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1977-10-25 第82回国会 参議院 運輸委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月二十五日(火曜日)    午後一時一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         内田 善利君     理 事                 安田 隆明君                 山崎 竜男君                 瀬谷 英行君                 三木 忠雄君     委 員                 井上 吉夫君                 伊江 朝雄君                 石破 二朗君                 江藤  智君                 木村 睦男君                 佐藤 信二君                 高平 公友君                 平井 卓志君                 青木 薪次君                 村田 秀三君                目黒今朝次郎君                 田代富士男君                 内藤  功君                 柳澤 錬造君                 山田  勇君    国務大臣        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       園田  直君    政府委員        運輸政務次官   石井  一君    事務局側        常任委員会専門        員        村上  登君    参考人        日本航空株式会        社社長      朝田 静夫君        日本定期航空操        縦士会会長代行  塚本雄之助君        慶応義塾大学法        学部教授     栗林 忠男君        航空評論家    関川栄一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○運輸事情等に関する調査  (日航機乗っ取り事件に関する件)  (日航機墜落事故に関する件)     —————————————
  2. 内田善利

    委員長内田善利君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  日航機乗っ取り事件調査のため、本日の委員会日本航空株式会社社長朝田静夫君、日本定期航空操縦士会会長代行塚本雄之助君、慶応義塾大学法学部教授栗林忠男君、航空評論家関川栄一郎君、以上四名の方々を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 内田善利

    委員長内田善利君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 内田善利

    委員長内田善利君) 運輸事情等に関する調査を議題といたします。  日航機乗っ取り事件及びクアラルンプールにおける日航機墜落事故に関する件について政府から順次報告を聴取いたします。園田内閣官房長官
  5. 園田直

    国務大臣園田直君) 日航機ハイジャック事件経過について御報告を申し上げます。  九月の二十八日、日本時間の午前十時四十五分、ちょうど日本航空朝田社長は、前日のマレーシアの墜落事件報告に来ておられるときにハイジャックの第一報を受けたわけであります。パリ発東京行き日航四七二便、乗客百四十二名、うち邦人客八十五名がボンベイ離陸ハイジャックされ、同日午後二時三十一分バングラデシュダッカ空港着陸をいたしました。  ハイジャック事件を知ったと同時に、警察運輸関係各省は、それぞれ各省対策本部設置いたしましたが、十一時半ごろ、政府内閣対策本部設置をして、これに対する対応策を逐次練ったわけであります。  犯人は、ダッカ着陸後、八万ポンドの給油と給水をバングラデシュ当局要求をいたしましたが、これが完了した後、二十八日の午後九時十五分になって、(1)わが国身柄拘束中の九名の囚人釈放及び(2)身のしろ金六百万米ドルを日本政府に対して要求してまいりました。この段階で、犯人日本赤軍であることが判明をいたしました。  これに対しわが方では、二十八日午後十時、総理官邸対策本部の第一回会合を開いて、私が本部長になりまして対応策を検討いたしました。二十九日午前七時四十三分ごろまで連続、関係大臣及び関係各省幹部を交えて検討議論をいたしました。まず第一に、人命が大事であるから身のしろ金の六百万ドル、いま国民の出された税金を使うことはまことに身を切られる思いでありますけれども、金で済むことならということで身のしろ金の要求には応じよう、こういうことを第一に決めました。犯人釈放は拒絶をするということで、これが第一の方針でございました。これに対して犯人側は、一切これに応じない拒否の態度をとったわけであります。  なお、バングラデシュの方では、一切日本政府関係犯人との折衝に当てることをかたく拒みまして、日本政府が、自分たち相談をして犯人折衝をしているということがわかれば、犯人が興奮をしていかなる事態が起きるかわからぬ、こういうわけで現地から直ちにかけつけました吉岡大使等も一切出さないで、陰でバングラデシュにいろいろお願いをしながら犯人交渉をするという状態テレビニュースで御存じのとおりでございます。  そこで、その次に犯人拒否しまして、時間が逐次経過してまいりまして、その次にわれわれが犯人要求に応ずる——応ずるというのは犯人釈放でありますが、しかし、まず第一番に異論があったことは、その犯人釈放も単なる赤軍関係の者ではなくて、爆破事件その他殺人事件拘束されておる者等があるので、これは一緒にできぬという議論でございましたけれども、結局最後にはこれも含めて犯人要求に応ずる。ただし、殺人、強盗の前科を持った二名の一般刑事犯については断じてのめないということで最後まで拒否したわけであります。  ところが、その後バングラデシュ参謀長の方は、日本政府に対していろいろ折衝の結果、とにかくその刑事犯の二名、それも現地に連れてきてくれ、そうして全部そろえば、刑事犯の二名は、自分が何とか日本に帰れるように取り計らう、こういう話でございました。そこで仕方なしに犯人の二名は現地に行ってバングラデシュ参謀長犯人交渉して返してくれるということならばということで法務省警察承知をして、そのうち解放要求された囚人中二名の者はいかなる意味でも政治犯罪者ではなく、釈放するのは妥当でないと、こういうことで終始がんばっておったわけであります。  そこで、なお向こうから要求しました九名のうち、本人が出国することを拒否した者を残して、わが方としては解放要求囚人と、それからお金を持って急遽政府の代表として石井団長、これに関係各省から石井団長に随員をつけ、同時に日本航空朝田社長以下日本航空の所要の幹部、これが特別機をもってバングラデシュに飛んだわけであります。  このときに運輸大臣と私から日本航空社長協力方要請いたしましたところ、社長からは、操縦士意見として行き先がわからぬうちには絶対に離陸をさしてはならぬということなど三項の条件が出され、同時に朝田社長より、石井団長ほか公務員五名から、向こうへ行って交渉の結果、自分たち人質になることを覚悟していくからそれを了承してくれと、こういう話がありました。石井団長ほかは政府幹部でありますけれども、朝田社長日本航空社長でありますから、われわれが人質に行けということは言えないわけでありますけれども、石井団長の覚悟に感銘をしながらこれを送ったわけであります。  そこで、向こうに参りましてからも、なお一切日本政府犯人とは折衝いたさせません。そのうちにだんだん時間が経過をしてきて、いよいよ最後の午前二時という時間の制限を犯人側からやったわけでありますが、われわれとしては石井団長に対して、石井団長はまた現地で、バングラデシュですべてを解決したい、全員釈放したい、こういうことが第一でありまして、全員釈放条件がかなえられない間は犯人並びに身のしろ金は渡すなということで石井団長も粘り、われわれも粘ったわけであります。  ついに最後には犯人の方では、いよいよこれを虐殺するぞという死刑の通告があり、その順番の氏名の通報までありました。このときに、いよいよ時間が迫ってきたときに向こうから来ました犯人側からの情報は、第一に虐殺をするのは米国人である。米国人銀行マンであって、しかもこれはカーター親友であると、こういう説明つき情報が入ったわけであります。ここで本部長である私は非常に困りましたわけで、いままでは人命、特に邦人乗客乗務員、こういうものを考えておったわけでありますが、ここで第一の虐殺氏名米国人で、しかもカーター大統領親友ということになりますれば、これは米国の威力に屈してわれわれが犯人要求に応じたと、こうなりますので、私はみんなと諮って、これは時間が経過しても返事するわけにはいかぬと、こういうわけで返事をしなかったわけであります。テレビで御承知のとおりに、ついに最後には、この米国人遺言状みたいなものをマイクで放送するという段階まできたわけでありますが、われわれはその要求に応じませんでした。  なお、この段階石井団長は、後で説明すると思いますが、みずから人質になって乗客をおろせということを迫り、あるいは副大統領のところへ単身赴いて最後折衝をやったわけでありますが、そこで、向こう言い分とこちらの言い分がなかなかうまく通じなかったわけであります。  そこで、十月の二日早暁、犯人側マームード参謀長との合意によって、釈放囚人六人及び六百万ドルと人質との交換を六回に分けて実施することになり、午前七時過ぎまでにこの条件に基づき人質六十人が解放されたわけであります。  この時期においてもなお、政府現地石井団長も、あくまでバングラデシュ最後まで解放してもらうようにという努力を続けたわけでありますが、バングラデシュの方では非常に急いでおりまして、なるべく早く、犯人を怒らさないで、流血惨事という言葉をしばしば使ったわけでありますが、流血惨事を起こさないように平和裏解決をしてもらいたいということで、もうすでに石井団長が行ったときには交渉は進んでおりまして、参謀長が言明した一般刑事犯二名は、現地まで連れてくれば犯人をなだめて日本に帰すということが話題にも上らない状態になってきたわけであります。  ここで石井団長連絡によって、総理大統領にも連絡をし、外務省は、バングラデシュに対して、行き先がないと、どこの地に打診してみてもどこの地も受け入れない。したがって、これが飛び立ったならば、生命に関する人道上の問題であるから、絶対に行き先が決まらぬうちは離陸させないでくれと、こういうことを強く要請をし、総理からも申し入れたわけであります。しかし、一方また、その段階では外務省バングラデシュ飛行機がおる間はバングラデシュの国のことでありますが、飛行機の車輪が地から離れた瞬間に日本国籍日本航空、そして乗務員乗客、こうなってまいりますると、犯人も含めてその生命を保護する責任は日本政府にあるわけでありますから、二十九カ国近くの国家にもしもの場合は受け入れてくれるかという打診を始めておったわけであります。  しかし、これはそういうわけでありますから、法務省警察にも言わずに、外務省だけで極秘打診をしておりましたところ、ほとんどの国は給油、それから領空通過一切拒否、ひどいのは領空に来たならば撃墜するというぐらいな強い国もございました。そうしてだんだんしぼっているうちに、政府政府交渉自分たちが受け入れるということはこれはとうていできない。無理に犯人飛行機で飛んで来たら人道上の見地から給油着陸を許す程度のことはという話でありました。そのとおりであって、その後バングラデシュを出てから二ヵ所に着陸したわけでありますが、その着陸飛行場は全部装甲車、または自動車を滑走路に並べて、これの着陸拒否の態勢を示した。その上空を飛んでいるうちにそれをのけて、仕方なしに着陸させたかっこうで給油その他を行ったわけであります。  そのうちに、この第一回の人質交換が完了した直後に、ダッカ市内クーデター騒ぎが発生をして、空港等にも反乱軍が闖入するなどして、犯人側との交渉は中断されたわけであります。ここで、このクーデター事件によって何とかこの事件を有利に導く手はないかと盛んにわれわれは考えたわけでありますが、これは新聞等で御承知のとおりに、現地に行った派遣団は、前後ろから来る銃弾のために、自分生命並びに派遣団連絡、それから釈放された邦人生命の安否、これが精いっぱいでありまして、なかなか交渉はうまくいかなかったわけであります。そこで、この参謀長行方がわからなくなったと、こういう状態でありました。この騒ぎは、午後には政府側によって鎮圧をされ、再度バングラデシュ犯人側との交渉が再開されたわけでありますが、この再開には現地参謀長は来なかった、行方がわからなかったわけであります。  そこで、政府としては情勢の展開に応じて、現地吉岡大使及び石井団長にそれぞれ指示をいたしましたけれども、すでにその時期においてはなかなか現地の状況が把握できなかった。そこで石井団長に一切を一任をして、こちらからは解決の促進をやっておっただけでありますが、石井団長はみずから副大統領のところに行き、それから総理に、何とか大統領電話で、人質全員バングラデシュ解放してもらいたい、こういう要請をしてくれと、こういうことで、そのうちにさらに人質四十二名が解放されたわけでありますが、いよいよ現地から、ハイジャックされた日本航空飛行機バングラデシュ政府から離陸命令が出されたと、こういうわけであります。  そこで探しましたが、大統領クーデター騒動の直後で、死骸はあちらこちらに転んでおる状態連絡はとれません。行方はわからない。そこで、電電公社その他を使って電話捜索をして、ようやく極秘の場所で会議をしている大統領連絡がつきました。そこで総理からは、いま申し上げましたような方針でさらに要請をしたわけであります。そこで大統領は、離陸命令を出したけれども、総理からのあれであるからもう一遍言ってみよう。しかし、この事件が起こったのは、クーデター事件が起こったのはこの事件が誘因したのでありますぞと、なおまた、わが国としては、あなたのおっしゃることも非常に大変だが、あれだけの大金を積んだ飛行機飛行場におるということが国の安全に影響をする、だから一刻も猶予はできない。こういうわけで、結局人質三十六名、乗客二十九名、乗員七名を乗せたままバングラデシュ強制離陸命令によって飛行機は出発をする状態になったわけであります。  そこで、ダッカ離陸したハイジャック機は、午前七時にクウェートに着陸給油すると同時に人質七人を解放、これは約束どおりであったわけであります。また、十二時半にはダマスカス着陸をして、給油を受けると同時に人質十人を解放し、十月三日午後十一時二十分ごろにアルジェリアダル・エル・ベイダ空港着陸をいたしました。この間の解放人員その他は、石井団長がおれに任せろと言った計画どおりにこれは向こうは、犯人約束を実施したわけであります。  そこで、このアルジェリア着陸するということは、残念ながらダッカ離陸した直後はまだわからなかったわけであります。一番最後ダマスカス着陸をして離陸をしたその直後、ロンドンの日本航空支店長からの情報であったと思いますが、犯人が交信しているのを見たらアルジェリアと交信をしておったから、アルジェリア着陸する模様であるということで、多分アルジェリアだろうとわれわれは解釈をしたわけであります。外務省としては、すでにその前に、アルジェリアも含む三ヵ国ぐらいに焦点をしぼって打診をしておったわけでありますが、この段階から打診ではなくて、正式の受け入れ工作に移ったわけであります。  そこで打診段階で、政府間の交渉でやるということは困る、無理に来たら受け入れると。だがその場合に身のしろ金、犯人引き渡し要求はしないだろうなという条件向こうからついておったわけでありまして、どうもそれ以外に方法なかろうということで、総理はいざという場合にはその方針で処置をしろと、こういうことを命じられておったわけでありますが、いよいよアルジェリア上空に飛んで行っていろいろ接衝の結果この条件をのまざるを得ないと、こういうことで飛行機ダル・エル・ベイダ空港着陸してから間もなく、十月四日午前一時ごろ、犯人及び解放された囚人六名はハイジャック機から離脱をし、残る乗組員を含めた人質全員解放されたわけであります。  解放された人質の救援に当たった日航特別機は、十月四日及び五日に羽田に帰着をいたしました。  なお、犯人及び身のしろ金の取り扱いについては、政府としてはアルジェリア政府がこれらをわが国に引き渡すことを希望しており、——と申しますのは、アルジェリア政府受け入れ条件で、犯人引き渡しと身のしろ金は渡せと言わぬだろう、それから損害賠償要求しないだろう、こういうことを言われておって一応了承したわけでありますから、国際慣例から言うと、一遍了承したものを返せというわけにはまいらぬわけでありますが、その後いろいろ相談の結果、再発防止ということから考えるとこれは大変なことであるので、一遍了承はいたしましたから要求する権利はありませんけれども、再発防止という見地から、ひとつ犯人は取り調べの上で返せるものなら返してもらえばわれわれはこれを喜んで引き受ける。また、身のしろ金もそうであります。しかし、それができなければ犯人は、再発ができないようにアルジェリアの国で拘束をしてもらいたい。なお身のしろ金については、返すことができなければアルジェリア政府で没収をして、犯人がこれを再発計画を立てる資金にならぬようにしてもらいたいという申し入れ——申し入れというよりもお願いアルジェリア政府にしたわけでございます。  そこでアルジェリア政府では、一遍要らぬと言ったものをいまごろ言うのはおかしいじゃないかということでありましたけれども、これは再発防止という観点から、礼儀を失しないように、根気強くあれやこれやとまた努力をいたしまして、犯人その他のことについてはまだまだこれが日本に引き取るまではいかなる努力も続けたいと考えておるわけであります。  以上大まかでありますが、ハイジャック事件の起こったときから解放されたときまでの経過を御報告を申し上げたわけであります。  第二に、委員長から指示されました再発防止についての簡単な経過を御報告を申上げます。  先般、数年前クアラルンプール事件がありましてから、政府ではこれの対策連合会議を持たれておるわけであります。これによってすでに御承知のいろいろな対策要綱が決められておるわけでありますが、なかなか相当微に入ってやられておるわけでありますが、中にはまだ足りない点もあるし、特にわれわれが前のことを批判するのはあれでございますから控えますけれども、対策が不備であったということよりも、事件があった当初は熱心にやっておったが、だんだん時がたつにつれて、そうして熱気がさめてきて、決められたことも実行されていなかったんじゃないかと思われる点があるわけであります。  そういうわけで、今度は政府再発防止本部設置をして、関係各省幹事会本部会議と分けてつくっておるわけでありますが、これには特に人間を輸送される日本航空、全日空の会社からも御参加を願い、それからなお、これは逐次どんどんどんどん案を立てていって、立てていったことはこれを実行に移す、そうしてこれは永久に再びこういう事件がないという確信ができるまではこの会合は続けて、これの実行をチェックしていきたい、こういうつもりでやっております。  まず安全検査空港諸施設における警備体制の強化、出入国業務に関する対策推進並びに国際協力の一層の推進等に力を入れてきたということでありますけれども、今度の事件を契機として、十月四日、内閣閣議了承によってハイジャック等人道的暴力防止対策本部設置し、かかる非人道的な暴力行為防止について真剣に対処することといたしました。  防止対策としては、一つ日本赤軍根源を断つこと。これは、委員会報告するのには何でございますけれども、今度の犯人は非常にドイツ日本と変わっておりまして、持っておった武器が、ドイツの方はプラスチック爆弾でありますが、日本犯人は残忍なくぎ爆弾等を準備しておった。それから、ハイジャックしてからおりるまで、一切機内の食事はしないで携帯のビスケットを食べておった。水も差し入れられた水は飲まないで、乗客が飲むと、残った水を集めて、そうして十時間たって何ともなければこれを飲むという、麻酔剤その他を飲まされることを警戒をしておるなんということであります。一面においては日本人とドイツ人の性格を非常にあらわしておるわけであります。  ドイツの方では機長を銃殺をして、その死体をほうり出した。しかし、その後は冷静に構えておる。日本はなかなかそういう残忍なことをしないかわりに、一度血を見たらとまりようがないというようなことなども非常に変わったところだと思いますが、七たび放ったら八たび捕らえなければ、おりるときにまことに恥ずかしい話でありますが、犯人の隊長が隊員に言ったせりふは、いよいよこれからおりると。これから先は日本政府じゃないから、日本政府と違って反抗したら射殺をされるから反抗するなと注意を与えておるわけであります。これはまさに犯人から日本政府、すなわち本部長である私が無能であると、やつらは何もできなかった、ここからは違うぞと、こういうせりふであります。これは党派を越え、決してこれは政治犯でもなければ思想犯でもない、極悪非道犯人でありますから、何とかしてこれは再び日本に引き返すような努力をしなければならぬ。こういうことで日本赤軍根源を絶つこと。こういうことをひそかに準備をいたしております。  次に、ハイジャック防止についての国際協力を強化すること。今度いろいろおしかりを受けました。受けたおしかりごとに私はいたく痛み入っております。しかし、この事件解決まで連日連夜電話が鳴るわけであります。その一方はなかなか厳しくやっつけろと、中には自衛隊を飛行機に積んでいってなぜやらぬのかというような御意見もありますが、また一方からは、なぜもっと一時間も早く出さぬのかと、金が惜しいのか、税金国民のために使うのだ、その命を助けるのに何が惜しいのかなどと言って、乗客並びにその他の関係の方からは言われたわけであります。しかし、いろいろありますが、やはり一番反省して、正直にわれわれとしてこの前のクアラルンプールも今度の事件も、足り得なかったことは、事件が起こると、直ちに世界各国協力を求めなかったということが私は少し足りなかったんじゃないかと、こう考えておるわけであります。  犯人行き先を封じるとか、あるいは受け入れるなら受け入れるで、受け入れたらどうするとかということを、むしろ私は、委員会で申し上げることではございませんが、率直にこれから先の御審議のために申し上げますと、バングラデシュで非常に急ぎました。出て行けと言わぬばかりの仕方。それから次には犯人を怒らせないで、犯人の言うとおりにやってくれということを、政府にも石井団長にも向こうが頼むぐらいにやっておった。これはバングラデシュの政情もあったと思いますが、また一つには、邪推であれば結構ですが、これに乗っておった米国初めインドネシア等乗客の命を助けるために、よその国からは逆にバングラデシュに危なくないようにやれというようなことも頼みがあったんじゃないかなどと考えますると、これは国際的な相談というのは大切だ。こういうものの協力強化及び国内対策、これはもうよくおわかりでございますから、チェック、その他旅券の問題省略をいたします。  こういうことで、必要な法律案の改正はいま急いで御相談をする準備をしておるわけであります。  以上、長くなりましたが経過報告といたします。
  6. 内田善利

    委員長内田善利君) 石井政務次官。
  7. 石井一

    政府委員石井一君) 私からは、日本航空クアラルンプール事故について御報告をさせていただきたいと思います。  去る先月二十七日、日本時間の午後八時ごろ香港を出発し、クアラルンプール国際空港へ向かっていた日本航空所属のDC8型機が、着陸の直前に同空港から北西約七キロの地点で墜落するという事故が発生いたしました。しさいにつきましては、お手元にお配りいたしました資料に記してございますが、日本乗客二十九名を含む乗客及び乗務員合計七十九名のうち、不幸にも三十四名の犠牲者を出しましたことはまことに遺憾の念にたえません。航空企業の至上命題である安全運航の確保を達成をせるべく、運輸省といたしましては従来よりこの点に最大の力点を置いて航空企業の指導監督を行ってきたのでございますが、今回このような事故の発生を見たことは、私といたしましてもまことに残念でございます。  本事故の原因調査につきましては、国際民間航空条約に基づき、事故発生国であるマレーシア政府が実施することになっておりますが、航空機登録国でございますわが国としても、航空事故調査官を現地に派遣する等の方法により、事故調査に参加しているところでございます。現在、事故調査は続行中でありますが、マレーシア政府協力を得て早急に事故原因を解明し、もって航空運送事業の安全運航の確立に万全を期する所存でございます。  以上、御報告申し上げます。
  8. 内田善利

    委員長内田善利君) 以上で報告の聴取は終わりました。     —————————————
  9. 内田善利

    委員長内田善利君) 次に、日航機乗っ取り事件について参考人から意見を聴取いたします。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日はお忙しいところ本委員会に御出席いただきまして、ありがとうございました。  それでは、議事の進め方について申し上げます。  本日は、日航機乗っ取り事件について忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。議事の都合上、御意見をお述べ願う時間はお一人二十分程度にお願いいたしたいと存じます。  なお、参考人意見陳述の後で各委員から質疑がございますのでお答えいただきたいと存じます。  まず、朝田参考人からお願いいたします。
  10. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) 日本航空社長をいたしております朝田でございます。  参考人として意見を求められております案件に先立ちまして、深く心からおわびを申し上げたいと思いますことは、ただいま石井政務次官からクアラルンプールの事故の発生の経過について御報告がございました。私も航空会社の絶対至上命令であります安全性の確保について日夜腐心いたしておりましたのでございますが、このような事態が起こりましてまことに申しわけのないことだと存じております。深くおわびを申し上げたいと存じます。  そこで、お尋ねのハイジャック事件に関しまして私が考えておることをお聞き取りいただきたいと存じます。  先ほど官房長官から経過の御説明がございました。今回の経過を通して、私も政府から特別救援機の派遣に際しまして、官房長官、運輸大臣から招致を受けまして、特別救援機の派遣について協力を願いたい、こういうことでございます。私は、以前にもドバイ、ベンガジのハイジャック事件がございまして、当時も私みずから現地に飛んで参りました。この種の事件が起こりますときにいつも申し上げておりますことは、今回は、政府は十分の御理解をいただきましてそれを御承認をいただきました。  私が申し上げております二、三の点を申し上げますと、まず第一に、特別救援機はそういう犯人の護送も役目として引き受けるわけでございますから、そして異常かつ困難な事態に処するわけでございますので、この特別救援機の派遣は政府の正式の御要請として扱っていただきたいということが第一点でございました。  第二点は、何をおいても乗客、乗員の人命尊重、人命最優先の万全の措置を講じていただきたい。これは言わずもがなの問題でございますけれども、その際に強くお願いを申し上げた第二点でございます。  第三番目は、先ほども経過の御報告にございましたように、行き先がわからないでダッカ空港から飛び立つということを絶対にお避け願いたい。相手のある話でございますけれども、そういう三点を絶えず申し上げておりましたところが、政府は十分その条件を満たすように最善の努力をするということでございましたので、私はそれをお引き受けいたしました。私みずからも、先ほどお話がありましたように、大事な日本航空としてのお客様の命にかかわる問題でございますので、不測の事態がいつ起こるとも限りませんので、私自身もお供をいたしまして、その事態の推移に応じては私の一身を挺してお役に立つことができればという念願のもとにお供をいたしたわけでございます。  そこで、これに関連をいたしましていろいろの問題がございますけれども、今回の事件についての一つの当事者でもありますので、私どもがその後とりました措置、あるいは今後お願いをいたしたい点というものを反省を加えて申し述べたいと思いますのでお聞き取りをいただきたいと存ずるのであります。  ここ数年来、世界の主要航空会社、あるいは空港及び関係国家機関は、頻発するハイジャック防止のために懸命の努力を重ねてきておりまして、米国におきましては一九七二年、搭乗全旅客の身体及び身の回り品の検査を一〇〇%チェックをする、こういうことが実施されまして以来、このような検査が全世界的に常識となりまして、私どもも寄港をいたしております各空港はもちろんのことでありますが、今日ではほとんどの空港がこの方式の採用をいたしております。最初は人力に頼っておりました検査も、次第に開発されました検査用機器、エックス線の検査装置や、あるいはメタルディテクター、金属探知器というものが導入されまして、総体的にハイジャック防止検査の質が高まってまいりました。またこれを裏づけるように、世界で発生をいたしましたハイジャック事件の件数も次第に減少してきておったわけでございます。  一方、私どもも一九七三年のいわゆる先ほど申し上げましたドバイ事件の後に、政府御当局の積極的な御指導をいただきまして対策を強化いたしました。従来の社内防止体制も全面的に改定をいたしまして、特にハイジャック防止体制につきましては、恒常的に発動し得る体制としては最も厳重なフェーズCというものを発動をいたしております。A、B、Cとあるのでございますが、これは社内の極秘の取り扱いの方法として外部には公表いたしておりません。こういうようなことで、可能な限り保安情報の分析を行いまして今日に備えておったのでありますが、にもかかわらず、今回の事件の発生を見ましたことはまことに遺憾と言うほかございませんが、当社の事件に引き続いて起こりました西独のルフトハンザのハイジャックの問題、あるいは先週に起こりました米国のフロンティア航空機のハイジャックというようなことが起こりまして、この種のハイジャック防止というものはつくづくむずかしいものだと痛感をいたしておるようなところでございます。  航空会社といたしましては、もちろん防止体制のどこかに欠陥があったか、あるいは防止の網が突破されたわけでございますから、今回の事件につきましても真相の究明をいたすことは必要でありますが、それと相まって補強を着実に実行してまいらなければならぬと存じております。しかし、何と申しましても、航空会社の保安体制でもって、念には念を入れて監視体制の強化もやりますが、しかし、いずれにいたしましてもそれに限界があるということでございます。これは後ほど申し上げたいと存じますが、こういうことに対してやはり国際的な協力、ワールドワイドの、世界的な協力のもとにこういうものが機能いたしませんとなかなか実効が上がらない、こういうことを考えるわけでございます。  私は、四十八年のドバイのハイジャック事件以来IATAの理事会に出席をいたしまして、私もIATAの理事会の理事を仰せつかっておりますので、そのときにカナダのモントリオールで開かれました理事会に出席をいたしまして、四項目の点を強調をいたして、IATA自身もそれに対応して世界各国関係各国に対してアピールをいたしております。このことが、いま思い返してみますと、いまでも当てはまる各項目でございまして、御参考のために私が申し上げましたことが今日なお同じような問題が討議されておるということに反省をいたしておるのでありますが、御参考のために申し上げてみますと、まず第一点は、民間航空の保安の責任は、究極的には政府に帰せられるということがIATAのたてまえでございまして、各国政府が不法侵害の防護対策を実施せられるように訴える。第二番目は、人命が危殆にさらされる暴行の再発防止するためにIATAは情報交換に関し新たな観点から強力な手を打つということであります。  第三点は、警備及び空港当局の協力を得て出発旅客及び手荷物のチェックに関し世界共通の方式を設定する。このことは、先ほど世界的に品質が向上いたしておるということを申し上げましたが、ドバイのハイジャック事故当時はこういうことを申さなければならないような状態であったわけでございます。このために各国際空港は相互補完の役割りを果たすことが前提となる。第四番目に、東京条約、ヘーグ条約、あるいはモントリオール条約をいまだ批准していない各国政府は早急にこれを批准するように訴える。さらにIATAは、かかる不法行為を絶滅するよう有効な条約が生まれることを期待して、ローマ会議を早急に完結するよう支援する。——ローマ会議は不幸にしてそういう結論を得ませんでした。いずれにいたしましても、そういう国際協力を、今回の政府の御対策の中にもございますので、いま国連で開かれております総会において特別にこれに対する防止体制の確立を政府御当局にもお願いを申し上げたようなわけでございます。私どもが政府の決められました対策につけ加えまして、航空会社として、日本航空としてさらに二項目をつけ加えていま実施に移しております。  最後に、これを取りまとめて申し上げてみますと、政府対策の中にもダブルチェックを行う、所持品の検査を厳重にやる、こういうことでありますので、このダブルチェックを実際に実施をいたしまする際にも、あるいはその他の監視の体制を強化いたします際にも、政府は当該国の協力が得られるように交渉、了解を得ていただきたいということが第一点でございます。ところによりましては、ある国におきましては、そういう航空会社がダブルチェックをやるということについて拒否をする国がございますので、こういうことの協力が得られますように御交渉をいただきたいということでございます。  第二番目は、情報の収集、連絡につきまして、各種の情報がいろいろなソースで私どもに入ってまいりますけれども、事前に航空会社に対してIATA、先ほど申し上げました国際航空運送協会、その中のセキュリティー・アドバイザリー・コミッティーというものがございますが、そういうようなところの情報、あるいは日本警察からの情報、あるいは大使館筋からの情報等がございますので、そういうものを通して私どもがすぐに即応できますように事前に流していただきたいということが第二点でございます。  それから、先ほど申し上げました国連あるいはICAO、IATAを通じての国際協力を通じてこれの万全の措置を各国政府がおとりいただくように努力をいたさなければならぬと思いますが、私も今回もまた再びIATAの年次総会がございますので、その際に開かれます理事会に出席をいたしまして強くこの点を訴えたいと存じておるような次第でございます。  それから、国内のチェックの、あるいは監視あるいはその所持品の検査の問題でございますが、私どもはいまやはり航空会社の手によって行っておるわけでございますが、これには限度があると申し上げましたのは、私どものたてまえ、立場からいたしますと、運送約款の範囲内で事を処理せざるを得ない、そこで凶器が発見されてもそれは没収することもできません。それに対して質問をしたりいろいろなことをするということもできないわけでございますので、東南アジア、中近東、あるいは欧州各国いずれの国においても、その国の政府警察力をもって、あるいはまた軍隊をもってそういう警備、保安体制の確保をやっていただいておるわけでありますから、わが国におきましても国内空港において警察が全面的に出ていただいて、ひとつ責任を持って警察力をもってこれの実効を上げていただきたい、こういうことをお願いをいたしておるのでございますが、いろいろな事情がありましてなかなかそういかないということを承っておりますけれども、もしそれが困難であるとするならば、その運用において、ひとつぜひ御高配をいただきたい、こういうふうに考えておるようなわけでございます。  以上でございます。
  11. 内田善利

    委員長内田善利君) ありがとうございました。  次に、塚本参考人
  12. 塚本雄之助

    参考人塚本雄之助君) 私は、日本定期航空操縦士会の会長代行兼事務局長をしております塚本でございます。  日本定期航空操縦士会は、第二次大戦後、わが国の翼が国際線に進出しつつあった当時、諸外国のパイロットの知識、経験を積極的に吸収していくために、昭和二十三年に設立されました国際定期航空操縦士協会連合会——以後IFALPAと呼ばしていただきますが——からの呼びかけもあって、当時国際線を運航していた日本航空在籍の機長、副操縦士によってつくられた国内対応組織でございます。昭和三十六年にIFALPAに加盟いたしまして以来今日に至っておりますが、利どもは、IFALPAの加盟協会として民間航空の秩序ある発展のために、運航の安全上の諸技術問題、ハイジャック防止等の保安問題等の多くの方策立案等に活動してまいりました。このような立場から、ハイジャック等民間航空に対する不法行為を防止する上で、国内あるいは国際的に望まれる方策について六十五ヵ国、五万五千人のパイロットを代表して意見を述べさしていただきたいと思います。  多くの方策がございますが、とりあえず次の三点について切に御要望さしていただきたいと思います。  わが国では、昭和四十五年三月三十一日に発生した「よど号」ハイジャック事件を契機として、政府ハイジャック等防止対策連絡会議設置されております。また、各主要空港には空港保安委員会設置されてまいりました。自来ハイジャック等防止対策連絡会議が定めましたハイジャック等防止対策要綱が、わが国におけるハイジャック等民間航空に対する不法行為を防止する対策の根幹となってまいりました。しかしながらハイジャックは、これらの諸施策にもかかわらず、「よど号」事件以降減少、絶滅することなく、以後七年間に十四件の発生を見ております。  頻発するハイジャックに悩んだ米国におきましては、連邦航空庁が中心となってハイジャック防止強化対策を策定、施行し、昭和四十三年から四十七年の間に年間平均二十九・四件の発生率がございましたが、昭和四十八年以降には、小型機使用事業等のゼネラル・エビエーションを含めて五・六件に減少してまいりました。定期便だけについて考えてまいりますと、航空機の使用頻度、普及度、あるいは米国における拳銃保持の自由等を考えますと、わが国における防止策並びにその結果とはなはだしく対照をなしていると言わざるを得ません。  民間航空の安全を向上するために各種の規定を国際的に定めてまいりました国際連合の一専門機関であります国際民間航空機構——ICAOと言わしていただきますが——は、民間航空の保安についても世界各国の専門家の参加を得て研究、討議し、その結果各国の航空保安対策の基本となるべきものを同付属書十七、「国際民間航空の不法妨害行為に対する防衛手段」及び「民間航空に対する不法行為防止の為の安全保障マニュアル」に定めております。その第四章には、「勧告」として、「当局は国の民間航空保安要領に関係する、或いはその各部門について責任を有する各省庁及び他組織間の活動が協調して行えるように具体的方策を設定すべきである」。また「注」として、「ICAOセキュリティー・マニュアルに述べる民間航空保安委員会の設立が本規定の趣旨に合致するであろう」というふうに注釈がついております。  ハイジャック等防止対策連絡会議及び各空港保安委員会を、ICAO勧告になる民間航空保安委員会と比較した場合に、その構成、運営方法、活動基準等について明らかな相違点が見られると思います。それらは特に社会情勢の変化に有機的に対応していく上での即応性及びそれを可能とする権限の問題に顕著にあらわれていると思います。世界各地で絶えず新たな手口によるテロ行為等が発生しつつある昨今、たとえ今日万全の措置をとり得たとしても、あすもまた万全であるとは何人も言い得ないことでございます。したがって、新たに保安対策を講ずるのみでなく、それを定期的に改善し、世界各地で発生した同種事件の教訓を取り入れ、もって潜在的なハイジャッカーのとり得る手口に対して、あらかじめ効果的に対処し得るような常設機関の設置を図ることこそ、将来にわたるハイジャック防止対策の根幹となるべきことと思われます。  したがいまして、私どもIFALPA会員は、ここに前述のようなハイジャック等防止対策連絡会議にかえ、ICAO勧告にありますように、民間航空保安委員会を、変動しつつある情勢に常に積極的に対処できるように常設機関として設置すること、その機関に政府が全面的に協力するとともに、必要な権限を長期的に継続して与えること及びその機関の決定に基づく実施状況を間接的に報告することによらず、直接的にモニターできるように現場の者を構成要員に入れることを提案したいと思います。従来より訴えてまいりましたパイロットの同委員会への参加を切に希望するものでございます。  また、国際的には昭和三十八年に、航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約——東京条約、昭和四十五年には、航空機の不法な奪取の防止に関する条約——ハーグ条約、昭和四十六年には、民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約——モントリオール条約が作成され、民間航空に対する不法行為を防止するための国際的協力のよりどころとなってまいりました。  IFALPA統計資料によりますと、昭和二十二年来毎年数回の頻度で発生しておりましたハイジャック事件は、昭和四十三年になって急増し、三十八件、八十二件、七十二件、六十二件、七十件と続き、昭和四十八年になって二十九件、以後二十六、二十七件と急減したことは、ハーグ、モントリオール条約を初めとする各国政府の積極的な対応策と、各国間の国際協力によるものと推察されます。しかしながら、昭和五十一年までに世界的に見れば依然として毎年一千名を超える乗客がこの種の不法行為の巻き添えになっております。しかも四十九年には、一年間に九名の乗員を含む六十五名の乗客ハイジャックの結果死亡しております。また、昨五十一年においては三十名の負傷者、十三名のとうとい犠牲者を出し、発生回数は減少したとはいえ、いまだ完全解決をされたとは言い得ないものであります。  今回の西ドイツ、ルフトハンザ航空事件について、機長の殺害の犯人をハイジャッカーとすることは大変簡単なことであります。しかし、私どもIFALPA全会員は、真の責任は、より有効な国際的な取り決めを国家主権等により履行し得なかった各国政府にあると思量いたします。これらの真の解決は、東京条約、ハーグ条約、モントリオール条約の履行を完全に強制する第四の条約の作成批准がなされることであると考えます。これらの実現について日本政府の主導的な活動を切望するものであります。  また、二国間航空協定の締結あるいは更新に際し、ハーグ条約、モントリオール条約の義務完全履行を相互に明確化することは、これら条約の本来保持しております抑止力を顕在化させることになり、ハイジャック等の不法行為防止に大きく寄与するものであることを信じてやみません。  最後に、一たんハイジャックされた航空機に対して、物理的に滑走路を閉鎖するなど、運航の安全を阻害する行為は完全に排除されるべきであると信じます。非合法的に支配されている航空機の安全保障については、機長の要望に沿った地上の支援体制の確立と、機長の要求のない武力介入については、ごくまれな例を除いて一大惨事を惹起することを真に御理解いただきたいと思います。  以上、簡単に申し上げましたが、三点について各方策を決定される各位の格段の御配慮をいただきたくお願い申し上げます。
  13. 内田善利

    委員長内田善利君) ありがとうございました。  次に、栗林参考人
  14. 栗林忠男

    参考人栗林忠男君) 慶応大学の栗林でございます。私の専攻の関係から、ハイジャック防止の国際法上の側面について御報告申し上げます。  ハイジャックの規制に関係のある国際条約といたしましては現在三つの条約がございます。いずれも国連の専門機関でありますICAOの主宰のもとに作成されたものでございますが、その採択の年代順に申し上げますと、一つは一九六三年の東京条約、二つ目が一九七〇年のハーグ条約、そして三つ目が一九七一年のモントリオール条約でございます。このらち二つ目の条約がハイジャックを直接的かつ詳細に規制したものでありまして、正式には航空機の不法な奪取の防止に関する条約と言われまして、一般にはハイジャック防止条約というふうに呼ばれております。この条約の前にできました東京条約は、広く航空機内の犯罪一般を取り扱ったものでありまして、ハイジャックについてはわずか一カ条の一般的な規定しか設けておらなかったために、一九六八年以降急激に増加しましたハイジャック事例に対処するためにハーグ条約ができたわけでございます。  内容は、簡潔に言えば、各国がハイジャッキングを重い刑罰で処罰すべき犯罪として国内法上定義する。そして、犯人または容疑者を条約上定められた一定の国に引き渡すか、もしくは訴追のために自国の当局に付託する義務を締約国に負わせる。またハイジャックされた航空機の乗客乗組員の旅行の継続を促進させるとともに、機体及び積み荷を占有権を有する者に返還すべき義務を締約国に課しております。  このハイジャックに関して詳細な規定を定めましたハーグ条約と同時に、航空活動自体の安全に重大な脅威を与える行為はハイジャックには限らない。それ以外にも航空機の運航並びに航空施設に対する妨害、破壊行為などをも含む不法な行為も多々あるので、ハイジャック以外のそれらの行為を規制するための審議が、ハーグ条約の審議よりちょっとおくれてスタートいたしまして、ほぼハーグ条約の諸原則を盛り込みましたモントリオール条約となって成立いたしました。  しかし、一九七〇年に入りましてから、航空機の地上襲撃事件爆破事件が相次いで発生しまして、特にアラブゲリラによります不法奪取や爆破行為は、航空機内の人質釈放とゲリラ捕虜の釈放交換要求を含むなど、次第にその内容がエスカレートしてきたこともありまして、政治、外交上の立場から、これらの行為を行う者の避難場所を提供する国に対する国際世論の非難を喚起するようになりました。そこで、ハイジャックやその他の不法な妨害行為を行った者が、ある国の領域内におり、しかも、その国がその者を抑制せず、あるいは、その後その者を引き渡しも訴追もしない場合には、そのような国に対して共同の制裁行動をとることができる、そういう仕組みを考えるべきだという機運が高まりまして、その結果ICAOは、いわばこの一連の条約づくりの最後の締めくくりとなるべき制裁のための条約の作成作業を行いましたが、一九七三年のローマにおける会議では、結局参加国間の合意が成立せずに失敗いたしました。  ハーグ条約にいたしましても、モントリオール条約にいたしましても、その作成経過が非常に短い間に行われたということが特徴でございます。それは、早急な抑制策を要望する各方面からの世論の結集によるところが大きかったのですが、しかし、その反面、これら航空犯罪の事例が増加する度合いに応じて、その都度対応する国際法規則の確立が急がれてきたために、ハーグ条約、モントリオール条約、さらに制裁のための国際立法化の過程並びにその審議内容には著しい追加的、補完的な色彩がありました。東京条約で不十分に規定されましたハイジャック規定を詳細に補完するためにハーグ条約が、またハーグ条約でカバーしなかった他の犯罪類型をモントリオール条約が、そして、それら条約の実効性を確保する必要が認識されるに伴って制裁への動きが出るといったぐあいでありました。  このように早急にそれぞれの条約を作成するという要請と同時に、もう一つ要請された点は、この種の犯罪を規制するためには、できる限り多数の国による条約への参加を確保しなければならないという点でありまして、この条約の早急な成立と、この多数国の参加という二つの要請の結果、条約内容には非常に多くの各国の妥協が盛り込まれております。それは、少数の国が国内法上の措置を整備、強化いたしましても、これらの犯罪に実際に遭遇した航空機自体が飛行する関係諸国による犯人引き渡し、あるいは訴追、処罰、さらに乗客乗組員の旅行継続と機体、積み荷の所有者への返還といった点に関する広範にしてかつ具体的な協力措置を得ることなしには問題に対処することができないからであります。そして、これらの点に関する各国の法制度や政策的な立場というのは必ずしも一様ではありませんで、しかも、しばしばこの種事犯に含まれる政治的要因との関連の中で、条約への普遍的参加を期さなければならないといった数々の困難が原因となっております。特に犯罪の抑制に関する国際間の規制には、各国の持っております領域主権に鋭く触れるものが含まれておりますだけに、国内法にゆだねられる傾向が強いといった面もございます。  私は、これらの条約の審議過程を議事録を通じて検討したことがございますが、審議の過程には幾つかの大胆なアプローチが示されたにもかかわらず、結局成立した条約が全体としては着陸国など、現在犯人がその領域内にいる国が必ず処罰したり、政治犯であるとしても引き渡ししなければいけないといったような体制にはなっていないということなど、各国の国内法や刑事政策上の裁量余地というものが広範に残される内容となったというのは、主として以上述べたことが理由となっております。加えまして、ハーグ条約にせよ、モントリオール条約にいたしましても、各国の政治的判断にはできる限り触れないという了解のもとに成立していたのでありまして、最近におけるテロリズムやゲリラ活動の線上においてこの種の事犯が信条や主義のデモンストレーションの手段として使用されるに至りますと、果たしてそれらに対抗する有効な法的規制としては、おのずと一定の限界がある条約体制であるというふうに考えております。  しかし、だからといって、国連の場で、できるだけ多くの国がこれらの条約体制に入るための呼びかけを行う努力を否定するわけではありません。むしろ条約体制に入る国がふえ、それに伴って各国の国内法の整備が進んでいくということになれば、それはより強固な体制の一歩でありますし、またそうした過程の中から共通の国際的意識が芽生えてくるのだろうというふうにも思っております。  ハーグ条約やモントリオール条約は、その目的といたしまして、そのような行為を抑制する目的をもって犯人の処罰のための適当な措置を緊急に講ずる必要があるという考慮のもとに締結されておりまして、犯罪の抑止のための処罰体制の強化という点にこれらの条約の直接の目的があります。したがいまして、ハイジャックや、広く民間航空の安全に対する不法な行為の予防的措置、あるいは事件発生後の救済的な措置につきましてはほとんど触れておりません。これらの予防措置につきましては、ICAO、あるいは各国政府、航空企業等の手でなかなか決め手が見出されないまま種々講じられてはおりますが、国際法の観点からいたしますと、ICAOでさまざまな検討を今後も重ねると同時に、それを現在のような各国政府に対する勧告という程度にとどめずに、もう少し強い性格のものにする必要があるのではないかと思われます。  また、最近の乗っ取り事件に見られますように、いわばアラブ諸国の間にも、人道上の見地から乗っ取り機の着陸を許可したり、乗客乗組員の安全を図るための国際協力に次第に積極的に応ずるようになっている傾向ということも見逃すことはできません。結局これら予防的措置、あるいは事後救済的措置の問題には、ハイジャック関係情報の迅速な提供や、技術保有国から発展途上国に対する技術援助や施設の提供などがタイアップされる必要があるのではないかと考えられます。  次に、先ほども触れましたように、避難場所を提供する国に対する共同行動に関する条約化が失敗いたしましたのは、準備的検討が不十分であったという側面がありましたと同時に、制裁についてのアプローチや考え方が各国間に幾つも分かれたことが原因でございます。  最終的には次の三つの方法、つまり一番目に、国際民間航空条約を改正して、そのような国をICAOから除名したらいいではないかという方法。二番目に、ハーグ条約とモントリオール条約に新たな議定書を追加して、犯人の存在する締約国が、犯人を航空機の登録国に無条件に返還するような規定を設けたらよいではないかという方法。三番目に、新しい条約を作成して、専門家委員会を設立し、事実調査を行わせ、実行は伴わないけれども、国際機関が違反国に勧告すればよいという方法。以上の三つが最終的に残った方法でございますが、そのいずれも多数の賛成を得ませんでした。  その理由は、国際民間航空条約の改正は長期的な解決策であり過ぎる、また、航空機の登録国への犯人の無条件引き渡しは、現行の国際法上、政治犯罪人不引き渡しの原則、あるいは国家の有する庇護権というものに鋭く抵触するものである、それからさらに、国際機関にこの問題に関する権限を与えることには、主に社会主義諸国の間から消極的な態度が見られる、そういうような理由によるものでございます。これらの方法が互いに三つどもえの対立様相を深めましたことが失敗の最大の原因でありまして、特に発展途上国の中には、国家主権の擁護の立場から、条約への強制的加入とか、諸国による集団的な行動の自動的作用に反対するものが非常に多く、とりわけ近年これらの諸国がかち取った独立の後に期待される経済的な発展を阻害するような形での航空活動の停止、航空路の停止といったような措置には反発する声が強かったのでございます。  こうした結果から得られる教訓は、世界のすべての国は、あらゆる脅威から国際民間航空を保護するという一般的目的について合意しているけれども、それを達成する方法については共通の合意が得られなかったということでありまして、現時点では、制裁という面は余りに性急にこれを行える状況にはないということでございます。しかも、この側面を普遍的なレベルで実現しようとするところに一つの無理がございまして、たとえば二国間または地域間の航空交渉などにおいて、そのための国際協力を徐々に積み上げていくというような方法を考えることも残されているように思えますし、また、政府間の組織だけでなく、IATAやIFALPA、その他の非政府間の国際団体において、世論の拡大を図っていくという方策も考えるべきかと思われます。  最後に国連では、近年テロリズム防止のための国際条約の審議が行われておりますが、テロリズムの概念自体におきまして、民族解放運動の暴力行為を正当化しようとする立場や、そのような動機や背景を問わずに、行為そのものの違法性を追求しようとする南北間の対立がありましてなかなか進まない状況にございます。恐らくこの問題の根本的解決は早急には図り得ないかもしれません。しかし、国家が相互に交通を行って、財貨、文化のたゆみない交流を通じて、初めて世界の平和と発展があり得るという基本的な点は、いずれの国も認めるところでありますから、民間航空の安全ということこそ最大の法益として主張することは、国際法の基本的原則にも合致するものであります。テロリズムを民間航空活動というものから切り離せという主張の正当化はそこにございます。わが国は、テロの防止の審議を進める過程におきましても、この点に国際社会の舞台で声を大にする必要があると思います。  以上述べましたところから、国際法の側面からのみ見ました見解ではございますが、結局私の御報告申し上げたい点を要約しますと次の四点ぐらいになるかと思います。  第一に、ややどろなわ的につくられましたハイジャック関係の国際条約をもう一度現時点において再検討する必要がありはしないか。  第二に、この種の犯罪の予防的措置と事後の救済措置について各国間の協力を促進すべきであろう。  第三に、民間航空の安全こそ人身、財産の安全という個人的な法益と、航空運送業務の正常な活動という社会的法益を保障するものであるという信念に立ちまして、犯罪の国際性を強調する国際世論の形成を積極的に行うべきではないか。  第四に、テロリズム防止のための討議を進めるかたわら、少なくとも民間航空の安全を脅かす行為とテロリズム一般の解決というものを切り離す方策を考えるべきではないかということでございます。  問題が多角的に検討されることによって初めて効果的な対応策があり得るということは言うまでもございませんので、皆様方の十分な御検討を望みまして、私の報告を終わらせていただきます。
  15. 内田善利

    委員長内田善利君) ありがとうございました。  次に、関川参考人
  16. 関川栄一郎

    参考人関川栄一郎君) 関川でございます。  ハイジャック対策というものには絶対的な決め手であるとか特効薬といったたぐいのものはないということは、これはもう皆様御承知のとおりでございます。とにかく犯人、容疑者を飛行機に乗せないということが当面われわれがとり得る最良の策であるということは、長い間の経験を通じまして各国の航空関係者の間ではすでに常識となっております。したがいまして、荷物とか乗客の身体検査、そういったチェックを強化する。それから、あるいは機内へ持ち込む手荷物の大きさとか数を制限する。つまり、武器などが隠せない範囲のものしか許可しないようにするというふうな、一見じみちな努力がわれわれに残された唯一の道であろうかと思う次第でございます。  日本航空では、新聞等によりますと、近く保安専任の社員を主な寄港地の空港に常駐させて警備に当たるという御方針のようでございますけれども、私はこの際、政府政府職員を疑わしい空港、あるいは疑わしい国、そういうところに常駐させることが必要ではないかと思います。それは、先ほど朝田社長からの御指摘にもございましたように、ハイジャック防止という仕事は、本来的には政府のやる仕事でございまして、航空会社の努力というものはその補助的な役割りを果たすべきであると私は思っておりますので、ぜひこの際政府職員の派遣ということも御一考願いたいと思います。  政府職員の派遣ということは、新聞等で御承知のように、目下西ドイツ政府が相手国と交渉中ということでございます。これは相手国の主権の問題とも絡みますので、政府職員が直接空港でチェックその他の仕事に当たるということはいろんな問題もあろうかと思いますが、たとえば、飛行機の入り口でもう一度二回目のチェックをするというふうな方式を考えれば、これはいかなる外国であろうとも自由にできるわけでございます。もし万一そういうことさえもできないとすれば、少なくともそういう国々の在外公館に保安専任の要員を常駐させることが必要ではないかと思う次第でございます。そして、政府の要員と日航の社員とが協力をして初めて大きなハイジャック防止の効果が上がるのではないかと思う次第でございます。  次に申し上げたいことは、空港の従業員にまでチェックの範囲を広げていただきたいということでございます。今回のダッカで乗っ取られました日航機の事件でも、この日航機が飛び立ってから途中寄港したいずれかの空港において地上側で手引きをした者があるとか、空港で機内に爆弾その他の武器を積み込んだ疑いがあるとかいうふうな報道が一部に伝えられております。外国にもこういう報道があらわれたことがございます。決して好ましいことではございませんけれども、われわれは、いままでもっぱら乗客のみに集中しておりました身体検査、荷物検査というものを、こういう状況のもとでは、空港の従業員にまで広げなければならない状況になってきたのではないかと思う次第でございます。  日本赤軍の例を見ましても、たびを重ねるごとに犯行がだんだん組織的かつ計画的になっておりまして、地上側にそれに内応する者、あるいは買収する者が今後出る可能性はますます高いと思います。したがいまして、空港飛行機に近づいて作業する者並びに飛行機の中に入って作業する者、そういう者の作業の監視及びチェックというふうなものはぜひ必要ではないかと思う次第でございます。御参考までにわが国の例を申し上げますと、羽田空港、大阪空港あたりで仕事をしておる作業員の中には、所属会社の社員ではなく、その下請会社、あるいはさらにその孫請会社の従業員まで入っているという例がございますので、この際身元調査並びに作業の監視というふうなことをぜひひとつ実行に移していただきたいと思う次第でございます。  ハイジャック対策もこういうふうに大規模になってまいりますと、それなりに財源というものが必要であろうかと思います。私はこの際、ハイジャックについても受益者負担という考え方を取り入れてもいいのではないかと思う次第でございます。すでに世間には、ハイジャック防止料というふうなものを設定してはどうかという提案をしている人もございます。近年わが国の航空旅客は年間およそ三千万人を超える数字になっておりますが、仮に一人頭三百円程度のハイジャック防止料というものを徴収いたしますと、それだけでたちまちおよそ百億円近い財源ができるわけでございます。これだけの金がありますと、人員の配置にいたしましても、設備の整備にいたしましてもかなりの程度のことがやれるのではないかと思う次第でございます。  次に、ただいま日本の世論は、もっぱらハイジャック対策にばかり集中しておるように見受けられるわけでございますが、飛行機関係の犯罪では、ハイジャックよりもっと恐ろしいものがございます。それは飛行機の空中爆破でございます。わが国には幸い、いままで空中爆破の例はございません。しかしながら、外国ではかなり例がございまして、ごく近いところでは昭和四十九年九月八日、ギリシャのイオニア海の上空で、アメリカのTWA航空機の爆破事件というのがございました。それから昭和五十一年十月六日、中米のバルバドス諸島におきまして、キューバ航空機が飛行中爆破された例がございます。これらはいずれも、事故調査委員会の結論といたしまして、貨物室に仕掛けられた爆発物の爆発による墜落であるというふうに結論づけられております。  こういう空中爆破という犯罪を防ぐためには、現在行われておりますような機内持ち込みの手荷物の検査だけに限定せずに、飛行機の胴体の下に入れる、つまりカウンターで預けてしまうチェックトバゲジ、あるいはペリーカーゴーというふうな呼び方をしておりますが、たとえば大きなトランク類のようなものですが、そういったものも一斉に検査の範囲に入れなければならないのではないかと思う次第でございます。これは、わが国でも一部の路線については現在実施されておりますけれども、まだ全面的にやるところまでは至っておりません。こういったものを今後全面的にやる必要があるのではないかと思う次第でございます。  今回ソマリアで乗っ取られました事件を契機にいたしまして、ドイツのルフトハンザ航空では、胴体の下へ入れる、つまり預けるチェックトバゲジの検査を今後義務づけるということを決めたそうでございます。ルフトハンザの説明によりますと、一たんカウンターで預かった手荷物を、飛行機に積まないで、飛行機の横に並べておくわけです。お客さんが搭乗いたしますときにその手荷物を、これは自分の荷物であるというふうに一つ一つ確認をさせまして、そうしてすべてのお客さんが搭乗を終わった後なお残っておる荷物、つまり持ち主のない荷物については、これは飛行機には積まない、犯罪の疑いがあるということで飛行機には乗せない、そういう処置をとる由でございます。これはかつて私も一度経験したことがございますが、大型の飛行機になりますとこの検査だけで約一時間以上要します。大変不便なことでございますけれども、今後の空中爆破という犯罪を防ぐためにはこれもやむを得ない措置ではないかと思う次第でございます。  なお、この空中爆破につきましてもう一つ大変細かいことでございますが、早急にとらなければならない処置が一つございます。それは空港に置いてある自動生命保険の機械を直ちに撤去しなければならないということでございます。これは、あの機械を利用いたしますと、人に顔を見られないで他人名義の保険を掛けることができるという、利点もございますけれども、反面、これを利用いたしますと、飛行機に乗る旅客の名前で保険を掛けておいてその飛行機を爆破すれば、犯人は保険金を手にすることができるわけでございます。このことは、国際航空機操縦士組合が以前から提案しておることでございますけれども、どういうわけか、わが国ではいまだに実行されておりません。しかも羽田空港の例などを見ますと、ターミナルビルを入りました一番目立ちやすいところにその機械が据えつけてあるわけでございます。これは私ども考えましても大変に危険きわまりないものであると思いますので、直ちに撤去の措置をおとりいただけるようお願い申し上げたいと思います。  最後に、一言つけ加えさしていただきますと、先般ソマリアのモガジシオ空港で西ドイツの特別部隊が、乗っ取られたルフトハンザ機に突入をいたしまして、大変目覚ましい成功をおさめたわけでございます。昨年、御承知のウガンダのエンテベ空港で乗っ取られました飛行機を、これはイスラエルの特攻隊がやはり突入いたしまして、人質を完全に奪い返したという成功した例がございます。で、ドイツにはドイツの事情があり、かつ必然性もあったこととは思うわけでございますが、それを私どもがとやかく言う理由もございませんけれども、私個人の忌憚のない感想を申し上げさしていただきますと、西ドイツはどうも困った前例をつくってくれたというのが率直な感想でございます。なぜかと申しますと、ハイジャック対策の中でこういう機内に突入するとか、それから飛行機の中に公安官を乗せるとかいうふうな強行策をとるのは下策の最たるものであると思うからでございます。こういう強硬措置というものは往々にして乗員、乗客を巻き添えにすることが多うございます。  御承知のミュンヘンオリンピックのときに、西ドイツがやはり強行策をとって失敗しております。それから特に目立つ例では、昭和四十七年十二月にアジスアベバで乗っ取られましたエチオピア航空機、昭和五十一年五月にサンボアンガで乗っ取られましたフィリピン航空機、これらはいずれも当局側が強襲をいたしまして、その結果多大の犠牲を出しております。こういうふうに世間では、たとえばエンテベだとか、モガジシオだとか、勝利をおさめた場合には華々しく大きく報道されるわけでございますが、その陰で起こったこういう悲劇については余りスペースを割いて報道されておりません。したがいまして、世間ではどうも成功例ばかり評価いたしまして、その陰にある数多くの失敗ということに目を向けたがらないようでございます。しかしながら、すべて公共輸送機関というものは輸送の安全について社会の負託を受けているわけでございます。それが場合によっては巻き添えになるかもしれないというふうなことでは、社会の信託に背くわけでございます。こうなりますと、公共輸送機関の存在意義の根幹にかかわる問題になってまいります。  今回の日航機乗っ取り事件などに関連いたしまして、わが国の対応が甘いとか、弱腰であるとかいうふうな非難がたくさん寄せられております。私も、必ずしもわが国のとった措置が万全であるとは思いませんけれども、しかし、反面、いままでわが国が何回も凶悪な乗っ取り事件を経験しながらいまだに一人の犠牲者も出していないという事実は、これは私どもはもっと世界に胸を張って誇ってもいいのではないかという気がいたします。で、ハイジャック対策は今後とも続く問題ではございますが、あくまで人命最優先ということを前提にして、柔軟に対応していくという基本方針だけはひとつ絶対に曲げないということをここで確認をしていただきたいと思います。  以上でございます。
  17. 内田善利

    委員長内田善利君) ありがとうございました。  以上で参考人の方々の御意見の開陳は終了いたしました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  18. 高平公友

    ○高平公友君 先ほど来官房長官、それから参考人の方々から、ハイジャックの問題についていろいろと御意見の開陳がありました。まあ私は、ただ思いますには、このハイジャックを含めた、さきのクアラルンプール事件もそうでありますけれども、この凶悪テロリストというのは、常に人命を盾にしてくるわけであります。したがって、これはもう石井団長さん、政府でもいろいろ救出対策を講ぜられましても、結局人の犠牲は絶対に出さない。いま朝田参考人からも強い御要請がありましたが、また総理の言われる人命は地球より重い、こういう方向の中からすれば、今日まで日本政府では何ら、対策本部はできたけれども必ずしもその実を上げていなかったという先ほどの官房長官のお話もありました。そういうことであるとするならば、結局はこのテロリストの要求というものに無条件にこれは屈せざるを得ない。まあそのとおりにしなければならないということになるわけだと思います。  ただ、国家がやっぱりこうしてりっぱに存立していくためには、国の法の厳正というものがあるわけであります。しかし、この間におきまして超実定法的措置、こういう措置によって今度は犯人側要求した六人の刑事犯罪人と六百万ドルの要求は全面的に入れた。しかし、国民にしますと、何となく全く後味の悪い苦々しさというものは隠すことができないと思うんです。この間の一体兼ね合いをどうしていくんだ。恐らくだんだんエスカレートしていくだろうと思いますし、豊富な資金と戦力を彼らは加えて、この次は何を要求してくるだろうか。また同じことをやらねばならぬのでないかというような、そういう危惧がきわめて多いわけであります。  そこで私は、まあ限られた時間でありまして、いまほどの参考人のお話なども承っておりまして、朝田参考人にひとつお伺いを申し上げたいと思います。あなたは今度のハイジャック、そして彼らが大きな強力な体制を持ったという中で、政府も万全の措置をすると言っておりますが、再度日航ハイジャックされるというような危機をお感じになるかどうか、こういうことをひとつお聞かせいただきたいわけであります。  なお私は、限られた時間が十分でありますので、ひとつずつの御答弁を求めませんで、もう一つ重ねて、答えは一度にお答えいただければいいわけですけれども、第二点としまして、今度のハイジャック事件のテロリストのあのピストルだとか爆弾を積み込んだ経路というものは、どういうようなボデーチェックを受け、どういうような形の中で彼らはそれをうまく機内に持ち込んだか。やっぱりこの入手経路というのは、私はある程度しっかり調べておかぬと今後の対策にならぬのじゃないかと思いますので、入手経路について日航でこれを十分掌握になっておいでになるかどうか。できましたらそれらの状況についてお話をいただきたいと思います。  それから、いま関川参考人からのお話もありましたけれども、当然これは政府でもお考えになると思いますが、しかし、やっぱり日航という乗客を運送する一つの企業の使命として、私はやっぱりチェック体制というのは大いに強化せねばならぬのじゃないか。で、タラップへ上がるその直前に、何か車で簡単な機械——簡単な機械といいますか、車で持っていけるような、持ち運びのできるチェック体制の機械というものをそこへ持っていって二重にチェックすることは、この際は大変必要ではなかろうか。なぜかなれば、いまほどの皆様方のお話の中で、必ずしも世界各国がそのボデーチェックを一律に一つの基本の中で実施していない向きもありますので、そういう体制を日航自身が乗客を運ぶという形の中で、当然のことながら、これは政府からのいろいろな手助けも必要であると思いますけれども、会社においてこういう体制をおとりになるお考えがあるかどうか、こういうこともひとつお聞きしたいと思います。  それから、この後はひとつ塚本さんにお聞きしたいわけでありますが、新聞あたりで見ますと、操縦室に何か施錠をして、そしてその辺をしっかり遮断してやった方がいいと言われておりますが、私はそんなことなんか全然もう通用しないんじゃないか。スチュワーデスにピストルでも突きつけて、お前は通路をぜひ開きなさいと言われた場合は、それは無条件でドアを開かねばならぬのが当然だと思います。そういうような安易な物の考え方は、それも方法かもしれませんが、およそいまの差し迫った状況の中では議論の余地がないんでないか。こんなことも思いますが、ひとつ操縦者の立場からこのことに対してもお答えをいただきたいと思います。  簡単でありますけれども、以上の点につきまして、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  19. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) ただいま御質問をいただきました最初の問題点でございますが、再度危険を感じておるかという点につきましては、私どもはそのいついかなるときに措置を、体制を整えておりましても起こるわけでございますので、絶えずそういう危険は感じております、率直に申し上げまして。  第二点は、入手経路でございますが、結論を先に申し上げますと入手経路はわかっておりません。ただ、ボンベイから乗りました犯人というものが、偽造のパスポートと偽名でもって搭乗しておるということは、後で乗客名簿で身元を確認をいたしまして、残りました五人というものが犯人であったということが後刻になって判明いたしておりまして、その後それを追跡調査をいたしました報告が来ておりますが、ボンベイで別々のグループで乗り込んでおりまして、その当時職員も立ち会っておりましたが特に記憶に残るのはなかったと。ただ二人だけはその顔を覚えておるというような状況でございまして、ボンベイのこういう監視あるいはチェックの体制は、御承知のようにボンベイの警察当局が一〇〇%行っておりまして、それに付加するチェックというものはすべての航空会社が行っておりません。  そのときの記録を調査をいたしてみますと何ら不審の者はなかったと。そして、特記すべき事項もないということが記録されておるわけでございます。そういうようなことでございまして、空港警察当局に言わせますと、あれだけのものを持ち運んで、そのまま通れるわけのものではない。したがって、別のところからの経路、入手というものを予想した発言をいたしておりますけれども、この点についてはまだ私どもの方は的確にどこの空港で、ヨーロッパ方面の上流の空港で持ち込まれたかどうか、あるいは先ほど来お話がございますような機内の掃除をする人、あるいは機内食を運ぶ人、あるいはメンテナンスのメカニック、整備のそういう作業員、そういうような者の監視体制を——わかりませんけれども、可能性は十分考えられますので、今後一層その監視体制を強化していきたいと、こういうことでございます。  第三点のダブルチェックの問題でございますが、今度の政府対策にもございますように、エックス線の検査、あるいは金属探知器を通りましても、もう一度規則で飛行機のそばで、あるいはこれは空港によりましてレイアウトが違っておりますので、非常に近いところで飛行機が着いておるというようなところの監視は比較的容易でございますけれども、相当離れたところにおりますと、やはり飛行機のシップサイドで再びダブルチェックをやるということの方針を決めまして、またそれを実際に行わせまする人たちの監視を私どもの直接雇用する社員によってそれをチェックしていくというようなことで考えております。したがいまして、特定の十七空港に対してセキュリティオフィサリー——保安専門職員を配置する、あるいは実際のダブルチェックはその国の警備会社等と契約をして、さらに二重チェックをやるというような体制を整えつつあるのでございます。  以上でございます。
  20. 塚本雄之助

    参考人塚本雄之助君) 操縦席の立ち入りについてでございますが、主目的は、自由に何ら妨害されることなく操縦席にはいれないというちの意思表示のために占領をするということと、不法行為が発生した場合に事前に予知、あるいは予告が機内客席よりでき得る可能性と、時間差を置いて私どもがそれに対応できる姿勢をとってからはいれるというようなことが主目的でございまして、先ほど先生のおっしゃったとおり、基本的に防止対策にはならないと思います。
  21. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 朝田参考人にお聞きしたいと思います。  どうも、いままでお聞きしたところでは、結局犯人に乗っ取られてしまった後ではうまい方策はないような気がする。そこで、犯人を乗り込ませない、あるいは武器を持って乗れないようにするという方法を考える以外にないような気がするわけです。その場合に、持ち込み荷物のチェックといったようなこと、あるいは身体検査ということはありますけれども、それが日本ばかり、あるいはドイツやフランスばかり厳重にやってみたところで、途中の国々でルーズに行われればこれは何にもならぬわけです。  したがって、思い切って機内持ち込み荷物を、たとえばチェックをするだけで抜かりがあるということを考えたならば、これはいつそのこと禁止してしまう。あるいはコートであるとか、上着などもまとめて荷物と一緒に別送する。お客は、悪いけれども上着なしで乗ってもらう。そのくらいの徹底したことをやらないと、これは万全を期することはできないんじゃないかという気がするんです。しかし、航空会社の航空政策上、これはいろいろ競争もあるでしょうが、そこまで思い切ることができるのかどうか、そういうことが可能なのかどうか、その点をお伺いしたい。
  22. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) まことに御指摘のとおりでございまして、今度政府でお決めになりました対策も、あるいは私どもの方で追加してとっております対策も、持ち込み手荷物を極力制限をする。そして、この点についていま周知徹底を各空港で図っておりますが、一個にしてもらいたい。その一個というのは、先ほどから申し上げております国際航空運送協会——世界じゅうの航空会社で組織いたしておりますいわゆるIATAと言っております国際航空運送協会で決議をいたしております品目がございます。  それはきわめて制限をされた品目でございまして、たとえば婦人用のハンドバック、婦人用の化粧箱、あるいは乳幼児が食べる物、あるいは身障者のつえだとか、そういうようなことに十七項目ほど列記いたしておりまして、それ以外の物は持ち込めないということになっておるのがたてまえでございますけれども、自来、それが各航空会社において厳格に守られていないというわけでございますから、この際私は、各航空会社がその決議を遵守、励行するということで、いま言われました外套などのような物はトランクに入れてチェックトバゲジ、受託手荷物として私どもが引き受ける。そういうことで、客室へ持ち込まないで飛行機の腹の中へ積み込む、こういう措置をとるということを決定をいたしておるようなわけでございます。
  23. 青木薪次

    ○青木薪次君 今回のハイジャクの関係で二通りあることを——国内、国際的な世論の中で賛否両論が渦巻いていると思うんでありす。一つは、今回日本政府のとった対策、それからもう一つはヨーロッパ、特にルフトハンザ機に対するハイジャックの西ドイツ政府のとった対策ということでありまして、これらの関係について一番、いまも話が出たわけでありますが、ハイジャックカーを乗り込ませないというためにチェックの方法でいろいろ言われているわけでありますが、すべてがチェックを厳重にせよということに尽きているわけであります。私はそのこともあると思うのでありますけれども、どうも今回は、ボンベイの空港のいわゆる設備のあり方に問題があるんじゃないかというように言われているわけでありますけれども、その点、朝田社長どうお考えになりますか。
  24. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) いま御指摘の点は、確かにあるとは私も存じております。  と申しますことは、金属探知器とか、あるいはエックス線の検査装置というものは、ボンベイの空港にはございません。したがいまして、ボデーチェックを警察当局がやっておるのであります。非常に原始的であるかもしれないけれども、実際はボデーチェックの方が効果が上がることもあるんだと。金属探知器の感度が鋭敏に出過ぎますと全部ボデーチェックをやらなきゃなりませんが、そういう感度というようなものにも問題があるので、警察当局に言わせると、ボデーチェックで十分そういうものが発見できるんだと、こういうことを言っておりますが、物的施設の面においてはそういうものはなかったということでございます。
  25. 青木薪次

    ○青木薪次君 塚本参考人にお伺いしたいと思いますけれども、いわゆるキャビンと、それから客室との関係を完全に遮断するという場合には、時間的にある程度のパイロットとしての処理はできると思うんですありますけれども、客席に乗っているスチュワーデスその他の皆さんと、いずれ操縦士との関係は、これはやはり脅迫によってとらざるを得ないという——結果的にはそうなると思うんであります。その点についてどうお考えになっておられますか。
  26. 塚本雄之助

    参考人塚本雄之助君) 先ほど申し上げたとおり、予告されて機内、客室内で不法行為があった場合に、不法行為者が機長操縦席に入りたいと言っておりますというような連絡を事前に受けることによって、私どもは地上にいろいろな交信を開始するとか、そういう時間差を得るということと、それから先ほど申し上げたとおり、自由にははいれないんだと、ある種の者がかぎを持ってそれで入っていく、あるいは操縦席から、中から外の信号によってあけるという複雑な装置であるかのように見せるのが目的だと思います。  ですから、機内でそういう不法行為が発生した場合には、いずれはあけなくちゃいけない、そして私どもが不法行為者と直接交渉し、旅客の安全を何らかの方法で確保しなくちゃいけないということでございます。
  27. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 栗林参考人にお伺いします。  この日本経済新聞の十月五日付ですか、「絶やせハイジャック」と、こういう連載記事があるんですが、その後の方を見ますと、二つ私はお伺いしたいんですが、いまボンベイのチェックの設備が云々ということがありました。私は国際線に就航する各会社は、相応の分担金を出してこのチェック体制、チェック設備、権限、そういうものについてやっぱり国際統一の基準をつくって、国が貧しいからチェック設備がないとか、そういうでこぼこをやはりきちっと国際条約で相当の分担金を出し合って、そして会社が不十分であれば、国が補助金を出し合って国際的な統一した、強力なチェック体制を早急につくると、そういうことがボンベイの二つ舞を踏まないための私は早急な措置じゃないかと、こう思うんですが、これを朝田社長さんと、それから栗林参考人の方に、そういうことがやはり緊急に可能ではなかろうかと、こう思うんですが、いかがでしょうかという点。  それからこの新聞が提案しているのは、いろいろこのハイジャック問題があったけれども、ハイジャック出てしまうとその国の責任とか、航空会社の責任になってしまう。ですから、ハイジャック防止のため、あるいはこれを取り締まるためには、この三条約の承認国も未承認国も含めて、強力なやっぱり世界ハイジャック防止組織をつくって、ハイジャックが出ればその組織が全権限を持って機能すると。その機能に従わないものについてはいわゆる国際空港に就航を拒否すると。そのぐらいのやっぱり強力なものがなければ最終的に手が打てないではないかという点を提起をしているんです。したがって、先ほどの共同制裁の失敗の問題との絡み合いを含めてこういうことが可能なんだろうかと、ここをお聞きしたいと思います。  それから塚本参考人にお伺いしますが、先ほどちょっと私の聞き違いかどうかしりませんが、ハイジャックが発生した場合は、あるいは滑走路に消防車を置いて阻止するとか、そういうことはやめてほしいと。ハイジャックが出たならば一切の判断権、あるいは決断権というのは機長に与えてもらいたい、そういうことの要請があったと思うんですが、これはやっぱり現在の航空法の改正なり、国際的な条約もあると思いますが、そういう権限の強化といいますか、そういうことを求めておるかどうか、再度見解を聞かしてもらいたいと、こう思うんです。  以上です。
  28. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) ただいま御指摘の点は私もそのとおりだと思いますが、各空港によって監視体制あるいは保安体制にばらつきがあるということで、そういう施設も人員もひとつ航空会社が負担をするからと、こういうことで、いわゆるスタンダード化する共通の方式というものはぜひ私ども必要だと存じます。そこで私は、先ほど冒頭に御報告をいたしましたようなIATAの理事会でまさにそのことを提案をいたしたようなわけでございます。そういうことをIATAがアピールをいたしましても、そこにやっぱり主権の厚い壁があるということでなかなか実現をいたしません。これはやはりいま言われましたような国際協力の場でそれを世論として喚起をして、そしてその国に対応する体制を整えていただくと、こういうことであろうかと私は思います。
  29. 塚本雄之助

    参考人塚本雄之助君) 先ほどの補足をさせていただきますと、ハイジャック等が発生した場合に、近来、物理的に滑走路を閉鎖する、あるいは航行援助施設の電破の発信を中止して、なるべくこのような飛行機に関与したくないという国が多くなっておりますが、私ども、不法に占拠された飛行機の責任者として乗客乗務員の安全を最大に考えますと、もちろん燃料があればほかのところには参れますけれども、万一の場合にはどうしてもおりなくちゃいけないということを考えますと、こういう物理的な、まあ一国の主権の問題あるいは外交上の問題で、緊急に必要な離陸着陸等の処置に妨害されるということは、私どもの責任に対しての挑戦であるというふうに考えざるを得ない。  それから現在の国内法においても、自国の事件が他国に及ばないように当該機を離陸させない方法を考えられることが多々ある。まあ過去にも多少あったかにお聞きいたしますけれども、飛行機離陸等について地上に車を置くとか、あるいはタイヤの空気を抜くとか、そういうようなことは大変危険でございます。機長なりがそういうことを要請してされるのであれば、私どもはよく熟知しておりますから何らかの安全な方法があってこそ要求するものでありますが、知らない間にそういうことをされた場合には、最高の惨事が発生するということを考えると、この種の権限の競合等については、今委員会あるいは将来設置される対策委員会において明確に検討されていただきたいということでございます。
  30. 栗林忠男

    参考人栗林忠男君) 私に尋ねられた御質問は二つあると思いますけれども、第一の分担金に応じて設備、人員等を派遣するということも考えるべきじゃないかと。実際に航空活動は他の交通活動に比べまして何よりもまず基準、規則というものの統一性を要求する分野でございます。したがいまして、ICAOを中心とします規制体制というのはまさに各国のばらばらの規則、基準、設備といったものを統一しようという方向に進んでおりまして、私自身は現在そういう面では非常にICAOを高く評価しているわけであります。しかし、人員とか要員といったものの派遣が容易に国家の国家的な威信というものと結びついてそれに抵触すると考えられやすいというようなことも考えあわせますと、何らかの発展途上国に対する技術援助、あるいは専門家の助言というような形でのさまざまな形の協力はあり得るかと思いますが、やはり相手国の領域内に立ち入ってあれこれと指示するということはなかなかむずかしいだろうと思います。  その点は第二の御質問の、強力な権限を持つ機関というものをつくるべきであるという御指摘と関連するわけでございますが、これまでの条約の審議過程をながめますと、国際条約の適用範囲を広くすることによって国内法の裁量幅のある内容を狭めるという効果があるはずでありますが、条約の適用範囲を見ますと、飛行中の出来事に国際法が関与し得るというだけでございまして、その飛行中というのが非常に狭い範囲でとらえられております。そういうところを見ますと、やはり各国の領域主権というのは国際法の直接的な適用性というものを認めずに、自分の国の法律内で処理するんだという意思が非常にかたいように思われます。で、かつて国際刑事裁判所のような、特にハイジャックに関する特定の国際機関をつくったらどうかという意見もございましたけれども、これはまだ時期尚早だということで反対されております。あるいは先進国の間ではそのようなことも可能かと思われますけれども、これをグローバルな形で設立するということは今日なかなかむずかしいだろうというふうに思います。
  31. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 初めに朝田参考人と塚本参考人に伺います。  ハイジャックが起こるたびにいろいろ対策が立てられるわけです。しかし、その後になるといろいろ新聞論評等を見ましても、いりも対策が手抜かりであったという手厳しい批判を受けているわけです。私たちもこれはハイジャックの問題が日航だけに責任があると決して申しません。しかし、前回のハイジャックから今回のハイジャックまでの間に、日本航空として対策を具体的に講じてきたものはどういうものがあったんですか。
  32. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) 前回のハイジャックは、先ほど少し私が触れた点がございますが、ドバイあるいはベンガジを通じて……
  33. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 簡単で結構ですから。
  34. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) から後にとりました対策は、直ちに社内関係で指令指示を行いましたことは、全ヨーロッパ線に対して、特に南回りのヨーロッパ線に対しまして、先ほど申し上げました厳戒体制のフェーズCを発動するということで実施方法を明示した指令を行っております。そしてまた運輸大臣の指示がございましたものに対して、全社を挙げて防止体制の徹底を図るべく通達をいたしておりますが、いまやはり問題になっております手荷物検査、そしてボデーチェックの完全実施と、当社の寄港いたしております四十二空港全部にわたりまして、またその全便に対しまして機内持ち込み手荷物検査、あるいはボデーチェックを実施しておりますが、国内、国際線あるいは路線、便数の便のいかんにかかわらず、恒常的にこれを継続して実施するということの体制を整えたわけでございます。  旅客と手荷物を分離いたしまして、旅客は金属探知器を使用し、あるいは直接手でタッチするということが許されておる可能な国においてこれを実施いたしております。外国におきまして、治安当局が直接検査を行って航空会社が独自に行うことを認めない国がありますが、そういうまちまちでありますけれども、空港当局あるいは治安当局とも密接に連携を保って検査に間隙が生じないように、そして、そういうことの交渉に当たってこれの対策が実現されたところもございます。  それから運送約款の改正を行っております。それは先ほど申し上げましたように、私どもが国内でも警察が前面に出てきていただいて欧州、東南アジア、中近東のごとく警察においてそれを一〇〇%責任のもとにやってもらいたいということをお願いをいたしましたが、これはなかなかむずかしいものでありますから、運送約款の範囲内で、そういうことをやらしていただくということで運送約款を改正をいたしました。  以上、概略申し上げたわけでございます。
  35. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 塚本参考人ですね、操縦士協会としまして、このハイジャックに対して前回の事故以来いろいろな提案がなされたと思うのです。これは具体的に今回の対策なんかにも盛り込まれているのかどうか、こういう点についての御意見をお伺いします。
  36. 塚本雄之助

    参考人塚本雄之助君) 委員長を通じて、御質問の要旨について、具体的に今回のということはどういうことでございましょうか。
  37. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 今回の政府対策ですね、そういう中に。
  38. 塚本雄之助

    参考人塚本雄之助君) 今回このような機会を与えられましたことは、私どもといたしまして初めてのことでございまして、従来は運輸省航空局を通じて私どもの希望を申し述べるという機会がごく近年、四年ほど前から確立されまして、航空局の専門の方と、先ほど関川先生のおっしゃったように、自動販売機の空港における撤去等、あるいは先ほど申し上げたICAO勧告に従う航空保安委員会設置、それからそれに、パイロットを含めた航空関係者の参加、あるいは常設の委員会においてそういうものをぜひ討議していただくということ、あるいは先ほどありましたように、機長の権限と警察の権限との競合する場合についての明確な解釈とか、機内への危険物の持ち込み等についての制限を国内的に整備していただくとか、危険品輸送、爆発物等、放射性物質を含めていろんな貨物がございますけれども、そういうものについて日本の国内法の整備をして、危険な貨物はなるべく積まないようにするとか、そういうことについては申し上げてございますが、特に本件に関して具体的なものはございません。
  39. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 もう一点塚本参考人に伺っておきたいんですけれども、この保安官の制度の問題が一部論議されております。先ほど関川参考人からも、この保安官の問題に対して余り芳しくない意見を私聞いたように伺うんですけれども、塚本参考人としては、保安官制度の問題について、これは操縦士協会として反対をしておるそうですけれども、具体的にどういう点で——私も保安官制度はつくる必要はないと、こういう見解に立っております。しかし操縦士協会、技術的に見ましても、どういう点で具体的にこの保安官を配置しない方がいいと、こういうふうな考え方を持っているのかどうか、その点について伺いたいと思います。
  40. 塚本雄之助

    参考人塚本雄之助君) IFALPA各国の実情並びに国内法の相違がきわめて多いことから、航空保安官の塔乗の是非については最終的に各国の協会にゆだねてまいりました。保安問題の最善の対処は未然防止措置の徹底であり、そのために機内への武器の携行禁止を含み無菌航空機——いわゆる不法行為に使われる物が塔載されない航空機ということでございますけれども、の考え方が必要であり、特殊事情がこれら諸点に優先しない限り、各協会としては航空保安官の塔乗に反対しております。航空保安官の塔乗の是非の決定に際して、その塔乗が何ら挑発的行為をとることがない場合があっても、ハイジャッカーの暴力的行為を誘発するものであり、またハイジャッカーに抑圧された場合にその武器がさらに利用されるということを考えますと、賛成というわけにはまいりません。  さらに、保安官が塔乗する場合に、その使用する銃弾等が操縦室内へ貫通すること、あるいは操縦室内の重要な電子機器に影響を及ぼすことを考えますと、防弾措置を十分に講じた飛行機に改造するなり、あるいは携行される武器の貫通限度というものを未然に計画的に考えて、航空機に合ったものにしなくちゃいけないということを考えますと大変むずかしいんじゃないかということでございますし、米国においても当初スカイマーシャルというものが発効いたしましたけれども、現在その制度がスカイマーシャルプランと変わりまして、航空会社の要請によれば塔乗するけれども、基本的には保安関係のプログラム、あるいはそういう施策の立案等に専任しておられるということだと聞き及んでおります。  以上でございます。
  41. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 余り時間がないんですけれども、栗林参考人に一点だけ伺っておきたいんですけれども、先ほどの御意見の中で国際条約の再検討をすべきであると、こういう御意見を述べていらっしゃいましたけれども、具体的にもう少し内容を詰めて、この三条約から何を補足し、あるいはどういう点で条約を再検討したらいいかと、もう少し具体的に御意見を伺いたいと思います。
  42. 栗林忠男

    参考人栗林忠男君) お答え申し上げます。  先ほど私の報告では二十分という限られた時間でございましたので、ごく一般的にお話し申し上げました。再検討の対象になりますのは、結局は現在の条約体制の不備ということでございまして、私はこれらの条約は一定の限界を持った構造を持っているというふうに申し上げたわけでございますが、たとえば私、すべてここで網羅的に申し上げることできませんが、気のつくまま申し上げますと、着陸国が犯人や容疑者に対して司法的な手続をとる際には、状況に応じてとればよいということになっているわけでございます。  現在のハーグ条約の内容によりますと、犯人や容疑者がおりても、権限ある当局に訴追のために引き渡されるまでは条約上の義務づけがなされておりますけれども、その先、その国がその犯人、容疑者を起訴するかどうかはその国の自由裁量に任されているわけでございます。しかも、それは状況に応じてとればよいということでございまして、非常にそこら辺がルーズになっているわけでございます。ここら辺をもう少し徹底していくということが、このハーグ条約ができました時点と今日の時点では少し国際意識が違うのではないかということで再検討を申し上げているわけでございます。  それからもう一つ、先ほど来のお話にありますように、武器の持ち込み禁止についてでございますが、条約の審議過程におきましてもそのことは議論されました。そして条約の中に、武器持ち込み自体を禁止すればよいと、禁止するという条項を設けるべきだという意見も、ある国の提案でございました。ところが、持ち込まれる武器は犯罪に使われるかもしれないし、使われないかもしれないというような非常にあいまいな基準でもってこの解釈、武器持ち込み禁止条項を入れないという方向になってしまいました。しかし私自身は、きわめて常識的であると言われるかもしれませんが、武器を持ち込んだ場合と、武器となるべき物を持ち込んだ場合と持ち込まない場合とでは、非常に大きな相違があろうというふうに感じているわけでございます。  ちょっとまだほかに思いつきませんですが、そういった不備というものをこの際もう一度再検討してみる必要がありはしないかということでございます。
  43. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 朝田参考人にもう一点だけ伺っておきたいんですが、政府対策の手ぬるさを恐らく日航社長という立場で私はいろいろ感じているところがあると思うんです。ここではなかなか言いづらい点もあろうかと思いますけれども、やはりこういう再発防止のために言うべきことをはっきり言ってもらいたいと私は思うんですね。そういう点で、日本航空としてもう少し、政府が前回の事故後対策本部をつくったけれども手ぬるかったと、あるいはもう少しこういう要請は聞いてもらった方がよかったと、こういうふうな問題点が何点かありましたらお聞かせ願いたいと思うんです。
  44. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) 先ほどお答えいたしましたように、前回の対策として私どももこれで十分だとは思わなかった点もございますけれども、まあまあ国際的なレベルからいって、相当突っ込んだ対策を決定をしていただいたわけでございます。今回の事件とあわせて考えてみますと、私はやはり一つ一つ非常に細かい問題でございますけれども、たとえば先ほど申し上げました機内に持ち込む手荷物を一個にする、身の回り品だけである、こういうことで実行するわけでございますが、そこに一つのやっぱり細かい問題でありますけれども、免税品の問題が起こってくる。外国へ御旅行になりまして、大変日本人旅客が多いわけでございますが、ウイスキーだとか、あるいはたばこだとか、香水とか、いろいろなみやげの免税品、こういうものを一個だということで限定をするならばそういうものも制限をすべきだ。  私はかねがね、これは関税法のたてまえでできないとおっしゃっておられるわけでありますが、そういうものは全部まとめてお預かりをして、客室の中に持ち込まない。それじゃ、先ほどから申し上げました飛行機の腹の中へ、貨物室に積み込むということになりますと大変な労力、あるいは割れやすいものでございますから、どういうものに詰めて梱包をしてやるか、あるいはそういうことのためにチェックを受けて、またそれをもう一遍積み込むということになりますと大変所要時間もかかりますし、最後は羽田における発着制限時間に引っかかるというようなこともいろいろございまして、私どもが提案をいたしておりますのは、これはひとつ免税品の酒類、たばこというようなものを羽田で受け取るということで、別の貨物機でそういうものを輸送しておきまして——皆御乗客の方々は座席の自分の身の回りに置かれるわけでありますが、これは他の保安、安全性の確保からいっても余り好ましいことではございませんので、羽田に着いて注文をしたものは羽田で受け取れるというような体制にしてもらいたいということをお願いをして、今回もそういうことを申し上げておるわけでございますが、関税法のたてまえでその人が携行をしなければならない、そしてみずから消費しなければならない、使うものでなければならぬというたてまえだそうでございまして、こういうことのハイジャック防止対策を真剣に考えるといういまの段階では、そういうこともひとつ改正を願ったらありがたいと、こういうふうに私は考えております。  また先ほども、警察が前面に出てきていただいて、各国政府がみずからの責任においてやっていただいておることは、やはり日本がこれだけの気構えで防止体制を強化されるというならば、私はそれもあわせてお願いをしたいと、こういうようなことでございます。
  45. 田代富士男

    田代富士男君 時間も余りありませんからまとめてお尋ねをしたいと思います。  最初に、朝田参考人にお尋ねしたいと思いますが、いま国会におきましてもハイジャック防止法案、六項目を中心に検討いたしまして、日航といたしましては、それ以外に八項目の緊急強化の実施をなさっていらっしゃることを聞いております。これはもちろん安全検査等の徹底が第一であると思いますが、いま委員が御質問になりましたボンベイの空港の搭乗の際のことが不明であると、こういうことでございました。それに対して関川参考人の方から、空港内における作業員、そういう作業員が下請あるいは孫請によって行われている。これを乗客者をチェックしても、そういう作業員をチェックしなければ何のためのチェックであるかわからないと、こういうことでございました。ボンベイにおける——それもどこから持ち込まれたのかわからない。せめて日航において現在下請あるいは孫請と、こういうような制度をいろいろな立場からとっていらっしゃるかと思いますけれども、これはやはり事件が起きていろいろ言うよりも、まずこういうところから、日航の社員としてこれは明確に身分を保証して、絶対間違いないという姿勢を日航みずから示すべきではないかと思うわけなんです。これに対するお考えをお尋ねしたい。  それから、塚本参考人がいろいろな立場から遠慮ぎみにお話ししていらっしゃったかと思いますが、このハイジャックを何とか防止したい、そのためにはパイロットの意見を聞いてほしいという、こういう御意見だと思いますが、民間航空保安委員会にパイロットの代表を加えてもらいたいという御意見でございます。私は、いままで詳しいことは存じませんでしたけれども、これは当然のことではないかと思うんです。そういう意味から、朝田社長はIATAの理事でありますし、そういう理事会におきましても、ただいまの塚本参考人のこういう意見は、私はぜひとも反映さしていただきたいことをお願いします。これに対するお考えも聞きたいと思います。  それから、関川参考人にお尋ねしたいと思いますが、端的に、関川さんは航空関係には有名なお方でございまして、航空関係の事故が起きた場合にはいうもそういうお立場にお立ちになる立場から御心配されていると思いますが決め手がないと、これはどうすることもできないんだという、しかし、何とかしなくちゃならないということで保安官の常駐、政府要員の常駐ということをいま申されました。しかし、これとても万全な対策はできないと思うんです。やはりこれは日本航空だけではだめです。国際的に、全世界が防止しようという、その一貫したものでなければならないと思いますが、「よど号」のハイジャック事件が起きまして、それからハイジャック防止のいろいろな協議がされました。そうして、特にクアラルンプール事件が起きました直後、アメリカのアンダーソン報道官が、こういう事故は二度と起こしてはならない、国際法上の協定をつくろうということを三木内閣にも働きかけているわけなんです。そのときにも、その協定をつくりましょうと、そのままになってきている。こういうような働きかけがあっても、それに対応することができなかったという政府自身の大きな問題点、ここが事故の起きる原因の大きな一つになっておりますす。  IATAの理事会においても朝田社長が、四項目の項目の中に、政府の責任であると、こういう強い意思も言われておりますが、こういう問題を解決しなくてはならないと思うのです。しかし、一度に解決できませんから、せめていま空港においてチェックされている——われわれもボデーチェックされますけれども、これとても国内法の法的裏づけがあってやられている問題ではない。せめてこれを解決するならば、国内法に基づく、日本の国内におけるこういうボデーチェック等のチェック機関を国内法で制定すべきであると、私はこのように思います。特にイスラエルのELAL航空という航空会社は特に厳しくやっておりました。ナイフを持っていただけでその人が乗ったときにボデーガードのそばに乗せられたという、こういう経過もあります。こういうところに私は強く思いますと同時に、政府自身がそういうような怠慢といいますか、こういう状況であります。  そういう立場から栗林参考人は、そういうような対策と同時に、国民あるいは世界のすべての人の世論を起こしていかなくちゃならないということを最後の四項目の中の一つで申されました。そこで私は、航空の日とかいろいろな日がありますけれども、これは忘れてはなりませんから、一年に一回か二回はハイジャック防止の日、そういうような防止週間というようなものを、国でとれなければ日航なり航空会社でそういうものをやりまして、すべての国民の中にそういう世論を巻き起こしていくべきだと、栗林参考人に参考として聞かせていただきたいと思いますが、よろしくお願いいたします。  以上でございます。
  46. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) ボンベイの、乗り込むときのボデーチェックをやっても、あるいはその他の空港においても同じことでございますが、そういうことだけではいけないんだと。作業員、あるいは先ほど私も触れましたが、機内食を運び込む者、あるいは機内を清掃する人たち、あるいはその整備に当たる作業員、あるいは給油作業に従事する者、あるいはそれ以外にも空港の職員もあるいは対象になるかもしれませんが、そういう者に対する監視体制を強化するということで、まさに私はごもっともな御指摘だと存じますので、十七空港に先ほど申し上げました保安専門職員を置きまして、そしてまた、それに対してどういう人選をするかということになりますと、その国情に通じた、あるいはその情報が入ってまいりましてもそれを分析する力のある人、そういった者を、あるいは警察関係の退官された方、あるいは軍のそういうことに非常な経験のある方というようなことも含めまして、いま人選を急いでおるようなわけでございます。御指摘のとおりの体制を十分強化してまいりたいと存じます。  同時に、ただいまの御指摘の第二点の、塚本参考人のお触れになりました点については、私も今後はIATAの理事会等の活動を通じて十分留意をして努力をいたしたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  47. 塚本雄之助

    参考人塚本雄之助君) 先ほど申し上げましみ国際民間航空機構——ICAOにおいては、IATA——国際航空輸送協会とIFALPA、私どもの所属しております国際定期航空操縦士協会連合会は、公認の団体としてすべての技術基準を作成する常設あるいは臨時の特別会議に参加いたしまして意見を述べさしてもらっておりますので、IATAとIFALPAについては全く協力関係が成立しております、参考までに。ただ、残念なことは、日本の国内においてはまだ正式に、余り耳なれない団体でございますので、なかなか意見を発言する場所は少なかったんですが、過去四年前に、日本で私どもの年次総会を開催して以来、運輸省航空局とは綿密な連携を保っておりますので、先ほど御指摘いただいたようなパイロットの各種分野への参加ということは年々成長しておることと思いますのでお礼を申し上げます。
  48. 栗林忠男

    参考人栗林忠男君) お答え申し上げます。  私に尋ねられた御質問は、国際世論の必要性ということでございますが、そういったハイジャック事件に対する意識という問題とかかわり合いがあるかと思います。実は、これはハイジャック事件にしばしば見舞われる国と見舞われない国とでは、この事件に対する意識の相違がございまして、たとえば東京条約の第十一条がハイジャック規定でございますけれども、これを主張しましたのはアメリカとベネズエラだけでございました。次第に賛意を得ていったわけでありますけれども、一番被害に遭っておりましたこの両国が強硬に主張しましてこの条項が入れられたといういきさつがございます。日本は東京条約会議を開いておりながらなかなかこの条約を批准しなかったのでございます。当時の世界の多くの国は、自分の国には火の粉がかかってこないだろうという、対岸の火的な存在としてハイジャック事件をながめていたことは事実でございます。  わが国も「よど号」事件をきっかけとしてそういった意識が高まりまして、そして国内法の制定という方向に動き、かつまたハーグ条約、あるいはモントリオール条約の批准に踏み切っていったのかと思います。しかし、一般に国家は、国内法を改正してまでも領域主権と鋭く触れるような条約を受け入れたがらない傾向が一般的にはございます。しかし、私はもはやそういうことではいけない、未来において航空活動というものが破壊されることによる損失というものは非常に大きいだろうと考えますので、先ほどの御報告の中でも、国際世論というものを形成する上に日本は積極的な役割りを果たすべきだということを申し上げたわけでございます。そして、やがてこれが一つの法に対する確信につながっていくということ。そして、これがハイジャック防止の一番大きな、一番強い決め手になり得るものかというふうに考えているわけでございます。
  49. 関川栄一郎

    参考人関川栄一郎君) 私に対する御質問は、ちょっと意味がとりかねたのでございますが、どういう質問でございましたか。
  50. 田代富士男

    田代富士男君 いまお尋ぬしたのは、保安要員とか政府の職員を常駐しなさいと御意見がありましたけれどもそれだけではだめだと。やはり政府が国際的に働きかけをしなくちゃならないけれども、こういうクアラルンプール事件の終わった後にアンダーソン報道官から国際協定をつくりましょうと言われたのにもかかわらず、三木内閣はやってきてなかったから政府の怠慢もあるんだと、私はそのように思うと、そういう意味から、ボデーチェックする国内法もこれは裏づけがない、そういう面を明確にしていくべきである、それに対する御意見をお尋ねしたいと、こういうことでございますから、時間が超過しておりますから簡単で結構でございます。
  51. 関川栄一郎

    参考人関川栄一郎君) 繰り返して申しげますけれども、私はハイジャック防止ということは、やはり政府が第一義的な責任を負うべきであると思いますし、航空会社の役割りというものは補助的な役割りにすぎないというふうに位置づけてもいいんじゃないかと思います。  そこで、政府職員がたとえばチェックに当たるとかいうふうなことが果たして妥当であるかという議論もあるかと思いますけれども、またこれが実施できるかというふうな可能性の問題もいろいろむずかしい点はございますけれども、やはりこれはどうしても何らかの方法で実施されなければならないんではないかと思う次第でございます。
  52. 内藤功

    ○内藤功君 時間がありませんので朝田参考人に二点聞きたいと思います。  一つは、先ほど関川参考人も言われた点なんですが、この空港の地上作業員といいますか、給油だとか食糧を運ぶとか、機内の仕事をするとかということで飛行機に接近する人、あるいは飛行機の中に入る人、こういう人の身元をしっかりさしておかなくちゃいけない、こういうさっき御意見であったと思います。そういう意味では、たとえば日本航空の下請あるいは孫請といいますか、そういう形でこういう仕事をしている人たちとの雇用関係、労働契約関係というものは、やはり直接日本航空がお雇いになるというような形ですっきりさしておく必要がこの際あるんじゃないか。下請のまた孫請というようなことではそういう危険の温床にもなるし、それから労働契約関係はやはりすっきりこの際しておいた方がいいんじゃないかというふうに思いますが、この点についての朝田参考人のお考えをこの際承っておきたいというのが第一点であります。  もう一つは、実は私、こういうことを聞いたのですが、去年の五月に、ニューデリーの空港での例の小荷物爆発事件がありました直後に、日本航空株式会社と、それから日本航空乗員組合という労働組合との間の交渉の席上で、組合側がそのときも手荷物検査の厳重実施を要求されたのに対して、安全検査の監督の立場におられるはずの航空保安室長の職にあった方が、いや、従来どおりの検査基準で十分だ、安全対策は営業とのバランスで行う、厳重検査はやらないんだという回答をされたというのを、私ある書類で見まして非常に驚いたわけなんです。もし事実とすればこれは大変な問題だと思うのですね。もしこれが事実とすれば、こういうおたくの会社の航空保安室長のお答えですけれども、あらゆるこれまでのハイジャック事件というものを教訓として取り入れていないことになるじゃないか。先ほどから政府の責任を強調される。ぼくもそうだと思います。しかし同時に、あなたの方の会社のいままでやってきたことについても十分この際顧みる必要があるんじゃないか。営業優先ということではいけない。やはり安全第一ということでなければいかぬと思うのですね。  顧みますと四十八年八月に、外国空港での日航独自の検査の実施を決めたいわゆる対策要綱というりっぱなものができたと思うのですが、これが実行されてなかったんじゃないか、本当に。これにもやはりこういう何といいますか経済性、営業優先という考え方が余りにも出てき過ぎていたんじゃないかと私は思うわけなんです。安全対策が営業と比べて、安全よりも営業だという姿勢が、くどいようですけれどもこれはあってはならぬと思うのですよ。そういう点について、いま私の指摘したような事実、これはどうなのか。また営業と安全についての明確な姿勢を承りたい。  以上、ほかにもいろいろ聞きたいことがありますが、二点について。
  53. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) 最初の点でございますが、下請会社あるいは孫請と申しますか、そういうようなことは国内の体制と、それから外国各国の空港におきます態様と区々まちまちでございますが、外国におきましては大体その国のナショナルキャリアに委託をいたしております。したがいまして、ボンベイではエアーインディアがやっておる。どこの外国航空会社もそれに任しておる。そのかわりに自国になりますとその国の、ドイツならドイツ空港の作業会社に委託をし合う。  これは全体の国際協力の国際航空における普通の態様でございますが、国内におきます小会社あるいは孫請と申しますか、そういう点につきましては、私どもは直接雇用契約を結ぶということについて、非常に膨大な作業量と人員あるいはその他の面、いろいろな面を考慮いたしまして、最も効率の上がる作業会社というものを設立いたしまして、私どもが相当額の出資をいたしておる、コントロールのきく、いまAGSと言っておりますが、そういうものにやらせておるわけでございます。したがいまして、そこで雇用される方々の労務問題あるいはそういうことに対する身元のはっきりした人でないと、これもまた監視体制を幾ら強化をいたしましてもなかなか効果が上がりませんので、その点については十分留意をしつつ運営をいたしておるような次第でございます。  第二点の、経済性と安全性の問題につきましては、御指摘のとおり、何といいましてもこれはもう保安及び運航、整備ともに、安全性の確保ということは絶対至上命令でございますので、私どもはそれを優先というよりも、むしろ基本的なわれわれの最大の使命というふうに考えてきておるわけでございます。当時の、お話ございました航空保安室長がそういうことを申したとするならば、あれは私は聞いておりませんが、そういうことを申したとすればそれは間違いでありまして、そういうことは許せるような方針ではないということは明確にお答えをいたしておきたいと思います。  いまお触れになりましたニューデリーの手荷物が爆破をいたしました際にも、客室乗員のパーサーとスチュワーデスがそれを発見をいたしましたのは、ニューデリーでおおりになったお客様の、上に荷物を載せるところがございますが、その荷物だけ一つ残っておった。寄港地に到着いたしますと、全部それをあけて機内の監視をいたしておりますが、これはむしろサービスの上で、お忘れ物があったのでは大変お困りだろうということでそれを探しまして、探しましても持ち主がわかりませんので、それを税関の保税地域の中の蔵置所に置いたのがその後爆破したと。これは私はサービスも安全というものに徹したものと同質のものであるということでその職員を表彰いたしましたが、私はその際にも、安全マインドと同質のサービスということを考えるべきだというふうに考えておりますので、安全性と経済性、あるいは営業優先ということであってはならないというふうに考えております。
  54. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 関川参考人にお聞きいたしたいんですが、ハイジャック防止の上でダブルチェックをやるというのが、私も非常に何というんですか、手っ取り早くてすぐやれる方法だし、効果もあると思うんです。先ほどのお話の中で、飛行機の入り口でもってやったならばというお話だったんですが、飛行機の入り口ということになれば、その国の主権との関係で心配何もないのか、日本の国内法だけでそういうことがやれるのかということをお聞きしたいんです。
  55. 関川栄一郎

    参考人関川栄一郎君) お答え申し上げます。  飛行機の入り口と申しましても、大変微妙な段階がいろいろあるかと思いますけれども、タラップを越えて一歩機内に踏み込んでしまいますと、そこの国の主権はもう及びませんから、これはどんなチェックでもできると思います。ただし、御承知のように飛行機の入り口というのは構造上非常に狭くて、いす等もございますので、大規模なチェック、たとえばエックス線装置を持ち込んでやるというふうなことは物理的に不可能でございます。たかだかやれる範囲はボデーチェック、こうさわってやるチェックと、それから携帯用の金属探知器が小さなのがございますが、これを使って検査をするという程度のことしかできないんではないかと思います。  将来、航空機の構造がそういうふうに改造されれば別でございますけれども、いまのところ、たとえば入り口のところにこういうふうなアーチ型の検査器をつけるというふうなことは、操縦室の計器とかいうふうなものに影響を与えるおそれがございますので、これも物理的には不可能だと思います。ただし、将来、これからハイジャックの検査ということを前提にして飛行機がつくられるようになれば、あるいはそういうことも可能になるかもしれません。しかし、現在のところは、先ほど申し上げましたように、入り口でかなりの時間がかかるとは思いますが、ボデーチェック、それから携帯用のメタルチェックカーというふうなものを使いましてごく簡単な検査をやるというのが限度かと思います。
  56. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 栗林参考人にお聞きしたいんですが、東京条約、ハーグ条約、そしてモントリオール条約と続いてきて、今度犯人を受け入れた国に制裁をさせようではないかということが中心になった一九七三年のローマでの会議、それはいろいろ意見が分かれて結局成立をしなかったというんですが、それからもう四年たらわけですけれども、その後はどういう動きになっているのかということをお聞きしたい。
  57. 栗林忠男

    参考人栗林忠男君) お答え申し上げます。  私の知る限りでは、このローマ会議以後、集団的な共同行動をとって違反国に対して制裁を加えるという動き、あるいは現行の国際民間航空条約を改正してその機関から脱退させるというような動き、それらにつきましてはいま国際社会の舞台では法的規制は考えられていないんじゃないかと思います。しかし、最近の国連の審議の中心はテロリズム防止人質防止という方向に審議が進められてきておるわけでございます。  以上でございます。
  58. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 朝田参考人に次にお聞きしたいんですが、先ほどのお話の中で、探知器を使って検査しておるわけなんで、凶器が発見されてもそれを没収することもできないんだ、そういうお話だったんだけれども、現実にそういうときがあったと私は思うんですよ、あれだけのことをやっていて。そのときにどうしているのかということと、現在もどういう扱いをしているのかということをお聞きしたいんです。
  59. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) そういう場合には没収はできませんが、警察官に来てもらう、そしてその処置をお願いをする。そこで私は、警察が直接責任を持っておやりいただきたいというところに非常に困難な事情があるといたしますれば、その運用において同様の効果の上がるような運営をしていただきたいと、こういうことを申し上げたわけでございまして、現在はそういうようなことで警察官に来ていただく。最近はそのそばにいていただくので大変助かっておるようなわけであります。
  60. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 もう一つ最後に塚本参考人にお聞きしたいんですが、アメリカが、何年ですか私も聞き忘れたんですが、ハイジャック防止でかなり厳しい対策を講じて、それから後が何か大幅に減少してきているということを先ほどのお話の中でお聞きしたんですけれども、この大幅に減少するほどの効果を上げた具体的な防止対策ということはどういうことをおやりになったのかという、そのことがお話の中になかったものですから、できましたらその辺少し詳しくお聞かせいただきたい。
  61. 塚本雄之助

    参考人塚本雄之助君) 詳しく今席に持っておりませんけれども、後日、必要ならば書類で提出させていただきたいと思うんですけれども、基本的には先ほど申し上げたように、関係各社の、各団体の協力を得てICAOの勧告に従ったような、航空保安委員会という常設の委員会設置して、先ほど朝田社長の申し上げたようなそういうことじゃなくて、当局が直接そういう方策を設立するというようなことだというふうに聞いておりますので、後日、委員長を通じて資料を提出させていただきたいと思います。
  62. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 お願いいたします。  終わります。
  63. 山田勇

    ○山田勇君 朝田参考人と塚本参考人、お二方にお聞きいたします。  一つは、空港警備の問題ですが、朝田参考人警察官の派遣要請というようなことを言われておりますが、これは警官の増員等とか、予算の問題とかいうので非常にむずかしいと思います。そういうことになりますと、勢いいまの空港警備という形の下請的なものになると思いますが、こういう支出とか、そういうものを踏んまえた上で、いま関川参考人がおっしゃったハイジャック対策費というのは聞こえが悪いんですが、受益者負担的な物の考え方というのは、ぼくは海外渡航する人にとっては了承できる費用だと思うんです、国によっては通関税なんか取られるところもありますから。ただ問題は、一律じゃなく、遠距離制をとっていくというふうな形でかけていく。その対策費そのものは、ハイジャックがなければ当然その金が余るんですから、余る部分がその航空会社のいわゆる大きなサービスの基幹になる。  たとえばいま瀬谷議員がおっしゃったように、ぼくはファーストクラスに一度乗してもらったことがあるんですが、はっぴを着せられたことがあります。これはなかなか心得たサービスだなと思うんですが。ですから、日本航空を利用する乗客に対してはユニホーム制をとるというふうな形になると、上着をハングアップしてかけていく。若干機内の構造を変えていかなければならない問題もあろうかと思いますが、そういうふうな形でユニホーム制的なものをとるとかいうことになれば、小さい物は絶対に持ち込めないということになります。もちろん手荷物も持ち込めない。だからこそこういう対策費的なものからそのサービスの一環としてすべて機内においてサービスをするというふうな問題があります。  ということと、これは私ごとなんですがね、われわれ議員というのは国民の信託を受けて選出された者がボデーチェックされるのは本当は潔しとしないんです、正直言ってね。かっこ悪いんです、はっきり言ってね。そういうことで、その点ですが、まあボデーチェックということは強化されているんですから、これはやむを得ず私たちも受けております。ひとつ私の意見として聞いていただければ結構です。  もう一つ、塚本参考人には、操縦室とスチュワーデス、これは聞いてみないとわからないんですが、スチュワーデスにまず要求を突きつけて操縦室へ入ってくるまでの時間の問題、スチュワーデスが電話で、ハイジャックされましたということを機長に知らせる場合、その間の時間において何らかの形でこれから飛行していく、運航していくコントロールタワーとの暗号、記号というものを確立しておいて何かをやる。しかし、非常に犯人側はメカニズムに強くなってきております、機能に。ですから、足か何か、操縦をするに必要な機能を操作するがごとく暗号発信、いわゆる犯人が何人であるとか、そういうふうな、武器は何丁だとかいうふうなことをコントロールタワーにとりあえず知らせること、たとえ操縦室に入ってきても運航機能上計器を操作しているがごとく見せて、それは一つの航空機の秘密としてそれをコントロールタワーに知らしていくとか、何かそういうふうな方向を協会の方では考えられないか、また考えていく必要があると私は思うんですが、その二点についてお尋ねをいたします。
  64. 朝田静夫

    参考人朝田静夫君) ハイジャック防止料というようなものの創設を考えてみてはいかがかと、受益者負担の原則に従いまして。この問題につきましては、やはり先ほどからお話が出ておりますような、国際的なレベルで物を考える必要があると思いますことと、現在国内で私どもが検査をやっておりますそういう金属探知器、あるいはエックスレーの装置、そういったようなもの、マンパワーも含めまして、大体航空会社の負担が三分の二になっております。三分の一が政府の負担というようなことになっておりまするが、そういう意味においては私どもも応分の負担をさしていただいておるわけでございますけれども、乗客のチャージとしてかけるという、いわゆる受益者負担でハイジャック防止料、騒音対策で考えられておるようなアイデアでそういうことを創設するかどうかということは国際的なレベルで私は考えるべきだと思いますが、今後検討さしていただきたいと思います。
  65. 塚本雄之助

    参考人塚本雄之助君) 先ほど御指摘の緊急信号、あるいは地上において自動的に検出されるある種の信号はほとんどの国において設定されております。ですから、その飛行機がそういう非合法的な不法占拠されたということについては、ある種の信号で地上との交信ができるようになっているのがほとんどの国でございます。犯人の数だとか、携帯の武器だとか、内容についての信号化ということも考えてはおりましたけれども、なかなか多岐にわたるので大変むずかしい。先ほど申し上げたように、操縦機長が武力介入を要請するときの信号を考えようじゃないかというようなことを含めていろいろ考えておりますけれども、現在までいまだ合意に達しておりません。大変その内容が多岐にわたるので、将来ともむずかしいかと思いますが、もう一度御指摘のあったことを本部に紹介して、私どもの常設の保安委員会において検討するようにしたいと思います。
  66. 内田善利

    委員長内田善利君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々に一言お礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  本件に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十七分散会      —————・—————