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1977-11-01 第82回国会 参議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月一日(火曜日)    午前十時十分開会     —————————————    委員異動  十月二十八日     辞任         補欠選任      宮之原貞光君     吉田 正雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鈴木 省吾君     理 事                 青井 政美君                 初村滝一郎君                 山内 一郎君                 川村 清一君                 相沢 武彦君     委 員                 北  修二君                久次米健太郎君                 小林 国司君                 坂元 親男君                 田代由紀男君                 田原 武雄君                 野呂田芳成君                 降矢 敬雄君                 坂倉 藤吾君                 丸谷 金保君                 村沢  牧君                 吉田 正雄君                 原田  立君                 藤原 房雄君                 河田 賢治君                 下田 京子君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        農 林 大 臣  鈴木 善幸君    政府委員        水産庁長官    岡安  誠君        海上保安庁次長  向井  清君    事務局側        常任委員会専門        員        竹中  譲君    説明員        外務大臣官房外        務参事官     井口 武夫君        大蔵省国際金融        局企画課長    橋本 貞夫君        中小企業庁計画        部金融課長    松尾 成美君        海上保安庁警備        救難監      山本 了三君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○漁業水域に関する暫定措置法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十八日、宮之原貞光君が委員を辞任され、その補欠として吉田正雄君が選任されました。     —————————————
  3. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 漁業水域に関する暫定措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は前回聴取しておりますので、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 川村清一

    川村清一君 法案の性質上、質問は事務的なお尋ねが多いと思いますので、ひとつ政府委員の方から主にお答えをいただきたいと思います。特に大臣からお答えをいただきたいときには私がお願いしますので、そのときに御答弁をいただきたいと思います。  この間「漁業水域に関する暫定措置法の一部を改正する法律案参考資料」というものを農林省からいただいておりますので、この参考資料に基づいて若干お尋ねいたしたいと存じます。  まず、この資料の二ページに「一九七七年のソ連水域における我が国に対する漁船割当隻数」というこういう資料がございますが、その中で「母船割当隻数二」となっておりますが、この二隻の母船について御説明をまずいただきたいと思います。
  5. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 資料の二ページに、わが国ソ連水域において操業いたします漁船割り当て総数六千二百五十五とございますが、そのうち母船の二は、北洋イバラ関係操業を行います母船が二隻ということでございます。
  6. 川村清一

    川村清一君 北洋には間違いないですけれども、「母船二」というのはどういう漁業をやっておる母船なのか、それをお尋ねしたいと思います。
  7. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 北洋イバラガニ操業のための母船でございます。
  8. 川村清一

    川村清一君 これは会社はどこですか。
  9. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) これは、大洋、日水、極洋その他の大手の水産会社が共同をしてこの操業を行うわけでございます。
  10. 川村清一

    川村清一君 そうすると、日鮭連に所属する母船式サケマス漁業の方の母船、これは二百海里の中に入らないからないんですか。
  11. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) おっしゃるとおりでございまして、これはソ連の二百海里内におきます操業する漁船許可隻数でございますので、サケマス関係は今回は二百海里外のみで操業いたしますものですから、入っておらないのであります。
  12. 川村清一

    川村清一君 その次に、総計六千二百五十五隻とありますね、「協定四条に基づくイシコフ漁業大臣書簡による。」と。これが昭和五十二年七月八日付五二水海第三五八一号、水産庁長官通達によりますと、「協定発効から本年末までの漁獲割当量は、総枠で四五・五万トンであり、操業区域は、オホーツク北部千島東樺太等七つ水域に限定され、操業隻数は、六、三三五隻に制限されることとなった。」と、こうありますが、六千三百三十五隻ということになっておるはずなのが六千二百五十五となっておるのは、これはどういうわけですか。長官でなくてもいいんですよ、答弁するのは。
  13. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 六千二百五十五と申しますのは、ソ連の二百海里水域出漁いたします漁船実数でございます。ところが、いま六千三百という数字を申されましたけれども、これは協定四条に基づく書簡によりまして海域、それから漁獲割り当て、トン数、漁具、操業期間、それから船の隻数がございますが、船の隻数の中にはそれぞれ共通をいたしまして、たとえば一定の第一の海域オホーツク北部とほかの海域とで共通出漁ができるというものがございます。いわば累計が六千三百ということになるわけでございます。
  14. 川村清一

    川村清一君 そういう答弁ならちょっと私も疑義があるのですけれども、別段大きな問題でないですから、そんなその食らいついている必要もないわけでございますけれども、これは国会審議のために正式に農林省から出された資料でございまして、しかも、一番下の方に「協定四条に基づくイシコフ漁業大臣書簡による。」というふうに説明書きがついておって六千二百五十五隻、ところか今度は協定によって——そんなことに時間をとっておってもしょうがないのでございますけれども水産庁長官から五十二年七月八日に出された通達、表書きは「「北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における一九七七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定」の発効に伴うソ連邦二〇〇海里漁業水域内における操業について」というこういう表題のもとに、時間がないので大事なところだけ読んでいるわけですが、「協定発効から本年末までの漁獲割当量は、総枠で四五・五万トンであり、操業区域は、オホーツク北部千島東樺太等七つ水域に限定され、操業隻数は、六、三三五隻に制限されることとなった。」と、きちっとこう書いておって、そうして私どもに出された資料には六千二百五十五隻、この数の違いはどうだとお尋ねしたら、何かちょっと私もわからないような答弁なんですが、ここは大した問題ではないですけれども、これは国際間の協定によって決まったものが数字が違って、そして国会に出された資料と若干でも数字が違っておるということはやっぱり疑義があるので、どうしてこういう違いがあるのかということをお尋ねしているのですから、もっとわかるようにお答えいただきたい。
  15. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) どうも、この予算関係資料について注釈が不足していたために、御指摘の私ども通達数字が食い違ったことは申しわけなく思っておりますが、先ほど申し上げましたとおり、六千二百五十五隻というのは、ソ連の二百海里水域内に今年中に出漁いたしますわが国漁船実数で六千二百五十五と書いてあるわけでございまして、その船の中には一定海域である特定の魚をとることのほか、ほかの海域に行きまして別の魚をとるということも認められているわけでございます。いわば鑑札は一つでございますけれども海域ごと計算をいたしますと、二重計算になるかっこうになるわけでございます。それは、つまり実数じゃなくて延べということになるわけでございます。六千三百五十五の方はいわゆる延べというふうにお考えいただきまして、今回、七七年中にソ連海域出漁が認められる漁船実数は、六千二百五十五ということに御了解いただいたらいいのではないかというふうに思います。
  16. 川村清一

    川村清一君 そうしますと、さらにお尋ねしますが、大臣がよく裏作裏作とおっしゃっておる。よく私もわかっておるんですが、そうしますと、ソ連の二百海里の中に入って一つの船でもって二つ以上の許可を持っておるものは一体何隻ぐらいあるのか、そしてその魚種は、漁業種類は何か、それが出ないと、延べ数と実数とがやっぱり食い違いが照合されないわけですね。この点御説明いただきたい。
  17. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) いま裏作関係、六千二百五十五のうちどういうような裏作関係にあるか、その数字はどうかということでございますが、実はいま数字を持っておりませんので、直ちにその御説明をするわけにはまいりませんが、私が申し上げましたのは裏ということではないわけでございまして、たとえばある漁船——今回ソビエトの海域におきましてはオホーツク北部それから千島、それから北緯五十度以南の千島オホーツク海側、それから二丈岩、それから北緯五十四度から北緯五十六度まで、東経百四十七度から東経百五十三度までのオホーツク海、それから東樺太日本海というようにそれぞれ海域が分かれております。それぞれの海域につきましてそれぞれ魚種が決まり、それぞれの海域魚種ごと漁船の船が決まる。ところが、ある漁船がある海域のほかで同じ魚種をとるという場合には、そちらの海域のその同じ魚種の入漁の船の数にも加算が計上されております。それを全部合計いたしますと、同じ船が移動してとるという場合には、それぞれの海域漁船隻数が計上されておりますので、合計いたしますと延べ隻数になる。しかし、実際に出る船は、この海域からこういう海域へ移動するわけですから一隻ということになり、書簡によるという中にその違いが出てきたということでございます。  なお、裏作のことにつきましては、現在資料手元にございませんので……。
  18. 川村清一

    川村清一君 だから、私は長官でなくても、そのほか専門にやられておる政府職員に聞くことだと言っておるんで、余りこういうものにこだわってやるのもどうかと思うのですけれども、ちょっとやっぱり疑義が晴れないものですからね。  そうしますと、二百海里で魚をとっておる魚種というものは大体決まっておるわけですね。だから私は、裏作でやっておるということを言っておるんでないですよ。大臣がよく裏作裏作という言葉を使われるんで、それは、サケマスをやっておるのが今度はサンマをやるとかというのはこれは裏作ですよ。そのことを言っておるんでなくて、ソ連二百海里の中で一隻の船がいわゆる権利二つ持っておる、サケもとる、あるいはカニもとるとかいったように、一隻の船で権利二つ許可二つ与えておる、そういうのがなければこういうものが出てこないわけでしょう。実数とそれからあれとは出てこないわけですね。ですから、それはわからないことはないんですよ。あなたの方で一船に対して権利二つ以上与えておれば、それは重なってくるわけですから。そういうのがあるんですか。
  19. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) おっしゃるとおり、そのいわゆる裏ということに当たるかもしれませんけれどもイカサンマとか、イカカニとかいうような操業を行っている船があり得るわけでございますけれども、現在この中で何隻がそういう兼業といいますか、それを行っているかということにつきましては、申しわけございませんけれども、いまここに、手元資料がないので御勘弁願いたいということを申し上げたわけでございます。
  20. 川村清一

    川村清一君 まあ、いいでしょう。まだ、どうも長官も余り自信のないような答弁をしておりますから、これ以上は私はお尋ねしませんよ。  それでは、この資料の次のページ、三ページをちょっと見てください。この三ページは、海上保安庁資料による「ソ連漁船拿捕状況」なんですね。それで、いままでに日本の二百海里内においてソ連違反をした漁船が四隻拿捕されておるわけですわ。そして違反内容は「操業日誌の一部不記載」という、こういう説明がついております。そこで私のお聞きしたいことは、この四隻は、それぞれ保証書提出、そして担保金を納付して釈放されております。三隻は五十万円ずつ担保金を納付して釈放されておりますが、一隻は保証書だけで釈放されております。これはどういうわけですか。
  21. 向井清

    政府委員向井清君) お答え申し上げます。  これは洋上で検挙いたしました際、相手方に担保金の提供があれば釈放するという通告をいたしまして、その担保金がすぐ払えないような場合には、保証書をもってこれにかえるという暫定的な制度を実施しているわけでございまして、まず、その保証書というものがしかるべきところから届いてくるということで、その際に、いついつまでに担保金を払うという約束があるわけでございます。いまおっしゃいました四隻目の分につきましても、すでに担保金が支払われております。
  22. 川村清一

    川村清一君 全部支払われているんですか。それじゃ、こういう間違った資料を出してもらっちゃ困るね。
  23. 向井清

    政府委員向井清君) つい最近支払われましたので、これは作成の時点のずれがございますと思いますので、御了解願いたいと思います。
  24. 川村清一

    川村清一君 権威ある農林省から出された正式の資料ですから、まじめに見ているんですから、きちっと数字まで検討して見ているんですから、そういういいかげんな資料を出してもらっちゃ困りますので、今後御注意ください。
  25. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) これはいいかげんではございませんで、この資料の冒頭にもございますとおり、五十二年八月十六日から十月二十日までの、その結果といいますか、状態で資料を作成したものでございまして、いま海上保安庁の方からお話がございましたように、この資料を作成した後担保金提出があったわけでございます。それは十月三十一日に担保金提出があったということでございます。
  26. 川村清一

    川村清一君 この法案に直接関係のあるこれは内容でございますから特にお尋ねしているので、しからばこの納められた二百万の担保金というのは、現在どこに保管されているんですか。
  27. 向井清

    政府委員向井清君) ただいまのところ運輸大臣の口座、日銀に保管という形になっております。
  28. 川村清一

    川村清一君 そうしますと、この法案が成立するとそのお金は国庫に帰属すると、こういうことになるわけですか。
  29. 向井清

    政府委員向井清君) さようでございます。
  30. 川村清一

    川村清一君 それでは、その次のページの四ページ。これは「ソ連に対する我が国漁船罰金支払状況」、これはわが方が払った方ですが、ソ連水域内操業違反、この罰金をとられた違反ですが、これを検討してみるというと、やはり水産庁あるいは保安庁行政指導相当手抜かりというか、未熟な点があると私は考えざるを得ない。まず停船命令違反が五件ありますね。無許可、これが二件あるわけです。こんなのはとんでもない話でね。それから禁止区域内一隻。それから、ソ連領海内に入っている。こんなこともとんでもないこれは違反でございますね。それから許可証所持等、これが六件ありますね。これまでは、これはソ連をとやかく言うことはできない。これはやはりこちら側の手落ちであります。漁船手落ちということは、いわばこの協定発効して以来の、発効するに際してのわが国のいわゆる水産当局行政そのものがきわめて不徹底であった、指導に欠けておったと、こう解せざるを得ないんですが、どうですか、御説明を願います。責任はわが方にあるのではないか。
  31. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 確かにこの資料は十月の十五日までの資料でございまして、合計百八件、そのうち操業日誌関係罰金を払いましたのが七十八件ということで、これが相当部分を占めているわけでございます。  その内容を見てみますと、この七十八件の中で一番多いのが操業日誌記載漏れということでございます。
  32. 川村清一

    川村清一君 そこまで聞いていない。
  33. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) いや、そういうようなことでございまして、やはり操業日誌について厳格に私どもとしましては記入をするように、これは非常に大事なものだからということを指導いたしたつもりでございますけれども日本漁船は従来から必ずしも、割り当ての量をもらいましてその範囲内でもって操業をするということになれておりませんでした。したがって、この操業日誌記載その他につきまして厳格にやるという考え方が多少なかった点もあったということが一つ。非常にふなれであったということが一つございます。  それから、この操業日誌の中には、たとえば封印がないということで、操業日誌をつづっておりますものに封印がしていないというようなことで罰金を科せられたということもございます。これにつきましては、ソ連の場合には非常に操業日誌を大事にいたしまして、これは加除、訂正を許さないということで、つづりひもの端はこれを表紙に張りつけまして封印をするということが通例でございましたけれども日本の場合にはそういうようなことまでやるという習慣がなかったと。お互いにそういう習慣の違いがございまして、そういうことに気がつかずにいたために罰金を食らったというようなこと、いわばお互いのふなれ、それから習慣違い等がありまして、非常に軽微な違反でございますけれども、この違反に問われたということが多くなったというように考えます。
  34. 川村清一

    川村清一君 長官、私はそんなこと聞いていないんですよ、そんなことは。私のお尋ねしていることは、この内容停船命令違反が五隻ありますね。無許可で二隻出漁している。これは違反でしょう。禁止区域内に入った違反が一隻ある。それから領海に入っている。常識で考えられないでしょう。領海に入って違反と認められたものが三隻ある。許可証を持たないで出漁しているものが六隻ある。ここまではこれは明らかに行政指導責任あるでしょうということを言っているんですよ。これはつかまえた向こうの方に罪があるんではなくて、つかまえられたこちらの方にミスがあるだろうということを言っているんです。この責任水産庁なり保安庁が、行政機関がしょうべきものじゃないかということを尋ねているんですよ。何を答えているんだ。しっかり聞いてやってくれ。
  35. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) はなはだ申しわけございませんでした。停船命令違反、それから無許可操業等行政指導手落ちがあるというふうに実は考えなかったので、全然見当違い答弁を申し上げて申しわけないわけでございますが、これは私ども当然の話だと実は考えているわけでございます。  もちろん、いままで外国の取り締まり船によって取り締まられるという経験が不足していたということ、特に沿岸の零細の漁民の船につきましてはそういうことが考えられますが、しかし、操業している以上、何か自分の国の、または他国の官憲の船が停船命令を出した場合に、これは停船をしないで逃げたというような例がほとんど大部分でございますけれども、そういうようなことはまず考えられないことでございますし、今回日ソの間で協定が結ばれまして、許可証なくしてはソ連の二百海里内では操業ができないということ、これまた当然の話でございまして、こういうような事案について、もし指導が不徹底であったということになりますと、私ははなはだ遺憾に思うわけでございまして、それは当然のこととして会合のときにはまず真っ先にお話しをし、それはもう当然のこととして、むしろ先ほど申し上げましたように、操業日誌のことその他細かい事項について特に注意するようにという指導をいたしたわけでございます。  私ども、こういう事案が出たということは、おっしゃるとおりある意味においては意外に思っているわけでございまして、こういう全く初歩的な違反は絶滅しなければならないというふうに考えておりますので、今後、もし私ども指導がこういう点についても不足しているということであるならば反省をいたしまして、こういうことにつきましても徹底をするようにそれは努力をいたしたいと思います。
  36. 川村清一

    川村清一君 当然なことで、こういうことは全く当然なことだ。ですから私は、この当然なことさえ指導できなかった政府責任を聞いているんであって、こういうようなことが二度とないように、これはどんな小さな船であったって当然なことなんですから、協定を結んだ以上はやっぱり秩序をきちっと守るという、そういう点が平均して漁民の方には往々あるわけですから、こういう海の秩序というか、しかも国際協定で結ばれているこういう約束事は、しっかり守るような指導をきつくしてもらわぬと困ると思う。それがあって、初めてこちらの主張も言うべきことは強く言えるわけですよ。当然守らなければならないことを守らないでおいてこちらの主張ばかり言ったところで、そんなものは世間様に通らないわけですから、これはしっかりやっていただきたい。  次に「若がに、稚がにの混獲」とある。これはちょっと疑問があるんですよ。網を張ったら、必ずとろうと思った魚だけ入るものではないんですよ。これはカニをとるつもりでなくてカニが網にかかるということは、こんなことはあり得ること、普通のことですよ。これを混獲といって厳重に処分されるということは、これは私は間違いだと思いますが、こういうことはきちっとこっちの方から言ってやらなければならないと思いますが、どうですか。
  37. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) これはおっしゃるとおり、漁労する場合に混獲というのは往々にあるわけでございまして、いわば制限をされております魚種以外の魚の混獲につきましては、その他というような費目でもって許されているわけでございますが、カニ類につきましてはどこの水域で幾らということ、また、そのカニ類操業を許されている船につきましては、その旨の許可証を持っていなきゃならないということでございますので、こういうような、ほかの魚の操業によりましてカニ類混獲した場合には直ちにこれを捨てる、投棄をするということ、これもまた常識だと私どもは考えておりますが、この二隻につきましては、混獲したカニをそのまま持っていたということによりまして、協定違反ということで罰金を科せられたというふうに考えております。
  38. 川村清一

    川村清一君 ヒトデなんかとっても、ヒトデが網にかかっておった、これが違反事項として処罰されているんですが、処分されるんですが、ヒトデというのは、これはもう魚類に対して有害動物であるということは明々白々なものでしょう。そのヒトデをとったからといって罰金を受けるなんということは、これもまた常識外だと思うんですが、こういうことを黙っているんですか。
  39. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) ヒトデ、それからツブ——毛ツブといいますか、これを混獲していたということによりまして罰金を科された例がございます。これもどういう理由であるかをただしたところ、ソ連側としましては、大陸だな資源である、大陸だな資源はこれはソ連所有物である、いわば大陸だな資源生物ですね、有用であろうがあるまいが、ソ連所有にかかる生物であるヒトデ、それから毛ツブをとるということは今回の協定では許されていない、だからそれをとったのは違反であるということを曲げないわけでございます。私ども、もちろんそれはおっしゃるとおりのことを主張いたしましたけれどもソ連側主張が変わりませんので、しからば、そういう混獲は往々にしてあるわけでございますので、その処理につきましては直ちにこれをやはり海中に投棄をすると、われわれも要らないわけでございますので、海中に投棄をするということであるならば違反ではない、今後そういう処理をしてほしいということで合意をいたしております。
  40. 川村清一

    川村清一君 やはり混獲を含めて、ヒトデだとかそれから毛ツブであるとかいったようなものは、大陸だな資源では間違いないでしょうけれども、それじゃ大陸だな資源だからソ連は大事にしている資源かというとそうではないわけでしょう。そういうようなものはこちらの主張主張、向こうの言っていることが間違いなんだから、これは強い態度でやっぱり臨んで、こういう常識外のことはきちっとやめさしてもらわなければいけないと思うのです。そのために努力していただきたいと思います。  一番最後に、その他十一件というのがありますが、「その他」はその他ですからいろんなものがあるんでしょうが、主なものはどんなことなんでしょうか。
  41. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) これは申し上げますと、たとえば許された漁具以外の漁具を一緒に持っていたというようなこと、それからこれは問題になっていま現在ソ連と交渉いたしておりますが、ビルジを排出いたしまして海洋を汚染したというような理由のもの、それから船長が乗っていなかったというようなことが、この中に入っているわけでございます。
  42. 川村清一

    川村清一君 そういうことも、やっぱりこれは指導のまずさでないかと思いますね。この船長が乗らない場合にはどうするかということも、付属書の中にきちっとあるわけですね。そういうことも書いてありますし、それから油のなんですか、あれについても付属書の中にありますしね、それから許可以外の漁具を持っておったなんていうことは、これまた常識的にいけないことは当然なことなんですから、これもやはりこちらの指導のまずさがあるんで、とにかくこれは国際協定でございますから、やっぱりこっちの守るところはしっかり守るように、強い指導をしていただきたいと思います。それでなければこちらの主張も通らないわけですからね。  そこで最後、この取りまとめですが、百八件で九千九百十九万一千円、これを一隻平均に当ててみたら九十二万円になるんです。それで向こうの方は一律一隻五十万、こっちの方は平均九十二万円。それで向こうの方の船はこれはまた百六十三トン、八百十トン、三千三百四十七トン、五百四十五トン、大きな船です。こちらの方は三十トン未満、まあ二十トン未満の小型の船なんかもたくさんいるんではないかと思うのです。  私の言いたいことは、罰金がこう違うのは一体どういうことなのか、余りに相違があり過ぎるんじゃないか。一体基準があるのかどうか、向こうの取り締まり官というのか監督官というのか、個人の判断でこの罰金を科すことができるのか。むろんソ連邦の最高会議幹部会令、あれによりますというと、一万ルーブルまで、日本円でいうと四百万までこれは行政官の処置によって取れるような仕組みになっているから、わが国の法体系と全然違うのでまあやむを得ない点もあるかもしれないけれども、それにしても全然違うと。その監督官個人個人の意見で違う。それできっちりした基準はないのかどうか、これをお尋ねしたいのですが、これはどういうことになっているんですか。どうしてこんな相違があるんですか。
  43. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 確かに私どもも一般的に見まして、ソ連の係官が科する罰金につきまして、その額が統一を欠いているということは考えております。  ただ、先に申し上げておきますが、先生がこの資料によりまして、百八件であり合計九千九百万円だから、これを割りますと九十万円余りということでございましたけれども、これと、ソ連船の違反に対する担保金の額は平均五十万円であるということとは多少違いまして、このようにいろいろ私どもの船がソ連につかまりました理由が相当違っております。そういうことでまず差がございますのが一点ございます。それから、操業日誌の不実記載という七十八件、六千六百六十九万円ございますが、この中にも非常に罰金の多寡に相違がございます。その理由の一つは、「操業日誌の不実記載等」と、こういうふうに一括してございますが、操業日誌記載について単純なミスを犯した船、それからそれ以外にほかの違反もあわせて犯している船等がございますので、そういうものもある程度この操業日誌の欄に整理をしているということもありまして、統一性を欠いている場合もあります。  しかし、それはそれといたしましても、確かにおっしゃるとおり、ソ連の係官の言い渡される罰金の額が統一性を欠いておりますので、これはソ側に対しましておかしいではないか、やはり統一された基準があってしかるべきだ、そういう基準はないのかということを聞いてただしているわけでございます。それに対しまして、もちろんソ連としては違反の種類、程度によりまして基準はあるけれども、それは一定の幅を持たして監督官に任されているということを言っております。監督官が具体的に罰金の額を決定するに当たりましては、ソ側の主張によりますと違反船の総トン数、それからソ側の監督官に対します協力の程度、それから累犯であるかどうかというようなことを勘案いたしまして、その一定の幅の中で監督官が決めているのだというようなことでございます。それにいたしましても、私どもは、わが国漁船に対します不信感というのがあるからよく注意してほしいということは、厳重に申し入れているわけでございます。
  44. 川村清一

    川村清一君 これはもう問題は毎日の新聞に出ているんですよ。もう罰金攻勢に遭って、しかも違反したならば罰金を取られるということは、こちらの方も、船長も漁労長も承知して注意はしていると思うんです。ところが、北海道の新聞なんかには毎日出ているんですよ。新聞の張ったのでもこれだけある。時間がないので読みませんけれども、その内容を見ますと、全然納得いかない。それこそもう常識外れのものがあるんです。全く身に覚えのない違反だといって罰金を百万取られたとか、それから今度、最初は四万円と言っておったのが、いま金がないと言ったら、何日まで持ってこいと、途端にそれが十何倍にふくれ上がって五十万持ってこいと、こういうふうになってみたり、まあ時間があればこれをみんな読めばわかる。これは後から長官に上げますからよく読んでください。大変なことなんですよ、これは。しまいに罰金が払えなくて操業ピンチになって、もう漁業をやめようというものも出てきている。  だから、違反をしたら罰金を取られることはこれはきちっと決まっているから、向こうの法律でやられるということはいたし方ないにしても、あるものは五十万で、あるものは百万で、もっともそれは事犯の相違によってでしょうけれども、どうも常識では考えられない。たとえば船にカニが十匹あった、たまたまこれは網にかかっておったんです。網を揚げたらすぐそのカニを海へ放してしまえばよかったんだが、それをうっかり船の中に揚げておったんですよ。そこへ監視官が来て臨検を受けて、カニが十匹あった。混獲だというのでたちどころに罰金百万円と、こう来る。こういうようなことは、違反をしたら罰金を払うのはいいんです、これは。向こうの法律でやられる、それはいいんですよ。いいんですけれども、それをやっぱり常識内でやってもらわなければ困る。  しかも、その監督官、取り締まり官の個人の考え方で全然違うというようなことになれば、これは大変なことですよ。漁師の方には安心して操業もできないでしょうし、出るたびに百万円だ、二百万円だといってお金を用意していかなかったら、今度は許可証まで持っていかれちゃう。許可証を持っていかれてしまって、そしてすぐ払えばいいんですけれども許可証返してくれるんだけれども、もたもたしておって、今度は許可証を持たないで出ていったら、そこをまた臨検を受けたら、今度は許可証不所持だということでまた罰金を取られる。罰金の二重取り、三重取りがかぶさってくるわけです。そういうようなことはもう少しきちっとして、何とか常識内で行われるようにならないものですか。少し弱腰じゃないですか。大臣、どうですか。これは大臣にひとつお聞きします、大臣が決めてきた協定によってこういうことが出てきているんですから。
  45. 鈴木善幸

    ○国務大臣鈴木善幸君) 私に答弁を求められましたので、いままで川村先生から御指摘になりました点を一括して私の考えをお答えをしたいと思います。  先ほど停船命令違反から許可証所持等まで、これはもう初歩的なことであって当然のことをやってないと、これは政府指導が十分でなかったというおしかりでございます。私どもおしかりを受けまして、これをとやかく言うものではございませんが、川村先生もおっしゃるように、これらはきわめて二百海里時代、向こうがその海域に対する主権的権利を行使する管轄権を持っているわけでありますから、こういうものは当然のことでございます。二百海里時代の厳しさというものを私どもは業界にも十分話をしておるわけでありますが、その厳しさというものが、この実施後まだ日が浅いという点もあろうかと思いますが、確かに甘く考えておる点もあるのではないかと、このように思うわけでございます。今後とも、この点につきましては、さらに指導の徹底を加えたい。  ちなみに、ソ連の場合どうなっているかと申しますと、今回モスクワへ参りまして、後段で申し上げるような、基準を明確にせよとかいろんなこちらから注文をしたわけでありますが、その際明らかになったことでありますけれどもソ連側においては、この違反事故を起こした船長は直ちに下船をさしておるようでございます。そしてその罰金日本では担保金でございますが、その担保金につきましては、船長等の月給からこれを棒引きをして、これは国で払うべきものではない、おまえたちの不注意等によって起きたこれは事件であるから当然みずからの責任でこれを支弁すべきであると、こういう巌しいやり方をやっておるようでございます。  こういう点を見ましても、ソ連のやり方につきましては、いろいろ不満もございますけれどもソ連側としてはこの二百海里時代の違反事故を起こさないように、また、それに対してはみずから巌しく律しておる、こういう姿勢であるわけでありますが、わが方としても、そこまではなかなか民間の漁船に対してはできませんけれども、そういう巌しいものであるということは十分やはり心得て、二百海里時代に対処して操業していかなければいけない。これがまず第一点でございます。  それから、基準が不明確である。確かに不明確でございますが、この点は、基準をどの国もこれを公表して明らかにしないたてまえになっております。でありますから、その基準がどの辺にあるかということは詳細に把握することができません。ただ問題は、同じような事犯が起こった場合に同じような処分を受けておるということであればこれは納得がいくわけでございます。しかるところ、どうも同じようなことであるのに罰金の額も大分違うというようなことで、取り締まり官なり、あるいは監督官なりのある程度の幅を持ってといいながらもどうもその辺が納得がいかない、こういう点がございます。この点は、今回長期交渉でモスクワへ参りましたわが方の代表から、もう少し基準に照らして納得のいけるようなやり方をやってほしいということを、改善方を強く要請をいたしておるところでございます。  それから、これに関連をいたしましてもう一点申し上げておかなければならぬのでありますが、この違反を摘発をし取り調べをして罰金を賦課したその調書を、ひとつ漏れなくわが方の漁船に渡してもらいたいという要求をしております。と申しますことは、どうもその調書がありませんと、政府の方でこれは不当であるというようなことで正式に抗議をすることがなかなかできない。とかく漁船員の方は、まあこの程度のことだったけれどもこれだけの罰金を取られたと、こうなるわけでございますけれども、それにはやはり調書というものをわが方でそれを受け取る、そういうことを励行してもらいたいということを申し入れをしております。これは向こう側でも、ぜひ第一線の取り締まり官に対して徹底をして、今後は調書はその当該漁船に必ずその写しを渡してやるということを約束をいたしておるようなことでございます。どうもいろいろやっておりますと、私どもがその違反漁船から聞いておりますことと向こうの調書、これとの間に若干の内容の食い違いがあるような点もあるわけでございまして、そういうようなことで調書をぜひ渡してもらいたいと、こういうことでございます。  それから、制度的な問題は、日本担保金を取りますけれども、これは刑事手続の進行を担保すると、こういうことで、基本は裁判ですべては決すると、こういうことにたてまえがなっております。その出頭命令を受けた日までに来ない場合に担保金は国庫に収納される、こういう仕組みになっておりますが、向こうは、ちょうど交通違反のようなぐあいに行政罰的な処分がなされる。それに対して不服があって不服の申し立てをした場合に裁判になると、こういう仕組みになっておりまして、制度的にも違う面がございます。  そういうようなことで、第一線の取り締まり官、監督官の与えられた裁量というものがあるようでございまして、この点は余りに大きな——それには感情的な問題あるいは取り締まりに対して非協力であったとか、態度が悪いとか、そういうようなこと等で罰金の額が違うというようなこともあるようでございますから、この点はソ連政府に対しまして強く申し入れをいたしておるところでございます。
  46. 川村清一

    川村清一君 ただいま大臣からお話のありました第三の点、いわゆる調書を必ず船長に渡しまして、船長がそれを持ってきて、それに基づいてまたいろいろ交渉する余地が残る、そういうふうなかっこうになれば大分この問題は解決すると思いますが、私ども新聞で承知する以外には方法はないわけですが、新聞はできるだけ注意して読んでおりますが、ただいま大臣からお話がありましたように、同じような違反行為であって罰金が全然違う。それは向こうの監督官の恣意によってどうにでもなる。一万ルーブルまで、いわゆる四百万円までは監督官の判断によって科せられるということになったら大変なことでございますから、それはぜひやっていただきたいし、漁民の方の要望としては、臨検を受けた場合に、でき得れば日本の巡視艇やあるいは監視船から来て立ち会って、そして罰金の調整をしてほしいといったような願いがあるわけですが、ちょっとこれはこちら側の体制からいってめんどうな点があると思いますが、こうなれば大変好都合だと思うのですが、そういうことはできないものかどうかということが一点。  次に、そういうような拿捕された者の、あるいは罰金を受けて損害を受けた——損害といっても、違反して罰金を科せられたのですから損害といえるかどうかそいつはわかりませんけれども、そういうものは一体漁船の災害補償法、あれの適用を受けられないのかどうか。拿捕保険というのがたしかあったはずですが、この拿捕保険の適用にならないものなのかどうか。ならないとするならば、これらの方々を何らかの形で救済する、そういう制度をつくれないものかどうかということを考えるんですが、これはどうですか。これは大臣にひとつお願いします。
  47. 鈴木善幸

    ○国務大臣鈴木善幸君) 御質問の第一点でございますが、海上保安庁の方とよくお話し合いもしておるわけでありますが、わが方の指導船なり巡視船なりが、そういう違反事故でわが国漁船が臨検等を行われておる場合にはできるだけそこへ駆けつけて、中へ入って適正な処理ができるように、こういうことが一番望ましいことでございますので、できるだけそういうことにいたしたい。いずれにしても、とにかく六千隻近い多数の漁船があの広い海域操業しておりますし、まだ早々で、わが方の監視船、取り締まり船の体制も不十分な点もございます。しかし、御指摘のような御趣旨に沿うように、水産庁海上保安庁でよく協議をいたしまして、できるだけのことをしてまいるようにいたしたいと考えております。  第二の点につきましては、拿捕保険の適用の問題は、これは拿捕保険が、御承知のように、領海侵犯でありますとかそういうような際に適用されることでございまして、これは今回のような協定違反というようなこと、しかも自分の不注意等によって起こるような事案でございますので、拿捕保険の適用というぐあいにはまいりません。しかし、何らかの措置を講ずべきだということが業界の中で大分意見が出てきておりまして、最近の動きとしては、各業種別団体あるいは全体でもって互助的な一つの機関をひとつ自主的につくろうではないかと、こういう機運が出てきております。互助的な制度としてそういうものをつくろう。そういうものができました際におきましては、政府としても、事務費の一部その他政府も助成をしてまいりたい、このように考えております。
  48. 川村清一

    川村清一君 次に、海上保安庁の方にお尋ねしますが、現在の保安庁の取り締まりの現状、現在の取り締まりの体制がどうなっておるのかということ。そういう巡視船なり、あるいはヘリコプター、飛行機、こういったようなものの配置状況がどうなっているかということ。  それから、もちろん現有勢力では足りないと思うのですが、今後この体制を整備されるためにどのような計画を持っておられるか。時間がありませんので、長々でなく、ちょっとかいつまんで大事なことだけ説明願えませんか。
  49. 向井清

    政府委員向井清君) お答え申し上げます。  現在の海上保安庁の船艇、航空機の状況でございますが、三百十隻の船艇、三十五機の航空機を擁しております。それで各般の海上保安業務全般を行っているわけでございますが、今般、広範な漁業水域における取り締まり業務というものが新たに加わってきたわけでございまして、これに対応いたしますためには、やはり重点的、効率的な運用ということがどうしても必要になります。そのために外国漁船操業実態というものを十分調査勘案いたしまして、現有勢力の性能等をよく見きわめた上で、重点的な配備を行っております。  これは、当該海域を所管いたします管区のみならず、他管区からの応援派遣ということも含めまして、重点海域に船艇、航空機を投入しているということでございまして、一つの例を申し上げますと、道南海域を中心といたします北方海域に常時五、六隻の巡視船を派遣して、全力を挙げて取り締まりに当たっておるということでございます。それで、現在のところ、このような体制をとりまして一応円滑な業務運営が行われているわけでございますが、先生御指摘のように、今後長期にわたりましてこういう体制を維持していく、現有勢力でもってこういう事態に対処していくということには、やはり困難がございますので、急速な整備増強を図るということで、五十二年度から大幅な増強を図っております。  その際、一番大きな要点となりますのは、やはりこのような広範囲な漁業水域における取り締まりに対して十分な能力を持っているような船艇、航空機、すなわち、ヘリコプター搭載巡視船、総トン数三千二百トンぐらいの新しい船でございますが、これを新しく整備していく。それから、千トン型の新鋭の巡視船というものを大量に整備していく。それから、三十メーターの長さのございます三十ノットの高速の出ます巡視艇というものを新たに整備していく。それから大型飛行機、中型ヘリコプター等ももちろん監視能力上非常に大きな役割を果たしますので、これも、整備していくということで、すでに五十二年度当初予算、それから情勢の進展に伴いまして、五十二年度補正予算というものにおきまして相当額計上されまして、海上保安庁の船艇、航空機の体制としては一応格段の充実を見つつあるということでございます。  今後の問題といたしましても、いま申し上げたような船艇、航空機につきまして、情勢の推移を見ながら、財政当局とも積極的に折衝を進めて整備を促進していきたい、このように考えておる次第でございます。
  50. 川村清一

    川村清一君 同じような問題で、水産庁の方の取り締まり体制について御説明いただきます。
  51. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 現在、水産庁におきましては、取り締まり船につきましては、官船四隻、それから用船二隻、合計六隻を保有いたしておりますが、これでは不足をしているというふうに私ども考えておりまして、今年度中にはさらに用船を二隻ふやしたいというふうに思っておりますし、また来年度予算要求におきましては、さらにこの取り締まり船を増加するように努力をいたしたい、かように考えております。
  52. 川村清一

    川村清一君 日ソ暫定漁業協定ができるときいろいろ暴議したときに、ずいぶん減船されるわけでありまして、その減船される船の中には、たとえば北転船のように相当大型の船もあるわけですから、こういうような船をやっぱり二百海里時代に対処して監視船に使ったらどうかという意見等もあったわけですが、こういう余剰の船をそういう方面に利用するお考えが水産庁としてはあるかどうか、お尋ねいたします。
  53. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 私どもも、今回の減船によりまして余剰になる船の活用につきましては、できるだけ努力をいたしたいというふうに考えておりまして、その活用先につきましては、新しい漁場を求めて漁場を転換をするということのほかに、御指摘のように、今後必要とされます取り締まり船また資源調査船等にはできるだけ、船の性能等によりますけれども、活用していく方向で、それぞれ予算措置を考えているわけでございます。
  54. 川村清一

    川村清一君 海上保安庁の方は、私もう質問終わりましたから、ほかに質疑要求がなかったらお帰りになって結構でございます。——ある。あるそうでございますから……。  次に、外務省の方にお尋ねしますが、これも農林省参考資料によるんですが、一番前の一ページのところです。五月二十三日に第三次国連海洋法会議第六会期がニューヨークで行われましたね。われわれは、ここでいろいろな問題点が解決されて、二百海里等も含めてこの会議がまとまるものと大きな期待を寄せておりました。と申しますのは、御案内のように、ソ連が一九七七年三月一日から最高会議幹部会令をもって漁業水域二百海里を決定したわけですが、これは暫定的措置であるということを明らかに向こうが言っているわけであります。私もモスクワでイシコフに聞いたときに、こういう海洋法会議で世界的な、国際的な結論が出て、それに基づいて二百海里を行使するということがいわゆる海洋の秩序を守ることになるのである、それが、沿岸国が勝手にどんどん二百海里を宣言するということになれば海洋秩序そのものが全く無秩序になる、こういうときに、アメリカあるいはソ連というこの両大国が、海洋法会議の決定を待たずに一方的にこういうことをやったことはまことに遺憾であるということを申し上げましたら、イシコフは、何もソ連から進んでやったわけじゃないんだ、これはアメリカ初めカナダ、そしてEC諸国がやられたのでわれわれもやらざるを得なかったんだ、しかしこれはあくまでも暫定措置であって、海洋法会議で決定したならばその線に従うんだということを明確にうたっているわけですね。  そういうような情勢を踏んまえて、私どもはこのニューヨーク会議というものの成功を願っておったんだが、できなかった。そして、また来年の三月に持ち越されたわけでありますが、第三次国連海洋法会議第七会期に向けて、これはジュネーブで三月の二十八日から開かれるわけですが、日本政府としてはどういう考え方、どういう態度で臨むのか、その会議でもってまとめようとして努力するのかどうか、これはきわめて重大な問題ですので、本当ならば外務大臣にお尋ねしたいところですが、外務大臣がお見えになっておりませんので、対策室長ですか、外務省の担当官の方から責任のあるひとつ御答弁をお聞かせいただきたいと思います。
  55. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) お答え申し上げます。  本年の五月から七月に行われました第六会期におきまして、やはりなるべく早期に海洋法会議を妥結させたいということは参加国すべての希望でございまして、それで、やはり特に深海海底の問題で話がまとまらなかったものですから、来年三月からもう一回やろうということになって終わったわけでございますけれども、海洋法会議をやはり包括的な条約をつくることによって早くまとめたいということにはコンセンサスがございまして、現に七月の二十日には従来の単一草案をまとめました統合草案というのができたわけでございまして、これについて実は今月からいろいろ非公式協議が行われまして、来年の三月までにさらに調整したいというわけでございます。  この日本政府の今後の方針ということについて御質問がございましたけれども、これについては、関係省庁とさらに今後いろいろ打ち合わせていく問題でございまして、その結果がまた閣議にかかるわけでございまして、いまこの段階でいろいろな可能性がございますから、はっきりしたことを詳しく申し上げるという段階ではございませんけれども、基本的には、やはり包括的な海洋法条約を一刻も早く成立させるということが、これは間違いなく日本の利益であるというふうに考えているわけでございまして、現に漁業の問題にいたしましても、これはいまの海洋法条約の草案というものよりも実は有利な内容のものをつくることはもはやむずかしいということでございまして、交渉の時間がかかれば、むしろ後進国から先進国の伝統的な実績というものを否定するような要求もございますし、いろいろ二国間交渉で入漁権を獲得するために法的な立場というものが、いろいろこの沿岸国が勝手なことをいたす傾向が出ておりまして、やはり日本は沿岸漁業国であると同時に遠洋漁業国でございますので、その調和を図る観点から、いまの海洋法条約の草案というものがバランスがとれていると思いますから、これをなるべく早く固めたいということでございます。  それから、大陸だなの問題にいたしましても、まだ若干議論がございますけれども、こういうものも、従来の方針というものはやはりいろいろ詰めた結果でございますから、特に方針の変更ということはないわけでございまして、従来の方針に沿って海洋法条約を早くまとめるということでございます。一番大きな深海海底の問題というのも、これは後進国の主張はございますけれども、やはり日本の先進工業国としての立場、私企業の立場というものを踏まえながら、後進国に必要な援助をして、早くまとめていきたいということでございます。
  56. 川村清一

    川村清一君 この問題についての農林大臣の御見解をお尋ねします。
  57. 鈴木善幸

    ○国務大臣鈴木善幸君) 深海海底の問題等、まだむずかしい問題が残っておるようでございますけれども、しかし、農林省の立場からいたしますと、今日まで各方面の、各国の意見を集約して統一草案、統合草案が固まってきておりますので、今後できるだけ早く、来るべき会期において結論が出るように、わが方としても最善の努力を払いたいと思っております。  ただ、その際に、一部の国から出ております遡河性魚種の問題についての統一草案に対する改定意見、そういう動きがございます。私どもは、その点には重大な関心を持ちまして対処してまいる所存でございます。
  58. 川村清一

    川村清一君 わかりました。  遡河性魚種の問題等につきましては、きょうは時間がありませんので触れませんが、いずれ長期協定を締結する際に国会でまたいろいろ議論があると思いますから、そのときにお尋ねすることにいたします。  そこで、いまお尋ねしたいのは、今度の北洋漁業の取り決めによって千隻以上の船が減船、休漁されておりますが、これに対して政府がいろいろ補償処置をとったんですが、この補償処置をとった概要について、これをひとつ御説明をいただきたいと思います。
  59. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) まず、今回北洋関係で漁獲量が大幅に制約をされた関係から、千二十五隻に及ぶ減船をしなければならないということになったわけでございます。減船関係の救済対策についての御質問でございますので、その点につきまして申し上げます。  まず、政府といたしましては、六月の二十一日に閣議了解をいたしまして、漁業者に対する救済の基本的な方針を決めたわけでございます。それに従いまして、まず減船漁業者に対しまして政府交付金を交付するということにいたしまして、これはすでに八月に予備費をもちまして、総額七百九十七億円の支出を決定をいたしております。現在、それぞれの業界におきまして減船の対象を決めまして、サケマス、それから北転船の一部を除きまして、それ以外の減船漁業者に対しましては、すでに政府交付金を交付いたしておるわけでございます。それから、残存漁業者が負担いたしますいわゆる共補償に対しましては、農林漁業金融公庫から融資をするということにいたしまして、融資対象事業の九割を農林漁業金融公庫の資金の中で確保いたしたわけでございます。この共補償の対象事業の総計は、私どもの計画では総額五百四十六億に上りまして、そのうち公庫から四百九十一億円の融資ができるように措置をいたしておるわけでございます。  それから、その他でございますが、さきに御審議をいただきました補正予算によりまして、たとえばつなぎ融資に対しまして、これは六ヵ月の融資期間でございますけれども、これをさらに延長をする等に要します利子補給の関係の経費等お願いすると同時に、減船に伴いまして発生をする不要漁船の対策といたしましては、たとえばわが国の近海の大陸だな斜面におきまして資源調査を実施をする、また新しい漁場としての南極洋におきますオキアミ漁業の企業化調査のための新しい母船一隻、キャッチャー十隻というような事業のための経費、それからモーリタニア沖等への漁場転換に要します助成措置のほか、どうしてもスクラップをせざるを得ない場合につきましては、それに対して一部の助成をするというような経費、総額百三十一億に上るわけでございますが、それらの予備費等をお願いをし、この間決定をしていただいたということであります。以上が漁業者、減船等を中心とします対策でございます。  それから、その他関連の水産加工業対策について申し上げますが、加工業対策につきましては、すでにつなぎ融資といたしまして総額八十億円に及びますつなぎ資金を融資いたしております。これも実は六ヵ月の期間の融資でございますので、これを期間が到来いたしますときに返還できるものは返還していただきますが、残余のものにつきましては長期低利の資金に乗りかえるということで、合計二百八十億円の長期低利資金、これを用意をいたしておるわけでございます。これも期限が到来次第、それぞれ審査をいたしまして、肩がわりをいたす措置をいたしたいというふうに考えております。  それから、加工業以外の関連企業につきましても、これは中小企業庁の方から合計四十億円のつなぎ融資が出ております。これも償還期間六ヵ月でございますが、これにつきましては、今年度いっぱいさらに必要な向きにつきましては償還期間を延長すると同時に、来年度におきましては、これを償還期間五年ぐらいの長期の資金に乗りかえができるように来年度予算で措置をいたしたいということで、検討をいたしておるということでございます。  なお、離職者対策について申し上げますと……
  60. 川村清一

    川村清一君 それはいいです。
  61. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) よろしゅうございますか。
  62. 川村清一

    川村清一君 いずれ、そういうことについては後にまたお尋ねする機会があると思いますから、きょうは時間がありませんので。  そこで、いま御説明を受けましたが、それに関連してお尋ねしたい二とは、政府からいただいたこの資料によりますと、政府交付金が七百九十六億五千三百万円、それから融資対象事業費が五百四十五億五千二百万円、合計で千三百四十二億五百万円、まあ千三百四十二億の政府の交付金、融資でもって千二十五隻の船が整理されたわけであります。  そこで、これはこれとして、今度はこの補償金の交付についてお尋ねしたい。私どもの考えといたしましては、補償を受ける対象者は漁業権、すなわち漁業許可を受けておる本人、この本人が実際に漁業経営をしている場合は問題がない、その人が対象者になるわけですね。ところが、漁業経営の仕組みというのは非常に複雑怪奇でございまして、これは長官御存じのとおりです。漁業権だけは持っている、しかし実際に漁業経営は行っていない、いわゆるペーパー船主という問題がある。これは一体対象者になるのかならないのか。これもまた新聞でこの間ちょっと見たんですが、ここにありますわな。四島周辺のカニ、これは全部で十七隻おりますね。これの補償金の交付について、ペーパー船主が補償金を受けておるといったようなことが現地では問題になっておるようでありまして、水産庁がそれを検査に行ったといったようなことも新聞に報ぜられておりましたが、こんなことが実際にあるのかどうかということの問題が一つあります。  それから、私のところにこういう手紙が来ておるんですが、名前とかそういうものは一切伏せますが、これは漁業権は貸したわけですよ。ですから、経営者は権利を借りて自分の船で、それで自分の資金で漁業経営をずっと行っておった。ところが、ことし日ソ漁業協定によってその漁業というものは全面的に禁止になったわけです。全面的に禁止になったので、政府は補償金を交付しているわけです。これは水産庁長官から、北洋漁業減船漁業者救済費交付金の交付についてというやつですが、交付が行っております。総額で一億百九万三千円、これは一体交付を受ける対象はだれなのか、権利を持っておる者が受けるのか、この権利を借りて漁業をやっている者が受けるのか、この点をひとつ明確にしていただきたいと思う。
  63. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) まず、カニかごの件につきましてお答えを申し上げますが、御指摘のとおり、現在四島周辺を操業区域といたしておりますカニかご漁船は十七隻ございまして、これが減船の対象になったということで、これは北海道知事を経由して交付申請書が提出されましたので、すでに政府交付金を交付いたしております。これらの交付に当たりましては、この減船対象になりました十七隻の漁業者が昭和五十一年以前の過去八回の日ソカニ交渉の結果に基づきまして、北海道知事から許可が与えられているということから、今漁期につきましても全船出漁する計画で北海道庁に漁業許可申請が提出されていたということもございましたので、私ども救済費交付金、いわば政府交付金を交付いたしたわけでございますが、御指摘のとおり新聞等によりまして、実際にそういう操業をいたしていない者、いわばペーパドライバーがいて、これが政府交付金を受けているというようなことを聞きましたので、実は現在係官を現地に派遣をいたしまして調査をいたしております。  やはり私どもは、現在カニかご漁業を営むことを予定していたことが確実であるという、そういう基準をこの政府交付金の交付につきましては要綱として定めておりますので、その基準に合致しないようなものにつきましては、これは交付金を交付すべきではないというふうに考えて調査をいたしているわけでございます。  それから、いま権利を借り受けて操業していた場合、それが減船の対象になったらどうかということでございますが、具体的事例につきましては、まだそれを拝見いたしませんので何とも申し上げられませんけれども、往々にいたしまして、共同経営というような形で経営をいたしておる場合がございます。したがって、単一のものだけを見ますと、その者がいかにも許可を受けていないようなかっこうになる場合もございますけれども、これは実態をひとつ拝見をさしていただきまして、共同経営というような実態が備えられている場合には、当然それなりに、私どもは減船の対象になった場合に政府の救済措置の対象になり得るというふうに考えております。
  64. 川村清一

    川村清一君 これは共同経営ではございません。そして、この漁業大臣許可であります。北海道知事の許可ではない、明らかに大臣許可漁業でございます。そして、その権利を持っておる者は漁業経営はいままでずっとしておらない、それで漁業経営をしている者は権利を借り受けてやっている。しかしながら、そういうことはよくないことはようわかっているんだが、漁業の世界には実際はそれはあるわけだから、いいとか悪いとか言ったってしょうがない、そういうことでやってきているわけですからね。それまで私はここで追求するという気はないんです。  しかしながら、補償金の交付、農林大臣から交付金を交付するという、そういうまあ何といいますか通知は、もちろん経営者じゃなくて、権利を持っている大臣許可した許可対象者に行っていることは、これは当然ですね。しかし、この人は漁業を全然やってない、別な人が権利を借りてやっている。まあ権利の借り賃ぐらいは何ぼか払っているでしょう、まあそれは幾ら払っているかわからぬけれども。それで船もこの人の持ち物、いろんな資金は全部この人が出している。ことしは漁業はだめになったけれども、従来ずっと何年もこの人がやっている。ところが、交付金が行ったところが、こっちの権利者の方が、全部とは言わぬけれども相当の金額を、これは当然権利を持っているおれの権利である、おれによこせと、こうやっているわけです。そこでトラブルが起きているわけですが、私はこれは一種のペーパー船主みたいなものなんですからこれにやる必要はない、当然こちらの方にやるべきだと、こう思うんです。ここで具体的に言えば悪いから言わないんですが、これが現実なんです。どうですか、長官、補償金はどっちの方に支払うべきですか、それをはっきりここで聞きたい。
  65. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) どうも、先生のお話だけでは実態は必ずしも明白でございませんので、先生の御質問に対してお答えするためには、実態を少し調べてみませんと私もこの場で判断をいたしかねますので、もしお許しをいただければ、具体的なケースを後ほどでもお教えいただければ調査をしてみたいと思います。
  66. 川村清一

    川村清一君 それじゃ、後でお話ししますから、具体的に調べてみてください。  それから、大臣、こういうことはどういうものでしょうかね。北転船の一隻当たりの政府交付金は三億一千万、それに融資として六千万、三億七千万。ところが、第一次でもって百五十四隻のうち三十隻を減船せいと、こうやったところが、もう減船希望者が一人もいないわけです。そこで、残る人たちが共補償で結局積み増しをしなければならぬ。この積み増しの問題を私は前にここでお話ししたわけですが、政府の方としてはそれまでめんどうは見られないという御答弁だったので、それはまあ見られないのが一つの筋だと思うんです。ところが、結論的には三億七千万ぐらいではとてもやめる者がなくて、ついに六億まで上がったんであります。で、六億円で手を打ったわけですよ、何とか三十隻は減船したと。こういうことを御承知かどうか。これは大変なことですね。  そこで、私は重ねてここではっきりしておきたいことは、大臣、今度の長期協定でどうなるかわからぬけれども、そこまで言わなくても、この第二次減船の北転の二十七隻というものはこれはどうなっておるのかということと、それから、今後あらゆる魚種において、あるいは北転船においても、あるいは中型のサケマス漁業においても、ずうっと減らされてきた場合に、もはや共補償なんていうことは現実の問題としてはできないと、残留の漁業者がその分を見てやるなんていうことはとうていできない現実に来ておると思うんですが、これは一体どうでしょうか。政府のここの御見解は。——そこでいますぐ、私がいまこうやれと言うことは、はい、やりますというようなことには絶対なるような問題の提起ではございませんけれども、もうここまで来たんですから、どうですかひとつ、全部こういう遠洋漁業漁業権を政府が補償して、全部政府が買ってしまったらどうですか。ちょうど旧漁業法によって与えた漁業権というものを、この現在の漁業法が、新しい漁業法ができたときに全部買い上げて、そうして新たに定置漁業権でも共同漁業権でも与えて、現在の新しい漁業の仕組みというものをつくったんです。日本漁業構造というものをつくったんでしょう。それをもう一回やるべき時代に来ているんじゃないですか。——いやいや、大臣がこうやられることはわかるんですよ。  私は、二百海里時代というのは日本の水産というものが一つの維新時代を迎えたんだと、昭和二十四年のあの時代と同じ時代に来ておるんだと。一回全部買い上げて、そうして遠洋漁業のようなものは、私企業、個人経営はこれは認めないと。公社のようなものでもって、——まあ社会党だからこう言うんですが、あなたの方はそれは絶対賛成しないと思いますが、こういうようなことでやることによってこういうような問題が全部解決するんではないでしょうか。そうして、資源を守るという点からも、——私は、こういう席で北洋漁業の実態なんというものをここで申し上げる必要はない。申し上げたいところもあるが、私も日本国会議員として日本の国益を考えれば、この場所でそういうことは言えないから言わないが、言うべきことはたくさん持っておる、材料は持っておる。そういうことによって資源というものを守るというような措置もできると思うんですが、いかがですか。  もう時間がありませんから、私はこれで終わりまして、後、同僚の丸谷議員とそれから坂倉議員がやることになりますので、私の質問は、今後どうせ長期協定を締結する時代に来たときにいろいろまた問題を提起してお尋ねしますが、いま私の申し上げたことだけについて御回答いただきたいと存じます。
  67. 鈴木善幸

    ○国務大臣鈴木善幸君) 今回の減船に対する政府の救済措置、これは私どもとしては、現在の国の財政事情の中におきまして精いっぱいの努力をしたつもりでございます。たとえば漁業許可に対するところののれん料というようなものにつきましても、一年間の平均の所得、そういうものを考えて五年間それを見たというようなことでございますし、なお、残存漁船の共補償に対する特別な融資の措置も、従来にない九〇%まで農林漁業金融公庫から見ると、そういうようなことで、私どもとしては誠意を持って最善を尽くしたつもりでございます。私はそれは適正な政府の救済措置であったと、このように考えております。  しかし、川村さん御指摘のように、それでもなおかつ残って漁業した方が将来に希望が持てるというようなこと等で、なかなか減船の方に回る人がないというようなことで、今度はそれに上乗せをして減船者を選択をすると、こういうことに業界が動いておるということも私も聞いておるところでございます。  私は、この際、業界の諸君にも申し上げておるんですが、余り無理をして、残る者もやめていく者もとにかく総貧乏になってはいけない、やはり二百海里時代に対応し、漁獲量等に見合った適正規模の操業隻数操業体制というものを確立をして安定をするようにしなければいけない、総貧乏になってはいけない、こういうことを申し上げて自粛ある措置を指導をいたしておるところでございます。しかし、このさらに上乗せをした分につきまして、税対策上いろいろやはり業界にも問題がございました。この点につきましても、政府の救済交付金あるいは正規の共補償の分につきますると同様に、その上乗せをした分につきましてもこれを分離課税として、そして従来これを新しい投資に二年の間に向けた場合に税の免税措置というものがとられておったわけでありますが、これも四年間というぐあいに延長をいたしまして、これらに対する救済の措置が実質的にも確保されるようにと、そういう配慮まで実はしておるわけでございます。そういうようなことでございますので、私ども政府の今回とった救済措置というものは、本当にできるだけのことを私どもはやったつもりでございます。  また、農地改革、漁業権改革の際と同じように、この際漁業許可、これを全部政府で買い上げてやったらどうかという、これは大変な問題を提起されたわけでございますが、御承知のように、漁業権改革の際におきましては、大部分漁業協同組合の共同漁業権あるいは区画漁業——当時は区画漁業権と申しました。そういうものに対する漁業権改革の措置として、政府でこれを一遍補償をやりまして、そのかわりに二千億というものを二十年間に新漁業権者が納付をすると、こういうことにしたわけでございます。しかし、池田内閣の際におきまして高度経済成長、そういうことで国の財政事情も非常に年々よくなったというようなこと等もございまして、私ども池田総理にお願いをして、この政府に分割支払いをする二千億、こういうものを棒引きにしたことがございます。そういうような過去の経緯がございますけれども、私は、いまのように減船に対する措置等につきましては、今後も今回のようにできるだけのことをしてまいると。その他の残存漁業者につきましては、この二百海里時代の漁獲量に見合った適正規模の操業体制を確保しながらやってまいるという措置で対応してまいりたいと、このように考えております。
  68. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 御答弁の方が長いので、私の時間がなくなってしまいました。答弁を簡潔にお願いいたしたいと思います。  ただいま川村先生から大変重要な提案がなされておりますので、これらは、ひとつ大臣、十分検討をしていただきたいことを、まずもってお願いいたします。  次に、いま長官答弁の中で、罰金の基準が統一を欠いていると、そしてそのことをいろいろ聞いているが、それらについて注意してほしいと連中に話しているというくだりがございます。この連中というのがわかりませんので、連中というのはだれを指すのか、注意してほしいと連中に話していると、こういう答弁でございますので。  それから大臣にお願いいたします。ソ連の方と話をすると、漁民の言い分といろいろ違うので、罰金の調書を漏れなく渡してほしいと申し入れをしておると。実際に調書をその後出しておるのかどうか。そして、それを入手しておれば、入手した調書によってどういう検討をしているかということを、ひとつ御答弁願いたいと思います。  それから三点、罰金が、当然、措置法によって千万円以下という円建てでございますし、担保金等も当然円建てだと思いますが、外国から持ってくる場合、それはドルに換算してドルで持ち込んで円に直すのかどうか。これから見ると、ただ円建ての条項しかございませんので。  その三点、ひとつ簡単にお願いいたします。
  69. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) ちょっと第一点、連中というのは、私どこで申し上げたかつまびらかでございませんが、もし正確に言い直さしていただきますと、一つは、ソ連の監督官がわが国漁船に科しております罰金の額が統一を欠いているということで、これはすでにナホトカにおきまして第一回の専門家会議をやりましたし、先般モスクワで日ソ、ソ日の暫定交渉の延長交渉をいたしますときにも、この問題につきましてソ連側担当官に言っておりますので、それらを含めて申し上げたのじゃないかと思うので、適当じゃなかったとも思っております。  それから調書の点でございますが、これは先ほど大臣からお答えいたしましたとおり、先般のモスクワでの専門家会議の際に、ソ連側としては、今後すべての場合調書の写しをこちらへ交付するように下に徹底をさせるということを言っております。しかし、いままでもすべての場合に調書がもらえなかったわけではございませんで、調書の写しをもらった船もございます。それらにつきましては私ども調書を検討し、それがわれわれの協定内容から見て妥当であるかどうかということはその都度検討いたしております。ただ、調書を持っていない船につきましては必ずしも現実では明らかでないので、先ほど大臣からお答えいたしましたとおり、ソ連の方に要求をいたしたものでございます。  それから、ソ連船の罰金の支払いでございますが、これはソ連から日本あてにはドルで送金をしてくるようでございますが、現実にソ連の大使館から保安庁の方に渡ります場合には、これは円に換算されまして円で支払いをされるというふうに聞いております。——いま罰金と申し上げましたのは担保金の誤りでございますので、訂正いたします。
  70. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 私は、改正の法律案の性格を理解をするために少し質問をいたしたいと思うんですが、第八十国会の中で成立をいたしました領海法並びに漁業水域に関する暫定措置法でございますが、これは特定の外国を対象に置いたものではなくって、新しい国際海洋秩序の展望、あるいはこれの現実に対応するという立場の中で、わが国の管轄権行使のいわゆる根拠、こういう立場でこの法案が成立をしたというふうに理解をするんですが、間違いありませんか。
  71. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) おっしゃるとおりでございます。
  72. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 今回提出をされました改正法案ですが、これは具体的にはいま川村先生から御論議をいただきましたように、日本国の「地先沖合における一九七七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定」いわゆるソ日協定ですね、これにかかわる措置の具体化と、こういうふうに一因としては見るわけでありますが、さきに質問いたしましたように、これは国際的な動向から見て、さらには漁業の性格という観点からながめて、漁業期の問題その他をとらえながらなるべく漁業に差し支えないように早期釈放しようという国際的な流れ、これに合わせてこの法案が提案をされたというふうに理解をしていいわけですか。
  73. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) これもおっしゃるとおりでございまして、最近の各国間に結ばれております二百海里時代下の操業協定におきましては、違反船は罰金その他それに相応する適当な担保またはそれを証する書面が提出された場合には、早期に釈放するということをお互いに約束するのが通例でございます。
  74. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 そうしますと、日本の隣接をするという立場になるところですね、すなわちアメリカあるいは南北朝鮮、中国、台湾省、こういった隣接をする各国との関係についても、この法案というものは具体的な事案というものが発生をすればこの改正法律というものは適用されると、こういうふうに理解していいわけですか。
  75. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) それはおっしゃるとおりでございまして、わが国の二百海里内でこの法律に基づきまして操業する外国漁船につきましては、これが適用されるということでございます。
  76. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 これは、先回配られました参議院農林水産委員会調査室の資料なんですが、この三ページに、後段の方ですが、「漁業水域法」は、「領海法」とともに七月一日から施行された。漁業水域は、韓国、中国に面する西日本海域を除いて設定された。また韓国人、中国人については、漁業水域内における規制もほとんど適用除外している。韓国、中国近海では日韓漁業協定、日中漁業協定に基づいて平穏な操業が確保されているため、このような措置がとられたものである。」と、こう説明書きが加わっているわけです。この説明からいきますと、これは除外規定がどこかにあるんじゃないかという、こういう立場になるんですが、この辺はどうなっているのか、ひとつ明らかにしてもらいたい。
  77. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) これは二百海里法に基づきまして、二百海里法はわが国の沿岸二百海里に設定をされるということになっておりますが、除外する海域がございまして、それはすでに定めておりますが、日本海の西部並びに東海、黄海等でございます。それとまた韓国人、中国人に対しましては、ここにございましたような理由もございまして、二百海里法のそれぞれの強制規定等につきまして適用除外の措置をいたしているわけでございます。
  78. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 それは、この法律のどこに規定されているんでしょうか。
  79. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) まず法律でございますけれども漁業水域につきましては、第三条の定義がございまして、ここで二百海里漁業水域の定義がございますが、その三項の末尾に括弧がございまして、「(領海及び政令で定める海域を除く。)」というのがございまして、この政令によりまして、先ほど申し上げました海域が適用除外されていることが一点ございます。  それから、特定の外国人に対します適用除外につきましては、十四条がございまして、五条から十一条までそれぞれの強制規定がございますが、これは「政令で、当該規定ごとに外国人及び海域を指定して適用しないこととすることができる。」と、これの政令で適用除外になっております。
  80. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 そこでお尋ねをしたいんですが、現実問題といたしまして、さきに私は、決算委員会の派遣で実は第七管区の海上保安部を実は調査を行ってまいったわけでございますが、そのときにいろいろと報告をされておる事態の中で、大変な問題が発生をしているのですね。件数からいきましても、この報告によりますと、昭和五十一年度に漁業関係で四百七件のいわゆる侵犯操業というものがこの第七管区の中で挙がっているわけでありまして、本年に入ってからも九月までに五百十二件というふうに報告をされている。これらにつきましても、この対象になっておりますのがいわゆるソ連とのかかわり、さらには韓国とのかかわり、こういうことになるわけであります。本年の七月から八月の二ヵ月間に十二隻のイカ釣り漁船が、これは日本北部でありますが、ソ連艦艇から罰金を支払わされている。あるいはその前には、日本漁船が韓国艦艇から銃撃をされるという事件が二隻あった。あるいはまた、この七月の二十三日でありますが、国籍不明で行動不審船、これを見つけて巡視艇あるいは飛行機を駆り出して追いかけたけれども、とうとう逃げられてしまった。こういう事案が具体的に報告をされておるわけでございます。  で、これらのかかわりは一体これからどういうふうな処理になるんだろうか。もちろん、これからの展望を考えてみましたときに、韓国にしろ中国にしろ、漁業水域いわゆる経済水域としての二百海里宣言は間もなくだろう、こういうふうに見るわけでありまして、これらに対するところのわが国の姿勢、こうしたものについて、考え方あるいは対処の方法等について少しお答えをいただきたいと思います。
  81. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 具体的なケースにつきましては保安庁の方からお答えがあると思いますけれども、従来また現在、特に韓国との関係につきまして申し上げますと、従来は日韓漁業協定によりまして、わが国領海が三海里の際におきましては、沿岸の基線から十二海里まで特定の海域でございますけれども、これは漁業水域ということにいたしまして、韓国漁船操業を禁止いたしております。それらの違反となった事例がたくさんあるようでございまして、それらは保安庁の方で取り締まりをいたしております。ただ、領海が十二海里になった以降はこれは領海侵犯という形になるわけでございまして、これはこれでそれぞれ処分がなされております。それ以外につきましては、先ほどお答えいたしましたとおり、韓国もまだ二百海里をやっておりませんので、私どもといたしましては、韓国の関係水域漁業水域に指定をしないといいますか、設定をしないと同時に、韓国人に対しましては、わが国漁業関係漁業水域法の取り締まりの対象にしないということで現在運用をいたしておるわけでございます。
  82. 向井清

    政府委員向井清君) 先生がおっしゃいましたように、日本海の一部あるいは東シナ海におきましては、二百海里水域というものが設定されていないという現状でございますが、海上保安庁といたしましては、当然近い将来において設定がなされるであろう。そのときの警備、取り締まり体制というものも当然考えておりまして、先ほど御説明いたしました昭和五十二年度当初予算並びに補正予算において整備をいたしております大型船艇、航空機というようなものも当然日本海の全域、あるいは東シナ海というものを対象にして考えております。これからもそのような海域の取り締まり、警備に大きなウエートを置きながら整備を図っていきたい、このように考えておりまして、先生御指摘のように、いろいろ違反事件が累積しているわけでございますが、今後は一層体制を強化いたしまして、万全を期してまいりたいというふうに考えております。
  83. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 そこで、現実的な形で御質問を申し上げるわけですが、その際に、密漁船といいますか、こちらの中へ入ってきて操業をしている船、それを見つけて警告あるいは停船命令その他含めまして行っていくわけであります。資料で明確にまだ私の方もきちっと調べておりませんが、北の方のソビエトの関係におきまして当面この二百海里水域の争いの問題でありますが、その形の中で拿捕をしたものはこの法案で適用されます。ところが、拿捕しないで逃がすケースというものは相当あると思うのです。たとえば第七管区の、私が実際お話を聞いてきた中ではあるわけでありまして、そのことの想定が北の場合にも当然あるんじゃないだろうか。したがって、拿捕した場合の取り扱いというのは、なるほどこの法案で結構であります。しかし、拿捕に至らないでたとえば逃げられた場合、そうしたもののケースというのはいま具体的に把握されておるのかどうか、いまのこのソ連とのかかわりの中で。この辺がおわかりでしたら、ひとつお答えをいただきたい。
  84. 向井清

    政府委員向井清君) 北方水域におきますソ連の取り締まり関係で申し上げますと、現在までに二十五件の立入検査を実施いたしまして、その間に四隻の違反が摘発され、それを検挙してきたということでございまして、立入検査を実施しましたものについては精細に違反事項の捜査をしたわけでございまして、その他の船につきましては、その辺のところはっきりしておらないということでございます。
  85. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 国籍が明らかになりまして、本来違反をしていたというふうに認識をされて、それが拿捕されない、すなわち、たとえば担保金も取れない、こういう状況になったときに、一体その措置はどういうふうに行われるのか、この辺が一つの私が聞きたいポイントなんです。これはむしろ海上保安庁じゃなくて、水産庁、あるいは他国とのかかわりでありますから外務省関係も絡みまして考え方があろうかというふうに思うんでありますが、いかがでしょう。
  86. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) どうも御指摘のケースがよくわからないのですが、想像できますのは、結局現場を取り押さえることができなかったケースとしては、たとえば、停船命令をいたしましても逃げてしまったというようなことその他じゃなかろうかと思いますけれども、そういうような場合にはやはり確認をいたしまして、これこれの船がいつどこで停船命令違反であるということを通告をして、それでやはり処罰を外交ルートその他を通じてやるということではなかろうか。わが国の場合にも、停船命令違反といたしまして十月二十日までに五件、その後二件ふえまして七件ございますが、それぞれやはり他の場所でまたつかまりまして言われたようなケースもございますし、その他、別途停船命令違反として罰金を科されるというようなことがございますので、それぞれケース・バイ・ケースによると思いますけれども、確認をすることが先決でございまして、確認によりまして担保金の徴収というような手続に入るということ以外には、ちょっといまのところは考えられないことであります。
  87. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 時間がありませんのできちっと聞くわけにまいりませんが、結局水の上でございますから、たとえば操業中に網を流して逃げるとか、ジグザグで船を寄せられない状況、こういうのが大変海上保安としては苦労されている、こういう実情がはっきりしているわけでございます。したがって、見つけたけれどもそれの措置がしにくいケースというのは、具体的には幾つかあらわれてくるというふうに想定が成り立つわけであります。したがって、それらの取り扱いを私は法案自体、今回はともかくといたしまして、当然考えていっていいんじゃないだろうか、こういう感じがいたすわけでありまして、ぜひその辺は御検討をいただきたいというふうに思います。  なお、法案そのものにつきまして、幾つかの政令の内容等も含めましてお聞きをしたい課題等が具体的にあるわけでありますが、時間がありませんので、きょうはこの程度にとどめます。
  88. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後一時再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時七分休憩      —————・—————    午後一時八分開会
  89. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  漁業水域に関する暫定措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  休憩前に引き続き、本案に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  90. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 私は、二つの問題について大臣並びに関係者に質問をいたしたいと思います。  まず第一は、二百海里時代におけるわが国漁業の対応策であります。  さきの国会で、領海法あるいはまた漁業水域法を制定して、わが国も二百海里時代に処する国内漁業の対応を一応講じたと言ってもいいと思います。ところが、国際的にはアメリカあるいは韓国、中国、この東西関係は、私はまあまあというふうに楽観し過ぎてはいけないけれども、対応策はあると思うんです。ところが、ソ連あるいはオーストラリア、ニュージーランド等の南北関係が非常に問題が残っておる。それでまた、私ども漁民といたしましても、非常に不安定な状態が続いておるのが現在の実情であろうと、かように考えます。  そこで、まず日ソ漁業交渉についてお伺いをいたします。  日ソ漁業協定も、ソ日漁業協定も、本年の十二月三十一日に効力を失うということになっておるわけでありますが、来年の一月一日からの北洋漁業はどうなるのかということが関係者の最大の関心事である。新聞報道によりますと、両協定を一ヵ年延長することで日ソ間の合意ができたように伝えられているのでありますが、実際に調印はされておらない。また、今国会に承認手続も行われておらない、持ち越しとなっておる。来年のソ日及び日ソ協定の締結の見通し、国会手続等について政府の所信のほどをお伺いいたしたい。関係漁業者に対しては、来年一月一日以降、万が一空白な状態が生じたとなると、非常に漁民は淋しい思いをする。まして、漁獲割り当て、あるいは漁業水域操業隻数の規制等がことし以上に厳しくなった場合には、非常に漁民は迷惑をすると思いますが、これに対する大臣の所信をまずお伺いしたい。
  91. 鈴木善幸

    ○国務大臣鈴木善幸君) 二百海里時代の対応につきまして、東西関係はまあ一応そう心配のないような状況にある。しかし、南北関係は非常に情勢が厳しいのではないか、こういう御指摘でございますが、御指摘のとおりでございまして、アメリカ、カナダ等は、御承知のように、自分の二百海里内の操業を中心としまして、遠洋漁業として他国の水域漁船出漁するというようなことが余りございません。そういうような関係もございまして、また、長年にわたる日米、日加の友好関係の基礎の上に立ちまして、話し合いが円満にいっております。私はただいま日米交渉、また日米加三国交渉の経過を見ておりますが、大体初村先生御指摘のように、私どももそう心配のないような雰囲気のもとに今後も話し合いを継続してまいる見通しでございます。  一方、日ソ関係でございますが、これは日本ソ連も世界における二大遠洋国でございまして、それだけに二百海里時代の影響を一番多く受けておると、こういう両国の事情でございます。とくに、日ソの間には北方四島の領土絡みの問題もありまして、大変国会の先生方にも国民の皆さんにも御心配をかけましたが、一応今年度の暫定協定という形でモスクワ協定、東京協定、それぞれできたわけでございます。しかし、これは一九七七年の十二月三十一日までの暫定の取り決めでございまして、来年度以降の問題はこれからの問題ということになりますが、先般来、モスクワに実務者を主体とする代表団を送りまして交渉をいたしたわけでございます。  その結果、わが方としては、できるだけ日ソ関係を長期にわたって安定をさせたい、こういうことで五年なり三年なりの長期取り決めにしたい、こういう考えでございましたが、ソ連側は国連海洋法会議の結論が出るまでの暫定措置として最高会議幹部会令でもって二百海里の設定をしたものである、であるからこの協定もそう長期にはできないということで、いろいろ交渉の結果、一年間とりあえず延長する。しかし、一九七九年を考えた場合に、それだけではどうも不安定であるというような話し合いで、協議条項をそこに一項目設けまして、一九七九年の操業につきましては七八年の適当な時期に協議をして延長するかどうかを決めようと、こういうカニ・ツブ協定と同じような考え方で議定書の話し合いが合意に達しまして、私どもはそこで議定書だけでも調印をしたいということでございましたが、ソ連側は来年度のクォータとともに調印をすべきであるということで、この合意に達しました議定書は露文と日本語のこの議定書というものを、案というものを交換をすると、こういうことで合意をしたわけでございます。  したがいまして、クォータの問題は残っておりますけれども、来年度引き続き現在の暫定協定が、モスクワ協定も東京協定もそのまま延長されるということだけはこれは固まったと、こう御理解を賜りたいと思うわけでございます。したがって、中断することがなく操業ができる。  残された問題は、来年度のクォータの交渉、この問題が残されたわけであります。ソ連側は九月交渉で一緒にやってしまおうかと、こういう話もございました。しかし、わが方としては、操業海域の問題あるいはクォータの問題、まあじっくり時間をかけて交渉もしたいということでございまして、これは十一月の上旬ということでございましたが、その後向こうから連絡がございまして、向こうからソ連革命記念日、記念祭等もこれありということで、十一月十四日から交渉を再開をいたしまして、クォータの交渉並びに漁業協力協定、この二つの案件を代表団を送りまして交渉することになったわけでございます。私どもとしては、先般の交渉に当たりましては、本体の方の交渉に領土絡みで非常に時間を食いました。そこでこのクォータ交渉、操業海域の問題は、きわめて制約された時間の中でやった関係もございますので、今度はひとつ腰を据えて、十分日本の立場というものを反映できるように最善の努力をいたしたい、こう考えております。
  92. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 いま大臣から説明を願って、大体安心したわけでありますけれども、なかなか向こうは力の関係を相当考えて交渉に上がっておるように国民は考えておるわけでございますから、粘り強いひとつ政治力でうまく協定等の処理が、議定書が交換できるようにお祈りをするわけであります。  次に、同じ日ソ関係でありますけれどもサケマス漁業について、一九五六年以来これはずっと日ソ漁業条約は続いておるわけでありまして、すでに本年の四月二十九日、ソ連側から条約廃棄の通告が行われておると聞いております。同条約第八条の規定によって、「この条約は、他方の締約国が廃棄通告を受領した日の後一年で終了する」ことになっております。サケマス漁業の漁期が始まる直前である来年の四月二十八日に終了して、その後は無条約状態と一応なると解釈するわけでありますが、その場合における対応及びサケマス漁業の確保について政府はどういう考えをいたしておるか、お聞きしたいと思います。
  93. 鈴木善幸

    ○国務大臣鈴木善幸君) 北西太平洋日ソ漁業条約は、御指摘のとおり、四月二十八日で失効をすることに相なっております。したがいまして、わが方からは、漁業協力協定一つの大きな重要な柱として、このソ連二百海里の外の公海上におけるサケマス資源の調査、資源の評価並びに保存措置、操業の条件、手続、そういうものをきちっと協定をしたいということで、日ソ漁業協力協定というものを提案をいたしております。しかるところ、ソ連側は、まだその協力協定については政府部内で検討の段階であって方針が決まっていないと、こういうようなことで、十一月の十四日からの交渉にこれを移すことになったわけでございます。  私は、このサケマスの問題は、アメリカ並びにカナダ、ソ連ともに、御承知のように母川主義を主張いたしております。遡河性魚種につきまして、二百海里の外であってもそのサケマス起源の国が管轄権を持つのだと、こういう主張をしておるわけでございます。  そこで、日米加三国でこのサケマスの問題を先般来話し合いをいたしましたが、アメリカに対し日本側からも、考え直してほしいと言っていろいろの提案もいたしております。各国の、三国の主張がそれぞれ出そろいましたが、これは改めて一月の早い機会に再開をして、この問題を結論を出そうということになったわけでございます。アメリカは当初、アメリカのこの二百海里法ができました時点において、ICNAFあるいは北太平洋の日米加国際条約、こういうものから脱退をするというような方針が打ち出されたこともございますが、今回交渉に臨んでみますと、日米加三国のこの北西太平洋漁業条約はこれを改定して存続をさせようと、こういうことにアメリカ側の方針が変わってきておるようでございます。したがいまして、日米加漁業条約の改定というような枠の中で、このサケマス問題をどういうぐあいに具体的に三国間で協定をするかと、こういうことで、ただいま私どもこれに最善の努力をひとつ傾けようということにいたしております。私があえてこの問題に触れましたことは、このことが日ソの二百海里の外のサケマス交渉、これにも微妙に影響を持つであろうと、こういうことで、ただいまこれに触れたお話を申し上げたわけでございます。  いずれにしても私どもは、二百海里の外、これはソ連系のサケマスも、日本系のサケマスも、あるいはアメリカ系のサケマスも、ここで混淆しておる特殊な海域でございます。そういうようなことで、ソ連の一方的な管轄権ということを了承するわけにはいかない。日本側としてもそういう事情を十分踏まえまして強力な交渉をやっていきたいと、こういう方針で取り組んでおるところでございます。
  94. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 次に、ニュージーランド、オーストラリア等における二百海里漁業水域設定の問題についてお伺いをしたいわけですが、さきに来日したトルボーイズ・ニュージーランド副首相との会談、オーストラリアとの交渉経緯等について、農林大臣がここで答弁できる範囲内で、どういうふうになっておるか、経過を御説明願いたいと思います。
  95. 鈴木善幸

    ○国務大臣鈴木善幸君) 先般、御指摘のように、ニュージーランドのトルボーイズ副総理がお見えになりまして、私も三回にわたって会談をいたしました。福田総理とも前後二回にわたって会談をしておるわけでありますが、主としてニュージーランド側は、牛肉の枠を安定的に、しかもそれをいままでよりも広げてほしい、拡大してほしいということ。それから第二は、乳製品——バター、チーズあるいは脱脂粉乳等の酪農品を日本はもっと買うべきである。第三の点は、ニュージーランド産の松材、建築用としてその製材を、日本は、規格上年輪の幅が広いと非常に弱いということで、これを余り受け入れてない。しかもこれに関税をかけておる。こういう点は、アメリカやカナダのツガ材等に比べて非常に不公平ではないか。これを改善すべきである。それからイカ等についての関税を撤廃せよ。こういう四つの柱から成るわが方に対する要請があったわけでございます。  私は、牛肉の問題につきましては、国内の需給事情、特に最近畜産の方は順調に伸びてきておりまして、牛肉も一三%ぐらい生産が伸びておる、消費は六%程度しか伸びていない、こういうようなことから、需給事情からいってそう大幅な輸入というわけにはいかない、こういうことを申し上げまして、まあ上期の割当を大体下回らぬ程度のことを考えたいということを申しておいたわけでございます。これに対しては非常な不満を表明しております。  それから、乳製品につきましては、これはもう法律があって、安定帯価格を上回って暴騰ないし暴騰のおそれがあるというときでないと輸入できないように法律的な仕組みがなっておる、こういう事情を話しまして、日本における乳製品の関係は、昨年来、夏非常に涼しかった関係もあって飲料乳の伸びが非常に停帯をして、原料乳に多く回ったために乳製品は国内でもだぶついておる。であるから、畜産振興事業団が国内のものをこれは買わざるを得ないような、買って調整保管をせざるを得ないような状況下にあるので、これはとてもできない。ただし、飼料用の脱脂粉乳、これは業界の方でも必要を訴えておるからこれは少し量をふやしましょう、こういうことを申し上げてあります。  その他の松材等については、今後実務者の間でひとつ検討をさせることにしましよう。イカの問題については、これはそう簡単にいかない。  こういうようなことで応対をしたわけでございますが、これに対して、ほとんどゼロ回答である、こういうようなことで、そういうことであればニュージーランドとしては、二百海里内において日本漁船の入漁を認めるかどうかということは、国民感情としてこれはなかなか厄介になりますよということを、私にるる話をしておりました。そこで、ソ連は肉を買ってくれるとか、韓国もいい返事をしてくれるとか、だから日本とは仲よくしたいんだけれどもソ連漁船、韓国漁船を優先的に考えざるを得ないというようなこともお話をされておったわけでございます。  しかし私は、いつも申し上げるように、漁業の問題は漁業の問題、酪農品その他の問題は別の問題、こうして切り離して交渉したい。また、漁業協力につきましては、本当にニュージーランドに対しましては日本は最大限の実は協力をやっておるわけでございます。そういうようなことで、日本の誠意というものをひとつくんでもらいたいということはお話をしてあります。  その後、豪州の方からも、いろいろ福田総理にフレーザー首相から、牛肉のアクセスの問題、安定的な輸入の問題等についての要請が、御承知のようにクアラルンプールのASEANの会議等でもございました。いろいろ考えまして、今回下期の肉につきまして割り当て量を決定をいたしました。それは一般枠で四万トン、それから特別枠で七千五百トン、若干それに色がつきますが、大ざっぱに言って去年並み、上期と下期を合わせまして去年程度の牛肉の輸入割り当てをしたわけでございます。これに対しましては豪州のフレーザー首相からも、去年に引き続き去年と同量に近い安定的な輸入を日本がやってくれるということで、大変喜びまして、感謝の電報が来ておりますし、現地における記者会見等におきましても相当満足の意を表しております。隣の豪州が満足をして、その隣のニュージーランドが不平不満を言うというのも、私には理解がいかない。こういう豪州の受けとめ方というのは、私はニュージーランド側にも自然に反映をするであろうと、こう思っております。  漁業協力につきましては、先ほど来申し上げるようにしていきたい。こういうようなことで、いろいろむずかしい問題はございます。ございますけれども、私どもは今後誠意を尽くしまして、このニュージーランド二百海里水域内におけるわが方の実績をできるだけ確保できるように最善の努力をしてまいりたい、このように考えております。
  96. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 政府当局の配慮によって、外国との問題を円満に解決してもらうことが一番国民としても希望するところでありますから、鋭意がんばってもらいたいと思います。  二番目の問題として、午前中から川村委員あたりがずっと質問しておりましたソ連監視船による罰金の徴収問題、これを問いただしてみたいと思います。  日ソ漁業協定が実施に入ってから今日まで約五ヵ月間たっておるわけでありますが、日本の大新聞が取り上げた記事によりますと、ソ連側の検挙数は百三十四隻、一億四千万円、日本側の検挙数が四隻、二百万円、こういうふうな数字を私どもは見せられるわけなんです。そこでここにも書いておりますが、「力の差」、「弱腰水産庁」、「注意するにこしたことない」、こういう記事を書いておるわけでありますが、やっぱり国民としてどうも解せない点がある。  そこでお伺いしたいのは、先ほど来聞き漏らしたのですが、水産庁の警備船が四隻、雇用船が二隻、計六隻と聞いたのですが、これに間違いないか。それから保安庁の警備船はヘリコプターを含めどういう状態にあるのか、まずそれをお聞きしたい。
  97. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 水産庁関係でこの漁業水域の取り締まりに専念いたしております船は、御指摘のとおり官船四隻、それから用船二隻でございます。今年度中にさらに二隻の用船をふやしたいというふうに考えております。
  98. 向井清

    政府委員向井清君) お答えいたします。  海上保安庁といたしましては、総隻数が船艇三百十隻、航空機三十五機ございますが、この漁業水域に関します取り締まり業務につきましては、やはり外国漁船操業実態等を十分勘案いたしまして、重点海域を定めまして、そこに当該管区のみならず、他の管区からも応援派遣をして、船艇、航空機の集中的な運用を図っておるということでございまして、ソ連関係で申しますと、最も問題になります道南海域——北方海域の中の一部でございますが、ここらあたりに巡視船五、六隻を常時集中しておる。それは交代交代で行っておるわけでございます。それから航空機の派遣も行いまして、常時監視を行っておるという体制を堅持いたしております。
  99. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 そうすると、ソ連の警備船ですね、これはあなた方の情報でどのぐらいいるのですか。
  100. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) ソ連の方の警備体制というのは、必ずしも私ども正確には理解をいたしていないわけでございますけれども、推定によりますと、日本海域に大体五隻程度、それから樺太の周辺海域で四隻、それから千島列島周辺で十五隻内外の監視船が配備されているのではあるまいかというふうに推定をいたしております。
  101. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 私は、この取り締まりがいまスタートしたばかりですから、指導が十分でない点もあると思うのです。これはいたし方ないと思いますけれども、やっぱり両方が、たとえば操業日誌のつけ方だとかいろいろあると思うのですがね。それと、やっぱしきちっとした指導体制をすべきじゃなかろうか、かようにいま考えるわけであります。  それから、特に漁民が一番心配しておるのは、ソ連の監視船から罰金を言われた場合、金がない。そうすると、自分たちが持っておる操業許可証を担保に持っていく。これは漁民としては非常に痛い体験なんですよ。だから、こういうことはやっぱり私は、お互い漁業者としての生活を守るための許可証を手放すということはこれは非常に遺憾千万な行為であると、だからそれにかわるようなことが何かないものか。日本の場合にはこの法律にあるように、向こうさんの方でだれかが、外務省かなんかの方が承認をすればすぐ釈放するようになっておりますから、そういう点をもう少しソ連との間に詰める必要がありはしないか。そこで私が一番心配をするのは、漁業者が罰金を渡す、これが外為法に実は違反しやしないか、こういうふうに考えるわけですが、大蔵省の方、どういうふうに解釈しておりますか。
  102. 橋本貞夫

    説明員(橋本貞夫君) 外国為替管理法では、通常外国へ向けた支打いをいたしますときには外貨で、しかも外国為替公認銀行を通じて送るということを想定しておりますので、円貨でしかも直接手渡すというようなケースは、ごく例外的な場合しか規定してないわけでございます。したがいまして、今回のケースにつきましてもこれを形式的に当てはめますと、外為法上問題のある場合も出てまいりますけれども、何分にもこういう偶発的な公海上における出来事でありますし、本来法律の想定してない分野でございまして、まあ拿捕された乗組員の方々の事情を考えますとまことにお気の毒なケースでございます。したがいまして、現行の法令を弾力的に読めないものだろうかと、また規定を整備できないものだろうかと、いま関係当局と折衝の上研究している最中でございます。  なお、私承っておるところによりますと、ソ連船が日本官憲に拿捕された場合には、支払い確約書のようなものを提出するだけで釈放され、罰金は後日送金されるというような形になっておると聞いておりますが、これこそまさに外国為替管理法の想定しておるところでございまして、こういうケースが仮に認められますと、法令上はまったく問題ございません。罰金の支払いにつきましては、こういう外為法違反のみならず、そのほか金額の妥当性とか、支払った後日の証拠とかいろいろ問題があるケースも多いと聞いておりますので、できれば相互主義のたてまえからこういうケースもわが国漁船に適用してもらえないだろうかと、こういう方向で関係当局にお願いしている最中でございます。
  103. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 私は、やっぱり外為法に違反しやしないかということを憂慮しておったわけでありますが、考え方によってこれはどうでもとれるとやはり日本政府ソ連が、現ナマを持っていてこう船長に渡す、その渡した一億四千万が果たして向こうの、ソ連の国のものになっておるのかどうか、それもわからない。こういうことであれば非常に解せないわけでありますから、やっぱり日本のような処置をソ連側にも要請する必要がありはしないかというような気がいたしますので、日誌のつけ方にいたしましても、罰金の取り方にいたしましても今後大きな課題と思いますので、この二点について政府の所信をお伺いしたい。  それから、先日、私が九月二十二日の日に、長崎県の「若宮丸」がビルジポンプの関係から二百万取られておるわけですが、これは交渉においてソ連側といま交渉中である、後日はっきりするというような答弁をいただいておったわけでありますが、この問題がどういうふうに経過がなっておるのやら、この点をお聞きいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  104. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 日ソ協定発効いたしまして以来、わが国漁船ソ連の官憲に拿捕されると、罰金を支払わされるというケースが非常に多数に上っていることは遺憾に思っております。私どもも今後ソ連官憲の取り扱いで不当なもの等につきましては、これは是正方を交渉したいと思っておりますし、また、わが国漁船がふなれのために拿捕されるというような事態に対しましては、講習会、説明会その他趣旨の徹底を図りまして、今後こういう事態の発生を未然に防止したいというふうに考えております。  なお、ソ連の官憲に対しますわが国漁船罰金の支払いの方法につきましてお話ございました。確かに、現在ソ連船を拿捕した場合の担保金の提供方法につきましては、大蔵省からのお話ございましたとおり、保証書というようなものを当局が受け取りますと、それを取り締まり船に通知いたしまして釈放いたしております。ただ、その方法をそのまま日本漁船の場合に適用したならば、果たして簡単に処理できるだろうかということを考えますと、現在の方法は、相手方の大使館というものを間にはさんでおります。そういたしますと、わが国にこれを引き直した場合に、ソ連関係当局をやっぱり間にはさまざるを得ない。そうした場合に、わが国漁船が拿捕され、釈放されるまでの間、短期間にすむかどうか、そういう点も篤と検討いたしまして、できるだけ被害が僅少に済むように——その間は漁労ができないわけでございます。その漁労ができない期間をできるだけ短くするように努力をいたしたい。別にいい方法があれば、検討をいたしたいというふうに思っております。  それから「若宮丸」の件でございますが、確かにこれは私どもソ連の言い分、ビルジを排出したことによって海洋を汚染したと、だから罰金を科したのだという言い分につきましては、納得のしがたい点かございます。これは八月にナホトカで専門家会議を開きました節におきましても抗議を申し入れ、向こうの見解を、ソ連側の見解を聞いたわけでございますが、納得できないということで、去る十月のモスクワにおきます交渉の際にも引き続きソ連側の釈明を聞きました。これでも十分な私ども説明を得ておりませんので、これは現在引き続きソ連側の回答待ちということになっております。できるだけ早く解決をいたしたいと思っておりますし、解決に努力をいたすつもりでございます。
  105. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 今回提案されている漁業水域に関する暫定措置法の一部改正案でありますが、違反外国漁船にかかわる担保金の額の基準、これは主務大臣が定めることになっておりますけれども、この基準についての基本的な考え方をまず伺っておきます。
  106. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) この基準につきましてつ、まず基本的な考え方の一つは、二百海里法によります罰金の最高額が一千万円ということになっております。したがってこの額を勘案することと、それから理論上は、この担保金につきましては、押収すべき物件等を一応返却をするわけでございますので、それを再提出を確保するために必要な金額というものも当然勘案をさるべきものというふうに思います。  で、具体的には、そういう総枠の範囲内におきまして違反の態様、それから相手方が初犯であるか累犯であるか、その他を勘案をいたしまして、これは運輸省及び保安庁とも相談をいたしまして政令で基準を定め、省令でその基準等に従います計算方法を決めたいというふうに思っておるわけでございます。
  107. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 ソ連の場合は罰金刑を科することにしておって、比較的軽い違反の場合でも一万ルーブル、約四百万円まで行政規則で現場の監督官が罰金を科せるようになっております。わが方は担保金で行う、こういう違いがあるわけですね。しかし、制度が違っても、両国の違反者が支払うべき罰金の種類によって支払う額は大体その両国の違反者とも相対的に相見合うような金額になることが望ましいのじゃないかと、そういったことを念頭に置いてこの法律案をつくられたのでしょうか。
  108. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 先ほど申し上げましたように、この担保金額というものは、やはり基礎になります二百海里法の罰金の額等が基準にならざるを得ないわけでございまして、この二百海里法の一千万円の罰金といいますものは、わが国の法体系の中におきましては、最高の額を決めたということになっております。それに対しましてソ連邦の方では、御指摘のとおり、行政罰としては一万ルーブル、しかし、累犯等の場合にはさらに十万ルーブルぐらいまで科し得るというような制度がございます。したがって、おのおのの法体系等が、それから罰金その他の刑罰の体系が違いますので、これを一様に直ちに並べるというわけにはまいらないと思っておりますが、具体的なその範囲内においての話でございますけれども、具体的な担保金の額の決定などに当たりましては、おっしゃるとおり、ソ連その他アメリカの事例等も十分勘案をいたしまして、保安庁とも相談をして決定をいたしたいと、かように考えております。
  109. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 制度が違うだけに、どうしても発足してみると、午前中からの論議にあるように、きわめて大きな格差がついている。そういう点で問題提起がされているわけですから、ソ連側とわが方との金額面でのバランスについて大きな隔たりが出てこないような、そういう事前のやはり打ち合わせというものがあってしかるべきであったのじゃないかと、こう思いますが、その辺の詰めが甘かったのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  110. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) いま御質問は、ソ連側との打ち合わせというふうに私伺いましたけれども、これはなかなかお互いに相互主義だから、罰金の、ないし担保金の額は同じような水準にしようという話は、これはなかなかむずかしい話でございます。もちろん、勘案事項としては、当然勘案されるべき事項であろうというふうに先ほど私どもお答えいたしましたけれども、これを両国が相談をして決めるというような筋合いではやはりないというふうに考えております。   〔委員長退席、理事山内一郎君着席〕
  111. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 すでに暫定実施中に四隻のソ連漁船が拿捕されましたが、この違反内容は四隻とも操業日誌の一部不記載でありますけれども、その不記載の中身は全く同じ種類であったのか、それともかなり内容に違いがあったのか、その辺どうですか。
  112. 向井清

    政府委員向井清君) いまお尋ねの四隻の違反内容でございますが、態様といたしましては大体同一の内容でございまして、漁獲量の記入、魚種名の記入がないと、何日分かないという日数の差はございますが、そういうものである。あるいは合計欄の記入がない、こういうようなことでは大体同じような内容になっております。
  113. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 提案理由の補足説明によりますと、「告知する担保金の額は、事件の種別及び態様その他の情況に応じ、政令で定めるところにより、主務大臣の定める基準に従って、取締官が決定する」と、こうあります。そうすると、今回の場合は不記載内容が大体同じ種類だったので、ソ連違反した各隻ともいずれも五十万円の担保金を言い渡したと、こうありますが、もし今後、不記載内容に違いがある場合には、A隻に対してはたとえば百万とか、B隻に対しては七十万、C隻に対しては五十万というように告知する担保金の額に違いが出てくることは当然あり得るわけですね。
  114. 向井清

    政府委員向井清君) 御質問のとおりでございまして、ただいま四隻検挙いたしました内容は先ほど申し上げたとおりでございますが、一括して申せば、いわば形式違反でございます。形式違反として大体五十万円というめどをつけたわけでございますが、今後、違反内容におきまして実質的な内容がこれに加わるということになりますと、担保金並びに罰金の額というものがそれに累加されるということは当然であろうかと思います。
  115. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 それから、違反内容停船命令違反とか、あるいは無許可あるいは許可証の不所持、それから混獲操業日誌の不記載いろいろ分かれておりますけれども、わが方としての、日本としての告知する金額の額については、かなり細かいところまですでに基準というものを決めてあるんでしょうか。
  116. 向井清

    政府委員向井清君) 現状でお答え申し上げますと、先ほど申し上げましたように、五十万円というのが大体形式違反としてその辺が妥当であろうと現場で裁定をしたわけでございますが、先ほど水産庁からお答えありましたとおり、罰金額の最高が一千万円であるということからしまして、その辺のめどというのは大体統一がとれるのではないかと思っております。
  117. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 要するに、まだはっきり許可証の不所持の場合はどれぐらいが基準、何万円ぐらいが基準あるいは停船命令違反の場合にはどれぐらいが基準という、明確な基準の金額までは決めてないというわけですか。
  118. 向井清

    政府委員向井清君) いまお尋ねの各種の犯罪の種別につきまして、それぞれの大体の基準というものは関係省庁の間で相談して決めておりますが、やはりこれは対外的に公表すべきものでもございませんし、取り締まりの内容にかかわることでございますので、申し上げかねるというのが実情でございます。
  119. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 それから、取り締まり官につきましては、「法律案政令規定見込事項」をきょういただきまして、「第二十三条第一項の司法警察員である者であって政令で定めるものは、漁業監督官及び海上保安官とする見込み。」とあります。したがって、海上保安官とそれから水産庁漁業監督官と両方から出るわけでありますけれども、の担当官によって罰金が不統一であるというと、また向こうから指摘を受けなければならない。そういうことがないように、事前の十分なる打ち合わせその他が行われなきゃならないと思いますが、その点に対する対策といいますか、準備はどういうふうになりますか。
  120. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) これは水産庁関係取り締まり船に乗りますのが漁業監督官であり、保安庁取り締まり船に乗りますのが海上保安官ということになるわけでございます。当然、両者の間に取り扱いがそごしては全くおかしいわけでございますので、十分連絡をいたしまして、統一がとれた措置ができるようにいたしたいと思います。
  121. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 違反外国漁船の早期釈放の制度化を今回の法律案でつくるわけですが、担保金の提供があれば釈放する。その後で海上保安官や監督官等から出された出頭要求に違反者が応じなければ、その担保金を没収し国庫に帰属させる。出頭し裁判を受けるケースはまずないだろうということで、担保金の事実上の効果としては罰金に近い性格を持つんだと、こういうことで今回提案されているわけですが、一部記載不備ということで担保金を科した場合、もし向こうが出頭に応じてその記載を書き直して持ってきた場合はどうなんですか、裁判を行うんですか、それともどうなんですか。
  122. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) これは書き直したからいいというものではございませんで、やはり常時操業の際にどういう記載をしていたかということが問題でございます。したがって、臨検捜査のときに記載の不備があれば、その場において違反があったということになります。したがって、徴収した担保金はそのまま担保金として保管しておきまして、出頭があれば一応これは返す準備ができると。しかし、その後、刑事手続が進行中の間はしばしば出頭の必要がございましょうから、その期間は引き続き担保金として保留をするということになるわけであります。
  123. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 取り締まり体制の整備についてお伺いしたいんですが、二百海里漁業水域内で外国漁船の取り締まりに当たるのは海上保安庁水産庁ということになりますが、現在、巡視船等は東北太平洋岸を重点海域にして特に配置を厚くすると、こういう体制をとっておるようであります。現状の体制ではきわめて不十分であるということについては、当局の方もそれを認めて体制の整備を急がれていると思うんですけれども、今後ますます両庁の業務というものは非常に増大していくと思うんですけれども、将来に対応しての取り締まり体制の整備方針、これをそれぞれ御発表いただきたいと思います。
  124. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 現在、漁業水域の取り締まりに専念いたしております取り締まり船は、水産庁関係で官船四隻、用船二隻でございます。そのうち、やはり御指摘のとおり、その大部分は東北太平洋、日本海等に出動をいたしております。さらにこれでは不足でございますので、今年度中に用船をさらに二隻追加用船をいたしたいと考えておりますし、来年度におきましても用船の追加というものを予算要求をいたしておるところでございます。
  125. 向井清

    政府委員向井清君) お答え申し上げます。  ただいまお話ございましたように、海上保安庁といたしましては重点海域を定めまして、そこに他管区からの応援派遣を含めまして重点的に船艇を配備いたしまして、効率的な取り締まりを行っておると。航空機についてもほぼ同様の体制で行っておるところでございますが、現在のところ、ほぼ円滑な業務運営が図られてはおりますけれども、やはり今後の長い推移を考えますというと、漁業水域あるいは漁船隻数の増加ということもございますし、いまの体制そのものがかなり無理をして集中配備をいたしておりますので、やはり現有勢力のままで長い間このような取り締まり体制を維持することは困難であろうかと思います。  したがいまして、五十二年度から急速な整備増強に踏み切っておりまして、その中の要点といたしましては、ヘリコプター搭載の三千二百総トン型の大型巡視船、それから千トン型の新鋭大型巡視船、それから三十メーターの長さのございます三十ノットの高速巡視艇、それから大型飛行機、中型ヘリコプター、こういう最も使いでのございます優秀な船艇、航空機を整備いたしまして、広範な漁業水域における警備、取り締まり体制に当たらせたいというふうに考えておりまして、すでに五十二年度当初予算、五十二年度補正予算におきまして相当数の整備のめどがつきまして、海上保安庁漁業水域におきますところの取り締まり体制も格段の充実を見たわけでございますが、今後ともこのような考え方にのっとりまして、財政当局とも積極的に折衝を進めて充実を図ってまいりたいと、このように考えております。
  126. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 現状の取り締まり実態でお尋ねをしておきたいんですが、二百海里水域法がソ連に適用されてからソ連船が初めて北海道の海に姿をあらわしたのが九月の十八日、それ以来二百海里水域で約九十隻近いソ連漁船が確認をされておりまして、襟裳岬から釧路沖にかけて大体常時四十隻前後ぐらいは操業を続けているということであります。ここの担当は一管本部なんですが、十二隻の巡視船を配置して、二、三隻がチームを組んで輪番で哨戒に当たっているということなんですが、この体制で十分な臨検が現在行われているんでしょうか。
  127. 向井清

    政府委員向井清君) お答え申し上げます。  ただいまお話ございましたように、第一管区が担当管区でございまして、当該管区の巡視船艇はもとより、先ほどお話し申し上げましたように、他管区からも逐次派遣をいたしまして体制強化を図り、常時五、六隻の巡視船が取り締まりに当たっておると、航空機がこれを支援して常時監視体制をしいておるということでやっておるわけでございます。相手方のソ連漁船の動静は、先ほど申されましたように、最近でございますと毎日三、四十隻の漁船が主として道南海域出漁しておるという状態でございまして、これに対して先ほどお話がございましたように、チームを組みまして順次立入検査を実施しておるところでございます。現在までに、昨日までのところ二十五隻の立入検査を行いまして、本日ただいま入りました報告によりますと、さらに二隻追加されまして本日までに二十七隻の立入検査が行われておる。そのうち四隻が検挙されたということになっておるわけでございます。  ただ、この場合ちょっと御理解願いたいのは、当該海域と申しますのはかなり海象条件あるいは海域の対応厳しいところでございまして、またソ連漁船と申しますのは、わが国漁船とやや異なりまして相当大型の漁船でございます。小さいもので数百トン、大きなものでございますと二、三千トン、母船でございますと一万数千トンという大型船でございまして、これに対して洋上で立入検査を行うということは、わが海上保安庁のいままでの経験からしましても余りそのようなケースはございませんでしたので、かなりの困難があることは事実でございます。実際、救命艇をおろしまして向こうの船に近づくこともなかなか困難でございますし、それから相手のおろしますなわばしごを伝いまして高さ三、四メーター、あるいは母船でございますと、十メーターに及ぶような高いところまでなわばしごをよじ登るというような困難な作業をまず前提としまして立入検査を行う。これも大型船でございますから、相当手間のかかる立入検査を行うわけでございまして、その結果、二十七隻というものの立入検査を行ったわけでございます。幸いにして現場の職員きわめて士気旺盛でございまして、先ほど申したような困難な状況を克服しながら逐次このような取り締まりを行っておる。だんだん業務にも習熟してまいりましたので、これからもほぼ円滑に業務が行っていけるものと確信いたしております。
  128. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 いまの御説明で、大変相手の船は大きい、それから海上がしけていて接舷も非常にむずかしい。そういう困難な中で臨検の作業をやっていらっしゃるわけですが、臨検をしようと思って近づいたけれども、しけのために臨検の機会をやむなく逃してしまったと、こういう例はあるんでしょうか。もしこれが日本の巡視船がもっと大型であれば臨検できたにもかかわらず、船が小さいために、また、しけが非常に強かったために、危険を伴うのでやむなく臨検の機会を逃してしまったという例は、現在までのところございますか。
  129. 向井清

    政府委員向井清君) 実情について若干御説明を申し上げたわけでございますが、確かに先生おっしゃいますように、海がしけました場合には大型船でもって近づいていくということがはるかに容易でございますし、また、広い海域において長期間航海をいたしましてソ連側漁船を監視、取り締まりするということも、大型船でございませんとなかなか容易ではございません。ただ、一つの問題といたしましては、やはり現実に立入検査を行うということにつきましては、ボートをおろしまして相手の船に乗り移るという作業が伴いますので、大型船に優秀な職員を乗せ、優秀な機材を乗せて行うという総合的な業務体制が必要かと考えております。
  130. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 これから冬になりますとますます海もしけますし、さらに船体に対する着氷、氷が着いて非常にまた条件が悪くなる。こういうことで、非常に現場で勤務をされる方たちは御苦労が伴うわけでございますけれども、そういった点で、やはりこの二百海里に伴う取り締まりの体制、これは非常に今後重要な役割りになりますので、現在進めている装備体制をさらに急速に整備されるように、海上保安庁または水産庁も大蔵省に対して強力に申し入れをして早急な整備体制をとられるように、強く要望しておきたいと思います。  日本漁船ソ連の警備艇の臨検を受けて、すでに相当の件数、それから罰金額を払っている状況は、午前中から各委員から質問があったとおりなんですが、ソ連側の言う違反による請求された罰金の額というのは、事例によってかなりさまざまな差があるようなんですけれども罰金の額によってソ連当局としては一定の基準を設けて徴収しているのか、それとも現場の監視船の取り締まり官に一任をしているのか、日本政府としてはどういう判断に立っていますか。
  131. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 確かにいままでのソ連の当局によります罰金賦課の額は、たとえば操業日誌の不備を理由としているものをとりましても、三万円から四百万円にまで及ぶというような差がございます。これは調書をよく見てみないとわからない点もございますが、違反の事実が一つだけではないと、複数にもわたるというような理由、そういうことも考えられるわけでございますが、しかしそれだけでも必ずしも理解できない面があります。  そこで、はなはだ統一を欠くということで、私どもソ連専門家と会合をいたした節に、どういう基準で罰金を科しているのかということを質問をいたしたわけでございます。それに対しましてソ連側は、違反の種類とか、程度等によりまして一定の幅を持った罰金額の基準というものを設けて、その基準によって現場の監督官が具体的な罰金の額を決定をしているというようなお話でございました。で、その幅につきましてどういうようなことを裁量基準にしているかということをも質問したわけでございますが、それに対しましては違反船の総トン数、それからソ連の監督官に対します協力の程度、それから累犯であるか、初犯であるかというような別等の要素を勘案をして現場の監督官が決めるのだということでございました。  それにいたしましても、私ども必ずしも統一ある額が科されておるというふうには考えられませんので、これはわが国漁民に与える影響も非常に大きいからできるだけ統一された額、同じような違反事件については同じような額の罰金が科されるようにぜひ指導をしてほしいということを、強く申し入れているところでございます。
  132. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 ソ連当局の監視体制の責任を持つ監督局、この実情についてお伺いしたいんですが、日本海、千島列島、それからカムチャッカ、オホーツク海別にどうなっているか。また、これを統轄するところはどこなんですか。
  133. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 北洋におきますソ連の取り締まりは、ナホトカとか樺太とかいろいろございますが、それを統轄しておりますのはウラジオにその統轄機関があるようでございまして、これは極東漁業規制総局というふうに言われております。
  134. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 ソ連当局、特に関係があるのはナホトカ漁業総局になっておりますけれどもソ連の監視艇による日本漁船違反摘発の件数、罰金額、こういったものを日本の方で調査したものと、すでにもう照合はされているんでしょうか。
  135. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) ソ連の官憲がわが国漁船に科した罰金の額が、わが国違反船の申告した罰金額とそれからソ連の承知している罰金額が整合性あるかという御質問でございますが、これは私ども日本漁船についてはどういう名目で、どういう罰金をとられたということは照会をし、把握をいたしております。  ただ、従来は必ずしもすべてのケースについて違反の調書、それから罰金の領収書等をもらってきておりません。したがって、ソ連——これは違いはあるはずはないと思いますけれどもソ連の監督官が理解をしている違反のケース並びに罰金の額と、それから日本漁船が理解をしております違反内容並びに罰金の額が多少食い違っておるおそれもございます。と申しますのは、いままでのわが国漁船が払いました罰金の中には、いわゆる罰金と、それから違反して漁獲した魚に応じまして損害金というものを支払わされております。それらの区別が調書ないし領収書等はっきりいたさない場合には、その了解の内容が食い違う場合もあり得るのではないかというように考えております。  そこで私どもは、先般モスクワで交渉いたしました際に、今後は必ず調書の写しをわが国漁船に交付するようにと、それからわが国漁船に対しましては罰金の領収書をもらってくるようにということを話し合いまして、両者合意いたしましたので、今後はそういうような書類が完備いたしますので、食い違い等はなくなるものというふうに思っております。
  136. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 ソ連罰金攻勢の激化に対して、常時意思の疎通というか、調整を図るというか、確認をするというか、そういう立場でナホトカの漁業総局に水産庁の係官を常駐させるべきであると、こういう提案に対して水産庁はそれを決定したように聞いているんですけれども、間違いございませんか。
  137. 鈴木善幸

    ○国務大臣鈴木善幸君) そういう方針で、いま外交チャンネルを通じて交渉中でございます。
  138. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 そうすると、相手方と交渉中であり、こちらの方として、日本水産庁としてはいつごろ、何人、だれを決まれば派遣をするという用意はすでにできていると、こういうふうに受けとってよろしいですか。
  139. 鈴木善幸

    ○国務大臣鈴木善幸君) 何人配置をするか、そういう人数の問題その他も含めて、いま外交チャンネルで交渉を重ねていると、設置をするという方針は、わが方としてはもう決めまして交渉に臨んでおると、こういうことでございます。
  140. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 そうすると、何人派遣をしたいということまで向こうと交渉をしているわけですから、決まればすぐに行ける人の手配も水産庁内部としては内定をしていると、決まればすぐに派遣をできると、こういう準備は完了していると、このように受けとってよろしいですか。
  141. 鈴木善幸

    ○国務大臣鈴木善幸君) そのとおりでございます。
  142. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 それから、今回ソ連から罰金を取られた多くの漁民の人たちの様子を聞いてみますと、非常にやり方に対して不信を持たざるを得ないと、こういうことで非常に訴えがございます。相当高額の罰金を請求されましたけれどもソ連の取り締まり官がその漁船の乗組員の持っている時計に目をつけて、その腕時計を渡すと罰金の額が十分の一ぐらいに少なくなってしまったと、こういう話もあるわけなんですけれども、こういったことが本当に行われているとすると、ソ連の場合は、いわゆるソ連の最高会議幹部会令で決まった、そこから指示された法的な根拠のある罰金の体制ではなくて、ソ連監視艇の取り締まり官のいわゆる胸一つで決まる、賄賂一つでもうどうにでもなるというようなずさんなものではないのか、こういう批判も起きてくるわけですし、そういうことがいつまでも行われているということは非常に遺憾なことでありますが、この点については、大臣、どのように見解を持っておられましょうか。
  143. 鈴木善幸

    ○国務大臣鈴木善幸君) まあ、いろんな場合があって、それが納得がいかないということであってはいけませんので、午前中にもお答えをいたしましたように、必ずその調書を日本の当該漁船に写しを交付するように、これを強くモスクワの先般の交渉で申し入れをしまして、ソ連側も、そのようにぜひやらせる、それを徹底をさせる、こういう確約を得ております。
  144. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 そういうような賄賂まがいの実情について、水産庁としては、漁民からの訴えを聞かれて、その上で抗議あるいはそういうことのないようにというような申し入れをした事実はあるんでしょうか。
  145. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) いま先生の言われたような、罰金をその場でまけるというようなケースは、私どもまだ当該の漁民から聞いておりません。もちろん、そういうことが事実ということになれば、私どもソ連側に厳重に申し入れなきゃならないというふうに思っております。
  146. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 現在まで漁業種別の違反を指摘された件数を、種別ごとに御報告いただきたいと思います。
  147. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) お手元法案審議用の参考資料はちょっと古い資料でございますが、最近の十月二十日現在で申し上げたいと思います。  全体の違反漁船として罰金を科された件数は百二十三件でございましてそのうち最も多いのがイカ釣りでございます。これが五十八隻。それから、あと十五隻が沖合い底びきでございます。それからサンマ棒受けが七隻、それから底刺し網、はえなわが十八隻、あとは北洋イバラガニ東樺太ズワイガニ、千島の花咲き、毛ガニ等が、それぞれ三隻ないし五隻というようなことになっております。その他、一隻ぐらいずつほかにもございます。
  148. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 いまの説明を聞きますと、イカ釣り業者が圧倒的に多いようなんですが、その理由はどういうところにあるんですか。
  149. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) ソ連漁業水域全体に出漁ができるということで許可証を発給いたします船が六千二百隻を超えているわけでございますが、そのうち、もう四千隻以上をその六千隻の中でイカ釣りが占めているわけでございます。それも、イカ釣りの中では中小の船、これが大部分でございます。ともかく数が多いということ、それから中小漁船でもございますので、ふなれな点があるというようなことから、主として操業日誌関係違反を中心にいたしまして、イカ釣りの違反が多かったのではなかろうかというふうに考えております。
  150. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 零細な業者に対する、やはり水産庁としての指導の徹底の仕方が最初からないがしろにしたというか、軽視をしていたという点があるんじゃないかと思うんですけれど、その辺はどうですか、御反省ありますか。
  151. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 私どもは、中小だからとか、大型だからというふうにしたつもりはございません。私どもこの協定発効に当たりましては、ブロック別に講習会等を開きまして、また業界別にも説明会等を開いて、それぞれ末端までの趣旨の徹底に努めたつもりでございます。何せその数が多かったことで、また期間も必ずしも十分とれなかったということもございまして、趣旨の徹底を欠いたといううらみがなきにしもあらずでございます。私どもはその後におきまして、ナホトカにおいて、またモスクワにおいて交渉をいたしました結果等も、通達により、また講習会等により、それぞれ徹底をいたしておりますが、今後ともこれらの違反の減少、絶滅を期するために、随時講習会等を開いて趣旨の徹底には努めてまいりたい、かように考えております。
  152. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 違反内容別の件数を見ますと、この中で操業日誌関係違反指摘が非常に群を抜いて多いわけですけれども操業日誌関係違反というのは、具体的にどういうような内容なんですか。
  153. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 百二十三件のうち、操業日誌関係として分類できるものが八十三件ございます。そのうち、最も多いのが一部記載漏れという、誤記も入っておりますけれども、それが三十四件でございます。その次が、漁獲量を正確に記載をしていなかったというもの、これが十三件、それから、とじひもの末端を表紙等に張りつけて封印をしていないと指摘されたものが八件、それから、ページの番号を記載をしていないというのが八件、それらが多い方であります。
  154. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 ソ連はこの操業日誌について、どうしてこういう厳しい態度をもって臨んでくるのか、理由についてはおわかりになっていらっしゃいますか。
  155. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) これは、やはり二百海里体制というもとにおきましては、漁獲量、それから魚種海域等を中心といたしました規制が行われるわけでございまして、それらの規制を確保するということのためには、操業日誌というものが重要な地位を占めるわけでございます。ソ連船につきましては、従来、そういうような訓練が行き届いておりましたけれども、残念ながら、わが国の船につきましては、操業日誌を正確に記載をするという習慣が必ずしも従来なかったということもありまして、不注意から違反を犯すという事例が大部分ではなかったかというふうに思っております。それ以外におきましても、たとえばつづりひも封印がないというようなことは、これはソ連日本とのいままでの慣習の違いでございまして、ソ連はそれだけ大事に操業日誌を扱っております。ところが、日本の方はそれほどでもなかったというような相違に基づくものというふうに考えております。自後におきましては、それぞれ会合を持って、操業日誌というようなきわめて機械的な事項についての違反は、これを極力なくすということで交渉をし、合意に達したものもございますので、それらの趣旨をなるべく早く末端まで徹底をいたしたいというふうに思っておるわけであります。
  156. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 この操業日誌について、日本漁業者の慣習と向こうの慣習の違い、こういうことは事前にわかっていたことなんで、もっと摘発される前の話し合いというものがあれば、かなり摘発件数は避けられたのではないかと思うんですが、この点、ちょっと操業日誌にかかわる水産庁の取り組み方というのに甘さがあったんじゃないでしょうか。
  157. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 確かに操業日誌は大事なものだと、それから今回の二百海里関係の規制は操業日誌が中心になるということは、講習会等で徹底したつもりでございます。ところが、日本漁民の現状からいきまして、もう少し徹底して講習会その他をすべきであったかというふうに思う節もございます。ただ、先ほど申し上げましたように、それ以外でもつづりひもの問題等につきましては、これは全く慣習が違うので気がつかなかった点でございまして、私どもこれは私の方の風習としてそれはなかったと、それを直ちに違反として摘発するのはおかしいということを申し入れいたしまして、申し入れをしたとき以後におきましては摘発を中止してもらって、一定の猶予期間を置いてから検査をするといいますか、違反を問うというような合意もいたしております。今後はこういうような事例はなくなってくるものと、こういうふうに思っております。
  158. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 そうしますと、操業日誌のとじひもの捺印がされてないということで罰金を受けた人がありますけれども、要するに水産庁としてもそこまできちっとやらなければ罰金を取られるということは予測をしていなかった。だから、事前の講習会でもその点は通達は出せなかったということですね。それで、水産庁からのそういう指示がないために操業日誌のとじひも、割り印というものをしないで罰金を受けたものについては、水産庁はどうなんでしょう、責任を感じられて、その罰金については政府責任と、こういうふうに受けとめられますか。
  159. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 確かに習慣の違いでございましたので、私どもあらかじめそういうところまで指摘ができなかったことは事実でございます。ただ、それを直ちに政府責任として、政府から補てんその他の措置を講ずるということはいかがかというふうに思っております。私どもは、今後そういうような事例の発生をなくすというような努力はいたしたいと思っておりますけれども、過去にすでに支払われた罰金につきまして、国が穴埋めその他の方法を講ずるようなことは困難ではなかろうかと、こういうふうに思っております。
  160. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 その辺の細かいところの取り決めがなかったために犯した違反、それについてはソ連側と交渉してそれを取り戻すという努力はされたんですか。
  161. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 最初の専門家の会議でありますナホトカにおきます八月の交渉におきましては、私ども日本側としては、そういう習慣がないからそういうものを事由として罰金を科することはおかしいということを強硬に申し入れたわけでございます。しかし、ソ連側としては当然のことであるということで、それまでに科されました罰金を返済するとは言わなかったわけでございますが、習慣が違うならばそういうような習慣というものを下まで了知させる期間は必要であるということになりまして、一定の期間は違反として処罰はしないというところまでまいったわけでございます。したがって、過去のこれを理由とする罰金の返還というところまではいっておりません。
  162. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 結局、そうすると、決められた事項を守らないで違反を犯し罰金を受ける、これはもう当然やむを得ないことだと思うんですけれども、当然過ぎるほど当然だと思いますが、国の指示どおりにしたにもかかわらず、また、国の指示がなかったためにささいなことで罰金を科せられる。もうそれはしようがなかったんだとして政府が一切めんどうを見ない、政府責任はないとそのままにされるのは、非常に酷じゃありませんか。何らかの道はありませんかね。
  163. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) この点につきましては、先ほど申し上げましたとおり、非常に困難であるというふうにしか申し上げられないわけでございますけれども、これは蛇足かもしれませんけれども、実際の問題として申し上げますと、違反漁船、これはすべてを当たったわけじゃございませんけれども、その大部分つづりひも封印なしということだけで罰金を科されているわけでないようでございます。ほかのやはり違反事項と合わせまして罰金を科せられているという事例が多いわけでございますので、そういたしますと、つづりひも封印分だけはどうかというようなことになることも考えられる。それは根本的には、それらについて政府が税金から穴埋めをするということが適当かどうかという問題もございますけれども、実際問題としても処理がはなはだ困難であるということでもございますので、この点につきましては、国が穴埋めをするということは現在は考えておりません。
  164. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 それから、停船命令違反というのが五件ありましたけれども、この内容がどうなっておりますか。ソ連の監視船に停船を命ぜられた日本漁船が逃げようとした事件が本当にあったのかどうか、事実関係は確かめてございますか。
  165. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 停船命令違反として罰金を科されましたのは、その後ふえまして現在では七件になっております。で、大体ソ連主張によりますと、臨検に先立ちまして日本漁船停船を命じますけれども、その場合、日本船がそれを無視してジグザグに逃亡したり、それから古い網を投棄したりして追跡を妨げたというようなことを言っているわけでございます。私どもその場合におきまして、そういう事例はあるかもしれないけれども漁船の中にはソ連停船命令がよくわからなかったというような事例もあるんだと。  そこで、ソ連停船命令というものがどういうような方法でやっているのかということを照会をいたしたわけでございます。それに対しましてソ連側は、まず国際信号旗を上げる、それからサイレンを鳴らし、それでもだめな場合にはサイレン以外の音響の信号を順次に発するのだということでございました。しかし、それだけではやはり十分ではないので、もう少しわが国漁船がはっきり認識できるような方法を考えてほしいということを重ねて申しましたところ、最近になりましてソ連側がわが方へ示してまいりましたのは、まず国際信号旗を上げる。で、それと同時に音、または光による信号を発します。それで、以上の信号旗なり、音、光による信号に従わない場合にはロケット信号弾を投げますと。それから接近して、日本語でスピーカー等によってその旨を伝達いたします。それだけをやりますと言ってきているわけでございます。私どもこの程度であるならば、夜とか霧のときとかというときにおきましても相手方の停船命令を知らないで過ごすということはあるまいというふうに考えておりますが、なお、私どもとしまして、停船命令を無視したのと、それから知らなかったということとは違うから、その辺はひとつ厳密に判断をして措置をしてほしいということを申し入れてございます。
  166. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 漁民の方から訴えられている声としては、ソ連の監督官が向こうの漁船に乗って、漁船を使用している場合が、非常に停船命令、そういった標識ですね、うっかり見過ごすことが多いと。それで逃亡と誤解されている点もあるのだと。こういう訴えもあるのですが、今後いま御説明の音とか光、あるいはロケット弾、こういうものがあればわかると思うのですが、それ以前にたとえば漁船なんかを使用している場合、なかなか標識が見えないためにそのまま操業を続けていた、運航していた、それで音を出し、光を出し、ロケット弾を打たれて初めて監督官が乗っているんだなと、停船をしたときには違反ではないと、そこまで話を詰めてありますか。
  167. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) そういう申し入れをいたしているわけでございまして、なかなかこれは事実認定のむずかしい点もございますが、私どもはぜひそういうような取り扱いをしてほしいということを申し入れております。
  168. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 それから、先ほども話の出ましたいわゆる大陸だな資源混獲という違反内容の問題ですが、漁業の実態として、ヒトデとかその他の魚種が一緒にとれてしまうことはやむを得ないことだと思うのですが、この点についてソ連側との話し合いがどうなっているのか。話し合われた後はこの点の違反摘発がその後なくなったか、また再度起きているのか、その辺ちょっとお伺いしたい。
  169. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 確かに、場合によりましては大陸だな資源と称されるようなものが入ってくる、いわゆるヒトデとかツブとか。そういう事例がたくさんあるわけでございます。私どもは、根拠といたしましては大陸だな資源であるからということでございますので、これはいたし方がないといたしましても、やはり当然網を打てば混獲の状態が起きると。そこで、そういうような場合にはまず捨てると。捨てるに際しましても、偶然に監視船が寄ってきて臨検がなされたという場合に、混獲の状態にある生物がまだ海中に生きたままで戻せるというような状態にある場合には、これは混獲をして違反であるというふうに扱ってもらっては困ると、そういう意思があるのだからということを強く申し入れたわけでございます。  私どもとしましては、そういう状態の場合には違反ではないというふうにしてもらうと同時に、死んでしまったような状態の場合には、直ちに海中に投棄をするようにということを指導をしておりますので、今後はこのような事例によりまして違反に問われるようなことはなくなるというふうに考えております。ただ、これらの話し合いが行われました後でも、一、二件なおまだ違反に問われている事例がございますので、私どもは厳重に抗議をいたしまして、至急末端まで指示が届くようにということを要請をいたしておる次第でございます。
  170. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 八月にナホトカでトラブル解消のための専門家会議が行われたわけなんですが、この会談後、ソ連違反摘発の状況はどのように変わってきたというふうに判断されますか。
  171. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 違反は現在まで累計百二十三件ございます。一番違反が多かったのは八月でございます。八月の中旬にナホトカで専門家会議が行われたわけでございますが、九月、十月とまだ激減ということではございませんけれども、減っております。また、形式的な違反というものも減っていると思います。私どもは、さらにこういう調子で順次違反事例が減るように、さらに努力をいたしたいというふうに思っております。
  172. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 ナホトカ会談以後の摘発については、ナホトカ会談で話し合われた結果とどういう関連があるか。話し合いにかかわらず、相変わらず違反の指摘を厳しくやっているのか、それともまた全然別な新しい種類の違反日本が犯しているから摘発されているのか、その辺はどうなっていますか。
  173. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) ナホトカ会談で合意をいたしましたものにつきましては、ソ連船はこれを違反としてはもちろんいたしておりません。その中には、先ほど申し上げましたように、操業日誌関係では末端までなお指示の徹底のために時間を要するものにつきましては、暫時摘発を猶予するというようなケースもございます。したがって、件数だけで直ちに比較はできませんが、そういう形式的な違反は減っております。ただ、ナホトカ会談でも合意に達しなかったものもあるわけでございます。それらにつきましては、引き続きモスクワでの十月での交渉の際にさらに専門家会議を催しておりますが、なお両者で合意をしないようなものが残っておりますので、それらにつきましては、私の方から摘発はやめてくれとは申し込めないので、できるだけ早くこの意見の相違は調整をいたしたいというふうに思っております。
  174. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 一つ確認をしておきたいんですが、十月二日、稚内の漁船ソ連の検査官グループの乗船を妨害したと、こういう理由で罰金百万円を請求されたそうでありますけれども、この漁船の人たちは全く身に覚えがないと、にもかかわらず罰金を科せられたと、こういう訴えをしておりますけれども、この事件は一体どういう内容なのか、実情を御説明いただきたいと思います。
  175. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 御指摘の十月二日の件は、稚内の沖合い底引き漁船の第十五日東丸が、十月二日に東樺太沖でソ連監視船から臨検を受けたわけでございます。そのときにこの漁船第十五日東丸が、去る八月十八日でございますけれども、八月十八日にソ連の監視船の臨検を妨害したという理由で罰金百万円の請求を受けたわけでございます。その当該第十五日東丸は身に覚えがないというふうに考えたわけでございますが、   〔理事山内一郎君退席、委員長着席〕 許可証操業日誌の没収がされては困るということから、罰金を支払って帰ってきたというふうに申し立てております。  なお、八月十八日の件といいますのは、第十五日東丸の話によりますと、わが国漁船が敷設しましたカニかご漁場の中におきましてソ連漁船を見かけて接近した後、そのまま立ち去ったわけなので、ソ連船の言うように臨検を妨害した事実はないということを申し立てております。  そこで、私どもとしましては、この件は第十五日東丸の申し出どおりとするならば、臨検を妨害した事実がないからこの罰金は不当であるということと、それからもう八月十八日にあったものを相当日時がたってから罰金を科するということ、これはおかしいではないかというような二点につきまして、早急にソ連側と話し合いをし、抗議を申し入れたいというふうに思っております。
  176. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 今後の問題として、関係漁業者は、洋上会談のようなものを、話し合いをどんどんやって問題を一つずつ解決していくようにしてほしいと、こういうことを望んでいるんですが、農林省としては、水産庁としてはこれをもっと強力にやっていける準備はございますか。
  177. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 北海道の場合には、宗谷支庁の漁業調査船が中心になりましてソ連側の監督官と洋上会談をした結果、非常にその後違反者もなくスムーズにいっているという事例があることは承知いたしております。もちろん、そういう機会があれば、私ども洋上会談等は大いにやっていきたいと思っております。ただ問題は、そういう洋上会談のほかにも私ども外交ルートを正式に通じまして、交渉すべきものは交渉し、取り決めるものは取り決めるというようなことも、あわせてこれはやっていきたいと思っております。
  178. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 最後に、罰金を取られた漁業者の中には、漁業者側から言わせると不当な理由で罰金を取られたというケースも大分あるようなんですが、こうした場合、その不当性を訴えるところですね、事件抗告の手続方法、これは現状をもっと明確化してほしいという強い声があるんですが、これについては水産庁としては、関係者に対して徹底をするような準備をいま進められているでしょうか。ソ連邦の国内法では、地区人民裁判所に十日以内に抗告することができるとなっておりますけれども、特に十日間ではこの洋上の事件、実際上そういう手続はこれぐらいの期間では不可能なので、操業を終えて帰港してからでも間に合うだけの相当期間ある程度抗告期間を設けてほしい、こういうようなことで要望が出ておりますけれども、これについての御検討はどこまで進んでいますか。
  179. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) これは先ほど大臣からもお答えしたところでございますけれどもソ連罰金というものは行政罰でございます。これに異議がある場合には、人民裁判所の方に異議の申し立てができるという道もございます。ただ問題は、そういう道をとるにいたしましても、御指摘のとおり相当な日時を要するし、その間漁労活動ができないというようなこともございます。そこで私どもは、問題の点につきましては、先ほどお話がありましたように、北海道なり国の指導船等が中心になりまして、相手方の監督官と洋上会談等の機会を持ちまして事実を明らかにする方法、また正規の外交ルートを通じまして、おかしいものはおかしいとして抗議をし、罰金の返還を求めるものは返還を求めるというような道を私どもはとっていきたいというふうに考えているところでございます。
  180. 下田京子

    ○下田京子君 午前中から大分ソ連からの罰金問題が話されておるようですが、大きく二点についてお尋ねします。  第一には、先ほど来からこれはソ連日本との習慣の違いであるとか、あるいは漁民のふなれによるいろいろそういったことで起きていることが多いというお話が大分出されておるようですけれども、だとすれば、逆に言えば、そのふなれな状況が解決して軌道に乗るまでのその間に起きたいろんな問題の中で、悪質な何というか問題についてはこれは別といたしまして、とじひもの問題であるとか、非常に漁民のいわゆるふなれから出てくるミスなんかについての措置については、先ほど来から、まあこれは政府で云々ということについても責任を持って補償するようなことにはならないというお話ですけれども、しかし、やはりこの点について具体的に考えていただきたいということを、私も重ねてお願いしたいところなんです。  といいますのは、御承知かと思いますけれども、九月の十四日にソ連の二百海里罰金によってついに漁民がもう今後操業を続けることができなくなった、許可証の没収、操業断念という事件が起きたということで、これは十月の二十日付の新聞等にも報道されている事件でございますけれども、こういったことが今後も相次いで起きないということは保証がないと思うんです。こういったことといいますのは、この方の場合は第二十五恵福丸で八・二トンの船ですけれども操業日誌に休漁中の日付が記入されていない。それから、船長が交代しているのに、名前を書いていなかったという理由でもって百八十万円請求されたというものだそうです。で、実際にこの方は金策等に駆け回ったけれども、漁協関係からも正組合員でないということで断わられたとか、あるいは担保の問題だとかいろいろあって、道だとか根室市だとか関係するところにみんな頼んだけれども、金策つかず操業断念ということになったというお話なんですね。  となりますと、最初に申しましたように、やっぱりこの習慣の違いだとか、双方のふなれだとか、あるいは指導をきちんとやっぱりとじひも等についてやれなかった部分なんかも含めて、信用保証措置といいますか、金融機関への指導などということもあわせて、政府でやっぱりある一定期間暫定的にめんどうを見るということをどうしても考えていただくことが必要じゃないかと思うわけなんですが、いかがでしょうか。
  181. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 一般的に申し上げますと、やはり罰金の支払いによりまして経営が非常に困難になるというような事例もないわけじゃないと思っております。そういう場合には、いろいろな形でもって資金の融通という道も現在あるわけでございます。  いま御指摘の第二十五恵福丸の事件は私ども承知いたしておりますが、これは特殊な事犯ではなかったかというふうに思っております。私どもはやはり罰金を支払う、それによります損失を政府が何らかの形でもってこれを裏打ちをするということは、財政を支出する側においても問題があるのみならず、また対外的にも問題があるというふうに考えております。  これも先ほど大臣からお答えをしたとおりでございますけれども、一般的に罰金の負担が大きいと、それも悪意、故意ではなくて、見解の相違等によります罰金の支払い等につきまして、互助組織というようなものをつくってこれをカバーする方法はないかというようなことが、現在民間の方で議論がなされているわけでございます。そういう互助的な組織をつくってやるという場合につきましては、私どももいろいろ御相談に応ずるとともに、その組織を運営するために必要な事務的な経費の一部につきましては、国からも助成ができるようにということで来年度の予算に計上し、現在大蔵省と話し合いをしておるというのが現状でございます。
  182. 下田京子

    ○下田京子君 互助会組織の話は先ほども聞きました。それとあわせて特殊なケースだということですけれども、今後こういったケースが決してないということは断言できないことだと思いますし、実際に罰金というか、違反を奨励するという意味じゃありませんけれども罰金の金策にもう困って手の打ちどころがなくなって起きた事態でもありますし、いろんなことを考えてみて、恒常的というのじゃなくて、暫定的に金融機関への指導だとか、あるいはこういった特殊なケースだったら特殊なケースに遭った相談があったらその措置をするとか、そういうものはあってしかるべきじゃないか、こう思うわけです。
  183. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 特殊なケースについては特殊の措置をというお話だと思いますけれども、この第二十五恵福丸の事件につきましては、いろいろいまお話ございましたとおり、漁協からの借り入れとか、それから信用組合からの借り入れその他本人も奔走いたしますし、道庁といたしましてもいろいろ努力をいたしたようでございます。ところが特殊な事情がございまして、なかなか国や組織からも借り入れが困難となり、また信用組合等からの借り入れにつきましても、保証人の問題等がネックになりまして借り入れることができなかったという残念なケースでございます。もちろん、今後こういうような特殊なケースがある場合には、私どもそれぞれ県等を指導をいたしまして、できるだけ必要な資金の融通ができるように、それは指導していきたいと思います。
  184. 下田京子

    ○下田京子君 いま特殊だということで、そのことについては今後対処していきたいというお話だったので、ぜひ具体的に相談に乗って、今後一切操業ができなくなるなどということがないように、特段にまた関係方面と連絡をとって対処いただきたいということを、重ねてお願いをしておきます。  第二の問題ですけれども混獲のことでずいぶんやっぱり問題があったようですけれども、先ほど来から具体的に出ているヒトデのことなんですよね。水産庁指導としてはヒトデについては海に投げればいい、こう考え、まあそういう指導をしているというお話ですけれど、現地の皆さん方に言わせれば、御存じのように、ヒトデというのはもう網に絡まっちゃうと取りにくいわけですよね。だから大事な問題、いわゆるソビエトが大陸だな資源云々とこう言われているけれども、実際に生態的に見てこれは有害だという、そこのところをはっきり認めさせて折り合いをつけないと、ただ投げればいいということになると問題は解決しない、こうおっしゃっているのですよね。しかも、ヒトデ一個が十万あるいは二十万というふうに、先ほど来から基準のことがずいぶん問題になっておりますけれども、そういう形で解決されるということについては納得いかない、根本的に話し合いを進めなさい、こういうふうに言われているわけなんですが、いかがでしょう。
  185. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 確かにヒトデにつきましては、有用性という点から見てこれはそんなに厳密に違反を問うべきものではあるまいというふうに私ども考えます。ただ、ソ連側がこれはやはり大陸だな資源である、大陸だな資源というものは有用性のいかんにかかわらず、やはり生物としてヒトデがその範疇に入るということで、結局意見が合わなかったわけでございます。したがって、とりあえずの措置といたしましては、私どもといたしましてそういう混獲されたものは直ちに海中に投棄をするということ、そういう指導をいたしておるわけでございます。いまお話のヒトデが有用でないということによって、これは大陸だな資源から外すかどうかということ、これは相当根本的な問題にもなるかと思いますが、今後機会をとらえまして、そういう話も別途これは詰めていきたいというふうに思います。
  186. 下田京子

    ○下田京子君 別途詰めていくという答弁ですけれども、問題は投げて処理するというのじゃなくて、やっぱり大陸だなの資源云々ということでなくて、もうそれは確かにそうだけれども、有害生物だというその御認識ですよね。そこのところをきちっと押さえてやらないと、このヒトデ問題にも絡んでやっぱりまたまた起きてくるというふうに思うわけです。大事なことは、このヒトデのことも含めて相手のあることですから、双方納得いかなければまた出てくるわけですよね。その際に、ソビエトがこう言っているからと言うだけじゃなくって、こちらでも本当にどうなのかという形での対等、平等な立場での外交問題とも絡んで、このヒトデの問題も含めて、その他のことも含めて、より積極的に根本的な問題の対策ということでもってさらに詰めをお願いしたい、こう思います。よろしくどうぞ。
  187. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) これはヒトデの問題のみならず、すべてのことにつきまして、双方納得がいかなければ合意が成立しないということでございます。そこで私どもとしましては、合意が得られるように一つ一つ問題に対処しているつもりでございまして、このヒトデの問題につきましては一応の対処方針は合意いたしたわけでございますが、今後基本的な問題は、別途ひとつ相談をしていきたいということで申し上げたわけでございます。
  188. 下田京子

    ○下田京子君 別途というのは、根本的に解決のための話し合いを進めるというふうに理解いたしまして、次の問題に移ります。  次の点で、水産加工関係、それから塩釜の加工団地の問題についてお尋ねしたいわけなんですけれども、まず第一に、何度か私も現地に足を運びましたし、委員会でも調査に行ったところでございますけれども、塩釜の加工関係の皆さん方、それから関連業者の皆さん方と懇談した際にまず出されたことが、北洋関連水産加工業の経営維持安定資金の融通措置についてまだ配分が決定していないというお話ですけれども、これに関してまず第一に、四月とそれから七月段階で二回にわたって実施をしたその問題について、その二回の融資限度額の合計額を基準とするんではなくって、新たに新規借り入れを認めなさいということを現地の人たちは大変こう強く要望されているわけなんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  189. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) この水産加工関連業者に対しまする二百八十億の融資でございますけれども、これは先ほど申し上げましたとおり、まずとりあえずの措置といたしまして、水産加工関係に対しましては現在八十億のつなぎ融資が出ております。これは六ヵ月間の期間を限ったつなぎでございますので、これをさらにどうするかという問題が控えておりますので、返還できるものは返還していただきますが、返還できないものにつきましては、これを長期低利の融資に借りかえをするということが一つございまして、これは当然この二百八十億の経営維持安定資金、新しい制度でございますけれども、これによって借りかえをするということがございます。  もちろん、それでは先ほど申し上げましたように、当然すでにつなぎ資金と二百八十億との金額の差がございますので、それ以外におきましても、当然北洋漁業関係魚種への原料依存度が高くて、漁獲割り当ての削減によって大きな影響を受ける加工業者に対しましては、新たにこの経営維持安定資金を貸し付けるということを私ども考えておるわけでございまして、これは先般の予算等が決まりましたので、現在その融資準備を進めているというところでございます。
  190. 下田京子

    ○下田京子君 その二百八十億については新規を認めるということですね。で、その際のいわゆる業種の問題ですけれども、第一次分には七業種だったと思います。で第二次分ではそれが十業種になって、その中では乾燥品の製造とか塩蔵業とかという形で枠を広げた形で入ってきたかと思うんですけれども、新聞報道等では一応業種の対象を言っておりますけれども、どういったところが入るか、その辺ちょっとお知らせください。
  191. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) この二百八十億の融資の対象業種、現在私ども考えておりますのを申し上げますと、すり身製造業、魚体前処理加工業、ミール製造業、冷凍水産物製造業、水産かん詰め製造業、塩蔵品製造業、調味加工品製造業、乾製品類製造業、身欠きニシン製造業、水産練り製品製造業等考えておりますので、御指摘の乾、塩蔵品等の製造等につきましてもこの対象になり得るわけでございます。
  192. 下田京子

    ○下田京子君 そうしますと、基本的には、第二次分のときに融資対象にした業種が今回も対象になるということでございましょうか。
  193. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) そのとおりでございます。
  194. 下田京子

    ○下田京子君 その際なんですけれども、実は第一次分、第二次分について一〇〇%の申し込みというか、利用があったかどうかという点なんですけれども
  195. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 私どもの設けました枠に対して、実際は七割程度が現実に融資されたというふうに聞いております。
  196. 下田京子

    ○下田京子君 七割しか利用申し込みがなかったというその原因については、水産庁の方ではどういうふうにお考えでしょうか。現地の皆さん方は大変困っているわけですし、借りたくても実際に借りられなかったと、いろいろあれこれ理由を挙げられておりますけれども、皆さんの方でつかまれている理由はどういうものが考えられますでしょうか。
  197. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 私どもは大体御要望に沿い得るように措置をいたしたつもりでございますし、また借入人が保証力その他について十分でないような場合には、保証協会の利用というものにつきましても私ども指導をいたしたつもりでございます。必ずしも融資枠の満度に至らなかった理由はケース・バイ・ケースでいろいろあると思います。私どもは特に大きなネックがあって、これが満額融資ができなかったというふうには考えていないわけでございます。
  198. 下田京子

    ○下田京子君 現地の方々との御認識がずれていますよね。それはなぜかというと、第一に期間の問題で六ヵ月であったということも一つ挙げられておりますし、それから操業率五〇%までだというようなことがありましたし、そういう問題から、それから組合に融資を認めてないというような問題もありますし、限度額のこともあったし、あるいは担保能力のこともありますし、それからそういったものをまだよく知られないというようなことなんかもいろいろ出されました。こういった問題についてやっぱり御認識を改めて、実際に改善する方向でもって二百八十億の経営維持安定資金の活用ということでもって今後具体的な事務の仕事を進めていただきたい、こう思うわけですが、いかがでしょうか。
  199. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) このつなぎ資金はまさにつなぎでございまして、日ソの交渉によりまして漁獲割り当て量が大幅に削減されたと、それによって急激に打撃を受けて、きょうあすの経営が非常に困難を来しておるというような加工業者に対しましてつなぎとして融資をいたしたわけでございますので、期間も六ヵ月ということになりますし、依存率もやはり大きい方からとっていくということもございますし、また融資対象も具体的に困っておられる個人というものにいたしたということは事実でございます。ただ、二百八十億は、先ほど申し上げましたとおり、つなぎ資金の借りかえ以外にも加工業者に対しまして必要な資金を融通するということを考えておりますので、いま御指摘の個人以外の組合単位の借り入れというものも、これはひとつ検討してまいりたいというふうに思っております。
  200. 下田京子

    ○下田京子君 具体的に組合の方は検討の課題に入っているということでしたが、限度額の問題はいかがでしょうか、それから操業率の関係はいかがでしょうか。
  201. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) これは、限度額はつなぎ資金の場合にも相当程度ゆっくり見たつもりでございますし、さらにこの運用につきましては、実情を勘案して、特に認める場合には限度額を超えることができるというふうに、私どもこの二百八十億については考えておりますので、できるだけ実情に合った形の限度額の設定といいますか、融通ができるというふうに私どもは考えております。また、操業率につきましても、ある程度実態に合わせるように検討はしております。
  202. 下田京子

    ○下田京子君 具体的にそういう方向で、これからまた現地なんかとも話し合ったりして決められるんだろうと思いますけれども、本当に困っている人が借りられるというふうな、そういう実効ある配分と、それから制度に中身をもっと考えていただきたいというふうに思います。  同時に、このことに関係してなんですけれども、いままでの対象業種のことで言いますと、ここには流通出荷業者が入っておらないと思うんですけれども、この取り扱いはどのように考えられているでしょうか。
  203. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 水産加工以外のいわゆる関連企業、いま御指摘の流通出荷業者等でございますが、これに対しましては、先ほどの私どもの措置のほかに、中小企業庁が中心になりまして暫定的な緊急融資四十億を貸し付けております。これもまあ貸付期間六ヵ月でございますが、これにつきましては、とりあえず必要な期限延長につきましては年度いっぱいこれを延長する、それから来年度につきましては、これは中小企業庁でございますけれども、五年程度の長期の資金に肩がわりをする、借りかえるというようなことを現在検討しているということでございます。
  204. 下田京子

    ○下田京子君 この流通出荷業者の取り扱いが、いまのようなお話わかりますけれども、実際に流通出荷業者がその中小企業庁関係の、北洋関連産業の融資を受けられているその額はどの程度のものでしょう。
  205. 松尾成美

    説明員(松尾成美君) ちょっと恐縮でございますが、全体についての業種別の数字はいま手元に持っておりません。たまたま宮城県の塩釜のケースにつきましては対象にはなることになっておりますが、この緊急融資という形では融資実績がないようでございます。で、実は、このほかに私どもの方では中小企業三機関で、実は私どもの方は水産加工業が若干制度が違いまして、中小企業関係の三機関の融資とこの緊急融資のいわば二本立てのような形になっております。そちらの方は申しわけございませんが、いま手元にちょっと、全体の数字はございますが業種別はございません。
  206. 下田京子

    ○下田京子君 短期六ヵ月の方の借り入れ四十億でとりましたよね。そのうちの全体の活用がどのぐらいだったかということです。聞けば十億程度だというお話なんですけれども、そうだったかどうか。
  207. 松尾成美

    説明員(松尾成美君) 御指摘のとおり、枠四十億に対して実績は大体十億程度にとどまっております。
  208. 下田京子

    ○下田京子君 ということは、どこにその原因があってそういう結果になったかというふうにお考えなのか。現地の皆さん方に言わせれば、短期でなくて、その前に緊急な形で、利率の高い方で一般のやつで扱いましたね、一回。それでその後今度短期のやつ、六ヵ月というのを入れてきましたよね。同時に、このことについてはいろいろと指導体系というか違いまして、知らなかったというケースも非常に多いというふうに言われているわけなんです。
  209. 松尾成美

    説明員(松尾成美君) 先ほど御説明いたしましたように、私どもの場合には、中小企業三機関による緊急融資というのがございまして、この問題が起こりまして早速に、五月の初めに、この緊急融資でそれぞれの三機関の窓口で地元の資金需要に対応するようにという指導を早速いたしました。これにかかわるものが、七月、いま私の手元にあります実績で大体八十億弱、七十八億という数字になっております。で、こういう制度がございまして、確かにこの緊急融資というのがその後水産加工業については特別の制度がある。で、関連産業についてはこういう六分五厘という制度がないという点が議論になりまして、ではそれにそろった制度をつくろうではないかということで、若干おくれまして、第二次の水産加工対策と同様に七月一日から発足いたしました。そういった関係で、従来すでに融資を受けておった方というのは、これに切りかえることを望まれた方と望まれなかった方があるというのが、どうもこれが伸びなかった実情ではなかろうかと思います。  なお、一つつけ加えますと、実はこれは私どもの方の制度的な立て方の問題がございまして、この利子の差額というのは利子補助という形で、それぞれの関連中小企業者の方が直接に都道府県から補助金を受け取るという形になりまして、利子補給の形に比べますと、若干手続的にこれは不便な点があるという点は否めなかったと思います。これは現行法上ちょっと制約がございまして、中小企業の特に国民公庫でございますが、これから借りている人については私どもが特に法律の根拠がなければ利子補給はできないという問題がございまして、私どもも利子補給が最善だとは思ったんですが、利子補助という形をとらざるを得なかった。そのために、手続は、いわばお金を借りるのと補助金をもらうのと二重手間になるという点がありまして、で、限度が五百万でございますから、五百万程度のものについて二重に手間をかけてやるまでもないということで、これを権利を放棄された方がかなりあったのじゃないかという点がございまして、まあかなり伸び悩んだという点があろうかと思います。
  210. 下田京子

    ○下田京子君 おっしゃるように、手続のことだとか限度額だとか、利子の問題だとかがあったと思うのですが、あともう一点、やっぱり来年度との関係もあると思うんですけれども、実際にそういうものを知らない人もあったと思うのですよ。そのことで関係してなんですけれども指導としてはどういう形でもって希望をとられているんでしょうか。
  211. 松尾成美

    説明員(松尾成美君) この融資の実施につきましては、私どもの中小企業庁、それから北海道、それから東北の三県でございますが、この県との間で打ち合わせをいたしまして、具体的な実際の実務は全部県にお願いいたしました。そういったことで、県には、いろいろと商工会あるいは商工会議所あるいは地元の中小企業関係団体等々を通じて周知徹底するようにということはお願いしたわけでございますけれども、残念なことに、中小企業についての組織率というのは必ずしもたとえば水産加工などの場合ほど整備されてない面がございまして、その辺で周知徹底を欠いたという面があるという点はあろうかと思います。で、私どもも今後につきましては、その点はさらに改善すべく努力はいたしてまいりたいというふうに思っております。
  212. 下田京子

    ○下田京子君 その点なんですけれども、中小企業庁から各道府県とそして商工労働部のルートでもって調査をなさっていて、希望もなかったということですけれども、今後改善するというお話なので、ぜひとも入れてほしいことが二点あります。  一つは、希望をとる際に農林水産部関係の皆さんとの懇談をするということですね。それから第二番目に、加工関係の方が新規加入を入れているわけですから、いままでの十億借りた枠の人たちが切りかえをしてまた来年も継続ということではなくて、新規加入も含めて改善方を該当する道府県と話し合いをしていただきたい、こう思うわけですが、いかがでしょうか。
  213. 松尾成美

    説明員(松尾成美君) 第一点の農林水産部との連携を十分に保つようにという点は、私どもも努めていたつもりではございますが、さらに注意いたしたいと思います。  それから、第二番目の点でございますが、この点につきましては、ちょっと緊急融資の当時から水産加工に対するものとこの関連産業に対するものとは考え方が違う点が一点だけございます。それはこの限度の問題でございます。水産加工の方につきましては月々を見まして、それでそれぞれ業種別にある程度必要な金額をいろいろ検討されてそれぞれ別の枠を設定するという形で、したがいまして、期間が延びると枠もふえていくような形で運用されたわけでございます。実はこの水産加工関係と関連産業が、その点についてちょっと差異がございます。先ほど申しましたように、関連産業につきましては三機関からの融資があって、全体の金額はそちらの方でかなり大幅に確保できるという前提がございましたので、特利となる額につきましては、災害の場合四百万というのが限度でございます。それを……
  214. 下田京子

    ○下田京子君 簡単にお願いします。
  215. 松尾成美

    説明員(松尾成美君) 参考にして五百万ということで限度をとったものでございますから、これにつきましては、その枠については今後も五百万というのは変わることは恐らくないだろう。これは発足当時からそういうふうに二つの間に差異を設けるという考え方でいきましたので、ちょっとその点は恐らく五百万を踏襲することに相なろうかというふうに考えております。
  216. 下田京子

    ○下田京子君 私、流通出荷業者との関係でもってお尋ねしたわけですよね。ですから、加工関係は水産関係の方の経営維持安定資金の方でめんどうを見ると。だけれども、流通出荷業者の方は中小企業庁の方になる。そうしたら、それは同じような形での取り扱いにしてやってほしいということなんですよ。その点、中小企業庁と話をして、水産庁の方でもきちっと手を打っていただきたいわけなんですが、いかがでしょうか。
  217. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 北洋対策につきましては、減船漁船対策を含めまして、先ほど申しましたように、六月の二十一日に閣議の了解で方針が決まりました。その中には、関連産業につきましては、水産加工のみならずそれ以外の関連企業につきましても必要な措置をとるということになっておりますので、これらにつきましては、私ども十分中小企業庁とも御相談をいたしまして、それぞれ均衡がとれたような形でもって措置をいたしたつもりでございます。  今後もいろいろ問題は残っておりますので、当然連携は密にいたしまして、片手落ちのないようにいたしたいと存じております。
  218. 下田京子

    ○下田京子君 そうしますと、非常に要望の多い流通出荷業者の問題も含めて、新規借り入れのことも含めて、中小企業庁とも相談の上、手を打ちたいというふうに理解してよろしいでしょうか。
  219. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 今後のやや恒久的な措置につきましては、来年度予算の問題でもございます。十分御意見を承りまして、中小企業庁とも相談をしてまいりたいと、かように思っております。
  220. 下田京子

    ○下田京子君 次の問題に移りますが、同じく塩釜の加工団地のことなんですが、細かくはいま触れません。いろいろと委員会も調査に行って、あるいは前にもこの本委員会の中でお話があったことなので、幾つかについて大臣の方から責任あるお答えをいただきたいわけなんです。  その第一に、加工団地がいま非常に遊休施設を抱えたり、あるいは公害防止事業団の融資の償還期限がこれじゃもうだめだというようなことでいろいろ悩んでおられるわけなんですが、その点からまず第一に、公害防止事業団の融資の償還期限ですね、これを十年延長していただきたいというふうなことが出されているわけなんですけれども、このことについていかがでしょうか。
  221. 鈴木善幸

    ○国務大臣鈴木善幸君) 塩釜の加工団地のことは、私、隣県でございまして、あれを初めのころから私も関心を持って見守っておったわけであります。いろんな経緯がございますが、国も助成をし、県でも相当力を入れ、塩釜市も力を入れてあの設備ができたわけでございます。その後、公害防止事業団等からの融資がなされております。大分施設をやりかえたり、いろんな経緯がございまして、よその場合よりも非常に割り高にできておる。いろんな事情がございまして、経営が苦しい、償還が非常に難渋をきわめておるという事情も承知をいたしております。  そこで、公害事業団に対しては、償還期限を延長するように農林省の方からもお願いをしてとりあえず一年だけ延長いたしましたが、今後その間にさらに検討する、こういうことになっております。
  222. 下田京子

    ○下田京子君 一年延長しているわけですから、さらに検討するということなので、よろしくお願いしたいと思います。  それから第二点目には、これもこの前答弁していることなんですけれども、サバだとかイワシなど、いわゆる原料転換のための農林漁業金融公庫の利用の問題ですね、これらのことも含めまして、あの施設が本当に有効に使える方向でもって、現地の皆さんとよく相談の上対処いただきたいというふうに思います。
  223. 鈴木善幸

    ○国務大臣鈴木善幸君) サバ、イワシ等多獲性魚を高度に利用するという問題は、これからの二百海里時代の対応の一つの大きな柱でございます。そういうようなことで、そういうことを新たにおやりになるという業者等に対しましては特別な融資等の配慮もいたしてまいりたい、このように考えております。  なお、加工団地の運営管理の改善の問題につきましては、やはり塩釜市、宮城県なりが中心になってごめんどうをいただいて、その上に国としても御協力を申し上げるということで、塩釜だから国が直接何でもというわけにはまいりませんが、まず地元、塩釜、宮城県が一生懸命おやりになることにつきまして、国としてもできるだけのことを御協力を申し上げる、こう御理解を願いたい。
  224. 下田京子

    ○下田京子君 おっしゃる方向で、ぜひ現地と話し合いの上、措置を講じていただきたいと思います。  最後になりますが、時間がなくなってきましたので、基本的な点でお尋ねしたいんですけれども、韓国漁船による被害の問題なんです。これは、昨年からことしに入っても、やはり件数が減っているとは言いながらも道の調べによりましても実に三億を超えている被害総額が出ているわけですよ。この被害を本当になくしていけるようにということで、四月の二十七日ですか、いろいろ話し合いの折にも、大臣が韓国と政府協定をきちんと結んで、そうしてそれで問題のないようにいたしますと答えているわけなんですけれども、しかし、現実に被害が続いているということについて政府はどのように責任をお感じになられているのか、大臣にお尋ねいたします。
  225. 鈴木善幸

    ○国務大臣鈴木善幸君) この韓国漁船による被害の問題、これにつきましては、取り締まり船等を増強したりいたしまして、その被害が今後なくなるようにということで、その面からの努力をいたしております。  それからなお、従来これは民間協定でやっておりましたが、民間団体間の話し合いではらちが明かない、そこで政府間の話し合いをやろうということで、係官を派遣をしましたりしてやっておるわけでありますが、向こうも検討すべき点は検討し業界の方も十分指導いたしますと、こうなっておりますが、わが国領海十二海里、さらに二百海里を設定した今日の段階におきまして、何とか政府間で協定をつくって秩序のある操業をやってもらいたい、こういうことでさらに両国間で連携をとっております。今月に入りましてすぐにでも、わが国水産庁と韓国の水産庁の間で、相当ハイレベルでこの話し合いをしたいということを申し入れをしておるのでありますが、ちょうど韓国側におきましてもいま国会中だそうでございまして、向こうの水産庁長官がその方に忙殺されておるということで、近く韓国の国会が終わり次第、わが国水産庁のハイレベルの者と向こうとで交渉することに話し合いが進んでおります。
  226. 下田京子

    ○下田京子君 問題は、四月の時点でも政府責任持ちますと、そして、北海道の沿岸漁民が泣くことがないように御信頼いただきたいということを大臣答弁されておることは、御存じだと思うんです。そしてそのために政府協定ができるように努力もいたします、こう言っているわけですけれども、実際にいまのお話の中にもありましたように、韓国側でもいま国会会期中だからそれをやるというあれはできないというそういうふうな態度が、やはりこの問題を根本的に解決を迫るという方向で、民間協定云々というようなところから政府協定がきちんと結べない方向に来ているんじゃないか、こう思うわけなんです。その点どうでしょうか。
  227. 鈴木善幸

    ○国務大臣鈴木善幸君) これは、韓国と日本とは一衣帯水の仲といえども、これはやはり相手国との関係でございます。二国間の問題でございますから、わが国の言うとおりだけには相手は動かない。ただおっしゃるとおり、私も常に念頭に置いて鋭意それに努力をしておる、誠意を持って当たっておるということだけは御理解を願いたい。
  228. 下田京子

    ○下田京子君 大臣は、国会の中だけで一生懸命やっているという答弁で済むと思うんですけれども、しかし現実的には、そのことによって被害を受け泣いている方がたくさんいるわけですね。  四月二十七日のわが党の小笠原議員の質問に対しましても、大臣は、議事録を読ませていただきますと、政府責任でやりますと、政府間交渉に御信頼をいただきたい、御協力をいただきたい、こう言っているわけですけれども、現実として、政府間交渉の見通しが十一月と言っているけれども、それだって危ないと思うわけなんですよ。しかも、八月二十五日から二十七日まで第三回の日韓における民間協議が行われたと思うんですけれども、そのいろんな報告文書を見ましても、もうとてもこれは大変だというふうに言われているわけなんです。そういう点から言って、本当に政府間交渉というものが一日も早くできるようにというのは、みんな願っているわけなんです。その見通しはおありなんですか。
  229. 鈴木善幸

    ○国務大臣鈴木善幸君) そういう被害漁民の方々、の立場は、私もよく承知をしております。でありますから、下田さんがじりじりしておられると同じように、私も早く何とかしたいという気持ちには変わりがありません。しかしながら、相手の国があることでございますから、私が農林省の部下に命じてやるような問題ではない、なかなかこれは外交交渉に類する問題でございますから、今後とも粘り強く向こうを説得をして、早く政府間の協定ができるように努力したい、こう思っております。  なお、その間にそのために経営がお困りになっておるとか、そういう業者に対しましては、中小漁船の経営安定資金等の融資、そういう問題につきましてもごめんどうを見るように、北海道庁その他とも連絡をとってやっておるところでございます。
  230. 下田京子

    ○下田京子君 時間になったのでこれ一点にしますけれども、いまおっしゃることは、四月の時点で小笠原議員が逆に質問していることなんです。相手があることだから、御信頼いただきたいと言ってもその見通しに甘さがあるんじゃないでしょうか、大臣どうですかと詰めているわけですね。その点について、大臣は、もうそこの点は責任を持ってやりますのでどうぞ御信頼いただきたいということだったわけなんです。いまのお話もその繰り返しになると思うのです。  同時に、困っていれば融資をということでしたけれども、融資というのがある意味では必要ですけれども、同時にこれは借金ですから、このことについて皆さん方は、むしろ補償の問題だったら無利子でというふうな要求も出しているほどですし、さらに具体的なことでは、即刻、カレイとかスケソウなどの漁具敷設の地域での韓国船操業については操業中止を申し入れる、あるいはこの海域からの退去措置をとってほしいというふうなことを言われているわけなんですが、こうしたことも含めて、本当に沿岸漁民がこれ以上泣かないような形で、わが党が四月の段階で主張しておりましたように、本当に日本漁船が守っていることについては韓国にも当然守らせるということは早急にやらせるべきだと思うのです。そういう態度で一日も早く政府協定が実るように、さらに政府責任でもってやられることを希望したいと思います。
  231. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は、最初に、常識的に理解しておきたいことをお尋ねします。  これはきょうの資料の五ページを見ますと、「拿捕漁船の早期釈放に関する規定例」として、この表の中で「ソ日漁業暫定協定」それから「日ソ漁業暫定協定」あるいは「日米漁業協定」、この「ソ日」とか「日ソ」とかあるのですが、これはどのように理解すればよろしいですか。
  232. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) これは略符号、符牒みたいなものでございまして、正式に申し上げますと、「ソ日漁業暫定協定」といいますのは、「日本国の地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定」、こういうふうになります。「日ソ漁業暫定協定」というのは、日本国の地先沖合いというのが、ソ連邦の地先沖合いというふうに入れかわることになります。そこで、非常に長くてよくわかりにくいので、日本漁船ソ連の二百海里内で操業する、それに関します協定については「日ソ」と、これはソ連側は「ソ日」と言っております。われわれは「日ソ」と、こう言っておる。それから、日本の二百海里内でソ連漁船操業する協定につきましては、これは「ソ日」というふうに言って区別をしておる、いわば符牒でございます。
  233. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、現在ソ連に拿捕されておる日本漁民がおりますか。また、おるとすれば、何名いま残っておりますか。
  234. 山本了三

    説明員(山本了三君) 現在、ソ連に拿捕されております日本漁船は三隻、十二名であります。
  235. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私がなぜそれをお尋ねするかと言いますと、この「拿捕漁船の早期釈放に関する規定例」をずっと一貫しておる、いわゆるボンド制度と言っておるようでございますが、それから受けます感じは、できるだけこの経済的損失を最小限度のものとしなければならない。そのためには、速やかにとか早期にとか遅滞なく釈放する、こういう文句が一貫してあるわけなんですね。その精神に沿うて、たとえば日本側が拿捕した表を見ますというと、拿捕したその日保証書提出されたのはこの日で釈放しておると、四件とも拿捕したその日、あるいは翌日、このように釈放しておるわけなんですね。ところが日本船が、漁民が拿捕されたというと、このようにいまだに拿捕されておるという。いつ拿捕されたか、その理由は何なのか、それをお聞きしたいと思います。
  236. 山本了三

    説明員(山本了三君) 三件の内訳は、領海侵犯並びに大陸だなの漁業資源の保存に関するといいますか、条約違反といいますか、そういうことで拿捕されております。
  237. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 領海侵犯ですね。
  238. 山本了三

    説明員(山本了三君) そうでございます。
  239. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 この点も明らかにして、不安のないように、不満のないようにということが大事であると思いますが、そういう点からいきますというと、こういうことが言えるのではないかと思いますが、ソ連側に拿捕された日本側の件数が百八件、金額にして九千九百十九万一千円、こういう莫大な件数と金額が、罰金が上がっているのですが、ところがその項目を見ますと、それから受ける感じは政府側の指導の不徹底、指導が十分なされていないのではないか、こういう不徹底から起こしておる過失ですね。たとえば停船命令違反したとか、あるいは許可証を持たなかったとか、あるいは操業日誌の不実記載とか、こういう不備によって捕らえられた件数が最も多い。こういうことからしましても、指導が徹底してない、こう思われますが、いかがでしょうか。
  240. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 確かに日本漁船にとりましては、特に零細漁民にとりましては、外国の二百海里内で操業するというのは初めての体験でございます。私ども協定が成立いたしまして早速それぞれのブロックごとに講習会等をやり、また業界ごとにも説明会等を開きまして、確実に遵守すべき事項、特に二百海里時代というのは従来より非常に厳しい規制が加わるということを説明いたしまして、規則の遵守方を指導したつもりでございます。ところが、残念ながら停船命令違反というような基本的な問題について五件、その後二件加わりましたけれども、五件ないし七件を数えるような違反が出てきてしまったり、また無許可操業とか、許可証を持たないで操業に出るというような、イロハに類することについての違反があったということは、非常に残念に思っております。今後とも、これらの点につきましては、二百海里時代の厳しさというものを末端まで徹底いたしたいというふうに思います。  それから、操業日誌の不実記載七十八件でございますが、これが非常に大きいわけでございます。これの大部分はきわめて不注意から来ておりまして、操業日誌の大事なこと、それに対する認識が欠けているというようなことが相当あったやに私ども考えております。この操業日誌につきましても、その重要性についてわが国の中小零細漁船はなれていなかったものでございますから、うかつに忘れたというようなことが多かったように考えます。それらの点につきましては、今後さらに趣旨の徹底には努めてまいりたいというふうに思っております。
  241. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 これは、ぜひ指導の徹底をしていただくことを強く要望しておきます。  次に問題点は、漁業水域二百海里、領海十二海里と広がった、これに即応する現在の取り締まり体制ですね、現状はどうなっておるのであるか。不備であるということはお答えを聞かなくても十分理解できるわけでありますが、その取り締まり体制の広がりに対して、しかも、重要なこの法の裏づけとしての取り締まり体制の現状はどうなっておるか。また、これをどう広げていこうと予算との結びつきで計画しておられるか、それをお聞きしたい。
  242. 山本了三

    説明員(山本了三君) 海上保安庁は、海洋二法の施行以後、海上保安庁が現有いたしております船艇、航空機、こういったものを重点的に必要な海域に配備いたしまして、領海並びに漁業水域の監視、取り締まりを厳重に行う、そういう方針で現在まいっております。しかし、御承知のように、新しいこの海洋二法の施行以来、海上保安業務といいますか、こういった監視、取り締まり業務は、その量が飛躍的に増大をいたしております。したがいまして、現有の船艇、航空機をもちましては、監視、取り締まりが必ずしも十分にできない。そういう観点から、ことしの五十二年度の予算から船艇、航空機の増強をお願いし実施いたしております。  若干具体的に申し上げますと、五十二年度——本年度の予算におきましては、ヘリコプター搭載巡視船、三百五十トン型巡視船、三十メートル型の高速巡視艇あるいは大型飛行機、中型ヘリコプター、こういったものの増強を行うことになっておりますし、それから補正予算におきましては、やはり同じようにヘリコプター搭載巡視船、千トン型巡視船を含めて船艇八隻、大型飛行機を含めまして飛行機四機、これの増強を行うことになっております。  なお、こういった船艇、航行機を増強いたしまして、外国漁船操業に対します監視、取り締まりを実施するわけでございますけれども、五十三年度以降の予算におきましては、こういった情勢を見ながら必要に応じて大蔵当局と必要な船艇、航空機の増強についてなお折衝してまいりたい、このように考えております。
  243. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、先ほどから論じられておりますが、罰金の比較についてですね、どうしても脆に落ちない。向こうのソ連の四件は大型船で担保金五十万円、四件で二百万円。日本側は小型船で、百八件に対して九千九百十九万一千円ですね。そこで、日本側の五十万円というこの根拠は一体どこから来たんですか。
  244. 山本了三

    説明員(山本了三君) お尋ねのソ連漁船のボンド金でございますけれども、四件とも一応巡視船が検挙、拿捕しボンドを科したということでございます。この違反内容は、漁獲量の未記載といいますか、不記載といいますか、そういうことでありまして、一回操業しますとその操業の後でどれだけどういう種類の魚をとったかということを操業日誌記載するということでございますけれども、いろいろな条件からそれが未記載になっているということで、ボンド金五十万円を科したわけでございます。で、これは比較的違反内容としては軽微であるというふうに判断されましたので、一応そういう金額でボンドを科したということであります。
  245. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 検討されて基準は決まったと思いますが、何かソ連側と比較した場合に、どうも日本の場合非常に軽過ぎるんじゃないか、こういう疑問を持つわけでありますが、この点につきましては一応これで終わりたいと思います。  もう一つ、取り締まりの不備という立場から、たとえば現地で臨検、拿捕されるその場所に、こわゆる警備体制の日本側のこれが立ち会ってもらっておるか立ち会わないかによって、私はその結果が大分変わってくるだろうと思うんです。いわゆるソ連側日本漁船がそこでやりとりする、そこへ日本側の監視船が一緒に立ち会うか立ち会わないかということは、非常に結果的に大きな違いが出てくると思いますが、そしてそのことを非常に強い要望があると思いまするが、その点いかがお考えですか。
  246. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 確かにまだふなれなこともございますので、無用のトラブル等が起こるおそれがあるわけでございます。そういうような事態につきましては、水産庁指導船が極力現地に参りまして交渉をいたしております。この百二十三件のケースのうち、水産庁指導船が立ち会いましたのは十件ございます。もちろん、もう少し多く立ち会いたいとは思っておりますが、何分にも六千隻を超えるような漁船が年間出漁するわけでございますし、広い海域操業をするということもございますので、どこで事故が発生するかわからない点もございます。私どもは、できるだけ指導監督の体制を整えまして、違反のあった場合にはできるだけ指導船が駆けつけまして円満な解決に努めたいと、かように考えております。
  247. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、沖縄近海を中心にしてお尋ねしたいんです。と申しますのは、尖閣列島並びに沖縄周辺を中心にして経済水域二百海里除外は中国船であると。その場合に、台湾漁船は二百海里の取り締まり対象となるべきだと思うわけなんです。台湾漁船に対するこの方との関係は、一体どのように考えておられますか。
  248. 鈴木善幸

    ○国務大臣鈴木善幸君) この問題には二つ問題がございます。  尖閣列島並びに沖縄、この十二海里の領海の中にはこれは一切外国漁船は入れない、これはもう明確になっているわけでございます。それから第二の問題は、その領海の外二百海里の水域内でございますが、これは漁業水域に関する暫定措置法に基づきまして、いかなる外国人といえども漁業または水産動植物の採捕をやるという場合には農林大臣許可を得なければならないと、こういうことになっております。したがいまして、台湾の漁民がこの二百海里水域内で操業するというようなことは、これは一切認められないことでございます。
  249. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 もう一つ確認しておきたいんですが、いま沖縄の場合、沖縄列島の東側では二百海里が引かれているわけですね。そこで違反があった場合にどうなるんですか。
  250. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) いま大臣お答えしたとおりでございますが、沖縄の東側は現在漁業水域に関する暫定措置法によりまして二百海里が設定されておりますので、その漁業水域の中では台湾漁船は一切漁労はできないということになっているわけでございます。
  251. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いまおっしゃる点、これははっきり政府の態度は決まっておりますか、もう一遍確認しておきたいと思います。
  252. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 法律上、当然にそういうことになっているわけであります。
  253. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 念を押すようでありますが、どうも尖閣列島の近海で、沖縄のこの列島の東側ですね、その辺については政府の態度がまだきちんと結論が出ていないと、こういうことも耳にするものですから、あえて繰り返して確認したいと思いまして申し上げる次第でありますが、はっきりそのようにもう政府の態度はきちんと決まっておりますね。それで、そのとおり実行してくださいますな。
  254. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) ちょっと補足して詳しく申し上げますが、現在のわが国漁業水域に関する暫定措置法によりましては、わが国の領土の周辺二百海里——まあ領海を除きますけれども、これは漁業水域が設定できるということになっておりますが、この法律の三条によりまして除外水域というのがございます。除外水域は現在日本海の西部、それから東海、黄海等が除外されておりますので、沖縄の西側——いま御質問は東側でございますけれども、西側は十二海里の領海は当然領海でございますが、それ以遠につきましては漁業水域が設定されておりません。したがって、沖縄の列島の西側につきましては、これは漁業水域が設定されておりませんので、台湾漁船の漁労は領海を除きこれは自由でございます。ただし、東側につきましては漁業水域が設定されておりますので、領海は当然のことながら、基線から二百海里までも漁業水域でございますので、この漁業水域の中には台湾漁船は、農林大臣許可が一隻も出ておりませんので、漁労はできないと、このようになっております。
  255. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  256. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 御異議ないと認めます。  本案に対する討論及び採決はこれを後日に譲ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十八分散会      —————・—————