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1977-10-26 第82回国会 参議院 交通安全対策特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月二十六日(水曜日)    午前十時一分開会     —————————————    出席者は左のとおり。      委員長        小野  明君      理 事                 中村 太郎君                 宮田  輝君                 安恒 良一君                 阿部 憲一君                 田渕 哲也君      委 員                 加藤 武徳君                 高橋 圭三君                 野呂田芳成君                 福岡日出麿君                 二木 謙吾君                 降矢 敬雄君                 穐山  篤君                 広田 幸一君                 上林繁次郎君                 山中 郁子君                 森田 重郎君    国務大臣        運 輸 大 臣  田村  元君        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    小川 平二君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       園田  直君    政府委員        内閣官房長官  塩川正十郎君        内閣官房内閣審        議室長      清水  汪君        警察庁交通局長  杉原  正君        法務政務次官   青木 正久君        外務政務次官   奥田 敬和君        運輸政務次官   石井  一君        運輸省航空局次        長        松本  操君    事務局側        常任委員会専門        員        村上  登君    説明員        外務大臣官房領        事移住部外務参        事官       橋本  恕君    参考人        日本航空株式会        社社長      朝田 静夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○交通安全対策樹立に関する調査  (日本航空七四二便乗っ取り事件に関する件)  (クアラルンプールにおける日航機墜落事故に  関する件)     —————————————
  2. 小野明

    委員長小野明君) ただいまから交通安全対策特別委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  交通安全対策樹立に関する調査のため、本日の委員会参考人として日本航空株式会社社長朝田静夫君の出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小野明

    委員長小野明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 小野明

    委員長小野明君) 交通安全対策樹立に関する調査を議題とし、日本航空七四二便乗っ取り事件及びクアラルンプール日航機墜落事故について調査を行います。  まず、内閣官房長官から報告を聴取いたします。園田内閣官房長官
  5. 園田直

    国務大臣園田直君) 再発防止対策について、ただいままでやりましたことを御報告申し上げます。  政府は、ハイジャック防止対策については、従来からも対策本部があって、安全検査空港の諸施設における警備体制強化出入国業務に関する対策の推進、国際協力等やってまいりましたが、今回の事件があって、万全ではなく、しかもこの実行についてのチェックが不足であったと考えておるわけであります。今回の事件を契機として、十月四日、閣議了解によって、内閣ハイジャック等人道的暴力防止対策本部を設置し、かかる非人道的暴力行為防止について真剣に対処することといたしました。  防止対策としては、日本赤軍根源を絶つこと、ハイジャック防止についての国際協力強化すること及び国内対策を徹底することの三本柱を中心に、とりあえず行政的に早急に実施すべき対策として十月十三日、十八項目に上る第一次ハイジャック防止対策を決定したところであります。  さらに、関係法律改正検討し、とりあえず航空機の強取等の処罰に関する法律航空の危険を生じさせる行為等処罰に関する法律及び旅券法のそれぞれの一部を改正することとして、今臨時国会に審議を願う予定でございます。  なお、政府としては、これが再発防止対策のすべてだと考えているわけではなくて、日本赤軍等過激犯人の裁判の促進を図るための刑事訴訟法改正の問題、警察官の海外派遣問題等についても引き続き検討する考え方でございます。  今般の対策防止本部の特徴は、直接旅客を輸送される日本航空並び全日空からも幹事会に御参加を願っていること、それからもう一つは、防止対策の要綱、方針項目等を決定するのではなくて、これは逐次その実行を監視、強化していくと、この点に特に注意をしてやっているところでございます。  以上、簡単でありますが、御報告申し上げます。
  6. 小野明

    委員長小野明君) これより内閣官房長官に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 安恒良一

    安恒良一君 一九七三年の七月、ドバイのハイジャック事件以来、政府及び各航空会社ハイジャック防止対策に私ども社会党としましては重大な関心を持ってまいりましたし、また、その事件が起こった都度、私どもといたしましては、それなりに防止対策について提言をしてきたつもりなのであります。しかしながら、これまでの対策は、政府並びに各航空会社対策というのが十分でなかったのじゃないか、遺憾ながらきわめて不十分であったのではないだろうかと思います。特に日本航空会社——日航が、安全対策営業とのバランスで行うと、こういう方針で安全第一の姿勢をとってなかったところに、たとえば今回の一九七七年九月二十八日の日航のダッカ・ハイジャック事件が発生したのではないかというふうに私は考えるわけです。しかし、今回のハイジャック事件発生後の政府対策の中で、人命優先方針をとられた点については私は高く評価するものであります。一方、今回の一般刑事事件一般刑事犯既決犯を含む六名の釈放が余儀なくされて、長年にわたって確立をされてまいりました法秩序が根底から覆されたことは大変残念でなりません。再度にわたる日本赤軍によるハイジャック事件の経験を生かし、法秩序維持させるためにも、三度このような事件を発生させてはいけないと、まず私は根本的に考えるわけであります。  以上の前提に立ちまして、私は官房長官並びに関係者の皆さん、特に官房長官にお聞きをしたいのでありますが、いま官房長官が口頭で、政府としてすでに十八項目決めた。さらに三項目にわたって方針を述べられました。このことは、私も方針は手元に持っておりますから、細かいことはいいわけでありますが、私がまず最初にお聞きしたいのは、ハイジャック対策基本的な方針についてどうお考えになるのか。これは、なぜ私がお聞きをするのかと言いますと、時あたかも日航機ハイジャックが起こった後、西ドイツ機ハイジャック事件が起こりました。それぞれの処理の仕方があったわけです。日本政府処理の仕方、このことについていろいろ国内的にも意見が出ています。そこで、政府といたしまして、ハイジャック対策基本方針をどこにお置きになるのかということについて、私はちょっといまの官房長官の御提案ではわかりかねますので、その点についてお答えをひとつお願いをしたいと思います。
  8. 園田直

    国務大臣園田直君) かかる事件が再び起きないように措置を講ずることが基本的な方針であります。そのためには、第一は赤軍根源を撃滅すること、このように考えております。
  9. 安恒良一

    安恒良一君 私は、もちろんハイジャック対策でありますから、再び起こらないようにすると、これは当然なことでありまして、そういうことを御質問申し上げているわけではないのです。私は、いま日本政府処理の仕方と、ドイツの政府処理の仕方について違いがあって、世論さまざまあるじやないか、そのこと。——じゃ、このようにお聞きしていいんでしょうか。ハイジャック対策は、乗客乗員人命尊重及び飛行機安全確保を最優先に、またこの目的のためにいろんなことを策定する、これが政府方針であるというに承っていいでしょうか。
  10. 園田直

    国務大臣園田直君) 法治国家でありますから、法の維持国家権威維持も大事ではありますけれども、やはり国家法律国家権威というものは、国民一人一人の生命を守ることのためにあるわけでありますから、何と申しましても法の維持ということもお察しのとおり断じて守らなければなりませんが、やはり人命というものが先であると私は考えております。
  11. 安恒良一

    安恒良一君 よくわかりました。  それでは、やはり政府のお考えも私と同じように、ハイジャック対策というものは、乗客乗員人命尊重飛行機安全確保を最優先に、この目的に沿うためにこれからいろいろな改正をやろうとされているということを承って大変安心いたしました。  そこで、第二番目としてお聞きをしたいんでありますが、それならばハイジャックの今度は防止について、防止の一番基本は何になるだろうか。防止基本——いろいろの対策があると思います、その防止のこれまた基本についての考え方をひとつ官房長官から——いま、いやこれは三つも四つもあると言われますが、私はやはり一つ基本方針があって、それに従っていろいろな対策が立てられるものだと思いますが、防止基本について官房長官のお考えをお聞かせを願いたいと思います。
  12. 園田直

    国務大臣園田直君) 根源赤軍に対する問題は省略いたしまして、何といっても、第一は国際協力ということが第一義であって、第二番目には国内取り締まり、この順序だと考えております。
  13. 安恒良一

    安恒良一君 もちろん国際協力国内とありますが、私は、これは一番簡単なことだと思いますが、官房長官、こうじゃないんでしょうか、ハイジャック防止基本は、まず航空機内にハイジャッカーを搭乗させない。それから、武器を搬入させない。このことをまず基本に置いて、そしていま具体的な対策としては、いま官房長官がおっしゃいましたような国際的な協力とか国内的——これはなぜこのことをくどく聞くかといいますと、ここのどころをしっかりしておかないと対策を立てるときにいろんなまた意見が出てくるわけでありますから、私は毎回重ねてお聞きしますが、航空機内にハイジャッカーを乗せないということ。それから武器を搬入させない。これは本当にわかり切ったことですが、ここを起点にして諸対策政府としてはいま立てていくということでいいんでしょうか。
  14. 園田直

    国務大臣園田直君) 全く御意見のとおりであります。
  15. 安恒良一

    安恒良一君 この点も安心をいたしました。  それならば、そこで今度はお聞きをしたいんでありますが、いわゆる政府三つのことをいまされてます。たとえば、いわゆる航空機強奪等に対する処罰法律改正とか、それからいわゆる旅券法改正をするとか、それから爆発物等の、これらについていま基本方針を述べられましたが、たとえば、若干具体的に旅券法なら旅券法のどこをどう改正をするのかとか、もしくは罰則なら罰則のどこをどう改正するのか。こういうことが決まっておりますなれば決まっている、政府はこういう考えを持っている、しかしまだ検討中なら検討中でも結構ですから、その点についてお答え願いたいと思います。
  16. 園田直

    国務大臣園田直君) 大体幹事会の案は決定をいたしております。ただ、私がもう一遍検討を命じておりますのは、航空機の中に危険を生ずるものを持ち込む、それが「業務中」という言葉がありますから、業務中以外に飛行機がただとまっているときに持ち込まれては困るから、「業務中」という言葉検討しろと、これだけ言っておるところでありますが、詳細は事務当局から。
  17. 橋本恕

    説明員橋本恕君) 旅券法改正の点について御報告申し上げます。  私ども外務省初め関係当局間の協議におきまして、事務的な一応の案といたしまして、まず第一に、旅券発給の際において簡単にどなたにでも差し上げるということではなくて、旅券発給の事由と申しますか、発給を厳しく制限するということがまず第一点でございます。それから、従来は懲役五年以上の刑でもって訴追されている方に対しては、これを発給を差しとめることができるという規定でございましたのを、懲役二年以上の刑で訴追されている方に対しては旅券発給を差しとめることができる。これが第一の点でございます。  第二に、虚偽申告その他、たとえば自分の名前でない人の名前を使って旅券を要求するとか、そういった虚偽申告に基づくところの旅券の入手ということに対する罰則も従来以上に厳しくする。これが第二点でございます。  なお、その他この細部の点につきまして、現在関係各省間で最後の詰めを急いでおります。これと並行いたしまして、各党の先生方にも御意見、御了解を求めておるというのが現状でございます。
  18. 安恒良一

    安恒良一君 官房長官の御滞在の時間が短いですから私もできるだけあれにしたいと思います。  それで、あと一、二点聞きたいと思うのですが、一時、航空公安官等を搭乗させるなどという意見が出ておったようでありますが、私はその効果は全然期待ができないし、むしろ危険を増大させるという、これは私は後で時間があれば十分な根拠を言いたいと思いますが、そういう点がありますが、その点は官房長官、もう消えたわけでしょうね、航空公安官という考えは。
  19. 園田直

    国務大臣園田直君) そういう意見も出ました。出ましたが、いまおっしゃいましたような意見で、特にパイロット協会の方からもそういう意見も出ておりますし、保安官を乗せることはかえっておかしいと、こう思っております。
  20. 安恒良一

    安恒良一君 そこで、私は以上の基本方針の上に従って、やはりハイジャック防止のためには、当面次のことが必要だと思いますが、この点について官房長官の御意見と一致するところもあるのですが、まず一つは、赤軍派などの集団の、国内はもちろん国外における組織、行動について常に情報を収集する。そして適切な取り締まりを行う。そのために、諸外国協力を得るための国際刑事警察機構等の関連、これらに要請を十分に行いまして、そしてなお、再度にわたる事件当該者については、その都度捜査を、徹底的に追跡調査を行う、こういうことが一つ。  それから第二番目は、国際民間航空機関——ICAOに対して、私は当面次のような処置をしなければならぬと思うのです。  一つは、加盟各国が三条約——東京、ヘーグ、モントリオール条約に加盟するように促進をする。  それから、身体検査及び機内持ち込み荷物検査強化を行う。その体制を確立するまでの間は、各国がやってくれない場合は日本航空独自の検査を承認をしてもらう。  それから、日本航空会社側防止対策、これは後から私は会社に聞きますが、何と言っても日本航空自体運送約款に基づいて行われる各検査周知徹底検査の実施。それから機内持ち込み物品及び身体検査等について運送約款に定められたことを厳守をしてやっていく。こういうようなことを私はやる必要があるというふうに考えますが、長官、時間を節約されて十分ぐらいで説明をされましたので、そういうところをおっしゃれなかったんじゃないかと思いますが、大体これは基本方針を私は確認した上で、具体的な方針の骨子になるものとして、以上三点にわたって質問を申し上げますが、長官のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  21. 園田直

    国務大臣園田直君) いま言われました三項は私も全く同意見でありまして、第一項の赤軍に対する国内外の情報追跡、こういうものはひそかにいま公安委員長と相談して、準備を進めております。  それから、二番目の加盟国勧誘並びにそれまでの強化、これも全く同意見であります。  三番目は、運輸大臣の方でまず国内航空会社に対して、荷物持ち込み禁止等ではいろいろ営業上の問題もあるようでございますから、行政指導でそういう方向に善処さしているところでありますが、世界各国に対してもそのようにやる必要があると考えております。
  22. 安恒良一

    安恒良一君 それじゃ、最後お願いしておきたいんですが、これは後から日航社長にも要望しますが、どうもやはり私は日本航空会社が安全よりも営業、まあ安全と営業バランスということで、いわゆる防止体制強化すると、特に国際路線等においては激しい競争が行われている、こういうことから営業本位に陥るところにどうもチェック体制が十分でないように私は考えます。こういう点につきましては、官房長官対策委員長でもありますので、関係官庁を通じまして、いわゆる日本航空株式会社防止体制強化について、ぜひ特段の御指導お願いをしたいと思います。  以上をもって私の質問を終わります。
  23. 園田直

    国務大臣園田直君) そういうこともありまして、日本航空社長及び全日空の専務に入ってもらっているわけでありまして、そういう点は十分留意をしてやってまいります。
  24. 穐山篤

    穐山篤君 この間のハイジャックの経緯を見ても、外国にいる日本人がやったと、それから検査体制の非常に手薄な外国航空基地で乗られたと、あるいは転々として飛行機が移動したわけですが、いずれもこれは国際条約批准をしていないところ、考えてみれば周到な計画、準備というものが行われているわけですから、単に国内法の整備あるいは国内対応措置だけではこの種事件というのは防止することは不可能に近いというふうに思うわけです。したがって、国際的に協力しなければならぬことは間違いありませんけれども、少なくとも日本としては、日本人が起こすハイジャックというものは絶対につぶしていかなきゃならない。もっぱらこれは国際対策中心にならざるを得ないと思うんです。ひとつその点について具体的な措置を明らかにしてもらいたい。
  25. 園田直

    国務大臣園田直君) 確かにそのとおりでありまして、外務大臣が早速各国に対して、これに対する協力要請並びに加盟国勧誘、それから国連に対する具体の提案等いたしておるところでございます。
  26. 穐山篤

    穐山篤君 事のよしあしは別にしても、ハイジャッカーというのは単純な物とりではないというふうに思うわけです。日本国内における事件を見たり、あるいは国際的に起きた事件を見てみますと、ある意味で言えば政治的な、経済的な、思想的な背景がきちんと整備されているわけですね。たとえば、この間の事件で言えば、天皇制の問題についての不満というものを表明しておりましたね。それから、日本国内における企業爆破について言えば、大企業といいますか、あるいは大金融といいますか、そういうものに対して相当の注文をつけるという意味で、これまた爆破が行われているわけですね。ですから、もう単純な物とりというふうな考え方ではないと思います。そういう意味では、私は残念なことだと思いますけれども、過去の国内事件あるいは国際的な事件を全部点検をしてみますと、一定の周期を持っているわけです。ですから、なくしたいという希望は持っておりますけれども、今後予想せざるを得ないものではないだろうかというふうに考えます。そこで国内で起きるであろうと思われる部分もこれは当然あると思います。しかし、国際的な立場で、あるいは国際的な関係で解決を図っていかなきゃならぬわけですが、先ほどの御見解では私はまだ不十分だと思うんです。現に手薄の国外航空基地について、どれだけの折衝をして、どれだけ進んでいるか、国民は非常にそういうものについて注目をしているわけですね。あるいは国際条約批准について、これから努力をするにしてみても、全く見通しがないのかどうか、こういうことについても皆深い関心を持っているわけです。お互いに努力をしなければならぬとこですけれども、その点についてもう一度お考えを明らかにしていただきたい。  時間ありませんから、続いて申し上げておきたいと思うんですが、これはごく卑近な例ですけれども、前々回のハイジャックがあった際に羽田を利用しておるといいますか、羽田を利用しておるといいますか、経由しておりますそれぞれの飛行機会社担当者日本に見えて、羽田空港におけるハイジャッカー対策あるいは空港警備について一定注文日本航空に提出したはずです。それについて、日本航空独自でできる問題もあるだろうし、あるいは政府あるいは行政と相談をして行わなければならなかった問題が数々あったはずがと思うんですが、その点についての対応措置について、あわせてひとつ明らかにしていただきたい。
  27. 園田直

    国務大臣園田直君) 世界各国日本飛行機が寄港する空港に対する折衝等はまだ準備中でございまして、そこまでいっておりません。しかし、その他のことはハイジャック防止に対する世界的な世論でありますから、見通しとしては逐次これが具体化していくものと考えております。  あとのことについては外務省から……。
  28. 橋本恕

    説明員橋本恕君) ハイジャック防止のための国際協力の中で現在のところ一番重要な要素といたしまして、国連一つ機関でありまするところのICAO、つまり国際民間航空機関におきまして、現在までにすでに航空機内で行われた犯罪その他に関する条約、それから航空機の不法な奪取の防止に関する条約、それからもう一つ民間航空の安全に対する不法な行為防止に関する条約、いわゆるハイジャック防止条約というものが締結されておりまして、これにつきましては、第一の条約では八十五カ国、第二に申し上げました条約につきましては七十八カ国、三番目に申し上げました条約につきましては七十カ国と、こういうふうな国がすでに批准と申しますか、この条約を誠実に履行する旨表明しておりますが、御承知のとおりに、国連加盟国すべての国の中で八十五といい、あるいは七十八というのはまことに少ない数でございます。これに対しましては、政府はいまだ加盟してない国に対して各種の外交努力を通じまして、できるだけ一国でも多くこの条約に加盟して国際協力のもとにおいてハイジャック防止するという努力を大いにいたしているところでございます。
  29. 阿部憲一

    阿部憲一君 官房長官にお伺いしますが、政府として、ハイジャック防止対策本部を常設化して、長期的な課題でこの防止に取り組まれるということですけれども、この対策本部構成とか、それからその後の経過について御説明願いたいと思いますが。
  30. 園田直

    国務大臣園田直君) 構成は、本部長内閣官房長官でございまして、本部員に法務大臣、外務大臣大蔵大臣運輸大臣総理府総務長官国家公安委員長内閣法制局長官内閣官房政務事務両副長官警察庁長官海上保安庁長官のほか、民間人として日本航空手塚良成常務、全日本空輸の清水教雄社長が含まれております。  経過は、幹事会本部会とございまして、幹事会事務的検討を詰めて、これで本部会を開いて一切の方針を決定する。ただいままで三回開いております。すでに御報告申し上げました対策並びにとりあえず臨時国会に御相談する法律案準備をやっておるところでございます。
  31. 阿部憲一

    阿部憲一君 民間からもというお話は、いまお述べになった程度民間人をお加えになられた程度で、この上さらに加えるとか、そういうことはお考えになっておられませんか。
  32. 園田直

    国務大臣園田直君) 必要に応じて、技術その他学問的なこともあります、いろんな問題もありますから、随時これにおいでを願うということは考えておりますが、定員としていまどうかすることは考えておりません。
  33. 阿部憲一

    阿部憲一君 ハイジャック防止対策として政府が責任を尾ってなすべきことが多くあろう、こう思いますけれども航空機が舞台になる以上、安全運航という立場からも慎重な配慮が必要であることは言うまでもございません。  先ほどもちょっと御質問ありましたが、航空保安官を搭乗させるという案、それから乗客がコックピットに立ち入ることができないようにすればどうかというような案もございますが、これはちょっと一つ間違いますと墜落事故にもつながるおそれもあるわけでございまして、非常に慎重にしなければならないと思いますが、これらの問題につきまして長官のお考えをお伺いしたいと思いますが。
  34. 園田直

    国務大臣園田直君) そういう意見も出ましたが、いろいろ意見を聞きますると、保安官を乗せることは、かえってこれは危険度が増すわけでございますので、保安官という制度はいまのところは検討外にいたしております。  それから操縦室と乗客室の隔離、これはいままでもやっておるところでありますが、今後とも相談をして進めていきたいと考えております。
  35. 山中郁子

    ○山中郁子君 官房長官にお尋ねいたします。  四十八年のいわゆるドバイ事件後、政府ハイジャック等防止対策要綱を発表されました。この中には羽田空港のダブルチェックの問題や外国空港における日航独自の検査の実施なども入っていて、今回の要綱よりも詳細にわたっているという面もあります。問題は、この要綱を政府が完全に実現してこなかったところに私は重大な責任もあるし、問題もあるというふうに考えておりますけれども、そしてこの点について政府が今後幾ら要綱を出したり、法案をつくったりしても、それが実行できなければ何も意味はないわけで、同じような事件が繰り返されるという余地を残すことになりますから、今回新たに再びその対策要綱を決めても、その実行の保証がはっきりされて、そしてそれも国民の前にはっきり示されなければならないと、ここに私は一つの大きな問題があると思います。  そこで、初めの問題ですが、この四十八年の対策要綱がなぜ完全に実現できなかったのか、そしてそのことによってこうした事件が起こったわけですけれども、その明確な理由ですね、政府が把握されておる問題点についてお聞かせをいただきたい。
  36. 園田直

    国務大臣園田直君) この前決まりました要綱は、御意見のとおり相当詳細に書いております。しかし、中には環境が変わりまして万全でないこともありますけれども、問題はこれを厳重に実行、持続できなかったところに問題があると反省をいたしております。したがいまして、今度の対策本部は要綱、方針等を決定することよりも、事後の実行強化あるいは変更、こういうことで持続的に、こういう事件は周期もありましょうけれども、世間が忘れたころに起こる事件でございますから、その点は十分留意をしてこの本部でいろんな考え方を進めていきたいと考えております。
  37. 山中郁子

    ○山中郁子君 具体的な保証というのを本当に真剣にはっきりさせていただきたい。これはもう国民の強い要望です。  それから、もう一点お聞きしたいんですけれども、きのう参議院の運輸委員会が開かれまして、きょうもお見えになっていらっしゃいますが、日航朝田社長がその中で、海外での日航独自の検査を行う場合に、そこの国での了解を得るということがどうしても必要なんだけれども政府がぜひ外国折衝をして、そして航空会社がトラブルなくチェックをできるようにそういうふうなことをしてほしいという、そういう依頼が出されたように承りました。私はこれはもっともなことだというふうに思いますけれども政府が今後そうした外交ルートを通じて、そしてそういう航空会社が独自に外国空港チェックできるという、そういう折衝をまあもちろん行うべきだと思いますし、それは当然考えておられると思いますが、具体的な計画ですね、それについてお聞かせをいただきたい。
  38. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの御意見は確かに承っておりまして、ダブルチェック、特に機内直前の検査はきわめて必要でありますから、外務省それぞれいま折衝しているところでございます。なお、折衝ができるまでも、日本航空の方とも相談をして、搭乗直前に私権を侵さぬ程度にまず実施をするということを考えておるわけであります。
  39. 山中郁子

    ○山中郁子君 そのいまの問題で、もちろんそういうふうにするというお答えなんですけれども、ぜひ明らかにしていただきたいと思うのは、現実にもうそうした折衝が始められているのか、いつをめどにそのことが確実に日航ができるようになるのか、その点をもう一つはっきりお伺いしておきたいと思います。
  40. 園田直

    国務大臣園田直君) 先ほどの御意見にも関係がありますが、私、幹事会に対し、本部会合に対して会合を開くごとに、まず新しい要綱を決定する前に決定した事項を実行されておるか、実行してみてどうかと、こういうことから始めるということをお願いしておりますから、これは終始続けるつもりでございます。ただいま申し上げました外務省折衝はすでに折衝を開始しておるはずでございます。
  41. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 時間が限られておりますので、まず基本的な問題について官房長官にお伺いをします。  今回のハイジャックの処置について、西ドイツのとった処置とわが国のとった処置と非常に大きな違いがある。しかし、これは両国の国情の違いもあります、また価値観の違いもあります。だから、私は一概にどちらが悪いとかいいとかいうことは軽々しくは言えないと思います。しかしながら、海外諸国の反響を見ますと、西ドイツには非常にたくさんの国が賛辞を呈しておる、日本に対してはむしろ批判が多い。その理由はどこにあると考えられますか。
  42. 園田直

    国務大臣園田直君) 各国の批判は政府はほとんどノーコメントでございます。民間新聞の情報を集めてみますると、イギリス、ドイツ等は相当批判が強い、他はまあやむを得なかったということもあるわけでありますが、これはしかられる当事者でございますから、理由はわかりませんけれども日本の置かれた立場というのは特殊な立場であって、ヨーロッパ各国でいままでしばしば経験をし、身のしろ金を取られ、虐殺をされ、失敗をしてきたヨーロッパと日本とは違うと、こう考えております。
  43. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 新聞の評価だけではないと思うんです。たとえば西ドイツに対して各国の首脳から祝意のメッセージとか祝電が送られております。わが国がこの問題を解決したときにそういうものが来ましたか、どこかの国から。
  44. 園田直

    国務大臣園田直君) ドイツのこの事件が解決したときにカーター大統領初め電報が行っております。これは事前にこういう強硬手段をとるについて各国了解を求め、その援助を受けておるわけでありまして、そういう国々から祝電が行ったわけであります。日本ではそういう関係もございませんので、どこからも祝電はいただいておりません。また、祝電をいただけるほどのことではなくて、やむを得なかったとお許しをいただくことであると考えております。
  45. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は日本のとった人命尊重基本とする政策は悪いと言うつもりはありません。これは当然のことであるし、また非常に大事なことだと思うんです。ただ、各国からわが国が批判を受けるというのは、このハイジャック犯に対しては、やはり国際的な一つの共同戦線、協力というものが必要なんですね。その協力戦線から日本は何となく脱落したような印象を与えておる。これは、私は人質とか、そういうものを全部人命を確保したのはりっぱなことだと思いますけれども、その人命尊重基本であっても、その中で最大限の努力をしたという跡が認められなくてはならない。わが国の場合はそれが何も認められない。そこに問題があると思うんです。だから私は、人命尊重を否定する人はまずないでしょう。だれ一人として人命尊重を否定する人はないと思います。しかし、人命を守りながらいかに法を守るかということをやるのが政府の責任である。そのための最大限の努力をした跡が認められるならば、たとえ同じような結果になってもそんなに批判を受けることはないと思うんです。私は、その意味で、政府のとった処置について必ずしも万全の評価をしがたいと思うんです。  それから、西ドイツの処置の中で、わが国が後から見て参考になる点というのはありましたか。
  46. 園田直

    国務大臣園田直君) 西ドイツのやられたことで参考になる点というのは、第一は国際的な協力を求めたという点、これは非常に大きな問題でありまして、正直に言って、ああいう早急の中で、日本としては各国にこういう方向でいきたいと思うから何とか協力頼むという、この協力が足りなかったという点が一番大きいと存じます。  それからなお、あとは参考になるとすれば技術的な問題で、そのほかはまあまあと思っておるわけであります。
  47. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 公安官制度は先ほど質疑出ましたけれども、もう一つ、機動隊の海外派遣、それをするための警察法の改正ということも、新聞等の情報では検討されておると流されております。この点についてはどう考えておられますか。
  48. 園田直

    国務大臣園田直君) 国家公安委員長もおられますが、同意見でありますから、私からお答えをいたしますが、これはドイツのような場合になった場合に、相手国が了承すれば警察官を派遣してやってもできるのかできぬのかという検討を命じましたが、私も公安委員長としても、法律改正をして、そして武装した警官が海外に行くという準備をしておくということは、これは憲法の規則には触れぬかもわかりませんけれども、精神から言っても、またそういうことを法律改正して、撃ち合う準備をしておくべき筋合いのものではないと、こう考えて、これはきわめて慎重に検討を命じただけの問題だと御理解いただければありがたいと存じます。
  49. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 じゃ、もう時間がありませんので、一言最後にもう一問だけお伺いします。  そうすると、その海外派遣ということはやらないというふうに理解していいわけですね。  それから、もう一つついでに意見を含めて尋ねますけれども、私の意見は、公安官制度にしても、機動隊の派遣にしても、公安官にしても、問題があることは事実です。しかし、一つの抑止力にはなると思うんです。実際にそういうものを乗せる乗せないは別です。ただ、乗せられるという一つのフリーハンドを持っているということは大事なことではないか。それから、機動隊の場合も、本当に海外派遣できるかどうか、これは相手側の事情もあるから、私はそう簡単にいかないと思います。しかし、条件さえ許せば、それが最善の方法だと判断できた場合にはそれができる、そのフリーハンドを持っておるということは非常に大事じゃないかと思うんですね。それで、ハイジャックというのは私はもう完全な決め手で、一〇〇%防止は非常にむずかしいと思います。いろいろやってもどこかで抜け道があって出てくる可能性がある。そういう万一起こった場合に対してのフリーハンドを持っておる、それが、やることがマイナスかプラスかはそのときどきで判断をして、マイナスであるならばやらなければいいわけです。それだけの選択の幅を持っておるということが私は大事なことだと思うし、またそれが抑止力にもなると思うんですね。日本はもう何もしないんだ、防止には一生懸命やるけれども、一たんハイジャックやられたら、あとはもうお手上げだということを何も明らかにしておく必要はないわけです。人命尊重基本にやられることは非常に結構ですけれども、やはりそれだけのフリーハンドを持つことが抑止力にもなるし、大事なことではないかと思いますが、先ほどの件も含めて御答弁をいただきたいと思います。
  50. 園田直

    国務大臣園田直君) 御意見は十分拝聴いたしましたが、警察官あるいは機動隊を情報収集または犯人の調査追跡のために派遣することはこれは許された範囲内で考えておりますけれども、いまでも政府要人等が海外旅行をした場合には護衛官は国を出るとき武器を捨てて相手国の国内に入るわけであります。そこで、これはもちろん相手国の主権に関する問題でありますから、相手国の相談もありますけれども、いまこの際、武装した警官がそれぞれの武器を持って海外へ派遣されるということを前提にして法律改正することは、確かにおっしゃるような意味もありますけれども、これは非常に大事な問題でありますから、よく慎重に考え、各党の御意見も承ってからこれは進めたい、それまでは進めない方がよいと私は考えております。
  51. 森田重郎

    ○森田重郎君 すでに本件ハイジャック問題につきましては、各種の委員会におきまして相当な論議が尽くされているというふうに私なりに理解しておりますので、多少私変わった視点から実はお伺いしたいと思うのでございますが、官房長官は時間の関係で早く御退席になるということでございますので、実は人命尊重と申しましょうか、人道上の問題と申しましょうか、そういう意味での御質問を、長官御退席後に実はお伺いしたいというような関係から実はお伺いするわけでございますが、例のダッカ空港におきまして、事件当時、政府軍の兵士が反乱軍に射殺をされたというような報道を私たち承知いたしておるわけでございますが、本件に関しまして、政府の団長を務められ大変御苦労なさった石井さんあるいはまた朝田さんでも結構でございますけれども、その辺の事情を、あとからの質問と関連いたしますので、ごく簡単に時間の許す範囲でちょっと御説明を賜りたいと、かように思っております。
  52. 石井一

    政府委員(石井一君) クーデターの問題に関しましては、日本国民の皆さん、大変御心配されたと思うのでございますが、現地におります私たちも、それを、正式な通告を受けたわけではございません。空港管制塔におります係員から、ちょっと国内的なトラブルが起こったので、しばらくこのハイジャック問題に集中するわけにいかぬかもわからぬが、間もなく解決すると、そういうふうな通告があっただけでございます。ただ、銃撃の音が大きくなり、そのうちに夜が白々と明けてまいりますと、空港の中にばたばたと兵士が倒れておる。また管制塔の中にも銃殺をされて血まみれになって倒れておる兵隊が、たくさんそういう姿が見える。こういう中から、またさらに司令官の部下の一人が、ハイジャック機に向かって三百メートル以内に兵士が近づいたら銃殺してもかまわない、こういう通告を出しておりますのを聞きまして、非常にささいなことだと言いながら、かなり深刻な事態に入ってきたなということを予感したわけでございます。私が聞き及びましたところ、このクーデターによりまして死傷した者が百名と報道されたり、あるいは二百五十名と報道されたりいたしておりました。それから空軍の下士官が起こしたクーデターということでございますが、パイロット以上相当な地位にある者が十一名射殺された、こういうふうに聞いたわけでございます。  わが日本代表団といたしましては、危害を加えられないと言いながら、反乱軍が上がってきて銃を向けた瞬間もございましたし、われわれが銃声の中で体を伏せて待機をしておったときもございました。また、非常にささいなことかもわかりませんが、劇的なことがありましたのは、私たちが暑いものですから服を脱いでおりまして、隣で服を脱いでおった外務省の係官の服を、兵士が変装するためにその服を着ましておりて行って、そのまま銃殺された。その外務省の係官の背広は血まみれになって、それ以上使用に供さない、そういうふうな劇的なこともあった。そういう情勢であったわけでございますが、このことによりまして約六時間日航機との交信が不通になった。水だとか冷房機だとか、そういうふうな物理的な問題についての交信はいたしましたが、人質解放に対する交信は不通になったと、こういう情勢であったわけでございます。
  53. 森田重郎

    ○森田重郎君 わかりました。結構です。     —————————————
  54. 小野明

    委員長小野明君) 内閣官房長官に対する質疑はこの程度とし、次に、クアラルンプール日航機墜落事故に関する件について運輸大臣から報告を聴取いたします。田村運輸大臣
  55. 田村元

    国務大臣(田村元君) 先月二十七日日本時間の午後八時ごろ、香港を出発しクアラルンプール国際空港へ向かっていた日本航空所属DC8型機が、着陸の直前に同空港から北西約七キロの地点に墜落するという事故が発生いたしました。  詳細につきましては、お手元にお配りした資料に記してございますが、日本人乗客二十九名を含む乗客及び乗務員合計七十九名のうち、不幸にも三十四名の犠牲者を出しましたことは、まことに遺憾の念にたえません。  航空企業の至上命題である安全運航の確保を達成させるべく、運輸省としては、従来より、この点に最大の力点を置いて航空企業指導監督を行ってきたのでありますが、今回このような事故の発生を見たことは、私といたしましてもまことに残念であります。  本事故の原因調査につきましては、国際民間航空条約に基づき、事故発生国であるマレーシア政府が実施することとなっておりますが、航空機登録国であるわが国としても、航空事故調査官を現地に派遣する等の方法により、事故調査に参加しているところであります。  現在事故調査は続行中でありますが、マレーシア政府協力を得て早急に事故原因を解明し、もって航空運送事業の安全運航の確立に万全を期する所存であります。  以上であります。
  56. 小野明

    委員長小野明君) この際、参考人日本航空株式会社社長朝田静夫君から発言を求められておりますので、これを許します。朝田静夫君。
  57. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) ただいま運輸大臣から御報告がございましたように、まことに申しわけのないクアラルンプールの事故を起こしまして多数の人命を失う結果になり、亡くなられました方の御冥福を心からお祈りいたしますとともに、生存者で負傷されております方々の一日も早く回復されることをお祈りいたしておるような次第でございます。  事故の概要はただいま御報告のとおりでございまして、私ども常々安全運航、安全整備、安全性の確保というものを絶対命題として経営に当たってまいりましたが、しかしながら不幸にしてこのような事故が再び起こりまして、まことに申しわけないことと存じております。深くおわびを申し上げます。  その後、事故対策を、私どもは連続事故の当時に総合安全推進本部というものを設置いたしまして、私みずから本部長の任に当たりました。八十三項目安全対策を設定をいたしまして今日まで努力をしてまいったのでありますが、ちょうど昨年十二月に、この安全対策をやっておればこれで十分だと、安全にはこれで足りるという考え方というものはございませんから、これでもって能事足れりとしてはいけませんので、ひとつ見直しを行うと。事情の変化に応じて間尺に合わなくなったようなものがあるかどうか、あるいは硬直化した安全対策であってはならないというので、四月あるいは七月にその見直しとその報告を受けておったやさきでございます。  そこで、今回の事故はマレーシア政府当局が調査に当たっていただいておるわけでありますが、客観的に科学的に合理的に厳正に調査を進められることを期待いたしておりますが、そういう事故の真相究明というものと、これは調査の結果を待たなければなりませんけれども、そして予断をもってこの問題を推論をすることは避けなければならない問題ではございますけれども考えられる可能性を十分私ども頭に入れまして、とりあえず即刻八十三項目安全対策につけ加えて、事故後とりました安全対策の補完について御報告をいたしたいと思うのでございます。  そこでまず第一に、何といいましても、安全運航のためには、定められました規定、手順というものを厳守するということ。そして相互モニターの実施が最も重要な基本でございますので、その徹底を図ることを最重点項目といたしております。  それから第二番目は、離着陸安全対策委員会の設立でございまして、少し名前が新聞に出ておりましたものも、名前が少し奇異にお感じになるかと思いますが、イレブンミニッツという委員会ということで出ておりましたが、このことは、航空事故は統計的に見ますと、離陸時の三分間、進入、着陸までの八分間という十一分の間に集中いたしておりますので、この十一分間を、私どもも絶えず今日まで研究開発を続けてまいりました人間工学的な研究や、あるいは自衛隊のケース等を参考にするなど、いろいろな角度からこれを解析して、人間に起因する誤操作、ヒューマンファクターというものを、誤操作、あるいは判断ミス、そういったものの入り込む余地のないように手順の確立と乗員相互間の連係動作の完璧を期することにいたしております。具体的にたとえばチェックリストをより正確に読む、あるいは乗員相互間の連係作業を洗い直してその成果を日常運航に反映せしめる。  なお、そういうようなことがこの委員会で決められたことは即刻ラインに移しまして実施の確保を期しておるようなわけでございます。  それと、第三番目は、経験豊かな老練な先任の機長によりますところの日常運航による特別指導でございます。できるだけ速やかに主席以上の機長が同乗をいたしまして若い後輩の指導に当たるということであります。  第四番目には、機長養成に当たりまして、それを教育指導をいたしますキャプテン、そういった者の指導要領を充実強化する、基本的な考え方についてのより充実した指導要領をもとに機長養成訓練の強化充実を図るということにいたしたわけでございます。  第五番目は、特定空港についての再点検でございますが、精密でない進入方式で着陸する滑走路を持っておったり、あるいは特殊な地形あるいは特殊な気象条件が存在する空港や、空港施設が不十分な空港——名前は申し上げませんが、そういうところの空港におきます最新の情報を入手いたしまして、乗員並びに地上運航当事者への徹底、必要に応じて運航方式の見直しを行いたいと考えておるようなわけでございます。  第六番目には、地上運航従事者と運航乗務員間の運航情報伝達の円滑化でございます。カンパニーラジオというものを持っておりますが、これと、この地上運航従事者と、飛行機との間に運航情報の伝達が円滑に行われるような装置を地上に装着をするということでございます。  一番最後の七番目の項目といたしましては、飛行記録の装置——普通フライトレコーダーと呼んでおりますが、飛行記録の装置を抜き取り検査をいたしまして、その飛行の経路、あるいは進入時、アプローチにかかったところのいわゆるフライトの実態を把握いたしまして、それを指導の材料にいたしまして、これの指導監督に役立てたいと、こういうことでございます。  以上、とりあえず八十三項目安全対策につけ加えまして、今回の事故に直接原因があったと考えられなくても、考えられ得る可能性も十分考慮に入れまして、とった措置でございます。  以上でございます。
  58. 小野明

    委員長小野明君) それでは、質疑のある方は順次御発言を願います。
  59. 安恒良一

    安恒良一君 私は日航社長にお伺いをしたいんですが、私は、これは今回の墜落事故、それからハイジャック防止、両方含めてお聞きをするんですが、いま日航社長は、民間航空会社であっても、まず安全ということが最重点だと、こういうことを強調されまして、具体的な安全対策項目について意見を開陳されました。社長、果たしてあなたの会社でそれがそのとおりになってるんだろうかどうかということについて私は大変心配をする。  それはなぜかというと、一、二の例を挙げてこのことについてお聞きをしたいと思いますが、第一は、御承知のようにニューデリーで手荷物の爆発事故がありました。このときにいわゆる日航乗員組合から手荷物検査を厳重に行うようにという要求があったんです。ところが、航空保安室長は、従来どおりの検査基準で十分だ、厳重な検査はやらない、安全対策営業とのバランスで行うということで組合の要求を当時拒否をしてます。ここを私は重視する、安全対策営業とのバランスで行うということを。このことは非常に重要なことなんですが、これが一つの例であります。  それから、ですから私はハイジャックのことだけ言いますならば、たとえばことしでも、日本赤軍がインドに侵入したという外電が流れた、そしてダッカでハイジャックが起きました。その場合、会社が安全第一の姿勢をとって手荷物チェック等を行っておられたならば、ある程度防止ができたんではないだろうかという考え方もあります。ですから、このことについて一つ。  それからいま一つ、これは一般の墜落事故の場合にも言えることなんですが、御承知のようにニューデリー、モスコー、アンカレッジ、クアラルンプールと、こういうふうに次から次に昭和四十七年以降起こってる。またこれをさかのぼりますと、ジェットになりまして以降、これは日航だけではありませんが、全日空の東京における墜落の問題であるとか、BOACの富士山における激突の問題である等々、いろいろあるわけです。そういう中で、特に昭和四十七年以降の日航の問題でありますが、これだけ次から次にいろんな事故を起こす、そのたびに、運輸省がいわゆる指導要綱というものをとった措置、私はこれ一覧表を持ってます。また会社が決められたやつも、時間がありませんから、要綱持ってます。会社がその都度とられたやつも、ここに厚い方針を出していただきましたからわかります。ところが、本当にこのことをやるときに、言葉の上では安全と言われながらも、どうも——民間航空会社でありますから、営業ということを私は無視をせいとは言いません。しかし、この営業とのバランスというところに重点が置かれておったんではないだろうか。  たとえば、これも具体的な問題でありますが、いわゆる事故が起こりました後、会社の経営姿勢といたしまして、経営管理室長が連続事故の後二年とたたないうちに、過剰な安全投資が問題だ、こういうことをおたくの「おおぞら」というところに発言をされて問題になったことがあると思いますが、そして会社からは安全の現状維持という言葉はあっても、安全の向上という言葉が最近ほとんど聞かれない、こういうことをおたくの従業員は大変心配をしてます。たとえば職場の中で、経済性であるとか、燃料の節減であるとか、復配、攻めの経営、こういう言葉はたくさんあなたたちから出るそうであります。ところが、安全第一とか、臆病という気持ちで——臆病という勇気を持てとか、安全で妥協するな、こういうような言葉は会社社長以下経営首脳部から聞かれない、こういうことを日航で働いている人々が大変心配をしているわけです。その点につきますと、社長が、こういうところへ出てこられると、まことに申しわけない、安全は第一だ、こう言いながら、現実に会社内で行われている私は具体的に二つの事例を挙げました。あなたの方の会社のかなり経営の責任者の二つの言葉を私は言ったんですが、こういう点について社長のお考えをまずお聞かせ願いたいと思います。
  60. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) ただいま御指摘の、第一のニューデリーの手荷物爆破事件がございましたときのことでありますが、当時の航空保安室長がそういうことを申したとすれば、それは誤りであります。それで、私どもはそういう考え方をとっておりませんで、先ほども御指摘がございましたように、運航の安全、整備の安全にとどまらず、保安をも含めて安全性の確保ということを常にやかましく言っておるわけでございますが、その際に、私はやっぱりハイジャック対策関係があるのでつけ加えさしていただきたいと思いますが、そのニューデリーでおりた乗客が手荷物を機内に残していったと。そこで、客室乗員のパーサーとスチュワーデスが、さぞお困りになっているだろうというので、これは真心のこもったサービスということを常に強調いたしておりますので、そういうことを監視のマニュアルもございますので、残っておりました荷物の所在を突きとめましたところが、だれも持ち主がいないということで、それを税関の保税地域の蔵置個所に置きまして、そして税関にそのことを連絡をしておいたところが、それが時間がたったときに爆発したということでございまして、それを私は、十分監視体制にも影響がございますので表彰をいたしたわけでございます。そういう意味で、私どもは安全性の確保ということは営業とのバランスでということは、連続事故後日航——ども会社企業体質にまで痛烈な御批判をいただきましたので、率直にそれを私は正面から受けてそれを改善をしたいということで今日までまいっておりますので、営業とのバランスとか、あるいはその過剰投資だと言っておりますことは、それは取り上げておりません。あるいは座談会か、あるいは機関誌の「おおぞら」でそういうようなことを申しておりますけれども、それは誤りでございます。私は復配ということも言っておりますけれども、必ずそれにつけ加えて、赤字は時間をかしていただきさえすればリカバリーできるけれども、事故で失われた生命というものはリカバリーできないんだ、赤字はこわくはないけれども、事故を起こして人命を損なうようなことがあっては元も子もなくなるんだということは、絶えずその再建計画、復配計画を言っております際に私は申し上げておるつもりでございます。今後、いま御指摘の点を十分自戒、反省をいたしまして、今後ともそれに対して努力を続けてまいりたい、こういうふうに考えております。
  61. 安恒良一

    安恒良一君 私は、これは具体的な事実に基づいてますから、昭和五十一年の五月二十六日に、乗員組合に対して航空保安室長が、安全対策営業とのバランスで行うと、こういうことを言ってますから、間違いなら間違いということで、航空保安室長というのはおたくの会社の幹部ですから、その点は厳重にそういうことがないようにしてもらいたい。それから、同じくいわゆる経営管理室長、これもおたくの幹部ですね、「おおぞら」という、その中で発言をされてる、これもまた事実なんです。事実であるとするならばって、そういう雑誌が出てる、その雑誌もある。だからそれも、この問題につきましても、過剰な安全投資が問題だなどというのは社長が間違いだと言われたんですから、明確にそういうことについては——会社の責任ある人がそういうことを言ってるんですから、あなたが最高責任者ですからきちっとしてもらいたいと思います。  そこで、最後に私は一つだけ質問しますが、いま社長も言われましたように、航空事故の大半が離着陸に起きてると思うんであります。しかも離着陸が大体悪天候下の事故が非常に多いわけですね。これは、たとえばアメリカで一九六四年から一九七一年に二件、一九七二年から七六年に九件と急増しているわけです。そこで、いわゆるNTSBから安全を第一とする体制ということで指摘がいわゆる六項目にわたってあります。そこで私は、おたくの乗務員の場合に悪天候下においてちゅうちょなくダイバートできるような御指導をされているのかどうか。——今回の場合も一つの悪天候ですね。ちゅうちょなくダイバートできるような御指導をされているのかどうか、こういう点。  それはなぜかというと、私がこれは間違っていれば間違っているということで御訂正願いたいと思いますが、雷雲レーダーというのがありますね、ところが、この雷雲レーダーに雷雲が映った場合には他の空港に着陸すると、これが私は常識だと思うんでありますが、日航の場合にはレーダーを見ながらどうも強引に着陸をしなきゃならぬ、こういう状況にあるやに聞いてます。でありますから、この点について最後質問として、いま申し上げたように、社長も言われたように、事故のほとんどが離着陸にありますから、いま申し上げたように、そういう場合にはちゅうちょなくダイバートできるような体制についての御指導をされているのかどうか、また今後どうされようとしているのか、そのことについて最後にお聞きします。
  62. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) 御承知のように、運航規程というものがございまして、詳細にそういうところを規定いたしておるわけでございます。手順あるいはその規定、そういうものを絶対に遵守するということがたてまえでございますが、直ちにダイバートするという以前に、そういう手順なりあるいはその規定の遵守というものがございます。これは、先ほど申し上げましたように、事故と直接原因との関係で申し上げておるわけではございませんので、予断を持って私が申し上げておることではないということを御了承いただきたいと思うのでございますが、そういうときに最低の安全対地高度というものを守っていきまして、そして視界が悪くって飛行場あるいはその他周辺の付属物が視認できない、見えない、こういうような状況のもとにおいては、そういう最低の安全高度を切ってはならない、したがって、それが見えないとそれは復航をするんだということの規定になっております。それでもなおかつおりられないというようなときにダイバートを考えることもあるわけでございますが、それの先ほどから申し上げております規定あるいはその手順、そういったものを遵守、励行するということが基本であります。  もちろん、ダイバートするというこどにオールターネートの代替空港というものを飛行計画の中に織り込んでおりますから、十分その点は、私どもはそういうことについて配慮をしてくれておると思いますが、しかしながら、そう申し上げましても、現実にこういう事故が起こっておるわけでございますので、先ほど申し上げましたイレブンミニッツ委員会というようなものも通じて、先ほど申し上げました、とりあえずとりました措置を励行してまいりたい、こういうふうに考えております。
  63. 安恒良一

    安恒良一君 それじゃ、時間も十五分で終わりたいと思います。  私、社長に要望して再検討お願いしておきたいのは、私はやはり、この安全第一ということで経営重点ということではないということですが、その方針があれば変えてもらいたい。特に悪天候下で強引に着陸をするということは私はいけないことだと思う。これは航空燃料の節約とか、乗客の宿泊費の問題であるとか、乗務員の労働時間、こういうような問題がありまして、どうも私がお聞きをするとそういうことがあるやに聞いていますので、どうかそういう点、特にいまも言われたように、まずダイバートする前に十分な規定を守ってと言う。ところが問題は、このアプローチ方式とミニマムの問題でありますが、私が調べましたことには日航のミニマムが一番低い。ですから、これは航空技術の問題がありますから、私は航空技術者でありませんから、ここで社長と論争する気ありません、このミニマムの問題。しかし、一応諸外国航空会社のこのミニマムの問題等見て、日航の場合が一番低いというふうに言われておりますので、こういう点についても安全第一と言われましたから、再検討を、ひとつぜひお願いをしたい。これは私の意見を申し上げて私の質問を終わりたいと思います。
  64. 穐山篤

    穐山篤君 直接事故の問題に入る前に運輸大臣に一言お尋ねしたいんですが、成田空港の問題はまた別の機会に議論することがあると思います。たとえば羽田空港にしましても、大阪の国際空港にしましても、その敷地も非常に広い。出入りの人間も非常に多い。特に出入りの人間の中には直接運航あるいは整備に携わっている正規の職員もありますけれども、   〔委員長退席、理事安恒良一君着席〕 いわゆる業務を委託をした方々が非常に出入りが多いわけですね。これも一応ネームはつけてはおりますけれども、疑えば切りがないほどいろんな人が構内に入っているわけなんです。それから、羽田の場合を見てみますと、保税倉庫を含めまして外部から人間が自由に出入りができるというふうな状況にあると、私は現実に調べて思うわけであります。これはハイジャック問題のみならず空港全体の安全という点から考えてみまして非常にゆゆしい問題ではないかというふうに考えますが、その点についてどう考え、あるいはどう最近措置をされているのか、具体的に御答弁をいただきたいと思います。
  65. 田村元

    国務大臣(田村元君) いまの御意見は全く同感であります。実は、これはちょっときょうのクアラルンプールの問題とはやや趣を異にするかもしれませんが、先般のハイジャック事件にかんがみまして、いま大急ぎであらゆる問題を洗い出しておるといいますか、ピックアップしております。そして、これはもちろん運輸省独断で物事を決めていく性質のものでありませんから、あるいは警察当局、また航空会社、御承知のように保安の問題等につきまして、あるいは警備の問題等につきましては、ほとんど航空会社が自主的にやっておる場合が多うございます。そういうわけで、抜本的に、しかも大急ぎで対策を立てていこうということで、いまいろんな問題をピックアップしておる、こういうことでございまして、具体的にこれをどうするのかということをお答えする段階ではありませんが、私ども考えております問題点の中に当然含まれておるわけであります。  たとえば、これは確実な情報ではありませんから、ここでこれを確言として申し上げるわけにはまいりませんが、先般のハイジャック事件におきましても、あるいは空港関係者が介在しておったのではないかというような新聞報道もあるわけであります。そういうこともございまして、単に外国だけを疑って、といって国内を、ドメスティックの方をないがしろにすることはなりません。あわせまして、いま検討中でございます。結論を急ぎたいと思っております。
  66. 穐山篤

    穐山篤君 それでは事故を防止するという点について日航社長にお伺いしたいんです。  先ほどの安恒委員の質問に対しまして、安全第一主義をとるということについて態度を表明されましたから、そのことについて私も評価し、ぜひそう進めてもらいたいと思います。ただ、それには実行が伴わなければ問題にならないわけでありまして、具体的に一、二の問題について最初にお伺いをします。  たとえば、経済性の問題がさっき指摘をされましたが、安全第一だというふうに表明されました。しかし、現実に日航内におきます規則だとか、定義だとか、あるいは指導というものの中には、依然として経済性という表現あるいは指導が非常に強いわけですね。   〔理事安恒良一君退席、委員長着席〕  たとえば機長の役割りの中には「経済性」という新しい言葉が挿入されているわけですね。ですから、安全第一ということが基本になるならば、経済性を無視しろとは言いませんけれども、経済性の前に安全は優先すべきではないか。そういう意味では、部内の規定、規則というものも安全第一という立場改正をされてしかるべきだと考えていたわけですが、いまだにその部分について直っておらないのはどういうわけかということをひとつお尋ねしたい。  なお、国内三社、大きな三社の中で機長がいわゆる管理職になっておりますのは日航だけでありますね。これを国際的に調べてみましても、日航を含めて世界じゅうで二つないし三つぐらいが機長が管理職になっているだけでありまして、それ以外は組合員たるべき資格になっているわけです。私は労使問題に介入するつもりはありませんけれども、これはまれなことではないかという意味で、われわれも非常にけげんに思っておりますが、国際的に乗員組合からも非難を現実に受けているわけですね。そのことがいろんな面に千波万波を呼んでいるわけですが、この点についてもこれからどうされるのか、最初にお尋ねをしておきたいと思います。
  67. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) 最初の御指摘の点についてお答えいたしますと、経済性というものを機長の役割りの中に挿入をした。この問題につきましては、私みずから乗員組合の方々と事故後安全に関する話し合いを持ちました。その際にも出たのでございますが、決してそういうことを従来から言っておるわけではなくて、私は常々安全性の確保というのは絶対命題であるということ、これは何といいますか、何にも優先して、どれを優先順位の問題じゃなしに絶対命題であるということについての疑念は持ってもらっては困る、そういう点について、経済性というのは、そのほかにも書いてございまして、定時性あるいは快適性というようなことも書いてございます。場合によってはこの定時性というものも解釈の仕方によっては衝突するじゃないかということにもなりますので、そういうことではないんだと、経済性というものを入れたということによって、従来の方針というものは大命題であるということを書いて、ぐらついているんだというような考えでは決してないんだということを再三話し合いを通じまして理解をしていただいたと私は思いますが、そういうようなことについて、もしもっと明確に処置をしなけりゃならぬことであるならば考えてまいりたいと、こう思います。  第二点は、機長を管理職にしておるのは、やはり労務問題、乗員の諸君の間にそういうものが根強く問題にされておるということでございますが、この問題につきましても、私はずいぶん以前にとられた制度でございますけれども、当時労務政策で管理職にしたんじゃないかというようなことの解釈が、むしろ私どもの方から言えば誤解があるというふうに私は考えます。機長というものの職責には、やはり航空機に乗り組む従事員に対する指導、監督あるいは指揮命令をするということができるようになっておりますし、何としても、いま先ほどから御指摘をいただいております貴重な人命をお預かりして目的地にまで無事故で送り届けなきゃならぬ。この固有の任務を果たすために、航空機に乗り組む従事員に対する指揮命令権を持っておる機長、そして、多数のかけがえのない貴重な人命を預かる機長ということになりますと、私は管理職であってしかるべきだ。もちろん航法上の立場もございます。先ほどからお話に出ております東京条約についても、そういうことも航法的な責任と権限を持っておるような立場でございますので、私は管理職というものが労務問題で発想をした考え方でないのだという私は考え方をしておるようなわけでございます。
  68. 穐山篤

    穐山篤君 いまの問題議論すればずいぶん深い議論があると思いますが、ただ私は日航の労使関係をここ数年見ておりまして非常にトラブルが多い。それは立場の違いがありますから、それはトラブルがあっても適当な時期に妥協するということはあり得ると思うのですが、ただ重要な問題で常にトラブルが多いんですね。たとえば少し古い話で恐縮ですけれども、昭和四十九年のハイジャックがあった後で、警察当局から日本航空に対しまして具体的に防止策について提案がありましたね。それは客観的に言えば、乗員あるいは乗客の生命の安全というよりも、ハイジャッカーをつかまえるという、そういうところに中心を置いた警察の要望であったように思うわけですね。それについて、組合側とやりとりをしております交渉の経緯というものを聞いておりましても、十分に労使の間で納得がされない、紛争のままで、そのままずうっと経過をしているというふうに思います。  それから、今回のこの事故の場合にも、時間的に、新聞報道を見ましても、急激な天候の変化というものがありますから、私は予断は許さないと思いますけれども、少なくとも悪天候あるいは雷が落ちているというそういう一番最悪な条件の場合の航空のあり方につきましても、機長側要求と日航側の考えではかなりまた食い違いが現にあるわけですね。交渉の経緯の中でもその記録は明らかにされているわけです。私はそのことが、機長が管理職だからというふうには言うつもりはありませんけれども、そういうことがひいては事故につながったり、あるいは傷害につながったり、不測の事態を起こしかねないのではないかという心配を現にしているわけです。したがって労使問題に介入するつもりはありませんが、現実に紛争が続き、あるいはしばしば紛争の種がまかれるということについて残念に思うわけです。ですから、その一つの問題として、今日では労務対策ではないとは言ってみても、世界にまれな管理職組合ですね、もう一遍この点は再検討をいただきたいというふうに思います。
  69. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) 労使関係についていろいろな困難な問題を抱えておることも御指摘のとおりでございまして、私はこの問題につきましては、経営の基盤も、あるいは安全性の確保も労使関係の正常化、安定化に基盤がなければならぬというふうに考えております。私みずからも、しばしば労働組合の諸君とも話し合いをいたしておりますので、今後ともそういうことの正常化あるいは安定化ということに向かって私は努力を続けてまいるつもりでございます。
  70. 宮田輝

    ○宮田輝君 せっかく日本航空朝田社長においでいただきましたので、日航としての安全対策を具体的にお伺いしたいと思うのです。  ところで、先ごろ私たちは新聞などで日本航空の安全度は世界の七十七社中の六十三番目と、こういうアメリカの「フォーチュン」の報ずる番付を知らされたわけでございますけれども、これが本当だとしたら大変危険な航空会社だということになりはしないかと思うのですね。いささか驚かされたわけでございます。私たちとしては、日航は世界一ではないかもしれないけれども、かなり安全な航空会社であろうと、漠然としてではありますけれども、そう思っていたと思うのです。いろんな調査の仕方もあるとは思うのでございますけれども、この雑誌の報道するそのデータといいますか、根底は一体何だったんでしょうか。あのときの御発言ではどうもそこら辺がよくわからないというようなことがあったと思うんですけれども日航のこの調査についてのその後の調べもまたおありかと思いますので、まずその点をお聞かせいただきたいと思います。
  71. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) 「フォーチュン」という雑誌に出ておりましたただいま御指摘の統計は、私ども調べましたところが、一つは飛行回数当たりの死亡者の統計というものが一つでございまして、第二番目は、飛行距離百万マイル当たりの死亡者ということの統計でございます。過去十年間にわたる実績をもってそういう統計が出たわけでございますが、私は率直に申し上げて、真っ向から率直にこれを受けとめなければならぬ。これについてとやかく言うことはいたしません、数字の問題でございますし、実績の問題でございますので。ただ遺憾ながらそういう統計が出ておりますが、従来大変高い評価をいただいておりました安全性についてこういう評価になるということにつきましては、何としても申し訳ない、一刻も早く安全性に関する私どもの当社の信用を回復するために役職員一丸となって全力を挙げて名誉回復に努めたいと考えております。
  72. 宮田輝

    ○宮田輝君 これはもう日本航空の信用というだけではなくて、文字どおり日本の翼、日本に対する世界の評価、日本の信用につながることでございますので、どうか社長いまの言葉をお忘れなく、役職員の方々に徹底していただきたい、重ねてお願いを申し上げておきます。  で、事故の原因でございますけれども、多くの場合パイロットの操縦ミスということを聞くのでございますけれども、この点についてはいかがでございますか。
  73. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) そういうケースがあることは事実でございますけれども、先ほど申し上げましたように、事故調査の真相を究明するという面で合理的に科学的にと申し上げましたが、これは徹底的にやはり真相の究明に当たっていただきたい。そこで、亡くなっておるパイロットの責任にしていいものかどうか、あるいは客観的な条件で、どうしてもそれに抗し得ないファクターがあったのではなかろうかと、いろいろ事故調査のファイナルレポートが各当該国の調査委員会で出されますが、それに基づいて私どもは判断をし、対応をしていかなきゃならぬと思います。一概にパイロットミスというようなことで片づけられることは、乗員はもとより私どももなかなかそういうことで承服できかねるというようなケースもございます。現にニューデリーの事故につきましては、いまだ調査報告に対しまして私どもは承服できませんので、インドの上級裁判所にアピールをしておるというような係争事件もございます。やはり客観的、科学的に、厳正にひとつ御調査をいただきまして、私どもは二度とこういう事故が起こらないように戒心をいたしてまいりたい、こういうふうに考えます。
  74. 宮田輝

    ○宮田輝君 現在航空大学校あるいは自衛隊出身者、自社養成と、パイロットの養成についてはこの三通りに大別されるということを伺っているのでございますけれども、出身者のたとえばいまの三つがそうであるとしたら、三者間の技能的な格差はこれはないものでしょうか。また外国の場合どういう人々をパイロットとして採用されているのか、その二点についてお伺いいたします。
  75. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) 出身別あるいは養成方式によります格差というものは私はないと存じております。外国の養成方式は空軍というものがソースになっておる。その国の空軍の人的ソースというものがございますが、私ども日本ではそういうわけにもまいりませんし、航空大学校、一般の大学を出ました自社養成あるいは防衛庁からの割愛——防衛庁からの割愛は最近とだえております。それは、事業規模を拡大いたさないで今日減量経営といいますか、そういうものをやっておるせいもございますけれども、そういうものはいまございません。ただ、航空大学校を卒業をしてまいります卒業生は、私ども会社立場考えまして、本当は全部地上職員ともに採用を中止いたしておりますが、航空大学校の卒業生だけは一年間十五人採用をいたしております。そういうようなことで、外国と事情が非常に異なっておりますし、コーパイロットになるまでの間の層が非常に厚いということの事実は否定できないと、こういうふうに考えております。
  76. 宮田輝

    ○宮田輝君 クアラルンプールの事故の場合、七十九名中生存四十五名、これは不幸中の幸いと言っていいのかもしれませんけれども、あの場合、報道されたところによりますと、その突っ込んでいく手前のところがゴム林であったというようなことが大きな活字になっていたのをいま思い起こすのでございますけれども、先ほどの参考人のお話の中にも特定空港の再点検を重視するというようなこともございました。で、空港並びに空港周辺について安全のためにこういうことを重点的にいま研究しているというようなことがございましたらお聞かせいただきます。
  77. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) 特定空港について、先ほど特定の空港名前を申し上げませんでしたが、精密進入方式のない、といいますと計器着陸飛行方式がないところ、あるいはその他の航行着陸の援助施設のないところ、そういうようなところあるいは特殊な地形、特殊な気象条件、こういうようなものが存在する空港と申し上げたのでありますが、非常に片一方のランウエーの端に向かって山があるとか、たとえば釜山の空港なんかがそうでございます。それから香港は御承知のように大変ああいう地形でございます。ボンベイは先ほどからハイジャックに関連して問題が出ておりますが、あるいはニューデリー、これはゴーストビームが、いわゆる幽霊電波が出たんじゃないかということも、その事故の当時から話もございます。そういうことについては、私どもも、あるいは政府御当局を通じてこれの改善方といいましても、地形はそう簡単に変えられるわけはございませんので、その他のそれに対応するそのプロシーデュア——手順、規定、そういったものを詳細に規定をいたしまして、十分注意をして運航するようにという、その補完的な対策を講じてまいりたい、こういうふうに考えております。
  78. 宮田輝

    ○宮田輝君 とにかく、まず安全ということをどうかひとつ役職員一体となってさらに御努力お願いしたい、こう強くお願いを申し上げて質問を終わります。
  79. 阿部憲一

    阿部憲一君 まず、朝田社長ハイジャック防止対策についてお尋ねしておきたいと思いますが、日航側では八項目の緊急強化措置を独自にお決めになられたと承っておりますが、その中で最も有効な項目というのはどんなふうにお考えになっておりますか。
  80. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) 今度政府が御決定になりました対策というものは、私どもも一体になって決めた対策でございますので、独自の対策で効果的なものというのは、やはり政府でお決めになりました対策の私どもにとっての関係のある部門は水際作戦、これはやっぱりダブルチェックあるいはその検査強化する、あるいは手荷物の持ち込みを制限すると、こういうことでございますが、私どもも、それを実効あらしめるための措置というのは非常にむずかしいところもございます。各空港によって当該国の主権という厚い壁にさえぎられるということもございますので、先ほど御指摘がございましたように、政府の御協力を得たい、そういうことに対する日航独自のダブルチェック——二重検査ができるようにひとつその当該国と御折衝をいただきたいということを申し上げておるわけでございます。  それと、私どもとしては十七空港にセキュリティーオフィサー——保安専門の職員を配置をいたしましてこれのダブルチェック等もさらに行いますが、それを監視するということ、あるいは情報の収集、伝達ということと同時に、規則において、先ほどから御指摘がありますような、いわゆる機内食を積み込む従業員あるいはその機内を清掃する、クリーニングをする職員、あるいは給油をする者あるいは整備でメカニックの人たちというようなものも十分それを監視するというそのたてまえをとりましたものですから、それに対応する配員を十七空港にそれぞれ規則における監視と手荷物チェックの監視等に航空保安専門職員というものを配置することに決定をいたしております。この辺がやっぱり水際作戦として、私どもは、当該国の主権の壁はございますけれども、決められた方策に基づきまして、懸命に努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  81. 阿部憲一

    阿部憲一君 いろいろと御対策を講じておられるわけですが、いまお話ありましたように、二重チェックということ、あるいはまた保安員の海外駐在というようなことですが、果たしてスムーズにいくかどうかということが非常に懸念されるわけでございますが、特に旅客に対するサービスなどを考えますと、激烈な国際競争の中においてそのような措置をとられることは相当マイナスになるというふうな懸念もしておりますが、その辺についてどのようにお考えになっていらっしゃいますか。また何かその他にも社長としてハイジャックを完全に防止するというようないい手だてがあるかどうか、もしおありになるとしたらばお伺いしたいと思います。
  82. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) こういう対策を実施いたしますと、仰せのとおり国際競争の上で不利な立場になるということも考えられますが、私どもは、日本赤軍というのはやはり日航にとって特有の現象でございますので、それにもかかわらずやらなきゃならぬと思っておりますが、でき得べくんば、これは国際空港相互のやはり関連を一体的なトータルシステムで物を考えなきゃならぬというのは、四十八年のドバイのハイジャック事故以来、IATAと申しまして、国際航空に従事しております世界の百社ばかりの航空会社で組織いたしております国際航空運送協会というものがございまして、私はその理事会の理事を仰せつかっておりますので、そこでモントリオールの理事会で、いわゆる各空港について共通の方式で共通の施設と検査というものを標準化してもらいたい、各空港においてばらつきがございますのでそういうものをなくしてもらいたいということと、IATAのいわゆる決議事項という、持ち込み手荷物の規定がございまして、決議を各航空会社が遵守励行してもらいたいというようなことで、歩調を一にすることがやはりわれわれの防止対策にもつながるところでございますので、今回もIATAの総会、理事会がございますので、私はこの点を強く訴えてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  83. 阿部憲一

    阿部憲一君 次に、さきのクアラルンプール日航機の墜落事故につきまして運輸当局に二、三お伺いしたいと思いますが、今度もまた不幸にしてとうとい人命を多数失ってしまったわけでございますけれども、事故当時の模様として、気象状況も非常に悪かった、それからさらに、現地空港の施設もILSが使用できなかったというような非常な悪条件を背負ってこの事件が起きたわけですけれども、事故前後ほかの空港へ着陸を変更した外国機もあったというようなことなどを考えますと、やはり大きな原因は機長の判断とか操縦の問題なんかに、いわゆる人的な要素といいますか、人為的な面が非常に大きいウェートを占めているんじゃないかというような気がするわけですけれども、お考えいかがでしょうか。
  84. 田村元

    国務大臣(田村元君) 少しく専門的な問題になることもございますので、航空局を呼んでございますから御説明を申し上げたいと思います。
  85. 松本操

    政府委員(松本操君) いまの先生の御質問でございますが、まず、当時天候が必ずしもよくなかったことは事実でございます。ただ、そのよくない程度でございますけれども、雷雲が——雷雲と申しますか、要するに雷を伴った激しい雨の降っている雲が当時空港の付近にあったということ、したがいまして、これを避けるために相当数の航空機が、待機と申しまして、空中でぐるぐる回りながら順番を待っておって、そのうちに気象状況が変わってよくなってまいりましたので順次着陸が始まったと、こういうふうな実情があったようでございます。初期の方のグループにつきましてはおりておるわけですが、日航機がおりました直後——おりましたというとおかしいのですが、日航機が墜落をしてしまいました直後、これは空港の方にもトラブルが起こってまいりましたので、三機ばかりの航空機がシンガポールへダイバートしておるようでございますが、そのほかの航空機はおりておると、こういうふうな状況であったらしゅうございます。  そこで、それではなぜいま先生おっしゃいましたようにILSのない方から入っていったのかと。これは風向きのかげんであったようでございます。ILSは実は南向きにしかついていない。北側から入ってまいります場合にはVORとNDBという二つの無線標識を使いまして入ってくると、こういうやり方になっておったわけでございます。たまたまILSに関する一連の機器が電波停止になっておったようでございますが、気象状況から言ってやはり北側から入らざるを得なかったと、こういうことであったようでございますので、ILSがなかったがために北から入ったと、こういうことではなかったようでございます。気象条件がたまたまそういうふうなことに重なっておったと、こういうふうなことであったと思います。
  86. 阿部憲一

    阿部憲一君 重ねて航空局の次長にお伺いしたいと思いますし、同時に日航社長にもちょっとお伺いしたいわけでございますが、日航機は四十七年に事故を続発いたしまして、六月のニューデリーの空港位置誤認による墜落、九月にやはりボンベイ空港の誤認による不時着、十一月にはモスコー空港で操縦ミスにより墜落というように、パイロットのミスによると思われる事故が続発して、日航としてもこれらの事故を教訓とされて、その後安全確保のために非常に種々な対策を講じられていたことも承っておりますが、しかし、どのような対策をとってこられたかちょっと簡単にお伺いしたいと思います。  それから、さらにまたことしの一月にアンカレジで泥酔した機長が墜落事故を起こしておりますが、当局の航空会社に対する安全点検といいますか、もっと厳しい監督が必要ではなかったかというような声も聞かれますので、航空当局としてはこれについてどのような措置をとられてきたのか、あわせて御説明願いたいと思います。
  87. 松本操

    政府委員(松本操君) まず四十七年に、いま先生御指摘のように大きな事故が日航において続発をいたしました。そこで、これに対して私どもといたしましては、早速日航に対してその都度の立入検査をいたしまして、どこにこの事故の原因の要因があったのか——当該事故そのものの原因につきましては、これは事故調査委員会等による調査が行われるわけでございますが、私どもといたしましては、当該事故に直結いたします事故の原因ということもさることながら、そのような事故を発生するに至った遠因がもしあるといたしますれば、当該事故についての対策を行ったのみではこれは万全を期したということにはならないのではないか。こういう観点から、ニューデリー事故の場合にも、あるいはモスコー事故の場合にも、それぞれに立入検査を実施いたしました。そして相当項目にわたる改善事項というものを定めたわけでございます。これにつきましては、日航の方もきわめて積極的にその対策に応じていろんな措置をとりました。たとえば規程類の整備及びそれの厳守というふうな点につきまして規程の改正を行うとともに、出発あるいは離陸前のブリーフィングの徹底でありますとか、あるいは進入中の高度及び速度をコーパイロットが必ず声に出して読んで確認をしていくというふうな手続等について厳重に守るように処理をしていったわけでございます。  それから、さらに装置の面といたしましては、ニューデリーの事故のときに、やはり地面に非常に近くおりてくるということが、これが問題でございますので、日本航空航空機にはすべて電波高度計という電波によって高度を知る仕掛けがついております。これとの組み合わせによりまして、ある一定の決めた高度以下に飛行機がおりてきてまいりました場合には、警報を発しキャプテン、コーパイロットにも注意を喚起する、こういうふうな装置の取りつけもいたしたわけでございますし、さらにまた、せんだってのアンカレジの事故、これはことしの一月に起こった事故で、その事故報告そのものは、まだ事故を担当いたしましたFAAからは出ておりませんけれども、私どもといたしましては、中間的に報ぜられました内容において、たまたま機長でありましたマーシュという機長の遺体から相当量のアルコールが検出されたという点に特に注目をいたしまして、機長を含め乗務員のそういったようなアルコール類の飲用に関する規程が現在でもあるわけでございますが、これの厳格な実施、そしてそれを担保するためにステーションごとにアルコール検知器を置かせまして、必要によってはそれによって確認をした上で乗ってもらう、こういうふうなところを具体的に詰めるというふうな作業もしたわけでございます。  したがいまして、今回の事故につきましては、これまたマレーシア当局において事故調査が依然として継続中でございますので、この事故の原因そのものを現時点で直ちにどうこう論ずるわけにはまいりませんが、しかし、着陸中の事故であると、異常に高度が低くなったのではないかと、その理由はよくわからないということが中間的に報ぜられておりますので、あるいはまたいろいろな方が指摘されますように、天候が必ずしも良好ではなかったということ、そういうふうなことを前提といたしまして、こういったような場合における諸般の規程類の見直し及びこういった規程についての厳守、こういうことにつきましては日航に対して十分に注意を喚起したところでございますが、私ども考えておりますのは、ただそういうふうに事故がありますたびに規程を複雑にし、あるいは装置をつけるということの繰り返しのみでは事故は防げないのではないか、もっと抜本的な対策というのをこの際考え直すべきではないかというふうなこともあわせて検討してまいりたい。そして早急な措置をとりたい、このように考えております。
  88. 田村元

    国務大臣(田村元君) いまの松本君のお答えにちょっと私から補足さしていただきますが、アンカレジの場合です。私から日本航空に対して厳しく忠告をいたしましたことはたくさんございます。いま答弁でいろいろありましたから、一、二のちょっと漏れたことを申し上げますと、可能な限り早く外人機長を日本人の機長に切りかえなさいと。別に外人が人間的にだめだと言っておるんじゃないけれども、これはもう全く概念的な話でございますけれども、マニュアルを厳守するというようなことについて、やはり日本人の方が律儀であろうというような感じがございます。そういう点を強く勧告をいたしました。  それから一種の飲酒運転でございますけれども、これについても搭乗前に全員アルコール検知器で調べたらどうかということを言ったのでありますが、これについては機長会でありましたか、操縦士の組合でありましたかちょっと私失念しましたが、やはり人権上問題があるというような反論もあったようでございます。そういうむずかしさもありますが、当時朝田社長以下を呼びまして、私の方から強くそういう点についても申し入れたということを申し添えておきたいと思います。
  89. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) 連続事故以後とった措置につきましては松本次長から御説明がありました。私どもも、その都度抜本的な対策も含めまして、当時から企業体質にまで痛烈な御批判をいただいておりましたので、率直にこれを真っ正面から受けとめていく、弁解をしないで回答は事実をもって回答していこうということで今日までまいったのでございますけれども、不幸にしてまた再び事故を起こして何とも申し上げようがないのでございますが、やはり最近のいわゆる手順あるいは規程というものが、計器というものを操作することにむしろ注意を奪われて、それを一生懸命にやっていれはというようなことがもしありとするならば、一番基本的ないわゆる地形その他の外界に対する注意義務あるいはベーシックな基本的な物の考え方というようなものにつきましては、老練な先輩の豊富な経験を持った機長が、そのいいそういった技能あるいは経験というものを後輩に伝えていくと、引き継いでいくという意味において、シニアキャプテンの指導というものを、先輩を特に飛行機に同乗させまして、そういうようなところをやるということの方が、どういうふうにして規程の遵守励行というものが保証されるんだろうか、確保されるんだろうかといろいろ考えてみましたが、やはりそういうような先輩のキャプテンの指導というものによってこれを補完してまいりたいというような考えを持っております。
  90. 阿部憲一

    阿部憲一君 時間がなくなりましたんで、もう一問だけ最後航空局にお伺いしますけれども、この安全運航への厳重な対応が十分行われてきただろうかどうかということに対しては、われわれもちょっと疑念を持っていますが、この安全性に対する配慮を十分とることは絶対に必要でございますが、どうもこの事故が起きたときには、非常に真剣に一応対策を講じましても、時がたつにつれると、やはり忘れられがちといいましょうか、その安全対策についての真剣な取り組みというものが薄れるような気がいたすわけでございます。そんなことから、これに関連してGPWSですか、地上接近警報装置の装備についてもこのことが言えるんじゃないかと思われるわけでございますが、今回の事故機にもしこの装置が装備されていれば事故は回避されたんじゃないかなというふうにも考えられますんですが、この辺のところ、非常に技術的な問題でありましょうが、ただ、私の指摘したいのは、こういったいい対案があるにもかかわらず、この装置をおくらしたということには非常に残念に思うわけでございますので、これについて当局のお考えを承りたいし、またこのGPWSを来年はおつけになるようなお話を承りましたけれども、この辺のこともあわせてお伺いいたしまして私の質問を終わらせていただきます。
  91. 松本操

    政府委員(松本操君) 御指摘のように、GPWSというものは二、三年前に開発された装置でございまして、いろんなケースがございます。一番新しいのは六種類のケースに対応して警報を発し、あるいは言葉でパイロットに注意を喚起する、こういうふうな仕掛けになっております。で、今回の場合にどれが当てはまるかはよくわかりません、事故の原因がわかりませんので不明でございますが、たとえば、この飛行機が脚も出さずフラップもおろさずというふうな状態で異常に接近した、あるいは異常な速さで降下をしたというふうなことがもしあったといたしますと、このGPWSがついておりました場合には、プルアップとか、あるいはブーブーと鳴るとか、こういうふうなことで警報を発するという機能がおそらく働いただろうと思います。で、もしそうでなくて、脚をきちんと出し、フラップも下げたという状態でございますと、先ほど私がお答えを申し上げました、現在ついております電波高度計と連動いたしましたある定められた高度以下に下がった場合に警報を発するというのとそう違いのない結果になったかもしれません。よくわかりません。しかし、そういったような新しく開発された装置というものを積極的に採用していくべきであると私どもも思いますので、かねてからその設置については関係航空会社に対して慫慂をしておったわけでございますが、しかし、この際、こういうことがあったことでもございますので、来年の九月までにはともかく、約一年でございますが、全機、YSU以上の飛行機には全部つけてしまいなさいということをせんだって航空局長名をもって指示いたしました。また、可能な限りこれを早めるということで、日本航空あたりに対しましては少なくとも二、三カ月程度はこれを早めて処置するようにというふうなことも指示をしている次第でございます。  なお、日本の持っております定期運送用の航空機の中でこれのついているものもございます。先ほど申し上げましたように、一型、二型とございますので、一型のものはなるべく二型に取りかえる、これからつけるものだったら、どちらかと言えば二型をつけるというふうな方向で、技術的にも完璧なものをつけていくというふうな方向で強力に指導してまいりたいと、このように考えております。
  92. 田村元

    国務大臣(田村元君) いまの装置でございますが、松本君が申したとおりでございます。私が受けました報告では、日本航空は来年九月までというのを、昨日三カ月早めるということを決定したやの報告を受けております。
  93. 山中郁子

    ○山中郁子君 クアラルンプールの事故に関して朝田参考人にお尋ねいたします。  けさほど来の質疑の中でもそうですし、また四十七年の連続事故の後、国会でも議論になりました。で、朝田社長は口を尽くして安全第一ということを強調されています。私は、率直に申し上げますけれども、経済性の問題との関連の質疑もありましたけれども、幾ら口で安全が第一ですと、こうおっしゃっても、実際にいま日航がどういう営業姿勢をもって、そしてそれに当たっているかということについては、私はやはりどうしても、こういう問題が起こって、国会でいろいろ質疑もされるし問題にもなると、そのときだけ頭をちょっと下げてやり過ごしてしまえば済むというふうなことでもう万々ないように、本当にそこのところははっきりさせていただきたいというふうに思います。  それで、これは四十七年の事故の後ですね、衆議院の交通安全特別委員会で、私は安全性については何ものにも妥協しないと、かたくななと言われても、私はこれを第一義にものを考えて、絶対命題として遂行していくというふうに力説されています。しかし、先ほど安恒委員からも御指摘がありましたけれども、たとえば社内報の「おおぞら」の中で経営管理室長が述べておられることは余りにも露骨です。時間が足りませんので、私は簡単にしか申し上げませんけれども、たとえばコストとイールド、つまり実収単価ですね、これの交差点の問題をあれこれ言われて、「この交差点をはやく実現させた第一の要因は」、つまりそういうふうにして実収単価が下がってきていると、これの第一の要因は、「四十七年の連続事故です。事故後の一連の安全性投資の結果、機材の稼働率は低下する、また、乗員のプロモーションを慎重にやるようになり、数的な余裕が生ずる」と、こういうことを経営管理室長が言っておられるわけです。先ほど社長はそれは誤りであるとこうおっしゃいました。誤りというのは一体何なのか。ここまではっきりした思想に裏づけられて、そして考え方として明快になっていることを会社の幹部が言われている。しかも、それをちゃんと活字で発表されているわけです。単に誤りということじゃ私は過ごされないと思います。その点に関して一体どういう措置をおとりになるのか、はっきりお伺いしておきたいと思います。
  94. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) 私は、国会で先生いま御指摘のとおりの発言をいたしておりますし、私の考えはいまでも変わっておりませんのでございますが、「おおぞら」に出たそのことは事実でありますけれども、しかしいろいろな議論が、大変な赤字が出たものでございますから——二百八十八億というような経常損失も出しました、オイルショック以来あるいは台湾ルート断絶以来。いろいろなことでそういう赤字を出しましたが、これをリカバーをしていくということはやっぱり安全性にもつながるということであります。より安全性の高い新鋭機と在来の飛行機とをかえていくというようなことも金は要ってもやっていかなきゃならぬ。まあ、そういうようなことで、ずいぶん圧迫要因にはなっておるということを言っておりますけれども、しかしその圧迫要因を重視するの余りに、安全性を阻害するということは絶対いけない。私は企業……
  95. 山中郁子

    ○山中郁子君 簡単でいいです、時間がないから。
  96. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) 企業体質強化委員会でも申し上げていることは、絶対に安全性を切り下げるような措置はいけないと、そういう前提で企業経営の再建三カ年計画を立てたわけでございまして、そういう点はいろいろ議論はありましても、最終段階の事業計画を決定いたします際には、そういうものを取り入れないということにいたしております。
  97. 山中郁子

    ○山中郁子君 関連しますけれども、もう一つ例を挙げれば、オペレーションズマニュアルですけれども、第四章の乗員の規定についてのところで、確かにこれはことしの八月ですか——七月でしたか、八月ですね。これに、いままで安全性、定時性、快適性というふうに運航の原則を決めておられたのに、経済性をつけ加えて運航の四原則にしているんですね。私はいま、先ほどから社長が強調されていることから照らしてみれば、これは明らかに逆行していると思います。いま本当に社長がそういうふうに強調されていることが実際に日航営業姿勢として間違いなくやっていくんだというふうにおっしゃるならば、運航規程からこの経済性を取るということを検討されてしかるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  98. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) 先ほどから申し上げております安全性の確保は絶体命題であるということは大前提でございますので、そういうものと衝突をする意味で経済性というものを入れたのではないということを組合との話し合いにおいても十分その話し合いをいたしまして、その辺の誤解は私はないというふうに考えております。
  99. 山中郁子

    ○山中郁子君 誤解の問題ではなくて、事実の問題です。姿勢をはっきり国民の前にそういう点で示されるならば、当然取るべきであるし、検討すべきであるということを重ねて申し上げておきます。  もう一つの問題はウェザーミニマムの問題ですが、御承知のようにクアラルンプールの事故の問題で、ウェザーミニマムは日航が一番低いということがその他の問題とも関連して焦点になってきています。そして、ここのところでマレーシア航空は七三七型機のウェザーミニマムを今度の事故の結果、百フィート上げました。それから、先般の英国航空のボーイング七四七、これが接触事故を起こしたという問題がありましたけれども、いままでのウェザーミニマムの八百六十を千百——フィートですけれども、これに上げています。そのほかにもたくさんの例がありますけれども、これは省略いたしますが、他社を比較しますと、カンタス八百四十それから英国航空八百六十、日航が七百五十というふうに一番最低になっています。そして、しかも日航は英国航空の事故の後こういうことがちゃんと認識されていながら、ことしの七月から八百七十を八百五十に逆に下げているんですね。これは幾ら社長が強調されたとしても、経済性の問題その他も含めて乗員に無理を強いることになるしという推論は一般的に成り立ちます。ですから、クアラルンプール空港の基準内だからだとはおっしゃるだろうと思います。しかし、他社のやり方を見ても、はっきり安全性の問題からこうした改定をしているということは明らかです。まして大事故を起こした日航がこの点についての再検討をすることは私は当然のことだというふうに思いますけれども、今後日航のウェザーミニマムについて全般的に検討するということをぜひやっていただきたいと思います。とりあえずクアラルンプール空港については改善をしなければいけないということは当然のことだと、これもあわせて考えますが、所見をお伺いいたしますと同時に、ぜひその点は安全を期待する国民並びに乗員に対してお約束をいただきたいと思います。
  100. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) この問題、非常に技術的な問題でございまして、航空局の通達がございました。そういうものの、いわゆる最低気象条件というものの計算の仕方、設定の基準というものがございます。またICAOにおきまする基準というものもございますので、そういうものから照らしまして、私どもが計算をいたしました航空局通達に基づいての基準と、それから当該国で先ほどから御指摘の七百五十フィートと、マレーシア政府がつくっておりますミニマムの最低の安全高度というものもございます。通達によってその基準を改定されましたものによって計算をいたしました基準と、マレーシア政府が決めておりますこれと合致しておるというようなことでございますので、そういうことにいたしたのでございますが、なおそういう他社との例も御指摘ございましたので、さらに検討をさしていただきたいと思います。
  101. 山中郁子

    ○山中郁子君 検討をお約束いただいたわけで、とりあえずクアラルンプールの基準については早急にやはり改善を図るということもあわせて進めていただきたいと思います。  次に、これも先ほど御指摘がありましたけれども、私も日航乗員の方々の労働組合を初めとする主張などの中にも、機長を管理職にして、そして会社が、機長が管理職になると組合から脱退することを陰に陽に強要するというふうないろいろな問題が出てきております。私は、その点は安全という問題だけにしぼって考えてみましても、そこのところは重要な問題を生み出しているということは否定するわけにはいかないというふうに思います。それで、これもかつて衆議院で議論になったことがあります。そして、そのときに社長は、会社は積極的に機長は組合員になってはいけないというふうに言っていないというふうに答弁をされています。しかし、その後たしかこれは昭和五十年の四月の労使の経営協議会の中で、社長が、あのときは国会では原則論を言ったまでで、実現はできないんだという趣旨のことを言われている。こういうことだと、初めに申し上げましたように、国会で幾ら申しわけないとか断固やりますとかとおっしゃっても、実際は本音を漏らせばそうでないと、そこに私は事故が生まれるという危険を大きくはらんでいるというふうに言わざるを得ないというふうに思います。そういうことですので、もし依然として会社が積極的に機長に、機長は組合員になってはいけないというふうには言うつもりはないんだということをおっしゃるならば、ぜひとも実際に約束を果たしていただきたい。国会で原則論だけを言ったまでで、実際はそんなことはできないんだみたいなことは一切やめていただきたいということです。もちろん憲法に保障されている問題であると同時に、機長になることによって組合の脱退を強要しないということが一つ。  それから、日航ではいまそういうのはほとんどないというふうに聞いていますけれども、機長で組合員であるという人たちに対して、昇給だとか昇任だとか配転など、あらゆる差別待遇を行わない、こういうことをはっきり約束をしていただきたいし、それが国民の命を守る安全につながるものだし、乗員の権利と、また安全を守るものだということを明確にしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  102. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) これは、機長が管理職にいたしましたのは、労働問題で組合員の分断作戦をやったということではないのでございまして、私が先ほど申し上げました考え方から出ておるのでございます。そこで、労働組合員になり得ないのかという理論的な問題でございますので、私は必ずしもなり得ないというわけではないという答弁を申し上げたのでありまして、積極的に組合員になれということも、なるなというようなことの指導会社側としてやるべきではないと私は思います。したがいまして、この点については非常に大事な問題でございますので、なお私もよく考えてみますけれども、そういうたてまえというものが定着をいたしておりますので、そういう考え方をどういうふうにするか、一遍労使の話し合いにしても、機長会との話し合いにしても、私はその問題を整理して、考え方をひとつ統一する必要がある、社内でひとつなお努力をいたしてみるつもりでございます。
  103. 山中郁子

    ○山中郁子君 一言。  いまのお話の中で、そういうことははっきりされるおつもりだというお話のようですけれども、重ねて私は申し上げておきます。  機長になったということで、組合から脱退を強要しないこと、そして機長の組合員に対して差別をしないこと、このことについてあわせていまお約束をいただいたものと思いますので、それでよろしければ御答弁はいただかなくて結構です。
  104. 小野明

    委員長小野明君) どうですか。
  105. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) 強制は私はしてはならぬと思います。したがって、組合員になってはいけないというようなことは強制をする意思はありません。ただし、その後の問題は、組合員になった人の差別をしてはならぬということでありますから、その問題は、なるかならないかという問題の後の問題でございますから、強制をすべきではないと私は思っております。
  106. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 時間もありませんので、官房副長官に二、三点かいつまんで質問をしたいと思います。  まず最初は、今回の政府ハイジャック防止対策の六項目は、内容は四十八年八月のハイジャック防止対策要綱とほとんど同じであります。これは先ほどもお話にありましたように、十分実行されなかったということを言っておられましたけれども、今回はそれなら実行ができるのか、その保証があるのか、いつもハイジャックが起こったときだけ何かかっこうつけて少し日がたてば全部うやむやになる、これに対する何かの保証がありますか。
  107. 塩川正十郎

    政府委員塩川正十郎君) 四十八年の際にも、相当数の対策を決定いたしまして、その中で部分的に実施してまいったものもございますし、ついては今回対策を決定いたしましたその六項目が四十八年とよく以ておるとおっしゃいますが、それはその当時決定していました中で実際に実行のむずかしかったものが現在に残ってきておるのでありますが、しかし部分的に見ました場合に、たとえば第一項目赤軍対策というのはどこまでが完成したかということは言い切れませんけれども、これに対する対策は具体的に本年度中に実施に移していきたいと思うております。またボデーチェック、先ほどお話出ておりました外国空港におきますところのダブルチェック問題等国際協力を得なければならぬ問題がございますけれども、しかし四十八年当時とはもう相当条件も違ってきておりますし、そういう国際環境も違うと思いますので、これはぜひこの際にこそ実施していきたいと思うております。  その他、時間ございませんので、在外公館の警備というような問題につきましても、いままで検討してきた資料はたくさんございますが、その中で実行し得るものはもうとにかくやっていきたいと思うております。田渕先生おっしゃるように、完全にこれが担保し得ておるのかということでございますけれども、これは私は担保し得るものは努力以外にないと思うておりますので、それは懸命に努めてまいります。
  108. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 次に、今回のハイジャックに対する対処の仕方を見ますと、非常に政府対策の中で混乱が見られると思います。たとえばいわゆる旅券冊子の交付についても、これは石井次官が現地でやむを得ない判断でされたことだと思いますけれども、これが全然報告されていなかったり、あるいは持っていった意図は万一に備えてのということで、パスポートは本来渡さないと、そういう合意があったにかわらずこういうことになっておる。こういう連絡の不備といいますか、内部の意思統一が全然されていない面がある。  それからもう一つの面は、アルジェリアに対する交渉の問題です。これは犯人、身のしろ金の処置に条件をつけない、機体の損害を補償しない、この条件についてこれは総理の周辺は決裁をしていない、こういう発言が新聞の報道であるわけです。だから、非常にこの対策本部の内部の乱れということが見られるわけですけれども、これはハイジャックというようなきわめて緊迫したぎりぎりの中で犯人との対抗をしていかなくてはならない状況で、こういう対策本部における乱れというのは私は非常に問題だと思うんです。この点はどうお考えですか。
  109. 塩川正十郎

    政府委員塩川正十郎君) 私は、率直に申しまして、細かい行政処理等の問題で、細かい事務的な問題でそういう粗漏があったことは認めざるを得ないと思うております。しかし、パスポートの、旅券発行の件につきましては私は定かではございませんが、もう一点の経過でございますが、アルジェリアの問題でございますが、全然政府首脳が全く知らない間に外務省の独断でやったということでは実はございませんので、この表現の、いわば新聞、テレビ等、いわゆるマスコミで報道されましたそういう表面に出ております実態から見ましたら、読者はそういう印象を受けると思うんでございますけれども、しかしながらあの当時概括的なことで、いわゆる対策本部の、特にそういう事態になり得るということは検討されておりました。なお、具体的にその着地時点におけるそういう細かい結めというものはなかったのでありますが、おおよそ受け入れ国はこういう要件を出してくるであろう、それに対しては細かい点は別としても、大体こういう趣旨であるならば受け入れざるを得ないのではないかということは対策本部の中で話し合いがあって、まあおおよそそういう方向で処理をするということでございました。がしかし、実際に着陸いたしますときには、それまでの経過の連絡は十分ではなかった。それは、その飛行機との交信の状態もございましたしいたしますので、あっという間に着陸するという事態になりましたので、具体的にアルジェリア政府と細かい結めをして、これでよろしいかどうですかという決裁、これは時間的に間に合わなかったということでありますが、こういうおおよそわれわれが対策本部の中で決定したその枠内においては狂っておらないということでございました。
  110. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 ハイジャックという事態はきわめて不測の事態ですから、それから緊急にその対処が迫られるわけですから、私は政府の中で混乱が起こるというのもある程度やむを得ないと思うんです。しかし、本当はこういう緊迫した中でそういう混乱が起こってはならないのでありますから、私はやはり今後もハイジャックは起こらないことを望みますけれども、万が一起こった場合に、やっぱりそれに対して乱れのない対策がとれるような準備をやはりやっておく必要があるのではないか。たとえば旅券の問題の扱いにしろ、あるいは受け入れ地の折衝の問題にしろ、あるいはそのほか犯人の条件をのむタイミングの問題にしろ、やはりぎりぎりわれわれは粘って犯人側を追い込んでいかなくてはならない。人命尊重が第一の要件であるといっても、だから手放しで向こうの言い分をのんでいいということにはならないわけです。日本は平和国家である、人命尊重基本の国である、これは日本国民の大多数が合意を得られる問題でしょうし、またわれわれもそれを今後とも守っていきたい、そういう合意というものは日本の国にあると思うのです。しかし、だからと言って、ハイジャック犯人だけではなくて、常に交流しておる赤軍のメンバーとか、あるいは凶悪犯人を世界にばらまいていいということにはならないわけです。これは世界の各国に迷惑が及ぶことですからね。日本が平和国家であり、人命尊重だからそういう他の国に迷惑を及ぼすようなことをやっていいという許される条件にはなり得ない。私はその意味で、やはりもう少し政府としても対応策というものを考えていただく必要があるんじゃないか、人命尊重だから、これはあとのことは、少々のことはやむを得ないという安易な姿勢ではいけない、このように思うわけですがね。これは考えてみたら公害の輸出と同じなんですよ。日本は環境優先の国だから、汚いことは外国でやってもいいんだという思想と全く変わらない、結果においては。そういう意味で、私は平和国家であり、人命尊重基本でありながらもハイジャック犯人の言いなりに応じて、いままでつかまえた凶悪犯を釈放したり、それを海外に野放しにするというようなことは許されるべきではない。もちろん、これは二律背反の問題でありますから、ぎりぎりのところで人命を選ぶという判断は正しいと思いますけれども、やはりぎりぎりのところまでは最善を尽くさなくてはならない、その対策のできるような体制政府の中につくってもらいたいと思いますが、いかがですか。
  111. 石井一

    政府委員(石井一君) ただいまの御指摘は、こういう冷静なときにお話を伺いますと非常にもっともだと思いますし、また今後の教訓として十分に政府は受けとめるべきだと思います。ただ、私がその現場のときにいろいろの問題を思い出しまして感じますことは、私自身政府の訓令違反を五つ、六つ犯しました。要するにどういう事態が起こるかと申しますと、十分前に起こったことが十分後には全く違う情勢に変わってしまう。バングラ政府の意向も変われば、ゲリラの意向も変わる。十分前の訓令というものが全く別の逆のものになってしまう。そしてその場の決断を迫られると、こういう情勢が繰り返し繰り返し行われるわけでございます。したがって、派遣団と政府、本部ともそれだけのギャップが出ざるを得ないという、こうある一時期に問題が全部集結をしてくる、またしばらく空白があると、こういう状態になるわけでございますから、私は政府部内の末端の各省の意見が必ずしもかみ合わなかったというふうな面も万やむを得なかったという一面もあるんではなかろうか、まあしかし今後の対策としてこれらは十分受けとめていくべきだと、こういうふうに感じます。
  112. 塩川正十郎

    政府委員塩川正十郎君) 田渕さんおっしゃるように、確かにいま日本政府の中にエマージェンシーに対する対策というもの、これは十分でないと思うのです。それは戦後三十年、こういう状態で来ましたので、そういう国家緊急事態というようなものがなかったように思います。がしかし、ハイジャック事件だとか、あるいは非常の災害というようなものはいつ来るかわかりません。そこで、そういう災害とかハイジャックとか、こういう場合にどういうふうに対処するかという、どういう体制対策を立てるかということと、その手順というものはやっぱり平素から準備しておかなけりゃならぬと思いますので、実はおくればせでございますけれども内閣審議室等が中心になりまして、そういう非常の場合にどういう体制を組んで、どういう手順で進めるかということをいろいろ考えておるところです。
  113. 小野明

    委員長小野明君) この際、朝田参考人に一言ごあいさつ申し上げたいと思います。  本日は御多忙中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。
  114. 森田重郎

    ○森田重郎君 私は冒頭におきまして、今回のハイジャック事件に関連いたしまして、人命尊重ないしは人道上の立場と、こういうような問題について御質問をさせていただきたいということを申し上げたわけでございますが、先ほど石井政務次官から、ダッカ空港内におきまするところの政府軍兵士あるいは士官でございましょうか、これらの方々が無残にも射殺をされたというような実は問題を伺ったわけでございますが、かような少なくとも日本の使節団ないしは日航関係者、これらの方々の護衛あるいはまた警護に当たる、また当たってくだすった政府軍の兵士の方々が目の前で射殺されるというような、こういったような問題につきましてどのようなお考えを持っておられるか、御答弁を官房副長官からちょうだいいたしたいと思います。
  115. 石井一

    政府委員(石井一君) クーデターの原因は、私が仄聞いたしておりますところでは、下級兵士が待遇の改善を求めた、ただ日航機がとまっておったそのハイジャックの時点が選ばれたということでございますから、直接にはバングラ政府空軍内の問題でございますけれども、ただその時期がたまたまこういう時期に選ばれたという意味におきまして、日本政府としてもいささかの配慮をしなければいかぬのではないかなあと私は個人的に思います。このことに関しましては、現地の言葉でパイロットなり司令官がオン・デューティーであったと、こういうふうに言っております。オン・デューティーという意味は、日航機があるために夜じゅうオン・デューティーになったのか、あるいは平常時でもオン・デューティーであるべきなのか、この辺は調査をしなければ私にはわかりませんが、少なくとも必要以上の兵士が当時空港におったということは確かでございますし、またその惨事が大きくなったということも確かでございましょう。この点に関しましては、帰りまして特に園田本部長に十分そのときの事情と空軍内での情勢について御報告申し上げておりますので、また政府特使が明日出発するようでございますから、こういう機会を通じて何らかの慰留と申しますか、政府としての措置をなさるのではないかと私は推察いたしております。
  116. 塩川正十郎

    政府委員塩川正十郎君) この件につきまして、早川崇先生を団長といたしまして、政府はバングラデシュに謝礼かたがたの特派使節を送ることになっております。その点御理解いただきたいと思います。
  117. 森田重郎

    ○森田重郎君 時間ももう二、三分のようでございますので、かいつまんでちょっと私見を申し述べたいと存じますが、私、ただいまこの席上でバングラデシュの内戦問題であるとか、あるいは国情というような問題を云々するつもりはもちろん毛頭ございません。しかし、いわゆる人命尊重と申しましょうか、あるいは人道上の問題と、こういった言葉が実はこのハイジャックを契機にしきりと叫ばれておるわけでございます。少なくともこのバングラデシュの政府軍の兵士という方々が何らかの形でやはり使節団あるいは先ほど申し上げました日航関係者、こういった方々のいい意味での警護、護衛というようなものには当たってくだすったというふうに私は私なりに理解をしておるわけでございます。ですから、考えてみますと、一方では人命尊重ないしは人道上と、こう言いますけれども、実はこの亡くなった方々もやはりこれは地球より重い一個の生命だというふうに私ども考えておるわけでございます。したがいまして、こういった細かい問題というのが将来の国際的な意味における外交交渉というふうなものにつながる、その辺の影響というものはかなり大きなものがあろうかと、かように思っておりますので、ひとつその辺をも含めまして、今後の外交交渉というふうなものをより前向きな姿勢で推進をしていただきたい。  以上申し上げまして終わります。
  118. 小野明

    委員長小野明君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十五分散会