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1977-11-01 第82回国会 参議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月一日(火曜日)    午前十時十分開会     —————————————    委員異動  十月三十一日     辞任         補欠選任      竹田 四郎君     田中寿美子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         楠  正俊君     理 事                 熊谷太三郎君                 福岡日出麿君                 対馬 孝且君                 安武 洋子君     委 員                 岩崎 純三君                 大谷藤之助君                 下条進一郎君                 中山 太郎君                 林田悠紀夫君                 小柳  勇君                 小山 一平君                 森下 昭司君                 馬場  富君                 峯山 昭範君                 市川 正一君                 藤井 恒男君                 柿沢 弘治君    政府委員        通商産業政務次        官        河本嘉久蔵君    事務局側        常任委員会専門        員        町田 正利君    参考人        東京玩具工業協        同組合理事長   佐藤 三次君        ゼンセン同盟会        長        宇佐美忠信君        日本ニット工業        組合連合会理事        長代行      伊藤 忠夫君        日本輸出金属洋        食器工業組合理        事長       中山  一君        日本双眼鏡工業        会副会長     大塚 岩夫君        関西線材二次製        品労働組合協議        会事務局長    川元 明光君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (不況対策等に関する件)     —————————————
  2. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  竹田四郎君が委員を辞任され、その補欠として田中寿美子君が委員に選任されました。     —————————————
  3. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  本日は、不況対策等に関する件につきまして、お手元に配付いたしております名簿の六名の方々を、参考人として御出席いただいております。  なお、参考人方々出席時間につきましては、各参考人の御希望を勘案いたしまして、委員長において午前三名、午後三名に決定させていただきました。  この際、参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところを本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。  長引く国内不況は申すに及ばず、特に最近の円高相場により、深刻な輸出不振の事態に直面していると推察いたします。したがいまして、その実情についてお述べ願うとともに、忌憚のない御所見を拝聴いたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。  つきましては、議事の進行上、佐藤参考人宇佐美参考人伊藤参考人の順序で、お一人十五分以内程度意見をお述べいただき、その後委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、まず佐藤参考人にお願いいたします。
  4. 佐藤三次

    参考人佐藤三次君) 私は、東京輸出玩具工業協同組合理事長佐藤でございます。  玩具状況につきましては、第一回のドルショック以来、順次企業的には困難を来しておりますが、第一次、第二次、三百六十円から三百円、約二百八十円から二百七十円、今日二百五十円というふうな状態をたどっておりまして、これに対してその都度、業界としましてはいろいろの対応策をやってまいりましたけれども、やや二百七十円ぐらいが限度であろうというふうな見通しで、今日まであらゆることに対処してまいりました。  で、ことしの始まりにおきましても、われわれの業界が大体貿易をやるに当たりましてはまあことしの前半、いわゆる春において取引の条件、それから数量とか、そういうものがほぼ決まるものでございますから、そのときの為替相場が今日の取引相場になっておりますので、したがって、ここで二百五十円というような急な円高になりますと、それだけ為替差損が出まして、この差損は一〇%以上にわたりますから、これはとても企業内では吸収できないというふうな状態でございますが、しかしながら、この二百五十円というものがいつまで続くものやら、大体二百六十円ぐらいを低迷しておりましたから、このときの状態ではまず暮れ近くになれば二百七十円台近いものに復すであろうと、こういうふうな安易な見通しでおりましたんですが、安易かどうかわかりませんが、まあ業界としてはそんなふうな考えもありました。ところが、実際にここ二週間ぐらいの間にこういうふうなことになりましたので、この為替というものの安定度といいますか、どこまでいくものやら、いわゆる不明の状態では対処のしょうがないと、こういうことでございます。したがいまして、要路におられる方々は、一体為替をどの程度に抑えるのか。もちろんフロートですから、なかなかそうはいかぬでしょうが、しかしフロートであってもその幅が余り大きくては商売にならぬと、やがては倒産という状態に追い込まれる。  まずことしの貿易状態は、われわれの方は大体先月一ぱいぐらいですから、ほぼ終わりに近いんですが、さて今度は来年度の商売に入るわけですが、これからのいわゆる新しい物の売り込みが果たして二百五十円でバイヤーに通るかどうか。きょうのNHKでもやっておりましたけれども、これは恐らくよくいって半分、あるいは三分の一ぐらいに落ちてしまうんじゃないだろうかということが憂慮されるわけです。  一昨年あたりは国内も非常に景気が向上しておりましたからいいんですが、もう国内も非常に景気が落ち込んでおりまして、ことしの年末の玩具状況は恐らく前年度比七〇%からよくて八〇、そのくらいの程度であろうというふうな状況からあわせますと、国内貿易とも減少を来しておりますので、これの持っていき場所、いわゆるどういうふうな状態で各企業が、また組合が指導していくかということが非常に問題でありますし、仮にいろいろな救済措置お金を出してくれても、それは一時的でございまして、やはり企業というものは、仕事がうまく回転していきませんと、いわゆる金利を払って食いつぶしてしまうようなことではどうにもなりませんので、これは何としても企業が回転できるような状態に、組合としてはもちろん持っていかなきゃなりませんが、そのためには、二百五十円が落ちつくのであれば、やはりそれをベースとして対処考えなきゃならぬだろうと、こう思うわけですが、一体これが二百五十円で落ちつくのか、あるいはまたもう少し上がるのか、そうしてそのベースで、二百七十円から見ますと約一二%の差損になりますが、これをカバーするには一体どうしたらいいか。まあ幸いにして玩具のことでありますから、新しい物をといいましても、昨今の状態では後進国の追い上げがなかなか厳しゅうございます。  後進国はわれわれの考案し、そういったものをいち早くコピーしますから、まあ半年かそこらですぐに日本模造品が出てしまうというふうな状況もありますし、それから低賃金による製品コストの差、それに加えて、いま低開発国特恵関税がしかれております。これが外国に入るところの輸入税が軽減されるために、この差がやはり二〇%ぐらいあります。そうしますと、それらを克服していままでやってきたわけです、二百七十円ベースでそういう問題も克服してきたんですが、それに加えてさらに二百五十円というベースになるとさらに一二%の負荷がかかる、こういう状態でございますので、これを乗り越えるというのはなかなか容易でないし、また、このベースが続くにおいては、遠からず来年一年は相当業界としても、苦労しても来年は一番苦しい時代になるんじゃないか。業界倒産する者も多いかもしれませんし、いかにしてもこのベース輸出を行うということは困難だということにこれはもちろんなりますが、まあこれを国内でカバーしようとしても、それだけの生産力国内に向けたんでは、国内自体商品があふれてこれも過当競争になり、加えて不況のために売れ行きも思わしくありませんから、これも望み薄、こういうふうな状態で、まことに困った状態になったものだと、こう思っております。  まあ、さしあたって救済をしてくださるというふうなお考えがございますれば、低利のお金を貸していただくと同時に、また為替安定度をできるだけ図っていただいて、そうしてこのくらい——決めるというわけにはいきませんが、フロートの幅をできるだけ小さな範囲にとどめてもらうというふうなことをぜひとも要望したいと思います。  以上で終わります。
  5. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ありがとうございました。  次に宇佐美参考人にお願いします。
  6. 宇佐美忠信

    参考人宇佐美忠信君) 私は労働組合の立場から、繊維産業の現状についての報告並びに対策についての意見を申し上げたいと思います。  まず第一に、わが国繊維産業日本経済に占める地位でございますが、昭和四十九年の工業統計表及び商業統計表によりますると、繊維産業製造業部門は、事業所数が約十五万、従業者数が百六十万人、それから卸、小売業部門におきましては商店数が二十五万、従業者数百四十万、これを合計いたしますと事業所数にいたしまして四十万、従業者数で約三百万人、さらに繊維家内労働者数約八十万人、こういうことで、繊維産業生活をしている人々の数というのはきわめて大きいわけでございます。また御存じのとおり、繊維産業はかつては輸出産業といたしまして日本重化学工業化の基礎を築いてまいりました。戦後もまた輸出産業中心産業として発展を遂げてまいりました。昭和三十年当時でも総輸出額に占める繊維輸出額は三七・二%、約四割を占めておりました。しかしその後状況の変化によりまして昭和五十一年は六・三%ということで、その比重がきわめて低下をいたしたわけでございますけれども、しかし先ほど申し上げましたように従業者数の割合からいたしますると、日本の全従業者製造業、卸、小売業の両部門ともそれぞれ比率として一三ないし一四%を占めているという状況でございます。  そういう繊維産業にありまして、不況が長期に及びまして、今日なお繊維の市況は低迷をいたしているわけでございます。で、十月下旬の相場は前月に比べやや持ち直しているとはいうものの、前年同月に比べますと、綿糸の場合にマイナス八・五、梳毛糸の場合でもマイナス一八・八%、ポリエステル糸におきましてマイナス一三%ということでございます。そういう状況でございまして、綿、毛あるいは合繊等御存じのとおり操短を大幅に行いまして、いまなおそれが継続されているということでございます。この間倒産件数は非常に増大いたしました。本年一月から九月の累計で千九件、負債総額三千三百七十六億円に達しました。負債総額では本年の一月から五月の間ですでに昨年の年間合計を上回り、史上最高を記録いたしております。  また、輸入の圧迫と円高による危機につきまして、いますでに佐藤参考人からもお触れのとおり、円高による被害が大変大きくなってき、今後の輸出についても非常に不安が増大しているというふうな状況でございます。で、雇用不安がございますから、被服費の支出につきましても、これもおのずと減退が明らかになってきているわけであります。  もう少し、今度は私ども組合関係での雇用不安の状況を申し上げますと、ゼンセン同盟の傘下におきましても、昭和四十九年の二月から五十二年の八月までの間に六百八十八件の企業合理化発生をいたしております。このうち倒産企業閉鎖工場閉鎖等が二百十九件でございまして、この間離職を余儀なくされました組合員が二万一千八百八十七名に及んでおります。なお、私ども組合昭和四十八年には六十万名の組合員を擁しておりましたが、こういうことによりまして九月現在では四十九万五千名に減少をいたしております。また、未組織労働者を含めた繊維全体の労働者数のうち、約十九万人が減少をいたしております。中でも紡績は六万五千人、三五・五%の減少織物関係で六万四千、一九・六%の減少を見ているわけでございます。もちろんこれは一定の規模以上の事業場統計でございまして、それ以下のものを含めますと、さらにこの数が相当上回ることになるわけであります。  これに加えまして、今日構造改善が進められているわけでございまして、過剰設備を抱えているわけでありますから、今後各業種にわたりまして過剰設備処理が具体的に進められることになるわけでありまして、大体二〇%ないし業種によりましては四〇%の過剰設備処理ということになります。そうなりますと、そこにおのずと離職という問題が発生をすることになるわけでございまして、私ども労働者にとりましても、大変重要な事態を迎えることになるわけであります。  雇用対策につきましては、私ども景気回復策を一刻も早く強力に進めてもらい、労働力需要を回復してもらうということ、あるいは雇用安定資金制度の活用、そしてまた今国会で問題になっております特定産業離職者対策臨時特例法の制定を強く望むものであります。それと同時に、職業訓練等機動的に推進するわけでありますが、職業訓練を受けてこれから一体どういう産業に就職をすることがよいのか、いわゆる労働力の再配置計画というものを一刻も早く明示をしていただくということが、大変大事なことではないか。特に労働力の不足をしている福祉部門への誘導と訓練というようなことについても、配慮を願いたいと考えております。  為替変動対策につきましては、円高によるところの差益を受ける部門、大きな差損を受ける部門等があるわけでありますから、これらにつきましては、ひとつその公正を期すような施策をとってもらいたい。緊急の問題といたしましては輸出関連中小企業に対する特別金融措置を行うことを求めているわけでございます。  また合繊関係ではナフサ価格が重要な問題でございまして、資料の七ページに記載のように、日本ナフサ価格が一キロリットル二万九千円、他の国々は二万四千円ないし二万二千円というような状況でございますので、これを国際水準並み設定をするということと、価格鎮静化のためのナフサ輸入の増加を図っていただきたい。  輸入対策につきましては、今日秩序ある貿易体制というのが国際的な趨勢であるわけでございますが、わが国におきましても、短期、中期の輸入ガイドライン設定を図り、輸入秩序化を図ってもらいたい。またすでに繊維国際繊維取り決め——MFAがあるわけでございますが、この取り決めに基づく二国間協定締結準備をひとつ急いでいただきたい。せっかく日本はこのMFAに参加いたしておりますが、今日どこの国とも二国間協定は行っておらないわけでございまして、いますぐ輸入が急増するかどうかについては、今後価格上昇によって急増のおそれがあるわけでございますから、その場合の歯どめ措置をいまから準備していただきたいものだと考えているわけでございます。なお、わが国繊維輸入関税につきましては、これはもう最低のものでございます。これも表に明らかにいたしておりますが、そういう状況等もひとつ十分留意していただきまして、秩序ある貿易体制をとっていただきたい。  それから五番目といたしましては、商品取引所対策でございまして、繊維品が今日綿糸毛糸等商品取引所に上場されているわけでございます。で、私ども繊維産業構造改善のためには、実需に沿った生産体制をつくり上げることが一番大事なことだということを強調してきているわけですが、この取引所に上場されることによりまして、実需いかんにかかわらず生産が行われ、そのことが産業全体の混乱をいつまでも長引かしているということでもございますし、働く者が額に汗してつくられた物がギャンブルの対象にされるというようなこともまた許されないことであろう。そういうことで、この産業における一つの問題点である商品取引所につきまして、ぜひひとつ具体的な検討を進めていただきたいものだと思います。  それから最後でございますが、繊維産業の場合、大手と言われる企業製造業十五万企業と申しましたが、そのうちの九九・六%ほどは中小企業でございまして、多くが産地を形成をしている、そういうところでこういう事態を迎えるわけでございますから、産業構造転換に伴い職業転換などを行う際にも、その産地に新たな企業が誘致される施策を強力に講ずるということがなければ、これはいろいろな施策がまあ絵にかいたモチになってしまうのではないか。そういう点で、産地振興のための施策につきましては特段の御配慮をお願いいたしたいと考えているわけでございます。  限られた時間でございますので、大変大ざっぱでございますが、私ども意見を申し上げた次第でございます。
  7. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ありがとうございました。  次に、伊藤参考人にお願いいたします。
  8. 伊藤忠夫

    参考人伊藤忠夫君) ニット工連理事長代行をしております伊藤でございます。  まあニットという言葉は昔はメリヤスというふうに言われておりましたけれども、最近はニット——英語で言うKNITと、こういう言葉でもって表現されております。皆さんがお召しになっております肌着あるいはセータースポーツシャツ類、こういう業界でございます。同時にまた、ニット商品をつくる素材になっております生地もつくっております。ジャージーという言葉で表現されております。  で、業界といたしまして大体四分の一ぐらいがニット生地、あとの四分の一がニット肌着、残ったところの五〇%弱、半分弱というのがニット外衣アウターウエア、そのアウターウエアが二つに分かれまして、セーター類とそれからスポーツシャツ、まあこんな概念でもってお考えになっていただきたいと思います。輸出比率が大体二〇%弱、輸入比率が昨年度におきまして二二%、このような状況でございます。企業といたしましては純然たる生産業界でございまして、ニット生地段階におきましては大部分が合繊メーカーないし商社賃加工でございます。そういう意味におきましては、問題点合繊織物等と全く円高の問題の受けているところは同じでございます。一方、肌着類大手寡占化状態にございまして、これは比較的安定しております。昨年度に対しまして一%、まあほとんど横ばいの状態でもっていま済んでおります。  それから外衣でございますけれども、最近はアパレルという言葉を使われておりますけれども衣料品でございますが。昨年の提言でもって、新しい繊維産業のあり方の中でもって、今後の繊維産業の柱としてアパレル産業を振興していかなければならないと言われておりますけれども、そのアパレル全体の四〇%ぐらいがニット分野であり、六〇%ぐらいが布帛織物ベースにしたところの縫製品でございます。  それで私どもの現在当面している問題は、この円高の急襲がなくても、構造不況として繊維産業全般が抱えている問題の中で翻弄されておりまして、いかにしてこれから脱却をしていくかという問題に取り組んでいたわけでございます。その真っただ中においてこの円高という問題が起きてきたわけでございます。  それで私ども業界輸出の問題を考え段階におきましては、製品の方の、アウターウエアでございますが、これは主として大阪地区でつくっておりますが、比較的大手の方が御自分でマーケッティングをやって、三百六十円時代から三百八円、そうして二百六十五円を突破して何とかここまでやってきたと。もちろん採算点というものは二百七十五円ぐらいにあったわけでございますが、二百六十五円ということに向かって歯を食いしばってでも受けていこうと、そういう覚悟でいたところ、二百五十円になってしまったと。現況の契約状況におきましては、来年の二、三月ごろまでのもの——米マーケットにおけるところのこれは、外衣輸出の八四%ぐらいがアメリカでございますが、その春物の約定はできていると、まさに来年の秋物の契約をしようというところにこの円高が来たために、目下そのバイヤーと売り手とが相対峙したまま、もうどうにもならない。しかし、その基本的な考え方におきましては、一たん市場というものを手離したならば、それは戻ってこない、いかなる犠牲を忍んでも輸出はやり遂げていくと、こういう覚悟でもっていま輸出製品業界はがんばっております。一方、このままの二百五十円の状態が進んでいったときに、もちろんこれは犠牲出血という形になりますので、現在の数量が確保し得るかどうかということはこれはまだ流動的な体制でございます。  一方、ニット生地の方の輸出状態は、これは合繊メーカーさん、商社さんの態度いかんに多分に影響されると思いますけれども、工賃は安くなる、そして量は減ると、この宿命は脱却できないのではないかと、こういうような状態に追い込まれております。  それから輸入の方の問題でございますけれども輸入昭和四十八年に前年度の一挙に三・八倍というべらぼうな上昇がございまして、その調整過程が四十九年、五十年と二年間ございましたけれども、昨年の五十一年にニット外衣におきましては前年比四六%という急上昇をしております。金額につきましても約四割ぐらい上がっております。これが円高ということになりますと、国内にそれだけ安い品物が入れられるということはこれは事実でございまして、発展途上国物価上昇賃金アップというものをカバーしても、こちらでは小売価格の据え置きというようなことが可能になりますので、輸入がふえるという可能性が、来年度の五十三年度についてはかなり大きなものじゃないかと私どもは心配をしているわけでございます。  ところが、その問題点というものは、この生産輸入を足しまして、それから輸出を引いたところの国内向け供給量の問題でございまして、それが安定的に推移する、低成長経済に見合ったものであったならばいいわけでございますけれども業界はわれわれ生産者はもとより、川下の方の流通段階問屋さんあるいは小売段階と、これは全部高度成長経済時代の体質のまままだ残っております。そういう関係におきまして売り場面積は広がる、問屋さんの新規参入は出てくると、そうして仮需という形でもってどんどん店頭品物が入ってくる。それがいまのこの先行き不明の経済におきまして、消費者生活防衛、財布のひもを締めているという形でさっぱり売れないわけでございます。特にことしの四月ぐらいから情勢が一変いたしまして、かつてファッション産業花盛りと言われたような様相はもうどこにも見られない。そしてバーゲンバーゲンという形でもって商品がダンピングされている。  また消費者の方はきわめて賢明でございまして、どうせバーゲンになるんなら、店頭に出た瞬間には品定めしておいて、バーゲンになってから買おうと。要するに正常な商売状態ではなくなってしまっている。一言で言えば四つのOというものが原因だと、四つのOは小売段階のオーバーストア、問屋さんが多過ぎる、オーバーホールセーラー、そうして生産者オーバープロダクション、そこへもってきて、どの企業もどの企業もオーバーボローイングということでもって、自己資本乏しいと、したがって、投げ売りというものに迫られてくると、こういうような状態がございまして、そこにもし輸出が伸びないで、輸出メーカーの内需参入あるいは輸入の増ということになりましたなら、その需給関係というものが一層シビアなものになってくるわけでございます。  これに対しまして私ども業界といたしましては、もう需給のバランスというものは設備の廃棄ということ以外にはない、——いろいろ方法はありますが、とにかく設備廃棄ということからやっていこうということで、現在業界といたしましては、設備廃棄の仮申込書を手続を業者に対して出すようにしておりまして、来年の五十三年度、五十四年度という段階におきましてその設備廃棄ということを具体化していこうと。それでいま、約二割弱ぐらいのものをこの二年間でもって設備廃棄していこうと、こう考えているわけでございます。で、政府の方も、中小企業の振興事業団の資金によっていろいろと予算措置等を講じていらっしゃるわけでございますが、私ども業界だけでも相当の金額になってまいります。で、この辺の予算の枠というようなことに遺憾のないようにお願いしたいと存じます。  それから、この設備を廃棄いたしまして、その資金を、実施主体であるニット業界では工連がやることになっておりますが、その工連がその資金を運営をして返していくわけでございますので、この運用益等についての非課税の問題というような点に十分御配慮をお願いしたいと存じます。それから、この設備廃棄に参加される業者の方々の圧縮記帳制度ということに遺憾のないようにお願いしたいと存じます。同時にまた、これは大蔵の関係かも存じませんけれど、本当に廃業して、それでもってもう食いつぶして食べていくんだというような方には、何とかその廃棄による売買益というものが出ましたなら、それに対する非課税というようなことができないものかなと、こういうふうに考えているわけでございます。それから、運用の面におきまして、据え置き期間は四年でもって、十二年で返すというような十六年の返済になっておりますけれど、この据え置き期間が六年ぐらいにならないかと、それから、できるだけ都道府県の負担というものを軽くしていただきたいと、こう考えているわけでございます。  それから、当面の円高の問題に対してはどういうような処置かということは、ただいま佐藤参考人宇佐美参考人から御意見の開陳がございまして、また繊維産業連盟といたしましても、各先生方にいろいろすでに申し上げておりまして、もうそのとおりでございます。もうとにかく内需というものの増大によって末端の消費需要というものを喚起していただくということ、これがもう基本のラインだと存じます。  それから、このフロートの問題というものは、これは当然避けて通れない問題でございますけれど、どこまでが正常のフロートであり、どこまでがこれはいろいろスペキュレイションによるところの円高かと、この辺のどういうふうに落ちついていくかと、現在われわれ困っておりますのは、先が幾らになるかということがわからないという——あるいはだれもわからないのかもしれませんけれど、この辺が商売をやる上においては非常にむずかしくなってきているということも事実でございます。  それから、為替変動対策緊急融資制度というものをやっていただいておりますけれども、この金利というものを特別——いままでも特利でございますが、特利に輪かけたような超低利というような形でもって御融資願えたらばというふうに考えております。  それから、輸出を中心とした企業におきまして仕事が激減して、そのために従来の制度融資等その他の返済というものが困難になってくるような企業も出てきております。こういうような企業につきましては、既往債務の返済ということについては、その弾力的運営ということを特にお願いしたいと思っております。  それから、昨今非常にうわさ、この流通段階における信用不安というようなことがございますが、それなりの銀行あるいは合繊メーカー等におかれて突っかい棒をしておりますけれど、この自由主義経済におけるある程度犠牲というものは避け得ないといたしましても、これが不測な波及というものを及ぼさないように、十分御考慮願いたいと存じております。  それから次に、転廃業の問題でございますが、私どもが設備廃棄をする、設備廃棄をして、それは完全に転業する方もあるいは廃業する方も、あるいは一部縮小する方もいらっしゃいますけれど、この転業という、どこへ行ったらこれから先われわれが食えるんだ、これは非常にむずかしい問題だということは、私どもよくわかっております。しかしながら、今後の日本経済のあり方というもの、資源有限でもって欲望無限の中において、今後われわれの、日本——日本がどうなるという、大変高いビジョンの問題になりますけれど、この産業構造と人間としての生き方というような変換について、先生方の本当の二十一世紀に対するステーツマンシップに基づくところの御指導を期待するものでございます。  それから雇用対策につきましては、もうただいま宇佐美参考人から詳細お話がございましたので、私どもとしては同じことでございますけれど、このいまの雇用保険法に基づく雇用対策の安定事業のうち、転換に基づくものと景気変動に基づくものとあるわけでございますが、この景気変動のものは前年同期に比べて三ヵ月で一〇%ダウン、最近一ヵ月で一五%ダウンというようなベースでないと、この景気変動等の調整事業に引っかからない。この考え方でいきますと、先へ先へともう完全に消滅するんでなかったら、この景気変動等のこれに、政府の保護に浴せないというようなことになるわけでございますので、この構造不況業種というようなものは、一斉に景気変動等の雇用調整事業の対象にしていただきたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。  構造不況業種離職対策は、宇佐美参考人の申されておるとおりでございます。  以上で終わります。
  9. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ありがとうございました。  以上で参考人三名の方の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入りたいと存じます。  質疑のある方は、順次御発言願います。
  10. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 どうも参考人の皆さんには貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。  佐藤参考人宇佐美参考人にちょっとお伺いしますが、先ほど来この採算レートが、いまもニットの方も、伊藤参考人も同じでありますが、採算レートの限界というのは大体二百七十円というように、ほぼ大体コンセンサスが得ているように感じましたが、この点採算レートの限界というのは二百七十円というふうに理解していいかどうか、これが一点であります。  それから、二つ目でありますが、金利対策の中で、救済対策の中で、この中小企業為替変動対策緊急融資制度、いまも訴えられましたが、これは国民金融公庫で五百万円、中小金融公庫が二千万円と、こうなっているわけですが、問題は金利は七・六%に、こうなっているわけですよ。この段階ですから、率直にお聞かせ願いたいんでありますが、安い方にこしたことはないんでありますが、ずばり言って、今日のこの円高の危機を救うための金利としては、何%が適当なのか、これがもしございましたらひとつお聞かせ願いたい。それから同時に、この為替変動対策緊急融資制度で、果たしてこれ今日の対策がなし得るのかどうか、この点もございましたらお聞かせを願いたい。これが二つであります。  三つ目は佐藤参考人にお伺いしたいのでありますが、かなり玩具の場合、けさもテレビでやってよく見ましたが、後進国の追い上げということでいまも訴えられました。韓国、台湾あるいは香港等のあれもありますが、特恵関税関係について、どういう考え方をお持ちなのか、もしございましたら、ひとつお聞かせを願いたいと、この三つであります。  以上です。
  11. 楠正俊

    委員長楠正俊君) では、最初に佐藤参考人から御意見をお述べいただきたいと存じます。
  12. 佐藤三次

    参考人佐藤三次君) 当初に当たりましては、大体レートの見積もりが二百八十円くらいを見積もったわけです。順次、三月、四月になってまいりまして二百七十円ぐらいでやらなければいけないだろうというふうな考えでいま二百七十円と申し上げたんですが、これがぎりぎりの線だ、二百八十五円から二百八十円ぐらいで当初見積もったんですが、どうもちょっと無理のようだというふうなことで訂正して二百七十円というふうに思ったのですが、これ以上はどうにもならないという最低の金額なんです。それが二百七十円。これを割りますとまず吐き出しになると、こういうのが限界でございます。  それから緊急融資、これは前にも私の方の業界で商工中金さんより緊急融資は受けているのです。これは二回にわたってたしか受けております。これが、第一回目の分はやや完了しましたけれども、第二に受けたものはまだ完了してないわけです。完了してないのにまたということになるわけです。そうしますと非常にかさんでくるわけですし、金利がそれにまたふえますから、したがって、こういうふうな今度は利益のないところの仕事でございますので、したがって高い金利はとうていその企業から生め出せないだろう、こういう意味では本当にもうゼロに等しいような金利をひとつお計らい願いたいということでございます。  それから、後進国の追い上げということは、まず外国のバイヤーが、いわゆる賃金が安いためのコストが非常に低いものですから、したがってそういう方向に向いていく。で、大体が外国のバイヤーといっても日本商品をいいものをねらって、そして日本のレートを聞いて、そしてそれを後進国に持っていって、幾らでつくれないかというふうな商談のあり方ですから、どうしてもそれは一つの目標があって、それに対して取引の条件として安くさせますから、これは当然賃金は安いですから、それはそれになってしまうわけです。そういう状態が大分長く続きまして、三、四年続いているわけです。あるいはもう五年ぐらいになるのかもしれません。こういうふうな状態でやりながら、後進国もだんだんと技術の向上ができてきたわけです。昨今においては相当の技術の向上を見ております。  それと、そういうふうな日本のアイデアによって後進国の人たちがだんだんと日本の技術に近い水準に到達しつつある。加えて、いわゆる後進国では特恵関税というふうな、まず香港、台湾、韓国というふうなところでは、豪州では幾らかつくようになったそうですが、一時は全面免除ですから、日本輸出する場合は三割も税金がかかる。それからアメリカにおいてもしかり、そういうふうな一流国家は特恵関税しいておりますので輸入税がかからない、これのさやが非常に大きい。ですから、なかなか日本の方がそれらと違った製品をつくっていかないと、なかなかバイヤーのうまい値段に合わすことができないというふうなことで各自いろいろと苦労しまして、いわゆる後進国でできないような製品をねらって順次開発していって今日来ているわけですが、しかしながら、この新しい製品の開発というのはやっぱり時間のかかる問題でして、そう一年、半年でできるものじゃありませんから、このつなぎがなかなかつらいということであります。  したがいまして、今後においても、そういう問題でどう対処していくか、とにかく、いわゆる大産業のいいところといいますか、これは後進国の持っていない設備でやっているからいいんだと、これも、後進国が同じものを持っていたらば大産業だってやっぱり同じ状態に入ると思うんですが、いわゆる玩具という小規模の産業のために向こうの人たちは非常にやりいいわけです。向こうの人はまた、向こうの何といいますか、あるブロックの人たちは、日本人のメーカーよりたくさん金を持っているわけです。そういう人たちが投資をするわけです。そうして企業を興しますから、金融的にもいろんな面で力がついているわけです。そういうふうな差もありますし、賃金は安いし、金があるからある程度設備はしますけれども、まだまだしかしながらそう言っても技術的な問題はそう二、三年では追いつけませんから、その点の差はあるのが、いまのところやっとわれわれの助かっている状態なんですけれども、それだけではもうだめだと。いわゆる大企業と同じように向こうに持っていない考案なり、設備なり、いわゆるシステムですか、そういうふうなものを新しく考え出して対処しないとだめだろう。いわゆる後進国に追いつかれないある車間距離を保つためには、そういう努力を今後一層やらなければだめだろう、こういうことでございます。
  13. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 次に宇佐美参考人にお願いいたします。
  14. 宇佐美忠信

    参考人宇佐美忠信君) 為替レートで一体ぎりぎりどのくらいかという御質問だと思うんですが、私ども組合として幾らだということについての計算はしているわけじゃございませんが繊維産業の現況から見ますると、二百七十五円のレートがこれがぎりぎりの線だと。現に操業短縮を大幅に行っていますから、操業度も下がっておりますし、そのことによるやっぱりコストアップ等もあるわけですから、そういう点では二百七十五円のレートをぜひひとつ実現するようにしてもらいたい。  それからその緊急の対策としての融資措置がいまとられるようになっているわけですけれども、ただ、私ども関係する中小企業の多くは、今日まで構造改善等進めるに当たりまして相当の借入金を持っているわけです。ですから今日はもう出すべき担保はほとんど出し尽くして、そうしてその資金を借り入れて構造改善を進めてきておる。ですからいま借り入れた金をどう返すかということ、それに大変苦労しているような状況ですから、新たな担保を出して、そうしてまた借りるということ自体について、実は大変苦慮されているというのが実情ですが、しかし、今日借りなければこの円高の中でどうしてもやっていかれないというような状況に置かれているということでございます。  それからもう一つは、幾ら当面のいろんな施策を講じてみましても、結局私どもはやはり積極的な内需喚起策がとられて、そうして国内需要というものをもう少し積極化することによって、急激な円高傾向というものに歯どめをかけていくということが一方とられていかなければいけないんじゃないかな。  それからさらにまた、私ども非常に国際性の強い商品関係する繊維労働組合でございますから、これをずっと見てみますると、たとえば綿糸でももうきょうはすでに一こり四十番手十二万円を割っている。毛糸につきましても一キロ千三百円とか、四百円。素材は急激にずっと下がっているわけですが、それじゃ衣料品価格はどうかと言えば、必ずしも下がっていない。ですから消費者価格が上がっているということはこれ事実で、いわゆるバーゲンで投げ売りされた場合には、もう非常に下がるということになっているわけですが、通常製品ということになると必ずしもそうならない。じゃなぜそうならないのかと言えば、やはり私は流通機構に大きな問題があるんじゃないか。そういうものをやっぱり積極的に改善することによって、そうして消費者が手にする衣料品価格というものがもっと下がってくることになってくれば、今度は輸入の問題についても、ある程度何といいますか、絶えずびくびくしなくても済むようなことになってくる。そういう構造改善が一方ぜひ伴わなければならないんじゃないかと考えております。
  15. 下条進一郎

    下条進一郎君 先ほど来三人の参考人から非常に厳しい、苦しい業界の事情をるる伺いまして、私ども非常に心を痛めた次第でございます。  そこで二、三の問題につきましてさらに問題点をはっきりさしていただきたいということを、またお尋ねを含めて申し上げたいと思うのでありますが、共通の問題は、一つはやはり構造的な不況業界である、これに対して基本的にどう考えたらいいかという問題があると思うんです。それは前前から言われてすでに久しいのでありますけれども、たまたま余りにもその不況の深刻の度合いが深まり過ぎておるということが一つと、それがまた最近のいわゆる円高問題によって一層加速されたという二つの二重の衝撃によりまして、深刻の度合いが深まってきているということだと思います。ですから第一点の要するに構造的な不況の問題については、これはやはり中期的、長期的な視野に立って、基本的な対策を立てなきゃいけない、こう思うわけでありまして、先ほど宇佐美参考人伊藤さんその他からお話がございましたような、やはりこれから前向きの業界の、要するにオーバーな設備をどうやってスクラップ・アンド・ビルドにするのか、あるいはスクラップだけにするのかという問題の一つの構想などを、もう少し伺いたいと思うのであります。  それからさらにそれに関連しまして、将来の展望の中に、ひとつ誘導してくれというようなお話もございましたけれども、一体業界として、たとえばそういう工場をせっかく銀行から金を借りておつくりになったわけでありますから、それが一体企業の形態の特性、あるいはまたそこに働いておられますところの勤労者、そういう方々が一体どういうことを志向して、将来どうなってもらいたいんだと、そういう願望を、あるいはその方向性というものを具体的にもう少し詳しく伺えればありがたいと思う次第でございます。  それからもう一点は、先ほど御質問がありました中に含まれておりますんですけれども、いわゆる為替相場の先物の問題でありますが、皆様の御要望では二百七十五円が一番望ましいというお考えでありますけれども、私は非常に現状をながめてまいりますと、いまこの時点において、再び二百七十五円を希望されるというのは一体現実的かどうか、私はそれに非常に疑問を持つんです。そういう要望をされる、採算の方から計算をされた場合には二百七十五円という希望の数値が出てくると思いますけれども、現在の為替状況、すでに二百五十円を割ったりしたという状況もございますし、先物までのディスカウント幅がちゃんとはっきり三・幾らかになっておりますから、そういう点から見れば、私は非常に現状と乖離した気持ちじゃないかと、やはり現状はもっと厳しい為替市場じゃないかと、こういうふうに考えます。しかも、それについて私は、おたくは一番被害を受けておられる業界だと、本当にもう同情に耐えないんでありますが、一生懸命採算を割って輸出をされるが、またずるっと為替相場が上がってしまう、こういうところに私は非常にそのむずかしさがある。  そこで、それに対して幾つかの問題を出されておられますけれども、私はさらに二点、ちょっと皆さんの御意見を伺いたいと思うんでありますが、第一点は、この問題は同時に消費者に対して関連してまいりますので、内需の喚起その他のことを言っておられますけれども、先ほど宇佐美さんのお話の中に、関税率の問題が出ておりました。この関税率は、私はやはりここで皆様と一緒になって、与党野党も一緒になって、この問題は相当しっかりやらなければいけないと、こう思うんであります。と申しますのは、現在の日本の関税率は、御承知のように、最初は司令部から与えられた非常に低いやつであった。そこから世界の風潮として、ケネディ・ラウンドなり、それから東京ラウンドでどんどん下げる傾向になった。向こうは何%下げたら日本は何%下げろと、こうこられてここまでやってきた。それに抵抗できる時代は、私はよかったと思うんです。しかし、それはもうできない。そのぎりぎりに来ている。こういうときには、私はこの関税率は衣類等を除きますと非常に低いと、これはECの方もあるいは米国その他を見ても大変な格差があるわけですから、これはがっちりこれ以上下げないし、本当にあらゆる緊急避難の条項もありますから、そういう形で、これはこの面ではひとつ抑えていくということをやらなければ私はもたないんじゃないかと思うんですね。  それからもう一点は、いまの為替の関連にひとつ付随するのでありますが、皆様の方は努力されてどんどんと苦労されているという業界でございます。それから一方において、輸入業界というものは、これはどんどん差益で潤っているという業界がたくさんあるわけでありますから、私の個人的な物の考え方でありますけれども、要するに、皆様がこういう緊急な、そしてしかも非常にスピーディーな情勢の変化のために、これに即応していく体勢が整えられない。それに対するいわゆるいろんな援助の方法として、いわゆる輸入為替差益の問題を基金として、できればそういう事態の緊急措置の一つのあれに何かできないかどうか。そのお考えがないかどうかということでございます。  なお金融制度につきましては、先ほどお話がありましたように、緊急融資制度の金利が私は七・六は高いと思います。しかし、これはもう政府資金としても低い資金が出ているのがありますから、私はぜひそうあるべきだという主張をこの前も本委員会でも私は申し上げておりますし、あるいはまた融資の条件の緩和の問題も、これは事態としては非常に大事な問題である、こう考えております。  さらに追加の御意見をまた拝聴できればと思います。
  16. 楠正俊

    委員長楠正俊君) どなたから……。
  17. 下条進一郎

    下条進一郎君 それでは宇佐美参考人にまとめて、全体にわたって御感想もおありと思いますが、できましたらお願いいたします。
  18. 宇佐美忠信

    参考人宇佐美忠信君) 繊維産業構造不況と言われて大変長い期間たっているわけでございますが、これはもう御存じのとおり、海外の環境がすっかり変わった、かつての輸入国が自給国から今度は輸出国に繊維の場合は変わってきたということ。それから、国外の状況から見ると非常に小さい企業が数多く存在して、非常に競争が激化している産業だ。そういう中で、結局過剰設備を抱えてしまった。今後の方向については、もうすでに、昨年の暮れに繊工審から通産大臣の方に提言が出されているわけでございますが、要約しますれば、簡単に言えば、一つは、余りにも繊維産業の場合には横にしかつながっていない、縦に全くつながらない。ですから、先ほど取引所で触れましたように、実需に沿った生産体制というものができていないわけです。かつては、輸出産業ですから、いわゆるつくるだけ物をつくって、つくってから売り先を探す、輸出先の方も、中国で売れなければ、いやそれを今度はアフリカへ持っていく、どこへ持っていくということで、まずつくるだけつくって、そうして売りさばく。いわゆる汎用糸とか汎用布をつくることが主たる仕事のあり方だった。そういういきさつの中から、今度は各工程別に分断されて、そうしていま言ったように秩序ある生産体制というものがつくられていない産業ですから、こういうものをもっと縦のグループ化をすることによってこの実需に合った生産体制をとろうじゃないか、それは私ども賛成だ。  それからもう一つは、この過剰設備処理の問題で、これは先ほど来触れていることですから省略をいたします。  それからもう一つの面は、結局、洋服の歴史の浅い国でありますから、どうしても一番消費者に近いアパレル部門、衣料部門が弱い。ですから、この衣料部門をもっと強化をするということをしていかなければ、産業安定につながらないだろうということと、それからさらにもう一点は、この取引のいわゆるおくれが非常に目立つ産業で、書面による物の取引ということがほとんどなかった。こういうものはやっぱり書面取引をするようにしていこうではないか。あるいはもう一つは、輸入の問題で、秩序ある貿易体制をつくることが大事だというようなこと。一つの構造改善の方向というものは打ち出されているわけですが、しかし、これとても法に基づく構造改善というのは五十四年の六月までということですが、先生御指摘のとおり、今度は円高で追い打ちがかかりましたから、体力が弱り切っちゃった中で、果たして今度は構造改善というような手術が可能なのかどうなのかというような事態を迎えることになっているのではないか。で、私どもは、いずれにしてもいま言いましたような方向は、これは是認をしているわけですし、何とかこれでひとつ繊維関係する労使はもとより、ひとつ政府の協力も得ながら構造改善を進めて安定した産業づくりをしていきたい。しかし、そうなった場合に、過剰設備処理とかいろいろあったときに、一体それじゃどういうところに行こうとするのかという問題なんですけれども、これは、実は私どもだけの問題じゃなしに、できればその産業構造審議会等で、これはひとつ日本の省エネルギー、省資源時代における日本産業構造のあり方はどうあるべきなのかということを早く明らかにしていただきませんと、私どもだけが、気持ちとしてこうありたいとか、こうなってほしいと思ってみても、これは勝手にできるものではないし、そこが一つのやっぱり大きな何といいますか、私どもが政治に求めるところであるわけでして、これはひとつぜひ急いでもらいたい。  ただ、先ほどもちょっと触れましたように、私なりに日本の姿を見ると、欧米と比較して何が余って何が足りないのかということを考えてみますると、余りにも福祉部門に従事する人の数は、これはどうも少な過ぎる。これは国際競争がある部門じゃないわけでございますから、そういう部門にはもっと人がおってもよいのではないか。それからまた、私ども繊維産業、我田引水ではございませんが、アパレルを中心にいたしまして、先ほど言いましたように、すそ野は大方中小零細企業ですから、高齢者の方々が大変多く働いております。アパレル部門には身体障害者の方も多く働いておられます。また、その人たちにとっては適職である部門もずいぶんあります。そうだとすれば、ただ、いままでのように、国際競争だけで、産業に人を合わせるという発想だけじゃなしに、もっと人に産業をどう合わせるのかという発想を大いにひとつ生かしていただいて、先ほど言いましたような産業構造のあり方をぜひとも模索していただきたいものだというふうに考えているわけでございます。  それから関税の問題等につきましては、これは私どもぜひこれ以上ひとつ下げるようなことはしないでほしいし、日本の置かれている立場からすると、関税率を一体上げることが可能かどうかという議論は出てきますが、しかし国際的には大いにこれは訴えてもいい問題じゃないか。とかくずいぶん海外でも誤解がありまして、何か日本は関税が高くて輸出がしにくいというようなことが言われているわけで、それはそうじゃなしに日本繊維の関税率は最低なんだということは大いにひとつPRをしていただき、やはりいま各国とも、ECあたりでは、繊維産業の場合には国防産業という位置づけをして、そして関税率を上げるなりMFAという協定の強化策を図るなどして産業保護を行うというような時代になっているわけですから、どうぞひとつ日本の場合もそういうことで、産業保護の方向で御努力いただきたいものだと考えておるわけです。  それから、為替のレートの問題につきましては、御指摘のとおり、一体現実的にはどうかということを言われますれば、これは大変むずかしい問題だということは率直に申し上げなければならないと思います。  それから、差益と差損の問題については、これは私どもきょうの文書にも指摘してありますとおり、やはり差益を相当得ているところと差損のところ、これは何かバランスをとってもらいたい。差益のところから、今度は差損で大いに苦しんでいるところに何らかの補給をしてもらうような制度をとっていただくということをしないと、何か不公平感、不公正感というものを持たざるを得ないということでございまして、これはもう御指摘のとおり、ひとつぜひ御努力いただきたいことだと思います。
  19. 馬場富

    ○馬場富君 この不況の中で、お三方から非常に貴重な意見を拝聴しまして、大変私も参考になりました。意見の中で二、三質問いたしたいと思います。  一つは、玩具関係佐藤さんにお尋ねいたしますが、非常に輸出が焦点になった産業で、この円高差益の問題とあわせての関税の問題が大きい影響になっておると、こういうふうに承ったわけでございますが、それとあわせまして、開発途上国の一つは追い上げで苦労してみえるという実態をいまお聞きしたわけでございますが、その中で、特に国内産業については非常に手形取引が多くて、そして期待が持てない、そのために結局長期の手形のやりくりのために、非常に玩具業界は困ってみえるという点をお聞きしておるわけでございますが、その点の実情と、それから、いわゆる関税の問題としては、各国に対する平均が一七・五%程度の関税負担というふうに聞いておりますが、その点をもう一遍御説明願いたいという点。  それから三方に共通の問題といたしまして、今回、この為替差益の特別融資が実は行われたわけでございますが、これに対して非常に皆さん方からの悪評があるわけでございますが、そういう点で、実は為替差益の緊急にとった政府の処置としては、一つは融資の条件に非常に問題がある。一点は限度である。最高限度二千万だと。そうしてもう一つは、金利が七・六%、それから担保を要すると、こういう点で、いま為替差益に悩んでみえる中小企業方々に対して、これは適切な融資法ではない、こういう非常に厳しい業界の御批判がございますが、その中で、できればこの期間等にいたしましても非常に問題点がある。特に金利においては七・六%でございますが、かつてドルショックのときに、実はこの対策をやった場合に金利六%で出した実例がある。そういうようなことから、実はその当時の公定歩合が五%であったと、今回は四・二五%に下がっておる、そういう立場からも、当然これに準じて行うべきだという、そういう強い声を各業界から私どもは聞いておりますが、その点について、御三方のどなたでもいいが、いわゆる為替差益の緊急融資の問題についての御意見をいただきたい、このように思います。  それから、今度繊維ニットにも共通の問題でございますが、設備廃棄がいま行われておりますが、繊維関係では。ニットはこれからいまひとつ進められると、こういう段階でございますが、その中で、先ほど来何点か出ましたが、もし共同廃棄をした場合のいわゆる設備買い上げに対する譲渡益の非課税の問題と積立金の非課税の問題ですね。この問題が先ほどニット関係から出ましたが、この設備廃棄に関して、ニット関係は、繊維は行われておりますが、これからもニット関係がいま希望をしてみえますが、その条件等についてお聞かせいただきたいと、こう思いますし、、先ほど出ましたが、いま都道府県の負担率ですね、これを下げてほしいということですが、ニットの皆さん方が都道府県の負担率を下げると、何かそこに焦点が、どういう点の焦点がございますか、お聞かせいただきたいと思います。  それからニット関係で、これは岡崎方面のニット関係の方の言葉でございますが、ソ連向けの注文が年間百万枚くらいあるんだと、これは韓国や台湾で実は生産されて、日本商社輸出をしておる、ここに一つは問題点があることをかなり訴えておる実情がございますが、この点についてわかっておれば御説明を願いたい、こう思います。  それから、宇佐美さんには雇用問題でございますが、いま二十万人の失業者が出たと、繊維業界においては。いま円高差益等もあわせまして、現状繊維業界労働組合から見られた過剰人員はどんな程度状況か、あわせまして、いま政府がとりました安定資金の活用とあわせまして、いま私どもががんばっております特定業種離職者臨時特別法案の趣旨におきまして、その過剰人員との兼ね合いですね。  それからもう一点は、先ほどお話になりました失業対策の中で、いま大まかな一つは、福祉の問題等もおっしゃいましたけれども、いわゆる現地、産地での一つは、職場転換の細かい手を打ったらどうだという点が先ほど宇佐美さんから出ておりましたが、ここについて、何か労働組合側からそれに対する適切な案がありましたならばお聞かせいただきたい。こういう点でございます。  それから、三方に共通な点の、今度はいわゆる関税率の問題と、それから逆輸入の問題で、特にやはり輸入数量のガイドラインをしっかりと適切にしてほしいと、こういう声が強いんですが、こういう点についての御意見もあわせて承りたいと思います。  それからニット繊維産業に共通な点は、先ほど来アパレル産業のことをおっしゃいましたけれども、川上、川中産業については政府の方の対策についてもかなり希望が持てないと。そういう点で、いわゆる川下産業に焦点を置くべきだと、こういう声が大勢を占めておりますし、政府の構造改善についてもそれがポイントになっておりますけれども、まだこれは具体的な推進策が出されておりませんけれども、ここで各業者間の声を聞いてみますと、特に川下産業の中で、一つはそういう国あるいは公共的な施設として、ファッションセンターというようなものをつくって、公的な力によって中小企業やそういう企業方々が補えない力というものを補ってもらって、そして日本繊維構造改善事業の一つの打開策の一環として、ここらあたりに焦点を置くべきではないかと。ここにやはり通産あたりも力を入れるべきではないかという強い声がございますが、その点につきましての御意見を賜りたい。  以上でございます。
  20. 楠正俊

    委員長楠正俊君) どういたしましょうかね。どなたからお答えいただきますか。大分たくさんの質問でございますので、どなたか代表してお答えいただければ時間の関係でありがたいんでございますが。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  21. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 速記を起こして。
  22. 佐藤三次

    参考人佐藤三次君) 先ほど手形が多いというお話でございますが、実際多いんですが、この手形は大体もう一定しておりますから、そう変動ございませんから、取引それぞれやっておられる方はそれなりに順応した商売をやっておられると思います。  それから税率は、これは各国多少違いますが、平均で一七か二〇ぐらいだろうと思いますが、これがいわゆる特恵関税の対象になるということでございます。  それから為替差損に対する二千万円の融資金利七・六%が不評であったというお話ですが、私どもは製造メーカーでございますので、直接為替差損については受けておりません。これは第一われわれが売っておる先の貿易屋さんがそれを受けているわけです。そのうち割引を、これだけの損害があったからひとつ何とか見てくれないかという相談はありますけれども、そうでない限り、直接的なそういう損益は受けておりません。  それから、日本での税率は余りよく知りませんが、たぶんシーリング方式と思われますので、一定の枠内では輸入が無税であろうと思いますが、いままでの輸入につきましては、昭和四十八年度が四十六億円の輸入でして、それから四十九年度は九十二億円、順次ふえておりまして、昨今は百五十二億というふうな状況で、玩具輸入も順調に多少ずつ伸びておるようでございます。  私の方はそれで終わります。
  23. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 伊藤参考人から、設備廃棄の問題とそれから雇用問題をお願いいたします。
  24. 伊藤忠夫

    参考人伊藤忠夫君) まず設備廃棄の問題でございますけれども、私ども実施主体として考えておりますのは残存簿価の三倍ないしは再調達価格の半分以内と、こういうような考えでもっていま進めております。それから都道府県の負担は九〇の一〇だったのが果たして九五の五というふうに都道府県五%になったものかどうか。そこのところがまだ新聞情報の程度のことしか私どもは存じ上げておりません。これは地方自治体が相当な財政難でございますので、なるべく地方自治体を軽くしていただきませんと、県によってばらばらの状態になってくる、それが業界としては困るということでございます。  それから次の、ソ連向けに第三国でもってつくったものが出ているんじゃないかというお話がございますが、これはうわさには聞いておりますけれども、実態は私ども生産業界じゃなくて、これはソ連向けの輸出をやっている商社、それも大商社が多いと思うのでございますけれども、そういう方々の方にお聞きになっていただきたいというような感じでございます。  それから川下産業云々の件でございますけれども、一つ例をアメリカの産業にとってみますと、アメリカは生産者が自分で物をつくりまして、末端の小売段階まで売る。言うならば、生産者と卸業が一つの会社として成り立っている。しかも自己資本比率は五〇とか六〇%、片一方でもってシーズンオフだったならば、レイオフということが十分できるわけでございます。しかも生産施設を持っておりますから、幅狭く商品を奥行き突っ込んでやっている。生産性が高い、しかもダイレクトに小売段階に売りますから、そこでもって安い商品を供給できる。そこへもってきまして、MFAによる多国間協定によって競争相手は全部押さえてあるわけでございますから、これは非常に安定したところの経営というものができている。それの全部日本は逆だと思っていただければこれいいわけでございます。そこでもって政府の繊工審の提言の消費者指向であり、そうしてアパレル産業の振興であり、垂直的連携ということは、これはいまの日本雇用ということを考えたときに、だれかが物をつくり、だれかが売るという、これは日本の実情に即してやむを得ない形だと思います。この形におきまして要するに共存共栄、ともに存し、ともに栄えるというならいいのでございますけれども、強い人だけが残って、強い人だけが栄えていたんじゃこれは困る。そこでもってそれぞれのグループにおきましてその企業の果たしている社会的な機能と責任に応じまして付加価値の適正配分ということをしていただきたい。  結局いま繊維工業はこれだけ悩んでいるというのは、過去は輸出段階において、あるいは内需の段階におきまして、生産者、弱い者、中小企業にしわが寄って自己資本というものが蓄積できなかったという収益性の低さが、きょうの体質脆弱を招いているわけでございますので、今後この繊工審の行き方でやる段階におきまして、とにかくこの自由主義経済においてもその自由の中の秩序という形におきまして連帯と協調が確立されまして、お互いが食べていくのだというこの理念の確立という、えらい精神訓話になりますけれども、その考え方というものが非常に大事じゃないか、こういうふうに考えております。  それからファッションセンター等をつくりまして売っていくということも一つのこれ行き方でございます。それで大事なことは、ファッション産業というものあるいはアパレル産業というものは、自由主義経済の非常な潤達な精神というものがあって、そこに初めて創造というものができるわけでございまして、やたらに保護的なやり方をしたところでファッション産業というもの、あるいはアパレル産業というものは決して栄えるものではない、リスクに挑戦するところの企業家精神が必要であり、またリスクに挑戦するだけの体質と、自己資本比率が二〇%やそこいらでリスクに挑戦するということはこれは無謀きわまりない、しかし大体の企業はそういう状況にある、こんなところでございます。
  25. 宇佐美忠信

    参考人宇佐美忠信君) 私、雇用の問題についてお答えいたします。  繊維関係、一体どのくらい過剰人員を抱えているのかという点ですけれども、これは大変むずかしい問題で、明確な数字を申し上げるような状況ではございません。ただ大ざっぱに言えますことは、先ほど言いましたように、製造業関係で百六十万人が働いている。そこで過剰設備が二〇からあるいは高い業種で四〇%の過剰設備だ、そういう処理が、業種ごとに出ているわけでございますから、そうなると大ざっぱに言って二〇ないし三〇%ぐらいの過剰ということになるわけですが、私ども傘下の関係では事前に経営側から長期の雇用調整計画というものを出してもらって、それを労使で協議しているわけです。ですから、いきなり解雇とか希望退職募集というようなことがなるべく起きないように、ということは新陳代謝のわりあい多い産業ですから、三年なりあるいは五年なりの長期計画の中で人員調整を行うようにしていきたいということですから、この点大変お答えにしてはどうも抽象的で恐縮ですが、明確につかむことがむずかしい。しかし、よし二割としても、三十二万人は過剰だということが言えると思います。
  26. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ありがとうございました。
  27. 安武洋子

    ○安武洋子君 参考人の皆様お忙しいところ御出席くださいまして、先ほどから貴重な御意見をお聞かせくださいまして本当にありがとうございます。  私、東京輸出玩具工業協同組合佐藤参考人とそれから日本ニット工業組合連合会の伊藤参考人にお伺いいたしとうございます。  いま大手商社とかそれからスーパーなどが、全世界的な不況を利用いたしまして韓国とか台湾それから東南アジア、発展途上国、こういうところで買いたたきをやっているというふうなことを聞いております。それが影響いたしまして国内価格は下げられる、また国内でも買いたたきがやられているというふうなことで、それに今回の円高が拍車をかけて皆さんの業界が非常に困難に陥っておられる一つの大きな原因になっているのではないかというふうに思うわけです。お二人方の業界の中で、こういう買いたたきの問題があるのかないのか、その辺をお聞かせいただきとうございます。もしあるようでございましたら、政府にどのような対策をお求めでございましょうか、その辺もお聞かせいただけたら幸せとお思います。
  28. 佐藤三次

    参考人佐藤三次君) 私の方の業界としましては、そういう買いたたきとかということはありません。それで、たとえばスーパーなどで安売りするために特定なところから買い入れて目玉商品にするというふうなことはございますが、一般的には余りそういうことはございません。また、そういうふうな商品をねらい撃ちされますと各メーカーも困りますので、なるべくそういうことのないように働きかけておるようですし、したがいましてまたスーパーの方で選びますときも、余り問題にならないような商品を集めてやっているようです。正常では余り買いたたきというのはございません。
  29. 伊藤忠夫

    参考人伊藤忠夫君) ニットの分野で申し上げます。  韓国の買いたたきというような、これはアメリカのバイヤーが韓国と来まして買うにしましても、相当シビアなものである。また向こうの方が言われますのは、アメリカの人が商品をお買いになるのは仮に一万という数字は一万ダースであると、ところが日本は一万枚だと、そこで数量が十二分の一になってしまうと、その割りに値段がきついと、そういうようなニュアンスではないかと思います。  それから国内の分野でございますけれども、スーパーでもって非常に安い物が出ますけれども、これは主として問屋さんの段階における企画はずれ、それからあるいは生産者段階における納期おくれ等の問題もあるかもしれませんが、そういうような要因の物が安く特売場等に出ている。言うなれば一種の売れ残り商品と、こう考えていいと思います。それに対しまして消費者に奉仕——小売状態を据え置くということがその流通の至上命令であるという形によって、そのしわというものが一番弱い者に寄ると、この傾向というものはこれは中小企業全般、ニットもその例外ではございません、あると思います。しかし、これを克服するためにはやっぱり需給の改善という、あるいは新しい企画商品というような物をつくっていきませんと、同じ物をつくって毎年値段を上げろということは、これはメーカーの方としても不勉強になりますので、こういう点については業者の自覚というものを促しながらやっております。  以上なようなお答えでございます。
  30. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 宇佐美参考人伊藤参考人にお伺いいたしますが、重複するところは避けてお尋ねいたします。  まず最初に、今回行われております総合経済対策というのは、雇用対策ということが第一義だと私は思っておるわけでございますが、これは宇佐美参考人にお伺いするんだけど、とかく銀行筋が、企業に対して融資継続の条件として、直接工場閉鎖あるいは人員削減を指示するという傾向が非常に多いように私は思うのです。これは私地方に参りまして、中小の紡績、織布などに回りますとよくそのことを聞きます。たとえば、団体交渉をやってもどうしようもない、メインバンクからこう言われておるのだから希望退職をやらざるを得ぬのだと、もう少しがんばれば何とかなるんだけどどうしようもないと、金融筋が切れたらどうしようもないから、やむを得ずこれをオーケーせざるを得ない。過日石田労働大臣が銀行筋に対して、この種のことについて反省するように申し入れておるように私も聞いておるのだけど、労働組合としてこのような事例があるかどうか、私はゆゆしいことだと思っておるのです。その辺のところざっくばらんにお聞かせいただきたいと思います。  それからもう一つは、いまお述べになった商品取引所の問題だけど、早くからゼンセン同盟はここに書いておられるような趣旨で、いわゆる製造業製品をギャンブルの対象にすべきじゃない。これが仮需発生の最たるものである、諸悪の根源だというふうにおっしゃっておるわけであります。私も、再三再四この委員会商品取引所の問題取り上げておるのですけれどもなかなかうまくいかぬ。いまのような状況で、商品で立ち会うと下げ効果しかない、こういうことにもなっておるわけです。国際的に見て、一体商品取引所繊維品を上場しておるというような事例があるのかどうか、そうして諸外国ではどうなっておるか。ゼンセン同盟は諸外国との広い交流もあるわけだから、その辺からお聞かせいただきたいと思うし、同時に仮に繊維商品取引を停止するということになった場合に、やはりそこには多くの従業員がおるわけでございまして、その人たちをどのように吸収していくおつもりか、また労働組合としてもやはり大切なことだろうと思うのです。それと業界の対応ですね。商品取引所の問題を取り出すと通産省は常に言うことは、やはり商品取引所というものがなければ換金の問題、あるいは中小が相場というか目安の立て方が全然なくなってしまうのではないか、むしろ中小業界が困るんじゃないですかというような答えも返ってくるんだけど、業界はこれにどう対応しておるのか。業界がその気になればひとりでに商品の上場はとまってしまうわけですから、その辺も非常に大切なことだと私は思うのです。  それからもう一つ、構造改善の問題だけど、いま構造改善が進みつつあるというけれど実際はストップしておる。まあ構造改善どころじゃない、あの提言それ自体は非常にいい提言がなされておるわけだけど、縦型の構造改善でとてもじゃない、これは予算つくっても借り手がないという状況になっておるわけです。しかも稻葉さんが常におっしゃっておるように、五十四年六月で法の措置は一切やめる、それ以降は自助努力で、あるいは優勝劣敗で繊維産業界自分でやりなさい、こういうきつい付帯意見があるわけですが、もう五十三年になるわけですね。したがって、私は五十四年の六月の時限切れというのはこれはナンセンスだと思っておるわけだけど、もうぼつぼつ動き出さなければいけないことなんで、その辺についてどう考えておるか、これは伊藤参考人にもお聞きしておきたいと思うのです。  それからいま一つ、輸入対策ですけど、残念なことだけどNFAの問題にしても関税の問題にしても、これは政府筋、まあ自民党の皆さん方にもお願いしておきたいんだけど大変な錯覚があって、日本が自由貿易であるがゆえに輸入の制限することはいけないんだというふうにとられがちです。しかし、現実にこれはガットで認められた制度であって、工業先進国では全部取り入れて日本だけがこれやっていない。こういう状況だし、関税それ自体は先ほど自民党からもお話があったように日本がべらぼうに低いわけです。こういう点ひとつ、どのように宇佐美参考人考えか。とりわけアメリカあたりで輸入規制あるいは二国間取り決めが行われる前哨は、アメリカの業界じゃなくて、労働組合雇用を確保するという意味から常に問題の提起がなされ、それがずうっと昇華して日本に対して政府が動いて、そして日本の通産省を抑え込むという形で二国間の取り決めをやられておる。日米繊維戦争もまさにそうなんです。それに照らして労働組合としてどのように対応するのか、これをお聞きしておきたいと思います。  それから、伊藤参考人にお伺いするわけですが、先ほどオーバーストアー、オーバープロダクションということで、現在過渡的な現象だけれども、まあちまたに製品が溢れておる。特にこれはアウターウェアの問題でございますが、それがゆえにバーゲンになる、買いたたかれる。結局、私は仮需じゃなくてデッドストックだと思うんですね。このデッドストックを一遍ぽっと横に置けば、もう少し消費者とも直結する向きもあろうというふうに思うわけだけれども、そういった方法が講ぜられるものかどうか。たとえば、被災地だとか、あるいは外国に対して、ちょっとこれを何か有償、無償の形で国の手で送り出していけば、ずいぶん私は直結する方向がとられると思うんだけれども、そのような動きをなさる意思があるかどうか。  それからもう一つは、適正輸入量をどれぐらいに見ておられるか。現在、二二%ということでございますけれども、適正輸入量、これは価格との関係も出てくるわけだけれども、それをお聞かせいただきたい。  それから大切なことは、やはりおくれておる、とりわけ繊維産業でおくれておる流通経路ですね、これが非常に迷路のようになっておるがゆえに製造業が適正付加価値を確保できない。まあ繊維製品の卸売価格はほとんど横ばいに推移しておるんだけれども、それにもかかわらず、繊維品の消費価格は一般消費価格とほとんど平行線をたどって上昇しておる。だから、カッターシャツ一枚の中に占める製造業の取り分というものは、これはもう驚くような低い数字でございまして、この辺の流通の近代化ができれば、私はもっと製造業に高い付加価値が確保されるというふうに思うんだけれども、これは法律でも支払代金遅延法だとか、あるいは独禁法による大から小への高圧的な取引はいけないとか、いろいろな取り決めがあるんだけれども業界自身がこの流通近代化にどのように対応しておるか、またわれわれがこれを手助けといいますか、お手伝いするにはどういう方法があるのか、流通近代化に関してですね。取引の近代化、この辺についてお聞かせいただきたいと思います。  以上です。
  31. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  32. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 速記を起こして。  それでは宇佐美参考人
  33. 宇佐美忠信

    参考人宇佐美忠信君) 御質問の第一点につきましては、そういう事実はございます。ゼンセン六百八十八件の合理化提案がございまして、工場閉鎖あるいは人員の削減、いろいろございます。企業が危殆に瀕したときに銀行の手助けがどうしても必要だと、そういう場合に人員削減の条件等が付されるということで、ゼンセンとしても銀行側とそのことについての交渉をしているという事実もございます。  第二点の商品取引所につきましては、もう先進工業国で工業製品取引所に上場している国は一つもございません。日本だけでございます。繊維の発祥地のイギリスにおきましては、かつては王立取引所綿糸取引がございましたけれども、それももう今日はやめております。こういうことで、日本だけが特異な例だ。で、従業員は一体どうなるのか。たとえば綿糸なりあるいは毛糸なりの取引をやめた場合に、私どもがそれにかわって取引所価格形成をする場合に、どういう品物が一番取引所に適合するかと言えば、やっぱり天候によって生産が左右されてしまうような物、工業製品は人為的にその生産の調整が可能ですから、工業製品じゃなしに主として農産物、だとするならば、たとえば綿花なんかはいま上場してないわけですから、そういう物を上場することによって従業員は職を失うことなしに済むことが可能だと思っているわけです。  それから輸入対策等につきましては、これは御存じのとおり、今度はまた十一月十四、五、アメリカの繊維組合と私どもとの会談が行われることになりますが、アメリカの組合はこれは積極的にやはり輸入を規制するという動きをし、二国間協定がそれぞれ韓国とも香港ともきちっと行われることになっている。ECではECの理事会に対して、EC各国の繊維労働組合が積極的にいまのMFA協定、これは六%上限にして輸入漸増ということをもっと下げろと、景気のいいときの六%じゃないかと、こんなに悪くなったときに六%高過ぎるということで、労働者の保護のために積極的な動きを見せているということからいたしますと、これはもう欧米各国共通して、繊維産業の場合に何らかの保護措置を行っているということを考えますと、日本の場合には何というか、手放しといいますか、まことにオープン過ぎるほどオープンだということが言えるのではないかと思います。  適正輸入量につきましては、私はこれは大変むずかしいんですが、かつて四十八年の景気のいいときに繊工審——繊工審の前で、機関は別ですけれども、いろんな論議したときに、大体二五%ぐらいの輸入シェアというようなことを言ったんです。これはとんでもない数字であって、今日輸入シェアということになれば、恐らく一二、三%。アメリカがあれだけ日本との交渉で騒いだときだって、一〇%前後ぐらいの数字で大騒ぎがあったわけですから、私どもは二五だなんというような数字はこれはもう高過ぎる。やはり一二、三あるいはせいぜい高くたって一五というようなところではないかと考えているわけです。
  34. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 商品取引所業界の対応、繊維業界
  35. 宇佐美忠信

    参考人宇佐美忠信君) 繊維業界はいろいろございまして、たとえば毛糸を上場している日本羊毛紡績会でも各会員からアンケート調査をとった。半分はこれはもう上場すべきじゃない、半分は意見がまとまらなかったということですけれども、しかし今日はもう大体上場すべきじゃないというコンセンサスが得られるようになりつつある。一番問題なのは、結局その取引所で換金機能を持っているから、需要があろうとなかろうと、つくるだけつくって、自転車操業ですから、つくった物は取引所に持っていけば金にかえてくれるということで生産が行われるから、幾ら片方で操短だって、片方は増産というようなことになってしまうことがあるわけです。それは結局特定の人たちだけを潤すような場所になってしまっているということなので、だんだん、恐らく糸を買われて織物をする人たちも、機屋さんの側も、取引所での上場についてはこれは反対だということになって、やはり安定した価格で原料が供給されることを望む、やはり安定を皆さんが望むようになってきているということでございますから、一部の人を除いては大方これについてはやはり抜本的なメスを加えるという動きになってきていると思います。
  36. 伊藤忠夫

    参考人伊藤忠夫君) 藤井先生の第一の御質問の構造改善の時間切れと、五十四年六月ではこれは早過ぎると思います。これはぜひ延ばしていただくようにお願いしたいと思います。  それから二番目にバーゲンの件でございますけれども商品の中にはべーシックの商品、典型的な例が肌着あるいはセーター類、あるいはシャツ類でも、ベーシックなものがございます。これらはそれなりの安定的な売り方というものがございますけれども、その中におきましても色彩というものがどんどん変わっていく。言うなれば、ニットアウターウエアというようなものは一種の生鮮食料品である。その生鮮食料品は時がたつに従って減価されていってしまう、こういう宿命。その新しいがゆえに消費者がお買いになる。ところがこのつくっているところの全部の流通段階の方が、その類型的同質商品をおつくりになりまして、その販売法がまた類型的である、同質文化の悪い方が全部そこに出てしまう。この辺に繊維バーゲン問題の大きな要因があるわけでございます。  それから適正輸入量の問題でございますけれども、昨年の答申ではニット業界は内需に対して二五%というものを出しております。昨年は二二%、ことしは一月から八月の段階におきまして二割を若干ダウンしていると思います。将来とも二五%ぐらいでとどめたいというのが、これは私どもの希望でございます。  それから、流通経路の問題でございますけれども日本小売段階、百貨店を中心とする——王者が百貨店でございますが、その小売段階にマーチャンダイジング能力がない。ないことはないのでございますが、乏しい。そのマーチャンダイジング、マーケッティングの肩がわりしているのは日本問屋さんである。そうすると、そこでもって現在の百貨店の体質というもの、あるいは大販店、専門店の体質が急速に変わるだろうかどうか。かなりタイムラグがあると、その間におきましては、どうしても生産者とそれから販売をするところの問屋さんとのこの間の垂直的な連携、非常に共存共栄の垂直的連携というものが必要になる。このような趣旨でこの前の提言の答えが出たものではないかと、こう判断しております。
  37. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 本日は佐藤参考人宇佐美参考人、そして伊藤参考人から詳しく御説明いただきまして、さらに各委員からいろいろと質問がありまして、詳細にお答えいただいて業界の実情大変よく理解できたように思います。  時間の制約もあるようですから、伊藤参考人に一つだけ具体的なお話を伺っておきたいと思いますが、ニット業界の改善のためには設備の共同廃棄が根幹になるというお話でございました。その際に、現存設備の大体約二割弱を廃棄したいというお話がございましたが、具体的に金額でどのくらいになるのか、私の、業界からの聞いているお話では二百億近くの資金が必要である。それに対して通産省が五十三年度予算の要求として出しているのが三百億程度であって、ニット業界以外にもさまざまな設備廃棄の要求がございますので、そういうものを含めると三百億では足りないんじゃないか。ニット業界に十分な設備廃棄の資金が回ってくるかどうかということを心配をしておられるというふうに聞いておりますが、その辺の実情をお伺いしたいと思います。  それからもう一つ、この要望事項の中でも、設備廃棄については五十四年度への継続確保ということをうたっておられますが、先般の参議院の予算委員会で対馬委員の質問に総理が答えまして、構造不況対策は来年中に終えるということを言っておられます。特に設備廃棄のための政府助成を含めた金融対策というのを含めて五十三年度中に終えると言っているわけですけれども業界の方では五十四年度への継続を希望する。五十三年度中にもしもいまの三百億の予算要求がふえて一挙にできるということなら、業界はそれに対応できるのか。それとも、総理のおっしゃっておるように、来年度中で終えるということでは困る、何としても五十四年度まで継続をしてもらいたいという希望があるのかどうか。きょうは通産政務次官もおいでになっておられますので、その辺の説明を聞かせていただければ幸いであります。
  38. 伊藤忠夫

    参考人伊藤忠夫君) ただいま柿沢先生の御質問に対してお答えいたします。  二〇%弱の設備でもって二百億は優に突破すると思います。どうしてこの五十三年、五十四年と両年度とここに書いたかと申しますと、いままでの漏れ承る情報が三百億というふうにあったために延ばしたわけでございまして、もしこれは潤沢な——しかし、これはニットばかりじゃございませんが、全繊維を挙げての設備廃棄資金がそれだけ用意されるんでございましたら、私ども単年度といえども一日も早く減量体制にもっていった方がいいと考えております。しかし、現段階におきましては、いまの申し込みはとにかく全部出せという形でもって指導しております。以上でよろしゅうございましょうか。
  39. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 他に御発言がなければ、午前の質疑はこの程度にとどめます。  参考人方々一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお聞かせいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  それでは、これにて休憩いたします。  午後一時より再開いたします。    午前十一時五十五分休憩      —————・—————    午後一時八分開会
  40. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題とし、不況対策等に関する件につきまして参考人意見を聴取し、それに対する質疑を行います。  この際、参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところを本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。  長引く国内不況は申すに及ばず、特に最近の円高相場により深刻な輸出不振の事態に直面していると推察いたします。したがいまして、その実情についてお述べ願うとともに、忌憚のない御所見を拝聴いたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。  つきましては、議事の進行上、中山参考人、大塚参考人、川元参考人の順序で、お一人十五分以内程度意見をお述べいただき、その後委員の質疑にお答え願いたいと思います。  それでは、まず中山参考人にお願いいたします。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  41. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 速記を始めて。
  42. 中山一

    参考人中山一君) 日本輸出金属洋食器工業組合中山でございます。  私ども業界に対して常々御理解を賜り、数々の御支援をいただきましてありがとうございます。業界を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  ただいま委員長殿が申されましたように、時間の制約がございますので、いささか早口で、また簡単でございますが、現況について御報告、お願いを申し上げたいと思います。  私どものこの円高問題について、お手元に差し上げてございます現況の調査でございますが、十月十九日に、この後におります川口、大橋の専務理事、常務理事の二人で行いました。  そこで一番に、生産と出荷の推移でございますが、ごらんいただきますように、五十一年の一月から十一月まで書いてございますが、五十二年の一月には一〇三%という数字で出ておりましたが、十月の時点では七五%、十一月は推定でございますが七〇%ぐらいだろうということになっております。十月の輸出実績につきましてはこの推定よりもさらに下回るのではないかという検査協会の実績の中間報告が入っております。  輸出の受注残でございますが、五十一年の八月の平均は約三ヵ月、同十月には三ヵ月強ございました。今年の八月の平均は一・五ヵ月弱、十月十九日調査時点におきましては一ヵ月弱というふうに契約が落ち込んでおります。  新しい契約につきましては、九月の後半から一部バイヤーも来燕し、空腹と不安の中で二百六十五円レートでもいいから、これで契約の交渉をしかけたわけでございますが、九月の末から十月に入ってからの急騰のために、バイヤーは発注を手控え、メーカーも大幅赤字のために受注を取りやめ、バイヤーは開発途上国それぞれに向かった者が多く、ごく一部で二百五十一円程度で受注する者等があり、悪影響が憂慮されております。  キャンセル並びに差損でございますが、キャンセルは円高推移に見合った値引きに応じたこともあり、キャンセルそのものは少なかったようでございます。差損はドル建て直貿が少ないために、直接的為替差損として計上できるものは少ないが、六月以降五%あるいは六%という値引きに協力している者が多く、六月から十月までで約百七十億に対しまする差損は八億円を突破しているというふうに推定される次第でございます。  採算の限界円レートといたしましては、中小企業でございますために、二百七十円というふうに皆さん答えております。  操業状態でございますが、親企業は八〇%、下請企業は六五%あるいは下請企業のそのまた下請、いわゆる家内工業的、研磨業のごときはこの数字をさらに下回っているというふうに聞き及んでおります。圧延業界——ステンレスの熱間コイルを圧延して私どもに供給いたします圧延業では、週休三日を実施し、研磨業ではさらに操業度がゼロに近いところも出ているという報告を受けております。  下請企業への協力の要請でございますが、完成品製造メーカーが下請に対する工賃の値引きのことでございますが、五ないし一〇%の範囲で行われております。これにつきましては、むしろ仕事量が少ないために下請企業の方から協力を申し出て、どうか注文をとってくださいと、こういう要請が出てきている状態でございます。  雇用調整でございますが、労組との折衝、モラルの沈滞、信用不安等を危惧し、十月から実施するのは少ないけれども、十一月以降は活用がかなり急増するものというふうに考えられております。  資金繰りでございますが、きわめて悪化しておりまして、燕市で特別に設けていただきました無担保保証の一口五百万円の件につきましては三十九件、これも同じく燕市で設けていただきました二百万円の小口融資、これは六十件、さらに新潟県で設定していただきました無担保保証の七百万円につきましては三十一件と殺到し、かつての四十六年の輸入制限、四十九年のドルショックのときよりもさらに様相が逼迫しておりまして、倒産並びにその連鎖が危慎される状態でございます。  私どもといたしましては、新しい産業分野への転換、高級品市場の開拓、団体法の効果的運用によります価格の維持等に心がけて、目下それの施策の実施に移りつつございますが、何分最高で三百名、百名以上の企業が十社ぐらい、その他は全部百名以下という小さい企業でございますので、資本面からきてもなかなか急速な改革ができなくて困難しております。  そこで、委員長殿にお願いしてございます陳情書についてお願いの言葉を述べさせていただきたいと思います。  陳情書の頭文におきます燕市並びにその周辺人口を養う産業の中心でありますことの御理解はいただいていると思いますので、さておきまして、要点のみについてお願い申し上げます。  円レートにつきましては、政府介入により為替レートの乱高下を防止し、一米ドル二百七十円以上に長期の安定方策を図られたいということをお願い申し上げたいと思います。  金融対策につきましては、中小企業信用保険法に基づく指定業種に対し、政府系三公庫の貸付利率を既往貸付分を含めて向こう三年間、一律高度化資金に準ずる引き下げの措置をお願い申し上げたいと思います。民間金融機関につきましても、右に準じた措置がなされるように御指導を賜りたいということをお願い申し上げます。  次、高度化資金及び公害防止事業団資金の借入金償還を、向こう三年間利子を含めて猶予の措置を講ぜられるとともに、利率を一%以上引き下げてくださいますようお願い申し上げます。  中小企業為替変動対策緊急融資について、次の措置をお願い申し上げます。貸し付けの限度の増額——中小企業金融公庫現行二千万円を五千万円に、国民金融公庫五百万円を一千二百万円に、利率は通常利率より二%下げていただきたいと思います。  次に、中小企業信用保険法による無担保保証の限度額八百万円は、同法指定業種に対しましては二倍の千六百万円となっておりますが、それをさらに三千二百万円に引き上げていただきたいとお願い申し上げます。  税制については、為替変動によって大きな影響を受ける業種については、三年から五年にさかのぼる法人税及び所得税の払い戻しの措置をお願い申し上げます。  五番目に、ステンレス鋼の原材料についてお願い申し上げます。ステンレス鋼の国内鉄鋼メーカーは、原材料及び添加元素等輸入による為替差益を原価に還元すべきと思考されまするが、減産等の理由でこれがなされておりません。今後中小企業ユーザーに対し、価格の引き下げや供給量の適正化を図られるよう指導をお願い申し上げたい。また、発展途上国向けステンレス鋼の原材料を国内鉄鋼メーカーが不当な安値で大量供給しないよう強力な制限の行政指導をお願い申し上げたい。  次に、雇用労働の安定対策についてお願い申し上げます。中小企業円高不況雇用の確保、離職救済等の対策をお願い申し上げたい。家内労働者救済のため、雇用調整給付金に準ずる救済措置をお願い申し上げたい。  以上でございますが、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。  どうもありがとうございました。
  43. 楠正俊

    委員長楠正俊君) どうもありがとうございました。  次に、川元参考人にお願いいたします。
  44. 川元明光

    参考人(川元明光君) 関西線材二次製品労働組合協議会の川元であります。  今回、当商工委員会において、私たちの働く鉄線産業の実情について事情聴取をしていただき、労働者として当委員会に実情を訴えさせていただく機会を得ましたことを、当委員会及び諸先生方に心から感謝を申し上げる次第であります。  私は、鉄線産業全体から見て、大阪の比重が非常に高いところから、大阪の実態を中心に報告をさせていただきます。  昭和四十八年、通産省工業統計表による全国の鉄線関係事業所数は二百二十八社であります。また、生産高は二百三十一万六千トン、出荷額は一千七百八億八百万円であります。都道府県別に見ますと、事業所数で大阪が五一・三%の百十七社でトップであり、次に東京の九・二%、二十一社が続いております。その他千葉、愛知、埼玉の順となり、出荷額ベースでは大阪の五〇・三%、約半分を占めておるわけであります。続いて東京の一八・三%が続きますが、大阪のウエートが非常に大きいわけです。この数字だけ見ても、大阪が全国トップの鉄線地場産業であると言えると思います。  また、大阪府下の実態を見ますと、比重の高いのは東大阪市であります。東大阪市における事業所は全国比で二八・九%、出荷額で三九・九%であり、大阪府比で見ると、事業所数で五六・四%、出荷額で七九・五%というふうに、この数字にあらわされているように、鉄線産業は大阪の地場産業であり、遠く江戸時代より人力、水力、電力の原動力の発達に合わせて大きく発展をしてきた東大阪市の伝統産業でもあるわけです。  昭和二十年代から三十年代にかけて、事業所数も増大をし、昭和四十年代の高度成長の中で膨大な設備投資を行ってきました。労働者の生活は低賃金、長時間労働が強制され、毎月の残業時間は二百時間前後は普通である、そういうような劣悪な労働条件下に置かれていました。しかし、四十年代後半には一定の生活水準を確保するに至りました。昭和四十八年のオイルショックによるパニック状態の中で、ある鉄線産業の重役は、いまもうからない企業の経営者は失格だ、こういうふうに豪語してきました。全くそのようにパニック状態の中で、鉄線産業も史上空前の大利益を上げることができました。  関西線材二次製品労働組合協議会に加盟する二十社の昭和四十九年の生産高は史上最高の六万九千四百トンであり、当時の労働者は四千四百八十人でした。ところが、鉄線産業にも四十九年末から不況のきざしがあらわれ、五十年に入るや急激に受注が落ち込み、労働者に一時帰休や希望退職という名の人員整理が強制されてきました。  日本国内の鉄線産業の急激な落ち込みとは正反対に、昭和四十八年、商社三井物産などの強力な援助によって、大阪の鉄線企業十社が韓国に企業進出を強行しました。この韓国進出に投下した総資本金は一千百四十三万一千ドルであります。また年間生産計画は、十二万七千七百トンであります。この韓国進出企業昭和四十九年から本格生産に入りました。このことによって発展途上国の追い上げとともに、輸出を主体とする大阪の鉄線企業は、アメリカ向け輸出の激減を中心に輸出は大きく減退をし、一層深刻な重大な局面を迎えるに至ったのであります。さらに加えて、大手高炉メーカーは、台湾や韓国に鉄線材料をダンピング輸出を行い、日本国内では逆に四十九年から本年まで三回の大幅な値上げを行ってきました。鉄線産業の国際競争力を大きく弱めると同時に、品種によっては材料代よりも製品価格の方が安いという、いわゆる逆ざや現象が長期にわたって続きました。  この三年間、鉄線労働者に強制された特徴的なでき事について具体的な実例を挙げて報告いたしたいと思います。  まず初めに、釘のトップメーカーである日本製釘では、さきに述べましたように韓国に進出をし、生産の拡大を図りながら、国内では人員整理やあるいは労働条件の大幅な切り下げを行い、労働者一人当たり一ヵ月四万円の賃金が引き下げられ、他の労働条件も合わせると十万円近くの収入が引き下げられています。  また、ステープルの、ホッチキスの大型ですけれども、ステープルのトップメーカーの杉本伸線は五十年八月に三百十名中二百名の解雇を含む十一項目の大合理化提案をされてきました。この合理化を遂行するために、三年前から三井物産から送り込んだ経営コンサルタントが組合つぶしのマル秘文書を作成し、そうして合理化は警察出身の労務屋を導入し、百三十余名の退職者が出ているにもかかわらず、組合幹部を中心に三十三名の指名解雇を強行してきました。組合は、指名解雇反対の方針を打ち立て、強固な団結をつくってきました。会社はこうした組合のその方針を見ると、組合の協力は得られない、そういう理由で同年九月十六日に大幅黒字の会社解散、全員解雇を強行してきました。現在杉本伸線では四十八年に韓国に進出し設立した韓国杉本、これを中心に生産を続け、三井物産の援助によって国内に逆輸入を行い、三井系列の会社でステープルを製造し、三井物産の手によって杉本伸線の市場に販売している、こういう事実があるわけです。労働者は会社解散以後、不当労働行為として提訴を行い、企業再開を目指して二年余りにわたる現在も、企業の再開を目指して要求をしています。  日本製線では韓国進出と同時に他府県に企業進出をし、その結果、親会社の労働者へは賃金の大幅な切り下げやあるいは労働条件の切り下げによって人員も三分の一以下に減少しています。  富士精線では、四十八年にこれも他府県に進出を行い、ことし八月には大阪地裁に和議申請を行いました。現在では十二項目の合理化案を提案し、官製合理化を強制しようとしています。  木津川製線では高炉メーカー中山製鋼の整理会社となり、本年十月末日をもって会社解散、労働者全員が解散をいたしました。東京でも五十一年十一月には矢口産業が新工場移転と同時に倒産するという事件が起こりました。  このように、特徴的な大きな事件しか時間的に報告することができませんが、いまやすべての鉄線企業に働く労働者が倒産を目前にした合理化攻撃の中で、企業危機もさることながら、労働者の生活がまさに危機に直面しているのが偽らざる現実であります。私たちの協議会に加盟する二十社の調査の結果、昭和四十九年を一〇〇として、五十二年十月現在を見ますと、労働者数で六一%に激減し、生産面では五三%に落ち込んでいます。鉄線産業の比重の高い東大阪市で見ますと、加盟十社を見ると、四十九年を一〇〇として労働者数で五〇%、生産量で四七%と大きく落ち込んでいます。私たちは、この原因がすべて企業側にあるとは思いませんし、少なくとも私たち労働者には何一つ責任のないことは明らかです。国内産業、とりわけ地場産業を守り発展させ、日本の労働者の生活を保障するために、そのための施策を早急に実施していただきたいと思います。  私たちは、鉄線産業の危機を打開し、労働者の雇用を確保するために関西鉄線業界との懇談会を初め、工業会加盟の企業に対してアンケート調査も行いました。ほとんどの企業の支持を受け、企業意見も考慮しながら、鉄線産業を守り発展をさせ、労働者の生活と権利を守る大運動を微力ながら展開をしてきました。大阪通産局交渉を二回、中央の通産省や労働省の交渉も過去二回行ってきました。現在鉄線工業界が実施しようとしている不況減産カルテルについて、これ以上労働者を犠牲にしないように、また雇用を拡大するために、時間短縮や週休二日制の実施をしていただきたいと思います。  また鉄線材料の価格の引き下げ、韓国、台湾からの輸入等逆輸入の規制、国際競争力を弱める材料のダンピング輸出の規制、鉄線製品価格の適正化や資金援助など、緊急な問題について早急に実施していただきますようにお願いいたしまして、鉄線産業の実態についての報告を終わります。  ありがとうございました。
  45. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ありがとうございました。  次に、大塚参考人にお願いいたします。
  46. 大塚岩夫

    参考人(大塚岩夫君) 私は、ただいま御紹介いただきました日本双眼鏡工業会の副会長を務めている大塚でございます。  当業界、諸先生方には大変御高配をいただき、また本日の委員会円高による不況対策にこのような機会を与えていただきましたことを、深く感謝申し上げます。  本日は、会長が来て説明するところでございましたけれども、現在、円高による関税対策等の問題でワシントンの方に行っておりますので、私かわって説明さしていただくことをお願いいたします。  それでは初めに、当業界の概要を簡単に御説明さしていただきたいと思います。  一、わが国双眼鏡製造業界の実態。(一)企業規模について。  現在双眼鏡の完成品製造業者七十二社存在しておりますが、うち大企業が六社、そして中小企業六十六社で九一・七%、その大部分が小企業、零細業者によって構成され、生産体制は受注生産による分業体制を確立した典型的なアッセンブル方式による労働集約型の産業でございます。(二)企業の地域別分布状況について。  東京都内板橋区、練馬区、豊島区、北区等六十社、八三%でございます。他府県が埼玉県、神奈川県、長野県、京都府で十二社、一七%。したがって、現在、東京都の地場産業となっております。(三)最近の生産輸出状況について。  全生産量は年間約三百五十万個前後になっています。このうち輸出向けが三百八万個、八八%となっております。国内向けが四十二万個、一二%です。外需依存型の典型的な輸出産業であり、しかも全生産量のうち大企業製品は十四万個でわずか四%、中小企業製品が三百三十六万個で九六%と、製品の大部分が中小企業製品でございます。また、用途としてはスポーツ、自然風物の観察、狩猟と、レジャー用に使用されています。主要輸出向け国としては、アメリカが四三%、西ドイツが一四%、フランスが六%、イギリスが五・五%、カナダが四・五%の五ヵ国で、全輸出量の七三%を占めており、わが国双眼鏡はほぼこの五大市場の景況と需要動向に大きく左右されており、とりわけ米国市場は重要な影響力を持っております。  二、最近の輸出環境と受注状況について。  これまで日本製双眼鏡は世界市場において手ごろな値段で、しかも品質がよいということで米国市場を初め、主要先進国に双眼鏡を供給してきたのでありますが、しかし、昨今の輸出環境は最大市場である米国が一九七六年一月一日から発展途上国に対して特恵関税を供与され、双眼鏡製造国においては韓国、香港、台湾、マカオ等が受益国となっております。とりわけ韓国の追い上げに大変苦慮しております。現在、米国の双眼鏡に対する輸入関税率は、発展途上国特恵関税によりゼロとなっておりますが、われわれ日本から出荷される物についてはFOB価格において二〇%が一応課税されているのに加えて、最近の急激な円高ショックにより発展途上国製品価格差は優に四〇%以上の格差になり、日本製双眼鏡は大きなハンディを背負うことになり、競争力も著しく低下しつつあるのが現状でございます。したがって、輸出成約状況も、通常ならば三ヵ月の受注残を持って稼働しているはずでございますが、十二月以降の受注は少なく、バイヤーとの先物契約が成立しにくいばかりか、値段も円高の影響により三ないし一〇%値下げされており、特に双眼鏡業界は零細企業が多いこともあって、今後は円高による受注減、赤字生産等により倒産も懸念され、体力も限界に来ており、その対策に大変苦慮しております。  ちょっと余談でございますが、私の個人的な企業の御紹介をさしていただきますと、先日一応大手の大量小売機構、言いかえれば百貨店ですけれども、そこが来まして、非常に張り切って大量の注文を持ってきたわけです。そして去年よりも四〇%ぐらい多い注文を持ってきて、ちょうど来ている間にこの急激な円高に遭いまして、向こうでことしの販売にいろいろ幹部を集めてプランニングをして、ことしはこういう価格で買って、こういう宣伝をし、こういう売り方をしていこうというようなことを決めてきたんですけれども、実際私どもが提出した価格は二百七十円であったわけです。ところが、ちょっと大げさかもしれないんですけれども、飛行機に乗っている間に二百五十円になってしまったんです。それで、もう来てすぐ、とにかくこの八%は何としてくれるんだ、われわれは来年の計画はめちゃくちゃじゃないかというようなことで、とにかく会談の場にならないぐらい、この八%について非常に討議をされたわけなんですけれども、これはもうどこにも結局訴えることができないような問題でありまして、私どももやむなく三%値引きして、何とか計画を進行してくれないかというようなことでお願いしている、まあ実情でございます。  それからもう一つは、香港から一応品物を買っているのが、非常に品物が悪いとか、また納期が非常に遅延しているために、ことしは日本から三十万台買いたいというようなことで、この円高にはもってこいの話があったんですけれども円高の影響を受けて、やはり不本意ながらことしも香港から買わざるを得なかったというふうな問題があり、私どもは本当に円高の問題と、それから後進国特恵関税の問題、この二つで大変窮地に追い込まれている業種でございます。  もう一つのインポーターは、やはり私ども毎月三千本、年間契約として大体三万本ぐらい買っている機種があったんですけれども、これもやはり韓国あたりがだんだん生産力も上回り、品質も非常によくなっているということで、いままではスタンダード製品しかやってなかったのが、だんだん中級品から高級品に向かうようになった、そういうことで、こういう品物であれば後進国の追い上げを免れるという品物まで最近食い込まれてくるようになった、そういうことで、この機種も結局韓国に持っていかれたということで、今後非常に大きな問題があり、当業界にとっては大変なピンチじゃないかと思います。しかも、スタンダード物においては、裸価格で三千八百円ぐらいしたものが現在三千四百円ぐらいになっている。あと受注残がないものですから、実際には値段は幾らでもいいからとってくれと、赤字覚悟の注文をとるというふうな形に現在追い込まれているわけです。  三、要望事項として、円高ショックはもはや企業の自主努力では解決できない問題であり、下記要望事項について、政府の抜本的救済措置をお願いしたいと思います。(一)、米国の双眼鏡に対する輸入関税率引き下げ交渉は強力に進めていただきたいこと。  このことは、当業界円高対策にとりまして本当に命の綱とも言うべき関税をゼロにしてもらいたいという運動をしておりましたけれども、なかなか現在の対日感情の悪化だとか、ドルがたまり過ぎているとかいう問題で進まないような状態で、この問題を何とか解決できれば円高に対応できるんじゃないかと思われております。  私ども双眼鏡業界では、これまでに当面の輸出環境改善対応策の一環として、去年十月より、ワシントンにあるマサオカ・イシカワ法律事務所に委託し、米国内の双眼鏡取り扱い業者の協力を得て、通商特別代表部、それから商務省等に対して、次の理由により米国における双眼鏡の輸入関税率を引き下げていただきたい旨、運動を展開しております。  理由一、米国には一九七二年以降双眼鏡の製造業者がいないこと。  理由二、現在米国における双眼鏡に対する輸入関税率は二〇%であるが、これは他の光学製品に比べて高過ぎるので、引き下げてほしいこと。  理由三、輸入関税を引き下げることが消費者の利益になること。  等を理由に議員立法で提案されたが、日本貿易収支黒字に対する風当たりと悪印象により、上院本会議は通過したものの、下院歳入委員会では否認されたため、行き詰まっております。しかし、関税引き下げに関しては、次の対応策を検討するために、当工業会の宮田会長は目下渡米中でワシントンに行っております。  そこで、政府としても今後日米両国間の代償交渉、または精算交渉とも言われますけれども、それと東京ラウンドの関税交渉の場においても、米国の双眼鏡輸入関税引き下げ実現方に御支援いただきたいと思います。(二)、中小企業為替変動対策緊急融資制度の条件緩和。  先般円高ショックに対する救済措置として金融措置が、金額にして二千万、金利七・六%というふうに報じられましたが、つなぎ資金としては金利が高過ぎるので、融資条件の緩和ですね、これは大企業では金利は四・五%ぐらいで借りているというようなことがあるので、四・五%ぐらいにしていただきたい。それから、金額の枠も五千万ぐらい。それから、一応その返済期間が三年となっておりますが、これを五年に延期ということもお願いしたいと思います。あわせて中小企業の税制上の処置も講じていただきたいとお願いする次第です。(三)、円相場の安定策を早急に確立していただきたいこと。  円高ショックの被害は企業の自助努力では解決できない問題があり、抜本的貿易収支の黒字解消対策を早急に講じ、円相場の安定を図っていただきたいこと。特に急激な円高はほんとに中小企業によっては致命的な打撃をこうむり、去年の十二月には大体二百九十六円だったのが一月には二百九十二円ということで、結局小さな中小企業商社等は、ほんとに資金繰りに困窮をきわめているようなわけで、これがさらに円高の影響を受けると、商売にならない、倒産に結びつくという問題、ほんとに身にしみて感じております。特に急激な、二週間程度で十五円も上がるというような、そういうふうなことは、何とか政府の方で処置を講じてもらいたいと思うわけです。  確かに日本産業としては自動車だとか電機、それから鉄鋼等においては非常に強いものがありますけれども、われわれはそういう業種を見るときに、何かよその国の企業みたいに感じるわけで、われわれとしては結局現在の力またはその品質管理、生産効率等を考えた場合に、二百七十円ぐらいがやっぱり妥当じゃないかというふうに考えられます。二百五十円——いかにも私どもには厳しい環境であるというようなことが考えられます。そのためにも何か抜本的な輸入か何かできないものかというふうなことを、素人ながらに考えているわけですけれども、何かこれだけドルが余って、国家財政は足りないとか、非常に対日感情が悪いとか、中小企業が非常に困るとか、何か方法があるんじゃないかと思われるので、ぜひ先生方にお願いして、今回の問題を、円高に対する不況対策をぜひ改善さしていただきたいと本当に心から申し上げる次第です。  どうもありがとうございました。
  47. 楠正俊

    委員長楠正俊君) どうもありがとうございました。  以上で参考人三名の方の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入りたいと存じます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  48. 森下昭司

    ○森下昭司君 最初にいまお述べになりました大塚参考人にお尋ねをいたしておきますが、中小企業為替変動対策の緊急融資問題については、先般の中小企業庁の円高影響調査によりましても、いまお述べになりました点について各業界方々から強い要望が出ておりますので、全く私ども同感であります。  そこでお尋ねをいたしておきますが、アメリカが主要な輸出国の対象になっているわけでありますが、発展途上国特恵関税の恩典を持っているアメリカ市場に相当数輸出しておる、この実態はどういうような状況に相なっておるか。いまの御説明によりますと、輸出が三百八万個、全生産の八八%、おしてアメリカが四三%ということになりますと約百三十万個程度がアメリカに出ておるわけであります。発展途上国はこれに対しましてどのような状況下にあるかという点、ひとつお願いをしたいと思います。  それから中山参考人にお尋ねいたしておきますが、これまたそれぞれ御要望になりました委員長あての陳情の内容、全く私ども同感でありますが、下請企業への協力要請の中で、むしろ下請から協力するから受注せられたいとの要請が多発していると。さらにこれと関係ございますが、一部で二百五十一円程度で受注するものがあり、悪影響が憂慮されるということでありますが、これは両方とも言葉を返して言えば、仕事がないよりも、安くても仕事がほしいという私は状況を示しているのではないだろうかと思うのであります。さらに下請関係におきましては、家内労働等の関係から考え合わせますると、言うならば自分の身を削って、そして協力をするという私は実態になっているのではないかと思うのでありまして、このむしろ下請から協力するから受注されたいとの要請が多発しておるというのは、いま申し上げたように、ないよりはましだという考え方なのか、利潤の点からまいりますれば、まだまだ多少のことはがまんできる余裕はあったということを指すのか、その点ひとつお答えいただければ幸いだと思います。  さらにこの二百五十一円程度で受注をするということは悪影響が心配される、全くこれは自分の身を自分で削ってしまうような行為ではないかと思うのでありますが、こういうような問題について工業組合としてはどういう対策をおとりになろうと考えておみえになるのかという点であります。  三つ目の問題は、この陳情書の中にございました「ステンレス鋼の原材料について」、「発展途上国向けステンレス鋼等の原材料を国内鉄鋼メーカーが不当な安値で大量供給しないよう強力な制限の行政指導をされたい。」という項目がございますが、そうだといたしますと、輸出金属洋食器におきましても、これまた発展途上国の追い上げが具体的にあらわれているのではないだろうかと私思うのでありまして、その影響が顕著な例がございましたら参考のためにお聞かせをいただければ幸いだと、かように存じます。  以上です。
  49. 大塚岩夫

    参考人(大塚岩夫君) アメリカにおける数量だけを御説明申し上げます。  一九七五年と一九七六年について御説明申し上げますと、日本が八十九万三千百五十三台、それが一九七六年には百三十万五千八百五十九台と一五五・六%伸びております。構成比は一九七五年が八九・九%、それから一九七六年が七七・九%となっております。それから発展途上国全部を御説明しますと、一九七五年八万二千三百台、比率八・八%、一九七六年三十五万二千五百五十五台、比率二一%、前年比が四二八%となっております。その中においても韓国だけを見ますと、四万五千四百六十台、比率四・九%、これが十七万八千五百六十二台、比率一〇・七%、伸び率は三九二・八%、このようになっております。
  50. 中山一

    参考人中山一君) 一番目の問題でございます。下請企業が仕事が少ないから仕事をとってくださいという問題でございますが、燕の私ども業界は、御存じのように完成品を製造出荷するメーカーが三十社ぐらい、ややそれに近いものが二十社ぐらい、そのほか半製品、形だけをつくる人たちが百五十社ぐらい、そのほかに約千七百と言われる研摩業者の方々がおられます。最前申し上げましたように、メーカーと言われる人たちは約五十人ないし百人の従業員を抱えておりますし、下請さんと言われる製造業者の方たちは十名ないし二十名の構成で働いておられます。さらに研磨関係方々は、少ない人はだんなさんと奥さん、あるいはほかの弟さんあるいは親戚の子弟とか、そういったようなもので概して十人以下、平均にならしたら約五名くらいだと思います。  そういう人たちは、仕事がいままででございますとメーカーから発注されたものを二ヵ月ぐらいの範囲の中でまとめるのが生地製造業者で、研摩の関係の皆さんは大体四日ないし五日、一週間くらいでまとめてメーカーのところへ納入する、こういう形でございまして、研摩関係の作業の工賃が販売価格の中で約三分の一弱入っております。これらの研摩関係の方の加工工賃を奮発して勉強していただくことは、すなわちメーカーにとっては自分の差損を少しでも助けることになります。したがって、家内工業の方は、たとえばいままででございますと九時間くらい働いておったものを今度は十時間働けばいいんだ、あるいは十一時間働けば同じぐらい取れる、仕事がなくて遊んでいるのはもうこれは大変だということでございます。製造業者の方は、私どもの燕市には工場団地が七つできました。そこで、ここで抱えております負債は民間のものが八百億、三公庫系が百九十億、高度化資金が二百億、その他三百九十億と、このように膨大な負債を抱えておりまして、皆さんとしては仕事を一日でも休むということは即手形が落とせなくなるという現状でございます。そこで、仕事を尽きさせるということはとてもできない、まあ少しぐらい安くても構わないから、一〇%どころか恐らく中には一二%、一三%工賃を下げてもいいからとってくれという声が自然に出てくるんだと思います。私どももやはり発注しようにもできないというような場合に、朝早くから皆さんが訪ねてこられて何とかとれないのかというような話で契約を迫ってくる、こんな状態で、二百五十円ではとても引き合わないながらも回すというふうに御理解いただきたいと思います。  次に、原材料の国内鉄鋼メーカーの安売り云々のことでございますが、安売りという言葉は当てはまらないかと思いますが、私どもに対しまするステンレスの供給は昨年四月までは十六万円前後でございました。それが四月に一万八千円上がりました。十月にはさらに二万四千円上がりました。このことは熱間コイル、コイルがどれだけ上がって圧延業者の工賃がどれだけ加えられたかということは秘密でございますのでわかりませんが、私どもがいろいろ調査した段階におきましては、約一ヵ年くらいは、いわゆる開発途上国向け輸出はドルにおいては変わりなく供給されているようでございます。しかし、私どもに対しまするいわゆる原材料の供給価格は、ただいま申し上げましたように三〇%近くも、合計四万円上がったわけでございますから大変な上がり方で、このことは東南アジア、中近東方面へ販売します、開発途上国との競合物品に対しましては原材料だけでも約一〇%ぐらいに当たります。ですから、この面での御調査、御指導を賜りたいと、お願い申し上げます。
  51. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ありがとうございました。
  52. 岩崎純三

    ○岩崎純三君 中山、大塚、川元のお三人の参考人方々には、本当に寸暇の暇もないほど御多忙の中、参考人として御出席をちょうだいいたし、さらに業界の厳しさをそれぞれの立場でお話を賜り、大変ありがたく感謝にたえない次第でございます。  政府といたしましても、構造不況業種あるいは円高による対策等々精いっぱいやっておるところでございますが、お話を承りますると、まだまだ不十分な要素が多々あるところでございます。ために当委員会に課せられたその責任もきわめて大きいものがあろう、心を新たにして取り組んでまいりたい、かように存ずる次第でございます。  そこで、まず第一番目には、中山さんにお尋ねでございますけれども、十月に入り円が急騰したためにバイヤーは発注を手控えた、メーカーも大幅赤字のために受注を取りやめた、その関係としてバイヤー発展途上国に向かっておるものが多い、こういうことでございますが、その割合は一体どのくらいになっておるのか。単純に私どもただいまの説明で検討いたしますると、五十一年十一月現在が、昨年は三ヵ月の受注残があった、ことしは十一月十九日現在で一ヵ月弱であるということですから、二ヵ月強のものが発展途上国に向かったんじゃなかろうかと、この数字だけで判断いたしまするとそういう判断が成り立つわけでございますが、現状はどういう数字的な推移にあるのか、お知らせをいただきたいと思います。  さらに資金繰りの問題でございますが、とにかく地方自治体としてもこの厳しさを等閑視できないということで、新潟県並びに燕市におきましてはそれぞれの金融制度を講じておるところでございますが、公定歩合が繰り返し繰り返し引き下がりました。そうした中で直ちに地方銀行にその金利が連動するものとは思えませんけれども、いま、こうした円高に対する緊急措置の金融制度あるいは地方自治体の金融施策を講じられましても、なかなか資金が十分でない。ために地方銀行に対しましての融資の申し出をされると思いますけれども、金利が今日、公定歩合の引き下げに従って、どの程度にいまなっておるのか。  それから、もう一点は信用保証協会。これらは、従来は無担保でその保証を金融機関からしておったわけでございますけれども、最近は債権保全ということで、担保なしでは保証協会が金融機関からの保証をしない、こういう話を私どもは地方で承っておるわけでございますが、そういったことが現実の問題としてあるのかどうか。  さらに、地方銀行としては、皆さん方は国や県の制度資金についてはお借りができましょうけれども、優良企業には幾らでも安い金利で出すが、金融機関も対象を選択して、不況業種というのか、不良業種というのか、そういったものについては、むしろ融資を差しとめて債権を保全するために資金の回収に当たっておる、こういう話も聞いておるわけでございますけれども中小企業を抱えておる中山さんのグループにおいては、そういう金融の実態があるのかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。  なお、大塚参考人にお尋ねするのでございますが、業界みずからが輸入関税率の引き下げについてアメリカまで飛んで努力をされておるということでございます。当然通産、大蔵にもお話がされておろうかと思いますけれども、政府として、皆さん方の要望にこたえてそうしたアプローチがいままで経過の中にあったかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。  なお、あなた自身が仕事のためにアメリカに飛ぶ、その飛行機の中で二百七十円が二百五十円に引き下がってしまった、ために契約について三%値引きをして契約に応ぜざるを得なかったという、みずからの企業を通しての具体的な事例の発表があったわけでございますが、その時点で三%値引きをして、その契約の商いの中でどのくらいの赤字を生んだのか、あるいは採算ベースの面においては赤字まで至らなかったのかどうか、その辺のところをお聞かせいただきたいと存じます。  以上です。
  53. 中山一

    参考人中山一君) それでは、開発途上国へ注文が、十月に契約が流れたかという御質問に対してでございますが、これに対しましては、私どもも数字の面では残念ながらはっきりとわかりません。ただ、いままでの平均売り上げ等からいたしまして、ここに金属洋食器、調理用具を除きましたいわゆる卓上用品についての記録ございますが、六月は二十六億九千万、七月が二十四億五千万、八月が二十五億五千万、九月が二十二億、十月は十九億、十一月は恐らく十九億達成は困難だろうと、こういう形で六月以降の契約がごく減ってまいっております。さらに昨年十月アメリカが自由化になりましたために、開発途上国並びに日本からアメリカが輸入した数量もかなり多かったために、幾分かそういった低調のせいもございましょうが、ここのところ二人、三人、百万ダース——百万ダースと申しますと約四億円ぐらいでございますが、それぐらいの引き合いを持ってきた三社が燕へ来て一、二軒ちょっとのぞいてみただけで、そぐにそのまま韓国あるいは台湾へ行って帰ったという事実を聞いておりまして、それらの客を持っているメーカーとしては全くがっかり、ちょっと途方に暮れた形をしているということでございます。  次に、金利のことでございますが、いま現在、長期のもので借りているものは一〇・八%という最高。それから平均は八・三%ぐらい。最近ごく短期間に貸していただく、融資していただくお金が七・六%、五%というものもございますが、これは一ヵ月間ぐらいのつなぎ程度のものでございます。  次に保証協会でございますが、保証協会からは、私ども業界におきましてはよくごめんどう見ていただいているというふうにみんなが感謝しているようでございます。市中銀行が貸し出しを渋ったり、あるいは回収しようとしているという点につきましては、そういうことがあるかもわかりませんが、ちょっと私もはっきりとは聞いておりません。  以上でございます。
  54. 大塚岩夫

    参考人(大塚岩夫君) お答え申し上げます。  通産省の方々には本当に御協力をいただいて、現在日本貿易振興会の、要するにジェトロを通じて、それから、ニューヨークの軽機械センターの岡松所長なんかにもお願いして、現在弁護士としては非常に有名な、日本では勲章もらった人ですけれども、マイク・正岡さんを通して、現在国会の方にかなりいい線までいっていたんです。実際には一応上院通りまして、それで下院も巧みな方法でうまくいくところだったんですけれども、何せここのところ、アメリカの方もちょっといろんな問題で、韓国だとか、エネルギー問題だとか、ドルの問題とか、そういうふうな問題が非常に重要な問題になったので、大急ぎで審議された結果が、対日感情の悪化で拒否されたというふうなことで、いま現在、岡松所長からの要請があって会長がいま相談に行っております。そういうことで、非常に通産省、それとかジェトロ、それから外務省あたりが非常に協力的に動いてもらっていることを大変感謝しております。  それから、代償交渉または精算交渉と言われるんですけれども、これは向こうのベアリング業界みたいなものについては輸入関税を引き上げて、日本からの結局輸入をできるだけ関税障壁を上げてやわらげようというふうなあれがあるんですけれども、それにかわって双眼鏡の方は外してもらえないかと、こっちが上げるんだったらこっちを外してくれというふうな、そういうふうな交渉も現在通産省を通じて外務省に働きかけてもらったり、太洋州課だとかそういうところに行っていろいろお願いしたりして現在やっているんですけれども、何せ東京ラウンドが真近に控えているというふうなことで、若干この交渉が進まないというふうな懸念があるわけです。マイク・正岡さんなんかの話によると、この関税はゼロに持っていくというふうなことで、私ども非常に張り切って、組合自身としても何万ドルという契約金を出しまして、マイク・正岡さんの方に働きかけをしているわけですけれども、現在、必ずしも私どもの意のとおりにいってないということが現状でございます。そういう面で、何か政府の方からでもひとつ要請していただいて、代償交渉なり、それから東京国際ラウンドには現在最優先に挙げてもらっていますけれども、あれの交渉方を早く実現していただきたいというふうなことをぜひお願いしたいと思います。  それから二番目の質問に対しては、これは私ともの企業のことになりますけれども、大体税引き前の利益は三ないし四%ぐらいが普通でございます。したがって、ほとんどの利益を結局出してしまったと、しかも結局来年のベースアップ多少あるでしょうし、インフレも多少続くでしょうし、そういうふうなものに対処するだけの結局余裕がなくなってしまった。そのために現在いろいろ合理化だとか、それとか下請の方に値下げ要求などを現在しつつあります。そういうことによって、とにかく注文がなくてはどうにもならないというのが現状であって、損得は言っておられないというふうなことが現状でございます。
  55. 馬場富

    ○馬場富君 本日は参考人方々にお忙しいところを御意見をいただきまして、非常に感謝いたしております。各三人の方々に一、二点質問をいたします。  最初に中山参考人には、特に洋食食器につきましては、かなりオイルショック以来の過去の融資において、相当その額が一千億円程度重なっておると、それがかなり苦しい経営のなにの中にもあるということを聞いておりますが、その実情をちょっと御説明いただきたいという点と、あわせましてきょうの要望の中の、陳情の中の金融対策の中の三点の、高度化資金やあるいは公害防止事業団の資金の借入金利と延長問題が挙げられておりますけれども、この過去の設備資金の額と状況を、ちょっと御説明いただきたいと思います。  それから円高によりまして洋食食器については減産とあわせて出血輸出がかなり行われておるという状況を聞いておりますが、その実情を御説明いただきたいと思います。それからあわせまして、先ほど森下議員も質問なさいましたが、はっきり出ておりませんでしたけれども、この材料の問題の点で、発展途上国向けのいわゆる原材料が、国内メーカーに比例して不当に安価だという点ですね、それは概算でも結構ですし、常識的な数字でも結構ですが、できればお示し願いたい。  あわせまして川元参考人にも、先ほど来原材料の価格の問題がございましたが、その点ひとつよろしくお願いしたいと思います。  それから双眼鏡の関係でございますが、いま輸出が最大のポイントになっておるということでございますが、一ドル二百七十円が基準ということをおっしゃっておりましたが、現在の二百五十円と、たとえば常識的な一個の双眼鏡のその差益の差額はどんな程度のものか、これを御説明いただきたいと思います。  それから、いま業界が米国の国務省やあるいは商務省に直訴をしていらっしゃる、この関税問題で。これは非常に頭が下がる思いでございますが、その中で出てまいりました双眼鏡が非常に関税でも苛酷に見積もられておると、二〇%ですね。他の光学器械との関係が出ましたが、その対比を、わかっておりましたら御説明いただきたいと、こういうことでございます。  以上でございます。
  56. 中山一

    参考人中山一君) お答えいたします。  最初に、負債の状態でございますが、私ども業界は燕市にほとんど依然集中しておりまして、しかも手先によります労働が中心でございましたために、町の中に皆さん、みんなたとえば十五坪ぐらいの作業場あるいは二十坪ぐらいの作業場、大きいところは百坪ぐらいの作業場というふうに、全く町の中に集中しておりました。燕市は当時、昭和二十九年当時は人口三万になるために周辺の農村をあわせてタイムリミットの一時間前に市になったという小さい町でございますが、そういう中にそういう産業がごちゃごちゃと入っておりますために、たとえば研磨の排じんが隣りの家の台所へピューピュー吹き込む、あるいはまた圧延の、スプーンをつくるための横延ベロールの音が子供の寝ている寝間の窓にカンカンカンカンもう九時、十時まで音がすると、こういう状態はずっと十年間ほど続きましたけれども昭和四十二年にアメリカ合衆国の、当時ジョンソン大統領だったというふうに記憶しておりますが、四十二年十一月に自由化しました際に、非常に大量の注文が引き続いてまいりまして、そこで、厳しい規制時代にヨーロッパあるいはその他の市場を開拓したの等も合わせますと、これは四十六年、四十七年には、あるいは世界一億ダースの輸出市場の中で、八千万ダース近い供給のシェアが取れるんじゃないかというような、あるいは私どもの誤算であったかもわかりませんですが、そういう実情が続きまして、そういう見通しが立ちましたので、いろいろ協議いたしまして、公害防止事業団の御援助とあわせて、町をきれいにしようということで町の中から外へ出ました。それがただいま申し上げます膨大な負債になっているわけでございます。  それ以前の投資額はどうかとおっしゃっても、ほとんど機械その他は古い機械、それから自動研摩機のようなものは団地進出後にほとんどが入っておりますので、それまでは手回しの羽布研摩機に手を当ててみがくというような状態だったもので、恐らく投資額は四分の一ぐらいじゃなかったかというふうに考えられます。ここの団地づくりで、建物あるいは土地投資等が多くございます。そこでその予測が外れまして、四十六年に再び輸入制限をやってきたと。しかもタリフクォータでございましたので、私ども日本に割り当てられた普通関税枠の数量を守って千百六十万ダースを昨年まで続けてまいりました、五年間続けてまいりました。韓国、台湾とは、コストの安さに、割り当て数量を超したものは非常に高関税をかけられるんですが、それをコストの安いところから高関税を乗り越えて非常に大量にどんどんどんどん入れてまいりました。そういったことから、このたびまた再び何か輸入制限の趣もあるようでございますが、こうしたいわゆる私どもの方は規制をして抑えている、向こうは自由にやっているというような形から、私どもの当初の予定八千万ダース近い市場シェアは守られずに、達成できずに、五千万ダースぐらいで低迷しているというのが実情でございます。そこで、それを予定した数量だけの売り上げができないだけでも苦労しておりますのに、さらに二百五十円台ということで実は大変難渋しているようなところでございます。  次、原材料の件でございますが、ここに圧延業者から燕市長あての陳情書がございますが、これによりますと五百五十ドル、ただ、これは燕の圧延組合のものでございますが、圧延組合のその言葉そのままを申し上げますと、五百五十ドルでずっと輸出しているそうでございます。そこで、この陳情書の中には、そういう自分たちが供給を受けているのは十九万三千円であると、それは仮に二百九十円であってもはるかに自分たちに供給しているよりも安いんじゃないかと、こういうことでこれらの是正をしてくださいという数字を挙げてきておりますし、現実に、先ほども申し上げましたように、私どもが供給を受けております数字は、昨年度一年間に四万円も上がったと、こういう形でございます。  以上でございます。
  57. 川元明光

    参考人(川元明光君) 韓国や台湾に対する材料価格が非常に安く売られておるという問題、これは私たちがことしの九月、十月に通産省と交渉をやりましたときには、初めは、九月の段階では、通産省が値引きをして輸出をしておるという実態については余りわからなかったんじゃないかというふうな感覚があるわけですけれども、十月十四日の通産省との交渉では、確かにダンピング輸出をしておるということがはっきり言われました。しかし、幾ら値引きをしておるということについては明確にされなかったわけです。  私は、先ほど事例に挙げました杉本伸線の出身です。会社解散、全員解雇を受けて、二年余りいま闘っておるわけですが、この中で、三井物産に対して毎週一回なり月一回話し合いを行っておるわけです。この中で、三井物産が韓国や台湾に輸出する。私どもは線材ロッドというふうに材料を呼んでいるのですけれども、このロッド価格が約八千円国内価格よりも安く売られておる、輸出されておるということが三井物産の口から発表されました。これが、八千円という確かな額でなしに、八千円ぐらいというふうにほかして発言されております。それでダンピング輸出のことがはっきりわかってきたわけです。  以上です。
  58. 大塚岩夫

    参考人(大塚岩夫君) それでは、関税の方のことから先にお答え申し上げます。  米国におけるカメラの輸入関税は、十ドル以上が七・五%となっております。ほとんどが十ドル以上でございます。十ドル未満は一七%となっていますけれども、これはアメリカのばかちょんカメラといいますか、安物のカメラを保護するためのものじゃないかと思います。現在ほとんどのあれがカメラの場合七・五%ということになっております。  それから、二百七十円から二百五十円になった一つの差損による業界の損益といいますか、そのことについては、多少、まだ現在発生したばかりですから、これからむずかしい問題に入ってくると思うのですけれども、ある業者によっては、下請さんを集めて、やはり一〇%ほど値引きしてもらうとか、五%値引きしてもらうとかいう交渉も持たれているように聞いております。  そういうことで、現在のところは、この円高に対してもうどうにもならないというふうなことから、とにかくメーカーとしては注文を続けなくちゃいけないというところにあって、現在損得の問題については、後で何か考えようというような、その辺が実情じゃないかと思うわけです。余り的確なお答えできないのですけれども、完全に幾ら損しているというところは、やっぱり個人差があるんじゃないかと思います。大体、これによってバイヤーが買わないで、韓国だとか香湾から買ったという例もあるでしょうし、実際の二百六十五円から比べると六%のアップなんですけれども、それを全部のんだという業者もあるみたいです。そういうことで、多少企業秘密にもなっていますし、確実な情報は、いまのところすべてわかっておらないような状態でございます。
  59. 市川正一

    ○市川正一君 皆さん方の御意見を承って、今日的に緊急な課題になっております不況問題について、深刻な現状とともに、その原因及びその打開策という点で、今後問題を探求する上でも、きわめて貴重で有益な御意見だったと存じております。これは政府としても大いに傾聴さるべきものでありますし、また私、本委員会の一員としても、今後真剣に取り組んでいきたいというように考えております。  さて、そういう立場から若干お尋ねいたしたいんでありますが、第一点は、川元参考人にお伺いいたしますが、先ほどのお話では、資金問題とかあるいは線材ロッドの価格問題だとか、さらには線材二次製品輸入規制など、本来経営者が責任を持って当たるべき問題についてまで労働組合として取り組んでおられる、まことに注目すべき活動を展開されていらっしゃるわけでありますが、こういう運動を労働組合として進めるようになったその契機といいますか、そういう点についてぜひお聞かせ願いたい。  第二点でありますが、これも川元参考人にお尋ねいたしますが、線材二次産業は材料の供給から販売まであるいは資金の手当に至るまで、新日鉄など高炉メーカー、さらには三井物産などのまた独占的大商社の支配下といいますか、その中にあるわけですが、これらの大企業、大商社が今日まで率直に言って利潤追求の場としてこれを利用してきたと私は考えます。ところが、今日これらの特に大商社不況に苦しむ業界に対して、首切り、合理化、こういうものと引きかえでなければ材料を供給しないとか、あるいは資金を提供しないといった不当な圧力をかけておるというふうに聞いております。いまこそ長年深いかかわり合いを持ってきた業界のためにも、安くて安定的な材料の供給あるいは資金の援助、さらには市場の開拓、こういう積極的な援助をすることこそが大手商社の責任であるとわが党は考えておりますけれども、こういう点についていまの実態に即しながら川元参考人の御意見をお伺いしたい。  第三点でありますが、これは中山参考人と川元参考人に伺います。  先ほども触れられましたが、業界不況の困難と原因の一つには、韓国などの、いわばそこへ大商社が先導して進出していくと、あるいはいま御指摘のあった日本大手の鉄鋼メーカーが不当な安価で、安い値段で大量供給しているという実態を私指摘することができると思うんですが、私はその現状をいまお伺いしたわけですが、同時に対策として、やはりこういうわが国中小企業に重大な被害やあるいは打撃を与えるような海外投資、あるいは原材料の輸出、こういうものを規制する、及びいわゆる逆輸入を規制する、こういう必要があると私は考えるのですが、こういう点について、業界の実態にも即しながら両参考人の御意見をぜひ承りたい。  最後に、大塚参考人中山参考人にお伺いいたします。  両業界とも、あの昭和四十六年当時のニクソンショック、それ以降品種の転換とか技術の高度化など、経営の改善に格段の御努力を尽くしてこられたことに対して改めて私敬意を表したいのでありますが、それにもかかわらず今回の円高は、その努力を水泡に帰すような事態を招いてきている。今回の円高の原因の一つとして、私はたとえば自動車あるいは家電あるいは鉄鋼、こういういわゆる集中豪雨的なこの輸出ということを指摘ししなければならないというふうに考えております。先ほど大塚参考人も、鉄鋼、自動車などよその国のことじゃないかと思うというふうにその実感を込めておっしゃいましたけれども、大塚参考人の所属していらっしゃる日本双眼鏡工業会の亀山芳治専務理事も十月五日付のある新聞紙上で、私ここにスクラップを持ってまいっておりますが、「鉄鋼、自動車、家電などのむちゃな輸出のツケが中小企業に回されている。大手企業をうらむ」という万感いわば胸にこもった発言をなすっていらっしゃいますけれども、私本当に身につまされる思いがいたします。こうした実態からも一部の大企業製品の急速な輸出の伸び、まあ俗に言う集中豪雨的輸出でございますか、これに対してわが党は輸出均衡税、こういうことを提案いたしまして、これはやっぱり課すと、そして一定の規制を行って、その税収を被害を受けている中小企業救済する資金の一部、たとえば中山参考人も提起されていらっしゃる為替変動対策緊急融資という問題を出していらっしゃいますけれども、そういう方面にも大いに回すという対策を私ども提起いたしておるんでございますが、こういう点について、業界の実態にも即しながら両参考人の御意見を承ればまことに幸いと存じます。  以上でございます。
  60. 中山一

    参考人中山一君) 大企業の開発途上国への進出の問題に対する意見でございますが、最前申し上げましたように、私どもの町の圧延組合、材料を供給する材料メーカーからの陳情によりますと、やはり韓国の特殊鋼メーカーと日本のまああるメーカーさんが合弁で圧延工場をつくったと。私どもの洋食器材と申しますのは、一般的に八〇%ぐらいが一三クロム、それから二〇%ぐらいが一八−八ステンレスと申しまして、ニッケルが八%入っているという原材料でございますが、一三クロムにつきましては、世界中でいまのところ供給するのは日本だけでございますので、私どもの立場からいたしましたら、この一三クロム材をある程度ほどほどに制限していただければ非常にありがたい。ここに申しております彼らのあれでは千トンくらいに抑えていただきたいということを申しておりますが、私も全くそのとおりだというふうに考えております。  次に、後から申し述べられました集中的輸出による中小企業の被害でございますが、私どももやはり、小さいながら自由の業を選んでおるものでございますから、大企業の方をねたんで発言するようなことは申し上げにくいわけでございまして、この席ではちょっと申し上げかねますが、私ども業界の中には、たとえば輸出課徴金のようなものをかけてドルを抑えてくれればいいというような声はたくさんございます。  以上でございます。
  61. 川元明光

    参考人(川元明光君) まず初めに、まあ三つ質問を受けたわけですけれども、その一つ一つについて若干情勢も報告しながら発言をしたいと、お答えをしたいと思います。  一つは、私たちがいま鉄線産業を守り発展をさせ、労働者の生活と権利を守る大運動、この運動をことしの八月の一日に発足をさせまして、この経過については先ほどの報告もいたしましてからでも過去二回不況カルテルが実施されました。この中で、経営者は労働者に日数カルテルと言いまして、休日をふやす、まあ非常にいいように見えるわけですけれども、これは実際には労働者には非常に大きな影響が出てきていまして、日数カルテルをしきまして実施をしていったわけですけれども、五十年のときにも不況の中で資金的な非常に厳しいものがあるというところからカルテルは実施して、それぞれが取り組んだものの資金が回らないというところから、会社の門は閉めておっても中で操業を続けると、あるいは業者同志の足並みがそろわなくてカルテル実施以前に駆け込め生産をやる、こういう事態もありましたし、また片方では高炉メーカーが加工メーカーに対して材料の割り当て制をとってますから、その材料を注文があるなしにかかわらず材料を供給をしていく。伸線加工メーカーはそれをいや応なしに受けざるを得ない、こういう実態の中でやむを得ず生産をしていかなければならない、そういう実態もありました。また、労働者には情勢が悪い、そういうことから実際には不況カルテルをやれば時間を短縮し、稼働日数を減らさなければならないはずの状況を、今度は逆に一日の労働時間を延長をしたり、あるいは週休二日制、土曜日を、休みのときを、それを出勤さしたりということから逆に増産体制が敷かれておった。そういうようなさまざまな事情があって、過去二回の生産カルテル実施については失敗をしていったわけです。  そういうような業界が本当に労働者の生活と同時に企業そのものを守らなきゃならないというそういう立場でやっておるにもかかわらず、全体でやろうとすれば、個々ばらばらになってお互いに傷つけ合うような状態になってくる。そういうところから何とか労働者の立場から、労働者の生活を守ると同時に職場を守る運動、そういう運動はないものかということを何回となく議論をいたしまして、結論としまして、経営者が高炉メーカーや商社に言えない、あるいは行政当局に強く言えない問題を労働組合として、労働者としてそれを堂々と商社や高炉メーカーや、あるいは行政当局に対して要求していこうじゃないか、そのことによって労働者の生活も守れるし、同時に職場が確保される、そういうことからこの運動を起こしていこうということになったわけです。  業界状態を若干言いますと、非常に中小企業が多くて、特に二、三十人から百人未満の企業が圧倒的な比率を占めるわけです。百人以上あるいは三百人以上の鉄線屋といえばもう数えるほどしかない。そういう非常に中小企業の多い業種でございますし、特に十人未満の零細企業もあるわけです。鉄線産業は二つに分けられてますけれども、大体鉄線メーカー、高炉から商社を通して直接材料を買って加工する鉄線メーカーと、その下請である賃加工メーカー、この二つに分類をされておりますけれども、非常に系列支配の強い産業でもあるわけです。  次に、商社なり鉄鋼大手との関係についてでありますけれども、資料によりますと、昭和三十八年にひもつき営業というのですか、商社を窓口とする販売とかそういうものについては一応廃止されたというふうになっておりますけれども、現在はなおひもつきあるいは窓口を商社とする営業方法が根強く残っておるということが言われていますし、不況になればなるほど、あるいは好況でもうかればもうかるほど商社、高炉メーカーの系列支配が強くなってくる、そういう現象があらわれております。特に鉄鋼メーカーとの系列では、鉄鋼から線材ロッド——材料を伸線加工メーカーが買いたくても直接に買えないという、これはすべて商社あるいは大きな問屋を通してでないと伸線加工メーカーに材料が供給されない。こういうふうになっていますし、逆に今度は伸線メーカーが製品を販売する場合でも、大口問屋かあるいは商社を通さないと、国内販売はおろか輸出は全然できないというふうに完全に商社のひもつき経営になっていっておるわけです。そして価格の方についてもやはり商社、ここで首根っこを押さえられておるというのも現実だろうと思うわけです。  高炉メーカー、鉄鋼メーカーとの内訳で言いますと、ここに資料として四十社の統計が出ておるわけですけれども、その内訳で新日鉄が二十二社——五五%を握っておりますし、神戸製鋼が九社、川鉄、住金が六社というふうに続いておるわけです。こういうふうに高炉の支配系列が非常に強まってきておるのと同時に、商社に強い力を持っておって、普通一般銀行から資金等の借り入れもやるわけですけれども、すべてこの商社が銀行の肩がわりをしておる。そうして、工場、財団あるいは経営者の持っておる財産をすべて根抵当で商社が押さえておる、そういう実態がはっきり出てきておるわけです。  それから商社との関係でもう一つは、先ほど私も陳述いたしましたけれども、いまの状況の中で労働者に非常に厳しい合理化が強制されておる実態があるわけです。  このことで一つ事例を挙げて言いますと、私のところの杉本伸線という会社が五十年の九月に会社解散、全員解雇したわけですけれども、この前段で三百十名中二百名の人員整理を提案してきました。そのときに三井物産が、人員整理二百名に対して四億の資金を出す——企業を守るための資金は、赤字がこれだけふえたらこれ以上資金は出せないと言いながら、労働者の首を切る、人員整理、合理化をやるための資金は出すということがはっきりと言われておる。これは当時の副社長の証言ではっきりしておるわけです。また、他の企業に対しても商社あるいは高炉メーカーが材料の供給やあるいは資金援助を打ち切る。合理化をしなければ資金援助なり材料を供給しない。そういうような攻撃が非常に強く出されてきています。そのためにいま伸線加工メーカーでは、いろいろな問題で労働者に合理化を強制をされる中で、あるいは労働者も積極的に協力をしながら職場を守るためにいろいろな運動も展開をしておるわけです。  もう一つ、三番目には海外進出——韓国進出の問題でありますけれども、私はここに昭和四十九年十月三十一日の鉄鋼新聞の記事を抜粋した韓国進出の資本金なり生産計画の表を持っていますけれども、この当時の韓国進出の企業のメリットとしては、やはり第一番に人件費が日本の労働者の五分の一である。そして労働強度が一・五倍である。それにあわせて税金の問題がほとんど無税に近い状態で優遇される。こういう利点があって、三井物産の当時線材部長であった、氏名まではっきりしていますけれども、その人が積極的にあっせんをやり、三井物産として九社を韓国にあっせんをし、日商岩井は一社をあっせんをしておりました。また、これ以前に日本の各企業、伸線加工メーカーがそれぞれの自己資本によって韓国に進出をしておりました。  こういうふうに四十八年から四十九年に対して進出をしたわけですけれども、五十年の不況に合わせて韓国では全面再開をし、日本に逆輸入と同時に、日本からアメリカに輸出すべき製品が逆に韓国からアメリカに輸出をされておるというふうになってきました。三井物産はそのことをとらえて、従来は日本にアメリカのバイヤーが寄って不足の品物を韓国、台湾から買って帰っておった。ところがいまは逆で、台湾、韓国から製品を買い、台湾や韓国にない高級品だけを日本に寄って持って帰る。そういう逆な状況になってきたということを言っていました。  また、杉本伸線の例で言えば、日本国内企業を三井物産と共謀してつぶしておきながら、韓国を生かして、そこから国内に逆輸入をして日本の市場に三井物産の手によって売りさばかれている、こういう実態もあります。非常にこの韓国進出によって国内の伸線加工メーカーが、そういう面でも大きな打撃を受けておると同時に、それに働く労働者が、非常に厳しい状況の中で生活を強いられておるということが、いま極端にあらわれてきておるということが言えると思います。  時間の制約がありますので、大ざっぱですけれども、以上で発言を終わります。
  62. 大塚岩夫

    参考人(大塚岩夫君) 以前の石油ショックに対しては、これは国際的な問題でありまして、結局、日本もまあ大変だったんですけれども、韓国だとか香港なんかも同じような影響を受けたわけで、まあその当時はもちろん受注も減ったし、いろいろ値段も下がったりしましたですけれども、まあそれなりに一つの見通しとか張り合いというものもあったと思います。しかし今回の円高は、わが国だけが非常にその大きな影響をこうむっていると同時に、私ども業界はそれに特恵関税という、そういう厄介なものもありまして、非常に前の段階とは違った感じを受け取っておるわけで、これが長く続けば、ますますわれわれの企業というのは侵食されていくというふうなことが言えるんじゃないかと思います。われわれ業界においては、韓国とか香港等に進出している企業は一社もございません。現在は、やっぱり韓国は韓国なり、香港は香港なりの、まあ韓国人、香港人によって現在経営されている企業との闘いだというふうなことは言えるのじゃないかと思います。  それから、輸入の均衡を図るための一つの措置として先ほどおっしゃられたこと、気持ちとして本当にありがたいと思うし、現在日本のすべての企業だとか、すべてがまあ現在円高に影響するような優秀な企業であるかということになると、そこで若干の問題があるわけなんですけれども、何かそれにも増して、輸入拡大だとか、何かやはりこれは鉄鋼だとか自動車なんか一つの日本の戦略商品としては、これはやっぱりどんどん活発にやっていただかなくちゃいけないだろうし、私はそれについては何もあれはないんですけれども、ただ結局それが円高に影響するところに大きな問題があるんじゃないかと思われるわけです。そのためにも何か輸入を拡大して、たとえば外国の企業で整備されてない道路なんかを一応あれするとか、コンコルドを入れるとか、エネルギー問題の確保をするとか、現在、核融合に対する一つのエネルギーの見直しだというふうな、そういうふうなこともありますし、何かそういうふうな日本全体がいいと、こっちを落としてこっちをあれするというよりも、日本全体がいいというふうな政策があれば、さらにいいんじゃないかと思いますけれども、その辺はぜひひとつ先生方のお知恵で、何とかやっていただきたいと思います。
  63. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 中山参考人にお伺いしますが、本院で、何年だったか、私忘れましたが、燕の団地を視察したことがあります。私も同行いたしまして、いまお話を伺っておりますうちに燕の実態がよくわかるわけです。御苦労のほどをお察しいたします。  時間がありませんから一つだけお尋ねいたしたいと思うんですけれども、きょうお見せいただきました陳情書の一番最後に、家内労働者救済の措置が書かれておるわけですが、燕の場合には家内労働者が非常に多い、そういった実態に照らして、これまでの間、この家内労働者に具体的にどのような救済の手だてがとられてきたか。そして、ここでいうところの雇用調整給付金、これは中小企業に適用されるべきものでございますけど、「雇用調整給付金に準ずる救済措置を講ぜられたい。」ということだけど、現実問題として家内労働に雇用調整給付金に準ずる措置がとれるかどうか。仮に、それじゃよろしいということになったら、どういうふうにこれ実際やろうとしておるのか。まあ燕全体を見るときに、この家内労働者救済ということは非常に底辺の救済、大切なことだと思うんです。そういう前提に立って、具体的に産地として家内労働をどうしようとしておるのか、あるいはこれまでどうしてきたのか、この辺のところを一度教えていただきたいと、このように思います。  以上です。
  64. 中山一

    参考人中山一君) 家内労働者救済につきましては、私はいままで具体的の策はお国においてもとられていなかったんではないかと存じております。ただ、いままでも私どもの地域では、輸入制限あり、あるいはドルショックありで、事ごと国のお世話になっておりますが、そのたびにとられましたことは、家内労働者あるいは下請企業に対する支払いを、あるいは仕事を与えよということを御指導いただき、さらにそういった支払い状況等につきましては、労働基準監督署あるい県その他から厳しくその支払いの状況を報告して、適正な工賃が払われているか、またその支払いが手形でないか、支払いの条件等についていろいろ報告を求められたり、また指導なされておりましたが、私の記憶ではその程度だと思います。  そこで、いまこの雇用給付金に準ずる措置をお願い申し上げたいと申しますのは、現在のこの雇用安定法に基づく雇用調整給付金は、従業員五十名以上の企業というふうに承っております。ところが、先ほど御報告申し上げましたように、燕には五十人以上の企業はごく少なく、二〇%にも足らないと思います。私どもの工業組合組合員の中でもそうだと思います。ましてや、それらの人たちの下請のそのまた下請をやっております五人、七人という企業が非常に多いわけでございますので、これらの中で他人を使っていられる人たちは、休ませようにも休ませる方法がない、だから仕事が欲しいんだということでございますので、そういう小規模の方の仕事を休んだ場合には、これらの五十名以上の方に施しておられるような雇用給付金を支給してあげられる方法がないものだろうかというふうにお願いしてる次第でございます。
  65. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これはまあいわゆる被用者を、たとえばその規模が十人、十五人でも、雇用しておる人がおれば賃金台帳もあるし、それに基づいて三分の二なら三分の二の賃金の補給という形で雇用調整給付金に準ずる形はとれるけれども、燕の場合にはそれはまだ少し大きい方でしてね、要するにその奥さんとそして親戚の子供さんと、文字どおり家内労働というのがたくさんあるでしょう。こういった場合にね、実際問題としてどういうふうな——いま中山参考人もおっしゃったように、ほとんどこれまでも具体的に底辺に対する措置というのはなかったということだけど、これ、やらなきゃいかぬと思うんですよ。やらなきゃいかぬけど、そういったところに実際どうやってこれ、制度的なものを適用していくか。まあそういうところに国金なら国金から融資していくと、つかみの融資をする、そのための信用保証を取りつける、そういったことは可能だと思うんですよ。だけど、制度的にこの、仕事がない、休業を余儀なくする、したがって孫請もその機械をとめなきやならない。しかし、現実にはとまらないと思うんですよ、私は。やっぱり何割か動く状態の中で、なお苦しい状態が続いておる、そういうものに制度的なものを課していくということは非常にむずかしい。しかしそれをやらなければ地場産業というのはどうしようもない。大変苦しいところだと思う。これは洋食器だけじゃなくって、その他の産業でもこれに類するものたくさんあるんです、産地で。だからその辺のところをもう少し産地側から的確にこういう手だてがありますよというものが出れば非常に私どもも参考になるわけで、そういう意味でお伺いしたわけなんです。もし何かあればでいいですけれども、もしなければまた皆さんのところでお考えいただいて、お教えいただければありがたいと思うんです。どうでしょう、何かありますか。
  66. 中山一

    参考人中山一君) ただいまのところ具体的には考えておりませんが、たとえば商工会議所で事務的なめんどうを——ただいま税金の納税等についてはずいぶんそういう人たちの事務的の仕事をやって助かっておりますが、そういうことを、あるいは組合あるいは商工会議所等でまとめてやったりしたら、あるいはそういう方法は何かできるんじゃないかというふうに考えておりますが、いまのところはそんなふうでございます。  ただ、これをどうしてもやっていただかないと、仕事を続けたいからまたメーカーのところへやってきて何でもいいからさしてくれ、何でもいいから注文をとってくれということで、どんどん値下がりしてしまうと、出血輸出がなされるというふうなことを一番恐れておるわけでございます。
  67. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 中山参考人、大塚参考人、川元参考人のお話を伺って、それぞれの業界の悩みや問題点がよく理解できました。  きょうの午前中の参考人の御意見もあわせて私考えましたけれども、こうした中小企業による輸出業界輸出採算の採算点というのは二百七十円台だということは、どうも皆さんの共通の御認識のようでございます。しかし、現実に円レートがどの辺に落ちつくかというふうに考えてまいりますと、二百七十円に戻してほしいという業界の方方の御希望にもかかわらず、どうも二百五十円もしくはこのまま推移すると二百四十円台にまで落ち込むといいますか、上がっていくことも予想としてはされるんじゃないだろうか。そこに現在の日本経済の悩みがあるように思います。それに対しては緊急輸入輸入をふやせという大塚参考人の御意見もありますし、それから輸出に対して課徴金をかけたらどうかという御意見もございます。それから、これによって苦しんでおられる業界方々に特別の救済の制度をさらに充実するということも必要だと思いますが、どうもやはり考えてみると国内景気対策をどう持っていくかということに尽きるんじゃないだろうか。  政府からは総合経済景気対策が発表されましたけれども、もうその効果はほとんど円高の中で帳消しになってしまっている。そうしますと、現在の経済政策を続ける限り、均衡レートとしての二百四十円、五十円というものと輸出業界の採算レートとしての二百七十円、それとのギャップでどうしても業界の皆さん苦労が続くような気がしてなりません。そういう意味では、これは業界の方方に申し上げる話ではないかもしれませんけれども、やはり政府の景気対策の見直しというのがどうしても必要になってきたということが、きょう一日のお話を伺っての私なりの感想でございます。  洋食器、双眼鏡それぞれ一つずつ簡単なことをお伺いいたしますが、そうした全体としての景気政策については、これは政府が責任を持ってやっていただかないといけない。しかし同時にやはり構造の問題があるように思います。そうした意味で、中山参考人の陳情書の中には産地振興対策というのが出ておりますけれども、いままでも付加価値の増大についていろいろと製品の高度化といいますか、努力をしてこられたと思いますが、韓国や開発途上国の追い上げの中で、さらに一層その輸出製品について付加価値を高めていく方法というのが今後ともあるのだろうか。もしくは関連のいろいろなその技術を身につけた方々が多いわけですから、金属の研摩について。そうした類似の業種への転換といいますか、そういうものについていろいろと皆さんも御検討されておると思いますけれども、どうした方向へ道を切り開こうとしておられるのか、その辺の自助努力の部分についてどんなことを考えていらっしゃるかお伺いをしたいと思います。  それから双眼鏡の業界もいろいろと御苦労が多いようですけれども、アメリカ輸出がいろいろな意味でむずかしくなっている。円高は、当然欧州向けの、円の対ヨーロッパ通貨向けのレートにも影響はしているわけですけれども、欧州向けについては今後どうなんだろうか。潜在的にはカメラなどのヨーロッパ市場というものも非常に大きなウェートを占めているわけでございますから、双眼鏡についても、先ほどのお話ですと、アメリカが四三%で、五ヵ国が七三、そうすると三割近いものが独、仏、英、カナダに行っているということになりますが、そうした方面へのさらに新しい市場開拓の努力というものがなされているのかどうか、その辺の見通し、さらに燕についてお伺いしたようなさらに付加価値の高い高品質の物への移行の努力というものが業界としてどういうふうに行われているのか、その辺をお伺いできれば幸いでございます。
  68. 中山一

    参考人中山一君) ただいまの御質問の付加価値の高い物、採算の合う物の開発に努力しているのかという御質問でございますが、お話しのとおり、私どもの工業組合でも、まず高級品の市場がいままで狭かったことに着目をいたしまして、各地に高級品の展示会等を開いて市場の開拓に努めております。ただ残念なことには、やはり大資本の流通市場でございましょうか、たとえば私どもが燕でお国の御許可を得まして燕ブランド、高級品を宣伝いたしましても、燕ブランドを打った物はおれは要らないよというような、むしろ何にも打たなければお前の商品は非常によい物だからおれは買うけれども、燕ブランドやジャパンを大きく打てばおれは買わないよというような問題等もございまして、その面ではいろいろかなり苦労をしてはおりますが、オーストラリアあるいはケルン、その他各地で高級品の展示会等を開きまして、その部分につきましては共同販売をやる等のことで徐々に成果を上げつつございます。しかしながら、やはり最も大量にアメリカの流通市場における輸入品のシェアというのは三千万ないし三千五百万ダースというふうに聞いておりますけれども、その中で二千万ダースぐらいがいわゆるホテル、レストラン等で使われる業務用であろうと言われておりまして、私どもやはりその面でかなりの量を出しておりましたもので、それがただいまのように円高の問題で急にまいりますと、非常に難儀するという形になっております。幸い小口ではございますが、ドイツあるいは英国等からそういった高級品の引き合いあるいはオーダー等も入っておりますので、これからもそちらに期待をかけております。  事業転換の件でございますが、これも洋食器だけに依存するということはいけないということにつきまして五年あるいは六年前からいろいろ話し合いまして、中には一部カーブミラーのようにもう事業化しているものもございますし、最近も事業転換業種に指定していただきまして、四社ほどが県の御許可を得たというふうに報告を受けておりますし、あわせて私ども及び個々の会社といたしましてもそれぞれ研究して、事業化できそうなめども一部ついております。皆さん、みんなそういうふうにしてやっておりますが、急にまいりました円高等のため、やはり資金的に難儀しており、また、事業転換の指定業種にはなり、あわせて自分のところは認可されたけれども、担保がないために中小公庫の借り入れが受けられないが、これを何とかしてほしいというような声も一社から出てまいりましたので、きょうも事務局に、そのことについて国あるいはその他にお願いしてくださいというようなことも言っておりますが、皆さん、みんな精力的にそのようなことを考えておられます。  以上でございます。
  69. 大塚岩夫

    参考人(大塚岩夫君) まず、市場のことでございますが、アメリカが四三%というようなことなんですけれども、われわれの双眼鏡の業界は、もう過去三十年ほど輸出しておりまして、現在百二十ヵ国に輸出され、ほとんどくまなく輸出して回っているというふうなのが現状でございます。それと、非常にむずかしいのは、価格の安いのがいいというふうなことなんですね。バイヤーのその要求は価格の安いの——高級品の志向があると非常にやりやすいんですけれども価格が安いのがいいという志向が非常に多いので、その辺のところがやはり、発展途上国の労働賃金の安さだとか、特恵関税とか、円高の問題等がかなり影響してきているというふうなことが言えて、これはアメリカの市場では、特恵関税の問題が円高に上回ってさらに厳しくなっていますけど、やっぱりヨーロッパ市場でもかなり影響を受けているのは事実でございます。  それから、そういうわけで、だんだん高級化をしていく努力はしたり、それから省力化、場合によったら手抜き等のコストダウンということも現在実際には行われているような状態で、そういうふうなことが将来影響を受けなければいいというふうなことも考えられるわけで、その辺のところには、各企業企業努力というものがいろいろ打ち出されているわけです。組合としては、何か抜本的な対策は、いまちょっと心当たりがないわけなんですけれども。  それから事業転換については、やはりまあ、ほかの企業もなかなか厳しいし、それに市場の占有率という問題が非常に企業のためには影響される問題がありまして、試みてもなかなかむずかしい。われわれの業者でも何回か試みて成功した例がめったにないような状態でございまして、その辺は苦しみながらも、現在のその業界で何か努力していった方がいいというふうなのが現状じゃないかと思います。  以上です。
  70. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 他に御発言がなければ、本日の調査はこの程度にとどめます。  参考人方々一言あいさつを申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお聞かせいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十三分散会      —————・—————