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1977-10-08 第82回国会 参議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月八日(土曜日)    午前十時三十二分開議     ━━━━━━━━━━━━━ ○議事日程 第四号   昭和五十二年十月八日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第三日)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  一、日程第一  一、国立国会図書館の館長の任命に関する件      —————・—————
  2. 安井謙

    ○議長(安井謙君) これより会議を開きます。  日程第一 国務大臣演説に関する件(第三日)  昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。白木義一郎君。    〔白木義一郎登壇拍手
  3. 白木義一郎

    白木義一郎君 私は、公明党を代表して、政府所信表明に対し、総理並びに関係閣僚質問をいたします。  昭和四十八年十月のあの歴史的な石油ショック以来、すでに満四年を経過しようとしています。当時、福田さん、あなたが胸を張って述べた日本経済全治三年論、よもやお忘れでないでしょう。その期限はすでに一年前に過ぎておりますが、わが国現況は、幾多の山積する難問を抱え、依然として病床にあると言わねばなりません。福田内閣によってつくられた今年度の予算も、昨年に引き続いて大型プロジェクト中心とする公共事業に力を入れ、しかも、本年度は、公共事業予算の七三%以上を上半期に集中して契約するという応急対策までやって景気回復を目指したのでありますが、それにもかかわらず、その効果が全くあらわれてこないことは、いまさら説明する必要もないと思います。しかも、三年続いて国家財政の三割近くを国債という借金に頼っても、このありさまであります。  中小企業倒産件数は、二十三カ月連続して毎月一千件を上回り、特にことし三月から六月までの四カ月間は毎月一千五百件を突破するなど、景気回復どころか、さらに深刻さを増しております。一方、完全失業者は八カ月連続百万人台を突破し、その上、企業は二百万人を超える過剰人員を抱えていると言われ、さらに銀行企業融資する条件として人減らしを各企業に迫っており、いまや失業者の増大という雇用不安が大きな社会問題となってきております。  その間、福田内閣のやってきたことは三次にわたる公定歩合引き下げであり、史上最低金利水準となりました。この結果、銀行から多額融資を受けている側は、大企業中心年間二兆円も利子が下がり、一社だけでも年間二百七十五億円の得をする会社があると言われております。一方、預貯金者側は、それだけ損をしたわけになります。すなわち、預貯金金利引き下げは、家計から利子を奪って、それだけ大企業を潤したにすぎないのであります。預貯金金利は大幅に下がっても、物価は一向に下がる気配はなく、その上、景気対策のための財源難理由に、老人医療、教科書の有料化児童手当の廃止に求めんとしている政府国民大衆を犠牲とした企業擁護政策に、庶民の生活は一歩一歩追い詰められているのが現状であります。  福田総理は、このような現状に対してどのような政治責任を感じているか、まず伺っておきたい。  高度経済成長時代に通用した処方せんは、いまや、あなたの言う資源有限時代という新しい時代には通用しなくなった証拠であると思いますが、総理はこのことを認めるかどうか、まず伺っておきたいと思います。そして、いまだ病床にある日本経済を全治する処方ぜんとして、総理はいかなる新しい哲学、新しい理念をもって臨もうとしているのか、総理の確信のほどを伺っておきます。  最初に、行財政改革の問題についてであります。  減速経済時代に入った現在、高度成長時代のすべての見直しが強く要求されているのであります。家計においても各企業においても厳しい改善と節約を余儀なくされている中で、最も対応がおくれているのは政府であることは国民のひとしく認めるところであります。しかし、福田総理は、総理就任以来、行政改革実施を大々的に宣伝はしておりますが、結局はかけ声だけで、何一つ実を上げることはできない現状国民にどう説明するのか、お伺いしたいのであります。  行政改革は、当然、各省各庁の定員の移動や削減を伴うものであり、それを阻止しようとする各省のなわ張り意識行政改革の大きな抵抗となってきたことは衆目の一致するところであります。したがって、行政改革の断行には、総理として深い洞察力と不退転の一念、そして強固なリーダーシップが必要であります。今後の行政改革に対する総理のお考え決意を伺っておきたい。  次に、財政改革の問題でありますが、御存じのように、わが国財政は、五十二年度累積三十一兆円の国債という借金を抱え、このまま推移すれば国債増加の一途をたどり、政府中期財政見通しでは、大幅の増税をしたとしても、なおかつ、昭和五十五年度五十五兆円の国債が残高となる現状であります。政府中期財政計画では、昭和五十年十三兆八千億円の税収を昭和五十五年度は実に三十五兆五千八百億とし、毎年の伸び率は平均二〇・九%となっております。その財源対策として、政府一般消費税の導入を考えているやに伺っております。私たちは決して税の負担増を何でもかんでも反対するわけではありませんが、現在のはなはだしい税の不公平をそのまま放置しながら、取りやすいところから取るという姿勢は断じて認めるわけにはまいりません。しかも、商品の売上額に対して一定の税金をかける一般消費税は、低所得者ほど負担率が重くなるというもので、大きな問題があり、断固反対いたします。  五十三年度税制改正で、租税特別措置の改廃、富裕税土地増価税創設等不公平税制是正に思い切った措置をとるべきと思いますが、総理のお考え伺いたい。また、これら税の不公平税制にメスを入れずして一般消費税創設はやるべきではないと思うが、総理の御決意お尋ねをしたい。  次に、財政難を理由後退が懸念される福祉対策についてお尋ねしたい。  政府管掌健康保険については、賞与、ボーナスに対する特別保険料創設、患者の一部負担の引き上げ、すなわち初診料を二百円から七百円に引き上げるという内容健康保険法の一部改正案政府は本国会において成立を強く望んでおります。しかし、八種類もある健康保険制度間の不均衡、不合理も、また薬づけとまで言われている医療行政の矛盾も放置されたままであります。このままで保険料を安易に値上げすることは、ざるに水を入れるに等しく、反対せざるを得ません。このような不合理是正政府は本気で取り組む姿勢があるのか、しかと伺っておきたい。  さき国会でクローズアップされた年金官民格差の問題も、公平という観点から考え国民の納得の得られるものでなければなりません。もちろん、年金制度は、それぞれ制度の発生、発展の経緯を異にしており、独自の慣行で積み立てが行われている面があり、一概に格差と言えない面もあることは認めるものであります。しかし、現実は各制度ごとに著しく格差が目につき、年金制度全般に対する国民の不信を招きかねない事態となっております。政府は、官民格差の問題についてどのようにお考えになっているか、お伺いしたい。  また、公明党福祉トータルプランで提唱している国民基本年金構想、すなわち、十八歳より六十歳までの働く人たちの掛金によって六十五歳以上のお年寄りに一人当たり六万円、夫婦十二万円を支給できる修正賦課方式に向かって根本的改革に着手する決意ありや否やをお伺いをしておきたいと思います。  次に、当面する政府総合経済対策についてお尋ねをいたします。  まず、景気回復について福田総理お尋ねいたします。  総理は、わが国景気回復の時期について、今年初め、梅雨の明けたころには、また次には、八月ごろには回復すると言い、さらに、公共事業の今年度の上半期集中執行による効果景気は回復し、大型補正予算は全く考えていないとまで断言をされましたが、総理発言はことごとく大きく外れてしまいました。国民政府に望んでいることは、将来に期待を持たせるような甘いリップサービスの言葉ではなく、現実を直視した正確な経済見通しであります。あなたはこの予想外れ原因をどうお考えになっているのか、お伺いしたい。  総理は、資源有限時代を迎えて、もはや高度成長時代の再現はあり得ないと述べました。それでは、総理考えている景気回復内容については、どのような経済状況になればよしと考えているのか、具体的に明確にお示しを願いたい。  また、政府は、公共事業上半期に集中執行することによって景気回復を目指しながら、その効果の出ない原因をどう考えられているのか、お伺いしたい。  また、前期集中執行の結果は必然的に後期の公共事業執行量のダウンを招き、このような公共事業執行量に大きな変動を生ずることは、経済原則から見ても非効率であり、行き当たりばったりの経済政策であるとの批判がありますが、政府のお考えをお聞きしたい。  公共事業景気回復牽引力とさせるためには、土地代補償費多額の金を要する大型プロジェクトよりも、古い校舎の建てかえなど、生活関連のきめ細かい事業を行うことが需要をつくり出す上で効果があり、しかも、その上福祉の充実という二重の効果を生じることは明らかであります。その点、大型プロジェクト優先政府景気対策は、景気回復への効果は少なく、地域的ばらつきを生じ、福祉の前進への効果も少ない点から方向転換をすべきだと思うが、政府考えをお聞きしたい。  次に、中小企業対策について伺います。  特に不況の波に直撃された中小企業倒産は大きな政治課題であります。この倒産のうち九九%が中小企業であり、数字にあらわれていない零細企業倒産を加えると、早急な救済措置を講じていかねばなりません。  そこで、官公需推進について伺います。  金よりも仕事というのがただいまの中小企業の切なる願いであります。国、公社、公団等中小企業向け官公需拡大が叫ばれながら、現実はむしろ後退しているとわが党の調査で判明しております。政府は、中小企業向け官公需を五十二年度の五割増しを目標に拡大するとか、適格組合の活用、分離発注あるいは銘柄指定増加など、中小企業仕事確保のために官公需発注増加に努めるべきと思いますが、いかがですか。  政府公定歩合引き下げの恩恵は大企業ばかりで、中小企業金利負担軽減は進んでおりません。ここで、中小零細企業救済一つとして、政府関係金融機関などの既存の借入金についても金利引き下げをするよう強力に指導するようなお考えはないか。  また、中小零細企業を大企業の進出から守るため、中小企業分野調整法商調法の運用を積極的に図るとともに、大規模小売店舗法事前審査を厳格に行うことが必要であります。その他、今後の中小企業保護施策を行うために、中小企業関連倒産防止保険制度創設など、数多くの問題を残しておりますが、当面の緊急課題について政府見解を求めるものであります。  次に、景気対策関連して、雇用対策についてお尋ねをいたします。  今回の長期にわたる不況影響は、雇用面に最も厳しくあらわれています。さきに指摘しましたように、百万人を超す完全失業者企業が抱えている二百万人と言われる過剰人員、四百万人の労働者を抱える構造不況業種新規学卒者五十万人の就職難等々、いずれを見ても暗い話ばかりであります。現在政府考えているような当面の糊塗策だけではとうてい根本的な解決とはなりません。  そこで、政府にお伺いしたい。政府は、現在の企業のいわゆる過剰人員をどのように掌握しているのか、また、構造不況業種から転換を迫られる労働者の数をどのように予測をしているか、さらに、長期的に新しい雇用機会をどの分野に求めていくのか、お伺いしたい。  次に、住宅対策についてであります。  総理の注文によって、総合景気対策一つとして、住宅金融公庫による十万戸の貸付枠の追加が行われることになっております。しかし、一方、来年度の住宅予算概算要求では、公営住宅が一万五千戸、公団住宅が二万戸、それぞれ減ることになっております。住宅金融公庫融資を受けられる人は、すでに土地を持っている人か、もしくはマンション購入のための必要な頭金四、五百万円の貯金ないしは手だてのある人に限られております。したがって、公庫の枠をふやす一方、公営公団住宅建設を減らす政府政策は、家を持ちたくても持てない層を切り捨てる政策と、怨嗟の声が上がるのも当然であります。むしろ、政府住宅政策中心は、安い公団公営賃貸住宅建設を目指すべきだと思うが、政府のお考えお尋ねしたい。  ここで関連して、住宅公団あり方についてお伺いをいたします。  今日、住宅公団は、「高い、遠い、狭い」の三悪の中に、住宅に悩む国民要求と余りにもかけ離れてしまっております。たとえば、2DK、3DKと、同じ形の住宅だけをつくるのではなく、スペースだけを販売または賃貸し、そのスペースの中に、子供ができ家族がふえるに従って自由にふやすことのできるフリースペース高層住宅をつくるなど、国民要求にこたえる努力公団としてももっともっとやるべきだと思うが、政府のお考えをお聞きしたい。  また、新しい公団住宅家賃が余りにも高いことも大きな問題であります。現在の公団家賃の中には土地購入費も含まれているが、これらを改善し、土地は国が購入して公団に貸与するなどして、土地賃貸料のみを家賃に加えるようにし、公団家賃軽減にもっと努力をすべきだと思うが、お伺いをいたしたいと思います。  次に、資源エネルギー問題についてお尋ねしたい。  内外の学者や各種調査機関が指摘しているように、一九八五年から九〇年前後にかけて世界的に構造的なエネルギー不足が起こる可能性が大きく、福田総理資源有限時代を強調し、景気対策とともに資源エネルギー対策国内経済対策の両目玉にしております。しかし、わが国総合エネルギー対策は遅々として進まず、このままでは、現在の中東情勢からして、第二の石油ショックが起こりかねない現状であります。私は、国民の一人として、政府に強力な総合エネルギー対策推進を願うものであります。  総合エネルギー調査会の答申では、エネルギー長期需給計画昭和五十年代前期経済計画の六%程度の経済成長の持続につじつまを合わせた数字としております。しかし、世界需給展望から見ても、昭和六十年度に五億キロリットルを超す石油輸入はもちろんのこと、政府が見込んでいる四・三億キロリットルの数字でさえ容易なものではなく、石油確保には並み大抵の努力では達成が不可能と思われます。そこで、石油輸入安定化のため、資源消費国間の協力拡大等を通じて、資源をめぐる国際経済関係安定化わが国は積極的に努める必要があると思うが、政府中東経済外交に対する基本的方針をこの際改めて明らかにしていただきたい。  総合エネルギー対策の具体的な方策の一つとして、一次エネルギー供給先多様化考えられ、政府としても早くから政策一つとして掲げておりながら、現実は、石油中東依存率はかえって高まっております。中国原油重油分の多いいわゆる重質油で、特殊な精製設備を要し、また、ソ連原油開発には多額資金を要するというハンディがあるものの、これらの国は積極的にわが国に輸出したい気持ちを持っています。中国原油のように、せっかく大量の取引が実現しそうにあったものを、わが国が現在不況であるということだけで、取引量を縮小させたことは非常に残念なことと言わざるを得ません。石油の九九・七彩を海外に依存し、その九〇%以上をOPECに依存している現状を、いかにして供給先分散化多角化をし、供給安定性を増大させるお考えか、お尋ねをしたい。  また、今後輸入される石油の質は、中国を初め、重質油が多くなる方向にあり、これら重質油のための対策として政府はどうお考えになっているか、伺っておきたい。  さきにも指摘したとおり、わが国石油依存度が高く、供給国相手側の事情によって輸入ができなくなる場合に備えて、石油備蓄を増強し、エネルギー需給安定化を図ることが必要であります。政府は、今年三月末七十七・五日分の備蓄昭和五十五年三月までに九十日に増加させる方針であるが、そのためには、一千万坪を超える膨大な土地と、この用地取得施設建設等に三兆円以上の巨額の資金が必要と言われております。政府は、今回の総合経済対策では、原油貯油量の五百万キロリットルの積み増しの実施石油備蓄基地建設促進の二つを具体的な対策として打ち出しておりますが、五十五年三月末九十日備蓄は達成できるのかどうか、政府見通しお尋ねしたい。  総合エネルギー調査会報告によれば、エネルギー関係所要資金は、昭和六十年までに約六十八兆円、物価上昇を見込むと八十八兆円の多額になると言われております。この資金をどうやって賄うかについては、報告書には明らかにしてありません。財源の三割を国債に依存している現況下では、公的資金は余り望めないと思うが、政府エネルギー財源調達方針お尋ねをしたい。  また、この点について、現在、年間一兆八千億円の石油関係諸税の八八・八%は道路整備のための特定財源として使用されております。政府部内では、今後はこれらの財源エネルギー関係所要資金に回すべきではないかとの議論があるようですが、道路整備との関連において、総理はどのように考えているか、あわせてお伺いをしておきたいと思います。  政府は二十一世紀時代の新エネルギー開発にも努力されているが、現状では余り多くを期待できません。一方、原子力発電も多くの解決すべき問題を抱え、政府計画は大幅に後退を余儀なくされております。よしんば原子力発電所建設が予定どおり進んだとしても、燃料であるウラン資源輸入には限りがあり、このままのエネルギー消費伸びを続けることは、近い将来エネルギー危機を招くことは識者の一致した見方であります。ここに省資源省エネルギー対策重要性があります。  そこで政府お尋ねしたい。省資源省エネルギー推進することと景気対策を進めることとは、どちらも重要なテーマでありながら、しかも相反する要素を持っております。すなわち、景気対策推進需要拡大することは、一方、省資源省エネルギー政策に反するからであります。政府はこの問題についていかなる哲学をもって対処するのか、お伺いをしたいと思います。  省資源省エネルギーをさらに強力に進めるためには、現在の消費構造産業構造転換が必要であります。自動車輸送より列車輸送に、洗剤よりは粉石けんに、また、化学肥料より有機肥料に移すべきとの意見があります。このような産業構造転換についてどのようにお考えになっているか、お伺いしたい。  次に、わが国が当面する外交問題について質問をいたします。  日中復交以来満五年を経過した今日も、なお共同声明で約束した日中平和友好条約締結されていないことは、まことに遺憾にたえません。私は、過日、日中議連代表団の一員として中国を訪問、中国首脳と会談する機会を得ましたが、同条約に対する中国側の主張は一貫しており、この早期締結の是非は福田内閣決断一つにかかった問題であるとの意を強くした次第であります。双方が満足し得る形で早期締結を図るなどと、あたりまえのことを繰り返し、逡巡しているだけでは解決されません。その責任中国側にあるとでもお考えでしょうか。明確にしていただきたい。  総理は、共同声明を忠実に履行すると言っており、問題の反覇権条項は本文に盛り込むことも異論がないことを明らかにしていることからすれば、すでに反覇権問題は解決済みの問題と思いますが、政府見解はいかがですか。反覇権条項に関し、日中間での不一致の点があるのかどうか。第三国との関係で何らかの支障があると考えているのかどうかも、あわせて明らかにしていただきたいのであります。  これ以上同条約締結がおくれることは、日中関係の前途に重大な障害をもたらすものであり、同時に、国際信義の上からも許されるものではないと思います。総理所信お尋ねをいたしますが、昨日までの総理のこの問題に対する御答弁は、全く伺っていて理解に苦しむものでございます。本日は明確に、国民に向かって、この平和条約締結責任者としてのあり方あるいは期間を明示し、あるいは作業の内容等について、できるだけ詳しく御報告を願いたいと思います。  所信表明演説で、総理は、さきASEAN歴訪を自画自賛しておりますが、総理がマニラで演説した内容は美辞麗句の域を出るものではなく、何ら国民理解を得るものでありません。日本軍事大国にならない、心と心の触れ合う相互信頼関係とは一体具体的にどういうことなのか、わかりやすく御説明を願いたい。  インドシナ諸国との関係をどうするのか。ASEAN諸国の認識と政府のそれとは大きな隔たりがあることは事実であります。単なる一時的なばらまき援助ではなく、長期的展望に立った経済協力基本原則をこの際確立する必要があると思いますが、いかがでしょうか。これらの点について明確に承りたいと思います。  さらに、朝鮮半島の朝鮮民族による平和的統一並びに安定は、きわめて重要な今日的課題となっております。政府はどのように対処するのか、お伺いをしたい。  また、朝鮮民主主義人民共和国の軍事境界線を含めた二百海里経済水域設置が宣言され、西日本一帯漁業者に与える影響はきわめて大きいものでありますが、政府対応策はどうか。また、金大中事件日韓経済協力についての、いわゆる金網旭氏の発言をめぐって国民疑惑は深まるばかりであります。総理はこれらの疑惑に答える責任があると思いますが、いかがですか。  最後に、私は、さき日本航空の重なる事件において、昼夜を分かたず御苦労をされた関係者方々に対し、深く敬意を表するものであります。また、墜落事故生命をなくされた方々に謹んで御冥福をお祈りするとともに、御遺族に対し心からお悔やみを申し上げるものであります。  地球より重いと言われる人命の尊重という至上命令のもと、政府のとられた超法規措置により、百四十余名の人質の方々の命が守られたことを心から喜ぶものであります。また、その反面、今後に大きな問題を残した点、割り切れぬ心情を各人の心の中に残したことも、これまた事実であります。政府及び関係者は、今回の事件を通しての数々の教訓を生かし、このような事件の絶滅のために積極的に努力すべきであり、総理決意を伺うとともに、わが公明党も、法秩序の原点たる生命の尊厳という立場から、党派を超えて努力することを誓い、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  4. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 白木さんにお答え申し上げます。  まず、日本経済現状につきまして、政府施策に対し、まことに厳しい御批判でございましたが、いま世界じゅうが非常な混乱の時代でありまして、その中ではわが国経済の大勢はかなりいいところへいっておる、こういう国際的評価であると、このようなことを申し上げたいのであります。  とにかく、石油ショック、あれは世界じゅうに衝撃を与えたわけでございますが、わが国につきましても、国際収支は百三十億ドルの大赤字である、物価は狂乱である、成長は戦後初めてマイナスになると、そういうような状態であったわけでありますが、三年目の昨年は成長は五・八%、これは世界最高先進諸国の中では最高でございます。それから国際収支の方は、黒字が多過ぎるといって非難されるような状態です。物価鎮静化方向だと、決して悪くないんです。ただ、今日この時点において見ますると、構造不況業種というものがありまして、そしてまあ、とにかく全体としての景気感が出てこない。それからさらに中小企業、三年半の低成長でございまするから、非常に疲弊をしておる。大企業でもそうでございまするけれども、中小企業疲弊こんぱい、これは私は非常に深刻なものであると、こういうふうに見ておるのでありまして、そういう認識で私はこの経済対策に取り組んでおるということを申し上げたいのであります。とにかく、資源エネルギー有限時代という人類始まって以来の変化の時代でありまするから、ぼくは、どなたがどう考えましても、そううまいわけにはいかないだろうと、こういうふうに思いますが、政府といたしましては全力を尽くしておるところであるということだけは、はっきり申し上げさしていただきたいのであります。  それから、とにかく、そういう状態でありまするから、そういう中で政府も率先して身を正さなきゃならぬ、これは当然のことであります。だから、私は行政改革ということを言っておるわけなんでありまして、その考え方につきましては、すでに九月初めにその大綱を発表しております。ただ、私がまだ検討中であると言っておるのは中央省庁だけの話である、あとのことは大方の方向は出してありますから、逐次にこれを実行する、こういう考え方でございます。  それからさらに、白木さんは、財政困難、こういう状態の問題に触れられまして、不公平税制是正ということを強調されておるわけであります。これはもう当然そのように考えておるところでございます。特に、さきの通常国会、ここでのいきさつ、これは私も十分よく承知しておるところでございまするから、この不公正税制問題、これにつきましては私も努力をいたします。  それから一般消費税問題これは、中期税制答申、これに主張されておるところでございますが、中期税制答申におきましては、何もいますぐやれと、こういうことではないんです。これは客観情勢を見まして、政府においてそのタイミング、その内容について十分検討してやりなさいと、こういうことでございます。政府におきましても、そのとおりに心得ておるのでありまして、その時期、内容を慎重に検討いたしまして善処すると、そういう考え方であります。いまここで、この一般消費税はやりませんと、こういうことも言えませんし、いま、いつこれをやるんだということも言えない、これからの問題である、かようにお考え願いたいのであります。  それから健康保険制度の不均衡問題、これにお触れになりましたが、これは確かに歴史的にばらばらに発達した制度でございますから、不均衡はある、これを調整統合するということは大事な問題だと、さように考えておるわけでありますが、これは年金制度基本構想懇談会、これにいま諮っております。その結果等を見まして善処をする、このように考えておるところであります。いずれにいたしましても、種々議論のある問題でありまするから、これは何とかしなければならぬ。その何とかする考え方の基本は、あくまでも公正を期す、こういうことであると、かようにお考えを願います。  それからさらに、国民基本年金構想公明党のトータルプラン、これにつきましても、これは相当金のかかる問題であります。年金問題は財政問題を度外視して考えるわけにいかぬ、そういうことでございますので、慎重に検討をいたしたい。すぐここでトータルプラン構想によりまして修正賦課方式に移行するということまでは申し上げかねるのであります。  それから、景気はずれてきておるが、これは一体どういう状態になったらこの問題は解決するのかと、こういうお尋ねでございますが、この問題は、先ほども申し上げましたように、確かに景気のずれはある、率直にそれを認めます。問題はどこにあるかと申しますと、景気全体のかさ上げはかなり進んできているんです。私は、いまの日本のこの状態は、世界先進諸国の中では第一位の立場にある、こういうふうには見ておりますが、そういう中で、石油依存度の非常に高いわが日本といたしますと、石油ショック影響が非常に深刻であった、その結果、わが国企業の中に多くの格差が出てきておる、こういう問題があるわけです。つまり、構造不況業種というものが多く存在しておるというところに問題がある。また同時に、低成長が長きにわたりましたその結果、中小企業なんかで非常に困窮しているものが多いというところに問題がある。結局、問題は、時代が変わってきたんだと、大企業といえども、中企業といえども、小企業といえども、その変わった環境に対して対応した姿勢のとり直しをしなきゃならぬ、そういうところにいま来ておるわけでありますが、その対応の仕方のむずかしいその業種が、ただいま申し上げました構造不況業種であり、また、特にそれの中で中小企業業種である。また、構造不況業種とも言われない中におきましても中小企業業種である、こういうことかと思うのであります。そういう構造不況業種などの時代の変化への対応、これを政府は助成していかなきゃならぬ、いくための最大の施策は、何と言っても経済の全体のスケールのかさ上げをすることである、かように考えまして二兆円事業規模の追加施策をやるというようにいたし、なお、その上に立ちまして、個々の問題につきまして、あるいは需給の調整、あるいは価格の調整、あるいは設備の廃棄問題、あるいはさらに、それに伴って起こってくるところの雇用対策等につきまして、きめの細かい対策を行おう、こういう考え方をいたしておるわけでありまして、これ以外に、まあ細かい点を言えばいろいろありましょう。ありましょうけれども、大局的な考え方といたしましては、これ以外に道は私はないんだと、このように考えておる次第でございます。  なお、それじゃ公共事業上半期集中政策をとったが、ちっとも効果は出ておらぬじゃないかというような御指摘でございますが、そんなことはないんですよ。これははっきりその効果は出てきておるわけでありまして、経済企画庁が調べたことしの四月から六月までの第一・四半期、あの経済成長の速度、それは幾らであったかというと一・九%、非常に高い水準です。その一、九%の成長の中で、その成長にだれが一体寄与したのかというと、輸出はわずかに〇・一%しか寄与しておらないんです。この一・九%という高い成長をなし遂げた最大の力というものは財政にあった、財政は〇・九%の寄与をしておる、約半分の寄与をしておるんです。この財政施策がなかりせば、もっと日本経済は沈んだであろうと見られるのでありまするが、私は、そういうことを顧みてみましても、今度の財政中心とする総合対策、これは必ずや効果を見てくるであろう、かように考えておるところでございます。  それから、さらに景気政策という立場から言いますと、大型のプロジェクト優先ではいかぬ、生活関連にすべしと、こういうようなお話でございますが、これは私も全く同感でありまして、そのとおりにいたしておるわけであります。御承知のとおり、二兆円というけれども、住宅対策がその大半を占めておるじゃありませんか。また、それに関連する諸施策、これがそれを支えておる、こういうような施策でございまして、この点につきましては、せっかくの御指摘でございまするけれども、私どももそのとおりにいたしておるんだと申し上げるほかはないのであります。  さらに、白木さんはエネルギーの問題に触れられまして、これから先を展望するとエネルギー問題が非常に大事な問題になってきた、その中でも依然として当分の間は石油に依存しなきゃならぬ、そういう際に石油輸入を順調に進めるための中東外交政策、これを重視すべしというお考えでございますが、これも私は全く同感でございます。これは昨日もお答え申し上げたんでありまするけれども、中東外交政策、これは、わが国といたしましては最も重要なる外交政策一つの柱でなけりゃならぬ。もとより、この政策を進める上におきましては、国連の安保理決議二四二号、あれを踏まえてのことでなければなりませんけれども、その上に立ちまして、技術協力、これを大いに進める、また人的、文化的の交流も進める、そしてそういう物や人の交流を通じまして、お互いにお互いが世界の中で連帯の関係にあるんだという、これもまた心と心との結び合いというものを実現していくことが非常に大事なことであろう、このように考えておる次第でございます。  それから、石油関係諸税エネルギー関係所要資金に回したらどうだという議論、つまり裏を返せば、いま石油関係の税収が道路財源になっておる、それとの調整をどういうふうに考えるかという御指摘でございますが、この問題は国の財政全体にかかわる非常に大きな問題であります。道路財源としての石油諸税、これが余ってくるということになればもう問題はないわけでございまするけれども、とにかく、わが国全体の財政の中で道路政策を一体どういうふうにこれからしていくか、そのために幾らの金が要るか、一方、石油関係の税収がどうなるか、それを総合的に見まして結論を得たいと、かように考えております。  これを要するに、省エネルギー時代になってきた、資源エネルギー有限時代になってきた、世の中は非常に変わってきた、そして省エネルギーを実現ぜんとすれば景気政策に支障があるじゃないか、景気政策を進めようとすればエネルギーが要るじゃないか、したがって省エネルギー政策と相矛盾するじゃないか、その間の調整を一体どうするんだ、おまえの哲学は一体何だ、こういうようなお話でございますが、私は、基本的には、資源エネルギー有限時代という立場を考えまするときに、わが国成長、これが世界で第一位というような現在の状態でありまするけれども、本当は、長きにわたってのわが国の将来を考えるときには、成長の高さというもの、これはなるべく私は低い方がいいと思っているんです、低い方が。それで、その低いところへ国民が全部、各界各層順応していくということになると、これはもうわが国資源エネルギーの立場の安全保障という体制ができるんだ、こういうふうに思います。しかし、わが国国内の活力、特にみんながひとつ精出して働こうじゃないかという雇用の問題、これを考えるときには、その低い成長というわけにはいかない。そこで、そういう立場からすれば高い成長がいいんです。その高くなければならないという国内的な要請と、また、低くせねばならないという世界的な資源エネルギーの環境のもとでの要請、これをいかに調和するかということが大事な問題であろう、こういうふうに考えておるのであります。  私ども政府も、精いっぱい、この点につきましては、どこが高かるべし、低かるべしという、その接点であるかということを検討したわけでありますが、ただいまのところでは、六%成長という程度でありますれば、ここ当分は石油輸入中心とするところのエネルギー問題にも支障はなかろうし、また、六%成長というところでありますれば、安全雇用問題、これにも大体支障はないところになるのではなかろうかというようなことで、まあ六%成長ということを目指して、省エネルギー政策も、また成長政策も進めていかなけりゃならぬだろうと、このように考えているわけでございます。  それから、そういう政策をとりますれば、したがって、白木さん御指摘のように、消費構造産業構造転換、これも必要になってくることは当然であります。しかし、これを急激にやるということになりますると、またそこに景気対策上問題がある。私は、徐々に静かにその方向を進めたいと、かように考えておるのであります。  次に、外交問題に触れられまして、まず日中平和友好条約を早く結べと、この締結されないことについての責任はわが日本にあるというようなお話である。中国側ではこれは一秒にして決まるんだとも言っておるというようなお話でございますが、私は、五年前の日中共同声明、これは非常に貴重なものであったと思うのです。あの線で、この五年間日中関係というものは非常に進んできておることは御承知のとおりであります。しかも、順調に進んでおる。あの声明に指摘されておるところの実務協定、これはもうほとんど実現をされておりまするし、また、あの声明に掲げられておらないところの商標協定なんというものまでも過日締結されておるというような順調な状態でありますが、さて、この日中平和友好条約をどうするかということになりますると、これは共同声明をそのまま書いてしまうというわけにもいかないんですよ。これはもう未来永劫、日本中国両方を縛る、そういう性格のものでありまするから、条約にするということになれば、その文言をお互いに相談をしなけりゃならぬと、こういう問題もあるわけでありまして、そう一瞬、一秒にしてというわけにはいかないわけでございまするけれども、私は一日中間にこの懸案があるんだということにつきましては片時も忘れておらぬ。これははっきり申し上げておきます。この問題は静かに進行をしておると、このように御理解を願いたいのであります。何も第三国のことで心配してどうのこうのということじゃございませんです。日中間のことは日中間のことで決めればいいんです。第三国に気がねをしてどうのこうのという、そういう性格のものではないと、さようなことをはっきりと申し上げておきたいのであります。  さらに、ASEAN外交、つまり、私が先般ASEAN諸国などを旅行した、その旅行の最後にマニラで演説をいたしたことに触れられまして、本当に、このASEANの国々、東南アジアの国々はおまえの言ったことを心から理解しておるのかというようなお話であり、なおまた、あるいは理解してないんじゃないかというような意味合いも含めてのお話でございましたけれども、私は、今度のASEANの旅行によりまして、このASEANの国々との間に、また、さらには東南アジア諸国との間に、いままではこれらの国々との関係というものは、どちらかと言えば物と金に偏り過ぎた関係であった、本当に、そうじゃなくて、これらの国々と私ども日本の国との関係というものは、同じアジアの一国じゃないか、運命共同体じゃないか、同じ船に乗っている同士じゃないか、困っているときにはお互いに助け合わなければならぬ、そういう間柄の国々じゃないか、そういう友好と協力、心と心との触れ合い、それに立つところの真の友人としての関係にこれを築き直す必要があると、このように考えまして、諸国を回り、そのようなことを申し上げたわけでありまして、このことは、これはASEAN、東南アジア諸国の指導者たちは本当に心から理解し喜んでくれたと、私はかように考えておるのです。  問題は、しかし、私ども日本の指導者と東南アジア、ASEANの指導者たち同士の理解だけにとどまってはならないんです。そこで私がこの間所信表明でも申し上げましたが、東南アジアの国々との間に友好と協力という一本の新しい苗木を植えたにとどまるんだと、植えることができたんだと、一本の苗木なんですよと、これからの問題はそれを育て上げることにあるのだと、これはひとり政府だけ、あるいは指導者たちだけの間でできる仕事じゃない、この植えられた一本の苗木、友好と協力というこの関係、これを国民次元のものにしなけりゃ本当の正しいアジアの平和というものは実現をしない、こういうふうに考えますので、私の考え方はそこにあるんだということをよく御理解くださいまして、御協力くださるようお願いを申し上げる次第でございます。  なお、そういう考え方でございまするから、白木さん御指摘のこの経済協力関係、これはいままでのように経済協力それ自身がひとり行くという考え方じゃいかぬと思うのです。友好と親善、相互理解、まあ困ったときには助けてやるという真の友人ですね、そういう立場においてわが国がこれらの国々に対して経済協力をするということでなけりゃならぬ、こういうふうに思うのです。そういう立場に立ちまして、経済協力当たりましては、相手国の立場、これを十分踏まえまして、そしてアジア諸国、東南アジア諸国の自主自立の努力理解を示しつつ、できる限りの協力をすると、こういうことにいたしたいと思っております。  朝鮮半島の平和的統一、この問題につきましては、私がしばしば申し上げているとおりでございます。これはいつの日にか、一つの民族が二つに分かれておるということは、これは清算されなければならぬ問題であると思う。今日的問題は、その環境をつくる、そのためにわが国協力をするということでなければならぬと思いまして、そのとおりの努力をやっておると、かように御理解を願いたいのであります。  また、朝鮮民主主義人民共和国、この二百海里経済水域設置に対する対応策ということでございますが、これにつきましては、これは民間交渉が行われたということは御承知のとおりでございますが、いま両国の置かれておる立場から見まして、この民間交渉のこれからの、この間行われた民間交渉の合意に従って漁業問題を処理していくということ、さらに、民間交渉がこれからどういう発展をするかということに期待するほかはない、かように考えております。  それから、さらに金炯旭氏発言の問題に触れられましたが、これはこの前の国会でもたしか私は申し上げたと思うのですが、これはずいぶん前に、もう韓国のその職をやめられた方なんです。私は、との人のこの発言にそう多くの証拠力というものを認めておらないのでありますが、ただ、あの人のお話を聞いておりますと、金在権という人に触れられた部分があるんです。このことは参考にすべきであると、こういうふうに考えまして、金在権氏との接触につきましては、これは政府におきましてはいま努力をいたしておるところでございます。  航空機乗っ取り事件の絶滅につきましては、これは白木さんのお話のとおりです。これは、政府におきましても、鉄は熱いうちに打てと、そういうような考え方で、もう早急に結論を出し、早急にこれを実施するという考え方でございます。  また、墜落事故の防止につきましては、あの墜落の原因、これなんかをよく調べまして、再びこういう悲惨なことが起こらないように、ひとつ政府としてもできる限りの努力をいたし、航空機関係業者等に対しましても督励をいたしたいと、かように考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣田中龍夫君登壇拍手
  5. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) お答えをいたします。  私に対しまする問題は、中小企業の問題とエネルギーの問題、二点でございまするが、ただいま御指摘のように、中小企業倒産等々の問題はまことに重大な問題でございまして、これが救済をぜひとも速やかにしなくてはならない。中小企業問題の根本的な問題としましては、政府系の金融三機関によりまする特段の優遇処置、あるいはまた貸し出し運用の際の返済の猶予、また中小企業保険法に基づきます倒産防止対策、あるいは連鎖倒産の問題についての特別処置、こういうふうな問題がございます。最近ではまた為替の変動対策の緊急処置もいたした次第でございますが、これらの問題と相まちまして、特に御指摘の下請の関係におきましては、昨年は三四%でございましたが、本年は三五・二形と官公需関係をさらに引き上げまして、同時にまた、地方公共団体等もこれに加わりますれば、五割以上の官公需の受注ができるように相なります。さらに、これのいろんな条件等につきましても十分に考えてまいらなくてはなりませんが、同時に、先般国会を通過いたしました分野調整法、また商調法ともに九月の二十四日に施行に相なっておりますので、これらを発動することによりまして、さらに中小企業に対しまする保護がより以上できると考え七おります。  次は、エネルギーの問題でございます。  御指摘のように、今日の日本エネルギーの給源というものは、地域的に見ましても、中近東に八割を依存いたしておりまするし、さらにまた、その中におきましてもメジャーが七〇%というように、非常に偏在をいたしておるような状態でございます。これに対しましては、まず地域的にも分散をいたすことによりまして、安全保障的な考え方を当然取り入れなきゃならない。中近東ばかりではなく、あるいはインドネシア、さらに中華人民共和国なり、さらにまた北方の方のアラスカ、あるいはその他の方面にも給源を求めたい、かように考えておりますが、同時にまた、このエネルギーといたしましての内容から申しまして、石油資源ばかりに依存することなく、でき得る限り、あるいは石炭に、あるいはLNGに、さらにまた原子力の面におきましても大いに開発しなきゃならぬと考える次第でございますが、また、契約の面におきましても、このGGベースあるいはDDベースといったような関係を保ち、同時に、産油国に対しましては、経済協力あるいは外交と、両々相まちまして、なお一層友好を深めたい、かように考えております。  御指摘のように、中国からの輸入いたしまする重油、あるいはサウジとかクウェート方面から参りまするのは重質油でございますので、これが分解装置を早急につくらなきゃなりませんが、これに対しましても、一基が約一億ドルほどの非常に高価なものでございますので、これが施設を早急に設けなければ相ならぬと考えております。  また、備蓄の問題でありますが、御承知のとおりに、ただいまは八十日分でございまするが、さらに明年を八十五日、明後年を九十日と、こういうふうに漸増いたしてまいりまするが、今日の時点におきましては、冬場を前にいたしまして最も輸入に満タンクをさしておりまする時期でございますので、現実には八十人目分ぐらいの貯油がございまするが、いま申しました八十日、九十日というのは、最も最低の段階におきまするベースを五十四年には九十日にいたすと、こういうのでございまして、約六千八百万キロリッターというのが目標でございます。  なお、これに要しまする財源でございまするが、ただいま御指摘のように、六十年におきましては、総合エネルギー調査会調査によりましても、六十八兆というような膨大な資金が必要となるわけでありまするし、今日の備蓄の問題、その他これが財源措置の問題につきましては、国といたしましても非常に重大な問題であるばかりでなく、この財源の給源を求めまするにおきましては、目下非常に努力をし、検討中でありますことを改めて申し上げます次第でございます。(拍手)    〔国務大臣坊秀男君登壇拍手
  6. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 私に課せられました御質問財政金融の問題でございますが、総理から大分詳しくお答えがありましたが、一、二点補足を申し上げます。  御質問は、今度の金利水準引き下げ関連して、中小企業政府系機関から受けておりまする借入金に対する既往の利子を、これを何とか下げないかと、こういう御質問であったと思いますが、この問題に対しましては、中小企業の中で不況業種という指定を受けておる業種のうちで赤字経営を余儀なくされておるという事業に対しましては、ずいぶん高い金利も既往の金利の中にはありますけれども、これを八・六%まで引き下げることができるということに決めまして、そうしてこれを十一月の一日から実施をすると、こういう運びになっております。  なお、中小企業全体に向かってそれをやったらどうかと、こういう御意見もあろうかと思いますけれども、そこまでいきますと、これは財政負担の問題でございまするから、現在のこの状況から申しますと、なかなかむずかしいということでございます。なお、黒字の事業に対しましてもやったらどうかと、こういうお話もあるかもしれませんけれども、黒字の企業に対しまして財政資金の支えによりましてこの利子軽減するということは、果たしてこれが公平であるかどうかということも考えなければならないと思います。  以上のようなことで、中小企業の中では、この緩和された金利、これによって救われないというような中小企業もあろうと思いますが、そういったようなものに対しましては、個々の事業別にこれをケース・バイ・ケースに考えまして、そして何とかこういったような企業に対しましても緩和された金利を適用していこうというようなことに指導をしてまいりたいと、かように考えております。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣石田博英君登壇拍手
  7. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 私に対するお尋ねは、いわゆる構造不況業種と言われるところからどの程度の離職者が出るかということが一点、それから二点は、長期的に見てこれからどういう方面に雇用吸収力を期待するのかと、との二点だと存じます。  政府といたしましては、雇用の問題を最重大課題と考えまして、いま御指摘の点についての的確な実情をつかみますために、雇用関係閣僚懇談会を設けまして、将来雇用吸収力を期待できる産業は何か、それがどれくらいの雇用吸収力を持つか、あるいは現在並びに将来にわたって雇用を減らしていかなければならない、いわゆる構造不況業種というものは、一口に大ざっぱに言いますならば、具体的に言えば何なのだという検討を開始いたしておるところでございます。  そこで、御質問の第一点は、いまわれわれが直面をしている構造不況業種でございますが、労働省として、先般発足をいたしました雇用安定資金の中の事業転換雇用調整事業、この対象事業に指定をいたしましたのが五十四業種でございます。そこに働いておる数は二百六万人、事業所数は十八万でございます。これは、業種をかなり細かく指定をいたしておりますので、数が多くなっておりますが、通産省の方からの御連絡がございます構造不況業種は六業種、アルミの圧延を加えますと七業種——こう加えるというか、分けると、七業種ということになります。そのほかに、運輸省所管の造船、海運、農林省所管の水産及び木材業、こういうようなものが構造不況業種考えられるわけでございますが、その数字のつかみ方が大変むずかしい問題であります。たとえば、繊維と申しましても、流通部門を加えますと二百七十万人ぐらいになるわけであります。ところが、現在構造不況業種対策の対象となっておる製造部門というところに限定をいたしますと、その半分くらいになります。しかし、繊維の流通部門と申しましても、繊維だけを扱っている流通部門というのは比較的少ないのでありまして、繊維も扱っているというところとの分け方に問題がございます。したがって、ただいま五十四業種を指定いたしましたが、さらに実情調査の進行に伴って追加していくこともあり得ると思っておる次第でございます。  そこで、問題の、どれくらい整理される者、離職する者が出るかということでございますが、これに私どもいま全力を挙げて調査をいたしております。そして各企業に行ってヒヤリングもしておるのでありますが、労使の関係を配慮されまして、正直に言って、数字を示してくださらないのが実情でございます。そこで、これに対する非常に大ざっぱな見方として、一方、日経連等では、四百万の雇用者に対して約一割と、こういう数字もお出しになっておりますが、それもいま申しましたような実情がありまして、中身がちゃんと根拠のあるものというわけにはいかない、大ざっぱに見てそういうところではなかろうかと、こう思うわけであります。  第二の長期的な問題でございますが、現在、完全失業者の数が百万を超え、失業率は二形、そういう実情の中で、なお本年七月の例をとりますと、昨年度の七月と比べまして六十二、三万人の就業者の増が見られるわけであります。ところが、その中身を申しますと、製造業ではむしろ減少をし、主としてこれが第三次産業でふえておるわけであります。こういう傾向は将来とも続くのではないか、こういう見当を私どもはつけまして、それが受け入れられるような、しかも資源が乏しいわが国でありますから、資源を使わないで雇用が増大するような三次部門の育成と助成ということに努力をいたしていきたいと思っておりますが、的確な数字のつかみ方については、冒頭に申し上げましたような経済雇用関係閣僚懇談会の作業としていま進行中でございますので、まとまり次第御報告を申し上げたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣長谷川四郎君登壇拍手
  8. 長谷川四郎

    国務大臣(長谷川四郎君) お答え申し上げます。  公団、公社の件についてでございますけれども、持ち家、借家、住宅関係につきましては、基本的には国民需要動向に即してその施策考えておるわけでございまして、反面、低所得層や社会的流動層、こういう面に対しましては十分に考えて、その借家方法というものを速やかに利用ができるように考えておる次第でございます。  さらに、昨年より少ないではないかというようなお話でございますけれども、まさに数字の上では、五十二年は八万五千戸でございます。五十三年は七万戸というように。しかし、金額につきますると、昨年は二千六百三十七億、本年度は三千二百六十億と、こういうふうになるわけでございます。それはどうして少ないのかということになりますと、御承知のように、最近では、住宅総戸数の方が総世帯数に比べて二百万戸程度上回っている。しかし、どうしてそれがそういう事態になっているかという原因は、国民の所得と生活というものが現在マッチしなくなってきているという、そういう欠陥があるわけでございますから、ただ量をふやせばいいではないかという問題ではなく、なるべく現代の経済にマッチするような住宅を、質のよいものをつくっていこうという考え方でございます。  そういうようなことでございますから、そのほかに、公団住宅の方が少し高いんじゃないかというようなお話もございますが、これは、御承知のように、いま公団住宅、五十一年度の実例でいきますと、一戸当たりに国が補給する額が、一カ月間に二万四千円を国が負担をしていま御利用をいただいておるわけでございまして、そういうように、七十年間をそうしたら何ぼになるかというようなことを考えますと、千何百万というような国の税金の負担がかかっていることであります。私は、その税金がかかるのがいけないと言っているのではないのであって、そういうように現在でも御負担を申し上げておるんだということを申し上げておるのでございます。  また、フリースペース高層住宅をつくったらどうかというお話がございます。本年度から、間取りとか内装とか設備とかというような住宅内容の設計につきましては、お入りになって御利用していただく方々に、十分それらを取り入れまして、どういう色がよろしゅうございますか、どういうふうにやりましょうかというように伺って、そのようにいたしておるところでございます。また、いま白木さんのおっしゃるような方法になりますと、全体をそのままでお貸ししたらどうか、ただ床を張っただけでお貸ししたらどうかということでございますが、なかなかこの面になってくると、ただ間取りばかりの問題ではなくて、中に柱を立てなきゃならぬようなところもあるわけでございますから、そういう面を、窓だとか壁、こういうような、やはり住宅を保全、維持する上において必要な面をどうするかというこれはお話でございまして、十分検討を加えてまいりたいと考えております。  そのほかに、申し上げたような家賃軽減でございますけれども、これらに対しましては十分考慮を加えて、均衡のとれた安い値段で御利用願いたいと、こういうふうに考えております。(拍手
  9. 安井謙

    ○議長(安井謙君) 答弁の補足があります。福田内閣総理大臣。    〔国務大臣福田赳夫登壇
  10. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほどの私の答弁中、健康保険制度相互間の不均衡是正の問題、年金官民格差の問題、この二つのうち、年金官民格差の点に触れず、かつ両者を混同してお答えをした節がありますので、改めてお答え申し上げます。  健康保険相互間の不均衡是正に取り組むべしとの白木さんの御意見、これは私もそのとおり問題があるということはよく承知いたしております。これをいかに是正するか、これは医療制度の中の重要な問題と心得ておるのであります。とにかく、社会環環、経済環環も非常に変わってきておりますので、五十三年度を目途といたしまして、制度の基本的な見直しをいま進めておるわけであります。この一環として引き続いて検討いたしたい、このような考えを持っております。  次に年金官民格差是正、この問題につきましては、これは歴史的な沿革もありまして、こういう格差問題が出てきておるわけでありまして、種々議論のあるところ、これは私もよく承知しておりますが、公正を期すという観点から、なお鋭意検討を進めてみたいと、かように考えております。  これは官民格差の問題ばかりじゃありません。年金各種間にいろいろな格差問題がありまして、これは横断的にこれを検討いたしまして、これを解決するほかはない、こういうので、これは先ほど申し上げましたが、年金制度基本構想懇談会、これに諮りまして、ただいま検討中である、このような状況でございます。(拍手)     —————————————
  11. 安井謙

    ○議長(安井謙君) 上田耕一郎君。    〔上田耕一郎君登壇拍手
  12. 上田耕一郎

    ○上田耕一郎君 私は、日本共産党を代表して、ハイジャック事件景気対策補正予算、日韓、安保問題を中心に、総理並びに関係閣僚見解をただしたいと思います。  総理は、昨年、赤軍派などに対する政府の党略的措置責任を追及した衆議院での田中美智子議員の質問に対し、さようなことは一切ない、厳重に抗議するなどと答弁しましたが、無責任に無責任を重ねるものと言わざるを得ません。なぜなら、たとえば、「よど号」事件の際、参議院予算委員会で川島警備局長は、赤軍派内の協力者に金まで出していること、国外脱出計画を事前に察知しながら、何ら対策をとらなかったことまで認めているからであります。政府は国内での厳正な犯人取り締まりと出国取り締まりという国際的責任を怠ってきたと言わなければなりません。  ところで、瀬戸山新法相は、初の記者会見で、乗っ取り犯人を受け入れないような条約、取り決めを率先して世界各国に呼びかけると述べました。しかし、今回率先して受け入れ国を探し、あまつさえ犯人も身のしろ金も引き渡しを求めないとアルジェリア政府に伝えたのは、日本政府自身であります。この呼びかけと余りにも矛盾しているではありませんか。政府は各国にどう説明するつもりですか。人命は地球よりも重しと総理は述べましたが、ファントム機墜落でいたいけな幼児二人が死亡しても、政府はアメリカに抗議一つしていない。一体、安保は人命よりも重いのですか。総理と法務大臣の逃げ口上でない答弁を求めるものであります。  さて、本臨時国会に対する国民の期待の中心は、景気対策国民生活防衛にあります。しかし、九月三日の総合経済対策も、事業規模二兆円、一般会計二千七百億円という補正予算案も、その本質は、従来型景気対策に財界の注文にぴったり沿った景気刺激策を追加したものにすぎません。日本共産党は、これまでも、政府景気対策を大企業本位の従来型政策の延長線上のものだと批判してきましたが、今回の政府対策は、すでに危険ラインを超えたものであることを指摘しなければなりません。  そのことは、たとえば国鉄や住宅公団現状を見れば明白であります。  政府は、国鉄財政の危機を相次ぐ値上げで切り抜けようとしてきましたが、逆に国民の国鉄離れを引き起こして、旅客は一割も減り、赤字はさらにふえてしまいました。一体、どういう見通し責任ある計画を持っていたのか、改めて答弁を求めるものです。  ところが、なお、このあつものにもこりずに、一九%の運賃再引き上げや法定制の骨抜きを企てている。これらが、再建どころか、国鉄の財政破綻をさらに深め、物価上昇を加速する結果をもたらすことは、だれの目にも明らかではありませんか。日本共産党は、これまでの借金方式をやめ、駅や線路など基礎施設を国の出資で賄うなど、費用負担方式の抜本的改善を柱とした国鉄再建政策を提案してまいりました。私は、こうした再建策の審議を強く求め、運賃法定制の骨抜きと、無謀な国鉄運賃値上げの中止を要求するものであります。  全国で三万戸の新築空き家と千二百ヘクタールを超える利用不能地を抱えている住宅公団も、いまや第二の国鉄となろうとしています。ところが、この問題でも政府がとった施策と言えば、今年度公営公団住宅二万五千戸のたな上げ、来年度三万五千戸の計画削減であり、プール制家賃という名の際限ない公団家賃値上げのレールを敷くことでありました。これは必ず国民公団住宅離れを引き起こさざるを得ないものであって、政府住宅公団の基盤そのものをみずから掘り崩しているのであります。  わが党は、値上げ理由一つとされております住宅の維持管理費については、公団自治会との民主的協議を提唱するとともに、プール制家賃方針の撤回を要求します。そして、住宅政策が大きな曲がり角にある今日、政府はいまこそ国庫補助制度の新設、関連公共施設費負担の抜本的改善などに踏み切って、新築住宅家賃引き下げ住宅難にあえいでいる勤労者の熱望にこたえるべきだと考えますが、建設大臣の見解をお聞きしたい。  政府景気対策がすでに危険ラインを突破していることは、いわゆる不況の二重構造が拡大している事実にも示されております。大企業がほぼ回復してきたことはいろいろな指数にもあらわれておりますが、逆に、中小企業倒産は前年度より三〇%もふえ、設備投資も生産も落ち込んだままです。不況対策の重点をどこに置くべきか、答えは明々白々であります。第一は、中小商工業者にも直接仕事が回る生活密着型の公共投資を積極的に進めることであり、第二に、物価を安定させ、福祉の低下を食いとめて、国民のふところを暖かくする、つまり購買力を向上させることであります。  ところが、この不況対策でも政府がとろうとしている方向はどうか。ことしになって三度目の公定歩合引き下げで、東証第一部上場の八百二十社の大企業に何と五千六百億円もの新利益をサービスした上、財政融資でも、高速道路などへの追加投資、石油備蓄基地建設促進、むつ小川原の巨大開発など、財界がまずまずの線と顔をほころばせたのも当然という大プロジェクト重視の内容なのであります。国民生活を守るために、当然、預金金利は早急にもとの水準に戻すべきであり、また、中小企業向け金利については、先般行われた政府系金融機関の金利引き下げ措置不況業種以外の既往債にも広げるべきであると思うがどうか。民間銀行の中小商工業者向け利子引き下げの行政指導の問題とあわせて、所見をお聞きしたい。  国家財政の破綻も重大問題であります。今年度末には国の長期債務残高は三十八兆円を超え、予算規模の一三四%にも達しようとしているのに、先進資本主義国にも例を見ない三割の国債依存率が連続三年に及んでいるのであります。これは、財政破綻とインフレを激しくし、そのツケを国民の税負担の増大に回す、きわめて危険な道にほかなりません。税制調査会は、去る四日、今後の税制のあり方についての答申を出しましたが、その内容は、一般消費税を初め、国民への大増税攻勢となっております。わが党は、軍事費など不要不急経費の削減、予算の組み替えや緊急税制改正によって財源確保し、今年度の長期国債発行額を一千億円程度減額すべきだと考えますが、政府の答弁を求めるものであります。  こうして、総理政策選択の焦点は、危険ラインを超えた従来型経済政策を続けるのか、それとも、日本経済の構造的危機を打開する政策転換するのかという点にしぼられてきます。ところが、総理は、これまでの国会答弁でも、危機打開を展望する何らの中期的展望さえ示しておりません。日本共産党は、去る六月、「日本経済への提言」を発表し、インフレと不況を同時に解決し、日本経済の再建を進める五カ年計画を詳細な数字の裏づけをもって発表いたしました。この見地に立って、九月三十日には「当面の景気対策および補正予算にかんする日本共産党の提案」を発表しました。国民の切実な期待にこたえる道は、政府国会が、日本経済の構造的危機の打開と国民生活防衛のために、長期、中期の展望計画を確立し、当面の緊急政策についての国民的合意をもかち取ることにあります。日本共産党は、そのために奮闘する決意を改めて表明するものであります。  次に、二百海里問題について質問いたします。  すでに開始された日ソ漁業長期協定交渉に当たり政府は領土問題を避けて通るのではなく、千島列島、歯舞、色丹島に対して明確に領有権を主張すべきであります。その上で、周辺水域の線引きを相互に保留し、共同管理水域として入り会い操業ができるようにする必要があると思うが、どうか。  また、日ソ暫定協定発効以後、ソ連の専管水域で日本の中小漁船が協定違反のかどで罰金を徴収される事件が頻発しており、大きな問題となっております。実態を直ちに調査し、政府責任に属することが明白な事件については日本政府が補償し、ソ連側の不当性が明白な事件については罰金の返済を求めるべきだと考えるが、どうか。  また、朝鮮民主主義人民共和国の二百海里水域実施については、さきの日朝友好促進議員連盟代表団の訪朝結果から見ても、軍事警戒線問題とともに民間漁業協定に対する日本政府の保証が最も大きい問題となっていることが明らかとなりました。協定は来年六月三十日までに結ばなければなりません。政府が明確な保証を行うこと、さらに漁業問題から申しましても、朝鮮民主主義人民共和国を一日も早く承認することが必要なのであります。そのためにも、朝鮮、中国が抗議しております日韓大陸だな協定関連法案は断じて成立させるべきではありません。総理及び農林大臣の答弁を求めます。  次は、お米の過剰対策であります。  実りの秋を迎えたにもかかわらず、ことしの予約限度超過米が九十万トンにも上ると言われ、農民は大きな不安を抱いております。生産調整は農民の協力で九九%が達成されており、超過米の大量発生は政府需給計画にこそ問題があったことは明らかであります。わずかな助成措置でごまかすのではなく、当然、全量を買い入れるべきだと考えますが、どうか。  さらに、政府は、米の買い入れ制限を強化して、今年度の二倍に当たる百七十万トンもの生産調整を行おうとしております。しかし、いま必要なことは、わが党が指摘し続けてきたように、農業を国の基幹産業として保護し、麦や大豆、飼料などに米並みの価格保障を行い、積極的な日本農業再建策を実行することにあります。わが国の農業基本法の生みの親とも言うべきマンスホルト前EC委員長も、思い切った農業保護政策重要性を強調しているではありませんか。農林大臣の答弁を求めます。  さて、国民の期待は、日韓癒着の解明と追及にも熱く向けられておりますが、私は金大中事件について次にただしたい。  第一に、政府は、この事件を明白な主権侵害事件と見ているのかどうか。事件当時の九月五日、二階堂官房長官は、韓国政府機関が関与している事実を確認せざるを得ないと記者会見で述べ、田中伊三次法務大臣も、九月十三日の参議院法務委員会で、国家の公権力の指示を受けなければ起こり得ない犯罪だと答弁しているのであります。主権侵害に関する政府見解はその後変わったのかどうか、はっきり答えていただきたい。  第二に、指紋や目撃者から連行犯人の一人であることが確定している元韓国大使館一等書記官金東雲の身柄引き渡し及び捜査官派遣による取り調べについて韓国政府と交渉することを私は要求します。できない理由はどこにもありません。アメリカ政府は、あの朴東宣の身柄引き渡しを厳しく朴政権に要求しているではありませんか。  第三に、事件直後の十一月、田中・金鍾泌会談で行われた第一次政治決着について重大な疑惑があります。先月二十二日の参議院法務委員会で私が追及しましたように、田中角榮首相は、不当な政治解決を優先して、主権侵害を不問に付すという趣旨の親書を朴大統領に送っているのであります。この全文をなぜ国民の前に発表できないのか。すでに何人かの証言があるように、この取引の裏には数々の疑惑さえ提起されているのであります。  第四に、金炯旭元KCIA部長は、身の安全が保障されれば日本国会で証言してもよいという重大発言を行いました。きのう、総理は、国会で相談願いたい、身の安全のためにはできる限り配慮するという答弁を衆議院本会議で行いましたが、金大中事件の徹底捜査を言う以上、当然、政府としても金炯旭氏の証言要請に積極的態度をとるべきではありませんか。  以上の四点について、総理責任ある明確な答弁を求めるものであります。  質問の最後は、日米安保条約をめぐる問題であります。  六月二十九日、ニューヨークのアジア協会で、アメリカのバンス国務長官は、日米安保条約は東アジアにとって柱であると演説しました。カーター政権は、在韓米地上軍の漸減政策を補うものとして、ことし春以来、日米軍事同盟の強化、韓国防衛の責任分担の押しつけを進めております。  そこで、まずお聞きしたいことは、去る七月末にブラウン国防長官が来日した際、福田首相らに、日米防衛協力について五項目の要請を行った問題であります。九月二十二日、参議院ロッキード問題調査特別委員会で、わが党の小巻議員の質問に対し、三原防衛庁長官は、意見交換の場でそういう意見があったという事実を認めました。その五項目とはどういう内容なのか、それに対して、三原訪米を含め、一体政府はどのように回答し、対処してきたのか。  第二は、佐世保を米空母の母港とする計画についてであります。去る六月二十九日、米議会予算局が提出した報告書には、横須賀のほかに、さらにもう一隻の母港施設を佐世保かスビックなどの海軍基地に建設すると提案されています。朝鮮海峡からわずか五百キロの近距離にある佐世保の新たな母港化は、日本の主権の新たな侵害と国民の安全に対する重大な脅威を意味します。こうした計画は断じて拒否するという態度をぜひ総理国会壇上で示していただきたいと思います。  第三は、P3C、F15、早期警戒機E2Cなどの導入、基地労働者の労務費分担などにまつわる疑惑であります。これらは、先ほど触れた五項目にある対潜水艦能力、防空能力の向上、防衛費分担拡大の要請に早くもこたえたものではありませんか。そして、それはちょうど田中内閣がドル対策の名目のもとにロッキード導入などに狂奔したように、福田内閣が日米間の国際収支のアンバランス是正の名目のもとにアメリカの軍用機購入を押しつけられていることにほかなりません。こうした対米従属姿勢国民から福祉財源を奪う軍事費拡大のてことなっているところにも、安保条約の反国民的本質があらわになっているのであります。総理並びに三原長官の答弁を求めたい。
  13. 安井謙

    ○議長(安井謙君) 上田君、時間が経過しております。
  14. 上田耕一郎

    ○上田耕一郎君(続) 日本共産党は、これら一切の危険な策動に反対し、国民生活を守り、日本の安全、アジアの平和を守るために、日本の日米軍事同盟からの離脱と平和中立化が必要であることを強調し、そのために全力を尽くすことを表明して、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  15. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず、ハイジャック問題についてでありますが、今回日本政府は多大の犠牲を忍んでアルジェリア政府に対して飛行機の着陸を要請した、それにもかかわらず、後で瀬戸山法務大臣は、世界じゅうにハイジャック機の着陸はせしめないと、こういうことを要請すべきだと言っておるが、それは矛盾じゃないか、こういうお話でございますが、とにかく、事が起こった以上、そして飛行機が飛び立っちゃった、そこには多数の人質を乗せている、そういう状態で、さあ目的地のアルジェリアへ近づいた、そういうときに、その着陸が拒否されて、どこにも着陸できないというようなことになったら一体どうなるんですか。海の中へ沈んでしまうほかないんですよ、これは。そういう際の非常の措置でございまして、これからはもう世界じゅうのどの国も受け入れませんと、こういうことになれば、ハイジャック阻止問題について非常に大きな効果を持つということを瀬戸山大臣は言っておるんですから、誤解のないようにひとつお願いを申し上げたいのであります。  それから、米軍機が落っこった。これはまあ大変残念なことでありまするが、直ちに米政府との間に事故原因の徹底的究明、また事故再発防止のための施策、そういうことにつきまして十分周到な話し合いをいたしております。  人命の尊重ということは、これはもう人類普遍のことでございまして、これはもうどういう場合におきましてもそうでなければならないと、かように考える次第でございます。  国鉄の問題につきましていろいろの御指摘がございました。私も、国鉄の現状を一体どうするかということは、もう本当に頭の痛い問題でございますが、結局、これは何らかの方法において、これは経営者の経営努力、それからまた政府の援助、それから利用者の負担、この三つが柱になって解決されるほかはないのです。当面、いろいろな施策につきまして国会にもお願いをいたしておるわけでありまするけれども、どうかひとつ、御審議願いまして国鉄の再建に御協力願いたいと、かようにお願いを申し上げる次第でございます。  さらに、預貯金金利問題につきまして、貯金、今回はこれを引き下げたわけでございますが、これをもとに戻せと、こういうような御趣旨のお話でございますが、これはそういうことはできません。いま最大の問題は一体何ですか。この日本の社会、日本経済、これをもう少し活発にさせようと、こういうことなんです。その中で一番苦悩しているのは何だと言えば、企業なんですよ。企業がなぜ苦悩しているかと言えば、過剰の設備を抱えておる。そのために人員が過剰になっておる。この過剰設備、過剰人員、そのために銀行からずいぶん金を借りているんですよ。その金利の負担、この三つの重圧に苦しんでおる状態ですよ。その一つの金利の問題、これをひとつ軽減してやろう、そういうことになれば、まあ過剰人員を抱えておるが、しかし、その過剰人員を首も切らずに、また抱えていくこともできるというような配慮もありまして、金利水準引き下げ政策をとったんです。金利水準引き下げ政策をとりましても、公定歩合を下げただけじゃ何にもならない。やっぱり、金融機関が貸し出すその金利が下がらなければいかぬ。そのためには預金者の預金金利も下げてもらわなければ、そういうことができないわけなんです。私も、それはいま物価が七%台というようなこの時期に預金金利を下げる、これはもう本当に私もずいぶん悩みに悩んだところでございまするけれども、しかし、日本社会を救い、そうしてみんなを活気づけると、そういうことによって、また貯金の方もふえていくんですよ、皆さん。そういうことも考えまして、ひとつ今回の措置には御理解を願いたい、かように考える次第でございます。  さらに、政府系金融機関の金利引き下げ中小企業全般について既往債を含めてやったらどうだと、こういうお話でございますが、これは一律にというそのやり方、これはむずかしいわけであります。しかし、不況業種につきまして、しかも、その不況業種の中で赤字で非常に困っているというようなものにつきましては、既往のものにつきましてもそのような配慮をいたしたいと、かように考えておる次第でございます。  また、民間銀行の金融、中小企業向け利子引き下げの行政指導をせよと、こういうお話でありますが、これもごもっともなお話でありまして、そのようにいたしております。  それから財政全体の問題に触れられまして、この際緊急税制をやったらどうだというお話でございますが、いま税をどういうふうにするか、不況からの脱出、そういうことが最大の課題であるというときに、まあ恐らく法人のことをねらっているんじゃないかと思いまするけれども、法人課税を強化する、これはちょっと私はいかがであろうかと思うんですがね。そういう考え方がないことをはっきり申し上げさしていただきたいのであります。  不要不急の経費の削減、これをすべし、この議論はごもっともでございまして、今回の補正予算も相当の部分を不要不急の経費の削減に充てておるということも御承知願いたいのであります。  それから、二百海里問題に触れられまして、ソ連から拿捕される船が続出しておると、それはずいぶんそういう事例があるわけであります。それは、二百海里制が施行された早々の間でありまするものですから、いろいろの紛争が起こるわけでございまするけれども、まあ双方とも慣習の相違があり、また、ふなれであるということからのことでありまして、だんだんと落ちついてまいるということになるだろうと思うし、また、そういうふうにいたしたいと思います。紛争がもし起こったという場合には、日ソ両国の専門家会議を開催するなどで調整をしてまいりたい。また、不当にソビエト側から拿捕されたというようなものの措置につきましては——不当にですよ、不当にソビエト側からの過当の取り締まりを受けたというようなものにつきましては、ソビエト側に対しまして十分申し入れもいたしておりまするし、また、問題の解決努力をいたしております。すでに罰金を返していただいたという事例のあることも申し上げさしていただきます。  なお、一日韓大陸だな協定関連法案の制定反対というお話でございまするが、これはもう、前国会で協定は承認さしていただいたわけでありますが、その承認があった以上、国内法が通らぬというようなことでは、協定が承認されたという意味もなくなっちゃう次第でございまするから、ぜひともこれは御協力願いたいと、これはお願いを申し上げます。  それから金大中事件につきまして幾つか触れられましたが、第一は、主権侵害ではないかとのお話でございますが、政府は、この問題につきましては、主権侵害があったと言い切ったことは今日までありません。そのようなことはなかったことをはっきり申し上げさしていただきます。  それから第二に、金東雲の身柄引き渡し、このことについての御要請でございまするけれども、この金大中事件はもう外交的な決着のついた問題なのでありまして、いまさら金東雲の身柄を引き渡したり、捜査官を派遣いたして取り調べをいたすというような考え方はいたしません。  それから第三に、田中首相と金鍾泌韓国首相——当時のですよ、首相との間の親書、これを公表せよというお話でありますが、これは、概要というか、内容の大体のところは、これはもう公表してあるんです。しかし、その全文を披露をいたすというところは、親書という性格上、外交上できないことであるということを御了知願いたいのであります。  なお、さらに第四といたしまして、金炯旭氏を証人として政府として要請をすべしと、こういうお話でありますが、先ほど白木さんにもお答え申し上げたんです。この人はずっと前に韓国の情報部長をしておられた方であって、その人がいろいろ伝聞をしたことを話しておるわけでありまするが、伝聞程度のことでありまして、私どもは証拠能力という点についてはそう高い評価はいたしておりません。ただ、先ほども申し上げましたが、金在権氏という人は実在の人である、しかも、あの当時駐日公使をしておった人である、そういうことに触れておりまする点につきましては留意してまいりたいと、こういうふうにいま考えます。いずれにいたしましても、政府といたしましては、金炯旭氏を証人としてこれを要請をするという考えは持っておりません。  それから、さらに日米安全保障問題に触れられまして、本年七月末、ブラウン米国防長官が私らに要請した日米防衛協力の五項目の内容と、それに対する政府の回答と、その対処の状況を示せというお話でありますが、これは私、全く寝耳に水という話でありまして、ブラウン国防長官とは私はお目にかかりました。ブラウン国防長官の表敬訪問でありまして、そういう席上において私は何ら事務上のお話は承っておりません。  それから、佐世保を米空母の母港とする米側計画を拒否するとの態度を明らかにせよというようなお話でありますが、そういうような米側の要請は提起されておりませんです。拒否するもしないも、提起されないものに対しましてお答えのいたしようがございません。  それから、さらに、P3Cなど、これが何かアメリカから押しつけられてというようなお話でございますが、そのようなことはありません。これらの問題これはわが国の防衛上どういうふうに処置することが最も効率的で、また最も国益に合するかという見地から、わが国が自主的に決定すべき問題でありまして、決してアメリカから押しつけられてどうのこうのということじゃございませんから、これは誤解のないようにお願い申し上げたいと思います。  また、労務者の労務費分担問題がどうなっておるかというお話でございますが、これは目下日米間において話し合い中であります。  最後に、わが日本政府は、軍事費を増強するその犠牲といたしまして福祉政策をだんだんだんだんと押さえつけていくというような御所見がありましたが、そのような考え方は持ってないんですよ。戦前は、わが日本は、いまから二十四、五分の一の小さな国でしたよ。それでも国民総生産の六、七割も使って、そうして世界の三大海軍国の一つだ、あの膨大な陸軍を持っておる、そういうような状態でありましたが、今日はどうだといいますれば、いわゆる軍事費に使っておる、自衛隊のために使っておる費用というものは、国民総生産の一%にも満たないような状態じゃありませんか。そういうような状態だ。それはなぜそうなのかと言いますると、戦後のあの荒廃した国土の復旧、これのために巨額の金を使っているんです。また、福祉政策、これも世界一級の水準まで来たじゃありませんか。そのために使っているんですよ。そういうことであって、決して防衛費を増強する、そのために福祉政策が犠牲になっておるというような状態でないということは、よくひとつ世界じゅう状態を検討した上、御議論願いたいと、かように存じます。(拍手)    〔国務大臣瀬戸山三男君登壇拍手
  16. 瀬戸山三男

    国務大臣(瀬戸山三男君) 上田さんにお答えする前に、一言ごあいさつを申し上げます。  先般のような経過によりまして、急邊私が法務大臣に就任することになりました。微力でありますけれども、誠意を尽くして努力をいたしたいと思います。それには、国民の皆さんの御鞭撻と御協力を願ってやみません。よろしくお願いいたします。(拍手)     —————————————  さて、私の就任当初の記者会見の発言が今回のハイジャック事件でとった政府措置と矛盾しておるじゃないかと、こういうお話であります。これについては総理からもお答えがありました。私が就任後考えましたことは、こういうハイジャック事件を起こさない方法はどういうすべをとるべきか、仮に不幸にして起こったときにはどういう措置をとるべきか、この二つがあると思います。一番最良の方法は、申し上げるまでもなく、こういう事件を起こさないことであります。でありますから、これら国内あるいは国外にわたって、そういうすきを与えないような措置を十分とらなければならない。それには、やはり海外に行った場合でも、どこも行くところがないんだと——仮にですよ。これはなかなかむずかしいと思いますが、そういう国際間の取り決め、話し合いができれば、ああいう野望を果たすためにやるわけですから、野望を果たす余地がないということになれば、非常に知恵のある彼らでありますから、やらないと私は思っております。でありますから、そういう措置を内外にわたってとることが必要である。できればさようなことを進めなければならないということでございます。国内的には、あらゆる技術的、法律的なチェックをして、ああいう機会を与えないようにする。これは目下検討中でございます。  そういう意味でありまして、飛んでしまってからどこにも降りないようにするなんということは、先ほど総理からもお話がありましたが、これは、人類の生命をわれわれが守る、これが人間の生き方でありますから、そういうことはできない、そういうことに至らない前の方策はないものかということでございまして、決して矛盾ではないと思います。  お答えいたします。(拍手)    〔国務大臣長谷川四郎君登壇拍手
  17. 長谷川四郎

    国務大臣(長谷川四郎君) お答え申し上げます。  住宅公団についての御質問でございますが、新旧家賃格差について住宅審議会からの答申もこれあり、また、その不均衡の是正という問題についての必要性があると、こういうような判断の上に立って家賃改定をしていきたいと、こういうふうに考えておるのでございまして、ただ、上田さんがおっしゃるように、単にこの問題をプール制とお考えになっていることは、ちょっと私とは考えが違うんじゃないのか。私の方は、不均衡是正はいたしますけれども、ただ、もう二十有余年もたっておりますので、相当家の傷んでる点もある。そして、その時代と現在というものの国民生活、所得そのものが違ってきている。それにやっぱり合うように、傷んだところとか、もういろいろございますから、そういう面を、修理をすべきものは修理をしなければならない、そういうような考え方に立って修理をいたし、そればかりじゃなくて、その方々全体に負担をしてもらおうということではないんであって、国からもある程度は金を出して、そして国も出します、あなた方のそれも直そうじゃありませんか、ですから幾分かの家賃の値上げをしていただきたいんだと、こういうことをお願いをしているのであります。したがって、先ほども申し上げたように、何と言っても、現在住宅にお住みになっていただいている、御利用していただいている方に対して、一カ月に国の負担が、国民負担が一戸二万四千円かかっているということも御了解いただかなければならない問題だと思うのでございます。それは利子補給というような問題もあります。そういうふうに国も負担をしておるのでございますから、こういう面も、ぜひひとつ上田さんの方からも御協力願って、お話しをいただくならば、きっと私は了解、理解をいただくことができ得ると考えておるのであります。したがって、家賃改定に当たりましては、ただ私たち公団の利用者だけじゃないんだと、十分にそういうことを申し上げて、そして御理解を得たい。お話があるように、御理解をいただくということは当然のことであります。当然の義務であります。十分御理解をいただく考え方でございます。どうか、そういう点を御理解の上、御協力のほどをお願い申し上げて、御答弁といたします。(拍手)    〔国務大臣鈴木善幸君登壇拍手
  18. 鈴木善幸

    国務大臣(鈴木善幸君) 私に対する御質問の第一点は、ソ連邦の二百海里漁業専管水域内におけるわが国漁船の操業違反ということで罰金等が徴収されておる事件が瀕発をしておる、この問題に関連しての御質問でございます。  第一点は、こういう事件が起こっておりますことは非常に不幸なことでございまして、これをできるだけないように、いま政府としても努力をしておるわけでありますが、政府としては、この協定が実施に移される前に、東京、札幌、あるいは稚内、釧路、八戸その他の場所で、関係漁業団体の諸君に集まっていただきまして、詳細に、協定の内容、また具体的な付属書等につきまして、その周知徹底方をやったわけでございます。また、その後どうも操業日誌等の記載の問題等、形式的なものが問題になっておるということ等もございまして、ナホトカに係官を派遣をいたしまして、十分、両国の慣習の違い、あるいはきわめて形式的、手続的な問題等の調整、そういうものにつきまして両国の間の意見の整合を図ったところでございます。そのことは早速帰りまして関係漁民にも十分伝えまして、違反が起こらないように努力をいたしておるところでございます。ソ連の監視船等の不法あるいは不当な措置によるところの罰金の徴収、こういうものは、これは絶対に容認できないことでございまして、そういう点についてはその都度ソ連側に厳重に申し入れをいたしまして、罰金等の返還も求めたものもございます。今後十分その点につきましては努力をいたしてまいりたい、このように考えておるところでございます。  第二の点は、米の取り扱いの問題、あるいは生産調整、さらに総合食糧問題についてのお尋ねでございます。  米の需給均衡をできるだけ早く回復をするということが、食管制度の健全な運用をいたします面からいたしましても、食管制度そのものを今後あくまで守っていくという立場からいたしましても、どうしても米の需給均衡を早く回復をいたしたい、このように努力をいたしておるところでございますが、今年度天候等に恵まれまして、相当、予約限度数量を超過するところのいわゆる余り米、余剰米というものが出ております。この取り扱いにつきましては、昭和五十年に作況が一〇七、今年度は一〇四でございますが、ことしよりも大変な豊作であった年におきましても、指定団体である農業団体あるいは卸売団体等に御協力を願いまして、また政府からも助成をいたしまして、この限度数量を超えたお米が全部処理することができたわけでございます。この点につきましては、今年度もこの経験を生かして、指定団体等の御協力をいただき、政府も所要の助成の措置を講じまして、自主流通米のルートを通じてこれを処理してまいる考えでございます。  それから、生産調整等をできるだけやらないで総合的な食糧自給力を向上するような施策をとるべきだと、この御意見につきましては、私も基本的には、生産調整ということは単なる緊急避難的なものであってはいけない、前に休耕等の措置を講じたわけでありますが、そういうことであってはいけない、そうでなしに、米に対するところの、稲作に対する志向が強まっておるが、一方において、必要なところの麦であるとか、あるいは大豆であるとか、飼料作物であるとか、そういう重要な作物が自給率が非常に低い。四、五%というような状況にあるわけでございますから、これを総合的な食糧の自給力を高めるために水田利用の再編対策というようなものをやりまして、政府もそのためにスムーズに転作等が進むような、あるいは相対価格の問題、生産対策、構造対策、そういうような総合的な環境整備、条件づくりに今後努力をいたしまして、総合食糧の確立に全力を尽くしたい、このように考えております。(拍手)    〔国務大臣三原朝雄君登壇拍手
  19. 三原朝雄

    国務大臣(三原朝雄君) 防衛問題につきましては、総理から大半お答えがございましたが、私に関連いたします二、三点についてお答えをいたします。  第一に、七月の末、ブラウン米国防長官が韓国の会議の帰途、防衛庁に寄って五項目についてのお尋ねがございました。ブラウン長官との会談におきましては、在韓米地上軍の撤退に関します問題が中心でございました。これらに関連をして意見の交換をいたしましたが、具体的に五項目というような要求を私どもが承ったということではございません。この点が第一点でございます。  第二点目の、今回私が訪米をしたことについてのお尋ねでございましたが、今回の訪米は、五十年の八月でございましたか、当時の坂田長官とシュレジンジャー米国防長官との間において、両国の防衛責任者同士が年に一回定期的に会合をして意見の交換をしようではないか、そういう合意がなされておりました、その合意に基づきます米側の招待を受けて参ったのでございます。その中身は、特別に課題を決めて結論を出すということではなくして、日米安全保障条約の円滑な運営を期していこう、これらを中心にして率直な意見の交換をやろうではないかというのが会議内容でございましたが、特に今回の会議におきましては、極東の軍事情勢、米国のアジア政策日本の防衛政策等について意見の交換をしたところでございまして、具体的に何らの結論を出したり、あるいは要請を受けたということはございません。  次にお答えをいたしたいのは、アメリカから具体的にいろいろな要請を受けてきたのではないかということでございまするが、わが国の防衛力整備につきましては、あくまでも、御承知のように、国防の基本方針わが国の防衛計画大綱に基づきまして質的な整備を図っておるというのが現在の防衛力整備の進め方でございます。内容でございます。したがいまして、米国の要請に基づいて防衛力整備を進めていくというようなことは全くございません。したがって、アメリカから具体的にこういう要請があったというような事実は全く今日までございません。  その他の点につきましては総理からお答えがございましたので、以上で私のお答えを終わります。(拍手
  20. 安井謙

    ○議長(安井謙君) 答弁の補足があります。福田内閣総理大臣。    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  21. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 答弁漏れがあった由でございますので、お答えを申し上げます。  一つは、朝鮮民主主義人民共和国との民間漁業協定に日本政府が明確な保証を行うべきであるかどうかと、こういうお尋ねでございますが、朝鮮民主主義人民共和国側の要求、その保証の形式、内容などがまだはっきりしてないのです、これは。よくその具体的要求内容を検討いたしまして対処方針を決めたい、こういうふうに考えます。  また、朝鮮民主主義人民共和国の承認を早期に行え、こういうお話でありますが、朝鮮半島の平和は南北間の微妙なバランスの上に成立をいたしておるわけであります。この微妙なバランスということをどこまでも重要視しなければならぬ立場にあるわけであります。朝鮮民主主義人民共和国や、それから中国、ソ連など、まだ韓国を承認をいたしておらない、そういう状態であります。そういうところへわが国が、朝鮮民主主義人民共和国をわが国だけが承認するというようなことになったら一体どういうことになるだろうか、そういうことも慎重に考えなきゃならぬ問題であり、ただいまのところは、同国を承認をする環境条件は整っておらぬというのが私の見解でございます。     —————————————
  22. 安井謙

    ○議長(安井謙君) 和田春生君。    〔和田春生君登壇拍手
  23. 和田春生

    ○和田春生君 私は、民社党を代表して、第一に総合経済政策のうち不況雇用対策、第二に対外収支の調整対策、第三には税制の改正と財政政策、そして第四に石油政策と原子力エネルギーの利用の四つに焦点をしぼって質問をいたします。    〔議長退席、副議長着席〕  質問を特にこの四点にしぼったゆえんは、与えられた時間の関係もありますが、今日、国民の大多数が重大な関心を寄せ、本臨時国会に期待している中心的な課題が、申すまでもなく、打ち続く不況と雇用不安から脱出する方策いかんであり、ここに取り上げる問題は、そのことと相互に深く関連し、さらには、わが国生活日本の将来の安危にも深くかかわる性質のものと考えるからであります。福田総理よりの率直、明確な御答弁とともに、関係各閣僚から必要とする御説明を承りたいと存じます。  まず、不況雇用対策に関してお尋ねをいたします。  総理は、かねてから、稼働指数の水準で需給ギャップの大きさを見るとの考え方を示してこられました。今日なお、その需給ギャップがはなはだ大であることは御承知のとおりであります。覆いがたい不況感の主因はそこにありますが、いかなる施策によってそれを埋めようとされるのか。事業規模にして約二兆円の公共投資追加等により国内需要拡大を図ると言われるが、一般会計約二千七百億、財投追加は、今回分を含めても約七千三百億円、年度の下期に一兆円の政府支出追加によりまして、地方財政が逼迫し、民間の投資意欲も冷却し切っている現状のもとで、政府のもくろみは果たして間違いがないでしょうか。需要拡大のタイムラグをどう見ているかも、あわせて伺いたいと存じます。  また、各般の民間需要の喚起策を実施するとも表明されましたが、各般の施策だけではよくわかりません。これまで政府支出の増加が必ずしも景気回復につながらなかった理由一つが高度成長期とは異なる最近の需給構造の変化によると思われますので、施策の具体例を示されたいと存じます。  次に、構造不況業種について、特に事業転換対策など関連業界の努力に対し政府とし所要の措置を講ずると言うが、いかなる所要の措置を想定し、用意しておられるのか。これまた中期的展望も含め、具体的に示していただきたいと思います。  さらに、中小企業不況業種に関しまして融資制度の充実と積極的活用を図ると言われました。しかし、公定歩合引き下げに伴い、プライムレートも着実に下げられている状況下で、不況業種や中小企業分野等では依然として歩積み両建ての制約が厳しく、過酷な担保の要求などが目立ち、しかも、政府関係金融機関でさえも、企業にとって無理な担保条件を突きつけると言われております。融資の充実、積極化の具体的な政府施策について、その実行措置を問いたいと思います。  次いで、雇用対策に関しまして深刻な問題に触れてお伺いをいたします。  政府は、中高年齢者層に再就職の機会を与え、構造不況業種離職者に対し周到な対策を講じると言っておられます。繊維、平電炉、化学の一部、造船、海運、水産など、きわめて困難な状況下にある重立った各業種につきまして用意されつつある周到な対策の具体的中身を伺いたいのであります。  なぜなら、これらの構造不況業種は、高度成長期における構造変化や景気循環のもとにおける一時的な苦塩とは根本的に異なり、日本経済の内的条件と、避けることのできない外圧などにより、その存廃と将来性を根源的に問われているからであります。政府がいままで示している諸政策の限りでは、生き残り得る部分は仮によいといたしましても、また、一時的な救済策としては部分的な効果を期待できるとしましても、追いやられる部分、はみ出す部分、悪い言葉で言えば、切って捨てられる部分の企業労働者について、その将来図や見通しが欠けているのであります。そのことに対する不信、不安、いら立ちが深いことを踏まえて、しかとした答弁を願いたいと思うわけであります。  第二の問題として、対外収支の調整対策に関してお伺いをいたします。  たまり過ぎ外貨と黒字国の責任に対する国際的批判に対し、輸入促進の諸施策を講じ、経済協力の強化に努めると言われますが、抽象論ではもはや通用いたしません。対日批判と不信は国際的につのる一方であります。輸入促進の品目、規模、その方法などについての政府方針を問いたいと思います。それらが具体的に実行されていかない限り、わが国の国際経済環境は悪化し、やがて孤立をする危険を感ぜざるを得ません。また、現在のわが国経済成長率は輸出の増大、輸入の低迷に負うところ大でありますが、六・七彩達成という目標値のもとで、最近の著しい円高傾向が輸入にどういう形で結びつき、かつ、それを国内物価の抑制、引き下げにどのようにして作用させるつもりであるのか、その方策を具体的に示されたいと存じます。  その一面で、一ドル二百六十円割れという円高相場は、鉄鋼ダンピング問題などとともに、為替と貿易両面からするアメリカの対日経済戦略の一環ではないかという見方も強いようであります。もし、そうだとすれば、ひいては輸出の減退につながり、ギブアップする企業も現に生じつつありますが、やがて国内不況の増幅という方向に働きかねません。政府見解ないしは対応策をこの際特にお聞きをいたしたいわけであります。  第三番目に、税制の改正と財政政策に関して政府所信をただします。  最近、一般消費税の導入を初め、増税方向が打ち出されております。国内需要の増大、不況よりの脱出、失業者の吸収などを緊急最大の命題としている現在、施策としてはマイナス効果が大きいと思われます。また、財政収支のバランスを保つ必要上、仮に将来増税を行うにいたしましても、税の不公平の是正、思い切った行政改革の断行、歳出削減の実施など、条件整備を先行させて、国民政府に対する信頼を回復することが大前提だと考えられますが、増税案が先行するようないまの形は、理屈抜きに国民の大きな反発を買うことは必至であります。  そこで、具体的な提案を含めて質問をいたします。この際、五十三年度、五十四年度の二年間は一切の増税を見送り、不足財源は時限的にある程度赤字公債の増大に依存しても、まず不況からの脱出、景気の浮揚、雇用不安の解消などを第一義とし、国民経済に活力を与える方策を最優先させることであります。そうして体力の回復を図り、しかる後に安定経済財政バランスに漸次移行する方途を考えるべきだと思いますが、いかがでございましょう。また、これによるインフレ増進の懸念につきましては、膨大な保有外貨も抱えているわけでありますから、円高相場を活用する方途を講ずれば、インフレ抑制効果も働き、国内、国際の両面にわたり経済関係の改善策を進めることが可能だとの意見もありますが、いかがお考えでございましょうか。  次に、一方で増税を唱えながら、他方で土地税制の緩和が政府によって主導されつつありますが、これは大きな矛盾ではないでしょうか。現在、土地が動かない主な原因は、税制ではなく、それは付随的な一つ理由にしかすぎません。この際の土地税制の緩和は、宅地供給増加には結びつかず、むしろ、最近気配を見せている地価上昇傾向や思惑投機に拍車をかけ、インフレをあおる可能性をはらむとも思われます。土地政策で取り返しのつかぬ失敗を犯した前科が自民党内閣にはあるだけに、しっかりした御見解伺いたいと存じます。  第四の問題といたしまして、最後に石油政策と原子力エネルギーについて質問いたします。  一昨六日、わが国を含むIEA、国際エネルギー機構加盟十九カ国は、閣僚理事会で、一九八五年の石油輸入総量を二千六百万バレル・パー・デーにとどめる節約目標に合意し、あわせて十二原則を採択したと伝えられております。七七年輸入量の二千二百万バレル・パー・デーに比し、わずか二割弱の増にすぎぬ厳しい目標であります。その中における日本石油需給バランス、輸入量の年次目標の見通しはどういうものでありましょうか。エネルギー節約と代替エネルギー開発にベストを尽くしても、実質成長率六%と見て、このままでは入五年に日本石油輸入量はいまより約三百万バレルふえ、八百万バレル・パー・デーに達するという数字見通しさえあります。この状況のもとでIEA二千六百万バレル・パー・デーに合意した日本政府決意と方策を具体的に問わなければなりません。もし、このIEA目標値の中で平均線で押さえていくといたしますなら、経済成長率年六%とすれば、わが国石油消費量の弾性値をおおむね〇・三程度に落とさなければならぬ勘定となります。また、石油輸入依存度の高い日本経済の特殊事情を強調するにいたしましても、これらのIEA輸入増加分約四百万バレル・パー・デーのうち日本だけでその半分以上を占めることが果たしてできるでございましょうか。  こうした厳しい石油需給状況を考えますと、原子力利用、特に発電のおくれは重大であります。わが国の場合、所要エネルギー増加を賄うには、いまのように原子力エネルギー開発が遅々としている状況のもとでは、そのほとんどを石油輸入の増大にしわ寄せする形とならざるを得ませんが、それはもう許されません。とすれば、他の代替エネルギー開発ももちろん緊要でありますが、原子力利用の促進から逃げを打つことはできないのであります。これに関する内外政策は、核燃料サイクルの問題も含め、楽観的で甘きに過ぎると思われます。どう対応していくか、抽象論ではなく、実際論と政府の確固たる決意のほどを示されたいと思います。  次に、エネルギー節約に関し、産業用エネルギーの大きな節約は、産業構造転換が軌道に乗った場合は別とし、ここ数年間の中期、短期に強行すれば必然的に経営と労働不安に結びつきます。一方、個人用住宅の大量建設住宅環境の改善は、必然的に民生用エネルギーの大幅な増加をもたらすわけであります。この間にあって、可能とするエネルギー節約の具体的方針の用意はあるのでしょうか。ないとすれば、いかなる方策で事態の打開を図らんとするのか、率直に伺いたいと思います。  さらに、わが国石油輸入の大部分を依存している中近東産油諸国は、自国の資源である石油を自国のために利用することを第一義的に考え、ポスト石油時代におけるそれぞれの国の自立と産業体制確立のためテクノロジーの導入を最重視しております。産油国と石油消費工業国と双方の経済合理性を根本的に考慮しながら、長期的視野に立って産油国への経済技術協力を国策として積極的に推進すべきでありますが、わが国ではその視点が欠けております。短期的目先の民間商業ベース依存ではなく、政府としていかなる方策と体制で臨もうとしているのかをお聞きいたしたいと思います。  また、石油輸出の見返りとしてのテクノロジー導入の問題とともに、アラブ諸国がきわめて重要視しているのが中東和平の問題であります。中東和平の動向いかんによっては、それも切迫した問題として再び石油禁輸などが戦略的武器としてわが国にも向けられる可能性もあるわけでございます。中東和平に関する日本努力への期待と疑惑の二つがアラブ諸国の中では交錯しており、わが国がひとりいい子になって傍観者たることは許されない状況にあります。このわが国の安危にかかわる中東和平問題について、言葉の上だけのきれいごとはもう結構です。政府の具体的な取り組み方、特にどう行動するのかについてただしたいと思います。昨日の衆議院本会議におけるわが党春日委員長の関係事項質問についての総理答弁にいたしましても、はなはだ抽象的、おざなりで、いたく失望をいたしました。しっかりお答えをお願いをいたしたいと思います。  さて、以上で私の質問を終わりたいと思いますが、総理が御答弁に立つ前に特に申し上げておきたいことがあります。  この質問の中では、ずいぶん答えにくいことについて具体的な答弁を幾つかあえて求めました。それは、総理を初め、政府所信表明やこれまでの答弁が、国民の心に触れず、聞く者を納得させず、しばしば空疎に響いた大きな理由が、言葉の上のきれいごとに過ぎ、楽観論ばかりが先走り、具体的にはよくわかりかねるものが多いからであります。わが国は、いまきわめてむずかしい転換期に直面をいたしております。この際、できること、できないこと、むずかしいが努力次第で可能性のあることなどを、はっきりさせるべきであります。どんなに困難でもやらねばならないことには、私たちも与野党の立場を超えて協力するにやぶさかではありません。そうした見地から、本院会議を通じ、広く国民にわかりやすく具体的に訴える立場で、特に福田総理の大胆率直な答弁と、福田内閣としての経綸を承ることができれば、はなはだ幸いであります。  以上をもって私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  24. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お答え申し上げます。  今日の経済事情、この本質をどういうふうにとらえておるかと、そういうことに関連して、私がかねて稼働率指数という問題を重視しているということを和田さんが思い出されまして、一体稼働率指数の動きはどうかということでございます。これは、率直に申し上げまして、私が二、三年前に考えておったような状態にいま動いておりません。製造業稼働率指数で言いますと八五ぐらいの水準であります。私が二、三年前展望しておった希望的な数字から言うと、九〇をかなり超えておるというところまで来ておらなきゃならぬわけでありますが、しかし、問題の本質がそこにあると私は思うのです。つまり、今日一部企業におきまして——一部というか、もうかなりの企業におきまして過剰設備、過剰雇用を抱えておる、この状態日本経済全体の景気問題の足を引っ張っておる、これが私は現状である、現実であると、このようなとらえ方をいたしておるわけであります。そういうような観点に立ちまして、どうしてもこの稼働率を上げなきゃならぬ。それはつまり需給ギャップを解消するということなんです。その方法は、だれが考えても二つしかないんですが、需要増加を一方においては図ると同時に、やっぱり能力の削減というか、過剰能力、過剰設備、特に構造不況業種などにおきましてそういう状態であると思いますが、そういう問題の措置をやると、この二つ以外に道は私はないと思うのです。しかし、全体といたしましては、日本経済のスケールはだんだんと上げていく、こういう結果になるような内容措置でなければならぬ、このように考えておるわけであります。  そのような考え方に立ちまして、今回二兆円事業規模の政府施策を打ち出したわけであります。もとより、その中で補正予算として皆さんに御審議をお願いをするその額は、これは三千九百億ですか、そのようなものでありますが、それと地方公共団体、それからさらに政府財政融資によるところのもろもろの需要、特に住宅、そういうものを全部合わせますると二兆になる。その二兆円の事業費、これが一体どういう程度の規模の経済効果となってくるかというと、まあ、公共事業中心でありまするものですから、土地なんかに投資されるものがかなりあるんです。そういうものは差し引きます必要があると思いますが、それにいたしましても、波及効果等を入れますると三兆五千億程度の需要喚起効果を持つと、このように見ておるのであります。その大体半分ぐらいが来年の三月、つまり今年度の下半期に出てくると、こういうふうに見ておるのでありまして、そういう考え方を基本といたしまして、本年度六・七%成長は達成できると、このような見解であります。しかし、その上にさらに、いま御指摘がありましたように、民間の需要喚起対策というものを考えておることは御承知のとおりであります。  その具体的な中身を言えと、こういう話でありまするが、最も大きなのは電源開発であります。これは、電源開発計画がちゃんと決まっておるんです。おるのだけれども、立地の関係でなかなかこれが進まないと、こういう状況にありましたが、地方の知事さん等に、また地域住民等にもお願いをいたしまして、ようやくこれが動き出すようになってきておるのであります。  それから、政府が直接ではありませんけれども、石油備蓄、このための投資、それからいろんな技術開発をしなきゃならぬ、技術水準をこれからいよいよ高めて産業の効率化を進めなきゃならぬというための技術開発投資、これも政府が直接やるわけではございませんけれども、金融等において助成をする。また、省エネルギー投資、これも大いに歓迎し、助成をしようというふうに考えておりまするし、また、海外におきまして、海外諸国で余りトラブルを起こさない、そういう輸出ができるわけであります。これはつまり、アラブ諸国等における大型プロジェクト投資、そういうものでありますが、これも大いに考慮していきたい。さらに、一般の消費につきましても、この際、石油ショックの際に大変これを抑えてきたんですが、これを多少緩和するということがいいんじゃないかというふうに考えまして、割賦販売の条件の緩和をいたしますとか、消費者ローンを拡充いたすとか、そういうようなこともまた考えておる。これが、何というか、政府で行うところの二兆円施策のほか民間需要の喚起策を講ずると申し上げておったものの具体的な内容でございます。  なお、歩積み両建て、また、あるいは過酷な担保要求、こういう問題についての御指摘がありましたが、これはもう長い問題でございます。ずいぶん改善をされてきた今日ではございまするけれども、このような企業不振の際でありますので、特段の配慮をするように金融機関を指導いたしたい、かように考えております。  それから中小企業への融資問題、これはしばしば申し上げておるので、もう詳しいことは避けますが、これはもうかなりきめ細かく金融対策をやっておるわけでありまして、なお状況はいろいろ変化するでありましょう。その変化に応じまして、この問題につきましては十分に配慮をいたしてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。  次に、外貨、過剰と言われるくらいな外貨の問題でございます。  御指摘のように、国際社会においてわが国の黒字国際収支、これがかなりの批判を受けておるわけであります。これに対しましては、ずいぶん努力はしてきておるのでありまするけれども、なかなか実績が上がってこない。この最大の決め手は、何と申しましても、国内で需要を喚起するということにある。そのために今度の二兆円経済対策等も大きく貢献するであろうと、こういうふうに考えております。  二兆円施策ばかりじゃありません。その他におきましても、あるいは原油の備蓄でありますとか、やっておるわけでございまするけれども、その積み増しの問題です。積み足しをやりますとか、あるいは非鉄金属の備蓄をさらに拡充する問題でありますとか、あるいはウラン鉱石の輸入を促進するとか、あるいは航空機の購入をこの際必要があったらやろうかとか、あるいは備蓄用の穀物、大豆だとか、そういうものがありまするが、小麦でありますか、そういうものの繰り上げ輸入、そういうようなことができるかできないか。それからまた、残存輸入制限品目の輸入枠の拡大、これができないか。輸入製品の常設的な展示場、これなんかも大いにひとつやってみたいと、そのように考えておる次第でございます。  さらに大事な問題がありますが、それは東京ラウンド、これは、わが国といたしましては、どうしても積極的にこれを推進するという役割りを尽くすべき立場にある、かように考えて、政府全体いま努力をいたしておる最中でございます。  そういう輸入を促進をするという施策、これもやりまするけれども、同時に、外貨を海外に対して活用する。その一つの有力なる方途といたしまして、対外経済協力という問題があることは申し上げるまでもありませんけれども、この問題も、こういう状況でありますので、一段と強化してまいりたいと、かように考えておる次第でございます。  それから、このようにいまわが国の外貨事情がいいものですから、それを反映いたしまして円高という動きになってきておる。その円高の影響を国内の物価に大いに反映さすべしと、こういう御所見でございますが、これは昨日もどなたかに御答弁申し上げましたけれども、この影響というものはもうピンと出てきておるのであります。卸売物価が、御承知のように、もう世界最低の水準まで来ておる。その背景には、円高、これがかなり響いておるのでありますが、それがやがて消費者物価にもはね返ってくるであろうし、同時に、輸入と申しましても、わが日本は八割までが原材料なんです。第一次製品なんです。二割が完成品なんです。でありまするから、まず卸売物価、これに響いて、その卸売物価に響いたものがだんだんと消費者物価に響くという順序になるわけでありまするが、二割ではありまするけれども完成品の輸入もあるわけでございまするから、その完成品、つまり、ウイスキーでありますとか、洋服でありまするとか、そういうようなものにつきましては一つ一つチェックをいたしまして、この為替利益というものが消費者に還元されるようにという誘導の努力をいたしておる次第でございます。  そういう背景の中で、日米間、——まあ国際社会でわが国はいろいろ批判も受けるような立場にありまするけれども、特にわが国経済的に最も密接なる関係のあるのはアメリカでございます。アメリカとの間にはいま鉄鋼ダンピング問題というような差し迫った問題もありまするけれども、日米関係というものは、とにかく、いま政治的に非常に大きな問題という問題は抱えておりませんが、ただ一つ、この日米の貿易アンバランスの問題という問題があるわけでありまして、何とかわが国景気拡大し、対米輸入もふえるようになり、そして数字的に対米輸出入がバランスすると、こういうようなことは、これはなかなかむずかしゅうございますが、いままでと傾向が非常に変わってきたなあという実感が出るような状態には一刻も早くいたしていきたいと、かように考えておるわけでありまして、いま、日米経済戦争が始まった、あるいはアメリカが対日経済戦略をとり出したというようなお話がありますが、そういうような状態ではございませんことを申し上げさしていただきたいのであります。とにかく、円高問題、これは非常に重大な問題でありますので、この推移につきましては十分に注意し、その都度適切な対策をとってまいるという考えでございます。  さらに、財政問題に触れられまして、一般消費税には反対だと、こういうようなお話でありますが、これは、しばしば申し上げておりまするが、まだ中間答申があっただけの話なんです。これをいかなるタイミングにおいて、いかなる時点において実行するかということにつきましては、これは慎重に対処してまいるつもりでございます。  さらに、和田さんにおきましては、五十三年度、五十四年度一切増税をなくしちゃって、そして不足財源は全部公債で賄えと、こういうようなお話でございますが、これはちょっと、せっかくの和田さんの御提言ですが、そうするというふうな御返事はいたしかねます。やっぱり国の財政の方もいま大変でございまして、とにかく先進諸国の中で歳入の三割を公債に依存しておるこの状態は一刻も早く改善しなければならぬ。これが続くということになりますると、本当に私は、日本国家、社会、これを根底から揺するというような事態になりはしないか、少なくとも改善の方向が出てきたなという状態には一刻も早くいたしたい、こういうふうに考えておりますので、せっかくのお考え、御提案ではございまするけれども、どうも肯定的な御返事はできないのであります。私も、財政経済、この問題については、これは経済あっての財政だというふうには考えておりまするけれども、これはおっしゃるとおりでございまするけれども、財政が本当に破綻し混乱するということになれば、その経済自体がまた死んじゃうのですから、その点もまた御配慮のほどをお願いしたい、かように存ずる次第でございます。まあ、非常にむずかしい事態でありますので、慎重に、しかも機敏に国内、国際両面の施策に取り組んでまいるという決意でございます。  最後にエネルギー問題に触れられました。IEA加盟十九カ国においては、一九八五年の石油輸入量を二千六百万バレル・パー・デーにとどめるという節約目標に合意したと伝えられる、その中で、日本石油需給バランス、輸入量の目標は一体どうなんだと、こういうお話でありますが、二千六百万バレル・パー・デーということは、年間十五億キロリッター、そういうことになるわけでありますが、わが国は、大体世界の消費国の総量、その辺になるであろうということを大体頭に浮かべながら、わが国のこの石油消費量というものを検討してまいった次第でございますが、政府といたしましては、このIEAの決定、これは決定された以上尊重すると、そういう立場でございます。その尊重したその立場に立ちまして、わが国におきましては、総合エネルギー調査会中間報告、これが大体一九八五年の日本の必要輸入量、これを四億三千二百万キロリッター——これは年間でございます。としておりますが、この数字はかなりいままでの趨勢から言うと低目のものになるわけです。かなりこれは省エネルギー、またさらには新エネルギー開発、こういうことに努力をしなきゃならぬわけであります。これはもう努力しなきゃならぬ。これはわが国経済社会を動かす原動力とも言うべきエネルギーの問題でありまするから、これはもう国民各界各層の御協力を得まして、どうしてもこの目標は貫き通すようにしなければならないと、かように考えておるわけであります。  また、原子力発電の問題に触れられまして、大変原子力発電がおくれておるが、そうすると石油輸入の方がふえてくる、また、そうするとIEAの方向とも違ってくるじゃないかというような御指摘でございますが、確かに、原子力発電石油にかわる最も有力なるエネルギー源である原子力発電、この方はおくれがちでございます。どこに原因があるかというと、立地問題にあるんです。やっぱり安全の対策、環境対策、これは政府としても全力を尽くしますけれども、立地問題につきましては、これはもう国を挙げての安全保障の問題であるというくらいに考えておりますので、どうかひとつ超党派で御協力を願いたいと、このように、この席をおかりいたしましてお願いを申し上げる次第でございます。  またさらに、しかしそういう省エネルギー政策というようなことを強行しますと、これはまた景気政策と矛盾するんじゃないかというような疑問を投げかけられましたが、それはもうまさに、省エネルギー政策景気政策を両立させるということは非常にむずかしい問題であります。私は、しかし、省エネルギー、これは大事な問題である、その前提といたしまして、資源有限時代が来たんだということを国民にいま強く訴えておるんでありますが、さて、その結果どういう施策をどういうふうにやっていくかということについては景気政策の側面もまた考えなけりゃならぬ。その調整をどういうふうにするかというところに今日この問題の扱いのむずかしいところがあるわけでありまするけれども、その間、とにかくエネルギーについての国民の認識、これはだんだんと強めていかなけりゃなりませんけれども、具体的適用に当たりましては、景気政策の方につきましても配慮しながらまいるというのが私の立場でございます。  最後に、石油で非常に大事な立場にある中東諸国との関係、これにつきましては、春日委員長が先般この地を訪問されまして、その首脳者たちといろいろと立ち入ったお話をされてきたことを私もよく承知いたしておるわけであります。この国々がお金よりも何よりもテクノロジーが欲しいんだと言っておるということも、私の頭にこびりついております。そういうようなことを頭に置きまして、そしてこの国々との経済接触を進めてまいりたい。  なお、その前提といたしまして、中東政策についての国連の二四二号決議、これはぜひともこれを日本といたしましても推進してまいる立場をとりたい、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣田中龍夫君登壇
  25. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) お答えいたします。  通産省関係の所管の中で、総理大臣からほぼ大部分お答えになっておられまするが、若干のものが残っておりますので申し上げますと、中小企業に対しまする金融その他の問題がございましたが、今般、緊急対策といたしましては、中小企業の為替変動対策の緊急融資制度あるいはまた中小企業倒産対策の緊急融資制度、さらに中小企業の信用保険法に基づきます不況業種の指定の拡充でありますとか、不況業種に属しまする中小企業政府系の中小企業金融三機関によりまするいままでの貸し出しの金利の引き下げ措置、あるいはまた中小企業信用保険公庫の方へ原資として百億円の追加出資、こういうふうなものが当面行われたものであります。  次に、構造不況の問題につきまして、その事業転換対策などにつきまして一言申し上げますと、現在の政府といたしましては、先般決定いたしました総合経済対策の基本方針に沿いまして、業界の実情に即応いたしましたきめの細かい構造不況対策を全力を挙げて推進いたしておる次第でございます。  すなわち、第一には生産・価格調整の対策でございまして、繊維業等におきまする不況カルテルの実施及び減産指導を行っておる次第でございますが、さらに過剰設備の処理につきましては過剰設備の廃棄凍結を指導いたしてまいりましたし、減産設備の廃棄に伴いまする必要な資金につきましては金融面からも支援を行っておりますることは先ほど申し上げたとおりでございまするが、同時に、雇用対策といたしまして、雇用安定資金制度の対象業種といたしまして指定する等の措置をとってまいりました。御指摘のありました事業転換対策については、繊維等は七十二業種につきまして中小企業事業転換対策臨時措置法に基づきまして、中小企業金融公庫、国民金融公庫及び中小企業振興事業団の長期低利の融資を行いまするとともに、信用保証、税制等の各般にわたりまして助成措置を講じてまいった次第でございます。また、中堅あるいはまた大手の方の、中小企業でない面におきましては、日本開発銀行によりまする事業転換融資等を行って、これが資金を充足いたしておる次第でございます。  以上お答え申し上げます。    〔国務大臣坊秀男君登壇拍手
  26. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) お答え申します。  歩積み両建て等につきましては、総理から、さようなことはあってはならないから鋭意これに対して対策を立ててやっておる、こういうお答えでございましたが、それにつきまして、私といたしましては、二、三の実施——どういうことをやっておるかということを申し上げさせていただきます。  低金利政策をとりまして、できるだけ企業に刺激を与え、そうして活力を与えていくというときに、一方において歩積み両建てなどということが行われておることはきわめて遺憾なことでございまして、何としてもそういったようなことはやらさないように持っていきたい、こういうふうに考えまして、去る六月でございますが、金融機関の最高責任者を含めました関係者に対しまして、これはもう絶対に責任体制を強化してもらわなければ困るということを通告いたしております。それからまた、金融機関がその優越的な地位を利用いたしまして債務者に不当な不利益をこうむらしめるといったようなことは、これは絶対まかりならぬということも通告いたしております。そういうようなことから、これの実効を期するために、八月以来、抜き打ち検査ということをやらしておりますが、いろんなことをやりまして、どうしたって低金利政策というものを実効あらしめたいと、こういうことをやっておるのでございます。  それから、中小企業に対しては、もうすでに通産大臣からお答えがございました。  税調の答申でございますが、これも総理からよく御答弁がありましたけれども、これは中期の答申でございまして、何もこの五十三年度から実施しようということに決めておることではございません。五十三年度の経済実態をながめてみまして、そうしてこの税調答申の趣旨をどれだけ生かしていくか、どれだけ具体化していくかということは、これからの慎重なる検討によってやってまいりたいと思うのでございますが、さてしかし、そういうようなことで仮にある程度の増税ということが行われるというようなことがあっても、御指摘のとおり、これは絶対に不公正税制の是正をやっていくということ、及び一方、歳出の面におきまして、これはもうできるだけこの歳出の面を見直しまして、そしてスクラップ・アンド・ビルドの思想に徹して予算を編成していきたい、かように考えておるのでございます。  それから、和田さんから——これももう総理からお答えがございましたけれども、ここ一両年は増税などということはもうこれは思い切って、そしてひとつ公債政策でもって政策を立てていったらどうだ、こういうようなお話でございますが、何しろ日本の今日の財政というものは非常な不健全な事態にあるということは、かねて御承知のとおりでございますが、この不健全なる財政を立て直すために、やはりそういう面から申し上げますと、できるだけ速やかにこの財政健全化に一歩踏み出しませんことには、この踏み出しがおくれればおくれるほど、結局、これの処理ということです、不健全財政をどう立て直していくかというこの大問題が大変困難な事態になってくるということをひとつぜひ御理解をいただきまして、何分の御協力を切にお願い申し上げる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣石田博英君登壇拍手
  27. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 私に対するお尋ねは、いわゆる構造不況業種から出てくる離職者の人たちに対してどういう具体的な施策をとるつもりであるか、事例を挙げられて個々について答えを求められたわけでございます。  先ほど構造不況業種と称せられる業種の中で、どれだけの雇用量があるか、それからどれだけの離職者が出る見込みかということについては、白木さんの御質問にお答えをいたしましたので、繰り返すことを御遠慮申し上げたいと存じます。  そこで、例を挙げられました繊維、平電炉、造船、はしけ、塩化ビニール及び北洋漁業の規制を受ける水産加工業、これについての対策をお答えを申し上げたいと思います。  運用する制度は、前国会で成立をいたしました雇用安定資金制度でございます。これを活用することによって、まず失業を予防する。それから、どうしてもその企業の中にいられない人々に対しては、一方において職業訓練を施し、他面において、そういう職種から離職した人を新しく雇用してくれる人に対する助成措置をすでにとっておりますが、明年度からはさらにこれを増額する処置をとるつもりでございます。  それから、やむを得ず失業状態になった方々に対しましては、雇用保険の個別延長、これを適用いたしまして、失業中の生活の安定をいたしたいと存じます。  それから、造船の離職者に対しましては、職業転換給付金制度内容はよく和田さん御存じだと思いますが、これの特別措置をすでに適用いたしておりますし、北洋漁業の規制に伴う減船施策についてもこの適用をいたす方針でございます。  それから、先ほども申しましたように、現状だけでなく、中長期の、つまり高齢者社会あるいは高学歴社会、そういうものを背景といたしまして、これから雇用吸収力がある部分はどこであるか、どれくらいあるか、また、これから雇用吸収力を漸次下げていかなきゃならぬものは何であるかというものの見きわめもつけまして、所要の対策を講じますために雇用関係閣僚会議を設けたことは先ほど申しましたが、労働省の中でも臨時雇用対策本部というものを設けまして、労働省挙げてこの問題に取り組みつつあるところでございます。    〔国務大臣鳩山威一郎君登壇拍手
  28. 鳩山威一郎

    国務大臣(鳩山威一郎君) 和田先生にお答えを申し上げます前に、先ほど総理からも申されましたが、この九月、大変暑い時期に春日委員長とともども中東諸国を歴訪されまして、各国の指導的な立場にある方々と会談をせられまして、私ども、その詳細な会談録までちょうだいをいたしまして、本当に厚く御礼を申し上げるところであります。  お尋ねの問題は、日本中東和平に対する態度、これがしっかりしたものでなきゃならぬと、こういう御趣旨と思います。今回の国連総会の場におきまして最も大きな問題が中東和平の問題である、それとともに、南部アフリカの問題、この二つが決定的に大きな問題であり、しかも、時期といたしまして、何とかことしじゅうにこのジュネーブ会議の再開を図るべきであると、こういう段階にあるわけでありまして、わが国といたしまして、わが国の立場をはっきり明瞭に主張をしてまいったつもりでございます。御承知のとおり、その根拠は安保理決議の二四二にあるわけでありますが、それとともに、パレスチナ人の民族自決権を含む国連憲章に基づく正当な権利の承認と尊重にあるということであります。そしてもう一つ、いまイスラエルによりまして占領地域内でこの現状を変更しようとするいかなる試みにも反対であるということを明確に述べ、また、パレスチナ人の代表としてのPLOを含む関係の国々が一つのテーブルにつく、しかも、何とかこの年内にジュネーブ会議が再開できるように日本といたしましてあらゆる協力を惜しまないと、このようにはっきり申してきたところであります。  また、中東諸国に対します経済協力の問題、あるいは先方の要望いたしますテクノロジーの問題につきましては、今後とも鋭意努力をいたしてまいる所存でございます。(拍手
  29. 加瀬完

    ○副議長(加瀬完君) 答弁の補足があります。福田内閣総理大臣。    〔国務大臣福田赳夫登壇
  30. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 土地税制の緩和と増税方針の矛盾並びに税制と宅地供給増との関連への疑問、こういうお尋ねがありましたが、これから数カ年を展望いたしますと、どうしても国民負担増加を求めなければならぬという状態にある、他方、今日のこの景気情勢をつぶさに点検いたしまするときに、需要喚起方策、これを考えなければならぬということは、これは和田さんも御理解されておるところと思うのですが、その需要喚起政策の中で大変大事なのは、これは住宅です。ところが、住宅政策を大いにやろうといたしますると、これは土地、つまり宅地という問題がある。この土地問題というのは、あの高度成長の末期にああいう大混乱を起こした問題でありますので、これは注意してこれを扱わなきゃならぬ問題であります。そのことは十分心得ておるところでございますが、この土地問題全体として検討をするときには、事は非常にむずかしいです。もう富士山のてっぺんからアルプスの山々まで含めての土地政策というようなことになる。しかし、いま当面する問題は、これは宅地だ、宅地を一体どういうふうに考えるかという角度の問題でなければならぬというふうに思うのです。その宅地を一体どういうふうに住宅対策対応させるかということを考えるときに、いろんな問題があるんです。まあ、調整地域をどうするという問題もあります。あるいは国土利用計画法をどうすると、こういう問題もある。また、土地税制という問題もこれに絡まってきます。しかし、私は、それら全体につきまして、土地に対する政府のこの施策、この枠組み全体、これは崩したくないと思うのです、枠組み全体は。しかし、その枠組みの中で、いま国が、また国民が期待をいたしておるところのこの住宅問題を解決するために、まあ、ささいなところで、何か災いというか、障害をなしておるという点がありますれば、それらの点はよく点検した上、これは調整したらいいじゃないか、そうすれば、また住宅対策にもいい効果が出てくるんじゃないかと、こういうふうに考えておるのでありまして、決して、増税というか、国民負担は大きくふえていかなけりゃならぬという傾向、そういう傾向に対して矛盾した施策をとるというような、そんな考え方を持っておるわけじゃないんです。もうこの住宅問題を真剣に考えておるがゆえに、もし微調整の余地があるならばそれを考えてみたらどうだと、こういうことを言っておるのであり、まだ結論を出しておるわけでもないんです。われわれがひとつこれからそういう余地があるかどうかを検討してみたらどうだろうかと言っておる、そういう段階であるということを申し上げさしていただきます。(拍手)     —————————————
  31. 加瀬完

    ○副議長(加瀬完君) 寺田熊雄君。    〔寺田熊雄君登壇拍手
  32. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 私は、日本社会党を代表して、さき政府演説に関し、総理並びに関係大臣に対して質問をいたします。  その第一点は、政治の道義性についてであります。  いわゆるロッキード事件は、自由民主党によって行われるわが国の政治が、国民の目の届かない裏街道で、外国の多国籍企業の醜い金銭的買収のとりことなった事実を国民の前に明らかにいたしました。それは、政治に対する国民の不信をいやが上にも大きなものとしたのであります。  これについて、当時三木内閣の副総理であった福田首相は、第七十七国会において次のように述べられました。すなわち、「私は、こういう疑惑を持たれるような事件が起こる背景というものがあると思う。わが国の社会的風土、政治的風潮というか、金さえあれば、物さえあれば、これが人生だという風潮が流れているところに問題がある。そういう風潮がどうしてかもし出されたかはむずかしいが、金で政治が支配される、金で政治を支配するという風潮が政界にないか、反省させられる。国民みんなで、何より政治家、特に、いま政権を担当する自民党において、本当に心から反省するいい機会である」と言われたのであります。  ところが、本年九月十日発表せられました昭和五十一年分の政治資金収支報告書を見ますと、自由民主党の台所がすべて大企業の献金によって賄われていることが明らかであります。これらの大企業は、税制はもちろん、金融政策、産業政策、労働政策など、わが国の政治全般に深いかかわり合いを持っていることは言うまでもありません。これらの大企業の献金によって支えられる政党が、どうして大企業の利益を図らないでおられるでしょうか。総理が真に日本の政治を国民的なものとすることを欲せられるならば、これらの企業献金と絶縁することがぜひとも必要であると信じますが、総理にこれを断行する決意がおありでしょうか。ただ、この際、特に付言いたしたいことは、大企業の社長以下の重役や部課長など、いわゆる会社の利益代表者がそろってする個人献金は、装いを変えた企業献金にほかならないということであります。  次に、千代田経済懇話会など、総理の率いられるいわゆる福田派政治団体が五十一年中に十億円を超える大金を衆参両院の国会議員や秘書などに送っている事実も明らかになっておりますが、総理は、国民に対してこの事実をどのように説明せられるのでしょうか。しかも、これらの金はすべて表街道の金であります。裏街道の金を合わせた場合、それはさらに巨額なものとなるのではないかと言われておりますが、この事実は、わが国の政権の掌握が金力に深く依存していることを物語るものではないでしょうか。しかも、派閥的政治団体に対するそれらの金の出所は、昭和五十年第七十四国会における政治資金規正法の意図的な改悪によって、大部分黒いベールに覆われているのであります。これらの事実は、さきにロッキード事件について語られた総理の御所感と全く矛盾するように思われるが、いかがでしょうか。  また総理は、今後の自派の政治団体を維持せられるおつもりでしょうか。そして、その団体に吸収せられた企業からの献金を自派の国会議員に送り続けるおつもりでしょうか。それとも、こうしたことをやめて、企業献金を禁止するか、少なくともそうした献金の出所をことごとく国民の前に明らかにするための政治資金規正法の改正を断行する決意がおありかどうか、お伺いをいたしたいのであります。  第二に、私は、最高裁判事の任命方法等についてお尋ねをいたしたいと思います。  最近、最高裁において、勤労者の労働基本権について過去になされた大法廷判決、すなわち、昭和四十一年のいわゆる全逓中郵事件判決や昭和四十四年の都教組事件の判決などが次々と変更せられたことは御承知のとおりであります。  裁判が、裁判官の能力や人生体験の広さ、深さ、公平さなどによって結論を異にするものであることは洋の東西を問いません。ことに、問題が歴史の進歩や政治の変化並びに階級的利害などにつながる場合には、それが裁判官の持つ世界観や歴史観によって左右されざるを得ないことも、何人も承認するところと存じます。  ところが、ここ数年来の最高裁長官や同判事の任命を見ますと、それが著しく体制擁護執心派ないし支配層擁護派とも言うべき保守的な人々に偏っていることを指摘せざるを得ないのであります。  私は、過去において、最高裁長官等に対して、最高裁判事は思想的に中立の人であることが望ましいという意見を申し述べてまいりました。そのこと自体には最高裁長官なども異議はなく、時として、いずれの陣営からも中立的と目せられる人物が選任ぜられる希有の事例もなかったわけではありません。しかし、その後の長官人事や裁判官人事を見ますと、それは大企業の顧問弁護士であった人々や政府施策にきわめて忠実であった行政官など、現在の支配層擁護派ないし体制擁護派とも言うべき保守的な人々に的がしぼられていることが疑い得ないと存じます。ことに、最近大企業の顧問弁護士から採用せられました一裁判官のごときは、現行憲法の権威に対して深い疑惑を表明してはばからぬばかりか、女子の深夜労働の禁止や生理休暇の必要性すら否定するような言辞を弄している人物であると報ぜられております。もしも、このような時勢に暗く、旧憲法的感覚しか持ち合わせぬ裁判官がありとすれば、最高裁が果たしてよく現行憲法の守護者として国民の基本的人権を守っていくことができるかどうか、疑わざるを得ません。それは、ひいて裁判の権威を傷つけ、裁判に対する国民の信頼を失わしめるおそれなしとしないのであります。  総理御承知のように、最高裁は憲法の番人であります。したがって、時には政府の重要施策に対しても、これを否定することも義務づけられる場合があるのであります。偏った保守的政治思想を持つ体制擁護派ないし支配層擁護派とも言うべき裁判官のみで占められる最高裁で、どうしてこのような憲法から託された神聖な義務が果たされ得るでありましょうか。  このような考え方からいたしますと、最高裁判事は、政治的に中立な人々、ひたすら憲法を守ろうとする公正な信念の所有者から選任せらるべきであると信ずるが、総理のお考えはどんなものでしょうか。また、適正な人事を保証するための方法として、一つには、何らかの機関、たとえば政府国会最高裁、日弁連などの代表者によって構成せられる裁判官任命諮問委員会のごときものを設置してはどうか。また二つには、現在の最高裁裁判官国民審査の方式がバツ印しか記載を認めず、何らの意思表示もなし得ない人、また、実際なさなかった人の投票をことごとく信任票と認めてしまう不合理さを改めまして、これをマルとバツの投票方式に改正すべきではないかと考えるが、総理のこれに対する御所見を伺いたいのであります。  第三は、経済の問題、とりわけ景気の問題であります。  総理は、その所信表明演説において、最近のわが国経済が設備投資など民間活動の盛り上がりに乏しく、雇用情勢の改善もおくれるなど、望ましからざる状況にあることを認められ、従来取り来った一連の景気政策に比して、さらに総合的な経済政策を決定した旨を述べられました。その内容を見ますと、それは、財政による需要喚起、すなわち、公共事業推進住宅公庫の貸付枠拡大並びに金利の引き下げなどを中心とする過去の不況対策と異なるところはありません。もっとも、今回はそれに民間需要の喚起策を加えたほか、従来の構造不況業種対策中小企業対策雇用対策などに若干の造作を施してはおるのであります。これらの不況対策は、現在のままでは六・七%の経済成長率を達成できず、国際的にも顔向けができないので、六・七彩成長を達成するために打ち出したものと考えられるのでありますが、しかし、そうであったといたしましても、それなりの景気刺激的効果を持つことは否定し得ないところであります。しかし、私どもの見るところでは、今日の不況は余りにも深くわが国経済に根をおろしており、これらの施策によって景気が立ち直るとも考えられず、不況感が払拭せられるものでもございません。  総理、従来の政府対策は余りにも財政主導型に傾斜し過ぎ、その他の要素、たとえば国民総支出の六割近い個人消費の景気に及ぼす影響を無視し過ぎたのではないでしょうか。都市と農村とを問わず、国民の購買力を増加させる方法、そのためには、福祉をさらに進めて老後の安定を図ることや、物価対策、とりわけ公共料金の騰貴抑制などが大切でございますが、政府はこうした点には余り重きを置かず、ひたすら財政の働きに頼り過ぎたのではないでしょうか。しかも、そうした対策すら公債依存率にこだわってタイミングを誤り、小刻みの、そして時期おくれの対策ばかりであったように思われるのであります。  顧みますと、三木内閣時代にとられた昭和五十年中の四次にわたる景気対策も、すべて財政主導型とも言うべき公共事業推進財政融資資金による住宅公庫の貸付枠拡大を柱としたものでございました。昭和五十一年中にとられた二回にわたる景気対策、すなわち、五十一年三月の八項目の景気対策と同年十一月の七項目の景気対策もまたそれ以前のものと少しも変わらず、わずかに、中小企業金融に対する政府資金の若干の増加、地方自治体に対する起債枠の拡大、国鉄、電電公社の工事削減分のある程度の復活とか、平凡な官僚的発想の域を出るものではありませんでした。  その間、福田総理は、三木内閣の経済政策を取り仕切る副総理としてこのような官僚的発想を擁護し、次のように言われました。すなわち、日本経済昭和四十八年秋の石油危機によって深刻な打撃を受け、全治三年の重症であると診断して、財政と輸出とによって日本景気は五十一年中に立ち直るという見通しを述べておられたのであります。すなわち、昭和五十一年一月二十七日の当院本会議における小柳勇議員の質問に対する総理の答弁を見てみますと、「第四次景気対策効果の浸透から見まして、これからの経済は上向きに転ずるであろう。そして、それを受けて五十一年度四月から始まる状態はどうなるかと言いますと、私はこれは比較的明るい展望ができると思うんです。つまり、昨年総落ち込みでありましたこの世界経済が今度は総浮揚である、どこの国を見ましてもプラス成長に転ずると、こう推しはかられる。」、「私はことしの経済というものは、これは相当明るい展望を持ってよろしかろう。私は、経済演説で、インフレも不況もこれでおしまいだと、こういうふうに申し上げましたが、そのような年になり得る、かように考えておるのであります。」というふうになっておるのであります。総理、あなたのこの経済見通しはみごとに外れたのではないでしょうか。このような余りにも楽観的な見通しが、安易で小出しの財政一辺倒の対策を生み、深刻な経済不況をもたらしたものと考えるのでありまして、総理の率直な反省の弁を期待いたしたいのであります。  さて、今回の対策のうち、いま私が特に問題といたしたいのは金利の引き下げの問題であります。  この金利引き下げによって、大企業の短期プライムレートは四・五%と一年もの定期預金利子の五・二五%を下回り、長期プライムレートも三カ月おくれて〇・三%下がり七・六%となるなど、その受ける利益はまことに巨大なものがあります。日銀当局によりますと、ことしに入ってからの三回にわたる貸出金利の引き下げにより、資本金一千万円以上の企業十七万社の受ける利益は年間二兆円、銀行預金利子の低下によってこうむる損失は八千億円、差し引き一兆二千億円の利益となるというのであります。一方、これと並行して行われました一連の預貯金利子引き下げや金銭信託の配当率の引き下げなどによって一般国民の受ける損失は年間一兆五千億円近いと言われているのであります。そうといたしますと、このような低金利政策は、一般国民の所得を減らして、その分だけ企業の所得をふやすことを目的とした一種残酷なる所得配分政策であると申しましても過言でないように思うのでありますが、総理はどのように考えられますか、御意見を承りたいのであります。  そのようなマクロの見地を離れてみましても、私たちは、かなりの国民からこの預貯金利子の低下について強い不満の声を聞くのであります。これら国民の損失を補てんし、その不満を取り除く道は、消費者物価の上昇率をせめて預貯金の一年もの定期の利子に同じ五%台に抑えることと、貸出金利の低下によって大企業や好況業種の受ける利益を雇用の増大と労働者の賃上げなど福祉に振り向けること以外にはないと考えるものでありますが、総理にこれを実現させる自信や決意がおありかどうかを承りたいのであります。  なお、このような貸出金利の低下の効果があまねく一般の企業に及んでいるかといいますと、多分に疑問なのであります。と申しますのは、利ざやの縮小によって経営が窮屈になりました銀行は、従来より一層企業の選別を厳しくし出し、いわゆる選別融資の強化によって、最も金利低下の恩恵を受ける必要のある不況産業や中小企業ほどかえってそれを受けていない現実があるのであります。ことに、過去の債務については、金利の低下はこういう企業には実際には適用されておりません。総理並びに大蔵大臣は、こういう厳しい現実を把握して適切な手を打つべきであると考えますが、いかがでしょうか。  それから、政府系金融機関、とりわけ中小企業を対象とするものは、過去の貸し出しに対しても利率を下げ、かつ、経営の苦しい企業に対しては期限の猶予を与うべきであります。大蔵当局の従来からの説明によりますと、既往の貸し付けに対しても、まあ今回の場合は特に十一月から一年間は〇・一考金利を下げます、期限の猶予についても弾力的に対処いたしますというのでありますが、実際にはそうしたことにさまざまな条件がつけられ、円滑に行われ得ないことが過去の実例に徴して明らかであると考えるのであります。それに、右の措置現実に行われるといたしましても、利下げ幅が、大企業の長短プライムレートのそれに比べますと、余りにも少な過ぎるのではないか。これは所管大臣の誠意ある御答弁を伺いたいのであります。  最後に、総理や大蔵大臣は、経営が窮屈になった市中銀行が各地で地銀や相銀の領域を侵略し、その優良なる得意先を奪わんとして、地銀や相銀も勢い貸出金利を引き下げて防戦せざるを得ない状態であります。弱小相銀などは、このため経営がすこぶる苦しくなりまして、わが国では、スモール・イズ・ビューティフルではなくして、スモール・イズ・ミゼラブルであると嘆いていることを御存じでしょうか。  さきに第八十国会中小企業分野確保法の成立を見たのでありますが、大企業中小企業分野を脅かす現実は、銀行間、金融機関の分野にもあるのでありまして、これについては大蔵大臣はどのように対処するおつもりか、放任すれば可とするのか、その点のお考えをお聞かせ願いたいのであります。  第四は、国民の税負担の問題でございます。  まず、私は、今回税制調査会が総理に答申をいたしました一般消費税の導入には基本的に反対であることを明確にいたしておきたいと存じます。その理由は、税制改正の出発点は何よりもまず不公平税制是正でなければならないのに、政府にはそれを断行する姿勢が見受けられないこと、他に、租税特別措置の整理や法人税の累進化などにより大企業中心とする法人関係税の増徴の余地があるのに、それをなさずして一般国民負担を転嫁ぜんとするものであって、税の所得再配分機能に背くこと、負担の逆進性を増すものであること、物価騰貴の引き金になること、中小企業に新たな納税上の事務的負担をかぶせることなどによるものであります。  これに関連して、私は、まず、総理が税調の提案の一つでもある不公平税制是正を断行する決意がおありかどうかをお伺いしたいと思います。と申しますのは、例によって例のごとく、日本医師会の武見太郎会長が「日医ニュース」においてこの問題を取り上げ、総理の態度を論難して、ちゃらんぽらんの態度であるとし、福田自民党体制と一戦を交える態勢を固めなければならないと政府を牽制しているからであります。総理は、この難問を控えて、小倉と手を結ぶか、それとも武見の軍門に下るかの岐路に立っておられると言わなければなりません。いずれにせよ、この問題を避けて税制改革を行うことはできませんが、総理に、よく党内をまとめてこの難問を解決する自信がおありかどうかを伺いたいのであります。  税制の不公正の第二は、法人税に関するものであります。  普通、法人税に関する不公正は、法人の受取配当の益金不算入、引当金、準備金、特別償却、交際費などに関する諸制度がその対象となっておるのでありますが、税制調査会答申は、ストレートに、わが国法人税の実効税率が諸外国に比してやや低く、法人税に若干の負担増を求める余地があるといたしております。これにつきましては、総理はどのようにお考えになるのか。従来、大蔵省当局者は、大臣以下一貫してこれを否定し続けておられたのであります。また、財界の反対も当然予想をせられるところでありますので、特に総理にお伺いをいたす次第でございます。  また、私どもは従来、法人課税に累進税率を適用すべきであると主張してまいりました。これに対し税調は、今回、このような制度は主要諸外国にも例がなく、かつ本来それは個人に適用せらるべきものであるとして、これに反対の答申をいたしておるのであります。しかし、法人もいまや社会的実体を備えた一個の人格として、個人とは別の社会的機能を果たしているのでありまして、法人をもって、社会的実体を備えない株主の集合体にすぎず、その人格は法的擬制にすぎないとする法人擬制説は、もはや今日の社会の実情に適合するものではありません。また、税調のごとく、諸外国に例がないとする論理をとるならば、利子・配当の分離課税のごときは、わずかにイタリア一国に例を見るのみで、その他いずれの先進諸国にもその例がございません。むしろ、わが国特有の制度であると申しても過言ではありません。  ことに、今日のごとき大方の企業が減益や赤字を余儀なくせられておる不況下においては、国民ひとしく乏しきを分かち合うことが要請せられるのでありますから、自動車産業のごとく一千億円を超える税引き後の大利益を上げている大企業の法人税率が、その何百分の一、何十分の一の利益しか上げていない企業の法人税率と同一でなければならない道理はなく、これを同一に扱わんとすることこそ、かえって公平の原則に反するものと信じますが、それでも総理は、なおかつその不公平に目をつぶられる御所存であるかどうか、承りたいのであります。  次は、対外援助の問題についてお尋ねをいたします。  総理は、さきにASEANの会議に招請せられ、次いでASEAN諸国を訪問して、その経済社会開発に対する援助を約せられました。私は、アジアにおける最大の経済大国たる日本開発途上国であるこれらASEAN諸国を援助することには全幅の賛意を表するものでありますが、その伝えられる援助の内容は必ずしも明らかではございません。私は、この際、総理がこれら諸国のいかなる部門の経済開発を援助ぜんとするおつもりなのか、また、いかなる種類の社会開発を目指して援助ぜんとしておられるのか、お伺いをいたしたいのであります。  と申しますのは、近い将来わが国と競争関係に立つことが予想せられるような工業プロジェクト、すなわちブーメラン的効果を持つ援助は必ずしもわが国の国益に沿わないと考えるからであります。これに反して、農業に対する援助は、これらの諸国の国民の大部分が農民であることから、直ちにその国民福祉の向上に役立つと考えるからでもあります。また、灌漑、水力発電所、鉄道、通信施設、道路、港湾の諸工事のごとき経済開発、また、学校、病院、都市計画のごとき社会開発に対する援助こそ最も彼我の利益に合致する望ましい援助と考えるのであります。  次に、総理は、わが国の対外援助、その中核となる政府開発援助が貧弱である点を反省し、ロンドン会議の際、これを五年間に倍増することを言明せられ、鳩山外務大臣もまた、今回の外交演説でこの点の決意を明確にしておられます。問題は、この五年間で倍増というものが、名目で言っておられるのか、実質で言っておられるのか、その点が不明確な点であります。この際、総理並びに外務大臣は、そのいわゆる五年間で倍増なるものが名目価格によるものか、それとも実質か、五年後のGNP比率をどのように考えておられるのか、必ず国際水準にまで高めるという決意であるのか——これらの点は、われわれだけではございません。関係諸国の為政者もまた注目するところと存じますので、この際、明確にお答えを願いたいのであります。  さらに、総理は、さき所信表明において、東南アジア諸国との関係を強化するには心と心の触れ合う真の友人としての関係を築くことが大切であると言われました。ところが、今年春に起きた国際学友会の寮の取り壊しと留学生の強制立ち退きに関するトラブルなどを総理は御存じでしょうか。今日、東南アジアからわが国に来ておる留学生の大半は反日的になって帰っていくと言われております。それは政府の国際学友会に対する指導と援助の不十分さに見られるような留学生政策の貧困によるものでありますが、このような状態で果たしてASEAN諸国民との心と心の交流が実現ぜられ得るとお考えでありましょうか。総理のこの点に関するお考えを承りたいのであります。  第六は、鳩山外相が先般外交演説において触れられました明年五月に予定せられる国連軍縮特別総会の問題であります。  この総会に、外相は、包括的核実験禁止を初めとする核軍縮問題通常兵器の国際移転問題等についてわが国の立場を強く主張する旨を述べられました。国も外交も、人類的な理想を持つべきであります。したがって、わが国の外交が世界平和という人類共通の願いについて誠実に検討を遂げ、積極的に発言することが望ましいことは申すまでもありません。ことに、わが国世界に例のない平和憲法を有し、世界最初の被爆国として、曲がりなりにも非核三原則を国是とし、兵器の国際移転にも消極的な態度をとっている以上、対外経済協力の問題点などとは違って、この軍縮総会には相当の発言権を持ち得るはずであります。ただ、核兵器の問題では、アメリカのカーター大統領がすでに、すべての実験停止を呼びかけ、進んで核兵器の部分的廃棄や先制攻撃的使用の否定などにも論及している現在、わが国の核軍縮の主張はやや色あせた感じがしないでもありません。  私は、わが国が、核兵器のみならず、それといささかも劣ることのない残虐な大量殺傷兵器であり、小さな水爆と呼ばれる中性子爆弾についても、その製造中止を呼びかけるべきではないかと思うのであります。それでございませんと、わが国の核兵器禁止についての主張は、アメリカに気がねをした、形ばかりのものという印象を世界に与えかねないと思うのであります。この点について政府の御所見を伺いたいと思います。  次に、カーター大統領は、去る十月四日の国連演説において、世界の軍事費が年間三千億ドルにも上り、一人の兵士の装備にかけた費用は、子供一人の教育費の六十倍にも上るという興味深い発言をいたしております。しかし、最近カーター大統領は、日本が防衛費をGNPの一%以内に抑えようとする政策をとっている点を批判したという報道がなされ、後にそれが日本の元首相の早合点に基づくものだとされたことがありました。
  33. 加瀬完

    ○副議長(加瀬完君) 寺田君、簡単に願います。
  34. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君(続) 私は、日本国民の税負担が他の先進諸国のそれよりもはるかに低いことの最大の理由は、わが国の防衛費が、他国の軍事費に比較した場合、そのGNPに占める割合が比較にならないくらい低率である点にあることを指摘したいと思います。そして、それが戦争放棄の憲法を有するわが国としては当然であること、各国もこれにならって軍事費をGNPの一%以内にとどめることが最もよく軍縮の理想を達成する近道であることを誇りをもって訴えるべきであると考えますが、これについて総理並びに外務大臣の御所見を伺いたいと思います。  最後に、地方自治の問題について(「時間時間」と呼ぶ者あり)総理は今回の所信表明において何事も触れられませんでした。しかし、実際には、国民生活と健康を守り、その教育と文化を高めていくための仕事は……
  35. 加瀬完

    ○副議長(加瀬完君) 簡単に願います。
  36. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君(続) 国に劣らぬくらい多く地方自治体にゆだねられておりますし、住民の地方自治体に対するそうした要求もまた無限と言ってもよいくらいであります。しかし、御承知のように、地方自治体の自主的な課税権には法律上の制約がありますし、今日のごとき不況下には財政収入が激減いたしておりますので、自治体がその任務を果たし……
  37. 加瀬完

    ○副議長(加瀬完君) 寺田君、簡単に願います。
  38. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君(続) 住民の正当な要求を——簡単にやります。満たしていくためには、どうしても起債に頼らざるを得ません。ところが、起債については地方自治法第二百五十条により「当分の間」ということで自治大臣または府県知事の許可制がとられております。この起債の許可制度が「当分の間」とせられたのは、憲法第九十二条の規定にも示されるように、地方自治の本旨からすれば、国のこのような介入は過剰なものと言うべく、とうてい合理的なものとは考えられないからであります。この法文が生まれてから三十年、地方自治もようやくわが国の土壌に根づき、住民の地方自治に対する理解や関心もかなり高いものがありますので、もうこの許可制度は廃止すべき時期に来ていると思います。  ところが、自治省当局は、主に次の二つの理由から起債自由化に反対しております。  その第一は、地方債発行を自由化すれば、財政的に信用度の高い自治体は(「時間」と呼ぶ者あり)……
  39. 加瀬完

    ○副議長(加瀬完君) 寺田君、簡単に願います。
  40. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君(続) 資金の調達が可能であっても、財政力に恵まれない自治体が資金調達ができなくなるという不都合を生ずるという弱小団体擁護論であります。第二は、地方自治体が財政力の限度を超えた起債によって財政の健全性を損なうおそれが十分考えられるので、国の補完的チェック機能が必要であるというものであります。  しかし、右の……
  41. 加瀬完

    ○副議長(加瀬完君) 寺田君、簡単に願います。
  42. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君(続) 第一の理由について申しますと、財政力の弱い自治体に対してこそ、財政融資資金の活用や政府保証の付与などによって、国が起債を可能とするようなめんどうを見ればよいのでありまして、そうでない自治体に対しても一々チェックして、事実上その自治機能を台なしにするような介入が正当であることの理由となるものではありません。また、第二の理由について申しますと、現在の許可制度は、とうてい補完的なチェック機能というべきものではなく、地方自治体の行政に対する全面的な……
  43. 加瀬完

    ○副議長(加瀬完君) 寺田君、簡単に願います。
  44. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君(続) 支配介入と目せられるべきものであります。
  45. 加瀬完

    ○副議長(加瀬完君) 寺田君、簡単に願います。
  46. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君(続) はい。もうすぐ、簡単に済みます。(発言する者多し)  自治省の言うような自治体の公債償還能力を示す地方税や交付税等の一般財源に対する公債償還費や赤字額の割合指標など起債の適否を判断する客観的な基準は、法律や条例で十分規定し得るものでありますし、現実になされる起債がこの基準を超える場合のチェック機能は、議会や住民の手にゆだねてしかるべきものであります。それこそが地方自治の発展に役立つ道であると信じます。  また、地方自治体が、首長の……(発言する者多し)
  47. 加瀬完

    ○副議長(加瀬完君) 寺田君、簡単に願います。
  48. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君(続) はい、もうあと三十秒で終わります。  いずれにせよ、東京都のような大自治体の行財政に対し自治省の官僚が一々チェックして、事実上自治の権限を奪うような現実は改めらるべきであります。美濃部知事が訴訟を提起して、この不合理な……
  49. 加瀬完

    ○副議長(加瀬完君) やめてください。
  50. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君(続) 制度と対決する決意を固めたのは至極当然であると考えるのでありますが、これに対する総理並びに自治大臣のお考えはどんなものかお伺いをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  51. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お答えをいたします。  まず、企業献金を廃止すべしと、こういう御意見でありまするが、企業も人と並んで、その人格を認められておる存在でございます。さようなことで、企業が献金をする、寄付をする、さようなことは法理的にもまた法的にも認められておるところでありまして、このことはもう十分御承知のところでございましょうが、ただ、私は、法理的に、また法的には認められておるといたしましても、それにはおのずから限度がある、節度を守らなきゃならぬと、そこが問題だろうと思います。その節度をいかに、どの辺にとるかということにつきましては、これは昨年一月一日から施行されておる新法において規定しておるんだと、こういうふうに私は考えておるところでございます。  次に、政治資金の問題に関連をいたしまして、私の後援団体がまだ存在をいたしておるじゃないか、これを廃止したらどうかというような御所見でありましたが、私も政治家です。福田赳夫を育てよう育てようという人が全国に、もうそれは数え切れないくらいおるわけであります。その人がとにかく寄り合って一つの団体をつくって、そうして、まあ非常にきれいな気持ちで、そして私の政治活動を助けたい——ことに、私もいろんな調査とか、そういうものをしなければなりません。私も私としての世界的視野に立っての見識を養わなければならぬ、そういうようなことで金が要るんですよ、これは。そういうことを本当に純真な気持ちで助けたいという気持ちの、そのまあ後援会的な存在、これはあってもいいんじゃないかと思うのです。ただ、そういう団体が不当な金を集めたり、不正な金を集めたり、また、それが不当な、また不正な金の使い方をしてはならぬと、こういうところが大事なところでありますが、私の支援団体につきましては、本当に私は公明正大にその経理を扱っておると、かように確信して疑いません。  次に、最高裁判事の任命についてのお話でございますが、これは、御説のとおり、もうわが国司法権の最高の立場でございまするから、この最高裁判所の判事の任命につきましては慎重にしなければならぬ、これはもちろんでありますが、政府におきましても真剣にこの人事につきましては考えておるわけであります。円満な常識、高い識見、それから法律の素養、しかも国民の納得いく人物というようなことで、これはもう本当に慎重に考慮いたしまして任命をいたしておる次第でございます。その方式を変えろというようなお話でありますが、私は、ただいまこれを変えるという考え方は持っておりません。  また、国民審査の方式につきましても、これを改めたらどうだというようなお話がありますが、これはまあ、この審査が形骸化したというような議論もあるところでありますが、これは憲法にも連なる大きな問題でありますので、なお今後とも慎重に考えてみたいと、かように考えております。  それから、石油危機以後の経済政策について反省を求めると、こういうようなお話でございますが、それはもう、反省せいと言われぬでも、私もいろいろ反省しております。おりますが、しかし、いいところも私は大いに着目してもらいたいと思うのです。とにかく石油ショック、いまあれで世界のほとんどの国が立ち上がりができないというような状態です。しかし、その中で、わが日本はとにかくあの狂乱物価解決はできた。また国際収支、あの大赤字を逆転して、いま大黒字というので責め立てられるような状態だと。また経済成長は、昨年第三年目です、これは。とにかく五・八%、先進諸国最高の水準を示したんです。大枠においての立ち上がりにおきましては、わが日本世界の中で際立った実績を示したわけでありまして、そのくらいのことはひとつお認めくださる雅量を持っていただきたい、このように存ずる次第でございますが、しかし、問題はあるんです。あるのは、もうしばしば指摘しておりまするように、あの石油ショック影響からいわゆる不況業種というものが出てまいりまして、この処置、これが非常にむずかしい段階に来ておる。また、とにかくこの三年半を超えるところの低成長でありまするから、高度成長になれたわが国企業とすると、かなりくたびれてきておる。大企業もそうでありまするけれども、特に中小企業なんかは深刻な状態だと。そういうような状態ですから、雇用問題がまたむずかしい問題になってきておる。そういうとらえ方をし、それらの問題に対しまして一つ一つ手を打っていこうとしておるその立場も十分御理解を願いたい、かように考える次第でございます。  さらに、金利利下げ、預貯金金利の利下げの問題に触れられましたが、これはもう、るる私はこの席から申し上げたので、くどくは申し上げませんけれども、これをやりませんと、これは本当に日本の今日のこの経済社会、この危局の打開ができないんです。私は、物価がこのような状態の中で預貯金の利下げをするというようなことにつきましては、本当にこれこそまた断腸の思いでございます。思いますが、しかし、これは苦しいときにはみんなして犠牲を分担しよう、そうしてその中で光を発見しよう、こういうような立場から、これはもう緊急な非常な措置であるというような考え方も持っておるわけであります。そういうような意味合いにおいてひとつ御理解を願いたい、かように考える次第でございます。  さらに、税制の問題に触れられまして、不公正税制を整理せいと、これはもちろんそのようにいま考えております。具体的に医師税制の問題、これは、率直に申し上げまして非常に困難な諸問題をはらんでおる問題であります。これはもう皆さんが一番よく承知していると思うのです。あれだけ大問題になっておりながら今日なお結論が得られなかった問題ですから。これは、ここで一刀両断解決すると、こういうふうには申し上げかねます。かねますが、鋭意この問題の処置には取り組んでみたいと、かように考えております。  また、一般消費税反対だと、こういうお話でありますが、これはもう、るる申し上げておりまするとおり、この一般消費税というものを、これはメリットもあるんですから、このメリットを認めてもらいたいんです。しかし、いまこれを直ちに実行するとか、そういうようなことを言っておるわけじゃございません。慎重に経済の情勢、また財政の情勢、そういうことを検討した上、その内容につきましても細かい配慮を使いながら決めていかなきゃならぬ問題であるというふうに考えておる次第でございます。  それから、法人税につきまして若干のまだ負担増加の余地があると税制調査会は言っておると、確かにそういうふうに税制調査会は言っております。おりまするから、そのことは十分私も心得ておきたいと思いまするけれども、何せいま、法人、つまり企業、これが非常に困窮した状態だ、いまこれをすぐやれと言っても、これはみずからを傷つけるような、そういうような結果になるのじゃないか。これも頭に置きまするけれども、これが具体的適用につきましては、時期、タイミング、それにつきまして十分配慮した上、そうしたいと思います。  また、法人に対し累進税率を適用すべしという話でありますが、累進税率論というのはあります。ありまするけれども、理論としてはあるんだけれども、これは国際的にそういうことをやっている国は実はないんです。それほどまた難点もある制度でございまして、ただいまのところ、これを採用しようという考えは持っておりません。  それから、ASEAN諸国に対するところの経済協力、これはASEAN諸国の社会開発に対して行うべしという考えを述べられましたが、私もそのとおりに考えておるのでありまして、いまASEAN諸国はその自主自立のために非常に努力をしておる、そのために日本協力が欲しい、そのASEAN諸国のイニシアを私はどこまでも尊重するという考え方でこの問題を処理していきたい、かように考えております。  また、対外経済の援助、これにつきまして、特にその中の政府開発援助につきまして、五年間にその額を倍増するという国際公約をわが国はしておるんです。これは実質倍なのか、あるいは名目の倍なのかというお話でございますが、そういう約束をしておりますのは名目の倍である、こういうふうに御理解を願います。しかしながら、そうは申しましても、わが国といたしましては、いわゆる政府開発援助、ODA、これのGNPに対する比率、これはいかにも今日低いんですがね。この今日低い水準というものをできるだけ早く国際水準まで持っていきたいということを心がけていきたいと思います。  それから、海外からの留学生対策を配慮すべしという御所見でございますが、これはもう当然のことだと、そういうふうに思います。私もずいぶん留学生対策には気を使っておるんです。いま東南アジアの国々で、もと日本に留学した人が反日になっておるというような話もある。そういうことを聞きまして、この数年間、留学生の中から、まあ少のうございますが、百人ぐらいずつ日本に招待いたしまして、そして日本との間の旧交を温めていただくというようなことまでずっとやっておるんです。私は心と心との触れ合いというふうに申しますが、これは指導者間だけの触れ合いではだめなんです。やっぱりこれは国民次元の心と心の触れ合いにならなければならぬ。そういう中におきまして、留学生というものは非常に貴重な役割りを演ずるだろうと思う。そういう意味において、御説には全く賛成であります。  なお、地方自治体の起債は自由であるべきであるというような御所見でございますが、これは、地方起債を自由にしておきますと、公的資金との間の調整問題、これができなくなるわけです。それから地方公共団体相互間でも調整ができなくなると、こういう問題もあるわけであります。そういうことを考えますと、この起債ということを自由にしておきますと、これは相当大きな国家社会に混乱を来すということになるだろうと思うのであります。せっかくの御提案でありまするけれども、この地方自治体の起債は自由であってはならないと。これは、まあ、そういうような考え方をとりましても、決してこれが地方自治の本旨に反するものではない、かように考えます。  なお、最後になりましたが、どうも、日本の防衛費が一%以内ということになっておりますが、防衛費が日本の国の社会を非常に圧迫するんじゃないかというようなことを強調されましたが、とにかく、わが国はこれだけの経済力を持っておって、防衛費というものが、ことしの予算で言いますが、〇・九%ぐらいでしょう、GNP対比で。その程度のものであります。普通の先進諸国は、三%とか四%とか、そういうような巨大な軍備を、国力に比べると巨大な軍備を使っておる。戦前におけるわが国なんかは六%も七%も使っておったんです。そういうような状態のものが、今日、とにかく〇・九、一%以内でやっておるということを非難されるというのは、これは私はいわれのないことであると、こういうふうに思うわけであります。(拍手)わが日本も、皆さん、これはわが日本政府国民の安全を守り抜かなけりゃならぬ責任を持っておるわけであります。その責任のある政府が、ささいといえども自衛のための軍備だけは持たなきゃならぬということは、これはもう大方の国民がそう考えておるところじゃあるまいかと、こういうふうに思うわけでありまして、まあ、とにかく国の守りだけはみずからの力でしなければならない。他を侵しては相なりません。しかしながら、みずからの国はみずからで守る、この姿勢だけは堅持してまいりたい、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣坊秀男君登壇拍手
  52. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) お答えいたします。  この公定歩合引き下げから金利を下げるということにつきまして御質問がございましたけれども、申すまでもなく、この貸出金利を下げるということは、これはいまの経済沈滞の折から、どうしたって、生産に従事しており、また公益に従事しておる企業に対しまして、企業の金利負担引き下げていくということで、企業に対しまして活力をつけていくと、こういうようなことでございまして、一連の着実なる景気回復についての財政政策と、まあまあ車の両輪ということで、この政策をとったわけなんです。ところが、この低金利政策をとったその裏づけといたしましては、どうしてもやっぱり資金のコストというものを下げていかなきゃならないということで預貯金の金利をこれは下げたということで、そういうことを二つにらみ合わせて考えてみますと、企業については金利負担引き下げたということで大変な利益をもたらし、それからまた、その預貯金の金利を下げたということによって一般の預金者に対して損害を与えた、こういうことになりまして、福田総理も大変断腸の思いをしながらこの政策をとったということでございますけれども、私は、いまの日本経済情勢の中におきましては、どうしてもこの政策をとらなければならない、それによりまして、企業がだんだんとその力が出てきて、そうして経理が楽になってくるということによりまして、これは雇用の問題にも大変大きなプラスの影響をしてくる。もしそれがなかったならば、これは大変な、雇用だ失業だというような問題に大きな波及をしてくるというようなことから考えてみまして、ぜひこれをやっていかなければならないということで、この点はひとつ、一方の犠牲において他方をよくするというような考えは毛頭ございませんし、そういったような方向に私は日本経済を進めていきたい、こういうことでございまするから、ぜひそれはひとつ御理解のほどを願いたいと思います。  それから、一般消費税につきましては、これはやるべきではないと、こういうお話で、私どもも、いま一般消費税というものを、先ほどからも申し上げておりますとおり、これは五十三年度からぜひともやるんだということは申し上げておりません。しかしながら、とれにつきましては、日本の現在の財政の健全化を図っていくためには、何か税負担というものをふやしていかなければならぬ。ところが、それについては、所得税をふやしていくということには限界がある。そこで、どこかからこの負担をふやさなければならぬということになりますと、一般消費税というようなことに税制調査会がここの選択をひとつしてもらいたいというような意味においてこの答申が出たわけなんですが、私どもはいま慎重に、皆さんの御審議と御協力を得ましてこれの選択をやっていかなければならないということになっておるのでございますが、しかし、この五十三年度におきましてこれを実行しようと、実行しないとすると、こういうようなことについては目下鋭意検討中でございます。  それから、法人につきましていろいろ御議論がございました。法人については、支払い配当の軽課、受け取り配当の益金不算入といったようなものがあるが、そういったようなことについての御意見もありましたが、これは、今日の税制のたてまえにおきましては、何とかして二重課税というものを避けていこうという考えでこういう制度がとられておることでございまして、この制度にもいろいろと意見がございますけれども、これはやはり抜本的に考えていかなければならない問題であろうと思います。  なお、その法人税に何とかして累進率を取り入れたらどうか、こういうお話でございますが、累進率というものは、やはりこれは所得税という、自然人、その自然人の所得について所得再配分というような見地から累進率をとっておりますが、法人というものは、これはまあ、    〔副議長退席、議長着席〕 できたら——ぼくは学者じゃございませんから、私の意見にすぎませんけれども、これはやっぱり営利を目的として、営利を遂行していくという機関でございまして、もっぱら営利のために人間の知識が、知恵が法人形式というものを生んだのだろうと私は思います。それから考えますと、自然人における所得再配分とかいう、それは大変必要なことだと思いますけれども、私は、法人体系につきましては、それほどの必要というよりも、これはやっぱり累進税というものは、これは自然人の所得に対して言われるものであろうと思います。しかし、そういったような点につきましても、今後の抜本的な税制についての検討ということが私は必要であろうと思います。  大体、その他のことにつきましては総理大臣からお答えがございましたので、私はこの程度でもって終わります。(拍手)    〔国務大臣田中龍夫君登壇拍手
  53. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) 御質問がございました中小企業をめぐります四囲の状況はまことに厳しいものがございますので、政府系の三金融機関、すなわち商工中金、それから中小企業金融公庫、国民金融公庫と、この既往の貸し出しにつきましての金利並びに条件の緩和、返済猶予というような弾力的な措置をとることといたしました。これは、信用保険法の第二条四項三号で不況業種に指定いたしました中小企業のその金利の軽減幅を、約定金利につきましては十一月一日から八・七%以上のものを八・六%まで引き下げる、なおまた、商工中金につきましては、右に準じまして金利の軽減幅は最高〇・九に引き下げる、以上でございます。つまり、中小企業金融に対しましては、既往の貸し出しにつきましても条件緩和なり引き下げをいたしました。  それから、先ほど和田さんにお答えをいたしましたこの保険公庫に対しましての百億の出資ということは、今回の予算の中に御審議をいただくことに決まっておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。(拍手)    〔国務大臣鳩山威一郎君登壇拍手
  54. 鳩山威一郎

    国務大臣(鳩山威一郎君) 軍縮総会につきましてお話がございました。来年の五月の二十三日から六月の二十八日まで軍縮総会が開かれる、これは国連始まって以来初めてのことでありまして、わが国といたしまして、これに大いに期待をいたしておるわけでございます。いままですでに準備委員会が三回持たれておりまして、わが国はその副議長国として参加をいたしております。この主要なわが国の問題意識といたしまして、もちろん、核軍縮が何よりも第一の問題である。そのほかに、通常兵器におきましても、武器輸出の問題、これが二番目に大きな問題であり、また、現に各国の軍事費が非常に大きいではないかという問題、これがふえつつあるという問題があって、この軍事費の削減の問題と、大きく言えばこの三つが問題であろう。そして、その過程が中性子爆弾の点に触れられましたが、わが国といたしましては、従来から、いかなる国でありましょうとも、核爆発実験、これには、地下であろうと地上であろうと、これはあらゆる包括的な禁止をすべきであると、こう主張しております。しかし、現実において、中性子爆弾におきましてはどのような実験が行われたか、まだ私どもは知る由がないのでありますが、いずれにいたしましても、この中性子爆弾というものにつきまして私どもまだ正確なる情報は得ておりませんが、しかし、これが防御的な兵器であるのか攻撃的な兵器であるのか、核兵器の中に入るのか入らないのか、これらにつきましてやはり今後検討を続けていきたいと思っております。  また、軍事費の問題は、わが国がGNP一%であるというのは、これはもう世界に比べまして大変低い比率でありまして、主要四十五カ国のうち、GNP比では四十三番目という低さであります。これをもって各国にこれを強いるわけにはいかないと思いますけれども、こういった、わが国が軍事費負担を非常に少なくしておるということにつきまして、そういう立場でもって軍事費の増大に対してわが国としては主張をしてまいりたい。大変これはばらついておりまして、GNPの比率におきまして、アメリカは六%程度と思いますが、ソ連が恐らくその倍近い比率になるんではないか。国によりますと、二割あるいは三割を軍事費に使っているという国があるわけであります。これらの点につきまして、わが国といたしましては、軍事費の増大に対してこれを抑制する側に立って努力をいたしたいと思っております。(拍手)    〔国務大臣小川平二君登壇拍手
  55. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) お答えいたします。  東京都知事が地方債の許可制度は憲法の保障しておりまする地方自治の本旨に反するという主張をなさっておいででございますが、そのような御主張の根底には、地方公共団体というものは、本来国から全く独立をして、国と対等の行財政の権能を持っておるんだという考え方があろうかと思うのでございます。しかし、憲法はもちろん国と全く離れて地方自治というものを認めておるわけじゃございませんから、地方自治を取り巻く環境のいかんによりましては、地方公共団体の活動に何らかの調整を加えるということが直ちに憲法の保障いたしまする地方自治の本旨に違反するものでないことは申すまでもございません。現行の財政金融制度のもとにおいて、地方債の問題は調整を加えらるるべき一つの問題として考えられておるわけでございます。  起債ということは、将来の交付税あるいは税収、こういう一般財源を先取りすることでありまするから、申すまでもなく、きわめて慎重でなければならない。個々の地方公共団体にとってはもとよりでございまするが、地方財政計画全体といたしましても、一つの適正な限度を維持することが必要でございます。地方債を許可にかからしめることによりまして、地方債を国全体としての適正な枠の範囲におさめるための調整を行っているのでございます。許可いたしました地方債については、将来の公債費は全額地方財政計画に掲上いたしまして、地方交付税制度等の仕組みを通じて財源を保証いたしております。でありますからこそ、金融機関が安んじて地方公共団体、弱小な公共団体にも融資をしておるのでございまして、許可制度というものが起債に対する一つの保証的な機能を果たしておるのであります。地方債は公共部門の資金調達の問題でありまするが、これを撤廃いたしました場合には、民間の資金調達を阻害するという事態も起こってまいりましょう。あるいはまた、力の強い団体は別でございまするが、信用力の乏しい団体の資金調達がはなはだ困難に陥るという事態も十分想像されるのであります。さような場合に、政府資金の重点配分をすれば足るではないかという御論旨であったかと拝聴いたしますが、今日、弱小団体の資金需要をことごとく充足し得るほど政府資金は潤沢ではございません。かようなわけで、地方債の許可制度というものは今後も維持していくべきものだと信じております。  「当分の間」ということについて御質疑がございましたが、地方債の許可制度を規定しておりまする地方自治法の二百五十条は、昭和三十八年に改正をされております。その時点で国会の審議を経ておるわけでございますが、いずれにいたしましても、「当分の間」という用語は、不確定の期限を意味しておるのであって、時間的に短くなくてはならないという意味にあらざることは、他の法令の用語例からきわめて明らかであると考えております。(拍手
  56. 安井謙

    ○議長(安井謙君) これにて質疑は終了いたしました。      —————・—————
  57. 安井謙

    ○議長(安井謙君) この際、国立国会図書館の館長の任命に関する件についてお諮りいたします。  国立国会図書館の館長に岸田實君を両議院の議長において任命いたしたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 安井謙

    ○議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。  よって、国立国会図書館の館長に岸田實君を任命することは承認されました。  本日は、これにて散会いたします。    午後三時五分散会