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1977-11-22 第82回国会 参議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月二十二日(火曜日)    午前十時九分開会     —————————————    委員異動  十一月十八日     辞任         補欠選任      中村 啓一君     森下  泰君      田代由紀男君     亀長 友義君  十一月二十二日     辞任         補欠選任      長谷川 信君     福島 茂夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         上田  哲君     理 事                 佐々木 満君                 玉置 和郎君                 浜本 万三君                 小平 芳平君     委 員                 浅野  拡君                 遠藤 政夫君                 亀長 友義君                 熊谷  弘君                 鈴木 正一君                 成相 善十君                 福島 茂夫君                 真鍋 賢二君                 森下  泰君                 高杉 廸忠君                 広田 幸一君                 安恒 良一君                 渡部 通子君                 小笠原貞子君                 柄谷 道一君                 下村  泰君    衆議院議員        修正案提出者   戸井田三郎君    国務大臣        厚 生 大 臣  渡辺美智雄君    政府委員        厚生省公衆衛生        局長       松浦十四郎君        厚生省医務局長  佐分利輝彦君        厚生省薬務局長  中野 徹雄君        厚生省社会局長  上村  一君        厚生省保険局長  八木 哲夫君        社会保険庁医療        保険部長     岡田 達雄君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        大蔵省銀行局保        険部保険第一課        長        萱場 英造君        国税庁直税部所        得税課長     小野 博義君        労働大臣官房統        計情報部情報解        析課長      中谷  滋君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○健康保険法及び船員保険法の一部を改正する法  律案(第八十回国会内閣提出、第八十二回国会  衆議院送付)     —————————————
  2. 上田哲

    委員長上田哲君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十八日、中村啓一君及び田代由紀男君が委員辞任され、その補欠として森下泰君及び亀長友義君がそれぞれ選任されました。  また、本日、長谷川信君が委員辞任され、その補欠として福島茂夫君が選任されました。     —————————————
  3. 上田哲

    委員長上田哲君) 健康保険法及び船員保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑を行います、質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 安恒良一

    安恒良一君 私は、先日赤字原因問題について、それからいわゆる今回の改正財政措置についていろいろお伺いをいたしました。率直に申し上げて赤字原因というのはたくさんあるわけでありまして、私はきょうはわが党に与えられた時間が二時間四十分でありますから、その範囲内で全部を済ますことができません。そこで、赤字の中の一つの大きな問題点と言われておりますところのいわゆる薬価問題について、少し厚生大臣以下関係局長にお聞きをしていきたいと思います。時間がありますれば、さらに赤字問題に関連をいたしまして老人問題等その他いろいろのことについても聞きたいと思いますが、まず私は、今日日本国民が、日本医療は薬づけになっていると言われて、大きな不安と不信を持っていると考えるのであります。そこで、この問題をまず解明をしてみたいと思います。  具体的には、一つは、健康保険財政赤字、これは薬に原因一つがあるんではないだろうか。第二番目には、日本医療は薬づけであると言われていますか、国民は薬の飲み過ぎではないだろうか。第三番目には、今日これまた大きな社会問題になっています薬害の背景には、薬の多用と副作用の軽視があるのではないだろうか。そして第四番目には、みずから内科医として診療にも携わっておりますし、また医事評論家でもあります川上武さんが、薬づけ医療は紛れない事実だとはっきり指摘をしています。そして、この責任は政府厚生省薬務行政保険行政、それと医療機関にある、こういうふうにこの原因指摘をしているのであります。そこで私は、これらの問題点解明をすることが、今度の医療保険制度改正に当たって国民が希望をしているところだと思います。  以下、順次こういう問題について解明を続けていきたいと思いますが、そこでまず最初にお尋ねしたいんですが、昭和三十三年に国民保険制度になりました。自来、この十年間に薬の生産額が急増して、私は、自由世界第二位にのし上がっていると言われておりますが、薬の生産額推移について、昭和三十三年から五十一年までについてひとつ御説明お願いをしたい。  それから第二番目に、ついでにこの中で説明していただきたいのですが、この薬の中でこの十年間に生産が急増していると言われているこの抗生物質製剤の四十一年から五十一年までの金額、対前年の増加率、指数、そういうもの等をひとつ説明をしていただきたい。資料があれば私にまずいただいて、その資料に基づいて説明をしていただきたい、こう思います。以上二点について質問します。
  5. 上田哲

    委員長上田哲君) 答弁に先立って安恒君に伺いますが、前回質疑で留保されている部分についてはいかが取り扱いますか。
  6. 安恒良一

    安恒良一君 前回の中で留保しております中で、これをやりますとまた二時間以上かかりますから、この中の第一点でありますところの抜本改正についてどの点をやるのか、それから実施の年月日はどうなのかということを聞いていますから、これだけはまず冒頭にやりまして、そして、この点委員長から御注意いただいてありがたいんでありますが、それをまずやり、続いていまの質問に入っていきたい。あとのところは、きょうのところは保留しておきます、また長くなりますから。
  7. 上田哲

    委員長上田哲君) 政府側に伺いますが、前回安恒委員質疑の中で、政府側答弁準備の不足から質疑が渋滞をいたしたと思います。よって委員長の判断は、次回にこの答弁を繰り越したのでありますが、本日も質疑を渋滞させないために、あらかじめ厚生省側に伺いたいが、答弁に対する十分な準備は完了しておりますか。
  8. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) しております。
  9. 上田哲

    委員長上田哲君) それでは、いま御質問の第一点の答弁お願いいたします。
  10. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 抜本改正につきましては、医療保険制度基本的見直しについて、先ごろ関係審議会から意見書が提出され、目下この意見書を踏まえながら、改正案検討を進めているところであります。制度改正は直ちに実現できるものについては五十三年から着手し、また中長期の準備が必要なものについては五十四年度以降に具体化してまいりたいと存じます。  なお、次のような事項につき、速やかに検討を加え早急にその実現に着手したいと思っております。  一、制度間格差是正、当面、健康保険組合間財政の調整を実施したいと存じます。五十三年度に立法し、法案通り次第、五十三年度中に実施をしたいと考えております。  二、本人家族給付水準格差是正等中心とする給付改善。  三、一部負担適正化合理化を図ってまいりたいと思います。これも五十三年度に立法をして五十四年度実施をしたいと考えております。  四、退職者継続給付検討。  五、付添看護差額ベッド歯科差額保険外負担の問題の改善、これにつきましては、次期診療報酬改定から逐次実施に取り入れてまいるつもりであります。  六、物と技術分離技術料重点診療報酬改善を図りたいと考えます。これも次期診療報酬改定から逐次実施をしたいと考えております。  七、実勢価格に見合った薬価基準適正化を図る考えであります。これにつきましても、次期薬価基準改定から逐次実勢価格に見合った改定をするよう努力をしてまいります。  八、適正な医療費支出対策推進、これは五十三年度から医療費支出について内容をしさいに検討しながら、その適正化を図ってまいるつもりであります。  九、給付に見合った保険料及び財政基盤に応じた国庫補助による保険財政安定化を図るつもりであります。五十三年度に立法化して給付内容改善時期に合わせてまいりたいと思います。したがって、五十四年度から実施をしたい考えであります。  十、保険料負担の基礎となる報酬合理的見直しを図るつもりであります。五十三年度に立法化を図り給付内容改善時期に合わせ、五十四年度から実施をしたい考えであります。  十一、老人保健医療制度整備を図る考えであります。極力準備をして五十四年度以降立法し、五十四年度以降実施に入るつもりであります。  十二、医療供給体制整備医療関係者養成確保を図っていくつもりであります。五十三年度より逐次実施をする考えであります。  十三、医薬品有効性及び安全性確保医薬分業推進及び薬害救済制度の確立を図る考えであります。これにつきましても、五十三年度以降逐次実施をする考えであります。  十四、健康づくり施策推進、五十三年度以降逐次健康づくり推進をやっていくつもりでございます。  以上が今後抜本改正主要項目として予定をしておるものであります。
  11. 安恒良一

    安恒良一君 委員長からも御答弁に注意がありましたが、これから内容を深めていくときにお願いをしておきたいのは、私、先日の答弁のやりとりを見ますと、医療問題は大変むずかしいわけです。しかし、物事によりましては、一つはやはりこの国民の側といいますか、その立場に立ってはっきり物を言うときは物を言う。これはなぜそういうことを言うかというと、率直に言って、国民の側に立ってはっきり物を言って、お医者さんの利害に関係する場合に、後から医師会からしかられたら困ると、こういうことですから、医師会の方にもうまく立ち回りたい、国民の方にもうまく立ち回りたい、こういう答弁をされますと、私は事態が長引く場合がある。もちろん、国民なり、被保険者側なりに問題があれば、それはそれなりにきちっと指摘をしていただく、お医者さんならお医者さん側に問題があればきちっと指摘をしていただく、こういうやり方をしないと進まないと思います。大臣はかなり度胸がいいんですが、関係局長になりますと両方に対して非常に気がねをされてやや答弁がもたもたすることが先日ありましたから、きょうは時間がございませんので、どうかそういう角度からこれから御答弁お願いをしたいと思います。  そこで、いま大臣から医療保険制度改正の基本的な考え方について触れられましたが、私は、こういうものが落ちておりはしないか、もしくはこういう危険性がありはしないかということについて再度質問をします。  第一点は、この配列をこう見ておりますと、これは必ずしも順序をあらわしているものではないと思いますが、第一、第二、第三までこれを見ますと、かなりまたやや財政対策がひとつ中心になる。ただ、第二番目に、「本人家族給付水準格差是正」というのがありますが、たとえば第一の問題は、当面問題になっております財政プールの問題であるとか、第三の問題は「一部負担適正化合理化」と書いてありますから、まあ「適正化合理化」だからいいじゃないかということでありますが、ややもすればこれは「一部負担」の金額をふやしていくことに発展をしかねないわけです。そういう問題については明確に五十三年度から立法としてやりたい。五十三年度ということになると、ことしの十二月の通常国会から来年にかけて五月まで行われるということになるんでありますが、それだけ意欲をお持ちだと思います。それならば、ほかの問題についても、私は、たとえば一つの例を挙げますと、「退職者継続給付検討」というのですね、これは非常に論議になっていますし、きょうも後からまた各委員から御指摘もあると思いますが、非常に元気で一生懸命働いているときに高額の保険料を納めている、退職と同時に国民健康保険に行かなきゃならぬ、七十歳になれば無料健康保険がある。だから、この間の谷間を埋めるために退職者健康保険制度というものについてかなりの議論があるわけです。こういう問題については立法の時期も実施の時期も、全然これは明らかにされておりません。  それからいま一つ、たとえば付き添いとか差額ベッド、こういう問題について、私は、これも時間がなくてまだ議論してないんですが、私は一部負担なら一部負担をやる。しかし、そういう問題については付き添いは要らなくする、差額ベッドはなくする、こういう中で一部負担が導入をされたり、さらに保険財政赤字のために、いわゆる赤字を充当していくために保険料率を上げるということであるならば、私は国民は納得するということを赤字のときに申し上げたんですが、こういう問題については次期診療報酬改定から逐一ということに、こうなっているわけです。ですから、これはいい意味で目の前にもう診療報酬改定もありますから、そういう意味で挙げられていると思いますが、どうかこれを運営をされるに当たっては、何となくまた財政対策だけが前に出るということがないように、ひとつそういうお考えをお持ちなのかどうかということについて、ちょっとこの順列その他から言うと心配をいたします。これが一つです。  それから第二番目は、「物と技術分離技術料重点診療報酬改善」の中で、私はこの前一日かけて議論した中で、すでに出来高払い制度にもう問題がある。でき高払い制度積み上げ方式、このことを再検討せざるを得ないという角度でいろいろ質問をしたんですが、ここに、「物と技術分離技術料重点診療報酬改善」という中で、出来高払い制度についても検討していくということで含まれているというふうに解釈をしていいんでしょうか。  それから、八の「適正な医療費支出対策推進」というのは、これまた私も時間がなくて議論しておりませんが、監査審査の強化という問題がこの中でやられるというふうに理解をしていいのでしょうか。  それから次は、十三の「医薬品有効性及び安全性確保医薬分業推進」のところにおきまして、私はやはりこの中において薬の流通機構の問題、たとえば一つの例を言うと、これは後から議論を展開していきますが、配給公社制度あり方などについてもやはり検討しなきゃならぬ。いまのように薬を扱うことによって、後から議論いたしますが、中間マージンがあるということは間違いだと思いますから、そういう問題についてもこの中で議論をしていくということでいいのでしょうか。  それから、十二の「医療供給体制整備医療関係者養成確保」の中に、これまた後から私は議論を深めていきますが、医療機関任務分担機能分化という問題があると思います。たとえば、診療所、有床診療所専門病院総合病院大学病院のそれぞれの機能分化、そうして相互に補完をし合う、こういう問題が私はあると思いますが、そういうような問題もこの中に含まれていわゆる抜本の中で議論をしていく、こういうふうに理解をしていいのでしょうか。  以上の点について、簡潔にひとつお答えをお願いしたいと思います。
  12. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 退職者医療の問題につきましては、これは老人保健医療制度整備という問題とダブっておるところがもちろんあるわけでございます。したがいまして、これにつきましてはそれらのもの等含めて検討をしたい、かように考えております。  それから、財政対策にだけ走るんじゃないかという御疑問につきましては、これは御承知のとおり、抜本改正と申しましてもお金のかかる仕事でございますから、財政を離れてお金だけを使うという計画を立てるわけにはまいりません。したがって、給付改善の充実というようなものにつきましては、収支バランスのとれた、当然整合性のある保険制度考えていかなきゃならぬ。したがって、財政対策だけに走るということはございません。  出来高払い制度の問題点につきましては、出来高払い制度にするか、請負制度にするか、人頭方式にやるか、いろいろな方法がございます。ございますけれども、出来高払い制は、出来高払い制の特徴もありまして、現在まで定着をいたしております。しかし、その中には多少矛盾するものもございますので、そういうような矛盾を極力排除をするという方向で検討を進めてまいりたいと考えております。当然、健康保険を充実するためには収支バランスをとらせるということでございますが、放漫な支出をしておいて、保険税を上げたり、一部負担を上げたりというようなことは一番先に許される問題でございません。したがいまして、審査とか監査という問題につきましては、もっと有効的な社会の公正を確保するような方途も当然あわせて検討をしなければならない、かように考えておる次第であります。  薬の問題につきましても、いろいろ問題点がございます。ございますが、われわれといたしましては配給公社をつくるということは目下考えておりません。  診療所病院等機能分化の問題につきましては、一つのりっぱな考え方でございまして、私はこの点は当然に診療所専門病院、あるいは総合病院あり方というようなものについては深く検討をしていく必要がある、かように考えております。
  13. 安恒良一

    安恒良一君 いや、いま配給公社をつくることを考えているかと聞いたんじゃないんですよ。そういうことについても薬問題の一つとして、流通機構の問題を含めて議論をするのですかとこう聞いているんですから、大臣考えてなくてもいいんですよ。そういうことをこの中で含めて議論をしていくのですかということを、議論しますね、流通機構問題ということで。
  14. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 議論は当然あって私は何ら差し支えない、そう思っています。
  15. 安恒良一

    安恒良一君 それでは、いまこれの問題についてはこれより以上もう時間がとれませんから、どうか私は抜本改正というものは、いま言ったように全体をやはりこの際洗い直す、その中でできるだけ早期に実施できるものからどんどん実施をして、国民医療を守っていくと、こういうことでやっていきたいと思いますので、これを終わりたいと思います。  そこで、続いて、すでに前に質問いたしました
  16. 上田哲

    委員長上田哲君) ちょっと途中ですが、三点保留として委員長に付託されておりました問題は、質疑者の御意向を勘案いたしまして、あと二点は自後の審議に付することとしたいと思います。よろしゅうございますね。
  17. 安恒良一

    安恒良一君 はい、結構です。
  18. 上田哲

    委員長上田哲君) 厚生省に申し上げますが、そのあと答弁準備についても十分な態勢を組んでいただきたい。  第二点。当委員会内の資料配付については、あらかじめ委員長に許可を求めるようにお願いをいたします。
  19. 安恒良一

    安恒良一君 薬問題について、私がお聞きいたしました医療薬品生産額、それから、これも増加率をわかるように、昭和三十三年を一〇〇とした場合に五十一年がどうなっているか、これは総数、それから抗生物質増加率も含めてひとつ御答弁を願いたいと思います。
  20. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 用意いたしましたのは、昭和三十六年が実は皆保険達成時点でございますので、三十六年の医療保険達成時点から五十一年までの資料を用意いたしてございます。お差し支えなければ他の委員のお手元にも配付をさせていただけたらと存じますが、委員部の方に差し上げてございます。資料のプリントは委員部の方にお預けいたしておりますので。  昭和三十六年に皆保険達成されまして以来、五十一年の統計によりますと医薬品の総生産額は二兆一千六百二十四億三千六百万円、こういうことでございまして、三十六年におきましては二千百八十億七千五百万円でございましたので、この皆保険達成以降の十五年間で約十倍の生産額となっております。で、この間の十倍の生産額推移の中で際立って生じました中身の変化は、抗生物質製剤が非常にこの十五年間で伸びておりまして、三十六年を一〇〇といたしますと、二三七三、約二十四倍の伸び抗生物質としては金額面では占めております。昭和四十五年ごろまでは、第一位が実はビタミン剤であったわけでございますが、このビタミン剤が四十五年以降抗生物質に取ってかわられまして、いま申し上げましたような数字になりました。約二十四倍の伸びということになっております。全体が約十倍で、抗生物質が約二十四倍。この抗生物質以外に非常な高い伸びを示しておりますものは、代謝性医薬品でございまして、これが約二十七倍でございますが、金額的には、全体の中で占めますシェアは、代謝性医薬品は約一〇%でございますが、抗生物質は、五十一年度の統計によりますと、全体の生産額の中の約二四%、つまり四分の一が抗生物質によって占められるという傾向を示しているところでございます。
  21. 安恒良一

    安恒良一君 いま中野さんは、皆保険達成のときからということで三十六年を持ってきた。私が質問したのは、皆保険制度実施されるのは昭和三十三年ですから、まあしかし三年のことをここで言わないで。  そこで、私は、これを少し整理してみたいんですが、なるほど抗生物質の使用が、いま言った、うにもう三十六年から二十四倍になっています。しかし、抗生物質がうんと開発されて、どんどん使い出されましたのは、一つは四十一年ごろからだと思いますから、四十一年から見ましてもこれが八倍になっているということですね。  それから、薬の方はこれは十倍ということでありますが、これは、私は三十年から統計をとって見ていると、やはりこれも二十四倍になっています。いずれにいたしましても、非常な勢いで薬が伸びているわけです。ところが、この薬の八割は、いわゆる医家用ということで、医者医療現場で消費をされているというふうに思いますが、それでよろしいですか。
  22. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 仰せのとおりでございまして、いまからほぼ十年ほど前には大体医家向けの薬と大衆薬、いわゆる一般薬との比率は七対三と言われておりましたが、最近におきましては医家向けのいわゆる薬品が八一%程度大衆薬一般薬が一九%程度比率になっております。
  23. 安恒良一

    安恒良一君 そこで、医療費の中に占める薬剤割合がどうなっているのか。これは、もう私、ずっとこれを専門にやっていましたからお聞きしないで、大体、最近は四〇%をちょっと割っていますが、ほぼ四〇%というところをずっと今日まで推移をしてきている。最近三七ぐらい。そこで、これを世界の各国の医療費の中で見ますと、これまた、一々答えていただくのは時間がありませんから、私の方から言いますと、日本が四六・四%、英国が九・四%、アメリカが一三・八%、カナダが一四・二%、西ドイツが一九・五%、いずれも一九七三年の統計であります。オランダイタリア、これはオランダが一八・一%、イタリアが二二・七%。これは一九七一年の統計なのであります。いずれも日本の半分以下なのであります。  ですから、こういう点から見て、世界医療費の中で、日本薬剤割合が非常に多い、こういう点について——こう言えばすぐ計算方法か違うと、こう言われると思います。私はいままで皆さんが答えたやつは全部読んでおりますから。そこで、ただ単に、計算方法が違うということじゃなくして、私は非常に高いと思いますが、この点についてどういうふうにお考えなのか、またどこに問題があるんだろうかということについて、とりあえず、総医療費の中に薬剤費の占める割合が非常に高いということについて考え方を聞かしていただきたい。
  24. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 先生御指摘のように、最近におきまして総医療費の中に占めます比率は、一番新しいところで三七・三%。それから、国際比較から見ましても、各国に比べて非常に高い。確かに、先生からすでにお話ございましたように、国際比較のとり方の基準というのが違う点があるにいたしましても、日本の場合には薬剤比率が高いということがあらわれております。  一つは、薬剤費の関係につきましては、技術料との相対的な関係ということもあるわけでございまして、先ほどお話ございましたように、かつては四〇%以上ということで、昭和四十八年には四六・四%という薬剤費の比率だったわけでございます。しかし、その後の診療報酬改定が二回、三回ございまして、その結果、逐次技術料をふやしていくというようなことから、最近では三七・三%ということで薬剤比率は若干は下がっているわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、総医療費の中で薬剤費のふえる、増加傾向ということは、やはり一つの大きな問題であるわけでございまして、私ども考えておりますのは、慢性疾患と疾病構造の変化なり、薬学の進歩による新薬の開発等によります医薬品の増加量ということも考えられます。具体的な例で考えてみました場合に、慢性疾患の増加等によりまして、一処方当たりの投薬延べ日数が昭和四十五年には五・〇〇日ということでございましたけれども、五十年におきましては六・四五日ということで、投薬延べ日数が過去五年間で一・四五日も延びている。それから、諸外国と比較しました場合に、これは最近の十年間でございますけれども、一九六五年から七五年にかけましての薬剤関係支出が、イギリスでは三・一倍になっています。それからアメリカでは二・二倍、西ドイツでは四・三倍になっておりますのに対しまして、わが国では、同期間で、十年間で五・三倍ということで、確かに御指摘のような薬剤費というものがふえる傾向にあるということは言えようかと思います。
  25. 安恒良一

    安恒良一君 計算方法の違いというのは私は承知していまして、これを余り計算方法の違いを強調されますと、それでは計算方法をそろえてひとつ資料を出してくれと、こういうことになります。そうすると、なかなかいますぐはできないでしょう。私は分子、分母の違いはよく知ってます。私は、それをそろえてみても、日本は高いと思いますから、あなたがもしも計算方法が違うんだから高いという、衆議院段階におけるような御主張であるならば、計算方法を統一をして比較をしたやつを聞かしてもらいたいと思います。  それから第二番目に、これもひとつ聞かしてもらいたいと思いますが、新薬の開発がいわゆるコスト高を生む、こういうことをいま言われました。それならば、この十年間に製造承認をされた新薬はどのくらいあるのか、品目はどのくらい開発をされたのか、それがどの程度薬に、いわゆる薬剤費のふえることに影響があるのか、このことですね。  それからいま一つは、疾病構造ということを言われましたが、私は国民の病気構造がそう急激に変化したとは、わが国だけが変化したとは思われないんですね。成人病その他がふえているということは、わが国もありますが、諸外国もあると思うんでありますが、そういう点から言うと、わが国だけが疾病構造が特別に薬を必要とするというふうに考えられませんが、いまあなたが言われた点についてどうなんでしょう。  それから、その次にお聞きをしたいことは、やはり薬の生産量を見なきゃいかぬと思う。ですから、わが国の場合の人口比率で、人口との対比で薬の生産量がどうなっているのか、これも見ないと正確でないと思いますから、人口比率、人口との対比で薬の生産量が、いま私が申し上げた世界各国とどのような関係にあるのか、これをひとつ聞かしていただきたい。  それから、その中でひとつ、中野さんは抗生物質がふえたことを認められましたが、最近の一年間で抗生物質の使用量が国民一人当たりどのくらいだろうかと。これは平均で見るしかありません。これは国家が検定されていますから、検定件数から逆算をしてみるしか私は見ようがないと思うんですが、国民一人当たりの抗生物質は何グラム使われているんだろうか。この点について、ひとつ以上のことについて考え方を聞かしていただきたいと思います。
  26. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 前段の方の保険関係についてお答え申し上げます。  医療費に占めます薬剤費の比率につきまして、国際的な分子、分母のとり方が違うということで、一概に比較できないということは私ども申し上げているわけでございますけれども、特に諸外国の場合には、薬剤費の比率という場合に、院内処方、入院分の薬剤費というものを除いて計算しているということになっております。そこで、日本の場合に先ほど三七・三%という数字を申し上げましたけれども、諸外国並みに逆に病院の入院分の薬剤費というものを除外して計算するとどういう数字になるかということでございますと、三一%ということでございます。しかし、入院分を除きましても、やはり諸外国に比べまして数字としては高いということは事実でございます。  それから、疾病構造の変化、特に老齢化の問題でございますけれども、ちょっと手元に数字ございませんけれども、日本老人比率というのは、まだ諸外国に比べまして、先生御承知のように非常に低いわけでございますが、そういう意味で、ここ数年ますます高齢化社会が進んでくるというようなことから、年々老齢者がふえてくるということで、そういう面での慢性病なり長期疾患というものがふえてくるということは、諸外国に比べまして日本老人比率が非常に低いということは言えようかと思います。
  27. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 過去十年間の新発医薬品、これは安恒委員御承知のとおりに、四十二年以降新しい薬の製造承認の厳格な基準が制定をされまして、これに従って基礎実験データあるいは臨床データのとり方が非常に時間のかかる方式に切りかわったわけでございます。そのようなことから、いわば新薬の開発費用が過去に比べまして非常に高くつくものになったことは事実でございますけれども、その四十二年以降今日まで、薬価基準に収載されました新発医薬品の品目数は四百三十二品目でございます。この中には、現在いろいろな議論を生んでおりますところの抗生物質セファレキシンの系統のものが多数含まれておりまして、これらのものが厳格に薬の使用量の増加、金額面での増加にどれぐらい寄与しているかということは、正確には計算いたしかねるわけでございますが、この新発医薬品医療費の押し上げということにつきましては、疑いもない事実ではなかろうかというふうに考えております。  それから、次に御質問の、生産量の統計から見てどのようなものであろうかということでございますが、いわば生産量を一人頭に計算いたしたものが国内消費量に対応するというふうに考えますと、現在手元に入手できる資料、OECD発行の化学産業についての統計数字でございますが、日本の場合、一九七三年の統計が大体ヨーロッパに対応する数字がございますけれども、その時点におきましては、当時の為替レートで計算いたしまして、西ドイツが人口一人当たりの生産額が五十三・一ドルでございました。これに対してその時点では日本は四十六・七ドルでございまして、西ドイツに次いで一人頭の国内生産高が多いということは数字的にも確認されるところであります。これに比べますと、たとえばその次のフランスが四十三・八ドル、アメリカが三十九・九ドルというふうなことでございまして、これらにつきましては、ただそれらの国のいわば医療保険制度医療保障のあり方も薬のいわば使いやすさということに影響している面もあろうかと存じます。しかし、結果的には西ドイツに次いで日本の一人頭の医薬品消費量は多いということは事実でございます。
  28. 安恒良一

    安恒良一君 私が聞いたことにお答えになってません。私は、わが国の場合、人口の比率との対比で薬の生産量が諸外国——金額でいまあなたが言った。  それから、私が第二番目に聞いている、全体がなかなかむずかしくなってはいけないと思って、一年間の抗生物質の使用量がどのくらいあるのか、一人当たりに何グラムあるのか、このことを聞いているわけです。このことによって、いま中野さんも言われたように、抗生物質が二十四倍も伸びているんですから、これで医療論争をやろうと思って私は抗生物質がどのくらい一人当たり使われているのか、このことについてお聞きをしておるわけです。
  29. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 先ほどの御質問に対して補足をいたします。  国内の生産額につきましては、日本は全体的に世界第二位でございまして、これはアメリカに次ぐ生産額でございます。これを人口当たりに割り直しましたものが先ほど申し上げた数字でございます。  抗生物質生産数量、これを一人頭で割り返してみますと、年間一人当たり大体七グラムの消費量になっております。これは完全に健康な人まで含めての平均額でございますが、数字的にはそういう七グラムという数字が出ております。
  30. 安恒良一

    安恒良一君 私の調査の方でも、平均で七グラム、これは赤ん坊からおじいちゃん、おばあちゃんまで含めてになるんですが、そうしますと、これは飲まない人もあるわけですから、一人当たりの消費量というのは数倍になるということになります。  そうしますと、これはアメリカに比べまして国民一人当たりの抗生物質の使用量が二・五倍、アメリカに比べて。それから、OECDの五ヵ国に比べても、これは残念ながらOECDの統計は使用金額しかわかりませんでしたから、それで私、対比をしましたが、日本がはるかに多い、抗生物質ですね。  そこで私は、抗生物質の使用がなぜ日本の場合多いのか。いわゆる本来抗生物質を投与しなければならない患者が外国に比べて多いのかどうかということですね。アメリカに比べて大体一人当たり二・五倍なんですから、OECDに比べても金額で比較して多いわけですから、抗生物質を投与しなきゃならない、そういう病気、患者が日本の場合は外国に比べて多いのだろうかどうだろうか。この点についてお答えを願いたい。
  31. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) これは、あるいは医療内容に関することでございますので、医務局長から御答弁した方が適当な面もあるかと存じますが、私の知っている範囲内で申し上げますと、特に日本の場合では諸外国に比べて抗生物質を必要とする患者が特に多いというようなことはまず考えられないかと存じます。ただ、これはいかなる医薬品を何といいますか、たくさん使うかというようなことは、その国々のいわば医療の中身の問題でございまして、たとえばアメリカなんかの場合には、生産の第一位が抗生新薬と申しますか、精神神経安定剤が第一位。ヨーロッパの場合には循環器用の薬品が第一位というふうに、いわばその国々の医療慣行によりまして、その薬のいわばシェアが異っているということは事実でございます。
  32. 安恒良一

    安恒良一君 これもまた論争してもあれですが、私は医学部を卒業しているわけじゃありませんから、私は日本化学療法学会の理事長であり、帝京大学で臨床をやっておられます藤井先生が論文を発表され、お書きになったのを読みました。その中にこういうことを言われています。いわゆる抗生物質の過剰使用、これが警告されています。日本で最近非常にふえたと。自分が臨床をやっておって、それだけ投与をしなきゃならぬという病名がふえたとは考えられない。患者のおなかの中で抗生物質のヘドロができるのではないだろうかと、こういうことを藤井先生が、いわゆるこの方面の権威の、しかも現実に臨床もおやりになっている先生が警告をされてます。ですから、私は率直に言って、いま中野さんが言われたようなことで、抗生物質の使用を説明することはできない。私は率直に言って、自由社会における医療というものは非常に公共性が強調されております。しかし、いつの間にやら医療に対して、経済性の論理が優先をしているのじゃないか。いわゆる人命のとうとさを忘れて、そういうところに私は医療問題で臨床の先生自体か、おなかの中でヘドロができやしないかとおれは心配をしていると、わが国のかなりこの方面の権威者の先生自体がそういう警告をされている。こういう問題がある。そしてこのことが残念でありますが、同時に健康保険財政赤字原因一つ連なっているわけなんです。このことについて、やはり厚生大臣としてそれをどうお考えになるのか。私は薬づけの原因をどこに求めたらいいんだろうか、こういう点についての考え方、それから残念ながらいろんなところを検討しても薬づけになっている、その原因がどこにあるんだろうかということについて、大臣のお考えをお聞かせを願いたいと思います。
  33. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 学問的なことは私よくわかりません。いま両局長からそれぞれ日本の薬が諸外国に比べて多い理由というものがいろいろお話がありました。いずれも私はそのとおりだと思います。しかしながら、これは証拠があって言うわけではございませんが、現実の問題として、巷間言われておるところは、これは薬価基準実勢価格とに差があり過ぎるのではないか。したがって、現在のバルクライン九〇、オンライン売買方式というのが適当なものであるかどうかというようなことなどが議論されるのは私はあたりまえのことであると。やはり、薬価基準実勢価格に差があれば、その差の分だけは実際は薬代としてよけいに数字の上にも乗ってくるわけですから、そういうようなことも薬が多いと言われる原因一つに私はなっているのではないであろうかという素朴な疑問は持っております。したがって、抗生物質を飲み過ぎているか飲み過ぎていないか、それと関係があるかないかということは証拠がないから申し上げられませんが、今後の抜本改正の過程においては、これは十分に検討していかなきゃならない問題であると、こう考えております。
  34. 安恒良一

    安恒良一君 これも時間がありませんから、それじゃ私は、私の方から原因を挙げて、これは大臣でお答えいただくのか局長になるのかわかりませんが、私は薬づけの原因がどこにあるかということで考えますと、一つは、いまの診療報酬制度あり方にあるだろう。いわゆる薬なり注射を多用すれば多用するほど水揚げが上がる、いわゆる出来高払い制度になっている。これが一つ原因ではないか。  第二番目には、いまこれから議論していきますが、薬価基準において実勢価格薬価基準の間に余りにも乖離があり過ぎる。これは後で具体的実例を挙げて、証拠がないとおっしゃいますから証拠を挙げて大臣に聞きますが、そういう問題がある。  それから第三点目は、やはり製薬業界のあり方ということ、これは自由主義社会でありますから一般の経済と同じだということで、いわゆる利潤追求型の産業に製薬業界というのがある。しかし、国の生産量の八割が医療に使われているということになって、単に利潤追求型の産業の形態であっていいんだろうかどうだろうか。これはその中には複雑な流通機構の問題もあります。  それから第四番目には、私はやはり厚生省薬務行政あり方、これも後から議論しますが、そういう問題の不備ですね。厚生省薬務行政の不備。  それから第五番目には、お医者さんのモラルの問題。  そして第六番目には、私は国民の、特に患者側の薬に対する認識の問題。これはどういうことかというと、このごろは薬害ということが非常にわかってまいりましたが、従来ともすればたくさん薬をくれるお医者さん、たくさん注射を打ってくれるお医者さんほど親切な医者さんだと、そういう観念もやはり一部国民にあったと思う。こういう私は公正に考えて六つの点が、これは薬が日本が他の諸外国に比べて非常に多い原因だというふうに思われますが、こういう点についてどうなんでしょうか。
  35. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 非常に重要な問題でございます。診療報酬制度の問題につきましても、出来高払い制というようなことについては、やはり出来高がなければ払わないわけでございますから、よけい薬をくれれば点数がよけい上がるという点も一つはありましょう。ありましょうけれども、だからといって出来高払い制が悪いとはなかなか言い切れない。請負制にしても契約で何人の患者を自分で一定の金額で見るということになっても、これも裏返しに言えば、それは患者を見ても見なくても同じ金が入るということになると、結局は不親切になって患者を見ないという、反面別な欠点が出てくるわけですから、だけれども、出来高払い制に欠陥がないか、どんなものでも欠陥がないものはない。しかし、その欠陥をできるだけ少なくするということは、私は必要だということを最初から申し上げているわけでございます。  医師のモラルの問題は、これは出来高払い制であろうと何制であろうと、どこだってこれが欠如してしまったのではみんな逆用されるということになるわけでありますから、この問題は全国、世界、古今東西を問わず共通の問題であって、やっぱり医のモラルの確立ということは、これはもう欠くべからざる問題であると、かように考えております。  厚生省薬務行政の不備ということにつきましても、完璧というわけにはなかなかこれはいかないでしょうから、不備は絶対にないとは私は言えないだろう。しかし、そういうものは一つ一つあれば直していくという方向でやる以外にはないと、かように考えておるわけであります。  診療報酬制度の問題につきましても、したがいまして薬で利益を上げるということになれば、よけい薬を飲ませるという傾向は人情の常として出てくる可能性、危険性がある。したがって、その薬では余りもうからないように薬価基準実勢価格の差を詰めろ、そのかわり、それは医者一つの収入になっておるんだから、これは技術料に振りかえろという議論は、もうかねがね安恒委員等も御主張のとおりであって、まあ少しずつではあるがいままでもやってきておることであって、これをこの次はもっと抜本的に大幅にやる必要があるだろうと、こういうわけです。
  36. 安恒良一

    安恒良一君 私はいま、大臣との間に出来高払い制度のよしあしを議論しているわけじゃありません。私はやはり診療報酬方法としましては、大臣も言われましたように、登録人員の人頭払い、それから包括払い、総額制請負の方式ですね、出来高払い制度等々いろいろありまして、このうちのどれか一つにした方がいいのか、それとも複数制にした方がいいのか、こういうことはいずれ抜本の中で議論をしなきゃならぬ問題だと思っていますから、いま大臣、何か私がさっきから言うとすぐ出来高払い制度をやめろと言っているように聞こえて、その防護に一生懸命お回りになってますが、大臣、そこらはひとつ今後の議論の問題ですから。ただ、私は出来高払い制度というものは、残念ながら薬を多発さしているということの原因一つだということを指摘をしておりますから、そこのところはひとつ誤解がないようにして。  そこで、これもこの問題だけでまた大臣議論を続けておりましても時間がなくなるから、私はやはり原因が六つある、いま言ったように。そこで、じゃ解決策は何だろうかということにこれを——私は私なりの代案を持って聞いている。  私の考え方を申し上げますと、第一は、技術中心医療費体系、いわゆる薬によってもうけをする、薬を出せば出すほどもうける、お医者さんはこれを潜在技術料と呼ばれています。私たちはこれを中間マージンと呼んでいます、中間マージンですね。その中間マージンなどをやはりなくしていくようにしなきゃならぬと、これは一つ思います。  それから第二番目は、いま大臣も言われましたように、いわゆる薬価基準あり方、これは後から論議しますが、薬価基準改正、これはバルクラインの引き下げ問題等を含めて薬価基準改正をやっていかないと、いわゆる実勢価格薬価基準が合うようにしていかなきゃならぬと思います。  第三番目は、やはり医薬分業を徹底をしていかなければならぬだろうと思います。  そして第四番目には、いわゆる医者のモラルの確立と、いま一つは、やはり私は広く国民の一人として国民の安易な薬に対する考え方、大分変わってまいりましたが、まだまだ国民も薬をたくさん好むという傾向が一部にありますから、私はやはり総合的にお医者のモラルの確立と同時に、国民の薬問題についても——ただここでお断りしておきたいのは、いわゆる薬というものは国民側が判断をしてもらうわけじゃないんですね。よく世間話にあります、かぜをひいたらふろしき包みいっぱい薬をもらったという話が世間話にございますが、そういう問題は、国民側からふろしき包みいっぱい薬くれと言った覚えはない。これは明らかに医療に必要という判断でお医者さん側が出されるわけでありますから、その意味から言うと私はやはり医者のモラルの確立ということはきちっとやっていかないと、世間によく言われている、腹が痛い、かぜをひいたと言ってふろしき包みいっぱいの薬という問題は解決はしないと言われている。こういうような問題が私は解決策としてあるというふうに思います。ですから、この問題についてまた大臣一つ一つ聞いていくと時間が長くなりますし、こういうことは後から担当局長なりの考え方をただしていきたいと、こう思いますが、私は薬のいわゆる解決策というものはいま言った四つをやるというふうに思います。ですから、これは後で、大臣じゃなくて、担当局長の方からどういうことなのか、いま言ったようなことについて考え方を、大臣は一般論で答えられますから、やや問題が専門的でありますから、ひとつ担当局長の方からいま言われた四つの問題ですね。技術中心医療費体系にやっぱり改めていかなければならぬ、薬価基準実勢価格に合わせるようなこれは調査方法から、バルクの引き方を含めて薬価基準をやはり改正していかなければならぬ。医薬分業を徹底的に進めていかなければならぬ。第四番目にはお医者さんのモラルを確立をする、と同時に、国民も安易に薬を好むという傾向を改める。この点が当面の解決策だというふうに考えますが、どうでしょうか。
  37. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 技術中心診療報酬体系の問題、これはもう御指摘のとおりでございまして、中医協におきましても薬のマージンということを基礎にしてその医業の経営を考えるというのは、あるべき方向ではないというようなことから、当然技術中心考えるべきであると、御指摘のとおりだと思います。そういう意味で、具体的に問題になりますのは、保険で決めております薬価基準とそれから実勢価格というところに差がある。そのためにいま御指摘ございましたマージンなりあるいは潜在技術料という問題が出てくるわけでございます。そういうような意味からも、現実の薬価基準につきまして、できるだけ実勢価格に近づけていく、これは努力していかなければならない方向であるというふうに考えております。そういう意味で、今回の銘柄別もその第一歩であるというふうに御理解いただきたいと思います。  三番目の問題は薬務局の問題でございます、私の方ではございませんので。  第四番の医師のモラルの確立なり国民考え方、方向としては御指摘のとおりだというふうに考えております。
  38. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 医薬分業が、いわば一種の過剰投薬というものに対する抑制になるという観点から、医薬分業推進する必要があるということはまことにそのとおりであろうかと存じます。四十九年の診療報酬改定の際に、安恒委員御承知のとおりに、処方せん料の大幅引き上げが行われまして以来、処方せんによる、分業形態によるところの投薬の件数は約三倍にふえておりまして、ただ現時点ではまだ外来の投薬全体の中に占める比率はせいぜい三%程度でございます。しかし、わずかではございますが、それが急速に伸びつつある、この傾向をより助長いたしまして、より進んだ分業の方に持っていきたいというふうに考えておりまして、その点は安恒委員の御指摘のとおりであろうかと存じます。
  39. 安恒良一

    安恒良一君 それでは解決策については意見が皆さんと一致をしました。  そこで、今度はその薬の中心の課題であります薬価問題について触れていきたいと思いますが、医療機関が仕入れて投薬する医療用の薬品については、健保財政では実費弁償をたてまえとしているというふうになっていると思います。そして、いわゆる薬価基準については、別に厚生大臣が定める、こういうのが健康保険法で規定をされています。そして薬価基準とは何か、これももう時間を省くために私から申し上げますと、薬価基準とは診療報酬における薬剤費の算定の基礎となる薬剤の標準価格であるとともに、保険医療に使用できる薬剤の範囲を示す品目表である、以上が薬価基準だというふうに思いますが、時間を省くために私の方から言いましたが、それでよろしゅうございますね。
  40. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) そのとおりでございます。
  41. 安恒良一

    安恒良一君 そこで、お聞きをしたいのでありますが、果たして医療機関では薬価基準の何割程度で購入されているというふうに思っておられますか。購入価格と実勢価格の現在について説明をしてもらいたい。特にこの中には、一つはたとえば国立病院、国立療養所等における主要医療薬品の購入状況の中で、基準がどうなっているかということが一つ。  それからいま一つは、一般にいわゆる一般診療所病院等における薬価の基準、これは薬価基準はもう法律で明確にされていますが、実勢の購入価格の現状について、ひとつ皆さん方の考え方を聞かしてもらいたいと思います。
  42. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 最近の調査はないわけでございますけれども、その後薬価基準が何回も改正になりましたので、現実保険局の方ではどの程度かというのはよくわかりませんけれども、四十五年におきましては三〇%程度というふうに考えております。
  43. 安恒良一

    安恒良一君 そんな古い調査でないですよ。四十五年とは何ですか。これだけ薬価の問題か大きい問題になっているのに、少なくとも薬価の実勢価格薬価基準の乖離がどの程度あるかということを、四十五年の調査で答えられても私は理解できません。中医協なんかでも議論をしているし、社会保険審議会等でも議論をしておりまして、四十五年の資料でそういう答弁は、委員長、困ります。十年前ですからね。少し最近の資料で答えていただきたい。
  44. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 私どもの方で調査資料としてございますのは、医療経済実態調査——先生も御承知の医療経済実態調査というのが基礎資料になるわけでございますけれども、医療経済実態調査につきましては、昭和四十五年に実施された後、その後昨年実施されたということで、現在その集計中でございますので、現在その数字はまだ出ておらないという段階でございます。
  45. 安恒良一

    安恒良一君 いや、私も去年の秋まで中医協をやっていましたから、医療経済実態調査は知ってます。私が聞いていることは、それじゃなくしても、これだけ薬問題についていわゆる乖離の状況が国民でやかましく議論になっているわけですね。ですから、医療経済実態調査だけじゃなくして、私はあなたたちが当然調べられるべきだ、調べる方法はいろいろあるわけですから。ですから、それで大体どの程度の乖離があるのかということを聞いているのに、あなたは四十五年当時三〇%だと、これだけで、たとえば大臣抜本をやるやると、こう言われてますが、抜本の中で薬問題は、大臣もいま言われたように、実勢価格に合わせるようにしなきゃならぬと、こう言われておる。ならぬと言われておって、どうしてそういう調査がないんですか。たとえば、私の手元に調査室を通じまして、国立病院や国立療養所における主要薬品の購入状況というものを調べましたんですね。それと薬価基準とで見ればすぐ乖離がわかるわけです。ですから、あなたたちが本当にこれだけ薬問題が大きくなっているということであるならば、私は調べられたら薬価の乖離がどの程度あるということについて、そんな四十五年の資料で言われるんじゃなくて、ちょっと関係局長でよくそこで相談してください。そんなことではいけない。四十五年しかわかりません、なるほど中医協がやっている実態調査は四十五年ですね、それから昨年。しかし、これは中医協がやっている。しかし、厚生行政を担当する皆さん方が、保険局なり薬務局なりとして、やはり実際の乖離かどの程度あるのか。それは薬価調査をやっていると言えばそれまでの話でしょうが、そんな四十五年の資料ではだめだ。私は最近の少なくともことしの春の資料等、いろいろここに手元に持ってきているわけです。それといろいろ比べて議論をしたいのに四十五年の資料であなた答えられたんじゃ、これはどうにもならぬです。委員長、議事の促進について少し向こうに言ってください。少なくとも十年前じゃ聞いている国民納得しませんよ、それはあなた。
  46. 上田哲

    委員長上田哲君) 安恒委員の御指摘はごもっともと思います。資料を速やかに整備してください。
  47. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 国立病院、療養所についてお答えいたします。  国立病院、療養所におきましてはおおむね八割程度で購入いたしております。中身を見ますと、九割程度のものもあり七割程度のものもあるわけでございますけれども、八割程度となっております。
  48. 上田哲

    委員長上田哲君) 医務局長答弁は何年度の資料ですか。
  49. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 何年度と明確に申し上げられませんが、強いて申しますと、五十一年の資料というふうにお考えいただきたいと思います。
  50. 安恒良一

    安恒良一君 少なくとも私は、やはりきょうは、こういう問題について薬品の購入のいわゆる価格と薬価基準について質問をしますと、きのう担当課長が五、六人そろってお見えになったとき、ちゃんと言ってあるんだ。どうして少なくともそういういまのような、何年ですかと委員長が聞いたら五十一年なんて——そうじゃなくて、少なくとも私は、国立病院、国立療養所における主要薬品の購入状況というものを、あなたたちがお調べになればすぐ調べられることなんです。しかも、衆議院でも議論になっているんです、衆議院でも。参議院に来れば、またそういうことが議論になる。こういう点についてどうして資料を、いまのような平均で八割程度——私はここに一覧表持っています、一覧表を。こういうことについてどうして用意をしないんですか、あなたたちは。そして、四十五年の話とか、いや五十一年でしょうと。物事を私はやっぱり論争するときには、正しくそういうものについて——私は厚生省じゃありません。しかし、いろんな政府委員の御協力を得たり、調査室の御協力を得たり、私自身が努力をして、一つの品目別にいわゆる購入価格、数量、全部持ってきています。ですから、そういうものに基づいて言ってもらわぬと。いや、七割のやつもあります、九割のやつもある、平均すると八割程度でしょう、これじゃ論争にならないですね。少なくとも、きょうは薬価基準問題が議論されるということになるなら。  というのは、私は、委員長、困るのは、私に与えられた時間は二時間四十分なんです。二時間四十分なのに、相手側は四十五年の資料答弁してみたり、局長は、頭の中で目の子算で五十一年でいわゆる八〇%程度だろう、これじゃ困る。こういうのは委員長、どうなるんですか。時間が、安恒君、おまえ二時間四十分でやれと言って、相手側がちゃらんぽらんなことでこういうことをやられたんじゃかなわぬですよ。議事さばきは委員長ですから、どうしてくれますか、これ。
  51. 上田哲

    委員長上田哲君) 安恒君に伺いますが、四十五年度の資料は、委員長の判断としても本日の具体的な審議にたえ得る資料だとは判断しませんが、今日の安恒委員質疑を進めるについては、この資料では不可能ですか。
  52. 安恒良一

    安恒良一君 不可能です。それは最低少なくとも、私は全病院を調べろと言っているんじゃないんです。国立病院とか国立療養所における主要薬品の購入状況等は、少なくとも五十年なら五十年とか、五十一年なら五十一年はそんなに薬数があるわけじゃないですね。私がそこで言っているのは主要な医療薬品と、こう言っているわけです。
  53. 上田哲

    委員長上田哲君) はい、わかりました。  厚生省に伺いますが、四十五年という古い資料でなく、新しい資料を取り寄せて答弁整備することは直ちには不可能ですか。
  54. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 医療経済実態調査を昨年実施して、現在コンピューターで集計中でございますので、現在は間に合わない状況でございます。
  55. 上田哲

    委員長上田哲君) 現在という意味は。(「五十一年があるでしょう、五十一年が」と呼ぶ者おり)
  56. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) ですから、国立病院の方は別といたしまして、私どもの医療経済実態調査、全医療機関でございますので、これはちょっと不可能だと思います。いま直ちにということは。
  57. 上田哲

    委員長上田哲君) そのコンピューター部分はわかりましたけれども、安恒委員質疑にたえ得る資料を、何らかの便法によっても速やかに整備することは不可能ですか。
  58. 安恒良一

    安恒良一君 いまの時間は差し引いてくださいよ、委員長
  59. 上田哲

    委員長上田哲君) はい、わかりました。  答弁、すぐせよとは言いませんが、その点の見通しが可能か不可能かについて速やかにお答えください。その点について答えることにも時間がかかりますか。
  60. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 国立病院、療養所の資料につきましては至急取り調べまして、資料を配布するなり、あるいは口頭でお答えするなりいたしたいと存じます。この件についてはしばらく時間をいただきたいと思います。
  61. 上田哲

    委員長上田哲君) 至急というのはどのぐらいの時間かということを聞いているんです。
  62. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) おおむね十五分ぐらいかと思いますけれども。
  63. 上田哲

    委員長上田哲君) その質疑を抜いて先へ進むことは不可能でしょうか。
  64. 安恒良一

    安恒良一君 結果的に、私は、国立の実情とそれから一般の実情とを対比をしながら議論しなきゃなりませんので、正確にやるためには、十五分なら十五分休憩していただいて資料整備してもらいたいと、こう思います。
  65. 上田哲

    委員長上田哲君) わかりました。十五分間というのは長い時間だとは思いませんから、質疑を円満に進めるためには、安恒委員がこのために費やした時間は六分間、その点を確認し、十五分間、本当に厚生省資料整備できるかどうか、できなければ自後の審議の日程を講ずることをも含めて、休憩いたします。    午前十一時二十四分休憩      —————・—————    午前十一時三十八分開会
  66. 上田哲

    委員長上田哲君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  佐々木理事から発言を求められておりますので、これを許します。佐々木君。
  67. 佐々木満

    ○佐々木満君 議事進行に関連をいたしまして、私から委員長お願いがございますので、申し上げたいと思います。  私どもは、いま健康保険法改正という大変大事な事案の審議に当たっておるわけでございまして、各党各派、委員長中心にしまして円満な議事進行のもとで十分審議を尽くそうということでこの審議に臨んでおるのでございます。理事会の決定に従って時間を守りながら、十分な審議をしようということで臨んでおるわけでございますが、先般来の委員会質疑応答、またただいまの状態を拝見をしたしますと、どうも政府側の方で資料の不足あるいは答弁の的確性を欠くうらみもあるようでございますので、どうかひとつこの審議国民の注目する審議でございますので、円満に、しかも十分審議ができますように、委員長から十分御注意をしていただきたい。どうかひとつ政府側も十分御協力をいただきまして、実のある審議になりますように、委員長から御配慮をお願い申し上げたいと思います。
  68. 上田哲

    委員長上田哲君) ただいまの佐々木君の御意見は委員長も同感であります。前回質疑におきましても政府側答弁準備が全きを期していないことに問題があるように感じております。ただいま御指摘のように、本法案はまことに国民生活の基底にかかわる重要法案であり、かつ委員会に付託されております審議の時間は非常に狭隘であります、円満なかつ迅速な審議の促進を図るために、その前提として法案提出者である政府側答弁準備の問題は当然なことであると私は思量いたします。前回等々の質疑内容にかんがみ、ただいまの佐々木理事の御指摘どおり、今後政府側が十分な反省の上に立って、答弁資料等々の整備に遺憾なきを期すよう、厳しく警告いたします。  なお、ただいま配付されました資料は、十五分間で整備されているんでありますから、審議経過中にこうした空白をつくることのないよう、さらに注意されるよう求めます。  休憩前、安恒君から求められておりました内容につきまして、まず政府側答弁を求めます。
  69. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) ただいまお手元に具体的な資料配付いたしました。資料は四十八年度と五十年度になっておりますが、五十年度で見ますと、ここにございますのは主要二十四品目
  70. 上田哲

    委員長上田哲君) ちょっと待ってください、資料か各委員に渡ってないそうですから。——大体回ったところで、後刻、足りない分は可及的速やかに配付せしめることといたしまして、答弁を認めます。
  71. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) お手元の資料には二十四品目が掲載されておりまして、これは国立病院、療養所の全薬品の約二〇%のシェアでございます。高いもの、安いものございますが、安いものではセファレキシンが七二・八%でございます。これはセファロスポリン系の内服用の抗生物質でございます。また、高いものでは加熱人血漿たん白でございまして、九九・六%となっておりますが、これらを加重平均いたしますと八一%となります。したがって、先ほどお答えしたように、おおむね八割で国立病院、療養所は購入しているものと考えております。
  72. 安恒良一

    安恒良一君 加重平均と言われたけど、加重平均の資料はここにありませんね。ですから、私の手元にいまいただいた資料では七八%ということで、加重平均といったら、またそれ出せということになるから時間かかるから、ですから、余りつじつまを自分の言ったことに無理に合わせないようにして、出た資料説明してください。  それから、私は委員長に申し上げておきますが、私は審議促進には協力しているつもりです。少なくとも私は、今度国会議員になったんですが、私が国会議員にならなかった前の、前国会の議事録も全部読んでいます。全部読んだ上で、詳細に点検をし、それを今日に引き直して私は質問しています。ですから、ダブった質問をしておりませんから、どうか審議の方は、そういうふうに、向こうさんの方かよく読んで、きちっとした現在の時点に引き直して答弁をしてください。  それでは、続いてまいります。私はこれは、国立がなぜ実勢価格で二割二分引きぐらいしかなっていないかということを後で問題にしたいと思いますが、一般の医療機関が購入をしている状況がどうなっているのかということで、ここで私は、もうこれもそちらに聞くよりも、私の考え方を少し申し上げてみたいと思うんですが、一つは、手元に読売新聞社が五十一年の秋から五十二年の二月までに、ダイレクトメール五社から医家と調剤薬局に送ってきた価格表の一覧表があります。それに一般の卸売業者を二社加えた、いわゆる九百五品目の安売り価格と少数の特価品のリストが私は新聞社の調査があります。それを見ますと、ここに大きな割引率が出ていることは皆さんもう御承知のとおりなんであります、これはすでに読売新聞社が発表しておりますから。それから、全国の自治体病院協議会の常務理事であります尾口さんが、これは全国自治体病院協議会でありますが、私的医療機関におけるところの値引き率というのが四〇から五〇、それから公的な医療機関で二五%、これだけ値引きがあるということを全国自治体病院協議会の尾口さんが、これは具体的に自治体病院で実態調査をしていますね。かなり実態調査をしまして、そしてその値引き率ということについて、これは勘でこのくらいということじゃなくて、私は手元に自治体が実態調査をした資料も持っていますが、これまた時間が長くなりますから、項目別は申し上げません。  それからいま一つ、私は一番最近のやつでやはり議論しなきゃならぬだろうということで、この手元に二つのダイレクトメールを九月分と十月分入手しました。これを後で何ならリコピーをして大臣に差し上げますが、九月分については四十一品目、半値以下であります。そして、そのうちの三十六品目の算術平均を出してみましたら八七・八%引きになっています。たとえば一つ、いま問題になりました塩野義のケフレックスですね、抗生物質ですが、薬価基準が二百九十四円ですね、三百プロ注文をいたしますと、いわゆる納入単価が百三十三円、そして四五・二%になります。それからセファレキシン、これは一番ひどいんでありますが、大塚製薬です。薬価基準が二百九十四円、千プロで一剤当たりが三十円でありまして、これはもう驚くなかれ約九〇%近い値引きになっています、等々これはいわゆる九月分です。  それから、こちらに同じく十月分のダイレクトメールがございます。これらを見ますと、これは十月分で見ますと、三十四品目が半値以下になっていまして、その中で二十六品目は驚くなかれ七六・五%引きです。こういうふうに薬が大量に実際に値引きをされて、医家に納められている。これは具体的なダイレクトメールであります。  でありますから、このように考えてまいりますと、私はいまのこの薬価基準というものが余りにも実勢価格薬価基準が開きがあり過ぎる、こういうふうに考えますが、私はまだそのほかに、たとえば私で調査いたしました都内の共済診療所における主要な薬の使用状況、値引き状況等についても調査をいたしました。いずれを見ましても、私は余りにも実勢価格薬価基準に乖離があり過ぎると、こういうふうに思うんでありますが、こういう点について大臣どのようにお考えになりますか。  以上、私は具体的に——何ならこれは大臣にいまそちらに持っていって、見ていただいたら結構だと思いますが、そういうふうに思いますが、どうでしょうか。
  73. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 先ほども先生から御指摘がありました際にお答え申し上げましたように、できるだけ薬価基準というものを実勢価格に近づけると、これは努力しなければいかぬじゃないかというようなことから、先般も従来のような薬価調査の方法でありますと、現実には銘柄によりまして、かなりいろいろな差があるというようなことから、一歩でも近づけようというようなことで銘柄別の薬価基準方式を、調査を採用したわけでございます。その結果、今般の薬価調査の結果は薬価ベースで申しますと五・八%ということで、従来の薬価調査に比較しますと、かなり大きな引き下げ幅になっているわけでございます。ただ、先生御指摘のように、実態といたしまして、個々の具体的な医療機関が個別に購入する価格ということになりますと、どうしてもある程度の差というものがあるわけでございまして、これはいまの薬価基準考え方が九〇バルクのラインということで売っておりますので、下から数えて九十番目のところということでございますので、九十番目以下のところではそれ以下で買っているというところもありますので、現実の問題としまして九〇バルクの方式ということになりますと先生御指摘のようなある程度の乖離というものも出ているわけでございますが、何分にも初めての銘柄別というものを実施したわけでございまして、できるだけ今後とも実勢価格に近づけるという努力を行わなければならないというふうに考えております。
  74. 安恒良一

    安恒良一君 私は乖離がわずかであるならば、九〇バルク方式をとっておりますからそういうことはあると思いますが、余りにも実勢価格といわゆる現実の薬価基準の間に開きがあり過ぎると思います。なるほど、薬価基準の引き下げは四十八年に三%、四十七年に三・九%、四十九年三・四%、五十年が一・一%、今回が五・八%でありますから、それは銘柄別ということが一つは出たと思います。しかし、私は、それだけでは解決がしないんではないだろうかと思います。  そこで、これももう時間がありませんから、薬価調査についての方法について現在は統一限定方式、銘柄別の調査、そして銘柄別の薬価収載方式を今回から採用されていますね。そのほかに経時変動調査というのをやられているわけですね。だから、私がお聞きしたいのは、経時変動調査を何回ぐらいやったのか、これはなぜかというと、いまの調査方法は、これももう時間がありませんから私の方から言いますと、中医協の決定によって毎年四月なら四月分を五月に調査する、こういう一ヵ月分の調査であります。中身を細かく行くとかなり専門的になりますが、一ヵ月分と言いましても調査品目によると一週間しか具体的に調査してないんですね。これはもう時間がありませんから私の方からどんどん言ってしまいますが、そういうことになります。でありますから、そうすると率直なことを言うと、私はいまの銘柄別に改めただけで薬価調査がきちっとなるんだろうかどうか、銘柄別方式というのは一つの方式ですが、そのほかに薬価調査についていわゆる改善の余地がありはしないかどうか、このことについてお聞きをしたいと思います。
  75. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) お答え申し上げます。安恒委員指摘のとおりに、現在の薬価調査は卸及び購入サイドの医療機関のいわば自発的な協力を得て適正な薬価基準設定のために実施をいたしておるものでございまして、私たちといたしましても、当然現在の薬価調査の方法は完璧なものであるというふうには考えておりません。多々欠点なり問題点があるというふうに考えております。  その一つは、第一に安恒委員指摘のとおりに、調査期間が短いということ、それが予告されているということがございます。この調査期間を、まあ非常に悪い言葉で言えば、価格操作の余地のないように、より長期の調査を綿密に行うということが一つ改善のさるべき問題かと存じます。  さらに、経時変動調査につきましては、今回の薬価調査は実施時期が五十一年の四月分を五月に調査したわけでございますが、五十一年の夏及び五十二年の夏、二回にわたって経時変動調査、これは卸の方にこちらの職員が乗り込みましてその伝票をチェックをするという方法で、値動きの激しい約四百品目について実施したものでございますが、この経時変動調査をより頻繁に行って、より新しい実勢価格を反映させるというふうな点も今後改善すべき問題点一つである、かように考えております。
  76. 安恒良一

    安恒良一君 私もまず薬価調査の方法についてはいま言われましたように、この自計調査ですね、この自計調査というのは販売面の卸売サイド、いま数が約四千と言われていますね。それから購入面では病院、診療所が千三百ですね、調査対象が。しかも、一ヵ月と言っていますが、千品目以上の薬を取り扱っている販売業者につきましては、アトランダムで八つに分けて一週から四週まで分けていますから、実際の調査は一週間になっていますね、これは。一週間しかしない、こういうふうに。そうすると予告をしておって一週間しか調べないということになると、いま言われたように自計なんですから、自分で書くわけですから、操作はいろいろできるわけです。これが長い調査月間であると、私はそう伝票操作を片っ端からやるわけにいかぬと思う。しかし、たった一週間しか調べない。しかも、これは何日にやりますよと予告をしているのですから、その一週間だけ伝票操作をやれば、しかも自分で書き込むのです、ここに私は薬価調査の大きな盲点がある。そこでどうしても私は必要なことは他計調査だと。自計——自分で書き込むんじゃなくて、他計調査というものも私はやらなければならぬ。その一つとして、いまあなたが言われた経時変動調査というものがあるわけであります。この経時変動調査というのは、私から言わせると、いまあなたは今回のやつは二回やったと言われている。私は回数が少ないと思うんです。やはり五十一年の夏と五十二年の夏、二回やった。それで今回は五・何%だと言われていますが、私はそこで中野さんにお聞きしたいのですが、率直に言って、今回のいま五・八下がったということですが、この経時変動調査がどの程度影響していますか、率直に言って。いわゆる薬価調査を四月にやったやつについて、経時変動調査でどのような修正値を掛けてどうしたか、それを説明してください。どういう修正値をかけられましたか。
  77. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 経時変動調査の影響による薬価基準改定分については、保険局側に資料がございまして。
  78. 安恒良一

    安恒良一君 それじゃ資料説明してください。
  79. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 経時変動調査を実施しない場合でございますと、二・五%でございます。
  80. 安恒良一

    安恒良一君 それでは後でその資料をください。私自分で見ればわかりますから、係数を二・五だと。しかし、経時変動調査の反映の結果五・八になったということですから、私はその数字を見ればわかりますから、いまその数字をここで細かく議論しておられぬ。私から言わせると、少なくとも私はまず薬価調査の方法について、どうしてもいま申し上げたような操作ができるというやり方です、調査の他計調査というものを、立入検査ということなんです、いまは経時変動調査だけしかやっていませんが、ぜひともやはり専門の調査官というものをつくって、そうして、やはり立ち入って流通機構の中に、もしくは病院の中に入っていってやはり調査をする。これがないと正確を期し得ない。どうしても自計だけでは、みずから記入するだけでは正確な調査は出てこない。ここに薬価の乖離の問題が一つあるというふうに思いますから、そういうふうにしてもらいたい。  それから、その次の問題といたしまして添付の問題ですね、いわゆるおまけというやつですね、これも私中医協におるときに添付禁止ということを言って、もしも添付をしたところがわかれば薬価基準の登載から外すということで、具体的に五十一年の一月から三月、添付販売薬品薬価基準から削除したことを中医協自体において覚えておりますが、どうもまた最近これが乱れてきているんじゃないか、こう思いますが、この薬の添付販売の状況について、それからどうこれを是正しようとしているのか。すでに中医協でこのことは決定されているわけだから、添付販売についてはやってはいけない、もしもわかればそれは薬価基準から外す、こういうことが決められて、それは一回やっているんですが、その後どういう状況になっているのか、こういうことについて説明してもらいたい。
  81. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 添付の問題がいわば行政的に把握をされまして、薬価基準から特定の医薬品を削除いたしましたのは、安恒委員仰せのとおりに、ルセルというフランス系の会社が五十一年度にそういう措置をとられているわけでございます。  私らといたしましては、その添付が、たとえば適正試供品率というものがどれぐらいであるかという問題もございまして、これは恐らく試供品の適正率は数%であろうというふうに考えておるわけですが、それ以上に試供品の率が非常に高いようなメーカーにつきましては、これは行政的に当然添付ではなかろうかというふうに疑われる理由があるわけでございます。そのような意味におきまして、ごく最近においても、その不適正な販売方法とされている多量の試供品を提供をいたしている業者については、現に、われわれの方も行政的に把握しているものもございまして、現在調査は進行中でございます。これは不適正の添付であるということが確定し次第、行政的に、保険局と御相談をいたしまして、薬価基準からの削除という措置をとるつもりでおります。
  82. 安恒良一

    安恒良一君 私は、もうすでに中医協がこのことを出して相当たっていますから、こういう問題はときどききちっとやらなきゃだめなんですよ。私の調査では、上箱だけにいわゆる実験用、治療用という判こを押したものや、試供品としながら五千錠単位の包装がメーカーから出ている、そういうことを知っています、私は。そういうような問題については、具体的にそういうものを持ってまいった場合には、あなたはいま言ったようにきちっとしますね。試供品というものが五千錠とか、そんな大きい単位ではないと思うんです、試供品というものは。
  83. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 当然、たとえばこれは具体的な企業名をここで云々することは差し控えたいと存じますが、たとえば、試供品の占める率が四〇%もあるというふうなデータも、ある企業について現在把握しているところでございまして、そういう事実が明瞭になりました際には、当然中医協の方針に従いまして厳正に措置をする所存でございます。
  84. 安恒良一

    安恒良一君 試供品が四〇%もあれば当たりまえなことなんですよね。そして試供品というものは、私はやはりその医療機関の規模によって常識の範囲があると思うんですよね、常識の範囲が。その常識の範囲をやはり超えておるもの、総生産高の四〇%あれば、これはもう当然なことなんです。それと、いま一つ、試供品で大切なことは、個人開業医の場合に大体一ヵ月にこれぐらいの程度を使う、これはわかるわけですから。ところが、試供品ということで持ってこられているものが、大きな包装の単位であるとか、錠剤であるとかいう場合には、これは試供品じゃないんですよ。ですから、ただ単に、製造総量の四〇%だけで押さえたんでは、私は、中医協の考え方とは違うと思うんです、それは。ですから、そういうような問題点については、中野さんとしてはいま調査中ということですが、私は、これもまたこれ以上論争しても時間がたちますからあれですが、ぜひ早急に。最近私は乱れがちだと思う。去年でしたか、前の薬務局長上村さんが一遍警告を出していますね、たしか。ですから早急に実態を調べて、そしていま私が言った二つの基準がある。一つは、製造量全体の中で何割を占めているのか。いま一つは、個々の医療機関に対する使用量と試供品の提供量、この量を調べることによって、これも私はやっぱり立ち入り的に調べるしかないと思う。おまけをもらった方がおまけもらったことをあんたのところへ報告する人はないんですよ、これは。私はこれだけおまけもらいましたって報告する人はないんだから、やはり厳正を期すためにはそういうところを他計的に調べて、そして試供品を防止をすると、おまけを防止をすると、こういうことがないと。だから、私は薬務行政の不備ということについて一つ言ったのは、大臣が不備も、完璧じゃないからあるだろうと言われたけれども、大臣、こういう問題がいまあるわけですよね。いま言ったおまけというやつ。こういう点について、ひとつ今後きちっとやるつもりがありますか。どうですか。
  85. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 中医協の方針に従いまして、厳正に処理する所存でございます。
  86. 安恒良一

    安恒良一君 それなら、いま薬価の決め方の問題について議論を進めましたが、次は、やはり新薬の登載と薬価の決定方法についてひとつ説明をしてください。  新薬の登載はどういう方法で登載される、その場合の薬価の決定の方法ですね。これは、率直に言って、薬ができて、薬害があるかどうかということで、薬事審議会にかける。そういうことは全部知っておりますから、私は、主として新薬の価格決定についてどうされているのか、こういうことの面を聞いております。医療面ではありません。
  87. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 新薬の薬価基準への収載の際の価格は、行政的な権限といたしましてはこれは保険局に属しておることでございますが、薬務局サイドで承知しておりますことを述べさせていただきます。  新薬の場合に、現在新薬の価格設定に使われております手法は、市中に流通をいたしておりまして、すでに薬価基準に収載されている既存の薬との薬効の比較によりまして、割り高、割り安というふうな名前で呼んでおりますが、たとえば類似薬効の薬品が別にございまして、これと比べて非常にすぐれた性能を持っているというふうな場合には、これは医家側の評価の問題が一つそこに絡むわけでございますが、それが非常にすぐれた性能を持っている場合には、既存の医薬品に対して何割増しというふうな割り高、割り安方式という手法を使いましてこれを設定いたしておるところであると承知いたしております。
  88. 安恒良一

    安恒良一君 私に対する説明では的確ではないですね。抽象的ではないでしょうか。何割増しなんて言われても。そこのところを、私は、薬価は新薬の場合にどういうふうに決定しているか、もう少し具体的にきちっと説明してください。そんな、何割増しとか何とか、薬効がこれだけすぐれているからとか、そんな素人に説明するような説明をしたらだめですよ。
  89. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 新薬の薬価の設定につきましては、一般の薬価基準につきましては市場価格に基づく、と。新薬はないわけでございますので、ただいま薬務局長が申し上げましたように、記載品目の薬理作用なり臨床効果等が非常に類似している医薬品というものと比較して決めるということでございますが、具体的な例でちょっと御説明申し上げたいと思いますけれども、エピナール錠というのがございますけれども、これは二百五十ミリグラム一錠四十円五十銭ということで薬価を設定したわけでございます。その際に比較対照する薬としましてボルタレン錠というものがございまして、これは薬効等が似ているということで、この際にエピナール錠については用法、用量は一日四錠から六錠使うのに対しまして、ボルタレン錠というのは二十五ミリ一錠でございまして、これの価格が六十円八十銭。一日三、四錠というようにことで、これの比率というものをとりまして四十円五十銭という価格を決めるというような方式をとっております。
  90. 安恒良一

    安恒良一君 これも私はまた専門的になり過ぎますからね。私は、やっぱりどうも、新薬の薬価登載の決定方法に疑問を感じている。それは、いま言われたように、何割引きとか何割増しと、こう言われている。それで、いわゆる類似医薬品がある場合は簡単なんだ。なかなか類似薬品がない。そうすると、あとは、あなたが言われたように、使用量の問題それからすぐれた薬効と言われた、効能と。これをどう判断をするかということは大変むずかしいことだ。私から言わせると、どうも率直に申し上げて、製薬メーカーと厚生省の担当官の間で、これは悪い言葉で言いますと、談合、話し合いで決められているんじゃないか。ですから、私はここでお聞きしたいのは、薬効については薬事審議会というりっぱな審議会があります。そこで、私はお聞きしたいんですが、新薬を登載をする場合に、国民の疑惑を晴らすために、新薬登載のためのそういう審議会を設けて、厚生省と製薬メーカーとが談合しているんじゃないかと、こんな疑いを持たれないように、新薬の価格決定ですね、登載の価格決定。というのは、私は率直に言って、新薬を開発をするためには大変な研究の努力が要ることも知っています。そこで、今回特許方法改定もされたことも知っています。ですから、私は、あと必要なことは、やっぱり国民にオープンにするということだと思うんですね。何も新薬をことさら安く決めろと私は言ってるんじゃないんです。開発の努力等も見なきゃならぬこともわかる。しかし、国民にやっぱり明らかにしないと、何か厚生省と製薬メーカーとの間にそういう問題がありはしないかという疑惑を国民から持たれることは、厚生省も本意としないところだろうと思うんです。じゃそれを防ぐ方法は何かというと、私は新薬の価格を決定するための審議会をつくって、そこに関係代表、利益代表をすべて入れて、その中でオープンで新薬の登載の価格を決めていけば、国民の疑惑は晴れると思いますが、その点についてどうお考えになりますか。
  91. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 価格決定の問題につきましては、新薬等につきましても中医協にかかる事項等もございます。この辺の問題につきましては、中医協に十分御相談いたしております。  それから、同種同効のものにつきまして、やはり既存の薬品、薬効なり臨床効果が類似しているものを持ってきますれば、先生御指摘のような問題はないと思いますし、さらに薬務局とも十分御相談いたしてやっているわけでございますが、さらに先生御指摘の問題も含めまして、薬務局とも十分研究さしていただきたいと思います。
  92. 安恒良一

    安恒良一君 いや、中医協で薬の値段は決めませんよ、中医協では、新薬の。それはあんた、間違いじゃないですか。私は決めた覚えありません。中医協で使用基準を、この薬を使うということのときに中医協は許可しますが、薬の値段を決めた覚えは全然ありません。  ですから、そこでひとつ大臣にお答え願いたいんですが、私はこういう問題は疑惑をやっぱりなくすことがいいと思うんですよ。国民の前にオープンにする。私は決して無理なことを言っているわけじゃないんです。新薬の開発についても考えていかなきゃならぬだろう。日本も何もよそから薬ばかり買っておってもしょうがないわけですから、そういう意味から、やはりオープンにするためには、ひとつ大臣、前向きに薬価を決定する審議会というものをつくって、そして国民の疑惑を晴らす、こういう点についてどうですか。恐らく、いま局長は薬務局長とよく相談してということで、局長ではなかなか答弁できないところですから、これは大臣ひとつ。
  93. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 非常に専門的な問題でございます、現在も薬務局、それから保険局の事務当局において厳正にいろいろな手法を用いて決めておるわけでございますが、今後さらに審議会を置いた方がいいかどうかを含めまして、検討をさしていただきたいと存じます。
  94. 安恒良一

    安恒良一君 それじゃぜひ、やはり私はこういうことで国民に疑惑を持たれることはよくないと思いますから、どうか前向きに、国民にわかるように、新薬の決定方法がわかるように関係審議会等をぜひ設けていただくことを強く大臣に希望をいたしておきます。  最後に、薬問題で、流通機構についてお聞きをしたいんです。薬の流通機構がどうなっているのか。これも一般的なお答えであるなら私はわかるわけです。通常は、メーカー、卸売、問屋ですね、それから医療機関、こういうルートで薬は流れていると、こう言われていますね。しかし、私は流通機構に大変な問題があるように思いますが、いまの薬の流通機構について改善をする考えがあるのかどうか、こういう点について、薬の流通機構問題についての関係局長考え方を聞かしてください。
  95. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 先生御指摘のとおりに、現在の流通機構には種々深刻な問題を抱えているというふうに、薬務局としては考えておるわけでございます。いわゆる直販と卸が併存をいたしまして、しかもその卸が実際の他の産業におきますような価格形成力を持たない、いわばメーカーにそれぞれ分属するような形の現在の流通市場になっておりまして、それがまた薬価決定に際しまして非常にいろいろな、たとえば価格操作の余地などが入ってきているというふうにわれわれとしては考えておるわけでございます。  ただ、現状といたしまして、この現在の卸を中心とする流通市場をいかように改善していくべきか。これについては種々の議論がございまして、たとえば薬事法等を改正いたしましてこの卸を一般の販売業者とは別の法的規制を加えるべきであるというふうな議論もございます。より法的な介入の程度を強めるべきだという議論もございまして、これについては、われわれといたしましては、全般の流通市場のあり方改善のためのいろいろな方策があろうと。それについては、できるところからまた手をつけていきたいというふうに考えておるわけでございますが、いずれにせよ現状についてはなはだ健全でない流通という側面があることは先生御指摘のとおりであるというふうに認識をいたしております。
  96. 安恒良一

    安恒良一君 いまの流通が健全でない、通常、メーカーから卸屋、卸屋から医療機関というふうに行ってないと、こういう点についてはあなたも認められましたし、現実に私が調査いたしましたところによりますと、いわゆる換金のために、医療機関が大量に購入をして逆に換金をするとか、卸屋がいわゆる換金のために大量の投げ売りをするとかいうことで、いわゆるこの流通機構が非常に乱れていると思います。  ですから、このことについて、もう時間がありませんから細かく論争はしませんが、そこで私は、薬問題を解決する一つ方法としては、率直に言って薬を扱うことによって利潤が上がるということをやはりどうしてもなくしていくことを考えなきゃならぬ。そこで、私は解決策について提案をしました。皆さん方も、その解決策はそうだろうということで。その中の一つの問題として私は、薬をやはり配給公社等をつくったらどうかと。薬の必要なものを国が買い上げて、そして配給公社を通じて医療現場におろしていく。各都道府県なり、さらにその単位まで配給公社をつくる。そうすれば、薬を扱ったことによって利潤を——もちろんその場合に物と技術分離して、技術料を評価していく、これは当然のことですよ。これは当然のことなんです。しかし、そういう方法を、何らかの方法を——それはなぜかといいますと、わが国は自由主義経済であります。自由主義経済でありますが、医療というものがすでに九兆円を超えている。そして、その中で薬が使われる部面は大ざっぱに計算しても三七、八%−四〇%。そうなりますと、健保財政問題になりますが、この中で一〇%か二〇%節約したらどうなるか。そうしたら、大臣はすかさず、それは技術料に回るから、行って来いだと、こうほかの審議会で答えられていますが、行って来いにはならないんです。なるほど、その面だけ見ると行って来いですが、それだけ技術料に回して、技術料が高くなれば薬を使うのが少なくなるわけですから、大臣は行って来いだという答弁されていますが、行って来いにはならないんですこれは、率直なこと言って。  ですから、私はやはりわが国の総医療費の中で薬の占める割合が非常に高過ぎる、それが薬害を生み出しているというときには、私はやはり薬を医療機関が扱うことによってマージンが出るというところをまず直していく。そのかわりに技術料を、たとえば初診料を上げるものは上げていくとか、再診料を上げていくものは上げていくとか、手術料を上げるものは上げていくというふうに、きちっと物と技術をやっぱり分離をして薬を減らしていく方法が一番いいんじゃないか、こういうふうに思います。  そして、それがために、いまのように薬を、自由主義経済でありますから、一般の商品と同じような複雑な流通機構に任しておったんでは、またいま言ったように本来ずっと流れているルートが逆に流れている場合があるわけですから、こういうことをするためには、もうこれだけ総医療費は九兆円、ことしの国家予算が二十八兆円——補正して幾らですから、その中で占める薬の割合ということを考えると、ただ単に野放しに薬というものを一般の自由主義経済のままに任しておっていいんだろうか、薬の流通について。こういう点について私は私なりの意見があります。  そこで、これらの点についてひとつ、まあこれも抜本の問題だとも思いますけれども、大臣の方で前向きにひとつぜひ薬問題の改善について、国民がいま考えている、薬づけになってはいないか、薬害が起きてはいないか、これを解決し、医療財政赤字を解消するためにも、薬問題について大臣は前向きに取り組んでいただきたいことをお願いして、これは答弁求めません。それはまた時間がたちますから。  そこで、私はこのほかに質問通告をいたしておりました問題としては、いわゆる検査のあり方の問題、機械の重複投資の問題、それから、医療供給機関のあり方の問題等々、たくさんの項目を通告しておりました。これはもう大臣、私の項目は第一日目に申し上げておりますから、ここで重複して申し上げません。  これらの点については、きょうはまあ一回り方式ということで、わが党に割り当てられている時間が制限をされておりますから、私は質問を保留をいたしまして、残っているということをこの席上で明確にし、最後に一つだけお聞きをしておきたいことがあるわけです。というのは、私はやはり医療供給体制の問題だと思います。国民保険になって、皆保険という制度は、私はりっぱな制度だと思う。それに見合う医療供給体制というものが整備をされたのかどうか。それが余りにも今日おくれているんではないだろうか。これも詳しく言い出しますと、医療機関の数から看護婦さんの数からお医者さんの数になりますから、そういうことをいま言おうとしているのじゃありません。私は十分しかあとありませんから。そこで、その中で特に私はお聞きしたい点は、どうしてわが国の場合において病院なり医療機関機能分化ができないのかどうかということ。御承知のように診療所があります。それから、有床診療所、ベッド数二十までですね。診療所はベッドがありません。それから、いわゆる専門病院、それから総合病院、それから大学病院というのがあります。まだあるかもわかりませんが、大ざっぱに分けるとわが国の医療機関は。  ところが、各医療機関がどこも外来をとる。たとえば一つの例を言いますと、腹が痛い、かぜをひいたといって大学病院に行ってみたり、いきなり総合病院に行ってみたりする、こういう問題がある。私は、わが国の医療の欠けている点は予防、治療、リハビリ、この一貫性が欠けていることが一つと、いま一つ機能分化がおくれていること。ここにわが国の皆保険下における医療供給体制の問題が非常にあると思いますが、こういうような問題についてどうお考えになるか。  特にお聞きしたいのは、老人医療問題が大きい問題になっています。大臣抜本改正の中で、老人保健医療制度あり方について議論をしようと。そして、五十四年度にはと、こう言われてますね。ところが、私は七十歳以上のお年寄りの方々の無料健康保険制度をつくったことはよかったと思います。しかし、それならば老人専門の病院というものがそれに合わしてつくられたのかどうかと。お年寄りが一般の病院に殺到している。ベッドもいわゆるお年寄りがこれを確保して一般の人が入院できないなどということを言って、逆に老人健康保険を改悪しようとする。私はそんなことを言っているわけじゃない。それは間違いです。これはあとで数字を見ればわかることです。そんなことを言おうとしているのじゃないが、少なくとも老人無料健康保険制度ができたならば、お年寄りが安心をして入れるやはり老人専門の病院というものが設定されてしかるべきじゃないか。ですから、制度をつくるときには、その制度に見合った医療機関というものがつくられ、また医療機関の任務というものが分担をされる中でやらないと、仏つくって魂を入れずということで制度そのものにひずみが出てくると思います。  こういう点についてひとつ、私はこまかく入る時間がありませんから、医療機関機能分化の問題、特に、老人が安心して入れるような老人専門病院、こういう問題について、これはどうしてもあとから議論になると思いますが、いわゆる不採算の部面が出てくるんです。老人専門病院。ですから、これはいわゆる公的援助がどうしても強化されないと、私はなかなか老人専門病院はうまく立っていかないと思いますが、そういうことがなされないまま今日に至っているところにあると思いますから、一応医療機能分化の問題、特に老人専門の病院の問題等についてお尋ねをいたします。
  97. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 大変貴重な御意見でございます。先ほども機能分化の問題についてはお答えをしたとおりでございまして、これについては十分抜本改正と絡めて検討をしてまいりたい。前向きでこれは検討してまいりたい。  それから、老人専門病院の問題あるいは不採算性等の問題につきましても、老人医療の問題とあわせましてこれは重要な柱として検討されなければならないと、かように考えております。
  98. 安恒良一

    安恒良一君 それでは、御承知のように、十月の十四日の朝日新聞に浴風会病院の問題が出ています。そして、これは十月の二十七日に衆議院の社会労働委員会で同僚の大原議員がこの問題について質問をされています。ですから、厚生省は現場を見に行かれたんでしょうか、その後。
  99. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 関連。ただいま安恒委員から医療供給体制の中の老人病院、特に浴風会についての提起がありました。私は去る十一月の十日に同僚の広田委員そして衆議院の社会労働委員会の金子みつ委員とともに浴風会を訪問いたしました。そして、同病院長初め病院当局から今日までの経過及び現状について伺いました。また、病院をつぶさに見てまいりましたし、看護婦さんや助手さんや医療に従事している人たちからも実情について伺いました。お年寄りの方とも会って直接お話もいたしてまいりましたから、特にいま安恒委員から御指摘のありました十月十四日号の朝日新聞の記事について大臣御存じであるかどうか、まず関連をして伺いたいと思います。
  100. 安恒良一

    安恒良一君 いまの点は、いま委員長からもう時間だと言われていますから、老人医療の問題は後から午後お答えを願いたいと思いまして、最後に一つだけお聞きをしておきたいことがあるのですが、これは財政問題の中で、今回の政正で、国民健康保険法の一部改正について「国は、前項の補助をする場合において、政令の定めるところにより、」云々で「費用の額の百分の四十に相当する額に達するまでの範囲内において、同項の補助の額を増額することができる。」という改正一つあります。これは財政の問題のときに聞いておきたかったのですが、時間がありませんでしたからここでこれをお聞きをしておきたいのですが、これは御承知のように現行が百分の二十五になっていますね。そこで、今回のやつは新設の国民健康保険財政上にも非常に弱いわけですから、そういう部面については百分の四十に相当するまで上げるということと、それから御承知のように、百分の二十五の場合には調整金というのが別個ついていますね。ですから、今回の場合は、新設の場合には百分の四十に相当するまでの範囲内において同額の補助額を増額をすると同時に、そういう調整金といいますか、そういうものについても考えていると、こういうふうにここのところの第三条を今度改正して衆議院で修正をされてこちらに送ってきていますから、この取り扱いについて政府考え方を聞かしておいてもらいたい。
  101. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 国民健康保険組合につきましては、市町村が四〇%の低率の国庫補助財政調整交付金五%に対しまして、従来から二五%の国庫補助というようなことで、国庫補助率の引き上げという要望につきまして国保組合関係者から非常に強かった問題でございます。特に擬適廃止に伴いまして新設組合、これは非常に財政力が弱いというようなことから、従来からもこの問題をどう対処するかということで、従来は二五%のほかに臨時財政調整交付金という形でこれの対策ということで努力しておったわけでございます。本年度におきましても昨年百四十億に対しまして百七十億という臨時財政調整交付金の増額を行ったわけでございます。先般の衆議院の修正によりまして、最高四〇%までの範囲内で補助率のかさ上げという措置が行われたわけでございまして、私どもも衆議院の修正の御趣旨に従いまして、国庫補助率の四〇%の問題につきましては努力してまいりたい。その場合に、やはり一番財政力が弱いというのは新設組合であるというようなことからも、従来も新設組合につきましては四〇%という線を維持しているわけでございまして、これは五十三年四月一日からの問題でございますけれども、政令実施の段階におきましては、補助率の確保につきましては十分検討さしていただきたいというふうに思っております。  それから、補助率以外に臨時財政調整交付金という問題もございますが、これは五十三年度の予算に関連する問題でございますけれども、やはり高額療養費なり、あるいは老人医療等の問題もあるわけでございまして、臨時財政調整交付金につきましても努力してまいりたいというふうに考えております。
  102. 上田哲

    委員長上田哲君) いかがでございましょうか。大体お約束の時間でありますから、このあたりで腹ごしらえをしたらいかがかと思います。  安恒委員質問を保留し、高杉委員の関連質問を午後冒頭再開することとし、午前の審議をこの程度にとどめ、午後一時半再開することとし、休憩いたします。    午後零時三十分休憩      —————・—————    午後一時四十四分開会
  103. 上田哲

    委員長上田哲君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。暫時休憩いたします。    午後一時四十五分休憩      —————・—————    午後二時六分開会
  104. 上田哲

    委員長上田哲君) 社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、健康保険法及び船員保険法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続けます。  安恒委員質問に関連して高杉君。
  105. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 安恒委員から午前の部で医療供給体制について、特に老人専門病院が必要だと思うが、不採算医療についての公的援助の強化が必要だと、こういう御発言がありましたし、これに関連して私は浴風会病院についてお尋ねをいたしました。したがって、大臣からまずお答えをいただきたいと存じます。
  106. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 社会福祉法人、浴風会の経営の状況につきましては、種々の要素が絡んでいると聞いておりますので、その実情を明らかにした上で対策につきましては関係部局で検討いたしてまいりたいと存じます。
  107. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それでは、引き続き浴風会について安恒委員に関連をして以下御質問を申し上げたいと存じます。  朝日新聞の本年十月十四日号については、先ほど安恒委員からも話がありましたとおりでありますが、この記事によりますと、浴風会は大正十四年に関東大震災の際、身寄りを失い、自活のできなくなったお年寄りを世話するために、御下賜金などをもとに設立された老人施設である。しかも、わが国の老人福祉施設のモデルとしてつくられたとありますけれども、この施設について関係当局から伺いますが、多分御存じだろうと思いますが、最近の事情についてはどのようにお認め願っておりますか。まずお伺いをいたしたいと存じます。
  108. 上村一

    政府委員(上村一君) 社会福祉法人浴風会と申しますのは、いまお話になりましたように、第一種社会福祉事業といたしまして、養護老人ホーム、それから特別養護老人ホーム、それから軽費老人ホーム、この三種類の施設を経営しております。  それから、それ以外にいま御指摘になりました病院の設置経営、それから有料老人ホームというものを設置経営しておる団体であるわけでございますが、昭和五十一年度総合収支を見てまいりますと、収入が十七億五千三百万円、支出が十六億四千百万円で、差し引き一億一千二百万円のプラスになっておるわけでございますが、累積欠損金等を計算いたしますと、三角が一千八百万円、こういう数字が私どもの方に報告されておるところでございます。
  109. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 この記事によりますと、そういう数字ではなくて、これはまあ老人ホームが、有料と軽費と養護と特別養護老人ホームがあることはおわかりのとおりでありますが、この種のものではわが国民間施設では唯一、最大の施設ではないかと思うんです。  記事によりますと、病院の赤字になったのはこういうふうに記載されているわけであります。五十年八月に約二十億円、鉄筋三階建ての建てかえの整備を行った。この際リハビリなど必要なものを一応そろえて建設されたと。この五十年については一億四千万、五十一年については約一億五千万の、計二億九千万、そのほかに経常の赤字として二億四千万、計五億三千万の赤字になったと報じているわけであります。これについては、十月の二十七日の衆議院の社会労働委員会で私どもの同僚の大原委員が触れております。したがって、そのときにも厚生省にぜひ現地へ行ってみたらどうですかという提起もあったやに伺うんですが、厚生省の方ではその後どういうようにこの事実をお確かめになりましたか、あるいは病院をお訪ねになりましたか、この点について伺いたいと思います。
  110. 上村一

    政府委員(上村一君) 衆議院の社会労働委員会でこの健保法の一部改正審議されましたときに、特別養護老人ホーム等を経営しておる浴風会について、社会局長は見たことがあるかというふうな質問があったわけでございます。そのとき私就任早々でございましたので、まだ見ておりませんというふうにお答えいたしました。そうして、私の腹づもりといたしましては、この国会が済みました後、非常に由緒のある施設でございますから、一度お伺いをしていろいろ関係者からも話を伺ってみたいというふうな気持ちでおります。したがいまして、現在まだこの浴風会を訪れたわけでもございませんし、まあ浴風会の経営のことにつきましてつぶさに関係者から話を聞いておるというふうな段階ではないわけでございます。
  111. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 私は安恒委員質問に関連をして午前中に申し上げましたように、十一月の十日に病院をお訪ねして、病院の関係の方からも、それからお入りになっているお年寄りの方にも直接会っていろいろ伺いました。したがって、その赤字になった問題についてぜひ厚生大臣を初め何らかの救済をする必要があると思うんです。したがって、その赤字について要因等も含め詳細にお聞きをしたところであります。ことしも人件費のアップで約四千五百万円ぐらいの赤字を見込まれる。しかも、先の見通しというものがなかなかつかない病院の窮状を訴えられました。そこで、入院患者二百三十名の半数が寝たきりで、おむつを使わなきゃならない。おむつを使っている方が約三分の二、大変な数であります。しかも、現状の七十八人の看護婦さん、助手がいるけれども、なかなかこれでは手いっぱいお年寄りの方をめんどう見るには大変だと、こういう実情です。しかも、一般の入院に比べまして一人当たり一日三千円も入院費が少ない、こういう現行制度上の問題もあると思います。また、普通の場合なら一日に五百人ぐらいの外来の患者さんがとれることになるんですが、都の医師会との関係でこれが外来の患者さん方を診るというわけにいかない。したがって、不採算医療の、先ほども申し上げたとおりに、医療について特に老人施設については公的援助が必要であると、こういうふうに私は思います。したがって、この点について大臣から、この不採算医療、特に老人病院に対する公的援助についての御見解、これを伺い、いま申し上げました幾つかの現状について厚生省の御見解、伺いたいと思います。
  112. 上村一

    政府委員(上村一君) この浴風会の病院部門について見てまいりますと、五十一年度の収入が七億一千万円、支出が八億七千百万円でございますから、差し引き一億六千百万円のマイナスになる、さらにいま前期の繰り越し欠損金がございますので、合わせますと約五億八千万円ぐらいの赤字でございます。  それで、この赤字原因というのはなかなかむずかしいわけでございますが、一つは、現在三百床の病院の新しい建物が建てられたわけでございますが、この三百床の建物が建てられるに当たりまして、もとありました老朽の病院の一部というものを閉鎖しながら改築を進めていった、その間、職員の方が非稼働のまま抱えざるを得なかったというふうな事情もあると思いますし、それからいま御指摘になりましたように、外来の数も少ないというふうな事情もあると思うわけでございますが、私どもの手元にあります資料で、年齢別に一件当たりの診療費なり一日当たりの診療費を見ますと、やはり一件当たりの診療費というのは、七十歳以上の人が、入院につきましても外来につきましても、六十四歳未満の人よりも相当高い額になっておるわけでございます。したがいまして、一般的に老人をたくさん入院をさせておるから、それで直ちに不採算に結びつくかどうかにつきましては少々疑問でございます。
  113. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 不採算医療の前提として、いわば供給医療体制の基本ですけれども、不採算医療についての大臣に特に私お答えをいただきたいというお願いをしたわけですが、公的援助が必要であるかどうか。私は必要だと思いますが、その基本について大臣からまず伺いたいと思います。
  114. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) この浴風会の経営の状態につきましては、赤字原因一つでなくていろいろあるようでございます。したがいまして、これらは先ほど言ったように実情をもっと明らかにいたした上において検討しなきゃならぬと。一般論といたしましては、不採算制のものについて、それは恒常的な努力をしても埋めることのできないというような問題については、やはりそれは適当な助成というようなことが必要だろうと、こう考えております。
  115. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 まあ赤字原因についてはたくさんあろうかと思います。それで一つの私はまあこれは病院をお訪ねしたときに、その問題については特にお話を聞きましたから、この点についてちょっと確認をいたしたいんですけれども、他の病院で断られたり、家庭でめんどうの見切れない六十五歳以上の患者さんを、病院としては断るわけにいかない。こういうお年寄りの方を入れることを浴風会病院の使命だと、こういうふうにしているわけですね。浴風会の各ホームからの患者さんを主として入れる。外来というのは医師会との関係で入れない、まあ診ないと、こういうことから、私は不採算医療の典型じゃないかと、こう思うんです。しかも、公私格差是正で、これは働く方に大変お気の毒だと思うんですが、手数のかかるお年寄りを介護したり、そういうところに、しかも公私格差是正から、都の方でも働く人たちの条件や何か引き上げなさい。公私格差是正するためのいろいろな手だてをしているけれども、しかし、実際問題としてその公私格差を言うけれども、じゃあ具体的に法的な援助なりその裏付けになるような措置があるかというとない。また、老人ホームについては法的措置がありますわね。しかし、老人専門病院については法的措置がないわけでしょう。そういうところに大変手数をかける問題が一つは大きな赤字の要因ではないだろうか、こういうふうに思うんですが、その点についてはどうか。  また、子供さんと私は比較をするわけじゃないんですけれども、小児との関係で言いますとね、老人に対する特別加算がないわけでしょう。ないわけですね。だから、そういうようなことで、その特別加算がない、これはまあ制度上の問題でありますから、今後の医療体系全般にわたっては、やっぱり特別加算をつけていくような、そういう制度にしていくというようなことが私は必要だと思うんです。したがって、いま申し上げました幾つかの点について、厚生省の見解をまず伺います。
  116. 上村一

    政府委員(上村一君) まあ一般的にいま公私格差是正と言われます場合に、典型的に挙げられる例でございますけれども、福祉施設について、これは措置費というものを各福祉施設に支払うわけでございますか、措置費の積算の基礎に国家公務員の給与ベースを使っておる。自治体によりますと差があるわけでございます。そこで、公私の差を補てんをするというふうな措置が講ぜられていることがあるわけでございます。したがいまして、この病院の場合に、公私格差是正と申しましても、私の方の基礎になります給与というものが、明確に積算の根拠にあるわけじゃございませんので、なかなか一概に決めつけられないんじゃないかなというふうに思うわけでございます。  それから、福祉施設の関係の方でございますが、特別養護老人ホームなり、あるいは養護老人ホームなり、軽費老人ホームにつきまして、大体四億数千万円の国費、公費というものがこの浴風園の施設に払われておって、その施設に入っておる御老人で病気の場合に老人病院の方に行かれると、それから開業医の御紹介で地域の老人が入ってこられる。まあ何と申しますか、福祉施設の場合には、御質問にもございましたように、本人の申請で福祉の実施機関というのが入所の措置をとるという、その施設と、それから行政機関と、それから中に入ります御老人との間に深い結びつきがあるわけでございますが、病院の場合にはそういった行政機関との結びつきがございませんで、形の上では患者さんと病院との契約で入ってくる。したがいまして、患者の態様によりまして、その施設で受け取られる、あるいはその病院で受け取られる収入というのが千差万別になってくる。そこにどうしても病院の場合と福祉施設の場合とで公の援助をするかしないかを考えます場合の、何と申しますか、やりにくい点があるんじゃないかな、こういうふうに思うわけでございます。
  117. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 診療報酬の特別加算の問題でございますけれども、確かに御指摘のように、老人の看護ということになりますと、一般の患者さんより手数がかかるという場合もあろうかと思いますけれども、お年寄りによりましてはやはり年齢なり病状、いろいろ千差万別でございますので、個人差があるというようなことから、一律に現在老人医療の場合に特別加算ということはなかなかなじみにくいんではないかというふうに考えておる次第でございます。
  118. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 これは特別加算がないことによって大変だというのは、私も実情を見てしみじみ大変だと思いました。  そこで、浴風会の患者さん方の中身を見ますと、高齢で身の回りの世話か大変なんで——その世話というのは診療報酬の点数にならないわけですね。しかも、この内容を見ますと、百九十人のうちに、四十七人の方の年齢、これは男ですが七十九・五歳、それから女の子が百五十二人いるんですが、平均年齢が八十・四歳、こういう高齢の方、しかもおむつが必要だと、こう大変手がかかります。したがって、どうしても特別加算をこれはしていく必要があると私は思っているので、その点について御見解をまずお聞きしたいということでさっきお聞きしたんですが、現状はわかっております。制度上、点数に入らないことはわかっていますが、その辺が一つです。  それから、ADLを見ましても、自分で歩けるのは三〇・八%にすぎませんね。この中の患者さん方、大変な、歩行もできない状態です。それから、行動範囲でも、ベッド周辺以下の人が半分以上、五〇%以上ですね。そして食事も、自分ではしを使える者、これが六六%になっているわけです。入浴についても、七〇%の方が介助が必要だということになりますから、大変な手数がかかっているこの実態を私も見てまいりました。こういう大変なお仕事をやっているんですから、これは点数に入らない、制度上の問題があるけれども、いま申し上げましたように、特別加算を必要だと私は思いますが、その辺はどうなんでしょうか。
  119. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 確かに一つのお考えだろうと思います。  ただ、いまの診療報酬の中でそういうような個人差のある問題まで一律にお年寄りだからといって加算するということは、なかなかむずかしいんではないか。  一つの解決方法としましては、看護の問題ということで、付添看護なりその辺の保険外負担の問題等もありますし、あるいは看護料の充実ということで、看護の面におきます重点的な考え方ということは一つ必要であろうというふうに思われますけれども、お年寄りが入ったからといって特別加算という形は、いまの段階ではいかがかと。  それからもう一つ老人懇の御意見等も出ましたし、これから広い意味での老人のあらゆる問題が今後研究の課題になるわけですから、そういうような問題との一環におきまして、この問題もひとつ考えていくことは必要ではないかなというふうにも思っております。
  120. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それは、現行制度上については私もわかっておりますから、しかも老人懇やこれからの高齢社会に向けて老人医療体系というものを一貫して体系的につくっていく、この必要に迫られているわけですね。ですから、私は、将来、近い将来こういうことをしていかなきゃならないと思うということを申し上げているわけです。現実にこの浴風会で大変なお仕事だなと思うのは、一日に五千枚のおむつの洗たくをしているわけですね。そうしますと、そのおむつの洗たくというのは代金に入らない、点数に入らないわけですね。ですから、そういうことがお年寄りの、手数もかかる大変なお仕事をしている、しかもいまの制度上、いまの医療費の体系ではめんどうを見れない。そこに献身的にやっておられる浴風会の方々のそういうお仕事から、私は赤字一つは出たんではないだろうか、こういうふうに思うんです。  そこで、何としても私は浴風会のこの病院、先ほど申し上げましたとおりにホームを幾つか持って、わが国、民間では唯一最大の施設であると思うんです。ですから、これはもうモデルの私は老人医療病院だろうと思いますから、そういう点で何とか救済の道をやはり見出さなきゃならぬ。  そこで、大臣にお尋ねをしますし、要望申し上げたいと思うんです。こういう現状ですね。ですから、私は、いまの現行制度で無理があることは承知であります。しかし、社会福祉法人であり、しかも老人ホームを持っていて、そして老人病院である、こういう特殊なモデルの浴風会という、長い間貢献をされてきたこの病院でありますから、この際何とかこの救済をできる道というものはないだろうか。何としても私はこういう貢献をされている、特に献身的にやっておられる病院を、赤字だからといってつぶしてはならないと思うんです。その辺について大臣、ひとつ要望も含めて私はお願いをしているわけですから、何かの措置が、あるいは臨時応急的な措置ができないだろうか。この点について伺います。
  121. 上村一

    政府委員(上村一君) いまお話しになりました、非常に歴史のあるりっぱな施設であることは間違いないわけでございます。したがって、私どもこういった施設がつぶれることがあってはならないし、つぶしてはならないという気持ちは持っておるわけでございますけれども、冒頭申し上げましたように、いかなる理由で病院部門というものが大きな赤字になっておるのか。まあ建物を新しく建てて過渡的に相当赤字か出た——古い建物を一部閉鎖しておったわけでございますから、そういうふうな問題であれば経過的な問題であろうというふうに思うわけでございますし、それから老人が多いけれども収入が少ないという問題であるならば、これは構造的な問題ではなかろうかというふうに思うわけでございまして、りっぱな施設であることは間違いございませんけれども、個別の社会福祉法人について、経営が赤字であるから特別の援助をするということは、行政当局の行う措置としては非常にむずかしいんじゃないかというふうに思うわけでございます。
  122. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 私は、その構造的な、あるいは赤字の要因が制度上の問題であるかどうかということよりも、現状で大変な御苦労をされているということを申し上げているわけです。したがって、臨時応急的な措置として、厚生省であるいは当局として十分その病院側のいろんなお話も聞いた上で検討をされて、措置ができるとすれば、その臨時応急的な措置はないかと、こう言っているわけですから、もう少し前向きに、この病院をつぶしてはならないという立場から、私はくどいようですが申し上げているわけです。ですから、その辺の臨時応急的な措置が何らか講じられるとなれば、早速現地においでになって、病院当局とも、あるいはそこで働いている方々とも十分お話を聞いて、御検討いただける余地がありますかどうか、この点について伺います。
  123. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 国会終了後、なるべく速やかな時期に係官を派遣をして相談に応じたいと存じます。
  124. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 大変、大臣からの前向きな御答弁をいただきまして、敬意を表しますけれども、私の関連質問についても余す時間が余りありませんから、最後に要望を申し上げたいと思います。  浴風会の病院については、いま申し上げました経緯があり、しかも長い間、老人医療の草分けと言われるほど今日まで献身をされてきました。先日、私も病院をお尋ねしたときに、患者さんの御家族の方々からのお話も伺ったわけであります。家族にすれば、お年の方が最後に息を引き取られるときに、せめてホームじゃなくて病院で、しかもお医者さんに見守られて息を引き取ることができた、一日でもお医者さんのそばにお年寄りの方を入院させてよかったと、こういうふうに御家族の方あるいは遺族の方が異口同音に、病院とホームがあることによって最後のお年寄りの願いである、せめて死ぬときにはお医者さんのそばで死んでいきたいという望みも、わずかに一日だけでもかなえることができたという家族なり御遺族の方々のお話を聞いて、私は何としてもこれは病院というものを、ホームが幾つか養護や特別養護も含めてあるわけですから、そういう施設というものを、わが国のこれからの医療のやっぱり一つのモデルとしても浴風会方式といいますか、ホームと病院とが併設されていく中に、私はお年寄りの今後の医療の体系があるんではないか、こういうふうに思います。したがって、この浴風会については大臣に非常に前向きの御答弁もいただきました。これについては早速、きょうも後ろに浴風会の方がお見えだと思います。大臣のお言葉によっては一喜一憂していると思います。いまのお言葉のように、早急にこの病院が成り立っていくようにひとつ御指導もいただくし、臨時応急的措置ができるならやる、こういうようなことで、ぜひとも浴風会が成り立っていくようにお願いを申し上げ、しかも委員長お願いでありますが、委員長のお住まいも近くにあるやに聞いております。したがって、本委員会としてもこのまま——新聞で報道されました記事を私どもが読んで、早速私どもは同僚と一緒に病院をお尋ねしていろいろ聞いたわけであります。委員長としても、ぜひ本委員会としても現状を、このまま窮状を放置するわけにはいかないと思います。したがって、いま大臣からお答えをいただいたように、早急にこれが成り立っていくような御指導も委員長にあわせてお願いを申し上げまして、関連の質問の時間がちょうど切れたようでありますから、要望を申し上げて終わりたいと存じます。
  125. 上田哲

    委員長上田哲君) 委員長に特に御要望がございました。私の住まいの近くだとの御指摘もございましたけれども、まさしく目と鼻の先の近隣でございまして、通勤にはそのそばを通ってくるということで、お勤めの方々ともはなはだじっこんにいたしておりまして、御指摘のところは実感として私もよく了解をいたします。大臣が積極的な発言をされたというふうに了解をいたしますので、御指摘のとおり、社会労働委員会の本来の任務に基づきまして、このような問題を法的措置のみならず、行政的、実態的に前向きに強力に処置するように努力することを、内閣ともども本委員会としても決意いたしたいと思います。  内閣からの発言はありますか。——当該局長、どうですか。
  126. 上村一

    政府委員(上村一君) 特にございません。
  127. 上田哲

    委員長上田哲君) 努力を要望して、質問を続けていただきたいと思います。
  128. 小平芳平

    ○小平芳平君 けさの委員会の冒頭で、厚生大臣から医療保険制度改革の抜本考え方についてということについての御説明がありました。私が質問したいと思っております項目も、大部分大臣の御説明制度改革の基本的考え方にありますので、必ずしも大臣からすべて御答弁いただく必要はありませんけれども、最初に何項目かについて御質問をいたしたいと思います。  まず最初の制度間格差是正、当面、健康保険組合財政調整の実施は五十三年度に立法し、五十三年度に実施するということに御説明になっておられますが、これはどういうことか、御説明をいただきたい。
  129. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 各個の保険制度の間でいろいろなアンバランスがある。したがって、それは将来は制度間の格差をなくすようにしなければならない。しかし、さしずめは、そう言っても、すぐにできるものとできないものとありますから、まず保険組合の中で非常にいい組合もあるし、保険組合でもすでに政府管掌保険の七・八%以上の保険料を徴収しておって、中には九%という高い保険料を取っておる、それでも赤字でやっていけないというところもあるわけです。したがって、それは保険組合の中でまず調整するようにとりあえずスタートをさせたい、こういう意味でございます。
  130. 小平芳平

    ○小平芳平君 そして、具体的には五十三年度中に立法実施するということになると、どういう段取りになるわけでしょう。
  131. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 当面、健保組合間の財政調整を実施するということになりますと、現在、建保組合相互間におきます財政調整というような基本規定はございません。したがいまして、このような何らかの財政調整なりあるいは共同事業なり、そういうようなことを実施できるような法的な根拠を与えるという意味での法律改正というものが必要になるんじゃないかというふうに考えております。
  132. 小平芳平

    ○小平芳平君 いつ成案を得て、いつ提案をし、実施するという見通しになりますか。
  133. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 早急にこの問題の内容につきまして検討いたしまして、五十三年中に法律改正案を提出いたしたいと、できますれば五十三年度から実施いたしたいというふうに考えております。
  134. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、この第二番目の、本人家族給付水準格差是正等を中心とする給付改善でありますが、格差是正をするということは、家族の給付を引き上げるという趣旨だと思いますが、それは本人、家族とも十割給付を実現しようと、こういうことでありますか。
  135. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) そこまで具体的にはまだ決まっておりませんが、本人、家族間の格差をなくするという方向で、しかも家計負担に重圧となるようなものを重点的に考えていく必要がある、こう思っております。
  136. 小平芳平

    ○小平芳平君 もう少し十割給付になるか、それとも十割給付に満たない給付にしようという目標なのか、その辺はまだ決まってないというお話でありますが、こうして五十三年度中にも法律改正をしようということでありますが、今後の段取りはどういうことになりますか。
  137. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) ただいま保険局長から申し上げましたように、これは国会でも済んでからすぐに検討に入らなきゃならぬ問題ですから、われわれとしては五十三年中に成案を得たいと、こう思っておるわけです。しかし、この給付改善というのは、御承知のとおり費用が伴うわけでございます。したがって、負担の問題との両面から考えなければなりませんので、どういうふうな負担の仕方をするか、そういうようなものをいろいろ検討いたしまして、それは一律八割五分がいいのか、九割がいいのか、一遍に十割にはとてもできませんから、徐々に片っ方だけ上げた方がいいのか、いろんなことが考えられます。それらと負担の問題とを絡めて直ちに検討に入るつもりであります。
  138. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、「一部負担適正化合理化」、これはどういう意味ですか。
  139. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 先般、社会保険審議会の方でいろいろ御意見をいただいておったわけでございますけれども、十一月五日に社会保険審議会の御意見というものをいただいたわけでございまして、この中にも一部負担あり方につきまして被用者本人の一部負担なり、あるいは一部負担等につきましては、家族給付との改善の見合において適正な額に引き上げることはやむを得ないというようなことから、特に今後医療費は非常にふえていくという際に、やはり適正な負担なり、あるいは保険料負担でいくか、あるいは一部負担でいくか、そういうような問題も含めまして負担あり方というものを検討いたしたいということでございます。社会保険審議会におきましても家族給付率の引上げとの関連で一部負担なり、あるいは新たな一部負担についても検討すべきであると言っておりますので、これらの一部負担あり方につきましても早急に検討いたしたいというふうに考えております。
  140. 小平芳平

    ○小平芳平君 いま審議中の改正案の一部負担の引き上げとの関係は、どういうふうに説明しておられますか。
  141. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 現在御審議お願いしております改正案の一部負担、この考え方は四十二年に一部負担改正になりまして以後、その後の社会情勢、経済情勢非常に大きく変わっているわけでございます。特に所得も伸びておる、あるいは医療費もふえているということで、現在お願いしております一部負担はむしろスライド的な改定ということでございます。今後の基本的な問題の際に考えますのはそういうことじゃなしに、一部負担のそもそものあり方というものを基礎にしまして、特に家族給付率との関連等を考慮した上で一部負担あり方をどういうふうに考えるかということで、この問題に対処いたしたいというふうに考えております。
  142. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、安恒委員等の質問に対する答弁がありますので、ダブらない点だけちょっと伺って次に行きたいんですが、「実勢価格に見合った薬価基準適正化」、これについては「次期薬価基準改定から逐次実施」となっておりますが、これはいつの改定時のことを言っているんですか。
  143. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これはこの次であります。この次。したがいまして、今回は薬価基準は告示をしてありますから、これはできません。したがって、明年度以降当然薬価基準改定をいたします。その次に、そのときにやはりこういうようなことは反映するようにしてまいりたいと思っております。
  144. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうすると、「次期診療報酬改定から逐次実施」という項目もありますが、この「次期診療報酬改定」はこれはいつを指しておられますか。
  145. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは次期といってもこの次ですね、この次やる診療報酬には現在の告示されておる薬価基準が見合うわけでございまして、その後ですから、次の次の診療報酬ということになろうかと存じます。
  146. 小平芳平

    ○小平芳平君 「付添看護差額ベッド歯科差額保険外負担問題の改善」、「物と技術分離技術料重点診療報酬改善」、これらの項目が「次期診療報酬改定から」となっております。その「診療報酬改定」はいつを想定しておられますか。
  147. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは全部というわけにはまいりませんけれども、この中の一部は今度、今度やる診療報酬の中でできるだけ、少しですよ、これは、少しですけれども、取り入れていきたいと思っています。
  148. 小平芳平

    ○小平芳平君 具体的に申しますと、近く諮問をなさるわけですか。厚生大臣、諮問なさる、それはいつになるかということはわからないんでしょうけれども、いつごろか諮問をされる、近くですね。その診療報酬改定の際にこうした問題の一部解決を図ろうと、しかし薬価基準については今回の五・八%引き下げですか、それには間に合わないから、薬価基準の問題は将来来年か再来年かになると、こういうことですか。
  149. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) そこで、六番目で「物と技術分離技術料重点診療報酬改善」とございますね。こういうようなものはこれは一遍には全部できないわけです。したがって、今回も薬価基準で五・八%引き下げるということはもうお答えをしておりますから、それが医療費に二・何%かでこうはね返ってくるわけです。そういうようなものはこの技術料の方に振り向けていく。したがって、とりあえず今度医療費改定をやる場合には、まず薬価基準の一部は振りかえていくという方向でそれはスタートしていきたい、薬価基準を大幅に下げたときにはもっと大きなはね返りになる、それは今度の診療報酬改定には間に合いませんよと、そういうことでございます。
  150. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから次に、「給付に見合った保険料及び財政基盤に応じた国庫補助による保険財政の安定」、これはどういう意味でしょう。
  151. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) いずれにしましても、基本的な問題を解決する際に、政府管掌の健康保険にしましても、医療保険制度財政的に健全に運営されるということがやはり一つの大きな問題であるわけでございます。そういう意味から申しまして保険料あり方、すでに現在政管の保険料は千分の七十八でございまして、法律で決めておりますのは八十まででございます。したがいまして、その後の保険料をどういうふうに考えるか、あるいは健保組合の保険料も現在上限が千分の九十でございます。これをどういうふうに考えるかというような問題もございます。さらに国庫補助につきましても、現在の千分の八十の範囲内におきましては、定率の国庫補助のほかに保険料率の引き上げに伴う連動国庫補助という問題もございますけれども、こういうような低成長下におきまして、しかも国家財政が苦しいという中におきましても、国庫補助をどういうふうに考えていくかという国庫補助あり方ということにつきましても大きな問題であるというふうに思っております。
  152. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうことに関連しまして、私は質問をしたいと思っていたわけですが、今回の改正によりましても赤字が解消できるかどうか、それは医療費値上げがあるかどうかにもよりますけれども、医療費値上げというものが必要となった場合には、結局赤字が解消できないじゃないか。そこで、厚生省が今回の改正案検討していた当時と今日の情勢とは大分変わってきているんではないかということ。たとえば、今日のような不況、倒産、企業の人員削減、まあ円高不況というふうなことはとうてい見通しがたたなかったこと、そういう見通しにくかった、むしろ見通しができなかった事態が今日に立ち至っているということ。そういう点で、この今回の一部改正だけをどんどん進めること事態が無理があるんじゃないか、こうした根本的な基本的な問題から出発して今回の改正に取り組むべきじゃないかという意見についてどうですか。
  153. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) この不況、倒産というような問題がございましても、病気が減るわけではございません。やはり、医療の需要というものは多いわけでございますから、それによってまた恩恵を受けるといいますか、当然給付を受けておるのでございまして、そういうようなことはことといたしまして、一方にその医療需要があるということはそれだけ費用がかかるということで、だれかがその恩恵を受けておるわけでございます。したがいまして、抜本改正抜本改正として、もっと手厚い医療給付もする、そのかわり費用負担も別にまたかかりますよということを提案をしていきたいと思っております。したがって、今回の問題はいままでの財政上の問題も含めて、要するにお金がなければ支払いがつかなくなって、健康保険がうまく運営できないわけでございますので、そういうような緊急避難的な意味改正案を提案をいたしておりますから、これはこれとして成立をさしていただきたいと、こう考えておる次第でございます。
  154. 小平芳平

    ○小平芳平君 第一、この今回の改正案を提案するその出発点は、昭和四十八年度の改正時点、この時点から検討し直さなくちゃならない。昭和四十八年改正時点では給付費の一〇%の国庫補助あるいは弾力条項というようなことで、この四十八年度改正によって赤字が防げると。現に会議録もいま私持っておりますけれども、厚生大臣も当時の局長も、四十八年改正によって四十九年、五十年、五十一年とこの保険財政を安定するということを繰り返し繰り返し答弁している。それに対して、私たちは果たして一〇%の国庫補助でいいか悪いか、いいか少ないか、あるいは弾力条項についてもいろんな意見があって、連動して引き上げになる国庫補助も衆議院で修正され、また参議院で修正されて、引き上げられた結果が修正可決されて四十八年改正となったわけでしょう。したがいまして、四十八年改正を反省した上で、今回の財政対策というものを検討なさったのかどうか、その点を伺いたい。
  155. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 御指摘のように、四十八年度で改正案を提案をしたわけでございますが、当時として政府案というのは家族給付を五割を六割に引き上げると、こういうことにしたわけでございます。ところが、国会修正によってそれが七割ということになったわけであります。一方、連動国庫補助の方も千分の一につき〇・四%が、千分の一の引き上げにつき〇・八%と、こういうようなことでふやされてまいりましたが、そのかわり特別保険料は削除になってしまった。そして実際から言えば、この四十八年当時のような高度経済成長がずっと続くということになれば、これでバランスがとれると当時思ったのでしょうけれども、現実には給付の方は引き上げられた。それから補助率の方も引き上げられたが、その差額というものは当然あるし、その間に医療費改定等もありまして、結局はその赤字ができてきたということでございます。参考までに申し上げますと、家族給付率の引き上げ、五割を七割に引き上げたことによって、四十九年から五十二年までの間には財政的には二千五百八十九億円程度支出増に実はなってきておるわけであります。一方、連動国庫補助率というものの設定によって、千四百八十八億円くらいこれは収入の面でプラスになっておりますけれども、支出の面の方がはるかに大きく出てきたということなどが赤字原因一つでございます。
  156. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、今回の改正改正といいましても衆議院で修正になっておりますが、今回の衆議院の修正案が成立すれば見通しはどうなりますか。
  157. 岡田達雄

    政府委員(岡田達雄君) 今回の衆議院の修正によりまする状況を申し上げますと、先般の当委員会におきまして委員の先生方に差し上げました資料のとおりでございます。数字を申し上げますと、法案が成立した場合、五十二年度におきましては単年度収支が四百四十二億の黒字となり、四十九年度以降の累積収支は九百三十四億円の赤字に減少いたします。五十三年度でございますが、五十三年度単年度におきましては、七百九十億の黒字が生じまして、差し引き四十九年度以降累積収支は百四十四億円の赤字が残ります。
  158. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは医療費引き上げがなかった場合でしょう。ですから、医療費引き上げなしでいかれますか。
  159. 岡田達雄

    政府委員(岡田達雄君) 診療報酬改定の問題は、いずれにいたしましても中医協に諮問するという段階になっておりますので、具体的にいつということはいま申し上げられませんけれども、診療報酬の引き上げということは先般の中医協の経過から見ましても、ある段階で諮問申し上げたい。したがいまして、診療報酬の引き上げは考えていかなければならないというふうに思っております。
  160. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがって、診療報酬を引き上げた場合には、五十三年度単年度でも、この引き上げの率いかんによりますけれども、仮に一〇%とすれば、すでに五十三年度単年度で赤字になるということでしょう。
  161. 岡田達雄

    政府委員(岡田達雄君) 確かに診療報酬改定の幅ということは、現在申し上げられる段階ではございませんけれども、いま申し上げましたように、非常に財政収支が窮迫している状況でございますから、ある程度診療報酬の引き上げということになりますと、やはり収支というものにつきましてはどうしても赤字にならざるを得ないというふうに思います。
  162. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがいまして、ちょうどけさ発表されたようなこうした基本的な問題が、そのままの現時点で、その衆議院の修正案どおり成立しても目に見えて赤字になるということで、どうして急がなければならないか。衆議院でも緊急避難的なものだというふうなこともおっしゃっておられましたが、仮に診療報酬引き上げの実施が来年四月以降ということもあり得るですか。
  163. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 先ほどお答え申し上げましたように、できるだけ早い機会に診療報酬改定の問題に取り組みたいというふうに考えている次第でございます。
  164. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃ、五十三年度がすでに赤字になるかどうかという点は、来年四月、つまり五十三年度に入ってもなおかつ診療報酬の引き上げがなければ話は別になりますが、五十三年度当初からすでに何%か引き上げになっていた場合、それが一〇%なら二百億円くらいの赤字になるということでしょう。
  165. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 診療報酬改定の時期は未定でございますけれども、先生のいま御指摘になりました五十三年の四月でございますか、四月から一〇%ということになりますと、一%について十六億でございますから、一〇%でございますと百六十億と、したがいまして、満年度にしますと千九百億と、二千億近い赤字が現在の累積赤字以上に、何らの措置を講じません場合には増加するということになります。
  166. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣ね、それはまあはっきりさせることはできないでしょうけれども、この診療報酬の引き上げの諮問はいつごろを予定されておられるか。それはいかがですか。要するに、五十三年四月一日以前に引き上げが予想されますかどうか。
  167. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私どもといたしましては、この健康保険制度の円滑なる運営というものを図ってまいりたいと、これが根本でございます。そのためには、提案をいたしました健康保険法改正案というものを通していただきたいと。これがともかく国会を通過するという暁において、なるべく早いときに、やはりその医療費の問題も適正にこれは決めていきたいと、こう思っておるわけでございます。どうせ医療報酬を引き上げて赤字になるんならば、それはみんな一緒くたにして来年度以降にしたっていいじゃないかと、こういうような御意見も一部ございますが、そうすることによって、すでに支払い不能の状態に陥る、赤字幅が大きくなるわけですから。ですから、なるべくそういうような傷はたくさんつくりたくないと、こう思っておるわけでございます。
  168. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、国会が終わった後というのは、国会あと三日ほどですから、あと三日ほどで国会が終わったら諮問案をつくるわけですか、諮問をなさるわけですか。
  169. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 三日で諮問をするというわけにはまいりませんが……
  170. 小平芳平

    ○小平芳平君 国会は三日でございます。
  171. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) ええ、国会は三日でも、私の方はそう簡単にはまいりません。(笑声)まいりませんが、しかし、これは法案が成立することが前提でございますから、成立の暁においては適切な諮問案をつくりたいと。なかなか今月中などというわけにはちょっとまいらないと思います。
  172. 小平芳平

    ○小平芳平君 どうも、成立することが前提と言われましても、反対の意見もたくさんあるわけですから、もし成立しなかった場合は、成立させない方が悪いんだと、したがって、診療報酬引き上げが延びるのは国会で法律が成立しなかったから、反対した方が悪いんだと、こんなことにもならないんじゃないですか。
  173. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私は、悪いことにはならないと思っております。
  174. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに、法案成立は——法案審議社会労働委員会、けさからもごらんのように一生懸命審議か継続され、今夜も遅くまで審議が続けられようということが、それが一つあるわけです。ただ、医療費の問題は医療費の問題としてまた一つあるわけです。したがいまして、法案成立しなければとか、法案成立した段階でとか、それが条件になるのは少し先走り過ぎませんかと言ってるわけです。
  175. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 理屈はいろいろあろうかと存じます。しかしながら、私は財布は一つしか持っておらないわけでありまして、やはりその財源の見通しが立たないというようなときに、われわれとしては、理屈があってもなかなか適正な医療費の実現はむずかしい、現実には。したがって、われわれとしてはあくまでも法案の通過を願って、お願いをしているわけでございますから、法案が通らなかった場合ということはいまのところ想定をしておらないわけです。したがって、法案が成立をすると、その暁において、ということを言っておるわけでございます。
  176. 小平芳平

    ○小平芳平君 では、法案成立、法案成立とおっしゃいますが、参議院でこの健保審議の始まる前の日にニュースで、自民党はこの衆議院修正案をさらに修正することを決めたというふうにニュースがありましたですよ。首振ってるけど、ぼくはちゃんと見たんですから。自民党の決めたことを政府に聞きませんけれども、やはり情報化社会ということを先週の委員会でも大臣局長もおっしゃっておられましたが、情報化社会の今日、やっぱりそういうように修正すると決めたと、まだ審議始まってないうちに、そういうふうなニュースが流れますとですね、全国に、やっぱり見たり聞たりしている人もいるわけですから。したがいまして、自民党が決めたということを政府に聞いても意味がありませんから聞きませんけれども、この千分の十五の負担割合、これは特に国庫補助がどうかという問題をお尋ねするわけですが、これは政管健保の構造的な赤字ということももう何年来言われてきたことでありますし、高年齢者が多い、給与が比較的低い、そしてまた病気が多いし、長い病気の方が多い、いろんな点で指摘されているわけでありますから、したがいまして、四十八年改正のときも一〇%でいいか悪いか、あるいは連動して引き上げられる分が幾らが妥当かということで、先ほども大臣からもお話がありましたように、衆議院、参議院、二回修正になっているわけですから。したがいまして、この国庫負担率についてどう考えますか。
  177. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私どもといたしましては、すでに三千億円からの国庫助成をいたしております。このことは、ドイツとかフランスとかというような健康保険制度をとっておるところにおきまして、国庫でそういうような健康保険の補助をしているところはございません。そういう点から見まするというと、日本国民健康保険には一兆四千億円、政府健康保険には三千億円というような膨大な国庫補助をいたしておりますので、現在の財政事情というものを考えますというと、現在提案されているもの以上に目下のところ国庫補助をふやすということは、言うべくして外国との比較におきましてもかなりのことをやっておりますから、これ以上大幅にふやすということはなかなかむずかしいという状態であります。
  178. 小平芳平

    ○小平芳平君 大幅とも私は言っているんではありませんでして、五、四、一ですか、五、四、一というこの一をたとえば二にするとか、そういうふやし方が検討課題になりませんかと申し上げている。
  179. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私どもといたしましては、目下のところこれ以上の修正は困りますということを申し上げておるわけでございます。
  180. 小平芳平

    ○小平芳平君 この政管健保の構造的な問題はきのうきょうに始まったことではないわけですから、厚生省としても十分検討してきたことと思いますから、したがいまして国庫負担がどのくらいと、それは外国にはないという話も、御答弁も何回聞いたかわかりませんけれども、なおかつ構造的な面を何らかで補助しなければ成立しないわけですから、そういう点を検討していただきたいとともに、先ほど大臣から特別保険料前回改正のときに削除されたということを言われましたが、そのとおりでありますが、これは国会でも野党が反対いたしましたし、審議会もこういう場当たり的なつじつま合わせの財政対策ではだめだという答申もあったわけでしょう、いかがですか。
  181. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 今回御提案申し上げております特別保険料につきまして、社会保険審議会なりあるいは社会保障制度審議会の御意見をいただいたわけでございます。社会保険審議会におきましてはいろいろ御意見が分かれておったところでございます。それから、社会保障制度審議会におきましては、基本的な問題、基本的にどうするかということでなしに、確かに先生御指摘ございましたような臨時的な場当たり的な意味でやるということではにわかには賛成できないということで、逆に恒久的な制度としてやるというならばむしろ考えるべきであるというような御意見もあったという点については、補足させていただきたいと思います。
  182. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに、特別保険料はボーナスから安易に差し引くということは、保険料を徴収するということはにわかに賛成できないと。私も反対ですけれども、この社会保障制度審議会ではむしろ保険料率を問題にすべきであって、こうした一時しのぎは続くものじゃないと、こういうことを考えること自体、そんなふうにも言っていないけれども、結局場当たり的じゃいけないということだと思います。  そこで、次にお尋ねいたしますことは、この特別保険料はいつまで続くことになりますか。
  183. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 御提案申し上げております改正法の法律の中にも書いてございますように、基本的な問題につきましての対策というものの措置が講ぜられるまでの間ということで、あくまでも臨時的、応急的な措置であるというふうに考えております。
  184. 小平芳平

    ○小平芳平君 必要なる措置が講ぜられるまでの間ということですね。そして大臣の提案説明にも、あるいは法律案要綱にも、きわめて一時的な措置だというふうに当面の臨時応急の措置とか、当面の臨時的な措置というふうになっております。なっておりますが、臨時応急と言いながら結局いつで切り、特別保険料の徴収がいつで終わるということが想像できますか、いま厚生省で、想定できますか。
  185. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それは、先ほども抜本改革の基本的な考え方というところで立法の時期、実施の時期というもののおおよそのめどを申し上げたわけです。われわれとしては、過半数以上のものを五十四年度ぐらいまでにやりたいとこう思っておるわけでございますから、これは政府が提案をすることですから、そいつを審議をなさって国会を通過をしなければ成立しないわけです。通過をさせる力というのはなかなか私の方はないわけでございまして、しかしわれわれの案はすでに衆議院などでも社労委員会に小委員会までつくろうかということになっておりまして、その小委員会は各党から出ておりますから、そういうところに諮って法案をこしらえれば、そう長いことひっかかることはないんじゃないか。したがって、提案をすれば提案の年、その年か遅くてもその次の年には成立をするんだろうと、そういうふうに期待をしておるわけです。そうなりますと、いつということはこれは国会との関係もございますから確約はできませんが、そう遠い先ではなくて、まあそこらにこう見えるぐらいのところと、こういうように御理解をいただきたいと存じます。
  186. 小平芳平

    ○小平芳平君 必要なる措置が講ぜられるまでの間ということは、十四項目挙げておられますものが検討の基本になるという御趣旨でございますが、保険局長、この中で財政にプラスになる項目はどれですか、財政がふえる項目は。ということは、診療報酬が引き上げになった場合、引き上げ幅にもよりますが、一〇%仮に引き上げになった場合には大幅赤字になると局長先ほどおっしゃっておられるわけですから、したがいまして財政負担がふえる項目はずいぶんたくさんあります。とともに、財政負担が、財政の収入にプラスになる項目、分けてひとつ簡単に御説明いただきたい。
  187. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 先ほどもお答え申し上げましたように、医療保険の健全な運営を図るという意味では財政基盤の安定なり確立ということが必要なわけでございます。そういう趣旨から申しますと、政府管掌健康保険の分野で申し上げますと、先ほどの十四項目の中で財政的にそういう意味では寄与するという面で申しますと、三の「一部負担適正化合理化」なり、あるいは九の「給付に見合った保険料及び財政基盤に応じた国庫補助による保険財政の安定」なり、あるいは十の「保険料負担の基礎となる報酬の合理的な見直し」というようなところが、医療保険制度そのものとしてはこういうようなところではないかというふうに思います。
  188. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、「一部負担適正化合理化」ということは、一部負担を上げるということですか。あるいは「給付に見合った保険料及び財政基盤に応じた国庫補助」、これはやはり保険料を引き上げる、それから国庫補助を引き上げるということですか。それから、「保険料負担の基礎となる報酬合理的見直し」は、これはどうしてプラスになりますか。
  189. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) ただいま申し上げた点は、   〔委員長退席、理事佐々木満君着席〕 いずれにいたしましても今後給付費はふえてまいるわけでございまして、それに見合いまして負担という面も当然考えていかなければならない。そういう意味から申しますと、一部負担適正化合理化という問題につきましては、社会保険審議会でも言っておりますように、一部負担適正化合理化というのは、現在審議お願いしております額というものを基礎にしまして、さらに今後どういうふうにこれの引き上げなり、あるいは新たな一部負担というものを考えていくかということになろうと思いますし、保険料なり、あるいは国庫補助ということにつきましては財政収入の問題になると思います。  それから、十番目の「保険料負担の基礎となる報酬合理的見直し」、この辺につきましては、標準報酬の上下限のあり方なり、あるいはボーナス保険料について今後どうするかというような、たとえば総合修正の問題等も含めましてこういうような問題も当然検討する課題であるというふうに考えております。
  190. 小平芳平

    ○小平芳平君 結局、「必要ナル措置が講ゼラルル迄ノ間」ということは、そう遠い先のことではないということでありますね。  この衆議院の修正で特別保険料の免除額、五分の一の免除ですが、「当分ノ間」となっておりますが、この「当分ノ間」も同じ趣旨に解してよろしいですか。
  191. 戸井田三郎

    衆議院議員戸井田三郎君) お尋ねの件は、政府提案の第二条第一項、先ほどありました「必要ナル措置が講ゼラルル迄ノ間」というものを受けて、この五分の一の免除というものを「当分ノ間」に解しております。
  192. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがって期間は同じというふうに理解してよろしいわけですね。
  193. 戸井田三郎

    衆議院議員戸井田三郎君) その範囲内と解しております。
  194. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますると、第二条の「必要ナル措置が講ゼラルル迄」の、その必要な措置がまだ講じ終わらないうちでも「当分ノ間」が切れるということがあり得るわけですか。それはあり得ないでしょうか。
  195. 戸井田三郎

    衆議院議員戸井田三郎君) これは第二条に、「迄ノ問」ということは、その間に抜本改正なりしてその特別保険料そのものの必要性というものもそこで決まると思います。その範囲内であります。
  196. 佐々木満

    ○理事(佐々木満君) 申し上げますが、戸井田三郎君、御苦労さまでございました。結構だそうでございます。ありがとうございました。
  197. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから次に、安恒委員から、十二月一日施行ということは物理的に無理だということがるる指摘されましたが、何か検討されましたか、その後。特別保険料
  198. 岡田達雄

    政府委員(岡田達雄君) この特別保険料の徴収につきましては、すべて一般の保険料と同じ取り扱いになるわけでございますが、健康保険におきます保険料は事業主から徴収することに相なっておるところでございます。したがいまして、この特別保険料につきましても納付義務者である事業主が支払うというふうになっておるわけでございまして、その点につきましては私ども問題はないというふうに考えておるところでございます。
  199. 小平芳平

    ○小平芳平君 いや、それが問題があるとるる指摘されたでしょう。その指摘を受けた結果、何かうまい方法が見つかりましたかって聞いているんです。
  200. 岡田達雄

    政府委員(岡田達雄君) 先般の委員会で問題になりました点は、被保険者が事業主に支払う点について間に合わぬではないかという御指摘を受けたわけでございますが、私ども検討いたしました結果では、あくまで保険料を納めますのは事業主でございます。現実問題といたしまして、事業主に被保険者が払うことが間に合わなかったという問題につきましては、これは別途事業主に対しまして被保険者が負担分を支払わなければならぬという債務を負うわけでございまして、これは事業主、被保険者間の問題でございます。さように私ども理解しておる次第でございます。
  201. 小平芳平

    ○小平芳平君 余り検討していませんね。結局同じことですから、物理的に時間的な無理をどう克服するか、克服できるのかできないのかということでしょう、問題は。どうですか。
  202. 岡田達雄

    政府委員(岡田達雄君) 先ほど来申し上げておりますとおり、この特別保険料につきましても、事業主から社会保険事務所が徴収するかっこうになっておるわけでございまして、この点につきましては、徴収につきまして別に時間的な問題はない、さように考えておる次第でございます。
  203. 小平芳平

    ○小平芳平君 なるほど、事業主が実際上ボーナスから差し引こうと差し引くまいと事業主はちゃんと納めると、そういうことですね。法律的にはそうだと。時間が間に合わないなんということは許さないというわけですか。
  204. 岡田達雄

    政府委員(岡田達雄君) この特別保険料を現実に徴収いたしますのは、具体的に申し上げますと来年の一月末までというふうなかっこうになっておるわけでございますが、私ども、この法案が成立いたしましたならば、直ちに事業主に対しまして周知徹底を図るというふうに考えておりまして、その間は問題はないというふうに判断しておる次第でございます。
  205. 小平芳平

    ○小平芳平君 御答弁はそれでいいですけれども、問題ないというその認識ですね、いかにもお役所式というか何というか。問題はあるんです、問題はありましょうがこうするよりほかないというんでしょうけれども、頭から問題はない、法案が成立したら納めるのが当然だという、そういうのはよくないんじゃないですか。どうですか。
  206. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これもこの前、私がお話しいたしましたように、本当は一ヵ月も前に法律が成立していれば一番いいんです。いいんですが、御承知のようなことで会期延長になっておくれたということも事実でございます。したがって、その日数が二十六日から一日までの間に日数が短いということも事実です。これは、事実でございますが、これだけ大問題になっておりまして、新聞もテレビもあることでございますし、情報化社会でございますから、(笑声)いま法案が通るか通らぬか、事業主はそれぐらい皆さんわかっているわけですよ。したがって、不親切ではないかと言われてしまえば身もふたもない話なんです、これは。そういう点ではもっと親切なことがいいにこしたことはありません。したがって、そういう点ではもっと時間があった方が趣旨は徹底するなということも事実です、これは。事実でございますが、こういうような事情でございますので、今回はもうやむを得ないことでございますから、趣旨は徹底させますから、まあひとつ、十二月の一日前に俸給、賞与を支払ってしまうとか、あるいは計算をしちまうというのはしばらくお待ちをいただきたいということなんです。ですから、確かにそういう点は十二月一日以前に俸給を支払う、計算をするというのは事業主の都合でございますから、こちらは公布しなければ法律発効しないわけですから、公布をすれば直ちに発効すると、こういう例は残念ながら酒やたばこの値上げの例とかたくさんあるんですよ。不親切だと言われればそうかもしらぬけれども、この際はひとつ御容赦をいただきたいと、こういうことでお願いをしたいと思っております。
  207. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣のいまのお話と部長さんのお話と大分違うということだけはっきりしておいてください、厚生省当局は。  次に、一部負担の引き上げ、二百円を七百円、六十円を二百円、この点についても、ニュースでは自民党が引き下げてもいいと決めたと、こういうふうにニュースでは言っておりましたが、厚生省はそんな引き下げる、要するに値上げ幅を抑えるというようなことは考えておりませんとおっしゃるでしょうけれども、私は引き続いて保険外負担のことでいろいろお尋ねをいたしますが、とにかく保険外負担というものが大変な金額に上っている、そういう現実があるわけです。その保険外負担の解消はこの次の診療報酬改定のときから手をつけて逐次やっていくというふうに朝の説明ではなっております。なっておりますが、現実問題、大変な保険外負担を強いられている。そういうときにもあえてこの七百円、二百円というものはぜひとも押し通そうとおっしゃるのかどうか。七百円を五百円か六百円に下げてもいいような、ニュースでも言っておりましたが、いかがですか。
  208. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 一部負担金につきましては、先ほども御説明申し上げましたように、四十二年以来据え置きになっているわけでございます。その後の経済指標の変動等を考えました場合に、医療費にいたしましても、あるいは所得の伸びにいたしましても、所得の伸び等は四倍以上、あるいは医療費も三倍半以上というふうに上がっているわけでございまして、単なるスライド的な改正であるということから申しまして、ぜひともこの額につきましては原案どおりお願いしたいというふうに考えている次第でございます。
  209. 小平芳平

    ○小平芳平君 ぜひともというところへ力を入れておっしゃったんですが、とにかく保険があって保険がないという実態がありますから、それは後でお話をいたします。  今回の改正には埋葬料、分娩費、こうしたものは出ておりませんが、とても赤字財政で埋葬料や分娩費を上げるどころの話じゃないという御趣旨かもしれませんか、そんなことは私は言いませんが、どういう趣旨で今回出しておられませんかということと、大体どのくらいいま埋葬や分娩にかかると思っておりますか。そういうことは調べておりますか、どうですか。
  210. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 分娩費、埋葬料につきましては、確かに先生御指摘のように、現在の政管の財政状況ということを考えました場合に、   〔理事佐々木満君退席、委員長着席〕 むしろ、その当面の財政対策というのが今回提案した法案は中心にならざるを得ないというようなことで、財政状況からしましても非常にむずかしい。ただ、非常に被保険者から要望の強い傷病手当金の延長の問題を取り上げたわけでございますけれども、財政的にも非常にむずかしいということと、もう一点は、昨年の改正におきまして分娩料なりあるいは埋葬料の改善を行ったというようなこともございますし、その後の状況等を見ますと、それほど大きな変動はないというようなことから、今回の改正については見送ったというような次第でございます。
  211. 小平芳平

    ○小平芳平君 最低保障額が埋葬料五万円、分娩料十万円ですね、それほど上がってないとおっしゃるんですが、どのくらいかかると思いますか、実際いま。
  212. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 昨年の分娩費用十万円ということで改定をしたわけでございますけれども、この考え方にはそれぞれ分娩の費用は地域によりましてあるいは施設によりましていろいろ相違があるわけでございます。  ただ基本的には、国立病院におきます分娩費用の実態というものから見まして、何とか賄えるんではないかというようなことから、昨年の改正におきまして十万円に引き上げたわけでございます、具体的な例で申し上げますと、北海道の場合には現在最低で八万一千円、それから最高で十一万というような数字でございます。地域によってやや違います。これは国立病院の数字でございます。東北の場合には最低で七万八千円、最高で九万八千円というような数字が出ております。ただいま申し上げましたのは国立病院の費用でございます。  それから、埋葬料の状況でございますけれども、東京都の区民葬の葬儀の料金、昨年の十月の数字でございますけれども、A券、B券、C券というのがございまして、公営の場合にはA券の場合に八万円、B券の場合には四万四千円、C券の場合には三万二千円というような数字でございます。
  213. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は分娩費、埋葬料、調べているわけじゃありませんけれども、いま局長のお話だけを伺っておりましても、国立病院で出産する人というのはごくわずかでしょう。その低い金額で出産できる方はごくわずかでしょう。
  214. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 分娩の場合に、施設分娩でいろいろあると思います。国立病院の場合には大体その地域の基幹病院的なものというようなことから、ある程度この辺を基準にしたということでございます。実際に確かに御指摘のように全部が全部国立病院ではないわけでございますし、逆に民間の開業医の方で分娩されるというケースもあると思いますし、逆に母子健康センターなりあるいは助産所等で分娩が行われるという場合に、国立病院より低いというケースもあるということを御理解いただきたいと思います。
  215. 小平芳平

    ○小平芳平君 常時これは調査していただきたいと要望いたしまして、次に、薬の問題については、けさ来ずいぶん出ておりますので、また薬価基準改定から逐次実施すると言われておりますので、一点だけ伺いたいんですか、その前に五・八%の薬価基準の引き下げ、これはいつから実施されるわけですか。
  216. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 現在、薬価基準の引き下げにつきましては、十一月一日にすでに告示したわけでございます。ただし、実施時期につきましては別に厚生大臣が定めるところによるということで、まだ完全実施にはなっておりません。この実施時期につきましては診療報酬改定ということとある程度考慮せざるを得ないということで、診療報酬改定を考慮しまして実施時期を決めたいというふうに考えている次第でございます。
  217. 小平芳平

    ○小平芳平君 薬価基準が五・八%現在高いということがわかったと、しかしその引き下げは診療報酬改定のときに合わせようということですから、わからないわけですね、いつ実施になるか。それで薬が荷動きが変わったりあるいはいまのうちは高いわけですから、高く売れるんですから、大量に売りさばこうとか、そんなことが起きるんじゃないですか。
  218. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 先ほども大臣答弁申し上げましたように、法案成立の暁には、できるだけ早い機会に診療報酬改定に取り組みたいということでございますので、すでに薬価基準改定内容というものも告示しているわけでございますから、できるだけタイムラグのないように、実施の時期をできるだけ早い時期にスタートさせたいというふうに考えております。
  219. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから次に、制がん剤というものが開発され、売り出されておりますが、制がん剤は何種類くらいあるか、その効用はどういう効用があるのか、そういうような点はいかがですか。
  220. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 制がん剤と申しましても、各種いろいろな種類に分かれておるようでございまして、ごく大ざっぱに申し上げますと、化学的な合成薬品によるもの、それから天然物を使いました制がん剤に大きく二つに分かれるかと思います。この天然物による制がん剤の中に、植物成分を使用したものとかあるいは抗生物質をその成分とするものもございます。現在、薬価基準に収載されておりますものは、成分として三十三、銘柄としては七十六銘柄でございまして、そのうち二十七銘柄が内用剤、四十七銘柄が注射剤、外用薬が二銘柄と、こういうふうになっております。
  221. 小平芳平

    ○小平芳平君 制がん剤につきましては、兜町では苦しいときのかん頼みとか言いまして、制がん剤を開発したとなるとその会社の株が上がる、株が上がるだけじゃなくて、さらに収入、会社自体の経営が楽になると。そんなにもうかるものですか、局長、制がん剤というのは。どうですか。
  222. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 何分にも先生御承知のとおりに、がんに対する的確な治療方法というようなものが非常に多数の人によって要望されているわけでございます。それに対しまして、現在のところ、いわばがんに対して有効な薬品をいまかいまかと待ち構えている患者の方が非常に多いということでございまして、そこで、制がん剤が開発されますると、これは競ってこの薬を使うという現象が起きるわけでございます。その意味におきまして、この制がん剤、逐次抗生物質あるいは化学成分によるものあるいは天然成分によるもの、いろいろ開発されてまいりまして、近年急速にその生産額伸びております。この生産額伸びておりますことは、それだけ医療面において実際の需要が大きいということを示すものだと思いますが、たとえば四十六年におきましては、その制がん剤の生産額はわずかに三十三億円でございましたが、五十一年ではすでにそれは四百三十億円、この五年間で十三倍ほどこの制がん剤の生産量が増加しているという事情にございます。特に、それで現在の薬価基準の方式等によりましては、新規に開発されました医薬品が後からどんどん、何と申しますか、同様のものをみんながつくり出すというふうな状態になるまでの間には、確かに薬品としてのいわば収益率が高い時期がございまして、そういう意味での新発薬というようなものが経営に寄与することはある程度推測できるところでございます。
  223. 小平芳平

    ○小平芳平君 制がん剤は、一九六三年四月一日から五日まで大阪でもって日本医学会総会が行われたという、そこで悪性腫瘍の化学療法ということで二千九百三十八例についての成績の報告があった。制がん剤を静脈内に注射した場合の効果はいかん、これは二千九百三十八例のうち静脈内に制がん剤を注射して効果があったという人はどのくらいあったと思いますか、局長
  224. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 残念ながらその資料を私見ておりませんので、ちょっと私はいまの段階ではお答えいたしかねるわけでございます。
  225. 小平芳平

    ○小平芳平君 大体でいいから、二千九百三十八例の人に制がん剤を静脈注射したと。
  226. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) たとえば、一つ最近薬価基準に収載されました天然成分による制がん剤の治験段階における有効率というようなものを見ますと、その数字は、大体単独ですれば二〇%、他の放射線等の併用を含んだ場合に二六%というような数字を現に持っている制がん剤がございます。大体まあそういう治験上の有効率というのは、まあ物にもよると思いますが、二、三割というふうな感じでわれわれとしては考えているわけでございます。
  227. 小平芳平

    ○小平芳平君 二、三割ということは、仮に三千人の人か注射した場合、六百人から千人くらいの人は効果があったと、こういうことですか。  大臣、おおよそでいいですから、二千九百人の人が制がん剤の注射をしたと、で、効果があった人は何人かという、おおよそのもう目見当でいいから。
  228. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは学問的な問題で、私からお答えするのはいかがなものかと思いますが、ただいま薬務局長から言ったように、大体二割から三割ぐらいと。で、私もそんなに少なくてもいいのかねというような話をしたことがあるんです。ところが、やっぱりがんというものはなかなかいままでともかく致命的な病気であるし、完全に治るという薬はいまのところ発見されてないと。そうするとみんなの人は、たとえば二割でも効くということになれば、ほとんど効かなかったわけですから、それは効く人があれば、それで命が助かるということなので、まあ二割ぐらいの治癒率といいますかね、効果があれば、これはやっぱりみんなが許可してくれ許可してくれという人が圧倒的に多いんだから、まあその程度でやむを得なかろうということが学者の意見だというので、まあ皆さんがそう言うんならそれしかないわけですから、私は。(笑声)それで許可をしておるわけであります。
  229. 小平芳平

    ○小平芳平君 まあ、大臣はお医者さんでもありませんし、私も医者でもありませんし、まあおおよその目見当で常識的にどのくらい効くかということを伺ったんですが、局長専門家ですから、もうちょっと正確でないと困るんじゃないですか。
  230. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 私は残念ながら事務屋でございまして、(笑声)こちらに専門の医務局長がおられますんで。
  231. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 私の存じております範囲内では、抗がん剤のみをもってがんを治すことはできないと考えております。せいぜい症状を改善させる。まあ、これもいろんな状態がございましょう。気分がよくなる、食欲がふえる、体重がふえると、そういったことではないかと思います。したがって、現在のような微力な抗がん剤であればどうしても手術とか放射線、こういったラジカルな治療方法と併用をしなければならないと思っております。最も象徴的な例は、子供に多い白血病の場合の化学療法でございましょうが、これも現在においては生存期間が十年ぐらいになってまいりました。しかし、これは世界の最先端の技術をもってしての治療状況でございますから、白血病の場合もたとえば日本あたりで平均で見ればまあせいぜい四、五年ぐらいの延命策しかないと考えております。
  232. 小平芳平

    ○小平芳平君 そこか大事なところだと思うわけで問題提起しているのですが、この日本医学会総会学術講演集によりますと、二千九百三十八例の中で、注射によって効果があったという人はわずか二例、二千九百人中ただ二人というこの学術報告ですから、私が言っているんじゃないんです。学術講演集の中に出ておりますのは、四種類の制がん剤を使っているんですね。そうして、多くの大学の外科医学会が参加をして、そうして研究をした。その研究の成果をお互いに報告をした。私も常識的に、二千九百三十八例ならば、まあ一割くらいはと思ったんですが、そうじゃない。読んでみるとわずか二例です。二人です。いま医務局長が言われたように、確かにこの制がん剤だけでは効果はないという。結局、外科手術などに頼らなければ、併用をしなければ、制がん剤だけの効果というのは期待できない。にもかかわらず、この制がん剤をつくってどれほどもうかるかということがこの「会社四季報」に出ているわけですね。これによりますと、ずっと薬品メーカーの名前が出ておりますが、名前は申し上げませんが、第一の会社は「制ガン剤が最低年商五〇億円と大幅寄与へ」——これ、書いてあるから見てください。東洋経済にそう書いてあるから見てください。第二の会社、「上期発売の制ガン剤……も寄与見通し」、第三の会社、「乳ガン治療剤の新薬も寄与」、第四の会社、「制ガン剤中心に収益源の医家向け薬が伸長」、第五の会社、「制ガン剤を発売へ」、第六の会社、「制ガン剤発売は53年前半に」、第七の会社、「制ガン剤発売予定」、会社の明るい見通しはみんな制ガン剤になっているんです。こういう点は、会社もうけるのはいいかもしれませんけれども、効きもしない薬を売って、(笑声)それでもうけるというのはちょっとおかしいと思いませんか、政府は。
  233. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) もちろん、医薬品の新規の製造承認は、中央薬事審議会におきましてその安全性有効性を厳密なデータによりましてその判断をしていただくということでございまして、先生御承知のとおりに、行政ベースで勝手な判断をいたしているということではございません。しかしながら、がんの特殊性ということからいたしまして、ただいま医務局長からの御説明もありましたように、多少とも有効性があればこれを何とか使いたいという一般の需要が非常に強いという面も、事柄に影響しているんではなかろうかというふうに考えております。
  234. 小平芳平

    ○小平芳平君 私も個人的にも身近な者が胃がんなどで亡くなっておりますので、非常にこのがんに対しては関心が高いと言ってはおかしいですけれども、重大な関心を持っております。何とかしてがんが征服できるか、またがんそのものはもう世界じゅうにある病気だし、昔からある病気なんですから、何とかがんを治す方法が見つからないものかというふうに期待をいたしております。また、努力もしなければならないと考えております。しかし、この効き目ですね、問題は効き目、効き目はないですか、あるですか、どっちですか。
  235. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) ただいま御答弁申し上げましたように、その有効性については中央薬事審議会で厳密な検討を経まして、有効な薬品であると判定されたものを製造承認をしているという状況でございます。ただ、現実にその段階におきまして、有効性ありと判断されたものであっても、一定の、実際にそれが国民医療に全般的に使用されまして、薬効の再評価等で有効性がないというふうな判断を後に下されて、その適用範囲なりその有効性そのものが否認されるというケースは絶無とは言えません。現在のところ、そういう役所の側で現在使われております薬についての薬効なり有効性なり、あるいは安全性の再評価という作業を進めておるわけでございますけれども、市販されました現在のその制がん剤についても、ある時期にはそういう薬効再評価の網をくぐるということはあり得ることでございます。
  236. 小平芳平

    ○小平芳平君 がんの免疫療法ということについて御説明いただきたい。
  237. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) がんの免疫療法は、ある個人の細胞の免疫の状態が変わったためにがん細胞ができてきた、発育してきたんじゃなかろうかと、したがって、その免疫の状態を変えればがんの進行がとまるかもしれない、あるいは元に戻るかもしれないという、簡単に申し上げれば考え方でございまして、もうすでに戦前からそういう考えはあったのでございますが、特にフランスを中心といたしまして、結核の予防に使っておりましたBCGの菌体成分かそのような免疫を強める、抗がん免疫を強める作用があるようだということかここ十年ぐらい強く主張されまして、現在各国で鋭意研究をされております。事の起こりは結核患者だとかあるいはらい患者、つまり結核菌あるいはその親戚の菌に感染している者にはがんが少ないようだというところから始まっているわけでございますが、これもたとえばBCGをそのまま使う方法もあり、あるいはその菌体成分を特別に抽出して使う方法もございます。しかしながら、こういった免疫療法でございますので、先ほど申し上げましたような合成物質による白血病の治療のような劇的な効果は示しません。やはり、漢方薬のようにじわじわとこう効いてくるようだという程度のものでございまして、まだ本当にこれが有効であるという結論が出たわけではございませんが、ここ数年各国が注目をして研究を推進している療法の一つでございます。
  238. 小平芳平

    ○小平芳平君 一時、サルノコシカケというのががんに効くからといって勧められたことがあったんですが、まあそういう名前では出てないと思うんですが、それについての説明と、それから丸山ワクチン、これについても新聞の投書などでは早く認可してほしいというような投書を再三見たこともありますが、これらについての御見解をお伺いしたい。
  239. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) サルノコシカケの成分を使いました制がん剤としては、現在クレスチンというものがございます。クレスチンはサルノコシカケ科に属するカワラタケというものの菌糸体から分離したたん白多糖体であるということでございまして、どうも私自身そう詳しく理解ができるものではありませんが、このクレスチンにつきましては、呉羽化学工業株式会社が製造業者でございまして、製造承認は昭和五十一年八月十日に与えられております。これはこの臨床上の治験例といたしましては、大体先ほど申し上げました二〇%ないし三〇%の有効率、効いた率が二、三〇%というところでございますけれども、著しい特徴といたしましては、他の制がん剤に見られるような重篤な副作用が全く認められない、つまり、無害性というところにあるようでございます。このクレスチンは、先ほどお話に出ましたこの制がん作用は、いわゆる免疫療法剤に属するものと言われておりまして、使用方法も先ほどの医務局長の御説明のように、少ない用量を長期間投与するという使い方のもののようでございます。この免疫療法の薬といたしましては、これ以外に昭和五十年九月にやはり薬価の基準に収載されましたピシバニールという薬かございまして、このピシバニールという薬とクレスチンが現在がんの免疫療法の薬といたしましてここ一、二年の間に開発され、一般に使用さてれるようになった薬でございます。  丸山ワクチンにつきましては、昭和五十一年十一月に、これは日本医科大学の丸山先生が、いわば治験段階的な扱いで個々の患者に投与されておった実績のある薬でございますけれども、これを正式にゼリア新薬工業株式会社から注射液としての製造承認の申請が出ておりまして、本年五十二年四月以降数回にわたりまして中央薬事審議会においてその安全性有効性についての審議が行われておる段階でございまして、現在その中央薬事審議会における審議が続いておる段階であるということでございます。何分にも丸山ワクチンは丸山先生が非常に特殊な開発の仕方をされたものでございまして、一般の医薬品のように製造承認手続上、たとえば基礎実験としまして、動物による毒性試験とか、催奇形性の試験とか、いろいろあるわけでございますけれども、こういうものと、それから厳密な臨床上の治験データというようなものが、普通の製造承認の過程において要求されているものが実は完備されていない面がございまして、そういう基礎実験あるいは治験データの整備ということで、いろいろゼリア新薬工業株式会社に書類、資料の保管をお願いをしておるというようなことのために、多少時間がかかっているわけでございます。現在のところ、私たちが聞いておりますところでは、そのような基礎実験データ、あるいは治験例の収集のお願いをいたしております、それにつきましては、大体来年六月ごろまでには完全なデータの整備が終わるであろう。その六月までの整備が終わりますと、最終的に中央薬事審議会においてその安全性有効性の判断が下され、それらが満たされれば製造承認の段階になると、かように聞いておるところでございます。
  240. 小平芳平

    ○小平芳平君 薬の安全性有効性については客観的な審査が行われているというふうに信じておりますので、素人考えではずいぶんそんなことがと思うようなことがありますけれども、それは客観的な学問的なデータで審査か行われていくようにと、当然のことではありますが要望いたします。  それから、薬の副作用による健康被害の救済制度はどうなっておりますか。救済制度を提案する、あるいはすでに五十二年度予算にも予算がついておりましたが、その後どうなりましたか。
  241. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 先生御承知のとおりに、薬というものの特殊性からいたしまして、製造承認の段階におきましては非常に厳密な基礎実験あるいは治験データを収集いたしまして、それによって製造承認をいたすわけでございますが、それが実際に多量に実際の医療に使用された場合に、その製造承認の段階で予見し得ないというような、その当時の学術の水準ではついに予見し得なかったような薬害が絶対起こらないという保証はまあ一つないわけでございます。それからさらにもう一つは、たとえば特異体質等の問題がございまして、多少の副作用が低い確率で起こるとわかっておりながらも、やはり薬を使わざるを得ないという場合も、薬の種類によっては往々にしてあり得るわけでございます。さような場合におきましては、いわば製造をいたしました製薬会社もいわゆる現行法制上の損害賠償責任を負い得ないたてまえのものでございますので、そういういわば民事責任が生じないような薬害につきましては、これはたまたまその副作用が生じた個々人の方の被害としてそれを放置するということは、薬の性格上と申しますか、大げさに言えば人類の共通の財産でございますから、その個々人に被害が与えられたまま放置されるということは適当でないという判断をわれわれとしては持っているわけでございまして、そのようなケースについては、そういう副作用の起きた方々に対する救済措置を、たとえばメーカー全体の負担においてとかいうふうな形で救済制度をつくっていきたいというふうにわれわれは考えておるわけでございます。このような発想につきましては、幸い世論的な支持もあり、また、メーカー全体の合意もございまして、現在その細目について検討を進めておる段階でございますが、五十三年度予算の要求上では、とりあえずそのような救済基金制度を五十四年一月に発足をさせまして、五十四年四月からさような形の救済制度を現実に発足させて給付を行っていくというたてまえで、すでに概算要求でもその関係準備費用等を要求してあるところでございます。いずれにせよ、そのような制度の最終的な政府の案が固まりますのは、予算の過程において最終的にその案が財政当局も含めて合意されて、また、国会にも来国会にそのための法案を提出することになろうかと、かように考えておる次第でございます。
  242. 小平芳平

    ○小平芳平君 そこまでは前の局長がしばしば答弁したところですが、いまのお話の中には、幸いにして世論の支持もあってというふうに言われますが、反対も強いでしょう。反対なさっておる方はどういう趣旨で反対していますか。
  243. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 私どもその反対論についてはもちろん全然承知してないわけではございませんが、たとえばこういう救済制度をつくることによりまして、たとえば薬の安全性あるいは副作用等に対する、何と申しますか、免罪符のようなものになってはいかぬという意味での御批判と申しますか、御意見はあると承知をいたしております。もちろん、このような救済制度実施されますことによって、いささかもその薬の安全性なり副作用に対する、何と申しますか、厳重なる注意を怠るようなことがあってはならないと。そういう意味におきまして、当然その救剤制度の発足と、車の両輪といたしまして、薬の副作用、安全性の問題についての行政上の措置のさらに充実あるいはその副作用情報の収集等も含めて、安全性達成ということについては、これ車の両輪という形において推進をしてまいらなきゃならないというふうにわれわれとしては考えておるわけでございます。
  244. 小平芳平

    ○小平芳平君 安全性の問題が一つ、要するに薬害被害者をなくそうということが一つですね。現在の健康被害を受けていらっしゃる方は、こういう悲惨な薬害被害を二度と起こさない、そのことを厚生省に強く要求するという点、それからそのためにはどういう処置をとられるかですね。いま行政的に安全を守るようにというふうに言われましたが、たとえば薬事法の改正とか、そういうことも要求しておられるわけですから、したがって、同じような薬の被害を出さないという、その政府の取り組み、これが一点です。  それからもう一点は、因果関係が予見できなかったもの、そのものに対して救済しようというわけでしょう。そうなりますと、そこの救済を受けるということは、因果関係不明と、因果関係が予見できなかったということが、そういうことになってしまうと、そうすると被害者は、原因はこの薬だと言っても、メーカーは、いやその薬のせいじゃないと言った場合に、そこで救済制度が、これは因果関係が予見できなかったといって救済の中に入れるということになれば、非常に被害者に不利になりはしませんか。  以上、二点はいかがですか。
  245. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 先生御指摘のとおりに、この救済制度は救剤制度といたしまして、薬害の根絶ということについて厚生省といたしましては全力を傾注する覚悟でおるわけでございますが、これはもちろん、製造承認の過程におきますところの厳密な安全性審査という問題がまず第一歩でございまして、その後の一般の医療医薬品が使われます過程において、いわゆる副作用情報を綿密に収集をいたしまして、その副作用情報によって、その薬の使用なり用法なり容量なりあるいは適応症なり、さらにはその薬そのものの安全性を常に再検討していくという手続をとる必要があるわけでございます。さような意味におきまして、安全性確保に配意いたします傍ら、しかしながら、先ほどお話しいたしましたように、その製造承認の過程では残念ながら因果関係が予測できなかったと、副作用が予測できなかったというケースについては、これは当然に社会的な救済を行わなければいけないという形のもので、この二つは理論的には両立し得るものであるというふうに考えておるわけでございます。  一方、先生の御指摘の第二の点でございますが、この救済制度は予見できなかったけれども、結局、一般論として因果関係は認められるものを対象にするものでございまして、何ら因果関係がないということではございません。  一方、因果関係があり、その因果関係があるということによって、民事上の責任をメーカーに対して追及できるとお考えになる方ももちろんおられるわけでございますから、そういう民事上の責任追及とこの薬害救済とは、決して、たとえば二者択一にするということでなしに、当然にこの救済を受ければ民事上の請求ができないなどというような形のものにするつもりはございません。したがって、この救済制度の救済を受けることによって、民事上の責任追及が不利になるという事態はあり得ないかと存じます。
  246. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、いま問題になっているスモンはどちらに入りますか。
  247. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) スモンにつきましては、先生御承知のように、政府の見解といたしましては、これは被告の中にはまた違った見解を持たれる方もございますけれども、政府の見解といたしましては、スモン調査研究班の結論に従いまして、いわゆるキノホルムとスモンの間には、この研究班の研究成果に従いまして、一般的な因果関係はあるというふうに考えておるわけでございます。  しかしながら、先生御承知のように、このキノホルムという薬は、戦争前から非常に多量に使われていた薬でございまして、このような、現にWHOにおきましては、いわば低開発地域が主でございますけれども、必須医薬品一つに、現にリストから落とさないで使用しているということもあるわけでございます。  そのような事情のもとで、政府といたしましては、一般的な因果関係はあるけれども、あのような薬害というものは予見し得なかったものだという姿勢をとっておりまして、したがって、予見可能性がなかったと。予見可能性がなかったという意味におきまして、メーカー側につきましても、また政府におきましても、民事上のいわゆる不法行為責任は成立しないものというふうに考えておるわけでございます。  しかしながら、現にキノホルムの服用によって、非常に多数の被害者と申しますか、薬害が発生していることもまた事実でございますので、これは現大臣の御判断によりまして、被害者救済ということを前提に物事を処理するという御判断から、裁判上の和解の手続によりまして、現にその一部について和解の調印がなされたという経緯でございます。  したがいまして、救済制度に関して申しますれば、キノホルムのようなケースが今後の問題として発生すれば、これは当然にこの救済制度の対象になり得るものというふうに考えておる次第でございます。
  248. 小平芳平

    ○小平芳平君 では、コラルジルの場合はどうですか。やはり同じように因果関係は認めているんでしょう。
  249. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) コラルジル事件につきましては、コラルジルはもともと心臓の薬でございますけれども、コラルジルの服用によりまして、使用によりまして、血液障害及び肝臓機能障害が生じたということで、国と製薬会社に対しまして損害賠償請求事件が提起されておるところでございます。  その因果関係につきましては、国は一般的な因果関係、つまり、個々の原告の方がそれに該当するかどうかは別としまして、一般的な因果関係は訴訟上認めております。ただ、個々人の方について、果たしてそれが該当するかどうかについては、政府としては争っているところでございまして、さらに、先ほど申し上げました予見可能性という、いわば責任に関する部分については、政府も製薬会社も予見可能性がなかったものとして、責任論については争う姿勢をとっておるわけでございます。  したがいまして、このコラルジルのような薬害が、これは過去に起きた事件でございますが、今後この種のものが起きれば、同様に、先ほどのキノホルムと同じように、薬害救済制度の対象になり得るものというふうに考える次第でございます。
  250. 小平芳平

    ○小平芳平君 ほかに訴訟が起きているものにどんなものがありますか。およそ、いま局長説明だと、一般的な因果関係は認められると、しかし予見可能性はないと、ほとんどそうなりそうですね。
  251. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) ごく例外的な部外品みたいなものを除きまして、医療用の医薬品によって起きている薬害の訴訟につきましては、すでにサリドマイドは、訴訟の形でなしに、和解で終結したわけでございますが、キノホルムがございまして、これが一部和解がすでに成立しているということでございます。  それ以外にはストレプトマイシン、それからただいまお話のありましたコラルジル、それからミオブタゾリジン事件、それからやや被害規模の大きいものといたしまして例の大腿四頭筋拘縮症事件がございます。これは患者の数が現在では二百三十九人という数になっております。それから、よく再生不良性貧血で言われますところのクロラムフェニコール事件がございます。それからあとクロロキン事件、それからクロタオン事件、以上が現在部外品を除きまして係属中の訴訟案件でございまして、八つございます。
  252. 小平芳平

    ○小平芳平君 いや、それで、いま挙げたものは因果関係は包括的には認められると。たとえばクロロキンにしましても、大腿四頭筋にいたしても、薬か原因であったと、まあ大腿四頭筋の場合は医療従事者にも問題があろうかと思いますが、因果関係は認められると、ただし予見可能性はないと、こういうことでいく、そういう考えですか。
  253. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) すべてが一般的因果関係を認めているということではございません。たとえば、筋弛緩剤のミオブタゾリジンにつきましては、たとえば因果関係そのものを国、被告製薬会社も認めておらないというようなことがございまして、すべてが一般的な因果関係を認めているということではございません。しかし、一般因果関係を認めたといたしましても、さらにそれが個別的な原告それ自身がそれの因果関係に、まさしくその薬の服用によって生じたかどうかという個別因果関係の問題がございますし、さらに先ほどの責任論、予見可能性に基づく責任論もございます。しかし、一般論として申せば、現在争われている薬害事件の相当数のものが、もしもこの救済制度が発足いたしますれば、相当数のものがその救済制度によって救済を受けるケースになるであろうということは申し上げられるかと存じます。
  254. 小平芳平

    ○小平芳平君 結局、最初から申し上げておりますように、いかにしてこの薬害をなくすかということがきわめて強い被害者団体の、被害者の皆さんの主張であるということ、そのためには、従来のような薬務行政では、要するに大量生産、大量消費そして被害者発生はもう断じて困るということが強い要求でありますから、このことはよく御承知と思いますか、いまのようにおおよそのものが因果関係があるということは、要するに副作用があるということでしょう。副作用として因果を認められるという、そういう説明をなさるでしょうが。しかし、予見可能性という責任はないというようなことで、依然として大量生産、大量販売で被害者発生の繰り返しはどうしてもこれ以上続けては相ならぬということであります。私もそう考えます。したがいまして、もう少し薬務行政を根本から洗い直すというようなことが必要かと。つまり、免罪符になることはあり得ないと局長はおっしゃっておりますけれども、まさしく免罪符になりかねない、そういう危険がありませんか。
  255. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) まず先生御指摘のとおりに、これはキノホルム事件についても地方裁判所の所見の中に示されておったことでございますが、確かに薬の大量販売、大量投与というふうなことが副作用による薬害発生の一つの要因になっていることは御指摘のどおりだと存じます。そのような薬害の根絶と申しますか、それをなくするということについて、私どもといたしましては現在精いっぱいの努力はしているつもりでございますし、また、その足りないところはさらに副作用情報の拡充なり、再評価の促進というようなことによりまして、役所としてできる限りの努力は、精いっぱいの努力をしてまいる所存でございます。ただ、御理解いただきたいのは、薬というようなものはごく低い確率ではございますけれども、副作用を物によっては避けがたいものもある。しかし、病気に対する治療というメリットのゆえに、その低い確率で生じ得るその副作用を一応認識しながらも使わざるを得ないというような場合もあるわけでございまして、それがその薬のいわば特殊性とも申せるかと思うんでございます。つまり、薬には非常に大きいメリットと、それからその反面のデメリットもあわせ持っている非常に特殊な性格のものでございまして、そこでいかに努力をしても、非常に低い確率で特異体質等について発生する薬害というものを避け得ない面もある。そのような場合に、やはりその被害を個人そのものにとどめておくということが適当でないという判断で、救済制度を発足させるということでございまして、決してこの救済制度が発足したことによりまして、安全性確保のための行政的な努力がいささかも緩められてはならないものと、われわれとしても考えておる次第でございます。
  256. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、サリドマイドの認定について、一応認定は終わったというふうに発表しておりますが、認定の窓口を閉ざすべきではないという、こういう申し入れがあったと思いますが、これについての方針はどうですか。
  257. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) サリドマイドにつきましては、和解成立後二回にわたりまして、そのサリドマイドによるいわば胚芽症と申しますか、その方のいわば申請の募集というのは、非常に変な言い方でございますが、一般に周知をいたしまして申し出を受け付けたわけでございます。二回にわたってこの受け付けを行いまして、第二次の和解後、つまり全体三回の救済が行われたというかっこうでございますが、最終のものが本年に入りまして百数十名の申し出のうちの約五十名が、厳密な診断の結果、サリドマイド胚芽症であるということが認定された、これは事柄医学にわたるわけでございますが、胚芽症の中で非サリドマイドのものと、サリドマイドに起因するものの医学的な診断が明確につく性質のもののようでございます。そのためにも、この問題の権威とされておる西ドイツのレンツ博士に来日をお願いいたしまして、レンツ博士の診断も受けて、その鑑定につきましては何ら当事者の間には疑義がない形で処理をされているわけでございます。  今後、なおまだサリドマイドによるところの胚芽症があり得るかという問題でございますが、われわれといたしましては、非常にこれだけ社会的な関心を集めた事件でございますので、すでにお申し出を受けた方々で、恐らく全部が把握されているというふうに信じているわけでございますけれども、もしも万が一そうでないと、依然として漏れておったというようなケースについての情報なり何なりがございますれば、それについては役所としても事情調査を惜しむものではございません。
  258. 小平芳平

    ○小平芳平君 事情調査を惜しまないということは、どういうことになりますか。
  259. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) そのようなケースがあるという事実をわれわれが知りました場合においては、当然それに対する適切な対応策を講じたいというふうに考えております。
  260. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、社会労働委員会でも、大腿四頭筋については参考人の意見を伺ったり、いろいろ取り組んできたことがありますが、これもとにかく現在の大眼四頭筋の被害者の救済と——これは薬に原因があるか、注射に原因があるか、要するに、九分九厘、九九・九%注射が原因だというふうに、そのときの参考人の方はおっしゃっておられましたが、これはもうそうしたことを起こさないという姿勢を厳しく打ち出していってもらわなくてはならないケースだと思うのですが、いかがですか。
  261. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 大腿四頭筋拘縮症の問題につきましては、局所に多数の筋肉注射を行った場合に生じたというふうに一応考えられるわけでございますが、これについては現に裁判上いろんな形で、たとえばその局所注射を行いましたお医者さんも被告として訴えられているケースもございます。あるいはその薬そのものだけで訴えられているケースもございます。これは現に多岐にわたる訴訟係属中の事件でございますので、その因果関係、責任についてここで申し上げることは控えさしていただきたいと存じますが、いずれにせよ、この種の薬害は、先生御指摘のとおりに、行政的にも、あるいは現実に医療を担当されますお医者さんたちの間におきましても、あるいは製薬会社の側においても、最大限の注意と努力を払って、このようなことを二度と繰り返さないようにすべきものと信じております。
  262. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは主に薬品原因があるのか、それとも注射をしたその注射に原因があるのか、どちらなんですか。
  263. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) これは非常に微妙な点でございまして、たとえば主として、あれは抗生物質とスリピリンと称する解熱剤との混合注射を、多数回一定部位に注射をしたということによって起きた事件でございまして、その場合に、そういう局所注射を多数回行うということが適当であったのかどうかというふうに考えれば、これは医療にも問題のあるという問題のとらまえ方になるわけでございます。これにつきましては、現に争訟中でございまして、裁判所の判断も待たなければならない問題でもございますので、それか筋肉注射の薬品に伴う薬害であるのか、あるいはその使用法に伴うものであるのかということについては、この席では申し上げることを差し控えさしていただきたいと思います。
  264. 小平芳平

    ○小平芳平君 裁判の結果は、それは待たなくちゃなりませんが、現にこの被害が発生していることは事実なんですから、それは薬が原因か、注射の場所が原因か、その法律的な判無は裁判所でやるのが当然でありましょうが、そうした被害者が次々と発生しない行政上の手は打たなくちゃならないでしょう。
  265. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 当然、そのような混注によりますところの筋肉注射を行うべきでないという形の行政上の措置は、すでにとられております。  それからさらに、その筋肉注射の薬品につきまして、薬品のいわば使用上の、まあ用法と申しますか、それによりまして、そのような拘縮症の生ずるような使用法に対する警告もすでに行われているところでございます。
  266. 小平芳平

    ○小平芳平君 いまの問題については、とにかく被害を未然に防ぐということが何にも先決だというふうに考えます。  次に、私は付添看護婦さんの問題についてお尋ねをいたしたいのですが、付添看護婦がつきますと一ヵ月どのくらいかかると思いますか。
  267. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 現在、付添看護の場合に、基準看護病院におきましてはこれは付き添いは必要でない。しかし、基準看護病院以外の普通看護の病院におきまして付き添いを必要とするという際には、健康保険におきまして看護料というものを支払っておるわけでございますが、現在の慣行料金について申し上げますと、六大府県の場合に、基本額で申しますと、慣行料金は、看護婦さんの場合に五千四百円、それから准看護婦さんの場合には四千七百円ということでございます。  なお、住み込み常勤等の場合でございますと、慣行料金では八千七百十二円というような慣行料金になっております。
  268. 小平芳平

    ○小平芳平君 基準看護病院でも、なおかつ付き添いが必要だと言われて、それで付き添いを頼んでいる人がいらっしゃる。それを保険外負担としてなくすべきだということ。それはどのくらいかかると思いますか。
  269. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 私どもたてまえといたしましては、基準看護病院では、普通看護以外に基準看護病院としましての加算料金というものが見ておるわけでございますので、基準看護病院におきましては、家族以外の付き添いは置かないというたてまえになっているわけでございます。  まあ、現実にいろいろそういう、基準看護病院でありながら、付き添いがおるじゃないかという御指摘もときに受けるわけでございますけれども、私どもといたしましては、基準看護病院におきましては、家族付き添い以外は認めないというたてまえにいたしているところでございます。
  270. 小平芳平

    ○小平芳平君 ちょっとこれ、委員長に。
  271. 上田哲

    委員長上田哲君) 委員部、配ってください。
  272. 小平芳平

    ○小平芳平君 いま、これを差し上げますが、局長、大正九年に生まれた五十七歳の婦人の方です。四十八年三月から入院をしております。付添看護婦がついて、費用は、右半分にありますように、十日ごとに払っているのです。病名はパーキンソン病。国保の被保険者本人。難病に指定されるまで高額医療で補助を受けていました。差額ベッド料は取られておりません。家族としては、夫は亡くなっております。長男は世帯を持っておりますので、長女と次女がこの付添看護料を実際かせいで払っているわけです。これは特二の病院です。東京都内の特二です。これが十日ごとに六、七万円、五、六万円ずっと払っていって、そしておおよそ計算しますと、一年間で二百四十万円、一ヵ月二十万円という付添看護料をこの長女と次女がかせいで払っているのです。疑いがおありでしたら、書かれてある領収書が全部ついておりますから。これみんな付添看護婦さんに払った領収書なんです。ですから、ときにそういうことを耳にしますなんて、局長言っていたんじゃ、とんでもないことじゃないですか、どうですか。
  273. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 先生御指摘のAさん、B病院での事例で申し上げますと、先生のお話でございますと、特二類の指定を受けているということでございますと、基準看護の特二類という、特二類につきましては看護力の面におきまして最も充実しているという病院であるはずでございます。したがいまして、特二類の基準看護病院におきましては、およそ付き添いはまず必要ないというふうに私ども考えておる次第でございます。したがいまして、先生御指摘の病院、具体的に御指摘いただきますれば、私の方で十分病院について注意いたしたいというふうに思っております。
  274. 小平芳平

    ○小平芳平君 それが注意してもらっただけでは間に合わないわけです。ということは、この方は特に長女の方、それから次女の方は名前を出されては困るというわけです。病院の名前も御自身の名前も出されては困るというんです。ということは、病院でどんな意地悪をされるかもしれないからということで、とにかく二人で一生懸命働いて、それで月二十万ですから、これは大変な金額なんですが、一生懸命払っているんです。今日もなお現在払っているし、難病のゆえにいつ治るかという見通しもないままになっているんです。ですから、この保険外負担診療報酬改定のときに段階的に考えるというふうな、一般的にはそういうことになるかもしれませんが、こういう実態が東京都内にあるという、そういう点を厳重に注意するのはもとより、なくしていかなくちゃならない。いかがですか。
  275. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 先ほども申し上げましたように、私ども特二の病院と申しますのは、基準看護病院の中でも最も最高の看護力が充実しているところでございますし、加算の料金につきましても最も高い加算額を健康保険の中で支給しているという病院であるわけでございます。したがいまして、具体的に私どもそういうケースがございます場合には、どうか言ってきていただきたい。悪質な場合には基準看護病院の取り消しということも考えられるわけでございます。ただ、家族付き添いは認めている、それから御家族の気持ちとして最愛の肉親が入院されたという際に、せめて一緒に付き添ってやりたいという気持ちから家族付き添いのかわりにということもあるかもしれませんけれども、私どもは基準看護病院は、特に特二の場合には、先ほど申し上げましたように十分その点はやっていけるはずであるというふうに考えております。
  276. 小平芳平

    ○小平芳平君 とにかく、特二の病院です。それでしかもこれほど領収書が束になっているんです。まあ局長おっしゃるように入院の場合、看護料七十八点ですか、で、特二なるがゆえに看護加算として百八十八点ですか、これだけのものは請求されているわけでしょう、恐らく。一方でこれだけの看護料を請求しておきながら、他方ではこういうふうに看護を必要とするということは、これは何違反になるんですか。
  277. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) これは基準看護病院の承認を受けておりながら、現実には基準看護以外で付き添いを置かせるということになりますと、当然基準看護病院としての取り消しということになると思います。
  278. 小平芳平

    ○小平芳平君 取り消すだけですか。これはたとえば不正請求とか過誤請求とか水増し請求とか、そういうことにはなりませんか。
  279. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 特二類の場合に、一定の患者二・五人に対して一人という基準看護の要員というものを確保しておりますれば、それだけの看護力があって現実にそれだけの看護要員もいるということになりますと、一応基準看護病院としての承認を受けておるわけでございますから、取り消すまでの間は一応適法に基準看護病院としてやっておったということは言えると思います。ただ、その基準看護病院につきましては付き添いが必要ないということになっておりますので、将来に向かって取り消しということになると思います。  それから、私どももできるだけ患者さんと十分お話しして、そういう場合には、本来の基準看護以外に付き添いが必要であったという場合に、その分は返還するというような指導もしたいというふうに思っております。
  280. 小平芳平

    ○小平芳平君 局長は、医療費急増の原因として、医療費がふえたという原因として、特二ができて看護が手厚くなったということを先週答弁しておられましたが、一方では病院はそれだけのこの七十八点、百八十八点というものを病院の収入として受け取りながら、他方では月二十万円も付添看護料を患者さんか払ってなくちゃならなかったということですね。それは将来に向かって取り消すということだけしか手はないんですか。
  281. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 基準看護の要件につきましては、病院の方から基準看護病院としてこれだけの看護要員は確保しておりますと、したがいまして、基準看護病院の特二類なり、特一類になりたいという申請があったわけでございますので、それを認めたと。しかし、現実にそうでなかったということになりますと、ただいま申し上げましたように将来に向かって取り消す以外には、いまのところちょっとないんじゃないか。ただ、指導等の面におきまして、患者さんとの関係におきまして十分な適切な措置ができるように指導いたしたいというふうに考えております。
  282. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生省の職員の平均給与はどのくらいだと思いますか。
  283. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 突然の御質問でございますのでちょっとわかりかねます。後ほど調べまして御答弁申し上げたいと思います。
  284. 小平芳平

    ○小平芳平君 いや、別に調べてくれなくて結構ですが、厚生省の本省の職員は本俸で十六万二千円だそうです。平均ですか。これらの方で平均年齢三十八・九歳、平均勤続年数十八・四年というんだそうですが、厚生省へ勤めていらっしゃるこの方が、月給をまるまるつぎ込んでも、この付き添いさんに払う金が足りないわけですよ。それほど深刻な思いをしているということを知ってくださるならば、それは取り消すということも一つ方法でしょうが、とにかく基準看護病院だから付き添いがなくてもいいように、すぐにも次の改定の時期を待つまでもなく、こんなに月々二十万円も払わないで済むような、そして安心して療養をし、病気を治すと、そういうふうにできるようにしてもらいたいと思うのです。これはたまたまこうした領収書を私が見ましてこういうふうに言っているのでありまして、ほかにも同じケースがあるのですから、取り消すとか、取り消さないかは、それはその行政サイドの問題になりますが、患者さんとしては、あるいは月二十万円も付添料を払っている、働いていらっしゃる娘さんとしては、それが願いだと思うんですね。安心して療養できるということが。特に、ありますように、姉さんが三十一歳、妹さんが二十九歳、私がこの家を出たらお母さんどうなるかというほど、そういう深刻な事態にあるゆえに、そういうことは次の何かの機会を待つというんじゃなくて、なくしていかなくちゃならない。厚生省はもう昭和三十三年からの方針でしょう。この基準看護病院で付き添いが要らないということは。それがいまなお徹底してないというだけのことなんですから、新しい提案をしているんじゃないんですから、いま申し上げるように、とにかく安心して療養できるように、いかがですか。
  285. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 先生御指摘のように、月二十万も付添看護料にかかるということは、もう家計にとって大変なことだと思います。そういう意味から申しましても、私どものたてまえといたしまして、基準看護病院はもう付き添いを必要としない。それから基準看護以外の病院、これはどうしても付き添いが必要であると。したがって、その場合には看護料を支払うということでまいっておるわけでございまして、具体的な御指摘がありました場合には十分注意いたしたいというふうに思っておりますし、さらに、できるだけ基準看護病院の手厚い給付がいけるように、今後におきましても基準看護の看護力の充実ということについて図っていきたいと、努力してまいりたいというふうに考えているわけでございます。ただ、その基準看護病院の内容の充実という問題につきまして、やはり特三類を設けたらどうかとか、あるいは従来の特二類以外の低い実態があるわけでございますけれども、そういうようなものをできるだけ上のランクに上げていくという際に、看護力なり看護体制の問題ということもございますので、そういう問題も十分研究して対処してまいりたいと。いずれにいたしましても、先生御指摘のケースにつきましては、後ほど病院の名前等を教えていただきまして、適切な処置をとりたいというふうに考えております。
  286. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういう私の指摘しているケースが特殊なケースと見るか、ほかにもあるというふうに考えられませんか。したがって、こんなに、月に二十万円も付添看護料を払うようなことはやめるべきだと、昭和三十三年にやめることにしているんですから、なおかつ、そういうものが残っているのはよくないと、すぐやめさしていただきたいですが、どうですか。
  287. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 御指摘のとおりだと思います。したがいまして、基準看護病院で付き添いを強要しているということがございますれば、やめさせるように指導の方の徹底をさらに期してまいりたいというふうに考えます。
  288. 小平芳平

    ○小平芳平君 どういうふうに徹底しますか。
  289. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 私ども各県の保険課長会議なり、あるいは担当技官の会議等におきましても、十分この趣旨を徹底しているわけでございまして、さらに次期診療報酬改定の際等におきまして、看護力の問題等も、看護の面につきましても重点的に考えなければいけないわけでございますから、適切な機会を見まして、さらに指導の徹底をしてまいるような指導を行いたいというふうに考えております。
  290. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣、そう全国の課長会議を待つまでもなく、早く徹底していただきたいと思うんですがね。
  291. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) ただいま局長からお話をいたしましたとおりでございますが、基準看護病院には、それぞれ保険組合から一般病院よりも多額のお金を払っているわけですよ。それは、付き添いをしなくてもいいだけのお金をこちらが払っているわけですから、にもかかわらず、基準看護病院で保険の金はたくさん受け取って、患者には与えない、食事代にしても同じことですね。そういうことをやられますと、これは一種の私はやっぱり不正行為だと思うんです、それは。ですから、そういうのは具体例を教えていただけば、私の方としては、なぜそういう実態なのか、なぜそういうことをやっているのか、それはきっとけじめはつけなきゃならぬ。恐らく、それ一つだけでほかには全然ないということでなくて、数多い病院の中でございますから、あるいは私はあるかもしらぬと思います。幾ら一般に徹底しても、そういう不正なものをする人があった場合は、国からは金はよけい取る、——国からと言いますか、保険からは。自分じゃ出さないというのは、ただ幾らその病院にたくさんお金をやったってそういうことは絶えないわけですね、これは。ですから、やっぱりそれはけじめをつける必要があって、なぜそうなっているのかということについては教えていただきたいと私は思っているのです。そうすれば、一罰百戒ではないが、一つ一つ決着をつけていく。それでなかったらば、もう同じことの繰り返しだと思うんです。病院の待遇をもっとよくしてやっても、自分のところで取っちゃって患者に渡さないわけですから、それはいかぬと思いますね。ですから、そういうことのないように徹底をさせますということです。
  292. 小平芳平

    ○小平芳平君 この不正行為を一罰百戒ということですね、それが一つと、不正行為に対する一罰百戒ということが一つと、それからもう一つは、先ほど来何回も申し上げますように、ほかにないと言い切れないわけですから、そのような不正行為かないようにということを徹底していただきたい。
  293. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それは徹底をいたします。いたしますけれども、中には幾ら言っても聞かない者があるかもわからない。こちらはなかなかそこまで目が届かないわけですから、ひとつ御協力をいただいて、そういうものはきちっとけじめをつけていくという両方の面が必要だろうと思います。
  294. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、この控除ですね。税額控除についても前回委員会でるるお話かありましたので、大蔵省の方、大変長い間お待たせいたしまして申しわけありません。こうした付添看護料としての領収書はないんです。要するに、病院が付添看護のためにこれだけのものを領収しましたということは出さないわけです。それはなぜかというと大臣のおっしゃる不正行為ですから。したがいまして、本人と看護婦家政婦紹介所の間の「賃金領収書」となっているわけです。この賃金領収書とそれから手数料がかかっているんですね。法定紹介手数料一日何円、受付手数料何円と、こういうふうになっておりますゆえに、この「賃金領収書」とともに「手数料預り書」がありますから、手数料も含めて税額控除の対象になりますか、そのことをお伺いしたい。
  295. 小野博義

    説明員(小野博義君) お答え申し上げます。  いまのお尋ねの件でございますが、その手数料が事実上その医療費に該当する付添料の一部だと考えられるならば、医療費控除の対象になると考えられます。
  296. 小平芳平

    ○小平芳平君 いま持っていきましたが、これはもう必然的に「賃金領収書」に「手数料預り書」はついているわけですがね。
  297. 小野博義

    説明員(小野博義君) お答え申し上げます。  いま手元に、「賃金領収書」、「手数料領り書」というものを拝見させていただきましたけれども、こういうものでありますれば医療費控除の対象になると考えられます。
  298. 小平芳平

    ○小平芳平君 案外、そのことは知られてないですね。知られてないですから、もう少しそのことを皆さんに知らせる必要がありませんか。
  299. 小野博義

    説明員(小野博義君) 私どもといたしましては、一般の給与所得者の場合が多いかと思いますけれども、源泉徴収表の裏面に医療費探除のPRをいたしますほか、あるいはいろいろな週刊誌等を通じまして医療費控除を受けられる方については、医療費控除の申告をなさるようなPRを常々行っているところでございます。
  300. 小平芳平

    ○小平芳平君 私が今回の質問の質料を集める段階でも、この国会の職員ではない方ですけれども、御本人が知らなかったですね、家族の方が入院していらっしゃるのに。ですから、もう少し皆さんに知らせてあげるようにしていただきたいと思います。  それから次に、差額ベッドについてはどういう現状になっておりますか。
  301. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 差額ベッドの問題は付き添いとやや違いまして、やはり差額ベッドを希望するという患者さんもあるわけでございますので、差額ベッドそれ自身をなくするというわけにはいかないと思います。ただ、差額ベッドを希望しない患者さんも多数おられるわけでございます。したがいまして、差額ベッド負担のために入院できないというようなことがあってはならないというようなことから、私どもも差額ベッドにつきましては一定の基準を設けまして、差額ベッドについては、たとえば一人部屋、二人部屋に限るとか、あるいは差額ベッドにつきましては国立病院については一〇%、民間病院については二〇%というような方針を出しまして指導を行っておるところでございます。ただ、現実問題としまして、必ずしもそのとおりいってないという面もあろうかと思います。ただ、私ども逐次そういうような指導を行っておりますが、現在、昭和四十九年では差額ベッド比率というのが病床数に対しまして一九・二%であったわけでございますが、昭和五十年におきましては一八・三%、それから昭和五十一年では一八%ということで、逐次改善はしているわけでございます。ただ、差額ベッドにつきましては、やはり現在の室料が非常に低いというような問題もございますし、病院経営等の関係もあるわけでございますので、今後次の診療報酬改定の際等におきまして、この室料問題等につきましても取り組みまして、さらにこの差額ベッドの解消ということについて努力いたしたいというふうに考えております。
  302. 小平芳平

    ○小平芳平君 差額ベッドの問題は、いま局長がおっしゃったように、一人か二人の部屋に限るということですね。実際はそうなってないということですね。三人の部屋でも差額を取られ、あるいはついこの近所のある病院ですが、窓際だからといって高くなるんですよ、窓際だからといって。ですから、そういうことはやはり趣旨に反するわけでしょう。ですから、それこそいま室料との関係もあるとおっしゃったですが、これは厚生省の基準が守られないと、堂々と守られないというところに問題があろうと思いますから、それは守るようにしていかなくちゃならないと思います。
  303. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 先生御指摘のとおりだと思います。私どもできるだけ早い機会にこの問題を解決いたしたいというふうに考えております。
  304. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、今度は大蔵省の方、大変お待たせしまして申しわけありません。  生命保険の中に疾病特約で——わかりますでしょうか、疾病特約あるいはがん保険というのが最近急激に伸びてきているようですが、その辺の実態についてお話をいただきたい。
  305. 萱場英造

    説明員(萱場英造君) お答え申し上げます。  生命保険には、その対象とする補償の内容によりましていろいろな種類がございますか、御指摘がございました疾病特約とかがん保険のような疾病を対象とする保険というものは、さまざまな病気にかかりまして入院した場合、それから手術を受けた場合、そういう場合の補償を内容としたものでございます。  お尋ねのございました普及状況でございますが、これを五十一年度について見ますと、年度末、五十一年度末の保有契約高は、件数で申しまして千四百九十九万件、それから契約の日額、これは入院すると一日幾らというふうな決め方、手術をすると一日幾らと、そういう決め方でございますので、そういった日額を年度末で合計しますと、約五百八十億円でございます。
  306. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣に後で御意見を伺いたいのですが、こうしたこの保険、疾病特約保険というあるいはがん保険という保険伸びていくということは、急速に普及しているわけですね、これが。
  307. 萱場英造

    説明員(萱場英造君) お答え申し上げます。こうした種類の保険が開発といいますか、販売され出しましたのは、大体四十九年度ぐらいからの傾向でございまして、したがって、そういった開発段階といいますか、本格的に出回り始めたのは五十年度ぐらいからでございます。したがいまして、伸び率で見ますと、確かに先生のおっしゃったように、かなり急に伸びておるという結果は出ておりますが、量的にはまだまだこれからじゃないかという感じはいたします。
  308. 小平芳平

    ○小平芳平君 何がまだまだですか。
  309. 萱場英造

    説明員(萱場英造君) 少々表現があいまいでございましたが、まだまだと申しましたのは、非常にまだ四十九年度ごろから本格的に販売され出しましたので、何といいますか、こうでき上った商品じゃございませんから、まだこう成長段階といいますか、数がふえつつある段階の数字であるということをお含みいただきたいと申し上げたのでございます。
  310. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣に伺いたいことは、そういうようにして、保険が普及していくこと自体、それは本人と家族の将来の安心を買うことにもなりましょうし、そのこと自体マイナスは何もないと思うんです。ただ、いかにも医療保険があり、年金保険があり、しかしその心配が多過ぎるという現実でありますね。しかも、私が、このある方の例を聞いた例によりますと、結局この方は骨折した、それで入院をしたわけです。そうしたら、この疾病特約で二十二万五千円の給付を受けているんです、保険から。しかし、病院では差額ベッドがついておりますけれども、病院はそんなにかからなかったのです。結局、差額十七万六千円というものが収入になった、残ったんです。これも課税対象にならないですか。
  311. 小野博義

    説明員(小野博義君) お答え申し上げます。  ただいまのお尋ねでございますが、所得税法の施行令によりまして、施行令の三十条に「(非課税とされる保険金、損害賠償金等)」という規定があるわけでございますが、身体の傷害に基因して支払いを受ける給付金につきましては非課税ということになっておりますので、この場合課税にならないと考えられます。
  312. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがいまして、健康保険政府管掌にしろ、組合管掌にしろ、国民健康保険にしろ、健康保険だけだといかにも先ほどの付添看護差額ベッド、そういう心配がある。こうしたゆとりのある人が保険に入っていれば、疾病特約の保険に入っていれば、なに入院をしても十分課税対象外の収入が入るというようなことで、そのことは別にこの方が損したわけじゃありませんからいいわけですけれども、いかにも保険が現在の社会、現在の健康保険の欠陥をそういうもので補っているんだ、収入があってそういう保険に入る人はそういう恩典に浴すけれども、そういうゆとりのない人は心配がつきものだという、こういう現状の上に立って制度検討していただきたい、こう思うんですがいかがでしょうか。
  313. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 保険外の負担の問題につきましては、政府の管掌保険等においてもできるだけ少なくするように抜本改正の折にやりたい、こう考えておるわけでございます。しかしながら、いわゆる疾病保険をなくすということはなかなかこれはむずかしい問題だと私は思います。自分が病気になったときぐらいは個室に入りたいとか、あるいはまあお医者さんの方から見ればともかく付き添い要らぬ、医療上は要らぬといっても、いた方が便利だということもあるでしょう。したがって、この強制的な保険でどこまでを見るかということは非常に問題の多いところだと思います。しかしながら、現状でよいとは思っておらないので、現状は不備でございますから、負担の面と両方あわせてこれは抜本改正をしたい、こう思っておるわけであります。
  314. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣のその御趣旨はよくわかりますが、私が申し上げていることは、政府の管掌している保険だけではいかにも現状はお寒い限りだということ、そしてゆとりのある人は疾病特約、そういう保険にも入っていてかえって収入になるという現実、そういう点を社会保障制度の全体を検討する上にこれが必要なことではないか、こう申し上げているわけです。
  315. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) ただいま申し上げましたように、政府管掌保険の待遇、待遇といいますか、給付をどこまでするかという問題なんですよ。これは結局裏返しに言えば、負担をどこまで負担できるかという問題と裏でくっついているわけですから、やっぱり国民の合意がなきゃできない。ですから、現在ではまだ不備でありますから、付添看護の問題とか、差額ベッドの問題等についてもいまよりも前進させる、費用もかかるがそこらは両方ひとつ合意を得なきゃだめですよ。そういうふうにしたいと思っていると、こういうことでございます。   〔委員長退席、理事浜本万三君着席〕
  316. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、医療費の領収書について、この点についても前回安恒委員から詳しく質問があり、答弁がありましたので、結論は、民法四百八十六条、受取証書交付請求権、それから同じく民法五百三十三条、同時履行の抗弁権、こういうことで領収証がもちえないときは代金は払わなくてもよい、こういう理解でよろしいですか。
  317. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) そのように解釈しております。
  318. 小平芳平

    ○小平芳平君 その上に立って、なおかつ領収書は簡単にもらえそうでいてもらえないということについて、いろいろお話がありましたが、病院によりましてはずいぶん工夫しているわけです。要するに領収書をもらうその前に、お金を払う前に、すでにおよその医療内容がわかるようなシステムもあるのですね。ですから、そういうようなことで何か研究しておりますか。
  319. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) これは学会の方でも病院協会の方でも研究は進めております。
  320. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでどうなったんですか。
  321. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) それに基づきまして、国立病院、療養所の場合には、これは予算決算及び会計令の三十一条に規定がございますが、また自治体病院の場合には、知事とか市町村長の規則によって、また日赤等の公的病院の場合は、それぞれの定めによって若干ニュアンスが違いますが、創意工夫を交えながら領収書の発行をいたしております。
  322. 小平芳平

    ○小平芳平君 何かずいぶん研究しているとおっしゃるのですが、何を研究してどういうことになったのですか。
  323. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 領収書の発行はやはり人手を要するものであり、事務のふえるものでございます。したがって、病院経営管理の合理化適正化という意味から、いろいろ研究されるわけでございます。
  324. 小平芳平

    ○小平芳平君 いや、その前に、私がいま申し上げたことは、領収書を発行してもらう前に、治療を受けた患者さんがおよその内容かわかるようなシステムがあるでしょうというのです。
  325. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) それはございますけれども、あらかじめそのような資料を差し上げるという病院はまだ多くないと考えております。
  326. 小平芳平

    ○小平芳平君 この問題で私は質問を終わりますから、もう少しちゃんと答弁してください。まだそんなに多くないというのは何が多くないのですか。
  327. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 病院の数が多くないということでございます。
  328. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃ、初めからきちっと答弁してください。  私が申し上げたことは、領収書をいただくまでもなく、領収書はいただく必要のある方は当然領収書を請求するたてまえでありますが、領収書を手にする前にもおよそ自分はどういう検査を受け、治療を受け、薬をもらいということが本人にもおよそわかるようなやり方があるでしょう。そういうやり方はどんなやり方ですか。そういうことをもっと普及していったらいいじゃないですか。
  329. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 一般的なやり方といたしましては、入院の場合がそうでございますけれども、あらかじめ請求書のようなものを出す病院がございます。そういった場合には、患者さんの方にもよくわかるわけでございますが、そういったやり方をまたいろいろ各病院で検討していると思います。たとえば、日赤のやり方もございましょうし、国立のやり方もございましょうし、そういう意味でございます。
  330. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで、衆議院の段階でも領収書についてはずいぶんいろいろ答弁していらっしゃるようですが、何か通知を出すなり、何かされましたか、その後。
  331. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) まだ通知は出しておりません。これはなぜかと申しますと、やはり関係方面との一応の話し合いが前提になろうかと考えているからでございます。国会が終わり次第、この問題は、厚生省の中でも幾つかの局にもまたがりますので、そういったことも考えながら、できるだけ適切な措置を講じたいと考えております。
  332. 小平芳平

    ○小平芳平君 関係方面ってどこですか。
  333. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) やはり、診療担当側ということで、医師会もございましょう。また歯科医師会もございましょう。また薬局ということで、薬剤師会もございましょう。そういった方面が関係方面だと思います。  また、厚生省といたしましては、医務局のほか保険局、また薬局では薬務局というような問題がございますので、その辺の調整を図りたいと考えております。
  334. 小平芳平

    ○小平芳平君 この今回の健康保険法一部改正について、まだいろいろ問題点を抱えておりますけれども、私は、きょうはずいぶん長い時間にもなりますので、質問はここまでにいたします。  ただ、国会が終わればとか、この改正案が成立すればとかということばかりを前提にされますが、そのことを前提にして答弁をされますが、こうした領収書を見るまでもなく、こういう欠陥をそのままにして財政のつじつま合わせということではならないということ、それについては、けさ大臣から抜本改正についての考え方を示されましたことは一つの前進であろうと思いますが、もっともっと、もうそれこそきょう一日でも何千円、今月いっぱいでも何万円という付添看護料を現に払っているというような実態を考えるについても、これは欠陥は欠陥として早く直していかなくちゃならないということを要望しまして質問を終わります。
  335. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 私、この問題について代表質問国会でいたしました。その準備をする段階、そして引き続いてきょうの質問をする準備の段階で、私、部屋で仕事ができないくらいたくさんの方々がお見えになりました。そして、十九日には請願の締め切りでございました。一万や二万の請願なら、私軽く抱えるんだけれども、本当に重くて、下手してぎっくり腰になったら大変だと思って、抱え切れないような請願を秘書が持ってまいりました。そしてまた、前回も今回もたくさん傍聴の方が来ていらっしゃいますし、二十四日にはまた労働組合もストライキを打ってでも生活、命を守るという大きな運動になってきております。  そういう中にも、私の部屋にはがきが次々と舞い込んでまいりました。私も、お客さんで忙しかったり、準備で忙しかったものですから、全部整理することができませんでしたけれども、ここにちょっとだけ御紹介したいと思います。  これは新潟から来た分だけを、ちょっときょうの分見てまいりました。「私達の地元では……一月の収入が五万円たらずです。この上、健保が改悪されては、生活か確実に苦しくなります。改悪しないよう、阻止して下さい。」  それからまたもう一人は、「私は結核の回復者で、働いております。よく風邪をひきますが、こんどの改悪は病気を治すこともできなくなります。だんことして反対です。闘って下さい。」、激励です。  それからまた、「私の会社は景気が悪くて賃上げも僅かでした。それなのに公共料金を初め諸物価はどんどん上がり、毎月の赤字は少ない一時金で補ってるので、この一時金からも引くような事はしないで下さい。又初診料を一気に三倍強も引き上げる事は絶対にやめて下さい。」、まあいろいろ賃金も上がったけれども、七%以下しか上がらなかったと。たくさんのこういうはがきが参りました。  そこで、私は大臣初め皆さんにしっかりと考えていただきたいということは、日本の産業構造を見ても、中小零細企業というのが非常に多く数がある。そして、日本の経済発展という、このたぐいまれな経済発展をしたその陰には、大きな大企業が下請、孫請、ひ孫請というような形で、零細企業の者たちの労働がどんなに過酷であったか、そしてその人たちが、収入か大変低い中で、そしていままたこの健康保険、私はあえて改悪と言いますけれども、改悪の中でどんなに苦労をさせられるのかということを考えたときに、私は、一枚のはがきを見るたびに、そしてまたあの請願の重みを感じるために、何としてもこの人たちの願いを聞いていただきたい。そして、本当に政府が、きょうは渡辺厚生大臣、大分張り切っていらっしゃいましたけれども、張り切り方がちょっと反対じゃないかと。もうちょっと閣僚の一人として、厚生省の予算が足りなきゃ足りないんだと、命を守る厚生省なんだというふうに、こっちにではなくて向こうの方に向かって張り切ってもらわなきゃならないと、そう感じたわけです。  さてそこて、まずこの政管——政府管掌健康保険ですけれども、これがそもそもなぜこういつも赤字を出して、そしていつもこれが問題になって、そしてこれから先もどういうときに解決かというと、決して——後で問題にいたしますか、解決の見通しは遠いというところから、まず最初にはっきりさせなければいけないのは、政管健保というのは構造的にどうなっているのか、なぜ赤字が出るのだと、ここのところを、くどいようですけれどもこれからお伺いいたします。しっかりと政管健保の構造的な脆弱さというものに目を据えていただきたいと思います。  それでは、これからお伺いいたしますけれども、まず保険料の収入に関してお伺いいたします。五十二年度政管健保被保険者の標準報酬月額は幾らになっておりますか。また、それに比べます組合健康保険保険者の平均報酬月額は幾らの見込みになっておりますか、お伺いしたいと思います。
  336. 岡田達雄

    政府委員(岡田達雄君) 五十二年度の予算につきまして申し上げます。  政管健保でございますが、平均標準報酬月額でございます。十三万六千七百二十一円でございます。それから組合管掌の方でございます。予算面でございますが、平均標準報酬月額は十六万八千三百五十七円、かように相なっているわけです。
  337. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いまおっしゃいました数字だと思います。  そういたしますと、組合健康保険の被保険者の標準報酬額とそれから政管健保の標準報酬額というものがどれだけの差があるかというと、三万一千六百三十六円の差というのが数字で出てまいります。  そうしますと、もしもこの政管健保の標準報酬月額、まあ政管健保に入っていらっしゃる方たちが、もしも組合健保のようなところに働いていて収入が、組合健保と同じような報酬であれば、五十二年度政管健保の保険料は何億円くらい入ってくるということになりますでしょうか。
  338. 岡田達雄

    政府委員(岡田達雄君) 保険料率が千分の七十八ということを前提にいたしまして計算いたしますと、ざっと四千億というふうに考えております。
  339. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 私も計算してみました。三万一千六百三十六円に千分の七十八を掛けて、そして十二ヵ月を掛けますと二万九千六百十一円と。それに被保険者の見込み数千四百二十九万を掛けますと、実に収入が組合健保並みであれば四千二百三十一億という収入になるということ、ここ一つ押さえておきたいと思います。  それでは次に、政管と組合を比較いたしまして、お医者さんにかかる率、つまり受診率についてお伺いしたいと思いますけれども、五十一年度政管健保と組合健保、本人の受診率の総数、回数といいましょうか、はどういうふうに出ますでしょうか。
  340. 岡田達雄

    政府委員(岡田達雄君) 五十一年度の実績でございますが、政管健保におきましては入院、入院外、歯科、これを合計いたしまして、本人が六・五二三一七、家族が七・〇二三七九というふうになっております。組合管掌の方でございますが、本人は五・三九九八八、家族が八・八〇一三四、かように相なっております。
  341. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 家族を抜いて本人で比較してわかりやすくしていきたいと思います。  いまおっしゃったように、回数でいたしましても、その差が一・一二三二九回と。これ割合でいきますと二割高いと。つまり、収入は少ない、受診、お医者さんにかかる回数というのは二割高いということになります。  それでは、もしも先ほどと同じような仮定で、受診率が組合健康保険の被保険者並みに低ければ、保険料から払う支出は逆に何億くらい少なくなりますでしょうか。
  342. 岡田達雄

    政府委員(岡田達雄君) 本人について申し上げますと千七百七十六億円の減と、家族は先ほども先生御指摘のとおり組合健保の方が政管健保より高うございます。したがいまして、その点を考えますと、家族につきましては千四百五億円の増と、差し引きいたしまして三百七十一億円の減というふうになりますが、このほかに国庫負担の減等もございまして、ざっと概算いたしましたところ三百億というふうに判断をしておるところでございます。
  343. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 私の計算、単純に計算したんですけれども、こういう見方はできませんか。五十二年度の医療給付費が一兆九千二十億ということになっておりますね。一兆九千二十億と。それの本人分というのは、本人が約六五%分というふうに見ます。そうすると、一兆二千三百六十三億という数字が出てまいります。それの二割かかる費用が減るということで、それの二〇%にいたしました。そうしますと、約二千億以上の減という数字が出てきたわけです。まあ、その額については仮定の問題ですから、ここで深入りして時間をとることはやめますけれども、とにかく支出は減ると、さっき言われたように収入は四千何億ふえてくると、そして逆に支出は減るというふうにきているわけですね。そこのところに政管健保というのが非常に赤字を出すということがはっきりしてきていると思います。  それからまた考えていただきたいのは、これもお伺いいたしますけれども、診療一件当たりの日数、本人の場合、組合と政管とどちらが長いか、入院と外来比べてどういう数字が出ておりますでしょうか。
  344. 岡田達雄

    政府委員(岡田達雄君) 一件当たり日数の比較でございますけれども、政管の方が若干長うございます。具体的に申し上げますと、入院で申し上げますと、政管でございますが本人十八・六二八日、これに対して組合管掌は本人が十六・七六一日、それから入院外について申し上げますと、政管が本人が三・四四八日、組合が本人が二・九八一日というような状況でございます。
  345. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そういたしますと、ここでも組合と政管を比較いたしますと、診療一件当たり日数が非常にかかっているということは、病気が早く治らなかったという結果になろうかと思いますし、入院もまたふえているということは、やっぱりそういう病気が長引いていくというような形にとれるのだと思います。そういうふうに見てよろしいでしょうか。
  346. 岡田達雄

    政府委員(岡田達雄君) 御指摘のとおりと存じます。
  347. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それでは次に、年齢階級別格差の問題についてお伺いしたいんですけれども、政管健保における高齢者の割合ですね、これは組合健保と比較してどうなっておりますでしょうか。
  348. 岡田達雄

    政府委員(岡田達雄君) 七十歳以上についての割合を申し上げます。政管健保におきましては、家族について申し上げますと五・四〇、それから組合健保の場合には四・三〇というふうになっております。
  349. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 高齢者の場合にも、やっぱり政管の方が高齢者の占める割合は多いと。いまのは何年ですか。
  350. 岡田達雄

    政府委員(岡田達雄君) 五十年の数字でございます。
  351. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 私、ちょっとずれますけれども、六十歳以上で調べさせていただきました。六十歳以上ですと、政管の場合は六十歳以上の方の占める割合が七・四%、組合健保では六十歳以上の方の占める割合は二・九%と。そういたしますと、政管の方が六十歳以上、お年を召された方が二・六倍多いというような結果に出てきて、ここでもまた政管がどうしても赤字を出さざるを得ないという裏づけがはっきりと数字で出ていると思います。  これだけはございません。労働省いらしてますか。それでは、大変労働省の方御苦労さまでございます。お伺いしたいと思いますけれども、労働時間の比較で、大企業、中小零細企業と分けたときにどういうふうな数字が出ておりますか。それから、中小企業と大企業の福利厚生費の比較でございますね、それ出ていると思いますのでお伺いしたいと思います。
  352. 中谷滋

    説明員(中谷滋君) 労働時間の規模別の比較でございますが、労働省でやっております毎月勤労統計調査の数字がございます。昭和五十一年の平均で五百人以上の大企業が百七十・六時間でございます。一番下の五から二十九人の小さいところが百八十三・九時間、これは月間の労働時間の平均でございますがそうなっております。したがいまして、五百人以上を一〇〇としますと、一番下の五から二十九人の小さいところは一〇七・八と、約八%近く労働時間が長くなっております。それから、福利厚生費の関係でございますが、これも労働省でやっております労働者福祉施設制度調査というのがございまして、それによりますと、昭和五十一年の平均で、福利費と申しますのが千人以上の大規模で申しますと、一人一ヵ月平均ですが、二万五千六百四十一円となっております。それから、規模が小さくなるに従いまして金額も小さくなってまいりまして、一番下の三十人から九十九人、これは調査がこれまでしかやっておりませんが、三十人から九十九人の規模で申しますと一万六千百二十三円でございます。したかいまして、一番上と一番下の格差を申しますと、一番上を一〇〇としますと、下のところが六二・九という格差になっております。
  353. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 ありがとうございました。  そういたしますと、中小零細企業、つまり政管の対象者は、大きな組合健保の加入の労働者よりも長時間働いていると。そして、その上に福利厚生施設という面でもわずかに六二・九%しかないと、こういうようないろいろな問題がここに重なってきております。これは大臣にお伺いしたいんですけれども、いま言ったように長時間労働働いて収入も低い、福利施設も少ない、そしてまた病気になっても忙しかったり、ちょっとお金の都合がつかなかったりというようなことで、ちょっと早期に診てもらえばいいのに診てもらわないということで病気が長引いていくというような結果になってくる。これが赤字をつくる、病人がふえるという原因になろうかと思いますけれども、これは労働者が悪いんでしょうか。大臣、どうですか。大臣に聞いているんです、大臣。いま言いましたでしょう。聞いていてくだすったんでしょうか。
  354. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) ようく聞いておりました。これは、特別に労働者が悪いとか、そういうような問題ではございません。
  355. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 確かに、労働者が好きで病気しているわけではございません。労働者が悪いわけではないとはっきりおっしゃいました。当然のことだろうと思います。しかし、このことが政管健保の赤字に、いい悪いは別にして、具体的にはね返ってくる問題だということで、私は大変くどいようですけれども、いままで申し上げたわけなんです。そういたしますと、福田総理からお答えいただいたんですけれども 本質を避けて、ごまかしていらっしゃると言わざるを得ないわけなんです。これは衆議院で浦井衆議院議員、わが党の議員が質問いたしましたときに福田総理は、政管健保赤字原因医療費の増大、医療技術の高度化、人口の老齢化などと簡単にお答えになって、いらっしゃるわけですけれども、これだけではない。もっと本質的なもの、つまり、なぜ病人がこう多くなってきているか、そして保険の収入、保険料の収入か仕組みとして少ないという、構造的な理由というのが、これが本当に大事な土台になる問題だと思うんですけれども、これを避けて通っていらっしゃる。私は、これは大変不本意だと思います。そして、本当にここにしっかりとメスを入れなければ、あとの問題の解決ということにはならないと思う。この点で厚生大臣はきょうもよくお聞きになってくだすったし、専門でいらっしゃいますから、こんな御答弁はなさらないと思いますけれども、まさにこの政管健保が赤字を出すのは、構造的な脆弱さからくると、るる私が申し上げたこと、この点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  356. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それはいまおっしゃるようなハンデはあると思います。しかしながら、組合健保の方は確かに給料は高いと、同じ率ならば納める保険料が多いと、片方は給料が安いから、同じ率でも納める保険料は少ない。病気は同じか、それよりもちょっとよけいかかっている、ですから赤字になるんだと、私はそうだと思いますよ。しかし、そのために、政府といたしましては、組合健保に対しては補助金はほとんどつけておりませんが、政管健保には三千百三十億円もことしは用意をしているのですと、これもちゃんとそういうことを考えまして、政府としては、政府財政資金で調整は図っておるつもりでございます。
  357. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 お答えはもうそう出ると思ったのですけれども、私はどこに比べて三千億が高いとか安いとかという問題じゃなくて、構造的に、必然的に赤字を生むものであるという立場ですね、それを大臣がお認めになるかどうかということなんです。つまり、くどいようですけれども、いままで言いました、いま日本の経済を支える、特にいま円高の中、不況の中でも一番苦労を背負って支えている人たちが体をこわし、そして収入も少ないという、この構造的な問題を抜きにして、政管健保に何ぼ金をやりましたなんというところを私は論議やっているんじゃない。この構造的な脆弱さが政管健保の一番土台になっているというところの認識を伺っているわけなんです。その認識については、先ほどから一つ一つ出しました。その答えについては、そのとおりだと、数字でございます。ごまかせないわけですから、これをあえて否定なさらないと思いますが、再度確認したいと思います。
  358. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) いまおっしゃったような問題点があることは認めます。
  359. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そういうふうに素直に問題をおっしゃればいいわけで、何ぼ出したなんて、そういうところに逃げないでください。そういうことになりますと、これはまたいろいろと御意見もあろうかと思いますけれども、これはまさに労働者に責任はないと。そして、この経営者は国ですよね、政管健保、政府管掌なわけですから、だから三千億出した、何ぼ出したなんて、そんな額の問題じゃない。やっぱり、この人たちを政府が責任を持って健康を守るという立場に立てば、これはもっと国庫負担率を引き上げるという責任をどう考えていらっしゃるか。いま一四・八%の率になっておりますけれども、二〇%ぐらい引き上げるべきではないか。そうすれば赤字対策だけではなくて、診療報酬も適正に引き上げるということもできる。これなしに、枠の中でやりくりやっているということでは私は解決つかないと、そういう意味で、私たちは——私たちというだけではなくて、多くの方たちは、国庫負担をふやすべきであると、三千億なんてけちなことを言ったらだめですよ。いま日本の経済大きいんだもの。あっち向いて強く出てください。二〇%国庫負担ふやす気ありませんか。
  360. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは国民健康保険についても言えることでして、同じような議論国民健康保険政府管掌でも言える問題なんです。ですから、国民健康保険の方は一兆四千億円を補助をいたしておりますと、組合健康保険には八億円しか出しておりません。そこでバランスをとっているわけですよ。ですから、政府管掌保険にもっと出すということになりますと、ほかの方とのバランスの問題もございます。  それからもう一つは、財源ということは、結局税金の話でございますから、これは私、本会議でも言ったように、税金をもっと取って、たくさん取って、そうしてそういうものももっとふやしていくという行き方も、それは一つの行き方としてはあろうかと存じます。しかし、自由経済をやっておる社会保険制度の国で、ドイツでもフランスでもアメリカでも、そういうふうなところは、国庫補助をどんどん出しているというところはない。日本はそれらの国と比べて一番よく出しておるので、私もこれ以上できるだけふやすようには努力をしたいと思いますが、これは財政全体との問題でございますから、いまこの法案に関して二〇%引き上げるということは、ちょっとこれは御無理なことではないだろうかと、こう思っておるわけです。
  361. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それで、大臣の本当の言いたいことがおっしゃれたと思うんですけれども、私たちとしてはやっぱり立場が違うのだなあと、つくづく感じるわけなんです。これは論議していくと時間がもう足りなくなりますので、私たちとしては二〇%の引き上げ、できないはずはない、やる気になればやれるのだ。その姿勢が問題だ。そして、やれば赤字解消だけではなくて診療報酬も引き上げられるという、その道をとっていただきたいということを重ねて要望する。検討の課題にもやっぱりやっていただきたいということを要望して、次の問題に移りたいと思います。  この法案に対しての大臣の御答弁、いろいろ本会議以来、また衆議院での議事録なども読ましていただいておりますと、何しろこの赤字をどうするか、財政対策がもう先に立っております。まずそれは、財政を無視してやれというわけにはいかないけれども、財政をどう軌道に乗せるか、どう赤字をなくすかということが、本当にもう先に立っているということを私は痛感したんです。確かに御苦労あります。赤字をなくしたいお気持ちもわかります。それではこの法案が出されて大臣の願っていらっしゃる、きっと夢にも見ていらっしゃるんだと思う、この赤字を。この赤字がなくなるという、そういう対策とれるのかどうか。財政対策というにも、これはまことにお粗末な本案だというふうに言わざるを得ないわけです。  で、この間資料をいただきました。試算をしていただきましたけれども、五十二年度、これ先ほどからも言われておりましたけれども、二百二十六億の赤字でございます。これが法改正になりますと、五十三年度で七百九十億というふうになるわけですけれども、いま言ったように、五十二年度二百二十六億の赤字の見込み、四十九年度以降の赤字は、これは一千六百二億になっております。五十一年の決算が出ました段階で一千四百六十七億、百三十五億累積赤字が減りましたので、私はそのことでちょっと計算をいたしましたけれども、一千四百六十七億の累積赤字が出てくるわけなんです。この本案が通りましたら、もしも本当に赤字が御心配でお出しになったとするならば、この本案が通った暁には財政は見通し立つといまでもそうお思いになっていらっしゃるのかどうか、また重ねての御質問になろうかと思いますが、お答えをいただきたいと思います。
  362. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私どもといたしましては、二%の法案を提出したわけでございます。そうして、それによって応急的に緊急避難的にいままでの赤字というものをできるだけ少なくして、そしてそのしっかりした基盤の上に抜本改正で莫大な金がかかるわけですから、それは負担も別にしてもらうことになるわけですからね、それはそれで整理した上で新しい発想で抜本改正をやろうと、こういうことでやってきたわけです。ところが、〇・五%をちょっとへこんじゃったものですからね、そこで予定が少しその分だけ違ったということは事実でございます。ございますが、それでもなおかつ、なくなってしまうよりはまだよいということで、これは忘れられないというわけであります。(笑声)
  363. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 本案が仮に成立するというふうにして計算をいたしますと、先ほど申し上げましたように、五十三年度単年度で確かに黒字が七百九十億出るわけです。そこで、もう前回からも問題になっておりました医療費改定は避けられないとそう思うわけです。二十日の読売新聞を見ましたら、武見さんと渡辺厚相、写真二人並んでおりまして、「医療費、来夏まで凍結」「来月十日内に未決着なら」と大変勢いのいい姿勢で書かれているわけですけれども、現実問題といたしまして、医師会にもしっかり物を言ってもらうことは物を言ってもらいたいと、渡辺厚生大臣に期待されるところもあろうかと思いますけれども、幾ら大臣がんばられても、医療費というのは当然いまのこの推移から見て引き上げなければならないということはお考えになっていらっしゃるだろうと。そうすると、七百九十億の来年度本案が通って増収になったとしても、これわずか四%の医療費引き上げで帳消しになってしまうわけですよね。わずか四%なんです。向こうは二けた以上だというふうに言っている。四%で果たしてこんなことでおさまるかどうかというのは一つの問題です。しかし、これは仮定の問題ですから、いまここであえて言いませんけれども、四%でおさまっても黒字の七百九十億というのは帳消しになっています。累積赤字の解消はできない。一体どうなさるんですか。来年度これ通りましても、四%の医療値上げでもうこれは黒字はパアになってしまう、累積赤字もできない。身ぎれいにしてなんておっしゃっても身ぎれいにならぬですよ、引きずっていますよ。これどうなさるおつもりですか。
  364. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 診療報酬改定の引き上げということが議題になりますれば、当然いまの医療保険財政が非常に窮迫しているわけでございますから、財源措置というのが必要なわけでございます。そういう意味で申しますと、現在政府管掌健康保険保険料率が千分の七十八でございます。したがいまして、保険料率の上限八十まで引き上げられるということになっておりますので、残りの二の料率を引き上げるということは当然考えなければならないというふうに思っております。  それから二を引き上げました場合に、これは診療報酬の上げ幅いかんによると思いますけれども、それでも足りないという場合におきまして、いずれにしましてもこれは来年以降どうするかということは考えていかなければならないというふうに考えます。
  365. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そういたしますと、これはどうにもならないということはお認めになったわけですよね、これも数字で出ているんです。四%引き上げくらいでおさまらない。もう収入の分はパアになってしまう。そうすると、いまおっしゃいました弾力条項を発動してぎりぎり千分の八十まで取るということですよね。そうすると、また来年に持っていくわけですよ。来年これの保険料上げなきゃならないわけです。八十まで取らなきゃならない。また負担がかかってくるというわけでしょう。全くこれ厚生省にしたらもうおかしいと思うんだな。ぺたぺた毎年効きもしないこう薬と言ったらメーカーから怒られるかもしれないけれども、本当にその場当たりのこう薬張りで済んでしまう。そして来年、この法案が成立しても弾力条項を八十まで引き上げます、これでまた診療費が上がったらまた今度上げなければなりません。全然お先真っ暗ですよ。だから、私はここでもう時間も余りありませんので論争するつもりはありませんけれども、はっきり言ってこれはもう全く財政対策にもなっていないということをここで確認して、次のボーナスの問題に入っていきたいと思います。  ボーナスの問題、これも先ほどからお話がるる出ておりましたけれども、現行制度で組合、政管の保険料率給付料率はどうなっていますでしょうか。また比較さしてください。
  366. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 政府管掌健康保険保険料率につきましては、ただいま御説明を申し上げましたように千分の七十八でございます。それから健保組合の保険料率につきましては、最近健保組合の財政も非常に苦しくなっておりまして、昭和四十九年が千分の七十でございましたが、現在は千分の七十六というところまで来ております。
  367. 小笠原貞子

  368. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 給付率につきましては、政管健保につきましては八八・三一%、それから組合健保につきましては八九・四八パーセントという数字でございます。
  369. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 医療保険制度がいろいろと分かれておりまして、それぞれの間に、いまおっしゃいましたように、給付負担格差がございます。いまの数字で明らかになったのは、保険料率が政管の方が高くて給付は低いという数字になって出てきたというふうに見られるわけです。今度、本改正案で新たにボーナス保険料を徴収するということが一つ問題点になるわけですけれども、組合の方は任意で政管は強制適用されると。そして、負担格差がこれまでにもこれだけの差があったのに、またここで政管の方だけ強制適用されてボーナス負担というものが出ると、ますます負担が拡大されて負担格差が広がる、不公平の拡大になると思うんですけれども、これは不公平の拡大をどういうふうにごらんになりますか。
  370. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 先生先ほど御指摘になりましたように、政管とそれから健保組合、これは確かに体質の差があるわけでございます。そういう意味で、政府管掌健康保険の場合にはどうしても財政基盤が弱い、それから一方、組合の場合にはそういう面で申しますと、政管よりははるかにいい、しかし組合も最近は非常に苦しくなっているということが申し上げられると思います。  そこで、今回政府管掌健康保険についてはボーナスが強制であると、一方、組合については任意であるということでございます。   〔理事浜本万三君退席、委員長着席〕  そこで、現在組合の場合には保険料率が千分の九十まで上限が引き上げられるということでございますので、恐らく組合の場合もかなり財政的には苦しくなっておるという実態でございますので、むしろ料率の引き上げということで対応するんではないかと。一方、九十の上限までいっているということになりますと、ボーナス特別保険料ということも考えられると思います。ただ、政府管掌とそれから健保組合、確かに御指摘のように片方は任意であり片方は強制であるという問題点はあろうかと思います。しかし、いずれにしましても当面政管の財政危機を何としても乗り切っていかなければならない、そのためには政管が非常に危殆に瀕しているというために、当面もう緊急やむを得ない措置としまして特別保険料で対応したいということでございます。先生御指摘のような問題点はあるにいたしましても、この問題はむしろ制度間の給付なり負担のアンバランスというようなことで、先ほども大臣から御答弁申し上げましたように、これからのむしろ制度の基本的な問題としてこの問題は取り組んでいくと。しかし、その問題に取り組むにいたしましても、当面この政府管掌健康保険のピンチを乗り切っていかにゃいかぬというために、特別保険料を徴収するということでございます。
  371. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 結論は、これ、どうしても乗り切らなきゃならないからこういうふうにやってください、通してくださいなんですよね。だから話が逆なんですよね。だから私がいま聞いているのは、大臣にもお答えいただきたいんだけれども、明らかに格差が拡大されると、不公正が拡大されると、それはわかっているとおっしゃったわけですよ。不公正が拡大されるのはわかっているけれども、とにかく頭を下げるから通してくれと、簡単に言えばそういうことですか。大臣に聞いているんだ、いま局長のはわかったんだ、局長の言っていることはわかったの。
  372. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 先ほども御説明申し上げましたように、組合管掌の場合も非常に財政的には苦しくなってきている、したがいまして、保険料率も従来に比較しますと非常に政管に近づいている、しかも組合の中には赤字組合もある、それから上限いっぱい九十まで取っているというところも九十七以上あるという点も認識いただきたいと思います。
  373. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 おたくの方は、組合健保は赤字のがございます、上限九十まで取っています、そんな比較なさるんだったら、私だって言いたいことあるわけよ。それじゃ松下のナショナルだとか、日立だとか、あんなところどうなんですか。全然低いじゃないですか。都合のいいときだけ、そういうのもございますからというような、そういうやり方やめましょう、もうこれで。だから、私が言いたいことは、私は制度的に言っているわけだ、こっちは強制で、こっちは任意だと、いまでも差があると、ボーナスをつければもっと差が出てくるよと、その不公正を是正しなければならないのに、不公正がますます拡大されるというのに、赤字があるからしょうがないと頭を下げてお願いになるわけですね。結果的には、それでいいわけですね。
  374. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) まあ結果的にはそういうことになるのかもあるいはわかりませんがね。それは実際組合の方でもナショナルのようなところもあるでしょう。しかし、銅山とか石炭とか、そういうところで、それは上限いっぱい取っているというところもございます。そういうところは、恐らくこの法律ができれば、やはり何とかしなきゃならぬわけですから、内部調整もできるだけ私の方ではさせるようにいたしますが、やはりボーナス課税をするところも出てくる。この保険料率の問題は日本ばかりでなくて、本当は全部一律なら一番いいんですよ。いいんですけども、なかなか、理想的にはそうかもしれないが、ドイツのような長い歴史のあるところでも、低いところは八%、高いところは一二%、千何百組合があっても、みんなそれぞれ違うわけです。長い歴史があるものですから、一遍にはなかなかうまくいかないというので、結論から言うと、先ほど言ったように頭を下げてもこの際は通してもらいたいと、こういうわけなんです。
  375. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 もう、いろいろ外国の例をお出しにならなくても結構なんです。その不公正がますます広がるということはわかっていても、頭を下げてでもお願いしたいというところがわかりましたから、次に進ませていただきたいと思います。  それでは、このボーナス保険料、先ほども問題になりましたけれども、第四条ですか、「健康保険制度ノ全般ニ関スル速ナル検討二因リ必要ナル措置が講ゼラルル迄ノ間」というふうになっております。「全般ニ関スル速ナル検討二因リ必要ナル措置が講ゼラルル迄ノ間」ということは、いま主での御説明や御答弁では、抜本との関係抜本改正に向かって、これとの関係だと、こういうふうにおっしゃったわけです。けさ抜本改正いただいたわけです。十四、これだけを抜本改正という問題としてまず認め、これ以外のことは考えていないのかということが一つの問題ですね。これだけでまず抜本と、政府はこういうふうに見ておられるんですか。
  376. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) まあ、こういうことが考えられるということで、この議論をこれからいたすわけですから、いい知恵があればそれはのっけるにやぶさかでございません。
  377. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いままで簡単に抜本抜本と、抜本に手をつければと、抜本改正ができればというふうに言われていましたけれども、抜本という概念がはっきりしていない。これは非常にむずかしいことだと思います。しかし、きょう出されたこれだけを見まして、たとえば「全般二関スル速ナル検討ニ因リ必要ナル措置が講ゼラルル迄ノ間」という、その「必要ナル措置が講ゼラルル迄ノ間」というのは、たとえば五十三年度に立法、五十三年度で実施というのもありますし、五十四年度以降というのもございますし、五十四年度以降逐次実施というのもございますね。そうすると、この「必要ナル措置が講ゼラルル迄ノ間」というのは、この抜本についてこういう計画があると、こういうふうにやりたいというそのものを出された。たとえば、これでも計画、一応初めてお出しになりましたね、具体的にこういうふうに。そしたら、これ出したときから抜本というのが始まって、どこの問題、どの問題について、そしてそれが立法化されたときを言うのか、立法化されて実施に移った段階に言うのか、それとも実施して、そして、それがおおむね完了したときに言うのか。それまでは大変だと。そうすると、立法化して実施した中間、第一期、第二期というふうに見て、そして「必要ナル措置が講ゼラルル迄ノ間」というふうに見ていくのか。非常にもう抽象的なんだ。「必要ナル措置が講ゼラルル迄ノ間」というのは、具体的に何がどうなった、そのときはどういうときなんですか。
  378. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 医療保険制度の基本的な抜本的な改善という際に、確かに法律改正を伴うような制度的な問題と、あるいは予算措置なりあるいは行政措置なり、そういうような問題もあろうかと思います。少なくとも、ここで私ども特別保険料の徴収期間について「健康保険制度ノ全般ニ関スル速ナル検討ニ因リ必要ナル措置が講ゼラルル」という問題につきましては、法律措置——立法措置を伴うということを前提としているわけでございます。したがいまして、五十三年なり五十四年という事項によりまして、これから詰めていかなければならないということになろうと思いますけれども、五十三年なりあるいは五十四年という時点を考えました場合に、何らかの法律を国会に御提出するということになろうと思います。その際に、当然費用負担あり方ということにつきましても御提案申し上げるということになろうと思いますので、それらの法律が国会の御可決をいただき、実施されるような時期というふうに考えております。
  379. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 はい、立法化されて、国会で通って実施される段階ということですね、わかりました。  そうしたら、それでも長いですね、これ。これいろいろ問題ありますよ。一部負担をどうするんだ、また値上げするんだなんて言ったら、これは通らないときがありますね。この法案だけだって、これだけ長引いたんだから。これ通らなければ、全部大変な問題、議論になりますよ、すんなり通りませんよ。私、通させないつもりなんだけど、よっぽどしっかりしたんでないと。通らなかったら、この「必要ナル措置」の期間というのはずうっとというふうになってしまいますね。
  380. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) ともかく、これは与野党を通じまして抜本やれ抜本やれと言われてきたわけでございますから、したがって、私どもとしてはその抜本の案をこしらえて、それで国会に上程をさしていただくということで、抜本というのは、これはその給付だけよくするということじゃございませんから、むだもなくするし、それから給付も上げるが、必要な財源もいただくということで、合理的なものをこしらえるわけですから、国会でこれだけやれやれと言って与野党で言ってきたんですから、私はこれが出れば通らないなんということは夢にも見たくはないんです、これは。これは通していただきたい。ただ、それには手続がありますから、まあ来年一年というわけにはなかなかいかない。したがって、そう遠くはないが、大体その辺に見えるぐらいのところ、五十三年というわけにはもちろんいきません、五十四年に出すものも、三年度に出して五十四年からというものもございますから、中には五十四年以降にあるいはずれ込むかもしらぬということだけれども、そうともかく長いことではなくて、まあ数字で言うのはどうかと思いますが、そんなに遠い話じゃないと、こういうふうに御理解をいただきたい、かように存じます。
  381. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 私も別に妨害したいと思いません。通るようないい案で出していただかなければならないと思います。それにしても、五十三年はちょっと無理、五十四年になりますよね。そうすると、結構長いですよ。緊急避難なんて二年間もそこにほっとかれたら、これは大変だということで、われわれはどうしても、さっきのはがきにありましたように、特別ボーナスから出すというやり方は間違っていると、まず赤字赤字と騒ぐ前に、やるべきことをやってから出直してこいというふうな論法になろうかと思います。それはそれでおくといたします。  それから、今度初診時の一部負担が七百円と三・五倍になりました。この問題も非常に大きな問題だと思うのです。つまり、かぜは万病のもとというように、また先ほどの例を見るまでもなく、早期発見、早期治療と、これがもう大切な問題、つまり後手後手に回れば病気もこじれるし、保険財政にも響く、早期の発見、早期の治療ということをいま私は一番大事にしてもらいたい。ところが、大臣は七百円になっても影響はないとおっしゃいましたけれども、一体その影響はないとされる根拠は何なのか。社会的通念でございますなんという返事がありましたから、もうそれについて時間をかけたくございませんから、それは私の方で論駁していきたいと思うんです。つまり、五十二年一月に出た財政制度審議会の建議で、はっきりと支出面での対策は受診の適正化をしなければならないと、こうはっきり書いているわけです。これは大蔵省の意見です、財政審の。つまり、受診を抑制する、つまり受診の中でも外来が非常にふえております。これも時間がありません。私の方で調べたので言いますけれども、政管健保本人の受診率増加の状況というのを昭和四十年、五十年の十年間調べてみました。そしたら、入院がマイナス一七%です。そして入院外、つまり外来というのが一五%にふえてきているわけです。だから、つまり外来を抑えれば保険財政を抑えられると。つまり、そういう外来を抑えるというのが主さに受診抑制をねらった財政審の考え方とぴたり一致するわけなんです。つまり、受診する人たちというのは、これもまた数字が出てくると思いますけれども、標準報酬階層別受診率というのをお伺いすればいいわけですけれども、標準報酬低い人ほど受診率は高くなっていますでしょう。それちょっとお答えください。
  382. 岡田達雄

    政府委員(岡田達雄君) お答え申し上げます。  標準報酬の等級の第一級それから第五級あたりは、該当者が数が少のうございますので一概に断定はできませんけれども、しかし傾向といたしましては、先生ただいま御指摘のとおり、標準報酬が低い方々の受診率は高いということは言えると思います。
  383. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 ここでひとつはっきり区切りをつけたいと思うんですけれども、いまおっしゃったように報酬、つまり収入の低い低所得者は受診率が多くなって病気にかかりやすい、これ当然そうだろうと思う。住宅環境も悪いし、栄養も十分じゃないし、労働強化で労働時間も大変さっき長くなっていたということですよね。つまり、そういう低所得者の受診、初診を七百円にするということはその抑制にぴたりつながってくるんです、  これは、いま私ここで本当に聞いていただきたいんだけれども、たとえば国保の問題でも前私予算委員会で取り上げましたけれども、初めに早期発見、早期治療すれば、初めは財政支出するんですよ。だけれども、それが結果的には病気をなくし、病気にかかっても軽くして済むということで、国保の財政が黒字に転化してきているというのが長野県の八千穂村の例で私は言ったわけですよ。そうすると、ここでこそくな手段で、ちょっと赤字赤字だなんて、赤字に目を奪われて、そして七百円にして受診抑制して、お金は抑制そのときはされたかもしれない。しかし、それで早期発見、早期治療ということの手おくれの中で、結果的には病気が長引くということを考えれば、保険財政は悪化する、そうならないとどうして保証できるかという点をはっきりさせたいと思います。大臣見解いかがですか。
  384. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それは私は程度の問題で、あなたのような御意見も確かにあると思います。あると思いますが、仮に千円、二千円に上げるとかいうのでなくして、物価、賃金の上昇、こういうものから考えれば、しばらく据え置いたものでございますから、十年来の据え置きでございますから、その分のスライドをする、それほど受診抑制というほどのことにはならないのではないかと。これは日本ばかりでなくて、スウェーデンあたりでも年々これ改定いたしまして……
  385. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 日本の話でいきましょう。
  386. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) いやいや、本当に世界じゅうそうなんですよ。ドイツでもことしから薬剤一部負担をやるようになったし、スウェーデンのような社会保障のお手本のような国でも、七五年に上げたものをことしからまた十二クローネから一回について十五クローネに去年上げるというようなことで、やはり全体の財政との問題で、やっぱりこれは保険制度を維持する上において必要やむを得ない最小限度の費用と、こういうようなにお考えをいただきたいと、こう思います。
  387. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 何ぼ言われてもお考えいただけないということで、私の立場ははっきりさせておきたいと思います。  いま受診料が幾らだ、一日の入院費が幾らだ、わずかのように聞こえますけれども、やっぱりその裏に先ほどから出されてました保険外負担というのが非常に大きい問題ですよ。私はその中で保険外負担差額ベッドの問題について伺いたいと思います。  四十六年の社保審の答申で、公的医療機関本来の使命を果たさせるために「公費を投入し、独立採算制を排除することとすべきである。」「これらの措置に対応して差額ベッドについてはこれを認めないこととすべきである。」と明確に述べられております。また今回の答申、十一月四日、あれを見ましても、ここで私は非常に厳しい批判が出ていると思います。つまり、四十六年答申が出された。その内容の「大半の課題は残されたままとなっている。政府の反省を促す」と、厳しく批判されております。そしてまた、保険外負担、「付添看護、室料差額等の保険外負担問題が当時に比べ切実さを増している」と非常に具体的に書かれているわけです。まことにこれ具体的に切実なもので、もう同僚議員から言われたわけですけれども、少なくともこの公的病院から差額ベッドをなくしていただきたいと、きのう資料お願いいたしまして出していただきました。確かに、国立病院は四十九年、五十一年比べてみますと減っておりました。しかし、問題なのはその他の法人の中、このその他の法人の中には私立の大学関係病院が入っていると思いますけれども、四十九年は二六・四%でございましたのが、五十一年七月一日現在では二七・八%というようにふえているわけです。これがふえてきているというのは大変困るわけなんです、患者にとりましてはですね。そういう点で、この問題について、なぜこういうふうに差額ベッドを取らなければならないと見ていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  388. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 確かに、先生御指摘のように、差額ベッドの実態から見ますと、その他の法人というところが一番高いわけでございます。四十九年二六・四%、五十年では二八・七%ということで、五十一年若干下がりまして二七・八%ということでございます。一番問題なのは、やはりその他の病院の中で私立大学の付属病院、この辺が一番問題だろうというふうに思っているわけでございます。  ただ、私立大学の場合には非常に経営上の問題というようなこともございますし、さらに教育の問題あるいは研究の問題というような普通の病院と違う要素もあるというようなこと、しかも私学の経営が苦しいというようなことから、こういうような状況になっているわけでございますけれども、私どもも私立大学付属病院につきましては特に差額の率が高いというようなことから、文部省等にも申し入れをしているわけでございまして、逐次改善してまいりたいというふうに考えております。
  389. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 文部省と協力し、逐次改善をしたいと思っているけれども、逐次改悪されちゃってきているわけですよね、ここを見てもふえてきているわけですよ。だから、結果的に数字で見ればふえてきていると。だから、その辺のところ強力に私はこの私立大学病院の場合は特に目をつけていただきたい、そして、できたら一番いいのは、各私立大学病院だとか大きな病院なんかでどれだけ差額ベッドがあって、幾らくらい取っているかということを調査して公表するというのは、非常に社会的に見られるわけですからね、これは一番大きなやり方ではないかと思うんです。私どもの「赤旗」の方で調査いたしましたの、もう「赤旗」読んでいただけていればおわかりだと思いますけれども、東京女子医大病院の労働組合の調べでとってきたわけですけれども、総ベッド数が千百五十八です。そのうち差額のないのはわずか百四十六にしかすぎない。千百五十八のうち差額のないのは百四十六しかないんですよ。しかも、このうち百二十四ベッドは、東京都に対して差額なしと報告しておきながら、五百円徴収していたということが、組合の告発で昨年の六月から差額廃止ということになったわけですけれども、総ベッドの九割近くが、最高が脳外科でしたっけ、これ、脳神経センター三万三千円というのから、最低千円の差額ベッドが取られていると。その他の私立大学も、慶応にしても似たりよったりだと思うんですよね。こういうような調査が発表されますと、やっぱり考えなきゃいけないというので、大きな社会的制約になって是正されていくと思いますので、ぜひ調査をしていただきたいということ。それから、三人部屋で取っちゃいけないわけでしょう。それなのに取っていますからね、東京女子医大。だから、それも調べてください。調査をすること、そして三人以上取っているというようなところは、適時取らないようにすること。お金がなければないで、なぜいまの医科大学が財政赤字なのか、上に問題解決やっていかなければ、お金かないから差額ベッドだ、付き添いだなんということじゃ困ります。だから、主な私立医科大学の差額ベッドを調査すること。そして、少なくとも三人以上では取らせないという、はっきりした態度で臨んでいただきたいと思います。
  390. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 私立大学医科病院につきましては、私どももある程度実態を把握しておりますけれども、さらにその調査の徹底を期してまいりたいというふうに考えております。  それから、私どもの指導基準といたしましては、一人部屋、二人部屋までであると、大部屋からは取らないようにということでございますので、その指導の一層の徹底を期してまいりたいというふうに思っております。
  391. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 さっきの答申にありましたように、公的病院のその使命から考えて、これはもうほんとにあっていいというものじゃないと思うんですよね。だから、やっぱりその公的病院、特に国立病院なんかでも基準が一〇%以下になったからということでいいという問題ではなくて、やはりそこに公費を投入してでも、差額ベッドなどというものは私は公的病院からなくすべきだと、そういう決意で臨まなければ、だらだらとなってしまう。そういう決意ありませんか。答申に言われている公的病院の使命から、公的病院少なくとも国立病院から差額ベッドをなくそうと。希望があるからといったって、病院に来て物すごいマンションみたいなりっぱな生活をしようなんという患者の方もちょっと教育してもらわなきゃならないと思う。決意がありますか。
  392. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 差額ベッドはやはりある程度ニードがあるというようなことから、これを全廃するということはいかがかと思います。そういう意味で、特に国立病院につきましては一般より一〇%というような基準を設けているわけでございまして、私どもといたしましては、この基準が守られるような指導を行っていきたいというふうに考えております。   〔委員長退席、理事浜本万三君着席〕
  393. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それじゃ、次に付添婦の問題についてお伺いいたします。春の委員会でも私、申しましたけれども、私自身が二人の寝たきり老人と障害者の夫を抱えて、そして一日一万円を払っているわけです、だから毎月三十万。先ほど小平議員からいろいろお話しになったけれども、まあ女の細腕でと言っても、国会議員だから余り細くない、ちょっと太い腕かもしれませんけれども、国会議員だからこれやっていけますけれども、この付添料というのは本当に深刻なんですよ。そこで、先ほどからの答弁を聞いておりましたら、国立や何か基準看護の病院で付添婦を置くことはけしからぬということになったわけですけれども、そもそも国立の病院で付き添いを置いていますね。国立病院、療養所、付き添いがちゃんといます。この調査、ずっと何年かやられたことありますか。
  394. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 国立病院は最近も実施しております。ごく最近も調査をいたしております。
  395. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 最近の調査で、東京だけで結構です、どういうふうな付き添いさんがいますか。
  396. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) ただいま資料が手元にございませんので、東京だけというのがむずかしいように思うのでございますか——失礼いたしました。資料が出てまいりましたので、(笑声)東京近辺六病院の調査結果でございますが、平均いたしますと七・八%となっております。
  397. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 せっかく調べて、いい資料もうちょっと出したらどうですか。私の方から時間がないから申し上げます。  基準看護、特二の東京の医療センター、ここで入院者数六百四人、家族の付き添いが四十人、プロの付添婦十二人いますよ、特二の医療センター。特一の東京第二国立病院、入院患者数六百七十六、家族の付き添い五十一、付添婦プロ二十五名いるんです。大臣、さっきから小平議員にお答えになるのを聞いていましたら、全然そんなことがないように、御存じがなかったように思いますけれども、国立の病院でプロがいるんです。プロがこれだけ——一人や二人じゃないです。いま言ったように特二で十二人、特一の東京第二、二十五人いる。これをどうごらんになりますか。
  398. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) まず、先ほども大臣がお答えいたしましたけれども、御本人がどうしても希望なさるという場合がございます。また、家族が希望なさるという場合もございます。また、医師が考えまして医学的にどうしても必要だといった場合も、非常に何と申しますか、要求の多い患者さんもあるわけでございます。そういうふうな関係が複雑に絡み合っておりますが、家族の付き添いというのはやむを得ない場合が多いと考えております。
  399. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 さっき大臣、基準看護の病院でこれはつけさせないというふうに言っていましたよね。局長も強い態度でそれをおっしゃっていた。おひざもとの国立の病院で、しかも東京で付き添いついているんですよね。このことの認識がない、さっきの答弁、やりとり聞いていたら。ここにやっぱり付き添いの問題、何だかんだ言っても本当に真剣にこの問題考えていらっしゃらないということです。私は、これは本当に不満だと思います。これだけの、東京だけ見てもこれだけの数字が出てくるんですよ。これ一体どうするか。いま佐分利さん、家族の希望がありましたらつけなければならないみたいなこと言ったけれども、基準看護でさっき特に特二の場合にはつけなくてもいいというふうにおっしゃったわけですよね。つけません、病院の名前わかったら指導しますなんて、わかったらっておたくの病院じゃないですか、国立、おたくの管理じゃないですか。そこのところはっきりさせてください。  それからもう一つ、私が言わなければならないことは、これは基準看護、やみやっているということになりますよね、さっきからので言えば。法律違反で付き添いを置いているということになるわけでしょう、極端に言えば。だからといって、これをやめてしまえというのは少し荒っぱいことだと思う。本当に付き添いが必要なんです。家族に付き添いをつけさせてほしいということを暗に国立の病院で言われて家族はつけているんですよ。だれも好きこのんで何十万のお金出して付き添いつけたいと思わない。だけれども、本当につけなければならぬように看護婦さん見てたらなってしまうわけですよ。そこで問題は、基準看護病院の取り消しをするとか、これをばっさり切っちゃうなんということで、強い姿勢で——姿勢はちょっとよさそうだけれども、ちょっとその向きが変わっていると思うんですね。私はここにやっぱり幾ら特二であろとも人数が足りないという問題があります。私の夫も特二にずっと入院していたんです。だけれども、この前も申し上げましたように、麻痺していますから食べられない。きのうも夜十一時半までですよ、御飯食べさせたのが、七時から食べさせて。こんなこと幾ら特二でも看護婦さんついていて食べさせられますか。こういうときには私はどうしてもつけてやりたいと思う。やみだと言われても私はつけてくださいとむしろ頼むだろうし、病院も頼んでくると思うのね。そういう道を考えるべきではないか。そうしたら、基準看護以外の病院でも保険から、少しずつよくなりまして、補助を出してくださるようになりました。ばっさりこんなやみ行為やめろなんという簡単な解決でこの付き添いの問題は解決しません。そういう患者がいても、特二なりまたもっと基準を緩くして、そうして看護婦さんをたくさん置いて、本当に看護できるような体制をとるかと、それともどうしても必要なら、やみだやみだなんてこれを抑えるのじゃなくて、そういう必要なところに基準看護であろうとも幾らかでも補助しますよというような次善の策を講ずるとかということをしていただかなければ、あっさりと片づける問題ではないと思います。大臣の御見解を伺いたいと思います。
  400. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) なるほど聞いてみると、あっさりとなかなかいかない問題もそれはあると思います。特に、一般論を私は申し上げたわけでありまして、付き添いをなくしろというためには基準看護病院をつくれと。基準看護病院をつくったけれども、しかしながら、本人がどうも看護婦さんだけのサービスでは物足らぬと……
  401. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いや、物足らないんじゃなくて、生きるために必要なんです。
  402. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) ですから、そういうのはいろいろあるでしょうけれども、物足らないというような方もあっても、それだけでそれじゃ付き添い認めますということになれば、基準看護病院何でつくったんだという話に一方なってきちゃうわけです。ですから、そこらのところが非常にむずかしい問題で、原則的には付き添いはつけない、そのための基準看護で特二ということになっているわけです、ですけれども、いま先生がおっしゃったように、看護婦さんが幾らいても夕飯食べるのにそれは十一時ごろまでかかるということになったら……
  403. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 夜の御飯。
  404. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 夜の御飯が、ですから何時から、七時から十一時ということになったら四時間もかかるわけですから……
  405. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 もういいです、時間がないですから。
  406. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) ですから、そういうような問題は特殊な事情もあることでしょうから、これらの問題等も含めまして、抜本改正の折にはそういうような特殊な問題をどうするか、これは検討を十分していきたいと、こう思っております。
  407. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 だんだん時間がなくなってきたので、大急ぎでお伺いしたいんですけれども、次は患者の給食費の材料費の問題なんです。薬づけ医療と言われるように、何かと言えば薬で治療されるというようなことが多くなっておりますけれども、やはり病人が自分で治癒力をどう生かすかと、その生命力を生かすために食費というのは、もうこれは一つの治療の一環として考えなければならない。たとえば腎炎、ネフローゼ患者というような場合には、たん白質をたくさん取らなければたん白質が出てしまうわけです。牛肉や大豆などが必要なんです。ところが、病院の給食費というものがだんだん物価が上がってということから、そういうものはたくさん出すことができなくなって、結局薬で対処するという悪循環になって、副作用も出てくるということになってまいります。これも医療内容の大きなゆがみだと思います。そこで、基準給食一日一千八十円出ているわけですけれども、うち材料費、国立療養所は六百六円ですね、もう時間がないから私の方から言います、六百六円になっております。ところで市町村立の病院、いろいろございます。そこで一日一人当たりの給食材料費についていつごろから調査されたか。五十一年度調査されたと伺いましたが、その結果はどうなのかを時間がございませんので、簡単にお答えいただきたいと思います。
  408. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 市町村立病院の入院患者一人当たりの給食材料費でございますけれども、昭和五十一年、施設数三百六十四の対象について調査いたしましたところ、平均では四百二十三円ということで、最高は九百九十三円、最低は二百七十七円という数字になっております。
  409. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 最高が九百九十三円で、最低が二百七十七円なんです。どうしてこんなに違うんでしょう。そうしてこんなに違って、二百七十七円程度で、調査が出てきた時点でどう考えていらっしゃいますか。
  410. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 確かに、最高と最低を比較しますと、かなりの差があるというのは事実でございます。恐らく、いろいろな原因あろうと思いますけれども、材料費の比率でございますので、地域の特殊性なり、あるいは病床規模なり、あるいは給食材料の購入価格なりあるいは購入方法、こういうような点がそれぞれの病院によって異なっているということでございますので、こういうような点がこれらのばらつきにあらわれているんじゃないかというふうに思っております。
  411. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 九百九十三円の最高と二百七十七円の最低というのは北海道なんですよ。地域同じなんですよ。同じ地域で九百九十三円、これは非常に良心的ですよね。九百九十三円もかけている。そうして同じ北海道でしかもベッド数も大体同じところの病院でこれだけ差が出てきているのですね。そうすると、これはもう患者にとっても大変だし、医療にとっても大きな問題ですよね。だから、まずお願いしたいことは、地域別、ベッド別、いまやって、御調査いただきましたけれども、こういう調査をもっと徹底してやっていただいて、そうして分析もはっきりしていただきたい。いま局長、地域差がありますなんと言ったって、北海道で差が出てきていますから、この実情を見ると。そうするとこういう問題についてどう対処したらいいかというその次の知恵が出ると思います。そこで、私は北海道だっていうものだからこれは大変だなと思いました。北海道の野犬幾らいま食べているんだと言ったら、野犬四百円食べているんですよ、あののら犬ね、保健所に預けておりますの。東京は安いんだけれども、北海道は四百円食べているんです。野犬が四百円食べていて、ベットにいて二百七十七円じゃこれはどうにもしょうがないですよ。これは病気治りません。だから、これについて具体的な御指導もいただきたいし、どういう手を打ってこういう格差をなくしていくかということを考えていただきたい。そして、私は少なくとも六〇%、国立並みにもってきていただきたいということについて、御指導きちっとやっていただきたいと思うんです。いかがですか。
  412. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 給食料につきまして保険で見ておりますのは、先生御指摘のように基準給食の場合には千円を超すものでございますので、確かに非常に低い給食材料費を使っているという点につきましては、十分研究してみる必要があるというふうに考えております。私どもも適正な給食なり、栄養量の確保という点につきましては十分確保していかなければならないというふうに考えておりますし、病院給食の指導担当部局等とも相談いたしまして、さらにこれらの調査の分析なり、今後の検討というものをさしていただきたいというふうに思っております。
  413. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 次に、薬価の問題についてお伺いいたしたいと思います。  本当に大きな、医療費の中に占める薬価の問題に本気になってメスを入れなければ、これは大変なことになるわけです。大臣は私が本会議で質問いたしましたときに、現在の薬価基準が原価を反映してないということは事実だとお認めになりました。そして、薬剤の原価主義は理屈としてわかるが、大変な手間がかかるというふうにお答えになったわけですけれども、私はどうしてもここで本気になってメスを入れるということを考えていただかなければならないと思って、時間がないから具体的にお伺いしていきたいと思います。  今度の十一月から薬価を銘柄別に決めて五・八%引き下げるということでございますけれども、果たして銘柄別収載という形で減るかどうかという問題ですね。これは先ほどのいろいろの御質疑の中でも出てましたように、これで一応抑えたとしても、また新薬というような形で、この新薬が薬価を引き上げる要因になりますというお答えになっていたわけですからね。だから、やはりこの銘柄別収載というのは一歩前進と認めたとしても、これは根本的な解決にならないということが言えると思うのですけれども、どうですか。  それと同時に、大変困難だと思うけれども、やはり基本的には原価を出させて、そして適正なマージンということにしなければ、私は薬価問題解決つかないと思う。いかがですか、その点。
  414. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは理屈としてはよくわかるんです。わかるんですが、現実の問題としては一万何千種類という薬の原価というものをきちっと把握するということは、ほとんど厚生省では不可能に近い、それは向こうで言ってきたものを全部これは検討しなくちゃならぬわけですから。そこで、やはりそれよりも市場の流通価格を押さえて、同じような効能のものは類似のものと並べちまうということの方が早い。しかし、銘柄別収載もただ単に現在のようなやり方だけではまだ矛盾もたくさんございます。したがって、そのバルクライン九〇、オンライン売買システムがいいかどうか。こういう問題等も含めて、これはやはり抜本のときに一緒に検討する、こういうことを言っておるわけでございます。
  415. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 その問題についてはまた改めてゆっくり質問したいと思います。  そこで、きょうはもう残り少ない時間でございます。具体的に保険財政をどう薬価で支出が多くなるのを防ぐかという問題で聞くわけですけれども、セファレキシン錠カプセル二百五十ミリグラムというものの最高と最低のものかどうなっておりますか。そして、もしも最低のものを使うとすれば一年間幾らの金額の違いが出てくるかということをお伺いしたいと思います。
  416. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) セファレキシンカプセルにつきましては、現行価格につきましては二百九十四円でございましたが、先般の銘柄別の改定薬価ということで二百二十円五十銭から百二十円までということになります。  なお、その最低の価格で計算した場合にどうかということでございますけれども、なかなかどの程度の影響度があるかという点につきましてはそう簡単に計算できない問題でございますので、いますぐお答えできるという問題ではないというふうに思います。
  417. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いまお答えいただきましたセファレキシン錠、これ抗生物質——かぜ、炎症なんかのときに使うお薬だと思います。これが今度銘柄別収載で名前がこうきちっと出てまいります。このセファレキシン錠が、塩野義で出しておりますケフレックスカプセルというのが、二百五十ミリグラム一カプセルがいまおっしゃった、安くなったとは言っても一番高い二百二十円五十銭でございますね。それからセポールというのが鳥居薬品で出しております。これが二百二十円五十銭、同じでございます。それからセファレキシンカプセル、参天製薬、これが最低の百二十円でございます。そういたしますと、これも国立療養所が使う薬の中から大体二〇%くらい、よく使う薬というのを十種類出していただいたわけです。その中でセファレキシン錠、いま言った抗生物質セファレキシン錠カプセルというのが非常にたくさん使われているわけなんです。これが一番大きな額を占めているし、量も占めております。もしも、この抗生物質セファレキシン錠のカプセルを塩野義とか鳥居とかという二百二十円五十銭で使った場合と、それから参天の百二十円で使った場合と、これは検定がちゃんと通っているわけですから、薬効としては同じだと思うんですよね。そうすると、これを安いもので計算いたしますと、実に三億八千百三十万という数が出てくるわけなんです。つまり、同じに国家検定も通った薬です。この同じ国家検定通った薬で、薬効も同じだと思います。検定通っているんだから大丈夫だと思います。この最高を使うか最低を使うか、この一つだけで三億八千——まあ約四億円、国立だけで、この薬だけでもこれだけ助かる。こういうような問題が、これは二〇%の薬を出してもらいましたけれども、これが国立全体でいったら、一体どれくらいの額になるか。そして、これが保険財政全体でいったらどれだけになるか。たとえば、全国の消費量が仮にまあ二十倍くらいだとすれば、セファレキシン一点だけで年間約八十億の保険財政が全体から違ってくるわけです。保険財政上膨大な影響になってくる。赤字だから赤字だからとおっしゃっていらっしゃいますから、こういうところに目を向けていただくということも、やっぱり考えていただかなきゃならないと思う。この最高と最低の薬、どっち使ったらいいと、保険赤字赤字とおっしゃっている大臣、どうですか。
  418. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは大変な実は質問なんでございます、これは。まことにそれはいまおっしゃったような問題点がこの銘柄別収載制度についてはございます。ございますが、これはやはりどういうふうに薬をとっていくかということについて、厚生省といたしましてはまあ物質特許というものを一つこしらえたと。それから、現実に高い薬と安い薬とあると、それでともかくその高い薬を買った者は高い値段でと。いままでは高くとも安くともセファレキシン二百九十四円になっていたわけですよ。いろいろあってもみんな二百九十四円で払っていたわけですね、今までは。今度はそれを段階的に分けることによって、実際に買った薬の値段をお払いいたしましょうと、こういうことにしたわけですから、まあ問題点はございますが、いままでよりは前進をしたと。しかし、それだけで私は満足と言っておるんではございません。これも大きな問題でございますからということで先ほどから言っておりまして、一歩前進はいたしましたが、さらにもっとよい方法はないかということを検討していきたい、そう思っております。
  419. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 重ねてお伺いしますけれども、お医者さんが薬どれ使うかというのはお医者さんの権限でございますから、私どもがこれが経済だから安く使えと言う強制力も何もないと思いますけれども、やっぱり同じ効果でそして安いお薬があったら、やっぱり安いお薬を使った方かいいではないかというような点はお考えになっていらっしゃると思いますけれども、どうですか。その点、もう一度重ねて。
  420. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それは非常にりっぱな御意見でございます。ございますが、いま言ったように、いままでは二百九十四円という単価があれば、その下のどれでもこれでよかったわけですけれども、今度はしかし、これはちょっと下がったけれども、ここで買ったものはこれ、ここで買ったものはこれ、ここで買ったものはこれということになるんですから、いままでよりは前進だということでございます。そしてその後で、今度は安い薬だけがいいかどうかといっても、これまたいろいろむずかしい問題もございますので、これは検討をさしていただきたい。
  421. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いままでより少しずつよくなるのはあたりまえで、悪くなったらもうただじゃおかないと思いますよね。  だけど、本当にやっぱり私、同情しているんですよ、大臣赤字だ、赤字だなんて、昼も夜も悩ませられていると思うから。だから、こういうところのむだ遣いを御指導なすって、安いお薬で検定も通っている、効果のあるものをお使いになったらどうですかということでございますので、これはもう大きく検討課題として考えていただかなきゃ——こういうことにメスを入れないで、それで金ないから出してくれ、出してくれと言うのは虫よ過ぎますわ、少し。やっぱりやるところ、きちっと出してもらいたいと思いますよね。  もう時間が五十三分までなので、やめますけれども、たとえばほんとに大臣、口しっかり出してもらいたいんですわ。私らの方に出すんじゃなくて製薬メーカーに口も力も出してもらいたいと思うの。大体、製薬メーカーがどれくらいもうかっているかということを、もう時間がないから私が言いますけれどもね、売上高の経常利益の比較というのをやってみたんです、きのう遅くまでかかって。そうしましたら、全産業の売上高経常利率というのは一・三%だと、全産業の売上高の経常利率というのは。それが第一製薬は一二・四%なの。だから、全産業の平均の十・三倍ですよ。薬九層倍なんというような、そんなものじゃないですね、十・三倍の経常利益率を示しています。山之内製薬が一〇・九%、八・四倍、塩野義が九・三%で七・二倍、武田薬品が五・九%で四・五倍です。三共が四%、三・一倍。これ、不況だ何だと言われている中で、全産業売上高経常利益率に比べて、この十倍からもうけているという、ここのところに私はほんとにメスを入れてもらいたいんです。徐々によくなりましたなんというものでは済まない。医療費のうち何ぼ薬価、薬代で取られているか。まさに保険に寄生して製薬メーカー、大もうけしているじゃありませんか。金額で言えば、武田は五十二年三月期決算経常利益百六十八億三千万です、塩野義で百六億五千二百万、これだけの利益を保険に寄生してこの不況の中でもうけているという、ここのところに、むずかしいだの何だのなんて言って手を出さなかったらだめです。少しずつよくなったなんて、そんなものじゃないですよ。これを解決しなければ、大臣、いつまでたったって赤字に悩まされますよ。ゆっくり寝られない時期が来ます。しっかり考えていただきたいと思います。  そして、すべては抜本の中で検討しますと言われたけれども、ここで私は質問を終わらなければなりませんけれども、あとの御連絡いたしましたリハビリの問題とか医療供給体制いろいろございます。一応残しまして、きょうこれで終わりますけれども、抜本抜本と言われるけれども、抜本ができた、抜本とは一体何なんだということですよね。つまり、ここではっきり立場が違っていることは、国が十分な財政支出し、そして国民の命を守る、健康を守るという立場に立たない限り、抜本らしきものが出てきてもこれでは解決にならない。そして、きょう私が特に申し上げましたのは、低所得者に大きな影響がある。非常に苦しみを残していかなければならないという点から、私はこの案というのは、まさに赤字対策にもならない、まことに劣悪な、出すに恥ずかしいようなものだということだけ申し上げて終わりにしたいと思います。大臣、何かありますか、きょうのずっと聞いていて。
  422. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 大変参考になるところもございましたので、私は率直に、いいところは御意見を……
  423. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 みんないいわよ。(笑声)
  424. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 全部いいとは私は申しませんが、いいところは採用さしていただきたい。特に、医療費というものが年々二〇%も伸びていくと、その中には必要やむを得ざるものもあるだろうけれども、もっとメスを入れれば、むだなものをなくせるという点もそれはあるはずでございますので、これだけの大きな金額になってまいりますと、それは真剣に受けとめて、惰性でやっていってはいけないということだけはよくわかっております。
  425. 柄谷道一

    柄谷道一君 最初に、高額医療の自己負担限度額引き上げについて御質問をいたします。   〔理事浜本万三君退席、委員長着席〕  まず、局長にお伺いいたしますが、自己負担限度額を三万九千円から五万一千円に引き上げようとする根拠はいかがでございますか。
  426. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 四十八年に高額療養費の制度ができたわけでございます。その際の考え方といたしまして、当初三万円ということでスタートしたわけでございます。そのときの考え方といたしましては、一日当たり被扶養者等が入院等した場合にどれぐらい自己負担がかかるかというようなことで、四十八年改正の際に考えました実績等から見ますと、大体一日千円ぐらいという数字であったわけでございますけれども、これは四十七年の数字でございます。それが四十九年におきましては五万一千円というふうに上がっております。  それから、当時政管健保の被保険者の平均標準月額というものを基礎にしまして、これの大体二分の一程度ということで、四十七年におきます政管健保の平均標準報酬月額は五万九千円ということで約六万、それが五十年度、最近におきましては十万までいっているというようなことで、昨年の高額療養費の自己負担限度額の引き上げの際に三万九千円から五万一千円というのが、その後の指標の動きから見て妥当である。しかし、被保険者なり患者にとりまして大きな負担になるというようなことから、一挙に三万九千円から五万一千円に引き上げるのはいかがということで、二年計画で段階的に引き上げるというようなことから、三万円から三万九千円に引き上げたというような次第でございます。したがって、昨年のいきさつ、それから制度ができました当時の平均標準報酬なり、あるいは患者の一日の負担額というもののその後の上昇というものを考えたわけでございます。
  427. 柄谷道一

    柄谷道一君 健康保険制度の目的、これは当然の問題なんでありますが、これは憲法二十五条の最低生活の保障というものを受けていることは論をまちませんけれども、社会保険審議会が四十六年十月にいたしております答申には、被保険者やその家族が傷病にかかったことによる医療費支出によって生計の破壊を防止することにある、こう答申ではうたっております。大臣として、健康保険制度の目的をどのように理解しておられるのかお伺いします。
  428. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) ただいま局長からもお話があったのでございますが、健康保険制度は被保険者及びその扶養者の疾病、負傷等、所定の保険事故について必要な保険給付を行い、もって被保険者の家計の破綻を防止し、その安定を図ることを目的といたしております。
  429. 柄谷道一

    柄谷道一君 法の目的がいま大臣が言われたようにとらまえるならば、むしろ高額医療疾患や長期医療疾患ほど保障を手厚く見るというのが法の精神に沿うゆえんではないかと、こう思いますが、いかがですか。
  430. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それはそうでございます。したがいまして、長期療養等につきましては負担の軽減を図っておるということであります。この高額医療費の問題につきましても、したがって三万九千円というものでやっておったわけでございます。しかし、それは物価、賃金等の上昇に伴って、それにスライドをしたから三万九千円が五万一千円になったと、三万九千円イコール五万一千円であると、こういうように御了解をいただきたいと存じます。
  431. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、この四十六年十月の答申当時、社会保険審議会の委員でございました。そして、一年に及ぶ審議に参加したわけでございますが、その審議会を通じて流れておりました精神は、その答申の中にもうたわれておりますように、「給付の漸進的・合理的改善に当っては、被扶養者に対する高額医療疾患および長期医療疾患については、公費負担医療に移行するもののほか、十割給付を実現することが現下最大の急務である」、このような答申を行っておるのであります。すなわち、健康保険立法の精神に基づいて、生活の破綻というものを防止するために高額医療や長期療養というのは手厚く見ていこう、そのために家族の給付率も、特に当面高額医療については十割給付改善していくべきではないか。その改善と見合って適正な一部負担というものが考えられてしかるべきである。これがもう一貫して流れておった社保審の精神であり、かつそれが答申の中に盛り込まれている、こう思うのであります。そういう経緯からいたしますと、この自己負担額の引き上げというものは、確かにいま局長が言われましたように、四十七年時点と五十一年時点の数値の対比によって自動的にスライドするという方式をとっているわけでございますけれども、少なくともこの引き上げというものは審議会の経緯なり答申というものから対比するならば、それはその精神に逆行するものであると、こう思いますが、いかがですか。
  432. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 確かに、四十六年の社保審の答申を受けまして四十八年の法律改正が行われ、家族給付率の引き上げ、さらに高額療養費の自己負担限度額と公費負担だと、保険負担という制度ができたわけでございます。そういう意味から申しますと、非常に従来から大きく前進したわけでございます。ただ、その高額という場合に何を高額と判断するか、やはりその時点、時点におきます社会情勢なり、あるいは経済情勢というものとの関連におきまして、高額のものにつきましてはやはり患者の負担というのをできるだけ避けて、保険で見ようということでございますから、高額の判断というものにつきましては、経済情勢の推移に応じてある程度引き上げていくということはやむを得ないものではないかというふうに考えております。
  433. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、この引き上げを行うことによる財政的な効果はどれぐらいでございますか。
  434. 岡田達雄

    政府委員(岡田達雄君) 五十二年度におきましては十二月実施で約二十億円、五十三年度におきましては満年度で約九十億円、さように推算しております。
  435. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣大臣はかねがねこの保険というものについては、疾病にかかってたくさん金がかかるというときは手厚く見ていこうじゃないか、そのかわり通院等でかかるべき医療費程度が少ないというときには、応分の自己負担をしてもらいたいと。これはもう大臣の終始一貫して述べられてきた保険に対する大臣の理念なんですね。しかも、これは政省令にゆだねられておる問題でございますけれども、これをやりますと、このスタグフレーションの中で、入院している人は一ヵ月の負担が一挙に一万二千円ふえるということなんですよ。しかも、その対象者は長期入院をして高額医療を受けなければならない、こういう人々なんですね、私はそういう経緯を考え、しかも、いま部長が述べられましたように、財政的効果も十戸実施の場合わずか二十億、五十三年度の平年においても九十億、しかも今回は保険外負担改善もまた抜本改正の際にゆだねられている、こういう問題を考え、かつ審議会の答申、そして大臣のふだんの保険に対する理念、こういうことを考えますと、これは私は本法案を円満に処理しようとするならば、まず大臣みずからが自己負担限度額は現状のままとして、その他一部負担保険外負担の軽減が行われる抜本改正の際に、改めて適正負担あり方というものについて検討いたしたい、これだけの、私は大臣というよりもむしろ政治家としての勇断がいま示されることが、私は前提でなければならない、こう思うんですが、いかかですか。
  436. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私は、いま柄谷先生から御指摘があったように、やはり病気になって重症になったようなときは手厚く皆見る、軽微な病気はなるべくそう手厚くなくともやむを得ないじゃないかということを言ってきたことは事実でございます。したがって、高額医療費の問題については、日ごろ言っていることと違うじゃないかという御批判も受けるかもしれません。しかし、局長が言ったように、三万九千円の自動スライドということで出てきたものでありまして、また民社党の方がこれ賛成をしてくれて円満に上げてくれるということであるのかどうか、そこらのところはよくわかりませんが、それは円満処理ということは、私は円満な法案の通過ということは大賛成でございます。しかし、いまのところはやはりやむを得ないのじゃないか。これはスライドですから、つらいところもありますよ、ありますが、そういうようにひとつ御理解をいただきたいと思っております。
  437. 柄谷道一

    柄谷道一君 余分な答弁がありまして、民社党がどうこうという問題はこれはこの質問が終わった段階の後考えるべきことであって、ちょっとただいまの御答弁は不穏当であろうと思います。ただ、いまきちっと聞いておりますと、大臣は私としては現段階ではと、こういつも使われるわけでございます。これは確かにすでに政省令の内容について大蔵省に厚生省概算予算要求の中にこれが出されているという現状から、いま大臣かそれでは撤回いたしますということはなかなか言いにくいでしょう。しかし、厚生省としては、現段階ではということは、本委員会審議によってこの問題について与野党の合意が得られる場合は、厚生大臣としては大臣のふだん思っておられることとその趣旨を同じくする方向なんですから問題ありませんね。
  438. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私といたしましては、この法案を無傷で通過をさしていただきたいということをお願いをしておる最中でございますから、それ以上のことは、まだ審議も終わらないうちに申し上げることはできないと、こういうわけでございます。
  439. 柄谷道一

    柄谷道一君 厚生大臣に対するこれ以上の追及は、答弁を引き出すのは無理だとすれば、今後いろいろ審議の中でわれわれとしても考えてみたい、こう思います。  第二番目に、一部負担額の引き上げと、保険外負担の問題について御質問をいたします。  一部負担額引き上げの数字的根拠についてお伺いします。
  440. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 一部負担金の額につきましては、昭和四十二年以来据え置きになっておるわけでございます。その後の賃金や医療費の上昇ということを考えました場合に、平均標準報酬でまいりますと当時より四・二倍、それから被保険者一年当たりの診療報酬医療費伸びということを考えますと三・六倍というようなことでございますので、一部負担金の額の引き上げということになりますと患者さんの負担になるわけでございますけれども、その後の経済指標等を考えますればこの程度の御負担ということは、医療保険財政が非常に窮迫しているという段階におきまして、何とか御理解賜れるんではないかというふうに考えている次第でございます。
  441. 柄谷道一

    柄谷道一君 高額医療同様に、この問題についてもきわめて数値的なスライドという発想以外の何物でもないと、こう理解いたします。  そこで、入院料、いわゆる室料差額徴収の現状についてでございますが、健保連、病院協会等の出しております資料と、厚生省資料との間には、若干の差がございますけれども、まあこの差の内容をつくことは一応さておくとして、厚生省資料によりましても、公立病院の一三・四%、その他公的医療機関の一九・八%、医療法人では一八・三%、その他法人では二七・八%、個人では二二%が、総病床数に対比いたしまして差額を徴収している病床であると、このような統計厚生省統計で出ておるわけでございます。また、これを規模別差額徴収病床の割合を見ましても、二人部屋で四二%、三人部屋以上でも七・五%が差額徴収をいたしております。  この現状に対して、厚生省としてはどのような認識を持っておられますか。
  442. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 差額ベッドの問題につきましては、やはりある程度のニードというものはございますので、室料差額を全廃するというわけにはいかない。しかし、差額を希望しないという患者さんも多いわけでございますので、そういう方々がこの分を負担しなければ入院できないということになりますと、何のための医療保険制度かということでございます。そういうような意味からも、私どもといたしましては差額ベッドにつきましてある程度の基準というようなことから、大部屋からは取らないと。一人部屋、二人部屋に限るとか、あるいは差額ベッド比率につきましては、国立一〇%、そのほかにつきましては二〇%というような指導基準を設けているわけでございます。先生御指摘いただきましたように、逐次改善はしておりますけれども、なかなかまだそこまでいかないというような状況もございますし、特に私立大学の付属病院等中心にしましたその他法人等におきまして、最も差額病床の比率が高いというようなことでございますので、さらにこの指導の徹底を期していかなければならないというふうに考えております。  ただ、先ほど来他の先生にもお答え申し上げましたように、差額ベッドの問題につきましては医療機関の経営ということもございますし、現在の室料が果たして妥当かどうかというような議論等もあるわけでございますので、次回の診療報酬改定の際に、この問題につきましては一つの大きな問題としまして研究さしていただきたいというふうに考えております。
  443. 柄谷道一

    柄谷道一君 付添看護料につきましては、日本臨床看護家政協会、これが慣行料金を定めております。六大都道府県、いわゆる甲地の住み込み超勤三時間の場合の慣行料金は、看護婦の場合八千七百十二円、准看護婦七千五百七十九円、看護補助者でも六千九百四十一円でございます。さらに、甲地で徹夜勤務、住み込み勤務をいたしました場合の慣行料金は、看護婦一万四百九十四円、准看護婦九千百三十円、看護補助者八千三百六十円。いわば、これは慣行料金の基準でございまして、実際の料金というのはこれをさらに上回っておる、それが実態であろうと思います。このような付添看護料につきましても、非常に過大な、家計を圧迫する保険外負担があるというこの現実をどう理解されておりますか。
  444. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 入院した場合におきます患者さんの負担をできるだけ少なくする、家計に対する圧迫を少なくするという意味からの医療保険制度であるわけでございます。そういうような意味から、現在医療保険におきましては基準看護病院以外におきましては看護料を支給するということで、基準看護病院におきましては付添看護が一般の普通看護病院と比べまして特別な加算を設けているというようなことから、基準看護病院につきましては付き添いがないように、ないというたてまえになっておりますし、さらに基準看護病院以外におきましては、先生ただいま御指摘ございましたように、慣行料金とそれから保険で支払っております看護料、これの間に差というものがあるわけでございます。基本額等につきましては保険で支払っております看護料と慣行料金とそれほど大きな差はないと思いますけれども、現実に住み込み、超勤と、先ほど先生からお話ございましたようなそういうような場合には、保険で支払っておりますのは七割程度というようなことでもございますので、毎年できるだけ保険外負担がないようにというようなことから、看護料につきましての改定というものも行っているわけでございまして、今後とも慣行料金との差というものをできるだけ埋めていきたいという努力を進めてまいりたいというふうに思っております。
  445. 柄谷道一

    柄谷道一君 いま、基準看護病院においては付添看護を厳格に遵守させる、そういう行政指導をしていきたいとこう申されました。しかし、一方、全国公私病院連盟の医療実態調査によりますと、累積赤字の判明しているもので都道府県市町村の病院四百七十病院で千九百五十億円、日赤、済生会、厚生連など百三十三病院で約二百二十三億円、いずれも五十一年度末の累積赤字を抱えています。また、昭和五十一年の調査によりますと、自治体病院で赤字病院はその七四…一%、その他公的病院で二五・七%、私的病院では一二・二%が依然として経営が赤字である。このような膨大な資料を発表いたしておるのであります。このような、特に病院の実態というものの中で、いかにして差額なき入院、付き添いなき看護、これを実現するか。これはきわめて困難な、しかし困難ではあっても解決を図らなければならない問題であります。  そこで、病院協会の要求書によりますと、「差額なき入院、附添なき看護を実現するため病院側の基礎的条件の整備をはかることとし、入院医学管理料を合理的に算定するとともに、室料の抜本的な見直し、看護の充実、とくに、量的、質的看護需要に対応するよう基準看護基準の弾力化をはかるとともに、看護員に関連する適正原価を」診療報酬の面で考えていかなければならない、こういう答申をいたしているわけでございます。事実、この看護基準でございますけれども、私は、この普通病院の場合、いま現行の基準看護基準は看護婦、准看護婦、看護業務補助者の比率が四、四、二の比率になっております。しかし、これもたとえばわりに軽症者を多く収容する老人専門病院という場合では、むしろこの比率は二、三、五ぐらいの比率でもやっていける。そのかわり、たとえばICU、CCU、こういう種類のものにつきましては文字どおり特殊治療を要するわけでございますからマン・ツー・マンの看護体制が必要である。さらに、一般の病気でありましても小児、乳幼児、重度身障者、難病者、重症者につきましては、この基準以外の人をつけなければ実際の看護はできない、こういうふうに考えるわけです。といたしますと、私は、言葉で差額なき入院、付き添いなき看護、これを実現しようということはだれでも言えることでありますけれども、これを本当に実施しようとするならば、こうした基準の洗い直し、そして現在の診療報酬体系の中に含まれております看護料、またその種類別の加算方法、こういったものについてメスを加えていく、そこで本当にいま言った付き添いなき看護、差額なき入院というものを実施し得るこの底辺を整備するということなくしては、現在の病院経営の実態からするならば、なかなかこの問題を達成することはむずかしいのではないかと、こう思うわけです。  厚生大臣としてお伺いしたいんですが、次回の診療報酬体系の中で配慮するということは、これらの基準の洗い直しや看護料の診療報酬体系の立て方そのものについても、これをなくするために特段の配慮を加えていくというその精神が含まれているのかどうか、明確にお答えを願いたい。
  446. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 精神は含まれております。おりますが、次回というのは、今回ですね、次回の診療報酬改定で全面的に洗い直しができるとは思いません。思いませんが、そういう精神でこれは解消の方向に向かって、いま御指摘になったような室料、差額等の問題については、原因等もあるわけですから、それはやはり今後報酬改定するというその都度都度、そういう考え方で十分配慮をしてまいりたいと思っております。
  447. 柄谷道一

    柄谷道一君 社保審の健保問題等懇談会が十一月四日に答申案を決定いたしておりますが、その答申案の中に小山路男座長は、保険外負担問題の「早急な解決がない限り社会保険への信頼感が薄らぎ、負担の増加に対する抵抗感を強めることは必至である。」と、こう指摘いたしております。いま大臣が言われましたように、付き添いなき看護、差額なき入院、その体制に向かってこれから前向きに取り組んでいこうとされるその意欲は買います。しかし、それが実現されるのはこれは段階的にいま言われたように実施されていくわけです。相当の差額の室料、付き添い看護料が依然として根本的な改善がされないまま、後当分は続いていくであろう、これまた否定しがたい現実でございます。  そういう過剰な保険外負担がある現在、この一部負担の増額幅を単に数値的にスライドさせる、そういうことについてどうしても理解できないものがあるわけであります。これを上げ幅をさらに縮小するというお考えはありませんか。
  448. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは、差額なきとか付き添いなきとか申しましても、みんなそれはいいことなんですよ。いいことなんですが、すべて財源を要する問題でございますから、全部いずれも、中のやりくりというだけじゃなかなかいかない。したがいまして、これは全面的な洗い直しという場合には、負担の問題と並行してワンセットでこれは考えていかなきゃならぬと、こう思っております。今回の改正は、当面の保険財政を維持し保険の円滑なる運営を図っていくための最小限度の緊急避難とも申すべきものでございますので、現在のところその一部負担の提案を縮小するという考えはございません。
  449. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、この一部負担の増額に伴いまして、受診率にどのような影響があらわれると判断されておりますか。
  450. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 先ほど来申し上げておりますように、今回の提案というのはあくまでもスライド的な考え方である。したがいまして、四十二年当時の額というものを今日時点にスライド的に引き伸ばしたということでございますので、受診率に対する影響というものはほとんどないんではないかというふうに考えておる次第でございます。
  451. 柄谷道一

    柄谷道一君 これはこれ以上やりとりしておっても、なかなか修正をするというお答えは出ないと思いますが、私は、財政効果の面を考えましても、五十二年度、これ満年度と仮定しても、初診時百六十四億円、入院時は十七億円でございます。私はさきにも触れましたが、四十六年十月の社保審答申は、明らかに家族給付率の改善と見合って必要な受診を抑制しない範囲内で適正な一部負担はやむを得ないと、こう答申しているわけです。これは家族給付率の改善と一部負担適正化という問題は、二者一体のものとして審議会はとらえておるわけでございます。しかし、今回の改正は全く給付改善が行われていない、いわば片手落ちと言ってもしかるべき政府提案ではなかろうかと思います。今後の委員会審議過程を十分尊重されまして、厚生大臣としてもこの問題についてはやはり審議会の意見を尊重する、その方向に立ったいわゆる政策の選択というものがぜひ必要であるということを強く指摘いたしておきたいと思います。  次に、特別保険料の徴収について御質問したいと思いますが、大臣も人間でございますのでお食事をされる必要もあると思いますので、この質問を後回しにして、国民医療費の現状と展望について局長中心質問をいたしておきますので、その間どうぞお食事を。  質問を続けます。昭和四十年度の総医療費は、厚生省資料によりますと一兆一千二百億円でございます。昭和五十一年度は七兆七千三百億円に膨張いたしております。これは経済成長及び実質賃金の上昇というものを大きく上回る数値でございます。この医療費増高の要因をどのようにとらえておられるのかお伺いします。
  452. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 医療費の増高というのは、これは日本だけではございませんで、国際的にも各国とも医療費が上昇しておるわけでございまして、各国ともこの問題の対策ということにつきましては頭を悩ましているわけでございます。非常に医療費の上昇の原因につきましてはいろんな要素が複雑に絡み合っているわけでございまして、何が決め手かということは言えないと思いますけれども、安恒委員にもお答えしたところでございますが、原因として考えられるものとしまして幾つかのものがございます。私どもの分折いたしました内容で申しますと、まず一つ制度改善によります給付改善ということが一つございます。四十八年には家族給付率が引き上げになったと、あるいは先ほどお話ございました高額療養費支給制度の創設が行われたと、さらに診療報酬改定、これも非常に大きな要素であろうというふうに思われます。物価、人件費等の変動に対応しまして四十八年改正以降、四十九年には二回の改正、さらに五十一年四月には診療報酬の引き上げが行われたということで、診療報酬改定も大きな要素であろうと思います。さらに、日本の場合には人口構成が非常にこれからますます高齢化していくということになりますと、今後高齢化社会に移行していくということになりますと、当然医療需要がふえてくるということになろうと思います。六十五歳以上の老齢人口の全人口に占めます比率昭和三十五年には五・七%であったわけでございますけれども、昭和五十一年には八%ということで、老齢化社会にますます移行していくということでございます。こういうような老齢化社会に移行する問題とも絡む問題でございますけれども、疾病構造というものが非常に大きく変化している。脳血管なり高血圧なり、心臓病とか腎臓病でございますとか、非常に長期のかつ高額な医療がかかるという疾病がふえてきているということが言えようかと思います。さらに、薬学の進歩によります新薬の開発ということもございます。この十年間で約四百二十品目についての新薬の製造承認が行われております。さらに、医学の進歩によります医療の高度化ということで、新しい開発技術の導入ということで、心臓なりあるいは脳の手術等が行われる。それから、医療救急体制の整備によります需要の増加でございまして、医師、看護婦数がふえている、あるいは病床の新設等が行われている。さらに、先ほど来お話しございました看護の質の向上ということで、従来ございませんでした特二類が昭和四十九年に新設されるというような看護の充実というようなこともございます。さらに、最近では検査の増加ということも大きな要因であろうと思います。そのほか、国民の健康意識の向上なりあるいは被保険者、被扶養者の増加というような要素もあろうと思います。こういうような要素というものが複雑に絡みまして、低成長下で一般の所得は伸びないにもかかわりませず、医療費というものは今後ともますますふえてくるであろうということが予想されるというふうに考えております。
  453. 柄谷道一

    柄谷道一君 いま局長の申されましたようなことが、医療費高騰の要因の中にあることは否定いたしません。しかし、各種審議会は、そういった要因のほかに、医療供給体制診療報酬体系の適正化などを主軸とする各種の条件整備、いわゆる医療保険の前提問題の改善医療保険制度の根本的改正が行われなかった、そのことがいま局長の言われました要因にさらに拍車をかけた、こう審議会は指摘いたしておるわけでございます。いかがでしょう。
  454. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 確かに、医療保険制度の問題につきまして制度自身だけの問題ではなしに、周辺問題につきましても社会保険審議会の御意見にもございましたように、いろいろな御指摘というものが行われているわけでございます。私どもといたしましてもできる限りの努力というものはしておるわけでございますけれども、確かに御指摘のような点について必ずしも十分でないというような点もあろうかと思います。今後ともこれらの制度だけではございませんで、周辺問題の解決ということについても努力していかなければならないというふうに考えておりますし、これからの基本的な問題、いわゆる抜本と言っておりますけれども、これらの問題の解決の際にも、大きな問題としましてこれらの問題に取り組んでまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  455. 柄谷道一

    柄谷道一君 これ四十六年に社保審、社制審の答申が出ているわけですね。その一年前には前提問題に関する意見書が提出されているわけです。それからもう、前提問題の整備に関して意見書が出されてから今日まで七年経過しているわけです。答申が出されてからも六年経過しているわけです。十一月四日に今度は、健保問題等懇談会がこの答申書を出しました。対比してみますとこの六年間前進ないんですよ。四十六年に指摘したままの現状が六年たった今日も同じ現状が続き、そして同じ趣旨の答申が行われている。それはいま局長が、努力はいたしましたがという意味の御答弁をされましたけれども、現実は大きな見るべき前進はなかったと、これが現実の姿ではないか、こう思うんですね。そのことに対する、大臣おられませんが、厚生省としての責任はどのように感じておられますか。
  456. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 周辺問題でございますので私がお答えするのはいかがかと思いますけれども、医療供給体制の問題にしましても、あるいは健康管理の問題につきましても、おしかりはいただくかもしれませんけれども、それなりにやはり厳しい予算の中ではございますけれども、予算措置の護得なり救急医療整備等につきましても前進は図っている次第でございます。おしかりいただいた点でまだ不十分ではないかという点はあろうかとも思いますけれども、そういう点につきましてはさらに努力していかなければならない問題であるというふうに思っております。
  457. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、今後の総医療費の展望、どのように把握しておられますか。
  458. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 医療費の上昇につきまして、非常に先ほど申し上げましたようにいろんな要素というものが複雑に絡んでおりますので、なかなか展望しにくいわけでございますけれども、現在、公式に発表しております数字は、昭和五十年の六兆四千七百億だったというふうに思っておりますが、今後五十一年度におきましては七兆七千億、それから五十二年度におきましては八兆七千億というふうに考えております。そこで、五十三年におきましては九兆を超えるであろうと、最近の実績等から見ますと、年率一〇%程度の上昇というのが考えられるのではないかというふうに思っております。一〇%前後ではないかというふうに思っております。
  459. 柄谷道一

    柄谷道一君 厚生省資料によりますと、昭和五十五年にはついに伸び伸びまして十一兆四千百億円ぐらいの数字に達する。しかし、これは診療報酬の引き上げが配慮の中に入っておりませんですね。したがって、診療報酬体系の上昇、これはどの程度かということはなかなか、中医協の問題でございますから、予測はむずかしいということはありますけれども、診療報酬改定というものを含めますと、まさに十二兆円を超えるという時期はそう遠い将来ではない。ここ三、四年の間に十二兆円から十三兆円の総医療費に達するであろうと、こう予測されるわけですが、いかがですか。
  460. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 確かに、医療費が今後どうふえていくかということにつきまして、いろいろな複雑な要素が絡みますので何とも申し上げられないわけでございますけれども、たとえば過去の平均の伸び率というようなものを試算しまして計算しました場合に、先生御指摘のように、五十五年度の時点におきまして診療報酬改定を見込みませんで十一兆というような数字も予想されるというふうに思っております。
  461. 柄谷道一

    柄谷道一君 どんどんこれから伸びていくわけら、五十五年十一兆四千億程度だということで、まだ的確な医療需給の予測すら立ってないというのが現状なんですね。きょう手元にいただきました「医療保険制度改革の基本的考え方について」というこの文書を見ましても、医療予測の確立ということは一行も入っていないのです。ここにうたっております項目の中のほとんどは、医療保険制度抜本改正の問題でございます。最後の三項目に辛うじて周辺問題の改善、これがうたわれているにすぎません。しかも、その前提問題たる医療需給予測はいつ、どういう方法で予測を立て、その予測というものに見合った周辺事項の整備を行うかということは、この資料の中には含まれていないわけでございます。どういう段取りでやられるわけですか。
  462. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 先生御指摘のように、社会保険審議会の中での意見書におきましても、医療費の増高原因についての要因分析、この必要性を指摘いただいているわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、非常に複雑な要素があるということで、なかなか将来の医療費の予想ということにつきましてはむずかしい問題があるわけでございますけれども、しかし、こういうような低成長下におきまして医療費はふえていく、一方、賃金は、所得は伸びていないと、そういうことになる。いかにしてこの医療費の上昇というものに対応するか、これは最大の課題であるというふうに考えているわけでございまして、諸外国におきましても、最近、医療費の上昇等につきましては、やはり一〇%を上回る医療費の増高ということが続いているわけでございまして、非常に各国とも悩んでいる。私どももこれらの今後の推移というものは十分勉強し、分析し、対応していかなければならないというふうに考えている次第でございます。先ほど、ただいま御指摘いただきましたが、医療保険制度の基本的な考え方の中に、その問題が抜けているではないかということでございますけれども、ここで書いております事項というものにつきましては、行政なりあるいは立法なり施策としてどういうふうに行うかということをここに書いているわけでございまして、医療費の増高なりあるいは現実の事態をどういうふうに分析し調査するか、これは役所として当然常時行わなければいけない問題であるというようなことから、ここに特に書いていないという次第でございます。
  463. 柄谷道一

    柄谷道一君 じゃ一点だけお伺いしておきましょう。来年度通常国会抜本問題の提案がある、その時期には厚生省として今後の中期的な医療需給の予測展望というものをお示し願えますか。それによって、われわれが全般を把握しつつ抜本改正審議するということができるように、資料整備をやっていただけますか。
  464. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 先ほど来お答え申し上げておりますように、非常に複雑な要素が絡んでいる問題でございまして、正確な予測というものを考えるという場合に、日本国民経済がどうなるか、あるいは所得がどうなるかというような問題、そのほかの経済状況等の将来予測等も非常に流動的な要素もあるわけでございまして、そういうような要素も考えました場合に、なかなか複雑な問題でございます。正確なお答えができるかどうかということは別にいたしましても、私どもは勉強は続けさしていただきたいというふうに考えております。
  465. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣にお伺いします。  私は本会議で非常にむずかしい問題ではあるけれども、これから抜本問題に取り組んでいく根幹がそこにあるということで、医療保障五ヵ年計画の提唱をいたしました。大臣答弁が漏れまして、私答弁漏れ言っておきたかったのでありますが、議運でもございますので、みずから答弁漏れを指摘することは遠慮したわけでございますが、総理大臣は非常にむずかしい問題だと、しかし何とか真剣に取り組んでみよう、こういう趣旨の答弁をされたと思うのであります。いま大臣ここ中座中に、医療費増高問題についてお伺いいたしておったわけでございますが、審議会で議論されましたのは、いまのような状態だとざるに水を注ぐようなものである。周辺事項の抜本改正をやらない限り、被保険者の保険負担というのは今後際限なく増加していく。こういうことを憂うる声が非常に強いわけです。なるかゆえに、周辺問題の整備が強く叫ばれ、それは一挙にできない問題であるから、これを漸次計画的に実施していくという中期計画の樹立が各方面で望まれているわけでございます。  大臣の所信をお伺いします。
  466. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) まさしくそのとおりでございます。  御提案の医療保障五ヵ年計画という問題につきましては、今後医療保険制度改正案の具体的内容実施手順の検討を進めながら、十分に研究さしていただきたい、かように存じます。
  467. 柄谷道一

    柄谷道一君 特別保険料の徴収について質問を進めます。  すでに、各質問者からも指摘されておるところでございますが、組合健保は任意適用、政管健保は強制適用、こういう結果になります。その料率において格差があることは別として、今度は徴収方法、すなわち負担方式そのものについて同じ被用者保険でありながら、組合健保と政管健保との間には格差を生ずる、こういう結果になるわけです。どう理解すればいいんでしょう。
  468. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 特別保険料につきまして、政管は強制であり組合は任意であるというようなことから、先生から御指摘いただいているわけでございますけれども、政府管掌の当面の財政危機をいかに乗り切るかというようなことから、何といたしましてもこのピンチを乗り切るという意味で、当面の応急措置として特別保険料を徴収するということにいたしたわけでございますが、組合の場合には組合の規約に沿って定めるということになっておるわけでございます。ただ、組合の場合に、政府の方は強制であり、こちらは任意ということでございますが、一つは当面の臨時的な応急的な措置であるというようなことと、それから組合の場合には保険料率の上限というものが九〇までございます。したがいまして、非常に組合の場合にも苦しくなっておりますけれども、ある程度保険料率の引き上げで賄えるところも出てくるんではないかというようなことから、政管健保同様に強制ということにできなかったような次第でございます。ただ、いずれにいたしましても、政府管掌とそれから健保組合の間に大きな制度上、財政負担なり給付の面で不均衡があるというような基本問題があるわけでございまして、これらはこれらからの負担の公平の見地から今後どういうふうに考えていくかと、これは制度の基本問題としましてこれから研究していかなければならない問題であるというふうに思っております。
  469. 柄谷道一

    柄谷道一君 もう一つの面で、政管健保に関する限り負担面では一種のこれは双方修正でございます。しかし、現金給付面では標準報酬月額を基礎として給付が行われます。この基礎となる額の負担給付の差というものについてどう理解すればいいのですか。
  470. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 確かに、現在の健康保険制度におきましては、標準報酬制ということで負担の基礎になります標準報酬というのは常に給付にはね返っている。そういう面から申しますと、今回の特別保険料というものにつきましては、給付の面にははね返らないという先生御指摘のような問題点はあるわけでございます。しかし、当面の財政対策として考えました場合に、負担の均衡なりあるいは公平化という見地から申しますと、特別保険料の場合に比較的給与の高い者ほど支給率が高い。低所得者ほどボーナスの額というものは低い。あるいは業種によりまして非常に好況のところほどボーナスの支給率は高いというようか面から、当面の財政危機という面から申しますと、負担の公平という面で、むしろ先生御指摘のような給付にはね返らないというような問題点はあるにいたしましても、負担のできるだけな公平化を図っていきたいというようなことで、特別保険料というものをお願いしているというような次第でございます。
  471. 柄谷道一

    柄谷道一君 基本的な問題としては、同じ被保険者間において負担方式に差が出てくる。それから、負担は総報酬給付は標準報酬月額、こういう間で矛盾が出てくる、こういう現実はお認めになりますね。しかし、まあ財政上緊急避難としてやむを得ないんだと、こういうことだと思うんです。いま局長は、いわゆる所得再配分の構想からすればこの意味に合致すると、こう言われたんですが、それでは抜本改正のときに総報酬制をとろうというお考えあるんですか。
  472. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 基本的な負担あり方というものを考える際にどうするかということになりますと、標準報酬あり方なり、あるいはボーナスの特別保険料をどうするかということも一つの研究課題ではあると思います。どうするかというのは、現在結論を出す段階ではないというふうに思っております。
  473. 柄谷道一

    柄谷道一君 健保問題等懇談会の意見書をよくよく読んでみますと、「費用負担あり方については、事業主、被保険者、国の負担割合について、先進諸国の動向等を参考としつつ漸次改善すべきである。」、「保険料の引上げあるいは一部負担の増を求める場合には、これらの者の負担能力及び財政力基盤を十分考慮し、国庫も応分の負担考えるべきである。」、こう指摘いたしております。いかに緊急の財政対策とは言いながら、今回の改正案は明らかに変形をした形ではございますが、保険負担の増額でございます。また、理由は別として一部負担の増額でございます。とすれば、これらに対しては国は応分の負担考えていかなければならぬと、これが忠実に審議会の意見に沿うゆえんでございます。  衆議院段階で五、四、一という比率で国の負担を負うということになりましたけれども、これはまだ現在の抜本改正がされずに、周辺問題の整備がおくれて、今日の保険財政の危機を招いたという現状に対比するならば、私はまだこの懇談会の趣旨に沿う適正な国の負担であるとはとうてい考えられないわけであります。  大臣として、この懇談会の意見書をお受け取りになるときは、十分尊重しますということを言って小山座長から受け取られたと思うんでありますけれども、国の負担比率を御再考になりませんか。
  474. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 懇談会の御意見は、抜本改正をする際の貴重な御意見として承ったわけでございます。
  475. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、四十六年の答申はいかがでございますか。
  476. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 四十六年の答申というものを基礎にいたしまして、私どもも四十八年の改正というものに臨んだわけでございます。しかし、先生御指摘のような点もございますし、さらに四十六年の答申を踏まえまして、今回新たに医療保険制度改善方策について社会保険審議会からの御意見をいただいたわけでございますので、これらの趣旨というものを十分踏まえまして、これからの基本問題の解決に臨んでまいりたいというふうに考えております。
  477. 柄谷道一

    柄谷道一君 これ保険料率の値上げやりましたら、国の国庫負担も自動的にふえるんですね。今度は変形の形をとっておりますね。この変形の形をとらずに保険料率を上げておれば国の負担はふえるわけですね、そうでしょう。変形の形をとっているわけですから、この変形の形においても、当然国の負担というものが保険料値上げというものを配慮して、そういうシステムにこの前の一部改正でしちゃったわけですから、これは考慮するということが、幾らこれが便法的措置であっても、当然いままでの経緯から推してくるならば、考えられるべき視点じゃないでしょうか。
  478. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 今回の改正におきましてもそういうようなこともございますので、特別保険料につきましては、特別の一四・八%というような一般の給付につきまして、定率の国庫補助があるわけでございますけれども、それ以外の国庫補助ということについても考慮したというような次第でございます。
  479. 柄谷道一

    柄谷道一君 この問題は後へ残しましょう。  そこで、当面の臨時応急の措置としておられます。きょう、これ厚生省の公式文書ですね、抜本改正の基本的考え方、これを見ますと、「本人家族給付水準格差是正等を中心とする給付改善」、「一部負担適正化合理化」、これと関連する九の「給付に見合った保険料及び財政基盤に応じた国庫補助による保険財政の安定」、これが保険財政の直接かかわりある問題であります。これは立法は五十三年度に行い、実施は五十四年度としたい、この厚生省の態度が出たわけであります。といたしますと、厚生省のこの公式文書のお考えからすれば、当面の臨時応急の措置とは具体的に五十三年末であると。五十四年からは新しい制度実施されるわけですから、今回の徴収は三回に限られるものである、こう当然読み取れるわけですが、間違いないでしょうね。
  480. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 医療保険制度の改革につきましては、大きな問題が種々あるわけでございます。  そこで、ただいま御指摘ございましたように、医療保険制度におきます給付格差是正なり、あるいは一部負担の適正、合理化なり、あるいは保険料あり方なり、あるいは国庫補助あり方をどういうふうに考えるか、保険料あり方をどういうふうに考えるかという問題もございますし、さらに老人保険医療制度ということにつきましても、どう考えるかというような問題もあるわけでございまして、私どもは、老人保険医療制度まで含めまして医療保険制度の改革ということにつきましては、これらの問題を一体としまして考えていきたいというふうに思っておる次第でございます。
  481. 柄谷道一

    柄谷道一君 これ、十二、十三、十四は周辺問題ですよ。老人保険医療制度整備というのは、今回の健保とはまた別個の発想を出していこうと。それも抜本の一環であることは否定しませんよ。しかし、これは時期はおくれますね。事を医療保険という守備範囲に限定しますと、家族給付をどうするのか、一部負担をどうするのか。さらに、こういうものを改善した場合に、大臣がいつも言われるように、今度は受け皿の問題として、国庫負担保険料を含めたこの負担方式はどうなるのか。これが保険サイドから見るならば中心の三本柱ですよ。この三本柱はいずれも五十四年度から実施したいと、こう言っておられるじゃないですか。とすると、私は、特別保険料の取り扱いは、この九項の「保険財政の安定」という項目が解決されて、当然五十四年度から実施されると、こう読み取らなければ読み取りようがないでしょう。もう率直にお答え願いたいと思います。
  482. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私どもといたしましては、老人保健医療制度の問題につきましても、これは「五四年度以降」と書いてございますが、できれば五十四年度にもやりたいんですから、これは大きな柱でございます。  しかしながら、これについてはその法案の成立というものが必要である。したがって、まあ一年でうまくできるかどうか、そこらのところも考えまして、何年ということをわざと言っておらないわけであります。  だけれども、先ほども返す返す言うように、そう遠い時期ではない、具体的な数字をもう出しているわけですから。ですから、そう遠い時期ではない。すぐ近くですよ。
  483. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣一流の答弁なんですけれどもね、ぼくはこの老人保健というものになると、これはもう方法二つしかないんですよ。一つは公費医療という形をもって処置していくか、保険制度をもって処置していくか。保険ということの方途をとるとすれば、老人の方々には負担能力はありませんよ、したがって、これは全国民がいわゆる健保とは別個の負担方式によって老人医療を見るという方式をつくるか、これは現在の被用者保険と離れる問題なんですね、そうでしょう。そうして考えてまいりますと、ここにですね、「給付に見合った保険料及び財政基盤に応じた国庫補助による保険財政の安定」を五十四年度から実施したいと、こう書いておられるんですよ。これが実施される場合は、当然特別保険料という問題は、この中に含まれて解決されると。これ以外に読み取りようないじゃないですか。
  484. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それは両方読むんですね、両方。あなたのような読み方もできます。しかしながら、老人保険医療というものは別になると言っても、それは別になれば保険財政というものはうんと楽になるわけですから。ですから、それはなるべく早く私は別にするんなら別にするということも、いつまでもぶん投げておく必要は何もないのであって、なるべく早い時期に、きちっとこういうものを提案をして成立させるという方向で、大体全部そろった抜本改正がほぼですよ、ほぼできたということになると思います。
  485. 柄谷道一

    柄谷道一君 まあ、これ以上のウナギをつかむような質問をしておってもしょうがないと思いますから、これはわれわれ委員会独自が考えてまいりたい、こう思います。  次に、医療費の確認方法についてでございます。領収書の発行問題につきましては、他の委員質問に取り上げられておりますので、この際は重複を避けたいと思います。そこで、厚生省の監督、指導に関する問題について御質問をいたします。  まず、保険医療機関及び保険医療養担当規則第四条、質問の時間を省略するためにこっちから申します。「保険医療機関は、当該患者に対する療養の給付を担当しなくなったとき、その他正当な理由により当該患者から被保険者証の返還を求められたときは、被保険者証に所定の事項を記入して、これを遅滞なく当該患者に返還しなければならない。」こううたっております。  次に、健康保険法様式第六号、この六号の中には、明らかに氏名、傷病名、開始年月日、終了年月日、転帰、請求金額を記載すべきことが様式で定まっております。さらに、備考五の(へ)には、「「請求金額」欄には、保険医療機関等が療養の給付に関して保険者に請求すべき費用の額を記載すること。」、こう明示されております。さらに、健康保険法第四十二条の九には、この全体を受けまして、ここに記載する額は「一部負担金ニ相当スル額ヲ控除シタル額トス」と、こう一連の医療費確認方法に関する現行の規定が定められているわけでございます。しかし、現実、被保険者証に請求金額が書かれている事例は、まれと言ってもいいのではないかと思います。現行規則でございますから、この規則に対して遵守の現状はどのようになっていると理解されているのか。遵守されていませんから、その原因は何と何にあると理解されておりますか、お伺いします。
  486. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 確かに、御指摘のように被保険者証への記入ということは必ずしも遵守されてないという事実はあるというふうに私どもも思っております。全国的な調査はやったこともございませんし、なかなか現実問題としてできないと思いますけれども、厚生省の共済組合証の被保険者証の更新がこの十月にございまして、その際に調査しました結果によりますと、給付記録欄の記入がありますものについては六百四十三件、八一・七%、それから記入のないものは百四十四件、一八・三%ということでございます。  そこで、現実には確かに療養担当規則におきまして記入するということになっておるわけでございますけれども、いろいろな理由で現実には必ずしもそのようになってないという事例があると思います。一つ考えられますのは、患者側からの理由としまして、非常に被保険者証を利用する機会が多いと、家族が他の医療機関を利用するというようなことで、被保険者証を医療機関に提示するというだけで、すぐ返還してもらうというようなこともあろうかと思います。さらに、医療機関側におきましても、非常に事務が大変であるというようなことで記入が省略されたと、あるいは傷病名の中には他人に知られたくないというようなことで、傷病名の記入をきらうという点からも記入されてないというようなこともあるわけでございまして、現実にはそういうような理由等から、必ずしも先生御指摘のように療養担当規則で決められましたような記載ということが行われてないというふうに考えておる次第でございます。
  487. 柄谷道一

    柄谷道一君 いろんな理由で守られないならば、その規則を変えるべきだと思うんです。そして、この規則を変えて、現実に実施可能な、請求ある場合の領収書の発行を義務づけるべきだと思うんです。規則にありながら、これかこういう理由でほとんど金額面は書かれておりませんということは、私は行政の怠慢という以外の何物でもないと、こう思うんです。領収書は書かれてないわ、現行法規で辛うじて被保険者が療養費をいわゆる確認できるという方法すら実施されていないというのが、これ現実なんですから、私は規則の洗い直しと、これが不可能で実行できないとすれば、実行可能な規則をつくるべきじゃないか、こう思います。大臣、いかがでしょう。
  488. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) ごもっともな御主張だと存じます。
  489. 柄谷道一

    柄谷道一君 ぜひ、これは抜本改正を待たなくていい問題でございます。いわゆる省政令に属する問題であり、一部健康保険法改正に影響するとすれば、これは五十三年度改正の際にそれを提案されればいいことでございます。そのとおりだという御答弁でございますから、ぜひそのように配慮願いたい。  次に、診療報酬体系の問題について、時間も余りありませんので、簡潔に御質問いたします。私はこの問題について過去三回当委員会質問をいたしております。第一回目は昭和四十九年十月二十五日、当時、齋藤邦吉厚生大臣に対する質問でございます。第二回目は五十年十一月十八日、当時、田中正巳厚生大臣質問いたしております。そして五十一年五月二十日にさらに同じく田中厚生大臣質問いたしております。  そこで、御質問でございますが、社会保険審議会、これが指摘いたしておりますのは、医療費増大の一つ原因診療報酬体系の不合理にある、こう指摘いたしておるわけです。これは社会保険審議会でございます。社会保障制度審議会も医療保険に絡まる問題の根源の大半は診療報酬体系にある、こう指摘いたしております。すでに、この診療報酬に対しましては、言葉では物と技術分離し、技術を適正に評価するということはもう言い尽くされているわけです。問題は、この趣旨に沿う診療報酬体系の適正化という問題が果たしてなし得るかいなかにかかってくると思います。こういう視点から、社会保障制度審議会は昭和四十六年九月の答申において、診療報酬体系の抜本的改革を行うために中医協の改組を答申いたしております。支払い側、医療側、公益側の委員数八、八、四を八、八、八と改めろ、公益委員八名の中の半数程度を常勤にして、これにスタッフをつけ、必要な調査資料整備と解析を行うという役割りを与えろ。そして、国民医療費について報告書を作成するために必要な権限を中医協に与えなさい、そしてこれを毎年国民に公表することを義務づけなさい。また、診療報酬について両側委員の意見が対立し、しかも事が急を要すると認めたときは、一定の厳格な条件のもとに公益側委員審議を終結して、その意見を報告することができるという道を開きなさい。具体的にこのような三項目を答申いたしておるのであります。  私が三回にわたる質問の中で、各大臣がそれぞれお答えになりましたのは、中医協はいまその機能を発揮しておると認識しております、現在の中医協で本当に適正な診療報酬体系ができないという考えに立ったときは、ひとつ中医協の改組も考えたい、これが三大臣の共通した答弁でございました。  これから、抜本改正に入ります。診療報酬体系の適正化という問題は、各委員指摘いたしましたように、抜本改正一つの大きな柱でございます。現在の中医協の構成で果たしてこのような報酬体系の適正化ができるとお考えになっているのか。むしろ私は、この際社制審の答申を尊重して、その中医協の構成そのものについてメスを入れるべき時期ではないか、こう思いますが、大臣の所信を伺います。
  490. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私も歴代三大臣答弁したようなことと同じ気持ちなんです。気持ちなんですが、仮に、これから抜本改正をやるということになりますと、支払い側についてもあるいは診療側についても、それは不都合なこともあるかもわからない。そのときにどこか一ヵ所退場してしまえば、もう中医協は流会で何も答申が得られないんだというようなことでは、これまた困ることでございますから、そのために厚生大臣は何もできないでもこれもまた実際は困る。したがって、常識的にやってもらえばそんなことも起きないから大臣と同じことだというのはそれなんですが、もし万一、これからそういう事態に遭遇する場合には、これは国会にも御相談をする必要があると思っております。
  491. 柄谷道一

    柄谷道一君 果たして、そういう大臣の姿勢で、確かに抵抗が出ることはわかります。しかし、果たしてそのような姿勢で診療報酬体系の適正化という問題が実施に移せるや否や、私は非常に危惧を持ちます。この点について、警告ではございませんが、大臣の決断というものをなるべく早急に下されることを求めておきたい。  さらに、いま付添看護の問題、それから差額ベッドの問題が出たのですね。ところが、中医協の医療委員のメンバーを見ますと、本当の意味での病院代表が含まれていないのです。病院代表二人いるとこう言われますけれども、経歴を調べましたら、全部基準看護をやっておる病院ではございませんと私は理解いたしております。今後の保険外負担の解消という問題は、きわめて抜本の中でも重要な課題であることを思えば、私は公的病院の代表者をこの中医協の委員に加えるか、もしくはそれが困難であるとすれば、医療担当者側、看護協会、利用者そして学識経験者、こういった専門機関で保険外負担の軽減とこれに伴う、それを実施に移し得るための条件整備のための専門機関の設置というものが必要ではないかと、こう思いますが、いかがでしょうか。
  492. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは、いまのままでも中医協等が常識的に機能すればやっていけると思っております。しかし、あなたのような御考えもあるでしょう。しかし、これは任期もあることでございますし、ですから、いますぐかえるというわけにはなかなかいきません。将来、機能しないと、そのためにいろいろな抜本改正の差しさわりになるというようなときには、先ほど言ったように、それは国会と御相談をする以外ないわけですから、まあ国会と相談しなくても機能してもらうように私は願ってやまないわけですけれども、もう少し先を見てからにしたいと思っております。
  493. 柄谷道一

    柄谷道一君 ぜひ私は、その中医協とは別個であっても、付き添いなき看護、差額なき入院と、それを実現するために、看護基準は一体どうあるべきか、標準報酬の中の配慮はいかにあるべきか、また、実際それに働かれる看護協会の立場もあろう、これを利用していく利用者の立場もある、本当に保険外負担を解消するとするならば、私は中医協のほかにでも、ほかにそういう専門機関を置いて、これを実行するための具体的方法検討する、それを政府の施策に盛り込んでいく、こういうことが必要であるということだけは指摘しておきたい。  で、時間の関係もありますので、抜本改正内容と方向につきましては、各委員からそれぞれ質問がございましたので、重複を避けます。また、家族給付率の改善退職者継続医療あり方につきましても、きょうの質問からは省きたいと思います。  一点だけ、御質問しておきたいんですが、出産給付改善問題についてであります。これにつきまして、昭和五十一年五月二十日の当委員会において、私は次のような指摘をいたしました。出産手当の問題について、労働基準法では、出産予定日がおくれた場合は実際の出産日までは出勤として取り扱っておる、しかし、健保では、その扱いがされていない。普通の人は出産予定日がわかる、その四十二日前から休み出します。しかし、出産予定日がおくれる、その出産で休業してる間の生活を保障すべき出産手当は、もう四十二日ということが定まっているから、途中で打ち切りになります。こういう矛盾があるのではないかと、基準法の精神にこれは沿って改正すべきであろうと、こういう問題提起をいたしましたところ、当時の保険局長も八木さんでございましたが、「先生御指摘のような問題もあるわけでございまして、やはりきめの細かい配慮ということも必要ではないかと」思われます。よって「貴重な御意見を賜りましたので、今後の問題として十分研究さしていただき」ますと、こう答えておられます。五十三年度の抜本改正が行われる際には、この問題が労働基準法の趣旨どおり改善されるという理解をしてよろしゅうございますか。
  494. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 五十一年度の法律改正の際に、先生御指摘のように、出産手当金につきまして、出産予定日がおくれたという場合の、出産手当金が受けられないという問題につきまして御指摘をいただいたわけでございます。この問題につきましては、私もその際お答え申し上げましたように、きめの細かい配慮という面から検討する必要があるんじゃないかと、受給者間の不公平か生じないように引き続きこの問題を検討したいというふうに考えておりますが、今回の改正におきましては分娩給付、出産等につきましての改正ということが行われなかったわけでございまして、将来、現金給付の中におきますこの出産手当金なりあるいは分娩給付改正の際の問題として、引き続き検討さしていただきたいというふうに思う次第でございます。
  495. 柄谷道一

    柄谷道一君 議事進行に協力するために、あと一問の質問にとどめたいと思います。  それは、公費負担医療の問題についてでございます。これまた審議会答申には、わが国の医療を、公費負担で守備すべき範囲と、保険医療において守備すべき範囲、これを明確にする必要があろう。すなわち、その公費負担医療の理念、範囲、方法等を明確にして、医療保険との関係についてはその性格と趣旨に応じた負担が行われるべきであると、こう答申いたしております。政府抜本改正のこの予定の中には、公費医療保険医療の守備範囲の選択について全然触れられていないわけでございますが、これに対する明確な答弁を求めまして、若干質問時間を残しておりますが私の質問を終わります。
  496. 松浦十四郎

    政府委員(松浦十四郎君) 四十六年の社会保険審議会の答申の中に、ただいま先生おっしゃいましたような公費負担の問題がございます。現在すでに、もう先生も御承知のように、たとえば戦傷病者に対する医療あるいは予防接種事故等につきましては、もちろん公費負担をいたしておりますし、さらに結核、精神といったような、社会に不安を与えるようなものにつきましても公費負担医療をしておりまして、こういうものを合わせますと、数え方によりましていろいろありますが、大体二十五種類の公費負担医療というのが行われておるわけでございます。この前の四十六年以降特に発展しておりますのは、難病関係につきましても新たに制度ができたわけでございまして、それもその後ずっと年々負担をしております疾病の数もふえておるわけでございます、このような観点からいたしまして、大体公費負担医療につきましては現在の制度でも相当のところまでいっておると、こういうふうに考えておるわけでございます、今後、医療保険制度内容がだんだんに充実していくということになりますと、新たに公費負担制度というものを特にこれ以上ということはさしあたり考えなくても、相当にカバーされているというように考えておるわけでございます。ただ、現在の公費負担制度の中におきましても、たとえばさらにもっと難病等でカバーすべきものがあるというようなことも考えられますので、そういうものにつきましては今後十分検討していくという考え方をとっております。また、老人医療につきましては、これは先ほどからお話がございますように、今後の老人保健医療制度の問題というものの中で検討されるということになろうかと、こういうように考えております。
  497. 下村泰

    ○下村泰君 委員会に入る前はあれも聞こう、これもお尋ねしようと思っておったんですが、大分時間が延びております。ナイターではありませんから、これから先やっていると皆さんもかえって疲れて、答弁も要領を得ないでしょうし、聞いている私もおろそかになります。たくさんお聞きしたいことがありますが、サリドマイドの問題一つにしぼってお尋ねして、快い返事がいただければ終わりますし、快い返事がいただけなければ延々と持ち時間だけいこうと思います。あらかじめ御了承を願いたいと思います。  その前に、厚生省にちょっと伺いますが、先般から私たびたび申し上げておりましたベーチェット病患者の更生施設の建設問題がございますが、その後どうなっておりましょうか、ちょっとお知りになっていることだけひとつお知らせ願いたいと思います。
  498. 上村一

    政府委員(上村一君) 五月二十日の決算委員会で御質問がございました。それから、九月二十八日にその村議会で建設反対の請願がございまして、不採択になっておるわけでございます。  先般、御質問がございましたときに、当時の社会局長からその後できる限り厚生省としても協力をするというふうに御答弁申し上げたわけでございまして、十月の八日、ベーチェット施設建設説明会というのが地元でございましたときに、公衆衛生局の難病対策課長と、それから社会局の更生課長も出席いたしまして、この施設が必要な理由というのを種々説明したわけでございますが、まだその地区住民の賛成が得られないで建設に着手するには至っておらないと、こういう状況でございます。
  499. 下村泰

    ○下村泰君 先ほど私ちょっと、福山さんといいますか、ベーチェット病の事務局長をやっていらっしゃる方に伺ったんですが、反対をしていらっしゃる方が約五名ほどおると。その五名ほど反対者がいて、そのリーダーとなっている方が大変政治的興味がおありになって、これを目玉商品にして今度何か議会の方に打って出ようというような方なんだそうです。その方もだんだん折れてきているという話なんですが、今月の二十八日にいま一度お会いになって、この日に大体決定が出るような話に伺っておるんです。この場合にはどうなんでしょうか、厚生省の方からどなたかお出かけになってお話し合いの席に着くとか、あるいは何か援護射撃というようなものはしていただけるんでしょうか、どうなんでしょう。全然それともこちらの方にお任せという形になりますか。
  500. 上村一

    政府委員(上村一君) 私ども、地元の人たちが反対された理由として聞いておりますのは、埼玉県知事の御配慮で秩父から現在のところが候補になってまいったわけでございますが、その決め方について、地元を飛ばして知事が決めたことを怒っておるのであると、ベーチェットそのものについて云々という前に、そういう言われ方であったわけでございます。そこで、地元の村長さんが中心になって、地元の説得に努められておりますので、いまお話しになりましたような情勢になりつつあるんじゃないかと。厚生省としましてこのベーチェット病について説明申し上げることは、すでにしてまいったんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  501. 下村泰

    ○下村泰君 どっちみち、これいま県側と村長、議長のあっせんでお話し合いをしておりますから、出ていくことはちょっと可能じゃないと思います。ただ問題は、施設が五十名収容のところが三十名に縮小せざるを得なかった。長期にわたったために坪の単価が上がりまして、人件費も上がったために財政困難であると。大蔵省に掛け合ったところが、早く着工してくれというようなお話だったそうです。  大臣、これもし着工して形になって、財政困難のときに、厚生省の方に申し出があった場合に援助策はございますでしょうか。
  502. 上村一

    政府委員(上村一君) この施設自身は、失明者更生施設として身体障害者福祉法による施設でございます。それから、建設費につきましては、自転車振興会の補助というのがもう二年前に決まっておりまして、いま保留になっておる。大蔵省の方で急がれておりますのは、寄付金募集について損金扱いをしておるというふうな関係もあるものでございますから早くやれと。情勢を見ながらどうするか判断さしていただきたいと思います。
  503. 下村泰

    ○下村泰君 そうしますと、そういうときには厚生省としては厚生省の援助の仕方もあるということですね。
  504. 上村一

    政府委員(上村一君) 相談に乗る体制にはあるということでございます。
  505. 下村泰

    ○下村泰君 そこのところがどうもはっきりしないんだね。私いつもずっと委員会を、この社労へ参りましてからお伺いしてて、各先生方が一生懸命御質問なさる。厚生省というところは一体どういうところなんでしょう、大臣に伺いますが。厚生省というこの行政機関、一体どういうところなんですか。役目は何なんですか、一体。
  506. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 厚生省でできるところがあれば、これは極力応援をいたします。させますから。
  507. 下村泰

    ○下村泰君 ありがとうございます。  なんですか、皆さんお答えになっているのは、それは厚生省という器の中に入っていらして、それぞれの役を仰せつかっておやりになっていらっしゃるんでしょうけど、その役向きのための弁護であって、厚生省のための弁護をしていて、国民のためのお話一つも何か聞いてくださっていないような感じがするんですな、皆様方のお答え聞いていると。だから、われわれ庶民感情では判断しにくいんですよ、ときどき。私らの長屋の言葉で、うるせえ、このやろうという心地になるんです。失礼しました。  さて、サリドマイドについて伺いますけれども、とにかくわが国の薬害の原点ということで、厚生省もずいぶんこれはお悩みになったことだろうと思いますけれども、第二次補償申請が終了した段階で潜在患者についてどういうふうにお考えでいらっしゃいましょうか。もう皆無と御判断でしょうか。
  508. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 先生御承知のとおりに、当初原告団に含まれておりました六十三名が、昭和四十九年十月に和解に調印をいたしまして、その後昭和五十年一月四日から二月二十日までの間にわたりまして、訴外の、つまりその訴訟に参加しておらなかった方々の、成立いたしました和解と同一条件による補償の申請を集めたわけでございます。この申請につきましては、三百五十二名の申請者がおりまして、このうちサリドマイドによるものと認められたものが百九十名ございました。さらに、訴外の第二次分といたしまして、五十一年十一月一日から五十二年の二月二十八日までの間に残りのさらに漏れた方がありはしないかということで、申請を受け付けました。この申請者の数が百七十四名でございまして、結果的にその中でサリドマイドによるものと判定されたものが五十名でございます。私らといたしましては、この第一次及び第二次、二回にわたるいわば呼びかけによりまして、これだけ社会的な関心の強かった事件でございますから、もはや漏れはないものと考えてはおりますが、しかしながら、もしも今後サリドマイドによるものというふうな申し出もしくはそういうふうな情報があれば、先ほどもお答えしたわけでございますが、それに対して適切な措置をとってまいりたいと、かように考えております。
  509. 下村泰

    ○下村泰君 ただ、厚生省が新聞記者に対する発表の中で、今回の作業で潜在患者がほぼ発掘されたとして、今後補償申請は受け付けない方針と、こういうようなことをはっきり何か示されておるようなんですけれども、そのとおりですか。
  510. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 多少そこの説明に不足があったかと存じますが、私らが申し上げておりますのは、二回にわたる申請によってほぼ残りなく把握されたというふうに理解しているということでございまして、もちろん、サリドマイドによるものの把握漏れがあるとすれば、そういう情報が私らの方に入った場合には、それに対して適切な措置をとる方針でございます。今後受け付けないという表現は、あるいはその物の言い方が不十分であったかというふうに考えております。
  511. 下村泰

    ○下村泰君 それはそうだと思うんですよ。百七十四名の申請者のうち一名が取り下げて、百七十三名について判断されて五十名が認定されたと。そうしますと、この段階で全部これ打ち切っちゃって、後は何もないだろうというような言い方をされると、これは大変不服な点がたくさん残るわけです。財団法人「いしずえ」の調査では、今回の第二次申請のときに、申請書類を入手しながら申請しなかった人たちの中に、申請書類がわかりにくかった、それから受験期等で子供と相談できなかった、それから現在子供、家族の同意か得られない等の理由を挙げている人がいる。こういうことなんで、申請の意思を有する者が現在の段階でも十名ほどいることがはっきりしたんだそうです、この「いしずえ」の調査で。そうなりますと、補償責任を国としてこれをどういうふうに御判断なさいますか、今後。
  512. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 当方といたしましては、第二次申請の日限の時点において十分意思を確認したと考えてはおりますけれども、もちろんそこに不十分な点があって、もしも漏れている者があるといたしますれば、それに対しては先ほど申し上げましたように事実を確認の上、適切な措置を講じたい、かように思っております。
  513. 下村泰

    ○下村泰君 ここに朝日新聞十一月十五日、毎日新聞十一月十六日、この新聞にもそれぞれこのサリドマイド児のことを扱って書かれておりますけれども、ここで残される問題としては、いまこの子供たちは青春期を迎えている子供さんもいるわけです。中には医者を志望しているお子さんがいます、高校一年。あるいは英語通訳志望の子供もおります。文学者を志望している子供もおります。皆優秀な成績でいま通学しているんです。しかし、お父さんの一人は「進学、就職、結婚とこの子たちのこれからは社会的な障害の連続です」と、こういうことを保護者の方は言うていらっしゃるわけで、またそのほかにもいろいろの問題が提起されておりますけれども、この窓口をあくまでも私は閉ざされちゃ困ると思うのです。そしてこの「いしずえ」という財団法人も、一つの窓口として置いても、ここから今度は厚生省へいろいろ申請されたり何かするときに、おれんとこは知らないよというようなシャットアウトされると、これは大変な問題になると思うのです。この方たちにとってはこの窓口が一つ、あ、残っているということが心の支えになっているのだと思います。そしていま申し上げましたような、これからの教育問題でありますとか、あるいは一人前として社会人として活躍しなければならない。そうなれば就職問題もございましょうし、そういうことの残る心配がたくさんあると思うのです。それだけにいま厚生省が、先ほどから局長いろいろとお答えくださっておるのは結構なんですけれども、大臣にお伺いします。こういう方たちのいま一縷の望みというのは、厚生省だけ頼りなんですから、その厚生省が必ず窓口を残しておいて、必ずこの問題、これからも、これ終わっているわけじゃないんですからね、この問題は。それは竹に節が一節あるように、その節を切ったからって終わるわけじゃない。その節はまた伸びていくんですから、次の節の段階に入ると思うのです。このサリドマイドのお子さんたちは、これで成長しないわけじゃないんですからね。そうしますと、やはり厚生省でも今後のめんどうを見てやらなければ、私は血道の通った厚生省とは言えないと思うのですよ。これをやったからこれでおしまい、あとはめんどくせえとか、あるいは法に照らし合わせりゃここでもうおしまいなんだというようなやり方では、ほんとの私は厚生という意味はないと思う。それだけに、何とかしてこの人たちの望みを断たないような方法を講じていただけますか、いかがでしょうか。
  514. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) ただいま薬務局長からいい御返事を申し上げたとおりでございます。できるだけのことはいたします。
  515. 下村泰

    ○下村泰君 そうしますと、この方たちの心配しているこれで断ち切られるということではなくて、必ず厚生省にその窓口が残り、問題に対していろいろとめんどうを見てくれるということなんですね。
  516. 中野徹雄

    政府委員中野徹雄君) 不幸にしてサリドマイドによる悲惨な薬害ができたという事実は永久に残るわけでございまして、その意味においてこの問題の責任を免れるものでないというふうに考えております。
  517. 下村泰

    ○下村泰君 ほかにもお聞きしたいことがございますが、まあいまこの新聞記事にも書かれているようなことを取り上げまして、いまお尋ねして、そしてこの方たちの希望がつながったという意味で、私は私の質問はこれでよかったと、自分でそう礼賛しております。ただ、最後に一つお尋ねしておきますけれども、小笠原先生もおっしゃいましたけれども、口唇口蓋裂のお子さんたちのいわゆる窓口の問題ですね、これはどういうふうになりましたでしょうか、その後。
  518. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 結論から申し上げます。  口唇口蓋裂の問題につきましては、医務局の歯科衛生課で窓口になることにいたしました。なおこの問題は、現在医務局にございます小児歯科保健懇談会でも御検討いただいておりますし、専門家の確保と施設の整備が医務局、それから医療保険保険局、育成医療は児童家庭局、それから更生医療社会局、特にスピーチセラピストは社会局と、広範な局にわたっておりますが、先ほど申し上げましたように医務局か窓口になります。
  519. 下村泰

    ○下村泰君 どうもありがとうございます。そういうふうにしていただけますと、あの方たちも喜ばれます。そしてこういう問題は、一番の底辺にいる、いわゆるこういう方たちが大ぜいいれば国は目を向けるんでしょうけれども、数が少ないためにむしろ置き去りにされているという問題ですね、これは厚生省の皆様方も全部おわかりだろうと思うんです。こういう問題をきちんと片づけることによって、私は抜本的な厚生省あり方があるのではないかというふうに考えます。どうぞひとつ渡辺厚生大臣、後世に残るような名厚生大臣になってほしいと思います。ありがとうございました。
  520. 上田哲

    上田哲君 委員各位にお諮りをいたします。  各会派の申し合わせによります質疑は、本日の質疑は終了をいたしたものと認めます。  各質問者の中で、留保された事項、さらに新たに質疑すべき事項はまだかなりな部分残っているものと確認はいたしますが、かなり遅くなっておりますので、このあたりで本日は終了したいと思いますが、そのように取り計らってよろしゅうございましょうか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  521. 上田哲

    委員長上田哲君) そのように取り計らいます。  本案に対する本日の審議はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後八時四十一分散会      —————・—————