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政府委員(河野弘君) お答えいたします。
郵政省といたしましては、省内に情報処理基本法データ保護基準研究会というものを設けまして
調査研究を進めてきたところでございます。この情報処理基本法の対象となるものには、御承知のとおり個人のプライバシーの保護に関する問題がございます。諸外国におきましてもこのような
観点から、その処理は主務官庁あるいは規律の対象者あるいは規律の方法あるいは規律対象者の
義務等の面におきまして、非常に区々にわたっておるわけでございます。単に通信という
観点からのみこれを処理するということが適当であるかどうかという点につきまして、私
どもは非常に疑問を抱きまして諸外国の現状等について
検討してまいったところでございます。
昨年、先ほど
先生のお話しのとおり、一年ぐらいということでお答えあったわけでございますけれ
ども、こうした諸外国の実情にも見ますとおり種々
問題点がございます。一年を経過いたした現
段階におきましてもなおいろいろ問題が山積いたしております。電気通信行政事務を担当する省といたしまして、その業務の一部であるデータ通信を所管する立場から、このデータ通信におけるデータ保護及び秘密の保持に限定いたしまして成案を得るべく
目下検討中でございますけれ
ども、このプライバシーの保護という基本的な問題にも関連いたしておりますので、さらに慎重に
検討してまいりたいという
考えを持っているわけでございます。
なお、ただいま
先生からお話のございました具体的な
問題点という点でございますが、あわせてお答え申し上げます。
情報処理基本法あるいはまたプライバシー保護法というものの
構想、具体的な問題が非常にたくさんございまして、現在のわが国の法制下におきまして、たとえば国家公務員法、弁護士法、
郵便法あるいは公衆電気通信法の中におきまして、秘密保護の規定がなされているわけでございます。これら個別の法規定との
関係におきまして、新規立法の必要性と申しますか、緊急性というものにつきましてどう
考えるかという問題がまずあるわけでございます。
次に、新しい法律をつくりまして、この法制度のもとにおきまして
一定の規制を加えました場合、まあ一方では確かに保護されるものがあるわけでございます。他方では、またこの法律によりまして制限が加えられてくるというのが出てくるわけでございます。これはまあ一般、法全体の原則でございます、申すまでもないところでございますけれ
ども。このプライバシー保護の問題をとりましても、現行の憲法のもとでの自由な諸活動の保障と基本的人権の保障というものの
関係について、どのように調整したらいいかという基本的問題があるわけでございます。
次に、コストの問題でございますが、
郵政省が、プライバシー保護のためにどのぐらい金がかかるかという点について試算いたしたわけでございます。この場合に、相当巨額な
費用が必要とされるということがわかったわけでございます。たとえば
郵政事業におきまして
貯金、保険、それぞれが、このプライバシーに関する利用者からの自己の情報
内容の開示あるいは訂正を求められた場合、これに要する
経費等、それに必要な移行
経費が約百億円から百八十億円ぐらいかかるということが試算で出てまいっております。このほかにも通常
経費がかかる、あるいは
人件費がかかるというようなこともございます。非常にコストの
負担が大きいものでございますので、このコストの
負担をどうしたらいいだろうかという問題がございます。
それから、アメリカにおきましては、プライバシー法はその規律の対象を行政機関に限定しているわけでございますけれ
ども、主務官庁は行政管理予算庁ということになっております。それからいま
一つ法を制定いたしてますスウェーデンにおきましては、法務省を主務官庁といたしておるのが現状でございます。このように、それぞれのプライバシー法の主管庁という面が各国とも、案を現在練っております国を含めまして、それぞれ皆区々でございます。日本におきましても、たとえば行政管理の面におきましては行政管理庁、あるいはまたそれぞれの分野におきましてそれぞれの各省が
関係しております。これらを調整いたしますために相当
期間がかかっているというのが現在の状況でございます。