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1977-11-25 第82回国会 参議院 運輸委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月二十五日(金曜日)    午後二時二十一分開会     —————————————    委員異動  十一月二十五日     辞任         補欠選任      長谷川 信君     衛藤征士郎君      桑名 義治君     田代富士男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         内田 善利君     理 事                 安田 隆明君                 山崎 竜男君                 瀬谷 英行君                 三木 忠雄君     委 員                 伊江 朝雄君                 石破 二朗君                 岩崎 純三君                 江藤  智君                 衛藤征士郎君                 佐藤 信二君                 高平 公友君                 平井 卓志君                 青木 薪次君                 穐山  篤君                目黒今朝次郎君                 田代富士男君                 内藤  功君                 柳澤 錬造君                 山田  勇君    国務大臣        運 輸 大 臣  田村  元君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  石原慎太郎君    政府委員        環境庁大気保全        局長       橋本 道夫君        運輸省鉄道監督        局長       住田 正二君    事務局側        常任委員会専門        員        村上  登君    説明員        日本国有鉄道総        裁        高木 文雄君        日本国有鉄道常        務理事      高橋 浩二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改  正する法律案  (第八十回国会内閣提出、第八十二回国会衆議  院送付)     —————————————
  2. 内田善利

    委員長内田善利君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、桑名義治君及び長谷川信君が委員を辞任され、その補欠として田代富士男君及び衛藤征士郎君が選任されました。     —————————————
  3. 内田善利

    委員長内田善利君) 国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 まず一番最初に、現在工事が行われております青函トンネル工事進捗状況をお聞きしたいと思います。一体どのくらい工事進捗をしているのか、完成はいつごろの見込みなのか、総工費はどのくらいかかるのかといったようなこと、まずお聞きしたいと思います。
  5. 住田正二

    政府委員住田正二君) まず、工事進捗状況でございますが、トンネルの総延長が五十四キロでございまして、現在までに二十八キロを掘っておりますので、掘削面から言いますと半分ちょっとの進捗状況ということになると思います。  それから工事費でございますが、五十年価格で三千五百五十四億でございます。最終的にはもう少し今後の物価の上昇によってふえると思いますが、五十年価格で三千五百五十四億でございます。  それから完成見通しでございますが、当初は五十三年度の予定でございましたけれど、大幅におくれておりまして、現在の段階でいつできるということの見通しはまだ立っておらない状況でございます。
  6. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 三千五百五十四億というのは五十年の推定であって、これが完成の際には幾らぐらいになるかということはまだ見当つかないという意味ですか。そういうことですか。そうすると、二十八キロというと半分以上できたということになるわけですね。いままでのところ、この工事安全性等について問題はないのかどうか。それから、この青函トンネルについては一体どういう組織が維持管理を行うのか。たとえば、どこの局がこれを担当をしていくことになるのかといったようなこと、これは国鉄の問題だと思いますが、お伺いしたいと思います。
  7. 住田正二

    政府委員住田正二君) 安全の問題というのは二つございまして、現在工事中の安全と完成後の安全と、二つの面があろうかと思います。御案内のように、昨年の五月に異常出水がございまして、安全上問題があるんじゃないかということでございましたけれど、その後排水ポンプを増設いたしましたり、セメントミルク等の注入をやりまして止水工事を確実にやって、安全については十分な配慮をいたしておりまして、現在の段階ではその点の問題はないというふうに聞いております。  また地震の問題がこの委員会でも出ておりますけれど、地震につきましても、十勝地震の際の経験では、海底では数分の一程度の影響だということでございますので、そういう点の心配もまずないだろうということでございます。  開通後の安全につきましては、これは国鉄の方でいろいろ御検討をいただいているようでございます。
  8. 高橋浩二

    説明員高橋浩二君) いま、開通後の安全で大丈夫かというお話でございますが、延長五十四キロに及ぶ非常に長大なトンネルでございます。ただカーブ、勾配等非常に緩やかにできておりますので、通常の列車運行、その点においては特に変わりはございませんけれども、非常に長い区間でございますので、一つには列車火災が起きた場合にどういう問題があるかということが、ほかのトンネルあるいは従来の陸上の鉄道に比べて特に違う点は、その点が第一点かと思います。それからもう一つは、非常に長い——勾配がきついという意味じゃなくて、非常に長い勾配を連続で上りますので、そういう面から車両の安全はどうかというこの二点がほかの点と違うのではないかというふうに考えております。  その点につきましては、いろんな部外の権威者方々にもお集まりを願いまして、いろいろな面から検討を進めておりますけれども、まだ十分な最終的な結論は出ておりませんが、そういう面からの検討で、安全は十分確保したいということで研究を進めておる段階でございます。
  9. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 このトンネル、すでに五十四キロのうち二十八キロができたということですから、半分以上できたということになるわけですよね。で、先般の公聴会青函トンネルの問題について私質問したら、これはやめた方がいいと、こういうことを言った人がおりました。五十年の価格で三千五百億ということになりますと、完成までに恐らく四千億を超えるんじゃないかなと、こういう気がいたします。このトンネル完成させただけでは意味はないわけですから、この青函トンネル完成をした場合の利用方法としては、新幹線を通すのか、在来線を通すのか、あるいは両方通せるのか、その点はどういう計画になっているのですか。
  10. 田村元

    国務大臣田村元君) 重要な問題でございますから、私からお答えをいたしたいと思います。  青函トンネルは、新幹線整備計画におきましては、新幹線在来線との共用ということになっております。トンネル完成いたしました場合の使用方法でございますが、まず第一に北海道新幹線状況を考えなければなりません。それから、まあ当然のことながら輸送量の想定とか、あるいは旅客、貨物の輸送方式、これはたとえば積みかえ方式にするのか、あるいは三線軌条方式にするのか、そういうような問題も勘案しなければならぬと思います。また在来線改良強化、特に連絡船との関連というものも、十分こういう判断について考えていかなければならぬ、そういういま申し上げたようなことを総合的に考慮しながら検討をしていきたいと、このように考えておる次第でございます。
  11. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 新幹線在来線共用するということでありますが、われわれ運輸委員会で去年視察をしたときの感じでは、上下線だけでもっていっぱいいっぱいというふうに見受けたわけです。そうすると、複々線のような形で四線並べるだけのスペースはないように思うんです。上下線だけだったとすると、新幹線レールの真ん中に在来線レールを敷く、こういうかっこうでもって共用をする以外に方法はないような気がするんでありますが、そんな方法共用をするという意味でありますか。
  12. 高橋浩二

    説明員高橋浩二君) 二つ考え方がございまして、いま先生のおっしゃいますように、新幹線ゲージ在来線ゲージでは約四十センチほど違いますので、各軌道を三線軌条といいますか、在来線軌条プラス新幹線三本レール、それの複線を使って線をつくれば、ある時間帯は在来線を通すし、ある時間帯には新幹線を通すということで技術的には共用ができるというふうに考えております。これにはまだ技術的に詰めなくちゃならない問題がございますので、この点については技術研究上その他、特に信号関係が非常にむずかしい問題がございますので、技術的に可能であるかどうかということについていま調べておりますけれども、一応技術的にはできるだろうという見当はついてまいりました。  それからもう一つ考え方は、とりあえず将来の輸送の伸びがどうなるかによりますけれども、まだ輸送量が少ないうちは、おのおの新幹線単線、あるいは在来線単線単線ずつで上下に使うというそういう考え方もないわけではないんじゃなかろうかということで、そういう意味で両方が使えるためには、あとどういう問題があるかということをただいま検討をいたしております。
  13. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 在来線新幹線と両方通すということになると、技術的には大変むずかしいということは想像にかたくないわけですね。しかも、その点はいま検討しておるということでありますけれども、技術的に可能であるというだけで、じゃ、実行に移すという腹を決めているというふうにはいま聞き取れなかったわけです。ところが大臣は、共用をする、こういうふうにおっしゃったから、共用するんならどんなかっこう共用するのかなと思ったわけです。で、新幹線線路在来線線路と別々に敷設をするということになると、新幹線在来線それぞれが単線運転をするということになるわるですね。そういう方法をも考えているということですか。
  14. 高橋浩二

    説明員高橋浩二君) いま二つ申し上げまして、あとで申し上げた方はそういう考え方もあるかなということでございますが、基本的には三線軌条でやりますと同時に、上下が使えるということでございます。ただ、いろいろ安全度の問題が、新幹線自体安全度の問題、それから従来からある在来線安全度の問題と、若干実は速度等によって違う点がございますので、同時に同じ時間帯に走らせるかどうかという点についてはもう少し研究しなくちゃならない点があろうかと思います。ただ、ある時間帯を決めましてこの一時間は新幹線を通すが、次の一時間は在来線を通すというような方式もあるんではないかということで、それも含めて検討をしているということでございます。
  15. 田村元

    国務大臣田村元君) 誤解があるといけませんので、私から正確にもう一回申し上げますと、新幹線整備計画で、新幹線在来線とが共用することになっておる、こういうことを申し上げたのでございまして、私の個人の意見として申し上げたわけではございませんので、そういうふうに整備計画がなっておる、こういうことでございます。
  16. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 基本的な考え方は、そうすると新幹線を通すという前提に立っておるわけでしょう、この青函トンネルは。そうすると、この青函トンネルは、でき上がった暁には、北海道新幹線東北新幹線をこのトンネルで結ぶ、こういうふうに解釈をされるわけでありますが、そのように解釈をしてもよろしゅうございますか。
  17. 田村元

    国務大臣田村元君) 北海道新幹線東北新幹線を結ばなければ、北海道新幹線をつくる意義というものは非常に薄れると思うんです。札幌と函館の間だけの重宝さということになります。でございますから、整備計画共用をうたっておるわけでございまして、私は、その整備計画共用ということにしておることを受けて、結んでいくことは結構なことと、このように考えております。
  18. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 東北北海道新幹線の接続を完了するというのはまだ先のことだと思いますが、トンネルだけで三千億、四千億と、こういう金が飛んでしまうわけですね。その前後の新幹線を含めると、これは整備計画でも出ておりましたけれども、ともかく兆の金が飛ぶということになるわけです。で、これだけ大金をかけて新幹線をつくって、さて、この北海道新幹線がペイするかどうか、こういう問題になるとかなりむずかしいのではないかなという気がいたしますが、その点はどうですか。
  19. 高橋浩二

    説明員高橋浩二君) 運賃の問題あるいは工事費の問題によって、この経済計算はいろいろあろうかと思いますので、将来のそれについてまだつまびらかには計算をいたしておりませんけれども、おおよその見当を申し上げますと、ただいま東海道あるいは山陽新幹線を私の方は運営をいたしておりますその経験から申し上げますと、ある断面交通量と申しますか、線の平均断面交通量が、おおよそ上下合わせまして五万人以上のお客さんがございますと、数年後に私の方は一応ペイするというふうに考えております。  ところが、しからば五万人というのはどのぐらいの数字かと申しますと、ただいま山陽新幹線新大阪博多間、ここで上下、合計いたしまして、ただいま通過しておる断面交通量は六万七千人程度でございます。それから、いま計画いたしております東北新幹線ですと、東京盛岡間で約五万ないし六万ではなかろうかというような見当でございます。そのぐらいが、ちょうど経済的にペイするかしないかという交通量から見た推定でございまして、いま問題になっております青函トンネルを通るいわゆる本州北海道お客様は一応私の方の推定では、昭和六十年度ということで推定いたしますと、おおよそ上下合計約二万弱というふうに考えております。  したがいまして、五万に比べますと二万でございますので、そういう面から見て、これはなかなかその面からだけの経済性という、いわゆる国鉄運営から見た経済性というものはとれないんではなかろうかというふうに考えております。
  20. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 国鉄にとって、新幹線が救いの主になるという可能性は率直に言ってないんじゃないかと思うんですよ。ということは人口密度を考えただけでわかると思うんですね。北海道というのは大体人口五百万、東京都の半分以下です。で、東北地方はこれまた日本の中でも人口の希薄なところですね。この間もちょっと私は指摘をしたんですけれども、東北新幹線でもって大都市と目されるのは仙台ぐらいなものです。それから仙台から先に行きますとこれはみちのくですよ。俗に言うみちのく、岩手県、青森県。こうなりますと人口密度はぐっと下がるわけです。  現在の東北線でも黒字にはなっておらぬわけです。スピードアップされて新幹線になったからといって、急に東海道新幹線のようにこれが黒字になるというような条件は備えてないわけでしょう。それが、トンネルくぐって北海道と結ぶ。北海道で結んだ場合の大都市札幌ぐらいなものですね。それから先になると、ますますこれは人の住んでいるところでなくなってくるわけです。こういう地域新幹線を建設するということは、国の政策としてはわかるけれども、国鉄自体の経営ということから考えてみると、かなりこれは大きな負担になりはしないか、こういう気がいたします。  したがって、この工事は、東北北海道新幹線トンネルを含んで結局工事費というのは完成までに全部でどのくらいかかる見込みですか。
  21. 住田正二

    政府委員住田正二君) 先ほど申し上げました青函トンネル工事を除きまして、東北新幹線盛岡青森と、それから北海道新幹線青森札幌、両方合わせまして一兆七千億程度の金がかかるというように見込んでおります。
  22. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 いままで国鉄問題を論ずる場合によく言われたことは、企業努力をもっとやれ、あるいはまた、民間私鉄を見習え、こういったような意見が出てきたわけですけれども、民間私鉄でもってもうかる見込みのないところに一兆七千億もの投資をするというばかはいないわけですよ。これは、国鉄なるがゆえにこういう重荷をしょわされているわけです。借金でもってこんな投資を行う。完成の暁にどんどんもうかるかというとそうはいかない。恐らく赤字ではないか。ということになると、これだけ考えてみても、国鉄にこのような新幹線重荷をしょわせることが果たしてどういうものか、これは考えなければならぬことじゃないかという気がいたします。これは政府自体が当然責任を負うということでなければならぬと思うのでありますが、大臣としてはどのようにお考えになりますか。
  23. 田村元

    国務大臣田村元君) 結論から申し上げますと、おっしゃるとおりであります。ただ、国策としてこういう整備五線等をやっていくというのは、やはりその地域方々の強い御要望というものもありますし、また地域格差を是正していくということもございます。でございますから、新しく新幹線をつくっていくということはこれは国の政策であって、国の政策である以上は、しかもそれが赤字が見込まれる以上は、国鉄にそのすべてをしょわせることは酷であります。国鉄再建を論議いたしておりますときに、このような大きな工事費国鉄に全部しょわせるのだという考え方であっては私は不謹慎だと思う。  でございますから、当然新幹線整備五線の建設費につきましては、その財源措置について、国の責任でこれを解決していく努力をしなければならない、私はそのように思います。ただでもらっても赤字が出るのでございますから、建設費については、財源措置について国が極力その責任において努力をしていくということは当然必要なことであろう、このように思います。
  24. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 東京札幌間あるいは東京−九州間ですね、博多、熊本、鹿児島、こういう間の国鉄航空機シェアは、逐年航空機の方に移行しているわけです。十年前、二十年前と比べるともう問題にならないくらい国鉄利用者は減っているわけです。私はこれは大勢ではないかと思うのですね。飛行機が昔のように輸送量が小さかったときは別でありますけれども、いまのようにジャンボ機なんというものが出てきて競争をすれば、片っ方は新幹線ですら七時間かかるところを、飛行機なら一時間半ですよ。おまけにグリーン料金やらあるいは特急料金が高かったりして、飛行機代新幹線と大して変わらないということになれば、新幹線よりも飛行機を選ぶというのは人情です、これは。そうなりますと、やはり長距離、特に一千キロといったような長距離は今後は新幹線が太刀打ちできるもんじゃない。こういう気がします。当然飛行機に移るだろう。これはやむを得ないことだろうと私は思うんです。その趨勢をやはりある程度見越して交通計画というものは立てるべきじゃないかという気がいたします。  そうすると、北海道の場合は、千歳空港まではわけはないんですが、千歳空港から札幌まではかなりあるわけですね。だから、むしろ空港と都市の間、たとえば千歳空港から札幌とか、あるいは旭川、岩見沢とか、苫小牧、室蘭とか、こういう地域を早く連絡をするということの方に鉄道としては頭を働かした方が、本州からの新幹線を結ぶことよりもむしろ有意義ではないかという気がするのですが、その点はどうですか。
  25. 田村元

    国務大臣田村元君) 空港は、大きな輸送ターミナルと言ってもよい、一つ交通流れターミナルでございます。でございますから、これと国鉄とを直接結びつけていくことはこれは非常に必要でございます。いわゆるアクセスとしての役割りを果たさしめる。何か千歳空港の場合も国鉄の方ですでに検討を開始しておるようでございます。私は非常に結構なことだと存じます。  ただ、新幹線の場合、率直に言いまして、航空から新幹線に大きくお客様が移っていくということは考えられないかもしれません。東京福岡間の新幹線ができ上がりましたときは相当大きな流れがございました。飛行機シェアは大幅にダウンしました。しかしながら、北海道の場合はそれがそのまま当てはまるかどうか、これは疑問でございます。まさにいま瀬谷さんおっしゃった時の流れ、時代の趨勢というものが、北海道の場合は航空機主体ということになることは想像にかたくありません。ただ、だからといって、北海道の住民があすこまで待望いたしております新幹線でもございます。また、この新幹線が果たします役割りというのは、札幌東京を結ぶというだけの役割りでもございません。でございますから、そういう点で、国が十分の対策を財源等において講じながらこれを建設していくということには、またそれなりの意義もあろうかと、このように考えます。  そういうことで、国の政策上これをやろうということになっておるわけでございますが、それにしても、環境アセスメントを含めまして、輸送量その他のいろいろな調査はやはり慎重に検討しなければならぬだろう、このように考えておる次第でございます。
  26. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 整備新幹線、これはいろいろ問題はあると思いますが、当委員会福岡公聴会を行いました際に、現在山陽新幹線博多までできておるが、博多から長崎鹿児島までこの新幹線をさらに延長した方がよろしいと考えるかどうか、在来線充実強化で事足りるというふうに考えるのかどうか、その点、私は出席された公述人の方にお聞きをしてみたんです。そうしたら、皆さんが長崎鹿児島まで延長した方がよろしいと、こういうことをおっしゃっていました。  そうすると、いままだこれはどこまで具体化するかわかりませんけれども、少なくとも整備新幹線については、これは大方の地区では待望されているというふうに考えてよろしいんですが、これを全部やるという場合には五兆の金がかかるようになってますね。五兆というと大変な予算ですよ。これらの五兆の金が一体どこから出てくるのか。  この膨大な負担をまたまた国鉄にしょわせるということになりますと、利息だけでもいいかげんなものになるはずなんですから、これはどうにもならぬだろうという気がいたします。果たしてこれをまるっきり国鉄負担にしないで、しかもこの整備新幹線完成をさせるという自信があるのかどうか、その点をお伺いしたいと思うんですが。
  27. 田村元

    国務大臣田村元君) おっしゃるとおりでありまして、過去の計算で五兆五千億、実際にこれをやりますときには諸物価値上がり等もございましょうから、相当莫大な金になる。これを国鉄にしょわせることができない。全部国鉄にこれをしょわせることはできないというのは、先ほど北海道新幹線で申し上げたのと同じことでございます。  でありますから、われわれはこれをやるという前提には立っておりますけれども、財源措置をも含めて慎重に検討していかなければならない。一部の議員の中には、建設国債でやれという御意見もあるようでございます。まあ建設国債と一口に言いましても金額が大きゅうございますから、いろいろな点でそう簡単なものではないと思いますが、私どもはこの財源の問題がはっきりいたしますまでは、本格的に取り組むことを、大変地域の方には申しわけありませんけれどもちゅうちょせざるを得ない。ちゅうちょせざるを得ないということはおくれるのか一そうじやなくて、裏返せば財源問題について早急に結論を出さねばならぬ、このように考えておる次第でございます。
  28. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 財源の問題についてどういう結論を出すかということが問題なんですよね。この国鉄財政再建ということを考えてみますと、いままでの累積債務というものをどうやって処理するかということが一番大きな問題でしょう。これが六兆だ、七兆だというもう、民間会社じゃ考えられないような途方もない借金になっているわけですね。  当委員会で質問がありましたけれども、一体いままでの債務はどのくらいだ、赤字はどのくらいだ、その質問に対して、合計七兆になる、利息の払いが五千四百億だ、こういう答弁があったわけですよ。年間五千四百億というと、これはちょっと民間会社じゃ考えられないです、こんな借金の利息は。  これは国鉄で働く人にとっても、もう絶望的な数字だと思うんですよね。自分たちの道楽の結果しょった借金なら、これはしようがないですよ。そうじゃないんですからね。新幹線あるいは在来線投資、要するにそういったようなことのために、借金政策でもって六兆だ、七兆だという債務ができる。利息だけで四千億だ、五千億だ、こういうことになる。その借金を払うために企業努力を一生懸命やりなさいと言われたって、これはやりようがないでしょう。  これはおじいさんだとかおやじさんの借金をせがれがしょい込んじゃって、それで働け働けと言われたって返す当てもないという、借金のために働けと言われたって働く意欲が出てこなくなると思う。財政再建の問題いろいろと論じられておりますけれども、結局はこういう借金のツケをだれが払うかということになってくると思うんですよ。  したがって、その財源をどこに求めるかということが、三方一両損とかなんとかいうことがいままで行われてきました。体裁はいいけれども、その借金の片棒は国鉄も担ぎなさいということだったんです、いままでは。現に担がされてきたんです。こういう借金の片棒を担ぐという負担を取り除くということを根本的にやらなければ、財政再建に対する意欲が私はわいてこないと思うんですね。それは思い切ってできるかどうか。これは国鉄財政再建について総裁の見解の中にもございましたけれども、これは総裁だけで何とかなるという問題ではない。まさに政治の問題であると思うわけです。これははっきりと確約できますか。
  29. 田村元

    国務大臣田村元君) 実は、私がお答えしたいことを瀬谷さんがもう正確におっしゃったと言っても過言ではないわけでございますが、整備五線につきましては、国鉄に過重な負担をかけない、そのような財源問題を解決することが先決である、このように考えます。過重な負担国鉄にかけることを前提とした新線づくりをわれわれがいま考えること自体が不謹慎である、財政再建を真剣に論じておりますときに、これはもう当然のことでございまして、私は御意見に全く同感であります。
  30. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 財源問題を考えないでこの新幹線整備計画なんというのは考えるべきでないというのは、これは当然だろうと思うんですよ。ところが、先ほど私が指摘をいたしました青函トンネルというのは、五十四キロのうち二十八キロ掘っちゃったわけです。半分以上できちゃっているんですね。この半分以上できちゃった青函トンネルをやめるというわけにはいかないような気がするんです。この間の東京公聴会では、あれはやめちゃった方がいいと言う人がおりましたけれども、トンネルなんというのは半分掘ってやめたって何の役にも立たないわけですからね。  そうすると、いやおうなしにこれは突き抜けるまで工事をやらなければならぬ。トンネルができ上がったら、そこへ新幹線を通さなければどうにもならぬ、こういうことになるでしょう。そうすると、結局は、この青函トンネルを掘っているということは、青函トンネルに付随をする北海道新幹線を含めて一兆、二兆という投資は、もうかろうともうかるまいと、やらなければならないようになっているわけですね、現在。そのやらなければならなくなっている分についても国鉄負担にしないということができるかどうかということは、大変われわれにとって関心の深いところなんでありますが、その点はどうですか。
  31. 田村元

    国務大臣田村元君) 当然の御心配であろうと思います。北海道新幹線ができ上がった暁において青函トンネル共用していくということは、それなりに意義があると思いますが、青函トンネルの方が完成が先行した場合、まあ事実は先行するでございましょうが、その場合にどうするか、とりあえずどうするかということについては、これは国鉄当局の判断というものをまず決めさせて、その上で対処しなければならないと思うんです。でありますから、国鉄が、北海道新幹線が供用開始になるまでの間、青函トンネルをどのようにするかを決めていくについては、私どもは、運輸省として余りおせっかいをやかないでこれを静観したいと、このように考えておる次第でございます。
  32. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 しかし、この青函トンネルがこうやって急テンポで進捗をしているということは、喜んでいいのか悲しんでいいんだかちょっとわからぬような気がするんですよね。両わきの方ができないで、海のものとも山のものともわからない——海の下をくぐるには違いないけれども——にもかかわらずトンネルだけでき上がる。トンネルだけでき上がったとしても、これはしようがないですなあ。線路のできないトンネルなんてのは、これはまあ何の役にも立たない。そうすると、これは一体どうするのかという問題が出てきます。当然トンネル線路と合わせるように工事しなきやしようがないでしょう。それができるのかどうかという不安もあるわけです。国鉄としてはその点自信があるのかどうか。どうなんでしょう。
  33. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 非常に弱っておるわけでございます。まあいまもお話しのように、何年か後にはトンネルが通過するであろう。でき上がったものをこれほっとくということもできないわけでございましょうし、さりとて両側を通ずるようにいたしますと、その投資に、仮に投資を私どもの負担でなくてやっていただきましても、さっき高橋務理事が説明しましたような交通量からいいまして、果たしてそれが引き合うかどうか、また赤字の原因をつくるのではないかという心配があるわけでございまして、在来線新幹線を組み合わしてどういう方法にするのが——もしどうしてもこれを使うんだという前提で考えました場合にも、在来線新幹線をどういうふうに組み合わして使えば一番採算上ぐあいがいいか、あるいは損が小さくて済むかしらんということを研究いたさねばならない。  同時に、昨日もどなたか他の委員から御質問がございましたけれども、私の方は例の青函の連絡船の問題がございますんで、これをどういうふうに将来持っていったらいいかという問題も絡んでおるわけでございます。率直に申しまして、ごく最近に至りまして、その辺のところを中心に、内々でございますけれども、いろいろ作業を始めておるところでございます。ほんのまだ作業の入り口でございまして、私どもも、さあこれどうしたらいいかということについて、今日ただいまの段階では、こちらはこういうやり方がよさそうだというところまで申し上げる段階に至っておりません。しかし、いずれこれはだんだんと、経営の立場ではどう考えるかということだけでもわれわれの方で出していかなければならないものというふうに考えております。
  34. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 計画そのものがまことにちぐはぐだと思うんですよ。どんな企業でもこういう莫大な投資をする場合には、投資が実りある投資であるように細心の注意を払うもんだと思うんです。ところが、この東北北海道新幹線並びに青函トンネルというのは、うまいことそれが合ってないんですね。トンネルばっかり先行している。トンネルはいま、聞くところによると半分以上できている。しかし、トンネルができ上がったときにこれがどう利用されるかということがいまだにはっきり決まってない。これじゃどうも金ばっかりかかって、その借金の利息ばっかりどんどん遠慮なくふえる、こういう状態で、何ら一銭もこれは利益を上げないでしょう、この青函トンネルは。こればっかりは、まあ全くトンネルだけで使用する方法が考えつかないですからね。  そうすると、これだけでも私は莫大なむだ遣いということになると思うんです。資金の有効な使い方にはならぬと思うんですね。こんなことが一体許されるのかどうか、一体だれの責任なんだろう、こういう気がします。この点をやはり現実の問題として十分に考えて、ともかくむだな金がかからないようにするということを考える必要があるんじゃないかという気がいたしますが、現実の問題として、それじゃ東北新幹線の方を促進をするといったような一つ見通しがあるのかどうか、その点をお伺いしたいと思うんですが。
  35. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) これは、実は青函トンネル工事費はわれわれと全く関係ないわけでございまして、まあ東北新幹線の方にどれだけつぎ込んでいくかということと、上越新幹線の方にどういうふうに進めていくかということは、大宮と東京の間が一本であります関係で、実際問題として、しばしば事実上の御相談をいただいて進めておりますけど、青函トンネルの方は国鉄とはほとんど関係なくいま進んでおるわけでございまして、また金利負担という問題も、いまのところは何も起こってないわけでございまして、さて、いずれ運輸省の方から、おまえの方で何か使えと言われるときが参りましょうから、そのときにまあどういうふうにして一そう簡単にはお引き受けしないつもりでおりますのですが、どういうふうにしてお約束をするかということでございまして、現段階では、率直に言って余り十分な連絡はとれておりません。  しかし、そうは言いましても、何といいますか、鉄建公団と私どもは、法律的には別のものでありましても、事実上兄弟分みたいなものでございますので、なかなかそこらあたりがむずかしいという現状でございます。でありますから、私どももそろそろ、でき上がった後にはどういう使い方をするかなという勉強を始めまして、われわれとしてももう少し積極的にこれから物を申していかなければならないかというふうに考えております。
  36. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 まあ普通鉄道をつくるんならば、だんだんこう先へ先へと延ばしていくのが常識じゃないかと思うんですね。ところが、この青函トンネルの場合は、トンネルだけ先にできちまう、その前後ができない、こういう事態になる可能性があるんじゃないんですか、現実の問題として。トンネルだけでき上がった、しかもそのトンネルは海底トンネルだ、こんな始末の悪いものはないですよ、これはね。  これは明らかに、莫大な金をかけてつくる以上は重大な責任があると思うんです。一体だれがこういうちぐはぐな工事責任をとるようになっているんでしょうか。国鉄には関係がないとはいうものの、縁のないことじゃない。政府としては一体こういうことをやっていいのかどうかということなんですね。これはやはり政府自体責任になるんじゃないですか。どうでしょうか。
  37. 田村元

    国務大臣田村元君) 高度成長時代に始めましたものでございますから、このような今日の経済事情になって非常に苦慮しておるということについては、これは政府の責任はやはり免れないと思います。しかしながら、せっかくここまできたものを捨てるわけにもいかず、ばら色のムードのときに生まれた子供を殺してしまうわけにもいかないというようなことでございまして、いま瀬谷さんもいみじくもおっしゃいましたが、いまさらこんなものを、大きなものをやめるわけにもいくまいがというお話でございましたが、後どのように現実に適合せしめるかということを真剣に考えることではなかろうかと、このように存じます。
  38. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 環境庁長官、先ほどからお見えになっておりますので、長官に対してまずお伺いしたいと思うんですけれども、新幹線の問題は、いま進行しているのは東北・上越新幹線。それから青函トンネルなんというのは、いま話したとおりトンネルだけ先にでき上がろうとしておるけれども、それに接続する東北新幹線の方はまず大宮−東京間が全然目鼻がついてないんです、いまのところ。大宮から先の方はどんどん進んでいるんです。これもどうもちぐはぐなことになりそうなんですね。この青函トンネルだけ先できちゃって、そこまで東北新幹線ができないという事態になるけれども、その東北新幹線が今度は大宮から仙台、あるいは盛岡、こういうところは先にできてしまう形勢にあるけれども、大宮から東京の間はいつできるんだかわからない。  その理由は、大宮と東京の間、この沿線の住民が反対運動をやっておるわけです。その沿線の住民の反対運動が、結局町のど真ん中を通るから新幹線には反対だ、新幹線公害には反対だ、こう言っているわけなんですね。この新幹線公害反対だという沿線の住民は、これは革新の市長のところばかりじゃないんですよね。気の毒だけれども保守系の市長のところが最も強いわけです。こういう事実なんです。これは保革の問題じゃないんです、こうなると。こういう問題に対処するには、まず新幹線公害というものに対して、やっぱり政府としても一つの方針を明らかにする必要が出てくるんじゃないかと思うんですね。  恐らく環境庁長官とすれば、この東海道新幹線の沿線住民からの苦情、あるいは山陽新幹線の沿線住民からの苦情というものも聞いたことがあるんじゃないかなという気がするんですよ、陳情やら何やらあって。そうすると、それらの問題に対してどう対処してきたのか。これからでき上がろうとする東北・上越新幹線に対してどういうふうに対処していったらよろしいのか。こういう問題について環境庁長官としての御意見を承りたいと思います。
  39. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 新幹線の公害につきましては、環境庁は非常に重大な関心を持っておりまして、いままですでに環境基準を告示し、振動についても緊急の措置を勧告してまいりました。特に人口の密集した市街地の新幹線の通過は、私自身も自分の選挙区にそういう部分を持っておりまして、体験として非常に政治的な立場を越えた深刻な問題だと思っておりますが、新規の新幹線については、これは十分アセスメントをしていただきまして、その結果を住民の方々によく説明をしていただくということは肝要だと思います。  その説得が効果をあらしめるためにも、いま御指摘のように東海道線でありますとか、あるいは山陽の新幹線でありますとか、既設の新幹線の周囲の住民から出ております苦情、これに対して国鉄がすでにしている約束というものを、やはり何と言っても完全に履行をしていただいて、誠意を示すということが私は肝要だと思います。そうしませんと、やはり疑心暗鬼も生まれてまいりますし、何と申しましても一番大事なことは八十ホン以上の区域というものの公害防止の達成というもの、これは来年の夏に来るわけでございますが、いろいろ国鉄の事情がおありでしょうけれども、とにかくこの八十ホン以上の地域に関しましてはもう多角的に総合的な対策を立てて、何としてでも達成期限内に実現をしていただくということが肝要だと思います。
  40. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 この新幹線の騒音というのは、まあ数字的にここは八十ホンだ、ここは七十ホンだと言って簡単にいかない問題もあるわけですね。場所によっていろいろと条件も違ってきているわけですが、騒音と振動と両方あるわけです。これらの新幹線公害を解決をするためには、方法としては新幹線と住宅というものが離れていればいいわけなんですよ、簡単な理屈だけれどもね。ところが、計画そのものに私は甘さがあったんじゃないかと思うんだけれども、新幹線の用地というものをごくもう目いっぱいに確保していくということをやったために、住宅と新幹線とがすれすれというと語弊があるけれども、かなり近いところを通るようなかっこうになっちまってるわけですね。東海道新幹線なんかの場合は、最初のうちは、住民は通ってみるまでばわからなかったわけでしょう、恐らく。通過されてから、これはたまらないということになったわけだと思うんですよ。  だから今度は、東北新幹線等の場合は、若干の用地を線路からとるようになったけれども、それでもまだまだほんのわずかです。道路に比べると、新幹線の場合ははるかに住宅と接近しているわけですね。道路の場合は、たとえば高速道路の場合は四、五十メーターの幅員をとるわけです。それでもかなりの騒音はあると思うんですよ。しかし新幹線の場合は十一、二メーターしかとらない、高架の幅が。十一、二メーターでもって、それから両わきはせいぜい四メーターぐらいしか取ってないんです。それも最近なんですよね、四メーターとるようになったのは。これではたまったもんじゃない。  したがって、初めからせめて五、六十メーターの幅員をとるようにして、新幹線と家屋との間に緑地帯を設けるとか、道路を設けるとか、ある程度の間隔を設けるという方式をとっていたならば今日のような新幹線公害という問題は、まあ全然ないとは言いませんけれども、かなり異質のものになっていたんではないか。それを土地の買収をけちったために、ぎりぎりいっぱいの幅員でもって線路を敷いてあるというところに、新幹線公害問題というものが起きてきたんではないかというふうに思うんですが、これらを解決するためには一体どうしたらいいのかということです、今度は。  これはこれから整備新幹線北海道新幹線から九州新幹線まで先の計画があるわけですからね。これから先のことを考えたならば、いま工事をしている新幹線についても、それらの配慮は十分に行われなければならないと思うんです。その点は、環境庁が考えたことというのが、運輸省なり国鉄なりによってストレートに行われているというふうにお考えになるのかどうか。実績としては果たしてどのように見ておられるのか。その点お伺いしたいと思う。
  41. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま先生から御指摘のございました点は、中央公害対策審議会が新幹線の環境基準を出しましたときに、今後の課題ということの中にそのことを相当詳しく触れているわけでございます。このことは国鉄だけでできる面もございますが、国鉄と地方公共団体との関係が非常にうまく調整をされなければまたできない。また地方公共団体にしましても非常に困っているわけでございますから、そこの部面をどのようにうまく持っていくのかというところが、現在あちこちの陳情を私どもも聞いておりますが、そこが非常にむずかしいところではないかと思います。  しかし、基本的には、これから新しくできてくるときにはその周りの都市計画や、あるいはその周りにできる建築物というものについての対応というのをやはり抜本的に考えていく必要があるんじゃないだろうかということでございまして、これは家ができないということは、住居がそこに入らなければいい、あるいは防音の住宅があればいいということでございますし、また住居でなければ、倉庫があっても何があってもいいわけでございますから、やはり価値のある土地の使い方をして進めていくということが一番大事だと思います。  そういう点につきまして、国鉄の方はどうかということでございますが、私どもときどき国鉄新幹線の担当の方に連絡をしてお願いをしたり、あるいはこれは一体どうなっているんですかということを聞いたりはすることがございますが、やはり基本的には、国鉄の方でその路線の構造あるいは車両というような技術開発を非常に進めていただくことがどうしても必要じゃないか、あるいは、これはここまで進んできたから、こういう構造ならばこれだけのものは防げるということをはっきり出していただくことがまず一番大事なのではないかというぐあいに考えておるわけでございます。
  42. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 国鉄にいろいろと技術開発をというふうに言ってみても、やっぱり二百キロ以上のスピードというのは昔の飛行機の速さなんですね。昔の飛行機の速さでもって地面の上を走るんですから、これはいろいろ工夫してみたところでやっぱりそうはいかないと思うんですよね。すぐそばを通られるのに振動も騒音もないというわけにいかぬと思うんですよ。  そうすると、方法として考えられることは、スピードをある程度殺すということ、さもなくば、新幹線と住宅との間を離すということ、どっちかにしないというと問題は根本的に解決できないんじゃないですか。その場合に、環境庁とすれば、ある程度スピードダウンをしても騒音、振動の被害を及ぼさないようにした方がよろしいというふうに考えるのか、あるいはスピードを思い切り出してもらうためには、住宅の方をずっと遠くの方へどいてもらうようにした方がいいと思うのか、どっちがいいというふうにお考えになっておりますか。これは長官にお伺いしたいと思うんです。
  43. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) スピードを落とすということになりますと、そもそも新幹線というものが敷設される意味合いというものが非常に薄らぐんではないかと、私、所管が違いますけれども素人として考えますが、いま局長が答弁いたしましたけれども、たとえば道路五カ年計画というようなものにも、環境庁は、もう少し道路の構造そのものを配慮するように建設省に勧告をいたしまして、建設省の方も五カ年計画の中で、こういう限られた国土の中での高速道路というものの構造について鋭意検討中でございますが、いま申されました速度を落とす、あるいは非常にむずかしい立地というものをたっぷりととるということ、これも非常にむずかしいと思います。つまり第三の道として、やはりここまで技術が開発された時代でございますので、新幹線の走る橋梁そのものの構造でありますとか、車両の構造でありますとかということで、私はやはり環境基準というものが維持できるんではないかと、そういうふうな期待を持っている次第でございます。
  44. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 これはしかし、騒音の問題は新幹線に限らないんですね。在来線だって結構うるさいわけですよ。それから自動車だってこれまたうるさいわけなんです。ただ、在来線の方はあきらめちゃっていて、うるさいものだと思っているから在来線について余りいろんな声が出てこないだけで、うるさい点では、新幹線在来線と比べるというと、在来線の方がにぎやかな場合もあるわけです。スピードが緩い区間は新幹線の方が静かだという場所もあるんじゃないかという気がするんですね。たとえば新幹線の問題で、有楽町だとか新橋だとか、この辺は新幹線の音がやかましいからという問題は余り出てこないわけです。つまり、スピードをある程度セーブしているところは問題はないということになる。そうすると、この新幹線公害問題を解決するためには、スピードについてもある程度これは緩めるといったようなことは考えていいんじゃないかという気もするんですよ。  たとえば東京−大阪間は三時間十分でひかり号が走るようになっちゃっているから、これをいまさらダウンするということはなかなかできない。しかし東京−新潟間の上越新幹線の場合は、これは三百キロしかないんですよね。三百キロしかないということになると、百五十キロで走っても二時間で到達できるわけです、東京−新潟間の場合。それをあと何分か、あるいは何十分か短縮をするために二百キロを出すということになると、二百キロ以上出すと必ずこれは騒音公害問題が出てくる。しかし百五十キロぐらいまでだったならば、在来線でも百三十キロ出しているわけですから、在来線の最高スピードぐらいだったならば問題は余り起きないんじゃないかと、こういう問題が出てくるわけです。  だからこういう場合に、上越新幹線の場合は二時間で走らせるということによって騒音公害の問題を回避するということが可能だというふうに判断をした場合には、最高速度というものを百五十キロぐらいに抑えるという方法もこれは考えられるんじゃないかという気がするわけです。その辺は判断の問題でありますけれども、環境庁としてはこういう場合に、やはり一時間半で走らせるということのためには、多少の騒音公害もしょうがないというふうに考えられるのか、二時間ぐらいにして問題を回避をするという方法を考えるのか、どういう選択をするのか、その点、お伺いしたいと思うんです。
  45. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 時間というものをお金で買い取るという形でのスピード化というものが、鉄道にしろ、あるいは飛行機にしろ、SSTなどにあらわれているんだと思いますが、しかし一方では、「せまい日本そんなに急いでどこへ行く」という標語もあるようでございまして、いま御指摘のように、それが非常に長い路線の場合には、スピードということも一つの経済価値としてしんしゃくされなくてはならないかもしれませんが、おっしゃられるようなケースについては、当然そういうことも考えられる余地があると思いますし、特に都市部の通過に関してはやはり速度というものに対する考慮が払われるべきではないかと思います。また、技術の向上によって、そこでおくれた部分を他の周囲に人家のない、あるいは非常に少ない部分で取り戻すこともできるんではないかと、まあ素人でございますけれども考えます。
  46. 田村元

    国務大臣田村元君) 私も、非常な人家稠密の地帯においてはスピードをある程度落として、新幹線公害の発生を極力抑えていくということは当然必要なことというふうに思います。
  47. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 ところが、あいにく日本じゃシベリア鉄道みたいなところは余りないわけですよね。人家のあるところばっかりでしょう、特に関東周辺は。東京−新潟間で人家の見えないようなところはトンネルの中以外はないわけですよ、残念ながら。そうすると、こういう区域を走る場合に、環境庁でもって新幹線の公害についていろいろと決めた基準というものを厳格に守っていった場合に、果たして所期のスピードが出せるのかどうかという問題が出てくるんじゃないかという気がしますが、その点は国鉄としては技術的にどうなんでしょうか。
  48. 高橋浩二

    説明員高橋浩二君) 東海道新幹線を建設いたしましたときには、鉄でつくりました橋梁を随所で実は使用いたしました。これが、振動も若干影響しますが、主として騒音値として非常に高い騒音を発生いたしました。大阪から博多にかけてのときにはこの経験をもとにいたしまして、極力鉄の橋梁は使わずにコンクリートの橋梁ということで設計をするようにいたしました。したがいまして、大阪から博多経験では、ほぼ八十ホンというもの以下にすることが可能になってまいりました。ただいま環境庁のお示しいただいた東北新幹線に対する基準は、開業当初は絶対に八十ホン以下でなければならないというものでございますので、従来の大阪−博多間でわれわれが開発しました技術だけではまだ不十分でございます。  なお、それに加えまして、いろいろゴム製品を使う、あるいは車体、車両自体に覆いをして音の発生を少なくする、あるいは橋梁のコンクリート構造物自体をもっとマッシブにいたしまして、それから発生する音をすぐに出ないようにするという、いろいろなことをただいま研究をいたしておりまして、近く小山付近でもいろんなそういう試験をいたす予定にいたしておりますが、ただいまのところ八十ホン以下にすることは確実に自信を持っております。ところが、それから数年後以内に——地域によって違いますけれども、七十五ホンあるいは七十ホンにしなければならないというふうにお示しをいただいておりますので、これに対する対策といたしましては、先ほど先生も触れられましたように、線路の両わきにいろんな他の都市施設等とあわせまして、人家等なるべく離れるようなそういう都市施設をするのが一つ方法ではないか。また、私の方としてだけで考えます場合にはそう簡単にまいりませんので、いわゆる人家に対する二重防音工法、それらを組み合わせまして環境基準の達成をしなければならないというのが現状の技術段階ではなかろうかというふうに考えております。  なお同時に、振動に対する基準も七十デシベル以下というふうにその後環境庁からお示しをいただいております。したがいまして、音だけですと二重窓等で防ぐことができますけれども、振動と騒音の両方が同時に来る場合には、二重窓等だけでは処置ができません。したがいまして、非常に地盤が悪いところでは振動、騒音、両方の基準を守るために、ある程度線路からの距離を離していかないとこれは達成できないんじゃないか。そういう意味においては、もっと都市施設その他等、よく私の方も協力させていただきまして、そういうものとあわせて環境基準を達成していくのが現実的な方法ではないかというふうに考えております。
  49. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 環境庁とすれば、環境庁というのはわりあいとそういう点は基準をつくってこのとおりやれと、こういうふうに言えばいいわけですから、実施をする側に比べると立場は楽かもしれません。しかし、特にこの新幹線というのはなかなか理屈どおりにいかないわけですね。いままでかなりやはり東海道新幹線等の沿線の住民の人たちからいろんな苦情が出ているわけですから、これらの苦情をもとにして、現在建設をしている新幹線の問題については、同じような苦情が出てこないようにする必要があると思うんです。したがって、そのための環境庁としての方策というものは、十分に運輸省なり国鉄なりと連絡をとってやっていっているとは思いますけれども、そういう点、これから建設をされる新幹線等についても連携をとってやっているのかどうか、その点どのような方法でもって新しい新幹線についての環境庁としての行政指導が行われているのかお伺いしたいと思うんですが。
  50. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 環境庁の立場としましては、環境基準達成の問題で国鉄がいろいろ努力をしていただいておるわけですので、いま考えておりますのは、五十三年の夏になりますと、第一のその八十ホン以上の地区を達成するというのが、そういう努力目標になっている時期になります。  そこで、一体どこまで進んだのか、何をどれだけやってよくなったのかというものを、やはり一応評価をしてみるということが一番大事なことではないか、もう一つは、研究開発をいま進めておられて、また試験的な路線でテストをやるということを先ほど常務理事さんの方からもお話がありましたが、ぜひともそのようなところを一回拝見をして私どもも勉強もしてみたい、そういうぐあいに考えておるわけでございます。
  51. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 環境庁、結構でございます。  また話はもとへ戻りますけれども、上越・東北新幹線が、先ほども申し上げましたように大宮以遠がどんどん進んでおる。大宮−東京間が目鼻がつかない、こういう状態が続いているわけなんですけれども、大宮以遠が先に完成をした場合には、一体この東北・上越新幹線はどういうふうにするつもりなのか。青函トンネルの場合とは多少また事情が違いますけれども、大宮始発で開業をするのか。東京−大宮間が完成をするまではこの東北・上越新幹線は開業しないで待つようなことになるのか。この点も大宮を中心として、向こうとこっちでもって工事のテンポが全然違いますから、いまから考えておく必要のあることではないかと思いますので、この点をお伺いしたいと思います。
  52. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) いまのところは、五十五年度までにはぜひ完成をしたい、それは東京といいますか、都内から接続したものにしたいというふうに考えております。ただ、いま非常に苦慮いたしておりますのは、先ほど来御指摘がありますように、大宮以南の地域の用地買収についてのめどが立っていないわけでございまして、そのことのために、大宮以南の現実のこの工事がいつから着手できるか、そしていつごろ完成するか、そのためにせっかく大宮から北の方が完成したのに、それを宝の持ちぐされのような状態で置いておく期間がどのぐらいになるかということの兼ね合いでいろいろ考えなければならないと思っておりますけれども、現段階では、私どもとしては何とか大宮以南の、御迷惑な次第ではありますけれども関係住民の方の御理解をいただいて、これを何としても早く完成をしたいという気持ちでございます。  それと、東北新幹線なり上越新幹線なりが持ちます意味は、上越地域なり東北地域方々の利便になる、便利になる、速くなるということがもう何よりも目的といいますか、ねらいでございますけれども、同時に高崎以南、宇都宮以南の通勤事情が非常に逼迫をしてきておるわけでございまして、近年あの地域の開発がだんだん進んでおりまして、しかも線路はほかに私鉄その他の整備も余りなされておりませんから、国鉄に非常に負担がかかっておるわけでございまして、そういう意味東北・上越新幹線ができますと、あの地域の通勤地帯における通勤輸送の改善ができるわけでございますが、大宮のところから南が、つまり赤羽ないし上野というような地帯が線路容量が弱くなっておりますので、そのことが大宮と高崎の間、あるいは大宮と宇都宮の間のパイプが詰まる理由になっておりますことを考えてみますと、東北・上越の新幹線が大宮始発という形になりましたのでは、ある意味が失われるということもございまして、私どもとしてはどうしても都内と結ぶというところからスタートしたい。  初めから大宮からスタートするということは、どうもいろんな意味でぐあいが悪いというふうにいま考えておるわけでございまして、さればこそ大宮以南の用地の確保ということについて大変摩擦を起こしておりますし、なかなか地元の方々の御理解を得にくいこともよくわかってはおりますが、どうしてもそこのところを打開をいたしたいということに専念しているゆえんでございます。
  53. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 大体町中に入るということにかなり無理があったんではないかという気がしているんですよ。私は、この東北・上越新幹線の建設予定地近辺は大体どういうところかわかっておるつもりです。それは大宮の先と手前でもって全然違うんですね、様子が。大宮から先の方はどんどん工事がいま進捗しているわけですよ。そして、線路を乗っけて架線を張れば列車が走れるような状態になっているところだってあるわけですね。ところが、片一方大宮から東京の間はどこを通るんだか、地図の上では線は引っ張ってありますけれども、まるっきり着工するどころじゃないわけですね。影も形もまだできていないんです。片一方はどんどん形が整っている、片一方は全然できていない。  そうすると、大宮の先と東京寄りと同時に竣工するということは、いまの時点では考えられないという気がするんですね。そうなればいやおうなしに大宮以遠が、あるいは大宮−新潟間が、盛岡青森間が先にできてしまう、こういうことにならざるを得ないという気がするんですが、そうなった場合に一体どうするのか。東京まででき上がらないうちはこれを遊ばしておくつもりなのか。あるいはまた、仕方がないから、東京までできないならば、新幹線でなくて在来線線路でも乗っけて運転をするようにするのか、その使い道は一体どのようにするのか。雨ざらしにしておけば、これまた何兆という金かけて一銭も利益を生み出さない青函トンネルと同じようなことになりはしないかという気がするんですが、その点はどうでしょうか。
  54. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 工事に非常に長い期間を要しますのは隧道と橋梁でございます。したがって、東北にしましても上越新幹線にしましても、工事の着手の手順といたしましては、隧道と長大橋からかかったわけでございます。主要な隧道なり長大橋はほぼ完成に近い状態になっておりますし、それ以外のところの高架橋部分もかなりの程度に進んでおります。  大宮以南の問題は、ちょっと目で見たところでは何もやってないということでございますけれども、大宮以南、東京都内まではいずれも高架橋でございますので、用地の問題さえ見通しが得られますといいますか、確保できますれば、比較的短期間に施工可能だというふうに私は聞いておるわけでございまして、そういう意味で五十五年度内に完成をするということは、まだ全然見込みがない話ではないという現状でございます。  したがいまして、現段階では、やはり何としても東京都内まで持ってきたいというのが私どもの考え方でございまして、確かに過去の投資をいつまでも寝かしておくのかという問題が起こります。いずれそういう時期が来るおそれがあるわけでございますが、それは確かに非常に大きな問題ではございますけれども、どうもたとえば仙台以北のような遠い地域方々でございますと、仮に大宮で乗りかえというようなことがありましても、かなりのメリットが出てくるかもしれませんが、もう少し東京に近い地域方々の、何といいますか感触を聞いてみましても、大宮で一度乗りかえて、そして新幹線に乗っていって向こうまで到達するのと、さらにまた、その新幹線の到着駅から在来線に乗りかえるという場合もあるわけでございますので、それを考えますと、むしろ都内から真っすぐ、上野から真っすぐ在来線で行った方が、何度も乗りかえしなくて済むということになるので、どうも大宮ではぐあいが悪いという感触が、東北なり上越の利用者サイドからもそういう感触の方が多いようでございますので、そういうことも考えあわせて、いまのところは何としても都内からスタートをすることにしたいという、繰り返しの答弁になりますが考えております。
  55. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 総裁が願望している気持ちはわかるんですけれども、用地の買収さえできればと、こうおっしゃいますけれども、用地の買収が全般目鼻がつかないからどうしようもないわけですよ、これはね。これはトンネル掘るよりも考えようによっちゃ大変なんですわ、用地の買収の方が。人家が密集している地帯で用地の買収が一軒でもできないということになるとこれは通しようがないわけです。  そこで、この東北・上越新幹線がここでとんざをしているということのもう一つの理由としては、東北、高崎線の線路容量が限界に達している、要するにこちらの方の輸送のサービスがおくれているということも、現地の住民にとっての一つの反発の材料になっているというふうに思うんですよ。  監査報告書の中にも、監査報告書の四十二ページに、「東北、高崎線においては、線路容量が限界に達しているため、現在着工中の東北・上越新幹線の早期完成を図ることが肝要である。」と、こう書いてあります。しかし、東北新幹線の早期完成を図ることによって、じゃ、東北、高崎線が完全に救われるかどうかということには問題があると思うんですよ。  ということは、たとえば高崎線の具体例を挙げますと、朝の通勤ダイヤでは長距離の列車は入らないようになっています。一本も入ってないんですよ。それでも間隔的にはぎりぎりいっぱいになっている。これは新幹線さえ完成すれば何とかなるという状況じゃないわけです。いままでやはり手当てが行われなかったというために、ぎりぎりいっぱいに切迫をした状態になってしまった国鉄の財政とやや似たところがあると私は思うんですね。なんでこんなになるまで東北、高崎線の輸送量の増強ということが行われなかったのだろうか。  赤字線区なら別だけれども、赤字線区じゃないんですよ。れっきとした黒字線区でもって、全然今日までサービスが行われなかったということは、現地住民から、こういう状態をほったらかしておいて新幹線とは何事だと、こういう反発が出るのもこれはまたやむを得ないと思うんですが、その点はどのようにお考えになりますか。
  56. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 確かにおっしゃるとおり現在でも東北線あるいは信越線、上越線のいわゆる優等列車は朝の時間帯はほとんど避けるようになっております。それはなぜかといいますと、高崎線自体の大宮−高崎間の線路容量が少ないとか、あるいは大宮と宇都宮間の線路容量が少ないとかということではなくして、大宮と赤羽ないし上野の間の線路容量が足りないということから起こっている問題でございます。で、宇都宮方から大宮に入ってくる線と、高崎方から大宮へ入ってくる線が大宮で一本になって南行してまいりますから、あそこで倍に交通量がふえますので、大宮から南方のところで詰まるわけでございます。ですから、大宮から南方のところの線路容量をまず強くいたしませんと、高崎線も東北線もいま以上に通勤の車のヘッドを短くすることができないということになっております。  そこで、東北・上越新幹線を、いまから七、八年前に始めました段階から、この二つ新幹線は単に東北地域あるいは上越地域輸送の便宜ということだけでなしに、関東地域における通勤対策という意味も兼ねてスタートしたわけでございますので、いわば一石二鳥ということになっているわけでございますが、その一石二鳥の働きをしますためには、大宮と東京の間をつながなきゃいけないわけでございまして、そういう意味で何としてでも、やはりこれは早く大宮の南の方をつながしていただきたいというふうに考えているわけでございますし、ごく最近でございますが、まあ地元の方の御要請のこともありましたけれども、場合によりましたならば、東北・上越の新幹線と並行といいますか、その施設を使いまして通勤線をさらにもう一本ふやすことも、いま具体的に検討いたしておるのもそういう趣旨でございますので、いずれにしましても、あの地域については、在来線と言わず新幹線と言わず増強を図っていかなければどうにもならぬというところに追い込まれております。
  57. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 東京周辺、東北、高崎線なんかの場合は、輸送需要があるにもかかわらず、輸送力の増強がそれに合ってなかったということになると思うんですね。平たく言えば対策がおくれておったということになると思う。おくれておったために今日こういう悩みが出てきたと思われるわけです。したがって、新幹線の問題でもってにわか勉強するように、急に何とか新幹線を突破口にして問題解決を図ろうということの前に、在来線充実強化というものをもっと前々からやっておくということが、新幹線問題を解決する際にも大事なことになるんじゃないかという気がするわけです。  どうも在来線の問題がおろそかにされておったという感じがするわけなんでありますが、その点、在来線輸送力を強化するということが思い切ってできるかどうか、今日の国鉄の財政状態から見ると在来線の強化にまで手が回らないような気がする、新幹線だけで精いっぱいの気がする。その新幹線だってもうかるとは限らない。先ほどから指摘をしておりますけれども、うまくいったのは東海道新幹線だけで、あとは必ずしも金のなる木のようなわけにはいってないんです。そうすると、国鉄の使命から考えて在来線充実強化ということもこれは当然もっと真剣に考えてしかるべきではないかという気がいたしますが、その点はどうでしょうか。
  58. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 私の感じでも、いままさに先生が御指摘のような点が少々後回しになっておったんではないかというふうに思っております。かつて東京の通勤対策といたしまして、七、八年前でございましょうか、十年ぐらい前でございましょうか、いわゆる五方面作戦ということで一挙に通勤線を強くしょうという計画が立てられた時期がございますけれども、おっしゃるように、全体の経営上の問題もありましておくれおくれになる、さらに、いわゆる住民の反対運動というものがだんだん高まってきておりますので、通勤線の場合にも用地の取得が非常に困難であるということでおくれおくれになっておるわけでございまして、東北、上越と限りませず、総武線につきましても、中央線につきましても、あるいは東海道方につきましても、大変このパイプが細くなっているわけでございます。  昨年参議院の当委員会で附帯決議が付されましたことも私どもの記憶に新たでございまして、幸い本年度から予算上も御援助をいただくことになりましたので、と申しますのは、単に財政的に国鉄全体がつじつまが合っていなかったからということのほかに、都会地の新線建設あるいは都会地の複線化、複々線化というのは大変用地代がかかるとか、あるいはまた全く用地の取得が困難であるために地下鉄道にしなければならないというような事情から、キロ当たり建設費が非常に途方もなくかかるわけでございまして、どう見ましても採算的には引き合わないということで、それもまたおくれの原因になっておったと思いますが、率直に申し上げまして、まだ満足はいたしておりませんけれども、三割の補助金をいただけるようになりましたから、多少ともこの負担が軽減されますので、私どもの公共的な役割りという角度からいたしましても、そのフィールドは積極的に取り組まにゃなるまいというふうに考えておるわけでございます。
  59. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 新幹線問題についていろいろとお聞きいたしましたが、現在の東海道新幹線東京−大阪間というのは飽和状態になっているんじゃないかという気がするわけです。監査報告書の中にもその点が指摘してありまして、「東京・新大阪間については、今後の需要の推移等を見極めつつ、新たな新幹線計画について検討する必要がある」、こう指摘しております。ということは、第二東海道新幹線を建設をしなければならぬということを意味しておるような気がするんですが、もしその必要ありとすれば、どのような方式、ルートを考えているのか。まだそこまで国鉄としては考えていないのかどうか。新しいその方式の列車をここで応用するということも考えているのかどうか、その点をお伺いしたいと思うんです。
  60. 高橋浩二

    説明員高橋浩二君) 確かに、おっしゃいますように、東海道新幹線は飽和状態というか、まあ飽和状態の少し手前にただいまございます。二、三年前の予測では、この六十年度ぐらいには完全に飽和状態になるんじゃないかというふうに予想をされておりましたけれども、昨年あたりからその伸びが少し鈍化をしてまいりましたので、六十年というのはもう少し、六十年の前半か中期ぐらいというふうに少しは先に伸びてきたんではないかというふうに考えております。  もう一つ、これまで非常に東海道新幹線が飽和状態のために、非常なおくれを出すではないかという問題がございまして、そういうことに対処するために、一番そのおくれの大きな問題は東京駅のホーム面数が足らないというようなこともよくわかってまいりましたので、一応この飽和状態に対する対策の一環として、東京駅の東海道新幹線用のホームをふやすということもただいま考えている。  とりあえずはそういうことをいたしまして、東海道新幹線をできるだけ長く持たせるような努力をしたいというふうに考えておりますけれども、長い目で見た場合に、いま監査報告等もありますように、いずれいまの東海道新幹線自体がいろいろ手当てをしなくちゃならないという問題も出てまいりますので、それに対する代案として、というと少し代案というには言い過ぎかもしれませんけれども、もう一つただいま政府から、中央新幹線のうち特に技術的にむずかしい甲府から名古屋の付近等についての、技術的に一体どういうルートをつくったらどういう問題があるのかということの調査を命ぜられ、ただいま調査中でございます。  その調査の結果が明らかになりましたら、これを政府に報告申し上げて、その後この中央新幹線についてどうするかというまた御指示も得なきゃならぬと思っておりますけれども、これはまだ調査の緒についたばかりでございまして、これが果たして技術的に一体どういうルートなり、どういう問題があるかということについてはまだつまびらかでございません。そういう意味で、できるだけただいまの東海道本線並びに東海道新幹線をなるべく大事に使っていきたいということで、ただいまそういう面からのいろんな検討をしているのが実態でございます。
  61. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 いずれにしても、東海道新幹線が飽和状態のちょっと手前まできているということはわれわれも想像できるわけなんです。  東京駅の問題が出ましたけれども、そうなってくると、東北・上越新幹線東京駅から出したい、新しい第二東海道新幹線東京駅ということになってくると、大変に東京駅自体の負担が大きくなってくるわけなんでありますけれども、東北新幹線の促進グループの中には、上野駅を起点にしろといったような意見東京都内にはあるようなんです。  そういうことは、考え方としては、東京駅に集中しないというためにそういう方法も考えられるわけなんでありますけれども、ただ、上野駅を起点とするという考え方は、現実の問題として今日国鉄で考えておるのかどうか、あるいはまた、中央新幹線というものができるとすれば新宿あたりに持ってくるというふうに考えるのかどうか、東京都内の駅の集中がこれ以上進んでも大丈夫なのかどうか、あるいは分散という方法を考えるのかどうか、その点どんな構想があるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  62. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 東北新幹線、あるいは上越新幹線は、とりあえずは東京駅をスタートすることにして計画が今日まで進んでおります。しかし、いま申しましたように、東海道新幹線の方の詰まりぐあいからいいまして、東京駅の現在のホームの状態では、東海道新幹線自体の運行にいろいろ差しさわりがあるということとも関連をいたしまして、東京駅から東海道方も東北方も、すべてそこからスタートするという考え方でよろしいかどうかということについては、最近に至りまして疑問を持ち始めておるところでございまして、いま東京に全部集めてくるかどうかということについては、真剣に再検討を行っておるところでございます。
  63. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 再検討ということはいろんな意味があると思うんですが、具体的にどういう方法が考えられておるのか。これはまあいろんな構想があると思うんですが、その点、別にここで揚げ足取るつもりはないですから、たとえばどんな構想があるのかということがあったならばお示しいただきたいと思います。
  64. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) いまは東京駅を出発点として、次は大宮駅というふうに考えておるわけでございますけれども、上野駅を東京駅として、何か一体として使う方法がないかというようなことでいま研究を大至急いたしておるところでございます。
  65. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 東京というのはわりあいと不便なんですよ。ということは、東北、常磐、高崎各線、東海道線に乗ろうと思えば、新幹線でも同じですけれども二度乗りかえをしなきゃ乗れないようになっているんです、現在線は。総武線の場合は東京駅へ直通で入ってきますけれども、新宿あるいは上野といったようなところは関所があるようなもので、これは二度乗りかえをしなきゃいかぬ。  だから、こういうところは東京駅へ直通するといったようなことを考えた方がいいんではないかという気がいたしますけれども、関西では、たとえば大阪を中心にして神戸あるいは京都、こういうところへもう東西に行っております。名古屋周辺でもそうです。しかも快速電車が走っておる。ところが、東京周辺は快速電車なんという気のきいたものは、中央線、常磐線にはあるけれども、東北、高崎線にはないわけです。しかもスピードの変わらない急行列車が走っておって、これは急行料金だけはがっぽり取るというふうなあこぎなやり方をやっておるわけです。したがって、この東京、特に上野から先の利用者というのは、関西に比べるとうんとこれはサービスの点で悪い目に遭っているわけですね。  こういう点、やはり運賃値上げの際に関西と比較をされるんですけれども、私鉄の発達をしておるところは一生懸命サービスする。快速電車でも急行以上に早い電車が走る。ところが、私鉄が走っていないところはまるっきりほったらかしになっている。こういう関西と関東のひずみというのがどうも露骨にあるような気がいたしますが、これらの問題を解消するということは国鉄としては考えられないことなのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  66. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) ちょっといまの御趣旨が十分くみ取れないのでございますけれども、従来はそういう点も考慮して、かなり東京駅に集中するというような方向で進められてきたわけでございまして、たとえば総武線を東京の地下駅に入れてくるというような考え方も、そうした考え方から出てきたものと思っております。ただ、現実問題として、もうすでに東京駅の利用方につきましては、ほとんどもう限界と見てよろしいんではないか。余り大きくなり過ぎまして、東京駅の中のまた連絡とか渡りとかいうところでかなり御迷惑をおかけしておるわけでございまして、いまのところ、せっかくの御指摘でございますけれども、仮に東京駅を中心としてもっとすべてのものを結んでいくというお考えであるとしますと、いまのところ、ちょっとそういうことをやっていくには東京駅のすべての条件が悪過ぎるというふうに思われます。  まあ一つには、関西に比べますと東京では山手線という環状線がかなりいろんな意味で有効な役割りをなしておるわけでございまして、その山手線につなぐことによってある程度の便益性を提供できているんではないかというふうに私どもは考えております。関西は関西でまた、いろいろ東京の方が便利だという御意見もあるわけでございまして、その辺についてはなかなか判断がむずかしいところではないかと思います。
  67. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 総裁の御答弁に、東京駅を中心にした在来線の上野−東京間の接続というのが非常にやっかいなんですよね。つまり東北、高崎線の利用者は上野で乗りかえをしなきゃ東京駅まで、あるいは横浜の方まで行かれないようになっているんです、現在の仕組みは。そういうのをストレートに直通をする、こういうことは今日まで計画されたこともあるけれども、実際問題としては実行に移されていないんです。それならば、東北・上越新幹線だって何も東京まで入れることはないだろう、大宮始発でがまんしてもらったっていいじゃないかという理屈になるんですよ、これは。  在来線東京までストレートに入れる状態になっているとすれば、新幹線もそうしなければならないんだろうと思う。在来線はそうじゃなくて関所を設けちゃって乗りかえを何回もしなければならない状態にしておいて、東北・上越新幹線だけは東京に入れようと、そんなサービスをするというのは、これは在来線利用者にしてみればこれまた納得のいかないことになるということなんです。したがって、もしサービスの面で東北・上越新幹線利用者の便宜を図るということであれば、在来線利用者の便宜も当然図るということを考えなければ片手落ちになるんじゃないかということを私は指摘したいわけです。
  68. 高橋浩二

    説明員高橋浩二君) いま大宮から東京の方へ直通は京浜東北電車だけでございます。おっしゃいますように、いわゆる中電は上野どまりでございます。そういう意味で、恐らく先生はもっと上野−東京間を在来線で結ぶことを考えるべきじゃないかということでございますけれども、これも従来からそういう御意見がございまして、わずかな本数でごさいますけれども、東京を——いわゆる横浜の方から参りまして東京を通過する電車、あるいは東京始発の日光行きといったようなそういう電車をわずかではありますけれども走らせたことはございます。ただ、実際の線路容量の問題からなかなかできないということで、在来線の方についてはいまのところは上野でとまるということが主になっているというのが実態でございます。  なお先ほどから、第二次東海道に絡みまして新幹線等の駅というお話でございますが、いま総裁の申し上げまするように、東京駅だけでさばくということは、非常にいわゆる一点集中し過ぎるということと、それからまたいろんな面から、お客さんが来るには、一点集中では非常にお客さんにとって不便である。そういう点から、山手線の沿線どっかに、そういう一点集中でないような駅をつくるということも一つのサービス上よいことではないか、そういうことをあれやこれやいろいろ検討はいたしておりますけれども、何せ非常に狭い東京都内の土地の中に、どういう線路を構成するのがいいかということで、技術的な面で非常に苦慮をし、非常にむずかしい工事をどうやってこなすかということもあわせて考えて、そういう便利さというものと技術的な問題とを組み合わせて、将来通勤においても、あるいは新幹線ターミナル等にしても十分検討をしてよいものを考えていきたいというふうに考えております。
  69. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 先ほどの総裁の御答弁の中に、昨年の附帯決議のことに触れられました。その附帯決議の中で「通勤、通学輸送」ということもあったわけなんです。その点はやはり附帯決議そのものは必ずしも十分に実行されてないという点はこれは指摘できると思うんです。  そこで、昨年の附帯決議の問題からちょっと入ってみたいと思うんですけれども、特に過去債務の処理はいつまでに行われるのか。今日までいろいろと論議されてまいりました「国鉄再建の基本方向」の中には、「五十三、五十四年度中に所要の対策を確立し、五十五年度以降健全経営を目指すための基盤とする。」と、こう書いてありますけれども、今度の「国鉄再建の基本方向」としてまことに漠然とこう書いてあるんですけれども、この過去債務の処理というものがこの所要対策の中に含まれるというふうに解釈をしてよろしいでしょうか。
  70. 住田正二

    政府委員住田正二君) いま御指摘のように、「国鉄再建の基本方向」の中では、五十三年度、五十四年度でいろいろ国鉄の問題点を洗い出して、今後の健全経営に乗せよということが言われておるわけでございます。したがいまして、五十三年、五十四年度の検討結果によりまして、国鉄の将来の計画というものがかなり明確になってくると思います。したがいまして、その計画の中で大体いつごろ収支均衡するということもわかるわけでございますので、その収支均衡の際における累積赤字をどう処理するかということも、その段階で十分検討いたしたいと考えておるわけでございます。収支均衡時においては、累積赤字につきまして過去債務のたな上げ等を含めまして、将来の国鉄の経営の負担にならないような措置を考えたい。そういうことも「国鉄再建の基本方向」の中に示されているわけでございます。
  71. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 田村運輸大臣から、原案と修正案とこう比較をして修正案の方がよくできていると、こういう意味の発言が当委員会であったわけですけれども、しかし、どっちがいいかということになるとなかなかむずかしいんですよ、これは。原案の方は数字が出ているわけです、一五%というふうに数字が出ているんです。ごまかしようがないんです、これは。ところが、修正案の方は数字でもって書いてないんですよね、文章で書いてあるわけです。これはごまかしようによっては、計算の仕方や資料のとり方やら、やり方によって結果はいろいろ出てくるんじゃないかなと、幅を持っているんじゃないかなとも思われるんですね。  その点はどっちがいいかということは一概には言えないんです、これは。大臣はやはり原案をお出しになった方なんだから、本来ならばおれの原案の方がさっぱりしていていいんだと、こう言わなければならないんだけれども、あなたの御答弁だと修正案はなかなかよくできていると、三党修正案にお世辞使ってそう言っているんだかどうかわかりませんがね、このところはどうなんですか、本当に修正案の方がこれはいいんだというふうにお考えになっているんですか。
  72. 田村元

    国務大臣田村元君) 実は、私は原案を提案した責任者でございますから、原案を絶対よいという立場をとることはこれは当然でございます。当然でございますが、まあ率直に言いまして、原案をつくるのは私自身が作業をしたわけではありませんので、いろいろと過程において議論もありましたが、修正案に比べてみて、私は一個の国会議員として物を申せばというといささか無責任のそしりを免れませんが、修正案の方がむしろすっきりしておる。  要するに、先般来お答えいたしておりますように、物価変動率、つまり人件費、物件費等、経費の上昇分だけをカバーしていくものであって、それ以上のものを賄うものではない。こういう非常にすっきりした姿であって、しかも、国鉄の経営努力と政府の助成というものにより一層重点を置いておる、国鉄並びに政府に対して非常な責任を課しておる、運賃値上げはそれを支えるものに過ぎないと、こういう思想が貫かれておりますので、私はこの方がすっきりしてよいなと、さような気持ちで申し上げました。ただ、提案をいたしました責任者が、修正案の方がよいなということを申し上げましたのは、これは不謹慎かもしれませんけれども、私は余り心にもないことを言えないたちでございますので、正直に申し上げたというわけでございます。
  73. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 去年の附帯決議の中で、「過去債務は国鉄負担を軽減するよう積極的に処理する。」と、こう書いてありますし、「国家的政策にもとづく国鉄の公共負担は、それぞれの政策実行部門が負担するよう努力する。」と、こうなっておるわけです。ところが、今日までの委員会における審議において各委員からいろいろ質問がありましたけれども、じゃ、具体的に公共負担について各省庁が、この附帯決議をまじめに実行に移すという姿勢をとっておるかどうか、こういうことになるとちょっと疑問を感ぜざるを得ないんです、これは。  ずいぶんいろんな関係者が出て来て答弁しています。文部省、あるいは厚生省、あるいは農林省、自治省、それぞれの関係者が、じゃ、まじめにこの附帯決議を実践に移そうという態度を示したかどうか、私はちょっと疑問があるような気がする。率直に言ってきわめて冷淡かつ無責任、こんな印象を私は受けている。本当に政策実行部門でもって誠意を見せるならば、国鉄がしょい込んでいる公共負担の分については、予算措置等について具体的に実行に移さなきゃならぬはずなんです。ところが、全然そういう点はないような気がするんですが、その点どうですか。
  74. 田村元

    国務大臣田村元君) この公共割引問題につきましては、もちろん見直しも必要でございましょうけれども、とにかく政策、予算として各省庁ではっきりとして、すっきりとしていただくということは何よりも必要でございます。そこで、以前の大臣も御努力なすったと思うんでありますが、私は閣議等でずいぶんこれを強く主張いたしました。事務当局同士の話し合いもさせました。まあ冷酷かつ無責任という御表現でございますが、そういうことが当たっておるかどうかは私にはわかりませんけれども、率直に言って、いまの表現されたお言葉に対していささか留飲を下げる気持ちでございます。  しかしながら、だからと言ってこれを放置するわけにまいりません。でございますので、私は総理大臣に実は直訴いたしまして、運賃割引制度については、その是正を図るため関係閣僚協議会を設置していただきたいと、こういう直訴をいたしました。御快諾をいただきましたので、内閣に常置機関としてのこの問題に関する閣僚協ができることになると思います。そうしてその場で、もうこういうものができれば何らかの結論を出さなければならなくなりますから、その場で検討をしてなるべく早い機会に結論を出すようにいたしたいと、そして国鉄負担を少しでも軽からしめたいと、このように考えておる次第でございます。
  75. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 親方日の丸という言葉があるんですけれども、親方日の丸という言葉は国鉄にもたれかかる側の方にも多分にあるんじゃないかという気がするんですがね。親方日の丸だからおれの方は国鉄に甘えちまう、だから、本来ならば各政策実行部門でもって負担すべき事柄を国鉄負担をさせる、そして国鉄の犠牲においてこれを実行させる、こういう面があると思うんです。これは一種の親方日の丸なんです。だから、この公共割引の問題にしても、いままで関係省庁で予算化して国鉄に納めるなんということを言ったところがどこかありますか。たとえば農林省が、あるいは文部省が、あるいは自治省が。これらの点は、本来ならば国鉄負担すべきじゃないからおれの方で予算化する、国鉄に回すといったような考えを、この片りんだって示したところがなかったんじゃないですか。  その点、今日まで数々附帯決議が行われているにもかかわらずちっとも実行されない。これはもう附帯決議をつけた各党、これは全会派が一致して附帯決議をつけているんですから、非常に国会の決議をばかにしているということになるんです。果たしてそれでいいのかどうか。これはばかばかしくなっちまうんですよ、附帯決議をつける方は。ちっとも実行されないということじゃ。だから私は、この辺で附帯決議というものは生かされるようにしなきゃいかぬ。一遍に全部とまでいかなくとも、少しでもそれが実行に移されるようにしなきゃこれはもうばかみたいなものですよ。これはどうなんでしょうか。
  76. 田村元

    国務大臣田村元君) 附帯決議は、国権の最高機関である国会の意思表示であります。でありますから、政府はその意思を受けて可能な限りこれを実現するために努力をしていかなきゃなりません。いわんや全会一致においておやであります。でありますから、まあ過去のことはとにかくといたしまして、私になりましてから、この附帯決議の実現のために今日まで、率直に言って本当に努力したつもりでございます。  いま申し上げました公共割引の件につきましても、瀬谷さんおっしゃるとおり、各省庁の反応が鈍い。鈍うございますから、私は総理に直訴をして、関係閣僚会議を常置していただく、そこで結論を出すように追い詰めていく、このようにいたしたわけでございます。どうぞ、私の意のあるところを御理解賜りたいと存じます。
  77. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 各省庁が誠意を見せなかったら思い切ってやめちまう、そのくらいのことをやらないと反応はないと思うんです。いろいろ言うけれども、まあ甘えちまおうという気持ちでもって今日までずるずるやってきたのがよくなかったと思うんですね。まあやめちまったら今度は国鉄が憎まれるから、泣く泣くやっているということかもしれませんけれども、それでは問題は解決しないと思うんですよ。  これらの問題は、地方交通線の赤字の問題についても言えると思うんですがね。今日まで示された数字の面からいうと、文章の面でいろいろ書いてありますけれども、文章の問題じゃなくて数字の面で言うならば、一けた足りないんですね、地方交通線の赤字に対する助成は。二千三百億のところへ一番最初は百七十二億。今度それまた少しずつふやした。これから四百億、五百億ぐらいになったって、一けた足らなければやっぱり二千億から不足が生ずるわけですね。二千億の赤字は五年たてば一兆になっちゃう。金利だけでべらぼうなものになる。これをそのままにしておいてどうやってやっていけるか。  「国鉄再建の基本方向」の中には、「自らの採算において企業的経営を行う。」と書いてある。ところが、年間二千億もの赤字を出すような仕組みをそのままにしておいて企業的経営をどうやって行うか。これはだれにだってできないことじゃないかと思うんですがね。その点、この問題はごまかしがきかない問題だけに、一体これからどうするつもりなんですか。その点をお伺いしたい。   〔委員長退席、理事三木忠雄君着席〕
  78. 田村元

    国務大臣田村元君) 何回も申し上げることでございますが、何と申しましても、運政審で御審議をいただいております問題でございますから、いま私どもに考えはないわけではありませんけれども、それを公にすることはまことに運政審に対する礼を失することにもなりましょう。でございますから、運政審の答申を待つことはこれは仕方がございません。当然のこととしてお許しをいただきたいと思います。  しかし、運政審の答申はきわめて近い将来に出てまいるでございましょうから、この答申を考慮しながら、「基本方向」が述べておりますように、五十三年度、五十四年度で徹底的に赤字要因を洗い出してその対策を講ずる、こういうことを申しておるのでございますから、   〔理事三木忠雄君退席、委員長着席〕 五十三年度、五十四年度中にその地方赤字ローカル線の取り扱いのルールを明確にして、所要の助成を含めて赤字の解消を図ることにいたしたいと思います。もちろんこの赤字の解消を図りますことは政府の責任において図っていきたいと、このように考える次第でございます。
  79. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 当委員会で視察をした際に、北海道の閑散線区も回ってみたわけなんですけれども、駅と駅の間が十キロ以上あるというところはいっぱいあるんですね、北海道には。東京周辺だったならば、十キロというと東京−新宿間なんですよ。この間に九つ駅があるんです。東京周辺だったら九つ駅がある間、北海道のこの線区へ行くと、本線ですらその間全然駅がない。しかも人家もまれである。そういうところがあるわけです。われわれああいうところを視察をしてみますと、なるほどこれじゃ赤字になるのも無理はないと痛感するわけですよ。そこへ住んでいる人は幾らもいない。人間より牛の方がよけいいる、こういうところで幾らがんばってみたって、企業努力をどんなにやってみたところで、経営の合理化どんなにやってみたところで、合理化のしょうがないと思うのです、これは。大体人が少ないんだから、その沿線住民全員が毎日汽車に乗ったって赤字は解消できない。  この間われわれが視察に行ったところだって、乗降客一人か二人、一箱百人の人間乗せる車両が走っていて、乗降客一人か二人。あれじゃ、入れ物で言うなら人力車で間に合っちゃう。それが毎日走っているのだから、これはどう計算したって、お釈迦様でもキリストでもこれはできっこないわけです。そういうところが現に存在している。にもかかわらず、文章の上では「自らの採算において企業的経営を行う」、こういうふうに書かれちまって、それで、数字の上では毎年二千億の赤字が出ている、こういう状態は、どう考えたってこれは企業的経営をやらせるには無理ですよ。  そこで、いま大臣からお話がありましたけれども、今日までこの赤字線区の問題は、たとえば運政審の答申を待ってと言いますけれども、その答申がどんなに美辞麗句で飾られておっても、実際に出る赤字国鉄負担にしないようにしない限りは、国鉄の財政は絶対にこれは浮かばれないということになると思うのです。果たして本当にその数字の面で負担にならないという保証ができるかどうか。もし二千億が仮に半分助成されるとしても、一千億赤字が出るにしたって、これだってやっぱり大変ですよ。民間企業じゃとってもやっていけない、一千億も赤字が出たら。五百億だってこれは大変ですよ。  ところが、いままでのやり方は、政府の助成をふやしました、なるほど百億や二百億ふえたかもしれないけれども、百億、二百億ふえても一けた違うんですからね。一けた違わない範囲でもってこの赤字というものを解消できるという保証がない限りは、この問題は私は解決しないと思う。運政審が一つの逃げ場になっちゃっているけれども、運政審でもってもし答申が出たとしても、数字的にその赤字が解消できないようだったならば一体どうするか、こういう問題が残ると思うんですが、どうでしょう。
  80. 田村元

    国務大臣田村元君) 先ほども申し上げましたように、運政審の最終答申はほどなく出ることと思います。そしてもちろん、運政審の答申を受けて整理すべきは整理しなければなりません。しかしながら、九千二百キロ全部を整理し切れるものでもないかもしれません。先ほど来の御質問にもありましたように、中には、赤字が出ることは仕方がないが、これを残さなきゃならぬという路線もあるはずでございます。  このような問題につきましては、いわゆる構造的な欠損として、いま申し上げたように、五十三年度、五十四年度という準備期間において、これを国の責任においてその構造欠損を処理するということのルールを確立していきたい。確立をして、まあ言うなれば、親方日の丸という言葉がありますが、国鉄の場合は気の毒に、こういう面においては親方が子分に日の丸をしょわしているようなかっこうでございますから、これはもう必ずきちっとけじめをつけていかなきゃならぬ。これは当委員会におきましてかたくお約束を申し上げたいと思います。
  81. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 運政審の問題が出ましたから、今度は運審の問題にもちょっと触れてみたいと思います。  この今度の法律改正、この法案がねらっておりますところは、運賃値上げの手続が国会審議から外されることなんですよね。こういう問題自体に非常にわれわれとしては抵抗を感じているわけなんでありますけれども、しかし、もしもこの運賃の決定方法がいままでと変わるとすれば、運審のあり方等についてもこれは当然考えなきゃならぬことだと思います。先ほど来、大臣から一つ考え方というものをお示しになりましたけれども、じゃ、——まだこれから詰めるんだというお話だったんですけれども、運審なり運政審なり、あるいは監査委員会なり、これらの機関というものの人選、選び方、構成、こういうものが在来どおりでよろしいのかどうか、いろいろ問題があると思うのです。  それから、どういう決まりでもって運賃を決めていくか、どういう手順でもって決めていくか、そこら辺も問題があると思うんです。これはいままでとかく運審の決め方というのは、バス料金を決めるにしても何にしても、一応民間の声を聞くといっても型どおりで行われてきたというきらいがないとは言えないと思う。その型どおりの決め方でもって、事務的にその決定が行われるということでは、これはまことにまずいと思うんでありますが、その運審が今度はきわめて大きな役割りを持つようなことになると思うんでありますが、その運用等についてどの程度お考えになっておられるか。
  82. 田村元

    国務大臣田村元君) 私がお示しを申し上げました案はもうすでに御承知のところと存じます。なお念のためにもう一回御説明を申し上げます。運審の審議のあり方を改善するために、各界、各層の意見を聞きまして、それが審議に反映されるように、行政上所要の措置を講ずるという、その所要の措置の方法として、「運輸審議会は、利用者代表を含め各界を代表する方々を専門調査員に委嘱し、その意見を直接に求め、又は公聴会において公述していただくこととする。」これだけではいささか心もとないことでございますので、なお、「専門調査員と国鉄とは、公聴会において相互に質問することができることとする。」ということを入れました。  公聴会は運輸審議会がもちろんみずから主宰して開くものではありますけれども、こうした制度を設けるに際しまして、運輸省令——運輸審議会一般規則と申します、これは運輸省令でございますが、これを改正してきちっとけじめをつけたい。そしてこの専門調査員、相当な発言力を持つことになりますが、運審に対して大きな影響を与えることになると思いますが、この人選、構成等に関しましては、まだこれから検討いたします、こういうことを申し上げました。  いま御説明申し上げました、このすでにお示しした案は、運審との間で大体コンセンサスを得た問題でございます。先般、私が当委員会において私の意見を述べて、その後すぐに官房長を走らせまして私の私案というものを運審に示し、運審の会長の了解を得たというものでございますが、この専門調査員をどのような方に委嘱し、どの程度にするかということにつきましては、私はやはり各党の御意見を承った方がよいと、このように思います。そうして、利用者を中心とした方がよいだろう。まあ人選、構成等につきましてはユニークな——従来的な、もう役所が一方的に頼んでいくというようなことより、ユニークな何か方法を講じたい、そうして各党の推薦された方々をもこの中に包含していきたい、このように考えておる次第でございます。このようにすれば、私は運審に対して、いわゆるダブルチェックの役割りは相当強く果たすものと確信をいたしておる次第でございます。
  83. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 監査委員会からも監査報告書が毎年出るわけなんですけれども、何か私は監査報告書なんか見ますと、非常に精神条項が書いてあるんですね。たとえば「すべての職員は、国鉄のおかれている現状を十分に理解し、その職責を自覚して業務を的確に遂行すべきであり、このことが国鉄再建に通ずる途であることを銘記しなければならない」、こういったような書き方、教育勅語的な書き方なんです。しかし、この「国鉄のおかれている現状を十分に理解し」と、こう書いてありますけれども、置かれている現状を十分に理解したならば、ばかばかしくて仕事ができなくなっちゃうおそれがあるんじゃないかと思うんですよね。  つまり、六兆だ、七兆だ、八兆だと、雪だるま式に借金がふえていって、その利息だけで年間四千億だ五千億だ、こういう利払いをしなければならないこういう状況を本当に知ったならば、これはどんなに節約をしたって追っつくわけのもんじゃないんです、これはね。しかもそれらの借金は、どこそこに新幹線をつくる、青函トンネルをつくる、四国に橋をかける、こういうことでもって、ばかすか使われているんですよ、今日まで。そういう投資のために、どんどん湯水を流すように何兆という投資が行われて、しかもその利息が何千億になる、その利払いが一日に十何億になる。こういう十何億の利息を払うように追い込まれておりながら、現場の連中はトイレットペーパー節約しろとか、消しゴムを半分に切って使えとか、こんなことをやったって追っつくもんじゃないでしょう。  だから、やはりこういう精神条項だけじゃだめですよ、これはね。やっぱり人間というのは、働けば働きがいがあるという状態に置かないと一生懸命になれないと思うんですね。どんなに一生懸命にやったって、ざるで水をすくうようなもんだと思ったんではこれは張り合いがなくなるんですよ。だから、そういうところを根本的に解決をするためには、先ほども申し上げたように借金財政から脱却をしなければならない、借金政策から抜けなければならない。利払いに追われないようにしなければならない。  そこで効率的に企業的経営を行うという場合でも、可能なことをやるんでなければこれはいかぬと思うんですよね。赤字ローカル線のような場合はだれが考えたってこれは黒字にはならない、赤字からは抜けられない。そういう問題は国がめんどうを見る、やめるならやめる、めんどう見るならめんどう見る、どっちかにしなければいかぬですよね。こういう点がどうもいままでいいかげんだった、極端に言えば。いいかげんでずるずると借金ばかりふえてきた。累積赤字はどうにもならなくなってきた。それでいて赤字はおまえらの責任だと言われたんじゃこれは立つ瀬がないと思う。  そこで、国鉄のいろいろな、たとえば運審だとか、運政審だとか、監査委員会だとか、こういう人選も、どちらかというと必ずしも民主的ではなかったという気がいたします。だから、こういう人選もやはり考え直す。そして多くの人たちの意見というものが反映できる方法を、運審だけじゃなくて考えていく必要があるんじゃないでしょうか。その点は、大臣として何らかの構想をお持ちになっているでしょうか。
  84. 田村元

    国務大臣田村元君) 各審議会の委員の方、まことにりっぱな経験、あるいは識見をお持ちと私は確信いたしております。でありますから、現在の審議会委員の個々の人選が間違っておったとは思いたくありません。しかしながら、御意見の御趣旨はまことに痛いほどよくわかります。でございますから、御趣旨を体しまして、今後審議会委員等の人選につきましては慎重ということもさることながら、その人選が、何人が見ても公正妥当であるように努力をいたさせる所存でございます。
  85. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 国鉄に対するいろいろな、総裁の見解によればしがらみというのがあったわけです。そのしがらみを解かなければいかぬということを言っておられるわけでありますけれども、それじゃ、まず国鉄経営のあり方なんですけれども、「労使の努力」ということを「再建の基本方向」の中で指摘をしております。「相互の十分な理解のもとに相協力し、全力を挙げて国鉄再建に取り組む。」と、こういうふうに書いてありますが、御趣旨はごもっともなことでありますけれども、そのためには、やはりスト権の問題等も考えなきゃいかぬと思う。経営形体の問題も考えなきゃいかぬ。総体の当事者能力の問題も考えなきゃいかぬ。  運賃の法定制だけを、ここのところだけをほどいてしまって、そして、その法定制緩和だけがひとり歩きをする、公述人の公述の中にもありましたけれども、法定制緩和だけがひとり歩きをしてしまう。しかし、総裁の当事者能力はどうなのか、それからスト権の問題はどうなのか、こういう問題は今日長い懸案の問題になっているにもかかわらず何ら手が加えられていないと言ってもいいんじゃないかと思うんです。  本来ならば、この前のスト権ストの際に一応の解決策が出されていなければならなかったんです、時期的に。ところが、あれだけの騒ぎを起こしておりながら、このスト権問題についての答えが出ていない。これはよくないと思うんです。本当に労使の努力というものを実りあるものにするためには、スト権の問題も、当事者能力の問題も、あわせて解決をしなければ片手落ちになるのじゃないかという気がいたしますが、この点はどうでしょうか。
  86. 田村元

    国務大臣田村元君) 私は、労働大臣という仕事をかつていたしました。そして、スト権とまともに取り組んだ一員でございます。それだけに、スト権というものについてのむずかしさもよく存じておりますし、また労働側の切なる願いもよく熟知いたしておる一員であるとみずから自負いたしております。ただ、スト権に関しましては、これは運輸大臣として発言をすべき内容のものではございません。私が運輸大臣という立場で、国鉄だけのスト権を論じることは、これは避けなければなりません。  いま基本問題会議で御審議をいただいておりますが、私自身がスト権というものについての審議に参画する立場では現在ございません。でありますから、その点を私はまず明確に申し上げておいてお答えをいたしたいと思いますが、いずれにいたしましても、国鉄の当事者能力というものが確立されていくといいますか、だんだんとこれが与えられていくことは非常によいことだと、このように考えております。
  87. 青木薪次

    ○青木薪次君 関連質問でありますけれども、昭和五十年の六月の三日に、当時の長谷川労働大臣に対しまして、わが党の田邊委員がこのスト−処分−ストといったような悪循環を今回を最後にしたいという質問をしたわけでありますが、いろんな意見の中におきまして長谷川国務大臣は、悪循環を断ち切るにはどうしたらよいかということは、関係者全部が真剣に考えなきゃならぬ、しかも、今回が最後にしていきたいんだということを、真剣に答弁をいたしているので、当時三木総理大臣もこの問題については、私どもが会った際に、本当に前向きに努力しようということで、専門懇の意見というものを徴してという立場であったわけでありますが、いま瀬谷委員の言われたように、この問題について遂に避けて逃げてしまったという表現が適切なような状態で、今日このような事態になっているわけであります。  大臣、このスト権が与えられたら、ストライキがもっともっと多くなるというようにお考えですか。それとも、労使の関係が信頼関係になって、そしてむしろ伝家の宝刀は抜かなくなってくるというようにお考えですか、どちらですか。
  88. 田村元

    国務大臣田村元君) これは私からお答えする内容のことではございません。でございますから、私は何とも申し上げるわけにまいりませんが、これは労使関係が、そのときにどのようになっておるかということが基本的な問題でございましょう。私いつもよく言うんでありますが、過去のことはいざ知らず、高木総裁になってから、国鉄の労使関係というものが微妙によき方向に変化しておる、これは私は非常に高く評価しておるんです。高木君の人柄もありましょうが、同時に労働者に対する温かい思いやり、友情というものが恐らく組合側にも通じ、組合側の真剣な気持ちが高木君にも通じたんだろうと、通じておるんだろうと、このように思います。  でございますから、今日の姿は私は評価しておりますから、これから高木総裁のもとにいわゆる国鉄一家というような美しい姿が徐々に、時間はかかりましょうけれどもつくられていくであろうと、私は実はこれを楽しみにいたしておる一員でございます。  ただ問題は、スト権が与えられたらストライキが少なくなるのか、あるいはスト権が与えられなかったらストライキが多くなるのか、このように言われますと、そのときの環境によってこれは一概には言えないことと、非常に単純に言えば、違法ストをやれば処分する、処分に対してまた抵抗する、抵抗したのにまた処分するというようなことは確かに悪循環でございましょう、率直に言って。悪循環でございましょうが、そこいらのところで私のお答えをひとつお許しを願いたいのであります。  昔からよく申すじゃございませんか、言わぬは言うにいやまさるという言葉もございます。でございますから、どうぞひとつ私の意のあるところを御想像いただいて、もちろんこの御想像は各人それぞれに違うかもしれませんけれども、平素の私の思想的動向等もよく勘案いただいて、ひとつそこいらは寛大の御理解を賜りたいと存じます。
  89. 青木薪次

    ○青木薪次君 田村運輸大臣ですから、私はそれ以上、徹底的にあなたの腹のうちをこれからひとつ突き破って前に出してみたいという気持ちにはなりません。それはやっぱりあなたの人柄であり、姿勢だと思います。ざっくばらんにいろいろ話し合っていくということは、これはぜひ必要なことでありますし、私はスト権が与えられたらこれはいまの——私は災害対策委員として有珠山も桜島も行ってきました。上から抑えて抑えてたまったものが爆発するんですから。(笑声)いつも門戸をあけたら、これはもうすでに話し合いということが前提になっているのです。あなたもお認めになっておるように、労使関係というものはきわめて健全化の方向に向いているというように私も確認をいたしているわけであります。  そこで、かつて藤井前国鉄総裁が、いろいろあるけれども、国鉄の場合にはそういうことを勘案いたしまして、条件つきのスト権についてはひとつ付与してもらいたいということを運輸大臣に答申をいたしました。このことは、国鉄の意思としてはそういうことが今日に続けられているということについては、これは確認できますね。
  90. 田村元

    国務大臣田村元君) え。
  91. 青木薪次

    ○青木薪次君 肝心かなめのところを聞いておいてくださいよ。  国鉄の意思として前藤井総裁は、いろいろあるけれども、条件つきのスト権を付与してもらいたいというのが国鉄の意思でありますということを政府に、運輸大臣に申し上げたわけです。その考え方はというものは国鉄の意思だということは、これは大臣としては胸のうちにしまっておりますね。
  92. 田村元

    国務大臣田村元君) 私の思い違いでございましたらお許しを願いたいのでありますが、藤井総裁は運輸大臣に申したのではなく、予算委員会でその発言をしたというふうに記憶をいたしております。  しかし、総裁がまさか予算委員会という国会の機関において、正規の委員会においてうそを言うはずはございませんから、でございますから、少なくともそのときの環境としては、藤井さんの言ったことはやはりそれなりの意義があったのであろうというふうに想像いたしますが、私は実は、当時運輸に何の関係もございませんでしたので、藤井さんもまあずいぶん大胆なことを言うなという程度の受けとめ方で、ある新聞記事を読んだということでございますが、まあ国鉄の経営者の中にもそのような考え方があるんだろうということは想像するにかたくないと、このように思います。
  93. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 スト権の問題は総裁の当事者能力の問題とも関係してくるんですよ。今日まで国鉄総裁という存在は権限がなかったんですな、これは。事故が起きたときに謝るだけなんです。あとはストライキがあったとき処分するだけなんです。それ以外に気のきいた権限がない。そこで、言ってみれば雇われマダムみたいな存在だったわけですね。労働組合が総裁と交渉して、話がついて問題が解決したという事例は、過去において一回もないんですよ。幾ら総裁と交渉したって、ストライキやってみたところでらちがあかないんですね。のれんと相撲をとっているようなものだ。だから雇われマダムということになっちまうわけなんだ。  そこにやはり組合側のふんまんというものがうっせきをしちゃうわけです。うっせきしたふんまんがストライキというかっこうで爆発するんです。これを抑えておくということは、桜島の噴火口にふたしておくようなものです。これは幾らふたしたってどこかから爆発をするということになる。かえってこういう抑え方の方が悪いと思うんですね。もうストライキがやけのやんぱちでもって爆発をするというかっこうになっちゃうわけです。  だから、やはりここに、総裁には権限を与える。総裁と団体交渉をすれば、そこで決まったことは実行に移される、こういうかっこうにしておかなきゃ、これは切りもなく労使の慣行というものは崩れていきます。崩れていくというか、こじれていきます。今日まではそのこじれ方が非常に極端だった。それをここでもって基本方向として、労使の関係をよくしていこうということであれば、そういう総裁の当事者能力というものをここでもっと強化をする、総裁と話をして決まったことは実行に移されるという慣行をつくらにゃいかぬ。そのためにあわせてスト権というものを付与するということの方が、労使の関係をうまくスムーズに持っていくのに役立つんではないかというふうに私は思うんです。  その点、運輸大臣としての答弁はできないとおっしゃるかもしれませんけれども、大臣も運輸大臣だけじゃなくて、労働行政についても決して素人ではないんですから、大臣の見解というものを、この際大胆にお示しをいただければここで示していただきたいと思うのです。
  94. 田村元

    国務大臣田村元君) 実は私が労働大臣をいたしておりましたときに、そのときの運輸大臣が、ある新聞記者の質問に対して答えたことが大問題になりました。それは、もしスト権を与えるということになれば、公労法は当然改正しなければなりませんねと、こういう質問があったわけです。それに対して、それはスト権が与えられれば公労法は当然改正しなきゃならぬだろうと、たしか十七条でございましたか、ということを時の運輸大臣が答えました。あたりまえのことなんです、もしスト権を与えればという仮定の問題ですから。法律の裏づけとして当然のことなんです。たったそれだけの発言で大紛糾いたしまして、その運輸大臣が窮地に追い詰められたということを私は目の当たりに見てまいりました。それほど運輸大臣の発言というものは心しなければならないということでございます。一つの例として申し上げたのでございますが。  それはそれとして、当事者能力というものが総裁にもっと与えられることは結構なことでございますし、スト権につきましても、私からとかく論評するわけには立場上まいりませんが、御趣旨のほどは一つの御意見として承っておきたい、傾聴しておきたいと、このように存じます。
  95. 内田善利

    委員長内田善利君) 暫時休憩いたします。    午後五時五分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕      —————・—————