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1977-11-09 第82回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月九日(水曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君   理事 小此木彦三郎君 理事 栗原 祐幸君    理事 澁谷 直藏君 理事 細田 吉藏君    理事 山下 元利君 理事 安宅 常彦君    理事 武藤 山治君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       安倍晋太郎君   稻村左近四郎君       越智 通雄君    奥野 誠亮君       金子 一平君    川崎 秀二君       木野 晴夫君    藏内 修治君       後藤田正晴君    櫻内 義雄君       笹山茂太郎君    始関 伊平君       白浜 仁吉君    中村 弘海君       根本龍太郎君    葉梨 信行君       藤井 勝志君    古井 喜實君       松澤 雄藏君    森山 欽司君       阿部 昭吾君    石野 久男君       上原 康助君    大出  俊君       川本 敏美君    小林  進君       佐野 憲治君    斉藤 正男君       多賀谷真稔君    藤田 高敏君       吉原 米治君    坂井 弘一君       武田 一夫君    野村 光雄君       広沢 直樹君    二見 伸明君       大内 啓伍君    河村  勝君       工藤  晃君    寺前  巖君       東中 光雄君    松本 善明君       大原 一三君    田川 誠一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         厚 生 大 臣 渡辺美智雄君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  田中 龍夫君         運 輸 大 臣 田村  元君         労 働 大 臣 石田 博英君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 田澤 吉郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         行政管理庁行政         管理局長    辻  敬一君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君         国土庁計画・調         整局長     下河辺 淳君         外務省経済局長 本野 盛幸君         外務省経済局次         長       溝口 道郎君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省関税局長 戸塚 岩夫君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         大蔵省国際金融         局長      旦  弘昌君         厚生省医務局長 佐分利輝彦君         厚生省薬務局長 中野 徹雄君         厚生省社会局長 上村  一君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省農蚕園芸         局長      堀川 春彦君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         農林省食品流通         局長      杉山 克己君         食糧庁長官  大河原太一郎君         通商産業大臣官         房審議官    山口 和男君         通商産業省通商         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省通商         政策局次長   花岡 宗助君         通商産業省貿易         局長      西山敬次郎君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         通商産業省機械         情報産業局長  森山 信吾君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         中小企業庁長官 岸田 文武君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         運輸省航空局長 高橋 寿夫君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総         裁)      森永貞一郎君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 十月十八日  辞任         補欠選任   藏内 修治君     稻葉  修君   瀬崎 博義君     松本 善明君 同月二十五日  辞任         補欠選任   大内 啓伍君     春日 一幸君   河村  勝君     佐々木良作君 同月二十六日  辞任         補欠選任   木野 晴夫君     安倍晋太郎君   寺前  巖君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     寺前  巖君 同月二十七日  辞任         補欠選任   上原 康助君     小川 国彦君 同日  辞任         補欠選任   小川 国彦君     上原 康助君 同月二十八日  辞任         補欠選任   寺前  巖君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     寺前  巖君 同月二十九日  辞任         補欠選任   川崎 秀二君     佐々木義武君 十一月一日  辞任         補欠選任   小林  進君     武部  文君   大原 一三君     山口 敏夫君 同日  辞任         補欠選任   武部  文君     小林  進君   山口 敏夫君     大原 一三君 同月二日  辞任         補欠選任   寺前  巖君     不破 哲三君 同月九日  辞任         補欠選任   安倍晋太郎君     木野 晴夫君   足立 篤郎君     葉梨 信行君   伊東 正義君     中村 弘海君   稻葉  修君     藏内 修治君   佐々木義武君     川崎 秀二君   井上 普方君     斉藤 正男君   川俣健二郎君     川本 敏美君   藤田 高敏君     吉原 米治君   浅井 美幸君     武田 一夫君   矢野 絢也君     野村 光雄君   春日 一幸君     大内 啓伍君   佐々木良作君     河村  勝君   不破 哲三君     工藤  晃君   松本 善明君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   川崎 秀二君     佐々木義武君   木野 晴夫君     安倍晋太郎君   藏内 修治君     稻葉  修君   中村 弘海君     後藤田正晴君   葉梨 信行君     足立 篤郎君   川本 敏美君     川俣健二郎君   斉藤 正男君     井上 普方君   吉原 米治君     藤田 高敏君   武田 一夫君     浅井 美幸君   野村 光雄君     矢野 絢也君   東中 光雄君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   後藤田正晴君     伊東 正義君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  予算実施状況に関する件      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  この際、国政調査承認要求についてお諮りいたします。  予算実施状況に関する事項につきまして、議長に対し、国政調査承認を求めることとし、その手続等については委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  直ちに委員長において所要の手続をとることといたします。      ————◇—————
  4. 田中正巳

    田中委員長 これより予算実施状況に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本日、参考人として日本銀行総裁出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————
  6. 田中正巳

    田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武藤山治君。
  7. 武藤山治

    武藤(山)委員 まず最初総理確認をしておきたいと思います。  今月二日に総理大臣河本政調会長との会談で、総理は、思い切って緊急輸入の規模を拡大する、最低でも三十億ドルは必要だと発言した旨新聞報道がなされております。数字を明示して、緊急輸入三十億ドルは必要だということは、確かに総理がそういうお話をしたのでございますか、それをまず確認をしておきたいと思います。
  8. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 最低というわけではございませんが、できたら三十億ドルぐらいは緊急輸入したいところだね、こういうようなことであったわけであります。
  9. 武藤山治

    武藤(山)委員 できれば三十億ドルの緊急輸入をしたい。いつごろまでの時期に三十億ドルの緊急輸入をふやしたい、時期はいつごろまでを大体めどとしてお考えになっていらっしゃるのですか。
  10. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 輸入でありますから、相手方があり、それが実施されるという時期につきましてはなかなかむずかしゅうございますが、めどにつきましては年内にはつけたい、なるべく早くつけたい、こういうふうに考えております。
  11. 武藤山治

    武藤(山)委員 それでは、各省庁は一体何を、いつごろ、どのくらい買おうか、そういうことを具体的に詰めている段階だと思うのですね、それぞれ総理大臣が言明された数字に近づくように。  そこでまず、順次各担当大臣にお伺いをいたします。  まず最初通産大臣通産省管轄緊急輸入はどのくらいが見込めて、どんなものをまず輸入しようか、従来のベースよりも余分にどういうものをふやそうか、そのリスト、金額をちょっと明らかにしてください。
  12. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  当初申し上げました七億ドルという問題とも相関性を持っておりまするが、まず原油積み増しの問題は御案内のとおりに三億一千万ドル、三百六十万キロリットルでありまするが、それ以外にも買える物がありましたらばできるだけ買いたいし、また同時に御案内のとおりいろいろな方法を講じまして、タンカーの活用による備蓄でありますとか、その他いろいろな手段を講じて、今後もその増額を図ってまいりたいと考えております。  それから非鉄金属の問題でございまするが、これも現在の備蓄をいまのところは一億ドルの措置をとっておりまするけれども、さらに、これとても各方面銘柄別にも話を進めてまいっております。  ウランの問題でありますが、御承知年内に一億三千万ドルのウラン、これは電源開発会社なりあるいはまた電力会社等を通じましての買い付けでございまするが、アメリカのERDAの方に向かいましてのウラン並びに濃縮料の支払い、そのほかカナダや各方面に対しまして交渉をさらにさらに進めてまいりたい、かように考えております。  ナフサの点でありますけれども、これは御案内のとおりに非常に従来から問題がございましたが、これも年度内に一億四千万ドル約百五十万キロリットルの積み増しの枠を設定したしました。これも為替の差益等もありまして、順調に入っておりまするし、同時にコストも若干下がりぎみでございます。  以上申し上げましたのが当初申し上げた額でございまするが、その後もなおウランにいたしましてもその他の問題にいたしましも、黒字減らしという意味を持ちまして、できるだけこの買い付けをいたしたい。その一応の目標といたしましては、ただいま総理からおっしゃったとおりでありまするが、やはりこういう問題につきましては、おのおの交渉がなされなければなりませんし、相手方のあることでもございまするので、いろいろと各方面に折衝を続けておる次第でございます。
  13. 武藤山治

    武藤(山)委員 農林省農林大臣食料品関係農林省管轄で従来の量、金額より上積みされる分ですね、土台よりもふえる分、これはどのくらいありますか。
  14. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 農林省関係、できるだけ国際収支の均衡に資したいということで努力をいたしております。  その一つは、今年度第四・四半期の輸入前倒しでございますが、備蓄用トウモロコシコウリャンが四万四千トン、約五百万ドル、それから備蓄用飼料大麦三万トン、三百八十万ドル、備蓄用の大豆二万トン、四百四十万ドル、それから牛肉でございますが、これは下期の割り当てを先般、一般枠、特別枠合わせまして約五万トンに決めたわけでございますが、従来でありますと下期の分は年度内に四〇%程度輸入するということにしておりますが、今回はこれを繰り上げまして、七〇%程度繰り上げ輸入をするということで、これが千百万ドル、合計いたしまして輸入年内前倒し分が二千四百二十万ドル。  それから備蓄在庫積み増し分。小麦の年度政府在庫の増加が十万トン、千二百万ドル、飼料用トウモロコシコウリャン備蓄積み増し十万トン、千二百万ドル、それから飼料用大麦備蓄積み増し三万トン、三百二十万ドル、計二千七百二十万ドル。  それから第三番目は、残存輸入品目輸入枠拡大でございますが、これは二百海里時代を迎えましたので、水産物を中心にしまして輸入枠拡大を努力いたしておりまして、年間で一億二千万ドルの増になります。下期だけで五千万ドルの増になる見込みでございます。
  15. 武藤山治

    武藤(山)委員 次に、運輸大臣民間の飛行機の問題、かつていろいろいわくつきの問題でありますから、あるいは余り深入りをしないという態度かもしれませんが、これから特に業界と相談をして航空機輸入問題については何か黒字減らしに役に立つような手立てを考えているのかどうか、その見通しを……。
  16. 田村元

    田村国務大臣 五十三年度末までに二十六機、約十億ドルという輸入計画があるようでございます。ただ、この民間航空機は、便数の問題、いろいろな問題との絡みがありますから、政府が余り具体的に、また強引にこれに介入するということは、ロッキードの後でもありますから、これはちょっと避けた方がいいんじゃないかというような感じでございます。
  17. 武藤山治

    武藤(山)委員 厚生大臣医薬品その他、厚生省管轄のもので特に緊急輸入協力できるような品目金額、もし検討しておったらその数字を明らかにしてください。
  18. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 医薬品につきましては、御承知のとおり、これはみんな民間でやっておりまして、種々雑多でございます。したがって、医薬品を大量に輸入するということは言うべくしてなかなかむずかしい問題であります。ただ、医療機械類につきましては、最近CTスキャナーとか高度の医療機械がいろいろ開発されておって、そういうような試験研究用のものとか国立とか何かで使うものについては、事情が許せば私どもも全面協力したいと思っております。ただ、しょせんお金の問題でございまして、厚生省にはそんなお金はありませんですから、資金の手当てをしていただければいろいろ——この機械と申しましても、これはやはり使う人の問題もございますし、置く場所の問題もありますし、ただ仕入れてくればだれでも使えるというわけではありませんから非常にむずかしい問題はございますが、いまのところ大体金の都合をしてくれれば二億五千万ドルか六千万ドルくらいまでは何とか消化できるのではないだろうか。二億五、六千万ドル程度考えております。これはお金の問題が一番大切なことでございますので、その点は強調しておきたいと思います。
  19. 武藤山治

    武藤(山)委員 外務大臣外務省管轄で特に業界に対して協力が要請できると思われる黒字減らし対策外務省管轄内における問題で何か協力できるものありますか。
  20. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 外務省は所管の物資というものはございません。前回の黒字減らしのときには、あるいは在外公館の用地の購入でありますとか、そのようなことをしていただいた経過がございます。しかし、これは予算を伴うものでございますので、ただいまのところ考えておりません。
  21. 武藤山治

    武藤(山)委員 次に企画庁長官企画庁も直接業界とのそういう関係はないと思いますが、しかし、こういう総理大臣の厳命の下っている大問題でありますから、企画庁としてはこういうことを業界に要請をしたい、そして輸入をふやしたい、そういう品目金額、何かありましたら明らかにしてください。
  22. 倉成正

    倉成国務大臣 ドル減らしについて考え得る限りのいろいろな項目を挙げまして、いろいろ検討いたしておるところでございます。それぞれの品目については、通産大臣農林大臣運輸大臣あるいは厚生大臣からお話があったとおりでございます。  経常収支とは関係ございませんけれども円建て外債発行であるとか、そういうものもあわせて考えていくということも大切なことであると思います。  それから、これだけ円が高くなっておりますから、輸入をもう少し積極的にやる方法はないかどうか、そういう問題についても商社その他の考えをいろいろ聞いておるところでございます。具体的にいまこういう問題で、相当まとまった数字黒字減らしに貢献するということ、この席で申し上げるものはまだございません。
  23. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵大臣大蔵省のなし得る範囲内でどういう黒字減らしが可能であるか。特にいま企画庁長官もちょっと触れました円建て外債発行の問題ですね、これがこの十月から十二月までの間に七億ドルから八億ドルありまして、これは従来のベースだと思うのですが、その後来年の一−三月に円建て外債がどのくらい人為的に、政策的にふやせるのか。新聞報道によると、一−三月も八億ドルくらいというんですね。そうすると、これは従来のパターンと変わっていないので、特に大蔵省が今回の政府の方針に協力をしてふやしたという形跡は感じられない。そこで大蔵省としてドル減らし協力し得る具体的内容金額、これをちょっと明らかにしてください。
  24. 坊秀男

    坊国務大臣 お答え申します。  大蔵省といたしましては、三十億ドルということにつきましては、造幣局がコインをつくる原材料といたしております銅、ニッケルというものについての来年度輸入計画をことしに繰り上げまして輸入をするということにいたしておりますが、具体的な方法についてはこれから検討してまいる、こういうことでございます。  また、円建て債につきましては、資本収支の問題でございますけれども、できるだけ柔軟に考えまして、たくさん来ております各国の需要にできるだけ応じてまいりたい、そしてできるだけ促進をしてまいりたい、かように考えておりますが、去年に比べまして、まだことしは十月までしかたっておりませんけれども、相当の金額がまとまっております。それにつきましては、国金局長から数字を申し上げさせます。
  25. 旦弘昌

    旦政府委員 五十一年度におきまして、円建て債年度間で六銘柄六百二十億円にすぎませんでしたけれども、五十二年度におきましては、十月末現在ですでに九銘柄千五百二十億円の発行を見ております。なお、今年中は十一月、十二月、二カ月残っておりますが、その分で五銘柄約千三百億円くらいであろうかと思います。したがいまして、十二月末までのところで見ましても、前年度対比、五十一年度年度全体と比較いたしましても約二千五百億円以上増加するのではないか、かように考えます。  それから、先ほどお尋ねの、来年一−三月はどうかということに関しましては、続々と申請が来ておりますが、なお市場関係者相手国政府等との間の話が現在詰まりつつありまして、幾らかということを現在申し上げる段階ではございませんけれども、恐らく各月数銘柄、三銘柄程度は出るのではなかろうか、そういうことで現在作業を進めておりまして、私どもといたしましては、これらの円建て債発行につきまして前向きの姿勢で対処したい、かように考えております。
  26. 武藤山治

    武藤(山)委員 総理大臣、いま各省庁のそれぞれの担当あるいは大臣数字を出してもらったのでありますが、この合計金額を概算してみますと約十億ドル、資本収支の分で円建て外債を別枠として考えて、これを仮に全体の外貨減らしということで考えていくならば、外債が十億ドル増と見て、これを仮にプラスしても二十億ドル。いまの銅、ニッケル輸入造幣局でやるといっても、坊さんは質問の趣旨がよくわからなかったのか、金額を明らかにしなかったのですけれども新聞によるとわずか三百六十万ドル、ほんのちょっぴりですね。いま通産省農林省、すべての省の検討しているものを合計しても十億ドルにならないのです。総理大臣の言明が実行されるにはほど遠い感じがいたしますね。総理、いまの大臣の答弁をお聞きになっていかようにお感じでございますか。
  27. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 普通の発想でありますと、大体十億ドルの緊急輸入、こういうことになるわけです。しかし、いまその十億ドル程度では妥当ではない、もっとふやすべきだ、私はこういうふうに考えておりますが、金目になるものを考えますと、やはり濃縮ウラン一つ。それから原油タンカー備蓄の問題、これができるか、できないか。この二つを詰めてみたい、こういうふうに考えているのですが、これができるということになればかなりの金目のものになってくる、こういう見解でございます。
  28. 武藤山治

    武藤(山)委員 総理大臣ですから具体的な数字はなかなか言えないと思うのでありますが、現実に日本政府の発表していることは信頼できない、こういう印象を外国に与えてはいかぬ、そう思うのであります。福田内閣はもうこの一年間に前科があるのです。当初経済見通しでは、経常収支七億ドルの赤字だ、これを国際会議に行っても総理は、日本は六・七%の経済成長率経常収支マイナス七億ドルですよ、だから国際的に大いに協力をする姿勢であります。だから、ロンドン会議では、そのときは福田さんは、それを期待されて大いに信用をされたのです。ところが、九月段階になってみたら、どうも七億ドルマイナスどころではない、日本経常収支は、ひょっとすると本年度は八十億ドルを超える、百億ドルから八十億ドルの間だということをアメリカあたり週刊誌調査では発表している。そんな、マイナス七億ドルが八十億ドルの黒字じゃ、日本総理大臣はそらっぺを言っておる——この辺でそらっぺなんという言葉は使わないかもしらぬが、うそを言っっておる、こういう点でまずこの円高の圧力がかかってきたのですよ。結局、投機筋が動いたのも、そういう日本政府の言ったことと結果がまるで違っているということが国際的不信を買っている一つの要因である、私の判断は。  今度また、政府は三十億ドルの輸入増を図ってアメリカとの貿易関係もできるだけ改善をしたい、国際的な責任も果たしたい、こういうことで、総理みずからが三十億ドルの緊急輸入数字を挙げた。私が質問をしたときには、総理は十月十五日には、一国の総理大臣輸入数字などを言ったら世界経済は大変なことになるからと言って、ここで言わなかったのですよ。ここに書いてある。これを読んでみましょうか。「私が、特別輸入を幾らする、こう言ったら、これは為替には相当強い影響が出てくると思います。それができるように、いませっかく努力をしておる、そういう段階でございます。」私は、前段で数字を言えということをここで質問しているのですよ。それで言わなかった。  その後、私の質問が終わって、十日ぐらいたってからか、今度は三十億ドルの緊急輸入をしろという大号令をかけたわけですね。この新聞にこんなにでかく「緊急輸入三十億ドル」、これは福田総理と河本さんの写真が出ている。これは日本だけじゃない、世界じゅうにわかっちゃうんですね、総理大臣の言ったことは。ああ、日本もいよいよ本気になったようだ。だとすると、その本気だということを裏づけるためには、具体的な数字三十億ドル、こういうものを輸入しますということが、ややそれに近い数字が明らかにならないと、また世界じゅうは信用しませんね。それでなくたって、日本はずるいの、ごまかすの、信用できないのと言われて風圧がかかっている現状で、この三十億ドルが実行できないと、また大変なことになると私は思うのであります。もう一回近い時期に円に対する風圧がかかってくる、これはそういう要素になる。だから、一国の総理大臣が発言したことは法律と同等の権威があるものである、その権威が実行されないような状況であることを大変慨嘆する。  企画庁長官通産大臣は、総理のこの言明、三十億ドルは達成できる、そういう確信を持っているのか、それが実行できない場合には、担当大臣として両名は辞職するぐらいの腹構えを持っておるのか、それをひとつ明らかにしてください。
  29. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま武藤委員お話でございますが、総理が三十億ドルの輸入をふやすということを言われたことはございません。(武藤(山)委員「さっき言ったと言っているんだ」と呼ぶ)そういうことを私ども総理からお話を承っておりません。
  30. 武藤山治

    武藤(山)委員 これはおかしい。企画庁長官、あなたは私と総理大臣との冒頭のやりとりを聞いておったのですか。私は総理にちゃんと、新聞に河本さんとの会談で三十億ドルの緊急輸入を指示したと発言があった、事実かどうかと確認したら、最低という言葉は使わないけれども、三十億ドルと言ったと確認しておるんだよ。いまの話は、あなたは総理大臣から直接三十億ドルという言明を受けてないから知らぬという意味だ。閣僚内部においてそんな食い違いはだめだ。  もう一回まず総理確認する。確認してからあなたに聞くよ。河本さんとの会談の中で、三十億ドルという数字を出したのか出さないのか。
  31. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 正確に申し上げます。  私と河本政調会長との会談では、三十億ドルぐらいはできるといいがな、こういう話をしたのです。私がそれを号令をかけたとかなんとかということじゃないのです。私の願望を表明した。それはそういういきさつでございますから、私自身から三十億ドル輸入するのだというようなことは言っておりません。政務調査会長が、新聞記者会見があったのでしょうか、その席で三十億ドルぐらいはしたいな、こういう話をしておる、これが実情でございます。
  32. 武藤山治

    武藤(山)委員 これは書いた新聞記者に確認しなければわかりませんけれども、どの新聞も「緊急輸入三十億ドル」という大きい見出しででかでかと当時書いている。しかもその中に、あなたとお互い一問一答したのか、あるいは意見交換したのか知らぬけれども新聞によると総理は、「黒字問題を以前にもまして深刻に受け止めており、「思い切って緊急輸入の規模を拡大する。最低でも三十億ドルは必要だ」と発言、」それに対して河本会長は、「「米国からの食糧輸入が円に対する風圧をかなりやわらげる」との立場から「米国から食糧を輸入して、それを発展途上国の援助に使うことを進めたい」と提言、首相もこれを了承、」こう新聞に書いてある。この新聞、うそですか。総理日本じゅうの新聞は全部うそだと敵にしますか、この新聞は事実だと認めますか。それから倉成さんに聞きましょう。総理、はっきりしてください。
  33. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いきさつは先ほど申し上げたとおりでございます。間違いはございません。  それから、新聞がどう扱ったかということは、どういうふうに政務調査会長が話したか、これは私はつぶさには承知いたしませんが、私が政務調査会長に話したのは先ほど申し上げたとおりです。寸分も間違いはございません。
  34. 武藤山治

    武藤(山)委員 世界じゅうに、日本政府はいよいよ本気になったようだ、三十億ドルの緊急輸入まで政府考えてきた、しかも政権を握っている与党の政調会長と総理との会談が事細かに新聞で報道されているのに、その事実を、最初最低という言葉は使わぬがそういうことを言ったと言いながら、いまは前言と同じだ、前言と同じだということは、最低という言葉は言わないが、緊急に三十億ドルの輸入は必要だ、そういうことは言った、こういうことですね。そういうことは言ったのですね。三十億ドルの輸入が必要だということは言ったのですね。
  35. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 三十億ドルぐらいな輸入をしたいなという願望を示した、こういうことでございます。
  36. 武藤山治

    武藤(山)委員 総理大臣の願望と、総理大臣がこれは実現したいというあなたの気持ちとどう違うのですか。総理の願望と政府がそれを実行しようとする方向とは一致しないのですか。総理大臣の願望というのは、政府の一応の方針でしょう。ただ腹の中に思い、頭の中に考えておるだけの願望なら、それは方針じゃない。しかし、一たび口から出て文字になった、これは総理大臣一つの方針ですよ。私はそう思う。もし方針でなかったら、あなたがしゃべったことは一々、これは方針であります。これは願望であります。これは頭の中にあることをちょっと文字にしただけですと、一々注釈をしていただかぬことには新聞読んで信用できない、そういうことになりますね。  それじゃ、三十億ドルの輸入をぜひ実現する方向で検討しろということじゃないのですか、あなたの願望で、ただふわっと世界にそう言ってみたのですか、どうなんですか。
  37. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ですから、三十億ドルぐらいは緊急輸入を実現したいな。そこで私も、先ほど申し上げているとおり具体的にいろいろ考えているのです。その柱となるものは、濃縮ウラン並びにタンカーによる石油備蓄である、こういうことなんです。
  38. 武藤山治

    武藤(山)委員 だから、三十億ドルぐらいはこの際日米関係の上からも、できるだけ経常収支黒字が減るようにしたい、あるいはアメリカとの貿易関係が少しでも均衡点に近づくような努力をしたい、そういうあなたの願望が、三十億ドルの緊急輸入をしたいという願望になって文字になったのでしょう。ところが、いま経企庁長官は、総理から聞いてないと言う。総理から直接聞いてなくとも、新聞にこれだけ出れば、総理のお気持ちであるということを推察するのが責任一体の閣僚の責任ではありませんか。それはまさに、内閣の意思が不統一でばらばらだということを意味するんだ。  ではあなたは、総理のそういう願望には全然沿わなくとも、積み上げてみたら十億ドルしかできない、もうこの辺でやむを得ないなといういま感じでおるのか、まだ三十億ドルに近づけようとこれから努力するのか、その辺はっきりしてください。
  39. 倉成正

    倉成国務大臣 輸入をふやす基本の姿勢は、やはり何と言っても内需が振興して国内の景気が起こっていくのが正しい筋道であると思います。しかし、それにはどうしても時間がかかる。そしてこういう貿易収支の不均衡が円高の背景になっているということで、緊急輸入のできる最大の努力をしなければならないということについては、総理大臣からしばしば御指示をいただいているところでございます。九月二十日の段階の対外経済政策で明らかになりました点が七億ドル強、これは九月二十日の対策でこれだけのものは確実でございます。これにどういうものを積み増すことができるか、考えられ得るあらゆることを考えてひとつこれを実行すべしという、これについての総理からの御指示はいただいておるわけでございまして、その線に従っていろいろ検討している。  先ほど総理からお話がございましたように、金目になるものとしては、やはり電力会社の購入するウランの問題が一番大きな金目になる。しかし、これは相手方があることでありますから、政府として確実にこれだけのものがと言うには、やはり物事を詰めていかなければならないということで、これは鋭意関係各省また外交ルート等を通じてやっているところでございまして、三十億ドルという数字、これは新聞でも私は拝見したしましたけれども、三十億ドルと言わず五十億ドルでも、もっとふやすことができればいいと思っておるわけでございますが、考えられ得る最大の手段を講じて、実際これができるかどうかということを詰めてみるようにというのが総理の御指示でございます。したがって具体的にこれだけというような金額を設定するのは適当でないと思っております。
  40. 武藤山治

    武藤(山)委員 それじゃ経企庁長官、具体的な数字を挙げてやるのは適当でない、こう言うのですね。適当でないことを総理大臣新聞で全国、全世界へ明らかにした。それは総理大臣が適当でないということで、総理大臣に取り消してもらうということですな。取り消させたらいいじゃないですか。
  41. 倉成正

    倉成国務大臣 そういう意味ではございません。三十億ドルというのがいろいろ話題で出る、それはそういうことはあり得ると思います。しかし、いまいろいろな手段を講じて、そして考えられ得るあらゆることを検討して積み上げてどうなるかということが現在の課題でございますから、三十億ドルをぜひこれだけやれというような御指示は、総理からいただいておりません。そういうことを申し上げたわけでございます。総理からは、とにかくできるだけ考えられ得るあらゆることを考えて、そして関係各省と連絡をして、なるだけ多くの緊急輸入ができるように、そういう御指示をいただいておるわけでございまして、三十億ドルというような具体的数字の取りまとめを私の方にはいただいていない、そういうことを申し上げたわけでございます。
  42. 武藤山治

    武藤(山)委員 それでは、経企庁長官、幾らぐらいまでが限度だ、それ以上はむずかしい、いま検討している段階ではこの程度しかどうしても進めぬ、それにはこれこれこういう事情がある。私も事情はわかっている。では、企画庁長官としてはどの程度までが可能な数字だと言明できますか。
  43. 倉成正

    倉成国務大臣 先ほどお話し申しましたように、一番金目になるのはやはりウランの問題でございます。(「一億二、三千万ドルじゃないか、そんなものは」と呼ぶ者あり)それはそういうことではございません。もっと大きな金目の問題でございます。しかし、これはいま交渉をしておる最中でございますから、この席でそれをとやかく申すのは適当でないと思っております。したがいまして、いま全体で幾らになるかということを申し上げるだけの材料を持っていないということでございますので、最善を尽くして、やはりこれは日本政府があらゆる努力をして、考えられ得るあらゆる手段を講じて、緊急輸入ができることをしておるという姿勢が私は一番大切なことであると考えておる次第でございます。
  44. 武藤山治

    武藤(山)委員 一国の総理大臣が、新聞であれだけでかでか出して三十億ドル、世界はそれを信頼する。ちょうど当初の経常収支赤字七億ドルを世界に一たん信用させて、ばれて風圧を食ったのと同じようなことがまた繰り返されそうですね、いまの議論を聞いていると。総理、三十億ドルというのはちょっと軽率に言い過ぎた。世界に誤解を与えた。いま経企庁長官が言うように、三十億ドルは無理だが、一生懸命そういう一つの目安をつくったので努力してみたが、本音はせいぜい二十億ドルぐらいがいいところか。どうですか、本音は。
  45. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いまわが国の黒字ということが世界的に関心を集めておる。そういう際に、わが国がそれに対しましてわが国の姿勢を示す、これは非常に大事なことだと思うのです。であるがゆえに、私も日夜苦心をいたし、そして大体十億ドル近くのものにつきましては見当はついておる、しかし、それで満足はできないのだ、さらにいろいろむずかしい点がありますが、これを打開いたしまして、さらにさらにこの当面の黒字減らしは実現をしなければならぬ、こういうふうにいま考えているのです。日本政府がそういう姿勢を示しておるというそのことは、私は国際社会において評価をされる、こういうふうに確信をいたしております。
  46. 武藤山治

    武藤(山)委員 総理大臣は、非常に深刻に今日の日米貿易関係や国際経済関係を案じながら、三十億ドルという数字を言ったのだと私は思うのです。私も、言うべきだ、数字を示すべきだという質問を前にしているわけです。だけれども、いまの経企庁長官の話を聞くと、いまの円対策というものに対する具体的でしかも一貫性があって、なるほどと国民を説得するようなものが残念ながらないね、企画庁長官。いまもあなたは、結局根本は内需を喚起することだ、内需の拡大だ。だれも異論はない。しかし、いまの財政の状態で、いまの企業の状態で、制約がもろもろあって、内需拡大ができない壁にぶつかっているわけでしょう。だから長期的な円対策としては内需拡大でよろしい。ところが、いま目の前でもう熱が四十二度にも達して、すぐ熱を冷ませないと日本経済が脳症を起こしたり肺炎を起こしちゃう。そういう熱冷ましをいますぐやらなければならない。これが一つ課題としてあるのです。その熱が冷まった後にさらに長期的な展望として円対策はいかにあるべきかという議論になる。ぼくはいままだここでは熱冷ましの議論をやっている。やがて後段で根本的な治療はいかにあるべきかを論ずるわけなんです。福田総理も、恐らくそういう熱冷ましのために、国際的に数字を示した努力の姿勢を示そうとした苦心の作だと思う。それを、どうも企画庁長官のいまの認識は、私の感じではまだまだとても真剣さが足りぬという感じですね。まあいい。  そこで総理総理はこの前十月十五日の私の質問に答えて、日本という貿易立国から言い、資源のない国からして、輸出を抑えるというようなことは日本はできない。そこで「結局輸入をふやすほかはない。そこで、いま原油でありますとか、ウランでありますとか、あるいは非鉄金属でありますとか、そういうものを買っておきましても、どうせこれはわが国の財産、資産になるわけだ、日本銀行がドルを持っておるというのと同じ価値があるものであります」、だから緊急輸入でこういうものを買います。こう十月十五日には答えている。これは政府が企業体を持っている場合はそういう主体的に物を言えるのです。政府が貿易をやっているのじゃない。政府ウランを使うのじゃない。ニッケルと銅は幾らかお金に使うぐらいで、日本政府は自由経済を信奉し、そういうシステムで経済運営をするというのが基本である。だから政府輸入をするわけじゃないところにむずかしさがある。それじゃウランを何ぼ買おう、あるいは銅を幾ら買っておこう、鉛を買っておけ。しかし、それを加工し、製品にし、利潤を求めるのは全部企業なんですね。そうすると、企業にしてみると、買った材料、原料がドル安によって値段が下がってしまうのか、あるいはこれからの経済の先行きを考えてせっかく大量に買っておいたが損をした、金利もつく、そういうリスクを、企業としては国がある程度考えてくれなければそれだけの量は買えませんよという返事がはね返る可能性がある。総理はこの十月十五日にいとも簡単に、日本の財産になるのだから、資産になるのだから、日本銀行がドルを持っておるのと同じ意味だからこういう輸入をふやすのだ、こう答えている。この辺の認識はいまでも訂正する必要はありませんか。日本の資産、財産として残るという感覚、ドルの積み増しと同じような価値がある、この感覚はいまでも同じでありますか。
  47. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 その認識は、同じどころじゃない、ますます強まっておる、こういうのが率直な私の心境でございます。御指摘のように、これは政府貿易じゃございませんから民間と話し合わなければならぬ、そういう隘路はありますけれども、その隘路を何としても打開して、そして私が申し上げたような考え方をいまこそ実現しなければならぬ、こういうふうに考えております。
  48. 武藤山治

    武藤(山)委員 通産大臣、そのリスクが起こるという可能性はない、そういうものを買ったときにドルがさらに下落をする、そして逆に日本がまたそれを輸出するときに、企業がそんなにたくさん買い込んだ場合、金利負担、その後の物価動向、そういうような不安というものを通産省にある程度保証してくれ、政府でめんどうを見てくれという要望は、各業界から通産省には出てないですか。
  49. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまのお話は、いまの仕組みでございますると、政府が直接買い入れるものではございせん。企業体がその責任において買い付けるものでございますが、しかし、それに対しましても、政府としては、あるいは金融の問題を世話するとか、あるいはまた利子の補給をいたしますとか、その必要必要に応じましてそのときに対処してまいる、私はこういうふうに考えております。
  50. 武藤山治

    武藤(山)委員 必要に応じて対処するということでは、業界輸入増政府が期待するような状況になかなかならぬだろう。本気で政府緊急輸入をやるというならば、やはりそういう問題まで十分政府の内部で保証措置なり、これだけの国家的な価値を増大さしておくんだという見地なら、細かいそういう配慮まで明らかにしなければ、業者は金利負担だけだって容易じゃないんだもの、これは緊急輸入はふえるわけないのですよ。だから、単なる総理大臣の願望に終わってしまうおそれがある。そうすると、また世界じゅうから、日本はいいかげんな国だ、総理大臣が発表してもそれは現実に実行される目標ではないのだ、単なる腹の中にしまっておく願望なんだ。これじゃまたアメリカからやっつけられますよ。またECやヨーロッパから、世界会議日本は批判されますよ。それだけまず言っておいて、次の問題に入っていきます。  大蔵大臣、ことしに入ってから、年初来、円は幾ら高くなりましたか。切り上げ率は何%になりますか。
  51. 旦弘昌

    旦政府委員 本年、年初来、円は一七・七%、これは八日現在でございますが、値上がりをいたしております。
  52. 武藤山治

    武藤(山)委員 円はことしに入ってから、一七・七%高くなった。これはいろいろな意味で大変な波及的な影響を各問題に与えている。まず、経済見通しの当初の見通し、改定の見通しでは、円高切り上げ率をどのぐらいに見ていたのか。経企庁長官、円は何%ぐらい上がるということを前提にして経済見通しができているのか、それをまず明らかにしてください。
  53. 倉成正

    倉成国務大臣 大体二百六十円台を前提といたしておりました。
  54. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、二百六十円台をあなたが期待して経済見通しを立てた。ことしの九月でしたか、あなたがそのことを発表してアメリカにそれが伝わり、日本政府はけしからぬ、介入をして二百六十円で守ろうとしている日本政府の意図だと、アメリカに経企庁長官の発言が受け取られちゃったのだ。それ以来、円の状態が急激にがたっと上がり始めるわけですね。九月二日、二百六十八円四十銭のとき、あなたが日本の防衛ラインは二百六十円だぐらいの意味をほのめかした。それは経済見通しの根底が二百六十円だったから、経企庁長官としてはやむを得ない、言わざるを得ないと思う。国会答弁ならそれでいい。しかし、国際的な波及をする大問題を一国の閣僚がこう言うと、ちょうどアメリカの財務長官や財務副長官がしゃべって投機筋をあおったのと同じような逆効果が、向こう側へはね返るのですね。これは大変なことだった。それからがたがたと上がっていって、ついに十一月二日には二百四十七円。政府経済見通しの根拠は完全に崩れた。改定をした政府経済見通しも根本的に改めざるを得ない事態になった。経済見通しをまた改定せざるを得ない状態になった。この事実を認めるかどうか、経企庁長官
  55. 倉成正

    倉成国務大臣 為替レートの変更に伴って、輸出が鈍化してくるということは考えられます。しかし、これには相当のタイムラグがあるのではなかろうかという感じもいたすわけでございます。十月から十二月の船積みの分はもうすでに成約が終わっているわけでありまして、来年度以降の問題になろうかと思うわけでございます。それから、やはり物価の動向ということもこういうことに関連いたしますから、そういうこと、また輸入がどうなるかという問題がございますから、経済見通しをどういう形で変えるというようなことは、いま考えておりません。
  56. 武藤山治

    武藤(山)委員 すぐ変えないにしても、経済見通しの基礎になった数字が狂ったという事実は認めるかどうかということです。
  57. 倉成正

    倉成国務大臣 何かの見通しを立てる場合にはやはり一つの前提が要るわけでございます。そういう前提としての問題でございますから、まあ、それが若干——固定した数字が幾らということを決めておるわけでございませんで、一応試算のときの根拠でございますから、その根拠が現在円高になっておるという事実は率直に認めたいと思います。
  58. 武藤山治

    武藤(山)委員 本年度は、六・七%の経済成長率を達成するためには、まだ十二月、一月、二月、三月、四カ月ある。あなたは今年度中には大した影響がないということで逃げた。しかし、本年度中にかなり影響が出るのですよ。通産大臣、輸出、輸入の決済というのは、サイトは常識的に普通大体どのくらいの期間ですか。
  59. 西山敬次郎

    ○西山政府委員 輸出、輸入のタイムラグは、品目によって種々ございますが、大体三カ月から六カ月ぐらいと考えております。
  60. 武藤山治

    武藤(山)委員 三カ月ぐらいが非常に多いのですよ。だから、年度内にこの円高の影響というのはかなりあらわれてくる。そういう点はやはり経企庁長官として、私はもっと率直に事実を認めていくべきだと思うのです。  そこで、円高がどのくらい上がったときにはGNPにどの程度影響があるか。いろいろな意見がありますね。一〇%円高になったときには、どのくらい経済成長率の引き下げ要因になるか、あるいは一七%円高になったんだから、どのくらいの引き下げ率になるか。あなたの言う二百六十円ベース経済見通しを立てたとなると、二百六十円から現在の水準までの上がった率でいくと、やはりGNPにかなりの影響が出てくる。私の計算では、この間の補正で大体〇・八%GNPを押し上げた緊急対策が決まったけれども、三月までの年度内を計算してみると、この円高で完全に消し飛んでしまった。私はそういう感じなんでありますが、これは総理大臣には無理かな、専門家の経企庁長官の方かな、答弁してください。
  61. 倉成正

    倉成国務大臣 円高によってGNPにどの程度の変化を及ぼすかという問題については、民間のいろいろな機関、たとえば日経のNEEDSあるいは各銀行、調査機関等で試算をいたしていることは私も承知しております。それについては、詳細にそういうものは見ております。しかし、これは一定のいろいろな前提を置いておるわけでございますから、これが必ず当たるかどうか、また武藤委員が御試算になったのがどういう根拠でどういう前提を置かれたかということもよく承知しないわけで、これを論評するわけにはまいりませんけれども、やはり円高によって輸出が減ってくる。しかしこれには相当なタイムラグがある。また輸入がふえるといっても、これについてもいろいろな条件が整わないとふえてこないということもございますし、それからまた名目のGNPが仮に落ちましても、物価が落ちついてまいりますとデフレーターの関係で実質のGNPは上がってくるという関係がございますから、いろいろな要素を勘案しないと、GNPが幾らどう変化するかということは申せないということで、内部ではいろいろな勉強をいたしておりますけれども、ここで申し上げる段階ではございません。
  62. 武藤山治

    武藤(山)委員 先に進みます。  円高によるいろいろな影響、まあメリットもあればデメリットもある。まず、そのメリットの点ですが、国民が大変期待しているのは、これだけ円高になって、年初来ドルとの関係で、すでに一七・七%ドルが減価しておるということになれば、輸入物資はかなり安くなっていいはずだ。ところが、それは企業のコストに吸収をされ、流通段階でもってもぎ取られ、さっぱり消費者価格には反映しないという批判が非常に強いわけであります。経企庁はそういう点について何か追跡調査でもして、輸入物資の追跡調査をきちっとやって、途中で消えてしまう不当な部分を吐き出させるような指導はやったことがあるのか、やっていないのか。やっていたとすればその具体的結果はどうなっているか、それをまず明らかにしてください。
  63. 倉成正

    倉成国務大臣 お話しのとおり、円高によって打撃を受ける中小企業その他があるわけでございますから、この円高をできるだけ消費者に還元し、国民に還元していくということが何よりも大事なことであるということで私ども考えておりますし、総理からもしばしばこれについて強い御指示をいただいておるところでございます。  そこで、輸入品の価格の調査については、五十一年の十二月とことしの六月と比較をいたしまして、三十六品目について追跡調査をいたしました。その結果についてはすでに発表し、またお手元にもお届けしたはずでございます。  そこで、その後の実態を踏まえまして最近の状況を申し上げますと、輸入価格が下がって小売価格ともに下落したものの代表的なものは、腕時計、木材、配合飼料、乗用車、カラーフィルム、書籍雑誌というのは明らかにそういう状況でございます。それから輸入価格が上昇にもかかわらず小売価格が下落または横ばいのもの、すなわち、円高だけではなくして、向こうの方の価格が上がるか下がるかという要素も非常に影響するわけでございまして、そういうことを考えてまいりますと、そういう輸入価格の上昇にもかかわらず小売価格が下落または横ばいしたものが十一品目ございまして、レモン、グレープフルーツ、ウイスキー、食肉加工品、大型電気冷蔵庫、万年筆、ライター、ネクタイ、カーペット、浴用石けん、石油製品というようなものがございます。しかし同時に、輸入価格が下がりましても、国内の流通関係であるとかあるいは需給がタイトであるために、あるいは高級品として定着しているためになかなか下がらない物資もあるわけでございます。  その後の動きを見てまいりますと、配合飼料については、工場建て値トン当たり六万四百円が五万五千四百円と約五千円九月一日から下がりました。それからウイスキーは、ジョニーの赤が標準小売価格で三千七百円から三千二百円、木材は米のツガの丸太が一立方メーター当たり、六月の二万四千九百二十円から八月には二万四千四百二十円となりました。グレープフルーツもキログラム当たり六月の二百八十五円が、八月が二百六十五円、カラーフィルムは、コダックの八ミリカラーが七・五から一〇・八%下げということで十一月から実施をいたしております。それから自動車については、フォード社が十二車種について二十モデルの国内販売価格を平均二十万円値下げをしております。これは十月二十七日に発表いたしました。書籍の換算レートも一ドル三百四十円から三百三十円というふうに下がりました。これは十一月実施でございます。灯油は、一部有力元売り会社が今冬についての値上げ撤回を表明いたしました。  それから政府の関与物資につきましては、たばこについて、英国製紙たばこを中心に改定対象銘柄平均で九・二%引き下げで十一月から実施をいたしました。牛肉につきましては、指定販売小売店の目安価格をキログラム当たり平均千七百四十円から千六百四十円ということで、平均五・七%引き下げまして十一月十一日から実施をいたすことにいたしております。それから前回の改定と合わせますと大体これが二百四十円、一二・八%の引き下げになるわけでございます。それから航空運賃については、サーチャージ四%の撤廃ということで十一月二十日実施の予定でございます。これは国際的な協定がございますので、この協定の承認を得てということになっておるわけでございます。医薬品につきましては、これは厚生省の所管でありますが、薬価基準改正平均で五・八%引き下げ、十一月一日告示で、新基準の適用時期はまだ未定でございます。電力、ガス料金につきましては、為替差益を今後できるだけ長期間現行料金維持のため活用するという方針でございまして、来年の三月までが大体現在の料金の期間になるわけでございますけれども、それ以降もできるだけ長期間現行料金に維持するという方針になっておるわけでございます。そのほか卸売物価全体につきましては、円高の影響が顕著に出ておるというのは御承知のとおりでございます。  以上でございます。
  64. 武藤山治

    武藤(山)委員 物価にかなりいい影響を与えていることは否定いたしません。しかしながら、日本の物価高というのは、OECD先進二十四カ国の中で九月の日本の物価上昇率が世界最高ですね、先進国家間では、OECDの中で。米国は九月は〇・四、日本は一・八、西独はマイナス〇・一、フランスは〇・九、英国は〇・五、カナダが〇・六。したがって、日本の一カ月間の物価上昇率一・八というのはOECD加盟国で最高である。この数字は間違っていますか、企画庁長官
  65. 倉成正

    倉成国務大臣 各月の上昇が幾らであったかということでございますけれども、いま武藤委員は九月の数字をお挙げになりましたけれども、たとえば六月、七月ということを例にとりますと、六月は日本マイナスの〇・五ということでございまして、アメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス、イタリアいずれも上昇しておりますから、先進国の中で日本最低でございます。したがって、その時点時点についてごらんになるということも必要かもしれませんけれども、やはり前年同月比ということで比較した方が適当ではなかろうかと思うわけでございます。九月の数字は御指摘のとおりだと思います。
  66. 武藤山治

    武藤(山)委員 私が聞いておるのは九月の数字、では前年比で比較してみて、たとえばアメリカは六・六、西ドイツは三・七だね。九月前年回月比で西ドイツは三・七。そういう数字で比較すると、日本は七・六というのは西ドイツの倍だ。倍の物価上昇率だ。だからそういう点から見ると、もっともっと円高によるメリットを生かす努力を政府はしなければいけない。特に九月以降これだけ円高が大体定着しつつある。二百四十八円前後がかなり続くと私は見ている。これは後で議論しますよ。これから円高はどうなるかということについては後の質問でありますが、総理大臣、こういうドイツの三・七の物価上昇率、定期預金金利よりも物価上昇率が低い。これをやはり日本は目標にすべきであるし、そういうところまで到達したときに初めて物価問題は成功した、こういうことが言える。福田さんはどうも前の狂乱物価の年間二三%も上がったときのことだけにまずノスタルジアを感じていて、あれから下がったじゃないか、あれから下がったから成功だ、優等生だということをよく言うのでありますが、私は非常によく似ている経済、西ドイツと日本というものとの比較、西ドイツが今日の他の国との比較のモデルでは一番モデルになり得る国であると思う。そういう意味では物価問題というのはまだまだ日本は西ドイツと比較したら高い水準である。だから、政府みずからがこういうドル安、円高というチャンスにも真剣にもっと突っ込んで取り組む必要がある。いま倉成さんのは品目別に発表がありましたけれども円高が物価に与えたいい影響というのはならして見た場合にどの程度のパーセントになるのか、そこらの点もちょっと聞きたい点でありますが、総理大臣、もうちょっとこの円高ドル安について消費者物価にはね返るような配慮をやるべきだと思いますが、総理の見解どうですか。
  67. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 円高が消費者物価に反映されなければならぬ、これは私は全く同意見でございます。すでに卸売物価にはかなり反映されておる、それがタイムラグはありますけれども、消費者物価には必ず私は響いてくる、またそれをにらんで行政はやっていかなければならぬ、こういうふうに思います。ただ、いま西ドイツとの比較のお話がございましたが、これは国情が少し違うのです。西ドイツにおきまして経済成長が非常に低いわけですね。いま三・五%成長だ、こういうような目標でやっておるようでありますが、わが日本におきましては六・七%をにらんでやっておる。成長の方が倍なんです。でありますから、失業の問題なんかをとらえてみると、わが日本の方が西ドイツよりは楽な状態にある、こういうような関係もあり、これを物価だけについて比較するというのは私は妥当ではない、こういうふうに考えます。とにかく円高、これがどういうメリットを持つかということになりますれば、これは物価に対して安定の方向を大いに助成するということにあるのですから、その傾向は政府といたしましては十分とらえて善処してまいりたい、かように考えます。
  68. 武藤山治

    武藤(山)委員 ドイツと日本人の生活水準なり、快適な生活をどちらの国民がしているかとか、あるいは社会保障とか公園とか老後の問題とか、そういうことを徹底的に論じないと、ドイツより日本の方が経済成長率が倍の高さだからいいなんという結論にはならぬ。そういう感覚が間違いなんです。GNPだけで価値判断をするところに日本は失敗をしておるのです。間違いを犯しておる。しかし、それをいま論争する時間がない。しかしいまの総理の言ったことについては異議がある。その異議については、それはまだまだ総理と徹底的に後刻論争することにして先に進みますが、二百六十円台を割り込んだ場合に日本の企業で採算のとれない企業がたくさん出る可能性がある。ごく最近の一番近い時点、政府調査をして、二百四十八円台のレートになったら採算割れで大変だ、そういう状況についての調査結果は、業種別に余りたくさん挙げなくてもいいけれどもどうでしょうか、十業種くらい、そのパーセントをちょっと出してみてくれますか。
  69. 田中龍夫

    田中国務大臣 最近の段階におきまして二百五十円台を割り込むというようになりましたので、去る十一月四日でございまするが、通産省の各通産局長並びに円高対策連絡推進本部の各担当局長を集めまして、十項目の円高緊急対策を指示いたしまするとともに、さらにまた御案内のとおりに金利の問題につきましても、同日付で閣議決定をお願いいたしまして融資条件を緩和いたしたような次第でございます。  ただいまのお話のいかなる業種にどの程度の響きがあるかということの中に、やはり業態別にもおのおの異なりますし、それから産地別にも異なりますが、企業の中の大体五〇%以上を貿易に占めておりまする、輸出に占めておりまする企業というものも相当ございます。それに対しましては各現地現地におきまして詳細な調査を命じまして、なおまた先般は各輸入業者あるいは流通業者の組合、団体に対しましての十一月十日付をもって報告を聴取するというようなこともいたしておりますが、業種別に申しますならば、あるいは大阪を中心といたしました家庭用ミシンでありますとか、あるいはまた大阪のめがねの関係でありますとか、あるいは燕の金属洋食器でありますとか、その他双眼鏡あるいは自転車部品、さらにまた多治見を中心といたしました陶磁器の関係、あるいはシガレットケースでありますとかアンチモニー工業、こういうふうな企業企業によりまして詳細な調査をいたしております。ただいま担当政府委員もおりまするから、さらに詳細についてはお答えを申し上げます。
  70. 武藤山治

    武藤(山)委員 企画庁がレート二百六十円を割り込んだ場合採算のとれる企業ととれない企業、その調査をおやりになりましたね。その調査では、採算のとれる企業をまずちょっと申し上げてみると、食品関係は一一%、繊維が二・九%が採算のとれる企業数、石炭、石油はほとんどとれない、鉄鋼が二・九%、自動車と輸送機器が九・七%、電気機械で二〇%、この程度が二百六十円を割り込んだ場合何とか採算がとれるといった企業ですね。あとの企業はもう採算割れだという回答のようですね。企画庁、この調査はいつの調査の結果ですか。これよりも新しい二百五十円前後になってからの同様な調査結果もあるのですか、これを明らかにしてください。
  71. 倉成正

    倉成国務大臣 経済企画庁の中ではいろいろな勉強をいたしておりますけれども、ただいま武藤委員お話しになったようなものは外部に発表している数字ではないと思います。したがいまして、公式の企画庁の見解ではございません。
  72. 武藤山治

    武藤(山)委員 公式に出した資料でないと言うからこれ以上追及いたしませんが、通産大臣、いまのようなこの調査結果の数字が正確なものであるかどうかは、企画庁調査方法やなんかも言わなければわかりませんけれども、かなりの企業が二百六十円を割り込んだときにすでにもう採算割れだ。二百五十円を割った現在では大変深刻な状況だと思うのです。その深刻な状況をもうちょっと浮き彫りにして、もうちょっと説明してみてください。あなたは先ほどはミシンとかめがねとか食器とか双眼鏡が悪いと言う程度でありまして、その悪さの程度が問題なんですね。
  73. 田中龍夫

    田中国務大臣 過ぐる十一月四日の本省におきます全国会議の際に主管いたしました政府委員がおりまするから、政府委員からさらにはっきりと申し上げたいと存じます。
  74. 岸田文武

    ○岸田政府委員 ただいま大臣からお答えいたしましたように、十一月四日に各通産局長を集めまして、各地域ごとの、また各産地ごとの実情の把握をいたしました。概況として申し上げますと、産地ごとにいろいろ事情は違いますものの、一般的に円高が継続をいたしますと、いままでは多少影響軽微だと思っていた産地においてもかなりの影響が出そうだという感じがいたしておりまして、各産地で緊張感がみなぎっておるという報告がございました。さらにまたいま末端の方は手持ちの仕事があるということで安心をしておるものの、先のことを考えると心配だという声が各地から聞かれておるところでございます。  新規契約につきましては商社、ハイヤーの模様ながめの状況から成約がおくれております。したがって、各地でも受注残が減少しているということが報告をされております。  少し業種別に入って御報告をいたしますと、繊維の場合には、構造不況によってもともと経営が悪化しているところに円高の影響を受けまして、新規成約が大幅に減少しておる、また一部には加工賃のかなりの引き下げを要求されておる、これから経営はどうなるかということを不安に思っている状況のようでございます。それから軽機械、金属製品類でございますが、これは従来の調査ではわりあいに影響軽微かと思っておりましたが、十月の調査の結果では新規成約がかなり落ち込んでき出しておるという報告でございます。それから雑貨その他に移りますと、新規成約の減少ということがいろいろの産地に見られておりまして、これに対して値下げをしないで数量が減ってもがんばろうという感じと、多少値を切っても注文をとらざるを得ないというような感じ、産地ごとにさまざまな反響を巻き起こしておるというところでございます。
  75. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういう動向から、最近の通関状況などを勘案して、調査の結果どの程度輸出がいままでのベースよりも減少するか、そういう調査も恐らく通産省はやっていると思うのでありますが、あるいは大蔵省、どちらかわかっている方から明らかにしてください。
  76. 田中龍夫

    田中国務大臣 政府委員から……。
  77. 西山敬次郎

    ○西山政府委員 七月の円高以降わが国の輸出は減少いたしておりません。のみならず若干上昇いたしておるわけでございますが、その原因として考えられますのは、第一には、数量としては伸びが縮小したにもかかわらず金額的にドル表示で上昇しておる、いわゆるJカーブ効果というものが一つあろうかと思います。第二には、国内が不況でございまして内需が乏しいということになりますと、勢い輸出に出るというような傾向があろうかと思うわけでございます。さらには価格効果以外の非価格競争力の強い品目につきましては、これまでどおり輸出されておるわけでございます。そういった事情でございまして、現在のところ円高による輸出の減少という効果は出ておりませんが、長期的に見ましたらだんだん縮小する方向に向かうのではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  78. 武藤山治

    武藤(山)委員 貿易局長、そうすると、それはいつごろの調査の結果か知りませんが、極端に円高になってきたのは九月二日以降ですね。だから十月段階、十月のごく終わりごろの通関の状況なり成約の状況なり、そういうごく最近の動向を発表してくれぬことにはだめなんです。大体役所の統計というのは二カ月ぐらい古い前の話をしているのです。いまのいつ時点で輸出は全然減っていないのか。それは自由経済では縮小均衡経済に入っていきますから、縮小均衡経済に入っていくときには輸出圧力はさらに強くなって輸出が意外と減らないということは、経済原則から言っても当然考えられるのですよ。考えられるけれども、いまあなたのおっしゃるように、これだけの円高になっても輸出の金額は全然変化がないというのは、どうもごく最近の数字ではないのではなかろうかという感じがする。それはいつごろのお話ですか。
  79. 西山敬次郎

    ○西山政府委員 十月の認証統計によりますと七十二億ドルということでございまして、まだ減少いたしておりませんが、これは私は長く続くということは申し上げていないわけでございまして、いずれは減少するときが来るのではなかろうかと憂えておるわけでございます。
  80. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると通産省、先ほどいろいろ新規契約が減少した、あるいは商社やメジャーが注文を差し控えたために受注が減少した、そういう幾つかのことが通産省調査では具体的に示されておるのでありますが、そういうのは統計に出るほどの大きな数字じゃない、本当の小さな、わずかな金額にしかならない、こう見ているのかどうか、通産省調査はどうですか。
  81. 西山敬次郎

    ○西山政府委員 わが国の輸出の四割近くが自動車と鉄鋼と造船ということになっております。九だいま中小企業庁の長官から御報告申し上げました品目につきましては、そのシェアはかなり低いものでございますが、この効果につきましては、この後十一月以降減少してまいるという傾向が出てくるのではなかろうかと考えておるわけでございます。
  82. 武藤山治

    武藤(山)委員 通産省日本の輸出構造を見ると、自動車が一三・二%、船舶が一〇・九、去年の実績ですね。家電が五・九、科学光学機械、二輪自動車等その他が二九・六、銅、鉄鋼が一五・二、繊維及び同製品は一六・一、化学製品が五・五、その他一三・六という数字ですね。これが日本の去年の輸出の品目別の構造ですが、そうすると通産省がいま調査した結果でこういう品目の中で特に打撃を受けているのは繊維とその他の一三・六%に含まれる輸出品目、そういうことになるので、全体から見たら、ほんのごく微少、わずかなものである、こう理解していいのかどうか、通産省どうですか。
  83. 西山敬次郎

    ○西山政府委員 先ほど申し上げました自動車、鉄鋼、船といったものがかなりな割合を占めておるわけでございますが、決してただいまの繊維その他が微少とは申し上げません。これらにつきましての効果は、いずれ年末から来年当初にかけまして輸出の減少としてあらわれるのではなかろうかと思っております。
  84. 武藤山治

    武藤(山)委員 総理大臣、いずれにしてもいまの貿易黒字を減らす、経常収支黒字をできるだけ少なくする、そういう世界的要請が日本にのしかかってきているわけでありますが、なかなか不況のときに輸出が減るという経済体質になっていない。それは日本の経済体質がもうそうなっておるわけですね。  そこで、これからそういう問題を、今度は少し長期的にながめた円対策、いままでは熱冷ましの当面の問題でありますが、やや中期的見地からこういう円に対する圧力をできるだけ避けさせる、そういうための具体的手だて、これはまたなかなか問題だと思うのでありますが、通産省の場合は、その産業構造そのものを転換をしない限り、そういう輸出増になるような体質はなかなか変わらない。その構造変革をどうするかということは、口では簡単ですが、これは大変な失業者を生み出し、あるいは倒産を生み出し適切な転業をし得る業種が見当たらない。もし輸出をかなり減少させるという手だてを政策的にやるには、そういう内部の摩擦というものは想像を絶するようなものが私はあると思う。  そこで、いま根本的にやらなければならぬ問題はどういうことなのか。中長期的に見た場合、政府としてやらなければならぬことはどういうことなのか。これは一番権威者はだれですか。通産大臣ですか、総理大臣、経済の神様ですか。総理大臣にまず聞いてみましょうか、これから中期的にどう何をなすべきであるか。
  85. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、先々の日本国際収支につきましては楽観をしておりません。つまり、わが国の国際収支を動かす石油輸入、この石油価格の動向というもの、これが非常に不安定である。これをまずわが国としてはよくとらえておかなければならぬ。それからもう一つは、わが国の輸出の大宗であるところの繊維、これがなかなか容易な状態ではないという問題があります。それからさらに造船ですね、造船輸出は、これまたわが国の輸出構造の中でかなりの大きな比重を持っておるわけですが、この状態はだんだんと先細りの状態になってくる。そのようなことをあれこれ総合いたしますと、私は、わが国の国際収支の前途というもりは、これはなかなかそう楽観はできない、そのように考えておるわけであります。ただ当面、ことしあたりはそういう状態ではない。わが国の輸出がとにかく高水準に推移しておる、それからさらに逆に輸入の方がなかなかふるわぬ、こういうようなことがあって、そして経常収支で相当の黒字が出る、そこで国際的に大きな関心を集める、こういうことになっておりますすが、私は、ことしはことしとして、そういう状態に対して緊急の措置を講ずる必要がある、そういうことから緊急輸入だ、こういうこと。この緊急輸入は、これはもう毎年毎年続けるわけではありません。ことしの問題の処理として、私は、そういう長期展望の中で非常に大きな意味を持つであろう、そういうふうに考えておるわけであります。  わが国として非常に大事なことは、わが国自体の問題もありますけれども、とにかく日米欧ですよ。この三極が相協力いたしまして、そしてこういう世界的な不安の状態の中で保護貿易体制というものが頭を持ち上げるということを絶対に阻止しなければならぬ。これは世界のためにも必要である。同時に、わが日本の国が生きていくというためにも必要である。その辺に大きな重点を置いた施策を進める必要がある、そういうふうに考えております。
  86. 武藤山治

    武藤(山)委員 私は、先ほど申し上げましたのは、いまは熱冷ましだ、そして円対策を緊急にやるというミクロの問題と、今後——総理はいま、やがて国際収支は楽観できる状態ではなくなる、この楽観できるか楽観できないかという基準がまた問題なんですよ。国際収支というのは黒字であればいいというだけでは国際協調、連帯と協調にならない。内外均衡が維持されたときに国際的な信用といまのアンバランスが解消するわけですからね。だから、とんとんでいいんです。経常収支とんとんというところに常に持っていくということがいいことなのであって、とんとんにいくためには——来年一年たってもとんとんにいきませんよ。もうすでに日本の銀行や研究機関では、来年の経常収支もこのままいったら八十億ドルになるだろうと言っておるのです。そしてことしは七十五億ドルの経常収支に改定をしたけれど、恐らくことしもこの七十五億ドルじゃきかぬね。大体私の感じでは、経常収支八十億ドルから九十億ドルにいく。ひょっとすると百億ドルになりますよ、日本のいまの経常収支。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕 そうすると来年も、いま各大臣にずっと輸入品目を言ってもらったけれども、日銀統計からいろいろ品目別、地域別の貿易の金額をずっと一わたり当たってみても、どれが輸入ががくっとふえるかというものがなかなかない。そうすると来年の経常収支もまた八十億ドルぐらいになる可能性がある。だとすると円に対する風圧はまた起こってくる。円はどこまで上がるか、まだこれ、大問題が残るね。私は、円がどの辺まで風圧で上げられるかということについて、後でまたその問題は専門にひとつ質問をしてみたいのでありますが、考えられるいろいろな中長期的対策は、輸入を増加させる、あるいは輸出の自粛をいかにうまく誘導するか。総理はこの前、秩序ある輸出と言った。しかし、秩序ある輸出と、言葉は非常に体裁はいいが、実現しないから世界じゅうが信用しない。秩序ある輸出が実現しないのです。だから風圧がかかる。たとえば、秩序ある貿易をやるというのなら、あなたが総理大臣になってからでも、たとえばヨーロッパの関係だけ見ても、ことしの七月、ヨーロッパヘの輸出は月に十五億九千七百万ドル、それに対して輸入は六億二千万ドル、輸出の半分。六月も、ヨーロッパに十二億七千六百万ドル輸出に対して、輸入は六億一千二百万ドル。そういう比率関係が、ヨーロッパはこの三月からずうっと同じような趨勢をたどっている。また、アメリカとの関係を見ても、アメリカとの八月の輸出輸入関係は、輸出が十六億五千百万ドル、輸入は九億六千二百万ドル。ここだけでもう一カ月で七億ドルも日本の方が黒なんですよ。その前の月を見ても、十七億六千二百万ドルの輸出に対して十億二千九百万ドルの輸入、これも七億ドルの差がある、アメリカ日本関係だけで。ヨーロッパとの関係も、さっき申し上げたように一カ月で九億ドルも差がある。その趨勢は三月からずっと変わっていないのですよ。これだからヨーロッパとアメリカから日本だけが孤立をさせられる。いま日本は世界の孤児になってしまっている。円をめぐって世界の孤児だ。ドルに責任をかぶせようとして何とか協議をしようとしても、だれも日本との共同歩調をとって協力してくれる国はない。そういう状態にいま日本は孤立化しちゃった。この責任は大きいですね。  福田内閣が誕生して今月で約一年になる。会社ならここで貸借対照表と損益計算書を出さなくてはならない。福田内閣のこの一カ年間の損益計算書、貸借対照表をながめると、大変いびつであります。健全な決算と言えない。何をやったのか、国民のためにどんな安心されるいい経済政策を実行したのか。外交的にも、福田内閣はこの一年間に日中平和友好条約も決断つかない。内外ともにこの一年間の貸借対照表は余り好ましい状況でないような気がするのですね。この前の二月の予算委員会のときはまだ福田内閣はできたばかりです。野球で言うならば二回の表ぐらいです。いま福田内閣の評価をすることは酷である、だから差し控えましょう、そういうことで私は深く追及しなかった。しかし、いよいよ一年たつのですからね、総理。この一年間に国民の前に示す貸借対照表はもうちょっとすかっとしたものにしないと、福田内閣は最終的には野たれ死に。来年もまた経常収支がかなり黒字で、世界的な反撃を食って袋小路に追い込まれて、あれやあれやと言っている間に、なす手がなく福田内閣が混迷をする時代が来ると私は思う。いまその熱冷ましを適切に行い、中期的な、根本的な治療策を提言しないと、そういう結果になるのではないか。したがって、輸入の増加をどう図るか、輸出の自粛をどうするか。資本主義経済で輸出の自粛、秩序ある輸出というのは一体どうしたらできるのか。いま申し上げた日銀統計によると、さっぱり秩序ある貿易になっていない。これを一体どうするのか。関税率の引き下げも、東京ラウンド前に総理は踏み切るというようなことが新聞にちらっと出ていた。しかし、またそんなこと言った覚えはないと逃げるかもしれない。そういうものをいつ決断するのか、そういう問題もかかって大きな重大課題だと私は思うのであります。  さらに、日本の国内需要拡大をする、そして内外均衡を維持する。しからば、国内需要の拡大策、名案があるのか。個人消費の拡大民間設備投資、財政支出、どれこれをとってみてもみんな大きな制約と壁がある。三〇%の国債発行歯どめも、この段階になると、これをこのまま置いたら内需拡大の財政政策はとれない。しかし、それをとっ外すことは、国債発行を四十一年に踏み切った当時の蔵相福田赳夫さんとしては、この歯どめを取っ払ってとめどもない日本の赤字財政の道は後世に大変禍根を残して名を汚すので、これもできない。だとしたら、内需拡大は一体いかなる手法で何を具体的にやるのか、まさに頭が痛くなるようなむずかしい問題であります。私にも名案はありません。もし私にその名案を聞かせよと言っても、私は個人消費をふやす方法は、減税か、あるいは各企業の社長が福田さんに同情して、この十二月の年末賞与を思い切って去年より二、三〇%よけいくれれば個人消費はふえる。しかし、企業家はそんな状態でないと反論するかもしれない。もう一つの手は、幸い日本の貯蓄性向は世界一だ。二四%という貯蓄性向がある。これは世界の倍の高い貯蓄水準であります。この貯蓄を、国民に、半分やめてくれ、半分減らしてもっと需要に回す方法はないか、そういうことを訴えるか。個人消費の拡大、内需の拡大と一言に簡単に言うけれども、その具体的中身はわれわれの知恵をしぼった限りその程度のことしかなかなか見当たらない。恐らく福田さんの脳みその中もその程度じゃないかと思うのであります。こういうもろもろのことを考え、さらにアメリカ国際収支改善を求める、節度あるドルの信認を守れるようなアメリカの経済財政政策を強く求める、これもなかなか国際関係でむずかしい。年間四百億ドルないし四百五十億ドルのOPECの黒字が世界不均等発展の最大の要因であるから、これと話し合いをつけることも長期的には重要でありますが、なかなか困難である。アメリカとヨーロッパと日本だけの個々の国々の関係黒字だ赤字だではんかしていたのでは際限がない、貿易構造を変えろという議論になる。どう変えるか、大変むずかしい。むずかしいけれども、もっとわれわれは探求する問題があると思う。  たとえば中国との貿易も、早く平和条約を結んで、中国が売ってもいいという原油を買って、中国と日本の間では日本が赤字になる、しかし日本アメリカの間では日本黒字になる、アメリカの赤字は中国との関係で消してもらう、そういう三国間なり四国間の全体を見て貿易じりというものを論じてもらわない限り、日本のような構造の国家は私は世界の中で協調していけない体質になってしまうと思うのであります。いま私が申し上げた幾つかの中期長期的な政策を具体的に取り組む以外に、私は、日本が世界に向かって日本の経済は真剣に連帯と協調のための世界づくりに協力をしているということは言えないと思う。  総理はそれらの問題について、少々今度は中期的な論点で日本円高問題をどのように対処するか。私はいま幾つか提言を交えて意見を述べました。総理の見解をお聞かせいただきたいと思います。
  87. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 中長期的に見ると、先ほども申し上げましたが、わが国の国際収支はそう楽じゃないと思うのです。まあ私が望ましい国際収支のタイプはどんなことかといいますと、やはり三、四十億ドルの経常収支黒字を残したいのです。わが国は資本収支におきまして対外経済協力を強化しなければならぬという問題もある、また民間の海外投資を迫られておる、こういうような状態もあります。そういうことから考えますと、三、四十億ドルの経常収支黒字は私はぜひ必要だ、こういうふうにいま考えておりますが、そういうことを展望しながら今日の状態をながめてみると、今日この時点ではかなりの黒字を出すような状態であって、諸外国からいろいろ文句を聞かされる、こういうような状態。ですから私は、ここで緊急輸入をぜひひとつやってのけたい、こういうふうに思うのです。  それから来年のことを展望しますと、さらに私は今回の円高がことしの暮れあたりからだんだんあらわれまして、来年あたりはかなり影響をもたらすであろう、こういうふうに見ておるわけでありまして、その辺のことも頭に置きながら国の経済政策を運営しなければならぬ、そのように考えておるわけでありますが、私は、そういう中でもやはりわが国といたしましては活力のある社会を維持しなければならぬ、そのように考えておるのです。そのためにはある程度の水準の成長を維持する、こういうことがいま非常に大事である。そのためにはどういうふうにするかということを考えまするときに、どうもこの一、二年の間は財政というものがかなり重要な役割りを演じなければならぬ状態にある、こういうふうに考えておるのです。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕 その辺の考え方に立ちまして今後の経済を運営してまいりたい、そのような考え方であります。
  88. 武藤山治

    武藤(山)委員 大臣の答弁は全く抽象的ですね。私は具体的にいま幾つかのことを提言をしたのですが、三十億ドルの緊急輸入のこともどうも願望であって、さっぱりこれは政府としての政策までは上がらない。いまの答弁を聞くと、中長期に何を具体的にやろうとするのか、これは国民が知りたいところがさっぱり明快でないですね。ただ経常収支は三十億ドルか四十億ドルくらいの黒にしておきたい、それがいまの答弁なんです。問題は、そういう経済になるために中期、長期的にあるいはいま何をどうなすべきか、貿易構造の転換なら転換をどうするのか、あるいは産業構造をどういう形に変革をしていくのか、そういうようなことの中身が全然述べられない。それを少しはっきりさせなければ国民の知りたいことに答えたことにならぬのであります。これはちょっと話が細かくなるので総理では無理なのかもしらぬが、企画庁長官が答えられるのですか。
  89. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま総理が基本的なことをお答えになりました。将来の日本の貿易構造としては、基礎収支でとんとんにいくようにしたい、したがって、経常収支では三十億ドルないし四十億ドル、前期経済計画では四十億ドルの黒字を持って、これで対外援助であるとかあるいは資本投資をしたい、そして基礎収支でバランスをとりたいというのが前期五カ年計画の構想でございます。  当面の問題については、武藤委員からいろいろお話がございましたけれども、当面の円高の影響を受ける業種における雇用問題に最大の重点を置いて、何とか失業者が出ないように、仮に不幸にして出た場合にはこれの対策について万全を期すということをいたしながら、中期的にはやはり産業の転換を図っていかなければなりません。  この産業の転換の方向は大体三つの方向であろうと思います。一つは、省資源、省エネルギー型の産業に転換をしていくということでございます。それから第二点は、いろいろなこれからの日本の産業について、付加価値の高い産業を育成していくということではないかと思います。これは具体的に言いますと、電子工業等を中心とする、またこの周辺の産業が一つの例ではなかろうかと思います。第三は、やはり他の国々との調和を図っていく、すなわち開発途上国との調和を図りながら日本の産業構造を転換していくということでありまして、繊維産業について申しますと、やはりより高級なものをつくっていくということではなかろうかと思います。  しかし、これらの産業構造を考える場合に一番重要な問題の一つは、やはり雇用の問題ではなかろうかと思います。今度の円高の不況の状況でも、日銀の調査等でいろいろ伺ってみますと、秋田、青森あるいは鹿児島、あるいは熊本、こういうところ、あるいは釧路は漁業の関係、そういうところで比較的円高の影響が少ない、そういう調査が日銀の支店長会議等でも出ておるわけでございます。したがって、農村の関係がやはり安定しているということが下支えになっているということもございます。それから、いま雇用吸収力が非常に高いのはやはり繊維産業並びにこれに関連している産業、これは一説には、流通を入れますと二百七十万とも言い、あるいは二百四十万とも申しておりますが、非常に大きな雇用を抱えておるわけでございますから、この繊維産業をどう転換させていくかというのは非常に大きな問題でございます。それから、将来伸びていく産業の一つとしては、先ほど申しましたような産業と同時に、やはり建設関係というものは一つの大きな目になるのではないかというふうに考えております。それから、やはりいま非常に大きな雇用を抱えておりますのは卸と小売業でございます。こういうものをこれからどういうふうに合理化しつつ考えていくかということが将来の産業の方向ではなかろうかと思いますので、やはり雇用の問題というのが非常に重要な問題であり、雇用吸収力のある産業をこれからどうやって考えていくかということが一つの方針ではないか。したがって、そういう問題を考えていく場合の一番大事なことの一つに、今度の円高を契機といたしましてやはり世界経済との調和ということを真剣に考える必要がある、そういうふうに思っておる次第でございます。
  90. 武藤山治

    武藤(山)委員 調和を考えていると言ったって、考えているだけで実行しなければだめなんですよ。さっきのいかにして緊急輸入をかなりの金額現実に実行するか、あるいはいかにして日米、日欧関係の輸出輸入をバランスをとるか、その具体的な中身を世界に示さなければ信用しないのです。日本も信用されていないからよけいやられるのですよ。あなたの言うようなことで、一体いまの円高風圧というものは消え去ると思っているのですか。  二百四十七円、いわゆる二百五十円台を割ったいまの円高というのはいつまで続くと見ているのか。さらにまた、これが二百六十円、二百七十円に戻ると思っているのか。大体円相場はこれからどういう推移をたどると見通していますか、総理大臣
  91. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 為替相場の今後につきまして私が所見を述べたら、これは世界的に大混乱を起こすことになりますから、これだけはひとつ御勘弁を願います。(発言する者あり)
  92. 田中正巳

    田中委員長 御静粛に願います。
  93. 武藤山治

    武藤(山)委員 経企長官と大蔵大臣、経企長官はこの前、二百六十円が妥当な相場である、こう言った。大蔵大臣はこの間国際会議にも行って、よく国際的な議論は耳にしている。大体、円はどのくらいがいつまで続くのか、いまの状態がどのくらい続くのか、あるいはまた戻るのか、戻るとしたらどの辺までに戻る可能性があるという感じを大体持っているのか。
  94. 坊秀男

    坊国務大臣 お答え申し上げます。  結論はまさに総理大臣がお答えしたとおりでございまして、大蔵大臣の私が一定の線を引きまして、そういうようになる、あるいはそういうふうに誘導していくとかというようなことは、これは私は、そういうことはやるべきでもありませんし、またここでそういうようなことを申し上げるということは差し控えさせていただきます。
  95. 武藤山治

    武藤(山)委員 総理大臣、マルクは比較的世界各国から非難、攻撃を受けていない。風圧を受けていない。新聞報道によれば、バーグステン米国財務次官補は、もうマルクについてはこれ以上大幅の上昇はないだろう、国会でそういう説明をしている。マルクはこれ以上大幅上昇はもうないだろう。日本の円については一言も触れない。ということは、ドイツはこれで大体国際的コンセンサスが得られている、マルクの水準は。日本の円はまだこれから日本政府のやり方、出方いかんによっては上がるぞ、こういうことを逆に、裏を読むと示唆しているような気がする。こういうアメリカの財務次官補の発言に対して総理はどんな感想を持ちますか。
  96. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 通貨の展望につきまして主要先進国の責任者がこれを語る、これはできる限り慎むべきものである、こういうふうに考えております。
  97. 武藤山治

    武藤(山)委員 マルクはこれ以上もう上昇はあり得ないが、円はあるかもしらぬという余韻を残した。いまの二百四十八、九円、この辺のレートというのは大蔵大臣、実勢価格だと思いますか、いまの円高は。
  98. 坊秀男

    坊国務大臣 このことにつきましては、先ほどもお答え申し上げましたとおり、フロート下における需給というものによって決定されることでございまして、これが正しいとか正しくないとか、これはフロート下の需給によって決定されることだと思っております。
  99. 武藤山治

    武藤(山)委員 日銀総裁、いまの円レートは実勢でしょうかね。大蔵大臣は大蔵委員会で村山喜一委員の質問に対して、いまのは実勢だ、そう答えたそうですね。だからあなたの見解は、これを実勢だと言っているのです。フロートだから、自由に価格が決まるんだから、だからこれは正しいとか正しくないとかは言えないけれども、そういう需給関係で決まった値段だと言っているのです。だから、いまの円高は実勢価格だと言うのです。確認しますよ、いいですね大蔵大臣、実勢価格ですね。
  100. 坊秀男

    坊国務大臣 需給によって決定されたものと思います。
  101. 武藤山治

    武藤(山)委員 日銀総裁、私はいまの、九月二日以降の円高の動きを見ると、本当にこれは実勢なんだろうか、大変疑問を持つのです。日銀総裁としては、通貨を担当する番人として、本当のところどう感じていますか。
  102. 森永貞一郎

    ○森永参考人 フロート制下でございますので、そのときどきの為替市場における需給によりまして為替相場が決定される。言いかえれば、そのときどきの為替市場の実勢によって為替相場が決定されるわけでございますので、いまの、きょうは少し円高でございますが、七円前後の為替相場は、そのときどきにおける実勢だと言わざるを得ないわけでございますが、この一月余りにおける為替市場の推移をながめますと、率直に感じますことは、少し急テンポにかつ大幅に為替相場が上がり過ぎた点は否めないのではないかと感じております。
  103. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると日銀総裁、急テンポに上がり過ぎたきらいがある、それは実勢——大体フロートというのは自然の成り行きで、おのずから無理のない、そういう状態で値段が決まるのが真のフロートですよ。しかしそれが自然でない場合、いまあなたがおっしゃった急テンポに上がるような場合には、自然の成り行きでない要素が何かあるのではないか。それはやはり投機があるじゃないですか。そう私は感じますが、御見解はいかがですか。
  104. 森永貞一郎

    ○森永参考人 九月末以後、いろいろな事件と申しますか、有力者の発言などが契機になりまして、このところとみに円高感、アメリカにおきましてはドル安感みたいなものがはびこってまいりました結果、投機的な動きが刺激されまして、ときに乱高下的な動きがございましたので、私どもといたしましても、そのときどきの情勢に応じ、介入によりまして極力乱高下を防止するように努力をしてきた次第でございまして、投機的な動きがその間においてなかったとは言えないかと存ずる次第であります。
  105. 武藤山治

    武藤(山)委員 投機的動きがなかったとは言えない。ということは、あったということなんですか。
  106. 森永貞一郎

    ○森永参考人 投機的な動きもあったと思います。
  107. 武藤山治

    武藤(山)委員 投機的動きがあった。世界各国は、そういうフロートというものが自然の成り行きで価格が決まるのでなくて、投機筋の介入で価格が上下するという、そういう場合にはフロートの本旨に反するから介入をしてよろしいというのが国際的な取り決めですか。これは日銀総裁ですか。
  108. 森永貞一郎

    ○森永参考人 いろいろな資金の動きによりまして為替相場が乱高下的に動く場合、その場合には、国内経済あるいは世界経済にもいろいろな影響をもたらしますので、そういう乱高下を防止するために所要の介入をすることは国際間においても認められておる、フロート下においても認められておることでございます。
  109. 武藤山治

    武藤(山)委員 日銀として買い支え、介入を何回か行ったようでありますが、これは何回行って、その金額はどのくらいになりますか。
  110. 森永貞一郎

    ○森永参考人 その日その日の各国の介入の規模、これは事後におきましても、あのときこういう介入をしたということがわかりますと、投機筋に対しまして今度もこういう動きをとるだろうというような憶測の種を与えますので、介入の内容、時期、規模等につきましては一切秘密にするということが国際間の約束、中央銀行間のかたい約束になっておりますので、いまお尋ねの点に詳しくお答え申し上げるわけにはまいりませんが、この間における介入の規模としては、日本は西ドイツその他の国に比較いたしまして、はるかに大きな介入を実施したことだけは申し上げたいと存じます。
  111. 武藤山治

    武藤(山)委員 かなりの金額介入をしている。  総理大臣、そういう投機筋というものが今後起こらないような、そういうためにきちっとした姿勢というものをやはり内外に示す必要があると思いますね。自然の成り行きで円が上がるということはこれはやむを得ぬ。しかし、いま日銀総裁もはっきり投機筋が動いたことを認めた。投機があった。そうすると、そういう場合にはやはり政府も日銀もはっきり世界じゅうに、やむを得ない、こういう投機が入ってきて国益を損なうようなことになる場合には毅然とした態度で臨むということを政府としてもきちっとやはり言明すべきだ、こう私は思うのですが、総理いかがですか。
  112. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 それはそのとおりで、そのための手法といたしまして日本銀行の介入ということが認められておる、こういうことです。しかし、介入という問題は、国際的に認められておりますが、とにかく投機、そういうことは好ましくないことでありますから、投機があるのかないのか、投機を判断するということ……(「あったと言った」と呼ぶ者あり)いやいや、判断は非常にむずかしい問題なんです。具体的な投機行為、それが一体どういう性格のものであるか、こういうことを突きとめることはなかなかこれはむずかしい問題なんです。  私も投機があったというような感じがしておりますよ。しかし、さてそれが具体的にどういう証拠をもって投機であったというようなことになりますと、なかなかこれはむずかしい問題もあるのです。しかし、投機は好ましくない、そういう立場につきましては、政府といたしましても、日本銀行といたしましても厳重に目を光らせております。
  113. 武藤山治

    武藤(山)委員 日銀総裁、投機があったやにだれが見ても感ずるのは、九月二日二百六十八円四十銭が、ほんの二カ月間で二百四十七円にまでなるということは尋常の方法ではない。そうすると、こんなにも円高になってしまって国内にいろんな摩擦や損害を与え、国益を損なうようなことも起こりかねない、それを見抜けなかった責任はだれにあるのですか。これは投機だ、投機だから投機の場合は国際的な了解を得て思い切った介入をする、そういう措置もとる気ならとれたと私は思うのです。その投機を見抜けなくて、ずるずると九月二十八日来今日まで七・六%もわずかの期間に高くなったのですね。このわずかの期間に七・六も円が高くなるということを、その場その場の相場の動きを日銀はちゃんと監視しておって、これは投機筋がかなり殺到してきておる、これはチェックしても国際的な非難を受けない、天下にこれは明らかにして、日銀は思い切ってやりますぞ、そういうことを適切に臨機応変にできなかった責任は日銀総裁にあるのですか、政府にあるのですか、日銀総裁の見解を聞かしてください。
  114. 森永貞一郎

    ○森永参考人 責任の所在論は私の口から申し上げるのもいかがかと存じますが、私ども介入に当たりましては、もちろん政府と緊密に連絡をしながら、そのときどきの対処策を決定いたしておりますことをお答えいたしたいと存じます。  なお、その間の経緯につきまして、もう一言つけ加えて申し上げなければならぬことは、なるほど一月余りの間に七%ということはテンポも速過ぎましたし、大幅に過ぎたということは先ほどお答えいたしましたとおりでございますが、その裏には何と申しましても日本経常収支黒字が非常に大きいということ、この上半期の経常収支黒字がどのぐらいでございますか、六、七十億にはなるのではないかと思いますが、そのことについての世界的な相場感、円高感あるいはドル安感と申しますか、というようなことがほうはいとして起こりまして、それに対しましては極力私ども介入によりましてならすように、乱高下を防ぐように努力をいたしましたけれども、市場の実勢にはいかんとも抗しがたいものがあったわけでございまして、それも何十億、何百億ドルの介入をいたしますればまた別でございましょうけれども、それはまた国際的にいろいろ問題が起こるわけでございまして、フロート制から逸脱するということになるわけでございます。  フロート制下におきましては、あとう限り時宜に適した介入をいたしたつもりでございますが、市場の実勢には抗し得なかったというのが実情であるということをつけ加えて申し上げておきたいと存ずる次第でございます。
  115. 武藤山治

    武藤(山)委員 日銀総裁、それではいまのその介入をやった金額は国際的な取り決めで発表できない、しかし政府と相談をして、これは投機筋がかなり来ておる、どうしてもここは徹底的な介入をするという、あなた、後に悔いを残さないような、そういう徹底的な踏ん切った介入をしたということもあるのですか。それとも、これはいろいろ国際的な圧力があって、日本の円はこの程度が当然なんだ、いまの日本の国力から言ってやむを得ない線なんだ、そういう配慮があれば徹底介入はできないわね。そうすると、いまのは実勢で、日本円高というのは大体この程度は当然なんだという認識に立つのか、これは少々高過ぎると感じておるのか、それは総裁としてはどうなんですか。
  116. 森永貞一郎

    ○森永参考人 現在の円の相場が適正であるかどうかということにつきましては、フロート制下でございますし、また為替政策の運用の一端を預かっておる者といたしまして、みだりに言明をしない方がよろしいのではないかと存じますので、御質問にお答えできませんことを大変残念に思う次第でございます。しかし、いまのような国際収支黒字下におきましては、ある程度円相場の上昇はやむを得ないことではなかったのじゃないかというふうに率直に感じております。
  117. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういたしますと総裁、国際収支がこういう黒字の状態ならばある程度やむを得ない——経常収支も貿易収支もいまの状態がいつになったら好ましい状態に解決されるかという見通しが立たない。先ほどから総理大臣以下各大臣に聞いておるけれども、いつになったら、たとえば経常収支が三、四十億ドルの状態になるのか、それがはっきりしない。そうすると、まだまだ円に対する圧力というものは今後も起こり得る、続く、戻らない、こういう感じがするのですね。総裁は、金融政策を担当する責任者として、貿易関係なり経常収支なりがどういう姿になったときには大体円に対する圧力は解消するだろう、その目安は、一体どういう姿のときにそういう風圧が消えるか、それはどの程度を設定しておるのですか。
  118. 森永貞一郎

    ○森永参考人 具体的な数字の問題はなかなかお答えしにくいのでございますが、基礎収支と申しますか経常収支プラス長期資本収支、その両方の合計、基礎的収支がほぼバランスするようなところへいくのが理想ではないかというふうに考えております。  日本もこれからこの国際収支の型が違ってきまして、商品輸出よりもだんだん資本輸出の方に向かっていくべきかと思いますが、また国際経済協力というような必要もございまして、何がしかの経常収支の黒は必要だと思います。その中から国際協力その他の援助あるいは資本輸出等が賄えるぐらいの黒字はなくてはいかぬわけでございますので、理想としては、基礎的収支がほぼ均衡するというようなところに参りますのが望ましい姿ではないかと思っておる次第であります。現に西ドイツでは、経常収支日本よりはるかに小さいのでございますが、若干の黒字でございますけれども、長期資本収支を含めました基礎的収支はむしろ赤になっておる。そこのところが円とマルクとの環境の違う一番大きな点でございまして、数字的にお答えできないのは残念でございますが、抽象的にはいま申し上げたようなことを私は考えております。
  119. 武藤山治

    武藤(山)委員 総裁、アメリカのモルガン・ギャランティー調査などを雑誌で読むと、円はあと一〇%ぐらい高くなっていいのだ、二百四十円ぐらいが望ましいのだ、あるいはまたフランスの雑誌は二百三十円ぐらいが当然だ、ドイツのドイツチェバンクが出した数字では二百四十円。だから二百二十五円から二百四十円ぐらいが円の大体実力だ、こういうような論評がかなりにぎわっている。これが世界の投機筋に読まれて、さらに円に対する圧力になってまた日本に戻ってきているわけだと思うのでありますが、こういうそれぞれの国が二百三十円なり二百四十円というようなことを言っている根拠、論拠ですね、那辺にあるのか、感じとして。これは総理大臣と日銀総裁、お二人にお聞かせ願いたいのです。こういう論評に対する論拠が何でそういうものが出てくるんだろうかというお二人の見解を。
  120. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 一つはスミソニアン・レート、これに比べまして円がどういう立場におるか、これは二〇%を超える切り上げになっておりますが、ドイツの方はこれが四〇%を超える切り上げになっておる。そこで日本の切り上げ率が足らないんじゃないかというような説をする人が多いようでございますが、日本はそれに対しましてどういう立場にあるか、こう申しますと、ドイツではインフレの進行が非常に少ないわけです。わが国はインフレが非常に高かった。ことに石油ショック後のインフレ、これが高かったということですね。これが私は強調されなければならぬところである、こういうふうに考えておりますが、ともかくいろんなことでいろんな見方が立つ、これはしようがありませんけれども、わが国としてはインフレがドイツに比べますと非常に高いところにあったということは事実である、こういうふうに考えます。
  121. 森永貞一郎

    ○森永参考人 いろいろな説をなす方々があるわけでございますが、一つはいま総理大臣がおっしゃいましたスミソニアン・レートとの対比でございましょうか。その点につきましては、私ども総理が仰せられましたごとく、日本とドイツとの場合ではインフレ率そのものが大変違うわけでございますし、また為替銀行の対外短期負債等の状況も基本的に違っておるわけでございますので、ドイツと一緒に議論をされては困る、それは間違いであるという主張をいろいろなところでいたしておるわけでございます。  そのほかに、たとえば為替レートの上がり方と卸売物価あるいは輸出物価の推移を比べて、まだ円レートが高くなってもいいのじゃないかというような意見を述べる方もございますが、これは一体物価を何によってとったらいいのか、その辺にもいろんな問題がございます。消費者物価を入れますと、西ドイツとの比較の場合に申し上げましたような実情に、日本はまだ消費者物価はかなり高いわけでございますので、その辺につきましては理論的にいろいろと問題があるわけでございまして、私ども、すべての議論を検討し尽くしたわけではございませんが、日本の立場としてはかなりいろいろな言い分がございます。異を唱えてしかるべき場合だと思っておる次第でございます。
  122. 武藤山治

    武藤(山)委員 日銀総裁は、いまの円高に対して政府としてこういうことをやるべきだ、こういう手段を講ずべきである、あなたがアメリカから帰ったときですか、所得税の減税で個人消費を拡大する必要があるのではないかという意味のようなことが新聞に報道されたのをいま思い出しているのでありますが、さらに国内政策としてこういうことをやらぬことにはとても日銀としてももうこれは防ぎ切れないのだ、もしそれをあなたが率直にここで総理のいる前で、こういうことは日銀としては期待をし、政策的に要望したいのだ、それを幾つか拾い上げるとしたらどういうことをやるべきでしょうか、ちょっと日銀総裁としての見解を聞かしてください。
  123. 森永貞一郎

    ○森永参考人 所得税の減税を具体的に提唱したつもりはございません。アメリカでのこのIMF会議の最中での記者会見で、諸外国がいろいろ申しましたのを受けまして記者諸君の方から、減税はどうかというような話が出ましたので、減税も含めて来年度予算をどうするかという問題は、政府においても慎重にいろいろと御検討をされるべき段階ではあるまいかということを言った次第でございまして、その点は、来年度予算をある程度刺激的にしていただきたいという気持ちはいまも変わりございませんですが、そのことを実現するための財政上の手段につきましては、いまのところ具体的にどうあるべしというようなことを考えておる次第ではございません。いま政府に特にお願いしたいことは、何といっても輸入がふえるような態勢に持っていっていただくことでございますけれども、そのために九月の初めに総合景気対策も講ぜられた次第でございますが、そういう対策の効果があらわれてまいりますのにはどうしても若干の時間がかかるわけでございますので、その間ただ待ってくれということじゃなくて、具体的にできますことからこの輸入増加についての対策を講じていただきますようにということをお願いしてまいった次第でございますが、その気持ちはいまも変わりございません。問題は、来年度予算についていろいろ政府においてもお考えになられることと存じますが、どちらかと申しますれば、やはり刺激的な内需振興型の予算をぜひともお願いしたいというそのことだけでございまして、その手段につきましては、具体的にある一つの方向にこだわって考えておる次第ではございません。
  124. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると日銀としては、これだけの円高で国内産業に打撃を与え、経済は縮小し倒産はふえ、雇用不安は増大する、こういういまの円高に対して、金融政策として何かやるべきことがまだ残されている、たとえば公定歩合をもう少し下げるのか、あるいは預金準備率をもっと縮小して資金的な余裕をもっと与えた方がいいのか、それとも逆なのか。金融政策としてとるべき手段は全部とり尽くして、もうすでにいま何もやらなくともいい。もう緊急輸入をとにかく早く実行してくれ、そして熱冷ましを具体的に示してくれ、そういうこと以外、金融政策としてとるべき措置はもはや現状ではない、こういう認識なんですか。
  125. 森永貞一郎

    ○森永参考人 ことしになりまして三回、合計二・二五%公定歩合を下げまして、それに対する市中貸出金利の追随も比較的順調に進んでおることは御承知のとおりでございます。現在の日本の金利水準は、西ドイツを除きましてそのほかの国に比べますと、格段に低いところへ進みつつあるわけでございますので、一般的な話といたしましては、この金融面からの景気回復への支援体制は十分に整っておるのではないかと思っておる次第でございます。九月初めに決定されました総合景気対策が今後効果をあらわしてくることでもございますし、いまのところはその効果を見守っておる段階ではないかと思っておる次第でございます。  なお、ミクロ的な面になりますと、輸出産業がいろいろ困って、いろいろな問題が起こってくる、その辺のところは私ども、従来に増して実情把握に努力し、不測の事態が起こらないようにという面の配慮が一層大切になってきておるという認識のもとに、支店長以下を督励いたしておる次第でございます。
  126. 武藤山治

    武藤(山)委員 どうも日銀の答弁を聞いても、総理の答弁を聞いても、日本の今日の混迷したドル安円高のこういう経済不安を、なるほどその手段で解決ができる、国民が安心して期待をかけるような答弁が何にも出てこない。まことに残念ですね。三十億ドルの緊急輸入のことですら、総理から命令を受けてない、それは政府の決定ではない、総理の単なる願望だ、数字を集めてみたら十億ドルそこそこだ。これでは、国民は一体政府の言うことの何を信用していいんでしょうかね。対策はいっぱい、細かい項目はあるけれども、金を貸しますというだけだ。その金を貸しますも、全体枠の政府の三機関の資金はいままでどおりだ。ただ為替変動による苦しい企業には倍額の融資枠を広げますというだけだ。無担保でもなければ無保証でもない。担保がなければ貸さないのでしょう。もう担保は大体使い切っちゃって、ないのがいまの中小企業の実態なんですから、これじゃ業者が聞いたって完全な対策じゃないですね。しかも、返すんだから、返すためには今後も仕事が続くという見通しがなければ返せない。どうも政府の政策は、きょう聞いた限りでは、なるほどと関心を寄せるような政策が皆無ですね。  大蔵大臣、いま日銀は、円高を、何とか投機筋を抑えるために介入をやった、西ドイツ政府よりははるかに強力な、額も多い介入をやったと。政府は、大蔵省は、介入資金をどのぐらい使ったんですか。全体の数字、明らかにしないならいいんでしょう。大蔵省政府資金は、今回の介入資金はどのくらい使っていますか。
  127. 坊秀男

    坊国務大臣 介入をどれだけしたか、総トータルの金額はどれだけやったか、(武藤委員「それはいい。トータルは言えないと日銀も……。」と呼ぶ)それは私も申し上げられませんが、私もそういうことについては申し上げるわけには、政府もできません。
  128. 武藤山治

    武藤(山)委員 では大蔵大臣、いまの外為会計、外為特会は幾らまだ余裕が残っていますか。予算総則で決められた金額の範囲内で、あとどのぐらい余裕が残っていますか。
  129. 旦弘昌

    旦政府委員 円にいたしまして、約四千億円程度枠が残っております。
  130. 武藤山治

    武藤(山)委員 円にして四千億円政府の外為特会の金が残っている。ということは、ことしの予算総則で外為が発行できる限度は、四兆五千億円、この金額には間違いないですね。予算総則で決まったこの金額には、大蔵大臣、間違いないかな。
  131. 坊秀男

    坊国務大臣 間違いございません。
  132. 武藤山治

    武藤(山)委員 間違いない。だとすると、そのうち四千億円が残っているということは、四兆一千億円買い支えに使った、こう理解していいのかな。違うとしたら、違う理由を明らかにしてください。(発言する者あり)
  133. 旦弘昌

    旦政府委員 その他運用益等がございますけれども、累計すればおおむねその程度でございます。
  134. 武藤山治

    武藤(山)委員 外務大臣、あなたは大蔵次官までやって、根っこがあるとは一体どういうことなんだ。いま、ここまで聞こえたんだ。この外為特会は、翌年度に繰り越さないんだから、そんなに根っこがあるわけがないんだ。だからいま旦さんは、おおむね私の言う数字だと承認した。これは短期国債を発行して、その短期国債でドルを買う以外にないという会計でしょう。根っこが残るわけがないんですよ。年々、ほんの二カ月ぐらいの短期国債を発行して転がしている会計なんですから。それでドルが流入したときにこれで買い支えをするというための特別会計なんだ。外務大臣、大蔵次官までやった人がそこらで、根っこが違うとやじるとは何事ですか。やじは取り消してください。  したがって、外為特別会計で四兆一千億円からの買い支えをやったということになると、これはかなりの金額ですね。ドルにしても大変な金額になる。それから日銀が恐らくかなりの金をやはり買い支えに使ったということは、大体想像がつきますね。しかし私は、やはりその使い方が、投機筋を排撃するためだったら思い切ってやっていいと思うんですよ。さっきから私が大臣に、この責任は政府にあるのか、日銀にあるのかと聞いたのは、政府もこの外為会計でそういう資金が使える仕組みができているわけですね。だから総理大臣が、投機筋で円が買い上げられるようなときには、国益に反するから、政府は思い切って介入をやるような日銀との協議をして、時期を失しないようにやりますよ、そういう答えがいただけないのでしょうか、投機筋については。
  135. 旦弘昌

    旦政府委員 本年度の外為会計の一時借入金等の最高額でございますが、これは根っこも含めまして四兆五千でございます。したがいまして、発行額の前年度末との差額が今年度の上積みということになるわけでございます。
  136. 武藤山治

    武藤(山)委員 総理に聞いている。いま何で旦さんが出てきたのか。
  137. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは投機であるかどうかということはなかなか判定がむずかしい問題ですがね。いずれにいたしましても、為替が乱高下をするという際におきましては、政府は、日銀が介入するということが国際的に認められておるのですから、その際には、そのような処置をとります。
  138. 武藤山治

    武藤(山)委員 時間ですからやめますけれども総理国際会議で、日本経常収支はとにかく赤字にするんだ、七億ドルの赤字に経常収支はするんだと。ところが、とにかく七十億ドルも黒字になってしまうということ、国際会議で約束したことが守れないで、いまどんな心境ですか。いま国際会議が開かれたら、あなたはこれをどう弁明するのですか。その弁明の中身をちょっとここで教えてください。
  139. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは経済の見通しは世界が流動状態だ。流動というよりは激動の状態です。そういう中でなかなかむずかしいのです。わが国の国際収支見通しは誤った。そればかりじゃありません、どこの国でも誤っている。アメリカはどうだといいますれば、百五十億ないし二百億ドルの貿易赤字である、これがいま二百億ドルないし三百億ドルの赤字だ。百億ドルの狂いが出てきておるわけなんです。ドイツはどうだといいますれば、これは成長五%、こういうことでありましたが、いま三・五%だ。こういうようなことでみんな狂いがあるのですよ。みんな狂いが出てきておりますが、私はその責任をお互いになすり合いあるいは責め合いというようなことではいかぬ、やはりその狂いが出てきたという状態を踏まえまして、そしてお互いに話し合ってそしてお互いが全力を尽くす、これ以外に道はない、かような見解であります。
  140. 武藤山治

    武藤(山)委員 時間ですからやめますが、七億ドルの赤字になりますと言って国際会議で約束をして、それが逆に七十億ドルの黒字になるというのは、単なる数字の誤差だとか単なる見通しの誤りなんということでは済まない。政府の政策態度が間違っているからなんだ。政府の政策が失敗をしているから現実に合わない、予想と計画と。しかも、その政策を今度実行するのに三十億ドル緊急輸入すると総理が言ったのについて、具体的な中身の詰めを聞いてみたら十億ドルしかないじゃないですか。これで世界が日本を信用しますか。アメリカの赤字がふえた、ドイツの経済成長も狂った、だから七億ドルの赤字が七十億ドルの黒字になるのが何が悪いかと言わぬばかりなんだ。その態度は国際的に通用しませんよ。私はきょうは時間がないからやめますけれども政府のそういうその場限りの行き当たりばったりの、しかも後手後手政策で自分の失敗は全く反省しない。日本丸の船長は絶対間違いないおれに任しておけと言った福田さんに、こんな状態で日本丸の船長を任せ切れますか。いまの質疑応答を二時間やったその答えを聞いて、確信を持った、なるほどと思う答えは一つもない。こんなことでは閣僚全体がもう一回日本の今日置かれた経済的状態に対して国民の前に、この道筋でこれでいけばこうなるという目鼻を、来年はもう再び円高の風圧などは起こらない、その政策はこれです。そのことを近い将来に明らかにしてください。私は時間ですからこれでやめます。ありがとうございました。
  141. 田中正巳

    田中委員長 これにて武藤君の質疑は終了いたしました。  午後一時四十分より再開することとし、この際休憩いたします。     午後零時四十三分休憩      ————◇—————     午後一時四十四分開議
  142. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。近江巳記夫君。
  143. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうの十一時現在、円は二百四十六円六十五銭、こうした異常な高さを示しておるわけでございますが、このような異常な円高というものは、わが国の経済にかつてない深刻な影響を及ぼしておるわけでございますが、この原因は何であるかということ、また、本年に入ってからのこの経済運営につきまして、総理としてはどのように反省なさっておられるか、まず初めに率直な御意見を伺いたいと思います。
  144. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今回の円高は九月二十八日から始まっておるのです。それまでじりじりと円高の傾向が続きましたが、これはやはり日本国際収支が非常に黒字基調であるということだったと思います。ところが九月二十八日以降、急激に円高傾向が出てきた。これは二つ理由があると私は思うのです。一つは、ずっと年初来続いておりました円高の基調ですね、これがある。つまり日本国際収支黒字基調であります。それからもう一つは、アメリカ国際収支が非常によくない、こういう状態が出てきた。それがなぜ九月二十八日ごろを契機といたしまして顕在化したか、こういうことになりますと、これはちょうどそのころワシントンでIMFの会議がありまして、この会議には世界各国の指導者たちが参加する、そういう人たちの間でドルの赤字、円の黒字ということが論議をされる、こういうことになり、それが一部思惑を誘発をいたすということになりまして、この一月余りに見るような急激なドル安円高、こういうことになってきたわけであります。ですから、この傾向には二つの要素がある。つまり、ドル安という面と円高という面と二つありますが、これは円が高くなっておるその反面におきまして、マルクなどヨーロッパの通貨に対しましてもドルが弱くなっておるということにはっきり出てきておる、このように見ておるわけであります。  結局、九月二十八日以降のこの変動、これは私は率直に申し上げまして、このような事態が起こるというふうには思っておらなかった。とにかくこの総合経済対策を遂行いたしまして、そして早く日本国際収支黒字過多の傾向から転換を示したという傾向があらわれてくるということをねらっておったのでありますが、そのやさきといいますか、にこのような事態になってまことに残念なことだ、こういうふうに思っておりますが、しかし、残念というだけにとどまるわけにいきません。これはあらゆる努力をしなければならぬ。その努力の一つは何だと言いますると、やはり緊急に当面する黒字を減らすといういわゆる緊急輸入措置を中心とした施策。それからもう一つは、この急激な円高によりまして輸出業者、特に中小の輸出業者、こういうものが非常に苦しい立場に立つ、その方々に対する手当てをどうするかという問題、これらを当面処理しなければならぬ、そういうふうに考えております。
  145. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理の御答弁を聞いていますと、状況を御説明になっているという感じなんですね。やはり政府自体がこういう事態を招いたという深刻な受けとめ方、また反省といいますか、そういうものがにじみ出る、そういうお答えでなければいけないと思うのです。  御承知のように、春ごろからこの円高が非常に顕著になってまいりまして、二百八十円を割った。そして六月には二百七十円というような傾向がずっとあったわけですね。ですから、いま総理が緊急の黒字減らしの対策であるとかいろいろなことをおっしゃっているわけですが、当然こうした問題に対しましてこの春ごろの時点からこれはもう真剣な取り組みがなくてはいけなかったのじゃないか。また、補正予算の問題等にしましても、もっと早く手を打って、やはり内需についてさらに一層の前進ができるような手を打つこともできたのじゃないかと思うのです。政府がそういういろいろな政府として打つべき手を打たずにきた。そして総理も、この九月の時点から急激に上がってきた、非常に驚いているということをおっしゃっているわけですが、そういう見通しができなかったということは、これは政府の責任じゃないですか。どういう問題であっても責任ということをまずきちっと感じる必要があると思うのですよ。いかがでございますか。
  146. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 率直に申しまして、九月末から起こったドル安円高、この傾向は、これがかくも急激にこのような形で出てこようとは想像しなかったのです。想像できなかったことは不明である、こういうことでありますれば、それは不明のそしりは甘んじて受けなければならぬ、こういうふうに考えますが、それまでの状態に対しましては、私は大体適正に対処してきたと思うのです。つまり、膨大な公共事業、昭和五十二年度予算、これの上半期集中執行、これをやるとか、そして集中執行でありますから、下半期には息切れをする、その息切れに対しましては、補正予算を中心とする二兆円の政府の施策による事業費の創出をやるとか、いろいろやってきたわけですが、そこへとにかく思いも寄らざるところのこういう事態が発生してきた、こういうことなんです。この発生してきた事態に対しましては、容易ならざることでありますから、全力を挙げて対処の方策を誤らないというための努力をいたしたい、かように考えております。
  147. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理は、いま見通しを誤ったというお言葉が出ましたので、私は深追いしませんけれども総理ともあろうお方が、この春ごろの時点からこれだけ円高になってきておるわけですから、当然これは二百五十円も割るんじゃないか、これはえらいことになるぞという対策というものは強力に打つべきじゃなかったか。しかし、それは率直に総理見通しを誤ったということを言われましたので、前のことばかり言っておっても仕方がないわけですから、これは大きな問題でございますから、総力を挙げて取っ組んでいかなければならないのじゃないかと思います。  そこで、この黒字減らし、緊急の対策でございますが、私は本予算委員会におきまして、十七日の日に質問しまして、七億ドルという数字政府から具体的に答弁されたわけでございますが、きょう午前中の同僚議員の質問に対しまして、河本政調会長との間におきます話し合いの中で、この三十億ドルという数字が出た、これは願望として言ったのだと総理はおっしゃっているわけですが、しかし、このことは武藤さんからもおっしゃっておりましたが、このニュースというものは、全世界に流れておるわけです。ですから、ただ単に総理が願望なんだとおっしゃっても、それは世界的には通用しないわけです。三十億ドルの緊急輸入日本がやるのだ、そういう期待の中で、アメリカを中心として皆見ておると思うのです。したがいまして、これは政府の総力を挙げて、少なくともこの三十億ドル程度緊急輸入は実現をしなくちゃいけない問題だと思うのです。前回の答弁の中でも七億ドルという数字が出まして、三十億ということになってまいりますと、残りは二十三億ドルということになるわけです。総理は、濃縮ウランあるいは原油積み増し円建て外債等をお挙げになっておられるように思うわけでございますが、こうした項目であとの二十三億ドルというものを積み増しをしていこう、こういうお考えでございますか。
  148. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まだ三十億ドルの緊急輸入をこういう内容で実施するというところまで来ておらないのです。いま固まっているのは、八億ドル内外のものでございます。しかしそれぐらいのところでは、これは円対策といたしまして実質的な効果がある対策とは言えない、こういうふうに考えておりまして、できれば多々ますます弁ずという状態でありまするけれども、この間政務調査会長と話をしましたのは、三十億ドルくらいできないかなというような話だったわけですが、これはまとまった品物になりますと、売り手側が問題なんですからね。売り手との間に売るか売らないかという問題もございます。また同時に条件というような問題もある。その他国内に引き取った場合の管理だとか、そういうような問題もあるわけでございまして、いま政府としてそういう施策が決まったのだ、こういう段階まで来ておらない、それは御理解願える、こういうふうに思いますが、とにかく多々ますます弁ず、そういうような姿勢でいま精力的に政府で取り組んでおる課題である、このように御理解願います。
  149. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理もおっしゃったように、実際にそれだけの緊急輸入ということになってまいりますると、相手の売り手の立場もある。いま総理のおっしゃるとおり、こちらの引き受け手のいろいろな手当てもあるでしょう。なかなか大変なことはわかるわけです。しかし、願望とおっしゃっているわけですが、これは本当に総理としては実現をしていきたい、そういう本当の実行目標として願望とイコールであるのかどうか、それはどうなんですか。
  150. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 何とかして実現をいたしたい、そのために最大の努力をしたい、そういう意味の願望でございます。
  151. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで中身は、総理は御答弁になっておられましたが、濃縮ウランあるいは円建て外債あるいはタンカーによる原油備蓄とか、そういうことが柱になるわけですか。
  152. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いろいろあろうと思いますが、主たるものは濃縮ウラン、それからタンカーによる原油備蓄、この二つです。それから外債お話がありましたが、これは緊急輸入じゃないのです。これは資本輸出の方でございまして、別物でございます。
  153. 近江巳記夫

    ○近江委員 濃縮ウラン原油積み増し、これでそうすると約二十億ドルを超えるということですね。どうなんですか。
  154. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは相手のあることでありまして、金額めどはまだ申し上げる段階じゃございませんけれども、できたらなるべくよけいこの際備蓄しておきたい、このように考えております。
  155. 近江巳記夫

    ○近江委員 私が円建て外債の話をしたのは、そういうものも、資本収支の方も入れて、そういう感じで、そういうことをお考えになっておるのじゃないかということで、念を押してお聞きしたわけです。これではっきりしましたけれども、結構です。いまおっしゃったように、願望イコール実現であるとおっしゃったわけですから、これは政府の総力を挙げて、緊急輸入対策、これにひとつ力を入れていただきたい、このように思います。  それから、黒字減らしに対しまして、やはり私は的はアメリカだと思うのです。それでアメリカとの交渉でございますが、わが国に特別通商部の代表が来るとかというような一部報道もされておるわけでございますが、このアメリカとの交渉について、これは非常に具体的な話も出てくるのじゃないかと思いますが、総理としてはどういう心構えで臨まれるわけですか。これは外務大臣でもよろしいですが、外務、総理と、お二人にお聞きしたいと思います。
  156. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私はいま非常に心配しておりますのは、世界で保護貿易主義、こういう動きが始まってくる、こういうことになりますと、世界の大混乱が始まってくる、そのように思うのです。そういうことで日米は、とにかくアメリカは自由社会第一の経済大国だ、その次に大きな規模を持っておるのはわが日本。その日米でございまするから、日米両国は相協力いたしまして、世界にさような不幸な事態が起こらないようにということを基本的な構えといたしまして、話をしてみたい、そういうふうに考えます。  そういう構えのもとに、いろいろ問題はあるわけです。アメリカにはドルの安定、これに努力してもらわなければならぬし、わが国といたしましては、この黒字過剰、こういう問題につきましてわが国自体の努力をしなければならぬし、また世界のいま当面する経済課題であるところのいわゆる東京ラウンド交渉、これを大きく前進させなければならぬ、こういう問題もありますし、いろいろ問題がありましょうが、要は日米がお互いにお互いを批判しておるという状態であってはならない。お互いが相協力して、世界のいまの混乱状態を何とか打開する、こういう姿勢でなければならぬ、このように考えております。
  157. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、今日のこういう異常な円高、これによりまして特に輸出産業、中小企業というものは、これは大変な打撃を受けておるわけでございます。政府として、この十月一日あるいは十一月四日にそれぞれ対策をお立てになっておられるわけです。緊急対策の問題につきまして、利子の引き下げであるとか、若干のそういう措置をなさっておられるようでございますが、通産省にお聞きしますが、これは実際動いておりますか。どうなのですか。
  158. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  先般の通産省におきまする円高対策推進本部並びに各通産局別の本部を設けておりまして、これが十一月の四日には全体会議をさらに開きますと同時に、同日閣議の決定によりまして、既往の金利のさらに引き下げをお願いを申したわけであります。なお、これらの各地におきます調査の報告を詳細に受けましたが、既契約の分につきましては、ドル建て比率の高い業種と、また産地を中心にかなり為替の差損をこうむっておる、また、新規の契約につきましては商社、ハイヤーの模様ながめといったようなことから成約がおくれておる一方、輸出向けの単価の引き下げ等を余儀なくされておるところもございまして、ほとんどの業種、産地で受注残の減少等大きな影響を受けておる、こういうふうな各種業種、産地につきましては、非常に緊張感も高まっておりますし、なお当該報告にも詳細な現地現地の報告を受けました。さらにそれの詳細につきましては、担当政府委員から詳細にお答えいたしますが、全国七十余りの輸出型の産地につきまして、通産局、都道府県の協力を得まして包括的な実態調査を行い、同時に先般もお話し申し上げました輸出輸入業界並びに団体の方に出しました調査の分も十一月十日を期してその報告が集約されるような仕組みになっております。つきましては、さらに政府委員から詳細お答えいたします。
  159. 山口和男

    山口(和)政府委員 円高によります影響につきまして、ただいま大臣から御答弁されましたように、ただいま七十六産地、二十三業種につきまして現地の影響実態調査を鋭意進めておるところでございます。ただ、それまでの間とりあえず聞き込み等によりまして調査をいたしておりますが、一応大きく分けますと、影響の比較的軽微な業種、たとえば自動車、カメラ等競争力の点で非価格競争力をまだ保持しておるというような業種もございます。また、差益によりましてある程度カバーができる、原材料の差益がある程度生じておるということによりまして円高の分を吸収しておるというような業種もございます。しかし、非常に影響の大きいと言われております業種、たとえばプラント関係につきましても、今後の契約につきまして受注関係で非常に影響が出るというようなことが言われておりますし、特に合繊あるいは肥料、石油化学、平電炉関係の業種等につきましては従来からいろいろと構造不況問題等もございます。さらに円高によりまして競争関係が悪化するというようなことで非常に問題が深刻になっていく可能性があるというように言われております。これらの点につきましてさらに詳細詰めた調査を現在鋭意進めておるところでございます。
  160. 近江巳記夫

    ○近江委員 私が先ほど質問しましたのは、そういう影響につきましては午前中政府は答弁があったわけですよ。ですから、ああいう対策をおとりになって、いわゆる既契約については返済をおくらせるとかいろいろな対策をとっておられるわけでしょう。新規の成約についても、なかなか実際はこういう制度をおつくりになっても動いていないわけですよ。だからせっかくそういう制度をおつくりになっているわけですから、さらにその困っておる方々に対しましても、これはやはり前向きの、いわゆるただ相談をかけられたら相談に乗る、そういうことでなくして、積極的にやっていただきたいということを申し上げておるわけです。おわかりですか。もう時間が非常にないから、簡潔に答弁してください。
  161. 田中龍夫

    田中国務大臣 もちろん、現地におきましては商工会議所、商工会あるいはまた都道府県の方とも緊密に連絡をとりまして、いまの構造不況対策のみならず、円高の問題につきましても積極的に、かつ、きめの細かい実施をいたしつつございます。
  162. 近江巳記夫

    ○近江委員 この輸出関連業種には非常に深刻な打撃を与えております。政府としては強力な取り組みをしていただきたいと思うのです。  それで、これは輸出業者だけではなく、やはりいろいろな点にもまた波及も出てきておるわけですね。そういう点におきまして、特に中小企業の倒産という問題につきましては、もう一千件以上の大台が連続二十五カ月続いてきておりますし、特に年未等につきましては非常に心配されておるわけです。この三公庫等を中心としまして年末融資、これには相当な力を入れなければいけないと思います。これについてはどのくらいの大幅な枠を考えておられるか。これは総理にお伺いしたいと思います。
  163. 岸田文武

    ○岸田政府委員 政府系三機関の年末融資につきまして、実は御承知のとおり第三・四半期は資金の繁忙期でございますので、三機関合計いたしまして一兆一千三百億円の資金をとりあえず用意をしてございます。大体これでもって相当程度賄えるだろうと思いますが、しかし実情を見ましてまだ不十分であるというふうに判断されましたときには機動的にこれを追加するということで対処いたしたいと思っております。まだその額等については検討は終わっておらない段階でございます。
  164. 近江巳記夫

    ○近江委員 ひとつ強力な対策を組んでいただくよう強く要望いたします。  それから、円高がここまできたわけでございますが、これはまた物価の問題等に十分生かさなければいけないと思うのです。そこで、特に為替差益で相当入っているだろうと思われるところもたくさんあるわけでございますが、石油業界、電力業界、この二点をまずお聞きしたいと思うのですが、この年間でどのくらい差益が入っておるのですか。
  165. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のとおりに石油業界、これが一番差益の大宗でございますが、先般の一応の計算におきましては一千億程度のものが入っておる。しかしながら、御案内のとおりに、これはOPECの七月の値上げ、さらにまた十二月の値上等の問題もございますので、この点はさらに慎重な態度をもって臨んでおりまするが、ただナフサの関係におきまして百五十万キロリッターの追加輸入をいたしました分につきましては、差益の点が相当顕著に出ておると存じます。そのほか電力の点等におきましては、御案内のとおりに、こり差益につきましては、今後むしろ長期にわたって電力料金の据え置きというふうなことの方が望ましいという一応の結論のもとに実施をいたしております。  なお、詳細は担当政府委員からお答えいたします。
  166. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 まず、石油でございますが、石油の場合、一円の円高についてキロリッター当たり八十五円ということを前提として計算をいたしますと、五十二年度中に二十円の円高で推移した場合には、かれこれ五千億円程度の為替メリットが出てくるだろうと思うわけでございますが、一方石油につきましては、御承知のように、本年一月と七月にOPECによる原油価格の値上げがございます。その他保安、防災関係費用あるいは備蓄費用、こういったもののコスト上昇分がございまして、これが大体六千数百億円程度になるのじゃなかろうかという試算をいたしております。この両者の兼ね合いがどの程度純粋の為替メリットとして入ってくるかということになろうかと思います。  それから電力につきましては、一部の燃料につきまして外貨建てで契約しております。この分につきましては一定の前提を置きますと、五十二年度中に約千百二十一億円の為替差益が発生するものと見ておりますが、一方で昨年の料金認可の際に、当然OPECの原油価格の引き上げというのを織り込んでおりませんが、この影響が約三百八十億ございます。差し引きいたしまして純粋の為替メリットは七百四十一億円程度ではなかろうか、かように試算をいたしておるわけでございます。
  167. 近江巳記夫

    ○近江委員 こうした膨大な差益が出ておるわけでございます。たとえば灯油等につきましては、二百五十円を割った場合には値下げをさせるということは大臣はちょっと参議院の方でもおっしゃったようでございますが、これはやらせますか。
  168. 田中龍夫

    田中国務大臣 先般の予算委員会におきまして検討をいたしたいということは申しましたが、その後のいろいろな推移等におきまして、これらの問題につきましては、石油関係は非常に関連の面が多いのでありまして、非常にむずかしい問題も伏在をいたしております。先ほど申しましたナフサの問題等もそれでございますが、慎重に検討を進めておる次第でございます。
  169. 近江巳記夫

    ○近江委員 慎重に検討なさることはわかるわけですが、これだけの膨大な差益が出ておるわけでございまして、あなたもそういう答弁をなさっているわけですから、これはひとつ実現をできるように全力を挙げていただきたいと思うのです。  それからまた電力等につきましても、料金を据え置くというように社長会では何か決めておるようでございますが、むしろ引き下げもさせるというぐらいの、やはり消費者還元という一貫した政府姿勢がなければいかぬと思うのです。すべての点におきまして、国民に還元という点において政府姿勢というものが非常に弱い、このように思うわけです。  輸入品の状況を見ますと、通産省は、今回輸入品の流通機構あるいは価格について、日本アメリカ、EC諸国の実態調査の結果を取りまとめたということを言っておるわけですが、CIF価格を一〇〇として小売価格を見ますと、米国製自動車を輸入した場合に日本は二三九、西ドイツは一三九、七〇%割り高。英国製ウイスキーの場合日本は八六八、米国は二五八と日米の差が約三・七倍。米国製チョコレートは日本が三一七、英国は一九六と、これも非常に日本が割り高となっております。このように輸入品が諸外国と比べまして非常に割り高になっておるわけですね。私はこれは非常に大きな問題だと思うのです。流通機構が複雑であるとかいろいろなことを政府は言っておるわけでございますが、今日のこういう状況下におきまして、やはりそういうメリットというものを小売価格に反映をさせる、こういう政府の強い姿勢が大事だと私は思うのです。その点、関税の問題あるいは流通機構の問題、こういう問題に関して政府としては今後どういう態度で臨まれるか、この点について総理にお伺いしたいと思います。
  170. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 為替が円高にいまなってきておる。それにつれまして非常にむずかしい問題が提起される一面、物価には大変これはいい影響を持つわけでありますが、そのいい影響を持つという面はこれは極力それを生かさなければいかぬ、こういうふうに考えまして、関係各省で一つ一つ商品ごとにそれが実現されるような行政努力をいたしておる最中でございます。また、総体といたしまして、すでに卸売物価、これは横ばいの基調になってきておるわけであります。これは為替の影響、これが非常に大きいと思いますが、消費者物価につきましても、そういう個々のもののほか、全体といたしまして卸売物価の影響、これが、時間は多少かかりますけれども、またはね返ってきて好影響を来すであろう、こういうふうに考えています。物価安定の非常にいいタイミングでございますので、その方はその方といたしまして最善を尽くしたいと、かように考えます。
  171. 近江巳記夫

    ○近江委員 それを強く要求いたします。  それから、きょうは非常に時間がございませんので、あと一問だけお聞きしたいと思います。  牛肉の問題、これは前回私、取り上げたわけでございますが、これもなかなか小売値には反映しないというようなこともあるわけでございます。それで、前回は輸入牛肉の調整金の引き上げと小売価格の関係についてお聞きしたわけでございますが、このときに農林大臣は、この調整金を改定するということが直ちに小売価格に反映するものではない、肉の小売価格をできるだけ引き下げをする、安定するために、農林省としても畜産事業団を指導し、業界を指導して努力しておる、このように答弁されたのでございますが、その後十月の二十九日夜十時、NHKテレビで、ドキュメンタリー「追跡・輸入牛肉」こういう報道がされたわけです。その中で全国食肉事業協同組合の副会長が、調整金を二百五十円上げたら小売価格も必ず上がる、このように豪語しておられるわけですね。私たち国会でこのように国民の代表として質問しているわけですね。農林大臣は安定させるとおっしゃっているわけですが、業界はこういうように言っておるわけですよ。そうなってきますと、政府のその後の指導あるいは効果、そういうものは一体どうなっているのか、国民は大変な不信を持つわけですよ。これに対しては大臣はどう思うのですか。
  172. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 牛肉の価格の問題でございますが、これは最近における円高のことも考慮をいたしまして、七月に御承知のように七・四%の引き下げを小売価格目安としてやったわけでございます。また十一月の十一日から、これまた五・七%の小売価格の目安価格を決めたわけでございます。そういうようなことで、私どもできるだけ円高のメリットを消費者に還元せしむるように努力をいたしております。これが調整金等の改定によりまして、小売価格、消費者価格に悪い影響があってはいけないということで、事業団の指定店舗に対しましては十分な監視、指導を続けておりますし、消費者の皆さんからも、モニター等で絶えずこの指定店舗等の動向を監視をしていただいておる、こういうことでございまして、せっかく国会からの御指摘もありまして、できるだけ円高のメリットを消費者に還元せしむるというような努力をしておるところでございます。
  173. 近江巳記夫

    ○近江委員 努力をしておるということをおっしゃっているわけですが、こういう責任者からこういうような発言も出るわけなんですから、今後さらに政府としては、こういう国会答弁、おっしゃっていることの実行ということにつきまして、十分な監督と行政指導というものを強化していただく必要があろうかと思うのです。いま農林大臣おっしゃったわけでございますが、総理として御答弁をお願いしたいと思います。
  174. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 牛肉の価格につきましては、これは国民が非常に関心を持っておることはよく承知しております。他方、畜産農家の立場、これも政府としては考えなければならぬ、こういうことでございまして、どうもてきぱきとした対策というか、円高の影響というものが出てこない。こういう状態にあるのですが、しかしそういう中でも、いま農林大臣からお話し申し上げましたように、いろいろ工夫をして、できる限りの効果が上がる、こういうふうにいたしたいと考えて、せっかくいま作業をしておるというところでございます。
  175. 近江巳記夫

    ○近江委員 農林大臣、これは国内の畜産業者との関係もあろうかと思うのですが、飼料を値下げになったとこの前にもおっしゃったわけですが、あれは米国におけるトウモロコシ価格の値下がりが反映して引き下げられたと私は思うのです。だから、円高差益を還元するならばさらに飼料は下がるわけですよ。そうすれば、畜産業者もそれで安定してくるわけですから、飼料代というものは約四〇%近くになってきているわけですね。そういうことをやっていき、さらに一方輸入牛肉も下げていく。やはり畜産業者もつぶすわけにはいかぬわけですから、そういう点政府としては、努力をすればできるわけですよ。そういう調整をしつつ、下方に安定さしていく、これが一番大事だと思うのです。ぜひそうしたことを工夫していただいて、国民が素朴な、もうこれだけ円が高くなっているのにどうなっているんだという大きな疑問を持っているわけですから、これはまた食生活におきましてもきわめて重大な問題だと私は思います。その点努力していただけますか。
  176. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御指摘のように、家畜の飼料穀物、この配合飼料につきましては、穀物の輸入価格が下がったということもございます。それから円高のメリットも還元をしたいということで、九月の一日から工場渡し建て値を五千円トン当たり下げたわけでございますが、その五千円のうち千円が円高メリットの還元、こういうことに相なっております。これは御承知のように、全農が飼料の相当部分を販売をいたしておりますので、この農業団体を通じまして、さらに飼料等の価格の安定また値下げ等も今後とも努力をいたしまして、畜産の肉の生産費のコストの合理化というものを今後とも努力をしてまいりたい。  なお、安定帯価格をどの辺の水準に持っていくかということが非常に重要な問題になります。この安定帯価格の設定の問題は、近江さん御承知のように、過去七年間の実勢価格を基準として安定帯価格を決めております。畜産振興審議会というものがございますが、そこにこの流通機構の問題あるいは肉の今後の取り扱いの問題あるいは畜産振興の問題、いろいろな角度から御検討願うようにいま私はお願いをし、御検討を願っておるところでございます。
  177. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは二人で時間を分けておりますので、もう時間がございませんから、あと一つだけちょっとお聞きしておきますが、これだけの異常な円高によりまして、今回補正予算が通過したわけでございますが、私どもはこれは帳消しになったのではないか、このように思うわけです。  そこで、このままでいきますると、私は今回の補正予算を組んだ意味もなくなるのじゃないかと思うのです。そこで第二次補正というような問題も総理としては当然今後お考えになるべきじゃないかと思うのです。この点だけ最後にお聞きして私の質問を終わりたいと思います。
  178. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今回の円高が、これはもう日本経済全体に対しましてかなり水をかける、そういう影響がある、こういうふうに見ておりますが、いかなる程度の影響を受けるかということは、またこれからの為替がどういうところで安定していくか、その辺も見きわめませんと、測定は非常に困難だという状態です。ただいま第二次補正ということは考えておりません。おりませんが、先般決定いたしました総合経済対策、あれをとにかく効率的に、しかも早目に執行するということで対処いたしていく、景気政策としてはそういう方向でやっていきたい、かように考えております。
  179. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。
  180. 田中正巳

    田中委員長 次に、広沢直樹君。
  181. 広沢直樹

    ○広沢委員 まず、総理にお伺いいたしたいと思います。  国民が福田内閣に期待したのは、やはり安定した日本経済のかじ取りであります。総理も一月の所信表明演説では、いわゆる本年は経済の年にする。ですから、その認識としては私は一致していると思います。しかしながら、その後の経済の動きを見ますと、御承知のように、総理がおっしゃったとおりに動いてないわけです。実態はなかなか、八月に景気はよくなるだろうということを総理はおっしゃったが、事実そのとおりならない。しかし総理がおっしゃるGNPがどうなるかという問題については、これがいま問題になっておりますいわゆる円高に結びついてくるわけでありますが、経常海外余剰がふくれ上がってくる。それによってGNPは大体目標どおり達成できるのじゃないか、いわゆる輸出に偏った形で全体のGNPを押し上げている形になっているけれども、その内客はそこにぴったりくっついてこない。したがって、御承知のように失業はこれは大変な問題になっておりますし、企業の倒産もどんどんふえている、こういう需給ギャップが起こって、大変な状況が起こってきている。そういう中で今度、総合経済対策も組んだわけでありますが、やはりこれがいま問題になりましたいわゆる円高の問題で相当な影響が出てまいった。円の急騰によるデフレ効果で経済政策にブレーキがかかってくるのじゃないか、こういう状況になってきているわけです。  そこで先ほど総理は、近江委員に、こういう円高の事態というのは予想はしていなかった、率直に言ってそうだ、こうお認めになりましたですね。しかし私は、そういう総理の現在の経済に対する取り組み方の甘さがあるのではないかと思います。というのは、この動きにつきましては、海外の有力雑誌とかあるいは有力紙については、すでに円に対するいろいろな批判が出てきておったわけであります。たとえば八月十日の「ジャーナル・オブ・コマース」に、ニューヨークの連邦準備銀行のチャールズ・クームズ副総裁、この人の発言が載っているわけでありますが、問題は円であるというそういう発言をしている個所が載っているわけです。これは有名な雑誌でありますから当然お読みになっているかもしれませんし、お聞きになっていると思いますが、こういう動きを的確にはおつかみになっていなかった。そこに今日の一つの対策のおくれというものが出てきているのではないかと思います。  さらに、先ほど総理は、まあ今日の問題としては、やはり保護貿易的な感じが出てくるということは特に警戒しなければならぬ、こういうようにおっしゃっているわけですが、海外においてそういう動きがあることは私も承知しておりますけれども、いまやその事態は海外のみならず国内にもそういう動きがある。これは報道によりますと、円の相場の急騰によって存立の基盤が脅かされている産業界においては、国際競争力の強い産業には輸出にブレーキをという声もあるし、あるいは輸入品の輸入を規制してほしいという声もあるやに言われているわけであります。したがって私は、自由貿易体制のもとにおいてはこういう動きが出てくることは大変だと思うのです。やはり通商政策の空洞化にもつながりますし、こういう保護貿易を助長するような形というものは大変な問題だと思うのですよ。輸出にブレーキをかければいいなんということは私も思っておりません。むしろその反対で、輸入を先ほど申し上げておるようにふやしていかなければならない。内需を拡大していかなければならぬ。この対策がおくれればおくれるほどこういう問題が出てくるわけであります。その点、先ほどの答弁にもありましたけれども、大変認識が甘いんじゃないか、もう少しそれに対する反省と取り組み方に積極性があっていいんではないか、こういうふうに私は議論を聞いておってまず最初思ったわけでありますが、総理の基本的なこれに対する考え方をひとつお伺いしたいと思います。
  182. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いまわが国はもう世界の中の日本である、わが国の経済のかじのとり方は直ちに世界に影響する、また世界の動きがわが国に直接はね返ってくるという立場にあるわけで、常に、わが日本のかじのとり方は、世界的規模の中の日本経済という取り組み方をしなければならない、このように考えておるわけなんです。  そういう中でいろいろ反省しながら、そういう姿勢が貫かれておるかどうか、そういうことを考えながらやっておるわけでございまするけれども、ただ一つうまくいかないのが、これがいま問題になっておる為替相場問題なんです。その背景にはわが国の国際収支黒字過剰、こういう問題があるわけなんでありまして、これはとにかく何とか処理しなければならぬ。私は、先々を考えますときに、日本国際収支というものはそう楽観はいたしておりません。先ほど午前中も申し上げましたが、国際収支という問題はわが国とするとなかなか重大な問題を常に抱えておる、そういうふうに思いますが、当面、いまこの時点におきましては、とにかく黒字が過剰だ、その過剰がいろいろ国際社会でも論議をされておる、こういうことでございますので、この状態、これを緊急輸入、この考え方によってとにかく一つは解決をしていく、こういうことだろうと思うのです。なおさらに、基本的には内需の振興、こういうことだろうと思いますが、これは多少時間的なずれというものを見込まなければなりませんが、まあ根本的には、とにかく世界経済にわが国は非常に深いかかわりを持っておる、世界をよくする、その中で日本の経済をよくする、そういう構えで内外の諸政策を進めなければならぬという構えでございます。
  183. 広沢直樹

    ○広沢委員 まあ総体で抽象的な話になりますとそれに間違いありません。そのとおりだと思いますが、そこで一番やはりいま問題として取り上げなければならないのは、企業活動するにしても経済活動するにしても、一体この不況というのをいつごろ脱却できるのか、これは一つの大きな問題だと私は思うのですね。それが、今回の総合経済対策で一応今年の補完はできたという一つの見方をしたし、この総合経済対策が打ち出された場合におきましては、それぞれの産業界もそれを歓迎する動きもあったやには聞いておるわけであります。われわれも早くこれが景気対策に影響を及ぼすということで、補正予算にも今回は賛成するという態度をとったわけでありますけれども、要するに、その問題と、もう一つはやはり円の実勢というものが、午前中も議論になりましたけれども、どの辺にあるのか、結局その基準が決まらないと計画がさっぱり立たないというのが今日の状況であるわけでありますね。しかもこの円高の影響というのは、今期の決算にあらわれる分もあるでしょうが、ほとんどが三月期の決算だとか来年度に大きな影響が出てくるのではないか、こういうような状況にあるわけであります。したがって、いま経済活動の中で一番焦点になるのは、こういった先の見通しが明確に立たなければならないし、それに持っていくためのプロセスというものを明確にどこまで示し得るかということが問題ではないかと私は思うのですね。ところが、その点になりますと非常にあいまいなところが多分にあるということは、やはり今日の企業活動、経済活動の企業家におけるマインドを沈滞さしていく原因があるのではないか、私はそのように考えておるわけであります。  したがって、これから具体的に二、三お伺いしてまいりたいと思うわけでありますが、きょうは日銀総裁も御出席をいただいておりますので、通貨当局に対しても二、三伺いたいと思います。  そこで、最近の円高ドル安に対して、いわゆる国際的、各国はどういうような考え方を持っているのか、こういうことを知る上で一番最近の問題としては、七、八日に行われましたBIS、国際決済銀行の月例会議の、その中における各国の通貨当局者の考え方というものがその中へ明確に出てきているのではないか。わが国としても、その会議に臨むに当たっては、国内の情勢とか、そういうものを十二分に説明して、理解を得る努力をしなければならぬということであっただろうと思うのです。しかし、会議の焦点というのは、やはり予想どおり円高ドル安を中心とするいわゆる国際通貨情勢の検討に終始されたというふうに聞いておりますが、その状況についてどのようにつかんでおられるのか、御説明をいただきたいと思います。
  184. 森永貞一郎

    ○森永参考人 BISの総裁会議は毎月一回ございまして、各中央銀行が緊密に情報を交換し合う、そして願わくば協調的な精神のうちに金融政策を進めよう、そういういわばロビー的な集まりでございまして、もともと何か物事を決めるというような会議ではないことをまず御承知いただきたいと思います。  今度の会議も、通常の月の会議と同じように、大部分の時間は各国における経済金融情勢の報告、それを基礎とした意見の交換ということに終始したわけでございますが、出席いたしておりました者がまだ帰っておりませんので、的確に、どういうことであったかということはまだつかみかねておりますけれども、現地から報告がございましたところを要約して申し上げますと、やはり九月の末からの為替変動の後でございますだけに、為替の問題が中心的な課題であったということでございます。各国とも、もうこれ以上余りドルが下がってほしくないというような意見の表明、その点については意見の一致を見たようでございますけれども、幸いにしてこの会議の前ごろから、国際為替情勢がやや小康を得ておりましたので、会議に出ました者の報告によりますと、当初心配されましたような危機感みたいなものは全然なくて、したがって、ドルに対して各国共同して介入をしたいというような、そういうような話題にはならなかったようでございます。  アメリカの方は経済の運営にかなり自信を持っておるようでございまして、いまの国際収支の赤字は、石油の輸入が多いということのほか、各国の景気のタイミングのずれによる輸入増加というようなことなので、エネルギー法案が国会を通るとか、あるいは各国の景気調整が軌道に乗ってくれば早晩解消するであろう、したがって、長期的に見た場合においてはドルについては何らの不安はないということをアメリカは力説をしておったようでございます。  円につきましては、私どもは私どもなりに昨今のこの情勢についてどう判断するか、また国際収支の調整につきましてはいかに努力中であるかといったようなことをるる説明をいたしましたわけでございますが、円のレートそのものについては、会議の性質もございますので、各国から別にどうこうというような意見は出なかったように報告を受けております。やはり問題は、国際収支調整に日本がどうこれから取り組んでいくかという問題についての希望の表明、意見の表明が主であったようでございます。会議の性質上、秘密会でございまして、どこのだれがどうというようなことは私どもにもまだ報告も来ておりませんですが、現地からの報告を概略申し上げますと以上のようなことでございます。
  185. 広沢直樹

    ○広沢委員 BISの会議がすべてを決める会議でないことはわかりますが、やはりそこにおいて今日の各国の通貨当局者がどういうことを考えているかということは、いま話があったところでまとまってきたのではないかと思うのです。ということは、いまの話を要約しますと、通貨の動揺は落ちつきを取り戻してきている。ですから、その動揺を抑えるための協調介入ということはいまする必要がないのではないか。それからいまおっしゃったようにドル安はこれ以上好ましくない、こういうことであった。それからまた、円相場はほぼ適正な水準である、こういう見方もあったやに報道がなされております。この報道は新聞によって違うんですね。協調介入で一致したというとり方も、いま申し上げるようにこれ以上のドル安は好ましくないといえば、これ以上動くということになれば協調介入してくれるのじゃないかというとり方もできますし、それからもう一つには、いま言うように円は適正な水準であるというと、大体もうこの辺だろうという見通しが立ってきた、むしろそういう見方と、まだまだ円は非常に強いという形を表現されたというとり方もできましょう。これについてはどういうふうにお考えでしょうか。
  186. 森永貞一郎

    ○森永参考人 お話のように現地からの報道はさまざまでございまして、共同介入をすることになったという報道もございますし、その問題には触れなかったという両説があるわけでございますが、私どもに報告がございましたのは共同介入は話題に上らなかったということでございます。それはお話にもございましたように、いま国際通貨情勢がやや落ちついてきておるというような背景のもとに、恐らくそういうことになったのではないかと思っておる次第でございます。  円為替につきましても、具体的にどうこうというような話は、これは中央銀行の集まりでございますので、ほかの国の為替については余りあれこれあげつらわないのがならわしでございますので、特別に批判がましき意見は出なかったように聞いておりますが、国際収支が良好であることについては各国とも触れたというような、その程度のことではなかったかと思っておるわけでございまして、BISの会議から得た印象としては、やや国際通貨情勢が落ちついてきたのではないかというのが率直な印象でございますけれども、しかし、市場は生き物でございますので、今後のことを予断するわけにはまいらないと思います。
  187. 広沢直樹

    ○広沢委員 これは政府当局と通貨当局の両方にお伺いしたいわけですが、さきの予算委員会におきましても、総理は、まあ全面的なドル安ということになれば世界経済に大きな問題が生じてくる、それはそのとおりでありますが、いまのこの通貨会議におきましてもこれ以上のドル安は好ましくないという、これはいまお話もあったとおりでありますね。そういうことで認識が一致しているということになりますと、これ以上円高ドル安ということが続きますと、政府当局においても積極的な介入をなさるお考えがあるのか、通貨当局も同じことでありますから、両者の御意見を伺いたいと思います。
  188. 森永貞一郎

    ○森永参考人 かねがね申し上げておりますように、為替相場そのものは市場における需給の実勢にゆだねなければならないわけでございまして、特定の価格ないしは特定の方向を誘導したいろいろアグレッシブな介入は避けなければならないと思いますが、いままでにもしばしばございましたように、投機的な行為その他によりまして乱高下的な現象が起こりますようなときには、積極的に介入することも辞すべきでないと思っておることを申し上げます。
  189. 坊秀男

    坊国務大臣 政府といたしましても、現在のこのフロート下の為替市場におきましては、積極的に一つの点を設けて、それにだんだん引きずっていこうとか、あるいはそういう方向に持っていこうというような考えはございません。ただし、乱高下に際しましては、これは何とか介入をして、乱高下は避けて、なだらかなる動きに持っていきたい、かように考えております。
  190. 広沢直樹

    ○広沢委員 いまも後ろで声がありますけれども、前々から政府も通貨当局も乱高下に対しては、自由フロート制のもとにおいては、乱高下のあった場合については介入できることは各国間で約束ができている。いまの状態は実際乱高下じゃないですか。過去の例を考えてみましても、四十八年ですか、スイスフランの場合八カ月で大体二一%ですか上がった例もありましょうし、マルクの場合もその前後で一七%ぐらい上がった例もある。わが国においても、いま年初頭から考えると大体一七%を超えて上がっていますね。そういうことを考えていくと、当時は向こうは相当介入して買い支えはやっているんですね。どこの時点で乱高下であるとかないとかいうことを判断なさるんでしょうか。短期間の間にこれだけ動くということは、だからこそ国内経済に大きな影響をもたらしてくるわけじゃないでしょうか。それがあなたのおっしゃるようになだらかな介入であるのだったら、一方の内需拡大とか緊急輸入拡大とかの政策と相まって、それだけ大きな問題として取り上げられる、先ほども申し上げましたように、保護貿易はいけないと思っても、そうしなければもう生きていけないのだというような産業界の声さえ出てくるという状況になっているわけでありますよ。その点の認識がどうなっているかということが問題じゃないでしょうか。どうでしょう、それは。
  191. 坊秀男

    坊国務大臣 ただいまの市況が確かに乱高下でないということは、私は申し上げられませんと思います。確かに乱高下の姿を呈しておるということでございまするから、しかるべくこれをなだらかにするためには、あの介入をしていないということは申しません。
  192. 広沢直樹

    ○広沢委員 それで、ここはやはり冒頭に申し上げました、企業がこれからそれぞれの経済活動、企業活動をやっていく上の一つの目安にならなければならない問題ですが、これもいろいろの議論は今日まで出てきたわけでありますけれども、けさも話がありましたが、現在の状態に投機的な問題があるとすれば、そこに急激な変動、いわゆる乱高下ということが起こってくるわけですね。現在その投機的な状況がある、一時はあると総裁は午前中お答えになっておられましたけれども、きょうもまた相当円高になってきておるわけですね。ですから、現在これは日本の経済の実態を反映したものというふうに考えておられるのか、やはりまた投機的な色彩というものがあるのか、この判断が非常にむずかしいと思うけれども、これを判断して、そこへ的確な介入をしていくということを考えていかなければ、やはりこれは議論があって現実の対応策が何もないということに相なろうかと思うのでございますが、その点いかがですか。
  193. 坊秀男

    坊国務大臣 基本的に考えますれば、とにかくいまの市況というものの基本には、日本の国の国際収支が堅調であって、これに反してアメリカの先行きドル安というような予想がされておるということが、いまの相場を形成する一つの大きな流れであろうと思います。しかしながら、まあこれは人間のすることでございますので、投機、思惑といったようなものが全然ないということは言えまいと私は思います。基本的の潮流とは別に、どれだけそういったようなことが影響があるかどうかということについては、私もはっきりわかりませんけれども、確かにそういうようなことはあろうということを私思います。しかし、基本的にはあくまで、市場における需要供給というものの相クロスするところに相場が形成されていくものだ。しかし、全然そういったような投機、思惑というようなことがない、まるでないということはないと思います。
  194. 広沢直樹

    ○広沢委員 市場の需給によって相場は決まっていくということはわかるのですね。それはそのとおりだろうと思うのです。いずれの場合においても、市場が開かれておればそういうことになるわけでございますが、しかし、その状況をどういうふうに判断するかということが問題なんですよ。いまこれは円高誘導ということにもなるのかもしれませんが、それぞれ各国の論調というのは、ロンドンにおいても、あるいはスイスにおいても、アメリカにおいても、英国においても、まだまだそれが二百四十円あるいは二百三十円という声も出てきているわけですね。そういうことが、いま外国から見ると、日本の状況から判断して言われているわけでございますね。ですから、これが仮にそういうことを一つの目安として動いているとするならば、これからもっともっと厳しい圧力がかかってくると考えなければならないわけです。しかし、それは一方、内需を拡大するということは基本的な問題であって、緊急輸入も当然でしょうが、それも先ほどからの議論がありますように、いまやったからといって、直ちに解決する問題じゃないですね。効果としてはタイムラグというものが必ずある。ですから、その間にやっていかれることというのは、わが国の経済の実態というものをよく掌握して、やはりどの辺でというのは、これは表向きにできないかもしれないけれども政府並びに通貨当局としては、それだけの腹づもりがあってこれはやっていかなければならないのじゃないか。これ以上円が高騰していった場合、仮に二百三十円になったら、そのときも市場の実勢でございますと言い切っておれるかどうかということです。その点はいかがお考えでしょうか、通貨当局と両方から伺いたいと思います。
  195. 森永貞一郎

    ○森永参考人 フロート制下におきましては、為替相場の決定を人為的に操作しないで、国際収支の実勢、為替市場の需給の実勢にゆだねるというのが基本でございまして、それによりまして各国間の国際収支の調整が自然に行われる、そういう効果を期待しておるわけでございます。たとえば、円について申しますと、国際収支がよくて余剰が大きければ、円の価値が上がって、それによって自然に輸出競争力が落ちて輸入がふえる、そういう調節作用に期待しておるわけでございます。基本はやはりそういうフロート制の趣旨を生かして、その市場における調整にゆだねるべきだと思っておるわけでございます。しかし、余り急激に変動が起こりますと、いろいろな意味で問題がございますので、乱高下を阻止するということでやっておるわけでございまして、基本はいまやっているようなことでまいるべきであると思っておるわけでございます。  しかし、何分にも国際収支経常収支黒字が多い現状につきましては、これを早く調整することが必要でございますので、基本はやはり国際収支の調整、そちらの方がもとになって経済運営の方向が決められていく、そういうことではないかと思うわけでございまして、為替の問題が先ではなくて、やはり一般経済政策の運営の方がもとではないか、そういうふうに考えておるわけでございます。したがいましで、いま為替相場をある特定の価格に維持、誘導するというようなことは、この際慎むべきではないかと思っておる次第でございます。
  196. 広沢直樹

    ○広沢委員 もう時間がなくなりましたので、総理に最後に二、三問お伺いしたいと思います。  総理は、現在の円高によってどの程度の経済の影響がある、せっかくの総合経済対策も帳消しになったのではないかという論評まであるわけでございますが、その点の御認識をひとつお伺いしたいと思います。
  197. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 円高の影響といいましても、景気ばかりじゃないのです。これは国際収支にも影響する、また物価にも影響する、総合して見なければならぬ問題でありますが、景気側面だけをとって考えますと、かなりこれは水をかけられた、こういうふうに見ております。しかし、どの程度のものかということにつきましては、これからまだ、いま相場は浮動している、定着しておりません。そういう状態のもとにおいて測定困難でございまするが、まあ水をかけられた、それに対しましては、去る九月三日の総合経済対策、これを効果的に、かつ時を移さず実施する、こういう方向で対処していきたい、かように考えています。
  198. 広沢直樹

    ○広沢委員 大変水をかけられた。やはりそれだけの影響があったことはお認めになっていらっしゃいますが、私もざっと、これは計数的な試算でありますから、的確にそれが全部当たっておるとは申しませんけれども、仮に試算してみますと、上期の輸出は約三百九十六億ドル、丸めて四百億ドル、下期も大体横ばいだとして四百億ドルと仮定しますね。そうした場合に、上期の期首平均レートが二百七十円、下期が二百五十円、これも仮定ですが、こうした場合に、やはりそれぞれ掛け合わせてみると、上期においては十兆八千億円、下期においては十兆円ちょうどです。差し引き八千億円の減少に下期はなってくる。これは二十円の円高ですね。それがこれだけの大きな影響をあらわしてくるということになりますと、今年度の補正予算でも大体この前後の財政の組み方であったわけでありますから、わずかこの期間のこれだけの円高というものが、計数的に言っても相当な影響を与えておることはわかると思いますね。ただ、それだけではなくて、やはり企業の経営者マインドというものが冷え込んでいくということがこれにプラスアルファされますから、もっと大きなものになるんじゃないか。  そこで、先ほど近江委員の方から、第二予算といいますか補正というものを考えなければならぬ、こういう提案もしたわけでありますが、さらには、もはや年内予算編成をされるという方針のようでありますが、来年度予算の方向というものがどういうふうになるか。新聞報道によりますと、積極的な予算、景気刺激的な予算を組まざるを得ない。ということは、現在の景気も下支えしていく意味からも財政の占める割合は来年度もやはりゆるがせにできない、これはもう当然のことだと思いますね。したがって、そういうことになりますと、諸般の事情から考えて、ここに減税問題、というものも出てきております。これについてはどう考えるか。さらには増税問題も、過日の中期答申にもありましたけれども、いまの円高の影響を受けて来年を展望した場合には、増税ということはもう考えられない、部分的増税は別としても大改正ということはできない、こういうふうに私は考えております。  そうしてまいりますと、現在の経済運営というのは、御承知のように五十年代の前期経済計画に基づいて財政当局としては財政試算を出していらっしゃいます。それに一応目安を置いて、健全財政、いわゆる五十五年までに赤字をゼロにするということに財政の運営の基本を置いていらっしゃるわけでありますね。それは財政面からいったら相当狂ってしまった、そのとおり実行できるとはだれも思わないと思うのですね。その点は、もうそろそろ予算を固めなければならない、年内編成といったらもう来月であります。したがって、その時期においてどういうお考えであるのか。先ほどから申し上げております先の見通しに対して、余りに国民にそのことをお明かしにならない。後から後からの追い政策みたいな形しかおとりにならないので、少なくとも政府が責任をもってできる見通しのきく政策は、前もって国民にその指針を与えるべきだと思います。経済計画の問題についてもあるいは財政試算の問題についても、来年度予算についてもどういうお考えであるのか、ひとつお聞かせいただいて、時間が参りましたので終わりにしたいと思います。
  199. 坊秀男

    坊国務大臣 お答え申し上げます。  究極、来年度予算をどういうふうにつくっていくか、その内容だとか性格とかいうものをどうするか、こういう御質問のように思います。  これを今日お答え申し上げるに当たりましては、私ども、何としてもできるだけ五十三年度の実情に即した予算をつくっていかねばならない、そういうようなことから考えますと、やはり明年度経済見通しというものが固まってまいりませんと、ここで来年度予算をどういうふうにしていくのだ、こういうことをお答え申し上げる段階にはないと思います。  それから、税制をどうするのかとか、そういう具体的の問題でございますが、そういったようなものにつきましては、やはり来年度経済見通しというものに即してこれを固めてまいりたい、かように考えております。
  200. 広沢直樹

    ○広沢委員 それじゃ総理、これはやはり総理からお答えいただかなければならないと思いますが、財政の大変な折でありますから、財政健全化か、あるいはそれよりも、もう少し景気を刺激するために財政の負担がかかっても仕方がない、こういうお考えなのか。これはやはり今後の方針のポイントだと思うので、その点だけひとつ最後に明らかにしていただきたい。
  201. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 財政も、これは健全でなければならぬ、そういうふうに考えておりますが、同時に、そういう方針を貫きながら、活力ある日本社会、これの維持発展に努めなければならぬ、両々立つように努力してまいります。
  202. 田中正巳

    田中委員長 これにて近江君、広沢君の質疑は終了いたしました。  この際、先ほどの武藤君の質疑に関し、旦国際金融局長から発言を求められておりますので、これを許します。旦国際金融局長
  203. 旦弘昌

    旦政府委員 午前中の外為証券発行に関します武藤委員の御質問に対します答弁につきまして、説明を補足させていただきたいと思います。  五十一年度末におきます外為証券発行残高は三兆五千七百六十六億円でございまして、現在の発行残高は約四兆一千億円であります。したがいまして、今年度現在までに約五千五百億円増加いたしておりますが、これは介入や運用益等を反映したものでございます。  なお、午前中に御説明しましたように、五十二年度の外為証券の発行限度額は四兆五千億円でございまして、今後の発行可能額は約四千億円となっております。  以上でございます。
  204. 田中正巳

    田中委員長 次に、竹本孫一君。
  205. 竹本孫一

    ○竹本委員 最初に、運輸大臣厚生大臣に一口だけ質問をさせていただきます。  まず運輸大臣。われわれ民社党は、国鉄の再建についてはできる限りの協力をしておるつもりであります。しかしながら、国鉄はいつ本当に再建できるのか、非常な心配を持っておるということでございますが、この際ひとつ簡単なことを伺っておきたいのです。  国鉄はいま何人おられるか。三十八万人とか四十万人とか言っておりますが、それについてわれわれが聞いておるところでは、多く言う人は十三万人ぐらい、あるいは十五万人過剰人口がおる、少なくとも三割おるということを言っておるが、何万人おって、大体何万人ぐらい過剰があると思っておられるかということを伺いたい。  第二番目は、赤字はなかなか解消できない、ストはときどきある、人数も多過ぎるということから、いっそこの際国鉄は、電力ではないが、九分割か幾分割か分割して、民営に移した方がいいではないかという意見もあります。私自身は、そういうことにはむしろ賛成ではありません。そういうことになりはしないかという心配をむしろしておるんだけれども、民営移管論なり分割論について、大臣はどういうお考えを持っておられるかということを伺いたい。
  206. 田村元

    田村国務大臣 国鉄には現在約四十三万人職員がおります。国鉄が論ぜられる場合に、確かに職員が多過ぎるということがよく言われますし、それを言う人は非常にたくさんあります。でありますから、一つの社会通念になっておるのかもしれません。しかしながら、私ども国鉄をお預かりする立場から申せば、適正人員数がどれだけであるのか、これを断定することは仕事の内容等につきましてもなかなかむずかしいことでございます。でありますから断定はできませんけれども、いずれにしても、仕事の効率化、合理化等に努めてまいらなければならぬことだけは事実でございます。  それから民営化でございますが、これはいろいろと御議論もございます。しかし。現在公企体等の会議がございまして、そこで御審議をいただいておりますので、先走って私がとかくの意見を申し述べますことは、せっかく御議論いただいておりますこういう時期でございますだけに、いささか礼を失するかと思いますので、御遠慮を申し上げたい、このように考えます。
  207. 竹本孫一

    ○竹本委員 私どもは、スト権も国鉄の労働組合に一定の枠をはめて与えるべきだと思う。しかし同時に、企業ですから、生産性の向上ということについてはもう少し真剣に取り組まなければならぬと思います。いま何人余っておるかということは算定がむずかしいという話もありましたけれども、これは私自身が現実にいろいろ知っております。きょうは本論ではありませんから申しませんが、ぜひひとつ国鉄当局に督励をして、民間の企業と比べてどのくらい能率が悪いか、この具体的な数字調査をしてもらうようにお願いをしたい、こう思います。  それからついでにもう一つ、要望ですけれども、ストライキはやる、能率は悪い、人数は多い、赤字はふえている、こういうときにボーナスの時期が近づいてきたのだけれども、この前も私、官房長官に篤と言ったことがあるが、国鉄その他、ストライキをやった後すぐボーナスをもらうような形にこの前なりまして、中小企業の連中はそうでなくても怒りを持って非常に憤慨をしているところへもってきて、しかも、中小企業はボーナスどころか、企業がつぶれるかつぶれないかで心配しているときに、時間的に言えば真っ先にボーナスを出すようなばかなことは政治的配慮をやってもらいたい。量については言いません、額については言いませんが、タイミングぐらいはもう少し前後左右を考えていくのが政治ではないか、これは私は要望しておきますが、総理、いかがですか。
  208. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 謹んで拝聴いたしておきます。
  209. 竹本孫一

    ○竹本委員 拝聴だけにならぬようにお願いいたします。  それから厚生大臣に伺います医療の問題は大変むずかしい問題でございまして、われわれも診療報酬の総合的な検討も必要だと思っておりますし、また、お医者さんの技術を日本のいままで以上に高く評価していくことも必要だと考えておる。しかしながら、厚生省の医療行政、またこれに対する医師会の受けとめ方等については、国民感情から言えば割り切れないものがたくさん残っておる。そこで、それに対する反発として、今度はいまの国鉄とは逆に、医療は国営にしろという意見がある。これについても私は簡単にそうやるべきものでないと思うが、厚生大臣のお考え、特に国営にすべきものでないとお考えならば、厚生省、医師会の姿勢はどのように直すつもりでおられるか、国民の納得のいくような努力をやってもらいたいと思いますので、伺っておきます。
  210. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 一部には医療国営論というのがございます。しかし、私どもは自由主義経済、自由社会をたてまえといたしておりますから、できるものは民有、民営がいいのじゃないか。しかしながら、国がやることが非常にメリットがあるというものがたくさんございます。ともかく、国立病院のようなものにいたしましても公的病院のようなものにいたしましても、やはり一般民間に任してはおけない、あるいは莫大な金がかかる、あるいは不採算性である、あるいは非常にリスクが多い、あるいは新技術、新研究が必要であるというようなことなど、他にもありましょうけれども民間に任しておいたのではなかなかうまくいかぬというようなものにつきましては、国立なり公営なり、あるいは民間に助成するなり、そういうようなことでやっていくことが有利ではないか。したがって、民間のいわゆる開業医制度というものもメリットは非常にあるわけなのです。非常に家庭医的な存在でございまして、病気といっても皆重症患者ばかりになるわけではございませんから、大病院の門をくぐらなくとも、本当にお医者さんと患者の間に信頼関係があって、ちょこちょこ気安くと言っては語弊がございますが、気安く診てもらえる、こういうようなメリットも非常にございます。したがって、私は両方あっていいのじゃないか、いまのようなことがいいのじゃないだろうか。  それから、厚生省姿勢と申しますのはどういうことかよくわかりませんけれども、医師会にいたしましても、まあこういうときでございますから、新聞に、何か気に食わなければ何かまた対抗手段をやって、保険医の辞退とか、学校医の引き揚げとか、予防注射に協力しないとかいうようなことがかってあったこともございます。しかし、いまはお医者さん方も非常にりっぱに成長されておりますから、そういうようなことはあり得ない、世間でもそういうことで、いささかのことでそういうことをやることについては承知すまいだろう、お医者さんもそういうことはやるまい、私どもとしてはもちろんやっていただきたくございませんし、うまくやってまいりたいと思っております。
  211. 竹本孫一

    ○竹本委員 両大臣は以上で結構ですから、どうぞ……。  次に、円高問題に入ります。けさのある新聞に「主な円対策の進捗度」というのが出ておる。十二項目あります。東京ラウンドの関税引き下げ、これは見通しを申しますと有望、これはそうだろうと思うのです。原油備蓄、期待できず。非鉄金属備蓄、これはまずまず。ウラン鉱石の繰り上げ輸入、これは量は期待できず。小麦、大麦などの備蓄、量は期待できず。円建て外債の増発、これは有望。こういうように書いてあるが、私は、円高の現状のもとにおいては余り有望ではないと思いますが、これは私と意見が違う。  次に、「不況・物価対策」について。失業対策、かなり有望。構造改善対策、期待できず。中小企業対策、期待できる。これは金利の引き下げぐらいのことを言っているのだろうと思いますが……。内需拡大、効果は期待できず。輸入品価格の値下げ、全体として期待できず。輸入原料の為替差益還元、これは期待できる。こういうふうなある新聞見通しであります。しかし、大部分私ども考え方に近いものがある。  けさほど武藤さんの御質問に対しまして、三十億ドルの問題がいろいろ論議されて、八億ドル、十億ドルという問題が出たようでございますが、総理一つお願いしておきたいのは、これは外国に対しては説明は余り役に立たぬと思うんですね。現実の結論だけが問題だ、現実の具体的な行動だけが問題だ。     〔委員長退席、栗原委員長代理着席〕  この点について私が思い出しますのは、自由化の問題が取り上げられましたときに、日本の自由化はさっぱり進まない、一体何をやっているのか全然わからない、やる意思がないんだろう、日本政府としては、こうやります。こうやりますと言って熱心に御努力をいただいたのでございますが、外国は全然それを評価していない。具体的なあらわれがないということが中心でございましょうが、そのときに非常にうまい批評が出た。日本のやっていることはステップ・バイ・ノー・ステップだ、こう言うんですね。ステップ・バイ・ステップでやるんだ、日本政府はそう言うけれども、さっぱり動かぬから、外国ではひやかしてステップ・バイ・ノー・ステップ、こう言った。なかなかうまい批評をしている。ところが、今回の日本円高問題に対する対策も、ややともすればステップ・バイ・ノー・ステップだ。具体的にこうやった、こうやった、こうやったというのが何も出てこない。ステップ・バイ・ノー・ステップにならないようにひとつやってもらいたい、これはまず要望です。  そこで、具体論に入ります。要するに円高問題は、日本黒字が多過ぎる、アメリカの赤字が多過ぎるということなのですから、まず日本黒字の方から問題にしますが、これについては、日本はやはり輸出をしなければやっていけない国なんだから、国内で不況であるからやむを得ず押し出し輸出をするという輸出もあるでしょうが、そうでなくても、本来、不況であっても好況であっても、輸出をするために設備を投資してやっている企業はずいぶんある。だから、そういう意味の輸出がある。それからもう一つ日本は、いま言った不況による押し出し輸出もあるでしょう。そのほかに、日本の輸出構造としては重化学工業製品が八〇%ですから、弾性値から見てうんと伸びやすい。そういう意味で輸出の黒字が多くなり過ぎる欠点もあるわけです。あるいは矛盾があるわけです。しかし、それにしても、日本の輸出が盛んであり過ぎて黒字も多過ぎる。大体私は簡単に覚えているのですが、アメリカ向けで言いまして、八億ドル買う、十八億ドル出すということになれば、だれが考えても十億ドルの黒字ですよ。八月が九億七千五百万ドルかの黒字になったのもその関係ですが、八億ドルしか買わないで十八億ドル出せば大変な黒字になって文句が出るのはあたりまえだ。これはアメリカに対する関係だけじゃなくて、ECに対しても大体十五億ドル日本は輸出するけれども輸入はその半分であるということになるのじゃないかと思いますが、そういう形で、結果として見れば、またアメリカの方は八月には百億ドル、正確には九十六億ドルの輸出をして百二十二億ドルの輸入をして二十七億ドル近くの赤字を出しておる、こういうことでございます。  そこで、後でいろいろ具体論に入るわけですが、日本の輸出をいかにして抑えるかという問題がなかなかむずかしい問題だけれども、しかし先ほど申しますように、具体的に輸出を抑えてみせなければ、黒字を減らしてみせなければ外国は承知しない。そこで、先ほど総理も、全く予期しない情勢の展開もあったということをお話しになったようですけれども、私は、この日本円高に対する外国の非難、攻撃、集中砲火というものは初めから予想できると思うのです。いまも広沢さんがいろいろ外国の学者や雑誌の話もされましたけれども、私はことしの二月何日かちょっと覚えませんが、二月のロンドン・エコノミストにウエストジャーマニー、西ドイツの批判が出ました。それにうまいことが書いてあって、総理、結論はそのまま日本に当てはまるということで、実は私は二月にその雑誌を見ながらわれわれの友人に、これはドイツだからまだいいけれども日本になったら大変だぞということを言ったのです。非常によく記憶に残っている。何と書いてあったかというと、アグリージャーマンス、醜いドイツあるいはドイツ人。これがその次には醜い日本人ときたら大変だぞということをぼくはその雑誌を見ながら、ひもときながら友人に話した。またその理由が非常に変わっておる。アローン・アット・ザ・トップと書いてある。自分一人がてっペんに住んでおって、周りのEC諸国は失業と輸出で苦しんでおる。自分だけがてっぺんにおって得意になっておる。アローン・アット・ザ・トップ、周りは惨たんたるものだ、だからアグリージャーマンスだ、とこうきている。日本がこういうことになったら、ドイツと違ってより以上に集中砲火を浴びなければならぬではないかと私は言ったのですが、いまその集中砲火を浴びつつある、こういうふうに心配をするわけです。  さらに十月八日号ですかのロンドン・エコノミストは皮肉に、日本とドイツの労働者団結しろ、そうでもしなかったら大変だぞ、こういうことでいろいろ書いているようですが、結論として、私は日本政府のいろいろの御努力は評価しますけれども、それでも具体的な成果という面から見れば、外国から見れば非常に問題にならない。そこで彼らは次はアグリージャパニーズと言う心配があるし、ある人は、いま外国の本当の空気は、戦争のときの日本の仏印進駐前の諸外国の空気と、いまの日本の集中豪雨的輸出に対する空気とは全くよく似ている、したがってあと出てくるものはどんなことになるかわからないということで、何とかもって気のきいたやり方をしてもらわぬと困るということを、特に外国に行ってきた人はもう皆それを口をそろえて言っております。  総理もよく御存じですから数字を一々言う必要もありませんけれども日本経常収支は七三、四、五年はそれぞれ大きな、大きなというか相当な赤字があったのに、七六年から黒字に変わって、経常収支は半年でもう三十億ドル、九月までには六十四億ドルの黒字をかせいでいる。そのかせぎ方が、先ほどの円高が乱高下になるという話と関連をするわけですけれども日本経常収支が乱高下ではなくて、みだりにめちゃくちゃに伸び過ぎる。めちゃくちゃに伸び過ぎるか伸び過ぎないかをわれわれが判断する一番いい基準はドイツだと思うのです。ドイツと事情が違いますけれども、しかしながら貿易の関係から見るならば、ドイツの黒字の伸びというものは幾らも伸びていない。少なくとも日本のように急激に伸びていない。その結果がそのまま為替相場にあらわれている。大体ことしの初めから十月の末までに一七%日本の円は高くなっておる。違いますか。一七%伸びておる。それに対してドイツは四・七%である。そういうことから見ても、日本黒字の著しい増加というものがそのまま今度は円高にあらわれて、経常収支の急激な増加と、円高の急激な発展、前進というものは全く符節を合しておる。一七%の為替相場の円高というものの現実は大変な問題ではないか。そういうことに対して私はこれから質問をいたしたいと思うのであります。これが前置き。  そこで、まず日銀総裁に伺いたい。  これだけの、一七%の円高について先ほど来通産大臣もお答えがありましたけれども日本の国内に、産業面にどういう影響があったかということについて、政府の方のお考え通産大臣からもいろいろお話がありましたので、日銀では最近支店長会議もやられたようだが、支店長会議を通じて、地方の中小企業の悩みというものがどういうふうに反映したか、またそれを総裁はどういうふうに受けとめたか、したがってどういうふうな対策を講じようとしておるか、まずその点を伺いたい。
  212. 森永貞一郎

    ○森永参考人 お答えします。  先月の二十四日から二十六日まで支店長会議を開きまして、各地の情勢報告を聞いたわけでございますが、各支店長ともやはり円高の影響に触れました。そのときは、一体先々どうなるだろうかという不透明感みたいなものがまだ強かったわけでございますので、正確に各企業への影響を測定することはなかなかむずかしいわけだけれども、ここまで円が強くなると、やはりかなりの影響が起こっておるのではないか。これはもちろん業界によって違うわけでございまして、たとえばまだ価格を引き上げる余地のある産業もございます。自動車とか、その部品とか、あるいは高級ディナーセット、時計、カメラなど、これは何とかやっていけるのではないか。しかし多くの業界、特に繊維、金属洋食器、雑貨類など競争力の弱い中小企業にあっては、円高による採算悪化を免れないで、経営面でもかなり困難が増してきつつあるのではないかというのが一般的な印象でございました。そういう企業に対しましては、もちろん各企業が自身でこの困難を克服するための努力をお願いしなければならぬわけでございますけれども、それに対して政府でも中小企業為替変動対策緊急融資制度をもうすでに御決定に相なられ、それを活用するということで、国内的にもいろいろと措置を考えていかなければならぬのは当然だと存じます。金融界といたしましても、実情に応じて適切な対応策がとれますよう実情の把握に努力し、また支店所在地におきまして各出先機関とも緊密に連絡をとりながら、たとえば中小企業対策連絡協議会というのがございますが、そういうところを活用しながら企業金融の実情を正確に把握して、できるだけきめの細かい対応策を講じていく必要があると考えておるわけでございまして、その当時、各支店長に対しましてもそのような指示を与えたような次第でございます。
  213. 竹本孫一

    ○竹本委員 これももうすでに大分議論になったようでございますが、これから少し日銀の介入の問題について御質問したい。  まず介入の額ですけれども、何回やったか、幾らやったかということを日銀当局が発表するということは立場上なかなかむずかしいと私も思いますから、私の方からちょっと数字を言いますが、去年の暮れの日本の外貨準備の残高は百六十六億ドルである。それが十月の末といいますか、その辺になると大体百九十六億ドルだ。こういうことになりますと三十億ドルふえておる。この三十億ドルはもちろん貿易の黒字もあるでしょう、それから今度は逆に対外投資もあったでしょう、いろいろの関係があるけれども、大部分は介入の結果であると見ていいのか、あるいはそれは間違いであるのか、その辺の感触はどうですか。
  214. 森永貞一郎

    ○森永参考人 お答えいたします。  外貨準備の増減のアイテムといたしまして、市場外における外貨の買い入れ、売り出しというものがございます。その典型的な例は、いまはもう改まりましたけれども、駐留米軍の本邦における円資金の調達、それを直接に市場外においてかえておりました。そのアイテムがございまして、その量は月々かなりのものでございました。これは諸外国における要請、批判等もございましたので、もう現在は直接市中で円にかえる。したがって、為替市場の需給の要因になるように改めました。そのほかに、政府並びに日銀が所有しておりまする外貨準備、これは外国でいろいろな形で運用されておるわけでございますが、その利息金が直接外貨保留として入ってくるわけでございますが、この部分は市場の方には影響を及ぼさないような仕組み、計算の方法にいたしております。  その二つのアイテムがございますので、それがこの外貨準備の増減のファクターとして介入のほかにございますことだけを申し上げまして、その引き算の結果につきましては、肯定も否定もいたしませんことを御了承いただきたいと存じます。
  215. 竹本孫一

    ○竹本委員 言いにくいところは、同情して、言わないことに一応了承します。  そこで、基本的な問題については同情しないでひとつ議論をしたいのですが、まず第一は、日銀は腰が弱過ぎるということが問題なんです。ダーティーフロートと言われる非難を恐れ過ぎて、やるべきときにさっぱりやってないじゃないか、その点をひとつ伺いたいのです。  まず第一に、昨年一月でございましたか、ジャマイカにおいてIMFの会合をもたれたときの新しい協定があるはずだ。その協定については、乱高下のときは介入してよいということが明確に、かつ積極的に打ち出されておると思うが、間違いであるかどうか。
  216. 森永貞一郎

    ○森永参考人 ジャマイカよりもむしろ前であったかと思いますが、IMFの理事会におきまして、フロートとか介入についてのガイドラインみたいなものがございまして、それは六項目ぐらいから成っておりまして非常に詳しく書いてございますが、その中には日々の乱高下に対してはむしろ介入しなければならないとか、あるいはもう少し長い期間における為替変動につきましては人為的に、たとえばいま二百五十円でございますものを二百六十円に下げるための、あるいは逆の場合もございましょう、三百円を二百九十円に上げるという、そういう逆の方向に相場を誘導していくような、いわゆるアグレッシブな介入はしてはいかぬとか、あるいはいろいろな国情を考えて、何とか介入点をいまのような規定の例外にしなければならぬ場合にはIMFに相談してやれとか、いろいろなむずかしい規定があるわけでございますが、いずれにしても人為的な介入はやめて、相場の決定そのものは市場の需給の実勢に任せろというのが本旨でございます。さらに、それを昨年のランブイエの首脳者会議におきまして、乱高下に対しては介入をするが、そういうことによって、人為的な介入を排することによってむしろ為替の安定を図るというような協定がございましたりなんかいたしまして、私どもはランブイエの精神といま申し上げました介入のガイドライン、この二つを実は鉄則として守ってきておるつもりでございまして、フロートの趣旨に徹した運用をいたしておるつもりでございます。日々の乱高下に対しましては、ちゅうちょなく処置をいたしておりますのも、その規則の命ずるがままのことを実行いたしておる次第でございます。  少し介入が逃げ腰に過ぎたのではないかというような御意見かとも思いますが、九月末から今日までの介入額ではむしろ非常に大きい方の一つでございまして、西ドイツよりも倍ぐらいの大きさに達しておる、そういう事情でございますので、決して介入につきまして中途半端な逃げ腰で対処したつもりはございませんですが、しかし、何分にも国際収支黒字が大きくて、それを背景とする市場観、為替観、相場観がございまして、それには抗し切れないでいまのようなところに来ておる、それが実情でございます。
  217. 竹本孫一

    ○竹本委員 総裁の主観的なお考えや決意のほどはわかるのだけれども、われわれが客観的に見ておれば、日銀は何をしておるということを言いたくなるぐらいに、守っておると言われるならば守り過ぎておるということになるのかもしれませんが、消極的であり過ぎる。  ひとつこれは総理にもお伺いしたいが、最近のアメリカの動きというのは、円に対して、それこそいまのお言葉を使えばアグレッシブであり過ぎると思うのですね。カーター・チームと僕はよく言うのだけれども、カーター政権の周りにいる人は自由な変動相場を言っている学者はいないでしょう。みんな管理されたるフロートだと言っている。そして管理の方に力を入れている。そして円を上げろ、マルクを上げろという方に重点を置いている。したがって、アメリカの為替相場に対する基本的態度はきわめてアグレッシブであると思う。一体そういう感触を総理は持たれるかどうか。  それに関連して日銀総裁にもお伺いしますが、乱高下はいけないということになるのだけれども、いまの過程を乱高下と見ておられるかどうか。先ほども議論になったが、いまは乱高下と認めておるかいないか。それから認めるときと認めないということの基準は何だ、そこを聞きたい。
  218. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まあアメリカ側から言えばドル安問題があるわけですね。それからわが国側から言えば円高問題があるわけですが、これはお互いに非難し合うという形でなくて、これはもうわかっていることですから、お互いがお互いにみずからを省みてその姿勢を正す、この姿勢でいくべきであるというふうに考えます。私は日本国の最高責任者ですから、最高責任者がよその国の批判をするというようなことになると、これはまた物騒な問題を引き起こすおそれがある。ですから、そういうことはいたしません。
  219. 森永貞一郎

    ○森永参考人 乱高下というのは一体何を基準としておるかというお尋ねでございますが、単にある一定期間における変動の比率であるとか幅であるとかいうようなものだけからは判定しにくい、いわく言いがたきものがあるような気がいたします。そのときの市場における心理の動き方ということもございましょうし、取引量ということもございましょうし、要するに市場が荒れてその結果として価格が大幅に変動する、そしてその背後にはどういう動きがあるかというような、いろいろなことを総合的に判断して介入の要否を決定しておるということでございまして、なかなか機械的な基準としては、これが乱高下であるというように申し上げにくいことを御了承いただきたいと存じます。  現在が乱高下であるかどうかというお尋ねでございますが、九月の末から今日に至るまでの間に確かに乱高下的な場面が何度かございまして、それに対処しまして介入もいたしました。今日いまの現状は乱高下であるかどうかということになりますと、ここ数日は比較的落ちついておるというのが私の感じでございます。
  220. 竹本孫一

    ○竹本委員 いま乱高下的という言葉を使われたが、そこは重大な問題だと思うのだな。乱高下そのものなのか、乱高下的なのかによってずいぶん対策が変わってくる。国民が日銀は何しているということを言うのは、そういう認識が問題になっているわけですね。乱高下である、これは大変だというので、もっと積極的に介入すべきだ。少なくともドイツのマルクのごときは、二・二五ぐらいのところからほとんど動かさないでやっているじゃないか。それはドイツの方の貿易は、非常に日本と違って正常な秩序正しい輸出をやっておる、日本のように集中豪雨はやらない、だからドイツの経済の背景が違うということはよくわかりますよ。しかし、それにしてもドイツは、マルクの価値を維持するということは、ドイツ中央銀行総裁の最高の使命として政治的生命をかけてやっておる。日本の日銀総裁も同じように、私は森永総裁が就任されたときに言ったつもりだけれども、インフレに対して円の減価というものを守るためにも、いままでの日銀総裁みたいな気合いの抜けたようなやり方ではだめだ、通貨価値の維持のためにがんばりなさいということを要望した。しかし同様に、今度はデフレではなくて、インフレとデフレの過程と同じようなものだが、今度円が高くなり過ぎるということについても、やはり日銀総裁というものは政治的生命をかけてでも守ってもらわなければ、これだけ、一七%も上がったときに乱高下的だなんというような認識でゆっくり構えられたのではとても間に合わないということを言う。  そこで、まず私は具体的に言うけれども、一七%上がったということは乱高下の結果である。あるいはアメリカの銀行家あるいはオイルダラーを持ったどこかの王様が操作したかは別として、とにかくこれはスペキュレーションが行われていることは間違いない。そういうものに対しては勇敢に立ち向かうのは当然のことだ。アグレッシブでなくてディフェンシブなことだけはしゃんとやってもらわなければ困る。そういう意味で私は強く申し上げておるわけですが、特に基準がなくて乱高下なんと言うのは、ぼくはどうもわからない。大体、このぐらいでは、期間だけではあるいは幅だけでは論じられないというのは秀才の答案としては満点ですよ。しかし政治としては決断が要るんだから、そんな、てにをはやら、条件づき、ただし書きばかりたくさん書いておったのでは政治にはならない。端的な行動が必要である。  そこで私は端的に伺うのだが、月に一%以上の円が上がるという場合には乱高下と見るべきであると思うが、どうですか。
  221. 森永貞一郎

    ○森永参考人 お答えします。  一七%というのは年初から十月末まででございまして、一月間ではまあ七%ぐらいでしょうか。もちろん七%にいたしましても、スイスフランがその間三・五%、ドイツマルクが三%足らずというようなことでございますので、飛び切り円為替の上昇率の方が高いことは事実でございます。それは、先ほど乱高下的と申しましたその「的」はよけいなことでございましたが、何回かの乱高下の現象によりましてもたらされたわけでございまして、その都度私どもかなり思い切った介入をいたしましたけれども、しょせん実勢には抗しがたく、今日のようなことになっておる次第でございます。  西ドイツと日本との場合、よく比較が行われるのでございますが、西ドイツの場合は、スミソニアンに対してドルを基準にした場合にすでに四割ぐらいアプリシエートされておるわけでございます。日本の場合にはそれがようやく二割ぐらいということでございまして、上昇率が西ドイツの方がもうすでにかなり高いところへ来ているということもございましょうか。そうなったにつきましては、また西ドイツと日本との貿易構造、経済構造の違いがあるわけでございまして、西ドイツの場合にはエネルギーの海外依存度が日本ほどそんなに高くなくて、しかも製品の輸入はかなり多かったというようなことから、石油ショックにもかかわらず、むしろ貿易が大幅な黒字を続け、そのころマルクの上昇が相当大幅に行われて、それが今日に来ておるわけでございます。日本は石油依存度が大きかったために非常な国際収支の赤字に一たんは陥りまして、円の相場も二百五十四円ぐらいまで行っておりましたのが、御承知のように三百円を割るところまで落ちたわけでございます。その間、日本政府を初め各方面で何とかしてこの事態を切り抜けるための必死の対策が行われました結果、国際収支の方はどうやら改善されて、いまはその改善が少し効き過ぎて、行き過ぎて、往年の西ドイツみたいな国際収支黒字経常収支黒字を起こしておるわけでございまして、ちょうど時期おくれにドイツで起こったことが日本で起こっておるというのが実情じゃないかと思うわけでございます。  しかも、輸入の増加に努力いたしましても、お話にもございましたように、日本の場合は原材料の輸入が八割以上ということでございますので、なかなか西ドイツの場合のように為替相場の関係だけで製品輸入がふえるというような国情にございませんで、したがって国際収支の大幅な黒字が長く続いておる、それを是正するのには非常に時間がかかる、そのことが、したがってまた円の相場にもあらわれてくるというようなことでございまして、これは両国の経済構造、貿易構造の違いからしてある程度やむを得ないことだ、ある程度またわれわれとしても、いまになって円の相場が上がりますことは甘受せざるを得ない面もあるのではないかというふうに考えておる次第でございまして、さりながら、投機的な動きによる乱高下は極力防止するのが私どもの任務であるというふうに心得ておる次第であります。
  222. 竹本孫一

    ○竹本委員 ドイツと日本との貿易構造の相違、よくわかります。それからマルクはすでにスミソニアンに対して四割ぐらい上げておって、日本は半分だったからということで、いまごろその調整が行われるのだという見方も、これは一応成り立つと思います。  ただ、そういうことを言うならば、日本の従来の経済政策あるいは為替政策、そういうもので円の切り上げを回避するために、減税をしないでもいいとき減税までやって、国内の購買力を刺激して何とか円の切り上げを回避しようというような下手な努力をやって、それが失敗して、いま累積した結果がここに来ておるということもわれわれとしては指摘しなければなりませんが、これはここではちょっとやめておきます。  そこで、今度はちょっと次元を下げて、円高の対策の問題について、先ほど来いろいろお話がありましたが、円高が急にならないように、特に乱高下に対しては介入もこれからはしゃんとやるというようなお話のように理解をいたしまして、具体論にひとつ入っていきたいと思います。  これは大蔵省通産大臣ともに関係の問題ですが、すでに中小企業の為替変動対策緊急融資制度については、金利が当初の七・六から六・二に引き下げられました。これは結構でございますが、その業種指定についてさらに拡大する必要はないか、また金額二千万円を少し弾力的にむしろ広げていく必要はないかという点が一つ。  それから第二は、中小企業の事業転換対策融資についても、現在金利が六・五%でありますけれども、これを、いま申しました為替変動対策融資と同じように六・二%にまで引き下げる考えはないか、この点だけ伺いたい。
  223. 田中龍夫

    田中国務大臣 前段の点につきましては、われわれも同じような気持ちを持っておりまして、客観情勢いかんによってはと存じまして、大蔵省とも御相談をいたしております。  後段の問題につきましては、私の口からまだちょっと申し上げかねます。
  224. 竹本孫一

    ○竹本委員 大蔵大臣……。
  225. 坊秀男

    坊国務大臣 中小企業為替変動対策につきましては、中小三機関の金利を下げる、こういうことでございますが、それにつきましては、すでに御指摘のとおり、七・六というものを六・二にまで下げておるということでございまして、これは現行の金利体系といたしましては、まさにもう精いっぱいのことをやっております。  それから中小公庫二千万、国民公庫五百万ということでございますが、中小公庫の二千万というものは、その根っこに六千万というものがありまして、それに対してこの間二千万というものを枠を増加したということでございますので、いまのところはそこから上のことは考えておりません。
  226. 竹本孫一

    ○竹本委員 もう一つ、具体的なことを二つあわせて伺いますが、住宅を中心として景気振興をやろうとよく言われるのでございますけれども民間金融機関の住宅ローンが最近いろいろの動きをしているようです。やはり住宅によって大いに景気を刺激しようということを政府もお考えになっておるのだが、この際は国の利子補給制度を住宅ローンというものについてもひとつ考えて、住宅金融公庫の五・五%に大体民間の住宅ローンの場合も並ぶように利子補給を考える。来年度予算においてそういうことを措置するお考えはないかということが一つ。  それからもう一つは、先ほどもちょっと議論になりましたけれども、年末の中小企業金融、必要とあれば大いにというような漠然たるお話でございますけれども、これも少なくとも、去年でも四千九百億近くだったと思いますが、ことしはこういう情勢のもとだから七千億円ぐらい考えるべきではないかと思うが、その辺についてどういうお考えを現在持っておられるかという二つを伺いたい。     〔栗原委員長代理退席、委員長着席〕
  227. 坊秀男

    坊国務大臣 住宅金融公庫の融資の利率でございますが、五・五をもっと下げたらどうか。これはなるほど住宅金融公庫の政策というものは非常に大事なことであるということは私もよくわかります。五・五をさらに下げるということは原資の関係等もありまして、いまのところこれをさらに下げていこうというようなことは考えておりません。
  228. 竹本孫一

    ○竹本委員 大体いままでの質問応答でも、まずいことはいろいろやむを得ない、それから新しいことはなかなかむずかしいということが結論のようですが、そんなことだからステップ・バイ・ノー・ステップで、さっぱり具体的な動きが見られないということを私は非常に残念に思っておることだけ申し上げておきたい。  そこで、時間がだんだん少なくなりましたけれども、経済問題の本質的な問題についてひとつ議論をしたい。  総理福田内閣の経済政策には三つの特色がある。これはまずい特色ですけれども、経済の専門家の福田さんであるから大いに期待しておるのですけれども、それにもかかわらず、第一に政府の手の打ち方は常にツーレートである。遅過ぎる。今度の二兆円の景気刺激の施策も半年前にやるべきであった。これは倉成さんもいらっしゃるけれども、ぼくは前からいつも言っておる、それからツーレートのほかに今度はツーリトルだ。小出しに過ぎる。一体公定歩合を下げるというのでも〇・二五ずつぐらい下げてやる。補正予算も一遍やって、また二遍やらなければならぬような補正予算を組む。これはツーリトルである。総理も御存じかと思いますが、最近ヘジフレーションという言葉があるのですね。ヘジテーション、すなわちためらって、これをやろうかやるまいかどうしようか、やればまたインフレになりはしないか、三〇%を超えはしないかというようなことで、ためらっておる。政府はヘジテーションでためらっておるが、その間に物価はどんどん上がり、インフレの矛盾はだんだん激成されていく、これをヘジフレーションと言うのだそうです。覚えておいてください。福田内閣姿勢はそのヘジフレーションの典型的なものであるように私は思うのだが、これはツーレート、ツーリトルだからそうなる。それはひとつやめてもらいたい。  さらにもう一つ重大な問題がある。第三の特色はツーローである。消費がロートーンで低過ぎる。次元が低い。これはいままで余り指摘しなかったので、ちょっと私、説明をいたしますが、福田さんが資源有限ということを言われたときに、ぼくは、やはりさすが福田さんだ、気のきいたことを言われるなと思って、これは高く評価したのです。しかし、四つの単語は聞いたけれども、政治の施策の上に資源有限が一体どこに具体的にあらわれたかというと、これもステップ・バイ・ノー・ステップで全然出てこない。何が出てきたか。行政機構改革、どこか行方不明だ。総理は一生懸命考えておられるようだけれども、国民の側から言えば、総理が真剣に取り組んで来年の予算にはどれだけの具体的成果が出るだろう、そんなことを期待している人はほとんどいませんよ。これは非常に残念なことだ。せっかく資源有限と言われたのだから、資源有限に対応するように行政機構の改革もやってもらわなければいかぬし、もう一つは、まず産業構造にメスをふるわなければいかぬ。一体通産大臣、産業の転換とかなんとか言うけれども、先ほども金利の問題も言いましたが、この産業は労働力の問題から見ても、あるいは資源の問題から来てももう国際競争力はだめだ、したがって、これはもう転換してもらう以外にはないという点について、漠然たる話はよく承りますが、本格的な話はほとんど聞かない。だから、ここで政府は、この産業、この産業は大体においてだめであるというネガティブリストを出したらどうか。これとこれとはもうだめになるというネガティブリストをはっきり国民に示して、そのかわり、殺しはしないのだから、これだけのことで金融面、税制面で助けてやって転換させるが、全体としては方向はもうだめなんだ、あきらめなさいということをはっきり言うネガティブリストを出すくらいの構えでなければ話にななぬ。行政機構改革でも、これとこれはやめるのだとはっきり言わなければ、何となく能率化しますとか簡素化しますぐらいの話ではやっぱり役に立たぬ。これはまた改めて論じますが、産業構造改革についてネガティブリストを出す考えがあるか、これがまず一つ。  それからもう一つ、これにあわせて、資源有限ということになると、われわれの生活様式、考え方を変えなければいかぬと思うのですね。哲学、思想、生活様式まで変えなければならぬ。それに対する指導は何にもない。たとえば石油が二億七、八千万キロリットル必要でしょうけれども、その三億キロ前後の石油を買うのに、前は四十億ドル前後だったでしょう。いまは二百四十億か二百五十億ドルぐらいになるでしょう。同じ物を買うのに二百億ドル金がよけいに支払いが必要だということになれば、われわれは生産性を向上するか、あるいは輸出品に上乗せするか、あるいはわれわれの生活様式を変えるかしなければいかぬ。二百億ドルというと鉄の輸出と自動車の輸出全部ですよ。それだけのものがだめになっちゃうのだから、それに対応するだけの物の考え方の転換が必要ですよ。坊大蔵大臣が、私は感心したのだけれども、この前の最初予算演説に構造変化という言葉を使ったでしょう。この構造変化にどう対応するか。資源有限という単語はあった。構造変化という言葉も大蔵大臣から聞いた。しかし、それに対応する施策というものをわれわれは全然見ない。この点は一体どうなるか。どうするつもりか。私は教育改革から精神改革、われわれの生活様式の転換まで含めて資源有限に対応しなければならぬと思うが、どうでしょう。
  229. 田中龍夫

    田中国務大臣 竹本先生のおっしゃるとおりでありまして、われわれは、いまの構造変化の問題につきましては、十三業種を特に指定いたしまして、あるいはその設備に対しまするスクラップダウンの問題なり、あるいはその後の処置を着々と実行中でございます。のみならず、さらにその転換に当たりましての対策につきましては、他の産業に転換させるのみならず、さらにこれから出ます労働力の問題につきましても、労働省と緊密に連絡をとっていたしつつあります。この二つの問題は現在進行中の問題でございまして、この点は先生のおっしゃるように、はっきりとスケジュールどおりに着々とやっておりますということを申し上げたいと存じます。  第三のいわゆる資源有限の問題の中で、一番大きな問題は油の問題でございます。この問題につきましては、すでに総合エネルギー調査会の答申も出、また、政府の方といたしましても、このエネルギーの問題について最も国家といたしまして重点形成をしなければならぬということは明確に打ち出しておる次第でありますが、それに対しまする所要資金の問題につきまして、御承知のとおりに六十八億でありますか、それがさらに六%の物価高を考えますれば八十八億、この膨大な資金量をどう確保するかという問題こそが私は最大の問題であろうと存じまして、ただいま大蔵当局と折衝も続け、あるいはまたその財源につきまして鋭意努力をいたしておる次第でございます。——八十八兆でございます。億と兆の間違いでございます。
  230. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 資源エネルギー有限時代ということを言いながら施策がないじゃないか、こういうお話でございますが、これは施策というと、いま竹本さんもちょっとお触れになられたようですが、これはもうわれわれの気持ちの持ち方から始まり、家庭の生活のあり方から、企業の運営の仕方から、あるいは国の行政のやり方から、もうあらゆる面の姿勢転換というところへ発展しなければならぬと思うのです。  しかし、この考え方をずっと進めますと、重大な問題がありますのは、いまわが国の社会が当面している問題は、景気を何とかしてもう少し浮揚しなければならぬ、こういう問題があるのです。そこで私も大変ジレンマと申しますか苦慮いたしておるわけでありますが、資源有限時代に対応する国民各階各層の姿勢転換、これを余り強調いたしますと、これはまた本当に景気問題に水を差す、こういうことになりかねない。しかし、資源エネルギー有限時代に対応する姿勢の転換ということは非常に重要な問題でありますので、これはいまとにかく早く景気を軌道に乗せて、そしてその上で強力にこれを進めなければならぬ、こういうふうに考え、静かにそのための環境づくりをしておる、こういうふうに御理解を願います。
  231. 竹本孫一

    ○竹本委員 円高の問題との関連もありますが、労働の生産性あるいは賃金の問題、それから資源の問題、今度は円高の問題、いろいろな点で日本の産業がもう従来の形では成り立たないというもののネガティブリストをつくってください、それを発表してください。そして時期をはっきり、この間に整理をし、転換をするのだということを政治は示すべきだということをさっき申したわけですが、それに関連してこれもひとつ、これは発表するがいいかどうかぼくは疑問だと思いますが、これは日銀総裁も先ほど来乱高下の基準の問題について言いましたが、私の方が一方的に言いますが、ぼくは一ドル二百六十円ぐらいがまあまあの水準だろうと思うのです。為替がフロートしたときに愛知君が大蔵大臣だったが、早く二百六十五円ぐらいになるという見通しのもとにフロートばかり考えているとひどい目に遭うことになりはしないかということを私は個人的にアドバイスをしたことがありますが、最近情勢も変わりまして、ひとつこれは政府にお願いだが、発表するかどうかはいろいろ慎重に考えなければいかぬが、円が二百六十円になった場合、そこでこれだけの企業は成り立つ、二百五十円ならどうだ、二百四十円ならどうだということを、経済企画庁かどこか知らないけれども、やはり目安をつけてもらいたい。科学的に総合的な判断の材料をひとつわれわれにも提供してもらいたい。そしてみんなでそういうものに対応できるような——それまで先ほどのようにじわじわドイツ式に円が上がっていくならいいけれども、乱高下は防ぐとして、じわじわ上がるにしてもどの辺までいけるのか、どの辺を目標にして企業は経営すればいいのかということを本当は適当な機会に適当な方法で国民に示さなければ、事業経営できませんよ。  それからもう一つは、またそのデータとしていま申しましたように、二百六十円、ぼくはそう思っているのだけれども政府がどこを考えておられるか、それに応じた考え方をひとつ出してもらいたい。それをリストもつくって、ひとつ科学的に日本産業の転換ということを考えるようにしてもらいたいということが一つ。  それから、国土庁がお見えになったのですが、いま資源有限を余り言うとデフレ効果の方が大きくなって景気刺激にマイナスではないかという御心配が総理はあるようだけれども、これは要望でも結構ですが、とにかくいままでの延長線上で政策を考えるといけないのであって、資源有限だからマイナスのものはマイナスにしてしまう。これはデフレ効果はありますよ。しかし、同時にそれ以上にプラスをつくる。河村委員が先般も五十三年、五十四年の予算は積極予算を組みなさい、七%成長ぐらい覚悟しなさいということを政府に強く質問で申し上げたのはその点なんですが、三全総だって、三全総で二百四十兆円要るんだ、これは土地の代金含みませんなんと言ってみたって、そんなものはそれだけで何の役に立たぬでしょう。エネルギーのために七十兆円、下手をすれば百兆円金が要ると言ってみても、それが政府予算編成とは全然関係がなければ何の役にも立たぬ。だから、私が言うのは、これからはいままでの単なる延長線上ではなくて、エネルギーの確保、三全総の具体化、そういう二つを柱にして、これを来年度予算の積極面にする。同時に、デフレ効果のあるような、行政機構の改革なりあるいは産業構造の転換なりというデフレ効果もやる。プラスもあればマイナスもある、差し引きプラス七%ぐらいの成長ができるような総合的な政策をひとつ考えてもらいたい。  特に今度円がこれだけ上がりますと、時間がなくなりましたから私だけ申し上げますが、五%円が上がれば、その結果GNPはマイナス〇・五%ぐらいになるという計算をした人がおる。私も試算してみると、大体やはりその辺じゃないか。今度は一七%一月以来上がっておりますから、約二〇%上がっておりますから、それで言うと、この間の二兆円の景気刺激政策は今度の円高でプラス・マイナス・ゼロになっただけでなくて、下手をすればマイナス一%ぐらいの衝撃が、全部年度内に出てくるかどうかちょっと疑問がありますけれども、覚悟しなければならぬと思うのですね。そうすると、それがまた来年度に続いたとしても、来年度の六%成長というのは、今度の一七%現在上がっておる円高からすればほとんど不可能になってしまうという点を心配しておる。それならばなおさら三全総も具体化するし、エネルギー確保のための積極的な投資も徹底的にやる。大体七十兆円と言えば年に七兆円、二百四十兆円と言うならば、十年計画ならば年に二十兆円前後のものを予算の中に具体的にそれが可能なように努力して織り込んでいかなければ、ただ調査会が答申をした、政府は承りましたと言うだけでは具体的でない。プラスがありマイナスがあるという政治的なひとつ仕上げをやってもらいたい。強く要望申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
  232. 田中正巳

    田中委員長 これにて竹本君の質疑は終了いたしました。  次に、工藤晃君。
  233. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 日本共産党・革新共同を代表して、質問いたします。  ことし一月一ドル二百九十二円が二百四十円台に突入して、私の計算では一八ないし一九%ぐらいの切り上げで、あのニクソン・ショックのとき、三百六十円からスミソニアン・レートの三百八円に切り上がったときは一六・九%でありますので、それより上回っている、このことは非常に大事であります。それに加えて、あのニクソン・ショックのときも不況であったという点での共通性がありますが、ことしの不況というのは言うまでもなく四年続き、そして長引く不況、明らかに構造的危機の様相を呈している。そこで起きたこのようなニクソン・ショックを上回る円の切り上げでありますから、日本経済のこれからの自主的な再建にとって非常に大きな障害があるし、直接中小企業や輸出産業に大きな影響をもたらしていることは明らかであります。これはもうきわめて重大な問題である。しかし、この問題に日本の政治が立ち向かうときにはこの円高問題に対してはっきりした認識を打ち立てる必要がある。この原因と背景は一体何であるか。もちろん日本の側にも問題があります。日本の輸出の急伸の問題があるし、他方では不況が長引いていることから相対的に輸入が伸びない。そこで貿易収支の黒字が大きくなっている。これがもちろんありますが、アメリカ側の問題、これは一層重要だと思います。一口で言って、アメリカ政府の側が国際収支の赤字を一層大きくし、加えてドルのたれ流しを大きくする道をとっていて、そこから生じる国際収支の悪化というものを、みずからの責任において緩和する方向でなしに、もっぱら日本の側に責任を求めていくという、そこから起きている問題をはっきりさせなければいけない、このように考えるわけです。  そこで、時間を省くために、これは商工委員会でも出しまして、その後いろいろ数字の調整も行いましたが、私は、このアメリカ国際収支の問題をぜひはっきりさせる必要がある、こう思っているわけであります。この第一表から、貿易収支が七五年の九十億ドルの黒字から、七六年九十二億ドルの赤字に転落する、貿易収支が悪化するという問題、これはもうよく知られておりますように、二つ、大きなことを考えてみなければいけない。  一つは、アメリカがいま戦略的に行っているところの石油備蓄政策による石油輸入増であり、ことしは四百五十億ドルぐらい輸入すると推定され、七五年のときは大体二百四十八億ドルであった。  それからもう一つアメリカの貿易収支の悪化問題の背景として第二表を見ていただきたいわけでありますが、いまアメリカの企業というのが、アメリカ本国の産業を基盤にしてそこから輸出を伸ばすというタイプから、多国籍企業となって海外の子会社で販売する、あるいはそこで輸出を伸ばすということで、これは単位は億ドルで書いてありますから、七五年などは、アメリカ子会社の売り上げが四千五百八十三億ドル、そのうちの輸出が千六百億ドル近くあって、これはどちらもアメリカの輸出を上回る。特に売り上げについて言うと、四・三倍にもなっている。つまり、アメリカの戦略的な備蓄政策と、アメリカのこういう構造変化、しかも、これがアメリカ政府が政策的に進めている方向、そこから貿易収支に大きな赤字が出てくる。ここを見なければならない。  しかし、もう一つ、第一表に戻りまして、投資収益収支を見ていただきたいのですが、他方では膨大な対外投資を行っているがゆえに、投資収益の受け取りが七六年は二百五十七億ドルにも達しまして、収支で見れば百三十七億ドルの大きな黒字を出していて、本来ならば貿易収支の赤字を埋めて十分ある。しかるにということになるわけですね。経常収支が赤字になるもう一つの原因としては、ベトナムでアメリカが侵略戦争を大々的にやってきたころと比べても、海外での防衛費、軍事支出が依然として五十億ドル近くで多いなどに見られるような、こういうアメリカの対外政策と結びついた支出が加わって、これが経常収支の赤字をつくり出している。こういうことが明らかになってくるわけであります。  そして、これに加えて、この対外投融資の異常な膨張、七六年は四百四億ドルに見られ、また、対外投資からの収益の異常な増大に見られるように、アメリカが世界の金融機関としてあるいは多国籍企業として投資に次ぐ投資をやり、これでドルのたれ流しが起きている、拡大されていく、こういうことから起きているアメリカ国際収支の悪化であり、ドルのたれ流しが基調として傾向的にずっと続いている。したがって、いまよく円の実勢ということが問題にされますけれどもアメリカがこういう石油備蓄政策をとる場合ととらない場合と二つ比較すれば、とらない場合をとれば、当然貿易収支も経常収支黒字になるでしょう。そうすれば、これほど異常な円高という結果は出てこないはずである。こういうことが明らかであります。私は繰り返し言いますが、日本の貿易収支の方に問題がないと言っておりませんが、しかし、こうやってみると、より大きな、言ってみれば世界の構造的な問題とも言えるものがアメリカの側にあるということが、こういう実態を明らかにすれば明らかなんであります。  そこで最初福田内閣はこれまで、ことしの三月の首脳会議、そのほかいろいろ会議があったでありましょうが、こういうアメリカ政府の側に対して、アメリカの責任でなすべきことはなせというようなことを主張してきたことがあるのかどうか、これをひとつ総理に伺いたいと思います。
  234. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、いま世界が非常に不安な状態にある、まあ激動期と言ってもいいくらいな状態じゃないか、こういうふうに思いますが、この状態は関係国、特に日米欧三極がよく相談しながら協調と連帯の精神でやっていかないと大変なことになりはしないかということを、日米間におきましても、あるいは先進国首脳会談におきましても主張してきておるわけでありまして、お互いにお互いを非難し合うということは害あって益はない。むずかしい問題点はどこにあるかということはお互いにわかっているのだ。わかっているのだから、そのわかった認識の上に立ってみずからがその姿勢を正すということに全力投球をする、これがもう世界を安定させる基本的な姿勢でなければならぬ、こういうふうに思っておるわけであります。アメリカにせよヨーロッパにせよ、お互いに悪口、責任のなすり合いということは慎みたい、かように考えております。
  235. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) もし、そういう国際会議の場で、協調と連帯でいきましょうとか、お互いにお互いのことをしましょうというような外交というのは、現実に日本の国民と日本経済の利益を守る外交としてはもう全く落第だと言わなければいけない。現実は本当に厳しいじゃないですか。さっき言ったように、円高問題の背景にあるアメリカの政策の問題、構造変化の問題、こういうものがどかっとある。そしてしかも、アメリカはみずからの責任でこの問題を解決することは回避して、もっぱら日本に攻撃をかけてくる。その対日攻勢というのが、もうことしに入ってから一連の形で、よく官民協調として、ブルメンソール財務長官も何度日本を批判したでしょうか。そのたびに、それにまた、アメリカの銀行などの投機が加わって、どんどん円がつり上げられてくる。たとえば八月のクームズ・ニューヨーク連銀前副総裁、国際為替の非常な専門家でありますが、この論文なんかはっきりと、あらゆる通貨に対して攻撃を加えるとドル不安でドルが大変なことになるから、円だけねらい撃ちしろというようなことを言って、これが事実上実行されてきた。こういうまさに官民協調の円にねらいをつけた対日作戦が行われてきたという厳しい現実があったわけなんです。こういう現実の中で、私は協調と連帯です。これで済みますか。  だから、私が改めて聞きたいのは、こういう具体的な対日攻勢があったことに対して、福田内閣は外交面でどういうことをやってきたのかということをはっきり聞きたいということであります。
  236. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 たとえば鉄鋼、鉄材の輸入が多過ぎるというような問題が起こるとか、あるいはカラーテレビの対米輸出が多過ぎるとか、いろいろ問題がありますけれども、それはみんな話し合いでひとつ解決しましょうということで、すでにカラーテレビのごときも話し合いで解決しておる。また、鉄鋼につきましても、鉄材につきましても、いま話し合いが進行しておるわけでありまして、お互いにお互いを批判し合うだけでなくて、話し合いによって万事を解決していくという方式でいくべきだ、私はこういうふうに考えておるのでありまして、まさにその方式どおりのことを進めておるわけです。これが工藤さんがおっしゃるように、いや、対日攻勢だ、対日謀略だというようなことで突っかかっていく、アメリカもまた突っかかってくる、そしてお互いに門戸を閉ざすというようなことになったら、これはどういうふうになりますか。そんなふうなことは考えてはならぬことであります。私は、協調と連帯、どこまでもその精神で日米両国、日米両国に限りません、全世界そうでありますが、特に日米両国はその置かれておる重大な立場にかんがみましてこの姿勢を堅持してまいらなければならぬ、そのように考えます。
  237. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) いま総理お話の中ではからずも日米間の問題として出されたものは鉄鋼とかカラーテレビとか、もちろんこれは問題がありますけれども、すべて日本側でアメリカ側から非難されていることばかり出して、そしてまあそれは話し合いでやりましょうと言ったというのです。しかし私は、そのことに加えてここではっきりさせなければいけないのは、六〇年代後半から七〇年代に入って日米間で一連の経済問題のいろいろな調整が具体的に行われました。沖縄の施政権返還のときに繊維問題がどんなに大きくなったか、言うまでもありません。貿易為替の自由化、資本の自由化あるいは関税引き下げ、関税障壁の撤廃等々、一連の要求がアメリカから出されてきました。しかし、この経過、歴史の事実として振り返ってみますと、同じパターンを繰り返しておるわけですね。それはどうか。  一つの点は、常に日米の軍事同盟の侵略的な強化ということと結びつけた日米間の経済問題の調整が行われた。これはきょう余り詳しくここでは論じません。もともと日米安保条約の第二条に日米関係の調整の仕方が入ってしまっている。そういう異常なことからもこれが出ておりますが、それは別にして、もう一つのパターンの特徴は何かと言いますと、先ほど総理が言われたように話し合いとかある程度協議が行われましたよ。そして話し合いの中ではいつも日本の側が譲歩していくというところでいく、これも一つのパターンでしょう。しかし、アメリカはいつも話し合いだけで解決しないというところが最近のアメリカの政策の特徴なんです。ニクソン・ショックのときに、その前にはさんざん日本が譲歩した後に、あれは日本政府は相談を受けたですか。アメリカはIMFのこれまでの体制も吹っ飛ばす、受けないで一方的にやってきたわけですよ。オイルショックのときにも、アメリカがこの機会を利用して日本や西欧諸国の経済的地位を低めようという一つの実力行使が入っているわけですよ。今度の場合も、確かに日米経済準閣僚会議だとか、いろいろ話し合いの場があったでしょう。しかし、そこで今度の円の相場をどこへ持っていくとかいうような話し合いがあったとは聞いておりませんし、事実上既成事実として一方的にアメリカが批判を繰り返す、そしてそのたびにニューヨークやロンドンや東京の市場で外銀その他の投機が行われて、実力的に二百六十円、二百五十円というふうになってきた、こういう経過があるじゃありませんか。  だから私がさっき言いましたように、アメリカの側が具体的な対日戦略を組んでいる。これはたとえばニクソンの時代に、アメリカの対外経済政策をどうするかというウィリアムス委員会報告なんかまさに膨大なもので、まさに相手が言うことを聞かなければそういうことをやるということまではっきり出しているわけでしょう。そういう国を相手にした外交なんだから、ただ話し合いで解決というより、向こうが話し合いで解決してしまわなく、そこを卑屈な態度をとり続けることがいよいよアメリカの外交をつけ上がらせていって今度みたいなことになっている、こう言わざるを得ないわけであります。  私が具体的に一つ問題を提起したいのは、十一月五日に明らかにされたこととしてのアメリカの大統領通商交渉代表部のストラウス特別代表が、二、三カ月以内に日本が日米貿易の不均衡解消に向けて明確な姿勢を示さない限り米政府としても重大な決意をせざるを得ない、まさにおどし的なことを言っております。  ニクソン・ショックのしばらく前にニューズウイークの七一年六月七日号に、ニクソン米大統領は不公正と考える貿易相手に対し、厳しい措置に訴えても米国の国際競争力を回復する決意を固めたようだ、世界貿易戦争を引き起こすほど厳しいものかもしれないと予告しておりますが、これを思い出させるようなものでありますが、まさにこういう姿勢で来ている相手に対する外交として、私はこれまでの日本政府の態度はまさに卑屈と言わざるを得ないし、それがいよいよつけ上がらせて一方的に動かされていっている、こういう経過をたどったんじゃないですか、どうですか。
  238. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国は厳然たる独立国でありますから、他国の支配を受ける、こういうようなことは断じてありません。しかし、よその国はアメリカばかりじゃありません。いろいろな国があるわけでありまして、その国々との間にいろいろ問題がある。これはもう御指摘を待つまでもないことでありますが、その問題はすべて話し合いで解決する、あくまでもこういう態度でいきたい、こういうふうに考えておるのです。もうわが国はどこの国の支配も受けておりませんから、その辺はひとつ御安心願います。
  239. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 私はアメリカと断交しろとか、そんなことを言っていないことは明らかであります。しかもいま私は、アメリカの対日経済調整が、歴史的に振り返ってみると、協議、協議と言って、その場でももちろんいろいろ譲歩をとるけれども、いざとなると実力行使を繰り返してきた、こういうことを事実で挙げた。そういう相手との交渉に臨む政府の態度としては、まことに自主性もないし従属的ではないか、そう言わざるを得ない事実をもって挙げたわけでありますが、総理ははっきりした回答を示さなかったわけでありますので、私はさらに質問を進めたいと思います。  しかも今度の円高問題のとき、重要なことは、こういうアメリカの側がもう実力行使をどんどん進めてきた。その中で政府が、IMFの総会その他の場で秘密で、ある程度円を切り上げることを同意したのではないかということがいろいろうかがわれるわけであります。IMF総会に出席した松川財務官が五日に帰国し、そして二百五十円までの切り上げに同意してきたことを総理に報告し了解を求めたということが商社の中の情報として言われて、そしてその翌日六日から東京市場では、その前の日まで直物で出来高三億ドル台だったのがいきなり七億ドルを超える出来高になって、しかもそのうち五億ドル以上が午前中に集中する、明らかに投機が始まったわけであります。  そういうことで、私はこの問題は非常に重大だと思いますので質問をしますが、一つの点は、総理は十月五日そういう報告を松川財務官帰国後受けたかどうか。それからもう一つの点、松川財務官はIMF総会で五カ国蔵相会議、そこで設けることが決められた七カ国の高級官僚会議出席して、そこで何を取り決めてきたのかという問題、そして松川財務官がちょうど十月五日にアメリカから日本へ帰るとき、空港で日本大使館から電話を受け取った。どういうことか。いまのこのくだりはみんな大蔵省から伺ったことであります。  それは、その直前に倉成企画庁長官が記者会見で、円は二百六十円から二百七十円で推移するだろうという意味の答弁をしたということがいち早くアメリカに伝わって、アメリカの財務省が問い合わせてきた。それで松川財務官は、アメリカの財務省と空港で電話をして——これはもう大変異常なことだと思うのですね。帰るとき空港で取っつかまって、そして日本側は政策を変更したかと問われたことに対して、変更しておりません、このように答えた。ここまでは大蔵省の方から聞いたわけでありますが、これも変更しておりませんということになれば、二百六十円から二百七十円という具体的な数字が挙げられ、しかも政策を変更しておりませんということになれば、ここを割ってどんどん落ちることを認めていますということをアメリカに合意を与えたにも等しいのではないか。あるいはその前に高級事務官会議などでもっと具体的な二百五十とかいう数字があったとすれば、それも含んだ回答にもなったと思うのですが、ここの真相はどうしても明らかにしていただきたい、こう思うわけであります。総理大蔵大臣、お願いします。
  240. 坊秀男

    坊国務大臣 総理がお答えの前に私から事実を申し上げます。  IMFへ参りましたのは、私が日本の代表として参りました。松川財務官が私に随行して参りましたが、そのIMFの各会議、また個人的な話し合いにおきまして二百五十円などというようなことを約束するとか、了承するとか、さようなことは絶対にございません。ただ、日本の経済総合政策等につきましては、アメリカ初め各国から相当歓迎はされました。しかしながら、これによってひとつぜひとも日本の国の輸入というものを何とかふやしてもらいたいということを強く要望されたということだけは申し上げておきます。
  241. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 財務官が一ドル二百五十円の相場を約束をした、了承した、これはあり得ざることなんだ。どこでどういうふうに聞かれたか知りませんけれども、そんな情報は全く荒唐無稽のものですから、それはそのように御了承願います。
  242. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) ところが、荒唐無稽と言われることがかなり実体を伴っているというところが私は重要なんじゃないかと思います。十月五日、その翌日、先ほど言いましたように、東京市場で七億ドルを超える直物の出来高ができた、異常なドル売り、円買いの殺到であります。その中で円は二百六十円を初めて割って二百五十九円となりました。  その前後の日本銀行の介入、これは先ほど来いろいろ問題になっておりますが、ちょうど十月五日の定例記者会見で、森永日銀総裁は、週明けから急上昇している円相場に投機的な動きがあるが、日銀は従来どおり、相場は為替市場の実勢に任せる方針に変わりない、投機的な動きもりっぱな需要であると言って、投機にある肯定的な発言もされ、そして一ドル二百五十円台になれば業種によっては苦しいところも出ようが、日本経済にとって円高のプラスとマイナスが均衡するところで相場は決定される、まさに前日に二百五十円台に入っていくことを認める発言をし、同時に介入をしないという発言もした。そして投機もりっぱな需要であると言って、投機的な動きに手放しのような発言もこの中には見られるわけであります。  ところが、その後為替の動きが二百五十円近くなったとき、特に十月十四日になって二百五十三円台割れに近くなったときに、大蔵省、日銀は市場への積極的な介入、つまり二百六十円では介入しなくて、そして二百五十円近くなって初めて本格的な介入ということになり、そして参議院予算委員会でも十月十八日、森永総裁は、今後とも投機的な乱高下に対してはちゅうちょなく介入しという前と変わった発言に移ったわけであります。  そこで、森永総裁、おいでいただいておりますが、なぜ二百六十円のときは介入しなくて、二百五十円近くなったら介入をしたのか、その政策の根拠は何か。それからまた、十月五日に投機もまたりっぱな需要であるということで、まさにその翌日から投機が殺到する前日にこういう発言をされ、その後大いに投機が始まった、こういう事態を踏まえて、そのときの発言の真意は一体どうであったか、これはどうしても聞かしていただきたいと思います。
  243. 森永貞一郎

    ○森永参考人 お答えします。  実は私も松川財務官が出ましたIMFの会議その他の会議には終始行をともにいたしておりましたので、先ほどお話のございましたような為替相場に関する密約説など、およそ荒唐無稽のものであるということを私からも確言いたしたいと思います。  次に、いつでしたか、私忘れましたが、記者会見のときに、為替相場は市場の需給によって決まるものである、その需給の中には投機的な要因も時によって含まれるだろう、そしてその結果として乱高下が起こるような場合には、これは乱高下を阻止するために介入をいたします。その前の段階で需要の中にはそういうものも含まれるという、そういう意味で投機もまた需要の一部であるということを申したことはありますが、それは決して投機を是認する意味で申し上げたのじゃございません。その結果起こる乱高下に対してはあくまでも介入するということの方を主張した次第でございまして、その辺の誤解をまず解いていただきたいと思う次第でございます。  それから、いついかなる場面で日銀がいかに介入したか、それは申し上げられませんけれども、二百六十円のときにどうであったか、そのこともいまは申し上げませんけれども、乱高下に対してはおよそちゅうちょなく対処するというのが日銀の一貫した方針でございまして、二百六十円を割ってから介入したから、何かその辺に密約があるかのごときお話を伺うことはまことに迷惑千万な話でございまして、そういう事実は全然ございませんことを確言いたします。
  244. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) いまそういう密約はなかったとかいうことを言われますけれども、こういううわさが、仮にうわさとして出たときに通貨当局や政府がとるべきはっきりした回答は、記者会見でうわさがあるとかないとかいうことを言うだけでなしに、はっきりと介入に乗り出すとか、そういう行動に出るべきであるということはもうこれはわかり切ったことなのであります。しかも、その五日の記者会見では、介入しない介入しないという発言で推移し、それが十四日近く——これは記者会見での発言集をずっと並べていただけばもう一目瞭然なんです。十四日ごろになって初めて介入という姿勢が出てきたわけであります。このことをもってしても、幾ら口でそのことを言われても国民を信用させることができないというのは、実態として、二百六十円のときはずるずる、ずるずると切り上げを放置する、そして二百五十円近くで、どうもこの辺だということで介入が始まった、この事実は明白なのであります。  ついでに申し上げておきますと、これは通産省の和田事務次官も、十月六日、これは六日になってからです。やはり午後の記者会見で、二百六十円台に入ったとき——それを割ったときですね、やはり円相場の水準自体は日本経済の実態を反映している、あらかじめ一定の相場水準を想定して誘導するような市場介入や操作は一切やるべきではない、通産省もこういうことまで言っている。まさに政府の各部門がこの二百六十円を割るときに、口を合わせたように、介入すべきではない、ここへ突き進んだ、これは明らかに一つの証拠として挙げられると思うのであります。  そこで、次にこの問題で質問を進めますが、先ほど言いましたように六日から始まった商社などの投機、その投機が私の調査では、先ほど言いましたように松川財務官が二百五十円で合意してきたということで、さあ、やろうということで円買いに走った。これは事実なんであります。そのもとはまだ認めていただけませんが、これは事実なんであります。それでしかもさっき言ったように、商社がどういうことをやったか、あるいはその日投機があったかどうかということは、十月六日の直物の出来高が、前日三億二千百万ドルが七億五千百万ドルになった、午前中だけで五億四千九百万ドルになった、こういうことが明らかであり、しかもこのことについては、私もここで一々挙げませんが、日本経済新聞も朝日新聞も読売新聞も、みんな外為銀行からいろいろ調査して、それまでは外国の銀行その他の投機が大きかったけれども、いよいよ国内の商社や企業の投機が始まったということをこのとき一斉に書いているわけであります。各紙が銀行からいろいろ事情を聞いて、はからずも一致したことを書いているわけであります。したがって、私は大蔵省に対しまして、この六日ごろに始まった国内の投機についてどういう調査を行われたのか、それについて伺います。
  245. 坊秀男

    坊国務大臣 精細な調査については事務当局から……。
  246. 旦弘昌

    旦政府委員 お尋ねの商社の行動でございますけれども、これは為替市場におきましては輸出前受け金の流入状況となってあらわれてくるわけでございます。ただいまお話しがございました十月の商社の前受け金の流通状況を月単位で見てみますと、九月が五億三千四百万ドルでございましたけれども、十月は大幅に減少したしまして三億三千六百万ドルということでございます。したがいまして、商社が輸出前受け金を通じまして投機をしたということは事実としてはございません。
  247. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 大蔵省は輸出前受け金の数字を示されて、そして九月、十月と比べて十月は大してふえてないということで投機はなかったと言われるのです。私は大蔵省の出した数字そのものを非常に疑っているのです。それはいろいろ理由がありますよ。  第一、いま輸出前受け金に対するチェックというのは非常に緩くなってしまっております。前は一件五千ドルでチェックされた、ところがいまは五十万ドルまで、五十万ドル超えて許可を得る。恐らくこれは外為銀行からの届けでこういう統計をつくったのでしょうけれども、商社もばかじゃありませんから、そろそろいろいろチェックが始まるようなとき、どういう形で届けるかという問題があるので、少なくとも政府たるもの、大蔵省たるもの、こういう数字が出たとき、はい、さようでございますかということでなしに、実態を調べなければいけないし、第一に輸出前受け金が、さっき言ったように規制がきわめてルーズになってしまっている。それがちゃんと前みたいにまだ一件五千ドルでチェックされているならば、こういう統計がもう少ししっかりした内容を持つと思うのでありますが、全くないのであります。しかも商社の統計は輸出前受け金だけだと思ったら正しくない。本支店勘定もあるでしょう、あるいは外国から金を借りてそれを円にかえるとかいろいろあるでしょう。そういういろいろなことでやられているわけなんでありますから、このどこかの銀行からとったと言われる数字をもとにして、この日、商社は投機はございませんでした、これは回答になりません。ともかく、はっきり言って、前日まで三億ドルぐらいのものがいきなり七億ドルを超した。そして午前中は五億ドルであった。もしこれが投機でございませんと言うならば、その中身は何か、これをはっきり出さなければ証明にはなりません。そういう意味で、そのような調査を行うこと、資料を出すことを改めて要求するものであります。
  248. 旦弘昌

    旦政府委員 輸出前受け金の本年の当初からの数字につきましては資料として提出をさせていただきます。先ほど申し上げましたように、十月は三億三千六百万ドルでございまして、九月だけを申し上げましたけれども、その前の月ずっと比べましても、この月の数字はかなり低いものであるということでございます。  それからなお、おっしゃいましたように、四十九年の七月から輸出前受け金につきましては、一件五十万ドル超につきまして許可を要するということになっておりますが、いま申し上げました数字はその許可を受けたものだけではございませんで、根っこからの全部の数字でございます。
  249. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 私がいま質問したことは、この数字そのものにもいろいろもっと調査しなければいかぬ、たとえば根っこからと言われたけれども、それは前みたいに一件一件五千ドル以上チェックしたという時代の統計と違って、外為銀行から届けられたものであって、これはもっと中身を調べなければいかぬと言っただけでなしに、商社の投機というものは何も輸出前受け金だけじゃないから、そういうことを含めて、特に六日の異常な取引の膨張を、だれが買ったのかというようなことを調べて出せ、そういうことを言っているので、それに対してはいまさっぱり返答になっていないですよ。もう一度答えてください。この五日、六日の経過は重大問題なんですから、ぜひこの調査はやるべきです。大蔵大臣もぜひ答えてください。
  250. 旦弘昌

    旦政府委員 日々の為替市場におきます取引につきましては、実際のその背後にあるものが一体だれであるかということにつきましては非常にむずかしい問題でございまして、それが商社であるということも断定できませんし、あるいは外国の銀行だけであるということもなかなかむずかしいことだと思います。
  251. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) それだからこそ調査をしろと言うので、そのことが一つ。  それからもう一つ、これは大蔵大臣もぜひ答えていただきたいのですが、こういう調査もできないような状態のもう一面の裏側には、少なくともオイルショック以後為替管理を非常に緩めてしまった、もちろん私は為替管理がいつもきつければきついほどいいということを言っておりませんが、やはり非常事態が起きたときには機動的に規制を強めなければいけない。そういうことで、たとえば非居住者の短期証券の取得規制を撤廃した問題や、いまの輸出前受け金の対円売却、その規制の緩和とか、非居住者の自由円勘定への準備率引き下げと撤廃、それから外為銀行の海外からの導入資金の円転換規制の緩和、あるいはそのほかいろいろありますが、そういうことに対して、一つ一つどうしろと言ってもいま答えにくいと思いますが、こういう問題もやはり国民にとって重大な事態が起きたときには再検討するかどうか、そのことだけ答えてください。  それと、改めていまの問題、調査するということをはっきりさせてください。
  252. 坊秀男

    坊国務大臣 現在の事柄の性質上、これを直ちにはっきりさす、数字をもってはっきりさすということはなかなか容易ならぬことでございます。しかし、そういったようなことについての検討はしてまいりたいと思いますが、すぐこれについての結果を御報告申し上げることはなかなかむずかしいことだということを御理解願いたいと思うのです。
  253. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 私の質問でもう一点、為替の管理問題も検討しなければいけない。どれをどの程度強めるということを言っているわけではありませんけれども、つい最近まであった規制もどんどん撤廃されて、その中で調査さえできないような状態ができているとすれば、もちろん日本銀行の介入ということも要りますが、日本銀行の介入だけでできない問題としてこの問題もあるわけですから、これを再検討するかどうか。  それから、先ほど大蔵省側の政府委員の返答として、商社の投機はございませんというような返答。一方ではわからないと言いながら、ございません、どうしてこういうことがあるのか、これはやはり取り消してもらいたいと思うのですね。
  254. 旦弘昌

    旦政府委員 先ほど私が申し上げましたのは、それが商社による投機である、あるいはその他のものの投機であるということを断定することはなかなかできないということを申し上げたわけでございます。
  255. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) したがって、結論としては、これはもう調査しなければいけないし、また為替の緩和問題について再検討する時期になっている、このことを申し上げて、時間も大分少なくなりましたので、次の質問をやりたいと思います。  六大商社の問題で、もう一つ表を配っておりますが、この中でことしの三月期の各社の有価証券報告書から作成した表があります。いまの総合商社は多国籍企業であります。そしてこれで見ても、外貨建て資産と外貨建て負債とを比べますと、外貨建て負債超がここに出ている。それからまた輸出成約残と輸入成約残を比べますと、輸入超過額がこのようにあり、ここで試算したとおりにこの負債超から出る為替差益は六社で一千三百億円、さらにまた成約の残高で見た輸入の超は、そこから来るところの為替差益は二千六百億円ぐらいになり、合わせると四千億近い為替差益が得られるわけであります。これに加えてさっき言ったような投機に走っているということはいろいろな調査から明らかになっておるし、また投機に走るその背景にある財務状態もまさにこのようなものであるから起きているわけであります。  そこで私は、これまで為替差益問題、これは国民に還元しろと何度も要求してまいりました。それは物価安定ということからも重要なことであります。しかしそれだけでなしに、総合商社が為替差益などをたんまり手に入れたとき今後どういうことが予想されるかといいますと、一点だけ指摘します。これは前に三菱商事がブルネイのあの液化天然ガスで半年に二百億円も利益を得た、配当を得た。どうしたか、これはいわゆる不良債権の消却という方向に向けていくわけであります。いま構造不況業種といわれるものの多くは、商社の金融によっていろいろな設備投資をやってきて、そして構造不況業種の状態に陥っている。そういうときに、この為替差益がこういう形で、いわゆる不良債権の消却という形で構造不況業種切り捨てに使われるおそれが非常にあると私は見ております。そういうことから私は最後に、この総合商社に対しまして、この為替差益を調査して、そういうことにならないように、このことを強く要求し、それについて総理の返答を求めるものであります。  なお、本日、私の質問で多くの大臣そのほかお呼びしましたが、時間の配分も足りませんでその点はおわびしますが、最後、いまの点について返答を求めるものであります。
  256. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 商社につきましては他の法人と同様に、税の問題がありますから税の問題として、利益がありますればこれはもう厳重に調査いたしまして、税法に従って納税していただく、このようにいたします。
  257. 田中正巳

    田中委員長 これにて工藤君の質疑は終了いたしました。  次に、大原一三君。
  258. 大原一三

    大原(一)委員 この前も質問をさせていただいたのでありますが、まず企画庁長官にお伺いします。その前に、運輸大臣厚生大臣、私、質問がございませんので、どうぞ御退席願いたいと思います。  企画庁長官にお伺いしたいのでありますが、長官、数字が出るごとに不況感が強まっておると私は思います。また新しい数字一つ積み重ねられたのでございますけれども、どうも明るい見通しがさっぱり出てこない。この前も申し上げましたが、一番問題になっておりますのはやはり企業の生産であろうと思うのです。四十八年に比べて三%、水面の上にちょっと浮かんだだけであります。同時に在庫は四八%から五〇%ですね。これは企業の収益にとっては大変な圧迫になっておると私は思うのです。さっぱり減っていかない。こういう状況が長く続いてきて賃金の方だけアップしていかなければならないということになりますと、早晩、企業は大変な事態に追い込まれていく、これが日本経済をトータルとして見た場合の実態であります。そういう意味で、私は現在の経済計画見通しに盛られている幾つかの指標、これはとても達成できないようなものが幾つかあると思うのです。  その第一番目が生産であります。ことしの見通しは九%超になっておりますけれども、これはいま三%でございますから、とてもこの水準は達成できない。生産が伸びないということは企業収益も伸びないということでございまして、企業圧迫要因はさっぱり改善されない。  同時に在庫水準でございますが、総理はよく九〇%ということをおっしゃいますけれども、これは四十五年を一〇〇にした水準でありまして、実質稼働率水準はやはり七四、五%だろうと思うのです。景気のいい企業は一一〇%という高い数字が出ておるのですから、実質稼働率水準はなべて七四、五%に追い込まれておるということです。こういうことを見ますと、まず生産の指標は目標どおり達成されない、企業収益は好転しない、したがって六・七%成長も大変あやふやになっておる、これは現在出た数字でそうなんです。ところがそれにプラスアルファのドルショックがオンしてきたわけでございますので、これは私は大変な結果が出そうな感じがするわけです。たとえば輸出にいたしましてから、四月から九月まで経常収支で五十四、五億ドルになっておるはずであります。これを今年度倍にしますと、経常収支でもって百億ドルを優に超えるわけですね。政府はこの前マイナス七億ドルを六十五億ドルにさらりと修正されましたが、今度はなかなかそういう修正も許さないと思うのでありますけれども、しかし実態はまさにそういう形で進んでおります。そういう意味で私は、現在の経済の六・七%成長の目標はかなり修正を迫られるのではないかと思うのですが、この点について長官の御意見をお伺いします。
  259. 倉成正

    倉成国務大臣 鉱工業生産について当初の見通しを改定見通しで九%台に修正いたしましたことは御指摘のとおりでございます。今回の円高によりましてやはりかなり生産に影響が出てくるのじゃないかというお話でございますけれども、     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 先ほどもしばしば申し上げましたように、輸出についてはやはりこれが影響が出てくるのは少しタイムラグがあるのじゃなかろうかという感じがいたします。  それからもう一つは、やはりいま稼働率指数が非常に低い状況でございますから、企業の対応の仕方としては、生産を落とすという形でなくして、多少出血でも輸出をしたい、こういう企業の態度が出てくるのではなかろうかと思うわけでありまして、その点について非常に大きく生産が落ちてくるというふうには考えません。ただ、これから先どういう影響がそれぞれの業態について出てくるかということを少し慎重に調査をいたし、対応いたしてまいりたいと思うわけでございます。  それと同時に、GNPについては鉱工業生産がすべてではございません。御案内のとおり、サービス部門その他かなり物離れ現象が出ておるわけでございますので、そういう点をどう見るかということがあろうかと思います。しかし、いずれにしましてもこの円高がかなり日本の経済に大きな影響を及ぼしてくるであろうということで、私どもこの事態を慎重に見守っている状況でございます。  それからもう一つは、物価が安定いたしてまいりますと、デフレーターの関係で仮に生産やその他が若干落ちましても、これがGNPの場合にはそう変わりがないということも出てくるかもしれません。そういうことを総合的に勘案する必要がございますので、いま直ちに六・七%成長が不可能であるというふうには考えておりません。われわれは総合経済対策を確実に、そしてできるだけこれを前向きに少しでも早く効果が出るように、最善の努力をいたしたいと思う次第でございます。
  260. 大原一三

    大原(一)委員 経済を伸ばす動因といいますと、設備投資がこれは非常に大きな動因になるわけでありますが、最近の見通しはどれもこれもいい見通しは出ておりません。企画庁の六%修正の見通しよりも低い数字しか出ていないわけです。そうしますと、一体現在の経済を伸ばしていく主動因は何かということになりますと、この前の二兆円の公共事業規模の補正予算ということに相なると思うのでございますけれども、すでに同僚委員から質問があったと思いますけれども、この二兆円でもってなお六・七%の達成が可能であると企画庁長官はお考えになりますか。
  261. 倉成正

    倉成国務大臣 われわれといたしましては、この二兆円については、おおむね一年ぐらいの間に三兆円強の需要創出効果が出るということを考えておるわけでございまして、そのうちの一兆五、六千億が年度内に出てくるということを期待いたしておるわけでございます。したがいまして、この効果がさらに大きく年度内に出てくることを努力いたしたいと考えておるわけでございます。  それにいたしましても、六・七%の成長が可能であるかどうかという問題は、先ほどるる申し上げましたように、そのほかの条件がどうなるかということと絡み合ってまいりますので、現在与えられた条件の中で最善を尽くして六・七%成長が達成できるように努力をいたしたいというのが政府姿勢でございます。
  262. 大原一三

    大原(一)委員 そうしますと、企画庁長官の御答弁はこの前の御答弁と全く同じであります。月初来一七%というドルショックは何ら緩和されていないということに相なりますが、そう解釈してよろしゅうございますか。
  263. 倉成正

    倉成国務大臣 そうではございません。円高が出てまいりまして、これが輸出産業またその他の心理的な要因として大きく日本の経済に影響を及ぼすということは決して否定をいたしておりません。しかし、これがどういう形でどの部門にどう出てくるかということについては、計数的に判断するには少し早いのじゃなかろうか。為替レートがどのような推移を示すのか、また同時にこれから先の影響がすぐ出てくるかどうか。すでに輸出については、十月から十二月分の船積みについてはもう成約が行われておるわけでございますから、これについては変化がないわけでありますから、影響としてはもう少し先に出てくるのが大きい、そう判断しているわけでございます。
  264. 大原一三

    大原(一)委員 私は、基本的には現代の経済の実態というのは、猛烈な貯蓄超過経済であろうと思うのです。これはこの前も申しましたが、GNPベースをとりましても家計調査ベースをとりましても、四十一年以降から四十七、八年までと、四十九年以降から現在までの貯蓄性向というのは非常に段差があります。つまり、その前は一七、八%の貯蓄性向でございましたけれども、現在はそれが二四、五%にはね上がっておるんですね。不況下の貯蓄という現象、それが輸出ドライブになって、先ほど企画庁長官もおっしゃいましたが、採算割れの輸出をも生んでおるという実態、これはまさにその姿は実態であろうと思います。  そこでお伺いしたいのでありますが、企画庁長官、七月の例を申し上げて恐縮でありますけれども、最近輸出の通関ベースの伸び率は一〇%、その当時二二%だったと思います。それに対して、それはドルベースでございますが、円ベースを見ますと九%ぐらいにしかなってない。物の取引で見ますと七%しかなってないんですね。輸出は、見せかけの輸出なんです。月初来一七%、スミソニアンから二四、五%というラインにあるようでございますけれども、その分だけ差し引きますと、企業の実質取引というのは大して伸びてないんですね。したがって、鉱工業生産も三%ぐらいのラインに落ちていくということに相なるわけでございますが、いまそういう形で輸出の名目輸出だけが伸びておる、円取引は伸びていないということ、それが企業に大変な採算割れを生んでおるということ、見せかけの輸出だということを申し上げたいのですが、その点についてはどうお考えでありますか。
  265. 倉成正

    倉成国務大臣 確かに、数量での伸びというのが低いということは、御指摘のとおりでございます。しかし、これを見せかけの輸出と判断するのがよいのかどうかということには、必ずしも同意いたしかねるわけでございます。ドル建ての輸出が伸びておるわけでございますから、この点はやはり率直に認めてしかるべきじゃないかと思います。
  266. 大原一三

    大原(一)委員 どうも長官の答弁、よくわからない点があるんです。  それじゃ通産大臣にお伺いいたします。  わが国で円建て取引というのは、全体のどれぐらいを占めておりましょうか。さらにまた、非常に高い円建て取引をやっている業種と、円建て取引が進んでいない業種があると思うんですが、それは一体どういう業種、業態によってそういう形になっておるのか、教えていただきたいと思うんです。
  267. 西山敬次郎

    ○西山政府委員 わが国の輸出の円建て比率につきましてお答え申し上げます。  円建ての多い業種から申し上げますと、プラントが六〇ないし七〇%、陶磁器が六〇%、建設機械が三五%、自動車が五〇%となっております。また円建てのほとんどないのは高炉製品、毛、麻、絹、化繊品などの繊維製品などとなっております。
  268. 大原一三

    大原(一)委員 後段の部分の御説明がないのでありますけれども、時間がないので結構でございますが、ドイツの場合はお聞きしますと、七割から八割がマルク建ての輸出だそうであります。スミソニアン以来、マルクの切り上げは四三、四%、スイスフランが七四、五%、日本が二四、五%ですね。ドイツは切り上げが徐々に進行している過程の中で企業の対応が非常にうまく進んで、いわゆる外国の通貨、ドルによるショックを緩和していけるような貿易取引が行われておる。これがわが国の場合は、いま局長が読み上げられましたけれども、非常にでこぼこで法則性が全くないわけなんです。私は、通産大臣、これは何か通産省のあるいはPRなり何らかのそういったことに対する心づもりというものがなかったからこんなことになったのではないかというふうに解釈されるのでありますけれども、これに対する今後の通産行政の対応の仕方、御意見がございましたら、教えていただきたいと思います。
  269. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  御案内のとおりに、西ドイツにおきましてはマルク建ての輸出比率が圧倒的に高い。これは過去におきます相次ぐマルクの切り上げによりまして、為替差損を避けるためにはマルク建てにする必要があるということを体験上痛感いたしまして、そうして輸出業者が永年努力してまいったのでありますが、さてこの日本におきましては、今回のような円建ての問題に対しまして、業種によりまして、また企業によりまして、ただいまお答えいたしましたようにまちまちでございます。今後輸出業者はリスクの回避のためにも円建て化に努力をすることになろうと存じますが、ただ最終的には輸出業者とバイヤーとの力の関係でございますので、この円建てが契約上認められますかどうかということはまことにいろいろ今後問題があると存じますけれども、品質の高度化、あるいはデザインその他の高度化等の非価格的な競争力が強まりますことによってわが方の立場も強力になる、かような機会に、ただいま御指摘のように円建ての問題につきましては推進いたすべきである、かように考えております。
  270. 大原一三

    大原(一)委員 推進いたすべきであるということはわかるのでありますが、何かこれは手段がございますか、通産大臣
  271. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまお答え申し上げたように、これは業者同士のバイヤーとメーカーとの間の取引でございますので、命令でどうこうということはなかなかできない。結局こちらの方の輸出いたしまする銘柄が、ただいま申し上げたような高度化いたしましたものにつきましてはこちらの方に交渉の分がある、こういうわけでございまして、特にドイツにならいまして、かようなことは本当に参考になると考えております。
  272. 大原一三

    大原(一)委員 ただいま貿易局長おっしゃった中身をちょっと拝見しますと、いま構造不況業種と言われておる業種に円建てが少ないということですね。これは中小企業でも非常に強い業種があります。たとえばカメラとか真珠ですね。これはわが国の独占力が強いのでしょうから、非常に円建ての割合が高い業種であります。そういう形で大体出ているのだと思いますが、ひとつ通産省も知恵をしぼっていただいて、今後またどういう水準に円が高くなりドルが落ち込むかわからない、それに対する対応というものは十分ドイツの知恵、よその国の知恵ばかりかりて恐縮でありますが、勉強してもいいのではないかというふうに考えるので御指摘申し上げたわけであります。  それから、さきに官房長官あてに新自由クラブとして幾つかの問題を指摘しましたが、全部質問する時間がございませんので、税制について、細かい問題ですが、大蔵大臣に御質問いたします。  それは、中小企業に対する、為替差損の大きい企業に対して、現在の欠損の一年間繰り戻しじゃなくて、三年間繰り戻しをおやりになったことがございますね。このときの政府の対応はまことに機敏でありまして、四十六年のニクソン・ショックのときに、八月でございましたが、十二月にその手を打って法人税の還付をしていらっしゃる。さらにまた四十八年にはいわゆる変動相場制移行に伴って、二月でございますが、七月でございますか、同じような改正を法人税法の特別措置法でやっていらっしゃるのですね。スミソニアンの場合は一六・八八でございました。現在はもう一七%をオーバーしているわけですから、同様な措置を機敏にとっていただきたいと思うのです。当然これはとるべきであります。大蔵大臣の御意見を承ります。
  273. 坊秀男

    坊国務大臣 御指摘のとおり、昭和四十六年、昭和四十八年の為替相場が大変変動したときにはおっしゃるような措置をとっております。今度の場合も、そういったようなことがぜひ必要であるかということにつきまして関係各省と相談をいたしまして、そうしてどうしてもこれは必要だというような結論が出ましたならば、来年度の、五十三年度の税制改正に際しましてこれを研究してまいりたい、かように考えております。
  274. 大原一三

    大原(一)委員 大蔵大臣、五十三年度の税制改正ではもう遅いですよ。さっきぼく申し上げましたが、八月のニクソン・ショックに対して十二月に出していらっしゃるのですよ。そういう対応だからわれわれはこうして一々言わなければならないわけでありまして、大蔵大臣のいまの答弁は大変不満であります。といいますことは、一六・八八に対してすでにそれをやっていらっしゃるのに、一七・七に対して来年の三月にならなければ税制改正しないというような対応では、これは全くナンセンスであります。もう一度大蔵大臣の御答弁をお願いします。
  275. 坊秀男

    坊国務大臣 非常に大事なことではございますけれども、これは税制改正でございます。そこでどうしても法律の問題でございます。だから、これに対しましては、五十三年度の、来るべき税制改正の機会は五十三年度の税制改正でございます。そのときにやりたいと思っております。
  276. 大原一三

    大原(一)委員 来るべき税制改正、意味がよくわからないのです。実は四十六年には十二月にやっていらっしゃるのです。それだけ政府の対応が敏感であったということでありますが、来るべき税制改正は十二月に行ってもいいわけなんでございましょう。その点はいかがでございますか。総理大臣、お答えいただきます。
  277. 坊秀男

    坊国務大臣 できるだけ早い方がいいということは私にもよくわかります。わかりますが、これはやはり国会で御承認を受けなければならないという問題でございますから、そういうことでやってまいりたいと思います。
  278. 大原一三

    大原(一)委員 ぜひ福田総理の明敏な御裁断をいただいて、早急に、過去にも例があることでございますし、御検討いただきたいと思うのであります。  小さな面でそれだけにいたしまして、先ほど企画庁長官に御質問申し上げたのでありますが、いまの日本の不況というのは、十三業種の不況だけではなくて、非常に大きなデフレギャップを背景にした構造的な不況であると私は思います。そういう意味で、輸出が経済の牽引力にもなれない大変な障害が出てきた。設備投資も、いろいろの指標を見る限りにおいて将来伸び悩んでおるということになりますと、総理大臣、あと残るところは財政だけだと思うのでありますが、総理大臣は当面第二次補正、われわれは官房長官を通じて総理にお出ししたのでありますが、財投計画を柱にする第二次補正をおやりになる覚悟はございませんか。
  279. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 結論を申し上げますと、ただいま第二次補正というものは考えておりません。九月三日の総合経済対策、これは政府事業二兆円の造出だ、こういう性格のものであることは御承知のとおりですが、これは波及効果を入れますと四兆円を超えるのです。それで、あの対策をとりませんと、ことしの経済成長は五・九%くらいであろうということで、それをさらに拡大しようというのであの政策をとったわけですが、その四兆円を超える波及効果ということを考えますと、それがことしの年度でどのくらい顕在化するか、一兆五、六千億と見たのです。これはかなり楽な見方をしたわけで、あの当時の見解としては、六・七%というのは優に実現できる、こういうわけだったのですが、ところがこの円ドル問題、こういうことでかなりこれは国全体の経済に水をかける、こういうことになってきた。それに対してどういうふうにするかという問題があるわけでありますが、これはその二兆円、波及効果を入れて四兆円を上回る施策、これを効果的にかつ急速に実施する、こういう態勢で臨むべきだ、こういうふうに考えておるわけでありますが、もっとも円ドルの問題がどういうふうになるか、この状況の推移も見なければなりませんけれども、ただいまのところはこれで十分対処できる、こういうふうに考えております。
  280. 大原一三

    大原(一)委員 総理の経済に対する御認識も、さらにまた企画庁長官の御認識も同様で、私は大変甘い見通しではないかと思います。恐らくこのまま行っちゃったら、来年の四月を越えて失業があるいは百三、四十万という大台に上る可能性もなきにしもあらずという感じがするわけでございます。そういう意味で、いままでの対応も大変おくれおくれの点があったのでございますけれども、いまのお二人のお話を聞いてみますと、現在の円高ということがそれほど深刻に受けとめられてないんじゃないかという感じがいたします。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕 そういう意味で現在の非常に大きなデフレギャップ、これは一説には二十兆円、私も二十兆円という根拠をこの前申し上げたのでございますが、そういう大きなデフレギャップの中で、しかもドルショックの中で、この前の二兆円の経済対策ではとても乗り切っていけないのじゃないか。不況は、総理企画庁長官考えられるよりももっと深刻な状況に追い込まれつつある。いまの指標を見ましても、先ほど幾つか申し上げましたが、倒産指標もそうでございます。失業も一向に減らないという諸条件の中で、もっと的確に政策の対応を示していただきたい。それがために、われわれは約一兆円規模のいわゆる財投計画の補正をやっていただきたいと申し上げたわけでございます。それには現在、資金運用部でお持ちの三兆九千億の中の一兆円を民間に売っていただいて、貯蓄超過経済の中に手を突っ込んで、それを財政が吸い上げて有効需要を喚起する以外には、現在の経済の引っ込みを浮揚させる道はないと思います。そういう意味で提案したわけでございますが、総理、その点についてもう一度御見識をお伺いしたい。
  281. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 円ドル問題の日本経済に及ぼす影響、これは非常に私は深刻、重大だ、こういうふうに見ておるのです。しかし、これはこれからのこの問題の推移を見なければならぬ、まだ固まってそういうふうになったというわけではないのであります。経済は生き物でありますから、この客観情勢の動きを見て臨機の措置をとらなければなぬ、こういうふうに考えておりますが、当面とにかくあの総合対策、四兆円を上回る経済効果を持っておる施策でございまするから、これを急速に効果的に実施する、こういう態度でまいりたい、かように考えております。
  282. 大原一三

    大原(一)委員 経済の推移を見ると言うのですが、円ドル問題の推移、これ以下に下がる可能性を見て、これより下がったら何かやるというふうに私に聞こえちゃったのでありますけれども、そういう意味じゃないのですね、総理のおっしゃることは。このままの水準でいいんだ、二百四十五円ないしは二百五十円未満オーダーであれば手を打つ必要はないんだというように聞きとれたのですが、そういう意味ですか。
  283. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま為替が非常に浮動しておるわけですね。どの辺でこれが固まっていくのか見当つかぬでしょう。あるいは円が安くなるものやら円が高くなるものやら、いま私も定かにこれを見通すことはできない、そういう状態の今日でございます。もう少し状態の推移を、関係の推移を見なければいかぬし、同時にその問題がどういう程度日本経済に対する波及ということになるか、これもじっと見詰めなければならぬ。ただいま私どもは九月三日の経済総合対策、これを急速果敢に実施することである、このように考えておるわけです。
  284. 大原一三

    大原(一)委員 総理は、いわゆる総合対策その他緊急輸入対策で現在の不況は乗り切れるという御判断のようでございますが、私はやはり現在の円ドル問題の基本は、いまデフレギャップにある、締めつけられておる日本の経済に有効需要を喚起するということが政策の本筋であろうと思います。あといろいろたくさん、先ほど私も幾つか申し上げましたけれども、これらの諸政策は小手先だと思うのです。やはり政策の基本は、いま沈みかかっておる日本の経済に浮揚力を与える、その本質論はやはり有効需要政策だろうと思うのです。それがためには貯蓄超過部分を、財政が民間にかわって、輸出のかわりに、あるいはまた設備投資のかわりに有効需要へ転化する手管が必要ではないか、これが私はいま多くの識者が考えておるところの政策の基本だろうと思うのです。この原点に返っていただいて、先ほどの一兆円オーダーの有効需要の喚起策をやらなければ、小手先の政策を幾らいじっても、いまの国際環境ではなかなか外国は信用しませんでしょうし、さらにまた先ほどの委員の質問にもございましたが、アメリカあたりは全く三百八円が二百四十数円になったところで、これはよその国の出来事、痛痒を感じていない。ましてや大蔵省筋で、共同介入をやったらいいかなんという甘い判断が私は間違いのもとであると思うのです。やはり政策の原点は、有効需要を喚起するための財政政策への転換以外はないと思います。総理大臣、もう一度この点お答えいただきたいと思います。
  285. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 考え方は私はわかりますが、有効需要を喚起する、これはどうしてもいま必要なんですよ。いま日本の経済の現状は何だといいますれば、経済全体を大観しましてデフレギャップ問題があるわけだ。だからこそ有効需要を喚起いたしまして、そしてデフレギャップを埋めていきたい、こういうのであの二兆円施策を打ち出しておるわけなんです。しかし一挙にこのデフレギャップを埋めようどしても、これはできないと私は思うのです。どうしても二年ぐらいはかかる問題だ、こういうふうに見ておりますが、いまとにかく二兆円施策、それによる有効需要の造出は四兆円を上回る。それを打ち出しておるわけですから、それを早く顕在化するというか、稼働させるということですね。これが一番手っ取り早いのじゃないか、そういうふうに考えてこの総合対策を効果的にかつ敏速に実施したい、これが私の考えであります。
  286. 大原一三

    大原(一)委員 やはり同じお答えでありますが、五十三年度予算の編成も中期、もうすでにあらかた見通しができていると思います。  ところで、三〇%の国債発行ベースでもって来年度六%実質成長、名目一二、三%でもってどの程度政策経費が出ましょうか。その辺の計数的なものをできるだけ詳しくお示しいただきたいと思うのです。主計局長で結構でありますが……。
  287. 坊秀男

    坊国務大臣 来年度予算があらかたもう骨格ができておるであろう、こういうお話、玄人の大原さんでございますが、いずれにいたしましても来年度予算を固めていくためには、来年度経済見通しというものがおよそ固まってきませんと、予算の性格なり規模なりあるいはその性質なりといったものを決めるということが、これは私は必ずしも時宜を得たものではないと思います。さような関係から、大体どういう内容か、いまお触れになったことについてはいまお答えする段階ではないと思います。
  288. 大原一三

    大原(一)委員 大蔵大臣にお聞きすると何も出てこないので、これはちょっと質問申し上げる気がなくなるのでありますが、私は、三〇%の国債発行では政策経費は出ないと思います。そういう状況の中で総理大臣も大変苦慮していらっしゃると思うのでございますが、いま私が申し上げましたような当面の危機を乗り切るためには、やはり三〇%ラインにこだわっていては、この貯蓄超過経済の中でデフレギャップを克服していく道はないと思います。そういう意味で、緊急避難的であってもとにかく短期の国債でいいじゃないですか、三年ぐらいのもの、そして三〇%ラインを若干超えても何とか公共投資をふやしていただいて景気の振興を図るというのが財政の筋だと私は思うのです。福田総理大臣に大変失礼でございますけれども、私のお師匠さんでございましたのであえて質問申し上げますが、私は、余りにも国庫主義的な発想というのは、かえって専門家である福田総理の経済政策を誤るもとになりはしないか、かように考えます。国庫は、経済があって国庫があるわけでございまして、国庫があって経済が沈没しては何もならないわけでございます。そういう意味で、何とかいまの不況を乗り切るための経済優先の財政政策を緊急避難的にもとっていただきたい、これがわれわれの意見でございます。総理大臣にもう一度御答弁をお願いします。
  289. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 経済優先、私は賛成です。しかし経済というのは、一番大事なことは、この日本の社会、経済をインフレ化しちゃいかぬ、ここにあるのですから、その辺を十分踏まえてやっていかなければならぬ、私はこういうふうに思っております。そういう考え方のもとに経済優先だ、これは私もそう考えておりますよ。おりますけれども、財政を通じてこれがインフレをつくり出すというようなことがあってはまた困るのですから、その辺も私は十分考慮しなければならぬと思います。私は、財政の健全性、つまりインフレですね、この観点から財政の健全性を維持しながらしかも景気を常道に戻す、その両様の目的を実現するというためにいろいろ工夫をしてみたい、このように考えています。
  290. 大原一三

    大原(一)委員 総理、先ほど私、五十五億ドル程度の輸出が四月から九月までに出ておる、恐らく年全体を通じてみますと、百億ドルを超えるだろう。といいますことは、最近の輸出信用状を見ましても、いままで一二、三%台であったのがこの八、九月は二二、三%台に上がっております。これは相当の輸出が今後も予想されると思います。そうなりますと、先ほど皆さん方が申された円攻勢というのはますます顕著になってくる可能性がございます。そういう中において私は財政の本筋論を申し上げたわけでございます。ですから、いまの状況の中で唯一の救いは、何とかこの貯蓄超過経済の中へ財政が入っていって、この一、二年の間は国庫主義的な均衡はある程度目をつぶって、不安定成長と私が申し上げました六・七%を——六・七%でも不安定と私は思うのです。それを浮揚させる努力を総理に御期待いたしまして、私の質問を終わります。
  291. 田中正巳

    田中委員長 これにて大原君の質疑は終了いたしました。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十八分散会