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1977-10-21 第82回国会 参議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月二十一日(金曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員の異動  十月二十日     辞任         補欠選任      橋本  敦君     下田 京子君  十月二十一日     辞任         補欠選任      加藤 武徳君     源田  実君      真鍋 賢二君     山本 富雄君      野口 忠夫君    目黒朝次郎君      粕谷 照美君     竹田 四郎君      寺田 熊雄君     野田  哲君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鍋島 直紹君     理 事                 戸塚 進也君                 内藤誉三郎君                 中村 太郎君                 宮田  輝君                 小柳  勇君                 山崎  昇君                 多田 省吾君                 内藤  功君                 栗林 卓司君     委 員                 浅野  拡君                 岩動 道行君                 石破 二朗君                 糸山英太郎君                 小澤 太郎君                 亀井 久興君                 亀長 友義君                 熊谷  弘君                 源田  実君                 下条進一郎君                 園田 清充君                 玉置 和郎君                 成相 善十君                 林  ゆう君                 三善 信二君                 望月 邦夫君                 八木 一郎君                 山本 富雄君                 秋山 長造君                 片山 甚市君                 竹田 四郎君                 対馬 孝且君                 寺田 熊雄君                 野田  哲君                 福間 知之君                目黒朝次郎君                 矢田部 理君                 太田 淳夫君                 峯山 昭範君                 矢追 秀彦君                 矢原 秀男君                 下田 京子君                 渡辺  武君                 井上  計君                 山田  勇君                 柿沢 弘治君    国務大臣        内閣総理大臣   福田 赳夫君        法 務 大 臣  瀬戸山三男君        外 務 大 臣  鳩山威一郎君        大 蔵 大 臣  坊  秀男君        文 部 大 臣  海部 俊樹君        厚 生 大 臣  渡辺美智雄君        農 林 大 臣  鈴木 善幸君        通商産業大臣   田中 龍夫君        運 輸 大 臣  田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君        労 働 大 臣  石田 博英君        建 設 大 臣  長谷川四郎君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      小川 平二君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       園田  直君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       藤田 正明君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       西村 英一君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  三原 朝雄君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       倉成  正君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       宇野 宗佑君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  石原慎太郎君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  田澤 吉郎君    政府委員        内閣法制局長官  真田 秀夫君        内閣法制局第一        部長       茂串  俊君        公正取引委員会        委員長      橋口  收君        警察庁警備局長  三井  脩君        行政管理庁行政        管理局長     辻  敬一君        防衛庁参事官   平井 啓一君        防衛庁参事官   番匠 敦彦君        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        防衛庁人事教育        局長       渡邊 伊助君        防衛庁経理局長  原   徹君        防衛庁装備局長  間淵 直三君        防衛施設庁施設        部長       高島 正一君        経済企画庁調整        局審議官     澤野  潤君        経済企画庁国民        生活局長     井川  博君        経済企画庁物価        局長       藤井 直樹君        経済企画庁総合        計画局長     喜多村治雄君        経済企画庁調査        局長       岩田 幸基君        科学技術庁計画        局長       大澤 弘之君        科学技術庁研究        調整局長     園山 重道君        科学技術庁原子        力局長      山野 正登君        科学技術庁原子        力安全局長    牧村 信之君        沖繩開発庁総務        局長       亀谷 禮次君        沖繩開発庁振興        局長       美野輪俊三君        国土庁大都市圏        整備局長     国塚 武平君        法務省刑事局長  伊藤 榮樹君        法務省入国管理        局長       吉田 長雄君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       中島敏次郎君        外務省経済局次        長        溝口 道郎君        外務省経済協力        局長       菊地 清明君        外務省条約局長  大森 誠一君        大蔵省主計局長  長岡  實君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  田中  敬君        大蔵省銀行局長  徳田 博美君        大蔵省国際金融        局長       旦  弘昌君        文部省初等中等        教育局長     諸沢 正道君        文部省管理局長  三角 哲生君        厚生省社会局長  上村  一君        厚生省児童家庭        局長       石野 清治君        厚生省年金局長  木暮 保成君        農林省畜産局長  大場 敏彦君        農林省食品流通        局長       杉山 克己君        食糧庁長官   大河原太一郎君        通商産業大臣官        房審議官     山口 和男君        通商産業省貿易        局長       西山敬次郎君        通商産業省産業        政策局長     濃野  滋君        通商産業省基礎        産業局長     天谷 直弘君        通商産業省機械        情報産業局長   森山 信吾君        資源エネルギー        庁長官      橋本 利一君        中小企業庁長官  岸田 文武君        海上保安庁長官  薗村 泰彦君        労働省労働基準        局長       桑原 敬一君        労働省職業安定        局長       細野  正君        建設省住宅局長  山岡 一男君        自治大臣官房長  石見 隆三君        自治省財政局長  山本  悟君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    参考人        日本銀行総裁   森永貞一郎君        前税制調査会会        長        小倉 武一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十二年度一般会計補正予算(第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和五十二年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第1  号)(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和五十二年度一般会計補正予算  昭和五十二年度特別会計補正予算  昭和五十二年度政府関係機関補正予算  以上三案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りをいたします。  昭和五十二年度補正予算案審査のため、本日の委員会日本銀行総裁森永貞一郎君及び前税制調査会会長小倉武一君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、出席時刻等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 質疑に入るに先立ち、坊大蔵大臣から発言を求められておりますので、これを許します。坊大蔵大臣
  7. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 今回の輸・開銀北東公庫機関貸し倒れ準備金の繰入率の引き下げ等による国庫納付金増加等に関する補正予算上の処理につき、日本社会党小柳委員及び竹田委員より御質問のあった点については、小柳委員指摘の三機関収入支出予算補正を行わなかった点については、事務当局より御説明申し上げたとおり、法令違反等には該当しないと存じます。また、竹田委員指摘借入金増加に伴う支払い利息増加予算に反映されていないという点については、これにより当初予算支出権不足を生ずる場合には支出予算追加補正を行う必要があることは御指摘のとおりでありますが、今回は、一方において借入金利率引き下げによる支払い利息の減少があるため、当初予算支出権不足を生じない見込みでありますので、収入支出予算補正は行わなかったものであります。  補正予算処理については以上のとおりでありますが、かつて昭和五十年度予算審議に当たり、本委員会において、日本社会党、公明党、民社党及び第二院クラブから共同提案された修正案の中に、輸・開銀貸し倒れ準備金の取り崩しによる国庫納付金増額等の歳入の修正の御提案が含まれており、この修正案に対し、当時の大平大蔵大臣から、政府としては反対である旨の意見を申し上げたという経緯があります。  当時といたしましては、諸般の事情から御提案を受け入れることができなかったのでありますが、今回の補正予算編成に当たりましては、厳しい財政事情のもとにおいて、財政の節度を維持しつつ、公共事業費等追加財源を確保するため、かつての御提案経緯も踏まえ、今回の特別財源措置を講ずることとした次第でありますが、その間、事前に十分な説明、御理解を得ないまま、今回の措置をとったことについて、本院において御指摘を受けましたことについては、率直にこれを認め、遺憾の意を表明いたします。     —————————————
  8. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) それでは、これより質疑を行います。栗林卓司君。
  9. 栗林卓司

    栗林卓司君 私は、経済問題を中心お尋ねをしたいと思いますが、質問に当たって大変やはりひっかかるのが例の全治三年間の問題でございまして、私は、こう思うんです。  全治三年間、昭和四十九年度から五十一年度、その最大の課題物価の安定であった。ただ、この目的を達成するためには個人家計部門、あるいは企業財政、そういうものに犠牲を求めざるを得なかった。私はこれがいわゆる全治三年間と言われているものの本当の姿ではなかったんだろうか。その物価の安定を確保しながら個人家計部門、まあ言うなれば、失業、雇用不安、所得の伸び悩み、さらには企業の低収益借金財政、こういうものにどうやって取り組んでいくのかというのがこれからの課題であって、いわば第二段階の仕事にわれわれは取り組むことになったのではないかと、こう思うわけでありますが、総理見解を伺います。
  10. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私が全治三年と申しましたのは、これは申し上げるまでもないんですけれども、経済循環一普通でありますれば、これはまあ一年前後の不況、それから二、三年の好況、また一年前後の不況、そういう循環になるわけです。ところが、石油ショックが起こりましたあのときは、私は国民の皆さんに、これは普通の景気循環ではありませんよと、一年ではこの不況は脱却できませんよと、これは三年ぐらいかかりますよと、こういうことを申し上げたわけなんです。まあそれを顧みまして、四十九年、五十年、五十一年、その三カ年でまあ一命は取りとめた、一命は。しかし、まだ傷がかなり残っておる。国民にも負担がずいぶん重くのしかかっておるし、それから企業も特にそうです。それから財政しわ寄せがかなりいっておる。そういう傷跡がかなり残っておる、こういう状態と理解しております。
  11. 栗林卓司

    栗林卓司君 で、いまのお答えの残っている傷跡をこれから解決をしていこう、こういうわけですけれども、やはりこれもこれまでと同じようにどこかに大きなアクセントをつけながら、ほかにやはり若干の犠牲を求めながらということをしながら解決をしていくんだろうと思うのです。  そこで、個人家計企業収益財政と三つ挙げたとして、これをどういう優先順位と方法でこれからおっしゃったしわ寄せをなくしていくのかという点についてはどうお考えですか。
  12. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 財政企業家計の上に成り立っておるわけですから、やっぱり大事なのは企業家庭あるいは家計ですね、そういうことかと思います。ただ、財政状況もこれは非常に無理をしておりますので、この状態も無視することはできない。ですから、財政の再建ということも心がけながら、財政を支えておる企業家計、これをとにかく早く健全にし、安定させなきゃならぬ、このように考えております。
  13. 栗林卓司

    栗林卓司君 いまの問題と続けてお尋ねしたいと思いますけれども、その前に、そうやって傷跡を治していこうというときに、昨今の円高というのは一層困難な状況をわれわれに提起したんではないんだろうか、そう思うわけでありまして、そこで今回のこの円高がどういう影響を、大体企業収益が直接の対象になるわけですけれども、与えたんだろうかと考えてみると、経済企画庁がことしの一月に調査をされた「新たな対応をめざす企業行動」という資料があるわけですけれども、中を見ますと、一体あなたのところは円レートが幾らだったらやっていけますかという質問に対して、二百五十円以下でも大丈夫だと答えたのが七%、二百五十円台大丈夫とお答えのところが五%。いまの円レートでいいといっているのは足して言いますとわずかに一二%。残り八八%はとってもいかぬ。しかも、ことし、五十二年の輸出計画を見ますと、あらかたのところは一ドル二百九十円で計画を組んでいる。  そこで、企画庁長官に、先ほど企画庁がおつくりになったこれから数字をとったのですけれども、実態というのは、いまのアンケート調査でありますけれども、それに近いものかどうか、御判断を伺います。
  14. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 円高産業に及ぼす影響については、企業心理状態としては、その調査の時点ではそういう考え方をしておったと思います。しかし、これは一義的にそれから動かないというものではないと、やはり経済情勢に応じて対応していくものであろうと思うわけでございますけれども、しかし、いずれにしましても円が急激に高くなったということは産業にとって非常に厳しい情勢であるというふうに受けとめております。
  15. 栗林卓司

    栗林卓司君 通産大臣お尋ねしますけれども、アンケート調査ではありますけれども、ことしの一月ですから大変最近の数字でありまして、いまの二百五十円台では一二%ぐらいしかもたぬという声が出ている中で、目下の差し迫った問題、通産省とするとどういう対応策でお考えになるのか、お尋ねをしたい。
  16. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えいたします。  ただいまのお話の、十数%のものは現在の円高でもやっていけるという回答があったようでありまするが、しかし、それは特殊の非常に好況企業におきましてはなおそれでも続けていけるであろうかもしれませんけれども、大部分の、特に中小企業、なかんずく輸出中心といたしました繊維関係のごときはとうていやっていけないというようなことで、先般来、為替の対策につきましての緊急融資対策を制度的につくりましたけれども、さらにあれではやっていけないんだというような意見も多いのであります。そこで、われわれの方といたしましては、円高に対しまする対策本部をこのところ結成することにいたしまして、これに対しての真剣な取り組みをいたしたい、かように考えております。同時にまた、今後、いろいろな施策をさらに検討いたしましてお願いをする予定にいたしております。
  17. 栗林卓司

    栗林卓司君 実は、きょうも、これは全国中小貿易業連盟というところからきた痛切な嘆願でありますけれども、もう二百七十円でなければとうていもたぬ、こういうお話でございまして、しかも輸出というと、いまおっしゃった貿易関係中小企業が扱っているものはどうかというと、実はそういうものが五四%を占めている、相当部分がそういうたくさんの種類の輸出品で賄われている。相当の覚悟で取り組んでいかなきゃいかぬと思います。  しかも、問題というのは、円レートが高くなったから大変だということだけではなくて、輸出かできなくなると、どうせまあ出血でやるんなら国内でと、国内がまた乱売になってくる。その意味では、国の内外を見ながら相当対策を御準備いただかなければいけないと思いますが、重ねて通産大臣の御見解を伺っておきます。
  18. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えいたします。  特に輸出関係をいたしておりまする、あるいは燕の方面の金属食器等を見ましても、平年の五〇%ぐらいしか受注がありませんし、それからまた関の刃物のごときは三分の一になっておるような状態でありますし、ことに多治見の陶器類のごときは平均が九十日のところを二十日しかもたないというような注文の状況で、これではもうどうしてもやっていけないということで、今回とった対策でも、これではとても困るという声が非常に強いんであります。われわれといたしましては、さらにこれに加えまして、いろんな処置一般不況対策とあわせてさらに講じていきたいと考えております。
  19. 栗林卓司

    栗林卓司君 関連して一つだけ通産省に伺いますけれども、こういう状況になりますと、銀行と約束した返済計画もとってもできない、三年の返済を五年に延ばしてくれないかという話が出てくるわけであります。ところが、銀行の方が状況はわかるから延ばしてやろうと言ったときに、信用保証協会の方が、いやわが方には中のいろんな取り決めがありますのでそれは困るんですということで、大変困っているということを聞くんですが、この辺はどうでありますか。
  20. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 御案内のとおりに、政府系の三機関もあらゆる手を打っておりまするけれども、何といいましても約九〇%のものは民間の金融機関から金を借りておるような状態で、その信用補完ということが一番私は当面の重大な問題であると存じます。これに対しましての保険公庫に命じましたいろいろな緊急制度、これらを総合的にいたしたいと存じますが、特に新規の貸し付けの利下げの問題やら旧債務のさらに金利の引き下げといったような処置もとっておる次第でございます。  なお、きめの細かい対策につきましては、中小企業庁長官も参っておりますので、詳細にお答えいたさせます。
  21. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) お話にございました信用保証の問題につきましては、それぞれの保証協会で内規をつくっておりまして、その中で運用することになっておりますが、具体的には個々の中小企業保証協会との間の保証の契約によって処理するというたてまえになっております。いまお話しのような事情にございます場合には、私どももやはり弾力的に措置してしかるべきではないかと考えておりますので、なおよく実態を調べてしかるべき指導をいたしたいと思います。
  22. 栗林卓司

    栗林卓司君 しっかりと御指導をいただきたいと思います。  そこで、こういう混乱ですけれども、考えてみますと、余りにも円高が急激で大幅過ぎたんじゃないか、そこに一つの大きな問題があるように私は思うんですけれども、どうしてこの円高がこんなに急激で大幅であったのか、日銀総裁来られておりますので、ごらんになっておる御意見をまず伺いたいと思います。
  23. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 御意見のごとく、大変円高の勢いが急ピッチであることは御指摘のとおりでございます。スミソニアンレートと比べますと、西ドイツは四割を超える上昇、それに対して日本円は二割を少し超える上昇ということで、まだ半分に満たないわけでございますけれども、年初来の対ドル上昇率を見ますと、西ドイツの場合は四・四%ぐらいであるのに対して、日本円の方は一六・三%、いかにも急激かつ大幅であるような実態になっておるわけでございます。私は、これは両国の経済構造と申しますか、それに伴う貿易構造の相違からくるこの間における経済情勢の推移の差がこれをもたらしておると思うわけでございます。  御承知のとおり、西ドイツではエネルギーへの依存の程度が、石炭がございますので石油がそれほど高くなく、総じて海外エネルギーへの依存度日本よりかなり低かったわけでございます。それともう一つ貿易構造で、水平構造と申しましょうか、製品の輸入が多かったわけでございまして、もう一つは、やはり西ドイツ政府石油ショック以後の施策よろしきを得たということがございましょうが、石油ショックにかかわりませず、国際収支の方は終始黒字が続いてきておる。特に、この石油ショックのときのごときはかえって黒字が、その翌年でございますが、大きくふえたというようなことでございまして、外貨準備は大いに蓄積されたわけでございます。その間において非常に急激なるマルクの上昇を見たわけでございますが、その後においては国際収支は依然として黒字でございますけれども、ひところほどの大きな数字ではなくなってきておる。  それに対して日本はどうかと申しますと、石油ショック影響が非常に多かったことは御承知のとおりでございまして、西ドイツがこの石油ショックの翌年に大変な黒字を出しましたのと対照的に、日本は大幅な経常収支の赤字を出したわけでございます。したがいまして、この為替レートも、スミソニアンに対して四十七年には一時対ドル二百五十円ぐらいまで上がっておりましたものが、七四年には三百円ぐらいまで戻る、スミソニアンのレートとほぼ近いところまで戻ってしまったわけでございまして、その後は貿易の状況を反映しながら一進一退ということでございましたのが、昨年から大変国際収支がよくなったわけでございまして、その間には未曾有の石油ショック、世界に類例を見ない石油ショックの負担の大きかったにかかわらず、日本国民の勤勉としんぼう強さと申しますか、これをみごとに乗り切って国際収支が黒字になった、これはまさに喜ぶべきことでございますが、その黒字がその後も依然として続いておる。  本年度すでに暦年では一月から九月までで六十五億ドルの経常の黒字というようなことになっておるわけでございまして、ちょうど二、三年前ドイツについて起こりましたのと同じようなことがいま円について起こっておるということでございまして、これは私は両国の経済構造貿易構造の相違、それに基づく現実の経済情勢の推移からしてやむを得ない面もあるのではないかと思っておる次第でございます。
  24. 栗林卓司

    栗林卓司君 なぜこう急激だったんだろうかという点でありますけれども、まあ世上外圧が伝えられるわけですけれども、ただ平たく見てオイルショックの直前と比べまして卸売物価日本は高くなっている。おっしゃったように原油依存率が高いわけですから高くなっている。ところが、輸出価格を見ますと逆に日本は下がっている。したがって非常に誤解を受けやすい日本の姿であるということは、急激であった背景の一つとして言えるのでございましょう。
  25. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) レートの変化とその間の輸出物価の格差を見まして、まだ円が高くなってもいいんだという議論は外国にはございますが、私ども、この輸出物価をとるべきであるのかどうか、あるいは購買力全体——購買力平価というような意味で一体何をとったらいいのか、あるいは卸売物価がもっと適切であるのかもしれませんし、あるいは消費者物価も入ってきてもいいのではないか。結局、デフレーターがどういうふうに推移しているかという問題になろうかと思いますが、理論的にはいろいろな議論があるところでございますけれども、私どもといたしましては、一概に輸出物価と比較してまだ円を切り上げる余地があるという外国の議論には必ずしも承服してないということだけは申し上げたいと思います。
  26. 栗林卓司

    栗林卓司君 誤解を受けやすかったんじゃないかと言っておる。  日銀総裁、いまお尋ねしましたのは、そういうむずかしいお話じゃなくて、よってもって誤解を受けやすい感じがあったということでございますかという質問なんです。
  27. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 急騰の基本的な原因は、何といってもやはりこの間における経常収支の大幅な黒字ということでございまして、その間にいま仰せになりましたような理論づけであるとか、あるいは外国のそのときどきの発言等が契機になりまして投機的な傾向が加わったりなどいたしまして、時に急激な変動も避け得なかった、もちろんその間適切なタイミング等において介入はいたしておりますけれども、やはり実勢には抗すべくもなかったというのが実情ではないかと考えておる次第でございます。
  28. 栗林卓司

    栗林卓司君 総理お尋ねをいたしますけれども、その急激な変化のいわば一つの引き金になったものとして、例の経済見通しの中で七億ドルの赤になるはずのものが六十五億ドルの黒字と見通しを変えた、これは再々衆参の委員会で論議がございました。  そこで一重ねてお伺いするようですけれども、いまのお話しのように、日本の外貨準備高、経常収支の黒字が大変目立ってきた、いつになって下がるのだろう、こう言っていたときに、総理が先進国首脳会議に行かれたときには、少なくとも総体のパッケージとしての日本経済政策の見通しというのは、黒字とはむしろ逆の赤字七億ドルでありますと、こう言っていたわけです。帰ってこられたら何カ月かするうちに、いやそれは六十五億ドルの黒字なんだ、これは外国から見てどう思うんだろうか。しかも変えたものは経済収支の黒字だけではなくて、民間設備投資が当初は一二%前後伸びると思っていたのが、どうやらこれは半分ぐらいらしい、おおむねこれは二兆円近い減だ、二兆円近い内需が減だから、よってもって外国の方でかせいできて六十五億ドルの黒なんだ、日本政府はそういう構えに変わったのかと見る方が私は普通だと思うんですが、この点いかがですか。
  29. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 急激に円相場が高くなった、その急激はどこからきたかといいますと、そういうような背景というよりは、IMFの会議ですね、ここでいろいろ今日の経済情勢、これからの経済情勢、これの論議がある。そういう中で日本は黒字が非常に残りそうだ、逆にアメリカの方は大変な赤字になりそうだと、こういうことが論議され、はっきりしてきたということが私は今度の急激な円高騰の原因であると、こういうふうに見ておるのです。ですから、この急騰が始まりましたのは九月の末でしょう、三週間のうちに五・五%も円の価値が上がる、こういうことになってきたわけですが、急激というようなお尋ねでありますれば、これはIMF論議、そこにあると思う。  それから、大幅な円高になったと、円にも原因があります、これは日本国際収支にも原因があるが、アメリカの国際収支にも原因がある、こういうふうに見ております。
  30. 栗林卓司

    栗林卓司君 私がお伺いしておりますのは、そのIMFの会議でいいんですよ。日本が黒字で困ったものだと、だけど日本総理大臣が日本政府として必ず下げると言っているから、もうしばらく見守ってやろうじゃないかという意見が出なくて、いや黒字で大変だということでとまってきたのは、考えてみたら日本経済計画では内需が不振である、よってもって輸出の方でというかっこうになっておるじゃないかということが有力な心証になったんじゃないか、むしろそう思う方が国際社会の中では普通ではありませんかと伺っているのです。
  31. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあそれはそうかもしれません。日本は黒字を減らす減らすと言ってそれを減らすことが実現できない、その背景には六・七%成長と言ったのが五・九しかいかぬと、こういうようなことですが、それは、しかし、もう総合政策を発表した、これでその問題は大体私は解消しておると思うのです。  また、経済見通しがこれは見通しのとおり実現されるというのはむずかしいんです。アメリカだってそうでしょう。アメリカの主要国首脳会談、このときは貿易収支が百五十億ドルないし二百億ドルだ、こういうふうに言っておったんですが、それが今日何と二百五十億ドルないし三百億ドルだと、こういうふうに言われるような状態で、それからドイツは五%成長と、こう言っておる。それが何と今日は三%台を低迷する、こういうような状態になってくる。これは相当その見通しのとおりいくかというと、それはなかなかむずかしい点があるんです。ありまするから、そういう点をお互いに主要国の間でよく理解をして、そして理解の中で最善をお互いに尽くすということかこれからの道ではないか、そういうふうに考えております。
  32. 栗林卓司

    栗林卓司君 見通しというのは当たるものじゃないと、これはかねがね政府の御答弁の中であるんですけれども、ただ、国際社会の中で暮らしていくということになりますと、政府がどういう見通し、計画を立てたかということはなかなかかつてのようなわけにはまいらない。よってもって六・七%というのが国際的な制約にもなってくる昨今であるわけであります。その意味では、なかなか将来のことはわかるものかという御主張はそれとして、日本とすると、こういったぐあいに歩いていくんですという計画については、もっと慎重に、出したらきちんと守っていくことを覚悟していかなければいけないんではないだろうか。  そこで、新しい経済政策を出したからというお話ですけれども、それではやはり不十分でありまして、「昭和五十年代前期経済計画」の中で、見通しといったっていろいろあると書いてあるんです。そこの中で、政策運営の基本的な方向として重視をすべきものと挙げておりますのが物価と雇用と国際収支であります。そのほかの公共投資、社会保障、これはできる限り実現したいけれども、状況の変化はあるかもしらぬ。民間投資、個人消費、これは予測的な性格と整理している。物価とか雇用とか国際収支、実はこれに経済の全体がにじんでいるのでありまして、その意味では、先ほど、考えてみたら見通しを七億ドルの赤から六十五億ドルの黒に変えたことがそういった印象を与えたかもしらぬとおっしゃったわけでありますから、この際に、これからの中期計画について基本的に見直しをしながらわが国はこういった方向で進みますと、私はそれを出すことか大変遠いようですけれども、昨今の円高対策であり、円・ドルレートをもっと妥当な水準に修正をしていくためにどうしてもしなければいけない仕事ではないか、こう思うんですが、いかがですか。
  33. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国際社会では、なるべく日本としては長期的にはこうだと、中期的にはこうだと、こういうことを示した方が相手国は施策がとりやすい。同時に、外国の方が長期、中期の計画を立てておくことがわが国としても都合がいいんですよ。しかし、なかなかこの長中期というのはそう立てましてもそのとおりいくかというと、そういうわけにはいかぬ。そのときの客観情勢に従いまして、そのときどきの環境に応じての狂いというものが出てくる。これは相互に理解しておかなきゃならぬことだろうと、こういうふうに思います。  そういう考え方のもとに、わが国といたしましては、いま御指摘のように、何といっても物価、雇用、国際収支、この三つを踏まえまして、そして大体六%前後の成長でこの十年間はやっていくんだということを宣言しておるんです。しかも、その前期五カ年、つまり昭和五十年代の前期におきましては、これは六%の平均よりも高い率でやっていこうということもこれは宣言しておるわけでありまして、私は諸外国に対して日本がどういう考え方をとっておるかということにつきましては、かなり明瞭にこの前期五カ年計画で示しておる、こういうふうに思うんです。ただ、その前期五カ年計画を毎年毎年に当てはめてみますと、これはずれが多少起きましたり、多少修正を要しなきゃならぬ、そういう問題は出てきます。出てきますけれども、基本的な考え方につきましては私は十分なものを示しておると、こういうふうに考えております。
  34. 栗林卓司

    栗林卓司君 いま六%とおっしゃったんですけれども、前期経済計画の中で経済成長率はどういう意味合いかと書いてあるのは、経済発展の大まかな姿を示しているだけである。ですから中の細かい肉づけが大切でありまして、総体何%というのはこの際あんまり意味がないんだと書いてある。したがって昭和六十年までおおむね六%と言われたって中身は何のことかさっぱりわからないということが本当なんじゃないか。  そこで、実は、この円高問題も含めて情勢は非常に大きく変わってきたんでありますから、毎年そう細かに直せるかと言っている状況とはちょっと違うと思う。その意味でも、もともとこの五年間というのは前半二年間が全治三年間に当たる期間であり、後半がいわば新しい課題に見合う期間である。二つのものが、両方入っている。その意味でも大変見づらい、わかりづらい。しかも現状では実態にそぐわなくなってきた。その意味で、これを変えますとおっしゃっていただくべきだし、その方が私はいろんな意味でプラスになるのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  35. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 前期五カ年計画をここで変えますと言うことはできません。できませんが、客観情勢は大変変わってきた。見通したそのところとの乖離も出てきておる。時間的なずれ、これはかなりある。そういう点を踏まえまして、いわゆるフォローアップといいますか、まあ見直し、検討といいますか、そういうことはひとつ鋭意やらなけりゃならぬだろう、こういうふうに考えておるのです。ただ、これを計画として全部改定だということになると大作業になりまして、この大作業が完了するぐらいの間には経済はもう相当動いちゃう、こういうことでございまするから、まあそれはそれといたしまして、見直し、フォローアップ、これは極力やってみたい、こういうふうに考えております。
  36. 栗林卓司

    栗林卓司君 総理お尋ねしますけれども、民間設備投資がなかなか元気にならない。理由は何なんだろうか。それは経済的な要因もあるけれども、心理的な要因もあるのじゃないかと言われるわけですけれども、その辺はどうつかんでおいでになりますか。
  37. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは心理的な要因もありましょうが、基本的には設備過剰、過剰な施設を抱えておりまして、そして新規な設備を必要としない、こういう状態か今日広範に各企業の中にある、こういうふうに見ております。
  38. 栗林卓司

    栗林卓司君 経企庁長官お尋ねしますけれども、いろんな御調査をなさっていると思いますが、いまの問題について御見解ありますか。
  39. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 私どもは経済白書でこの問題を多少分析をいたしております。  これでは、大体、第一は、非常に稼働率が低いということ、需給ギャップがあるということが第一でございます。  第二の理由といたしましては、やはり企業の利潤率が低下しておるために新しい施設をいたしますとコスト高になるということ、これが古い設備になかなか対抗できないというのが第二でございます。  第三点は、技術革新が一巡いたしておりますので、新しい規模の利益を追求する余地が少なくなった。  それから第四番目には、非常に将来の不確定な問題に対して企業家がなかなか自信を持ち得ないという心理的ないまお話しの点があろうかと思うわけでございまして、当然出てよいと思う設備投資も若干周囲の様子を見ておるという点があるわけでございますので、潜在的にはまだ設備投資をやる余力は十分あると私は思っております。
  40. 栗林卓司

    栗林卓司君 いま引用された経済白書の最後の締めのところで、これからどういった方向を重点にして進んでいこうかという一番最初に書いてあったのが信頼感の回復だと記憶しておりますが、間違いありませんか。
  41. 倉成正

    国務大臣倉成正君) お話しのように、現在の経済情勢というのは非常に不透明で不確定な要素が多いわけでございますから、政府といたしましては、できるだけこの不確定、不透明の要素を一つずつ少しでも少なくしていくということではなかろうかと、そのことが信頼感回復につながると思います。
  42. 栗林卓司

    栗林卓司君 総理お尋ねしますけれども、OECDの経済見通し、各国別に分析してありまして、日本だけ大変珍しい言葉が使ってあるのです。やっぱり設備投資はだめだろう、理由はコンフィデンスがない。辞書を引いてみたら、信頼がない、自信を失っている。だから日本はなかなかであろうと外国でも言っている。国内の分析はいまお話しのとおり。重ねて心理的な要因についてどの程度評価したらいいか、御見解を伺います。
  43. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 企業はこうすれば利潤が上がるんだということになれば、これは勇気が出てくるんです。ところが、そういう状態にならぬ。その最大の要因は、私は設備過剰であり雇用過剰である、そういうようなことがあると思うんです。企業というものは、これは利潤が出るという状態、これが展望できれば私はそこで勇気がでてくる、またコンフィデンス、つまり自信が出てくる、こういうふうに思いますが、遺憾ながら、いま企画庁長官も申し上げたとおり、稼働率が低い、つまり設備過剰の状態、これが蔓延しているわけです。  そういうところでありますので、政府といたしましては、この状態を早く解消しなけりゃならぬ。それには需要を造出しなけりゃならぬ。さて、それが設備投資からくるかというと、これは設備投資はただいま申し上げたような状態でなかなか起こらぬ、やっぱり政府が需要を喚起するほかはない。そこで公共事業を中心とした需要造出政策をとる、こういうことにいたしておるわけです。やっぱり信頼感というのは抽象的なものでは私はないと思うんです。展望というものは抽象的なものじゃない。これはやっぱり具体的な裏づけがなければ信頼感、つまり自信というものは出てこないんだと、こういうふうに思いますが、その最大のものは何といっても需給のバランスというか、この設備過剰、そういう状態をここで解消する、そういうふうに考えております。
  44. 栗林卓司

    栗林卓司君 おっしゃるように、具体的な裏づけが必要なんでありますけれども、そのための重要な宅のが政府の単に何%という成長率だけではなくて、中身を盛り込んだ新しい計画ではないのか。それをこう強く求めなければいけないほど昭和五十年代前期経済計画実態から離れてきたのではないか、こう申し上げたのです。
  45. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 結局、経済成長というのは何のためにするんだということになるわけですか、これはやっぱり国民の生活を安定させるためにこそ経済成長と、こういうことがあるわけですから、成長政策を否定するわけには私はいかぬだろうと思うんです。しかし、成長政策というものはその目的が国民生活の安定のためにあるんだというその認識ですね、これは失ってはならぬ、こういうふうに考えております。  そういう見地から申し上げますと、前期五ヵ年計画、これはかなり政府も検討いたしまして、また経済審議会の答申まで求めまして、つくり上げたものでありまして、そう考え方の基本において間違っているところがあると、こういうふうには思いませんが、ただ、時間的ずれだとか、多少客観的な情勢変化だとか、そういうものが現在出てきておるという事実はあるんです。その点はよくフォローアップいたしまして、そしてこれからの展望に備えたい、こういうふうに考えております。
  46. 栗林卓司

    栗林卓司君 私は、設備投資を考える場合でも、それから問題の雇用、失業の問題を考える場合でも、存外に企業収益というのは大きな意味を持っているんではないのか、こう思います。  そういう大きな問題について、どういう見通しを前期経済計画がしていたかといいますと、中を引用すると、鉱工業生産指数の方はかなり速い速度で増加する。したがって法人所得の方もかなりの回復を示す。いまはどうかといいますと、御案内のとおり惨たんたる低収益であります。これだけ開いてくると手直しじゃ済まない、私はこう思いますが、いかがですか。
  47. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 現状を分析しまして、そして今後の展望をしてみる、そういうことはもう必要だろうと思います。そこで、いまそういう考え方で経済審議会の方でも作業を進めておる、こういうことであります。ただ、しかし、これを全面的に改定するということになると大仕事でございまして、これが当面の施策に間に合うかということになると、これは間に合いそうなそういうしろものというか、そういうようなものじゃございません。これはもう時間がかなりかかる。これはもうあらゆる社会現象というものを総体的に分析いたしまして、そしてあらゆる角度から調整のとれたそういうものでなけりゃならぬということを考えまするときに、あれを全面改定して、そしてということでないとこれからの指針が立たないと、こう言うんじゃ私は時期を失するおそれがある、そういうふうに考えるわけです。  そこで、あれはあれといたしまして、あれを見ながら現状はどうなっているか、前期五ヵ年計画とどういう乖離が出てきておるか、その乖離をとらえて今後どういうふうに展望すべきか、そういうような作業はぜひやってみたい、こういうふうに考えております。
  48. 栗林卓司

    栗林卓司君 いまの総理お話というのは、なるほど直さなきゃいかぬことはわかるけれども、いかにも仕事が大変だと、こういうことですか。
  49. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 基本的な考え方について直す必要は私はない、こういうふうに思うんです。ただ、それが現実にどういうふうに適用されているか、こういうことになりますと、これは直るところもかなり出てきておる、こういうふうに思います。  しかし、基本的な考え方で間違いがある、こういうことであれば、これはもう直さなきゃいかぬし、そんなものを採用して政府の指針だなんというようなわけにはいきませんけれども、基本的な考え方で間違いないんだと、いろんな時間的なずれが出てきておる、あるいは若干の修正点も見られると、こういうような状態でございますので、あの計画がここで修正が簡単にできるものであれば、それはもう修正してもよろしゅうございますが、そう簡単にできない。いろいろ施策を進めていく上に参考になるような、そういうような万全を期した新計画というものはそう簡単にはできない。そこで、それをどこまでも指針としながら、現状をよく分析して、どういう乖離が計画との間に出てきておるか、その乖離を踏まえてこれからどういう展望を出すべきかということが実際的じゃないか、そういうふうに見ております。
  50. 栗林卓司

    栗林卓司君 いまの基本的な性格というのを考えてみますと、みんなそろって一生懸命働いて、あとどうやって分けようか、これは計画の一番基本的な部分だろうと思います。  そこで、前期経済計画を見ますと、所得分配がどうなっているのか。わかりやすく三つだけ挙げますと、額に汗して働いている勤労者、雇用者の所得は一体どんなぐあいになるのか、企業の法人所得はどうなるのか、利子とか賃貸料でかせいでいる人たちはどうなるのかと分けますと、この計画で一番伸び率が高いのは利子賃貸料所得。分配率ですよ。その次に伸び率が高いのが法人所得。一番低いのが雇用者所得。基本的な部分でおかしいんじゃないですか。
  51. 倉成正

    国務大臣倉成正君) お答えいたしたいと思います。  御案内のとおり、昭和五十年代の前期経済計画を立てた時点というのがいわゆる不況のときでございます。不況のときには雇用者所得は低くなるということは、もう栗林委員十分御承知のとおりでございまして、たとえて申しますと、雇用者所得にとりましても昭和四十五年ぐらいをとりますと五四.五と、これから四十六年が五七・三、四十七年が五八・一とだんだん上昇してきておりますけれども、特にこの不況の時代になりますと、日本の終身雇用の制度のもとにおいて雇用を維持していくということで、どうしても雇用者所得が高くなるということで、この五十年時点においてとりました雇用者所得が非常に高く出ておるわけでございます。したがって、この五十五年の時点において五十年よりも若干下がりましても、過去のトレンドから見ますと上昇していると、こういうふうに御理解をいただけばいいんじゃなかろうか。法人所得やその他の所得においてもちょうど同じことでございまして、不況のときにおける状況というのがその問題を反映していると思います。  なお、多少技術的な問題になりますけれども、法人所得についても四十八年度は八・一%に落ち込んでおるわけでございますけれども、五十一年度一〇・一%となっていますが、不況前の一四、五%という水準には実は及ばないという状況でございまして、この辺が非常に落ち込んでいる、したがって、これがある水準まで戻っていく、こういうことを考えておるわけでございます。  それから、もう一つ技術的な点を申しますと、国民所得統計の企業の在庫品の価格による水増しというものは、企業収益から控除をいたしておるわけでございまして、四十八年度以降、非常に異常物価のために在庫品評価というのが出てまいりますので、これについては法人所得から控除しておるわけでございまして、この辺が若干この統計上ごらんになりますと、ひょっと一見しますと不思議に思われる点じゃなかろうかと思うわけでございます。
  52. 栗林卓司

    栗林卓司君 数字で伺いますと、法人所得の伸びが五十年と五十五年で一七・二%、雇用者所得が一二・五%、これは五十年が法人所得は低かったんだと、これは確かに御指摘の事実はあります。ただ、個人利子、賃貸料所得が一九・三というのはどういうわけですか。
  53. 喜多村治雄

    政府委員喜多村治雄君) お話しございましたように、確かに経済計画におきましては法人所得の伸びが非常に高く出ておりまして、これはいまお話しのございましたように、五十年の数値が非常に低かったということを反映いたしまして非常に伸びました。で、反面、雇用者所得は、これは五十年の段階におきまして比較的正常な数値を示しておりましたために、その伸び率を正常に伸ばしておりますために法人所得よりは伸びは小さいということでございます。  で、残りのいま仰せになりました個人利子、賃貸所得につきましては、これは五十年代の前期、五十年代の構成比は一三%ということでございますものが一六%ぐらいになるわけでございますから、お話しのようにそういうことになるわけでございますけれども、これにつきましては残渣として出ておりますためにこういう結果に出ておるということでございますが、非常にこのウエートとしては小さいものでございますので、伸び率としては御高承のとおり一九%というような伸びをしておりますけれども、ウエートとしては小さいわけでございますので御了承いただきたいと思います。
  54. 栗林卓司

    栗林卓司君 ウエートとして小さいとおっしゃいますけれども、昭和五十五年度の金額を見ますと、法人所得の方が十八兆、利子、賃貸料所得の方が三十九兆、ちっとも小さくないじゃないですか。  関連して、大蔵大臣にお尋ねしますけれども、利子、賃貸料所得の伸びが一番大きい、これを聞きながら、配当利子分離課税というのはどういう税制だったかとお考えになりますか。
  55. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 配当利子分離課税と申しますのは、もう申し上げるまでもございませんけれども、総合課税の中の一つの例外規定でございまして、配当利子につきましては、法人税法からも二重課税というようなこともこれを避けていかなければならないというようなこともありますし、それから、それが始まったのはやはり何にいたしましても資金の充実ということが大事なことでございますので、それでその民間資金を充実していくというような目的もありましたし、そういったようなところからこれが生じてまいったのでございますが、しかし、これは税法上から考えますと、他の政策目的のために、税法上の公平であり、収入を集めるということに対して、妥協と申しますか、あるいはそこを犠牲にするといいますか、そういったような点がございますので、従来からこれを考えまして、今日もその点につきましてはどういうふうに持っていこうかということについて鋭意検討をしておる次第でございます。
  56. 栗林卓司

    栗林卓司君 全然お答えになってないわけですけれども……。  総理お尋ねしますけれども、みんなで一生懸命努力をしてかせいだものをどう分けようかというのは計画の基本的な部分である、先ほどそうだとおっしゃいました。中を見ますと、法人所得が十八兆で、利子、賃貸料が三十九兆、多少数字の出入りはあるんでしょう。だけれども、伸び率から見てとにかく利子所得の方が一九・三%伸びて、法人所得が一七・二%で、雇用者所得が一二・五%というこの組み立てば、基本的な発想として妥当なんだろうか、慎重に検討してもう一遍考えてみる対象ではないのかと思いますが、いかがですか。
  57. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私、この前期五カ年計画のその辺はまた——まだというか、詳細に記憶しておりません。おりませんが、考え方としては利子配当所得、これのシェアがふえるという状態は、私はこれは好ましい状態とは考えません、シェアですよ。でありまするから、再検討というとまた先ほど申し上げたような問題になりまするから、注意深く見守っていきたい、かように考えます。
  58. 栗林卓司

    栗林卓司君 いま、私が伺っていますのは、これほど乖離しておりますよという材料を幾つか申し上げているんです。ですから、慎重にお考えいただいて、しかも、先ほどの、この不確定な時代にどうやって将来を見通していこうか、四苦八苦をしている多くの国民、経営者からしますと、いま政府が一番高いところから周りが見えるわけですから、将来を考えてこういったぐあいに持っていくんだと、多少出入りはあるかもしらぬけれども、基本的な構えはこうだとおっしゃっていただくことがいかに必要かということを再三繰り返し申し上げているわけです。  で、食い違いのもう一つの例として申し上げますと、エネルギー問題。  原油が一体どれぐらい買えるだろうか、前期五カ年計画で言っておりますのが四億八千五百万キロリットル、ところが、先般出されましたエネルギー調査会の整合性と実効性のある総合エネルギー政策の推進、これは精いっぱい節約してくれと言っておりますのが四億三千二百万キロリットル、その差は五千三百万キロリットル違う。五千三百万キロリットルというのは、ごく大まかに言いますと、一日当たり百万バレルです。百万バレルというのは大変大きい数字でして、IEA十九カ国が相談をして六十年までに全体で輸入する原油の量を幾らにしようかと相談したのが二千六百万バレル・パー・デーです。そこの中で百万バレル・パー・デーが違う。しかも、新しいこの計画では、何と言っているかといいますと、四兆円からの金を使って百万バレル・パー・デーの原油を何とか探そうじゃないかといってやっているわけです。それぐらいの額が違っているということは単なる違いでは済まないと思いますが、いかがですか。
  59. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 五十年代前期五カ年計画、これはかなりエネルギー面ではゆとりを持っておるんです。当時のエネルギー見通しからいいますと六・七%でしたか、八%でしたか、その辺までの成長が実現可能であると、こういうわけであったわけです。ところが、どうもエネルギーの供給面において、特に原子力発電ですね、この面の進捗がよくないというので、ただいまお話しのような暫定見通しが出てきておるわけでございますが、この見通しによりますと、エネルギーの供給が全体としてかなり落ち込むわけです。しかし、落ち込みましても、この十カ年展望六%成長、これに支障はない、そういう数値になっておるわけであります。
  60. 栗林卓司

    栗林卓司君 私がお尋ねしましたのは、百万バレルを一日当たり減らすというのは並み大抵ではない、経済の各分野にいろんな努力を要請しながら、協力を要請しながら、減るものではない。ということは、計画としてちょっとやっぱり調子が悪いということなんですよ。だから、何であんな計画をつくったと言っているんじゃないですから、やっぱりあれは見直さなきゃいかぬ、何とかその努力をしようということぐらいは言えるんじゃないですか。
  61. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 確かに、御指摘の点はそういうことになると思います。つまり、あのとき総エネルギーの供給、これを見通してやったんですが、総合エネルギーの供給は当時はかなりゆとりを持っておりましたから、それが減りましても、まあ一向経済成長六%というものには支障はない。ありませんけれども、その六%成長を達成するためには、それに必要なエネルギーを充足しなきゃならぬ。そのためには、一つは、当時見通したよりはかなり省エネルギーというものを強く推し進めなきゃならぬ、こういう問題が起こってきているんです。その点がまた各界にかなりの影響を持つであろう、これはよく承知しております。お説のとおりでございます。
  62. 栗林卓司

    栗林卓司君 では、当面の問題に戻ってまたお尋ねしますけれども、構造不況業種という言葉、これはよくわかりません、どういうことだか。大変あいまいであります。ただ、どちらにしても、いまの経済成長率をとにかく高めて、景気の回復を急いで、いまのわれわれが抱えている幾多の困難な問題を解決していこうということが対策の基本であることは御異論ないと思います。そういう観点で、今回の二兆円の公共投資の追加で十分なんだろうか、この点まずお尋ねします。
  63. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この二兆円というのは、波及効果まで入れますと四兆円を超えるんです。その四兆円の規模の波及力を持つ今回の施策、これが大体まあ本年度の末ですね、来年の三月末までにどのくらいの効果を生ずるかと、こういうことを相当幅を持たせて展望しておるんですが、これが一兆五千億ないし一兆六千億ぐらいにはなろうと。そういうことになりますれば、これは六・七%という成長になる、こういうことでありまして、これは私は実現できると、こういうふうに見ております。
  64. 栗林卓司

    栗林卓司君 大変単純にお尋ねするようで恐縮ですけれども、今年度全体の公共投資がおおむね十兆予定しておりました。上期は、七三%前倒しということで集中的に消化をしようということですから、十兆の七三%というと七兆三千億円、下期は二七%しか残っておりませんから、二兆七千億円、差し引き足りないものが四兆六千億円、二兆円を足したとしても依然二兆六千億円が足らない勘定になりませんか。
  65. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 計算は大体そういうことかと思いますが、上期に契約をした、それが上期に全部が実行されるわけじゃないんです。それが下期にまたずれ込む、そういうことになるわけですね。そういうことを考えますと、今度の施策をとりました結果、昨年の下期よりはかなりふえておる、こういうことになり、上期からのずれ込み、これを加えますと、落ち込みというような事態にはならぬと、こういうふうに見ております。
  66. 栗林卓司

    栗林卓司君 下期へのずれ込みということをおっしゃるとすると、この上期にも前からのずれ込みがやっぱりあった。それは押せ押せの関係でありますから、やっぱり同じことで、そこで私が先ほど単純に申し上げたのは、そう余り理屈として違っていないはずだというので、十兆の七三%が前に来ているから七兆三千億円だ。下期は二兆七千億円しかない。よってもって足りないのが四兆六千億円。こういう計算というのは、おくれおくれの効果というのはそれぞれ持っているわけですから、やはり言えるんじゃないですか。
  67. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのおくれおくれを去年と比べてみまして、ことしは去年の下半期よりはかなりそういう事業はふえていく、こういうふうなことを申し上げておるわけです。
  68. 栗林卓司

    栗林卓司君 そうすると、上期の場合に、なぜ七兆三千億円、七三%も前倒しをしなければならなかったのか、その前のいわばこちらに送られてくるものが足らなかったからなんだろうか。私がなぜこういう聞き方をするかといいますと、たとえ話はいけないかもしれませんけれども、どうもいまの日本経済というのは乾いた畑みたいなもので、幾ら水をまいてもどんどんどんどん吸っちゃってなかなか湿り気か及ばない、そういう状態じゃないか。そうすると、上期に何杯まいた、下期に何杯まいたというのは、普通は波及効果がございまして、おっしったようにずっと後ろに効いてくるのだけれども、いまの日本経済の乾き方というのはなかなかのものだから、結局、上期に幾ら金をつぎ込んだか、下期に幾らつぎ込んだかということが直ちに響くような経済ではないのじゃないか。その点いかかですか。
  69. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 乾き切ったという表現ですが、その点は私もそんな感じもするんです。つまり稼働率が非常に低い企業ですね、これが非常に多いわけです。ですから、問題は、その稼働率、これを上げる、そして企業の需給のバランス、これをとる、こういうことだろうと思います。そこで初めて新規設備投資需要というものが起こってくる、これが一般的な意味でそう言えるんじゃないか、こういうふうに思いますが、望ましい稼働率までまだ行かないんですよ。今度二兆円施策をとったと、こう言いましても、その望ましい稼働率のどうも半分道中ぐらいしか行かない。そこで働けど働けどじっと手を見るというような心境になるわけでありますが、その辺か私はよく認識されなけりゃならぬと思うんです。働けば必ず需給の回復ができるんだと、こういう方向に向かって事は進みつつあるんですから。  まあしかし、現在の状態では、政府があの手この手いろいろ打つ、業界も努力をする、しかし何せ望ましい稼働率というものが一般的には実現されないものですから、そこで企業収益というようなものに改善が見られない、非常に焦りを感ずると、こういう状態かと思います。
  70. 栗林卓司

    栗林卓司君 そこで、いまの本当に乾き切った経済状態、まああえて申し上げますと、在庫の過剰感がどれぐらいあるかというと、ある機関の報告ですけれども、製品在庫で四割ぐらいが多いと言っている、流通在庫では六割ぐらい余分なんだ、設備はどうかというと、いややっぱり四割余分なんだ、思い込む方は勝手かもしれませんけれども、そういう過剰感を抱きながら現在しているほど乾き切っている。そこの中でまあ水をまいて湿り気をくれるように御努力なさっているわけですけれども、たとえた質問で恐縮ですか、乾いた畑に水をかけていく場合に、その水というのは、かけ続けていかなければいけないんではないだろうか。断続的に、この日まいたからあしたは休みじゃなくて、ずっとかけ続けていかないといかぬ、そう思いますが、いかがですか。
  71. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この水をまいた結果、乾いた畑がちゃんと肥沃な田畑に変わる、こういうことを見届けるまでは、これは水をまいていかなければならぬと、そういうふうに考えています。
  72. 栗林卓司

    栗林卓司君 そこで、企画庁長官お尋ねをします。  私は、いろんな意味で、去年の経済運営が災いの種をまいたんではないかという気がして仕方がないんですけれども、そこで去年の政府の水のまき方、公共支出、果たして十分であったとお考えかどうかお尋ねします。
  73. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 景気を支える要素には、民間の個人消費、設備投資あるいは住宅投資、在庫投資、財政支出等がございます。これらがバランスをとれて伸びてまいりますと経済が順調にいくわけでありますけれども、昨年は、暦年で申しますと、一月から三月までは非常に景気が上昇の過程にあったわけでございます。これを支えましたのは輸出であったわけでございます。ところが、これが若干輸出にかげりが出てきたというようなこともございまして、四−六月ちょっと全体の成長が落ちてまいりまして、七−九、十−十二月という点から申しますと、これはいわゆる国鉄、電電等の法案のおくれとか、あるいはロッキード事件というような問題が足を引っ張りまして、確かに財政支出の面で七−九、十−十二月という点は十分な役割りを果たさなかったという点はあろうかと思うわけでございます。  で、問題は、やはり日本の景気が輸出財政支出で支えられてきたわけでございますが、本来ならやはり個人消費支出と設備投資というものがこれを引っ張っていくのがたてまえでございますけれども、ちょっと外生的な輸出とかあるいは財政支出がちょっと手を緩めると、景気が停滞してくる、そういう性格を持っておったんじゃなかろうかと思うわけでございます。
  74. 栗林卓司

    栗林卓司君 私がお尋ねしたのは、去年の政府支出、財政支出が十分だったかどうかという質問でありまして、そこで去年の予算編成を振り返って考えてみますと、少なくも景気刺激型ではなかった。どちらかというと中立型でありましたし、それがゆえに物価調整減税もしなかったわけであります。予算編成のことも振り返りながら——いまたまたま法案のおくれのことばかり強調されましたけれども、予算編成のことも考えながら、果たして足りたんだろうか、足りなかったんだろうかという御判断はどうですか。
  75. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 私は、やはり設備投資あるいは個人消費、その他の在庫調整の進展、そういうものがやはりわれわれが期待したよりもおくれたというところに原因があるわけでございまして、昨年の段階において、財政状況では精いっぱいのことをしたというふうに判断しておるわけでございます。ただ、振り返ってみて、昨年足らなかったから、いまから考えたらどうだということになれば、いろいろな意見があるのじゃないかと思います。
  76. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 去年の財政措置、つまり予算が大変景気回復のためには過少であったんじゃないかと、こういう御意見でございますけれども、去年の予算も前年度に比べまして二一・二の増、それから、ことしの五十二年度は御承知のとおり二一・四と、それに比べてみますと、そんなに変わらないというような予算の組み方をやりましたが、しかし、御案内のとおりいろんな事件が起こりました。それに加えまして、企画庁長官お話がありましたが、鉄道とか電電のこれの工事ですね、これが非常におくれたといったようないろいろとそういう原因が起こりまして、確かに公共事業等が思っただけできなかったということがありますか、去年の予算もそういう目的のためには精いっぱいのことをやってきておると、こういうことでございます。
  77. 栗林卓司

    栗林卓司君 せっかくの御指摘ですからお伺いしますけれども、去年の公共事業関係費、これは前年ですから五十年ですね、昭和五十年の補正後と比べて伸び率は何%ですか。
  78. 長岡實

    政府委員(長岡實君) お答え申し上げます。  五十年度の補正後に比べまして、五十一年度の公共事業の伸び率は一四・四%でございます。
  79. 栗林卓司

    栗林卓司君 ほんとに一四・四ですか、補正後に比べて。ちょっと念のため、間違いなし補正後に比べて一四・四ですか、補正後と当初。
  80. 長岡實

    政府委員(長岡實君) 失礼いたしました。  ただいま私が申し上げましたのは、補正後・補正後ベースの比較でございますので、補正後・当初ベースはいますぐ調べてお答え申し上げます。
  81. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) すぐ答弁出ますか。——
  82. 栗林卓司

    栗林卓司君 じゃ後に回して結構ですから。  経企庁長官、先ほど、振り返ってみたらいろいろあるかもしれませんの、「いろいろ」の意見を聞きたいのですけれども、どうですか、振り返ってみてどうお考えですか。
  83. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 私が申し上げましたのは、昨年の暮れ十一月に景気対策をいたしまして、またことしの三月、四月と景気対策を追加いたしたわけでございますけれども、その時点で考えてまいりますと、民需が思うように出なかった。したがって、それに対して財政がいかにあるべきかということについて御意見があってもそれは一つの御意見ではなかろうかという意味で申し上げたわけでございます。今日の公債依存率のもとで精いっぱいのことを財政当局はいたしたと、そういう評価をいたしているわけでございます。やはり民需が伸びてこないことには、財政だけで非常に大きく引っ張るということは大変無理なことではないか。また余り財政が背伸びしますと、今度は逆にそのカンフル注射がなくなったときにどうなるかということになるわけでございますから、われわれが目指しているのはやっぱり持続的な成長ということで、ある節度を持ちながらほどほどにやっていくということではなかろうかと思います。
  84. 栗林卓司

    栗林卓司君 財政当局の御努力のことまで聞いておらないのでありまして、経済白書ですと「総じてマイルドな伸びにとどまっている」と書いてあるのです。大変慎重な言い方だけれども、足りなかったと訴えているのです。で政府に伺いますと、つい財政が頭に来ますけれども、資金の流れという面でこれは非常にやっぱり大きな問題だと思うのです。足りたか足りなかったか、たくさんの貯蓄があったんだけれども有効に使われたんだろうか、使われなかったらデフレギャップになることは総理も御承知のとおり。  そこで、日銀総裁に、去年を振り返ってお尋ねしたいのですけれども、日銀の昭和五十一年の金融経済の動向を見ますと、そこで指摘してあるのは、一つ国民が貯金した金を使い切れなかった。二番目、その結果ドルをたくさん買い込んで大幅黒字の原因になっちゃった。問題だと書いてあります。三番目、民間設備投資はそう急には伸びないのだから、政府投資ががんばらなければいけなかったのに、政府投資は昨年下期には逆に減ってしまった。大変大ざっぱに言っておりますから正確を期すことはできませんけれども、以上書いてあることを踏まえながら総裁の御見解を伺いたいと思います。
  85. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 特に財政支出がいま問題にされておるわけでございますが、いまお読み上げになりました調査月報、これは事務的な分析でございまして、言葉の節々に足りないところがあるかもしれませんが、私自身はこのように判断しております。  昨年の上期は、大変財政支出が伸びたわけです。それはその前年の第四次不況対策の効果もございましたし、また年度初における公共事業等の支出促進等の効果もございましたので、暦年の上半期は大変支出は伸びたと思います。それが第一・四半期、第二・四半期のGNPの伸び率にも反映しておるわけでございまして、それが下半期になりますと、どうも財政支出か少し伸び悩んだと申しますか、むしろGNP統計ではマイナスに転じたということがあるわけでございます。  なぜそういうことが起こったか。それにつきましては上半期に施行が寄せられたということの反動もございましょうが、先ほど来御答弁がございましたように、国鉄、電電等の値上げの延期による国鉄、電電の工事計画の削減というようなこともあったと思います。しかも、輸出が年度初は非常によかったのでございますが、年度半ばに少し中だるみ的な症状を呈して、それらが相まって昨年の下半期における景気の停滞、いわゆる足踏み的な状態になったと考えておるわけでございます。そこで、そういう状態ではいけないというようなことで、昨年のいわゆる七項目の財政面からの対策が講じられ、さらにそれが補正予算の提出となってさらに補完されたわけでございまして、一−三月になりますとかなりの規模に財政支出が増勢を取り戻しておるということがGNP統計の上にも明らかに出ておるわけでございまして、その結果五十一年度、これは年度でございますけれども、全体としてのGNPが五・八というようなことにおさまったというようなことでございまして、そのときどきにおいて谷間はございましたけれども、そういうときにはやはり財政の面で弾力的に補整策、通貨対策が講ぜられたように見受けておるわけでございまして、そのときの情勢に即して弾力的な運営が図られたと、それが私の昨年度の経済についての結論でございます。
  86. 栗林卓司

    栗林卓司君 企画庁長官総理お尋ねしますけれども、先ほど畑が乾き切っているのでどうやって水をまいたらいいか、水はまき続けていかなければいけないと申し上げて、総理もそうだとおっしゃいました。先ほど来のお話しのように、去年の下期にまくのをサボったわけです、結果として。ただ、なぜその対策がおくれたかの一環に、去年の臨時国会の開会がなぜあんなにおくれたのか、この問題もあるわけでありますから私はあえてサボったと申し上げます。これが景気の回復という面でどういう結果になったのか。乾いたところに水をまくのをサボったのですから景気の回復が大きく波を打った。この点についてよかったか悪かったか、経企庁長官にまず伺います。
  87. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 後から振り返ってみますと、たとえば四半期別の国民総支出の変動要因の中で、昨年の七−九月あるいは十−十二月に政府支出が十分伸びてないという結果が出ております。ただ、結果的にこう出ているわけでございますが、やはり海外の輸出の伸びというのも、この時点におきましては非常に昨年の七−九月は寄与率としてはゼロというようなことで、また十−十二月についても上半期に比べると非常に落ちたということでございまして、やはり世界の景気というものも相当大きくこれに響いたというふうに思うわけでございまして、振り返ってみて、もう少しこの時点で成長率を高くするために財政支出をしたらどうかという議論は結果的には出るかもしれません。しかし、この時点については、私どもは当初の運営がうまくいき、また世界景気がうまくいき、国内の需要が出てくれば順調な推移をたどったものと思うわけでございます。  なお、在庫が非常に過剰であって、なかなか公共支出の効果が出てこないという点がございますけれども、最近の統計等を見ますと、この在庫について公共支出の効果が徐々にあらわれてきておるということでございますので、これは財政がかなり役割りをこれからも果たしていくと信じております。
  88. 栗林卓司

    栗林卓司君 私は、よかったのか悪かったのかと聞いておりますので、そのお答えだけをいただければ結構なんです。
  89. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 設問の仕方、よかったか悪かったかという二者択一の御質問お答えするわけにはまいらないと思います。
  90. 栗林卓司

    栗林卓司君 総理お尋ねしますけれどもね、結局、波打ったわけですよ。それでいま長官あんなことを言っているけれども、経済白書で書いているのは、もう二度とジグザグ型の回復は御免ですよと訴えている。なぜ訴えているかといいますと、一生懸命政府が畑に水をまいてくれている、やがて湿るだろう、そうなったら仕事をしようって、種買い込んだんです。種買い込んだらサボっちゃった。種どうなったか、意図せざる在庫の積み上がり、在庫を減らそうと思ったら逆にふえちゃった。したがって乾いた土地に水をまく場合にはまき続けなければいけない。これをサボって波を打ちますと、在庫を減らさなきゃ、いまの過剰在庫を整理しなきゃとってもこれは日本経済はもたないと言っているのに、その在庫積み上がりの原因をみずからつくってしまった。それがジグザグ型景気回復の持っている最大の問題点と私思うんです。  そこで、前のことを言っても仕方がありません。先を考えますと、今度はこれを反省しながら必死にまき続けていかなければいけないんじゃないか。その意味で二兆円で足りるんだろうか、総理お尋ねします。
  91. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 確かに、去年は、私、経済企画庁長官という立場で予算編成に関与したわけですが、そのときは、大体見当といたしまして財政輸出経済成長というか、景気を引っ張る、こういう見当だったんです。これが二つの目玉であると、こういう説明までしたんですが、ただいま皆さんから御説明があったような事情財政支出の方はおくれちゃったんです、これは率直に言って。結論といたしまして、一年度間を通ずる財政の景気への寄与というものが非常に微弱だった、これは率直にそう思います。  しかし、おくれてではありまするけれども、財政の方はだんだんと機能し出してきて、ことしの一−三月、つまり五十一年度の第四・四半期、そういう段階になりまするとその傾向が相当出てくる。それからことしの四−六、これになりますと、とにかく一・九%成長だというのでしょう、その一・九%成長を押し上げたのは一体何だというと、実に約半分の貢献を財政がやっているという状態になってきておるわけであります。ただ、それにもかかわらず貿易は頭打ちというような状態になりつつある。確かに高水準ではありまするけれども、しかし伸びが非常に鈍化してきた。そういうことでありますから押し上げの力としては微弱になってきているのです。四−六をとってみましても、一・九%成長だというその中でわずかに〇・一しか寄与しない、こういう状態になってきておる。そういう中でことしをずっと展望してみますと、輸出の伸びというものはやっぱり高水準ではあるけれども鈍化を続ける。そういうことで財政の役割りというものが非常に重大になってくる。そこで今度の二兆円施策と、こういうことになるわけですが、この政策をとる結果は、これはもう輸出にはそう期待はいたしません。財政主導、こういう形で六・七%成長、これを実現する、またできると、こういう見当です。  まあ黒字がずいぶんあるというので輸出がえらい景気に寄与しておるような様相ではございまするけれども、輸入が非常に鈍化しておる、輸出の方はまあ鈍化している、こういうような情勢の中で黒字がふえるのであって、経済の成長発展に対する輸出の寄与度というのはそう期待できないんです。財政が主導的な役割りを演じなきゃならぬと、こういうふうに考えております。
  92. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ちょっと待ってください。数字を……。
  93. 長岡實

    政府委員(長岡實君) 公共事業関係予算の五十一年度当初予算額の五十年度補正後に対する伸び率は、六・四%でございます。
  94. 栗林卓司

    栗林卓司君 わずか六・四だそうですから、大臣覚えといてください。  それで、いまの総理お話でありますけれども、とにかく異常な畑の乾き方なわけですね。そうすると上期の方に七三%ですから、たまたま全額が十兆円ですから七兆三千億円と、こうなるわけだけれど、下期がやっぱりそれでいくと感覚的に足らない。じゃ本当の経済はどう動いているのかという話になると、これは別かもしれませんけれども、おっしゃるように輸出の方は伸びることはとうてい期待し得ない。むしろ下期の方が財政の先ほど申し上げた乾いた畑への水まきをふやしていかなければいかぬかもしれない。そうすると、やっぱりとうていそれは足りないと見てあたりまえである。  なぜそんなことを申し上げるかといいますと、振り返りますと、五十年の初め、ちょっと始めたが、だんだんだめで、年末に第四次景気対策をやって効いてまいりまして、輸出の好調もあって五十一年度の上はよかったんだが、下期はすとんと落ちた。そこで、今度はまたずっと持ち上げながら上期に前倒しをしている。下期がまただめですとんと落ちてしまう。こうやって波を打ちますと、それはもう民間の自信もへったくれもあったものじゃないし、しかも、その結果は意図せざる在庫の積み上がりまで招いてきた。そうすると、仮に単純な計算ですけれども、七兆三千億と二兆七千億の差の四兆六千億、二兆足したとして二兆六千億足らぬじゃないかとまあ見ながら、一兆か二兆か三兆かは別として、もっと水まき量をふやさなければいけないと考える方が普通ではないんでしょうか。
  95. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そういうふうに見る見方というものもこれは一般的にはあるかもしれません。しかし、私どもは、これはもう精細に財政あるいは金融とそれから経済の動き、それがどういうふうにつながるかということを見ておるわけです。これは企画庁でもう非常に精細に総合的に見ておるわけですが、そういう中で今度は二兆円施策を講じた。これは四兆二千億円の波及効果を持つ、こういうふうに言われている。それが五十三年三月末までには、かなりゆとりを見ましても一兆五千億ないし一兆六千億の効果を持つ、刺激の効果を持つ、こういう結論でございまして、これは上期に前倒しをやったから、下期には、何というか息切れがするんじゃないかという感触から御出発のようでありますか、私どもは、いろんな総合的な要素を勘案いたしまして、そしてもう下期は上期に比べましてかなり堅実な成長を続ける、こういうふうに見ておるわけでありまして、私どもが専門的に国民に責任を持つ、そういう立場の観察といたしましては、下期に息切れというようなことはございませんです。
  96. 栗林卓司

    栗林卓司君 大変失礼な言い方なんですけれども、それと全く同じように自信満々としたお言葉で、去年の三月までに稼働率を九四にしたいとおっしゃったんです。で、だからだめだろうとは言いません、よくしなきゃいけないんですから。  だけれども、本当にそれでいいんだろうかと考えてまいりますと、恐らくいま総理の御判断の中にあるのは、公債依存率三〇%を超えたらちょっと困るんで、その枠の中で精いっぱいという枠がまずありまして、そこの中でとなっているんで、二兆円でも多いんだと、こうなるんでしょうけれど、じゃ公債依存率三〇%というのは、三〇%そのものがもう異常値でありますから、こんなもの続けていいとはだれも思わない。そうは言いながら、いま三十二粒栄養剤があればよくなっていくんだというときに、いやともあれ三十粒だという議論をしていくんだろうか。公債依存率三〇%を絡めながらもう一度お尋ねしたいと思います。
  97. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 三〇というのが神聖にして侵すべからずというような、そういう理論的根拠を持っておるというふうには思いません。しかし、この三〇%公債依存率という、これはもう世界で本当にただ日本だけがそれをやっておるというくらい悪い指標であると、こういうふうに申し上げて差し支えないと思うんですが一私どもが目指しておるのは景気の回復でしょう、そして景気が私どもが展望するように回復される、そうすると設備投資活動も始まってくるわけですよ。そのとき、そんなにたくさんの公債を出しておって、そうして民間の設備投資資金と競合する、こういうようなことになったら一体どうなるんだ、これも日本の社会を揺るがすような大問題に発展してくる。その辺を私どもは非常に慎重に考えているんです。  神聖にして侵すべからずと、こうは考えませんけれども、とにかく三〇%財政が国債に依存するというのは異常な事態です。その辺ぐらいは、せめてこれは守り抜かなきゃならぬだろうというのが私の関心事でございまして、栗林さんのおっしゃるお話よくわかりますよ、わかります、気持ちはわかりまするけれども、また、しかし、これは日本の国というのはことしだけで済ませるわけじゃない。公債をうんと出してことしは景気はよくなる、確かによくなると思いますけれども、来年もある、再来年もあるんですよ、これは。その先ずっとあるんですから、それを考えますと、この公債問題、これも中期的展望の中でしっかり踏まえて日本の社会を乱しちゃならぬという角度から考えなきゃならぬ問題である、そういうふうに考えます。
  98. 栗林卓司

    栗林卓司君 これは来年度の予算編成を展望しながら、また十分に御検討になる課題だと思います。  そこで、三〇%ということが異常値だと、もうおっしゃるまでもございません、後でこれはまた伺います。ただ、とにかく元気な体に戻りたい、三十二粒栄養剤をくれたら回復が早まるんだけれども、やっぱりそれでも三十粒しかくれないのかという議論になったときに——仮定の議論ですよ、だけれど十分あり得ることだとお考えいただいて結構だと思います。そのときにもやっぱり、いや三〇だというたてまえで、三〇%が異常値だということなるがゆえに当面のこのしばらくの緊急避難まで、それもいかぬとおっしゃるんでしょうか。
  99. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ何ですね、三〇%、これは相当高度の公債発行額になるわけであります。これをさらに増発する、私どもは景気回復を願っておるわけですから、そのとき一体そんな状態で臨んだらどうなるかということもまた真剣に考えているんです。三十二粒あれば助かる、こう言うが、三十二粒出したらこれは副作用が出てくる、こういうこともまた考えなきゃならぬわけでありますから、その辺をよく考えて、私どもも副作用が起こらないように、三十二粒どうしても必要だと言えば、副作用を起こさない薬の方はそれだけだ。しかし、ほかの方の副作用を起こさないそういう薬を考えるというようなこともありまするし、とにかく三〇%というのは、私の気持ちとすると、何とかこれは維持したい、こういうふうに考えているんですが、気持ちはわかっていただけると思います。
  100. 栗林卓司

    栗林卓司君 確かに公債発行し続けますと、残高の大体一割が国債費になるわけですから、十年も出していきますと、国債出したってまるで国債費でとられてしまいまして物の役に立たない。そんな財政が維持できるか、おっしゃるとおりであります。だから、逆に言うと、再建を急がなきゃいかぬという角度で、私は総理と別に異なったことを議論しているつもりはありません。  ただ、そこで、いまの公債依存率三〇%になぜなったんだろうか。五十年の大きな歳入欠陥がありました。そのときに、財政の景気に対する配慮もあってという御説明がございましたが、圧縮できなかった。その大幅な歳入欠陥が今日までずっと続いてきている。これをどうやって回復するかというのが具体的な問題なんだろうと思います。  振り返りますと、五十年の歳入欠陥はおおむね四兆円でした。今年度の特例公債発行高が約四兆円、大体似たり寄ったりで持ち越している。そこの中で一番大きいのは法人税と申告所得税でありまして、五十年の落ち込みは三兆円。いま利益率はどうかといいますと、四十七年不況に比べて、そのときの一番底よりも、いまの利益率は二割減、四十年不況に比べて利益率は三割減、惨たんたる低収益であります。これを直そうといまやっているわけですけれども、直ったとすると、当然、いま三兆円の法人税、申告所得税は回復をしてくる。いま大体合計しますと七兆円から八兆円台です。仮に利益が二割、三割と回復をすると、全体の成長率が伸びなくても二兆、三兆の回復は当然期待し得る、それを早く期待したいものだというと、ある時期に三十二粒ということもあるかもしれない。そういう中期的な戦略をお立てになる必要はないのか、その角度からもう一遍聞きます。
  101. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 中期的、長期的に事を見ておる、そういう姿勢をとりますと、公債政策、これに慎重にならざるを得ないんですよ。それは一年限りのこととすれば、公債をうんと出して、そして政府がうんと金を使いますれば、これはもう景気は目に見えてよくなる。でありまするけれども、さあ景気はよくなった、設備投資は出てくる。それと公債と競合するということになると、これは大混乱が起こってくるんです。その時期は五十三年度予算というその年度のうちに起こってくるとは私は思いません。五十四年になるか五十五年になるか、その辺になると大変なことになる。その中期的、長期的に見るときに、公債問題というものは、これは本当に真剣に考えなければならぬと、こういうふうに考えているんです。栗林さん同様、私は事を中期的、長期的にながめての所見であるというふうに御理解願います。
  102. 栗林卓司

    栗林卓司君 いまの財政赤字ですけれども、中を考え方として分けてみると、景気がよくなると消えていく赤字、まあ景気循環的な赤字とでも言うんでしょうが、そのほかにいろんな政策を政策的にふやしてきたんで、これはちょっとそれだけではこの赤字は消えませんといういわば構造的な赤字と二つ考え方としてはあるんだろうと思います。  そこで、先ほど私が申し上げたのは、法人税、申告所得税というのは景気の影響を非常に強く受けるわけですから、循環的な赤字解消策として、しかもいまの低収益がずっと続いたら財政の前に経済がもたないですから、どちらにしてもその回復は期さざるを得ない。そうすると、まず景気の回復を急ぎながら、結果として財政の再建をしていったらどうか、私はこういう取り組みというのは決して間違っていないんじゃないか。  たとえば、この間——この間というか、ことし三回にわたって公定歩合を下げました。企業の負担がどのぐらい安くなったか、お話によりますと一兆三千億ぐらいだと伺いました。すると、これは企業収益に寄与するんでありまして、まあ全部が全部黒字企業じゃないでしょうから赤字か減っただけだというところもあるとして、八掛けぐらいに考えてもおおむね五千億前後は税収がそれだけでふえるはずであります。大きい額です。そういうものとして経済を強めながら財政の再建を図る、逆にそうしないと公債の重圧というものからわれわれは抜け出せないんじゃないか、そう思うけれども、いかがですか。
  103. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) その点はそのとおりに思います。  なお、申し上げますれば、これは財政あっての日本国でありませんから、やっぱり財政日本社会のために奉仕しなければならぬ、そういう立場にあるわけです。また、財政はその運営に当たりましては、企業それから家計の上に成り立っておるわけでありますから、この企業家計をという考え方、もとだという考え方、これはもう堅持しなければなりません。なりませんけれども、その企業家計の方がまた財政のやり方いかんによっては大混乱になるんですから、その辺もまた考えなければならぬ。  いま一番危険な状態にあるのは何だといいますれば、私は財政じゃないかと思うんです。これはもういまお話しのように、構造的な要因もありまするし、また景気的な要因もある。確かにありますが、とにかく経済成長を進めながら財政も直さなければならぬ、家計も立て直さなければならぬ。またさらに、企業、この再建、これも大事である。その三つを全部円滑に処理する、それは急にはいきません、これは漸を追うていかなければならぬということにおきまして、栗林さんと同意見であると、こういうふうに申し上げておきます。
  104. 栗林卓司

    栗林卓司君 前の税調会長においでいただいておりますので伺いたいと思いますけれども、先日、今後の税制のあり方についての答申ということで、一般消費税の構想も含めた、いわば大変大きな衝撃を与える御労作をなさったわけですけれども、その論議の過程で、いま話題にも出ておりました、景気がよくなれば消えていく赤字と、それだけでは消えない赤字と二つあるんだということをどのように踏まえながらこの税調答申ができてきたのか。  伺っている意味というのは、増税が景気にプラスになるとはなかなか素朴に思えないわけでありまして、まずもって景気回復を急ごうということになりますと、一般的な大幅な増税というのはしばらく後の課題に残しながら、まずもって景気の回復を急げと、こういうことになるんだろうと思います。そういう議論を踏まえながら、いわば一つの材料としてお出しになったということなのか、それもこれもひっくるめて、とにかくやらなければ困るという意味で、対処策を講ずることがおくれればおくれるほど問題の解決は一層に困難になるとこの一般消費税を持ち出してこられたのか、いわばその考え方はどうであったのか、お尋ねをしておきたいと思います。
  105. 小倉武一

    参考人小倉武一君) ただいまのお尋ねでございますが、先般の中期税制のあり方についての答申は、増税の必要性を一般国民の方々に訴えるという性質のものであることは御指摘のとおりでございますが、その際、増税の時期につきまして、少し先にすれば、その間景気もよくなって増収になりというようなことで、その方がよくはないかというようなことも税調の中でも御議論がございました。無論、その際に、いまの財政の赤字、これが景気循環的なものによる赤字がどの程度あるのか、あるいは構造的なものがどの程度あるのかというようなところまでは詳細議論があったわけではございません。しかしながら、増税を先に延ばして、その間、若干景気がよくなれば財政の赤字問題はそれでずいぶん軽減されて、大きな増税は必要なくなるというようなことはちょっと考えにくいというのが税制調査会の考え方であったように思います。
  106. 栗林卓司

    栗林卓司君 確認の意味でお尋ねをしたいんでありますけれども、財政の現状を憂える気持ちにおいて私もその一人でありますけれども、そういう対策とすると、景気回復をまず急げということやら、構造的な問題を考えると、全部がそれは景気回復で埋めることは困難だという御主張になってみたりするわけですけれども、そこで議論としますと、そういったことは十分ありながら、将来税制改正するとすると一つのこれはたたき台であるという参考資料としてお出しになったということなのか、参考資料を越えて、これをとにかく早くやらないと大変なんだということにアクセントを置かれたのか、どちらなんですか。
  107. 小倉武一

    参考人小倉武一君) どちらかというお尋ねはちょっとむずかしいですけれども、税調の全体の気分といたしましては、先に延ばせばさらに傷が深くなる、さらにむずかしいことになるというようなことで、できるだけ早い期間がよろしいというのが結論であったと、こう思います。ただし、そうは申しましても、いろいろ準備もございまするし、あるいはまた国民各層各界の意見も、今後、具体的な増税なり、税制のあり方ということについても反映していくという必要がございまするから、余り先を急いで失敗をするというようなことは、これはもし大きな新税を起こするとすれば慎重に考えなければならぬということは、これは忘れてはならぬことかと思います。
  108. 栗林卓司

    栗林卓司君 そういう大変取り扱いは慎重を要するということでつくったんだという意味に理解をしておきます。  で、この機会ですから重ねてもう一つお尋ねをしたいんですけれども、一般的消費税という御提案がこの中心になっているんですけれども、なかなかそれは慎重な取り扱いをしなければいけないということになりますと、一般的なものでいけないんなら、選択的なものではいいんだろうかと、妙にわかったようなわからないような議論が出がちになるわけであります。そこで、選択的増税というのが実は来年の増税案の絡みで議論になるに決まっておりますので、ここでひとつお尋ねをしておきますと、一般的と選択的というのは税調の中でどういう御議論があったんだろうか。本当の意味というのは、この不況のさなかでありますから、言葉の問題ではなくて、その税を動かすことによる景気への影響というものが検討の中心であって、一般的、選択的という言葉だけで議論するのは私は間違いではないかと思いますけれども、関連して御見解お尋ねしておきます。
  109. 小倉武一

    参考人小倉武一君) いまの一般的増税あるいは選択的増税という言葉でございますが、それに関連してお述べになりました御意見、私、ごもっともだと思います。ただし、われわれいま当面をしておる税制の問題としましては、何と申しましても、そういう言葉によれば一般的増税を必要とする時期であるというふうに考えておるわけでございます。無論、一般的増税の必要がある時期だからといって、御質問にございましたような選択的増税というようなことが必要でないというわけではございませんので、これは年々の税制のあり方を検討する場合に私はあんばいをしていくという性質のものかと、こう存じます。
  110. 栗林卓司

    栗林卓司君 では、大蔵大臣にお尋ねをします。  財政赤字の中で景気循環的なものと構造的なものがどれぐらい具体的に入っているかということはお答えにはなかなかなれないし、実はだれも知らないと思います。そうは言いながら、確実に両方があることははっきりしている。それを見合いながら、この税調答申にしても取り扱い注意、だけれども老婆心ながら急がないでとおっしゃっていたことは気にとめておきます。そうは言いながら取り扱い注意ということでまいったわけですけれども、これをどういう角度で大蔵省としてはお取り組みになりますか。
  111. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) ただいま前税制調査会長がお答えになりましたのを私どもはこういうふうに受け取っております。  この税制調査会における答申というものは、これはたたき台とかそういうものではなくて、これをとにかく実施をするようにしたい。しかしながら、それは短兵急に一遍にこれをやってしまうとか、是が非でもやってしまうとかいうようなことでなしにという御趣旨は、今後五十三年度以降各年度において経済の実勢あるいは財政状況、そういったようなものを踏んまえて、それに適合するといったような具体化をしたらどうだと、こういう御趣旨かと思います。それで、私どもは、そういうつもりになって今日そういう方向に研究、検討をいたしておりますけれども、いまのところは、まだ、しからばその具体化の方法をどういうふうに持っていこうかというようなところまではいっておりませんが、そういう方向で研究をしてまいりたい、かように考えております。
  112. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 時間がそろそろですが、ここでとめてよろしゅうございますか。
  113. 栗林卓司

    栗林卓司君 結構です。
  114. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) なお、森永参考人小倉参考人はどういたしましょうか。
  115. 栗林卓司

    栗林卓司君 小倉参考人はこれで質問終わりました。森永参考人はちょっと相談さしてください。
  116. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) それでは、小倉参考人には大変御多忙中のところを本委員会に御出席いただき、まことにありがとうございました。御退席を願いまして結構でございます。  森永参考人は、もうしばらく。  午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後一時から委員会を再開し、栗林君の質疑を続行いたします。  これにて休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩      —————・—————    午後一時一分開会
  117. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十二年度補正予算三案を一括して議題とし、午前に引き続き、栗林君の質疑を行います。栗林君。
  118. 栗林卓司

    栗林卓司君 エネルギー問題について若干お尋ねをしたいと思いますけれども、先般出されました総合エネルギー調査会基本問題懇談会のいわば暫定見通しという形でありますけれども、これから六十年にかけて相当な資金をかげながら開発あるいは備蓄を進めていかなければいけない。そこで、どれぐらいの資金が必要かと言いますと、そこで書いてある内容で拾いますと、民間資金だけでどうやら六十兆円を超える額が六十年までに必要らしい。まあ将来はこれはいろいろな料金とかあるいは税金とかその他のもので回収する道があるでしょうけれども、さしあたって恐らく民間資金市場からの調達ということが主流になるのではないか。そのときに、果たしてこの六十兆を超える額というものが入るのだろうか。入ったとして、どういう影響を与えるのだろうかということをまずお伺いしておきたいと思います。  ちなみに、三全総の五十一年から六十年までの累積総固定資本形成で見ますと二百九十兆円、そこの中で約六十兆というので約三割ですから膨大な額であると思うのですが、この点につきまして日銀総裁の金融、経済という面からの御判断を承りたいと思います。
  119. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 五十一年から六十年までの所要資金七十兆という試算は承知いたしております。その数字の積算の根拠が正確なものかどうか、その辺のところは検討もいたしておりませんので何とも言えませんが、かなり大きな資金が必要であるということはそのとおりだと思っております。  エネルギー政策はやはり大変大切な問題でございますので、私どもといたしましては、所要資金を、これは主として民間資金になる率が多いかと思いますが、その資金調達をできるだけ金融政策上におきましても支援しなければならないと思うのでございますが、金融だけの観点から申しますと、エネルギー関係の資金もあるいはそのほかの公私の資金需要も、ひとしくやはり資金需要として、それをいかにして物価を上げないで円滑に調達するかということが私どもの任務になるわけでございまして、膨大な量に達するエネルギー関係の資金ではございますが、この民間資金需要の枠組みの中でそれをいかにして円滑に達成するか、十分に検討をしてまいりたいと思っておる次第でございますが、しかし、何分にもまだその額についての的確な判断ができませんので、具体的なことにはまだなかなか考えが及ばないわけでございます。と同時に要請したいことは、国民経済の規模あるいはそのころにおけるあり方、性格などと十分バランスをとったエネルギー計画でなければならないわけでございまして、その辺につきましては関係方面におきましても十分な御配慮をお願いしたいと思っておる次第でございます。
  120. 栗林卓司

    栗林卓司君 当然のこととは言いながら大変慎重な御発言でございますし、六十兆円そのものが暫定ですから、数字に即した議論はなかなかできないのでありますが、いずれにしても相当巨額に上るらしい。それと国債の大量発行という問題。いま金融が大変緩んでいる中で、まあまあ問題をそう表に出さないでやってまいったわけですけれども、エネルギー問題というのは、昭和六十年までに待ったなしにこれはやらなければいけない、いわば目標は決まっているわけでありまして、そうすると、金融情勢もそちらの面からまた詰まってくるのではあるまいか、あるいはまた物価問題が相当深刻になるのではあるまいかということは、いまの国債大量依存ということも含めてなかなかの考えていかなければいけない問題であるというぐあいに理解してよろしいですか。
  121. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) お話のございましたとおりだと私も考えております。今後具体的な問題がだんだんに煮詰まってくるに伴いまして日本銀行といたしましても慎重に弾力的に考えてまいりたいと思っております。
  122. 栗林卓司

    栗林卓司君 日銀総裁の時間の御都合があるようでございますので、ちょっとエネルギー問題と離れますけれども、続けて御質問申し上げたいと思います。  いまのような状況考えていくと、物価問題も将来いろいろと慎重な配慮が必要になる。そこで、片方では国債の大量発行ということは、赤字公債はなるほど消すことができたとしても、依然として財政に果たす役割りは大きいであろう。片方では、資金運用あるいは資金調達の手段が多様化してまいりました。そういう中でどういう総需要管理政策をおとりになるのか。これも、いつまでもということではなくて、なかなか急がれている課題になってきたのではないかということで御見解お尋ねしておきたいと思います。
  123. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 長い先までの見通しはなかなか困難でございますけれども、当面の経済情勢、金融情勢に即して考えますと、国民経済全体としての流動性がいまかなり高まっておるという事態が一つございます。それともう一つは、いまお話のございましたように、公共部門を通ずる資金の流れが大変大きな割合のものにふくれ上がっておるという問題がございます。それと、もう一つは、経済あるいは金融についても国際化がだんだん進んでまいりまして、外国との関係の問題を無視しては国内政策が考えがたくなっておると、そういう事情がございます。  そういう事情の中で、今後の金融政策をどう運用するかということでございますが、基本はやはりインフレにならないようにして、資金を通ずる、金融を通ずる資源の配分をいかにして適正ならしめるかということに帰するわけでございますが、その意味で今後私どもがどうしても取り上げていかなければならない問題は、やはり金利の自由化を目指しての金利の一層の弾力化ということではないかと考える次第でございまして、このように金融が緩んでおる段階においては比較的その問題を取り上げやすい環境も整っておるわけでございますので、究極は自由化でございますが、そこに行き着くのにはまだいろいろ問題がございますので、さしあたってはできるだけ金利を弾力化していくと、そういう問題が当面われわれとして非常に重要な問題になってくるのじゃないかと思っておる次第でございます。  その場合に、貸出金利もさることながら、問題は、一番むずかしいのは預金金利でございまして、郵便貯金を含めました預金金利についてこの弾力化をいかにして進めていくかといったような問題が大変むずかしい問題として横たわっておるわけでございます。この問題につきましては、最近運用上大変うまく各方面の御協力をいただいておるわけでございますが、問題としては今後も一層その方向で御協力をいただくということだと思いまして、具体的にどうするかという問題は申し上げませんが、一つの問題だと思っておる次第でございます。
  124. 栗林卓司

    栗林卓司君 日銀総裁、総需要管理という面でもう一つのいまは金利だけでしたけれども、御答弁の中で追加される点があるのじゃないでしょうか。
  125. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 総需要管理をどうやるかという問題でございますが、根本は、先ほどもちょっと申し上げましたように、あくまでもインフレの再燃を避けながら、国民経済の正常化と申しますか景気の着実な回復のために必要な資金には事欠かないように対処していくということだと思うわけでございまして、それを抽象的に申し上げますと、結局、金利の自由化によってそれを達成していくということになろうかと思うわけでございますが、現実にはもちろんそれだけじゃ不十分でございまして、金融の量的な調整につきましても始終配慮していかなければならないわけでございます。いま、まだ窓口規制、窓口指導の枠組みだけは残しまして、運用につきましては金融機関の自主性にできるだけゆだねるというような運用をいたしておりますが、当分その姿勢はそのまま続けたいと思います。  なお、量的な規制を通じて総需要を管理するという場合の一つのメルクマールと申しますか、指標として、いわゆるマネーサプライの問題があるわけでございます。現金通貨、預金通貨、さらには準通貨としての定期預金、そこまででいわゆるM2というのを毎月公表いたしておりますが、大体最近は一一%ぐらいのところで落ち着いておるようでございまして、当面問題はないと思いますけれども、昭和四十七、八年におけるがごとく、このマネーサプライが二〇何%を超え、現金通貨では三割を超えたというようなこともございまして、そのことがあのころの物価騰貴その他経済の余りにも行き過ぎた膨張につながっていったという貴重なる経験もございますので、私どもといたしましては、このマネーサプライの動向を始終把握しながら、量的に行き過ぎないようにという点の配慮をいたしておるわけでございますが、現在のところはきわめて穏当な、落ち着いた足取りをいたしておりますので、安心をいたしておる次第でございます。  しかし、今後景気が回復してまいりますと、民間の資金需要も増加してまいります。それと巨額の国債の消化とが競合してくる。その場合にマネーサプライがどうなるかという問題は、いつも私ども頭の中から忘れ去ってはいけない問題でございますので、今後はそういう面にも十分配慮しながら、金融の量的なバランスを得るようにと努力をしてまいるということでございましょうか。
  126. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 森永参考人には、午前、午後にわたり本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございました。御退席をいただいて結構でございます。
  127. 栗林卓司

    栗林卓司君 公取委員長お尋ねをいたしたいと思います。  これからなかなかむずかしい時代の中で、物価を含めて健全な経済を目指していく中で、公取としての役割りは大変重いと思います。ただ、実態を見ますと、この不況の中で新規参入者がむずかしくなってきている。競争よりも協調に傾いてくる心配があるかと思えば、片方では出血価格で自殺的な競争をするということも絶えないのでありまして、そこの中で公取のかじ取りは一体どういう考え方で進んでいこうとされているのか、ひとつお考えを伺っておきたいと思います。
  128. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 独占禁止法なり独占禁止政策の基本的な考え方は、いま先生がお触れになりましたように、競争条件の維持促進ということであろうかと思います。ただ、競争と申しましても、単純な競争政策の貫徹のみでは経済実態にマッチをいたさないわけでございますから、独占禁止法第一条にございますように、公正にして自由な競争というのが基本的な考え方であると思います。いま私どもの直面しております問題についての心境と申しますか考え方は、実は栗林先生がそのまま表現をしていただいたわけでございまして、こういう不況状態が長引いてまいりますと、まあ競争の行き過ぎた形態と申しますか、たとえば押し込み販売とか不当廉売とか、そういう不公正な取引方法が一方に生じてまいりますと同時に、片方には競争制限的な行為に走るという面もございます。そういう点から申しまして、言葉としては公正にして自由な競争ということでございますが、その両者にはさまれた道は大変狭いという感じがするわけでございます。マクラッケンがことしの七月に申しましたナロー・パース、細い小道という感じは、公正取引委員会委員長に就任いたしまして痛感をいたしておるわけでございまして、そういう点につきまして今後の独禁政策の運営につきましてはむしろ御教示をいただきたいという感じがいたしております。  しかしながら、日本の独占禁止法は、御承知のように一般的な不況情勢の場合のカルテルを認めておるわけでございまして、この不況カルテルの運用いかんによっては、日本経済の減速経済過程への軟着陸を側面的に援助するという効果も持つわけでございますし、この不況カルテルの認可につきまして一切これを取り扱わないというような考え方はむしろ法律の上に眠るものだというふうに思うものでございまして、今日まで主として不況カルテルの運営によって現在の不況状態からの脱出を側面的に援助するという姿勢をとっておるわけでございます。
  129. 井上計

    ○井上計君 関連。
  130. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 関連ですね。井上計君。
  131. 井上計

    ○井上計君 いま公取委員長から栗林委員質問に対しましての御答弁がありました。不況カルテルについてはかなり弾力的に認めておるというふうな御答弁であったわけでありますが、もちろん私どもは独禁法の抜本的な改善につきましてはこれを強く主張をいたしましたし、また厳正な運用等につきましてもいささかもこの主張に変化はございません。ただしかし、現実にこの深刻な不況の中で企業をつぶさないためにどうするかということで大変な苦労をいたしておる中小企業者が非常に多いわけであります。  そこで、関連質問として公取委員長にお伺いいたしたいと思いますが、独禁法第二十四条におきましては、中小企業協同組合等を同法の適用除外の団体といたしております。これは、経済的に非常に弱い小規模の事業者の相互扶助を目的とする協同組合を組織することによって初めて同法の理想とするところの「公正且つ自由な競争」の単位となることを考えて、一定の要件を備えておれば協同組合の行為については特別な場合を除いて独禁法の規定を適用しないと、まあこのように定めてあるわけであります。ところが、この長年の不況のために、多くの中小企業者は、生き延びるためにはもう自分の首を締めるというふうなことがわかっておってもなかなかそうはまいらねと、原価を無視して販売をしたり、やむを得ないそういう状況の中で過当競争で共倒れになってもう倒産寸前だというふうな状態に追い込まれております。最近、三当二落という言葉が実は言われております。これは選挙用語ではございませんで、実は入札に参加をしたり販売をする場合に、原価を三割割れば何とか落札もできる、あるいは販売もできるけれども、原価を二割程度しか割らなければ全くだめだということで三当二落と、こう言われておるわけでありますが、実はこのような状態であるわけであります。したがって、これをこのまま放置いたしておりますと、国民経済の発展のためには大変な阻害は当然でありますし、中小企業の大部分はもう壊滅をして、業種によっては大企業だけしか残らぬ、まあこのような業種さえ実は発生するおそれがあるわけであります。そこで、この難局を切り抜けるためには、どうしても中小企業の過当競争を避けていかなくてはいかぬ。これについては通産当局も非常に行政指導を活発にされておるわけでありますが、どうしてもそこで必要なことは、自主的に原価を基準とした適正価格によって健全な経営に戻す努力をしなくてはいけないわけであります。しかし、そのためにはだれかが音頭をとらなくちゃいけません。すなわち、中小企業団体、協同組合等を活用してその機能をこの際十二分に発揮をさすと、まあこれが緊要であろうというふうに考えます。ところが、協同組合等が適正価格を示してこれを組合員に通知したりあるいは組合員の自発的な協力を求める指導をしておりますと、実はこの程度のことでありましても、価格協定では全くないのに、実質的にはこれが独禁法違反のおそれがあるということで、いわばきつい厳しい取り締まりがなされておるということでありますが、私は、この程度の行為はやはり是認すべきではなかろうか、このように考えますけれども、これにつきましてどうお考えか。私は、このような実態考えますときに、これらの中小企業の安定を図らなければ労働者の雇用安定のためにも大変なことになるのではなかろうかと、こう考えております。公取委員長のひとつ御見解をお伺いをいたしたいと思います。  なお、このことは調整事業を行っております商工組合についても同様であろうと、このように考えておりますが、いかがでありましょうか。
  132. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 中小企業団体が構成員に対しまして事業の合理化等を図るため経営指導を行うことは、一般的に申しまして独占禁止法違反とは言えないと思います。ただ、いま先生がおっしゃいました事項の中に、価格面に触れた行為があるわけでございまして、料金とか価格の問題になりますと、これは本来市場において自由に形成されるべきものだという基本的な立場を持っておるわけでありまして、構成員の価格に触れるような行為、価格の形成に直接的に影響力を与えるような行為につきましては、独占禁止法違反の疑いがあるというのが従来からの考え方でございます。  ただ、そう申しましても、現実には、単純な指導と、それから価格介入と申しますか、価格の決定と申しますか、団体としての意思決定としての価格の形成との間には、いろいろな段階があるわけでございます。いろいろな対応があるわけでございます。したがいまして、問題は事実認定に帰着するわけでございまして、結論的に申しますと、ケース・バイ・ケースというふうに申し上げる以外にないわけでございます。  ただ、私も就任をいたしましてこういう問題につきましての御不満なり苦情というものは各方面で耳にいたしております。内部的にも事業者団体に対する一般的なガイドラインをつくったらどうかということが前々から実は議論としてございまして、いろいろな問題があるために打ちかけになっておりますか、私はぜひこれはつくるべきだ。一般一つの基準というものをお示しして、その基準で一〇〇%解決するとは限りませんけれども、現状よりはよくなるというふうに思うわけでございまして、この点は、事務局もいま盛り上がっておりますから、恐らくはそう遠くない将来に事業者団体全般に関するガイドラインというものをお示しすることができるのではないかと思います。
  133. 栗林卓司

    栗林卓司君 では、エネルギー問題に戻りながら通産省お尋ねをしたいと思います。  先ほどの中間報告でありますけれども、昭和六十年の所要石油輸入量として四億三千二百万キロリットルとありますけれども、この調達の見通しはどう御判断でしょうか。
  134. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいまのエネルギーの問題に対しまして、この調達の問題でございまするが、御案内のとおりに省エネルギー、できるだけの節約をいたしましても、御案内の総合エネルギー調査会の方の答申によりますれば、どうしてもそれだけはなくてはならないというような状態でありまして、これが調達につきましてはもう全力を挙げて努力をいたしまするが、同時に、いまの分散いたしましての給源、あるいはまた、さらに天然石油のほかに代替石油といたしましての原子力の問題、あるいはまた石炭の問題、あらゆる問題を総合エネルギー調査会の方では検討いたしましてこの結論をお出しいただいたような次第でございます。  同時に、この資金の問題は、エネルギーの問題を解決いたします上から申しますれば絶対の問題でございまして、われわれはただいま政府部内におきましてもエネルギー問題即資金をどう調達するかという問題に帰着すると、こういうふうにさえ考えておるのでございます。物の面におきまする各方面のこれが調達の問題と、資金の面におきまする国内におきまするこれを調達する、どういうふうにいたすか、目下いろいろと研究を遂げ、また同時に大蔵当局の方とも御相談をいたしつつある次第でございます。
  135. 栗林卓司

    栗林卓司君 いまのお答えを一言で言いますと、四億三千二百万キロリットルはどうしても要るんだと。これはわかります、使う方が勘定するのですから。調達に努力をするとおっしゃるのだけれども、調達できなかったらどうするのですか。
  136. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 先生の御質問は、昭和六十年度において四億三千二百万キロリットルの原油の輸入可能性いかん、こういうお尋ねだと思いますが、いろいろ検討の過程におきましても意見が出たわけでございますが、最も楽観的に見る方は、六十四年度においても四億八千万キロリットル程度は大丈夫であろう、かような御意見もあったわけでございますが、私たちの参考にいたしましたのはことしの一月にOECDの発表いたしました数字で、これは二つの数字がございますが、いわゆる政策努力を遂げた結果の必要輸入量といたしまして二千八百万バレル、一日当たりの輸入量を算定いたしておりまして、その中に日本の分といたしまして七百五十万バレルという数字か入っております。そういった数字も勘案いたしますと、この四億三千二百万キロリットル、七百五十万バレル・パー・デーに相当いたしますので、そういった点からも可能性ありと。それからせんだってのIEAの二千六百万バレルの数字でございますが、これは全体としての努力目標でございます。しかもフランスがこれに入っておらない。御承知のとおりでございますが、フランスが大体二百ないし二百五十万バレルといたしますと、先ほどのOECDの数字とも合致してくるわけでございまして、やさしい問題ではございませんが、その程度のものの確保は可能である、かように考えております。
  137. 栗林卓司

    栗林卓司君 そうしますと、四億三千二百万キロリットル、昭和六十年、この数字というのは、これ以上と言われてもそれは困りますというような意味を含めながら、まあここまでは何とか手に入る可能性があるであろうと、そういう数字と見てよろしいですか。
  138. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 絶対にこれ以上困るかどうかという問題は、その時点における国際的な世界的な原油に対する需給事情がどうなるか。たとえば、御承知のように、北海油田の油もその時点では三百万バレル、あるいはアラスカの油は二百万バレル程度にも伸びてまいりましょうし、あるいは関係各国の成長率といったようなものもあろうかと思います。ただ、私たちといたしましてはできるだけ省エネルギーを推進する、石油に代替するエネルギーの開発に努めることによりまして、石油に対する依存度というものを低くしてまいりたい。現在時点で七三%もございます。六十年度の想定で四億三千二百万キロリッターというのは、依然として六五%のウエートを持っておりまして、一部を除きまして先進各国ではすでに石油に対する依存度は五十%を下回っております。さような努力的な意味も含めまして、四億三千二百万キロリッターという暫定数字を設定いたしたと、こういうことでございます。
  139. 栗林卓司

    栗林卓司君 同じ計画の中で、原子力発電に依存している部分が三千三百万キロワットとあるのですが、これの達成可能性はどう御判断ですか。
  140. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 御案内のとおりに、原子力の問題につきましては、この三千三百万キロワットというものは、現在の計画といたしまして持っておりますものは、二十九地点の開発計画でございまするが、その中におきまして現在の稼働運転いたしておりますものが十四ございますが、これからの建設中の十カ所と計画中の五カ所と、現在のところ二十九地点の二千二百万キロワットでございます。なお、これ以外にも三千三百万までの、これからのいろいろな計画がございますが、これらにつきましては、一番問題なのは現地におきまする工事の進捗に対しましていろいろな障害があることでございます。これは政府といたしましても積極的に現地に乗り出しまして、そして、あるいは国民のコンセンサスを深い御理解を得るということと、また技術的の問題につきまして安心感を持っていただけるような努力を払うこと、こういうふうなことによりまして原子力の発電の計画の完全遂行を期しておる次第でございます。  なお、詳細は長官からお答えいたします。
  141. 栗林卓司

    栗林卓司君 総理お尋ねします。  事、単にエネルギー問題というにしては余りに大きいのでありまして、経済成長率だってまごまごすると決まってしまう話であります。そこで、いま七百五十万バレル——四億三千二百万キロリットルを直しただけの話ですが、それとてもなかなかの努力目標としての不安定性がある。しかもそれは、三千三百万キロワット原子力でがんばってくれないとそういう答えにならない。ところが、そっちの方は、二千二百万キロワットまではこれから計画中五基を含めてめどかついたとしたって、まだ千百万キロワッも足らない。しかも、建設をするというと何年かかかるのは常識でありますから、昭和六十年というとあと約八年後であります。そう考えていくと、相当せっぱ詰まっている気がするのですけれども、この辺の見通しについてどのような感触を、現在、見通しといいますか、こういった問題についてどういったお考えをお持ちか、伺っておきたいと思います。
  142. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 総合エネルギー調査会の暫定見通し、これは実は暫定なんです。しかし、大体私どもの勘といたしましては、これは最終的な段階になりましてもこれとそうは多く変わるまいと、こう見ておるわけです。そうしますと、三千三百万キロワットの原子力発電、それからさらに四億三千万キロリッターの石油の輸入、これはもう不可欠なんですね。これは後ずさりのできない一線である、こういうふうに思いますので、石油の輸入の方は、国際情勢に大きな変化がなければ何とかなりそうな感じもしますが、原子力の方、これはいろいろまだ険路があるわけで、国民の御理解を得まして何とかこの目標には到達したいものだと、こういうふうに考えておりますが、ぜひ御協力のほどをお願い申し上げます。
  143. 栗林卓司

    栗林卓司君 一つ主張として申し上げておきますけれども、三全総の最近の報告を見ますと、確かにこのエネルギー需給について深刻な表情がうかがえました。本当にそれができるのだろうか、もしだめだったら三全総にしても相当厳しい見方をせざるを得ないんだけれどもとつけ足しながらの記述のようであります。なかなかきょうがきょうというお答えにはなりませんけれども、事はやはり急ぐ問題だし、原子力発電所はどうかといいますと、地域住民を含めて国民の理解をどう得ていくのかという政府としてしなければいけない相当重要な問題がある。電力会社のけつをひっぱたくだけではどうにもならぬという面が非常に大きいわけでありますから、鋭意これは御研究を急いでいただきながら、先ほどの中期計画の話をいまここでするわけではないですけれども、やはり政府としての確たる見通しを持ちながら進めていただかなければいけないところだろうと思います。  そこで、時間がなくなったものですから労働大臣にお尋ねをしたいと思います。  構造不況業種を中心にした雇用問題でありますけれども、私は、やはり基本的にはいまの不況を回復していくこと、これがもう何といっても先決だと思います。その意味で、構造不況業種の問題を解決するためにはどうしたらいいかというと、経済白書が指摘しているのは、高目の成長率をとってもらいたい、余り振れのある公共投資はやめてもらいたいと、こう書いてあります。それは当然としても、いまのエネルギー問題一つ考えましても、よほど早期に構造不況業種の問題を解決しなければいけない。各業種の労使の、あるいは産業間の話し合いか煮詰まってからということでいいのだろうか、これが御質問です。  同じ意味で、私は、雇用問題というのは地方経済の問題だと思います。その意味で、自治省としても相当な関心を持ちながら先取りをして取り組んでいかないといけないのではないだろうか。それぞれにお尋ねをします。
  144. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 現在の雇用情勢を構造不況業種だけに限らずに全体として見た場合は、四十九年から五十年にかけては、大体、鉱工業生産が一一%強落ち込んだのに対して雇用指標は六%弱でありました。したがって、全体として過剰雇用感が非常に強かった。ところが、五十一年と四十九年と比べますと、五十一年度は、わずかでありますが、一%強増加しております、鉱工業生産が。しかし、雇用指標は七・九%程度減っておるわけであります。したがって、全体として見た場合の過剰雇用感というものはかなり薄れてきたと、こう思います。しかし、構造不況産業の場合はこれは別でありまして、現在われわれが掌握しております関係各省の調査、それから私どもの方で調査をいたしましたものを合算をいたしまして、おおよそいわゆる十二業種の中で三百五、六十万いるんじゃないか。もっともその中に流通部門が約百十万おりますから、それを差し引きますと二百四十万、これの中からどの程度の離職者が出るかということを実は的確につかみ出そうと思って、いま鋭意努力中でございますが、これはよくおわかりと思うのでありますが、個々の企業におきまして労使関係がある。それからもう一つは、その産業の内部における思想統一ができていないという点もあります。しかし、繊維と平電炉についてはおおよそでき上がっておるわけであります。大ざっぱに日経連あたりは四百万の四十万と、こうおっしゃいますけれども、これも積算の基礎がそう確実なわけではございません。  いまお話しのように、これを解消していくのには、全般的には確かに経済不況の克服でありますが、しかし、この構造不況産業の場合においては、やっぱりぜい肉落としがこれに伴わなければならぬわけであります。そのぜい肉の量の問題でございます。  それからもう一つは、終身雇用制とか、あるいは雇調金とかという制度で抱え込んでおった過剰雇用というものが、これは先ほども申しましたように全産業的には解消しつつありますが、構造不況業種ではこれは解消されていないわけでございます。しかし、われわれの方で準備いたしております雇用安定資金の運用は、総額四百七十七億でございますが、しかし、これは足りなくなれば予備費でこれは義務的経費でございますから支出が可能でございます。  それから地方的な偏在に対してどうするか。これは、そういう雇用指標の悪い地域に対しまして新規に雇用をしてくれる企業に対しましては、一人当たり一万一千円ずつ、これは五十二年でありますが、十二カ月支給をいたすというような方法をもってこの雇用指標の悪い地域への雇用の増大に努めているところでございます。
  145. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) 構造不況の問題は、経済の構造変化から出てきておる問題でございますから、経済政策について基本的な責任を負っておりまする国が所要の措置を講ずべき問題、それが筋だと存じます。しかし、不況業種が集中しておりまするような地域の地方公共団体ではもちろんこの問題にきわめて強い関心を持っておるわけでございます。  そこで、今後、国が十分な助成をして、地方公共団体も応分な負担をいたしまして、何らかの構造不況対策として有効であろうと思われる政策を実施するというようなことになりました際には、それが円滑に行われまするように自治省としても必要な財政措置を講ずる、これは当然のことでございます。あるいはまた、地域単位に各省庁が協議をしまして、雇用対策として何かの施策を実行するということになりました際には、自治省は、手足を持っておらない役所でありまするけれども、都道府県知事等に要請をいたしまして、円滑に実施されるように努力をするつもりでございます。
  146. 栗林卓司

    栗林卓司君 では最後に総理お尋ねをします。  民間の経営の問題は、一義的には民間が責任を負うというのが話の筋道だと思いますけれども、振り返ってみますと、たとえばいま過剰設備だと言われますけれども、昭和四十八年ごろは経済社会基本計画では一〇%近い成長率を約束されていた。じゃと言ってやったら、設備がふえてしまった。恐らく平電炉はそう言いたいところだろうと思います。一方では過剰在庫かふえてどうするか。約五・四半期かけて減らそうと思っていたところに、政府の公共投資が途切れたので意図せざる在庫の積み増しをしてしまった。それだけが原因とは言いませんけれども、感じている意図せざる在庫の積み増しというのは三割から四割であります。それを考えますと、私はいまの不況は、政治不況、政治不況だとどうしても言わざるを得ない。過去は問いません。これからを考えますと、構造不況問題も、やはり高目の経済成長がないとなかなかできるものではないし、しかも、乾いたたんぼにはのべつ潤沢な水をとにかく自立回復力がつくまでは注いでおかなければいけない、こういう時期だと思います。政府の一層の実態を認識した対処を心から要望しながら、総理の御見解を伺って、私の質問を終わります。
  147. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今日の不況を、政策不況、政治不況と、こういうふうつ決めつけられましたが、つまり、それは全部が全部政府の責任だというような意味合いかと思うのですが、私はこれはそうは思わないんです。もちろん政府のやり方、こういうものに足らないところがあったということは、これはもう率直にそう私も考えまするけれども、今日のこの深刻な状態は、これはもう世界が非常に変わってきたその中でのわが国での変化であります。私はもう本当にこれは人類始まって以来の変化の時代だと、こういうふうに申しておりますが、非常にむずかしいそれへの対応というものがいまわれわれに求められていると、こういうふうに思います。その対応、これを間違わないようにする。これは政府もそうしなけりゃならぬし、あるいは企業においてもそうしなけりゃならぬ、あるいは国民家庭一つ一つにおいてもそうしなけりゃならぬ。特に、政府は、その中におきまして、これからのこの激変した環境に対する対応国民の皆さんとともに誤らないというために、最善の努力、また責任を持って行動しなけりゃならぬと、このように考えています。
  148. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上をもちまして栗林君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  149. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、矢田部理君の質疑を行います。矢田部君。
  150. 矢田部理

    ○矢田部理君 私は、日韓問題とASEAN外交について質問をしたいと思いますが、日韓問題については、政治、経済、軍事など各般にわたる問題が多岐にわたりますが、きょうは金大中事件一本にしぼってお聞きをしたいと思います。  まず最初に、総理から伺いたいのでありますが、総理は、金大中事件の意味するもの、問題点、重要性についてどう認識されておるか。さらには、今後真相究明のために、どういう姿勢、どんな努力をしようとしているのか、そこを明らかにしていただきたいし、続いて、国家公安委員長にも、警察を代表する立場でお願いをしたいと思っております。
  151. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国は主権国家であります。その主権国家たるわが国の中において、主権を侵犯するというがごときことは許されない。ところが、金大中事件というものはそういう疑いを持たれるような事態であった。そういう性格の金大中問題、これはそういう立場において究明されなきゃならぬ問題であるというところにこの問題の重要性があったんです。  しかしながら、この解明が非常にむずかしい。日韓両国の関係というものは非常に大事なんですね。日本の本当にもう一番近い隣国である。この隣国韓国との関係がぎしぎししているというようなことでありましては、わが外交全体にも影響してくる。そこで、韓国の金鍾泌首相も来日いたしまして、そうして遺憾の意を表明する、今後こういうことをなからしめるように最善の努力をすると、こういう約束までしていったのでありますので、この辺でこの問題は決着といたしまして、そうして日韓関係を正常化した方がいい、こういうことでいわゆる政治決着措置がとられた、こういうことであります。しかし、事態の重要な問題であるという立場に立ちましてこの事件としての捜査はなお継続しよう、こういう措置をとりました。
  152. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) 総理から余蘊なく申し上げましたので、つけ加えることがございませんけれども、今日すでに問題は外交的に決着がついておる問題でございます。したがいまして、この事件の捜査は非常な制約を受けざるを得ませんけれども、そういう制約のもとでなおかつ警察が最善を尽くして真相の解明に努力をいたしておるわけでございます。
  153. 矢田部理

    ○矢田部理君 いま述べられた問題については後でまた詰めていきたいと思っていますが、最初に、事実経過に関連して主として警察庁を中心お尋ねをしたいと思います。  警察庁は、八月一日——四十八年の八月八日に拉致事件があったわけでありますが、その前の八月一日に金大中拉致未遂事件というのがあったとされていますが、それについて状況をどの程度把握していますか。
  154. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 八月一日に誘拐未遂事件があったというのは初耳でございます。
  155. 矢田部理

    ○矢田部理君 大変異なことを答えられるわけであります。当時の新聞にもそれは出ているわけであります。時間がありませんから、かいつまんで事実関係お話しますれば、東亜日報の特派員であった申用淳という人から、金大中氏に対して、外国の記者を中心にして話をしないで、自国の記者とも会ったらどうかと再三にわたって会見の申し入れがあった。——この人に容疑かあるというのじゃありませんよ。そこで、八月一日の夜に築地で会食をした。その後さらに銀座で飲食をしたわけでありますが、その際、申用淳氏は、これから横浜にドライブに行かないかという誘いをするわけであります。金大中氏は、ここで、自分の身の安全のためにも、あるいは夜遅いということのためもあってか、断わりましたけれども、そのとき横浜の韓国領事館ではいま名前が挙がっている容疑者らしき人たちが全員集結をしておって横浜から連れ出す計画があったとされています。全然この事実関係については調査、捜査をしておりませんか。
  156. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 存じませんので、捜査もしておりません。
  157. 矢田部理

    ○矢田部理君 重ねて伺いますが、そうしますと、容疑者として六名の人たちが各方面から指摘をされているわけでありますが、その人たちの当夜のアリバイ、行動などについても押さえておりませんね。
  158. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 当夜というのは八月八日の……。
  159. 矢田部理

    ○矢田部理君 一日の。
  160. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 捜査しておりません。
  161. 矢田部理

    ○矢田部理君 続いて八月四日の日のことでありますが、この金大中事件の責任者とも言われている金在権氏と梁一東氏が会談をしておりますね。その会談の内容はどの程度押さえておりますか。
  162. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 八月四日であったかどうか、ちょっと忘れましたけれども、梁一東氏と金在権氏が事件の前に会っておることは承知しております。
  163. 矢田部理

    ○矢田部理君 内容は。
  164. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 内容は、金大中氏に会って韓国へ帰ることを勧めてもらえないかという趣旨であったと記憶します。
  165. 矢田部理

    ○矢田部理君 いま局長が述べられた趣旨、その前段として、金大中氏と会うかどうかということで梁氏の行動を探ろうとしていたということもっけ加えられるようでありますが、どうも、金在権氏を中心とする韓国大使館は、日本にいてもらいたくない、韓国に帰るよう説得してくれという気持ちが少なくともこれは端的にあらわれているのであります。その点では、犯行、犯罪捜査をする上において、目的、動機、場合によっては犯意を認定する有力な素材だとも考えられますが、この辺はいかがですか。
  166. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 八月四日でございますが、会って梁一東氏と金在権氏がそういう話をしたということは事件後の捜査で判明したわけでありまして、事前にわれわれが知っておったわけではありませんが、そういう事実があったからといって、直ちに金在権氏が犯人グループといいますか、犯行に加担したというようなことにはならないかと思います。
  167. 矢田部理

    ○矢田部理君 動機を考える上で有力な資料にならぬか、こう言っている。質問に正確に答えてください。
  168. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 捜査上の一応参考になりますけれども、それをもって直ちに捜査上どうこうという判断はしかねることであろうと思います。
  169. 矢田部理

    ○矢田部理君 捜査上の参考になるということでありますから次の質問に入りますが、そこで、事件当日、八月四日の事件が起こっている段階で、梁一東氏から韓国大使館に電話がありましたね。その韓国大使館にかけた電話は、宇都宮代議士にかけた電話とどちらが先だと梁一東氏は言っていますか。
  170. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 時間的な点でございますが、梁一東氏は金在権公使に連絡をする、大使館に対して連絡をする、金敬仁氏をして宇都宮氏に連絡をさせる、こういうことでありますので、ほとんど同時というように考えております。
  171. 矢田部理

    ○矢田部理君 その韓国大使館にかかってきた電話の内容はどういうことだったんでしょうか。
  172. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 事件の発生を知らせて、善後措置を講ずるようにということであったと思います。
  173. 矢田部理

    ○矢田部理君 それは、もうすでに拉致されたということでしたか、それとも、監禁か何かされている、あるいはそういう状況を明確にした内容の電話だったんでしょうか。
  174. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 意味は、拉致されつつあるという意味だと思います。
  175. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、時間の前後関係が問題になるわけでありますが、宇都宮代議士にかけたのと同時刻ごろ——宇都宮代議士は明確にそれは二時五分だと言っています。金在権氏はそのときに韓国大使館にはいたのでしょうか。
  176. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 私たちの捜査では、時間の幅がありますけれども、ほぼ同じ時間帯でございます。金在権公使は大使館内におってその電話を受けたということです。
  177. 矢田部理

    ○矢田部理君 その電話は、金在権氏が直接受けたのでしょうか。
  178. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 捜査の大変細かいことでありますけれども、端的に申しますと、一回目は自分で直接受け——直接というのは、取り次ぎがなかったという意味じゃありませんけれども、電話口に出たと、二回目は出なかったと、ほかの人が受けたと、こういうことであります。
  179. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうしますと、わかりにくいのでありますが、宇都宮代議士にかけたのと同時刻ごろにかかってきた、一回と二回という話がいまありましたけれども、それとの関係はどうなんでしょうか。
  180. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 一回目電話がかかってきたので、金在権公使は直ちに大使に報告したと、報告している間に二回目の電話——二回目の電話は五分後のようでありますが、かかってきて、金在権氏は自分の部屋に留守ですから、他の人が受けてそのことを金在権氏に伝えた。それから金在権氏はホテルに飛んでいくと、こういうことでございます。
  181. 矢田部理

    ○矢田部理君 確認的に伺いますが、その一回目の電話が、宇都宮代議士にかけたのと大体同時刻ごろと、こういうふうに伺っていいですね。
  182. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 同じ時刻でございます。金在権氏と梁一東氏が手分けしてかけておりますので、物理的のあれはちょっとあれで、同時刻でございます。
  183. 矢田部理

    ○矢田部理君 その時刻を宇都宮氏はかなり具体的、正確に指摘をしておるわけであります。その後後藤田官房副長官などとも連絡をとるようでありますか——あ、後藤田氏は当時警察たったですか、ちょっと不正確ですが、金在権氏のその後の表にあらわれる行動というのは、二時二十分にはすでにグランドパレスホテルの現場にいたというふうに言われているのですが、そのことは確認していますか。
  184. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 正確な時間の五分、十分のあるいは差があるかもわかりませんけれども、私たちの捜査では午後二時十五分ごろと考えております。
  185. 矢田部理

    ○矢田部理君 現場に……。
  186. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 現場到着の時間でございます。現場到着も、ホテルの入口に着いた時間と、部屋に行った時間と、若干の差はございます。
  187. 矢田部理

    ○矢田部理君 わかりました。  ここで一つ重大な疑問が出てくるわけでありますが、梁一東氏が金敬仁氏を通して宇都宮氏に電話をする、同時刻ごろ梁一東氏自身は韓国大使館に電話をする、それが二時五分だと宇都宮氏は電話を受けた時間を指摘をしております。ところが、その時刻には、韓国大使館にいたはずの金在権氏は、わずか十分後になりますね、いまの警察のお話ですと、二時十五分にはすでにグランドパレスにいる。韓国大使館とグランドパレスは、どんなに早く行っても二十分前後です。この前後の時間や金在権氏の行動がどうも私は実は糖に落ちないわけです。現場にすでに行っておったのではないかという疑いを持っているわけであります。この点も、警察としていろいろすでに国会答弁等でこういう事実があるという弁解、説明は聞いておりますけれども、さらに詰めてみる必要はありはしないかという疑問であります。  そこで、次の質問でありますが、金在権氏は、警察の説明によりますと、韓国大使館で電話を受けてから急速駆けつけたことになっております、現場に。そのときには自分の車が出ないので運転手の車で行ったということになっておるようでありますが、そのとおりでしょうか。それからさらには、帰りの車はどういう車で帰ってきたのか。
  188. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 金在権氏が韓国大使館からグランドパレスの現場に駆けつけるのが時間が短か過ぎるというお話ですけれども、私たちの捜査の段階では必ずしもそうは思いませんし、またいまの点につきましても運転手についても調べてありますが、公用車よりも運転手個人の私用車の方が出しやすいところにあったので、大変取り急ぐということでその車に乗って直ちに駆けつけたということであります。  帰りの車もその車であったと思いますけれども、ちょっといま確たる点は覚えておりません。
  189. 矢田部理

    ○矢田部理君 運転手の名前を明らかにしてください。
  190. 三井脩

    政府委員(三井脩君) この人は捜査上の参考人でございますので、せっかくのお尋ねでございますけれども、事件の直接の関係者でもないということでありますので、捜査に協力をいただいておる方のことでございますから、名前を出すことについては御遠慮さしていただきたい、御協力いただきたいと思います。
  191. 矢田部理

    ○矢田部理君 やっぱりこの事件を解明する重要な人物の一人だと私は思っているわけであります。  問題は帰りの車ですよ。これも金在権氏の話は非常にごちゃごちゃしているわけです。それで警視庁に当時帰りの車で使ったのは練馬ナンバーだというような話が流れたわけでありますが、金在権氏がさらに警視庁に今度は電話をしてきて、外国公館ナンバーの車だったと説明をしているという話もあるのですが、いかがでしょう。
  192. 三井脩

    政府委員(三井脩君) その詳細については、私はちょっといま記憶しておりませんが、自分の運転手が運転する車に乗ってきたわけですから、その車で帰ったんだと、こう思っておりますけれども、詳細はまた取り調べます。
  193. 矢田部理

    ○矢田部理君 いずれにしても、韓国大使館に帰った金在権は、その後どういう対応をしたでしょう。あるいは現場にいてどういう処置をしたんでしょう。
  194. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 現場では梁一東、金敬仁氏らと会って話を聞いて、それから早速戻ったというように聞いております。  その後の措置に入るかどうかわかりませんけれども、私は、捜査員、部下に対しまして、彼が現場におったということがわかりましたので、彼についても直ちに事情聴取せよということを言いましたら、そのことがニュースとして流れたらしくて、彼は、ニュースを聞いたけれども、私の話を聞きたいということだけれども、私も自分から名乗り出て事情を説明したいと思っておったところだといって電話がございました。翌日、早速大使館に赴いて捜査員が彼から事情聴取をいたしました。
  195. 矢田部理

    ○矢田部理君 梁一東氏について伺いたいわけでありますが、梁一東氏は事件があった三日後、十一日に韓国に帰りますね。それまでの間、梁一東氏から事情を聞いたと思いますが、事情を聞いた日時、場所、時間等についてお話しをいただきたい。
  196. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 彼には滞在の期限が決まっておりましたけれども、滞在期間を延長してもらう等協力を求めて何度も話を聞きました。回数並びに時間、場所、その他は記憶しておりません。必要があれば後ほど申し上げます。
  197. 矢田部理

    ○矢田部理君 帰る前日の十日の晩、グランドパレスの彼の部屋で事情を聞いておったのではありませんか。
  198. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 大変細かい質問でございますが一私は記憶しておりません。
  199. 矢田部理

    ○矢田部理君 あなた自身は梁一東氏に会っておりますか。
  200. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 梁一東氏には会っておりません。他の人には会っております。
  201. 矢田部理

    ○矢田部理君 この梁一東氏から事情を聞いた警察官の官職、氏名、それから事情を聞かないまでもこの帰国までに接触をした警察側の人たちの名前を明らかにしていただきたい。
  202. 三井脩

    政府委員(三井脩君) いずれも私どもからやったわけでございますけれども、その官職、氏名その他、ただいまのところ存じておりません。  一般に捜査に従事する警察官について、捜査の事件進行中にその官職、氏名等を公表するということは私たちはいたさないことになっておりますので、この点についても御協力願いたいと思います。もしどうしてもその氏名が必要だという特に合理的なあるいは必要性ということでもございましたら、また公の席でないところにおいて申し上げるというようなこともあろうかと思いますけれども、一般論としては以上のように措置しておるわけでございます。
  203. 矢田部理

    ○矢田部理君 警視庁の幹部の方で梁一東氏にこの間会った方はおられますか。
  204. 三井脩

    政府委員(三井脩君) この事件が起こっての捜査以外に梁一東氏に会っておりませんので、幹部といいましても警視クラスの人は私は会っておると思います。幹部というのはその辺のところでございます。
  205. 矢田部理

    ○矢田部理君 これは私の方から事実を指摘しておきたいと思いますが、この十日の晩に、明日梁一東氏が帰るということで、できるだけ事情を聞いておきたいということで、この期間はいろいろ事情聴取が行われたようでありますが、十日の晩も同氏の部屋で行われた。そこへ、装束湖——現在は韓民統の幹部でありますが——氏が、明日梁一東氏が帰国するというので電話を入れた。大体夜九時ごろ、八時半から九時ごろと言われているわけであります。その電話を入れたときに、梁一東さんは警察から事情を調べられていて電話に出られないために、たまたま駆けつけておった梁一東さんの弟さん梁三永氏が表東湖氏の電話を受けた。そのときに、梁三永氏は、いま客があるから兄は出られない。だれだと言ったら、警察である。つけ加えて、警察のえらい人たちの話では金大中は生きている、こういう話があったので伝えておく、こういう電話があった。金大中の生死が公になったのは、御承知のように十三日の夜です。ソウルの自宅付近で解放されてからであります。この電話の事実関係を詰めていきますと、もうすでに警視庁は金大中氏の動静について知っておったのではないかと重大な疑問を指摘せざるを得ないわけであります。いかがですか。
  206. 三井脩

    政府委員(三井脩君) そういうことが週刊誌その他で出ておるということは私も読んで知っております。ただ、いまの趣旨が、金大中氏が八月十三日に無事が確認されるその以前に警察が何らかの方法によって彼が元気であるということを知っておったと、こういう意味でありましたら、そういうことは毛頭ございません。私たち以下、金大中氏の生死を安否を大変、心配しておりまして、そのために捜索救助というような角度で大いに活躍しておるといいますか、捜査と合わして探しておったという時期でありますので、そういうことは毛頭ございません。
  207. 矢田部理

    ○矢田部理君 これはあメリカの状況ともある程度一致するわけですね。すでにこれも問題にされておりますけれども、日本時間の九日の午前一時か二時ごろ李在鉉氏が国務省のレイナード氏に電話をした。まあその前からある程度連絡があるようでありますが、ベン・バルカ事件にはならないかと。これは、御承知のように、アルジェリアの独立運動の闘士が拉致されて行方不明になったという事件がかつてあったわけでありますが、心配するな、そうはならないと生存を確認している応答があった。つまり、ソウルの自宅で金大中氏が解放される前にアメリカ国務省は状況をつかんでおった。日本でも同様のことがあったのではないかという疑いを強くしているわけでありますが、  いまの答え以上には出ないわけでしょうか。
  208. 三井脩

    政府委員(三井脩君) そういうことは毛頭ございませんので、そういう疑いをお持ちでありましたら、ぜひ晴らしていただきたいと思います。
  209. 矢田部理

    ○矢田部理君 これはまた後で問題になるかと思いますが、そこで警察庁に伺いたいのは、加害者側と思われる人物、これは幾つぐらいのグループ、何人ぐらいいたというふうに見ておりますか。
  210. 三井脩

    政府委員(三井脩君) この事件は拉致をして韓国まで連れていったということでありますので、その全体をとらえれば相当の人数になるものと、こういうふうに思いますけれども、ただいま私たちがやっておりますのは日本で起こった部分中心でございますから、現在までの捜査でわかっておりますのは六人組ということでありまして、これはまあこの六人組は船に乗ったかどうかわかりませんけれども、船員の数まで含めれば相当なものになり得たと、こう思いますが、捜査上は六人というのがいままでのところでございます。
  211. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、六人組と接触したと思われる人たち、見たり、会ったり、そういう人たちの人数、職業、場所、日時、状況、名前を明らかにしてもらいたいと思います。
  212. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 六人の人に会った人というのは重要な目撃参考人、証人ということになるわけでございまして、捜査上それぞれ御本人から事情を聞いておりますけれども、その名前をまた一般に捜査進行中に公表するということについては、証人保護というような角度からも考慮しなきゃならぬ問題もありますので、この点についてはぜひ御理解いただきたいと思います。
  213. 矢田部理

    ○矢田部理君 人数、職業、場所、日時、状況と名前は。
  214. 三井脩

    政府委員(三井脩君) まずホテルのルーム関係の人とかフロントの人とか、あるいはあんまさんだとか、レストランでビールを飲んだときの応待をした人だとか、それからまた「さかいや」でいろいろなものを買っておりますが、そのときの関係者とかということになりますので、またエレベータの中で見た人というようなことになりますので、おおむね人数はいまは何名になりましょうか、二十名ぐらいになろうかと思いますが、あるいはもっとになるかもわかりません。
  215. 矢田部理

    ○矢田部理君 この犯行グループと思われる人たちに会った人たちが二十人もいると。これは犯罪捜査としては目撃者、参考人が多い事件だろうと思うのですね。普通、殺人事件なんというのはなかなか被害者は割り出せても加害者側の目撃者というのは少ないわけでありますから、どうして日本の警察が割り出せないだろうかと私は不思議に思うのですが、その点いかがですか。
  216. 三井脩

    政府委員(三井脩君) そういうような多くの方々の協力を得て今日まで金東雲を割り出し、犯人が六人組であるというところを割り出しておるわけでございます。
  217. 矢田部理

    ○矢田部理君 これは容疑者六名だというようなことはかつてわが党からも指摘をしたことがあるし、フレーザー委員会などでも問題にされているわけでありますが、警視庁は、金東雲、尹振元、尹英老、柳春国、洪性採、劉永福等の写真は持っておりますか。
  218. 三井脩

    政府委員(三井脩君) いま申された手振元は持っておりません。そのほかの人は大体持っておると思いますけれども、尹振元ははっきり持っておりません。
  219. 矢田部理

    ○矢田部理君 先ほど述べた二十名前後の関係者にそれらの写真を示して回答を求めるというふうなことはやっていますか。あるいはまた、それらの人たちの当日その時刻ごろのアリバイなり所在なりはどうなっているかということについてはどういう調べになっていますか。
  220. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 写真を示すその他の方法で捜査をもちろんいたしております。その結果犯罪に結びつく者が金東雲一人であるというのが今日の結果でございます。
  221. 矢田部理

    ○矢田部理君 ほかの五名については全く疑いがないという立場ですか。
  222. 三井脩

    政府委員(三井脩君) いままでのところ本件との関係は出ておらないということであります。
  223. 矢田部理

    ○矢田部理君 通常、何人かの目撃者等がいれば、これは捜査のやり方にもよりますが、モンタージュなどをつくって、その人相とか体つきとか服装とかということを天下に明らかにして協力を求めるなどという作業をやることが多いと思うのですが、どうしてそういう作業をやっていないのでしょうか。
  224. 三井脩

    政府委員(三井脩君) いまのおっしゃるような着眼点で捜査をいたしました。いたしましたけれども、目撃者によりましてもはっきりしない。したがって、可能性としては、いま世間で言われておる人たちが、ことに金炯旭が言う人たちが犯人でない可能性も大きいと、こういうことにもなろうかと思いますが、おっしゃるような参考人、証人という人たちの証言をもとにしてそういうような着眼で捜査を進めましたけれども、まあモンタージュについて言えば、モンタージュができるような人がいなかったということになります。
  225. 矢田部理

    ○矢田部理君 韓国大使館はこれは外交特権がありますけれども、金在権氏などから事情を聞いたと言っておられますが、韓国大使館関係者で事情を聞いた人の人数、氏名、事情を聞いた状況等について報告いただきたい。
  226. 三井脩

    政府委員(三井脩君) はっきりしておるのは金在権氏でございますが、そのほかにはさっき申し上げた運転手等がございます。主な人はそういう人たちでございます。
  227. 矢田部理

    ○矢田部理君 いま挙げた六名については。
  228. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 直接事情聴取はいたしておりません。つまり、事情聴取をするだけの容疑をわれわれは持たなかったということでございます。
  229. 矢田部理

    ○矢田部理君 柳春国などからは事情を聞いたのじゃありませんか。
  230. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 柳春国氏には事情を聞いておらなかったと思います。つまり、彼が日本における間に捜査の状況から見て彼から事情を聞く必要を感じなかった、そういう捜査の状況じゃないということであります。
  231. 矢田部理

    ○矢田部理君 「アンの家」の捜査状況を……。
  232. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 金大中氏がその供述等の中で言っておるアン氏の家というのを「アンの家」と普通言っておりますけれども、この点についても、かねて御報告申し上げておりますように、あの地方におけるアン氏の家である可能性、アンとか安田とかいろいろありますけれども、約千軒をリストアップいたしましてこれをシラミつぶしと言いますか全部捜査いたしました。その結果、この家であろうと思われるものは、現在までのところ一つもないという結果でございます。
  233. 矢田部理

    ○矢田部理君 四十九年八月二十日の参議院決算委員会では、二千カ所——あなたの説とまた違うんだが、当たってみた。その中で二、三カ所にしぼったとあなた自身が答弁しておるのですが、どうですか。
  234. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 数字はちょっとまるめて言いましたが、千八百というぐらいのところでございますので、言い方があれでございましたが、調べの中で第一段調べ、第二段調べといってだんだんしぼっていくわけでございます。そういう意味で、二、三カ所にしぼると、こういう段階になったときに質問がございましたので、その当時そう答えたわけでございますけれども、その後の捜査によって、それもすべてシロということに今日ではなっておるわけでございます。
  235. 矢田部理

    ○矢田部理君 その捜査対象の中に、神戸市東灘区の岡本エクセルマンション三階の三〇二号室、これは韓国大使館の大阪領事であります朴シュウカと言うんですか、ソウカと言うんですか、朴宗華という人のマンションの部屋があるようですが、これについては直接当たってみましたか。
  236. 三井脩

    政府委員(三井脩君) それも捜査の中で出てきております。捜査いたしました。しかし、いま申しましたように、結論として申しますと、ただいまの段階で事件と結びつくものではないと……
  237. 矢田部理

    ○矢田部理君 ただいまの……。
  238. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 捜査を今日まで進めてきましたその捜査の結果としては、これは事件に結びつかない、結びつくものがないという現状でございます。
  239. 野田哲

    野田哲君 関連。
  240. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 関連質疑を許します。野田哲君。
  241. 野田哲

    野田哲君 警察庁に伺いますが、兵庫県の尼崎市に居住している国際観光株式会社の会長をやっている林秀夫、韓国名を林秀根というふうに呼ばれておる人でありますが、この人の名前は当然警察庁も承知をしておると思うんです。疑惑になっているモーターボートの所有者でありますが、この件について本年の春からことしの夏にかけて兵庫県議会において質疑が行われておりますが、この質疑に対して県警本部長あるいは警備部長の答弁によると、このモーターボートそれから林秀夫という人については警察庁からの指示があって再捜査を進めている、こういうふうな答弁が県議会でなされております。ここに県議会の議事録もあるわけですが、この警察庁の指示によって再捜査を行っていると、こういう兵庫県警本部長や警備部長の答弁、これはそのとおり確認をしていいのかどうか。  それからもう一つは、四年も時日が経過をして、なお今日この捜査を続けている林という人の問題について、具体的な事実関係が出ていない、しかしなお容疑があるから再捜査をしている、こういうふうに答えているのですか、これは一体どういうことなんですか。
  242. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 韓国名林秀根氏のことでございますが、これはことしの二月であったと思いますけれども、通常国会の予算委員会においてそういう質問がございました。当時、私たちは、この林秀根氏の関係も、ただいま申しましたモーターボート等の関係で兵庫県警か事件当時捜査をして、事件とのつながり、関連が出ておらないという捜査結果になっておったわけでございます。そこで、ことしになってさらにその点について疑わしくないかというのでいろいろの点をお挙げになりましたし、また同様のことは週刊誌等でも出ましたので、国会での論議の状況等を兵庫県に伝え、さらに調べるべきことがあれば調べてくれ、念のためだけれどもと、こういうことでありまして、当時捜査をいたしましたけれども、再びそういうことでありましたから、念のための捜査ということでありまして、新たに捜査が出てきたということではございません。  また、兵庫県において今回改めて調べましたけれども、従前の本件との関連は薄いといいますか、特に関係は認められないという結論を覆するような新たな事情も出ておらないということを報告を受けております。
  243. 野田哲

    野田哲君 いま警備局長は薄いということかありましたから、兵庫県警の答弁でも完全にシロというふうには言われていない、薄いという同じような言葉が使われているわけですが、そこで重ねて伺いますけれども、この問題のモーターボートは四十八年の七月の末に買われたものだと、こういうふうに言われております。この七月末、ちょうどそのころに、神戸にある韓国系の金融機関の信用金庫神戸商銀、この金融機関から架空名義で四十八年の七月末に五千万、それからあと二回その後に三千万と三億五千万円、合計四億三千万円という融資が架空名義で行われております。この金はこの林秀根という人が受け取ったことになっています。これは明らかに信用組合としての限度額を超えた不正融資であることは明らかであるし、兵庫県の当局あるいは県警の方でも調査の対象になっているわけであります。この四億三千万円が林秀根氏の経営する事業に使われたという形跡は全くない。しかも、この神戸商銀の経営者平山庄太郎という人は韓国名では黄孔煥、それからボートの所有者であって四億三千万円の不正融資を受けた林秀根という人、この林秀根は、事件直後に、神戸に居住するごく親しい人に、金大中は私がボートで運んだということをしゃべったということを証言をする人もいるわけであります。この商銀の理事長の黄孔煥という人と林秀根という人は、済州島出身の洪という朴大統領の警護室の企画所長というポストにあってきわめて重要なポストにある人でありますけれども、この人ともきわめてじっこんな関係を持った人だというふうに言われております。この四億三千万円の不正融資がモーターボートの購入資金並びに金大中拉致事件の善後措置の資金に充てられたというのがもっぱら神戸における韓国人の間のうわさになっているわけであります。当然この融資事件についても林秀根に関連する問題として捜査の対象になっていると思うのですが、それはどのような状況を把握しておられますか。
  244. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 商銀関係からの融資云々ということは、兵庫県議会でもそういうことは質問があり、兵庫県の刑事部長が答えておりますけれども、そういう事実を承知しておらないということでありまして、今日のところ、ただいまどうであるか、私は把握しておりませんけれども、事件としては捜査、いわゆる刑事事件としての捜査はしておらないのではないかと、こういうふうに考えております。  一方、また、この林秀根のモーターボートとの関連で本件に金大中事件との関連はどうかという点につきましては、先ほどもお答えいたしましたように、四年前に捜査いたしましたけれども、また新たな目で見直しをやってみたけれども、新たなものといいますか、事件の関連というものは出てきておらないというのがただいまのところの現状でございます。
  245. 矢田部理

    ○矢田部理君 大阪総領事館の問題について伺います。  韓国大使館の大阪総領事館でありますが、八月八日、事件当日の昼ごろに金在権氏からテイドジュンというんですか、鄭度淳総領事あてに電話があった。その電話の内容が、きょう午後あなたのところへ人が行くから、領事館で必ず待っていてほしいと。夜まで待っておったら、夜の九時か十時ごろ一人の男がやってきて、車を出せと言って強引に、大使館ナンバーの黒塗りのベンツだそうでありますが、持ち去ったという話が伝えられています。そこで、そういう状況、青ナンバーの車が動いたかどうか、周辺でそういう状況があったかどうか、その聞き込みなどをやったことがありますか。
  246. 三井脩

    政府委員(三井脩君) いまおっしゃることも週刊誌で読みました。早速そういう点について捜査的な手当てをいたしましたけれども、細かな経緯はいっぱいありますので忘れましたけれども、その件については事件との関連が出てこなかったという報告を受けております。
  247. 矢田部理

    ○矢田部理君 この週刊誌の話は、ピストルを突きつけ、すぐ出すんだと言われたので出したというのは、少し私も、警察にそれならすぐ通報すべきだ、車を取られたのでありますから。ただ、もう一つの私の調査による状況から見ますと、この総領事もあるいは事情を知っていたのではないか。問題が発覚したときに無理やり持っていったということをやっぱり周りに少しく出しておいた方がいいというようなことで出した可能性も強いわけであります。  いずれにしても、電話があったということと、車が持ち出された。その車がその後の拉致といいますか連行に使われた可能性は相当程度あると見なきゃならぬわけでありますか、当時そういう状況について当たったことはありませんか。最近になってからですか、これは。
  248. 三井脩

    政府委員(三井脩君) そういう情報が当時あったかどうか、多分なかった。私も最近週刊誌で読んだのですから、当時はなかったと思いますが、そういう点も含めて捜査というのはそのときの段階で考えられるいろいろな可能性を踏まえた上でやるわけでありまして、さらに今回そういうような情報が週刊誌であっても、あったということを踏まえて調べてみてなおかつ事件との関係は出ておらないということは、捜査としては打つべき手といいますかなすべき措置をちゃんとやっておるということだと思います。
  249. 矢田部理

    ○矢田部理君 その総領事から当時の話を聞いた人という三、四人、これは名前を挙げない方が私はいいと思いますが、そういう人たちからも含めてやっぱり正確に事情を把握すべきだと私は思います。  それから海上保安庁、きのうも出ましたヘリコプターの件でありますが、もう時間がありませんので、要求だけしておきたいと思います。いまわかれば答えてください。  八月九日の日、八尾基地を出たヘリコプター、これは日の丸もついておるし、ラウドスピーカーもついているようでありますが、その搭乗者名、飛行ルート、ラウドスピーカーの有無、ラウドスピーカーの性能——何メートルくらい聞こえるか、それから機体に日の丸がついているかどうか、ヘリコプターの速度、とりわけ当日の航空日誌があったら、資料として提出していただきたい。その概況についていま答えられれば答えてほしい。
  250. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) いまお尋ねの件、全部網羅できてお答えできるかどうかわかりませんけれども、いまお話があったのは、八尾基地のベル206B型のヘリコプターが九時二十分に八尾基地を出て、十一時五分まで一時間四十五分間操縦訓練を大阪南港の埋め立て地でやってございます。結論的には、先ほどからお話が続いている金大中事件との関連は、われわれは全くないということを確信しております。日の丸はついております。それからスピーカーはついております。船の窓をあけておけば二百メートルぐらいの声は聞こえるということでありますが、繰り返してお答えしますが、本件との関係は全然ないということを確信しております。
  251. 矢田部理

    ○矢田部理君 資料の提出は。
  252. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) それから搭乗航空日誌はございますので、これは先生のところへお届けしたと思いますが、もう一度お届けしてもよろしゅうございます。
  253. 矢田部理

    ○矢田部理君 乗員は。
  254. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 乗員の名前はわかっております。それは必要があったらお届けをします。
  255. 矢田部理

    ○矢田部理君 いまお聞きしているのです。
  256. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) ここに手持ちはありません。名前は手持ちはございません。お手元へお届けしてあるものだけ私ここに持っております。
  257. 矢田部理

    ○矢田部理君 外務省に伺いますが、容疑者の一人として言われている柳春国氏はアメリカで亡命の動きがあったようですが、最近韓国に戻ったという話もあります。外務省は確認しておりますか。
  258. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 私どもも、いま言われましたような柳春国についての新聞報道その他は承知しておりますけれども、事実関係は把握しておりません。
  259. 矢田部理

    ○矢田部理君 もう一人の容疑者とも言われている劉永福が、九月末か十月上旬ごろ、日本に来たことがあるという有力な情報がありますけれども、法務省は確認しておりますか。
  260. 吉田長雄

    政府委員(吉田長雄君) ただいま手元にございます資料によりますと、劉永福氏は、一九六八年七月一日に入国して、一九七三年九月五日に出国しておりますが、その後のことはいまのところはございませんが、もし最近ございましたらまた調査いたします。
  261. 矢田部理

    ○矢田部理君 通過ビザというのですか、次の目的地に行くために一時日本にとどまるということがございますね、そういう状況としてもキャッチしておりませんか。
  262. 吉田長雄

    政府委員(吉田長雄君) お尋ねの趣旨は、寄港地上陸のことでございますか。——寄港地上陸は、調べないと、ちょっといま手元にはございませんです。
  263. 矢田部理

    ○矢田部理君 亡命の動きを示していた柳春国をKCIAの高官がロスに出向いて行って帰国を要請した。そして、その後で親しいKCIAの同僚一人がロスに飛び、九日の日に、日本時間では十日でありますが、柳をソウルに連れ帰ってきたという報道があります。そのとき親しい友人として柳春国を連れ帰りに行ったのが劉永福ではないか。しかも日本に三日間程度滞在をしている。柳春国と思われる人に会っている人もいるという事実があるんですが、全く外務省も法務省も確認しておりません。警察はどうですか、まとめてお尋ねをいたしたい。
  264. 三井脩

    政府委員(三井脩君) いまおっしゃることは情報として聞いておりますが、情報源に問題がありますので、その点を留保しながら調べてみましたけれども、ただいままでのところそういう事実は把握できておりません。
  265. 矢田部理

    ○矢田部理君 きのうもこれは問題になりましたが、一連の経過を聞いてきて、やっぱり把握できていない、調べてみたがどうも容疑の線が浮かんでこない、こういう答弁が非常に多いわけですね。しかし疑問はいっぱいある。なぜそうなのかということを考えた場合に、一つはこれは主なき犯罪になっちゃう。つまり、被害者も加害者側と思われるグループも韓国に行ってしまう。どうしたって韓国に捜査の手を伸ばさなければ内容が詰まらない。警察の最初の姿勢などにも問題がなしとはいたしません。ところが、これは三井さんも、あなたの寺田議員の春の予算委員会のときの質問でも言っているわけですね。政治決着が支障になるんです。もう一回答弁していただきたいんですが、韓国に捜査を依頼する、この人からもう少し事情を聞いてくれ、こういう証拠が挙がったが、この裏を取ってくれ、そういう要請はもうできないんでしょう、はっきりしてください。
  266. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 政治決着といいますか、外交的決着というのはそういう意味も相当程度含まれておると思いますけれども、私はその前に韓国側にいろいろ調査を依頼して、回答は来なかった、こういうことから含まれますと、あるいは政治決着の有無と必ずしも直接関係ない面もあるんじゃなかろうかというようにも考えたりいたしております。
  267. 矢田部理

    ○矢田部理君 後の方聞いていない、前段だ。  いまから韓国にこういう裏を取ってほしいとか、この点を調べてほしい、この人に当たってほしい、この人の供述をとってほしいという要求はできますか。
  268. 三井脩

    政府委員(三井脩君) それは外交的決着の意味合いがどこまで含まれるか、どこまでをカバーしておるかということになると思いますけれども、通常のことについては、通常の捜査的照会についてはできないんじゃないかというように考えております。
  269. 矢田部理

    ○矢田部理君 総理どうですか。そこで、重大な主権にかかわる問題だ、これからも真相を明らかにしていきたい、捜査は続けさせたいと言っているんですが、実際には大きな壁があって進まない。だから、私たちは政治決着を白紙に戻せというのが基本であります。その基本を崩すつもりはありませんけれども、少なくとも捜査に関しては韓国に協力を求める、そういう外交ルートの窓を開くべきじゃないか、そのぐらいやらなきゃ、総理、この真相を徹底的に解明しますと、明らかにしたいと思いますという話は違ってくることになってしまいますよ。外務大臣あるいは総理に回答を求めたいと思います。
  270. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 金大中事件に対します一応の外交面におきます決着という意味は、捜査面は事件が決着していないけれども、通常の外交関係を開いていこう、これが大きな趣旨であろうと思います。  それから、金東雲氏につきまして、最初は外交的決着という段階でも、なお捜査は続行をする、こういうことであったわけであります。それから二年後の五十年になりまして、金東雲氏について捜査の結果、犯罪事実を証明することはできないという韓国側の申し出があったと、この点につきまして、先方は金東雲の公務員としての処分を行った、こういうことでありますが、この面につきましては一応決着がついている、こう考えざるを得ないと思います。しかしその他の点につきまして、新たな事実関係、公権力の行使を立証するような事実関係が出た場合におきましては、これは外交ルートを通じましても再度韓国側に申し出をすることは十分にできるということを私どもは考えておるところでございます。そのためにいま捜査を続行し、そして新たな事実の解明に警察庁が努力をされておる、このように理解をいたしておるのでございます。
  271. 矢田部理

    ○矢田部理君 ちょっとはさんでおきますがね。総理、新たな証拠が出て、公権力の介入だという裏づけがつけばということではなくて、新たな証拠を出すためにも事実を究明するためにも、少くとも捜査機関がこれだけは必要だと韓国に聞いてもらいたい。いまは三井さんの話のように協力要請もできない状況に追い込まれているわけでしょう。その捜査に対して協力要請を取りつけるぐらいのことはしなければ進まぬじゃありませんか。そこを聞いておる。
  272. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 先方に依頼をするということよりも、やはり日本側として相当な証拠を用意するということが私はやはり必要ではなかろうか。そういうことによりまして私は先方の協力もそういう段階になれば私は要請することが可能である。現状におきまして、日本側として新たな事実を証明することなくして先方に要求するということは、私は効果がないのではないかというふうに考えております。
  273. 矢田部理

    ○矢田部理君 おかしいな、納得できないな、これは。
  274. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) なおアジア局長から補足をさせます。
  275. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 先ほど来総理、外務大臣が御説明になりましたように、そしてまたこれは先生も先刻御承知のように、事件が起きました年の十一月二日の政治的決着というのは、これはむしろ日本も韓国も、この事件は当然韓国においても刑事事件であるわけでございますので、日本も韓国もともに捜査協力——捜査を継続すると、そしてまた日本側でいろいろ容疑の出ている者を含めて捜査を協力するということで、この政治決着以降も御案内のように日本からいろいろ捜査資料を出し、またそれに基づいて韓国で捜査した結果をいただき、そういう捜査資料の交換は引き続き行われたわけでございます。その中で、最も日本側の捜査当局が自信を持って容疑が濃いと言って韓国側に迫りました金東雲一等書記官につきまして、特に韓国の捜査の結果に注目したわけでございますけれども、これが一回目の返事はそっけのないものであったので、これをもう一度捜査をやり直してもらいたいと強く要請して、そしてその結果来ましたのが七月二十二日の口上書の件であったわけです。そういうことで、金東雲一等書記官については、日本側としては十分満足はできないけれども、韓国としても一応これでけりをつけるという努力をしたということで、日本側も一応これにけりをつけるという決断をいたしたのが一九七五年の七月二十二日であったわけでございますので、いま残っておりますのは、最初の政治決着のときに、はっきり両方の外務大臣——先方は金鍾泌国務総理であったわけですが、その会談の席上ではっきり留保してございます公権力介入について新たな事実がわが方で出たならば、これは政治決着全部を見直すんだという点についてははっきり権利を留保している、こういうのが現状でございます。
  276. 矢田部理

    ○矢田部理君 中心的な関係者がいないところで犯罪捜査をやれと言ったって、これは常識的にむずかしいんですよ。協力要請もできないなんてばかなことがありますか。大体、警察は、政治決着をつけるときには事前に相談を受けたんですか、了解したんですか。
  277. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 外交的決着でございますので、外務省の所管する範囲内ということで相談は受けておりますが、その点については、われわれとしては外務省のおやりになることで了解をいたしました。
  278. 矢田部理

    ○矢田部理君 これは公権力の行使がわかったら再交渉だというのじゃなくて、少なくとも捜査機関がこれだけやっぱり調べなきゃならぬというやつがあるはずですよ。あるでしょう。そのぐらいはやっぱり韓国に問い合わせるなり、協力を求めるなり、朴東宣のためにアメリカは乗り込んでさえいるじゃありませんか。そのぐらいの姿勢を示さなければ、あなたの韓国に対する姿勢はおかしい。これはまともに追及する立場にないと言われてもしようがないと思うんですよ。どうですか。
  279. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 御承知のように、金東雲一等書記官につきましては、一九七五年七月二十二日の口上書による決着にもかかわりませず、国会の意思として金東雲一等書記官を呼べないかというお話がございまして、これにつきまして韓国側と接触をしたことはございます。韓国側は、この外交的決着の趣旨がございますので、韓国としては何ともお答えのしようがない、こういうことでございまして、もう一度考えてもらえないかということを念のために頼みましたところ、先方は、非常にむずかしいと、こういうことであったわけでございます。  他方、こういう状況のもとで、韓国にすでにおります韓国人の容疑のある者、これを日本に呼ぶということは、これは政治決着のあるなしとは関係なしに、一般に犯罪人引き渡し条約がない場合には大変むずかしいことでございますし、犯罪人引き渡し条約がある場合でも、自国民不引き渡しという原則もございまして、その実効性については相当疑問があるということは一般論としては申し上げることができると、こう思います。
  280. 矢田部理

    ○矢田部理君 総理総理から、これは検討するぐらいのことは言ってほしいと思う。前向きでそのぐらいはやるという話はできませんか。
  281. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、経過につきましては御承知のとおりでございますが、なお捜査当局は鋭意捜査を進めておる案件でございます。  そこで、いまも外務省にちょっと聞いてみたんですが、これは政治決着が行われた案件であると。したがって、政府としていろいろ韓国に申し入れることは、これは遠慮すべき立場にあると。しかしながら、国会の意思と、こういうようなことであれば、政府はこれを取り次ぐことができる案件であると、こういうふうに申しておりますけれども、それでも同じ結果になるんじゃないかと、こういうふうに思いますので、そのような国会が御意思でありますれば、そのようにいたしたいと、かように考えます。
  282. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上をもちまして矢田部君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  283. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、矢原秀男君の質疑を行います。矢原君。
  284. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 近くは歴代の総理が唱えておりましたけれども、福田総理、あなたの、福祉国家として、近代日本の進路についてという角度から、またあわせて、現今における社会保障、福祉に対する基本姿勢について、具体的に四点ぐらいにわたってお伺いをしたいと思っております。  現在、国民の多くは暮らしの先行きに対しまして大きな不安感を抱いております。見通しが全くわからないことにいら立っているのではないでしょうか。低成長時代にわが国をいかに適合させるか、確かにむずかしい時代を迎えております。雇用不安は深刻さを増そうといたしております。こうした困難な問題を解決するためには、総理は、今後の見通しを明らかにした上で経済の見取り図を示しながら、国民が自信を回復するように努めるべきではないかと思います。必要なら困難な事実を説明して国民の協力を要請すべきだと思いますけれども、国民に対して現状と将来をどのように説明されるのでしょうか、まずお伺いいたします。
  285. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、国民にこれは大変な世の中になってきたということを切々と申し上げておるわけです。資源エネルギー有限時代を迎えておるということですね、これが象徴的な私の発言だと、こういうふうに見てくださっていいと思うんですが、わが日本昭和四十年代におきましては、とにかく世界でびっくりするような高成長をなし遂げてきた。しかし、いまやそういうことはもう許されない。もう四十年代の末期ごろからそうなんですが、もうわれわれは家庭においても企業においても、まして国においてはもちろんでありますが、この変わった世界情勢対応するという、この姿勢で臨まなけりゃならぬというふうに考えておるわけです。この私の考え方は、折に触れ時に触れ精力的に国民に訴えていきたいと、このように考えております。
  286. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 また一面では、総理は、企業家計に蓄積をというのが十年来の持論でありました。企業は確かに高い生産性を持ちまして、諸外国に負けない国際競争力を有しているところもあります。しかし、家計は蓄積どころか吐き出し、食いつぶしで、零細な預貯金は預金金利の引き下げで実質的な目減りとなっているのが現実であります。総理国民に協力を訴えるならば、政治に信頼感を取り戻すために社会的不公正の是正などに積極的に取り組んでいかなくてはなりません。そして、後追いの施策ではなく、積極的なリーダーシップが求められております。総理は今後それらの国民の期待にどのようにこたえていくのか、お伺いしたいと思います。
  287. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、国民に夢よもう一度というような考えがあれば、それはできないことだということをはっきり申し上げなけりゃならぬと、こういうふうに思います。   〔委員長退席、理事内藤誉三郎君着席〕 しかし、世界が低成長時代に入る、その中でわが国もまた低成長時代に入るわけですから、そういうときに心しなければならぬことは、いままで高成長のときは所得の少ない人、特に社会保障施策の対象の人、そういう人も国の経済の伸長とこう肩を並べましてこの施策も充実してくると、こういうような状態であったわけでございますが、これからは低成長時代に入る、そういうときには特に低所得者の、その中でも社会保障対象者、そういうような人々の立場、これに政府としては特に目を配った取り組み方をしていかなければならぬと、こういうふうに考えておりまするが、そのような基本的な考え方でこれから諸施策を進めてまいりたいと、そういうふうに考えております。
  288. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 打ち続く不況、雇用不安、物価上昇のもとで国民の生活は実質的な低下を来しております。特に失業者、老人世帯、身障者世帯、母子世帯など弱い立場にある人々の生活はまさに危機に瀕しております。このようなもとで、福祉充実への要求は一層強まっておりますが、五十三年度予算編成を前にもいたしておりますが、政府の社会保障に対する基本的な考え方というものもただしてまいりたいと思います。いま国民が望んでおりますことは、まじめに努力をすればどんな場合でも憲法に保障された「文化的な最低限度の生活」ができるということです。ところが、財政難にのみ目を奪われて、福祉施策については長期的視点に立った社会保障確立への意欲は、少なくとも従来までは見られないように思います。むしろ、福祉見直しの名のもとに財政事情を優先させた予算編成であり、福祉なくして成長なしという考え方は、再び成長なくして福祉なしといった福祉論に逆行しているとも考えられるわけでございます。福祉に対してどのようにお考えでありましょうか、お伺いします。
  289. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 福祉は、これは先ほど申し上げましたように、これから政治の原点といたしまして重視しなけりゃならぬ、これまでの高成長の時代とまた趣を異にいたしまして、特に重点を置いていかなけりゃならぬ、その政治的な考え方、まさにそうなければならぬと、こういうふうに考えます。ただ、低成長の時代でございますから、高度成長の時期のように毎年毎年あのような勢いで福祉を充実させていくということは、これはもうとても望んでも得べからざることである、こういうふうに思いますが、まあ諸施策ですよ、遂行するに当たりましてはそういう考え方でやってまいりたい、かように考えます。
  290. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 社会保障の予算の対前年度の伸び率が一般会計予算の対前年度伸び率を上回るようになったのは四十七年度からであります。高度成長のひずみの是正の名のもとに上昇を始めてからわずか三年にして大幅なダウンを示している状態でございます。五十三年度予算編成に向けてどのような意向で対処されようとしておりますのか、重ねて総理にお伺いしたいと思います。
  291. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 基本的な考え方は、ただいま申し上げたとおりであります。それをどういう数字で表現するかということになると、これから準備をするわけでございまして、まだ申し上げる段階まで来ておりませんが、考え方の基本は、ただいま申し上げたとおりであるということで御理解願いたいと存じます。
  292. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 私も報道されております福田語録というものを拝見させていただいておりますが、福田さんの、いろんな国民に対して、こういう時代には福祉はどうなるんだというふうな明確なお話というものが非常に少ない、早く言えばないと言っても過言ではない、こういうふうな状態なんですが、そういう意味で、私はいま、こういう現況下における総理の福祉に対する姿勢というものをまずお伺いをしておるわけでございます。  総理、先般中期税制の答申がございました。その中で調査会が、歳出の大幅な削減は社会資本の充実や社会保障支出の増加相当程度犠牲にしないと成り立たない旨の答申がなされております。総理はこれに対してはどういう見解なのか、お伺いしたいと思います。
  293. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いまわが国の財政事情というものは非常に厳しい状態にあるんです。この財政の再建、これは政府としても政策の重点をかなりここへ置いた取り組み方をしなけりゃならぬと、こういうふうに考えておりますが、そういう中で、これはもうあらゆる施策について、一定の経費をもちまして最高の能率を発揮するという工夫が行われなければならないと、こういうふうに思うのです。これはもうあらゆる行政の分野においてそのことが求められている、こういうふうに思います。しかし、先ほど申し上げましたように、福祉ということにつきましては、この低成長時代においては特に重要な課題になるということ、これは先ほど申し上げたとおりの立場において取り組むべき問題であると、こういうふうに考えております。
  294. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 私、今般、児童手当制度も検討しようではないか、廃止をしようではないかというふうな、そういう動きもございますので、まず児童手当の問題について質疑を重ねてまいりたいと思います。  児童福祉法には、御承知のように、第一条の児童福祉の理念の中には、「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。」、二項には「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」、こういうふうに明確になっているわけでございます。そういうふうな中で、まず私が質問申し上げたいのは、総理についてでございますが、この児童福祉法の精神をどこまで尊重されておられるのでしょうか、そういう点についてお伺いしたいと思います。
  295. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 児童手当法の中でも、児童を養育している者に児童手当を支給することによって、その児童の健全な育成及び資質の向上を図る。いつの時代でも児童の健全な育成及び資質の向上ということが重要なことでございますから、その点は当然われわれも重要だと、こういうふうに考えております。
  296. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 昭和四十六年に児童手当法案が提出されました。その提案の理由というものは、児童手当制度は、わが国社会保障制度の中でいまだ実現を見ていない唯一の制度であり、次代の社会をになう児童の育成の場である家庭の生活を安定させ、児童の健全な育成と資質の向上を図るためには、この制度の創設かかねてより懸案となっていた。特に、今後において老齢化が予測されるわが国の人口構成を考えるとき、将来の高齢化社会を支えていくこととなる児童の健全な育成と資質の向上を図ることは、わが国が将来にわたって活力にあふれた社会として発展を続けていくために、今日においてとるべき緊急の課題と言わなければならない。政府としては、このような観点から、わが国の国情に即応した児童手当制度を実現すべく鋭意検討を続けてきたが、このほど成案を得たので、この法律案を提出した次第であると。このことについては、厚生大臣も総理大臣もゆめお忘れでないかと思いますが、改めて、いささかも変わっておらないという御心境をまずお伺いをしたいと思います。
  297. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 児童の健全な育成と資質の向上というようなことについては、変わっておりません。
  298. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 厚生大臣、いま私が申し上げておりますこの提案理由の内容、政府の姿勢、重ねてもう一回はっきり言ってください。
  299. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) ただいま申し上げましたように、児童の育成と資質の向上ということは、いつの時代でも重要でございますから、そういう点は変わっておりません。
  300. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 大蔵大臣にお尋ねいたしますけれども、経済の低成長下、財源的に困難なことであるとの理由で、児童手当支給に関して、ここ一、二年、廃止をするような考えがあるやにもうかがうわけでございますが、真意のほどはどうなっているのか、現時点において。お伺いしたいと思います。
  301. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 申すまでもなく、福祉ということは非常に大事なことであり、かつまた低成長時代においてはその必要性が加わってくるものだと思います。ただ考えていかなければならないことは、福祉というものの政府のサービスでございますが、これが本当にしかるべきところへできるだけ多くのものか渡っていく——できるだけ多くというよりも適当なる、適切なる手当が渡っていくということが非常に大事なことでまたあろうと思います。財政が非常に切迫しておる折からでございますので、そこで、あえて私はこれを削るとかなんとかということは考えておりませんけれども、最も適切なる方法によって、適切なる場所にこれが渡っていくということが大事なことでございます。さような意味におきまして、ただいま予算考えておるところでございますが、いずれにいたしましても、これは厚生省とよく相談をして、最も適切有効なるものにしていきたいと、かように考えております。
  302. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 総理大臣、児童福祉法の第一条をいま私は申し上げて厚生大臣と大蔵大臣に質問をいたしたわけでございますが、やはり明確な答弁というものが返ってこないわけでございます。私たちは、どなたもそうでございますが、世界の国にまず飛行機から降りて、その国の子供さんの目の輝きを見れば、子供さんの姿を見れば、その国の人間味あふれる真心の政治であるとか教育であるとか、そういうその国のすべてが一望にわかるわけでございます。そういう意味で、子供さんに対する施策というものは非常に大事でございますが、この児童福祉法の精神の尊重を踏まえた中で総理大臣に一言お伺いしたいわけでございます。児童手当制度を国民が納得のいく形で続けていくと、このようにしかと示されるべきではないかと思うわけでございますが、この点いかがでございましょうか。
  303. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 児童手当の問題につきましてはいろいろ議論もあるところであります。したがいまして、子供の育成と資質の向上の重要なことは当然私どもわかっております。そこで、これは現在中央児童福祉審議会において、いろいろ専門家、有識者の御検討をいただいておるところでございます。
  304. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 昭和五十三年度予算要求の内容についても、児童の健全育成対策の要求額が七百七十億二千百万円と計上されております。備考には、一つ家庭児童相談室運営費九億二千四百万円、二番目には児童館運営費十三億五千二百万円、三番目には母親クラブの活動費として九千万円、四番目には都市児童健全育成事業費として一億三千万円、五番目には児童育成指導技術研修事業費として三百万円、合計二十四億九千九百万円が明確になっております。こうなっておりますと、児童手当国庫負担金については検討中という、この検討中という形、それで金額の計上はされておりません。計上されない唯一の理由はどこにあるのかということについて、私はこれは厚生大臣と大蔵大臣に明確に答えていただきたいし、そうしてこの予算要求に、児童の健全育成対策の要求額が七百七十億二千百万円と計上されておるわけですから、児童手当国庫負担金を除く要求額二十四億九千九百万円、これを七百七十億二千百万円から引いても七百四十五億二千二百万円というものが残ってくるわけです。この額を児童手当国庫負担金の額として見ても間違いないのかどうか、また児童の健全育成対策の要求額は、なぜ七百七十億二千百万円と計上されたのか、こういう点も御答弁をお願いしたいと思います。
  305. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 先ほどお答えをいたしましたように、児童手当のあり方等については中央審議会で検討中でございますので、さしずめ枠要求をしてあると、こういうことであります。児童手当の問題について、実は私が厚生大臣になりましてから、これについてはいろいろ問題が出てきましたので、前年と同額で一応支給はいたしました。この問題はどうしてかと申しますというと、児童手当は、産めよふやせよという思想ならば、それは三子、四子、五子といくに従って額をふやすというのも一つの物の考え方であります。ところがそういうことでもない。  それから、非常にボーダーライン層を救うと、生活保護にはならないけれども、生活保護すれすれの人もおる、そういう者を救うということならば、四百五十数万というような所得制限は高過ぎるのではないか、こういうような議論等が実は出てきたわけであります。それらの問題、それからいままでどおりでいいじゃないかというもちろん議論もあるわけでございます。したがって、そういう問題も全部含めまして、中央児童審議会で学識のある方々の御参加をいただいて、いかにあるべきかということについて目下検討中であり、来月中ぐらいにはその成案を得るものと考えております。
  306. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 去る五月、児童手当の意識調査が発表されましたが、その結果をどう受けとめ、どのように対処されようとしておるのか、お伺いします。
  307. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 意識調査をごらんになっていただけばわかるように、それにもいろいろな議論が出ておる、しかし、児童手当を置いた方がいいというのがやや多いことも事実でございます。そういうような問題点が意識調査の結果出てまいりましたので、そういうものも含めまして御検討をいただいておるわけでございます。
  308. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 その調査の中では、児童手当の支給を差し控えるべきであるというものは調査全体の一割程度ということになっております。こういうことを考えておりますと、やはり児童の健全な育成と資質の向上というものについて、非常に目的の効果も上がっているということがはっきりしておるわけでございますが、やはり今後のあり方といたしましては、世界の諸国が第一子からの児童手当支給を増加して、これが大勢となっております。ところが、四十六年制定のわが国の児童手当法は、所得制限つきで、義務教育終了前の児童を含む三人以上の児童を監護し、生計を同じくする父または母に支給すると規定しており、財政を優先的に考える余り、児童が一人か二人しかいない親には支給されていない。こういうことになっているわけでございますが、国際動向とかけ離れた多子養育養護を児童手当法上の児童手当の目標としていることになるのではないかと思うわけです。こういうことでございますから、現行のこの制度の対象となっているのは二百四十三万世帯、全体の七%程度でございますけれども、制度を拡充して対象世帯をふやし、そうして国民の認識をさらに積極的に深めていく、そうして児童の育成というものを国の責任でやっていかなくちゃいけない、こういうふうに考えるわけですが、厚生大臣、この点をお伺いします。
  309. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) この福祉の問題は、児童手当ばかりでなくして、できるだけ多額の手厚い保護をするということが、私はいいのに決まっておるじゃないか。問題は財源の実は問題でございます。また各国の取り組み方も違いまして、ドイツのような場合は確かに第一子から支給をいたしております。スウェーデンの場合も一子から幾らということでいたしておりますが、スウェーデンのごときは、ともかくやはり生ませることにかなり力を入れておると、こういうような点がはっきりしておるわけでございます。そのかわりスウェーデンのように十二万円も出すということにつきましては、また一方、税金もべらぼうに高いということになりまして、たとえば三百万円で子供二人という夫婦の給与所得者を見ると、日本なら六万六千円しか所得税を払わないが、スウェーデンは三十五万円払う。あるいはストックホルムの市民税を見ても、三百万円の給与所得者が七十三万四千円の市民税を払っておる。日本の場合だと五万七千円の住民税の所得割であります。したがって、五万七千円と七十三万円という税負担の問題は十倍以上の問題でございますから、ここはうんと手厚くして、そのかわりうんと課税もスウェーデン並みに、あるいはドイツでも日本よりはるかに多いですから、そうようにしていくのがいいのか、あるいは現在の児童手当等のあり方について、ばらまき的なやり方を何か工夫をした方がいいのか、これはいろいろ御相談をしていかなければならない私は問題じゃないか。所得制限の問題等につきましても、これは全般的にかかる問題でございますが、資産があってもそれには関係ないと、仮に山をたくさん持っておっても木を切らない限りは財産家であってもいろんな手当がもらえる。極端な話が、豪邸に住んでおっても所得がないと言えば手当がもらえると、こういうようなことがいいのか、それとも本当に非常に苦しい有限な財政の中にあるのだから、真に困った人を救っていくというところに比重をかけていった方がいいのか、これらは哲学の問題も伴うことでございまして、幾らでも財政をふくらますということができない、税金も思い切って上げることもできないということになってくると、限りある財源の中でどういうようなやり方が本当に福祉社会をつくっていく点において有効であるのか、効率的であるのか、皆が納得するのかというようなことなどもあわして検討をしていきたいと思っておるところでございます。
  310. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 この点については、政府が衆参両院の社会労働委員会の附帯決議を尊重し、社会保障施策における児童手当制度のより明確な位置づけを強く要望いたします。  時間がございませんので第二点目に入りますが、老人医療の無料化制度の存続と制度の拡充についてでございますが、昭和四十八年から施行された老人医療公費負担制度により七十歳以上の老人の医療費負担が解消されたことは、すべてのお年寄りに医療の門戸を開いたばかりか、高齢者を介護する家族の家計費の軽減をもたらし、その政策的効果にははかり知れないものがあります。しかし、政府は近年、医療費の増大傾向とともに経済の長期的な低迷の中で、財源難を理由として制度の後退的な見直し、そういうものが云々されておりますけれども、この問題については、政府の方ではいかような姿勢を持っていらっしゃるのか、明確にしていただきたいと思います。
  311. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 日本では幸いに老人の寿命が延びまして男が七十二・一五、女が七十七・三五というようなことで、スウェーデン並みのトップクラスの寿命になりました。これはたった三十年間で二十歳以上の寿命が延びたと、このことはまあ世界の人類の歴史にないんじゃないか、一億一千万人の人が。アメリカあたりだと男の平均寿命は六十八、ソ連も大体その程度であります。したがって、イギリスよりも、フランスよりも、ドイツよりも日本は平均寿命が延びた。これは非常に結構なことだ。しかしながら、その反面皆さんが長生きをしますから、そういうような方がどうしても病気になりやすいということで老人医療の問題というものが出てまいります。また年金の問題というものが出てきます。この二つがこれからの社会保障制度の大きな柱になってくるわけです。  そこで、老人医療の問題につきましては、これはよく国保財政との絡みで言われることでございますけれども、元気のいいときは保険に入っておる、定年退職になっておっぽり出される、年金受給者または失業してから国保に入る。そこで負担等もあるというようなことから老人医療無料化という問題が出てきたわけでございますけれども、これによって救われておる面も事実であります。しかし、この医療無料化の問題は、ただ単に老人の医療制度だけの問題でなくして、やはりこの老人の問題というのは、医療偏重からこれからは病気の予防、それから病気の回復、治療からリハビリテーション、それから入院ばかりしなくても在宅でやっぱり家族と一緒にできるだけいられるような工夫がお互いにいいのではないかと、こういうようなことなど等も含めて老人の医療問題につきましては、目下私の手元で老人医療問題の懇談会をこしらえておりまして、これは本当に近々今国会中に結論が出していただける見込みでございますから、その方針を踏まえて皆さんともよく相談をいたしまして一つの方向を打ち出してまいりたいと思っております。
  312. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 総理、この際、老人医療無料化存続の決意というものをお伺いしたいと思います。
  313. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま厚生大臣から申し上げましたように、これいろいろ論議がある問題でありまして、論議を尽くして、そうして五十三年度予算にどういうふうにするかということを決めるのが筋であろうと、こういうふうに考えております。ここで五十三年度にいまこの段階でどうするかということは申し上げかねますか、この問題は老人の医療をどうするか、これは老人対策というといろいろあるわけですね。老人雇用の問題がある、あるいは老人の所得をどういうふうに援助していくかという問題もある。そういう老人問題、広い幅の考え方の中でこの問題の結論を出すべきことであると、かように考えます。
  314. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) この老人の問題は、先ほど言ったように、ひとつ老人の問題というものを一貫して取り上げていきたいと、その費用につきましては、これはいずれか、どの人もいずれは老人になるわけでございますから、自分も年がたてば老人になるので一これはやはり国民の各界各層の公平なひとつ御負担をいただきたいと、そういう方向がいいんじゃないだろうか。ドイツの例を引きますと、ドイツの場合の老人の医療という問題については、現に年金に加入をしている方が、その年金の中から支払い額の一一%を老人の医療費として負担をしておると、こういうような実情にもございます。したがって、世界の例を見ましても、やはりこういうものは国民の各界各層の公平な御負担によってそういう制度を確立していく方向が有力ではないだろうかと思っております。
  315. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 いずれにいたしましても、この老人医療無料化制度創設の本旨に立ち戻って、政府財政難だと軽々にそういうことで存廃を決定するのではなしに、発展の方向で無料化制度の拡充に努力をしていかなくてはならないと私は強く要求をする次第でございます。  次に、義務教育諸学校の教科用図書の無償配付の問題でございますけれども、これまた憲法二十六条にうたわれておりますように、義務教育に関するもろもろの無償という問題、こういう観点の中から義務教育諸学校の教科用の図書の無償配付というものは、父母の教育費負担を軽減させることと、教育の機会均等及び義務教育の無償に大きな成果をもたらしているわけですから、この問題についても私たちは憲法の精神から外れてはいけない、このように政府に強く要求をするわけでございますが、この点についても明確に無償配付の存続、こういうことに対してお伺いしたいと思います。
  316. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 義務教育の教科書無償配付の制度は昭和三十八年度から着手をいたしまして、四十四年度に小中学校生徒全部を対象にして実行しておることは御承知のとおりでございます。御指摘のように、憲法の精神も踏まえ、また、あすの日本を担う児童生徒の育成のためにきわめて有益な政策であると判断しておりますので、大切にしていきたいと思います。
  317. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 次に、心身障害者・児の福祉関係について質問いたします。  心身障害者の福祉は施設の収容、在宅のケア、所得保障、雇用確保、生活環境の整備等総合的に行われなくてはならない、そういう観点の中で一言だけ政府に要求するわけでございます。一番問題になるのは骨子の問題でございますが、社会福祉の施設整備であるとか、そういう長期的な計画をなぜ政府は取りやめたのか、そういう点についてお伺いしたいと思います。
  318. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 社会福祉の施設の整備計画に対しましては、昭和四十六年度を初年度として緊急整備五カ年計画をつくりました。五年間かかって六十二万人分の整備を行いました。五十年度末において約二百万人分の施設を整備する目標で策定したのでございますが、五十年度までに全体としてこれを上回る実は整備をしておるわけでございます。
  319. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 社会福祉施設整備状況見ましても、五カ年計画、これはあるのですけれども、重度身体障害者の施設達成率が五〇・九%です。心身障害児・者の施設というのが五九・四%ですね。こういう状態から見ると、いま大臣がもろもろのものが一〇〇%も達成されたようなお話をされておりますか、こういう世界の先進国からおくれている日本の国で、社会保障の長期計画ができずして手当たり次第に、言われるからやっていく、財源がなければやらない、総理、こういう点はどうなんですか。経済でも道路でも建設でも全部五カ年計画であるとか長期計画、すべてつくった上で進めておるじゃないですか。弱者の問題に対してなぜそういうことをやらないのですか。総理、答弁してください。
  320. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 重度のいろいろな養護施設につきましては、これは国として一応整備はいたしておりますが、特に地方地方によってニードが違うんですよ。したがって、いろいろな重度の看護を要するような精神薄弱児・者等につきましても、重度床、重度棟等を設けまして重度加算あるいは嘱託医の手当、こういうようなことで処遇をしておるわけであります。したがって、今後県等においてそれぞれのその地域に即した、都市と農村とはまた違いますから、その地域地域の要求があった場合には積極的にそれらに対して助成策を講じてまいりたいと、決しておろそかにしておるものではございません。
  321. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 社会保障の全体についての考え方、これは政府の五十年代前期五カ年計画、これに明らかにしておるわけですが、これを一つ一つ砕いて、そして長期計画をつくるということは、これは厚生大臣からもいまお話がありましたように、非常にこれはむずかしいんです。できたらそうしたいと、こういうふうに思いますけれども、実際問題としてなかなかむずかしい。しかし、何とか少し大づかみにでもやや具体的な長期計画、これができないかというので検討はしておりますがね。ここの席で長期計画つくりますというお答えをするほどのまだ自信がない、こういうことでございます。
  322. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 つくる方向で鋭意検討していただきたいと思います。  それから最後になりますが、精薄の方々の身障者雇用の状況実態をお伺いしたいと思います。
  323. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 身体不自由者の方々に対し、いわゆる身障法が先般改正されたことは御承知のとおりであります。この改正はいままでの努力義務を法的義務に変えたこと、それから雇用率を二%平均して上げたこと、それから納付金制度というものを採用したということであります。この身体不自由者に関する限り、従来の二%上げない前の雇用率では大体民間では七〇%くらいの事業所が達成をいたしております。それから、政府関係機関でもほぼ全体としては達成をしている状態であります、部分的には若干問題があると思いますが。しかし、改正後の調査でありますが、六月一日時点で調査を開始しておるわけでございますけれども、まだ集計ができておりません。集計ができ次第発表したいと存じます。  一方、精神薄弱者の問題でありますが、これは精神薄弱者に対する調査は、昭和四十六年に厚生省が行った時点においては、十五歳以上の人が約十九万人、その中の大体三三%くらいが雇用されているんじゃないか、そういう数字が出ていると承知しております。で、身障法の改正のときも身体不自由者という、障害者というだけでなく、心身障害者ということを入れろという議論が非常にございました。ただ、これはなかなかやっかいな問題がございまして、一体、精神薄弱者とは何ぞやという定義がまだできておりません。それから、お医者様が判定するとか、ケースワーカーが判定するとかいうようなことであります。それからもう一つは、その程度が非常に違っておりまして、たとえば知能指数で言いますと、九〇から一一〇くらいが常人といたしますと、一体、九〇以下の者は全部そうなのかと、そういうレッテルを張るところに問題がございます。しかし私どもとしましては、でき得る限り個々にわたっての雇用の相談にあずかる、いわゆる相談所を設けますとか、あるいはまた、精神薄弱者を多く、あるいは精神薄弱者だけを使っておる、そういう事業所もあるわけで、私も自分自身でも何カ所か見てまいりましたが、そういうところに対しては低利の融資の方法を講ずるとか、そういうような処置をとって促進を図ってまいりたいと思っておる次第でございます。
  324. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 関連。
  325. 内藤誉三郎

    ○理事(内藤誉三郎君) 関連質問を許します。太田淳夫君。
  326. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 ただいま身体障害者の皆様方の問題について伺っておりますが、特にこの国会は雇用不安に対する国会と言っているぐらいに国民の皆さん方はその対策をまっております。また、いま一番困ってみえる方々は、きょうのいま議題になっております身体障害者の皆さんではないかと、このように思っております。  第一にお聞きしたいことは、この不況解雇というときに一番先に身体障害者の方が解雇されるという、そういう実態があろうかと思いますが、その実情をどう政府は掌握をされているか、第一点。  第二点は、こういうときこそ官公庁が優先して身体障害者の方を雇用すべきじゃないかと思いますけれども、法律に基づいた身体障害者の方々の雇用状況はどうなっているのか、その点をお尋ねいたします。  また第三点は、民間企業の身体障害者の雇用状況はどうなっているか、最近の状況を御報告願いたいと思います。  また、あわせまして労働大臣からもこの身体障害者の方々の雇用促進について特に行政指導を強化してもらいたい、こう思いますけれども、この三点についつ御答弁願いたいと思います。
  327. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) ただいまの答弁とやや重複するかとも思います。現在、法改正後の実情については、まだ先ほど申しましたように累計ができておりません。——先ほど二%上げたというのは〇・二%の間違いでございました。訂正をいたしておきます。そういう状態については、政府関係機関その他においては、前の状態においてはほぼ達成をいたしております。それから、民間においては約七割の事業所が達成しておるわけであります。これはしかし納付金制度が裏にございまして、身体不自由者から先、もう結局、人道上の問題は考慮に入れず、身体不自由者から整理をしてまいりますことが採算上必ずしも有利でないような状態になっておるわけであります。われわれとしては、身体障害者雇用促進協会をもうすでに発足させまして、これを中心にこの身体障害者の雇用促進に努力をいたしておるところでございます。  現在の状態は、先ほども申しましたようにまだ集計ができておりませんけれども、いままでの大体の状態、たとえば新聞なんかでは相当高名な事業所が身体障害者だけを雇用したいという広告などがしばしば見受けられるようになりました。ただ、一般的な経済不況その他の状態もございますので、はかばかしいという御報告をするには至っていないわけでございます。
  328. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 いま関連もありましたように、雇用国会と言われる、現下の雇用問題は非常に厳しいと思います。で、不況下でそのしわ寄せば心身障害者の雇用に影響されるところでございますが、特にいまもお話があったように、精神薄弱者は身体障害者の雇用促進法の適用除外になっておりますので、適職の開発もおくれております。そういうことで職業訓練においてもなかなか困難な状況にございますので、訓練施設も整備されなくちゃいけないし、こういう面からも積極的にこういう施策について万全の体制をお願いしたいと思います。  終わります。
  329. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 身体障害者に特別のしわ寄せがないような処置が身障法の改正によって行われていることは御承知だと思いますし、最近これについての自覚は他の問題、たとえば定年の問題とか中高年雇用の問題以上に各企業の関心が高まっていることは御承知のとおりでございます。それから、ただその精神薄弱者の問題になりますと、実際正直に申しますと私は四十五年ほど前にそういう施設の手伝いを長い間したものでありまして、何が適職であるか、それからイデオサバンと申しまして、知能検査で低い層にあっても特別の、特定の才能においてはすぐれている場合がある、そういう才能を生かす、ケース・バイ・ケースで図っていかなければならぬのでありますが、そういうことを合わせたいわゆる相談機関、訓練機関というものの充実を図りたい。これはそのほかのものと違って一律になかなかやれないというところに困難な問題があると思います。
  330. 内藤誉三郎

    ○理事(内藤誉三郎君) 以上をもちまして矢原君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  331. 内藤誉三郎

    ○理事(内藤誉三郎君) 次に、福間知之君の質疑を行います。福間君。
  332. 福間知之

    ○福間知之君 質問に入る前に一、二外務省にまずお聞きしたいのですが、昨夜東南アジアのタイ国におきましてクーデターか発生をしたわけでございますが、その実情について把握している状況をお知らせ願いたいと思います。
  333. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 昨日の現地時間の午後六時でございますが、タイにおきましてサガト国防相、退役の海軍大将でございますが、サガト国防相を長とする革命団がクーデターを行って国政を掌握したという発表があったわけでございます。で、その第一号の布告によりますと、王制の護持あるいは現行の憲法議会及び内閣の廃止、昨年以来の戒厳令の存続等を発表をいたしております。   〔理事内藤誉三郎君退席、委員長着席〕  革命団は昨年十月六日のクーデターにおきまして指導者であった人々によって指導をされておるというのが特徴でございまして、これらの指導者のサガト国防相を初めククリアンサック氏等は、やはりタニン首相の顧問格のグループでございます。この方々が昨年の十月のときにもクーデターを指導した人でありまして、これらの人々がタニン首相との間に意見のいろいろな相違があった。一説によりますと、閣僚の更迭を要求をした、その要求が二回、十七日に四閣僚、十九日に五閣僚の更迭を要求をした。それに対しまして、その回答期限であります昨日の午後六時、この回答期限に対しましてタニン首相が期限の延長を求めたという経過がありまして、その回答期限におきまして実力をもって政権を掌握したと、こういうことが実相のようでございます。そしてわが国等に対します影響といたしまして、その布告の一号にも国連と協力をする、それから権利を保全し、各国との間にすでに取り交わした条約あるいは合意を遵守するというようなことも言っておりまして、わが国との外交上の従来からの方針には影響はないだろうというのが私どもの見方でございます。
  334. 福間知之

    ○福間知之君 これは総理、東南アジアにかかわらず、世界のある地域には政情が非常に不安定であるという国が存在をしております。そういう国々の状況を見きわめながら、いわば経済的にも政治的にも外交を進めていくという必要から、日本も大変にそういう点では神経も使わなきゃいかぬし、情勢も的確につかまなきゃいかぬと、こういうことはあろうと思うのですけれども、特にいまのタイの場合、先般総理はASEANの諸国を回られて、さらに経済援助についても約束をしてこられたわけであります。私たちは、わが国の経済援助は相手方の国民の生活改善、経済の発展に寄与するというたてまえでやるものだと承知をしておりまするから、政権はそういう意味では一つの道具にすぎないかもしれません。しかし、その国、その民族、その社会はやはりその国の政治の安定によって初めて何事も円滑に生々発展を遂げていくものと信ずるわけであります。そういう意味では、貴重なわが国の財源を糧とした援助でございますので、やはりこういう再三にわたってクーデターなどに見られる政情不安定という姿が起こってくる場合に、国民はやはり疑惑を持つと思うのでありまして、あるいは疑惑というと語弊がありますが、疑問を持つと思うのでありまして、そういう点で相手の国が、いま外相がおっしゃったように、国連の関係も変わらない、各国との協定とか約束事も変わらないと、こう言ってはおりますけれども、わが方としては、それで全く無定見に認めていっていいものなのかどうなのか、そういうことに関しての所信を伺いたいと思います。
  335. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) タイ国に限らず、いろいろわが国は東南アジアの国々と深い接触があるわけであります。その国々とのつき合いに当たりましては、その国々の政情はどうかというようなことは十分これは検討しておつき合いをいたしておるわけであります。タイのタニン首相は、私のASEAN訪問後わが国に来訪された。その前後に、今度のクーデターの中心になったククリアンサック将軍ですね、この人もわが国に来ておる。私がASEANを訪問のころは、ちょうど展望がフィフティー・フィフティーといいますか、九月まででしょう、十月まででしょうというような政権についての見方なんかが流布もされておる、こういうような時期でございましたが、その後、そういうルーマーというか、いろいろな外交通の人の展望、そのフィフティー・フィフティーの、フィフティーの九月、十月までの政権であるという展望が当たってしまったわけでありますがね。福間さんのいまお話しのようなこと、十分気をつけながら対処しております。  それから、今度のタイの問題は、わが国とタイとの関係ですね、これは私はそう影響のある問題ではない、こういうふうに見ております。
  336. 福間知之

    ○福間知之君 それに関連しまして、これ全く思いつきと言えば不都合なんですけれども、私も海外諸国を何度か歩いてまいりましたけれども、概して発展途上国と申しますか、国の数でもかなり多い、戦後の独立主権国というようなものは経済的には発展がいまだしというのが多いわけですから、開発途上国に対して先進国と言われる工業諸国あるいは国連、それぞれ二国間であろうと、国連を通じた国際的なルートであろうと、鋭意経済的な御協力をしてきているわけですけれども、それがどうもさながら現地においては協力をさせていただく側の意に反している面がかなり多い。だから、かつて国連の開発五カ年計画とかいうのが第一次、二次とありましたけれども、それぞれなかなか成果を、効果を上げ得ないままにきている。まことにこれは遺憾のきわみなんでありまして、まあ、よそ様の国の内情に指を突っ込んでかき回すというわけにはまいりませんけれども、御協力をする側としては、これは私は日本だけじゃないと思うのであります、アメリカにしてもそうでしょうし、ドイツにしてもそうだと思うのですけれども、国民感情としてはその御協力した効果が果たして上がっているのかどうなのかといういわばフォローを何らかの形でできないものなのか。これは一対一でできなければ、国際的な国連という機関においてそういうことがやっぱり行われなければ、人類の進歩にとってそれこそ総理、無意味だと思うのです。具体的な名前を挙げることは差し控えまするけれども、東南アジアでもタイの近国にあるわけであります。そういう点でいわゆるフォローですね、御協力を提供した場合のフォローをどういう形でこれはなすべきなのか、そんな必要はないのか、なすとすればそれは国連なり何なりの機関でやるべきなのか、こういう点についての御所見はいかがですか。
  337. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国といたしまして、経済協力をしたその相手国が、その経済協力を受け入れた結果、それをどういうふうに活用していくかというようなことは、これはわが国としてフォローいたしておるわけであります。これは外務省が中心になってやっております。結局、私は経済協力というものが、これが本当に実を結ぶというためには、経済協力という経済、つまり物と金だ、そういう関係だけでは本当にいい効果は出てこないと思うのですよ。やっぱり私は基本といたしまして、その相手国とわが日本の国、その双方の間に本当に理解と協調という関係が打ち立てられないと、これはせっかく経済協力をしたが、その効果、意義、そういうものは私は出ることが非常に薄いと、こういうふうに思うので、なるべく私は、どこの国ともそうでありますが、親身なつき合い、そういう考え方をこれは捨てちゃならぬと思うのです。またそれを本当に精力的にその考え方を推し進めて、その上に立って経済協力ということになれば、私はもうわが国とその相手国を結びつける非常に大きな糧になってくるんじゃないか、そういう考え方に基づきまして今後経済協力政策を進めていきたいと、こういうふうに考えます。
  338. 福間知之

    ○福間知之君 総理のいまのお話は一〇〇%私も了解します。私、申し上げているのは実はそういうことで、心と心の触れ合いを前提にしたそのお話はもうよくわかります。その上での経済協力、これはよくわかる。提供したわれわれの援助協力が、わが国の経済なり何なりにプラスになるようにというそういう角度の話ではなくて、実は、わが国が提供した金員でもって発電所が何件建つということは必ずしもはかり切れないでしょう。あるいは国民生活が何%改善されたなどははかり知れないでしょう。よそ様の御協力もあわせてその国が活用しているわけですから、わが国の提供した協力はその一部にしかすぎないわけです。そういうことではありますが、しかし、その国のやはり経済国民生活の進展ということが何らかの形でわれわれに理解されるような、そういうフォローが実は私はやっぱり必要なんじゃないだろうか。総理もいつでも言うように、心と心の触れ合い、あるいはまたその上に立った効果的な経済協力ということ、そのことが結果として日本との貿易関係なり、あるいは友情なりを深め高めていくということになるわけですから、提供したものが、率直に言って、いわゆる国民のすみずみにまで影響しないような経済的な活用の仕方であれば、私は問題があるということを申し上げている。国連の開発計画がいかなかった理由は、私はどうもそこにあると、そういうふうに見ておるわけでございますので、その点、もう御答弁結構でございますけれども、申し上げておきたいと思うわけであります。  次に、円高の問題あるいはまた経済の問題、構造不況の問題など四、五点にわたって御質問したいと思います。  まず、円高に関する問題でございますが、これは総理、経企長官お尋ねしたいんですけれども、いかがですか、昨日は小康を得ているようでございますが、年初来のかなりのレートアップに対しまして、その背景、理由というもの、総理は、いまいろいろとこの当委員会でもお話が出ておりましたけれども、整理して一遍お聞きをしたいと思います。
  339. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 円がこの三週間の間に五・五%急騰したわけであります。その円の急騰というのは、結局円・ドルの需給関係、これに基づくわけでありますが、ドル売り円買いというものが起こったということでございます。その背景は、これはやっぱり一つは、私は日本国際収支にあると思うのです。これが大幅な黒字になるということがIMFの総会等において流布され、事実そういう傾向にわが日本国際収支の動きというものがあったわけでありますから、クローズアップされた場はIMFの会議かと思います。  それから、もう一つの理由はドルであります。アメリカ側にある。アメリカの国際収支がこれが予想をかなり上回って悪いと、こういうことでこれはドル安と、こういうことであります。ドル安と円高、これが日本の場合は総合されてあの為替相場の円高ということになってきたと、こういうふうに見ております。
  340. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 総理お答えになったとおりだと思います。
  341. 福間知之

    ○福間知之君 少し角度を変えてお聞きしたいのですけれども、先日、七日付でイギリスのフィナンシャル・タイムズかおおむね次のようなことを記事にしておるわけであります。要するに七〇年から七三年の間に円が世界的な通貨の平均値に対して一〇%以上も上昇した。そしてまた、石油価格の高騰で日本経済はひどい打撃を受けた。しかし、いま円はその当時失った地盤を回復をしたということにすぎないのではないだろうか。そういう文言の底にある一つの見方、これは総理、どういうふうに感じられますか。
  342. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、そういう一面があるような感じもするんです。つまりスミソニアンレートに比べますと、円の今日の上昇、円価値の上昇率はこれが二〇・七%、これに比べましてスイスフランのごときは七〇%上がっているんです。それからマルクは四一%上がっておる、こういう状態です。わが日本は、スミソニアンレートに比べますと非常にその上昇率が低いわけでございますが、だから、いま福間さんがフィナンシャル・タイムズの記事を引用されまして話されたような見方もあると思いますが、今回のこの短期間、三週間において五%上昇したと。さっき五・五%と申し上げましたが、今日は五%です、少し円が立ち直ってきましたので。五%上昇ということは、私はこれはアメリカの国際収支の問題、日本国際収支の問題、これが重なってこういう結果になってきたと、こういうふうに見ております。
  343. 福間知之

    ○福間知之君 いま総理かおっしゃったように、マルクあるいはスイスフランの上がり方はかなり大きいという認識がおありのようでございますが、だからこそ先般のIMF総会、大蔵大臣も行ってこられたわけでありますけれども、イギリスのヒーリー蔵相あたりの厳しい批判、それに対してドイツのアペル蔵相ですかは、かなり明確に物を言っているようですが、日本がやはりドイツのようには言えないということになるんでしょう。結局、アペル蔵相あたりは、石油危機を克服して物価安定を実現し国際収支問題を解決した国がなぜ非難されるんだと、やや開き直ったようなことを言ったそうでありますが、わが国の坊大蔵大臣はそこまでは明確に態度をされなかったようであります。このことは私は、日銀総裁をきょうはお招きしておりませんけれども、今後といえども日銀の必要な適時適切な介入ということはあり得ると想像しますし、それはそれとしても、国際的にドイツのような明確な姿勢というものがやっぱりとれないということは、いろんなアメリカその他との政治関係もありましょうが、ドルが相対的にこれは安いと、こういう認識が総理の頭の中におありではないのか、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  344. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、世界経済が平常の状態であれば、これはわが日本の今日のこの国際収支というものはすばらしいことである、こういうふうに思うんです。ただ、いま世界が非常な混乱状態にある。その混乱のまあ一つのというか、非常に大きな理由は、赤字国、黒字国というのが世界で二分されるようなことになってきました。その赤字国の経済運営、非常にこれはむずかしい状態になっておる。まあ黒子国があるから赤字国が出てき、赤字国があるものだから黒字国がこう出てくるような状態ですが、やっぱり赤字、黒字の調整問題というのがいま世界政治の、特に経済面では大きな問題になっておる。そういう中で、とにかくわが日本は営々として努力してこれだけの黒字を出すようなことになったのですが、まあそれは私は胸を張ってもいい一面はあると思いまするけれども、いま世界の経済が混乱していると、そういう状態の中でこれだけの黒字を出すということは出し過ぎじゃないかなあと、こういうふうに考え、諸外国に対しましてもわが日本は黒字幅の縮小のために努力するということをPRというか宣言をし、これをいま実行に移っておると、こういう段階なんで、ドイツでも同じような立場にあるのではないかと、こういうふうに思いますが、まあその立場立場でいろいろ言うことは日本とドイツは違いまするけれども、ドイツが非常に黒字を累積する、それでほかの国が赤字で困るというようなことになれば、これは世界がますます混乱いたしまして、それもやがてドイツにはね返ってくる問題なんですから、ドイツといたしましても私はこの黒字問題につきましては関心を持つべき立場にあると、こういうふうに考えます。
  345. 福間知之

    ○福間知之君 大蔵大臣、ことしになってからの円高の推移というものを概略説明を願いたいと思います。
  346. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) お答え申し上げます。  東京市場の円・ドル相場は、昨年十二月ごろから円高傾向をたどっておりますが、四月中旬には二百七十一円台となったが、その後、公定歩合の引き下げもあって、五月には二百七十七円程度で推移をいたしました。六月中旬から再び円高に向かいまして、七月上旬には一時は二百六十三円台となったが、八月から九月にかけて米国金利の上昇等もありまして若干円安となり、二百六十六円ないし七円程度で安定的に推移いたしました。しかし、九月末からわが国の堅調な国際収支を反映して円高の度合いが強くなりまして、一時は二百五十二円程度となりましたが、現在は二百五十四円程度となっております。これは年初に比べまして一五%弱の切り上げとなっております。
  347. 福間知之

    ○福間知之君 これはある雑誌に載っていることなんですが、私はまだ調べる間がありませんのであれなんですけれども、日本はいわゆる石油の輸入が大変多い国でございますので、石油の世界的な需給動向というものとの関連で、円高ということに連なる傾向があるのかないのか。これは一つの見方として確かに私は考えればありそうな気もするわけであります。御承知のとおり、日本石油は購入代金はドル決済する、ドル支払いするわけでありまするし、一番ドル支払いの多い商品が石油だと聞いておりまするから、そういう点で、しかも為替管理が行き届いている国ですから、必要なドルを調達する場合に円高になってしまうのじゃないのかというふうなことが考えられるわけでありますけれども、これは一遍調べてみるとおもしろいのじゃないかと思うのです。単に国際収支たけてはなくて——国際収支はもちろん基本です、先ほどのお話しのように。だけれども、日本貿易構造あるいはまた支払いの条件等との関係というふうなものも短期的には影響があるのじゃないんだろうかと、こういうふうに思うわけであります。これはまあこの点でとどめておきたいと思います。  それから円高による差益ですね、特に先日の報道では、日本の国全体で今回の円高で千百七十億ですかぐらいの差益が出ると、こういうふうなことが報道されておりましたが、私、通産省にちょっと要請をしておったのですが、石油企業などの為替差益の実情というものを教えていただきたいと思います。
  348. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えいたします。  今回の円高の差益の実態でありまするが、これはまあ各業態によって異なっておりまするが、いま先生のおっしゃいました石油企業の経常収支に計上されております為替の差益の総計は、五十一年度全体で一千億円をやや上回る程度でございまするが、五十二年の上期に至って、いまだ企業の決算の集計が終わっておりませんために詳細は不明でございますが、五十一年度の下期を上回るものと予想いたしておりますが、なお、五十二年度の上期の決算では経常収支が赤字に転落する見通しの企業数は増加する見通しでございます。  なお、詳細は、エネルギー庁長官が参っておりますから、石油企業に対しまする詳細なデータは御報告いたします。
  349. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 石油につきましては、ただいま大臣が申し上げましたように、決算ベースでは五十一年度までしか出ておらないわけでございますが、五十二年度でどの程度石油企業におきまして為替メリットが出てくるかということは、今後のレートの推移等によりまして変動してまいるわけでございますが、石油の場合は一円の円高につきましてキロリッター当たり八十五円の為替メリットが出てまいります。五十二年度を通じて二十円程度の円高で推移するということを前提といたしますと、かれこれ四千九百億、五千億円弱の為替メリットが出てくるであろうと思うわけでございます。一方、石油の場合には、御承知のように、ことしの一月と七月、二度にわたりましてOPECにおきまして原油価格の引き上げが行われております。まあこういった関係もございますので、一概に為替の差益だけで石油企業の経理内容というものを判断するわけにまいらない。先ほど大臣も申し上げましたように、ことしの上期においてむしろ赤字決算を出す企業がふえてくるのではなかろうか。民族系におきまして、ことしの三月末に七百億円の繰越損を残しておるわけでございます。むしろこれは消えるどころか、増加するのではなかろうかというふうに予測いたしておるわけでございます。
  350. 福間知之

    ○福間知之君 総理、いまお聞きのように、この際は大手企業総じて今年度五千億近くの差益が出ると予想されると、こういうわけであります。もちろん、いまエネルギー庁長官もおっしゃったように、そう調子のいいときばかりでもないことは言わずもがなでございますが、それにしても、この大きな差益というものを石油企業だけに一任していいものなのかどうかであります。私はこれを一遍聞きたいと思っていたのです。かねがね問題になりながら、一向解決策は出ておりません。
  351. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 石油につきましては、これは特殊な事情があるんです。つまり、石油の価格が、原油の輸入価格が浮動すると、こういう事情があるわけでありまして、ことしについて言いますと、いまエネルギー庁長官が申し上げましたように、二回値上げが行われている。それと今度の為替差益、これとの相殺関係、まあエネルギー庁ではかなり安定——為替の日本円の強い基調か続いてもまあとんとんぐらい、原油輸入の価格の引き上げによるところの損失、それから為替が強くなったそれによる利益、それとの相殺関係、これはとんとんぐらいじゃないかなと言っておりまするけれども、現実に一体どういうふうになってくるかということは、為替がこれからどういうふうになるかということを見ないと、これははっきりしたことは申し上げられない。ほかの事情がちっとも変わらない、為替だけの関係だ、こういうようなことでありますれば福間君のおっしゃるような問題は提起されなけりゃならぬ問題である、こういうふうに考えております。
  352. 福間知之

    ○福間知之君 いや、私は、先ほど総理お答えになったし、私も全く同感なんですが、これだけの円高になったということは、国民全体として一面悲しむべきかもしらぬけれども、それ以上に喜ぶべき面があるわけでございますので、そういう前提でいまお聞きしたわけです。みんなの力でここまで来たという意味合いであります。  ところで、長官の方に、いま総理もおっしゃいましたし、長官もおっしゃったように、すぐにそういうOPECの値上げというときのことも考えなければいかぬと、こういう話になるんですけれども、その点のいわゆる緩衝剤としてメジャー系から日本石油会社は買っておるわけですから、しかもその手形サイトは長いときはもう三カ月以上もあると聞いているんですけれども、そういう中である程度吸収はされる仕組みになっているんじゃないんですか。
  353. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) ちょっと私、御質問の趣旨をとりかねておるわけでございますが、いわゆる私たち為替差益と単純に言わずに為替メリットと言っておるわけでございますが、これは一つには、ここまで円高になってまいりますと、為替差益と申し上げましても二つの線が出てくるのじゃないか。一つは、円高基調によるところの原油価格が安くなってきておるという意味での為替上の利益があるかと思います。一方、円高の基調の中でありまして、ただいま先生御指摘になりましたように、三カ月ないし四カ月の輸入ユーザンスというのがございます。それから中東から八割方原油を運んでまいるわけでございますから、この輸送に要する期間が二十日ぐらいかかるわけでございます。したがいまして、大体債務が発生してから支払いが立つまでに四カ月ないし五カ月のタイムラグがあるわけでございます。したがいまして、円高基調の過程におきましても、支払い時点と債務の発生した時点で、円高ではありながら、むしろ差益と申しますか差損が発生するような場合もあるということも言えるんじゃなかろうかと思います。それから一部石油企業におきましては、為替につきまして先物予約をやっております。現在時点で大体取引高の一五%ぐらいは為替につきまして先物予約をやっておる。ということは、損もないかわりに益もないと申しますか、先物予約しているものについては、いわゆる為替上のメリットというものは経理的には出てこない、こういったのが実情ではなかろうかと思うわけでございます。
  354. 福間知之

    ○福間知之君 これはまた石油連盟の会長さんあたりを呼んで適当な時期に適当な場で審議してみたらいいと思いますので、この程度にしておきたいと思いますが、国民はやはりそういう点について、最近は情報が発達していますから、いろいろと不思議に思う面があるということを、やっぱり政治は常識にこたえていかなけりゃならぬというふうにも思いまして、私この問題をお聞きをしたわけであります。  次に、今後のこの対策としまして、すでに政府も一定の緊急輸入の方針をとるというふうなことが行われましたけれども、なかなかそれだけでもいかない、いろいろ工夫をしようというので、きのう、うちの対馬議員のお話に対しまして、セメントや肥料、余ったものを商品提供しよう、こういうふうなことが考えられているようでございますけれども、それは必ずしも私、ドル減らしになるとは思わないんですが、それよりもいま一つ考え方として、外債の発行受け入れということがかなり顕著になってきているのじゃないかと思いますが、大蔵大臣、現状はいかがですか。
  355. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) わが国の金利水準の低下ということを契機といたしまして、円建て債、円建て外債ですね、これの発行希望者がどんどんと出てきてまいっておりますが、当局といたしましては、それに対しまして、できるだけこれを、日本国内市場の動向もこれ見てまいらねばなりませんけれども、事情の許す限りはこれを柔軟的に考えまして、これを敏活にひとつやっていこうというような態度をとっておりますが、今日までの実績等につきましては、もし必要でありますれば政府委員からお答えさせます。
  356. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 円建て債の発行の実績につきまして御報告いたしますが、五十年度には公募債三銘柄で三百五十億円でございました。五十一年度に入りまして六銘柄で六百二十億円になったのでございます。今年度は九月末現在で公募債がすでに六銘柄、金額で千二十億円、このほかに私募債が二百億円ございますので、合わせますと八銘柄、千二百二十億円ということになっております。  なお、今後の見通しでございますが、十月、十一月、十二月、三カ月残っておりますが、それぞれ各月三銘柄程度が予定されておりますので、それを合わせますと五十二年度は非常に大きな金額になるという予想でございます。
  357. 福間知之

    ○福間知之君 いまのお話のように、私は大変結構だと思うんです。さらにこれは拡充をしていくように対処をされることが望ましい。特に開発途上国等に対してこれは非常に有効な手だてになるんじゃないか、こういうふうに思っていますので、むしろ宣伝をしてですな、総理、なかなか加工製品を買えない国でございますので、せめてこういうドルのあるときにお金でもってひとつ御協力をしていく、こういうことが必要かと思うわけであります。これは要望として申し上げておきたいと思います。  次に、円高の問題とも関連し、あるいは後ほどお聞きしたいと思っていることに関連する、産業構造の問題とも関連するんですけれども、いま不況の中で、しかも円高という圧力が一部の業種を除いては非常に輸出を困難にしておるという現状がございます。特に私申し上げたい、そしてお聞きをしたいのは、いま政府が出している十二の構造不況業種のみならず、基幹産業一つでもあり大事な部門でありました重電機部門が大変いま困っておるわけでございます。実はここ二、三年来、専業のメーカーの場合は事実上希望退職という人員整理が続いてまいりました。ことしは工場の一部売却などが出ておるんです、きわめて最近の話でございますけれども。そういう実態について通産省はどのようにとらえておられますか。
  358. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えいたします。  重電業界の全体の生産額は、先生よく御承知のとおりに、五十年の前年比で八〇%の水準まで大きく落ち込んでおったのでありますが、その後本年になりましてから一一七%程度に回復いたしました。しかし、重電業界の内部について見ますと、営業品目の構成によりまして業況、業績に非常に跛行性が見られております。たとえて申しますと、一般工場設備投資に依存いたしておりまする標準モーター等の比率の大きいメーカーにつきましては、生産の回復が緩やかなものにとどまっておるような次第でありますが、重電業界はその営業品目がきわめて広範囲にわたっておりますので一般的に不況業種とみなすことはできないまでも、個別の品目の業況に応じまして有効な不況対策を講じてまいりますためには、きめの細かい業況の把握がなくちゃならない、かように考えております。十分実態の把握に努めまして、今後ともにきめの細かい対策を講じてまいりたい、かように考えております。
  359. 福間知之

    ○福間知之君 通産大臣、最近伝、えられるところによりますと、機電法が今年度末までで切れるんですが、新しい装いでこの機電法の延長をやろうという方針があるやに聞くんですが、通産省としてはいかがですか。
  360. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 政府委員からお答えいたします。
  361. 森山信吾

    政府委員(森山信吾君) ただいま御質問のございました機電法でございますが、先生御指摘のとおり五十三年三月末をもちまして失効することとなっております。したがいまして、私どもといたしましては、機電法にかかわるべきものを検討すべく現在産業構造審議会におきまして検討を諮問をしておる段階でございます。
  362. 福間知之

    ○福間知之君 その場合の前提として、現在の重電機生産水準というもの、あるいは企業の数というものについては、通産省としては妥当性についてどういう判断をされていますか。
  363. 森山信吾

    政府委員(森山信吾君) 先ほど大臣から答弁ございましたように、重電業界全体といたしますと、マクロで見まして過去の最高値にやや近づいておるという状況でございますけれども、特殊な業種特に汎用モーター関係につきましては、先生御承知のとおり過去の最高水準の現在六割程度の生産しか実施していないわけでございますので、そういう現実を踏まえまして対策を検討したいと、こういうふうに考えております。
  364. 福間知之

    ○福間知之君 その対策はどうですか。
  365. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 福間君、もう一遍質問してください。
  366. 福間知之

    ○福間知之君 その対策をお聞きしているわけです。
  367. 森山信吾

    政府委員(森山信吾君) その対策につきましては、先ほどお答えいたしましたとおり、現在産業構造審議会におきまして諮問をしておる段階でございます。私どもといたしましては、過去のこれまでの機電法の精神がいわゆる産業の合理化、高度化という観点で法律の運営をしているわけでございますので、引き続きましてそういう産業の高度化、合理化という観点から対策考えていくかどうかにつきまして検討をすると、こういうことでございます。
  368. 福間知之

    ○福間知之君 これはまた別の機会にします。  労働大臣、そこでいろいろと総合経済対策の中での雇用対策についてお話も承りましたけれども、いま申したような部門も実際には困っておるわけです。そして、金を借りようと思っても、つなぎのための金を借りようと思ってもなかなか銀行は人減らしを前提にしなければ金を貸さないというふうな傾向にあるわけであります。かなりの規模の企業なんですよ、いわゆる中小零細とは言えない企業なんです。そこで、労働者は困っておるというのが実情として訴えられてきているわけですけれども、労働省としての御所見を伺いたい。
  369. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) ただいま御指摘のような話をよく聞くわけであります。御指摘のような産業部門に限らずよく聞くわけであります。しかし、政府が今回とりました補正予算あるいは公定歩合の引き下げというのは、これは景気の回復と同時に雇用指標の改善を目指していることは言うまでもないわけでございますので、個々の証拠をとらえるということはなかなかわれわれの方の役所ではできることでございませんが、近く銀行協会と会談の機会を持ちまして、公定歩合の引き下げ、あるいは今次補正予算の目的は一つには雇用の改善にある旨を強く言って、そして雇用の改善という目的に沿わない行為を厳に慎んでもらうように申し入れるつもりでございます。
  370. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) ただいまの御質問に対しまして、大蔵省としてお答えを申し上げます。  金融機関なり銀行がその相手の貸出先に対しまして、自分の、金融機関の債権保全のためにも、また預金者保護のためにも貸出先の事業がうまく円滑にいってもらうということは、これは金融機関としての非常に大事なことでございまして、それで絶えずそれにつきましては関心を持っておる。先ほど福間さんおっしゃられました、国と国との間にもいろいろそういうことが考えられると。自分の貸したり提供したりした金がむだなく効果を発揮してもらいたいということを考えるわけでございます。そういうようなことで関心を持つことは私は当然のことだと思いますけれども、しかしながら、相手方の内情に立ち入り過ぎまして、そして雇用の関係などに対しましてくちばしを出すということは、これはよろしくないことであるということで、そういうことがありますれば、大蔵省といたしましても、その金融機関に対しまして、さようなことのないようにこれは指導をしていきたいと、かように考えております。ただ、先ほど労働大臣からもお話がございましたけれども、今度の金利水準の引き下げということは、そもそも雇用水準を保持し、雇用水準を拡大していくというために非常にそこに力を入れておるところでございまするから、そのときに大蔵省といたしましては全国銀行の協会長だとか、あるいは地方の銀行の団体の代表者に対しましては、今度の金利水準の引き下げというものの目的の一番大きなところはそこにあるんだということはかねてよくこれを申し添えておるわけでございますが、今後ともこの点につきましては大いに注意をしてまいりたいと、かように考えます。
  371. 福間知之

    ○福間知之君 口では、おっしゃることはわれわれもわかるのですけれども、実際はなかなかそういう現場に聞くと円滑にはいってないようでありまして、もちろんそれは一つの歴史のある企業、プライドのある地域産業として、そう理屈抜きに銀行に頭を下げてばかりもおれないという事情はありますけれども、しかし、結果として困るのはそこで働く全体が困るわけですから、また地場産業であれば地域が困るわけですから、そういうことが気がねなしに、困っておるときは気がねなしに援助の手が差し伸べられるような、そういう指導を私政府に強く要請をしたいと思います。  そこで労働大臣、私時間がありませんから早口で申しますが、いま全体としてやはり雇用は過剰であると思うのです。しかも今度の総合経済対策の雇用対策で来年大臣がおっしゃるような水準までいくのかどうかはなはだ疑問です。というのは、やはり高度成長の時期に五年ないし十年を展望して企業は人を抱え込んでいるという向きが多分にございます。したがって、このいまの低成長で必要でない人を人員整理をするわけにもなかなかいかないということで、かなり抱え込んでいる。さらに低成長の展望はまさに低成長でありまするから、まさに円高による圧力だとかまた国内における競争の激化とか、企業にとってはまさに断崖絶壁に立たされるということになって、実は人をもっと減らさなきゃならぬという企業がたくさん出てくるんじゃないかと思うのです。そういう意味で、私は今度野党が提案していますようなこういう臨時の離職者対策措置を、当面のつなぎとしてはぜひひとつ労働省でも好意を持って、ひとつこいつを実現するように努力をしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  372. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 過剰雇用の状態及び見通しでございますが、四十九年から五十年にかけましては、鉱工業生産指数もあるいは設備の稼働率も一一%ないし一二%近く落ちたわけです。しかしながら、雇用指標は六%弱の減であったわけです。ところが、五十一年と四十九年と比べますと、やや回復をいたしまして、四十九年に比べて一・一%程度鉱工業生産指数が伸びた。ところか一方、稼働指数というのは約八%弱四十九年と五十一年の間に落差があるわけです。したがって、全体として考えますと、過剰雇用感というものはかなり五十年度に比べると減ってきたと、こう一応数字の上からは考えられる。  ただ、いわゆる構造不況業種の中にそういう状態のものが深刻にあることは、これは否定できないわけであります。ここに、いわゆる構造不況業種と言われるところにどれだけの雇用があるかというと、大体三百五、六十万、そのうちで流通部門が百十万くらいございますから、それを引きますと二百四、五十万というところがいわゆる対象でなかろうかと思うのであります。その中に、一体どれぐらいが過剰であるかという実態をつかむヒヤリングをいま進行中でございますが、労使の関係等を配慮されまして、なかなか正直におっしゃってくださらないので、そのつかみ方に非常に苦慮をいたしておるところであります。  しかしもう一つは、就業人口自体は、五十年不況の、五十年のあの中でも六十八万人くらいふえておる。それから本年は上半期で六十二万くらいふえておるわけであります。ただし、それは製造業で減って第三次部門でふえておるわけであります。だから、製造業はまだ相当過剰雇用を、特に構造不況では抱えておる。これが一遍に整理されるのではなくて、早く対策ができて、その対策が早く実行に移されるならいいんですが、いま業界として意見がまとまってきているのは平電炉とそれから繊維くらいのものでありまして、あとまだまとまっていない。したがって、一遍にそれが出てくるというようなことは考えられないわけであります。徐々にそういう傾向が生じてくることは否定をいたしませんけれども、一度にどっとというふうなぐあいにはなるまい。これに対しましては、まず第一に失業という状態にはめ込まないようにする。こちらの方から新しい職場の方へ移るとき移りやすいようにする。このためには、第一にはそこに働いている間に職業訓練をしてもらう。次には、その構造不況から出る人を受け入れてくれる。企業に対して奨励措置をとる。どうしても離職した場合には、保険金をお払いすると同時に、あらかじめ雇用先を見つけながら訓練を続行する、こういうような方法でいわゆる雇用安定資金制度を運用していくつもりでございます。現在の金額で四百七十七億円、私どもはいま申しましたような情勢の中で、本年度はこれで十分対処できると考えておるわけであります。  したがって、新しい立法がなくても対応できると考えているわけでございますが、労働四団体を初め各党からも出、また自由民主党からも立案されていることは承知いたしております。その中には無理なものもございますが、しかし同時に、私どもだけではやれぬことを応援してもらってやってもらうようなこともないわけではありません。無理なこともございます。それから同時に、現在の状態の中で十分対処し得られるものもたくさんあるわけでございます。したがって、与野党等の意見がまとまりましたならば、その実行、執行に当たりましてはむろん最善の努力をするつもりでございます。
  373. 福間知之

    ○福間知之君 通産大臣にお伺いしたいんですが、いま労働大臣の話しにもございましたが、第三次産業部門に就業人口がふえていく、これは従来からそうでございますが、いまの企業の中でもそうである、こういうことでございます。百六十万からある流通部門の中の小売店、小売業、これは人を一人抱えておるところもございましょうし、全く家族だけでやっているところがたくさんあると思うのですが、そういう流通部門、これは流通機構の近代化というところから見ても問題が私はあるとにらんでいるのですけれども、全く週に一日も休まないでそういう御商売をなさるということは、日本的な勤勉な一つの姿かもしれないけれども、時代の発展とともにそれは改めていかなきゃならぬ問題でもあるわけでして、現状小売部門の就業実態というものはいかがか。  労働大臣にもちょっとついでに、週休二日とは言いませんが、一日は必ず休むと、家族を含めて。そういう立法化をする必要があるのじゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  374. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいま御指摘の商店街等におきましては、週一回程度の休日を実施をいたしておるところが多いと聞いておりますが、御質問の趣旨は理解できますけれども、小売業につきましては一律に週休一日を法制化することにつきましては、消費者の利便でありますとか、あるいはまた商習慣にもかかわる問題でございまして、この点は御趣旨のほどをよくかみ分けまして慎重に処理してまいりたい。また労働省の方ともいろいろと御相談をして、今後とも処理いたしたい、かように考えております。
  375. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 商店の週休一日の実施というのは、実は初めのころは、私が初めて労働省をお預かりした二十年くらい前は、ほとんど不可能に近いほど困難でございました。横山町、馬喰町等にかなり強い行政指導をいたしまして週休制を実施さしたわけでございます。現在の状態ですと、昭和四十一年にはその週休一日を実施していない商店が四五%もございました。ところが、現在は九・六%程度に改善を見ておるわけであります。それから基準法ではもう明確に四十八時間、それから週休一日、一カ月四日ということは現在規定してございます。なおその九・六もなくするように行政指導を強めたいと存じます。
  376. 福間知之

    ○福間知之君 時間が迫ってまいりました。  科学技術庁に一つお聞きをしたいと思うんですが、今日の重化学工業産業の発展をもたらした背景には、いわゆる新しい科学技術の進展というものがあずかって力があったわけですけれども、いま世界の工業諸国と比較しまして、わが国の将来産業にわたる展望に立ったいわば科学技術の水準というものについて、質の問題も含めてどのように判断されますか。
  377. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) わが国のいわゆる科学技術開発力と申しますか、そうしたものの算定にはいろいろな方法があろうかと思いますが、各部門にわたりましては世界の水準をぬきんでるものあり、また相当なギャップのあるものもあろうと、こういうふうに思います。  そこで、われわれといたしましては、一応研究費が今日各国においてどれだけ計上されておるか、たとえばアメリカは十兆円、ソ連が六兆、日本が二兆六千億、西ドイツがほぼ同額、しかし、米ソは御承知のとおり軍需産業というものもございますから、そうしたものと、さらに国土、人口等々を勘案いたしますと、わが国はかなりの水準にあるのではないかとも考えられます。また、技術者の数等々も考えますと、日本が二十六万、そうしてアメリカが倍の五十三万、さらに西ドイツは十三万、こういうふうなことも一つの基準ではなかろうかと存じます。あるいは、そうした結果、われわれがどれだけのものを技術として輸出をしておるかと、このことも非常に重大なエレメントではないだろうかと、こういうふうに思いまして、そうしたことをずっと合わせまして、やはり何と申し上げましてもアメリカが世界の最高峰でございますから、アメリカを一〇〇といたした場合に、一応の試算ではございますが、西ドイツ三七、日本が二七、これぐらいのところではないだろうかと、こういうふうに考えております。しかし、科学技術の振興は今後もさらに国民のために大いにやっていかなくちゃならないと心得ております。
  378. 福間知之

    ○福間知之君 大分質問の内容をはしょらなきゃなりませんが、総理、いま科学技術庁にお尋ねしたのも実はこういうことなんです。結局、高度成長を支えてきた日本の重化学産業というものが、そのスケールメリットにおいても一つの壁が国際的な関係からも出てきてまいっています。あるいは技術的な水準もかなりのところまできている。新しい抜本的な革命的な技術開発というようなものはそういままでのようなわけにはいかなくなってきたということであります。そうすると、いままでの技術を応用していくという方向で、しかもそれはある程度国全体としての一つの指向性、方向性を持ちながらいわゆる文化に寄与していかなきゃいかぬというように思うわけです。各産業、各企業まちまちのままでやっていると、いい面もありますが、これからはそうはいかないだろうと、こういうような私は感じが実はしておるわけです。むずかしいことは申しませんけれども、感じがしておるわけです。したがって、構造不況対策とあわせまして、実はこれからの日本産業構造というものは、先ほども流通機構の問題を話題に供しましたけれども、含めまして高付加価値の商品をつくらなきゃいけないんだとか、省資源のあるいはまた産業構造にしなきゃいかぬとか言われながらも、具体的なリーダーシップというものはやはりとられていないような気がするわけでありまして、そういう点をお聞きしたい。  最後に、総理は、総合経済対策によって、来年三月をめどに予定の成長、物価、雇用など、達成する御自信がおありかどうか、達成できなかった場合には政治責任はどうなるのか、確とお承りしたいと思います。
  379. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) こういう非常に変化の時代でありますから、その変化への対応ですね、これは産業界にありましては、どうしても構造的ないろいろな側面の変化というものが求められている、こういうふうに思います。産業構造審議会、こういうところで篤とその問題は検討いたします。  それからそういう大きな長い目の問題もありますが、当面の課題は何だというと、やっぱりそういう長期的な問題、これを解決するわけでありまするけれども、さあ差し迫って問題は、これは今日のこの経済の不安定な状態を早く安定させなきゃならぬ、こういう問題であり、その安定化はやっぱりある程度経済の動きの底上げをしなきゃならぬというので、いま補正予算案の御審議なんかもお願いをいたしておると、こういうことであり、また、日本銀行では公定歩合の引き下げをやるというようなことになったわけであります。今度の措置で大体六・七%成長、これは実現すると私は信じております。また、物価、これはかなり安定の基調に向かっておると、このようにこれも私は確信いたしております。  それから何とかいたしまして黒字問題これが傾向か変わってきたなあというような状態に早く持っていきたいと、こういうふうに思っておりますが、この黒字問題だけはこれは時間がかかります。そこで、それを時間のかかるのを待っておる余裕がございませんので、緊急輸入、これを積極的にやってみると、このように考えておるわけであります。全力を尽くして国民に対して責任を果たしたいと、かような決意でございます。
  380. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上をもちまして福間君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  381. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、内藤功君の質疑を行います。内藤君。
  382. 内藤功

    内藤功君 大蔵省にお伺いしたいのですが、報道によりますと、米軍の立川基地の全面返還の日から六カ月間、引き続き自衛隊が暫定使用すると、こういうふうに国有財産の関東地方審議会が決めたというふうな報道がされておりますが、そのいきさつをまず御説明願いたいと思います。
  383. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) お答え申します。  立川基地の返還後の利用計画については、各方面から希望が競合して殺到をいたしております。大蔵省は、これに対しましては、その全体的な利用計画の大綱について国有財産中央審議会で審議をしてもらうということに相なっております。  この跡地全体の最終的な利用計画が決定されるまでには、なお相当の日時を要するものと見込まれるところでありまして、それまでの間における暫定的な使用や跡地の一部のみの使用については、国有財産関東地方審議会の審議を経て処理していこう、こういうことにしておるわけでございますが、一方、防衛庁としましては、立川基地の返還後も、その一部について、防衛活動のほか首都圏における災害発生時の救援活動等を目的として、引き続き自衛隊に使用させたいとの希望を持っております。また、現在の使用実態から見ましても、返還と同時にその使用を中止するということは困難なことだと認められます。そこで、本跡地の全体的利用計画策定までの間、自衛隊に約百十五万平米を暫定的に使用承認することが適当と認められますので、十月十九日国有財産関東地方審議会に諮問をいたしまして、その了承を得たところであります。  なお、同日の審議会におきましては、地元の強い要望にこたえまして、本跡地内の南北に通過する道路用地約二万八千平米を立川市に対し無償貸し付けする件も同時に諮問いたしまして、了承を得たところでございます。
  384. 内藤功

    内藤功君 いまの内容では一つ問題がありますが、これは後でやることにして、大蔵省にもう一点。  東京都と地元の立川市、昭島市から立川基地の跡地をこういうふうに利用したいという利用計画書が国に出されておると聞いておりますが、これはどういう内容か。
  385. 田中敬

    政府委員田中敬君) お答え申し上げます。  去る九月下旬、地元東京都、立川市及び昭島市から大蔵大臣に対しまして、立川基地の跡地利用計画というものが提出されております。この利用計画の概要は、大要、次のようなものでございます。  大体全体の基地八百ヘクタール、これは基地周辺の土地も若干含まっておりますけれども、総体計画八百ヘクタールといたしまして、業務用用地、たとえば行政施設——お役所を建てるとか、そういう業務用施設に百ヘクタール、それから大学、地元のお話によりますと東京大学六十ヘクタール、都立大学四十ヘクタール、それと公園用地といたしまして、大公園、緑地といたしまして二百四十ヘクタール、住宅用地といたしまして二百六十ヘクタール、それからいわゆる道路その他の都市施設といたしまして百ヘクタール、合計約八百ヘクタールという大要の利用計画をいただいております。
  386. 内藤功

    内藤功君 そういうふうな具体的な計画も出ておったやさきであります。  ところで、現在、立川基地を使用しておる自衛隊について伺いたいんですが、防衛庁長官昭和四十七年から八年にかけて航空隊が移駐した際の問題でありますが、まず、いま立川基地におる部隊の任務、性質、名称ですね、これはどういうふうになっていますか。
  387. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 現在、立川におります部隊は、東部方面飛行隊というのがございます。それから第一飛行隊というのがございます。これは東部方面隊の隷下のヘリコプターを主とした部隊、それから第一師団の隷下のヘリコプターを主体とした航空隊でございまして、航空機は三十三機、主にヘリコプターでございます。
  388. 内藤功

    内藤功君 この部隊は「もっぱら首都の災害救助活動を目的とする」ということを、当時、防衛事務次官が昭島の市議会議長に対する文書でも言っておりますが、そのとおり間違いないですか。
  389. 三原朝雄

    国務大臣(三原朝雄君) 首都の防衛はもちろんでございますが、特に災害救難に当たるということを事務次官が申し上げておるのは間違いございません。
  390. 内藤功

    内藤功君 そこがちょっと違うんです。  私、ここに理事各位の御了承をさっき得ましたので持ってきたのをお見せしたいんですがね。防衛事務次官の昭島市議会議長あての文書ですよ。これによると「もっぱら首都の災害救助活動を目的とする」、こう書いてあるんです。
  391. 三原朝雄

    国務大臣(三原朝雄君) 自衛隊の任務についてはもう言うに及ばず、それはもう大前提にあるわけでございますが、しかし、特にいま申し上げておりまするように、もっぱら災害救難に当たるということを申し上げておるものだと私は理解をいたしておるのでございます。
  392. 内藤功

    内藤功君 「もっぱら」というのは、この部隊は首都の災害救助活動のみに当たると、こういう意味じゃないですか。おかしいじゃないですか、こう書いてあるんだから。
  393. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 自衛隊の任務は、もちろん直接及び間接の侵略に対処する任務を持っております。で平時におきまして自衛隊の持っている組織力、それからその力というものをやはり国民に還元しなければなりません。したがって立川に配備しておりますヘリコプターの部隊並びに基地というものは、首都におきます大災害等の際には、そこを基地として、私どもの計画では、中部方面隊その他から八十機以上のヘリコプター並びに航空機をここに集中いたしまして、首都の災害に対処する計画を持っております。したがいまして立川という場所が首都まで約十分のところでございますので、最もこの災害対処には適当な場所であるというふうに私どもは考えているわけでございまして、平時における活動といたしましては、まさに大災害が起きたときの有力なる基地になるというふうに考えておるわけでございます。
  394. 内藤功

    内藤功君 この論争はもう少ししたいんですが、時間が私少ないから次の質問。  それじゃ、実際にきょうまで災害活動にどんなふうに出動して従事しておりますか、この部隊は。
  395. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 首都の大災害というのは幸いにしてまだ起こっておりません。したがいまして個々の場合の訓練等はやっておりますけれども、その大災害に派遣したということはないわけでございます。
  396. 内藤功

    内藤功君 ないんだね。——  次の質問ですが、防衛庁長官に。四十七年から八年にかけての移駐の際に、政府側は、当時の移駐は立川基地の全面返還までの暫定使用であると明確に述べておるんです。今回、防衛庁が立川基地全面返還を目前にして継続使用ということを申請したのは当時の約束に反するんじゃないか、言葉に偽りがあるんじゃないか、地元ではそうとっていますよ、言葉はきついですけれどもね。どうです。
  397. 三原朝雄

    国務大臣(三原朝雄君) お答えをいたしますが、移駐時の長官は増原長官の時代でございました。私は内閣委員長をいたして、この協議の際に立ち会っておったのでございまするが、その言葉をいまでも思い出すのでございますが、防衛庁の希望としては将来ともひとつ使用さしてもらいたいということでございますけれども、いろんな使用条件等がそのときに持ち出されましたので、いま御指摘のように、これは全面返還になり恒久的な使用方針が決定をすれば、その時期にはその恒久的な使用方針に従いますということを申し上げられたことを承知をいたしております。
  398. 内藤功

    内藤功君 答えになっていないね。前言ったことと違うじゃないかという、偽ったことにならぬかと言うんです。
  399. 三原朝雄

    国務大臣(三原朝雄君) いま申し上げましたように、それを読んでいただきますれば、偽りではございませんということを申し上げたつもりでございます。
  400. 内藤功

    内藤功君 いま東京の中で、後楽園の百倍と言われている土地ですよ。そしてとにかく昭島市、立川市両方にまたがっておる。そして交通の問題でも、あれがあるために大変ないま不自由をしているんですね。それから環境の面、それから平和の面、文化、住宅の面、商業の面、こういった面でこれを平和的に利用していきたいという地元の要求は非常に強いですね。私は、これは地元だけじゃなくて、国全体の見地からだって、首都東京にこれだけの大きな土地があって、どういうふうに使うかという大問題だと思うんですね。  私は、やはり大蔵大臣がいままでのいろんな論議を踏まえて、特に地元の要求というものをもう一回考えて、こういうふうに自衛隊が当分居座る、居座ってしまったらずっと長い間いて、これはもう既成事実をつくることになりますよ。地元では大変なこれは強い要求です。私は、いま大蔵省が白紙の立場に返って、国土の利用、国有財産の利用というのはどうしたらいいのか。きのうも私聞いたけれども、軍事要求というのを先に出したら、これはあなた方のあんまりお好きな言葉じゃないが、軍国主義というのはそういうことなんですよ。軍事が先に出てくる。そうじゃなくて、やっぱり民生、住宅ですね、大学ですね、緑地、公園、災害地域、こういうものをやっぱり優先していくべきだという地元の要求をまず第一に考えていかなければならぬ。そういう立場で、白紙の立場で、これは広い政府の立場で検討すべきだと思うんですよ。この点を大蔵大臣どう思いますか。
  401. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) この跡地の返還後の全体的の一最終的の決定というものは、国有財産中央審議会に頼みましてこれを審議をしてもらうということになっておりますが、そういうことになるまでには、返還をしてもらう、返還後またそういう審議を経るというようなことで、ある程度の期間が要るわけです。その暫定期間の間を、これを国有財産関東地方審議会で審議をしてもらって、暫定措置としてこれを自衛隊にひとつ使わそう、こういうことで、私はこれは暫定的ということでこういうことに相なったということを申し上げます。
  402. 三原朝雄

    国務大臣(三原朝雄君) いま大事な御発言がございましたので、私が申し上げさしていただきたいと思いますのは、軍事に使うというようなお言葉がございましたが、私は防衛を担当する者といたしまして、特に平和憲法下の防衛でございます。したがって平和と独立を守って国の安全を打ち立てていくというのは、民生の大前提と心得ておるわけでございます。決してそういうような私は考え方でないということを御理解願いたいということであります。  次には、いま大蔵大臣も言われましたが、恒久的な利用計画が話し合いによって決まりますれば、私どもはその方針に従うという考え方でおるわけでございます。
  403. 内藤功

    内藤功君 まあ暫定と言いますけれども、暫定暫定と言ってずっと永久使用してきたのが、米軍の基地もそうだし、自衛隊の基地もそうなんですよ。ですから、私は暫定ということをしないで、やっぱり全面返還後は一応あそこはあかしておいて、そうしてもっと平和的な仕事のために暫定使用させるべきだと、こういうことを強く要求して、これからまたいろんな委員会で聞きますが、この問題は次に移りたいと思います。  二番目の問題は、防衛経費の分担に関連をしてお聞きしたいんですが、まず施設庁に伺いたいんですが、駐留軍で働いておる人の中に技術報道専門職というのがありますが、これは何をする専門職か、何人ぐらいおりますか。
  404. 高島正一

    政府委員(高島正一君) お答え申し上げます。  私は施設部長でございますが、この問題は労務部長が担当しておりますので、いますぐ呼び寄せましてお答え申し上げたいと思います。施設庁から私のみいまこちらへ出席しておりましたので、はなはだ申しわけございませんが、すぐ答弁をさしていただきます。
  405. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次の問題に入るわけにいきませんか。
  406. 内藤功

    内藤功君 いや、これが来ないと、次に続かないんです。
  407. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  408. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 速記を起こして。  じゃ、内藤君、質問願います。
  409. 内藤功

    内藤功君 それでは、次の質問から先に入りましょう。  防衛庁に伺いたいんですが、神奈川県の座間の米軍施設内に、アメリカの陸軍の記録センター——ユナイテッド・ステーツ・アーミー・ドキュメント・センター、こういう機関がありますが、御存じですか。
  410. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 座間に太平洋米陸軍文書センター、まあ日本語で申し上げましたが、USアーミー・ドキュメント・センター・パシフィックというのがあるのを承知いたしております。
  411. 内藤功

    内藤功君 その機関の人数、それから機関にいる職員の国籍ですね、アメリカ人、日本人、それから仕事の内容、指揮報告系統はどういうふうになっておるかという点について御説明願います。
  412. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 先生も御承知のように、情報部隊というものはなかなか具体的なことはわからないわけでございます。で、昨日、先生から御質問の要求がございましたので、私どもの方で調べましたけれども、以下のことがわかりましたので御報告いたします。  まず、これは陸軍省の情報保全コマンドというのがメリーランド州のホートミードというところにございます。その出先機関でございまして、座間に五〇〇部隊というのがございます。その中に文書情報を解析する任務を持ったセンターとしてこういうものがございます。しかしながら、いま先生が御質問にございました、どのぐらいの人数か、それからどういう国籍の者がいるか等につきましては、これは教えてくれませんでした。
  413. 内藤功

    内藤功君 指揮系統、済みません、伊藤さん、指揮系統は。
  414. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 失礼しました。  指揮系統は、いま申し上げましたように、アメリカの陸軍情報保全コマンドというのがございまして、これは陸軍の機関でございますが、その司令部がメリーランド州のホートミードにございまして、その指揮を受けている出先機関でございます。
  415. 内藤功

    内藤功君 日本人がいるかどうかというのはどうですか。そのくらいわかるでしょう。
  416. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) ええ、日本人はいるというふうに聞いております。
  417. 内藤功

    内藤功君 それでは、私の方の調べの方が少し詳しいような感じがするんで、私は時間を余り食いたくないんですが、日本人が四十六人いるんですが、どうです。
  418. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) これも私ども調べましたけれども、四十六人という数字は聞いておりません。しかしながら、施設庁が座間の基地に、いわゆる駐留軍労務者として雇って勤務している者が四十人程度いたというふうに聞いております。しかし、それが全部そこに勤めているかどうかというのは確証を得ておりません。
  419. 内藤功

    内藤功君 防衛局長、ここに私の調べたのがあるんですがね、四十五人あるんです。ただし、四十五人あって……。  質問します。これは現在、座間基地には米軍の軍属が十人、さっき聞いた技術報道専門職が四十六人、それから翻訳、印刷、図書、人事などをやるのが四十四人、合計九十人いるというのがわれわれの調査です。よく調べていただきたい。
  420. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 私どもが承知しておりますのは、日本人の駐留軍労務者として四十人程度がいるということでございまして、その部隊の規模がどのくらいのものかというのはわかりません。
  421. 内藤功

    内藤功君 この調べをずっとやってみますと、陸上自衛隊の副師団長、それから方面の幕僚長ですね、特科の連隊長、それから海上自衛隊では艦長、こういうような経歴の人で将補、一佐の経歴の人が非常に多くいるんですが、どうですか、こういう点は知りませんか。
  422. 渡邊伊助

    政府委員(渡邊伊助君) お答え申し上げます。  先生からの御質問があるということで現在調査をいたしておりますから、まだ完全に調査を終わっておりません。ただ、元自衛官がここに勤務をしているということだけははっきりわかっております。まだ人数等については把握いたしておりません。
  423. 内藤功

    内藤功君 それだけじゃなくて、自衛隊を経ないで直接この機関に入った旧陸軍の大本営陸軍参謀中佐の人がおります。そのほか中野学校出身者もおります。こういうことはいかがですか。
  424. 渡邊伊助

    政府委員(渡邊伊助君) いまおっしゃった点については、防衛庁としては関知するところではございません。
  425. 内藤功

    内藤功君 あっさり言いましたが、そういう問題じゃないんだよ。社会主義国別に班に分かれていることは知っていますか。
  426. 渡邊伊助

    政府委員(渡邊伊助君) 存じておりません。
  427. 内藤功

    内藤功君 つまりソ連班、中国軍事班、中国技術班、それから北朝鮮班、ベトナム班、ベトナム以外のインドシナ班(カンボジア、ラオス)だね、それから海軍班、これだけ分かれています。どうです。
  428. 渡邊伊助

    政府委員(渡邊伊助君) 存じておりません。
  429. 内藤功

    内藤功君 防衛局長ね、早く調べて、私にきちんと回答してくださいよ、これ。
  430. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) これは自衛隊のいわゆる情報部にいたしましても、いまおっしゃいましたように地域別の担当というのはございます。したがって、その米側の情報部隊にもそういうものがあるということは推測できますけれども、これは聞きましても、そういうものになっているというようなことは答えてくれません。
  431. 内藤功

    内藤功君 このやっている仕事ですがね、まず、情報の私は真髄というのは、相手の将軍のファイルをつくることだと思うんですよ、将を射るわけですね。どういう性質か、どういうキャリアか、どういう戦歴があるか、朝寝坊かどうかといういろんな趣味、嗜好、こういうものを調べ上げるわけです。たとえば中国人民解放軍だとか、ソ連軍の各級指揮官のファイルを調べておる。これが一つ。もう一つは、社会主義国の軍隊の各級部隊がどこに存在しておるかということをこういう軍事地図で調べておる。この二つが大きな仕事だと、このユナイテッド・ステーツ・ドキュメント・センターの大きな仕事だと、こういうふうに聞いています。これはどうですか、心当たりはないかね。
  432. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) それは、先ほど申し上げましたように、ドキュメント・センターでございます。したがいまして、いまおっしゃいましたような地域別に集められましたいろいろな資料について、これを分析し翻訳する、そういう仕事はやっていると思いますけれども、いま先生がおっしゃったようなことは、私どもは何とも知り得ないわけでございます。
  433. 内藤功

    内藤功君 そこで、最後に、  私は、日本人として大きな疑問を持つんです。つまり自衛官というのは軍人じゃないけれども、軍人に準ずるようないろんな服務が自衛隊法でもって決められておる。こういう職種にある人か、やめてから後だといっても、また同盟国だといっても、よその国の軍隊の情報機関に入って、そこから月給をもらって、そして指揮命令のもとで仕事をするということは、これはいかがなものですかね。これは三原さんに伺いましょう、どう思われますか。
  434. 三原朝雄

    国務大臣(三原朝雄君) この問題、私は、過去において田中内閣の時代か何かでそういう御質問があったことを思い出すのでございますが、現在の日本の法規によりましては、自衛官のときでありますれば自衛隊法なりで処置をいたしますけれども、自由人になりますれば、これを処置できない現行法のたてまえになっておるわけでございます。  なお、新しいそうした御指摘でございまするので、研究はいたしてみるということにいたしますけれども、事態はそういう事情でございます。
  435. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 内藤君、時間が来ておりますから、簡潔に一問願います。
  436. 内藤功

    内藤功君 一言です。  私は、就職するのは自由だという、そういう労働法理論みたいなことを答えているんじゃこれは答弁にならないんですよ、この問題は。私はやっぱりいまカーター政権のもとでアジアで新しい再編成が進んでいますよ。そういう中で、このアメリカが社会主義のいろんな国の軍隊の情報を探っている。そういう手先になるということは、私は、自衛官というのは平和と独立のためにやるといつも三原さんは言うけれども、それから見て非常に恥ずかしいことじゃないかと思うんです。こういうものができるのは、やっぱりもとは安保条約というものがあるからだと私はもうつくづく思ったんです。  時間が超過しましたから、私はこれでやめます。それだけ指摘しておきます。
  437. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 答弁は要りませんか。
  438. 内藤功

    内藤功君 要りません。
  439. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上をもちまして内藤君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前十時から委員会を開会し、参考人からの意見を聴取いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十分散会