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1977-11-17 第82回国会 参議院 科学技術振興対策特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月十七日(木曜日)    午後一時三分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         藤原 房雄君     理 事                 源田  実君                 藤川 一秋君                 森下 昭司君                 塩出 啓典君                 佐藤 昭夫君     委 員                 亀井 久興君                 後藤 正夫君                 鈴木 正一君                 成相 善十君                 松前 達郎君                 吉田 正雄君                 向井 長年君                 柿沢 弘治君    政府委員        科学技術庁長官        官房長      半澤 治雄君    参考人        東京大学教授   安藤 良夫君        立教大学助教授  服部  学君        佐世保市議会議        長        井上 末雄君        長崎漁業協同        組合連合会会長  住江 正三君        元むつ助役   浜谷 一梅君        前むつ市長    菊池 漢治君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法  律案(第八十回国会内閣提出、第八十二回国会  衆議院送付) ○核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関  する法律の一部を改正する法律案(第八十回国  会内閣提出、第八十二回国会衆議院送付)     —————————————
  2. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) ただいまから科学技術振興対策特別委員会を開会いたします。  日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法律案並びに核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  本日は、両案について参考人方々から御意見を聴取することといたします。参考人としてお手元に配付の名簿のとおり、東京大学教授安藤良夫君、立教大学助教授服部学君、佐世保市議会議長井上末雄君、長崎漁業協同組合連合会長住江正三君、元むつ助役浜谷一梅君、前むつ市長菊池漢治君、以上六名の方々に御出席を願っております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、皆様には御多用のところ本委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございました。  本日は、ただいま議題となりました両案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜りますとともに、また広く当面する原子力行政に関する諸問題につきましても、御意見、御希望があればあわせてお聞かせいただき、今後の法案の審査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。  なお、参考人方々には、まず順次それぞれ十分程度陳述お願いし、その後委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず安藤参考人からお願いいたします。
  3. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) ただいま御紹介にあずかりました東京大学安藤でございます。  私は、原子力船に関しましてはかなり昔から関心を持っておりまして、私の所属しております講座は、工学部の原子力工学科の中にあります原子力推進工学という講座でございますが、これはほとんど日本では唯一でございますけども原子力船とか原子力ロケット、そういうような推進に関する講座を担当しております。私は、もともと船舶工学科を出まして、ただいま原子力工学科におりますので、特に原子力船の問題には深い関心を持っております。  それで、まず原子力船開発の意義でございますが、原子力船燃料の重量が非常に軽い、そして現在、石油危機以来の石油の値段に比べますと、エネルギー当たり非常に安価な燃料を使うことができる、そういうようなことで高出力の船には適しているわけでございます。きわめて、ネットだけで計算しますと、ウラン35という核分裂するウランが三キログラム核分裂しますと「サバンナ」とか「むつ」ぐらいの船が世界一周できるというような程度でございますが、欠点としては、設備が普通の在来船に比べて高価である、それから、いま運航上いろいろ普通の船よりもやかましい規制が必要である、それから住民は、あるいは必要以上と思われるんですが、不安感を依然として持っている、そういうような欠点がございますが、原子力船開発するということは、特に日本昭和三十一年以来世界できわめて抜群の、世界一でございますが、造船国でございます。それで三十一年以来二十数年間ずっとその首位の座を守っているわけでございますが、多分ことしも来年もそういうことが続くと思いますけども、実質的には世界の船が少し多過ぎるというようなことで造船はやや苦しい立場になっております。特に最近は発展途上国、一例を挙げればお隣の韓国あたりが非常に安く船をつくりますので、そういった傾向はこれから発展途上国造船を盛んにしてまいりますとずっと続くと思いますが、日本造船が繁栄を保って日本国経済あるいは国民生活、そういうものに寄与するためには、船の方も比較的やさしい技術でできる船はこれからの追いついてくる国に任したとしても、原子力船のような高度の技術を要する船、そういうものに日本は力を入れていかなくちゃいけない、そういうことが「むつ」をつくるときの最初から言われていたことでございまして、原点に立ち返っても原子力船開発というのは大いにやっていかなくちゃいけないということになります。  それから、もう一つエネルギー問題でございますが、エネルギー問題というのは日本が抱えた、これからの近い将来の非常に大きな問題でございますが、現在、御承知のようにエネルギーの主力は石油にあるわけでございまして、日本はその九九・何%というような非常に、ほとんど全部を輸入しているわけでございます。石油消費は、主として電力とか、あるいは生産、あるいは交通機関、ごくわずか民生に使われるわけですが、電力の不足というのは、将来やはり原子力というのがその大きな代替として期待されておりますが、船の方を見ますと、交通機関を見ますと、船が使うことと、それから自動車が使うこと、それから鉄道などが使いますが、船が使う油の量というのは石油輸入量の約一割でございまして、そのほかに、日本の船が外国に行って向こうで船に油を積むということを考えますと、一五%ぐらいになるかと思いますが、これはかなりの量でございまして、将来石油が枯渇するときには、大きな船は原子力で走って、漁船のように小さい船で原子力になかなかなじみにくい船、そういうものは油で走ると、そういうようなことが必要になると思われます。  それから、原子力開発は非常に息の長い話でございまして、軍用のものはアメリカソ連、イギリス、フランス、こういうものが開発しておりまして、現在はっきりした数字はわかりませんが、数百隻動いていると見られているわけです。それで、それに対して平和利用の船はソ連の「レーニン」、それから「アルクチカ」、いまつくっていると思われる「シベリア」というような三隻と、それからアメリカの「サバンナ」、それにドイツの「オット・ハーン」、日本の「むつ」、これだけが一応平和利用と考えられますが、ドイツ日本のように軍用のものを持たないというところは、その技術の進歩におくれないために原子力開発が必要だと考えられます。  それから、少し時間がなくなりますので、私どもが行いました委員会での結論をかいつまんで簡単に申し上げますと、「むつ」の総点検遮蔽改修に関しての委員会の話でございますが、まず、おととし出しました結論では、大体こういうふうにすれば遮蔽を直すことができるであろうと。それから、原子力船事業団が考えている総点検も妥当なものであるというような結論を出しました。それから、去年出しました報告では、これは燃料を抜かないでも十分修理ができると、こういう結論を出しております。それからことしになりまして、長崎県の方で燃料を抜いてきたらどうだというような話が出ましたので、もし燃料を抜くとすればこういう手順でやれば安全にできますと、こういうことを検討しまして報告書をまとめておりますが、これは燃料を必ず抜かなくちゃ修理ができないということじゃなくて、それの結論に合わせて、燃料を抜かなくても十分直せるということは念のため申し添えおきというような形で申し添えてございます。  時間になりましたので、私の陳述はこれで終わらしていただきます。
  4. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 次に、服部参考人
  5. 服部学

    参考人服部学君) 服部でございます。  何の因果か存じませんけれども、「むつ」の問題が始まりましてから十何年の間、外側からこの問題にずっとつき合いをさせられてまいりまして、それだけに「むつ」の問題というのは何か人ごとのような気がしなくなってきております。  「むつ」の技術的な問題にもいろいろ問題があったわけでございますが、いわゆる大山委員会——「むつ放射線漏れ問題調査委員会の御報告、その中にこういう文句がございます。「「むつ放射線漏れそのものは、単に原子炉遮蔽欠陥に伴う現象にすぎない。しかし放射線漏れに関連して表面化した諸問題は、たまたま原子力第一船開発推進に伴い露呈したわが国の原子力開発体制欠陥そのものとして、率直な反省が必要である。」、こういう御指摘があるわけでございますが、その後の経過を見ておりますと、どうもこの提言が素直に受け入れられていないんではないだろうか、率直な反省というのが本当に行われているだろうかということに関しまして大きな疑問を抱かざるを得ないわけでございます。  行政上の問題は本日は省略いたしまして、技術的な問題だけに限って意見を申し上げたいと思いますが、技術的な問題に限りましても、「むつ」の放射線漏れ、これはかなり初歩的な欠陥であったということが言われております。つまり、原子力船というのはこれはできるだけ軽くしたいということ、これは当然の要求でございまして、そのためにはやはり遮蔽構造というものが一番目方を軽くするという意味では重要な設計の要素になってくるわけでありますが、その肝心の遮蔽構造自身欠陥があった、しかもそれがかなり初歩的な欠陥であったということになりますと、これは単に遮蔽の問題だけではなくて、これを機会に総合的な点検というものが必要ではないか。つまり、化け物屋敷の入り口で一つ目小僧が出てきたけれども、その奥にほかの化け物がいないかどうかということはまだわかっていないわけでありまして、その中へ入っていってみればあるいはもっと三つ目小僧が出てくるかもしれないし、ろくろ首が出てくるかもしれない。むしろその初歩的な過ちを犯してしまったということは、これは原子力に限らず、最悪の場合のことを考えるのがむしろ至当であろうというふうに考えます。本当にその遮蔽ミスがあった、遮蔽だけに、ミスがあったというふうには証明されていないわけでありまして、原子炉をいじっております立場の人間から申しますと、むしろこの際この原因というものは徹底的に追求することが望ましいと思います。と申しますのは、やはり「むつ」というのは最初につくった原子力船でございますから、最初にやったことにいろいろな欠陥がつきまとってくるのは私は当然だと思います。しかし、その欠陥をただ臭い物にはふたと、傷があったらばんそうこうを張ってしまうということではなくて、どういうところからその欠陥が生じてきたのかということを明らかにすることが、第一船試験船としての最も重要な意味があるのではないかと考えるわけであります。その意味で、原子炉というものはそんな欠陥原子炉設計しようと思ってもつくれるものではございませんので、現在あります欠陥原子炉というのはある意味では非常に貴重な資料になり得るものだと思います。それを単に放射線が漏れたからその外に何百トンもコンクリートを打ってそれをふさいでしまうということではなくて、私はやはりこの際、臭い物にはふたではなくて徹底的な原因究明、それこそが本当の将来に向かっての原子力開発原子力船開発に最も有効な道ではないかというふうに考える次第でございます。  技術的に申しますと、たとえば一例を申し上げますと、「むつ」の燃料というものは、「サバンナ」と比べまして原子炉炉心直径が大分小さくなっております。これは、炉心外側に水がもしありますと、そこで早い中性子が減速されまして遅い中性子になります。そうすると今度のような早い中性子がたくさん漏れてくるということはかなり減らすことができるわけであります。早い中性子が漏れてきたからといってそこに何百トンもの遮蔽を追加するということは、原子力船原子炉としてはきわめて不適当な設計方法になってくると思います。むしろ、漏れてくる中性子そのものをもう少し少なくすることができるんではないだろうか。ほんの少し原子炉直径を大きくすることによって漏れてくる中性子を減らすことができる。そういったことを、どっちが得なのかというようなことを徹底的に検討されることの方が望ましい。あるいは、中性子が漏れてくるといっても、どういうエネルギーのスペクトルを持った中性子が漏れてくるのかといったことについても、現在決して十分なデータが得られているとは申せないわけでありまして、ただこの際傷口をばんそうこうを張ってしまうよりは、そういったいろいろなことを検討すべきではないかというふうに私は考えます。  そのほかに、たとえば、この問題を契機といたしまして、燃料交換用クレーンのシステムということに関連いたしましても、現在考えられているような方法、つまり上にある大きな重いふたも、それから中にある燃料を引き抜くのも外からの同じクレーンを使ってやるという方式が必ずしも適当なものではなかったということがむしろこの問題の経過の中から明らかになってきていると思います。そのほかにも、イオン交換樹脂に付着している放射性物質検討することによって燃料健全性というものを検討できるんではないかと、そういったいまやれることが幾つかあるわけでございます。そういうことを徹底的に検討されることの方が私は望ましいことだと思います。そのためにはやはり何と申しましても、単に修理を急ぐということではなくて、四者協定に示されましたように、新しい母港を見つけるという努力を政府が誠意を持つ七真剣に行われること、そしてその新しい母港においてそういう検討を十分になさること、そして将来また外洋で臨界試験を行うといったような、ああいうばかげたことばしないで済むように十分な検討をおやりになることの方が望ましいと思います。  聞くところによりますと、原子力船事業団法延長法案、十一年とか三年とか延長し、その間に修理を行うということが何か第一目的のようになっているというふうに伺っておりますが、その前にやるべきことがあるんではないだろうか。またそれを研究所法案に、その三年の間に改組するというようなお話も漏れ伺っておりますが、研究所というものは私はやはり研究者の側からの要求に基づいてその内容検討されてしかるべきものだと思います。ただ事業団というものを研究所というものに名前をすりかえるということに終わることなく、本当にそれが研究所に改組するのであるならば、どういう研究所が望ましいのか、いまどういう研究が最も必要なのであるかということを研究者の間で十分検討ができるような措置をとっていただきたいと、そういうふうに考える次第でございます。  そのほかにも申し上げたいことございますけれども、時間が来たようでございますので、一応これで私の意見を終わらせていただきます。
  6. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 次に、井上参考人
  7. 井上末雄

    参考人井上末雄君) 私ども佐世保市議会といたしましては、昨年の二月十日に、ときの総理大臣でございます三木総理から、佐世保市で原子力船むつ」の修理をしてもらいたいと、こういう御要請がございまして、この政府要請を受けて、佐世保市議会といたしましては、ことしの四月一日に結論を出すまで約十四ヵ月間、慎重に検討をしてまいったわけでございます。そこで私ども議会といたしましては、総務委員会に付託いたしまして検討してまいりましたが、私たちは、この問題は非常に当時多分にもイデオロギー過剰的な議論が多い、それから第二番目には非常に政治的な面の議論が多い、さらには多少感情論も入っておると、こういうようなことから、この問題は純粋に科学的に、しかも冷静に理論的に検討すべきである、こういう観点から、大体目標といたしましては、第一にこの問題の安全性について、それから第二番目は原子力行政のあり方について、次に、修理港として果たして佐世保港が適当であるかどうかという点について、さらには、将来の日本原子力平和利用というものの内容について、そういうことを中心にいたしまして、佐世保市民の本件に対する市民の動向、こういうものを大要五つの点を中心として議会としては審議をしてまいった次第でございます。  そこで、まず第一に安全性の問題でございますが、こういう高度な科学技術知識を必要とする問題につきましては、遺憾ながらわれわれとしては十分ではございません。しかしながら、安全性の問題というのは私はやはり信頼性に基づいて考えていかなきゃいかぬ、こういうふうに思うんですが、幸い政府におかれましてこの安全性の問題につきましては大山委員会あるいは安藤委員会、こういった日本の最高の知識を持っていらっしゃるこういう委員会において、大体この原子力船むつ」については修理が可能である、安全であると、こういうような結論が出ておりますので、私どもはこの貴重な意見十分評価をいたしておるわけでございます。  次に、原子力行政確立の問題につきましては、これはかなり当時批判の対象になった問題でございますが、これも有沢先生中心としたいわゆる原子力行政懇談会、この席上におきまして今後の原子力行政確立についての意見書が出ております。これは内容的にもかなり私ども評価いたしておりまして、これを政府が尊重し、確実に実施していくならば十分この原子力行政についても評価できるのではないかと、こういうふうに考えたわけでございます。  次に三番目の、修理港として佐世保が適当であるかどうかという問題でございますが、御承知のとおり佐世保市は昭和三十九年から現在まで、御承知の「エンタープライズ」を中心として米国の原子力艦艇を二十二杯入港さしております。当初かなり世間を騒がせましたが、ほとんどこの原船の入港に際しましても何ら具体的に影響は出ていない、こういうふうに考えておるのでございますが、そういうことを踏まえた上で、この「むつ」を修理するに当たって環境の問題、あるいは港の条件の問題、設備の問題、そういうものを慎重に検討いたしました結果、佐世保港は適切な修理港としていいと、こういうふうに判断をいたしております。  次に第四番目に、原子力平和利用の必要につきましては、私がいまさら申し上げるまでもなく、諸先生方承知のとおりでございますが、日本エネルギーの現状、あるいは資源小国といわれている日本の将来、こういうものを踏まえて、ぜひともこの原子力平和利用推進しなくちゃいかぬ、むしろ日本のこの面に対する対策先進諸国に対しておくれておる、こういうふうに判断をいたして、積極的に推進すべきだと、こういうふうに解釈をいたしておるところでございます。  次に、市民のこういう問題に対する態度でございますが、ただいま申し上げました点を種々十四ヵ月間にわたって、あるいはむつ市の現地に行き、さらには科学技術庁原子力船開発事業団あるいは学者、そういう方々の御意見ども拝聴しながら十分に検討してまいりましたが、市民といたしましては、この「むつ」が入港した場合修理するであろう佐世保重工業におきましては、経営者の方も、さらにはあそこに働いておる労働組合もこの修理を引き受けると、こういうような態度が確定いたしておるのでございまして、そういう点から私ども佐世保市議会はことしの四月一日、いろいろな議論の結果政府要請にこたえると、こういう議決をいたしたような次第でございます。さようなことでございますので、四月一日に政府要請にこたえるという議決をいたしまして今日まで御承知のとおりもう八ヵ月たちます。したがって、佐世保市民の中には、政府はどうするんだと、佐世保市にお願いをしておきながらそれを何ら対応しないではないかと、こういう不満の声もあるのでございまして、どうか早急にこの「むつ」の問題に政府において対応されるようにお願いいたしたいと思います。  それから、ここで先生方にちょっとお願いを申し上げたいと思いますのは、御承知のとおり、この団法は昨年の三月の三十一日で期限切れと、こういう事態が発生いたしました。これにつきまして政府の方では期限は切れたけれども、次の法律手続があるまでは有効である、こういう解釈でございます。しかし、一方においてはすでにこの問題は宙に浮いておると、こういう法律論もございます。われわれ法律にうとい者あるいは佐世保市民としては非常に迷う問題でございまして、こういう点はひとつ国の方で具体的にはっきり態度をお決めいただかないと、いたずらに住民としては迷惑をこうむると、こういう点を特にお願い申し上げたいと思います。  次に、法律の問題でございますけれども、先般、衆議院は通過したようでございますが、何分にも地元といたしましてはこの問題で非常に議論の沸いている問題でございますから、ぜひともこの参議院においても早急にこの団法を成立させていただいて、積極的にこの「むつ」の問題あるいは日本原子力平和利用の問題について御尽力賜りますことをお願い申し上げまして、まことに簡単でございますけれども意見といたします。
  8. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 次に、住江参考人
  9. 住江正三

    参考人住江正三君) 住江でございます。本日は御審議中の二法案に関連して、原子力船むつ」問題につきまして参考人としての意見陳述する機会を得ましたことを厚くお礼を申し上げます。  現在における私ども漁協系統の「むつ」問題に関する対応は、本年四月、長崎県知事協力要請に対し、条件を付して、核抜き、修理受け入れやむなしの機関決定に基づきまして、今後の国、県の方針に対し重大な関心を持って注目しているところでございます。  顧みますと、本問題は足かけ三年にわたり、私ども長崎漁協組織を揺り動かした協同組合史にも残る重大問題であります。私たち漁民は、日本国民動物性たん白の過半を水産物に依存する食糧生産の一端を担い、国民消費者に豊かな食生活を約束し、水産物を供給するという国家的使命を果たすことに生きがいを感じているものであります。また、漁民みずから漁業によって生活を維持し、かけがえのないきれいな海と豊かな資源を大事にし、子々孫々に伝えることが漁民の義務と確信しているものであります。しかるに、高度経済成長のひずみは漁場喪失資源枯渇などのはかり知れない損失を与え、漁家生活を根底から破壊する取り返しのつかない結果になりつつあることはまことに憂慮にたえません。  原子力船むつ」も放射線漏れ事故という重大なミスを犯し、安全性に対する不安は解消されないまま、事もあろうに水産県長崎、被爆県長崎において修理する政府当局の姿勢に対しまして、いかに国家的事業といえども、きれいな海と魚を守るという生活防衛立場から反対を堅持してまいったわけでございます。その間、漁協組織をあげて陳情や抗議、海上デモ、また一万人大会を初めとする数回の決起大会、十一万五千名を超える署名活動など、あらゆる手段、機会をとらえまして漁民の心情を訴え続けてまいったわけでございますが、本年四月、県民の合意を得るべく、安全性研究委員会の答申を尊重した長崎県知事から慎重な協力要請を受け、再三にわたる知事との懇談の結果、確約事項を信頼し、五月の漁連の通常総会において、六つの条件と二つの確約事項を前提としましてやむを得ず受け入れることに同意した次第であります。  まず、六つの条件につきましては次のとおりであります。  一、佐世保修理受け入れ燃料体を取り外した後入港し、修理期間中においても、絶対に装荷しないこと。  二、燃料体引き抜きの確認及び修理期間中の修理内容の定時点検には、長崎県漁連代表または、その推薦者を当たらしめること。  三、修理期間について明示するとともに、修理期限到来日または、期間満了日前の修理完了日をもって、即日出港することを義務づけること。  四、放射能汚染のおそれのある一次冷却水を初め、一切の廃棄物は船外に放出しないこと。  五、長崎県内における母港設置を禁止すること。  六、政府と県並びに佐世保市が締結する協定書には、直接の利害関係を有する長崎漁民を代表して長崎県漁連代表を加えること。  以上の諸条件について、一から五項目までは知事も明確に了解し、六項目につきましては、政府及び市との合意が必要であるため、漁連代表を協定の当事者とするよう最大の努力を払うことを了承されております。  次に、知事との確約事項であります。  一、佐世保市議会の決定を受けた市長が、燃料体つき受け入れを表明していることについては、修理するよう働きかけ、燃料体抜き受け入れに一致させること。  二、二百海里時代を迎え、本県水産業の重要性は、ますます高まりつつあり、特に沿岸漁業振興に力を注ぐため、漁場造成、資源保護が強く希求されている今日、漁業を無視した企業誘致は十分チェックし、必ず地域漁民と話し合い、その同意がなければ誘致しないこと。  以上の事項についても知事は全面的に確約いたしております。これらの事項につきましては、知事との三回にわたる懇談、対策委員会における五回に及ぶ内部討議の末、四月二十八日の県下百七十八の漁協長会議を五月十六日の漁連総会において慎重審議の結果、提示された絶対要件であります。協議の過程におきましても、過去まる二年に及ぶ苦しい反対運動に純粋に取り組んできた漁民の熱情を思うとき、事ここに至っていかなる条件をも否定し、受け入れ絶対阻止貫徹を主張する組合長も多数いらしたわけでございますけれども、激論の末、了承を得た最低ぎりぎりの事項であり、一項目たりとも譲歩できないことを諸先生方に御理解いただきたいのであります。  長崎県下漁民は、みずから進んで受け入れることが本意ではなく、今日なお組織決定された時点における厳しい姿勢は堅持されております。これらの事項がゆがめられ、ごり押しされる事態が万が一今後発生するとすれば、再び絶対阻止の運動を起こすことを当時の総会においても約束しておりますので、改めて申し添えておきます。  「むつ」は事故発生以来約三ヵ年、いまなお大湊港に係留されていることは、原子力行政の漂流とさえ論評されております。そもそも科学的、技術的に、放射線漏れによる遮蔽構造欠陥もさることながら、それ以外にも欠陥があるのではないかという疑義は多くの専門家の方々も指摘されているようであります。まず、これらの疑問を解消するため、単に修理で終わることなく、青森県下の四者協定にある新母港選定を国民的合意の中で進め、基礎研究からスタートし、徹底した総合点検がなされ、欠陥を明確にすることが安全性に対する不安を解消するものと考えております。私たち漁民安全性に対する不安とともに、原子力行政の進め方に対する不満が反対の大きな理由でもありました。陸奥湾における強行出港、絶対安全を豪語したあげくの放射線漏れ、四者協定の不履行など青森県下漁民を無視した言動は同じ漁民立場から激しい憤りを禁じ得ないのであります。本件においても、黙秘のうちに進められた対馬三浦湾の母港化構想と計画の挫折、五十一年二月七日の抜き打ち修理要請、たび重なる陳情や汗と涙がにじむ十一万五千名を上回る反対署名を無視する姿勢など、漁民や地域住民不在の行政は、権力のごり押し以外の何ものでもないのであります。このような強引さがかえって漁民を硬化させ、抵抗に立ち上がらせた大きな一因であることを銘記すべきであろうかと思います。不信感が介在する以上、いかに中央の論理のみで修理安全性を力説されましても、何を好んで同じ青森県下漁民がそっぽを向いた「むり」を水産県長崎に持ち込むのかという、漁民が繰り返して叫んでいる声でございます。もうこれ以上海を汚されたくないという地方の生活実感にあふれた純粋な願いをともに考え、地域住民立場に立ったきめの細かい行政を熱望してやまない次第であります。  エネルギー確保が国民的課題であるとともに、二百海里時代の真っただ中にあって、国民の命と健康を守るため、水産資源確保に命をかけて働いている漁民が、安心して生産に打ち込める漁業環境づくり、水産業の振興を図ることもまさしく国家的命題だと確信するものであります。この調整を図ることが生きた政治であると理解するものであります。  以上でもって参考人としての意見を終わらせていただきます。
  10. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 次に、浜谷参考人
  11. 浜谷一梅

    参考人浜谷一梅君) 浜谷でございます。  私は、原子力船むつ」との関係は、昭和四十二年の九月から四十八年十月まで、収入役並びに助役として、つまり自治法でいう市長の補助機関としてかかわってまいりました。それで、ただいま申し上げましたように、四十八年の十月に退職いたしましてから、全く一人のむつ市の市民として、つまり私が生まれて育ってきたその郷土に母港を持つ一人の人間として、純粋の立場から、いわゆる先進国であるドイツ連邦共和国並びにアメリカ合衆国ではどういったような原子力船の運航をしているだろうか、あるいはそれに対応する、日本でいう市町村並びに漁民、あるいはドックで働いている労働者の方々は、どういったふうにそれを受けとめているであろうかといったことを、私自身の目で、直接個人で確かめてみたいと思いまして、退職しました翌年の四十九年七月から八月まで、まずハンブルク、そこのラートハウス、つまり市庁舎と申しましょうか、そこを初めとしまして、GKSS、日本でいう原研と事業団と一緒にしたみたいな組織でございます。これが「オット・ハーン」の運航と管理に当たっておりますが、そこ並びに造船所であるHDB、さらに漁業経済研究所、あるいはまた市民方々と、可能な限り私なりにどん欲に取材活動をしてまいりました。非常に幸いなことには、七月の十八日、北海に面するあのタックスハーフェンから原子力船「オット・ハーン」に体験航海する機会を得まして、ハンブルクまでの約六時間、実際に運航しながらその炉の一番下まで私人ってまいりました。全く位階勲等も何もない私にとっては本当に幸せだった体験でございます。その後アメリカ合衆国へ渡りまして、商務省のMARADから直接アレンジしていただきまして、ジョージア州の「サバンナ」、現在リタイアしておりますその「サバンナ」にも乗ってみることができました。あるいはさらに一番長うございましたが、テキサス州のガルベストン、そこでは、非常にエビで有名でございますが、そこの市長さんあるいは漁業会社の方々、さらに漁民の方と、できるだけこれもいろいろな手段を使って取材活動をしてまいりました。  先ほど申し上げましたように、全く私の良心、自分に言って聞かせるための取材活動でございましたものでございますから、これをどなたに報告しなきゃならない、だれに頼まれたといったこともない、そういった旅行でございましたが、帰ってきましてなるほどあの方々は、両国は、自分たちの国が生きるためにああいった開発を堂々と進め、しかも、特にハンブルクにおきましては、あすこは、ラートハウスでいただきました資料に基づきますと、社会民主党の非常に強いところであります。その労働者の方々が自分たちが、非常に、陸奥湾どころではございません、非常に錯綜したハンブルクの港で、必要に応じては約一〇〇%に近いみたいな出力上昇試験なんかも自分たちの責任でやりますよと、はっきり私はこの耳で聞いてまいりました。そうしてなるほどそうかと、同じ人間でありながら、日本はどうなのか。もちろん、外国の姿をそのまま日本国にこれを適用するなどとは、諸条件が違いますから、そういった論理の飛躍はいたしませんが、しかし、一九八〇年からやがては九〇年、二十一世紀になる、その際に、日本国世界の海運の孤児になってはいけないんじゃないかというふうなことを自分で考えながら、やればできるんじゃなかろうかなというふうな気持ちを抱いてきたのでございます。そうして帰ってみましたら、私の郷土の本当のすぐそばにあの原子力船むつ」の大騒動でございます。私は漁民にも非常に友達が多うございます。また、役所にいた関係で乗組員の方々もよく知っております。もしあのとき、私が漁民であったならばどうしようか、やはり同じことをしたかもしれません。なぜなればあのときはホタテが最盛期でございました。ホタテのおかげで家族と離れたああいった、つまり、出かせぎもことしはもうやめてもいいよというくらいまで陸奥湾の漁民たちが考えて、その人たち原子力に対して無知だとかどうこうと、あるいは科学への挑戦だとかと言ったって、これは現代では最も進んでいる科学をわれわれにすぐ理解しろと言ったってこれはなかなかむずかしいと思います。一方考えてみますと、じゃ自分が乗組員だったらどうだろうといった場合には、団法——これは御存じのとおり全会一致でもって決まった団法、それが時限立法でございます。そのタイムリミットに逆算したならばあの時点でもってどうしても出港せざるを得なかったろう、私が乗組員だったらやはり出港したであろうと私自身はそう考えております。であるならば善意の人々と善意の人々が何でああいった血みどろの闘いをしなきゃならないのだろうか、もう少し日本人としては知恵がなければならないんじゃないかといったようなことを自分では考えたのでございます。  そこで、私は、言うまでもなくナショナルプロジェクトは住民のコンセンサスが必要である、そのためには民主主義は時間がかかると思います、そういったような大前提なしにああいった問題が惹起し、騒動となり、そうしてまたお互いの心を、善意の人と善意の人同士が心を傷つけ合わなきゃならないといったことは非常に遺憾である、原子力行政から土俵が別のところへ移ってしまって、そこで非常に、勝った負けた、あるいはそういった傷つけ合うようなことをしては、原子力行政の、あるいは原子力開発のために非常に遺憾である、日本国民として原子力平和利用に反対する人はいないと思います、それだけに非常に遺憾であると、私はそう思っております。しかも、その解決策としましては、非常に高度な政治的な立場だったかもしれませんが、世にも不思議な四者協定なるものが出現している。これにつきましては、時間の関係で、もし御質疑がありましたならばお答えいたしますけれども、そういったような解決方法しかなかったのかというふうなこと、それらをいろいろと考えてみて、もう一度われわれは最初の立法の精神、それに基づき、さらに定係港を初めてむつ市に決めたあの原点に立ち返って、本当にその原子力船開発のために日本国の総意として時間がかかってもいいからがんばっていかなきゃならない、そういった意味推進者の一人であるということを申し添えまして、参考人としての意見を終わらしていただきたいと思います。  以上です。
  12. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 次に、菊池参考人
  13. 菊池漢治

    参考人菊池漢治君) 菊池でございます。  ただいまこの委員会においていろいろ申し上げることを整理をしましても、なかなか申し上げたいことが多くて整理しかねる状況でございますが、時間の範囲内で考えておりますことを申し上げて、御参考にもしなり得れば大変幸せだと存じます。  「むつ」が放射線漏れを起こしました際に、先ほどどなたかのお話にもございましたように、「むつ」の漂流は原子力行政の漂流である、その象徴であると、こう言われました。このことを契機として原子力行政を本来の姿に返し、平和利用を進める上での確固たる基盤を築く一つの足がかりにしようということが、当時の私は一致した国民的な考え方であったろうと思います。そのことの最も中心的なものは、原子力行政に対する国民的な不信、この不信の解除、信頼回復ということが最もまた中心的な命題であったろうと、そのときを追憶いたしてこう考えているのでございます。そういう観点からしますと、四者協定の締結は、政府代表である当時の総務会長である鈴木善幸先生の提案を地元が受け入れたという形で結ばれたものでございます。この四者協定を、国自体が責任を持った一当事者として結んだものが完全に履行されることによって、私たちは信頼回復の第一歩が実現すると、その当時こう判断をいたしました。  なお、協定の締結に際して一つの問題としてここで申し上げておきたいのは、鈴木総務会長が政府代表として現地に参りました翌々日に、三ヵ月間で撤去をするから入港を認めてくれという御提案でございました。私はその提案のあった翌日に鈴木総務会長とお会いする機会がございました。その際に、いかなる方法を考えても、いかなる状況判断をしても、三ヵ月での母港撤去ということはきわめて因難であろう、さんざんいままでうそを言っているとか、説明がなされないとか、不信感が渦巻いているこの問題解決に当たって、せめて総務会長だけでも私はうそを言わないで済むようなそういう条件をもって問題の解決をしてほしいと、そう申しました。この三ヵ月ということ、期間については漁業関係者と十分な話し合いの上で可能な期限をもって締結をすべきであると、こう申し上げました。その後、漁業関係者との話し合いの上で、六ヵ月間で新定係港を決定し、二年半をめどとして母港を撤去する。それで、その撤去というものについても、鈴木総務会長と私との話は、船が出ていくことは撤去ではない、陸上施設をもひっくるめた撤去であり、特に地元採用の職員、その他の跡始末というものが最も大きいものになるであろうということまでも申し上げて、その後、四者協定というものが結ばれました。今日、この四者協定がなおまだ実施を見ておりませんことを私は大変原子力行政の将来のために心配しているものでございます。  九月の青森県議会定例会において、竹内知事が、原子力平和利用は将来とも進めなければならないであろう、そのためには四者協定を守らなければならないし、守ってもらわなければならない、重要な変更を加えることは将来に禍根を残すという御発言をされておりますが、私もこの点については全く同感とするところでございます。四者協定の六ヵ月以内に新母港を決定するという取り決めに対しまして、その期限直前であります昭和五十年三月二十七日、八戸のホテルに当時の科学技術庁の片山政務次官がみずからおいでになり、鈴木総務会長、竹内知事、杉山県漁連会長と私と四人を呼びまして、いま統一地方選挙が行われておるがこれにこのことを絡めることは将来非常に問題があるので、四者協定の新定係港決定の期日を統一地方選挙の終了後まで待ってほしい、これはもう後発表するだけである。そして、私たちに新定係港の建設スケジュール、その他までも示して了解工作を行いました。新定係港には、私たちむつが定係港である場合にはドックの必要性も要請しておりましたけれども、ドックをも兼ね備えた新定係港構想を示したのでございますが、その後、統一地方選挙が終了後は何の音さたもなく今日まで経過をいたしております。二年六ヵ月後の撤去につきましても、最後に私たちに話がありましたのは、ここにおいでになります安藤先生の安藤委員会燃料棒抜きの諮問をしたので、その結論が出るまで待ってくれ、撤去を待ってくれ、こういうお話でございまして、七月末に報告書が出ましたけれども、以後青森県に対して何らのあいさつも、何らの意思表示も、科学技術庁からなされておりません。このようにみずから提案して決めたことも守られないような状況下で、このきわめてむずかしいとされる原子力行政原子力平和利用というものがますます国民の手から離れていくことを私たちとしては最も心配をするものでございます。先ほど佐世保井上議長さんからも御不満の御意向がございました。私たちも同じように、政府の取り組みに対する姿勢が私たち地元との間の人間関係と申しましょうか、関係をきちんと整理しながら、きちんと保っていくという姿勢が欠けている、そのことが信頼回復をいよいよ困難にしていっている、このように思われてなりません。四者協定の実施につきましては科学技術庁長官機会あるごとに守るというお話をしているようでございますが、これについてもどのように守っていただくのか。すでに期間は過ぎております。そしてこれが経過すればするほど、佐世保の議長さんのお話のように、われわれに対する背信行為がそのまま長崎県へもはね返って、あるいは長崎県以外のところにもはね返っていくという状況になっていくことは必然であろうと思います。  なお、新市長が母港存置ということから科学技術庁がそのような方向をも検討するやのお話がございます。しかし、それについても科学技術庁長崎県にもいろいろお願いをして、聞くところによりますと、瀬戸内にもいろいろ話をしていると聞きますが、そういうようなものをきちんとしない中での取り組みこそ私はいよいよ問題を困難にしていくだろうと、こう考えるものでございます。  なお、青森県漁業関係者の意向が最近ずいぶん変わったような報道がなされているようでございますが、先ほど住江長崎県漁連の会長さんのお話にもございましたように、漁業関係者の意向は今日なお従来と変わりがない状況にあるということを同時に私は申し上げておかなければならないと存じます。今後原子力船の問題を解決するためには、初心に返ってもろもろの未解決の問題をきちんと決めながらものを進めていく姿勢を、もう一度打ち直して再出発する以外にいま方法がつかないのではなかろうか。それほどまでにいま非常に荒廃した不信をいよいよつのらせる、そういう状況にあろうかと思います。ひとつ先生方には、原子力行政を正しい方向に国民の理解と協力をもって進められるにはどうすべきか真剣にお考えいただいて、私たちの意のあるところをお察しくださいますならば非常に幸せだと存じます。  時間が過ぎましたので、以上申し上げまして、最初意見開陳にかえさしていただきます。
  14. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) ありがとうございました。  以上で、各参考人からの意見の開陳は終わりました。  それではこれより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  15. 源田実

    ○源田実君 自由民主党の源田実でございます。  まず、安藤先生にお伺いしたいと思いますが、エネルギー問題は現在の人類が抱えておる核戦争の阻止とエネルギー問題の解決、人口問題及び食糧問題、こういうこの人類の生存にかかわる大きな問題の中でもほとんど他のすべてに関係する重要な問題であろうと思います。ところがいままでいろんなことからエネルギー問題の将来が必ずしも明るくない。現在、ことに日本においてはエネルギーの大半を石油に依存しておる、しかもその石油はほとんど九九%以上を輸入に依存しておる、こういう状況であります。もちろん先生方十分御承知のことでありますが、その石油が、われわれがいろんな資料から見ると、今世紀末にはいままでの確認した埋蔵量はほとんど底をついてしまう。もちろん未発見のものも出てくるでしょうから若干は延びるかもしれないけれども消費量がやっぱりいまのままでいけばふえていく。そうすると、石油が底をつくのはもう後二十年か三十年の間にほとんど底をつくのではないかと考えるわけなんです。そうすると、これに対してどうしてもわれわれは代用エネルギーを求めなければならない。こうしていままで言われておるこの代用エネルギーの一番喧伝されておるものは核エネルギーであります。ところがその核エネルギーの利用に関しては、日本ではもちろん被爆国である関係もあり、非常に反対が多い。そうして諸外国でもやはりある程度反対があるわけです。しかし、ここに核エネルギーが一番利用しやすくて、まずこれを利用するのに最も有利な条件を備えるものはもちろん陸上の発電所、それからもう一つは舶用機関であろうと思うのです。船は何としても独立したエネルギー源を持たなければならない。飛行機も同様なんです。自動車も同様である。あれは発電所から電線を引っ張って電車みたいに動くわけにいかないんですね。ことに飛行機なんかもう絶対に電車にはならないのです。こういうものはどうしても独立したエネルギーを持たなければならない。ところが飛行機に原子力発電なんというのはちょっとこれはいまのところ無理だろうと私は思うのですよ。私は飛行機乗りで、とても無理である。一番まず動くもので最も使いやすいのは、まあ漁船なんかちょっと無理だ。ところが商船、相当大きな船、こういうものが、要するに舶用機関に利用するのが一番手っ取り早い問題であり、先ほど先生のお話では、いま石油消費量の一〇%ぐらい、あるいはまた一五%ぐらいまでが舶用に振り向けられるというお話でしたが、私は、舶用が一番先頭を切ってこの問題を解決していかなきゃいけない、その意味において「むつ」の問題をわが日本はこれを最もいい方向に処理していかなきゃならないという基本的な考えを持っております。この点に関しまして、舶用機関は将来一番先に全面的に核エネルギーに転換しなければ、将来商船も軍艦も何もかも一切動かなくなるというのは目の前に見えておるような感じがするわけであります。何かほかにこれに対する代用エネルギーのお考えがあるかどうか。それから、そうでなければこの舶用エネルギーには核エネルギーを使用していく方向にあらゆる施策を進めていく必要があるかどうかということについて、ひとつ先生の御所見を伺いたいと、こういうぐあいに考えます。
  16. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) ただいまの源田先生のお考えでございますが、代替エネルギーと申しましても、いまと違った形態のものは多少あるかと思いますが、いずれももとをただしますと化石燃料と申しますか、たとえば液化天然ガスとか、あるいはまた昔に戻って石炭をたくというようなこともエネルギー源として考えられますが、これとても非常に枯渇しますし、それぞれ、石炭なんか特に公害問題などに問題がございますので、多分石油が非常に枯渇した時代には一番考えられるのはやはり原子力エネルギーだと思います。これは陸上においても同じでございまして、ちょっと御質問のあれからそれるかもしれませんが、−陸上で太陽エネルギーを使ったらとかいろいろございますけれども、家庭のお湯を沸かすというようなことは太陽エネルギーでもできますけれども、たとえば百万キロの太陽発電所をつくろうとしまして、日本の緯度で熱効率が一〇%ぐらいとしますと、百万キロワットの発電所をつくるには大体五十平方キロメートルぐらいの面積の太陽熱を集める必要があるわけです。現実にいま福島に東京電力の福島第一発電所というのがございますが、これは約二平方キロメーターで五百万キロの原子力発電をやる計画になっていまつくられつつあるわけですが、そういうことを考えますと、太陽エネルギーというのは非常に薄いエネルギーでして、こういうものを集めて船を動かすというようなことはちょっと考えられないと思いますので、やはり大型の船は原子力になると思います。現在動いています大きな船、商船で申しますとコンテナ船が大きなエンジンを積んでいるのが多いんでございますが、十二万馬力という船が外国に出現しておりますし、日本が多くつくっている五万総トンクラスで、二十フィートコンテナに換算しまして二千個ぐらい積む船が盛んにつくられておりますが、これが五万総トンぐらいで多分八万馬力ぐらいのエンジンを積んでいると思いますが、そのぐらいの大きさになりますと、ほかの反対とかその他で港に入れないというようなことがないとすれば、経済的に十分引き合うような船が現実の在来船としてございますので、そういう船が原子力船にかわるというようなことはわりに近い将来考え得るんじゃないかと考えております。  これでお答えになったかどうかわかりませんが……。
  17. 源田実

    ○源田実君 この舶用として、原子力以外にいま何かいい手が考えられるわけでしょうか、石油を除いて。
  18. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) いまお話ししましたように、液化天然ガスとかあるいはプロパンガスとか、石炭とかいうようなことは考えられますし、きわめて特殊になれば水素とかいうようなことも考えられますが、最も手っ取り早く代替になるものは私は原子力だと考えます。
  19. 源田実

    ○源田実君 実は、石炭ならばアメリカ大陸あたりは数百年、まあ四百年か五百年ももてるというんですが、この問題は、化石燃料をたとえ液化して使うとしても、大気汚染というものが話にならないほど大きなものが将来出てくるというんで、この原子力発電によってエネルギーを得るとか、あるいはそれを推進力に使うとかいうような、ああいうように大気汚染を余りやらないで済むようなぐあいにはいかないと私は素人ながら考えておるんですが、それはどういうぐあいにお考えになっていますか。石炭の問題。
  20. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) 石炭は、たとえばこれは陸上ので比べますと、大ざっぱでございますけれども、百万キロワットの発電所をずっと運転続けると、多分二百万トンぐらい石炭が年間要るかと思いますが、それですと灰が、いい石炭を使っても三十万トンぐらい出るとかいうようなお話でして、非常に公害という面では大きな問題であろうと思います。  それから、石炭によっては——地球の中には御承知のように天然の放射能を持ったものがたくさんあるわけですね、ラジウムとか、あるいはこういう国会ですと御影石でできておりますが、多分普通の建物より放射線は少し強いと思いますが、石炭の中にはラジウムのような、あるいはラドンとか、放射能を持ったものが非常に含まれておりまして、それが煙になって出ていくというのは、原子力発電所が定常運転をしているのよりもよけい放射能をまき散らすという調査をなさった方もあるぐらいでございまして、そのほか、蒸気機関車は昔なつかしいので、皆さん非常にいまの人は快く受け入れておりますが、昔実際に乗ってみますと非常に煙が——大阪から東京まで来ると顔は真っ黒になってしまうと、そういったようなことがございまして、これを大量にやりますことは、公害の面からいきましても非常に慎重を要するんではないかと考えます。  エネルギー問題は、余り一つに偏らないで、なるべく使えるエネルギーは全部使うようにした方が、われわれの人類のエネルギー問題解決、その危機が来るのが少しでも長くなるわけですからよろしいわけでございますけれども、石炭の問題にはそういった宿命がつきまとうんじゃないかと思います。  それから、いま世界で購入できる石炭というのが非常に少なくて、大体自国消費というのが各国とも原則になっておりますが、日本世界で売っている石炭の多分半分以上を買って、主として製鉄に使われておりますが、多分製鉄だけで六千万トンぐらい使っていると思いますが、そのほかの発電に使う量はそれに比べますと一けた下で、余りたくさん石炭だきの発電所ができると、それはそれで問題が生ずるかと思います。
  21. 源田実

    ○源田実君 次には、核燃料を積んだまま改修が安全に行われるというのが、改修技術検討委員会では出ておると思っておりますが、ところが、長崎県の研究委員会では、燃料抜きでやらなきゃならぬということに方向が出ておる。これについて先生の御所見をちょっと伺いたい。
  22. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) 先ほど述べましたが、長崎県のを拝見しますと、本文というよりは提言というところに燃料を抜いた方がいいというふうに書いてあるように思われますが、その本文の中では、たとえば制御棒駆動装置の試験でございますね。これは炉の中に沈んでおります制御棒を、一本ずつしか動かしませんが、抜いてみて、それが動くかどうか調べる、こういうような試験でございますけれども、一本ぐらい抜いても全く安全であるというようなことが長崎県の報告には書いてあるわけでございます。それで、それにもかかわらず抜いた方がよろしいと、こういう御意見なんですが、われわれが抜かなくても大丈夫だということの前提には、「むつ」には十二本制御棒がございますが、それをすべて炉心に装入したままで作業をやる、これハ絶対に動かさないと、そういうことでやりなさいという提言になっておりまして、特に臨界に達するというふうなことは全くおそれがございません。それから、いますでに入っているものを特に慎重に扱わなくちゃいけないんですが、「むつ」の場合には、予備の燃料集合体ですね、これは濃縮度が違うのが二種類あるわけでございますが、それぞれ一体ずつ予備があるわけでございまして、そういうものを慎重に抜けばもちろん問題はないんですけれども、それをいじくり回すということはしない方がよろしいと、こういうこともございまして、われわれの委員会としては、私個人の意見もそうでございますけれども、ほとんど全部の委員燃料を抜くことに賛成された委員は一人もございませんで、全員一致で燃料を抜かなくても十分安全にできると、こういう結論をすでに去年出しております。  で、その後長崎県からそういう提言がありまして、長崎議会で、燃料を抜けば受け入れると、こういうようなお話になりました後、運輸大臣と科学技術庁長官から、われわれの委員会で、じゃ今度抜くことについて検討せよと、こういう御命令でございましたので、ことしになりましてから、もし抜くとすればこういう手順でやれば安全に抜けますよと、これはもちろん抜いてまたもとへおさめるという前提で検討をいたしまして、どうしても抜くということでしたらできないということではございません、そういう結論を出して、この前大臣に答申したわけです。ですから、どちらでもできることはできるんですが、わざわざ抜く必要はないというのが前の結論で、今回の結論にも、忘れないように、それもあわせて申し上げたと、そういうことでございます。
  23. 源田実

    ○源田実君 もう一つお伺いしたいんですが、それは、今度事業団法案衆議院で修正されまして、三年後には研究所をつくるというような方向にいま向いておるわけですが、これに対して、要するに事業団研究開発機関に変わっていくということに対する先生の御所見をひとつ伺いたい。
  24. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) そういう方向は大変望ましいことで、現在の原子力船開発事業団は、開発事業団という名前でございますけれども、ほとんど開発的な研究はやれないような仕組みになっているように——細かく言うと違うかもしれませんが、大ざっぱに申しますと、新しい開発というのはやれないような仕組みになっておりまして、とにかく第一船——第一船と申しますか、「むつ」に関してのことだけをやる、で、将来の原子力船時代に備えて新しい研究をやると、そういったことはできないような仕組みになっているように了解するんでございますが、これが研究開発機関に移りますと、たとえば、日本でございます動燃事業団とか、それから原子力研究所、こういうものを合わせたような形になって、新しい舶用炉の開発あるいは研究、そういうものに関して永久的な機関ができれば大変望ましいことだと考えます。
  25. 源田実

    ○源田実君 次に、浜谷さんに一つお伺いしたいんですが、先ほど四者協定についてちょっと御所見があるようなお話でした。それで、時間がないのでお話しにならなかったと思うんですが、いまその四者協定についてどういうぐあいにお考えになっておるか、ちょっとお聞かせを願いたいと思います。
  26. 浜谷一梅

    参考人浜谷一梅君) ただいまの源田先生の御質問にお答えいたします。  私は、先ほど四者協定は世にも不思議な四者協定だと言いましたが、その理由は五つございます。  まず第一点は、あれは暴力に屈服した協定であるといったことであります。私は、漁民方々の善意は、これは先ほど申しましたように十分わかります。しかしながら、昭和四十九年の九月十六日、青森県漁連が入港を阻止するために、土のう六万俵を港に投下して、港の機能を破壊するといった実力阻止を決定しております。これは、個人個人の善意にかかわらず、客観的に見れば暴力であると私は思います。これが第一点。  それから第二番目、確かに私の知っている範囲内におきましては、原子力船むつ」は開発事業団がオーナーであるはずでございます。あるいは船長以下職員の方々もすべて事業団方々でございます。そのオーナーが全然入ってない協定といったのは、これがおかしい、これが第二番目でございます。  それから、第三点でございますけれども、さかのぼって昭和四十二年、むつ市が国からどうだろうと相談を持ちかけられた際には、一応民主的なステップを踏んで市長が判断した。最終的には昭和四十二年の十月二十六日に、むつ市にあります母港議会から答申を得て、そしてやはり住民としては受け入れ賛成だなという判定のもとに行ったのでございます。しかるに、あの内容母港の撤去を内容とするものでございますが、そういったような民主的なステップを踏むことなしに協定が結ばれたといったことば民主国家で果たしていいのであろうかといったことでございます。  それから、第四点でございますが、漁民は、自分たちの方からお金は全然要求してない。約十三億といった金が報道されたとき、私自身が市なり県なりに電話をかけてみました。算定根拠は何だろう、だれもわからない。後で見ましたら、それらはほとんど当然漁業構造改善事業等で手当てすべき筋合いのものである。にかかわらず、何か迷惑料みたいな金でもってあのお金を先に出したといったことは、考えてみれば、まさに愚民政策であると私は言わざるを得ない。極端に言えば、徳川時代の農民政策に匹敵すべきものである。  それから、私はここに持ってきておりますが、形式上の問題でございます。これは四者協定のコピーでございますが、これは確かに「政府代表・自由民主党総務会長鈴木善幸」、あるいは「青森県漁業協同組合連合会長杉山四郎」、「青森県知事竹内俊吉」、「むつ市長菊池漢治」とありますが、この判こは、それぞれ三人は私印でございます。そして公印はむつ市長一人でございます。はっきりしています。先般行われましたむつ市長選挙におきまして、第一の公約としてむつ市の母港の存置を訴えたその候補者が当選した。その数字そのものがいわゆる存置派の数字であるとはストレートに考えないにしましても、この数年間の間でもって、やはり母港が必要だろうというふうなことになりますと、何らかの形でこれは改定せざるを得ない。その際に、果たして日本国の「政府代表」、こうありますが、どなたにどういった判こをもらって更改契約をしてよろしいのか、いまだにわからないでいる、といったような五点から、私は世にも不思議な四者協定だというふうに言った次第でございます。
  27. 源田実

    ○源田実君 どうもありがとうございました。  終わります。
  28. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 私は、日本社会党の吉田正雄です。大変きょうは御苦労さまでした。  最初安藤先生にお尋ねいたしたいと思います。  先生の専門的分野についてお尋ねいたしたいと思うのですが、たしか、原子力関係、特に炉の安全構造であるとか、あるいは材料工学的な分野、こういう方面を専門にされておるんじゃないかというふうにお聞きいたしておるんですが、その点、よろしゅうございますか。大ざっぱな点でよろしいのですか、そうですか。
  29. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) 大体大ざっばに申しますと、そういうことでございますが、冒頭に自己紹介いたしましたように、私は船舶工学科を卒業しましたので、船のことは一通り——船舶工学科の助教授もいたしておりましたし、それからその後、生産技術研究所というところに参りまして、溶接工学、いま船のこともやっておりますが、主として研究しておりますものは、原子力プラントの強度関係ですね、壊れるか壊れないか、そういった関係が専門でございます。
  30. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 次に、昭和四十九年の九月一日に発生した例の「むつ」の放射線漏れ原因を調査するため、同年十月二十九日の閣議で、「むつ放射線漏れ問題調査研究委員会を設置することが決定をされて、十名の委員が委嘱をされ、さらにその後、専門的事項調査のために三名の専門委員が委嘱をされて、十一月二十二日の第一回委員会で大山氏を委員長に選任して、総計十三回の委員会、あるいはむつ市における現地調査などを行って、五十年五月に報告書が提出をされたわけです。このいわゆる大山報告書については御存じでしょうか。
  31. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) 出たことは知っておりますが、その中身は、いま一字一句は覚えておりませんが。
  32. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 原子力委員会は五十年三月十八日に原子力船懇談会を設置しましたが、安藤先生もその構成員の一員に名を連ねておいでになりますが、間違いございませんか。
  33. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) 間違いないと思いますが、原子力船懇談会は何回もありまして、最近は大抵連ねておりますので……
  34. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 いいですか、私が言ったのは、「むつ」の放射線漏れが四十九年の九月に起きて、そしてその調査委員会が設置をされたわけですね。そしてその翌年、五十年の三月につくられた原子力船懇談会——これ多分最初だろうと思うのですがね。
  35. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) それは最初ではございませんが……
  36. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 原子力船むつ」に関しては、この放射線漏れの直後の委員会です、懇談会です。
  37. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) 多分入っていると思います。
  38. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 その「設置目的」によりますと、当該懇談会は、原子力船むつ」の放射線漏れ問題の事態にかんがみ、わが国における原子力船開発の今後のあり方、原子力第一船「むつ」の今後の措置、日本原子力船事業団のあり方等について抜本的な見直しを行うために設置するとされたものでしたが、間違いありませんか。ここにありますがね。それを事務局の方、渡してください。——おわかりになりましたでしょうか。
  39. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) 名簿を見ましたら、私の名前が載っております。
  40. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 載っておりますですね。  で、そこの懇談会のところには、いま申し上げたような目的が書いてございますが、それもよろしゅうございますね。
  41. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) はい。
  42. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 懇談会は、四月の十八日、五月十六日、ずっといって、九月の十一日まで七回にわたって開催をされております。それは最初の冒頭に、そこのところに日程が書いてございます。名簿の後ですね。よろしゅうございますか、「経過」というところで。
  43. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) はい。
  44. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 ところで、先生は何回ほど出席されましたでしょうか。
  45. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) 何回と申されますと、記憶にございませんが……
  46. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 記憶が不確かなら結構ですが、でも大体どれくらいというふうに思っておいでになりますか。熱心に出席されたと思っておいでになりますか、それとも、ああ、こういうものもあるか、という程度出席をされましたか。余り記憶にないところを見ると、どうなんでしょうかね。おおよそでいいんですよ、半分くらいかなとかですね。
  47. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) まあ、そのぐらいは出席していると思います。
  48. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 で、審議に際して——そのところをごらんになっていただければわかります。一々いきなり言われても、人間の記憶というのは定かでありませんから。二ページというところなんですが、二ページのちょうど中ほど、「当懇談会は」というところがございますけれども、そこのところで、審議に際して、原子力第一船の今後の措置については、先ほど申し上げました「むつ放射線漏れ問題調査委員会の調査報告、いわゆる大山報告と言われておりますけれども、この大山報告が、そこに書いてあるところを見ますと、この報告参考資料として提出をされ、それを参酌しながら、報告書をまとめて、同年九月十一日に原子力委員長あてに提出された、これは提出をしたことになっているわけですね。  で、この大山報告書が、この当該懇談会の審議をする際の非常に重要な参考資料になっておりますし、技術的な検討についてはこれが非常に大きな参考になっているわけですが、この報告書は当然審議委員として配付もされておりますから、十分目を通されたと思いますが、妥当なものと思われますか、どうですか。
  49. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) その大山委員会自身は、放射線漏れの詳細については、委員会自身ではそれほど詳細に検討されなかったと私は承っております。そして、私が大山委員会に一度だけ、参考人か何か知りませんが、呼ばれまして、その前に行いました、われわれの方で調べました、「むつ」がまだ漂流しているときから委員会を開きましたが、そのときに、多分この「むつ」の放射線漏れ技術的なことは、いま調べられることではこういうことで……
  50. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 その放射線漏れのことば聞いていないんです。
  51. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) いや、大山委員会のことを聞いていらっしゃるので、そのわれわれの……
  52. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 私の質問したことに答えてください。懇談会の審議委員としてあなたは参加をされて、この報告書参考資料として出されて、そして懇談会はこれを参考資料として参酌をしてと、こう書いてあるわけですよね。したがって、これが非常に重要な参考資料になっているわけですよ。したがって、この調査報告書は妥当なものと思われますかと、こう聞いているんですよ。一々細かい具体的な内容は聞いてないんですよ。
  53. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) ちょっと直接じゃなくてお答えしたいんですが、いまの技術的な問題についてとおっしゃったので、その放射線漏れ技術的な部分に関しては、その前にわれわれの方の委員会がやりました、いまの委員会とは違いますけれども、そのときも——通称安藤委員会と言っておりましたが、そこで放射線漏れの実態の報告をしまして、大山委員会技術的なことに関しては……
  54. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 聞いておらないのは答えないでください。いま安藤委員会のことは聞いておりませんから。私の聞いたことに答えてください。よろしいですか。
  55. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) はい。
  56. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 聞かないことに答えないでください。
  57. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) ですけれども大山委員会の……
  58. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  59. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) じゃ、速記を起こしてください。
  60. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 参考人は、説明を求めるときには求めますから、その説明には答えていただきたいと思いますが、質問以外のことは答えないでください、時間がありませんから。  じゃ、次に入りますが、大山報告は次の点を指摘しております。そこにあったら渡してください。
  61. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) 何ページでございますか。
  62. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 いまこれから言います。  まず第一に、事業団開発体制について、報告では次のように述べております。四十一ページの九行日あたりです。「一般には」というところがございますね。「一般には、実験などを伴う開発研究においては、前任者との細部にわたる完全な引き継ぎは難しい場合が多い。特に時間的制約のもとに開発が行われる場合には、不十分な検討により出されたものであっても、一度出された結論は必要以上に信用されやすく、あらためて再吟味することは、比較的行われ難いと思われる。このことからも前述のように責任者または担当技術者がしばしば交替したことは好ましいことではなかった。また、事業団発足の時点において、それ以前に日本原子力船研究協会などで行われた調査研究をそのまま引き継いで実施することが基調であったことは、昭和三八年八月に発足して、昭和三九年一〇月基本設計完了、建造契約、昭和四二年初め進水、昭和四四年三月引渡し、昭和四六年解散という事業団の当初の性急な予定がそれを裏付けている。」と。さらに四十三ページに参りまして、この下の方ですが、「昭和四九年末までの事業団は、原子力船開発プロジェクトの全体的な推進体制として、必ずしも十分であったということはできない。」ということは、そもそも事業団が発足をした当初の経過から、まだその前にもずっと書いてあるんですけれども結論としてこの大山委員会はそういう報告をしているわけですね。この点についてはどういうふうにお思いになりますか。長く要らないんです。大体適切であったとか、大体指摘どおりであるとか、こういう程度で答えてもらいたいと思うんです。
  63. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) 大体でお答えしますと、時限立法であったということから、終身雇用制のほかの社会と違いまして、そのプロジェクトの最初から終わりまでずっと勤めるというような方が少なかったというような点で、ここに指摘してございますが、まあそういう点もあったかと思われます。
  64. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 その結果、ただいまも論議になっておりますが、舶用炉については——二十八ページを開いていただきたいんですが、上から五行目のところです。「最初から、舶用炉については国産とする方針が打ち出された理由には、原研のJRR−3が国産に成功したことと、舶用炉は商用発電炉に比較して小型で、技術的に容易であるとする先入観があったこと、および原子力船懇談会が米国の舶用炉を検討して国産化可能と判断したことなどがあげられる。しかし、原理的には可能であっても工学上の問題は残る。そこで、陸上に同型炉をペアで建造すべしとする意見や、実験炉あるいは原型炉を経て、開発を段階的に進める計画も示されたが、いずれも、結果的には見送られた。」と、この点は間違いないわけですね。
  65. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) 結果的には陸上のものはつくられなかったので、まあ多分これは予算の関係だと思いますが、理想的にはそういう段階は経る方が理想であったとしても、現実にばこういうような予算は通らなかったんじゃないかと思いますが……。
  66. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 次に、四十四ページを見ていただきたいのです。四十四ページの中ほどからちょっとまた下になりますが、「舶用炉には特に重視すべき固有の問題がある。例えば負荷変動に対する追従性、船の動揺に伴う特性の変化などであるが、重量、重心位置およびスペースに対する制限から遮蔽も特記すべき問題の一つと言える。これらを明確に意識し、第一船の場合は特に成功するとは限らないという警戒感のもとに、その研究開発に継続的な努力を払うべきであったが、そうした心構えが十分であったとは言い難い。遮蔽設計に限って言えば、分割発注の場合重要な一次遮蔽の外での線量、つまり二次遮蔽のための線源の質と強度を厳密に査定して設計したかどうか疑わしい点がある。」と、こういう指摘がなされているわけですね。この点についても、これも細かいあれは要らないんですが、大体こういう指摘が当たっておるかどうか、大体の言い方でいいんですが。
  67. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) この当時の遮蔽計算が多分現在より進んでおりませんで、現在計算しておりますような二次元の遮蔽計算コードというようなものが日本で利用できなかった時代だと思われまして、世界的にはどこかであったかもしれませんが、日本では使われなかった状態で計算しました——そのもとを計算したと思われますので、多少不十分であったということはあり得るかと思います。
  68. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 いまの参考人のおっしゃっていることも、その後にずっと書いてあるのです。その次のページに、「当時すでに、このコードでは計算に乗らない現象さえ認められたにもかかわらず、こうした不十分な点、不明確な点に設計段階でどう対処するのか、はっきりした方針を持たずに進んだ疑いがある。すなわち、計算に乗らない点については、むしろ、直接実験で補うという姿勢とみえるが、その目的としては十分な実験を行ったとはいい難い。」と言って、やっぱり指摘をしているんですね。  その点でさらに次に伺いたいと思うんですが、四十七ページを開いていただきたいと思うんですけれども、三行目です。「実験の企画・実行には熱心であったが、その結果を炉設計に取り込むということには必ずしも熱心であったとは言い難い。」と言われておりまして、そこをずっと四行ほど飛ばしてもらいまして、「前にも」というところがあります。「前にも述べたように遮蔽効果確認実験は、実物のフルモックアップ(完全な模擬試験体)によるものでなく、計算コードのチェックが主目的であった、この場合、そのコード自身が初期のコードだったのであるから、それをチェックすれば終わりというものでなく、後日進歩したコードが開発された時には、実験の見直しということを考えておくべきであったし、実験体系と実際の体系との相違点についても、処置の方針を立てておくべきであった。」云々とずっと参りまして、次のページを見ていただきまして、「JRR−4における遮蔽実験で、中性子ストリーミングの現象が一応とらえられ、実験の効能の一つが表われていたにもかかわらず、その成果が十分生かされなかったのは残念である。」、こういうことを言っているんですよ。この点についてはいかがお考えですか。
  69. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) ただいま御指摘の点は、ストリーミングを実験で発見して、これは私の聞いているところによりますと、JRR−4はスイミングプール型でございますので、水の層を通して計測した、そのために本当の生のものの計測ができなくて、水によって中性子エネルギーが減って、つまり高速中性子が実際には漏れたんですが、それが熱中性子がストリーミングをしているような形でとらえた、それを熱中性子ならこれでとまるはずだというふうに解釈されたところに問題があって、実際は高速中性子であったために遮蔽が不十分で実際抜けた、そういう御指摘だと思います。
  70. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 もう一つ、先生、船の方ですが、船種変更問題について若干お伺いしたいと思うんですが、これも三十ページに指摘してございます。三十ページをちょっと開いていただきたいと思うんですが、三十ページの中ほどです。「開発にとって核心となるべき技術開発中心に据えた総合的な体系としての原子力船開発審議は、不十分のまま終わったと思われる。確たる原子力船開発政策を樹立するよりも建造費の高騰に目を奪われたとあれば、そのこと自体に大きな問題がある。要するに、外国の情報の表面的な解釈技術以外の要因によって船種船型の変更という重要な決定が行われたとみられ、このような指導の態度が回り回って技術開発の目標をばく然とさせる結果を招いたことは否定できないであろう。」、この点はいかがですか。このとおりでありますか。
  71. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) これは、技術の問題よりも、あるいはどこの問題かわかりませんが、当初海洋観測船兼実験船ということが、実用船も兼ねるというようなことで貨物船ということに変更されてつくられたということが指摘してあるんだと思いますが、私の聞いておりますことは、船をつくるという技術的な原子炉部分に関してはそれほど変更が加えられてなくて、その船の船種を変えるという問題で予算が認められた、そういうふうに思いますので、これは予算をお決めになる方の側のことじゃないかとむしろ考えるわけでございます。
  72. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 また、参考人がつけ加えられていることがほかにも書いてあるんですよ。あるんですが、結論的にこういうことが指摘をされておるんで、できるだけそこの部分に関してお答え願いたいと思うんです。
  73. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) どうも、なれませんものですから、申しわけありません。
  74. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 その次に、安全性確保のための規制の問題についてお伺いをいたしたいと思うんですが、三十一ページをちょっとごらんいただきたいと思うんです。「原子炉の設置許可は、原子力委員会意見を尊重して、内閣総理大臣が行う。内閣総理大臣に対し、設置者から設置許可申請が出されると、その内容の是非について、内閣総理大臣原子力委員会に対し諮問する。原子力委員会は、設置許可申請に対する原子力委員会意見をきめるに際し、安全性に関する部分については、内部機構として設けられた原子炉安全専門審査会に調査審議を行わせる。同審査会は、原子炉などの基本設計について審査を行うが、詳しい設計・工事の方法内容にまでは立ち入ることはない。当面問題となっている原子力第一船の遮蔽について、原子炉安全専門審査会で審査を担当したのは、環境専門の委員を主体とするグループであった。同グループには放射線防護についての専門家は含まれたが、遮蔽設計の専門家と評価された人はいなかった点を指摘しなければならない。原子炉安全専門審査会の委員は非常勤と定められており、一般に大学、研究所研究者がパートタイマーという形態で審査に当っているので、必ずしも常に最も適当な専門家を当て得るとは限らない。」、こういう指摘がなされているわけですね。この点についてはいかがですか。
  75. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) この点は大体事実だと思います。
  76. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 次に、同じくそのページの下から四行目なんですが、「この結果、審議内容は往々にして、結果に対する責任と役割の限界をあいまいにしたまま、無難な結論が採用される恐れがある。そこで、この審査と現実的な設計との間には、工学的・技術的空げき(隙)の存在する可能性が考えられる。」、そしてさらにもう一枚まくっていただきたいんですが、三十四ページの一番上の行の終わりの方ですが、「現実に、このような新型式炉の場合、いわゆる「安全審査」と現実の原子炉建造との間には、技術的にかなりの間げき(隙)が生じ得ることを特に注意する必要がある。もっとも法体系や制度がいかに完備されたとしても、技術はしょせん人に付随するものであり、この点については、今回の「むつ」問題の関係者の厳しい反省と今後の努力が望まれる。」、こういうことが言われているわけですね。この点いかがですか。
  77. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) もっともであると思われます。
  78. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 それで、安藤先生には最後に一つだけお伺いいたしたいと思うんですが、以上のような経過から、私は、この指摘をされたような配慮がなされてきておったならば——これは原子力開発事業団の組織やいろんなものも含めていろんな点が指摘をされておるわけです。そういうことが行われてきたならば今回のような放射線漏れというものは発生しなかったであろうという点では、これは地震だとか台風などと違って、むしろ私は、やっぱり研究体制の欠陥から来るものではないかというふうに思うんですが、その点いかがですか。
  79. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) ある意味では、いま先生のおっしゃった点もございますが、事中性子遮蔽の問題は、その船用の遮蔽設計して、それを実際に船につけてみまして、原子炉を動かさないように調べるという方法はないわけです。大きな中性子源というのはございませんので、原子炉を運転して始めてあらわれる、そういう点があるわけです。これは世界的にも同じでございまして、世界最初平和利用の「レーニン」というソ連の船は……
  80. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 簡潔にしてください、時間の関係がありますから。
  81. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) これは重要ですから申し上げさしていただきたいんですが、七百ミリの遮蔽をつけたところが、やはり「むつ」ほどではないんですが、五十倍ほど漏りまして、ちょうど日本と同じようにストリーミングの現象で漏りまして、そしてさらに六百ミリ遮蔽をつけて直したという事実が公表されています。ソ連のように、たくさん潜水艦をつくったと思われるような国でも、原子力船をつくるときにはそういうことはあり得るんだと。ですから、紙の上だけでいかによくしてもやはり遮蔽の問題は、トライアル・アンド・エラーと申しますか、試行錯誤の問題というのはどうしてもつきまとうのではないかと思います。
  82. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 どうもありがとうございました。  次に、服部先生にお尋ねいたしたいと思うんですが、時間もありませんから簡潔にひとつお願いしたいと思うんですけれども、「むつ」が放射線漏れを起こした直後一応の調査が行われましたけれども、調査内容は十分と思われますか、それとも不十分だったと思われますか。
  83. 服部学

    参考人服部学君) あの直後に漂流しておりましたときに、宮坂調査団と通称言われている調査団が調査をされたわけでございますが、率直に申しまして、十分なデータではなかったと私は判断いたしております。
  84. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 次に、この問題後、事業団遮蔽改修工事について行おうという計画があるわけですけれども、これについてお伺いしますが、放射能漏れについてはこの遮蔽設計に基本的、初歩的なミスがあったと言われておりますけれども、その点はいかがでしょうか。
  85. 服部学

    参考人服部学君) 少なくとも一・四%の出力であれだけの放射線が漏れたというのは、やはり初歩的なミスと言われてもやむを得ないと思います。
  86. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 また、その後の調査で、この放射能漏れについてすべての原因が解明されたと思われますか。
  87. 服部学

    参考人服部学君) 非常に不十分であるということを先ほど申し述べたつもりでございます。
  88. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 この放射能漏れは、同時に、遮蔽設計と工事だけでなく、大山報告が提言をしたように、この機会原子炉全体について各部分ごとにもまた総合的にも技術的、数量的な細部検討原因究明とあわせて徹底的にやるべきだと思いますが、すなわち、放射線漏れを単に遮蔽問題だけに限定して改修することは真の解決にならぬと思いますが、いかがですか。
  89. 服部学

    参考人服部学君) まさに、先ほど私が申し述べましたのは、それと完全に一致することでございます。
  90. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 次に、技術的な面でお伺いしますが、科学技術庁と運輸省が合同で出した「修理港における原子力船むつ」の安全性等の説明に対する質問事項」というきわめて分厚いものがございますが、あるいはごらんになっておると思いますので、これについて簡単にお伺いいたしますけれども修理港における原子炉の状態について「核分裂の連鎖反応が持続しない状態を、原子炉が止まっている、つまり運転停止の状態という。」と述べ、制御棒一本を抜いても問題はないような言い方になっていますが、制御棒を引き抜けば未臨界であっても運転の状態と思いますけれども、これはいかがですか。
  91. 服部学

    参考人服部学君) 私も長い間原子炉の運転の管理をしてまいりまして、その問題につきましては、原子炉の運転をした私どもの仲間に聞きましたところ、やはり制御棒を抜き始めるという操作が始まったときからが原子炉の運転の開始であろうというふうに解釈している人がほとんど全員でございました。
  92. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 時間がそろそろ参りましたですね。まだ何点かお聞きをしたいんですが、一つだけ、やはりきわめて重要な問題ですからお聞きをいたしておきたいと思いますが、修理港の中で——これはどこで修理されるかわかりませんが、修理港の中で、燃料集合体を原子炉の中に存在させたままで圧力容器のふたを取って工事をやったり制御棒を動かしてその機能検査をすることは、きわめて危険であると思われます。また取り外したふたや一次遮蔽体の措置をどうするのか、この点も非常に大きな問題でありますし、また原子炉を停止した状態で機器及び全系統の健全性の確認あるいは性能テストはできないというふうに思いますが、これらの点についてはいかがでしょうか。
  93. 服部学

    参考人服部学君) 長崎県の「むつ」の安全研究委員会でございますか、正確な名前は忘れましたが、そのときに検討した——私も委員の一人として検討したことでございますが、燃料棒を抜いて工事を行った方がより安全である。燃料棒が入っていれば、そこで工事をやれば必ず事故が起こるというようなことはだれも申しておりません。しかし、燃料棒を抜いて工事を行った方がより安全であるというふうに判断された委員の方が多かったと、私もその一人でございます。
  94. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 時間が参りましたので終わります。どうもありがとうございました。
  95. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 公明党の塩出啓典でございます。  諸先生方非常に御多忙の中、また遠路からお越しいただきまして、非常に貴重な示唆に富んだ御意見を賜り、まことにありがとうございました。私たちもこれを参考に進めてまいりたいと思います。  そこで、まず最初安藤先生と服部先生にお尋ねしたいわけでありますが、原子力船の将来についてどうお考えになっていらっしゃるか。と申しますのは、一ころよりも非常に原子力船の実用化の時期が大分将来に延びたんではないか、こういうことを聞いておるわけであります。また一方、国内にあります陸上の軽水炉原発も非常に稼働率がよくない。四十五年以来どんどん下がって、五十年にはもう五割以下になっておると。洋上という、そういう困難な条件を考えると、もっともっと軽水炉の信頼性が高まっていかなくちゃならないわけで、そういう点で、私たちも、このむつ事業団、あるいは研究所になったにしても、これは将来原子力を船舶の動力として採用すべきかどうか、そういうことを決定する非常に大事な問題であると考えておるわけでありますが、私たちは、そういう問題は必ず解決されるであろうと、こういう考えは持っておるわけなんですけれども、そういう意味で、原子力船の将来についてどう考えていらっしゃるか。  それから特に服部先生はもう一つ研究所法の問題ですね。安藤先生からは先ほど御意見を承ったわけでありますが、私たちは、やはり時限立法ではなしに恒久的なものにしなければならない。しかも、「むつ」の開発だけではなしに、もっと研究ということに重点を置くという意味で、ぜひ「むつ」を研究所にしていきたい、こういう考えでありますが、それについての先ほど研究者の側からの研究所にしなければならない、こういう点もございましたので、そういう点での御意見がありましたならば、簡単で結構でありますので、御意見をいただきたいと思います。
  96. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) ただいまの私に対する御質問に対してお答えしますと、まあ「むつ」ができたころの資料などを見ますと、その当時ですと、一九八〇年代の終わりごろにはかなり原子力船が走っているんではないか、こういうような状況を想定していたと思いますが、若干それは少しその時点から見ますと延びてきているとは思われます。ですが、石油エネルギーというのは次々発見されますけれども、しょせんは、地球の中に何百年、何百万年もかかってできたものですから、それをくみ上げてしまえばなくなることは確かでございまして、その時期がその当時考えたより少しは延びたかもしれませんが、やはりエネルギー問題というのはかなり延びたと言っても、われわれが生きているであろうと思われる時代の非常に大きな問題であろうと思われます。大きなエネルギーを要する船、先ほどちょっと例に挙げましたが、大きなコンテナ船ですと、一航海するのに一万トンぐらい油を使うと思います。ですから、タンカーの上にカーゴ・コンテナを運んでおると、こういつたような感じにもなるわけでございますが、そういったような船は、時期さえ到来すれば、かなり急速に原子力船化する可能性があると考えております。——そのほか何をお答えすればよろしゅうございますか。
  97. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 その点だけで……。
  98. 服部学

    参考人服部学君) まず原子力船の将来ということについて私の意見を申し上げたいと思います。  将来の可能性としては、原子力船に限らず、原子力開発というものは大きな可能性を持っていると私も信じております。しかし、それが現在すでにもう実用化の段階に入っているというふうには判断しておりません。それからエネルギーの問題が当然これに関連してくるわけでございますが、エネルギー問題というものに関しましては、私は、ただその石油が足りなくなったから次は原子力だというのは余りにも安易な——イージーゴーイングな考え方であろうというふうに考えております。これはエネルギー政策全体として考えなければならないことでありまして、一方では、エネルギーをだれが何のために使っているのかということも同時に考えていかなければならないと思います。一例を挙げますならば、現在の石油消費の中で非常に大きなウエートを占めているのがいわゆる軍事利用でございます。たとえばベトナム戦争の間にアメリカ石油消費が約三〇%ふえております。戦争というものはいかにエネルギーをむだに使うものであるかということだと思います。これは直接戦争に使うエネルギーだけでなくて、また、その戦争の準備のためにどれほどむだなエネルギー消費されているか、やはりそのことも含めてエネルギー政策——広い意味での全般的なエネルギー政策というものを考えていかなければならないと思います。率直に申しまして、軍事利用をやめるということで原子力発電所の十や二十というものはすぐつくらないで済むような状態と、私は、将来原子力も大きな可能性を持っておりますが、現在はあくまでも基礎研究を重視する段階にあるというふうに考えております。当面の間はむしろ使い方をどうするか。使い方を節約するというのは、何も家庭の電気を消すとかテレビを消すとかいうことではなくて、一番むだをしているところを抑えていく、そういうことによって当面はしのぐことができる。その間にじっくりと基礎研究を積み上げていくべきであろうというふうに考えております。原子力船につきましても同じように考えております。開発の段階ではなくて、あくまでも基礎研究を積み上げていく段階であったと。まあ十三年の間、大変ロスをしたわけでありますけれども、これからでもこのむだというものを、決してただ修理をして動かしてしまうということだけではなくて、この失敗の教訓というものを十分に分析していくということによってそれを生かしていくことができるのではないだろうか、かように考えております。
  99. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから次に、むつ及び長崎からいらっしゃいました参考人の方にお尋ねしたいと思うわけでありますが、先ほどから共通しての問題は、やはり政府原子力行政に対する不信というものが非常に物事を混乱をさしておると、したがって、そのためにはいやしくも政府は約束したことを守らなくちゃいかぬ、こういう御趣旨が共通しておりましたし、そういう点は当然本当に反省すべきことが私は多々あると思います。  そこで、その点はそれでいいわけでありますが、次に安全という問題ですね。これは先ほど住江参考人は、やはり中央の安全という論理は現地には通用しない、やはり幾ら政府が安全だ安全だと言っても、そこに政治不信があるために、なかなか信用はできない。こういう点で国民のコンセンサスを得るということは非常にむずかしいわけでありますが、特にそういう意味住民のコンセンサスを得るにはどうすべきか、こういう点について御意見があれば承りたい。これは簡単で結構でございますから、四人の方にお伺いしたいと思います。  それともう一点は、今回の「むつ」問題を通しまして、非常に「むつ」というものがいろいろなほかのものと取引をされて、長崎では新幹線というようなお話もあるわけで、私たちも本当に長崎や九州の旅には新幹線も必要であろうと思うわけでありますが、余りにもそういうものがそれ以外の要素によって取引されているということは、これは私たちも、非常に多く原子力行政を曲げるんじゃないかと。もちろん、原子力発電所を持つ、「むつ」を持つ地元の皆さんがこうむる迷惑に対しては、やっぱりそれなりのものを十分していかなければいけないと思うわけですが、無定見なそういうものはすべきではないんではないかと、そういう私は感じがするわけでありますが、この二点について簡単で結構でございますので御意見を承りたいと思います。
  100. 井上末雄

    参考人井上末雄君) ただいまの御質問の二点についてお答え申し上げます。  住民のコンセンサスの問題でございますけれども、先ほど私申し上げましたように、どうもこういう原子力という非常に、知識と申しますか、高度な知識を要する問題でございますがために、どうも問題の解明の場合に、イギオロギー論争が先に出てみたり、あるいは非常に政治的な議論が飛び出す、本当に科学的な面よりもそういった議論が先行いたしまして、ついついやっぱり感情論が対立するということが私は一つ問題だと思うんです。佐世保市の場合におきましては、先ほど申し上げましたように、十四ヵ月という長い間いろいろな角度から議論をしてまいりましたし、またそれぞれの団体で面接住民に説明会を開くとかいうようなことをやったんですが、やはりこういうむずかしい問題でございますから、対話を進めて、そして、もう少し政府の方で住民にわかりやすいPRと申しますか、そういうことをやっていただきますならば、私は、原子力平和利用ということについては大方の国民はわかっておるわけでございますから、十分コンセンサスができるのではなかろうかと、こういうふうに考えます。  それから、第二点の問題でございますが、私ども地元でも、もし「むつ」が佐世保に入ってきたならば、いろいろメリットの議論が出ておりますけれども、私どもは、メリットを考えていないと言えばうそになりますけれども、やはり基本的には、日本の将来のために、この原子力平和利用推進していくという観点を第一に考えておりまして、これによって国益の発展につながるわけですから、その分についての開発利益ですね、開発利益が地元住民に一部返されるということは当然ではないかと思います。御承知のとおり、たとえば発電所ができた場合においては、電源三法によっていろいろお手当ていただいておりますが、そういう意味で国の開発利益に大きく寄与した場合におきましては、その開発利益の一部が地元住民に返ってくるということは当然ではなかろうかと、こういうふうに考えております。
  101. 住江正三

    参考人住江正三君) 第一点の問題でございますが、私ども漁民といたしましては、やはり原子力平和利用につきましては全面賛成でございます。ただし、先ほど申し述べましたように、政府にいたしましても、事原子力船むつ」問題に対しましては、ほおかぶり的な面が多いということに対しまして非常に不信感を持っているわけでございます。したがいまして、私たちは純然たる漁師でございます。科学的なことは何もわかりませんということで、ここに参考人で御臨席の服部先生、また中島先生、そういう詳しい方々八人の先生をお招きいただきまして数回となくいろんな勉強会もいたしますし、そして各先生方のお話を聞きまして、これはどこまでも現在のままでは非常に危険性が多いと、やはり私たち被爆県長崎あるいは水産県長崎においては当然受け入れられるべきものではない——これは長崎ばかりではありません。漁港があり、漁民がいるところには入れてはいけないという信念の上に立って、ことしの四月まで猛反対をしてきたわけであります。  第二点のメリット等につきましては、全然考えておりません。いろいろ新聞その他におきましては、やれ新幹線云々問題とか、あるいは佐世保市商工会におきましては、数百億のお金を預託して、その利子で何とかしょうとかいうことが報道されておりますけれども、しんからそういうことを願う長崎県民は私はおるまいと考えております。したがいまして、私たちは、皆さん国民すべての方々が、これで原子力、特に原子力船むつ」は大丈夫、どこで修理をやっても大丈夫なんだということを国民全部の方々がおっしゃるならば、核抜かずでもよろしゅうございます。受け入れてもいいと思います。しかし、先ほどからいろいろ賛成、反対の先生方の御意見もありますとおり、現時点においては、恐らくそこまで諸先生方も言い切れるお立場ではないのではなかろうか、かように考えております。したがいまして、現時点においては、長崎県知事が示しましたように、棒を抜いてだったら、そして六つの条件を入れるならば佐世保修理をやらしてもいいということを組織で決定いたしておりますので、この組織決定には微力を尽くして実現方に努力いたしたいと、かように考えております。
  102. 浜谷一梅

    参考人浜谷一梅君) お答えいたします。  われわれは、メリットという場合に地域エゴと同じように考えている場合が非常に多うございます。むつ市が昭和四十二年に政府に回答いたしました際、条件一つもございませんでした。とにかく安全であってくれ、もう一つは何かそれに伴う計画があった場合は事前に相談してくれといったような表現がございます。それをあえて条件と申しますが、これは民法上の条件でも何でも、なかった。しかし、県との話し合いに基づきまして十項目にわたる要求政府にいたしました。その十項目は、ほとんどすべて政府が約束どおり実施しております。その中には重要港湾の問題もございます。もちろん、重要港湾になるには、それぞれの法律に基づいて行われていることでございましょうけれども、十項目の中にその重要港湾もあって、そのとおりになったといったようなことは、つまり、未来に対する基盤といったような意味では非常な大きな意味になるんではなかろうかと。したがって、われわれは、メリットとは何かといったことをもう一度考え直さざるを得ないといったようなことを考えております。  それから第二点でございますが、私の体験では、合衆国におきましてその任に当たった方でございますが、その方は全然原子力知識も何もなかった。真っ暗やみの中を自分が歩いているみたいだった、だけれども、やはり自分が確信を持てたのは教育のおかげだよというふうに、ミスター・ローペスという方でございますが、私に言ったその言葉が非常にまだ印象的でございます。したがいまして、民主主義は時間がかかるものでございますから、科学者は科学者の方々なりに、賛成とか反対とかということなしに一生懸命やっておられる。そういったような意味でじっくりとそれを考えてもいいみたいな、そういったような体制のもとにこれを開発すべきであろう。私は、教育といった問題が非常に大きな要素になるのではなかろうかと、そういうふうに考えております。  以上です。
  103. 菊池漢治

    参考人菊池漢治君) お答えしたいと思います。  コンセンサスを得るためにはどう考えるかということが一つでございますが、いままでは、原子力船むつ」の場合を考えますと、余りにコンセンサスを得る努力が少なかったというふうに私たちば考えております。それで話をいろいろいたしましても、たてまえ上大丈夫だということだけの説明に終わります。しかし、最近の地域住民は、たてまえどおり行っていない具体的な問題に対する問題提起をしますと、そのことについては、もう逃げてしまうというようなことが一つございます。それからもう一つ。私は、どうも、それ以上に原子力開発を進める上での最も必要なたてまえというものをもう二度きちんと考え直して、その上に立った物の進め方をしなければならないのではなかろうかというふうに思います。そのことは、一つは、あくまでも原子力平和利用というものは危険というものを抱え込んでいるのだと。ラスムッセンの問題がよく言われますけれども、あれも確率が高いか低いかの問題があって、とにかく高い、そういうことで危険を内在しているということについては変わりはないわけでございます。それなりにそれに対応したいろいろとるべきものが要請されておりますが、しかし、一般に言う立場には、これをゼロとしてということから出発していく、そういうところにも不信感が出てきているだろうと思います。たとえば、いまの「むつ」の場合で申しましても、事務的にいろいろ話をし、あるいは改まった席でない場合にいろいろ話をしてみますと、ああいう交換率の非常に悪い内湾の奥深い場所に定係港をつくったことが誤りであった、どうしてああいうことをしたのだろう、こういう話が関係者の中から出てきますが、そういうものを無視したことが今回の一つの波乱をここまで大きくした理由であろうかというふうに思います。若い科学であり、技術であり、場合によっては未熟だと、こう言っていいと思いますが、そういうものを進める上ではやはりもう少しそういう実態的なものを考えながらお互いに話し合うという姿勢がなければ、私は、コンセンサスは出てこないと思いますし、また、ちょっと批判をしますと、すぐ反対だ、こう決めつける姿勢もコンセンサスを阻害する大きい理由になるだろうと思います。  それから、何かそのことによって、物というか、別の物を要求することについてどうかというお話がございました。これは入港に際して、青森県の漁業関係者あるいはむつ市が何かしらごね得をしたというような印象をお持ちの方がずいぶんあるようでございますが、先ほど浜谷参考人のお話にもちょっとございましたように、漁業関係者の例のものは漁港の整備等漁業構造改善事業のものを処理したわけですが、これは従来計画を持っていたものの年次を早めてやろうという鈴木総務会長政府代表の心からわれわれに示されたものでございます。  それから、わがむつ市の問題につきましては、一つは避難道路の問題がございます。それから有線放送がございます。それから体育館がございます。これは、避難道路と有線放送につきましては、私たち原子力施設を持っている市町村は防災計画をつくるべく義務づけられてございます。その防災計画によって示されているところは退避という事態を予想した事項がございます。それから正確な情報を速やかに市民に提供する。過大な情報によって二次災害を起こす場合もある、また過小な報道によって同じく後へ影響を及ぼすような事態も起こり得る、それを避けるためには正確な情報を市民に早く知らせるということと、それにのっとった退避をいかにうまくするかということが義務づけられてございます。そういう点から、一つ方法として有線放送をもってそういう事態に処すべきであろうという提案を私がいたしました。それから退避につきましては、大湊地区というのは二車線の道路が一本あるだけでございます。もう一本道路はありますが、これは二車線としては狭い道路で、どうしてももう一本定係港を中心とした半径で退避可能なような退避道路が必要であろうと。いまの車社会で、走らないで歩いて退避しろ、そう言ってもなかなかこれは実行しにくいだろう、どうしても車というものを考えざるを得ないとするならば、もう一本退避道路が必要であろうという要求をいたしておりました。出港前の四十九年八月までは科学技術庁はその必要もないという言い方でございましたが、八月十三日か四日の閣僚懇談会において、それらのものを実施しようという決定をされております。それから体育館につきましては、これは事業団の職員並びに船員の体位維持のために、雨天あるいは冬期間のためにつくりたい、そういう要請事業団から出まして、しかし、国の基準から言うと、従業員の数が少ない。それが余り何も「むつ」の定係港存置ということについてやっていないので、せめて市民と共用の体育館というような名目でもつくって、両方で、円満に使えないものかという国会先生方の御意見によって予算がついておったのですが、石油ショックによる物価騰貴あるいはいろいろな問題で着工できませんでした。それが最後に、市がもし土地を獲得してくれるならば両方共用できるような場所に建てよう、そういう動きのあったさなかに放射線漏れが起きて、鈴木総務会長の収拾策ということになったわけでございます。それで私には、早期撤去というような事態になるならば、もう退避道路も有線放送も必要なくなりましょうと、もちろん核燃料を抜かないという話になったのですが、体育館の共用という点も、事業団が早急に撤去するということからすれば必要なくなりましょうと。ただ、そのために買った土地の代金ぐらい一部何とか鈴木先生めんどう見てもらえないかというのが私の鈴木総務会長に対する要望でございまして、鈴木総務会長は、むつ製鉄以来この土地にはいろいろな意味で迷惑をかけっ放しである、今回は閣僚懇談会で約束したものはやっていくから、それを受けてくれということで、この問題が四者協定に載ったというような状況でございます。しかし、先ほど来出ておりますように、電源三法によって原子力発電所が何がしかしらのものがございますが、これは財源その他の関係でその電源三法の適用は受けておりませんが、考え方からするならば同じようなものがあってもいいのではなかろうかというふうに思います。
  104. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 どうもありがとうございました。
  105. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  106. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 速記を起こしてください。
  107. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 どうも、きょうは参考人の皆様方御苦労様でございます。共産党の佐藤昭夫でございます。私の持ち時間の制約がございますので、失礼ですけれども最初に質問事項をずっと一巡申し上げますので、お答えをお願いをする方々には続けて御答弁をいただきたいと思います。  まず、一番最初服部先生にお願いをいたしますが、先ほど冒頭の御発言の中にも、政府ないし事業団の「むつ」問題の今後の方針には、いわゆる遮蔽改修の問題が非常に強調をされるばかりで、いわゆる全面的総合点検、これがおろそかにされておるということで、幾つかの事例も出されながら、そういった計画方針の誤りを指摘をされておったわけでありますが、いま一度、本当に将来に向けての安全性を優先をした原子力船開発のために、どういう総合的な点検が今日必要なのかということを、内容的にもう少し具体的に御説明をいただきたいと思います。  二つ目には、そのことともかかわると思いますが、いわゆる船舶炉、これが経験もなしに、陸上炉だけの経験の中からこの「むつ」の問題が登場をして、そういう未経験の中からああいう大きな事故に逢着をしたわけですけれども、そういう点で今日舶用炉の問題についてどういう基礎研究が必要なのか、また、政府に対してどういう施策を学者、研究者立場から御要求をなさるのか、基礎研究の問題についてもう少し具体的にお聞かせいただきたいと思います。  それから三つ目には、いわゆる軽水炉型の原子炉欠陥性という問題、特に日本の場合には、一つは軽水炉自体の問題と技術的にアメリカに大きく依存をしてきたという三つの面があろうと思いますが、その両面を含めまして、軽水炉型原子炉欠陥性が各界からいろいろ指摘をされておるわけですし、また、最近も新聞に報道をされましたアメリカのNRCの実験記録の問題、あるいは一昨日エネルギー庁が発表しましたけれども、定期検査をやったら、六基のうち、またもや三基故障を持っている、こういう事態が露呈をしてきているわけですけれども、この種軽水炉型原子炉欠陥の問題について御専門の立場からの御意見があればお聞かせいただきたいと思います。  それから、次は住江さんにお尋ねをいたしたいと思います。  先ほどの御報告で、漁連として三年間の非常に苦悩に満ちた内部的な討論の経過を経られまして、さっきの六条件に基づく知事との確認をなさった。この六条件というのは、もう私としても、まことに当然のことだというふうに思うわけですけれども、この六条件をさらに佐世保市側とも知事の責任で話し合いをやって、言うならば佐世保市側にも同調を求めるという努力をやるんだということをあわせて知事も約束をしているんだという御報告であったかと思うんですけれども、今日現時点でこの六条件の問題について佐世保市側が大体どういう意向を持っているのか。その点で、知事を通して、ただいま御判断なさっておるおおよその状況、そんなようなことがありましたらお聞かせをいただきたいと思います。  それからもう一つは、漁連のお仕事をなさっているわけですし、全国漁連の役員もなさっておるというふうに伺っておるわけですけれども、在来の発電所に加えて各種の原子力発電所の温排水の問題でいろいろ住民側からも苦情が出ているということは、もうよく御存じだと思いますけれども、しかしながら、政府や企業側の方は、温排水の有効利用といいますか、それでウナギを育てるだとか、そういうことをとかく強調をしている。この温排水が沿岸漁業に対して与えていく被害という問題について、七年ほど前になりますけれども衆議院の商工委員会ですでに温排水を規制をする基準を責任を持って国がつくるべきだという附帯決議が行われているんですけれども、今日時点も依然としてそれがつくられていないという現状にあるわけですけれども、この温排水の漁業に事える影響という点で、漁連のお仕事をなさっている立場で何か御見解があればお聞かせをいただきたいと思います。  それから、最後に菊池さんにお尋ねをいたしたいと思いますが、先ほども塩出委員の御質問にかかわって、いわゆる四者協定で確認をされた、地元補償といいますか、そういう性質の問題は、いわば基本的に鈴本総務会長の側の方から提起をされたものだと。ところが私、いろいろ新聞なんか見ましても、たとえば菊池市長の時期、むつ市の側が国から取るだけのものば取って、あと「むつ」出ていけと、こういう論法というのはまことに盗人たけだけしいとか、そういうきわめて意図的な中傷宣伝というのがやられているわけですけれども、そういう点で、もう少し事態の性質、四者協定が締結されてきた性質はどういう性質だったかということと、それから取るものは取って、あと出ていけと、こういう宣伝について今日時点でどういう見解を持たれるかという点をお尋ねをしたいと思います。  それから最後の問題は、最初の御報告のときにも、新定係港確定のぎりぎりの時期といいますか、昭和五十年三月二十七日の段階で八戸のパークホテルですか、そこでもう新母港はあすでも発表できる段階まで煮詰まっている、ただ統一地方選挙後まで待ってくれというところまでの話があって、選挙は終わったけれども、待てど暮らせど事態は進まぬ、こういう御報告があったわけですけれども、そこまでの話があったということば、これは当然のことということで推定をするんですけれども、たとえば出てまいりました片山政務次官、それはひとつ文書で、たとえばいよいよこういうことで新定係港確定の作業に入りますということでの目八体的な作業日程を含めた作業内容、そういう文書による提示が四者の代表にあったのかと、それからそれは政務次官片山氏の私案であったのか、この閣僚懇談会なり閣議決定という、そういうところまで決めた内容として提示をされておったのか。それから、その後それが三月二十七日の段階では、そういう話がありながら進んでいないわけですけれども、それなら、その後進んでいないなら進んでいないで、計画変更をいたしますということについてのむつ市側への文書による断わりでも出ているのかどうか、こんなような点をお尋ねをいたします。
  108. 服部学

    参考人服部学君) 簡単にお答え申し上げます。  第一番目、総合点検としていかなる内容のものが必要であるかというふうな御質問であったと思います。実は先週十二日の日に、日本学術会議原子力特別委員会委員長の三宅泰雄先生、長崎造船大学の山川先生、それから科学評論家の村上隆さん、それから私と四人の名前で、この「むつ」問題の具体的解決のための提言というものを発表いたしました。その中にそれに関係することが含まれておりますので、読み上げさせていただきたいと思います。提言の中では、やはりこれ以上国民の不信を招くことのないように政府が誠意を持って四者協定を実施してほしいということ。特に新母港の設定を優先すべきであるということをまず述べまして、その後で遮蔽構造修理を急ぐよりも、まず総合点検を行うべきである。その総合点検の中には次のような項目の検討が含まれるべきである。順序不同でございますが、一番目、「燃料交換用クレーンシステムの再検討」、二番目、「原子炉炉心直径を大きくすることと、しゃ蔽構造を追加することの得失の比較検討」、三番目、「燃料被覆材をステンレスからジルカロイに変更することの検討」、四番目、「現在のイオン交換樹脂塔内に付着している放射性物質の分析による原子燃料健全性検討。」五番目、「外海での性能試験等の愚行をくり返さないため、最低限母港で行なうべき性能試験の内容検討。またその際の環境に対する影響等の検討。」、六番目、「十三年前の古い材料および設計施工にかかわるものであり、しかも既に船齢の半ばを過ぎている現在の「むつ」を修理することにこだわるか、あるいは新しく設計をしなおすかの、客観的な検討評価を行なうべきである。」と、こういうことを発表しております。それぞれの項目について実は理由がございますけれども、ここでは時間の関係もございますので省略させていただきます。私たちは、この総合点検の結果が完全に公開され、そしてまた、その総合点検の結果に基づいて安全性についての再審査というものが行われるべきであると考えております。  それから二番目の御質問、どういう基礎研究が必要かということに関連してくると思いますが、私たちは、「政府は、原子力船の自主的開発のための基礎研究を重視し、大学および研究機関においてその促進を図るべきである。立案に当っては、充分に専門家の意見を聞くべきである。」というふうに述べております。その内容等につきましては、一例を挙げますならば、先ほど挙げました燃料棒の被覆の問題とか、あるいはECCSの問題とか、これは十三年前の設計と現在の設計とでは、現在新しく設計するとなれば、ずいぶん改良された点が出てくると思います。それはその一つでございます。あるいは先ほど安藤先生が御指摘になりましたような振動問題であるとか、あるいは燃料交換の問題であるとか、あるいは負荷の変動の問題であるとか、研究すべき問題はたくさんございます。これはやはり研究者の中から、こういう研究所はこういう研究をやるべきだということを出して、それをくみ上げていくようにしていただきたいと思います。  それから最後に申し上げておきたいことは、やはりこの原子力船開発のそういった基礎研究を含めての研究成果というものが軍事利用にされないための保障措置というものを国会あるいは政府等は十分に講じていただきたいと、こういう内容のことを発表いたしました。  それから三番目の御質問で、軽水炉の欠陥性はという御質問でございましたけれども、これは私は、軽水炉だから欠陥であって、ほかの型の原子炉なら欠陥がないというふうには考えておりませんで、軽水炉には軽水炉なりの問題点がありますし、そのほかの型にはそのほかの型なりのいろいろな問題点があるということで、これはやはりそれぞれの型について、抽象的になるかもしれませんけれども、基礎的な研究というものを積み上げていくべきだと思います。幸いにして——幸いにしてと言いますと語弊がございますけれども、最近いろいろな発電所の運転その他の経験がだんだん積まれてきておりまして、その中から問題点というものもだんだんと浮かび上がってきているんではないかと思われます。特に材料の問題応力腐食の問題、そういった問題については、特にこれまでデータがなかったことでございますので、十分な研究というものが必要なのではないだろうかと、軽水炉だけが欠陥があるとは私は考えておりません。船に積むという場合には、これまでの経験から言えば、軽水炉というのはかなり有利な型の一つではあると思います。しかし、それなりに問題点というものはたくさんあるということも同時に考えておかなければならないと思います。
  109. 住江正三

    参考人住江正三君) 二点についてお答え申し上げます。  第一点の六条件でございますが、まだ県の方に政府の方から要請があってないものですから、先ほど申しましたように、六項目をぜひひとつのんでもらいたいという知事の申し入れのみにとどまっております。恐らく、五点までは知事が責任を持つということでございますけれども、六点目の四者協定ということについては、ある程度難点があるのではなかろうかということを知事は申しております。  第二点の原発の温排水の問題でございますが、九州の方には、御承知の私たちの近くには佐賀県の玄海原発があるわけでございますが、ここは外海に向かっての取水あるいは排水でございまして、拡散が比較的早いので、現在のところ影響はそうないということでございますが、京都、福井にまたがるところの関西電発、これはいま問題が起こっているようでございます。むしろ温排水よりも、取水時における魚卵問題でございまして、やっぱりああいった大きい取水をやる上において卵を一緒に吸い込むということで、出てくるときにはすでに死滅した状態で出るということで問題が起きているようでございます。特に夏場の高温時におきますところの温排水、御承知のように、六度から七度の上昇率になるわけでございますが、特にハマチ養殖等を行っている漁場近くの電発の温排水は非常に迷惑だという声が起こっているようでございます。  以上でございます。
  110. 菊池漢治

    参考人菊池漢治君) 四者協定に盛られました地元への問題については、先ほど申し上げましたとおりでございます。これは入港を条件として、そしてその入港は核燃料をあそこで抜かないで二年六ヵ月以内に撤去するという条件のもとでの協定でございますが、その中にすでに含まれているものでございまして、あれらのものは出ていけということではないと思います。取るものは取ったから出ていけということはきわめて心外であり、一緒に出ていくことが条件の協定だということをまずはっきりと御理解をいただきたいと思います。  それから、われわれが要求したものではないということについては、たしか日本経済新聞の五十嵐さんが「むつ漂流」というのをお書きになっておりますが、その中で鈴木総務会長の言としてこのことが出ていたように記憶をいたしております。ひとつこの点につきましては誤解のないようにお願いを申し上げたいと存じます。  それから新母港開発スケジュールというものについて、これは閣議で決まったかどうか、その点は明らかではございませんが、日本原子力船開発事業団の用紙に書かれたものを当日配付をいたしております。「原子力船開発に関し当面考えられる検討スケジュール並びに日本原子力開発事業団開発計画表」というようなものを添えて、このようなことで新定係港を考えているのだと、それがいまの統一地方選挙に影響が出て混乱をすれば困るので、それが終わったらできるだけ早い機会に発表するので、それまで待ってほしいということでございました。その後、決定の問題については話が何も出ておりません。それから長崎県の修理港問題が出ました際にも、修理港と新定係港の関係、それらの問題について現地の関係者に説明をするべきではないかという要請をいたしましたが、説明に局長をやるという返事だけはございましたが、ついに局長が説明に来ないまま今日に至っております。ただ、二年半に近くなったころ、少しずつ延ばしてくれという申し入れば数回にわたって行われております。長崎県の態度が決定するのがすぐ近くであるから、それまで待ってほしい、あるいは安藤委員会へ核抜きの諮問をしたので、その答えが出るまで待ってほしいというようなことの要請はありましたが、最後の安藤委員会報告結果についてのその後の待ってほしいということについては一言もまだございません。ただ、守る守るということを内外において関係者が表明をしているだけでございます。
  111. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 どうも済みません。持ち時間超えていますけれども住江さん、申しわけありませんけれども私お尋ねした第一問は、漁連の側の六項目、これを知事はひとつ実現するために努力をしようということで約束をなさった、それと同時に、この六項目を佐世保市側もそれに同調をしてくれるように、知事として働きかけをしていこうということもあわせて約束をなさったという一お話でしたので、その点について現時点はどう進んでますかという私の質問ですので、済みませんけれどちょっと。
  112. 住江正三

    参考人住江正三君) その件につきまして知事から具体的に話があっておりません。佐世保市長とこの問題について詰めたかどうかということは、いまのところまだ彼と会っておりません。
  113. 向井長年

    ○向井長年君 私は民社党の向井長年でございます。きょうは参考人先生方、非常に長時間にわたって御苦労さんでございます。  実はきょう参考人の皆様方にいろいろと陳述いただきましたが、本院の本委員会におきましては、御承知のようにこの日本原子力船開発事業団法が時限立法でございまして期間が来た、したがって、これを十年間延長という形で政府は出してまいりました、これを衆議院段階においてこの問題について、「むつ」の問題もろもろございますが、何はともあれ四年八ヵ月の延長、そして今後研究機関として設置していこうではないか、こういう形で本院に送られてまいりまして昨日からこの審議をいたしております。したがって、この問題についていろいろと問題あるにいたしましても、本日お越しいただきました参考人の皆様方はこの延長に反対だということではないのではないかという感じがいたしますが、この点延長に反対でしょうか。もし反対の参考人がおられるならばお聞きいたしたいんであります。内容は、四者協定まことにけしからぬという問題、あるいはまた技術的に不備な点がたくさんあるではないかといろんな疑問はありますけれども、本来の法案審議に対しましてはこの本委員会におきましても賛否両論があるんです。そういう中でこの問題について参考人の皆様方に延長に反対だと、あるいはまだ研究機関に移行することは反対だという考え方がある方がおられればお聞きしたいと思います。安藤参考人、先生は先ほどいいことだということを言われましたのでよくわかっておりますが、他の参考人の皆さんいかがでしょうか。
  114. 服部学

    参考人服部学君) 私は延長をするならば何のために延長するのかということがやはり明確にされるべきだと思います。ただ期限が切れているから延ばすというのではおかしな話でございまして、何のために延ばすのか、その場合に私の伺っております範囲では何か非常に——修理するために延長するということであるならば、私の先ほど述べましたこととはむしろ逆行する方向、いまいたずらに修理を急ぐよりはむしろ徹底的な総合点検が必要であるというふうに考えております。  それから、研究所移行の問題につきましても、先ほど申し述べましたように、私は基礎研究がきわめて大事である、基礎研究をぜひとも重視していただきたいと思います。しかし、それも研究者の側から出た案ではなくて、ただ機構いじりと申しますか、名前を書きかえるというだけの移行であるならば、これは先ほど申しましたように、大山委員会の答申の精神というものを決して十分に踏まえたものではないんではないか、そういうふうに考えます。問題は延長するか移行するかということではなくて、延長して何をやるのか、どう移行するのか、これが問題ではないかというふうに考えております。
  115. 向井長年

    ○向井長年君 いろいろと内容的に、先ほどからも論議ありますように、問題点は多いかと思います。しかしただ、先ほど服部先生は、将来やはり原子力に取り組んでいかなければならぬ、これはもう当然だということを言われました。しかし、当面やはり研究段階ではないか、こういう話でございましたが、まずエネルギーという立場から考えるならば、発電所は研究も含めてやはり実用化に入っておると思います、現状は。したがって、ただ船の場合においては本当にまだまだ幼稚なこれからの研究でございまして、諸外国の例を見ましても研究段階であり、あるいは実用化に入っておる国もありますが、こういう過程でやはり国産化と申しますか、これは言うならば導入国産もありましょうが、とにかくわが国自体で開発をしていく、こういう姿勢というものはあってしかるべきではないか、こういう感じがするわけですよ。したがって、いまこの延長するという問題につきましては、当然今日までの「むつ」の欠陥、あらゆる問題を含めての研究開発というものがなされるべきである、こういう感じからわれわれは延長してやるべきではないか、こういう感じを持っておるのですが、その点、服部先生、いかがでしょうか。
  116. 服部学

    参考人服部学君) 基本的には多分一致するのだろうと思うのでございますが、少しまあこれは当然意見が違うところが出ておると思います。ただいま発電の方はもう実用化の段階に入っているというふうに御指摘になりましたけれども、私はその点では若干まだその評価が違っておりまして、現実に日本の原発の現状を見ましても稼働率が非常に低い、あるいは修理のために関係する下請の労働者が大量の放射線の被曝、蓄積量がふえてきている、そういった現状から考えますと、これもまだ実用化という段階ではなく、現在進められている日本原子力発電あるいはいわゆる開発というのはいささか急ぎ過ぎて焦り過ぎ、そして無理をしているのではないかというふうな気がするわけでございます。そういう意味原子力全般の問題、船も含めましてまだまだ私は基礎研究が大事な段階であろうというふうに考えております。
  117. 向井長年

    ○向井長年君 一点は、先ほど服部先生は、エネルギー問題から考えて、国際的にこの問題についてやはり相当深刻な世界各国の情勢である、したがってこれについては開発も含めてであるけれども、もっと考えなければならぬ問題がある、それは言うならば軍事的の問題だということも例をもって言われました。この軍事的という問題は日本の自衛隊を指して言うておるのじゃなくて、例に言われたようにベトナム問題等、アメリカの状態、各国の軍事力、これに大きなエネルギーを使っているではないか、これをもう少し考え直さなければならぬではないかという高度な御意見だったと私は思う。これは国際的な問題で、わが国が直ちにまた国連を通じて軍縮問題とかあるいは核兵器反対とかあるいは実験反対、核兵器をなくしようじゃないかといろいろな提起はいたしておりましても、現実問題として国際的にそう簡単にこの問題は解決つける問題ではない。しかし一方、国内においてエネルギー問題を考えたときに、あすからのエネルギーという問題を考えなければならぬわけですね。いま石油がそういう状態でありましょう。そうしますと、地熱とかあるいは太陽熱、いろいろありましょう。しかしながらこれ、いまの現状で考えた場合に、政府原子力行政にしてもエネルギー行政にしても私は不備がある、十分あると思いますよ。しかしながら、考えたときに、やはり一つの今日までの経緯を見ますと、たとえば水力にいたしましても火力にいたしましても、開発計画をしてから何年して初めてこれが完成するか、水力、火力では五年を見なければならぬという状態ですね、立地問題から含めまして。原子力の場合は十年以上見なければならぬということなんですよ、今日まで少なくとも。長いのでは十七年かかっておる、そしてようやく開発に着工できた、その他は十年かかってようやくという、こういう年月が要るわけです。これに対して、いや将来は考えるけれども、現状の中ではそういうものはまだ研究段階ではないかということはちょっと私ば解釈に苦しむのですが、いかがでしょうか。  それと、もうおしまいでございますが、もう一点は、井上参考人浜谷参考人にお聞きしておきますが、いま、先ほどからも御意見ございましたが、国民のコンセンサスですね、これは私は大別して三つ、四つに分かれると思うのですよ。一つは、やっぱりわが国は被爆国です。したがって、原子力開発をやっていけばプルトニウムが出てくる、保持する、したがって将来原爆を軍事力に持つんではないかという不安、こういう問題に対してやはり警戒心というものは国民の中にもあるでしょう。あるいは、それとあわせて政治不信、イデオロギー闘争、この中に一つのこれに対する取り組みがまた国民の中に一部にある。特に過激派の学生なんかはその一つでしょう。それと同時に、もう一つは、やはり先ほどから論議されているように、本当に安全であるか、放射能のいわゆる安全が十分であるかという不安、こういう中から明確ではないという疑心暗鬼、これに対する反対もあるでしょう。もう一つは、そうじやなくて、やはり純粋にいわゆるアレルギーですね、まあ国民は言うたら、そういう技術的なことわからぬ、したがって、原子力というものはこわいもんだと。したがって、そういうこわいもんはやってもらっては困るという、言うなら純粋なアレルギー、過度なアレルギーと申しますか、そういう問題と、こういうように私は大別されるのではないかと思う。これに対して政府の取り組みも私は鈍いと思いますが、特に井上さんは市会議長までなさっておられますし、市民の代表でもありますし、また、浜谷先生は助役とか、そういう形をやってこられておりますので、そういう意味で、私がいま申した問題について今後どう国民のコンセンサスを図っていったらいいのか、こういう点だけをお伺いいたしまして、私は終わりたいと思います。
  118. 服部学

    参考人服部学君) 先ほど一言言い落としたことがございましたので、この際つけ加えさしていただきたいと思いますが、エネルギーを大きく消費しているのは軍事目的だと、同時にやはり日本の場合には産業構造そのものを思い切って転換していくということがエネルギー政策の中に当然入らなければならないことだと思います。つまり、余りにもエネルギー集約型の産業というものを日本に集中して持ち込むという、そこのところからやはり検討し直す必要があるということが一つございます。  それから、軍事目的にエネルギー日本の場合にどういうふうに解釈するかという御質問でございますが、これは日米安保条約に基づく軍事同盟体制というものをどう判断するかということでこの委員会議論とは若干違ってくると思いますので、お答えを避けさせていただきたいと思います。  それとあともう一つ最後のは……
  119. 向井長年

    ○向井長年君 エネルギー開発があすからの問題だということです。
  120. 服部学

    参考人服部学君) 失礼いたしました。  これは現在の石油にいたしましても、たとえばカナダにオイルシェールの膨大な資源がございます。この前カナダに行きまして、どうしてあれを開発をしないのだと、あれはまだ使う必要がないと、いま自分たちが自分たちの国のいまの生活を保っていくならばまだやっていける、それは将来のためにとっておくのだと、こういう話を聞いてまいりました。先ほど源田議員のお話の中にも、いまのエネルギー消費がこのままふえていけばという、こういう前提があったわけでございます。いまのようなふえ方ということ自体にやはりすでに無理があったわけでございまして、日本の問題について申しますならば、エネルギー需要の予想というものはまさに高度経済成長政策に伴ってつくられたものです。その高度経済成長政策自体が破綻し、そしてまた、私が先ほど申しましたように、エネルギー集約型の産業構造自体を思い切って変革していかなければならないという時期にエネルギー需給のカーブだけが昔のものが生き残っているのはやはり少しおかしい。エネルギーの使い方自身と申しましたのはその意味でございまして、需給の曲線がいまのままで伸びていくというようなことでしたら、これは毎年何%という形で伸びてまいりますと、いわばエクスポネンシャルのカーブと申しますが、いずれは無限大に発散してしまうカーブでございます。この無限大になるまでの時間が多少長いか、短いかだけのことでございまして、いまみたいな成長をそのままやっていったら、これは原子力をやろうと何をやろうといずれ無限大に発散して、追いつかなくなるということでございますので、開発とそれをどう使っていくかということを組み合わせて、全体的な総合的な本当の意味エネルギー政策、率直に申しまして、日本にはこれまでエネルギー政策と名のつくほどのものは欠けていたんではないかという気がいたします。
  121. 井上末雄

    参考人井上末雄君) ただいま国民のコンセンサスということで四点ほど御指摘がございましたが、その四点のうちで、被爆国民であるということと核アレルギーにつきましては、私ども日本の置かれておる立場、あるいはああいった悲惨な経験を経ておりますから理解できると思います。  あと二点の政治不信の問題でございますが、私は、今回の原子力船むつ」の問題にいたしましても、いろいろ文献を読んだり、いろいろなことを研究してみますると、これに反対する方々がそう危ない、危ないと強調するほどでもないんじゃないかという気がまずいたします。非常に必要以上に強調されて、先ほど申し上げますように、この原子力という問題は非常に高度な知識が要りますから、非常に一面から危険、危ない、どうだこうだという強調をされますと、なかなかやはり先ほどの核アレルギーあるいは被爆国民ということに加えて増幅するのではないか、こういう気がいたします。  ちょっと話が長くなって恐縮ですけれども佐世保市は、御承知のとおり米軍のエンタープライズ以下原潜を二十二杯今日まで入れておりますけれども、当初私ども全くの素人でございましたから、学者の方々に、賛成、反対、来ていただきました経験がございますけれども、当時などは原潜が佐世保の港に入った、極端な表現ですけれども佐世保の港はあしたでも吹っ飛んでしまうというようなお話なども聞きまして、十四、五年前の記録を見て、ああいうことが本当にまじめに議論されたかということをいましみじみ感ずるんですが、そういう意味で、先ほどから申し上げますように、お互いに、国民の福祉のためにも国の発展のためにも、エネルギーの問題についてもう少し冷静に処していくならば、私はコンセンサスというものはそうむずかしくないのではないか、こういう気がまずいたします。したがって、そういう意味では、私は政府におきましてももう少し的確に、しかも迅速に情報を提供していただいてやっていただくならば、そういう問題の解消にもつながるんじゃなかろうか、かように思います。  それから、安全性の問題でございますが、これまた、私どもも今回政府から要請を受けまして以来たくさんな学者あるいはその他の方々意見を聞いておりますが、賛成、反対の学者の意見を聞いておりますと、どちらもなかなか本当のような感じがするわけでございます。どちらを信用していいかわからぬというのが率直な気持ちでございますが、そこで私は、やはり安全性というものは、先ほど申し上げますように、信頼をする、それからどっかにやはりよりどころを置かなくちゃいかぬ、そういうふうに考えますと、現在日本では、御承知のとおり原子力工学の最高権威とされております放射線漏れ問題調査委員会あるいは総点検・改修技術検討委員会、俗に申します大山委員会あるいは安藤委員会という日本の権威あるそういう委員会で出されました結論というものは、皆さん御承知のとおり「むつ」自体多少の過ちはあったかもしらぬけれども、全体としてはかなり高い水準を持っておる、したがって、十分な配慮をしていくならば改修は可能である、一口に申し上げますとそういう御意見が出ておりますので、われわれはこういう意見を尊重して進んでいったらどうか、かように考えた次第でございます。
  122. 浜谷一梅

    参考人浜谷一梅君) 向井先生の御質問に直接お答えする前に、先ほど参考人として現在審議中の延長法案どう思うかといったようなことでございますが……
  123. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 速記をとめなさい。   〔速記中止〕
  124. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 速記を起こしてください。
  125. 浜谷一梅

    参考人浜谷一梅君) それでは前言を取り消します。  国民のコンセンサスをどうしたらいいのか、とるにはどうしたらいいのかといったことでございますが、私こうしたならばとれるといったような大げさなことば自分では何も言えないと思います。ただ、私だけの経験を申し上げまして御答弁にかえさせていただきたいと思います。といいますのは、私自身学校は経済学部でございます。したがって、六年間直接間接に原子力船問題とかかわりがありましたけれども、実際言ってむずかしくてわかりません。そのために考えましたことは、やはりドイツの「オット・ハーン」はあの時点でもって三十二万マイル、アメリカ合衆国の「サバンナ号」は五十万マイルの実際の経験をしている。その中で果たしてリアクターによる事故があったのかどうか、あるいはまたそういった関係者の方々あるいは市民方々はどういうふうに受けとめているのか、それを現実に体験することによって安全性といったものを自分でそういった方法で認識するしがなかった、そういうようなことから、まだできてない原子力船の問題でいろんな議論があると思いますが、それはそれなりに結構だと思います。先ほど菊池参考人が、何か言えばすぐ反対だというふうに色をつけるんじゃなくて、やはり国民全体が原子力平和利用といったものに対して賛成であるならば、お互いの英知を出してこれを進むべきじゃなかろうか、そのためにはやはり先ほど申しましたように、すべて先進地の視察を含め、やはりダイナミックな教育といったものが非常に重要な問題になるのではなかろうかと、直接の御答弁にならないと思いますが、以上をもちまして向井先生の御質問にお答えしたい、そう思います。
  126. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 新自由クラブの柿沢弘治でございます。きょうは六人の参考人の方からのお話を伺って大変勉強になりました。私自身の蒙を開いていただいた部分もありまして、その点は大変お礼を申し上げたいと思います。  時間が迫ってきておりますけれども、私の時間の範囲内で御質問させていただきますが、まず感想としては、先ほど井上参考人がおっしゃいましたように、核の問題イデオロギー抜きで、しかも冷静に議論をすべきであるというお話賛成でございます。  それから、きょうは二つの違った立場方々にそれぞれおいでいただいているというふうに伺っておりましたが、比較的意見の違いが少なかった。その点でも、私たちが言っております対決の政治とか対決の社会から何とか一本合意を求めていく社会へという前進が見られたんじゃないだろうか、非常に心強い気がしたわけでございます。そういう意味原子力の問題を取り上げる場合、特にこの原子力船の問題はこれからどうしていくかという問題にしぼって考えてみたいと思うのですが、一つは、やはりこの原子力船開発研究を続けていく上で起こってくる危険の度合い、どんな研究開発にもどんな技術にも危険はつきものでございます。原子力については危険がゼロでなければいけないとおっしゃる先生方もいらっしゃいますけれども、この原子力船むつ」で、むつ湾の漁民の皆さんに実害があったのかどうか、イエスかノーかだけで結構でございますから、浜谷参考人いかがでございますか。
  127. 浜谷一梅

    参考人浜谷一梅君) お答えいたします。  私の知っている限りにおきましてはございません。
  128. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 私もいろいろと聞いておりますけれども、実害はなかったというふうに考えられると思うのです。そうしますと、なぜ実害がなかったところであれだけの問題が起こったのか。これは漁民の皆さんの非常に素朴な不安というものがあったと思いますし、それから科学技術庁の処理のまずさ、事業団の当事者能力のなさというものがあったと思いますので、その点では科学技術庁これからも十分対応していかないと、佐世保でまた同じ過ちを繰り返す。特に科学技術庁長官がどっかいなくなっちゃって党の総務会長が出てきて解決を図らなければということでは、もう政府として当事者能力がないと言われてもやむを得ないと思うわけでございます。それと同時に、やはり学者の皆さん、そして政治家、そしてマスコミの三者が、先ほどからいろいろ出ております核アレルギーというものを増幅する形で議論をしていた、それが大きな問題だったのじゃないだろうか。私たちもそれも含めて反省をしなければいけないというふうに思うわけでございます。そういうふうに考えますと、長崎の漁連の皆さんが、被害が出てはいけない、きれいな海を欲しい、食糧資源、たん白資源を供給していく責任があるのだとおっしゃることは非常によくわかりますけれども、それならば漁船から流れ出る油でもかなりやっぱり海は汚染されるわけです。その汚染をある意味で犠牲としてコストとしてわれわれ受けながら魚をとっているというふうに考えますと、原子力船からの実害はなかったといういまの「むつ」の経験をやはり大事にされてといいますか、それを前提にお考えいただく必要があるのじゃないだろうか。その点では菊池参考人のお話ですと、十三億はわれわれが欲しいと言ったのではなくて、鈴木総務会長がとにかく取っておけと言った。これも全く無責任な話で、自分のポケットから出したごとく国民の税金を使ったということはこれは許しがたい背信行為だと思いますが、そういう意味でごね得は一切考えないというきっぱりとしたお言葉がありました。これを私はぜひ守っていただきたいと思うわけですが、そう考えてよろしゅうございますか、一言だけ。
  129. 住江正三

    参考人住江正三君) ちょっと問題それるかもしれませんが、私たちば四十七年有明海の水銀、PCBで痛い目に遭っています。先ほど井上参考人は、アメリカ原子力船「エンタープライズ」が入ったけれども、何らそういう汚染はなかったと言いますけれども昭和四十二年「ソードフィッシュ号」が入っ場合、ああやってうそのでたらめの報告もあったわけでございます。あのときの魚価の暴落、暴落だけではなくて全部売れぬかったわけです。そういう苦い体験を踏んできているものですから、ああいった抵抗を続けたわけでございます。決していままで何ら被害ばなかったということではありません。これははっきりしているわけでございます。
  130. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 わかりました。  その有明海の問題それから魚価の暴落、有明海の問題については実害が起こっておりますから、それについて実害が起こったら損害賠償を請求する、これは結構だと思います。しかし、実害が起こらない場合、風評で魚価が暴落する、これはいわばつくられた危険でございます。そういうものを避けていくためにも政治や、それから担当の学者の皆さんがもっとクールな議論をしてもらわなければいけない、つくられた損害というものをわざわざつくる必要はないというふうに私は考えます。  それで、井上参考人、先ほど国益の還元はあっていいだろうというお話でございました。その点は私も理解できると思いますが、発電所のようにすぐに皆に利益が上がるというものでない、こういう研究開発機関だけに国益の評価というのはなかなかむずかしいなというのが感想でございます。  それから今後の問題としては、先ほど服部参考人がおっしゃったように、いまの「むつ」はもう老朽化しているし技術が古いからこの際廃船にして新しいのをつくれという議論になるのか、それともいろいろと不十分な点はあっても軽水炉でおおよそいいのではないかという服部参考人の御判断もございます。そういう前提で考えますと、船齢が古くなったというのはそう大きな問題ではない。むしろ原子炉を積んだ船として実験ができればいいわけですし、いまのまま総点検、総点検と言ってお蔵に入れておくくらいむだなことはないというふうに考えますと、いまの船のままで続けた方がいいのか、それともかなりの割合でいまの船はスクラップにした方がいい、炉も含めてスクラップした方がいいというお考えなのか。これも安藤参考人服部参考人、理由は結構ですからどちらがいいかということだけお答えいただきたいと思います。
  131. 安藤良夫

    参考人安藤良夫君) 私は、将来新型の原子力船の舶用炉を開発するにしても、「むつ」というものを完成しないで先へ進むということはできないと思いますし、国際的にも非常に注目されておりますので、どうしても「むつ」を完全なものにするというのが一つのステップだと考えます。  それから、先ほど服部先生がおっしゃった、直径を大きくしろとか、あるいはジルカロイにかえろというような御意見もございましたけれども、これはもう総点検という枠の外で考えるべきもので、たとえば原子力船は幅が多分十九メートルありますが、その二割ずつは炉の設備をつくってはいけない、こういうところになっていまして、真ん中の六割の中におさめなくちゃいけない、そして原子炉を大きくすれば当然「むつ」の船体では入らなくなりますから、「むつ」をやめて別の炉を積むということは「むつ」を続けるということになりませんで、われわれが考えておりますのは、「むつ」の船体を、国民の税金でつくったものでございますから、これを生かして、いまのプラントも、まあ欠陥炉というお話がございましたけれども遮蔽がまずくて放射線が漏れただけで、一〇〇%の出力にするまでは何とも申せませんけれども、一応いままでのところは冷却系統その他正常に働いておりますので、これを完全な形に直して、そして当初予定された実験をやって将来に備えるというのが非常に有効な使い方だと考えます。
  132. 服部学

    参考人服部学君) 先ほど申し上げましたように、私たちは現在の「むつ」を修理することにこだわるか、あるいは新しく設計をし直すか、その点から客観的な検討を行うべきであると考えております。
  133. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 いまの判断はどちらですか。
  134. 服部学

    参考人服部学君) 私自身は、船というものは非常に貴重な実験材料だというふうに考えております。いま安藤先生のお話しになりましたように、炉心を大きくしろという話も私は一メートルも二メートルも大きくしろと言うんではございませんで、せめてたとえば「サバンナ」並みにもう二十センチ大きくするということは、これは十分に検討に値するものではないかというふうに考えております。
  135. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 服部参考人は貴重な実験材料だという表現でおっしゃいましたけれども、その点からもいまの船の研究を続けることに意義をかなりの割合で見出してくださっているというふうに一応理解をさせていただきます。そうしますと、その点でも安藤先生との間のギャップは余り大きくないということで大変安心をいたしました。  最後に、そうすると開発研究を続ける、まあ研究といいますか開発といいますか、研究開発を続けるためにはどうしても次の母港なり修理港を決めなければいけない。で、母港を早急に決めろということも服部参考人のいまの建議の中でおっしゃっているわけですけれども、そうしますと、いま服部参考人の御発言の中でどうも一つうまくつながらないなというのがございます。それは長崎県漁連の諮問で服部先生も入って出されたリポートの中で、核抜きがより安全であるというリポートを出しておられる。ところが今回の建議の中では、むつに対してもしくは政府に対して四者協定を厳守しろということをおっしゃっておられる。四者協定の中にはむつで核燃料を抜いてはいかぬというのがあるわけですが、そうすると、むつに対してはそこで核燃料を抜いてはいかぬ、それを守れとおっしゃって、長崎県に対しては核燃料を抜いてこなければ危ないよというリポートを出しておられる。そうすると、服部先生のおっしゃった外洋で核燃料を抜くというような愚行を犯せと、こういうお話なのか、それともその両方が両立するような方法というのがうまい方法があるのか、それを教えていただきたい。
  136. 服部学

    参考人服部学君) それが提言の二番目でございまして、ですから新母港の設定を優先すべきである、その新母港というのはあくまでもちゃんと、その中ではドックであるとか、原子燃料の安全な交換施設、使用済み燃料の安全な貯蔵及び運搬施設、船体並びに機器の修理機能、それから実験研究施設と、そういうものを付帯すべきであるというのが私たちの提言でございます。
  137. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 これで最後にいたしますが、わかりました、新母港の設定を急げと、そうすると新母港を一体どこに急いで設定をしたらいいのでしょうか。科学技術庁に、もしくは政府にその能力がある、どこか適地がある、受け入れてくれるところがあるというふうにお考えでしょうか。私は、それも服部先生聡明な大学の助教授でいらっしゃいますから、いまの状況の中で佐世保を除いて「むつ」を受け入れてくれる港がないということは十分御理解をいただけるんじゃないだろうか。その場合、佐世保が核抜きか核つきかということで佐世保の現地と長崎県の皆さんとで意見が分かれている。その中で果たして核抜きでなければという議論をあえてサポートされ、そのために新母港を早く決めろと、修理港ではなくて母港を、母港が決まらないから修理港をと言っているわけでございまして、それも妥協だとおっしゃればそれは確かに行政上の妥協でございますが、さりとてあの「むつ」を二年も三年も凍結をして、いま聞きましたら百八十億円の税金が使われている、資金が使われているわけでございます。それをむだにして研究開発の材料にもしないということでは私は責任を果たしていると言えないんじゃないだろうかという気がいたしますので、だから新母港を設定しろと言っているんだというのは私は答えになっていないんじゃないだろうか。どうも参考人にこんなことを申し上げて失礼ですけれども、その点だけお答えをいただいて終わりにしたいと思います。
  138. 服部学

    参考人服部学君) 四者協定というのはやはり政府の権限を委譲された鈴木総務会長が判をつかれているわけで、先ほどのようにそれ自体が無責任だとおっしゃれば別でございますけれども、四者協定を結ばれた以上はやっぱりその責任はおとりになるべきではないだろうか。結ばれた以上はその責任をとる、それをやらなかったらやはり国民の信頼というものはつながってこないんではないでしょうかということでございます。
  139. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 わかりました。
  140. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) ほかに御発言がなければ、参考人方々に対する質疑はこれにて終了いたします。  参考人方々には、御多用中長時間にわたり御出席いただき、また貴重な御意見を拝聴いたしましてまことにありがとうございました。委員一同を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十分散会