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1977-11-14 第82回国会 参議院 本会議 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月十四日(月曜日)    午前十時三分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第九号     —————————————   昭和五十二年十一月十四日    午前十時 本会議     —————————————  第一 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正   する法律案趣旨説明)  第二 健康保険法及び船員保険法の一部を改正   する法律案趣旨説明)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      —————・—————
  2. 安井謙

    議長安井謙君) これより会議を開きます。  日程第一 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案趣旨説明)  本案について提出者趣旨説明を求めます。三原国務大臣。    〔国務大臣三原朝雄登壇拍手
  3. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  まず、防衛庁設置法の一部改正について御説明いたします。  これは、自衛官の定数を、海上自衛隊八百九十人、航空自衛隊九百十七人、計千八百七人増加するための改正でありまして、海上自衛官増員は、艦艇、航空機就役等に伴うものであり、航空自衛官増員は、航空機就役等に伴うものであります。  次に、自衛隊法の一部改正について御説明いたします。  これは、航空自衛隊輸送航空団編成航空団編成と区分し、輸送航空団司令部及び輸送航空隊から成る編成を定めるほか、同じく航空自衛隊第三航空団司令部の所在地を愛知県の小牧市から青森県の三沢市へ移転するものでありまして、それぞれの部隊の任務遂行の円滑を図るためであります。  以上が、この法案趣旨であります。(拍手
  4. 安井謙

    議長安井謙君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。野田哲君。    〔野田哲登壇拍手
  5. 野田哲

    野田哲君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました防衛法案について、その前提となっている防衛構想中心に、福田総理三原防衛庁長官並びに関係大臣に対し、数点にわたって質疑を行うものであります。  まず、本法案前提となっている防衛基本構想について総理所信を伺うものであります。  本年七月に防衛庁が閣議の議を経て発表した「日本防衛」と題した防衛白書防衛基本構想を示しているものでありますが、これで注目すべき点は、従来は曲がりなりにも「憲法第九条の制約」があることが記述をされていたものでありますが、今回発表されたものでは、一言半句も「憲法第九条の制約」という文言が見当たらないということであります。なぜ、前回まで記述されていたこの基本原則が今回は記述されないのか。このことは、文章上の問題ではなく、政府並びに防衛庁認識の問題としてきわめて重要であります。政府並びに防衛庁認識からは、もはや憲法第九条の認識は失われているのでしょうか。総理認識をまず伺うものであります。  次に、政府防衛構想基本は、依然として日米安保体制基本となっています。二十年一日のごとく、このような固定観念にしがみ続けている政府考え方について、この際改めて大きな疑問を投げかけざるを得ません。今日の安保体制が形成されてから現在に至るまでに、アジア地域情勢は大きな変貌を遂げております。  その第一は、ベトナムに対するアメリカ侵略は完全に失敗し、インドシナ三国はそれぞれ新しい国づくりに踏み出し、ASEAN諸国との間でも友好関係の道を開きつつあります。このことは、アメリカ安全保障コミットメントは決して万能のものではなく、それどころか、アメリカが介入していたことが近隣諸国の平和と友好を妨げ、アメリカが撤退をしたことが平和と友好をもたらしたことを明確に示しているのであります。(拍手)  第二には、日本アメリカ合衆国が安保体制によって対峙していた中華人民共和国との間には五年前から国交が回復され、友好関係が樹立されるに至りました。アメリカも、いま中国との関係の修復を行いつつあります。かつて安保体制発足当時、世界を、アメリカ中心とした自由陣営ソ連中心とした社会主義陣営の二極構造と規定して、日本アメリカ前方展開戦略の一翼に組み込まれていた時代は、もはや終わりを告げようとしております。  今日、日本の平和と安全を守る道は、軍備の増強よりも、平和外交の積極的な展開によって近隣諸国との友好関係を確立することにあるのではないでしょうか。その立場に立って、次のことについて総理見解を伺います。  それは、五年前に国交が回復した中華人民共和国との間で懸案になっている平和友好条約の締結は、今日では、まさに総理決断いかんにかかっていると思います。この点についての総理の率直な所信を伺うものであります。  次に、最近注目すべき動向として、PRM一〇と呼ばれているアメリカ大統領政策検討メモランダム第一〇号によると、NATOと東アジアにおけるアメリカ安全保障コミットメントが再検討されていると言われています。三原防衛庁長官並びに鳩山外務大臣は、このPRM一〇について、どのような感触と認識を持っておられるか、伺うものであります。  現在の日米安全保障条約の期限である一九八〇年が間近に迫っています。一九七〇年代に大きく変化した国際情勢、なかんずくアジア情勢を踏まえ、一九七〇年にとられたような現行安保自動延長ではなくて、国民的合意によってその道を選択するための提起をされる用意があるかどうか、一九八〇年に向かっての総理見解を伺うものであります。  次に承りたい点は、今日のわが国経済情勢防衛費の規模についてであります。  政府は、今日まで、防衛費GNPの一%以内という原則によって防衛費肥大化に一定の歯どめを行ってまいりました。しかし、経済高度成長時代には、この原則によってさえ防衛費GNPの伸びに比例して年々肥大化の一途をたどってまいりました。減速経済時代を迎え、もはや、かつての高度成長は望み得ない状況になった今日、国民は、防衛費のとめどもない肥大化に対してどのような歯どめが行われるか、重要な関心を持っています。高度成長時代防衛費GNPの一%以内という原則を持ちながらも、パイを大きくすることによって防衛費の増加を図るという、かつての手法が通用しなくなった現在、この経済的な制約を破棄させようとする動向が国の内外で顕著にあらわれております。政府は、低成長時代を迎えた今日、防衛費についての経済的な制約をどのように考えているか、総理見解を求めるものであります。  第三点は、武器輸出に対する政府考え方についてただしたいと思います。  政府は、現在まで、武器輸出について、「紛争当事国には輸出しない、国連で決議した禁止国には輸出しない、共産圏には輸出しない」、この三原則をとってきたと思います。この三原則は、今日の国際情勢経済情勢のもとでは洗い直しをする必要があるのではないでしょうか。  その理由の第一は、日本から外国に対して行っている経済援助がその受け入れ国において武器の生産に充てられていた場合、その生産された武器がどのように供与されるかについて日本は何らの規制措置を持ち得ないのであります。現に、日本からの経済援助によって操業を行っている韓国浦項製鉄所韓国軍事産業中心的な役割りを果たしていることは、本年初頭、現地を視察した朴大統領の年頭の訓辞でも明らかにされているのであります。ここで日本からの経済援助によって生産された武器が朝鮮民主主義人民共和国に向かって配備されている現状は、まさに紛争当事国に対する武器供与そのものではないでしょうか。  政府は、このような現状にかんがみ、武器輸出原則を洗い直し、武器輸出全面禁止と、あわせて、「武器製造業種に対する経済援助は行わない」、また、「武器製造企業に対する資本進出は認めない」、このことを今日明確にすべきではないかと考えますが、総理並びに大蔵大臣見解を承りたいと思います。  次に、政府が予定している新しい装備について、総理並びに防衛庁長官にその見解を伺うものであります。  政府は、昭和五十三年度以降において、次期潜哨戒機としてP3Cオライオン四十五機を配備することを決定しています。この対潜機は、いまさら言うまでもなく、国際的な賄賂商法展開したロッキード社の製作に係るものであり、田中角榮総理に対する贈賄事件外為法違反脱税容疑などで田中総理とともに起訴され、法の裁きを受けている丸紅、児玉譽士夫が、それぞれ代理店、コンサルタントとしてロッキード社と契約を交わしていた機種であることは明白なる事実であります。ロッキード事件公判における冒頭陳述においても、児玉がP3Cの売り込みに介入し、画策をしていたことが具体的な事例を挙げて述べられています。P3C導入への道を開いた昭和四十七年十月の国防会議経過に対して、国民は依然として深い疑念を抱いています。本院ロッキード調査特別委員会において、三木前総理並びに防衛庁長官が、疑惑法的解明とあわせて政治的にも解明されなければならないと言明されているが、このような言明は、どのような理由で今日変更されたのか、総理並びに防衛庁長官の明確な答弁を求めるものであります。この言明を誠実に履行される意思があるとするならば、ロッキード事件公判が終結するまでPXL輸入を凍結すること、PXL国産開発を白紙に還元して輸入の方向に転換した当時の国防会議関係者国会での証人喚問要求に応じさせる措置をとること、この二つのことを実行されることこそ、国民疑惑を晴らすための総理並びに自民党総裁としてとるべき道ではないでしょうか。総理並びに防衛庁長官見解を求めるものであります。  次に、政府は、F15イーグル次期戦闘機として配備しようとしています。F15F4ファントムにかわって、ソ連ミグ23、ミグ25を意識して、これに対する米空軍の回答として開発された世界最新鋭の要撃戦闘機であり、これには、六千九百五十キログラムの爆弾搭載する爆撃装置空中給油装備を備えていることは明確であります。爆弾搭載をし、空中給油装置を持った戦闘機を配備することは、明らかに憲法第九条を踏み越えたものであると断定せざるを得ないし、断じて私たちは容認することはできません。  昭和四十七年十一月七日、政府は、衆議院予算委員会におけるわが党の石橋委員質問に対して統一見解を発表しています。これによると、戦闘機爆撃装置を施すことによって他国侵略的、攻撃的脅威を与えるとの誤解が生じるので、爆撃装置は施さないという増田長官見解を明らかにし、これに加えて、次期支援戦闘機FST2改は足が短いので爆撃装置をつけても他国への侵略的、攻撃的脅威を与えるおそれを生じることはないという奇妙な弁解を行っております。  空中給油装置については、昭和四十八年四月の本院予算委員会において、わが党上田哲委員 森中守義委員質問に答えて、当時の田中角榮総理は、問題となったファントム給油装置について、空中給油は行わない、空中給油機は保持しない、空中給油のための訓練は行わない、の三点を確約するとともに、その装置についても、防衛庁制服要求を抑えて、地上給油にしか使用できないように改造することを確約をしていることを総理並びに防衛庁長官はお忘れではないでしょう。今回のF15導入について、爆撃装置空中給油装置を持ったまま配備する計画は、明らかに憲法第九条を踏み越えた行為であると同時に、さきに述べた国会における政府見解を大きく逸脱するもので、断じて容認することはできません。福田総理並びに防衛庁長官の責任ある答弁を求めるものであります。  次に、自衛隊に対する政府シビリアンコントロールのあり方について、総理並びに防衛庁長官見解を伺いたいと思います。  去る十一月四日、航空自衛隊平野幕僚長は、記者会見において、爆撃装置空中給油装置要求性能の中に当然入っていたもので、取り外すことはできない、これを取り外せばF15F15でなくなってしまうという驚くべき見解を発表しています。この見解は、明らかに他国に対して攻撃的、侵略的脅威を与える性能を持ったFXを配備することを意図していたことを示すものであり、あわせて、国民を代表した国の最高機関である国会での論議の経過制服が挑戦した言動であると言わなければなりません。さらに、去る十月十四日には、栗栖統幕議長天皇認証官発言も行われております。これらの制服組発言は、偶発的なものとしては受け取れない重要な意味を含んでいます。それは、憲法制約を度外視し、国会での審議経過意識的に黙殺をして、ひたすらに高性能装備を持とうとする制服組意識シビリアンコントロールを無視し、天皇と直結しようとする意識が赤裸々にあらわれているからであります。  総理並びに防衛庁長官は、シビリアンコントロールということについて、それを無視する制服組言動について、一体どのような認識を持っておられるのか、その見解を伺って、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  6. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お答え申し上げます。  本年度防衛構想の中から「憲法第九条の制約」という言葉が消えたが、それはどういう意味か、憲法認識を問うと、こういうようなお話でございますが、わが国防衛計画は、憲法第九条という言葉のあるとなしにかかわらず、憲法範囲内においてこれを進めるべきものであると、こういうような基本的な考え方であります。防衛計画の大綱におきましても、憲法上許される範囲内でこれをやるんだということを冒頭にかぶせておるんです。別に故意的にこれを削除したという意味ではございません。  次に、国際情勢変化したので、防衛構想前提となる安保体制を修正すべきではないか、八〇年ごろにはこれを廃棄すべきではないか、そういうようなお話でございますが、日米安保体制を長期的に維持することは、単にわが国安全保障のみならず、アジアに、ひいては世界の平和と安全に大きな影響のある問題でありまして、これを修正するとか、あるいは廃棄するということは、これは妥当でない、このような見解でございます。  それからさらに、近隣諸国との平和関係、これを推進すべきではないかというお話でございますが、それはお話を承るまでもないのであります。ソ連との間には、平和条約、これらの問題がある。北方領土問題を早く解決いたしまして、そして平和条約にこぎつけたい。それから日中平和友好条約、これはしばしばこの席上で申し上げておるとおりでありますが、双方の満足し得る条件、状態のもとにおきまして日中条約をとにかく早く締結したい、そういう考え方で進めておるわけであります。  それから、世の中は高度成長時代から低成長時代に入った、そういう際におきましても、GNP一%という防衛費考え方、これに変わりはないかとのお話でございますが、これは変わりはありません。これは、わが国を取り巻く安全保障、この環境に重大な変化が来る、こういうことになれば格別であります。しかし、そういう事態のない限りにおきましては、一%以内という方針はこれを堅持してまいる、そのように考えております。  それから、武器輸出原則に対する考え方、これは従来の方針を堅持します。なお、その上におきまして、いま野田さんから御指摘がありましたが、武器製造業に対する資本輸出の問題であります。この問題にも思いをいたしまして、武器製造に対する資本輸出につきましては、武器輸出原則精神に沿って、精神を踏まえましてこれを抑制する、こういう考え方をとっていきたい、かように考えます。  それから、P3Cの導入につきまして、国民疑惑は消えていない、ロッキード事件の終結までP3Cの導入はこれを凍結せよと、こういう御所見でございますが、次期潜哨戒機につきましては、ただいま国防会議参事官会議におきましてこれを検討いたしております。その検討の結果、ロッキード社のP3C、これを購入するというようなことになります場合におきましても、この疑惑につきましてはこれを全部解明して、国民に信頼をされるような形を打ち出していきたいと、かように考えております。  また、国防会議関係者国会に証人喚問させよというようなお話でありますが、これにつきましては、これは国会でお決め願いたい、かように考えます。  それから、F15爆撃装置空中給油装置、これは憲法違反じゃないか、こういうようなお話でございますが、いま、この問題につきましては、防衛庁の提案をもとにいたしまして、関係省庁で調整が行われております。いずれにいたしましても、国防会議で慎重に審議する、いやしくも憲法違反のそしりが出るというようなことにはいたしません。  それから、防衛庁自衛隊高級指揮者がいろんな発言をしておる、こういうお話でございますが、それは、あるいはこの運用者立場から爆撃機の機能につきまして単に意見を述べたもの、あるいは自衛官社会的評価を高からしめようという願望を述べたというようなものでありまして、これがシビリアンコントロールに反するとか、憲法違反であるとか、そういうような考え方は持っておりません。  以上。(拍手)    〔国務大臣三原朝雄登壇拍手
  7. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 私と総理に同じ質問がありますけれども総理の申された点について、違ったと申しますか、補足するような点についてお答えを申し上げたいと思います。  まず、第一の御質問で、防衛白書憲法の字句を取り上げていないという点がございました。これは制約を無視しておりはしないかということでございましたが、この点につきましては、昨年の防衛白書も本年の防衛白書におきましても明確にいたしておりまするのは、わが国防衛力整備につきましては「自衛に徹する専守防衛のものでなければならない」ということを明記をいたしておるのでございます。これ自体は憲法九条の趣旨に基づくものでございます。  それから、アメリカ大統領政策検討メモについて御質問がございました。この点は、大統領の委託によりまして米国の各省庁は当面する諸問題について調査研究を行っておる、そして、この研究結果をまとめて国家安全保障会議にかけると、そういうようなことで研究されておるということを承知をいたしておるのでございます。なお、このメモランダムにつきましては、極秘に取り扱われておるわけでございまして、内容の詳細を承知いたしておりません。なお、本件につきまして、ワシントンポスト紙にエバンス氏とノパクの両記者署名入りで報道いたした資料がございます。この点についてお尋ねであろうと思うのでございますが、NATOの維持に関する検討、これは戦略的なものであろうと思いまするが、あるいは韓国における米軍即応態勢検討等がその中に載っておるようでございます。この点について、御指摘のような米国コミットメントの再検討については十分承知をいたしておりません。  次に、GNP一%についての御質問がございました。総理と全く同じ御方針のもとに進んでおるわけでございます。内外情勢変化がない現状におきましては、この方針を変える考えはございません。  次に、ロッキード事件の法的、政治的な解決がなされてからPXL導入について取り組むべきではないかという御指摘でございます。ロッキード事件は、御指摘のように、私どもといたしましても、国民への影響がきわめて重大であった、そういうようなことから、一般的には公判も一切終了してかかりたいという、そうした受けとめ方については変わりはございません。しかしながら、現在の公判状況等を想像いたしましても相当長期の期間がかかるであろう。わが国防衛体制考えてまいりますれば、対潜能力の向上ということは過去十一年間も検討してまいったのでございまして、喫緊の要事であると私ども考えておるわけでございます。防衛庁といたしましては、あくまでも、絶えず申しておりまするように、純技術的あるいは専門的な立場で、純防衛的な立場選定作業を進めてまいりましたし、その作業中には国民へのPR等も含めて実施をしてきたことは御承知のとおりでございます。私どもといたしましては、公判が進行中であり、先ほども申しますように、この決着がついてということは考えてはおるわけでございまするけれども、いままで司法当局が発表いたしました捜査の結果、あるいは先般アメリカ証券取引委員会に対する報告書資料等検討いたしましても、このPXLについては犯罪容疑がないということを私ども承知をいたしておるのでございます。なお、防衛庁といたしましては、ロッキード事件経過等を踏まえて、ロッキード社に対しましての詰めてまいるべき一切のことは詰めてまいりました。そして、将来こうした事件の再発が絶対行われない予防措置もとってまいっておるわけでございます。こうした諸般の情勢を踏まえて、防衛庁といたしましては最後の決定をいたしたという経過でございます。  次に、F15爆撃装置なり給油装置を今回そのままの状態導入するということは、従来の政府方針を変更したのではないかという御指摘でございます。私どもといたしましては、防衛庁として過去数年間対防空関係航空機について検討をしてまいりました。最終的に昨年これを防衛庁決定をいたしました。そうして、本年度概算要求にこれを盛ってまいりましたし、今後は、ただいまのところでは国防会議参事官会議でこれの検討を進めております。その結果、引き続いて国防会議にかけ、政府予算決定というようなところで審議を願うわけでございます。そういうようなことを大前提にして、私どもは今後の対処をいたす考えでございます。  そこで、ここで申し上げておきたいのは、防衛庁がそうした決定をいたしましたのは、現在の世界航空機の技術が非常に向上してまいった、また、わが国の地勢的な立場から、北は北海道から南は沖繩までというような、そうした地勢上の運用の観点からこの選定について検討を加え、なおまた政治優先シビリアンコントロールというわが国防衛上の体制ということは、かたくこれを踏まえてまいっておるわけでございます。そうした立場で、私どもといたしましては、今後は国防会議の慎重な審議に期待をいたしておるという現況でございます。  次には、このことが憲法上に抵触するのではないかという御指摘でございます。この点につきましては、防衛力の保有いたします装備整備につきましては、御承知のように、あくまでも憲法上の制約ということを私ども前提にいたしておるところでございます。自衛のための必要最小限度のそうした装備をいたすということ、これを前提として進んでおるわけでございます。したがいまして、数千マイルも飛んでまいりまする、そうした重爆撃機でございまするとか、あるいはICBMのような長距離誘導ミサイルというようなものは、これは私どもとしては持たないという、そうした立場で進んでおることは御承知のとおりでございます。F15は、あくまでも空中におきまする要撃戦闘機としてこれが生まれてきたものでございます。したがいまして、対地攻撃でございまするとか空対地核爆撃とかいうような機材は一切搭載をいたしておりません。また、支援戦闘におきましてもF15はおのずから限界がございます。行動半径も、御承知のように、数百海里というような状態でございまして、そうした支援戦闘能力におきましても限定がなされておるわけでございます。したがいまして、絶対に、これが外国侵略するとか攻撃するとか、そしてまた外国脅威を与えるというようなものでは、現在時点の列国の航空機状態を見て、私は、脅威を与えるものではない、そういう判断をいたしておるのでございます。いずれにいたしましても、御指摘のように、専守防衛でございまするとか、あるいは政治的なシビリアンコントロール、そうしたものを十分踏まえながら、私ども装備については処置してまいる考えでございます。  次には、平野、栗栖両君のことについてお尋ねがございましたが、これは総理から御答弁がございました。全く私も同様な見解を持つものでございます。決して憲法を無視したり、あるいはシビリアンコントロールを踏みにじるというようなものでは断じてないということでございますので、御了承を願いたいと思うのでございます。  以上で私の答弁を終わります。(拍手)    〔国務大臣鳩山威一郎君登壇拍手
  8. 鳩山威一郎

    国務大臣(鳩山威一郎君) 私に対する御質問は、いわゆる大統領政策検討メモランダム第一〇号、PRMナンバーテンと言われるものについてでございます。これにつきましては防衛庁長官から御答弁がありました。外務省といたしましても、このメモランダムと言われるものはアメリカ政府部内の検討資料であります。そして、これも対外的には一切公表されておりません。そういった次第で、日本政府といたしまして、その正確な内容等は承知をいたしておらないということで、したがいまして、その内容のコメントも差し控えさしていただきたいと考えます。  また、武器輸出、あるいはわが国から進出した企業が外国においてこのような武器をつくっているのではないかと、こういうお話でございます。これにつきましては、あるいは大蔵大臣からも御答弁があると思いますが、従来からのわが国経済協力、もっぱらこれは民生の安定あるいは経済の発展と、こういうことを考えまして行っているものでありまして、武器製造を目的としたような援助は絶対に行っておらないということを申し上げておきます。  ただいま浦項製鉄所にお触れになりました。しかし、素材製造というものは、これはその結果、製品がいろんなものに使われるということはございます。しかし、鉄をつくるから、これが武器産業であるということは、これは世界的に通らない常識であろうと思います。私どもといたしまして、製鉄事業には協力をいたしました。しかし、これは仮に製鉄がなくても、素材はどこの国でもつくっておるわけでありますから、これをもちまして武器産業と言うことはいかがであるかということを申し添えまして、お答えといたします。(拍手)    〔国務大臣坊秀男君登壇拍手
  9. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) お答え申し上げます。  わが国国民外国に合弁企業を設立して武器を製造するということにつきましては、総理から御答弁がございましたけれども、御指名でございますので、私からも補足的にお答えをさしていただきます。  対外投資の許可を行うに当たりましては、関係当局間で慎重に審査し、武器の製造を目的とすることが明らかである場合には、武器輸出に関する処理の方針に照らしまして、これを抑制することといたしております。また、合弁企業が投資後事業目的を変更して武器の製造を行っていることが明らかになった場合には、本邦投資企業が合弁企業に対しまして影響力を行使いたしまして、それを抑制するということに相なる次第でございます。  以上でございます。(拍手
  10. 安井謙

    議長安井謙君) 答弁の補足があります。三原国務大臣。    〔国務大臣三原朝雄登壇拍手
  11. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 国会の過去の審議経過において、田中総理なり増田元長官あたりのそうした発言にもとるではないかというお尋ねのようでございます。  まあ、結論的に申し上げまするならば、国際軍事情勢と申しますか、軍事技術の変遷、技術的に非常に向上してまいったという現況を踏まえて、実は過去の問題のそうした点をお答えをいたしたいと思いますが、F4は戦闘爆撃機でございます。今度のF15は要撃機でございます。そうした機種の違いによりまする機能の相違というような点から御判断を願いたいと思うのでございます。給油問題のそうした装置についての発言もあるわけでございますが、この点につきましても、性能上の差なり、やはり列国の航空機のそうした技術、機能等の向上自体に対処するというような、性能上の問題から、それに即応する航空機整備しなければならないというような点でございます。そうした過去で申されたときの情勢と現在の世界の軍事情勢との推移というような立場から、そうした決定をいたしたということでございます。(拍手)     —————————————
  12. 安井謙

    議長安井謙君) 和泉照雄君。    〔和泉照雄君登壇拍手
  13. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 私は、公明党を代表して、ただいま趣旨説明のありました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対して、総理並びに関係閣僚に質問をいたします。  まず第一に、ポスト四次防問題についてであります。  昨年十月二十九日、ポスト四次防計画の大綱が決定され、本年度から従来の五カ年固定方式ではなくて、ローリング方式による防衛力整備計画に入っております。この防衛力整備構想は、従来の脅威対応論とも言うべき所要防衛力論から基盤的防衛力構想を採用しておりますが、その前提として、現在のわが国を取り巻く国際情勢が東西関係において四次防策定時と比較して大きな変化はないとの認識に立っており、その限りでは、わが国への顕在的軍事的脅威は当面存在しないとの判断をしております。そのため、この前提条件、特に国際環境が大きく変化する事態が生ずれば、この構想自身もまた再検討さるべきものとされていたのであります。  ポスト四次防大綱決定後の国際情勢の大きな変化として、在韓米軍の撤退という米政策の変更があります。昨年十一月八日、丸山次官は、日本記者クラブの講演会で、カーター政権が在韓米軍の撤退に踏み切ることになれば大綱は見直ししなければならないとの危険な発言をしているが、カーター政権の在韓米軍撤退の方針がかなりはっきりした現在、国際情勢の判断において大綱決定時とかなり異なっていると考えられますが、政府は、丸山発言のとおり、大綱を再検討する考えなのかどうか、総理並びに防衛庁長官の御所見をお伺いしたいのであります。  第二点は、防衛費GNP一%問題についてお伺いをいたします。  昨年十月のポスト四次防決定後、十一月五日の国防会議及び閣議で、ポスト四次防における当面の防衛関係費の総額を当該年度GNPの一%内に抑えることが決定されています。しかし、その後、本年七月の国防会議議員懇談会では一%の枠を外せとの議論が出たり、また、三原長官も、八月二十二日の福岡市内外情勢調査会、九月二十六日の東京国策研究会懇談会等で、一%ラインを固定する必要はない旨の発言をしていたり、政府として閣議決定方針を真剣に遵守するのかどうか、大いに疑問が持たれます。さらに、最近の在韓米軍撤退等の米国アジア離れの傾向からわが国の安保ただ乗り論も台頭しており、さきの岸・カーター会談における日本防衛費一%論も取り消されたとはいえ、米側の真意の一端を示すものと考えられるのであります。  わが国防衛費は、来年度以降ポスト四次防の目玉商品とも言えるP3C、F15等金額の多い装備があり、両機種合計の総額は約一兆五千億円にも達すると言われ、その上にAEW等も加われば、これら装備の調達のため、GNP一%枠を守ることはなかなか困難との見方も防衛庁内に生じているようであります。昨年十一月決定の当面一%の「当面」の意味について、三原長官は十月十三日の衆議院予算委員会で、大体昭和五十五、六年までとの発言をされ、その後十月二十五日の衆議院内閣委員会では、七、八年先か十年先になってもよいと修正されているようでありますが、真意は一体どこにあるのか、明確に御答弁されたい。  また、政府は、装備充実とGNP一%とのどちらに重点を置いているのか、はっきりした態度を示すべきであるとともに、安保ただ乗り論など一%に対する非難にただ弁解するだけではなく、国の内外で明確に反論すべきであると思うが、総理の御見解をあわせてお聞かせ願いたいと存じます。  第三点は、米国からの防衛協力要請についてであります。  本年七月末、ブラウン米国防長官が、ソウルでの米韓安全保障協議会に出席の帰途日本に立ち寄り、福田総理、三原長官等と会談しましたが、その際、ブラウン長官は、在韓米軍撤退についての米韓協議会内容を説明するとともに、わが国に対し日米防衛協力に関して五項目の要請をしたことが伝えられております。その内容は、一、対潜能力の向上、二、防空能力の向上、三、補給態勢の充実、四、対韓経済協定、五、防衛費の分担、の五項目と言われています。これらの項目は、当面のわが国防衛上の懸案であるP3C、F15の採用、在韓米軍撤退の影響、基地労務費の分担問題と絡み、当然三原長官の渡米後の議題となり得る項目であります。  この点に関して、三原長官は、さきの参議院本会議における代表質問答弁で、五項目の対日要請について、その事実を全面的に否定しております。しかし、八月五日、閣議後の記者会見では、この五項目の要請を間接的に認める発言をしているようであります。この点について、五項目要請の事実が本当にあったのかどうか、また、五項目の具体的内容、政府のこれに対する方針を立てているのかどうか、総理並びに防衛庁長官にお伺いをいたします。  最後に、在日米軍駐留費の分担問題についてお伺いをいたします。  最近、米国内には、安保ただ乗り論を背景に、わが国に駐留費の分担を求める空気が強まっているように思われます。すなわち、本年六月には、米会計検査院が、在日米軍基地労務者の人件費の分担、同基地の共同使用による経費分担などについて日本政府と交渉することを勧告をしており、また、七月末には、来日したブラウン米国防長官が、在日米軍の労務費問題を含む日本防衛費分担拡大を申し入れたことが伝えられております。  日本に駐留する米軍の経費は、地位協定二十四条により、米側が全額負担することになっており、基地労務者の労務費をわが国が分担することは地位協定に違反することになるため、防衛庁としては、各種社会保険の雇用主負担分、各地方自治体の労務管理事務委託などを日本側が分担することは法的に可能との解釈で、五十三年度予算に約六十億円を要求する方針とも伝えられています。伝えられるとおり、六十億円要求方針で進めているのか。今回の日米首脳会談では、この問題はどのように取り上げられたのか。一たびわが国が分担を受け入れると年々増大すると思われるが、その点についての見通しを総理並びに防衛庁長官にお伺いをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  14. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お答え申し上げます。  国際情勢変化してきたのでポスト四次防計画の大綱を再検討すべきではないか、そのようなお話でございますが、世界情勢を見ましても、安定化のための努力が続けられております。また、わが国周辺を見回しましても、その国際政治構造が変化しておるというふうな認識は持ちません。和泉さんは、あるいは在韓米地上軍の撤退問題なんかを頭に置かれての御質問かとも思いますが、これもしばしば申し上げておりまするとおり、南北関係、朝鮮半島における南北関係に均衡を破るような影響を与えるものではないと、こういうふうに考えておるわけでありまして、したがいまして、防衛計画の大綱、これを変更するとか、あるいはその前提として再検討しなけりゃならぬと、こういうふうには考えておりません。  次に、防衛費GNP一%枠の問題でございますが、これをどこまで守るんだと、こういうことでございますが、これは、国際情勢に重大な変化のない限り、わが国防衛費に対する大きな方針として堅持してまいりたいと、かように考える次第でございます。そういう際に、防衛装備充実とGNP一%、この二つの課題、それをいずれを重しとするか、こういうようなお尋ねでございますが、このGNP一%枠、これはただいま申し上げたとおり、当分、つまり重大な国際情勢変化のない限りこれを堅持するわけでありますが、その枠の中におきまして、装備の充実、これはせっかく努力をしてまいりたいと、このように考えておる次第でございます。  また、安保ただ乗り論に対して弁解するばかりでなく、国の内外に対し日本立場を積極的にPRするべきじゃないかと、こういうような御質問でございますが、これは、わが国世界の中では防衛に関しまして——というよりは、むしろ国のあり方としてと申し上げた方がいいんじゃないでしょうか、非常に特異の立場をとっておるのであります。つまり、持たんとすれば持ち得る経済上の力を持っておる。その日本が強大な軍備は持たない、専守防衛といいますか、他国を脅かすような性格の軍備は持たない、そのような態度をとっておるわけであります。これは、歴史の教えるところは、経済強国は必ずもう軍事強国になる。わが日本は歴史始まって以来初めてと言ってもいいかもしれません。その道をたどらない、こういうことにいたしておるわけでありますが、私は、長い将来をずっと展望してみますと、強大な軍備なんか持つことのおろかさというものを国々が感ずるようになってくるだろうと思う。しかし、それに到達するような道程は私は長いと思うのです。しかし、歴史の流れというものは、その強大な軍備を持つそのおろかさをだんだんと知るという流れであるだろうと思う。わが日本はその流れの先端に立っておるという国であります。そういうことにつきましては、わが日本は、これはもう世界にわが日本の平和国家としての立場、そしてその立場に立って世界にその道を説くべき立場にある、また、その道を説きつつある、このように御理解願いたいのであります。  ブラウン米国防長官を通して五項目にわたる防衛協力要請があったと伝えられているが、その真相について伺いたいと、こういうお話でございますが、私は、本年七月、ブラウン米国防長官から表敬訪問を受けましたが、ただいまお話しのような防衛問題についての要請は何一つ私は受けておりません。  また、和泉さんは、在日米軍の駐留費の経費分担につきまして、米側から日本は要請されておるが、どのように対処するつもりであるかというお話でございますが、在日米軍の駐留費の経費負担につきましては、地位協定で、もうはっきり決まっておるんです。米側から、その地位協定で決められていることを越えて要請をされるというようなことはありませんから、それはひとつ、しかと御了解おき願いたいのであります。  なお、そのお話の中で触れられました在日米軍の労務に関する問題につきましては、これは、駐留軍従業員の雇用並びに生活を安定した基盤の上に置くという観点から、現在、日米合同委員会におきまして検討を行っておるところでありますが、まだ結論が出ておりません。これは何らかの結論が出るであろうと、こういうふうに思っておりまするけれども、これはまあしかし、いずれにいたしましても、地位協定の枠組みの中でその結論が出るということでありまして、日米安全保障体制、その中の駐留軍経費の負担原則、これに従って処理されるものであると、このように御理解おき願いたいと思います。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣三原朝雄登壇拍手
  15. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 総理から大体お答えをいただきましたので、漏れております点等について私から補足的にお答えをいたします。  在韓米軍の撤退について、防衛計画大綱を見直すというようなことを考えていないか——特に、これは丸山事務次官の発言指摘をされたようでございますが、丸山事務次官の発言は、外交努力なり、あるいは撤退後におきまする補完的な措置等が米韓の間になされない場合にはという前提のもとに、ああした発言をしたことを承知をいたしておりますので、いま総理が申されましたように、国際情勢の基調が大きく変化をするというような判断をいたしておりませんので、現在、防衛計画大綱を変更するというような考え方は持っておりません。  GNP一%の問題についても総理からお答えがございました。私が五十五、六年のことを言い、あるいは十年というようなことを内閣委員会で言ったことが御指摘でございますので、ここで解明をいたしたいと思うのでございますが、「当面」という御質問がございました。これにつきましては、政府において現在実施をやっております経済計画、この終わるのが大体五十年代の前半期、五、六年ということになりまするから、一応の当面の見通しはそうであろうということをお答えをいたしました。十年という点につきましては、それは現在組んでおりますFX、F15なり、P3Cの予算というようなものが実際に将来一%以内で賄えるのかという御質問がございました。それに答えて、現在のようなわが国経済状態の推移等を見てまいりますれば、十年後においても一%以内で賄い得ると見通しを立てておりますというお答えをいたしたのでございます。  次は、ブラウン長官の五項目の要請があったのではないかということでございますが、総理からお答えがございましたように、韓国におきまする第十回の米韓の防衛協議会の帰りに日本に立ち寄りました。その際には、米韓関係会議の内容、これは声明文にも出ておりましたが、そういうものを中心にして意見の交換をいたしたわけでございます。具体的に五項目の要請というものは受けておりません。ところが、八月の五日のある社の記事に五項目が載っておったということで、私に、ほかの社の記者の方からこういう事実があったのかというコメントがございましたので、そういうような具体的な要請は受けていないということをお答えをいたしたのでございます。  しかし、この点につきましては、御承知のように、米議会におきまする会計検査院なり予算局等においてそうした問題が論議をされておるということは、私ども承知をいたしておるわけでございます。防衛関係者といたしましては、防衛計画大綱に基づきまして、可及的速やかに防衛力整備を自主的に計画的に私どもは実施いたしておるわけでございます。  次に、労務費の問題について、総理からお答えがございましたように、あくまでも私どもは地位協定の方針を踏まえてこの問題とは取り組んでおるわけでございまするが、この問題は、ただいま日米合同委員会で検討中でございます。そういうような状態でございますが、私がブラウン長官に会ったときにこの問題を話し合ったのではないかということでございますが、私は、この問題につきましては、ブラウン氏に私の方から現在検討を進めていますということを申し上げて、その結果を待って適当な処置をいたしたいということを申し上げたのでございます。将来の労務費の推移等について御心配の御意見がございましたが、いま総理からも申されましたように、あくまでも安全保障条約の地位協定の線から逸脱することはできません。したがいまして、合同委員会の結果が出てまいりますれば、それを踏まえて処置をいたしたいと考えておるわけでございます。(拍手)     —————————————
  16. 安井謙

    議長安井謙君) 山中郁子君。    〔山中郁子君登壇拍手
  17. 山中郁子

    ○山中郁子君 私は、日本共産党を代表して、防衛法案について、福田総理並びに三原防衛庁長官関係閣僚に質問いたします。  この防衛法案は、自民党内閣のアメリカに追随する危険な外交軍事政策に対する広範な国民の批判によって、国会審議ですでに三回も廃案になったものです。しかるに、今日福田内閣は、またも同法案を持ち出し、会期を延長してまで強引に通そうとしています。  その背景には、アメリカがベトナム戦争の敗北後、朝鮮半島、北東アジアに焦点を合わせた日米軍事同盟の再編成に取りかかり、一方で在韓米地上軍の漸次的撤退を図りながら、他方では、その補完策として日米韓軍事一体化の計画を推し進めようとしている事態があり、また、このために、カーター政権と福田内閣が頻繁に協議を重ねながら、沖繩基地を初め、在日米軍基地からの自由出撃態勢、自衛隊の増強と日米共同作戦態勢、さらに米日韓軍事連動態勢の本格化などを強力に進めていることと無関係でないのは明らかです。この点で、カーター政権からいわゆる防衛分担の増大をどのような形で求められているのか、三原長官、国権の最高機関である国会に具体的に明らかにしていただきたい。これを否定しようとされても、事実が証明しています。  その第一の具体的なあらわれは、アメリカ政府日本に対して対潜作戦と防空の態勢強化を要請したのにこたえて、政府防衛庁がP3C対潜哨戒機F15戦闘爆撃機導入に踏み切ったことです。  周知のように、P3C対潜哨戒機購入問題は、あのロッキード疑獄の黒い霧に包まれて、いまだ解明されていません。また、F15は、航続距離の長さ、爆撃照準装置空中給油装置の常備などから見て、侵略的攻撃能力を持とうとするものであり、どのように解釈しようとも、わが国憲法のもとでとうてい許されるものではありません。現に、ブラウン国防長官は、訪米した三原防衛庁長官に、P3C、F15導入計画を高く評価したと報道されています。日米共同作戦態勢具体化のための、このようなF15、P3Cの導入は絶対に行うべきではないと考えますが、総理並びに防衛庁長官見解を伺います。  第二の重大な問題は、日米防衛協力小委員会における危険な作戦研究協議が国民の目に隠れて進行していることです。  日米防衛協力小委員会は、昨年八月以来きょうまで六回の会合を行い、有事の際の作戦、情報、後方支援にわたり、二、三年の間にガイドラインを作成する作業に取りかかっています。きわめて重大な点は、この協議に関して外務省が提出した文書によると、研究協議事項が「我が国に直接武力攻撃がなされた場合又はそのおそれのある場合の諸問題」となっていることです。三矢研究が問題になった当時、昭和四十年三月二十六日の参議院予算委員会で、わが党の岩間議員の質問に対して、政府は、「おそれ」だけで日米が共同行動はできないと明確に答弁をしていました。言うまでもなく、日米安保条約はその第五条で、日米共同作戦の発動は、日本国の施政下にある領域に対する武力攻撃があったときと規定をしています。ところが、今回、これを「おそれのある場合」をも研究協議の対象にしたことは、日米安保条約第五条の日米共同行動条項をさらに危険な方向に拡張解釈する重大な策謀にほかなりません。日米防衛協力小委員会が武力攻撃の「おそれのある場合」をも日米共同作戦の対象としているのは、いかなる理由と根拠に基づくものですか、総理防衛庁長官並びに外務大臣の明確な見解を求めます。  第三の重大な問題点は、こうした日米防衛協力小委員会の研究協議の進行の中で、三原長官が有事の際の法令の研究を指示し、同時に、福田総理が参議院予算委員会で有事立法の研究は好ましいことであると述べたことです。  折しもアメリカでは、昨年九月まで在韓米軍司令官だったスティルウェル将軍が「八年後の日本軍隊について動員の体制を予定した法制が確立し、共同作戦の計画と指揮は適切に編成される」と述べ、憲法改悪を初めとする八〇年代の半ばを目標にした日本の有事体制確立を予測しているのです。有事立法は、必然的に国民の言論、集会の自由を奪い、さらに、個人の財産を政府または自衛隊の各級部隊指揮官の命令一つで取り上げ、拒否すれば刑罰に処するというものにならざるを得ません。これは、かつての太平洋戦争中の国家総動員体制の事例を見れば明白ではありませんか。これこそ、わが国憲法に真っ向から対立するものです。一九六五年に三矢研究国会で暴露されたとき、当時の佐藤首相は、これはゆゆしいことだと述べ、今日この平静な状態のもとに非常事態を予想する、そういうこと自身が間違っておると述べています。政府見解は、いつ、またどんな理由で変わったのですか。政府が有事立法の研究を改めて指示した理由と根拠は何ですか。あわせて福田総理と三原長官に責任ある答弁を求めるものです。三矢研究以後、今日まで進めてきた研究協議をすべて公表し、こうした反憲法研究を直ちにやめることを国会国民の前に厳粛に約束をしていただきたい。  第四は、不法な防衛費分担の問題です。  アメリカ政府は、いま基地労働者の給与問題で不当な肩がわり支出要求日本政府に対して行っています。新聞報道によると、政府は六十数億円もの日本側負担に踏み切るようですが、そうであれば、これは在日米軍のすべての経費は合衆国が負担すると明記してある米軍地位協定第二十四条にさえ明らかに違反する行為で、断じて許されないものです。政府はこのような違法の費用分担をどういう根拠で行うつもりか、明らかにしてください。総理と外務大臣答弁を求めます。  次に、横浜市のファントム機墜落事故について質問いたします。  この問題で政府のとった措置は、幾ら口で平和安全を唱えても、実際の態度がいかに対米従属、主権放棄の屈辱的なものであるかを改めて国民に示したものでした。ようやく戻されたエンジンを初め、機体の調査、パイロットを含む米軍関係者の事情聴取など、どのようにして捜査当局が行い、結果をいつ公表するのか、防衛庁長官並びに国家公安委員長の明確な答弁を求めます。国民の生命財産を優先するなら、少なくとも原因究明まで米軍機の厚木基地使用を中止させるべきです。福田総理、三原長官、あなた方にその考えがあるかどうか、はっきりお示しください。  最後に、私は今回の防衛法案の柱である海空自衛隊員千八百七名の増員輸送航空団の改編強化、第三航空団の三沢移駐などが、自衛隊をカーター政権の新たなアジア干渉戦略の一層強力な助手に仕立て上げ、有事即応体制を固めようとする策謀にほかならないことを強く指摘して質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  18. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お答えいたします。  朝鮮半島の新しい情勢に対処しまして、在日米軍基地の機能が強化されておる、それに対する見解いかんと、こういうことでございますが、私どもは、朝鮮半島の情勢がまあ地上軍撤退という事態を迎えておりまするけれども、これによって南北の間の緊張が激化するとか、そういうような見方はいたしておりません。また、在日米軍の活動、こういうことにつきましても、特段にそういう情勢を背景といたしまして変化が来たと、こういうふうな認識は持っておりません。  また、次に日米共同作戦を先取りする、そういう形のF15、P3Cの導入、こういうものはやめたらどうだと、こういう御提言でございますが、これはいま防衛庁昭和五十三年度概算要求として大蔵省と話をしておる問題でございまするけれども、これはいずれ国防会議において慎重に検討した上結論を出しますが、とにかく頭からそういうものの導入をやめてしまえという議論には承服はできません。こういうものはわが国を守るという立場から必要であるということに判断されまするならば、これは決して頭から否定してかかるというような性質の問題ではございません。  それから有事立法問題につきましていろいろのお尋ねがありましたが、自衛隊をそもそも否認してかかるというのなら、これはもう何をか言わんですよ。しかし、いやしくも自衛隊を是認して、そしてこれが国家のために必要であると、そういう見解に立つ以上、自衛隊というものは何のためにあるんですか、有事の際にあるんですよ。その有事の際のいろんな対処ぶりを日米安保体制下において日米間で相談をする、これは当然のことなんです。  それから、政府がどうしてその研究を改めて指示するようになったかということでございますけれども、改めてとか何とかという問題じゃないんです。前々から当然これは検討すべき問題であったわけであります。  また、その研究の結果を明らかにせよと、こういうお話でございまするが、これはもう研究して、すぐそれをどうするという問題じゃありません。時間をかけてゆっくり検討する問題でありまして、検討の結果が出るというようなことになりますれば、これは先々のことでありましょうが、必要に応じて皆さんにも開披いたすということにいたして支障のない問題であります。しかし、くれぐれも申し上げますけれども自衛隊は有事のためにあるんですから、その点だけはひとつ間違いのないように御理解を願いたいと思います。(拍手)  それからスティルウェルという元の在韓米軍司令官が将来の日本の軍事情勢について何か述べたということでございまするが、私の聞くところによりますると、これは民間の研究機関としての発表であると、こういうことでありまして、そういうものにつきまして一つ一つ神経をいら立たしては私どもはおりませんです。  それから防衛協力小委員会の協議対象として、わが国への直接武力攻撃のおそれのある場合の諸問題というのを対象として加えた、こういうことは行き過ぎではないかというような御趣旨の御質問でございますが、自衛隊米軍が共同対処行動を実施する事態は、一般的に、日米安保条約第五条にいう、わが国の施政のもとにある領域に対する武力攻撃が生じた場合であります。これははっきり私ども承知しております。しかし、共同して調査研究する、それが武力攻撃が生じた場合に限定するという、かたくなな考え方をとる必要はないと思うのです。そういう武力攻撃が生ずる、その場合にどういうふうに対処するか。そうすれば、その一環として、その前の段階の、おそれのあるそういう段階、そういうことについて調査研究をする、これは当然のことじゃないか、このように考える次第でございます。  それから、駐留軍労務者に対する日本側の労務費分担問題についての基本的な考え方、この基本的な考え方につきましては、先ほど和泉さんに対してお答えしたとおりでありまして、地位協定、これに従ってやると、こういうことでございます。  また、この事故原因究明まで米軍機の厚木基地使用を中止させる意向はないかと、こういう話でございますが、そのような意向は持っておりません。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣三原朝雄登壇拍手
  19. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 総理から大半はお答え願いましたので、補足する点について二、三申し上げてみたいと思います。  まず、アメリカから防衛に対する五項目の分担要求が出されておるではないかということでございます。もう再三これは申し上げておりますように、わが国防衛は、防衛基本方針なり、あるいは防衛計画大綱を設定をいたしておるわけでございます。その方針に基づいて、実は可及的速やかにその整備をしていくという方針のもとに私どもは進んでおるわけでございまして、決して米国から要請されて防衛力整備をいたしておるというようなことではございませんので、この点は改めて申し上げておきたいと思います。  日米共同作戦についてのお話は、総理からすでにお話がございましたが、その先取り云々というような言葉でございまするけれども、断じてそうではございません。いま申し上げましたように、防衛計画大綱に基づく、やらねばならない防衛力整備という立場で、自主的に、計画的に私どもは進めておるわけでございます。そうしたことを考えてまいりますると、対潜機についてはもう十一年前から整備にかかっておる。なおまた、このFXにつきましても五年ぐらい前から皆さん方の御審議を煩わしておる問題でございます。断じてそうしたアメリカの要請というようなことではございませんので、明確にお答えをしておきたいと思うのでございます。  有事立法につきましては、総理から明確なお答えがございましたので、改めて私は申し上げませんが、あくまでも私どもといたしましては、平和主義なり、民主主義の条項を踏まえて対処いたしておるわけでございます。断じてそうした御心配のような線はございません。自衛隊は有事のためにその使命を遂行せねばなりませんので、総理の御意見どおりでございます。  研究内容等についての具体的にどうだということでございます。これも総理からお話がございましたが、各法制上の関連することについての勉強をいたしておるわけでございます。いま結論を出すとかいうような性格のものではございません。  スティルウェルのお話がございましたが、これは全く総理の御意見どおり、民間のスタンフォードの研究発表でございまして、これを防衛庁がこれに関連をして云々するというようなことはございません。この点も明確に申し上げておきます。  厚木の基地における今回の重大な事故についてでございますが、あの事故が起きまして本当に申しわけない事態であったことは、再三おわびを申し上げてきたところでございますが、これは事故分科委員会において、御承知のように——これはアメリカの軍用機のエンジンの事故の原因調査というのはアメリカ自体でやるわけでございまするが、しかし、日本にそうした検査をし、調査をする施設がなかったので持ち帰ったわけでございまするけれども、それについては一日も早く調査が終了後には日本に持ち帰るようにという要請をいたしました。なおまた、検査が終了したその成果は報告をせよということを要請をいたしましたし、また、パイロット、その他の資材等につきましては厚木にとどめ置くようにという、三点の要請をいたしたことは御承知のとおりであります。そういう点に対して、十一日の日にエンジンは持ち帰り、十二日の日に厚木にエンジンが輸送されてまいったのでございます。今後につきましては、いま、この成果等を踏まえまして、調査合同委員会において専門家を入れてこの検討に入るわけでございます。アメリカのそうした調査結果がまとまり次第に、その委員会を開会をする予定でおるわけでございます。また、この事故調査の結果に基づきまして、私どもは、絶対に再発しないような処置を取りまとめてまいりたいと思うのであります。  次に、飛行中止の申し入れがございましたが、私どもは、いまも申し上げましたように、事故原因の徹底的な調査をいたしまして、再発をしないという対策を明確にし、国民の生命あるいは身体、財産の保護には十分ひとつ万全の努力をする考えでございます。防衛庁といたしましては、米側に事故が再発しない要請をいたしておりまするが、米側におきましても、御承知のように、安全対策について万全を期して、事故の再発をしないということで努力を約しておることも御承知のとおりであります。わが国防衛の責任遂行上、また日米安保条約のわが国におきまする義務履行という立場から、また厚木の基地の重要性等を考えてまいりますれば、いま直ちに厚木の基地における飛行を中止せよというようなことを申し出る考えはございません。(拍手)    〔国務大臣鳩山威一郎君登壇拍手
  20. 鳩山威一郎

    国務大臣(鳩山威一郎君) お答え申し上げますが、防衛協力小委員会の協議対象、この「おそれのある場合」ということを加えたことは日米安保条約第五条の規定からいってどうかと、こういうお話でございますが、共同対処行動、これはもう作戦行動をとる、こういうことでございます。今回検討中のことは、この「おそれのある場合」は、それについてのいろいろな準備等の研究をするということでありまして、共同作戦をおそれがあるからやる、こういうことを意味しているものではない。御了承をお願いいたします。  それから、駐留軍の労務費につきましても、総理から御答弁がありました。しかし、毎年毎年、駐留軍の労務者の方々の給与につきましては、これは毎年のベースアップ等もあります。それからまた、最近に起こりました為替のこれだけの変動がありますと、恐らく二割弱くらいの予算が足りなくなるわけであります。そうなった場合どういうことが起こるかといいますと、駐留軍労務者の人員整理が必ず起こって、最近は毎年毎年相当な人員整理が起こっております。いま問題になっておりますのは、これらの方々の生活あるいは雇用関係、これをどうしたら維持できるかということでありまして、そういう意味から、日本政府としても何らかそれに対処をいたしませんと、駐留軍労務者の方々が大変な生活上、雇用上の心配が出てきたわけでありまして、これらにつきまして、わが国といたしましてどういう対策を講じたらいいかということを検討している。その点はぜひとも御理解を賜りたいのでありまして、駐留軍の経常費をこれはアメリカが負担をするという大原則はあります。しかし、日本人が、駐留軍労務者の多くの方々が働いております。そうして大変な数の整理が起こっておるわけでありますから、その点につきましていかに考えるかというのがわが国としての問題であるということを御理解をいただきたいのであります。(拍手)    〔国務大臣小川平二君登壇拍手
  21. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) ファントム墜落事件につきましては、警察は独自に捜査を進めております。実況見分はもとよりでございますが、目撃者の確保、被害者等の確認、関係技術情報の収集、パイロットのステートメントの分析と証拠並びに関連知識の収集に精力的に努めておるのでございます。  しかし、事案の究明のためには、機体はもちろんでございますが、エンジン等主要部品の技術的分析が必要でございますから、米側の調査あるいはまた事故分科委員会等、日本側の調査をも参考にしつつ、鋭意事案の解明に努力してまいるつもりでございます。(拍手
  22. 安井謙

    議長安井謙君) これにて質疑は終了いたしました。      —————・—————
  23. 安井謙

    議長安井謙君) 日程第二 健康保険法及び船員保険法の一部を改正する法律案趣旨説明)  本案について提出者趣旨説明を求めます。渡辺厚生大臣。    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇拍手
  24. 渡辺美智雄

    国務大臣(渡辺美智雄君) ただいま議題となりました健康保険法及び船員保険法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  医療保険制度につきましては、昭和四十八年の改正により大幅な給付改善と保険財政の健全化のための諸施策が講じられ、また、五十一年には社会経済情勢の変動に対応したスライド的な改正が行われたところであります。  しかしながら、医療保険をめぐる諸情勢は一層の厳しさを加え、各制度ともその財政状況は逐年悪化の傾向にあります。保険料収入については、かつてのような大幅な伸びが期待できない反面、医療の高度化、人口構造の老齢化の進展等により、保険給付費は今後とも増加の傾向を示すものと思われます。  政府は、このような社会経済情勢のもとにおける医療保険の給付のあり方と、これを支え得る費用負担のあり方の両面にわたっての全般的な検討を急ぎ、その結果に基づき必要な措置を講ずることとしておりますが、健康保険の財政は、現在すでにきわめて窮迫した状況にあり、制度の運営にも支障を生じかねない状態となっております。  今回の改正は、このような事情を考慮し、健康保険制度の当面の円滑な運営を図るため、ぜひ必要な措置を講じようとするものであります。  以下、との法律案の内容について概略を御説明いたします。  まず、健康保険法改正について申し上げます。  第一は、標準報酬の上限の改定でありますが、最近における給与の実態にかんがみ、被保険者の保険料負担の公平を図る見地から標準報酬の上限を現行三十二万円から三十八万円に改定するものであります。  第二は、賞与についての特別保険料の徴収であります。政府管掌健康保険においては、その窮迫した財政状況に対処するため、当面の臨時応急の措置として、健康保険制度の全般に関する速やかなる検討により必要な措置が講じられるまでの間、被保険者の受ける賞与を対象に、その二%を事業主及び被保険者の折半により特別保険料として徴収することといたしております。  また、健康保険組合につきましては、規約の定めるところにより、料率は二%の範囲内、被保険者負担分はその二分の一以下の範囲内で政府管掌健康保険の場合と同様の特別保険料を徴収することができることとしております。  この特別保険料の徴収につきましては、衆議院において、料率を一・五%とするとともに、政府管掌健康保険の被保険者の負担する特別保険料の額については、当分の間その五分の一を免除し、免除された額に相当する額を国庫が補助する旨の修正が行われたところであります。  第三は、一部負担金の額の改定であります。現行の一部負担金の額は、昭和四十二年以来十年間にわたって据え置かれておりますが、その間、医療費、所得等が大幅に伸びていることにかんがみ、初診時一部負担金の額を現行二百円から七百円に、入院時一部負担金の額を現行一日当たり六十円から二百円に改定することとしております。なお、継続療養を受ける者の入院時の一部負担金の額は、一日当たり三十円から百円とすることといたしております。  第四は、傷病手当金の支給期間の延長でありますが、被保険者の強い要望等を考慮いたしまして、現行六カ月を一年六カ月に延長することといたしております。  次に、船員保険法改正について申し上げます。  第一は、標準報酬の上限の改定でありますが、現行三十四万円から三十八万円に改定することとしております。  第二は、一部負担金の額の改定でありますが、初診時一部負担金の額を健康保険と同様に現行二百円から七百円に改定することとしております。  なお、衆議院における修正によって、国民健康保険法の一部についても改正を行うこととされ、国民健康保険組合に対する国庫補助を、政令の定めるところにより、組合の財政力等を勘案し、療養の給付費等の額の百分の四十に相当する額に達するまでの範囲内において増額することができることとされたところであります。  また、この法律の実施時期につきましては、衆議院における修正によりまして、健康保険法及び船員保険法の一部改正は、昭和五十二年十二月一日から、国民健康保険法の一部改正については、昭和五十三年四月一日からとされております。  以上が、健康保険法及び船員保険法の一部を改正する法律案趣旨でございます。(拍手
  25. 安井謙

    議長安井謙君) これにて午後零時五十分まで休憩いたします。    午前十一時四十八分休憩      —————・—————    午後零時五十三分開議
  26. 安井謙

    議長安井謙君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  先ほどの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。浜本万三君。    〔浜本万三君登壇拍手
  27. 浜本万三

    ○浜本万三君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案理由のありました健康保険法及び船員保険法の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに関係閣僚に対し、質問をいたします。  医療問題が今日ほど社会問題化しておる時代は、いまだかつてなかったと思います。医療の問題は、人間の命にかかわるきわめて重要な問題であります。毎日の生活の中で、病気になったとき安心して医療を受けられるかどうかは、福祉充実の基本であります。しかし、今日国民を不安に陥れているのは、救急医療などの供給体制が不十分であったり、薬の投薬過多による薬づけや薬害といった事例が起こり、国民に深刻な不安を抱かしている点であります。さらに国民に強い不満を抱かしているのは、医師に対する不公正な税の優遇措置がまかり通り、薬の流通面で不公正な価格の取引が見られ、その上、医科系大学の裏口入学の事実が判明するなど、医療をめぐって、さまざまな社会的な不公正が見られることであります。  これら国民の不安、不満に対し、国の適切な対策がなされているかという点になると、はなはだ心もとない限りであります。国民は医療問題に対して国の適切な決断を待っているのであります。特に本法律案の提出に見られるように、将来に対する明確な見通しもなく、累積赤字を一挙に患者と被保険者の負担で解消しようとする政府の安易な態度は断じて許されないところであります。  まず、総理質問したい点は、以上申し上げましたような国民の不安、不満をどのように認識されており、いかに解消していこうとされているのか、その基本的姿勢についてお伺いをいたします。  また、医療保険制度について、政府は何度となく抜本的改正を口にしていながら、また、四十六年以降、諮問機関の答申も受けているのに、その実現をサボり、赤字を増大させ、そのしりぬぐいを国民に求めているが、なぜ実現に努力しなかったのか、厚生大臣はその理由と責任を明らかにすべきであります。  厚生省は、五十三年度に抜本的改正を講じる旨発表しているが、私は、国民の納得できるような抜本的改正の具体案を早急に出すべきであると思います。その点、いつ、どのような形で明らかにされるのか、明確に御答弁をいただきたい。  次に、具体的問題について触れたいと思います。  その第一は、現在本法律案で解消しようとしている政府管掌健康保険の累積赤字の原因と対策を明らかにしなければなりません。  四十八年改正の際に、累積赤字三千億円余をたな上げし、保険料率などを引き上げ、四十九年度以降は収支がバランスすると説明したのは、ほかならぬ政府自身だったのではありませんか。それが経済見通しの誤りで、被保険者数は伸びず、保険料の基礎となる賃金が見込みどおり上がらず、一方、給付費は医療費の引き上げで増加したわけであります。私は、いまさらその見込み違いの責任を問おうとしておるのではありません。ただ、これを、今回の改正案に見られるように、直ちに被保険者の負担に転嫁し、収支を合わせようとする政府の態度がどうしても理解できないのであります。  今回の政府の態度は、医療保障としての社会保険を正しく理解していない後ろ向きの姿勢として厳しく糾弾されなければなりません。特に財政危機に直面している政管健保は、同じ健康保険法のもとにありながら、組合健康保険に対して、保険料の基礎となる標準報酬は二割も低く、被保険者の構成も、五十五歳以上が組合健保八・三%に対して一三%と、老人の構成比がきわめて高く、また、零細企業被用者が多いため、病気にかかる率が高いので、給付費が相対的に高まるのは当然のことであります。政府は、現行保険制度の分立がこのような構造的弱点を持っていることをどのように理解し、対処しようとしているのでしょうか。現行の一〇%プラス弾力条項による国庫補助では、とうてい赤字発生の原因を埋めることはできないはずであります。弱い健保には政府が積極的に助成するという立場に立って、思い切った国庫補助をすべきであると思うが、厚生大臣の明確な御答弁を伺いたいと思います。  第二は、この赤字を埋めるのに、ボーナスに対する特別保険料を創設しようとする発想でございます。  この発想はどこから出てきておるのか、きわめて理解に苦しむところであります。これはまさに政管被保険者に対する懲罰的規定とも言えるのであります。財政対策の糊塗策として全く拙劣であります。政管健保の財政安定対策を赤字発生の根本原因にメスを入れることなく、政管健保の中のみで果たそうとする政府の態度は余りにも拙劣と言わざるを得ません。もしこの制度を認めれば、他の制度とのバランスを失い、その格差を拡大するばかりか、いわゆる不公正助長の政策に手をかすことになります。したがって、絶対に容認することはできません。すでに社会保障制度審議会及び社会保険審議会におきましても、政府の安易な集金方法を批判した答申を提出していることを考えますと、これを撤回すべきであると思いますが、厚生大臣の御答弁を伺いたいと思います。  さらに、ボーナスに対する特別保険料について、「健康保険制度ノ全般ニ関スル速ナル検討ニ因リ必要ナル措置が講ゼラルル迄ノ間」と規定し、その期間を全くあいまいにしておりますが、この規定の意義と具体的期間を、この際あわせて明らかにしてもらいたいと思います。  第三は、一部負担の問題についてお尋ねします。  皆保険のもとでは、国民は、健康であるときは一定の保険料を納付し、病気などの事故に備えようとするものであります。病気の際に自己負担を強いられるというのでは、何のための保険か疑問となるのであります。一部負担の増加によって受診の抑制につながり、早期に治療し、軽症のうちに治癒させるという医療の目的が達成されないならば、それは本末転倒の政策であると思います。  そこで、厚生大臣に伺いますが、一部負担引き上げの前に、差額ベッド、付添看護の自己負担の解消こそ緊急の問題であると思いますが、御見解はいかがでありましょうか。  また、健康保険の一部負担の改正は、昨年五党一致で削除の修正を見た経緯から考えますと、今回の提案は国会軽視とも言えるのではありませんか。一部負担の撤回を要望いたしたいと思います。  また、政府は、被保険者の負担増を行う前に、長期の収支均衡実現のために政管健保の構造改革を行うべきであると思います。その間、暫定的措置として、厚生保険特別会計法の借り入れ制限規定の緩和を図るべきと考えます。この点につきましては、すでに社会保険審議会答申において、被保険者代表及び公益委員の一部から同じ意見が付記されておるところであります。大蔵大臣の所見を伺いたいと思います。  第四は、薬価と薬害の救済制度について伺います。  国民の医療費は、五十年度で六兆四千億円にも達しております。そのうち薬剤費は約四割、その額は二兆五千億の巨額になっております。しかし、現在医療機関が請求できる薬価は、薬価基準ということで公示されており、実際の薬の値段はこの薬価基準の半値以下のものもあると伝えられておるのであります。このような事実について、厚生大臣は、どのように認識をされて、改善されようとしておるのか、明らかにしていただきたいと思います。また、大蔵大臣は、この医療機関の購入価格と薬価基準との差益をどのように調査、推計しておられるのか、伺いたいと思います。  さらに、薬品に関連して、国民の不安は薬害、薬禍の問題であります。今日までの薬害は、制度上政府にもその責任が存在することは明白でございます。そこで、一連の薬害に対する政府の責任を明らかにするとともに、薬害救済制度に対する具体的方針を明らかにしていただきたいと思います。  次は、文部大臣にお尋ねします。  医療費の増高傾向の中で国民が最も不思議に思っているのが、医師の子弟を含めて、大学入学に当たって法外な裏口入学金が納められ、かつ非道な裏口入学が後を絶たないことであります。本年二月発表の文部省の調査においても、平均が千六百万円、調査対象二千四百名のうち、二千万円を超えるものが実に九百名もおるという事実が公表されております。このような巨額な寄付や、奈良県立医大の不正入学のごとき事件が増大をすれば、能力のある医師志望の有能な若者たちの職業選択をも閉ざすことになっております。医師に有能な人材が登用できるよう万全の対策を講じる必要があると思います。特に奈良県立医大の不正入学事件については、文部省はすでに承知されておったとの報道がありますが、その事実はいかがなものでしょうか。私は、これまでの不正事件の反省と今後の対策について、大臣の明確な所信を伺いたいと思います。  次に、診療報酬体系のあり方について伺います。  厚生省は、「点数制の矛盾点」についてという文書を出して、現在のような点数出来高払いの方式のもとでは、医師が医学上の判断からだけでなく、点数のより高い診療行為を選択する傾向が生まれて、水増し請求などが日常化すると指摘されております。これは、収入と支出との間に何らの関連性もルールもなく、幾ら医療費を上げても、それは問題にならないということを言っておると思います。そこで、診療報酬の支払い方法、指導監査、報酬体系等についてどのように改善して、厚生省が指摘するような矛盾点をなくしていくつもりか、明らかにしていただきたいと思います。  また、医師会は、去る十二日大会を開きまして、医療費の値上げ問題について政府と政治決着をつけたいと挑戦をしておられるようでありますが、医師会の対策をどうするのか。厚生大臣の毅然たる態度を伺いたいと思います。  次に、自治体病院などの財政健全化について伺いたいと思います。  自治体病院は、地域医療の中核として高度・特殊医療、救急医療、僻地医療に当たっておりますが、自治体の財政難と医師不足のため、その経営は悪化の一途をたどり、昭和五十年度末の累積赤字は実に千八百億円に上っています。このような財政状況にかんがみ、政府は、昭和四十九年度に行ったような特例債の発行と、それに伴う利子補給をすべきであると考えますが、自治大臣見解を伺いたいと思います。また、国公立病院に対する国庫補助をさらに増額すべきであると思いますが、あわせて厚生大臣の御答弁を求めます。  最後に、医師の診療報酬に対する租税特別措置の廃止問題について伺います。  社会保険診療報酬に対する租税特別措置は、昭和二十九年に議員立法により法制化されたのでありますが、当時の特別措置による減税額はわずか十二億円でありました。現在は実に千八百九十億円の巨額にまで増殖しておるのであります。まさに税の公正に巣くうガンのごときものと言えます。過去数年間、総理の諮問機関である税制調査会は、税の公正の観点からその廃止を勧告し、あるいは是正について具体策を提案してまいりました。また、現に徴税を行っておる国税庁の長官が、この問題の放置が国民の納税意欲を減退させると言明をしておるのであります。今日、私を含めて国民の多くは、医師の方々の国民医療に対する貢献は評価しながらも、なお不公正税制の是正を求めておるのであります。従来、政府は、税制調査会の提言に対し、医師会の強い抵抗に遭って常に後退を繰り返してまいりましたが、来年度税制改正案に、この特別措置の廃止、または適正化を実行される決意があるのかどうなのか、総理大臣並びに大蔵、厚生両大臣のしっかりした御所見を求めまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  28. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お答え申し上げます。  医療に対する国民の不信、不安を解明するための政府基本姿勢はどうかと、このような御質問でございますが、私は、今日のわが国の医療体系というものは、かなり国際的に見まして高い水準に来ておる、このように考えるのであります。その証拠には、国民の平均寿命、これがもういま世界第一というところまで来ておるわけであります。ですから、国民から見まして不信というような状態ではないと思います。しかしながら、国民から多々要望のあること、これも存じておりまするし、また、私ども政府自身といたしましても、医療保障の制度をこれから充実していくという、この上とも充実するという、その必要のあること、これはよく承知しております。でありますので、救急医療体制整備、医療保障の充実、医薬品の安全性の確保、そういう諸点につきまして鋭意施策を進めておるところでございますが、今後を展望いたしますと、人口構造の老齢化、そういう問題が強く浮かび上がってくる。そういう中で、医療需要の変化というものが起こってくるわけでありますが、それらを踏まえ、医学、薬学等、学問の進歩にも即応しながら適切に対処をしてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。  なお、社会保険診療報酬課税の特例につきまして、これは政府の税制調査会でも答申されておるが、これに対して政府はどういうふうに対処するかというお話でございます。お話のとおり、今回の税制調査会答申におきましても、この特例措置の改善が強く要請されておるわけであります。この問題は非常に長い歴史がある。実に二十三年の歴史と言ってもいいくらいのいきさつがあるわけであります。したがいまして、なかなかこれが一刀両断と、こういうような次第にはまいりません。けれども、答申を尊重し、できる限り早期に適切な措置を講じたい、さような考えでありまして、どのようにいたしますか、これはなかなか医療課税だけの問題じゃない、広い立場考えなけりゃならぬ問題でもありますので、日夜苦心をいたしておる、このように御了知願います。(拍手)    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇拍手
  29. 渡辺美智雄

    国務大臣(渡辺美智雄君) 浜本議員にお答えをいたします。  まず第一問は、なぜ、いままでいろんな答申があったのに、抜本改正が行われなかったかということでございますが、これは、実際問題として、なかなか関係者の意見がまとまらなかったというのが実情でございます。そこで、われわれといたしましては、去年から、御承知のような老人保険医療問題懇談会あるいは社会保険審議会が二年にわたりまして数十回の学者先生方の御意見を徴してまいりまして、その結果、最近それらの答申が出ておりますものですから、その答申を踏まえまして、直ちにできるものは五十三年度から実施をしたい、それから、中・長期の準備が必要なものもございます、それは。それらにつきましては、五十四年度以降具体化をしたい、ことしから来年にかけて準備を徹底的にやりたい、かように考えておる次第でございます。  第二番目は、政管保険の赤字については見通しに誤りがあったんだ、だから、それを労働者にしわ寄せをするのはけしからぬではないかというような御発言でございます。この赤字の原因というのは、確かに、収支というものが四十八年のときに考えたときよりも収入面が落ち込んだことは事実でございます。ところが、四十八年の改正をするときには、収入が上がるものということで、そこで、国会の修正等もありまして、たとえば家族負担というものを、政府原案が六割という案でございましたが、これは七割というように変更をすると……(「いいことじゃないですか」と呼ぶ者あり)結構なことなんです、それは。(笑声)結構なことなんですが、支出の方はちゃんと設定されて、それはそのとおり実施をされてきた。収入の方が思っただけの金が入らないというようなことなどが赤字の大きな原因になっておることも間違いございません。それからまた、もう一つは、何と申しましても、医療が高度化をいたしまして、もともと健康保険ではやってもらえなかった高度の治療、たとえば心臓手術あるいは脳の手術——心臓手術などは、保険でやりますと、本人の場合は無料でできますが、月に大体百万円ぐらいかかるわけであります。しかし、これも保険でいたしましょうと。あるいはまた、がんの手術のようなものも数十万の金が月にかかる。人工透析のようなものも六、七十万円のお金がかかりますが、こういうような高度の医療も、すべてほとんどこれは保険で賄うというようになりました。また、看護基準等につきましても、いわゆる特二類といって、患者二・五人に看護婦さん一人というような濃密な看護制度というものもふえてまいりました。こういうようなことで、医療の内容が高度化をしてきたということのために出費がふえたということも事実でございます。また、長生きして、いま総理お話にあるように、老人がふえたと。長生きすることはいいことでございますが、やっぱり老人がふえると、どうしても故障も普通の人よりは多いわけでございますので、そういうようなことなどで、やっぱり医療需要というものが非常にふえたわけでございます。また、家族ですね、子供の数、家族の数もその当時から見るとふえてきておると、こういうような問題がいろいろございますものでございますから、これは今回しわ寄せをしたというのでなくして、かねて特別保険料は、昭和四十八年にも——いままでも何回か提案したことがございます。日の目を見なかったわけでございますが、財政事情も、これはにっちもさっちもいかないというようなことになっておりまして、いま言ったような給付も受けておるわけでございますから、ひとつこの際は、われわれは千分の二十というようなことで、二%というようなことでございますが、衆議院の修正で一・五%というふうに修正をされたわけでございますので、これだけは何とかひとつ御了解を賜りたいと、かように考えておる次第でございます。(拍手)  それから、その特別保険料徴収の期間について、いつまでやるんだと、のべつ幕なしじゃ困るよというお話でございまして、われわれも、もうそんなことはとても考えておりません。これは抜本改正ができるまでのごく短い間……(「やらないって言ったじゃないの」と呼ぶ者あり)いや、抜本改正、これはやるんです、早速。ですから、できるものは来年から始まりますということでございまして、そう長いことではございません。したがって、皆さんの御協力で抜本改正が二年先にできれば、もう二年先にこれは乗り移っていくということになるわけであります。  抜本改正、抜本改正と申しますが、しからば抜本改正とは何なんだと。この議論も余りないわけでございますが、抜本改正というのは、たとえば一部負担をともかく長期療養の場合はなくしなさいとか、あるいは家族と本人とのバランスをちゃんと同じく一〇〇%とか九〇%にしなさいとか、いろいろあるわけでございます。あるいは付添看護をなくせとか、差額ベッドを取るなとか、これはみんなお金のかかる話なんでございますからね。抜本改正というのはお金がかかるという話ですから、したがって、このお金のかかる話については、財源について御協力をいただかなければ抜本改正は進まない。したがって、これはワンセットでございます。ワンセット。そういうことで、それらの話がつけば、われわれは速やかにこれに対応してまいりたいと、かように考えておるわけでございます。  次に、薬品の問題でございますが、診療報酬の中に占める薬剤費の割合が非常に多いと、実勢価格と薬価基準の間に非常に差があるではないかと、私どもも、ときどきそういう話を聞いております。したがいまして、これらについては適正にしなきゃならぬと、まことにごもっともなことでありまして、年々この薬価基準の調査をいたしておりまして、四十五年から三%あるいは三・九、三・四とか下げてまいりましたが、ことしは五・八%薬価基準を下げる。そして、しかも銘柄別収載制度に踏み切る。そのほかに経時調査——ある一定の日を決めて薬価基準を調査するんですが、なれ合いでやられたんじゃ困るわけですから、今度は抜き打ち的に本当にその値段が正しいかどうか、後から追っかけていく、いわゆる経時調査というものをかなり徹底をしてやって、そうしてそれが薬価基準に反映するように持ってまいりたい、こう思っておるわけでございます。  それから、現在の出来高払い制の健康保険制度というものは非常に矛盾がある、水増し請求なんかもルール化するんじゃないかとか、いろいろ話があるわけです。これは一長一短でございまして、フランスのようなところは、これは償還払い制度でございます。したがって、医者にかかるときにはお金をそろえてお医者さんに診てもらって、領収証をもらって、それで保険に請求する、そうすると、全部は返ってこない。それの七割とか、あるいは七五%しか戻ってこないわけですから、こういうふうなことで、これは二割とか二割五分は自己負担というようなことになるわけです。したがって、そういう点で、余りむちゃくちゃな領収証を医者が出せば、患者の方もちょっと、自分が金を二割、三割払うわけですから、これはおかしいんじゃないか、この医者は高いから、ほかの医者に変わるというような話もあって、確かにそれはブレーキがかかるんです。ドイツはやはり日本と同じように出来高払い制でございます。そのほかに、団体の請負制とか人頭登録方式とか、いろいろございます。いずれも一長一短であって、どれがいいというか、なかなかむずかしい問題でございますが、わが国でも、昭和十八年に採用されまして以来、現在まで出来高払い制というものが行われております。したがって、その中には確かに矛盾があります。ありますが、その小さな矛盾よりも、大きく国民皆保険というものが貢献したことの方が、比重にすれば大きいと私は思っておる。しかしながら、小さな矛盾はございますから、これはもうなくしていかなければならぬし、特に薬の乱用という問題については、これは監査ですね。私は、これはやっていかなければいかぬと本当に思っているのです。ところが、現在監査の定員に百七名の人がいるはずなんだけれども、七十八人しか現在員がいないということで、これはやはりぜひとも大蔵省にも予算をいただいて、人員をふやしてもらって、地方技官等の監査態勢というものを確立をしていく。指導監査というものをもっとやっていって、その他皆様のお知恵をかりて、むだのないような効率的な合理的な診療報酬制度というものをつくってまいりたい、それはそのとおり私もやってまいりたいと思っております。  それから、公的病院の不採算性医療等に対する国の助成ということでございますが、これは、われわれといたしましては、いままでも僻地医療の問題とか、あるいは公的機関のがん診察、あるいは小児医療、リハビリテーション等、必要な建物施設に対する助成は国がやってきております。医療機器の整備についても助成をいたしてきております。そういうようなことでございますから、それで十分とは申せませんので、今後ともそれは努力をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。  医師税制に対する所見いかんということでございますが、これは重大な問題でございますので、一総理大臣がお答えしたとおりでございます。(拍手)    〔国務大臣坊秀男君登壇拍手
  30. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 私に対する御質問に対してお答えを申し上げます。  厚生保険特別会計の借り入れ制限規定でございますが、これは四十八年の健康保険法改正に際して設けられたものでありまして、その趣旨は、それまで政府管掌健康保険の収支不足を毎年借り入れによって処理してきたので、そのため累積収支不足額が増大する一方であった。そのことに顧みまして、政府管掌健康保険財政の健全化を図る必要があったことにあると考えられます。この借り入れ制限の規定のねらいは今日においても何ら変わることがなく、今後も政府管掌健康保険の財政を健全に維持していくためには、この借入金の制限規定を今日ただいま緩和すべきものではない、かように考えております。  それから、医師所得の計算上、必要経費として控除する金額は、本来薬価基準ではなく、実際の購入価格によって計算するのでありますけれども、しかしながら、社会保険診療報酬の課税の特例を受けるものにつきましては、薬価を含めたすべての必要経費を実際の金額にかかわりなく、その報酬の七二%とすることができるのでございます。ここに問題がございましょう。したがって、薬価基準と実際の購入価格とに差があっても、課税上の影響はありません。個々の納税者の課税に当たりましては、薬価基準と購入価格との差額の状況について、これは現行法では特に調査をいたしておりません。  それから、社会保険診療報酬課税の特例につきましては、総理からお答えがございましたけれども、今回の税制調査会の答申におきまして、その改善が強く要請されておるのでございまして、政府といたしましては、この答申を尊重いたしまして、できる限り早期に適切な措置を講じたいと、かように考えております。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣海部俊樹君登壇拍手
  31. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 御指摘をいただきましたように、私立医科・歯科大学の一部に多額の入学金を入学許可の条件として社会的な御批判を受けたのは、まことに遺憾なことだと考えております。文部省は、この事実を厳しく受けとめまして、不正があった大学には具体的に事情聴取をして指導をいたしておりますが、大学側も、私立医科大学協会、歯科大学協会、一部学校ではなくて協会すべての問題として受けとめ、自主的な改善案を講じていた最中でございましたので、文部省は、先年、入学時の寄付金の禁止、入学者選抜の公正の確保、教学と経営の健全化について通達を出し、強く指導をしたのでありますが、今後とも各学校ごとに指導を厳しくして政策努力を重ねるとともに、この通達の実が上がるように努力をいたしていく決意でございます。  なお、医師養成の重要性につきましては、御指摘いただいたとおりでございまして、現在、無医大県に国立医科大学の創設を準備しておるもの三校、来年度に創設準備を考えて調査をしておるもの一校、それぞれ進行中でございますが、既存の大学につきましては、大学設置基準を改正して、講座をふやしたり、大学の独自な教育努力を容易にするために大講座制を採用するなど、弾力的な運用が図れるように努力をして、大学の自主的な努力に期待しながら、指導、助言を進めてまいりたい、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣小川平二君登壇拍手
  32. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) 公立病院の経営状況でございますが、昭和五十一年度の決算見込みにおきましては、過半数の事業が、平年度純利益を生じております。また、不良債務を有する事業の数も漸減をしておりまして、全体としてかなり好転しているという状況でございます。こういう現状にかんがみまして、不良債務を有する事業につきましては、自主的な再建計画で解消が図れまするように指導を強化するとともに、必要な財政措置を講じてまいるつもりでございます。  再度、公立病院特例債を発行するということは、ただいま考えておりません。(拍手
  33. 安井謙

    議長安井謙君) 答弁の補足があります。渡辺厚生大臣。    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇拍手
  34. 渡辺美智雄

    国務大臣(渡辺美智雄君) 薬害救済対策につきまして聞き落としがございました。一言私の方から補足をいたします。  薬害の救済対策につきましては、まず、現在の医薬品を承認するに当たりまして、その審査というものを、安全性、有効性というような点から非常に厳格に、これは厳しくやってまいりたいと、かように思っております。また、一遍発売された医薬品については、試験段階等において薬害がないと思っておっても、あるいは何万人に一人というような特異体質の方もございますから、それらの副作用の収集、また、いろいろな考えつかなかったような副作用等もある場合もございます。したがって、それに対するいろんなモニター制度とか、WHOを通しての海外の情報をこちらでとったり、また伝達をしたりという制度をきめ細かくやってまいるつもりでございます。  また、薬の再評価ということも実施をいたしまして、現に四万ぐらいの薬がいままでに出ておるのでございますが、そのうちの一万数千については、すでに洗い直しをいたしました。中には製造禁止をさせ、効能効果のないものはやめさせると、販売も停止させるというような措置をその都度とってきておるわけでございます。  今後とも、いろいろな研究機関を充実をしたり、いま言ったようなことを通しまして薬害の救済については万全を期したいし、なお、そういうことをしてもなおかつ患者が出るというような場合の薬害の救済措置という制度をつくるために、目下いろいろと検討をしておるところでございます。  なお、去る十二日の医師会が集まって何かやったことについて厚生大臣はどういう見解であるかということでございますが、何かお話があったようでございますが、私のところへはまだ何も来ておりません。私は、これはまだ話し合い等もいたしておりませんものでございますから、まあ話し合いで解決つく問題であろうと、こう思っておるわけでございます。(拍手
  35. 安井謙

    議長安井謙君) 答弁の補足があります。海部文部大臣。    〔国務大臣海部俊樹君登壇拍手
  36. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 奈良県立医科大学の不正事件について、文部省は、この事実を知っておったり、黙認しておったというようなことはございません。(拍手)     —————————————
  37. 安井謙

    議長安井謙君) 渡部通子君。    〔渡部通子君登壇拍手
  38. 渡部通子

    ○渡部通子君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました健康保険法及び船員保険法の一部を改正する法律案に対し、総理並びに関係大臣にお尋ねをいたします。  国民の健康を守り、生活の安定を図ることは政治のかなめでありますが、その国民の健康と生活に最もかかわりのある医療問題に対して、最近の国民の不信、不満は、ただならぬものがございます。社会的に事件となったものだけでも、救急医療における、たらい回し、スモン病等に見られる薬害問題、差額ベッド料や付添看護料などの保険外負担の増大、あるいは医科大学、歯科大学の莫大な入学金に見られる一部医師の倫理の喪失など、挙げれば枚挙にいとまはございません。これはまさに、医療政策に展望なく、不毛の行政がもたらしたものであって、国民の願う方向に問題が解決されないばかりか、むしろ助長しているとさえ思われる政府・自民党の政治姿勢に大きな原因があるのであります。総理は、こうした病める体制を根本的に改めるお考えがおありかどうか、政治生命をかけても医療問題に取り組む決意がおありかどうか、まずお伺いをいたします。  次に、役に立つ保険への方向についてお尋ねいたします。  私たち国民の多くは、日ごろは保険料を支払うだけで、せいぜいかぜを引いて薬をもらう程度で過ごしております。しかし、いざ重病に直面したときに、初めて保険は役に立たないと知って愕然とするのであります。したがって、ここ四年の間に八十六万口にも達したがん保険、また、それに触発された成人病入院特約百二十万件と言われる人々も、決して特別高度の医療に迫られて加入しているのではございません。大事なときに医療費が保険では賄ってもらえないと思えばこそ、高い保険料を払って自衛に努めているのです。これほど痛烈な健康保険制度に対する批判はないではありませんか。社会保険があるから安心できるという国民の信頼を取り戻さない限り、今後とも増加するであろう医療費の負担を国民に求めることはできないと思います。総理並びに厚生大臣は、その信頼をどう回復しようとなさるのか、お聞きしたいと思います。    〔議長退席、副議長着席〕  第三に、健康保険制度の抜本改正についてお尋ねいたします。  去る四日の社会保険審議会の答申では、さきに出された四十六年の抜本改正について、その提言がほとんど実施されていない現状に対し、政府の反省を促すとともに、今回の意見書を含め明確な実施計画を策定することを強く要請しております。私も、今回の答申と四十六年の答申の間には内容的にそれほどの差はないと思います。したがって、もし四十六年の答申後直ちに適切な措置を講じておれば、今日のような医療の荒廃は、ある程度防ぎ得たのではないでしょうか。政府の責任はきわめて重大だと思うのですが、それを感じておられるのかどうか。また、今回の答申も同じくほごとすることはありませんか、責任ある答弁を求めます。  さらに、答申で求めている実施計画のうち、特に医療供給体制として指摘されている公的医療機関の整備と独立採算制を排除する問題、パラメディカル職種を含め医療従事者の確保等は、その計画当初から実施まで相当長期にわたる問題であり、直ちに着手すべき事柄だと思いますが、決意を伺いたいのであります。  第四に、抜本改正のもう一つの大きな問題である各保険のアンバランス是正をどうするかについてお伺いをしたい。  健康保険法による組合健保と政管健保との間には、その成立基盤に大きな格差があります。具体的に申しますと、平均標準報酬の水準で、男子二万二千円、女子一万八千円の違いです。また、組合員の年齢構成を比べても、有症率の高い六十五歳以上の組合員比率は、政管健保が約三分の一多くなっています。このような成立基盤をそのままにして財政対策を急いでも、しょせんは砂上の楼閣ではございませんか。政府は、衆議院において、根本的対策は対策として実現することとし、政管健保の財政状況はそれを待ついとまがないと述べておりますが、待ついとまがないからこそ、逆に保険の成立基盤を是正する必要があるのではありませんか。それを赤字是正ということで、政管健保の対象である中小企業など弱い経営基盤の上に立つ労使の負担増を強要することは、それらの負担能力の限界を超えることになり、かえって、たとえば老人医療制度創設といった抜本策を考えるのに障害となることは明らかであります。  政府は、せっかく五十三年度に抜本改正の準備のための予算を計上し、五十四年度に実施すると明言されたのですから、それまでの間、弾力条項の発動、または私どもが衆議院で指摘したように、厚生保険特別会計法の借り入れ制限規定の緩和を図るなどによって対処すべきであると思いますが、厚生大臣の御見解を伺いたいのであります。  第五に、本法案による経済へのデフレ効果についてお尋ねいたします。  改正案による政管健保の赤字補てん額は、平年度化してみると約千百億円であり、組合健保の赤字解消額も相当額見込まれます。こうした赤字補てんは、経済的に見ると強制貯蓄の役割りがあり、乗数効果を考えると年間約三千億円のデフレ効果があります。こうした意図しないデフレ効果は総合経済政策の効果を大きく減ずるものであり、雇用面へも当然影響することは避けられません。たとえば、政府は現在、雇用安定資金等を使って雇用安定に努めていますが、その金額は約五百億円強であり、乗数効果を見ても一千数百億円程度にすぎません。このようなことを考えますと、不況対策、雇用確保の観点からも、本案は撤回すべきであると思いますが、経済企画庁長官及び労働大臣の御所見を伺いたいのであります。  第六に、本法案に直接関連する事柄について若干お尋ねをいたします。  その一つ、ボーナスに対する特別保険料の徴収について。これは過去数回、総報酬制導入の形で提案されましたが、抜本改正の中で論ずべきこととして実現しなかった経緯は御承知のとおりでございます。もし現行制度のままで導入するならば、所得の低い層に最も高い負担を課する逆進的社会保険料負担となるわけで、許されることではないと考えます。  その二つ、特別保険料の徴収期間について。これについては、廃止の具体的手続規定を欠いております。日本原子力船開発事業団の例に見られるように、いつまでも徴収することが可能となりかねません。法律上、その廃止はどのような手続規定によるのか、明確にすべきと思います。  その三つ、初診時及び入院時の一部負担金の引き上げについて。健康保険制度が社会保険であり、強制加入である以上、個々の給付に対する利用者負担の制度は、本来筋違いであります。しかも、昨年度国会では与野党一致で削除した条項をそのまま盛り込んで、一挙に三倍以上の引き上げとは無謀に過ぎます。これこそ抜本改正に関連して論ずべき問題で、したがって、現段階では一部負担の引き上げ凍結を主張いたします。  以上、政府の誠意ある答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  39. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 渡部さんからも、先ほどの浜本さんからのお尋ねのように、国民の医療不信、こういう問題についてでありますが、総体的に見ますと、わが国の医療保険の施策はかなり高い水準のものと、こういうように考えております。とにかく、わが国は長寿国世界第一というところまで来ておるわけでありますが、それは医療保険の施策が本当に貢献しておると、このように考えております。ただ、先ほども申し上げましたが、とにかく、国民の健康を増進し医療を確保する、これはもう福祉社会の基盤でありまするから、従来からずいぶん努力をいたしておるわけでありますが、今後とも、社会経済変化、特に老齢化現象というようなところを十分踏まえまして適切に対処いたしていきたいと、かように考えております。  さらに、今日の社会保険制度については、保険外負担の問題などの種々の問題があるが、医療不信という問題とも関連して、いかに対処するか、このようなお話でございますが、先ほども厚生大臣からお答えいたしておりますが、近年の社会経済情勢変化を踏まえて、いま基本的な見直しということを進めておるわけでございますが、あるいは付添看護婦の問題でありますとか、差額ベッドの問題でありますとか、確かに保険外負担の問題は、これは大きな問題でございます。その一環といたしまして、何とかこれを改善し、公正で安心できる制度運営のできるように早くしたいと、せっかく努力をいたしておる最中でございます。(拍手)    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇拍手
  40. 渡辺美智雄

    国務大臣(渡辺美智雄君) 社会保険制度につきまして、ただいま総理からお話があったように、保険外負担の問題等いろいろな点が不信を買っておる、速やかに抜本改正をしろということで、私どももその趣旨には賛成でございます。したがいまして、早速できるものは来年から、それから、来年からできないものは五十四年から、これは抜本改正の方向に持ってまいりたいと、かように思っておる次第でございます。  また、この抜本改正の内容等につきましては、全部固まっちゃうわけじゃございませんが、先ほど言ったように、老人懇とか社保審等の先生方の答申を踏まえまして……(「それを踏まえて何にもやってないじゃないの」と呼ぶ者あり)だから、これからやるわけですよ。(笑声)それをやっていくつもりであります。  公的病院の充実等につきましても、一層御趣旨に沿って努力をしてまいるつもりでございます。  なお、政管保険と組合保険との格差問題についてお触れになっておるわけでございますが、これを一遍に財政調整をやってしまうということは、まあ理屈ではできるんでございますが、それぞれ長い、組合保険には何十年という長い歴史もございますし、直ちに合併とか、直ちに財政調整ということは、なかなか言うべくして時間のかかる話です。しかしながら、組合保険の中でも、こういうような不況等を踏まえまして、石炭とか、あるいは造船にいたしましても、繊維にいたしましても、あるいは鉱山のようなものにしても、その他のものにしても、なかなか大変なところがあるわけです。組合保険はばかに大金持ちのようなことばかり言われておりますが、実際かなり苦労しているところもあって、現在すでに政府管掌保険の千分の七十八以上の保険料を取っている組合が四二・六%あるんです。よく、組合健康保険の方にボーナス保険を掛けないで、任意にしておいて、こっちだけ掛けるんだというお話もございますが、これは政府管掌保険よりも高い料率の組合が四二、約半分近くある、赤字でどうしようもないところもあると。したがって、われわれは、まず、その組合健保の中でいいのと悪いのがあるわけですから、その中で財政調整をやるように、まず第一段階としてはそういう方向で努力をしていきたいと考えております。  それから、政府管掌と組合保険の間でちゃんと政府がバランスをとっておるわけです、これは。健保組合につきましては八億円しかやってないわけです。ことしの予算で八億円の補助金。政管には、これは法案が全部通ると三千百三十数億円、国民保険には一兆四千億というものを政府のお金で実は調整をとっているんです。(「あたりまえじゃないの」と呼ぶ者あり)あたりまえというお話がございますが、実は健康保険制度をとっておるドイツやフランスでは見られないことなんです。こういうふうな莫大な金を政府が出しておるところはありません。補助金はございません。ドイツやフランスでは国庫の補助金というのは原則的にないんです。ないんです、これは。したがって、日本がこれだけのものを直接やってきているということは、政府としては、いままで余裕もあったということもあって、やってこられたことであり、私は、このいい制度は残していきたい、こう思ってさえおるわけであります。  それから特別保険料の収入というものにつきましては、これは弾力条項の適用などをやったらうまくいかないかというのでございますが、いろいろ知恵をしぼったんでございますけれども、結局、ただいま皆さんにお願いしておる案による以外にないと、臨時応急の措置としてともかく御了解をいただきたいと、こうお願いをしておるところでございます。  それから特別保険料の徴収期間につきましては、先ほど申し上げましたとおり、これは健康保険制度の基本的見直しによって、必要な措置が講ぜられるまでの間ということになっておるわけであって、それはいつなんだということでございますが、私どもとしては、できるものについては五十三年から、それから残りのものについては五十四年からということで、なるべく早い時期に抜本改正をやりたい。抜本改正はお金がたくさんかかることでございますから、これは負担を一緒にお願いして、ワンセットでございますよと、したがって、これはともかく両方の皆様方の御理解がなければできっこないんです。したがって、御理解をいただければ近年のうちに、間もなくできるだろう、こう思っておりますので、そう長い時間かからない。これにつきましては、国会でも保革伯仲という状態でもございますので、われわれだけで押し切っちまうといったって、なかなかむずかしい、実際。したがって、これは皆さん方からも知恵をいろいろ借りて、それですぐに通過するような方法で改正案というものは考えていきたい、こう思っておりますので、何分よろしくお願い申し上げます。(拍手)    〔国務大臣倉成正君登壇拍手
  41. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) ただいまお挙げになりましたデフレ効果、その背景となる健保改正による増収額は、実施期日がどうなるかということによって変わってくると思います。しかし、いずれにしましても、保険料等の引き上げ分だけ可処分所得が減少することは御指摘のとおりでございます。しかし、今回の改正の内容は、先ほどから厚生大臣からるる申し上げますように、健保財政の健全性を確保することによって健保制度が十分機能を発揮して、国民生活の安定に寄与せしめるための最小限の措置である、そういう意味においてこの改正趣旨を御理解いただきたいと思うのでございます。  なお、特別保険料の徴収に見合う応分の国庫負担の増額及び給付の一部改善を図ることにしておることは御承知のとおりでございまして、この不況の克服のためには、総合経済対策を着実に実行いたして、一日も早く不況の状態を克服してまいるのが政府のただいま考えている姿勢でございます。よろしくお願いいたしたいと思います。(拍手)    〔国務大臣石田博英君登壇拍手
  42. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) いま経済企画庁長官からお答えがございましたように、個人の可処分所得が減少することは、これは御指摘のとおりでございます。しかし、それが銀行かどこかへはめ込まれて動かないというのではなくて、他の購買力にやはりなってまいりますものと考えます。  それから、わが国の五十一年度国民総生産は百六十八兆円、今度の改正によりまする赤字補てん額が、先ほどのお話のように時期にもよりますけれども、一応一千百億円程度と試算をいたしましても、国民総生産に比べればごくわずかなものであると私ども考えておる次第であります。(拍手)     —————————————
  43. 加瀬完

    ○副議長(加瀬完君) 小笠原貞子君。    〔小笠原貞子君登壇拍手
  44. 小笠原貞子

    ○小笠原貞子君 私は、日本共産党を代表して、健康保険法改正案について質問いたします。  いま中小企業は、労働者はもとより、事業主も、不況とインフレ、円高のもとで大変な苦労をしております。ところが、政府、自民党と新自由クラブは、この改正案で、初診時患者負担を二百円から七百円に、入院時負担分を一日六十円から二百円に引き上げるとともに、わずかなボーナスからも新たに強制的に保険料を取ろうとしています。総理、あなたは、この負担増が不況にあえぐ中小企業家とその労働者にどんなに打撃を与えることになるか、真剣にお考えになったことがあるでしょうか。まず、この点についてお伺いしたいと思います。  いままで二百円で済んでいた初診時一部負担が三・五倍の七百円にも引き上げられては、低所得者はお医者さんに行きにくくなるということは事実です。また、入院時負担を三・三倍以上、二百円に引き上げられては、これだけではなくて付添看護料や莫大な差額ベッド代、これらと重なって、低所得者についてはますます負担に耐えられない深刻なものとなっていきます。これは、いつでもどこでもお医者さんにかかれる権利を国民から奪うことになり、まさに健康保険の理念を破壊する許しがたい改悪であります。総理、あなたはそうお思いにならないのでしょうか、はっきりお答えをいただきたいと思います。  総理、もともと憲法第二十五条の趣旨からして、健康保険制度の充実は国の義務であり、国と資本家の責任でその充実をこそ図らなければならないものではありませんか。国としての責任を果たさず、保険財政の赤字を国民の犠牲によってのみ切り抜けようとする今回の措置は、全く暴挙と言わざるを得ません。総理はそうお考えにならないのか、この点についてもお答えをいただきたいと思います。  政府は、政管健保の赤字見込み額が五十二年度は二百二十六億円、四十九年度以降の累積赤字が約千四百六十億になることを、今回の不当な措置の口実としていらっしゃいます。しかし、中小企業に働く低賃金の労働者を対象とした政府管掌健康保険は、もともと財政基盤が弱いのです。中小企業労働者が仮に組合健保労働者並みの賃金水準であれば、五十二年度で保険料収入だけでも約四千二百三十億の増収になるのです。また逆に、受診率が組合健保並みに低ければ、支出は低く見積もって約二千億円も減らすことができるのです。この事実から見ても、明らかに政管健保を政府が助成することは制度上当然の国の義務ではないでしょうか。また、最近の赤字の累積も、今日の中小企業の深刻な事態に加えて、自民党政府の貧困な医療政策とかたく結びついたものであり、中小企業労働者には何の責任もないことです。政府は、まず当面、国庫負担の増額によってこの財政困難を解決すべきです。  政府は、これまで医療保険の抜本改正を行うと言明したにもかかわらず、いまだに行っていません。この点については、わが党が言うのみならず、先ほどからも指摘されていました十一月四日に出された社会保険審議会の答申においても、「昭和四十六年の答申内容は、今日までの間に実現をみた事項が少なく、大半の課題は残されたままとなっている。」と政府の反省を促し、政府の姿勢を強く批判しているではありませんか。いまは責任を果たさなかった政府の姿勢こそ問われるべきであります。政府としての責任をどうお考えになっていらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。したがって、政管健保の財政問題は、抜本改正を待って検討すべきではありませんか、総理並びに厚生大臣答弁を求めます。  次に、私は、保険財政再建のために政府が緊急に次の措置をとることを求めます。  その第一は、薬剤費に本気になってメスを入れる問題であります。  薬代は健康保険支出の約四割を占めています。製薬大会社は、国民皆保険に寄生して、この不況下でも大もうけをしています。厚生省は、薬価を銘柄別に決め、五・八%引き下げたと言っていらっしゃいます。銘柄別決定といっても、従来の市場価格調査をもとに薬の値段を決めるやり方、そのやり方そのものを変えたものではありません。このようなやり方で薬の価格を多少引き下げることができたとしても、大メーカーは、装いを変えて新薬として申請し、価格をつり上げることができます。したがって、問題の根本的解決にならないことは明らかであります。だから、わが党は、製薬企業の製造原価をもとに、それに適正な利潤を加えたものを政府決定の薬の値段とすべきであると言ってきました。すでにアメリカやフランスでも、政府が薬価決定に介入し、引き下げの努力をしているではありませんか。このように、薬価問題に真にメスを入れるなら、たとえば二割引き下げるとすれば千二百億も健康保険支出を減らすことができるのみならず、医師の技術料も正当に評価することが可能になるのです。厚生大臣、この立場に立ってなさる決意があるかどうか、はっきりとお伺いしたいと思います。  第二は、保険料の負担割合についてであります。  フランスが一対三・六、イタリア一対四・一など、外国の社会保険料負担割合が資本家に多くなっているという例をここで持ち出すまでもなく、わが国においても、組合健保では実質上事業主負担が多くなっています。政府は、いまこそ折半負担に固執する立場をきっぱり改めるべきときであります。中小企業の事業主負担増については、当面、国が補助すべきことは当然ですが、保険料の労働者負担分の軽減措置をとる、その決意があるかどうか、お答えをいただきたいと思います。  第三は、公費負担医療の拡大であります。  まず、老人医療制度についてお伺いしたいと思います。いまのお年寄りは、あの戦争の犠牲の中から今日の日本を築き上げた方々であります。お年寄りを大切にする政治こそ、国民の多くは望んでいるのです。総理府調査によっても、八割の国民が老人医療無料制度の継続発展を希望しています。政府は、それでもなお有料化はしないと明言できないのですか、総理の明快な答弁を求めたいと思います。  わが党は、老人医療や重度心身障害児・者、難病などの医療は、社会全体が責任を持つべきであり、全額公費負担医療とすべきであると考えていますが、総理にこういう立場検討する用意があるかどうか、伺いたいと思います。  今日、十人に一人以上が病人という状態です。国民の健康を守るためには、労働時間の短縮や待遇の改善、公害の防止、住宅対策などの強化、また、保健所の拡充など、公衆衛生対策の充実が必要なものとなってきております。同時に、保険外負担として国民の重い負担になっている差額ベッド、付添料の解消などは緊急になすべきことだと思います。私は、政府がこれらの点、十分な方策をとることを強く要求するものであります。また、国民によい医療を提供するためにも、診療報酬の適正な引き上げと不合理を早急に是正すべきことを強く求めるものであります。  わが党は、本臨時国会では、不況克服、雇用と生活の安定など、国民生活に緊急に必要な課題についてこそ十分審議すべきであると主張してきました。しかるに、政府・自民党は、民社党、新自由クラブの協力を得て、国鉄、防衛二法等とともに本改悪案を成立させるためにのみ、強引に会期を延長いたしました。私は、この点、本案の内容ともあわせて、政府の反国民的な姿勢に強く抗議して、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  45. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お答え申し上げます。  今回の法改正によりまして、まあ国民の負担がふえる、そういう中で、中小企業に従事する人々、また労働者、そういう方々に非常に大きな重圧となるんじゃないか、そのようなことに対してどう考えるか、こういうことでございますが、確かに、今度の法改正の結果ですね、先ほどもお答えがありましたが、一人一人の国民、これの可処分所得がそれだけ減る、こういう問題はあります。ありまするけれども、いまこの機会に、この法改正といいますか、健康保険財政の立て直しの一部を実行しませんと、この制度自体が崩壊をすると、こういうようなことにも立ち至る。そういうようなことを考えますと、多少皆さんには御不満の点もありましょうけれども、この際は、ぜひ大局的見地から御賛同を願わなけりゃならぬ問題である、このように考えておる次第でございます。  なおまた、小笠原さんは、低所得者ほど打撃が大きいんだと、医者に行きにくくなる、それをおまえ考えたことあるかと、こういうようなお話でございますが、それは、ただいま申し上げましたように、負担の増加になるということ、これは避けられない。しかし、このようにりっぱな医療保障体制、これを維持するというために何がしか国民の皆さんに御負担を願うということも、また私は理解していただかなけりゃならぬ問題である、このように考えています。今回の法改正で、どうも医者に行きにくくなるというような御観察でございますが、そのようないわゆる受診抑制というような効果につきましては、私どもはそのようなことはあるまい、このようにはっきり見通しておるわけであります。  また、今度の法改正を非常に暴挙だと、国民的犠牲によって健康保険の財政危機を切り抜けようとするというようなことについての御見解であり、そうは思わないかというお話でございますが、この改正案が暴挙である、そのようなことには断じて考えておりません。保険料の国際的水準というようなものも考えなけりゃならぬ問題でありましょうし、国庫の財政——小笠原さんの話をずうっと聞いておりますと、国の財政というものをどういうふうに考えておられるんだろうかということをしみじみ考えるくらいな気持ちでございますが、(拍手)財政の状態というようなことを考えまするときに、これを暴挙だと言って片づけてしまわれる小笠原さんの姿勢に私は承服しがたい。  また、根本改正をここまで延ばしてきた責任を問うというお話でございますが、これは厚生大臣から先ほどるる申し上げましたが、これはもう医療保険制度に内在する問題というのは大変複雑多岐、しかも関係者間の意見が不調である、そういうようなことが続きましたので、根本改正がおくれておるわけでありますが、根本改正というのは、とにかく非常にむずかしい問題であるにいたしましても、まあ内在する重要な問題が片づき次第それを逐次実行していく、そのように考えておる次第でございます。  また、政府管掌健康保険の赤字責任、これは労働者にはないんで、抜本改正を待って検討すべき問題ではないかというようなお話でございますが、政府管掌の健康保険、これは特に財政が悪化しておるという状態であることは御承知のとおりであります。賃金の伸びが石油危機以後鈍化してきた、また、医療内容が高度化をしてきて給付費がふえてきたというような収支両面の事情から、非常にむずかしい状態でございます。これは先般、関係審議会から、どうするんだということにつきまして意見書が出ておるわけでございまするけれども、とにかく、この根本的な見直しも非常にむずかしい問題であります。しかし、これは急ぎます。急ぎまするけれども、さればといって、その改正が行われるまで、この法改正を待ついとまがないという点につきましては、ひとつ御理解をいただきたいと、このように考えます。  さらに、老人医療の無料制度は継続する方針かというお話でございますが、まあ、老人が急増しておるわけであります。また、さらにその傾向は続くであろうというわけでありますが、わが国の社会保障体系の中で、老人の社会保障、特に保健医療の問題これは重大な問題になってくると思うのであります。この問題は、ひとり医療という問題の取り上げ方ばかりでなくて、まず老人の所得を一体どういうふうに維持、拡大をするか、こういうことが大事だろうと思うのです。それにつきましては、年金制度をどうするか、また、雇用を一体どういうふうに考えるか、また、老人に対する福祉サービス、こういう問題もいろいろ考えなけりゃならぬと、こういうふうに考えておるわけであります。そういう老人対策の施策の一環といたしまして医療問題というものも考えなけりゃならぬわけでありまして、それは、幾ら高額所得者あるいは高い資産家、こういうものでも老人だから無料だと、こういうようにしていいかどうか、こういう問題があるんですよ。ですから、そういう幅広い見地でこの老人の医療問題というものをどういうふうにとらえていくかというお考えでやっていただきたいと、このように考える次第でございます。  さらに、わが国の老人医療、また重度身体障害者、難病患者、そういうものに対しまして全額公費負担をやれと、こういう御主張でございますが、わが国のこのような医療保障は医療保険制度体制をとっておるわけです。これを変えろという意見であり、対案があると、こういうのでありますれば、これは見解も述べられますけれども、私どもは、国際的社会の中で、わが国もまた医療保険制度をとっていくということ、これが妥当な行き道であると、このように考えておるわけであります。保険制度である以上、これを全額国庫負担ということはあり得ないことであります。(拍手)    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇拍手
  46. 渡辺美智雄

    国務大臣(渡辺美智雄君) お答えをいたします。  抜本改正がおくれたということは、繰り返して申し上げますが、なかなか関係者の間で意見の分かれるものが多かったということでございます。今後も抜本改正については、いま言ったように——小笠原先生は社労の委員でもあり、私より詳しいぐらいでございますから、何回もくどくは申しません。申しませんが、何と申しましても、抜本改正というものは大きな金がかかるということが第一問題でございます。したがって、これは給付と負担という問題をどういうように組み合わしていくか、これらについても、これから案をつくりますから、御賛成をいただきたいと存じます。  それから、いまも総理からお話があったように、政管健保の赤字というものについて、その理由は、これもまた、たびたび私はお答えをしておるところでございまして、医療の内容の高度化、人口構造の老齢化、扶養家族数の増加など、そういうような支出面の増加と、確かに思ったほど高度経済成長が続かなかったという点もございます。しかしながら、家族給付の内容等は、政府原案六〇を七〇に引き上げたというようなことで、これは二千五百億円ぐらいの実は財政に影響を与えておることも事実でございます。したがって、今回は臨時応急の措置として、われわれはボーナスの二%というものをお願いをしたいということを申し上げている次第でございます。  なお、負担割合につきまして、二分の一でなくて、もっと労使間、たとえば使用者側を多くしろというお話だと思いますが、これは制度の根本に触れる大問題でございますので、抜本改正の際に検討をしてまいりたい。  先ほども国庫補助につきましては申し上げたように、ドイツやフランスは国庫補助はいたしておりません。スウェーデンのようなところとか、あるいはイギリスのようなところは確かに国庫補助はいたしております。それから市役所等で医療を公営でたくさん見ておるということも事実でございます。そのかわり、これはまた税金が全然違うんでございますから、その方も忘れられたんじゃ困るわけでございまして、たとえば日本の場合ですと、一九七四年の租税及び社会保険料の負担は国民一人当たり二十五万九千円でございますが、スウェーデンは百三万五千円でございます。全然これはもう取る方が違うんですから、たくさん取れば幾らでもこうできるわけでございます。ドイツあたりでも七十八万三千円、アメリカでも六十七万円と、そういうような状況になってございますので、国庫で賄えと言われましても、それはなかなか、日本でそういうような制度になっておりませんから、これはできませんということを申し上げるために、まあ蛇足かもしれませんが、申し上げたような次第でございます。  それから薬の問題、薬を原価主義にしろ、製造原価によって薬価を決めろということでございますが、これは理屈はよくわかるんですが、現実の問題というものは、これは大変な作業と手間が必要になってまいります。何万という薬、一万三千もあるわけですから、それを市場価格でわれわれの方は見ておって、ある程度一緒にして幾らと、こう取りまとめてやりますが、会社ごと、一品ごとの原価をつくるということは、これは言うべくして——私は研究してみますが、むずかしいむずかしい問題であると、かように考えておるわけでございます。しかしながら、現在の薬価基準が適正に市価を反映していないと、これは私はそう言われて当然だと思います。したがって、これについては極力反映をするように、今回は銘柄別収載制度をつくり、あるいは経時調査というものをもっと徹底をさして、これについて実勢価格より倍もあるとか、何割増しだとかというようなことのないように、これは工夫をしていきたいと、かように考えておる次第でございます。  それから、老人医療の無料化制度については、ただいま総理からお答えをしたとおりでございまして、ただ単に、老人医療問題というものは、治療の問題ばかりでなくて、老人の病気の予防をどうするか、生活環境をどういうふうに見ていくか、それから、もし病気になった場合には、もちろん病院に入るのでございますが、なかなか老人になると、もう固定しちゃって病気が治らないという場合もございます、これは。したがって、そういうようなものは家庭がいいのか、老人ホームがいいのか、それからその中間的施設がいいのか、そこで結局、機能回復訓練等あわしてやるようなものも考えていく必要があるのではないか、あるいは社会復帰というものをもう一遍考えてやってもいいのでないかなどなど、老人懇等においてもいろいろな問題を指摘をしております。したがいまして、これは医療の問題ばかりでなくて、老人の老後の生活問題というものは、そういうような予防から治療、リハビリテーション、家庭看護の問題も含めまして……(「医療はどうするの」と呼ぶ者あり)ですから、そういうものも含めて、その一環としてやるわけですよ。医療だけじゃ足らないわけです。医療以上にもっともっとめんどう見ましょうと。もっとめんどう見るんですよ。そういうことをしてまいりたいと。そのためには、やはりだれも老人になるのでございますから、国民各層から公平な負担をちょうだいをしなければならない。これもワンセットでございます。御協力をお願いいたします。(拍手)     —————————————
  47. 加瀬完

    ○副議長(加瀬完君) 柄谷道一君。    〔柄谷道一君登壇拍手
  48. 柄谷道一

    ○柄谷道一君 私は、民社党を代表して、ただいま提案されました健康保険法及び船員保険法の一部を改正する法律案に関し、総理並びに関係大臣に対し質問を行うものであります。  近年、わが国国民総医療費は急激な膨張を続け、昭和四十年度の一兆一千二百億円が昭和五十一年度には七兆七千三百億円と、経済成長率を大きく上回り、経済の低成長時代を迎えて国民所得の伸びが低迷しているにもかかわらず、さらに増加を続けて、昭和五十二年度には、診療報酬の引き上げを別として、八兆五千億円に達するであろうと見込まれております。このため、各医療保険制度はその財政が急速に悪化し、国民の負担は限界に達し、医療保険の行き詰まりは顕著なものとなっております。もちろん、医療費の増大は、日本経済高度成長政策から来る国民の健康破壊、人口老齢化、疾病構造の変化、医学医術及び薬学の進歩と普及、公衆衛生の進展等の要因があることは当然でありますが、政府の各審議会も指摘しているように、医療の供給体制を主軸とする各種の条件整備、医療保険の前提問題の改善、医療保険制度の根本的改正が行われなかったことに大きな原因があることは明らかであります。  これらの抜本改正を行う必要があるとする声が上がってからすでに久しいものがあります。特に社会保険審議会は、各政党、各団体の意見を参考としつつ、長期にわたる慎重な検討を行い、四十五年十月に「医療保険の前提問題についての意見書」を提出、翌四十六年十月には「医療保険制度の根本的改正について」の答申を全会一致で行い、社会保障制度審議会も四十六年九月、「医療保険制度の改革について」答申を行っているのであります。  根本改正の方向と内容はすでに明らかであり、国民の合意はでき上がっていると言うべきでありましょう。しかるに、自民党の歴代政府は、それを実践する決断を欠き、無為無策、適切な施策もないまま、いたずらに糊塗的な保険財政の赤字対策を繰り返してきたのであります。まことに政府の責任は重大であり、その怠慢は大いに責められるべきであります。審議会の答申があって以来六年余、総理は、抜本改正を怠ってきた政治責任をどう感じているのか、今後その反省に立って、いつまでにどのような改革を行おうとするのか、その内容は審議会答申を忠実に履行しようとするものであるのか、総理及び厚生大臣の明確な答弁を求めるものであります。  次に、具体的問題について質問します。  その第一は、特別保険料の徴収についてであります。  衆議院段階で修正が行われたとはいえ、この制度は、組合健保は任意適用であるが、政管健保は強制適用であるため、組合健保と政管健保の被保険者間の負担の不公正を拡大する結果になること、また、負担面で総報酬制としながら、給付面は標準報酬月額を基礎とする矛盾を残すという基本的な問題を含んでおります。まことに安易な財政対策と言わなければなりません。社会保険審議会の多数意見が反対の立場を明確にし、社会保障制度審議会も、にわかに容認することはできないとして反対の答申を行っている現実を無視し、あえてこの制度を設定しようとする真意は那辺にあるのか、私がさきに指摘した二点についてどう考えているのか、さらに、当面の臨時応急の措置としているが、具体的にいつまで徴収し続けようとするのかをお答え願いたい。  第二は、医療給付の改善と一部負担の関連についてであります。  医療保険制度の目的は、被保険者とその被扶養者が傷病にかかったことによる医療費の支出によって生計の破壊を招くことを防止することにあることは明らかであります。医学医術が高度に進歩した今日では、かつて不治とされた病気の多くが治療可能になってきた反面、医療の恩恵に浴するためには多額の費用を要し、個人経済では負担できないものも少なくありません。このため、審議会は、高額医療疾患及び長期医療疾患については逐次公費負担医療に移行するもののほか、当面、家族の給付率を国民健保との均衡をとりつつ改善し、さらに差額ベッド料、付添看護料といった保険外負担の解消することを求め、これらの改善と見合って、必要な受診を抑制しない範囲で適正な一部負担はやむを得ないと答申しているのであります。  しかるに、政府は、見るべき給付の改善、保険外負担の軽減等を行わないまま、一部負担の増徴を図ろうとしております。これは明らかに片手落ちの施策と言うべきでありましょう。政府の猛省を求めつつ、答弁を求めるものであります。  また、高齢者の深刻な雇用情勢にかんがみ、退職者継続医療給付制度を創設し、出産給付もILO百二号条約の基準を満たすよう改善すべきだと考えますが、あわせて政府見解を求めます。  第三は、高額療養費の自己負担限度額の引き上げについてであります。  政府は、被扶養者の一カ月平均自己負担額、政管健保の平均標準月額、平均賃金、可処分所得、消費者物価指数等について、昭和四十七年度時点と最近時点とを対比し、それらの上昇率を勘案して、三万九千円から一挙に五万一千円に引き上げようとしていますが、これは、冷たく血の通わない官僚的発想と言うべきであり、スタグフレーションに苦しむ国民生活の実態を知らざるものと言わなければなりません。医療保険制度の目的はすでに述べたところでありますが、高額療養費の自己負担額の軽減を図ることこそ政治の姿勢でなければならないのではないでしょうか。限度額引き上げの財政効果は、満年度七十九億円程度であることからしても、政府は、この際提案を撤回し、現行のままとして、抜本改正を待つべきであると考えますが、総理及び厚生大臣の政治家としての所信を求めます。  最後に、私は、医療保障五カ年計画の樹立を提唱し、政府見解をただします。  すべての国民は、その生命の尊厳と、心身ともに健康な生活を営む権利が保持されるよう、生活の不安を伴うことなく、ひとしく適切な医療を受けることが保障されなければなりません。しかるに、わが国の医療制度は全般にわたり多くの問題を抱えております。このため、共通の前提となる医療需給予測の確立と均衡の実現、健康管理体制の確立、包括的医療機関の整備拡充と医療資源の効率的配置、医療従事者の養成、僻地及び救急医療体制の確立、医薬制度の改善、診療報酬体系の適正化、公費負担医療の拡充等を年次計画的に改革するとともに、これと連動させながら医療保険制度を改正する必要があることは、多くの説明を要しない時代の要請であります。皆保険に伴う医療需給の展望を欠いたまま、政策不在、事後対策にのみ追われてきたことが今日の医療の荒廃と保険財政の危機を招いた根因だと指摘せざるを得ません。  去る十一月四日の社保審健保問題等懇談会の結果も、明確な実施計画の策定を強く求めており、政府はこの際速やかに国民合意の上に立つ五カ年計画を確立すべきだと考えますが、政府の勇断ある答弁を期待して、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  49. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お答えいたします。  医療保険制度の抜本改正が立ちおくれてきておる、これが今日の医療保険問題の根源であると、こういうようなお話であり、その責任は重大であるという御指摘でございます。確かに、この国民医療問題につきまして、これは問題が本当に山積していると、こういうような状態でございますが、なかなか関係者の中で意見の調整、そういうものもできない、そういうようなことから、今日までいわゆる抜本改正の実現を見ずに至っておるわけでありますが、いまお話がありましたように、老人保健医療問題懇談会、社会保険審議会、こういうところから答申も出ておると、こういうような次第でありますので、鋭意この問題の根本的な側面、基本的な角度の検討をしておりますが、五十三年度以降結論は出てくると、こういうふうに思います。結論が出次第、それを逐次実行に移すというふうにいたしたい。  それから、いわゆる高額療養費引き上げ問題、これにつきましては、お話のように、この財政効果はそう大きくはないんです。ありませんけれども、これは御承知のような賃金の上昇の停滞の問題もある、また医療費の増高というような問題もある、そういう動きに対応いたしまして、これは小さい問題でありましても改善しなけりゃならぬところは改善しなけりゃならぬ、改定すべきものは改定するということになりませんと、保険財政というものが立ち行かないんです。今回の改定案は、四十八年に三万円でスタートしたこの高額療養費でありますが、これを五万一千円にしようと、こういうことで、それくらい細かい配慮をしないと保険財政は立ち行かないというような見解でございますので、御理解を賜りたいと、このように考えます。  なお、医療保障五カ年計画、これはこの際これを決断を持って前進させよと、こういうような御意見でございまするけれども、これはもうお考えは私も十分理解できるところでございまするけれども、御承知のように、複雑な問題が多々あるわけでありまするし、また、関係者間の意見の調整、こういう問題もなかなか容易ならざるところでございますので、さあ直ちにこの医療保障五カ年計画を実施するということを言明することは、これはちゅうちょをいたしますが、とにかく御趣旨の点はよくわかりますので、鋭意そういうお気持ちに沿うような方向で努力してみたい、こういうふうに考えておるわけであります。まあ、五カ年という考え方が一挙に出てこなければ、まとまったものから逐次実施する、こういうふうにもいたしたいと、かように考えておる次第でございます。  ありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇拍手
  50. 渡辺美智雄

    国務大臣(渡辺美智雄君) お答えをいたします。  医療保険の抜本改正につきましては、久しくなかなかできなかったということは、わかりやすく言えば、負担の問題でなかなか関係者間の意見がうまく一致をしないというところが一番の問題点でございます。しかしながら、何と申しましてもこれは抜本改正をしていかなければならない事態に差し迫ってございますから、社保審とか老人懇等の意見を踏まえまして、思い切った改正案というものをつくってまいりたい。当然これは内容の充実ということもございますが、それと同時に、また、合理化あるいは効率化、負担の公平化、こういうような問題が全部一緒にならなければならない、こう思っておるわけでございます。これにつきましては、五十三年度から着手をして、中・長期にわたるものもございますから、五十四年からの具体化というものも出てまいります。  それから特別保険料につきましては、いろいろ御意見のあるところでございます。あるところでございますが、組合健保との関係において御議論をされるわけでございますけれども、これはどこまでも臨時応急の措置でございます。それから組合健保、つまり保険組合の方はそんなにもうかってばかりいるというわけじゃなくて、かなり企業努力もやっておられるし、それから、中では悪い組合も、六百六十ぐらいの赤字組合があります。その中でかなりひどいものもございます。千分の九十を突破して保険料を掛けておるというところもあります。七十八以上——政管よりも高い保険料のところが四〇%以上あるわけですから。四六%。ですから、まずそれはその保険組合の中でお互いに助け合いをやってもらうように、一部実施をしておりますが、さらにそれを推し進めて、制度間の前に、まず組合間の中での負担の公平というものを図っていくようにしたいと、こう考えておるわけでございます。今回の特別保険料の徴収は、先ほど言ったように、健康保険財政の窮迫した現状に対処した臨時応急の措置でございますから、何とぞこれはそういう面で御了解をいただきたい、かように考える次第でございます。  一部負担の問題につきましては、これは総理からもお話がございましたように、入院一時負担一日六十円というのは、昭和四十二年から十年間据え置きでございます。ところが、標準報酬月額の伸びというのは、四十一年と五十一年を比べると四・二倍になっております。被保険者一人当たりの診療費の伸びも三・六倍になっておる。こういうような面も考えたり、実際家庭にあっても食事はなさいますし、病院に行っても食事はするわけですから、一日六十円は、これはやっぱりいまどきの物価から見てもなかなか適当とも思われない。そこで、われわれは、ともかく二百円。スウェーデンのような、何でもただと思われるような国でさえも、これは一部負担というのがございまして、入院の場合は一日につき二十クローネですから、千百円。スウェーデンでは一日千百円の入院一時負担を取っております。それから初診時の問題につきましても、開業医に行く場合は一回が千三百七十五円、病院に行く場合が八百二十五円の通院の際の一時負担というのを取っておる。ドイツでは、各薬品ごとに百二十円の調剤一時負担というものをことしから取るようになった。こういうようなことでございまして、これは世界じゅうの問題でありまして、日本においては十年間も据え置きでございますから、それらの財政事情等も考えれば、世界に類のないことでなくて、スウェーデンよりは安い負担金でございますので、これらの点も御勘案くださって御了承を賜りたいと思います。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣坊秀男君登壇拍手
  51. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) お答えいたします。  医療保険制度を初め、医療保障制度、この大問題の改正でございますが、これはなかなか問題が大きくございまして、今日までの経緯に顧みましても、一挙にこれを改正していこうということは、なかなかむずかしい問題でございます。  そこで、御提案の医療保障五カ年計画につきましては、厚生省におきまして、今後医療保険制度の改正案の具体的な内容と実施手順の検討を進めるに当たりまして熱心に研究されていくものと、また、研究しておられるものと考えます。大蔵省といたしましては、厚生省とも十分相談しつつ、国民負担や、あるいは財政負担の面に配意しつつ、今後の医療保障制度について研究をしてまいりたいと、かように考えております。(拍手
  52. 加瀬完

    ○副議長(加瀬完君) これにて質疑は終了いたしました。  本日は、これにて散会いたします。    午後二時四十一分散会