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1977-11-18 第82回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月十八日(金曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員異動  十一月十四日     辞任         補欠選任      内田 善利君     中野  明君     —————————————   出席者は左のとおり。     理 事                久次米健太郎君                 原 文兵衛君                 粕谷 照美君                 小平 芳平君     委 員                 大石 武一君                 田代由紀男君                 田原 武雄君                 山内 一郎君                 野口 忠夫君                 中野  明君                 沓脱タケ子君                 三治 重信君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  石原慎太郎君    政府委員        環境庁長官官房        長        金子 太郎君        環境庁企画調整        局長       信澤  清君        環境庁企画調整        局環境保健部長  山本 宜正君        環境庁自然保護        局長       出原 孝夫君        環境庁大気保全        局長       橋本 道夫君        環境庁水質保全        局長       二瓶  博君        通商産業大臣官        房審議官     松村 克之君        労働省労働基準        局安全衛生部長  野原 石松君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        国土庁計画・調        整局計画課長   星野 進保君        農林省農蚕園芸        局植物防疫課長  本宮 義一君        水産庁研究開発        部漁場保全課長 伊賀原弥一郎君        通商産業省生活        産業局紙業課長  小野 雅文君        運輸省海運局総        務課長      山下 文利君        海上保安庁警備        救難部長     久世 勝巳君        自治省行政局選        挙部政治資金課        長        岩田  脩君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公害及び環境保全対策樹立に関する調査  (農薬空中散布に関する件)  (PCBによる環境汚染調査に関する件)  (アル・サビア号による油流出汚染事故に関す  る件)  (石原環境庁長官政治姿勢に関する件)  (環境アセスメント法案に関する件)     —————————————   〔理事粕谷照美委員長席に着く〕
  2. 粕谷照美

    理事粕谷照美君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。  本日、委員長には、お身内に御不幸があったために委員会に出席できないとのことですので、委託を受けまして私が委員長の職務を行います。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十四日、内田善利君が委員を辞任され、その補欠として中野明君が選任されました。     —————————————
  3. 粕谷照美

    理事粕谷照美君) 公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。   〔理事粕谷照美君退席、理事原文兵衛君着席〕
  4. 粕谷照美

    粕谷照美君 環境庁長官は、松枯れ防止対策のための特別防除法律ができる前に、自然保護団体方々とお会いされまして、こんな無差別的に農薬がまかれることについては非常な問題点があるということについてお話し合いをなされたと思います。そのときに長官は、まさにこの問題は日本版サイレントスプリングだと、こういうふうにおっしゃられたということで、非常に保護団体方々は意を強くされたわけですね。一生懸命にがんばると、こうおっしゃっておられましたので、何とかなるのかとこう思っておりましたが、一週間後には結局長官も押し切られた形であの法律が提案をされてきたということで、非常にがっかりしていられたわけです。その自然保護団体方々が、その後の松枯れ防止のための空中散布あるいは農薬空中散布について大変な調査をやっておられますので、そのことについて長官としても最終的にどういうふうにお考えかということをぜひお伺いをしたいという立場から、まず第一に、農薬住宅地に対する無差別空散について質問をします。  一九七七年の八月十六日に、滋賀県の近江八幡上田西上田地区水稲病害虫駆除のための農薬の空散が行われております。滋賀県知事からは、上田地区空中散布実施計画書農林大臣に提出をされているというふうに思いますけれども、これはいかがでしょうか。
  5. 本宮義一

    説明員本宮義一君) 航空散布実施当たりましては、これは航空散布が広範な地域農薬をまかれるということから、その計画実施団体から県を通じ国に提出されてくるたてまえになっております。で、私どももその報吉はちょだいしております。
  6. 粕谷照美

    粕谷照美君 これは、実施要領によれば、二月末日までに報吉をしなければならないというふうになっているはずなんですが、その期日までに報告がありましたでしょうか。
  7. 本宮義一

    説明員本宮義一君) 期日の点につきましては、手元に受け付けの書類を持っておりませんのではっきりいたしておりませんが、多分その期日までに到着したものと私は考えております。
  8. 粕谷照美

    粕谷照美君 事前に通告してあるわけですから、そのくらいのことはきちんと確かめておいていただきたいというふうに思うわけですが……。  それでは、その実施に当たっては、あらかじめ、散布地区の境界、それから散布除外個所飛行上の障害となるものなどを明記した実施区域地図を作成しなければならないわけですが、その地図はありますでしょうか。
  9. 本宮義一

    説明員本宮義一君) この計画は、各実施地区からの計画を取りまとめまして、県がそれをまとめて国に報告するたてまえでございまして、詳細な地図等につきましては、実施団体手元にあるのでございまして、こちらの方には地図は届いておりません。
  10. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは、地図がなければどういうふうに説明をしていいのかちょっと困るわけですが、その地図上田地区が入っていれば、散布区域は、予防措置を講ずることができない区域は除外しなければならないわけですし、実施指導要領違反なわけですね、地図が入っていれば。それから、もしそこの中に入っていなければ、この地域に空散をされたのはでたらめの空散だということになって、いわゆる指導要領違反ということになるというふうに思いますが、どうでしょうか。
  11. 本宮義一

    説明員本宮義一君) 農林事務次官から都道府県の知事あてに、農林水産航空事業実施指導要領というものを通達して、特に空中散布の場合には、実施に当たっては、散布区域の問題については、市街地であるとか、飛行に危険を生ずるおそれのある場所等については、こういう予防措置を講ずること、また講ずることができない場合においては、その地域を除外するということを指導しております。  それで、ちょっと具体的にいま御質問のございました、この上田地区がその実施地区の中にはさまれているかということはいま現在つまびらかにできませんけれども、私どもが聞いておりますところでは、これは新興住宅地でございまして、数年前にここに住宅地百四十世帯がつくられたところというふうに承っておりますが、そういうところでございますので当然それは航空散布除外地区になっていると私どもは思います。
  12. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうしますと、除外地区になっているというふうに思われるわけですから、これは空散が行われたという事実があれば違反ということになりますね。どうでしょう。
  13. 本宮義一

    説明員本宮義一君) まず第一に、住宅地航空散布をする必要がございませんので、当然まく計画になっていないと思います。それですから、そこには当然航空散布は行われなかったと。ただ、ちょっと私こう申し上げながら危惧しておりますのは、誤って何らかの散布ミス、また風等のかげんでそういう住宅地農薬飛散したことがあるいはあるのではないか、そういうようなことのおそれはございますけれども、当然それをまくことを対象にして、その地域をまくことにして計画が立てられているものではございません。
  14. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは、この結果について報告が行われなければならないというふうに思います。  知事は、空散の効果その他の問題点調査して、記録を整備して、実施主体指導するようになっているわけですけれども、それらの記録というものは農林省の方に提出されておりますか。
  15. 本宮義一

    説明員本宮義一君) 当然この実施状況については、私どもの方としてはその報告をちょうだいするわけでございますが、現在の段階では書類という形で報告はちょうだいしておりません。ただ、こういう地区で、この地区近江八幡市で行われた約三千ヘクタールの水田でございますが、それの実施に当たって、これは二回の散布が行われました。一回目は七月十五日から五日間。それから八月十五日から三日間というように二回目が行わまれました。それで、二回目の散布の際に、これは私ども滋賀県から伺ったところでは、一部農薬住宅地帯飛散したということが、これが当時新聞等で問題にされたということは伺っております。
  16. 粕谷照美

    粕谷照美君 私、ここにその団地人たち決議文というものを持っているわけです、やってくれないようにという。ところが、そのやってくれないようにという決議文に対して、必要だからやりますよという木で鼻くくったような回答書が出てこれが実施されているんですね。決議文は、「近江八幡市の農政課予定では、滋賀県の指導のもと、農薬空中散布が、今年度も七月八月に二回にわたり実施となっています。西上田自治会資料等に基づき、今年度散布される予定農薬について調べました所、農薬そのものが、毒物であることには間違いなく、魚類等が即死してしまうことがそれを証明しています。最近では、千葉県の農民がスミチオン中毒で死亡していることは耳新しいニュースです。西上田自治会では、住宅地に無差別的に粉剤が落ちてくる、又通学通勤時に危険この上ないといった直接的な被害と、さらに大きく自然の生態系が破壊されるといった観点から、昭和五十二年度自治会運営委員の全員の反対決議とさらに町内の署名に基づき、農薬空中散布を中止するよう、近江八幡市、さらには滋賀県に対し決議するものです。誠意ある回答解決策が出されない場合には、訴訟も辞さないつもりです。」と、こういうものが出されているんです。それに対して、近江八幡病害虫防除協議会会長奥野泰三さんという方の名前でもって申し出があり、当協議会において審議いたしましたところ、本年度につきましては同封しました計画どおり実施することに決議されましたと、こういうふうにして有無を言わさず実施をしているわけですね。非常にこの辺の態度に問題があるのではないかというふうに思います。こういうふうに住民反対申し入れにもかかわらず強行していくというようなことは、やっぱりこれは指導要領違反をしているのではないかというふうに考えられますが、どういうふうに判断されますでしょうか。
  17. 本宮義一

    説明員本宮義一君) これも滋賀県からお聞きしたところでございますが、この計画に、近江八幡市役所事務局員をしております近江八幡病害虫防除協議会で、この計画につきまして住民方々から賛成が得られなかったということで何度か、何回かの話し合いをされた。そこで、その結果、どうしてもやはり病害虫防除航空散布でやりたいということの希望が周辺農家の方から非常に強いということで、この防除協議会——現実には市役所の職員の方が事務当局でございますので、市の担当者の方が住宅地自治会に出向きまして御説明をして、こういうことで御了承を得たいということでお願いに上がったということで、まくことに決定いたしましたというように私ども承っております。  もちろん、水稲病害虫防除航空散布相当広範に行われておりますが、このことはあくまでもまいてもらいたいという人と、それからまくといういわゆる航空会社との間の契約で行われるわけでございますが、そういう相当広範囲に農薬散布されるということ、それが非常に周辺に与える影響が大きい、また関係住民方々にもこれについて賛否いろいろと御意見があるということから、こういうことについては十分地元の方の同意を得て行うことということを指導要領のモットーにいたしております。決して無理やりに押し切ってまくというものではございません。  で、今回の場合につきましても、周辺農村地帯で、十数年前からこの地区ヘリ切除を行ってきたそうでございまして、最近こういう新興住宅団地ができた。この団地方たちはまくことに反対であるということで、その地域方々の中で、まいてくれという方とまいては困るといったような方の両方の意見があったので、そこでこういうことでいろいろと市当局が苦労されましたといいますか、その間に入って住宅地の方にお願いして同意を得てこれを散布したと。それで、私ども国といたしましても、こういうような住宅地周辺農薬がまかれて、それが、住宅地農薬飛散するというようなことがあってはなりませんので、そういう周辺においては地上防除に切りかえてやる。それは地上防除で手動のものでまくというような形でまいてもらうというような形で、決して無理をしてこういう防除をするというように指導はしていないのでございます。
  18. 粕谷照美

    粕谷照美君 私もそのとおりだというふうに思います。地図をごらんになればわかりますけれども、ずうっとたんぼがありましてね、そしてその間に住宅地ちょんちょんと入っているわけですね。ですから、どうしても団地団地との間の防除飛行機でやろうとすれば、どうしたって住宅にかかるということが私ども素人が図を見てもわかるわけですね。  で、ここで行われましたその防除実態がどうであるかということについて報告もしながら、農林省の考え方を聞いておきたいと思います。  この報告書は、これは阪大の先生がその防除についての統計をとられたものでございます。これによりますと、ヘリコプター空散によって、目的水田には十アール当たり〇・一五から一・八九キログラム、住宅地には十アール当たり〇・二六から〇・八七キログラムの農薬が落下しているわけです。で、この落下をしたのはどのようなことをして調査をされたかといいますと、それぞれの地点地点シャーレを置きまして、そして検査をしているわけなんですね。そして、そのとってきたシャーレの中にありますものを自分たち分析をされているわけですが、この一つ一つを御報告を申し上げるにはちょっと時間が足りないのではないかというふうに思いますけれども、こういうことを実験をされたのだということを知っていらっしゃいますか。
  19. 本宮義一

    説明員本宮義一君) これは、新聞でそういう報道がなされたということを県当局から聞いております。
  20. 粕谷照美

    粕谷照美君 その中についての資料御存じでしょうか、地点地点の。
  21. 本宮義一

    説明員本宮義一君) ただいま先生がお述べになりました水田地帯住宅地帯で、それぞれシャーレ数個ずつを置いて、そこに落ちてきた農薬の量を調べられたということについて、その数字も聞いております。  ですが、私どもこれを聞きまして非常に腑に落ちませんのは、いま先生もお述べになりましたように、水田地帯の何倍もの——四倍でございますか、にも及ぶ農薬住宅地の方に落ちておると。早く言えば水田にまくべき農薬住宅地にまかれておるという実態のように承ります。これは現実問題として、それでは水稲航空散布の実効も当然上がりませんし、当然まいてもらう側の農家としても、これは非常な苦情だろうと思います。で、こういう実態というのは、これは実際のどういうところにシャーレを置いて調べられたのかという実態は、私にはいまのところつまびらかでございませんので何とも申し上げられないんですが、ただ、私のこれは推測でございますけれども、これは二回目の八月十五、六日の時点での調査と聞いておりますので、そのころになりますと稲が相当に大きくなります。もうほとんど稲は完成体の形になりますので、私どもの感じでは、どういう形でシャーレを置かれたのか、水田の中というふうに書いてあるそうでございますが、そういたしますと、水田の中では、稲が大きくなりますと稲に付着する量が非常に多くなりますので、いわゆる水田への農薬散布量というものはこれは当然少なくなると、水田シャーレの中にですね。いわゆる水田の土地の上に落ちるですね。それに比べて住宅地の方は、これも推測でございますけれども、思うに、住宅地の中の屋根とか、あるいはまた道路というところにシャーレを置いて調べられたと。仮にそういうような推測が許されるとするならば、当然あの水田については十アール当たり〇・何キロというように非常に少ない量しか検出されなかった。それに比べて、非常に残念なことでありますけれども住宅地については相当量の多い農薬が落ちたという結果が出たのではなかろうかということを推定するものでございます。
  22. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうすると、新聞紙上でいまのは御存じだというふうに思うんです、数字はね。もうちょっと、私この後で資料を差し上げたいと思いますけれども、置いたシャーレは七ヵ所なんですね。その七ヵ所のうちの一つは、ナンバー一というのは、団地周辺道路に隣接した水田のあぜに置いているわけですから、稲の下じゃないわけです。たんぼの中ではないんですね。二番目は団地北西端空き地に置いている。空き地です。それからナンバー三は、団地水田との間を流れる用水路にかかる橋の上ですから、これも妨害物がないというふうに理解をしていいんじゃないですか。ナンバー四は水田に面した住宅玄関先ナンバー五は団地内の住宅の庭、六は団地内の縫製工場裏空き地、そして最も少なかったナンバー七というのは水田の中の農道にあるわけです。ですから、いまのあなたの御説明では私は納得できない。やっぱりもう少しきちんと資料など見ていただいて、事実を明らかにしていただきたい。いますぐやっていただきたいというわけではありませんけれども、ぜひそういうことをやっていただきたいというふうに思います。  それで、これは写真のコピーなものですから、どうもうまくお見せすることができないわけですけれども、(資料を示す)これ、飛行機住宅真上まで来ているんですね。大変な真上まで来ているんです。そればっかりではありません。これはまあ遠くから撮っているわけですけれども、これが住宅屋根の線で、大変高いところを飛んでいる。これなんかはもう住宅から言えば真上を飛んでいるんですね。だから、やっぱり水田の上を飛ぶよりも住宅の上を飛んでまき散らしている。これはもう住民人たちは大変な不安を持つだろうということを私どもも感じられるわけですが、こういうような態度というのは許されるんですか。どうでしょう。
  23. 本宮義一

    説明員本宮義一君) まず、私ども、現在粉剤散布が、まだまだ全国的に言えば三割ぐらい空中散布でまかれておるわけでございますが、できるだけ粉剤散布液剤に切りかえていくべきだというように考えております。どうしても粉剤はその目的のところから飛散の、たまたま風などがある場合には相当に広がってまかれる危険がございますので、特にこういうような人家の密集したようなところにおいては、粉剤を極力液剤に切りかえたい。ただ、その際に、若干問題は、これをヘリコプターに搭載する作業が、非常に短かい時間の間にヘリ農薬を搭載するわけでございますが、粉剤の場合には非常にスムーズにできるけれども液剤の場合はやはり相当重たいとかあるいは液がこぼれて作業者の方にかかるといったようなこと等からいって、なかなか粉剤の切りかえができかねるのでございますが、これを極力液剤に切りかえるべく、ヘリコプターへの搭載についての機械化を助成するといったような措置を現在も講じておるところでございます。  また、先ほども申し上げましたけれども、こういう人家に密接したところにおいて空中散布をいたしますことは、いま問題になっておりますような事態を引き起こす危険が多々ございますので、小型散布機でこれをやると、防除するということで、滋賀県もこういうことで指導をしておった。で、すでに滋賀県としては、農家の方の協力を得るために小型散布機の助成についても措置を講じておったということでございます。たまたま御指摘の地区が、そういうところで粉剤がまかれ、かつまたそういった県の指導にもかかわりませずその周辺地帯でまかれたということは、非常に私ども遺憾に存じております。
  24. 粕谷照美

    粕谷照美君 まことに遺憾きわまりないことだというふうに思うわけですが、この研究資料によりますと、なぜ住宅地にたくさん落ちてたんぼの方に少なかったのかということを分析しているわけです。で、その一として、ヘリコプターパイロット散布技術はどうであるか。二番目に、気象条件はどうであるか。三番目に、使用した農薬の量が正しかったかどうか。そうして四番目に、その他のことが考えられると、こう分析をしながらも、まあパイロットは免許を持っているんだから、特にパイロットが悪いということではないというふうに考えている。それから気象条件も、これは大体まあ適しているというふうに考えたい。そうしますと、農薬使用量というのですが、これもきちんと監視をしてヘリに積むわけですから、それも問題はないであろう。そうしますと、最後の、その他の条件ということが考えられてきているわけですね。では一体その他の条件というのは一体何だろうかということなんですが、それは農作物病害虫防除粉剤を用いる場合には、四メートルから八メートルの飛行高度で散布するように実施要領には定められているわけです。西上田地区には関西電力の八幡変電所があって、周辺には高圧送電線があって、高高度から散布をしているということが考えられるというふうに言っているわけですね。先ほどお見せしました地図にもありますように、その水田のところには高圧線が通っておりまして、鉄搭が何本も何本もあるわけですから、飛行機は四メートルから八メートルなんて低い高度を飛ぶと非常に危いわけですから、やっぱり命が惜しければ高いところからまかざるを得ない。じゃ高いとことからまけば、四メートルから八メートルという指導要領があるわけですから、指導要領違反ということになります。そんなの証明がないじゃないかと言われるかもしれませんけれども先ほどから私がお見せしましたように、非常に高いところからまいているという実態写真があるわけですから、その辺のところも十分に見ていただきたいというふうに思うわけです。監視体制がとられているのに、そのことについて何らの注意も行われていなかったとするならば、これはまたそれで、その地域防除協議会そのもの体制に問題があるというように思うわけですが、この高高度からの散布というのは許されないわけですね。どうでしょう。
  25. 本宮義一

    説明員本宮義一君) 当然高いところからまけば飛散の範囲が広がるのでございます。で、そういうような、散布適確でないという形でこの地区がまかれたとすれば、まことにこれについての指導の任に当たります県の指導が弱かったということにならざるを得ないし、私どももそういった点で県に対します指導の弱さを痛感いたします。  ただ、これも私は現地を見ておりませんのでまた推測を加味して申し上げることになりますけれども、最初私はこういうような事態が生じたということを聞きました際に、粉剤はどうしてもやはり相当の距離に飛散いたしますので、われわれは少なくとも市街地と相当の距離を離してまくようにということを指導しておるわけでございますけれども先ほど先生写真でお示しになられましたように、そういう住宅地住宅地の間の相当狭まったところをやはりまいたということでこういうような、高さもさることながら、やはり市街地の近くでまいたということが一つの基本的な今回のこういう問題を起こした一番大きな原因ではなかろうかというように考えます。特に、液剤でもある程度の飛散はあるわけでありますが、粉剤の場合においては、いま申しましたように、相当の距離を離してまくというのがこのヘリ散布一つのわれわれの指導でございますが、それがこの地区においては適確に守られていなかった。当然これをまく際には、県の指導機関の方々、現地のいわゆる病害虫防除所とか農業改良普及所の方々が出まして、まく地域とまかない地域というものはそれぞれ標示をいたしまして、まくヘリコプターのいわゆる乗員が直ちにわかるような形でまくというふうにいたしておりますので、そういった点が果たして十分に行われていたかということを大変私気になる次第であります。
  26. 粕谷照美

    粕谷照美君 あなたがおっしゃるように、住宅地からは離れてまかなきゃならないと言われましたけれども住宅地のほら、真上でしょう、後でお見せしますけれどもね。もう真上から農薬はまき散らされているのがちゃんと写真に載っているわけですよ。だから、明らかにもう構やしないということでまいているという実態があるわけです。  まあそれはまた後でやりますけれども、この統計によりますと、水田に落下したその量というのが、あぜ道には十アール当たり一・八九、それから先ほど申し上げましたナンバー七の水田のところに置きましたシャーレは〇・一五と、もうきわめてきわめて微量の散布量になっているわけです。そうしますと、水田落下は、公称散布量の十アール当たり三・〇キログラムの二十分の一という計算になりますね、大体〇・一五というふうになりますと。そうしますと、これは農薬散布の効果がなかったんじゃないか、二十分の一ですからね。効果があるんだろうか。その辺の判断はいかがですか。  それと同時に、水田の上にこれほどのものが——まあ落下量が非常に少ないと、あなたも非常に不思議に思うと、こうおっしゃっておりましたけれども、それではちゃんと契約どおりに農薬量がまかれたという資料が、いわゆる防除をやった側からは出されておりますか。もしそれがなかったとしたならば、証拠というのはこの数字以外に私はないというふうに思いますけれども、そうだとするならば航空業者の契約違反だというふうに思いますけれども、契約違反があったならばこれはどういうふうな措置をとられるんでしょうか。
  27. 本宮義一

    説明員本宮義一君) いま先生のお述べになられましたように、水田にまくべき農薬適確にまかれてないということは、まことにおかしなといいますか、許されないことだと思います。ただ、私、当然農家人たちも見守っておりますので、それが適確にまかれでなければ、ましてや粉剤でございますので、液剤だとちょっとまいたかまかないかは少量散布の場合などわからぬ場合がございますけれども粉剤の場合ですと、うっすらとまかれる——いまおっしゃられましたように、十アール当たり三キロでございますので、非常に薄くではございますけれども農薬のまいた跡というのが見られるのでございますけれども、こういうような、いまおっしゃられるような、水田で〇・一五なんということになれば、全然まいてないということに相なるわけで、当然これは農家側として見れば、おれのたんぼにまいてもらうことで金払ったんだがまいてないじゃないかという、私当然クレームが出てくるべきものであると思います。  ただ、私、この新聞で報ぜられております、何ヵ所かのシャーレを置かれたということについて、こういう実態が多少私には疑問だと申し上げておりますのは、その実態がよくわからぬせいもありますけれども農家の方というのは相当長い経験、この地帯の航空散布をしているそうでございますので、その地域水田にまかれなかったというようなことであれば農家の方から当然クレームが出るべきだけれども、出ないというのは、これは大胆な推測かもしれませんけれども、まあそういうところもあったということで、全体的には非常にうまくいったんだけれども、ということではなかろうか。で、農家の側としては相当多額の経費を持ってまいてもらうわけですから、まかれてなけりゃ当然そういうことについての、もう一度まいてくれとかなんとかというような形のものが出ると思います。契約してまかれるべきものが現実にまかれない場合については、それはその契約を履行しないのでございますから、当然それは、航空会社はそういう散布料金というものは取るべきでない、返させるべきだと思います。
  28. 粕谷照美

    粕谷照美君 まあ農家の人は見守っていると言いますけれども空中散布やっているのに見守るなんてことはないと思いますよね。それはまかれた、終わった後で見守るだろうと、こういう意味かもしれませんけれども、終わった後全たんぼを見て、いやここのところは薄かった、ここのところは厚かったなんてというようなことが本当にあるんだろうか。人手がないからそういうふうにして頼んだのだから、それだけまいてもらえば大丈夫だというふうに普通考えるのではないかと、私はまたあなたと違う想像をするわけですが、まあこれは以後科学的な判断にゆだねなければならないというふうに思いますから、多分この自然保護運動をやっていらっしゃる方やこの先生方も、これからもまたこういう研究を続けられるというふうに思いますが、ぜひ言われた数がきちんとそのたんぼの上にまかれたというようなことがわかるような状況というものをつくり出していくべきだろうというふうに私は考えます。  さて、この住宅地への農薬飛散だとかあるいは地域住民農薬被曝について具体的な法規制は、このような実態から考えてみますとまことにほご同然で皆無にひとしいわけです。これでは住民の健康被害は続出していくばかりですし、いまのこの農林省のようなお答えでは、泣き寝入りする以外に何もないというふうに思うわけです。これを今後どのようにしていくかということが一つ考えられなければなりません。さらにこの上田地区のでたらめ散布は一体だれの責任なんだろうかということをあなたの方から明らかにしてください。そして、その責任が明らかにされたならば、一体どのように具体的な措置をするのか。そして、措置をされたら、その措置については私の方に報告をいただきたいと思いますが、いかがですか。
  29. 本宮義一

    説明員本宮義一君) この近江八幡西上田地区に行われました防除が、先生の御指摘の問題点を持っているわけでございますので、私ども十分に、ここがどうしてそうなったかということにつきまして調べてみたいと思います。  ただ、私非常に残念なことは、県に当然こういうような散布適確に行われたかというようなことは——まあこれは全部の地区にそれまでやることはなかなか大変なんでございますけれども、そういうものが適確農薬がここまでこういうようにまかれた、あるいはここには飛散してこなかったということをはっきりさせるための、そういうような一つの、まあいま大阪大学の先生が貫かれていたといいますが、普通はそういうようなことを現地において調べるような体制でやらせるように私ども指導しているわけでありまするけれども、たまたまこの滋賀県のこの地区ではそういったような調査が行われなかったというようなことなんで、滋賀県としては、こういうような実態がどうかということは私どもとしてはわからないということが、実は滋賀県から聞いたことでございました。  それともう一つは、先ほど先生の御指摘にございました、見守ると申しましたのは、飛行機の飛んでいる下で見守るというわけじゃございませんで、現実に適確にまかれておれば病害虫の発生というものは——これはいもち病とかウンカ、ヨコバイの防除をしておりますので、こういうような広範に出る病気でありますので、適確にまかれていなければ、後で当然そういったような病気が出るという意味で、いわゆる見守るというような表現を使って申し上げたのでございます。  で、こういったような西上田地区ヘリ散布実態、私、農林省の段階では県からの口頭報告を得ているということでございますので、これにつきまして現地を調査さしていただいて、その結果を御報告に上がりたいと思います。
  30. 粕谷照美

    粕谷照美君 どの地域にどのくらい散布されたかということを確実に点検をするような指導をしていらっしゃるというふうにおっしゃいましたけれども、それはこの指導要領で言うとどこの部分に当たりますか。
  31. 本宮義一

    説明員本宮義一君) 指導要領の中に記載はしてございません。ただ、そういうように一つ農薬散布をする際に、そういうような農薬がどこまで現実にまかれたか、あるいはまいてならぬところにそれがまかれたかというようなことを確かめるために、そういうようなことを調べるようにという指導をしておるということであります。また、そういうことを的確にはこの指導要領の中には記載は現在しておりません。
  32. 粕谷照美

    粕谷照美君 指導をしているというのは一体どこで指導をしているんですか。指導要領に書いてなくて指導しているというのは、どういう場所で指導をしておられますか。
  33. 本宮義一

    説明員本宮義一君) この指導要領は、国から県を通じてこういうような農林水産航空事業が適確に行われるためのいろいろの手続のことから、それから散布する方法とか、そういったいわゆる農薬の雄とかというようなことを記載しているのでございますが、先ほども申し上げましたように、こういう事業は、まいてもらいたいという地域の方とまく航空会社との間で、自由契約という形で行われると申しましたけれども、これにつきまして、やはり飛行機の数にも限りございますので、またそういうことを計画的に推進するという意味で、社団法人農林水産航空協会という協会が両者の仲立ちをするという形で、全国的な計画の取りまとめ等を、先ほど一番冒頭に申し上げましたように、実施団体から県、国を通じて来たものが航空協会に行って、航空協会はそれをもって航空会社との間で具体的なヘリのスケジュールを練るわけでございますが、そういう航空協会においてそういうような指導をしておるということを申し上げたのでございます。
  34. 粕谷照美

    粕谷照美君 そういう指導をしているということがわかれば私も納得をしますが、それでは、その指導はやっぱり何かきちんと書いてなければならないというふうに思うわけですね。農林水産航空事業実施指導要領というのがそこにはあるはずなんですから。そうしまと、そこのところにある具体的な資料というものも私にお示しください。それでわかりましたから。  それでは、いまの問題点につきましては、事情はわかりましたということで、正直言って納得をしていないわけです。で、いま農林省でも言われるように、住宅の上をまくなんというのはとんでもない話だと、地域人たちがまいてくれるなと言ったら、よくお話し合いをしてまかないのが原則だ。それから、そういう住宅があるときにはできるだけ手でもってまくようなことを指導していると、こうおっしゃっておられるわけですから、来年度この地域にまた空散が行われて、住民の方方が問題ないからことしは空散やってもいいと言われるかもしれません。言われるかもしれませんし言われないかもしれません。そうすると、またことしと同じようにこの地域はそうやって空中散布はやらないでくれという申し入れがあるかもしれません。そのときに、この近江八幡病害虫防除協議会は、ことしはやるという答弁をしているんですが、来年についてはやらないこともあり得るというふうに言っておりますので、十分に話し合いをし、その団地人たちがやらないでくれと言った場合にはやらないようにしなさいという指導をするように県に対してやっていただけますか。どうでしょうか。
  35. 本宮義一

    説明員本宮義一君) 先ほども申し上げましたように、この事業は、決して地域関係住民方々同意、納得なしに無理押しをして行うべき事業ではございませんので、いま先生のお述べになられましたように、反対の方のいらっしゃる場合においてはこれはまかない。ただ、まあ現実問題として、そこらあたりでどのように実施主体の方が判断なさるかでありますけれども、それは十分その地域の方とお話し合いをしていただいて、納得をしていただく努力をやはり積み重ねるべきものだと思います。
  36. 粕谷照美

    粕谷照美君 その点については了解をいたしました。十分な指導のほどをお願いをいたします。  では、次に移りますけれども、千葉県の農薬中毒死事件についてでございます。これ、ちょっと概況を御説明いただけますか。
  37. 本宮義一

    説明員本宮義一君) 千葉県の夷隅郡大多喜町三又というところで、本年五月二十九日、日曜日でございますが、午前十一時ごろ水稲のイネドロオイムシ防除としてスミバッサ75という農薬散布いたしました。散布後非常に短い時間でありましたが、そこにお住まいの、兼業農家の六十歳の男の方でございますが、外に、農作業じゃなくて、何かパイプの接続作業をしに行かれたというように聞いておりますが、その方が行かれて三十分ほどで倒れた、そして病院で手当てを受けたけれども、三時間半後に亡くなられたという事故が発生いたしました。  この事故につきましては、新聞等にもいろいろ報道をされておりますけれども、この原因等については、この死亡をされました病院での死亡診断書は農薬中毒死の疑いということでございます。それから、その後千葉大学の法医学教室で司法解剖がされました。その結果については、実は、私ども直接には見ておりませんけれども、千葉県の報告で、その司法解剖なさった先生からの診断を、口頭でありますけれども伺ったところでは、いろいろの診断から、農薬の入った量は多くはないが、慢性肝炎のため毒物の解毒が十分に行い得ず、コリンエステラーゼ発生が阻害され、心臓機能の不全が重なって死亡したと考えられる。で、これは、解剖所見としては、農薬による中毒、死因は農薬中毒死であるというように言っております。ただ、この中で、普通の健康状態なら軽いかぜ程度の症状と考えられるというようなことも言っておられたということは、千葉県からの報告で聞いておりまするけれども、そういうようなことで、現在このことにつきましては千葉県警が目下捜査を続けられておりまして、まだその結論を聞いていないのでございます。  概要は以上です。
  38. 粕谷照美

    粕谷照美君 この防除作業の事業主体の大多喜町の空中散布協議会というのは、一体この大多喜町地域一帯にどのようなその安全対策を行っておりましたか。実施以前に。
  39. 本宮義一

    説明員本宮義一君) ここは、大多喜町空中散布協議会は、会長は町長でありまして、この地区は昨年初めてやったと、まあ実施経験は二年目でございます。この航空散布をするということを決めましてから十分まあ話し合いの場が持たれた。それで二十七、二十八日には、二十九日にまいておりますので、前日と前々日には有線放送で——この有線放送というのは加入率が九七%だそうでありますが、この有線放送でこれを十分周知徹底を図っておるということで、まあ亡くなられた方も、家族の方からきょうは空中散布があるから行くなというふうなことを言われたけれども行ったというふうなことが言われておりますので、十分周知徹底は図られたというように判断されると思います。
  40. 粕谷照美

    粕谷照美君 スミバッサ75乳剤が使用されたというわけですが、この使用方法というのはどのように指定をされていて、登録をされておりますか。それから安全基準というのはどのようになっておりますでしょう。
  41. 本宮義一

    説明員本宮義一君) スミバッサ乳剤75というのは、スミチオン四五%とバッサ三〇%を含有した乳剤でございます。で、これは四十七年に登録されておりまして、空中散布に使うことについては四十八年以降認められてきているという農薬でございます。  この安全性につきましては、これのそれぞれの原体でありますスミチオン、バッサにつきまして、それぞれ急性経口毒性試験であるとか慢性毒性試験等、あるいは催奇形性試験等のいわゆる毒性試験は行われたデータは十分済んでございまして、これを農林省のこういう農薬を登録いたします農薬検査所においてこれの登録手続を完全に経たものでございます。  これの使用方法等につきましては、これはバッサが劇物でございますので、劇物としての取り扱いということでなっております。ということで、当然これは劇物に準じた取り扱い、使用上の注意ということが、この薬剤の使用として認められているわけであります。
  42. 粕谷照美

    粕谷照美君 これ、一ヘクタール当たり八リットルで、原液八倍の希釈というふうになっておりますけれども、スミバッサの登録にはそのようになっておりますでしょうか。
  43. 本宮義一

    説明員本宮義一君) これは、スミバッサ75というのを、この地区では、まあ液剤少量散布という形で言っておりますが、原液の八倍希釈液でまく。ですから、原液で換算した場合にはちょうど十アール当たり百ccという量になります。ですから、地上防除で言いますと、まあ千倍液をヘクタール当たり千リットルでまくと同じような、いわゆる水田に落ちる量からすれば同量の農薬散布されたということでございます。そのスミバッサ75のこういった原液八倍希釈液については、使用上の注意でそういうことを認めておるわけであります。
  44. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうすると、こういうふうに理解していいわけですか。スミバッサ75乳剤は大体千倍希釈というふうになっているけれども、空からまけばそれに該当すると、値が同じであるというふうに考えていらっしゃるわけですか。
  45. 本宮義一

    説明員本宮義一君) 地上防除の際は平常千倍液でまくわけでございますが航空散布の場合、航空機の積載量が限定がございますので、どうしてもやはり濃い濃度をまく。ただし量は少なくまくということで、水田に落ちる量については地上防除でまくと同じ量が原液換算としてはまかれるような形でまくようにしております。
  46. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうしますと、水田に落ちないで、もし住宅があったというような場合には、大変な濃度のものが上に落ちるというふうに解釈できますね。どうでしょう。
  47. 本宮義一

    説明員本宮義一君) 濃い液ではありますが、単位当たりについては同じ量——水稲でありますと十アール当たり大体百ccまかれる形がスタンダードの防除の形ですから、この場合ですと八倍液をヘクタール当たり八リットルまくという形でまきますので、濃いけれども非常に量を少なくまくという形でまかれるのでございます。
  48. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうではなくて、濃いけれども水のところに溶けるから大体同じような値になるというふうに理解をしてよろしいんですか。どうなんですか。その薄さが違うわけでしょう、千倍に薄めた場合と八倍に薄めた場合では。そうすると、落ちて、そのものに付着した場合には全然値が違ってくるんじゃないですか、やっぱり。千倍のものと八倍のものとでは。水田に落ちていった場合にはなるほど同じ値になるでしょう、八倍にしたものでも。水のところに落ちればそういうことになるでしょうけれども、たとえば稲とかいろんなところにくっついた場合には物すごく濃い溶液だというふうに理解しますが、どうなんですか。
  49. 本宮義一

    説明員本宮義一君) こういうように御理解いただきたいんですが、普通の農薬はいわゆる千倍に薄めて、そのかわりこれをたくさんの量をまく。ヘクタール当たりであれば千リッターをまくという形でまかれるわけですが、航空散布の場合では濃い液を少なくまくと。濃い液というのは、これは八倍に薄めるといいますか相当濃度の高いものですが、それを非常に小さな粒子にして、これを均等に水田の中にまくという形で、ですから当然まかれる単位当たりにしてみれば、原体のいわゆる農薬の有効成分といいますか、ある意味から言えば毒性分ですが、というようなものは同じ値であるというように考えております。
  50. 粕谷照美

    粕谷照美君 あなたの説明がわからないのは私がよく理解ができないせいなんだというふうに思うんですけれどもね、国民がそういう説明を聞いてもわからないわけですよ。濃いのをまかれちゃったら大変だなという感じがしますね。しかも、それは本当に水田にだけ落ちていくならば別ですけれども、もしそのような溶液が自分の上に落ちたり自宅の庭なんかに落ちたりしたら非常に困るというふうに考えませんでしょうか。それは間違いなんですか。そんなことは絶対にあり得ないんですか。
  51. 本宮義一

    説明員本宮義一君) 人家に落ちるかどうかの議論は別にいたしまして、ただ、濃い液であるけれども要するに非常に少量をまくという形で、単位当たりの面積についてのいわゆる原体の有効成分は同じ形にしてまくという方法で、航空散布の場合はそういうような形でまいておるわけであります。
  52. 粕谷照美

    粕谷照美君 じゃ、そのことについては私はよくわかりませんから、後で、もう少し勉強をしてからまとめて質問をしていきたいというふうに思います。  では次に移りますけれども、五月の二十九日にその防除実施する予定というものは、一体時間で言えばどのようになっていて、実質的にはどのような時間で行われたか。気象条件、上昇気流、このようなことについて御報告ください。
  53. 本宮義一

    説明員本宮義一君) この二十九日の散布につきましては、先ほど申し上げましたように、前日と前々日、有線放送でくまなく放送した。その際の放送の内容というのは、要約すれば、早朝からまきますということでございました。それで、二十九日、計画どおりにいくならば当然早朝にまかれるべきであったと思いますが、たまたまそのときに霧が発生したということで、現実にまかれたというのは、先ほども申し上げましたけれども、午前十一時でございますが、午前十一時ごろに現実にはまかれたと。予定よりも数時間おくれて現実には防除が行われたという実態でございます。当日は、その近くにある測候所の記録等から見ますると、多少の風が吹いておりましたけれども空中散布について、まくに不適当な気象条件ではないというように判断されております。
  54. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうすると、その気象条件から言えば、まくに適当な状況ではないということであれば、それをあえて強行したということはやっぱり問題があるわけじゃないでしょうか。
  55. 本宮義一

    説明員本宮義一君) 先ほど申し上げましたのは、気象状況から見まして不適当だとは言えないというふうに申し上げたんでございますが、ただ朝の早いときにおきましては気象条件が安定をしておりますが、どうしても気温が上昇いたしますと上昇気流が発生するということで、現実にこういうような航空散布の場合においてはいわゆる早朝散布ということが原則でございまして、こういうような気温が暖まって上昇気流の生ずるようなときにおいては、航空散布はしないということを指導しております。
  56. 粕谷照美

    粕谷照美君 したがって、あなたの方で出されたこの指導要領の十ページにもありますけれども、「上昇気流の発生が少なく気象の安定した時間に実施するものとする。」と、こういうふうにあるものに違反をしているというふうに思うわけです。だから、あえてそれに挑戦をして、起きやすい時間に踏み切ったということは、非常に手落ちがあるというふうに判断できないでしょうか。
  57. 本宮義一

    説明員本宮義一君) 確かに御指摘の点は私は否めないというように思います。しかし、こう申し上げるとあれでございますが、一応相当にダイヤの編成というものがあるというようなことから、たとえば雨が降って延びるというようなことも間々あるわけでありまするが、まあできるだけ予定どおりそのスケジュールの中でこなしてしまいたいというのが、これはまく側も、またまいてもらう側の実施協議会の方もそういう意向であるわけですが、いずれにいたしましても、予定よりも相当おくれた場合については、やはり関係者の住民方々に十分な報道をすべきであったという点について、この千葉の事故が住民方たちに対するそういった点のPRというものに欠けているところがあるというように判断せざるを得ないというようにわれわれ考えております。
  58. 粕谷照美

    粕谷照美君 私も全くそのとおりだというふうに思うわけですが、農薬取締法十二条から十四条、それから同施行令五条によりまして、農林大臣環境庁長官は、このようなことに対しては、その報告を求めて、そして立入検査をして改善命令を行うという、こういう責任があるんじゃないかというふうに思いますけれども、このようなことを実施をされましたでしょうか、どうでしょうか。
  59. 本宮義一

    説明員本宮義一君) この事故は五月の末に起きた事故でございますが、その後、いろいろ私どもも県とも協議いたし、また私どもの方からも県に出向きまして、いろいろこの状況の調査並びに収集に努めたのでございますが、そこでいま私が先生の御指摘について申し上げましたような、やはり農林水産航空事業の危被害防止について、従来からも十分そういった点については指導してきたのでございますけれども、今回の事故にかんがみてみますると、やはり反省すべき点が多々あるように思います。そういうことで、実は八月八日付をもちまして、農林省の農蚕園芸局長名をもちまして、この危被害防止対策の励行についてということで通達をいたしました。特に散布地域の問題とか使用の農薬、それから従事者、それから散布時間、それから実施する場合の状況、特に市街地とかいわゆる病院とかあるいは通勤、通学の路といったようなところについては特に注意するというようなことでございますが、それとまた医療機関とも十分連絡をとっておくというようなこと、それから広報活動を徹底するといったようなことの七項目につきまして、局長通達をもちまして各県に注意を促した次第でございます。
  60. 粕谷照美

    粕谷照美君 農林省がそのような改善命令といいますか、注意のための通達を出したというのはわかりますけれども、じゃ農林省は、報告を求め、立入検査をやったんですね。どうでしょう。
  61. 本宮義一

    説明員本宮義一君) これにつきましては、先ほど申し上げましたように、県から十分にいろいろと調査報告をちょうだいしておりますし、私どももこの司法解剖をなされました千葉大学の先生にもお目にかかったり、あるいはこれの捜査をしておられます警察等にも出向きましていろいろ伺っております。ただ、現在も千葉県警がこの問題を捜査中でございますので、私どもとしてはその結果を見てこれに対しての対処をいたしたいというふうに考えておるのでございます。
  62. 粕谷照美

    粕谷照美君 報告を求めたということはわかりました。そうすると、立入検査はやられていないというふうに理解をしてよろしいですね。  さて、農林省のやったことはわかりましたけれども環境庁長官はこういうことをやっぱりやるというふうになっているわけですが、環境庁の方はどうでしょう。
  63. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 農薬空中散布そのものの実施指導等をこれは第一義的に農林省の方でやっておられますので、むしろ農林省の方の御判断を軸に考えた方がよかろうということで、もちろん私の方は農林省の方とも連絡しながら、その辺の状況等につきましてはいろんな報告等も受けてございますが、農林省自体としても立入検査というところまで行っておりませんので、環境庁の方も農林省を差しおいて行くということはどうかということで、現実の問題として立入検査はやっておりません。報告はいろいろ聞いております。
  64. 粕谷照美

    粕谷照美君 一つの省だけで十分であればそれでいいんですけれどもね。一人の人間が死んでいるわけですから、これは非常に重要な問題ですので、ぜひ環境庁としても報告を受けたということではなくて、きちんと自分のところでも調査をしておいていただきたい。そうでなかったら、自然を守ってもらいたい、自分たちの健康を守ってもらいたいという国民の声に対して、こたえることにはならないのではないかというふうに思いますので、これは私の意見です。  では、次に移りますけれども農林省はこのような対策をしたというのはわかりましたけれども、しかし、先ほどからあなたが御報告をされているように、慢性肝炎があって心臓障害があったからこの人は死んだんだ。ということは、ほかの人は元気だから死ななかったんだ。あるいは注意を守ったから死ななかったんだということになるわけですが、しかし、私はそのような事故が一つでも起きないようにするための防除計画でなければならないし、注意でなければならないというふうに思うわけです。で、医師の報告農薬が原因だというふうになっているんですが、どうしてもそのことをくっつけたいわけですか。心臓に疾患があったとか、肝炎があったから、だからこの人は死んだんだというふうに、県の方も言っているようですけれども農林省もそういうふうにくっつけたいわけですか、どうでしょう。
  65. 本宮義一

    説明員本宮義一君) そういう亡くなられた方が心臓障害があったというようなことを、特に強調して申しているわけではございません。やはりこういう体の弱い方が、こういう農薬が引き金になったとして死亡されるということは、これは農薬散布するわれわれとしては非常にショッキングなことでございます。ただ、私ども航空散布事業というものが行われまして十数年に相なるのでございますけれども、これで死亡なさったということが初めての事例でございますので、実のことを言いますと、この取り扱いについては、私どもとしてはあり得べからざることが起こったと、率直な気持ち、そういうような気持ちでおるわけでございます。ただ、言わしていただきますと、農薬はどうしてもやはりある程度の毒性を持つということでございますので、これはできるだけ毒性のないようなものに切りかえていくということを鋭意努めておりますが、やはり農薬としての効果を発揮するための毒性もあるわけでございますので、特に農薬取締法の農薬登録の条件にもいろいろうたっておりますが、まあ普通の使用をした場合に、危害防止方法を講じた場合においてもなお人畜に危害を及ぼすおそれのあるものは登録できませんけれども、そういうような危害防止措置を講ずれば、いわゆる農薬として人畜に被害を及ぼさないものは農薬として登録をするというたてまえにいたしております。ですから、私ども決して健康な人間だけを対象にして物を申しているわけじゃございませんけれども、十分にいわゆる危害防止対策を講じていただく。特に、体の弱い方はこういうような農薬散布の後に立ち入るようなことのないように十分に注意していただくように、またそういうように十分に御指導するなり、そういったようなことを周知徹底を図るといったような、危被害防止対策を十分に講じまして、そういうような被害の発生ということを極力抑えていく、こういうように私どもとしては考えておるのでございます。
  66. 粕谷照美

    粕谷照美君 お言葉ですけれどもね、体の弱い方はそのようなところに入ってもらっては大変困るからというふうなことをおっしゃったけれども、いま農業をやっていらっしゃる人たちというのは一体どのような層がやっているんですか。かあちゃん農業、老人農業でしょう。お年寄りの人たちが農業をやっているわけなんですから、そんなこと言ったら農業をやれる人いなくなりますよ。私は、だからそういう人たちが農業を支えているんだという考え方に立って、本当に無差別農薬爆撃なんというのは困るということの上に立って質問をしているわけです。  そのような意味も含めまして、ひとつ、この登録農薬の毒性を検査するというのは、一体どのようなことで行われているのでしょうか。そしてさらに、スミバッサ75の毒性テストというのはなされているのでしょうか。
  67. 本宮義一

    説明員本宮義一君) 農薬の登録に当たりましては、これは農薬取締法という法律に基づきまして、それぞれの登録保留基準に合致しなければならぬわけですが、その農薬の登録保留基準というものについては、これは環境庁長官が定められるということになっておるわけです。  そこで、まず農薬の登録に際しましては、急性毒性及び慢性毒性とか次世代に与える影響試験、それから作物への残留、それから土壌残留といったようないわゆるデータをそろえまして、それはもちろん農薬としてのそれぞれの条件を備えているというテストも出されるわけでございますが、そういうものをそろえまして、これを農林省農薬検査所に提出される。農薬検査所においてそれを審査いたしまして、それが農薬登録基準に合致するものであればそのものをそのまま登録するという手続になりますが、物によっては、新しいものにつきましては、これは改めてそういうような登録保留基準をつくっていただく。また、物によってはこれを環境庁の方で御検討いただくというような形で、農薬の登録につきましては、慎重に毒性問題を検討して登録するということにいたしております。  それから、当然スミバッサ乳剤75につきましても、これは先ほど申し上げましたように、スミチオンとバッサを含有する乳剤でございますので、それぞれの、スミチオン及びバッサの毒性についてのいま申し上げましたような審査をいたしております。それから、これにつきましては、いわゆる混合農薬でありますので、間々混合農薬の場合には毒性が増すというようなことも現実にありますので、これについてはすでに環境庁の試験で両者混合液についての、スミチオン、バッサという原体と、それからスミチオンとバッサを混合したものとについての、いわゆる半数致死濃度の試験等も行っております。そういう結果に基づきまして、これが劇物としていわゆる登録されておるということでございます。
  68. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうしますと、環境庁がバッサとスミチオンの混合したものの調査をやったと言われますけれども、環境庁自身は、一体どこの機関で、どのような形で混合液をやられましたでしょうか、調査を。
  69. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) お答え申し上げます。  まず単体としてのスミチオン、それからバッサ、これ、それぞれ毒性試験をやったわけでございますが、ただいま農林省の方からもお答えがありましたように、その個々の農薬につきまして、それぞれが一応毒性はこの程度という場合にも、異なった農薬を混合した際に相乗効果を出すという場合と、それから逆に減殺効果をもたらすというようなこともございますので、環境庁としては逐次この相乗毒性問題、これを検査をしてまいっております。ただいまお話のございますスミバッサ——スミチオンとバッサの混合剤につきましては、四十八年に残留農薬研究所、ここに環境庁が委託をいたしまして、毒性調査をやっております。その結果としては、大体単体よりはやや毒性が若干強いという面もございますけれども先ほどお話がございますようないわゆる劇物の範囲内ということでございまして、若干の毒性があるという面はこれは否めないと思いますが、その程度の結果になっております。
  70. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうしますと、どういうことになるんですか。この農薬は単体で検査をするということは法で示されているけれども、混合になったら、必ず検査をしなければならないという、こういう法的な規制はありますでしょうか。
  71. 本宮義一

    説明員本宮義一君) 従来、この単体の毒性は、登録の際に全部これを調べてみておるわけでありますが、混合剤につきましては、検査する能力等も整わなかったということで、この問題が後回しにされたのでございますけれども、現在こういう混合剤については、いわゆる急性毒性試験のデータを添付するように、これを登録条件といたしております。
  72. 粕谷照美

    粕谷照美君 それではそれはわかりましたが、しかし、私どもが考えてみますと、農林省から出されましたこの資料、たとえば「スミチオンの安全性に関する主要試験データ」ですね。和歌山の県立医大だとかあるいは火水歯科大だとかに検査を依頼しているようですけれども、これをつくっている住友化学そのものの試験結果を資料として出すなんて、つくっているところが出している資料を出すということはやっぱりちょっと問題があるのではないだろうかというふうに考えますし、「米国の毒性研究機関」なんてこう出ておりますが、「米国の毒性研究機関」なんというものが本当にそういう名前で存在をするのだろうかどうだろうかということも一つ疑問があります。さらには、この米国の毒性研究機関といいますのは、いわゆるインダストリアル・バイオ・テスト・ラボラトリーズのことではないかというふうに思うわけですが、ここのところのスミチオンについての警告なんかもEDAから出されておりますので、相乗毒性でこのスミバッサ75は若干強いというふうに言われておりますが、若干強いなんてものではなくて、もっと厳しい取り締まりというものが必要なのではないかという意見を申し上げまして、先ほど農林省の方で言いました、あり得ないことだということについては、私は非常に反論があるわけです。何も千葉だけではないですよね。五年前ではありますけれども、加古川の農業をやっていらっしゃる橋のぶえさんという方が、アソスミバッサ散布中に死亡した事故がありましたね。この辺のところについてはどのようにお考えですか。
  73. 本宮義一

    説明員本宮義一君) これは四十七年の八月でございますが、加古川の野口町に住んでおられます五十五歳の御婦人の方が、自宅付近の水田三アールの防除をみずからされた。手回し散粉機でなさった。で、散布中に倒れたということで、入院なさったのですが、翌日死亡なさったということが、兵庫県から私どもへの報告、これは四十八年の四月に報告を受けております。このことにつきまして、実は私どもまあ当時の書類からそういうことをいま申しておるわけでございますが、ここで一医師は農薬中毒によると診断されたというように県も報告しておりますが、県がこれについての意見として、農薬中旬事故であるかどうかについて明確でないというような意見をつけてまいりまして、そういうことでこの実態をもう少し明らかにしたいと思ったのでございますけれども、ちょっと、担当の者がもうかわったりしておりまして、なかなか明らかにならなかったというのが実情でございます。
  74. 粕谷照美

    粕谷照美君 質問通告が時間的に遅かったわけですから、十分な調査ができなかったという点については理解できますけれども、しかし、新聞を読んだ限りで、医者がこういうことを言っているわけでしょう。魚住光洋さんというお医者さんが、「どう孔が異常に収縮していた、おうとを繰返していた、死亡直後からだ中に青紫色の斑点が現れた」ということを言っていらっしゃるわけですね。こういう所見というのは農薬特有の現象ではないんでしょうか。どうでしょう。
  75. 本宮義一

    説明員本宮義一君) いま先生のお述べになられました症状は、農薬中毒に起きる症状というように私も聞いております。
  76. 粕谷照美

    粕谷照美君 さらに、そのときの新聞を読みますと、その近所の農家人たちは、この薬ですね、アソスミバッサを吸うと吐き気がする、目まいがするということを言っているわけですから、私が考えただけでもこれはもう完全に農薬の中毒死だというふうに理解ができるわけですが、農林省の方では、県が言う方が正しくてこういう医者の診断書なんというものは、何というのですか、二の次だというふうな態度ではないと思いますが、どうですか。
  77. 本宮義一

    説明員本宮義一君) これは専門家である医者の判断によるべきものと思います。ですから決して——ただ、県からこの事故についてのそういうような記載があったということを申し上げたのでございます。
  78. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは後で、県がそういうふうに言ったというなら、県が疑わしいと、中毒死と言っているけれども県としては疑わしいと判断しているという、一体何が疑わしいのかということを県に聞いていただきまして、県が疑わしいとする材料を私の手元に届けていただきたいと思いますが、どうでしょう。
  79. 本宮義一

    説明員本宮義一君) 実は、昨日もこの問題、県に何度も問い合わせたのですが、的確な返事をいただけないで、その当時県から報告のあった書類から私先ほど申し上げたわけでございます。御指摘でございますので、これは現地を十分調査いたしまして結果を御報告に上がります。
  80. 粕谷照美

    粕谷照美君 あわせて、農薬の事故死というのは余り考えられないと、こういうふうにおっしゃいましたので、私もないということを願いながらも、それでは過去十年間ぐらい、いわゆる空散が実施された以後、あるいはそれ以前というふうにこうひとつ区切りたいというふうに思いますけれども農薬事故の調査を、統計を出していただきたいというふうに思いますが、いま手元にありますでしょうか。これから調査をされなければそれは出ないでしょうか。どうでしょうか。
  81. 本宮義一

    説明員本宮義一君) 農薬中毒事故の発生につきましては、農林省としては四十七年から調査をいたしております。で、四十七年から現在まで、五十一年を入れまして五ヵ年間、一時相当に多い中毒も相当減少したというように、数字の上からうかがわれるわけでございますが、また、散布中に事故で死亡されたということ並びに間違って——これは管理が悪かったのかもしれませんけれども、間違ってこれを飲んでしまったとかいうようなことで亡くなられたというような被害は、その後まだ後を絶たないということでございます。  また、ヘリ散布につきましては、実は、中毒事故という報告が、過去に、私の記憶では何年かに一回あったというように、五十年に二人の軽い中毒事故があったという報告が来ておりますが、主として空散の危被害の発生というものは、ほかの農作物に農薬がかかるとかあるいはまた養蚕、まあこれ養蚕もほかの作物もございましょうが、それから水産関係に被害が出たというような、むしろそういったような周辺のいわゆる動植物、有用動植物に及ぼす被害、それからこれは自動車の塗装などに、農薬の薬剤が落ちたために塗装がはげると、汚れるといいますか、そういうような被害ということの報告がなされておりまして、人身に及ぼすそういった事故というものは、いま申し上げたことの報告でございます。
  82. 粕谷照美

    粕谷照美君 ですから、その資料をいただけますかと、具体的にどこどこでこのような事故が起きたということがいただけますかということを先ほどから言っているわけなんですが。
  83. 本宮義一

    説明員本宮義一君) これは私ども手元に来ておりますので、提出いたします。
  84. 粕谷照美

    粕谷照美君 最後に、長官にお伺いをしたいというふうに思いますけれども、五十二年度の松枯れ防止特別防除実施状況なんかは、まだ環境庁の方ではできていないというふうに思います。ついこの間終わったばかりですから。それができ上がりますときちんとした質問もできますし、御答弁もいただけるのだというふうに思いますが、いま申し上げましたように、非常に国民の間では最近空中からの農薬の無差別散布というものが恐ろしい、非常に危険なんじゃないかという気分が盛り上がっているわけです。そういうような機運というものを本当に大事にしていくような環境行政というものをやっていただけますでしょうか。それぞれの省、農林省が環境基準をつくっておけばそれでいいのだというふうな考え方でおやりになりますでしょうか。長官のお考えをお聞かせ願いまして質問を終わりたいと思います。
  85. 石原慎太郎

    ○国務大臣(石原慎太郎君) 農薬空中散布は、いろいろな点でいろいろな危惧が持たれるということは、もう私十分承知しております。この間その法律の修正を出しますときも、自然保護団体の方から、農林省の方では取り合ってもらえないということで私の方に陳情が来られまして、陳情をお聞きしまして、これは環境庁も聞くだけではなしに、ぜひ農林省の方に聞いていただきたいということで、向こうにも会っていただきまして、そのとき何項目かの要請がありましたけれども、聞き入れられないものもありましたが、農林省側もそれをしんしゃくしていただきまして修正の中に加えていただいたと聞いております。その後それの実行に当たって後追いの調査をして、問題があればやはり農林省と連携をとって、そういう実害のないような形で、これはもう人間の健康に係ることでございますし、今後も鋭意検討し、そういう指導をしていくつもりでございます。   〔理事原文兵衛君退席、理事粕谷照美君着席〕
  86. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は、きょうはきわめて限られた時間でありますので、PCBについての問題点を二、三伺いたいと思います。  環境庁が十月十九日に発表されたケミカルアセスメントというこの環境調査についてでありますが、特に、PCB代替品についてのことについて概要を御説明いただきたい。時間が非常に短いので簡単に御説明をいただきたいと思います。
  87. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 五十一年度の化学物質の環境調査をいたしました結果を先般発表させていただきましたが、お尋ねの、PCB代替品のところだけにつきましてお答えいたします。  PCB代替品といたしまして、今回調査いたしましたのは十三物質でございますが、そのうち六物質が検出されました。本調査の中で、水質中からポリ塩化ナフタレンほか一物質。底質中からはターフェニル、ポリ塩化ナフタレン、ポリ塩化ターフェニルが検出され、魚からも一例ポリ塩化ナフタレンが検出されました。いずれも検出数値は半定量的な分析ということでごく微量でございまして、かつてのPCB汚染の数値と比べましてはるかに小さかったわけでございます。
  88. 小平芳平

    ○小平芳平君 やはり、代替品ですから分解しにくいとか、化学反応をしにくいとか、熱に強いとかあるいは蓄積性があるとかという点はある程度共通しているんでしょうと思いますが、そうでしょうか。
  89. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 私どもも、PCBの代替品として使われておりますので、特性としては、PCBに似て非常に難分解性であるというような性質を持っておることは当然のことでございます。
  90. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがいまして、現段階ではごく微量であるという報告でありますが、将来とも継続してやっていかなくてはならないという姿勢だと思います。  次に、化学物質審査規制法という、それによる専門官は何人いるんですか。各省庁別に分かれていたらそのようにして報告していただきたい。
  91. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 現在、私どもの環境庁の中におきまして保健調査室というのを設けておりまして、ここは室員が全体で九名でございますが、環境庁のいろいろな保健関係の調査事務をしております。特にこの化学物質につきましての担当の専門官は一名、さらにその係が一名というように二名が担当しているわけでございますが、まあ当然のことながら、その仕事の閑繁に応じまして室員の他の者も応援をするという形で何とかやっているわけでございます。私ども、通産省の方につきましては定かに存じておりませんが、厚生省におきましても、薬務局の安全課で二名の専任の担当者によって行われていると、さように心得ているわけでございます。
  92. 小平芳平

    ○小平芳平君 専門官は環境庁二名、厚生省二名、計四名くらいで十分やっていかれますか。長官いかがですか。
  93. 石原慎太郎

    ○国務大臣(石原慎太郎君) これはもうとても足りません。アメリカでも二百人ほどのスタッフで足りないと言っているそうでございますから、とても足りるものじゃございません。
  94. 小平芳平

    ○小平芳平君 とても足りない上に、私がきょう質問いたしたいと思いますPCBによる環境汚染調査はおやりになっていますか。どうですか。
  95. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) PCBは、先生御存じのように、このただいまお話ございます化学物質規制法、この制定当時——四十八年でございますけれども、もうすでに行政指導によりまして製造、使用が中止をされております。したがいまして、ただいま申し上げました法律が施行された後——施行が四十九年四月でございますが、間もなく、PCBそのものが、この法律に基づきます政令によりまして、「特定化学物質」ということで指定をされておりまして、厳しい規制が加えられたわけでございます。したがいまして、この法律の運用に関連いたします環境汚染調査というのは行われておらないわけでございます。ただ、製造、使用が中止をされておりますけれども、すでにその段階で製造されておったものがございます。そういう製造されておったPCBによります環境汚染、これにどう対処していくかということで、所要の対策を講ずるために、四十七年度にPCB全国一斉調査、これを行いまして、さらに引き続きまして四十八年度にも全国環境調査の一環として調査実施されまして、これらの調査の結果を踏まえまして、むしろ対策ということで、五十年にはPCBに係ります水質の環境基準、排水基準、それから底質の暫定除去基準、あるいはまた廃棄物の処分基準というようなものが定められたわけでございます。  そういう基準が定められまして、その後どういう状況になっておるかということまで申し上げますと、PCBによります水質汚濁の関係でございますけれども、これは水質汚濁防止法によりまして県の方で定めます公共用水域の測定計画というのがございますが、これに基づきまして、それぞれ環境基準の監視が行われておりまして、その結果の数値を申し上げますと、五十年度におきましては、全国の公共用水域の水質の測定をいたしました結果によりますと、環境基準を超える割合、これは検体数ではじいた割合でございますが、〇・三八%ということになっております。ですから、逆に言えば、九九・六二%が一応問題ないということでございますが、若干、〇・三八%は環境基準値を超えるものが見つかっております。  それから、PCBによります底質の汚染の状況につきましては、先ほど申し上げました底質の暫定除去基準というものを設定いたしましたけれども、これを超えます水域が七十三水域ございまして、この五十一年八月末現在で対策をもう完了をしたというのが四十二、対策を実施中、これが十二、その他の対策の検討が進められている地域、これは十九というような内訳になっております。  なお、PCBにつきまして残されている問題といたしましては、廃棄物処理法の処分基準によりまして、廃棄が著しく厳しく規制をしてございます。その関係でのPCB原液の処理なりあるいはノーカーボン紙の問題なり、あるいは廃コンデンサー等の処理、こういうものがまだ残ってございます。したがいまして、汚染調査というよりはもう対策の調査をやりまして、それに基づいていろいろな対策等を進めておる、こういう段階に入っておると、かように考えております。
  96. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは、水の基準についていまお話しなさっていらっしゃるわけでしょう。そのほか大気はどうですか。簡単に。
  97. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 大気の方におきましては、四十七年の十二月に、PCBを焼却する場合の排ガス中に含まれるPCBの濃度の暫定基準を設けております。それからもう一つは、環境大気中のPCBの暫定基準を設けております。
  98. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、水と大気とそのほかにも関係して非常に環境汚染が問題だということをひとつ——これはPCBが規制になったそもそもの出発点が四十三年のカネミ油症発生にもかかわらず、日本の国のPCB生産はたちまち四十三年度の倍にも生産が増大していったわけですから、そこで四十五年、四十六年当時から環境汚染、魚の汚染があちらこちらで問題になり、そういうところから、いまのような基準、規制あるいは、生産、販売、使用の中止ということになったわけですから、したがって、環境問題としてPCBはもっと取り上げていかなくちゃならないと、これは環境庁も同じ御意見だと思います。  そこで次にPCBを使ったトランス、コンデンサーあるいは感圧紙、こういうものがどの程度いまあるか、これをどう処理しようとしていらっしゃるか、これはいかがですか。
  99. 小野雅文

    説明員(小野雅文君) まずノーカーボン紙、感圧紙関係でございますが、現在までに所在が確認されている量は約三千四百七十トンでございます。ただし、これは紙の量でございますが、PCBは約二%ぐらい含まれていると思います。最終処理方法としては焼却を予定しております。
  100. 松村克之

    政府委員(松村克之君) トランスについてでございますけれども、トランスに含まれていたPCBの処理につきましては、PCBを使用いたしました電気機器を新しく使用することを禁止しているということでございまして、ただ、従来から使用中のものについては適用を除外しているわけでございます。  で、現在PCB使用の電気機器の保有状況は、トランスが四万一千百二十五台、それからコンデンサーが三十二万一千五百六十九台ということで、この中には使用済みで事業所に保管してあるものも含まれているわけでございます。これらのPCB使用機器を保有する事業所に対しましては、地方通産局を通じて立ち入り監視指導等を実施し、これら機器の適正な保管が守られるように努めているところでございます。  なお、今後PCB使用電機の処理につきましては、昭和四十八年八月に電気絶縁物処理協会、これは財団法人でございますが、こういった協会を設立いたしまして、この無害化処理事業の推進に当たっているところでございます。
  101. 小平芳平

    ○小平芳平君 たとえば、県や市で抱えているノーカーボン紙の始末に実は困り切っているんですが、最終的には焼却するというんですが、いつどういうところで焼却しますか。
  102. 小野雅文

    説明員(小野雅文君) 先ほど申し上げました確認残存量のうち、地方の県庁、市町村等の役場等で持っております分が約五百二十トンございます。これを含めまして、全体の感圧紙の焼却につきましては、現在焼却炉を製作が終わりまして、焼却のテスト中でございます。そのテストがうまくいきまして、あと、処理方法についての許可が得られれば実際に焼却に入りたいと、こういうふうに思っております。
  103. 小平芳平

    ○小平芳平君 先ほど橋本局長も、この焼却実験をやったと言われましたですか、要するに焼却実験のデータは公表されておりますか、どうですか。
  104. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いまの問題はむしろ通産省の方からお答え願った方がいいのではないかと思いますが、これは科学技術庁が特別研究調整費を取りましてやったデータがございます。通産省の研究所でやっておりますので、向こうからお答えをお願いします。
  105. 松村克之

    政府委員(松村克之君) 御指摘の点につきましては、いま環境庁の方から……
  106. 小平芳平

    ○小平芳平君 公表していますか、していませんか。
  107. 松村克之

    政府委員(松村克之君) ありましたように、工業技術院の公害資源研究所で研究いたしまして、その結果は公表いたしております。
  108. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、通産省で先ほど言われました、現在のPCBの紙、トランス、コンデンサーについての資料、それから焼却実験の公表されたデータを私の方へ届けていただきたいと思いますが、よろしいですか。
  109. 松村克之

    政府委員(松村克之君) さよう取り計らいます。
  110. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、液状PCBを洋上焼却するということで、これも前回の委員会でいろいろ質問しておりますので、次の点についてお答えいただきたいのですが、洋上で焼却するということになりますと、タンクから船積みするときの安全性、焼却船自体の安全性、こういう点はどうなっているか。
  111. 松村克之

    政府委員(松村克之君) PCBの洋上焼却につきましては前に御説明したとおりでございますが、この洋上焼却の可能性について、いま御質問がありましたような点につきましては、本格的な調査研究を行うことといたしまして、現在産業公害防止協会の中に調査研究について委託を行うということで、この関係省庁、地方自治体、学識経験者等から成る廃PCBの洋上焼却処理調査委員会を設置し、それらの点について具体的な安全対策及び調査のあり方について検討いたしているわけでございます。したがいまして、その結果によって遺憾ないように、実施してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  112. 小平芳平

    ○小平芳平君 洋上といいましても、たとえば領海内なのか、それとももっと遠くへ行って領海外でやるのか、そういうような点はいかがですか。
  113. 松村克之

    政府委員(松村克之君) ただいま申し上げました関係省庁の中には、それらの点についての、運輸省あるいは水産庁等々の関係省庁もございまして、どのような海域が最も気象条件として安定しているか等々、その他関連の状況について今後協議を進めるということでございます。
  114. 小平芳平

    ○小平芳平君 環境庁はそれに対してどういう態度をとっておられますか。簡単でいいです。
  115. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) PCBの洋上焼却の関係につきましては、ただいま通産省からお答えがあったわけでございますけれども、洋上焼却処理といいますものは、これはわが国では初めてのケースになろうかと思います。したがいまして、環境に与える影響なり安全性等につきましては、十分に事前に調査検討をして適切に処理されるということが、これが必要であると、かように考えておるわけでございます。それで、ただいま通産省からもお話しございましたように、いろんな環境問題なりあるいは水産問題というようなこともございますので、そういう関係の専門家なり関係の役所の職員の方なども、この産業公害防止協会というのに設けております廃PCB洋上焼却処理調査委員会、これでそういうような環境というものに与える影響なりあるいは水産なり、そういう点も含めまして、この洋上焼却の適切な実施方法ということでの事前の調査研究というものを進めておるわけでございます。この委員会には環境庁の方も一応メンバーとして検討にも参加をいたしておりますし、委員会でのこの慎重な調査研究の結果というものを踏まえまして、環境保全に十分配慮した適切な処理が行われますようにこれは努めてまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  116. 小平芳平

    ○小平芳平君 環境庁長官、いままではこの抱えているPCBをどう処理するか、通産省がその担当部局として、これは洋上焼却以外にちょっとうまい方法がなさそうだというようなことになってきたように聞いておりますが、洋上で焼却するとなると、むしろ環境庁が中心になって、そして二次公害、二次汚染はどうかということを徹底して調べていただきたいということ。で、この委員のメンバーの一人に入っていらっしゃる方で愛媛大学の立川涼教授も、談話として次のようにお話しをしていらっしゃる。焼却しても一定の濃度で海洋汚染を引き起こすことは間違いないと。これは水と大気と両方が問題になると思うわけです。いまもっぱら水質の方で答弁をしていらっしゃいますが、大気の方ではどういう環境が変化が起きるか、汚染が起きるかどうか、そういうような点。それで、また同じく立川教授のお話の中には、国際的にも了解を得られるものでなくてはならないということ。あるいは結論を急がず、十分に検討すべき問題と、このようなお話がニュースとして伝わってきております。したがいまして、この洋上焼却、始末に困って、せっぱ詰まって船に積んで持っていって燃やせば何とかなるというような問題じゃなくて、ひとつ環境庁が十分その点は検討に加わっていただく、環境問題は当然環境庁が中心で検討していただく、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  117. 石原慎太郎

    ○国務大臣(石原慎太郎君) おっしゃるとおりだと思います。まあたまたま所管が通産省になっておりますけれども、環境庁といたしましても、二百海里専管水域の時代でございますし、当然重大な関心を持つべき問題だと思っております。ただ、仄聞いたしましたところ、何か大気の場合には、何度以上かの温度で焼却しますと、PCBは焼却によって変質して問題ないというふうに聞いておりますが、この点もう少し詳しく調べてみたいと思っております。
  118. 小平芳平

    ○小平芳平君 時間がないのと、私も専門家ではありませんので、十分このデータを公表し、また専門家に検討をさせていただきたいと、検討をしてからにしていただきたいと、要望いたします。  それから、次に十月二十七日の社会労働委員会で、撚糸工場でPCBの入った潤滑油を使っていた、そこの労働者の血液の中のPCB濃度が非常に高いという報告が、京都市衛生研究所の藤原邦達博士、その他の方で発表されたということ、この点については労働省から御報告いただきたいんですが、すでに社会労働委員会の会議録もできてきておりますので、ごく概要をひとつ部長さんから御説明いただきたい。
  119. 野原石松

    政府委員(野原石松君) 先ほどもお話がありましたように、PCBによる汚染の問題につきましては、昭和四十三年のカネミ油症事件以来大きくクローズアップされ、労働省といたしましてもこの問題を重視し、数次にわたる法制の整備等行いまして、規制の強化を進めてまいったわけでありますが、現在、PCBそのものは新幹線の車両のトランス油などごく限られた分野で使われているにすぎませんが、たまたまこの撚糸業界におきまして、これはもう昭和四十七年ごろまでの話と聞いておりますが、PCBを混入したスピンドル油——潤滑油でございますが、これを使用した実績がございます。そういったこともありまして、関係労働者の血液中のPCBの濃度が非常に高い値を示しているというような情報が京都市の御生研究所の方からございましたので、私ども直ちに当該地を管轄しております京都労働基準局に実態の把握を指示し、そしてその結果に基づきまして、設備の改善、つまりその汚染された土間とかあるいは床板の除去、こういったことを強力に進めてまいったわけでありますが、先月の下旬に、その後の追跡調査の発表が神戸市で行われました公衆衛生学会の席上ございました。それによりますと、一向にこの労働者の血液中のPCB濃度が減っていないと、こういうことでございますので、気中の濃度はそれほど高くないわけでありますから、問題は依然として土間とかあるいは床板が汚れておって、そこからの接触によって汚染されているのではないか、こういうふうに考えられます。そこで、私どもとしてはさらに京都労働基準局に指示をし、早急にこの設備の改善を進めるように現在手配をしておる状況でございます。
  120. 小平芳平

    ○小平芳平君 たまたま京都では市衛生研究所がそういう調査をして、健康調査をしている間にそういうことが発見され、報告されたから問題提起されたわけでありますが、スピンドル油あるいは潤滑油のほかにも、潤滑油自体も京都の撚糸工場だけで使ったんじゃありませんから、全国的に使われたに違いありませんし、そしてまた塗料等そのほかにもPCBは使われたわけでありますから、労働省としては、この京都については先日の委員会でもそういうように一生懸命やっているというふうに御答弁なさいますが、藤原先生のお話では何の音さたもないとおっしゃっているわけですが、京都は京都で進めるとともに、全国的に広がっている追跡調査をどう進められるか、この点について伺いたい。
  121. 野原石松

    政府委員(野原石松君) 実は、先般の社会労働委員会先生からの御指摘もございましたので、私ども直ちにその研究発表の内容をいただきまして、その内容を検討いたしますとともに、実は今週の初めに関係の専門官、それから医学系の職員を現地に派遣いたしまして、実態の把握、さらには論文を発表されました先生にお会いいたしまして、いろいろ事情をお聞かせいただいたわけでありますが、それらを踏まえて今後、まあ京都の問題はそれとしていろいろやりますが、そのほかにもいまお話がありましたように問題があるんではないかということで、それらに対する調査をどのように進めるか、いろいろ検討をしているさなかでございますが、実は、このスピンドル油なるものがほかの業界でも使われておったんじゃないかと、こういうことが一つには懸念されるわけであります。そこで、現在関係の省庁あるいは業界にいろいろ当たっておるわけでありますが、現在まで私どもが把握をしているところでは、そのようなスピンドル油、つまりPCBを混入したような潤滑油は、撚糸業界以外では使っていないんではなかろうかというふうな情報を得ております。したがいまして、当面、撚糸業といいましても、京都だけでなくて全国二十数ヵ所ぐらいあるわけでありますので、そういったところを重点として、その中でも比較的規模が零細なところにやはり問題がありますので、そういうところでしかもたくさんの事業場が集まっているような地域というものをねらい打ちにして、早急にもう少し幅の広い調査をやってみたいと、こういうふうに考えております。
  122. 小平芳平

    ○小平芳平君 まあ撚糸業界だけでいいかどうか、それは非常に私も疑問ですが、なお検討していただきたいと思います。  そこで、少なくとも健康ですね。血中PCBが異常に高い、平常人の百倍も高いというような方の健康についての将来にわたる観察は必要でありましょう。で、同じような職場環境で、PCBの入った潤滑油などを使われた同じ職場環境の労働者に対しては、血液中のPCBの検査をすることとともに、異常に高い方がすでに発生しているということははっきりしているわけですから、将来にわたる健康観察をどうやっていくか、この点についてはいかがでしょう。
  123. 野原石松

    政府委員(野原石松君) 実は、今回の学会における発表におきまして、血液中のPCB濃度が非常に高いと、こういうふうに指摘された方々につきまして、実際にどのような健康障害があるのかというようなことを調べてみたわけでありますが、現在のところは自覚症状を初めとする健康障害は認められないと、こういうことのようであります。しかし、私どもとしては、いまお話がありましたように、現在はそうであっても、将来それがさらに悪化するかもわからないということは当然考えられますので、関係事業場に対しまして、当該作業者の健康状況というものを十分に観察するようにということで、強力な行政指導を進めてまいりたいと思います。  それから、そういう観察の結果、万IPCBによると考えられるような自覚症状あるいは他覚症状を訴える人が出た場合には、より精細な健康診断といいますか、もちろん血液検査あるいは肝機能検査、こういうものを含めましたような特殊な健康診断あるいはそれに基づく健康管理、こういうものを強力に進めるように指導をしてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  124. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、労働省は、分析機関というものがそう各地方に十分あるわけではありませんので、環境調査あるいは血中のPCB濃度の調査については、たとえば県衛生研究所あるいは公害研究所、いろいろあると思いますが、そういうところに依頼するとか、あるいは予算ですね、その場合の労働省としての予算、予算がなくてちょっと今年度は手がつけられないというようなことになったんでは、いまおっしゃっていることが水のあわになっちゃうんですが、そういうような点についてはいかがですか。
  125. 野原石松

    政府委員(野原石松君) いまお話がありましたように、この調査を本格的にやるといたしますと、確かに環境汚染調査あるいは血液中のPCB濃度の測定といったように、非常に経費のかかるような調査も入ってまいります。労働省としては、こういったことに対応できる研究検査機関としては、付属の産業医学総合研究所あるいは検査センターというのも実はあるんですが、それだけではもちろん十分でありませんので、都道府県の衛生研究所にも十分な御協力をいただきたいというふうに考えておりますが、そういう意味合いにおきまして、今後関係の省庁と十分に御相談を申し上げまして、そういった場合に必要な経費の手当てをどのようにするか、まあ私どもの方で要求できるものはおのずから限界がありますので、そういったことについてさらに関係の省庁と十分に御相談を申し上げて、そういった裏づげの上に適切な調査ができるように進めてまいりたいというふうに考えております。
  126. 小平芳平

    ○小平芳平君 最後に、環境庁に伺いますが、こういう報告を受けておられますか。きのうお知らせしておいた事項なんですが、滋賀県草津市で、PCBの埋め立てをした日本コンデンサー工業草津工場が、PCB公害の汚染水田の土壌を入れかえるため池を地元から買い取った。そこへ、PCB汚染土を化学処理した上で池を埋め立てた。このほど近畿土地建設工業会社がその池を買い取ることに話がまとまった。ところが、県土地対策課は、売買価額や用途が適正である限り届け出を受理すると言うが、県環境保全課では、PCBが、中へ密封したとはいいながら入っているのだから、反対だと言っているということで、これは東京都にもいろんな例があったことは御承知のとおりでありますが、こういう点について環境庁は何か指導をされますか。
  127. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) ただいま先生からお話しございました件につきましては、聞いております。で、この面につきましては、ただいま先生からもお話しございましたように、そのPCB汚染土を封じ込め処分した跡地、これを利用したいということで、ことしの七月二十二日に、日本コンデンサーとただいま先生が名前を挙げられました近畿土地建設工業、この両社から宅地造成を目的としまして国土利用計画法によります権利移転の届け出がなされたわけでございます。で、これに対しまして、県の方では、環境保全の観点からいたしまして、封じ込めの状態を崩すような開発行為は好ましくない。結局宅地にすればいろんな基礎工事なりあるいはいろんな配管等もあってまた掘り返すということもあり得る。したがいまして、どうも封じ込めの状態を崩すような開発行為ということになりかねないというようなことで、まあ県の方ではいろいろ県の対策課なりあるいは環境保全課等のそれぞれの意見もあったかと思いますけれども、結果といたしましては、ただいま申し上げましたような好ましくないということで行政指導を行ったわけでございまして、その結果、八月三十一日、届け出は取り下げられたと、かように聞いております。
  128. 中野明

    中野明君 私は、去る十月二十日に起こりましたクウェートの国籍であるタンカー、アル・サビア号の重油流出事故についてお尋ねをしたいと思います。海上保安庁に最初にお尋ねをいたします。  この事故は、十月二十日の夜、高知県の室戸岬沖合いでアル・サビア号から油漏れの通報があって、保安庁では直ちに停船命令を出して、高知海上保安部の巡視船「くま」が現場へ急行し、その状態としては、油は東に向かって帯状にあり、土佐湾沿岸にはほとんど影響がないだろうとの見通しが発表されたようですが、そのとおりでございましょうか。
  129. 久世勝巳

    説明員(久世勝巳君) 先生ただいま御指摘のとおり、去る十月二十日午後八時五十二分、室戸岬の南方海域におきまして、ペルシャ湾から神戸向け航行中のクウェートのタンカー、アル・サビア号、これは三万五千七百五十二総トンでございまして、C重油を五万トン積載しておりました。これの右舷船首部に亀裂を生じて燃料油が流出していると、そういうことを代理店を経由しまして当庁に通報があったわけでございます。  情報を入手しました当庁は、夜間ではございましたけれども、直ちに巡視船「くま」を出動させまして調査に当たらせるとともに、翌早朝には鹿児島からビーチクラフト機を出動させまして、該船の監視あるいは流出油の調査実施したところでございます。そして、該船に対しましては、これ以上陸岸に接近して沿岸に流出油が漂着しないよう指導したところでございますが、当時の流出油の状況は、先生やはり御指摘のとおり、室戸岬の南約三十四海里の地点から南西方向に向けまして幅が約千メートル、長さが約四十二海里にわたりまして漂流しておりました。当時の気象・海象から判断いたしまして、当時北寄りの風が約十一メーターという相当荒天でございましたけれども、沿岸に漂着する公算が少ないと、このように当時は判断しまして、以後は随時監視体制に入っていたところでございます。
  130. 中野明

    中野明君 時間が非常に限られておりますので、なるだけ要点よくお答えいただきたいと思います。  ところが、いまの状況判断があった後、二十三日に土佐清水の漁船が足摺岬の南南西約十八キロから三十八キロの付近で、大量に重油が海上に浮流をしているということを報告してまいりまして、それで大騒ぎになったわけですが、いまお話しのように、船に亀裂が生じて油が流れたんですから、その船が通過してきたコース、これを保安庁の方では、飛行機まで飛ばされているんで、調査をなさったのかどうか。で、どちらが早く発見をしたのでしょう。その辺を。
  131. 久世勝巳

    説明員(久世勝巳君) その油の状況につきましては、実は二十一日の早朝に飛行機を飛ばしまして、四国沖の全体海域につきまして調査したところでございます。しかしながら、海上に流出した油というものは、一般に気象・海象の自然現象というものの影響を強く受けて拡散して、いろいろ複雑な様相を呈しておりますが、今回の流出油もそのようなことであったと、このように思われます。二十三日に漁船から報告を受けたことはそのとおりでございまして、先ほど申しましたように、いろいろ随時監視体制に入っておりましたので、その報告を受けまして、直ちに翌日に船艇、航空機をさらに増強しまして、その状況を監視したところでございます。
  132. 中野明

    中野明君 非常にこの事故は、当初の情勢判断の甘さというのがその後に非常に大きな影響を残していると、私も残念に思うわけですが、船が油を流しながら通過した地域をもっと最初に海上保安庁の方で掌握をして、そして連携をとっていただいたら、もっともっとその後の回収状況がうまくいったんじゃないだろうかということを私も考えている一人です。特に、この当初の情勢判断がそういうことだった関係でしょうか、高知の海上保安部も、二十日に事故がわかって二十六日に対策本部、県の方は二十九日なんです。ですから、もうこれ、どう考えてもおくれというものが目立つ事故でございますので、この情勢判断というものはより正確を期していただきたいと、このように強くこれは要望をしておきたいと思います。  それで、事故の原因とそしてアル・サビア号から流れ出た油の量、これは幾らになっておりますか。
  133. 久世勝巳

    説明員(久世勝巳君) まず第一点の事故の原因でございますが、アル・サビア号は、その後いろいろ洋上で船体を補修して、それから神戸で荷役をするという予定になっておりましたけれども、洋上の修理は大変むずかしいので、一応小松島沖にこれを入れまして、そして該船に応急手当てをしまして、それから神戸に入りまして、すでに搭載油は全部揚げたところでございます。しかし、事故の原因につきましては、一応今後専門家には、調査はしておりますけれども、ドックに入りまして修理して一応調査しないと確実なことがわからないということになっておりますので、今後その報告を受けたいと思っております。  それから、アル・サビア号から流出いたしました流出量は、これは私どもでは千三百キロリットルと推定しております。
  134. 中野明

    中野明君 この千三百がわかったのはいつの時点ですか。
  135. 久世勝巳

    説明員(久世勝巳君) 当初いろいろ該船から代理店を経由して通信連絡を受けたので、当日はよくわかってなかったのでございますが、その後、アル・サビア号が小松島に入りまして、具体的に海上保安官が該船に行きまして調べたところわかったわけでございまして、それはたしか私の記憶では十月の三十一日と記憶しております。
  136. 中野明

    中野明君 この種の事故というのは、やはり防除対策を立てるに当たって一番ぼくは問題になるのは、一体どれぐらいの油が流れて出たのかと、これがわからないでは油の回収をする体制は整わないのじゃないだろうかと、こう思うわけです。私も現地にも行ってまいりましたし、一緒に油の回収もやってみましたが、当初保安庁の方の発表では百三十キロ、ところが実際に油を回収している人たちの回収してきた油がすでにもう百三十キロをオーバーしたので、あわてて、恐らくこの分では千キロぐらいじゃないだろうか、そしていまお話しのように、最後は千三百になった、こういうことになったわけですね。この辺のことはもう非常に私も歯がゆい思いをするわけなんですが、最近は外国船籍の船が非常に多くなっておりますし、またそれらの事故がこれからもますますふえるんじゃないだろうか、こういう心配をしておりますが、外国船で領海外におったために立入検査ができないと、こういう一つの大きな隘路があるわけですが、今後この法律を改正してでも、何か流れた油が日本の沿岸に被害を及ぼすというような状況のもとでは、やはりどれぐらい流れたのかという立入検査ができるようにすべきじゃないだろうか、こう思うんですが、その辺の御見解はどうでしょうか。
  137. 久世勝巳

    説明員(久世勝巳君) 当該船からの流出油というものの量については、先ほどもちょっと申しましたけれども、無線連絡で、途中代理店が入ってきましたので、つまびらかにならなかったのは事実でございますけれども、われわれとしても先生おっしゃっているとおり、その流出油の量というものの算定は一刻を争うことだと思いますし、今後ともその教訓を生かしてやっていきたいと思います。  それから、いま第二点の御指摘の、立入検査の件でございますけれども、海洋汚染の問題につきましては、現在の国際法上は、領海外において外国船舶に対しまして立入検査権を発動することは、いまのところ私どもはいたしかねるところと存じております。また、今後の問題につきましては、現在国連海洋法会議等の場においていろいろ検討中であるので、私どもとしましては、国際的な動向につきましで十分関心を持って見守っていきたいと、このように考えております。
  138. 中野明

    中野明君 そうしますと、領海の中へでもこうオイルフェンスを張って、来てもらってでも調査をするとかいうことをしないと、いまのお話のように、二十日に油が流れて、全部流れて本当に量がわかったのが三十一日でしょう。その間もう何かこう手探りで回収をしているというような状態なものですから、これは考えていただかないと、今後この種の事件が私は起こる可能性はあると思います。その辺をぜひ研究もし検討もしていただいて、油が流れたその量を——これはいろはのいだろうと思いますので、早く掌握するようにお願いをしたいと思うわけです。  それで、一千三百キロリットル流れたんですが、大体土佐湾に入ってきたのはそのうちどれぐらいとお考えになっていますか。そして回収した量はどれぐらいになっておりますか。
  139. 久世勝巳

    説明員(久世勝巳君) やはり原則的な立場で流出量の算定というのは早くやらなくちゃいけないわけでございます。先ほど申しましたように、アル・サビア号から約千三百キロリットル流出したと、このように推定されますが、私どもいままでの経験で、一般に海上に流出した油は、いろいろな自然現象がございまして蒸発するほか、拡散とか浄化、漂流とか、いろいろな複雑な様相を呈するため、いま先生が御指摘になりました、土佐湾にどれくらい流入したかという量については、実は推定は困難だろうと、このように考えております。しかし、今月の四日までに、これは海上保安庁あるいは船主、あるいは船主の手配しましたいろいろな防除機関、あるいは漁船等の総合的な回収した油は一応約百八十キロリットルというふうに考えられるところでございます。
  140. 中野明

    中野明君 いま申し上げましたことは、今後の問題としてぜひ、法改正までいかなくても、すぐ立ち入りができるような研究をお願いしたいと思います。  それから、次に海運局にお尋ねをするんですが、この船の保険でございますが、保険については総額幾らになりますか、これ簡単で結構ですから教えていただきたい。
  141. 山下文利

    説明員(山下文利君) 私どもの承知している限りでは、イギリスのウエスト・オブ・イングランドという保険会社に三千万ドルの保険をかけてあると、このように聞いてございます。
  142. 中野明

    中野明君 そうしますと、日本円にして、まあ現在円が変わっておりますので、ちょっと……。
  143. 山下文利

    説明員(山下文利君) 円換算をどうするかによりますけれども、約七十億以上は確保できるんじゃないかと、このように思っております。
  144. 中野明

    中野明君 そこで、水産庁にお尋ねいたしますけれども、この事故による被害額、漁業被害額といいますか、回収に要した費用、休業補償、それらを含めて一体どれぐらいになっておりますか。
  145. 伊賀原弥一郎

    説明員伊賀原弥一郎君) アル・サビア号の重油流出事故による漁業の被害額につきましては、現在高知県漁連の中に、高知県漁連流油補償対策委員会というものができておりまして、この委員会が各漁協から細かく資料を取り集めまして、被害額の算定をやっておる最中でございます。まず十一月末ごろまでには最終的な被害額をまとめるようにやる予定であるというぐあいに聞いておる次第でございます。
  146. 中野明

    中野明君 これはぜひ正確を期さなきゃなりませんので、なるたけ早く正確にということなんですが、特に漁を休んで油の回収に当たった、これはもうほとんど回収作業は終わったんでしょうから、休業補償なりあるいは回収に要した経費、これは早くわかると思いますし、またわかっているんじゃないかと思いますが、その辺どうでしょう。
  147. 伊賀原弥一郎

    説明員伊賀原弥一郎君) 先生からお話がありましたように、算定の中で、防除関係の費用につきましては算定作業が比較的早く進んでいるというぐあいに話を聞いております。ただ、問題といたしましては、いろいろな単価なり——一つ船をとりましてもいろいろな船型がございまして、どういうような単価を当てはめるかというような問題、あるいは一日全部出動しなかったような場合もございますし、そういうものをどう標準的な数字を入れて計算するかと、そこら辺がまだ若干詰まってないというぐあいに聞いておる次第でございます。  それから、その後の実際の漁業の方に係りました被害につきましては、それよりは若干おくれておりますが、これにつきましても漁連及び全漁連という全国の系統団体がございますけれども、それも加勢いたしまして、また県の職員も加勢をいたしまして作業を一生懸命進めておるという段階だと聞いております。
  148. 中野明

    中野明君 非常にこれは、前回の水島の事故に例がありますように、やはり双方の損害額の言い分にもかなり大きな食い違いがあったりすることが通例だろうと思いますが、先ほどのお話で、保険に七十億円入っておるということのようですので、ぜひこれは円満に交渉をしていただいて、補償だけは十分にお願いをしたいと、こう思っております。交渉は現在もう始まっておるんでしょうか、その辺。
  149. 伊賀原弥一郎

    説明員伊賀原弥一郎君) 補償を受けますのは個々の漁業者ということになるわけでございますが、それでは交渉になりませんので、高知県漁連が一応全部をまとめたような形にいたしまして、それを二人の弁護士が代理いたしまして、船主側の弁護士との間の補償交渉をするということになっております。もうすでに弁護士同士で下打ち合わせをやっているというぐあいに聞いております。
  150. 中野明

    中野明君 非常に、年の瀬も控えておりますし、休んでまで大変苦労をして油の回収に当たったんですから、水島のときも何か年末に一時金のような、前渡しのような形で補償が出たやに聞いておりますが、そういう方面も含めて、今後水産庁の方としても極力応援をしてあげていただきたい、このことを要望しておきます。  それから、時間がございませんので、最後に国土庁にちょっとお伺いをしたいんですが、今回発表されましたこの三全総に、四国西南地域の開発が盛り込まれておりますが、私どもが承知しております範囲では、当初の草案の中ではこの四国西南地域が入っておらなかったはずなんですが、それが成案の中で入ってきたわけですが、途中でこの西南地域が組み入れられたのには何か特別の理由がおありなんですか、どうですか。
  151. 星野進保

    説明員(星野進保君) 先生御指摘のとおり、当初の案では南九州とか沖繩地区とかといったまあ特異な状況のあるところの一つの中に四国西南は入ってなかったのでございますが、その後審議会で御検討いただいたり、われわれもその後いろいろ地元の要望等を受け入れまして検討した結果、南九州と同じように、かなり地域的な条件、それから最近の人口流動の状況、要するに若年層がかなり流出しておるとか、そういうような非常な厳しい条件にあるということが確認されましたし、地元、それから先ほど申し上げましたように審議会での御要望、そういうものがありましたので、当然南九州と同じような形で四国西南を位置づける必要があるだろう、こういうことで入った経緯がございます。
  152. 中野明

    中野明君 この計画を入れるときに、いわゆるCTSというんですか、原油基地、この問題を含めての開発という前提になっておるんですか、どうですか。
  153. 星野進保

    説明員(星野進保君) 私ども、今度の三全総におきまして非常に重視しておりますのは、定住構想ということで、そこにおられる方々がいかにその地域で安心して——その安心の中身といたしましては就業の場も当然入るわけでございますが、安心して生活していけるかということを基本的な態度としております。  したがいまして、文章を念のためにここで申し上げますと、「四国西南地域は、平地が乏しく、かつ、脆弱な地質、台風常襲地帯であること等の制約的な自然条件を持ち、更に交通基盤等の整備が立ち遅れ、既成の集積地との連携が困難な状況にある。この結果、産業の発展が遅れ、若年層の流出が続いて人口構造の老齢化が著しく進んだ地域となっている。このため、豊かな水資源、森林資源、水産資源、恵まれた自然景観、温暖多照の気候、良好な開口性湾域などすぐれた条件を活用し、自然環境の保全、国土の保全を図りつつ、特に施設園芸、畜産等を主体とする農業、林業、水産業、地場産業、観光レクリェーション等を振興し、新たに工業等の導入に努め、交通体系の整備を促進するとともに、教育、文化、医療機能を含めた総合的居住環境の整備を図る。」ということを書いておりまして、基本的には私ども、ここでは非常に恵まれた自然環境がございますので、一次産業を主体にしたような形で、しかも、その場合に、できれば加工工業としてはそういう一次産業と結合したようなもの、で、なおかつ足りない場合には、当然内陸工業だとかはその就業の場として確立すべきであろうということを、四国西南地域についてはいまお読み申し上げましたような形で書いてあるわけでございます。  ただ、私どもちょっと違った観点で、国民生活の基盤といたしまして、エネルギーという問題は非常に大きな問題だという認識を片一方で持っておりまして、特に現在のエネルギー基地、特に石油精製等の基地につきましては、東京湾それから瀬戸内海に非常に密集し過ぎておりますので、できることならそれを他の地域へ移転さしていくということは別の個所で書いてございます。四国西南地域について、いま先生御指摘の、CTSをお前ら頭に入れながらここで書いたのかというお話については、それは当然ここにはいまお読み申し上げたことしか書いてございません。
  154. 中野明

    中野明君 この別の個所に書いてあるのが私もひっかかるんですがね。それで、なぜここでこういう話を持ち出すかと言いますと、「日本列島改造論」という有名な本が出まして、その中で、この宿毛湾というのが原油基地にもう最適じゃないかということが書かれてあったために大騒ぎになりまして、そして地元ではもうこれ、こぞって漁民は猛反対です。特に今回この事件が起こりまして、地元漁民の心配が表面に出たわけですね。御承知のように、日本の漁業の一番の宝庫と言われる黒潮が、一番日本に近づいているところが足摺岬なんです。その足摺岬のすぐそばに宿毛湾があるわけです。ですから、そこへ原油基地を持ってこられて、黒潮が汚染されたら、もう日本の漁業は恐らく壊滅的な打撃を受けるだろう。しかも、二百海里時代だというようなことになりまして、漁業資源というのは、やっぱりこれ非常に重要な国家的要請にもなってきております。こういうことですので、ぜひこれは、原油基地はちょっとこれ適地じゃないんじゃないか。列島改造論では最適地となっておりますけれども、私は真っ向からそれには反対をしております。現実に最適の地域とは思われず、最悪の地域だろうと思っております。今回このアル・サビア号がわずかな油を流しただけで、もうすでに土佐湾へ黒潮と逆流して入ってきているわけですから、今後宿毛湾に原油基地が来れば、これはもうこういう事故が日常茶飯事のようにもし起こったとしたら、もう漁業はだめになるでしょう。  しかも、もう一つ問題になるのは、これは環境庁長官の御見解を聞きたいんですが、足摺宇和海、ちょうど宿毛を真ん中にはさみまして、片や足摺、片や宇和海です。足摺宇和海国立公園になっております。この国立公園に昇格させる条件として、海中公園、海中の景観というのがすばらしいということで、日本の海中公園の本土では第一号ということで、私どもも一生懸命骨を折らしていただいた一人なんですが、そういう非常に重要な自然環境保全の指定地域になっております。このちょうど目になる、ど真ん中に宿毛湾があるわけです。だから、これはもう漁業の問題も考え、あるいは自然保護、環境保全、海中の景観ということ、こういうことを含めまして、宿毛湾の原油基地という、これはいま国土庁のお話では全然、まあ全然考えていないということは話が出ませんでしたけれども、そういうことを仮定したとしたときに、環境庁長官のお立場から、立地条件として、果たしてこの、宿毛湾が原油基地として適地であるとお考えかどうか、御所見をちょっとお聞きしたい。
  155. 石原慎太郎

    ○国務大臣(石原慎太郎君) 具体的にこういう計画がどこまで進んでいるかつまびらかにいたしませんが、想定ということで申しますならば、これはあくまで私の個人的な見解になりますけれども、私はやはり好ましくないと思います。私自身、足摺の近くの海、また宿毛湾、自分自身が海へもぐりますからよく存じております。先般も伊豆の新島にCTSの基地云々ということがされましたときに、物事が決まったわけではございませんので私は発言を控えておりましたが、幸い撤回されたようでございますけれども、やはり場所というものを選びませんと、いたずらに集中を排して適当なところに、地形がいいからというだけで持っていくということでは、本当の意味の社会に利益を還元する開発にはならぬと思いますし、宿毛湾に限って言いましても、私は先般問題になりました新島と同じように、自然のかえがたい景観ということからしましても、これは環境行政の上から言っても余り適当ではないという気がいたします。
  156. 中野明

    中野明君 いま環境庁長官のお答えを聞きましたが、私も同意見を持っております。日本の国情から見まして、現在においてはエネルギーの一番大切な石油、これを備蓄することについて、決して、もう一から十までやみくもに反対しているんじゃございません。いま申し上げたような諸般の状況から判断して、立地条件としては、私は適、不適ということに分ければ、不適の立地条件じゃないだろうかと、こういう見解を持っておりましたが、いまの御見解を聞きまして、環境庁長官も大体私と同じような考えをお持ちになっておりますので、その点は意を強くした次第でございます。  今回の事故がそういうことを、私どもの心配を裏づけしてくれたような形になりまして、各関係方面の皆さん方にこの事故の後の処理、それから、環境庁もできれば水質調査もしていただきたいぐらいに思っておりますが、補償の問題も含めて善処していただくことを最後に要求いたしまして、私の質問終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  157. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、限られた時間でお伺いをしたいんですが、最近の報道を見ておりますと、実は私ちょっと異例なことだなあというふうに感じるわけです。といいますのはね、石原環境庁長官に対する罷免要求決議だとか、それから罷免要求あるいは抗議というのが各団体から非常に多いわけです。これは報道で見る限りでもずいぶん多い。今月になってから報道されている分を見ましても、総評の評議員会で石原長官罷免要求することを満場一致で決議したと、これは十一月の九日です。それから十一月の十一日には、環境週間・全国公害被害者総行動デー実行委員会、ここでは環境庁に石原長官の辞任要求の申し入れがやられております。それから、十六日には、公害対策全国連絡会議から、石原長官を罷免せよと福田総理あての申し入れがやられております。まあこのほかにもいろいろありますが、昨日はまたマスコミ共闘から、石原長官の辞任と謝罪要求というふうなことを含めて抗議がなされておるわけでございます。私は、歴代環境庁長官の中でこういうことが次から次とやられておるというのは全く異例のことだと思う。私は国会へ参りましてまだ五年になりませんけれども、しかし、歴代長官ではそんなことはなかった。こういう異例の事態が起こってきているという点について、石原長官、どういうふうにお感じになっているのか、所信をまず最初にお伺いをしたいんです。
  158. 石原慎太郎

    ○国務大臣(石原慎太郎君) それは、まあ罷免要求なきにこしたことはございませんし、大変遺憾なことだと存じますが、そういう要求をされていらっしゃる方々、それぞれやはり政治的な価値観と申しましょうか、所信も私とおのずと違うところの方々のようでございます。それで、その問題、そうした動向の何よりの引き金になりましたことは、やはりそういった抗議文等にもうかがわれておりますけれども、私の例の調和条項に対する発言のようでございますが、しかし、どうも拝見しておりますと、私の発言の真意を御理解いただいてないといいましょうか、そこまで行く前に、たとえば調和条項の復活を図っているから許せないというふうな文章がございますが、私はたびたび国会でも明言しておりますように、いまこの時点で調和条項を昔と同じ形で復活するというようなことは申しておりません。その種の誤解もありますようで、衆議院でもこの問題について社会党の委員、共産党の委員といろいろお話しをいたしましたが、話し合いをしてみますと、野党の方々も今日の経済情勢を踏まえて、環境問題に関する認識というものが四十五年当時とはかなり変わられているという感じがいたしました。それは、私は、国会における討論の望ましい一つの所産だという気がいたしますが、そういう意味で、そうした方々とも機会があればお話しし、そして私の真意というものをやはり十分に理解した上で、またひとつ御批判を仰げればと思っております。
  159. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 長官、そういう十分真意が理解されていないというふうにおっしゃられるわけですが、これは、私どもも、そういう私どもの知らないところでも、幾つか決議をされたりなんかしておりますから、全部皆さんの御意見聞くわけにはいきませんけれども、しかし、たとえば公害連の「罷免要求について」という内容を見ましても、これは経済との調和条項の問題についての発言ですね。基本姿勢の問題で、これはきわめて重大だという点をとらえていますのは、私は単に理解が十分いっていないということだけではなくて、長官御就任以来の諸問題、ずっとこう一連の諸問題の中での言動、そういうことと関連をして、まあいわば一年近くの間の総決算みたいなかっこうで先般そういう御発言をなされたというのが、やはり一番大きい問題になっておろうと思うんです。たとえば、お持ちになっておられるかどうか知りませんけれども、ごらんになっておられるかどうか知りませんが、公害連の罷免要求の中で、たとえば調和条項の問題、それから環境アセスメント法案の問題についてもこれは触れておるわけですね。これは冒頭にそのことを触れておりますが、その点で長官の言葉の真意云々といのうではなくて、考え方として、あるいはよって立つ立場が、一貫して大企業、財界の立場に立っているというふうにしか見られないという点を非常に強く指摘しているのは御承知のとおりです。  それで、たとえば環境アセスメント法案の問題につきましても、これは国会でも、次には出す、次には出すと言いながらいまだに出ませんし、今国会にもついに出されなかったわけです。まあおくれた理由については本委員会等でもたびたびお伺いをいたしておりまして、建設省や通産省や関係省庁あるいは企業側との調整が必要なんでというふうな御意見がずっとあったわけですが、しかし、その間に柳瀬局長の急激な更迭があるというふうな暗い情報が出てきたり、そういうことが出てまいりますと、これは長官一体何を考えているんだということにならざるを得ないわけです。で、たとえば「経団連週報」という、これ経団連の部内資料なのかどうか知りませんが、「経団連週報」というのを拝見してちょっと驚いたんです。たとえば「経団連週報」のこれは三月二十二日号、四月の十二日号、それから五月の十七日号、これ毎日毎日——月一回理事会をおやりのようなので、毎月そのことをやられているんですが、この「環境アセスメント法制化問題」というのが毎回議題になっておりまして、こんなふうに書かれておるんですね。その環境アセスメントに関する項には、「当会としては、あくまでも法制化そのものに反対すべきであるとの基本的立場にたって、現在政府、与党首脳部ほか関係方面に対し、この趣旨を鋭意働きかけている。なお、本問題は最終的には総理の判断で決まることになると思われるので、福田総理には先般、土光会長より直接経団連の考え方を説明し、陳情した。」云々というふうに書かれているんです。それから四月号にはどういうふうに書いているかといいますと、「われわれとしては、あくまでも法案が国会に出されないようにすることが何よりも重要であり、今後引続き事態の推移を見守り、対処してゆきたい。」云々と出ているんですね。それで、五月の十七日号では、「環境アセスメント立法化問題について」という項に、「最終的には、さる十三日の閣議において法案の今国会提出は見送られることになり、一応私どもの心配していた事態はとりあえずまぬがれた。」というふうに書かれているわけですが、三月の二十二日号によりますように、反対だと、法制化反対だという立場で、「現在政府、与党首脳部ほか関係方面に対し、この趣旨を鋭意働きかけている。」というふうに書いてあるわけですがね。まあ関係方面といえば環境庁が一番その直接の衝に当たる関係方面だと思いますけれども長官、何らかの要請を受けましたか。
  160. 石原慎太郎

    ○国務大臣(石原慎太郎君) そのようなことはございません。むしろ——その前にお断りしておきますけれども、再三申したことかもしれませんが、その案文がアセスメント法に関してできたのはこの一月でございます。歴代の長官、提出されるされると言ってこられましたが、しかし、実際の案文ができたのは一月でございまして、日本の行政原理の中にいままでなかった一種の手続法というものは、もう非常にいろいろな点で問題を含んでおると申しましょうか、他省から見れば目につく存在で、まああれだけ重要な法律案を、一月に案文つくって各関係省庁との討論を経て国会に提出するというのには、私も最初ちょっと時間がないのじゃないかという懸念をもうとにかく冒頭に持ったことは否みません。で、私自身も、これを何とかして前国会に提出するために、むしろ逆に経団連にも働きかけまして、こちらから相手を洗脳するような努力をずいぶんいたしました。そしてその結果、私たちがつくった案文を逐条に説明しましたところ、何人か来ました経団連側の代表者が、電気業界を除けば、何だ、こういうものだったのかと、私たちの理解がちょっと違っていたというふうな、そういう合致点まである時期持ったことがございます。ただ、電気業界はいろいろな形でつまり抵抗を示しておりましたが、なおやはり形を変えてこういった業界も説得する必要があると思ってその会合を終わりましたけれども、その後またいろいろな方から巻き戻しがあって、どうも事が膠着し、結局タイムミリットが来て残念ながら提出できなかったわけでございます。  それから、人事のことについて言われましたが、私はとやかく言いわけはいたしませんけれども、やはりアセスメントのためにもよかれと思って行いました人事でございますし、そういう点、結果がこれから先あらわれてきて御理解いただけることと私は思っております。
  161. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それはあれなんですね、長官、やっぱり御就任以来いろいろの言動がありますけれども、まさに長官のお考えと合致しているというふうに報道を受けている国民は見ているわけです。というのは、私も、長官就任以来いろいろと御発言、御行動になっておられることが新聞紙上にあらわれているのをずっと通読をしてみたのですが、毎度見ているわけじゃないので、私ども長官の言動を知るのはそういうことが中心にならざるを得ないわけですけれども、二月の一日の日経新聞を見てみますと、こういうふうに書いているんですね。「石原行政 役所の環境を変える」というところでアセスメント問題が出ているわけですね。そこで、私の考えを入れると長官が言われた。そして、「法案作成準備を着々と進めていた企画調整局のメンメンをびっくりさせた。」「しかし」——その担当官の言葉が書かれているんですが、「アセスメント法の目指しているのは開発の〃否定〃ではなく、健康被害など環境への影響を未然に防ぐことで、視点は開発規制というよりも公害の未然防止に置かれているのであって、長官はここを混同されているのではないか」というふうなことで、就任されて以後すぐに発言をされていることが、かねがね仕事を進めてきておられる事務当局をびっくりさせたというふうなことでも出ておりますように、まさに合致しているというふうに受け取られているわけです。これは日経新聞ですよ。何だったらごらんいただいたら結構です。  それから、「経団連週報」のやっぱり同じ四月の十二日砂ですね。これにはこない書いてあるんですよ。「先般来より福田総理はじめ政府・与党関係方面に鋭意働きかけているが、」——お名前が出ているのです。「石原環境庁長官は、産業界が危惧している点についてはある程度認識してくれたものの、環境庁事務当局から相当説得されたためか、何とか立法化したいという決意は固いようである。」と、なかなか経過的にあなたのお考え方の変化というものをわざわざ週報に出している。そういうことなんですね。  そういう点で、やはり国民が、いろんな諸団体であなたにそういう罷免要求決議あるいは抗議に来られるというふうなことが続出をしているというのは、一連のそういう問題として見られているわけです。やはり公害対策、環境行政というのがいわゆる経済寄り、大企業寄りであるかないかというのがやはりかなめになっているわけですね。だから、経済との調和条項の問題で、あんなのを法律から外したというのは魔女狩り的だなどとおっしゃったら、まさにどんぴしゃり、財界の、経団連の御要望どおりのことをおっしゃると、こうなるわけですよ。そのあたりの問題というのをやはりもっと深くお考えをいただきたいと思うんです。  ですから、たとえばNOXの関係でもこれはいろいろありますよ。いろいろ論議もしてまいりましたよ。しかしずっと後退しているというふうに見ざるを得ないわけですね、確かに。規制だって第三次規制が半年以上もおくれたし、規制もゆるめられたと、あるいは当初から健康被害補償法の対象物質にすると言っておりながら、いやしないんだというふうなことで次々後退をしてきている。しかも片方では患者がふえているというふうな問題があるわけですね。しかもNOxについてもこれは経団連では非常にはっきり言っておりますが、しかも行動もしていますよね。経団連は去年の五月の二十日に、これも週報の記事ですけれども、通産省の立地公害局長を呼んで、財界が最も重視しているNOxの基準骨抜き問題、これについて、NOx問題について懇談をしているんですよね。こういう点などが出てきておりますから、そういう動きとしかも環境行政の経過、これを見ますと、財界翻りだというふうに国民が判断をせざるを得ないというふうな形でこれは出てきているというのはもう明らかなわけです。  それから、もう一つ重大な点は、それと符合するとも見える重大な点だと思いますのは、国民に対して冷たいと、きわめて独善的で非民主的だというのがいろんな形で出てきている。これも私ずっと読んでみて驚いたんですけれども、たとえば長官この前の委員会でもおっしゃっておられましたが、調和条項のときにね。環境問題については産業との関係というのは無視できないと——アセスメントの問題ですよ。しかし、健康問題は第一に考えるのだとおっしゃっておられるのだけれども、いろんなものの文章や新聞記事などを見てみますと、水俣病患者でも公害患者でないのに救済をされておるのがおるとか、そういうことを言っておられるのですね。これには——これは毎日新聞のことしの二月五日ですわ。「石原発言の真意問う」というようなのが、水俣病被害者の会から公開質問状が出ておるのですね。そういう問題が出てきたり、あるいは例のテニスの問題で、国民と会う時間はないけれどもテニスをする時間は取るんだというようなことね。これはいろいろ理由は聞きましたよ、聞きましたけれども、客観的にはそういうことになってしまっている。特に環境庁の記者クラブとの問題につきましては、これは私も長官がいろんなところで言われておる文章、発言等を、特に雑誌「現代」で対談をしておられるのなども拝見いたしました。しかし、それだって根拠を示さずに断定をするというふうな独善性ね。これはやはり民主主義の原則に反しますよ。そういう非民主的な独善的な性格というのですか、これはそういうやり方に対して国民がもうがまんがならぬということで出てきていると思うんですよ。その点、私は歴代長官にはこんなに集中されて罷免要求決議などが出たのは見たことがない。にもかかわらず石原長官にこれだけ集中して来ているという点について、これはね、長官、考えてみなければならぬと思いますよ。あんた不適格だと国民から言われているのだから。本当に。一遍見解を述べてください。
  162. 石原慎太郎

    ○国務大臣(石原慎太郎君) るる私の言動についての御批判なりをいただきましたけれども、しかし、たとえばその調和条項についての発言についても、抗議される方もおりますけれども、むしろ私の言うところが妥当であると、こういう機会をとらえて、経済もこうなってきた状況の中で、生活環境の問題をどういうふうに経済と一極の相互主義にのっとって考えていくかということを、もう一回考え直す必要があるんじゃないかという論もあるわけでございまして、まあ国民国民と言われましても、国民にはいろんな方がいらっしゃるわけで、私は要するに両方の意見をしんしゃくしながら冷静な行政をしていくつもりでございます。  客観的にと申されましたけれども、しかしそれが果たして絶対な客観であるかどうかということは、私にしてみますと、私の言動を正確にとらえずに、しかもある政治的な立場にのっとられてそれを曲解されているという非常に不本意さもございます。ですから、やはり国会の討論だけではなしに、マスコミをかりたりしてこの問題についても大きな国民的な討論というものが行わるべきだと私は思うんです。まあケネディじゃございませんけれども、激しい討論というものは、ある時期一つの大きな対立というものを生み、摩擦を生みますけれども、やはり討論の末一つの進歩があると思うんです。私は、衆議院での公環特でいろいろな野党の方と議論いたしましたが、その結果、やっぱり野党の方にも、自分たちといえども、つまり経済との調和というものを決して否定するものでないという発言をされたということは、私はやはりこれは大きな進歩だと思うんですね。そういう意味で、言葉の一部をとらえてそれを拡大解釈されたりしないで、やはり開かれた場所でですね、抗議される前につまり討論というものを持たれるべきじゃないか。私はやはり民主主義社会というものはそれで成り立っていくんじゃないかという気がいたします。
  163. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 まあ私はいままでの一連のそれぞれの局面については御見解を聞いているんですよ。いまそれを聞こうと思っていない。しかし、歴代の長官にはこんなことなかった。あなたにだけこんなになっているというのはやはり問題だと思うんですよ。その点について少しも反省をしておられないわけですか。
  164. 石原慎太郎

    ○国務大臣(石原慎太郎君) ですから、調和条項の問題については、反省と申しましょうかね、要するに不当な表現だった部分は取り消しましたけれども、しかし、私は現在環境行政というのを預かっている当事者として、責任者として、いろんな問題でいろいろな支障を感じていることがございますので、四十五年のあの措置について自分の印象を語ったわけでございます。ですから、私たちはやっぱり環境行政というもの、環境問題というものが時代的な変遷を経て、現代どういう新しい状況にあるかということを直視しなければならぬと思うんです。ですから、そういう直視の末、討論の末私の考え方が間違っていたというなら私は撤回をいたしますし陳謝もいたしますけれども、しかし、人の真意を聞かず討論もしないで、一つの言葉をとらえて、しかもそれを曲解し、私が言ってもいない調和条項を復活するのはけしからぬと言われても、これは筋違いの抗議じゃないかと私は思うんです。  それから、記者クラブの問題も、これは記者の諸君とずいぶん討論いたしました。私対環境庁記者クラブのいろいろな問題をこういう席で取り上げていただくのは恐縮ですけれども、これはやはり中傷したかしないかという問題について、どうも見解が平行線で一致点を見出せません。そういう状態であるわけで、私はこの問題についていろんな専門家にも相談しましたし、自分に本当に非があるならば謝りもいたしますが、回答書の段階で、「該当しない方々には」という形で私はおわびもしておるわけで、しかも、私はだれを特定して中傷しているわけでもないし、環境庁記者クラブ全体を誹謗したわけでもないと思っております。そういうことで、これまた平行線で来ておるわけですが、そういう点ひとつ御理解いただきたいと思います。
  165. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、まあ私は記者クラブの問題も時間があれば詳しくお伺いをしたいと思うんです。特に、わが党の機関紙「赤旗」というのが名指しで長官のお言葉に出ておりますからね。だから、それもああいう雑誌「現代」でのお話し合いの模様から見たら、何も具体的な中身なしに、「赤旗」というふうに——「赤旗」のどの記事なんだという点まではっきりなさるんならまた話は別ですけれども、全く一方的に何の根拠も示さずにああいう独善的な態度というのは私どもも認めがたいです。  で、時間がありませんから、さらに私は申し上げたいと思いますのは、環境行政上の環境庁長官としての基本姿勢がいろんな角度から問われているというだけではなくて、政治家としての良識の問題ですね、これについても疑われるわけです。一昨日、これはもう御承知になっておられると思いますが、衆議院の公選特別委員会でわが党の安藤議員が指摘をいたしましたが、新しい改正された政治資金規正法の、まあ法網をくぐったというんですかね、というような形で、一体何をやってるんだというふうに思いますよ。  自治省の方来ておられますか。——石原慎太郎氏に関する政治団体というのは幾つあって何というんですか。
  166. 岩田脩

    説明員(岩田脩君) 一昨日の衆議院の公選特別委員会で取り上げられました団体の名前を申し上げますと、結成月日順に申し上げまして、日本の新らしい世代の会、真・革新政治経済研究会、石原慎太郎の会、石原慎太郎慎友会、石原慎太郎慎和政経懇話会、石原慎太郎政経後援会、石原慎太郎曙会、石原慎太郎曙光会、石原慎太郎若潮会、以上九つの団体があの委員会で取り上げられました。
  167. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、時間の都合がありますので、全部自治省の方に言っていただいたら一番いいんですが、私、一昨日衆議院でやられたことの内容をちょっとまとめて申し上げますから、間違いがあるかないかを言っていただいたらいいと思うんですね。  いま御報告がありました長官の政治団体ですね。九団体あるわけですけれども、このうちの五団体は昨年新設されているんですね、設立年度から見ますと。この九団体のうち、八団体の事務所は大田区山王一−三十一−十三福田ビルで、全く同一だということになっていますね。それから、そのうちの五団体では電話番号が同一または連番となっていますね。それから、届け出順序、届け出の受理番号などを見ましても——まあ大したことないと言えばないんですけれども、連番なんですね。筆跡も似たものが多くて、四、五人がどうやら分担してやっているようなものに見られる。それから、そのうちの二団体では事務責任者が同一人。で、九団体の職員全体の給料を石原慎太郎の会が支払っていると思われる。これは都内活動費の支出などの状況を見ますとですね。  こういうふうに見てきますと、今度の新しい政治資金規正法では限度額百五十万ですか、金額規制がありますから、全くその寄付の限度を免れるために急速につくられたトンネル団体だとしか見られないという疑いもあるわけですね。一昨日問題になった資料を見てみますと、たとえば、九団体のうち宗教法人霊友会からの寄付金は、九団体中八団体がそれぞれ百五十万、計千二百万というふうになっているわけですね。それ間違いないですね。
  168. 岩田脩

    説明員(岩田脩君) 大変多岐にわたりましたのであるいはあれかもしれませんが、九団体のうち五十一年度に結成された団体が六つあること。それから八団体が大田区山王一−三十一−十三に事務所があること。それから電話番号に連番のものがあることは事実であります。それから、受理番号と筆跡の問題については、これは一昨日はたしか話が出なかったと思いますが、受理番号については幾つかのものにこう並んでいる——全部が並んでいるというわけではありませんが、並んでいるのがあるのは事実であります。それから、筆跡についてはお答えする限りではなかろうかと存じます。事務責任者が同じもの、これは私どもの方でいきますと事務担当者、私どもの方に報告書を提出された、その報告書の表紙に書かれました事務担当者の氏名のことをおっしゃっているんだと思いますが、これが同一のものが一件あるのは事実であります。それから、人件費の点に関しましては、これもそういう方に対して活動費が出ているのは事実でありますが、人件費がどの団体からどういうように支払われているかということは、私どもの方ではわからないようなことになっております。  以上でございます。
  169. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、その調査の中身を見てみますと、「都内活動諸経費」という形で、石原慎太郎の会から支払われているのですね。そういうふうに見ますと、九団体あるけれども石原慎太郎の会が胴体で全く八岐大蛇みたいなかっこうになっているんじゃないかとしか思えないわけですね。しかも、一昨日の衆議院での自治省や警察庁等の御見解では、違法とも言えないけれども合法とも言い切れないというやに言っておられるのですね。まさに違法すれすれなんですよ。長官、これどうお考えになりますか。
  170. 石原慎太郎

    ○国務大臣(石原慎太郎君) 御質問いただきましたので、私自分の名誉のために申し上げておきますけれども、新規の政治団体というものを登録しますときに、私は事務所に命じまして、自治省とそれから選管にも問い合わせました。そして、政治資金規正法が国会で論議されたときの議事録も取り寄せて専門家にも相談しまして、つまり決して違法でないということでそういう手続をしたわけでございます。もし、つまり法の網の目をかいくぐって脱法性のあるような行為をしようと思うなら、これは専門家もいることですから、幾つか新設する政治団体に一々私の名前をつけませんですよ、これは。これは九月にこの問題が、数字が発表されて、政治資金に執念を燃やしていらっしゃる市川房枝さんのコメントも私見ましたが、市川さんもおっしゃっていますように、むしろ石原さんの場合には正直と言えると言われましたけれども、私は何も自分たちがばか正直だったことをここで売り込むつもりはございませんけれども、私たちが法の目をかいくぐって脱法性のある行為をしようと思ったら、私はつまりこんなことをあえてしないと思いますし、それは世間でも判断していただけると思うんです。  それで、新設の団体は、これは何もそこで新設されたわけじゃなしに、それまで既存の任意の団体としてそれなりの活動をしておりました。たまたま政治資金規正法が施行されまして、いままでと同じような、あるいはそれ以上の政治活動を選挙区なりあるいは全国で行っていくためにも、やはり政治資金規正法にのっとって自分たちも政治資金というものをあれし、受け入れて活動しようということで、それぞれの支持者の方々が中心になって登録をされたわけでございまして、私はその限りで既存のこれらの政治団体について違法性はないと思っております。ただ、私自身もはからずも閣僚になりましたし、いままでやっていた政治活動というのがいままでのようなテンポでできなかった節もございまして、活動が鈍かったりしたことで、繰り越しをしたりあるいは同じ、つまり被推薦人が私でございますから、その政治活動のためにというのでいままで活発に動いていた石原慎太郎の会なり、その他の会につまり歩調を合わせるという形で集めた政治資金を、一部寄付したという形になっていると私は聞いております。まあ収支のことは私任せてありまして詳しく存じませんが、私は少なくとも違法の行為をしているつもりはございませんし、また繰り返して申しますけれども、法の網の目をくぐって、要するに脱法性の色の濃い行為をしようと思ったら、私はやっぱりもっとやることばあったと思うんです。それ、ひとつそういう私の姿勢は御理解いただきたいと思います。
  171. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、まあ何と問題の多い長官だなあということなんですよ、実際。笑いごとじゃなく。だって、歴代長官でそんなに罷免要求決議なんというようなものを集中された長官もおらないし……。で、こういうかっこうで政治団体だって——だって自治省だって明確に合法的ですと言い切ってないんですね。そうなんですよ。これは後ほど衆議院での質疑応答をよく調査をしていただいたらいいと思いますけれどもね。だから、違法ともしかし言い切れないと確かに言っているんですよ。そういうすれすれみたいな、そういう話を聞けばすれすれだということになりますよ。だから、そういう疑いの持たれるような形の政治団体は、これは整理なさるおつもりないですか。
  172. 石原慎太郎

    ○国務大臣(石原慎太郎君) いろいろな点で誤解を受けましたことは非常に私も不本意でございますので、そういう誤解を受けないように検討するように指示いたします。
  173. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ちょっと、私あともう一つ、PCBに関してお伺いをしたいと思ったんですけれども、時間が、きょうは特に長官の御都合で時間を厳守しないとぐあいが悪いそうなんで、残念ですけれどもやめます。厚生省からおいでいただいているのに申しわけないんですけれども、これで終わります。
  174. 三治重信

    ○三治重信君 どうも時間が大変窮屈で、御迷惑だと思いますが、特別委員会で法案がないと、なかなかいろいろお話しする機会もなくて、長官、一年もたっていても一遍もお話しする機会がないのもと思って、きょうはちょっと欲張って注文したわけなんですが、まあいましばらくひとつよろしくお願いいたします。  もうこれは長官とすればたびたび御答弁なさったことだと思うんですけれども、やはり環境庁としていま一瀞問題にされており、また長官をめぐっていろいろ価値判断されているのも、この環境影響評価の関係の法案をめぐっての問題が一番多いかと思うんですけれども、もう御答弁をされたことが多々あろうと思いすが、いわゆるこの環境法案について、長官とすれば、この次の五十三年度に対していまどういうふうな態度でおられるか、ごく簡単に一遍御説明願いたいと思います。
  175. 石原慎太郎

    ○国務大臣(石原慎太郎君) 先ほども沓脱委員にお答えした際に申しましたが、何分案文ができたのがことしの一月でございましたので、しかも、いままでの行政原理になかった手続法でございまして、非常にこの法律に対する身構え方というものがやっぱり各省非常に微妙でございまして、それで、いろいろな問題が確かに一種の争点としてございまして、それを事務レベルで対処し切れずに、結局時間切れになりましたのですが、そういう各省庁との交渉の仕方そのものにもいろいろ問題があったと思いますけれども、しかし、やはり議論すべきものは議論して、とにかくこの次の国会には何とかして提出するように、いま担当局長以下鋭意努力中でございまして、また何としてでも次の通常国会に提出したいと思っております。
  176. 三治重信

    ○三治重信君 この法案は、ことしの一月、原案として具体的に条文が環境庁の事務当局でできて、大臣もそれに目を通された。したがって、五十二年度は提出できなかったけれども、五十三年度においては何とか提出ができるような努力をしたいと、こういうことでよろしゅうございますね。  それで、長官の言によると、法案ができて各省との折衝もやったけれども、ことしの一月だものだから、なかなかまとまるまでに至らなかったということなんですが、これは事務当局で結構なんですが、法案をつくって、各省と折衝してみて、重要な問題点、環境庁としてはここが非常に重要だと思うのだが、各省との調停で非常に問題だと、こういう問題をしぼってどこが、一番問題とし、各省がなかなか文句のあるところだという問題点をちょっと御説明願えませんか。
  177. 信澤清

    政府委員信澤清君) 先生のお話のように、いろいろ問題がございますが、集約して申し上げますと、次の三点だろうと思います。  一つは、どの役所も環境影響評価を制度化することについて反対はいたしておりません。ただ、いろいろ既存の法律がございまして、それぞれの法律に従った手続その他があるわけでございます。そういう他の法律の手続と、私どもが考えております法案による手続、いわばそのすり合わせと申しますか、整合性を考えてほしいと、これが第一番に大きな問題の一つでございます。  それから第二番目は、これは法案と申しますか、制度そのものに対する一つの考え方だと思いますが、環境影響評価をやることは賛成だと、しかし法律的な、いわば義務を伴う、そういうことを制度として実施をするには時期が早いのではないかと、これはまあ全部の省庁ではございませんが、一部の省庁にそういう考え方があるわけでございます。  三番目は、これはまあ私ども自身もなかなかむずかしい問題だと思っておりますが、環境影響評価なるものを実施いたします場合に、いろいろ準拠となるべき、まあ言ってみれば物差し、そういうものが必ずしも全部十分に整っていないと、こういう問題がございます。ものによってはいわゆる定量的に数字の上であらわせないような問題があるわけでございまして、たとえば自然環境の保全等についてはそういう問題が非常に多いわけでございますが、このような場合にどういうことを目安にして、めどにしてこの法律を動かしていくのか、やや技術的になりますが、この点の問題が一つあったと思います。  ほかにも細かい点はたくさんございますが、以上三点が大きな問題でございます。
  178. 三治重信

    ○三治重信君 その中で、事務当局とすれば結局一番争う点はその一の問題で、これは非常に、政治的に見れば大した問題じゃないのだけれども、各省のいわゆる権限争いということで、これは最後までなかなか大変な問題だと思うのですよ、まあ私も過去やったことがあってね。この問題はしたがって非常に、政治的には大した問題じゃないけれども、いわゆる事務レベルとしては非常に各省との権限争いで大変な問題だろうと思うんですが、これはひとつ時間をかけてやらざるを得ぬと思うんです。  二番目の、評価の義務を伴うものは反対だと、こういうことは、結局刑罰を課すというんですか、その義務というのはどういうことですか。この評価の法をつくる場合に、罰則——評価に従わない者、またそれに意図的に反対するとか曲げてやるという者についてのいわゆる罰則をつけていると、その罰則について反対と、こういうことか、その中身をちょっと御説明願いたいと思うんです。  で、実施の際の基準という問題は、これも技術的な問題で、私もあるいは誤解がある御質問になるかもわかりませんけれども、私は、この環境評価について、結局その価値判断をする基準というものを各省がどこに置いておくかと、こういう問題だと思うんですが、まあこれはちょっと言いがかりだと——感じとしてはね。言いがかりの問題が非常に多いんじゃないかと、こう思う。  したがって、この評価の問題について、この二と三が私は非常に密接に結びついているんじゃないかと思うんですが、まさに私もきょう主に考え方を聞いておきたいと思うものはこの二つなわけなんですが、この両方を絡めての問題なんですけれども、結局そうすると環境評価というものを実際わかりやすく説明すると、何にこれ役立てようとされているか、そこに一つ問題を——やはりそれがしっかりしないと、いわゆる評価で義務を伴うものは反対だとか、基準についてどうこうと、こういう議論が出てくるわけですが、その心棒について、この環境影響評価というもの、アセスメントというものはなぜ必要かというよりか、それをやってどういう効果を期待しているか、こういう問題が、私はそこからスタートすべきじゃないかと思うんですがいかがですか。
  179. 信澤清

    政府委員信澤清君) この法案の目的とするところは、従来から再々申し上げているところでございますが、一口で申せば、公害と自然破壊の未然阻止ということに尽きるかと思います。したがいまして、そのような目的を達成するためのいわば一連の手続をこの法律で決めようとしているわけでございます。したがいまして、手続の違反に対してこの法律で罰則を設けるというようなことを考えているわけでございません。先ほど私が申し上げました実施の手順等について、まず運用でやって、しかる後、その定着を見た上で制度化する、法律化するという意見がございますのは、これはいわば方法論と申しますか、問題にアプローチをする姿勢の問題だと思います。つまり、いろいろな形のものが考えられるわけでございますが、一つのある決まったタイプの中ですべてを解決すると、このこと自身についていろいろ疑問がある。つまり、これは冒頭に申し上げましたように、各省も環境影響評価制度はつくらなければならぬとおっしゃっているわけでございますし、それから過去いろいろなお立場からそれぞれ各省は各省なりに事業遂行上やってきておられるわけでございます。そういうそれぞれの役所の御経験からいうと、いま私ども——いまと言いますか、当時私どもが考えておりましたような画一的な手続、制度、これだけで対応することが適当であったかどうか、これについての疑問に対する十分な私ども説明ができなかったという点が問題だったというふうに承知いたしております。
  180. 三治重信

    ○三治重信君 まあその手続というのは、これ、一言で言うと非常に簡単のように見えるんですが、結局その環境破壊の未然防止のために、いろいろの開発事業なりいろいろ事業やった場合に、その事業の施行によって環境破壊がされる恐れのあることを事前にやはり指示するといいますか、具体的にその工事者に対してそれが守られるかどうかということを指示することだろうと思うんですが、そういうものを、画一的と言うんだけれども、実際そういう問題はどういう時点に着手しようとされておるのか。たとえば電源開発なら電源開発が、電力会社が開発事業によって指定されるときに、この認可というんですか、のために、電力会社が官庁へ申請をする前に始めるのか、してから始めるのか。それからまた電源開発の認可があってからやろうとするのか、その点の手続の問題というんですか、結局、そういう環境評価が本当に未然防止に役立つためには、そういういろいろの開発計画なりそれから公共事業の施行計画なりというものと並行してないと、片方は進めていく。後からまあ待て待ておれの方がやってからでないとちょっとそういうことはだめだと。片方は予算化が進んでいく、それから地元とも話が進む。環境庁の方のこの評価を始めるタイミングとかやり方がちぐはぐになってくるとそこにトラブルが起き、これは実施官庁としてはめんどうくさいからそれは待て待てと、こういうかっこうになるんじゃないかと思うんですが、そこをどういうふうに考えておられますか。いわゆる未然防止の手続をするときの。片方じゃ工事を法律に基づいて計画されていく。それ、どの時点をつかまえて手続を始めるというんですか。環境評価の手続をやりたいと思っておられるのか。
  181. 信澤清

    政府委員信澤清君) 先生御指摘の点が実は問題の一つの大きな点でございます。いつの段階でこの環境影響評価法に基づく手続をやるかということが一つの争点であるわけでございますが、私どもは、これは審議会でもいろいろ御議論がございました結果出た結論で、やや抽象的でございます。抽象的でございますが、いわゆる基本計画段階ですでにもうやるべきではないかと、こういう御意見もありました。つまり、公共事業を例にとりますと先生よく御理解いただけるんじゃないかと思いますが、いわゆる調査費がつく、この段階でもう環境影響評価はやるべきではないか。そうではなくて、調査費がついてやや計画が具体化する、いわば基本計画段階でございますね、この基本計画がつくられた以後においてこの制度を適用したらいいんではないかとか、こういう意見もあるわけでございます。私どもは、やはり一つの割り切り方として、全く海のものとも山のものともわからぬその時期に環境影響評価をやると、それも相当の経費を使ってやるということはいかがかと考えておるわけで、いずれにいたしましても、その段階での調査は必要だと思います。しかし、法律に基づく一連の調査を初めとする手続につきましては、そういった基本構想といいますか、基本計画がまとまり、工事そのものが具体化するその前にやると、こういう段階を一応想定して各省庁とお話し合いをいたしたわけでございます。したがって、許認可等のございます事業につきましては、その許認可を受ける前の段階において環境影響評価を実施すべきだと、原則的にはそういう考え方で従来の法案は立てられておるわけでございます。
  182. 三治重信

    ○三治重信君 まあ大体個々の法律によっての事業認可とかいろいろきっと現行法では各省のそういう事業によって手続関係は若干の相違があると思うんですけれども、いま言うその調査費がついた段階というのは、これは大体プログラムがつくられた段階ですから、そこで環境評価やるといったって、これはちょっと行き過ぎだと思うんですがね。調査費がついて、具体的な事業計画ができて、そうして予算の規模から大体の具体的なその輪郭がわかって、ものができた場合に、初めてどういうふうな影響が出てくるかというアセスメントの効果があるだろうと思う。そういういまの局長の考え方では私はそう異存がないんですが、それに対して、各省庁との折衝で、異存というのかその環境評価の手続の開始時期、またはそういうものをやる時期というものについては、各省との問題でトラブルはないんですか。
  183. 信澤清

    政府委員信澤清君) 直接的に、いま私が申し上げ、かつ先生からお話しございました点についてトラブルを生じたことはございません。ただ、先ほど申し上げました、ほかの法律とのすり合わせという意味合いで、まああえて例を申し上げさしていただきますれば、都市計画法との関連等を考えました場合に、これは先生よく御存じでございますが、都市計画の案をつくろうとするときには、都市計画法の十六条で住民の意向反映のための公聴会その他の手続があるわけでございます。同時に、都市計画案を決定をしようとする場合には、地方の都市計画審議会の意見を聞く等々の手続があるわけでございます。そこで、私どもの従来の案では、まず一つは、都市計画事業として行われるものについてを個別の事業として一つ一つをとらえると、こういう構成をとっておったわけでございます。これに対して建設省の御意見は、その都市計画を決定するその前にですね、その前に環境影響評価というものを行うべきではないか。つまり、相互に関連する大きな計画でございますから、一つ一つの事業を切り離すのではなくて、計画そのものの中に入っておる事業について、都市計画案の決定前にそれをやるべきじゃないかと。そこらあたりが私どもの方も十分理解ができなかった面があったようでございまして、その結果、建設省の御意見としては、最終的に私どもにお示しになられたのは、むしろ都市計画法の中でいま言ったような考え方による環境影響評価の制度を、向こうの法律自体に書きたいと、こういう御意見をお持ちになったわけでございます。
  184. 三治重信

    ○三治重信君 そういう場合に、結局手続法は許認可の環境庁でつくられるとしても、個々の実施の開始時期とか、それからそういう事業の進展度合いと関連してのやつはそれぞれの工事法の方で書きたいのも、ある程度妥協の線が出てくる一つの線かもしれないと思うんですが、その場合に、やはりこの原局の方、工事をやる方のところは、個々の事業でなくしてその全体の、公共事業だったらその地方の全体の計画についてやってくれと、これもある程度話がつくと思うんですが、そういう場合に、何と申しますか、そういう評価をして未然に防止するのだけれども、それは計画とすれば、あるいは役所同士のことなんだから、大体これだけの計画についてこれだけの環境の自然破壊防止事業が加わっているのだから、まずやってもそう影響は、全然ないということはないけれども、やっても大きく自然破壊あるいは環境汚染というものがないんだということは、今度は事業をやる者と環境庁の方が、まあ共同正犯というのですか、住民反対なり住民意見に対しては、これは共同的に説明しなくちゃならぬと、こういう立場に立つと思うんですが、その点はどうなんですか。
  185. 信澤清

    政府委員信澤清君) 役所がお互い同士、まあお言葉をかりればいわばなれ合いみたいな形で物事を決めていくところに、従来問題が発生した一つの大きな原因があるという認識が私どもにもあるわけでございます。したがって、いろいろ事業によって違いますが、いずれにせよ、いわゆる環境影響評価という言葉で理解されておりますが、私どもが環境影響評価制度と言っています場合には、事業をやる者あるいは計画する者が、その事業なり計画が環境に及ぼす影響について十分調査、予測あるいは評価をいたしました上、それを一定の文書にいたしまして、そうして住民の方に見ていただく。そうして説明をいたす。またそれについての意見も言っていただく。それをさらに計画なり事業の実施に反映していく。ここに一つどもの法案のねらいがあるわけでございます。したがいまして、このこと自身は実はそれほど各省は異論はないはずだと思いますが、やはりいままでの各省の経験から申して、その場合のいわばルールと申しますか、そういうものについてそれぞれの役所ごとの事情に応じた心配をされている点はありますことはこれは私どもも理解できますし、先生にも御理解いただける点ではないかと思います。
  186. 三治重信

    ○三治重信君 そうすると、事業計画について環境評価をやって、それが事前に住民側の方に説明されて、役所側にはもちろん評価ができればこれは当然写しなりそういう評価の中身が知らされるんでしょうが、それが事業計画者が、そういう環境評価のいわゆる問題点について、大体事業計画の中にそういう防止工事が入っているのかいないのかということについて環境庁はチェックはしないわけなんで、ただ一般的な評価がこうだと、こういうことを言っていっただけで、それを守っているか守っていないかはその原局の価値判断だと、こういうことになるわけですか。
  187. 信澤清

    政府委員信澤清君) ちょっと私の御説明が足りませんが、私どもが大枠のかなめと申しますか、法案のかなめとして考えておりますのは、これまた大ざっぱな分け方でございますが、三点ございます。  一つは、科学的な手法によって、その事業なり計画が環境に及ぼすであろう影響について調査し、予測をし、そうしてこれなら大丈夫であろうというような判断を、まず計画の立案者なり事業者がやる。同時に、これを公表いたしまして、先ほど申し上げましたように、関係する住民の方の意見を聞く。他方、基本的な、地方公共団体でございます市町村長なり都道府県知事意見を聞く。その上で、全国レベルの視点から環境庁がそれなりの意見を申し上げる。まあ大まかに申しますと、そういう三つの点がこの法案のかなめになろうかと思います。
  188. 三治重信

    ○三治重信君 これは個々の具体的な問題になっていくと、非常にいろいろの問題点というんですか議論があるかと思うのですが、一つ問題は、結局工事を計画してやろうとする方は、いままでの従来のやり方についてさらに複雑怪奇というのか、計画を余りおくらされる問題については非常にいやがるだろうということが想像されるわけなんです。その点、この評価法によって評価をやる、その評価のまあ調査、手続というんですか、それの開始の時期やそれからその結果について、それをどう原局——事業計画者が利用する、またそれに対して、環境庁の方が、評価の部面から見てその事業計画をどの程度チェックするのか。またそれを全然チェックしないと、今度は住民が、その工事施行者に対して環境破壊だと、あるいはこれについて着手絶対反対だと、こう言ったときには、評価はしても両方で、事業計画者の方は、環境庁の評価は大体取り入れてこれだけ防止のために工事費を一五%も二五%も割いて計画に入っているんだから、これでいいんじゃないかという議論になり、片方から見れば、また住民になると、いや、そんなことは全然環境庁の評価では、環境評価について全然取り入れていないと、まあこういうふうなことがないことを望むわけなんだが、そういう問題が出てくる可能性は私は非常に多いと思うのですが、現在のいわゆる発電所の設置の施工についても、あるいは下水道の終末処理場についてのトラブルも、結局現地住民との関係や、そのときになって、計画は全部できている、予算もついているけれども地元の反対を十分説き伏せないためになかなか工事に着手できないと、そういう現実があるわけですね、たくさん。それに対して、環境評価法ができて環境評価をやるとどういう効果が出てくるかという、今度はできた後ですね。この法が進んでいったときに、そういうトラブルに対する防止あるいはその解決について、一つの有効な方途にこの評価法というものが利用できるのか。いやいやもうそんなものは全然関係ないんだと、こう言うのか。
  189. 信澤清

    政府委員信澤清君) これは、本当は事業官庁側からお話しいただければ適当かと思いますが、私、手元に五十一年度の建設白書を持っております。この中でも建設省御自身がお認めになっておりますように、いわゆる公共事業につきまして、昭和四十五年から四十九年までの五年間では、三十年から三十四年——十五年前に比べて訴訟の件数が八倍になっている。しかも、訴訟の内容は、金銭で解決をするということじゃなくて、未然に問題を、何と申しますか、未然の防止策をとってくれという、いわゆる差しとめ訴訟というものがどんどんふえてきていると、こういうことをおっしゃっておられるわけなんです。同時に、これは四十七年に閣議了解で、公共事業については一種の環境影響評価をやることを決めておるわけでございますが、その結果、四十五年には、公団の事業を含めて建設省所管の事業でアセスメントをやったというのが六十三件であるが、四十九年には七百五十件と、これまた約十二倍に増加しておると。で、このような対応を示しながらやっているんだが、いま先生のお話のような、いろいろ地域住民との利害調整というのが困難で、その調和を図る必要があるということで、まあいわば地域社会との調和のための新たなルールを形成していくことが必要であると、ここまで申しておるわけでございます。したがって、私どもの環境影響法案は、そういういわばルールの一端を担うもの、全部ではございませんが一端を担うものと、こう考えておるわけでございまして、この点の認識においては、建設省も私どもと全く同じでございます。
  190. 三治重信

    ○三治重信君 ちょっと、重要なことをさっき聞くのを忘れていたんですが、そうすると、この評価法ができると、その評価をやるのは、建設省の工事については建設省、農林省の工事については農林省が環境評価を、法律に基づいて実施官庁が環境評価をやると、こういうことですか。
  191. 信澤清

    政府委員信澤清君) これはまあだれがやるかというのが非常に問題でございますが、国の直轄事業につきましては、当然所管の建設省なり農林省がやります。それから、補助事業等につきましては、これは公共事業でございますれば地方公共団体が多かろうと思いますが、地方公共団体なりあるいはいわゆる特殊法人でございますか、公団のたぐいでございますが、こういうものが実施をいたすと、こういう仕組みを考えているわけでございます。
  192. 三治重信

    ○三治重信君 そうすると、そういうものをやる担当者というんですか、そういうものは、もしもこれをやると——まあ現在でも実際の問題として環境影響が非常にトラブルの種になるから、それぞれにそういうものに対していろいろ評価というんですか、調査をし、それの対応策、破壊度とかいうものについてのいろんな資料をつくっているだろうと思うんですが、そういうものについての、何といいますか、専門家というんですか、そういう担当者についての養成、訓練というものはどう考えておりますか。
  193. 信澤清

    政府委員信澤清君) 問題は、いま先生御指摘になりましたような点があるわけでございます。一つは、評価と申しますか、いろいろ判定をいたしますその判定のやり方、これにつきましてもいろいろな方法があるわけでございますが、やはり私どもは、一般的なといいますか、公知の手段、方法によってやっていく必要があるのではないか。これについては、事業ごとに各省と私どもと御相談をして、この分野についてはこういう方法で予測をし、評価をすると、こういうものを決めていきたいというふうに考えておるわけでございます。  問題は、そこから先の問題でございますが、お話のように、それでも不十分ではないかというお話が出ることがあろうかと思いますが、この法律ではやはりそこまでは手が届かないというふうに考えております。
  194. 三治重信

    ○三治重信君 まあこういう問題をやっていくと法案の中身の審査みたいになって、この辺でぼくのひとつ——まあ評価法に対してちょっと問題点の二、三をお聞きしたんですが、長官、現実にいま非常に、先ほど、建設白書でもここ五、六年で五倍も十倍もトラブルができて、しかもそれが、日本人が余り好まぬいわゆる裁判にかかっている。まあ余り裁判にかかってやっているということは、いままで電源開発とか、特殊な大工事にはあったんですけれども、これが各所で非常に大きなトラブルが起きる。こういうふうになってくると、私は非常に、何と申しますか、環境保全をやりながら、国民生活上もぜひやっていかなきゃならぬ問題が次から次ヘストップされてきていると思うんです。その一つの例は、産業廃棄物もさることながら、これはまあ産業廃棄物の中に有害物が含まれているということもあるんですが、また一般の家庭から出る廃棄物の処理に、これはいまはただ完全に焼却ということだけがあるようなんですけれども、焼却だけではとてもじゃないがこれはやっていけない問題がもう目に見えている。そして、一般のやつも産業廃棄物も、最終処理場の問題はこれはもう現地のトラブル、どこでもつくられるのきらいだ、反対だというのはわかるけれども、これは現実に行わぬと、いま現在、これから開発するんじゃなくて、現在行われている産業そのものも息の根をとめなければならぬ。こういうような問題の一つ解決策として、環境評価という客観的なものができて、それが行司役となって、ひとつその現地の住民のいろんな不安も解消する。しかし、また施工者の方にも、やはりそれは金かかるかもしれぬけれども、環境保全のためにはそれだけのコストを負担してやっていくべきだという一つの判定にも役立つ。こういうことを私は、結果からいくと何かそういう問題で役に立つことができぬか。それにはこの評価法というものが非常に、この一つの事前の解決策のてこにならぬかと、こういうことを考えているわけなんです。  それから、いま、もう一つの一番大きな問題は、これは下水道関係ですね。これは内湾の中における海の汚染、それから陸の水の汚染というものも、下水道のやつに一にかかっていると思うんです。ところが、一番肝心な終末処理場がどこもみんなストップされている。こういう問題までもやはりこれはもう絶対反対というのが、もう文句なく反対という部面がある。しかし、文句なく反対と言ったら、これは下水道やるとこう言って予算をつけてどんどん上の方の工事はできても、終末処理場ができなければ本当にこれは絵にかいたもちみたいになって、空中分解みたいになるんじゃないか。これをどの程度はお互いにがまんしなくちゃならぬのかという問題も——まあこれは環境評価でやれと言うのは少し期待が大き過ぎるかもしれませんけれども。  それからもう一つは、成田空港で見られるように、もう、一つの空港をつくるだけでもこれだけの大難事業。じゃ日本で国際空港が成田空港一つでいいかとなると、これは国際間見ても、やはりとてもじゃないが、これだけの高い生活水準をやっている国で、外国との比較において、国際空港といえるような空港が、成田空港があるったってこれはまだ不十分でしょうし、一つもないと。こういうときにつくれという、またはつくろうということは当然出てくると思う。だから、成田空港のこの経験を生かして、そうして、またこれは空港をつくるのについてどれだけの準備をしていかなくちゃならぬか、こういうようなものをやっていく上において、私は環境評価が住民とのトラブルや、それから施行者について慎重な計画を進める上において非常に役立つんじゃないかと思う。  ちょっと考えてみても、下水道、飛行場、廃棄物というものが、これは日本の産業を高度成長に持っていく、持っていかぬというのにかかわらず、やはり国内の生活、国際的な交流をやっていく場合において、もうこれは本当に真剣になって考えていかなければならぬ問題だと思う。そういうものの処理に手段的に法律を結びつけて考えるのは問題かと思うんですけれども、環境庁として本気になってそういう現実の処理という、まあ一つの理想もあるけれども、現実の処理にこの一つの理想をどういうふうに結びつけていくかと、まあこういう発想もひとつ私は、ぜひやっていただきたいと思うんですが、それについて御意見を伺って、きょうまだ食事もされておらぬようですから、これで私の質問を終わりますけれども、ひとつ忌憚のない御意見を、また今後の見通しを出していただきたいと思います。
  195. 石原慎太郎

    ○国務大臣(石原慎太郎君) 私たちがいま考えておりますアセスメント法は、必ずしも快刀乱麻の、要するに名刀にはなかなかなり切れないと思います。すべての問題がこれで解決は決してしないと思いますけれども、しかし、いままで行われてきました開発、それからそれにまつわる住民とのいろいろトラブルというものから考えますと、要するに、説得性と申しましょうか、住民の持っている疑心暗鬼というものをつまり一応冷静にこう説得してかかる一つの手続にはなり得ると思うんです。やはり、それは最小限そういう手続がありませんと、日本のような国土の状態からしましても、なかなかそう簡単に代替地があるわけではございませんし、また同時に、これだけの高度な経済国の、まあ国民全体が果たしてそれを望むか望まないかわかりませんけれども、今後十年間たとえば六、七%の成長をとげれば、日本の経済がさしたる質的、構造的な変化をとげないままに、いまの再生産方式でいきますと、埋め立ても煙突も倍になるというようなことになりかねません。それが好ましいか好ましくないかは別にしまして、ともかく向こう数年間の模様を見ましても、国民の経済生活のために、たとえば電源の立地等不可欠の問題もあると思いますが、なかなかその不可欠というものがその開発の地域の当事者たちに、住民の当事者たちには感覚的に、心理的に納得していただけないということでいろんな問題が起こっているわけだと思いますけれども、ともかくその環境影響評価というものを行うことで、確かに自然というものは人間の手で状況は変わるにしても、これだけの限度の変化であるということをお知らせすることで、住民方々の受容性というのはできてくるんじゃないかと思うわけでございまして、まあ成田の例をお引きになりましたけれども、OECDの幹部が昨年東京で会議をしましたときに、非常に成田を見たがって、いろいろ危険もありますのでこちらも何か非常にちゅうちょしたそうですが、結局お忍びでごらんになった。何でそう成田にそれほど執心されるかと聞きましたら、アセスメントを一切しなかったプロジェクトの最もそのサンプルであるからということで、大変参考になったと言われたそうですが、まあ成田を含めまして現在起こっておりますいろんな問題の中で、関係省庁もそれぞれその体験を踏まえての認識がまだ微妙に違っておりまして、たとえばいまの田村運輸大臣などは、伊丹並びに成田で本当にこりごりして、新幹線の問題でもいろんな問題を痛感して、やはり急がば回れで、こういう法律が絶対必要だという認識をいただいておりますが、一方、まあこれは通産省と言いますより、通産省が所管しております電気事業界には、電力の逼迫の度合いが強過ぎるために、やはりこれができることでまたいたずらにその立地が困難になるということならば、向こう一、二年はいまのままで、こういう手続法がないままでやらしてもらって、できるものだけを確保した後これを実現してほしいというような要求もございますけれども、ここら辺私たち論の分かれるところで、やはりいまもう電源の立地が非常に難渋をきわめておる。難渋をきわめておるということならば、最悪の条件から一歩はい上がるためにもやはりこういう法律というものが電気事情のためにもプラスの要因として不可欠だということを説得しているわけで、まあ私たち、必ずしもオールマイティの法律にはならないかもしれませんけれども、しかし、これをつくることで、いま特に生活環境にかかわっていろいろな開発の立地の困難性というものが、住民意見参加によって二歩でも三歩でも進むと確信して、この法律をできるだけ早期に国会に上提するように努力するつもりでございます。
  196. 粕谷照美

    理事粕谷照美君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後一時五十六分散会      —————・—————