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1977-11-15 第82回国会 参議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月十五日(火曜日)    午前十時八分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         安孫子藤吉君     理 事                 大鷹 淑子君                 亀井 久興君                 原 文兵衛君                 戸叶  武君     委 員                 秦野  章君                 町村 金五君                 三善 信二君                 阿具根 登君                 小野  明君                 福間 知之君                 渋谷 邦彦君                 矢追 秀彦君                 立木  洋君                 和田 春生君    国務大臣        外 務 大 臣  鳩山威一郎君    政府委員        外務政務次官   奥田 敬和君        外務省アジア局        次長       枝村 純郎君        外務省経済局次        長        溝口 道郎君        外務省条約局外        務参事官     村田 良平君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        資源エネルギー        庁長官官房審議        官        武田  康君        労働大臣官房長  石井 甲二君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        警察庁刑事局公        害課長      浜田 栄次君        警察庁警備局警        備課長      若田 末人君        科学技術庁原子        力局調査国際協        力課長      川崎 雅弘君        科学技術庁原子        力安全局保障措        置課長      栗原 弘善君        外務省国際連合        局科学課長    太田  博君        通商産業省貿易        局輸入課長    斎藤 成雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○核兵器の不拡散に関する条約第三条1及び4の  規定実施に関する日本国政府国際原子力機  関との間の協定締結について承認を求めるの  件(第八十回国会内閣提出、第八十二回国会衆  議院送付)     —————————————
  2. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  核兵器の不拡散に関する条約第三条1及び4の規定実施に関する日本国政府国際原子力機関との間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。鳩山外務大臣
  3. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいま議題となりました核兵器の不拡散に関する条約第三条1及び4の規定実施に関する日本国政府国際原子力機関との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、一九七〇年二月三日核兵器の不拡散に関する条約NPT)の署名に際し、わが国が同条約第三条に基づき国際原子力機関IAEA)との間に締結する保障措置協定内容は、他の国(群)がIAEAとの間に締結する協定内容に比して、わが国にとり実質的に不利な取り扱いとなることがあってはならない旨を明らかにいたしました。政府は、かかる平等性の確保を最重点事項として、一九七二年六月以来、IAEAとの間で保障措置協定締結のための交渉を行ってまいりましたが、このほどかかる平等性を確保した案文について最終的に合意を見たので、本年三月四日この協定に署名いたしました。  この協定は、前文、本文九十八条及び末文並びに議定書十八条及び末文から成っておりまして、IAEAわが国保障措置を適用するに当たり、わが国国内保障措置制度を利用すること、両者保障措置活動を調整すること、わが国最恵国待遇を与えること、商業上及び産業上の秘密を保護する措置をとること、合理的に保障措置実施すること、二国間協定に基づく現行の保障措置の適用を停止すること等を内容としております。  現在、わが国が使用しているほとんどすべての核物質は、米、英、加、仏、豪との二国間原子力協定に基づきIAEA査察を受けておりますが、本協定に基づく保障措置は、原則としてIAEAわが国による自主査察の一部に立ち会うこと及び自主査察を観察することにより実施されることになっているほか、商業上等秘密の保護について十分配慮されることになっている等の点で合理化されており、この協定締結することは、核兵器拡散を防止する見地及びわが国原子力平和利用促進見地から多大の貢献をなすものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。  以上でございます。
  4. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 以上で説明は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 戸叶武

    ○戸叶武君 きょうの新聞によると、日韓大陸だな特別措置法案は、衆議院商工委員会審議中であるが、成立見通しが立たないので、外務省では、十四日夜、国内法成立しなくても大陸だな協定批准することがあり得るという注目すべき考えを明らかにしたと報じておりますが、新聞にこのような見解を表明した方は外務省ではどなたでありましょうか。
  6. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 本日のある一部の新聞紙上に、ただいまおっしゃったようにとれるような記事が載っておりますが、昨日夕刻、私が記者懇談をいたした際に、大陸だな開発国内法見通し等について質問等がありましたので、その私が行った懇談からいろいろ推測を加えて書かれたものというふうに私自身は解しております。
  7. 戸叶武

    ○戸叶武君 問題は、この新聞記者が受けとめたような考え方外務大臣はお述べになったのでしょうか。
  8. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 私は、従来から政府として申し上げておるそのことを、何ら変更する趣旨で申したことはございません。  大陸だな協定韓国との間の国際約束国際協定として締結をされて、国会の御承認をいただいた、こういう事実があって、そしてそれは通商産業省の方でつくられております国内法成立をいま期待をしておるわけでございます。他方条約が署名されまして国会承認をいただきました。それに伴う国内法は、同じ国会で御承認をいただけることが望ましいわけでありますが、本件はそれができなかったわけで、臨時国会の御審議をいただいているわけでございます。従来から、国内法は、遅くとも次の国会で御承認がいただけることを期待をいたし、政府といたしましても最大限の努力を傾けているところでございます。  ただ、万一、国内法の御承認がいただけないという事態になった場合に、どうするのであるかという質問がございますと、政府といたしまして、従来から、そのようなことは仮定の問題でございます、したがいまして政府としては国内法成立に最大の努力をいたしますと、こういうことを申し上げてきているわけで、その点については変わらないわけでありますが、他方韓国側からは、条約国会承認があった上は速やかに批准をすべきであるという主張が強く出されておるわけでありまして、この点につきまして、政府としては万一国内法成立しないというときには大変苦しい立場に立つわけであります。そういう仮定の場合のことはただいまの段階として申し上げるべきではない、そういう態度で終始をいたしておるわけであります。
  9. 戸叶武

    ○戸叶武君 どうも外務大臣言い回し方がのみ込めない点があるんですが、従来から日韓大陸だな措置法案をめぐって、日韓大陸だなが公海にあるため、領土領海内に適用される鉱業法にかわって特別立法するもので、共同開発地区日本側鉱業権はこの法律によって設定されることになる。一方、大陸だな協定には、協定効力発生の日から三カ月以内に開発権者を認可する。この協定批准書交換の日から効力を有するとありますが、日本政府韓国側の強い要請と、いままで外務省当局国会承認を受けてからという考え方のようでしたが、批准から三カ月以内に国内法成立する見通しが確かなれば、批准できるというような解釈の上にいま立とうとしているんでしょうか。  そうすると、いままでの政府における答弁というものと非常な食い違いがそこに生じるのであって、国会における政府答弁よりも、対外的な関係があるとしても、韓国側の要諸に応ぜざるを得ないという見解をいま持っておられるのか、その点を明確にしてもらいたい。そうでないと、国会におけるわれわれの審議というものが非常におろそかにされて、想定には答えられませんという態度国会の権威というものを無視して、政府の意思によって、しかも第三国の圧力によってこの協定が左右されるということになると、ここに悪前例をつくることになるおそれがあるのではないかと思いますので、重大なことになるというのがわかっていながら、しかもそれをやる政府のやり方に一つは後で禍根が残ることになるのじゃないかと思うので、その辺のことを慎重な態度でこの問題を進めてきた外務大臣として、後から責任を追及されたでは済まない問題ですから、その点においてはもっと明確な答弁お願いしたいと思います。
  10. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいま仰せられましたことは、これは私か述べたことと大分趣旨——いろいろ推測が加えられた記事になっておるのでございまして、その新聞記事余り——そのとおり述べたというようなことではございませんことをまず申し上げておきます。  私どもといたしまして、国会国内法の御審議お願いをいたしておるわけでありまして、あくまでもこの国会でのこの国内法成立お願いをいたしておる、そういう態度にはいささかも変わりがないわけでございます。ただ、韓国側からは強い要請があるということを申し述べたのでございまして、したがいまして国内法成立しない場合には日本政府としては大変苦しい立場に立つ。協定といたしましては国会の御承認をいただいておるわけでありますから、国会の御承認をいただいた条約をいつまでも批准をしないということは一つの問題が生ずるわけでありまして、したがいまして、そのようなことが起こらないように何とか国内法成立に万全の努力をするというのが私ども立場でございます。
  11. 戸叶武

    ○戸叶武君 鳩山さんは福田内閣の中にあっても比較的正直な方ですから、いまの答弁を私は善意に解釈いたしますけれども、もしもそうでない場合には、やはりこれはえらい問題になると思いますから、心して取っ組んでいってもらいたいと思います。  そこで、私は、この問題から転じて、わが国国際原子力機関との間の保障措置協定について質問を展開いたします。  その前に、いまの問題と直接関連がありますが、どうも福田内閣動きには、日韓大陸だなを無理をしても通して、しかる後に日中平和条約締結しようというような動き方をしているように見える。これは新聞でもテレビでもそういう推測の上に立って問題を解説している模様でありますから、私らだけの推測とは言えないのであります。ここで日韓大陸だなを無理押しして通すというようなことをすると、もろもろのハレーションが起きると思うのであります。後日、二百海里問題等で、中国側との折衝交渉におきましてもつまづくような場合がないとも限らないと思うのであります。  この前、十月二十二日の本委員会における私の質問に対して、外務大臣は、大平さんが中国側にこの日韓大陸だなの問題は話してあると答弁していますという答えでございましたが、話してあるというのは、大平さんに聞いても大平さん一流のわかったかわからないような答弁で、あいまいもことして、このごろのもやみたいな答弁しかいままでも余り得られなかったのですが、中江アジア局長は、少なくとも十八回は日中間本件について話し合いをしたということを答弁で明言しております。しかしながら、戸叶先生がおっしゃいましたじっくり話し合いをしたかという問題に対しては、じっくり話し合う機会というものはいまだなかったのは遺憾なことだと思いますと、遺憾なことを表明しております。その点では、やはり鳩山さんよりもこの中江アジア局長の方か正直ではないかと私は判断しているのであります。  この問題は、外務大臣としては非常に苦慮している問題だと思いますが、「その関係国の中には」中江アジア局長答弁において説明しているように「韓国もありましょうし、北朝鮮もありましょうし、いまこの関係国一堂に会して効果的な話し合いかできる国際情勢でない、つまり時期が熟してない」という答弁で結んでおります。鳩山外務大臣は、この中江アジア局長と同じような見解でしょうか。その点、中江アジア局長鳩山さんの間に見解相違があると後日また困るから、その点を改めて私は質問いたします。
  12. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 大陸だな協定につきましては、これはもう三年半以上前からの経緯、あるいはその前のエカフェの報告があってからの長い歴史を持っておることでございまして、過去の問題につきましては中江アジア局長の方が私よりもよく存じておるところでございまして、中江アジア局長と私と見解が違うはずがないと考えております。  中国側から本件につきまして日本政府了解を与えたことはないという趣旨発言があり、合意をしたことはないという趣旨だと思いますが、それは、そのとおり、私ども中国側の明確な了承というものを取りつけることはできなかったわけでございまして、大平外務大臣も、先方日韓大陸だな協定につきましての説明を行って、それに対する先方の返事は受け取っておらないわけであります。そういう意味で、合意したということは事実ございませんし、私ども先方了解を得たというような発言は一度もいたしておらないのでございます。  また、時期が熟していないという判断は、これは韓国中国との間、あるいは韓国北鮮との間それぞれには外交関係が持たれておらないということでありまして、関係国一堂に会して完全な了解を取りつけるということは一番好ましいことであるという点につきましても、同じ考え方をとっております。ただ、中国側見解といたしまして、日本といたしまして早く開発をいたしたい、そのために日本韓国だけにかかわる部分につきまして協定を結んで開発をいたしたい、こういう考え方に対しまして、中国側は、いま直ちに関係国が集まるということはなるほどできないであろう、しかし、開発自体をそんなに急ぐことはないではないかというような見解が、漏れ承るところによりますと、出されておりまして、そういう意味で、その点につきましてはやはり考え方相違がある。  そんなようなことで、私と中江局長とは考え方、認識を全くともにしておると考えております。
  13. 戸叶武

    ○戸叶武君 鳩山外相中江アジア局長とは見解が一致しているということでありますが、中江局長は、この前の答弁において、この協定国会承認を得ましてから、二度北京東京で話しているが、先生の言われるところまでは行っていませんという答弁をしております。その二回の北京東京での話し合い内容は、どの程度の受けとめ方を中江局長としてはしておりますか。
  14. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 中江局長衆議院商工委員会の方に出席しておりますので、私が申し上げますが、北京におきまして、小川大使をして先方外交部のしかるべき方に、日本におきます協定衆議院におきます進捗状況につきまして御説明をし、そして御理解を得るように指示をいたしまして、五月の二十七日の日に、小川大使は何英外交部副部長と面会ができたわけであります。この時点におきまして、衆議院を通過をいたした後におきまして御説明をしておるわけであります。  それから、東京におきましては、自然承認を得ましたのが六月八日でありますが、その後、六月の末に、松永官房長田島中国課長在京中国大使館参事官一等書記官説明をいたしておるということでございます。
  15. 戸叶武

    ○戸叶武君 外務大臣にお尋ねします。  中江局長——どもは、しんぼう強く本件につきましてもっと突っ込んだ話し合いをいたしたい。この種話し合いは単に日韓大陸だな協定の問題に限らず、いま御指摘のように海洋法秩序が流動していますので、将来日中間でやがて問題になるであろう二百海里問題を含めまして、日中は一衣帯水の両国でありますので話し合いの雰囲気をつくっていきたい、こういうふうに明快な答弁をしています。鳩山さんも同様な見解でございましょうか。
  16. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 二百海里時代を迎えまして、日本中国の間にも、将来いつの日にかこの問題が解決しなければならない問題となるであろうと思います。日中間漁業関係は、大変円滑に日中間漁業協定に基づいて行われておりまして、その点では現在におきまして何ら支障がないわけでありますが、今後の問題といたしまして、なるべく早く両国間で話し合いをいたすべきものと、かように考えております。この点につきましては、中国外交当局ともいろいろ打ち合わせをいたしており、機会があれば、そのような機会を早く持ちたいと考えておるところでございます。
  17. 戸叶武

    ○戸叶武君 私たち日韓大陸だなの問題を慎重審議しなければいけないというように主張するのは、やはりこういう国と国との間の取り決めが、中江アジア局長が言われるように、中国とも韓国とも関連があるというような問題をここでこじらしてしまって、先を急ぎ過ぎたがゆえに後で禍根を残すというようなことがあると、日本外交の信というものを問われることがあるので、そういうような配慮が十分政府において行われているならば別ですが、いまの国会に対する内閣政治姿勢というものは何とかして野党の慎重審議をかわして、そうしてこれを無理しても通そうという気構えが露骨に出ておりますので、そういう点から、私たちは、政府がこのような問題において後で中国との間あるいは朝鮮民主主義人民共和国との間、そういうものとの間が非常にこじられるようなことがあると大変だと思って注意を促しているのであり、また、国内法が簡単に整備できるというような政府側独断的予測のもとに、この協定だけはやってしまえというような心構えだと、やはりこれまた韓国側の強い要請はそのまま受けて、日本国会における審議の手続はまたいでいってしまったというような悪前例を残すことになる。  そういう点を先ほどの鳩山さんの答弁だとどう受けとめていいか、大体、善意に受けとめれば、そういうことをしないという意味にも受け取れるんですが、これまた非常にもやのような答弁で、くみ取るのが困難な面もありますけれども、どうなんですか、一体、これは。そういう心配はありませんか。
  18. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 日本韓国との間の外交面におきます協定は、これは国会の御承認があったわけでございます。したがいまして、これを行政府のみで批准を抑えてまいるというのには、これは常識的な意味でやはりある種の限界があると私は思うのでございます。したがいまして常識的な限界の中で政府といたしまして国内法の整備にあらゆる努力をいたすべきものというふうに考えておるわけでございます。  そういう意味で、政府といたしましては、ぜひとも国内法の御審議を促進していただいて、何とか御承認を賜りたい、こういうことに徹しておるわけでございます。現在におきまして、国内法がなくても開発は強行をするというようなことは毛頭考えておりません。
  19. 戸叶武

    ○戸叶武君 この問題で繰り返して外務大臣にお尋ねしたいことは、外交権内閣にあります。しかしながら、内閣のみの独走によって審議権を持つ国会協力を求めずして突っ走るようなことをやると、これは必ずはね返りが起きまして、国の主権者はあくまでも国民なのですから、国民合意を得られないような条約なり協定というものは必ずそれによって不祥な出来事を生ずる場合が多いのであります。一九六〇年の安保闘争においても、岸さんがあれほど無理をしなければみずから自滅しなくても済んだと思うのであります。やはり岸さんの流れをくむ福田さんに憂慮するのは、福田さんもなかなかしんのしっかりした方でありますが、岸さんより根回しは上手のようですけれども、しかし、やはり非常な無理をしたときには人民の怒りの前に、やはりこれは岸内閣と同しように、粉砕される危険は多々あるのであります。  そういう意味におきまして、この日韓大陸だなの問題と、核防条約批准後におけるこのNPTに基づくわが国国際原子力機関との間の保障措置協定はかかわりはないじゃないかというような人もありますが、私は非常にかかわり合いがあると思うんです。これはこの前にも外務大臣質問したのでありますか、いまのこの激動変革時代における虚々実々の、世界の戦国時代とも言われるような外交というものはすべて経済とも絡みついておるのであります。エネルギー問題と貿易の問題、貿易アンバランス是正の問題、すべて絡みついております。通貨におけるところの円高ドル低、これも人為的操作がそこに加えられていないとは言えないのであります。そういう意味において、いまの外交は、福田さんは自分で全責任を持とうと言い、鳩山さんも福田さんをかばう形においてまあうまくやってるんでしょうが、やはり心していかないと、いろんな面に私はがたがたが出てくると思うのであります。  核防条約批准したわが国が、昨年の九月四日から国際原子力機関保障措置協定交渉に入って、査察受け入れの問題などでユーラトム並みの条件を確保したことから、去る三月四日に保障措置協定に署名して、国会本件を出したのでありますが、その間に、国連局長等が中心になって国際間の折衝をやってきたと思うのでありますけれども、この保障協定問題点は、国内措置だけでなく、使用済み核燃料の再処理問題が抱き合わせられておるところに問題があるのですが、外務省としては、それに対してはどういうふうに対処しようという考え方を持っておりますか。
  20. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) ただいま御審議いただいています保障措置協定は、わが国が昨年批准いたしました核防条約自体に伴う必然的な措置でございまして、核防条約加盟国として、当然、わが国として発効せしめなければいけない義務を負っているものでございます。  それから、再処理の問題につきましては、もちろん間接的には関係はございますけれども、先般来問題になりました東海村における再処理工場運転の問題は、これは日米原子力協力協定の第八条の規定から出てきた問題でございまして、日米での交渉を通じて、御存じのとおり、九月の中ごろに日米共同声明という形で、一応、その決着がついたということでございます。  もちろん、日米交渉で、日本は、いろいろ核拡散防止についての日本としての信念なりを説明いたしましたけれども、それは当然に核防条約批准した後、わが国として保障措置協定も近く批准するのであるということを前提とした日本主張でございまして、アメリカもさように受け取っていたと思いますので、その意味では、両者は確かに関連していることかと思います。
  21. 戸叶武

    ○戸叶武君 外務省としては、十二月四日までに、核防条約保障措置協定を発効させなければ、核防条約義務違反となるという考えを持っているようです。  それはごもっともだと思いますけれども、次に、この東海村の再処理工場運転を認めたさきの日米合意は、もし承認を受けないような場合においては根本から揺すぶられるというお考えを持つようですが、あの東海村の再処理工場をめぐる交渉を見ても、なかなかアメリカ側は核防条約批准するまでの段階とは、大統領がかわったから変化があるのでしょうが、大変な国際情勢によるカーター大統領の変化と好意的には受けとめているようですが、何がゆえにアメリカにそのような——東海村の再処理工場の問題をめぐっては大川局長も脂汗を流したと思うんですが、どうしてあの底意地が悪いとまで思われるような締め方をされなければならなかったのか。その経緯を、やはりあなたたちの体で受けとめているだけでなく、国民が受けとめなければ、将来、アメリカに対しての外交交渉において、日本が余りになめられた形では、今後、うっかり条約批准でも協定でもできなくなるおそれもあるので、その点は、本当に真意をアメリカ側に訴えるだけでなく、国民に明らかにしてもらいたいと思います、大川さん。
  22. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) アメリカのカーター大統領が昨年の大統領選挙の過程におきまして、突然、核の拡散防止という見地から非常に厳しい政策——原子力の平和利用についていろいろの制約を課すことを主眼とする政策を表明いたしました。同じく、当時のフォード大統領も、昨年の十月に、そういった趣旨の演説をいたしましたけれども、これは必ずしも選挙戦の過程で突如出てきた全く新しい考え方ではなかったかと思います。  もう少し敷衍して申し上げますと、一九七三年の石油ショックによる石油の価格の高騰、続きまして一九七四年におけるインドの核爆発実験の実施といったようないろいろ新しい発展かございまして、こういったようなことは、実は、核防条約のテキストが確定いたしました一九六八年の時点では、当初の起草者によりましても予想されなかったことではないかと思います。核防条約自体は、核の拡散を防止するための最も基本的な、法的枠組みとしてきわめて重要な存在価値を持っておりますし、今後とも核防条約が基本であろうかと思いますけれども、そういった新しい世の中の発展に伴いまして、核防条約による核拡散防止体制をさらに補てん、補強する必要が出てきたんだということが一九七五年あたりからの国際社会の認識となってきたのではないかと思います。その一環として、アメリカの大統領ないしは大統領候補があのようなことを言い出したというふうに私たち了解しております。  しかしながら、日本としては、もちろんアメリカの大統領の申しております核拡散防止の必要性については十二分に承知いたしておりますし、また、この地球上において核拡散防止の必要を説き得る国があるとすれば、まさにわが国であるべきではないかと思うのでありますが、同時に、核防条約においては、原子力の平和利用についての差別を受けざる権利がはっきり核防条約批准国に保障されておりますので、その権利を侵害されるような形でいろいろの政策が進められることは、核防条約批准国であり非核兵器国である日本として承服できないといったような立場から、一昨年の暮れあたりから、いろいろの機会にいろいろの場でアメリカ政府当局に対して日本としての主張をなし続けてきたわけでございまして、その主張を行いました結果、アメリカ合衆国としても日本がいわゆる核武装をやる意思がないことを毫も疑っていないということを確認いたしましたし、また、原子力の平和利用面においては、日本としては前進せざるを得ないんだということを十分認識するに至ったのではないかと思います。その結果が、去る九月の東海村再処理工場に関する日米共同声明及び日米原子力協定の第八条に基づく共同決定という形になってあらわれたのではないかと思います。
  23. 戸叶武

    ○戸叶武君 現在進めている日加原子力交渉の妥結を妨げ、その結果、カナダ産ウラン輸入再開が大幅におくれるおそれがある、また、近く始まるオーストラリアとのウラン鉱輸入交渉にも悪影響を与える、次に、わが国原子力政策についても、これを十二月四日に間に合うように承認しないと世界各国に大きな不信感を与えるというような見解を、外務省のスポークスマンは語っておりますが、そのカナダウランの輸入の問題、オーストラリアとのウラン鉱輸入交渉の問題、それはどういうふうな進め方をいままでしできたのでしょうか。
  24. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) 最近におきますカナダやオーストラリア等、いわゆるウラン資源保有国の一連の動きは、やはり先ほど私が御説明申し上げた核防条約発足以来の世界情勢の変化を背景としていると言えるかと思います。  特に、カナダの場合におきましては、インドが一九七四年に核爆発実験を行ったわけでありますけれども、それはカナダがインドに輸出した原子炉によって生産されたプルトニウムを使っての核爆発であったということで、カナダとしてはかなりの衝撃を受け、それ以来、カナダ産の核物質、資材等を輸出する際の条件を各国に対して厳しくすることを政策として打ち出したわけでございます。そこで、カナダは、関係国との間で協議を始めたわけでありまして、日本との間でも協議を進めておりましたが、その協議がカナダの期待するような形で進展いたしませんので、ことしの一月に入りまして、交渉相手国たる日本、ヨーロッパのユーラトム諸国、スイス等に対してはカナダ産のウランの供給を停止するというようなことまで実は実施するに至ったわけであります。これに対しましては、わが国といたしましては、誠意を持ってカナダと交渉をしてまいりましたし、カナダが主張してまいりました日加原子力協力協定における各種保障措置等の強化について応じ得るものについては話し合いに乗ってまいりましたけれども、なお幾つかの問題が残っておりますので妥結に至っておりませんが、今後とも、引き続き一生懸命カナダとの話を早く片づけるべく外交努力を続ける所存でございます。  オーストラリアにつきましては、この国はもともと多量のウラン資源を抱えておりますけれども、それを輸出するかどうかということ自体について国内でいるいろ議論がありましたけれども、数カ月前に至りまして、オーストラリア政府として、オーストラリア産のウランの開発及び輸出に踏み切るということを決めたようでございます。それに伴いまして、やはりカナダと同じような角度からであろうかと思いますけれども、オーストラリアのウランを買う国々に対しては、そのウランが核の拡散につながるような形で使用されないことを確保するために一連の保障措置の強化を求めることを考慮中のようでございまして、非公式に私どもに対してもオーストラリアの保障措置強化政策についての説明がございます。ただいまそういう段階にございます。
  25. 戸叶武

    ○戸叶武君 カナダが日本以外に、スイスその他どこです、断ったのは。
  26. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) ユーラトム諸国でございます。
  27. 戸叶武

    ○戸叶武君 日本及びスイスそれからユーラトム諸国等は共通の利害関係を持っているので、その後もカナダとの折衝を行っていると思いますが、それらの国々と日本は同一歩調で交渉を続けているのでしょうか。
  28. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) おっしゃいますとおり、まさにそれらの国々と日本とは、ウラン資源の輸入国という立場で、同じ立場、非常に似通った立場にございます。したがいましてカナダ、アメリカ、豪州といったウラン資源の供給国との話し合いの際にも、日本とユーラトム諸国との間の情報交換、意見交換ということはできるだけ行うようにいたしておりますし、それはそれなりにお互いに参考になっているわけでございますが、ただ、同時に、ユーラトム諸国の場合には、そもそもユーラトムという原子力平和利用についての一つ国際機関を構成いたしておりますので、その点は日本の場合と基本的に異なっているところでございます。  たとえば、御承知のように、日本とアメリカとの間には原子力協定がございまして、それによりますと、日本におきましてアメリカ原産の使用済み核燃料を再処理するときにはアメリカと共同決定を行わなければならないということになっておりますけれども、ユーラトム諸国はユーラトムとしてアメリカと原子力協定をつくっておりますので、その協定におきましては、日本とアメリカの協定にありますような再処理の場合には共同決定を必要とするんだというような規定がございません。そういった点ではユーラトム諸国は日本に比べてアメリカに対しては有利な立場にあると言えるかと思います。そういった違いはございますけれども、基本的には同じ輸入国、消費国として相互に十分連絡を保つということが今後ともますます重要であろうと思います。
  29. 戸叶武

    ○戸叶武君 核兵器の不拡散に関する条約第三条1及び4の規定実施に関する日本国政府国際原子力機関との間の協定についてでありますが、わが国は一九七〇年二月三日に核兵器の不拡散に関する条約に署名した際に、政府声明として、一、核軍縮の進展、二、非核兵器国の安全保障の確立、三、原子力の平和利用の平等性の確保、この三つを挙げておりますが、その重点に置いたのは、政府としては原子力の平和利用の平等性の確保にあたったと思うのです。  したがって、NPT第三条は、締約国となる非核兵器国に対し、原子力の軍事転用を防止するため国際原子力機関との間に保障措置協定締結する義務を課してありますが、政府は、これに基づいて保障措置協定を結ぶ際にも努力したのは、いま大川局長が問題を出しておりますが、欧州原子力共同体、ユーラトムとの間にIAEA締結した保障協定内容に比して実質的に不利な取り扱いをされないように努めたのだと思いますが、その確認は十分に得たと大川局長は受けとめますか。
  30. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) 核防条約に基づく保障措置協定のもとでのいわゆるユーラトム並みの待遇ということかと思いますけれどもわが国といたしては、今回でき上がりました国際原子力機関との保障措置協定の付属議定書規定によりまして、十分、ユーラトム並みの待遇を獲得し得たというふうに考えております。
  31. 戸叶武

    ○戸叶武君 先ほど、大川さんは、ユーラトム諸国は日本に比してアメリカとの間においては有利な関係にあると言いますが、その有利不利を埋めていくことはできましたか。
  32. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) 先ほど私が申しましたその点は、ただいま御審議いただいております保障措置協定上の問題というよりも、ユーラトム諸国とアメリカ合衆国との間の二国間協定の問題でございます。実は、ただいまアメリカの議会におきまして新しい核拡散防止法案が審議されておりますけれども、聞くところによりますと、これは来年前半におきまして恐らく成立する見通しだそうでございますが、その法律案によりますと、アメリカ合衆国といたしましては、今後は、各国と結んでいる原子力協力協定を順次引き締めていく権限を与えられている、しかも、ユーラトム諸国との原子力協定におきましては、日本との原子力協定にございまするような再処理に関する事前同意の規定をも導入することを今後交渉で試みる一方針であるというふうに承知いたしております。それがもしユーラトム諸国との間で成立いたしますれば、先ほど私が申しましたユーラトム諸国と日本との間の事情の違いということがなくなることになるかと思いますけれども、いずれにいたしましても、これは保障措置協定上の問題ではなくて、別の問題であろうかと思います。
  33. 戸叶武

    ○戸叶武君 今度は、鳩山外務大臣質問いたします。  保障協定の問題でなく二国間と言いますが、この核燃料の問題をめぐって、日本はアメリカに最恵国待遇を受けているというような印象を国民は持っているのですが、事実上において、いままでの経過から見れば、ユーラトム諸国との間には非常に違いがあるわけです。それを、アメリカは国際情勢の変化においてユーラトムを日本との二国間協定で定めたような線に引き締めていくというような大川局長のいま答弁でしたが、外務大臣は、それはやむを得ないというふうな受けとめ方をしておりますか。
  34. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 日本とアメリカの原子力協定につきまして、アメリカとユーラトム諸国との間とは、再処理問題につきましての共同決定という点におきまして差異があること、これは大川局長から御説明申し上げたとおりでございまして、日本といたしましては、現在、核兵器拡散につきましてカーター大統領がこれを大きな問題として取り上げておるところでございますので、現状におきましては、将来の再処理問題の実体につきましてどのようなことを国際的の場で取り決めていくかという点に最大の関心を持っているところでございます。  再処理自体につきましての共同決定という方式をなくすということができれば、これは好ましいことに違いないのでありますけれども、これだけ使用済み核燃料の再処理ということか国際的に大変大きな問題として取り上げられている際でありますので、再処理問題の実体につきまして国際的に今後どうするかというこの方針を決めることが先であるというふうに考えているところでありまして、その点につきまして、日本といたしまして、日本の国益を守る、すなわち日本原子力の平和利用のいままで日本でつくっておりますスケジュールと申しますか、これに影響を与えないような、そういう結果か得られるように最大の努力をいたす、かように考えているところでございます。
  35. 戸叶武

    ○戸叶武君 原子力は、エネルギーとして、平和利用の面と同時に、核兵器としての軍事利用の面と二つの面かあります。アメリカのカーターが打ち出した人権外交なり、核拡散をもっと引き締めていくという行き方なり、それなりの評価は私たちはいたしますけれども、アメリカの外交政策には、どこの国にも避けられない面があるが、極端な矛盾が今日においては露呈しておるのでありまして、むしろアメリカの外交政策の中に一日分の国の利益本位に物を考えて、他の核を持たざる国々の利害というものを無視したようなひとりよがりの政策が随所ににじみ出てきていると思うんです。  特に、私は、日本に対しては唯一のパートナーだと言ったり、西ドイツと日本とアメリカが世界の景気の沈滞を打破していく牽引車であるというようなおだて方をしておりますか、一番私たちが不愉快に感ずるのは、日本の憲法が核の被害を受けた国民の悲願を込めてつくられたものであり、その精神をくんで非核三原則もつくられており、核拡散防止条約も、国内においてフリーハンド論者があって、核を日本でもつくる能力があるのにどうしてつくらないのかという論者が特に自民党の中には青嵐会一派を初めとしてはびこっていたものでありますが、それをも克服して日本外交の基本原則を前進させているのに、いまだに何か日本では核をまた持とうとしているんではないかという不信感をアメリカがあらわしているというのは、政府なり自民党の姿勢の中にアメリカならアメリカにそういう誤解を招くような言動が随所に出ているからではないでしょうか。  私は、海外に武器を売らないと言っているアメリカが一番売っていたり、また、軍事用の飛行機を各国の政権を握っている政党に賄賂をばらまいて売り込んだり、実にえげつない政策が世界じゅうで露呈しておりますが、なぜアメリカは日本に対してしつこく、日本が核は絶対につくらないと、戦争を日本はしないと、こういう宣言をしているのにもかかわらず、そういう不信感を抱いているのは、日本における外交努力が足りないんじゃないですか。また、カーターが素人で、新しく登場して目新しい外交を展開しようというアクロバティックな外交展開をやる際にそういう粗雑な面があるでしょうが、だんだん大川局長が言われているように、日本の真意というものがわかりつつあると思うんです。それにもかかわらず、何か日本政府というものは非常に無視され、それから日本が誤解を受けているのは別なところにあると思うんですけれども、そういう外交努力の面で外務大臣はどういうところが足らなかったという一つの反省を持っておりますか。
  36. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) わが国が唯一の被爆国である、そして非核三原則を堅持して、核武装する技術的な能力あるいは経済的な能力を持っているけれども、核武装は絶対にしないという点は、これはもう世界の指導者の方はみんな理解をしていると思います。アメリカ政府が、その点につきまして、日本に対して理解がないということは私は絶対ないと確信をいたしております。  ただ、カーター大統領が、プルトニウムが容易に核兵器に転用されるこの点について、核拡散につきましての大変な心配を持つに至ったことは、これはインドの核実験から来ているわけでありまして、カナダの原子炉によってインドが核実験をしたということが発端であると理解をいたしておりまして、したがいまして、その点につきまして私は日本の政策が理解をされてないということではない。  ただ、東海村の例をとりますと、これがカーター政権になりましてから、使用済み核燃料の再処理がプルトニウムを生産することによって容易に核拡散につながる、この問題につきましての最初のケースであったということで、この問題の処理が、世界に対しますアメリカの核政策と申しますか、これにつきましての先例になるという点から、アメリカといたしまして大変努力をいたしたということでありまして、日本に対する不信があるから、したがって大変問題にしたということでは全くない。これはもうたびたび先方も申しておることでありますし、私どもといたしまして、その点はいささかも疑っておらないところでございます。
  37. 戸叶武

    ○戸叶武君 アメリカの核政策はエネルギーの問題と深く絡みついておりまして、その中軸をなすものだと思います。したがって、このエネルギーをアメリカの戦略物資として取り組み、国内にも要請しているところでありますか、外国に対しても、石油の代替品となる可能性がある核燃料についても厳しくこれを抑制する方向に向かってきている模様でありますが、それがやはりそれに並行して貿易政策にもあらわれてきたと思うんです。  円高なりドル安の現象というものは、明らかに、私がもう数回この委員会で指摘しておりまするように、人為的に仕組まれたものであります。アメリカとしてはアメリカの立場からそうせざるを得なかった、これが国策であると言えばそれまででありますが、この問題をめぐって、福田政権は昨年の十二月に発足し、米国ではカーター政権がことしの一月に誕生したのでありますが、この過去十一カ月間における日米間のぎくしゃくした足取りを見ておりますと、米国の対外貿易の赤字は七七年一月から六月まで半年間に百二十五億ドル余となり、そのうち三十億ドル余が対日貿易のアンバランスから生まれております。七月には六億七千万ドル分の対日貿易の赤字が計上されております。  こういう状態で、アメリカはあたかもアメリカの赤字は日本のせいであるように宣伝しておりますが、本年一月から八月にかけて、米国の石油輸入量は一日当たり約九百万バレル、昨年に比べて二六・八%アップ、輸入総量は二十二億バレル、二百八十七億ドル、これは前年に比べて三九%近く急増したことになっております。私は、米国のこの輸入はアメリカのやることだから別に介意はできないのですが、一九七三年には一日当たり三百万バレル、昨年は五百二十万バレル、現在は九百万バレルというふうに、ぐうっとこの四年間に三倍近く増大しているのであります。異常な増大ぶりであります。アメリカはこの石油と食糧とを戦略物資と規定し、食糧の問題は、ソ連に食糧を主として供給することによってこれを使い、また日本においてももっと食糧を買えというふうに押しつけてきておりますが、この日本の黒字減らし、これは日本政府も受けとめてこれを具体的にしようというふうに配慮しておる模様でありますか、このアメリカの石油輸入というものがアメリカの貿易面における赤字累積を生んでいるというこの事実を、アメリカ側と折衝するたびに、外務大臣はこれをアメリカ側に述べていると言っておりますが、どういう機会にそのことをアメリカ側に述べてきたのでしょうか、外務大臣に御答弁を願います。
  38. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいま戸叶先生御指摘になりましたように、アメリカの国際収支の赤字、特に貿易収支の赤字が非常に巨大になってきて、その大きな部分が油の輸入の増大によって起こっておるということは御指摘のとおりであろうと思います。アメリカの油の輸入の増大は、とりもなおさず、これはアメリカの国内産の減少ということから起こっておると言われております。あるいはまた、昨年の冬に大変な燃料危機があったということも影響したのかもしれませんが、一般的には、やはり国産の油あるいは天然ガスの生産の減少が輸入の増大を来しておるということが言われております。  しかし、アメリカが非常に気にしておるところは、なるほど油の輸入増によりまして大変な赤字が出ておるというわけでありますけれども、国別に見てまいりますと、アメリカといたしまして最大の貿易の赤字国は日本であります。そういう点から見まして、やはり日本に対するアメリカの貿易収支の赤字というのは大きな問題になってきつつある。それとともに、最近に至りまして、この貿易収支の赤字ということよりも、アメリカの製鉄所が倒産をするというような、そういう目に見えた事件から日本に対する批判が強まっておる、特に国会筋等におきましてそのような同調者がふえておるというのが現実のところでございます。  そういう環境のもとでありますが、日本といたしまして、御指摘のように主張すべきことは主張をするということが必要である。で私どももバンス国務長官に会いましたときにも、この石油輸入の問題を指摘をしております。あらゆるときに指摘をいたしておりますが、アメリカ政府といたしましては、エネルギー法案の成立をとにかく期するんだということにいま全力を挙げておるということで、エネルギー法案の行方につきましては、わが国といたしましても関心を持って見ているところでございます。  また、世界の通貨でありますドルが不安になるということは大変危険なことである。御承知のように、産油国のドルというものはアメリカの金融界に多額に流入をしておる、この流入した短期資金がどのように動くかということは世界の金融市場に非常な影響を与えるわけでありまして、この点につきまして、アメリカ自身といたしましても通貨問題の解決は何より必要なことであると考えておるに違いないと思っております。  そういう次第で、わが国といたしまして、アメリカとして正すべき点は正してもらうように、それはあらゆる機会主張をすべきものと考えております。また、わが国といたしましても、やはり大きな黒字を継続するという点は国際的に問題でありまして、その点につきましては、御承知のように対外経済対策を関係各省一緒になって強化拡充をしていかなければならないということで、先週の土曜でありますが、十二日の日に対外経済対策会議というものを設置をいたして、早急に有効な施策を講ずるように努力をいたしておるところでございます。
  39. 戸叶武

    ○戸叶武君 日本岸内閣成立した直後、岸首相はアメリカを訪ねて、そうして安保改定の重荷を背負わされてきたんですが、あのときにダレスとの折衝の中において、アメリカの国会における演説でも、日本といまのアメリカの状態とは当時逆で、日本貿易において日米間かアンバランスの関係にあって赤字が累積されておるのです、それを訴えて、このアンバランスな日米間の貿易を均衡のとれたものにしてもらいたいと訴え、特に貿易の面におけるアンバランスだけでなくて、日本に送ってくる品物を運ぶ船をアメリカだけのものにしないで、日本の船も使って貿易外の収入を日本においても得られるようにしてもらいたいということを訴えたのですが、それに対しては一顧だに与えられなかったのであります。  私は、当時、アメリカの上院議員の外務委員長のセネター・グリーン、前のセネター・ワイレーの紹介で、国会の中からその光景を見詰めておりながら、何と日本外交のこの弱々しさよというふうに感じ、またアメリカ自身が余りにも手前勝手だという憤りをその当時は持ったのでありますが、しかも、岸さんが共産主義諸国に対し日本が防波堤になる、日本がアメリカに協力するというようなことを最後に演説をやったところだけが拍手になっていたんです。  日米間は、そのダレス時代と非常に違ってきて、パートナーと言われるほどにまで一応きたのかと思いますが、いま日本のことは日本で当然やって、黒字減らしを積極的にやる必要があります。しかし、アメリカにおける石油業者なり何なりがカーター政権にエネルギー問題を通じて揺すぶりをかけているのも、まだ国内で開発すべきものがあるが、それを怠っているじゃないかという揺すぶりが一番強いんじゃないんですか。アメリカの中にエネルギー資源を温存しておいて、まず、とりあえず、日本のような国あるいはドイツ、そういう国をこの核戦略並びにエネルギー戦略によって抑えていこうというこのアメリカの基本的な外交方針によって日本が手玉にとられているじゃないかという印象を私たちは今日受けてしようがないんですが、これは野党のひがみでしょうか。  政府は、アメリカと折衝していながら、いつでもごめんなさい、ごめんなさいと幼稚園の子供じゃあるまいし、そういうことばかりして自主性のない外交をやっているところに、いつまでもこういうなめられたことが出てくるんじゃないかと思うんです。私はアメリカに盾突けと言うのではないが、もう少しなめられないだけの自主的な外交体制を確立しないと、年じゅうきょろきょろアメリカのごきげんだけをとって一切合財やっているという外交じゃどこの国の外交かわからなくなると思うんですが、そこいらに対して鳩山さんはどういう形でふんどしを締めつけていますか、お答えを願います。
  40. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) わが国外交政策が日米という大きな基軸のもとに動かされていること、これは御承知のところであろうと思います。しかし、わが国といたしまして、アメリカに対しまして対等のパートナーとして、これは世界全体に対しましてやはり日本としては責任を果たしていくべきものである。そのように日本の力が非常についてきたと申しますか、経済力の面におきまして、特に自由世界でアメリカに次いで経済力を持つに至ったのであります。したかいまして日本が世界経済に対しまして協力的な姿勢をとらなければならない、また、それは国際的な責任を果たしていく日本の大事な道であるというふうに考えております。  わが国の政策を進めるに当たって、アメリカがこうしろと言ったからしておるんだということでは全くないわけであります。アメリカ自身は世界のことも考え、そして国内の事情もいろいろございましょう。しかしながら、アメリカ自身としては常にやはり世界全体のことを配慮しなければならない、こういった立場にあるわけで、そういう面につきまして、日本も、今日の日本の地位というものを考えた場合に、協力をしていかなければならないわけであって、そういう意味から、やはり日本といたしまして黒字減らしというようなこともやる必要があるわけでありまして、何もアメリカに支配されているというようにお考えになることは、これは私どもといささか見解を異にするところでございます。
  41. 戸叶武

    ○戸叶武君 私は、アメリカに別に支配されているとは思っていないが、何か政府のやり方を見ると、アメリカに振り回されて唯々諾々としてそれに従っていく、後手後手というふうに政策も動いている、こういうことは私は日本にとって不利だと思うのであります。  特に、いま、きょうも円が二百五十円を割るどころか四十五円前後になってきたというようなところには、政府でもそれは露骨には言わないけれども、アメリカの政策が動いているというのは御承知のとおりであります。福田さんは二百五十円程度は何とか仕方がないんじゃないかというようなことをすでに前に声明しておりますが、そうすると二百五十円でも大丈夫だから二百四十円ぐらいまで引き下げていけという操作がそこに行われているんだと思いますが、そういうふうに日本の政治家の言動というものが一々アメリカの方へはね返って、そうして三十億ドルの黒字減らしをやると言っても、ぐずぐずして具体的な対策は出てこないからというふうにアメリカでは受けとめているし、アメリカだけでなく、英国労働党内閣のヒーリー蔵相は、十日、大蔵省で、通貨不安が続く世界経済とその改善の兆しに対して英国の現状、問題点を述べ、その中で、ドルの下落は米国が応分の石油赤字を分担したためやむを得ない結果だ、これはアメリカの肩を持って弁解の方に回っていますが、鳩山さんよりも少し積極的な弁解のようです。しかし、国際金融組織と自由貿易体制を脅かしている元凶として日本の大幅な貿易黒字を厳しく批判して、工業製品の大幅な輸入拡大を迫るとともに、他の先進国並みの開発途上国援助を要請しております。  ここで、私は、一番問題になるのは、とにかく自動車でもあるいはカラーテレビでも、日本のものがよくて安いというのは定評があるんで、これはいかにアメリカなりイギリスなりがやってみても、よくて安いものを買うのは常識でございますが、問題は、日本の発展途上国に対する積極的な協力というものが具体的にあらわれていないところに、やはり諸外国から日本は自己本位の国である——先ほど鳩山さんは世界のことを考えてやっているんだと言いますが、自己本位の国であるときめつけられてもやむを得ないと思うんですが、黒字減らしという形の中で、海外援助に対して技術経済協力の面で具体的にどれだけいまやろうとしているのか。その面も明らかにしないと、今度は、アメリカだけでなくて、イギリスからも発展途上国からもその面の非難が浴びせかけられるんじゃないかと思いますが、それはどういうふうに受けとめていますか。
  42. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいま御指摘になりました海外経済協力の面におきまして、日本がGNPの対比におきまして昨年は暦年で〇・二にしかならなかったということがございます。これは大変残念なことでございますが、この点につきましては五年間に金額的に倍以上にふやそう、こういうことを天下に声明しておるわけでございます。  この海外経済協力は、御承知のように、発展途上国とそれぞれ個別に協定をいたすものと、機関に対する拠出等とあるわけでございますが、この二国間の面につきまして、実際に協定をいたしましてから現金が出るまでに相当なタイムラグがあるのが現状でございます。したがいまして、この金額を早急にふやすということはなかなかむずかしいのでございますが、ことしは、年初来、諸外国に対する援助の約束はもう昨年に比べまして飛躍的にふやしてまいっております。しかし、これが現実に現金面での支出になりますのが恐らく来年度以降にずれてしまうというのが残念ながら実際でございまして、この点につきまして、やはりしばらくは諸外国からの批判は減らないものと思います。しかし、二国間ベースでの援助の約束をする、そういう面では格段の努力を払っておるところでございます。
  43. 戸叶武

    ○戸叶武君 今週開始した国際核燃料サイクル評価計画は、今後のわが国原子力利用に対して非常に大きな影響を与えるものと考えておりますが、そこで果たす日本の役割りはどのようなものか承りたい。
  44. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) このINFCEの会議に大川局長が参加をいたしたわけでございまして、大川局長がそこで日本立場を明らかにいたしたわけでございますか、大きく申しまして、核の拡散を防ぐということと原子力の平和利用、これをともにその目的が達成できるようにいたしたいというのが日本の基本的な立場でございます。  カーター大統領の考え方でいきますと、原子力の平和利用の面は少し抑えても核拡散を防止したいというような思想が強うございます。しかし、それではエネルギー資源に不足しております日本でありますとかその他の国々としては、これは大変困るわけでありまして、日本といたしまして、核拡散を防止しながら、原子力の平和利用はあくまでも既定の計画が実施できますように、そのような結論を導き出すために努力をいたすというのが基本的な考え方と思います。  なお、詳細でしたら、大川局長から補足させます。
  45. 戸叶武

    ○戸叶武君 大川局長はそういう国際的な集まりのベテランですが、そこで日本は何をなし得るかという点を具体的に説明していただきたいと思います。
  46. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) この国際核燃料サイクル評価という作業は、今後、二年間続くわけでございまして、八つのテーマを設定いたしました上で、それぞれのテーマにつきまして作業部会を設けて、そこで純技術的、客観的な見地からいろいろの問題を検討していくというのが趣旨でございます。したがいまして何か初めから二年後の結果を予断するようなことではございませんで、二年後の終了しました段階で、それぞれの作業グループにおきまして全会一致のいわばコンセンサスで何か結論が出たとすればそれもよし、それが出なかった場合には、それぞれ異なった意見を両論なり各論を併記した形で報告書を提出するということが一応各国間で了解されております。したがいまして、わが国といたしましては、この検討作業に積極的にこちらから貢献するということが一つ。  それはもう少し具体的に申し上げますと、たとえば一例を申し上げれば、九月以来運転が開始されました東海村の再処理工場における各種保障措置の適用の技術的な面について報告をいたしましたりすることで積極的に貢献いたしますし、同時に、せっかくの機会に世界各国の一流の技術者、専門家が集まっていろいろの角度からいろいろな問題を検討いたしますので、わが国としても、そこから具体的なわが国の参考になるような情報を吸収していくというような、貢献する意味でも、それから吸収する意味でも、両面からできるだけ積極的にこれに臨んでいきたい、これが私たち考えでございまして、その結果どういうことになりますかはもちろんいまの時点では全く見当がつきませんけれども、少なくとも原子力の平和利用に関心がある主な国々が集まってそれだけの期間をそれだけの問題について検討いたしますこと自体、恐らくそれなりに非常に大きな意義があるのではないかというふうに考えて、これの作業が始まったことを積極的に評価しているということでございます。
  47. 戸叶武

    ○戸叶武君 貿易面における日本の黒字減らしの問題で、アメリカ側は具体的に日本がもっと食糧を外国から輸入せよと、そういうものはやはり肉類やあるいは畜産関係の製品、果実、いろいろにわたっておりますが、このことによって日本の農業に与える打撃は大きいのではないかと思われまして農林省は頑強にこれに抵抗しておりますが、アメリカとしても、中間選挙に備えて、カーターの基盤であるところの南部の農民の支持をかち取るためにはこの問題は強引に抑えてくるんじゃないかという懸念がありますが、これに対して通産省や農林省並びに大蔵省はどのように対処していくつもりですか。
  48. 斎藤成雄

    説明員(斎藤成雄君) 御存じの先般九月三日に開かれております総合経済対策におきまして、特にこういった残存輸入制限、その他輸入枠の拡大等について検討するということになっておりまして、九月二十日にはその趣旨かさらに確認をされております。  したがいまして、現在、通産省といたしましては、お尋ねの農林物資につきましては農林省との間で検討を進めているところでございます。これはあくまでも品目別の需給動向などを勘案しながら輸入枠の拡大等について検討を進めるという立場に立って行っておりまして、国内に悪影響のないように、かつまた、海外の要望にこたえられるようにという趣旨から作業を進めているところでございます。
  49. 戸叶武

    ○戸叶武君 作業は進めているが、具体的にあらわれないことが外国をいら立たせているのじゃないかと思いますけれども、こういう問題は、やはりいつでも対処し得るような操作がなされていなけりゃならないのが行政機構における一つのファンクショナリズムの上に立った役割りだと思うのです。福田さんがいら立っても行政改革もできない、それから総合的な対策というものか各省ばらばらでできない。アメリカでは、エネルギー省に総括されて強力なエネルギー問題を中心としての政策の一貫性が行われているのに、日本においてはこういう点がきわめてゆるふん的なだれた体制ですが、そういうものに対して、これは外務大臣責任というわけじゃありませんが、こういうスローなアイドルシステムによって行政面における対応姿勢がないことについては、日本のいまの各省のあり方なんかにいろいろな問題点があると思うんですが、外務大臣は私見としてどう考えておりますか。
  50. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 貿易上の諸問題につきまして、これは関係する業界等がございますのでなかなかむずかしい問題でございます。貿易の自由化の問題につきましては、もう過去に長い歴史がございまして、目下、日本としては二十七品目のものがまだ自由化していない品目であるわけでありますが、この点につきましては過去に何回かのいろんな検討を経て、現在、二十七品目か残っておるということでございます。したがいまして、これらにつきまして早急に結論を出すということはなかなかむずかしい問題でありますけれども、今回、この対策会議におきましてはそれも含めて検討していきたい。また、これらの自由化していない品目につきましても、輸入枠の拡大という点につきましても、検討してもらいたいと考えております。これらにつきまして、ものによりましてはいろんな国内あるいは財政上の対策等も必要になるようなものもあるわけでありますが、関係各省で緊密な連絡をとって結論を出してもらいたいと思います。  また、他方、輸入のみならず、輸出の面におきましても、節度ある輸出ということも日本としては考えていかなければならないと思っておりますが、自由なる貿易体制のもとに節度のある輸出体制をとることによってこの黒字対策を講ずるべきであろうというふうに考えておるところでございます。
  51. 戸叶武

    ○戸叶武君 最後に、日中問題の締めくくり段階に来たときにおける外務大臣の進退について承りたいのであります。  一国の外交権内閣にあります。しかしながら、これは今後においては外交、防衛の問題は国の大事でありますから、できる限り話し合いを深めて、そうして政党政派を乗り越えても一つの基本的な路線というものが確立されなければならないのでございます。それにもかかわらず、いまの自民党の福田さんのやり方を見ていると、自民党の中のタカ派あるいは反中国派まんべんなく渡りをつけようという形で、台湾には岸さん、韓国には椎名さん、あるいはタカ派の代表の灘尾さんというふうに根回しをし、あるいは保利さんが近く中国へ出ていくかもしれないというような模様で、外務大臣は一体どこにいるのかわからないような所作が行われておりますが、ソ連との関係が悪化した際に、鳩山さんはすぐにもソ連に行くような気構えをしましたか、私は慎重にした方がいいんじゃないかと、よけいなことだが言ってきましたけれども、この日中平和友好条約締結というのは日本外交史上に残る大きな一つ動きであります、歴史的な記録であります。そのときに外務大臣がかすんでしまって、どこにいるのかわからないような外交をやっておったのでは、あのときの外務大臣はだれだったろうなということになってしまって、歴史にも書くことができなくなってしまうんじゃないかと思うんです。  私は、やはりこの段階に、あなたの遠慮深さはわかるけれども、決然として福田さんと話し合って外務大臣みずから北京に乗り込み、そうしてわれわれの自主的な外交政策というのはかようなものだといって、アメリカにもソ連にもごきげんをとることなく、自主的外交の見本を見せなければならないときに来ているんじゃないかと思うんです。その時期をあなたはいつに選んでおりますか、正直にお答えを願います。
  52. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 戸叶先生のおっしゃいますことは、私も全く傾聴に値する御議論でございます。ニューヨークにおきまして黄華外交部長とお話をいたしましたときにも、この最後に残された平和友好条約の問題はもうなるべく早く解決を図りたい、その点では両者とも意見を同じくしたわけでございます。問題点として数点まだ残っているわけでございますか、これらの点を外交努力によりまして極力詰めるべきであるというふうに考えております。  ただ、この問題につきまして、時期等につきましては、やはり大変微妙な段階でありますし、また、日本国内におきますコンセンサスというものも大変大事なことでございますので、やはりそれらを見定めた上で訪中すべきものであると考えております。その時期等につきましては、ただいま申し上げる段階ではないのでございます。
  53. 戸叶武

    ○戸叶武君 コンセンサスもよいのですか、コンセンサスというならば、日韓大陸だなの問題は、日中平和友好条約よりも、政府のコンセンサスを得る努力が足りないようです。にもかかわらず、脱兎のごとくこの日韓会談はあっという間に促進し、日中平和友好条約は遅々として進まないという状態は、日本外交の力点がどこにあるのかということを人に疑わしめる一つの見本になると思うんです。それはどこにあるんですか。
  54. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 日本といたしまして、特にアジアの平和が何より大事なことであるということは申すまでもないことでございまして、日中間の国交を拡充してまいることがこれまたアジアの平和にとって大変大事なことでございます。そういう認識のもとに立って私どもといたしまして外交を進めておるわけでございます。  ただ、お尋ねのその時期の点につきまして、ただいま申し上げられないということを申し述べておるのでございまして、その点、外務省あるいは私ども政府としての姿勢、これにつきましては、一日も早く双方の満足し得るような形で実現をいたしたいと真剣に考えておりますということを申し述べさしていただきます。
  55. 戸叶武

    ○戸叶武君 年内に鳩山外務大臣、年が明けたら福田さんということになるんですか。  どうも福田さんも、あなたも、いまにもやりそうなかっこうをして、いつまでたってもやりませんけれども、やはり物にはタイミングということがありますから、時期を失してしまったらだめだし、やはり中国を除いてアジア問題の解決はないんです。そういうことをやはり中心に考えることと、もう一つは、簡単にはいかないにしても、隣の朝鮮民族が悲願を込めている南北朝鮮の統一というものに対して積極的な配慮を払うということが、アメリカじゃない、日本にとって大切なのでありますが、そういう問題を非常におろそかにしているような感じがしてならないんです。これでは福田内閣外交政策に対する不信任というものが国民の中から巻き起こらざるを得ないと思いますので、やはり適当な時期に腰を上げないと、福田さんもあなたも腰が抜けてしまったんじゃないかという疑惑を国民から受けると思うんですが、お腰の方は大丈夫ですか。
  56. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) もうたびたび申し上げておるとおり、本当に真剣に取り組んでおるということ、毎回同じことを申し上げているようでありますが、本当に福田総理も私も真剣に取り組んでおるということを再度申し述べさしていただきます。
  57. 福間知之

    ○福間知之君 核兵器の不拡散条約に基づく国際原子力機関との間の保障措置協定を中心に御質問しますが、その前に二、三国際関係事項について、ただいまの戸叶委員の質問とも関連いたしまして、最初に、ちょうど斎藤輸入課長がおいででございますのでお伺いしたいんです。  先般、予算委員会における円高集中審議質疑答弁の中でも、私どもは、政府側のこのドル減らし対策の一環としての輸入政策について非常に不満があるわけであります。あの委員会を通じたマスコミ関係の報道などでも、一様に、審議としては不十分だったというふうな見方が出ておるわけでありまして、これは何のためにあの委員会をやったのか、いささか私ども立場からしても少しみずから納得がいかないという結果に終わったと私は思うんであります。  その後、先週の土曜日でございましたか、たまたま為替市場が休みでありました関係もあって、その日をねらったんでしょうが、経済閣僚会議が開かれたようであります。鳩山外相も閣僚の一員として出られておるわけでありますけれども、実際そのときに政府はどういう切迫感を持って議論が行われたのかということを、まず、お伺いをしたいと思います。
  58. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 十二日の関係閣僚の会議でございますけれども、これは円高問題、通貨不安等もございますが、また日本の黒字の問題、これにつきまして本当に真剣に取り組まなければならないと、こういうことで総理から招集があったわけでございまして、その点は関係閣僚ともこれは本当に緊急問題として真剣に取り組もうと、こういうことでございます。
  59. 福間知之

    ○福間知之君 あの予算委員会のときにも、関係各省の対策について、それぞれ大臣から具体的な内容をお聞きをいたしましたね。あの結果を最終的に総理かまとめて総括答弁としてされた中で、せいぜいまあ十億ドル程度になるかどうかという見通しでございました。かねがね三十億ドルの備蓄を含めた緊急輸入というふうなことが国際的にも公言されてきて、結局、それが一つ日本政府の政策として約束されたかのやはり取り扱いをなされてきているわけでありまするから、その関係において考えた場合に、十億ドルと三十億ドルとの差二十億ドルというのは具体的にこれは数字でだれが考えてもギャップとして出ておりますので、それについては見通しがありますか。
  60. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) いま御指摘の点は、アメリカからウランの鉱石、あるいは濃縮ウランという形になりますか、こういった資源の輸入問題ではないかと思います。で、当日、予算委員会で総理がおっしゃいました鉱石の輸入の問題と、石油の海上備蓄といいますか、タンカーを使いました備蓄の問題がまだはっきりした結論が出ていないわけでございます。海上備蓄の問題につきましては、これは運輸省と通産省とで緊急にこの案を練ると、こういうことでございます。  他方、核燃料の問題につきましては、これは御承知のとおり核燃料は現状では売り手市場の状況にございます。で、日本が輸入計画を立てますときに、買い手市場にあるような物につきましては日本が決めればそれは実行できるわけでございますけれども、売り手市場にあるような物は、これはやはり先方とのはっきりした交渉をしませんとはっきりしたことが申せないわけでございまして、いま目下折衝中でございます。何とか実現をいたしたいとして努力中でございますけれども、なかなかアメリカの政策の関係等もあろうと思いますので、この点につきましては、ただいまのところ具体的な見通しというものを申し上げられるまでに立ち至っておらないというのが正直のところでございます。
  61. 福間知之

    ○福間知之君 余り突っ込んだ議論をこの点できょうやる気がないんですけれども、ちょうど輸入課長がおいでのようですからお聞きしますけれども、ストラウス通商交渉代表の来日がずれましたね。そのかわりに、アメリカの方で国務省とか財務省あるいは大統領の通商交渉特別代表部などの次官クラスで対日経済問題特別委員会が設置され開催されたと、こういうふうに報道されているわけです。  その中身を見ますと、やはり日本が検討しているウランだとかあるいは原油、農産物、非鉄金属等の追加輸入ないしは前倒しの輸入などを含めて、三十億ドルに上る緊急輸入政策というものの行方を非常に注意深く見守るというふうなこと、あるいは流通機構や輸入制限などの制度の抜本的な見直しを強く求めていこう、こういうふうな姿勢だと報じられておるんですけれども、これは間違いないですか。
  62. 斎藤成雄

    説明員(斎藤成雄君) お尋ねの件につきましては、正式にはまだ向こうからは何も言ってきていないわけでございます。したがいまして、私どもは、そういった問題があろうかということで内々の検討を進めている状況でございます。
  63. 福間知之

    ○福間知之君 また一面で、ニューズウイーク誌あたりの報道では、五月のロンドン首脳会議で総理が諸外国に輸入を拡大するんだということを表明したんだけれども、それが守られていない。このままでは日本は恐らくことし貿易黒字が百六十億程度になるんじゃないか、こういうふうなことを記事として出している。あるいは、今後、アメリカの当局としては、日本の輸入を規則するために、一つは、レファレンスプライス制度——基準指標価格制度、これは同じ価格以下の輸入製品については自動的に課徴金が課せられる、ダンピング審査の結果が出るまで課徴金が据え置かれる、こういう制度らしいんですけれども、これは大変なことだと思うんです。あるいは二つ目には、七四年の通商法によってアメリカの産業救済条項を発動する、こういうふうなことかカーター政権の対日輸入規制についての厳しい措置として考えられている、こういうことも一応信頼すべきニューズウイークの報道としてあるようですけれども、そういう情勢をつかんでいられますか。
  64. 斎藤成雄

    説明員(斎藤成雄君) 情報としては、いろいろだだいま御指摘のようなものか私どもにも入っております。ただ、正式のルートというかっこうでアメリカ側の意向というものをいまだに私どもは入手いたしておりませんので、そういった情報をもとにして検討しておるというのが現状でございます。
  65. 福間知之

    ○福間知之君 最初に申し上げたいわゆるストラウス通商交渉代表の先行部隊として次官クラスが来るんですか、来ないんですか。そして会合はやられるんですか。
  66. 溝口道郎

    政府委員(溝口道郎君) いま先生がおっしゃられましたように、今週の末、十八日と十九日に日本側と非公式な意見交換をするために、アメリカの特別通商代表部の法律顧問をやっておりますリバーズ、それから国務省の次官補代理等が参りまして、会談を行う予定になっております。
  67. 福間知之

    ○福間知之君 それに対して、日本側、わが方はいままでの輸入をめぐる一連の経過ですね、総理が三十億ドルと言ったとか、七億ドル減らすと言ったとか、いろんな経過がありますか、そういうものの一つの締めくくりとしてどういう態度で臨もうとされているのか、どういうコミットメントを今度与えようとしているんですか。
  68. 溝口道郎

    政府委員(溝口道郎君) 今回の会談は、非公式に、日米双方が当面するいろんな経済問題、世界経済あるいは景気の問題あるいは貿易の問題、そういう問題を——まあいままでも首脳会談ですとかOECDの閣僚会議ですとか、あるいは九月のいわゆる準閣僚会議等もございましたが、いろんな機会に意見交換しておりますが、その延長でございまして、双方で双方の当面するいろんな問題について意見交換するということになっておりまして、具体的にどういうようなことで日本側が臨むかという方針につきましては、目下、関係各省と協議中でございますが、先生の御指摘のように、当然、わが方としましては、ただいま総合経済対策に基づいていろいろ検討しております措置についても話か出される可能性があると存じます。
  69. 福間知之

    ○福間知之君 国内の需要が予想したほどのテンポなりあるいはまた水準で回復しないということで、国内的には、それはそれで大きな国民経済としての問題かあります。しかし、対外的には、それと一応別に、多額のドルを抱え込んでしまったという現状からかなり厳しい批判にさらされているということでございますので、これは政府だけの責任とは私は申しませんけれども、産業界などを含めて大変な事態にいま見舞われているんだということで、いままでとは全く発想を変えて、思い切って国内における産業構造を本当に真剣に改革をしていくというようなこととあわせて、貿易構造の転換というものを図っていかなければ、私は、来年度もまたドルがたまり過ぎる、さらにまた円の乱高下というような事態が出ないという保証はないですね、いまのような政府のなまりはんじゃくな姿勢をとっていくとするならば。それを憂えるわけでして、国内的に総合経済対策の成果を期待しても、国際的なそのような情勢との相殺で意味がなくなってしまう、こういう危険を感じておるわけでありまして、きょうは、それが本旨でありませんのでこの問題はこれでとどめますけれども外務大臣も、農産物等の海外への第三者を通じた援助というようなことについてもかつて考えられたようでございますしね、せっかくそういうアイデアを出されても、一つずつ実行をしていくことか大事でして、ぜひ真剣な、また積極的なひとつ対応を要望しておきたいと思うのです。  次に、国際関係の問題で一つ。  ILOからアメリカが脱退をしたという件について、これは質問通告しておりますんで、労働省の官房の方から御説明を願いたいと思いますか、いろいろな報道で、大体、脱退をしたその理由、背景というものがわからぬではないんですけれども、正確にわが国政府としての見解をお伺いしたいと思います。
  70. 石井甲二

    政府委員(石井甲二君) アメリカはかねてからILOが本来の理念から離脱をして特に政治化の傾向が強まっているということで強い不満を持っておったわけでございますが、一九七五年六月のILO総会におきましてPLOにオブザーバーの地位が認められたというようなことを契機にいたしまして、一九七五年十一月五日付で当時のキッシンジャー国務長官の書簡が出されまして、こういうことではアメリカとしてはILOを脱退するという旨の通告を行ったわけでございます。  で、アメリカがこのような通告を行った理由として挙げておりますのが四点ございまして、第一は、ILOが本来の立場として貫くべき三者構成主義、すなわち政労使各グループの独立性ということが侵害されているということが第一点でございます。第二点は、人権侵害問題の審査につきまして差別的取り扱いがなされている。いわゆるダブルスタンダードの問題でございます。第三が、適正な手続が無視された運営をされているということでございまして、特にイルラエルの非難決議との関連におきまして、これが意識をされたということであります。それから第四は、本来の目的を離脱して政治化の傾向か強まっておる。特にPLOにオブザーバーの地位が与えられたということに関連する面が強いわけでございます。この四点がアメリカがILOを脱退する旨の通告を出した理由でございます。  で、それ以後、この問題点につきまして、アメリカもそうでありますが、二年間にわたりまして、わが国あるいは西欧諸国の協力によりまして、この政治化傾向を是正する、あるいは人権問題に関するダブルスタンダード問題についてこれを是正する努力をいたしまして、特にダブルスタンダード問題について若干の改善を見たようでございますけれども、ことし行われました総会ではほとんど見るべき成果がなかったということが実際でありまして、そのことから十一月一日にカーター大統領の脱退の決意が表明されたというのかこれまでの経緯であるというふうに考えております。
  71. 福間知之

    ○福間知之君 条約の勧告適用に関していわゆるダブルスタンダードというふうな傾向が目立つということですが、わからぬでもないんですが、最初の大原則である政労使三者構成という国でない社会主義圏の諸国あるいはそれに似たような発展途上国などが該当すると思うんですね。で、いわばソ連を初めとする東欧諸国は戦後の発展途上国と同列視することは少し妥当じゃないと思うんですが、しかし、そういう一応名の通ったソ連初め東欧諸国はそのダブルスタンダードに該当するわけですか。
  72. 石井甲二

    政府委員(石井甲二君) いわゆるダブルスタンダードの問題につきましては、実際の運営上の問題といたしまして、特に人権侵害との関連におけるILOの審査の中でアメリカか意識をいたしましたのは、率直にいま先生か御指摘になりましたように、同じ問題につきまして西側に非常に厳しい、東側に対しては非常に甘いといいますか、そういう現実的な結果としてのあり方が、まあプリンシプルといいますか、事実が同じものに対する評価なり審査か非常に異なっているということでございまして、具体的にどこの国がどういう事態で、それがどういう評価であるかということについてはいろいろの見方があるというふうに考えます。
  73. 福間知之

    ○福間知之君 かつて国際情勢が冷戦時代と言われたときにも、ILOの中にやはりぎくしゃくした関係が自由主義諸国と社会主義圏の諸国との間に醸し出されたことがいま思い出されるんです。私も労働運動に携わっていた人間の一人として、今回のアメリカの脱退というのは非常に私は重大視すべきじゃないか、こういうふうな感じがしてならないわけであります。  財政的にも、四分の一を超えるような負担をアメリカかしておって、脱退したためにILOの財政は危殆に瀕する、職員の削減、活動費の削減ということに当然のこととしてならざるを得ないということは言うまでもありませんけれども、問題は、特にすべての面で、先ほど来の議論でも出ていますように、日米関係というものか大変緊密なものであるだけに、それはわが国労働運動の国際的舞台においても決して例外ではない、こういうふうに思うわけであります。そういう点でこれは軽視すべき問題ではない。  さりとて、なるべく早く復帰をしてもらうんだと言っても、じゃ具体的には関係諸国に対してどう働きかけるのか、しかも、それはすぐれて西欧諸国とかわが国とかがやはり担わなきゃならないような私は課題ではないかと、こういうふうに思っているんですが、労働省としては、脱退に至るいままでもすでに二年間の猶予期間かありましたし、その間に何をしたか、これからまた何を具体的にしようと考えておられるのか、お聞きをしたい。
  74. 石井甲二

    政府委員(石井甲二君) 先生御指摘のように、アメリカがILOを脱退するということは、ILOにおけるこれまでの歴史の中におけるアメリカの役割り、あるいは世界全体の中のアメリカの地位といいますか位置といいますか、から見て、非常に重大なことでございます。  で、これまでそれに対して日本がどういう対応をしてきたかということでございますが、この二年間の間に、まず、わが国は西欧諸国と協力をいたしまして、理事会等の場を通じましてILOの特に問題になっております政治化傾向の是正あるいは人権問題に関するダブルスタンダード問題等につきまして、積極的な働きかけを行ってきたわけでございます。しかし、結果的にはこういうことになりましたが、特にキッシンジャー書簡以来、本年のILO総会終了後にでございますが、まず七月の十二日に、石田労働大臣からマーシャル労働長官にあててILOにとどまるように強く要請をいたしたわけでございます。また十月十二日には、福田総理大臣からカーター大統領にあてて再度ILOへの残留を働きかけたということがこれまで行ってきたわが国のこの問題に対する対処でございました。  今後におきましてでございますが、少なくともアメリカはILOの創設に大きな役割りを果たしたことも歴史的な事実でございますし、また、ILOの政労使グループ内においても非常に大きな影響力を持っておるわけでありますので、特に労働条件の改善を初めとするILOの活動に大きな貢献をしてきたことも確かでございます。したがってアメリカ脱退後のILOに関しましては、今後、財政問題を含めましてどのような事態が起こるかということはいま現に総会において検討中でございますが、今後やはり適正なILOの活動を確保するということからしても、わが国としましては、事務局部に対しましてもその合理化を図るように期待をするような努力をいたしたいと思いますし、また、アメリカにおきましてもカーター大統領がILO脱退の声明を出したときの内容におきましても、もしILOが適切な原則と手続に立ち戻るならばいつでも復帰する用意があるということを述べていることでもございますので、わが国としては、ILOが本来の目的達成のために本来の形をとるように、西欧諸国と努力をしながら、ILOにアメリカが一日も早く再び入ることを期待しながら粘り強い努力をしてまいりたいということでございます。
  75. 福間知之

    ○福間知之君 官房長のおっしゃる気持ちはわかるんですが、また私も早く復帰されることが望ましいと思うんですが、カーター政権は人権尊重主義を旗印にもしている政権でございます。脱退に至るこの最近の最終的な経過の中では、どうもカーター大統領よりもILOを構成する他の二つの代表、まあ労使がかなり積極的であったと、こういうことか言われております。それはどの程度真実なのかはわからないにしても、ある程度推察がいくわけであります。  そこで、拠出金なんかにしてもアメリカは圧倒的に多額なものを拠出し、あるいはまたそれだけの経済力あるいは労働力、労働市場というようなものも大きいわけでございます。そういう人口なり経済力、負担金の多い少ないということにかかわりなく、ILOではそれぞれ一票の行使権しか持っていない。具体的には、そういうことが、結局、先ほど脱退の理由に出てきた政治化の偏向が顕著になったとか、あるいはまたダブルスタンダードなどが顕著になったとかいうことになってあらわれてきているわけですね。  だから、具体的な改善を日本なり西欧諸国が今後中心になってやっていかなきゃいかぬという場合に、それらの問題点についてアメリカ側ともちろん話し合わなきゃならぬことは言うまでもないんですけれども、国連そのものの機構なり運営なりのあり方にまで触れなければ、これは私は簡単にそうですが、政治化は改めます、ダブルスタンダードは少し留意していきましょうというふうな精神論では復帰はなかなかむずかしいのではないか。だとすれば、それは一年延び二年延び三年延びして、単にILOの舞台だけでなくて、いわゆる厳しい諸情勢の中での国連のあり方にまで影響が波及しないとも限らない。非常にそういう点で復帰がおくれるという私は大きな懸念を持っておるわけでありまして、だから具体的な一つの改善策というようなものについて、今後、特に西欧諸国あるいは当事国であるアメリカをも含めて、日本がやっぱり果たしていかなければならぬという役割りはあるんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  76. 石井甲二

    政府委員(石井甲二君) いま先生御指摘の問題はもう非常に重大な問題でございますが、ただ、ILOの機構あるいは組織あるいは手続のあり方というものは歴史的に非常に長い歴史を持った一つの経過がございます。したがいまして、現在、ILOの本部でも各国が集まりましていろいろな議論をしているところだろうと思いますが、現在は、アメリカが脱退したことによる財政的な問題、特に四分の一の財源を失うということに対する対応の問題が当面の問題のようでございますが、いま先生御指摘のような問題については、日本政府としては、少なくとも従来のILOの歴史を踏まえながら対応していかざるを得ないだろうというふうに考えております。
  77. 福間知之

    ○福間知之君 いまにわかに日本政府の具体的な取り組み方を聞いても少し無理があろうと思うんですが、さりとていまの官房長の御答弁では余り中身がないわけで、むしろいまのお話の中にありましたけれども、確かに財政的に問題が大きいということはそのとおりですけれども、したがってそれはそれなりに早く縮小、再出発という一応の体制を整えて、しかし、目はそういうところに向けるのではなくて、アメリカの復帰のためにやいのやいのILOを挙げてアメリカ側に対して要請をするなり、また、いままでの活動のあり方を振り返ってみて改めるべきは速やかに改めるというふうな姿勢をとることがやはりこの際は一番肝要じゃないかなと、こういうふうに思うんですよ。  財政問題その他よって生起するであろう運営上の困難については、それはそれなりに応急手当てをしていく以外にこれは手がないわけです。私は、その復帰がおくれればおくれるほど、ILOにとって、あるいは国連にとってきわめて重大な事態になるということが考えられますので、せっかくひとつこれは労働省が中心になって、また外務省などの協力も得ながら取り組んでいただきたい。かえってILOの標榜する理念、あるいはまた国際的な普遍的な効果的な活動というものが後退をしてしまうということ、それがここで一年、二年停滞する、あるいは後退するということは将来に向かって大きな後退につながる、こういうことを憂えまして、この問題については終わりたいと思います。  核兵器の不拡散条約に基づくわが国国際原子力機関との間の保障措置協定についてお伺いをしたいと思います。  この協定の具体的な質問に入る前に、若干重要だと思われる件についてお尋ねします。それは去る十月の三十一日からウィーンで開かれました核物質防護条約起草検討会議、これは国際原子力機関の主催でありますが、わが国の代表団としては、いままでになく外務省、科学技術庁、警察庁など、十名からの代表団がこれに参加した模様であります。  そこで、アメリカではすでにいわゆる過激派によるところの発電所などの核ジャック未遂事件が過去に十数件あったと、こういうふうに報じられているんですが、どういう具体的な事件が起こったんでしょうか。改めてこれは政府を通じて確認をしたいんです。
  78. 浜田栄次

    説明員(浜田栄次君) 警察庁の公害課長でございますが、ただいま先生御指摘の核ジャック未遂事件等の情報は、警察庁といたしましては、現在のところは入手はいたしてございません。
  79. 福間知之

    ○福間知之君 なぜ、それを入手されようとしないんですか。
  80. 浜田栄次

    説明員(浜田栄次君) これは外務省の方にもお願いはしてございますか、先般、科学技術庁でございます核防護専門部会の調査団の一員として私もアメリカの方に行って調査いたしましたが、その関係でアメリカ当局にもいろいろそういう事案につきまして伺いましたけれども、そういう事案の発生はないと、こういうような答えでございます。
  81. 福間知之

    ○福間知之君 アメリカ側の発表をそのまま信頼するわけにはまいりません。また、発生しておったとしても、アメリカ側がこの時期に日本側に詳細な内容を知らすとも単純には考えられません。したがって私は余りこれを深くこの時期に追求する気はありません。  しかし、いまあなたがおっしゃったように、仮にないとしても、わが国においてたとえば核燃料会社だとか、あるいはまた原子力発電所だとか、あるいは東海村の再処理工場とか、一応、核燃料を貯蔵したり使用したりしている施設があるわけでございまするので、そういうところで、今後、そういう事態が発生しないというふうに考えられますか、そう考えていいですか、そんな可能性はないんだと考えていいですか。
  82. 浜田栄次

    説明員(浜田栄次君) 核ジャックの問題につきましては、ただいま科学技術庁の中におきます核防護専門部会というのが昨年の四月に設置されまして、やはりわが国におきましても、そういったような状況が起こった場合に対処いたしまして、現在、いろいろと検討しておるわけでございます。で、私どもも、現在の情勢におきましてはそういった情報はございませんけれども、しかし、今後、そういうようなことが起こり得るということは当然考えて対処しなければいけないだろうと、このように理解いたしてございます。
  83. 福間知之

    ○福間知之君 核ジャックなどが起これば、これはハイジャックどころの騒ぎではないわけでして、万が一にもそういうことはあってはならないと国民全部が考えていると思うんです。しかし、これはわかりません。したがって、これからこの保障措置協定とも関連するんですけれども、具体的にいろんなケースを想定して、やはり防護対策についてこれは一〇〇%もう防ぐんだという立場で万全を期してもらわなきゃならぬ。そういう検討は具体的に進められているんですか。
  84. 栗原弘善

    説明員(栗原弘善君) 科学技術庁の方でございますが、いま先生のおっしゃられました核物質の防護につきましては、私ども非常に重要な問題であろうと思いまして、従来から検討を進め対策も図ってきたところでございます。  核物質の方でございますと、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」という法律がございますが、この法律に基づきまして、私どもといたしましては人の出入管理の徹底等、所要の規制を行ってきたところでございますが、先生御指摘のように、これからの原子力開発利用の進展とか、そのような状況によりまして、今後とも、わが国においては核物質の取り扱い量というのは増大すると思われます。それから、さらに国際原子力機関が、最近国際条約を検討したわけでございますが、その前に一九七二年から七五年にわたりまして核物質防護に関する勧告というのを出しております。これは世界的なそういうような要請にこたえて勧告をつくってきたわけでございますが、そのような勧告もございましたというふうに国際的にもこの問題は活発化しつつございますので、わが国といたしましては、先ほど警察庁の方からもお触れになられましたが、昨年の四月に原子力委員会におきまして核物質防護の専門部会というものを設置いたしました。この部会におきまして、わが国の国情に即した核物質防護のあり方というようなものにつきまして検討を進めていたわけでございますが、本年の九月でございますけれども、この専門部会におきまして第一の報告書というのを発表さしていただいたわけでございます。これを原子力委員会に報告いたしました。  これまでも、私どもといたしましては、先ほど先生おっしゃいましたように、原子力発電所とか、それから核物質を取り扱っている加工施設とか、いろんなところがございますが、そういう施設におきまして、たとえばその防護のための設備の点検とか整備とか、それから施設への人の出入りを管理することの強化とか、そういうことについて措置を講じてきていたわけでございますが、今後とも、報告書を踏まえまして、所要の体制整備を進めるということにつきまして、私どもだけではなく、関係省庁と御相談をとりつつ所要の体制を進めていきたいというふうに考えております。
  85. 福間知之

    ○福間知之君 仮定の問題ですけれども日本で核ジャックして日本政府一つの要求を犯人が出すという場合だけじゃなくて、外国で核ジャックして日本に要求する、この間のダッカでのハイジャックみたいなものやいろんなケースが考えられます。そういう点では、まさに一国だけではどうしようもない。犯人引き渡しその他の関係条約を各国と多国的に結ばなきゃならぬというふうなことになると思うんです。そういうことも十分考えていられますか。
  86. 栗原弘善

    説明員(栗原弘善君) その点につきましては、核物質防護というのは、先生御指摘のとおり、非常に国際的な関係と申しましょうか、そういうところが強い分野でございます。  で、その一つのあらわれと申しますのが、先生が一番初めに御指摘になりました、本年の十月三十一日からウィーンにおいて行われましたフィジカルプロテクションに関する国際条約でございますか、これの制定に関する政府間会議というものでございますが、これには私ども科学技術庁も参りましたが、政府といたしまして代表団を送りまして前向きの形で取り組みたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  87. 福間知之

    ○福間知之君 いま申された、私が先ほど申したウィーンの会議ですね、これに参加され審議に加わられて、どうですか、各国とも、かなりこの核ジャック問題については深刻に受けとめて対策に万全を期そうというふうな意気込みなり、具体的な提言なり、討議が行われたんですか、どういうふうに感じておられますか。
  88. 太田博

    説明員(太田博君) お答え申し上げます。  先般、ウィーンで行われました核ジャック防止のための国際条約の検討会議におきましては、ただいま先生御指摘のとおり、参加各国が非常に熱心でございまして、正直に申しますと、われわれが当初考えておりましたぺースよりも多少早く審議が進行したというのが実情でございます。  それでアメリカが具体的な一つの案を用意してまいりまして、それにつきまして各国がコメントをいたしまして、今回の審議に基づきまして、来年の四月にもう一度ウィーンでさらに具体的な条約審議を行うということになりまして、もしその来年の四月のウィーンにおきます審議で話がまとまりますと、来年の秋の国際原子力機関の総会におきましてこの条約が採択される、そういう可能性もあるわけでございまして、先生の御指摘のとおり、各国とも、この条約をできるだけ早く成立させるべきであると、そういう考えを強く持っていることが感じられました。
  89. 福間知之

    ○福間知之君 この間の会議は、参加国はどれくらいですか。
  90. 太田博

    説明員(太田博君) 三十数カ国でございます。
  91. 福間知之

    ○福間知之君 細かい内容はもうこの際お聞きする時間がありませんけれども、私はこれは大変重要な問題だと思うし、単に個人的じゃなくて、わが国としてやはり積極的に取り組んでいかなければならない。特にハイジャックでは悪名をとどろかしているわが国でございますので、しかも、国内の原子力開発問題をめぐりましても、その必要性が叫ばれながら必ずしもコンセンサスとしてすっきりしたものがないという現状で非常に不安でならないわけでありまして、取り越し苦労をするわけじゃないですけれども、やはり準備おさおさ怠りないということが何よりも大事でございますので、これは、今後、われわれ国会でも常に時期を見ながら議論の対象にしていくべきだろう、こういうふうに思っておりますので、特に科技庁の方ではますますひとつ積極的に取り組むことを要望しておきたいと思います。  次に、国際核燃料サイクル評価、INFCEの設立総会が先般十月の十九日から三日間ワシントンで開かれました。そこでカーター大統領が演説をしたわけですが、その中で核燃料安定供給のための国際核燃料銀行設立構想、あるいは使用済み核燃料の米国内一括貯蔵管理などの提案が行われたようですが、それらは一つのまだ試案ではありましょうけれども、このアメリカの提案については、わが国はもちろんですが、大方の国の一つの反応というものはいかがですか。
  92. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) ただいま言われました核燃料銀行という構想は、INFCEの設立総会でカーター大統領がみずから出席して披露したものでございますけれども、まだその具体的な事項が必ずしもはっきりしておらないということで、どういう形で具体的にどういうものをつくろうということをアメリカとして考えているのか、今後とも、われわれとしてはできるだけ聞き出してみたいと思っております。  それから、同時に、実は、あの会議が始まりました前日だったかと思いますけれども使用済み核燃料の貯蔵を外国分も含めてアメリカとして引き受ける用意があるという発表をいたしたわけでございます。これは十月の十八日でございました。これにつきましても詳しいことは、実は、まだ十分われわれにはわかっておりません。  今後、例の核燃料サイクル評価という作業が二年間続きまして、その過程でいろいろのテーマがいろんな角度から検討されることになっておりますけれども、いまの二つの構想も恐らく核燃料サイクル評価作業自体の中で吟味され、各国からいろいろ意見が出され、いろんな角度から検討されていって、次第次第に形が整っていくような方向にいくんではないか。要するに、今後、二年間続く核燃料サイクル評価の過程で次第に形づけられていくんではないかと、そういうふうに考えております。
  93. 福間知之

    ○福間知之君 日本政府は、いまのところ、おっしゃったように、具体的な中身というのはもうひとつ定かでもないから、これに対しての評価、見解というものは持てないということですか、日本政府として。
  94. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) やはり具体的にどういう形のものをどういうふうにつくろうかということがもう少しはっきりいたしませんと、われわれ日本政府としても、これに対してどういう評価を下すべきか、ちょっとまだいまの時点では時期尚早かと思っております。
  95. 福間知之

    ○福間知之君 四月にまた開かれるということではないのですね、この会議は。
  96. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) 四月にまた開かれるといいますのは、先ほど科学課長が御説明申し上げました核物質の盗難防護に関する国際条約をつくるためのIAEAにおける会議でございます。それがこの間第一回目が先週終わりまして、その二回目が来年の四月ごろに開かれるであろうということでございます。  一方、私が申しました国際核燃料サイクル評価は、もうすでに十月の十九日から二十一日までの三日間に設立総会が開かれて、それから八つの作業部会をつくりまして、今後、その作業部会が並行して二年間それぞれの与えられたテーマについて検討を行っていく。この作業はいまから約二年後に一応終わるということになっております。
  97. 福間知之

    ○福間知之君 ああそうですか。二年先には、総会がまた開かれるということになるのですか。
  98. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) 総会は、実は、一年に原則として一回ずつ開かれるということが了解されておりまして、最後の総会は、いまから約二年後に開こう、こういう考え方でございました。
  99. 福間知之

    ○福間知之君 そうしますと、先ほどのアメリカ大統領提案などをめぐって、日常的な意思疎通といいますか、そういうものが私は重要じゃないかと思うんですね。当然のこととして、これは多国間で行われると予想されるわけですけれども、特に日本とアメリカあるいはまたヨーロッパ、この三極の関係では大事だと思うわけですけれども、かなり活発に今後はこの問題についても立ち回られるお考えなんですか。
  100. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) 先ほど申しました国際核燃料サイクル評価の中で、八つの作業部会が設けられました。そのうちの第一作業部会は、実は、ほかならぬ核燃料及び重水の入手可能性、入手の可能性についての検討を主たるテーマといたしております。ですから、恐らくこの核燃料バンクという問題はそこの場でも出てまいりましょうし、それからもう一つ、第三作業部会におきましては、核の拡散防止を念頭に置きつつ、どうやってこういったものの長期的な供給保証を行うことができるかというテーマを取り上げることになっています。ですから、核燃料バンクという構想は、その第三作業部会で一番よく恐らく検討されることになろうかと思います。  なお、使用済み核燃料の貯蔵の問題につきましては、これは第六作業部会だったかと思いますけれども、まさに使用済み燃料の貯蔵ないし処分の問題が主たるテーマでございますし、第七作業部会では、廃棄物の管理ないし処分というテーマで、今後、作業を行っていくことになろうかと思います。  わが国といたしましては、こういった八つの作業部会のいずれにも積極的に参加して、みずからいろんなデータを提供したり、知恵を出したりするということで、積極的にこれに協力してまいりたい、かように考えております。
  101. 福間知之

    ○福間知之君 わかりました。  先ほど来、何度も御説明のある八つの作業部会の設置が決まったということは、だから、それぞれが適宜これから会合などを持っていく、日常的な作業としてやっていく、こういうことが考えられるわけで、特に第三部会は、いま御説明のように、再処理あるいは分離したプルトニウムのリサイクル問題等審議の場だと、こういうことでございますが、これは議長国になっているんですか、日本が。
  102. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) 実は、第四作業部会でございますけれども、第四作業部会は、使用済み燃料の再処理と、それで出てきたプルトニウムの取り扱いと、それからそのプルトニウムを今後さらに再利用することの問題についての部会でございます。第四部会です。で日本は、イギリスとともに、その第四作業部会の共同幹事国になったわけでございます。
  103. 福間知之

    ○福間知之君 これは大変重要な部会のように思いますし、また責任があるわけですが、ひとつ名誉ある議長国としてりっぱに重責を果たしていかなければならぬと思うんです。  それについて一般に会合か終わってから、やはり日本のこの核燃料サイクルに対する基本的な思想、考え方というものが必要だと、こういうふうにも評価されているわけでありまして、多分に、先ほど来のこのアメリカ提案一つとりましても、アメリカと日本だけの話し合いで事がまとまるわけでもありませんので、これは多国的な関係で調整を図らなけりゃならぬと思いますけれども、国内におけるいまの核燃料問題をめぐるこの重要な段階を考えれば、積極的に国際的な場で日本の国益を維持しながらも、またそれの実現を積極的に果たしていくという立場努力しながらも、国際的により大きな安全と保障というようなものが私は必要だと思います。国民もやはりこの核燃料問題は将来を考えた場合に日本だけでよりうまく対応できるとは思っていないと思うんですよ、事は非常に大きいと思うんですね。それだけにこういう会合が最近開かれたということについて非常にこれの意味は大きい、こういうふうに考えまするし、積極的な役割りを果たしていく中で日本の利益というようなものを将来にわたってひとつ守っていく、こういうことについて私どもも真剣な検討をいたさなきゃならぬかと、こう思っております。今後のひとつまた努力要請しておきたいと思います。  次に、今回のこの保障措置協定についてですけれどもユーラトム並み保障措置の確保ということが前提になっているんですけれども、主な内容というものを少し御説明を願いたいと思うんです。
  104. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) ユーラトム並みについての主な内容という御質問でございますか。
  105. 福間知之

    ○福間知之君 そうです。ユーラトム並みという内容です。
  106. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) これは具体的には御審議いただいています協定の付属の議定書に書いてございますけれども、一言で申し上げますと、いままでは日本は五つの国と二国間原子力協力協定を持っておりまして、それに基づきまして国際原子力機関査察を受けておりますけれども、これは全く国際原子力機関がみずから乗り込んできて、自由に報告を調べたり査察を行ったりするという先方を主体とした保障措置を受けているわけでございますけれども、今回、この協定を発効させますと、今度は日本自身の国内制度というのが中心になりまして、それがこうIAEAの側から立てられるようなかっこうになるわけでございます。もう少し具体的に申しますと、日本査察関係者が施設を査察しておりますそのそばに立ち会って横から見ているというようなこととか、つまり日本みずからの国内制度を尊重して、それとの重複を避けるようなことを主眼としているわけです。それがいわゆる調整制度と申しますか、ユーラトム諸国と国際原子力機関が結んでおります保障措置協定の特色でございます。その国内保障措置制度あるいは体制と国際原子力機関保障措置との重複を避けるための調整を、日本との協定においても、獲得できたという意味におきましてユーラトム並みの待遇をかち得たと、こういうことでございます。  さらに、実は、これはユーラトムと国際原子力機関との協定にはないもう一つ規定がございますが、それは議定書の第二条にございますいわゆる最恵国待遇規定がございます。これは実施面におきまして、もし国際原子力機関がユーラトム諸国に対する査察において、いままでよりもより有利な取り扱いを行うことになった場合には、日本としてもそれを要求できるという意味で、ユーラトムの国々が受けている待遇に均てんし得るという意味での最恵国待遇規定でございます。これはユーラトムと国際原子力機関との協定にはない規定でございます。
  107. 福間知之

    ○福間知之君 その最恵国待遇はいまのところわが国だけなんですか。それは先ほど戸叶委員の質問に対する答弁の中でも、アメリカが今後かなり厳しく出るんじゃないかと、こういうお話がありましたけれども、それとの関係はどうですか。
  108. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) その問題は、この保障措置協定自体の問題と申しますよりは、アメリカと日本あるいはアメリカとユーラトムとの原子力協力協定の問題でございまして、御承知のとおり、たとえば、日本がアメリカから輸入した濃縮ウランを原子炉で燃やしまして出てきた使用済み燃料を再処理いたします場合には、日米原子力協力協定に基づきまして、アメリカとの間で共同決定を行わなければならないという規定がございます。この規定はアメリカとユーラトムとの間の協定には実はない規定でございまして、その意味におきましては日本はユーラトム諸国に比べて不利な形に置かれておるわけですけれども、これも先ほど御説明申し上げましたとおり、目下、アメリカの議会で審議中の新しい核拡散防止法案が成立いたしますれば、その法案に基づきまして、アメリカとしては、ユーラトムとの協定を、その再処理面につきましては日本並みに引き締めるということをすら考えているように仄聞いたしております。
  109. 福間知之

    ○福間知之君 だとすると、そのアメリカの現在進行している厳しい一つの規制方針というものと直に今回のこのユーラトム並み最恵国待遇付与ということとは関係がない、こういうことですね。  ここに書いているように、保障措置の実際のオペレーションの段階で、わが国が不利な待遇を受けることのないよう最恵国待遇条項は確保されたと、こういうように理解できるんですけれども、実際のオペレーションの段階でということですから、具体的にはいまアメリカと日本とが結んでいる協定とは少しずれがあるわけですね。
  110. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) 先ほど御説明申しましたユーラトム並みということは、これはいま御審議いただいています国際原子力機関との保障措置協定で言いますいわば狭義の保障措置についての話でございます。要するに、日本なら日本の各原子力発電所あるいは研究所あるいは再処理工場等々で取り扱われている核物資が軍事用に転用されることのないように常にチェックしているという意味での狭義の保障措置についての話でございます。  ところが、再処理についての共同決定でありますとか、あるいはある国から輸入した核燃料物質をその国がまた第三国に移転する場合の事前同意権でありますとか、あるいは濃縮ウランを輸入した国がその濃縮ウランをさらに高度に濃縮する場合の事前同意権というのがございますけれども、これはいまの協定の対象になっている保障措置よりはもう少し広い、いわば広義の保障措置の範疇に入ることだろうと思います。ですから、それはいずれも現在の国際原子力協力体制では、二国間協定における規制の対象に大体されている、こういうことでございます。
  111. 福間知之

    ○福間知之君 まあ大体わかりました。より広義なというか、より基本的な問題ということですね、アメリカと日本との関係での規制というのは。  それはせっかくこういうふうに不拡散条約NPTに基づくいろんな協定が展開をしていく中で、いまおっしゃったように、より広義な基本的な問題は二国間協定だということについては何か少し不自然さを感ずるんですが、将来の見通しとして、また、わが国としてはそれでいいと、こう考えておられるんですか。
  112. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) これはいろいろ考え方があろうかとは思いますけれども、たとえばこれは全く仮定の問題で、一つの私の個人的な考え方にすぎませんけれども、こういったようないわば広義の方の保障措置に入る問題ですね、たとえば再処理についての事前同意権、あるいは二〇%以上に濃縮する場合の濃縮に対する同意権、あるいは第三国に対する移転の際の事前同意権、こういったような問題も二国間取り決め、二国間協定の対象ということに任せることではなくて、何か国際的な、たとえば国際原子力機関のようなところが統一的に見るというようなことは考え方としては確かにあり得るかと思います。ただ、現在の形、現在の各国間の二国間協定では、それぞれその協定の対象になっている。  これから始まります二年間の国際核燃料サイクル評価は、原子力の平和利用の推進という命題と、それからそれに伴う核の拡散をいかに防止すべきであるかという問題の二つの表面上一見矛盾するような命題をまさにいろんな角度から検討して調和させようということを主たる任務にしているとさえ考えていいんではないかと思います。その二年間のINFCEの過程を通じて、そういった問題についても恐らく意見が出てまいりましょうし、国際的な協力を通じてこういう方法が今後一番いいんだということになれば、INFCEの期間の終了後に、まさにそういう形に制度を改めていこうじゃないかということになり得るかと思います。なるかどうかわかりませんけれども、その可能性はあるかと思います。
  113. 福間知之

    ○福間知之君 いま御説明のあったことは非常に重要だと思いますね。その間、やっぱり、何といいますか、その二つの命題に向かって、統一性といいますか、整合性のあるような措置内容というようなものを各レベルでやっていくことがしたがって重要である。それが支障なく進んでいけば、最終的に、国際的な原子力機関というふうなものかより広義な基本的な課題までも含めて、細部の措置を統一的に多国間なべてやっていくというふうな姿が生まれることが私は一つの理想だと思うわけですよ。それは未知数なものですから、いまの段階ではこれ以上議論をする必要はないと思いますけれども、そんな感じがいたします。  次に、自主査察で不十分とIAEA側が判断した場合、さらに厳密な立ち入り査察が行われることになるんだと思いますね。その場合、産業機密の保持というものについての保障、これは大丈夫なんですかな。
  114. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) 多少細かくなりますけれども、まず第一点として、いま御審議いただいている協定の第八条に、国際原子力機関が提出を要求できる情報資料は、必要最小限度のものでなければならないという規定一つございます。  それから、同じく第八条で、わが国が特に機微であると認めたような施設の設計情報の審査は、わが国にある建物の中で行うんだ、国際原子力機関からこちらへ来まして、日本のその施設の建物の中で調べてもらうことにしなきゃいけないのだ、そういう規定もございます。  それから、第四十六条には、締約国、日本なら日本国際原子力機関要請いたしますれば、商業上機微な情報を含む工程につきましては、特別の物質収支区域、これは俗に言うブラックボックスに当たるものでございますけれども、そういうものを設定して取り扱うことができるという規定がございます。  さらに、第七十六条におきましては、査察における立ち入りにつきましては、枢要な個所等、あらかじめ合意された個所、日本政府国際原子力機関との間で事前にここなら入ってよろしいということで合意した個所についてのみ立ち入りを許すこともできるというような規定がございます。  以上のように、国際原子力機関に提供いたします情報、それから原子力機関の査察員の立ち入り場所等についてはいろいろな制限が付せられておりますし、さらに、国際原子力機関自体の憲章を見ますと、その第七条に、査察に当たる職員は「機関に対する自己の公的任務により知るに至った産業上の秘密又は他の機密の情報をもらしてはならない。」という、いわゆる守秘義務規定が厳然として入っております。したがいまして、こういったいろいろの面での機密保持の規定かございますので、わが国の産業秘密はまず十分保護されるんではないかと、かように考えております。
  115. 福間知之

    ○福間知之君 いまの御説明の中で、七十六条ですか、日本国政府との合意によって云々という説明がありましたけれども、立ち入り場所に関する制限に関して、七十七条ですか。七十六条にないですがね。
  116. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) 七十六条の(C)項でございます。それを読みますと、「機関の査察員は、第七十二条の目的のため、補助取極に規定する枢要な箇所及び第五十一条から第五十八条までの規定に従って保持される記録に限って近づくことができる。」と、こういう規定があります。
  117. 福間知之

    ○福間知之君 報告書の提出義務の中で、大量の核物質の損失がある異常事態の場合に、特別報告を提出するということになっているようですが、大量の損失とは具体的にはどの程度の数値なのか、また、その判断はどこが認定をすることになるんですか。
  118. 栗原弘善

    説明員(栗原弘善君) お答えいたします。  大量の損失でございますが、これにつきましては、日本国政府とそれから国際原子力機関との事前の合意に基づいてどの程度かということを定めることになっております。補助取り決めにおいて行われることになっております。  それから、どのぐらいかということでございますが、これにつきましては、各施設、たとえば原子力施設の形によって違ってまいるわけでございまして、一般的にはちょっとなかなかむずかしいと思いますが、ウランとプルトニウムでも違ってまいると思います。かなりの量であるということでございますが……。
  119. 福間知之

    ○福間知之君 かなりの量であるということでは、これは何にもならぬのでございますが、一応、科技庁としてのお考えはどうなんですか。
  120. 栗原弘善

    説明員(栗原弘善君) これは補助取り決めと申しますのが、協定によりまして、協定が発効してから九十日以内に日本国政府とそれから国際原子力機関の間で取り決めるべく最大限の努力をするということでございますので、正式には、今後、決めることになると思いますが、たとえば、これはここに書いてございます六十八条の特別報告でございますが、ちょっとお読みさしていただきますと、「異常な出来事又は状況が生じた結果、このような場合のために補助取極に規定する限度を超える核物質の損失があり又はあり得たと日本国政府が認める場合」という、この「限度」でございますが、これにつきましては、大体、ウランの場合につきましてはたとえばキログラム単位とか、それから数百グラム単位とか、そのぐらいであろうと思っております。プルトニウムの場合につきましては、御承知のとおり、プルトニウムの影響というのはかなりウランに比べて相当多うございますので、それよりも一けたぐらい下がるんではないかというふうに予想されております。
  121. 福間知之

    ○福間知之君 まだ余り本格的に作業をやっているとも思えませんので、さしあたってはさして問題がないかもしれませんけれども、将来、ここらあたりはやっぱり国際的な紛争の種にならぬようにしていかにゃならぬかなと、こう思っておるわけであります。  それから、先ほどの産業機密漏洩の問題にちょっと返りますけれども、今日までにユーラトムとIAEAとの間でこの産業機密問題の漏洩というふうなことをめぐってのトラブルなどはないんですか、あるいはありましたですか。
  122. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) そういう例は、いままでに発生したというようなことは私ども聞いておりません。
  123. 福間知之

    ○福間知之君 これはわれわれ具体的な手だてがないですからわかりませんけれども、先ほども申しましたように、まず、この保障措置協定の条文では心配がない、こういうふうに考えていいということですね。  原子力産業開発整備に関して、わが国の財政措置——それはまあわれわれ国会にも責任かあるんですけれども——と、特に先進諸国と言われてきた国の財政上の措置について、そのウエートがちょっと日本は高いとか低いとかいうふうなことがあろうと思うんですけれども、概略的にどうなんですか、原子力産業開発整備に関する財政措置というようなものについては、特にこれは科技庁あたりは担当部門として感想があろうと思うんですけれども、どうですか。
  124. 川崎雅弘

    説明員(川崎雅弘君) あいにく細かいデータを本日手持ちを持っておりませんので、概略、お答えさせていただきたいと思います。  原子力産業の分野といっても、現実にはかなり広い分野でございます。若干国情によっても違いもあろうかと存じます。まず、大ざっぱに申し上げまして、原子力発電につきましては、これは諸外国、特にアメリカと日本は民間の電力会社によって運営をされているという点で、財政的な支出というのは原子力発電所の安全研究にかかわる分野と、安全基準を整備するための所要な経費というのを財政的に支出してございます。一方、フランス、イギリス等は電力そのものが国営でございます。したがいまして原子力発電所の建設工事費一切がそういう意味では国費で行われるというふうに言えるかと存じます。  それから第二の分野は、大きい分野でございますが、核燃料サイクルの分野でございます。これはウラン採鉱という段階におきましては、ほとんどの国が民間の企業に依存をしております。特に産出国でありますカナダあるいはオーストラリア等、いずれも民間産業によって行われております。しかしながら、ウランの探鉱、鉱石を探すという行為につきましては、わが国を初めといたしまして、各国政府の財政支出によって探鉱を促進いたしております。ちなみに、わが国の場合には、動力炉・核燃料開発事業団をしましてこういう海外における探鉱あるいは国内における探鉱活動を行わしておりまして、年度におきますこれらの補助金並びにみずからの経費は五十二年度でおよそ百億弱でございまして、これについてその他の諸国と比べますと、大体、比率としましては、わが国を一といたしますとドイツあたりは二というぐらいの比率になろうかと、かように考えます。  それから濃縮につきましては、現在、先進国の中でも、アメリカのみか国営のERDAの——現在エネルギー省へ移りましたが——施設において濃縮サービスを行っておりまして、これはサービス料金を取っております。したがいまして、どこまでが国費でという計算はいささかむずかしゅうございますが、研究開発の段階にございます英、独、それにオランダという三カ国のグループ、それに日本等におきましては、財政的には全額政府のお金でこれらの濃縮のための技術開発を現在行っております。これは五十二年度におきましては、わが動力炉・核燃料開発事業団におきましてウラン濃縮についての遠心分離機の製作を含めますシステムの完成ということで数十億を計上してございます。で、やや開発の度合いに相違がございますので、年度間で英、独、蘭及び日本との比較というのは困難でございますが、ほぼこれは相似たレベルにあると、要するに政府まる抱えでやっておるというふうに考えます。  三番目の分野でございますが、これは特に軽水炉に続きます炉型として考えられておりますいわゆる高速増殖炉でございます。これにつきましてはその開発のあり方がかなり国によって異なっております。特に高速増殖炉は、現在、実験炉がわが国では動いておりますし、アメリカあるいはドイツ等においても実験炉が動いておりますが、これに続きまして、商業化の可能性を探るための原型炉という約三十万キロワット程度の規模の炉をつくるわけでございますが、この研究開発費を官民でどのように負担するかということにつきまして、実は、国内でまだ最終的な結論を得ておりません。しかしながら、米国あるいはドイツ、フランス等におきましては約八割が政府の支出によって行われる、残り二割は民間が負担をする。大体三十万キロワットの高速増殖炉の開発費の規模は四千億程度ということで、各国ほぼ相似た数字でございますので、わが国の場合には、現在、大蔵省、それに関係いたします業界と鋭意原型炉建設のための経費の負担割合について協議を進めておるという、かような状況でございます。
  125. 福間知之

    ○福間知之君 時間が参りましたのでこれで終わりますが、いまのお話で今年度は百億円であったと、来年度は、科技庁はどれくらい要望されているのかをお聞きして、終わりたいと思います。
  126. 川崎雅弘

    説明員(川崎雅弘君) 大体、ウラン濃縮の分野におきまして、四十億円程度を予算原案として現在大蔵省に提出中でございます。それから、ウラん探鉱という面につきましては約百億円程度を同様計上いたしております。さらに、再処理につきましても百数十億円の予算を原案の中で現在大蔵に対して要求中でございます。  なお、FBR、ATRについては、特に高速増殖炉につきましては、現在のところ、まだ基本的な設計段階でございますので、これについては全額国で見るということで、現段階ではまだ官民の比率を決めないままに予算を計上しておりまして、その金が、大体、いま私はその数字を……
  127. 福間知之

    ○福間知之君 トータル。
  128. 川崎雅弘

    説明員(川崎雅弘君) おおよそトータルいたしますと、原子力関係の財政支出は、来年度、一千四百億円弱を大蔵に対して要求をしているという状況でございます。
  129. 福間知之

    ○福間知之君 少なくはありませんね、終わります。
  130. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 午前の質疑はこの程度とし 午後二時三十分まで休憩いたします。     午後一時三十四分休憩      —————・—————     午後二時三十五分開会
  131. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  午前中に引き続き、核兵器の不拡散に関する条約第三条1及び4の規定実施に関する日本国政府国際原子力機関との間の協定締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  132. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 午後の質疑の時間、外務大臣はおりませんけれども、私は質疑をいたしますから、ひとつこの審議の状況を政務次官初め外務省関係の諸官はひとつ的確に外務大臣にお伝え願いたい、最初にそのことをお願いておきます。  最初に、ソ連の最高会議幹部会議長のブレジネフ氏が今月の十一月二日、クレムリン大会宮殿で開かれたロシア革命の六十周年記念祝賀会でもつて基調演説をやったわけですね。その中で、すべての国の核兵器の生産を同時に停止しろということ、それから一定期間核兵器の実験を禁止するとともに、平和利用目的の核爆発も停止するというような核軍縮の新しい提案をしているわけでございます。日本新聞にも大きく報道されておりますが、このブレジネフ提案というものを日本政府としてはどういうふうに受けとめているのか、まず、その点をお伺いしたいと思います。
  133. 奥田敬和

    政府委員(奥田敬和君) ただいま先生のお話のように、十一月二日、モスクワでブレジネフ提案が行われたわけでございます。その骨子は、いまほど先生がお話しなさいましたとおり、すべての核兵器生産の停止及び一定期間平和目的の核爆発も含めて核兵器実験禁止等が主要な骨子であるように承っております。  しかし、私どもといたしましては、ソ連は、従来、平和目的の核爆発は禁止対象より除外するということを主張してまいりました。アメリカやわが国立場は、平和目的といえども核爆発に関してはそういった装置そのものは区別できないので禁止すべしという立場をとっておったわけでございますけれども、ソ連側は平和利用目的の爆発は除外しろというのが従来の主張でございました。  それといま一つ、この核分裂性物質と申しますか、プルトニウムの生産停止について、従来、ソ連は生産停止の確認のための現地査察というものを拒否する態度をとってまいりました。このことは米国提案の現地査察という形を拒否してきた経緯があるわけでございます。  これらの点を踏まえると、今回のブレジネフ提案の内容はまさに画期的な内容を含んでおる、したがって私たちとしては、これらの点も踏まえまして、わが国の従来からの核兵器全廃を呼びかける国是というか基本姿勢というものは今回の提案と全く合致するものであります。そういったことから、今回のブレジネフ提案がこれらのわが方が従来提案し主張してきたことと軌を一にするというものであるとすれば、大いに評価をしたい。しかし、いま申し上げましたように、従来のソ連側の主張する経緯もこれあることでもあり、その点、ブレジネフ提案の内容については、今後、詳細に分析、検討をした上で政府態度を決めたい。大筋においては大いに評価するということでございます。
  134. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 そうしますと、大筋においては評価するけれども、ソ連がいままでとってきた姿勢と大分違うことを打ち出してきたわけですね。だから、それを十分検討してからいろいろと日本としての対応の仕方を考えるということであって、この提案あるいは演説そのものに対しては、まだ外務省日本政府としては直ちにそれにどういう対応をしたかということはないわけでございますね。
  135. 奥田敬和

    政府委員(奥田敬和君) そのとおりでございます。  それで、ただ参考意見として、現在、米英ソの三国間で核実験の全面禁止交渉が行われておるわけでありますけれども、これらの軍縮委員会において具体的なそれらのブレジネフ提案がどういう形でこれらの交渉の中で反映されていくかということも注意深く見守っていこうというのがわが方の態度でございます。そしてなおブレジネフ提案に対する政府の最終的な評価というものは、そういった推移を待った上で、私たちはそういった基本的なブレジネフ提案に対する姿勢というものをはっきりさせたいと思っております。
  136. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 最終的な評価は十分検討した上ということでございますが、確かにソ連のいままでの姿勢とはずいぶん変わった。しかし、これはこのとおり実行されれば非常にいいことだと思うんですよね。そういうことを提案したわけでございますから、私は、やっぱりこの機会をとらえるべきじゃないかと思うんです。  アメリカでは、すぐバンス国務長官が、ブレジネフ演説のあった五時間後に、そのブレジネフ提案を歓迎するところの国務長官表明を行っているわけですね。それは新聞にも報道されておりますが、さらにアメリカのカーター大統領は、ブレジネフ議長に、アメリカの駐ソ大使を通じて、これをもう非常に積極的に進めるべきであるというような趣旨の書簡を送っているということも、日本新聞で報道されているわけです。  私は、日本がいわゆる原爆のただ一つの被爆国である、そして非核三原則を堅持している、そういう特に原爆あるいは核軍縮というものについては特殊な地位にもあると思うんですね。したがって、アメリカでさえ、十分検討して評価するとか何とかいうんじゃなくて、一応すぐこれに対応しているわけです。私は、やっぱりこういうようなことを、とにかく非常にいいことだから、特に日本としては、こういう立場からぜひそれを進めてほしいというようなことをぱっと対応するような姿勢が欲しいなあという気がするんですけれどもね。どうも日本のこの外交といいますか、まあ慎重を期しているのかもしれませんけれども、何かぱっとする対応の仕方が遅いんじゃないかという気がしますが、この辺についていかがでしょうか。
  137. 奥田敬和

    政府委員(奥田敬和君) 先生の御趣旨を踏まえて、早急にわが方としてのブレジネフ提案に対する姿勢というものを表明する、こういった形で努力をいたします。ただ、演説そのものは膨大な量でございますし、そしてこの軍縮関係部分の翻訳のその部分だけをいま当方は入手して分析をしているという状態でございますけれども、そういったことも踏まえ慎重を期しているというのが実情でございます。  先生の、しかし対応策が遅い、こういったいいことに関しては積極的にアメリカがやったように日本側も即行的にこたえろという点は、私も、まさに同感でございます。ただ、わが方としては、いわば従来の主張と全く変わった形の本当に画期的な内容を含んでおるものでございますから、慎重を期しておるという形が先生のまた御批判にもつながるわけでございますけれども、私たちとしては、こういった提案内容の評価すべき点は早い形で政府側としてはそういった結論、姿勢を出したいということでございます。
  138. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 これはいま御提案になっているNPT条約にも関連するわけですが、カーター大統領はプルトニウムの拡散を憂えるというたてまえから、核燃料の輸入国に非常に厳しい態度——日本に対してもそうですね、態度でもって臨んでいるわけですが、そうであるなら、やっぱりアメリカ、またソ連も当然ですが、みずからもっともっと核軍縮について、そんなかけ声だけじゃなくて真剣な努力をしなくちゃいけないんじゃないか、そういう点を、私は、さっき申し上げたようなただ一つの原爆被爆国としての日本の特殊な立場というものを踏まえて、世界に向かって、日本が、米ソを初め核保有国に対して一体何をしているんだというようなことでどんどん突っ込んでいくような、そういうもっと積極的な態度をとっていくべきだろうと思いますが、この点について皆さん方も当然そういうふうにお考えだろうと思いますが、ひとつもう一回お答えを願いたいと思います。
  139. 奥田敬和

    政府委員(奥田敬和君) 確かに米ソというような核に関する超大国、こういった国に関して、どこの国よりも非核三原則を国是としているわが国が先頭に立って強く核実験、核兵器全廃、こういった主張を積極的に行えという先生の御趣旨に対しては、まことにそのとおりであると思いますし、外務省としても、そういった原則をわが国原子力政策に関する国是としてあらゆる場において主張し、米ソ両大国に関しては特にこういった点について強く迫っていくという基本的な姿勢において今後とも外交展開を進めていきたい、このように考えます。
  140. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) ただいま政務次官から申し上げましたとおりでございますが、一番最近の例といたしまして、目下、ニューヨークで開会中の国連総会の第一委員会で軍縮関係の討議が十月の終わりごろから行われております。その席で、わが代表は十月の二十七日に演説をいたしまして、その中から引用いたしますけれども、「わが国としては、米・ソ両国の首脳がその特別の責任を想起して、SALTIIを早期に妥結せしめ、更に核兵器の実質的削減のための具体的ステップの開始に努力するよう強く要請したい。」と、一番最近の例としてはこういうことを申しております。従来も、たびたびこういったような発言をいたしております。補足させていただきます。
  141. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 国連の総会で演説することも結構ですけれども、こういうブレジネフがとにかくいままでのソ連の姿勢から見ると思い切った提案をしたんだから、その提案の何といいますかね、それをいい意味で言葉じりをつかまえるといいますかね、それをぱっとつかんで、そして世界に向かって働きかけるというような態度が私は大事じゃないかなと思いますので、ひとつぜひまたそういう方面で今後の措置を遺憾なきようにしていただきたいと思います。  次に、原子力発電の問題についてお伺いしたいと思いますけれども日本の国が安定成長を続けるという上から見ましても、あるいはまたいま問題になっておりまする雇用問題ということからいたしましても、エネルギーの確保ということは、これはどうしても日本の将来にとって一番大事な問題になると思うわけですが、そういうような意味合いにおいてこれからのエネルギーの需給の見通し、まあいろいろ書かれておりますけれども、かいつまんで簡単にひとつお答えいただきたいと思います。
  142. 武田康

    政府委員(武田康君) 先生のお話のとおり、これからの日本経済あるいは国民生活を考えまして年率六%前後程度の安定成長を今後十年、十五年続けていくということが雇用の面でも、その他の面でもきわめて必要だというようなことでございます。  そういう前提に立ちまして、実はエネルギーの関係でいろいろ勉強していただいている審議会がございまして、これは総合エネルギー調査会でございますけれども、そこでことしの初め以来、いろいろこれから将来十年、十五年先のエネルギーの見通しがどうなるか、それに対してどんな政策を立てたらいいかということを調べていただいている段階でございまして、この八月に中間的な報告が出て、来年までかけまして最終のまとめをしていただくということでございます。  その中間的な報告によりますと、これは昭和六十年度及び六十五年度を目標といたします暫定的なエネルギー見通し——暫定見通しと言っておりますけれども、先ほどのような経済成長の達成がぜひとも必要であるという前提のもとで、昭和六十年度には、従来のような進め方あるいはエネルギーの需要の伸びを前提といたしまして、大体、現在の八割増しの七億四千万キロリッター、油に換算してでございますが、そのぐらいのものが必要であり、昭和六十五年度には九億をちょっと超す九億二千万キロリッター相当ぐらいが必要であるということでございます。  で、油の供給増加によりましてそれを賄っていけるかどうかというのにつきましては、いろんな見方がございますが、多数の専門家の方々は、これから十年、十五年というような時点を考えますと油の増産余力がなくなってしまうんではないだろうか、その時期を越えますとむしろ世界的な意味で油の供給か逓減——山を越えて下がってしまうおそれがある。そういった実態を考えますと、最大限に油にかわるべきエネルギーの開発をする。同時に、全需要を賄うことがなかなかむずかしいものでございますから、省エネルギー努力を、これは産業面も民生面もでございますが、最大限一生懸命やる。かたがた、そういたしましてもやはり油に相当部分を頼りますので、油の取得と確保というものも一生懸命やる。  こういうようなことで見通しを立てたものでございますが、その数字の要約を申し上げますと、昭和六十年度につきましては、先ほど総需要が七億四千万キロリッター相当と申し上げましたが、そのうちの一割ちょっとをエネルギーの効率的な利用あるいは節約ということでカバーいたしまして、現実の需給バランスに出てくる需要の総額を約六億六千万キロリッターに抑える。それから、たとえば原子力を、なかなか立地難等もございますけれども、その時点までに総設備出力が三千三百万キロワット、現在八百万キロワットでございますから、これから二千五百万キロワット新たな設備を完成させなければいけないわけでございますが、そういう努力をする。そのほかにLNGの輸入あるいは石炭も一般炭の輸入を考え、国内のものも小さなものも全部積み上げるということをいたしまして、輸入の石油以外のもので約二億三千万キロリッター相当のものを賄う。残りが石油輸入になりますが、これが差し引き算をいたしまして四億三千万キロリッター相当が必要である。で四億三千万キロリッター程度までであれば、世界のいろんなバランス、あるいはOECDなりIEAでいろいろ将来に向かいましての世界のバランスあるいは需要というようなものを想定したり、あるいは専門家がいろいろ見ておりますけれども努力すれば可能な範囲内であるというようなのが昭和六十年度の努力目標の見通しでございます。これを対策促進計数と言っているわけでございます。  で、あともしいままでやってきたようなことを続ければどうなるかというのもございまして、その場合には、先ほど油の量が四億三千万キロリッターと申し上げましたが、その努力の程度が従来程度であれば五億キロリッターぐらいの油を輸入しなければいけない。これは実行上、現実問題としてその達成がきわめて困難で、結果としては供給がショートするかもしれない。したがいまして官民の総力を挙げて、先ほど申し上げました省エネルギーあるいは原子力開発そのほかのものにも取り組みまして、先ほど申し上げましたような六十年度の対策促進計数を達成するように努力したい、あるいは努力すべきである。その裏づけになりますお金であるとか、あるいは国民的なパブリックアクセプタンスであるとか、そういうものを達成すべく、さらに具体的な対策を詰めていこうというようなのが暫定見通しでございます。  なお、十五年先、昭和六十五年度についても同様な数値を描いておりまして、原子力だけについて申し上げますと、昭和六十五年度の達成目標値は、設備の容量にいたしまして六千万キロワットということでございます。
  143. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 そうしますと、原子力発電ということもどうしても欠かせないことになると思いますが、しかも昭和六十年度で現在の四倍強を原子力発電は目標にしているというふうにいま承ったと思いますけれども、その場合、原子力発電をそのように大幅に積極的に進めていく上で、燃料である天然ウランまたは濃縮ウラン、これが一体確保できるかどうか、その見通しについてはどうですか。
  144. 武田康

    政府委員(武田康君) 先ほど、現在八百万キロワットで目標が三千三百万キロワットと申し上げました。四倍でございますが、現在動いているのが八百万キロワットでございまして、そのほか建設中のものあるいはまさに着工準備をしているものを含めますと二千二百万キロワットでございまして、残りの千百万キロワットをこれから手をつけて、それで六十年度までに完成しなければいけないということでございます。しかし、その千百万キロワットを達成するのがなかなか大変な努力が要るということでございます。  それで、いま御指摘の燃料の点でございますが、まず原子力発電の燃料は、天然ウランを取得いたしまして、それを転換して濃縮工場に送り濃縮をして、さらに燃料体に加工するわけでございますが、天然ウランにつきましては主としてカナダ等々ウラン産出国との長期契約を電力会社が締結しておりまして、現在手配をしている量は一九九〇年ごろまではマクロにはそのぐらいまでを大体賄える程度の量でございます。もちろん、それが一〇〇%必要な時期に入ってくるという前提が入っておりますが、契約としては一応そういう量を手配しております。それから濃縮につきましては、これは主としてアメリカの研究開発——いまエネルギー省の方に統合されることになっておりますが、の工場との間に濃縮の契約を締結しておりまして、これは大体原子力発電の出力にいたしまして約五千万キロワット相当のものでございます。そのほかにフランス等との契約もございます。したがいまして数合わせといたしましては、昭和六十年度三千三百万、あるいは昭和六十五年度六千万キロワットの原子力開発に必要な部分は、マクロ的な数合わせとしては確保されているということでございます。もちろん、現実には、これから十年、十五年先までをカバーすることでございますので、いろんな状況の変化もございましょうし、また日本の国内の原子力発電を持っております電気事業者個々にばらし、それから年度ごとにばらしました場合には、マクロにはいいと言いながら、個別にはいろいろ調整しやりくりしなければいけない部分は中にあるわけでございます。その辺を消去いたしまして、大ざっぱに言えば、いま申し上げたように一応の手配はこれから十年、十五年の間できていると言ってよかろうかと思うわけでございます。
  145. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 この間、九日の日でしたですかね、ソ連の原子力利用国家委員会のペトロシャンツという議長か参りまして、私も、実は、その晩、歓迎のレセプションにちょっと出たんですけれども、ペトロシャンツ議長が科学技術庁の長官にソ連の濃縮ウランを日本が購入したらどうかというようなことを促したという報道を新聞で見たのでございますが、これにつきましては政府はどういうふうに考えているんですか。
  146. 川崎雅弘

    説明員(川崎雅弘君) ただいま先生の方から御指摘がございましたとおり、去る十日に、ソビエト連邦原子力利用国家委員会議長であるペトロシャンツ氏が宇野科学技術庁長官を約三十分程度表敬訪問をいたしました。そのときの話題といたしましては、ちょうど今回のペトロシャンツの訪日において予定されております産業界同士での、日本原子力産業会議と先方原子力利用委員会でございますが、この産業レベルでの協力協定調印についての話が主でございましたし、さらに、昭和四十八年に、わが国政府とソビエト国家科学技術委員会との間に締結をいたしております科学技術協力協定に関する話題が主に終始いたしたわけでございます。  一部に報道があったわけでございますが、正確に申し上げますと、その政府間の科学技術協力協定を今後どのようにして具体的に進めていこうかというような話題が出ました際に、たとえばこういう協力関係が深化することによって、ソビエトとしては、濃縮役務というものを日本に供給するというような事態も考えられるというようなことをペトロシャンツ議長の方から申されたわけでございます。  本件につきまして、私どもといたしましては、すでにソビエトとの間でウラン濃縮の役務契約をやっております諸外国の事情等を調査いたしまして、供給の安定性とかその他の面での検討を要することだとは存じますけれども一つには、わが国におけるウラン濃縮についての需給状況、それからもう一つは、こういう濃縮役務というものの供給の安定化という見地からは多角化ということがやはり一つの方策ではあろうと、そういうような点を勘案いたしまして、今後、関係いたします通産省、外務省等と検討をしてまいりたい、現時点では、このように考えております。  なお、したがいまして、ペトロシャンツ議長の方からは、政府に対しての正式な提案というふうに受け取るには、余りにも軽い話しぶりであったというふうに思っております。
  147. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 わかりました。  それはそれで結構ですが、それに関連して、カナダの対日ウランの供給停止問題についてちょっと御質問したいと思いますが、ことしの初めごろからカナダは対日ウラン供給を停止していると言われておりますが、その理由はどういうところにあるんでしょうか。
  148. 奥田敬和

    政府委員(奥田敬和君) カナダが対日ウラン供給を停止した直接原因は、先生御存じのとおり、インドか一九七四年の五月に核爆発実験を行った際に使用したプルトニウムが、結局、カナダからインドに輸出した原子炉によって生産されたものであったということ、このためにカナダ国会内でも大変な批判、追及が行われ、カナダの原子力政策として、今後、こういった核物質輸出に際しての条件をかつて例のないくらい厳しいものに決めたということでございます。  そこで、御存じのとおり、わが国との間の供給にもいろいろな条件を具備して、いまだ全面解決に至っていないわけでございますけれどもわが国並びにユーラトム側九カ国、英、仏、独を含めた、それとスイス、合計十一カ国に対して、本年初頭より、こういったカナダ産ウラン供給停止を実施しておるものでございます。
  149. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 カナダがいわゆる核拡散防止ということについて非常に熱心であるというか、神経質であるとかいうことは、それはわかりますけれども、しかし、日本とカナダはとにかく友好国になっているわけでございますが、そういう日本に対していままでやってきたウランの供給を停止するというようなことは非常に重大なことだと思いますね。そして、同時に、対日ウラン供給停止というような措置は円滑な原子力利用を妨げるということになるわけでありまして、供給国としての責任を果たさないということにもなると思うのですが、この点について、日本はカナダに強く申し入れているのかどうか、その点ひとつはっきりとお答えいただきたいと思いますが。
  150. 奥田敬和

    政府委員(奥田敬和君) もう先生はとっくに御認識であるかと思いますけれども、いま現在、カナダとの交渉過程において一番未解決の点は一点ございます。それはカナダ産ウランがアメリカで濃縮された、こういった形で二重規制を受けるという点が最大の問題点でございます。  確かに、先生の御指摘のとおりに、日本とカナダは外交的にも経済的にも最大の友好国でもございます。したがって、こういったウランの供給停止措置というものは、先生が神経質という言葉を使われましたけれども原子力平和利用という面にまで非常に大きな影響を与えてくる、はっきり言うと、過度の防護措置というものに対しては私たちはまことに遺憾でございます。  したがって、この問題に関しては、何回も政府として正式に申し入れをして交渉も行っておるわけでございますけれども、たとえば本年の六月バンクーバーで行われました第一回の日本・カナダ経済協力合同委員会、このときにも鳩山外務大臣からジェミソンカナダ外務大臣に対して、直ちに供給停止を解除するように強く申し入れを行ってもおります。  また、先般、これは二回にわたってでございますけれども、ロンドンで行われました先進国の核利用に関するロンドン協議においても、わが方の政府代表が、二重規制のこういった問題、たとえばいまのアメリカとカナダとの間で二重規制を受けるようなこういった問題に関して、もう少し円滑に国際間でコンセンサスが得られるように作業部会を設置する等々も強く提唱して、これが実現にこぎつけております。  また、一番近くでは、INFCEの会議で、ワシントンであったわけでございますが、日本代表としては、ここの大川局長が参りまして、こういった形に対するカナダの過度にわたる措置に対しては厳しい批判を行っております。つまりウラン資源国が平和利用に関する規制措置の強化を急ぐ余り、平和利用のためのウランの供給停止を行うことは慎むべきである、このようなことは国際的なこういったコンセンサスによって決定されるべきものであって、一国の恣意的な措置によってされるということはまことに好ましくないということを主張いたしております。  なお、御参考のために申し上げますと、先般、西独のシュミット首相とトルドーカナダ首相との間で会談も行われました。このときも、西独シュミット首相は、平和利用のための供給保証が尊重されなければ二国間の相互信頼も失われるという形で強い論旨で迫ったようでございます。特に西側陣営の平和利用というものがこのことによって停滞を招くという形に対しての危機感も含めて強く訴えたようでございます。また、フランスはカナダに対して、核拡散防止のためのこういった努力はわかるけれども核物質の供給停止というような過度の方法を招来するものであってはならないという形で、これまたわが国政府と同様に強い形でこういったカナダ側の供給停止措置に迫っておるわけでございます。  ただ、先生のいま言われた日加友好の観点から言っても、こういった二重規制というわが方としてはのみ込めない措置に関して、何とか国際的にユーラトム諸国等々と歩調を合わせて問題解決に当たりたいし、また早急解決に当たりたいというのがわが方の主張でございます。
  151. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 原子力発電をさらに積極的に進めていく上においても、カナダの対日ウラン供給停止というのはやっぱり大きな問題なんで、この問題につきましては、時間がないからこれ以上申しませんけれども、何とか早く打開するように強力にひとつ進めてほしいと思います。  それから、次は、いま議題になっているNPT保障措置協定でございますか、このNPT保障措置協定が発効いたしますと、現在ある二国間原子力協定、これが一体どういうふうになるのか、これとの関連をひとつ簡単に的確に御説明いただきたいと思います。
  152. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) 御審議いただいています保障措置協定の第二十三条をごらんいただくと書いてございますけれども、この保障措置協定か発効いたしますと、わが国がいま結んでおりますアメリカ、イギリス、フランス、カナダ、豪州との二国間原子力協定に基づく現行査察は停止されて、この新しい協定に基づく国際原子力機関保障措置がそれに取ってかわるということになっております。ただし、先ほどの五カ国との二国間協定は、査察に関する規定以外にも燃料の供給であるとか、いろいろほかにも規定がございますので、そういった査察以外の規定につきましては、この協定が発効いたしましても引き続き適用されることになるわけでございます。
  153. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 さっきもちょっとお伺いした、ペトロシャンツソ連原子力利用国家委員会議長が来たのは、日本原子力産業会議との間でもって日ソ民間原子力協定締結するのが目的であるというふうに聞いておるんですが、一体、日ソ民間原子力協定というのはどういう性格のものなんですか。これが結ばれることによってどういうような影響が出てくるのか、この点についてお伺いしたいのですけれども
  154. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) それは私ども直接に関与しておりませんので伝え聞いているところを御説明申し上げますけれども、これはわが方から見れば、どこまでも民間協力協定でございます。中身としては、原子力関係の分野におきまして資料を交換したり技術者を交換したり、いろいろ共同の研究をやったりするというようなことが書いてあるように承知いたしております。
  155. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 この協定締結されることによって日ソの国家間の現在ある技術協力協定ですか、というようなもの、あるいは将来日ソ国家間でもって何か協定を結ぶというようなことについて、格別支障はないものなんですか。
  156. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) 現在、存在しております日本とソ連の政府間の科学技術協力協定には、特に影響はないものと承知しております。
  157. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 そうすると、これはNPT保障措置協定とこの日ソ民間原子力協定というものとの間には、何のかかわりもないというふうに解してよろしいんですか。
  158. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) そのとおりかと思います。
  159. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 このNPT保障措置協定によりまして、いわゆるユーラトム並み協定締結されるんだというふうに了解しているわけでございますが、大変疑い深いようで恐縮でございますけれども、本当にユーラトム並みが確保されるのであるかどうかという点でございます。  先ほど、福間委員も御質問されておったようでございますが、アメリカと日本との間で使用済み燃料の再処理問題、これは大変御苦労されて、九月十二日の日米共同声明でもってようやく片づいたというふうに承知いたしております。しかし、アメリカとユーラトムの間の協定では、ユーラトムは再処理についてはアメリカの同意を必要としないというふうになっていると思うんでございますが、そうしますと、どうも日本はアメリカの同意を得るという、この点においてやはりユーラトム並みといっても、本当のユーラトム並みじゃないんじゃないかというような点かどうも私ども腑に落ちないんですけれども、この辺はどうなんですか。
  160. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) このユーラトム並みと申しますのは、実は、御審議いただいています保障措置協定規定する、いわゆる国際原子力機関による保障措置の上で日本がユーラトム諸国と同じような待遇を受ける、こういう意味に使っているわけでございまして、要するに狭義の保障措置についてユーラトムと同じ待遇を受けることに成功したと、こういうことでございます。  ところが、日米原子力協定に基づきまして、日本がアメリカから輸入した核燃料を使用した後でこれを再処理する際に、これについて日米協定規定に基づいてアメリカから同意を取りつけなければいけないと。にもかかわらず、アメリカとユーラトムとの間の同様の協定ではそういったアメリカの事前同意権が規定されてないという点では、確かに日本はユーラトムに比べてより厳しい制約を課せられておると、ユーラトム並みでないということがおっしゃるとおり言えるかと思います。しかし、われわれがいわゆるユーラトム並みと申しますのは、先ほどの狭義の国際原子機関による保障措置の適用面でのことを申しているわけでございます。
  161. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 どうもその狭義、広義ということですが、確かに狭義の解釈ではユーラトム並みと言えるのかもしれないけれども、私ども素人にはその辺が余りぴんとこないんですけれども、まあそれはそれといたしておきましょう。  とにかく、日本がこれからこの協定によっていささかでもマイナスにならないように、ことに、また、いわゆる産業機密の保持というような面におきましても非常に問題もあると思いますので、そういう点につきまして、今後とも、ひとつ外務省としても最大限の努力をしていただきたいということを申し上げたいと思います。  時間が余りありませんので、いろいろお聞きしたいこともあるのですけれども、はしょります。  十月の十九日から二十一日まで、例の国際核燃料サイクル評価設立総会がワシントンで開かれたということでございます。わが国からも大川代表が行って演説もしておると聞いているんですが、この国際核燃料サイクル評価設立総会によって、一体、具体的にどういう成果があったのか、また、これからどういうふうにこれがひとつ展開していくのかという点につきまして、簡単明瞭に御説明いただきたいと思います。
  162. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) まず、カーター大統領がことしの四月に打ち出した構想でございますけれども、とにかく四十カ国が参加いたしまして、いわゆる核燃料サイクル評価という作業がとにかく走り出したという意味において、これは大きな成果であったかと思います。  もう少し具体的に申し上げますと、八つの主要テーマを設けまして、そのそれぞれのテーマにつきまして一つの作業部会を設けて、その作業部会に関心のある国が出席して、それに対して具体的な貢献を行うということで二年間検討を行っていくわけでございますけれども、その結果どういうことになりますかは初めから予断されるものではなくて、全く技術的で客観的な検討でございますから、それの成り行きにいわば任せて、二年後に出てきた結果をみんなでその時点で見てみようというような趣旨でございます。  その基本的な問題は、原子力の平和利用ということを推進しなければならないんだという命題と、それから核の拡散を防止する必要があるんだというこの命題と、一見相矛盾するような二つの命題をいかにうまく調和させることかできるかということをいろんな面から国際的に検討していこうではないかと、これがINFCEの一言で申して趣旨であろうかと思います。私ども日本政府といたしましては、その二つの命題は必ず両立させられるんだという見地から、積極的にこれに参加してまいる所存でございます。  なお、日本立場から申しまして、八つの作業部会いずれにも参加することを意図表明してまいりましたけれども、そのうちの第四作業部会——使用済み燃料の再処理、その結果出てまいりますプルトニウムの取り扱い、それからそのプルトニウムを再利用する問題、こういったテーマを取り扱う第四作業部会にイギリスと一緒にいわゆる共同幹事国として選出されましたことは、日本として最も関心のある分野の一つである再処理関係で具体的に貢献ができるという意味で、日本として一応うまくいったというようなことか言えるんではないかと思います。
  163. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 先に飛ばしまして、原子力発電についての安全の問題について御質問したいと思いますが、原子力発電所自体の安全の問題それからまた使用済み核燃料の安全の問題という両方の問題があると思うのでございますが、もう時間がないので一々お伺いするのは飛ばしますけれども原子力発電所はすでに動いているわけですね。そして同時にまた、したがって廃棄物ももうすでに出ているわけですが、これらについて安全性確保のための日本でとっている措置、それからヨーロッパやアメリカではどういうふうにそういう問題について処置をしているかという点について、簡単に素人わかりのするようにひとつ御説明していただきたいと思います。
  164. 武田康

    政府委員(武田康君) いま先生のおっしゃいました安全措置につきましては、原子力委員会のもとで科学技術庁、通産省協力いたしまして一連の措置をとっております。  で、原子力発電所自体につきましては、その基本設計の段階から安全審査というものをいたしまして、それからデテールの設計についても、建設の工事についても、あるいは運転につきましても、原子炉等規制法とかあるいは電気事業法とか、そういう法令に基づきまして審査し、検査し、チェックをするというような体制を整えておりまして、設計上の自動的なと言ったらいいかと思いますが、設計上の自動的な安全措置、二重、三重の防護措置等を加え、それに先ほど申し上げましたような法律に基づく審査、検査を加えて、外部に対して何らの被害も与えない、実質的な被害を与えないというような措置をとっているわけでございます。  それから廃棄物等々につきましても、これは科学技術庁の方でございますけれども、原子炉等規制法のもろもろの規定に基づきまして、放射線による被害を外部のものあるいは一般の方々に与えないというようなレベルに抑える。これも法律の規定に基づきまして審査し、検査をするというようなやり方をいたしておるところでございます。  諸外国につきましても、法律の立て方なり、それから見る断面なり、チェックする断面でございますが、そういったものはそれぞれ違っておりますけれども、いわば大同小異のような国による規制、それから自主的な管理というものが行われているのが現状でございます。
  165. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 この原子力の安全性の確保ということは、これは当然もう厳重な上にも厳重であらなくちゃいけないと思います。同時に、また、原子力関係しての環境保全なり公害対策というようなものも、これも万全を期していかなけりゃならないと、これは当然なんですね。  そこで、申し上げたいんですが、環境問題、公害問題、これは日本では、ともすると、ときには感情問題に発展していったといううらみがないでもないと思います。これらにつきましてよほどPRといいますか、十分な科学的なしかも具体的な説明、あるいは広報によって不断に絶えず国民の皆さんに理解と納得をしてもらっておかないと、これからの原子力の発電等の計画もなかなか計画どおりにいかないと思うのですね。  そういうことについて、私がすぐ思い出すのは、三年前のいまごろだったと思うんですが、例の原子力船「むつ」の問題が起きたわけですね。大騒動になったことで、いまさら私がここで言う必要もないわけでございますが、あのときに試験運転中に出たのは毎時〇・二ミリレントゲンという量の放射線が出たということであったと思います。この〇・二ミリレントゲンというのは、人間の健康上は全く問題にならない量である。普通病院なんかで、われわれが人間ドックになんか入って胸部の間接撮影をする、レントゲン撮影をするという場合でも大体五百ミリレントゲンの放射線を受けているんだと。私は医学上の知識がないから、これは聞いただけの知識でございますけれども、そういうふうに聞いているわけですね。そうしますと、「むつ」の場合の毎時〇・二ミリレントゲンの放射線というものは、これは生命はもちろん、健康上でも全然問題ない。しかも試験運航中の出来事であったと思うんですが、それがああいう大きな問題になったということは、私は、日本国民の間にもちろん原爆体験というものもあるものですから、原子力ということについては格別に非常に心配をするのは当然だと思いますけれども、しかし、同時に、そういう問題についての科学的な具体的な積極的な説明というものが政府において十分でなかった面もあろうと思うんです。  そういうような意味で、私は、これから原子力をさらに開発し発展さしていく上において、こういう問題が非常に大事になってくると思いますので、平素から十分なそういう問題についての的確な広報といいますか、PRといいますか、そういうことをもっと積極的にやってもらいたいと思うんですが、これはどなたにお答えいただいたらよろしいんですかな。
  166. 川崎雅弘

    説明員(川崎雅弘君) ただいま先生の方から御指摘ございました原子力関係の広報活動、普及啓発活動を積極的にやるべきではないかという御趣旨につきましては、私どもも全く同様に考えております。  すでに私ども原子力開発約二十年の歴史を有しておるわけでございますが、その間に、私ども科学技術庁のみならず、通産省におきましても、あるいは総理府の広報室におきます一般政府広報予算の中においても、原子力の広報を進めてまいっているわけでございますが、従来の手段は、マスメディアによります媒体を使いましての広告、あるいは意見広告、あるいは原子力の安全あるいは放射線といったものについて認識を深めるためのやさしい解説書といったようなものをかなりの部数作成してまいっております。  しかしながら、なかなか御理解を賜るのに必ずしも印刷されたものだけでは十分ではないというような点も考慮いたしまして、特に、昨年来、科学技術庁長官は茶の間で語る科学技術懇談会というような形で、一般の方々が時折集まりまして原子力問題を含めて科学技術問題を話し合って、どういうPRを進めたらようかというような戦略を考える場を設けましたり、あるいは関係閣僚として全国的な遊説計画をブロック別に現在進めております。で、さらに、こういう私どもの方から与えるばかりではなくて、直接国民の皆さん方の声を聞くという趣旨から、五十二年度には科学技術庁におきまして全国約五百名の原子力モニターというものをお願いをいたしまして、ここから国民の皆さん方の声を聞き、それに基づいて御趣旨に沿うような原子力の理解と協力を求めるための普及啓発活動を促進してまいりたい、かように考えております。  なお、若干まだ予算的に不十分な面もございますが、私どもとしては御趣旨を体して今後とも努力してまいりたい、かように考えております。
  167. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 時間がありませんので、最後に、核ジャック対策についてお伺いいたします。  十月三十一日から今月の十日まで、ウィーンで核ジャック防止国際会議が開かれたということでございますが、先般来のハイジャックだとかテロだとか、いろんなことが起きているわけでございます。アメリカでは、核ジャックとは言わないんでしょうが、濃縮ウランが相当量紛失した例があるとか、あるいは原子力施設に対して爆破をするというような脅迫——事実はなかったようですけれども、脅迫が行われたという事例もあるとか、いろんなことを聞いていますが、私は、やはりこれからこの核ジャックということがもしあったら大変なことになるし、その対策はそれこそ本当に真剣にいまからでももう具体的にどんどんどんどん進めていかなくちゃならないと思うんです。そういうような意味で核ジャック防止についての対策は、現在、一体どのようにやっているのか、また、将来どのように進めていこうとしているのか、科学技術庁あるいは警察庁からひとつポイントだけを簡単にお答え願いたい。
  168. 栗原弘善

    説明員(栗原弘善君) ただいま先生から御指摘がありましたとおり、核物質の防護という問題につきましては、これは非常に私ども重要な問題だと思っております。これまでも私どもといたしましては、原子炉等規制法という法律に基づきまして所要な措置というのはとっていたわけでございますが、いまほど先生から御意見がございましたように、今後は、わが国におきましても、これまでより一層に核物質の防護に関しましては充実強化をしなければならないというふうに考えております。  したがいまして、国内的な問題でございますが、国内的には原子力委員会におきまして、昨年でございましたが、昭和五十一年の四月に核物質防護専門部会という部会を設置いたしました。この部会におきましては、近年の状況にかんがみ、わが国の国情に即した核物質防護とはどうあるべきか、それからその基本的な方針はどうあるべきかということについて検討を行いましたが、その第一次報告書を本年九月報告していただいたような次第でございます。  これはかなり内容的にいろいろ今後日本においてとるべき措置ということについて提案がございますので、私どもといたしましては、この問題は、国内的にも関係する省庁が私どもだけではなくて、先生御指摘のように警察庁もございますし、そのほか運輸省その他いろいろな省もございますし、さらに国際関係もございますので、その辺を関係省庁とも御相談を進めながら、今後、核物質防護専門部会の報告書に指摘された問題点につきまして、積極的に整備を進めていきたい、こういうふうに考えております。
  169. 若田末人

    説明員(若田末人君) 警察庁の立場からちょっと補足御説明申し上げたいと思いますが、現在、国内で核ジャック的な事実はございません。  情勢を御説明申し上げますと、極左のうち一部にこの核の関係について関心を持っておるグループがございますが、しかし、これは調査をいたしましたところ、公害関係の問題についてそういう観点から反対運動、先ほど先生いろいろお話ございましたが、原子力発電所関係について公害の立場、反対の立場から反対していこう、そういう観点からこういう施設を見学に行ったようでございまして、核ジャックというような立場からのいま極左についての動きはないのが現状でございます。  それから、核防護関係につきましては非常に重要な問題でございますので、科学技術庁等と連絡をとりながら、警察といたしましても、現在の体制あるいは将来に向かっての対策、そういうものについて真剣に検討いたしておるところでございますが、現在の防護体制につきましては、施設につきましては一応科学技術庁等の御指導によりまして、二重三重に物理的に外部からは入れないように、あるいはガードマン会社等を特別につくりまして内部の方を固める、それから警察は外周につきましていろいろその会社等とも連絡をとりまして、それ専門の派出所等もつくりまして警備をやっておると。特に、そういう意味で施設にあります間は非常に安全でございますが、その燃料が輸送される途中が私ども現時点においては危険だと承知しておりまして、この輸送につきましては、内密にどこからどこまで輸送されるというようなことが私どもの方に連絡が参りまして、これについて情報がある場合には、それに相応いたしました厳重な警備体制をしいておるのが現状でございます。
  170. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 時間もございませんから、最後に要望して質問を終わりますが、いままでいわゆる過激派といいますか極左の連中も、核ジャック自体を計画するというようなことではなかったかもしれないけれども、私はやはり核ジャックというものが現実に日程に上がってくる危険性も十分考えられると思うんですね、いまのこういういろいろな情勢からしますとね。そういうような意味で、その警備対策等具体的な問題は機密にわたる事項もあるかもしれないので、ここであえて質問いたしませんけれども、科学技術庁、警察庁はもちろん、運輸省等関係当局も、この問題が日程に上がる危険性があるという前提のもとに、十分な対策を講じ、そしてそれをいますぐからでも具体化していくように、ひとつ最後に要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  171. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後三時四十分散会      —————・—————