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1977-11-17 第82回国会 参議院 内閣委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月十七日(木曜日)    午前十一時十七分開会     —————————————    委員異動  十一月十七日     辞任         補欠選任      片山 正英君     藤井 裕久君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         塚田十一郎君     理 事                 加藤 武徳君                 林  ゆう君                 大塚  喬君                 野田  哲君     委 員                 岡田  広君                 源田  実君                 竹内  潔君                 林  寛子君                 藤井 裕久君                 降矢 敬義君                 堀江 正夫君                 勝又 武一君                 久保  亘君                 山崎  昇君                 和泉 照雄君                 太田 淳夫君                 山中 郁子君                 井上  計君    国務大臣        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  三原 朝雄君    政府委員        国防会議事務局        長        久保 卓也君        防衛庁参事官   夏目 晴雄君        防衛庁参事官   平井 啓一君        防衛庁参事官   番匠 敦彦君        防衛庁長官官房        長        竹岡 勝美君        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        防衛庁人事教育        局長       渡邊 伊助君        防衛庁衛生局長  野津  聖君        防衛庁経理局長  原   徹君        防衛庁装備局長  間淵 直三君        防衛施設庁長官  亘理  彰君        防衛施設庁総務        部長       銅崎 富司君        外務省アメリカ        局長       中島敏次郎君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        外務省欧亜局東        欧第一課長    都甲 岳洋君        通商産業省貿易        局輸出課長    柏木 正彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案(第八十回国会内閣提出、第八十二回国会  衆議院送付)     —————————————
  2. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、片山正英君が委員を辞任され、その補欠として藤井裕久君が選任されました。     —————————————
  3. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事大塚喬君を指名いたします。
  5. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 山中郁子

    山中郁子君 防衛二法の質疑に当たりまして、私は、まず初めにファントム機の墜落問題について、一点だけとりあえずきょうの質問ではただしておきたいと思います。  それは、先日の本会議質問に当たりまして、エンジンの問題で三原長官答弁をされましたけれどもアメリカ軍用機エンジン事故原因調査というのはアメリカ自体でやるわけで、日本にそうした検査をし調査をする施設がなかったので持ち帰ったと、こういう御答弁でございました。これは私は大変理解に苦しむところで、ファントム偵察機はいっぱい日本に飛んでいる、自衛隊にもある、米軍飛行機も日本でちゃんとその任務についていると、そういう事態のもとでこのファントム偵察機エンジンを調べる施設日本にないということは、実際上は日常的なエンジン調査とか、事故の起こった場合の問題点、あるいは防止の問題、そういう点の設備日本にない、そういう危険な状態でこのファントム偵察機がいっぱい日本に飛んでいるという状態を意味することになるというふうに思いますけれども、一体、日常的に自衛隊にもファントム偵察機はあるし、米軍ファントム偵察機もいっぱい飛んでいる、そうしたエンジン日常的な整備などは一体どこでやられているんですか。
  7. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) お答えいたします。  エンジンとその関連部品については、米側で、十月の八日にカリフォルニア米海軍航空修理施設に移したわけでございますが、その際のそれについての説明といたしましては、この事故に関連しますエンジン並びに関連部品の精密な調査をするのに必要な技術的な人員、それから施設並びに設備在日米軍においては十分でない。それで、かつその事故原因の早急な調査解明ということがあるものでございますから、十分な人員並びに設備を持つ米本国施設に移したと、こういうことでございます。したがいまして、全然そういう人員なり施設設備がないということではございませんし、日常通常整備点検に必要な人員設備はもちろん持っているわけでございますが、今回の事故のような大きな問題に関連します精密な検査のためにはそれが十分でない、こういうことで移したと、こういうふうに承知しております。
  8. 山中郁子

    山中郁子君 では、まず初めに伺うのは、アメリカのどこのどういう設備でないとそれができないのですか。
  9. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) 今回のエンジンを移しました先は、カリフォルニア州にあります米海軍航空修理施設でございます。自衛隊でもファントムはいま先生お話のように持っているわけでございます。したがって、自衛隊ファントムに関して自衛隊は十分なる能力設備も持っているわけでございますが、型式が同じではございません。自衛隊の持っておりますのはRF——偵察機型にしましても、戦闘機型にしましても……
  10. 山中郁子

    山中郁子君 RF何ですか。
  11. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) 4Eでございます。で、今回の米軍事故機は4Bでございます。それから、エンジンも同じ型式のものではないと聞いております。
  12. 山中郁子

    山中郁子君 どこが違うんですか。つまり、アメリカに持っていって調査をしなければならないという、そのいまの型式が違う、エンジンが違うと言うけれども、そのどこが違うんですか。
  13. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) 私も素人でございますので、技術的にどこが違うかということはただいま御答弁する用意がございません。
  14. 山中郁子

    山中郁子君 じゃ玄人の方にお答えいただきます。玄人の方もいらしているんでしょう。
  15. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) そういう玄人は出席いたしておりません。
  16. 山中郁子

    山中郁子君 じゃ、まずその点について、技術的に内容的にどこが違うのか、したがって、この設備日本にないのでアメリカに持ち帰らなければならなかったということについての資料を、いまでなくて結構です、私また引き続き何回も質疑をさせていただきますので、出してくださるようにお約束いただきたい。
  17. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) 一つ申し上げておきたいのは、この米軍機事故につきましては、合同委員会の合意に基づきまして、米側で第一次的調査を行うと、こういうことになっておるわけでございます。したがって、在日米軍がこの調査を第一次的に行うわけでございますが、在日米軍において持っておる人員、資材、設備が、こういう場合の精密な検査に十分なものでないということであるわけでございます。ただいまの先生お話の点については、できる限り米側に照会しましてわかりましたら御報告します。
  18. 山中郁子

    山中郁子君 資料の御提出はお約束いただいたんですけれども、私は、いま長官がおっしゃったわからないと、米軍に聞かなきゃわからないものを、あなた方がわかっていたからこそ、それは日本ではできないから米軍が持ち帰るということについて容認なすったと、こういう理屈になっているわけですよね。それなのに、なおかついま現在でも米軍に聞かなきゃわからないということは、米軍言いなりになってエンジンを渡したということ以外の何物でもないということを私は一つ指摘をしておきたいと思います。  それからもう一つ、これはぜひ三原防衛庁長官お答えをいただきたいんですが、そうだとしますと、自衛隊機整備や、それから事故が起こったときの調査はできると、日本施設で。できるけれども型式が違うからアメリカのものはアメリカに持ち帰らなければできないんだと、なれば、いま日本にたくさん来ているアメリカファントム機ですね、これが実際に飛んでいるわけでしょう。それは全く危険な状態で、日本日常的なエンジン整備もできない状態で飛ばしていると、こういうことですか、ぜひとも三原防衛庁長官お答えをいただきたい。
  19. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) 先生に御理解いただきたいと思いますのは、私は日常の、通常整備点検に必要な能力在日米軍が持っていないとは考えていないわけでございます。今度の事故のような場合には、その事故原因究明のためにも技術的にあらゆる角度から非常に精密な検査を要すると、そのための能力在日米軍において十分でないと、こういうことを申し上げたわけでございます。日常通常飛行整備点検に必要な能力がないということは申しておりません。
  20. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 私は、今回の事故のきわめて重大性にかんがみまして、米国は、いま施設庁長官お答えをいたしましたように、精密な検査調査をするということでそういう処置をしたものだという受けとめ方をいたしておるのでございます。
  21. 山中郁子

    山中郁子君 じゃもう一つ、ぜひともこれは資料をまた出していただきたい。いまおわかりになるならば答弁をいただきたいわけですけれどもエンジンの精密な調査日常的な調査日常的な整備ですね、それの決定的な違いというのは一体どういうことなんですか。日本のいまある設備ではできない、ここの問題ができないんだということについてお答えいただきたい。
  22. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) まあなかなかむずかしい御質問で、技術的なところについて私も御説明する能力を持っておりませんが、先ほども申し上げましたように、在日米軍が一次的な調査権を持っておる、在日米軍の現有の人員並びに施設設備においては、今回の事故原因解明にかかわるような精密な調査のためには十分ではない、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  23. 山中郁子

    山中郁子君 じゃそのことについて、内容ですね、どこが、エンジンの普通の日常的な整備点検の場合と、事故が起こった場合の精密な検査ということの中身ですね、これについて後ほどまた教えていただくということをお約束ください。
  24. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) どういう御説明を申し上げればよろしいのか私もわかりかねますが、よく考えてみたいと思います。
  25. 山中郁子

    山中郁子君 私は、この問題はあなた方そういうふうにいろいろ言われるけれども、いままでの経過を振り返ってみますと、結局アメリカ言いなりになって、そして、先回の和泉委員の御質問に対する答弁もありましたけれども、黙って持ち帰らないように要請したにもかかわらず断りがなかったので遺憾の意を電話で表明したと、こういうようなことだとか、いろいろ言っているんですけれども、実際問題として、現実厚木エンジンテストのできる設備はあるわけですよ。それはだれだって、近所の人だってみんなわかっているわけです。そういう状態にありながらエンジンを持ち帰らせたことに関して、そういう言い逃れ、私はもう子供だましの言い逃れとしか受けとれないし、国民だってそれはそれ以上のことを——いま私があなたに聞いて、防衛庁自身亘理長官自身が御存じないという、そういう理由でもって、アメリカに持ち帰らせて、それでそれが最も妥当な道であってなんということは、言い逃れ以外の何物でもないということを私は改めて指摘せざるを得ませんけれども現実の問題として、再度確認をしますけれども、そういう設備日本にないままでアメリカファントム偵察機日本で飛んでいるという状態は、国民の安全を守る上から直ちに考えるべきだというふうに思います。一々アメリカに持って帰らなければ、そのエンジンの精密な部分については安全かどうかわからないと、そういうようなファントム機日本上空で飛んでいるなんていうのはとんでもない話です。直ちにこの問題については解決をしてくださるよう、これは三原防衛庁長官にお約束をいただきたいと思います。
  26. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) 先ほど来繰り返し申し上げているつもりでございますが、通常飛行のための整備点検能力と、事故原因解明にかかわる精密な調査とはおのずから、私も素人でございますが、異なると思うわけでございます。通常飛行のためのエンジンテストは当然行われておりますし、それに必要な整備も当然厚木においても行われている、それは言うまでもないことでありますが、そのことと、事故原因解明のための精密調査とはおのずから異なるということは、私は素人でございますが、この点は御理解いただけるのではないかと思います。
  27. 山中郁子

    山中郁子君 じゃ重ねて防衛庁長官お尋ねしますが、私が言うのは、そういう精密なというのは、日常的な点検の場合だって精密な点検が必要とされることがあるわけですよ。しかも、精密な問題について、つまり事故が起こった問題について、すぐにその場で点検できないような状況の本とでファントム偵察機日本上空を飛んでいるという実態をどうお考えですか。結局ああした危険は今後絶対に起こさないと何回も繰り返されていらっしゃるけれども、そういう保証の一つの問題です。こういう言い逃れなさるならば。
  28. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) いま施設庁長官が再三申し上げておるところは御承知願えたと思うのでございますけれども、いまあなたの御指摘の、そういう事故再発防止については最善の努力はするであろうが、絶対にないということは言えないではないかと、そういうことが不安につながってくるからという立場からの御意見でございます。私もそういう御意見については理解できるわけでございますが、しかし、先ほど施設庁長官が申しておりまするように、現在、平常の訓練、活動等におきまする事故に対する修理あるいは措置等の私は施設なり人員は十分あるということを承知をいたしておりますけれども、しかし、いま申し上げておりまするように、一つのそうした大きな事故が起こりました際に、それを深く掘り下げて専門的に検討を下すというようなことになりますれば、いままでの事故経過等から見ましても、相当な期間を要し、相当な陣容で各方面から検討を加えるわけでございます。そうした私は将来の事故再発防止という立場からも、そうした精密な行き届いた検査なり調査というようなものは、私はやはりそうした特別の施設のあるところに持っていく、あるいはそうした人材のそろっておるところに持っていくということも一面の考え方なり進め方ではないか、そう判断をいたしておるところでございますが、しかし、不安のないように、現在日本におりまする米軍航空機等修理あるいは事故に対しまする対処、人的な態勢というようなものを不安のないように整備せよと、そういうことをひとつ十分配慮なさるように要求をしなさいということにつきましては、私どももいまの御意見については、その点に向かって努力をせねばならぬという考え方でおるわけでございます。
  29. 山中郁子

    山中郁子君 問題は、実際上はっきりしている問題は、そういうことでいろいろと言いつくろって、そして米軍のイニシアで、極端に言えばさっと持ち帰ってしまって、証拠隠滅したかしないかわからないじゃないですか、私はそういうことを言いたいわけ。それは指摘をしておきますけれども、そうしますと、アメリカに持ち帰って、カリフォルニアですかの何か海軍の基地の施設でなければ調査できない精密な調査が済んだからエンジンが戻ってきたということだと思いますので、その精密な調査の結果については当然御報告なさるわけですね。
  30. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) これは米側とも、かねて申し上げておりますとおり話し合っておりまして、日本側からは、このエンジンが、米本国に持ち出した後、検査が終わり次第戻してもらいたいということ、これはこの十一日に横田へ持ち帰りまして、十二日に厚木に移送されて実現されておるわけでございますが、と同時に、この米本国での検査結果を日本側にも提供してもらいたいということは申し入れておるわけでございますが、これはいずれほかの資料とあわせまして事故分科委員会において提供されるものと考えております。
  31. 山中郁子

    山中郁子君 一昨日の質疑の中でも出ておりましたけれども、次の事故調査委員会はいつごろおやりになる予定なのか。それから、本報告を、いまの問題も当然含まれることになると思いますが、含めた本報告をいつごろお出しになる見込みなのか、それもお知らせいただきたい。
  32. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) 現在、事故分科委員会の関係につきましては、しばらく開かれていないわけでございますけれども日本側といたしましては、米側調査結果がまとまりまして事故分科委員会が開かれた場合にこれを技術的に十分分析検討するための体制を整える、そのための諸準備を進めておるところでございます。  いま御質問の、具体的にいつそれでは事故分科委員会が開かれて、米側調査結果が提供されるかという点については、私どもその促進方米側に申し入れておりますが、いまの段階で具体的にいつということはまだ申し上げられる状況になっておりません。いずれにしましても、この事故原因究明と、それに基づく特に自後の安全対策、それから再発防止対策については急を要するわけでありますので、できるだけ早くしなければならないと、こう思っております。航空機事故調査というのは、前回の委員会においても申し上げましたとおり、相当の時間がかかるのは通例のようでございますので、いま現在の状況で、はなはだしくこの調査結果がまとまるのがおくれておるという状況になっておるとは思いませんけれども、一日も早く調査結果を検討し、再発防止対策を詰めまして、これを公にできるように急ぎたい、こういうことで考えております。
  33. 山中郁子

    山中郁子君 もう二ヵ月近くもなるんですよね、事故が起こってから。それで、しばらくこのところ事故分科委員会開かれていないと、私は怠慢だと思います。それで、いまの御答弁だと結局アメリカ任せでしょう。少なくとも、あなた方は早く事故分科委員会を次にいつごろ開くようにしたいということで米軍に申し入れておられるんですか、それだけもし本当に一生懸命やっているとおっしゃるなら、誠意のあかしとして御答弁いただきたい。
  34. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) 私どもは一日も早くということでございまして、ただ、これは米側の第一次的な調査結果がまとまって、それが提供されなければ具体的にその事故分科委員会検討する材料がないわけでございますので、米側調査結果をできるだけ早くまとめてもらいたい、この調査結果はもちろん十分なるものでなければならないわけでございますが、十分なるものをできるだけ早くまとめて事故分科委員会に提供してもらいたいということで、繰り返し米側にその促進方を要請しておりますが、いつまでという時点を切っての申し入ればいたしておりません。
  35. 山中郁子

    山中郁子君 ファントム墜落問題につきましては、補償の問題その他多くあります。後の機会に譲ることにいたしまして次の問題に入ります。  これも私本会議質問の中で申し上げたことですけれども日米防衛協力小委員会のどういう経過になっているのかという資料要求に対しまして、外務省から出されてきた資料に基づいて、この中で、おそれのある場合にも研究協議の対象とするということが含まれていることを取り上げまして、これはいままでの政府の主張、それから安保条約の解釈その他の問題から絡めて重大な新しい改定の素地になるものだということを中心にして質問をいたしました。外務大臣あるいは総理大臣からそれぞれ答弁があったんですけれども、私はこれは大変重要な問題だというふうに思いますので、ちょっと少し詰めてみたいと思います。  まず、この日米防衛協力小委員会報告の中に出ております「我が国に直接武力攻撃がなされた場合又はそのおそれのある場合の諸問題」というふうになっている「おそれのある場合」というのはどういう場合を指すのかということについてお尋ねをいたします。
  36. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 「我が国に直接武力攻撃がなされた場合」というのは、まず安保条約第五条の発動される事態でございます。「そのおそれのある場合」とはいかなる場合かというお尋ねでございますが、これはその文字どおりわが国に直接武力攻撃が行われるおそれがある事態ということで、これは具体的事態に照らして判断するよりいたし方ないかというふうに考えます。
  37. 山中郁子

    山中郁子君 具体的に、たとえばそれじゃどういう場合ですか。
  38. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 具体的にたとえばとおっしゃられると、大変私も簡明直截にお答え申し上げることが困難なわけでございますが、いずれにしろわが国に対する直接の武力攻撃が発生するおそれがあると判断される事態ということ以外に申し上げようがないかと思います。
  39. 山中郁子

    山中郁子君 だったら、その場合を想定して基本構想だとか、機能調整に関する問題だとかということは協議できないでしょう、具体的な問題を考えなければ。あなたがおっしゃるような範囲で、そして機能調整に関する問題、作戦機能情報機能、どういう場合にそれをどういうふうにするのか、この一つ一つについては後ほどまた伺いますけれども、具体的にどういう場合を想定して、それがおそれのある場合になるのかということについて答弁なさらない限りは、こうした協議はできないはずですよ。どんな協議しているんですか。
  40. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) この防衛協力小委員会は、そもそも発足をいたしましたのは昭和五十一年、昨年の七月八日の日米安全保障協議委員会の第十六回会合というところでその設立が決まったわけでございます。その第十六回会合設立が決まりましたときの発表文を御想起いただきたいと思うのでございますが、その発表文によれば、この防衛協力小委員会というのは「緊急時における自衛隊米軍との間の整合のとれた共同対処行動を確保するために取るべき措置に関する指針を含め、日米間の協力のあり方に関する研究協議を行い、その結論を本委員会報告する。」と、こうなっております。ここで言いますところの「自衛隊米軍との間の整合のとれた共同対処行動」というのは何かと言えば、これは日米安保条約第五条に定めますところの、わが国の施政の下にある領域におけるいずれかの締約国に対する武力攻撃が発生した事態でありまして、その場合に日米両国共通の危険に対処するために行動するということになっております。その共通の危険に対処するために行動するその行動そのものが、ここで言うところの「共同対処行動」でございます。この共同対処行動が、自衛隊米軍との間で整合のとれた形で行われるようにするためにいかなる問題があり得るか、いかなる事態が考えられるか、そういう点を協議研究するのがこの小委員会任務の主要なものでございます。したがいまして、そのような共同対処行動が円滑かつ効果的に行われるためには、それの準備段階においていかなる問題があるかという点を研究する必要があるというのが、このおそれのある事態というのに対応する状況であろうと思います。したがいまして、その円滑な共同対処行動を図るために必要と考えられる準備態勢というような問題について研究協議するということになるわけで、したがいまして、そのおそれのある事態というものは、その円滑なる共同対処行動の準備行為としていかなることが必要かということとの関係において検討されるべき問題であるというふうに考えます。
  41. 山中郁子

    山中郁子君 それでは、外務省からいただきましたこの文書は、ちょっと前提の問題として確認したいのですけれども、もちろん日米ではっきり了解をされたものですね。
  42. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) この文書とおっしゃられるのは、恐らく立木議員からの御要求に基づいて外務省がことしの九月の二十六日に立木議員に御提出した書類をおっしゃられるのだろうと思います。  この文書自身は、従来日米防衛協力小委員会会合がありますたびに、その会合の内容につきまして新聞に発表をいたしております、その従来発表御説明してきたことを要約して私どもでつくったペーパーでございます。そういう意味で、もともとのペーパーに要約してありますことは、従来その会合の都度に新聞等に御説明し、国会においてもいろいろ御説明したところでございますので、その限りで従来申し上げてきたことと何ら相違がないわけでございまして、その発表内容自身は、その都度米側とも十分打ち合わせて合意されたところに従って発表が行われておる、こういうことでございます。
  43. 山中郁子

    山中郁子君 要するに内容は了解されたものであるということです。  もう一つ前提ですけれども安保条約第五条で言う日米共同対処武力攻撃が発生してから初めて発動されるということについても、これは当然のことながら、そういう立場に立っているということは確認できるわけですね。
  44. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 安保条約第五条は、先ほど申し上げましたように「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」、その武力攻撃が発生した事態を想定しているわけでございます。
  45. 山中郁子

    山中郁子君 そうすると、武力攻撃のおそれがあるということだけでは日米共同対処はできないといういままでの政府の見解は変わらないということですか。
  46. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 武力攻撃が発生いたさなければ、この第五条で言うところの「共通の危険に対処するように行動すること」はないという点は従来と変わっておりません。
  47. 山中郁子

    山中郁子君 そうしますと、この日米防衛協力小委員会で、「おそれのある場合の諸問題」というものも入っているということは、安保条約五条のいままでの法の内容からして、そしていままでの政府のとってきた立場からして逸脱するものになるということは明らかじゃないんですか。   〔委員長退席、理事加藤武徳君着席〕
  48. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先ほど来御説明申し上げておりますように、安保条約第五条が発動いたしますのは武力攻撃が発生した場合でございます。そのおそれのあるような事態において第五条が発動することはあり得ないという点は、安保条約締結以来国会において御説明しているとおりでございます。問題は、日米防衛協力小委員会で、おそれのある事態をも含めて研究協議の対象としておるのは、先ほど来御説明しておりますように、第五条が発動されて共通の危険に対処するような行動をとるために、その以前の段階において、いわば準備態勢としてどのような問題があり得るかという点も協議研究しなければならないだろう、そういう認識に基づいてその準備態勢等の問題について、すなわち、おそれのある事態についても研究協議の対象にしようということでございまして、安保条約第五条に定めるところの事態を改変しよう、またはしているというようなことは全くないわけでございます。
  49. 山中郁子

    山中郁子君 そうしますと、安保条約のどこを根拠にしてそうしたおそれのある場合が協議対象になるというふうにお考えですか。何にも根拠ないでしょう。
  50. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 安保条約第五条は、その武力攻撃が発生した場合に共通の危険に対処するように行動することになっているわけでございます。問題は、共通の危険に対処するように行動する、その行動が円滑かつ効果的に行われるためには、それ以前の事態をも考えながら準備を行わなければならないであろうと、その場合にどのような問題があるかということを研究協議するわけでございますから、いわば安保条約第五条と関連した研究協議と言うことができるわけでございます。  なお、それを安保条約上の根拠としてどこに求めるのか、こういう点の御質問になるわけでございますが、この点は、法律論として申し上げれば、もともと日米防衛協力小委員会というのは日米安保協議委員会の下部機構でございます。日米安保協議委員会というのは、御承知のように安保条約第四条に基づいて、いわゆる随時協議の規定に基づいて設立されたものでございます。したがいまして、法律的にその淵源を示せとおっしゃられれば、恐らく第四条という形になるだろうと思います。
  51. 山中郁子

    山中郁子君 その経過の中で、国会質疑でも、安保条約第五条ということが、日米安全保障協議委員会の論議の経過でも明らかになっているんです。それがすりかえられて、そして、おそれまで拡大しているということは、まさに安保条約第五条をおそれを含む方向に広げていくという問題にならざるを得ないということを、私は本会議質問も含めて指摘をしているわけですけれども、もう一つ進みまして、先ほど、そこまでおっしゃるんだったら、そういうふうに答弁なさるんだったら、どのような場合がおそれのある場合かということをあなた方が答弁できない限りは、研究協議なんかできっこないはずでしょう。どういう場合か想定しない限りは研究協議できないですね。どういう場合か全然わからなくて、作戦機能情報機能研究協議なんてできないでしょう。これはだれが考えてもはっきりしています。  それで伺いますけれども、たとえば三十八度線、朝鮮半島有事の問題がいま大きな問題になっております。で、このことについて、政府がいままで一貫して主張してきたことは十分承知した上であえて伺いますけれども、三十八度線で紛争が起きたような場合には、おそれのある場合ということで考えられるんですか、その範疇に入るんですか。
  52. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) とりあえず私の方かう私の感ずるところを述べさしていただきますと、おそれのある事態が、明確では具体的にないではないか、こういう御懸念でございますが、武力攻撃の発生という事態自身が、具体的にそれを示せとおっしゃられても、これはまさに具体的に発生した事態をそのときに考えるよりいたし方ないわけでございまして、そのおそれのある事態を具体的に示せとおっしゃられても、それは同じことではなかろうかという気がするわけでございます。問題は、ここは安保条約第五条の事態を想定してのことでございますので、いま第五条の事態というのは、わが国の施政の下にある領域におけるいずれかの領域に対する武力攻撃という事態でございますので、このこと自身は朝鮮半島における事態とは直接の関係がない。問題は、わが国の領域におけるいずれかの締約国に対する武力攻撃の発生の可能性がきわめて、何と申しますか、大になってきた、イミネントになってきた、そういう事態がいわばおそれの事態ということであろうと思われます。それが具体的にいかなる事態であるかということは、その地域的に示して答えろというのはこれは無理なのではなかろうか、まさに具体的な事態に即して判断すべきことではなかろうかというふうに考えます。
  53. 山中郁子

    山中郁子君 無理じゃないんですよ。それは何も、予想できないものに対して研究協議すること自体がどだい無理な話で、話は逆さまですけどね。  じゃもう一つ重ねて伺いますけれども、歴代政府、特に三木内閣当時の宮澤外務大臣が、朝鮮半島の紛争が強まってわが国に火の粉がかぶさってくるといった場合がこれに当たると、くる場合というようなことを盛んに事前協議の問題その他でもって言われました。つまり、朝鮮半島で紛争が強まってきてわが国に火の粉がかぶさってくる、こういうことを言われるわけですか、こういうことはそういうふうな中身に入るわけですか。
  54. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 朝鮮半島における事態とおっしゃられる点が、再三お言葉を返すようで申しわけないのでございますが、朝鮮半島における事態いかんにもよるであろうと思います。ただ、まさに先生のおっしゃられた火の粉がかぶさってきそうな事態というのは、恐らくここで言うところのおそれのある事態というのに該当するんだろうと思います。
  55. 山中郁子

    山中郁子君 問題は、その火の粉がかぶさってくるという問題ですけれども、さらにもう一つ伺いますが、朝鮮半島で軍事衝突が起きて在日米軍が出動すると、こういう事態があり得ると、そうした場合に、朝鮮半島に対する米軍や韓国軍の補給路を、自衛隊——つまり火の粉で、それが、どれがどういうふうな火の粉だということになるのかというのは、あなた方おっしゃっていることはわかりませんけれども、要するに、その場合に韓国軍や米軍の補給路を自衛隊が守ると、こういうようなことが想定されるわけですか、おそれのある場合と言われることは。
  56. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま先生がおっしゃったような内容のことは、この研究協議の対象にはなっていないわけでございます。
  57. 山中郁子

    山中郁子君 それでは、私どもがずっと主張しているように、実際いまの時点で、そして有事立法——後ほど有事立法に移っていきますけれども、そういう事態のもとで、朝鮮有事の場合を想定して、そしてアメリカからさまざまな要請があると、五項目要請の問題その他いろいろ議論になっています。そうした事態のもとで、朝鮮半島との関係で日本が新たにおそれのある場合ということを想定するとすれば——なさるわけだから、なさったわけですね、火の粉がかぶさるということは。それは一貫して政府が言ってきたわけですから、それはまさにこの安保五条を拡大解釈をして、実質的には安保五条を改定していくという含みを持たせた、実質的にはその改定につながる、そういう重大な問題であるというふうに認識せざるを得ないですね。防衛庁長官の見解を伺います。
  58. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま先生がおっしゃいましたのは、先ほどの宮津大臣の御発言との関連でおっしゃっておられるようでございますが、それは事前協議の問題ではないかと思うわけでございます。事前協議の問題につきましては、今度のこの日米防衛協力小委員会においては研究協議の対象としないということを私どもは決めているわけでございます。
  59. 山中郁子

    山中郁子君 それでは、外務省の言われることと防衛庁の言われることとちょっと違うのではないかというふうに思いますけれども先ほど私は、事前協議の問題で宮澤さんは盛んにこういうことを言いましたと、で、あなたはおそれのある場合というのは何にもおっしゃらないから、それでは宮澤さんや歴代政府が事前協議の問題などに関して言われてきた、こういう言い方がおそれのある場合にいま入るのかというふうに尋ねたら、あなたは入ると、外務省は入るとおっしゃったわけ、防衛庁の見解と違いますね、どうなりますか。
  60. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 御想起いただけるかと思いますが、私は事前協議の問題としてお答えしたつもりは毛頭ないのでございます。先生がそのような宮澤大臣の答弁を御引用になられたときに私は申し上げましたことは、朝鮮半島というような具体的な事態との関連でこの研究協議を行うということではなくて、一般的に言って武力攻撃が発生した場合、またはそのおそれのある事態の問題について研究協議をするんだということを申し上げたわけでございます。そのおそれのある事態とは何だという御指摘で朝鮮半島の例をお引きになりましたけれども、私は朝鮮半島との関連で申し上げることはできないということを明らかにした上で、火の粉のかかってくるような事態というのは恐らくおそれのある事態というふうに該当するであろうとお答え申し上げたわけで、いずれにしろ、そのような具体的な事態は具体的な状況に即して判断するより仕方がないであろう。この協力委員会任務は、そういう具体的な地域とか具体的な事態との関連における作戦計画その他を設定する、策定するということが任務ではないのでございまして、一般的に言って、いま武力攻撃のある場合またはそのおそれのあるような場合、その他ほかの事態もありますが、そういうものの状況におけるところの日米の間の協力のあり方について研究協議をするというのがこの委員会任務であるわけでございます。で、この点につきまして、防衛局長お答えと私の答えに違いはないというふうに考えております。
  61. 山中郁子

    山中郁子君 重ねて押さえておきたいんですけれども武力攻撃のおそれがあるということだけでは日米共同対処はできないという政府の見解は確かだと、このことはアメリカも明確に了解しているんですね。
  62. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 今度のこの日米防衛協力小委員会におきまして研究討議をやる際に、私どもが冒頭にまず合意をしなければならないことといたしまして、自衛隊のできること、そしてまたできないことをはっきりさせた上で、そして共同で対処する場合、整合のとれた対処がどうやればうまくいくであろうかということを研究討議するという前提に立っております。したがいまして、そのことにつきましては最初の合意の段階で、このおそれのある場合に共同で行動するということはないということは確認し合っているわけでございます。
  63. 山中郁子

    山中郁子君 外務省答弁ですけれども先ほどの、だから第五条を逸脱するではないかと、「おそれ」の問題が入ってくれば、この協議対象になればね、ということを申し上げました。第五条は確かにそうだと、こうおっしゃるわけでしょう。だったら、この日米防衛協力小委員会の前提となる第十六回の日米安全保障協議委員会ですね、これの中で、この問題について政府がどういうことを言っているかということは、私は相当重要な食い違いだというふうに思うんです。  それで、これは昭和五十一年七月十三日になっていますね、衆議院の外務委員会です。山崎当時のアメリカ局長だと思いますが、こういうふうに答弁しているんです。防衛協力小委員会研究協議の問題、対象の問題です。これで、「この研究協議の中心になりますのは、仰せのありましたように、」——これは社会党の河上委員質問です。「ありましたように、安保条約第五条の事態になるかと思います。すなわち、わが国に対する武力攻撃が行われた場合に、自衛隊米軍との間で整合のとれた共同対処行動を確保するにはどうすればいいかということを中心に話し合っていくことになるかと思います。」と、こう答弁されているんです。おそれのある場合は入るはずがないんですね、このときの政府答弁によりますと。これは大きな食い違いですね。
  64. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 私ただいまの山崎アメリカ局長答弁を手元に持ち合わせておりませんが、いま先生のお読みになられたことを拝聴しているだけでも、その安保条約第五条の発動の事態が中心になると思いますということを言っておるわけでございまして、それ以外の事態の問題の研究協議が入らないということも申していないわけでございます。で、現にこの防衛協力小委員会会合において合意されましたことは、これはそのお手元に届いております立木議員に提出しました書類にもございますように、この協力委員会の第三回の会合において研究協議の事項として了解された事項が三つございます。一つは「我が国に直接武力攻撃がなされた場合又はそのおそれのある場合の諸問題」と、二つ目は「(1)以外の」、いまの第一番の点以外の「極東における事態我が国の安全に重要な影響を与える場合の諸問題」、「(3)その他」の問題ということでございまして、この研究協議の中心は「我が国に直接武力攻撃がなされた場合」ということであろうと思いますが、それはその以外のことが入らないということでは全くないのでございます。   〔理事加藤武徳君退席、委員長着席〕
  65. 山中郁子

    山中郁子君 これは文章お読みになればわかるでしょうし、当時のアメリカ局長答弁の中身ははっきりしているんです。それは量の問題とかそういう問題じゃないんです。その質問経過なんかもお読みになればわかりますけれどもね、安保五条の事態だと。そして、わが国に対する武力攻撃が行われた場合にどうすればいいかと、こういうことになると言っているんですよね。それを今度ここでは「我が国に直接武力攻撃がなされた場合又はそのおそれのある場合の諸問題」と、並列的に出ていますよね。じゃこれはおそれのある場合と直接武力攻撃がなされた場合というのは、どういうウエートでもってここで確認されているんですか。
  66. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先ほど来御説明しているつもりでございますが、「そのおそれのある場合」が入っているのは、まさに安保条約第五条において、武力攻撃がなされた場合に共通の危険に対処するよう日米が行動するということが中心でございまして、その共同対処行動が効果的かつ円滑に行われるためには、それ以前の事態においても、いかなる問題があるかということを研究協議しなければ効果的にいかないであろうというのが、そのおそれのある事態を含めた基本的な発想でございます。したがいまして、中心はあくまでも第五条発動の事態というのが念頭にあるわけでございます。
  67. 山中郁子

    山中郁子君 だから明らかに、おそれのある問題、おそれのある事態というのは後から入れた問題なんですよ。で、あなたがいまおっしゃるような言い方ならば、もともとこの安保条約第五条が直接武力攻撃がある場合なのかどうかという、その枠の拡張解釈がどうだということを何十年もかけて国会で議論するような、そういう中身じゃないんですよ。そういう中身だから、そういう中身だからこそいろいろ議論になって、そしてここの、いま私が読み上げた協力委員会の設置に関しての議論もあったわけでしょう。それをここへ来てすいっと、当然実際に武力攻撃が行われた場合におそれのある場合も含まれるんだと、理屈からして含まれる、そのことから準備しなきゃならないんだと、なおかつ、おそれのある場合というのはどういう場合だかちっともわからないと、こういうようなことでは、実際のいままでの安保の五条の議論というものをもう全く横において、そして、どういう意図を持っておそれのある場合にこれを拡大してきているかということははっきりしてくるというふうに思います。  それで、具体的にそれでは伺いますけれども、この「機能調整に関する問題」として「作戦機能情報機能、後方支援」、三つあります。その前提として「基本構想」というふうにあります。では、機能調整に関する問題それぞれについて、まず作戦機能からで結構です。作戦機能について、わが国に直接武力攻撃がなされた場合とおそれのある場合と、どういうふうな違った研究の結果になっているのか、経過になっているのか、議論になっているのか、ひとつ例としてこれをまずお示しいただきたい。
  68. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 御承知のように、共同で整合のとれた作戦をやるためには、それぞれの指揮系統に従いまして、日米の両方の部隊が協力することになるわけでございます。その場合に、現実の問題としてどういう形で調整を行うか、どういう場で行うか等につきまして、いまそれぞれの部会において研究をいたしております。で、おそれのある場合ということについては、共同の対処事態に至るまではそういった調整の機能そのものは要らないわけでございますが、そういったものを五条の発動の際に円滑に実施できるためには、それぞれの自衛隊なりあるいは米軍なりが、自隊の中においてどういう準備をしておけばいいかというようなことを研究しているということでございます。
  69. 山中郁子

    山中郁子君 よくわからないんですけれどもね。そうすると、武力攻撃がなされた場合とおそれのある場合について、作戦機能研究協議の中身は違うと、別々な協議があると、こういうことですか。
  70. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 有事の際に共同で対処する、整合のとれた対処行動をとるというためには、その有事になった途端にあわてても何もできないわけでございます。したがいまして、平時からそれぞれ勉強はしているわけでございますが、その過程におきましていろいろな状況があるわけです。したがって、おそれがある、すなわちその整合のとれた対処行動をしなければならないということが迫ってきたときには、それぞれの部隊においてどういう準備をしておけばよいかというようなことも研究の対象にしているわけでございます。
  71. 山中郁子

    山中郁子君 結局ね、あなた答弁なすっていてもちろんお感じになっていると思うけれども、ジレンマに陥るわけですよ。  じゃ続けて伺いますけれども情報機能、後方支援、それぞれ直接武力攻撃がなされた場合、あるいはおそれのある場合、それぞれの内容というのは、研究協議はどういうものになるんですか、違うんですか、同じなんですか。
  72. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) この情報機能につきましても、いわゆる共同で対処する場合にはやはり密接なる情報交換をするための機能が必要になってまいりますので、それはどういう形で、どういう場所でやるのかというようなことも研究をしているわけでございます。で、そのおそれのある場合に、そういうことに持っていくためには、それぞれ米軍なり日本自衛隊におきまして、どういう能力といいますか、分野を担当している者をどの程度そろえておけばよいかというようなことを準備するというようなことの違いがあるわけでございまして、いわゆる共同で対処するときには、それはもう行動に移っているわけでございます。そして、そのおそれのある場合には、そういうのがいつ来てもいいように準備をしなければならないというような緊急の事態ということを考えているわけでございます。
  73. 山中郁子

    山中郁子君 じゃもう一つ、後方支援についてもお聞かせください、この中の三つ目の。
  74. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 後方支援の問題というのは、これはむしろ平時からいろいろ勉強しておく必要があろうかと思います。たとえば、自衛隊が作戦する場合に後方支援の面でどういう点を米側に期待するのであるか、そういったことを積み上げてまいります。そして、有事の際には最も必要なものはどういうものであるかということをお互いに認識を統一しておく必要があるわけでございまして、米側といたしましては、あるいは必要なものを支援するための準備というようなことも、非常に緊張状態になった場合には米側自体も進めてまいると。また、その時点において、わが方が現在行動をするためにこういった点を特に期待しているんだということを連絡するというようなことは当然あり得ることだと思っております。
  75. 山中郁子

    山中郁子君 そうすると、この「武力攻撃がなされた場合」と「そのおそれのある場合」というのは、具体的な協議研究の場になれば、中身としては同じものだと、こういうことですね、お話を伺った限りでは。
  76. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) ですから、私どもは、そのおそれのある場合に何をし、その対処行動のときに何をするというような形よりも、現在、第五条で整合のとれた共同対処をするためにはどういうことが必要であるかということを中心に研究をしているわけでございます。したがいまして、今度はそれに基づきまして、おそれのある場合には米軍なり自衛隊なりがそういったものに対して自分たちはどういうことをやっておく必要があるだろうかということを研究し、それをまた話し合うというようなことになってくるというふうに考えております。
  77. 山中郁子

    山中郁子君 だんだんはっきりしてきたんですけれども、結局は、だから、おそれのある場合も武力攻撃が直接行われた場合も込みにして、一緒の問題として、そして、これらの問題についての研究協議をするということに結局ならざるを得ないんですよ。ということは、安保条約第五条に、いままでこれだけの議論があって、そして、これは直接武力攻撃が起こった場合でおそれのある場合ではないんだということがはっきりされているにもかかわらず、安保条約第五条に「おそれ」を込みで突っ込むと、こうしたものになる以外にないんじゃないですか。そこのところを私は一つは申し上げている。
  78. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 先生の御議論が私どもにはどうもよくわからないわけでございますが、日米安保条約がありまして、私ども日米安保体制によりまして日本の安全を守るために働かなければならないというふうに考えておるわけでございます。この日米安保体制が発動されるというのは日本にとっては最悪の事態であるわけでございます。したがって、それが平時から何にもしないでおって、ある日突然直ちにそういうことができるということはまさにあり得ないことでございまして、これは先ほどアメリカ局長が御説明いたしましたように、安保条約の中でも、随時協議ということで、どうやればこの日米安保体制というものを円滑に運用できるかということは、いろんな場所において協議しているわけでございます。その中で、特にこの自衛隊米軍とが整合のとれた共同対処ができるということを勉強しておこうということでございますから、安保条約がある限り私ども自衛隊としてはそれはやっておかなければならない責任だというふうに考えておるわけでございます。
  79. 山中郁子

    山中郁子君 半分の時間になっていますので、あとは午後に譲ります。
  80. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時十五分再開することとし、休憩をいたします。    午後零時十七分休憩      —————・—————    午後一時十九分開会
  81. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  午前に引き続き、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  82. 山中郁子

    山中郁子君 午前中の質疑の続きでございますけれども、そうしますと、「おそれのある場合」ということについて明確な御答弁がいただけないでいるんですけれども、それでは、この事態がおそれのある場合であるというのは、だれが判断をするのでしょうか、どういう段階で。
  83. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) この判断をだれがするかということでございますが、これは政府あるいは総理、いずれにいたしましても政府が判断することであろうと思います。
  84. 山中郁子

    山中郁子君 そうすると、関連ですけれどもね、政府が判断して、一方的におそれがあるということで何らかの行動を起こすと、こういう事態になるわけですか。
  85. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 自衛隊法の七十六条には防衛出動という規定がございます。さらに七十七条には防衛出動の待機命令というのがございまして、「長官は、事態が緊迫し、前条第一項の規定による防衛出動命令が発せられることが予測される場合において、これに対処するため必要があると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の全部又は一部に対し出動待機命令を発することができる。」というふうになっております。おそれのある場合にはこういう手続によって待機命令が発動されることになろうと思います。
  86. 山中郁子

    山中郁子君 それではないんです。防衛協力小委員会のいま議論をしています「おそれ」の問題、安保五条にかかわる問題です。  それでは次に、それとの関係でいま伺っておりますけれども、要するに、先ほどおそれのある段階と、それから直接武力攻撃が起こった場合と、それぞれが含まれているんだというお話ですけれども、実際におそれのある段階で行動が起きるということですね、この防衛協力小委員会のこの中身から照らして。安保五条との関係でです。
  87. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 先ほど来御説明いたしておりますように、行動を起こすということはあり得ないわけでございます。したがいまして、ただいま私が読み上げました七十七条の条項、すなわち総理大臣の承認を得て待機命令を下すというような事態、そういう事態に準ずるような場合に、手続といたしましては、一応長官といたしましては総理などとも御相談なさると思いますけれども、きわめて緊迫した事態であるという判断をなさると考えております。
  88. 山中郁子

    山中郁子君 防衛協力小委員会の中身として、「おそれのある場合の諸問題」として「作戦機能情報機能」、先ほど説明いただいた内容を協議研究なさるということでしょう。協議研究するということは、協議研究した中身がそのおそれのある場合に行動に移される、武力攻撃が直接あった場合にも行動に移される、こういうふうにならざるを得ないんじゃないですか。
  89. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) ですから、いま申し上げましたように、七十七条によりまして待機命令がかかるような状況というものは、まさにこの「おそれのある場合」に当たるだろうと私どもは考えているわけでございます。
  90. 山中郁子

    山中郁子君 そうしますと、実際問題として安保五条に基づいてこの防衛協力小委員会の中身が議論をされていて、そして、それは自衛隊法とは別問題ですよね、自衛隊法による自衛隊の出動とは別問題ですね、日米協力の問題ですから。そうすると、結局共同対処が、おそれの段階でも行われるという以外の何物でもないというふうにならざるを得ないと思いますが。
  91. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これは関係がないと御認識いただくことは私は全く想像いたしていないわけでございます。で、安保五条に基づきまして共同で整合のとれた対処行動をやるというのは、まさに自衛隊にとっては七十六条の防衛出動の場合だというふうに考えているわけでございます。
  92. 山中郁子

    山中郁子君 いや問題は、だから、おそれのある段階で日米が共同行動を起こすというふうにならざるを得ないではないかということを言っているんです、ここに「おそれのある場合」が入ってくれば。
  93. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 共同行動を起こすということは、再三申し上げているように、おそれのある場合にはあり得ないわけでございます。これは五条で共同行動をとる場合に——それが安保五条によって発動されるわけでございますから、先ほど先生は、おそれのある場合も共同で何かやるんではないかということを盛んにおっしゃっておられますけれども、私どもは再々御説明申し上げておりますように、そういった事態になったときに何にもしないでいて直ちに対処行動というのはとれないだろうから、その事前の準備なりあるいは意思の疎通なり、そういったことが必要であろうと、したがってそういうことを研究しているのでございますということを御説明申し上げているわけでございます。
  94. 山中郁子

    山中郁子君 じゃ関連してもう一つだけ伺いますけれども、これは日米で合意してできているということですね。そして、アメリカがいま朝鮮半島をにらんだ形での戦略で日本にいろいろと要望をしているという事態が、これは客観的に明確です。そうしますと、この日米防衛協力小委員会の中でこうしたことが合意をされているとすれば、少なくとも日本がどういうふうに考えようと、どういうふうにまた理解をしようと、アメリカはその場合に、おそれのある場合も含めて共同対処ができるというふうに理解をしているということにならざるを得ないんじゃないですか、その辺はアメリカはどういうふうに理解しているんですか。
  95. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) それは先ほども御説明いたしましたように、この小委員会研究をやるに当たって冒頭に私どもがはっきり確認しなければならないこととして、自衛隊としてできることとできないことをはっきりさせるということでございます。したがいまして、その点につきましては全くアメリカも理解しているところでございます。
  96. 山中郁子

    山中郁子君 では具体的に、その自衛隊ができることとできないことがはっきりしているというお話ですが、まず、この報告いただきました文書によりますと、「前提条件として了解された事項は、次のとおり。」ということで、これができることとできないこととの関連であるというふうに理解してよろしいわけですね。
  97. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これはその基本的な前提条件でございます。しかし、それぞれの研究の段階において、たとえばその整合のとれた共同の対処行動におきまして、わが国防衛構想、すなわち専任防衛立場から、アメリカに期待されてもできないこともございます。そしてまた、われわれがやり得るのはここまでであるということもあるわけでございます。そういう具体的なものを、こういった前提条件に基づきまして研究をしているということでございます。
  98. 山中郁子

    山中郁子君 それで、ここに「前提条件として了解された事項は、次のとおり。」となっていまして、その(1)として、「事前協議に関する諸問題、我が国の憲法上の制約に関する諸問題、及び非核三原則は研究協議の対象としない。」と、こう記されております。この意味をちょっと教えてください。余り適切な文章でないという感じなんで、二通りに理解できるという内容があるんですけれども、意味するところを。
  99. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) まず、この事前協議の問題というのは、通常考えられますのは、どういう場合に事前協議を行って、どういう場合にどういう形でやるかというようなこと、そういうことはやらないということでございます。それから、わが国の憲法上の制約というのは、この日本の国内におきます国会の論議、あるいは私ども立場からのいろいろな制約の解釈、そういったものにつきましては、これが前提になるんだということで、そのことについては議論をしないということでございます。それから非核三原則につきましては、日本の政策でございますので、このことについては向こうに理解を求め、これについての議論はしないということでございます。
  100. 山中郁子

    山中郁子君 一点目について恐れ入りますが、もう一度ちょっと教えてください。
  101. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 事前協議の問題といいますと、たとえばどういう場合に事前協議をするのか、これは条約上は決まっているわけでございますけれども、具体的にある事態を想定してこういう場合というような、そういった問題の研究協議はしないということでございます。
  102. 山中郁子

    山中郁子君 そうすると、事前協議にかかわる制約に関しては協議研究ということの中では考えないと、こういうふうに理解してよろしいんですか。
  103. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 事前協議の問題というものは、従来から外交チャンネルを通じて協議、議論されている問題でございます。したがいまして、自衛隊米軍との間でこれを研究協議する問題ではないという認識に私どもは立っていたわけでございます。
  104. 山中郁子

    山中郁子君 そうすると、もう一つ伺いますが、外交チャンネルでのいわゆる事前協議の問題ですね、それは当然のことながら、防衛協力小委員会の中で協議研究の対象からは外れるという意味ですか。
  105. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) その条約に書かれております事前協議、そういったことは、いわゆる外交チャンネルを通じてやるというようなことについては、それを前提条件としてそのことについて議論したり協議するということはしないということでございます。
  106. 山中郁子

    山中郁子君 そうすると、いままで、たとえば事前協議に関して百項目に上る秘密協定があるとか、いろいろ報道された面もありますけれども、具体的にひとつあなた方が中身としてはこういうものについて考えているんだということを聞かせていただきたいということと、「我が国の憲法上の制約に関する諸問題、」ということの「制約」というのは、具体的に何なのかということをあわせて伺います。どういう項目になるのか。
  107. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 事前協議の点についてのお尋ねでございますが、ここにございますように、事前協議に関する諸問題はこの研究協議の対象にしないということでございますので、およそ事前協議に関する問題はすべて外れるということで、それが具体的にどうかというようなことは、すべて包括的に外れてしまうものですから、余り具体的に御説明することは困難であるというふうに考えます。
  108. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 「憲法上の制約」というのは、従来から私どもが制約として強くみずからに課しております、たとえば海外派兵の問題、それから自衛権の及ぶ範囲、これは従来から御説明いたしておりますように、領空、領海には限らないけれども公海上においても自衛のために必要な範囲に限られるというような前提の問題、それから、攻撃的な兵器、こういったものは持つことはできない、いわゆる専守防衛に徹するんだというようなことが憲法上の制約でございます。
  109. 山中郁子

    山中郁子君 そうすると、非核二原則の問題に関して言うならば、米軍の核兵器は絶対に持ち込まない、積んだままの船はもちろん入ってこない、こういうことを前提にした研究だということですね。
  110. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) それはまさに前提条件でございますから、日本の非核三原則に抵触しないということになっておるわけでございます。
  111. 山中郁子

    山中郁子君 すると、先ほどから伊藤局長は、自衛隊のできることとできないことをはっきりさしているというふうに言われましたけれども、この前提条件との関係で、この防衛協力小委員会の中で議論をされた自衛隊のできないこと、つまり除外合意項目みたいなものですね、それについての資料を、いまでなくてもよろしいですけれどもいただきたいと思うんです。
  112. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) それは、特に資料というものはございません。いろいろ研究の過程において、日本側のわれわれ以下関係者はすべてそれを承知しているわけでございますから、その議論の過程において、そういうことはできないというようなことがあるいは起こり得るんですけれども、いまのところはそういう問題が起こったというふうな報告は受けていないわけでございます。
  113. 山中郁子

    山中郁子君 それでは、この前提条件に基づいて、この協議研究の内容の具体的な中身でもって、この点は日本の憲法に抵触するからこれはできないんだとか、それから、事前協議との関係に関係するからこれはできないんだとかいうふうな議論が、一度も防衛協力小委員会の中では行われていないということですか。
  114. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま現実にやっておりますのは、たとえばその指揮、調整というような問題について部会で研究をいたしております。この問題につきましては、従来から御説明いたしておりますように、それぞれの米軍あるいは自衛隊は別個の指揮下にあるということでございますから、こういった問題については議論の余地のない、ところでございます。そして、その中でどういうことができるかということを研究しているわけでございますから、この問題について、これが自衛隊のできることに触れるか触れないかというような、そういった問題があって議論になったという報告は受けていないわけでございます。
  115. 山中郁子

    山中郁子君 じゃ具体的に、これが第二回にこの問題が議論をされたわけですので、私もう少しその内容について知りたいものですから議事録をいただきたい、これをお願いしたいんです。
  116. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) この小委員会につきましての議事につきまして、正式な議事録と称するようなものはつくっておりません。
  117. 山中郁子

    山中郁子君 正式な議事録がなくて、それでは何によってそれらが確認されるんですか。つまり、まあ普通考えて、この前の委員会でこう言ったではないか、日本はそれを了解したではないか、アメリカが第三回目に、第二回目のことについて言うとなると、するとどうなるのですか、言った言わないの水かけになったりなんかするのじゃないですか。
  118. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 文字どおりこの小委員会は特定の問題について研究協議をする場でございます。したがいまして、この前のときにおまえはこう言ったじゃないか、だからこうであるというような、記録を引用しながら相互に批判し合う、そういうような性質のものではないわけでございます。もちろん会議に参加している者は、それぞれが適宜または適当な者がメモをとるというようなことはみずからの覚えとしてあり得ること、会議でございますから当然あり得ることだと思います。ただ、私が申し上げましたのは、日米間で合意して調製しましたような正式の議事録というようなものを残すというようなやり方はしておらないということを御説明申し上げたわけでございます。
  119. 山中郁子

    山中郁子君 それはまたずいぶんひどい話で、実際問題として協議するのでしょう、研究だけではない、協議するんですよね。それを実際に、アメリカから現在も、やれ防衛費の分担、労務費分担がどうとか、五項目要請があったとかないとか、アメリカがもう日本にしてもらいたいことはわかっているわけでしょう。そういう中で、日本がどういうふうにそこでもって協議研究をしているのかということが、後に一切残らないような無責任な防衛協力小委員会のあり方をしているわけですか。
  120. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) その点はお手元にも差し上げております紙にありますように「研究協議の結論は、安全保障協議委員会報告し、」ということになっております。この小委員会の結論はいずれまとめられて文書になって安全保障協議委員会報告されることになるわけでございます。
  121. 山中郁子

    山中郁子君 まとめるに当たっても、何にも文書記録をしていないということはあり得ないと思いますから、そうした国会を軽視し、あるいは国民を愚弄するような態度は重大な問題だというふうに私は指摘しておきます。そして、これだけしがなくて、皆さんいずれまとめるときに、みんな頭の中に入っていたものを、じゃ第一回は何をやっただろう、第二回は何をやっただろうといってつくるわけじゃないでしょう、報告書を。材料になるものはあるでしょう。それをそれでは見せてください、議事録ないというならなくても結構ですから。
  122. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 防衛協力小委員会自体は、ただいま申し上げましたようにその結論をいずれ親のもとの委員会報告するわけでございます。したがいまして、その報告すべき結論の案というようなものが、ある段階にくれば当然に討議の対象になるだろうと思います。そういう意味のペーパーが両方の討議の対象になるということを決して否定するものではございません。ただ、それがいずれ小委員会の結論という形になって、そして正式に採択されれば親元の委員会報告されるということでございます。
  123. 山中郁子

    山中郁子君 そうした姿勢についての指摘先ほど申し上げたとおりです。  で、関連をいたしまして、この第二点の「憲法上の制約に関する諸問題、」ということの中に、憲法に基づく日本の各法律、いわゆる国内法ですね、ということは入っているのでしょうか。
  124. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 憲法に基づく法律ということは憲法上の制約の一環として入ると思います。
  125. 山中郁子

    山中郁子君 ということは、もう一度確認をさしていただきますが、憲法並びに国内法については協議の対象とならないと、こういうふうに理解してよろしいわけですね、内容的に。
  126. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) その国内法というのがよくわかりませんけれども自衛隊法その他につきまして憲法に基づいてやっているということでございまして、その憲法の制約というものが、直接その範囲内での法律のすべてを規制するということではないと思います。
  127. 山中郁子

    山中郁子君 そうすると、日本の国内法が、場合によってはアメリカとの研究協議の対象になるということですか。
  128. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) それはそういうことではございません。まあ私どもは、現在の時点で国内法に及ぶというふうには予想はいたしておりません。しかしながら、研究協議をする際に、日本独自の立場において、自衛隊に憲法の規定の中でこういう任務を与えた方がいいということがあるいは出てくるかもしれません。しかし、それはその前提条件の第二項に書いてございますように、「両国政府の立法、予算ないし行政上の措置を義務づけるものではない。」ということでございますので、日本政府立場としてそういうものは必要であるかないかという判断というものがまずあるわけでございます。したがいまして、この自衛隊法そのものまで対象にして研究するということではないわけでございます。
  129. 山中郁子

    山中郁子君 ちょっと歯切れが悪いですけれども、私が一番最初に申し上げた意味は、憲法上の制約というのは——国内法は憲法に基づくものですよね、すべて。私たちはそれは自衛隊法の違憲性だとかそういうことを言っています。だけれども、いまそのことを言っているんじゃないんです。すべて日本の国内法は日本の憲法に基づいてつくられている法律であると、その法律がこの日米協議の対象になるはずはないと私は思っておりますが、そのことは確かなんですかと、ここは「憲法上の制約」としか書いてないからと、こういう趣旨の質問です。
  130. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) それはいま先生がおっしゃるように、憲法に違反するような内容を国内法で盛るというようなことは全く考えていないわけでございます。しかし、先生も御承知のように、自衛隊法というものもできてから全くこれは変わらなかったかというとそうばかりでございません。たとえば、自衛隊法ができましたときに自衛隊に与えられていなかった南極観測の輸送業務の支援というような任務というものは、そのときどきのやっぱり法律によって変わってきているわけでございます。したがいまして、いまあるものを全く手をつけないということかというと、あるいは研究の結果部分的に直した方がいいというような判断が政府に出る場合もあるでしょうと、しかし、それは憲法の制約の中には当然含まれるものでございますというふうに御説明しているわけでございます。
  131. 山中郁子

    山中郁子君 すりかえようとしてもだめなのよ。私は日米防衛協力小委員会でね、あなたがおっしゃることはいいですよ、それは。法律は変わることはあるんだから。で、変わっても憲法との整合性のもとで変わると、基本的な前提ですよ。だけれども日米協力委員会協議の対象になるのかどうか、このことを言っている。
  132. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) それは日米安保体制をとっているわけでございますから、この研究協議の結果、自衛隊にあるいは憲法の許される範囲でこういう任務を与えた方がスムーズにいくという場合も、これはないわけではないと思うわけでございます。しかし、現在までの研究におきましてはそういうことは予想していないというふうに考えております。
  133. 山中郁子

    山中郁子君 私は大変な重大な問題だと思います。それで三原長官にもう一度伺いたいんですけれども日米協力委員会の中の研究協議の対象として、日本の法律が上がるということもあり得ると、いままでは上がっていないけれどもと、こうおっしゃっているわけでしょう。大変な主権放棄じゃないですか。そんなことは私はあり得ないと思う。日本政府が独自に自衛隊をこう改正したいというふうに考えたりなんかするということと別なんですからね。日米協議の中でそのことが対象になるということは、日本の法律をアメリカと相談して、アメリカ意見も取り入れて変えるということを考えることを研究協議する、こういうことになる以外考えられないんじゃないですか。とんでもない主権放棄の姿勢じゃないですか。
  134. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま、日米で相談してこれを変えるというふうに先生はおっしゃいましたけれども、それはないわけでございます。日米安保体制を有効に維持していくためにはどうすればいいかということを勉強するのがこの研究協議の会でございます。したがいまして、その結果日米安保体制によってわが国の安全を守ろうとしているわが国政府が、憲法の許容される範囲においてこういうこともした方がいいということが日本政府の独自の判断においてなされた場合に、そういうことが絶対にないということはないだろうというふうに申し上げているわけでございまして、これは決して自主的な判断も何もなく、アメリカに言われてそういうふうにするというふうなことでは全くないわけでございます。
  135. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) いま防衛局長がるる申し上げておりますように、この日米安全保障条約なり、それに関連いたします取り決めを円滑かつ効果的に運営をしてまいるという前提のもとに研究協議をやっておるわけでございます。したがいまして、その中に日米安全保障を円滑かつ効果的に遂行する上に、いろいろな意見が出るであろうと思います。それがしかし、出ましたその意見というようなものは、後段に決めておりまするように日本の国内法なり予算を制約するものではない。しかし、日米安保条約を遂行するために、こういう点はどうだというような意見の中に、あるいは、憲法に抵触することはもちろんございませんけれども、現行法規に抵触するようなものがありましても、それはそういう場合に、そういう意見が仮にあったといたしましても、それはまずこの日米合同委員会にかけられ、そうしてそれが、そういうことになりますれば政府に持ってこられまするから、政府がそれをどう処理するかということはわれわれ政府なり国会にあるわけでございますので、決してアメリカの言うままにこれが運営されるとか、アメリカからそういうことを強要されて云々するというような問題ではないと私どもは考えておるのでございます。
  136. 山中郁子

    山中郁子君 アメリカの言うなりにとか、アメリカのあれによってとかいうふうなことまで言わなくても、少なくともアメリカの関与というものは日米協力委員会の中では出てくるんですよ、日米のそのための協力ですから。私は繰り返して申し上げますけれども日本の法律をアメリカとの協議研究の対象にするということ自体、主権放棄という重大な政府の姿勢を示すもの以外の何物でもないというふうに重ねて指摘をしておきまして、この問題引き続き次の機会にさらに詰めたいと思います。
  137. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) ちょっといまの御発言に。  誤解を招くおそれがありますので申し上げておきますけれども日本の法律を変えるなんというような意思、あるいはそういう協議をやるというようなことは、初めからそういうことは毛頭考えていないということは、るる防衛局長が申し上げたとおりでございますので、その点はひとつ御理解を願いたいと思うのでございます。
  138. 山中郁子

    山中郁子君 そういうことも言われたけれども、逆に協議対象になって、日本政府として判断をして、そして法律は変わるということはあり得ると、憲法との関係で矛盾がない範囲で変わるということはあり得るということも言われているわけです。ですから、私が言っているのはおわかりだと思いますが、日米協議で憲法上の問題については対象としないと、だけど国内法については結局対象になるのだというふうになるので、それは外国との協議研究の中で日本の国内法が対象になる、変えるかどうかは別としてですよ。それでもって変えるのかどうかということは別として、変えるということも結果的にはあり得るではないか、そこに変えるというところにつながっていく協議というものはあり得るではないか、ということを私は指摘をしておきます。具体的にそれはまた次の機会ございますので、また御意見も承りますけれども
  139. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 大変恐縮でございますけれども、法律を変えることがあり得るというのは、私ちょっとそういうふうに受け取られると、大変恐縮でございますけれども、法律を変えるというのはこの国会でございますので、ですから国会の御判断にまつということが前提でございます。
  140. 山中郁子

    山中郁子君 もちろん当然そうでしょう。だから、そのことを協議の対象にすること自体が、日本独自で考えて法律を変えようと政府が思って、国会に諮って、国会でそれが成立するというなら別だけれども、そうではなくて、この協力委員会の中で協議の対象になるということは重大な問題につながりますということを私は申し上げているんです。憲法上の制約というふうに言われているから、これはすべての法律を包含するという意味なのかと、それだったらわかると思って質問しましたところが、必ずしもそうではないという御答弁だったので、その点を指摘しているわけです。  小委員会のいわゆるガイドラインを取りまとめて出すというふうになっておりますけれども、これはどういうふうにいま現状になっていて、いつごろ公表されるのか、どういう形式で、というのは、具体的にはここに三つの部会というのが出ていますけれども、それぞれ三つの部会ごとにガイドラインが発表されるのかどうか、その辺のところを伺わせてください。
  141. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これはまだ、いまのところは具体的にとてもお答えできるような状況ではないわけでございます。この安保協議委員会ができました経緯というのは、すでは御承知だと思いますけれども、有事の際に有効に対処するためにどうもいままで何もこういう相談をしていなかった、したがって、どういうふうにすれば有効に対処できるかということについての指針を何か求めたいということでこの委員会が発足をいたしました。そして三回、四回とわたっていろいろ議論をしたわけでございますけれども、どうもなかなか具体的なイメージがつかめないということでございまして、五回目のときにその部会というのを設けまして、いわゆる軍事専門的にそれぞれの分野について勉強している段階でございますので、どういう内容の指針になって、どういう形、あるいは部会ごとにやるのか、あるいは取りまとめてやるのか、そういうところまで研究が進んでいないというのが現状でございます。
  142. 山中郁子

    山中郁子君 じゃもう一つですけれども、まあちょっと大体の展望がありますでしょう。あなた方の願望でもいいですわね。それはどのぐらいにそれを取りまとめて発表することにこぎつけたいと思っていらっしゃるんですか、大体の感じでいいんですけれども
  143. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これは過去二十年間やっていないことでございます。したがいまして、始めたときに一体どのくらいかかるんだろうかということも私どもいろいろ議論いたしましたが、まあ常識的に考えて、二カ月に一回のテンポで進めるということになると二年ないし三年ぐらいはかかるかなあというような感じを持っていたのは事実でございます。
  144. 山中郁子

    山中郁子君 じゃこの問題でもう一つちょっと具体的なことを伺いたいんですけれども、三つの部会がそれぞれいままで何回、何月何日に開かれたかということだけちょっと教えてください。
  145. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これはことしの八月にできましてから大体月一回ずつ開いております。いままでのところをそれぞれ申し上げます。作戦部会が三回開かれておりまして、五十二年の八月——正式な部会といたしましては八月に一回、九月に一回開いておりますが、その前の準備の段階等で六月にも開いております。
  146. 山中郁子

    山中郁子君 何日。
  147. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これは一番最初に開いたのは六月八日でございますが、これはまだその設置が決まっておりませんから、部会というものがどういうようなものになるかというようなことでございまして、八月……
  148. 山中郁子

    山中郁子君 それじゃ、それ後で教えてください。よろしいですか。
  149. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) はい。
  150. 山中郁子

    山中郁子君 じゃ余り十分時間があるわけではありませんので、それは後で教えていただくことにいたします。  で、有事立法の問題に関連してくるわけですけれども、この問題も、本国会におきましても、予算委員会やあるいは先日の同じく防衛二法の本会議質問の中でも、かなり政府としての積極的な対応の御答弁が一貫してありました。それで、実情をまずお伺いしたいんですけれども、いま有事立法を防衛庁以外の省庁ではどういう研究体制に入っているのかということを教えてください。これは防衛庁から伺うので結構ですけれども
  151. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) この有事立法の研究を、三原長官からもことしの八月に、少し勉強してみたらどうだろうということで指示を受け、われわれもかねてから思っておりましたので、勉強を進めようとしておる段階でございますが、他の関係省庁は、この有事立法についてはいま全くのまだ関心はないと思っております。何もやっていないと思っております。
  152. 山中郁子

    山中郁子君 防衛庁長官も、たしか有事立法は防衛庁だけで考えたんではだめなんだと、いろんなところで関係してくるんだと、現に国防会議も大蔵、通産、経企、外務だとかで構成されているわけですね。しかし、いまほかの省庁では有事立法については何ら研究だとか行動がされていないというお答えでした。で、皆さん方が有事立法有事立法と言っていらっしゃるのは、先ほどからの議論とも関係するんですけれども、いわゆるおそれのある場合にも発動されるという内容のものとして考えていらっしゃるわけですか。
  153. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) 現在、いわゆる有事立法ということは、わが国にいわゆる侵略があった場合に、現在の憲法の範囲内で、かつ現在の法体制で果たして十分にやっていけるのかどうかという問題で、現在の法体系をどのように整備する必要があるんだろうかということを勉強しようとしておるわけなんです。で、現在の自衛隊法にも、御承知のとおり百三条というのがございまして、「防衛出動時における物資の収用等」ということで、防衛出動を下令されました場合には、都道府県知事は長官等の要請に基づきまして物資の収用をするとか、そういう規定がございます。こういう規定がございますが、と同時に、この現在の自衛隊法の中にも、いま言いました百三条の中にも政令や何かにペンディングで残されたものもございます。それから、あるいは防衛庁職員給与法の三十条にも、防衛出動を下令された場合に出動手当とか災害補償手当なんかは別の法律で決めなさいということが、現在の法律でペンディングで残っております。われわれ勉強いたしますのは、まずこの線から入っていくべきだろうと思います。と同時に、これは有事の場合といいますと、この狭い日本、過密の都市で侵略が行われた場合、これは非常に大変なことになるだろうと思うんです。多くの国民を避難誘導しなければなりませんでしょうし、あるいはこの間のわれわれの意向調査によりましても、自衛隊と一緒になって戦おうというのが三七%おりますし、あるいは自衛隊に参加して戦うというのも数%あります。恐らくそういう場合は、国民の多くの皆さんも、これは逃げていくところがないわけですから、一生懸命になって戦わなければいかぬという気持ちになられる、そういった支援を受ける場合に、現行の法体系だけで果たして十分かどうなんだろうか。ところが、そういう関係法令、たとえば避難誘導するとかいろいろな問題がございますが、これはほとんど他の省庁との関連法規だろうと思うのでございます。しかし、現時点、国民がまだそう危機感を持っていない時点におきましては、とりあえず防衛庁だけで、いざというときに防衛庁何をしておったんだということでは困ります。防衛庁としまして他の関係省庁との関連法令もございますけれども、どういった問題点があるであろうかということを十分にゆっくりと勉強していきたい、こういう観点で考えております。
  154. 山中郁子

    山中郁子君 そうすると、おそれのある場合に発動されるものとしては考えていないというふうに理解してよろしいんですか、私の質問から言うならば。
  155. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) いまの答弁、失礼しました。当然、おそれのある場合、先ほど防衛局長たびたび言いましたですね、第七十七条で、非常に危機が迫ってきた場合なんですね、恐らく。国民だれが見ても、これはいよいよ日本は危ないぞというようなときなんでしょう。そういうときに、恐らく私はこういった有事立法というものは、もう関係省庁寄ってたかって必死になってつくるだろうと思うんです。だから、おそれのある場合にそれは法律がつくられるでありましょうし、あるいはその前の時点で、そういう緊急の場合に、まだ足らない法律があるかもしれません。だから、これから勉強していきますけれども、そういったおそれのある場合にも要る法律があるのかもしれません。これはもうしばらく勉強させていただきたいと思います。
  156. 山中郁子

    山中郁子君 いや、私が言うのは、おそれのある場合にも発動されるものとしての有事立法を考えていらっしゃるのかと。いま何か研究だか勉強だかよくわかりませんけれども、そういうことを伺っているんです。
  157. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) おそれのある場合にも、あるいは交通統制なり物資の収用なり、あるいは別の法律が要るのかもしれません。要るのかもしれません、おそれのある場合にも。これはもうしばらく勉強させてください。当然私は要ると思います。
  158. 山中郁子

    山中郁子君 私どもが一貫して主張しているのは、このおそれの問題、無制限に拡大していくではないかと。先ほどの御答弁もありましたけれども、いま平時もおそれのある場合の状態の前段階。で、有事の場合、つまり武力攻撃があった場合の前段階がおそれのある場合、そうすれば無限につながっていくわけですよ。そうして、無限にその有事立法の中身がまた問題ですよ。これはまた議論しなきゃいけないんですけれども、私が本会議質問で申し上げました国家総動員法のことを考えてみれば、あるいは三矢研究の中身をいま照らしてみれば、非常時立法、有事立法の性格というのが何なのかということは、もう学問的にも歴史的にも明らかになっているのですよね。だけど、それはいまちょっと横に置きます。いずれにしましても、いま御答弁があったんですが、もう一度ちょっと長官にはっきりさせていただきたいのは、いままでいろんなところでいろんなふうにおっしゃって——いろんなふうというか、同じことをおっしゃっているのかどうかよくわかりませんが、有事立法の研究の指示をなすったというのはどういうふうに指示をなすったのか、もう一度ちょっと直接私の質問に対して御答弁をいただきたいと思います。
  159. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) この指示をいたしました時期というのは、ちょうど堀江議員が見えておりますが、堀江議員が有事の際における自衛隊任務遂行上の欠陥というか、法制面における研究が十分なされていない面があるではないかという御指摘の御質問が事前に通告があったわけでございます。なお、その当時には、関東、東海におきまする大震災というようなものの予報問題等が問題になっておったのでございます。そこで私は、内局と幕の会合を週に一回やるわけでございまするが、その席上で、そういう問題の御意見質問があるようになっておるが、そういう点について——そのときには、したがいましていま論議になっておりまするような有事立法、あるいはそのおそれのある場合というような問題も、その内容の中には入ると思いまするけれども、広く有事とは何ぞやというところから問題を解明せなくてはなりませんけれども、私はそのとき申し上げましたのは、そうした震災対策、あるいはいま言われまするような有事の際という七十六条なりあるいは安保条約の五条というような、そういうものも含めて検討、勉強をする必要があろうと思うと、しかし、そうした有事立法の問題は、政府の政策なり、政府の方針が確立して初めて具体的に研究に取り組むことであろうが、しかし常時ひとつその点については、法制面について勉強をしておく必要があるぞということを実は指示したわけでございまして、直接、有事立法の準備をせよというようなことを具体的に言う立場でもございませんし、そういうことは申し上げていないのでございます。
  160. 山中郁子

    山中郁子君 そうしますと、勉強なすっていると。実際政府が政策として有事立法をつくるということを決める方向が確認された段階で、具体的な研究、実際の正式にというのか、何というのか、正式な研究に入る、こんなふうな関係になっているように伺いました。そうしますと、そうしたことについて三原長官は、福田総理大臣も大変積極的に何か答弁をずっとなすっているのですけれども、福田総理大臣にそのことを、防衛庁長官として進言なすったわけですか。
  161. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 特別有事立法の必要性を進言をしたことはございません。
  162. 山中郁子

    山中郁子君 そうすると、いわゆる業務としての本格的研究が、政府の方針として明らかになった段階で総理から指示をされるという御認識ですね、その辺のことについては何らかの話があるわけですか。総理大臣の方から、正式にその有事立法の研究防衛庁としてもやってくれと、まあその場合には防衛庁だけにならないと思いますけれども、そうしたことはいまあるんですか。
  163. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 現在までのところ、総理からそういう指示、要請は受けておりません。
  164. 山中郁子

    山中郁子君 そうであっても、総理はさまざまなかなり積極的な答弁をいろいろなところでなさっている。それで、その中の答弁一つに、いずれ開示をする、どういうことを一体やっているのかということに対して、いずれ開示をする——開示って、まあ開いて示すという、開示をするというふうに言われているんですが、防衛庁としてはこういうものはどういう形式で国民の前に示されるというふうに考えておられますか。具体的に言えば、たとえば法律案みたいなもので示されるのか、法律案大綱みたいなもので示されるのか。いまのお話だと、まだそれは先の先の段階だというふうな御答弁が来るんじゃないかとは思いますけれども、総理はいずれそれは開示すると、こういうふうに具体的にもうおっしゃっているんですね。それはどういうふうに理解されていますか。
  165. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) 先ほども言いましたように、いま日本の国の国民はほとんど危機感を持っておりません。非常に平和で暮らしておるというときですけれども、しかし、自衛隊防衛庁だけは有事の場合に備えてこういう有事立法的なものは勉強しておく義務がある、このように思ってわれわれは勉強しておるわけですけれども、これを恐らく立法化するというとぎには、相当の国際情勢が変わり、国民に危機感が伴ってきて、いわゆる政府がいよいよこれは立法化する必要があるぞというようなときに、内閣総理大臣以下政府長官が判断をされると思います。そういうときでなければ、われわれは各省庁と打ち合わして立法の具体的な段階に進む段階ではまだない。あくまでも現時点では防衛庁内部だけの勉強にとどまっておるべきものであろうと、このように思っております。だから、立法の手続は、そういった国民の危機が迫り、政府が判断していよいよ立法の準備を進めろ、こうなりますと、これは一防衛庁だけにとどまらないと思うんです。あるいは内閣、あるいは国防会議事務局、そういったところも中心になりまして、各省庁と関係法令の詰めをする段階が来るんであろう、このように思っております。
  166. 山中郁子

    山中郁子君 この問題が、これは三原防衛庁長官がたしか参議院予算委員会答弁された中身だと記憶しておりますけれども、坂田長官の時代に研究の再開を指示したと、研究であるか、勉強であるか、指示したと。そして、改めて、先ほどお話がありましたように、三原長官も指示をなすったということは、何か特別な、どういう理由によってそうした形で有事立法の研究ないし勉強の指示が改めて行われたのか。私はある防衛庁の職員の方の感想めいたことを伺ったんですけれども三原長官から有事立法の指示があった、これはやっぱり身を引き締めてやらなければならないというふうに感じたという意味の感想めいたこともちょっと伺ったのですけれども、それはやはり、いままでずっとやってきたから、それでやっぱり常にやらなきゃいけない問題だということだけではおさまり切らない何らかの理由があるというふうに言わざるを得ないと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  167. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) ちょうど、先ほども私はそういうことを勉強指示をいたしました際の動機と申しまするか、それを申し上げました。それは堀江議員の御質問、それから国土庁を中心にいたしましての、あるいは消防庁等を中心にする、また自衛隊も参加をいたしておるわけでございまするが、震災に対処する、そういう準備態勢等の論議がわれわれの間にも問題になっておったところでございます。そういう動機から私は勉強をしておれということを指示したのでございます。  なおまた、その際に私はつけ加えたのは、三矢研究というようなものが一つの問題になったのは、長官がそういう勉強の指示もしないのに積極的にみずから勉強したことでございましたが、それがシビリアンコントロールの不十分なところではないかという国会指摘があって中止し、一切を廃棄するというような処置をしたわけでございまするので、そういう点から私は特にその例も挙げて、私が指示をするのは、とにかくそうした法制面において、何百という法律があるが、それらに対して自衛隊任務遂行上欠陥あるいは不足するような点はないのか、そういう点を勉強しておけと、しかしそのこと自体は、政府が政策として決定をする時期には具体的にどういうものをやれというようなことになると思う、各つかさにおいて勉強をしておいてくれということを言ったところでございます。坂田長官の場合も、恐らく私は、御本人に確めておりませんけれども、やはりそうした何らかの動機があって私と同じような御指示をなさったもののように承っておるわけでございます。そういうような経過でございます。
  168. 山中郁子

    山中郁子君 そうですかと伺うわけにいかないことの最も大きな理由として、三矢研究の問題があったわけですよね。あなた方、勉強しているだけですと言いながら、三矢研究の中身をあれしていただければわかるけれども、それが大問題になったわけでしょう。それで私は、一つだけ三原長官のお考えというか、それは認識でも結構ですが、伺っておきたいんですが、三矢研究が暴露されて問題になったときに、佐藤当時の首相が参議院の予算委員会で、今日この平静な状況のもとに非常事態を予想する、そういうこと自身が間違っておると、こう言われておるんです。私本会議でも申し上げました。このことについてどうお考えか、変わったのかと、その情勢が。そのときは平静な情勢だった、だけれども、いまはもう平静な情勢ではなくなっているから有事立法の研究をしなきゃいけないんだと、こういうふうに変わったのですかということを伺ったんですけれども、これについては御答弁がなかったわけなので、これはひとつぜひここでお伺いをしたい、こう思います。
  169. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 現在の国際情勢あるいは特に防衛関係からする軍事情勢等につきましては、再三公表もいたしておりまするように、急迫な態勢だということは考えておりません。平和と安全の状態は継続されておるという認識に立っておるわけでございます。しかし、先ほども私は指示をする動機を申し上げましたように、関東、東海の大地震が予想される、そういう点について、特に各方面からの強い要請を受けたのでございます。そういうものを含めて、私は話を申し上げたという動機を申し上げたのでございまするが、そういう点を含めて勉強をしておくようにということを申し上げたのでございます。
  170. 山中郁子

    山中郁子君 平静な状況のもとに非常事態を予想する、そういうこと自身が間違っておる、こういうことを言っていることについて、情勢が変わったのですかと、当時は地震は起きないということだったけれども、いまは地震が起きそうになってきた、たとえばそういうふうに変わったのですかと、まあ地震というふうにおっしゃるならば。そういうことを伺っているんです。
  171. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 私は、佐藤さんの時代と現在と、そう国際情勢、わが国の脅威なんというようなものについて変化があったということは思っていないということを先ほどから申し上げております。しかし、現在やはり非常に大きな関心がございますのは大地震でございます。これは演習を名古屋でもこの一ヵ月ぐらい前もやられたのでございまするが、このこと自体は非常に大きないま問題視されておるところでございます。それを動機にして、実は私は、いま有事立法と盛んに言われるから、いかにも非常な問題視されるわけでございますが、そのときは、私はそういうものを含めてひとつ自衛隊任務遂行のために勉強をしておくようにということを申し上げたのでございます。御理解を願いたいと存じます。
  172. 山中郁子

    山中郁子君 それじゃ有事立法というのは、地震など、まあ地震ですね、そのための研究であるということですね。
  173. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) まあ、おとりいただくことはなんでございますが、しかし私は、地震というものも含めて、その有事の際のいろいろな、堀江議員の御質問等もあったわけでございまするから、そうしたものを含めて広く有事というような点から、ひとつ法制面の研究のための勉強をしておきなさいということを指示をしたわけでございます。これは防衛庁長官がそういうことを指示しませんと、単独で積極的にやっておることが大きな、外部にそれが出てまいりますと、一つの非常な自衛隊に対する誤解を招く点もございまするので、私から特にその点を申し上げたところでございます。
  174. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) いま国土庁が中心になりまして、現在の災害対策基本法だけでは、いわゆる大地震のときに、あるいは道路交通そういった関連で、現行法規だけでは足らないんじゃないかということで、各省庁とそういうことを勉強しつつあるやに聞いております。これはわれわれの方のいわゆる有事の場合にも非常に参考になることでございますし、まず、われわれもそういった大災害対策における現行法規の不備があるかどうかというこども、われわれの有事の勉強のまず最初の出発点にしていきたい、長官の言われたとおりで、勉強しております。
  175. 山中郁子

    山中郁子君 まあ余りこの問題にこだわっても仕方ないんですけれども、私が申し上げたいのは、堀江委員質問されたことが動機でとおっしゃっているように、堀江委員が何を質問されたなんということはわかっているわけですよ、何も地震やなんかということをおっしゃったわけじゃないですよね。そういうことについて、長官が、あくまで有事立法について、やれ地震だの何だの——私は地震の問題にしたって、何も有事立法をつくらなきゃ地震対策ができないなんて毛頭思っていませんけれども、だけれどもそれは横に置いて、そういうふうな御答弁ではなくて、あなた方が、かつて三矢研究といって暴露されたからわかったけれども、憲法無視のあの非常時立法、国家総動員体制につながる非常時立法を内々でつくっていたわけでしょう、防衛庁で。そして、そのことを暴露されて、そして平時のときにそういう非常事態を予想すること自体が間違っているというふうに佐藤首相が述べたんですよ。だから、地震の問題だけじゃないんでしょう。じゃないんだから、その中に当然有事、軍事の問題入っているんでしょう。だったら、そのときの情勢といまの情勢とどう違うんですかと、あのときの佐藤首相が言ったことは違っていたのかと。それは三原防衛庁長官の認識で結構です。感想でも結構です。そうではないんだと、いまこそ有事に際して、やはり地震もあるでしょうけれども、有事に際して準備をしなきゃならない新たな情勢が来ているんだという認識がなければ、この国会答弁と違うでしょう、佐藤首相の当時の答弁と違うでしょうということを私は申し上げている。
  176. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 私は、あくまでも自衛隊任務遂行という立場で問題を考えてまいっておるのでございます。それには、いま申されますような有事の際の任務遂行というものが主目的でございましょう。しかし同時に、国民の要請する非常災害に対する、これに対する対処任務遂行ということもあるわけでございまするが、それらのことが、認識といたしましては佐藤さんと同じ認識を持っておるわけでございまするけれども、何らの準備もしていなかったということであっては申しわけないではないかと、そういう点については、外部に発表していろいろ国民に御迷惑をかけるようなことがあってはいかぬから、自分で勉強だけはしておけと、しかし、外部に発表ということについては、政府が政策を決められて、そういうことでその際に整理をして具体的な指示をする、私は老婆心ながらそういう点を含めて勉強の指示をいたしたところでございます。認識については、佐藤さんの時代の認識も、私の現在の国際情勢に対する認識、防衛任務遂行に対する認識には変わりはないと考えておるところでございます。
  177. 山中郁子

    山中郁子君 時間になりましたので、引き続き次の機会にこの問題も含めて、先ほどのことも含めて、資料もいただいた上で質疑を続行いたします。そのほかにF15あるいはP3C等々たくさん問題がございますが、最後に一つだけここで伺っておきたいのは、それではいま研究を指示したというふうに言って、勉強されているわけですね、防衛庁の内部では一生懸命。それは三矢研究のときには八十七件の立法件数が挙げられていましたけれども、どのくらいの案件がいま研究、勉強の対象として防衛庁内部で行われているのか、行われるように指示されているのかお聞かせいただきたい。
  178. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) 昭和三十八年の三矢研究とは若干趣を変えまして、まさに長官の指示のもとに、シビリアンコントロールのシンボルである防衛庁長官の指示のもとに、内局で、官房長、私が中心になりまして、私の下の法制調査官室を事務局にしまして、そして各幕の法制担当者とこれから詰めていくことにしております。  で、現在どれだけの法律が要るかは、いま各幕に、とにかく検討項目を挙げさせておる段階でございます。恐らく十二月ごろにどういう問題が検討すべきか上がってくると思います。先ほど先生が言われましたように、三矢研究当時挙げられたたくさんの法律があるようでございますけれども、これはあくまでも現憲法の範囲内で、しかも、われわれ有事を考えましてどういう法律が要るかをこれから勉強していくところでございのすので、いま具体的にこれこれと言える段階ではございません。
  179. 井上計

    ○井上計君 先ほど山中委員への御答弁の中で官房長が、最近行われた自衛隊についての世論調査の結果等についてちょっと御答弁の中にあったようでありますけれども、そのことにつきまして少し詳細にお尋ねをいたしたいと思います。  世論調査の方法、どういう方法でなされたのか、あるいは調査の結果等につきまして、特に特徴的な点がありましたら、これらの点についてひとつ御説明をお願いいたします。
  180. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) 従来まで、わが国国民の方々の自衛隊に対する評価あるいは国防意識といったものは、総理府の広報室が中心になっていただきまして三年ごとにやっておりました。過去四十七年と五十年とやっております。で、四十七年のときに、自衛隊の支持率が七三%、五十年のときに七九%ということでわれわれも非常に喜んだわけでございます。本来ですと五十三年に総理府が行うわけでございますけれども、たまたま私の方の広報関係で、いわゆる国民の皆さん方が、マスコミの新聞なりテレビ、ラジオをどのように見ておられるだろうか、それによって、国防問題というのはどういうように情報をとっておられるだろうかということも、今後の広報のために聞いておく、一遍調べてみたいということと同時に、防衛庁としましては、最近、ミグ25事件もあったり、あるいは領海の問題があり、あるいは防衛庁としましては基盤的防衛力という構想も出しておりますので、国民の方々が、そういう新しい局面において自衛隊に対する支持なり、国防問題をどのように考えておられるだろうかということを、この際防衛庁独自で調査してみたらいかがなものかということでことしの九月にやったわけであります。  やり方は、これは防衛庁をひいきする人たちだけをやっていくというわけにいきませんので、従来総理府がやっておりますとおりの調査、しかも、総理府が委嘱しております民間のそういう調査機関に委託をいたしまして、約三千人を母体といたしまして調査した結果でございます。  で、その結果の特徴は、前にも申し上げましたけれども、実は私も非常に心配しておったわけなんですが、七九%五十年に出まして、ここで防衛庁独自で五十二年にやってみた結果七九%を割ったら、これはもう官房長の責任問題かと思ったぐらいですけれども、やってみました結果が幸い八三%という支持率でございました。一九七五年の西ドイツの国防白書を見ますと、あれだけ緊迫した西ドイツですら国防軍に対します重要性という認識が七五%、ただ私の方は、自衛隊があった方がよいかと、問い方はちょっと違いますけれども八三%、いままでわれわれ総理府にやってもらった調査の中では最高であったということを非常に喜んでおるわけでございます。と同時に、日米安保体制につきましても六三%の人たちがこれを評価しておるということも言えると思います。それから、日米安全保障条約が日本の平和と安全に役立っておるという評価をしているのがやはり六三%、今後の日本防衛力のあり方、これはやはり安保条約も自衛力もいままでどおり、そういったものが二九%とあります。  私はこれを見てみまして、自分なりで感じましたのは、やはりまだいまの国民の方々は、大体いま程度の防衛力、安保条約でしっかり手を握っていま程度の規模の防衛力をずっと続けていけと、まあ質的向上を含めましての、そう物すごく大きな防衛力は考えていないということも一つのあれだと思います。  それからもう一つは、国民の四分の一、二五%ぐらいの方々が、今後防衛をどうやったらいいかとか、あるいは防衛予算はどうあったらいいかという防衛の具体的な問題になるとまだわからないという方が、案外いま言いました二割五分ぐらいあると、わが国防衛というものは本当にむずかしいんだなということを私自身感じましたけれども、何といいましても八三%というものが、自衛隊に対しまして、あった方がよいと、またあるべきだという支持率を得たことを非常に喜んでおる次第であります。
  181. 井上計

    ○井上計君 それではひとつ長官にお伺いしたいのでございますけれども、いま官房長からのこの調査の結果についてのお答え説明を伺いました。大変すばらしいといいますか、非常に高い支持率が出ておるわけでありますが、このような高い支持率が出た理由といいますか、どんなところに大きな原因があるのかどうか、長官のひとつ御見解をお伺いいたします。
  182. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) お答えいたしますが、今回の世論調査には二つの大きな柱があったと思うんです。  一つは、国民のコンセンサスを得るための自衛隊の理解をしていただきたいというところで、実は国民の方々が広報宣伝の媒体になりますテレビ、ラジオあるいは新聞等をどうごらんになっておるか、それを時間的に見たり、職業的にいろいろな立場から検討したりする、要するに広報媒体でございまするそうした機関の利用をどうしておられるかというようなことを見させていただきました。これは私は非常に成果的に効果があったものと思っておるわけでございます。  次には、自衛隊に対します国民の理解と認識がどこまでいっておったかという点で、いろいろな意見が出ておりまするけれども、これを集計をいたしてみますと八三%という結果が出た。このこと自体は、いまお尋ねの、なぜそういうことになったかということでございますが、これはやはり自衛隊自身の平素の教育訓練、活動に対しまする認識が一つの成果であろうと思います。また、日本を取り巻きます情勢等のこともあったのではないかと思うのでございまするけれども、そういう点でそういうような成果が生まれてきたと思いまするが、しかし私自身は、そうした成果というようなものをもっと掘り下げて検討をすべきであるぞと、そういう結果が出た数字によって、国の防衛に対する国民の理解と認識が高まった、あるいは自衛隊の支持率が高くなったということだけで喜ぶべきものではない、したがって、今後国民が要請される災害復旧に対する努力等を含めて、今後自衛隊の訓練、活動等について一層積極的に精進をし、国民の理解を高めていくことが必要である。また、広報宣伝機能というようなものも、ひとつ十分、十全の努力をすべきであろうというようなことを申し上げてまいっておるわけでございまして、そういう受けとめ方をいたしておるのでございます。
  183. 井上計

    ○井上計君 いま長官お話の中で、実は私も全く同感なもので、あと質問がどうも若干出にくくなるようなことで、いま長官お話しのように、今度の高い支持率といいますか、調査の結果による支持率に甘んずることなく、さらにこれを掘り下げて検討して一層の努力をいたしたい、こういうことでございます。これは特に私からも、ひとつ今後努力をしていただくということを要望をいたしておきたいと思います。  振り返ってみますと、十数年ぐらい前、とにかく最近に至るまで、自衛隊の隊員が制服を着て表に出ることを大変いやがったと、制服を着て歩いておると、時には税金どろぼうと言われて石を投げられたというふうなこと、まだ余り遠い昔のことではないと思いますが、当時から見ますと非常に自衛隊に対する関心、特に支持といいますか、自衛隊の必要性というものが認識されて大変結構でありますが、しかし、まだ私はどうも十分でないというふうな感じがいたすわけでございます。  先ほど、やはり官房長が山中委員への答弁、有事立法りことについてのお答えの中で、国民は危機感を持っていないと、こういうふうな御答弁がありましたけれども、私自身もやはり常に感じておりますことは、どうも日本国民は非常に第二次世界大戦後恵まれておりましたので、平和というものが、水や空気と同じように黙っていても、努力をしないでも与えられると、こういうふうなどうも考え方が大変強いんではなかろうか。ただ、最近は水や空気は大分汚染をされました。水や空気については非常にその危機感といいますか、まあそのようなものを感じておりますけれども、依然として平和ということについては、全くと言っていいほど危機感がない。調査の結果かなり危機感があるように思えますけれども現実的には余りそういうふうな危機感を持っていないという国民が多いんではなかろうかと、こういうふうに思います。  そこで、ひとつさらに国民の間に防衛という問題についての危機感を、必要性というものを痛感をしてもらうためにも、まだまだ現在十分でないと思いますので、長官先ほど、さらに広報宣伝等について努力をすると、こういうお話でございましたけれども、現在までにどのような防衛庁はPRをしておられるのか、主な点お答えをいただきたい。
  184. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) 私も、私事ですが、警察から参りまして、防衛庁というのは非常に広報に涙ぐましいほど力を入れておるなと、これぐらいPRしなきゃいかぬのかなというぐらいの気持ちでおりますけれども、一生懸命にやっておると思います。大体、年間予算が五億九千二百万ほどございますけれども、たとえばこの夏なんかは、夏休みに各駐とん地をある一定期間開放して子供さんたちに見せておるとか、あるいは部隊にこういった市民の方々をお招きして、訓練に差し支えない限りお招きして広報宣伝やっておりますが、それ以外に新聞雑誌等に対しますいろいろな広告の配布をお願いしております。また、防衛庁自体でも「防衛アンテナ」等々、いろいろなパンフレットを出してやっております。それから、特に最近、陸海空が持っております音楽隊、これが、たとえば木曜コンサートとか、そういったことで、地方によりましては音楽鑑賞を兼ねて自衛隊のPRをしておりますし、それから、有志の方々に訓練の場合、あるいは護衛艦に乗せたり、あるいはヘリに乗せたり、訓練に差し支えない限りにおいてはそういった便を図ることもございますし、それから、一日入隊というのがこのごろ非常に多いわけでございますけれども、若い青年の身体を鍛えるためということで各企業からの申し入れもございますけれども、こういう点につきましても、訓練に支障のない限り十分のお役に立つように、明るい自衛隊をPRするために努力しておるところでございますけれども、さらに一層の努力をしてまいりたいと思います。テレビ、ラジオ等でも、最近は非常に防衛問題取り上げていただいておりますが、一層の努力をしてまいりたいと思っております。
  185. 井上計

    ○井上計君 まあ、かなりPRにいままで力を入れておられることについては承知をいたしておりましたけれども、これでまだ十分ではないという感じもします。特に、例の体験入隊ですけれども、各企業が案外そのわりに知らないんですね。こういうふうな、容易に体験入隊が認められるといいますか、そういうふうなことができるということを案外知らないんです。特に中小企業が余り知りませんので、中小企業の実態からして、そう一日の体験入隊なかなかできにくいという点はありますけれども、むしろ、私はそういう面でもう少し企業に対して体験入隊を呼びかけるというふうな、そういうふうな広報宣伝に力をさらに入れていただいたらどうであろうかと、こういう要望でございます。  そこで、これは長官というよりも政府委員の方のお答えで結構でありますけれども、外部からの侵略——先ほどから山中委員の御質問等に対してのいろんなお答え等あるわけでありますけれども、やはり外部からの侵略の脅威が、なかなか現在、平常、平時というふうな、お答えいろいろありますけれども、やはり私は、侵略の脅威は去っていない、むしろ逆に最近は高まりつつあるんではなかろうかと、これは私というよりも国民の間にもそういうふうな懸念が生じておる。これはこの数年相次いでおりますけれども、率直に申し上げてソ連の不法行為、北方海域における特に日本漁船に対する不法な行動、拿捕等が頻発をしております。あるいは若干古くなりますけれども、ミグ25の領空侵犯というふうな問題、こういうふうなことから考えてまいりますと、やはり国民の間に、特に防衛、国防に関心を持っている人たちに言わせますと、現在のわが国の自衛力、装備、配置等は、果たしてこの脅威に対応できるのか、十分かどうかという、かなりやはり心配が最近特に起きつつある、ふえつつあると、こういうことだと思いますが、この点についてひとつどうでしょう。現在の考えられる脅威に対して、現在のわが国防衛体制、十分かどうかと、この点につきまして、簡単で結構です。
  186. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 簡単にお答えするのはなかなかむずかしいわけでございますが、いま先生がおっしゃいました脅威というのは、いろんな意味で二百海里問題等を通じましてのトラブルはございます。しかし、それが侵略の脅威であるかどうかということになりますと、やはり侵略というものは、持っております軍事能力と、それからその意思が結びついたときに脅威になるというふうに私どもは考えておるわけでございます。そういう点からいたしますと、確かに軍事力の面からいたしますと、日本の周辺諸国の軍事力というものは、過去十年をとってみましてもそれぞれに努力をいたしまして能力が上がっているというのは事実でございます。したがいまして、私どもも、防衛計画の大綱でお決めいただきました兵力量の範囲の中で、その質的な向上というものは努力してまいらなければならないというふうに考えております。具体的な例といたしましては、F15あるいはP3Cをいまの概算要求でお願いいたしておりますのもその一つのことでございますが、そういうことによって、日本の周辺にある国々というものが、日本に侵略をしても、その得る利益よりも損害が大きいのではないかということによってそれを思いとどまる、その抑止の力としての防衛力を建設したいとして努力をいたしておりますし、また、それなりの効果はあるものというふうに考えておりますのは、過去、戦後三十年間、日米安保体制のもとにそういうふうな努力をしてきたということが侵略を防いできたという事実からも効果があったのではないかというふうに考えているわけでございます。
  187. 井上計

    ○井上計君 そこで、もう一つずばりお尋ねをいたしたいと思いますが、先ほどのアンケート調査の結果によりましても、日米安全保障条約の必要性、それらについてのかなり認識、支持といいますか、そういうふうな支持率が出ておりますけれども、もし仮にこの日米安保条約が消滅をした場合、現在の防衛力でどうであるかということについて、ひとつどうでしょう。差し支えない範囲で結構です。
  188. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 御承知のように、現在世界情勢を見てまいりましても、単独で自己の国を守り、あるいは平和と安全を確保するということは、きわめて至難な状態にございます。したがいまして、国連において決められておりまするように、集団安全保障体制をとるというような傾向が世界各国の情勢でございます。したがいまして、わが国におきましては、再三申し上げてまいっておりまするように、わが国のこの防衛体制というのは、憲法の制約下において専守防衛の体制をとってまいっております。そして、日本の安全を自力で確保できないような場合には、アメリカ協力を得て共同対処をしていくという安全保障条約を持っておるわけでございまするが、しかし、いまそれが破棄されるような状態になった場合どうなんだというお尋ねでございまするけれども、いま申し上げましたように、私どもの国の安全は、日米安全保障体制を堅持していくという立場で実は日本防衛を考えておるわけでございまして、いまそういう体制に持っていくというようなことは考えられない、またそうすべきでないという方針を堅持をいたしておるところでございます。その点はひとつ御理解を願って御協力を願いたいと思うのでございます。
  189. 井上計

    ○井上計君 長官のお立場、また現状からいたしますと、いまの御答弁当然だというようにこれはもう理解ができます。ただ、国民の中に、永久的に日米安保条約、安保体制が堅持されるんだという、そういうふうな安易な考え方もある。これが三年、五年、十年というふうないわば年月でなくて、そういうふうな安易な考え方もあるというふうなこと等から、やはり私は日米安保条約、現在の安保体制というものが、いかにわが国防衛にとって必要かということ等につきましても、先ほど自衛隊のPRをさらに積極的におやりいただきたいという要望をいたしました。また、長官もさらに掘り下げて検討するというふうなことでありましたが、あわせてそれらの点につきましても、もっと国民の間にやはり安保体制の必要性、堅持をしていかなくちゃいけないわが国の実情、それらについて、さらに加えてそういうPRが必要ではなかろうか、この点ひとつ意見として申し上げておきます。  それで外務省の方お見えでしょうか。——それでは外務省の方にちょっとお伺いいたしたいと思いますが、昭和十六年に日ソ中立条約が締結をされております。これが昭和二十年に、大変残念でありますけれどもソ連の一方的な宣戦布告という形で破棄されたわけでありますけれども、この日ソ中立条約についてその経過、それから、この条約の骨子、主要点、これらのものを事実に基づいてだけで結構であります。ひとつ御説明いただきたいと思います。
  190. 都甲岳洋

    説明員(都甲岳洋君) 御説明させていただきます。  日ソ中立条約の事実関係を簡単に御説明いたしたいと思いますけれども、この条約は昭和十六年四月二十五日に批准書を交換いたしまして発効いたしております。四条から成る条約でございまして、第一条におきまして、締約国はお互いに他の締約国の領土の保全及び不可侵を尊重するということを約束しております。それから、第二条におきまして、締約国の一方に対して軍事行動が行われた場合には、他方締約国はこのような紛争の全期間中中立を守るということを約束しております。第三条は効力規定でございまして、批准を了した日から五年の期間効力を有するということが約束されておりまして、それで、両締約国のいずれの一方も、この期間満了の一年前にこの条約の廃棄を通告しないときには、この条約は次の五年間自動的に延長されるという規定になっております。第四条は単に批准書交換のための手続規定でございます。
  191. 井上計

    ○井上計君 いま経過、事実関係、御説明いただきましたが、といたしますと、二十年の八月九日であったと思いますが、ソ連が日本に対して宣戦布告をしたということであります。したがって、これはいまの四条から成る条約の第三条ですか、有効期限五年間である、したがって、昭和十六年の四月二十五日の発効でありますから、まだ五年間以内であったということにこれは大体なると思います。それからさらに、一年前に廃棄通告をしなくてはいけないというふうな点から考えて、これは明らかに国際法違反であると、こう思いますけれども、その点についていかがですか。
  192. 都甲岳洋

    説明員(都甲岳洋君) 御承知のように昭和二十年の四月五日に、モロトフ外務大臣が佐藤駐ソ大使を招致いたしまして、ソ連邦としては明年四月期限満了後この協定を延長しない意向を宣言するという意向を日本側に通達いたしました。その結果、この協定は昭和二十一年の四月二十五日をもって失効するという状態にあったわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、その昭和二十一年の四月二十五日までは、この条約の規定に従いましてこの条約が依然有効であったということでございます。しかるところ、昭和二十年の八月八日になりまして、再び当時のモロトフ外務大臣が佐藤駐ソ大使を招致いたしまして、日本に対する宣戦布告を通告いたしました。この条約の規定からいたしまして、当然領土の不可侵及び中立ということが約されていたわけでございますし、その約束は昭和二十一年の四月二十五日まで有効であったわけでございますけれども、この対日宣戦布告というものがこの条約の規定と両立しないものであるということは、この条約の規定から見て明白であろうというふうに私どもは考えております。
  193. 井上計

    ○井上計君 ということは、明らかにソ連のこのときのとった行動、行為等については、違法、違反であるということは明白だと思います。  そこでもう一つ伺いますが、ソ連は日本に対して八月八日に宣戦布告をした。ところが、わが国はソ連に対しては宣戦布告をしたかどうか、これをお伺いいたします。
  194. 都甲岳洋

    説明員(都甲岳洋君) わが国といたしまして、ソ連に対して明白に宣戦の布告の措置をとったことはないというふうに私は記憶しております。
  195. 井上計

    ○井上計君 といたしますと、そこでいろいろな問題が生ずるわけでありますが、もう一つ伺いますが、この条約等に基づきましてのソ連の違法、国際法違反、これはもう明白でありますけれども、そこでわが国の固有の領土でありますところの北方領土を、ソ連が現在でもなお占拠いたしておるわけであります。ということは、これはやはり国際法上どうであるか、これについてひとつお答えをいただきたいと思います。
  196. 都甲岳洋

    説明員(都甲岳洋君) 御説明いたします。  北方四島の問題に関しましては、ソ連側は諸般の国際協定によって解決済みであるという主張をしていることは御承知のとおりでございます。その根拠を具体的につまびらかにいたしませんけれども、ソ連側の根拠となっている幾つかのものといたしまして、たとえばヤルタ協定であるとか、ポツダム宣言であるとか、サンフランシスコ条約というものを挙げていると考えられますけれども、たとえばヤルタ協定でございますけれども、ヤルタ協定というのは、昭和二十年の二月にソ連が対日参戦をすでに約して、その代償として千島等を譲り受けるということを約束しているわけでございますけれども、これは当然に、日本国がポツダム宣言を受諾した際にはまだ秘密にされていた条約でございます。昭和二十一年の二月に初めて米国務省によって公表されたものでございますので、日本側としては当然にこの協定の存在を知らなかったわけでございます。それから、連合国側といたしましても、このヤルタ協定というのは、単に連合国側の共通の目的を陳述した文書にすぎない、これによって領土画定の効果は一切持たないんだということを明確に表明してございます。そういう意味で、ヤルタ協定そのものがこの北方四島の占有の法的根拠となり得ないというどとは明白だろうと考えております。  次に、ポツダム宣言でございますけれども、これは戦後の処理方針を連合国として決めたものでございますけれども、この中に引用してございます大西洋憲章であるとか、カイロ宣言等におきましては、領土不拡大の原則というものが明確に定められております。このポツダム宣言というのは、ソ連側もこれに参加しているわけでございますから、当然にその基本原則となっている領土不拡大の原則というのは、ソ連側も戦後処理の方針として承知していたはずでございます。  それから、サンフランシスコ平和条約でございますけれども、ソ連は御承知のようにサンフランシスコ平和条約の当事国ではございませんので、これを援用する立場にはないと思いますけれども日本はこのサンフランシスコ平和条約によりまして千島列島についての権利、権原を放棄いたしております。しかし、過去における日本とロシアの間の条約が十九世紀に二つございますけれども、この条約に即してみましても、固有の領土である歯舞、色丹、国後、択捉、特に国後、択捉が千島列島に含まれていないということは明白な事実でございますので、法的に見ても、サンフランシスコ平和条約で日本が権利を放棄した千島列島に、これら四島が含まれるという根拠は一切ないというふうに考えております。  以上のような見地からいたしましても、ソ連側がこの北方四島を占拠する法的根拠は一切ないというふうに私どもは考えておりますし、そういう意味で、ソ連のこれらの四島の占拠は不法であるというふうに考えております。
  197. 井上計

    ○井上計君 千島列島は別といたしましても、北方四島については、ソ連が現在占拠していることは違法である、これは明確なお答え、よくわかりました。これ以上実はこの問題等について外務省お尋ねをすることは差し控えをいたします。  ただ、私はそこで申し上げたいのは、日ソ中立条約のいまお答えがありましたような経過、結果といいますか、一方的なソ連の不法な態度、あるいは不当な宣戦布告、さらには北方領土の不法占拠、こういうふうな事実を、実は現在日本国民、案外知らないんですね。知っている人が非常に少なくなりました。私はこのことについていろんな理由があると思います。特に、戦後三十数年間たちましたが、このような問題等について国民に知らすということについて、何か大変憶病な、外務省も、あるいは最初から防衛庁あったわけじゃありませんけれども政府も大変憶病になってこういうことを余り知らさなかった。マスコミも、残念ですけれどもつい最近まではこういうことは余り多く取り上げる機会がなかったというふうなことから、国民の間にこういうふうな事実を知らない人が非常に多いと思うんです。先ほどからいろいろとお話出ておりますけれども防衛思想というふうなことだけでなくて、わが国のやっぱり歴史というふうなもの等から考えましても、こういうやっぱり事実、真実を国民に知らすということが、私は今後のやはり日本のお互いが考えておりますところの平和な、あるいは民主的な国家の建設のためにぜひ必要だと、こういう考えを持っておりますので、せひひとつ外務省も勇気を持って、こういうことについては事実を、これは何も外務省の見解とか政治的な配慮ということじゃありませんで、要するに事実でありますから、真実をもっともっとやはり簡明に国民に知らすというふうなことをひとつお考えをいただきたいというふうに思います。外務省の方にはもうこれ以上お尋ねありません。  そこで、私は防衛庁にまたお伺いしたいのでありますけれども、まあそれらの点を考えますと、現在の防衛体制あるいは国防会議のあり方等まだまだ十分でないと、こういう考え方、感じを持っております。  そこで、各国のGNPに対する国防予算の比率であります。時間が何ですから、短縮する意味で私が持っておる資料で、もう御説明いただかぬでも資料持っておりますので結構です。  そこで、これを児ますと、アメリカはGNPに対する国防予算の比率は六%である。西ドイツが三・六、フランスが三・七、イタリアが二・六、スイスにおいてさえが二・三である、ソ連は一一ないし十三%だと。中国は不明でありますけれども、推定されるところ七・四%から九%程度を占めておるようだと、韓国は五・一、パキスタンが六・二、フィリピンでも二・四だということであります。ところがわが国は、先般来総理も三原長官もしばしば言明をしておられますけれども、一%以内ということを非常に強く言明をしておられます。一%というのが、現在のわが国のGNPに対する防衛予算のいわば許された限界だというふうなことであります。これはこれで私は理解しております。しかし、アメリカの庇護のもと、あるいは安保のかさのもとで戦後三十年間わが国が異常な経済発展を遂げたということ、これは各方面、特にアメリカあたりから非常にこれが最近非難の対象になっておるわけでありますが、これがひいては最近の円高、アメリカのこれはひとつのやっぱり謀略だということもうわさされておりますけれども、謀略とは思いませんけれども、私はこの円高戦略の一つに、わが国がこの安保のかさのもとでぬくぬくと、いわば甘えておって、GNPの一%以内しか防衛予算を計上しなかったということも原因なしとしないというふうに感じております。  そこで、防衛予算をふやすということ等についてお伺いしたいと思いますが、必ずしも、私は防衛予算をふやすということが、言われておりますように国民生活を圧迫するということとは違うというふうな感じを持っております。というのは、現在非常に深刻な不況であります。雇用不安はますます増大をいたしておりますけれども防衛予算をふやすことは、私は不況克服の一助になるんではなかろうか、あるいは雇用不安の解消の一助になるんではなかろうかというふうに考えておりますが、これについての長官のひとつ御所見、さらには、まあ一%というふうな、いま一応限られた形の中での防衛予算でありますけれども、一%の枠を当面守るとしても、五十二年度の予算はまだ〇・八八%にしかすぎないと、としますと〇・一二%まだ、まあ余裕というとおかしいですけれども、枠が余っておるという考え方もできようかと思いますが、〇・一二余っておるとすると、明年のGNP、まだ数字出ていないようでありますが、大体二千億円程度はまだ回せる枠があるんではなかろうか、こんなふうに考えますが、長官いかがでございましょう。
  198. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 私は、防衛力の整備ということによりまして、国の安全と平和が保持されるということは、国民生活あるいは福祉社会の建設という大前提だと思います。しかし、いま井上議員御指摘のように、防衛力の整備自体が現在の不況打開なり、あるいは対米関係の改善に役立つかどうかというようなことを、私がここでお答えをする立場でもございませんが、そうした井上議員の御識見は御識見として受けとめてまいるところでございます。しかし私は、現在のGNP一%それ自体が防衛整備の問題の中心ではなくして、実際に私どもで基本的な方針があるわけでございます。−防備の基本方針なり防衛計画大綱というのがございまして、その別表に防衛整備の実は計画を盛っておるわけでございます。それが実は、日本防衛の責任を持つわれわれとして可及的速やかに整備をいたしたいということで進めておるわけでございます。自主的に、計画的に実は防衛力の整備を進めてまいっておるわけでございまするから、その自主的に計画的に進めておりまする防衛力が実際に整備されておるかどうか、整備していくことができるかどうかというところが一番問題であるわけでございます。そういう点から、実はこれを一%に対比をして考えてまいりますると、本年度の予算が〇・八八%であるというようなことが内外の批判の的になっておることは承知をいたしております。しかし、防衛費の問題につきましては、国の経済、財政の状態なり、あるいはわが国におきまする、各省庁において実施をいたしておりまする諸施策との調和の問題もございまして、そういうものを総合的に判断をしてまいりますれば、私はこの一河自身が、これを上回らねばならぬとかどうだというようなことをいま考えることが重大問題ではない。先ほど申しましたように、計画を立てて防衛整備をやっておることが実際に達成されておるのかどうかというところに問題の焦点を当てて考えてまいりたいと思っておるところでございます。したがいまして、私どもといたしましては、いま一%問題で、実際にそれでは具体的に防衛整備についてどうなんだと、果たしてそれでできるのかというような御質問でございましたが、私は現状の防衛庁が考えておりまする防衛力の整備計画は、現在の一%の一つの決定の線で、それを超えなくても整備はここ当分の間はやっていけるという立場に立っておるわけでございまして、やはり政府が決めましたGNP一%の線というのは堅持していかねばならぬという基本姿勢に立っておるところでございます。   〔委員長退席、理事加藤武徳君着席〕
  199. 井上計

    ○井上計君 私、この問題で若干まだ意見がありますけれども、これはもう時間の関係もありますので、いま長官の御答弁で理解をいたしておきます。  そこで、今回の自衛隊法の改正でありますけれども、海と空については、合わせて千八百七人の定数増の案が出ておるわけであります。ところが、陸上自衛隊の定数が十八万人でありますけれども、このうち依然として二万五千人程度の欠員があると、このように承知をいたしておりますけれども、なぜそのような欠員があるのか、なぜ充足できないのか、ひとつお尋ねをいたしたいと思います。どなたでも結構です。
  200. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま御指摘がございましたように、陸上自衛隊では約二万五千人の欠員を抱えております。これは先生も御承知のように、全員を充足して訓練をしておくということが最も望ましいことでございます。したがいまして、自衛隊といたしましても昭和三十五年ごろまではほとんど一〇〇%近い人員を充足いたしまして訓練をやっておったわけでございます。その後、いろいろ景気の動向あるいは対象人口といいますか、若い人たちがいろいろ、経済力が豊かになってまいりまして、活躍する分野がふえたというようなことになって、なかなか募集が困難になってきたという時代があったわけでございます。そのころからなかなか募集がむずかしい、そして人を集めるために訓練をやっている自衛官そのものも募集のために働いてもらわなきゃならぬというような事態が起こってまいりました。そこで、自衛隊として可能な範囲はどの程度であろうかということを、これはもちろん募集技術の面からと同時に、私ども防衛局の立場からも、現実にこの訓練をし精強な部隊としての実力を養うためにはどの程度の充足というものが最小限必要であるかということを検討してまいりました。で、九〇%ということも議論されたこともございます。しかし、現在におきましては、これは四十年の後半からの考え方でございますけれども、最低八五、六%というものは絶対に必要であると。このことによって、たとえば教育部隊、あるいは教育機関、あるいはホークの部隊、航空部隊等はかなりの高充足をいたしまして、その他の一般部隊においての充足率というものは、ある程度がまんしながら平常の訓練をやっていけるという見通しを持ったわけでございます。その後、募集の状況というものは好転してまいりましたけれども、依然として、やはり募集努力というものは何もしなくて集まってくるというものではございません。したがいまして、まあ八六%というような数字で推移いたしてきておりますが、四十八年の石油危機以降というものは、人件費の問題なんかもこれに一つの圧迫となってきているわけでございます。したがいまして、定員を完全に充足してやるということは望ましいことではありますけれども、従来の検討によりまして最小限のところというものをいまだに維持しているというのが実情であるわけでございます。
  201. 井上計

    ○井上計君 五十三年度の募集の予定数、さらに、これで五十三年度当然またいろいろな退職者があると思いますけれども、それらの退職の予定者の数をお伺いいたします。
  202. 渡邊伊助

    政府委員(渡邊伊助君) 五十三年度についてのお尋ねでございますが、これは現在概算要求をしておる数字でございまして、したがいまして、私どもでいまお願いをしている数字でございますので、最終的にどうなるかまだわかりませんし、また、来年度国会で御審議をいただくことになるわけでございますが、ただいま私どもで希望いたしております数字を申し上げますと、退職予定者につきましては、第一に停年の該当者の見積もりがまず大体把握できます。それから、これに相当するものとして士につきましては、任期満了で退職をする者の傾向が大体過去の状況から把握できます。それからあと、中途退職をする者がございますが、これらにつきましても過去の傾向等から勘案いたしまして、自衛隊全体で大体二万六千程度を見込んでおります。したがいまして、これを補充する必要があるわけでございますけれども、これにつきましては、たとえばいろんな制度的な、学生とか生徒とかいう制度的なものがございます。これは一応その定数がはっきりいたしております。これを差し引いたものが大体一般士として補充することになろうかと思いますが、それらを全部ひっくるめまして大体二万八千八百程度を採用を予定したいというふうに希望しておる数字でございます。
  203. 井上計

    ○井上計君 ということは、退職予定者が停年、任期満了、中途、合わせて約二万六千名程度の推定、それについて要求はいま二万八千八百ということでありますから、要求どおり通りますと約二千名程度は欠員の補充がなされると、こういうことですか。
  204. 渡邊伊助

    政府委員(渡邊伊助君) これは、ただいまお願いをいたしておりますように、艦艇、航空機等の就役に伴いまして増員をお願いをしておるわけでございますが、来年度も同じような状況がございます。そういうものがございまして定員がふえますので、その分を含めてでございます。
  205. 井上計

    ○井上計君 もう一度、退職予定者の任期満了による退職者、これは二万六千名のうちでどれぐらいですか。
  206. 渡邊伊助

    政府委員(渡邊伊助君) 任期満了で退職をする者の見込みは大体九千五百程度でございます。
  207. 井上計

    ○井上計君 先ほどお答えの中で、現在の欠員補充等なかなか思うに任せないと、いろいろな募集の技術のむずかしさ等もあるし、予算その他の状況から見て、大体最低八六%ぐらいで何とかというふうなお答えがあったわけでありますけれども、ところが、過去と現在とはかなり、特に対象人口、若年のいわば就職希望者の状況が変わっておると思うんですね。特に来年は相当違ってくると思うんです。高卒あるいは大卒の新規就職希望者は大変な就職難だと、こう言われております。あるいはまた深刻な不況の中で、さらにこれから円高不況による倒産もふえるというようなことが憂慮されておりますが、そういう中で、かなり若年労働者の離職者がふえるんではなかろうかということが言われておりますし、憂慮されておりますが、こういう人の中に、やはり自衛隊に入隊をしたいという希望者がかなり出てくるんではなかろうか、こういうふうにも一つ感じられます。もちろん予算等の問題がありますけれども、私は、せめて来年あたりは現在の二万五千名の欠員のうち、一挙にとはまいりませんけれども、せめて五千名ぐらい増員をするというぐらいのことでひとつ募集を考えたらどうかというふうに思いますが、どうでしょう。ひとつお伺いいたします。
  208. 渡邊伊助

    政府委員(渡邊伊助君) 先生のただいまのお話で、確かにそういう面もあろうかと思いますが、ただ、長期的な傾向といたしまして二士適齢人口が逐次減少をしております。そういう事情がございます。それからさらに、進学率等も向上してまいっております。それらの影響というものは二士隊員の募集にかなりの影響を与えておるわけでございます。来年度の状況についてはまだつまびらかに雇用の動向というものは把握いたしておりませんけれども先生お話しのように、五千人の増ということになりますと、これは従来からの募集の状況から考えまして、これを一挙に五千ふやすということはかなり困難ではなかろうかというふうに考えております。
  209. 井上計

    ○井上計君 困難だという事情についてわからぬわけじゃありませんけれども、最近、来年の大学卒業生、どうしても就職がなかったら自衛隊に入りたいなんていうふうな者も、私二、三耳にしておりますので、いままでの状況と大分変わっておる。進学率が高まったとか、あるいは高度成長時代のように就職口が非常に多いとかという状況等もすっかり様相が変わっておりますので、それらの点についてもひとつお考えをいただいて、できればそういうふうな人たちを、いわば就職先として吸収すると言うと言い方が余り適当でないかもしれませんけれども、そういう人の中に、やはり国を守ろうというふうな気概のある優秀な青年も多々おると思いますので、さらにひとつそういうことについての御配慮をいただきたい、こう要望しておきます。  そこで、先ほど伺いましたが、退職予定者の中で任期満了退職者九千五百の約一万名程度ということであります。これらの人たちは、従来から、私の承知しているところでは、自衛隊でそういうふうな規律正しい生活等の訓練を受けて、家業を継ぐとか、あるいはまた一般の民間企業に就職をするとかというふうなことが非常に多いわけでありますが、そういう人たちの退職後一般社会へ出ての要するに評判といいますか、自衛隊出身者であるというふうなことについての評判というものはどういうふうなことをお聞きになっておられますか、お伺いいたします。
  210. 渡邊伊助

    政府委員(渡邊伊助君) 余り精査をしたわけではございませんけれども、私も、時たま会社の方にもいろいろお会いをしてお話をする機会がございます。その方々のお話等からうかがえることは、一般の民間企業で士の隊員を雇用した後の働きぶりと申しますか、そういう点については非常に好感を持って迎えられておるということでございまして、自衛隊の中での技能の習得という面もあろうかと思いますけれども、それよりも、本質的には、やはりただいま先生おっしゃいましたように、士の隊員は大部分営内居住をいたしております。営内居住というものはいろいろな問題もあろうかと思いますけれども、やはり共同生活を営み一致団結した生活をしておるわけでございまして、その間に上官と起居をともにいたしまして、非常に規律正しい生活を営んでおるわけでございまして、それがおのずから身についておるといいますか、そういうことで、会社においてのしつけの正しさと申しますか、そういう点については非常に会社の方々に喜ばれておるということを伺って私ども大変喜んでおる次第でございます。
  211. 井上計

    ○井上計君 私も数年前でありますけれども自衛隊の退職者を採用して大変いい評価をした実は経験があるわけです。そこで、そういうふうな点から、そういうふうな人たちをできるだけ——自衛隊はもちろん一朝有事の際の備えでありますけれども、やはり社会の秩序を守るというふうな、そういう風潮を高めるために、そういういわば任期満了による隊士を一般社会に送り出すことも、やはり私は自衛隊の考えるべき任務一つではなかろうかと、こういう点も考えますので、今後ともひとつ十分またそういうふうなことも配慮しながら、いろいろと教育訓練等をひとつお願いいたしたい。要望しておきます。  そこで、予備自衛官制度がありますけれども、予備自衛官の手当はいまどうなっておりますか、お伺いします。
  212. 渡邊伊助

    政府委員(渡邊伊助君) 先生御存じのように、予備自衛官は一朝事あるときに防衛招集に応ずる義務がある。それから、ふだんは訓練招集に応ずる義務、こういうものがございます。現在予備自衛官に対します処遇といたしましては、予備自衛官手当というものと訓練招集手当というものと二種類ございます。  予備自衛官手当は現在月額二千円を支給いたしております。これはいわば、先ほど申しましたように、訓練招集に応ずる義務あるいは防衛招集に応ずる義務というような精神的な拘束に対する見返りというような性格で理解をしておりますが、月額二千円でございます。それから、現在では年に五日間訓練招集で訓練をいたしております。この訓練招集に応じた場合にその対価といたしまして、訓練招集手当として日額四千円を支給いたしております。
  213. 井上計

    ○井上計君 招集手当はまあまあかと思いますけれども、精神的な拘束を伴うその手当が月二千円というのは、ちょっとどうも何か少な過ぎるという感じがするんですがね。まあこれについて特に私は質問とか要望とかいたしませんけれども、これらのこともやはり考えていく必要があるんではなかろうかと。先ほどお答えもありましたように、私も申し上げましたように、自衛隊の退職者が一般社会において大変評価がなされておる、いい評価がなされておるという面から見ると、私は精神的な拘束と、予備自衛官に対する拘束というものをやはり義務づけている以上は、二千円という、この時節、大変手当と言えないような手当でありますから考慮する必要があるんではなかろうか、こう思います。これは要望しておきます。  次に、今回の自衛隊法の改正についてでありますけれども、小牧から第三航空団の移転がなされ、その後に輸送航空団がまた移動によって入ってくるということでありますが、そこで小牧周辺地区の住民の立場から見ますときのメリット、デメリットといいますか、これらの点等につきましてひとつお伺いをいたしたいと思います。
  214. 平井啓一

    政府委員(平井啓一君) 航空自衛隊の第三航空団を小牧から三沢に移すことにつきましては、防衛庁といたしましては、日本列島の防空上から航空団の配置の均衡を図るとか、あるいは訓練環境を改善するとかというような別途の理由もございますけれども、御承知のように小牧飛行場の周辺が非常に市街化されてきておりまして、かねてから地元といたしましては、あの飛行場におきます民航の運航も含めました航空機騒音に関しましては、非常に問題意識を持っておられたところでございます。したがって、今回第三航空団を移すということにつきまして、五十年の二月から自衛隊法の改正を国会の審議をお願いしているわけでありますが、これに関しましては、地元からはその後特にこの移設ないしは法案の成立に関しまして強い関心と強い期待、要望を寄せていられるところであります。当然、航空団が移ることに伴いましてジェット戦闘機の運用がなくなるわけでございますし、かなりの騒音に関する影響は出てくると思います。ちなみに、現在小牧の飛行場におきます飛行機の管制回数と申しますか、それで比較してみますと、昨年一月から十二月までの一年間、管制回数は、民航も含めまして全部で約八万五、六千回、まあ年によって違いますが、昨年では六千回ぐらいになっておりますが、八万五、六千回という数字でございます。そのうちで第三航空団に所属します戦闘機の管制回数は約一万四千回、それぞれの年度を平均しますと大体一万三千ないしは四千回ぐらいということになりますので、これだけの管制回数が減る、特にジェット戦闘機の管制の回数が約六分の一減るということでございますので、騒音に関しましては、後、輸送航空団等が使用するといたしましてもかなり減少するものと考えております。
  215. 井上計

    ○井上計君 愛知県を初め多くの団体や自治体から三空団の移転促進の要望がなされておると聞いておりますけれども、大体どれぐらい来ておりますか。
  216. 平井啓一

    政府委員(平井啓一君) これは地元といたしましては、この第三航空団を三沢に移すという方針を防衛庁が決めます前から、先ほど答弁申し上げましたように、名古屋空港と申しますか、小牧飛行場の航空機騒音に関する問題意識が非常に強うございまして、多年にわたって騒音問題に関する御要望が出ておりまして、飛行場撤去とか、あるいは航空団移れないかとかという要望が出ておりましたが、法案を提出させていただきましてからは、毎年愛知県知事あるいは地元の春日井市、小牧市、さらにあの周辺の小牧、春日井含めました十二市町のそれぞれの議会の協議会、そういったところから、年に一回ないし二回ぐらいはそれぞれ御要望を出してこられたり、東京へ来て御要請に来られたりというようなことだと私どもは承知しております。
  217. 井上計

    ○井上計君 わかりました。  次に、通産省の方にお伺いいたしますが、武器の輸出についての政府の方針をひとつお伺いしたいわけでありますが、これについて、「武器輸出について」昭和五十一年の二月二十七日の「政府の方針」等については持っておりますから、特にこれ以上のお答えを別に期待できないと思いますから、これはもうお答え結構であります。  そこで、武器輸出につきましての三原則の対象地域以外の地域に対する武器の輸出、これについてはどのような方針でおられるのか、この点についてひとつお伺いをいたしたいと思います。
  218. 柏木正彦

    説明員(柏木正彦君) お答えいたします。  武器輸出三原則対象地域以外の地域につきましては、昨年二月の政府方針にのっとりまして、武器の輸出は「慎む」ということにいたしております。「慎む」とは何かということになりますが、文理上はきわめて慎重に取り扱うということと解されますけれども政府の消極的な態度を表明したものというふうに考えております。
  219. 井上計

    ○井上計君 そこで、「三原則における「武器」とは、」という「武器」の定義でありますけれども資料お願いしましたが、お持ちいただきましたか。——このいまいただいた資料ずうっとまた丹念に見なくちゃなんですけれども、ざっとこれ見ますと、いわば衣類といいますか、以外のものは大体全部入っているような気がするわけであります。  そこで私はお尋ねをしたいと思うんですが、仮にというふうなことでひとつお尋ねをしたいと思いますが、フィリピンは対象地域外であると、こう理解をしております。もし違えばまた後で違うとおっしゃっていただければ結構ですが、そこで、フィリピンは現在の状況から見ますと他国を侵略をするとかという意図は毛頭ないでしょうし、また、そんないわば軍事力は全くないというふうに私どもまた理解をしておりますが、そのフィリピンが現在大変な内乱状態、内乱と言うと、あるいはまた怒られるかもしれませんが、事実上の内乱状態であると、戒厳令が布告をされておるということであります。このフィリピン政府から、もしいわば治安維持、治安保持のために必要な武器といいますか、兵器ですね、この購入がもし来た場合には通産省はどう対応をされるかということです。私は、フィリピンの例を一つ例として出しましたけれども、こういう場合には、五十一年二月二十七日の「武器輸出について」の「三原則における「武器」とは、「軍隊が使用するものであって、直接戦闘の用に供されるもの」をいい、」というこれには該当しないのではなかろうか、こういう考え方を持っておるのですが、いかがでしょうか。
  220. 柏木正彦

    説明員(柏木正彦君) お答えいたします。  まず、武器の定義でございますが、いま先生が申されましたとおり、武器輸出三原則上の武器とは、昨年の政府方針にございますとおり、「軍隊が使用するものであって、直接戦闘の用に供されるもの」を言いまして、具体的には、輸出貿易管理令別表第一に掲げるものを言うことになっております。  なお、第二番目の御質問のフィリピンについてでございますが、フィリピンは三原則対象地域ではございません。ただし、三原則対象地域以外に対する武器の輸出につきましては、繰り返しますが、これは慎むということになっております。具体的には当該案件に即して判断する必要がございまして、一般的には、専権的にお答えすることはできかねるわけでございますが、昨年二月の政府方針にのっとりまして慎みたいというふうに考えております。
  221. 井上計

    ○井上計君 ただいまのお答え、これ以上通産省の担当課長お尋ねしてお答えをちょうだいをしたいと言ってもこれは無理であるのを承知しておりますから、もうこれ以上お尋ねはいたしません。ただ、「慎む」、すなわち慎重ということのこれは字句の持つ意味でありますが、先ほど通産省としては、消極的に慎むということを、事実上規制をしておる、抑制をするというふうな、そういうふうにとれる感じのお答えがあったわけでありますけれども、私は、現在もうきわめて厳しく武器というものについての輸出が規制されておる、抑制されておる、こういう理解はいたしますけれども、ただし、そこで、これは私の私見であります。私見でありますけれどもわが国から武器を輸出をする、その輸出をした武器によって国際紛争が助長されるということはこれは絶対避けなくてはなりません。しかし、いまフィリピンの例で申し上げましたけれども、仮にフィリピンにわが国から武器を輸出をしたとしても、それが国際紛争のいわば助長ということにはならない、こういう私は考えでおるわけです。そういたしますと、現在政府の行っている輸出の規制は、この武器輸出三原則に照らしてみても余りにも厳しく抑制し過ぎておるのではなかろうかというふうな感じがいたしてならないわけでありますが、現在わが国は、もうかつてなかったような大変な不況であり、長期不況であります。そして、円高によって異常な状態、経済界は混乱をしつつあります。本当にもう日本経済のお先は真っ暗だと、こういうふうに言う人もあるわけでありますし、労働者は、先ほどちょっと申し上げましたけれども、雇用不安、失業の憂き目を見ながら大変苦労をしておる。生活苦はますます増大をいたしておる。こういうときに、従来と同じ考え方で、いわば消極的な、ある意味ではもう大変憶病な考え方でこの武器の輸出というふうなことを抑制することはどうであろうかと、こういう感じがしてならぬわけであります。私は雇用の機会を少しでもふやすため、そうして国民生活を少しでも安定さすということが政治の基本であるわけでありますから、ぜひひとつそういう面について慎重な配慮をお願いをいたしたい、こういう要望であります。せっかく引き合いが海外から来ましても、あれも武器だと、あるいはこれも武器だと、あれもだめこれもだめというはれものにさわるような態度で片っ端から輸出の商談をつぶすということになりますと、私はやはりこれは適当でない、こういう考え方でございます。まあ現在、見方によっては武器でないものまでどうも無理に武器の中にはめ込んだというふうな感じもいたすわけでありますから、どうかひとつ、そういうふうな点十分配慮をしていただく。本来輸出というのは自由であるべきだというふうに思います。もちろん、国のそのときの状況からして一定の規制は必要ではありますけれども、その規制をひとつ最小限にとどめるということも、これまたやはり必要ではなかろうか、こういう点を率直にひとつ、これはもう要望ということで、お尋ねではございません、要望ということで申し上げておきますから、十分ひとつお考えをいただく、よく御検討をいただくということで、武器輸出の取り締まりについては、そういうふうな点についてもお考えをぜひしていただきたい、これをひとつ要望をいたしておきます。通産省の方、お尋ねすることは以上でございます。  まだ私に与えられた時間、実はかなり残っておりますけれども、大体私のお尋ねをいたしたいということが終わりましたので、これで質問を終わります。
  222. 大塚喬

    大塚喬君 一昨日の私の質問に対して、ただいま防衛庁から「F−15の支援戦闘機能及び空中給油装置を残置することについて」の文書による報告を受けたところであります。一読して率直な感じを申しますと、防衛庁としてずいぶん強気に、まさに居直った感じの文書を国会提出された、こういうことを率直に感ずるものであります。で、ちょうど久保国防会議事務局長の御出席も願っておるところでありますので、事務局長は、前に防衛局長当時の国会の論議に参加をされております、こういう経緯から、これらの問題について重ねてひとつ質問を続けたいと存じます。  防衛庁長官お尋ねをいたしますが、ただいま提出をいただいたものは、これは防衛庁内部の決定でございますか。さらにもう少し発言を続けさせていただきますと、防衛庁内部のこの決定が、この国会の審議経過等を見て余り問題が出ないと、こういうようなことになれば、このことは国会の閉会中に国防会議の決定を経て国の方針と、こういうことに進むのではないかと、こういう懸念を持つものでありますが、この点に関して防衛庁長官から答弁を受けたいと思います。   〔理事加藤武徳君退席、委員長着席〕
  223. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) お答えをいたしますが、このF15の問題についてでございますが、これは総理も予算委員会あるいは本会議お答えをいたしておりまするように、政府といたしましては白紙の立場である、防衛庁が防衛を担当する防衛庁の責任において決定をいたしたものでございます。したがいまして、これから国防会議におきまする各省から出ておりまする参事官会議等で詰めが行われ、なお、そうした経過を経て、国防会議で慎重審議を願った上で御決定を願うというようなものでございまして、重ねて申しますが、防衛庁だけの決定でございます。
  224. 大塚喬

    大塚喬君 そうしますと、自衛力の限界ということが、ただいまいただいた文書、この中の中心の論議になるだろうと思うわけでありますが、自衛力の限界について、自衛のための必要最小限の、自衛力として憲法が許容するもの、さらに他国に攻撃的な脅威を与えるものは自衛力の限度を超えると、これは昭和四十二年三月三十一日の参議院予算委員会における当時の佐藤総理の答弁であります。また、四十七年に防衛庁が統一見解を出したときは、行動半径の長い戦闘機は爆撃装置を施すことによって他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるとの誤解を生じさせるとの解釈をとっておるわけであります。今回のこの内容は、明らかにこの当時の佐藤総理の国会における答弁、さらに四十七年の防衛庁の統一見解と異なっておる、このことはお認めになりますか。
  225. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 佐藤総理の言われました、外国に対して侵略、攻撃の装備をして脅威を与えるようなことはしないという御方針、そして当時の防衛庁が出しました、外国を侵略するような足の長いものはいたしませんというようなことを言いました点につきましては、私どもはその基本的な方針、要するに外国に脅威を与えるようなことはいたしませんという基本的な方針につきましては、その方針はそのまま踏襲をいたしておるのでございまするが、今日のごとく航空機の技術的な進歩、運用の向上、性能の向上という、そういうような事態に対しまして、憲法の制約下、専守防衛防衛方針に基づいて、これらの外部からの攻勢に対してこれに対応するという点につきましては、いま申されましたように、その時点と現在の状態というようなものに、対応の仕方なり、列国のそうした航空機の技術並びに性能の向上というようなものについては対処の仕方が変わってまいったということは、私は御指摘のように受けとめておるところでございます。
  226. 大塚喬

    大塚喬君 前のF4のときに、侵略的、攻撃的な脅威を与えるということで、この問題が国会の論争の末に、一応空中給油、爆撃装置、これらの問題について、さきの四十七年の防衛庁の統一見解が出されたものと理解をいたしております。F15は、先日も申し上げましたように、一回の給油も受けないで四千七百七十キロの航続距離を持つ、そこへ空中給油装置を施して、空中給油ということも当然考慮の中に考えられる。このF15はこの航続距離の関係から、前の侵略的、攻撃的脅威、これに該当すると、あるいはしないとお考えになるわけですか、長官いかがでしょう。
  227. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) この防衛庁の考え方を御説明いたしました文書の冒頭にも書いてございますが、私どもは、F15という飛行機はF4と本質的に違う目的のもとにつくられたものであるから、F15を装備してもこれが他国に脅威を与えるという誤解を生ずるものではないというふうに判断をしておるわけでございます。四十七年の政府考え方を述べました中にも、F4そのものが攻撃的兵器であるかどうかということではなくて、それが誤解を与えるという点についての議論であったというふうに私どもは記憶しているわけでございます。
  228. 大塚喬

    大塚喬君 先日の防衛局長答弁によりますと、侵略的、攻撃的脅威を与える飛行機の例として、B52、F111の例を挙げて説明をされたわけであります。爆撃装置のあるF4、このF4戦闘機は脅威を与える飛行機には入らないわけですか。
  229. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 私が御説明いたしましたB52、これは非常に高高度で長距離を飛んで爆撃をする飛行機でございます。それから、F111という飛行機は、いわゆる地上攻撃にはきわめて能力の高い飛行機でございまして、一つだけ特徴を申し上げますと、対地高度計によりまして、一定の高度を保って低空で侵入していって攻撃するという能力を持っております。このことは、いわゆるレーダーの覆域を離れまして、敵の知らないうちに奥地深く侵入するというきわめて高い能力を持っているものでございますが、ファントムはそういうものは持っておりません。しかしながら、先生も御承知のように、ファントムという飛行機は核爆弾も搭載することが可能でございました、当時アメリカで。それからまた、誘導弾を搭載して地上攻撃するということも可能でございました。したがいまして、その当時からございましたB52とか、あるいははF111といった飛行機ほどの攻撃能力はございませんでしたけれども、そういったことが可能であったと、もちろん日本に入ってきたときにはその核爆弾なんかは装置できないようにはなっておりましたけれども、そういうことで誤解を与えるといけないということで、この爆撃装置を外すという方針を定めたものというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  230. 大塚喬

    大塚喬君 この論議が、こうすりかえられる論議になって私も大変遺憾に思うわけでありますが、F15はF4よりも航続距離が長いことは、これはもう御承知のとおり。で、論議がすりかえられておる問題は、爆弾の搭載量、爆撃機というそういう性能を持ったF4、これと飛行機の質が違うと、こういうような答弁の内容でありますが、F15戦闘機は確かにF4よりも爆弾の搭載量は少ないことは私も承知をいたしております。で、F4の方はF15よりも航続距離が短い、搭載量は多い、こういうこの二機の比較で、その二種の飛行機のいわゆる他国に与える脅威、侵略的、攻撃的な脅威、こういうものの差が、あなたはその片方はないんだと、そうおっしゃるんですけれども、一体その攻撃的な脅威、侵略的な脅威、この差がどうして説明ができるわけですか、差があるはずはない、私はそう考えるわけですが。
  231. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) ファントムのときにも私どもは攻撃的な脅威を与えるというふうには考えておりませんでした。そして、ファントム任務を持って活躍している時代と、それからF15を採用いたしまして、これから私どもがこれを運用いたしますのは一九八〇年代の後半から一九九〇年代という時期でございます。そういたしますと、飛行機の技術的な進歩によりまして飛行機自体というものが変わってきているわけでございます。したがいまして、F4Eのときですら私どもはそのおそれがあるということで爆撃装置を外すというような御決定をいただいたわけでございますけれども、本来的にいわゆる要撃任務に最も能力を持っているF15、一九八〇年代の後半以降のそういった目的のためにつくられた飛行機が、いま先生が四千六百キロの航続距離で航続距離が長いという、それだけで脅威を与えるということにはならないというふうに考えている次第でございます。
  232. 大塚喬

    大塚喬君 いまの防衛局長答弁は、実は重大な国会の審議に関しての防衛庁の受けとめ方に対する問題をはらんでおりますよ。国会の審議、国会の決定、そういうものがあって、それらの決定が出た上で、防衛庁はその決定に反してそうは思わないと、こういうことですから、これは国会の審議、国会の決定というものを防衛庁が無視をし、軽視をするということにつながる発言だろうと思います。この点はいかがですか。
  233. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 私どもは、このF4の御決定の際の国会の意思というものは、まさにそのとおりに実行いたしておるわけでございます。現在の時点でF15というのが同じようによその国に脅威を与えるではないかという御質問でございましたので、一九八〇年代の後半以降のいわゆる航空技術の面、また本来F4Eというのは、戦術戦闘機としていわゆる要撃機能と同様に、地上攻撃機能というものを重視してつくられた飛行機で、それと違ってF15というのは、空中における戦闘、これが重視してつくられた飛行機であるから、四十七年のときのF4Eと同じような形で、F15というものが他国に脅威を与えることはないだろうというふうに考えておるということを申し上げたわけでございます。
  234. 大塚喬

    大塚喬君 従来の国会審議の経過をたどってみますと、従来の政府の見解では、爆弾の搭載量よりも航続距離の点に他国に与える脅威の重点があったと、こういうふうな経過が明らかであります。爆弾の搭載量が幾ら多くても、敵地まで到達できなければこれは脅威は一切与えないわけであります。一切と申しますか、脅威は与えずに済むわけであります。そういう意味で、F15は要撃能力はあるが、それがあるにしても足が長い、空中給油を実施をする、こういうことになれば、他国に脅威を与えることに当然つながるわけじゃないですか。
  235. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 四十七年の御議論のときには、現在のF1、当時FST2改と言っておりましたが、対地支援戦闘機、これの装備に関して行われた議論でございました。したがいまして、F1という飛行機、現在装備いたしております飛行機というものは爆弾の搭載量も多うございます。したがいまして、こういう飛行機がなおかつ長い航続距離を持っておれば他国に脅威を与えることになるのではないかというような御議論のもとになされたというふうに記憶している次第でございます。
  236. 大塚喬

    大塚喬君 ただいまの文書による報告、この内容を見ますと——国防会議の事務局長もおいでですので、久保局長にも質問をいたしたいと思いますのでひとつよろしくお願いをいたします。  昭和四十八年の三月の参議院予算委員会の席上で、わが党の上田哲議員の質問に関して、当時の田中総理が、空中給油はしない、空中給油機は持たない、空中給油の演習、訓練もしない、この三原則を明らかにしたわけであります。今回文書による防衛庁の方針を示していただいたわけでありますが、これについて、二番目の、空中給油機は持たない、こういうことは明らかにされておるわけでありますが、この内容は、田中総理の国会における答弁の中での、空中給油は実施をすると、こういう内容を含んでおりますね。防衛庁長官、この文書の中にはそういうことが明示されておるわけですね、いかがですか。
  237. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) いまのお尋ねに対しましては、その可能性を残しておるわけでございます。
  238. 大塚喬

    大塚喬君 可能性を残しておるというようなあいまいなものではなくて、空中給油をするということでしょう。いかがですか、はっきり言明をいただきたい。
  239. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) そのとおりでございます。空中給油をやりたいということで、可能性を持っておるわけでございます。
  240. 大塚喬

    大塚喬君 三番目の、空中給油の演習、訓練もやるということですね。
  241. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 現在のところは、演習をやるということは考えておりません。
  242. 大塚喬

    大塚喬君 現在のところというと、近い将来はこれをやるということになるわけですか。
  243. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 平時におきまするいま現在におきまして、私どもはそうした演習、訓練をする必要は認めておりません。しかし、有事的な状態というようなものが考えられるような時点におきましては、そうしたことを考えなければならぬかなということを予想いたしておりまするけれども、現在では実際にそういうことをしようということは考えておりません。
  244. 大塚喬

    大塚喬君 先日、それから本日の朝ほどからのそれぞれの質問を通じて感じますことは、ずいぶん防衛庁というところはすりかえたりごまかしたり、その場しのぎの答弁をされる官庁だなと、私は、私の個人的な受けとめ方ですが、そういう感じを強くいたします。  それで、空中給油機は持たない、こういうことがこの文書の中に示されておりますが、これは未来永劫にわたって空中給油機は持たない、こういうことを意味するものですか、いかがですか。
  245. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 先ほど来申し上げておりまするように、列国の航空技術の進歩あるいは性能の向上等を考えて、いまから十年以上後のことでございますが、現在におきましては給油機を持とうという考えはございません。しかし、未来永劫どうかというようなことは、私どもといたしましてはそういうお答えをすることは遠慮いたしたいと思います。現在のところ給油機を持つという考えはございません。
  246. 大塚喬

    大塚喬君 四十八年三月の田中総理の国会における答弁、これは一国の総理大臣が、しかも国会でこのような明確な答弁をされて、これは明らかに政府方針であります。その政府方針がいつどこで変わったのかわかりませんが、内閣の一省庁であります防衛庁から、突如として、総理のそういう国会答弁を明らかに逸脱をし変更した方針が出される、こういうことについては、この国会の審議それ自体が国民に与える大きな影響、国会の権威、これらに防衛庁は明らかに挑戦をしておるものと、こう考えるわけでありますが、この点について防衛庁長官の明確な見解の表明をいただきたいと思います。
  247. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 先ほど来申しておりますように、時代的な問題、それから航空機性能、技術進歩の状態等を考慮いたしまして、防衛庁として、防衛任務、特に憲法の制約下、専守防衛という立場で私どもはこういうことを決定をいたしましたけれども、それは防衛庁だけの決定でございまするので、これから国防会議等の議を経て最終的な政府の決定を、慎重審議の結果お願いをいたしたい、そういうことでおるところでございます。
  248. 大塚喬

    大塚喬君 最終決定は、当然国防会議なり、あるいは閣議決定なりの審議を得た後に出される、これは当然の話であります。しかしながら、制服組の空幕長、そういう制服の者が、国会の審議、このような決定が現存するのにもかかわらず、各種の報道機関に対して防衛庁の内部決定、こういうものをいち早く国民の前にPRを重ねておる。こういう問題は、明らかに国会の審議を無視し軽視をし、そしてシビリアンコントロールというようなものを現実に破棄をしながら、これらの人たちが日本の国政の方針、政府方針というものを打ち破っていく、そういう現実の姿を示しておるのではありませんか。
  249. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) あくまでも、このことは私が責任者として最終決定をしたものでございます。ユニホームを着ております自衛隊員が決定をしたものではございませんから。なお、防衛庁として、国民の方々に、なぜ決定をしたかということについての趣旨の徹底、御理解というようなものを仰がねばならぬということで、報道機関等にも、その防衛庁で選定をいたしました経過等の御説明を申し上げておるところでございます。
  250. 山崎昇

    ○山崎昇君 ちょっと、関連さして長官に二つほどお聞きをしたいのです。  先ほど来御説明を聞いておりますが、そこでF15とファントムの違いが何かと言えば、いままでの説明ですと、一つは、F15の場合には爆撃装置が前よりも劣る、しかし航続距離は長いのだ、こういう話であります。そこで問題は、今日まで国会で議論されたのは、爆撃装置と航続距離と二本立てで議論されました。したがって、航続距離が延びるということは、これは相手に脅威を与えないという、誤解を与えないという理論にはならない、少なくとも。それから、私どもの得ておるこの資料によると、相対的に言えばF15の方が性能が優秀である、こう考えるときに、私どもは、いま防衛庁の答弁というのはどうしてもやっぱり胸につかえるものがある、こう考えざるを得ない。  もう一つは、これはアメリカでも採用されております主力戦闘機です。相手に脅威を与えないような武器なんというのはあり得ない。したがって、アメリカファントムをやめてある程度F15が主力になっておるというのは何か、それは武器としては進んでおるからF15の方を採用しておるわけです。アメリカで優秀な武器がなぜ日本に来たら武器にならないんですか、なぜ日本で採用したらそれが相手に脅威にならないんですか、そこにまた私は一つ問題点があると思う。  もう一つは、私は今日までの日本の歴史を考えるときに、明治百年の歴史を考えても、日本から攻撃した歴史がありますが、日本が攻撃をされたという歴史は余りない。そう考えるときに、この軍事の問題というのは大変重要な一側面を持っているんじゃないかと思う。だから、外国は日本が何か武器を持つというと、またかつてのようにわれわれに脅威を与えるんじゃないかという、そういう精神的な問題がやっぱり一つの背景としてある。これは歴史的にあります。これを抜きにしてこの問題だけを議論することは私はできないと思っているんです。だから、そういう点を整理して私ども考えませんと、いままでのあなた方の答弁だけではこれを納得することはなかなか困難です。ですからやっぱり私は、相対的に言うならばF15の方がまさるわけですから、航続距離は抜群にふえるわけです。スピードも多い、爆弾の搭載も、この資料によりますというとわずか二十四発と十八発という、確かに六発ぐらい少ないようであります。しかし、その他の武装はほぼ同格であります。そう考えるときに、やっぱりF15のこの給油装置なり爆撃装置を持たせたままでやるということは相手に対して誤解を与える、こう判断するのが素直じゃないでしょうか。無理に誤解を与えないんだ与えないんだと言うことは、少し私は防衛庁の見解としても無理ではないんだろうかと、こう思うんですが、長官の見解を聞いておきます。
  251. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) まず防衛局長から答えさせます。
  252. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま先生がおっしゃいましたが、F15が優秀な飛行機であるということは間違いございません。優秀な飛行機であるから私どももこれを装備したいと思っているわけでございます。この優秀な点というのが、際立っているのが空中における戦闘能力ということでございます。したがいまして、いま先生がおっしゃいましたように、そのファントムができた十数年前のファントムの爆撃機能、それに比べましてもF15の爆撃機能というものは劣っております。劣っておりますというのは、決定的な点を申し上げますと、核爆弾を搭載できないということでございます。したがいまして、これを使用いたします一九八〇年代の後半になった時点の世界の航空機というものを考えますときには、ファントムが出たときに、その持っている爆撃能力、そういうものに比べますと、相対的に低くなっているということを御説明申し上げたわけでございます。
  253. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 第一の御指摘の点は防衛局長からいまお答えをいたしましたけれども、第二の点で、日本の歴史的な回顧に基づく外国の受けとめ方についての御意見ございましたが、私はこの点につきましては、日本の今日までの国防に対する一貫した考え方、特に国会の論議等も列国もよく承知をいたしておりまするし、特に政治優先の体制というものは不動の体制として定着しつつあるということでございまして、決して日本が主導的に好戦的な姿勢をとるということは憲法の条章に照らしましても断じてないと、こういうことだけはひとつ信頼を願いたいと思うのでございます。
  254. 山崎昇

    ○山崎昇君 いま防衛局長から答弁ありまして、十年後の様子を考えたときに果たしてこれがそれじゃ有効打になるのかどうかということは疑問だと思う。それじゃ十年後に採用する飛行機がそれほど大したものでないから、いま採用すること自体がもうこれは無意味じゃないですか、また、少し極端な言葉を使えばむだ遣いみたいになるおそれはありませんか。そういうことを防衛庁が言うということは、私はやっぱり論理の少し矛盾があるんじゃないか。いま私ども、これを採用することが相手に脅威を与えるんじゃないか、その理由は何かと言ったら、過去の飛行機で議論されたときに二つありましたと、そのうちのなるほど一つは核弾頭を積み込めないということは確かにこの飛行機にあるかもしれない。しかし、もう一つ議論になった航続距離の問題は解決できないのです、これは。両方が解決できなければ脅威を与える誤解ということになるのじゃないんでしょうか、その点をもう少し明確にしてください。
  255. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま私が申し上げましたのは、その十年後に役に立たないということを決して申し上げたわけではございません。いま私の説明の中にございましたように、F15というのは、空中戦闘能力というのは際立ってすぐれているということを申し上げました。そのことが十年後の一九八〇年代後半の飛行機に対処するきわめて重要な能力でございます。そしてまた、航続距離が延びるということが、その時代の要撃戦闘においてもきわめて重要であるということは、なぜかと申しますと、いままでの要撃闘機の対象とするものは爆撃機でございました。これは航続距離の関係からいたしまして戦闘機というものは日本に侵略して攻撃するということは不可能であったわけでございます。ところが、現在すでに出現しております戦術戦闘機そのものが、爆弾を持って日本に攻撃をするという可能性をすでに持っているわけでございます。これが十年後になりますと、そういった戦術戦闘機というものが日本に対して侵攻する可能性というものは当然出てまいるわけでございます。この戦術戦闘機を迎え撃つ場合には空中戦闘というものが必要になってまいります。したがいまして、いままでの爆撃機に対する一撃というだけではいけないのでありまして、空中における戦闘行動というのが必要になってまいります。といたしますと、前にも御説明いたしたと思いますが、空中戦闘行動というのは普通飛ぶ燃料の六倍あるいはそれ以上の燃料というものを消費することになるわけでございます。したがいまして、現在仮に二時間飛ぶにいたしましても、その飛び方によってはきわめて多くの燃料が必要になってくるわけでございますから、その時点におきます航続距離というものは、防空戦闘上もきわめて重要な意義を持ってきているということは当然考えられることでございます。
  256. 大塚喬

    大塚喬君 このF15の装備の論争ですが、空中給油の問題から爆撃照準の問題、これらは、私がただいままでに指摘いたしましたように、明らかに政府の方針を内閣の一省庁である防御当局が逸脱をして、そして日本政府方針、憲法の定めにまで抵触するようなおそれのあるいわゆる専守防衛、こういう方針を防衛当局が国会の審議を無視して、そして、そのような方向に国の方針を引っ張ろうと、こういう大変危険なおそれのある問題でありますので、これらの問題は断じてこれを容認することができません。で、この問題は、今後重ねて私どもとしてもこれらの問題をこの国会の場で取り上げて、将来にわたって国の方針が誤りのないように、わが憲法に規定されたそういう問題について、後たまでの国民に大きな迷惑、そういうふうなことのないようにひとつこれから先も努力していきたいと思いますが、重ねて、ともかく防御当局が国会の方針を逸脱して政府方針を変更を迫る、こういうようなことは許されるものでないと、こういうことを指摘して次の質問に移りたいと思います。  国防会議の事務局長に御出席をいただいておるものですので、次に国防会議の改革問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  国防会議の改革については、歴代総理大臣が必ず一度は口にして、しかも、それが実現に至らず今日に至っておるわけであります。昨年も三木内閣の当時、ロッキード事件の起きたときに、これを契機に国防会議のあり方を含め文民統制のシステムを再点検をし、国民の疑惑解消に努めるべく国防会議の運営の改善、構成員の増加、事務局の強化等の検討をすることにしていたはずですが、結論を得ずに現在に至っておるわけであります。そして福田内閣にかわったわけでありますが、福田首相も、今年度早々の国防会議において、これは一月七日の国防会議でありますが、国防会議の格の引き上げやそのあり方について検討を加えることを決め、久保国防会議事務局長に同会議の充実強化を指示したことが伝えられておるわけであります。この点について国防会議の事務局長から、どういう指示があったのか、その内容についてお聞かせをいただきたいと思います。
  257. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 田中総理のときには、将来の問題として国防会議のあり方を検討しろという御指示があった旨引き継ぎを受けております。それから、三木総理のときには私直接に伺っておりますが、やはり同じようにこの問題を検討しなさいということでありました。それから、福田総理の場合はいまの御指摘とちょっと違いまして、従来のように防衛庁から提案をされたそのものを審議するだけでは仕方がない、もっと範囲を広げて、そして、その背景になるような問題をもろもろ取り上げて運用を検討すべきではなかろうかという御指示があったわけであります。  そこで、私どもはそういった歴代の総理の御指示、それから国会における御要望、マスコミ、学者方の御意見、そういうものを伺いながら現在事務的に勉強をしているところであります。で、政党の御意見の中に、たとえば国会質疑を通じ、あるいは活字を通じて御意見がわかるのがあるわけですけれども、私の意見では、国防会議というのは文民統制、すなわち政治が軍事あるいは防衛を統制するというもの、その一機関でありますから、政治の御意見というものは反映しなければならない。そこで、各政党の御意見がわかっている点は大変ありがたいんですけれども、ただ、社会党と共産党の御意見は私どもまだよく承知しておりませんので、政治優先という立場からも政治の方の御意見というものを十分に取り入れて国防会議のあり方を検討してまいりたい、さように考えております。
  258. 大塚喬

    大塚喬君 事務局長は、ことしの三月十五日の衆議院予算委員会の第一分科会で、国防会議は、縦割りの安全保障政策を横からながめる役割りを担当すべきだ、それから二番目に、単純な諮問機関であるよりも、総理の補佐機能を高めるべきだ、三番目に、現在の防衛庁設置法の第三章国防会議の規定を、国防会議の構成に関する法律を一緒にして単独法とすることが適当であると、このような答弁をされたことが報道されておるわけであります。その後この方針は具体的にどのような検討を進められておるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  259. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 現在、国防会議そのものから私ども事務当局に対しまして、国防会議の改組、権限の問題について具体的に検討せよという、そういう具体的な御指示にはいまのところなっておりません。したがいまして、ただいま申し上げましたように、政治の場から私どもに御要望があった場合にどのようにもお答えできるように、どういう問題があり、そしてそれに対する答えは何であるかということをいま事務当局で勉強しているところでありまして、ただいまお述べになりましたことは私どもが勉強している内容の一端であるというふうに思います。
  260. 大塚喬

    大塚喬君 勉強しているというお答えですが、それらの具体案が固まるのはいつごろの見込みですか。
  261. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) これは先ほど申し上げたように、政治の御要望がどこにあるかということで、われわれはどのような御要望にもお答えせねばならない立場にあるわけでありますから、必ずしも一案と限りませんで幾つかの方向というものを打ち出してみたいというふうにも思うわけで、これは急げば早くもできるかもしれませんが、なるべくならば各政党の御意見を拝聴してそれを盛り込みたいということでありますので、まあこれは私の考えでありますけれども、したがって、そういう御意見がどのように出るかによってタイミングは違ってまいると思いますけれども、時期的なめどはいまのところ置いておりません。
  262. 大塚喬

    大塚喬君 その案の中に、先ほど申し上げた米国の国家安全保障会議並みの格上げ、それから、会議構成員の増員、会議事務局の充実、こういうものが含まれるのかどうか、いま勉強されておるというその中身が。さらに、第二十二国会政府当初案にあった民間人をこの構成員に含めると、こういう問題もその中に含めて勉強されておるのかどうかお伺いをいたしたいと思います。
  263. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 私ども事務当局の中における議論の中には、そういった問題も入っておりますけれども、ただ、たとえばアメリカの安全保障会議のようなものになるのか、権限的にもそうなるのかといいますと、これはアメリカの憲法及び国家安全保障会議のたてまえ、そして日本の場合には、日本の憲法及び内閣法の関係から申して安全保障会議と同列には少しなし得ない。基本的に申せば、アメリカの唯一最高の権限者、行政における権限者は大統領であり、日本の場合には内閣であるといったところが基本的に違うんだそうでして、したがいまして、これは同じようにはならない。しかし、それでは現在の縦割り行政で横からながめた場合の機能というものが、実は国防会議は諮問機関でありますから、縦割りの仕事を持っていないことになるわけであります。そうしますると、強いて言えば内閣官房あたりになるわけですけれども、そういうことが果たしていいのかということが権限上は問題になる。  それから、議員の数をふやすということは、これは四十七年でありましたか、で、国防会議及び閣議で決定しまして一応三人の方をふやすということになっておりますが、文民統制の見地からして議員の数をふやすことだけでいいのかどうか、私はむしろ疑問に思っているわけなんで、それは国防会議が取り扱う事項の範囲をどうするかということにもかかわってくるわけであります。人数が多くなればなるほど、たとえば閣議のように非常に広範な仕事を扱うことになりまして、実質的な審議ができにくいという面もあろうかと思いますので、その辺の権衡を、一応閣議で決定はしておるんですけれども、ほかの問題とあわせて検討する、単に議員の数だけで議論をするのは適当ではないんではなかろうかというふうに思い直しているわけです。  それから民間人の問題は、これは国防会議が設置される二十年前からすでに議論になっていることなんですが、そしてまた私どもも念頭に置いて議論はするわけですけれども、いまのところこれは必ずしも適当ではなかろう。ある憲法学者の意見の中でも、当初は民間人を入れるということに賛成であった人が、後ではそれは閣議の責任、内閣責任制のたてまえからいっていかがなものであろうかというふうに見解を変えている方がおられるように思いますし、私ども、どうもそういう感じもしますので、議論はいたしておりまするけれども、民間人は入れない方がいいんじゃなかろうかというふうに、事務当局としては勉強の過程でそういう考え方を出しております。
  264. 大塚喬

    大塚喬君 いまの久保事務局長答弁によりますと、国防会議の構成員の増員、これは昭和四十七年の二月の四次防予算の先取り問題で国会が紛糾をした際に、船田議長あっせん案が出されたのであります。政府は文民統制の実を上げるため適切な措置を講ずる旨の内容を持っておるわけであります。これによって同年十月の九日に、国防会議及び閣議決定による「文民統制強化のための措置について」ということで要綱がまとめられております。久保事務局長は、この船田議長あっせん案、それから、国防会議並びに閣議決定の事項に反対だと、こうお考えですか。
  265. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) まず、文民統制強化に関する衆議院議長のあっせん案の一項目については、これはすでに毎年度の予算の中の主要項目については国防会議及び閣議で決定をするということでこたえておるわけであります。しかし、もう一つこたえようとしました議員の増員の分については、それを反対とかいけないとかいうことを言っておるのではなくて、議長の御趣旨である文民統制強化ということに対して、それだけでおこたえをするのが適用であるか、もっとよりよいおこたえの仕方があるんではなかろうかということを考えているわけであります。
  266. 大塚喬

    大塚喬君 文民統制の実を上げるために民間人を構成員の中に増加をすると、こういうことについては、どういう理由で事務局長は反対の立場をとられるわけですか、重ねてそこのところを明確にしていただきたいと思います。
  267. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) この種の問題については国防会議でまだ議論になっておりませんので、こういった公的な場で私が申し上げるのは多分不適当であろうと思うんですけれども、しかし、せっかくのお尋ねでありますからお答えいたしますが、民間人の問題は、昭和三十年、三十一年ごろの国会でずいぶん議論をされております。そしてまた両論ありました。今日といえども、政党の方によっては民間人を入れた方がよろしいという御意見の方も、党もございます。しかし、基本的に言えば、現在の運用で言えば、国防会議で決定され、しかも国防会議で決定されるものは国の安全と独立にかかわる基本的な項目である、そしてそのことが閣議で決定される大勢を占めることになろうと思うんです。従来であれば、国防会議決定はそのまま閣議の決定になっておる。そこで、憲法によれば、内閣責任制ということで内閣が行政の最高権限を持つものである。ところが、民間人というのは、まず情報が集められておりません。そして、だれに対して責任を持っているかということが明確ではございません。議員の方でありますると、当然選挙民という方があり、まず第一に憲法からいっても国民の代表者であるわけですから、これは責任を持つ対象があるわけでありますが、民間人はそこがない。そういう方、つまり情報がなく、そして責任の対象がない民間人、しかも秘密の保護ということがこれは確保されていない。そういう立場で国防会議に参加されて、それが非常に大きく内閣を拘束するということ、これが適当であろうかということであって、二十年前に国会政府側から答弁された内容と私はいまもやはり同じ見解を、これは私として持つのであって、国防会議で議論されたわけでありませんから、現在の国防会議の方々がどういう御意見を持つかは私は存じません。
  268. 大塚喬

    大塚喬君 昭和四十七年のいわゆる国防会議及び閣議決定による「文民統制強化のための措置について」、その内容によれば、通産相、科学技術庁長官、内閣官房長官、国家公安委員長の四人を議員として追加をしておるわけであります。現在は、総理、それから外務、大蔵、防衛庁長官、企画庁長官の五人でありますが、この法改正は野党の反対もあって政府が法案提出に至らずに実現をしなかったわけでありますが、この問題については国防会議事務局長としてはいかがお考えでございますか。
  269. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 政府の外におきましては、たとえば国家公安委員長とか、科学技術庁長官の国防会議議員になられることについての反対が一部にあるようであります。また、過去の国防会議の議論の中で、一応四人と決まっているけれども、さらにほかの大臣も入れた方がいいんじゃないかという御意見も過去において出ております。そこで、繰り返しますように、文民統制の強化に関する措置として、単に三人、四人の方をふやすということだけで足りるんだろうか、もっと本質的な問題があるんではなかろうか、そして、もしそうであるならば各野党の方も反対なさるはずはないのであって、各党が反対なさらないような文民統制強化の措置を国防会議についてどういうふうにしたらいいのかということが、私がもしつかめるならば、そういう法案を準備することは可能であろうと思います。もちろん議長たる総理に御相談しなければいけないわけでありますが、そこのところがどうもなかなかつかみ切れないという問題があります。
  270. 大塚喬

    大塚喬君 この国防会議の運営について、どうも私ども、雲の上というか、かすみの向こうにあって、その運営の内容をつまびらかにすることができないことを大変残念に思っておるわけですが、国防会議の開催状況、これはその都度国防会議の開催の内容等をまとめていらっしゃるはずだと思うんですが、その一覧表、資料提出をいただけますか。
  271. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 本来、先ほど申し上げた縦割りの行政機関である各省庁は国民向けの組織でありますから、当然いろいろなことが公表されるわけでありますが、国防会議総理大臣に対する諮問機関でありますので、言うならば総理の方を向いていると。そして、総理と内閣と申しますか、閣議を補佐する形になりますので、どうしても一般的には外に情報が出にくいわけでありますが、資料そのものは当然可能な範囲で御提出いたしますし、いま御要望のものは差し上げます。
  272. 大塚喬

    大塚喬君 ただいま要求いたしました資料はひとつ速やかに、次回の内閣委員会までに提出をいただきますようにお願いをいたします。  国防会議お尋ねをいたしますが、先ほど論議になりました、いわゆる専守防衛に関する防衛庁の見解の解釈の発展と申しますか、この問題については、現在まで国防会議で論議になったことがございますか。
  273. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 国防会議ではまだ議論いたしておりません。
  274. 大塚喬

    大塚喬君 この問題は近く国防会議で論議をされる予定ですか。
  275. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 事務局といたしましては、F15にしましてもP3Cにいたしましても、関係各省庁におりまする兼任参事官も含めて検討を進めております。まだ検討は終わっておりませんが、継続いたしまして、国防会議そのものにおける検討は、多分国会終了後しかるべき時期から逐次お始めいただけるのではなかろうかと思っております。
  276. 大塚喬

    大塚喬君 国会の閉会後、鬼のいない間の洗たくということで国会の論議の追及をかわす、こういう中で、この防衛庁のいわゆる政府方針、こういうものを国防会議で事務局長としては決定をする、まあちょっと語弊がありますが、そういう方針でございますか。
  277. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 私どもは別に国会を鬼とは考えておりません。ただ、事務局で勉強するのもまだ終わっておりませんので、先に国防会議をお開きいただくのは少しどうかなという感じもありますし、当然、総理また各大臣大変お忙しいのでもありますので、可能な範囲において早い時期にというふうに考えておるわけです。
  278. 大塚喬

    大塚喬君 これは重大な問題でありますので、今後重ねて論議を進めることにいたしまして、私の時間がちょうど三十分までですので、一応あとの問題は留保いたしまして、本日の質問はこれで終了いたします。
  279. 久保亘

    久保亘君 最初に、いま論議になりましたF15などに関連をして、防衛庁の平野空幕長が、記者会見で、政治がどこまで守れと行動範囲を決めるのはよいが、装備にまで口を入れるのはどんなものだろうかと、こういう発言をされているようでありますが、このような空幕長の発言について、長官の御見解を承っておきたいと思います。
  280. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 先ほども申し上げましたように、こうした重要な防衛関係の事項というのは、これは国防会会議にかけるようなものでございますので、そうしたことは、防衛庁で決定をする場合は防衛庁長官のところで決定をするわけでございます。そうしたシビリアンコントロールの私はやるべきことだと思っておるのでございます。  いま御指摘の、空幕長が装備云々というようなことを言ったかどうかということは、私はまだつまびらかにいたしておりませんけれども、当時のことを伺いました際には、防空関係の専門家としての私見を述べたことは承知をいたしております。あくまでも、それは防衛庁においてF15を決定をいたしました後のことでございまするので、決して現在の空幕長がそのF15等に関して、装備に関して云々を、シビリアンコントロール等について政治の場において云々することを指摘をして、そうしたいま御指摘のような意見を申し述べたものとは私は受けとめておりません。
  281. 久保亘

    久保亘君 いや、そういう発言をしたかどうか。私はそういうふうに受けとめていないということではなくて、制服の責任者が、最近は統幕議長になられた栗栖さんのあのシビリアンコントロールを否定するような発言もありましたですね、新聞記者会見で。私はそのシビリアンコントロールなどについては、何か現代にはそぐわないものだと思っているというようなことを言われておりましたですが、それであなたも注意されたことがありますね。この制服の人たちが、言ってみれば、国会で装備の問題などは余り議論するなと、装備の問題はわれわれ制服に任せろと言わんばかりの言い方でここへ書かれておるわけです、新聞にも。仮にこういうような発言がその制服の責任者によってなされるとするならば、これは大変遺憾なことであり、長官としてはそのような言動は注意すべきものだとお考えになりませんか。
  282. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 重ねて申し上げるようでございますが、先般各記事に載りました空幕長の発言は、防衛庁として決定をいたしましたそのF15の運用等に関していろいろ記者の方々に御説明を申し上げたということでございますが、その中にいま申されたような、国会審議について規制をするような発言をしたとするならば私は適当でないと考えております。
  283. 久保亘

    久保亘君 それでは、長官としてひとつ確かめていただきたいと思うのでありますが、これは新聞に、「先日の記者会見で航空自衛隊の最高幹部、平野晃空幕長は、にがにがしそうに言い切った。「制服がやいのやいの言うことはしない」といいながらも、「政治が、どこまで守れと行動範囲を決めるのはよいが、装備にまで口を入れるのはいかがなものか。ほかの国ではありえないことだ」とも語った。」、こう書かれておるわけです。このような事実があるとすれば、いまの長官の見解によりますと大変問題のあるところであります。事実をひとつ調査をされて、このような発言があるのかどうか御確認をいただきたい。あればそれに対する適切な措置をおとりいただきたい、こう思います。
  284. 野田哲

    ○野田哲君 関連。  ただいま久保委員質問でありますけれども先ほど三原防衛庁長官は、平野空幕長の私的な発言というふうに言われたけれども、私的な発言ということではないですよ、これは。防衛庁の記者クラブの人たちが防衛庁の庁内で会見をされているわけですよ。ここに記者の方たくさんいらっしゃる。防衛庁の庁内で会見をされているわけです。平野空幕長に対して、F15の問題について会見して聞かれているわけですから私的な発言じゃないですよ、あれは。いいですか。それから、政治が装備にくちばしを入れるなということは、制服が政治に対してくちばしを入れておることじゃないですか、事実を確かめてこれに対する防衛庁長官の見解を明らかにしてもらいたいと思います。
  285. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 私の先ほどの発言に、私的な空幕長発言と言ったことでございますれば、それはそうした気持ちで言ったわけでございませんので、それは私的という点については取り消していきたいと思います。  なお、両議員から申されました平野空幕長の発言についての御指摘の点は、私が空幕長を招致をいたしまして、よくその意見を聞きまして対処いたしたいと思います。
  286. 野田哲

    ○野田哲君 アメリカへ行っているんですよ。
  287. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) いや、帰ってまいりましたから。
  288. 久保亘

    久保亘君 それでは私は次に、本年の八月に防衛庁で内定をされました次期対潜哨戒機についてお尋ねをしたいと思うのでありますが、防衛庁は計数的にもいろいろとこの決定に当たって資料を提示されておりますが、この中でわからない点をひとつまず最初にお尋ねいたしますが、アメリカ海軍が五十二年度に取得をしたP3Cの価格は幾らになっておりますでしょうか。
  289. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 千七百万ドル弱でございます。
  290. 久保亘

    久保亘君 千七百万ドルということは、ちょっといますぐ計算できませんが、円が非常に高くなっておりますが、仮に三百円レートで計算をいたしましても五十億ちょっとということになりますね。ところが、防衛庁が今回P3Cの内定に当たって出されております資料では、ライセンス生産によって取得されるP3Cの価格は七十七億と出されております。それで、本来ならばこの円高でありますからもっと五十億をはるかに割る価格になるわけでありますが、昨年私が別の委員会お尋ねいたしました際にも、価格は五十数億と述べられております。今回、この五十三年度概算要求価格において七十七億というP3Cの価格を出されております根拠は何でありますか。
  291. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 一機当たり七十七億という単価は、四十五機を購入する場合の平均単価でございまして、私どもが今回概算要求いたしました数字は、十機分といたしまして平均七十五億円でございます。
  292. 久保亘

    久保亘君 その数字をそう言われるが、これはあなたの方からぼくはもらった資料ですが、これに一機七十七億と書いてあるんですよ。「次期対潜機の選定について」五十二年八月防衛庁という文書ですね。それで四十五機の調達計画は、調達機四十五機約三千五百億円、平均単価約七十七億円とあなたの方、書いておられる。
  293. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 非常に計算上ややこしいことをいたしまして申しわけないと思っているわけでございますが、この対潜機を買います場合、初めの三機は完成機を買うわけでございまして、その場合三百円ぐらいで計算して五十一億でございまして、ライセンス生産になりますとそれよりかなり高価になってくるということでございまして、それを四十五機、ライセンス生産分の多い四十五機で平均いたしますと七十七億円でございまして、来年度概算要求いたしましたのはライセンス生産分が少ない分でございますから、それを十機平均いたしますと七十五億円ということでございます。
  294. 久保亘

    久保亘君 まあ七十五億にしろ七十七億にしろ、少なくともアメリカ海軍が五十二年度に取得をしたP3Cの価格とすると三十億近く高い、一機当たり。そういう価格になるだけではなくて、あなた方の方は平均単価七十七億と説明されておりますが、この内容を詳細に検討いたしますと、予備エンジンや補用部品が一機当たり約十五億円これに追加されるはずであります。しかもこの対潜哨戒機には関連する地上の設備などがあります。そういうものの経費が一機当たりやはり約十二、三億かかってくるのではないかと思われます。そうしますと、P3Cは防衛庁の計画によれば、五十三年度概算要求価格において平均いたしますと大体一機百億をちょっと超す、こういうふうに予算上は理解をしてよろしゅうございますか。
  295. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) ただいま概算要求中の段階でございまして、その詳細については説明を差し控えさしていただきたいと思うわけでございますが、まあ十機の平均七十五億円に、それから補用部品でございますか、これを入れますと約九十億円弱ということでございまして、それに、これは地上支援機材であるとか、あるいはその施設整備といったような費用が約五百億円かかると、そういうことでございます。
  296. 久保亘

    久保亘君 五百億円というのは、これは十機についてですか。
  297. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) これは四十五機についてでございます。
  298. 久保亘

    久保亘君 そうすると、私がさっき言いましたように、一機当たりちょっと十億少しかかりますね、四十五機で五百億ですから。そうすると大体全体で、P3Cを配置をするということはいまの防衛庁の計算で一機百億余り、こういう理解でよろしゅうございますね。
  299. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) いま頭に置いております四十五機調達ということを基礎にいたしますと、計算いたしますとそういうことになってまいります。
  300. 久保亘

    久保亘君 それでは、四十五機ということを念頭に置けばということでありますが、P3Cはピーク時において保有機数を何機にするつもりでライセンス生産に踏み切られるわけですか。大体量産計画に一つの最終的目標がおありでしょう。何機でおやりになるつもりですか。
  301. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 私どもが概算要求をいたしました基礎といたしましては、四十五機を調達するということを基礎といたしまして計算をいたしております。
  302. 久保亘

    久保亘君 六十二年に四十五機仮に完成をいたしたといたします。P2Jがそのとき三十六機残っている計算になっておりますね、八十一機。しかしその四十五機の一機はスペアだと、こういうことですから、八十機の体制で六十二年にそうなるということですが、その段階ではP2Jはすでに生産はもうストップしておりましょう。で、六十七年までかけてこれはゼロになっていくわけでしょう。五年間でP2Jはなくなるわけですね。そうすると、その五年間八十機体制を維持するということになれば、四十五機で終わればポストP3Cが考えられなければならぬ。その辺のところはどういうふうに考えておられますか。
  303. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま先生がおっしゃいましたように、私どもはP3C級といいますか、次期対潜機の機数といたしましては約八十機、そういったものでオペレーションをしたいと思っております。現在はS2F、P2J、それからP2Vという古いのを含めまして百二十機あるわけでございます。したがいまして、そういうのは徐々に落ちていくわけでございますが、一応十年後の時点で、いわゆる対潜機というものがいまのP3Cのままいくものであるのか、あるいはその次の対潜機というものが出てくるのか、そこら辺の見通しがまだ定かではございません。したがいまして、いま先生がおっしゃいましたように、何もしないでその六十二年を迎えてしまいますと後は何もできなくなるわけでございますが、当然その以前の時点で、その後の飛行機をどういうふうな形で取得するのかという検討はなされなければならないと考えておるわけでございます。
  304. 久保亘

    久保亘君 一号機が入ってまいりますのが五十六年ですね。そうすると、防衛庁の計画どおり決まったとしてですよ、一号機が五十六年に入ってきて、六十二年に四十五機生産が完結する。一応四十五機の計画で出発すれば値段は四十五機で決まっていく。しかし、こういうやり方をされますと、四十五機量産ということで値段を割り出して出発するが、しかし実際には、これは六十二年を過ぎてもP3Cの生産が続くということになれば、このライセンス生産を防衛庁から請け負った側は非常に割りがよくなるわけです。四十五機生産の価格で契約さしてもらっておって、実際に四十五機終わる段階でさらにあと三十機追加と、こうなってくれば、もうかるような仕掛けになるわけです。大体防衛庁というのは、航空機産業に限らず、防衛産業や、それから商社からなめられっ放しなんでね、いままで。商社なんかは、輸入契約についてもあなた方に見せたこともなかったんです。なめられっ放しでやられている。それで、国民の税金だからと思ってあなた方の方も気前よく払っている。そういうことが多過ぎるので、たとえばT2にしても、T2が最初契約の段階でいろいろ協議され論議されたときには、T2一機の価格は五億以内というような話が出ておって、契約段階になったら十四億四千万という契約になったことがある。それだけではなくて、この防衛庁が買うた航空機というのをずっと逐年追っていきますと、これは高度成長よりもはるかに高い勢いで価格が上昇しますね。特に対潜機などというのは一年に一割見当でどんどん上がっていくんです、価格が。だから、いま七十五億とか七十七億とかいう価格で、いろんな関連のものを含めて百億という値段で出発されれば、実際に五十六年度取得されるときにはとてもそんな価格じゃないと私は思う。それからまたどんどん上がっていって、四十五機一応の計画が終わる段階にこの飛行機は一体幾らになっているんだろうか、それから先はさらにこの計画を拡大ということで、初め四十五機の計画でやらしてもらったものだから高い値段で買い取ってもらった、あとはおまけのようにして今度はまたもうけさしてもらう。こういうようなことになれば、国民としては、もともとこの飛行機が——またいまからやりますが、この飛行機が日本防衛上一体何の意味を持つのかということに対する疑問も非常に多い中で、国民の税金の非常なむだ遣いになりはせぬかという危惧が残るわけです。この七十七億の価格の設定の仕方だって、アメリカ海軍が五十億以下で買っているものを何で七十七億で買わにゃいかぬのか、これはわからないですよ、国民には。その辺をひとつしっかり説明してください。
  305. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 初めに先生が申されました七十五億が七十七億、まだどんどん上がっていくんじゃないかというお話でございますが、これは次の段階どういうことになるか、まだ未定でございますが、もし仮に同じP3Cをライセンス生産するということになりますれば、その段階においてちゃんと原価計算をいたすわけでございまして、初めの四十五機のとき設備した機械とか治工具とか、そういうものがどういうふうに四十五機で償却されたかというような点をぴちんと原価計算をいたしまして、決して甘いあめをしゃぶらせるというようなことには断じてならないようにいたしますでございます。
  306. 久保亘

    久保亘君 いままではあなたがいま言うようなぐあいにはいっておらぬのだよ。たとえば私は一つの例を挙げましょうか、対潜機で挙げた方がいい。  P2V7のイニシアルペイメントは最初千二百万だったんですね、技術指導料としてアメリカ側に支払われたのは一機当たり千二百万。P2Jに改造するのをこれは日本がやったんですよ、日本の企業が開発した。P2V7をP2Jに変えたのは日本がやったわけだ。別にアメリカから指導されてやったんじゃない。ところが、アメリカ側は飛行機が改造されたということでもって、そのイニシアルペイメントを千二百万から千八百万に上げて取ったんですよ。それをふんだくられて、六百万よけいふんだくられるのを防衛庁は黙って払っておるじゃないですか。だから、あなた方は決して国民の税金をむだなことはやりませんとか言っているけれども、実際にはずいぶん防衛産業というのはうまいものだという気持ちがあるんです。これは大体宣伝も要らないでしょう。わが社の大砲はと言ってテレビで宣伝する者はおらぬのです。新聞に広告する者ないでしょう。広告料も一銭も要らぬし、値段はあなた方との協議で決まるんです。そして、計画生産だからつくっただけ必ず買い取ってもらって、一機飛行機が余ったからどっか買うてくれぬかというような心配要らないんです。こんないい商売はないんです。だから、この値段の決定についてはぴしっとやらぬと、こんないいかげんなことで決められては困る。  アメリカで五十億しないものを何で日本防衛庁が七十五億円以上で買わにゃならぬのですかというお話に、あなた方国民説明してくださいよ。
  307. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 先ほど申し上げましたように、ただいま概算要求中でございまして、その点詳細に触れるのをちょっと差し控えさせていただきたいと思うわけでございますが、まあアメリカが買うものと日本が買うものとの差というのはかなりあるわけでございまして、これはアメリカ海軍が買う場合にはこの研究開発に要した費用というのは除外されますし、また研究開発費とか、それから、アメリカは会社に特殊な専用機械というのを貸し付けておるわけでございますが、これもアメリカ海軍が買う場合にはその貸付料というものは算入しないとか、あるいは、もしFMSで買うということになりますれば、これに対しての管理費といったようなものが日本が買う場合は数%を取られるということもございますし、また、日本が特有な装置なり仕様というものを注文いたしますものでございますから、そういうものに対するプログラムの開発費といったようなものも取られるというように、これは概算要求段階で御説明できないというのもまことに残念でございますが、いずれにいたしましても、こういう点を後刻明らかにいたしまして納得を得たい、こういうふうに思っております。
  308. 久保亘

    久保亘君 いままでは、商社の秘密契約による販売報酬とか、そういうものも全部防衛庁でお支払いになっておったようなかっこうになっておるわけです。今度のロッキード事件でそういうものが出てまいりましたですね。それで、これもロッキード事件がアメリカの上院で問題になってこなければ、P3C決めれば児玉譽士夫は、四十五機ならもらえたのかどうか知りませんが、五十機なら二十五億円もらうということになっておったわけですね。多分そのときだったら防衛庁は五十機以上お買いになったでしょうから、二十五億円もらうと。それもあなた方が払う価格にみんな入っておる。  それから、いま言われるように、確かにペンタゴンが技術研究開発費を分担しろと言ってきますね、アメリカ飛行機買いますと。それはわかります。しかし、それはそんなに膨大な額にはならぬでしょう。一機二十億円もペンタゴンがふんだくるならそんなもの買いませんと言えばいいんです。  これは、それじゃ価格の問題については、いまあなたが言われたように、私、まだ国防会議でも決まっておらぬ問題だから、防衛庁の内定の段階の論議として聞いておきます。しかし、これが五十三年度の概算要求にもし国防会議がこんなものを決めて要求されてくるならば、私たちはこの七十七億の内訳というものをぴったり示してもらわぬと、とてもこんなもの納得できぬのだということを、これは価格の面から申し上げておきますよ。  それから今度は、対潜機の選定の基準というのは一体何なんですか。要求される性能というのを、あなた方の防衛白書を見ますと、広域水中捜索、目標の識別、それから潜水艦の位置の局限、ここだというのを決めて、そして攻撃をして撃沈させる、これが対潜機の対潜水艦作戦の流れであると、こう書いてある。そこから要求される性能が出てくると書いてある。それならば、日本の海上自衛隊に装備されるP3Cは、この最後のところです、相手の潜水艦の位置を限定してこれを攻撃して撃沈する武器は日本のP3Cには何を搭載されるんですか。
  309. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 今後多少検討を要する点もあると思うわけでございますが、私どもが購入しようとしておりますP3CのアップデートII型でございますが、これは三百五十ポンド対潜爆弾、五インチロケット弾、対潜魚雷、機雷、ハープーン空対艦ミサイルなどを搭載しております。
  310. 久保亘

    久保亘君 ブルパップは搭載いたしますか。
  311. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) ブルパップはアップデートI型には搭載されておりましたが、アップデートII型には搭載されておりません。
  312. 久保亘

    久保亘君 そうすると、これに搭載する爆雷は核爆雷——アメリカのP3Cは核爆雷を搭載することができるようになっておりますね。それは御承知ですね。
  313. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) はい。アメリカの使用しておりますP3Cは、先生指摘のように核爆雷を搭載することができるようになっておりますが、私どもが買うP3Cはこれを除去して買うということになっております。
  314. 久保亘

    久保亘君 核爆雷と普通の爆雷とは、これは爆雷そのものが差があるのであって、この搭載設備は同じものじゃありませんか。
  315. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 核に関しましては、核管制装置という特別な装置がございまして、これによって投下方法、投下のタイミングとか、高度とか、そういうものをすべてコントロールしておるわけでございまして、核管制という特別の装置がついておるわけでございます。
  316. 久保亘

    久保亘君 そうすると、日本のP3Cが核爆雷を搭載できないようにしてあなた方が配備をされる、すると、それはもう対潜水艦作戦という軍事的価値という意味ではこのP3Cは攻撃能力を失うと、こういうことになりませんか。
  317. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 核爆雷と通常の爆雷と比べればこれは違うわけでございます。しかし、先ほど先生が御指摘になりましたけれども、対潜水艦作戦というものは対潜哨戒機のみでこれを実施するものではございません。対潜作戦というのは、長距離の対潜哨戒機、それから護衛艦、さらにはまた、その護衛艦に積んでありますヘリコプター、こういったものを一体にして攻撃をするわけでございます。そして、私どもがこの対潜哨戒機に最も期待をいたします能力というものは、潜水艦、すなわち原子力潜水艦の出現によって水中においてスピードがきわめて速くなったということ、それから長い期間もぐりっ放しで行動できるという二つの観点から、従来のP2Jの能力では、これを捜索し、その位置を局限するという能力がきわめて限定されますので、その意味におきます探知をしこれを捕捉する能力、これがきわめて大きくなるわけでございまして、主として私どもはこの対潜哨戒機に期待する大きな能力としてそれに注目しているわけでございます。したがいまして、攻撃能力の面からいたしますと、現在持っておりますP2Jが搭載しております爆雷あるいは魚雷、それからロケット、そういったものとそれほど大きな差があるというふうには考えていないわけでございます。
  318. 久保亘

    久保亘君 そうすると、対潜哨戒機で、日本の海上自衛隊は潜水艦の位置を捜索して局限すると、どこにいるというのを捜し出す。そうすると、あと主としてその攻撃は、もし潜水艦と戦争するということになればアメリカ海軍に依頼するというかっこうになってくるんですか、それで日米共同の作戦においてアメリカ海軍が求めている潜水艦捜索の任務日本の海上自衛隊が受け持つと、こういうようなことになってくるのではありませんか。
  319. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) アメリカ海軍におきましても、対潜哨戒機のみで対潜作戦をやっているというわけではございません。したがいまして、先ほど申し上げましたように、対潜哨戒機、それから護衛艦、まあアメリカではこれを駆逐艦と言っておりますが、駆逐艦、それからヘリコプター、そういったものを併用してやるということでございます。
  320. 久保亘

    久保亘君 ことし対潜水艦作戦について日米の共同演習がありましたね。それ御承知ですか。
  321. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 具体的なことは夏目参事官からお答えいたしますが、毎年ハワイに行って訓練をやってきております。
  322. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 日米の共同訓練は、これは昭和三十年以来行われておりまして、この主たる内容は対潜特別訓練、対潜訓練でございますが、これは昭和三十年度以降毎年一ヵ月もしくは二ヵ月に一遍ぐらいの程度でやっております。したがいまして、過去昭和三十年以降現在までに約八十回近くの米国との共同訓練を実施しております。
  323. 久保亘

    久保亘君 そうすると、あなた方がこの防衛白書に出されるのはこれは何ですか、「日米協同訓練実績」と言うて、対潜水艦特別訓練というのはことしになって一回しかないじゃないですか。だから、二ヵ月に一遍やっておるならもっとこれはずっと書かれないと……。五十一年度二回しかやっていませんよ。
  324. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 五十一年度はいま御指摘のありましたとおり二回しかやっておりません。いま私が申し上げたのは三十年度以降のものを申し上げたわけでございます。——失礼しました。ちょっとほかの演習と勘違いしまして、一ヵ月もしくは二ヵ月に一遍というのは間違いでございまして、三十年度以降七十八回ということでございます。
  325. 久保亘

    久保亘君 この共同訓練は、主として日本側航空機が大半であってアメリカ側の航空機はほんのわずかしか参加しておらぬのです。艦艇もそうなんです。それで、結局これは日本航空機によって捜索をし、そして攻撃はアメリカ側がやる、こういうことになっていくんじゃありませんか。その防衛白書の前の方にもそう書いてある。限定的な小規模の侵略に対して対応するのがわが日本自衛隊任務であって、そしてこれが限定的小規模の侵略を超えるようなものに遭遇した場合には、そのときはアメリカに頼むんだと書いてある。そうでしょう。
  326. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 先生も御承知のように、護衛艦、約六十隻現在保有いたしておりますが、この護衛艦の性能をごらんいただくとおわかりのように、海上自衛隊の艦艇のほとんどのものは対潜機能というものを重視した装備をいたしているわけでございます。
  327. 久保亘

    久保亘君 それでは、その対潜用の装備をしているということにして、この潜水艦に対する捜索、識別、局限、攻撃となる、この攻撃の判断というのはどこから出てくるんですか。その限定的で小規模な侵略というのは、その侵略というのは能力と意図があった場合に判断できると、こうなっておるんですが、海の中にもぐっている潜水艦の限定的で小規模な侵略の意図というものを、このP3Cの電子情報処理装置というのは捜索できるわけじゃない。そうすると、この日本海軍がその潜水艦を攻撃するという場合はどういう場合に可能なんですか、どういう場合に想定されるんですか。
  328. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これは海上自衛隊任務の中で、船団といいますか、商船、これの護衛というのが重要な任務になっておるわけでございます。といいますのは、御承知のように、攻撃型の潜水艦というものは本来的にそういった商船を攻撃しあるいは艦艇を攻撃するという任務を持っているわけでございます。したがいまして、そういった日本自衛隊の艦艇並びに日本の船、そういったものが潜水艦の攻撃を受けるときに、それを防御するために、探知し追尾し、そして捕捉して攻撃をするということになるわけでございます。
  329. 久保亘

    久保亘君 潜水艦が独自に限定的で小規模なそういう攻撃を加えるということは、これはあり得ないでしょう。そういうことが防衛庁として想定できますか、あなた方専門家として。そして、この場合に、あくまでもあなた方のこの対潜機配置の前提に立っているのは、日米共同作戦という前提に立っておる。そうすると、この場合に原子力潜水艦を一つの目標にしながらP3Cを配置するということになれば、原子力潜水艦をいま持っている国、日本の近海にそれを配置できている国というのは一つしかない。もう一つあるけれども、ここは一隻しか持っておらぬのだから、一つしかない。そうすると、このP3Cの配置というのははっきりと相手国を指定してその国の潜水艦を捜索をするために配置をされると、こういうことであなた方は考えておられますか。
  330. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 現実の問題としては先生のおっしゃるとおりでございます。しかし、この限定的なものといいますのは、日本の周辺海域において、日本の重要な港湾の付近において、日本の船並びに自衛隊の艦艇、こういったものが攻撃を受けたときにそれを阻止する、そういう能力を持つということでございます。
  331. 久保亘

    久保亘君 この海域において、潜水艦の軍事的な攻撃を受けるという事態を限定的で小規模な侵略の行為としてあなた方は考えられますか、潜水艦が実際に攻撃をするということになれば、魚雷を発射して——原子力潜水艦というのは核弾頭を持つ、ミサイルを装置しておりますね。で、そういうものが攻撃を加えてくる、日本の商船などに攻撃を加えてくるという行為を限定的で小規模な侵略の行為だと考えられますか。
  332. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 私ども防衛構想として書いてございますのは、日本が原則として独力で対処するのが限定的なものというふうに述べているわけでございます。したがいまして、それ以上のものは米国の協力を得てこの侵略というものに対処するということでございますから、限定的なものに対処するだけのものしか持たないということではないわけでございます。
  333. 久保亘

    久保亘君 いや、持たないのはいいんですよ。しかし、そういうような行為に出た場合には、もしそういうような事態に対応した場合には、こちらからも攻撃をするということですか、その潜水艦に向けて、日本の対潜哨戒機P3Cが敢然として攻撃をするということですか。
  334. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これは積極的に攻撃をするというわけでございませんで、自衛権の発動として三つの要件、常に御説明申し上げているわけでございますが、急迫不正の侵害、すなわち武力による組織的な攻撃があった場合、あるいはまた、その際にもほかに手段がないという場合、その場合にもさらに必要最小限度の範囲で行うという場合でございます。したがいまして、いま先生が再三おっしゃっておられる、たとえば潜水艦が商船を攻撃するようなことが現実にあるかどうかという問題、それは非常に大きな、世界的なパニックになるのではないかというような観点からの御質問だと思います。そういうふうに拡大されてまいりますと、これはまさに世界的なパニック状態に陥る、すなわち小さな紛争ということではないと思います。しかしながら、その中でも日本の周辺において起きるかもしれない、そういった攻撃というものに対処できる能力は持っていなければならないというふうに考えているわけでございます。
  335. 久保亘

    久保亘君 それを持つことについて、私は海上自衛隊防衛の範囲内に入ってきた原子力潜水艦に対して、仮に、能力があって攻撃を加えるということをあなた方は簡単に軍事的に言われるけれども、核を持っている原子力潜水艦を日本の近海において攻撃し撃沈した場合には、相手の潜水艦を沈めたということだけじゃ済まないでしょう。そのことによって日本が核の影響を受けることになりませんか。だから、そういう点について、対原子力潜水艦——核装備の原子力潜水艦に対する軍事作戦の持つ意味というものについて防衛庁で検討されたことがありますか。仮に日本の領海の中に入ってきて、核装備の潜水艦が日本に攻撃を加える意図がはっきりしてきたと、これは攻撃せにゃいかぬというのでこれを撃沈してごらんなさい、どういう事態が起こると思いますか、そういうことについては検討されていることはありますか。
  336. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) それは先ほど申し上げましたように、自衛の範囲で必要な能力ということでございます。したがいまして、その核装備をした潜水艦が日本の周辺に来たから、積極的にこれを攻撃するというようなことはあり得ないわけでございまして、現実日本の商船あるいは自衛艦、そういうものが攻撃を受けるようなとき、そのときにそれを阻止する力として持っていたいというふうに考えているわけでございます。
  337. 久保亘

    久保亘君 そういう事態は、限定的な小規模の戦争として、小規模の衝突として考えられる事態ではないとあなたも言われた。さっき、そういうことをぼくが、言っているのだろうと言われた。私はそう思います。それで、そういう事態がいま考えられるのではなくて、むしろ原子力潜水艦を相手にして対潜機を攻撃的な力の保有をして備えるということならば、これは逆に大変危険な状態わが国の国土並びに国民に対して与えるのじゃないか。日本の近海で核を装備する潜水艦を仮に攻撃に成功して撃沈したとしても、そのことのもたらす意味は、相手国にとっては原子力潜水艦が一隻沈んだというだけのことだ。しかし、その潜水艦がここで核爆発を起こし、原子炉の放射能漏れの事故を起こしたということになる場合には、相手国は潜水艦一隻の損害、わが国はこれを攻撃して沈めたために起こる甚大なる永遠にどうすることもできない被害をこうむるおそれがあるということを私は言うておるわけです。  だから、そういうようなことを考えていくと、核装備をしている原子力潜水艦に対して攻撃的能力を持つということが一体わが国防衛上意味があるのかどうか。むしろ、それはわが国防衛するのではなくて、仮にこれを攻撃した場合には、そのことによってもたらす国土の破壊ということにつながるんじゃないか、そういう点について防衛庁は検討されたことがあるか、こう聞いておる。
  338. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま先生がおっしゃるような意味での攻撃というものは考えてはいないわけでございまして、これは向こうから攻撃を受けたときに阻止するために、原子力潜水艦の行動、そういったものを捕捉し追尾する、そして攻撃を受けたときにこれを阻止する、そういう能力を持つということでございます。で、いま先生がおっしゃいましたが、そういうことが一回起こって、それで、それがすぐ世界のパニックになるというふうには私どもは考えていないわけでございまして、そういうことが全世界の七つの海で起こるようなことになればこれは大変なことになるだろうということを申し上げているわけでございます。
  339. 久保亘

    久保亘君 核装備をした相手の海中の兵器である潜水艦を、国土の防衛という意味で攻撃するようなことはやってはいかぬことなんですよ、いかなる場合でも。やることによって、その潜水艦を沈めたといって、防衛庁あるいは昔流に言えば戦闘に勝ったという状況があるかもしれぬが、戦闘に勝って国土が滅ぶということになる、破壊される。だから、こういう事態は絶対にやってはならぬことなんで、いかなる場合においても、日本の対潜機が、あるいは日本の潜水艦攻撃能力が原子力潜水艦に対して攻撃的能力を発動することはあり得ないということを明確にしておかないと、これはただごとじゃ済まぬのです。そういうことで、私は一体P3Cというのがここに配備をされて、そしてあなた方が防衛白書やあるいは「対潜機選定について」という防衛庁のこの出された資料の中に書かれているように、捜索から、識別し、局限し、攻撃するというような、そういう性能を要求する意味においてP3Cを選定されるというならば、私は非常に問題があるということを指摘をしたいわけです。こういう点については、ただ、防衛庁の軍事作戦的な立場だけでこのP3Cの問題を考えられてはかなわぬと、こういうことなんです。  それから、この場合、私は先ほど相手は一国しかないということを申し上げましたけれども、P3Cが目標とする原子力潜水艦という場合には、防衛庁としてはこれはソビエトの潜水艦ということで限定して考えられておるわけですね。
  340. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 現在極東に配備されておりますのは、ソ連の潜水艦が約五十隻ございます。それから、先ほどお話がございましたように、中国も潜水艦を保有しているわけでございます。ほかの国というのは現実に原子力潜水艦は保有しておりません。したがいまして、いま現在の状況であればいま先生がおっしゃったようなことになると思いますけれども、これはいわゆる一九八〇年代以降長くこれを使うわけでございますから、原子力潜水艦がそれだけにとどまるかどうかということはわからないわけでございます。
  341. 久保亘

    久保亘君 そんな将来の仮定の話じゃなくて、現実にいまも配備されている、あるいは二、三年後に配置されるP3Cの捜索目標、有事の場合の攻撃目標というのはソビエトの原子力潜水艦である、こういうふうに防衛庁は作戦上は考えておられるわけでしょう。そうですか。
  342. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 現実にいまの時点でありますのはまさにそのとおりでございます。ただ、この原子力潜水艦が現実に極東にあるというわけでございます。そして、その原子力潜水艦はやはり水上の艦艇、商船、これの攻撃能力というものを持っているわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、いわゆる直接武力攻撃を受けたようなときに、いま先生のおっしゃいますように日本の商船がどんどん沈められても黙っているべきであるというふうには考えないのでございまして、必要最小限の自衛権の行使というものは許されるというふうに考えているわけでございます。
  343. 久保亘

    久保亘君 その原子力潜水艦によって日本の商船がどんどん沈められる事態というのは、これはまさに世界的パニック状態であって、日本の自衛力をもってしてどうこうできるという事態じゃないんです、そういうときには。そんなばかなことを言うたらつまらぬです。そういうときにはこれはどうにもなる状態じゃないんです。それで、そういうような事態をなくしていくためにどうするかというのが、いまこれは世界的に人類の英知をしぼった努力なんですね。そのことをやっているわけなんです。そのときに、私はこのP3Cというのは、あなた方がいま言われるように、ソビエトの極東に配備されている五十隻の原子力潜水艦、中国が持っている一隻の原子力潜水艦、それから原子力潜水艦でないものがソ連、中国合わせると百隻ぐらいいるのかもしれませんね。そういうような潜水艦を目標にして配備をされて、国土の防衛上どれだけの価値があるのか、そのことについて私は国防会議あたりは厳しい議論をして決めていただかないと、四千五百億で火遊びのおもちゃを持たすわけにはいかぬ。だから、防衛庁が内定したからといって国防会議は、かつて中曽根さんが言われたように、防衛庁長官のなわ張りであるから、われわれは国防会議の議員ではあってもそこで要らぬことを言うと仕返しされるから、わしらはそこでは沈黙して何も言わぬのじゃということを、私ちょっと言葉悪いけれども、そういう意味のことを衆議院のロッキード委員会の証人に出られて言われた。だから、国防会議というものが、そういう核装備をした原子力潜水艦とここで事を構えた場合に、一体それは軍事的な意味以上にどういう意味を持っているのかということ、それから、仮にその潜水艦、この日本の海上自衛隊が八十機やそこらの対潜哨戒機、それに幾らかの対潜能力の部隊を持っていたとしても、五十隻を超す原子力潜水艦と、原子力装備はしてなくても、原子力によらないでもかなり優秀な潜水艦がこの日本の近海にたくさんいるときに、そういうものが軍事力としてどれだけの一体価値を持つのか、そういう問題についても、これは国費の膨大な消費というような立場とあわせて、国防会議としては真剣な議論の上でこの対潜哨戒機の問題については結論を出してほしい、私はこう思うんですが、事務局、長いかがですか。
  344. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 防衛庁の御意見は主として軍事的立場からの御意見であります。そして、国防会議はその設置のときの趣旨からしましても、むしろ高度の、かつ広範囲の立場から国防会議の議員方が責任を持って判断されるものである。それは総理に対する諮問機関ではあるといいましても、やはり総理、内閣、国会国民に対して責任を持つ、間接的に責任を持つものというふうに考えますので、国防会議におきましては、いま先生おっしゃったような御趣旨で御判断になるものと思います。
  345. 久保亘

    久保亘君 いまこの問題については国防会議の参事官会議でいろいろ検討されていると思うんですが、その段階においてもこういう問題について私は真剣な討議をしてもらいたいと思います。われわれの側が核を持たないからといって、相手の側が核装備をしている潜水艦である。で、その場合に、防衛庁あたりはすぐ逆のことを考えて、相手が原子力潜水艦だからわが方も原子力潜水艦についても研究しておかにやいかぬというようなことで、将来原子力潜水艦でも装備しようかというような研究をするような方向へ向かう可能性がかつてあったわけですが、そういうようなことがあるといけないのでありまして、むしろそういう問題については、国防会議においてはもっと大局的なといいますか、非常に広い立場からこの対潜機の選定、つまり対潜水艦作戦というものがどういう意味を持つものかということについて、それに費用対効果という問題も含めて真剣な御論議をなさる必要があるだろう。私どもはそういう問題について、引き続きいろいろな機会に論議をし、また意見も申し上げていきたいと思うわけです。  こういう問題をずっと詰めて考えていきますと、一体日本に配置をされる、将来八十機にも及ぼうかという大型対潜哨戒機P3Cというのは、これはむしろアメリカ海軍の極東作戦の一翼を日本が分担させられるものではなかろうかという感じがするわけです。第一、あなた何かこう言いたそうだけれども、こういうことよ。日本にP3Cを備えたって、この電子情報処理装置というのは、中に打ち込むデータというのをあなた方持たないでしょう。ソ連の潜水艦であるという識別、ソ連の原子力潜水艦何型であるということを識別するデータを日本の海上自衛隊はお持ちになっておりますか。
  346. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) まだ正式にいろいろやったわけではございませんが、P3Cを導入すれば、ソ連の原子力潜水艦の背紋など——アメリカの暗号とか、それからアメリカ自体の原子力潜水艦の音紋といったようなものはリリースされないということになっておりますけれども、それ以外のものは日本に渡されるということになっております。
  347. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 先ほど先生は、核装備をした潜水艦を捜して攻撃するんではないかというような観点からの御質問でございますけれども、潜水艦の中で、この原子力潜水艦の中にもポラリス潜水艦のように、本来的に、SLBMといいますか、水中から発射する強力なる核弾頭を持っている潜水艦もあるわけでございます。それから、普通の攻撃型潜水艦のように、艦艇あるいは商船を攻撃する任務を持った潜水艦もあるわけでございます。私どもは、恐らく先生が御指摘になっておられると思うんでございますけれども、そういった長距離の弾道弾を持ったような潜水艦を捜してこれを攻撃するというようなことは毛頭考えていないということを申し上げたいと思うわけでございます。
  348. 久保亘

    久保亘君 そんなことを私は言っておらぬです。あなたそんな大それたことやってもらっちゃ困るんです。そうじゃなくて、ソ連の潜水艦、これは大体相当高度なデータがないとこの装置は稼働しない。それはすべてアメリカ海軍の手中にあって向こうがくれなきゃわからぬのです。それから、さっきあなたは八〇年代になるとどうなるかわからぬ、そのときは原子力潜水艦をほかの国も持つかもしれぬと、こう言われる。仮にそれじゃ日米共同作戦、日米両国の軍事的蜜月時代が終わった場合にはどういうことになる。軍事力というものが、その自主的な防衛力ということで動き始めたときにどういうことになる。アメリカの潜水艦に関するデータは一切お持ちになっておらぬ、そうすると、そのデータで合わないやつはアメリカのやつじゃと、こういう話になるんでしょう。そのデータで確認できないものがアメリカのやっと、こういうことになる。また、今度だってですよ、すべてこの情報処理装置の、その情報を分析し、識別していくその能力というのは、アメリカ海軍の手によって全部掌握されている。そうなってくると、このP3Cの活動というのはアメリカ海軍の極東作戦の一環としてしか何もあなた活動できぬじゃありませんか。結局、それはアメリカ日本に対して、この極東における対潜作戦の非常に重要な部分といいますか、捜索、識別、そういう部門について必要な任務を負うてもらう、アメリカも作戦上必要な任務を負うてもらう、そういうために日本に当面十年間の間に四千五百億円の負担をしてほしい、こういうことになってきているのではないかという疑問が残るわけであります。  私はきょうは五時半までしかやるなということでありますから、これで終了だそうでありますから大変残念でありますが、一応質問をここで留保いたしまして、次の機会に引き続きこの問題についてお尋ねしたいと思います。
  349. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十分散会