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1977-10-18 第82回国会 参議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月十八日(火曜日)    午前十時三分開会     ―――――――――――――    委員の異動  十号十七日     辞任         補欠選任      上田耕一郎君     佐藤 昭夫君  十月十八日     辞任         補欠選任      玉置 和郎君     野呂田芳成君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         鍋島 直紹君     理 事                 戸塚 進也君                 内藤誉三郎君                 中村 太郎君                 宮田  輝君                 小柳  勇君                 山崎  昇君                 多田 省吾君                 内藤  功君                 栗林 卓司君     委 員                 浅野  拡君                 岩動 道行君                 石破 二朗君                 糸山英太郎君                 小澤 太郎君                 加藤 武徳君                 亀井 久興君                 亀長 友義君                 熊谷  弘君                 下条進一郎君                 園田 清充君                 玉置 和郎君                 成相 善十君                 野呂田芳成君                 林  ゆう君                 真鍋 賢二君                 三善 信二君                 望月 邦夫君                 八木 一郎君                 秋山 長造君                 片山 甚市君                 竹田 四郎君                 対馬 孝且君                 寺田 熊雄君                 福間 知之君                目黒今朝次郎君                 矢田部 理君                 太田 淳夫君                 峯山 昭範君                 矢追 秀彦君                 矢原 秀男君                 佐藤 昭夫君                 渡辺  武君                 山田  勇君                 柿沢 弘治君    国務大臣        内閣総理大臣   福田 赳夫君        法 務 大 臣  瀬戸山三男君        外 務 大 臣  鳩山威一郎君        大 蔵 大 臣  坊  秀男君        文 部 大 臣  海部 俊樹君        厚 生 大 臣  渡辺美智雄君        農 林 大 臣  鈴木 善幸君        通商産業大臣   田中 龍夫君        運 輸 大 臣  田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君        労 働 大 臣  石田 博英君        建 設 大 臣  長谷川四郎君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      小川 平二君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       園田  直君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       藤田 正明君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       西村 英一君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  三原 朝雄君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       倉成  正君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       宇野 宗佑君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  石原慎太郎君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  田澤 吉郎君    政府委員        内閣法制局長官  真田 秀夫君        内閣法制局第一        部長       茂串  俊君        内閣総理大臣官        房同和対策室長  黒川  弘君        総理府人事局長  秋富 公正君        公正取引委員会        委員長      橋口  收君        公正取引委員会        事務局取引部長  長谷川 古君        警察庁刑事局長  鈴木 貞敏君        警察庁警備局長  三井  脩君        防衛庁参事官   夏目 晴雄君        防衛庁人事教育        局長       渡邊 伊助君        防衛施設庁長官  亘理  彰君        防衛施設庁総務        部長       銅崎 富司君        経済企画庁調整        局審議官     澤野  潤君        経済企画庁国民        生活局長     井川  博君        経済企画庁物価        局長       藤井 直樹君        経済企画庁調査        局長       岩田 幸基君        国土庁土地局長  松本 作衛君        国土庁地方振興        局長       土屋 佳照君        法務省刑事局長  伊藤 榮樹君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       中島敏次郎君        外務省欧亜局長  宮澤  泰君        外務省中近東ア        フリカ局長    加賀美秀夫君        外務省経済局長  本野 盛幸君        外務省条約局長  大森 誠一君        大蔵大臣官房審        議官       加藤 隆司君        大蔵大臣官房審        議官       海原 公輝君        大蔵省主計局長  長岡  實君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  田中  敬君        大蔵省銀行局長  徳田 博美君        文部省初等中等        教育局長     諸沢 正道君        文部省大学局長  佐野文一郎君        文部省学術国際        局長       井内慶次郎君        文部省社会教育        局長       望月哲太郎君        文化庁次長    吉久 勝美君        厚生省公衆衛生        局長       松浦十四郎君        厚生省医務局長  佐分利輝彦君        厚生省薬務局長  中野 徹雄君        厚生省社会局長  上村  一君        厚生省年金局長  木暮 保成君        農林大臣官房長  澤邊  守君        農林省農林経済        局長       今村 宣夫君        農林省構造改善        局長       森  整治君        農林省農蚕園芸        局長       堀川 春彦君        農林省食品流通        局長       杉山 克己君        食糧庁長官   大河原太一郎君        林野庁長官    藍原 義邦君        水産庁長官    岡安  誠君        通商産業省通商        政策局長     矢野俊比古君        通商産業省通商        政策局次長    花岡 宗助君        通商産業省貿易        局長       西山敬次郎君        通商産業省産業        政策局長     濃野  滋君        通商産業省基礎        産業局長     天谷 直弘君        通商産業省機械        情報産業局長   森山 信吾君        通商産業省生活        産業局長     藤原 一郎君        中小企業庁長官  岸田 文武君        運輸省鉄道監督        局長       住田 正二君        運輸省航空局長  高橋 寿夫君        郵政省貯金局長  高仲  優君        郵政省電波監理        局長       平野 正雄君        労働省労働基準        局長       桑原 敬一君        労働省職業安定        局長       細野  正君        建設大臣官房長  粟屋 敏信君        建設省計画局長  大富  宏君        建設省道路局長  浅井新一郎君        建設省住宅局長  山岡 一男君        自治省財政局長  山本  悟君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        外務大臣官房領        事移住部長    賀陽 治憲君    参考人        日本国有鉄道総        裁        高木 文雄君        日本銀行総裁   森永貞一郎君        一橋大学名誉教        授        馬場啓之助君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十二年度一般会計補正予算(第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和五十二年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第1  号)(内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和五十二年度一般会計補正予算  昭和五十二年度特別会計補正予算  昭和五十二年度政府関係機関補正予算  以上三案を一括して議題といたします。  質疑に入るに先立ち、補正予算三案の審査につきまして理事会において協議、決定いたしました事項について御報告いたします。  審査期間は、木十八日から二十四日までの日曜日を除く六日間とすること、そのうち本十八日から二十一日まで及び二十四日の五日間は総括質疑とし、二十二日は参考人からの意見聴取の日とすること、総括質疑における質疑時間は七百四分とし、各会派への割り当ては、自由民主党・自由国民会議及び日本社会党それぞれ二百二十分、公明党百十分、日本共産党六十六分、民社党四十四分、第二院クラブ及び新自由クラブそれぞれ二十二分とし、質疑順位についてはお手元の質疑通告表のとおりとすること、以上でございます。  右のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  4. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十二年度一般会計補正予算外二案の審査のため、本日の委員会一橋大学名誉教授馬場啓之助君及び日本銀行総裁森永貞一郎君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、出席時刻等については、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  7. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) それでは、これより質疑に入ります。小柳勇
  8. 小柳勇

    小柳勇君 三つの部門に分けて質問をいたします。  第一の問題は、国際関係、第二の問題は、国内経済、特に景気回復の問題、第三の問題は、昭和五十三年度の予算に絡む政治的な緊急課題、これを六つ質問いたします、国鉄あるいは老人対策など。  したがって、第一の国際関係に入るわけでありますが、その前に日本ハイジャック事件が発生いたしました直後、ドイツでルフトハンザのまたハイジャック事件がありました。いまのニュースではまだ定かでありませんが、乗客全員無事に救出された、特にドイツ民主主義を守るという立場で、ドイツ内閣がうんと全知全能をしぼったようでありますが、福田総理大臣見解をお聞きしたいと思います。
  9. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、まだドイツ状況について定かには承知しておりませんけれども、どうも乗客全員無事で、特攻隊のようなものが出動いたしまして始末をつけたと、こういうように伺っております。まあ私どものとりました措置につきましては、とにかく当時の状況といたしましてはあれ以外に道はなかったのじゃないか、このように存じておるわけでありまするが、今後あのようなことが再び起こらないというために万全の努力をする、これが政府の責任である、このように考えております。
  10. 小柳勇

    小柳勇君 日本の場合、あの状態の中で私もそう思ってまいりました。ただ、福田法務大臣がおやめになりました。また、その後、事件処理の後、パスポートの問題などでいろいろ発表して差し支えないようなものが隠してあった、そういうもので割り切れないものを持っていますが、ハイジャック対策に対して、国連など国際的にその後日本はどういう対策をとったか、外務大臣から報告を求めます。
  11. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ハイジャック防止あるいは人質対策等につきまして、国連でも一九七二年に国際テロリズムアドホック委員会というものを設置されまして、また人質行為防止国際条約起草アドホック委員会、これは一九七六年に設置されまして、それ以来国際的な努力が続けられておるわけでございます。今回のような事件がありましたので、日本政府といたしまして、これらの場を通じ、また国連専門機関でありますICAO等を通じまして、これからのハイジャック防止につきまして全力を挙げてまいりたいと考えております。
  12. 小柳勇

    小柳勇君 ただいま三つ条約を挙げられましたけれども中近東など多数の国がその条約を批准していません。しかも、ハイジャックが発生いたしましてこれだけ国民的な関心があるのに、これから対策を立てるというようななまぬるいことでは外務省として国民の批判を受けてもしようがないと思うが、もう一回大臣見解を求めます。
  13. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいま現在進行中の委員会のことを申し上げたのでありますが、防止条約といたしまして三条約があるわけであります。しかし、これらの条約につきまして、国連百四十九カ国になりましたけれども、まだヘーグ条約につきましては七十八カ国しか加盟いたしておりません。何よりもあらゆる国がこれに加盟することが望ましい、これはもう言うをまたないところでございます。しかし、従来テロリズムに対しましていろいろ見解を異にする国々があったことは現実でありまして、そのためもありましょう、なかなか中東諸国の中にはこれに加盟しない国が多いわけであります。これからは国際的な世論というものがありますので、全世界、全国連加盟国がこの三条約に加盟するように極力あらゆる努力をすべきものと考えております。
  14. 小柳勇

    小柳勇君 昨年のIPUの会議ロンドン会議で私も日本代表として演説をいたしておきましたけれども、反響が非常に鈍いのであります。したがって、先般のハイジャックのあの苦い経験をもっと深刻に受けとめて、敏速に国連なりあるいは列国議会同盟に働きかける、そういう決意をしてもらいたい。これは総理大臣から見解を聞きます。
  15. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お話、まことにごもっともでございます。私は、もう鉄は熱いうちに打たなきゃならぬと、こういうふうに関係者を督励しているわけでありまするが、この施策は内外にわたって展開されなければならぬ。外交努力も敏速果敢に精力的にやってみたいと、かように考えております。
  16. 小柳勇

    小柳勇君 横浜米軍機が落ちまして、調査も済まないのに米軍エンジンを持って帰った。どういう抗議をしたか、また米軍からどういう釈明があったか、防衛庁長官から聞きます。
  17. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) お答えいたします。  経緯を申し上げますと、今月の五日及び六日の時点におきまして、米側から精密検査のためにエンジン等米本国に持ち帰りたいという意向が伝えられたわけでございます。警察側はこれを留保いたしまして、各省にも連絡がございました。したがいまして、そういう米側意向がわかりましたものですから、七日の事故分科委員会の席上におきまして、日本側代表から、できるだけ日本国内において調査してほしいということ、それからまた、一方でわが方は原因の早急な究明を希望しておるわけでございますので、そのために、どうしても本国に持ち帰ることが適当であるということであるならば事前連絡をしてもらいたい、かつ、その場合にはその調査結果を日本側に提供してもらいたい等のことを申し入れたわけでございます。それで、米側もこれをわかっておったわけでございますが、その後、八日に、横田から、エンジンとその関連部品をカリフォルニアにあります米海軍航空修理施設に運んだということが、十四日の夜になりましてわかりました。したがいまして、私どもはその時点まで具体的な持ち出しの日時等について連絡を受けなかったということでありますので、十五日の朝、事故分科委員会代表から、米側に対しまして、この事前連絡を怠ったことはまことに遺憾である、今後再びこういうことのないようにということを申し入れまして、これに対して米側も遺憾の意を表明したわけであります。さらに、昨日、日本側代表から、米側に対しまして、本国における精密な調査をできるだけ早く終えて、終えたならばまた日本に持ち帰ってもらいたいという申し入れをいたした次第でございます。
  18. 小柳勇

    小柳勇君 前もってこちらの方でも注意しておったのにかかわらず、黙って持って帰った。日本関係者を無視するような米軍行為に対して、だれが抗議をしたか、あるいはどういう釈明が来たか、明らかにしていただきます。
  19. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) いま申し上げたとおりでございますが、日本側事前連絡をしてもらいたいという申し入れは、事故分科委員会の席上で日本側代表から米側代表申し入れておったわけでございます。したがいまして、この事前通告を怠ったことにつきまする申し入れを、先ほど申し上げたように十五日の朝にいたしたわけでございますが、これは同じく日本側の議長から米側代表に対しまして厳重に申し入れをいたしまして、米側代表はこれに対して遺憾の意を表明したと、こういう次第でございます。
  20. 小柳勇

    小柳勇君 米側代表というのはだれですか。
  21. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) 在日米軍の第三部長ダイザー空軍大佐でございます。
  22. 小柳勇

    小柳勇君 防衛庁長官から見解を聞きますが、横浜でいま対策本部をつくりまして、市民一体となって今後の事後処理を、対策を考えておるけれども、こういうように、市民国民も、しかも防衛庁もばかにされて、もっと正式に釈明を求める必要があると思いますが、どうですか。
  23. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 御指摘のとおり、ああした悲惨な事故が生じまして、こちらから持ち帰ることについては事前連絡の要請をいたしておりましたのを無断で持ち帰ったということにつきましては、その事態の重大性にかんがみて、私どもはそれは遺憾な処置であるということを申し上げてきたことは、いま長官から申したとおりでございます。したがいまして、私どもといたしましては、この問題については、将来そういうことが起こらないように万全の処置をいたしたいと思うのでございまするが、事故全体につきましては、いまだかつてないカーター大統領、そして外務大臣国防長官から、それぞれ総理大臣外務大臣防衛庁長官に、また米国大使外務省に参って陳謝の意を表し、安全対策について万全を期したいと言っておるところでございますが、しかし、いま御指摘の今回の処置については、これは全く遺憾である、そこで早速ひとつこちらに持ち帰ってほしいということを昨日も明確に申し入れをいたしておるというところでございます。
  24. 小柳勇

    小柳勇君 この問題は、竹田君が地元でありますから、後でまた詳しく質問をいたします。  私は、次に、中国日本との関係について質問を進めます。  まず第一に、先般経済団体代表長期貿易協定のために中国に行っておられましたが、協定内容、今後の見通しについて通産大臣から報告を求めます。
  25. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 御案内のとおりに、土光経団連会長を中心といたしましたミッションが参りまして、先方お話をいたしました後に、さらに引き続きまして十月十四日には関係経済界代表をもって新たに日中長期貿易取り決め推進委員会が発足いたしまして、この委員会内容といたしましては、特に長期貿易取り決めをいたしたい、また、わが方があるいは石油石炭、これを希望いたしますのにつきましても、先方側の方ではプラント、特に石炭採掘設備洗炭設備でありますとか、輸送設備、港湾、石油採掘設備、冶金等々、また石油化学発電設備その他いろいろのパテント、ノーハウ等要望もあったようでございます。  なお、本、日中長期貿易取り決め推進委員会におきましては、新たに稲山日中経済協会会長委員長になりまして、土光敏夫さん、藤山愛一郎さんが顧問になっておりまして、総員六十一名でございます。
  26. 小柳勇

    小柳勇君 その代表団などよりも、その契約の内容なり将来の中国日本との貿易状況に対する見通しを発表願います。
  27. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 日中間の友好並びに貿易の促進につきましては、政府といたしましても今後とも一層努力をいたすつもりでございます。
  28. 小柳勇

    小柳勇君 外務大臣から。
  29. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 日中貿易につきましては、一昨年は、いままでのピークと申すことができると思いますが、三十七億九千万ドルに及んだわけでございます。しかし、昨年はいろいろな先方国内事情等もありまして、これが往復三十億ドルに、まあ二割減というような状況になったわけでございますが、ことしは徐々に回復基調にあるというふうに考えられております。いまのところは、まだ上半期では対前年六%ぐらいの増でありますが、年間を通じますと、前年に対しまして一割ぐらいの増加になるというふうに見込んでおるところでございます。
  30. 小柳勇

    小柳勇君 私は、四月の予算委員会で、日本トラック産業などは生産過剰であるから、石炭石油と見返りに貿易ができないかという話もいたしました。十五日から広州の交易会が開会されておりますが、通産大臣としてそういう具体的な問題について日本経済団体お話しになったことはございますか。
  31. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えいたします。  特に先方からのトラック要望に対しましても私といたしましてトラック業界の方にこの旨を直接伝えた次第でございますが、五十一年に七千八百台弱のトラックが輸出されておりまするが、需給状況その他の問題もありまして、本年度の輸出につきましてもわが方といたしましてもできるだけの協力をいたすつもりでございます。
  32. 小柳勇

    小柳勇君 できるだけの協力じゃなくて、もう少し日本の産業をどうするかという立場に立って、通産省としてはあらゆる国に触手を伸ばしていかなきゃならぬでしょう。  外務大臣、私は、先般中国へ参りまして、向こうのトラックの生産状況などを調べようといたしましたが、調べることができませんでした。外務省としてどういうふうに把握しておられるか、お聞きいたします。
  33. 森山信吾

    政府委員(森山信吾君) 中国トラックの生産能力でございますが、これは統計上公表されておりませんので正確に掌握はいたしておりません。ただし、私どもの推定でございますが、現在年産十六万台ぐらいの生産能力があるものというふうに推定をいたしておるところでございます。
  34. 小柳勇

    小柳勇君 後でまた運輸大臣とちょっとお話をしたいのですけれども、いまのところでは十六万台、とても中国であの広いところでありましてこれから輸送機関として相当必要であると思う。いすゞの代表も行っておられたようでありますから、通産省も一緒になって向こうの方に貿易を拡大するような方向で努力してもらいたいと思います。  それから、文部大臣にお聞きいたしますが、いま文化交流の面はいかがですか、中国と。
  35. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 学術文化の交流の面につきましては、ただいま主として民間交流が行われており、文部省が関与したり承知しておりますのはごく限られた面でございますけれども、的に例を挙げますと、留学生の受け入ればただいま二十六名でございます。また、一昨年、日本学術振興会の招きにより中国から地震関係の学者が来られました。また、中国の高エネルギー物理学の教授等七名が来日してわが国の研究所を訪問し、日本からも学術研究調査団が訪れております。このほか、御承知のように、青少年団体、卓球を中心とするスポーツの交流、また出土品とか伝統芸術の展示会の交流等を行っておる状況でございます。
  36. 小柳勇

    小柳勇君 これは外務省でしょうけれども、いま日本から青年あるいはビジネスマンがたくさん渡航いたしております。先般も、九州から、青年の船四百五十、創価学会の青年の船二百五十だったと思いますけれども青年が行っておる。いまどのくらい渡航があるか御報告を願います。
  37. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 総体の中国に対する日本からの渡航者は大変急に増加をいたしておりまして、四十七年に日本から中国に向けられました旅行者の数が八千人でありますが、これに対しまして昨年は一万八千八百二十五名という数に上っております。本年は恐らく二万人を超すのではなかろうかと言われております。  なお、青年の船等につきましては担当からお答えいたさせます。
  38. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 青年の船に限っての人数というのは実はまだ把握しておりませんので、後刻青年の船に限っての数字がお入り用でしたらお調べいたします。
  39. 小柳勇

    小柳勇君 文化的な面で、先般、私は、文部大臣に、中国日本の漢字の共通化の問題で検討委員会申し入れておきました。新聞に出まして反響が方々からありまして、賛否両論ですけれども、これは賛成の意見です。したがって、将来検討委員会をつくって、特に日中議連など超党派の政治的な課題もありますから、検討委員会をつくったらどうかと思うが、文部大臣見解をお聞きしたい。
  40. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 小柳先生から御指摘をいただきまして、新聞等に出ておりますいろいろな報道等も調査いたしましたし、また文部省へも賛否両論が寄せられておることは事実でございます。しかし、文部省といたしましては、現在国語審議会におきまして漢字表及び字体表の審議中でございますが、特に委員の皆さんの中で字体の審議に関連して中国の文字改革の実情をつかんでおくことが必要であると、こういう御意見もございまして、審議会委員を中心とした調査団を中国に派遣して字体整理の動向等について情報を調査してまいったことがございます。しかし、先生御承知のように、中国の文字改革は最終的には表音文字、世界共通文字に到達することをねらいとしておるということでございますし、わが国は漢字まじりのかな文字、両方の併用が基本になっておりますし、また、中国は音読みのみでやっておりますが、日本は音読みのほかに訓読みというのもある。両国のそれぞれの文化に根差した経緯もございますし、将来の問題等につきまして文化庁の国語課がこのことは主管をしておりますが、さらに中国の文字改革の情報等はきちっと収集いたしますとともに、国語審議会の御議論等を通じてさらに一層の努力を続けてまいりたいと、こう考えておりますが、いま直ちに検討委員会を設置したらどうかという御提案でございますが、現状のように当面は国語審議会の審議を通じて検討、判断を続けさしていただきたい、こう考えております。
  41. 小柳勇

    小柳勇君 私ども旅行いたしまして、五百字ぐらい覚えますと大体人民日報の三分の二ぐらいわかるのじゃないかという気がするわけです。したがって、これからの青少年諸君が、まあ共通化――一緒にしなくともいいですけれども、でき得るならば、点とか一画で同じものもあるわけです。したがって、検討するのは無益ではないと思いますので、十分ひとつ御検討してください。  それからもう一つは、これは外務大臣ですけれども田中総理が共同声明を出された後、実務協定が締結されておりますが、その協定の現在の実行状況について概略御説明を願います。
  42. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 日中共同声明以来、貿易、航空、海運、漁業の四つの実務協定が締結されました。また、ことしの九月の二十九日の五周年のときに商標権につきまして協定ができました。これを入れまして五つになったわけでございます。  貿易協定は四十九年の一月五日に署名をいたしたものでございまして、有効期間三年、その後はいずれか一方の終了予告によりまして終了をするということになっております。本年六月二十二日にこの有効期限が満了いたしましたけれども、日中双方の確認を経ましてその後も引き続き有効期間を継続させるということになっております。  航空協定は四月二十日に署名をいたしたものでございまして、有効期間は特定の期間は定めておりません。いずれか一方の終了通告によって終了するという取り決めになっております。  海運協定は四十九年十一月十三日に署名をいたしまして、有効期間三年で、その後はいずれか一方の終了予告によって終了するということでございます。  漁業協定は五十年の八月十五日に署名をいたしまして、有効期間は三年で、その後はいずれか一方の終了予告によって終了すると、このようになっておりまして、これらの協定はいずれも円滑に運用されておるということでございます。
  43. 小柳勇

    小柳勇君 総理に質問いたします。  ただいま日本中国との関係、経済問題、あるいは人的交流、文化並びに五カ年間の実務協定をただしました。日中平和友好条約の締結はもう時期ではないかと思います。総理は双方の満足する形でと再々言っておられますが、台湾に対する自民党内の気がねさえなければ大体もう時期ではないかと思います。しかも、それは国民的な世論ではないか。先般来、日本の各地で開かれました中国の展覧会が全部盛況です。国民的なコンセンサスももう得ていると思います。したがって、この際に日中平和友好条約を締結する決意をしていただきたいと存じますが、いかがですか。
  44. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日中平和友好条約は、私はなるべく早くこれを締結したいと、そういうふうに考えております。これは日中の長きにわたっての関係を規定するものですから、双方が満足するというものでなければならぬ。私は、そういう形におきましてなるべく早く締結いたしたいと、その環境づくりをいま進めておるわけなんです。  去る九月の三十日に鳩山外務大臣と黄華外交部長がニューヨークで会談をいたしまて、なるべく早くひとつこの条約は締結いたしましょうと、こういうことになっているわけでありまして、静かにではありまするけれどもこの環境づくりは前進をいたしておる。私は、両国が満足し得るという状態を早くつくり出しまして、そうしてなるべく早くこの締結にこぎつけたいと、さような決意でございます。
  45. 小柳勇

    小柳勇君 両国外相の合意は得ておるようであります。また、先般日中友好議連の団長の濱野さんと鄧小平副首相との話の中でも、福田総理に対し非常に敬意を表しておられます。一秒で決断できるんだからと言っておられますが、ただいまの発言で、もう大体総理は一秒間の決断をされたと、そう私は理解をしておいて話を進めたいが、いいでしょうね。
  46. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは条約をつくるんですから、一秒で片づくと、そういうわけにはまいりません。しかし、いよいよという際には、つまり正式の交渉が始まると、こういう際には、そう私は時間をとらないで問題は処理したいと、そう希望しております。
  47. 小柳勇

    小柳勇君 米国における両国外相の合意を私はいまここで総理から聞きまして、話を次に移したいと思います。  次は、日本と朝鮮半島両国との関係であります。先般、超党派の日朝議連の代表団が漁業交渉に参りました。その代表団団長と北京で会ったのでありますが、非常にさえない顔をしておられるわけであります。私は思いました、自民党の代表が団長で漁業交渉に行かれたんだから、外務省はもっとバックアップして、さえた顔でぼくらに会えるようになぜできなかったかと思ったのですが、私はこれも時期ではないかと思うのです。日本の漁民の願いであります。特に西日本の漁民の願いでありますが、あの協定の前進のために外務省見解を聞いておきたいと思います。
  48. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 漁業水域の設定、あるいは軍事警戒水域の設定というようなことが行われまして、日本の零細漁業の操業を維持するために朝鮮民主主義人民共和国との間にもっと政府ベースで交渉すべきであるというような御意見もあります。しかし、現状におきまして両国間に国交がないということでありますし、また、この国交問題につきましては、朝鮮半島の現実を踏まえますと、早急には踏み切れない状態にあるわけでありまして、日本政府がみずから協力をするというわけにはまいりませんが、民間の力によりまして、また、超党派議員団の力によりまして、漁業関係がとにかく操業が継続できたことにつきまして私どもは評価するにやぶさかではありません。ただ、その際に政治的な面を含む声明が出されたわけでありますが、これにつきましては、私どもはこれに直ちに同調するわけにはまいらないという立場でございます。
  49. 小柳勇

    小柳勇君 日中議連も日朝議連も、自民党の皆さんが中心でやっておりますから、もう少し大事にして、政府も十分にこれを活用してもらいたいと思います。  それから、総理にお聞きいたしますけれども、この日韓関係という、癒着の問題もありますが、金大中の事件など、なぜ自民党及びその政府はこれにふたをするような姿を国民の前に映さなきゃならぬのであろうかと、まことに残念に思います。総理みずから先頭に立って、いやあ何でもないんだと、野党が言うものは全部証人として呼ぼうと、そうしてみずからその問題を解明して明るい国民生活をつくろうと、日韓関係をつくろうと、そうやられるのが総理の任務ではないかと思うけれども、ずっと本会議の答弁から今日まで、臭い物にふたをするような、そういう姿としか、あるいは発言としか受け取れぬわけですが、どうなんでしょうか。野党が言っていることを素直に聞いてもらえぬでしょうか。
  50. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日韓関係につきまして、臭い物にふたをすると、そのようなけちな考え方は全然持っておりません。証人の喚問の問題、特に金炯旭氏の問題かと思いますが、あの人は八年前にもう現職をやめた人なんです。それで、言っておることはいろいろありますが、警察当局なんかに聞いてみますと、相当事実と違ったことを言っておる、こういうことでもあり、どうも証拠性というか、その言動に、その言っておられることに証拠性、これが乏しいのじゃないか、そういうふうな感じがします。しかし、事は国会の問題でありまするから国会においてひとつ御相談願いたいと、こう申しておるわけでありまして、決してこれを拒否すると、そういうふうに決めておるわけでもないんです。それから、全体といたしまして、あれだけのことをいろいろ言われますから、真相は解明した方がいい。私は、日韓関係というものは、そう言われるような状態じゃないと、こういうふうには思いまするけれども、いろいろなことが言われる。言われる以上これを黒白を明らかにするということは、これはそのように努力をしなけりゃならぬ、そのように考えております。
  51. 小柳勇

    小柳勇君 この日韓関係の問題は専門家が私の方でも議員がいますから、後でまた専門的に質問いたしますから、その方に譲ります。  国際経済の問題に入ります。  まず第一は、現在の円高の実態、その原因、今後の見通しについて、きょう日銀総裁がお見えになっておりますから、日銀総裁から、まずお話を聞きます。
  52. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) お答えいたします。最近の円高の基本的な原因でございますが、これはもう申し上げるまでもなく、日本の国際収支、特に貿易収支、貿易外を含めた経常収支の黒字が非常に大きいということが基本的な原因だったと思いますが、昨日発表いたしました昭和五十二年度上半期の経常収支の黒字幅五十五億ドルということでございまして、どうしてもそういう大きな黒字がございますことは円高を招く根本的な要因として働くわけでございます。それに加うるに、昨九月末ごろからにわかに円の急騰傾向を招いたわけでございますが、その事情としてはIMF会議が終わりました前後からアメリカの国際収支の規模がかなり大きいこと、しかも来年もその赤字が続きそうなこと、それに引きかえ日本の黒字は非常に大きいというようなこと、そういうことが責任ある当局から公にされたりなどいたしまして、新聞、雑誌等の論調もそれに加わりまして、とみに円高感、ドル安感が加わりまして、その結果として、海外における円買い――投機的な動きが多分に入っておりますが、円買いが盛んになり、また、国内では、内外金利差を利用した円シフトなどが起こりそうな気配にございましたところへ円の先高感が加わりましたので、この円シフトが一とんざを来し、なかなか進まない。そういうことで円が急騰し、為替銀行におきましてもこのポジションを調整する等の動きが加わりましたために、この二週間余りの間に十二、三円も円が高くなるというような現象を呈しておるわけでございます。  本日午前中の取引の状況は二百五十二円五、六十銭ぐらいのところで行われておるようでございます。  以上、原因並びに現況を申し上げた次第でございます。
  53. 小柳勇

    小柳勇君 昨年のロンドン会議あるいは先般のIMF会議など、日本の総理並びに大蔵大臣は黒字減らしに努力するということを世界に宣言して帰っておられる。こちらはまた政府に聞きますけれども、にもかかわらず円高、それはアメリカを中心として日本に対する外圧だというのが一般の世論のようです。そういうものに対する総裁の見解と、最近日銀が介入したという新聞情報であります。その様子と、それからこれからどういうふうになると御判断であろうか、その三点を御答弁願います。
  54. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) お答えいたします。  ドルの国際収支の赤字が大きいこと、その大部分の原因は石油なんでございますけれども石油以外にも赤字が大きい。そのちょうど赤字に見合うぐらいの対米黒字が日本の国際収支に出ておるといったようなことから、アメリカにおきまして何とかもう少し輸入をふやしてくれという切なる要請があることは、私も今度のIMF会議に出まして痛切に感じてまいった次第でございます。ただし、この為替レートについて、巷間伝えられるように思い切って上げさしてやろうというような、そういういわゆる策謀みたいなものがそこに働いておるようには感じません。  ただし、実際問題といたしましては、この二週間の間に大変円が上がっておるわけでございますので、私ども、余りの急騰はやはりいろいろな混乱を招きますので、市況の現況に即しまして、いわゆる乱高下に陥ると思われるようなときには、時にかなりの規模の介入もいたしておるのは事実でございます。介入の金額、日取りその他につきましては、国際間の慣行もございますので申し上げませんが、この二週間の間にはかなりの規模の介入を行いましたことは事実でございます。しかしながら、フロート制下でございますので、やはり国際収支の黒字幅が非常に大きいという実勢、それが為替市況に反映されるわけでございますので、為替市況の実勢にはしょせん抗し切れないわけでございまして、少し急ピッチではございましたが、この際における円が切り上げられるような相場形成になりましてもやむを得ない事情もあるのではないかと思っておる次第でございます。ただし、今後といえども、この市場の実勢にゆだねながら、そのときどきの市場の情勢に応じまして、いわゆる乱高下――投機的な取引などによりまして乱高下が起こりそうなときには、ちゅうちょなく介入し、市場の平穏化を期する所存でございますので、その辺は従来とちっとも方針を変えておりませんことを御了承いただきたいと存ずる次第でございます。
  55. 小柳勇

    小柳勇君 政府見解は後で聞きますけれども、いま二百五十二円、一体どのくらいの相場をこれから考えておられるか。いま、新聞では、二百五十円ぐらいを当分もっていくのではないか。後でまた産業構造については質問しますけれども、そういうことですが、日銀総裁はどういう程度を考えておられますか。
  56. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 先ほども申し上げましたように、フロート制下、為替相場のことは為替市場に聞けというようなことになっておるわけでございまして、為替市場を預かる者の一人といたしまして、将来どうなるであろうというような為替相場の市場の予測に関するようなことを申し上げることは慎まなければならない立場にございますことを御了承をいただきたいと存じます。  あくまでも実勢にゆだねますが、その間乱高下等がございます場合には時々適切なる介入をいたしていく方針であるということでお答え申し上げるほかないわけでございますので、御了承いただきたいと思います。
  57. 小柳勇

    小柳勇君 鉄鋼の自主規制とかなんとか話題になっていますけれども、黒字になるような産業はそうたくさんないわけでして、日銀などの考えがこれからもその産業の自主規制などにも大きく影響するでありましょうが、ただ、経常収支がすぐ減るかという見通しはないように思いますけれども、どうですか。
  58. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 何分にも経常収支の黒字幅が大きゅうございますので、国内の経済、内需による拡大を図っていただいて、それによって輸入の増加をもたらすのが現下における基本的な対策であるべきだと思うわけでございます。九月の初めにおきまする財政、金融両方にわたりまする総合対策もそのような趣旨から実現いたした次第でございますが、しかし、内需の拡大、それによる輸入の増加には時間がかかると思うのでございまして、その時間がかかることを説明して各国の了解も求めなくちゃならぬわけでございますが、各国の立場といたしますと、なかなかその時間も待てない。そこで、輸入の増加につきまして、できることから一つずつ実施に移すようにというような切なる要請があることは御承知のとおりでございまして、私どもその要請にこたえて、やはりできることから一つずつ取り上げて実行に移していただくことがこの際において最も望ましいことではないかというふうに考えておる次第でございます。
  59. 小柳勇

    小柳勇君 日銀総裁としては公表できない面もあるようであります。  総理に見解を聞きますけれども、総理がロンドン会議で赤字七億ドルということを世界に宣言されました。その意味は一体どういうことだったのでしょうか。
  60. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 別に七億ドルと言って宣言したわけじゃございませんけれども、私どもの国といたしましては黒字が余り大きいわけです。この傾向は是正をすると、こういう宣言をいたしております。つまり、いま世界が非常に混乱をしておる。その一つの原因は、赤字国、これが発展途上国を初め先進諸国の中にもある。それに対しまして、黒字が余り大きいと、こういうことはわが国の国際社会におけるあり方としては妥当でない、こういう考え方でそのような意図表明をした、こういうことであります。
  61. 小柳勇

    小柳勇君 ことしの四月の予算委員会で、ロンドン会議に行かれる前ですから、私は特にそれを念を押しました。六・七%のGNPの成長と赤字七億ドル、これを目標にすると言って行かれて、ロンドン会議でそれを宣言して帰られたんですよ。それがいま足かせ手かせになっておると私は理解しているわけです。それからどうしても経常収支が減らないで、いまの日銀総裁の言われるように、ますますふえるという情勢ですね。総理は、一体、それじゃ経常収支はどういうところが一番妥当だと考えておられるか。それは、たとえばドルの保有高も、あるいは輸出の依存率も、そういうものを含みながら、前提としながら、どういうところが一番妥当だと考えておりますか。
  62. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 当面は別といたしまして、安定した姿ということを考えますときに、若干の経常収支の黒、これが妥当であるという見解であります。つまり、わが国は、発展途上国なんかに対しまして、資本輸出、つまり投資、援助、そういうものをしなけりゃならぬ。資本収支におきましては恒常的に赤字になる、そういうことを考えますと、経常収支においては幾らか黒字を残したい、こういうふうに考えております。
  63. 小柳勇

    小柳勇君 それでは、その赤字の七億ドルは世界に向かって取り消しをしなきゃ、たとえば米国の財務長官だって、まだ黒字が六十五億ドルもあるから、福田総理は七億ドル赤字だと言った、もっともっと黒字を減らせと、そういう圧力がいまかかっているのじゃないでしょうか。
  64. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) その数字を問題にしておるわけじゃないと思うのです。とにかく、ほうっておいたら七十億八十億にもなりそうだというふうに言われるところの経常収支の黒字、これが問題にされておるのです。確かに私は問題があると思います。これは是正しなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。
  65. 小柳勇

    小柳勇君 それじゃ、参考に聞いておきますけれども、年間の貿易額、いわゆる貿易依存度、それから黒字幅、外貨準備高、その上下の幅など、大体どのくらいの程度に考えておられますか。
  66. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) ただいま大筋のことにつきましては総理大臣がお答え申したとおりでございますが、日本は、元来は、原料、原材料を輸入いたしましてそれを加工して日本の経済というものをもたしておる国でございまするので、ある程度におきまして、まあそれができる準備と申しますか、そのためにはやはり原材料を入れていくというだけのゆとりを持たなければならない。ところが、それを達成するためにいま問題になっておりますのは、どんどんそれを積み重ねていきましてそして黒字幅がどんどんとふえていっておるということでございますが、いまの世界の経済を考えてみますと、これは申すまでもございませんけれども、黒字国、赤字国というのが大変な二つのグループというようなことになりまして、その間に非常な世界経済全体にとってはアンバランスがあるということが一つの世界経済の悩みの種ということになっておるということでございまするので、そこのところをバランスをとってまいりまするためには、私は、その相互の国が相互依存、連帯というような考えでもって世界経済に対処していかなければならない、こういうことでございまするので、日本といたしましてはそれならどれだけの黒字、どれだけの外貨準備というようなことにつきましては、今後その世界の情勢に応じましてこれは十分よく検討をいたしましてやっていかなければならないと、かように考えます。
  67. 小柳勇

    小柳勇君 そんなことを聞いているのじゃないんですよ、基礎的な考えを聞いている。  経済企画庁長官にお聞きしましょう。いまのと同じ質問ですけれども、一体いまの日本貿易構造をどういうふうに考えておられるか、お聞きいたします。
  68. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 先ほど総理からお答えがございましたように、中期的には――中期的にはというのは、昭和五十五年を目指しまして基礎的な収支で均衡するという考え方を持っております。御案内のとおり、わが国の貿易構造では、貿易収支で黒字、貿易外収支で赤字、なお多少の余裕を持って長期資本収支が赤字になって対外協力をやっていく。したがって、昭和五十五年の姿において経常収支で四十億ドルの黒字、そして長期資本収支で四十億ドルの赤字、そして収支均衡が基礎収支で保たれる、そういう考え方を持っておるわけでございます。  なお、外貨準備につきましては、いま百七十六億ドル前後でございますけれども、これは幾らが適当であるかということは、なかなか御婦人の御衣装のようなものでございまして、これで十分という人もありますし、日本の経済としてこの程度あった方がよろしいという考えもございますので、これは論評を差し控えたいと思います。
  69. 小柳勇

    小柳勇君 通産大臣、いまの貿易が輸出がうんとふえて黒字ですが、黒字減らしのためにどういう努力をされましたか。
  70. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいまお話しのように、拡大した意味の均衡をとりたい。そのためには、まず輸入の拡大を当面やらなくちゃならないということは当然でございます。新聞等にも、ごらんになったかも存じませんが、われわれとしましては、当面まず必要な原油をこの際に思い切って入れたいと存じておるのが、大体三億一千万ドル程度を緊急に入れたい。なお、非鉄金属の備蓄の問題、これも従来からも懸案になっておりまして、一億ドルほどの緊急輸入をしたい。それから同時に、ウランの鉱石でございますが、これをとりあえず一億三千万ドルほど原子力発電の鉱石購入をいたしたい。これもこれだけでというわけじゃございませんで、なおこの交渉は積極的に続けてまいりたい。それから御承知の合繊工業、化学工業方面におきまする原料ナフサの輸入、これは先般百五十万キロリッターほどの増枠をいたしましたけれども、できるならばこれも蔵置をいたしたい。  以上のような、当面でございまするが、考えられますもので約六億八千万ドルほどに相なります。そのほか、今後ともにこれ以外のものにつきましても、またこの分につきましても、たとえば石油の備蓄のごときは民間だけに任せておきましても容易にさらに増枠ということはむずかしいとすれば、やはり政府が買いつけて政府が備蓄するという方向に進まなくちゃならぬと、こういうふうなことでいま全力を挙げてこの輸入の増枠に努力をいたしておる次第でございます。  なおまた、輸出の問題につきましても、いろいろ対米あるいはまたEC方面でも問題がございます。先般、日米間におきましては、輸出の促進の委員会をつくりまして、両国の間の秩序ある輸出の促進をいたすように協議をいたしております。
  71. 小柳勇

    小柳勇君 それじゃ、通産大臣、いま黒字の一番大きな原因になっている業種はどれとどれですか。
  72. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 御案内のとおりに、あるいは自動車でありますとか、あるいはまた問題になっておりまする鉄鋼関係でございますとか、こういうふうな懸案の問題がございます。特に鉄鋼関係におきましてはこれが一番問題の焦点でございますので、これにつきましても日米間の調整を図るべく、われわれの方の国内の業界の方並びに先方の方の外交関係と交渉等を続けたいと思っております。
  73. 小柳勇

    小柳勇君 総理にもう一回、この流れている、流動している経済問題を後追い後追いで論議しても本当は意味がないと思うんですよ。しかも、それをやっている人は業界ですね。政府は一つの目標を出しますけれども、最近は余り目標も出しませんね、一つ目標をこう示しますけれども、あと動いているのは業界です。これは何も政府と相談してやっているわけじゃない、それは情報はとりましょうけれども。したがって、さっき私は質問したのをもう一回聞いておかなきゃなりませんけれども、基礎的な、たとえば外貨準備高も、一応の、経済企画庁長官はああいう話をされましたけれども、それとか、それから輸出に対する日本の経済の依存度、あるいは経済収支の大体の目安、そういう一つの内閣としての基礎的な数字の焦点を全閣僚が持っておらなければ通産大臣だって指導できないでしょう。それがいま、去年のロンドン会議では赤字七億ドル、そして六・七%とおっしゃった。それがもう一年のうちにがらっと変わってしまっているでしょう。しかも、それに対する対策は、いま通産大臣から聞きましたけれども、ちっとも現場の方には、産業界の方には浸透していません。浸透しておれば、そんなに外圧がかかるはずがないでしょうに。それは業界は業界としてもうけなければならぬ、輸出産業は輸出によって生きているわけですから。その調整というものは政府がやらなければならぬけれども、しかし、それには、引っ込んだ産業と出た産業とのバランスを調整する任務があるのですよ、内閣には。したがって、もう一回、基本的な経済のいわゆる貿易あるいは日本の産業のいまの置かれているものからどうしたらいいかと、総理の見解をお聞きいたします。
  74. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 政府の先々の見通しにつきましては、これは大体この十年間ぐらいは六%成長、その成長を踏まえまして、前期五カ年におきましてはなるべくやや高目の成長政策をとると、こういう基本的な構えをとっておるわけであります。そういう中においていろいろ変化が起こる。ロンドン会議では各国とも成長政策の披露がありました。それが一体どういうふうになっておるかというと、ドイツでは五%したんです。ところが、この五%もなかなかむずかしい、あるいは三%台に転落するかもしらぬというような情勢でございます。それからアメリカ、これは成長率は大体発表したように動いておるようです。ところが、国際収支、これは数字は発表しませんけれども、大体当時は二百億ドルの赤字というふうに言われておったものが大変な赤字がふえそうだと、こういうふうな状態。そういうことで、どこの国もそう思ったとおりには動いておらぬと、こういうような実情でございます。しかし、あくまでも中期経済見通し、あれを基本といたしまして、そしてそのときどきの情勢に対処していきたいと、こういうふうに考えておるわけであります。通産大臣も非常に努力をしておりますし、いま通産大臣が輸入計画を披露しましたが、あれを合計しますと七億ドルなんですよ。私はその数字には満足しないんです。もう少しひとつ検討されたい。ことにウランのごときはこの際鉱石として輸入しておく、これは外貨保有と同じじゃないかと、こういうような考え方を持ちまして、この際緊急に思い切った輸入をせられたいという要請をいたしておるわけでございます。
  75. 小柳勇

    小柳勇君 まだ根本問題はありますけれども、いま輸入の話がありましたから、農林大臣に、日本の畜産農家には別途何か補助をして牛肉をこの際輸入したらどうか、そうして安い牛肉を消費者に与えたらどうかと、これは後でまたドルの差益の問題などもお話ししたいけれども、それより別に、いま総理の意向に沿って牛肉を輸入して安い牛肉を国民に食わせると、そういう決心をされてはどうですか。
  76. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 日本の畜産の現状につきましては、小柳先生よく御存じのところでございます。安定帯価格を設けまして、そして畜産農家の生活安定、経営の安定を図っておる。そういう中で輸入のことを考えるわけでございますが、大体自給率は八〇%程度に進んでおりまして、二〇%程度のものを外国から輸入をしておる、こういう状況でございますが、御承知のように、国内産の牛肉と輸入牛肉との間には相当の格差がございます。そこで、調整金というものを事業団で取りまして、国会で問題になりましたところの中間業者による不当な利益の収吸、これを排除しなければ利権化してしまうと、こういう国会での御論議等もございまして、調整金制度というものを適切に運用しておると。しかし、一方において消費者には、安い牛肉を要望しておるわけでございますので、畜産事業団では指定店を八百店舗から二千二百店舗に拡大をし、また今月の下旬には全国に一万五千店舗の特販店を指定をすると、そういうようなことで、輸入をいたしました牛肉を卸売業者を通さないで直接小売店舗に小売の目安価格を指示しまして、それでできるだけ安く牛肉を販売をすると、こういう政策もとっております。また、生協と生産者団体あるいは消費者団体との間の産直、これを大いにやっていただくということで、政府の方でもこれに助成等の措置も講じましてやってまいるわけでありますが、いま事業団におきましては、これから十一月、十二月にかけまして相当量の輸入牛肉を放出をして価格の低位安定を図るという方向で努力をしてまいりたいと考えております。
  77. 小柳勇

    小柳勇君 牛肉の問題は、けさの新聞では、円高の差益差を消費者に還元せよという意見も出ておりました。大蔵大臣、この考えはどうですか。
  78. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 円高を日本の国の消費者の価格にこれは何としてでも反映さしていかなければならないということはかねがね考えておることでございまして、政府といたしましてもそれに鋭意努力をいたしておりますが、今後ともそう持っていきたいと思っております。
  79. 小柳勇

    小柳勇君 黒字減らしの対策につきましても、もう少し具体的に話していかなければならぬと思うんですよ。でないと、いまの円高の外国の攻勢も何ともならぬであろうと思います。したがって、大蔵大臣、この前IMFの会議で米国の財務長官などともいろいろお話しになったようだが、日本が黒字減らしにこういう努力をしておりますということをこの機関を通じてよくわかるように話してあります。
  80. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 先般IMFへ私が出席してまいりましたが、そのときに、機会あるごとに日本は黒字減らしということに骨を折っておりますと。もっとも日本の国に対しましては、この黒字がどんどんふえていくということにつきましては相当強い批判の声がございました。私が、これに対しまして、日本の考えておりますことは、まず基本の方針といたしましては、国内における景気を回復して、そうして国内の需要というものをまず基本方針としては刺激してまいりまして、そうして国内における輸出圧力というものを減殺していくということが一つの一番の基本的な方針であって、しかも、それによって輸入をふやしていくというのが基本的な方針でありますけれども、そういった基本的な方針というものは、効果を早目にあらわしていくということは、それが全部が全部早く効果があらわれるものと、しからざるものとがあるというようなことで、この点はひとつ長い目で見てもらいたいと。ここで私は総合経済対策の話をいたしました。そういう目的でやっておるんだと。これは相当な評価をしてもらいました。それに対しまして、それではその緊急的な方策としてどういうことをするかということにつきましては、先ほど来申しておりまするいろいろなものの輸入というものを強力に進めていく、またそれをやりやすいようにいろいろなことを考えていくということを申し上げた次第でございますが、IMFにおきましてはなるほど黒字の多いことについては確かに批判を受けました。受けましたが、日本のこれに対処する方針については相当の評価をしてもらったということはここで申し上げます。
  81. 小柳勇

    小柳勇君 いまの問題についてまた後で竹田委員質問いたしますが、通産大臣、たとえば円高によりまして倒産する企業もあるわけです。わかりますか。円高によりまして、たとえば新潟のあの食器産業などは大変な打撃です。これはいまの不況対策以外に突発した事故ですよね。通産大臣は、この円高がいつごろまで続くと判断してこれからそういう業者の対策を考えますか。
  82. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 円高がいつまで続くかという見通しの御質問でございますけれども、これは一日も速やかに正常化をしてもらわなきゃならぬ。特に繊維関係等々、七月以来産地二十二カ所に担当者を出しまして調べてまいりましたのでありまするが、業界によってそれはもちろん違いますけれども、御案内のとおりに二百六十五円という線が一つのラインだと考えておったのでありまするが、その後どんどんますます高くなってまいったような次第であります。現在の二百五十円台におきましては、これはもう相当な倒産その他対策を講じなければならない緊急事態であろうと存じますので、これにつきましてはすでにいろいろと方策も検討し、同時にまた、御承知のとおりに、つなぎ融資等々につきましては、為替対策の緊急措置、これによりまして御案内のとおりのつなぎ融資を金融機関の方から要請いたしておるような次第でございます。これにつきましても、これだけではなく、一般の不況業種その他中小企業対策を総合的にこれとあわせていたしますことによりまして何とかこの緊急の事態を切り抜けたい。同時にまた、いまお決めいただきました政府の方の処置も、これも業者の追加指定あるいはまた条件等々のさらに緩和等今後続けてまいる次第でございます。
  83. 小柳勇

    小柳勇君 通産大臣、いまの答弁では、もう対策をとっておるのですか。金融措置など対策をとったとおっしゃったんですか。ちょっとはっきりしませんので。
  84. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 御案内のとおりに、為替に対しまする防止処置は十月一日から実施に入っておりまするが、その十月一日からいたしましたつなぎ融資の特別の措置におきましては、現在ではそれでは足らないと思いますので、新たに今後さらに緊急に検討しなければならぬ、かように考えております。
  85. 小柳勇

    小柳勇君 日銀総裁に通告はしてないのでございますけれども、いまの円高のこの見通しもまだ模糊としてわかりません。総裁の腹にはもうちゃんとあるかもわかりませんけれども、いまの内閣の答弁を聞きましてもはっきり言われない。この円高が日本経済に与えるデフレ効果、及び、これに伴う、いまもう業者は先行きを見ますから、金の動きなど相当変わっていると思うのですけれども、その金の流れの変化ですね、そういうものに対して日銀総裁としてお知りの点をお話し願います。
  86. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 円高に伴うデメリット、メリット両方あるわけでございますが、それをどういうふうに総合的に判断するかという問題だと存じますが、さしあたり、輸出業者にとりましては輸出がしにくくなるわけでございますので、業者、業界によりましては大変苦しい事情に追い込まれるところもかなりあるのではないかというふうに私ども心から同情いたしておるつもりでございます。当面、金融等の問題につきましては政府においても対策を講ぜられておるわけでございますが、基本的にはやはり構造問題にまで波及していくわけでございますので、その辺のところをどう処置するか、これが日本経済に課せられた大きな問題ではないかと思っておる次第でございまして、一層合理化に徹し、場合によっては、事業の改変、当該産業の企業目的をほかに転換するとかいったような問題も物によっては出てくるかと思うわけでございまして、なかなか大変な問題じゃないかと、その辺のところは政府各方面においてしかるべく御対処いただけることと期待しておる次第でございます。  私ども、この下旬に実は全国支店長会議を開く予定にいたしておりますので、そのときに各地における円高の影響その他詳しく事情も聞きたいというふうに考えておる次第でございまして、要は、健全な経営をやっておる産業が単に金融上の問題その他でつぶれるというようなことがないように極力努力していかなくちゃならぬわけでございますので、その意味での運営方針は従来と変わりませんが、今度の事態に処する態度、方針等につきましては、いずれ支店長会議等でも詳しく事情を聴取しました上で善処いたしたいと思っておる次第であります。
  87. 小柳勇

    小柳勇君 馬場参考人もお見えのようでありますから、日銀総裁に後に国内経済との関連の問題がありますけれども質問を一緒にいたしまして御退席願いたいと思うのですけれども、まず、それはいまの不景気です。不景気とは一体何かということは後でまた総理と論争いたしますけれども、とにかく不況対策をいまここに提案されています、この補正予算が。これによりまして今度政府が総合経済対策をとります。この資金需要ですね、不況産業などの資金需要。金利を下げました。金利を下げることによってこれが不況対策にどう結びつくかということ。資金需要がうんとどこどこふえますよと、そしてここはうんと景気になりますよと、これが刺激して全般的に景気がよくなりますと。いままでの総理の見解は、金利引き下げによって雇用を拡大するとおっしゃっている。この問題は後でまた質問いたしますけれども、日銀総裁には、資金需要がどういうふうに影響するか、その点についてのお話をお伺いいたしたいと思います。
  88. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 公定歩合引き下げに伴う金利負担の軽減はいままでになくかなり急ピッチで進んでおるわけでございまして、それがひいては各事業の金利負担の軽減、収益の改善に結びつき、ひいては雇用問題の改善にも結びついていくことを期待しておる次第でございます。そういうことによりまして企業心理にも一脈の明るさが伴ってくることを期待しておるわけでございまして、そういうことで今後の着実なる景気振興の上にそれなりの効果が出ることを期待しておる次第でございます。  ただいま資金需要がどうなるかというお尋ねでございますが、物にもよりますけれども、この辺が金利の底値ではないかというような感じも実は出かけていないでもないわけでございまして、たとえば起債市場におきましては、最近、起債規模額が少しずつふえてまいっておるというような事情がございます。それからまた、これから年末に際しまして決算資金等の需要があるわけでございますが、企業の手元はかなり充実され流動性が十分満たされておりますので、借入金を極度に圧縮しておる反面、いざというときの決算資金等につきましてはそれが貸し付け増に結びつく可能性が生まれつつあるような感じもいたすわけでございます。しかし、何しろ景気そのものの動きが、これから対策が効果を生じてくるわけでございましょうが、目下のところはきわめて緩やかでございますので、設備資金の需要にはなかなか結びついていないような感じがいたします。  また、先ほどもちょっと申しましたが、円シフトの資金需要などが一時かなり起こりかけておりましたのが少し沈滞したとかというようなこともあるわけでございまして、総じて申しますと、金融機関の資金需要はまだ落ちついた状態が続いておると申し上げざるを得ないかと存じます。今後それがどう動いてくるか、それはやはり財政、金融両面からいたしまする景気対策がだんだん効果を上げてくるに伴って景気の回復のスピードも少し増幅されてくるわけでございます。それに伴って資金需要もだんだん増加してくるのではないかと予測いたしております。  私どもといたしましては、金融機関がいわゆる貸し出し競争などに走って流動性が過剰になることはもちろん警戒しなければなりませんが、当面、景気の回復に必要な資金需要につきましては、これを十分満たしていくという方針で金融政策の運用に当たっておる次第でございまして、今後だんだん資金需要が増加していくというような情勢が近づいてきつつあるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  89. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 小柳さん、森永参考人はよろしゅうございますか。
  90. 小柳勇

    小柳勇君 どうぞ。
  91. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 森永参考人には大変御多忙のところを委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。御退席願って結構でございます。  なお、竹田君の質問のときには、またよろしくお願いいたします。
  92. 小柳勇

    小柳勇君 あと馬場先生がお見えのようでありますから、いま一つ。  実は、これは国内経済の問題で御意見を伺いたかったのでありますが、お忙しいようでありますから、その先にいたします。  おいで願った意味は、この三年以来、公共事業に財政支出することによって景気を回復しようと、そういう政策をずっととってまいりました。それに公定歩合の引き下げと。ところが、現在、景気はよくなりません。私は、四月の予算委員会では、発想の転換――これは発想の追加でありますが、不況業種に対し一つ一つ手当てして積み上げていって景気がよくならぬかと、そういうことを総理に申し上げましたが、それをやっても景気はよくなりません。思いまするに、さっきちょっと発言いたしましたけれども、昨年ロンドン会議で総理が言われた六・七%の経済成長、マイナス七億ドルの経常収支、こういうものを基本にして日本の経済が動けばよかったけれども、それはもう当てが外れてしまった。経済はひとりで動いております。そこで、経済優先の考え方、経済の論理を貫徹して、そしてそれに事後処理で手当てをしていく、それがいままで三年ぐらいの大体財政政策であったと思う。それでは景気もよくなりませんし、たとえば昭和四十八年の福祉元年と言ったわれわれの国民生活中心の政治の方向というものがもうゆがんでしまった。私ども、いま、もう外圧などによる世界の経済変動、日本の不景気、こういうものの事後処理だけではなくて、発想の転換をして、まず国民生活優先、社会の論理を中心に据えて、これに経済が奉仕する、そういう政策に転換しなければならぬときではないか、そう思うわけです。先生は、総合社会政策基本問題研究会の委員長でございました。また、今度国民生活審議会の会長もお務めになるようでありますから、私はまだもうちょっと国内経済、国際経済を論議した上で質問したかったのでありますけれども、先生の御見解をお聞きしたいと思うのです。
  93. 馬場啓之助

    参考人馬場啓之助君) それではお答えいたします。  総合社会政策基本問題から報告書を出しました。その中でいま先生御指摘のような発想の転換ということをうたっておりますけれども、この内容といたしましては、事後的、部分的な均衡ということを中心にして展開いたしました社会政策を、さらに総合的な観点から、社会システムというようなものを念頭に置きまして、その社会システムの中で経済、社会、文化、さらに自然との関連を踏まえまして、計画的、事前的な政策をとる必要があるだろうということを発想の転換という形で申し上げたわけでございます。ただ、その中で、私たちといたしましては、この社会という言葉の中に、経済と社会ということで経済に対比して考えられております社会ではなくて、総合的な社会システムということを念頭に置きまして、調和ある社会発展ということを考えるべきであるということを発想の転換の中でうたったわけであります。申し上げるまでもなく、経済が総合的な社会システムの中で最も重要な条件づくりの役割りをしているということはわれわれとしては否定するものではございません。しかし、経済の発展の中から結果として国民生活がよくなるであろうということを期待するのでなくして、国民生活の安定と向上ということを目的の中に加えまして総合的に対処していくべきであるということを申し上げたわけでございますが、しかし、御存じのとおり、基本問題研究会というところで行いましたので、行政的、政策的なレベルに即しまして具体的な問題につきまして発言をしたわけではございませんので、そのようなものとして御理解願えれば幸せかと思います。
  94. 小柳勇

    小柳勇君 少しわかりにくいのではございますけれども、もう少し経済論争をやりまして、いまの国際経済なり国内経済の矛盾点が明らかになりました後で総理と論争した上で先生から御意見を聞いたらもうちょっと的確だったと思うのですけれども、それは午後になってしまいました。  したがって、もう一度聞きたいのは、社会保障の予算も、四十八年はよかったのですけれども四十九年から減りました。それは、いまの景気対策ですね、石油ショック以来の事後処理がありますから、それは一つのやっぱり理由であったと思います。それをだめだったとは言いません。しかし、もういま石油ショックなどということを不景気の原因にするのは通りません、これは。もうそれは済んだことである。したがって、いまは、いろいろ産業を分析してみましても、たとえば資源依存型の産業がうんと引っ込んでしまって、その他加工業が先に出ているというふうに、産業からも変えていかなけりゃなりませんが、そういうような六・七%なりあるいは六%とか、あるいは経常収支をとんとんにゼロぐらいにしようとか、一つの目標は、それにがんじがらめになってやっておっては、本当の国民生活優先の政治ではないのではないか。だから、これからもう一歩進んで、もうそれはそれと、事後処理もやりますけれども、もっとポジティブの仕事の方にうんと予算をつけて、そして景気を回復する、事後処理事後処理でやりながら新しい分野に向けて金を使っていく、そして国民生活をとにかく優先すると、そういう政策でなければいまならぬ、そういうものを考えておるわけですけれども、これからの国民生活審議会の中ではどういうお考えでお話を進めていかれるか、お聞きしたい。
  95. 馬場啓之助

    参考人馬場啓之助君) お答えいたします。  国民生活審議会におきましては、総合政策部会と消費者政策部会とをつくりまして、この総合政策部会の課題といたしまして、中長期の展望に立って日本型の福祉社会を目指しましてどのような政策を展開するかということを検討すべきであるという課題をこの間総会で決めまして、まだその具体的な問題の取り組みには入っておりませんけれども、そのような方向で進むものと思います。
  96. 小柳勇

    小柳勇君 ありがとうございました。
  97. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) もう馬場さんはいいですか。
  98. 小柳勇

    小柳勇君 はい。
  99. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 馬場参考人には御多忙中のところ当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございました。御退席を願って結構でございます。
  100. 小柳勇

    小柳勇君 さっきの質問の続きでありますが、一九七五年には輸出はマイナスでございました。七六年が輸出が過大になりました。だから黒字論争をやっておりますけれども、五年も黒字でやってきたわけじゃないわけですね。したがって、この経済の流動、そういうものを余り――まあ余りじゃありませんけれども事後処理として一つ一つ処理してまいる、そういうようなことが必要であろうと思うのですけれども、問題は産業構造をやはり見直す時期ではないか。たとえば総理は操業率をおっしゃいますね、操業率八五ぐらいいこうと。その八五の基礎になるものは、あの五年ぐらい前の高度経済成長時代の施設、人員など、そういうものが一つの目安になっておるのも事実ですね。四十八年ごろを考えて、それに対して比較しているというのもあります。根本的には産業構造を見直さなければならぬ。いまの黒字の問題にいたしましても、たとえばさっき通産大臣がおっしゃいましたのは鉄鋼でありますけれども、鉄鋼は七二年は輸出が三十六億ドル、七三年が五十三億、七四年が百七億、とにかく二年のうちに三倍にもなるわけですね、生産力が。巨大企業でありますから、ちょっと力を入れたら二倍、三倍さっと上がる。自動車産業もそうでしょう。そういうものをそのままでいいかどうかということ、高度経済成長時代のそういうパターンをそのまま基準にしておいて景気・不景気を論争することはもうこれは事後処理ではないか、そう思うわけですけれども、総理、いかがでしょうか
  101. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま政府がとっておる政策は、とにかく不況感が強い、そこで経済全体の底上げをしようじゃないかというので、ほうっておきますれば五・九%成長ぐらいになりそうなその経済の勢いを、六・七%成長を実現するに足る、そういうものに持っていこう。しかし、そこで事が決着がつくかというと、そうじゃない。やっぱりいま世界が非常な変動期になっておる。わが国の経済もその世界の中の一環の経済といたしまして非常な変動期だ。つまり、世界も日本も資源エネルギー有限時代という新しい事態を迎えておるわけです。そういう転換の中で、いわゆる構造不況業種、そういうものが出てきておる。これがとにかく雇用問題をとるにいたしましても、あるいは企業の収益というような問題を考えるにいたしましても、とにかく景気という問題に対しまして非常に足かせ手かせ、そういうふうになっておるわけです。私は、ですから、経済全体の底上げをしますが、同時に、この構造不況業種、これは十三業種というふうに言われておりますけれども、それに準ずるものも多々あります、そういうものの処理、これをやりませんと日本経済というものは本当の安定した姿にはならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。つまり、資源エネルギー有限時代でありまするから、そのことをよほど考えてこれから産業構造の転換という問題に対処しなければならぬだろう、こういうふうに思います。そういうことを頭に置きながら、この構造不況業種対策、これを円滑に進めるというのが、私は、いま日本の経済が当面するこの困難な事態、それに対処する新しい道ではあるまいか、そのように考えております。
  102. 小柳勇

    小柳勇君 経済協力の問題、これは貿易の問題でもありますけれども、一つの例として、私が、繊維機械を輸出した国別の統計をとりました。韓国、台湾、香港、シンガポール、インドネシア、タイ、合計で六百二十億円ぐらいの機織り機を出しているわけですけれども、この機織り機で安い労働力で今度は日本に逆輸入して、いま繊維産業は大変ですね。ASEANに総理は旅行されました。今後の経済協力問題など論議されておりましょうが、大企業の逃げ場をつくるとか、あるいはこういうように日本の機械などを輸出して、今度は逆に日本が攻められるというようなものもいろいろあります。批判があります。こういうものに対する基本的な考えについて総理から見解を聞きます。
  103. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 発展途上国に対しましては、発展途上国の自主性によりましてその官立の計画、これにわが国が援助、貢献をするという基本的態度をとるべきであるというふうに考えておるんです。もとより、わが国と競争に将来なるだろうと、こういうような産業、これが発展途上国の自主的立場というその立場から求められるということも時にあると思います。しかし、わが日本が協力しないでも、他の国がこれにまた協力をするというようなこともあるので、そのようなケースに対するわが国の経済協力、このあり方はなかなかむずかしい問題でありまするが、まあそういう問題があるという配慮、これも頭には置くべきだと思いまするけれども、とにかく発展途上国、これは世界の中で生きる、そういう権利を持っているわけですから、その発展途上国が自主的にどういうふうにやっているか、その計画よく見まして、それに対してわが日本が協力援助をする、それがつながって発展途上国の自主独立体制を固めるということになれば、これは私は非常にいいことじゃないか、そのような認識で対処してまいりたいと、かように考えます。
  104. 小柳勇

    小柳勇君 通産大臣質問しますけれども、産業計画懇談会から「貿易構造の改革」という提言がなされていますが、これに対する見解です。貿易構造もこの際業種別に分析をして変革していかなければならぬとみずから提言しておりますが、通産大臣見解を聞きます。
  105. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 御指摘の産業計画懇談会の提言というものがございますが、これに対しましていろいろと非常な貴重な御意見をいただいており、特にわれわれの方といたしましてのいろいろな体制の問題もございましたり、あるいはガットの問題も論じられておりまするが、まあ要は国際分業の関係の形成を図るという観点から、付加価値、高加工度の知識集約的な構造にわれわれとしてはビジョンを当てていかなければならぬと、こういうふうに考えております。
  106. 小柳勇

    小柳勇君 あと国際金融関係については竹田君からの質問がありますから、このくらいにいたしまして、日米航空協定について外務大臣から見解を聞きます。
  107. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 日米航空協定の現状でございますが、六日からまた会談を行っておったわけでございますけれども、双方の主張に差がありまして、今回は結論を得るに至らなかったということで、十一月末にもう一度再開しようということになっておるわけでございます。これはもう御承知のように、この輸送の路線の問題あるいは以遠権の問題等がありまして日本といたしまして主張を続けておるわけでありますが、先方からは、チャーター便、チャーターについての協定を同時にしたいと、こういう先方の強い要望がありまして、これらの問題につきましてお互いに理解を深めたということで、十一月に再開をすると、こういうことになっておるわけであります。
  108. 小柳勇

    小柳勇君 第五回の会談でどうも交渉が妥結しないまま当分中止ではないかという風評も流れておりますが、感触はいかがですか。
  109. 田村元

    国務大臣(田村元君) 日米航空交渉につきましては、わが方としては従来の強い態度を変えておりません。今後も断固たる態度で臨むつもりであります。率直に言って不平等条約でありますから、これは何としても是正しなければなりません。アメリカ側との間に相当大きなまだ隔たりがあります。でき得る限り会議でこれを詰めていかなきゃなりませんけれども、しかし、いずれにしましても、相当長引いてまいっておりますから、次の会議におきましてはわれわれはより一層の決意を持って臨みたいと、こう考えておりますから、途中で捨ててしまうというそういうことは絶対ございません。
  110. 小柳勇

    小柳勇君 いま巷間にはしきりにそういう話が流れておりますから、運輸大臣外務大臣はちゃんと腹を据えて、日本の将来の航空行政のためにがんばってもらいたいと思います。  それから国際関係はもうちょっと問題がありますけれども、以上で一応打ち切りまして、午後は国内経済に入りますが、その前に、国内経済で今度の補正予算の中で産投特別会計から千五十八億円の一般会計に繰り入れがあります。輸銀、開銀、北海道東北開発公庫から一千五十八億円を会計に繰り入れている。この間本会議で問題にいたしましたように、前に五十年の予算委員会ではそれはだめだと言って時の大平大蔵大臣が拒否しているわけです。今度は千五十八億円も一般会計に繰り入れると、これは一体どういうことか、お聞きいたします。
  111. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 政府関係の金融機関から、貸し倒れ積立金と申しますか、準備金と申しますか、これを積立率を減らして、そしてこれを一般会計なり国庫に繰り入れろという御議論が従来からあったということは承知いたしております。ところで、この政府関係の金融機関もこれは金融機関でございまするから、不測の損害に備えるためにはやはりそういったような積立金が必要であるということでございますが、しかしながら、いろいろな御意見もございまして、検討いたしまして年々歳々これの積立率というものを減らしてきておったような状態にございます。時たまたま今度の補正予算をつくるに当たりましてどうしたって二兆円の支出をしなければならない、予算上。そこで、財政当局として考えましたことは、何としても財源の問題でございます。ところが、その財源につきましては従来の方針のとおり赤字国債というものはできるだけこれは避けてやっていかなければならないということで、そこで政府関係金融機関の内情についていろいろ検討をいたしました結果、先年来そういったような御意見もおありでございましたし、これを検討いたしました。そうすると、やはり政府関係の機関も大体民間の金融機関と相通ずるようなところもありまして、そこで民間の金融機関というものにちょうど貸し倒れ積立金というものがありますので、その率がやはり千分の五になっておるというところから、そこまで積立率を減らしまして、そうして計算上政府関係金融機関の中にそういったようなゆとりがあるということに相なりました。そういうことがだんだんと計算上そういうことに相なりましたので、それを国庫納付金というふうにこれを繰り入れてまいったということでございます。
  112. 小柳勇

    小柳勇君 それでは、こっちの方の輸銀、開銀、北海道東北開発公庫の予算書を出してください。出ていますか、この国会に。
  113. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) お答え申します。  御指摘のとおり……
  114. 小柳勇

    小柳勇君 予算書が出ていますか。
  115. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) いいえ、出ておりません。そこで、そのことについて……
  116. 小柳勇

    小柳勇君 予算書が出ていないでどうして予算ができる。
  117. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) お答え申します。ちょっとお聞きくださいませ。今回の措置は、輸銀、開銀等三機関の貸し倒れ準備金の繰り入れの引き下げ等によりまして当初予定以上に利益を見込みました。その結果、国庫納付が増加するものと相なった次第でございますが、この貸し倒れ準備金の繰り入れ率の引き下げによる利益の増加は収入支出を伴うものではなくて……
  118. 小柳勇

    小柳勇君 おかしいよ説明するの、何にも出してないんだよ。
  119. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) ちょっとお聞きください。
  120. 小柳勇

    小柳勇君 だって、何も出してないじゃないか、それを出さなきゃならぬのに。おかしいじゃないですか。
  121. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) まあお聞きください。国庫納付金も収入支出予算の対象外であり、各機関の収入支出予算の補正は必要がないものであります。  なお、今回の特別財源措置に伴い、必要となる政府関係機関予算総則等の補正は行っております。  また、国会の御審議の参考に供するため、予算説明で特に三機関の主要財務内容を明らかにしておるところでございますから、主要三機関についての必要なる予算総則の補正によってやっております。
  122. 小柳勇

    小柳勇君 産投会計から取り崩して、あとの予算書を出さないで、いま大臣が説明するということはできないですよ。いままでは、だって、予算委員会で全部論議しているのだから。質問できないよ。
  123. 長岡實

    政府委員(長岡實君) お答え申し上げます。  今回の貸し倒れ準備金の率を引き下げまして、それによって生じました利益の増を一般会計の財源としたわけでございますけれども、輸銀、開銀及び北東公庫のちょうど今回の対象になります三機関の予算の立て方と申しますか、これは、北東公庫につきましては、公庫の予算及び決算に関する法律に基づいてこういう性質の予算を国会に提出するという原則が定まっております。また、輸銀及び開銀につきましては、それぞれの輸銀法及び開銀法によりましてこういう性質の予算を国会に提出するという原則が定まっております。三機関を通じまして申し上げられることは、いずれも政府系の金融機関として金融活動を営むわけでございますけれども、国会に提出申し上げて御審議をお願いしております予算は、その金融活動といいますか、営業活動そのものではございませんで、活動を営んでいく上に必要な経費と申しますか、たとえば収入であれば、貸し付けを行ってそれによって上がってくる利子収入がどのくらいあるか、支出については借入金にどれだけの金利を払うかといういわゆる収入支出予算を国会に御提出申し上げる仕組みになっております。先ほど大蔵大臣からも申し上げましたように、今回貸し倒れ準備金の引き当ての率を引き下げまして、それによって生じた利益を一般会計に入れることにしてもらいましたのは、これはいわゆる収入支出予算、経費予算の面ではございませんで、営業活動の結果の利益処分になるわけでございます。したがいまして、現在の公庫の予算決算法及び輸・開銀法によりますと、その面は予算という形で国会で御審議を願う対象になっておらない。したがいまして、三機関の収入支出予算は今回の補正予算には計上されておらないと、こういうことでございます。
  124. 小柳勇

    小柳勇君 これは理事会で検討してもらいます。
  125. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 時間が参りましたので、午前中の質疑はこの程度にとどめます。  午後一時から委員会を再開し、小柳君の質疑を続行いたします。  これにて休憩いたします。    午前十一時五十七分休憩      ―――――・―――――    午後一時開会
  126. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十二年度補正予算三案を一括して議題といたします。  午前に引き続き、小柳君の質疑を行います。小柳勇君。
  127. 小柳勇

    小柳勇君 午前に引き続きまして、午前の問題を整理してまいりたいと思いますが、政府関係の金融機関から千五十八億円の一般会計への繰り入れです。昭和五十年の予算委員会のときに、社会党の阿具根議員会長が野党全部をまとめて予算の組み替え動議を出した。そのときには大平大蔵大臣はにべもなくこれを拒否いたしました。にもかかわらず、今回は一片の通達でこれを取り崩している。私はこういうことは一体できないと思う。大蔵大臣見解を求めます。
  128. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) この大事なものを一片の通達でもって片づけるのは、これはけしからぬと、こういうお話でございますが、日本開発銀行の貸し倒れ準備金の繰入額は、日本開発銀行の国庫納付金に関する政令第一条第三項により「大蔵大臣の定めるところにより算出しなければならない。」と、こういうふうに規定をされております。この規定によりまして、銀行局長大臣の命を受けまして通達を作成し、そして総裁に通知をした、こういうところでございます。
  129. 小柳勇

    小柳勇君 そこのところを、できるならばこの前だってもっと真剣に検討すべきであるし、それでは、これからの予算でもこういうことを例にしてやってよろしいのですか。
  130. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 私は、こうやりました形式については間違いがないと、かように思っております。で、今後こういったような場合が生じたときには、そのときの事情、実情、そういったような実態をよくながめてみまして、そしてやるべきことでありまして、いまやったからもう今後必ずこれをやるということではない。ただ、いまやりましたこの形式については間違いがございませんと、こう申し上げておる。
  131. 小柳勇

    小柳勇君 そういたしますと、まあ形式については後でまた少し竹田君からの質問通告もあるようですから、やるとしても、たとえば二年前にはにべもなくけっておるのであるから、今度はこういうことをやりますよと、野党の政審会長とかに適当の礼儀を尽くして、そしてやるのが政治家の任務ではないか、勝手にできますからやりました、この前はやりませんでしたと、それでは政治的にはけしからぬではないか、その点いかがですか。
  132. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) それは民主主義議会政治の常といたしましては、よく事前お話を申し上げるということはできるだけやるべきことだと思います。
  133. 小柳勇

    小柳勇君 私ども労働金庫などに関係していますけれども、貸し倒れ引当金というものが、たとえば五%決まっています、これは一つの金庫に対する、公庫に対する信用ですよ。勝手に一般会計が足らぬからこれを持ってきましたというようなことは通達でやれるようなものではなかろうと思うけれども、いまの制度ではそうなっておるようですから、あと竹田君からも少し論議してもらいましょう。私は国内経済の問題、景気回復の問題に入っていきます。  まず総理に質問いたしますが、六・七%経済成長、これを中心にしていまの不況克服ということで総合経済政策を閣議決定されました。景気とは一体何か、不景気とは一体何か、まずそのことから総理の見解をお聞きいたします。
  134. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 景気、不景気を論ずる指標というものは何十というくらい多くあるんですが、ただいまの段階において景気、不景気を論ずるという場合に、私は二つ大きな問題があると思うんです。  一つは、一つ一つの企業が採算がとれるような状態、これが一つの問題点である。それからもう一つは、やっぱり日本経済全体として過剰雇用、これが深刻な状態であるかないか、これが景気観を決める大きな問題点である、こういうふうに思うわけであります。まあ適正な雇用状態が実現される、同時に企業企業が適正な企業経理、つまり適正な利潤を上げるというような状態になりますれば、景気というものは落ちついてきたなと、こういう状態になるのではないか、そのように考えております。
  135. 小柳勇

    小柳勇君 総合経済政策で、財政支出と金利引き下げ、まあ柱二つでありますが、その他もろもろの問題がありますけれども、それでは、一体、この財政支出を公共事業にやることによってどういう経路を経て景気がよくなるか、たとえば雇用増大とか適正利潤ですね、そのプロセスについて、これは経済企画庁長官からお話し願いましょうか。
  136. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 公共事業の支出によりまして出てまいりますのは公共事業に関連する物資でございます。たとえばセメント、鉄鋼、木材等でございまして、今回の政府関係する約十兆円のもの、これを事業費に直しますと十二兆八千億になります。そういたしますと、セメントで約三千万トン、鉄鋼で七百十五万トン、木材で三百万立米、こういう需要が出てくる計算になります。これがやはり在庫の調整に役立ってまいりまして在庫が減っていく、これが稼働率の上昇に響いていくという形で、直接は建設関連の部門において需要を起こしてくる。これが波及効果をだんだん流通関係その他に起こしていく。したがって民需がこれによって活発になってくる、こういう考え方でございまして、モデル計算でいたしますと約一・八ぐらいの需要創出効果を持つ、そういうふうに考えております。
  137. 小柳勇

    小柳勇君 昨年の本会議でも私は同じような質問をいたしました。財政支出では景気はよくならぬでしょう、特に公共事業投資ではね。それから、ことしの四月の予算委員会でも同じようなことをいたしました。ちょうど四十九年から今日まで財政支出、公共事業に支出したものの合計が三十五兆六千億ございます。三十五兆六千億を出して、ばらばらではありますけれども予算、補正と、こうやってきましたけれども、ちっともよくならぬでしょう。在庫調整は進んでいません。なお悪い状態ですね。けさの統計なんか見てまいりましたけれども、ちっともよくなっていない。しかも民間の設備投資もふえていません。それから個人消費もふえていません。それじゃ、いままでこうやってきたけれども悪いから、今度は、二兆円やったから大丈夫ですと、経済企画庁長官、自信ございますか。
  138. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) お答えします。  従来、公共事業の効果がなかなか実体経済面にあらわれてこなかったということは御指摘のとおりでございます。この原因は、やはり非常に在庫が多かった、したがって、その在庫に食われて、これが稼働率なりあるいはその他の実体経済に及んでこなかったということでございますけれども、八月について申しますと、セメントも五、六%生産が上がっておりますし、それからコンクリート等の需要、鋼材の需要ということがふえておりまして、また雇用面におきましても、求人関係は建設関係で申しますと前年に関しまして二〇%ふえている、こういうことでようやく公共事業の効果が実体経済の面にあらわれつつあるというふうに判断しておるわけでございまして、あれだけ大きく公共事業を前倒しにしておるわけでございますから、効果があらわれない方がおかしいわけでございます。ただ、非常に在庫が多くて、これに食われたというのが実情ではないかと思うわけでございます。したがって在庫調整がだんだん終わってあく抜きをしてまいりますと、これは実体経済面にあらわれてくると思います。  しかし、そうは申しましても、公共事業の全体の比率というのが資本支出の面、全体の経済からはそう大きなものでございませんから、これは野球で申しますとやはり一塁打ぐらいの力であって、やはり民間の設備投資、個人消費と、こういうのに期待しておるというのが実情でございます。
  139. 小柳勇

    小柳勇君 もう一問、経済企面庁長官に。  総理は、景気の安定は完全雇用と、それから適正利潤とおっしゃいました。経済企画庁長官はそんな答弁ではありませんでしょうが、いまの在庫調整にいたしましても、あるいは民間の設備投資にいたしましても、あるいは個人消費にいたしましても、どういうところを適正な景気だとおっしゃいますか。
  140. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 景気の問題というのは非常におのおのの立場で違うと思うわけでございますけれども、結局、有効需要が非常に不足しているために経済活動が停滞しているという状況が不況である、その逆の現象が好況であるというふうに判断しておりまして、やっぱり需要供給の関係であると思います。  したがって、景気を判断する指標としては、需要、これは一つのポイントではなかろうか、GNPがどのくらい伸びているかというのもまず第一の判断の基礎であろうかと思います。それから供給の面でございますけれども、鉱工業生産指数等であらわれる供給の面、それからその需要と供給のギャップと申しますか、これがどういう形であらわれているかということで、これは計算が非常にむずかしいわけでありますけれども、これは鉱工業の稼働率指数である程度判断することができると思います。そのほか、やはり価格動向がどうであるか、製品の価格がどうか、サービスの価格がどうかということでありまして、結局、卸売物価が安定しているかどうかというような問題も景気にかなり影響を及ぼすわけでございます。  ただ、これを経済の主体の面から見ますと、御案内のとおり企業においては、先ほど総理が申されましたように、企業収益がどうであるかということに端的にあらわれるし、個人の場合には、賃金、収入がふえるかどうか、あるいは雇用が安定しているかどうかという問題であろうかと思います。そのほかに、やはり金利であるとか通貨量であるとか、あるいは企業家の心理、必要以上に貯蓄をせっせとするとか、あるいは設備投資がもう当然出てきてもよいのに先行きの不安のためにどうも設備投資に踏み切らない、そういう企業家心理、そういう諸般のものを大体総合して景気指標というふうに考えておりまして、われわれが月例報告等で出しておりますものも、企業家心理までは指標には出しておりませんけれども、その他については、ただいま申しましたような指標について挙げておるところでございます。
  141. 小柳勇

    小柳勇君 いま長官は大きく二つおっしゃいました。一つは有効需要、一つは企業の好不況ですけれども、有効需要の方では個人消費の増大とそれから民間消費支出ですね、その点いかがですか。――もうちょっと伺います。有効需要を、まあ需給ギャップとおっしゃいました、需給ギャップも十八兆円ぐらい言われておりますけれども、有効需要を増大するには個人消費の増大とか、民間投資の増大とか、そういうものがファクターになっていきますね、その点ちょっと話してください。そういう問題がどうなっているか。
  142. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 仰せのとおり、国民総需要を構成する要素として一番大きなのは個人消費でございます。そのほか設備投資、それから住宅投資、在庫投資、さらに財政支出、輸出と、こういうものが構成要素でございますから、これらのものすべてが需要の要素になるというふうに判断しております。ただ、現在のところ、その個人消費が若干伸び悩んでいる、設備投資が非常に冷えておるというのがいまの状況でなかろうかと思います。
  143. 小柳勇

    小柳勇君 財政支出は政府が意図的にやられるわけです、やっていいわけです。それで、いま景気を刺激しようとしておられるが、それは全体の日本の経済の二割五分くらいです。あとは民間の個人個人、個人の会社、個人の消費、そういうものは政府が幾ら言ったって国民がついていかなきゃ消費しないわけですから、したがって消費支出の問題で、これを公共事業に投資して、これで民間の方に波及しようとされておるけれども、私の方で粗末ですけれども調査をいたしましてグラフに書かせました。  これはいま理事会の承認を得たんですけれども、財政規模と民間部門の消費支出の関係ですね、逆関数をやるわけです。これは二十七年から五十年まで純計をとりまして計算させました、コンピューターで。そうしたら財政支出をよけいやりました年は民間投資の方がうんと減っている。極端に言いますと、戦争経済のときには民間投資はゼロになりますね、これは政府支出で民間の投資などが勝手に支配されないということではないか。これは私が勝手に計算させたんですから、相関係数なども。しかし、これはでたらめじゃありません。そういうものを考えますと、財政支出で公共事業をやりましても、民間の設備投資にそのまま波及しないのではないかと、いまの状態、この三年間は。個人消費もふえない。これはちょっと違いますけれども、その点についての見解を聞きます。
  144. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) お答えいたします。  政府の財政支出によって需要を創出いたしますと、これはもう当然景気に影響を及ぼすわけでございます。その程度がどういう程度であるかと、あるいは在庫が非常に多い場合に、その在庫に食われるかどうかという点はあろうかと思いますけれども、当然、国民経済の中で二割程度を占めております財政が影響を及ぼさないというのがおかしいわけでございます。  いま先生が申されました政府の固定資本形成、民間設備投資の相関関係昭和二十七年から構成比とそれから伸び率と両方で調べてみました。これは実質でやっぱり計算する方がいいんじゃなかろうかと思いますので、実質で考えますと、昭和二十七年から大体三十年代までは、この相関関係はでこぼこが構成比であるわけでございますけれども、四十年以降、若干逆相関関係が出てきておると。伸び率で申しますと、御指摘のように昭和二十七年、二十八年を除きますと、三十年以降は、大体、逆相関関係が実質ではじきますと政府固定資本形成と民間設備関係にある、そういう数字が出ております。
  145. 小柳勇

    小柳勇君 それから、労働大臣、いまのこの個人消費は労働者の賃金に大きく影響すると思います。昔は高所得者、低所得者ともに消費支出というのは余り変わってないんです。最近は低所得者がうんともう消費支出が減っています、貯金率はふえていますけれどもね。現在の労働者の賃金の跛行性、格差ですね、そういうものについての御見解を聞きます。
  146. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 御指摘のとおり、性向、つまり可処分所得とそれから消費支出との割合というものは低所得者の方が高く高所得者が低い、それが通常のパターンで、それが四十九年と五十年は逆になったわけですが、それが五十一年からまたもとのパターンに返っていることは事実であります。したがって、それだけ勤労者の、特に低所得者の負担というものが重くなってきているということは事実だろうと思います。  賃金は、原則として、御承知のごとく労使で決定すべきものでありますが、特に低所得者に対しましては、まず第一に必要なのは、低所得者の多いのは中小企業でございますので、その経営の近代化を図ってもらいますとともに、最低賃金制その他を活用いたしまして、低所得者の生活の安定に努力をいたしたいと存じます。
  147. 小柳勇

    小柳勇君 総理大臣に。もう三年来のこの同じパターン、財政支出による、公共事業による景気刺激ですね、いわゆる常識ですから、そうおやりになったのでありましょうけれども、いまのこのような情勢では、それだけではもう景気はよくならぬ。一つは不況感もありましょうね。それから産業構造が高度経済成長時代に沿うようになっているのがそのまま来ているのがたくさんあるんではないかと。で、後で十二業種のこの不況業種に対する対策も聞きますけれども、そういうものを根本的に考えなければ不況対策にならぬのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  148. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、さきに午前中も申し上げたんですが、今日の不況、これは国の経済全体としますと、とにかく緩やかな上昇過程にあるわけです。ところが、企業を見ますと、これが二重構造というか、非常に成績のいい企業もあるかと思うと、また構造的な要因をはらんで非常に処置のむずかしい企業もある。そのでこぼこといいますか、ばらつき、これがいま日本の経済の好況感を非常に阻喪さしていると、こういうふうに見ておるわけで、これは世界の客観情勢、これが大変変わってきた、そういうようなところからわが国の経済界におきましても大きな変化が出てきたと、この問題に取り組まないと私は日本の経済は安定しない、こういう見解でございます。
  149. 小柳勇

    小柳勇君 総理は、六・七%から来年は六%ということで見通しを修正しておられますけれども、この六・七から六に変わる過程で、たとえば産業構造などについては現状のままでいいと思っておられるのか、あるいは経済団体などいろいろ協力を仰ぎながら変えていかなきゃならぬと考えておられるか、いずれですか。
  150. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それでありますから、構造不況業種につきましてはよほど思い切った措置が必要だと、こういうふうに考えるわけです。当面、いま構造不況業種が中心になりまして景気感を非常に阻喪さしていると、こういう状態であります。  そこで、日本の経済全体の底上げをいたしまして、そうしてその過程において構造改革、これをやっていかなけりゃならぬだろうと、こういうふうに考えておるわけであります。さしあたり生産調整あるいは価格調整あるいは過剰設備の廃棄、こういう問題もあえてやらなければならぬだろうと、こういうふうに思いますが、かたがた、そういうことをやりますれば、これは雇用問題にも相当大きな問題が出てきますから、雇用対策の方もにらみながらやらなけりゃならぬ。そうして、そういう過程を通じて日本の産業の中に構造的な改革を行っていく。そして、さっき企画庁長官が言いましたように日本経済全体の需給を安定させる、その中で一つ一つの企業の安定を図ると、こういう手法をいま進めておるわけであります。
  151. 小柳勇

    小柳勇君 通産大臣質問しますが、七月三十日に産業計画懇談会が新しい産業の姿を提言をいたしました。貿易の改革など提言いたしておりますが、御感想はいかがですか。
  152. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 先ほどもちょっと申し上げたように、新しい貿易のビジョンと申しますか、産業構造の問題につきまする提言も、われわれの方といたしまして、これらを、特に構造等々の問題になりますれば産構審の方の審議を経まして、そうして、できるだけ速やかに施策の上に移していきたい、かように考えておりますが、なかんずく貿易その他の問題につきましては、先ほど来お話が出ましたように、非常にむずかしい問題が多々現実にございます。これらの問題に対しましても、あるべき貿易の姿、つまり、言いますれば、わが国としましては資源のない国といたしましての、あくまでも自由貿易――保護貿易に対してはこれをあくまでも自由を守っていくと。そうして、同時にまた、それが対外的にも後発途上国等に対しまする経済協力と相まちまして、そしていわゆる日本経済というものが対外依存度が非常に高い中におきましても原料を十分に確保いたしまして、そうして輸出の振興を図っていく、つまり輸出振興と言うと語弊がありまするが、いわゆる正常な貿易というものを貫いてまいりたい、これがわれわれの考え方でございます。
  153. 小柳勇

    小柳勇君 それから、ことしの八月に産業構造審議会の総合部会が通産大臣報告書を出していますね。これも大体似たようなことを提言いたしておりますが、これに対する決意をお聞きいたします。
  154. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 先般、産構審の総合部会がございまして、そうして今後のあるべき日本経済に対しまする一つの指針、そうしてまたビジョン、さらにまた、現在の段階におきまする諸施策だけではなく、将来に向かってのいわゆる展望という問題につきまして、いろいろと報告を拝聴いたしました。
  155. 小柳勇

    小柳勇君 通産大臣、その拝聴いたしましたはいいですが、それを拝聴されて、通産行政としてどういうふうにこれを今後生かしていかれますか。私は二つの提言を言いましたが、これをどういうふりに生かそうとされますか。
  156. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいまも申し上げたように、つまり、わが国のあるべき国家と経済体制からいたしますれば貿易依存度が非常に高いと。ついては、その貿易の構造も、とかく集中豪雨的ないままでの姿から安定した市場、それからまた同時に、今後の国内の経済の姿におきましても、既往の高度成長の時代にありました設備、これを現在の設備に転換する、その構造改革というものが大きな指標でございます。と申しまして、その現在の構造変化の中におきましても、やはり将来をはっきりと認識した姿におきまして安定成長を続けていかなきゃならぬ、こういう意味でございます。
  157. 小柳勇

    小柳勇君 経済企画庁長官、午前中からいろいろやっていますけれども、新しい大きな転換の方向を考えなければならぬだろうと、国際的にも国内的にも。で産業構造審議会の答申について、これは通信大臣ですけれども経済企画庁長官はこれから日本の経済の方向を計画しなゃなりませんから、どういう御見解ですか。
  158. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) お答えします。  私は二つ問題点があると思います。一つは、国際経済の中で日本経済をどう位置づけるかという問題でありまして、世界の経済秩序が非常に動揺していると、これは先進国の間の新国際経済秩序がいま模索されておるという状況でございます。これにもう一つ、南北問題、すなわち南の国が主張する新国際経済秩序というのはまた違ったものでございますから、こういうものを踏まえながら世界の経済秩序を構築する上において日本がこれに役割りを果たしていくということが一つではなかろうかと思います。  これを国内の問題にいたしますと、結局日本の産業構造を、そういう国際経済を踏まえつつこれから転換していかなきゃならないと思いますが、一つは、資源エネルギー節約型の産業、それから付加価値の非常に高い加工的な加工業、機械工業、こういうものを中心にしていかなきゃならないと思います。しかし、同時に雇用の問題というのを考える必要があるんじゃなかろうか。雇用吸収力のある産業ということをやはりわれわれは頭に置いておく必要があると思うのであります。一億一千万の人口を擁する日本としては、国内のマーケットが非常に大きいですから、結局かなりいろんな産業が成り立ち得る地盤があるわけでございますから、この辺を踏まえながらこれからやっていかなきゃならないと思います。一つ問題としては、繊維産業をどうするかという問題がございますし、それから国内二次産業としては、建設業等はこれから大きくやはり伸びていくであろうと、そういうふうに考えております。
  159. 小柳勇

    小柳勇君 総理大臣質問いたしますが、総理は、この公定歩合引き下げを雇用につなぐ、こうおっしゃっているんですが、どういう経路を経て雇用につながるんでしょうか。
  160. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公定歩合の引き下げを中心といたしまして金利水準全体の引き下げを図る、先ほど私が申し上げましたが、景気がよくないというのは、一つ一つの企業が非常な重い負担に苦しんでおるわけです。それは金利負担それから人件費負担、そういうものであります。そこで、金利水準を引き下げる、その中で金利負担を軽減をするというようなことになりますれば、それは、そういうことがなければもう雇用の重圧に耐えかねない、この辺でひとつ解雇をしなけりゃならぬとかなんとか、そういうことになりそうな企業が一念ついたと、笠利の負担の方が楽になったと、そこでひとつ雇用をつなごうとか、あるいは雇用を拡大をするという力はなかったけれども、これは金利の方が楽になったから雇用を拡大しようという意欲を持つ企業も出てくるであろうし、まあとにかく相当大きな金利引き下げというものは企業の雇用力を培養するという上に力があると、こういうふうに見ております。
  161. 小柳勇

    小柳勇君 いまの話ではまだ納得できません。よくわからぬのですね、総理はわかっておられるかわかりませんですけれども。  時間もないから細かい論争できませんが、金利引き下げによってうんともうかる企業もあるわけです、大企業。それから、借りようとしても、金利が安くても借りられない、そして倒産する中小企業あるわけですよ。したがって、これは公式として使っておられるから、もう少し詳しく論争してもいいんですけれども、私は直接は雇用につながらぬと思います。  そこで通産大臣、不況業種十二とおっしゃるが、その不況業種十二の対策をかいつまんで、区分を分けてもいいから説明してください。
  162. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えいたします。  不況業種の対策といたしまて、基本的には金融面の従来からのとってまいりました処置でありますけれども政府系の三金融機関の資金量をまず確保しなけりゃならぬ。御案内のとおり、昨年三兆六千億、明年度におきましては四兆数千億と予定いたしておりますが、同時に貸し出しの運用の際の返済猶予等、それから中小企業の信用保険法によりまする倒産関係の保証特別処置の機動的な運用、こういう基本的な推移でございまするが、緊急の問題としましては、御案内のとおりに中小企業為替変動対策の緊急融資制度の創設によりまして、これは十月一日から施行いたしておりまするが、つなぎ融資の問題を措置をいたしました。さらにまた中小企業の倒産対策の緊急融資の制度の延長を考えております。それから中小企業の信用保険法に基づきます不況業種の指定、これをやはり客観情勢に応じたある程度の指定を拡充しなけりゃならぬ。  それから、不況業秘に属します赤字の中小企業の政府系金融三機関の既往の貸出分につきましても、この金利の引き下げその他の処置をとる、それからまた、中小企業信用保険公庫によりまする五十二年度のあれで百三十億という原資がございましたが、これがもう大分枯渇いたしておりますので、今度の補正予算で百億の原資の追加をお願いいたしてみるような次第でございます。  さらにまた、中小企業の連鎖倒産の防止の共済制度につきまして、これまた御審議を、御協力をお願い申すつもりでおるのでございます。
  163. 小柳勇

    小柳勇君 これから相当失業者が出る可能性があるし、新卒の就職もなかなか大変ですけれども、雇用状態について労働大臣の御見解を聞きます。
  164. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) もう新聞やその他の論議を通じてよく御承知だと思いますが、有効求人倍率は、本年の一月から〇・六二ぐらいであったんでありますが、八月現在で〇・五三と下がっております。ただし、これは七月が〇・五二でありましたものが若干回復をいたしました。その回復したのは、先ほど企画庁長官の御発言にもありましたように、建設部門であります。  それから就業人口は、昨年一年間でそれでも六十八万ほどふえております。しかし、ことしは上半期で六十二万ばかりふえておるのでありますが、その内訳は、製造業では減っております。第三次産業でふえておるわけであります。  現在の雇用、失業情勢は二つに分けて考えられる。一つは、この景気の変動によって生じた雇用問題、これは雇用調整給付金その他の制度の活用によって失業者を出さないで済むように努力をいたしておるわけであります。これと、それからもう一つは、終身雇用制というわが国独特の雇用慣行で、言いかえればかなりの過剰労働力を抱えておる。それが景気変動で、景気が回復いたしましても雇用関係の指標がなかなか思うように回復しない理由だうと、こう考えております。そこに今回の雇用問題の特殊性があると思います。  将来を展望いたしますと、若年層については現在でもまだ求人倍率は二に近いものが平均してございます。しかし、ぼつぼつではありますが、若年層の滞留も目立ってきております。  それから、職種別に調べましたものが、去年のものはもうとっくに出ておりますが、ことしの八月に調べたものはやがて出てまいると思いますが、そう大きな変化はないと思います。この中には、特殊な技能においては七十万以上の技能労働の不足がここに見られるわけでありまして、それが職業訓練と結びつかせるようにしなきゃならぬと思います。  それから、新規学校卒業者。これは中学校卒業者あるいは高等学校卒業者に対する求人は、これは前年とほとんど変わっておりません。求人倍率は高等学校については七くらいでございます。しかし、大学卒業生につきましても、本年の大学卒業生中の求職着は大体二十七万ぐらい。直接的にはこれは文部省の所管で、大学がそれぞれの責任を負っているものでありますが、私どもが側面から概況をつかんでおるところでは、求人の数は求職者の数に十分見合うと思います。  ただし、その求職者の希望と求人側の希望とが合致しない。規模別に求職者は大企業をねらう、それから管理事務部門をねらう。ところが、求人側はサービスあるいはセールスの部門を求め、五百人以下の中企業に求人意欲が非常に見られる。そういうアンバランスがあるのでありまして、教育の面におきましても、そういう社会の実情を踏んまえた対応の仕方を望んでおるところでございます。
  165. 小柳勇

    小柳勇君 大臣、もう一問。  野党がまとめました特定業種離職者臨時特例法案なるものがいま論議されておるようでありますが、ただいまの大臣見解によってこの法案は今度通してもらえますね。
  166. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 私どもは、いま先ほど申しました景気変動による離職者に対する対策と、それから構造不況業種に対する離職者の対策と二本立てにして、いま雇用安定資金の運営によって対応しようといたしております。来年度予算の概算要求の中に、いろいろとそれの金額の引き上げ等の要求を含んでおるわけでありますので、特に構造不況業種は、いままでは平電炉とそれから繊維とは業界の意見もまとまり、労使関係の話もついて実際進行中でありますが、他の業種については、業界内部もまだ意見の統一が行われず、労使の間の話し合いも進行中でございます。したがって、これからどういうぐあいになってくるか。私どもは、いわゆる構造不況業種と言われる十二業種についての現在の雇用者の総数というものはつかんでおります。  それから、過剰と思われる数字も、これはヒヤリングその他あるいは各省の材料でおおよそつかめるものもあり、つかめないものもあるのでありますが、ところが、それでは一体どれくらいの離職者が出るだろうか、出ればいわゆる脂を落とした健康体になれるだろうかということになりますと、幾ら個々にヒヤリングをいたしましても、なかなか労使関係その他を配慮したと見えて正確な数字が出てこない。  ただ、現在の雇用安定資金の枠の中で、私どもは十分現行法で対処できると思っておりますし、その枠の中で対処できなくなる、つまりお金が足りなくなった部分は、これは義務的負担でございますから、したがって、当然、予備金支出等によって賄い得ると考えますが、しかし、議会で与野党で一致されて法案を提出される準備が進行中と承っております。その案の内容についても、私どもの方は私どもの方としての検討をいま進めさせておるわけであります。意見がまとまって成立をいたしますれば、法律でございますから、それを忠実に執行するのが政府の役目でございます。
  167. 山崎昇

    ○山崎昇君 関連。  雇用問題に関連して、農林大臣と、それから労働大臣と厚生大臣の三人に具体的にお聞きをしたいと思います。  一つは、二百海里の影響でかなり船が減船をされる。それから水産加工業者が労働者が余りましていまどうにもならぬという現状にあります。そこで、これらの者に対する雇用の機会というのが、私ども行ってみますと、ありません。それからまた、減船あるいは水産加工に従事しておりました労働者は、就職のあっせんをするとか、あるいは職業の訓練をいたしますとかという労働省の考え方のようでありますが、現状を言ってみますと、全くこの機能がない。したがって、こういう方々について一体どういうふうに雇用というものを確保していくのか。これは農林大臣と労働大臣にお聞きをしたいというのが第一点です。  それから第二点は、高年齢層、特に問題になりますのは、六十四歳までは労働力人口と称されまして労働省の扱いになる。しかし六十五歳以上になりますというと、これは老人福祉法の関係になりまして、社会福祉協議会が無料の紹介所でやっとこすっとこ何とか相手をしているという現状にあります。したがって、この六十五歳以上の老人を扱っております社会福祉協議会等から、六十四歳以下の場合は雇用保険法等で奨励金が出されるのに、一生懸命やっておりますこういうところについては、法の不備とはいえ、奨励金が一円もない。したがって六十五歳以上の場合についても奨励金を出すべきでないかという見解がある。  もう一つは、六十五歳以上の場合には無料の紹介所がありますが、わずか政府から出ております補助金というのは一カ所平均しまして百三十五万ばかりであります。いま全国的にふえてまいりましたけれども、必死に第一線でこういう方々のお世話をしている者に対して余りにもこれは厚生省として私は不備ではないだろうか、こう考えるのですが、これらについての厚生大臣見解を聞きたいし、いま申し上げましたようなことをどの程度まで、これは五十三年度に移行すると思いますが、やられるのか、具体的な点でありますから、三大臣にお聞きをしたいと思います。
  168. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 北洋漁業の漁獲量の削減に伴いまして相当数の減船が出ました。それに伴いまして雇用問題が御指摘のように出ておるわけでございます。ただ、ただいまサケ・マスあるいは沖底あるいは北転船等々につきしては、御承知のように表作と裏作というのがございます。一隻の漁船で裏作、表作それぞれ漁業をやっておるわけでありますが、そういうようなことでいま再編成が行われつつある過程でございますので、どれだけの失業者、離職者が出るかということをいま鋭意把握に努めておるところでございます。私は、大ざっぱな計算でございますけれども、八千人を上回ることはないであろうと、こういうぐあいに一応見通しをしておるわけでありますが、政府としては、減船に対する政府の救済交付金等の中には離職者に対するところの退職金等も実は含めておるわけでございます。  あとは労働省並びに運輸省と緊密に連絡をとりまして、給付金の問題でございますとか、あるいは職業訓練、あっせんの問題でありますとか、今後とも関係省庁と協力をいたしまして努力をいたて、まいりたいと、このように考えております。  なお、加工業者、関連業者の問題でございますが、御承知のように大幅な漁獲量の削減を見たのはスケトウダラを中心とするものでございます。ただいまのところことしはサケ・マスも漁があった、さらにまたイワシ等も北海道等においては近年にないほど好漁であったというようなことで、加工工場等も、私も釧路にも行ってまいりましたし、るる見ておりますが、わりあいに仕事がございます。問題は、一月から三月、スケトウダラを原料とするすり身加工の時期、この時期が原料難に陥る心配がある。そういうことを十分勘案をいたしまして、原料の輸入、確保等につきましてはいろいろ対策を講じてまいりたいと、こう考えます。
  169. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 御承知のごとく、船から船へ行く人、あるいは船から陸へ行く人、いろいろ事情が違うと思います。その場合、一定規模以下の船に乗っておった人は私どもの対象になるわけであります。これは二百海里の設定に伴ったものについては、転換給付金の業種指定を行う方針でございます。  それから、職業訓練は、われわれの方で雇用促進事業団でやっておりますもの以外にも、各種学校その他をできるだけ利用いたしまして展開をしようとしておるところでありまして、現在のところは、まだ離職の状態までまだいっていないわけでありますから、しかし、すでにそういう関係者で離職された人あるいはこれから転職するという人の職業訓練を受けられた方は、北海道だけの例でありますが、約九割までは就職がもう決まっておる実情であります。
  170. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) お答えをいたします。  水産加工業者の高齢者の就労の問題でございますが、厚生省といたしましては、これについて高齢者の就労あっせん事業費という項目を設けて、一カ所三百四十四万円ぐらいの運営費で実は就労のあっせんをしておることは事実でございます。事実でございますが、高齢者の就職という問題に取り組むに当たりましては、現状やはり年金の問題等との絡みもございまして、厚生省の本来の姿からすれば年金の方に重点が置かれるべきものと存じますが、しかし、現在のいろんな経済社会の情勢というふうな点から考えまして、希望のある方にはできるだけ就労のあっせんをすることにいたしております。この補助金は二分の一補助ということになっておりますが、今後とも、社会情勢というものを見ながら現実に合ったような適切な指導をしてまいりたいと思っております。
  171. 山崎昇

    ○山崎昇君 いま、厚生大臣、私の聞いているのは、漁業関係の高齢者ばっかりじゃないんです。一般的に言いまして六十五歳以上になりますと労働省から手が離れて厚生省になっちゃう、老人福祉法になっちゃう。ところが六十四歳以下は奨励金出したりして一生懸命労働省がやっているんです。ところが六十五歳以上になると何にも出ないし、やっているのは無料紹介所なんです。そういうところにあなた方もっと手厚くしなさいという意味なんです。ですから何も漁業関係者ばっかり言っているわけじゃない、その点だけ明らかにしておきたいと思うんですね。その点についてどうしますか、もう一言だけ答弁求めて終わります。
  172. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 先ほどもお答えいたしましたように、六十五歳あるいは七十歳というような方々については、それを就労させるというところに厚生省が力を入れるということよりも、年金その他の方の充実を図っていく、こういうことが原則だと思います。しかしながら、現実の問題としてなかなか年金だけでは食えない、働きたいというような者につきましては、今後とも、やはりできる限り就職のお世話もしてまいりたい、こう考えておりますということでございます。
  173. 小柳勇

    小柳勇君 国土庁長官と建設大臣に。  建設をもって景気を回復しようとしておるが、建設業界なんか余り景気と言わぬのです。その経路について御説明を願います。
  174. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) たとえば今回の十万戸の住宅建設にいたしましても、関連産業の住宅投資の約二倍の波及効果があるということは明らかな事実であります。したがって、大体、十万戸に対しましては一兆八千億ぐらい、いろいろな備品とか中の道具、カーテンから始まっていろいろなものが備えつけられるわけでありますから、そういう面を合わせますと、そのぐらいの費用が使われていくであろうというような計算も出ておりまして、したがって、また住宅の新築に伴ってのカーテン、家具、電気器具等が入りますと、ちょうどそのくらいの見積もりになる、こういうことでございます。ですから、私とすればかなりの波及効果はあるものだと、こういうふうに感じております。
  175. 田澤吉郎

    国務大臣(田澤吉郎君) お答えいたします。  住宅建設の促進のためには、まず地価の安定が必要でございます。そのために、私たちは、これまで国土利用計画法あるいは土地税制等の規制を行いまして一過去三年間、地価の安定を図ってまいったわけでございまして、今後、やはり土地の投機的取引を抑制しながら地価の安定を図るということでこの政策を進めてまいりたい。  いま一方は、やはり住宅の建設を促進するためのものとして、やはり土地の提供がなけりゃいけませんので、優良土地の提供をいかに促進するかという問題があるわけでございまして、この点については、やはり遊休地の活用だとか、あるいは宅地転換のための計画を進めていくというようなことをこれから進めてまいらなければなりません。しかし、この優良土地、宅地の提供のためにも、あくまでもやはり地価は安定しなければならないということが基礎でございます。
  176. 小柳勇

    小柳勇君 雇用対策及び中小企業対策では、もっと問題たくさんありますが、同僚議員が質問通告いたしておりますからそれに譲りまして、この国内問題の最後は不公平税制の問題であります。  私どもは、来年度は不公平税制を改める年にして、再来年ぐらいに新しい税制を考えよという考えを持っておりますが、大蔵大臣いかがでしょう。
  177. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) お答え申し上げます。  おっしゃるとおり、租税制度の中で公平ということは本当に一番大事なことです。税の執行をやるに当たりましても、税の制度を決めるに当たりましても、これ一番大事なことで、私どもも絶えずこれには注意をしてまいっております。そこで、何としてでもいろんな面から不公平というものは脱却していかにゃならぬということでございまして、そこで税の不公平ということにつきましていろいろ論議が交わされておりますけれども、その不公平の見方については、やや見方なり観念なりが混乱をいたしておるということも見受けられるわけでございます。  そこで、私どもは、税の不公平ということは、まずどこが一体税の不公平かということを考えますと、この税制にいたしましても経済にいたしましても生きております。だから、ある場合に、あるときに、非常にある政策が大事であると、非常にこの政策を実行していくためには多少ほかのことについては妥協してもらわにゃならないと、ほかのことについては多少これを犠牲にしなければならないというような立場から、税制におきましても特別の政策の目的を持ちまして、税制の公平ということを、これを犠牲にしてその政策を強く推進してきたときがあるわけなんです、個々の税につきましてね。その税が長いことやっておるうちに経済情勢が変わってきますと、そこでその税の政策目的というものはもう十分その役割りを果たしまして、ところが税の妥協をしておる面につきましては、その税を負担する人にとっては、これは非常に有利なものでございますから、だからそれはあくまでもこれをひとつ守っていきたい、温存していきたいという気持ちのあるのも、これまあ当然のことでございますが、そういったような税制がたくさんある。それがすなわち租税特別措置だと、こういうことに相なりますが、その租税特別措置につきましては、数年来、これを改正し改正ししてまいっておりますけれども、まだ今日にもそういったようなものがあります。で租税の不公平ということをおくめんもなく衆目の前にさらしておるというようなものもあるいはないとは限らない、そういったようなものをやっぱり改正をしていこうというのが租税の税制を公平化していく、こういうことでございます。  そこで、今後、この税につきまして、いつ何をやるというようなことは考えておりませんけれども、中期におきまして何とか税の改正をやって、そして負担を国民にお願いしていかなければならないという事態に遭遇いたしておりますが、そういうときには、これは本当にまず特に税の不公平というものを、公平化していくということが何よりも大事だと思います。これはやらなければなりませんが、あるときは一つ税の公平ということだけをやって、そのときはほかの税の改正はやらないんだというふうに決めていくということは、これはどうも税の公平化ということは税制改正の非常な前提になりますけれども、それと分けて考えるということではなしに、私は、一緒にやっていくということもあり得ると、こういうふうに考えます。
  178. 小柳勇

    小柳勇君 わかりました。  この間出ました税制調査会の答申の中で、第一番にいまの税制の改正のところで、社会保険診療報酬課税の特例は廃止すべきであると書いてあります。これはやりますね。
  179. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 確かに中期答申の中にはその提言がございます。しかし、私どもといたしましては、いまのところその提言の中で何を取り入れるかということは、五十三年度以降各年度におきまして経済の実態とそれから財政その他のいろいろな要請といったようなものを考えましてそれを具体化してまいりたいと、かように考えております。ことに、今日は、来年度の経済の見通しというものがまだ固まっておりません。したがいまして、予算の規模なり予算内容につきましてはまだ決まっておりませんので、何を取り入れていくかということはいまここで私が申し上げる段階ではないと思います。
  180. 小柳勇

    小柳勇君 大蔵大臣は、もう年来のこれは主張だったようでありますけれども、いま少し答弁がぼやけておりますが、総理大臣、いかがでしょうか。
  181. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いまお話しの税制調査会の答申、これはあくまでも中期展望に立っての答申です。五十三年度にこれだけのことをやれと、そういうような性格のものじゃないんです。答申自体も明らかにしておりますが、これは答申はするが、この答申をいかに実現していくか、それは各年度における客観情勢、そういうものをよく見てその内容とタイミングは政府において決定されたいと、こういうことなんです。しかし、そういう性格の中期答申でございます。でありまするから、その中期答申を五十三年度にどういうふうに生かすかということ、これにつきましては五十三年度の問題として考えていくべき問題であると、このように考えております。
  182. 小柳勇

    小柳勇君 調査会とか審議会の答申というのは、いいところはとって、もう自分にぐあいの悪いところはとらないようなものではないと思うんですね。したがって、これだけ厳重に響いてありますからね。「社会保険診療報酬課税の特例は廃止すべきであり、少なくとも「昭和五十年度の税制改正に関する答申」において提案した具体的な改善案を早期に実施すべきである。」とびしゃっと書いてありますよ。もう一回総理の見解を聞いておきましょう。
  183. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 明快に申し上げておるつもりですが、その答申はあくまでも中期展望に立っての答申でありまして、それを五十三年度において直ちに実現すべしと、こういうふうには言っておらないわけであります。五十三年度においてその答申をいかに取り入れるかということにつきましては、答申が言っているとおり、その内容とそのタイミングにつきましては十分検討いたしまして、その時点において決めていきたい、こういう考えでございます。
  184. 小柳勇

    小柳勇君 時間がありませんから、またこれも同僚議員の申告がありますから、詳しく徹底的に論議してもらいましょう。  最後の第三の部門の五十三年度関係緊急課題でありますが、第一は国鉄再建であります。今回の法律に国鉄再建法が出されておりますが、国鉄総裁がお見えでありますが、現在の国鉄の経営状態なりあるいは今後の決意なりを御披瀝願います。
  185. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 昨年は国会に大変御迷惑をおかけいたしましたが、かなりの大幅の運賃改定をお認めいただいたわけでございますけれども、一つには私どもの計画と比べますとその時期が遅れたこともありまして、非常に残念ながら五十一年度の決算の結果といたしましては九千百億円というきわめて巨額な赤字が単年度で発生するというのが私どもの財政状態でございます。  一方、昨年の改定の結果といたしまして、一般的な不況というようなこともございますけれども、かなり他の輸送機関の運賃水準と比べまして私どもの運賃水準が接近をしてきたというようなことから、一部いわゆる国鉄離れというような現象も出ておるわけでございまして、だんだん私どもの経営自体が独占的な性格から競争的なフィールドの中に没入をしていくような状態が現実の問題として起こってきておるわけでございますので、その意味におきまして、経営といいますか、再建といいますか、いよいよ困難をきわめてきつつあるわけでございますが、しかし、やはり従来からお願いいたしておりますように、利用者の方に御理解をいただいて、運賃を他の物価あるいは賃金の水準をにらみ合わせながら改定さしていただくということが一つと、それからどうしてもたとえ不採算なところでも仕事をしていかなければならないという宿命がございます関係上、それなりの財政援助をいただくということが一つと、この二つに加えまして、何よりも国鉄自身の経営努力によって経営を改善していくということを加えまして、この三つの、従来から言われております三つの柱を通じて再建をしていく以外にはないと考えております。きわめて状態は困難でございますけれども、しかし、どうしてもやはり鉄道というものが国民生活の中で現在置かれている地位を考えますと、民間の私企業のように経営のぐあいが悪いからやめるというわけにはまいらないわけでございますので、今後とも労使いろいろ努力をいたしてまいりますので、よろしくお願いをいたしたいと存ずる次第でございます。
  186. 小柳勇

    小柳勇君 運輸大臣にいまの国鉄再建の問題についての見解をお聞きいたします。
  187. 田村元

    国務大臣(田村元君) 先ほど国鉄総裁が申しました三本の柱、この一言で尽きるわけでありますが、ただ、私は、ニュアンスの問題でありますからそう特にとりたてて申し上げる必要もないかもしれませんけれども、国鉄総裁は適時適切の運賃改定ができる仕組み、そして国の適切な財政援助、この二つに加うるに国鉄の経営努力ということを申しましたが、私は、国鉄自身の労使の徹底した経営努力を中心に、そしてそれに加うるに適時適切の運賃値上げの仕組み、あるいは本来国鉄の経営の限界外にある費用に対する適切な国の助成と、このように考えた方があるいは国民的ではなかろうかという感じがいたします。それに、まあ徹底した経営努力の中の範疇に入るわけでありますけれども、やはり労使は協調してやっていただかなきゃならぬ。その意味でまだ私がほめて差し上げる段階じゃありませんけれども、総裁を初めとする経営陣の、労働者、組合に対する対応ぶり、あるいは組合幹部の現実に対する対応ぶりという点については、私はまだ現在及第点を差し上げるわけにはまいらぬかもしれませんけれども、心の中で評価をいたしておる次第でございます。
  188. 小柳勇

    小柳勇君 運輸大臣にもう一つ質問しますが、運輸大臣、総合交通体系の確立の問題と、それから先般問題にいたしました運送トラックの共同集金制度のその後の進捗状況はいかがですか。
  189. 田村元

    国務大臣(田村元君) トラックの共同集金問題については、これは小柳さんの御提言まことに一つの見識でありまして、いま検討さしております。来月は相当その調査が進むはずであります。いずれ改めて自動車局担当者から御報告をさせようと思っておりますけれども、あるいはもう御報告が行っておるかもしれません。  それから総合交通体系でありますが、私は総合交通体系は必要であると思っております。昭和四十六年三月の運政審の答申、それからそれを受けて政府で総合的にやりました閣議了解のあのいわゆる総合交通体系というものの示しておる方向というものは、いまなお妥当なものが多いと思います。私は、そういう意味から、運輸省自体の行政機構も、総合交通体系を推進していくことのできる、あるいは策定できるような、そのような仕組みにしたいなあというふうに考えて今日努力をいたしております。まあ官僚諸君も非常に協力的でありますので喜んでおりますけれども、ただ、問題は、総合交通体系を憲法にしてはならぬのです。それはなぜならば、憲法にしてしまえば、自由主義経済に対する逆行にもなりましょう。中央集権的にもなりましょう。官僚統制も行われましょう。でありますから、あくまでもガイドラインであるという考え方はやはり自由経済の自由主義の今日の日本においてはとっていかなきゃならぬのじゃないか。しかし、だからといって必要なんだということを私は強く強調して総合交通体系に非常に力点を置いた運輸行政を展開してまいったし、これからもますますしていきたいと考えておる次第でございます。
  190. 小柳勇

    小柳勇君 国鉄問題は、専門屋がおりますから、あとまた同僚議員に譲ります。  次は、老人医療と年金の問題ですけれども、厚生大臣、老人医療有料化の声が高いものですから老人が非常に心配しております。これをひとつ安心させる方策はないものか。  それから年金が、昨晩もテレビでやっていましたけれども、官民格差が大きいということで、共済年金の人なんかもうすぐ年金が悪くなるような錯覚を持っておるから、ここではっきり厚生大臣見解を聞かしておいてもらいたい。でないと、年金で暮らしている人は非常に不安です。
  191. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 老人医療の問題につきましては、かねて答弁をいたしておりますように、私の手元で老人医療の専門家の懇談会を持っております。そこでいろいろ検討いたしまして、大体結論点に近づいております。今月の末のころまでには御発表がいただけるのではないだろうかと、かように考えております。その問題は、有料にするというような問題ばかりでなくて、そういう話でなくて、要するに現在の老人医療というものが医療にだけ偏り過ぎておると。したがって、これを老人の健康教育あるいは保健指導あるいは疾病の予防、老化の予防、それから治療問題、それからリハビリテーションとか在宅療養というようなものを一貫いたしましてそれでその老人の医療対策というものをつくっていくべきではないかと。その中で負担の問題というのはこれは当然出てくるわけであります。したがって、この負担の問題は、これは若い人でもいつかは必ず年をとるわけですから、ですから、国民の各層からの御協力を求めてそういうような負担というものは考えていったらどうなんだというようなことなどが議論になっておるわけでございます。すぐ直ちに老人有料化というようなことが端的に出ておるわけじゃございません。負担の問題は全体の問題として総合的に一緒に考えていこうということです。  それから年金の問題でございますが、年金の官民格差の是正ということが言われておるわけでございますけれども、これはまあともかく官の方が、併給制限がないとか、あるいは五十五歳から開始されておるではないかとかいうようなことが言われておると思います。しかし、これは長い歴史のある問題でもございますし、現在受給をされておる方の変更などということは、言うべくしてこれはできるものではありません。しかし、これから非常に急速な老齢化が進むにつれて年金の負担も膨大になってくるので、何らかの方法を講じて、将来の問題としてこれはなるべく近づけるようなことは考えていかなければならぬ。しかし、ともかく現在の受給者の既得権を侵害をするということは、これはできる問題じゃないと私は思っております。しかし、将来の問題としては、官民の格差というものがなくなる方向で検討をされていかなければならぬ。これも年金の懇談会をつくっていま鋭意回数を重ねておりますが、ことしの末のころには中間報告が出されるようなふうに聞いております。
  192. 小柳勇

    小柳勇君 この問題にもちゃんとうちの専門屋がおりますから、専門屋から詳しく質問いたしますから。  第三の問題は、同和対策の問題です。総務長官、同和対策、これも非常に心配しておりまして、同和対策事業特別措置法を同対協答申に基づいた内容に充実強化してもらいたいというのと、この法律の期限を延長してもらいたい、それから同和対策事業の促進を自治大臣も御協力願いたい、こういう問題でありますので、総務長官と自治大臣の御見解をお開きいたします。
  193. 藤田正明

    国務大臣(藤田正明君) 御承知と思いますが、同和対策関係につきましては、昭和三十三年に閣内に同和対策閣僚懇談会というものが設けられまして、ちょうど十年後の昭和四十三年に特別対策を法制化すべく四党協議会というものができました。そして、昭和四十四年から十カ年という時限立法をもっていまの特別措置法ができたわけでございます。その四党の協議会は、自局、社会、公明、民社、この四党でございます。今回、先生がおっしゃいましたように、来年の五十三年度でもってそれが切れるわけでございます。日時にすれば五十四年の三月三十一日ということになりますけれども、まだ時日の余裕がございます。そして、現在五十三年度はまだ概算要求の段階でございまして、どこまで同和対策の特別措置法にのっとって事業ができるかということもまだ明瞭でございません。すなわち、残額、残事業量がどれくらい残るかということもまだはっきりいたしません。そういう状態でございますので、いますぐ特別措置法を延長するとかしないとかということではなくて、各政党間で九年前におやりになったような協議会をおつくりいただきまして御相談をぼつぼつお願いいたしたいとともに、われわれ政府といたしましては、同対協-同和対策協議会あるいは地方公共団体とこれを相談しながらこの延長をすべきかどうかというふうなことも進めていきたい、かように考えておる次第であります。
  194. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) 同和対策事業は、法律が規定いたしておりまするように、憲法の理念にのっとって国と地方公共団体が協力して実施すべき事業でございますから、これは国庫補助負担事業で実施するのが本筋でございます。したがいまして、そのための予算も逐年ふえて今日に至っておりますが、正直のところまだ十分でございませんために単独事業の形で実施しておる事例が非常に多いというのが現状でございます。そこで、自治省といたしましては、各省に対しまして繰り返して同和対策事業をできるだけ多く国庫補助事業として採択してほしいという申し入れをいたしまして、各省もその方向で毎年予算をふやして今日に至っておるわけでございます。自治省といたしましても、起債の面あるいは交付税の面であとう限りの努力をいたしております。今後ともこの方向で努力を続けまして問題を解決していきたいと、こう考えております。
  195. 小柳勇

    小柳勇君 さっきの総務長官の答弁の中で、われわれがこの法律をつくりますときにはいわゆる解放同盟を主体にして話しました。それがだんだんいま形が変わっております。私どもの心の中には、やはりこの解放同盟がいままで長く松本治一郎先生以来闘ってきた成果であると受けとめておりますので、いろいろ問題は言いたいが時間がありませんから、総務長官もそういう腹をちゃんと持っておいていただきたいと思います。これは希望です。  それから第四は、厚生大臣にスモン病です。近くこの和解案が出ましてスモン病には措置がされるようでありますが、いま裁判でないスモン病の人については一体どういう措置をするのか。それから和解案が出ました後、国は一体どう対処するか。これからの法律などもありましょうが、恒久対策はどうするか、こういう点について見解をお聞きします。
  196. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) まず、訴訟をやっていない方に対する問題、これについてはいま対処の仕方は考えておりません。  現在の訴訟につきましては、ともかくわれわれといたしましてはこの重篤なるスモン患者、悲惨な大規模なスモン患者を救済するということを主眼といたしまして、いろいろ法律上議論のあるところもたくさんあるわけでございますが、和解のテーブルについておるわけであります。また、和解案が最終決定をしたわけでもございませんので、その内容等につきましてはそう時間はかからずに妥結するのではないだろうかと、裁判官の言っておることの大部分を受け入れなきゃならぬじゃないかなあと、こう思っておるものですから、ですから、裁判の方もまだ決定を最終的にしてないものですから、それ以外のところまで非常に微妙な時期でもございますのでただいま申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じます。
  197. 小柳勇

    小柳勇君 田辺製薬の反対など問題が相当残っているようですけれども、要は、このスモン病にかかっている人が裁判をしようとしまいと認定されたら救えるという体制、しかもそれはもう製造を禁止された薬のおかげでありますということですから、今度の和解案を基準にして、裁判でない人、そういう明らかな人については救済の手を差し伸べる、対策を考える、こういうことについての見解を聞きます。
  198. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) このスモン病の問題については、私どもといたしましては、スモン研究班の調査研究結果というものを尊重して実は和解のテーブルについておるわけであります。しかし、そのスモン研究班が全部のものを見ておるというわけでも実はございませんし、まして投薬証明が実はないというような方の中でスモン病であるというようなことを言われる方もございます。しかし、国が対処する場合は公金をもって対処するわけですから、それらの点等については現在の訴訟中のものが解決してから検討したいと思っております。
  199. 小柳勇

    小柳勇君 第五番目は、奄美群島振興法の問題であります。これは国土庁です。奄美群島の皆さんが、もう振興法が五十四年で切れるが、来年の通常国会にかけないとこの法の延長ができないと。現状を私も見ましたけれど、まだこちらの本土に比べまして非常に不便です。したがって、この法律の延長について長官の決意をお聞きいたします。
  200. 田澤吉郎

    国務大臣(田澤吉郎君) 奄美群島振興特別措置法につきましては、昭和五十三年度末で期限切れになるわけでございまして、五十四年度以降の奄美群島の振興対策につきましてはただいま国土庁としては総合調査を進めてございます。その結果と審議会の意見を聞きまして結論を出すわけでございますが、先生御案内のように、昭和四十九年にこの法の改正の折に国会の附帯決議がございます。この趣旨を体して、ただいま先生の御意向も承って、前向きでひとつ検討してまいりたいと考えております。
  201. 小柳勇

    小柳勇君 わかりました。  最後は、農林大臣に米の生産調整の問題です。これも各地方から陳情がたくさん出ています。転作奨励金をもらってもちっともありがたくない、したがって、この米の生産調整というものに対する根本的に考えを変えてもらいたいと。たとえば、産業計画懇談会などでは、この際もし失業者が出たら第三の失業対策事業として球根でも掘り返そうではないかとか、あるいは山林を開発しようではないかとか、あるいは東京湾や瀬戸内海や伊勢湾の清浄作業をやろう、あるいは下水道を全部ひとつ国に完備しようではないかと。そういうのが本当の不況対策だと言っておられるわけです。にもかかわらず、いま転作などをやっている、生産調整をやっている。非常に農村は不満ですね。これに対する農林大臣見解を聞きたいのです。
  202. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 米の過剰基調であることは小柳先生よく御存じのところでございます。この需給の均衡をできるだけ早く回復して食管制度の健全な運営を図っていく。これは食管制度堅持を政府としてはあくまでやってまいりたいと考えておりますが、農民諸君にもこのことはよく御理解をいただいて御協力をいただかなければならない点であると考えております。と同時に、一方におきましてはお米がことしも豊作でございまして、今年度は政府の在庫が三百数十万トン、来年が平年作でありますれば四百数十万トンになる見通しでございますが、一方におきまして、麦でありますとか、大豆でありますとか、あるいは飼料作物でありますとか、そういうどうしても日本として必要な作物、こういうものの自給率が低いことも、停滞をいたしておりますことも事実でございます。そういうような観点からいたしまして、今回は早目にこの総合的な食糧需給政策をとらなければいけない、このように考えておりまして、いままで御承知のように水田総合利用対策というものを進めてまいりましたが、さらに一歩を進めまして、水田利用再編対策ということで、米だけでなしに総合的な需要に見合ったところの農作物の総体的な自給力を高めるようにしてまいろう。だから、緊急避難的なものでなしに、今後十年ぐらいの時間をかけまして日本の農業の再編成をしよう、こういう考え方で取り組んでおるところでございます。  これを実行してまいりますためには、何といっても、米づくりと他の作物をやります場合との相対的な収益性、これがやはり格差があってはいけない。一遍にはまいりませんにしても、収益性をできるだけ近づけていく。そういう面からいって、麦であるとか大豆であるとか、そういうものの米価に対する相対的価格も是正をするという必要がございます。また、土地改良基盤整備事業等も生産条件をやはりそれが転作がスムーズにいけるような条件を整備していく必要があると思います。また、価格だけで十分でない点につきましては、いまお話がありましたような転作の奨励金というようなものもやってまいらなければいけない。そういう総合的な施策を進めまして、先ほど申し上げましたような総合的な食糧政策というものを展開してまいりたいと、このように考えております。したがいまして、来年度は、需給の関係等からいたしまして百七十万トンの生産調整、稲作の転換を必要とするということで、転換奨励金の相当手厚い改善策も考えております。また、先般、一連の農産物の価格を決めましたが、麦価の場合でも、あるいは大豆の価格にいたしましても、てん菜の価格にいたしましても、現時点においてできるだけの価格の是正を図ったところでございます。今後あらゆる施策を総合いたしまして、わが国の農政がバランスのとれた健全な姿で安定した農業経営ができるように政府としては最善の努力を傾けてまいる考えでございます。
  203. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 速記をやめてください。   〔速記中止〕
  204. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 速記を起こしてください。
  205. 小柳勇

    小柳勇君 もう一問、農林大臣、この間、花卉園芸連合会というのがありまして、そこから、転作で菊などをつくりたいが価格が非常に不安定である、価格安定の方法がないものであろうか、それから各大きな都市の中央市場にちゃんと出れるようにしてくれぬかと、こう二つ要請がありますけれども、いかがですか。
  206. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 最近、花卉に対する需要が高まってきております。特に菊であるとかバラであるとか、そういうものに対する需要が高まってきておりまして、一面において価格もだんだん上昇してきておる。こういうようなことで、それだけに増反も行われておるわけでございます。そこで、農林省といたしましては、今後花卉に対する需給協議会というようなものもつくりまして、今後の需要、また国民の皆さんの希望するような花卉が生産されるように、また、需給を十分バランスのとれるような姿に持ってまいりまして花卉の価格の安定も図っていきたい、このように考えております。いろいろ御指導もいただきまして花卉対策は今後ともやってまいりたい、こう思っております。
  207. 小柳勇

    小柳勇君 総理に最後の質問ですけれども、ちょうどこの間米の生産調整の陳情を受けておるころハイジャックの問題がありまして、あのダッカの参謀長が、うちの国ではこんなに飢えた者がおるのに、日本の青年は何と傲慢だと、満ち足りてこういうことをすると言われたということが新聞に出ていました。したがって、生産調整で百七十万トンも古米が余るとおっしゃるそういう米を、私は外交の方は素人ですけれども、そういう古米なども、たとえばバングラデシュとかインドとか、あの飢えている人民、国民に経済協力として出すようなことはできぬのであろうかとこの間生産調整の話を聞きながらしみじみ考えたのでありますが、内閣の方でいろいろ専門やらたくさんありますから、そういうことで、ただ機械とかなんとか持っていくだけでなくて、日本で余った物があったら持っていく、そうして足らない物を買う、こういう政治をつくってもらいたいと思うが、いかがですか。
  208. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それは常識的にはもうすぐ考えられる問題なんですが、さあ実施だということになりますと、なかなかむずかしい問題があります。つまり、一千万ドルなら一千万ドルひとつ協力をいたしましょうと、さあその相手の国は何をお買いになりますかというと、日本の米というふうに言ってこない。やっぱりインドネシアだとかあるいはその他のASEANの国々等の使うところのお米、これは日本の米と大分違うんです。そこに一つの問題がある。それから同時に、無償、有償という二つの行き方がありますが、いずれにいたしましても、わが国の米は非常に高いわけなんです。同時に、無償にせよ、有償にせよ、これは国の財政負担、これが無償の場合にはもろに響くわけでありますが、これは非常に大きな問題である。だから、軽々に無償というわけにいかぬ。まあ有償だと言って幾らかわが国が財政上の負担をしながら出すというようなことになりましても、先方はこれを希望しないと、こういう問題もありまして、そう簡単に実施というわけにはいかない性質のものなんですよ。しかし、もう常識とするとそうしたらいいじゃないかと、こうすぐくるような性質の問題でありますので、また御提言はよく頭に置きまして検討いたします。
  209. 小柳勇

    小柳勇君 もう答弁は要りませんが、最後です。経済国会でありますが、ただ事後処理の、不況、それに手当てだけの経済政策でなくて、新しく国民生活優先の福祉政策に政治が展開しますように期待いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  210. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上をもちまして小柳君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  211. 鍋島直紹

  212. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 最初に、先般起こったハイジャック事件の再発防止についてお尋ねいたします。  シンガポール事件、クアラルンプール事件、今度のダッカ事件等悪質なのは日本赤軍と称する君たちの行動である。彼らの非人道的暴力行為はまさに国辱であり、全世界に対して日本の信用失墜の最たるものであります。日本人は肩身が狭い。ことに海外に進出している日本人にはまことにお気の毒であったと思う。かかる無法な者を育てたのは何といっても根本は戦後教育の責任であると思います。自由放任、無責任な教育の結果であり、人間としてこの世に生まれた幸せを感謝するとともに、日本人としての誇りと自信を与える生きがいと価値観を与えなかったからであると思います。文部大臣はどのようにお考えでございますか。
  213. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 御指摘のようなハイジャック事件が起こったこと、そういった精神の荒廃を持つ若い世代がおることは大変心痛むことでございます。  しかし、率直に申し上げて、自由で民主的な社会を形成するには、人間が自分の正当な自由を主張することは権利でありますが、それは当然他人の自由、他人の権利をも認めるという義務が伴っておるはずでございまして、文部省といたしましては、学校教育の中において、みずからの主張とともに他人の権利を尊重するという義務もあわせて教えなければならぬということは常々考えておりますが、今回の学習指導要領の改定におきましても、心身ともに豊かな国民の育成を目指して、少なくとも法を守る、ルールを守るということを大切にし、個人的にも、そして集団的にも暴力に訴えるような行為は絶対許してはならぬという人間の基本についてしっかりと身につけさせるように指導いたしたいと思いますが、学校教育だけではこれは十全ではございませんので、社会教育も家庭教育も力を合わせて、こういった事件の撲滅のためには御協力を賜りたい、かように考えておる次第でございます。
  214. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 次に、ハイジャックの再発防止についてお尋ねします。  ハイジャックの防止については、機内への持ち込み制限、身体検査を厳重にすることは当然でありますが、飛行機のタラップに感受する装置を整備するような措置が講ぜられないものかどうか、いわゆるダブルチェックの問題ですが、これは運輸大臣にお尋ねします。
  215. 田村元

    国務大臣(田村元君) まず、国内の問題でございますが、ジェットの離着陸します十八の空港では、金属探知器、最新式のもの、あるいはエックス線等の検査をしております。と同時に、ボデーチェックもいたしております。それから、受託の荷物につきましても、開披ですね、開くこと、開披をも含めまして厳重にいたしております。まあ国内問題につきましては、もちろん足らざる面もありますけれども、相当厳重にやっております。そうしてまた空港の受付でそれをすることに意義があると思います。  問題は、外国の場合でございます。で、外国の場合は、若干の土地――アメリカとか東南アジアの一部とかいうところでは、金属探知器とかエックス線等の器械を日航独自に取り入れまして検査もいたしておるところもございますけれども――ちょっと正確に申しますと、新型金属探知器七台、携帯用の金属探知器が約七十個というものを配置しております。けれども、それはごく一部、限られたところでございます。でありますから、JALの寄港地におきましてもっと厳重にしなきゃならぬし、いまのお話しのようにJAL独自の体制をとらなきゃなりません。もちろん外国との国際問題ございますから、それを踏まえて努力するように十分の指導をいたしておるところでございます。
  216. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 ハイジャックの暴徒については、もう少し裁判を簡略にし、速やかに極刑に処していただきたいと思う。従来のは刑が甘過ぎるような感じがするので、普通の犯罪と同じように人権を保護して裁判が長くかかるから今回のように釈放の対象になるのであります。私は速やかに法改正していただきたいと思いますが、法務大臣の御見解を承りたい。
  217. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) お答えいたします。  一般に裁判の遅延が心配されておりまして、しかも社会の情勢の変化と新しい事件形態、いろいろむずかしい事件がふくそうしております。でありますから、一般に裁判の迅速を図るために年々裁判官の増員あるいは事務処理の機械化等の予算をいただいて改善を進めておるところでありまして、ややその効果はあらわれつつあります。  ただ、問題は、いまお話しのように、ハイジャックあるいは爆弾事件等、一定の特殊のイデオロギーを持った犯罪、こういう事件が遅延する現実があるわけでございます。これはせっかく法がありましても、その実効があらわれない、予防がでできない、こういう事態がありますので、ハイジャック事件を契機にいたしまして、むずかしい問題がありますけれども、やはり訴訟の促進を図る特別な立法をすべきじゃないかと、こういうことを目下検討中でございます。成案ができましたら、ぜひこれは国民的課題として国会の方にも御協力をいただきたいと思います。  それからもう一つ、刑、これは御承知のとおりハイジャック防止法等において、仮に殺傷したときには死刑の科刑がありますけれども、そうでない単なるハイジャックのような場合には、これは最高無期刑になっておるわけでございます。最近のこういう犯罪の状況を見まして、そういうことではこれは根絶を図ることはできない、かように私ども考えております。厳罰だけが目的ではありませんけれども、これほど世界人類にいわゆるあだをなす犯罪は相当重く罰すべきである。この問題についても改正すべき問題として目下検討中であります。できるだけ早く国会にお諮りをしたいと思っております。
  218. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 国内的な措置はもちろんでございますが、中近東諸国が国際条約に加入してないところに根本的な原因があると思います。過去においても何回かこの種の犯罪が起きたが、国連でこの問題を正式議題に取り上げ、各国に協力を求めたことがあるのかどうか。また国際条約の未加入国に積極的に働きかけを行ったかどうか、今後どうするつもりか、外務大臣にお尋ねいたします。
  219. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 御承知のように、ハイジャックの防止を目的といたしましたへーグの条約、これは国連百四十九カ国のうち、ほぼ半分ちょっとの七十八カ国しか入っておりません。そしてまた中近東諸国の多くはこれに入っておらないというのが現実でございます。従来はテロリズムに対します考え方が若干相違があったということが反映していると思いますけれども、国際的なこのハイジャックに対します世論、これを踏まえまして、国連の場におきましても、これにつきましてあらゆる国がこれに加盟するように努力を続けたいと思います。  なおまた、現在は、人質に対する防止の条約等につきまして、国連アドホック委員会が持たれております。これらの場を通じまして今後できる限りの努力をいたしたいと思います。
  220. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 鳩山外務大臣ね、この前、クアラルンプール事件があったんですよ。その後、日本政府はどういう措置を講じたんですか。
  221. 賀陽治憲

    説明員(賀陽治憲君) お答え申し上げます。  外務省の措置といたしましては、ただいま対策本部でお決めいただいております六項目というのがございますが、それに含まれております偽造旅券の鑑別の特別のマニュアルがございますが、これを従来はわが方の在外公館のみに配付しておりましたが、今回は全外国官憲にこれを徹底せしめるという措置を講じております。これが外務省の措置でございますが、国連関係のこれにつきましては、他の説明員から御答弁いたします。
  222. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 私は、どうもその外務省の措置が手ぬるいと思っているのは、これだけ世界的な大きな問題ですからね、当然、国連の場で正式議題に取り上げて各国に協力を求めるのが筋じゃないかと思うんで、どうも日本だけ幾ら国内法を整備してもこの問題は解決しないと思うから、ひとつ外務省でしっかりやっていただきたいと思う。外務大臣、もう一度お願いします。
  223. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 従来から、ただいま申し上げましたアドホック委員会が二つつくってあります、この場におきまして積極的な努力をいたしておりますけれども、いまこのような事件がまた再発したということでありますので、今後、一層全力を挙げて努力をいたしたいと思います。
  224. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 この際、もう二度とこういう事件が起きないように、国内的、国際的な取り決めをしっかりする緊急の必要があると思いますが、総理の御決意を承りたいと思います。
  225. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この問題は、お話しのとおりでございます。これはもうこういう事件が起きた際ですね、この要件を教訓としまして、早急の措置をとらなけりゃならぬ。早急というところが私は大事だと、こういうふうに考えております。時間が経過しますとどうもなおざりにこの処置がなってしまう、こういう傾向があるだろう、こういうふうに思いまして、とにかく今月中に諸対策、方針も全部決めます。もうすでに決めたものもあるというくらいのことでございますが、そして再びこのような事件が起こらないための、もう考え得るあらゆる努力をするということがこの事件処理に対する政府の責任である、こういう考えでございます。
  226. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 福田総理は、先日の参議院本会議代表質問の中で御答弁されました中で、明治時代は文明開化、富国強兵等の国家目標があったが、いま日本には国是がない、国家目標がないのが残念だと申されました。私も同感なんです。  いま日本は徳川時代のように鎖国もできないし、戦時中のように自給自足もできない。世界の中に生きるよりほかに日本が繁栄する道はないのであります。エゴでエコノミックアニマルでは日本の将来はございません。世界じゅうから信頼され尊敬される日本であるかどうか、これが日本民族の運命の分かれ道であります。貿易も経済も政治も教育も外交もすべてこの一点に帰着すると思うんです。それは道義日本の確立であると思います。道義日本を国是とし国家目標にしていただきたいと思いますが、総理のお考えを承りたいと思います。
  227. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 道義日本という御所見ですね、私は、もうこれは一〇〇%そのように考えておるわけであります。わが日本は、戦争後、平和国家という形で再生をしたわけでありますが、もう国際社会の中においてわが国が国際社会の信頼をかち取るという以外に本当に正しいわが国の生きる道というものはない、こういうふうに思うわけであります。  ところが、現実はどうかというと、やはりいま内藤さんがおっしゃられるように、エゴというか、そういうような風潮が非常に目につくわけであります。ハイジャックにいたしましても、人の命までこれを軽視する、そういうやっぱりエゴの風潮とつながりがあるのじゃないか、そのような感じもするわけでありますが、日本はもう自分だけで生きていくわけにはいきません、これは。諸外国が繁栄する、また諸外国が平和を保ち得る、そういう中でわが日本の平和もあり繁栄もあると、こういうことを深く考えるとき、とにかくエゴの国日本というようなことでなくて、本当に世界に奉仕する、その中でわが国は国際的な正しい高い評価を受けつつ生き延びる、こういう道を求むべきだと思います。  道義問題、いろいろ教育問題、まあ内藤さんは権威であられますが、教育の制度とかなんとかそういう問題もあるんです、あるんですけれども、それよりも何よりも先にやはり社会道義というか社会風潮といいますか、これを再建しなければいかぬと、私はそう考えております。
  228. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 次に、景気対策を中心に経済問題についてお尋ねします。  石油ショック以来の不況は従来の景気循環論では解決できない。今回の不況の直接の原因は何といっても石油価格が四倍に上がり、二千億ドルに近いオイルダラーが偏在して世界じゅうに十分還流しないところにあると思います。世界じゅうが不況であるから日本だけが景気がよくなるはずがない。それでも福田内閣のおかげで日本は米国、西独と並んでよい方だと思っております。  いま一つの原因は、戦後、開発途上国への先進諸国の経済援助の結果、その効果があらわれて世界経済の構造上の変化が起きてきたことだと思います。特に韓国、台湾、東南アジアに日本企業が著しく進出している現状では、国内に不況産業が出るのは私は当然だと思っております。高度成長経済のときには表に出なかった矛盾が、石油ショックを契機に、一度に噴き出した感じがするのであります。  それゆえに、総理は全治三カ年とおっしゃったが、私は少し短過ぎるのじゃないか。世界経済の再編成が進行中であるので、わが国も世界経済の波に乗りおくれないで、国内経済の再編成を行う必要があると思います。そのためにはある程度時間的に必要があるので、全治最低五カ年ぐらいはかかると思いますが、これを総理どういうふうにお考えになりますか。
  229. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 内藤さんがいま日本経済の現状を診断されまして、そしてこれは景気循環現象じゃない、これは構造的な変化だと、こういうふうにまあ御判断された、それは私はもう正しい判断だと、こういうふうに思います。私もそう見ておるのです。つまり、資源エネルギー有限時代というので世界が非常に変わってきた、その変わってきた事態からいろいろな現象が出てきておりますが、その象徴的な出来事は石油ショックである、こういうふうに見ておるわけでありますが、とにかくこの石油ショックに象徴されるような大きな世界の社会環境、経済環境の変化、その中の日本経済の今日の現状ではあるまいか、そのように私も見ておるわけであります。  さあ、それをさらに掘り下げて、いま今日この段階の日本経済はどういう状態にあるかということにつきましては、何といっても一番国の経済を見ていく上において大事なかなめ、これは国際収支です。次いで物価、それから景気、これは非常に大事な見どころでございます。  国際収支は、いま非常に――五十一年度をとりましょう、全治三カ年の最後の年でありますから。五十一年度におきましては四十七億ドルの黒字、それで世界からは黒字を減らせという空気が出てくるような情勢である。物価はどうかといいますれば、かなり鎮静化の傾向になってきておることは御承知のとおりであります。経済成長はどうだというと五・八%、これは世界第一の水準までいったわけで、私は、全治三カ年と言ったのはそれは間違っておるというような感じはいたしませんけれども、そういうふうに骨格の整備はできました、できましたけれども、しかし、いま日本の経済が安定しておるかというと、そうじゃない。それは何であるかというと、やっぱり内藤さんが御指摘になられるように、これは構造変化の問題があるわけです。つまり構造不況業種というものが相当多数ある。それは一方において非常に好況な産業はありますよ、ありまするけれども、そういう不況産業、これがいま日本の経済の足を引っ張っておる、それで好況感というようなものも出てこない、こういう状態だろうと、こういうふうに思うのです。  これを克服する、つまり構造不況産業、これが時代の変化に対応して、そして生き延びられるような形にする。それには当面カルテルなんかも使ったり、いろいろな手法を使って生産の調整、価格の調整もしなければならない。また同時に、場合によったら設備の廃棄までしなければならぬ産業もあるわけです。そういう際には雇用が非常に重要になってきますから、その雇用対策、これもにらんでおかなければならぬ。そういう対策をとるには、政府がいろいろな刺激というか援助、これもしなければならぬ。ならぬが、わが国の、そういう世界の資源エネルギー有限時代へ転換したその中で、その直撃的な影響を受ける産業がその新しい環境にどういうふうに順応できるか、順応させるか、これができれば、私は、大体日本の経済というものは安定感というものが出てくるだろうと思う。  そういうことまで考えてみますと、内藤教授がいま指摘いたしました全治五年説、これまた私は理由のあるところでございましょうと思います。
  230. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 そこで、これからの問題について、心構えについてお尋ねしたいんですが、過去の高度成長経済の夢を追うことをやめて、むだ遣いやぜいたくはやめる、物を大切に、節約勤勉な風潮を喚起すべきである。この世界的不況の中で日本、米国と並んで経済が一番安定していると言われている西独でも五%の成長率を四%に切り下げたと、先ほど総理はさらに三%とおっしゃったからね。私は、いままでのように消費は美徳だというような風潮はやめて、もっと日本人もまじめにならなければならぬと思うんですが、これについての総理のお答えをいただきたいと思います。
  231. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 午前中、小柳さんから御質問がありましたがね、産業計画懇談会、これが「貿易構造の改革」についての提言をしておる。その提言を見ますと、日本という国は人口が世界の三%だと、しかるに、いま資源を二五%使おうとしておる、そういう状態は許されない、こういうことを前提としていろんな献策をいたしておるわけなんですがね。わが日本の立場を考えてみますると、やっぱり私は資源をいま使い過ぎておる、こういうふうに思うんです。  私は、人間同士これは仲よくしなけりゃならぬ。自分も大事にしなけりゃならぬが、相手も大事にしなけりゃならぬ。そして相寄り相助けて初めて自分の人格の向上、完成というものが進められていくんだと、こういうふうに思いますが、同時に、私はそういう相互依存ということは人間同士だけじゃないと思うんです。地球上の万物の間にそういう関係があると思うんです。あるいは動植物に対しましてもそうじゃないかと思うんです。また、あらゆる自然に対しましても、やはり自然を大事にするという関係を無視して私は本当にいい社会というものは成り立たぬと思うんです。  そういうことを考えますと、基本的には、おっしゃるとおり、物を大事にいたしましょうというその姿勢というものはこれはもう世界じゅうでそれを考えなけりゃならぬことである、特に資源エネルギー有限時代となるとそうだろうと、こういうふうに思いますが、いまあんまりこの時点でこれを言いますと、いま不景気でしょう、一方において物の消費というものも出てこないと景気状態がよくならぬということで、いまちょっと非常に私としては苦悶の時代なんですが、とにかく基本的には内藤さんのおっしゃるとおりです。ただ、私ども、いまこの時点におきましては、あんまり節約いたしましょう、大事にいたしましょうと言うと、これがまたこの経済に図らざる影響もあろうかと思いまして、大変慎重な発言をしておるわけですが、基本的にはまさにお話しのとおりだと思います。
  232. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 構造不況産業については、過剰設備で笠利負担に困っているものに対しては三回の金利利下げを行って、近年にない低金利政策をとられた。これ以上はちょっと期待することは無理だと思うんです。そこで、私は、やっぱり過剰設備があることは事実なんだから、これを積極的に廃棄させるために政府は奨励金でも出したらどうかと思うんですが、これは通産大臣の御見解を承りたいと思います。――大蔵大臣
  233. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 構造不況事業、これが非常に苦しんでおるということが日本の今日の景気立ち直りに非常に障害といいますか、足を持って引いておるということはこれは決して見逃しておくことはできないと、さような意味におきまして政府は鋭意力を入れておりますが、いずれにいたしましても、この業界だとかあるいは事業だとかというものは、自助的と申しますか、自立的にひとつ大いにやろうというような意欲に燃えてもらうということがまず第一に私は大事なことだと思います。そういったような事業に対しましては今日まで政府はいろいろと突っかい棒も出してまいってきておりますが、今度の総合経済対策におきましてもいろんなことをやっておりますが、その中で財政金融でもってどういうことをやっておるか、いま大分おっしゃいましたが、財政金融でもってどういうことをやっておるかということから申し上げまして、後でお答え申したいと思います。  まず、財政金融の面におきましては、共同設備廃棄等により構造問題に取り組んでいる平電炉及び繊維の二業種につきましては、債務保証基金の造成または拡充ということを行うため、補正予算に必要な経費を計上したところでありまして、また政府系金融機関の企業貸し付け、いまおっしゃられました企業貸付金利の軽減を図るとしておるほか、中小企業振興事業団の設備共同廃棄事業融資や開発銀行、中小企業金融公庫等の事業転換融資の活用を行う等の措置を講ずることとしておりまして、いまの、おっしゃいました奨励金を出して構造不況業種の過剰設備の廃棄を促進すべきであるとの御提言は、いま申し上げましたようなことから、現段階においては、これを講ずることとして過剰設備の廃棄が促進される、いまのやり方でもって奨励金まで出さなくともこの目的が達成せられるのじゃなかろうかと、かように考えております。  以上、財政金融だけ。
  234. 田中龍夫

    ○国務大屋(田中龍夫君) お答えいたします。  内藤先生の奨励金のお話でございますが、これはまあ奨励金とうらはらみたいな話でありますけれども、現在抱えておりまする設備をこれをまずもってスクラップダウンしなきゃならぬと、そういうことのためにお金も要りますし、買い取らなきゃなりません。今度はまた、それをするためには同時に、現在使っておりまする方々に対しまするその設備の担保をこれを滌除しなきゃならぬ。それから従業員等々の転業の問題もありましょうし、そういうことから今度は運転資金を相当やはり貸し出さなければならない。こういうことで、御案内のとおりに政府系の三機関によりまする特別な融資のほかに、設備の買い取りに対しまする資金、あるいはまたその後のいまの担保を抜きましたり、さらに運転を続けていきます構造不況業種が必要な資金をこれまた別途貸し出しておるわけでございます。  でございますから、結局、あなたの言われます奨励という言葉は違いますけれども、国といたしましては相当きめ細かくいろんな融資制度なり保証制度をつくりまして、そうしてその目的を達成しようといたしております。つまり、言いますれば、一般中小企業も景気の非常な冷え込みで非常に困っているところへもってきまして、特にそういうふうな構造不況対象業種につきましては特段の手厚い処置を国としていたしたい、こういうふうな処置がただいまとられつつある次第でございます。
  235. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 次に、中小企業対策でありますが、わが国経済の構造上の再編成が進行してから中小企業が一番打撃を受けているのであります。特に、最近は一円高ドル安の為替相場の影響で輸出が伸び悩み、不況は深刻でございます。これには業種別のきめ細かい対策が必要であると思いますが、信用保証の拡充、連鎖倒産防止対策、事業転換の円滑な推進、為替変動対策等、中小企業対策の抜本的強化拡充が必要であると思いますが、これは通産大臣いかがですか。
  236. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えいたします。  ただいま申されましたように、日本経済の何といいましても九十何%というものを占めております中小企業、直接の企業体のみならず、その従業員等を加えますれば、実に今日の総人口の七割以上に及ぶ関係者でございます。これをこの非常な不況の苦しみの中から救済する、助けるということは、これはもう経済問題と同時に社会問題でもあり、政治問題でございます。  そういうことで、先ほど来申しておりまするような――いま先生がよくもう御勉強なすっていらっしゃいますから、逐条申し上げる必要はございませんけれども、そういうきめの細かい多くの措置を総合的にとりまして、そうして少しでも立ち上がるように、また今度は下請という問題もございまして、その下請を何とか下請遅延防止法等によりまして救っていかなきゃならない。それから倒産をすることに対しましては、不況業種の指定、さらに倒産防止、今度は倒産等のありました業体にいろいろと関係を持ちます中小企業、これはまたその倒産の関連企業といたしまして倒産防止の措置を講じ、同時にまた救済処置もいたしております。  なお、もし必要なれば、詳細のことは担当政府委員がおりますから、詳しく御説明をします。
  237. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 構造不況産業に関連して過剰雇用の問題でございますが、ただいま就業人口は一億一千万の半分五千四百万、男三千三百万、女二千四百万、失業者は百六万で約二%となっております。近年著しく機械化が進み省力化した今日、労働力が余るのは私当然だと思うんです。戦前の大家族制度の時代では、一家の戸主が労働に従事して家族を養っていた。核家族時代になり、高度成長経済の波に乗り、ネコの手もかりたいほど労働力が不足したため夫婦共かせぎの傾向がふえ、労働人口が画期的に増大いたしました。安定成長の時代になってこれが困難になったということも、これも事実だと思うんです。  この際、私は、雇用問題も根本的に再検討する時期が到来したように思うんです。民間労働者はもちろん、国家公務員、地方公務員の定年制の問題も少し真剣に考える時期が来たのではなかろうかと思うんです。過剰雇用の問題について何か抜本的対策を樹立する必要があると思いますが、労働大臣はどうお考えですか。
  238. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 私は、わが国の労働人口というものがこれからずっと将来にわたって過剰基調が続くものだと、こう断定しないんであります。現在の雇用問題は、先ほども小柳さんにお答えをいたしましたが、一つは、景気変動によって生じた過剰雇用、これはわが国独特の雇用慣行、いわゆる終身雇用制度、それからもう一つは雇調金制度、こういうものによって首を切られない、レイオフされないでとめられておった過剰雇用であります。もう一つは、先ほどから問題になっておる構造不況から生じてくる、これからまた生じてくるであろう雇用問題でございます。  これを込みで全体で見ますと、昭和四十九年から五十年にかけましては鉱工業生産指数がよく落ちました。それにもかかわらず雇用指数はそれほど落ちなかったのであります。したがって、そこに過剰雇用感が非常に強く起こりました。ところが、五十年から五十一年にかけては、今度は鉱工業生産指数が若干伸びまして、四十九年に戻ってそれを超えたのでありますが、しかし、雇用指数は依然として減少しております。その結果として労働の生産性が七・八%ほど上がっているわけであります。したがって過剰雇用感というものは全体としてはかなり薄れているんではないか。  その一つのあらわれといたしまして、昨年五十一年度で一年間に就業人口が六十八万ほどふえました。ことしは上半期だけで六十二万ほど雇用人口がふえているわけであります。ただ、問題はその中身でございまして、その中で二次産業は依然として製造業は減って、そうして三次産業がそれを補っていまのような数字になっているわけであります。五十年代の前期経済計画の中でわれわれはどういう数字を見ていままできたかと申しますと、五十年度実数でこれは五千百七十八万、そのうち第三次が二千六百九十七万、第二次が千八百二十三万、一次が六百五十八万。これが五十五年度には第一次は百万人余り減ると思います。そして第二次は若干ふえる、それから第三次はかなりふえる、そういうことが予想されております。私自身の感触としましては、これ以上、この数字よりは第三次が多くなり、第二次はこんなにふえないんじゃないかと、こう考えております。その第三次の中で消費生活関連の部門がふえておるわけであります。  それからもう一つは、わが国がまだ諸外国に比べてやらなきゃならぬことが幾つかございます。それは労働時間の短縮の問題であります。週休二日制の問題であります。週休二日制も店のオープンを減らして、そして週休二日制をしたんでは雇用の増大と直接結びつかないんでありますが、店は店で同じように闘いといて、一人当たりの週休二日制を実行してまいりますと雇用がふえていくわけであります。それから、年次有給休暇の完全実施、そういう方向によって社会の連帯と申しますか、乏しきを分かち合うと申しましょうか、そういうような施策の展開によって、私は、将来にわたってまで過剰雇用が必然的に続くんだとは考えておりません。
  239. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 労働大臣はふえる方をおっしゃったけれども、現在百六万の失業者があると言われておるんですがね、その失業者とふえる分とをやって、やっぱり失業者の方が多いんじゃないでしょうか。
  240. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 失業者の失業率、これは一・三%くらいであれば完全雇用と言っていいんじゃないかと思います。というのは、労働力の移動がありますから。いまは季節調整をいたしまして一・九%くらいであります。一・三%になったときの実数は、就業人口自身がふえますから、実数もふえまして、七、八十万くらいじゃなかろうかと、こう思うんです。そういう点は補い得られる数字だと私どもは考えます。  それからもう一つは、これも余り時間がたたないうちに皆さん方にお渡しできると思いますが、各職種別の求人倍率、これは非常にまちまちでありまして、いわゆる技能労働力の不足が七十万から七十五万くらいあると言われております。そこで、そういう方向に向けての職業訓練を行っていきますと、両方相まって一・三%程度の失業率にとどめ得られるようになるんではなかろうか、私はこう考えておる次第であります。
  241. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 労働大臣の御説明を伺って私も安心したんですがね。ひとつ技能労働者が不足しているそうですから、そちらの方に向けていただいて、ひとつ労働雇用不安を解消していただきたいと思うんです。  特に、私は、先ほど大学出の新規卒業者の話がありましたが、やっぱり新規卒業者はこれからの日本の産業を支える人でございますから、これは何としても確保しなきゃいかぬと思うんですが、先ほど労働大臣は大丈夫だとおっしゃったんだが、その点もう一度はっきり言っていただきたいと思います。
  242. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 大丈夫だとは決して申しません、非常に心配をいたしてはおります。しかし、高等学校と中学校で就職される人たちに対する求人は前年並みでございますし、就職希望者を相当数上回っております。大学を卒業する人たちについてでありますが、これは第一義的には文部省、その当該学校の責任であることはよく御承知だと思いますが、私どももほうっておくわけにいきませんからいろいろ調べております。男女合わせまして、本年の卒業生の中で、自分の家へ帰るという人を除いて就職希望者が約二十七万人でございます。求人の数は全体としてはそれを上回っております。おりますが、厄介なことには、就職希望者は千人以上の企業、あるいは一部、二部上場企業、これを希望いたします。それだけに、千人以上に限定をいたしますと、みんながそこへ殺到しますと、六人に一人ぐらいしか就職できません。  それから、もう一つは職種であります。これはほとんどが管理事務部門を志向いたします。ところが管理事務部門というのは、企業によって違いますが、平均いたしますとせいぜい二五%ぐらい。そこへ約四〇%ぐらいの卒業生が殺到いたしますから、そこで摩擦が生じます。しかし五百人以下のいわゆる中堅企業、これの求人意欲は非常に旺盛でありますので、事業規模においてはその辺をねらい、それから職種においてはサービスとか、あるいはセールスをねらってまいりますならば、つまり賢明に学生並びに学校が対応してくれるならば数字の上では合いますと、こう申し上げたわけでございます。  しかし、やっぱり教育内容というものも社会の要望に合うように考えていただくことを労働省としては熱望いたす次第であります。
  243. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 次に、物価問題でありますが、一部の生鮮食料品を除いて物価は安定していると思います。特に卸売物価が横ばいなのが強みでございます。円高による輸入産品の小売価格の引き下げを行い、消費者に還元していただきたいと思います。このことが物価の安定に大変役に立つと思います。特に通産省は輸入産品の価格引き下げにもっと積極的に行政指導を行っていただきたいと思います。特に大量にわが国が輸入しておるところの石油製品の価格の引き下げをやっていただきますと、これは国民経済にとって大変幸せと思いますが、通産大臣の御見解を承ります。
  244. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えいたします。  ただいま御指摘になりました石油製品等、為替がこういうふうになりまして円高になってまいった、それに伴いまする差益の還元という問題、こういう点におきましては、いろいろと数ある中におきましても大宗であろうと思うのでありますが、いまの石油価格の問題はなかなかむずかしい問題でございまして、今日でも私どもは一番この価格差の問題について、これを何とかして国民全体に均てんしなきゃいかぬ。ことに、石油のみならず全体の為替の差益というものについて、これを国民経済の中にぜひとも物価対策としても考えたい、こういうことで、いろいろと努力いたしております。  朝日新聞でございましたかNHKでありましたか、昨日の朝の報道によりまして、十円という価格が開きますと電力関係だけでも千三有徳というふうな益金が出るじゃないかというふうな、算術計算的なあれもございました。それは一つの例としての計算でございますが、実際におきましては、各方面に何とか物価を下げるように、総理の御指導のもとに、内閣といたしましては先般来鋭意物価対策として努力をいたしております。  それから、物価担当富会議を企画庁のもとに一昨日開きまして、そしてこれらの問題を討議いたすと同時に、私の方の所管におきましても、輸入業あるいはまた流通業に従事いたしておりまする団体の元締めと申しますか、そういうところに通達を出しまして、下部団体に対しまして、今回の差益の問題につきまして、これを十分に反映するように指示を通達いたしたような次第でございます。
  245. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 円高ドル安は、輸入を促進する反面、輸出競争力が弱まり黒字の解消には役立つと思いますが、輸出産業が伸び悩むとまた国内不況を増大する危険があるので、急激な変化は好ましくない。円高ドル安の原因は国際収支が大幅に黒字だからだ。この際、石油、非鉄金属の備蓄の拡充はもちろん、ウラン鉱石の輸入促進に努力する必要があると思いますが、この点はどうなっておりますか、通産大臣
  246. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいま御指摘の今回の措置に対しまして、われわれとしましては、この機会にある程度まで為替の関係に貢献しなきゃならぬということで、輸出の抑制と同時に輸入の振興をしなきゃならぬ、そういうことで、銘柄といたしましては、石油の備蓄をこの際ぜひ大量に行いたい。これはいつも申し上げておるところでありますが、五十四年の九十日備蓄という目標がございます。現在タンクその他の工事の施行が思わしくございませんので、なかなか備蓄も容易でございませんけれども、この機会にあらゆる努力を払いまして大量の石油の買い付けをいたしたい。それからまた、原子力の関係のウランの購入も、アメリカの方のERDAの関係もございますけれども、交渉を遂げまして、できるだけひとつ鉱石を、日本に持ってこなくても向こうに備蓄しておいてもいいんじゃないかとさえ考えておるような次第でありまして、そのほかあらゆる問題をいま探っておりまして、当面、この間公にいたしました、総理が仰せられました約七億、この程度は十分に完遂できるし、同時にこれだけではなく、今後いろんな問題につきましてこの際にいろいろ備蓄その他の黒字解消の問題に努力いたすつもりでございます。  反面、また輸出の抑制の問題につきましては、これは鉄鋼を初めいろんな問題がございますが、日米間におきましては、この問題についての促進の委員会を両国でつくりまして、担当者同士いろいろと検討をして、この対米の輸出のある程度調整をいたしてまいりたいと思っております。これは日米関係だけでなく、先般ジェンキンズが来ましたときにも、ECの関係におきましても同様な処置をとりたいというので委員会をつくることにいたしております。
  247. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 通産大臣、もっと大幅に輸入の促進と備蓄とをやっていただきたいと思いますが、さらに貿易の黒字収入を東南アジアに振り向けて、日本からの機械やプラント等の輸入拡大資金に振り向ければ日本の産業も一段と振興すると思います。特に開発途上国への経済援助のGNPに占める割合が日本は国際的に非常に低く、世界じゅうから非難されている今日、日本はドルの黒字を活用して、この際東南アジア諸国に積極的に援助の手を差し伸べるべきだと思います。特に先般福田総理がASEAN外交をおやりになったわけですから、その福田総理のASEAN外交を実りあらしめるためにもこれが積極的に活用をしていただきたいと思いますが、総理の御所信を承りたいと思います。
  248. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま円対策は、これはもう差し迫った非常に重大な問題と心得ておりまして、ただいま通産大臣からお話し申し上げましたが、まあ緊急輸入、これを大幅にひとつやっていきたいと思っております。同時に、経常収支に貢献するというわけじゃありませんけれども、外貨保有高を減少させるという効果を持つ大きな問題があるんです。一つは外債ですね、これを日本の円市場において促進をすると、こういう問題。それからもう一つの問題が、内藤さんのいまおっしゃられた対外経済協力、こういう問題でございます。対外経済協力につきましては、これは財政負担が伴うものですからね、そう大幅なことがいま緊急対策というような形ではできないんでございまするけれども、この間、お話がありましたようにASEANに私は行ってきた。ビルマにも行ってまいりました。そういう際に、このような緊急事態というようなたてまえでなくて、いろんな約束をいたしてきておるわけでございます。それは的確にまた速やかに実行いたしたいと、こういうふうに考えております。同時に、いまお話がありましたが、政府開発援助の比率が非常にわが日本というものは悪いと、こういうようなお話でございますが、これは確かにそういう状態になっておるんです。しかしわが国の世界における責任ということを考えますと、この状態は改善しなきゃならぬと、こういうふうに考えまして、これは全体として促進基調でやっていきたいと、こういうふうに考えております。
  249. 宮田輝

    ○宮田輝君 関連。
  250. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 関連質問を許します。
  251. 宮田輝

    ○宮田輝君 私、この前の国会で、ここで政府に強く要望を申し上げたことがあるわけでございます。それは外交といい、いま話題に上がっております経済といい、土台は人間関係ではなかろうか。つまりお互いに理解し合うことが肝心です。文化とか、あるいは国際文化交流について、政府予算面だけじゃなくて、いろんな面でもっともっと配慮されるようにと、こう要望申し上げたわけでございますけれども、総理が先般ASEAN諸国を歴訪されたときにも、この日本とASEAN諸国のために新しい一本の木を植えたんだと、こういうような発言がございました。これは大事なことだと思うのでございます。たとえば、あのフィリピンのマルコス大統領と一緒に、マニラで大きなクスノキになるその苗を植えたということを承知しておりますけれども、これは単にクスノキではなくて、アジアに通う心を植えたことだと私は理解するわけでございます。で、物の交流あるいは経済交流ということは大事なことだということはよくわかっているんですけれども、心の交流をいまこそ大事に考えたい、こう思うわけでございます。人類の生存繁栄の大もとは人々の相互理解であり、そのためには心ある本当の国と国との交流が行われなくてはならないと思います。  そこで、まず総理に国際文化交流、特に東南アジアの諸国との交流について基本的な考え方をお伺いしたい。またASEANの諸国は、特にわが国の対応の仕方を厳しく見ていると思うのです。ですから積極的な態度が要求されると思いますので、総理の決意のほどもあわせてお伺い申し上げます。
  252. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国は、どこの国とでもそうでありますが、やっぱり信頼関係を持って、その上に立って協力をするという関係を結びませんと、わが国自体も立っていかない関係にあると思うのです。そういう中で、特にわが国はアジアの諸国との間にその正しい関係を打ち立てるということは、もう地理的に、また文化的に、あるいは人類的に特別の関係にあるところのアジア諸国の一員としてわが国がやってのけなきゃならぬことであると、こういうふうに考えております。そういうふうに考えておりますが、東南アジアとの関係は、戦後大変緊密になってきたんです。なってきましたけれども、これを反省してみますと、どうも経済関係に偏り過ぎている。物と金です。これが東南アジアとわが国を結びつけておると、こういうふうに見られてならない。この関係というもの、これも私は悪い関係であるとは思いませんよ。思いませんけれども、それはいま宮田さんがおっしゃられるように、その背景というか、根っこにやっぱり心と心の通い合い、触れ合いというものがあっての物と金でなければ、これは長続きする関係には発展しない。そういうふうに考えまして、まあひとつアジア諸国間の関係というものを、それを物と金の関係ということでなくて、心の触れ合うそういう中における理解と協調、そういう関係にひとつつくり直そうじゃないかということをずっと呼びかけてきたんです。  私は、この呼びかけに対しましては、訪問先の国々は大変よく理解してくれたと思うのです。ただ、日本とこれらの国々との理解は指導者間の理解なんです。これを日本国民、またアジアの国々の国民、そういう間の国民次元にまで広げていかぬと、また本当の意味の理解と協調というものが充実した形にはならぬだろう、こういうふうに思うのです。そういう意味で私は一本の苗を植えました。これから先この苗を育てていかなけりゃならぬということを強調しておりますが、それはその政府指導者たちの間の関係国民次元のものに広げていきたいということに私は重点を置いておるわけです。そういう意味から申しますと、この文化交流、こういうことも非常に大事でありまして、それで私はまあいろいろこの文化交流面、特にアジアの諸国との間では、これは強化しなけりゃならぬというふうに考え、そういう私の考え方を実現をするというために努力をしてきております。まあ交流基金なんていう、国際交流基金なんというものも私の提唱でできたわけでございますが、とにかく、私は日本とアジアの諸国ばかりじゃない、特にASEANという国々が東南アジアに出てきた。ASEANの国々相互間における心と心の交流というものもあってしかるべきじゃないかと、こういうふうに思うのです。で、いまASEANという体制ができたけれども、これは主として経済関係です。これをもう少し心と心という、そういう関係に基礎を置いたものにされたらどうですかというアドバイスもしたんです。もしそういう企画があれば、そうしてASEANの国国が求めるならば、わが国はASEANの国々の間の文化交流というものにも財政上の援助をしてもよろしゅうございますよと、これまで言っておるわけであります。そういう考え方のもとに一つ一つ問題を解決していきたい。特にインドネシアあたりでは、あるいはタイあたりでは文化会館、こういうようなものをつくりたいというようなお話がありますが、これなんか、私はもう日本はこれに喜んで応ずべき立場にある、こういうふうに考えております。
  253. 宮田輝

    ○宮田輝君 総理のお話でも、つまり経済交流の一つの材料として文化交流をするんだというような感じは全然ございません。つまり大もとが人と人との理解し合う関係である。だからこれを大事に育てていきたいというふうに私は受け取らせていただきました。  そこで、いま交流基金という話もございましたけれども、国際交流基金を含めて外務大臣から、そして文部大臣からお伺いをしたいのでございますけれども、国際文化交流について国はどういう役割りを果たし、たとえば予算面ではどこまで配慮すべきか、そして次年度以降どういう計画をお持ちなのか明かにしていただいて、私の質問を終えたいと思います。
  254. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 国際文化交流基金、ジャパン・ファンドと言われておりますけれども、これは福田総理が外務大臣のころお始めになりまして、いま基金が三百五十億円までなったわけでありますが、来年はこの基金に対しましてさらにいま五十億円の増額を要求しております。先ほど来いろいろお話がございましたが、この文化交流につきましていまいろいろお話がありましたが、私は特にまた心と心の交流という意味で、非常に大きな機能を果たしておるものが技術協力の部面と、それから青年協力隊の派遣事業であろうと思います。これらの方、特に青年協力隊の方々は相当田舎の農村まで入り込んで、現地の人と本当に一緒になって、月たしか百九十ドルだと思いますが、これらの非常にわずかの待遇でありますけれども、現地の人と同じ生活をしておるという点で、大変これはそういう意味で成果を上げておると思いますし、また技術協力で派遣をしております技術者の方々、これはもうお医者さんもありますし、各部門いろんな方々、看護婦さんもあります。各部面にわたりまして現地の人と一緒になって生活をいたしておるという面で、これらの面につきましても来年は大いに力を入れてまいりたいと考えております。
  255. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 文部省として実施しております国際交流の仕事の一つの重要な面は、御指摘のとおりの留学生の交換でございますけれども、現在日本には五千六百七十一名の留学生がおりまして、そのうち国費留学生が千三十七人、八〇%がアジア地域からでございます。今後ともに特にアジア地域には配慮をしてやってまいりたいと、こう考えております。なお、私費留学生につきましては、大学における研究条件、教育条件の整備とともに、医療費の八割補助という制度等も配意しまして、勉強がしやすいような条件をつくるために努力いたしておりますが、このほか宿舎とか日本語教育だとか、それから家庭との交流とか、そういったことにも配慮いたしております。それからユネスコを通ずる多国間教育では、アジア地域の教育革新計画、アジア文化センター等にも当然これは意を用いてやっているわけでありますが、特に有機的な研究協力を促進するために、総理の東南アジア外遊のときにいろいろなお話し合いが現地となされまして、その結果わが国でも拠点大学構想というのをつくりまして、その大学の国内の組織の中に拠点を設けて、そこを窓口により一層の交流の推進をいたしたい。また東南アジアからの留学生の人々に、学位取得のために新しい指導方法を導入してやっていかなければならない、こういったことをいま鋭意進行中でございます。
  256. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 日本は最近、経済的には世界が驚くほど繁栄したが、先進諸国に比べて社会資本のおくれが特に目立っている。今度の補正の特色の一つは公共事業の拡充であるが、住宅、上下水道等、国民生活に密着した部分の需要の喚起も大切であるが、同時に高速道路、飛行場の建設に努力していただきたい。私は、二十一世紀に対処するため、日本列島の根本的改造が必要であると思う。三全総が決定されたが、貨物輸送は高速道路、人間もバスや自動車による高速道路、長距離なら飛行機を利用するようになったのであります。新幹線も遠距離は時代おくれになるときが私はいつか来ると思う。国鉄の従来のような輸送の独占時代は終わりまして、高速道路と飛行機が時代の趨勢になると思う。国鉄は明治時代の郷愁にとらわれないで、新時代に即応した抜本的対策を樹立する必要があると思います。新幹線と山手線、高崎線以外は貨物も旅客も全部赤字であると言われている。運賃法の改正も一つの解決策ではあるが、運賃の改正ぐらいで解決できるようななまやさしい問題ではないんじゃないかと思うんです。先ほど運輸大臣三つの柱をおっしゃったけれども、私はどうも三つの柱だけでいいんだろうかという疑問を持っている。たとえば、もうほとんど人が乗らないようなところはバスにかえるとか、在来線について根本的に再検討しなきゃいかぬじゃないかという気もするのですが、運輸大臣にさっきの三つの柱以外に何か根本的な対策があったらお尋ねしたいと思う。
  257. 田村元

    国務大臣(田村元君) いまおっしゃったのが、それも経営努力の中に入るわけですね。たとえば赤字ローカル線、これをどうするか、これは運輸政策審議会から中間報告が出て、答申ということになってまいります。いまわれわれが漏れ承っておりますところによれば、地元の選択を待とう、地元と国鉄がお互いに協議をする、そして残してほしいというなら特別料金という制度もあろう、あるいはやめて、それをりっぱな道路にしてそこへバスを走らす手もあろう、あるいはすぐ近所の道路をもっと整備して、そして私鉄のバス会社のバスを走らすという方法もあろう、あるいはもうすっかりやめてしまうという方法もあろう、まあいろんなこと言われている。要するに一種の合理化なんですね。でありますから、私はさっきの三本の柱ですべてを大体含んでおると思います。その合理化の中に、いわゆる徹底した経営努力の中に、そのような合理化も含めて、そして総合的な観点から国鉄を再建していく。でありますから、これ以上新幹線をつくるな、あるいは在来線といいますか、これ以上もう地方線もつくるなという御意見もごもっとも、一つの私はそれは御意見だと思う。しかしながら、政策面からこれをやらなきゃならぬ場合もある。そのときには国がどのように国鉄を保護するか、あるいは地方がどのように責任を分担するかというような問題もあります。単に工事費だけの補助をするだけで国鉄は助かるものじゃありません。あとの赤字をどうするか、運営面のことも考えてやらなきゃならぬ。でありますから、私は常日ごろよく言うんでありますが、まず政治が国鉄に対して温かい愛情と理解と協力を示すことだと、こういうことを常に申しておるんでありますが、そこいらを踏まえてどうぞよろしくお願いをいたします。
  258. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 次に、高速道路、飛行場の件でありますが、山陽線の国道二号線は車の渋滞で貨物運搬が非常に停滞しております。中国縦貫道が完成すれば、九州からの遠距離の貨物輸送は一段と促進され、国道二号線の渋滞はなくなるのみならず、中国、九州地方の開発も画期的に進み、都市の過剰人口の地方分散も定着すると思う。中国縦貫道はいつ完成するのかお尋ねをしたい。これは建設大臣
  259. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 国土の均衡ある発展を図る必要がある、これは申し上げるまでもなく、先ほど内藤先生からもお話があったように、二十一世紀に先駆けて道路網の整備をしていかなきゃならぬ、こういうような関係でございますので、大体第八次の道路整備五カ年計画というのを立てまして、もって二十八兆五千億という膨大な予算を立てて、そして来年度以後取り組んでまいりたいと、こういうふうな考え方を持っておるところでございますが、しかし、何といっても昨今の経済の実体の上に立って今後方向づけをさらにしていかなきゃならぬ、そう思います。  お話しの高速道路、自動車の方でございますが、大体三千五百キロメートルが目標でございますが、五十二年度末までには二千二百キロ供用をしていきたいと、こういうふうに考えております。
  260. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 特に、飛行機は遠距離の人の輸送には重要な交通機関である。九州はジェットが飛ぶが、東北、北陸、中国地方はほとんどジェットが飛ばない、プロペラ機が主であります。これからは人間の長距離輸送はジェット飛行機が原則になると思う。騒音防止等なかなかやかましい問題はあるが、東北地方や中国山脈の山の中で人けの少ないところなり、海岸の埋め立てを行ってジェット機の発着する飛行場の建設を急ぐべきであると思うが、これは運輸大臣、いかがですか。
  261. 田村元

    国務大臣(田村元君) いまわれわれは五カ年計画で全国のネットワークを大体策定してやっております。特に飛行場は進めなけりゃなりません。YS11の寿命ももうあと五年か十年でしょう。STOLの――いわゆるSTOLというのは短距離滑走路で済む飛行機ですけれども、これのすばらしいものが開発されるのにも時間かかりましょう。でありますから、とりあえずは従来の飛行機に頼らなければならない。そういうこともございまして、私どもはこれを進めなければならないと思っております。ただ問題は、飛行場をつくる、あるいは拡張するということになりますと、どうしても地域住民との間にトラブルが起こりがちであります。でありますから、いま流行語になっておりますが、環境アセスメントというものも十分やらなきゃなりませんでしょう。われわれはいままでの苦い経験を持っております。この経験を生かして、そして慎重に急がば回れの大鉄則を踏み外すことなく急いでいかなきゃならぬということでございましょう。いずれにしてもうんとやるつもりでございます。
  262. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 プロペラ機の時代はもう過ぎたと思うんですね。町中から飛行場までの専用の高速道路を用意すれば、運輸大臣、心配ないと思うんですね。九州の鹿児島、熊本、長崎は私は大変いい参考になると思うんで、九州は日本じゅうで一番便利になったと思うんです。景気回復も大事だが、公共事業大幅拡大のせっかくの機会だから、二十一世紀を先取りする高速縦貫道の完成はもちろん、横断道の建設、ジェットの飛行場建設を計画的に行い、完成時期を早めていただきたいと思いますが、これは国土庁長官、どうなってますか。
  263. 田澤吉郎

    国務大臣(田澤吉郎君) お答えいたします。  国土の一〇%にすぎない三大都市圏に人口の四五%が生活をしている。このことがやはり水資源だとか、あるいは食糧、エネルギーあるいは住宅問題等に深刻度を加えているわけでございますから、やはり大都市圏の整備をまず図る、それから地方の振興を図らなければならないということから、私たちは第三次全国総合開発計画をいま策定している段階でございます。その中で人口定住化構想を開発の方式にしているわけでございます。これを実現するためには、何としてもやはり地方に人口を定住するための雇用の場を与えなければならないということは、これは当然でございますが、そのためには教育、文化、医療等を見直すと同時に、ただいま先生が御指摘のように、幹線交通体系に思い切ったやはり力を入れてまいりませんというと、魅力ある地方というものが、定住構想がつくられるような地方ができてまいりませんので、そういう点でいわゆる第三次総合開発計画がつくられているということを御理解いただきたいと思うのでございます。
  264. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 最後に、専管水域二百海里時代を迎えたわが国漁業の現状と将来の対策についてお尋ねします。  海洋国日本は、従来世界じゅう至るところに漁業の手を差し伸べてきたが、米国、カナダ、豪州、ニュージーランド、ソ連等の専管水域二百海里のために完全に包囲され、苦境に立たされ、漁民も非常に困っているのであります。わが国漁業の現状と将来の見通し及び今後の対策について農林大臣に承ります。
  265. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいま内藤先生御指摘のように、急速な二百海里時代の到来を迎えまして、わが国の漁業は重大な転換期に立たされております。政府としては強力な漁業外交を展開をいたしまして、できるだけ今日までの漁業実績を確保するということに努力をいたしております。  また、それにいたしましても、どうしても漁獲量の削減は避けて通れないと、こういうことでございますので、日本列島周辺の沿岸沖合いの漁場を積極的に開発整備をしまして、資源をふやし、海外で失う部分をこれで補っていく。幸いにして日本周辺の二百海里水域というのは、世界で六番目の大きな海域であり、暖流寒流が交錯するということで、暖流性の魚も寒流性の魚もとれる非常な好漁場でございます。今後私どもはこの沿岸漁場の積極的な開発整備、さらに進んで栽培漁業等を振興して、国民に魚肉たん白の供給については御不安を与えないように最善の努力を払ってまいりたい。また多獲性の魚族の高度利用を図る、こういう点にも今後努力をしてまいる所存でございます。
  266. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 経済問題についてはその程度にいたしまして、次に今後の景気対策に非常に影響のある日中平和友好条約の問題についてお尋ねします。  福田総理は、日中平和条約は日中共同声明を忠実に履行し、双方の満足のいく形で一日も早く締結したいとのお考えのようでありますが、中国側は、日中共同声明を忠実に履行すれば問題はないと言っております。総理のおっしゃる日中双方が満足のいく形とはどういう意味なんでしょうか、お尋ねします。
  267. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日中間の基本的な問題は、共同声明ですね、これにもう整理されておるわけです。いま残っておる問題は、日中平和友好条約を締結すると、この日中平和友好条約条約でありまするから、その効力というものはずっと長く日中両国を拘束するものでございますが、日中という関係はとにかく隣国でありまするし、文化的にも歴史的にもまた経済的にも非常に深い関係のあった国であり、これからもなければならぬ国ですから、長続きする条約、つまり両国が本当にいい条約ができたなといって評価できるようなものにいたしたいと、こういうふうに考えておるわけです。三木内閣のとき、宮澤外務大臣とそれから喬冠華外交部長条約問題で話し合いをいたしましたが、これが中途でとぎれて今日に至っておるわけなんです。私は常々申し上げておるとおり、とにかく早くこの条約は結びたい、こういうふうに思っております。ただ私の決断だけで、もう一秒で決まるというものではないんです。これは両国で条文をよく練り合わして、そうしていい条約だということに持っていかないといかぬだろう、こういうふうに考えております。私も静かにその方向でいろいろ手順を進めておると、このように御理解願います。
  268. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 総理のお考えはよくわかりました。  ASEAN外交を進める上にも、インドシナ三国との国交を回復する上にも、私は中国との友好が必要であると思っております。特に中国石油ショックの影響を受けていない国でもあるから、欧米諸国と異なって貿易の拡大が今後期待されると思っております。私は九月上旬、ちょうど毛沢東の一周忌に際し、超党派訪中団の一員として中国へ行けということで行ってまいった。昔から一衣帯水と言われた隣国、総理のおっしゃる隣国でございますが、なるほど飛行機で北京まで四時間、上海まで二時間半、近いのが何よりの長所だと思っております。第一回は日中国交回復前、一九七〇年の文化大革命の直後でした。文化大革命とは何かと聞いたら、人間改造精神革命だと言うんでね。昔はハエや紙くずがいっぱい、こじきがごろごろしており、どろぼう市が栄えるほど盗難があり、犬とシナ人入るべからずの立て札を立てられ、腐敗堕落していたと言われる中国が完全に立ち直っているのに私もちょっと驚いたんですが、その原動力が毛語録である。仏教の五戒、うそをつくな、物を盗むな、人を殺すなから始まって自力更生、刻苦奮闘、勤倹建国、最後が人民のために服務する、人民のために奉仕することが毛沢東最高指示であった。この国では毛沢東は絶対崇拝、絶対信仰で神格化されていたので、毛語録は至上命令であり、権威があった。昔の教育勅語以上にみんなが拳々服膺したから教育の成果が上がったんだろうと。  私は、教育の偉大さに実は驚いたわけですが、今度は文化大革命の終結宣言を行った直後でした。軍事訓練や勤労奉仕は姿を消しました。防空壕掘りも終わりまして、防空壕は外からは全然見えない。前回と比較して大変伸び伸びとして自由な雰囲気になっているなという印象を強く受けました。服装も以前は工人服一色であったが、今回は質素だが色とりどりが目立つようになった。毛沢東一周忌の記念演奏会に招かれたが、歌って踊って実に楽しかった。  師範大学を見学したが、大学から幼稚園まで毛沢東の教えが中心であることには変わりはなかったが、どの教室にも毛沢東の写真が飾られていた。学校のみならず、あらゆる職場、駅等の公共施設はもちろん、農家の各家庭まで毛沢東の写真が飾られているのには実は驚いた。八億の人民が毛沢東を中心に団結する姿はうらやましくもあり、頼もしい気もした。四人組の追放と鄧小平氏の復活で華国鋒体制は一段と安定してきたように思われました。特に農業、工業、国防、科学技術の四つの近代化を国是として決定しているので、日中貿易の前途は明るいように思いました。特に、中国には日本が欲しい石油石炭の地下資源が豊富であると聞いております。  出発前に経団連の土光会長にお目にかかり、わが国経済界の実情をお尋ねしましたら、欧米との貿易はもう頭打ちだ、これからは中国に期待している。四つの近代化のほかに八億の人民がおるから、日中平和条約が締結されると前途は非常に明るいんだと、一日も早く、平和条約の締結を望むとのことでありました。  国交回復以来、海運、航空、漁業、貿易と四つの懸案が実務協定ができ上がって、解決ができないのがいまの平和条約だけなわけで、これがまあむずかしいわけなんです。しかし、これができないとやっぱり日中貿易の進展も多くを期待できないんではなかろうか。五年前に田中元総理の日中国交回復のときは、最大の懸案である台湾との断交があったが、台湾問題はいろいろ問題が残されているようでございますが、大筋においてはもう解決済みではないかという気もするんです。  日中国交回復に際し、日本軍が多年にわたり損害を与えた上に、一千百万の人命を奪ったのに対し、中国は一文の損害賠償も要求しなかった。私は、これは世界史上でも珍らしいことだと思っております。  国内的には対ソ関係を考慮して、確かに慎重論もございます。しかし、北方領土の返還なくしては日ソ平和条約は私はできないと思うんで、日ソ平和条約の見込みはいま全く立っていないんではないでしょうか。日中平和条約と日ソ平和条約とは私は全く別個の問題で、ソ連が漁業問題や北方領土で日中平和条約を牽制するなら、私はソ連こそ漁業問題や北方領土でもっと誠意を示していただきたいと思いますが、この日ソ関係の現状について、鳩山外務大臣からお尋ねをいたしたいと思います。
  269. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 日ソ関係につきまして、平和友好条約――いつも、毎年定期外相協議をやることになっております。この協議が、実は昨年も行われなかったわけで、ことしはぜひ行いたいと、こう考えまして、ニューヨークでグロムイコ外務大臣ともお会いしたわけであります。しかし、なかなかことしじゅうはむずかしいということで、来年になりまして早々モスコーに出向きまして定期協議、条約の継続交渉をいたしたいと思っております。  漁業問題につきましては、あるいは農林大臣から御報告した方がよろしいかと思いますけれども、来年の一月以降の漁業の操業につきまして、これはいま一応、暫定的にもう一年延長をしようという方向で一応話は進んでおるわけでありますが、漁獲量の交渉、またサケ・マスの、これは二百海里外の操業問題がありますので、それと漁業協力関係、これらを律しました新しい協定の作成を十一月の十日から行う、こういう状況でございます。
  270. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 日中共同声明の中にある覇権の問題でありますが、日本もいかなる国の覇権にも反対だと、ソ連であろうと米国であろうと覇権の反対には変わりはない、武力を背景にした自国のみの利益を主張することは私はすでに時代おくれだと思うんです。いまや世界は一国だけで生存できる国はない。世界は一つ、人類は同胞であるという世界連帯感こそ二十一世紀の指導原理でなければならないと思う。お互いに譲り合い、助け合うことが必要なんです。この点を明確にしておくことが、東洋の平和、ひいては世界の平和に役立つものと思います。覇権反対にも異存はないと思う。道義外交の面でも、もう総理が決断をされるべき時期に来たと思います。中国福田総理に非常に期待をしている。総理が国内の各方面の意見を取りまとめていただきまして、一日も早く福田内閣の手で多年の懸案を解決し、歴史の一ページを飾っていただきたいと願っております。総理の御決意のほどを伺わせていただきます。
  271. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日中平和友好条約締結の問題は、しばしば申し上げておりますが、なるべく早く締結したいと、両国の満足し得る形で、いい条約ができたなあといって評価されるようにぜひ早く締結したいと、さような決意でございます。
  272. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 最後に、教育の再建についてお尋ねします。  日本には資源がほとんどない、あるのは一億一千万の人間だけである。国際的に信頼され尊敬される日本人をつくるか否かが日本民族の運命の分かれ道であります。このままいけば、物で栄えて心で滅びるギリシャ、ローマの二の舞になるかもしれません。  日本商工会議所の永野会頭さんが、佐藤総理は、沖繩の返還なくして戦後は終わらないという名言を吐いたが、私は、教育の改革なくして戦後は終わらないと述べられました。この席には海部文部大臣もいらっしゃったんですが、私は非常に印象的であった。それは米国の占領政策によって、軍国主義と超国家主義の排除のために修身と地理、歴史が抹殺された結果、日本の教育が骨抜きになり、価値観を喪失してしまった。その上に戦前になかった受験地獄が新たに台頭し、わが国教育界の最大の課題にのし上がった。私は、いまこそ教育の根本的改革が必要であると痛感しておるんであります。  教育課程の改正では、ゆとりのある人間性豊かな教育を目指すとのことであるが、入試制度の改善が先決条件で、諸悪の根源は私は試験地獄だと思っております。教科書の内容を精選することも結構だが、分量が減っても入試制度が改善されないと、学習塾が繁盛し、学習参考書がたくさん出回るから、子供の負担は一向に軽減されないと思う。わが国の入試では、各学校がてんでんばらばらに振り落とすための難問奇問を出すから、受験生は迷惑するし、教育の弊害が大きいのであります。受験地獄がわが国教育界の最大のガンであると私は思っております。このガンは尋常一様ではどうにもならない、思い切った対策が必要であると思っております。  そこで、たしか昭和三十四、五年ごろだと思うんですが、全国共通の中学校一斉学力テストを実施したことがある。私は、これをぜひもう一遍復活してもらって、高校入試を全廃していただきたいと思う。そして、各学校はその成績を参考に、内申書と作文と面接等、人物考査を中心にやったらどうかと思いますが、これひとつ文部省で十分御検討いただきたいと思うんですが、文部大臣の御所見を承りたい。
  273. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 御承知のように、現在公立の高等学校は、各都道府県ごとにその地方自治体の特色やあるいは個性を尊重して共通のいま試験制度に入っておりますので、いま直ちにそのように変換をするという計画はございませんけれども、せっかくの先生の御指摘でございますから、将来の研究課題として検討さしていただきます。
  274. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 次に、大学入試制度の改善でありますが、終戦後、進学適性検査を実施したが、二次試験で学科試験を行ったために、受験生は二重負担になり、ついにこの制度が廃止になった。その後、能検テストを実施してりっぱな成績を得たが、日教組の反対と大学の非協力でこれも実施に至らなかった。現在の大学入試は、客観テストと称してマル・バツだけで面接や作文等の人物考査はやらない。十人に一人は精神異常者が大学に入学し、全学連の中で人殺しをしたりしているんだそうです。  医学会の総会で文部省に人物考査をするように注文が出ているが、大学側は作文や面接等の人物考査は主観が入るという名目で今日まで実現できなかった。私が参議院の文教委員長当時、諸悪の根源である大学入試制度の改善について日教組の槇枝委員長を初め高校、私大、国立大学等の関係者をお招きして公聴会を開いて大方の賛成を得たので、参議院文教委員長試案を発表したのでございます。その骨子は、第一次は大学入試の資格試験か共通テスト、第二次は原則として学科試験は行わず、一次の学科試験を参考に内申書と小論文、面接等の人物考査による。特別の場合には専門教科一科目または実技を課することができる程度のものでした。私は、各党の了解を得て議員立法を提案しようといたしましたが、文部省の役人が、いままで非協力であった国大協が全学連騒動以来反省して共通テストに踏み切ったから、しばらくその様子を見てくれるようにと説得されまして、これさたやみになった。  国大協のその後の様子を見ておりますと、一次試験のほかに二次試験でも各大学が二科目も三科目も独自の学科試験を行うのが原則で、東大、京大では三、四科目を行うようだ。これではいままでよりも学生は二重負担になり、かつての進学適性検査の二の舞になるんではなかろうかと心配しておるんです。六・三制の本家米国でも共通テストで入学を決めているし、英国、フランス、西ドイツでは国家試験を行っているんです。ひとり日本だけが例外なんです。日本の場合には、何か大学自治を侵害するという考えが強いようだが、入学選抜は大学の自治であるけれども、選抜方法は私は国で統一していいはずだと思うんです。大学自治には直接関係がないと思うんです。むしろ大学入試は高校以下の教育に重大な影響があるからでございます。文部省ははっきりとガイドラインをお示しになったのかどうか。国立大学の二次の学科試験が千差万別であるのに私も驚いたんです。しかも大学の八割は私学なんで、私学が協力しなければ試験地獄の解消には役立たぬわけで、私大を含め大学の協力が得られるかどうか、得られないならこれは立法措置で制限するのもやむを得ないと思うんですが、これは文部大臣の御所見を承りたいと思う。
  275. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 御指摘のように、大学の入学試験制度の改革につきましては、今年国立学校設置法の改正を国会でお認めいただきまして、入試センターを設置しまして、そこで実施をいたしますとともに、今後の調査研究を続けるということになっておりますが、第二次試験につきましては、御指摘のように、各大学が自主的にそれぞれ判断するわけでありますが、国立大学協会がガイドラインを示しました。一つの大学を除きまして、ほとんどの大学が科目数の削減に協力をいたしまして、現在平均しますと二・九科目ということに相なっておりますが、中には先生御指摘のように、学科試験を全然しないで、面接あるいは実技あるいは小論文に頼るということを発表したところもございますし、また、推薦入学の制度をとると発表しました大学が四十四に及んでおります。私は、こういったことは決して受験生の二重負担にならないと考えておりますし、従来のように、一回の一発のペーパーテストだけで選抜するよりも幅広く、奥深くその受験生の資質というもの、能力というものが選抜の対象になる方がより望ましいと、こう考えておりますので、二重負担にならないようには十分考えてやってまいります。  なお、第二点の私立大学が協力しなかったならばという御発言でありますが、現在参加してもらうように強く要請しております。私立大学側の方もアンケート調査を行うなどして現在検討中であると承っておりますので、大学の自主性も尊重しながら、あくまで理解と納得の上でこの改革が成功しますように指導、助言を続けてまいりたい、こう考えております。
  276. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 いまの文部大臣の御説明はよくわかるんですけれども、実は私が心配しておるのは、一次の共通学力テストですから、本来なら一次の共通学力テストでそれでいいわけなんで、二次はできれば面接と小論文ぐらいで、人物考査を中心にやるべきだと思うんで、それがおやりにならぬわけですね。ですから、仮に二次で学科試験をやるんでしたら、まあ私は専門科目一科目ぐらいにしぼっていただきたいんで、そうでないと、一回共通テストやるのにまたテストだから、二回になる。それで二回目は各学校がてんでんばらばらにやって難問奇問をまた出すんだから、私は大臣のおっしゃるようにちょっと楽観できないんですがね。もう少しやっぱり文部省が毅然として国立大学を指導すべきじゃなかったかと私は思っているんですが、文部大臣はどうでしょうか。
  277. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 私が文部大臣を仰せつかるはるか前の昭和四十六年に、先生御承知のように文部省で大学入試改善会議というのがこの改革の方向の結論を出して、以来、八十八の国立大学がこれでいこうという完全な意見の一致を見たのがこの骨子になっておることはよく御承知のとおりだと思います。  そうして一次試験は高校生活の到達度を見るということで、二次試験の方はその大学のその専門学部に入学をして学生として適性があるかどうかを大学の立場で選抜をする、こういうふうに二つの目的に分かれておりまして、そこにもう一つ内申書を重視しようという三つの方向の御指示があったと私は伝え聞いております。その精神をいまも拳々服属してやっておるわけでございますので、どうぞ御理解をお願いいたしたいと思います。
  278. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 大臣の御見解もよくわかりました。  最近、親子の断絶、世代の断絶がよく言われ、小学生や中学生の自殺が非常にふえ、一家心中も目に余るものがあります。学校ぎらいが激増し、暴走族が横行し、青少年犯罪も増加しているのであります。終戦後、何か世界観が変わったように私は思うんです。  日の丸の旗を上げたばっかりに卒業式ができなくなった学校があるかと思うと、君が代を歌わない学校もある。君が代は天皇制だから反対だという人もあるが、主権在民の新憲法でも天皇は日本国及び日本国民統合の象徴となっているのであるから、君が代こそ私は国歌にふさわしいと思うのです。卒業式や入学式には日の丸の旗を掲げ、君が代を歌うことは、日本国民として当然のことであると思うんですが、どうも十分な成果が上がっていないのであります。私は、まさにこれは国籍不明の日本人になったのではなかろうか、その国籍不明の日本人を育成した最大の原因は、昭和二十年十二月、占領軍の指令で軍国主義と超国家主義を排除する目的で修身、地理、日本歴史の三教科が廃止されたんです。これが一つ。その後、昭和二十三年に、教育の大本である教育勅語が衆参両院の文教委員会で失効宣言が行われ、日本教育の大本が失われ、百八十度転換して価値観が変わり、教育の一貫性がなくなったところにあると思うんで、これが世代の断絶の根本原因であるように思うのでございます。  文部省は、教育課程の改正の中で、学校行事には国旗を掲げ、国歌を歌うことが望ましいとされたが、この程度のことでは、終戦直後、天野文相のときの通達から一歩も前進していないんです。私は世界じゅうどこの国でも学校行事には必ず国旗を掲げ、国歌を歌うことが慣例であるのに、どうしてわが国だけが望ましいとされたのか、これも文部大臣にお答えいただきたい。民主主義にはやっぱり強力な指導性がないと烏合の衆になる危険があると思う。この際、文部省は強力な行政指導により全国の各学校にこれを徹底していただきたいと思いますが、文部大臣の御所見を承りたい。
  279. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) いろいろな問題を御指摘をいただきましたが、謹んで拝聴いたしました。特に最後の国旗を掲げ、国歌を斉唱することが望ましいということは、これは内藤先生も文部省の幹部としていろいろお心を痛めていただいたころより、やっぱり国旗を掲げ、君が代を斉唱することが望ましいと、現在そういう指導になっておりますが、今度の学習指導要領の改定におきましては、国旗を掲げ、国歌を斉唱することが望ましい、これは指導要領でございますから、この望ましいという気持ちを率直に学校現場が受けとめていただいて、やはりこれは掲げ、歌ってほしい、この趣旨を徹底するように指導をしてまいりたい、こう考えております。
  280. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 実は、このたびの訪中に際し、私は会談の合間に万里の長城を見学いたしました。紀元前三世紀、秦の始皇帝のころに建設されたものだそうです。長さ六千キロ、東京からバンコクぐらいの距離があります。城壁の上に登ると幅七、八メートル、車が往復できるほど広いんです。私は人間の力の偉大さに実は驚いたんです。万里の長城を見学して、人類は果たして進歩したのであるかという疑問を抱いたのであります。科学技術が発達して機械化が進み、人力が動力に変わったにすぎないのではなかろうか。生活環境、社会環境は驚くほど変わったが、人類の本質は変わっていないという確信を得たのであります。世界的歴史学者アーノルド・トインビー博士が、二十一世紀は仏教、儒教の時代が来ると予言されました。その釈迦、孔子はともに紀元前五百数十年、時を同じゅうしてこの世に生まれたのでございます。キリストも二千年前に生まれている。自来、釈迦、孔子、キリストより偉大な人物はこの世に生まれておりません。人類の歴史は紀元前から今日まで一貫しており、わが国のように、終戦の前と後で世の中が百八十度転換し、価値観が変わったように考えるのは、明らかに間違いであることを私は深く反省させられたのでございます。  先日、世界各国の教育を比較してその長短を研究している比較教育学の日本における第一人者、国立教育研究所の平塚博士が、国民学校令以前、昭和十二年までの日本の教育は世界に冠たるものであったと、こういう講演をされまして、私もそれを聞いておりまして、戦前の教育のいい点は積極的に取り入れるべきだという確信を実は深めたのでございます。  道義日本を確立するために、道徳教育の振興は特に必要なんです。戦前は修身が学校教育の中心であったと思う。昭和三十三年の第一回の教育課程改正の際に、修身にかわり道徳が新設されましたが、当時は、修身復活は戦争につながるといって猛烈な反対がありましたせいか、いまだに十分な成果が上がっていない。今日の改正でも、文部大臣、これは指導項目がたしか二十八で多過ぎると思う。私は、やっぱり多いと焦点がぼけるので、せいぜい五つか十ぐらいにしぼるべきだったんではないか。徳目中心に戻した方がよかったんではないかという感じがしますが、この点も大臣からお答えいただきたい。  次に、道徳の教科書がないんですよ。昔の修身は論語読みの論語知らずになったと、道徳は実行が本旨であるからということで、第一回のときは教科書はつくらないことにしたが、私はこれは失敗だったと思っているんで、教えることが先で、それから実行することなんです。教えないで実行させることは、これは生まれながらの聖人君子でない限りは無理なんで、道徳はあらゆる教育活動のうちで一番むずかしいんです。戦前は校長先生が担当している。教科書なしに教える先生はいないと思うわけで、そこでいまではどうなっているかというと、副読本が中心になっているんです。この副読本ですと、文部省の検定がないわけですから千差万別、いいのもあれば悪いのもある。なぜ教科書をつくらなかったのか。どうして教科にできなかったか、この理由をお尋ねしたいと思うのです。
  281. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 現在、学校におきます道徳教育というのは、学校の教育活動全般を通じて児童生徒が身につけてもらう、それを基本にいたしております。御指摘のように、二十八項目という徳目は多過ぎるとおっしゃいますが、やっぱりその中心になる基礎基本はおっしゃるように数項目だと思いますが、おのずから現場におきましてはその軽い重い、優先、付随というようなことについては御指導をいただけるものと私は期待をいたしておりますし、また、どうして教科にして本をつくってやらなかったかという御指摘でございますけれども、道徳の時間を設定して、そしてそこはただ本を読むということだけじゃなくて、視聴覚教材もございますし、あるいはこういう対話もございますし、先生とクラスとの触れ合いの中から、周辺のいろいろな材料と集団活動の中から身につけてもらうべき問題等もあろうということで、教科書をつくって普通の教科にしてしまいますと、何か読み物一辺倒の道徳教育みたいなことになってしまって、やはりこの方がより幅広く新しく身につけてもらうことができるのではないか。教育課程審議会の答申もそのような方向を指さしておりましたので、現在そのもとで指導を進めておるところでございます。
  282. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 学校教育の中で一番大事なことは、愛国心を養うことだと思うんです。そのために小学校の社会科を廃止して、占領軍の指令で廃止した地理と日本歴史を私は復活していただきたかった。  中学校は、昭和三十三年の第一回の改正のときに地理、歴史、公民の三分野にしたので問題は少ないが、小学校の社会科をそのままにしておいたのが失敗であった。私も当時の責任者の一人として深く反省しているのであります。小学校では私は社会科は必要ないと思うんです。今度の改正で社会科をなぜ廃止できなかったのか、どうして地理と日本歴史が復活できなかったのか、お尋ねいたしたいと思います。
  283. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) お答えいたします。  社会科というのは、社会生活の中で市民として必要な資質を身につけてもらいたい、こういう願いで社会科が生まれておるわけでございまして、しかし今度の改正でも、こういった市民としての資質を養うという社会科の基本的な性格は継承いたしておりますけれども、先生御承知のように、その内容におきましては、地理と歴史について、特に地理学習については、地理的環境としての国土の特色について理解させることを重視しておりますし、また歴史学習については、わが国の歴史に対する児童の興味や関心を高めるために、主な歴史的事象あるいは人物の働きや文化遺産を中心に取り上げて指導していく。要は、地理と日本歴史については、わが国の国土と歴史に対する理解と愛情を育てることを重視して教育の中に盛り込んでございますので、先生御指摘の精神、趣旨というものはこの中にくみ取っていただけると、こう考えております。
  284. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 もちろん、小学校五年の社会科では地理的分野をやることになっておりますが、小中学校とも同じような内容で、農業、水産業、工業等、産業が主な柱で、交通網等、人文地理が中心になっている。中学校で人文地理を中心に教えるなら、私は、小学校では自然地理を中心に、特色を持たせた方がよいと思うんです。  特に、小学校では、日本は北海道から沖繩まで海に囲まれた島国であるが、気候温暖で風光明媚な点で世界一美しい国、北は北海道の洞爺、阿寒湖から東北の十和田湖、富士箱根、瀬戸内海、九州の阿蘇、雲仙に至るまで山や川、湖、海岸線等、自然環境に恵まれた美しい日本国を教えるのが教育の第一歩であると思う。こんな美しい国日本に生まれた幸せを感謝する国民に育てていきたいと思うが、いかがでしょうか。
  285. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) おっしゃることはまことにごもっともでございますし、また今度の学習指導要領でも、日本のそういう美しさ、祖先がずっと継承してきたそれぞれの特色ある日本の地理というものは児童生徒には身につけてもらいたいと思っておりますので、そういう趣旨も盛り込んでございます。
  286. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 それなら大変結構です。  次に、日本歴史でございますが、現在は社会科六年で歴史的分野があるが、私は、いまの教科書全部見ましたが神話がないんです。弥生、縄文、登足遺跡から始まって、大和朝廷の成立、聖徳太子の飛鳥時代、奈良平安、室町、江戸時代と文化史中心になっている。源平合戦の模様や、いかにして戦国時代を平定して天下を統一したか、織田、豊臣、徳川の血みどろな合戦の跡もない。建武中興に際し桜井の駅にわが子正行を呼び寄せて七生報国を諭した楠木正成の湊川の合戦も出てこないんですよ。元禄時代の花形赤穂浪士の忠臣蔵も消えている。それから、  親思う心に優る親心今日のおとずれ何と聞くらん  身はたとえ武蔵の野辺に朽ちぬともとどめおかまし大和魂  と辞世の歌を詠んで弱冠二十七、八歳で小塚原で打ち首になった明治維新の原動力、松下村塾の吉田松陰も歴史に出てこないんですね。日露戦争に際し、天気晴朗なれど波高し、皇国の興廃この一戦にあり、各員一層奮励努力せよと言ってバルチック艦隊を撃滅した東郷元帥も、旅順で二子を失った乃木将軍も日本の歴史から消えているんですよ。  私は、戦前の歴史教科書をこれまた全部読んでみたんです。小学校五、六年の二年が歴史なんですよね。その一つの柱は、天照大神の神話から始まってわが国の天皇制の特色を明らかにした歴史である。  日本には万里の長城はないが、私、万里の長城に匹敵し世界に誇るべきものは二千年続いた天皇制だと思うんだよね。飛鳥、奈良、平安と天皇親政時代が続いたが、平安中期から摂関政治となり、源平合戦の後に源頼朝の鎌倉幕府以来七百年の武家政治が続いて、明治維新で王政に復古して今日を迎えたのであるが、政治の形態は二千年来いろいろと変わってきたが、天皇制の国体は変わらなかったと思うんだね。  イギリスは王制の国であるが、王室と国民が血で血を洗うような醜い権力闘争の結果今日のような王制になったのであり、日本の皇室とは成立の過程において根本的に違っていると思うんだよね。日本の場合には、歴代の天皇が国民をわが子のように慈しみ愛され、君臣の間は父子のごとく、世界の歴史の中でも比類なく、世界に誇るべきものであると思うんですよ。特に、大東亜戦争終結に際し、軍部は一億玉砕を主張してやまなかったが、天皇陛下は日本民族を滅亡から救うために一大決意をされ、耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んで万世のために太平を開かれたので、そのおかげで一億の国民が救われ、今日の繁栄があることを忘れてはならないと思うんですよ。特に、マッカーサー元帥にお会いになったときに、私の身はどうなっても構わないから日本国民を飢えさせないことを嘆願された。まさに身を捨てて仁をなされた。命ごいに来たと思ってお出迎えもしなかったマッカーサー元帥もこれにはいたく感激し、日本には天皇制が必要だと痛感し、日本国及び日本国民統合の象徴という形で天皇制が存続されたんです。これは天皇陛下の御人徳のおかげであると思いますが、終戦当時、無条件降伏したが、国体護持をただ一つお願いした一億国民は二千年来の祖先に対して申し開きができ、子孫に対して恥をかかないで済んだことを私はうれしく思うのでございます。  戦前の日本歴史の中心は、いま申しました一つは天皇制だったんです。もう一つは、日本国の発展に貢献した人物中心の歴史だった。特に日本国の発展に貢献した人は楠正成、吉田松陰、西郷隆盛、東郷元帥、乃木将軍等、これは神様として神社に祭られているんですよ。  私は、今度の改正で神話を指導要領に入れられたことは大変結構であると思う。神話は歴史的事実でないかもしれないが、民族の夢と希望と理想が長年にわたり伝承され、日本民族の心となり魂となっていたからであります。特に社会科では、小中学校とも同じような文化史中心の歴史でなく、中学校が文化史中心なら、小学校の方は神話に始まり二千年にわたる天皇制の特色を明らかにし、人物中心の歴史に戻していただきたいと思う。そして子供たちに、わが国が今日あるのは長年にわたるたくさんの先輩偉人のおかげであり、一朝一夕にでき上がったものではない、先輩に負けないように日本国の発展に貢献しようという心構えを育てていただきたいと思うが、文部大臣の御所見を伺います。
  287. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 御指摘の点につきまして、神話伝承というものをこれは無視したわけでは決してございませんので、古事記とか日本書紀の扱いの中においていろいろなお話は出てまいると思いますし、また先生いろいろ挙げられました神様として祭られておるようないろいろな方を扱うかどうかということは教科書を執筆する執筆者の選択に任せるという態度をとっておりますが、児童生徒がその当時を理解し、人物の動きを理解しやすい人はできるだけ扱うようにということになっていることは御承知のとおりでございまして、たとえば聖徳太子とか織田信長、徳川家康、豊臣秀吉のような者は出てくるであろうと、こう考えますし、また、わが国の国土の統一を理解するとともに、国の形成に関する考え方を示す話には大いに関心を示すように、こうなっておりますから、私は決してそういう神話伝説のたぐいや日本の歴史というものを全く無視して、そういったものを知らないような教育をしようという方針ではございません。
  288. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 戦後教育の失敗の第二は、教育勅語を廃止したことである。明治五年、村に不学の戸をなくすために学制を頒布したが、明治天皇は教育の根本は倫理道徳であり、道徳は仁義忠孝であることを宣明にされ、明治十二年の教学大旨に、明治十五年の幼学綱要にこのことが明記されている。この考えが明治二十三年の教育勅語となって発布されたのである。ここに明治以来終戦に至るまでのわが国の教育の大本が確立されたのである。当時は鹿鳴館時代、文明開化の時代で国論が四分五裂して天下は麻のごとく乱れていた。  当時の文献を見ると、今日の情勢と全く酷似している。終戦後、昭和二十三年、衆参両院で教育勅語の失効宣言が行われた。これは天皇が主権者でなくなり、主権在民になったために、天皇の命令で教育を行う根拠がなくなったからであります。教育勅語の失効宣言により、教えそのものが間違っていたような鎖覚を国民に与えてしまった。  教育勅語のかわりに教育基本法が制定されたが、教育の目的については、真理と正義を愛し、勤労と責任を重んじ、平和で文化的で健康な国民の育成とあるが、この程度のことは当然のことを述べたにすぎないのであって、教育の具体的目標にはならない。教育勅語のような徳目中心でなければ、教育の成果が上がらないと思う。戦前の教育は教育勅語によって教育の指導原理が確立され、教育に大黒柱があって、心棒があった。教育勅語の精神により親も子も学校の先生も国民も共通の価値観に支えられて教育の成果が上がったが、いまでは何にもないので、親も子も学校の先生も価値観がてんでんばらばら、その結果、エゴでエコノミックアニマルな国民になったような気がするのです。  私が文部省の事務次官のころ、教育勅語のかわりに、いかにしてこれから人間を育成すべきかという「期待される人間像」を中央教育審議会に諮問してりっぱな答申を得たが、これもそのままになってしまった。その後、教育勅語にかわる教育憲章制定の国民運動を始めて今日に至ったが、十分な成果が上っていない。教育も原点に返って、教育憲章ができないなら教育勅語を復活し、これにより日本教育の大本を確立すべきだという意見もあるわけだ。  総理が前回参議院選挙で教育勅語を礼賛されたと新聞で報道されたが、総理は教育勅語についてどうお考えか。
  289. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 教育勅語は、これはもう廃棄された問題でありまして、これをよみがえらせるすべはありません、そういうふうに思います。  しかし、あそこに盛られておる人の道ですね、これは私はもう非常に貴重なものである、こういうふうに思います。「父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ」「博愛衆ニ及ホシ」、本当に人間のかくあるべしということをりっぱに表現しておる。あそこに盛られておる精神がこれが廃棄された、こういうふうには考えませんです。
  290. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 国際的にも国内的にも道義日本の確立が急務な今日、教育勅語の復活が無理なら、新たに教育憲章を速やかに制定して教育の大方針を確立していただきたいと思いますが、これは文部大臣及び総理のお考えを伺いたい。
  291. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) その国にはそれぞれの理想があり、その理想を求めて国民は生きていくわけでございます。わが国では新憲法、教育基本法のもとでいま鋭意努力をしておるわけでございますが、先生の御提案は私も謹んでいま拝聴させていただいて今後の研究課題とさせていただきますが、これには国民的な合意と国会の御決議という手続も必要な問題でありまして、慎重に対処させていただきたい、こう考えます。
  292. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま文部大臣から申し上げたとおりに存じます。
  293. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 戦後教育の第三の失敗は、師範学校を廃止したことです。  最近教育界の代表が米国の教育事情を視察してきた話によると、六・三制の本家米国の最大の関心は教員の養成と再教育であるとのことでした。教育で一番大事なものは親と教師です。お医者さんや看護婦さんは六年または三年間みっちり専門の勉強をした上に厳しい国家試験に合格して初めて資格がもらえるのに、教員は教育原理、教育心理、教授法等、教職教養十五単位と二週間の教育実習をやれば、どこの大学、短大でも、だれでも簡単に教員の資格がもらえる。もちろんりっぱな先生もあるが、教員にでもなろうか、教員にしかなれないでもしか先生や、アルバイト、リベート、プレゼントの三ト先生が出てくるような素地があるわけなんで、子供の手本になるような、聖職たるにふさわしいりっぱな先生の養成が絶対に必要であります。  教育は単に知識や技術だけではありません。教え方も大事ですが、教師の人格そのものがもっと大事である。私も参議院に籍を置いて努力した結果、十年かかってやっと新構想の教員養成大学院大学の創設が神戸と上越に決まったが、学生の入学は昭和五十五年と聞かされ、実は落胆しているわけです。  先日、訪中の際、北京の師範大学を見学させていただいた。学生は全額給費、お小遣いまで国からいただいて、三年間全寮制の学生生活で毛沢東学習でお互いに切磋琢磨しながら鍛えている姿を見て頼もしく思ったのでございます。  私は、新構想の教員養成大学院大学を創設した上で現在の教育学部の改革を考えていたが、いまのような現状では教員養成改革のめどが立たないわけなんです。私は、各県にあったもとの師範学校はいまでは教育学部、学芸大学として生まれ変わったが、何だかその性格があいまいで、教員養成専門の大学ではなくなり、このままでは存在の意義もない。教員の養成、再教育専門の大学として教育界の中核となり、大本山であるという誇りと自信を持たせたい、そういう必要があると思う。この際、思い切ってもとの師範学校全部を大学院を置く師範大学に昇格して、りっぱな教員の養成、再教育専門の大学にすべきであると思うが、大変むずかしい問題でありますが、文相及び総理の御所見を伺います。
  294. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 戦後の経過は内藤先生よく御理解のことでございますが、昭和二十四年に従来の師範学校というものはことごとく編成がえされたわけでありますけれども昭和四十一年の国立学校設置法の改正によりまして、再びそれが教員養成大学、学部の目的、性格を明らかにするために名称を変更しまして、特に小中学校教員の育成に重点を置くと。御指摘のように、教育は人なりと言われまして、現場の教師のお人柄、指導力、熱意、そういったものが高まることも教育の改革のためには大変大切なことであることは言うをまたないところでございます。今後とも、各地にございます教員養成学部の充実には全力を挙げてまいります。  ただ、もう一つ、広く開放的に人材を求めるという意味で、各大学から、特に中学、高校の教師になられる方を求めておりますけれども、ここにはいま教育の実習についてもう少し検討すべき問題点はなかろうか、いろいろ判断をいたしております。そこで、これらの実習期間についてどうするか、実習内容をどうするか、教師一人一人の資質の向上をどうするかということについて、現在、前向きに検討しておるところでございます。
  295. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 最後ですが、いかに学校教育が改善されても、テレビが朝から深夜まで放映して、番組が劣悪で国民教育に及ぼす影響は甚大であると思う。一億総白痴化の根源であるのみならず、不良化に一層の拍車をかけ、赤軍の温床にもなりかねないと思う。中国では国営放送一社のみ、夜の七時から十時まで三時間だけである。憲法で保障する言論の自由は、公共の福祉に反しない限り認められているのであって、現在のような無制限な自由はあり得ないと思う。番組審議会はひとつ厳重にこれを取り締まっていただきたい。こんな無制限な国は、私、世界じゅうにないと思うんでね、徹底的に改善していただきたい。視聴率ばかり気にしている放送のあり方を根本的に再検討するべきだと思う。  電波は国民のものである。国民の教養に役立つものに限り認めることにし、風紀を乱すもの、特にセックスものやスリラーものは追放していただきたいと思う。電波の許可権を握っている郵政大臣の御英断を望むんですが、郵政大臣、ひとつ明解に御答弁願います。
  296. 小宮山重四郎

    国務大臣小宮山重四郎君) 最近、アメリカで十五歳の少年が、テレビを見過ぎまして、六、七時間見まして、テレビ殺人というのが大変アメリカの世論の中でも問題になっております。これも大変裁判ざたで問題になっております。事実、大変そういう意味では大きな社会影響がある。  たとえば昭和三十五年に生まれたお子さんがいま高等学校三年生でございますけれども、この方方が見ておりますのが大体二時間三十五分、あとラジオが一時間四十分ぐらい聞いております。この人たちは大体昭和六十年で全人口の四〇%を占めるということでございます。で、見ている番組時間が非常に長うございますので、私たち自身、放送事業者に、今後その教育、育成という問題について大変影響がございますので、ぜひ民放、NHK等が決めております放送基準というものを的確にやっていただきたい、そういうことを要請し、かつ、先生がおっしゃいますように電波というものは国民のものでございます。そういう意味でも国民生活に大変影響のあるものでございますので、今後とも放送事業者の自覚と良識に訴え、たび重なる要望をして、今後とも大いに教育に資したいと考えております。
  297. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 以上で私の質問を終わります。ありがとうございます。(拍手)
  298. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上をもちまして内藤君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  299. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、竹田四郎君。
  300. 竹田四郎

    竹田四郎君 最初に、総理並びに大蔵大臣にお尋ねするわけですが、今度のこの予算で輸銀、開銀等の貸し倒れ引当金の繰入率を少なくして、八百三十七億という国庫納付金を出して財源に充てた、このこと自体は私どもいいことだと、こういうふうに考えています。ただ、総理は、ことしの予算委員会でも連帯と協調ということを大変強く主張をいたしました。しかし、この案は、先ほど小柳理事の方からもお話がありましたように、昭和五十年、この席でうちの方の阿具根登会長が、共産党を除く野党の共同提案として出した修正案です。言うなれば特許権は私どもの方にあるわけです。それを一言のあいさつもなしに――使うことはいいと思うんですよ、私。それを否定しているわけじゃないんですよ。一つぐらいは野党さんの御意見を受け入れてつくったというぐらいのあいさつがあって私はしかるべきだと思うんですよ。あいさつもなしでここで使うということになれば、私どもそのロイアルティーを要求したくなる。こういう点は連帯と協調の精神に非常に反する。いいことは野党、与党を問わずお互いに話し合って、君たちの案を借りるよと、君たちの案を使うよと、そのくらいのあいさつがあっていいのじゃないですか。どうですか、これはお二人から聞きます。
  301. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) ちょっと先に私から。  この問題につきましては、予算委員会等、皆様方にあらかじめ申し上げるのが本当に念の入ったことであったのですが、その前に予算をつくる過程におきまして私は各党の政審会長さんに集っていただきまして、そして各党でございましたけれどもそこでこのことを申し上げたような次第でございますので、念を入れましてこの予算委員会の理事の皆さんに申し上げればこれはよかったのでございますけれども、そこは、私の、政審の会長さんに申し上げたものでございますから、大変どうも手落ちでございまして、おわび申し上げます。
  302. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、連帯と協調、これは人間の行動原理だと、こういうことを強調しているわけですが、国会においてもそれでいきたいと、こういうことを常々申し上げていることは御承知のとおりでございます。そういう立場から、今度の補正予算の編成に当たりましても、大蔵大臣に対し、各党とよく話し合って、御意見もよく伺って、そうして編成するようにということを指示してきたわけであります。ただいま大蔵大臣からお話のありましたような経過になっておる由を承っております。今後とも各党に対しましてまあ何事によらずできるだけの連絡をとりながらやっていくということ、それをさらに積極的にやってまいりたいと思います。
  303. 竹田四郎

    竹田四郎君 お二人の答弁、一応了承いたしましたけれども、それで、先ほど小柳委員の方から、今度のこの予算に開銀、輸銀等の予算書を出してない。このことは大変重大な問題だと私は思うのです。と申しますのは、この「財政投融資」のところに、今度国庫納付金を増額するに対処して資金需要が資金繰りがそれだけ少なくなる、だからこれは資金運用部から借り入れをする、こういうふうにしてあるわけですね。資金運用部でただで金を貸してくれるわけはないんですよ、国民の貯金ですから。これにはどうしたって利息を払わにゃいかぬでしょう。あるいは出資金を減らした分、この分だって貸し付けの額がそれだけ減るわけでしょう。貸付金の利息がそれだけ減るでしょう。そうしたら、当然あれじゃないですか、この開銀法、輸銀法の趣旨に基づいて、補正予算であってもこの借り入れの利息なり支払いの利息については計上しなくちゃいかぬと書いてある。それを出さないでこのままにしているということは、私はこれは明らかに法律違反だと思う。先ほど理事会でもお話しいただいたようでありますけれども、こういう着想は非常にいいけれども、やり方が法律違反じゃ私は承知できない。はっきりしていただきたい。
  304. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 主計局長をして答弁いたさせます。
  305. 長岡實

    政府委員(長岡實君) お答え申し上げます。  竹田委員指摘のように、貸し倒れ準備金の引き当ての率を引き下げまして国庫納付がふえることなどによりその分だけ三機関につきましては原資が減るわけでございます。この原資を賄うために運用部から追加の借り入れをいたしております。そういたしますと、借入金の利息がふえるわけでございますが、一方、五十二年度は、年度中二回にわたりまして運用部から政府関係機関等に貸し付けます金利が下がっております。したがいまして、当初予定しておりました借入金利息の予算が若干余ってまいりまして、その範囲内で賄えるために予算の修正を要しないということになったわけでございます。  また、一方、貸し付けが減って収入が減らないかという点につきましては、ただいまの借入金の追加措置によりまして当初予定どおりの貸し付けを行うことになるわけでございまして、そういう意味で貸付金利息の収入は減らないということになるわけでございます。
  306. 竹田四郎

    竹田四郎君 表面的にはそうかもしれませんが、たとえば、輸銀にすれば、出資を百十億引き揚げるわけですね。そうすれば、これはふえてくるわけですよね。そういうものをいいかげんにやってきているところに私は問題があると思うのです。今度の問題はこれは大きい問題ですよ。今後の財投なりあるいは輸銀、開銀の問題の本質に触れてくる問題ですよ。その一番初めにそういういいかげんなことをやるのは、私は、官僚の独善であるし、国会の意思を考えない措置だと思うのです。これはどうしてもその辺を明らかにしておかにゃいかぬ。
  307. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 事のいきさつはいま主計局長が申し上げたとおりでございまして、これによって法律違反だとかそういうことには私はなるものではないと。たまたま金利というものが下がりましたので、そこで開銀が支払うべき金利というものはそれだけではない、もっと前々から払わなければならない融資を受けておったということでございますので、新たにそれだけの金利がふえてくるということではないということは、ただいま主計局長が御説明申し上げたとおりでございますので、さように御了承を願いたいと思います。
  308. 竹田四郎

    竹田四郎君 いまの大蔵大臣の答弁は、私はこれは主計局長の意見もすっかりわかっていない答弁だと、こういうふうに思わざるを得ません。しかし、これだけに時間を費やしていると、たった二十五分の時間がどんどんなくなってしまいますから、これはひとつ理事会ではっきりこの点はけじめをつけていただくように委員長にも特にお願いをしておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  309. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ただいまの問題は、よろしゅうございますか、理事会に諮りまして。どうですか。自民党、いいですか。――それでは、理事会に後刻諮ることにいたします。
  310. 竹田四郎

    竹田四郎君 それでは、輸銀、開銀の問題に入りますけれども、輸銀の納付金が五十一億、北東公庫が百二十三億、開銀が六百六十三億。輸銀が実に開銀の十分の一ですね。ここで繰入率を引き下げたことによって、開銀では六百五十二億、輸銀では三一五十四億といういわゆる利益が出たわけです。輸銀がたった五十一億しか出さない。三百五十四億から五十一億を引いた約三百億、これはどこへ行っちゃったんですか。
  311. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) お答えいたします。  輸銀の今回の措置によります貸し倒れ準備金の取り崩し額は三百七十六億円でございますが、そのうち三百二十五億円は法定準備金として積み立てが行われますので、その差額を引いたもの五十一億円が差し引き増加と、こういうことになるわけでございます。
  312. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、この開銀、輸銀のやり方は、まず利益がある程度ある、その中から貸し倒れ引当金、いままでは千分の十六ですか、これを差し引いちゃう。それでも残った分は、これは法定積立金に入れる。こういう二段構えで繰入率を高くして、そこで利益をストップさせる。それで余ったのは今度はこの法定準備金でストップしちゃう。国庫への納付金はそれで出させない。まあ開銀はやっと若干出てきましたけれども、輸銀の場合には全然出してこない。こういう形で、せっかく政府金融機関がある程度の利益を得ても、それが国庫に返ってこない。こういう組織が今日の輸銀、開銀のやり方じゃないんですか。そういうように考えていいですか、銀行局長
  313. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) お答えいたします。  先生御指摘のとおり、輸銀、開銀には法定準備金に関する規定があるわけでございます。この準備金は、利益が出ました場合の百分の二十、あるいは貸出金の千分の七これに積み立てるわけになっておるわけでございますけれども、この法定準備金は、輸出入銀行あるいは開発銀行という銀行の名でおわかりのように、他の金融機関、公庫と違いまして、運営に自主的、自主性があるわけでございますので、その財政的な基礎として法定準備金が認められているわけでございます。
  314. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、開銀の場合なんか、貸し倒れ引当金がある。そのほかに法定準備金がある。この金額というのは相当なものですね。そんなに現実に要るんですか、法定準備金。しかも、これは、法定準備金とは言っても、貸し倒れ引当金のそれをこうやっているだけですよね。帳簿の移しかえにすぎないんですよ。利益金でもそうですね。そういうことでたくさんの法定準備金なりあるいは貸し倒れ引当金なりというものを積んでおく必要が一体あるんですか。現実にいままでそれだけ貸し倒れ引当金を積んでおいて、貸し倒れ償却を一体どれだけやっているんですか。ほとんどやっていないでしょう。四億か五億程度のものでしょう、いままで。それで何でこんなたくさん積んでおかなくちゃならないんですか。国の方はこんなに財政的に困っているというのに、なぜ開銀と輸銀だけがこんなたくさん金を積み込んでおかなくちゃいけないんですか。
  315. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) お答え申し上げます。  輸銀、開銀は、独立した銀行として世間の信用というものがこれはどうしても大事なことでございます。そこで、その銀行が、何と申しますか、金融機関としての信用の基礎となるものがこの法定準備金を義務づけられておるということでございます。そういうようなことで、この開発銀行等につきましては、開発銀行が外債を募集するというような資金を外債に仰ぐといったような場合にもこれが一つの信用となるというようなことでございまして、この法定準備金というものが両銀行にとりましては非常に大事な、銀行としての基礎づけをしておるというような意味を持っておるのでございます。
  316. 竹田四郎

    竹田四郎君 銀行局長に伺いますが、開銀の五十一年度の法定準備金の累積額は幾らになっておりますか。
  317. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) お答えいたします。  五十二年三月末現在でございますが、開銀の法定準備金は二千八十六億円でございます。
  318. 竹田四郎

    竹田四郎君 同じ時期の全国銀行、これの積立金を都市銀行、地方銀行別におっしゃってください。
  319. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) お答えいたします。  五十一年下期でございますが、全国銀行の資本金、法定準備金でございますが、五千四百四十四億円でございます。それから剰余金が三兆四千二百四十五億円でございます。  それから都市銀行と地方銀行でございますか。
  320. 竹田四郎

    竹田四郎君 はい。
  321. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 都市銀行の法定準備金が二千八十五億でございます。それから剰余金が一兆五千三百八十九億でございます。  それから地方銀行でございますが、法定準備金が二千六百十七億でございまして、剰余金が一兆二千八百三十二億円でございます。
  322. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、大蔵大臣、法定準備金に関する限り、都市銀行と開銀一行と匹敵するぐらいの準備金がたまっていると。こんなに必要なんですか。
  323. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 開銀等につきましては相当な政策金融というものをやっておりまするから、そこで市中の銀行よりもそういったようなことを厚くしていかなければならない。ただ、金額がどこまでが適当でどうだということは、私にもいますぐ申し上げる知識がありませんけれども、さような意味において、政府機関のこの銀行は準備金が市中の銀行より多いのではなかろうかと、かように思います。
  324. 竹田四郎

    竹田四郎君 輸銀、開銀は政府政府機関ですよ。ですから、政府の監督なりあるいは政府のいろいろな援助なりというものはいつでもできるわけです。いま財政がこれだけ苦しいといって、三〇%の国債依存度を何とか守らにゃならぬ、どこかから引き出してこなくちゃならぬというときに、一方では民間の設備投資が少ない、こういうときに、ここへたくさんの金を積んでおいて、一体何になるか。ことしは、どうですか、開銀、輸銀が貸付枠は不用額を出さないですか、どうですか。
  325. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) お答えいたします。  まだ年度の途中でございますが、いまのところ貸付計画はそのとおり実行されるものと、このように考えております。
  326. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は他のいろいろそういう金融関係の雑誌を見ましても、恐らくかなりの不用額が出るだろうと、こういうふうに言われております。  ところで、大蔵大臣、伺いますが、資金運用部で今年度五千億の長期国債を引き受けましたね。まだ半分約五千億ぐらいありますね。それに今度の追加がありますね。これは今度資金運用部で引き受けるんですか、引き受けないんですか。
  327. 田中敬

    政府委員田中敬君) 本年度運用部引き受け予定分一兆円のうち、すでに五千億引き受けておりますが、残額は運用部で引き受ける予定で現在のところおります。
  328. 竹田四郎

    竹田四郎君 最近、新聞に、運用部の持っている国債を売ったらどうだと、こういう話があるわけでありますが、運用部の資金というのは最近非常に少なくなってきていると思うのですが、郵政大臣、貯金の伸び率はいまどのくらいになっていますか、昨年と比べて。
  329. 小宮山重四郎

    国務大臣小宮山重四郎君) 金利の引き下げまでは大変伸び率がよくて、一三六%の達成率でございます。十月以降は少し落ちるだろうと予想しております。
  330. 竹田四郎

    竹田四郎君 具体的にどのぐらいになったか、数字はございませんか、昨年同期に比べて。
  331. 小宮山重四郎

    国務大臣小宮山重四郎君) 本年度の目標は四兆一千四百億で、達成率が先ほど申しました一三六%でございます。いまのところ、五十二年四月から九月までの実績は二兆七千五百三十九億円でございます。
  332. 竹田四郎

    竹田四郎君 伸び率の比較を言ってください。
  333. 小宮山重四郎

    国務大臣小宮山重四郎君) 本年度末の見込みで一一一・八%で、五十一年度の増加率に対して一一一・四でございます、伸び率は。
  334. 竹田四郎

    竹田四郎君 その前は……。
  335. 小宮山重四郎

    国務大臣小宮山重四郎君) その前五十一年度の実績の前年度対比一〇九・三%を若干上回るという程度でございます。
  336. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、郵政大臣、郵便貯金の伸びは去年よりいいということですね。
  337. 小宮山重四郎

    国務大臣小宮山重四郎君) 去年よりいいということでございます。
  338. 竹田四郎

    竹田四郎君 まあ私はそうではないというふうにほかの統計で見ておりますが、郵政大臣が伸び率がいいということでありますから、若干私はその点では安心しておりますが、私は、先ほど申し上げましたように、輸銀、開銀だけにこの積立金の制度があって、ここにたくさんの金が寄せられて、しかも最近はあんまり設備投資が伸びない、こういう中で資金運用部の金を開銀あるいは輸銀の方に回していく。まあ金額は大したものではありませんが、余りこの点は感心しません。むしろそうした政府資金というのは、地方でもほかの方でも大変これは要求があるわけです。あんまり借り手もないような、借り手の少ないようなところにそうした金を使うということは、私は大変不満でございます。むしろ、私は、資金運用部からの金をそこへ持っていかない、貸付枠を減らすなり何なりする方が金の利用の上では大変いいのではないか、こういうふうにひとつ福田総理大臣にこれは要求をしておきます。  それから福田総理大臣がかつて行政管理庁の長官のときに、実はこの貸し倒れ引当金、こういうものは実際はもう利益のものなんだ、本当に償却するものじゃなくて利益積み立てと同じなんだ、こういうものはやめるべきであると、こういう勧告を出していますね、四十八年に。その辺は、あなたは総理大臣として、しかもこういうことには計数には詳しい人ですから、どういうふうにお考えでしょうか。
  339. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私、準備金を廃止とまで言ったですかね。
  340. 竹田四郎

    竹田四郎君 いや、廃止とは言っていません。
  341. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) あんまり目立って多いのはよろしくないから、これは是正すべき点は是正すべきである、こういうふうに申し上げたようないま記憶でございますが、そのとおりに大体動いておると聞いております。
  342. 竹田四郎

    竹田四郎君 そういうことで、今度千分の十六を千分の五に輸銀、開銀は下げる。その他の公雄も幾らかずつ下げるんです。私はもっと下げていいんじゃないか。民間の金融機関にしてもずっと下げてきておりますけれども、これもいま銀行局長幾らですか、民間銀行の貸し倒れ引当金の繰入率は。
  343. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) お答えいたします。  民間の金融機関の貸し倒れ引当金の繰入率でございますが、五十二年四月一日から五十二年九月三十日までの事業年度で銀行と保険が千分の五でございます。それから相互銀行が千分の九・五でございまして、信用金庫が千分の十一・四でございます。
  344. 竹田四郎

    竹田四郎君 千分の五になっているですか、いま。
  345. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 千分の五でございます。
  346. 竹田四郎

    竹田四郎君 違うのじゃないですか。
  347. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 経過措置がございますが、繰り入れ率は千分の五ということで決められております。
  348. 竹田四郎

    竹田四郎君 経過措置を含めれば幾らになるんですか。
  349. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 経過措置を含めましたものは個々の銀行によって異なりますので、ちょっと手元に計数は用意しておりません。
  350. 竹田四郎

    竹田四郎君 恐らく千分の五ではないと思います。もっと高いと思う。これを早く実質的に千分の五にやはりしていく必要が私は民間もあると思う。政府機関も実際に貸し倒れ償却をやったというのは余りないわけですから、あってもごくわずかですから、これを下げて――ほかにもいろいろな公庫もございます。住宅金融公庫もございます。適当に下げて、これは国庫納付金に、こういう際ですから、いつも入れろということじゃありません、財政の非常に緊要な際ですから、私は入れるべきだと思うのですが、これは総理大臣にひとつお伺いいたします。
  351. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 御提言みたいなことでございますが、十分これは念頭に置きます。
  352. 竹田四郎

    竹田四郎君 先ほどの小柳さんの質問で、これは農林大臣にお尋ねしたいと思うのです。  先ほどもオーストラリアの国会議員の方々がお見えになりましたけれども、今度畜産事業団ですか、これの調整金を三百五十円から六百円、こういうことにするというお話が先ほどありましたね。しかし、いま世界で日本は牛肉を入れるのが非常にタイトだ、流通機構も大変複雑でなかなか入らないというのが世界の評判です。これが今回の円高にさせられた一つの原因じゃないか、こう私は思うんですよ。こういう際ですから、何も畜産事業団がもうける必要はない、もっと安くしてやって売れるようにしてやる。このことを福田総理がここでぴしっとやる、思い切ってやる、このことは、いまの円高相場に対して世界の世論が日本も本気でやる気になったなと、こういう一つの示しになると私は思うのです。そう言っちゃ福田総理に悪いですが、この当初予算のときにも、貿易収支が経常収支が赤字の七億出るということはだれも信じなかったですよね。あなただって恐らく信じていなかったでしょう。そういうことをずうっとやってきた。だから、私は、日本が最後にこの為替相場で外圧に遭って四苦八苦している、こういうことになると思う。だから、私は、この牛肉の輸入の問題をはっきりとここでけじめをつけないと、恐らく世界の世論は承知をしない、こう思うのですが、どうですか。
  353. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 竹田さんも御承知のように、わが国の畜産業、これは昭和四十七、八年ごろの畜産危機をようやく乗り越えたばかりでございます。非常に体質は弱い、基盤は弱い、こういう状況下にございます。  そこで、私どもは、牛肉の価格につきましては、安定帯価格、これを設定いたしまして、その安定帯価格の上限を上回る場合には外国から輸入したものを放出してふやす、また、安定帯価格の下限を下回る場合には事業団で国内のものを買い入れる、こういう形で安定帯価格に価格を安定させましてわが国の畜産事業の育成を図ってやる、そういうようなこともございまして、一方におきましては、今回の円高に伴うところの家畜の配合飼料、これは九月にいち早く差益金等を勘案いたしまして工場建て値トン当たり五千円引き下げをいたしました。こういうようなことをしながら畜産業の安定、畜産農家の生活の安定確保を図っておるわけであります。  そういうような中で、この外国からの輸入牛肉をいかに低位安定で消費者に供給するか、これは非常にむずかしい問題がそこにございます。まあそういうことを勘案いたしまして、私どもは畜産事業団の指定販売店制度というものを逐次広げまして二千二百店舗に拡充をいたしました。また、全国に十月の下旬から一万五千店舗の壁板店あるいはその他専門のスーパー等々に価格を指定しまして週に二回ぐらい一般の市価よりも二十円ぐらい安い肉を配給をする、こういうような施策もとっているわけであります。  そういうようなことでございまして、私どもは国内の生産者の問題を考えながら消費者の方にも何とか安いお肉を配給をしよう、こういうことを考えておるわけであります。  そこで、一部には不足払い制度をとったらどうか、こういう御意見がございます。これは生産者の方から高く買ってそして消費者に安く売るということで、これは米の食管制度のような二重価格制をとる、こういうことにつながるわけでございます。私どもは、国内の生産がおかげで約八〇%程度の自給率を持ってきた、足らざる二〇%を輸入をしておる、こういうことで、これが逆に輸入品が八〇%、国内生産が二〇%である場合においては不足払い等もこれはやりやすい。しかし、なかなかそうはいかない。そういうようなことで、そういう畜産業を守りながらいかに国内の消費者の皆さんに安く供給するか、そういうことで非常に私ども努力をし苦心をしてやっておる、こういうことを御理解を賜りたいと思います。
  354. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 円が高くなったので、せめて高い高いと世界的にも言われており、国内ではもちろんでありますが、この際牛肉の価格を下げたいという気持ちは、これは竹田さんに劣ることはないくらいそう考えるのですが、ただ、生産農家というものを政府は抱えておるわけです。これの立場が、それをやりますと大変むずかしいことになってくる。そういうようなことで、生産農家の立場を維持するに足る調整金というものを逆に輸入牛肉から徴収する、こういうようにしたわけなんです。畜産事業団というものは、海外から輸入してくる肉、それから国内で生産される肉、これを全部買う、こういうことになっておれば、これはもう問題なく海外から入ってくるのが安くなるのですから、平均的な売り値というものは安くなる、なり得るのですが、そういうシステムにはなっておりませんし、また、わが国の畜産というものは千差万別でございまするから、統一的な価格でそれを畜産事業団に買い取るというようなこともできませんし、これは本当に政府としては、せっかく円が高くなった、牛肉の輸入価格が安くなった、そういう際ですから、これを消費者に還元させたいというところでありまするが、奇手、妙手というものがない、非常に頭が痛く、またつらいところである。しかし、そういう中でも、いま農林大臣が申し上げましたように、いろいろ工夫をいたしまして、そしてこれは工夫程度のことでありまして大きなことはできないと思うのですが、いささかでも消費者に安く肉が提供されるようにいたしたいと思って、あの手この手と工夫をいたしておるというところでございます。
  355. 竹田四郎

    竹田四郎君 総理ね、消費者に安くするという円高のメリットを返すということ、これも重要ですよ。しかし、いま一番重要なことは、日本がどう黒字減らしをやろうとしておるのか、その決断をこの円高ということで求めているんだ。だから、確かに政府が出してきている黒字減らしの金額を総計したって、これは大したことないですよ。十億ドル程度のものでしょう。幾らでもないんですよ。また、すぐに急にできるものでもないんです。しかし、この牛肉の場合なら、私はこれをまず初めに総理が決断をもってやる。それは確かに農林大臣の方で――畜産事業団なり畜産農家についてはいろいろ問題はありますよ。これは私はいまお話があったように全然調整のできないものでもないと思う。やればできると思う。福田さん、私は今度の円高の責任というのはあなたにうんとあると思う。実現できそうもない赤字七億ドルを振り回してみたり。そして私が何回か言ったことがありますよ。ことしは補正予算を早く大きなものをつくれということを私はかなり前に言っておりますよ。去年は、円高になるんだから徐々にひとつ円高の方へ誘導していったらどうだろうと、こういうことも私はこの席で言っておりますよ。あなたは言うことは言うんだ。しかし、何にも決断しないんだ。だから、ひとつ牛肉一つぐらい決断して、世界に、日本もなるほどドル減らしをやる意思があるんだな、行動に出たなと、私はいまそのことが一番必要だと思うのです。  だから、ちょっと通産大臣に聞きますが、あなたが先ほどいろいろなものを輸入する輸入すると口では言いますけれども、具体的に、何月末までにこれだけ輸入します、何月末までにこれだけ輸入します、そういうプログラムをいま世界に向けて私は出すべきだと思う。口だけで言って何にもやっていないから、円高への外圧というものが私は来たと思う。これからの日本の経済のやり方、そうしたものは、もう具体的なプログラムをつくらないと世界は信用しないと思う。通産大臣、どうですか。具体的に言ってください、具体的に。
  356. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいま申し上げましたあるいは原油の問題、あるいは非鉄金属等の問題、これは私どもといたしましては非常にかたい数字を申し上げたので、ということは、今後なお業界との折衝もございますけれども、少なくともこれだけのものは既定の促進という意味でございますからこれは確実にできます。まだウランの問題……
  357. 竹田四郎

    竹田四郎君 確実にできるじゃないんだよ。私の質問は、いついつまでにどれだけやるというプログラムを出せと言っているんです。
  358. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) これは私どもの役所の特徴としまして政府が自分の資金で自分のところへ輸入するのではございませんで、やはり石油を輸入するにしましても、あるいはウランを輸入するにしましても、たとえばウラン等は原発をやっておりまする会社との交渉事が中間にあるわけでございますから、いまの自己資金で自分のところに政府輸入をするというような、いま先生にここではっきり一カ月後にはこれはこれこれ輸入いたしますということを確言できないところが通産省というところのまことに申しわけないところでありまするが、この点はどうぞ御容赦をいただきとうございます。
  359. 竹田四郎

    竹田四郎君 恐らくここでできてないから出さないと言うんですが、じゃ、いついつまでにそういうものを出しますか。これは総理もそのくらいこういう問題で牛肉の問題を初めいろいろな輸入の問題で明確にプログラムをして、それを行動していくという、そういう証拠がなければ私はいかぬと思うんですよ。その点をはっきりしてくれなければ、幾らあなたがうまいことを言ったって、やっぱり外圧がどんどんどんどん来て、日本の経済というのは急激に、ソフトランディングをねらっているにもかかわらず、この間の米軍機みたいにがしゃっと墜落しちゃう。その点は決意してください。決断してください。
  360. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) まず、原油の問題でございまするが、これは三百六十万キロの積み増しは十二月までにできます。それから非鉄金属の備蓄の問題は来年の三月までにできます。それからまた、ナフサの点でございますが、これはまだいろいろと非常にむずかしい業界との関係もあることは御承知のとおりでありまするが、来年三月までには解決いたしたいと思っております。
  361. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、いまお話しのように、早く決断し早く実行する、これが最大の円対策だと、そういう考えなんですよ。それであればこそ、いまどういうふうな緊急輸入をするか、まあ基本的には日本の経済が上昇しまして、そうして日本経済の購買力、これが物を言うと、こういうふうに思いまするけれども、それを待たず、まあとにかく緊急輸入をしようと、こういうので、通産大臣から申し上げたようなこと、それから私はそれではまだ満足しないと、こう言っているんです。いま、運輸大臣にも、航空機の購入、そういうことは考えられないのかというようなこととか、あるいは厚生大臣に対して医療機械というような問題についての考え方ができるかできないか、そういうようなこととかいろいろお願いをしておるし、また、通産省にも、ウランの問題ですね、もう少し大量にこの際できないかということの検討も求めておりまするし、しかも、とにかく早く見当だけはつけると。通産省は百分で仕事をするわけじゃないから、いつ幾日と、こういうようなことは言えぬかもしれぬけれども、大体の見当はつけるというようなことを求めておるわけなんです。ただ、竹田さんのお話が牛肉の問題から出発されておりますが、農林関係はいろいろ輸入するものがあるんです。あるんですけれども、金目にならない、これは。たとえば牛肉をいままでよりも一万トン輸入をする、相当これは大仕事でございまするけれども、一万トン輸入して三千万ドルぐらいにしかならない。ですから、農林関係の方に大きなあれを求めるのはなかなかむずかしいようでございます。しかし、その他のもの、特に通産省の関係するいわゆる資源、こういうものは、この際、日本銀行といたしましても、資源で持っているということはこれは外貨を持っているんだというくらいな考え方で大きく踏ん切るべきだと、こういうふうに申しておるわけですが、いまその作業を進めておる段階でございます。
  362. 竹田四郎

    竹田四郎君 通産大臣ね、さきに立ったときはそんなものは出せませんと言って、二回目に出たらすぐ三月末だとか十二月末だとか、出せるんじゃないですか。なぜそういうものをはっきりしないんですか。私はそういう態度にやっぱり問題があると思うんですよ。それからいまの重油三百六十万キロリッターと、非鉄等は三月末に必ずできますね。約束できますね。いいかげんなことで、ここで言い逃れをして後でできなかったというとよけい不信を買いますよ。
  363. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えをいたします。  先ほど申し上げたように、政府が直接政府の資金で現在ありますタンクに備蓄をするというようなことならば、これはいま仰せられましたようにはっきりとお約束ができます。しかしながら、これから、いま交渉中でありまするが、少なくともこの時期までにはそれを貫徹したいと、こういうことを目標を申し上げたのでありまして、私がここだけの席で明確な歯切れのいいことを申し上げないところに私は信頼していただけるもとがあると思うのです。
  364. 竹田四郎

    竹田四郎君 そういう態度でいるから私は日本の経済をこういう混乱に陥れたと思うんですよ。もう少し――半年前といまと違うんです。半年前は日本の国内の景気の回復ということを非常に諸外国は望んでいた。それがこの間のIMFの総会から一遍に変わってきたんです。円高という外圧になってきているわけです。それはもう日本景気回復に熱意がないと、こういうところから円高をねらってきた、こういうふうに私は理解をせざるを得ないわけです。  そこで、総理にお聞きしますけれども、今後の円が二百六十円に返るのか二百五十円台を続けるかどうかわかりませんけれども、恐らく私はこの補正予算に出されている総合景気対策、これが六・七%達成ということが大きな目標だったと思う。これはたとえば五十円台が続くと仮定して、まあ六十円台に返ればいいでしょうけれども、五十円台に上がったとして、それが続くと見て六・七%というのはこの補正予算の額でできますか、どうですか。
  365. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ円高は景気には多少景気全体に対しまして水をかけるという影響があると思うんです。その程度が一体どういうことであるかということでありますが、これはもう少し為替の動きを見ないと判断できない、こういう性格のものです。要するに、いまわれわれがなすべきことは何だと言いますれば、六・七%成長、これはまあ国際社会に公言をしておるわけですから、これはもうどうしたって達成しなければならぬ。また、黒字減らし、このこともそういう方向をとるということ、これも累次やってきておるわけですから、これも実現しなきゃならぬ。私は、国内的には、総合経済対策、これはかなり影響力を持ってくると思うんですよ。成長達成、これには決定的な要素になってくる。  それからこれから先の輸入動向ですね、これは私は輸入がふえてまいりまして、そうして黒字が縮小基調に向かうと――基調でございます、縮小基調に向かうという効果は出してくるだろうと、こういうふうに思いまするが、この路線を見詰めながらとにかく諸般の施策を進めると、こういうことかと思います。
  366. 竹田四郎

    竹田四郎君 経済企画庁で計算されていると思うのですが、計算の数字があったら出してください。
  367. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 円高によってどういう景気に影響を及ぼすかということは、いま総理からもお話しのように、円高がこれからどういう基調で続いていくかということを判断しませんとなかなか計算できないと思います。一般的に申しますと、円高が長く続きますと輸出が減る、そうしてその分だけ輸出産業の生産が減ってくるという面がございます。しかし、一方において輸入がふえてくるという面も出てくるわけでございますので、一概にこれがどうなるかという計算ができないというのが現状でございます。それと同時に、現在やらなければならないことは、やはり総合経済対策を着実に実行して進めていくということでございます。二兆円の事業費によって約三兆円の一年間で効果を持つわけでございまして、これの半分一兆五、六千億が年度内に出て、あとの半分が半年ぐらいの間に五十三年度で出るというわけでございますから、多少大きな幅を持っておりますから、これを着実に進めていく、そして同時に円高で影響を受ける産業に対する対策をきめ細かくやっていくというのが当面の政策であろうと思います。
  368. 竹田四郎

    竹田四郎君 経企庁その他の研究機関も大体計算しておりますけれども、二百五十円というものが相当期間続くとすると、大体〇・三%から〇・五%ぐらいの成長率は落ちるということがいまの常識です。そういうことで、私は、本来ならばこの補正予算というものはもう一回考え直すべきだ、そう思うのですけれども、これはまた後ほど相談した上でお話を申し上げたいと思いますが、せっかく日銀総裁がお見えでございますからお聞きしたいと思うのですが、総裁は乱高下のときには介入することがあると、為替相場が乱高下するときにはやることがあると。しかし、この二週間の円の高いというのは、乱高下の乱高ですね、乱高じゃないんですか、これは。
  369. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 乱高下という言葉を激変の意味で申し上げておるわけでございますが、この二週間の経験は、おっしゃるように急騰という場合だけでございました。
  370. 竹田四郎

    竹田四郎君 総裁、今度は総裁の市場介入が私の目には大変控え目であったような感じが実はいたします。これだけ意識的に日本の円高に攻撃を加えてくるということになれば、私は、ドイツみたいにもう少し介入して、まあ円高になること自体私は悪いとは思いませんけれども、急に円高にならなくて、こう緩やかに円高になっていく、こういうことが一番必要だと思うのですが、どうもそういうことが今回は感じられなかったのですが、それはどういうことでございましょうか。
  371. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) ドイツマルクの場合は、実はもう少し早くマルクが高くなったわけでございます。スミソニアンレートに対する実効引上率で申しますと、マルクの場合は四割ぐらい一これは実効引上率です、四割ぐらい高くなっておるわけでございます。日本の場合はかつて四十八年に二百五十四円という相場をつけたことがございましたが、その後のいろいろな推移、特にオイルショックなどのような事態がございまして大変国際収支が悪化したような時代もございまして、フロート制下にそのままの変動が繰り返されてきておったわけでございますけれども、ことしになりましてからは国際収支の黒字が非常に大きいという基本的な背景から、どちらかと言えば円高一途に過ぎてきておるわけでございます。九月末からの二週間も、おっしゃるようにいささか急激に失したような感じがいたします。私ども、その日その日の市況を注目いたしておりまして、余り激変を来さないように、急騰を来さないようにかなりの規模で介入もいたしたつもりでございますが、何分にも黒字幅が大きいという実勢、並びに国際的に円高ムード、ドル安ムードみたいなものが加わってまいりまして、実勢としてはどうも抗し切れなかったというのが現実のありのままの実情でございます。  ちなみに、本日の午後の円レートは二百五十二円で引けておることを申し上げておきます。
  372. 竹田四郎

    竹田四郎君 日銀総裁は大蔵大臣と一緒にIMFの総会その他御出席になっているわけですが、どうも大蔵大臣の発言と日銀総裁の御発言と大分ニュアンスが違うのですね。それで、先ほど、大蔵大臣は、九月三日に決めた総合政策は各国で非常に喜ばれた――喜ばれたという言葉は使われなかったけれども、受け入れられたと、こういう言葉ですが、総裁はどうもその辺が大蔵大臣と同じでないような、もっと危機感をお持ちになっていたようでありますけれども、どちらが本当でしょうか。
  373. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 九月三日の総合対策が各国から等しく歓迎され評価された点につきましては、全く大蔵大臣と同感でございます。ただ、外国の立場から申しますと、果たしてこれで効果が上がるのだろうかという疑問の念も抱いている向きがございましたのも事実でございます。しかし、その辺のところは、日本のことは私どもが大蔵大臣を初め外国の大蔵大臣あるいは総裁に比べれば一番よく知っておるつもりでございますので、私どもといたしましては、この九月三日の対策が効果をあらわすことを見守ってほしいということを強調し続けてまいったというのが実状でございます。しかし、その場合、時間がどうしてもかかることはやむを得ないわけでございますが、その時間がかかることについて諸外国特にアメリカは少しいらいらした感じを持っておるようでございますので、私は効果としての金額のいかんを問わずできることからやはり一つずつ着手していただくのがよろしいのではないかという感じを持って帰った次第でございまして、そのことを切に政府にもお願いを申し上げておるのが私の心境でございまして、大蔵大臣のお考えと何ら変わりはないと確信いたしております。
  374. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、いま総裁がおっしゃられたように、どうも大蔵大臣が二十九日の段階で御発言なさったことはそうかもしれぬ。今日の段階に至ってもあれが非常によく理解されたなどということをおっしゃっているのは、どうも大蔵大臣として私は責めを果たしているかどうか、これは実に疑問に思いますけれども、どうですか。
  375. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 私がIMFへ出たときに、総会だ、小委員会だ、そういうところで私がこの総合経済対策のことを申しましたら、これに対しては、いま日銀総裁が裏書きしてくれましたが、評価を受けたわけでございます。しかしながら、さっきも申し上げましたとおり、しかし日本の黒字というものがどんどんたまるじゃないかと。そこでひとつ輸入にこの際力を大いに入れてもらいたいということは強く私は要請を受けたということも申し上げたような次第でございまして、いま私もそのつもりで何とかこれはやらねばならぬと思っておる折からでございますけれども、やはり黒字がだんだんたまっていくということにつきましてはどうしてもこれは何らかの対策を立てていかなければならない。で、政府は、先ほど来も申し上げておりますとおり、それぞれの官庁におきましていろいろ腐心をしておるというところでございます。
  376. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、その点は、日銀総裁の最後の方でおっしゃられた、何でも小さくともいいからやっていくと、このことに非常に力点を置かれた点はまさに同感です。そういうつもりで総理大臣も大蔵大臣もその気になってやってもらわにゃ困る。だから、あんなに小さなと言うと怒られるかもしれませんけれども、輸入牛肉の問題を私はそういう意味で取り上げた、その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。  総裁がIMFの総会の最中ですか、あるいは終わってからであるか、その時間は私はっきりしませんけれども、減税をやるべきだという記者会衆がございますけれども、その減税をやるべきだという内容はどういうことでございますか。
  377. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 財政面からの経済の拡大策としては、たとえば公共事業の増額、あるいは減税、いろいろあるわけでございますが、各国のやり方を見ておりますと、いろいろな国情の違いによりましてやり方があるわけでございます。たとえば、イギリスのヒーリー大蔵大臣は、公共事業ではすぐに外国からの輸入に結びつかないのではないかというようなことを申しまして、日本の景気対策が果たして効果があるだろうかというような疑問も呈したわけでございますが、その辺のところは、やはり各国それぞれの実情に応じていろいろな考え方ができるところでございまして、投資減税と限ったわけではございませんが、記者諸君から減税のことは一体どうなんだという質問がございましたときに、やはり日本の経済が直面しておる事態を率直にながめて、必要なあらゆる問題を来年度の予算の編成に際しては考える必要があるのではないだろうか、従来投資減税もしばしば話に出ましたけれども実現できないでずっと来ておるわけですけれども、各国ではこれを実行しているところもあるわけでございますので、その辺のところを一遍白紙に返してあらゆる対策を一遍検討してみるだけの価値はいずれにしてもあるのじゃないだろうかというような感じを申し上げたわけでございまして、私は別に投資減税の実行方を積極的に提言したということではございませんでした。私の感想としていろいろな問題をこの際考えて、検討し直してみる必要はあるのじゃないかということを申し上げた次第でございます。そのときの事情を申し上げた次第でございます。
  378. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうもありがとうございました。それじゃ、総裁、もうあと質問はございませんのでお引き取りを願って……。
  379. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 森永参考人には御多忙中のところを再度にわたりまして当委員会に御出席をいただき、ありがとうございました。御退席いただいて結構でございます。
  380. 竹田四郎

    竹田四郎君 あと、時間がなくなりましたからいろいろお聞きしたいことが伺うことができないのですが、この間総理が東南アジアを回ってきたんですが、あの当時、日本人の経営者が夜逃げをしたということがタイの国でありましたね、ジュートで。これは具体的にどう処理しましたか。これの処理の仕方によっては、せっかく総理が歩いてきても、私は意味がなくなると思うのですが、どうですか。
  381. 花岡宗助

    政府委員(花岡宗助君) お答えいたします。  現地法人でございますサラブリ・ジュート・ミルの賃金未払い問題というのがございましたけれども、その親会社でございます日本製麻に対しまして指導をいたしまして、同社の幹部が現地へ参りましてタイ側と解決に当たりまして、九月の八日の日に工場を閉鎖いたしまして、同日までの従業員に対します賃金と退職金を全額払いまして本問題は解決をしたというふうに了解いたしております。
  382. 竹田四郎

    竹田四郎君 もう一回最後に念押ししたいのですが、これは円満にそういう解決をしたんですか、従業員を含めて。
  383. 花岡宗助

    政府委員(花岡宗助君) 本件は円満に解決いたしております。
  384. 竹田四郎

    竹田四郎君 外務省でも大蔵省でも結構ですけれども、韓国が七月一日から付加価値税というのを入れました。その後、これは物価の関係で一体どんなふうになっているか、両省両大臣から御説明願いたいと思います。
  385. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 韓国が七月一日からEC型の付加価値税を導入したということは聞いております。その付加価値税を導入いたしました結果、その後どういうふうになっておるかということについては、まだ私はここで御報告申し上げるだけの知識は持っておりません、まだ日なお浅いものでございますから。それにつきましてもし必要とすれば政府委員から御報告申し上げます。
  386. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 韓国の付加価値税の実施につきまして、先般の閣僚会議の際にいろいろ聞いてみたのでございますけれども、はっきりしたことはまだ把握できなかった次第でございまして、まだ今後を見守ってまいりたいと思っております。
  387. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、外務省から向こうの韓国経済等々の写しをもらったのですが、あの件については韓国大使館である程度確認はしたことなんですか、どうなんですか。――いや、外務省に聞いている。あなたじゃない。
  388. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 私、先生に外務省から差し上げた資料が具体的などういうものであったかということをちょっといまつまびらかにしておりませんけれども、御指摘の付加価値税の問題につきましては、在韓日本大使館の担当官で鋭意調べているのが現状であるということは聞いております。
  389. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  390. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 速記を起こして。
  391. 中江要介

    政府委員(中江要介君) ただいま先生が御指摘されました外務省のアジア局から差し上げました情報につきましては、いま在韓日本大使館の担当官が確認を急いでいると、こういうことでございます。
  392. 竹田四郎

    竹田四郎君 主税局長、先ほど立ったから、どういうふうだかお伺いします。
  393. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) アジア局長からお答えいたしましたのと同じでございますが、竹田委員御承知の韓国のいろいろな新聞、雑誌等の情報は、私どもも鋭意フォローいたしております。で、ただいま在韓のわが方の大使館の担当官に、政府に対してこういういろいろな報道について政府としてはどういう見解を持っているのかひとつ早急に聞いて、事実関係も詳しく教えてほしいということを申しております。  それから先ほどお答えしようといたしましたのは、物価がどうなっているかという御質問であろうと思いまして、これは実は手元にお持ちになっているものと韓国銀行の経済統計月報というのはかなり感じが違っておりまして、そのどっちが本当かなということを確認をしたいという段階でございます。韓国銀行の経済統計月報では、いろいろな記事に見られるほどの上昇になっていないわけでございます。
  394. 竹田四郎

    竹田四郎君 この資料は、今後の一般消費税導入に対して大変貴重な資料になると思いますから、ぜひひとつ、わかり次第、予算委員長を通じて御配付をお願いしたいと思います。  あと一点。先ほど小柳委員から言われました米軍の墜落でございますけれども米軍側は十秒前に飛行機を出たと、こういうふうに言っておりますけれども横浜市の調査では、三十秒以前に出ている、こういうふうに実は言っているわけです。この辺なんかも大変大きな違いがあるし、けがをした人はこれは大変な重要な問題にもなると思うのです。私は現地にも行きました。この辺は一体どうなんですか。日本の自衛隊ならば、もう民家へぶつかるというと、これは源田さんに私伺ったのですが、もう自分も一緒に飛行機で死んじゃう、そういう状況でありますけれども、この米軍機の場合には三十秒前に脱出をしたと、こう言われている。そして、被害者のところにお見舞いに来たのも非常におくれている。こういう状態で相変わらずあそこを飛行機が飛ぶということは私はどうも日本人として納得できない。そして、その故障機は黙って持っていっちゃう。こういうことをなくするためには、私はやはり基地をなくしていく、あるいは米軍の飛行経路を変えさせる、このことが必要だと思うのですが、これは防衛庁長官それから総理大臣に伺いたいと思います。
  395. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) いま竹田先生から御指摘がございました、脱出の時期等に問題があるではないか、あるいはああいう事故が出たことについていろいろな問題があるから航空路を変えるなりあるいは基地についてひとつ検討を加えるべきではないかという結論的な御意見等も出たわけでございますが、いま私どもこの事態を非常に重大視して取り組んでおるわけでございまして、事故調査を積極的に進めております。  なお、再度そうした事態が起こらない、再発防止の対策も進めておるわけでございまするが、そうしたことをいま事故分科委員会で取り組んでまいっております。なお、これを最終的には合同委員会に持ち込んで、いまいろいろな点の御指摘がございましたが、そういうものを含めて最終的な検討をいたしまして結論を出したい、そういうことで鋭意取り組んでおる事情でございますので、御了承願いたいと思うのでございます。
  396. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 本件はまことに遺憾な出来事だったわけでありますが、再びこういう事態の起こらないように最善を尽くします。
  397. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上をもちまして竹田君の質疑は終了いたしました。(拍手)  なお、主税局長にちょっとお伺いをしますが、先ほどの竹田君の要求資料につきましては、よろしゅうございますか、お出しになりますか、韓国の……。
  398. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 委員会開会中に間に合いますかどうか、間に合いますれば……。
  399. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) それじゃ、お出しを願います。  明日は午前十時から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十九分散会      ―――――・―――――