運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1977-10-19 第82回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月十九日(水曜日)    午前十時三分開会     —————————————    委員の異動  十月十九日     辞任         補欠選任      野呂田芳成君     玉置 和郎君      園田 清充君     山本 富雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鍋島 直紹君     理 事                 戸塚 進也君                 内藤誉三郎君                 中村 太郎君                 宮田  輝君                 小柳  勇君                 山崎  昇君                 多田 省吾君                 内藤  功君                 栗林 卓司君     委 員                 浅野  拡君                 岩動 道行君                 石破 二朗君                 糸山英太郎君                 小澤 太郎君                 加藤 武徳君                 亀井 久興君                 亀長 友義君                 熊谷  弘君                 下条進一郎君                 園田 清充君                 玉置 和郎君                 成相 善十君                 林  ゆう君                 真鍋 賢二君                 三善 信二君                 望月 邦夫君                 山本 富雄君                 秋山 長造君                 片山 甚市君                 竹田 四郎君                 対馬 孝且君                 寺田 熊雄君                 福間 知之君                目黒今朝次郎君                 矢田部 理君                 太田 淳夫君                 峯山 昭範君                 矢追 秀彦君                 矢原 秀男君                 佐藤 昭夫君                 渡辺  武君                 井上  計君                 山田  勇君                 柿沢 弘治君    国務大臣        内閣総理大臣   福田 赳夫君        法 務 大 臣  瀬戸山三男君        外 務 大 臣  鳩山威一郎君        大 蔵 大 臣  坊  秀男君        文 部 大 臣  海部 俊樹君        厚 生 大 臣  渡辺美智雄君        農 林 大 臣  鈴木 善幸君        通商産業大臣   田中 龍夫君        運 輸 大 臣  田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君        労 働 大 臣  石田 博英君        建 設 大 臣  長谷川四郎君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      小川 平二君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       園田  直君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       藤田 正明君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       西村 英一君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  三原 朝雄君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       倉成  正君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       宇野 宗佑君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  石原慎太郎君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  田澤 吉郎君    政府委員        内閣法制局長官  真田 秀夫君        内閣法制局第一        部長       茂串  俊君        公正取引委員会        委員長      橋口  收君        公正取引委員会        事務局取引部長  長谷川 古君        警察庁刑事局長  鈴木 貞敏君        警察庁刑事局保        安部長      森永正比古君        警察庁警備局長  三井  脩君        防衛庁参事官   番匠 敦彦君        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        防衛庁人事教育        局長       渡邊 伊助君        防衛庁経理局長  原   徹君        防衛施設庁長官  亘理  彰君        防衛施設庁総務        部長       銅崎 富司君        経済企画庁調整        局審議官     澤野  潤君        経済企画庁総合        計画局長     喜多村治雄君        科学技術庁研究        調整局長     園山 重道君        科学技術庁原子        力局長      山野 正登君        沖繩開発庁総務        局長       亀谷 禮次君        国土庁計画・調        整局長      下河辺 淳君        国土庁土地局長  松本 作衛君        国土庁大都市圏        整備局長     国塚 武平君        法務省民事局長  香川 保一君        法務省刑事局長  伊藤 榮樹君        法務省入国管理        局長       吉田 長雄君        外務省アメリカ        局長       中島敏次郎君        外務省欧亜局長  宮澤  泰君        外務省中近東ア        フリカ局長    加賀美秀夫君        外務省経済局長  本野 盛幸君        外務省経済局次        長        溝口 道郎君        外務省条約局長  大森 誠一君        大蔵大臣官房審        議官       加藤 隆司君        大蔵省主計局長  長岡  實君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  田中  敬君        大蔵省銀行局長  徳田 博美君        大蔵省国際金融        局長       旦  弘昌君        文部省初等中等        教育局長     諸沢 正道君        文部省大学局長  佐野文一郎君        文部省学術国際        局長       井内慶次郎君        文部省体育局長  柳川 覺治君        文部省管理局長  三角 哲生君        厚生省公衆衛生        局長       松浦十四郎君        厚生省医務局長  佐分利輝彦君        厚生省社会局長  上村  一君        厚生省児童家庭        局長       石野 清治君        厚生省保険局長  八木 哲夫君        厚生省年金局長  木暮 保成君        農林大臣官房長  澤邊  守君        農林省農蚕園芸        局長       堀川 春彦君        農林省食品流通        局長       杉山 克己君        林野庁長官    藍原 義邦君        水産庁長官    岡安  誠君        通商産業大臣官        房審議官     山口 和男君        通商産業省通商        政策局長     矢野俊比古君        通商産業省貿易        局長       西山敬次郎君        通商産業省産業        政策局長     濃野  滋君        通商産業省基礎        産業局長     天谷 直弘君        通商産業省機械        情報産業局長   森山 信吾君        通商産業省生活        産業局長     藤原 一郎君        中小企業庁長官  岸田 文武君        運輸省港湾局長  大久保喜市君        運輸省鉄道監督        局長       住田 正二君        運輸省航空局長  高橋 寿夫君        気象庁長官    有住 直介君        労働大臣官房審        議官       関  英夫君        労働省労働基準        局長       桑原 敬一君        労働省職業安定        局長       細野  正君        建設大臣官房長  粟屋 敏信君        建設省計画局長  大富  宏君        建設省都市局長  中村  清君        建設省住宅局長  山岡 一男君        自治大臣官房審        議官       福島  深君        自治省行政局長  近藤 隆之君        自治省財政局長  山本  悟君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        外務大臣官房領        事移住部長    賀陽 治憲君        外務省国際連合        局外務参事官   小林 俊二君        日本国有鉄道総        裁        高木 文雄君    参考人        日本銀行総裁   森永貞一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十二年度一般会計補正予算(第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和五十二年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第1  号)(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和五十二年度一般会計補正予算  昭和五十二年度特別会計補正予算  昭和五十二年度政府関係機関補正予算以上三案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りをいたします。  昭和五十二年度補正予算案審査のため、本日の委員会日本銀行総裁森永貞一郎君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、出席時刻等については、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) それでは、これより質疑に入ります。中村太郎君。
  7. 中村太郎

    中村太郎君 私、時間がございませんから、ハイジャック問題一つにしぼりまして、総理の言われるような鉄は熱いうちに打てと、そういう御趣旨に従いまして、どうしたらハイジャックの防止ができるのかという点についてともども考えてみたいと、こういった観点から御質問いたしたいと思います。  いろいろな意見がありましたけれども、結果的に私はやっぱり政府がああいう措置をとらざるを得なかった、これを認めるにやぶさかでありません。しかし、それにいたしましても、あの間における総理以下関係者の皆さんの御心労というものは大変なものだったと思うのです。この労を深く多としたいと思うわけでございます。  しかし、ただ、あの多くの意見のあった中にも一つ、とにかく政府弱腰であってはいけないと、これに屈服しまするとハイジャックをいよいよエスカレートさしていくんだ、あるいはまたハイジャックはやり病を世界にばらまくというようなことになるからしっかりがんばれというような意見もありました。たまたまそれを裏書きするようにドイツハイジャックが起こったわけでありますね。で、御案内のようなああいう強硬措置をとって、人質乗客もと二つとも解決をしました。日本では人質法秩序か、この二者択一選択を迫られたわけでございます。ドイツのああいうやり方が成功した、強硬手段が功を奏したということと、日本のあの二者択一の方法、この二つ総理はどういうように評価するでしょうか。あの西ドイツ強行作戦から何か学び取るようなものがあったかどうか、その辺のまず所見をお伺いしておきたいと思います。
  8. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先般のハイジャック事件につきましては、当時、人命尊重かまたは法の尊重か、その二者択一というような角度の議論もありましたが、私は二者択一という考え方じゃなかったんです。両方とも何とかしたい。法の秩序を守りながら人命尊重する、その立場を貫きたい、こういうふうに思いまして、最後まで——最後というか、最後の段階に至るまでその立場を堅持してまいったわけであります。ただ、西ドイツの場合と比べまして非常に客観情勢が違うんです。ダッカにおける情勢は、御承知のように、なかなか日本の代表と犯人との直接交渉も許されない、こういうような状態でもありまするし、それからたまたま不幸にしてバングラデシュ国におきまして暴動というか、軍事的反乱が起こる、こういうような事態もあり、非常に私どもは苦慮に苦慮いたしたわけでありまするが、そういう中で、とにかく時間を犯人側は切りまして、午前三時までに回答がなければ人質処刑をいたします、それじゃ四時まで延ばしましょう、四時が限界です、さあ八時まで延ばしましょう、八時が限界で、今度は名前まで挙げまして第一の処刑者はどうだと、こう言う。それに対して、私ども、ただいま申し上げましたような客観情勢の中でなすすべがない。これはもう法の尊厳人命尊重、これを両立させることはなかなかむずかしい。そういうようなことで、最後には犯人要請に応ぜざるを得ない、こういう処置をとったわけです。もしこれが、これは一つの賭けになりますが、仮に犯人最後通牒のその時刻、その時刻までにわれわれが犯人要請を受け入れないという態度を堅持して譲らぬというようなことになって、犯人の言うがごとく一人一人処刑が始まるというようなことになったら一体これはまたどういうことになっただろうか、私はそんなようなことを考えると、あのとおりとりました日本政府処置国民はこれを理解してくれた、こういうふうに思いますが、しかし、とにかく、法の尊厳人命尊重、その二つを貫き通すという初めからの考えが実現できなかった、そうしてとにかく超実定法的措置をとらざるを得なくなったということにつきましては、本当に私は残念に思います。また、その結果といたしまして、法務当局あるいは警察当局があれだけ苦心惨たんをいたしまして拘置しておったところのあの凶悪な行為をなした者たちを釈放をしなければならぬ立場になった。これは、私は、本会議でも申し上げましたが、本当に断腸の思いでございました。しかし、私はやむを得ざることであったと思います。  西ドイツの問題につきましては、これは私は本当に貴重な教訓にすべきだと思うのです。この事態はずっと経過をよく私どももフォローいたしまして、そして今後再び非人道的な凶悪な事態、犯罪が起こらないような固めをしなけりゃならぬ。そのために最大の貴重な教訓としてこれを用いていかなければならぬだろうと、このように考えております。
  9. 中村太郎

    中村太郎君 大体いま総理の言われたとおりだと私も思っているわけでございます。だから、いまにわかに起こっております、日本弱腰ざまあ見ろ、それ見たかと、だからだめじゃないかという意見に私はやっぱり賛成できないのです。とにかく、基本的に、西ドイツの何と言いましょうか合理主義社会日本情緒社会、知性と情義と言いましょうか、そういう基本的な土壌の違いがあるという点が第一点ですね。もっと端的に言えば、いわゆる西ドイツは、かつての同じ国土内に二つ体制国家、反体制国家があって、反体制国家実情というものを本当にはだで受けとめておる。そのことから生まれる国家意識、国を守る、体制を守っていこうという意識、これはやっぱり私は日本とは違うと思うのですね。それが選択の道を違わしたということになると思うのです。だから、西ドイツでできたから直ちに日本でできるというものではありませんし、また、日本ではまだ残念ながら実情が、人命尊重も法治国の尊厳が前提だとか、あるいは血を流しても民主主義を守るべきだという、そういう国民的な合意ができていません。だから、仮にあの場合政府強硬手段に訴えても、恐らく長続きしない、ドイツのように五日間も抵抗できない、その足元から国民の方から崩れることは間違いないと私は思うのです。そういう意味でも私は今回の処置はやむを得なかったと評価せざるを得ません。  ただ、じゃそれでいつまでもこの状態で、日本は国情が違うから、民度が違うから、全然血を流さないよ、知らぬ存ぜぬだよ、だからよその外国でやってくれというわけにはまいらぬと思うのです。やっぱり、そうでないと、国防問題じゃありませんけれども、他力本願のそしりを免れぬし、国際信義にも反すると思うのです。だから、どうしても場合によっては正義を守るためには血を流す、その決意を植えつけるような不断の努力国民に向かって国民合意を取りつけるような努力をこれからは惜しんではならないと、私はこういうように思うのですが、どうでしょう。
  10. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これからの措置といいますか、この事件処置のこれからの問題、これは何としてもこういう事件を再発させない、これが私は最大の問題であり、それをなし遂げることが政府の責任であり、また、残念なことでございましたけれども実定法的措置をとらざるを得なかったそれに対する政府最大措置である、このように考える次第でございます。とにかく、法の尊厳、これを維持しなけりゃならぬ、これは国家存立のもとであるという思想の涵養、これは人命尊重とともに大事な問題であります。人命尊重もこれは貫き通さなきゃならぬ。同時に、法の尊厳、これにつきましても、これは国家の生命の問題ですから、これにつきましても国民の理解をもっともっと深めていくという努力はぜひいたしたいと、かように考えます。
  11. 中村太郎

    中村太郎君 したがいまして、今回の措置はまことにやむを得ざるものがあったと認めるわけでございますが、さらばといって、あのときの処置が何でもかんでもいいんだといって素直に割り切る気持ちにもなれません。これも恐らく国民の一般的な共通意識だと思うのです。あの厳しいさなかにでも何かもう一つ工夫はなかったろうか、何かもう一つ知恵はなかったものかなあということなんですね。これもよく言われているのですけれども、もう少し粘ったらどうなんだと。粘って、せめても殺人犯人だけの引き渡しは拒絶するとか、あるいは身のしろ金の六百万ドルだけは何とか防げなかったものか。まあみみっちく言えば、これも値切ることができなかったものだろうか、こういう意見も出ているのです。その辺の事情について、官房長官、大変な御苦労をいただいたのですけれども、どうだったのでしょうか、事情をひとつお聞かせいただきたいと思うのですが。
  12. 園田直

    国務大臣園田直君) お答えいたします。  お察しのとおりでありまして、短期間ではありましたが、犯人から出された要求を直ちにのんだわけではありません。いろいろ議論をし、バングラデシュを通じて犯人交渉しながら、まず第一に、身のしろ金はやむを得ない、こういうことになったわけであります。これはいままでの慣例からして、最後土地で没収されて返ってくるという可能性もありましたので、まあ税金のことでありますが金で済むことならということで妥協したわけであります。  次に、犯人の拒否については、これまた最後まで法務大臣を中心に法秩序ということから再三拒否いたしました。バングラデシュの方が、日本政府が直接犯人と折衝すると犯人を刺激するからというので、最後まで政府がおることを犯人に隠しておりました。一切出させなかったので、他人の座敷で他人が相撲を取るのを後ろから声でお願いするというような状況であっていろいろやりにくいこともありましたけれども最後まで拒否いたしましたが、ついに犯人ものむということになり、最後には、しかし、犯人は別として、一般刑事犯の二名だけはどうしてもできないと、これだけは拒否すると強くいたしましたところ、バングラデシュの方では、それでは現地まで連れてきてくれ、現地まで連れてきてくれたら、二名は自分の方で必ず日本に帰れるように取り計らうと、こういう話もありましたので、最後刑事犯二名も出したわけでありますが、さて現地に行きましたら、ああいう騒動の結果、これも不履行に終わったわけであります。最後までいろいろ拒否し、研究をしたことはただいま御報告申し上げましたとおりであります。
  13. 中村太郎

    中村太郎君 一般的に考えているような努力対策本部として十分とったのだ、しかし事情が許さなかったということであろうと思うのです。  その点で、作家の曽野綾子さん、これが一つおもしろい提案をしているのです。六百万ドルという金を、犯人にくれるよりも、むしろ、アルジェリア国家の大体十分の一に近いのですね、六百万ドルという金は。これをそっくりアルジェリア政府に寄贈して、そのかわりせめてもの犯人の逮捕だけ要求する、こういう取引というか、交渉はできなかったかなというように言われておるのですよ。その辺、官房長官、どうでしょうかね、そんなことも思いついたのでしょうか、それとも、こんなことはとても思いも及ばなかった状況だということでございましょうか。
  14. 園田直

    国務大臣園田直君) 犯人がアルジュリアへ向かって着陸を企図しているとわかりましたのは、ハイジャック機が第三の着陸地であるダマスカスを出発してからわかったわけでありまして、すでにそのときには犯人に六百万ドルは渡してあったわけであります。そこで、その後いろいろ考えて、いろいろ腹の中であるわけでありますけれども、これはまあ今後の問題でありますから……。
  15. 中村太郎

    中村太郎君 そこで、この問題に関連しまして、アルジェリア政府から日本政府に対して犯人引き渡しと身のしろ金の返還を要求しないと、こういう申し入れに対して、伝えられるところによりますと、外務省が独断でやったとかなんだとかいうようなことを言われておりますが、この辺の事情は一体どうだったのでしょうか。
  16. 園田直

    国務大臣園田直君) 政府は、一番最初は、バングラデシュ最後解決をつけたいと、こういうわけでバングラ政府に対して何とかそこで解決をしてくれと、こういうことを最後まで粘ったわけであります。そして、最後には、行き先は一切ございませんと。各地に当たりましたけれども給油、領空通過、それから着陸を承諾する国がないと。そこで、行き先がわからぬうちに飛び立つと人命に影響するから、そういう立場からも行き先がわからないうちは離陸を許さないでくれということを最後までやったわけでありますが、バングラデシュはついに最後は自分の国の都合で自分の国の安全に問題があるということで離陸命令を出したわけであります。  そこで、政府としては、犯人側に対しては、行き先はないぞと、出たら降りる場所がないぞということを犯人並びに外部に対しては言っておりましたけれども、もし仮に犯人が強行離陸をするか、あるいは現地から離陸命令を出されると、車輪が離れた途端に日本の国籍である日本航空乗務員、乗客等の生命は日本政府が守らなければならぬ責任があるわけでありますから、一方には行き先がないと言いながら、内々には極秘で各所に着陸をさせてくれる国はないかと当たっておって、大体二十九カ国当たったわけでありますが、どこの国も領空通過、給油、着陸一切認めないと。国際的に批判を浴びるし、その後いろいろな問題が起きてくる、ハイジャックに協力体制をとれないと、こういうことでありました。  そこで、だんだん詰まってきて時間が迫ってくると、いよいよ飛び立ったと、こういう段階で大体三カ国ぐらいにしぼりまして外務省はこれに対する折衝をしたわけであります。内々は本当は飛び立つ前から大体行きそうだという地点についてはやっておったわけでありますが、どこの国の言い分も、政府政府の相談で自分のところへ受け入れるということを言うことは国際上困ると。そこで、犯人の飛行機が無理やりにやってきたら人道上の立場からまあ着陸だけは許すということにしてもらわぬと困るというのが本当の話であります。そこで、第二、第三の着陸地点も全部新聞で御承知のとおりに滑走路には自動車または装甲車を並べて着陸拒否の体制をとり、ハイジャック機が上空を数十分飛んでからこれを取りのけて着陸をする。最後のアルジェリアも滑走路でないところに外れて着陸するというようなこともあったわけでありますが、そこで、その場合、どこの国も、もし自分のところへ来たら、内々の話だが、身のしろ金と犯人要求されちゃ困ると、先般のリビアがひどい目に遭ったと、こういうことの条件がついておると、こういう経過の報告が総理並びに対策本部長にあったわけであります。そこで、いまの行き先がないということを秘密にするためと、そういう点と合わして、あとのことは横には連絡をしてなかったわけでありますが、その際その経過を聞きながら最後にはそういうことで仕方がないんじゃないかと、そういう方向で処置しろと、こういうことを総理から内々言ってあったわけであります。  そこで、これも打診でありまして、いよいよ最後の第三の地点を離陸いたしましてしばらくしてからロンドンの日航支店長から、犯人の交信によるとアルジェリアに向かうと、こういうことが入りましたので、これから初めてアルジェリアと日本外務省が正式の交渉に入ったわけであります。そこで、飛行機は上空に到達をする、アルジェリアと折衝をすると、こういう段階でありましたので、外務省としては、かねてから報告してある線に従って外務省から訓令を出し、宮崎大使はそういう相手の申し出に対して受諾をしたと、こういうことでありまして、外務省の勝手にやったことではございません。ただ、その後、ああいう火急の場でありますから事後の報告とか連絡等について手落ちがありましてごたごたしたことは、本部長としてまことに申しわけないと存じます。  その後、閣議、対策本部等で議論されましたことは、それは仕方がないと。しかし、約束はしたものの、ハイジャックを再び起こさないということを考えたならば、相手に対する要求はできないかもしれぬが、要請なりお願いはできるのじゃないかと。そこで、ああいう約束はしましたものの、ひとつ犯人は返してもらえぬでしょうかと、特に二名の刑事犯は返していただけぬでしょうかと。どうしても返せぬとおっしゃるなら、国内で拘束をしていただきたい。身のしろ金についても、没収して返していただきたいが、返せぬとおっしゃるならば、犯人から没収をして、犯人が再びこういう行動を起こすための資金にならぬようにお国の方で没収をしていただきたいという内々の、これは申し入れではなくて、一遍約束して要らぬと言ったものでありますから、国際上の慣例を失しないように相手に礼儀を尽くしつつ再発防止の観点からお願いをいたしますと、こういうお願いをしたわけでありますが、向こうの政府では一応これを断わられましたが、これは今後いろいろ考えて粘り強く礼儀を失しないように努力をするように考えております。  以上でございます。
  17. 中村太郎

    中村太郎君 外務省の名誉のためにも独断専行でなかったことを私は結構だと思うのです。  それで、もう一つ外務省に関連して、犯人等に旅券を発行した問題ですね。何か領事移住部長は当初もう絶対に犯人に旅券を発行することはあり得ない、こういう言明をしておきながら、後になったらば自分の責任でやったというようなことがこれまた何か連絡不十分で、やったとかどうかという問題も話題になっております。この辺の事情についてもいろいろあろうと思うのです。率直に簡単で結構でございますからお聞かせをいただきたいと思います。
  18. 賀陽治憲

    説明員(賀陽治憲君) お答え申し上げます。  総務会が行われましたのは本件事件解決当日の十月四日正午からでございました。領事移住部長は、席上の御質問に対しまして、釈放犯六人に対しましては正規の旅券を発給していないということを御報告申し上げたわけでございます。この事実関係はその後も変わっておりません。一方、ダッカにおきましては人命救助のための超実定法的な措置として現地の御判断でマームド参謀長に対しまして旅券冊子が渡されたことにつきまして、当日事情が不明でありましたため報告ができなかった次第でございます。  領事移住部長といたしましては、旅券冊子が何らかの目的に役に立つのではないかという考えのもとにこれを現地に携行せしめたわけでございますが、現地の判断で冊子の手渡しが参謀長に対してなされましたことは、緊迫した人命救助の事態における対応といたしましてはやむを得なかった、という御判断をいただいておるわけでございます。  なお、旅券冊子は何ら法律的な効果のないものでございますけれども、念のため政府代表団から事情を伺いました後にこれら番号の無効通告を直ちに在外公館を通じて各国政府に行ったものでございます。
  19. 中村太郎

    中村太郎君 事が緊急事態でございますから、連絡のそご、あるいは万全な対応措置というものはとっさにはできないと思うのです。したがって、私はある程度やむを得ないと思う。しかし、やむを得なくても、そのとき直ちに明らかにしておけば、これはその時点では国民は了解するんですよ。後になりますから、結果論が出てきて、ああでもないこうでもないという意見が出ると思うのですね。そういう点は、十分今後こういう問題については配慮すべきではないか、こう思っております。  それから緊急措置としてはやむを得ないといたしましても、先ほど総理が言われましたように、とにかく今回の措置は法治国家としては最大の屈辱であることは間違いないと思うのです。これは何と言いましても、そのいろいろな批判に報いるためには、絶対これから防いでいくというその対応の姿勢、対策、これが徹底的に講ぜられなければならぬと思うのです。そういう意味でやはり過去の厳しい一つの反省の上に立って新しい施策を考えていかなければならない。  そういう意味で私申し上げたいのですが、まず何と言いましてもクアラルンプール事件以来の政府の対応というものについては私は大変甘さがあったと思うのです。それが証拠には、四十八年の八月二十九日ですか、いまのハイジャック対策要綱を決めたのです。それをずっと金科玉条としてやってきているのですよ。クアラルンプール事件のときの新しい事態に対する新しい対処の方向というものは何にも決めてないんですよ、どこにもない。この辺がまず手抜かりの第一点。ただ、あのときに私ども率直に思ったのですが、こんなばかげたことが二度と起こるまい、起こってはならないという願望があった、期待感があった。それがやっぱり油断を生せしめたということを私ども率直にみずから認める。やっぱりこの辺が大きな今後の問題点になりゃせぬかと私は思うのです。そういう意味でこれから二、三お伺いをいたしたいと思うのです。  まず外務省、この対策要綱の中では東京条約、ヘーグ条約、モントリオール条約、この加入への積極的な呼びかけを行うと示していますね。じゃ、四十八年以降今日まで一体何をしてきたのか、何もしてこなかったのか、今度初めてこの問題を取り上げたのか、こういう問題になりますね。だから、私はお聞きしたいのは、四十八年以降——四十八年のときばたとえば東京条約は六十五カ国だった。今日は八十八になっておりますよね。この間に日本外務省としては一体どこどこの国にどう呼びかけていつ成果を上げたという誇り得べきものがあるかどうか。よその国が自然に入ったのじゃだめですよね。こんなものは努力にはならない。そういう成果の跡が示されるならば示してもらいたいと思う。
  20. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) お答え申し上げます。今日まで、ただいま先生御指摘の三条約につきましては、わが国はいずれも多数国間の場におきまして積極的にその成立に参画いたしてまいりましたし、その加盟を促進する勧告案の採択につきましても共同提案国になる等いたしまして積極的に努力をいたしてまいりました。二国間の働きかけということは、特定の国に対しては今日までのところいたしておりません。それは若干の微妙な問題を含んでおりますので、私どもといたしましては、多数国間の場を通じて多数国間の雰囲気づくりに積極的に関与してきたということでございます。
  21. 中村太郎

    中村太郎君 あなたそう言うならば、いつ幾日のどういう会議でそれを主張したか、具体的に例がありますか。
  22. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) たとえば、一九六〇年に作成されました東京条約は、その名のとおり、東京で外務省が積極的に開催いたしました会議で採択された条約でございます。また、一九六九年の第二十四回国連総会におきましては、飛行中の民間航空機の強制的進路変更——まあハイジャックでございますが——と題する決議の共同提案国となってその採択に努力いたしました。また、翌年の一九七〇年、第二十五回国連総会におきましては、オランダ等十四カ国と共同提案国となりまして、空のハイジャッキング及び民間航空による旅行に対する妨害と題する議題の緊急上程を求めまして、その結果この採択を見まして、こうした決議に基づいて七〇年十二月にはヘーグ条約が作成され、採択されたということになっておるわけでございます。
  23. 中村太郎

    中村太郎君 外務省はそれを自分の力と思っているらしいのですけれども、国際連合の中では必ずしも評価されていないようですね。いろいろな新聞に批判も出ております。しかし、それはそれとして、とにかくいま残っておる未加盟国、これは厄介な国がたくさんあるんですな。いま三条約とも大体半分程度ですね。アラブ、中近東、東南アジア、ここに未加盟国がいっぱいあるんですな。これに今後積極的に呼びかけるというんですけれども、一体どういう方法で呼びかけますか。いままでと同じように、国連の場を通じて、あるいは会議を通じてだけやるのですか。それでは強化体制にならないと思うんですよね、これをどうやるのか。たとえば、アルジェリア、あるいはソマリア、これなんかも入っておりませんわ。むずかしい国は全然残っちゃった。これは人一倍努力しなければなりませんよね。どういうふうな対応をしていくのか、そうしてその見通しは一体どうなんですか。簡単に話が通じるでしょうかね。私は非常に険しいと思う。どうなんでしょう。
  24. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 従来、中東諸国のうちでこのヘーグ条約に未加盟の国が多いわけでございます。これはやはり若干の思想的な背景と申しますか、テロリズムに対する考え方がわが国とはいささか考え方を異にした面がある。しかし、最近のようなハイジャックに対します国際的な世論の盛り上がりということがございますので、従来に比して今回の態度は大分変わってきているというふうに考えます。したがいまして、これから私どもは先ほど来お話の出ております国際的な国連初めその他の多数国の場、あるいはまた個別の場も通じまして、これらの点につきまして努力をいたしたい。決して私はいままでむずかしかったから今後できないだろうということではないと思います。また、この問題につきまして、中東和平というものが、これが本当に先々ジュネーブ会議が開かれる、このような方向に進んでまいりますと、よけい私どもは見込みが非常に出てくるのではないかと考えておりまして、中東諸国に対しましても今後積極的に努力をいたしてまいりたいと考えております。
  25. 中村太郎

    中村太郎君 これに関連して、昭和五十年の九月のジュネーブでの犯罪防止と犯罪者処遇に関する第五回国連会議、これに日本では竹内団長が出席されていますね。このとき、やっぱりICPOの強化策に対して提言しているのですよ。ところが、発展途上国の政治的動機に基づくものは犯罪ではないということでこれは採択されなかったんですよね、ICPOの強化の問題は。この提案はその後どういうことになったんですか、その後いろいろな機会でやっぱり提言しているのですか、現状、結論はどうなっていますか。外務省で結構です。
  26. 三井脩

    政府委員(三井脩君) ICPOの強化がこの種事犯に対して大変効果があるというように考えておりまして、手配等を通じこの種事犯の防止並びに捜査に各国が協力をしていただくように働きかけておるのが一つあります。同時にまた、手配以外の各種のICPOルートによる情報の提供等による強化というのがありますが、一番の問題は、このICPOは政治的な犯罪を扱わないということになっておるわけでございます。政治的犯罪は人種的とか宗教的等とともにICPOが扱わない部類に入っておるわけでありますけれども、そしてICPOの初期の段階では政治的犯罪の範囲をできるだけ広く解する、こういうような態度で臨んできておりましたけれども、最近のこの種テロ行為に対しましては、これが政治的な目的であると否とを問わず、その行為自体、犯罪自体の凶悪性にかんがみまして、政治的背景云々というものを抜きまして、普通の刑事事件だ、特に凶悪な刑事事件だという考え方の方向にだんだんとなってきております。したがいまして、われわれもまたICPOルートを通じての働きかけ、手配等によりまして、御存じのように相当数の者がわが国にも送り帰されてくるというような効果を上げてきておりますが、なおこれで十分かと申しますと、国によりましては、テロにもいろいろ種類があって、なるほど形だけ見れば凶悪犯かもしらぬけれどもその内容によっては政治的なものである、ことに民族解放闘争のためのものであるということを強く主張するところもあるわけでございまして、この辺がこの種凶悪犯、テロ行為、テロ的犯罪を防止する上において一つの隘路といいますか、抜け道といいますか、欠点になっておるわけでございます。したがいまして、わが国におきましては、前回、特にクアラルンプール事件を契機にいたしまして、国際的なこういう世論をICPOの場で盛り上げようということで、早速、あれは五十年八月でございましたけれども、十月の会議でこの辺を提案いたしました。したがって、この問題を取り扱うための特別のシンポジウムを開いてほしいということで、そのシンポジウムの中にこれを入れてもらいまして検討いたしました。それからその前年の五十年にはこのICPOの本部の総会がございましたので、これに対しましてこの点を強く申し入れ、ICPOの総会等に将来取り上げ、ICPOを通じた考え方として、背景のいかんを問わず、この種テロ行為は凶悪犯として政治犯ではないというようにやってもらいたいという働きかけをしておるところでございますが、いまのところそこまででございまして、その後これがわれわれが提案しておるようなものにだんだん固まる方向でございますが、形の上においてしっかり固まったというところにまだ至っておりませんので、なお努力を継続いたしたいというのが現状でございます。
  27. 中村太郎

    中村太郎君 まあ日本の警察庁はICPOとかなり緊密な連絡をとっていますね。それで、今日までいろいろな成果を上げております。これはもう認めるのにやぶさかではないんです。しかし、いまの体制をもって万能ではないんですよね。もっと強化しなきゃいけない。特にICPOの相互主義、それについてはやっぱり日本も協力すべきものは協力しなければ相手に要請もできませんわね。そういう意味で、私は、日本の国内法の整備を含めて、もっとICPOの機能を強化するには一体どうしたらいいか、こういう点について警察庁に何を提言があればお伺いしておきたいと思うのです。
  28. 三井脩

    政府委員(三井脩君) ICPOも実は外交ルートとは別に警察相互間の協力ルートということでできておりますけれども、最終的にはこれは外交的に処理がされるということはもう前提になっておるわけでございます。そういう意味におきまして、これまたICPOの関係もまた相互主義が決め手になるわけでございまして、そういう意味におきましては、ヨーロッパ諸国が相互間でやっておりますような、ICPOのいわゆる逮捕手配を出せば直ちにその国の逮捕状が発せられると同じように身柄をとりあえず拘束しておく、それから外交的な交渉があって身柄を引き渡すと、こういうような制度があれば、わが国もまた一層端的に能率的にいくということがございますけれども一つは国情が違うということがございますし、また法制のたてまえも違うということもございますので、この点については法的側面とそれからまた実情というものを踏まえまして検討してまいりたいと思います。  ただ、その点が解決しませんとそれではICPOルートでの相互の協力が必ずしもうまくないかと、こういうことからいきますと、ただいま申しましたように、ICPOの逮捕手配はわれわれはできませんけれども、逮捕状がありますよということを情報手配ということでやる。また、手配の様式になじまないものは、日本赤軍というのはこういう凶悪な人物ですということでその資料をICPOのルートを通じてそれぞれの国に送っておると、こういうような、日本赤軍が凶悪犯を起こしておるということとの兼ね合いの中で世界の多くの国においてこの辺についての認識と日本赤軍の凶悪性に対しての認識というものが深まってまいりましたので、ICPOからの手配の有無にかかわらず、それぞれの国がわが国から手配されておるあるいは通報されておる罪名によって、あるいは手配されておらない日本赤軍のメンバーにつきましてはその国の独自の法令によって処理をするということで、たとえば外国人法違反ということによって送り帰されてくるとか、あるいは多く偽造旅券等を使っておりますので、文書偽造というのはどこの国においても犯罪とされておると考えられますので、それによって措置をし、わが国に送り返してくると、こういうようなことでございますので、ただいま法的な点はなお研究いたしますけれども、これがなくても、一方ただいまのような意識といいますか認識を深める努力をするということによって成果を上げてまいりたいと、また、現に上げてきておるということでございます。
  29. 中村太郎

    中村太郎君 三井さんね、そこで、いまの相互主義を徹底するためには一体日本の国内法では何が障害になっているんですか、どういうことを変えればいいんですか。簡潔で結構です。
  30. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 簡単に申しますと、ICPOによる手配書が来れば、それは日本で逮捕状と同じ効果を持って、それだけで逮捕するという簡便な方法をICPOは予定しておりますけれども、そういう法制はわが国にはない。したがって、相互主義のたてまえ上、わが国はその種逮捕手配、赤紙手配というものをやらない、こういうことでございますが、ただいま申しましたように、そういうICPOの手配をもって逮捕状にかわるものとして直ちにそれによって仮に身柄を拘束しておくというような制度、そういう法制をつくるについてはなお研究すべきいろいろの諸問題があるという点がありますので、これを研究中でございます。
  31. 中村太郎

    中村太郎君 法務大臣ね、いま警察庁から言われた相互主義を徹底するための国内法の整備、これは刑訴法が絡んでくると思うのですね。これはいまどうなんですか、検討されようとしていますか。
  32. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 刑事局長から御説明申し上げます。
  33. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 先ほどのお尋ねに端的にお答えしますれば、━━━━━━━━━━日本国憲法三十三条で令状主義の原則がございます。ICPOの手配書きが日本の司法官憲が発した令状と同視できるというものではございませんので、それが一番の障害でございます。法務省としては、警察と御相談いたしまして、これにかわる次善のものを現在検討中でございます。
  34. 中村太郎

    中村太郎君 それでは、次に外務省。  いまの旅券法には大変不備な問題があると思うのです。たとえば、発給制限の理由の範囲の拡大の問題とか、それから処罰だって軽いと思う。これらについて改正の用意がありますか、検討されていますか。
  35. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 旅券法につきまして発給制限の条項を厳格にするその他につきまして、いま案を準備して対策会議の方で検討中でございます。
  36. 中村太郎

    中村太郎君 それから総理ね、いま警察庁が出てきたんですが、今回のハイジャック事件でまさに切歯扼腕の思いでこの超実定法措置をながめているのは、私は警察官あるいは法務省だと思うのですよね。とにかくふだんから命をかけて一生懸命がんばっていますよ。特に浅間山荘で二人の同僚を犠牲にして、それでも血みどろな努力の結果逮捕したんですよね。これをとにかくクアラルンプール事件で釈放されちゃった。今度の場合も、とにかく企業のテロ集団、これまで悪戦苦闘の末ようやくつかまえたんですな。それを今回また釈放してしまう。同時にまた、殺人犯まで一緒につけてやってしまうというようなことで、恐らく警察官の気持ちはやり切れないと思う。何のためにふだん命をかけているんだという率直な気持ちだと思いますよね。したがって、私は、この際、これから捜査の中心はやっぱり警察官なんです。現実にあれ以降もずっと寧日ない活動を続けているんですよね。ですが、やっぱりここで士気が低下しちゃ困るんです。このためには、警察を激励する、士気の高揚をなお一層図る、そういう施策をこの際とるべきだと思う。何らかの対策をとるべきだと思うのですが、この辺、総理、いかがでしょうか。
  37. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今回の処置に対する検察、警察の心情ですね、全く中村さんのおっしゃるとおりだろうと思うのです。対策本部会議、ここでも、検察、警察は、何とかして犯人を、犯人というか、抑留者を釈放しないで済まされないかということを力説いたしたわけなんです。私どもも当然そのような同じ考え方を持っておりまするから、最後の段階までそのことをあきらめないでいろいろと努力をいたしたわけでありまするが、先ほど申し上げました客観的な事情もあり、やむを得ず犯人要求に応ぜざるを得ないと、こういう立場になってしまった。本当に残念であります。特に検察、警察の心情を察しますと、本当に胸の張り裂けるというような思いだと思いますが、お説のとおりでありまして、今回政府のとった措置につきましては、法務大臣も、また国家公安委員長も、またそれを補佐する刑事局長も、それから警察庁長官も、対策本部の席には同席をしておるわけです。あの経緯を見ますると、今度政府がとった措置はやむを得ない、あれ以外の選択はなかった、こういうことについては理解は持ってくれておる、こういうふうに思いますが、これらの当局の心情を思うとき、本当に中村さんのおっしゃるとおりです。これから特に大いに検察、警察を激励し、またこのハイジャック事件というような非人道的な凶悪犯罪が再び起こらないというために思いを新たにして全力を尽くしてまいりたい、かように考えます。
  38. 中村太郎

    中村太郎君 そこで、警察庁にもう一つお伺いしておきたいんですが、二年前のクアラルンプール事件直後、あらゆる情報がこの次のハイジャック事件が恐らく起こるとすれば東南アジアであろうと言われておったんです。これは当時の新聞も指摘しています。この地域が国際協力体制が手薄である、日本も十分これと機能していない、日本の警察庁も。同時にまた、日本と死活の関係にある東南アジアで事を起こせば日本に与える脅威は高まる、こういう判断を赤軍はするであろうと言われておったんです。それで、警察はこの地域に対する警察体制は強めておったと思うんですけれども、一体、どういう取り組みをされてきましたか。  もう一つ、ついでにお伺いします。  ICPOの強化策については警察庁は提言があるようでございますが、しからば国内体制日本赤軍に対する独自の捜査体制、あるいは新聞によりますと赤軍課を設置するとかしないとかというような意見も出ておりますが、これらの国内体制をどう強化するか。  それから、西ドイツの例の特別部隊、このまねをしろとは言いませんが、やっぱりあれだけでも今後の対応の一つではなかろうか、あるいはあの中に含まれている訓練というようなものはいまの警察でやっても差し支えないかというように思うのです。この点はどうでしょうか。
  39. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 日本赤軍が最初ドバイ等でハイジャック事件を起こし、その後シンガポール、クアラルンプールといったようなところでこの種事犯を起こしておるわけでございまして、彼らの犯行を犯す場所として日本に近いところで行われるという可能性につきましては、判断として私たちは同じような判断を持っておりました。ただ、具体的な情報というのはございませんでした。したがいまして、これにつきましては彼らがねらうであろう時期、チャンスというような機会には格別力を入れて警戒をするということで、外務省と連絡の上それぞれのところに警戒警報を発する、また、それぞれの国にいろいろ強化をお願いするということでやってまいりましたので、ごく最近の機会としては、総理が東南アジア六カ国訪問に出られる時期、これがひとつ危険な時期であろうということで、こういう手を打ちました。したがって、この点については彼らは蠢動するに至らなかったというような効果を上げておるというように考えます。  それから第二の点につきましては、国内におきまして先ほど申し上げました日本赤軍関係者で海外から送還されてきた者、あるははその国を国外追放になってわが国に帰ってきたという者がおるわけでございまして、これがわが国での刑をそれぞれ終えております。これが日本国内で海外の日本赤軍に対する支援組織をつくり、あるいは組織がなくてもそういう活動をしておるということでございますので、これを徹底的に解明していくということを目標としておるわけでありますけれども、今回の事件にかんがみ、さらにこの点に力を入れていきたいというのが国内におけるわれわれの日本赤軍対策の方向でございます。  それから第三点に、西独の国境警備隊的なものの運用といいますか、こういう考え方でございますが、西独の国境警備隊の実情並びにその中に特別つくられた第九部隊と申しますか、それらの活動等につきましては一応の知識は持っておりますけれども、今後、さらに本件事犯に具体的に即しまして調査等をいたした上で、取り入れるべきものは大いに取り入れて参考にいたしたい、こういうふうに考えます。  そういたしますと、いままでのようなハイジャック事件があった後、われわれは何をしておったか、こういうことになりますけれども、この点につきましては、機動隊の中にそういう訓練を積む、特に機動隊の中の一部のものにつきましては、これを専門といいますか、徹底した訓練を積んでおるということでございますが、海外に出て行ってやるということはいままで考えたことはございませんので、今回のことを契機といたしまして十分検討してまいりたいと考えておる次第でございます。
  40. 中村太郎

    中村太郎君 時間が迫ってきまして、あとの予定がありますので、進めていきますから、答弁の方も要領よくお答えをいただきたいと思うのです。  きのうも法務省の問題につきましては内藤委員から指摘がありましたが、とにかく日本の裁判のおくれには定評があるのですね。そこで、たとえば昭和四十五年でしたか、例の浅間山荘事件ですね、警察側二人が射殺された事件、一体いまあの進捗状況はどういう状態にありますか、これは事務当局。
  41. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 簡単に申し上げますと、まだ第一審の終結を見ておりません。熾烈な被告人、弁護人の法廷闘争が主たる原因でございます。
  42. 中村太郎

    中村太郎君 とにかく五年何カ月たっているのです。あれはたしか二月か三月だったですね。それでまだ一部が一審に入ったかどうかという程度なんです。いま国民の率直な気持ちは、どうしてあんな凶悪犯をいつまでも生かしておくのだ、とっくに処刑してしまえばいいじゃないかと、これが端的な気持ちなんです。私はやっぱり大変裁判がおくれているので、処刑してしまえば釈放しようと思ってもいないんですから、もとが。この辺は考えていかなければいけないと思う。きのう法務大臣は特別立法を考えておると言われたのですけれども、ぜひ早急に結論を出していただきたいと思うのです。同時にまた、いわゆる処罰も軽過ぎる、極刑に処する、こういう方針で刑法の改正に積極的に取り組んでいただきたいということを、これは特に要請しておきたいと思うのです。  それでもう一つは、いまの裁判制度の枠組みの中ではいまより全然もう進捗できないのですか。たとえば月一審の審理を週一審にするとか、選出弁護士がいろいろなことを言えば官選弁護士をつけて、審理には官選弁護士だけ寄って審理を進めるとか、何かこういった知恵、工夫というものはないでしょうか、その点どうでしょうか。
  43. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 端的に申し上げますが、浅間山荘事件を初めとする過激派による主要事件というのは弁護人が出廷しなければ法廷が開けない。いわゆる必要的弁護事件でございます。こういう必要的弁護事件につきまして、たとえば一週間に一開廷で公判期日を入れようといたしますと、被告人、弁護人が意思を通じましてこれを拒否いたします。これを強いて裁判所が期日を入れますと弁護人が退廷戦術あるいは辞任戦術をとります。辞任をいたしました場合には、御指摘のように国選弁護人を裁判所が選任できるわけでございます。これを弁護士会に推薦方をお願いいたしましても一人の御推薦もないのが現状でございます。したがって裁判所としては何カ月かの空転の後、結局、被告人、弁護人の言い分をそのままのんでやはりスローペースで期日を入れざるを得ない、こういうのが現状でございますので、その点をさしあたり立法的に改善する必要があるのではないかと真剣に考えておるところでございます。
  44. 中村太郎

    中村太郎君 大変むずかしい問題もあると思いますが、法務省自体が今度の措置をとるについては断腸の思いをしたことはよくわかります。再びみずから断腸の思いをすることがないように、法務省の立場でできることは精いっぱいの努力を私はやっていく必要がある、こういうようにお願いしておきたいと思うのです。
  45. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) ただいま浅間山荘事件のお話がありました。私は、就任直後、あの事件の経過を聞いたのでございますが、御承知のとおり昭和四十七年、ちょうど国会で予算委員会の開催中でありました。まさにテレビ放映で衆人環視の中であの凶悪な犯罪が行われておる事件は明らかであります。それが今日まだ第一審の係属中であるということは、国民の皆さんだれしもが承服できない事態だ。こればかりじゃありませんが、昨日も申し上げましたように、この種犯罪についてはいま刑事局長からお答えいたしましたように、法の悪用といいますか、をするような状態に置かれておるむずかしい問題点もあるようでありますが、何とか法の実効を上げるように特別な改正をいたしたい。成案を得ましたら御協力いただきます。
  46. 中村太郎

    中村太郎君 そこで、これは外務省ですか、運輸省ですかね、私はずっと今回の対策要綱と前回の対策要綱を比較してみて思ったんですけれども、前回の対策要綱の中で、外国寄港地における日航独自の検査体制を検討し、実施すると書いてあるんですね。だから、あの際四十八年の時点で、日航のダブルチェックなり何なり独自の検査方法をとっておれば、あるいは今回のハイジャック事件は免れたかもしれないんですよね。ところが全然放置してあるんですね。それでいまごろになって、出おくれの幽霊じゃありませんけれども、緊急に外国の寄港地の調査をするというふうに出ているんですよ。この辺の感覚はどうなんでしょうかな。  実際手をつけてみたけれども、いろいろな障害、たとえばこれこれがあってできなかったんだ、しかし、いまになったらできるんだというものはあるんでしょうか。私はいまの運輸大臣の責任だとは言いません。が、少なくとも運輸省が入った中で、みずから決めたあれをないがしろにした怠慢だけは責められて仕方がない、こう思うんですが、どうですか。
  47. 田村元

    国務大臣(田村元君) 運輸省とか航空会社は直接被害を受ける立場ですから、やはり私が調べてみても相当熱心にやったとは思います。けれども、このような事態が起こったということは、やはり何か欠けておったものがあるということは率直に認めなければならない。  そこで、いま外国のお尋ねでございますけれども、一部の地域におきましては日航独自のチェックをいたしております。数字を持っておりますからちょっと申し上げすと、金属探知器七台、携帯用金属探知器七十個、これを日航独自の検査体制の整備ということで外国で配置をしております。それから、保安担当官を任命したりいたしておりますが、これだけで足りるものじゃないということは申すまでもありません。  で、参考までに今度のあの飛行機の寄港する土地の検査状況というのをちょっと御報告しておきたいと思います。パリはエックス線装置、金属探知器がございます。検査実施者は警察官でございます。それから、アテネはやはりエックス線装置、金属探知器、それから警察官。カイロはもちろん同じであります。カラチは手荷物検査の機器がありません。それから乗客検査は金属探知器があります。航空局職員がやっておる。ボンベイは手荷物検査の機器がありません。開披の検査——開いて検査をする。それから乗客検査も機器はありません、ボデーチェックだけであります。そういうことがありますから、今後、外務省と十分連絡を取り合って、なお一層の強化を図りたい、このように考えております。
  48. 中村太郎

    中村太郎君 いろんな対策要綱がありますけれども、私はあれを見て一番手っ取り早くできるのは日航自体のダブルチェックだと思っているんです。したがって、これを機会にしっかり実行に移していただきたいということを要望しておきます。  それから、この種の事件の特徴といいましょうか、とにかくふだんの緊張を伴わない、一種の災害みたいなものでしょうね。だから事件の最中はうんと緊張する。それで緊張の度合いが高まれば高まるほど、今度また事件解決した際は安堵感も強いんですよね、これがのど元過ぎればになってくると思うんです。だから、私はそういう意味で総理が鉄は熱いうちに打てと言うのは至言だと思います。この際、やらなければいかぬと思うんですよね。ただ熱いうちに打って鋳型だけつくってもだめだと思うんですよ。やっぱり中身を入れて製品をつくらなけりゃいかぬ。その意味で、私は、対策要綱にとどめず、対策の要綱の中で法制化できるものはどんどん法制化をして、それで日常の義務化を図っていかないと、これはまたもとのもくあみになる、その可能性が多分にあると思うんです。その点、総理いかがでしょうか。
  49. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 御説のとおりです。対策要綱をつくるのはそう時間はかかりませんけれども、これを実行するということが大事なんでありまして、そのとおりに心得ております。
  50. 中村太郎

    中村太郎君 いずれにいたしましても、日本がこれからいろいろな外国の協力を得るためにも、あるいは強く要請するためにも、日本独自でできる体制というものをしっかりやっておかなけりゃ、これは何といったって主張できないと思うんですよね。だから、そういう意味で、私は、外国に協力を得なければ万全の対策はできない、そのこともよくわかります。そのことも十分努力をしていただかなければならないけれども、その前提としては日本自体がしっかりした体制をつくり上げる、こういうことが必要だと思うんですよ。その点をしっかりやっていただきたいと思うんです。  それから、私は、ハイジャックを防ぐには、こういう当面の施策を充実する、これが当然の条件だと思うんですよね、しかし、根本的に根絶するには、私は日本のいまの風潮あるいは教育、この問題をしっかり取り上げておかなければ絶無は期しがたい、こういうふうに判断をします。それはたとえばいまの風潮、まず国家よりも社会よりもエゴイズムが先行していますわな。あるいは権利だけを振り回して義務をおろそかにする、そういう風潮、これではハイジャック事件が起きたから正義を守るために戦おう、抵抗しようなんという考えも勇気も出てまいりませんわ。この辺をしっかりためていかなければだめだと思うんですがね。  わけても私が感じますことは、法律軽視、法律無視の問題。そうでしょう、とにかく自分たちの気に入らない法律は全部悪法だときめつけて、平然とこれを踏みにじってはばからない、そういう風潮、これがまず第一に解決されなければならぬと思うんですよ。これはやっぱりいまのハイジャク発生あるいはハイジャッカーを生み出すそのことと私は無関係ではないと思う。むしろそういう風潮がハイジャックをいつの間にか育て上げていく、そういうことにつながっていると思うんですがね。そういう意味では、言いにくいけれども、たとえば官公労のストライキ、とりわけ日教組のストライキあるいは三里塚闘争あるいは成田闘争、みんな法律無視においては軌を一にしておるんですよ。(「共産党の火炎びんがもとだ。」と呼ぶ者あり)いま話が出たけれども、とにかく今度の日本赤軍、火炎びん学生あるいは成田闘争の新左翼、これはみんな同種同根じゃありませんか。(「右翼はどうなんだ、右翼は。」と呼ぶ者あり)右翼もやらなければいかぬ。それで、私はいまにして思いますのは、この同種同根の火炎びん学生をかつて支援し、これと協調して火炎びん闘争を展開した一部の勢力、政党がありますけれども、いまにして思いますと、これらの政党の責任はきわめて重大だと私は指摘せざるを得ないんです。  いずれにいたしましても、とにかく国民全体が法律無視を断固排除する、抵抗する、こういう姿勢を貫いていかなければ、ハイジャックの完全撲滅は容易ではないと思っている。そのためにはやっぱり政府自身が、是々非々、白黒をはっきりすること、いいかげんな妥協をしない、非に対しては断固対決する、こういう厳しい姿勢を貫いていかないと、国民はその判断に迷ってしまうんですよね。大事な政府の姿勢だと思います。その点、総理、いかがにお考えですか。
  51. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今回のような非人道的な凶悪犯罪、これは私は今日の社会風潮と無縁のものではない、こういうふうに思います。これはいろいろの原因がありましょうけれども一つの大きなこの事件の背景は、やっぱり自分の主張を通すためには他人のことは顧みない、国家、社会のことは顧みない、この風潮ですね。つまり非常にゆがめられたエゴ、この風潮というものがかかわりがある大きなところじゃあるまいか、そういうふうに思えるんです。やはりもとを正すという考え方ですね、これは今回の事件処理と関連いたしまして非常に大事なことである、かように考えます。
  52. 中村太郎

    中村太郎君 最後に、一点。  文部大臣、いまの風潮の問題と関連して教育、いろんなことを言われておりますが、とにかく学校教育を受けて、そのまま過激派学生になって、そのまま日本赤軍に入っちゃうんです。しゃばの空気に当たってない。この経過から見ても、これはやっぱり学校教育に何らか欠陥があるのじゃないかということになりましょうね。しゃばの影響を受けてないんですから、この辺に問題があると思う。たとえば……
  53. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 中村君、時間が来ております。
  54. 中村太郎

    中村太郎君 はい。京都大学の今回の赤軍支持、一体どう思いますか。  それから、教育も基本的には厳しいしつけをしない。是非の判断をする、礼儀作法を守る、こういうことをさせない甘やかし教育が今日おかしな気違いみたいな学生を生んでいくということになる。この基本をしっかり踏まえていかなきゃいかぬと思いますけれども、文部大臣の所見をお伺いして、私の質問を終わります。
  55. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 御指摘のように、学校教育の中で、いいこと悪いことをきちんと区別をする、また法秩序をきちんと守らなけりゃならぬということは、それぞれの発展段階において指導するようにいたしておりますが、また全体として徳育、体育、知育、そういったもののバランスのとれた人間教育に全力を挙げなきゃならぬことは御指摘のとおりだと考えております。
  56. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 中村君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  57. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、矢追秀彦君の質疑を行います。矢追君。
  58. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 初めに、ただいまも議論されておりましたハイジャック問題について簡単に伺います。  私は、今回の政府のとった処置はやむを得なかったという感じもいたしますが、数々の検討すべきことがあると思います。総理は、今回の西ドイツ処置について、参考にすべきことがあれば参考にしたいと、このように言っておられますが、具体的にどのような点を参考にされますか。  また長崎におけるバスジャック事件は、警察当局処置によって解決に成功いたしましたが、総理はどのようにこれを評価されておりますか。最初に一言伺っておきたいと思います。
  59. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、あのような事件に対処する基本的な考え方は、法治国家として法の秩序を守らなきゃならぬということ、これが一つ。同時に、これとともに人命尊重、これを実現をしなきゃならぬ、こういうふうに思うわけでありますが、それをいかに実現をいたしていくかということになると、なかなかそのときそのときの置かれた環境、条件、その中でそう簡単ではありません。最後には最後の決断をしなけりゃなりませんが、私は、今回のハイジャック事件によりまして、わが国がとった措置はやむを得ざる措置であったと、こういうふうには思いますが、西ドイツがその置かれた環境のもとにおきまして、あのような措置をとったということは、また私なりにこれを評価しております。  私は、人命も守らなきゃならぬ、また同時に、法の秩序、法の尊厳もこれを貫かなけりゃならぬというたてまえに立ちまして、今回の西ドイツ事件というものは、これは非常に貴重な教訓を与えておると思うんです。あの事件の経過、成り行きをつぶさに検討いたしまして、そして貴重な参考にし得るところが多々あるのではあるまいか、そういうふうに存じまして、よく実情をフォローしてみたいと思います。
  60. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ぜひ二度と起こらないように、政府としては早急に対策を講じていただきたいことを要望いたします。  次に、日中問題に触れますが、総理は、しばしば今回の予算委員会で衆参ともに決意は大変述べておられます、決意は。しかし具体的にどうするかということについては、ほとんど述べておられません。外務大臣は、機は熟している、こう言われました。また私が北京に行ってこの問題に取り組むときは、最終的な決断のもとに行わなければならない。また、この問題は、福田総理の高度の政治判断により、いかに仕上げるかであり、その意味で刻一刻と近づいていると認識している、これは外務大臣の答弁です。しかし、総理は、このような決意をされ、刻一刻と近づいていると、ここまで言われながら、具体的な面になりますと、なかなかおっしゃらない。  ここで、私は、まず、そのようにはっきり言われないのは、時期を見ておられるのか。たとえば中国の華国鋒政権の今後の動向を見ておられるのか。あるいは日ソ関係を見ておられるのか。また、きょう新聞によりますと、自民党の中で何人かの議員が集まられて会合をやられた。「日中条約締結にブレーキ」と、こういうような見出しが出ております。こういった自民党内の動きを見ておられるのか。どういった点で総理が具体的な面に言及されない原因があるのか、それをまずはっきりしていただきたいと思います。
  61. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日中平和友好条約につきましては、私は、しばしば、くどいほど繰り返して申し上げておるわけですが、日中両国の満足し得るような状態において一刻も早くこの条約の締結をいたしたいと、こういうことでございます。  この問題は、私はそういう考え方でございまするけれども、いきさつがあるのです。とにかく日中平和友好条約が締結されましてもう五年になるのですよ。それで今日に至っておるというのですが、ちょうど前内閣のとき宮澤・喬冠華会談が行われた。そのときかなり突っ込んだ話をしたわけです。ところが、その後、まあいわば水が入ったというか、そういう状態になりまして、まあ具体的な接触がとだえておるわけでありますが、私は、ただいま申し上げたような基本的な考え方に立ちましてこの問題を処理したい、こういうふうに考えておるわけでありますが、とにかくこの環境づくり、これは私は静かにではあるけれども進捗をしておる、こういうふうに見ておるわけであります。すでにわが国の鳩山外務大臣と黄華中国外交部長との会談も行われ、そうして双方とも早期に日中平和友好条約を締結するということにつきましては意見が一致しているわけなんです。この問題は前進をしておるというふうに私は見ておるわけであります。別にソビエトに気がねをしておるということはありません。日中間は日中間の問題で、ソビエトとの関係は日本とソビエトの間の関係になる、こういうふうな理解であります。  また、党内におきましてどうだと、こういうようなことでございまするけれども、私は自民党をずっと見ておりまして、日中平和友好条約を締結すべからずという議論は、これは私はないと思うのです。ただ、その手順、段取りを慎重にぜいと、こういうような意見は、これはありますよ。まあしかし、私は、大局的にいま事を判断いたしまして、最終的には最後の決断をしなければならぬ。ただ、私が決断するまでの段階におきまして、私が一言この問題について何か言いますと、これが問題解決のために妨げになるようないろんな波紋が出てくるんです。  たとえば、私は非常に純真な気持ちで、夏ごろでしたか、六月でしたか、七月でしたか、新聞記者から日中問題は一体どうなっているかというような質問がありまして、私は、とにかくそうでしょう、もう私が内閣をつくってからすぐ予算の編成だ、あるいは国会だというんで、もうなかなか時間的余裕もなかったんですよというような話をします、私は素直な気持ちでそう話す、そうすると、中国側では、時間的余裕がなかったとは何だというような反響が出るくらいな状況であります。私は、静かにこの問題の処理を進めておる、こういうことであり、また私はそれがこの問題を解決する上において最善の措置である、こういうふうに考えております。私の考え方の基本は、私が内閣を組織いたしましたその後もずっと一貫してそういうつもりであります。
  62. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま言われた、静かに進めておるということですが、その中身を言うと大変になると言われますが、問題は、私はもう反覇権問題一つしかないのではないかと、こう思うんですが、その点のすり合わせでの静かな折衝なのか、その点いかがですか。
  63. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 締結をすべき日中平和友好条約、その内容の大筋はすでにもう日中共同声明で決められておるのですから、そのこと自体に問題があるわけじゃないんです。  ただ、共同声明は共同声明で、両国の政治的な姿勢をお互いの首脳が表明したという性格のものでありますが、今度はこれを条約にするということになりますると、国家間の権利義務、またそれぞれの国と国民との間の権利義務、そういうことを規定することになるわけでございまするから、これは文言については、かなり両国とももう非常に周到なすり合わせをしなけりゃならぬ。後で問題が起こって、そうして、この条約について揺るぎが出てくるというようなことであっちゃならぬ。もう日中関係というものは永遠にわたって緊密な関係になるという、その基礎をつくるところの条約でありまするから、その文言のすり合わせ、そういうことについては、これは周到にやっていかなげりゃならぬだろう、こういうふうに考えております。
  64. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そうすると、いまの総理のお話だと、条約の文革をつくることに、現在作業が進められておるところでのいろんな中国側との折衝が静かに行われておると、こういうことですか。
  65. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この条約の文言の問題につきましては、これは宮澤・喬冠華会談でかなり話があったんです。その後すり合わせというところまでこないで、そういう段階にどういうふうにして持っていくかというところまではきておるわけでございまするけれども、まだすり合わせを現実にやっておるというところまではきておりません。まあこの問題は、中へ立ち入りましてとやかく私が申し上げますと、本当にこれは支障がある、こういうふうに私は思うんです。  しかし、私が日中平和友好条約は、共同宣言の趣旨に沿って、双方が満足し得る状態において一刻も早く締結をしたいんだということはひとつよく御了知のほどをお願い申し上げます。
  66. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そこはちょっと私はわからないんですよ。総理がいま言われたこともよくわかるんですよ、共同宣言の趣旨は遵守すると、日中双方の満足することだと。では、この条文のすり合わせをやっているのかというと、まだやっていないと、こういうことですね。何が障壁になっていま静かにやられているんですか、それは言えませんか。中身までは、それは私も外交交渉ですからむちゃは言いませんけれども、何が問題になって条文のすり合わせまで入らないんだと、これは言ってもいいんじゃないですか。これに対して総理としてはこういう姿勢だと、これはいかがですか。
  67. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 宮澤・喬冠華会談でお互いの立場というものは非常にはっきりしておるんです。そういうことでございますので、その話し合いを始めたら、そうその時間がかからないように条約の締結ということができることがまたこの条約が双方の国民から祝福されるゆえんであろう。条約のすり合わせが始まった、そこでごたごたして両国国民がいらいらしたという状態でこの問題が処理されるということは私は不幸なことである。こういうふうに考えるのであります。そういう交渉が始まれば、そう障害がなくその交渉を進め得るような環境づくり、これが私は大事だと、こういうふうに考えておるわけであります。その環境づくりというのは一体どうなんだと、こういうようなことにつきましては、私はこれは申し上げない方がよかろうと、こういうふうに考えます。
  68. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 結局、その辺がよくわからないわけです。こればかりやっているわけにはいきませんので、ただ、最後に、次の国会で調印、批准を目指しておやりになりますか。
  69. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いつ幾日ということを言われると困りますが、私は、両国が満足し得るような形において一刻も早くこの条約の締結をいたしたい、こう思っております。
  70. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、財政、経済の問題に入ります。  まず、最近の円高の問題に入りますが、カーター政権について、総理はどのようにこういった最近の貿易の問題、あるいは今回の円レートのことについてのカーター政権というものを、特に日本に対して、どう評価をされておるか。これは総理、並びに、特にアメリカと交渉に当たられたことのある防衛庁長官科学技術庁長官それから通産大臣にお答えをいただきたいと思います。
  71. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) カーター政権の首班であるカーター大統領、この方は——日米欧委員会というのがあるんです、つまり、これからの国際社会においては日米欧の協力関係が非常に大事である、そういうので日米欧の指導的立場にある方方が集まりまして、そしてこの世界の政治、世界の経済の中での日米欧の役割り、これを論議する会合でありますが、その一員なんです。そしてその会員はそう多数あるわけじゃありませんけれども、今度カーター政権が誕生したそのカーター政権の中のかなりのメンバーがこの日米欧委員会のメンバーである。ブレジンスキーという人がおりますね、これは安全保障の方の最高の責任者であります。この人なんかは日米欧委員会のこれはもう中心的な推進者であったわけです。そういうようなことで、私は、今日のカーター大統領の政権というものは、世界の中で大きな役割りをしておるところの日本というものは何だということにつきましては、とにかく日米欧という三つの極のその一つ日本であるという理解を非常に強く持っておる、こういうふうに思います。  また、私は、この三月にカーター大統領と会談をしてみましたが、カーター大統領は非常に何というか宗教家的なまじめさを持った人だと、こういうふうに思います。ですから、自分の言ったことにつきまして責任を持つというようなことですね、そういうようなことは私は厳格に守っていくような立場をとる人であると、こういうふうに思います。  カーター大統領は、日米欧委員会の一員として、大統領になる前、すでに昨年の五月日本を訪問し、そしてその会談に臨んだわけであり、日本のこともよく承知していると同時に、日本という国が日米欧という中で非常に大事な国であるということ、私は非常に深い理解を持っておると、こういうふうに思うわけであります。そういうことを考えますと、今日の日米関係の中でカーター政権というものは日本立場というものに非常に深い理解を持ちながら対処していくであろう、こういうふうに考えております。
  72. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいま御質問の要旨は、カーター政権の対日関係におきまして、特に非常に自由貿易を福田総理とともに堅持して強調されておると。こういう問題に関連しまして、日本の、集中豪雨的という表現には異議がありまするが、たとえばテレビの問題にしろ、あるいは鉄の問題にせよ、そのほか自動車の問題等、そういうふうな通産関係といたしましてのいろいろな経過がございます。その間におきまして、業界その他の強い突き上げに対しましても、あくまで日本との間の協調という趣旨のもとに自由貿易を堅持するという姿をずっと取り続けておられると存じますが、われわれの方の範囲としましては、そういう経済的な接触面でございます。
  73. 三原朝雄

    国務大臣(三原朝雄君) 私は、防衛庁長官として、軍事面からカーター政権についての考察を申し上げてみたいと思いますが、カーター政権は、世界の軍事力のバランスを考慮しながら、世界平和と申しますか、戦争回避の努力をいたしておる、これは米国の本来の基本姿勢でございます、それを踏襲しておる。特に特色的に見てまいりますれば、日本及び西欧の友好国の協力を基礎にいたしまして、人権外交、そういうものの展開をいたしておるという見方を持っておるのでございます。軍事面でソ連との関係におきましては、増強するソ連の軍事力を注視しながら、米国の軍事力の整備について政策を進めておる、そういうようなことが言えるのではないかと思うのでございます。また、友好国に対しましては、友好国の軍事力と防御については自助の努力を期待をいたしておるという見方をいたしておるのでございます。  で、わが国との関係につきましては、いま総理からお話がございましたので、私がこれにつけ加えるものはございません。  アジアにおいて、朝鮮半島の問題でございますが、在韓米地上軍の撤退については、その政策を推進をいたしておるわけでございまするけれども、きわめて慎重な朝鮮半島におきまする平和と安全を期待しながら、そうした撤退を進めておるというような受けとめ方をいたしておるものでございます。  まあ以上が私が見ておりまする軍事面から見るカーター政権の施策でございまするが、現在のところ、軍事面では、総理から申されましたように、特に日本との関係で問題はございません。特に日本のアジアにおける立場というようなものをきわめて信頼し、日米安全保障体制の堅持について、両国の長期的な利益のためにも、これを堅持すべきであるという見方をいたしておると私は受けとめておるわけでございます。
  74. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 日米原子力交渉を通じましての私の率直な見解を申し上げますと、核不拡散という政策は恐らく大統領の宗教的信念から当初は出たものであろうと思います。したがいまして、特に選挙中のことですから、最初から日本一つの目標として出された政策でないことは明らかであります。ただ、日米間におきましては、御承知のとおり日米原子力協定がございますから、それに基づきまして当初はきわめて厳しい姿勢をとられたことも事実であります。しかし、福田・カーター会談におきまして、総理にも非常に奮闘していただきまして、次の一つの原則を打ち立てていただきました。それは核の不拡散と原子力の平和利用は両立し得るという大きな原則でございます。この原則に関しましてカーター大統領にも同意をしていただきましたので、今回のごとく妥結することができたと私は思います。この原則は、今後、世界におきましても大切な原則であり、今後の日米間におきましてもその親善の基をなす原則であると私は確信いたしております。
  75. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私は、総理、カーター政権というのは非常に日本にとっては厳しい政権である、こういうように評価をしておるわけです。  それは今回の円問題にあらわれておりますし、鉄の問題もございますし、いま科学技術庁長官は話し合いで解決ができたと言われますが、当初大変厳しかったことは事実ですし、やはりこれからカーター政権を余り甘く見てかかると私は大変な誤算があるのではないか、こう思うわけです。その点、いまの大臣のお話だと、大変友好的であるという評価が強いわけですけれども、いかがですか。
  76. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) カーター政権は、これは世界における日本の役割り、立場というものを非常に重視しておる。私はいまだかつてこれくらい日本の世界における役割りというものをそのように評価している政権はなかったくらいに思うわけであります。  日本に対して厳しいというか、そういう認識のもとにおいて、世界の中での日本のあり方、そういうことについて大きな期待を寄せておるという、そういう意味において私はまさにアメリカの日本に対する姿勢というものは厳しいと、そういうふうに思います。思いまするけれども日本の置かれておる立場、そういうものにつきましては深い理解を持っておる国でもあると、こういうふうに思うわけであります。  私は、アメリカが何でも日本の言うことは聞いてくれるというような、そんな甘い考えは持っておりません。日本よ責任を尽くせ、そういう姿勢は非常に厳しいですよ。厳しいですが、その厳しさというものは正しい厳しさでありますれば、私はこれに協力をするということでなけりゃならぬと思いますると同時に、日本立場、いま原子力協定に見られるように、それにつきましては私はかなり深い理解も持っておる国である、日本立場、そういうものをぜひひとつ尊重していきたい、こういう国でもあると、こういうふうに思います。
  77. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、円問題について日銀総裁にお伺いをいたしますが、ブルメンソール発言と為替相場の関係性、これをどのように見ておられますか。
  78. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 円高の基本的な背景は、あくまでも日本の経常収支の黒字であると思っております。先般のIMF会議出席いたしました場でアメリカのいろいろな方と接触いたしましたが、対日——アメリカから申しますと赤字でございます、対日赤字の縮小についての要請はきわめて切実なものがございまして、私ども国内で考えておりましたよりもより深刻なものがあったことを痛感した次第でございます。しかし、その意図を為替相場によって意図的に実現しようという、意図的な円高の策謀みたいなものがアメリカ政府にあったとは思っておりません。  IMF会議の最中におきましてはレートの話は少しも出ませんでしたが、会議が済みました直後に、アメリカの国際収支の赤字が非常に大きいこと、日本の対米黒字が対応的に大きいということ、そういうことをブルメンソール長官が話されたのは事実でございまして、ちょうど運の悪いことに、その時期にアメリカでも大変信用のあるモルガン・ギャランティー・トラスト会社の調査月報みたいなものがやはり円問題を取り上げておりまして、円は少しアンダーバリューされておるというような趣旨をぶち上げましたわけでございますが、そういうことが一つの契機になって、それまでも円高感、ドル安感が渦巻いておりましたところへ一つの勢いがついたような感じで、約二週間ぐらいの間に十二、三円の円相場の高騰を見たということになっておるわけでございます。私は、先ほど先生のおっしゃいましたように、ブルメンソール発言がきっかけみたいなものを運悪くつくってしまったということはあるかもしれませんけれども、ブルメンソール長官自身としては意図的に戦略的に円高を招こうというつもりではなかったのではないかと思っておる次第でございます。  現実には円高感、ドル安感がつのってまいりまして、海外からの投機的な円買いの殺到、また国内でも円シフトの停滞、為替銀行のポジションの変化等いろいろなことが起こりまして、ごらんのような円高になっておるというのが現状だと思っておる次第でございます。
  79. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまの総裁の発言だと、運悪くそうなったけれども意図的ではないということですけれども、現実に九月二十八日、二百六十六円九十銭であったのが——これが発言の日です、最初の。九月三十日には二百六十四円五十銭と二円近くも下がっております。また、十月の十三日、同氏が円は過小評価されている、円はもっと高くなる必要があると、こう発言をされたときが二百五十五円七十七銭、それが明くる日には二百五十三円、それからずっと以下、御承知のように、きのう現在でも二百五十二円台、こういうふうなことになっておりまして、大変私としてはこういった発言が大きな影響を及ぼしておるし、米政府としてはやっていないかもしれませんが、現実にアメリカの多くの投機家たちがこの日本の円を目がけてきて攻勢をかけておることは私は間違いないと思います。  そういった点で、ちょっと日銀総裁のいまのお話だと、これもまた非常にアメリカに対して好意的な発言ではないかと思うんですが、その点はいかがですか。
  80. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) ブルメンソール長官が円高を意図的に招く目的でああいう発言をしたという意味での意図的な戦略的なものではなかったと私は信じておりますが、結果としては、その発言によりまして円高感、ドル安感が一つの勢いを得まして、投機者がそれに便乗いたしまして円に対して投機が殺到した結果今日のような状態になったという、これは事実として認めるにやぶさかではございません。  そこで、私どもといたしましては、投機的な動きによりまして円の乱高下が起こりませんように、そのときどきの市況の実勢に即しまして介入をいたしておることは御承知のとおりでございますが、しかし、実勢にはなかなか抗し切れませんで、ごらんのごとく二週間余りの間に十二、三円余の高騰を見たような次第でございます。  なお、ごく最近のブルメンソール氏の発言につきましては、確かにただいまお話しのごとく、日本の新聞あるいはその前に外電で円、マルクはまだ過小評価されているというふうに伝えられて、それが契機となりましてまたそこで投機的な動きが起こったことは事実でございまして、それ以後私ども介入をもって対処いたしましたが、ごく最近になりまして、ブルメンソール氏のあの発言は少し誇張して伝えられておる、真意は過小評価されておるというようなことではなかったんだというような訂正の発表などもございましたけれども、まあ結果としては、しかしいま申し上げましたようなことが起こってしまったわけでございます。
  81. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 総裁の今後の予測といったらむずかしいかもわかりませんけれども一つは、現在のこの円のねらい撃ちがやっぱり対スミソニアンレート、これにあると思うんですけれども、まあ西ドイツぐらいまで上がるように今後とも攻勢をかけてくる、こういうふうな可能性はあると思われますか、その点いかがですか。もしそうとすれば、このスミソニアンレートというものをもう一度考え直す必要が出てくると思いますが、その点いかがですか。
  82. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) スミソニアンレートは一種の固定相場制として各国が協定してできましたわけでございますが、その後現実にはフロートに移っておるわけでございまして、再びスミソニアンレートみたいな新たな固定相場の動きがいますぐ起こってくるとは思っておりません。  マルクは、実情といたしましては、スミソニアンレートに対しまして四割ぐらい切り上げた結果になっております。日本は四十八年に一時二百五十四円という記録的な高値をつけました後、石油ショックその他いろいろなことがございまして、文字どおりフロートしてまいっておったわけでございますが、昨年の秋ごろからことしにかけての円相場の高騰に伴いましてスミソニアンとの比率は二割ぐらいのところまでまいっておることは御承知のとおりでございます。マルクあるいはスイスフランほどにはまいっておりませんが、二割ということは大変切り上がった結果になっておるわけでございまして、単純に西ドイツと比べてまだ切り上げが足りないと言われる、そういう簡単なものではないような気がいたします。  一つには、この物価問題一つとりましても、マルクの場合には前年比消費者物価が四、五%にとどまっておるわけでございますが、日本の場合はだんだん対前年比が下がってはおりますけれども、まだ八%ぐらいというようなことでもございますし、その他いろいろな情勢を見まして日本がマルクほど切り上げられなければならないというようなことは全然根も葉もないことであると存ずる次第でございまして、私どもといたしましては、あくまでも市場の実勢で円の適正な価格が決まるようにと、もし乱高下的な動きがございますれば介入をいたしますが、基本はやはり実勢でという立場でおりますけれども、マルクみたいなことが日本にも強要せられるというようなことは考えてもみたことがございませんです。
  83. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 これから二百四十円台への突入ということは予想されるのかどうか。政府も大変関税の引き下げとか、あるいは緊急輸入を相当大幅にまた昨日もやられたということを聞きましたけれども、それによって落ちつくのか、しかし依然としてまだこういった騰勢は続くと予想されておるのか、その点はいかがですか。そういった場合の日銀の介入ですね、もっと積極的にやるべきだと思いますが、その点はいかがですか。
  84. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 本日午前中の市場は、二百五十二円の上で六十五銭ぐらいのところまで値幅がございますが、きわめて落ちついておるようでございます。出来高もふだんの出来高に戻ってきておる次第でございます。  今後、どういう相場が予測されるか、これは私責任者の一人といたしまして、為替相場の予測みたいなことは絶対にすべきでないということを考えておるわけでございまして、もし不用意な発言をいたしますと、それがまた憶測を呼びまして、いろいろと変動を招くというようなこともございますので、将来のことはやはり為替市場に聞くしかないのではないか。ただし、その間、投機的な要因等によって乱高下がございます場合には介入もいたしますということを申し上げるにとどめるしかございませんことを御了承いただきたいと思います。
  85. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 この際、日銀総裁もお見えになったのでちょっと伺っておきたいんですが、それで総裁の質問を終わりたいと思いますが、円問題から少し離れますけれども、デノミネーションについてでございますけれども総理もしばしばこのデノミについて発言がされております。現在、金融界あるいは産業界でも、このデノミ実施に対するいろんな研究等が進められております。パンフレット等もかなり出回っておりますし、そういった点で、こういうドル攻勢というようなことも考えますと、デノミというのも一つの考え方の中にあるかと思いますけれども、総裁は、このデノミの前提条件、それから方法、いろんなタイプ——いままで行われた各国のタイプは三つございますけれども、そのタイプ、それから時期、それから資産再評価あるいは税制改正、こういった点について、どうお考えになりますか。
  86. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) デノミネーションというのは、本来ならば単なる計算単位の変更ということでございますので、実体経済には余り影響がないはずのものでございますが、しかし、いざ実行するとなりますと、これは大変な国民経済上の大きな問題なのでございまして、その影響もなかなか大きいのでございます。私どもといたしましては、目下のところ全然検討であるとか準備であるとかいたしておりませんが、もしデノミネーションが行われるとするならば、それはもう少し経済の諸般の関係、特に物価関係など安定した暁において、デノミネーションが単に計算単位の変更として受け入れられるような落ちついた経済の雰囲気が整ってきたときであるというふうに考えておる次第でございまして、まだまだそういう時期には当分ならないのではないかと考えておる次第でございます。したがいまして日本銀行といたしましては具体的には何も検討もいたしていないのが実情でございます。
  87. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 この問題、総理、一言。
  88. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 日銀総裁はいいですか。
  89. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 結構です。
  90. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 日銀総裁は御退席されて結構でございます。まことにありがとうございました。
  91. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、かねてから、いまの一ドルが二百何十円だというような状態は非常に不自然だ、こういうふうに考えまして、いつの日にかいわゆるデノミネーションを行うべきだ、こういうことを考えておるわけであります。それはしかしタイミングはどうだ、こういうことになりますと、いま日銀総裁が申し上げましたように、これは経済諸般の角度から見て落ちついた時期でないと行うべきではない、このように考えております。ですから、私は、早く日本の経済が、物価の面から見ましても景気の面から見ましても国際収支の面から見ましても雇用の面から見ましても、まあまあ落ちついたというような状態を早く実現をしたい、こういうふうに考えておりますが、その際にはこのデノミネーションを行いたい、こういうふうに考えております。
  92. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 午前中の質疑はこの程度にとどめます。  午後一時から委員会を再開し、矢追君の質疑を続行いたします。  これにて休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      —————・—————    午後一時二分開会
  93. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十二年度補正予算三案を一括して議題とし、矢追君の質疑を続行いたします。矢追君。
  94. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 総理、午前中の最後に一言触れたデノミについてもう少し具体的にお聞きしたいのですが、総理は前々から言われておるのと同じ答弁でございましたけれども、私が先ほど申し上げましたように、すでに各方面では、こういうデノミについてその意義と効果とか、かなり詳しいのが出ております。目的それから経済社会環境あるいはデノミが実施されたらどうなるか、そういうようなことが出ておりまして、かなり具体的に各方面においては総理の発言というのが引き金になりまして話が出ておるわけです。したがって、ただ安定したからやるのではなくて、大体どれくらいの規模で、それからどういう方法で、そういった点まではやはり言いかねるという状況ですか。
  95. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) デノミをどういう形で実行しますか、この実行の態様はいろいろあると思います。思いますが、私がここではっきりしておきたいこと、言えることは、このデノミに関連して財産税というか、戦争直後とりましたあの措置、ああいうようなことは考えておりませんし、考えてはならぬと、こういうこと。つまり、デノミの際に金融資産といいますか、それを調べて、そしてそれに対して何か税制上の措置をとるとか、このことはすべきではないと、かように考えております。
  96. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に私は、経済見通しについて伺います。  本年の三月の当委員会におきまして、私は政府の輸出につきまして、この伸びの見通しは大変少な過ぎると、こういう点を指摘をいたしました。それに対して経企庁長官は、世界の貿易の伸びが落ちてくる、この趨勢を踏まえた客観的な数字だと、このようにはっきり言われたわけです。現状においては伸びていることは御承知のとおりです。この改定見通しの誤差ですね、今回見通しを変えられましたが、その点の根拠と数字を挙げていただきたいと思います。
  97. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) お答えします。  五十二年度の当初見通しにおきまして、輸出等は二十六兆七千五百億という数字でございましたが、今回の改定見通しで二十五兆六千億という数字になっております。これは名目では必ずしも——その数量的にはそう伸びていないわけでございますけれども、名目的なものがあるわけでございます。比較的日本の産業の競争力が非常に強かったと、むしろ輸出の面よりも輸入が思ったように伸びなかったということが貿易収支あるいは経常収支の黒字につながっていると、そういうふうに考えておるわけでございます。
  98. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 これは総理も輸出はそう伸びないと、こういう点をはっきり言われたわけですね。この点について、いま輸入が伸びなかったから、だからこういう改定になったと、こういうふうに言われますけれども、輸出もやはり伸びているわけですね、現実には。で、特に黒字がこのようにたまってきておる、これは完全な見通しの誤りと、そういう点ははっきり断定してよろしいですね。
  99. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 企画庁長官が申し上げましたように、輸出の方はそう見通しは狂っておらないんです。むしろ名目で言いますと相当減っておる、こういうような状態です。ただ、輸入の方が思ったように伸びない、そこに黒字が思ったよりも多いという原因があるわけなんです。実質でいきますと、当初見通しでは五・四%の伸びというのが六・〇と、名目で言いますと、これが一一・七の伸びと当初見ておったものが四・二%の伸びである、こういうことになっております。輸出としますと、大体これは見通しそのとおりに近いところでいってるんです。輸入が非常に低調であったというところに黒字が見通しが狂ったと、こういう原因があると、こういうふうに御理解願います。
  100. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 この原因は、一つは内需の喚起がおくれたことにあると思いますけれども、結局こういうことで、先ほど私が午前中議論しましたように、この輸入を怠ってきた、伸びなかったと総理は澄ましておられますけれども、怠ったわけですね。で、アメリカからこのように殴られてから初めて緊急輸入をやると、こういうことでいまあわてて政府はいろいろ対策をされておるわけですが、この経済見通しのとおり輸入を伸ばしておけば、今回のような事態はそう来なかったわけです。私はこういうことにはならないという予測をこの三月にしたわけですけれども、私の予測のとおり、結局政府の見通しが誤ってしまったわけですね。この責任といいますか、この見通しの誤り、ただ総理、いま輸入が伸びなかったんだと、こう言われますけれども、その結果このような状況にいま追い込まれているわけですから、これはどう責任をおとりになるか、どうされるか、その点いかがですか。
  101. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ輸出でありましても輸入でありましても、政府がやっておるわけじゃない。これは業界が政府の施策等も参考にしながらやっておると、こういうものでありまして、そう政府のコントロールがきくような性質のものじゃない。ありませんが、この景気活動、特に設備投資の増加ですね、これが思ったような状態にいかなかったということ等から輸入が低調であったと、こういうことになってくるわけであります。それじゃ設備投資が一体どうして伸びなかったのかと、こういうことになりますが、これは伸びることは若干は伸びておるんでありますが、やっぱり構造不況業種ですね、これの状態が非常に深刻である。一部に好況産業があるが他方において構造不況産業を抱えておる、そういうところに根本的な問題があると、こういうふうに見ておりますが、いずれにいたしましても、設備投資が思ったように伸びなかったということについましては、私ども不明を恥じております。
  102. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 その設備投資も、私はこの委員会でやはり伸びないという、政府の見通しは大変大き過ぎましたと、それもちゃんと指摘をしてございます。そういうことで、いま総理はともすれば政府の責任でないような言い方をされました。もちろん政府がコントロールできるような体制でないことは私も知っています、日本の経済は自由主義経済ですから。いわゆる統制経済ではないから政府の力で何でもできるとは思いませんが、少なくも、政府がいま設備投資が伸びなかったその点はお認めになったわけですけれども、この点を総理は、民間よりも財政を主導にして財政でこの景気回復を図ると、そうして総理のいままでの発言であれば、いまごろはもう景気は回復して順調な安定経済の路線に乗っておる時期です。全治三年論もそうです。また、梅雨明けには回復するとか、いろいろ言われました。それは全部狂ってきて、しかも、その一番肝心の財政で総理が景気回復をさせると言われたのが、これが不調に終わって、その後民間がついてこなかった、そしていま言われたように民間設備投資の伸びの見誤りが行われ、そして輸入が間違って、そうしてこのように円高ということになってきたと、これは大変私は大きな問題があると思うんです。その財政で、一番総理が頼りにされた財政による景気刺激、これは成功しておりますか、どうですか。
  103. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 民間の設備投資が不振であると、それにもかかわらず経済を成長発展させるということになりますれば、これは財政がその役割りをするというほかはないのでありまして、この私どもの財政主導による景気政策、これは私は成功していると思うんです。現に、もう今年度に入りまするとかなりその傾向が出てきておる。四−六期、これは一・九%の成長です。それを分析してみますと〇・九、つまり半分は財政がこれを支えておるというような状態であり、ことし二兆円の追加政策をとりますが、その結果を分析しますと六・七%成長になる。そのうち六%は内需がこれを支えておる。その内需の中の主要なる要因は財政と国民消費ですよ。わずかに〇・七%だけが輸出がこれに寄与すると、こういう状態になるんだと。そういうようなことを見ましても、財政がいかに大きな役割りをしておるか、これはおわかり願えると、こういうふうに思いますが、ただ、それにもかかわらず景気全体としては不調でありまするけれども、この財政のそういう支えがなかりせば一体どういうことになったんだということを考えれば、財政が今日の経済を支えておるその大きな主軸であるということは御理解をお願いできると思います。
  104. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま総理の言われた数字に見る限りは、財政があったから破綻を免れたと、何とか支えておるということは言えると思います。しかし、政府が最初言っておられたほどの効果が、実際いま総理もお認めになっているように、現実にはまだまだ不況感というのが国民の間には充満しているわけです。事実倒産も減っておりません。また失業もふえる一方です。これから構造不況業種の対策をとられたならば結局失業者はさらにふえる、こういう形になるわけですから、不況感はぬぐわれていないわけです。この政府が一生懸命おやりになった公共投資の前倒し、これも契約の面で見ればある程度政府の言われておる線に来ておることを私は否定はいたしません。しかし、まだまだものによりますと大変おくれておるものもあるわけです。  この政府からの資料によりますと、一般会計によりますと住宅対策、工業用水道事業、社会福祉施設整備等の契約率、これは他の費目に比べますと低い契約率にとどまっております。それから同じ資料で特別会計では港湾整備、公団事業団では水資源公団、それから京浜、阪神外貿埠頭公団、雇用促進事業団等の契約率、これが非常に低いわけです。こういった点はどういう理由でこう低くなっておるのか、その点説明願いたいと思います。
  105. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) お答えをいたします。  私の方が七三%という目標値よりは低いことは事実でございます。その理由は、雇用促進事業団の公共事業部門の約四三%が雇用促進住宅であります。土地の取得難等によっておくれておりましたが、八月中にほぼ、たしか六八%程度まではなったように覚えておりますが、なお促進に努めます。
  106. 長岡實

    政府委員(長岡實君) 矢追委員御指摘のとおり、個別の事業種類別に見ますと契約状況のおくれているものが若干あるようでございます。ただ当初の、公共事業等全体について七三%を上半期に契約をいたしますという目標を立てましたときに、事業別に最初からとても上半期には七三%いかないという事業もございまして、あるいは逆にそれ以上進むというものも合わせまして、平均七三%の目標を設定したわけでございます。  ただいま御指摘の点で、最近私ども関係各省から事情を聴取いたしましたところでは、ただいま労働大臣もおっしゃいました雇用促進事業団を初めといたしまして、住宅対策、社会福祉施設整備、阪神高速道路公団、阪神外貿埠頭公団につきましてはおおむね目標率を達成できる見込みと承っております。目標率を若干下回っている模様のものとしては工業用水道事業、港湾整備、水資源開発公団、京浜外貿埠頭公団がございます。これらにつきましては、用地あるいは漁業補償の難航、工場進出の出おくれ等に起因して若干事業におくれが生じているものと思われます。全体といたしましては、上半期七三%の契約目標はほぼ達成できるものと考えております。
  107. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、地方自治体について伺いますが、これは自治大臣にお願いをいたします。  政府からの資料によりますと、八月時点の調べで契約率は五八・五%、中でも千葉県の四六・二%、それから沖繩の四四・〇%、これが低いところにございます。さらに五〇%台の県は二十八県に及んでいます。地方は相当無理をして契約率を高めておる、政府から督促をされて大変無理をしておると聞いておりますが、その現状と契約率達成の見通し、特におくれておる県の実情、これについて自治大臣にお答えいただきたいと思います。
  108. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) 地方公共団体が公共事業の三分の二を担当いたしておるわけでございますから、景気浮揚という観点から繰り返して契約の促進方を要請してきたわけでございます。八月末の実績が仰せのとおり五八・五%でございますが、これは昨年度の九月末の実績でありまする五九・二%とほぼ一致する数字でございまして、相当積極的に地方公共団体が公共事業に取り組んでおることを示しておると存じます。目標でありまする七三%はほぼ達成できると考えておるわけでございますが、場所によりましては、あるいは大規模の団地等で用地の取得が思うに任せなかったというような事情のあるところもあり、あるいけ技術者の獲得が困難であるというような場所もございます。それぞれの場所につきまして政府委員からお耳に入れます。
  109. 山本悟

    政府委員山本悟君) 御指摘の各府県、いろいろばらばらであることはそのとおりでございます。特に八月末現在等で率の低いところ、ただいまおっしゃいました千葉とか沖繩とか東京とかいろいろあるわけでございますが、たとえば千葉直で申し上げますと北総ニュータウンあるいは東京湾の埋め立て、こういったものの工事が約五百倍あるんでございますが、これらがなかなか手がつかない、そういった事情。あるいは沖繩等におきましては技術者の関係といったようなことで、人事異動等の影響も受けてなかなか思うように事業が進まなかった、かようなそれぞれの地域におきまして、府県によりまして違った事情があるようでございます。総じて申せますのは、関東地区が千葉、東京、埼玉、神奈川等は比較的低いのでございますが、多くは、たとえば高等学校の用地の取得難と、こういったところがどうしても率として響いてくる。こういうのが各県につきまして当たってみました結果の主たる理由でございます。しかし各県ともいろいろと努力をされているようでございまして、都道府県に関しましては九月末で七三%が達成できるのではないかと、かように存じているところでございます。
  110. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま契約率で申し上げましたが、支払い済み額で見ますと、これは大変まだまだ進んでいないという状況が出ております。予算規模、予算現額に対する支払い済み額の比率を見ますと、合計欄では二五・一%、これは昭和五十一年度で二五%、五十年度で二六・二%、四十七年度を比較しますと二四・一%、こういう状況では実際契約が行われてもお金が入ってくるのがおくれているわけですから、実際の事業が進まないということになるわけです。で、会計別に見ますと、一般会計と特別会計は前年度より比率は高いんですが、政府関係機関、公団及び事業団、これは大変支払い比率が悪くなっております。これはどういうことなのか。特に、支払いの額というものをもう少し注目すべきと思いますが、その点もあわせて答弁をいただきたいと思います。
  111. 長岡實

    政府委員(長岡實君) 御指摘のとおり支出のベースでまいりますと、契約ベースに比べましていままでの進捗割合、必ずしも大変進んでいるとは申し上げるような状態でございません。いまおっしゃいましたように、大体五十一年度、前年度をちょっと上回る程度の支出の状況になっております。これは具体的に各個別契約の事業内容等によって支払いの時期が変わってくるわけでございまして、私どもといたしましては支払いが遅延しないように十分監視をいたしまするけれども、契約の段階で資材等の手当てが行われるということに重点を置いて契約の促進を図ってまいっておる次第でございます。  御指摘の政府関係機関、特に公団、事業団等について非常におくれておるではないかという点でございますが、これらの事業は事業規模が比較的大きなものが多うございまして、したがって支出につきまして、前年度の債務負担行為による債務負担の時期、事業内容あるいは事業の完成時期等に左右されまして、支出時期が年度後半になっているものなどが多いからではないかと考えております。いずれにいたしましても各省庁から十分事情を聴取いたしまして、順調に進めてまいるように努力をいたしたいと存じます。
  112. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 自治大臣、地方自治体はこの支払い率についてはどうですか。
  113. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) 八月末の時点で三五%となっております。なお引き続いて促進方を要請いたします。
  114. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 総理、いまお聞きでおわかりのように、契約率は大体七三%前倒しがほぼできると。物によってはできないところもありますが、そういう見込みを言われましたが、これはあくまでも契約でございまして、結局、実際支払いの方をもっと重要視しない限りは、私は本当の好況感が出てきたということは言えないと、こう思うわけです。いつも契約率だけでこう前倒しと言われておることは、結局口先と言ったら恐縮ですけれども、表面だけのこれで公共事業は進んでおるんだということになるわけでして、たとえば支払い率を見ますと、いま自治大臣言われたように五八・五が三五%です。当初予算から見れば地方自治体の場合二〇・五%、まだ五分の一しか支払いができてないと。総理のおひざ元である群馬県はちょうど平均よりちょっと上の三七・三%、それでもこれ当初予算から見ると一九・五と平均より下がると、こういう状況なんですね。特に私は地方自治体をこれから重要視したいのは、生活関連あるいは福祉関連は地方自治体がやることが非常に多いわけです。そういった意味で、地方自治体が仕事をやることが特に中小零細企業にも大きな影響を与える、こういうことで申し上げておるわけですけれども、それも含めまして、この前倒しが七三%いったから、だからいいんだというのではなくて、支払いの方もここぐらいまでいかなければ本当の好況感は出てこないと、こういうふうな言い方に変えていただきたいと思うんですが、その点いかがでしょう。
  115. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 御説のとおりでございますが、それにいたしましても契約がこれがもとでありますから、その契約に基づきまして資材の需要が起こってくると、こういうこと。これはかなり早く私は起こってくると見ておるんです。そして、その資材等を使いまして工事が進捗いたしまして支払いと、こういうことになるわけでありますから、支払いの方もこれが促進されるように、これは気をつけていかなけりゃなりませんが、とにかく総体として見ると、いまの日本経済、これはいろいろ問題を抱えておりまするけれども、こう枠組みとしましてはかなり高いところへだんだんといっているんですよ。今度の二兆円施策、これをとらぬでも五・九%、こういうことが言われるくらい上昇過程にあるんですが、それを支えているのは何だというと、これは公共事業なんです。また公共事業を中心とするところの政府支出なんです。政府支出というものが非常に重要な役割りを持っておる、そういうことに思いをいたして、支払いにつきましても鋭意これを推進したいと思います。
  116. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、現在のこういった円高の中で大変大きな問題になっておるわけですけれども、この間政府で出された総合経済対策、これといい、こういった二百五十円台、あるいは場合によっては二百四十円台に突入する——一ドルですね。そういった時代を踏まえまして、五十年代前期経済計画、こういったものもこれは根本的に見直さなければいけないと思うんです。  まず第一番目に、この総合経済対策——この九月に発表された。これはこの範囲内で、この円高の状況も含めて総理は乗り切れるという自信がおありなのか、あるいはこの補正予算、これで十分手当てができるというお考えなのか、場合によっては第二次補正ということはあり得るのか、その場合は一ドル二百四十円台に突入した時点を言うのか、その点いかがですか。
  117. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 政府の中期的なこれからの経済の展望、これは五十年代前期五ヵ年計画、これをとにかくにらんでやっていきたいと、こういうふうに思っております。ただ、経済のことでありまするから、そのときどきの客観的な世界情勢によりましてはわが国の経済は影響を受ける。まさに、今日わが国の置かれておる立場というのはそういうところがあると、こういうふうに思いますが、あの中期計画、これをにらみながら、その時点その時点でその調整を加えていく、これが基本的な考え方であります。  それから、この間の二兆円施策、これによってことしの経済はいま政府が言ってるように動いていくかと、特に為替円高、この状況下においてどうだと、こういうお尋ねでございますが、為替の状態はどういうふうになっていくか、これはちょっといま見当つきません。まだしばらく推移を見なけりゃなりませんけれども、これが非常に深刻な影響を与えるという事態におきましてはそれぞれの手当てをしなけりゃならぬ、これは当然でございます。当然でございまするけれども、とにかくあの二兆円施策、あれはおおむね六・七%成長という政府の見通し、これは実現されると、そういうふうに確信をいたしております。
  118. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そうすると、これは大蔵大臣に聞きますけれども、この間IMFで演説をされたときの、国内の内需を喚起しますと、それからいま総理の言われた、最初六・七ですね、今度は六・四ですか、それで十分であると、それをにらんだ上で言われたのか、その点いかがですか。
  119. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) お答え申します。  先般IMFへ出まして、そこの総務総会、その他の会議へ出ましたが、機会あるごとに私は、日本の今日の経済情勢は、この国内の景気を着実に回復をしまして、そしてそれによりまして内需を喚起するということによって国内の経済を安定へ持ち込んでいき、それからそれを通じまして国際的の収支、これをだんだんとバランスを回復していくということで鋭意やっておりますと、こういうことを申し述べてまいったんですが、帰りましてからも、御案内のとおり、経済の総合対策につきまして、あるいは住宅公庫の十万戸の貸付枠、それからまた、いま御審議を願っておりまするこの補正予算等でもって、IMFでも申し上げましたことを、これを何としてでも実行に移してまいりたいと、かように考えておりますが、さらにまた、IMFにおきましては日本の黒字に対しまして大分批判を受けたことは率直に申し上げます。それを減らしてもらいたい、ひとつできるだけ輸入をふやしてもらいたいと、こういうような話もありましたので、私は帰りまして、総理の御指示もこれあり、私も参加いたしまして、関係閣僚の皆さんに非常な御協力を願いまして、石油の備蓄等を中心といたしまして輸入の増大を図っていくというようなことでもって、私は日本経済を、これを着実に回復して、それをもって国際経済に貢献をしていくということに相努めておりまして、必ず私は六・七%の成長率を達成いたしまして、IMFにおける私のお話ししましたことを実現してまいりたいと、かように考えております。
  120. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 総理、先ほども少し触れられましたが、五十年代前期経済計画、これはかなり守るというふうなお話ですね。ところが実際は、五十  一年度においては「着実な景気回復と雇用の安定を実現する」とあります。「五十二年度以降計画期間の前半はこれら需要項目の着実な増加に加えて、民間設備投資もかなりの増加に転ずるものと予想されるため、やや高目の経済成長が実現し」と、こういうことが言われておるわけですが、これは現実は全然違うわけですね。したがって、先ほど言ったようにこれの見直しはあり得るのか、もし総理があり得るとすれば新たな経済計画はいつ提出をされるのか、その点はいかがですか。
  121. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 五十年代の前期五ヵ年計画は、これは非常にあらゆる角度から検討いたしまして総合的にまとめ上げたものでありまして、これをいまもうだめになったという、そういうわけにはいかぬと思うんです。あれはとにかく五十年代前期のあるべき姿、これを展望したものでありまするから、これはとにかく私はこれをにらんで経済運営をしたい、こういうふうに思っておりますが、しかし、その中でその一つ一つの年度においてどういう形になるかということは、これはもうこういう激動期の中でありまするから、これは違った面が出てきます。それは出てきた面は出てきた面でとらえまして、そしてその時点において経済見通しを立てる、こういうふうにしていきたいんです。その際には、五十年代前期五ヵ年計画、これがその年度においてどういう立場になったか、どのくらいのずれになってきておるか、そういうようなことはいわゆるフォローアップといいますか、点検は十分していきますが、この計画を廃棄するという立場はとりたくないと思います。
  122. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私は、国民が願っているのは、もちろん経済は変動するものですけれども、やはり安定した計画も立てなくちゃならない、そういう意味ではきちんとした長期計画あるいは中期計画、こういったものを望んでいるわけです。それがいま、一年ぐらいは狂ってもしようがないじゃないかと総理は言われますけれども、それでは国民はますます不安になるだけでして、やはり私は現在は大きな変動の時代だと思います。それだけに一日も早く安定をして、そうして総理のこの経済計画に盛られておるきちんとした目標に近づけるというのが私は政府の責任だと思うんです。重ねていかがですか。
  123. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) あの計画はこれからというか、五十一年から十カ年を展望しまして、これは大体資源エネルギー、そういうことを考えますと六%ぐらいの成長を考えていった方がよかろう。しかし、現実の問題とすると平均毎年六%というわけにはいかぬ。石油ショックの影響を受けまして属間設備に過剰な状態があるわけですから、過剰なところへ設備投資が起こるはずがない。設備投資が起こりにくいこの初めの段階、この段階におきましては平均の六%より高目の成長政策をとろう、こういうことを言っておるわけなんです。この考え方の基本は私は誤りはない、こういうふうに思います。時間的に若干のずれはこれは出てきておる、こういうふうには思いまするけれども、十カ年を展望し、その中で五ヵ年間をどうするかという基本的な構え、これは前期五ヵ年計画に含まれておるところの思想でやっていきたい。それでありますが、そのときどきのその年度におきましてどういう具体的な措置をとるべきかということにつきましては、その時点において検討しながら対応していくと、こういうふうにいたしたいと思います。
  124. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、補正予算の中身について伺います。  人事院勧告で公務員の給与改定六・八%アップが勧告されておりますが、その実施に要する費用がどれだけ計上されておりますか。
  125. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) お答え申します。一  従来から給与改定に当たりましては、五%引き上げ分は当初予算で計上するということは、これは御案内のとおりでございます。そこで今度の勧告に基づく予算の引き上げでございますが、その引き上げの率が六・九二%ということに相なっております。そうすると、五%の間の開きというものが二%にちょっと足りないというぐらいのものでございますが、そうすると、各省庁あるいは部局におきまして、いろいろ人事に対する——いろいろと節約だとか節減だとか、そういったようなものがございまするので、ちょうどその節減を五%にプラスいたしますれば、この要望されておるベースアップを満たすことができるというようなことに相なるものがございますので、そういったようなところではこれは予算に計上をいたしておりません。  予算計上の総額でございますが、六百九十四億円ということに相なりますが、省庁におきましてそれを計上していないところがあるわけでございますので、その点ひとつ御理解願います。
  126. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 大胆、先に答えを全部言ったらだめじゃないですか。まだこれから聞くわけです。そういう先回りをされると困るんです。  いま大臣は大体答えてしまいましたけれども、厚生大臣、農林大臣、通産大臣、まあ大蔵大臣はいま答えられましたので、これはちょっと別にしますが、いまの三省庁で職員基本給、超過勤務手当、退職手当の追加補正は計上されておりません。その理由を説明してください。
  127. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいま大蔵大臣からお答えがありましたように、ベースアップに伴う財源措置につきましては、執行上支障のないように十分配慮いたしてございまして、その中身につきましては事務当局から説明させます。
  128. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 農林省関係、特別会計を含めまして給与改善所要額は百五十四億六千万円でございます。そのうち、先ほど大蔵大臣からお答えございました当初予算で五%計上してある分、百七億三千万円を残しまして、さらに人件費の既計上分の中で不用額等がございまして、補正予算として計上いたしておりますのは四億五千万円でございます。
  129. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 厚生省は五%の予算がとってございますし、あとは経費の運用等で賄うつもりであります。ただ、らい療養所におきましては不足がございますので、不足額を補正予算要求いたしました。
  130. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 私の方に御質問の御通告がなかったものでありますから、まだ給与担当官が参っておりませんので、至急呼びまして、後刻お答えいたします。
  131. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま二省からお答えをいただきましたが、相当たくさんある政府関係機関の中で、計上されておるところと計上されてないところが大変ばらばらです。大蔵大臣はいまいろいろ言われましたけれども、どうしてばらばらになったんですか。たとえば防衛庁というのは非常にきちんと出ているわけですね。非常に人数が多いわけです。じゃ少ないから出ない、多いから出るんだという議論のできないことは、もっと小さい、たとえば会計検査院でもちゃんと出ているわけです。ところが、いま申し上げたような大蔵本省あるいは農林省、厚生省に至っては、いまありましたように本省とか試験所では出てなくて、らい療養所だけ出ていると、こういう非常にばらつきがあるわけです。それはただ一律の五%の範囲内におさまると、そういう単純な議論でいいのかどうか、その点はいかがですか。
  132. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 大体原則は私が申し上げたとおりと思いますけれども、各省にわたることでございまするから、主計局長をしてお答えさせます。
  133. 長岡實

    政府委員(長岡實君) 給与改定に要する財源措置の仕方でございますけれども、ただいま大蔵大臣から御説明申し上げましたように、当初予算に五%分を計上し、それから具体的な人事院勧告を受けましてから所要額をはじきまして、各省ごとに欠員の充足状況あるいは新規増員の採用の時期の状況等によって、予算がどの程度捻出できるかということを工夫していただくわけでございます。各省の事情によりまして、なかなか欠員が出た場合に充足をおくらせるわけにいかないという事情、あるいは職員の新規採用を抑えるわけにはいかない、時期をずらすわけにはいかないというような事情が異なっておりまして、それによって不用額の出方が各省庁によって違ってくるわけでございます。不用額によってもなお足りない分を今回予算補正でお願いしているわけでございまして、数省の省庁におきましては五%分と、ただいま申し上げましたような捻出額によって給与改定の財源が賄えるということで、追加補正をお願いをしておらない省庁もあるわけでございます。
  134. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま主計局長も言われた不用額ですね、これは私は非常に問題にしたいと思います。各省にわたって退職手当を当初、補正、決算と見ますと、退職手当の流用に伴う減少と不用額の計上が大変多いわけです。職員基本給にも流用による減と不用計上が見られるわけですが、退職手当のそれはきわめて巨額になっております。この辺を非常に私は問題にしたいわけです。たとえば、小さい組織である会計検査院でも使用したのは六二%、一億二千万が不用として処理されている。これは四十九年度です。五十年度でも追加補正されておりませんが、当初計上四億四千万中三億五千万の支出で七九%にすぎないと、こういうことになっているわけです。また、大蔵省では四十九年度では十八億円が不用、五九%しか使っていない。こんな状況ですから、いま言われたようなことだけでは非常に理屈に合わない。というのは、結局は当初予算のこの職員基本給、超勤手当、退職手当の立て方が、大変この計算がずさんではないか。いまいろいろ事情をおっしゃいましたけれども、それでは防衛庁のような大変たくさんの人数を抱えたところがきちんとした形で計上されている。そして追加補正されておる。小さいところでもされておる。そういった点はどうお答えをなさるわけですか。いかがですか。
  135. 長岡實

    政府委員(長岡實君) 各省庁の人件費の予算につきましては、退職手当も含めまして、各省庁別の現員現給調べ、あるいは退職手当につきましては各省庁別の退職見込み者調べといったようなものを各省庁からとりまして、それに基づいて翌年度の予算の積算を行い、計上しておるわけでございます。御指摘のように、予算どおりに執行されずに、足りない省庁あるいは予算を余す省庁が出てまいっておることは事実でございますけれども、これは一応当初の予定と実績と申しますか、その実行状況にずれが生じたためでございまして、私どもといたしましては、決して一律のずさんな積算を行って予算を計上いたしておるつもりはございません。
  136. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私は、決してこれは当初が高過ぎるからといって給与を上げるなとか、そういうことを言うわけではないわけでして、誤解されると困りますが、要するにこういう形で出されただけの予算書では非常にわれわれとしてはわかりにくい。予算審議をする上においてはもう少し親切であっていいのではないか。きちっとした人数が出ておるわけですから、もう少し当初予算でこういう理由でこれだけを組んだと、今回ベースアップが決まったからそれに伴ってこれだけの補正をした。これはしなくてもいいんだ、これは途中でこういう出入りがあったからだとか、ある程度は、細かいところまで出すのは大変でしょうけれども、そこまでを出すのが私は国民に対して予算というもの、特にいまこういう経費削減が大変言われておるときですから、それは私は国民に対する親切ではないか、こう思いますので、今後これをどういうように変えていかれるのか、その点大蔵大臣いかがでしょうか。
  137. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 御指摘の説明資料の点でございますが、でき得る限りひとつ詳細に提出をさしていただくということにいたしたいと思います。
  138. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、私は消費者対策について伺いたいと思います。  今回の総合経済対策で、消費者に対する対策としてはどのようなものがございますか、通産大臣。
  139. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 消費者に対しまする対策といたしましては、御案内のとおりに、先般来いろいろと問題になっておりました中小企業関係の大店舗法の問題でありますとか、あるいは商調法の問題でありますとか、そういうふうな中小企業の機構上の問題もございまするが、同時にまた、大局的に言えば物価の問題でありますとか、そういうふうな問題と関連をいたし、同時にまた、さらに一般の景気対策というものが、これが根底に全面的に出ておるわけでございます。景気浮揚の問題につきましては、御案内のとおりに、中小企業対策と並びまして構造問題も、さらにまた一般の中小企業に基づく諸対策を景気浮揚のためにあえて行っておる次第でございます。
  140. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまの通産大臣の話は非常に大ざっぱで、私が聞こうとしているのは総合経済対策の中で具体的に消費者に対して何らかのプラスになることはどんな施策ですかと聞いておるわけです。
  141. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 直接の問題といたしましては、一番端的にあらわれてまいりますのが消費者に対しまする信用条件の改善という問題、つまり金利の引き下げ等の問題と相関連いたしまして、特に内需の喚起にも影響の多い割賦の販売の条件緩和という問題が考えられるだろうと存じます。そのほかには消費者ローンの拡充の問題、民間金融機関からの融資の消費者ローンの増加といったような金利の問題とも関連する問題がございます。
  142. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そういうことはわかっているんですよ、もうここに書いてあるのだ。具体的に何をどうしましたかと聞いているわけです。
  143. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 詳細は政府委員からお答えいたします。
  144. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) お答え申し上げます。  割賦条件の緩和につきましては、九月の十九日に関係審議会を開きまして、まず自動車につきまして、たとえば乗用車でございますれば頭金が現行二〇%でございますが、これを五%引き下げまして一五%、それから支払い期間は従来二十カ月でございましたが、これを五カ月延ばしまして二十五カ月、そのほかトラック、バス等につきましても同様の手を打ちました。次に家電製品で、エアコンとカラーテレビにつきまして、現行の頭金比率一五%を一〇%と五%引き下げることにいたしまして、十月一日から実施すると、このような手配を済ましております。
  145. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 もう少し詳しく言えませんですか。
  146. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 消費者ローンについて申し上げます。  現行の消費者ローン金利は、この七月に、これは種類によって違いますが、〇・七五ないし一%引き下げられましたが、十一月からさらに〇・七五ないし一%の引き下げを行うことが決定されております。この結果、消費者ローンの金利水準は合計一・七五低下いたしまして、非常な引き締めのときの四十七年当時と同水準になることに相なります。消費者ローン金利につきましては、一・七五%の低下幅は、資金コストである預金金利の低下幅、これは今春来一%ないし一・五%、この低下幅を上回っております。また、前回の引き締め期において、公定歩合やあるいは短期プライムレートが四・七五も上昇した際にも一・七五しか引き上げられておりませんで、比較的安定的に推移してきておるところでございます。  以上でございます。
  147. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 通産省、家電については品目はどうですか。
  148. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) カラーテレビ及びエアコンディション機械でございます。
  149. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 通産大臣、まず今回の緩和で恩恵に浴すのは自動車、トラック、バスそれからエアコン、冷暖房、しかも三キロワット以下、それからカラーテレビのみと非常に品目は少ないわけですね。頭金あるいは利率は確かに下げてはおられますけれども、非常に範囲が狭いのではないか。これだけの不況時代、しかも今度の補正予算では減税は行われませんでしたし、社会保障もそう大きな増額がないわけですから、やはり消費を伸ばすという点については、もっと大幅に拡大をすることを考えてもよかったと思いますが、この点はいかがですか。
  150. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいまお答え申し上げたごとくに、当面の問題といたしまして、自動車あるいは家電製品等々の割賦販売に基づく引き下げをいたしたわけでございますが、なお今後ともに消費者大衆の面におきまする内需の喚起といいう大幅な経済対策の意味から申しましても、割賦の問題はさらに検討させていただきとうございます。
  151. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 総理どうですか、もっと幅を拡大し利息を下げる、たとえば自動車なんか四十九年から二回ですよ、下げられているのが。そういった点で、公定歩合が何回も下げられておるにもかかわらずたったの二回、こういう状況です。いま申し上げておるのは、割賦販売をもっと品物もふやし利率ももっと下げる、それによって需要の喚起をもっと進めてはどうかという提案です。
  152. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあそういう考え方を極端というか非常に強く進めるというのもどうだろうかと、こういうふうに思います。しかし、いま景気問題ということでありますので、臨時の措置として割賦販売、これをひとつ規制を緩和しようと、こういうことにいたしたわけでありますが、まあほどほどというところが私はこの問題に対する態度としてはいいところじゃないか、そのような感じがいたします。
  153. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、消費者ローンについては大蔵大臣からいま少し説明がございましたが、私はここで、最近大変国定の間で消費者ローンというのが伸びてきております。まず信販会社、クレジット会社、こういった会社の融資が高金利になっておる、こういった点は前々から言われておりますが、この問題について法務大臣に利息制限法、出資法の立法趣旨、これについて伺いたいと思います。
  154. 香川保一

    政府委員(香川保一君) 事務的なことでございますので私からお答え申し上げますが、利息制限法の趣旨は、一定の利率を超える高利の契約がされました場合に、その超過部分を無効ということにいたしまして、そういった高利契約を防止し、また、なされた場合の経済的弱者である債務者を保護すると、かような趣旨によるものと心得ております。
  155. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) いわゆる出資法の中で、ただいまのお尋ねは、第五条の高金利の制限の関係のお尋ねだと思います。出資法第五条の高金利の禁止、これに対する刑罰、これは高金利のうちの反社会性の強いものについて刑罰でもって臨もうという趣旨でございます。
  156. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 通産省にお伺いをいたしますが、信販会社、クレジットカード会社、これの業務内容、会員数、会社数、取扱高、銀行系列等についてお伺いをいたします。
  157. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 政府委員からお答えいたします。
  158. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 手元に詳細な資料を持ち合わせておりませんので、後刻お答え申し上げたいと思います。
  159. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ちゃんと資料要求をして出てきているんだよ、ここへ。通産省からいただいた資料があるんです。
  160. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 通産省から資料が出ておるそうですよ。
  161. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) お答えいたします。  御指摘の信販業者あるいはサラ金業者は、法律上は貸金業者として届け出をしておるものでございますが、その貸金業としての届け出をしております件数全体の数を申し上げますと、五十一年度末で十五万三千七百件ございます。
  162. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 通産省は後からいただきます、質問ができませんから。  それで、次にお伺いしたいのは、この表を見ていただくといいんですけれども、いま申し上げた信販会社、クレジットカード会社、しかも一部上場、二部上場になっておる大変社会的に信用度の高い会社が大変な高金利、利息制限法を上回る金利で貸されておる、こういうわけです。こういったことはお認めになりますか。これは通産省か大蔵省、どっちか。
  163. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) サラ金業を含めた貸金業についての資金の受け入れだとか、あるいは金利の取り締まりだとか、そういう金利——貸し金の高金利の取り締まりといったようなものにつきましては、これはそれに対処することを都道府県に委任をしておるということでございます。そういうことでございまするから、ここのところの詳細なサラ金業、貸金業等の生態につきましては、これはひとつ事務当局から詳しく説明をさせます。
  164. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) お答え申し上げます。  信販会社につきまして、私手元に持っております資料によりますと、現在アドオン方式で大体七・二程度でございますから、実質金利にいたしますと約倍程度が手数料と申しますか、取っておる実質的な手数料になっておるのではないかと考えております。
  165. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ということは、利息制限法の範囲内ということですか。
  166. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私ども信販会社の取っておりますアドオン金利、現在申し上げましたように七・二の実質上は倍ぐらいではないかと思いますが、この中には——いろいろ信用調査の関係その他いろいろな手数料等も入っておりますので、直ちにこれが利息制限法に触れるかどうかということについては、私は触れないのではないかと考えております。
  167. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 勉強が足りないと思いますね。私が一応調べましたのを表にいたしましたのがこれです。通産大臣と大蔵大臣、よく見ておいてくださいね。大体一七・五から六五・〇——実質金利です。アドオンじゃありません。それからクレジット会社が大体一〇・二から四三・八と。これはいわゆる一般のサラ金と言われているものですけれども、大体利息制限法以下をホワイトゾーンと言っています。それから出資法の制限額一〇九・五%までをグレーゾーンと通称言われております。大体この信販会社、クレジット会社はグレーゾーンが大半であるわけです。私たちの調査によってはそれがきちんと出ております。もっと詳しいデータもこれは後でお見せしますけれども、きちんとこれは調べ上げました。通産省の実際いま言われたのは七・二、七・二ばかりで、仮に倍として、実質金利が倍として一四・四ですか、それは利息制限法のこのホワイトゾーンのぎりぎりのところ辺しか言っておられないんです。実際はそんなに単純に言えるものじゃないんです、この利息は。通産大臣、勉強になっておりますか。アドオン方式を御存じですか。アドオンというのを御存じですか。大臣に聞いているんです。
  168. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 先生の御指示に従いましてひとつしっかりと勉強させていただきます。
  169. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 大蔵大臣は御存じですね。
  170. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 私もそう詳しくは存じません。
  171. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 両大臣とも残念ながらアドオン方式というのは御存じなかったわけでして、これはやはり借金をして物を買われた経験がないからそういうふうになると私は思います。非常に恵まれた方たちだと思うのですが、実際、現実にはこのアドオン方式というのが大変見せかけはいいように見えても、実質金利というのは大変高くなるわけでして、これを私は問題にしたいわけです。ただ、物流の場合は最近はようやくアドオン方式何%、実質金利何%ときちんと書かれるようになりました。しかし、いわゆるお金を貸す方についてはなかなかこの点が書かれていないところもありますし、また実際に書かれておるものと事実とがかなり反しておる、こういった点を私は指摘をしたいと思うわけです。  そこで、まずこの金利の表示法、これについて具体的な例を私は示したいと思いますが、ちょっと大臣御存じないから、これを見てもらっていまからレクチュアをしないといかぬと思うんですけれども、ちょっとよう見ておいてください。  ここに書いてあるのは一つのキャッシング——クレジットカード会社のものです。ここに表示アドオン十回払い一六%と出ております。これは、こういう場合、十万円を十回払いで借り入れをしますと、利息が一六%、すなわち一万六千円分が前取りされるわけです。したがって、本人に入る元金は十万マイナス一万六千円、八万四千円となるわけです。したがって、この金利計算をしますと、金利イコール元金分の利息額、すなわち八万四千円分の一万六千円、すなわち〇・一九〇四、すなわち一九・〇四%、こういうことになるわけです。したがって、ここでアドオン一六%と示されておる金利は、実際は一九・〇四%のアドオンになるわけです。アドオンが一九・〇四%ということは、通産省から出ている実質年率早見表というのがあるわけですね、これは非常にむずかしい複雑な方程式でシグマなんか出てきますけれども、こういうので計算された表で換算をしますと、三九・五〇%となるわけです。したがって、消費者の方はこれを見ると、ああ十回払いの一六%のアドオンかと、まあ大したことないなと思って借りると、現実には実質金利は四割と、こういう大変なことになるわけでして、こういった点で、もう少しこの表示というものについて何とかできないか。これについて公正取引委員会はまずどのようにお考えになっておりますか、その点お答えいただきたいと思います。
  172. 橋口收

    政府委員(橋口收君) アドオン方式は、日本語で申しますと上乗せ金利方式、あるいは金利上乗せ方式というふうに申し上げた方がよろしいかと思いますが、これはアメリカでも十数年前に問題になった問題でございますし、また日本の事例で申しますと、かつて正規の金融機関である相互銀行の行います相互掛金につきましても、表面のレートと実質的な債務者の金利負担との間に相当大きな懸隔があるということが問題になったわけでございます。したがいまして、いま先生がお話になりましたような形態でアドオン表面利率七・二%と、あるいは一〇%と書いてあります場合には、それをもって直ちに不当な表示であるということは申しにくいと思います。ただ、いまお話がございましたように、実質的な債務者の金利負担というものは大変大きな割合であるわけでございますから、実態を調査いたしまして、是正すべきチャンスがあれば是正をしたいというふうに考えております。
  173. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま公取委員長言われましたが、できましたならば、この割賦販売では、先ほども少し申し上げましたが、アドオン表示とともに実質金利がはっきり出ております。したがって、消費者金融の場合にも実質金利をはっきりと表示させるような指導をしていただきたいと、こう思うわけです。  問題は、先ほど通産省と大蔵省とかわりがわりお出になったように、この省庁の監督指導の範囲といいますか、これははっきりしておらぬわけです。この点は、大蔵大臣、通産大臣、どのように把握をされておりますか。
  174. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいま御指示がございましたごとくに、その間両省のすり合わせをいたしまして、ひとつ今後その点は遺漏なきを期したいと存じます。
  175. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) この問題につきましては、先ほども申しましたとおり、これの指導だとかあるいは届け出なんか、そういったようなものは大体都道府県に委託をしておるということで、貸金業者の自主性を尊重してやっておりますけれども、その後、庶民金融業協会というものがこれは各都道府県にできておるはずでございます。それが一つのまあ指導機関と申しまするか、むちゃなことにはならないようにという指導をやっておるわけでございますが、さらにそれの連合会といったようなものが確かに中央に法務、大蔵、これは恐らくは警察庁——私はそこははっきり詳しく知りませんけれども、そういったようなところの関係者の協議会というものができておりまして、そこがまた総合的に検討をしておるということになっておりますので、おいおいだんだんとこれは正しい方向に進んでいくものであろうと期待をいたしております。
  176. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 大蔵大臣、全然わかってないと思うんですね。いま連絡の話をされましたが、五省連絡会議というのが現在あるわけでしょう。どうですか。
  177. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 詳しくは局長からお答えさせます。
  178. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) お答えいたします。  ただいま大臣が申し上げましたのは各都道府県にある組織でございまして、これは御承知のとおり、貸金業者の自主規制の助長に関する法律に基づきまして、庶民金融業協会というのができているわけでございます。この協会におきましては、定款において、所属している貸金業者が利率の表示を店頭に正確に掲げるようにと、こういうことが指導ラインとして載っておりますので、この庶民金融業協会の適正な運営によってもかなりの効果を上げ得るんではないかと、このように考えております。
  179. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、警察庁にお伺いしますが、貸金業に関する資料といいますか、実情をどのように把握をされておるか、お伺いします。
  180. 森永正比古

    政府委員森永正比古君) お答えいたします。  貸金業者等の問題につきましては、警察は違反があった場合これを取り締まるという業務を行っております。したがいまして、取り締まった結果についてはすべて統計をとっておりまして、これを必要に応じて各関係省庁の方に差し出しております。
  181. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 大ざっぱに言えませんですか、大体内容を。
  182. 森永正比古

    政府委員森永正比古君) 取り締まり結果につきまして簡単に申し上げますと、昭和五十一年中に出資法違反といたしまして取り締まりました件数は千二百八十三件、千二百九十九人でございます。これを前年、昭和五十年と対比いたしますと、件数で四二・七%、人員で六三%と大幅に増加をいたしております。で、この出資法違反の大部分は貸金業者等による違反が多うございまして、その主なものは高金利違反、これが九百四十一件でございます。これも前年と対比いたしますと、三五%増加いたしております。また次に、無届け貸金業の違反が二百五十一件で、これも前年対比で五二%増となっております。この両方の違反で、出資法違反全体の約九三%を占めておるというふうな状況でございます。
  183. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、もう一度、警察庁、申しわけありませんが、被害の実態について簡単におっしゃっていただけますか。
  184. 森永正比古

    政府委員森永正比古君) お答えいたします。  被害の実態につきましては、経常的に統計をとっておらないのでございますが、必要に応じて取り締まりの資料にするためにとっております。最近とりましたのが、昨年の十一月に行いました金融取り締まり月間の実施結果について取りまとめたものがございますので、この内容について御報告を申し上げたいと思います。  この月間中に出資法違反で検挙いたしましたのが六百五十三件、七百十三人となっておりますが、この月間の被害者になっておりますのが、これは高金利事件の被害者として立件いたしたものだけで六千五百八十一人と、こういうことになっております。で、大体高金利の違反の被害者はどの程度かということを見ますと、大体少ないもので十人ぐらい、多いもので二百人ぐらいの規模のものもございます。少なくとも十人以上の被害者があるというふうに見ているわけでございますが、これは、この取り締まり期間中のものについては、一応立件したものだけで大体、事件一件当たり十人ということになっております。  この内容を簡単に分析したものを申し上げますと、年齢別では大体三十歳代と四十歳代が全体の三分の二、六七・七%を占めております。それから、職業別では家庭の主婦が圧倒的に多うございまして、約三分の一の三一・八%となっております。また借り受けの理由別では、生活費が全体の約半数に当たりますところの四八%となっております。この借り受けの金額でございますけれども、これが大変零細でございまして、十万未満が全体の約半数に当たる五三・三%となっておるわけでございます。
  185. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 これは総理、先低どの総理の答弁は、大変総理はこういったローンというものについては非常に何か厳しい態度のように思います。というのは、年齢上やむを得ないと思います。年輩者の方は借金ということを余りよく思われてない。しかし、いまの現実の若い世代は、車を買うにしてもローンで買うというのはあたりまえになっていますし、それだけに、いま話のあったように、被害者の中で多いのが結局三十代、四十代という若い、しかも主婦が多い。これは生活費ということは大変な問題ですけれども、私はこれからはますますローン時代に入ると思うんです。したがって、こういったいわゆる消費者ローンというものも、きちんとした方向で健全に持っていかなきゃならぬと思います。現に業界の中でも、まじめに取り組んで、消費者の立場に立って利息ももっと下げようと、そういうことを非常におやりになろうという機運も出てきております。全部が全部この出資法に取り締まられているような悪徳金融業者ばかりではないわけでして、私は健全な方向には、これからの時代の流れを考えれば持っていかなきゃいけない。  しかし、それに対する政府の対応は、先ほど見られたように、まだまだ都道府県にお願いしているとか、これは通産の範囲でございますとか、そういうふうな状況ですし、しかも、大臣がアドオン方式を全然御存じない。こういうことじゃしょうがないと思うんですね。そういった点で、これからの時代の流れの上から、こういったものについて政府としてはどのようにしようとされておるか。たとえば政府が、国民金融公庫はこれは企業向けの貸し出しですが、消費者向けの消費者ローンというものの、そういった公庫をつくることも一つの考えでしょう。また銀行にもっと積極的に消費者ローンをやらせることも可能だと思いますし、また、まじめな業者を育てていくということもあり得ると思います。その点について総理のお考えを伺って、この問題は終わりたいと思います。
  186. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 消費を人為的に刺激するというか、お使いくださいというような調子で政府が何らかの役割りをするということは、これはほどほどにしなければならないと、こういうふうに考えます。しかし消費者ローン、これはまあ時代の流れの産物だという、これは私は認識です。でありまするから、そういうものが健全に行われていくということは、これはもうぜひ行政当局としても心得なけりゃならぬと、こういうふうに考えます。よく矢追さんの御趣旨はわかりましたので、そういうような御趣旨で対処をいたします。
  187. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、構造不況業種と言われておる繊維の業界、それから平電炉について質問したいと思いますが、大変時間がなくなってしまいましたので、まず通産省の方から繊維、平電炉、またその他の十三業種と言われておるこの構造不況業種に対するきめ細かい対策、これに対してひとつお答えいただきたいと思います。
  188. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 構造不況業種の問題は、当面いたしました非常に重大な問題でございますので、その中におきましても、平電炉並びに繊維関係、その他アルミでありますとか段ボールでありますとか、各種ございます。  まず、構造不況業種に対しまして、私どもがその生産価格の調整対策というもの、これは御案内のとおりに、不況カルテルの活用なり、さらにその中におきましては、御案内のとおりに、生産カルテルあるいは価格カルテルという問題で取り組んでまいりましたが、中小企業の団体法に基づきますカルテルに十月一日から切りかわったのが平電炉の関係でございます。なおまた、そのカルテルを結成し得ない分野におきまする生産並びに価格の調整問題、これは御案内のとおりに、通産省といたしましての勧告操短といったような形におきまして合繊関係等がいたしておりますことは御案内のとおりでございます。  なお、これらの問題の当面の一番大きな問題は、過剰設備を、これを整理するという問題でございまするが、繊維産業等におきましては、綿紡の関係が、御案内のとおりに約一二%、百三十五万錘、毛紡の関係が一六%、三十四万錘、こういうふうな過剰な設備を抱えておる次第でございます。また平電炉におきましても同様、これを三百三十万トン、約一六%のカットダウンをしなきゃならぬ、こういう問題に対しまして、御承知のとおりに、金融的な問題が一番大きな問題でございます。この設備の廃棄等に伴いまする金融対策、これに対しましては、債務の保証基金をつくりまして、そうしてこの設備を何とかして縮小してまいりたい。  それから同時に、ことに繊維関係におきましては中小企業振興事業団の共同設備廃棄事業融資というものをいたしておりまして、これによりましての設備の軽量化をいたしてまいります。しかしながら、これに対しまするやはり設備を廃棄いたしまするにつきましての、さらに信用保険法に基づきます不況業種の指定のみならず、特段の構造不況に伴いまする特別融資並びに金利の引き下げ、特に既往の金利を引き下げるという問題と、今後将来ともにこの金利をいかにして軽くするか、つまり言いますれば、設備をまず廃棄するということと、今度はそれに対応いたしました運転資金、つなぎ融資をどう手当てするかということが大きな問題でございます。なおまた、これらの金繰りの問題で、商品担保の融資、つまり申しますれば在庫融資の措置もあわせてとらなきゃなりませんし、同時に、これらの構造不況に対しまする措置をあわせまして、今後これらの企業がどういうふうな再建、転業をいたしてゆくかという問題も非常に重要な問題でございます。同時にまた、これらに働いておりまする方々の転業の問題、雇用の問題、これらにつきましては労働省と緊密に連絡をとりまして、今後将来雇用関係におきましても十分のきめ細かい措置をとってまいりたい、かように考えております。
  189. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまいろいろ言われましたが、繊維業界は大変慢性的な不況とも言われるような状況が続いておりまして、いま言われたことも非常に大事ですが、ひとつ現実においてまだまだ小さい業者が大きなところに抑えられている、こういう現実がございます。  これはかって本予算委員会でも問題になりましたが、織物業者が商社から糸を仕入れるときは四十五日の手形、そしてかつ五・七九%、この間まで六・四だったわけですが、の金利がついております。次に商社が織物業者からその布を買うときの手形サイトは七割が九十日ないし百二十日。で百五十日以上も一割強はあるわけです。このような長期の手形。しかも、こちらの方の長期の手形には利息はついていない。また、メリヤス業界においては百五十日手形というのが常識になっている。これは事実ここに証拠も持っているわけですけれども、こういうことが相も変わらず続いておりますし、しかも利息がついている。だから、政府でそういうことをいろいろやられても、まだまだ現実のこういったものをなくさない限りは、中小、小さいところは大変問題である、こう思うんですが、通産大臣いかがですか。
  190. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 手形その他の問題につきましては、ただいま仰せられるようないろんな具体的な問題がございます。また同時に、銘柄別、産地別にも特殊な関係がございまして、産地ぐるみの金融というものも、これもやっぱり繊維関係におきましては非常に重要な問題でございまして、地域的に信用不安を起こさないような対策も、大蔵当局並びに日銀、通産三者共同いたしまして地域別にもいたしておるような次第でございます。しかも、今回の円高等によりますれば、さらに繊維関係にいたしましても非常な苦境に立っておりまして、今朝のテレビにもございましたように、契約も次から次へと破棄されていくような姿が現実の問題でございまして、これらにつきましては、われわれはさらにさらにきめの細かい対策を講じたいと思っております。  なお、以下詳細なことにわたりましての御説明は担当政府委員から申し上げます。
  191. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) お答え申し上げます。  繊維関係の商社といま主として織物業者について、取引関係について御質問でございますので、その関係についてお話し申し上げます。  お示しのとおり、商社と織物業者との間の取引の形態というのは非常に複雑でございまして、いろいろな形態があるわけでございます。繊維産業全般につきましては、商社が各工程におきまして金融機能等の機能を果たしております。いろんなところに介入をしておるわけでございまして、繊維企業の現実の倒産防止問題というふうな場合にはどうしても商社の助けを借りなければならぬ面もあるわけでございます。したがいまして本年の五月三十一日付をもちまして、その辺につきまして商社の機能の発揮と適切な行動ということについて指導通達を発したわけでございます。  商社と織物業者との取引の実態について申し上げますと、本年二月に、実は、私ども繊維の取引につきましては繊維取引改善委員会というものをつくりまして、織布、メリヤス、染色、縫製その他全般にわたりまして取引形態の調査をいたしまして、これをなるべく合理化しようということで推進をいたしておるわけでございますが、その改善委員会の調査によりますと、加工賃の受け取り期間につきましては、製品を納入いたしましてから三十日以内に支払いを受ける企業が二九%、三十日を超え六十日以内に支払いを受けるものは五七用でございます。したがいまして一応八六%が六十日以内の支払いを受けております。加工賃の現金手形比率につきましては、手形比率が三〇%未満の企業が三五%であるのに対しまして、手形比率が七〇%以上の企業が二二%というふうなことになっております。これはそれぞれの業態によって非常に違うわけでございます。手形期間につきましては、九十日を超えますものが全体の三七%と相なっておるわけでございます。  全体といたしましてはそういうふうな数字でございますが、私どもといたしましては、なるべく手形期間が長期にわたりませんよう、また取引の形態が近代化されまして、返品その他好ましくない慣習がなくなりますよう指導してまいりたいと思っております。
  192. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 公取委員長、この問題について公取委員会ではこういった事件はかなり掌握をされておりますか、この点いかがですか。
  193. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 商社と織物業者との一般の取引につきまして、公正取引委員会が調査する立場には残念ながらないわけでございますが、ただ、商社と織物業者の間に、親事業者と下請事業者との関係、つまり製造委託等の請負関係があります場合には、これは法律の規定によりまして調査の対象になし得るわけでございますし、また現に書面による調査もいたしておりますし、必要に応じて立入検査もいたしております。  で、いま質疑応答を拝聴いたしておりまして、決済関係につきまして仮に先生のおっしゃるような事態が存在いたします場合に、果たして商社が優越的な地位の乱用としての不公正な取引方法に該当するかどうか、これはよほど検討してみる必要があるだろうと思います。いずれにいたしましても、下請関係の存在いたします場合には指導基準もございますし、全体としての支払い条件は最近の金融状況から見ましてそれほど悪くなっているとは認められないのでございますが、しかし、手形の期間等につきましてはやはり指導基準をオーバーする手形も散見されるわけでございます。そういう点につきましては、定例的な調査のほかに特別調査もいたしておりますし、さらに現在特定の産地につきましての立ち入りの検査も実行中でございます。一昨年行われました繊維を中心とする商社、デパート等の検査の結果につきまして、手形期間が指導基準をオーバーしているものにつきましては、逐次是正の措置を講じておるわけでございます。なお、いま申し上げましたように、現在、立入検査をいたしておりますので、繊維業と申しましても大変広範な内容を含んでおりますが、着実に前進をしてまいりたいというふうに考えております。
  194. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 関連。
  195. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 関連質問を許します。矢原秀男君。
  196. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 通産大臣、景気の回復についても、非常に円高の問題から、雑貨、繊維などの輸出環境も一段と厳しくなるという分析もある中で、政府がいまとっている繊維に対する救済策、特に日本全国に散らばっております地場産業の救済でございますけれども、たとえば絹織物業界、全国で一万六千三百の企業数がございます。生産数量が年間に一億三千万平米近くも出されておりますけれども、この地場産業に対する政策の中で、不況対策として政府最大の救済策は何かと言えば、機械を取り壊してしまう、それが最大の救済策だといま言われているわけです。専門的な言葉では設備共同廃棄事業というわけでございますが、現地においては、行政の指導の中で、あるところでは田や畑を売りながら農業をやめて家内工業、これが大多数でございます。しかし、いまだにこういう不況の救済というものがなかなかできてない。確かに国際的には二国間の協定の問題、そうして絹糸の国際価格の問題等々の中で、このような零細企業の人たちをどういうふうに救済するのか、不況になれば機械を壊していい、こういうふうな政策が実際に最大のものである。情けないことでございます。  こういう点について、大臣としては、本当にどういうふうな形で救済をしようとしているのか、きめ細かい具体策を明示していただきたいと思います。
  197. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えいたします。  ただいま御指摘になりました繊維関係の業界、これは当面の円高の問題だけではなく、ここ数年来の深刻な不況、その中でも最も冷え切った業態でございます。私どもは、この繊維関係の復興のために、ただいま設備の廃棄さえすればそれで済むかというような厳しい御指摘でございまするが、決してそうは考えておりません。  御承知のとおりに、この一般の緊急対策といたしましては、まずもって倒産をするようなことがないように、この倒産の防止対策というものの緊急な融資の制度をつくりまするのみならず、さらに、これらの業界のほとんどが民間の金融機関から資金を借り入れている。政府系の三金融機関に対しましては、あるいは政府が特段の措置を講じていろいろな施策もいたしまするが、この民間からの金融につきましては、これは何とかして救っていかなきゃならぬということから、一番問題になっておりますのが信用補完の制度でありまして、信用保証協会を動員し、さらにまた、その信用保証の原資でありまする信用保険公庫の原資の拡充、今回の補正予算におきましてもお願いいたしておりまする百億円というものは、この保険公庫が本年予定いたしておりました百三十億というものがほとんど使い切っておるような次第でありまして、さらに追加の百億を出すことによりまして相当の信用の補完ができる、こういうふうに考えておるのみならず、この信用公庫法に基づきまする不況指定、あるいはまた緊急の諸施策について金融面におきましても動員をいたしております。  さらに民間金融機関につきまする保証というものが何と言いましても一番私は重大な問題であろうと存じまするが、いまお話が出ましたような下請の関係もたくさんございます。で、その当該企業が非常な不況でありまする場合に、その不況に対しまする措置、さらにまたその企業自体は健全でありましても、親企業、元売というところが倒産するといったような場合におきまするさらに関連した倒産がないように、これまた政府といたしましては、いろいろな施策、金融措置等々を講じておる次第でございます。  さらに、今後の需給の問題が基本的な問題でありまするが、御案内のとおりに繊維工業となりますと、後発途上国の繊維企業というものが非常に伸びてまいります。一方におきましては輸出の問題で頭を押さえられておりまするが、反面、また足元から後発途上国の突き上げという問題がございます。絹の問題あるいは絹糸の問題、そういうふうな問題のみならず、たとえ化繊でありましても同様でありまして、韓国あるいは台湾、その他中国方面の途上国から、つまり言いますればかつて日本がランカシャーに対しあるいはまた対米関係に立ちましたと同じような逆な立場がこの繊維業界におきましては追い上げられておるというような現況でありまして、これに対しましては外交的な面におきまする協定あるいはまたいろいろな貿管令その他の諸措置もあわせて講じなければなりません。  さらに、こういうふうな業態の事業をいかにして転換するかというのでありまするが、昨日もゼンセン同盟の方々と懇談をいたしたのでありまするけれども、これらの業界の労働者の方々、あるいはまた経営者の方々が深刻な悩みを持っておられ、同時に、自分たちが今後どういうふうな方向に新しい夢を持って働いていくかということにつきましては、これまたこの問題につきましては産業構造審議会等におきまして将来のビジョンというものを私どもで御一緒につくり上げていかなきゃならぬ。この雇用の問題、そのまた転換の問題、将来に対しまするこういうふうな方々の夢をもう一度お与えしなきゃならぬということがわれわれ為政者といたしましての私は重大な問題であろうと存じます。
  198. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 繊維業界の実態も、三十万の事業所、製造と流通含めて、そのうち九九%が中小零細企業でございますし、関係の従事者も二百七十万人からおられます。こういう大変な不況下にあるわけですから、地場産業も含めて、不況に対して、きょうの時点でも非常に現場では苦しんでおります、早く救済の手を打っていただきたいと思います。  そこで、総理にも関係あるわけでございますが、この点もよろしくお願いしたいわけでございますが、総理、いま消費者物価も私たちは計算の中で昭和四十五年を一〇〇として五ヵ年の五十年は一七〇%台でございましたので、世界の先進国では一、二という物価高でございました。これは銘記をしてほしいと思います。そういう国民生活、不況と根強い物価高でいま非常に大変でございます。そういう立場から総理に一点だけ質問するわけでございますが、長期不況の中で倒産がふえております。九月の全国企業倒産は負債が一千万円以上で約千五百四十件、負債金額が約二千四百五十三億円となっておりますが、こういうふうな非常に最高水準の忌まわしい中で、建設業であるとか木材、繊維、不動産、非常に大変な被害を受けておるわけでございます。  政府がいつも実態を示すときに完全失業者、そういうふうなことが言われるわけでございますが、完全失業者が八月末でも百六万人、その陰にございます潜在の失業者をどの程度把握されて、そうしてどういう救済策をやればいいのか、そういうことを国民の前に明示をしていただきたいこと。そうして企業倒産も、負債が九百万以下の零細企業についてはどれだけの実態で、どういうふうにきめ細かい救済をするのか、これまた明らかにしていただきたいと思うわけでございます。そうして私が思いますのは、総理は……
  199. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 関連時間が過ぎてきましたから、簡潔に願います。
  200. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 はい。五十二年のこの十月の十一日には、構造不況十三業種の対策に、繊維も含めて、六・七%の成長でこれに力を入れればいけると、こういうふうに言われたわけでございますが、具体的にどういう不況対策を進めようとされていらっしゃるのか、国民の前に明示をしていただきたいと思います。
  201. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、雇用の安定ということを非常に重視しておるわけです。今度、総合対策で二兆円の追加需要の喚起を行うと、こういうことにいたしましたのも、これは職場をつくる、そういう考えです。また、大変一般国民に、つまり預金者には御迷惑ではございましたけれども、金利水準の引き下げを行う、これも雇用のことを考えておるわけであります。完全失業者が一・三%、この辺までいけば安定した状態だと、こういうふうに思いますが、まあこれにはちょっと時間がかかる。しかし、その理想的なところまで行く前に、雇用対策、これも十分しなければならぬ、そういうことで雇用安定資金制度、そういうものを中心といたしましてこれは万全の対策をとっていきたい、こういう考えでございます。
  202. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 完全失業者のほかに、どれくらいの潜在失業者がいるかと、こういう点でございますが、それ以外にいるのは失業者という名前をつけるのは私は適当でないと思う。これは企業がやっぱり雇用しておりまして、そうしてこれに対して雇調金等を私どもの方で手当てをしておるんですから、失業者という名前は当たらないと思います。  しかし、いわわる構造不況の中でどれくらいの人が働いているかと申しますと、現在、私どもで調査をいたしておるところでは、三百五、六十万じゃなかろうか、いわゆる十三業種で。その中で二百七十万くらいが繊維、そのうちで百十万くらいが流通部門。流通部門を除きますと、約百万人引けますから二百五十万人くらい。その中でどの程度が過剰であるか、あるいはどの程度整理するかという点になりますと、私どものヒヤリングではなかなかつかめない。なぜつかめないかというと、その労使の間のいろいろの折衝の過程にいまありますために、企業側から発表されない。こういうのが実情でございます。日経連あたりでは大ざっぱに一割くらいということを申しておられますが、これはやっぱり大ざっぱな数字でありまして、具体的な根拠があるとは思えません。
  203. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 関連の時間はもうなくなりましたので、よろしいですか。——
  204. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 簡単に、通産大臣、平電炉について。  まず、通産省はかつて平電炉を増設を非常に奨励をした。しかし、いまになって大変構造不況ということで減らそうとされておる。これはもっと早い手がどうして打てなかったのか。それから、価格カルテルが現在組まれておりますが、これでもなおかつ生産業者は原価が割れてしまっていると、もう少し上げてもらいたいという要望も出ておりますが、今後どうされるのか。その二点についてお伺いしたい。特に公共事業における価格において何とかできないものか、その点はいかがですか。
  205. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えいたします。  平電炉に関しましては、ただいまも申し上げたように、構造不況業種といたしまして最も当面いたしました問題でございまするが、この平電炉につきまする価格並びに数量のカルテルがすでにできまして、それが今度はさらに設備の縮小と申しますか、買い取りの段階に入っております。同時に、価格につきましては御案内のとおりに非常に低価格でありましたが、五万二、三千円の適正価格に戻りましたことは非常に結構であろうと存じますが、しかし、この平電炉の中におきましても、約二千百万トンぐらいの能力のあります中で約三百三十万トンというものを一応整理をするという目標でございます。  つきましては、その関係には、背後に高炉関係にありまする平電炉の関係もあれば、あるいはまた商社の関係の平電炉もございます。で、そういうふうなところからのいろいろな救済もございますけれども、構造不況の関係の協会をつくりまして、それに対しまする基金をこの補正予算においてもお願いをいたしておるような状態で、政府並びに民間によりまする基金によりまして、この全体の約七十億ほどの資金をもちましてこの整理に当たるわけでございます。それからなお、これらの業態はさらに将来このままではいけないのでありまして、今後、これをどういうふうな方途をもって再建をいたしていくかというルールづくりに産業構造審議会の方におきましても検討をいたしておる最中でございます。
  206. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 最後に、私は、医療問題について伺います。  厚生大臣、私は、かつてこの予算委員会でも、また本年の予算委員会の分科会におきましても、保険の点数、すなわち診療報酬のあり方に対する矛盾というものを指摘をしてまいりましたが、厚生大臣は、現在のこの診療報酬に対して、まあ理論的といいますか学問的といいますか、矛盾があるとお思いになっておりますか。
  207. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 診療報酬体系について矛盾があるかという話でございますが、私はやはり自由社会において一つの統制価格を決めますから、部分的なことを言えばいろんな細かい矛盾はあろうかと存じます。しかし、現在の保険制度の中で、診療報酬というものについては政府は正しくこれを評価をして決定をしてきたつもりでございます。
  208. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまいろいろ、たとえば医療費もどんどんふえてきております。特に医療費の中に占める薬代の大変な部分、薬がたくさん配られる、こういうようなことも問題になって、国民からは大変な不満といいますか不信も出てきておるわけですが、そういった点も、詰めますと、そこら辺にあるんじゃないか。  もう一つは、地方自治体等は大変国民健康保険の赤字を抱えて困っております。これは今回保険料の値上げということを政府は意図されておりますけれども、この保険制度のあり方、それから診療報酬のあり方、まあ大体いいといま言われましたけれども、私はもっともっと抜本的な見直しをやり、現代の医学の立場、今後の方向、そういったものからもう一度きちんとしなきゃならぬと私は思うんです。たとえば私の専門の歯科の場合であれば、これは大臣は適当だとおっしゃっておりますが、子供さんの歯の治療についての加算が余りにも少な過ぎる。二十点で二百円ですから、これは厚生大臣は口あけ料としては適当であるという答弁をされましたが、そんなものじゃ私はないと思います。もっと虫歯を減らし歯をきちんとしていくためには、根管治療も含めてですが、特に子供に対する治療のあり方、この点数も私は見直すべきだと思いますが、そういったことも含めてどのようにお考えですか。
  209. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 薬代が非常にかかり過ぎるではないかと、こういうような御質問がかねてございます。確かに昭和四十八年ごろは四六%というような、非常に薬代の割合がひどかったわけであります。年々薬価基準等の改定も行い、適切な指導等もしてまいりまして、現在は三七%ぐらいになっております。これにつきましても、近くまた薬価基準の改定等をやってまいりたい、こう考えておるわけでございます。  各保険制度間の財政のアンバランスというようなことが言われます。御指摘なのは国民健康保険を指しておっしゃっておることと存じますが、確かに収入の少ない人、退職した人、こういうような人が国民健康保険に加入し、したがって収入がないですから保険料が少ない。一方、病気は非常にふえる、老齢化ということで当然そうなってくる。そういうような点から国民健康保険が非常に財政が苦しい、これにつきましては、政府としては別に組合保険がよくて、国民保険が悪くて放置をしておるというようなことはございません。この保険組合に対しましては政府は助成らしいものをいたしておりませんが、国民健康保険組合に対しましては一世帯当たり年間九万六千円、総額にして一兆四千億円というような莫大な財政援助をして、そこで財政調整を結果的にやっておるというようなことであります。しかしながら、これらの問題は老人の医療の問題に主として大きな原因がございますから、老人医療の問題については、何か別の方法を考えなくてはという声も多いので、私のもとで老人医療懇談会をつくって二十数回の会合をやり、今月中に結論を得たいと、かように考えておるわけであります。  なお、子供の診療の場合の加算点数でございますが、まあこれは内科等の場合も小児加算十五点ございます。歯科の方が同じく赤ちゃんを診るにしてもむずかしいということで、五点よけいに加算をしておるわけでございますが、これらの診療報酬の改定のときに、ひとつあなたのおっしゃることもわからないでもないので、よく検討をしていきたいと思っております。
  210. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 時間がなくなりましたので、これも私はことしの春から厚生大臣に言ってきたことですが、なかなかやっていただけないので重ねて申し上げますが、保健所における歯科医師の数、これまた五十一年末は三名去年より減りました。五十六名になって、四十八年の五十八名よりまだ少なくなっています。これはやはり保健所における歯科医師の立場を明確にしないからこうなると私は思います。  私は所長にしろとは言いません。第五条にある「保健所には、」云々から始まる施行令、これに歯科医師という言葉が入っておりません。「医師、薬剤師、」と飛んでおります。やはり歯科医師というものをきちんとこの中にも定めてそれなりの待遇をしたならば、これから歯科大学あるいは国立大学の歯学部の卒業生もふえてきますので、保健所へ行く人も私は出てくると思います。そういったことが結局虫歯をふやす大きな原因になっております。これが第一点。  次に、母親に対する指導、これはまだまだ母子保健手帳が交付されているにもかかわらず、そのレクチュアを受ける人は大変少ない。これはやっぱり政府の怠慢だと思います。これをどうするか。  それから、できたら、私は、今度大阪に国立循環器センターというりっぱな設備ができました。小児歯科センターのようなものを国で建てて、そうして積極的に子供の虫歯の追放を本気になってやらないと、これは私は少しは減ってきておりますけれども、まだまだ世界的には大変高い数です、これは決して減らないと思います。  さらに、大学の問題についても、これは文部大臣ですが、国立大学の歯学部、いま京都大学や岡山大学でも大変設置を要望されて具体的な動きがございますが、それも推進をしていただきたいと思いますが、その点についての答弁。  最後に、厚生大臣、きょうは理事会のお話では歯の模型まで持ち込んで答弁をされる、非常に意欲満々と承っておりますので、厚生大臣の虫歯撲滅の意欲を含めて伺いまして、私の質問を終わります。
  211. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 模型も用意いたしまして十分答弁をしようと思ったんでございますが、時間の関係もございますから、はしょらせていただきたいと存じます。  保健所法施行令第五条で確かにいまおっしゃったように「保健所には、地方の実情に応じ、医師、薬剤師、獣医師、保健婦、助産婦、看護婦、」これこれこれの「必要な職員を置かなければならない。」と書いてあります。その中に歯科がないではないかと。先般来の改正で獣医師というものを入れました。実は、これは私どもに言う前に、やはり先生も歯科の方の大家で大学の先生で、歯科医師でもございますので、歯科医師会の統一見解といいますかね、歯科医師会としてそういうことをぜひひとつやってほしいというような意見がまとまりますれば、私どもは検討するのにやぶさかでございません。  それから、母親に対するところの虫歯に対する指導、赤ちゃんを虫歯にしない指導をしろ、こういうことでございますが、これにつきましては母親の教育ということは、これはこの虫歯ばかりではなくて、特に赤ちゃんの育児指導ということについて抜本的にわれわれとしては大きな運動をしていかなきゃならぬと、それは来年、健康づくり運動をやるという一環として重要な項目として取り入れていくつもりでございます。  それから、小児歯科センターのようなものをこしらえろということでございますが、これは実は昭和五十年度から各都道府県が行う小児や心身障害者・児の歯科診療事業といたしまして、口腔の保健センターというものを毎年六カ所ずつ実はつくっておるわけであります。そのほかに何か全国的にひとつ循環器センターみたいなものをこしらえろという御意向かどうかわかりませんが、まあいまのところそういうような特別なセンターをつくる気はございませんが、この小児の歯科の健康センターというものは各県に一つずつ設置をしていきたい、かように考えております。
  212. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 岡山大学と京都大学について申し上げますが、岡山大学は今年度から長崎大学とともに歯学部の創設準備を行っております。京都大学につきましては、その他の要望をしておる学校等もございまして、今後どうするかということをただいま慎重に検討しておるところでございます。
  213. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上をもちまして矢追君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  214. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、目黒今朝次郎君の質疑を行います。目黒君。
  215. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 私は、わが党の小柳先生が質問した中で、特に雇用関係あるいは国鉄関係の問題を重点に、時間が短いものでありますから端的に御質問申し上げたい、こう思っております。  まず最初に、福田総理、まあ参議院選挙も終わってあちらこちら外交交渉やられて絶頂のときにあると思うんですが、総理みずからも世論調査をしてほしいなんという要望を新聞社の方にPRしたと、こういうことを聞いておるわけでありますが、その福田内閣の支持率は、「支持する」が二七%、「支持しない」が三五%、一番新しいやつでね、この毎日新聞の統計によりますと。こういう支持率になっておるわけでありますが、この国民の動向について経済の福田としてどのようにお受けとめになっているか、まず考え方を聞きたい。
  216. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、じみな政治家でございますから、また、福田内閣発足当時のああいう経緯もありまして、福田内閣に対する世論の調査、これはスタートのころは余りよくなかったと思うんです。しかし、その後、逐次安定成長を続けておる、かように見ております。
  217. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 安定成長どころか横ばい成長だと思うんですが、その横ばい成長の最大の原因は、いろんなこの社説を読んでみますと、福田内閣には庶民性がない、六・七%は必ず言うけれども、その他の問題についてはちっとも具体的に示さないと、そういうふうに酷評しておるわけでありますが、この点はいかがですか。
  218. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) さあ庶民性があるかないかというのは、これは国民の判断の問題でありまするが、福田さんという人は庶民的な人だと、こういうのが一般の感想じゃないでしょうか。私はそう見ておるであろうということを私自身思っております。
  219. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 それで、総理の本会議の演説では、この雇用対策が当面の最大の課題だと、こういう位置づけをしておるわけでありますが、その考え方と、具体的に六・七%の成長率と一・三%の失業率、そこまでに達するに具体的にどういうプログラムを持っているのか、具体的に国民に示すべきじゃなかろうか。失業率並びに有効求人倍率、それをどういうふうに是正をしていくのか。それを具体的に示してもらいたい。
  220. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、五月に先進国首脳会談に臨んだんです。そのとき先進国の首脳のもう本当に共通の苦悩といいますか悩み事ですね、これは失業、雇用の問題、非常に深刻であった。いま国際経済社会で、黒字赤字の問題でありますとか、あるいは保護貿易体制の台頭というような問題とか、いろいろ複雑な問題が出てきております。どこから出てきているんだと。黒字国から非常に輸出が多過ぎる、その輸出が多過ぎる結果赤字になるんですが、赤字そのものの角度じゃないと思います。その背景に、そういう諸外国からの輸出によって雇用状態が悪化してきておる、そこにいま問題があるというくらいに見ておるわけです。  これはいま世界経済社会では、失業問題、雇用問題というのはわが日本を含めまして最大の問題である。そのように考えておるわけですが、わが日本においてどういうふうにこれに対処するかというと、やっぱり日本経済の規模が拡大されなけりゃいかぬ、そして職場が与えられる機会を増大しなけりゃならぬだろう、こういうふうに考えまして、財政、金融上いろいろな施策をとっておる、これは御承知のとおりであります。そして、まあとにかく、なるべく早く完全雇用状態、これは一・三%失業率という状態ですが、そこへ持っていきたい。これは昭和五十五年度を目標にいたしております。
  221. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) どういう年次的な計画で一・三%へ五十五年度に持っていくかと、こういう御質問でございますが、詳細な具体的数字は後で必要ならば事務当局から説明もさせますが、大局的に考えますと、こういう経済不況の状態においても就業人口は伸びております。五十一年度において六十八万人増加し、五十二年度において上半期で六十二万くらい伸びておるわけであります。ただし、その伸びは製造業でなくて第三次産業に伸びておるわけであります。製造業はむしろ減っております。  それから第二番目には、したがってその伸びを計算をしてまいりますと、五十五年には全体のいわゆる労働力人口というものが五千五百万人をちょっと超えるくらい、それに対して就業人口が五千四百五十万人くらい、その差が約九十万くらいあるだろう、こう考えるわけであります。九十万人くらいと考えれば、それがほぼ一・三%になる。それの裏づけとして現在申しましたような方向で就業人口は伸びてきつつあると、こう考えておるわけであります。
  222. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 総理のこの演説を見ますと、ことしの景気対策の中の雇用対策は、現在の雇用安定資金を最大限に利用する、あるいは求人の開拓をする、そういうことを言っておるわけでありますが、具体的にじゃどういう予算の裏づけがあるのかとこう見ますと、景気全体を大きくするんだという抽象論はありますが、関係基金の予算というものについて今度の総合対策でどれだけ上積みしているかとこう検討しますと、なかなかわかりません。ですから、今次の暑気対策で具体的にどういう雇用対策の裏づけをしたのか、財源がわかっておれば具体的に示してもらいたい、こう思うんです。
  223. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 直接、今度の補正予算ということになりますと、労働省関係で申しますと、いわゆる労働者の移動用住宅のために五十五億円、それから北洋漁業離職者関係の対策として十一億円でありますが、本年の五十二年度予算の中には約一兆三千億円が雇用対策費として計上されておりますし、すでにその予算の中に組まれております四百七十七億円がこれから実施に移っていくわけであります。それは事業転換等雇用調整費と、それから景気変動等雇用調整費に分かれております。中の事業は四つずつございますことはよく御承知のとおりです。
  224. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 いまのことを具体的に検証するために、いままであった雇用給付金ですね、この雇用給付金がもう発足してから二年ぐらいになるわけでありますが、具体的に失業人員をどの程度防止した実績になっておるのか。それを今後を展望するために教えてもらいたいと、こう思うんです。
  225. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) おおよそでありますが、三十万人ぐらいは救済していたのではないか、失業を防止し得たのではないかと考えます。
  226. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 一時帰休になってそのくらいでありますが、この一時帰休の期限が切れて解雇になったという数字は幾らですか。
  227. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) この一時帰休が期限が切れたというだけの場合ではなくて、いろいろ考えられると思うんでありますが、雇用調整給付命の支出額で言いますと、五十年は、正確には覚えておりませんが、約五百数十億円、そして五十一年がうんと減って五十億円程度になっておる。一方、鉱工業生産指数は五十年と四十九年とを比べますと一一%強減っておるわけであります。これに対比いたしまして雇用指数の減は五%強であります。したがってその時代にはかなりの過剰雇用感があったと思いますが、五十一年度においては四十九年度を一%程度上回るような成績を示しているにかかわらず、雇用指標が七%以上かえって逆にマイナスになっておりますので、いわゆる過剰雇用感というものはかなり一般的には減少しておると思いますけれども、いわゆる構造不況事業についてはこれまた別であります。その中で繊維と平電炉については、業界労使の間のおおよその意見がまとまっていま進行中であると承知しておりますが、他はまだ具体案が出てこないので、したがってこれからが本番だと、こう考えておる次第でございます。
  228. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 そうしますと、この二年間で三十万人程度ということから見ますと、先ほど構造不況の雇用関係だけでも、大体これは日経連が言っているのを見ますと、三十万から四十万程度ことしの秋から来年の春に出るであろう、こう言われておるわけですね。現在の百五万の失業者、こう見ますと、現存する制度だけではなかなか私は救済に不十分ではないか、こういう展望を持つんですが、いかがでしょうか。
  229. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 先ほども矢追さんにもお答えしたんでありますが、いわゆる構造不況業種というところの雇用総数が、通産省、運輸省、農林省所管全部合わせまして一繊維の流通部門を加えて三百五、六十万、それから繊維の流通部門を除けば二百四、五十万というところであろうかと思います。日経連はそれを四百万、そして一割は過剰雇用だと、こうおっしゃっているわけでありますが、私どもの方も雇用数は正確につかめます。しかしながら、どれだけ整理するかというのは労使間のいろんな交渉もあって私どもの調査になかなか応じてくれないというのが実情でございます。したがって、日経連の方の数字も根拠があるかと言えば、それは根拠は的確にあるとは言えないだろうと思います。で、そういう情勢がどういう時期にやってくるか、いま現在、先ほど申しました平電炉、繊維についてはおおよその合意を見て進行中でございますから、そこから出てくる。しかし、他の業界におきましては、まだそれぞれ行われつつある途中でありますので、そう短期間にまとまって一遍に出てくるということは考えておりません。ただ、したがって現在の雇用安定資金の範囲内で処理できる、こう私どもは考えておりますが、しかし、それが足りなくなれば、これは義務的な経費でございますから、予備費等の支出によって十分賄っていける、こう考えておる次第であります。
  230. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 農林大臣ね、二百海里問題で、まだきのうの答弁では、ちょうど組みかえの時期であるからはっきりわからぬと、こう言っておるんですが、実際二百海里問題で漁船の方と加工業者、そういう方々を含めれば、いま八千人と言われていますけれども、相当程度の私は人員が出てくる、こういうふうに推定するんですが、どのような展望を持っていますか。
  231. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) いま目黒さんからお話しになりましたように、減船に該当する船、また他の漁業に転換するもの、いろいろ業界内部で協議中でございまして、御承知のようにサケ・マスのようなものは三カ月ぐらいの漁期でございます。したがって、それを表作として、裏作もやっておるわけでございます。そういうようなことで、いま漁業界各分野で再編成が行われておるということで、どれだけの乗組員が転職せにゃいかぬかということはまだ流動的でございまして、把握しかねております。  また、加工業者の関係につきましても、スケトウダラを原料とする季節——一月から三月ころ、この時期を除きましては、ことしはイワシその他も好漁でございまして、私も北海道等を見てまいりましたが、加工工場はわりあいにフルに稼働しておる、こういう状況でございます。今後のスケトウダラ等の状況を見なければはっきり把握できませんが、私はせいぜい八千人程度、それ以内におさまるのではないか。その救済対策につきましては、労働省、運輸省等と緊密に連携をとりまして万全の措置を講じてまいりたい、このように考えております。
  232. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 運輸大臣、造船界も大分問題になっておるのですが、造船界としてはこの雇用という問題、あるいは過剰雇用という関係でどの程度考えておられるか、教えてもらいたい。
  233. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 御承知のごとく、船の海の上へ浮かんでいる方があっちで、陸の上で仕事をしている方は私の方でございますが、造船業界は非常な不況でございますので、今度、職業転換給付金の支給対象にすべく準備中でございます。これもいわゆる構造不況業種に指定されておりまして、私どもの方も雇用安定事業の指定業種の中に入れて対処をいたしております。
  234. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 いろいろ肝心なところを聞くと、まだ情勢を把握していないと、こういう話になる。  私は、この前、予算委員会で、中村先生と一緒に福島、宮城、岩手を歩いてくると、大変現地の方々が深刻なことを言っている。そこにずれがあるんですね。ですから、私はそういう点から考えますと、現存する雇用安定資金であるとか雇用保険法、こういうものだけではとても救済し得ない事態に雇用問題が追い詰められているんではなかろうか、こういう私は認識をするんです。したがって、必要な場合には予備費を使うというそういう姿勢では、雇用問題が今次福田内閣の最大の課題だと言っておることとはきわめて歯車がかみ合わない、こう思うのですが、再度どうでしょうか。
  235. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) お金をこう一遍に積んでおいて一遍に出すわけじゃないんで、したがって、出てきた条件に応じて支出をしていくわけでございますから、その情勢を見て必要となれば予備費でそれを追加していくことができるわけです、義務的経費でございますので。かつて五十年度にはそれを実行に移しました、百数十億のものを五百億前後に、たしかだったと思っております。  それから、いまお話しの宮城県、岩手県、福島県等におけるいろいろな事情の違い、御希望や御意見とわれわれの食い違いは、主として業態にまだいろいろまちまちがございます、そういうこととの関連があると思います。したがって個々にわたって事情を調査いたしまして、できる限り現実の情勢に合わせるように配慮をしたいと思います。
  236. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 労働大臣は、労働四団体と会見をした際に、労働四団体が構造不況の方々に対して集中的な対策をしてほしいと、そういう申し入れをした際に、時間がないのでもう間に合わない、しかし、議員立法としてされれば、政府提案と同じように検討する用意があるということを労働団体に答弁したと言われていますが、これ間違いありませんか。
  237. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 私は、現在の制度、つまり雇用安定資金制度というのはスタートを切ったばかりでありますし、先ほどからお話を申し上げておりますように、そういう現在にある制度で対応できると思っておりますが、しかし、現在の雇用関係の諸情勢にかんがみて四団体の提案をされた提案の趣旨というものは理解できる、ただ、これを政府提案としろということになりますと、政府提案とするためには各省間の意見の調整を行わなけりゃなりませんから時間がかかる。いま労働四団体の原案のほかに各党間でもいろいろ意見が出ておるし、与党でも研究中である。したがって、議会で御意見がまとまった形で法律になれば、法律を忠実に執行するのはこれは政府の責任であると、こう申し上げたのであります。
  238. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 そうしますと、これはきのう野党五党がまとめて一定の成文化をして与党に申し入れて、この参議院の予算委員会の開会中に何らかの結論を出すと、こういう方向を出されておりますが、大臣としてもこの内容に含まれている中で、雇用安定基金でダブっている点もあります。それから全然新しい提案もあるわけなんです。あるいは現行法の改正を含める点もあるわけなんです。そういうものも含めて、この五党の野党案について、あるいは労働四団体の問題提起については前向きに検討すると、そういうふうに受け取っていいんですか。
  239. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) いわゆる五党案というものを拝見をいたしまして、御指摘のようなこともございますけれども、無理だなあと思うこともあるわけであります。したがって、承るところによりますと、与党を含めて共同提案にもっていくような検討が行われつつある、その期日も非常に近いということを承っておりますので、私どもの方の考え方も聞いていただきつつ、案の行方を見守っているところでございます。
  240. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 厚生大臣、この関係でちょっとお伺いするんですが、自民党さんの方の中で、この法案が出されれば健康保険法案と刺し違えだと、そういう何か新聞報道なんですが、そういうずるい考えはないと考えるんですが、いかがでしょうか。
  241. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私どもの方ではまだ聞いておりません。
  242. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 ないことを期待します。  それで総理、いまちょっと総理が欠席の間いろいろ聞いたんですが、やはり福田内閣の当面の問題が雇用対策だと、こういう位置づけをするならば、やはりこの労働四団体、すべての労働者の集まっておる労働四団体、それから五つの野党、これが一致してまとめた法案については、やはり総理としても積極的に解決するための努力という点についてここでぜひ表明をしてもらいたいし、大蔵大臣もそれに必要な金については、万難を排して金集めをするという決意のほどをひとつ聞かしてもらいたいと、こう思うんです。
  243. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、雇用対策は非常にいまわが国として大事な問題であるということは、もう私がしばしば申し上げておるとおりでありますが、そういうためにこそ、この二兆円も追加支出をするということにいたしておるわけでありまするし、預金者には大変御迷惑ではありまするけれども、預金利子の引き下げ、これまであえてお願いをすると、こういうことにしているんです、これは雇用問題なんですね。それからそういう雇用の場をつくる、そういうことを考えても、しかし構造不況の問題とかいろいろ問題がありますし、また過剰雇用というような問題もある。そういうことで別途の雇用対策ということもまた必要なんです。そこで、雇用安定資金、これはもうフルに活用する、その他のいろんな手法を総動員をする、こう申し上げておるわけで、まあ私どもといたしましては、まずまずきめの細かい考えられる努力、それはしたつもりでございます。しかし、せっかく四団体からまた新たなる御提案もあるわけです。その提案の中にはなかなか受け入れにくいというものも多々あるわけでございまするけれども、まあ与党、自由民主党におきまして、野党の皆さんといろいろ相談してみると、こう言っておりますので、しばらく政府といたしましてはその相談を見守っていきたいと、かように考えております。
  244. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 御意見につきましては、私はまだ深くこの内容についても存じ上げておりません。よく関係各省とも御相談申し上げて、慎重に検討してまいりたいと思います。
  245. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 総理以下、前向きにこの問題を取り上げて、この国会で成立するようにひとつ最大努力要請いたしておきます。  これに関連して経済企画庁長官にお伺いしますが、テレビの討論会とか週刊雑誌とか、あるいは新聞の座談会に、この一年間の公定歩合の引き下げで三十万人の雇用を拡大したという点を具体的に数字を挙げて御発表なさっておるんですが、大ざっぱに、たとえばどの会社がこれだけの金利負担になってこれだけの雇用を確保した、そういう総論じゃなくて各論のところを二つ、三つでもいいから具体的に教えてもらいたい。私は、机上プランで公式の場に言っておるのではないと思いますから、この場で具体的に教えてもらいたいと、こう思うんです。
  246. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) お答えいたします。  私がいろいろな座談会で申し上げましたのは、三月、四月並びに九月の公定歩合の引き下げによりまして、日銀の試算によりますと、支払い利息と受取利息の差額が約一兆二千億ということでございます。したがいまして、今日の企業は減量経営、何とかして金利負担を軽くし、また過剰雇用があれば人減らしをしよう、また新規の雇用を控えようという態度をとっておりますから、仮にそういう状況の中で金利の負担が減少すれば、一カ年の給与を三百万と仮定すると四十万程度の雇用吸収力になる、そういう話をいたしたわけでございます。しかし、勤労者の五十一年の給与総額は二百四十六万と承っておりますから、そういうことになれば約五十万近い雇用吸収力があるということでございます。しかし、これが現実にどの企業にどういう形であらわれるかということは企業者の経営方針、また特にその中での労務対策がいかなる立場をとるかということで決まるわけでございまして、やはりこれは労使の間で十分話し合いを進めていくということが基本でありますし、政府といたしましてもできるだけ失業者が出ないようにしていくということに最善の配慮を払っていくことではないかと思うわけででございまして、したがって、どの部分が雇用にどう回るかということは私の方で、政府で計算をいたしているわけではございません。
  247. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 そういう無責任な話を……。私はこの公定歩合引き下げに対する国民の反感を、目をそらすための作戦ではないかという、あなたのテレビ討論を聞いていて直観しました。奥さんが大分言ったでしょう、ずいぶん適当な数字で公定歩合を合法化するんですねと、あの奥さんが一発言いました。あなたと討論しておって。  それで、私は大蔵省にお伺いしますが、大蔵省はこの問題は国民に納得させる新論法だと、こういうことを新聞の見出しでとらえているんですが、大蔵省はこの問題についてどんな考えでおるか。公定歩合の引き下げと雇用という問題についてどういう考えを持っておるか、聞かせてもらいたい。
  248. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 公定歩合の引き下げは、その目的は一般の金利水準を下げていこうと、こういう目的でございます。総理が常に申し上げておりますとおり、貸出金利を引き下げることによって企業の経理というものが、これが金利が高いときよりも安くなったことによって経営がやりやすくなってくると、それによって企業の何と申しますか、経営がよくなってくるというようなことを通じましてそれが雇用の維持、雇用の拡大というところを、これを目標としておるということを私もさように考えております。
  249. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 そうすると、こういう新聞に出ておるとおり、新論法を雇用関係で始めたんですから、私は通産大臣にもお伺いしたいんですが、こういうことが現実に政府の責任者からある以上は、各企業でどれだけの金利負担に軽減があった、したがって、孫会社を含めて、この程度のやっぱり雇用はきちんと確保しなさいということを通産と労働がきちっと連携をとって、いわゆる監視の目と言っちゃ語弊がありますが、具体化するように私は指導し、あるいは具体的な会議を——会議と言っちゃ変でありますが、指導すべきだと、単に労使の関係で逃げるのはひきょうだと、こう思うんですが、いかがでしょうか。
  250. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えいたします。  いまお話しのような、労使の関係で逃げるとかなんとかということは私全く考えておりません。のみならず構造不況業種等によりまして、私の方でどうしてもやっぱり設備の縮減をしなければならないところから出ますこの雇用の、労働者の方方の問題につきましては、私の方としては一番神経を痛めておるところでありまして、これこそ労働大臣と緊密に連絡をとって今後の転換その他の問題を考えてまいります。
  251. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 先ほど企画庁長官がおっしゃった数字、労働者が一人当たりにかかる費用というのは約三百万と、大体の認識は私どももそうなんです。それですから、単純に一兆二千億を計算しますとそれは四十万と、こういうことになるわけでありますが、それを全部人件費に回せるかというと、それは先ほどからのお話のようにそう簡単にまいりません。それから、経営の条件がよくなりますから、少なくとも新規離職者が出ることを防止するという役割りはこれは十分果たせるんじゃないか。  それから雇用余力が——雇用の吸収力がこれから将来にわたってどういう部分で期待できるか。これはいままでの計算と別の角度から計算をする必要がある。そうして、実質五十五年一・三%というところへ持っていきたいのでございます。そういう意味を兼ねまして先般雇用関係の閣僚懇談会も設けました。それから同時に、労働省では緊急臨時雇用対策本部を設けていまその作業にかかっているところでございます。まあ、大ざっぱに申しますと、第三次産業に雇用吸収力が期待できるんではなかろうか、特に消費生活関連の第三次産業に期待できるんじゃなかろうかと、こう思っております。
  252. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 私は、経済企画庁長官が国民の前にああいう発言をしたんですから、あなたのところでやっぱり二つか三つ大手のところをマークして、具体的に金利負担と雇用という関係が、どういう相関関係で具体的に来年の三月まで進行するのかということをあなたの責任できちっと点検をして、追求をして、そして国会に具体的に報告すべきだと、こう私は思うんでありますが、やってくれますか。   〔委員長退席、理事内藤誉三郎君着席〕
  253. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) お答えいたしたいと思います。  私が申しましたのはマクロの数字で、今日の経済状態で一番大事なのは雇用の問題であると、したがって、企業がこういういまの状況であれば、雇用の方にしわ寄せをしていくという可能性が非常にあるわけです。現実にまた企業としてはそういう対応をしておるわけでございます。したがって、これを防ぐために企業としてこういう負担の軽減ができるということを申し上げたわけでございます。したがいまして、いまお話しのようなことにつきましては、私ども十分勉強してみたいと思います。
  254. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 勉強じゃない、やるかやらないかだ。やりますか、勉強じゃなくて実際行動としてやりますか、次の国会までに。
  255. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 個々の企業がどういう対応をするかということについて、私の方でこれを指示するわけにはまいらないわけでございます。しかし、そういう趣旨でこういうことを考えておるということを申し上げたわけでございますので、勉強は十分いたしたいと思います。
  256. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 少なくとも福田内閣の責任ある閣僚がそういう発言をした以上は——これはあなた直接でない場合もあるでしょう、あるいは通産大臣の応援をもらう、あるいは労働大臣の応援をもらう、そういう福田内閣全体として、金利負担と雇用という点が具体的にどういう相関関係で進展したのかということをやっぱり発言した以上は国会に報告する義務がある。私はそんな無責任な発言をあっちこっちで言っては困る。だから言った以上は、私は全部とは言わぬ、大体三つか四つぐらい、大手があるんですから、孫会社まで含めて追跡追求をしてほしいと、その結果について次の国会に報告してほしいと、こう言っておるんですが、どうですか。
  257. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 御趣旨の点は十分勉強いたして、御報告できるように……
  258. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 勉強じゃないよ、やるかやらないかの問題。そんな勉強なんていう言葉を使うやつがあるか。
  259. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 勉強と申しますが……
  260. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 あなた自身がやるかやらないかだよ。
  261. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) やるかやらないかという御趣旨がよくわからないわけです。調査をしろということであれば二、三の会社について勉強いたしたいと思います。
  262. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 国民をごまかしてなぜ発言した。
  263. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 私の立場から申し上げますと、今度の金利の引き下げ、これはやはり雇用を確保することが目的である。したがって、少なくとも銀行等が金融をいたします場合に、人減らしを条件として金融をするといううわさをちょいちょい聞きます。そういうことを——これはしかしうわさだけであって、なかなか証拠がつかめない。言うた方が言うたとは言いませんし、借りた方は後がこわいから言いません。したがって、いま大蔵省の銀行局と私どもの方の職業安定局と連絡をいたしまして、少なくともそういうことのないような通牒は発するつもりでございます。
  264. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 私の方が納得できない。経済企画庁、自分が言ったなら自分が責任を持ってやれないのかしら、追跡追求を。金利負担でどのくらいポケットして、どのくらい雇用に使って、どのくらい設備投資に使ったと、それぐらいの分析できるだろう、できないですか。金利負担の流れはできませんか。
  265. 内藤誉三郎

    ○理事(内藤誉三郎君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  266. 内藤誉三郎

    ○理事(内藤誉三郎君) 速記を起こして。
  267. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) ただいまのような御趣旨であれば、十分それは調査してみたいと思います。ただし、どの部分が雇用に回り、どの部分がというふうに、お金に印をつけるわけにはなかなかむずかしいと思いますので、その企業の態度によって違いますので、その辺だけはあらかじめ御了承いただきたいと思います。
  268. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 関連のことでございますので、私からもお答え申し上げます。  大蔵省といたしましては、先般の公定歩合引き下げに際しまして、金融機関に対して、この貸出金利引き下げに際して、金利が助かると、各企業が助かると、その企業に対しましては、金融機関からできるだけひとつ、これは雇用の保持安定という方面に活用してもらうように話をしてもらいたいと、かように申し入れております。
  269. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 総理最後にお願いしますが、やはり、私は案外頭の回転が鈍いか、ばかかしれませんが、抽象的な総論だけではいやなんです。そういうタイプなんです。ですから、あなたが国民に言った以上は、このためにこうなったということを、やっぱりきちんと国民に示すというのが、私は政治の常道ではなかろうかと思いますから、ぜひ総理の方でもひとつ陣頭指揮をして御協力願いたいと、こう思うんです。これ要望です。  それから、この定年延長の奨励金と、こうあるんですが、これは昨年は三十億の予算に対して実績は二億と、なぜこんなに少ないんだろうか、問題点を教えてもらいたい。
  270. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 実は、私自身が今度就任をいたしまして驚いたことには、こういう制度があるということを各企業経営者で知らない人の方が圧倒的に多いわけであります。それから、中高年齢者雇用促進助成金でありますか、そういういろいろな制度がございますが、そういう制度があるということさえも知らない人が多い。したがって、これをまず周知徹底さして、少なくとも予算が消化されるようにやることがまず第一だと考えております。しかし、同時に金額的に魅力が少ないということにも原因があるかとも思いますので、今度の概算要求の中には増額を要求いたしております。
  271. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 私は、いまの大臣の答弁は、率直に言ってこの定年延長とかそういうものに対して労働省自身が非常に熱意が欠けているんじゃないか。まあPRの不足と言いましたが、PRの不足イコール行政指導の不徹底ですよ、裏を返せばね。ですから、この定年制の問題について衆参両院で決議もされておるんですが、基本的にこの六十歳定年が一九八〇年までに実現する可能性があるのかどうかということについてひとつ見解を聞きたいと、こう思うんです。
  272. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 現在の五十五歳定年というものは、日本人の平均寿命が四十歳前半のときのものであります。それが今日七十何歳になってなお続いているということは不合理であると思います。したがって、これは速やかに是正さるべきものだと考えます。  そういう方針で労働省は行政指導を従来いたしてまいりました。その結果といたしまして、先般まで六〇%台であったものが、現在五十五歳定年制をとっておるのは四七%くらいになってまいりました。進行しておるわけであります。それから六十歳定年制を採用している企業は、これも二〇%台であったものが現在三六%近くになってきておるわけであります。したがって、これをできるだけ早く普及しなければならぬ。少なくとも厚生年金を受給する年齢、六十歳までは速やかにしなきゃならぬと思います。思いますが、これには長い間の人事管理の体系、それからもう一つは賃金原資の分配の問題が絡んでおるのであります。そういうこととあわせて解決をしつつ行わないといけないと思いますし、それから、企業の中にはそれぞれ変わった対応の仕方をしております。たとえば、高年齢で働く仕事とそうでないものとを分けて別会社にするとか、あるいは働いているうちに単能工を複能工にするとか、そういうそれぞれの対応をしておりますので、現在の段階で一律にこれを規制するというのは時期が早過ぎる。むしろ逆効果が出てくるので、私どもといたしましては、行政指導を通じ、やがてはそうなるんだということを経営者に十分知ってもらっておく必要がある。  それからもう一つは、高年齢社会になるということは、逆に言いますと若年労働力の総体的不足の時代が来ることであります。したがって、早い時期にそれの対応の仕方をしておくことは企業の方にとっても有利である、こう私は考えておる次第であります。
  273. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 それからことしの六月十八日、労働省で残業の抑制なり年休の完全消化、時間短縮という、こういう面で積極的な雇用を拡大すると、そういう行政指導を強化するということを決めていらっしゃるようでありますが、その後の状況なりあるいはこれを行政指導をする上での問題点があったら、どういう問題点があるのか聞かしてもらいたい。
  274. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 労働時間の短縮ということが労働者の福祉につながるだけでなくて、国際的にもあるいは国内的にも、公正な競争の条件を整えるために必要なことだと考えております。  それから週休二日制の実施、これは直ちに雇用の増大につながるとは簡単に言えないと思います。たとえば、銀行はこれは銀行法の改正を行わなきゃだめですから早急にはむずかしいとしても、たとえ話でいたしますと、銀行が一週間に五日だけ開いて、そしてみんなが二日休むんではこれは雇用はふえません。六日開いて一人一人が二日休むので初めて雇用がふえるわけであります。それから大衆の利益との関連も考えなければならないわけでありますので、にわかに法制化するということには問題がございますが、この実施についてやはり努力をしておりますし、いま、具体的な数字は忘れましたが、かなり好転をしつつあるわけであります。  労働時間については、現在週四十二時間弱、平均そうなっております。ただ、これを法制化しておりますのはアメリカとフランスだけで、イギリスは婦人と年少労働に関してだけの規定があるわけであります。各国の法制等も配慮いたしたい。直ちにそれが雇用に結びつくとは言えないとしても、先ほどから申しましたように、長い目で見て雇用にも結びつくし、労働者の福祉の増進にもなるし、さらに公正な競争力を持たせるという意味において必要だと思っておるのであります。その効果等について、御必要でございましたら事務当局から……。
  275. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 どうぞ。
  276. 桑原敬一

    政府委員(桑原敬一君) お答えいたします。  私ども、労働時間の短縮と雇用の関係というのはきわめて密接な関係があろうかと思いまして、いま鋭意勉強いたしておりますけれども、一応考え方といたしましては、比較的好況に推移している産業というようなものにつきましていま調べております。それが昭和四十八年、いわゆる非常に好景気のときと比べまして、労働時間、特に残業はどんなふうになってきているか、それと雇用の関係はどうなっているかというのはいま勉強いたしております。基本的には、私どもはできるだけ恒常的な残業時間は御遠慮いただいて、   〔理事内藤誉三郎君退席、委員長着席〕 好況的な企業につきましては雇用にいろいろな面で寄与していただきたいというようなことでいろいろと指導いたしておるわけでございます。現在の状況といたしましては、四十八年のピーク時から比べますとまだまだ残業時間は回復いたしておりません。漸次景気の好転に伴って時間外はふえてはまいってきておりますけれども、まだ従来の水準まで来ていないというような実態がございますので、やはり企業のそれぞれの実態に応じて十分指導してまいりたい、こういうふうに思っております。
  277. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 もう時間がありませんから、私は、年休それから残業からどのくらい雇用が拡大するかという点を試算した案があるんですがね。私は相当程度回復できる。ただ一言言いたいのは、好況産業である自動車産業などについては、もう他の産業に比べて比較にならないくらい残業をしておるわけですね。私は、きのうからいろいろ貿易収支の問題で議論されていますが、自動車産業がそういう好況産業であるならば、やはり残業を規制して常用労働者を雇うと、そういうくらい積極的な雇用面に好況産業が寄与するという私は努力が欲しいし、そういうこともやっぱり労働省なり通産省は指導をすべきではないのか。好況産業がこういうかっこうでは、もう不況産業は置いていかれるわけですから、そういう配慮、行政指導が必要ではないかと、こう思うんですが、具体的にいかがでしょうか。
  278. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) これは、こういう情勢のもとにおいて、やっぱり乏しきを分かち合うと申しましょうか、社会の連帯性と言いますか、そういうものは労使ともに十分考えていただかなきやならぬことであります。したがって、それと同時に、これから想定されます離職者の就業を考えまするためにも、求人の開拓ということはこれはどうしても必要でありますので、先般全国の担当者を集めまして、求人の積極的開拓に努めているところであります。その仕事の一つとして、いま御指摘されましたようなことも一つの対象事業として考えたいと思います。  それから、年次有給休暇の消化の問題でございますが、これは必ずしも、いろいろな人員配置の問題、労務管理の問題等があって、雇用にすぐ結びつくかどうかということになると、問題があると思います。しかし、現在の消化率は七一%であります。これも先ほどの時間短縮の問題その他と同じように、国際的な公正な競争をするというたてまえから、あるいは国内的にもそういうたてまえから、完全消化を行うように行政指導を強めたいと思っております。
  279. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えいたします。  ただいまお話しの自動車産業でありまするが、御指摘のように現在最も好調を続けておりまして、そういうふうな関係から、大部分のメーカーが、余剰の労働力を抱えておりまする繊維産業あるいは鉄鋼、造船等の不況産業の方面から出向の従業員を受けております。大体その数は約千六百人に上っておりまして、また、そのほか約四千七百人の季節工を採用いたしております。また、一一人当たりの月平均時間外労働の時間を見ますると、ピーク時に、四十八年は三十三時間でありましたが、最近では二十一時間となっております。なお、自動車メーカー全社は完全に週休二日制を採用いたしておること。なおまた、自動車メーカー十一社の正規の従業員は二十二万人でございますが。そのほか、今後ともに雇用事情を見ながら労使間における話し合いを進めるように指導いたしたいと存じております。
  280. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 通産大臣、製造業が十二・六なんですよ、時間外。好況産業の自動車が二十一でしょう。製造業の倍も持っているということは、相当やっぱり余裕があるということなんですよ。ですから、もっと好況産業にこういう点では労働力の移動、不況産業からの移動ということをもっと受け入れるように努力してもらいたいと、このように要請いたします。  それから、次は国鉄問題でちょっとお伺いいたします。  運輸大臣にお伺いしますが、きのう小柳先生の質問に答えておりましたけれども、ことしの決算を見て、天十一年の。五十四年度までに収支をとんとんにすると、こういう計画について見通しはどうですか。
  281. 田村元

    国務大臣(田村元君) 当初予定しておりましたいろいろな条件、あるいは経済状況あるいは運賃問題等の狂いがございましたから、非常にむずかしい状態になってきたということだけは言えるかと思います。
  282. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 あれだけ二年前議論をして、いま言ったようなことになるんですが、その根本的な原因は何でしょうか。原因と対策。
  283. 田村元

    国務大臣(田村元君) 近い原因といいますのは、経済状態の問題もありましょう、運賃問題もありましょう。しかし私は、国鉄問題については、やはりみんなに考えていただかなければならぬ時期が来たんじゃないかというふうに思うんです。私は運輸大臣になりました当時は、国鉄当局に対しても厳しい批判を持っておりました。ところが、最近はむしろ同情さえいたしております。と申しますのは、国鉄の場合、両手両足を縛られて走れと言われておるような姿が確かにあります。たとえば新幹線、恐らく整備五線以降のこれからつくろうとする新幹線は、つくってみても赤字でございましょう。あるいは地方線にしましても、赤字が目に見えたものもつくらなければならないという運命をしょわされておる。これは廃止しなければならぬことは当然わかっておっても、赤字ローカル線を廃止することもできない。あるいは合理化にいたしましても、貨物の合理化も根本的なこともなかなかできない。いろいろなむずかしい問題を含んでおります。こういうようなむずかしい問題、本来ならば、これを解決すればあるいは再建ができるんではないかと思われるような問題がなかなか解決できないというむずかしさ、現実がございます。そうしてまた、よく申されております三本柱でありますけれども、国鉄の徹底した経営努力ということを今日求めておるわけでありますが、もっと前からなぜこれに着手しなかったであろうかということを思えば悔やまれてなりませんし、また適時適切の運賃値上げということをしておったならば、こんなにまで高くすることもなかったであろう。そうすればもっと競争力も強かったであろうと思えば、過去が悔やまれてなりません。  また、政府の助成でもそうであります。政府の助成、これは国民大衆のお金でございます。納税者は主権者たる国民大衆であります。その国民大衆に対して、果たして愛されておる国鉄であるかどうかということを考えるときに、われわれはやはり慎重に考えざるを得ない面がございます。汽車に乗るのに、御苦労さまでございます、毎度御乗車ありがとうございますと、やさしく客を迎えてくれる国鉄に早くなってもらわなければなりません。そして、国民大衆の了解を得て、その合意を得た上で、本来国鉄が負担する限界を超える公共性のものについて、十二分の助成をしていくということをやらなければならぬでありましょう。いずれにいたしましても、われわれも必死に努力をしております。同時に、国鉄の労使も最近微妙な変化を示して、労使協調の実を上げようとしておられることは高く評価してよいと私は思います。このようにみんなが今日目覚めております。いましばらくごらんをいただいて、われわれがやりますこと、あるいは国鉄労使がやりますことにつきまして、前向きのことについてはどうぞいろいろと御協力をお願い申し上げたいと思うのであります。
  284. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 国鉄総裁、新幹線の収支はいまどうなっていますか。黒字ですか、赤字ですか。簡単に。
  285. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 現在運行しております東京から博多まで考えますと、新幹線だけで見ますと黒字になっております。しかしながら、これは同時に従来の東海道本線並びに山陽本線の収支状況と合わせて見なければならないわけでございますので、それを合わせて見ますとまだ赤字でございます。ただ昭和五十年度決算では、その赤字の程度が、いわゆる収支係数で一〇六ということで、収入百円に対して経費が百六円でございましたが、五十一年決算では、先般お願いいたしました値上げの影響もございまして、その一〇六が一〇三になったわけでございまして、恐らく五十二年度ないし五十三年度には山陽本線、東海道本線と総合いたしました全体の収支係数が一〇〇を割ることになるんじゃないかという希望を持っておるという程度でございます。
  286. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 福田総理、いま大臣と総裁から言われたとおり、国鉄のドル箱と言われる新幹線さえもいまとんとん、それから経済効果のない東北・上越新幹線は、いみじくも田村運輸大臣が、建設しても赤字だろうと、こう言っているんです。ドル箱線が赤字だということになりますと、それ以外の他の約二万キロに及ぶ線はほとんど私は赤字であって、社会の要請に応じて辛うじて運転していると、こう思うんですよ。そうすると、国鉄の赤字というのは、労使関係もいろいろありますけれども、結局は構造的な赤字というふうに私は見て差し支えないと、こう思うんですが、いかがでしょうか。
  287. 田村元

    国務大臣(田村元君) その前にちょっと訂正します。  先ほど私が申し上げたのは整備五線以降の話でありまして、東北・上越は私は黒字になると思います。東北は数年たたずして収支が均衡するでしょうし、黒字に転化するでしょうし、上越も五ないし十年で私は黒字が出ると思う。でありますから東北・上越についてわれわれは心配はいたしておりませんけれども、整備五線以降は、私は運営費もあるいは赤字が出るんじゃないか、それも下手をすれば大きいぞという懸念を持っておると、こういうことでございますので、誤解のないように願いたいと思います。
  288. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国鉄の現状はまことに憂慮にたえないところです。私は、しかし長期的に展望いたしますと、やっぱりここでもいろいろ御議論がありましたが、資源エネルギー有限時代、それがもう現実のものとして諸対策をまたとらなけりゃならぬと、こういう時期が必ずやってくると思う。そういう際に大量輸送手段としての国鉄、これの私は使命というものは必ずまた見直されるという、そういう時期がやってくるんじゃないか、そういう展望を持っておるんですよ。しかし、とにかく当面を考えますと、これはなかなか容易なことじゃない。まあ先々決して捨てたものじゃないというこの長期的な展望の中で、当面の切り抜けをどうするかということを真剣に考えなけりゃならぬ。その考えるかなめというのは、きのうも運輸大臣から話がありましたが、やっぱり国鉄自体の問題、これはやはり考え直すいろんな面があると思うんです。同時に政府も援助協力をしてやらなけりゃいかぬ。同時に利用者におきましても協力をする、こういうことじゃないかと思うんです。私は国鉄の先々のことを考えますときに、決して国鉄自体がこれで終わったというふうな認識は持っておりません。それだけに、私は国鉄をこのままにしちゃいかぬ、何とかして再建整備しなけりゃならぬ、こういう考えでございます。
  289. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 いろんな議論を聞いていますと、国鉄のこの赤字というのはさも国鉄労使の責任のごとく言われておるんですが、私は、四十四年から今日まで四回ですかの再建計画。四十四年の当時、私は動労の役員をやっておって、このままいったんでは必ず赤字になると、だから抜本的な、たとえば線路の建設、こういうものについては国がきちっと負担をして建設をする、そういう方向性でやらないと、このような再建案では必ずつぶれると。私の言ったとおり毎年つぶれているじゃないですか。ですから、私は運輸大臣がああいう非常に明るい見通しを言っておるんですが、私は東北新幹線にはそんなに自信がありません、遺憾ながら。私も東北っ子ですから。ですから、ドル箱がとんとんか赤字かということであれば、他の路線はすべて赤字というのは、これは当然なんです。そこにやっぱり私は国鉄の国鉄たるゆえんが——やっぱり国の助成できちっとすると、そういう方向性を定めないと、また二年、三年たてば同じことを繰り返す。  ですから、従来の三本柱のうち合理化と運賃値上げはもう限界なんですよ。この限界という点から考えて、もう一回三本柱の再建方針について根本的な検討を加えない限り、国鉄の労使にだけ責任をぶっかけるというのはどうも私は腑に落ちない、こう思うんですが、基本的な問題ですから総理どうでしょうか。
  290. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 何も国鉄の労使だけに責任をというふうに言ってるんじゃないんです。これは国鉄内部のいろんな——労使関係もあります、いろんな自主再建の努力、これの必要なことを申し上げておるわけですが、同時に、国がただ傍観視していいんだと、こうも申し上げておらぬし、また利用者の問題、これも御協力を求めなけりゃならぬと、こういうことを申し上げておるわけでありますが、やっぱり三本柱ですよ、結局。どう考えてもその三本柱をやっていくほかはない、こういうふうに考えております。
  291. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 私は、前回の運賃値上げの際に、東京−大阪のグリーン車と飛行機を比べてグリーン車が高いと、これはグリーン車のお客があすから減ると言った。私が言ったとおり、もうがたがたっといっちゃって、この前再改定をやったじゃないですか。そういうわかり切っていることを、私はやっぱり運賃の限界だと言うんですよ。国民は敏感ですから。しかも交通機構が多様化するんですからね。私鉄あり、バスあり、マイカーあり、いろんなものがあるんですから。選択の自由があるんですよ。ですから、選択の自由にこたえるためには、運賃値上げはもう限界だと、こう思うんですが、いかがでしょうか。
  292. 田村元

    国務大臣(田村元君) 先ほどのグリーン車の話は、目黒さんと全く私同意見でありますが、運賃値上げは確かにむずかしい厳しい状況下に入ってきたことは事実だと思います。これは率直に認めなきゃならぬと思う。ただ、だからといってこれをすべて放棄してしまうということは、これは私はできないと思うんです。やはり適時適切の運賃値上げということは、われわれは考えていかなきゃならぬ。ところが、従来のように一本調子の運賃値上げということがなかなかむずかしくなってきたので、いろいろな工夫をこらしてきめ細かいことをやっていかなきゃならぬ時代に入ってきただろう、このように考えるものでございます。
  293. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 総裁、合理化の問題を言われていますが、私の見るところでは国鉄の合理化はもう限界、無人列車でも走らせればいざ知らず、特に運転関係、信号関係は私は限界だと思うんですよ。あなたはどういうお考えを持っていますか。合理化で相当国民の期待にこたえることができると思っているんですか。
  294. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 従来ずいぶん長い間そうした問題と取り組んでまいりましたわけでございますので、だんだんと、このいわば余裕がないというか、そういう詰まってきておる状態でございます。しかし、それでは全くそういう余地がないかと申しますと、たとえば貨物を例にとりましても一番最盛期と今日とで、走っております車両の数はほとんど減ってないわけでございまして、もう少しいろいろ仕組みをうまくやれば、能率よく同量の貨物を運べるのではないかというふうに考えております。ほかにもそういう面はあるわけでございまして、だんだんとそういう面がむずかしくなったと申しますか、ぎすぎすしてきておることは御承知のとおりでございますが、それでは全くこのいわばいろいろな仕組みを変えることによって、もう少し能率を上げる道はないかというと、まだまだいろいろ工夫の余地はあるというところでございまして、全く合理化は今後はだめだというふうには考えておりません。
  295. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 私は、運賃も合理化もゼロ、ゼロなんということは言わないですよ。大きな再建の柱にするにはもうそろいろ限界に来ているのではないかと。ですから、やっぱり三本柱のうちの国の助成あるいは建設に対する国の責任、こういうものについてきちっとこの辺でけじめをつけて、そして国鉄は国鉄でうまくやれと、そういうふうにやっぱり国の責任と国鉄の責任ということを明確に責任づける、そういう段階に国鉄問題は来ているのではないかと、小手先の合理化とか運賃値上げではどうにもならないと、こういうふうに私は感ずるから問題を提起しているんです。  この点について、監査報告書の百八十三ページ、あるいは監査報告書の二十一ページ、この段階でいろんな諸外国の例などを挙げながら、ひとつ政府に決断を迫るという点を監査委員会が出しているのですから、これはやっぱり私は大事にしてもらいたいと、こう思うんですが、これは総理、いかがでしょうか。この監査委員会はもう限界だと言うのです、合理化と運賃値上げは。ゼロではない。ゼロではないけれども、やっぱり三本柱は大変だと、こう言っているんですから。
  296. 田村元

    国務大臣(田村元君) 私は政府助成ということにより一層努力をするということには賛成であります。ただ問題は、先ほど申し上げたように、納税者は主権者たる国民大衆であるということを忘れたくないのです。  それからもう一つは、国鉄の運賃は他の公共輸送機関の運賃と同じように、元来が原価主義を貫いておるのであります。でありますから、そういう点で、私どもは本来の原則を踏み外すことなく国の助成を十分にしていかなければならぬと思っております。日本は、よく外国の例が引かれるのでありますが、日本の国鉄に対する政府の助成というのは世界の超一流であります。輸送密度を考えれば、これは事務当局に詳しく聞かなきゃわかりませんけれども世界一じゃないでしょうか。恐らくそうだろうと私は思うんです。でありますから、そこまでやっておる、けれどもなおかつ苦しいと。で、私は私見でありますけれども、何とか、いま目黒さんがおっしゃったような御意見も当然の御意見一つでありますから、何か特定財源を見つけることができないだろうかと、いま私自身必死になって模索をしておる最中でありますけれども、これまた国民に御負担をかけることになりますから、なかなか言うべくして行いがたいことではありますけれども、そういうことまで私どもはいまねじりはち巻きでため息をつきながら模索をしておる、探しておるというような状態であることをひとつ御理解賜りたいと思うのであります。
  297. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 総理、この監査委員会の、国の責任はどう思いますか。
  298. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) その委員会の報告というのは私よく知りませんけれども、目黒さんのおっしゃるのは国が責任を持てということを強調しておると、こういうことのようですね。国が責任を持つ、これは当然のことでございまするけれども、しかし、これを財政的に責任を持ってひとつそれを主力にしてやれというそのお考えになります、これはなかなかむずかしいんじゃないかと思うのです。さなきだに、いま国の財政というものが非常に逼迫しておる。世界でも本当にまれに見るというか、もう絶無でしょう、恐らく。三〇%歳出需要を公債に依存しておると、こういう状態のもとで、財政にそう多くの負担を求めるというのは実際問題としてむずかしいのじゃないか、そのように思いますが、しかし、やっぱり私は幾ら考えてもこれは国鉄の自主再建の努力、それに対応して政府もできる限りの助成をすると、同時に利用者にも——いろいろ工夫をいたしまして、これはもう工夫が要ると思うのです。交通体系全体の料金をどうするかとか、いろいろそういう問題があると思いますが、そういう工夫をした上で利用者にも御負担を願うという、こういう三つの柱の上に立ってこの再建を考えるというほか道はないと、このように考えます。
  299. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 まだ再建論争は平行線ですから、法案も参議院に来るそうでありますから、その際にまた議論をします。  それで人権問題でちょっと二つ三つお伺いしますが、十月十五日の新聞によりますと、統幕議長予定の栗栖さんという方が、大変な——統幕議長は認証官にすべきだと、そういうことを官房長官に申し入れて、官房長官も了承したような新聞記事がある。それからやはり制服優先というのはもう時代おくれだというようなことを「ひと」という談話で言っておる。シビリアンコントロールの問題についてそういう問題を言っておると、こういう問題は私は大変な問題だと思うのですが、要請を受けた園田官房長官の受けとめ方についてお答え願いたい。
  300. 三原朝雄

    国務大臣(三原朝雄君) お答えをいたします。  衆議院の予算委員会においてもこの問題が取り上げられまして、官房長官にも、いまお尋ねのような御質問があったわけでございます。私は、それは総理のところに、防衛庁の人事におきましては十日前に閣議決定をお願いすることにいたしております。それは職務の事情上十日前に閣議了解を得るということにいたしておりまして、そういうことで参りました際に総理に対して申告を申し上げた、そういうときになされた発言と、それから官房長官の場合は、官房長官は私が渡米中に臨時代理の職をなさいました際に、ざっくばらんに庁内幹部を呼んで意見を聞かれた懇談の際に出たお話の内容等でございますが、そこで私は、衆議院の予算委員会でも申し上げたのでございまするけれども、まず、いま認証官問題がお尋ねでございますが、その点につきましては園田官房長官のおいでになった際に、懇談の際にそういう話が出たことを承知をいたしておりますが、この点につきましては私も総理のところに参りましたときに、そういうものを含めて本人に忠告を与えたのでございます。それが毎日新聞に出ましたので、それをとらえて申し上げたのでございますが、認証官問題につきましては、記者会見の際に本人から認証官を希望すると言ったことではございません。あなたは認証官になりたいのではないかというようなことを、質問を記者からされたのでございます。それに対して本人が、自衛隊の最高責任者として将来そういうことでもできますればありがたいことでございますというような、懇談的なお答えをしたようでございます。本人自身がそういうことをみずから申し出たことではございませんが、そういう経過であるわけでございます。  私は、衆議院の予算委員会でも申し上げましたのは、本人自身がちょうど、いまのあの最高責任者になる陸将という立場というのは、大体、これ履歴を申し上げて恐縮でございまするけれども、十分本人のために御理解願いたいと思いますので少し細部について申し上げたいと思いますが、本人は旧軍から出た者ではございません。いま大体陸将、海将、空将というのは、当時大尉ぐらいの旧軍時代の階級で警察予備隊に入ったというような経過の者の人事でございます。本人は、そうでなくて、普通の中学から高校、大学を出て実は警察予備隊に入ったというような履歴の者でございます。そういうようなまず履歴の者でございまするが、ここ三十年ぐらいの勤務をいたしておりまするが、きわめて優秀な勉強家でございまして、また平素の勤務ぶり等を見ましてもきわめてまじめな人物であるわけでございます。  したがいまして、いま認証官の問題につきましても、みずからが記者の方に、なりたいなというようなことを言ったんではなくて、尋ねられて、できれば最高地位にある者がそういうことになればありがたいことと思います、それは部隊の士気高揚にもなってまいりますからというようなことを懇談的に話したような事情でございまして、そういうような経過のものでございます。
  301. 園田直

    国務大臣園田直君) 私が防衛庁長官代理を一週間ぐらいやりました際に、昼食をいたしました。その昼食の席上で、防衛庁の幹部及び自衛官の幹部三名が一緒にしたわけでありますが、そのときにいろいろ懇談で意見が出てきまして、その最後ごろに、自衛官の地位向上と士気高揚のために認証官にしてもらうと非常に都合がいいという意見が出ましたので、私は黙ってそうかと聞いておった、これが事実でございます。  しかし、御承知のとおりに、警察庁長官、海上保安庁長官は認証官ではございません。政務事官、事務次官等も認証官ではございません。こういう事務的から言ってもこれは話にならぬ話でございますが、特に自衛隊というものを国民の中に何とかして理解してもらおうという努力の最中に、認証官などという、ややもするとかってのごとく天皇制と自衛官を結びつける誤解を与えるようなことになりますので、そういうことは取り上げられるべき筋合いではないと考えております。
  302. 三原朝雄

    国務大臣(三原朝雄君) 一言補足をさせていただきますが、いまも官房長官が申されましたように、認証官自体法律事項でございます。それから、総理もそうだと伺っておりますが、私自身もいま統幕議長を認証官にするというようなことは毛頭考えておりません。そういう経過でございます。
  303. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 関連質問を許します。矢田部理君。
  304. 矢田部理

    ○矢田部理君 いまの質問に関連して申し上げたいと思いますが、防衛庁長官官房長官のお話は大分事実と食い違いがあるようです。しかし、いまの答弁の中で同時に感じられますことは、本人及び周辺が認証官にしてもらいたい、した方がいいという前提だけはすでにお認めになっておるようでありますから、そこを中心にお話をしますと、衆議院でも問題になりましたし、政府側の弁解もありましたから、私なりに調査をいたしましたし、記事も精密に読んでいただきたいんであります。三つのことを本人はしゃべっています。  その一つは、いま議論になりました統幕議長は天皇の「認証官であるべきだ。」と。二番目には「二十日に任命を受けたあと宮内庁へ記帳に行く。」。そして三つ目には、総理を異例の訪問をして一いままで統幕議長はないそうでありますが、「定期的に軍事情勢を報告したい。」、この一連の発言が記者会見でなされている。これが問題点の一つであります。  同時に、それに対する政府の対応が二番目には問題にされなければなりません。つまり統幕議長は認証官であるべきだということについては官房長官も賛成していると、こういう記者会見をされているわけですね。この新聞記事では、官房長官は、いや検討を約束しただけだと、こういう言い方に変わっている。そして、きょうは、両長官とも、いやそんなことはできないのだと否定的に変わった。どこかに事実のすりかえが行われていると思われるわけであります。  それから二番目の問題については、宮内庁に記帳に行くという問題について、これは宮内庁が許可を出したと言っております。宮内庁は来ておりませんが、総理府、一体、これはどうなっておるのです。  そして三番目には、定期的に軍事情勢を首相に報告したい。防衛庁長官もいれば国防会議もある。制服のキャップがどうして定期的に直接首相に報告しなきゃならぬのですか。それをあなたは原則的には了解をされたという、これも大変な問題です。  同時に、大きな三番目といたしましては、そういう政府筋の一連の説明があった後、きょうの新聞を見ますと、またまた問題を出しているわけですね。つまりシビリアンコントロールは「現代国家には必ずしもそぐわない。制服が主体となるべき運用面もある」のだと。大体絶対平和思想なんていうものは観念の産物にすぎないのだと。いいですか、「一度やられたからって」——これは太平洋戦争に負けたことを前後から読めば指すわけでありますが、「一度やられたからってフニャッとなるのは、人間の本性に反する。倒れただけでは済まん」とたんかを切っているわけであります。これは大変な問題じゃありませんか。もともとこの男はいわくつきなんです。制服組はシビリアンコントロールで抑えられてなかなか物が言えぬと。しかし、この人ならば制服組の代表としてシビリアンと対等に渡り合えるただ一人の人物だと制服組は期待をしておる。そういう期待の上に立って、ことし五十二年度の予算編成の際にも、財政当局が現実にはコントロールしている、財政、大蔵は大変けしからぬと物議を醸し出した男でもあるわけであります。どうですか、関係大臣のもう一回の答弁。  結論的に言うならば、もう私は公務員として罷免に値する。少なくとも、あした発令だそうでありますが、内定を取り消して発令をとりやめるべきだ、こういうふうに思いますが、総理大臣以下の答弁を求めたいと思います。
  305. 園田直

    国務大臣園田直君) 私に関係することだけお答えをいたします。  私は賛成はいたしておりません。報告したとおりでございます。  それから、総理に対する定期的な軍事的な政治的な報告、これは一切ありません。いままでもやったことはありませんし、そういう話は聞いたことがありません。
  306. 三原朝雄

    国務大臣(三原朝雄君) お答えをいたします。  認証官の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、本人が申し出たものではないと、その記者会見の際は。先ほど官房長官との会見で官房長官にお尋ねでございまして、私は答えなかったのでございまするが、これは記者の方から、認証官になりたいのではないかというお尋ねがあったので、士気高揚というような面も考えて、できますれば、そういうことになればありがたいことでございますというごく懇談的な所感を申し上げたのであって、決して、これは法律によって決められることであるし、また各制服を着ております海上保安庁の問題あるいは警察の問題等がございまするので、そういうことをいまできることとは考えておりませんということを率直に本人も私に申しておったのでございます。  それから、記帳の問題は、これは事務次官は皆さんが記帳しておられる。できれば、記帳はどなたでも行けるわけでございまするけれども、この際、そういうことをしてもらうと非常にみんなの気持ちも盛り上がるが、しかし記帳というのは儀礼的なものである、決してこれが他のいろいろな問題と関連をして考えておるものではないと、あくまでもそうしたことでございますということを私に率直に申しております。  それから、定期的に報告をさしてくれということでございまするが、これは決して行き過ぎたことではございません。私の了解を得て軍事専門的なそうした自衛隊の運用というような面について、ときにはひとつ最高指揮官である総理に報告をさしてもらうような機会をお願いできまいか、かた苦しく君は考えずに、ひとつ総理にもお願いをしてみるが、昼食会か何かやってもらっただけで、一、二回やっていただきましたけれども総理もお忙しゅうございまするので、それが立ち消えになりました。そこで、私といたしましては、できますれば三カ月に一回とかそういうことにお願いできればと、自衛隊全体の教育訓練等でお願いできればということを私が考えておったところでございます。決して本人たちが長官を抜きにして云々するという行為ではございません。この点御了承願いたいと思うのでございます。  それから、シビリアンコントロールにつきましては、本人自身が、いろいろな記録もありまするが、彼自身が言っておりまする記述の中にもございまするが、自分は隊服を着た国民であるという気持ちで自衛隊員皆に話をし、また自分の書き物等にもしておりまして、決して民主主義時代における自衛隊、平和憲法に示す自衛隊の本旨を踏み外してしたものではない。そういう人物ではございません。その点は長く見ておりまするが、そうした思い上がったようなものではございませんし、あくまでも最高指揮官は総理でございます。その指揮監督を受けて私がコントロールをせなきゃならぬ立場にあるわけでございます。それを無視して、逸脱してそういうことをするというような考え方に立つような人物でないということは率直に皆さん方に私は報告できると思うのでございます。  それから、平和思想の問題でございますが、これは私は読売にそういうことが記載されまして、早速本人を呼びました。これはどういうことを君は言おうとしておったのかということで、私は本人を呼んだのでございまするが、そうした平和思想なり平和哲学的なもののいろいろな書き物があります、そういうような意見があるということを私は申し上げたのでございますということを言っておりまするが、私自身、本人の長期にわたる隊務の業績、それから本人の人柄等を見てまいっております。出身も、先ほど申しましたように、シビリアンとして警察予備隊に入り、その後隊務に従事をしてまいっておりまするが、人格識見といい、私はりっぱな人物だと思うのでございます。  どうか、そういう点で、閣議で決定をしていただき、明日が発令の日でございまするし、それから私自身も本人に対しましては直接の長官として厳重な注意も与えましたし、また、今後も、そういう点については誤りのないように指導監督してまいりたいと思うのでございます。あすは、ぜひひとつ発令をさしていただきたいとお願いを申し上げたいのでございます。
  307. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 定期的な報告という問題でございますが、確かにそういうようなことを、定期的と言いましたか、あるいはときどきと言いましたかね、そういうようなお話がありました。それに対しまして、私は、必要があればこちらから指図する、こういうふうに答えてあります。
  308. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 矢田部君、再質疑を許しますけれども、時間がちょうど来ておりますので、簡潔に願いたいと思います。
  309. 矢田部理

    ○矢田部理君 一つ一つがきわめて問題なんですね。かなり弁解とすりかえが事実の上で行われているということを一つ一つ指摘したいのでありますが、時間がありませんからやりません。  ただ、総じて言えば、何度か問題を起こしている、問題発言がある。加えて評価を申し上げるならば、シビリアンコントロールに反対をして、天皇の軍隊を目指す人物だと言われてもしようがない一連の言動が目立つわけです。平和と民主主義を否定する軍国主義復活のプロモーターと言ってもいいでありましょう。こういう人物を制服組の頂点に据える、これは断じて認められない。公務員としてだけではなく、公務員としてもおかしいし、まして統幕議長などということはやめるべきだと、そのことを強く要求しておきたいと思います。総理、どうですか、これは防衛庁長官の所管でありますけれども。全然だめですよ。
  310. 三原朝雄

    国務大臣(三原朝雄君) 記事そのものを受けとめられてのいろんな私は厳しい御発言だと受けとめております。しかし、私は、シビリアンコントロールにつきましては、栗栖陸将自身が、本人自身が、私は長く本人と接して見ておるのでございまするけれども、この民主主義体制の中に入り、平和憲法のもとの自衛隊でございまするから、絶対にそうした考え方、思想の持ち主でないということだけは十分これを認めてまいっておるのでございます。彼がいままで二十数年間やってまいりました業績等を見てまいりますれば、私は明確にそうした逸脱したような考え方のもとに隊務に従事しておるということは考えられないことでございまするので、御信頼を願いたいと思うのでございます。
  311. 矢田部理

    ○矢田部理君 全く納得できません。
  312. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) それでは、いま本件の取り扱いにつきましては、この後、理事会において協議をすることに決定をいたしました。  それでは、目黒君進めてください。
  313. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 警察庁にお伺いしますが、変死体が発見された際の身元確認の方法などについて具体的に教えてもらいたい。
  314. 鈴木貞敏

    政府委員鈴木貞敏君) お答えいたします。  身元不明の変死体、非常に数も多いわけでございますが、これは警察としましては、それぞれ規定を設けておりまして、一連の手続によって適正に処理をするということで、全国的な基準でやっておるわけでございます。  もう少し具体的に申しますと、死体が発見された場合は、まず、その死因が犯罪によるものであるかどうか、あるいは犯罪に起因しないものであるか、これによって手続が違うわけでございますけれども、犯罪に基づいているというふうな認定でありますれば、これは鑑定処分許可状という許可状によりまして、やはり司法解剖というふうな言葉を使っておりますが、そういうことで解剖して死因を究明するというふうになります。また、客観的ないろいろの情勢から、そういう犯罪に起因しないということであれば、それぞれ検案あるいは見分あるいは行政解剖というふうな手続によって処理する、こういうふうになっております。
  315. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 検視規則六条についてちょっと説明してください。
  316. 鈴木貞敏

    政府委員鈴木貞敏君) お答えいたします。  検視規則の六条は、検視の要領ということでございまして、検視に当たってはそれぞれの項目につきまして綿密に調査しなくてはならない、こういう規定でございます。一号から九号までございまして、変死体の氏名、年齢、住所、性別を初めといたしまして、それぞれの当時の状況、こういったものについて調査をするというふうな規定になっております。
  317. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 八月七日の朝日新聞に「証言台」という題名で出ておる記事でありますが、この記事のお母さんから、どうしても問題がはっきりしないので確かめてほしい、こういうことがあるわけでありますが、俗にいう水本事件、こういう問題についてどういう経過か、御報告願いたい。
  318. 鈴木貞敏

    政府委員鈴木貞敏君) いま御質疑の、水本潔の変死体の取り扱いについての御質疑でございますが、これは、ことしの一月六日に、千葉県市川署管内の江戸川におきまして変死体が発見されたわけでございます。で、当日は、市川署の刑事官以下七名が現地に出向きまして、死体を川岸に収容して見分したというようなことでございます。  死体は、着衣等にも乱れや破損もない、溺死体特有の非常に肥満した、いわゆる巨人態様というふうな様相が見られまして、腐敗の初期的現象と見られる表皮の剥脱、こういったものが随所に見られましたが、全身に外傷は見られないというふうな状況でございまして、死体の特徴といたしましては、後頭部に若干の毛髪の脱落部——理由はわかりませんけれども、脱落した部分と、右下の腹部に若干の手術痕、こういったものの痕跡があるというふうなことのみでございまして、死体は身元を確認する手がかりとなるべき所持品は何らないというふうなことで、身元は不明であるということでございまして、全体的な情勢から見まして溺死であるというふうな判断によりまして、市川市長に対しまして、死亡の報告を行い、死体とその着衣なり所持金品とともに市長さんに引き渡した、こういう手続をやっておるわけでございます。  また、一方、その後苦労いたしまして、死体からの指紋を取っております。指紋を取った結果、一致するものが出てまいりまして、その結果、これは水本潔に間違いないということでございまして、非常に表皮が剥脱した状況で、非常に苦労して指紋を取ったわけでございますが、警察庁、県警に保管しておった十指指紋原紙と一致したということで、水本潔であるということで断定した、こういうことでございます。
  319. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 私もこの「証言台」という新聞を読んでみて関心を持っておったわけですが、結局、その後この調査によりますと、一月の十七日ですか、お母さんと家族を呼んでその写真を見せたところ、これは私の息子ではないと、こういう親の陳述があったということについてはいかがでしょうか。
  320. 鈴木貞敏

    政府委員鈴木貞敏君) 水死体というのは、大変その経過した日時、時間あるいは当時の気温、あるいは水の温度、そういったものによりまして非常に腐敗の現象その他がいろいろ違いますけれども、まあ当死体は約一週間から十日ぐらいを経過しておると、こういうふうに見られておるわけでございますけれども、大変先ほど言いましたように巨人様相といいましょうか、非常にやはりふくれた状況でございまして、やはり生前とは完全に趣を異にした状況であったわけでございます。そういう意味で、一見してなかなか同一人物と判定しがたいというふうな状況であったわけでございますけれども、何しろ指紋によってはっきり水本潔であるということが断定できる状況でございますので、一日も早く引き取っていただきたい、こういうふうに思っております。
  321. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 しかし、そのお母さんは、この検視規則第六条をずっとこうやってまいりますと、死体の見分をする際には歯であるとか、けがの傷であるとか、あるいは入れ墨であるとか、あるいは体全体の構造であるとか、そういうものを全部写真に撮って判定の際に十分しなさいと、そういうふうになっておるんですが、この歯の問題を言いますと、歯の問題は自分の息子ではないと、そういう点が言われておるわけですが、この点はいかがでしょうか。
  322. 鈴木貞敏

    政府委員鈴木貞敏君) 確かに、歯というのはやはり同一人物を確定する場合にきわめて有効なる体の部位でございまして、そういう意味では大変あれでございますが、何しろ本人がどこの医者で、どういうふうな経過で何人の医者にかかっておるか、その辺の手がかりは親自身としてもなかなか知らない部面があろうかと思います。いずれにしましても親御さんが水木とは違うと、こういうことでございますけれども、この件につきましては、現在、裁判所に事件が係属中でございまして、御質問の点につきましても、いま慎重に審理されておるというふうに伺っております。ということで、私は、そういう裁判の審理によって十分解明されるというふうに確信いたしております。
  323. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 しかし、警察として処理する際、歯の問題についても警察官同士で食い違いがあるというようにこの「証言台」は述べておるんですが、それは真実ですか。
  324. 鈴木貞敏

    政府委員鈴木貞敏君) 先ほど申しましたように、水本の生前の特徴、いわゆる頭の若干頭髪の抜けておった場所、あるいは手術の跡、こういった面についてはやはり生前それはあったというふうなことでございます。ただ、特徴もいろいろ体の部分でたくさんございますので、そういう水死体という異常な状況下にある中で、一部いろいろ見解が違うということもあるようでございますが、先ほど来言っておりますように、決め手でございまする十指指紋によって指の指紋、これはシリコンラバーという特殊な方法で指紋を取っておるわけでございますが、指紋によって同一人物であるということがはっきりしているわけでございますので、御了承願います。
  325. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 これは自治大臣に関係すると思うんですが、戸籍の抹殺ということについてどういう手続になるんですか、戸籍の抹殺、抹消。
  326. 鈴木貞敏

    政府委員鈴木貞敏君) 御質疑の戸籍法の問題でございますが、当方の警察としての死体取扱規則、この第九条第三項というのがございまして、身元不明死体を市町村長に引き渡した後に身元が明らかになったというふうな場合には、戸籍法第九十二条の第二項の規定によりまして、死体の本籍等判明報告書、これによりまして市町村長にその旨を報告する、こういうふうになっております。その報告を受けた市町村がそれに基づいてしかるべき措置をとる、こういうかっこうでございます。
  327. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 この戸籍法八十七条、九十四条によりますと、この届け出義務者は同居の親族、その他家主、地主となっておるんですが、この件を見ると、全然親の方の了解がないままに一方的にこの除籍の措置をしたということが言われておるのですが、これも事実ですか、「証言台」によると。
  328. 鈴木貞敏

    政府委員鈴木貞敏君) いま新聞記事に基づく先生の仰せについては、私の方で了知いたしておりません、そういう事実は聞いておりません。
  329. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 私は、これは直接その関係者から聞いたんですが、市役所には家族の了解をとったと言って届け出たと、家族の方は全然知らなくて、三月十二日市川市税務課から国民健康保険の掛金のあれがあるから来いと言われて初めてわかったと、こういう事実関係なんですが、いかがでしょう。
  330. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 時間が来ています。
  331. 鈴木貞敏

    政府委員鈴木貞敏君) いま仰せのようなあれは私としては聞いておりません。
  332. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 じゃ時間が参りましたから、こういう案件がありますから、引き続いて警察庁に関係資料を出してもらう、そして法務委員会でさらに追及する、そういうふうにお願いしておいて、資料の提出を可能な限りお願いしたい、こう思います。いかがですか。
  333. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 警察庁、資料提出できますか。
  334. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 できる範囲内で結構です。こういう事実関係を裏づける資料があったら。
  335. 鈴木貞敏

    政府委員鈴木貞敏君) いずれにいたしましても、裁判で審理中の問題もあり、警察で取り扱った分につきまして、お出しできる分はひとつお出しするように検討いたします。
  336. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) それじゃよろしゅうございますね。  以上をもちまして目黒君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  337. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、戸塚進也君の質疑を行います。戸塚進也君。
  338. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 御通告はいたしておりませんが、法務大臣に一言だけ伺います。  きのうときょうとわが党からもハイジャックの問題についていろいろ意見が出されているわけでございますが、私は、一言に申し上げて、わが党からも極刑を科すべきだということが出ております。極刑とは、少なくとも人を殺傷しなくても、あのような非人間的な、しかも世界的な混乱を起こすようなああいうことをやった者に対しては、当然死刑も含めて処断をするということができるように改正をするのが当然だと私は思っております。  あわせて、このような種類の事件のために、身を粉にして働かれる、命を犠牲にして働かれる警察官そのほかの職員の万一の問題ということについてもやはりこの種の法案の整備の場合には考えておくべきだ、以上二点について法務大臣の御所見をもう一度伺いたいと思います。
  339. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) お答えいたします。  御承知のように、いわゆるハイジャック処罰法は、ああいうハイジャックによって人を死なせるようなことがあったら、御承知のとおり、「死刑又は無期」と、こうなっております。それに至らないものは「無期又は七年以上の懲役」と、こうなっておるわけであります。  今回のような凶悪事犯について、仮に死に至らざる場合でも、大変な事件でありますから、いわゆる極刑、死刑に処すべきだという意見もあるわけでございます。いま検討中でありますが、今度のようなああいう凶悪犯については、もう少し刑を重くすべきであるという考えを持っております。持っておりますが、死刑という問題については、まあ世界的趨勢といいますか、国連等においてもできるだけ死刑を少なくするという世界的傾向にある。現在司法制度審議会で草案を出しております刑法改正草案にも従来の現行刑法よりずっと死刑を減らしておるという状態でありまして、この問題は、仮にああいう場合に、極刑、必ず死刑に処するということをしておいた方がいいかどうか。そうしますと、犯人の心理状態で、どうせ死ぬんならやってしまえというようなことになってもいけない。殺すようなことがなければ場合によっては命は助かるという点もあるわけです。非常にこれは微妙な問題であります。世界の傾向等も考え、国会等の御意見も聞き、また各方面の意見を徴して、いかなる刑を決定すべきかと、これを慎重に検討したい。現在検討中でございますから、御意見は承っておきたいと思います。  それからそういう場合に、仮に犠牲になった警察官等の問題については、いろいろ現行規定がありますから自治大臣といいますか、国家公安委員長から後でお答えいたします。
  340. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 公安委員長、お答えになりますか。
  341. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) 極左テロ分子の犯罪の捜査あるいは逮捕に当たりまして、けがをする、あるいは殉職をした警察官に対しましては、次第に手厚い措置がなされておりますが、これからもその方針で努力を重ねてまいりたいと考えます。
  342. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 法務大臣、答弁は要りませんが、死刑もあり得るということにすべきだというのは国民の多くの世論だということをひとつ肝に銘じて御検討を進めていただきたいと思います。  総理、一言日本の名誉のために申し上げますが、このハイジャックの記事で、昨日の大新聞の夕刊でございますが、ある東大の教授が西ドイツへ行かれて、そしてこの間の日本ハイジャックのときに、日本がああやって身のしろ金を出したり釈放したりしたのは、第一に殺されると予想された人が米国のしかも白人であったから、だから日本政府はこういうことに屈したんだけれども、あれがもしそうでなかったらそんなことはしなかったというようなことを実は述べられています。私は、まことに残念なことだ、こういうことは絶対事実でない。日本の名誉にかけて総理から一言御答弁願いたい。
  343. 園田直

    国務大臣園田直君) その点は私が直接処理をいたしましたから、明確にお答えをいたしておきます。  犯人の方から、政府要求をした条件が整わなければ逐次射殺をする、こういうことでありました。そしてだんだん時間が経過をして、こちらの事務手続上も手間取っておりまして、向こうの制限をした時間を経過をしたわけであります。ところが、射殺の順番を発表いたしまして、第一は米国人であると名前も発表いたしました。そして、それはカーター大統領の親友であるという説明つきでございました。そこで、私は、それを見た瞬間にあなたと同じような意見を持ちました。人命尊重とはいうものの、犯人から第一回の射殺者が米国人でカーター大統領の親友であると聞いた以上は、これは国民の疑惑を受ける、これは返答できない、こういうことで、返答しなくて、午前二時の制限時間が経過をし、そして米国人に遺言みたいなものを放送させました。それでもこちらは返答はいたしませんでした。この点は明瞭にいたしておきます。
  344. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 では、質問に入ります。  防衛庁長官、これは当然のことだと思いますが、もし現時点で日米安保がなくなった、ないとしたら、いまの現時点の日本の防衛力で日本を守り切れると思いますか。私は守り切れぬと思うが、いかがですか。
  345. 三原朝雄

    国務大臣(三原朝雄君) お答えをいたします。  御承知のように、わが国の防衛は、憲法の規制、政治的な制約もあるわけでございます。そこで、そういうものを踏まえて国防の基本方針ができてまいっておるのでございます。それを受けて防衛計画大綱というのを示しておるのでございます。そして、防衛計画大綱は、御承知のように、わが国の防衛につきましては、国際情勢なり、あるいは国内におきまする財政、経済の状態、あるいは各政策との調和、そういうものを勘案しながら防衛力の整備をしてまいるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、一国の防衛をやるにつきましては、これは世界の情勢でございまするけれども、一国だけでその国の安全を確保することはなかなかできません。そこで、わが国といたしましては、いま申し上げましたような諸般の情勢を踏まえて適切な規模の防衛力を整備していくということに方針を決めておるわけでございまするが、そして足らざる点につきましてはアメリカの安全保障体制を堅持しながら、この整合のある共同動作によって国の安全と平和を守り抜くという方針のもとに防衛力整備をいたしておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、いま日米安全保障条約がなければどうだとか、あればどうだとかいうような、ない場合がどうだとかということは毛頭考えておりません。あくまでもそうした日米安保条約を基調にしながらわが国の防衛は進めていかなければならない。そして国の安全と平和を守っていく方針のもとに進んでおるのが現状でございます。
  346. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 外務大臣に伺います。  過般マンスフィールド駐日大使が書簡を出しました、アメリカの国に対して。こういう書簡を見たときに外相はどういう感想を持っていらっしゃるか。私は、アメリカの議会なりアメリカの国民の多数の中に、現時点で日米安保条約というものをアメリカ側から見たときに、これはどうも改定してもらわなければならぬじゃないかというようなそういう考え方というものもかなりあるのじゃないか、そういう背景があるからマンスフィールド大使があのような書簡を出されたのじゃないかと、いま実は非常に危惧をしているわけでありますが、その辺のアメリカ側の事情も含めて御答弁願いたい。
  347. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 安保条約に関しましていろいろな議論があることは確かに事実だろうと思います。たしか五月の十一日の上院の本会議におきましてバートレット議員の行った演説等におきましては、日本にもっと防衛上の負担を明らかに求めているような演説があったわけでございます。これらは、やはり日本が経済的に大国になったと、こういうことから、もっと防衛上の負担をする能力があるのではないかという発想から来ておるものと思います。また、他方、経済面におきまして日本の輸出が非常に力強く世界に伸びておると、こういう背景がありまして、それは日本が負担が軽いからそのような経済発展を遂げておるのではないかというような発想もあろうと思います。しかし、現実の為政者は、日本が憲法上あるいは政治上の制約がある、この制約の範囲内で防衛力の整備を図っておるということにつきましては理解をしておると、そのように考えております。
  348. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 防衛庁長官、ただいま外務大臣が適切な答弁があったと思うんです。私は、おんぶにだっこというような体制じゃこれからやはり日米安保も心配だ。やはり日本が自主防衛といいますか、もちろんそれは先ほど長官がおっしゃったように憲法の範囲内ですよ。憲法の範囲内であることは当然でありますけれども、そういう中で自主防衛というものをさらに拡充していくといいますか、していく必要がある。そのためには、GNPの一%、これは経済がどんどん伸びたときは別ですよ。今日のような時点においてGNP一%にこだわっておれますか。この点について、国の防衛を担当する防衛庁長官として、やはりそれについては国民にもっと防衛の必要といいますか、安保ただ乗り論もある今日、もっとやはり理解させるべきじゃないか。防衛予算というものに対してもしっかりとした認識を持つべきじゃないか、こう考えますが、いかがですか。
  349. 三原朝雄

    国務大臣(三原朝雄君) お答えをいたします。  いまGNP一%の問題が出ました。私どもは、先ほども申し上げましたように、防衛力の整備にはいろいろな条件があるわけでございまするが、日本の国情、国勢等も見てまいらねばなりません。なおまた、諸政策との調整もやらなければなりません。そういうようないろいろな制約のもとに防衛力の整備をやるわけでございます。そこで、そうした立場から防衛力整備をやってまいりまする場合に、一%がどうだということよりも、そういう立場で防衛力を着実に整備をしていくことによって日本の防衛に対する国民の信頼と、そして真の平和、安全が保たれることが大事でございます。したがって、そういう点から防衛力の整備をいたしておるわけでございます。しかし、その防衛力を整備して、結果的に見てまいりますれば、いま申し上げましたように、過去数年間もそうでございましたが、現在では一%程度の範囲内でそうした防衛計画大綱に基づく防衛力の整備が可能であるという見通しのもとにやっておるわけでございます。しかし、一%というのはあくまでもいま申し上げましたような状態でございまするから、国内情勢あるいは国民の御理解等を得てもう少し伸ばさねばならぬというようなことになりますかどうかということはそういう判断に立つべきであって、現時点におきましては、私は、一%でいま私どもが計画を持っておりまする防衛力整備計画はそれで達成できる、そして不安のない防衛体制を整備できるという方針を持っておるわけでございます。
  350. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 総理総理のひとつ防衛に対する確固たる信念を一言伺いたいと思います。
  351. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 一国の安全ということは、これはもう何よりも国の政治の中で大事なことであります。ただ、一国の安全ということは、これはいま一国でこれをなし遂げるということは、これはなかなかむずかしいのじゃないか。さればこそ、国際連合におきましても、まあ将来は国際警察軍でもできて、そしてもう軍備のないそういう社会を展望したいと、こういうふうに考えておりますが、当面はやっぱり相共同というか、その国々が協力して、その安全の道を選ぶべきであると、こういうふうに言っているわけです。わが国はその国際連合の精神にのっとりまして、日米の間に安全保障条約というものを結びまして、そしてアメリカと相協力いたしましてわが国の安全を保障する、こういう体制をとっておるわけです。御承知のように、わが国にはいわゆる憲法第九条という制約があるわけであります。でありまするから、その憲法、これののりを越えるわけにはまいりぜんけれども、この憲法の範囲内においてできる限りの努力をし、また、アメリカとの間のその条約を柱といたしまして、そしてわが国の安全も図っていかなけりゃならぬだろうと、こういうふうにも思います。  いま防衛庁長官が申されましたが、まあ大体一%、防衛費はGNPの一%以内ということでありますが、いま日米安全保障条約を前提とし、かつ、わが国の憲法というものを考えてみるときに、過去、四十二年ですか、昭和四十二年以降、大体GNPの一%以内におきましてあれだけの充実ができたわけです。これはかなり量的にも質的にも充実ができた。これから先を展望してみますと、量的の側面では、ここで一休みといいますか、そういうことにいたし、質的な充実を試みたいと、こういう防衛庁の考え方でございますが、そういうことでありますれば、過去十一年間続きました一%以内という体制で十分対処できるのじゃないか、そういうように思います。国際環境が非常に変わってきたというようなことがあれば、そのときはそのときでまたいろいろ工夫をしなければなりませんけれども、当面は一%以内でそしてその質的な防衛力の充実ということに最善の努力を尽くすべきであると、こういうふうに考えております。
  352. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 行政改革について総理にお伺いいたします。  行政改革のねらいということでございますが、私も賛成でございます。これは高度経済成長時代の膨張した是正、あるいは財政窮迫、民間がこのように経済で不況で困っている、親方日の丸はいけない、これは全くそのとおりだ。しかし、反面において、社会構造が大きく複雑化してきた、あるいはまた経済環境も変わってきた、国際情勢の変化もある、こういう点を考えると、ただつぶすばかりでない、やはり建設的な、どうしても必要なものはビルドすると、こういう考え方もあわせて必要ではないかと思うが、私と総理との考えが違わないかどうか、それだけを承りたい。
  353. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 全然違いません。
  354. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 全然違わないことを前提にして農林大臣に伺います。  二百海里の問題以来、全国の漁業者、国民もすべて含めて、少なくとも漁業省がないのは不思議じゃないかというぐらい言っているんです。農林水産省、農林漁業省という構想がありますが、農林大臣はソ連にも行かれてはだで感じられているでしょう。いかがでしょうか。私は全漁民を代表して、この際、次の国会、来年度ぐらいまでには農林水産省をつくってみせますと、そのくらいの  ことをひとつどうですか。
  355. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 戸塚さん御指摘のように、二百海里時代の急速な到来によりまして、わが国の漁業をめぐる内外の情勢はきわめて厳しいものがございます。これに対応いたしまして漁業外交を強力に展開し、また沿岸漁業の開発整備を進め、資源をふやす、また、栽培漁業等を積極的に振興する、また多獲性魚種等の高度利用の研究開発、いろいろな研究体制も整備しなければなりません。したがいまして、私は、これらの問題に取り組む政治課題、行政課題、これは非常に強く望まれておると、このように考えております。そういう観点から私としてもいろいろ検討をいたしております。  ただ、漁業省をつくったらどうかと、世界一の水産国であるのだから漁業省ないし水産省をつくったらどうかという御意見のあることも承知をいたしておりますが、総合的な食糧政策を進めるというような観点で、これを分離することはこの段階では適当ではないと、このように考えております。したがいまして、この省の呼称の問題を含め、今後の政策課題並びに行政需要に対応できるような機構の整備、拡充強化を図ってまいりたい。このことは、内閣に、御承知のように、行政管理庁長官を長とする行政改革本部がございますので、十分協議をしながら内閣全体の問題として取り組んでまいりたいと、このように考えております。
  356. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 大臣と私も同じ見識です。農林水産省でいいですから、がんばってください。  次に、総理大臣に一言。中小企業専任大臣の問題が過般のこの不況下の中で非常に実は声が大きいんです。これは通産大臣もがんばっておられますよ。それからそこに中小企業庁長官がおられますが、あの長官は涙が出るほどよく働いていますよ、私に言わせれば。今度の中小企業対策なんかりっぱなものだ。しかし、それはそうであっても、閣議の席に列して、寝ても覚めても中小企業のことについてやはり閣議で責任を持って発言できる大臣——これは中小企業省をつくれというのはいまの機構上から無理かもしれません。これは人を減らさなきゃならぬ時期ですからね、機構を。しかし、専任大臣をそれじゃ総理府に置いて、兼任でもいい、それでもいいから中小企業庁担当大臣というものをつくってくれという国民の世論は大変強いんです。どうですか、総理、これをあわせて考えてくれませんか。
  357. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 企業は、大企業もあれば中小企業もある。それが連帯と協調でとにかく円満に経済界は動いておるので、中小企業が立てば大企業が立つというものでもなし、大企業だけが立てば中小企業はどうでもいいと、こういうものじゃないんです。それで、仕事も非常に濃密な交錯関係に両者はあるわけでありますから、これを截然とこの省庁を分けろ、こういう議論もありますが、それは妥当でないと、こういうふうに思うんです。  そこで、いま戸塚さんがおっしゃるように、それじゃ、せめて専任大臣を置いたらどうだと、こういう議論になるわけだが、専任大臣の場合には、ただいま私が申し上げたような弊害は、省庁を分けるという場合に比して非常に少ない。少ないわけでございますが、しかし、同じような問題がやっぱり残るんです。そういうことを考えますと、いまここで歯切れよく専任大臣を置きますというようなお答えをどうもいたしかねるわけでございますが、なおこれは検討問題にさしていただきます。
  358. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 これは総理とやり合って、歯切れよく総理がやりましょうと言われるまでがんばりますから。  その次に、不況対策で中小企業庁長官に承ります。  政府から、倒産防止共済制度、これの今度法案が出されるそうであります。大変時宜を得て結構だと思います。しかし、私ども予算委員会の視察等で回ってみますと、この制度は大歓迎だが、しかし問題がある。それは当面のすぐの不況対策に間に合わない。だから、何とか一時的な対策ができないか。九百万円という上限では、現在の不渡りの実態からいって中小企業者にまだまだ少ない、せめて一千万超してもらえないか。掛金がかなり多くなりますから、その分についての税金の扱いはどうか、こういう点について悲痛な声が出ております。せっかく政府が提案されるなら、そういう問題について前向きな法案を出していただきたいと期待しておりますが、現時点でどのように考えられているか、承ります。
  359. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) お話のございました倒産共済制度につきましては、私どもも、いまの不況の状況にかんがみまして、少しでも早く利用していただけるようにしていきたいと思っておるところでございまして、目下成案を得るべく必死の努力をいたしておるところでございます。当初は通常国会にと思っておりましたが、周囲の情勢を勘案いたしまして何とか今国会に間に合わしていきたいということで努力をいたしておるところでございます。  内容につきまして二、三お話がございましたが、一つは掛金限度をもう少し上げられないか、こういった点も中小企業業界からいろいろ御要望がございますので、ひとつ研究をさしていただきたいと思っておるところでございます。また、少しでもこの制度が早く中小企業の方々に均てんできるように掛金の一括納付というような考え方がとれないかという御提案も聞いておりまして、これもあわせて検討いたしておるところでございます。なお、税金の問題等につきましても関係省とお打ち合わせをいたしたいと思っております。少しでも早く成案を得るように今後とも努力をさしていただきます。
  360. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 通産大臣、ただいまの長官の前向きな答弁でありますが、大臣もしっかりやっていただけますな。
  361. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいま長官からお答えいたしたとおりでございます。特にこの冷え切った日本経済の現況にかんがみまして、中小企業の重要性からぜひひとつそうしたい、このように考えております。
  362. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 大蔵大臣に政府系の各金融機関の企業貸付金利の引き下げの問題についてずばりお尋ねいたします。  これは十一月にはもう不況業種については特別な扱いしていただける、大変ありがたいことであります。しかし、全国を回ってみますと、一般の業種でも、特に中小企業が過去長い間借金したやつが利が下がらないということで、市中金融機関がこんなにサービスしているのに政府系機関が一番どうもサービスが悪いじゃ困るじゃありませんか、これこそやはり不況対策に持ってこいですよという声があります。どうですか、大蔵大臣。
  363. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) お答え申します。  一般に金融機関が自分が貸し出しておる相手の企業に対しまして既往の金利を引き下げるということは、金融機関としては、自分の債権を保全する、そのためには金利を引き下げてあげるということが一番大事なことで、そういったような場合にはやることでございますけれども、しかし、今日の不況に際しましては、それはそれとして、原則といたしまして、いまおっしゃられたように特に既往の金利を引き下げていったということは事実でございます。これに対しましては、通産大臣が不況業種として指定したものに対してこれを適用する、これは御案内のとおりでございますが、そこで、その他の一般の業種に対してもひとつ何とか考えたらどうかと、こういう御意見でございますが、それはやはりその金融機関が——いま申しておりますのは政府系金融機関でございますが、政府系金融機関がその企業とよく話をしまして、企業の実情を把握いたしまして、そうしてこれはやっぱり何とか金利を下げなければならないといったような判断に立ちますれば、ケース・バイ・ケースでできるだけそういうふうにやっていくことを指導いたしておる次第でございます。
  364. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 これは、大蔵大臣、ぜひひとつ前向きに考えてください。  総理にお伺いいたしますが、投資控除税制ということでございます。内需の促進、いまやまさにこれが一番国を挙げて大事だ、円対策も含めて、不況対策も含めて。そこで、どうしても来年度に向けて、中小企業初め企業が設備をした分については何とかひとつ税制の優遇措置をとってほしい。これは数字はもう私が申し上げるまでもありませんが、五十二年十月のいわゆる民間設備投資というのは前年対比九三・七、民間設備投資の比率の伸び率というのが、当初見込みが今年度一二・二、これが政府改定で今度六・〇、これは各公共投資は全部ふえているのに、民間だけこうやって大幅に下げなきゃならないほどの四年連続の実は低迷をしているわけです。こういうような状況の中で、関係の企業者にアンケートをとってみますと、もし来年そういうことをやってくれるというならば大いに歓迎します、設備投資も考えましょうと。企業の八割、中小企業の四社に三社が、この中小企業に特別のこうした控除税制をやってもらえれば、ひとつ来年度は自分の会社も古い体質から新しい構造改善するためにやろうと、こう言っておりますよ。総理の発言を衆議院あたりで伺っておりますと、どうもちょっと後退されたように伺えて残念でなりません。やはりこれは内需の促進、不況対策からいって、やっぱり前向きにこの問題も考えていただく、これが必要だと思います。総理、いかがでしょうか。
  365. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) こういう際ですから、投資減税というと耳ざわりが非常にいいです。いいですが、よく考えてみますと、いま日本の企業の中には二種類ありまして、非常に好況なものがある。かと思うと、構造不況業種みたいな、あるいはそれに類似した企業があると、こういうような二つの分類ができるくらいな状態なんです。さて、その好況業種に対しまして投資減税をやると、こういうことを考えてみますと、好況業種は、投資減税なんかしないでも、これは設備をどんどんやりますよ。それから今度は不況業種につきましてはどうかというと、不況業種というのはどうして不況業種であるかというと、設備が余っているのです。新しい投資なんか減税したってするというような状態にないんです。ですから、一般的にここで投資減税、つまり法人減税をやりますと、こういうことになりましても、これは大した効果はない。ただ公害の問題でひとつ設備をつくりたいというような人があるというようなことで、それで設備投資だと、こういう際に、それに対して減税するというようなことになれば、それは公害設備を助長するということにもなりましょうが、私は、皆さんがおっしゃるような効果が設備投資減税から出てくるかというと、そうは見ないんです。財源が要る。それだけの財源があれば、不況業種の方に仕事を与えるための公共投資をやるとか、そういう方がましじゃないか、そういうふうな感じがしておるので、ずいぶんいろいろな人が投資減税、投資減税と言いまするけれども、私はこれに対してはきわめて慎重に対処しなきゃならぬと、そういうふうに考えております。
  366. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 通産大臣、ただいま総理から公害とかいろいろ事を限って考えるということなら別だよというようなお話もあったわけですが、通産大臣はこの問題についてどんな御所見を持っていらっしゃいますか。
  367. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 御案内のとおりに、税制の問題でございますから、所管から申すれば大蔵省の方の所管でございまして、いま戸塚先生と思いが同じ私の方からお願いを申し上げなければならない内容でございますので、これは閣内におきまして、また大蔵大臣や総理ともよく御相談をいたしたいと存じます。
  368. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 委員長、大蔵大臣のお顔を見たらさびしそうですから、もうそれは聞かなくてもいいですよ、どうも何だか余りいい案が出てきそうもないから。  そこで、次に、大規模店舗法のことについてお伺いします。通産省の政府委員に伺います。  現在、大規模店舗法の三条、五条等で全国的に申請している件数は何件ありますか、また、申請を準備しているものは相当あるかどうか、承りたい。
  369. 山口和男

    政府委員(山口和男君) お答え申し上げます。  大規模小売店舗法は、昭和四十九年三月一日から施行されておりますが、それ以来、法の第三条によります届け出件数が、五十一年度末現在で九百四十三件になっております。さらに、法第五条によりまして小売業の店舗の開設につきましての届け出件数は、同期間におきまして一万一千三百二十一件になっております。これは商店ごとに届け出をすることになっておりますので、したがいまして、一つの大きな店舗の中にまあ十商店あるいは十余りの商店が平均してあるということになるわけでございます。三条の方は九百四十三件、五条の方が一万一千三百二十一件となっております。  それから届け出前に事前にいろいろ相談を受けておるというような件数は、先生御指摘のとおりかなりあると思われます。恐らく数十件の件数があるように報告を受けております。  大体そういう状況でございます。
  370. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 政府委員に伺います。  現在のところでは、この大規模店舗と一般零細小売業者との紛争をある程度緩和するために、五条のいわゆる届け出を受けるという場合に、行政指導で、地元がある程度商調協で話し合いが余りつかないうちは役所が指導してなるべく受けない、こういうことをしていることは事実でありますな。これは全国的にやっていただいておりますな。これは今後ともやっていただけますね。
  371. 山口和男

    政府委員(山口和男君) お答え申し上げます。  基本的には、届け出でございますので、許可と違った法律的な手続になるわけでございますが、実際問題として現地の周辺小売商業との調整を十分尽くしてやるようにできるだけ指導をしてまいりたいと思っております。
  372. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 中小企業庁長官に伺います。  長官のところに全国の小売業者からどういう悲痛な叫びが来ていますか。
  373. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 私、各地へ参りまして中小企業団体の方とお目にかかり、あるいは中小企業庁におりましていろいろ話も聞いておりますと、やはり小売の問題というのがいまの中小企業問題の中でもかなりむずかしい問題になっておるという感じがいたしております。各地におきましては、場合によっては大型店と中小店とが協調して町づくりをするというケースもございますが、他面では大規模店が出たために中小企業は大きな打撃を受けるという声が非常に強いという感じがいたします。やはり何らかの新しいルールづくりが必要ではないかという声がかなり強いというふうに印象を持っております。
  374. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 通産大臣、これはやはり現在の大規模店舗法だけでは、届け出で、そして指導をしているために何とかかんとかもっていますが、これをこのままにしておいたら大変なことになりますよ。全国の百六十万小売業者は大変なことになりますよ。この人たちが日本の経済を一生懸命支えていたんです。この際やはり現在のこういう状態を考えて、自由主義経済を保っていくには、大きい者の勝手ばかり許さぬと、弱い者も伝統的にがんばってきたものはそれぞれの地域でやっていけると、こうするために大規模店舗法を次の国会に向けて許可制等も含めてやはり改正、強化する必要があると思うが、所管大臣としてどのようにお考えになりますか。
  375. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えいたします。  ただいまの御意見のとおりに私どもも考えておるのでありまして、実は、先般、分野調整法あるいは大店舗法、商調法、非常に草々の間に取りまとめられたものでございまして、なおその間にはもっともっとりっぱな法律にいたしたいという希望を持っております。そういうことから懇談会をつくってございまして、そこで学識経験の方々に十分にいま検討をしていただいておるところでございます。できるだけ早く答申をいただきまして、また皆様方にも御相談をいたしまして、よりりっぱなものにいたしたいと、かように念願をいたしております。
  376. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 建設大臣に伺います。  大規模店舗が、最近、工業地域とか準工業地域とか、本来工場ができて煙がもくもく立つようなところへ、工場の移転をした跡とか、そういうところをねらい撃ちにして来るのです。そういうことをやられますと、町の商店街の機能等は大きく崩れる。本来、そういう店は商業地域にあってしかるべきなんです。それがそういうところへどんどんやってくるから、大変な迷惑をしているのです。業者もまた市町村もですね。従来十一月ごろから住専地域については政令の改正でこういうものを建てられなくなった。私は、建設大臣の恩情をもって、ひとつ近い将来政令をさらに改めて、こういう工業地域とか準工業地域などに大型店舗が出るなどということは規制すべきだと、こう考えるが、大臣のお考えはいかがですか。
  377. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 工業地域、準工業地域、これらは工場に利便を与えるためにつくられているところであります。ただ、あなたがおっしゃる大規模店舗というものは規制すべきではないかという御意見になりますと、私の方の建築基準法だけで決めていくということはちょっと困難だと思います。十分関連がある省庁と今後のこれらに処する問題は連絡を密にしてそして御期待に沿うようにいたしたいと、こう考えております。
  378. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 総理、ただいま建設、通産両大臣からお話がありましたが、全国百六十万小売業者が注目しているんです。ひとつ、総理からも、前向きにそうしょうと、こういう一言で結構ですから。
  379. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この問題は、地域社会において相当ややこしく、かつ重要な社会問題化している問題ですから、これは大型小型店舗間の紛争を適正に処理するというために最善の努力をいたします。
  380. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 土地税制、土地重課税の検討について、その主眼点を伺います。  土地重課税は、現在の不況を改善する一つの方法として、やはり現在のままで置いたのではまずい、これは私もそう思います。しかし、これを全面的にやめてしまうと、またインフレ、あるいはまた大きな資産家がもうかる、こういうふうなことがあってはやはり社会正義的になりません。そこで、今度改定をするならば、重点を、庶民大衆が土地を求められる、あるいは少しの土地を売ったら税金でやられたということがないような点に留意すべきと思うが、関係大臣、いかがでしょうか。
  381. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 土地の問題でございますが、いま一番大事なことは、やっぱり宅地が供給されるということです。その宅地が円滑に供給されるのを何が阻害しておるかと申しますと、これはやっぱり地方団体が開発についての阻止を大分やっておる。それからもう一つは、団地とか住宅とかつくる場合には、それに伴う公共公益施設、たとえば水道だとか道路だとか下水道、そういうものに金がかかるというようなことが一つの大きな理由でございますが、それに並んで、いま税制が余りに土地を縛っておるじゃないかということでございます。そういうことでございますので、その宅地提供ということにしぼりまして、一体どうすればそれに貢献することができるかということを関係各省庁で相談をしておるのでございますが、いずれにいたしましても、税制だけをいじりましてこの目的を達成するということは非常にむずかしい、かえって逆作用でいま御心配になったようなことが起こってくるということも考えなければならない。要するに、土地政策と税制政策というものは一つの補完政策として考えていかなければならないと、かように考えております。
  382. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) 最近、地価がやや鎮静の傾向を見せておりますが、これは国土利用計画法というようなものの効果もあったでございましょうけれども、同時に土地政策を補完しておりまする特別土地保有税の果たした役割りというものも大きいと考えておるわけでございます。これはもともと土地の保有に重課することによって優良な宅地の供給を促進しようという税でありまするし、徴収猶予の制度もある、最近またこれの手直しもされておるわけですから、この税が土地の供給を阻害しているという批判は全く当たらないと考えております。もともとこれは土地政策を補完する税制でございますから、土地政策の基本が改まらないのに税制だけを先走って改めるということはいかがかと思いまするし、これをへたに緩めますると、またまた投機を誘発する、あるいは地価の上昇を誘発するという結果になりかねませんから、当面さような改正をするつもりは持っておりません。
  383. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 戸塚さんがおっしゃいます点については、別に心配がないように、要するにそういうような枠組みを崩してまで行おうという意味ではないのでございまして、要は、検討している内容というのは、法人の土地譲渡益重課については重課適用除外要件というのがありまして、そのうちの二七%の利益要件がありますが、それを今度は国土利用計画法に価格審査というものができましたので、そうするとダブってやることになるじゃないかというような観点もありますので検討を加えているというところであります。  さらに、もう一つは、特別土地保有税の中にあるいま現在有効に利用されている貸ビル——遊んでいるビルじゃないんで、使われているビルそのものに対する非課税を取ったらどうなんだろう、こういうようなことでございますので、別にこれによって以前のような土地が高くなるだろうという御心配はないというふうに考えております。
  384. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 次に、庶民住宅、特に庶民住宅等を建てる場合の官民協力体制ということについて一言申し上げたいですが、土地を造成して、特に庶民の百坪とかその程度の土地を造成していく場合にもいろいろ公共負担がかかる。造成した場合の計算して五二%公共負担だというんです。そうなってくると、やはりどうしても土地を相当高く買わなきゃならぬ。この公共負担をある程度国の方で考えてもらえるならば、中産階級的な人たちがいま一番不満に思っている土地を得たい、小さい家を持ちたい、そういうことの期待にもっと沿えるのじゃないか。あわせて、最近、国土庁の佐藤政務次官が、私案として、そうした庶民住宅を建てる場合については、国がある程度の一定の利子補給を一定の年数する、こういったようなことによって多くの持ち家を確保させ、そして経済の不況の克服もする、大変私はいい案だと思うのです。その案について別にとやかく論評を政府に求めるものじゃありませんが、そういう住宅建設に対する官民協力体制、このことについて政府はどうお考えか、関係大臣から承りたい。
  385. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 民間の住宅ローンに対しましては国が利子補給をしておりまして、したがって、この金額も年間には莫大な金額を補給しております。しかし、その上に今度さらにそれを行えということは、少し一般の大衆から見たときにどうだろう、家をつくる人だけに特典を与えるということはどうだろうというような感じもいたしますが、いずれにしても、国の財政資金というものにはおのずから限度があるということをまず知ってもらわなきゃならぬ。それからまた、もう一つは、住宅金融公庫において、一般会計の利子補給を申し上げたようにやっており、そのほかに低利の融資も行っておるわけでございますから、この上にそれを行えということは少し一般から見てどうかという、まあいずれにいたしましてもそういうお話もございますので、十分検討を加えてみたいと考えております。
  386. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 大臣、公共負担はいかがですか。
  387. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 公共負担の件につきましては、たくさんいろいろのものもやっております。しかし、なるべく国の方でそういう面を地方に負担をかけないような方法をとりたいというようなことと、もう一つは、現在ある三法律を十分に生かして使うように今後さらに一段と高い指導をしてまいりたいと考えております。
  388. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 総理に円問題で一つだけ伺います。  どうもこの円問題は、これは日本だけの問題じゃない。きのうおとといあたりは大分もう欧州市場の問題にいろいろドルの問題で発展していっております。これは、総理、ひとつお得意の首脳会議じゃありませんけれども総理から提言されて、世界各国の関係者がまた一堂に会するなり何かして、この円問題、あるいはまたドル、通貨全体の問題についてさらに考え合う、こういう国際会議を提唱されるお気持ちはありませんか。
  389. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 端的に申し上げますと、いまこの段階で国際会議ということを提唱する考えはありません。まあそんな仰々しい国際会議を開きませんけれども、日米欧、この三極におきましてハイレベルの事務当局間で緊密な連絡をとっておるんです。それでいま十分である。まあ状況が変化いたしまして首脳会談を必要とするということでありますれば考えてもよろしゅうございますけれども、いま直ちにその必要は感じておりません。
  390. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 総理に、もう一点、経済問題でデノミについて伺います。  午前中矢追委員からお話があって、総理の気持ちはわかりましたが、しかし、これは私も実はきょう通告して、デノミを福田総理のときやりなさいと。それは福田総理のときに準備をして心構えをつくっておかなければ、これは準備をするのに三年なり相当かかるんですから、あなたがやれなければほかの総理大臣はなかなか次もやれないだろう、そのくらいに期待を持って、これを総理がやると言われた場合には、私は福田人気は少なくとも最低一〇%はすぐ上がるだろう、このくらいに思いますよ。それは、いま経済人としてそれによってすぐもうかるわけじゃないけれども、やはり何か新しい経済の秩序を求めていますよ。目標を求めていますよ。そういう点から見ても、あるいは内需増進という面から見ても、これはどうしても福田総理にひとつ決断をしていただく必要があると思うのです。ここでやるということを言うことは恐らくないと思いますが、しかし、相当真剣に検討するというぐらいのことはひとつ御答弁なさっていいんじゃないでしょうか。いかがですか。
  391. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) このデノミというのは大変誤解されやすいんです。これは何も景気がどうなるとかいうような性格のものじゃないわけですわね。そういう感触を持つ人があるところに問題がある。そういうようなことでなくて、もう本当にこれは通貨の呼称変更だと、こういうことが本当に理解されるようにならぬと困ると思うのです。まあそういうことを大いにPRしたい。  それから同時に、そのタイミングといたしましては、経済があらゆる角度から見て安定した状態だと、そういうタイミングを選ばなければならぬと、こういうふうに思いますが、私はそういうPRもちゃんとし、それから経済政策も努力いたしまして、早くデノミをやってもいいというようなことにしたいと、こういうふうに考えておるわけです。
  392. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 それじゃ、総理がそういう環境になったと考えられれば、あえておやりになるというようなこともあり得ると。
  393. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) デノミが実行できるような経済環境を早くつくりたいと、そういうふうに思っているんです。
  394. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 雇用問題について一点文部大臣に伺います。  昨日、労働大臣からも、どうもネコもしゃくしも大学へ行く、あるいは管理職を期待するということで、それで就職戦線が狭いんだというお話がありました。私は、職業に対する認識、あるいはまたネコもしゃくしも大学へ行かなければという考えよりは、むしろ、技術教育、あるいはまた職業に対しては卑しいとかどうとかはないんだと、たとえ家事お手伝いでも非常に立派な仕事なんだと、こういったような教育がもっと行われるならば、私は大分雇用関係の問題も違ってくると思うのですが、文部大臣、学校教育の中でもう少しそういう指導ができませんか。
  395. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 職業に貴賎なし、おっしゃるとおりであります。学歴よりも実力、肩書きよりも能力を大切にする教育をしなければならないと常々考えております。
  396. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 文部大臣、そういう御指導をひとつ文部省関係者にお願いしたい。  次に、労働大臣、雇用あるいはまた不況、安定賃金等の問題で最近政労会議といいますか、いろいろ労働者の代表の方々とお会いになっていらっしゃるようであります。非常にこれは結構なことだ。そしてよく労働界の意見もお聞きになって、そして経営者と政府と共々力を合わせてこの不況を克服するし、また日本の経済の発展に努めていただきたいと思うが、現在円満にお話し合いを進めておられると思いますけれども、将来は、こういった中から、賃金体系の問題やらいろいろ諸般にわたって政府と労働界が意思疎通ができるようにしてほしいと、こう考えておりますが、現状どうお考えになっていらっしゃるか、大臣から伺います。
  397. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 私は今度久しぶりで労働省をお預かりいたしまして一番痛感いたしましたことは、労使の間の関係というものが、特に民間の労使関係というものが非常に改善されているということであります。相互の理解が進んでいる。それから現状の認識に大きな相違がない、またその対応の仕方にも大きな相違がないということであります。経営者は労働組合をパートナーと考え、労働組合は近代社会の構成員としての責任を自覚しているという状態、この変化の大きさに実は驚き、かつ喜んでおる次第であります。現在行われておりますのは、労働大臣の諮問機関として産労懇——産業労働懇談会というものがございます。これは一カ月に一回行われております。それから労働四団体あるいは政策推進労組会議というような組織からの代表者の方々から、それぞれそのときの問題についての提案やあるいは決議などをもとにした懇談が行われているわけであります。ただ、賃金の問題は、これは元来労使の間で決めるのが鉄則でありまして、おおよその基本的な考え方の話し合いというのは結構でございますが、具体的な問題はやはりその原則を貫くべきだと考えておるわけであります。これからは、産業労働懇話会におきましては、議題を決めまして、その議題に直接関係のある閣僚の出席を求めて、一つ一つ懇談をし、相互の理解を進めていく方針でございます。
  398. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 関連して、スト権問題の検討状況、それから政府としていつごろまでに結論を出されるお気持ちか。これは政府委員で結構です。
  399. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) いや、政府委員でなくても、私でも……。  現在、スト権問題については、スト権問題についての基本問題懇談会が中山先生を座長にして進行中でございます。そして近く労働側の意見聴取が開始されるわけであります。政府としては、できるだけ早い結論を期待いたしますけれども、これは人に審議をお願いしておいて拘束的な注文をつけるべき性質のものでもございませんので、私どもはその審議の進行を見守っておるところであります。
  400. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 大蔵大臣、厚生大臣に新税制と社会保険負担について伺います。  いわゆる税制調査会の中間答申によりますと、租税負担も社会保険負担も欧米諸国に比べてわが国は一番少ない、これはわかります。しかし、税制調査会の中では、ただ新税制のことばかり言って、社会保険負担のことについてあるべき姿に全然触れていない。これはおかしいじゃありませんか。両方調和をして考えてみて初めて税金がこれだけと、こうあるべきじゃありませんか。その点、大蔵大臣、片手落ちじゃありませんか。また、厚生大臣としては、この負担についてやはり明確にされるべきじゃありませんか。
  401. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 租税負担、社会保険の負担、いずれも国民の負担には違いございません。そこで、同じ負担だからひとつ両方とも交通して考えろと、こういう御意見のように承りましたが、この違いが、負担という意味においては違いはございませんけれども、税制における負担というものは国全体の歳出をどうして税でもって賄っていくかというこういう観念、それから社会保険負担というものは社会保険に要する費用、それを被保険者が保険料として負担する。つまり、受益者と負担者とがやっぱり同じでございますわね。そういうようなことでやっていっておりますが、税はそこが違うのです。そこで、ひとつ極端なことを言いまして、社会保険負担をふやしていけば税がその分だけ減るじゃないか、そうすると新税は要らぬじゃないかと.こういうような御意見もあるように承っておりますが、これは社会保険料負担によって税の分量を代替していくということは、ちょっとそれは秩序が違う。税と社会保険負担というものが、同じ負担ということでございまするが、部屋がこれ違いまして、鉄のとびらがあえてあるとは私は申しません、鉄で仕切っておるとはあえて申しませんけれども、その間を自由に出し入れするというような考え方では、ちょっとやっぱり先ほど申し上げましたとおり目的が違う。ところで、税の中にも目的税というやつがあるじゃないか、こういうお話もむろんあろうと思いますけれども、要するに、税というものは、本来の性質としては、一般の経費に対しまして税で賄っていくんだと、こういうことが私は税の性質としては正しい姿だと、かように考えますので、なおまた、今度の税制調査会の意見も五十年代前期経済計画というものを踏まえてやっておりますが、そこの前期経済計画では、日本の国は将来どうしても税の方の負担も重くしていかにやならないし、それからまた社会保険も充実していかなければならないんだから、それに要る経費、つまり保険料というものも両方をこう上げていかなければならぬというふうに書いておりますので、そこを方針として税制調査会の方針が決めたというふうに理解いたしております。
  402. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 社会保険あるいは社会保障を充実をしろ、あるいはいろいろな抜本改正をやれという議論がございます。しかし、これはしょせんお金のかかることであって、だれがそのお金を持つのか、国とか公共団体が持つのか、個人が持つのかということだと私は思います。特に、社会保障費というものがGNPに対して日本は少ないとか、あるいは国民所得に対して外国よりも少ないではないかという議論は出てくるのですが、日本は税金が安過ぎるではないか、保険料がむちゃくちゃ安いという議論は出てこないのであります。私はこの間調べてみたのですけれども、たとえば国民一人当たりの租税の負担あるいは社会保険料の負担の合計額を見ると、日本の場合は国民一人二十五万円、アメリカ六十七万円、スウェーデンが百三万円、ドイツが七十八万円、フランスが六十二万円でございますから、ともかく社会保障が少ないと言われましても、負担の方もうんと三分の一で少ないんだと、こういうようなことをまず念頭に入れていただいて、これから社会保障を充実しろという御議論の際には、ぜひとも非常に——特に保険料のごときは日本は五万四千円ですから、これはスウェーデンの四分の一とか、ほかの国の五分の一とかという状況なので、こういうこともあわせて御議論をいただければきわめて幸いでありますと、こういうことをお答えいたします。
  403. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 そこで、厚生大臣、やはり見識を持って、厚生大臣としてはこのくらいの負担はしてもらうべきだというようなことも含めて国民に明らかにされる必要があるんじゃないか。  あわせてもう一点、老人医療について老人グループのみの保険、老人保険みたいなものをおつくりになる、こういうお考えがないかどうか。
  404. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) したがいまして、幾らぐらいそれじゃ負担をしたらいいんだと、これはやさしそうで非常にむずかしい実は問題なのであります。たとえば、国民所得に対する負担割合というのをパーセントで示せば、日本は社会保障費が約二六・七、あるいは西ドイツが四九、あるいはフランスが四七とかいうのですから、フランスやドイツやスウェーデンが五七・七、それぐらいまで負担をするのかという話もございます。しかし、私は、国情、国柄、家族制度のあり方、こういうようなものもかなり違っておりますし、一概に諸外国が国民所得に対して四〇だ五〇だと言うから、それまで日本も負担をさせるようなことをやらなければならないのかどうなのか、非常に論争のあるところじゃないか。しかしながら、いやおうなしにこれは老齢化をしていきますから、医療費も減ることはないし、年金がどんどんふえていく。現実に厚生年金を見ましても、現在の受給者は二百八十五万人ですが、あと八年もすると、たった八年間で六百五万人にもらう人がふえる。しかも、被保険者の方は余りふえない。国民年金にいたしましても、被保険者の数、つまり保険料を納める人はふえないで、それでもらう方は現在三百九十万人ですが、昭和六十年には六百七十万人になるということになれば、これは保険料がかなりふえていく。例示的に申しますと、たとえば、国民年金で昭和五十五年まで一〇%改善をし、それ以上八%程度要するに受給額をベースアップしていくということになりますと、名目では現在二千二百円の保険料を八千円以上に上げなきゃならぬ、こういう問題が出てくる。算術の問題でございます。したがって、どの程度の負担がいいかということは、どれぐらいもらいたいかということと裏表でありますから、そこらのところをよく皆さんと相談をして決めてまいりたい、こう考えております。
  405. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 老人保険は。
  406. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 老人保険につきましては、これはきのうもお答えをいたしたのでございますが、つまり、国民健康保険にばかり老人が偏ってしまうと。したがって、国保が赤字であると。だからこれは別建てにしたらいいじゃないかと。これは別建てにするとだれがその負担をするのかという問題が一番先に出てまいります。現存のところは、要するに国保財政が困っておりますから、国は一兆四千億円ほどの財政的な援助をして、財政調整を実際行っておる。こういうような直接国の税金で医療費に社会保険をやっておる制度で補助金を出している国は余り知りません、私は。ドイツもフランスも国費を医療保険に補助をしているということはございません。日本はそれをやってこられたわけであるし、いまやっておるわけでございます。したがって、当然いままでの分はこれはやはり持っていただくことになるでございましょうが、これ以上に国に大幅に出せといっても、これはなかなか期待困難——私は期待しますよ。期待しますが、なかなか現在の財政事情からすると、そう大幅な期待はできないということになれば、老人の医療を別建てにしても、医療だけの別建てでは余り意味がない。そこで、リハビリテーションとか、あるいは家庭における生活の指導とか、要するに病気の予防とか、そういうような一貫したものを老人について別建てにすべきではないかという有力な意見がございます。これらについて実は私の手元で老人の医療問題の懇談会が二十回以上開催されてそろそろ結論と今月中には結論をいただけるものと私は思っておりますが、いま私が言ったようなことが大きな柱になって検討されておりますから、その検討が出た暁においてはっきりした私の態度を表明していきたいと、こう思っております。
  407. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 地震対策について伺います。  過般の予算委員会で東海大地震ということが指摘されました。気象庁長官に伺います。現在のところでは東海地域の大地震の発生する可能性が強いのかどうなのか、特に変わったことはないか、承ります。
  408. 有住直介

    政府委員(有住直介君) お答えいたします。  東海地域の過去を見ますというと、大地震が百年ないし二百年の間隔で繰り返し起こっております。一番新しいのが安政の大地震でございますが、それ以来すでに百二十三年を経過しているというような現状でございます。一方、明治以後の測量を繰り返したり、また地殻活動の監視ということをやっておりますと、同地域には相当のエネルギーがたまっているというように考えられているわけでございます。そういうことから大地震の可能性が指摘されるようになっておるわけでございます。これを確かめるためには各種の観測強化がまず第一であるということの判断で、昭和四十九年に東海地域を観測強化地域ということに指定されました。以来、関係各機関の協力のもとに観測強化をしまして、またデータの収集も行いまして予知に結びつけるために判定会というものが四月十八日に発足したわけでございます。判定会の委員は定期的に各種データの検討を行っておりますけれども、その判断によりますと、現在のところ大地震が迫っているという兆候はございません。  しかし、今後ともこの観測体制とか常時監視体制をさらに整備いたしまして東海大地震の予知をしまして、この予知情報が防災に生かされて役立ちますように私ども一層の努力をしたいと、こういうふうに思っているわけでございます。
  409. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 科技庁長官に伺います。  予知ということの重要性、これは私が言うまでもない。中国では過去の大地震四回のうち三回は予知していると言われています。日本でも予知が絶対不可能じゃないと私は思うのです。この点の予算あるいは機構について全力を挙げて強化をしてほしい、来年度予算についてもがんばってほしいと思うが、科技庁長官の決意を承りたい。
  410. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 率直に申し上げまして、予知は非常にむずかしい問題だと、こういうふうに聞いております。しかしながら、あらゆる知能を傾注しましてその確度を高め、そして国民の生命、財産、これは守らなくちゃならぬと、私はかように考えております。したがいまして、もうすでに本部も発足しましたし、いま気象庁長官が答えましたとおりに判定会も発足しまして万全を期しております。特に東海地域に対しましては本当にもう万一そういうことがあった場合にはどうしようかというので非常態勢までわれわれといたしましては考え、また知事会等におきましては平素から防災訓練なんかやっていただきまして、その点政府といたしましても非常に敬意を表しておる次第でございます。本年度予算はさような意味でわれわれも努力をいたしましたので、昨年対比五九%の伸びであります。金額にいたしますと三十七億程度でありますが、そうした問題に関しましても国民の生命、財産という観点から今後も努力をしていきたいと、かように存じております。
  411. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 農林大臣に伺います。  現在、林野で例の由比の地すべりをやっていただいておりますが、新幹線、東海道、東名全部あわせて地震が来たら電信網、鉄道すべてとまりますよ。これについてはやはり事業を思い切って早める考えがありませんか。
  412. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 静岡県由比地区の林野の地すべり防止対策、これは全国的に見ましても最も国土保全上重要な地区と認識をいたしておりまして、昭和五十年度から重点的に予算をつけまして、五十二年度までに約十六億予算がついておるわけでございます。なお、五十二年度から御承知のように第五次治山整備事業五ヵ年計画が発足をいたしますが、その中に約七十億程度のものを予定をいたしまして、計画年次にはぜひ早急にこれを完成をしたい、このように考えております。  なお、用地の問題や道路事情の問題等、地元といろいろ御協議をして御協力をいただかなければならない問題もございますので、よろしくひとつ御協力のほどをお願いしたいと思います。
  413. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 総理が抜けられましたから、地震立法は後で申し上げます。  教育問題を文部大臣に伺います。  最近、子供が相次いで自殺をしています。いろいろな動機はありますけれども、これはゆゆしい社会問題でありますし、教育上どのような適切な指導方針をおとりになっているか、文部大臣のお考えを承りたい。
  414. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 全国の教育委員会を通じて、どういう理由で子供が自殺するのであろうかを調べますと、それぞれに原因は挙がってまいります。学業不振であるとか、家庭の状況であるとか、あるいはまた欲しいものを買ってくれなかったとか、いろいろございますが、それは引き金になった直接の理由であって、その裏に何かもっと深いものがあるのではなかろうか、こういうことを考えまして私どもは当面二つのことを考えました。一つは、学校の授業そのものを、詰め込み主義という批判を受けましたが、そうではなくて、ゆとりのある心身ともにバランスのとれた健全な育成を図るようにしなければならぬ。これが一つ。それからもう一つは、最近たくさん新聞の投書が出ておりますが、特に現場の教師の立場からなされる投書の中で、人間の生命の尊厳をどこでどう教えるかという角度の投書、あるいは十代の学生自身の投書の中で、孤独にさせないでほしい、話を聞いてほしいというようなものがございます。私はここにも一面の大きな背景があると思いますので、家庭においても、学校においても、それぞれの立場で対話を深めたり、あるいは共同生活の中でお互いに悩みを聞いてあげたり、指導したり、実態をつかんだりするように細かく努力をして、幾らかでも防ぐようにがんばっていかなければならぬ、こう考えております。
  415. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 私学助成に取り組む姿勢について伺います。  財政上なかなか大変なところを、今日まで、大学については二五・九、中高校については二二・九、そこまで高めたことは評価します。しかし、これからが一番大事なんでありまして、どうしてもこれはまじめな私学に対しては大いに教育の実を上げるために私学助成については今後も大いに強力にやってほしい。あわせて、前国会で玉置委員も申し上げましたが、私学の幼稚園に対する就園奨励費、経常費、これについては、余りにも公私の負担の差がはなはだしい幼稚園の場合についてはどうしてもこれは考えていかなければならぬと思っていますが、文部大臣の前向きな御答弁を承りたい。
  416. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 私学助成の問題は、御指摘のように、大学関係も高校以下の分も今年度予算では文部省予算の中で最大の伸び率にしていただいておりますが、これは概算要求におきましてもこの方向を維持してできるだけ私学の助成には力を尽くしていきたい。特に具体的に御指摘のありました私立幼稚園の就園奨励費の問題につきましても、幼児教育の重要性に着目をいたしておりまして、五十七年度には四、五歳の就園を希望する人が全部就園できるような計画を立てて行っておりますので、そういう政策とあわせて格差是正のために一層の努力をしなければならぬのは当然のことだと考えておりまして、御趣旨に従って努力をいたします。
  417. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 学校給食の米飯実施の状況、これについて承りたい。  中には、週二回にしたらどうか、また、お母さんの味というためにお弁当を詰めて持ってくるというような手づくりの運動をしたらどうか、こういうような声もあります。これは農林大臣も喜ばれると思うので、ぜひ文部大臣に考えてもらいたい。  あるいはまた、この際ひとつ日本のお茶、緑茶を学校給食に導入していただいたらどうか、こう思いますが、これをあわせて伺います。
  418. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 学校給食に米飯を導入するという施策は、昭和五十一年から積極的に推進しておるところでございますし、私自身も米飯給食の現場へ行って一緒に食べてまいりました。現在、その結果、学校数で昭和五十一年に三六・五%であったものが現在五八・三%にまで米飯給食の設備は普及いたしましたので、今後、設備の整備を進めるなど、すべての学校で実施できるように努力をいたしてまいりたいと考えております。  なお、米飯給食の実施に当たりましては、たん白質とかカルシウムの摂取に努めるために、児童生徒の栄養を適正なものにするために、牛乳の飲み方を指導しておりますが、日本茶に関しましては、一部の地域で行われておると承っておりますけれども、地域地域の自主性によって御判断なさるべき問題であろうかと、かように考えております。御意見として承っておきます。
  419. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 日本人の心を育てるにはお茶が一番いいんですから、大臣、覚えておいてください。  総理大臣が来られましたから、地震対策の特別立法について伺います。  知事会におきましてもいまこの立法問題について特別委員会をつくってやっておりますが、大地震が起こる、こうなったときに、総理大臣の権限、自衛隊の問題だとか鉄道をとめるとか、そういう問題について、現行の法律では大変な混乱が起こる、だからどうしてもこれは地震立法をすべきだ、こういう声が大変強いのであります。まず国土庁長官に伺います。
  420. 田澤吉郎

    国務大臣(田澤吉郎君) お答えいたします。  地震対策につきましては、これは御案内のように、大都市震災対策推進要綱というものをつくりまして、それを基本にしながら具体的な案をただいま進めている段階でございます。そこで、問題は、予知された段階でそれが行政措置をいかにしたらよろしいか。たとえば、道路規制等をどうすべきかということは、現行の災害基本法で全部救うことができないだろうか。もし救うことができないとすれば、戸塚さん御指摘のような新しい法で扱わなければならないわけでございます。この点についてはいま少し検討させていただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、新しい地震に対する体制について私たちは思い切った路線をつくっていかなければならないときであろうと思うのでございます。そこで、東海地区ではすでに判定会もできておりますので、実は、国土庁としては、この九月の災害の日に関連して、防衛庁、あるいは消防庁、他の機関の協力をいただきまして、国と県と富士市の協力をいただきまして震災対策の訓練を行ったのでございますが、富士市では十万人の市民の協力をいただきまして大きな成果をいただいているわけでございます。こういうようないわゆる具体的な例をも参考にしながら、また知事会の意見を聞いて、ただいまの戸塚さんの提案の趣旨をできるだけ早い機会につくり上げたい、かように考えております。
  421. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 総理、お聞きのとおりですよ。知事会からも強い要望が総理にあったでしょう。総理からもひとつ前向きな答弁を……。
  422. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま国土庁長官が明快にお答えいたしたとおりにいたします。
  423. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 海外留学生対策について伺います。  ASEANへ総理は訪問されましたが、伺うと、二万人ぐらい日本に留学した経験のある人がおって、大活躍をして日本のためにがんばってくれたそうです。そういったような意味からも、海外の留学生というものに対する対策は万全を期さなきゃいかぬ。だが、現在のところでは、私費留学生の対策とか、留学で帰った人のアフターケアの問題とか、非常に足らない面がある。場合によって、現在では、反日運動をやるかもしらぬというような問題にもなってきます。この際、留学生対策は万全を期さなければならぬと思うが、総理の御所見を伺います。
  424. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日本に対しまして留学いたしました人は東南アジア諸国に非常に多いんです。この人たちは、これらの東南アジア地域とわが国とを結びつける上に、ことに、私が、心と心との交流、触れ合いだと、こういうふうに申しておりますが、それを実現するために非常に貴重な役割りを果たし得ると、こういうふうに思いまして、それで元留学生、この人たちにいろいろな施策を講じておる。幸いにいたしまして、その施策が実りまして、元日本留学生協会、そういうものまでできまして、そして非常に活発な活動をしておるわけでありますが、この動きは私はさらにこれを助長していきたいと、こういうふうに考えます。同時に、これから日本に留学してくれる人、この人たちがまた日本の国とそれらの方々の母国とのかげ橋というふうになって、そして友好関係、これに貢献してくれるということになるようにぜひしていきたいと、このように存じています。
  425. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 官房長官に伺います。  ベトナム難民対策について九月二十日に閣議了解が行われました。非常に気の毒な方々です、私も行ってみましたけれども。しかし、日本に来てとても喜んでいます。こういうような状況を踏まえながら、現況とそれから将来の問題点、なおまた、法務大臣からは入国問題等について、また子供たちの学校について文部大臣、ひとつ御見解を伺いたい。
  426. 園田直

    国務大臣園田直君) ベトナム難民の上陸を認め、それぞれ処遇をいたしておりますが、御指摘のとおり、人道上国際的に重大な問題でありますから、九月の二十日に閣議了解を行い、これに基づいて内閣の中にベトナム難民対策連絡会議を開いております。この会議でそれぞれ施設拡大あるいは医療その他の諸準備を逐次検討を進めておるところでありますが、なお必要な問題が起これば、逐次関係各省とも協議を開いて進めていくつもりでございます。
  427. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) ベトナムの難民は、昭和五十年五月以来わが国に避難してまいりました人は千二百六名であります。その際には、国連の難民高等弁務官事務所がありますが、そういうものや日赤——日本赤十字社と連絡をしてできるだけ施設に収容する取り扱いにいたしております。が、しかし、日本はまだ受け入れる体制ができておりません、定住という受け入れ体制が。そこで、そのうちで現在残っておりますのは大体約八百五十名でございます。その差額——差額といいますか、差はアメリカあるいはフランス等に送り届けておる、こういう状況でありますが、非常に気の毒な立場の人たちであります。祖国を捨てて逃げてきておる。ただ、わが国に定住させる受け入れをするかどうか、ここがいわゆる難民の問題で重要な問題でありますが、それは先ほど官房長官もお話しになりましたように、わが国は御承知のとおり非常に領土が狭くて、しかも国民の数が多い、こういう状況もありますし、また、日本国民生活の中にうまく溶け込めるかどうかという問題点等もあります。でありますから、そういうものをあわせてもう少し検討をしなければならぬ、定住者として受け入れるかどうかということはもうしばらく検討をしよう、こういうことにしておるわけでございます。
  428. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) ただいま御答弁のありました定住問題についてどういう結果が出ますか、その結果を待って文部省といたしましては児童の教育については検討を深めさせていただきたい、こう考えます。
  429. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 総務長官に伺いますが、元号問題が最近国民の大きな関心の的になっております。私も非常に大きな関心を持っておりまして、これは当然日本人の心の中に定着しているわけでございますから、これはしっかりした対策をやっていただかなきゃいけない、方針を出していただかなきゃならぬ。この問題について、総務長官の現在の御心境と今後の御方針を承りたい。
  430. 藤田正明

    国務大臣(藤田正明君) 元号問題につきましては、ことしの八月に世論調査をいたしました。これは第三回目の世論調査でございます。それで、元号を常時使用している人は八九%であります。それから元号の存続を希望する人が七九%であります。元号を希望しない人、存続を希望しない人は六%であります。これは大体三回の調査で同じような数字でございます。まあ、それらにかんがみまして、元号は存続すべしという国民の大半の意向である、このように考えますので、元号の存続はそういう方針をもってまいります。そうして、その手続に関しましては、これは現在検討中でございます。
  431. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 最後総理に二点伺います。  まず、北方領土問題について、最近、地方議会からの非常に強い要望、意見書等が総理のところへも届けられていると思います。この問題については、不退転の気持ちで、日本国民の悲願、こういうことで総理としては北方領土問題に強い関心と、これは非常に大きな重要課題、こういうことで取り組んでいただかなきゃならぬと思っておりますが、総理の心構えを承りたい。
  432. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 全くそのとおりの考えでやってまいります。
  433. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 それでは、最後に、総理に臨時国会後の政治スケジュールについて伺います。  これは、新聞等には、気の早い方は、人心一新とか、大臣どうとか、解散がどうとか書いてありますが、私はそんなことを伺おうとは思わない。しかし、総理として少なくとも臨時国会後はこういうことに重点を置いてやりたいんだとか、あるいはまた、かねての心と心の触れ合い外交、これは非常にやはり好評だったんですね。そういうことから考えてみて、この国際的ないまの円の問題も含め、あるいはまた近隣外交も含めて、当然総理なりにいろいろ考えていらっしゃることがあると思うのです。外交、外遊の問題、さらにはまた、その他のいま総理の一番頭にある事項を承りたい。  そして、最後に、私は総理がお時間があったらぜひ次の通常国会までに国民とはだで触れ合うということを考えてほしい。水戸黄門様をやってほしい。総理はお顔も黄門様に似ているんですよ。だから、総理がただ演説会で人を集めるのじゃなくて、たとえば工場へ出かけて行って不況の現況を聞く、労働者に私に肩をたたくように、おい、御苦労さんとやる、あるいは病院へ行って気の毒な子供たちを見舞ってみる、あるいは保母さんたちを激励してみる、やはりそういうことを福田総理がやってくださったなら、先ほどどなたかがあなたは庶民的じゃないとおっしゃったが、私は庶民的だと思うんですよ。ですから、その庶民性を大いに総理として発揮してほしい。いかがですか。
  434. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 臨時国会が済みましてからの政治日程ですね、これにつきましては、私は、いま何といっても世界が経済的に非常に混乱をしている、そういう中でわが日本の経済は安全に運転していかなければならぬと、こういう問題です。そういう中で五十三年の経済をどういうふうに展望するか、その展望の上に立っていかにりっぱな予算を編成するか、これが私は最大の問題だと、こういうふうに思いまして、その問題に鋭意取り組んでいくという考えでございます。  なお、外国から元首または元首級の人が数名参りますけれども、そういう人たちとは十分に意見の交換をいたしまして、これらの国々との間の友好親善、心の触れ合いをひとつ深めてまいりたい、こういうふうに思います。  私の政治家としての姿勢につきまして大変ありがたい御提言を承りましたが、そのようにいたします。
  435. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 終わります。(拍手)
  436. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上をもちまして戸塚君の質問は終了いたしました。  明日は午前十時から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十五分散会