運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1977-10-17 第82回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月十七日(月曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君   理事 小此木彦三郎君 理事 栗原 祐幸君    理事 澁谷 直藏君 理事 細田 吉藏君    理事 山下 元利君 理事 安宅 常彦君    理事 武藤 山治君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    伊東 正義君       石川 要三君   稻村左近四郎君       越智 通雄君    奥野 誠亮君       金子 一平君    川崎 秀二君       木野 晴夫君    藏内 修治君       櫻内 義雄君    笹山茂太郎君       始関 伊平君    白浜 仁吉君       玉沢徳一郎君    藤井 勝志君       古井 喜實君    松澤 雄藏君       松野 頼三君    森山 欽司君       阿部 昭吾君    井上 普方君       石野 久男君    上原 康助君       大出  俊君    川俣健二郎君       小林  進君    佐野 憲治君       多賀谷真稔君    藤田 高敏君       坂井 弘一君    広沢 直樹君       二見 伸明君    吉浦 忠治君       和田 一郎君    大内 啓伍君       河村  勝君    西田 八郎君       瀬崎 博義君    寺前  巖君       正森 成二君    大原 一三君       田川 誠一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 瀬戸山三男君         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 渡辺美智雄君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  田中 龍夫君         運 輸 大 臣 田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 長谷川四郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       小川 平二君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      園田  直君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      藤田 正明君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      西村 英一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 三原 朝雄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 田澤 吉郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 妹尾  明君         警察庁長官   浅沼清太郎君         警察庁警備局長 三井  脩君         防衛庁長官官房         長       竹岡 勝美君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁人事教育         局長      渡邊 伊助君         防衛庁装備局長 間淵 直三君         防衛施設庁長官 亘理  彰君         防衛施設庁施設         部長      高島 正一君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君         環境庁自然保護         局長      出原 孝夫君         沖繩開発庁総務         局長      亀谷 禮次君         国土庁長官官房         長       河野 正三君         国土庁土地局長 松本 作衛君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君         法務省入国管理         局長      吉田 長雄君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省中近東ア         フリカ局長   加賀美秀夫君         外務省経済局長 本野 盛幸君         外務省経済局次         長       溝口 道郎君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 大森 誠一君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省関税局長 戸塚 岩夫君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省理財局次         長       川崎 昭典君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         大蔵省国際金融         局長      旦  弘昌君         国税庁長官   磯邊 律男君         文部省初等中等         教育局長    諸沢 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省体育局長 柳川 覺治君         文部省管理局長 三角 哲生君         厚生省環境衛生         局長      山中  和君         厚生省環境衛生         局水道環境部長 国川 建二君         厚生省医務局長 佐分利輝彦君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         農林省食品流通         局長      杉山 克己君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁長官   岡安  誠君         通商産業省通商         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省貿易         局長      西山敬次郎君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         資源エネルギー         庁石炭部長   宮本 二郎君         中小企業庁長官 岸田 文武君         運輸省船員局長 高橋 英雄君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省職業安定         局長      細野  正君         労働省職業訓練         局長      岩崎 隆造君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治省行政局選         挙部長     佐藤 順一君         自治省財政局長 山本  悟君         自治省税務局長 森岡  敞君  委員外出席者         外務大臣官房領         事移住部長   賀陽 治憲君         文部省管理局企         画調整課長   塩津 有彦君         参  考  人         (海外経済協力         基金総裁)   石原 周夫君         参  考  人         (海外経済協力         基金理事)   結城  茂君         参  考  人         (日本住宅公団         総裁)     澤田  悌君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 十月十七日  辞任         補欠選任   根本龍太郎君     玉沢徳一郎君   古井 喜實君     石川 要三君   浅井 美幸君     吉浦 忠治君   矢野 絢也君     和田 一郎君   河村  勝君     西田 八郎君   柴田 睦夫君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   石川 要三君     古井 喜實君   玉沢徳一郎君     根本龍太郎君   吉浦 忠治君     浅井 美幸君   和田 一郎君     矢野 絢也君   西田 八郎君     河村  勝君   正森 成二君     瀬崎 博義君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十二年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十二年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ――――◇―――――
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十二年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三件を一括して議題とし、質疑を行います。近江巳記夫君。
  3. 近江巳記夫

    近江委員 まず初めに、総理にお伺いしておきたいことがあるわけでございます。きょうは建設大臣も御出席のところでございましたが、国際会議があるということでどうしてもというようなことで、出席されておりません。そういうことで、総理政府を代表して確認をしておきたいと思うのです。  そのことは、住宅金融公庫貸付条件改善につきまして、自民党と野党三党の合意を見たわけでございます。このことにつきましては総理もお聞きであろうかと思いますが、このことに関しまして政府としての見解をお伺いしたいと思います。
  4. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 住宅政策はこれから当分、非常に重大な問題としてわが国政のかなめの一つをなすものである、そういうふうに考えております。そういう立場から、五十三年度の予算では公庫融資改善につき大いにこれを検討してみたい、かように考えております。  それから、今年度の措置といたしましては、本年度追加をお願いしております十万戸、これにつきましては、低所得者貸し付けにつきまして無抽せんによる優先貸しをいたしたい。それからさらに低所得者向け貸し付け限度額につきましては、既定の予算の枠内ではありまするけれども、割り増しを行うように努力いたしたい、さような考えでございます。
  5. 近江巳記夫

    近江委員 それで大体わかりましたが、特に来年度の公庫融資改善につきまして、貸付総枠並びに貸付限度額増額等を含め、さらに大きく進んだ、そうした改善をしていただきたい、このように思います。これにつきましてもう一度お願いします。
  6. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 来年度につきましても、金融公庫貸し付け、これにつきましては改善方を前向きで検討してみたい、そういうふうに考えております。
  7. 近江巳記夫

    近江委員 それでは、次の質問に移りたいと思います。  まず初めに円の問題でございますが、きょうの朝の相場は二百五十三円四十銭と、非常に円高が強いわけでございます。まず政府といたしまして、今日の円相場の実態というものにつきましてどのようにごらんになっておられるのか、どう認識されておられるか、その点をお聞きしたいと思います。
  8. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいま変動為替制でありまして、為替相場はそのときどきにおける当該通貨に対する需給の関係で決まる、こういうことになっておりますが、いま円、ドルについて申し上げますと、ドル国際収支におきまして大幅の赤字を露呈する、こういうことが見通され、他方、円につきましては大幅な黒字が見られつつある、こういうことで円高推移をたどってきたわけであります。でありまするから、これはわが国経済の方にも円高現象原因がありまするし、同時にアメリカ側の方でも、つまりアメリカ経済側におきましてドル安という原因がある、それが競合して今日の現象になっておる、こういうふうに見ておりますが、さて、これが今後どういうふうになるかということになりますと、私がその見通しを申し上げることは、これは妥当でない、こういうふうに考えます。わが国といたしましては、その背景になっておるところのわが国国際収支大幅黒字、これにつきましては、世界経済を安定させる、そういう見地から見まして、余り大きな黒字を出しておるという状態国際社会に対する正しいあり方ではない、こういうふうに考えまして、その円の、つまり日本経済の大幅な国際収支上の黒字、これにつきましては格段の調整努力をしていかなければならぬ、こういうふうに考えておるのです。今回補正予算をお願いし、また、それを含めまして二兆円の追加投資を行う、こういうようにいたしましたのもそういう配慮でありまするし、さらに各般の措置を講じまして、黒字が余り大きいというこの状態を是正してまいりたい、かように考えております。
  9. 近江巳記夫

    近江委員 今日のこの円高というものは、繊維雑貨等中小企業等にはもう甚大な影響を与えております。私は、今日のこの円高を生み出す背景というものにつきましては、総理いろいろとお述べになったわけでありますが、当初政府は見込みにおいては七億ドルの赤と言っておったのが、修正して六十五億ドル。これはアメリカあたりはひょっとすれば百億ドルまでいくのじゃないか、こういう見方まで一部うわさされておるわけですね。こういうような今日の状態を招いたということは、これは輸出主導型でやってきた、いわゆるもっと内需の喚起といいますか、やはりもっと対策というものがあったはずなんです。こういう点、政府はやはり経済政策において誤っておったということは言えると思うのです。この点、総理としてどういう御認識をお持ちでございますか。
  10. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 確かにわが国経済は、昨年は輸出主導型であったわけであります。ことしはこれが是正されまして、六・七%成長と言いますけれども、その六・七%の成長、その中で大体六は内需がこれを押し上げる、こういうことになる、〇・七%が海外、特に輸出要因である、こういうことで基調は非常に変わってきておるのです。確かに近江さんが御指摘になられるように、間違いがあった。確かに私は、国際収支がもう少し数字となって黒字が減ってくる方向へ行くだろう、こういうふうに見ておったのが、今日までそれがそのようにはなっておらぬ。これは見通しが大きく狂っておるわけです。国際経済が揺れ動く中で経済見通しをそのとおり実現するというのは、なかなか困難なんです。日米独をとってみましても、ドイツは成長率についてロンドンでの首脳会談で五%としたのです。それが四・五%に修正され、四%になり、そして今日ではその四%も非常にむずかしい、こういう状態になっておる。アメリカではどうだと言いますと、成長アメリカの方はいいのですが、国際収支はあんな大変な赤字を露呈するというような状態になってきておる。わが国におきましては、成長の方は今度のあれでどうにか六・七%成長だ、こう言うが、黒字の方が国際収支の面で非常な黒字が出てきておるというので、なかなかこれは、いま世界全体が揺れ動いているものですからむずかしいのですが、しかし、国際収支の揺れ動くその中で日本は責任を尽くさなければならぬ。そういうことから、国際収支の大幅な黒字基調につきましては、いろいろの工夫をいたしましてこれを改善したい、こういうふうに考えております。
  11. 近江巳記夫

    近江委員 先ほども触れましたが、輸出業者中小企業繊維であるとか雑貨であるとか、これは非常に大変な状態です。政府としてはそれなりの対策もとっておられるとは思うわけですけれども、しかし、短期間の間に、通産省を中心として調査をなさっておられたときは二百六十円台のときですね、もうすでに十円上がってきておるわけです。そうしますと、調査時点といまは、これだけのわずかの短期間で十円上がってきておる。これは私は大変な深刻な状態だと思うのです。その点、政府としてはどういう調査をされ、どういうように認識を持っておられるか、ひとつお伺いしたいと思います。
  12. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  お話しのとおりに、産地別の二十二カ所につきまして調査を進めてまいったのでありまするが、その後におきまする現地の方の状態は、一時八、九月にちょっと盛り返したのでありますけれども、また今回のような非常な為替変動がございました。これに対しまして通産省の方の、御承知為替変動緊急対策処置が十月一日から実施に移っておりまして、まだ半月ほどの経過でございます。相場いかんによりましては、とうていこれではやり切れないというような場合におきましては、また緊急な処置をとる必要がございますけれども、いまのところでは十月一日施行、まだ半月という姿でございますので、これを見守っておるような状態でございます。なお、必要に応じまして随時、今後緊急な処置を講じなければならぬということは十分に考えております。
  13. 近江巳記夫

    近江委員 通産省調査をなさったその時点で、もう二百六十五円というのが大体のすれすれの限界である、調査をなさって大体そういう結果ではなかったかと思うのです。もうすでに十円切り上がっておるわけですよ。あなたの答弁聞いていますと、その当時の調査時点と全然変わってませんよ。十円切り上がったその深刻な状態を踏まえてのあなたの答弁と違いますよ、それは。もっと認識をしっかり持ったらどうですか。
  14. 田中龍夫

    田中国務大臣 為替幅の十円の差というものは大変な状態でありまして、二百五十円台ではとうていやっていけないというような調査の結果も十分出ておる次第でございます。なお、現地別のいろいろなさらに詳細なデータにつきましては、御質問によりまして中小企業庁長官からお答えいたします。
  15. 近江巳記夫

    近江委員 それでは中小企業庁長官、いまこういう状態に対してあなたはどういう対策をとっているのですか。
  16. 岸田文武

    岸田政府委員 円高の問題が起こりまして以降、私どもは、産地の動向がどうなっておるかということについて、非常な関心を持って調査を続けておるところでございます。七月に二十二の産地について調査をいたしました段階におきましても、これからの為替の先行きはどうなるかということで不安があり、したがって成約が進んでいないという状況が報告されておりますし、また当時の調査によりましても、二百六十円台が長く続くならば今後の輸出について相当大きな影響が出るであろうということが報告されておりまして、その後八月、九月引き続き調査をいたしておりますが、その段階におきましては、やや成約は取り戻したものの、値段の面でなかなか注文が合いにくいというような報告でございます。いま十月の調査を実施しまして取りまとめの段階でございますが、中間的な調査によりまして、やはり二百五十円台が出たということで、これからの成約がどうなるかということを大変心配しておるようでございます。  私どもは、先ほど大臣からお答えいたしましたように、とりあえず、各産地の要望がつなぎ金融が欲しいということが強く言われましたので、大蔵省とも相談をいたしまして、十月一日から為替変動対策緊急融資制度を発足させた次第でございます。これによりまして、とりあえずつなぎ金融を実施するということにいたしましたが、なお二百五十円台がもし今後も続くということでありますれば、産地にさまざまな影響が出てまいるかと思います。その間の事情は私ども十分注意をしながら必要な対策を適時とっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  17. 近江巳記夫

    近江委員 政府がこの制度を緊急につくったことはわかるわけですが、まさかこの時点では二百五十円台にまで切り上がるという予想はしていなかったわけですね。したがいまして、この条件にいたしましても、見ますと、貸付利率にしたって七・六でしょう。利率にしても何も安くはないわけです。また、担保にいたしましても同じようにとる。ところが、そういう打撃を受けておるところにつきましては、担保力なんというものはもうないわけです。そういう点についてもどういうように配慮していくか。あるいは業種だって拡大しているわけです。政府指定では五十九しておりますね。こういう拡大していく業種に対してもどうするかという問題もあるわけです。  ですから、六十円台でお考えになったこういう対策でございますから、いま申し上げたようなそういう金利の問題、担保の問題あるいは額の問題、対象業種の問題こうしたことは機動的に政府としてはできるわけなんですから、それを硬直した姿勢で、これができておりますから、もうしばらくちょっと推移を見守って――そうじゃなくして、もうここまでの状態になっておるわけですから、早急に検討されるべきであると私は思います。いかがですか。
  18. 田中龍夫

    田中国務大臣 御承知のとおりに、輸出産業が非常に衰退いたしております不況下のもとにおきましては、中小企業対策といたしまして、基本的には政府系銀行によります不況業種指定でありますとか、あるいはまた借りかえ等条件の変更でありますとか、倒産に対しまする防止対策やら、連鎖倒産の問題やら、いわゆる不況業種等々の特にはなはだしい輸出産業につきましては、基本的には多くの対策が講じられております中におきまして、当該為替変動についてのつなぎ資金の問題が出ておりまして、それがプラスアルファになっておるわけでございます。  でございますから、先生の仰せられましたような、今後の、さらに変動の問題によりまして倒産その他の問題が出るというようなことにつきましては、先ほど来申しますような倒産防止その他緊急の諸処置が並行的に、総合的に作用するわけでございます。なお、いまのつなぎ資金におきましても、七分六厘といういわゆる平準な利率につきましては、これは御案内のとおりのつなぎ融資としての特別措置でございますが、それに対しましても、今後また、状況いかんによりましては臨機の緊急な処置をとるつもりでおります。それから対象業種に対しましても、御案内のように非常に弾力性を持って対処いたします。
  19. 近江巳記夫

    近江委員 ひとつ政府としましては、先ほどから答弁がありますように一応の対策はお立てになっておりますが、しかし、産地のそういう状況というものはわれわれが考える以上に深刻でございます。したがって、機動性を持って、私がいま何点かの具体的なことを申し上げたわけですから、そういうことをきちっと運用をしていただきたい、これをひとつ強く要望いたします。ひとつ総理から確認の意味で……。
  20. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国国際収支黒字が余りにも多い、こういう点につきましては、是正をするためにあらゆる努力をいたします。と同時に、現実の円為替相場が急激に非常に高くなってきた、これによりまして特に中小の輸出業者が大変お困りになる、そういう状態です。これに対しましては機動的に対策を行ってまいる、こういうふうに考えておる次第でございます。
  21. 近江巳記夫

    近江委員 今日の円高背景というものは、先ほど答弁があったわけでございますが、政府としましては緊急の輸入をやろう、こういうことで九月の二十日に対策をお立てになっておられるわけですが、この計画をお立てになっても、これはやはり速やかにやるということが大事でございます。そういう意味におきまして、きょうは衆議院におきます予算委員会の最終日であります。今日その段階にまで至っておるわけですね。ところが、いままでの御答弁をいろいろと聞いておりますと、まだまだ具体的な数値も出てこない。これはそこに至るまではいろいろと作業があることはわかりますよ。わかりますけれども、こういう対策を発表なさって、もう今日の時点にまで来ておるわけです。  そこで私は、この一つ一つの項目につきましてお伺いしていきたいと思うのです。具体的にどういうものをどれだけ輸入する、金額はどのぐらいになる、これをきちっと御答弁をいただきたい、このように思うわけでございます。  まず、輸入の促進の原油の問題ですね。それから二番の非鉄金属、三番のウラン鉱石、四番の航空機の安定的輸入、これは通産関係になりますね。お答えください。
  22. 田中龍夫

    田中国務大臣 一応御指摘の銘柄につきましてお答えを申し上げますと、原油の場合には、三百六十万キロリッターの積み増しをいたしまして、これの価格は三億一千万ドルです。  それから非鉄金属でありますけれども、これは備蓄の拡充によります間接輸入の増でございますが、大体一億ドル程度になります。  それからウランの問題でございます。これは先方との契約の問題もございますが、当方といたしましては、原子力発電のウランの鉱石購入、これが約一億三千万ドルほどに相なります。  それから航空機の件でございますが、これはいまのところ、まだお答えをいたしかねます。  それから先生のおっしゃった中でもう一点私の方から御連絡いたしたいのは、ナフサの問題がございまして、これが、百五十万キロリッターの輸入の数量を一応先般対策として出しましたけれども、実は、これをさらに追加いたしたい、こう考えてもおりますが、この百五十万キロリッターといたしまして、一億四千万ドルほどに相なります。  大体、以上でございます。
  23. 近江巳記夫

    近江委員 次は、農林関係になりますね。備蓄用飼料穀物の繰り上げ輸入、これにつきましてはいかがですか。
  24. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 農林物資関係の輸入の問題でございますが、この問題につきましては、御承知のように食糧用の小麦、大麦、さらに飼料用のトウモロコシその他の飼料作物、これを、今年度中にやる分につきましては第四・四半期分を前倒しで輸入をするということと、特に畜産関係の経営の安定を図りますために相当量の家畜飼料の備蓄をやる必要がある、こういう考え方でただいま対処いたしておるところでございまして、ただ、金額の面におきましては、農林物資の関係から余り大きな金額には相なっておりませんが、できるだけ国際収支改善に資するよう、という観点に立ちまして努力をいたしておるところでございます。
  25. 近江巳記夫

    近江委員 農林大臣、大体推定どのくらいになるのですか、額でいきますと。
  26. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 いまのところ、小麦の前倒し等につきまして約十万トン前後、それから飼料作物の備蓄の積み増し、これが十万トン程度、大麦につきまして三万トンないし四万トン程度、こういうことでございます。
  27. 近江巳記夫

    近江委員 東京ラウンドへの積極的取り組み、ということが出ておりますが、先日総理は、わが党の二見委員質問に対しまして、それを待たずに前倒しに関税の引き下げということをおっしゃったわけでございますが、これは具体的にどういうようなものをお考えになっておられますか。これは大蔵大臣でもいいですが、それじゃ大蔵大臣の後、総理……
  28. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  東京ラウンドにつきましては、来年の一月十五日を期しまして各国からのリクエストがあって、それに対するオファーをやって、そこから本格的な交渉に入っていくというわけでございまして、ただいまのところは各国の関税の引き下げの方式について、たとえばEC方式とかあるいはアメリカ方式とかいったようなことについて相談をいたしております。だから、本格的の交渉は十五日以降ということに相なりますけれども、それよりも先に何か日本は手を打つものはないかと、こういうようなことでございまして、それにつきましてはいろいろと考慮しなければならない問題もございますけれども、今日の日本の置かれました国際経済情勢の中におきましていろいろのことも考えてまいらなければならないというようなこともこれあり、慎重に鋭意そのことについて検討をいたしておるというような事態でございます。
  29. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いわゆるガットの東京ラウンド、これにつきましては、わが国アメリカ、EC、そういう国々と共同いたしまして、これをぜひ速やかに結実させたい、こういう考え方のもとに積極的な姿勢で臨むわけであります。しかし、いま円高問題なんかにも関連し、かつまた、国際社会におけるわが国黒字の過多という問題とも関連いたしまして、ガットの総合的な結論を待たずにわが国としては関税問題、できる問題をこの際手をつけたらどうだと、大蔵省に対しましては、本国会に御提案できるようにできないかということも相談してみたのです。これは相手国がありまして、関税、これはなかなかそういう急速なわけにはいかないというお話でございます。そこで、通常国会には提案できるように、ひとつこれを準備する、こういうことでいま作業に取りかかっておる、こういう段階でございます。
  30. 近江巳記夫

    近江委員 六項目にございます残存輸入制限品目の輸入枠の拡大、これは非常に厳しい問題もあろうかと思いますが、農林大臣はどのようにお考えでございますか。
  31. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたもののほかに残存輸入品目の問題があるわけでございますが、これは近江さんすでに御承知のように、農家経営に及ぼす影響が非常に大きいものがございます。わが国は、国内で生産できるものはできるだけ国内で自給率を高めていく、足らざるところを安定的に輸入するという方針をとっております関係で、できるだけ努力をいたしますが、国内の農畜産業者等に及ぼす影響を十分考慮しながら対処してまいりたい、このように考えております。
  32. 近江巳記夫

    近江委員 具体的な数字、また金額というものが出ましたので、一歩前進だと思いますが、総理先ほどお聞きしましたのを大体合わせてみますと、通産関係で六億八千万になるわけですね。ナフサの追加を入れまして六億八千万ドル。  農林は、いま量はおっしゃいましたけれども、金額的にいきますと、これはどのくらいになるのですか。推定で結構です。
  33. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 農産物の価格もまだいろいろ動いておりますので、的確には申し上げられませんが、金額的には余り大きなものではございません。推定いたしまして、大体二千数百万ドル程度ではなかろうか、こう考えております。
  34. 近江巳記夫

    近江委員 ざっといま政府が緊急に実行しようとなさっておられるいわゆる量というものは、大体六億八千万プラスいま農林大臣がお答えになった数値ですね。総理としては、このくらいでいいじゃないかというお考えなんですか、さらにまだこれを十分検討して拡大していくおつもりであるのか、その点ひとつお伺いしたいと思うのです。また、具体的にお考えがあるならば御答弁いただきたいと思います。
  35. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私はこの際、考え方を割り切って、そして緊急の措置をとるべきである、こういうふうに思っておるのです。つまり、わが国の外貨保有高、これが百八十億ドルというような巨額になっておりますが、こういう状態の是正ということを考える場合に、わが国がこれから先必要とする資源、これを保有する、現物で保有するということは外貨保有にかわる実質を持つものであるという考え方をとるべきである、こういうふうに考えておるのです。私は、日銀総裁にもそういう考え方で対処してもらいたいということを申し上げておるわけでありますが、いま当面考えられることを各大臣から申し上げましたが、ほかにいろいろ、そういう考え方をとりますと資源があるはずです。たとえばウラン、そういうものにつきましても、これは買い先が同意をする、そういうようなことになればさらに追加の輸入というようなものも考えられるわけであります。ただ、相手というか買い先がどうなるか、こういうむずかしい問題があるわけであります。しかし、いろいろ工夫をいたしまして、この際、思い切った緊急輸入をしてみたい、そういう考えです。
  36. 近江巳記夫

    近江委員 この点は、政府としてはこれだけの対策をお立てになって、これは何も国内だけでのいわゆる発表でないわけですから、全世界がいまや日本のあり方、実行力というものを見守っておるわけですから、これはやはり政府全体の信用にかかってくる問題です。さらにひとつ努力をやっていただきたい、こう思います。  それと同時に、いま国民の中で一番声が出ているものは何かといいますと、これだけ円高になってきておる、輸入品は大変安く手に入らなければならないのだ、にもかかわらず一向に下がらない。中でも皆非常に驚いておりますのは肉の問題でございますが、今回いわゆるこの調整金を冷蔵肉三百円を五百十円に引き上げる、凍結肉三百五十円を六百円に引き上げる、こういう措置をとるというようなことによりまして、そして一般の小売店はどう言っているかといいますと、結果としては小売価格は上がりますよと。これは国民は皆非常に驚いておるわけですね。これだけ円が高くなってきて、何とか安い物をと、いまこれだけの不況の中でもう皆台所は火の車ですよ。肉を食べておる人なんていま本当に少ないですよ。何とか安い物を欲しい、円が高くなってきたから、いろいろな影響もあるだろうけれども、せめて輸入の物だけでも少しは安くなるのじゃないか、これが全然違うのですよ。総理は、いわゆるこの円高を物価安定に、また引き下げに十分役立てたい、こういうふうにおっしゃっているわけですよ。こんな現状でいいんでしょうか。一遍この経過も聞いてみたいと思いますが、農林大臣から……。
  37. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 農林省といたしましては、この円高の差益、これをできるだけ消費者の方に還元し、反映をさせる、こういう考え方で業界を指導いたしておるわけでありまして、すでに配合飼料につきましては九月に工場建て値でトン当たり五千円、約九%引き下げて畜産農家に配給をさせておる、こういう措置もとっております。  ただ、いま近江さんから御指摘になりました輸入肉の調整金の問題でございますが、これは国会でも、この安い輸入肉の取り扱いの段階において中間業者が不当な利潤を上げておるのではないか、これが利権化するようなことは困る、こういう御指摘もございました。そのためには輸入肉を扱います場合に、畜産振興事業団で国内の肉の価格の動向等をにらみ合わせながら調整金というもので中間業者が不当なマージンを収奪しないように調整をいたしておるところでございます。したがいまして、この調整金を改定するということが直ちに小売価格に反映をするものではないわけでございます。この肉の小売価格をできるだけ引き下げをする、安定をするというためには、いろいろ農林省としても畜産事業団等を指導し、業界を指導して努力をいたしておりますが、畜産事業団に対しましては、従来、指定小売店が八百店舗でありましたものを二千二百店舗に拡大をいたしまして、そして事業団から直接この指定小売店に対しまして目安価格を指示をいたしまして、そしてこれが標準になって小売価格がだんだん安くなるように業界を指導しておるところでございます。  またさらに、今月の下旬を目途にいたしまして、国産肉につきましても、全国一万五千の店舗を指定をいたしまして、そして各県の食肉の流通の改善対策協議会というようなところで、同様に需給の動向をにらみ合わせながら目安価格を指定をして、小売価格がだんだん安くなるように指導しておるところでございます。  また、肉の量販店あるいはスーパー、百貨店等に対しましては、週に一回ないし二回、二〇%前後の値引きをした価格でこれの販売をさせる、そういうことで小売価格の鎮静を図っておるところでございます。  また一方におきましては、生活協同組合、そういう団体等、産地の生産者の団体との間で産直をやらせまして、そしてその中間マージンを排除した価格で肉の販売をさせる。それに対して、先ほどお話がありました調整金等から畜産事業団が資金を出しまして、そしてこの流通の合理化、中間マージンの不当な収奪というようなものを改善するように努力をいたしておるところでございます。
  38. 近江巳記夫

    近江委員 農林大臣は、制度的には調整金を引き上げても小売価格は絶対に上がることはないということをおっしゃったわけですね。これは絶対上がりませんね。また、これだけの円高の情勢なんですから、引き下げるようにその努力をしていただかないと困ると思うのです。この点はいかがでしょうか。
  39. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 ただいま申し上げたような対策を講じますと同時に、輸入肉の放出量、これをふやしまして、そして小売値段が上がらないように最善の努力を図る所存でございます。
  40. 近江巳記夫

    近江委員 そうすると、肉の輸入というものはふやすわけですか。その点の計画はどういうようにお考えですか。
  41. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 畜産局長から説明をいたさせます。
  42. 大場敏彦

    ○大場政府委員 畜産振興事業団が輸入肉の大半を取り扱っておりますけれども、畜産振興事業団は在庫を持っておりますし、それからチルドにつきましては計画的に輸入して放出するという事業をやっておりますが、当面いま御議論になっておりますチルド牛肉につきましては、十一、十二の需要期を控えまして放出量を増加させる、それから同時に、冷凍牛肉につきましても需要期を控えまして数量を増加させる。これは既存の輸入枠内で処理が可能であります。
  43. 近江巳記夫

    近江委員 いま農林大臣から御答弁があったわけですが、総理もお聞きになっておられてよくおわかりになったと思いますが、これはもう国民にとりましては非常に注目すべきいまの物価動向でございますので、これはひとつ総理からも、調整金が上がったということによって小売値が上がる、そういう不当なことがないように、むしろ引き下げの努力政府全体として重ねて努力してもらいたい。この点について高いしたいと思います。
  44. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 牛肉の価格がわが日本軍で非常に高いということは、内外で非常に注目されておるところであります。今回調整金を引き上げることにいたしましたが、これは流通段階における不当の利益、これに着目いたしましてのことでありますが、この上とも牛肉の価格安定、これには努力いたします。
  45. 近江巳記夫

    近江委員 それはひとつ政府が責任を持って監視していただきたい、このことを要望しておきます。  それから政府は、特に輸入品につきまして国民に還元しなければいけないということでいろいろ努力をなさっておるようでございますけれども、外国製たばこであるとか航空運賃を今後考えるとか、その点の項目というのが、国民の実感として非常に少ないと思うのです。これは経企庁長官、その円高をいかに物価に反映させていくか、この努力がまだ足らぬのと違いますか。どうなんですか。いまどういう対策を立てていますか。
  46. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えします。  非常に急ピッチで円が高くなってきておる。したがって、これを物価にぜひ反映をすべきであるということは、総理の指示もございますし、われわれもその基本姿勢で臨んでおるところでございます。御案内のとおり、円高がすぐ響いてくるのは卸売物価、特に卸売物価の構成要素が生産財あるいは資本財ということで輸入物資にすぐ響いてまいりますから、たとえば石油あるいは木材あるいは飼料、そういうものについては直接響いてまいります。したがって、卸売物価がいまわが国において非常に安定しているのは、この円高がかなり大きな役割りを果たしておると言うことができると思うわけでございます。したがって、石油業界が値上げをしようというような意思を発表いたしましても、なかなかそういう主、張は通らない。そして、灯油等についての据え置きを発表する業界も出てきたということで、そういう面では円高は卸売物価、直接輸入に関係するものについては相当反映されておると私は思うわけでございます。  ただ、御案内のとおり、わが国の輸入構造から申しまして、消費財、完成財の輸入というのが非常に少ないわけでございます。したがって、私ども先般、輸入する三十六品目についてその円高がどのように反映したかということをいろいろ調べたわけでございますけれども先ほど農林大臣からお話のありましたような配合飼料とかあるいは腕時計であるとか、いろいろ実際に円高が直接反映した消費財というのもございますけれども、輸入価格が下がったにかかわらず流通機構その他の事情で下がってない品目もいろいろあるということで、この詳細についての実情を国民の前に明らかにし、また今回の対策として、さらに関係業界に対しまして、どうして下がらないのかという問題について、それぞれの省にお願いしてこの問題をさらに詰めてまいりたいということで努力をいたしている次第でございます。
  47. 近江巳記夫

    近江委員 経企庁長官からいま御答弁があったわけですが、総理、こういうことも機動的に、敏感に各省にもお願いしてやっております。確かにそうかもしれませんですよ。だけれども、これこれこれの品物については業界とも話し合って政府としてはここまで下げさすようにしたというような、そういうことを逐次発表していくとか、国民が納得できる指導、行政というものを私はやってもらいたいと思うのですよ。ちびりちびり、ほとんどの物が下がらないし、これはやはりぴんとこないですよね。それはほとんど原材料の輸入であるということはわかりますよ。しかし、完成品なんかはもうすぐに響くわけなんですから、その点の努力をもっと真剣にやっていただきたいと思いますね。いかがでしょうか。
  48. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今度の円高は九月の二十八日から起こっているわけです。そして、二十日間たちまして今日五%強の切り上げに、円の価格の高騰になっておる、こういう状態ですが、今度のその九月二十八日からの円高がもうすぐ商品価格に影響するかというと、私はそういうわけにはいかぬと思うのです。それで契約したものが、その新しい状態を直ちに反映したものがすぐ入ってくるかというと、そういうわけにはなかなかいかないわけですから、それはこれから先々の問題になってくるのです。それはひとつ御承知おき願いたいと思うのです。しかし、年初来、九月の二十八日までの間にすでに円高問題というのが起こってきておりまして、これは二十八日からの今回の円高とはまた規模が、期間も長いですけれども規模もまた大きいわけでございます。それらはもうすでに卸売物価の方に響いてきておると見ております。  わが国では第一次産品、これが大体八割、輸入構造として見るときには八割がそうですから、卸売物価にまず響いてくる。それから、消費者物価に影響のある完成品、これは二割程度でございます。しかし、その二割程度につきましても、とにかく年初来から考えますと、大幅十四、五%の円価値の高騰でございますから、これは相当影響のある、こういうふうに見て、そこで企画庁長官から申し上げましたように、そういう顕著な影響のありそうな完成品につきましての調査もし、そして円高が末端価格でどういう影響を出しておるかということの調査もしておるわけです。また、それに伴いまして行政指導もしているわけでありまして、今回の新しい事態も踏まえまして、そのような方向で、円高が国民生活に顕著に響くような方向での誘導をいたしてまいりたい、そういうふうに考えております。
  49. 近江巳記夫

    近江委員 輸出につきまして、特にアメリカ、EC等を中心にいろいろな問題が出てきておると思うのです。自動車であるとか家電であるとか鉄鋼とか、これは非常に大きな商品になっておるわけでございますが、こういう問題についてはどのように対応なさっていくおつもりでございますか。
  50. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のとおりに、ただいまアメリカ並びにEC方面に輸出されておりまする自動車でありますとか、御指摘の家電関係、そういうふうな問題につきまして、先般もECからジェンキンズ委員長が見えましたときにも、ECと日本との間に実務者関係におきまするかような貿易関係の促進、輸入の促進と輸出の規制等についての委員会をつくりましょうということで話を進めておりまするし、アメリカとの関係におきましても同様に、準閣僚会議がございました、その後に引き続きまして担当者同士の輸出促進の懇談会、同時にまた輸入についてのいろいろな相談をする機構をただいまつくってまいった次第でございます。  なお、これらの問題につきましては相当今後にいろいろな交渉を経なければならぬのでありまして、目下鋭意努力をいたしておる次第でございます。
  51. 近江巳記夫

    近江委員 輸入をするにしましても、これは黒字を減少さしていくという点におきまして輸入をしていく。しかし、何といいましてもやはり内需の拡大ということが根本になるわけですね。そういう中で、やはり大事なことは個人消費の問題あるいは公共投資私たちは公共投資でも生活関連の公共事業、公共投資、これを強く主張いたしておるわけでございますが、この個人消費におきましても、政府は修正しなければならぬというような状態にもなってきておるわけでございまして、今日のような状態の中で非常に個人消費を拡大していくということはむずかしい問題であるということもわかるわけですね。  しかし、そのわかる中で、総理、何回もこの委員会でも論議があったわけでございますが、一般消費税の問題ですね、これは税調の方からも答申が出たようでございますけれども、もしもこういうものを来年度導入していった場合、個人消費が少なくともGNPの五十数%になるわけでしょう、こういうものをただ財政的に苦しいからということで導入して、半分以上を支えておる個人消費、これは全く冷や水を浴びせられたことになりますよ。私はこれは大変な問題だと思うのです。タイミングとしても一体どうなっているんだろうと思うのですね。この消費税の問題につきましては少なくとも来年度は、将来政府としてどういうことをお考えになるのもそれは御自由ですし、結構ですけれども、しかし、こういうことを早急に導入するというようなことは私はまずいと思うのです。いかがでしょうか、総理
  52. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この間税制調査会から一般消費税導入、そういう内容の答申があったわけです。これは税制調査会自体が言っているのでありますが、これはあくまでも中期的な展望の中での税制改正だ、これをいかなる内容で、またいかなるタイミングで実施するか、これはまたその年々の税制調査会に諮り、また政府はその年々の時点経済の客観的情勢、また財政の状況、そういうことをよく見て決めるべきものである、こういうふうに言っておるわけでありまして、政府はそういう中期的な意味におけるところの税制調査会の答申を受けましたが、税制調査会の言うがごとく、これをいかなる段階で、いかなる内容で実施するか、それはこれからの客観情勢の動きを見て決めなければならぬ問題であるということで、いま近江さんが御指摘のように、一般消費税を導入する、これは相当大きな問題ですから、慎重にも慎重を期して対処するという考えでございます。
  53. 近江巳記夫

    近江委員 今日の経済情勢から考え総理も慎重にも慎重を期す、こうおっしゃっているわけですね、その段階あるいは中身等につきまして。そうなってきますと五十三年度予算の、そうした編成作業も大蔵省では進めておると思いますが、こういう時点を踏まえますと、少なくとも来年度は消費税の導入はないということは、これははっきり言えますね。
  54. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まだ五十三年度の展望、つまり経済状態はどうなるのだろう、経済といえば景気の側面もある、物価の側面もありますね、国際収支の側面もある、それから財政の状態は一体どうなんだろう、こういう財政収支上の問題、こういうこともあるわけであります。それらをもう少し先の時点で、すべて検討いたしまして結論を出す、こういうことです。  現在の段階におきましては、慎重に対処するということは申し上げることはできますが、これはもう一切消費税はやりません、ここまでまた言い切れない。五十三年度の問題は五十三年度の問題として、これから先々の動きの中で慎重に対処する、こういうことでございます。
  55. 近江巳記夫

    近江委員 慎重慎重ということを何回もおっしゃっているわけです。この慎重にも前向きの慎重と後ろ向きのとあるわけですね。少なくとも来年度に限っては、総理状況をお考えになって慎重、少なくとも実施には踏み出さない、そういう慎重さ、こういうお気持ちですな。
  56. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 せっかく、この間、中期答申があったばかりなのに、ここでもう来年はやりません、ここまで言うのは、なかなかむずかしい問題でありますが、慎重の上にも慎重を期して対処したい、こういう考えでございます。
  57. 近江巳記夫

    近江委員 非常に含蓄のある御答弁だと思うのですね。慎重の上にも慎重ということを非常に重ねておっしゃったわけですが、いま、こういう税を導入するということは、国民生活の上にとっても経済政策の上におきましても、これはもう大失敗ですよ、もしも、おやりになるとすれば。それはもう賢明なる総理でございますから、いろいろなことを私はお考えになっておると思います。その点ひとつ総理は二回、慎重にも慎重にもとおっしゃったわけですが、私は十回ぐらい慎重の上にも慎重と申し上げたいと思います。どうかひとつ来年度は本当に少なくともやらない、こういう方向でやっていただきたいと思います。  それから、個人消費をやはり喚起していく、こういう点からいきますと、いま非常に財政的にも苦しいことはわかるのです。わかりますが、そういうときにこそ何とか努力をいたしまして、逆にいわゆる減税、来年度所得減税をなさるおつもりはございませんか、いかがでしょう。
  58. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 さあ、減税によって購買力を刺激すべしという議論ですね。これは先国会でも私くどくど申し上げたのですが、私は、それよりはなお効率のいい道があるのじゃないか。減税という手段、これは金が要るのですよ。財源がそれだけ要るわけであります。それだけの財源があった場合に、減税という手段で購買力を喚起するか、あるいは他の手段でやるかというと、私は公共事業ということをずっと言ってきたのですが、やはり住宅、そういうものを中心といたしました公共事業などをやるのが一番いいのではないかと思うのです。これはそれだけ国民の資産が残るわけですからね。ただ単に減税だというようなことでありますれば、これはそれだけ消費力はふえますよ。ふえますけれども、それは消費に向かって、それで消えてなくなってしまう、こういうようなことになってしまうわけです。国民財産として残る公共事業、特に住宅、その関連の施設、そういうものをこそやっていくのが筋じゃなかろうかと思いますし、それから景気政策という見地から近江さん、おっしゃっているのですが、景気への波及効果、そういうことを考えますと、減税という道は余り賢明な道じゃないのじゃないか、そのように考えます。
  59. 近江巳記夫

    近江委員 時間の関係で次に移りたいと思いますが、ハイジャックの問題でございます。  日航機ハイジャックの件に関しまして、ハイジャッカー五名、釈放犯六名、計十一名は、先週アルジェリアから身のしろ金、パスポート等を持って国外に出たという新しい情報を、いろいろなところから耳にしておるわけですが、事実であるかどうか、お伺いしたいと思います。
  60. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまのお話は、いろいろ言われておりますけれども、外務省といたしましては確認いたすことができないでおるわけであります。
  61. 近江巳記夫

    近江委員 去る四日の政府対策本部会議の今後の対処方針の中で、アルジェリア政府に対して、犯人に関するすべての情報、捜査資料の提供を求めるというようなことをおっしゃっているわけでしょう。全然そういう報告は聞いてないのですか。
  62. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 アルジェリア政府に対しまして、わが国といたしまして、ただいまおっしゃいましたような情報の提供等を申し入れたわけでありますけれども、その当方の申し入れば、先方が受け入れなかった次第であります。
  63. 近江巳記夫

    近江委員 これはひとつ政府として、よく報告を求めてもらいたいと思うのですよ。よろしいですか。
  64. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 あとう限りの情報の収集をいたしたいと思います。
  65. 近江巳記夫

    近江委員 この日航ハイジャックに続きまして、いま西ドイツで問題になっております。さらに、この間は長崎でバスジャックが行われました。こうした風潮、これは非常に皆心配しておるわけであります。総理は、こういう風潮の根絶という問題について、どういうようにお考えでございますか、時間の関係で簡潔にお答えいただきたいと思います。
  66. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 やっぱり人命の尊重はしなければならぬ。同時に、ああいう凶悪犯人が釈放されるというようなことのないようなふうにしなければならぬ。それを考えますと、やはり根源は、ああいう事件が再発しないような万全な構えをとるということに尽きると思うのです。私は、そういう考え方のもとに、内外にわたりまして強力な施策をこの際打ち出し、また、これを実行しなければならぬ、こういうふうに考えているのです。鉄は熱いうちに打て、今回の教訓は本当に私はむだにしてはならない、こういうふうに考えまして、ひとつ、ああいうものが再びできないという時代をつくり上げていきたい、かように考えます。
  67. 近江巳記夫

    近江委員 このハイジャック事件につきましては、本委員会の質疑を通じまして、いろいろの問題が浮き彫りにされてきたわけであります。こうした質疑を踏まえまして、私は問題を整理しつつ、基本的問題に関して三点についてお聞きしたいと思うのです。  第一点は十六億円の支出の問題、第二点は犯人釈放の問題、第三点は旅券冊子の交付の問題であります。  そこで、まず第一点につきまして、この十六億円は五十二年度予備費の使用であるということが言われておるわけですが、この使用のための閣議決定の名目はどうなっておりますか。確認であります。
  68. 長岡實

    ○長岡政府委員 緊急の事態でございまして、閣議で予備費の使用を御決定いただいたわけでございますが、内容は、組織は外務本省、それから項を新しく立てまして、項の名前はバングラデシュ人民共和国ダッカ空港事件特別措置費ということで予備費の使用を御決定いただいたわけでございます。
  69. 近江巳記夫

    近江委員 次に、これが超実定法的措置だと言われるのは、どういう法律を超えているのか明らかにしてもらいたいと思うのです。これは法制局長官でも結構です。
  70. 真田秀夫

    ○真田政府委員 御存じのとおりのような経過で既決、未決の囚人を釈放したり、あるいは犯人の不法な要求に応じて十六億円の国費を出したわけでございますが、これが、そういうことを適法にやってよろしいという実定法は実はもちろんないわけなんですね。身柄の点で言いますと、既決、未決の囚人の身柄を釈放してよろしいという理由というのは、これは監獄法に実は規定がありまして、監獄法で言いますと、既決と未決といろいろありますけれども、大赦、恩赦があった場合とか、あるいは刑期が満了した場合、あるいは権限のある命令者の指揮があった場合というふうになっておりまして、その権限ある命令というのは、これは刑法なり刑事訴訟法で決まっておりまして、これまた既決と未決と違いますけれども、未決の場合には裁判所の勾留の取り消しとか保釈とか、あるいは勾留の執行停止というような事由がなければ釈放はできない、既決の場合にはいまの刑期の満了とか恩赦とか、あるいは刑の執行停止というような事由がなければ釈放できない、そういうことになっておりまして、今回のように犯人の不法な脅迫によって既決、未決の囚人の身柄を釈放してよろしいという規定が実はないわけでございますから、そういう意味で超実定法的措置というふうに言っておるわけでございます。
  71. 近江巳記夫

    近江委員 もう一度ちょっと整理しますと、この十六億円の使途につきましては、いわゆる超実定法的措置とおっしゃいましたね。そうしますと、これは法律で言いますと財政法の範囲は超えておりますね。そうですね。もう一遍確認します。  それからついでに、犯人釈放の問題につきましては、監獄法等を超えておることは間違いありませんね。これは超実定法であると言えますね。  それから旅券冊子の問題、これも超実定法的な措置ですね。確認しますが、どうですか。
  72. 真田秀夫

    ○真田政府委員 十六億円を渡したこと、これも実はそういう不法な犯人たちの不法な脅迫に屈服して国民の財産である公金を、国費を支出してはいけないという、これはもう当然のことでございまして、そういうことを許す規定があるはずはないわけでございますので、そういう意味でやはり超実定法規でございます。  それから旅券につきましては、旅券の発給という、これは外務省の説明では旅券そのものではないので旅券の冊子ということのようでございますけれども、やはりそういうことを許す、そういう権限を外務省に与えている実定法はございません。そういう意味でやはり超実定法的措置と言って差し支えございません。
  73. 近江巳記夫

    近江委員 いま長官から、この三つのことは、すべて超実定法的な措置だったという御答弁がございました。これらの一連の超実定法的措置をとった責任者として福田総理は、今回の所信表明演説で「断腸の思い」と言われたと思います。私も同じ思いをいたした一人でございますけれども、これだけの超実定法的措置については、行政府がやむを得ずやったということだけでは私は済まないと思うのです。自民党のある部会の責任者が、これらの超実定法的措置については国民のコンセンサスを求める必要があり、野党党首に諮るべきだったと発言されたと聞いておるわけですが、このハイジャク事件の処理に際して、国民の意思の代表である国会に対して、総理として何らかの形で了解などを求めるなどの措置が必要ではなかったかと思うわけですが、いかがでございますか。
  74. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そういう措置が必要だというふうに考えますが、事件がああいう唐突のことでもあり、その処理も、もう本当に時間を争って、これを万全を期さなければならぬという性格のものでありますので、国会の御協力を得ると申しましても、なかなか事前にということがむずかしい状態であったわけであります。したがいまして事後になる、こういうことにならざるを得なかった。閣議までそういうような状態であったような状態でございますが、たまたま本国会が開会されまして、私の所信表明演説という機会があったわけで、その冒頭におきまして私は皆さんの御理解を求めるということにいたした次第でございます。
  75. 近江巳記夫

    近江委員 西ドイツ政府は今回のルフトハンザ機のハイジャックに際しまして、千五百万ドルの要求につきまして、今月の十五日早朝、政府、議会、捜査当局の最高首脳による拡大非常対策会議を招集して最終的協議を行い、十六日に千五百万ドルの支出を決定しておるわけであります。こういうような政府のやり方が私は当然ではないかと思うわけです。これは議会制民主主義の常識とも言うべきことではないかと思うわけです。しかも西ドイツ政府は早朝やっているわけですね。早朝に政府と議会、捜査当局の最高首脳による拡大非常対策会議を招集しておる。同じ緊張した、緊迫したそういう状況下の中でこういう措置がとられておるわけです。私はこの点につきまして総理としてのお考えをひとつお聞きしたいと思うのです。
  76. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今回とりましたこの措置は、ただいま申し上げたような経過で、またああいうような結末になっておりますが、今後のああいう事態に臨んだ場合の運び方、そういうことにつきましては、近江さんの御意見よくわかりましたので、よく私ども考えてみたい、このように存じます。
  77. 近江巳記夫

    近江委員 この異常な事態に対する国の対応の仕方、その手続等の規定が不備かどうかという重大問題もあるわけですが、あのクアラルンプール以来の経験にもかんがみまして、議会制民主主義の常識にのっとって今後、総理は国会との関係について、やはり何らかのルールといいますか、先例といいますか、そういうものをきちっとされる必要がある、このように私は思うわけです。行政府が超実定法的行為を国会と関係なくできるというならば、行政行為は法律を超えて、時の場合によっては何でもできるということになりかねないわけですね。どのように歯どめをするか、あるいは制限があるのか、これは将来にとって重大な問題であるわけです。だから私はこのことをお聞きしておるわけですね。重ねて総理にお伺いしたいと思います。
  78. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 御提言はまことにごもっともなことだと思うのです。そういうことも踏まえまして、今後一体どうするか、よく私も考えてみます。
  79. 近江巳記夫

    近江委員 次に、外交の問題に移りたいと思います。  いま日ソ間におきまして漁業問題がございます。まず、政府は当初、日ソ漁業長期協定を締結することを期待して、この日ソ漁業交渉に臨んだと思われるわけでございますが、その際におきます長期協定の中身は、一つは日ソ、ソ日両協定の三年から五年の延長、二つ目は、来年四月二十八日終了する日ソ漁業条約にかわってサケ・マス漁業のあり方を定めようとする新協定の締結であった、このように思うわけです。これらはいずれも国会の承認を要する事柄であるわけでございますが、その後の政府交渉の経過はどのようになっておりますか、簡潔にお答えください。
  80. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 それでは私からお答えをいたします。  いま近江さんお話しのような方針で臨んだわけでありますが、ソ側では、国連海洋法会議の結論が出るまでの暫定措置として、最高会議幹部会令によって二百海里の設定をした、そういう事情もあるので、来年の海洋法会議の行く末というようなこともあるので、この際はモスクワ協定も東京協定も一年間の延長にしたい、しかし、その点についてはカニ・ツブ協定の先例もあることであり、一九七九年の分については七八年の適当な時期に協議をする、こういうようなことで一年、一年の延長でいきたい、こういうことでソ連側の方針を確定をしておる、こういうことでございます。わが方としても、今年十二月三十一日までの、この暫定協定を中断することなしに来年も操業できるようにということが当面の問題でございますので、その方針を応諾いたしまして、そういう方向で合意が煮詰まりつつある、こういうことでございまして、きわめて近い機会にその合意がなされる見通しでございます。  なお、二百海里の外のサケ・マスの問題、それから日ソ間の漁業協力の問題、これは十一月の十日ごろを予定いたしまして、再度日ソ間で協議をする、こういうことで合意をいたしておるところでございます。
  81. 近江巳記夫

    近江委員 新聞報道等によりますと、漁獲割り当てを決める交換書簡等の絡みから、一年延長の議定書の批准が延期された、次回に持ち越すことになると報道されております。これは外交というものは、確かにいろいろな駆け引きがあることもわかるわけです。わかるわけですが、そこで確認しておきたいのですが、来年一月一日からの操業は間違いなく確保されるか、また来年五月からのサケ・マス漁業はどうなるか。ということは、これは一に政府の決意にかかっているわけですね。この点につきまして農林大臣の決意をお伺いしたいと思います。
  82. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 来年一月一日からのモスクワ協定、東京協定、これは間違いなく継続をされる、こういう見通しであり、また政府も絶対にそういう方向でやってまいる、こういう決意で臨んでおるところでございます。  なお、日ソ漁業条約の失効後における二百海里の外のサケ・マスの問題につきましては、十一月十日ごろから開かれる日ソ間の交渉において、わが方としてはサケ・マス漁業が継続できるように最善の努力を払うつもりでございます。
  83. 近江巳記夫

    近江委員 総理、これはきわめて重要な問題だと思います。農林大臣が決意を披瀝されましたから結構ですけれども、その点、十分交渉に臨んでいただきたい、要望申し上げます。  それから次に、私はソ連監視船による罰金徴収問題について、ちょっとお伺いしたいと思うのです。  去る六月日ソ漁業協定実施以降、九月末までの約四カ月間におきまして、日本漁船がソ連監視船に臨検を受け、操業日誌の記載の不備等の理由から、日ソ漁業協定第六条に規定するソ連邦の法律に従い責任を負うこと、具体的には五十一年十二月十日付のソ連邦最高会議幹部会令第七号の適用によりまして罰金を徴収されておるわけです。私が調査をいたしましたものだけでも、六月十日から九月末現在、北海道四十件、三千八百八十九万六千円、青森県九件、千四百三十四万四千円、鳥取県五件、三百三十二万四千円、兵庫県九件、四百八十六万四千円、福岡県六件、四百三万一千円、長崎県九件、千三十五万七千円、その他十七件、九百二十万二千円、県別で言いますと岩手一、神奈川三、新潟一、石川一、富山一、島根四、福井一、山口四、大分一、計九十五件、八千五百一万八千円、こうなっておるんですね。こういう事実は、協定の実施当初として、認めるには余りにも多過ぎると私は思うのです。  最近におきまして海上保安庁がソ連漁船を臨検しますと、同様に操業日誌記載の不備があることも明らかになっておるわけです。そこで、両国間でお互いに罰金刑の応酬のようなことを今後長く続けていくということになってまいりますと、これは総理が言われるような日ソ友好親善には私は決して役立たないと思うのです。五十二年七月八日の水産庁長官通達「ソ連邦二百海里漁業水域内における操業について」及び五十二年八月二十三日の水産庁海洋漁業部長通達を見ましても、改善の余地がないとは私は認められないわけです。  また、ソ連監視船は、臨検とともに洋上で罰金を徴収して、罰金の支払いを拒む場合は有無を言わさず許可証を取り上げるということで、やむを得ず罰金を支払っておる例もあるわけです。さらに、日本円で支払うために、出漁漁船は最高四百万円の現金を油紙に包んで持って出漁しておる現状であります。全く異常な状態なんですね。油紙に現ナマを包んで皆出ておる。何千隻という船がいま現金持って出ておるのです。少なくとも、洋上で漁船が現金を支払う現状を私は速やかに改善すべきであると考えるわけです。これは外為法の関係からいっても問題があるのじゃないかと思うのです。この点につきまして農林大臣、大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。
  84. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 日ソ漁業協定、ソ日漁業協定の具体的な実施につきまして、交換文書によって、その手続、方法、様式等が決まっておるわけでありますが、私どもは、この交換文書で規定されております内容を十分周知徹底させる必要があるということで、各業種別団体等を集めまして、東京、札幌、稚内、釧路、八戸、塩釜、その他の地区におきまして関係業界をできるだけ集めまして、その周知徹底を図ったところでございます。しかしながら、何分にも数千隻に及ぶ漁船が操業するというような状況であり、その趣旨の徹底において十分な点がなかったこともあったと思います。また、操業日誌その他の問題につきましても、両国の慣習等が違う点もございまして、行き違いもございました。そういうようなことで、私どもが当初予想したよりもそういう事故が発生をしたということは非常に遺憾でございます。  そういう事態にかんがみまして、ナホトカに係官を派遣をいたしまして詳細な打ち合わせをし、改善を要する点は改善をするということでやりましたし、わが方として容認できない点につきましてはソ連側にそれを改善をさせるということもいたさせました。また、両方の見解が食い違っておる問題につきましてはモスクワに移しまして、モスクワで検討を求めておる、そういうようなことで、その後大分改善を見ております。しかし、今後におきまして、わが方の漁船に対しては行政指導等を十分徹底をいたしまして、違反事故等の事件が起こらないように今後とも努力してまいりたい、このように考えております。
  85. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答えいたします。  油紙で包んだ日本円でもって支払いをすることは外為法に抵触するかしないかというお話でございますが、これは事務の方でひとつお答えさせます。
  86. 旦弘昌

    ○旦政府委員 現在の外為管理法におきましては、日本人が海外に出ます場合には、円キャッシュといたしましては十万円を持ち出せることになっておるわけでございます。したがいまして、いまお話しのような場合には、そのルールには厳密に申しますと反するわけでございます。私どもといたしましては、こういう緊急の事態でございますので、その状況に置かれました漁船の方々には大変同情を禁じ得ないところでございますので、その辺の扱いにつきまして弾力的にできるかどうか、それを検討させていただいておるところでございます。
  87. 近江巳記夫

    近江委員 もう時間がありませんから、これで終わります。  総理、お聞きになったように、こういう状態なんです。ですから、たとえば違反の場合、切符制度にするとか、それはソ連側とよく交渉をして、そんな不自然な、油紙で現金を包んで出漁している、こういうことはひとつやめていただきたいと思うのです。その点だけ、もう時間がございませんから終わりますが、よろしゅうございますね。一言だけ……。改善努力してください。
  88. 坊秀男

    ○坊国務大臣 大いに努力をいたします。
  89. 田中正巳

    田中委員長 これにて近江君の質疑は終了いたしました。  次に、西田八郎君。
  90. 西田八郎

    西田(八)委員 最初に総理にお伺いをいたしますが、わが党の河村議員との議論の中で、今後の経済見通しあるいはその政策転換等について十分な答弁が得られなかったと思うのですが、総理はまず、これからの日本経済、いま円高輸出業者等が大変大きな被害をこうむっております。また、この円高は、アメリカ初め日本に対する経済戦略の一つとして、責め上げられてきておると思うのです。こういう状況の中で、国内では構造不況という言葉の中で不況業種がどんどんとふえつつある。そういうところから労働者も離職をされようというような状況の中でありますが、実際に六一七%の経済成長率が維持できるのかどうか、今後の見通しについてひとつ総理の確たる所信を表明していただきたい。     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕
  91. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま世界的な経済の激動期でございます。そういう中で、わが日本経済をどういうふうに運転していくか、こういうことでございますが、とにかく国際収支、これは非常に大事ですね。これで破綻がくるということになったらもう大変なことになりますから、この点。それから物価、これに混乱がくるということであってはならぬ。それからもう一つは、経済社会というものの活力のある状態、つまり成長が順調に進んでおる、こういうことですね。これらを基本的に踏まえて経済運営をしていかなければならぬ、こういうふうに思いますが、いま問題は、一つは国際収支です。これは実際はよ過ぎるのです。よ過ぎて、いま国際社会で批判を受けるという状態であります。この状態を、国際社会に責任のある一員としての日本政府としては考えなければならぬという問題がある。もう一つは、活力ある経済社会、この点でございますが、いまの日本経済界には不況感が非常に強い。なぜ強いかといいますと、これは構造不況業種というものがあるわけなのです。この処置をしないと、安定感というものが出てこないのじゃないか、こういうふうに考えまして、そこへ政策の重点を置いておるわけなのです。経済全体のスケールは、とにかく六一七%成長といえば、これは大体満足していただかなければならぬところである、そのように考えます。そういう中で、とにかく構造不況業種というものの処置、これをやっていきたい。そうして今後代替エネルギーの需給、そういうことも十分考えなければなりません。そういうことも考えると同時に、雇用問題、そういう角度の考え方もしなければならぬ。それで六%成長、これはぜひやっていきたい。六%と申しましても、これはそのときの状況によって、多少上がることもあり、多少下がることもありましょうけれども、その辺の成長を実現しながら、とにかく国際収支の健全性、それから物価、これはインフレを再び起こしてはいかぬ。それからそういう基本的なかなめ、かなめは押さえてまいりたい、そのように存じます。
  92. 西田八郎

    西田(八)委員 結局、経済福田と自任しておられる総理が言われることであるから信用したいと思うのですけれども、どうもながめておりますと、そういうような傾向へ行っていないですね。これは私の主観でありますが、いま経済成長しない、あるいはまた生産した製品が過剰になってきている最大の原因は、やはり国民の不況感にあふられた買い控え、いわゆる消費が拡大されていない、消費の鈍化というような点にあるのではないかと思います。そういう点から考えますと、やはり思い切った消費拡大の政策というものを打ち上げるか、あるいは極端に言えば、過剰製品を全部買い上げてしまって、そして秩序ある生産体制というものをとるということが必要になってくるのではないかというふうに私は思うわけですよ。ですから、総理が言われるように、本当にそういうような好循環になるかどうか。いまのところはむしろ悪循環で動いているのではないかというふうに考えるわけですが、その辺の見通しはどうですか。
  93. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、日本経済全体としては、これは世界の混乱の中としてはまずまず効率的な動き方をしておる、こういうふうに思います。私は、世界もそういう認識をしておる、このように思います。ですから、いまとにかく有史以来と言ってもいいのじゃないでしょうか、資源有限時代という時代を迎えようとしておる。その資源有限時代に特に企業がどういうふうな対応を示すか。こういう時期ですから、企業の方でも非常に苦しい時期です。この苦しい時期、つまり新しい環境への対応、これを乗り切れば、もう夢よ再びという高度成長を期待すべくもありません、それはもう許されないことである、しかし六%前後の成長というものは必ず実現できる、私はこういうふうに確信を持ちながら経済運営に当たっておるわけであります。
  94. 西田八郎

    西田(八)委員 資源有限時代という言葉が常に総理の口から飛び出すわけでありますが、資源が有限であることはもうもっと早くからわかっておったはずです。わが国が石油を二億リットルを超えて消費するころから、世界のそうした学者は、もう石油も底をつくんだぞということを何回か警告をされたはずであります。そして日本の公害関係、いわゆる水質の汚染あるいは大気の汚染が極度に進んだ昭和四十二、三年ごろには、そのことが資源の埋蔵量との比較において非常に強く叫ばれたと思うのです。したがって、いまさら資源有限時代という言葉は、私はもう、ちょっと当たらないと思うのですが、まあそれはさておいて、資源が有限であるとするならば、当然やはり国際経済というものも、もっと国際間の協調の中で当然人間の生活に必要なものを製造していく、それが人類の発展と向上に役立たせていくという方向で物は生産されなければならないと思うのです。そうしますと、当然わが国の場合におきましても、いままでのようにもうかるからつくる、もうからなくなったらやめるというようなやり方、いわゆる商品経済体制そのもので私はもう行き詰まりを来しておるんではないか。むしろこの辺で経済の中に計画性を導入して、そして需給のバランス、それは国内だけの需給バランスではなしに、国際的な需給バランスも考えた上で、国際分業というものも考えていかなければならない時期に来ておるのではないだろうか。すなわち、そういう点について総理は、これからの経済安定を図っていく中で、いわゆるその計画的な経済というものをつくられる意思があるかどうか。
  95. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、つとにこれからの経済、これはまあ需要の管理というところに非常に重点が移ってきておるということを強調しておるのです。六%成長だ、こういうふうに申し上げましたが、さあそういう見当を実現をするということになれば、これはやはり需要管理という考え方、これを取り入れていかなければならぬ、こういうふうに思いますが、それは財政だとか金融だとか大きな手法、そのもとでそうやるべきである。一つ一つの経済活動、これを統制、規制をする、こういう考え方であると能率のいい経済社会という状態はこれは維持できないだろう、こういうふうに私は思います。経済の中身、これは自由体制だ、まあしかし大枠の経済の運営、これは財政金融等を中心とした需要管理体制、そういうことでなければならぬだろう、そういうふうに考えております。
  96. 西田八郎

    西田(八)委員 財政金融だけで処理をするというのがいままでのやり方であったから、それで頭打ちをしているわけです。ですから、私は、やはりこれからの生産量、そういうものに対しても完全にもう国家管理のもとに置けとか、あるいは国家統制をしろと言っておるわけではない。少なくとも大まかな計画というものを立てた上に立って、そうして生産をすべきではないのか。そうすれば、いまは構造不況と言われるような業種そのものも、こう急激に打撃を受けずに済んだのでけないか。そこにコントロールする必要があったのにもかかわらず、それがコントロールがされていなかったから、今日のような状態というものが止まれてきたのではないかというふうに思うのです。したがって、経済、これは自民党の総裁福田さんに言うのですから無理かもわかりませんが、経済のそうした大幅な転換、経済政策の転換、そうしてそういう点が国際社会における日本経済戦略、そういうものも立てた上での対策でなければ、これからの日本、特に資源を持たざる日本経済というものは、きわめて困難になってくるのではないだろうかというふうに思うわけであります。  特に、先ほども議論の中に出ておりましたように、製品化されたものを輸入するものはほとんどないということは、やはり原料を仕入れてきて、日本の緻密な技術とそして卓越した頭脳がいろいろのものをつくって、そして外国へ売りに出しているわけです。ですから、それを大量に輸入するということになれば、日本の企業なべて皆いかれてしまうということになるわけですね。ですから、その辺をどうコントロールするかということが私は政治だと思うのです。最近までよく政経分離という言葉が使われたわけでありますが、経済と政治というものを分離して私は論ずることはできない。そうだとするならば、経済成長発展、ひいては国民生活の向上ということは、福祉の向上ということは、必然的にやはり政治が経済をある程度コントロールする、そういう時代にすでに入ってきているのではないかと思うのですが、いかがですか。
  97. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 だから、これからの経済というのは、これは野放しはとても許されないと思うのです。野放しにしておきますれば、それは当面は高度成長なんというようなことはあるいは自然に実現するかもしらぬ。しかし、そうやったらその翌年はまた大問題が出てくる。その翌々年はさらに問題だというようなことになりますわね。ですから、そうあってはならないです。やはり国の経済全体、この枠組みですね、これはちゃんと踏まえて、そうしてそれが枠組みのとおり行くような経済運営、これは西田さんの言葉で言えば、政治運営と言ってもいいかもしらぬですが、そうすべきだと思うのです。  ただ、その枠組みの中での経済の仕組みをどういうふうにするかということになりますれば、これは大枠はそうでありましても、自由競争体制、これを余り拘束するようなことになりますと、これは経済が私は非常に非能率的になり、また萎縮し、またしたがって必要な成長も実現できないようなことになるかもしれない。その辺は十分配慮していかなければならぬわけでありますが、政治が経済をリードするというか、枠組みにつきましては、がっちりとこれを踏まえての経済運営でなければならぬ、こういうふうに考えています。
  98. 西田八郎

    西田(八)委員 ということは、こういうふうに理解していいわけですか。従来のいわゆる自由放任と言えばいささか言い過ぎかもわかりませんが、自由に経営者の商取引の慣行上任してきた経済というものも、これはある程度限界に来ておる。したがって、われわれの言う計画性と生産における自由競争、こういうものを混合したいわゆる混合経済体制といいますか、そういう方向へ経済政策の転換を図っていこうというふうに考えておられると解していいのかどうか。
  99. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 枠組みは管理、それから中身は自由経済体制、そういう意味において混合経済だ、こういうことは私は言えると思います。混合経済、混合経済といろいろな人が言いますが、いろいろ意味が違いますようでありますが、私のいま申し上げたような、枠組みは管理体制だ、中身は自由競争体制だという意味においては、混合経済体制にこれから移っていくというか、もうすでにそういう方向に移っておりますが、これからの社会経済は混合経済体制だと言っても支障はない、かように存じます。
  100. 西田八郎

    西田(八)委員 続きまして、いま問題になっておる構造不況業種、これに対して一体どういうふうに改善をしていくのかですね。これは離職者もずいぶん出てくるでありましょうし、と言って国際競争力も失いつつあるこうした業種に対してどう改善されて、そうして将来にわたって安定させられる見通しを持っておられるのかどうか。
  101. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  構造不況業種と一概に申しますけれども、その中にはあるいは繊維あるいは平電炉あるいはアルミその他と、いろいろと銘柄によりまして内容は異なることは当然でございます。そういうことから大まかに申しますれば、まず生産価格の調整対策というものと、それからまた過剰設備に対しまする対策と、それから金融対策でありまするが、これらの構造的な縮小体制に入りまするものに対しましての設備買い上げその他の債務保証等の問題、それからまた政府の金融機関によりまする既往の貸付金利等の軽減の問題でありますとか、それから今度はわれわれの方の所管と競合いたしますけれども、主として労働省関係の雇用対策、こういうふうに大きく分類できると存じます。
  102. 西田八郎

    西田(八)委員 総理質問したのですが、通産大臣からお答えいただいた。大体そういうことで対策を立てざるを得ないと思いますが、しかし、それでもまた競争力を失ったというようなことで、第二次、第三次というようなことがあってはならないと思う。したがって私は、総理として現在の国際情勢の中で、いま不況業種と言われておるいわゆる十三の業種が、本当にいま通産大臣の言われたような方向で改善をすることによって安定させられるのかどうかということをひとつ伺いたい。
  103. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 一番大事なことはやはり各企業の需給の調整ですね。そして、過当の利潤であってはなりませんけれども、適正な利潤が得られるような状態をつくり出していくということじゃないかと思います。そういうことを考えながら当面の施策とそれからまた少し長期的な構造的対策、こういうことが二つ求められると思うのです。当面は何といっても、これはあるいは独占禁止法でありますとかあるいは中小企業団体法でありますとか、ああいう法に基づくところのカルテル、これを弾力的、機動的に使っていくという必要があると思うし、同時に行政当局、特に通産省の行政指導、そういうようなことで業界の需給とそれから価格、この面につきまして対策を講じなければならぬだろう、こういうふうに思います。  それから、そういうことを考えますと一つ問題になってくるのは、設備廃棄という問題がどうしても起こってくるのですよ。スクラップ・アンド・ビルドになるものもありましょうし、あるいはスクラップでおしまいになってしまうものもありましょうが、とにかく過剰設備を廃棄する、こういう手法もあえて進めていかなければならぬだろうと思う。そういうことを考えますと、政府は、やはり企業でありますからこれは金融を手法としなければなりませんが、特別の援助をそれらの問題が解決されるために使っていかなければならぬだろう、こういうふうに思います。  一方、これが行われますとやはり雇用問題が出てきますね。雇用を一体どういうふうにするか、これは労働省を中心として万全の陣をしいておるわけでありますが、それも考えなければならぬ。そしてそういう当面の施策をどんどんやっていきますが、同時に先々、これらの企業がそういう処置を了した後どういうふうに持っていくかという構造対策、これをやっていかなければならぬ。私は、いまは非常に苦しいと思いますけれども政府も大いに援助また指導もします。しかし、非常に大事なことは、業界が全体として足並みをそろえてということなんですよ。これが必ずしもそろわないものですから、なかなか政府の方の即し方もむずかしいのでございますが、本当に業界が一致してこういうような手法でひとつ難局を切り抜けようということになれば、私は、構造問題というのは非常に困難な問題ではありますけれども、これは解決し得るというふうに自信を持ちながらいまこの問題と取り組もうとしている、そういうことでございます。
  104. 西田八郎

    西田(八)委員 こうしたいま構造不況と言われる業種改善するということは、結局はぜい肉でふくれ上がった産業、いわゆる生産構造というものを変えていかなければならぬ、ぜい肉を取っていかなければならぬ。そうするためには当然そこには縮小生産というのが生まれてきます。縮小生産という形にならざるを得ないというふうに思うわけです。そうしますと、そこには当然余剰労働力というものが出てきます。いま総理がおっしゃったとおりであります。そうすると、その余剰労働力を一体どこで再雇用するのか。現在やっておる業種にかわるいわゆる繁栄する業種というのは何かあるのかどうか。これをひとつ聞かしていただけませんか。これは私ども非常に模索しておるわけですが、なかなか適当な産業というのは見つからないわけです。いま自動車がいいと言われておるわけです。しかし、この自動車も、来年度から始まるアメリカのスモール計画というものがどんどん進んでくれば、果たして現在のような輸出量を確保することができるのかどうか。あるいは東南アジア地方のまだモータリゼーションまで入っていない諸国の経済水準を引き上げるのにかなりの年数がかかるとする場合、その期間というものは自動車もそういう形が生まれてくるのではないか。あるいは電機工業、電子工業、こうしたものはだんだんと世界に広がりつつある。とするならば、自給体制というものがとられてきたら、日本の家電製品あるいはまた電子計算機等も輸出がなかなかむずかしくなってくるのではないかというふうになると、ここでもやはり飽和状態というものが考えられざるを得ないというふうに考えてくると、これからの日本で生き延びられる産業は一体何があるのか、ひとつ聞かしていただきたい。
  105. 石田博英

    ○石田国務大臣 いま西田さんの御質問のもう一つ前の前提は、一体構造不況業種というところにどれだけの雇用力があって、そしてそのぜい肉を落とす場合にどの程度の離職者が出るかというところから始まらなければいかぬと思うのです。これは各関係官庁その他の調査、御報告を受けますと同時に、私どもの方でもそういう業界に対してヒヤリングを行って、現在の雇用量というものはおおよそつかめるわけなんです。ところが、そのぜい肉を落とすためにはどれくらいの離職者が出るかということになりますと、各業界がなかなかまとまらない。それから各個々の企業におきましては労使関係等の問題もありますので、それが完全になかなかつかめないのが現状であります。つかめないというよりそういうことはいま進行中であると言った方が適当じゃないかと思います。全体の数は日経連では、四百万人の雇用量に対して一割過剰だということを大ざっぱによく言いますけれども、私どもの方で調査をいたしましたところでは、大体十二業種で三百五、六十万の雇用量。そこからどれくらい出るかということになりますと、さっき申し上げたような事情であります。  一方、こういう状態にあるにもかかわらず、就業人口自体は昨年に比べて伸びておるわけです。昨年は一年間で六十八万人ほど伸びたのですが、ことしは上半期だけで六十二万人ほど伸びております。しかしながら、製造業では減っているわけです。これからも製造業で大きく伸びることは、いまいろいろお話がございましたように、なかなか困難ではなかろうかと思います。製造業が減っているのにどこで就業人口がふえているかといいますと、結局第三次、しかも消費関連の第三次であるわけなんです。それからもう一つは、やはり技能労働力の不足というものが七十万以上、ヒヤリング等によりますと出てまいります。これも職種が大体わかっておりますので、そういう方面に技能訓練をやることによって振り向けていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  106. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御質問の点は非常にむずかしい問題でございますけれども、今度は転換いたしますについてどういう新業種考えられるか、これにつきましては、産業構造審議会におきましていろいろと検討もいたしております。つまり、言うならば、わが国産業の将来のビジョンとでも申すべきものでありますが、これに対しましては、特に当面考えられますことは、エネルギー節約という問題につきましては、これは一口に申しますけれども、内燃機関の問題からあるいは高度の集約化いたしました産業に転換する、こういうことでいませっかく構造審議会におきまして真剣に検討を進めておるところでございます。
  107. 西田八郎

    西田(八)委員 いま労働大臣が懇切丁寧に、余剰労働力は約四十万ぐらいじゃなかろうかというふうに言われておるわけですが、私はそれでは済まされないような気がするのです。現在、大学卒浪人というか、これは恐らく半数が就職できないという状況にあるわけです。そういう状況下で、若い労働力も相当数余ってくることも考えますと、新規労働力となるものとの関連から見ていきますと四十万やそこらでは済まされない。現在働いている人の中からはき出されるのがそれだけ、次に就職しようとする人が雇われなくてそのまま残っていくのもできてくるわけです。といって、いま通産大臣が言われるように、恐らく、産構審でどれだけ議論してみても、なかなかいい産業、これなら大丈夫という結論は出てこないと思うのです。  そこでやはり雇用構造を思い切って変えていかなければならない。いま三次産業に人がふえておるということでありますが、それをもう一歩進めて、福祉行政にもっと人を使うべきではないか。大体、私どもの計算からいきまして、看護婦の四十万を初めとして、百八十二万という人が現状では不足しておる。それだからいろいろ悲劇が起こるのだと思うのです。あるいはまた、老人対策、老人対策と言われながらも、老人ホームなり養護老人ホームなり、老人が安心して老後を暮らせる場所さえも現在ないという状況であります。こういうものをふやしていって、そこで介護人なり看護人なりあるいは管理人なりというものをふやしていく。いまの時期にこれをやらなければやるときはないと思うのです。したがって、これは福祉産業と言えば言い過ぎかもわかりませんが、そういう方向へ思い切った雇用転換といいますか、政策転換を図らなければならないと思いますが、総理、どう考えられますか。
  108. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これからの日本経済を展望しますと、産業中心から生活中心へと、こういうような傾向が強くなる、こう申し上げて差し支えない、このように思いますが、そう考えますときに、製造業にそう多くの雇用を抱える力というものはない。これは多少の伸びはありますよ、しかしそう多きを期待することはできない。ですから、いわゆる第三次産業という部面、こういうものが非常に強力な支えになってくるのじゃないか、そのように思います。  私は、少し中期的に見ますと、雇用問題は基本的には窮屈だというふうには思いません。全体のバランスは、そう多く欠陥が出てくるというのじゃなくて、地域的に、業種的にあるいは年齢層的に非常にむずかしい点がある。ですから、雇用の流動化というか、そういうちぐはぐな点をどういうふうに調整するか、それによほど力を入れていかなければならぬだろうこういうふうに思います。  そういう中で、いま御指摘の福祉行政に人を使えと、これは民社党の方の御意見とどういうふうにかみ合うのか。私も伺っておりまして、行政整理をせいせいと言う。やはり人を公務員としてふやしていくということもそう濶達にはいかぬだろう、こういうふうに思います。それは心構えとしてはそういう心構えでいきますけれども、そこにいまの労働問題の隘路を打開するというだけの大きなことを期待するのはなかなかむずかしいだろう、こういうふうに思います。もとよりそういう配意をしますよ。しますけれども、それが決め手になるのだ、こういうふうにはなかなか思いません。経済全体を、六%でもいいでしょう、その辺で成長させていく、そういう中で地域的に、業種的に、年齢的にあるいは性別的にかみ合わないところがいろいろ出てくる。そういう隘路の打開、これが非常に重要であるというふうに私ども考えておるわけであります。
  109. 石田博英

    ○石田国務大臣 誤解があるといけませんので、ちょっとあなたの御発言を訂正させていただきます。  それは、四十万という数字は私が出しておる数字ではないのです。日経連の中ではそういうふうな数字をお出しになっている。しかし、それは各業界ごとに具体的に話をまとめて積み重ねたものではない、そういうことです。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕  それから大学の問題でございますが、求人求職は、数の上では求人の方が多いのです。ただ、大企業と管理事務職へ志向する者が多過ぎるので、いま申しましたような就職難が起こっておる、こういうことであります。
  110. 西田八郎

    西田(八)委員 いまの総理答弁ですが、ちょっと誤解しておられると思うのです。われわれの言う行政改革というのは、つまらぬしっぽを切ってしまえということを言うておるわけで、必要なものまで減らせとは言うておらぬのです。むしろ福祉産業を興して、そちらの施設の方へもっと十分なる体制を整えるべきではないかということを提唱しておるわけですから、ひとつ誤解のないようにしていただきたい。これはもうこれからのきわめて重要な施策だと私は思うのです。したがって、政府の中でもこの問題はひとつ十分に対処をされ、来年度の予算にそうしたものが大幅に取り入れられることを期待しておきたいと思います。  それから、労働大臣のおっしゃる人数の違い、数量の違いは理解いたしました。ただ、四百万人の一〇%というのは自動的に四十万と出てくるわけで、そこそこの数字ではないかと思いますが、私はもっとあると思うのです。  そこで私は労働大臣に伺いたいのですが、これだけの人、一〇%程度なら、時間の短縮と休日の増加ということで吸収できるのではないか。現在、これだけ不況不況と言われながらも、全国の平均で見ますと、一カ月当たり十二時間という残業が行われておるわけです。それに、交代勤務のときに引き継ぎのために早出をするか残業をするかという形をとられているところもあるかもわかりません。しかし、それらはごぐ小部分であって、その約七割はやはり一般生産のための残業というふうに考えれば、これは相当な時間になると思うのです。一人十二時間ということは、一週四十時間でありますから、それで割り返せば三人で一週分が出てくるという計算になるわけです。三人分で三十六時間ですから。一カ月を四週と二日とすると約百七十時間ですから、大体一〇%弱程度を時間外労働で補っているという面があると思うのです。また、日本の場合、有給休暇は二十日と定められておる、週休二日制はまだ完全に定着していないというような状況の中で、少し人間は働き過ぎの傾向があるわけです。したがって、もっと短い時間で、休みも多くとって、そして雇用を拡大する方法というものが考えられないか。そうすれば当然労働基準法の改正という問題も具体的に上がってくるわけでありますけれども、そういう労働時間の短縮、残業の全廃、そして休日の増加、特にゆっくりと休むいわゆるバカンス、これは夏だけに限らない、冬の場合も秋の場合も春の場合もあるでしょうが、そういう休日の増加によってそれらを埋め合わせていくということは考えられないかどうか。
  111. 石田博英

    ○石田国務大臣 一般的、原則的には、有給休暇、労働時間の短縮、週休二日制というようなものは、国内あるいは国際的な公正な競争力を確保する、それから勤労者の福祉の増進を図るという意味で原則的には賛成であり、その方向へ向かって努力しております。  ただ、現在の時間延長の実情は、かつてのたとえば昭和四十年不況、四十六年不況の回復期に示された時間延長の状態よりはまだ延長時間は少ない状態であります。それから労働時間の短縮も、漸次それぞれ労使間の協定によって行われまして、平均して一週四十二時間弱になってきております。ただ、週休二日制の場合は直ちに雇用増には結びつくとは言えない。むしろ、オープンしている時間はいまのとおりで、一人ずつが週休二日制になると雇用の増加には結びつくと思います。しかし、いろいろ大衆の利便とか、そういうものを考えますときに、一律にいま法的規制によってやることが現状に合うか、それからもう一つは、いま非常に苦しい中小企業の経営の状態、それから第三番目には、終身雇用制の背景の中に、そういう要素がやはりかなりありますので、そういうものに影響を与えないか、検討をする必要があると考えます。
  112. 西田八郎

    西田(八)委員 労働大臣言われるような環境は、わが国の産業全体が持っておると思うのです。しかし、それだからといってそれを踏襲していったのでは、いつまでたっても改善は図れない。それは思い切った施策を必要とするわけで、このように雇用不安が随所に起こっておるわけですね。私は先日も造船所を見てまいりました。四十万トン、五十万トンというタンカーができるその造船所のドックの中に、三百トンの船が二そう並んで建造されておるわけです。一体これをどうするんだ。まだ余ったところがあるわけです。ところが、通産省の指導で、一カ所で何そうもつくるとよその造船所へ回らぬことになるからということで、非常に制約を受けていますという説明でありました。しかし、その中で三百トンの船にかかっている労働者の気持ちは、このままでいったらいつおれのところの会社はつぶれるかわからぬ、どないしてくれるんだというのが、私は労働者の率直な気持ちだと思う。紡績だってそうであります。合繊だってそうなんですね。  ですから、全体的にそういう方向へ来ておるときですから、この際思い切って、いままで踏襲してきた労働条件、労働慣行ではなしに、私はここで政府が積極的に指導的立場を果たして、そうしたものを推進していくべき時期に来ておると思うが、どうですか、労働大臣
  113. 石田博英

    ○石田国務大臣 ただいまお話しのような方向で行政指導はやっております。  それから、有給休暇の消化なんですね、これは有給休暇の現在の日数をふやすよりか、いま掲げられている日数を消化してもらうようにしていく必要がある。これも慣習に従っておったらしょうがないじゃないかとおっしゃられるかもしれませんが、どうも日本人は長い間休みをとるという習慣がないものでなかなか、現在で七〇%強くらいの消化率でございます。そういう方向で行政指導をいたします。
  114. 西田八郎

    西田(八)委員 それはわれわれ中年を過ぎたというか、中年者と若い者とではそういう感覚が違うと思うのです。これからやはり職場の主導権というものは若い人たちに移っていくわけですから、私はこういう時期にそうしたことを奨励すれば必然的にそういう方向へ行くと思うのですね。世の中の環境がそういうふうになってくれば、中小企業中小企業なりにその環境で私は処理できると思うのです。もちろんおっしゃるとおり、中小企業が少しでも機械効率をよくするために残業でかせごうという気持ちはわからぬでもないのです。しかし、それがやがてはまた自分たちの仲間の首を締めるということもこの際十分理解させると同時に、そういう環境の中でも育つような中小企業対策というものはやっていかなければならぬと思うのです。したがって、私はこの際、そういう方向へ大きく転換されるよう、ひとつ指導の面で努力をいただきたいと思います。  次に、ハイジャック関係についてちょっとお伺いをしておきたいのですが、先ほどもいろいろな問題点が出ました。ただ私は一点、これは国民の皆さんも一どうも納得のいかぬというのが一つあると思うのです。  それは、アルジェリア政府日本とが約束をされて、ハイジャックをされたときに渡した身のしろ金と犯人は引き渡さなくてもよろしいという約束があったのでアルジェリア政府が引き受けた。ところが、外務省の事務レベルでそういう約束をされた事項と後で政府が決められたことと全然違う。そうして法務大臣はそのために責任をとっておやめになったのだろうと思うのですが、外務省の方のそれを約束した人は何のとがも受けてない。閣議が決定する前に行政で勝手にやっておいて、そして後で閣議が決定したにもかかわらず、そのことに関しては、あれは遺憾であったとか間違っていたとかいうおとがめを受けてないのはどういうことか。しかも法務大臣はやめておられる。この辺は私はどうもすっきりしない。これは勘ぐれば、だれかがもうそれでやってしまえということを言うてしもうたのではないか、しかしそれでは世間がうるそうていかぬから、結局後で閣議で決めたというふうに勘ぐられても仕方がないのではないかと思うのですが、その間のいきさつはどうなっているのか。そして、今後この処理はどう解決されるつもりなのか。
  115. 園田直

    ○園田国務大臣 この前も報告をいたしましたが、第一、閣議の問題は、逐次経過を報告をして、最終段階では閣議は総理に一任という了承を得ておりました。  それからアルジェリアに対する交渉は、一つは、政府は何とかしてバングラデシュで最終解決をしたい、ここでぜひ乗客を全員釈放するように御努力を願いたい、なお各国ともこの飛行機を受け入れする国がありませんから、飛び立ったらそれこそ人命に影響するから、そういうわけでひとつ行く先がわからないうちは絶対に離陸はさせないでくれ、こういう強い要請をやっておりました。しかしまたその半面、もし無理に飛び立てば、飛び立った瞬間から、日本航空は日本の国籍でありますし、乗客、乗務員、外国のお客さん等もおるわけでありまして、これの生命の保護をする責任があるわけでありますから、内々外務省は、一方では行く先がないといいながら各所で当たっておったのであります。二十数カ国当たっておりましたが、領空通過、給油等も含めて拒否する国が大部分でありまして、その後だんだん時間が経過をして、折衝しておりましたが、大体行く先に見当をつけて、それを数カ国にしぼったわけであります。そこで数カ国にしぼって、何とかもしもの場合はという打診をしておったわけであります。  その数カ国にしぼった状況で、バングラデシュは、犯人の意思ではなくて、バングラデシュの方から離陸命令を出したわけであります。バングラデシュが離陸命令を出したのは、あの飛行機がおることによって自分の国内というものも非常に困るということで離陸命令を出したわけであります。離陸しました後、大体、燃料それから犯人の動向等から行きそうであるという国に見当をつけて打診をしておったわけでありますが、しばらくしてからロンドンの日本航空の支店長の情報で、犯人の交信によるとアルジェリアに行きそうだ、こういう情報が来たわけであります。  そこで、その情報が入る前に、どうも数カ国あるけれども政府政府の交渉、打診の結果では、着陸をみんな、その後のことがありますので了承しそうにない。ただ、内々いろいろやってみると、犯人が無理に着陸をすれば、ということの意図はあるようだ。その際は、どこの国にも身のしろ金及び犯人の引き渡しは要求しないだろうなということであるということまでが総理に報告があり、私も受けておったわけであります。そういう段階に来ますると、もはや大体それ以外になかろうということで、総理の御意図を受けて私の方では、総理も私も、最終段階に来たらその方向で臨機の処置をやれ、こう言っておったわけでありまして、これは事後の報告においても、私から事の経過は聞いておった、そして臨機応変の処置をやれと総理はおっしゃった、そういうことはおっしゃったわけであります。  そこで、その段階でいよいよアルジェリアに着くということになったわけでありますが、アルジェリアの方も許可しない、上空を飛んでいる、こういう段階で、前もって了承を得た方針に従って外務省は訓令を発し、現地の大使はそのことで交渉をしたわけでありますから、行政上の間違いはなかったと考えております。その後直ちに対策会議を開きまして、人質が解放された段階でいまの状況を報告をされて、そして各人が、そのことはそのことではあるけれども、再発防止という観点からひとつ、ぜひ要請をしようじゃないかということで、約束は約束したけれども、再びこういう事件が起こっては困るから、お金は何とか返せるものなら返すように努力してくれぬか、どうしても返せないものなら、没収をして、犯人がそれで再び計画をすることができないようにしてくれ、犯人もまたぜひ返してもらいたい、しかし、どうしても約束できぬとおっしゃるならば、身分を拘束して、犯人が自由な行動ができないようにしてもらいたいというお願いをしたわけでありまして、これはアルジェリアの方も最初は、前々の約束はあるけれども、それによって両国がどうこうというわけではない、こういうことでございましたけれども、最後には、ああいう約束をしたのであるから、こういう申し入れば受けられない、こういうことでございましたから、今後の問題については、時期を見ながら、両国の関係を考慮しながらねばり強く相談をしよう、こういう方針に決まったわけであります。  なお、法務大臣がおやめになりましたのは、法務大臣は経過の途中において、法治国家として法律を守るということがきわめて大事であるということを終始主張してこられました。ところが、最後の段階で、いよいよ虐殺の通告があり、その人名の発表があり、その遺言が発表になるにつれて、これは万やむを得ないということで、法務大臣としても、法務大臣としては筋を通したい、しかし対策本部員としてはやむを得ざるものと考える、こういうことで、そのときから、しかしやはり福田内閣というものは法をまず第一に大事にしたいんだ、しかし人命上やむを得ざる処置をとったという筋だけは立てたい、そこで私はこれの処理が終わったら内閣の筋を立てる、法律を守る番人である法務大臣がその筋だけは立てたいということで、内々総理とお話し合いをされて、そして最後まで本部員として終始細部についても御協力を願い、人質が解放された段階総理とお話しの上、私はやはり法律を守るという筋は残しておこう、これは万やむを得ずにやったんだ、こういうことで、総理と相談の上、辞任をされたものであります。  以上が事実の経過でございます。
  116. 西田八郎

    西田(八)委員 まあ、そういうことであるならば、初めから大体そういう方向で解決されるというのがわかっておれば、やはり後で国民が迷うような閣議をしたりなにをされない方がいいんじゃないか。されるならされるで、もっと実現可能な方向で努力されるべきじゃないか。非常にこの点については疑惑を持っております。また一部の新聞等では、非常にその点を遺憾であるという表明さえしておられた。したがって私は、こういう問題は、事国際問題、もちろんそれは超法規的に処理をしなければならない問題であったかもしれませんが、今度の西ドイツのルフトハンザ機のハイジャックされた処理の経過とわが国のとった処理とには、若干日本政府に甘さがあるのじゃないか。したがって、もっとこういう問題は、超法規的に解決されるにしても、先ほど近江さんからもお話がありましたように、少なくとも野党の委員長ぐらいとは相談をする機会があってもよかったのではないかというふうに思うわけであります。そういう点、これはまた野放しになったようでありますから、どこでどういう問題が起こるかわかりませんが、早急にこの対策を立てると同時に、そのときには十分ひとつ処理してもらいたい。そうでないと、無法者の彼らのことですから何をやるかわからぬ。総理大臣をよこせ、皇太子をよこせ、それウラン鉱を持ってこいなんと言われたらどうするか。そのときにでも超法規的にというてお手上げの状態でいくのか。大変な問題が想起されるわけでありますから、ひとつ厳重にそういう処置をされるように要望をしておきたいと思います。  そこで、労働大臣にお伺いしますが、先ほど言われたような状況で、構造不況から出る労働者は非常に数が多いわけでありますが、これらの労働者が本当に再就職するまでの間というものは、非常に長い期間がかかると思いますし、また不安でならないと思うのであります。そこで先取りをして雇用安定資金制度がこの十月一日から発足して、企業内労働訓練であるとか、あるいは訓練所等も臨時に指定するような形で広げておられるのはわかるのですが、しかし、いま言われたようになかなか受け入れる産業がないわけですね。総理からも答弁いただけなかったのですが、これという確たるものがなければ一体どうしていいかわからぬというのが状況ではなかろうか。先ほど労働大臣も、これから見きわめてというお話がありました。したがって、そういうものを補完する意味において、現行法規だけではできない部分があると思います。たとえば年齢制限の問題もあるでしょう。現在の雇用対策法、労働省令によれば四十五歳、それを特定の業種だけには四十歳まで引き下げておられる。しかし、いま本当に生活に困っている三十歳から四十歳までの間がどうなるか、あるいはまた繊維産業初め若年労働者の場合は一体どうするかという問題も出てきておるわけであります。したがって、これは現行の法令だけで十分フォローすることができないと私は思いますが、それらの点について、大臣、どのようにお考えになっていますか。
  117. 石田博英

    ○石田国務大臣 先の、これからやるんだという意味で申し上げたのではないのです。いま各構造不況業界においてそれぞれ対策考えられて、意思の統一を図っている途中でありますから、そういう関連の離職者が出るのはこれからだ、こういうことで申し上げたのです。  それから、現行法規で対処できないのじゃないか。今度は雇用安定資金が出発したばかりであります。四百七十七億円計上してございますし、明年度についてはそれの約五割増しの概算要求をいたしております。これで間に合わなかった場合は、これは要するに義務的負担でありますから、当然予備金で対処する。五十年度はたしかそういう対処をいたしたはずであります。私どもは、現行法規の範囲内でやれる。特に若い人の年齢制限の問題でありますが、若い人は比較的求人倍率が高いのです。それから先ほど申しましたように、特殊な技能工の不足が見られます。そこで、訓練を受ければ再就職の機会もあるわけでありますので、そういうことは現状のままで私はいいと思います。だが、与党、野党を問わず、あるいは労働四団体からいろいろの御意見が出ておるわけでありますので、その中には、私どもの行政からいえば応援団みたいなものを感ぜられる部門もあるわけでございますので、御意見の調整の進行を見守っておるというところでございます。
  118. 西田八郎

    西田(八)委員 ということは、いまの現行法だけでは十分できない。私が申し上げました年齢制限の問題とか、あるいは再就職困難者に対するいろいろの措置、そういうものを補完する意味で、その議員立法なりの形で出された場合には、それは政府としても十分受け入れる用意があるというふうに理解していいわけですか。
  119. 石田博英

    ○石田国務大臣 各党の意見が調整されて法律になれば、それを執行するのが政府の役目でございます。
  120. 西田八郎

    西田(八)委員 当然そうだろうと思いますが、それからやられていたのでは若干遅いのではないか。やはりこの際、いま安定資金制度ができた状況と現在の状況とはかなり変わってきておるわけですから、そういう状況を踏まえてやはり処置をしていくというのが本筋でなければならぬと私は思うのです。そういう面でひとつ十分なる対処を要望しておきたいと思います。  次に、通産大臣にお伺いしたいわけですが、こうしてお聞きのとおりのような……。通産大臣はどこに行かれたのですか。――それでは、通産大臣が留守なら、文部大臣にひとつお願いをしておきたいのですが、こういう構造不況業種から離職する労働者の中に、現在定時制高校にいっている者がたくさんいるわけですね、男女を問わず。ところが、定時制高校は、私立、公立いろいろあるわけですが、転学、転入することが非常にむずかしいということが言われておるわけです。したがって、せっかく三年生までいったのに、二年生までいったのにというのが、途中で挫折せざるを得ないというふうに考えられるわけですし、またがってそういう例がたくさん出たわけであります。働きながら学ぶということは非常に困難なことで、それを克服して学んでいる学生諸君は大変だと私は思うのです。それが一遍に環境が変わるということでは本当に忍びがたいと思うのです。そういう場合に、文部省として各定時制高校間にある程度の連絡をとって――労働省にまずお願いをしておきたいのですが、労働大臣は立たれましたが、再就職の場合には継続就学がしやすい場所へひとつ再就職をお願いすると同時に、文部大臣もそういう定時制高校関係の連絡を十分にしていただいて、ぜひとも就学のしやすい環境をつくっていただきたいと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  121. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御指摘のように、定時制高校間の転学と申しますか、あるいは同じ定時制高校でも継続して勉学ができるようにしたいということはかねがね考えておりまして、たしか昭和四十九年の年末だったと思いますが、文部省として直接定時制高校へ通達するというのではなくて、責任を持っていただいておる地方の教育委員長、それから知事にもこれらのことを要望をいたしたことがございますが、御指摘のとおりの状況でありますので、今後一層に指導を強めてまいりたいと考えます。
  122. 西田八郎

    西田(八)委員 ぜひひとつお願いをしておきたいと思います。非常にけなげな勤労青少年のためにぜひとも一はだ脱いでいただきたい。  次、通産大臣にお伺いしたいのですが、いま円高で、むしろ外国の製品をたくさん買わなければならぬときではあるけれども繊維製品等については輸入を規制しなければならぬものもたくさんあるわけですね。特に最近米国の労働界で問題になっておりますJ・P・スチーブンスという会社があります。この会社は、国内法も守らずにむちゃくちゃな労働条件で人をこき使って、そして米国繊維労働組合の幹部が組織に行ってもそれを妨害するというような状態の中でつくられた製品が日本の百貨店にたくさん出てきております。そういう実態を御存じかどうか。  また、日本の企業も悪いことをしている企業があります。タイ国でサラブリ県にあるサラブリ・ジュート・ミルという、これは日本の日麻が出資をしてつくった合弁会社でありますが、そこで五百人の給料未払いで夜逃げして帰ってきておる経営者もあるわけですね。こういうのが一つ二つ出てくると、日本の企業はえげつないというふうに言われるわけです。私は先年タイ国で、日本の優秀な企業でタイ国へ進出しておられる代表の方と一日つき合いをし、お話をしてきたが、日本の場合、投資した資金の回収が非常に早過ぎる、外国はそういう点はゆっくりやって、そして融資先においてそこの国民が十分に恩恵に浴せられるような状態をつくりながら企業を誘致している、日本の場合とは全く逆だ、したがって、日本製品はどうしてもボイコットされる。そしてまた、私はそこに収容されている寮なんかも見学してまいりました。これは本当に雲泥の差があると言ってもいいほどだ。しかし、現地の経営の責任に当たっておられる方は、非常にそのことを苦しんでおられるわけです。上から早く回収せいと言われるのと、現地で何とか定着したいという板ばさみになって困っておられるという状況を見てまいりました。この日麻というのは非常にけしからぬ経営者だ、こういうのがおるから日本製品ボイコットというものが出てくる。したがって、こういうものに対しても厳重に監視をすると同時に、外国で起こっている問題については、こういう問題が日本に波及しないように、そのために国内の産業が荒らされるようなことになってはならないと思うのです。そういう点について承知をしておられるかどうか、そしてその対策を聞かしていただきたい。
  123. 田中龍夫

    田中国務大臣 日麻の問題につきましては、ちょうど総理と御一緒にASEANに参っておりましたときに現場で起こっておりました問題でございます。そのときには給料を全部決済いたしまして、その後また二度目に私がタイに参りましたときに、その後はどうだったかというと、全部解決いたしましたように報告は受けております。  いまアメリカの問題につきましてのお話は、私、寡聞にして存じ上げませんけれども、しかし、何はともあれ、日本の進出しました企業が、最近の状態は数年前と違いまして、非常な反省と、それから同時に、経団連におきましても投資の基準なり何なりを決めましたし、日本貿易会の方でもノルムを決めておりますし、通産省の方でも相当厳しい準則を出しております。さような関係で、本当にせっかくいい雰囲気のできましたこの環境でございますので、われわれとしましてはひとつ十分に指導いたしまして、せっかくの日本の信用を海外において失墜することがないように、またそれがはね返って日本経済に悪影響がないように、きめの細かい指導をいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
  124. 西田八郎

    西田(八)委員 大臣、米国のスチーブンス社のことは……。
  125. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま申し上げましたように、そのスチーブンス社の問題は私ちょっとまだ存じておりませんから、担当の政府委員からお答えいたします。
  126. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 お答え申し上げます。  スチーブンス社の件でございますが、おっしゃいましたような、生産条件の劣悪という点については私ども余りよく承知していないわけでございますが、この問題、いま国際的には非常にいろいろ問題がございまして、その輸入につきましてもある程度行政指導をしておるという状況でございます。
  127. 西田八郎

    西田(八)委員 それは十分調査してもらいたいと思います。これはもうアメリカ繊維労働組合でもいま大きな問題になって広がって、国際繊維労働組合の会議でこの製品をボイコットせいという決議までなされておるわけです。ところがそんなことで聞くやつじゃないのですから、これはもうとにかくそういう会社の製品は買わぬというところまで政府は踏み切らないといかぬ。私の方に資料があります。これも差し上げますが、同時に政府の方でも調査をして報告されることを要望しておきたいと思います。  次に、通産大臣にお伺いしたいのですが、一つは、現在のように不況業種が密集している地域で、そして離職者がたくさん出る地域があります。そういうところに対する振興策を何かお持ちかどうかということが一つと、もう一つは、中小企業連鎖倒産が非常にたくさん起こってきておるし、現在円高のために、成約された取引まで破棄されるというような状況が生まれてきておるわけです。せんだっても、燕市は洋食器等をたくさん輸出しておられるところですが、これがもう六割は恐らく輸出できないのじゃないかというようなことで、もうすでに市内では大きな問題が起こっておる。あるいはまた瀬戸物の町がそういう状況であります。そういうことに対処して、一体その円高対策と密集する離職者多発地域の今後の対策をどのように考えておられるか、またどう進められるのか、ひとつお伺いをしておきたいと思います。
  128. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  密集地域の中で、特に燕でありますとかあるいは浜松の別珍、コールテンでありますとか、繊維関係、陶器関係、金物関係、いろいろあるわけでございますが、特に今度の円高等に対しましての打撃も深刻でございます。同時に、そういうふうな構造的な問題につきましては、産地ごとの転換という問題で、一例を申しますと伝統産業に転換するとかなんとかというふうな指導もいたしつつございます。なおまた、そういう地域に対しましての労働省とのあれで追加指定を労働省の関係からも雇用関係でしていただいておるような状態でございます。  それから、ただいまのお話の連鎖倒産でございますが、これは御案内の、倒産それ自体に対しまする問題につきましては不況業種指定によって救済を考えておりますが、その事業は健全であっても関係企業が倒産したことによる問題、これが連鎖倒産でございますが、その点につきましては、あらかじめ連鎖倒産防止法なりあるいはまたそれに対する共済制度なり、きめの細かい処置をただいまとりつつある次第でございます。
  129. 西田八郎

    西田(八)委員 産炭地振興がずいぶん進められてきておりながらなかなか振興しない実例があるわけでありますから、ひとつそうした失業者多発地域における、離職者多発地域における産業振興、新しい産業の導入というようなことについては万全を期していただくように特にお願いをしておきたいと思います。  最後に、農林大臣にお伺いをしたいのですが、先ほど近江委員との間でやりとりがありました牛肉の問題ですが、円が高くなって輸入品が安くなるというのが原則なんで、なぜ六百円も上がるのかという、これは率直な国民の疑問だと思うのです。そしてそれが必ずまた市場価格に影響してくるのじゃないか、こういう心配を持っておられます。これはここ二、三日いろいろな形でそういうことが論じられておるわけでありますが、ひとつ私はこの際、そういうことを絶対にやらない、輸入価格はそれでも調整をしながらむしろ物価の引き下げのために努力するという約束と同時に、国内の畜産業者は、いま牛を本当に飼って出して売る場合には、著しいところになると十万円ぐらいはかえってマイナスになるというふうに言われておるわけですね。ですから、これは二百海里時代を控えて、日本のたん白源をそうした畜牛によって賄っていかなければならない、こういう事態が余儀なくされておるときでありますから、国内の畜産にももっと協力をしながら、育成指導しながら、そうしてその価格も輸入牛肉と同等に、競争のできる、競争と言うと語弊がありますが、均衡のとれる、そういう事態にしていただきたいということを要望いたしますが、お約束いただけますか。
  130. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 西田さんがおっしゃるように、国内の畜産業者との関係を配慮しながら今後肉の問題は処理していかなければならない、こう考えておりますが、国内の問題につきましては、先ほども申し上げましたように、円高による輸入飼料、配合飼料につきましては、九月から工場建て値で五千円引き下げをしたというようなことで、畜産農家のために配慮をいたしておるところでございます。  輸入肉に対する畜産事業団の調整金の問題でございますが、これは中間業者等における不当なマージンというものを抑制すべしという声がございまして、この制度を少し強化をしたということでございますが、末端の消費者価格にはこれを及ぼさないようにしております。そうして、むしろ畜産事業団としては、指定販売店、これを八百店舗から二千二百店舗にふやし、かつ放出の輸入肉も量をふやしまして、消費者価格に反映をしないように、消費者価格を安定させるように今後とも努力をしてまいる考えでございます。
  131. 西田八郎

    西田(八)委員 それではこれで終わりますが、とにかく安定だけでなしに、いまの高値安定を引き下げ安定、もっと低くするようにひとつ努力をしていただくことを要望して、終わります。どうもありがとうございました。
  132. 田中正巳

    田中委員長 これにて西田君の質疑は終了いたしました。  午後一時十五分再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ――――◇―――――     午後一時十九分開議
  133. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。正森成二君。
  134. 正森成二

    ○正森委員 本日午前中に、去る九月二十七日に発生いたしました米軍航空機の墜落事故について中間報告がございましたので、その問題について若干質問をさせていただきたいと思います。     〔委員長退席、澁谷委員長代理着席〕  この墜落事故について私が思いますのに、非常に問題だと思われますのは、航空機が発進して離陸直後にエンジンに火が噴いておりますから、まず第一にその整備に誤りがなかったかどうかというのが第一点であります。  第二点は、搭乗員の脱出の時期が早過ぎたのではないか。人家に被害を起こさないために最善の措置をとったかどうかというのが、次に問題になると思います。ところが、この報告書を見ますと、整備員の氏名が全く記載されておりません。また、その整備員にいかなることを聞いたのかという点についても、全く記載がありません。一体こういう点は、政府において米側に要求をしたのかどうか、まず伺いたいと思います。
  135. 亘理彰

    ○亘理政府委員 お答えいたします。  現在、先生御承知のとおり、事故原因の究明は、合同委員会の下部機構である事故分科委員会で扱われております。それで、直接には米軍で組織しました事故調査委員会で調査している最中でございます。ただいまお尋ねの整備のやり方等についても、詳細を報告してくれるように求めておりますが、いまの段階でまだ具体的な回答を得ておりません。
  136. 正森成二

    ○正森委員 私は整備の仕方について報告してくれと言っておるが、まだ返答がないと言われておりますけれども、その整備員の氏名さえこの中に書いておらない。搭乗員の氏名は二名書いておりますけれども、整備員の氏名まで書いておらないのは非常な手落ちであるというように考えております。また、乗員二名についても調べたのかどうかの記載もありません。少なくともエンジンが持ち去られた経緯にかんがみ、この整備員や搭乗員については、事故原因が判明するまで、あるいは調査が十分行われるまで日本を離れるべきでない、こういうように要求すべきであると思いますが、その点についてはいかがですか。
  137. 亘理彰

    ○亘理政府委員 パイロットにつきましては、先生のおっしゃるとおり、日本を離れないようにということは申し入れておりまして、現在厚木におると承知しておりますが、米側もその点については了解しております。  整備員の氏名等については、わかり次第御報告させていただきたいと思います。     〔澁谷委員長代理退席、委員長着席〕
  138. 正森成二

    ○正森委員 整備員は事故原因が判明するまで日本を離れるべきでないという点についても要請して、その結果を報告していただきたい、こういうぐあいに考えております。  そこで、この報告書には米側のエンジン、部品持ち出しの経緯が記載されておりますが、報道機関によりますと、この経緯がここに記載されているところと少しく違いまして、十月五日に持ち出されておったと報道しておるもの、また十月七日に事故分科委員会におきましてすでに持ち出すということを知っておって、持ち出されたこともその直後に知った、しかるに政府上層部には十月十日過ぎまでそれを秘匿しておったというようなことが報道されておりますが、それらの本当の状況について御答弁願います。
  139. 亘理彰

    ○亘理政府委員 私どもがエンジンとその部品が持ち出されたことを承知いたしましたのは、十四日の晩もかなり遅くなってからでございます。これは外部から、そういう情報があるがどうかという問い合わせがございまして、そのときの情報というのは、いまお話しのように、五日に横須賀から持ち出された、こういうことでございまして、それで即刻私どもの事故分科委員会の代表から米側の事故分科委員会の代表に連絡をとりまして確かめた結果は、五日ではなくて八日である、それから横須賀ではなくて横田からであるということでございます。  なお、七日の事故分科委員会におきまして、あるいはその後におきまして、十四日の晩に確かめますまで、米側から八日に持ち出したという連絡は、政府の私どものみならず、外務省、警察を含めて受けておらないわけでございます。五日あるいは六日ごろに持ち出したいという意向がありましたことは、先般外務大臣からお答えしたとおりでございます。
  140. 正森成二

    ○正森委員 この報告書を見ますと、十月七日の事故分科委員会におきまして、日本側が米側に述べた内容が記載されておりますが、ここでは明らかに持ち出しを前提として、持ち出す場合には事前に連絡をしてほしいとか、あるいは調査結果を日本側に提供してほしいということを言ったことになっております。日本国外へ持ち出してはならぬ、持ち出してもらっては困るということを言ったようにはなっておらないわけでございますが、そのような態度は国民の期待から著しく反するのではありませんか。
  141. 亘理彰

    ○亘理政府委員 すでにお答え申し上げておりますとおり、五日及び六日の段階におきまして、米軍から神奈川県警に対しまして、近日中に精密検査等のために持ち出したいという意向が伝えられまして、その点はその段階で警察も留保いたしておるわけでございます。そういう気配が政府関係省庁に伝えられたこともありまして、七日におっしゃったような発言をした次第でございます。
  142. 正森成二

    ○正森委員 私はそういう答弁には納得いたしませんけれども、ここで防衛庁長官と自衛隊の最高指揮官である総理にお聞き願いたいことがあります。  手元に持ってまいりましたのは「日本海軍航空史(1)用兵篇」に載っておるところでございます。  御承知のように、昭和五年四月十七日、ロンドンの近くのフェンチャーチ航空隊でわが海軍の小林淑人大尉(当時)――海軍ではダイイと言うそうでありますが、航空機の飛行訓練を受けておりました。シスキン戦闘機を操縦して特殊飛行訓練中に、ロンドン郊外の上空八百メートルで、突然発動機の右側より火災が起こった。そこで左横滑りに入れて燃料コックを締めて消火に努めたが、火災がだんだん激しくなって飛びおりるより仕方がないということで、下を見ると人家が密集しておる。そこで畑の方に向けて飛んだ。そのうちにぽかんと大きな音がして、真紅の炎が手足や顔に吹きつけてきた。燃料タンクの爆発と察し、とうてい消火の見込なく、いよいよ飛びおりだと決心して下を見るとなお人家が続いておる。ここで飛びおりたら地上に惨禍を起こすこと必定ということで畑の方に進んだが思うにまかせぬ。これでいよいよ自分の最後だと思うと一生のことが走馬灯のごとく頭を駆けめぐった。ひょいと気がつくと不思議に畑が直下に見えてきたので安心して安全帯を解き機外に出た。こうなっておるのです。そして火傷の手当てを受けたが、入院中は一面識もない多数の人から見舞いを受けた。身の危険を冒して人家に与える被害を防いだこの英雄的行為は、当時トップニュースとして英国の報道機関に報道され、英雄小林の名は英全土に広がり、英人に非常な感銘を与えた。こういうぐあいになっているのです。これが軍人たるべき者のあるべき姿であります。  これに対して、今度米兵のとった態度は、まだ真相が究明されていないから搭乗員二名の米兵をここで非難することは私は慎みたいと思いますけれども、少なくとも安全性についてこの小林大尉のような必死の思いをしたというようなことはうかがえません。その上に、事故について日本側に協力するのはおろかエンジンをさっさと持ち出して、日本側があれほど言っておるのに、事前にそれについて通告もしないなどということは全く言語道断と言わなければなりません。私は、こういう点について政府としてよくよく考えてもらわなければならぬ問題があると思う。もしこういうことを放置しているなら――日本と当時の英国との間ではこういうように軍人が必死になって相手方の国民の生命、財産を守ったのに、米側はそういう態度をとらず、海軍の後高であります海上自衛隊は、かすり傷を負ったぐらいの米兵は助けても日本国民を助けようとしなかったということになれば、こういうものが安保条約であるなら、その安保条約は果たしてわれわれの安全を守るものかどうか、こういう疑問が国民の間に起こるのはまことにやむを得ないことであると思います。  こういう問題について防衛庁長官総理はどういうぐあいに考えておられるか伺いたいと思います。
  143. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  第一に、ロンドンにおきます旧軍の処置については、私自身も感動いたしておる者でございます。かくありたいものだと考えておるわけでございます。  それから今回の米軍の事故問題でございますが、事故調査中でございます。なおまた、再発防止のために鋭意検討を進めておる時期に、その大事なエンジンが持ち去られたということは、一応日本の担当者といたしまして合同委員会等において、持ち去られるというようなことについては十分連絡の上処置願いたいということも御相談をいたしておりました最中に、無断で持ち出したということはきわめて遺憾なことだと思っております。将来こういうことのないように、その分科委員会を通じ、また合同委員会等の場において、はっきりそうしたことを申し入れたいと考えておるところでございます。
  144. 正森成二

    ○正森委員 いま防衛庁長官から御答弁がございましたが、私は今後このようなことがないようにというだけでは不十分であると思います。報道によりますと、エンジンを米側が勝手に持ち帰ったことを聞いたあの二人のお子さんを亡くしたお父さんはこう言っておるのですね。「私らゴミみたいなもので、もうすべて手の届かないところの話です」、自分自身をごみみたいなものだ、こういうぐあいに感じているのです。そして二児を奪われ、自分自身が三度のやけどを負っておるお母さんは、「こんな体になっちゃって、くやしい。私はいま何も言えないからパパやお父さんが代わりに怒って下さい」、こう言っているというのです。日本国民にこういうことを言わせるようでは、これはわれわれ国政に携わるものとして決してほめた話ではない、大いに反省すべきことだと思うのです。したがって、今後こういうことがないようにと言うだけでなしに、エンジンを早急に日本に送り返すようにということもあわせて厳重に言うべきである、こう思いますが、いかがです。
  145. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  いま正森さんの御意見、私もそのとおりに受けとめておるわけでございます。したがいまして、今回の事故調査につきましては、まずは精密調査をいたしておりまするから、その情報は分科委員会なり合同委員会に報告をさせる、通報させるということにいたしておりまするし、なおまた必要が迫ってまいりますればこれを持ち返らせる、その通報もいたしておるところでございます。
  146. 正森成二

    ○正森委員 私は、法務大臣に伺いたいと思いますが、十二日にわが党の荒木委員質問いたしましたが、昭和三十九年四月に町田で、三十九年九月に大和で、同じように米軍の墜落事故が起こりました。四名と五名のわが国民が死亡しておりますが、この点について業務上過失致死で送検しておるのに、その結果がうやむやになって、わが法務省も何ら知らないということであります。本件のエンジンを勝手に持ち去った経緯を考えますと、本件についても、このままであれば、うやむやで済まされる可能性が非常に強い、こう思わざるを得ません。しかし、地位協定の十七条の六項の(a)、(b)等によれば、お互いに裁判権が競合する事件については通告をし合うということになっているはずであります。したがって、この件についてうやむやになることのないように、相互に通告をする、米側から当然報告を求めるということは厳重に行っていただきたいと思いますが、お約束いただけますか。
  147. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 正森さん御承知のように、さような場合には第一次的にはアメリカの裁判権ということになっておりますが、詳細については事務当局から答えさせます。
  148. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 大臣が申し上げたことを補足いたします。  何はともあれ、犯罪の容疑があるかどうか、鋭意事故原因の究明を通して詰めなければいかぬと思います。その上で、ただいま御指摘になりましたような条項を踏まえて善処したいと思います。
  149. 正森成二

    ○正森委員 それでは、この問題については一応この程度で終わらせていただきたいと思いますが、私は、ここで、栗栖統幕議長が自分自身を認証官にせよと言った問題を取り上げたいと思います。  私は、国民はこういう発言を聞いて、恐らく唖然としておると思うのですね。時期が時期だ、米軍がああいう事故を起こして、海上自衛隊の措置には非常な不備があったとかなかったとかいうことで国会に問題になっておるときに、自分自身を認証官にしろというような要求を制服の事務当局が出すというのは、一体どういう心境なのかということは、国民がひとしく感じるところであります。  そこで、総理は認証官にするという方針はないということをお約束になったそうでございますが、さらに官房長官に伺いたいと思いますが、当時記者会見に参加した新聞記者によりますと、この栗栖という勇ましい統幕議長は、自分自身を認証官にしろという点について、この問題については官房長官にも要請してある、賛成してもらった、長官も賛成してくれたと言っているわけであります。あなたは賛成したのかどうか、私は伺いたいと思います。
  150. 園田直

    ○園田国務大臣 お答えいたします。  賛成はいたしません。きのう報告しましたとおおり、聞きましたのは、栗栖新統幕議長予定者から聞いたのではなくて、前任者の鮫島統幕議長から、昼食のときに、自衛官の地位の向上と士気高揚のために、こういうことも一つわれわれは困っておるのだ、こういう話があっただけであります。
  151. 正森成二

    ○正森委員 そこで、それなら伺いますが、官房長官が言ってもおられないことを、官房長官には要請してある、長官も賛成してくれた、こういうことを、部内で言うだけでなしに、新聞記者に発表しているこの栗栖という人物の責任は、どういうぐあいにとらせるつもりですか。
  152. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 ただいまの御質問に関連をいたしまして、昨日総理の御答弁がある前に私から申し上げたのでございまするが、記者会見の際に、いろいろなお話が出たのでございます。記者の方から、認証官にしてもらいたいというような希望はなかったのかというような質問が出て、初めて、実は栗栖陸幕長がそれにお答えをしたということでございまして、みずから認証官にしてほしいというようなことを申し出たわけではございませんので、そうした点は御了承を願いたいと思うのでございます。  本人自身私のところに参りまして、率直にこういう心境で申しました。それはいま官房長官が申されましたように、私自身今回は、二十日からは、自衛隊の最高位のものになります。社会的な地位の問題、士気高揚のために、こういうような意見のあることは承知をいたしておりますので、記者からお尋ねの際に、将来の問題としてそういうことができるならば望ましいことであるということを申し上げたということでございます。しかし、それは、いろいろ問題が指摘をされておる点については軽率なそしりを免れないと思いますがというような、率直な心境の吐露が私にございましたけれども、私は、本人の今日までの経歴、そしてやってまいりましたそうした事態等を見てまいっておりまして、決してそうした将来の統合幕僚の議長にふさわしくない人物ではなくて、適格な、優秀な人物であると認めておるところでございます。  そういうことでございまするから、将来この人事についてとかくを考えてはおりません。
  153. 正森成二

    ○正森委員 私の質問に率直に答えておられないと思うのですが、私が申しておりますのは、防衛庁長官がお答えになりましたこと以外に、官房長官が賛成もしていないのに、官房長官に要請して賛成を得ている、そういうことまで言っておる責任はどうなるのかということを聞いておるわけであります。  もう一点私は続けて伺いたいと思います。この人物がこういうことを言ったのが、決して軽々に言ったのではないということがわかるわけであります。  これは東京新聞の十月十五日付でありますが、本人は記者に対して、「先輩が、この地位を代表権なき取締役会長と皮肉っていた。同感ですな」、こういうことを言いまして、「そこで新機軸を考えているところ」、こう言っているのですね。新機軸は何だろうと思ったら、認証官にしろとか宮中へ記帳に行くということがその第一段であります。そして同じときに記者に対して「日本の自衛隊にはシビリアン・コントロールがなく、大蔵省コントロールだけがある」、こう言っております。別の新聞では主計局コントロールだけがある、こう言ったとも報道されております。  私は、これはゆゆしい発言だと思うのですね。大蔵省は、予算を査定する場合でも文官の立場から財政面から査定をするわけであります。しかも、それは大蔵省や主計局だけでとまるのではなしに、政府予算編成方針になり、まさにこれがシビリアンコントロールであります。そして国会でこういうぐあいに予算審議をして、国権の最高機関である国会が承認して初めて予算が執行されるのに、それを大蔵省コントロールだ、こういうことを言っておる。シビリアンコントロールに対して真っ向から挑戦し、国会の国権の最高機関性に対して真っ向から挑戦しているわけであります。だからこそ認証官にしろという発言が出てくるし、官房長官に賛成してもらっているというような軽率な発言が出てくるわけであります。この人物と同じように警察庁長官が、おれは二十数万の警察官のトップだから認証官にしろ、各省事務次官は、おれは通産省、おれは大蔵省の官僚のトップであるから認証官にしろ、こういう要求をてんでんばらばらに出してきて、しかもそれぞれにてんでんばらばらに記者会見をするということになれば、官吏の服務規律というのは一体どうなるのですか。官吏一般としても、こういう人物のこういう記者会見の発言というものは決してゆるがせにできないことである。ましてシビリアンコントロールに従わなければならない軍人としては、私はあえて軍人と言いますが、自衛隊の制服の、本人の言い分によれば最高幹部としては、わが憲法体系下においては絶対に許されない発言であり、人物であると思います。
  154. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 シビリアンコントロールについて強い御意見がございました。私は、栗栖陸幕長はシビリアンコントロールの何であるかということは十分承知をいたしておると思いますが、そういう点で、言われた言葉等についてそうした誤解を招いたことについてはきわめて残念だと思っておりますけれども、本人は私のところに――今回の問題が起こり、また新聞等でいま先生御指摘の点の指摘がしてあるわけでございます。そういう点を踏まえて私にいろいろなことを、心境を申してまいっておるわけでございます。したがって、彼自身が、シビリアンコントロールの、まず予算の審議でございますとか、あるいはまた国防会議の運営でございますとか、そうして長官なり総理の任命権者の立場あるいは国会の立場というようなものを十分承知をいたしております。彼がそういうことを言ったときには、全くの懇談的な立場でそうした点に触れて、そうした大きな何か企図するような問題でも考えて言ったものではなくして、自衛隊の最高の地位にあり、社会的な地位等を考えて、できれば認めていただきたいというようなところから、そうした願望を踏まえておりましたので、そういうことを言ったと私は思いますけれども、決して本人自身はそういう人柄ではないということを重ねてここに保証して申し上げるところでございます。
  155. 正森成二

    ○正森委員 私は、防衛庁長官が二度にわたって私の質問に直接お答えにならずに弁護だけをなさったという点に注目したいと思います。懇談であっても、いやしくも就任の記者会見で言っていいことと悪いこととがあります。それぐらいのけじめもつかない人物なのか、そういうことをわれわれは危惧するわけであります。  官房長官、あなたは自分が賛成してもいないことに賛成しているということを記者会見で言われているわけであります。そういうことに対して、あなた自身はどういう措置をおとりになるおつもりですか。
  156. 園田直

    ○園田国務大臣 新聞記者からその話を聞きましたときに防衛庁長官に、乱暴な話があるものだということで、防衛庁長官がよく注意をします。こういうことでございました。
  157. 正森成二

    ○正森委員 乱暴な話があるから注意する。いままでわが国の憲政史上、軍なり制服の乱暴な発言だけでなしに、行動で民主主義が破壊されたということは厳然たる事実であります。われわれはその萌芽のうちに摘み取らなければなりません。この人物がこういう発言をしたのは決して軽率なことではなく、認証官にし、記帳に行くということで、軍政と軍令を分けて、軍令の方向は、天皇の権威をかりて発言権を強くしていくということを十分に計算して発言していると見られても仕方がないと言わなければなりません。自衛隊の最高指揮官である総理として、この問題についてのお考えと、最高指揮官として、この人物に人事上の断固たる措置をおとりになるかどうかを重ねて聞いて、質問を終わりたいと思います。
  158. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、本人が天皇の軍隊を復活するのだというようなそんな大それた考えを持ってああいう行動をした、こういうふうには思いません。恐らく非常に熱心に自衛隊の士気を高揚しよう、そういうことを考えておられる方だ、こういうふうに思いますが、発言等につきましては、公務員としてこれは本当に注意しなければならぬ、それをそののりを越えてというようなことがあってはならぬわけですから、その辺につきましては、防衛庁長官十分注意していただきます。
  159. 正森成二

    ○正森委員 時間がございませんので、私は御答弁に納得するわけじゃありませんが、次の質問に移りたいと思います。  日韓問題について金炯旭氏が種々発言をいたしまして、証人喚問が野党全体で行われております。総理は、この問題について証人として喚問することに御消極のようであります。そしてその理由として私の承知しておるところでは、八年前にKCIAの部長をやめておるのだ、それから伝聞ではないかという点で御消極のようでありますが、そう伺ってよろしゅうございますか。
  160. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は証人喚問に消極的だ、こういうようなお話ですが、あの金炯旭さんは、いまお話しのように八年前に現職をのいた人である、それから発言を聞いておりますと、これは人から聞いた、そういうことが大体主であります。そういうことで私はその発言に証拠性というものがそうないような感じがするのですよ。ただ、私が注目いたしましたのは、あの中に金在権と申しましたか、金在権氏との話が出てくる。金在権さんは当時駐日公使であったわけでありますから、この人は当時の事情について相当権威ある話ができる立場にあるのじゃないか、そのように考えるわけでございますが、その他の点なんかにつきましては、これは警察なんかの話を聞きましても、こういう事実はありませんとかそういうような報告で、どうもその証拠性というものが乏しいような感じがするのですよ。そういうことで、証人喚問と言われるがどうかなという感じもしますけれども、証人喚問というのはこれは国会でやることでありますから、国会で御相談されたらどうでしょうか、こういうふうに申し上げているわけです。
  161. 正森成二

    ○正森委員 八年前にKCIA部長をやめた、こういうように言われますけれども、一九六九年にKCIA部長をやめられた。一九七三年の四月ごろまでは国会議員等として韓国に在住したのですね。そして金大中事件が発生したのが一九七三年の八月ですから、総理は八年前八年前と言われますけれども、実際上はやめてから四年後、あるいは韓国を離れてから一年たたない間に事件が起こり、そしてきわめて接着した時間のときに聞いておるのです。  そこで、私は伝聞であるという点について伺いたいと思います。国家公安委員長ないしは法務大臣に伺いたいと思いますが、わが国の捜査機関は、いつから伝聞であれば調べないというような方針をとっているのですか。たとえば吉展ちゃん事件や三億円強盗その他すべての真犯人がまだわからない事件について、それが伝聞であるから調べないというような方針を一遍でもとったことがありましたか。あるいはロッキード事件で田中前首相をなるほど逮捕して調べましたが、田中前首相を調べなければそれ以外の丸紅や全日空や、あるいは航空行政に絡まるいろいろの疑惑、こういうものは調べないという態度をとりましたか。そうではないでしょう。周辺のものを全部調べて、頂上作戦として田中前首相を逮捕し、調べたのではありませんか。わが国の警察やあるいは法務省、捜査機関は、いつから真犯人を直接聞くのでなければ、その前にそれ以外の証拠を、伝聞などは調べないというような捜査方針に転換したのかどうか、これからもずっとそういう捜査方針でやっていくつもりなのかどうか、それを伺いたいと思うのです。
  162. 三井脩

    ○三井政府委員 お答えいたします。  伝聞という言葉の意味といいますか、そういうような点にやや混乱があるのではないかというような気もするわけでございます。この発端は、金炯旭氏がことしの六月、御存じのようにアメリカの国会で話をした。その中にはいろいろなことがありますけれども、要するにあの人が言わんとしておるのは、金大中事件というのはいわゆるKCIAの犯行である、こう言っておるわけでございます。したがいまして、それを受けまして、わが日本におきましても、あの事件はKCIAの犯行であるというふうに考えろ、こういう趣旨に彼自身が言ったかどうかわかりませんけれども、そう言われますので、私どもとしては金大中事件につきましては捜査をいたしておりまして、事案の真相を捜査的に証拠によって積み上げていく、こういう観点から申しますと、金炯旭氏の発言があるからそれをもって直ちにこれをKCIAの犯行というわけにはまいらない、こういうことを申し上げておるわけでございます。  いま言われました伝聞云々という捜査方法のことにつきましては、もとよりわれわれはいろいろなものを捜査の参考としてその中から手がかりをつかんでいく、こういうことでございます。ただ金炯旭氏が言っておられることは、ことしの二月段階から、文明子氏が金炯旭氏からの話だということでずっと言っておられまして、六月段階で、それからまた六月のそれを受けて日本の新聞等も彼に単独インタビューその他の方法で、金炯旭氏の発言は証言以外でも多々あるわけでございます。ところがその内容は、金大中事件に関する本質的な部分についてそれまでいろいろ言われておることとその内容において異ならない。ただそれ以外にかえって、たとえば事件を警察は事前に知っておった、それもまた写真を撮ったとか、呼び出して警告を発したとかという全く事実無根のこともある。こういう意味におきまして、金炯旭氏の発言については問題がある、こういうことを言っておるわけでございます。
  163. 正森成二

    ○正森委員 私が必ずしも聞いておらないことについて弁明的に長々とお話しになったと思いますけれども、要するに、真犯人をいきなり聞かなければほかのことは聞かないというような捜査方法はとらないということは間接的にお認めになったと思います。  そこで、私は何も金炯旭氏の発言そのものによってKCIAの犯行であると断定しなさいというようなことは言っていない。金炯旭氏を呼んで聞く値打ちは十分にある、あるいはわが国内に来てもらって捜査機関が金炯旭氏の同意を得て供述書をとる、そういう必要性あるいは値打ちというものはあるのではないか、こういう問題提起をしておるわけで、問題をすり違えないようにしていただきたい、こう思うわけであります。  そこで、私は法務省に伺いたいと思うのですが、刑事訴訟法の三百二十四条、三百二十二条では、被告人の供述内容を内容とするところの第三者の供述というのは証拠能力が一体あるのかないのか、その点について御答弁願いたい。
  164. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいまのお尋ねにお答えいたします前に一言お断り申し上げておきますが、刑事訴訟法の問題は、当事者主義をとっております訴訟構造のもとでの証拠能力の問題でございます。国会で証人をお呼びになります場合の問題は、これとは全く別個の観点があろうと思いますので、そのことをお断りいたしました上でお答えいたしますれば、刑事訴訟法の解釈はただいま仰せのとおりでございます。
  165. 正森成二

    ○正森委員 刑事局長は私の主張を、非常に勘がよくてお認めになりました。つまり、総理もお聞き願いたいのですが、わが国の刑事訴訟法の三百二十四条と三百二十二条では、被告人が自分に不利益な事実を任意に述べた場合には、その内容自体が第三者が言ったことであっても証拠になるのです。これを金在権氏と金炯旭氏の問題について言いますならば、金炯旭氏が言っていることは確かに金在権から聞いたということであります。しかし、この金在権というのは金大中事件についての全くの第三者ではなしに、自分自身が金大中を拉致する実行グループ六人と一緒に、自分が日本国内の責任者でやったんだ、こういういわば犯罪者の自白内容であります。ですから、この犯罪者の自白内容を、金在権が自分にこういうことを言ったのだということを言っている発言あるいは証言というものは、その内容自体で刑事訴訟法上証拠能力があるのです。ですから、金炯旭氏の発言を証拠力がないとかなんとか言うのは、刑事訴訟法のたてまえから見て全く許されないことである、こういうように言わなければならないのです。そのことは、いま専門家の刑事局長が認めたとおりであります。  かてて加えて、わが国会においては、刑事訴訟法のような犯罪の存否そのものについて犯人に刑罰を言い渡すという厳格なことをやるのではなしに、その政治的背景等を追及するのでありますから、刑事訴訟法よりも緩やかな証拠法則をとっても当然いいはずであります。そうなれば、総理が言われる証拠能力から見ていかがかというような発言は、これは全く事実に合致しないと言わなければなりません。  特に金炯旭氏の発言のうち、金東雲は自分がKCIAの部長であったときに日本に派遣したのだ、彼もKCIAだというような発言は、まさに本人でなければ知ることのできない直接証拠であります。  また、私が後で時間があれば追及しようと思っておりますソウル地下鉄関係のこともございますが、それについてソウルの三菱の支社長であった中川忍一が何遍も自分のところにやってきた。どうしたらいいかというので相談したので、岸信介氏に行ってもらえ、こう言ってやったのだといったような点については、まさに直接証拠であります。  ですから、私は、いかなる意味においても金炯旭氏を証人に呼ばないとかあるいは調べなくてもよいとかいうような考え方は、日韓癒着について真相が明らかにされたくない、何とかこれをもみ消したいというような考えをとるものでない限りは、当然これは呼んで聞くべきである、こういうように思いますが、いかがです。
  166. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日韓問題をもみ消そう、そんなけちな考えはいたしておりません。ただ、金炯旭氏については、これはどうもその事件当時よりは前に、四年前ですか、その職を去っている人で、さあ、その人の話を聞いてどのくらいの参考になるか疑問がある、こういうことを言っているのですよ。しかし、証人喚問は国会の問題です。ですから、何も否定的に言っているわけじゃない。国会において御論議願いたい、こういうふうに申し上げておるわけで、いやしくももみ消したとか、そのようなつまらぬことは考えておりません。
  167. 正森成二

    ○正森委員 総理が、もみ消し等は毛頭考えておらないという御答弁をされたことを非常に高く評価したいと思います。それならばそれで、私がいま言いました論拠で当然金炯旭氏は国会において証人喚問すべきであり、あるいは日本に来られた場合にはわが捜査機関が金炯旭氏から直接調書をとるべきである。それは十分に刑事訴訟法上も証拠になり得るものであるということを私は指摘しておきたいというように考えるわけであります。  そこで、その関連で言いますと、柳春国という人がロサンゼルスにおって、場合によったら真相を明らかにしようということを発言しておるということが十月の六日に毎日新聞に載りましたが、急遽十月の九日にはもう韓国に帰ってしまった。韓国KCIAのナンバーフォーという人がやってきていろいろ問いただしたら、祖国とKCIAを裏切る気持ちはない、自分がKCIAだということを認めておるのですね。そして、そう言っておるのになおかつ安全を期するためにというので連れて帰った。よっぽど柳春国にしゃべられたらぐあいが悪いことが韓国とKCLAにあるというように見られてもやむを得ないじゃないですか。これは金炯旭氏の発言が真実性を持っておるということを示しているではありませんか。私はそういうことを指摘したいと思います。そして私は、質問要旨には金在権、柳春国氏の事情聴取についてというように書いておきましたが、柳春国民が韓国へ帰られたいまとなっては金在権が残っているだけであります。  時間がございませんので、外務省の中江アジア局長は金在権氏の事情聴取について、主権侵害になってもいけないのでアメリカ国務省を通じて折衝をした、そうしたら、アメリカで市民生活をしたいのでアメリカ以外でなら調べに応じたいというようなことを言っておるので、それじゃどこがいいか、いつごろかということを聞いたが、それについてはまだ回答がなくて接触中であるというような御答弁が、たしか他の委員質問に対してあったと思います。それは現在でも間違いがないかどうか。ある新聞によれば、十二日の新聞でありますが、すでに金在権氏とは接触をして事情聴取をしておるという報道もあります。こういう報道は正しいのかどうか。外務省からの御答弁及び接触した政府機関があるなら、あるいはそれは官房長官の筋かもしれませんが、お答えを率直に願いたいと思います。
  168. 中江要介

    ○中江政府委員 私が過日この委員会で御説明申し上げましたことは、いま正森先生が御引用になりましたとおりで、そのことには間違いございません。したがいまして、後段の部分でおっしゃいましたことは事実でないということでございます。
  169. 正森成二

    ○正森委員 それでは接触をしておらず、まだ事情聴取もしておらないというように私は伺っておきたいと思います。  しかしながら、アメリカ政府の法律及び法律解釈によれば、任意に事情聴取をする限りは、わが国は主権侵害の問題を考えなくても任意にできるようにアメリカの法典ではなっているのではありませんか。またアメリカ側の国務省は、わが国の捜査機関、警察官やら検察官が事情聴取をする場合でも、任意の場合には事前通告だけで足りるということを言っているのではありませんか。
  170. 中江要介

    ○中江政府委員 先日私が申し上げましたように、アメリカの国務省を通じてアメリカ政府の見解として、私どもが照会しましたことに対する回答の中で、アメリカ政府といたしましては、本人が任意の事情聴取に応ずることを条件として日本政府が本人に対して任意の事情聴取を直接行うことに異議がない、こういうことであったわけでございますので、そこで私どもといたしましては、本人がそれに同意するかどうかということを国務省を通じて照会している。そうしましたら第一回目の回答では、応ずべき義務はあるとは思わないけれども、応じてもいい、ただしアメリカでは応ずる気持ちがないということであったものですから、それならどこでなら応じるのか、また応じるについてどういう条件考えているのかということを重ねて聞いているというのが実情でございます。
  171. 正森成二

    ○正森委員 非常に回りくどい答弁ですから私はずばり法典を言いますが、米国法典の第二十八編の千七百八十二条のb項では明白に、任意の事情聴取の場合には各国は自由にやってよろしい、こういうぐあいになっているじゃありませんか。また駐米日本大使館には、日本の捜査機関が行う場合にも事前の通告だけでむずかしい手続をしないでもいいという口上書が行っているはずであります。そうではありませんか。
  172. 中江要介

    ○中江政府委員 いま御指摘の点は、そういうアメリカ考え方というものは回章で私ども承知しておりますけれども、その場合でも絶えず本人がそれに応ずるということが前提になっているというふうに私どもは了解しておるわけでございます。
  173. 正森成二

    ○正森委員 私がアメリカの法典を示し、大使館に口上書が行っているはずだ、こう言うと、語調が何となく自信がなくなってきて、そして前のような元気のいい答弁でなくなってきております。しかし、私はあえて申したいと思いますが、金在権が米国以外なら応じると言ってなかなか事情聴取に応じようとしない。そういう場合に日本政府としてはもうそれ以外に打つ手がないのですか。そうじゃないでしょう。  同じく米国法典の二十八編の千七百八十二条のa項では――わが国には司法共助の規定があり、外国裁判所の嘱託による共助法という法律がある――そしてこれと事実上照応して米国法典の千七百八十二条のa項で、一定の手続をとる場合には証人として強制力を持ってアメリカの裁判所に喚問をし、宣誓をさせ、そしてうそをついた場合には偽証罪にもなり得るということで証言を強制することができるという手続があり、これはわが国も利用できるはずであります。現にこういう規定があるからこそ、ロッキード事件ではコーチャンに対してそういうことをやったんではありませんか。いまわが国の主権が侵害されているという重大事件ついて、ある意味ではロッキード事件の民間航空機に対する賄賂よりもずっと重大な事件について、それほど金在権氏の証言が得たいなら、なぜこの明文の規定のある手続を使用しないのですか。
  174. 中江要介

    ○中江政府委員 政府としましては現在のところは、外務省は捜査当局と十分御相談いたしまして、金在権氏から任意の事情聴取ができないかという手続を進めておる最中でございますので、いまのところはアメリカの国務省もそれに協力して、金在権氏との接触を努力しておりますので、その結果を待ちたい、こういうことでございます。
  175. 正森成二

    ○正森委員 私の質問に正面から答えなかったけれども、しかし千七百八十二条のa項という規定があり、やろうと思えば向こうの任意を待たずに強制力で証人としてアメリカで調べられるということを事実上認めました。なぜそれをやらないのです。それをやれば金在権氏の証言を先にとらなければとらなければというのがとれるではありませんか。  私はここに「警察研究」の昭和五十二年十月十日発行の雑誌を持っておりますが、この雑誌にも警察庁の北澤二郎という国際刑事課の専門官がおりますが、「アメリカ合衆国における捜査共助に関する連邦法」こういう論文を書いて、その中で十分にこういう措置がとれるということを金大中事件を名指しにはしておりませんが、詳細に論文で書いております。こういうことがあるのに、なぜわが政府は主権に関係することについてかくも怠慢であり、かくもやるべきことをやらないのであるか、それは私は実際上真相を明らかにしたくないと考えているからだと思われても仕方がないと思います。そうでないならこの場で――ぐずぐずしていると柳春国のように韓国へ連れ戻されるのです。そうならない間にこういう手続をするということを、法務大臣、あなたは法秩序を守るためには流血の事態もやむを得ない場合があると言いました。法秩序を守るために、わが主権を守るために血を流さなくてもやれる、こういうことがあるんだから、それをやるということを言明していただきたい。
  176. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 先ほど来事務当局から答えておるとおりでありますから、その順序を踏んでやりたいと思います。
  177. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいま大臣が順序を踏んでやるというふうに仰せになりましたので、私、その順序について若干御説明申し上げます。  先ほど合衆国法典等の御指摘がございましたが、当該法典の当該条章にそういうことが書いてあることは認めます。ただ、証人尋問と簡単に言いますけれども、まず日本の裁判所で証人尋問の必要性を認めて、そうしてアメリカ合衆国の裁判所へ嘱託をするという手続になりますので、その前段階の疎明資料がどれほどあるか、こういうことがまず問題でございます。その辺は警察御当局とよく相談をして検討しなければならぬことだと思います。  それから任意の問題でございますが、やはり国際間に相互主義の原則がございますから、向こうへは事前の通知だけで本人の同意があれば調べられるから行く。しかしアメリカの官憲が日本へ来た場合にはそういうわけにはまいりません。その辺の相互主義の兼ね合いをどういうふうにするか、その辺も外務省とよく御相談をして決めなければならぬ、これらの手順を踏まなければならぬという趣旨を法務大臣は簡明におっしゃったんだと思います。
  178. 正森成二

    ○正森委員 簡明過ぎて一向にわからなかったわけでありますけれども、私は日本の裁判所でも十分に証人として嘱託ができる事案だ、なぜならば金東雲については指紋があり、当時警察庁の警備局長は、これがわが国であるならば逮捕状を十分にとり得る事案である、また起訴もできる事案である、こう言っております。また連行車が同じく横浜の副領事の車であるということは明らかになっており、そして金炯旭氏の証言の中で、この二名を含む実行犯六名、こういうぐあいになっておる。そしてその首謀者である金在権氏が、涙ながらに自発的に自分が訴えたという内容があるわけでありますから、金炯旭氏の証言及び調書がとれるなら、十分にどの裁判所でも証人尋問を認める事案である。速やかにその手続をわが政府はとるべきであるということを重ねて要求したいと思います。
  179. 園田直

    ○園田国務大臣 いまの御意見でございませんが、先ほど私の名前が出ましたから申し上げておきますが、金在権氏と私の接触は何らございません。七月の末、金在権氏から書信をもらっただけであります。その後委員会で御注意があって、筆跡鑑定をしたところ間違いなしということで、その内容は、自分のために非常に御迷惑をかけて相済まぬ、自分に関する限り金炯旭氏の証言は全くのでたらめであるという趣旨であって、その中に何ら具体的なこともなければ証拠もありませんから、単なるあいさつと思って、私はこれを私信としておさめ、返答も出しておりません。
  180. 正森成二

    ○正森委員 いまのような内容こそ伝聞だ、こういうわけであります。私たちは、そうでないように国会で宣誓をした上で聞きたい、あるいは警察当局あるいは検察当局に刑事訴訟法上効力のある調書をとるというようにするのが当然であると思います。  時間がございませんので次に移ります。  P3Cについて伺いたいと思いますが、政府はP3Cを五十三年度以降導入するような措置をとっておるというように聞いております。この経緯についても聞きたいわけですが、時間がありませんので全部省略をいたします。そこで、国民が考えておりますのは、P3Cを導入するのが是か非かについて意見が分かれておる国民がありましょうとも、導入する際に、あの児玉譽士夫に対してびた一文もわれわれの税金の中から金が払われてはならないと考えている点については、これはすべての国民は恐らく一致するであろう、政府もそういう御態度であろう、こういうように思っております。防衛庁が児玉に金を払わなくてもいいというように考えているのは、恐らく児玉がダミーとしてつくりましたと言われているブラウンリーとロッキード社との契約、それに基づいてすでにその契約が解約されておるからだ、これが骨子だと思いますが、いかがですか。簡単で結構です。
  181. 間淵直三

    間淵政府委員 先般来お配り申し上げました資料によって明らかだと思うわけでございますが、児玉とロッキード社との間の契約に基づく支払いというものは一切残っておりません。またブラウンリー社とロッキード社との間の契約に基づく支払いも一切残っておりません。
  182. 正森成二

    ○正森委員 私は時間の関係で省略したわけですけれども、児玉に支払わなくてもいいようになっておるということを言うためには、ブラウンリー社とロッキード社との契約に児玉の権利義務が引き継がれたんだということを言う必要があるというように私は考えるわけです。ところが実際上は、このブラウンリ一社とロッキード社との契約と、児玉とロッキード社との契約は同じ権利義務関係を引き継いでおるとは言えないんではないか。たとえば契約書の十五条では、たとえ販売にいろいろ努力をしても、購入先がこんな金を児玉に払ってはならないと一方的に文句をつけた場合には、これはロッキード社は児玉に払わぬでいいんだとか、あるいは第九条の解約されたときに特定の製品について支払い義務が残るかどうかという点についても前の児玉とロッキード社との四条、五条のB項と第九条とでは内容が若干違うというように思いますが、いかがでございますか。
  183. 間淵直三

    間淵政府委員 この二つの契約でございますが、児玉がいろいろ努力をして何らかの報酬を支払うというような意味においては大体一緒でございますが、解約の手続その他については形式上非常に違っているところがございます。
  184. 正森成二

    ○正森委員 いま児玉とロッキード社との契約と、ブラウンリー社とロッキード社との契約が内容において相当違っておる点があるということは防衛庁もお認めになりました。  そこで法務省に伺いたいと思いますが、冒頭陳述というのは、証拠によって証明する事実を記載した書面であるというように思いますが、いかがですか。
  185. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 そのとおりです。
  186. 正森成二

    ○正森委員 いま資料をお配りいたしますが、検察官がここに記載したのは十分に証拠があるのだ、証拠によって証明するのだ、こういうぐあいになっております。私どもがいただいております児玉の冒頭陳述の四十四ページにはこう書いてあります。「児玉とロッキード社との関係を隠ぺいするため、ブラウンリー社を大刀川及び児玉の使用人である高野美代子、仲憲太郎の三名の名義で買収したうえ、従来児玉とロッキード社間で締結していた基本契約及び修正一号ないし五号契約を解約して、ブラウンリー社に右契約上の権利義務をそのまま移行させ、ブラウンリー社とロッキード社との間にマーケッティング・コンサルタント契約を締結し、ロッキード社はブラウンリ一社にコンサルタント報酬等を小切手で支払い、その後同社から児玉が日本円で受領することに合意が成立した。」と書いてあります。いま資料を差し上げます。その中に載っておることでございますけれども、これを見ますと、検察官が証拠によって十分証明できると言っておりますように、児玉がロッキードと約束をしたのは、おれとロッキードとのいままでの契約の権利義務をそのまま移行させるのだ、そしてブラウンリー社をダミーとして名義を隠してそこから金をもらうのだということだけであります。そして同じく冒頭陳述によりますと、ブラウンリー社と児玉との間の契約には児玉は立ち会わないで、大刀川だけがジャパンPR社へ福田とともに行って契約をしたということになっております。そうすると児玉譽士夫は、冒頭陳述でわが検察庁が認めておるように、前の自分の契約の権利義務をそのまま移行するとなっておるのに、いま防衛庁が認めたようにブラウンリー社との契約ではおれの知らない間に権利義務が大いに変更されているということになると、児玉は前の契約についてP3Cについての自分の報酬権を主張する余地が残るということになるわけであります。  私はこの問題について、アメリカとの間の訴訟についても造詣の深い国際法律事務所の弁護士さんの意見も伺いました。そうしますと、これらの条文をよく比較検討をして解釈に違いがあればカリフォルニア州法によって判断をするということになっておるそうでありますが、カリフォルニア州法にはコンシダレーションの法理というのがあるそうであります。コンシダレーションの法理というのは、本来契約が成立しているかどうかということについて、いままで一方の契約の当事者がどれだけ対価を支払いあるいは役務を提供したかによって契約が成立しているかどうかの判断にするという法理でありますが、同時に、契約条項のある条項についての解釈をする場合にもこのコンシダレーションの法理は働くと言っているわけであります。そうすると、児玉譽士夫は契約を解約されたけれども、P3Cについては機器と機体とを分離してはいかぬ、それではロッキードが売れなくなるぞというような助言をしておる。これは冒頭陳述で認めております。また、児玉は現在は言っておらないけれども昭和四十七年十月九日の国防会議の点についても自分が貢献したということを言うかもしれません。そういうような点がありますと、このコンシダレーションの法理によりますならば、児玉は十分にP3Cについての報酬請求権が残る余地がある。児玉は、カリフォルニア州法に基づいて争う気であれば、勝訴の可能性はあり得ると言っておるわけであります。そうすると、P3Cをこれから何十機といって導入するということになれば、われわれの税金から払ったお金の中から、また児玉に払われるという余地が残ります。こういう点はゆゆしい問題であると思います。ロッキードに誓約書を防衛庁はとっておるようでありますが、こういう点について法務省は児玉譽士夫にその点を確かめているのかどうか。児玉譽士夫がそういう点についてどういう態度をとっておるのかということを調べるのでなければ、国民はP3Cの導入について疑惑がないということは言えないと思います。児玉譽士夫は身柄の拘束さえ受けておらない。そういう状況の中では、国民は決して疑惑が全然ないとは言えないと思います。  時間がありませんので、本来数問に分けて行うべきところをまとめて行いましたが、これらの点について答弁を願いたいと思います。
  187. 間淵直三

    間淵政府委員 私どもは、あの契約の文面上から児玉の請求権は残らないと解しておりますが、万々一のことを考えまして誓約書をロッキード社からとりまして、いかなる名目を問わず、ロッキード社が児玉に支払いをした場合には、誓約書の罰則規定、解約なり、あるいはそれに見合う金額を徴収するということを誓約させておりまして、国庫には迷惑をかけないという手はずを整えております。
  188. 正森成二

    ○正森委員 その誓約書の問題について、私は時間があれば申したいのですが、少なくともいまの答弁でも、児玉にロッキードから傘が支払われる余知があるということは否定しませんでした。そうなると、ロッキードが児玉に払うわけですが、国庫に迷惑はかけないと言っておっても、ロッキードは児玉にも払い、日本政府に対してもなおかつ利益があるような値段にする可能性があるわけであります。幾ら原価計算をすると言っても、そこまで調べられない可能性があるわけです。ですから私は、この問題について児玉譽士夫がどう言っておるのか、その点について疑惑が残らないように児玉から誓約書をとるなり、あるいは児玉を調べたのかどうか、その点を答弁していただきたいと思います。
  189. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 児玉に対する取り調べ及びそれに対する応答の内容については、明らかにすることを差し控えたいと思いますが、ただいまのブラウンリー社との契約を更改をいたしました前後のいきさつ、その契約の考え方、解釈の仕方、そういった細かいものについては、当時の児玉の病状等にかんがみまして、余り突っ込んで聞いていないのではないかというのが私の感想でございます。
  190. 正森成二

    ○正森委員 これで終わります。  いま刑事局長が言いましたように、内容については細かく言えないけれども聞いてないかと思うと、こういうことであります。それならば、私は国民の疑惑を解くために、当然この問題について詳細に聞くべきであるというように思います。それは、P3Cを導入するのに賛成かどうかという点については意見が分かれることがあっても、恐らくロッキード事件について怒りを持っておる全国民の希望であり、全国民の意思であると私は思います。その問題について最終的に総理答弁をお伺いして、時間が参りましたから私の質問を終わらしていただきます。
  191. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まだP3Cの導入につきましては、政府は態度を決めておりません。おりませんが、御指摘のようにこれはいきさつがある問題でありますから、国民に疑惑を持たしてはいかぬ、それから国庫に不当の不利益をもたらしてもいかぬ。その辺は踏まえまして、最善の配慮をいたします。
  192. 正森成二

    ○正森委員 私はこれで質問を終わりますが、先ほど来申しておりますように、金炯旭氏の証人喚問、これは理事会でぜひ御検討願いたいと思います。
  193. 田中正巳

    田中委員長 本件については、理事会において一応の結論を見ております。したがいまして、理事会の結論をひとつおたくの方の理事オブザーバーからお聞き願いたいと思います。  これにて正森君の質疑は終了いたしました。  次に、近江巳記夫君。
  194. 近江巳記夫

    近江委員 きわめて限られた時間でございますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと思います。  まず初めに、私は当せん金附証票制度についてお伺いしたいと思います。すなわち宝くじの問題でございます。私は、近年庶民の間で非常にブームを呼んでおります宝くじの問題についてお伺いしたいと思います。  宝くじは、地方財政の資金に寄与するため、昭和二十年から三十年間余り行われているわけでございますが、特に近年不況の深刻化等の世情を反映いたしまして、異常とも言うべきブームを呼んでおりまして、昨年暮れに発売となりました宝くじでは、けが人をも出すほどになっております。ところが、そのブームとは逆に、宝くじ制度及びその資金の流れにつきましては、必ずしも知られていないのが実情であります。  そこでまず、宝くじの歴史的経緯並びに発売額の推移、委託銀行について、概略の御説明を簡潔にひとつお願いしたいと思います。  さらに、宝くじ発売に関して自治省はどのような立場、権限を持たれるのか、あわせてお伺いしたいと思います。
  195. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 宝くじの件についてでございますが、御案内のとおり、宝くじは昭和二十三年以来発売をされている事業でございます。その間、当初は政府くじもあったわけでございますが、現在は御指摘のとおり地方公共団体、都道府県及び指定市の財源として発売されている、かようになっているわけでございます。  やり方といたしましては、それぞれの都道府県及び指定市が各ブロック程度あるいは全国一本でそれぞれ発売団をつくりまして、それが受託銀行との間で契約を取り交わしまして発売をさせるというかっこうにいたしております。現在のところ、受託銀行としては第一勧業銀行一行というのが、各団体とも共通した事項になっていると存じます。  なお、現在の発売額は、五百十三億が五十一年の発売実績、かようになっているところでございます。
  196. 近江巳記夫

    近江委員 宝くじの発行は昭和二十年から始められ、現行の地方くじの発行が行われましたのが三十四年からであるわけでございますが、三十四年の発売額は四十七億円であったものが、年々急速に伸びまして、五十一年度では、ただいま御報告ございましたように十倍の五百十三億円となりました。本年予定では、二十一倍の一千億を超えております。正確には一千九億三千万円、このようになっておるわけでございます。  ところで、宝くじ発売の根拠法でございます当せん金附証票法は、昭和二十三年七月に制定された法律でございまして、     〔委員長退席、澁谷委員長代理着席〕 その後改正されつつ今日に至っておるとはいえ、先ほど述べました宝くじの伸び及び宝くじを取り巻く情勢の変化等を考えましたとき、必ずしも現実に相応しない点が多々あるのではないかと思います。その意味から、私が宝くじに関する調査を行いました諸点につきまして、政府の明確な答弁をお聞きしたいと思います。  まず、この発売回数でございますが、宝くじの発売回数は自治省がこれを許可することになっておるわけですが、昭和四十四年三月の自治省通達におきまして、宝くじの発売は原則として月四回以内とすることになっておるわけですが、この通達の趣旨を簡潔に御説明いただきたいと思います。
  197. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 御指摘のとおりに月四回でございまして、実績といたしましては五十二年は約百七十二回あたりを予定をいたしているわけでございますが、大体一回の発売の期間というのが一週間を中心にいたしておりますので、全国くじの場合には十日間というのもございますが、さような関係でただいま申し上げましたような発売回数ということをめどにいたしておるわけでございます。
  198. 近江巳記夫

    近江委員 ではお尋ねいたしますが、この通達の趣旨からいいますと、月四回以内、つまり年間四十八回を超えてはならないということになっておるわけですが、五十一年度の実績からいいますと、北海道から中部に至る各県では全国自治宝くじ八回、関東・中部・東北自治宝くじは四十三回、計五十一回発売されておりまして、栃木県の場合六十四回発売され、通達の四十八回よりも十六回もオーバーいたしております。  こういうように、この通達の違反になっておるわけですが、自治省としましては、みずからお出しになった通達をみずから破っておられるわけですが、この辺の自治省の姿勢というものは私はわからないのですが、いかがでございますか。
  199. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 実績といたしましては御指摘のとおりと存じます。栃木県といったようなところが特殊なことになっておりますのは、御案内のとおり、あの関係は僻地医療振興ということで自治医科大学の財団に対しましての特殊な援助ということを、地元でございます栃木県を通じまして行うというような全府県の合意というようなものからさようなことになったわけでございまして、きわめて特殊な事例というぐあいに存じております。
  200. 近江巳記夫

    近江委員 特殊な例ということでお認めになっておられるわけですが、非常にあいまいな通達姿勢というものが見られるわけです。これが全部に共通いたしておるように私は思うわけです。  それで、次に私は宝くじ資金の運用について伺いたいと思いますが、先ほども触れましたように、本年度宝くじの発売回数は百七十二回、昭和五十二年には一千九億三千万円となるわけですが、その受託銀行は第一銀行だけがこれを行っておられることは周知の事実でございます。この受託銀行は宝くじの受託に関して、いわば奉仕事業でありますというように説明されておられるようでございますが、この辺には私は本当にそうかなという思いがするわけです。  そこで、何点かお聞きしたいと思いますが、宝くじ資金の運用に関しましては、附証票法第十四条には「受託銀行は、当せん金附証票の発売等に関する経理を、その通常の業務の勘定と別な勘定を設けてこれをなし、且つ、その勘定に属する資金を貸付、投資その他の通常の業務に使用してはならない。」と規定されておるわけです。さらに、同法第十八条で罰則を設けてこれを禁止しているところであります。現行の六種類の宝くじの発売回数は月平均十五回、年間一千億に達しまして、受託銀行の第一勧銀がこれを受託しておられる、こういう状況のもとで、常時どのぐらいの資金がプールされているとお考えでございますか。
  201. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 細部の資料というのは持ち合わせておりませんが、銀行におきましての経理といたしましては平均残高七十億程度を持っておる、かように存じております。
  202. 近江巳記夫

    近江委員 宝くじの発売主体が自治体でございますから、自治体が委託した銀行の経理について自治省が正確に、そこまではわからないというような、そういう感じもあるんではないかと思うわけでございますが、そうであってはならないと私は思うのです。やはり自治省がこれは最も責任があるわけでございます。宝くじの発売に関します法律を所掌し、通達を出し、細部にわたる規定を行っておる自治省が、先ほど申し上げましたように、これは最終の責任を持たなければならないと思うのです。  宝くじの関心が国民の間で急速に伸びまして、昨年末には後楽園におきましてけが人まで出しておる状況下でございまして、こういう点におきまして、いま自治省から、七十億ぐらいがプールされておるだろうということで御返事があったわけでございますが、こうしたいわゆるプールされておるお金というものは別に色がついておらないわけでございまして、この宝くじ資金が運用されておるかどうかは全く不明であります。法律におきましては運用を禁止いたしておりますが、実際にその色のついていないお金というものを完全に監督する方法があるのかといいますと、これは実際上できないわけですね。法律では発行主体が受託銀行に立入検査できることになっておるわけですが、では、現実に自治体がそういう検査をするかということになるわけでございますが、そういう自治体が実際に検査をやっていますか。いかがですか。
  203. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 御指摘のとおりに、法律上は受託銀行に対しましては都道府県知事または指定市の市長が監督を行うということでございまして、報告書の提出あるいは立入検査というようなこともそれぞれの府県並びに指定市、かようなことになっているのは御指摘のとおりでございます。したがいまして、自治省といたしましては直接というかっこうにはなかなかなってまいらないという点はあるわけでございますが、もちろん所管省といたしましての責任というものは十分その点も把握しなければならない、かように反省をいたしているところでございます。  また、各発売回ごとにそれぞれの幹事の県、幹事市というようなものが委託先の銀行、勧銀につきまして必要な報告等をとっている、かような事実がございます。
  204. 近江巳記夫

    近江委員 いま御答弁があったように、報告を聞いておるという程度のことではないかと思うのです。当せん金附証票法の制定の昭和二十年当時は、宝くじ発売回数、売上金ともに今日ほど多額に上ることは予想し得なかったであろうと思います。まして第一勧銀一社が受託するという考えに立っていなかったから、さほど宝くじ資金の運用については問題化されなかったと思うのであります。  経過はともあれ、現在まで第一勧銀がずっと受託されておられまして、今年度では一千億、今日まで毎年数百億に上る売上金を扱い、最低見積もりましても、先ほど自治省からお話しございました七十億ぐらいの資金がいわゆプールされているということになってまいりますと、どうしているのかなという素朴な疑問がやはり浮かぶわけでございます。宝くじのくじ券の実際の販売は、第一勧銀を初め、第一勧銀の子会社、日本宝くじ販売株式会社などが行っておるわけですが、それぞれの販売実績を簡潔に御説明いただきたいと思います。
  205. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 販売の実績でございますが、直売をいたしておりますのが二八%、それから日宝販が扱っておりますのが一四%、その他の受託販売をいたしておりますのが五八%、これが実績でございます。
  206. 近江巳記夫

    近江委員 また、宝くじの売り上げ代金はそれぞれの販売員が売りさばいた後に納付されるのではなく、日宝販を代表とする業者が宝くじ発売の三日前に立てかえ払いとして第一勧銀宝くじ部へ振り込み、宝くじ部がこれを確認した上で発売二日前にそれぞれの業者にくじ券が配られる、このように聞いておりますが、それでよろしいですか。
  207. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 さように聞いております。
  208. 近江巳記夫

    近江委員 それから、それぞれの店頭におきまして売り上げられた代金は、業者が持つ第一勧銀の普通口座に振り込まれ、プールされる。これは、第一勧銀が宝くじの立てかえ払い代金を原則として第一勧銀の小切手でなければ受け取らないということも言われておるわけであります。そこでやむなく売上金を第一勧銀の口座に預金する、こういうシステムと言われております。そうしますと、この第一勧銀の普通口座に振り込まれる資金と、そこから第一勧銀の宝くじ部に立てかえ払いとして振り込まれる資金とは全く同一の売り上げ代金に係る資金であることには変わりないわけであります。したがいまして、当せん金附証票法におきまして宝くじに係る資金の運用を禁止し、受託銀行が運用の事実を全く否定したといたしましても、現実には、上記の資金ルートから資金を運用されているのではないかという疑いが生まれるわけでございます。この点につきましては政府はどのように見ておられますか。
  209. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 いろいろ受託銀行といたしましての取り扱いの内部の点でございますので、しかくつまびらかではございませんけれども、今後さらに調べてみたいと、かように存じます。
  210. 近江巳記夫

    近江委員 これは不明であるという御答弁があったわけですが、ですから、こういう制度自体の、法律自体のやはり矛盾があるわけなんですね。だから後で私はまとめてまたお聞きいたしますが、それだけの七十億というのがプールされている、普通であれば、それを運用すれば当然かなりの利子も出るわけなんです。ですから、こういうことを今後どうなさるかという問題もあるわけであります。  それから、財団法人日本宝くじ協会についてでございますが、日本宝くじ協会は設立は昭和三十九年四月一日、地方財政に寄与している自治宝くじの健全な発展を図るとともに宝くじの持つ国民大衆性にかんがみ、公益の増進に協力することを目的として発足した財団法人であると言われております。  収入源は、主として宝くじの売上金の二%をそれにあてがっております。さらに、業務として宝くじの調査研究、二、助成事業、三、宝くじに関係する団体の連絡調整、四、国営富くじ国際協会への参加、こういうことに収入源を充てておられるわけでございます。  宝くじ協会の収入源は、さきに述べました宝くじの売上金から二%出費をされております。しかし当せん金附証票法並びにその通達に全く規定のないこういう助成事業を売上金の二%を使って行っておられるわけであります。こうした助成事業というものを福祉であるとかいろいろな面にされておりますから、その使用なさっておられることにつきましては、非常に有意義なところにも使っておられるわけですが、本来のそうした法律に基づくそういう行動であるのかどうかという大きな問題があるわけであります。  日本宝くじ協会の活動を私たちは否定するものではありませんけれども、宝くじの売上金二%を恒常的に普及宣伝と称して助成事業に出費するということになりますれば、当然これは法律に明記する必要があるのではないかと思うのです。この点はいかがでございますか。
  211. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 日本宝くじ協会の成立その他につきましては、ただいま御指摘のとおりでございます。  この日本宝くじ協会が設立されました経緯を簡単に申し上げますと、この団体の設立される以前におきまして東京オリンピックが開催されましたときに、宝くじといたしましてもオリンピックに協賛するという意味で売上金の二%をオリンピック協会に寄付する、こういうようなことを数年間行ったわけでございます。が、約四年半このことを行いまして、それが終了したときに、さらに二%相当のものをどうするかという考え方でいろいろ議論があったわけでございますが、各発売団体の協議の結果、ただいま御指摘のございましたような宝くじ関係の事業というものを行わせるのが宝くじというものの公共性というようなものをPRする上からも最も適当ではないか、かような考え方もございまして、この協会というのが設立をされた、かように存じておるわけでございます。  実際の扱いといたしましては、地方団体がそれぞれ各年度ごとに協議をいたしまして、契約に基づきまして二%拠出をしている、かようなことにいたしているわけでございまして、内容はただいま御指摘のございましたように福祉関係その他のものに支出をいたしている、かようなことにいたしているわけでございます。
  212. 近江巳記夫

    近江委員 これは、売上金の二%といいますと、本年度売り上げ一千九億三千万円に対しまして約二十億円に相当する額であります。毎年発売総額がふえ続けておる状況下の中で、果たしてこの二%ということを恒常的にこれが続くということは、私は非常に疑問に思っております。普及宣伝という観点に立てば、たとえば一等賞金一千万円を、二十億といいますと二百人に還元する方が宣伝になるのじゃないか、このようにも思うわけですが、この当せん金の還元率というものは法律では五〇%以下、自治省の通達では四五%以下にしなさい、現行は四二%になっているのですね。この宝くじの売上金の使途は自治体が三八%、当せん金が四二%、そしてこの協会を入れまして、協会二%、経費は一八%、これでよろしゅうございますか。
  213. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 御指摘の数字のとおりでございます。
  214. 近江巳記夫

    近江委員 宝くじに係る経費の内訳につきましては、日宝協に二%、くしの印刷、宣伝費等に三%、人件費、物件消耗費、光熱費等間接経費が五%、売りさばき手数料、支払い手数料が一〇%、これで二〇%。この間接経費についてお伺いしたいと思うわけですが、その前に、私がいま言いましたのは、これでよろしいでしょうか。
  215. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 標準的にはそのとおりでございます。
  216. 澁谷直藏

    ○澁谷委員長代理 この近くにいなさいよ。
  217. 近江巳記夫

    近江委員 近くにおってください、委員長からお話があったから。  間接経費についてお伺いしたいと思うのですが、第一勧銀の職員のうち宝くじの業務に携わっておられる方々約六百五十名程度とお聞きしております。この職員の方々の給与、退職金、福利厚生費、事務所料、電話料等の経費でございますが、五十一年度年間総額は約二十三億円に達するかと思われます。通常の場合、国の委託事業に係る一般管理費は一、二%ということを聞いておるわけですが、こういうことになって、五%ということになってまいりますと、非常に高額ではないかと思うわけであります。この受託銀行は、法のたてまえから言いましたならば、他の銀行も含まれるわけです。ところが現在第一勧銀は退職金、事務所料等を徴取しておるということを聞いておりますが、これは第一勧銀が宝くじを一社で受託するという前提に基づくものではないかと思うわけです。こういうものは法律に照らしてどうなのかということであります。  さらにこの手数料につきまして、手数料の内訳は九%が売りさばき手数料、一%が引きかえ手数料。宝くじの売りさばきは第一勧銀直営が二八%と先ほどおっしゃいましたね、日宝販が一四%を占めております。そうしますと、第一勧銀は給与を取っていながら売りさばき手数料、引きかえ手数料等を取っているのではないかと思うのですが、この辺については、政府はどのように解釈しておりますか。
  218. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 御指摘の数字はそれぞれそのとおりだと存じますが、職員数六百数十名と申しますのには、臨時的な職員も入っているように聞いております。ただ、ただいま御指摘になりましたような人件費というようなものも、おっしゃいましたところにそれぞれある程度実は含まれている、かように存じているわけでございまして、それからまた直売の場合の売りさばき手数料もやはり全く別建ての問題といたしましてそれぞれ支出をされている、かようになっていると存じます。ただ、それぞれの発売のたびに、それぞれの経費につきましては発行者の方におきまして一種の査定をいたしまして経費の積算をする、かような取り扱いになっておりまして、何といいますか、一回の発売額の大小に応じまして法律の限度内におきましてそれぞれ経理がなされている、かように聞いているところでございます。
  219. 近江巳記夫

    近江委員 たとえば宝くじにかかわる職員の給与計算の問題でございますが、本支店約六百五十名の職員の方々が宝くじに関する業務を行っておられるわけですが、各支店におきましては職員の方が常時宝くじ業務に専念しておられるかどうかという問題があるわけです。一般業務との兼務をしていないのかという問題もあるわけであります。そういう場合、職員の給与を全額宝くじから支払うというのはどうか、こういう点疑問が生まれるわけであります。その点どう思われますか。
  220. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 御指摘のような点、それぞれの発行者におきまして契約を結びます際に査定をいたしているわけでございますが、ただ、ただいま御指摘のようなことであればなお問題がある、検討に値することではないか、かように存じます。
  221. 近江巳記夫

    近江委員 先ほど来私は、宝くじ資金の運用の問題並びに経費のあり方についてお伺いいたしたわけでございますが、こういう点非常にいろいろな問題点が出てきたわけであります。現在、国内的にも国際的にも不況の真っただ中にありまして、雇用不安や高物価などほとんど明るい希望がないわけであります。そういう点、庶民はそのささやかな夢として、せめてと宝くじを買い求めておられるわけであります。今年度は一千九億三千万円となろうといたしております。また地方自治体といたしましても非常に赤字に苦しんでおりまして、その対策に苦慮をいたしておることも事実でございます。そういう点からいきまして、宝くじ収益金の配分におきまして地方自治体はぎりぎりの三八%しかこれを取っていないのです。三八%を下らないと法律には明記されておりまして、一番最低の三八%、また宝くじを買う庶民に対しては、法律では五〇%まではいいとなっております。ところが自治省の通達では四五%、そして実際には四二%になっておる。そういうように還元の点におきましても非常にこれは問題であるわけでございます。現実には四二%しか当せん金が還元されておらないわけです。私はこうした点、いままでこの制度がずっとそのまま存続してきたわけですから、政府として本当に必要な経費なりそうしたことをよく検討されて、そうして赤字に苦しむ地方自治体に、あるいはまた大衆に還付する、こういう形でもう一度見直しをしなければいけないのじゃないか、このように思うわけでございます。この点、大臣はどのようにお考えでございますか。
  222. 小川平二

    ○小川国務大臣 非常に適切な御注意をいただいたと存じます。収益金の配分の基準に改定を加えずにまいりましたのは、物価が上昇しておるにもかかわらず、宝くじの単位を百円とずっと据え置いてきたというような事情にもよるわけでございますが、近年に至って発売の金額が著増しておることでございますから、この機会に経費の見直しを行いまして、御指摘のありましたように経費率を圧縮する、反面賞金の率あるいは地方公共団体の収益率を高める、こういう方向で検討をいたすこととします。  なお、五〇%と法律で決まっておるのに四五%ではないかという御指摘がございました。四五%のうち二%が協会へいくわけでございます。あとの一%は当せんしたにもかかわらず受け取らない人があるというような事情でございますが、これを五〇%まで引き上げるべきか否か、これはいろいろな議論がございまして、一面において、そこまでいくと若干射幸心をあおるという弊害が出やしないかという御意見もあり、反面、いまの時勢だからいっそ家一軒買えるぐらいのものを出せばよいじゃないかという御意見もあるわけです。その辺のところは今後さらに慎重に検討させていただくつもりでございます。
  223. 近江巳記夫

    近江委員 大臣の御答弁、非常に前向きであったと思います。地方自治体に還付するあるいは大衆に還付する、これは政府でよく御検討されればいいと思うのです。ただ、一千億で一%と言っても、これ十億ですから、一千万円当せん者が百名出るわけです。ですから、本当にささやかな夢を買っているわけですし、また財政に苦しむ地方自治体が潤うわけですから、そういう点、政府としては本当に御答弁のあったとおり実行していただくことがやはり私は大事だと思うのです。自治大臣はそのように御答弁されたわけでございますから、私も今後見守っていきたいと思います。  総理、いままでの質疑を通じまして総理もいろいろとお感じになったと思います。自治大臣の御答弁を踏まえて、総理もその点を速やかに実行できるようにやっていただきたい、このように思うわけです。御答弁いただきたいと思います。
  224. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 近江さんのお話、なるべく経費を節して、そうして効率の高いものに運営をしたらどうだ、こういう話はごもっともだと思います。そのように努力します。
  225. 近江巳記夫

    近江委員 それでは、速やかに国民が納得できるそうした配分をしていただきますよう、重ねて御要望いたします。  きょうは非常に時間が限られておりますので、次に移りたいと思います。  私は、通常国会予算委員会におきまして、沖繩の読谷飛行場の問題で質問をいたしました。その後政府調査をなさっておられるわけでございますが、今後の方針等もお聞きしたいと思うのです。時間の関係で、私は何点かの質問を用意いたしておりましたが、確認しておきたいことをまとめて申し上げますので、政府より御答弁いただきたいと思います。  その前に、この読谷飛行場は全く米軍がいま使用しておらないのでございますから、提供をやめるよう検討されるつもりがあるかどうか、この点をまず初めにお聞きしたいと思うのです。
  226. 亘理彰

    ○亘理政府委員 お答えいたします。  読谷飛行場につきましては、滑走路から東側の部分の区域の返還につきましては、第十六回の日米安全保障協議委員会において移設を条件として返還されることが了承されておるわけでございます。この移設と申しますのは、犬舎及び管理施設等でございますが、これについては五十二年度予算で実行中でございまして、これができ上がりますと、滑走路から東側の部分、約百万平米でございますが、これが返還になる予定でございます。  それから、それ以外の西側の部分でございますが、これは隣接する楚辺通信所の電波障害防止区域として必要であるというような事情もございまして、早急な返還は見込まれていない状況でございます。
  227. 近江巳記夫

    近江委員 それで、私は三点確認をしたいと思いますので、簡潔に御答弁をいただきたいと思います。  一つは、土地所有権委員会の運営につきましては、三月十七日の本委員会で私が指摘したとおり、その申請は全くでたらめであるが、このような申請になったのは、当時米軍が支配している旧軍使用の国有地的取り扱いの土地については個人からの申請はしてはならないとの指導があったからだとの考えがあるが、そのとおりであるかどうか、これが一点です。  第二点、当時朝鮮戦争の前後で、読谷飛行場は重要な基地として軍用機の発着が激しく、各人の土地所有権申請や決定に対する異議申し立てのため、各人の立入調査が不可能であったとは認めないのか、あるいは可能だったと認めるのか、これが二点であります。  第三点、政府は、飛行場用地を正当な売買契約による取得であるならば、それを裏づける何らかの証拠書類があるべきではないのか、それがあれば提示してもらいたいと思います。また、契約書類がなければ、地主との間における土地代としての金銭の授受等を立証する関係書類を提示してもらいたいと思います。  以上三点、簡潔に御答弁をお願いします。
  228. 川崎昭典

    川崎政府委員 お答えいたします。  御指摘の第一点の土地所有権認定委員会が正当に行われたかどうか、特に国有地は提供中の状況でございましたから、土地所有権証明の申請がしたくてもできなかったのではないかという点でございますが、これはできたという調査結果になっております。すなわち、民有地としての所有権証明が交付されたというところもございますし、また、巡回裁判所の判決によって旧地主の所有権が確認されたといった事例もございます。  第二点は、当時読谷飛行場が軍用機の発着が激しくて立ち入ることができなかったのではないか、特に土地所有権証明の申請をしたいために立ち入るということができなかったのではないかという点でございますが、この点は、測量その他のことで調査員が立ち入ることができたということは明確に証拠づけられております。所有権申請をしたい人本人が読谷飛行場に立ち入ることができたかどうかという問題でございますが、この点は他の飛行場関係ではできたという調査が成り立っておりますが、読谷飛行場自体では、できたであろうという推定にとどまっておるのが現在の状況でございます。  第三点でございますが、物的証拠が何かないかというお話は、先島等においてはかなりの物的証拠がございますが、沖繩本島では間接的な証拠以外に物的証拠は特にございません。しかしながら、読谷飛行場では売買を証拠づけるところの境界のくいといったようなものが最近確認されておりまして、これらの調査結果は鋭意大蔵省において取りまとめつつあるところでございます。
  229. 近江巳記夫

    近江委員 きょうは時間の関係で、この読谷問題につきましては、いま確認をいただきましたことを踏まえてまた関係委員会で取り上げていきたいと思います。  いずれにしましても、この問題はいわゆる憲法の問題だと私は思います。これは私有財産にかかわる重大な問題でもございますし、今後政府としてはさらに力を入れて御調査をいただきたいと思うのです。真偽をはっきりさしていく必要があろうかと思います。その点、総理から御答弁をいただきたいと思います。
  230. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 その点につきましては、ことしの三月の本委員会において申し上げたとおりでございますが、とにかく調査を急ぐ、これが大事だという認識でございます。調査を急いで、そして結論が出たというときには、それに応じまして適正な処置をいたします。
  231. 近江巳記夫

    近江委員 それでは、総理がそういう御答弁をされましたので、あとその実行をしっかりやっていただきたいと思うのです。  私は前回質問をしまして以来、確かに調査はいたしてはおりますが、その規模といい、見ておりましてまだまだその力の入れ方というものは満足すべきでないように思うわけです。その点、本当に沖繩の方々にこたえることのできる、誠意を持った、そういう御調査をしていただきたい、このことを重ねて要望いたしておきます。  次に、私は住宅問題、いろんな角度からやりたいと思っておりましたが、時間もあと十分程度でございますので、しぼっていきたいと思います。  それで一つは、日本住宅公団の問題でございますが、これはいろいろな角度で論じられておりますが、むだな保有地を取得しておるとか、入居者のない賃貸住宅の建設であるとか、莫大な利払いをしておるとか、政策ミスの負担を利用者に押しつけて、家賃は高くて、また距離も遠い、また狭いというような、そういう状況になっておることは御承知のとおりでございます。今日、勤労大衆の住宅問題の解決あるいは入居者へのサービスの向上、こういうことは本当に大事な問題であろうかと思うのです。  それで時間の関係で進みますが、この公団が出資をいたしまして団地サービス株式会社というものを設立をいたしておられるわけです。この団地サービス株式会社につきましては、営業収益等の推移を見てまいりましても、設立以来十六年で一千倍以上に、今日では三百四十六億円という収益も上がっておるわけであります。     〔澁谷委員長代理退席、山下(元)委員長代理着席〕 そういう中でいろいろな事業をなさっておられるわけですが、入っておられる方の声を聞きますと、物品販売等やっておりましても、一般のコマーシャルベースの価格であるというような、そういうことであるとかいろいろな問題が出てきておるわけでございます。現在不況下にありながら株式配当は八分ということも聞いておりますし、社長さんの基本給も八十六万、専務さんは七十万五千円、常務さん五十五万五千円、取締は三十三万というような高給もお取りになっておられるわけです。いわゆる団地サービス株式会社というのはあくまでサービスに徹するということは、この法律ができましたときに、衆参両建設委員会におきまして、これは附帯決議でも明らかに言われておるわけでございます。  そこで私は、少なくとも営利主義の行き方の性格というもの、これは本当にサービスに徹していただきたい、このように思うわけです。少なくとも公団が六七%も出資しております。いわば国の機関に近い会社でもあるわけです。そういう点、きょうはもう時間もありませんので、細かい問題には入れませんけれども、これはひとつ大臣、いろいろとお話も聞かれると思いますが、今後どのように改善されていくのか、それをひとつお伺いしたいと思います。
  232. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 団地サービスは、団地に居住する方々のこの維持管理はもとより、まずその目的とするものはサービスであって、それを行わせるために創立をしたものでありますから、その目的に沿わないような点があれば、公団と十分今後話し合いをいたしまして、御指摘の点等あるならば、十分これらを直していかなければならぬ、そういうふうに考えます。申し上げたように、これらについては早速公団と話し合いをいたしまして、その目的に沿うようにいたしたいと考えております。
  233. 近江巳記夫

    近江委員 いま確かに趣旨にのっとって今後改善するということをおっしゃったわけですが、具体的にどういうような点を改善されるのか、ひとつ担当者、もし大臣が同じ答弁であるならばほかの方で結構です。
  234. 澤田悌

    ○澤田参考人 ただいま大臣からお答え申し上げましたとおり、株式会社団地サービスの設立の趣旨というのはもう明確でございます。サービスに徹するべきものでございます。公団といたしましても、その趣旨に即応するように十分適切な機能を発揮するように指導をしてまいりたいと存じます。たとえば物品販売につきましては、良質な商品を低廉な価格で提供するように努力する、あるいは修繕、営繕等につきましては、迅速にかつ親切に、しかも安く施工するよう努める。また夜間、休日等の緊急事故に対しましては迅速に対応する体制を整えるというような点につきまして十分努力してまいりたいと存じますが、いろいろと御指摘のような御批判が絶えない点はまことに申しわけないところでございまして、今後一層改善努力してまいるつもりでございます。
  235. 近江巳記夫

    近江委員 この問題を一つの問題として申し上げましたのは、やはり政府のそうした政策、またその実行というものは、常にやはり入居者の立場に立ったきめ細かな、そうした配慮をしたそういう住宅政策でなければいけない。その一つとして、一こまとして私は申し上げたわけでございます。この点、政府におかれましては十分認識されて、今後本当に実のある住宅政策を進めていただきたいと思うのです。  最後に総理から、先ほど私が質疑いたしましたけれども、それを踏まえまして総理の御所見をお聞かせいただきたいと思うのです。
  236. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 御説まことにごもっともでございます。そのように努力いたします。
  237. 近江巳記夫

    近江委員 終わります。
  238. 山下元利

    ○山下(元)委員長代理 これにて近江君の質疑は終了いたしました。  次に、大原一三君。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕
  239. 大原一三

    ○大原(一)委員 時間もありませんし、経済問題についてはほとんど出尽くしたような感じがいたしますが、たくさんの委員の方々の御質問の後で総理いろいろなことをお答えになったのでございますけれども、現在の景気、景況に対する基本的な認識の問題でございます。それにつきまして私、現在の景気の非常に特殊な指標としてまず第一番目に企業の倒産件数をとらえたいわけであります。数字が発表されるたびに、毎月毎月の指標が倒産件数が多くなり、かつまたその負債金額もその記録を更新しております。ちなみに四十八年度の企業の倒産件数と、恐らく今後予想される今年度の倒産件数を見ますと、上半期の数字で延長推計しますと大体倍ぐらいになっております。さらにまた倒産の金額で見ますと、四十八年九千億だったものが、商工リサーチでは大体三兆円という倒産金額になっておる。現在の景気の深刻さの指標として私はこの倒産件数というものを見ながら、しかもそれが記録を毎月毎月更新しておるという実態に着目したときに、日本の現在の不況というものがいかに深刻であるかということを考えるわけであります。  当委員会における議論の中で構造不況問題が非常に取り上げられまして、十二業種ないし十三業種について典型不況業種として、雇用問題、金融問題等々から触れられていったわけでございますが、これが不況であることは事実でございます。しかしながら、いま構造不況という言葉をとらえるときに、十三業種で構造不況であるという物の考え方は間違っていると私は思うのです。特定の二、三の業種を除いたらそのほとんどの企業が構造不況へ入っていっているというのが日本経済の実態ではないかと私は思います。  まずその第一番の理由は、これは武藤委員がおっしゃったのでありますが、総理はよく六・七%成長というのは非常に高いのだ、外国に比べたら、ドイツは五%から四%へ落とし三%へ落とし、最近はゼロ成長である、それに比べて六・七というのは非常に高いのだという御議論をなさったと思いますけれども、この認識はやはり若干問題があるのじゃないかと私は思うのです。  と申しますことは、いままでの成長率が非常に高かったわけでございまして、企業の経営で言うならば実質成長よりも名目成長で議論すべきだと私は思うのです。たとえば四十八年の名目成長はGNPで二二%という高い数字を示しております。ことし、来年の予測等を見ますと一二、三%という数字が出る。要するに二二から一二、三%へいきなり落ち込んだということは重大だと私は思うのです。そういう意味で六・七%成長というのは安定成長ではない。一二、三%の実質成長から六・七でございますから、実質でも非常に落ち込んでおる。それは即日本経済の現在の姿が、言ってみれば高度成長から不安定成長期へ突入した指標ではないかと私は思います。  たとえて言いますと、よく言われるのですが、いままでの日本経済は、ファーストとセカンドだけ持っておってサードのない自動車に乗っておるようなものだ。それがいきなりブレーキをかけたものですからノッキングを起こしておる。その強烈なノッキングの中で雇用問題あるいは企業倒産という深刻な事態が発生しておる、かように私は考えます。来年の経済の問題は後で申し上げますけれども、そういう基本的認識に立っておるわけでございますが、総理の御所見をもう一回お伺いしたいと思います。
  240. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、日本経済の今日は、世界の環境が激変をしておる、その中の日本経済現象である、そういうふうにとらえておるわけであります。これをどういうふうに運営していくかということになれば、日本経済全体に活力を与える、つまり若干の底上げをする必要がある。その中で激変によって大きな影響を受けている。それでいわゆる構造不況業種、これにまた準ずるものもありまするが、そういう構造不況業種というものが出てきておる、そういう問題の処理をする、こういうことによって初めて日本経済は安定していくのだ、こういうふうに考えておりまして、そのような方向、施策をとっておるという現状であります。  いま大原さんは非常に大規模な景気政策というようなことをしたらどうだという御示唆のようでしたが、日本経済の現状は、とにかく好況業種もある、あるいは不況業種もある、非常にばらつきが多いのです。平均的に見ればそう悪くない状態でありますが、ばらつきがあって、その中で落ち込み産業、つまり構造不況またはこれに準ずる業種というものがある、そこが問題だ。一律的に非常に高い成長政策をとる、そういうようなことになれば好況業種というのは行き過ぎになってしまうような状態にもなりましょうし、全体の経済を構造業種までをくるめて需給がバランスをとれるような政策というような考え方はとうていとることはできない。とにかく着実に日本経済に内在するばらつき、これを処理していくという政策をとることが妥当であるという見解でございます。
  241. 大原一三

    ○大原(一)委員 総理大臣は、どなたの質問か名前は忘れましたけれども、企業の稼働率の質問に対しまして、でき得れば九三、四%に底上げしていきたい、当面九〇%ぐらいの稼働率を目標にしたいとお答えになりまして、新聞にも翌日大きく出ました。この総理がおっしゃった九〇%稼働率というのは私にはわからないのでありますけれども、四十五年を一〇〇にしたものですか、それとも実質稼働率でありますか、その点をお答えいただきたいのであります。
  242. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私が申し上げておるのは製造業稼働率指数です。これに大体九を掛け、それが実質操業度である、こういうふうに言われますが、これは実質操業度を測定する仕組みがありません。そこで製造業の稼働率指数のことを言っているのですが、これが九三、四%、その場合には実質操業度は八四、五でしょう。その辺までいくといいな、こういうふうに思っておりますが、本年度中にはどうもそこまでいきそうにないのです。何とか稼働率指数で九〇%に乗せられることができるかな、そうなるといいな、こういうふうに思っておるわけであります。
  243. 大原一三

    ○大原(一)委員 わかりました。四十五年基準の九〇%だというふうに理解をいたしましたが、四十五年という年はやはり一〇%ぐらいげたがあるのです。四十五年一〇〇というのは、実質稼働率で言えば九〇%ぐらいだと言われております。そうしますと、八四・八%といういまの稼働率は七四、五%に落ち込んでしまうわけですね。残りが設備の余裕でございます。そうしますと、これを九割に上げるということになると大変なことだと私は思ったからお聞きしたわけでございます。  企画庁長官にお聞きしたいのでありますが、四十八年以前の稼働率というのは四十五年基準で大体一〇〇%でございますね。だから総理の目標はそれより一〇%落ち込んだところで大体いいだろうとおっしゃるのでありますが、現在の鉱工業生産の見通しからいきますと、四月以降の数字を見ますと対前年同期で三%ぐらいしか伸びてないのですね。政府の目標は九・二%でございますか、とてもこの稼働率を九〇%に持っていくということは不可能だと私は思います。それと、仮に一〇〇%ラインに四十五年基準で上げるとしたら、鉱工業生産指数は、ことしじゅうじゃないですよ、来年も含めてで結構でございますが、何%上がったらバランスがとれるのでございますか、その点お聞きしたいと思います。
  244. 倉成正

    ○倉成国務大臣 総理のお話は、先ほど申し上げましたように、四十五年を一〇〇とする稼働率指数の点でございます。したがいまして、これが九三、四ぐらいまで行けばまあまあじゃなかろうか、そういうお話でございます。しかし、今年度中にはそこまでは無理で、およそ九〇前後ではなかろうかということでございまして、私どもさように考えておるわけでございます。  なお、本日の三時発表になりました鉱工業生産指数は、前月に比較しまして一・三ポイント上がって一二九・七でございます。前年同月比二・九。それから生産出荷指数が同じく前月比一・三ポイント上がりまして一三二・八、前年同月比一・八ということでございます。なお生産者製品在庫率指数が一三一・二ということで前月比一・一ポイント下がっております。そういうことでございまして、稼働率指数もちょっと上がりまして八五・八ということでございます。ジグザグコースをたどっておるわけでございます。  なお四十五年の一〇〇という数字は、御案内のとおり非常に構造不況、今日は構造不況業種を抱えておるわけでございますから、全体としてこれが九三、四になるということになれば相当なものがやはり四十五年の一〇〇近い稼働率指数になってくる。しかし、構造不況業種をそこまで持っていくということは、平電炉一つをとりましても四十六年、七年ごろ約六百万トンの生産能力が、現在は高炉メーカー分を入れると二千四百万トン、四倍の生産能力を持っておるわけであります。昨年の生産が約千三百万トンです。そういうことを考えますと、これをそう大きなところまで持っていくということはとうてい不可能でもあるし、またそれは日本経済にとっても必ずしも好ましいものではないという考え方でございますから、およそ九三、四ぐらいのところに行けば一応経済としてはうまくいっている運営ではなかろうか、そういうお考えだと思います。
  245. 大原一三

    ○大原(一)委員 時間がありませんので、細かい議論ができないわけでありますが、失業統計に関連して労働大臣に御質問申し上げたいのであります。  二・一一という失業率、百六万人、この数字は、いろいろお聞きしてみますと、現在の毎勤統計でございますか、月末一週間以内で一時間働いっちゃったら、日本の統計は失業にならない。アメリカの場合は十五時間働いたら失業にならない。十四時間多いんですね。それからヨーロッパの統計を調べてみますと、失業保険をもらっておる人の数字なんだそうでありますね。各国とも大変な違いがあるわけです。日本経済が非常によく見える、失業が少なく見えるということも、こういう統計の操作にやはり原因があるんじゃないかと私は思うのでありますが、われわれはもっと外国並みに失業者がたくさんいるという感じを持っております。たとえば企業内失業、これは本当の失業じゃございませんが、相当ある。この失業統計を、ちょっと非常識な月末一週間以内でたった一時間という統計をマッカーサー以来お改めになっていないのですが、これを改められて、もう少し実態をあらわす統計に変えられる意思はございませんですか、その点お聞きします。
  246. 石田博英

    ○石田国務大臣 失業統計を国際的に正しく比較できるために国際的な共通の基準というものを設けてやりたいという、そういう研究はさせております。ただ、ヨーロッパ並みの失業保険受給者を失業と見るという見方をしますと、日本の場合はたしか六十四、五万で非常にまた指標がよくなるわけであります。ただ、これを正しく国際的に比較する、アメリカとヨーロッパの統計のとり方にも違いがあるものですから、国際的に正しく比較できるような方法、そういう方法の検討は命じておりますが、同時に、総理府の労働力調査とかあるいは各民間機関の調査等をも勘案いたしまして実態の把握に努めております。
  247. 大原一三

    ○大原(一)委員 もう一つ、労働大臣質問がございますが、労働大臣はよく、現在の有効求人倍率〇・五二倍、数字の差異に、地域的に非常にばらつきがある。さらにまた、企業別でも大変にばらつきがある。これは非常によくわかるのですね。その実態を労働省の職安局にお聞きしましたところ、昨年の十月の資料は出ているのですね。一年に一回ずつこの統計をおやりになっているというのでありますが、いま緊急におやりになっていますかと聞いたら、まだやっていない、それは十月でないと結果がわからないと言うのでありますけれども、現在のような緊急事態に対処して、労働省としてはもっと早くこのような統計を整備される必要があると思うのです。ばらつきがあることは一般的にわかりますが、どういうばらつきが地域的にあり、業種別にあるかという把握は、これは労働省しか把握の仕方がないのです。われわれもそれを早く知りたい。そういう考え方から申し上げているのでございますが、その点はいかがでございますか。すぐ着手していただけましょうか。
  248. 石田博英

    ○石田国務大臣 年齢別、地域別のものは、お話しのように八月の時点調査をいたしまして、それを十月に取りまとめて発表いたします。したがって、本年度の分はもう間もなく計算ができましてお目にかけることができると思います。そのほかの職種別のものは毎月やっておるわけであります。  大ざっぱに申しまして、東北、北海道、九州、四国、この地域が有効求人倍率が低い。それから近畿地方も、都会地の割合には低いところが多い。特に兵庫などは多いわけであります。それに対しまして、東京、名古屋、関東、そういう地域は求人倍率は比較的高いわけであります。
  249. 大原一三

    ○大原(一)委員 ちょっと考えますと、労働大臣、高年者の失業がふえているということを皆さんおっしゃいますですね。ところが、最近いただきました労働省の指標を見ますと、二十歳から三十歳までの失業が、百六万のうち四十万を占めているわけです。二十代から三十代の失業が一番多いのです。これは私は大変な問題だと思います。総理大臣もよく口にされるのでありますが、日本の失業は、どっちかというと、一時間でございますから非常に少なく表示されておりますが、ECとアメリカ日本を合わしたところ、千四、五百万の失業者がいまいます。その中、ヨーロッパでは若年層が半分以上占めておるという実態ですね。日本もそれに近づきつつあるのですよ、いまの数字は。百六万のうち四十万が二十代から三十代の失業でございます。大臣は、それに対する御感想で結構ですけれども、どうお考えになりますか、お伺いしたいと思います。
  250. 石田博英

    ○石田国務大臣 ヨーロッパでは若年層の失業が非常に多い。日本の場合は、それに比べると若年層の失業の割合が少ない、それに反して中高年齢層は極端に悪いわけです。  もう一つの問題は、今度は有効求人倍率で見ますと、三十歳以下の有効求人倍率が高いんですね。二に近い。それなのになぜ四十万もいるか。これは大学卒業者の就職問題と同様でありまして、社会の要求と求職者の希望との間がつり合わないというところに問題がある。ヨーロッパが中高年齢層は比較的よくて、若年が失業が高いというのは、やはり先任権の問題とか年齢別の賃金格差というものが少ないものですから、したがって同じ使うなら熟練者の方が得だ、こういう傾向が見られる。しかし、日本にも最近若年労働力の同様の傾向が見えてきましたが、どうしてもやはり職種にかみ合わないというところに問題がある。お手元にお持ちだと思いますが、各職種別の求人倍率が出ておるわけです。そうすると非常に高いのと非常に低いのとのばらつきが目立ちます。そこで、一つには職業訓練、もう一つには御本人の意識の変更というようなこともあわせて指導をいたしまして、このギャップを埋めていけば、かなりの回復を見ることができる、こう考えております。
  251. 大原一三

    ○大原(一)委員 企画庁長官にお聞きしたいと思うのですが、先ほど申しましたように、六・七%の数字合わせはまことによくできていると思うのです。二兆円掛ける乗数、掛けまして今年度分ということを割り算して、そして足しますと、補正しない場合の成長率五・九%、それに補正による成長率〇・九をプラスしてちょうど六・七%になるという御説明でございますが、現在の経済はその六・七では不安定成長である、そのいろいろの指標が、はっきり各種の指標へ出ておるのです。  たとえば雇用関係にいたしましても、これは八月の数字で、企画庁長官は新しいのをお持ちのようでありますけれども、やはり水面下にあるわけなんです。労働大臣はよく雇用は伸びている、伸びているとおっしゃいますけれども、雇用指数から見ますとやはり水面下です。それから在庫投資でございますが、これは四十八年基準で四九%、五〇%という水準にあるわけです。生産は逆にマイナス三%、四%でございますから、これは大変な企業経営の実態をあらわす指標だと思うのです。  そういう中で、落ちこぼれ、つまり自由競争に漏れた人たちが選別されて倒産という数字の中へ追い込まれていくわけでございますけれども、この企業倒産が減って、いまノッキングを起こしておるこの経済の中で、日本株式会社、中小企業も大企業も入れて、ある程度本当に安定路線に乗っかる時期でございますね、これは一体いつごろになるか、長官のお考えを承りたいと思います。
  252. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えします。  先ほどから総理と大原委員とのやりとりの中でございましたように、今日の日本経済が、今回の不況が非常に落ち込みが激しかった、二割以上の生産が落ちたということもありまして、設備投資それから個人消費はなかなか出てこないというのが一つの特色でございます。回復過程に入りましても、さっきノック現象とおっしゃいましたけれども、一進一退というか、ジグザグコースでならしてみると非常に緩やかな回復になっている。しかも業種間の格差が非常に激しいというのが私は今日の経済の特色だと思うわけでございます。  したがいまして、いま仰せのとおり、今回政府が総合経済対策を行いまして、今年度じゅうに一兆五、六千億の需要創出効果をねらいまして、五十三年度にあとの半分、約一兆五、六千億のものが五十三年の上半期に出てくる、合わせて三兆円のものが出てくる。さらにその先を計算いたしますと、四兆円程度の需要創出効果が出てくるということでございます。したがいまして、私どもが今回総合経済対策考えたときの一つの考え方の中心は、線香花火であってはならない、やはり持続的な成長であるべきであるということを考えまして、この政策の効果が半分ぐらいは後年度に持ち越すということを一つの大きなポイントにいたしたわけでございます。したがいまして需給ギャップが非常に大きいということは御指摘のとおりでございますから、結局この需給ギャップを政府の施策によって埋めていく、しかも、これに刺激をされまして、民間の方々が企業の経営について自信を持っていただいて、だんだん設備投資あるいは個人消費等が回復の過程をたどってくるというのが、これからの経済再建のコースであろうかと思うのでございます。ただ、構造不況業種について、また雇用問題について、余り芳しくない数字が出てきておるのが現況でございますので、雇用問題については最重点をもって政府として臨んでいくということでございます。  なお、労働大臣からお話がございましたけれども、私は雇用関係は今後のここ数年の動向ということを考えてまいりますと、昭和五十五年に完全失業率一・三ということを目指しておるわけでございますけれども、その際に私どもが真剣に考えておかなければならないことば、やはり二つあると思います。一つは女子の就業者の動向をどう考えるかというのが一点、それからもう一点は、先ほども労働大臣からお話がありました自発的な失業というものでございます。いま失業者の数がありますけれども、みずからの都合で仕事をやめているという人たちがあるわけでございますから、そういうものをどう考えていくかということによって数字が決まってくると思いますので、ただ表面の数字だけで判断するのは、非常に危険であるというふうに思っております。
  253. 大原一三

    ○大原(一)委員 いつごろにそのノッキングが収斂して曲がりなりにも安定成長にいくだろうかという質問に対して――いま二・一一が一・三に収斂するのが収斂ですね。一・三というのは四十八年以前の平均の失業率でございますから、そこへいくのは五十五年になるだろうということになりますと、ほかの数字も大体そういう感じではないか、私自身はそういうふうに感じておるわけでございますが、もう時間がありませんのでお答えにならなくていいと思います。  そこで、日本経済のいまのぎくしゃくが、何とか曲がりなりにも一つの地点へ収斂して全体のバランスがとれる時期が五十五年だ。先ほどデフレギャップの話が出ましたけれども、私は端的に自分なりに計算するわけでございますけれども、失業が二・二あってそれから目標値の一・三を引きますと〇・九%、それから設備の方はどうなっているかと言いますと、仮に九〇%を目標にしますと、九〇%というのはいままでからいいますと大変な不況なんです。本当は一〇〇%を目標にすべきなんですね、設備の余剰ということからいいますと。現在だってトラックの場合は一一〇%という操業率ですね。一一〇%というのはもうフル回転です。そういうものがあるかと思うと、一方には五〇%というものがあるわけでございますけれども、平均してなべて二割ぐらい設備に余裕があると見ていいと思うのです。この二つだけで、仮にこれをフル回転したら現在有効需要は果たして幾らあったら埋まるかということをざっと計算しますと、やはり一〇%ぐらいの成長余力を残しているということになるだろうと思うのです。これは過去の経験値からでございますけれども、そうすると二十兆円くらいのデフレギャップがあるのではないか。個人の貯蓄を見ましても、過去十年ぐらいの数字を見ますと、四十八年からものすごく貯蓄が不景気なのに伸びているわけですね。それまでは一七、八%から二〇%台の個人貯蓄、これは家計貯蓄もGNPベースも大体同じでございますけれども、いきなり二四、五%台に貯蓄率がはね上がっておるわけでございまして、そういった面を見ましても貯蓄超過経済であるということが言えると思うのです。  今度企画庁長官のところでは、まさにそれに符牒を合わせたように、設備投資は一二・何%を六%にダウンさせられたわけですね。これは正しい修正だと私は思います。民間の調査を見ますとそこまで行っていないんですね。民間の調査を見ますと、これは日本経済新聞でございますが、全産業で四・六%です。製造業ではマイナス六四%に落ち込んでおるわけであります。  そういったことから、いまのデフレギャップを埋めるものは何かということになりますと、よく皆さん個人消費とおっしゃいますけれども、個人消費は一人歩きしないのです。これをふやす道は、総理がおっしゃるとおり、設備投資がだめですから、財政投資か輸出しかないわけですね。財政投資か輸出しかございません。仮に五十五年にいまの経済のぎくしゃくを収斂させるとして、そういうギャップを埋めていかなければならぬということになりますと、輸出環境というのは、もう先ほどから議論がありますように大変行き詰まっておる。来年の見通しだって大変むずかしいと思います。企画庁長官が一番苦労されるところと思うのでございますが、やはり財政しか期待するものがないということになりますと、今年度の補正予算規模で六・七へうまく合わせられましたけれども、来年度が大変問題だと思うのです。この辺の考え方について、総理大臣、お答えいただきましょうか。
  254. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 累次申し上げておりますが、問題は日本経済の中のでこぼこといいますか、ばらつきにある、こういうことなのです。そのでこぼこ調整が終わるとかなりすっきりした状態になるだろう。しかし、これは簡単にはできません。そうことしいっぱいというようなわけにはまいりませんが、そういう状態の中でまた来年という年を迎えることになりますから、やはり傾向としては、これは政府がかなり景気維持政策についててこ入れをするということが必要になってくる、こういうふうに思います。まあどの程度のてこ入れが必要であるか、それはもう少し先へ行ってでないと見当をつけにくいわけですが、方向といたしましてはそういうことだろう、こういうふうに思います。
  255. 大原一三

    ○大原(一)委員 ここで私、若干の個別問題な一、二お伺いしたいのでありますが、先ほどのノッキングを起こしておるという理由でございますけれども、結局二二%ないし一七、八%の名目成長になれた企業がいきなり半分の名目成長率へ落ち込んだために何が起きているかというと、人、物、金の抱え込み過ぎですね。これを早く身軽にしなければならない。いわゆる減量経営への対応の早い企業は、これは何とか抜けていけるけれども、減量経営にとてもついていけない企業は倒産に追い込まれる、あるいは政府に何とかしてくれと泣きついてこざるを得ない形に追い込まれていくのですが、企画庁長官、最近の倒産の中身を見ますと、企業倒産件数のたった三分の一が売り上げ不振であります。残りの三分の二は売り上げ不振ではないのです。売り上げは伸びておるけれども、倒れていくというものですね。つまり、高度成長になれたために企業の採算点、専門用語では損益分岐点といいますか、それがものすごく高いところにあるわけです。だから、とにかく何が何でも売り上げをふやさなければならない。端的に言えば名目成長一〇%の売り上げでは足りないのですよ。二〇%ふやさないと自分の体がもたないところに行っているものですから、これらの減量のできない企業は倒産に追い込まれていくという数字が企画庁の数字ではっきりしているわけであります。  ところで、建設大臣にお伺いしたいのでございますが、企業の倒産件数、上半期だけでございますが九千件近くあるわけです。その中で二五%というのは建設業なんです。しかも建設業というのは――構造不況業種と言われる繊維や木材関係、あれは大手の方が非常に多いんですね。ところが建設業の二千数百件というものは中小企業が大部分であります。そしてそれが特に地域経済影響するところが非常に大きいんですね。そういう件数並びに負債金額から見ても非常に地方経済に与える影響の大きい建設業について、残念ながら過般の中小機関、国民金融公庫やあるいはまた中小企業金融公庫の既往の貸出金利が〇・一%引き下げられましたけれども、対象に入ってないのはなぜでありますか。四十八年には、建設業につきましては例の信用保証枠の二倍の増枠がしてあるはずでありますけれども、今回はそれがとられてないというようなことから、建設大臣の御意見を承りたいと思います。
  256. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 まさにおっしゃるように、基盤の脆弱な零細企業というのが非常にふえてきているということだけは御承知のとおりでございます。いずれにいたしましても大小合わせまして四十三万という大きな業種になりまして、四十五、六年ごろから始まりまして、その二、三年というものは軒並み建設業、建設業というのができてしまいまして、全く四十三万という膨大な数字になっておるような次第でございます。したがって、それでは実際それだけのものになっているのかどうかということを見ますと、大体五十二年の建設投資額は、政府経済見通しに基づいても約四十兆と見込まれておる。実質で前年度から考えてみますると八%の伸びが期待されておるわけでありまして、公共事業の前倒し執行と中小企業に対する受注機会の確保の対策によって、五十二年の五、六、七を合わせまして受注額は前年同比二〇%増であります。したがって、雇用者数におきましても、昭和五十二年上半期は、対前年に比較いたしますと、労働統計でいっても七万人ふえておるということになっておるのでございます。しかしながら、残念ながら、このような状態の中にあっても、いま御指摘のとおりに、大体倒産する全業界の中にあって二割、三割近くを占めるというような特殊な状態でございして、これに対しまして中小企業共同化とかあるいは体質の改善を進めるとかいうようなこともやっておりますし、さらに政府系の金融機関の地域融資を特に行って、公共投資の地域配分にも十分考慮をいたしておるところでございます。
  257. 大原一三

    ○大原(一)委員 時間がありませんので。これは建設大臣、その件数が多いことが大事じゃなくて、倒れる件数がいかに多いかということが地域経済影響を及ぼすことが大きいわけですから、業種として一番たくさんの倒産が出ているという実態に着目しながら、今後は通産大臣とよく御相談いただいて、信用保険法二条の不況業種指定の問題ですね、十分御検討いただきたいと思います。  ところで、銀行局長さん来ていらっしゃいますか。――実は承りしたいのですが、私は総理の前で申し上げますけれども、中小金融機関に対する今度の既往の貸出金利の引き下げというものは大変善政だと思うんですね。なぜかと言いますと、これは日銀公定歩合の連動率でございますけれども、都市銀行の場合は二月から八月までに〇・八%下がっております。地方銀行で〇・五、相互で〇・三、信金で〇・一ないし〇・二程度の下がり方になっているわけですね。ところが中小企業というのは、こういう金利の連動率の低い、つまり金利の高いところから金を借りているのですから、それに政府が何らかの手を伸ばしてやるということになれば、中小機関、政府関係機関の既往金利の引き下げということですね。これは大企業は相談でもって都市銀行と既往の金利の引き下げもできるはずであります。また商業銀行は一年ものでありますから、一年来ればすぐにこれが更改できるという形になって連動率が高くなるけれども、地方機関ではなかなかそういかないということから大変いい制度だと思うのです。  ところで、銀行局長に承りしたいのでありますが、開発銀行を入れてで結構でございますけれども、今度の制度による〇・一%引き下げで、赤字企業に対するところのメリットを金額でお教え願いたいと思います。
  258. 徳田博美

    ○徳田政府委員 お答えいたします。  今度の政府関係機関の既往金利引き下げによってどの程度のメリットがあるかということでございますが、御承知のとおり、今回既往金利の引き下げにつきましては、今月に入りまして二十八業種の追加がございまして、全部で九十二業種あるわけでございますが、その業種につきまして、さらに赤字企業について引き下げが行われるわけでございます。したがいまして、その点の集計についてはまだ数字が固まっておりません。いまの段階ではまだ推定は困難でございます。
  259. 大原一三

    ○大原(一)委員 赤字企業の推計は困難ですけれども、実績率を出せばできないことはないのでありましょうが、時間がありませんので先に進みます。  次に、円高問題でございますが、スミソニアンから二一%、年初から一五%、月初から五・五%、これは大変な上がりようでございます。これはいままで各委員が申されましたけれども、この値上がりというものは政府の今回の見通し並びにそれに対する総合対策の中に入っていないわけでございますけれども、これから先この影響によるショックが各面に非常に出てくると私は思うのです。その点は各委員の方からいろいろ申されましたので申し上げませんけれども、一つだけ私申し上げたいことは、企画庁長官で結構でございますが、現在のわが国の統計ですね、先ほど統計について幾つかのお話をしましたけれども輸出は円ベースで表示してありますね。七月は二二%輸出が伸びております。こういう数字になっているわけです。外人が見ても、よほど日本輸出が伸びているなと思うだろうと思うのでありますが、八月が二〇%。その二〇%に対応する円ベースの輸出というのはわずかに九%強でございますね。それなら物はどれだけ出たかと言いますと、物価が二%ぐらいありますので、七%しか出ていない。統計の上では日本輸出は二二%伸びておる。ところが、日本の企業の手取りは九%、生産に影響する物のベースでは七%ですね。七%と二〇%の間が円高部分、つまりドルの減価部分でございまして、これは統計に大変な間違いがあるのじゃないか。これから先こういう事態が頻繁に起こると困るのでございますが、たまたまそういうことを考えておりましたら、大蔵省の方で統計を改める、ドルベースを変えて円ベースにすると言うのですね。聞くところによると、各国ともドルで表示しているところはないそうであります。総理大臣、この際やはり日本の実態をはっきりする意味で、先ほどの失業もそうでございますが、この輸出の問題も、名目の増加に押されてちょっと外国等から不当に誤解を受けるのじゃないかということを考えるのですが、その点はいかがでございますか。
  260. 倉成正

    ○倉成国務大臣 各省で発表いたしております国際収支の関連統計の大部分は、通常、ドル及び円の両方で表示をいたしております。わが国の対外取引は多くがドル建てで行われておりまして、国際比較上も非常に便利だということでドル表示の国際収支統計を用いることが非常に多いわけでございます。ただし、いま大原委員の御指摘の点もございますし、また先進国では自国通貨で表示しているところが非常に多いわけでございまして、また為替変動しているような今日の状況では輸出入の実勢をつかみにくい、したがって円表示の方法を利用してはどうか、こういう意見がございまして、この点についていま関係各省で検討してまいりたいと思っておるわけでございます。  なお、ちなみに、ドル及び円建ての両方で表示されている統計は通関統計、これは大蔵省国際収支統計、大蔵省、日銀、輸出認証統計、通産省、輸入承認統計、通産省輸出信用状統計、日銀等でございまして、これらはいずれもドル及び円両建てで表示をいたしております。
  261. 大原一三

    ○大原(一)委員 それに関連して申し上げたいのでありますが、日本のいまの現状を見ますと、輸出についてでございますけれども、どうも余り外国からいろいろ言われると、ちょっと被害妄想になっているきらいがあるのではないかということを、逆に私は申し上げたいわけであります。たとえばドイツでございますけれども、一人当たり輸出金額で見ますと、日本の倍以上でございますね。三倍くらいになっております。日本はちょっと伸ばすとけしからぬと文句言われるのですが、ドイツの場合は、人口一人当たりの輸出金額で見まして三倍以上伸ばしても文句を言われない。この辺が私にはどうしてもよくわからない。それから外貨保有高にいたしましても、ドイツは一人当たりに割りますと四倍でございます。まだまだ日本経済というのは、そんなしっかりしたものじゃないのじゃないか。それに、ブルメンソールとかなんとかいうわけのわからぬ人が八月二十九日に、何かちょこちょこと言っちゃったらドルが下がる。これなんか不当な内政干渉ですよ。われわれはこれだけ躍起になってやっておりますけれども、ドイツのベース――イギリスにしたって外貨保有高は、人口一人当たりでわが国よりも高いのです。  そういうことを踏まえてみますと、いろいろ統計の間違いもございましょうし、やり方によっては先ほど輸出入の数字の表示の仕方等々、この辺はもっと言うべきところは言わなければならぬのじゃないかという感じがいたします。  それにたまたま東京ラウンドでございますが、大体自由貿易をわれわれに教えてきた先輩国はアメリカだったわけですね。それでわれわれは、しばらくの間は、とても自由貿易では立っていかないから何とか保護貿易。ところが農産物の二十二品目にいたしましても、これはどっちかと言うと日本の方は少ない方でございましょう。そういうこともこれあり、余り被害妄想にならないで、言うべきところをどんどん言っていくという姿勢も必要ではないかと私は思うのですが、大蔵大臣いかがでありますか。
  262. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  大変傾聴に値する御意見を承りました。私もまさにそういうふうに考えております。  そこで、しかし非常にむずかしいことは、言うべきことは大いに言え、こういうことでございますけれども、この問題に関する限り、私が余りいろいろなことを申しますとたちまち、たとえばブルメンソールが言ったことが、日本を初め世界に非常に影響を及ぼしたというようなこともありますので、私はいまのところ、沈黙は金というわけではございませんけれども、ひとつできるだけ発言をしないということにしておりますので、御了解願いたいと思います。
  263. 大原一三

    ○大原(一)委員 大蔵大臣は言わなくてもいいから、だれか政府関係のある人がどんどん言えばいいわけです。  あと、時間がありません。税制問題、一般消費税をお伺いしたがったのでありますが……。  先ほど、企画庁長官は、日本経済がぎくしゃくしたところから一定のところへぽつんと落ちつくのは二年かかるとおっしゃったのですが、一般消費税の導入も、私はそういった点に十分着目しながら慎重にやらなければならぬと思います。  これは御答弁は要らないのですが、ただ一つ申し上げたいことは、いまの一般消費税の仕組みというのは、理論的、体系的にはきわめて答申はよくできていると思うのです。思いますが、やはり中小企業ということを考えますと、あれは転嫁できない企業が出てくるのですよ。強い企業は転嫁して、弱い企業は自分で消却せざるを得ない。いわゆる税金の自己消却というものでありまして、結局、上げられないで、安い値で売らざるを得ないということになりますと、オーバーオールの一般消費税の導入は、私は問題があると思います。そこで、これを段階的に導入する方法はないかというのが一点。  その第一は、まず大企業のマスプロ製品にだけ課税するということ。しかも低率から始めて漸次高率――高率というのは語弊がありますけれども、目標値に接近させるということ、これが一点であります。  第二点は、国民大衆のコンセンサスを得る手段として一つ方法論を申し上げたいのでありますが、それはこの名前を変えてしまうのですね。たとえば福祉教育税という形にされたらいかがですか。目的税的利用を考えられるということ、それともう一つは、これは低所得者課税になることは当然でございますので、一方において所得税を補完する富裕税をつくられるということ、この二つをお聞きしたいのですが、大蔵大臣、いかがでございますか。
  264. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  一般消費税につきましては、税制調査会から提言をされております。これはできれば実行していきたい、かように考えておりますけれども、果たしてしからば、いまおっしゃられたようないろいろな形式がございます。一つの段階において、まず段階的にかけていけというようなお話もございますし、それから目的税的に考えて、福祉教育といったようなことの目的的に考えろというようなお話もございます。いろいろなことの議論がございますけれども、今日のところ、その中のどれに特定していこう、また、ほかの考えでいこうかということについては、まだ固まっておりません。これからいろいろ御相談を申し上げてまいりたいと思います。
  265. 大原一三

    ○大原(一)委員 要するに、財政硬直化打開の手段として、われわれもいまは公債発行論を言いますけれども、やはり先ほど言いましたように、日本の企業が総体的に見て六・七%なり六%の中で軟着陸できる段階においては、やはり増税を考えざるを得ないと思うのです。その際の政治的選択の問題、これは事務屋の問題ではございません。大蔵大臣、私が申しますのは、国民のコンセンサスを得る手段として、あの答申を全部国民に読めというのか、そうじゃなくて、この手なら緊急やむを得ず今後の財政硬直化打開の手段としてのんでくれるのじゃないかということは、政治的選択の手段だと思います。これは学者の議論ではありません。そこは十分お考えいただいてやっていく必要があろうというのが私の私案でございますから、参考までに申し上げます。  時間がありませんので、最後に一つ二つお伺いしたいのは、日中漁業協定の問題でございます。われわれ最近中国へ参りまして、鄧副総理とよもやま話も入りましたけれども、二時間半ばかり話しました。その中で河野代表から、日中漁業協定問題に関連して、二百海里問題を中国はどう考えるのかと質問をいたしました。それに対して返ってきた鄧さんの答えは、われわれは二百海里を宣言する権限は留保しているが、それを発動するかどうかは考慮中であります。日中漁業協定の問題に関連いたしましては、すでに日本との間には二十年間の民間協定、さらにまた、二年前の政府間ベースの漁業協定がありますから、その実態を踏まえて、しかも条理にかなった考え方で協定を結んでいきます。こうおっしゃっていますね。私はまことにりっぱな態度だと思うのです。その前にソ連の攻撃がずいぶん入っておりましたから、これは皮肉もある程度入っておるのだと思うのでありますけれども、いまソ連の海域で、先ほどどなたかから質問がございましたけれども、あの協定ができてから百件近い事件が起きて、しかも現金を抱えていかなければとても漁業が安定してできないというようなことで、書類で処理するのだったら一日遊ばなければならないというような事態があって、緊急避難的にああいう事件が起きているのでございますが、中国との間ではいままで何か事件がございましたか、農林大臣
  266. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 日中の漁業関係につきましては、ただいま大原さんからお話しになりましたように、日中の民間協定時代、さらにまた昭和五十年の政府間協定ができましてから、非常に安定的に、何らのトラブルなしにこれが機能をいたしておるわけでございます。また、違反事件があるか、これも皆無でございます。さらにまた、漁船の衝突その他の事故につきましても、年間せいぜい四、五件程度、それも両国の漁業団体間で話し合いをいたしまして円満に処理がされておる、こういう状況でございまして、私どもは、西日本の漁民諸君のためには、日中の現在の漁業協定が将来とも安定的に運営をされていくということを強く希望いたしておるところでございます。
  267. 大原一三

    ○大原(一)委員 時間がございませんが、とにかくソ連とのトラブルは、国内法でやっているものですから、一万ルーブル以下だったら現金で現地調査官が徴収できるというような、われわれにとっては大変理不尽なことですね。そういう事態が起きないように、もう少し措置考えていただきたいというのが要望でございます。  それともう一つ、時間が少しありますから、私考えておりました質問で土地税制の問題がございますが、国土庁長官から承りたいのであります。  土地税制というのは、二七%のアローアンス、それ以下だったらよろしい。しかも三年間ですね。一年間に九%の利益率です。二七%の中に利子が入っておりますね。利子を含んで二七%の範囲内です。これを取っ払うことの実益があるかないか。いまのような不況の中で、不動産会社だけ九%、九%ずつ利益を上げていかなければならないという理由もいかがかと思うのです。  それから、一度に御質問しますけれども、国土庁から出されておるところの森林関係のものですね。つまり、現在三十万ヘクタールというものの中の三分の二、これは山だというのですね。しかも不動産会社が持っていらっしゃるのですが、国土庁の案によれば、これを森林法によるところの森林施業計画の中へ入れた場合には、保有税の一・三%を免除するということになっておりますね。ところが、これは一つの法人全体でやらなければならぬというところの障害が一つあります。しかしながら、長官、施業計画は五年間ですよ。だから、不動産会社が五年間だけ施業計画をやって木を植えて、五年過ぎたらまた切ってしまうということもできるのです。そういうことでは、私は本格的な施業計画にならないと思います。  この二点について長官の御意見を承りまして、私の質問を終わります。
  268. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 お答えいたします。  土地政策を担当している国土庁としては、あくまでも土地の投機的取引を抑制して地価を安定するということが基本であると同時に、いま一つは、国土の適正な利用を図るということでございますので、最近のようにいわゆる住宅問題が大きい話題となってまいりますと、いずれも宅地の提供というものが必要になってくるわけです。この宅地も、単に土地を素材のまま放出しては何ら意味がないのでございますから、そういう意味から言うと、優良宅地の提供というものが必要になってくるわけでございます。そういう関係から、私たちはこの優良宅地の提供のために、あるいは遊休地の活用だとか、あるいは宅地の転換のために市町村に助成するとかいうような措置も講じてまいりますけれども、同時に、税制の面で何か緩和してこれらの問題を解決することはできないだろうかということで、ただいま大原さん御指摘の法人重課税について、いままではいわゆる利益率の二七%というので基本にしてまいりましたけれども、そういう点を何かもっと企業努力が報いられるような形でこの法を扱うことはできないだろうか、そういう意味でただいま検討中でございますので、そういう点はひとつ御理解いただきたい。  もう一つは土地保有税についてでございますが、確かに施業計画を立てた者に対しては免税しているわけでございますが、それについても、いま山林が施業しないまま放置されている部分が非常に大きいものですから、ぜひその施業計画に載るような山林をたくさんつくりたいという意味で、いわゆる土地の有効なる利用を図る意味で何らかの手段がないだろうかということでいま検討いたしておるのでございますので、ただいまの大原さんのお話も十分踏まえながら今後検討してまいりたいと考えます。
  269. 大原一三

    ○大原(一)委員 終わります。
  270. 田中正巳

    田中委員長 これにて大原君の質疑は終了いたしました。  次に、安宅常彦君。
  271. 安宅常彦

    ○安宅委員 正式な質問はこれで終わりになるわけでありますが、私は、去る九月二十七日、アメリカのエクソン社が米連邦証券取引委員会に対しエクソン社の海外支払いに関する報告書を提出いたしましたことについて、日本政府はこれを入手し、そうして検討しているかどうかについて、総理からひとつ御答弁をいただきたいと思います。――ではとなたか、法務省……。
  272. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 お尋ねの報告書を入手しまして、検討いたしております。
  273. 安宅常彦

    ○安宅委員 その中で日本関係する部分は次の二つであります。もちろんこの報告書は、連邦証券取引委員会はこの報告に満足して受理した、こういうことになっております。そういう中で言うのですが、日本関係したのは次の二つでございます。  一つは、一九七三年の報告によれば、エクソン社沖繩支配人は沖繩の二つの大政党に対して一万九千ドルの政治献金を行った、こういうことを書いてあります。これは当時沖繩復帰の境目のあたり、微妙な時期なんですけれども、一九七〇年には本国会に沖繩の方々が満場一致の決定によって構成員となられました、そういう時期ですから、一九七三年の報告によればということですが、復帰以後日本の政治資金規正法が適用になったと思いますし、非常に微妙な時期です。それで私は慎重な配慮をしていま発言しているのですが、献金を受けた政党は何という政党なのか。二つの政党です。それから、このことについて政治資金規正法上の調査、あるいはエクソン社に対して、どの政党へ、一万九千ドルですから、これを幾らぐらいずつのパーセントでやったかということも、それは報告書に書いてありませんが、こういう調査なり照会なりしたかどうか。  第二番目の事柄は、一日本の国会議員に対して、エクソンの日本子会社は、数年にわたり月額約千百四十五ドルで顧問契約を結んでいた。このことば不適当でも不法でもないが、一九七三年まで正確にエクソン社の帳簿には記載されていなかった。また、この契約関係は一九七五年に終了した、こういう事柄であります。  そうしますと、数年間にわたって月額日本円にして約三、四十万円ずつ入ってきたことになります。多国籍企業の通例として、これはガルフでもロッキードでも同じですが、ただの金は出さないわけです。ただの金は。だから、このエクソン社に対してどういう貢献をして、どういう性質の顧問料をこの議員は受け取っておったのか。この議員はだれなのか。受け取り方について外為法上の問題はなかったのか。それからこれは申告されているのか。このことについて大蔵省や法務省や、さきの政治資金ならば自治省、こういうことは、時間がありませんからどなたか代表して、本当は総理が一番いいのでございますけれども答弁をしていただけないでしょうか。  以上です。簡単にお願いします。
  274. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 お尋ねは二点に分かれております。いずれもエクソン社の日本における子会社である日本法人がやったことであります。したがって、外為法違反の問題はございません。  まず、現職の国会議員という身分をお持ちの日本人の方に毎月三十万円前後の顧問料を払っておったという事実はあるようでございます。しかしながら、私、法務省刑事局でございますが、刑事事件になる可能性のあるものは認められないように思います。  それから沖繩の関係について御指摘でございますが、一万九千米ドル、これを沖繩の政党に献金したということでございますが、これはどうやら復帰の時点の前後、非常に接着したころのようでございまして、いずれにいたしましても、検察あるいは法務検察の立場からいたしますと、考えられる犯罪が全部時効になっておりますので、この程度の調査で打ち切っておる次第でございます。
  275. 安宅常彦

    ○安宅委員 私は犯罪の立場で質問しているんじゃない。あなたは犯罪の立場でだけしか言っていませんね。自治省、届け出というのは、一九七三年の報告によれば、七三年以前か七三年か、そういうことについて的確な政治献金の――二つの沖繩における政党ですね、こういうこともまだはっきりしていないとするならば直ちに、この国会が終わる直前では困りますから、早急に調査をして、本委員会に対して報告を求めます。  それから、ただいまの答弁で、日本法人がやったことだから外為法上の関係はない、こう言いますけれども、これはやっぱり、犯罪を頭に置いてやる人の答弁はそうなるのです。そうじゃありません。これはエクソン社が、本社の帳簿にちゃんと載っておって、そして不備な点もあったという報告をしているわけですね。ですから、このことについて言うならば、たとえば国税庁はこの人がだれであるか――道義上の問題があると思うのですよ。アメリカの多国籍企業に貢献をしたから顧問料を払ってもらっているのですから、このことについて、どういう人か、あるいは申告は正当に行われているのか、どういう性質の金かということについて把握しているかどうか、それから契約の内容……。
  276. 磯邊律男

    磯邊政府委員 ただいま先生の御指摘になりました課税関係でございますけれども、これは法人につきましても、それから個人につきましても、適正に処理しております。
  277. 安宅常彦

    ○安宅委員 法人につきましてもといいますと、個人ではなくて、その国会議員はある会社を経営して顧問料をもらっているという意味なんでしょうか。
  278. 磯邊律男

    磯邊政府委員 それは支払いました法人、つまり日本法人でございますが、その法人に対する課税でございます。
  279. 安宅常彦

    ○安宅委員 私の質問に答えていませんね。どういう報酬なのか、性質、それから私の――これは後で議事録を見てください。  あと、委員長に申し上げます。  委員長、この問題は急に言われたって、あるいは発表できないことやら何かいろいろ考えて、わけのわからない答弁をしているかもしれませんから、さっきと同じように、これも同時に、本委員会に報告をするよう委員長から御手配を願います。どうですか。
  280. 田中正巳

    田中委員長 さよう心得ました。
  281. 安宅常彦

    ○安宅委員 出させますか。
  282. 田中正巳

    田中委員長 調査をいたしてみまして、御相談申し上げます。(安宅委員「だれに相談するのか」と呼ぶ)政府側といろいろ協議いたし、調査の結果、お出しできるかどうか、そちらに相談をいたします。
  283. 安宅常彦

    ○安宅委員 委員長、おかしいじゃないか。それは答弁がなってないから、だから私は武士の情けで、後で報告してくれ、なるべく早くと言っているのですよ。そのくらいはいいじゃないか。じゃ総理に。そういうことはいいですか。総理、どうですか。――おたおたすることはないのだよ。もういいよ、時間がないから。これは各省関係した者が協議してやってください。政府ですから、政府
  284. 田中正巳

    田中委員長 それでは理事会で本件を協議いたします。
  285. 安宅常彦

    ○安宅委員 総理にお伺いいたしますが、あなたは常に、いろいろな答弁のときには、日本はあらゆる国と仲よくしていかなければならない国ではありませんか、こう言うのですね。朝鮮民主主義人民共和国はそのあらゆる国の中に入っていないのでしょうか。
  286. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 朝鮮民主主義人民共和国もまたあらゆる国の中の一つであります。
  287. 安宅常彦

    ○安宅委員 お断りいたしますが、総理、大変長い名前でとこの間おっしゃったのですが、その場合は朝鮮で結構ですから。北だけは入れないでください。南へ行ったときはあるいは北と言うかもしれないけれども。国名は朝鮮と省略して一向差し支えないと思います。何も教えるわけじゃないけれども。  その朝鮮がたとえば世界で九十五カ国から承認を受けているのです。そして北と南、朝鮮と韓国と両方を承認している国は四十数カ国ありますね。そういう大勢の中で、日本がなぜ隣の国を承認できないのでしょう。私はいつも、何回も言うのですが、あらゆる国と仲よくする国の一つならば、なぜ片一方を承認し、なぜ片一方を承認できないのでしょうか。社会主義の国だからいやだと言うのだったら、モンゴルだって、ソビエトだって、キューバだって、中国だって、皆すでに国交は回復しているじゃありませんか。これはどういう意味なのでしょうか。
  288. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 朝鮮半島は南北のバランスの上に平和を保っておる、こういう状態です。そういうバランスの要素は、軍事的バランスもある、あるいは経済上のバランスもある、いろいろの角度がありますが、外交的側面から見ますと、韓国はまだソビエトや中国から承認をされておらない。そういうような状態の中で、韓国と国交を持っておるところのわが日本が朝鮮民主主義人民共和国と関係を持つということは、これはまた非常にむずかしい問題じゃないか。
  289. 安宅常彦

    ○安宅委員 この間、本会議でどなたかに、中国やソ連が韓国を承認してないじゃありませんか、などと、開き直ったような、かっとなったような答弁をあなたはしていましたよ。ソビエトがしようとしまいと、中国がしようとしまいと、日本日本の独自の政策があってしかるべきです。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━これは総理、一国の宰相というものは、ソビエトがやらないではありませんか、中国がやらないからわれわれはやらないなどという、そういう他人のせいにするのは間違いだと思います。私はそれだけ言って、きょうはこれ以上申し上げません。  それで、農林大臣、私ども日朝友好促進議員連盟に所属する自民党の久野忠治さんを団長とする代表団は、この間、いわゆる日朝漁業暫定合意書というものを締結してまいりました。日朝漁業暫定合意書は、日朝漁業協議会というものと朝鮮東海水産協同組合連盟との間に成立したものでありますが、この内容についてどう考えているのかということについて、内容は大臣が逐条御存じのとおりでありますから、ひとつまとめる意味で御答弁願えればありがたいと思います。
  290. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 朝鮮民主主義人民共和国の本年八月一日からの二百海里経済水域の実施につきましては、同水域においてわが国の漁船が多数操業しており、きわめて重要な漁場であるところから、政府としても憂慮をいたしておったところでございます。  しかるところ、先般、超党派で日朝友好促進議員連盟の派遣団が訪朝され、漁業問題についても暫定的合意がなされ、一定の水域においてわが国漁業の継続が図られたことは大きな成果であったと考えております。  暫定合意において、朝鮮民主主義人民共和国が操業水域を軍事警戒線を除く水域に限定したことは遺憾であると考えておりますが、当該水域においてわが国漁業の継続が認められ、また、漁業者の負担増となる入漁料が徴収されないことは、わが国漁業者にとってまことに喜ばしいことであると考えております。  また、各種海難事故または災害の場合に、双方が可能な限り便宜を図り、保護すること、さらに、民間レベルにおいて、双方が水産科学技術資料の交流等を行うことがうたわれたことはきわめて有意義であると考えており、政府としてもこれについて側面的協力を惜しむものではございません。  さらに、政府としては、今後とも日朝の民間レベルでの話し合いが行われることにより、わが国漁業の継続と安全の確保が図られることを期待しているものであり、これまで日朝漁業協議会から政府に対し、民間漁業交渉につき指導要請があり、技術的面でのアドバイス等を行ってきたところでありますが、今後も同協議会からの援助要請があれば、可能な範囲で援助する考えでございます。
  291. 安宅常彦

    ○安宅委員 まあ、いいでしょう。  次に、これはあくまでも暫定措置なんですね。そして来年の六月三十日までしか期限がないのですよ。その間に、いわゆる民間漁業協定か政府間の協定か、政府間の協定は、総理答弁でこれはできませんな、いまのところ。それができない限り、またストップになるわけですね。日本の漁業に重大な影響があります。したがって、交渉に私ども入らなければならない、そういうときに、この交渉に政府要員を派遣するとか、いつか福田さんがアヒル一羽ベトナムになんということがありましたね、たとえばそういうようなことをやるとか、あるいは協定当事者の支援のために、私らも必死になりますけれども、随時協議しながら支援すべきだ、こう私は思うのですが、農林大臣いかがですか。
  292. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 わが国と朝鮮民主主義人民共和国との間にはまだ国交がないので、朝鮮民主主義人民共和国以外の水域で民間漁業協定締結交渉が行われる場合において、政府職員に民間交渉の支援に当たらせることについて政府部内で検討してまいりたいと考えております。
  293. 安宅常彦

    ○安宅委員 まあ、いいでしょう。  朝鮮民主主義人民共和国側は、民間漁業協定を結ぶに当たって、暫定措置でもそうだったのですけれども、一体日本政府は、遭難もあるでしょう、海難事故だってあるでしょう、衝突事故だってあるでしょう、いろいろな細かい問題を含めて、日本の漁船が入るんですから、そういうことについての問題を含めた何らかの措置というものをとるべきである、自分の国家の漁民が働いているのですから、そういう場合の政府保証というものをやるべきではないか、こういうことを盛んに言うのです。もっともだと私ども思っているのです。  たとえば、これは外務省に後で答えていただきますが、大臣の談話か、外務省高官の談話か知らぬけれども、わしら帰ってきたときに、かかわりのないことだと言っているのです。新聞を見たら。木枯し紋次郎じゃあるまいし、外務省、いっそんなことになったんですか。日本の漁民を守るのが日本政府じゃないでしょうか。そんなことをおっしゃるようなことでは困ると思うのです。だから、大変りっぱな大臣ですから、それを補佐する側がよけいな、昔の大日本帝国のような感覚でいる外務省の役人だったら、この際やめてもらわなければならないくらい私はかっとなっているのです。人がやってきたことにけちをつけるぐらいだったら、日本政府が手前でやったらどうだという気持ちです。だから、そういう意味でその政府の保証というものをどう考えているのか。日ソ漁業交渉あたりで、もう本当に心労を煩わした鈴木大臣ですから、名答弁が期待されるのじゃないかと思っておるのですが、どうですか。
  294. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 朝鮮民主主義人民共和国の要求している政府保証の問題につきましては、その内容、形式等が現在のところ必ずしも明らかでございませんが、ただいまの御質問政府の立場を十分御承知の上でしたものと考えておりますので、今後その具体的内容が明らかになった時点において判断させていただきたいと思います。  政府としては、今後民間漁業交渉が円滑に進展し、来年六月三十日までの間でできるだけ早く民間協定が締結されることを強く期待しており、私としてもその実現のためできる限りの支援、協力をいたしてまいりたいと考えております。
  295. 安宅常彦

    ○安宅委員 朝鮮が二百海里の経済水域を宣言し、これを実施したということについて、日本は朝鮮側に対抗して、東経百三十五度以東はいままで日本はソビエトといろいろな関係で二百海里を宣言している、ですが、以西はそういう対抗手段をとらない、こういうふうに断言できるでしょうか。
  296. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 わが国と韓国、中国との間では現在それぞれ漁業協定が締結されており、それに基づき円滑な漁業秩序が保たれております。この関係を維持する見地から、両国に関連する水域の日本海西部等にはわが国の漁業水域を設定していないところでございます。今回、朝鮮民主主義人民共和国の経済水域が設定されましたが、朝鮮民主主義人民共和国の漁船は、現にわが国の二百海里に相当する海域で操業していないことでもあり、日本海西部等にはいままで同様漁業水域を設定する考えは現在のところ持っておりません。
  297. 安宅常彦

    ○安宅委員 第五番目に、これは私ども向こうと非常にやり合ったのでございますけれども、黄海の水域ですね、これはフグはえ縄は全滅になるのです。それから以西底びき網、これも全滅です。絶対入れません。これは軍事警戒線というものを朝鮮側が出したために、あそこは中国との中間線になっているのですか、そのために全滅なんです。日本海側も三〇%以上くらい率直に言ってダウンする。大体、総トン数の考えでいくと百トンから百十トンくらいまでで、それ以上のものは困るという制限も実はありますから、そういうことに対する保証というものは政府考えておられるのかどうか、御質問したい。
  298. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 あの水域で操業しておりました漁船で操業できないものも確かに出ております。今後における操業の状況、その影響の度合い、そういう点を勘案しながら今後検討してまいりたいと考えております。
  299. 安宅常彦

    ○安宅委員 どうもありがとうございました。大変好意ある答弁に敬意を表します。  私は次に、いまいろいろ問題になっております私立の医科歯科大学の問題について、これは教育という立場からも、それから日本の国民の、何といいますか、教育がここまで腐敗し、そして金を出さなければ大学に入れない。私は田舎におって、東京の子は幸せだって言うんです。田舎の選挙民の人はね。たとえば中学に入る際も、豪雪地帯でございますから、下宿をしなければならない、高等学校へ行くときはもっと遠いところへ行かなければならない、大学へ行くときは東京に行かなければならない。東京の人は相当生活程度もよろしい、電車で通学すればいい、大学もたくさんあるじゃないか、これでも教育の機会均等かという質問がうんと出るんですね。もう高等学校あたりでおやじのすねは骨だけになってしまうんですよ。だから、そういう時期に、これは五千七百万出したってのがおるんですね、このたびのいろいろな問題になっている医科歯科大学の試験に合格させるための寄付金ですね。そんなばかなことがあっていいのだろうか。金がある者しか大学に入れないし、金のある者しか、頭がばかでも歯医者にそういう人だけがなる。隣の歯を抜いてみたり、えらいことになるのじゃないか、こんなばかなことがあるかというのが率直な庶民の感情だと思いますね。  これは高度経済成長時代に、急に昭和四十五年ころから歯科と医科の私立大学というのはどんどんできてきましたよ。こういうことが特徴なのですけれども、そしてそういう時期に粗製乱造された私立の新設医科歯科大学、こういうものに限ってまた不祥事件が起きているわけですね。巨額な寄付金徴収、何か金とコネで左右される入学試験、そして水増し入学や大量留年など、差別と選別の受験体制でゆがめられた教育の姿というものを、私は、ここまで教育が荒廃したか、日本の国民は、金さえあれば何とかなる、そういう哲学を持つようになったのか、これは大変なことだと思っております。これはすべて私は――私どももいろいろ力が弱くて、あなた方に意見をしたりなにかしても通らない、こういうこともありますけれども、自民党政府の責任だと私は思っています。  どうかひとつこういう意味で、あなた方の文教政策がもたらしたこういう教育の立場というもの、あり方というものをぜひひとつ、人間の生命を扱う医者を育てる教育の現場なのですから責任は重大だと思いますが、そういう高度経済成長というものに対する考え方というのは総理もときどき言われますけれども、そういう責任をお感じになりますかどうか、明確な答弁をひとついただきたいと思います。
  300. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 高度成長下で日本の社会に、金が世の中を支配するというか、金さえあれば、物さえあれば、こういうような思想がとにかくはぐくまれてきた、これは非常に残念なことなんだ、これを是正しなければならぬということを私は常日ごろ強調しておるというわけであります。
  301. 安宅常彦

    ○安宅委員 それは私は不満ですけれども、まあいいでしょう。  これは文部大臣にお伺いいたしますけれども、こういう新設の医科歯科大学というものを安易に許可した。私は、安易に許可したというよりも、インチキだということがわかっていて許可したのだと思っているのですよ。不正な申請が行われていることがわかっていた。また、非常に統計上はっきりしているのですよ。四十七年なんというのは医科と歯科を合わせたら十ですな。十の大学を審査しなければならない。文部省の管理局ですか、できやしないと思うのですよ。一生懸命やった、一生懸命やったとどこの場でも弁解するのですね。参議院の九月十三日でございましたか、宮之原さんの質問した内容、議事録全部読ましていただきましたが、全部そういう答弁です。そんなことはできっこないですよ。だから、全部調べないで、見せ金だということも見抜けない。いまの時代に、本物の金か自分の金か、見せ金でこの男は申請しているかということを見抜けないようだったら、━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━この人は日本の文部行政を預かるような、そういう官僚としては私は失格だと思うのです。  こういうことがある。そこに四十七年がピークなんですね。こういう非常に特徴的な数字にあらわれているのですが、どうかひとつ、実際にいままでの監督が十分でなかった、こういうまた責任もありますね。なかなか、わかっておってもその対処の仕方がマンマンデですよ。それから不祥事件が発覚しても、国民の前に疑惑を解明するという積極的な姿勢が見られないですね。そういうことでもって、いま文部大臣になっておられる海部さん、どうかそういうことについてあなたの抱負なり責任の問題なりについてお伺いしたいと思います。
  302. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 私立医科大学、歯科大学の一部が社会的な批判を受けるような不正事件を起こして世間をお騒がせしておることはまことに遺憾なことだと考えております。ただ、当時基準を定めて、その基準に合致するかどうかの審査は、文部省といたしましては当時いいかげんにやったものとは考えておりません。そのときはそのときなりにいろいろな基準に合わせて一生懸命やったものと私は判断いたします。そういう報告も聞きました。しかし、今日のこの現状を振り返ってみますと、たとえば、その基準自体に問題がありはしなかったか、あるいは一年間で審査する方法に問題がありはしなかったか、あるいは新設校を六年間アフターケアと申しまして実地に調査してきましたが、それが短過ぎたのではなかろうか。いろいろな面を率直に反省すべきは反省をいたしまして、それをたとえば十年に延ばすとか、あるいは現在もまた設置基準の資金の額を上乗せするとか、いろいろな改革を考えて、今後こういった事件が再び起こらないように、いま鋭意改善努力をしておるところでありまして、担当大臣としては歯学協会、医学協会、私立でありますけれども、協会自体もこの事態を厳しく受けとめて、改善に協力をしてほしいという方向で取り組んでおるところであります。
  303. 安宅常彦

    ○安宅委員 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  304. 田中正巳

    田中委員長 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  先ほどの安宅常彦君の発言中、もし穏当でない言辞がありますれば、委員長において速記録を取り調べの上、適当な措置をとることといたします。御了承願います。  安宅君。
  305. 安宅常彦

    ○安宅委員 私は時間もありませんから、簡単に触れますが、一番先に、三億円がどこからともなくだれかが預かっておいて、だれかが持っていって盗まれたり、これはおかしな金の管理をしているなあという国民感情、そういう中で、正確に三億円ではないでしょうが、そういうものが、ある預かっている人からどこかに渡ったり、いろいろな事件を起こしている愛知医大の問題について、これはやはりただいま言ったように昭英振興会から大金が奪われる。どうもどろどろした側面をこの大学は持っている。これは非常にあきれるほかないですね。奪われた金というものは子供の父兄からの預かり金なんですね。この大学のことだけじゃなくて、いまたくさんいろいろな雑誌やあるいは新聞などでもう書き立てられているのですね。ここまで医学が、あるいは教育が腐り果てたということになりますと、こういういいかげんなことを起こさせないためにも文部省は徹底的に疑惑を解明する、こういうことに大きな思い切ったメスを当てるべきだと私は思うのです。  特に、当時大臣ではなかった海部さんが、地元の大学は当然つくるべきだ、一生懸命協力した、これは九月十三日の議事録をずっと見てみたら、そういう弁明をあなたはしています。私もそれは当然だと思います。だけれども、当時の西岡政務次官に言ったら、それは資金計画がめちゃくちゃだから手を引いた方がいいんじゃないですか、これは許可にならないでしょうという意味のことを言われて、ならないと私は思っておった。そういう感じがしておった。ところが、この大学は次の年というまでに至らないような短い期間に許可になったんですね。だから、それは幾らそのころ大臣でなくても、ちょっと不思議に思わなかったんだろうか。だから私は、いま大臣になっているからあなただけ申し上げるのです。いろいろな協力をした人がたくさんおられるようですけれども。こういうことについて、あなたは不明だった、あるいはまた私がやったのは何も悪いことはしていないけれども、協力の仕方がどうもやはりいろいろ御迷惑、そのために現在の状態になって迷惑をかけている――私だったら、そこまでいくんだったら、そういう大学にならないように、金なんかかからないような、何とかしてりっぱな、私立大学の中でもいいような方向に、地元の大学だったら最後まで必死にタッチするという方法だってあると思います。いろいろな批判はあると思いますが、あなたは、そういう意味を含めて反省をなさる、あるいは遺憾であるというふうな態度をおとりいただけないだろうか、こう思っているのですが、いかがですか。
  306. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御指摘のように、地元に医科大学の設立計画ができました当初、私は地元の議員として賛成をし、協力をいたしました。しかしその途中で、御指摘があったように、資金関係に足りないところがあってこの資金が何とか補充されなければいけないということで、私は当時資金面の御協力までする能力も立場もございませんでしたので、結局、協力者にはなったが、できる前に身を引かなければならなかった。なぜもっととことんまで協力しなかったかという御指摘を受ければ、それはそういう考えの相違があると申し上げなければなりません。  ただ、誓って、地元議員として節度を守った行動に終始してきたつもりでありまして、政治家として疑惑を受けるようなことは絶対にいたしておりません。しかし、きょう今日この立場に立って振り返ってみますと、私が当初協力者になりながら、大学が設立されたときはもう関係がなくなっておったというようなこと、あるいはきょうこうして社会にいろいろな御迷惑をかけておるということ等を顧みますと、私としては慎重を欠いたのではなかったか、こう考えて、今後この反省に立ってみずからを戒めてまいりたい、こう考えております。
  307. 安宅常彦

    ○安宅委員 反省をするということですね。――うなずいておられますからそういうふうに受け取ります。  それで、これは私の言い方が非常にかっとくるような口の立ち方があるのですけれども総理、さっきも言ったように、三千万も五千万もかかるような大学に、息子をどうかひとつ頼みます。代議士さんですから何とかなるでしょうという期待を込めて頼まれる、支持者から頼まれたときに知らぬなんて言えないと思います。ただ、節度というものを考えれば、三千万も五千万もかかる大学だとわかっておって頼まれたら、よし、やってやると言うことはおかしいと思いますよ。私だったら、そんな金のかかる大学になぜ子供を入れるのですか、そんな金があなたおありなんですか、そういうことを忠告し、あるいは言って、そんな大学でない方をお選びになったらどうですかと言うのが普通のような気がするのです。ところが、私らとちょっと違うのですね。自民党の方々で名前が出ているのがあるのですけれども、これは悪いけれども福田さんの秘書さんなんかも進学相談に乗っています。だけれども、結論は金銭絡みでやっていることでもないし、謝礼を持ってきてくれる人はいません。とにかく、何かもらっているんじゃないかと初めから疑われていることの答弁しかだれもみんなやってないのですね。  はなはだ失礼だけれども海部さん、九月十三日の議事録を見ますと、文部大臣としてあなたはどうなんだということを宮之原さんが聞いても、私は潔白であります。そこだけ一生懸命弁解しているのです。これは後であなた読み直してください。そういう立場に立つとそういう言葉になるのかもしれませんが、みんなそうなのです。たとえば杏林大学というのがあるのです。ここには、福田さん見てください、福田さんから頼まれたんだとちゃんと書いてあるのがあるのです。だから総理、これはどういうものでしょう。私らもやはり頼まれます。だけれども、そういうときに、なぜ三千万も五千万もかからなければならない大学があるのかということ、文部行政なり文教政策というのを考えて一番先に頭に来るのはそっちの方であって、この子を入学させるというよりも、政治家というのはそっちの方に頭が向くのが本当じゃないかな、こう私は思うのですよ。もちろん、あなたがやったのじゃなくて秘書さんがやったと答えるだろうと思いますよ。だから秘書さんにもそういう教育をやっておって、余り金のかかる大学だったら引き受けるなよぐらいのことは、自民党の政治家、しかも総理、自民党の総裁なんですから、おっしゃって、教育されていった方がいいんじゃないでしょうか。名前が出ているのは残念ながら自民党の方々だけです。どうですか。
  308. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、入学というものは非常に厳正なものでありまして、金で動かされるというようなことはない、こういうふうにすると思っておりました。ところが、最近どうも金で点数が評価されるのだというような話をいろいろ聞きましてびっくりしているようなわけでありますが、私も代議士でございますから、ときどき父兄の人から、うちのせがれをどこへ入れたい、紹介してくれなんというようなことを頼まれることがあるのです。そういう際に、うちの秘書なり、私が書いたこともありますが、名刺をその学長でありますとか理事長でありますとか、そういう人に書くということがありましたが、最近のようにこんなに金がかかるというようなことを聞いてみますと、名刺を書くにもよほど気をつけなければならぬな、こういうような感じがいたします。
  309. 安宅常彦

    ○安宅委員 そういう言い方もまだおかしいのですよ。名刺を書く場合に、私が一国の宰相の時期になぜこんな私立大学を、こんな制度日本でつくらなければならなかったか、つくられてしまったのかということが一番先に頭に浮かぶんじゃないかという意味のことをさっきから盛んに私は言っているんでございますけれども、いかがですか。
  310. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 どうも入学にこんなに寄付金が要るという状態は異常だと思います。これは是正しなければならぬ、そのような考えです。
  311. 安宅常彦

    ○安宅委員 これはまあそれぐらいにいたしまして、もっとすごいのがあるのですよ。松本歯科大学だとか杏林だとか、それから愛知だとか、いろいろ問題になっておりますけれども、すごいのがあるのです。しかもこれは日韓絡みでとんでもない学校があるのですが、福島県の郡山市に東北歯科大学というのがあるのです。  これに入る前に、ちょっと文部大臣、あなたのところの塩津さんという管理局企画調整課長が来ておられると思いますけれども、その人に直接質問しますからお許し願いたいと思うのですが、「東北歯大も〃架空寄付金〃」、設立資金の十億は協力者の口座を利用してインチキをやった、発覚を恐れて口どめ文書までできているという記事がきのうの読売新聞に出ているのです。私、このいろいろなあれは調べておったのですけれども、それはそれとして、塩津さんという方は新聞記者に対してどういう回答しているかといいますと、「松本歯科大でも同様のケースがあったが、東北歯科大については初耳」、これが一つ。企画調整課長として初耳だったのかどうか。それから「国会終了後にでも事実関係をただし行政指導を検討したい」。何ですか、「国会終了後にでも」なんて、どういう意味で「国会終了後」がここに入ってくるのでしょうか、弁明を願います。
  312. 三角哲生

    ○三角政府委員 別に課長としては他意はございませんで、いろいろ書類等の調べに時間がかかりますので、そういう表現をしたというふうに聞いております。
  313. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは重要なことです。何もこの人を首にして、後に残る妻や子が路頭に迷うなんてところまで私はやるのじゃないのですよ。しかし、国会終了後にでも検討したいとか、しかもこの問題は文部省は事実の調査もしているし、あるいは検察庁が捜査段階に入るような態勢にあるということは、毎日毎日新聞に出て知っているはずですよ。初耳だ、しかも「国会終了後にでも事実関係をただし行政指導を検討したい」、えらいことを言う。これは総理大臣みたいな答弁だ。この「国会終了後」とは何だとぼくは聞いているのです。文部大臣、かわって謝ってください。これ以上言いません。そういう文部省のあり方がおかしい。
  314. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 ただいま起こっておりますいろいろな事態を、呼んで事実をきちんと調査をして事実関係を明らかにするようにということは、私から管理局長にも指示をいたしました。ただ、国会中はいろいろと答弁資料の作成とかその他の仕事もございますので、ついそのように書かれる答えをしたかと思いますけれども、できるだけ早くするように処置をいたします。
  315. 安宅常彦

    ○安宅委員 まあいいでしょう。  あと犬丸さんという人がおりますね。これは何もあなたが答弁しろとは言いませんが、先ほど言った宮之原委員が参議院で質問されました九月十三日の議事録の十一ページから十三ページの若干の部分などについて、守秘義務であるとか、そういうことについて、議員というものに対して、何かおまえさん知らないのはあたりまえだ、こっちさえ知っていればいいんだと思われるような発言が非常に多いのです。後で私は大臣にだけは申し上げておきたいと思いますが、きょうは時間がありませんからざっと大まかなことを言うだけですけれども、今後衆議院のあらゆる委員会で、あるいは参議院でも日本社会党はこれを追及したいと思っております。そのときのために、犬丸さんという人の発言は、ただいまページ数も言いましたが、重要な意味で留意をしておきたい、こういうことだけ申し上げておきます。  それで入りますが、その入る前にちょうどおもしろい資料があるのです。これは法務省から出していただいたのですが、お医者さんと看護婦さん、あるいは研修をなさっている看護婦さん、学校に入っている人も含めてですが、医師、歯科医師が昭和四十六年ごろからピークになる四十七年、四十八年とずっとそれと同じような形で急激に韓国から流入してくるのですね。看護婦さんの場合は、四十五年はゼロだったのが、四十六年が四十七人、四十七年が六十二人、四十八年が百五十九人、四十九年が百三人、五十年になって減って四十五人、五十一年は十二人、こういうようにちょうど日韓癒着というか日韓の医学癒着というか、労働者低賃金という意味の癒着というか、そういうものがはっきりしてくる。お医者さんの場合でもそうです。四十五年はゼロ、四十六年は五、四十七年は十二、四十八年は七十九、四十九年は五十、五十年は四十七人、五十一年は三十三人、五十二年は三十人、急激にふえている。その中で、この郡山の東北歯科大学というものがある福島県は、四十八年から急にふえまして、四十八年が五人、四十九年が五人、五十年が十人、そして五十一年は五人、つまり、日本の県の数からいったら、ここは特異的に多いのですね。これは看護婦さんだって同じことですよ。ですから私は、このことについてこれから申し上げることは重要な意味を持ちますから、ぜひひとつ政府側は誠意を持った答弁をしていただきたい、こう考えております。ただ、時間がありませんから、私、ずっと申し述べまして、捜査に入っているはずの検察庁、それから新聞や何かばかりではなくて、投書も来ている。それからそういういろいろな訴えがある。そういうことを受けているはずの文部省が、時間がもうないので、いま私がずっと読みますから、こういうことを全部または大部分、あるいは一部について確認をしているかどうか、後でまとめて答弁をしていただきたいと思います。よく聞いていてください。  法務省にお聞きいたしますが、四、五日前に郡山市の暴力団の一斉手入れで、この郡山市の依居一家に属する今井喜三郎という者が恐喝事件で逮捕されている。この者は後で出てくるのですけれども、五十年の十月十五日ごろ、この大学の理事長影山四郎などと一緒に、四十数名の中の一人として韓国を訪問し、韓国の慶煕大学、そういうところに一千万円を寄付する行為をとった。そのときに金をみんなで一緒に、分担して持っていったのかわかりませんが、外為法に違反して金を持っていかれたのですが、その中の一人と思われる同名の者であるということをお認めになりますか。法務省、ちょっと答弁をしてください。
  316. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 一度にたくさんのことをお尋ねいただきましたので、混乱が生ずるといけませんからお断りいたしますが、今井喜三郎という者が十月十四日に検察庁へ身柄で送検されて、現在勾留、取り調べ中であることは事実でございます。  それから、先ほど御指摘の昭和五十年に、この東北歯科大学の理事長が四十数名とともに韓国へ渡りまして慶煕大学を訪問したことも事実でございます。どうやらその四十数名の中に今井喜三郎という者が入っていたようでございます。
  317. 安宅常彦

    ○安宅委員 ちょっと局長にお願いをいたしますが、その名簿を私出しまして、確認をする意味であなたの方の部下の方にお願いしたのですが、返ってこなかったものですから、ちょっと手配していただけませんでしょうか。私の名簿をやっているのですが、だれかちょっと連絡してください、法務省の方に。  本論に入ります。  文部省、この大学のことで、五十一年の十一月二日付の陳情投書というのでしょうか、文部省にいろんな事柄について入っているはずでございます。その内容には、影山四郎という理事長が五十年七月に韓国政府に一千万円の防衛献金をしていること、それは学校の公金ではないかという、そういう投書があるのではないか。あるいは韓国の京郷新聞、七五年の七月十一日付の新聞には、写真入りで「日本人影山晴川」、これは書道をやる人だそうで、雅号なんだそうですか、影山四郎が日貨一千万円をわが社を通じて、この新聞社を通じて、防衛誠金というのです。向こうは。これを本社李桓儀社長に伝達しているところである。写真入りで出ているのですね。こういうことをやったり、あるいは台湾などの学校にも出しているし、その他、先ほど言った十月ごろの慶煕大学にも一千万円献金している。寄付している。こういう金の出どころなどについておかしいのではないかという陳情が来ていると思われる。しかも、ここでちょっとよけいなことを言ってまた怒られるかもしれませんけれども、ぜひ総理に見てもらいたいのですけれども、これは配っているはずですね。総理のところに行っていませんか、この写し。ちょっと見てください。――そうです。この新聞の写真を見てください、総理。非常に重要なんです。ここの写真の説明は、いま言ったようなことが書いてあるのです。日本の福島東北歯科大理事長影山晴川氏が日貨一千万円を本社を通じて云々というように書いてあるのですね。さっき言ったような言葉で書いてあるのですが、この手渡ししているもの、目録じゃないです。これは。私、一千万円なんて持ったことがないからわからぬけれども、ちょうど一千万円ぐらいの厚さでしょう、これは。どうですか、皆さん。そう思いませんか。私、ぴんときたです。  これは、大蔵省には外為法の違反ではないか、こういうことを含めて、ひとつ後でまとめて調査をしているかどうか、しているのだったらしている、していなかったらしていない、気がつかなかったら気がつかなかった、こういう簡単な答弁をしていただきたいのです。  次に、この影山みずから大株主になって、自分の長男を取締役にして三協開発株式会社をつくって校舎、講堂、体育館などを水増し発注したことにつき、見積書を証拠として、文部省に投書が行っているはずであります。その他、私文書偽造行使などの内容も含まれているはずであります。さらに、この投書に基づく事情聴取、私大設置審議会などでも何らかの措置をしたはずであると思いますが、さっきの初耳という話と関連して、やっていると思いますが、全然知らないのかどうか、後でまとめて答弁をしていただきたいと思います。  さらに聞きますけれども、設立認可基準を満たしていない事実を文部省はいまの段階で認めるのか。たとえば自己資金、土地などを含めてここに資料として出しておりますが、念書というのがあります。これは明らかに自己の資産でないものをごまかしてやったという明確な証拠です。そのほかに、皆さんに資料として配っておりませんが、契約証書というのがあります。これも売った買ったということにかっこうだけはなっているけれども、そうじゃないんだ。金は後で払うんだということを書いてある契約証書なんです。こういうものを取り交わしているのですが、こういう証拠もつけて、これも検察庁にはそういうことを告発し、告訴していると思いますが、これは文部省と同時の、同じ意味のことを聞きますけれども、そういうことを両方とも知らないかどうか。したがって、これは不正な申請をしているということになることを、私は資料をもって皆さんにいま申し上げたわけであります。  さらに、入学を条件とする寄付金に関するやりくりによる自己資金の操作など、昨年の二月ごろと思うのですが福島地検に、これを中心としていやがらせを受けたとか、いろんなことを含めたものが告訴されているはずでありますが、これは法務省は御存じでございますか。  それから告発者は、当時準備委員会の事務局長であった本郷勝也という人と、当時国会議員であった八田貞義、利用されて後で首になってしまうのですね、この人は。そのころ同大学の理事長のはずですね。その人たちがこの影山を相手取って公正証書原本不実記載などの疑いということで法務省に告訴、告発をしていることを法務省は認めておられるだろうか。  それから七四年九月十二日、韓国の八・一五光復節、つまり独立記念日ですね、維新民団主催で韓国の舞踊団を呼びまして、同校の講堂で開いているのです。これはきわめて政治的であって、日本の大学の一般的な常識的範囲を超えているのではないかと私は思います。なお、当日は、何者かの要請で、たとえば爆弾を仕掛けられるおそれがあるとか、掛けたとかそういう理由の要請によって警察が大学構内に制私服の警官を警備に当たらせたという事実があるかないか、これは警察庁であります。  それから自治省として、五十一年の三月、郡山市議会で、同大学が郡山の市有地、これはいろいろ説があるのですが、駐車場に使っている部分であるとか、ゴルフ練習場であるとか、あるいは校庭の部分であるとか、私、まだ具体的に行って調べたわけではないので不確かなところはございますが、要するに郡山市から賃貸契約、この影山四郎という人が借りているのですね。長い間市会議員なんかしていろいろなボスだそうですよ。これを自己資産として設立の申請のときに虚偽の報告を出したということが市議会で問題になったことがある。これを自治省は御存じかどうか。  以上の事柄について、文部省、大蔵省、法務省あるいは自治省に至るまで名指しをされたところの方々は、確認はしておらない部分があったら、この部分と言っていただいていいですから、大部分やっているのだったら大部分確認しておりますというふうに答弁をしてもらえば結構だと思います。
  318. 三角哲生

    ○三角政府委員 五十一年十一月の投書につきましては、私ども受け取っておりまして、本年の七月におきます私立大学審議会のアフターケアの際もその投書の件について一々確かめてございます。  なお、その後も学校の関係者から事情を聞いてきたわけでございますが、まず最初の韓国政府の寄付問題についてでございますが、私どもとして聞いておりますのでは、五十年七月に影山理事長が韓国政府の招待で同地に赴きました際に、戦災孤児あるいは身体障害者福祉のために日本円に換算して一千万円寄付を行ったというふうに聞いております。それから、当該の一千万円については、その資金は学校会計から支出されたものではないというふうに申し立てております。  それから次の韓国の慶煕大学への寄付でございますが、これは、東北歯科大学として昭和五十年十月に慶煕大学、これはソウルにある私立の総合大学と聞いておりますが、これと姉妹校の提携をいたしたようでございまして、これに先立って同年五月に植樹代、図書費として五百万円の寄付を行った、これは学校会計から支出されていると言っております。その他、台湾の中国文化学院大学には五十年に、これは理事長個人として三百万円の寄付を行っているということを聞いております。  それから次に仰せになりました影山氏の長男の三協開発云々の件でございますが、影山氏の養子……(発言する者あり)三協ではございませんで協立医療という会社をやっておりまして、それが大学の中でスペースを大学から借用して食堂、売店等を経営しておるということであります。三協の方は、前に三菱建設株式会社の副社長であった……
  319. 安宅常彦

    ○安宅委員 知っているか知っていないか聞いている。
  320. 三角哲生

    ○三角政府委員 この水増し発注につきましては、大学側にこれをはっきりさせるために、この会社の……。
  321. 安宅常彦

    ○安宅委員 そういう投書があったと思いますが、ありますかと聞いているのですよ。
  322. 三角哲生

    ○三角政府委員 投書はございました。  それから認可基準に関連する事実も投書に述べられております。  それから韓国舞踊団を呼び、講堂で催し物を開催したという件については、私どもは了知しておりません。  以上でございます。
  323. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 検察当局といたしましては、前学長等から影山四郎氏らに対する告訴、告発事件を受理しております。その内容は相当部分ただいま御指摘の問題点と重なっております。鋭意捜査中でございます。
  324. 旦弘昌

    ○旦政府委員 外為法関係についてお答えいたしますが、私どもその事実を初めてただいま伺いましたので、調査をいたしておりません。
  325. 三井脩

    ○三井政府委員 同大学講堂での行事に対する爆破予告電話があり、警戒をしたという事実はございますが、日時が違っております。昭和五十年九月二十一日でございます。
  326. 小川平二

    ○小川国務大臣 郡山市から賃貸している土地を自分の土地として云々という件につきましては、自治省は報告を受けておりませんが、調査をせよというお言葉であれば、直ちに取り調べてみます。
  327. 安宅常彦

    ○安宅委員 郡山の市議会で問題になって暴露されたのですから、本当は自治省に報告が来ているはずですよ、大臣。あなたの方まで行かないのだな。みんなたるんでいるのじゃないかな。さっきも文部省、これはかわいそうな孤児に何か寄付したのだと本人は言っているなんてあなた何も私に答弁することないですよ。だって、向こうがちゃんと書いておるでしょう。防衛献金なんですよ。防衛のための献金、これはうんと向こうでいま、はやっているんだ、自主国防を強化するために。向こうでは防衛献金と言わないで防衛誠金と言うのですよ。誠をささげる金だ。ちゃんと韓国の新聞に皆載っている。ごらんなさいよ。そして、わが国に寄付したのだ、日本人影山晴川氏、日貨で一千万円、換銭つまり韓国の金にかえると一千六百三万九千ウォン、それで寄付してくれた。つまり防衛献金をしてくれた会社がずらりと並んでいるのですよ。一番大きい活字で出ているのですよ。それでも孤児に出したのですか。そんな言いわけをしたって、新聞に出ているのです。朝日新聞にも出ているのですから、朝日新聞を見てください。日本の新聞ではだめだと思って、こっちを持ってきたのです。私は知らなかったから、孤児にかわいそうだから寄付したのだという報告が来ているなどということでは、あなた方、だからインチキな自己資産なんかを見抜けなかった。書類でだけ、何か聞いてだけやろうなんという考え方だからいかぬ。綱紀が紊乱しているのではないかということはそこでも出てくる。私はぴんときた。この写真を見ただけで、目録を渡したわけじゃない。ちょうど一千万円の札束の厚さだなとぴんとくるくらい厳重に私は見ているのですよ。それはうそだか本当だかわかりませんよね。キリの箱に入っていた手形だかわからないけれども、これはちょうどいいくらいの厚さですよ。どうですか、そういうところまで警戒心をあなた方がちゃんと維持しながら行政をやらないと、こういう不届きな男は粛清できませんね。よほど私は答弁によっては何とかもっと強い言葉を吐こうと思っておったのですけれども、さらにひとつ私は最後に言いたいのです。  これは外務省に聞きますけれども、五十年の十月十五日ごろだと思います。東北歯科大学理事長影山四郎の一行四十六名の名簿を私はここに持っているのですけれども、実際は四十二名だという現地からの調査結果が来ていますが、実はこういう名簿があるのです。それをあなたのところの部下に、こういう人は本当に行っているかどうか、行かなかったのはそれではだれかということをぜひ確認してもらいたいと言ったら、時間がなくて間に合わなかったという返事がただいま参りました。それで言いますけれども、そういう連中が何人かはわかっているのじゃないかと思うのですね。この人が行っているということを旅券などを通じて外務省はつかんでおられるかどうか、それを答弁願いたい。
  328. 賀陽治憲

    ○賀陽説明員 お答え申し上げます。  調査の御依頼をいただきまして、鋭意調査いたしました。約二十名について確認されておりますが、残りについてはさらに調査を進めた上で御返事させていただきます。
  329. 安宅常彦

    ○安宅委員 この中に、十七人目のところに瀬戸功という人がおります。ミスター・I・SETOと書いてある。神奈川県小田原市曽比三千二百二十三番地と書いてあるのですが、この人の職業はあなたの方で調べていませんか。
  330. 賀陽治憲

    ○賀陽説明員 ただいまの点は、いま調査をさせていただいております。
  331. 安宅常彦

    ○安宅委員 私の調査では税関の相当えらい人だ、こういうふうに聞いております。調査を願います。税関に勤めているえらい人だという話なんですが、うそだったらこれは悪いですから、御調査を願います。  いろいろなそういう人、さっき言ったように暴力団で恐喝で取っつかまった人もこれに入っているし、それから自分の長男を取締役にして新しい会社をつくって、そこに講堂や校舎をつくらせたその長男もおりますし、相当おりまして、こういう人々がある人の話では一千万円を四十名ぐらいで分割して持っていったじゃないかなどといううわささえ出ておりますから、こういうことは文部省が、警察庁が早く手をつけると、捜査中でございますからあと申し上げられませんと言うとロッキードみたいで大変だから、あなたの方で先にやってもらわないと、投書が来てから一年半も時間が過ぎているんですから、初耳ですなんて言わないで、これももっとあるんですけれども、ただいま申し上げました事柄について大至急調査の上、本委員会に報告をしてもらうことができますか。
  332. 三角哲生

    ○三角政府委員 設置認可の申請に当たりまして自己資金の操作をして、いわゆる資産がないのにあるかのごとくに粉飾をしたというような件に関しましては、早急に調査をいたしたいと存じます。
  333. 安宅常彦

    ○安宅委員 それで、この問題で最後に総理にお伺いいたします。  そのほかにも理事長が大学の助手をぶん殴った事件だとか、これは新聞にも出ていますし、それから文部省にうそ報告いたしまして、教授と助手は要員を充足しているといううそを報告をして、実際は、投書の中にあるはずですけれども、助手なんかずっと七人も欠員になっているということやら、それから先ほど言ったように、あなたの方の塩津さんですかが言ったように、これは読売新聞にきのう載った記事ですから、このことについてなどはすべて入学を条件として前取りした金を全部文部省には自己資金だというふうに見せかけるために、文部省にはわからないようにちゃんと合図してからきちっと答えてくれとか、税金の方は御心配ないようにしてあるとか、そういう文書まで配っていることがだんだん明らかになっているのですよね。そういうことを含めて、初めからおかしな申請をしておった学校である、こういうふうに認定されたときには、これは文部省は――文部大臣もひとつ答弁なさっていただきたいのですが、どういう始末をするものかどうか、私、素人でよくわからない。文部大臣から言ってもらいますか。
  334. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 事実を十分調査いたしまして、それぞれに該当することが判明すれば、そのそれぞれの処置を厳正にとらなければならないと思います。調査をさせていただきます。
  335. 安宅常彦

    ○安宅委員 昭和五十年の年にここの助成金を一たんストップしたことがあるのではありませんか。管理局長で結構です。
  336. 三角哲生

    ○三角政府委員 昭和五十年には補助金の交付を行っておりません。
  337. 安宅常彦

    ○安宅委員 どういう理由でありますか。
  338. 三角哲生

    ○三角政府委員 当時学内で、前学長と理事長の間というふうに聞いておりますが、紛争がございましたので、交付を停止しております。
  339. 安宅常彦

    ○安宅委員 たとえばさっき言った念書ですね、皆さんにお配りいたしましたが、渡辺守、渡辺君子なんという人は地主であるがゆえに理事になっているのですよね。そして、八田さんとの間に名前だけ登記移転したことにして、大体二万四千五百六十八平方メーター、こういうのをごまかして、そしてそれで財産もあるのだというふうに申告しているということが念書で明らかでしょう、それから契約証書でも明らかでしょう。これから調査してなんというものじゃないでしょう。それははっきりしているのじゃないでしょうか。だからそういうときには、もう理事長と学長がけんかしたなんというので助成金切るぐらいですから、こんなのはぶった切るのはあたりまえじゃないかと私は素人なりに考えているのですが、政府の見解はこういうときはどうなんですか。大変大きな問題がたくさん大学にありますが、総理の見解を最後に聞いておきたい。
  340. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 管理運営に問題があれば、どこにどういう問題があったか、やはり具体的な事実を明らかにしてから判断させていただきたいと思います。
  341. 安宅常彦

    ○安宅委員 それだったら、投書はいつ来ましたか、管理局長。私、何回も言うようですけれども、年月日電話で言ったはずです。
  342. 三角哲生

    ○三角政府委員 五十一年十一月十三日に受け取っております。
  343. 安宅常彦

    ○安宅委員 法務省は告訴、告発の手続は受けておりますが、福島県には重大な問題があって滞っておるのです。早急に手をかけたいということは言ってこられているのですが、あなたの方はまだ事実を確かめてなんて、何をとぼけたことを言っているのですかね。投書が来たらすぐ動くのが本当じゃないでしょうか。そして、その後設置審議会ですか、何かが行って事情を聞いているようですよ。そうじゃないのですか。どうなんですか。私大の審議会か、どっちかの審議会です。
  344. 三角哲生

    ○三角政府委員 私立大学審議会のアフターケアの調査に参っておりまして、その際に投書に示されたことについても事情を聴取いたしております。
  345. 安宅常彦

    ○安宅委員 帳簿を調べたりなんかやったのですか。口だけきいたのですか。どっちです。
  346. 三角哲生

    ○三角政府委員 帳簿程度の細かい点まではいたしておりませんが、事情を聞きまして、より民主的な運営をするようにというアドバイスを行っております。
  347. 安宅常彦

    ○安宅委員 民主的な運営と初めからごまかしたのとは大変違うのですよ。安宅みたいな柄の悪い理事長がおった、それは民主的にやりなさい、はい。それと初めから金をごまかしたのとは天地雲泥の差、月とスッポンの違い。あなた、それはまるきり次元が違うことではないでしょうかね。そんな答弁なさらないでください。  文部大臣の見解を聞きます。投書に基づいて本当にそういうことがあったかどうか。
  348. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 私は、投書を残念ながらまだ読んでおりませんので、これは具体的にどういう事実であったのか、調査に行ったときはどういうことを調査してきたのか、その結果、民主的な指導ということは何であったのか、一度事実を十分把握してから答弁させていただきます。
  349. 安宅常彦

    ○安宅委員 ただ、くどいようですが、約一年近くなるのであります。昔、徳川幕府でさえも目安箱なんというのをつくったという。一年ぶん投げておく役所というのはやはりたるんでおると思います。綱紀紊乱をしておる証拠です。ぜひひとつ若さを誇る文部大臣が、これは粛正のためにやらなければならないと思いますが、抱負なり見解を述べていただきたい。
  350. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 できるだけ早急に調べさせていただきます。
  351. 安宅常彦

    ○安宅委員 それがさっき言った反省というものだと思います。  時間がもうそろそろないのですが、この報告は早急に参るということになっておりますし、私はここで結論を出そうなどとは考えておりません。先ほど言ったように、わが党は各種委員会なりあるいは参議院、衆議院を通じまして、この問題、東北歯科大学だけではございません、いま問題になっている歯科大学のあり方という問題、あるいは私立の医科大学のあり方の問題、そういう基本的な教育の腐敗をいかに直すかという問題について、政府と議論をしたいと考えておりますから、どうかひとつそういう意味で、きょうはこれでこの問題は打ち切らせていただきたいと存じます。  さらに、これは実は通告して、時間があったらと思っておったのですが、ちょっとありますから――まだありますね。
  352. 田中正巳

    田中委員長 四十六分まであります。
  353. 安宅常彦

    ○安宅委員 お伺いいたしますが、札幌で冬季のオリンピックでございますか、これを招請をするという閣議決定を行ったのは事実でございますか。担当の大臣は文部大臣ですか、何回も気の毒ですが。
  354. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 一九八四年第十四回オリンピック冬季競技大会、これにつきまして、札幌市長から国際オリンピック委員会に対するオリンピック冬季競技大会を札幌市に招致したい旨の招請状に政府の承認を求める申請が提出されました。これはオリンピック規則において、立候補都市は、その希望があることについて自国の政府確認を求めなければならないとの定めがありますので、閣議の了解を得て、内閣総理大臣の署名のある招請状を国際オリンピック委員会あて今月中に提出し、立候補の意思表示をするために、閣議の了解を求めた次第でございます。了解をいただきました。
  355. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは日本という国ではなくて、つまり、日本のNOCというのでしょうか、オリンピック委員会という組織が国際オリンピック委員会という組織の中に加盟することになるわけですな。その立場で立候補するわけなんでしょうか。そうだと思いますけれども、これはスイスのローザンヌでIOCの理事会があって、そのときに立候補を正式にやる、こういうことになるのだと思いますが、いかがですか。
  356. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 これは開催の都市がIOCに申請するのだそうでありますから、札幌市でございます。
  357. 安宅常彦

    ○安宅委員 そうしますと、結局札幌市で開催するということになって、これはギリシャのアテネで来年五月だかに決定するということらしいのです。私も素人ですから余りよくわかりませんが、その場合に、そのものずばりいきましょう、政府の閣議決定というのは、すべての加盟国を招待いたしますという、そうでなければ開催できないわけですから、そういうこともお決めになったというふうに承っておりますが、そのとおりですか。
  358. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 オリンピック規則におきまして、オリンピック委員会、IOCの正式の決定を見まして開催都市としての資格が発生するわけでございまして、決定いたしますと、実際の開催に当たりましては、IOCの方で加盟国の選手等に対しましてカードが出されます。そのカードの保持者につきましては入国を認めていく、入国の承認ということを前提としてオリンピックの開催地が決まるという関係になっております。
  359. 安宅常彦

    ○安宅委員 この前の札幌オリンピックのときとはちょっと違いまして、当時は台湾が入っているのですが、ちょうどその直後に日中国交が回復しているのですよ。ですから、IOCの加盟国というのは、中華民国という名前で台湾が入っているのですね。だから、そういう国を呼ぶという条件でなければだめなわけですね。そういう閣議決定をなさったと思います。そうでなければだめなんですから。そうすれば、一体日本はそのとおりやるのでしょうか。どういう立場になるのでしょうかね。こういうことは顧慮しないで、まあとにかく立候補しよう、条件がわかっておってもそこだけ、大臣の皆さん、私程度しか知らない方もおられたか何かわかりませんけれども、大体知らないだろう。オーケーだったらオーケーと決まればあっさり、この際大臣なんというのは大まかなところで決めたというところでしょうかね。そういうこともちゃんと頭に入れてお決めになったのでございましょうか。どうですか。各大臣閣下、皆閣議に入っているのですからね。
  360. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 オリンピック委員会に加盟する国の決定はIOCでお決めになるわけでございますが、御指摘のとおり、昭和七年に中華民国が加盟国になっておりますが、三十二年に中華人民共和国は脱退を通知されております。台湾は現在そのまま加盟しておるという状態でございまして、中国のIOCへの加盟問題につきましては、IOCでお決めになるというものでございまして、加盟国につきましては、先ほど答弁申しましたとおり加盟国の選手団等につきまして入国を認めるという前提でオリンピックは開催されるということでございます。
  361. 安宅常彦

    ○安宅委員 オリンピックに参加する国というのは、IOCがその都度決めるみたいないまの答弁ですけれども、そうじゃないのですよ。IOCの規約では、そんなことなっていません。加盟している者は、全部入国する、ある差別はつけない、これが原則。原則どころか鉄則ですよね。だからソビエトがこの間モスクワを引き受けましたよね。そのとき、すべての国について加盟国は招待する、招聘する、こう言ったものですから、中華人民共和国が、台湾どうしてくれるんだ、台湾行くんだったらわしら行けないではないか、同じ社会主義の国ではないか、それこそ社会帝国主義だと言ってかんかんになって大論争になっているのですよ。あなた知ってるでしょう、それは。IOCが決めるんじゃないのです。初めから決まっているのです。だから、いまIOCの幹部が中華人民共和国に何回も行ったり来たりしていますよ。キラニン会長という人が九月の十四日に中国入りしたり、いろいろな記事、最近出ていますね。ですから、台湾というものを認めた、そういうことになりますと、中華人民共和国との日中平和友好条約は時代の流れでありますということがとんでもない大きな障害になるではありませんか。総理の見解を聞かせていただきたいと思います。
  362. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまの問題につきまして八四年、すなわち七年先のことでございますので、それまでにいろいろな変遷も考えられるわけでありますので、現在までのところ立候補という段階でありまして、これから先の検討にいたしたい、このように考えております。
  363. 安宅常彦

    ○安宅委員 必ずそう言うだろうと思っていたのです。それこそ国際信義を裏切るものです。大臣。外務大臣なんです。あなた。考えてくださいよ。ソビエトがそういうふうに言っただけで抗議が来る。キラニン会長がこう言っていますよ。中国をオリンピックから除外しているIOCから抜け出す道があるかどうかを探りたい、必死になって会長動いているのです。こっちは気楽なもので、八年も先の話だからそのときは何とかなんべえさなんという無責任な態度は日本という国は絶対とってはいけないと思います。そういうときには引き受けられないのですよ、現実の問題として。そんな安易なものではない。そういうことについて官僚や何かが素案を出すと、そんなものだろうと思ってばんと盲判を押してはいけないのです。これは非常に国際信義上の問題になります。総理。そのときはそのときでどうなるかわからぬのですけれども、いまのところは何とかなるだろう、ではお引き受けいたしますという態度は一番悪い態度なんだ。国際外交上、こんな下の下の外交はありません。こんなふしだらな外交はありません。そういうものを一体、中華人民共和国が入るんだったら私らはお引き受けいたしますけれども、そうでなくて、いまの台湾のままでございましたならば――カナダなんかもそういうことでいろいろもめましたね、モントリオールのときに。そういう先例もあるのですから何らかの、どちらかの、私、社会党という立場で物を言いません、自民党政府といえども何らかの、どちらかの態度を決定するのが礼儀というものであります。それこそ総理の見解をお聞きしたいと思います。いかがなものでしょう。基本的姿勢の問題です。――もう私、時間終わりですから政府が統一見解を出すように要求いたします。委員長、善処してください。
  364. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 とにかく札幌市が立候補するということになると、今月中にその意思を明確にしなければならぬ、こういう立場にあるそうです。その前に、これほど世界的にむずかしいこの参加国問題、これを決めてからでなければ立候補できないのだといったら、これは立候補のチャンスを失うのですよ。ですから、とにかく立候補はいたしておきます。おきますが、その後の措置につきましては慎重に対処いたします。
  365. 安宅常彦

    ○安宅委員 そんなこと納得できませんよ。そんなことはどこの国だってございません。立候補したという閣議決定をするのが早かったのではないのですか。そこが問題なのです。そういう複雑な事情があるということを全然考慮をしないで立候補を閣議で決定なさったのが間違いなのではありませんか。それだったら、国際信義上できないのですよ。日本の態度を明らかにしなければできない。現在のメンバーの国家はすべて入国を認めますと言ったら中華人民共和国は怒り出す。いや、台湾はだめですと言ったら、今度はIOCが非常に大あわてで、カナダのときももめましたが、いろんなことが起きるでしょうね。結局、そうなったら開催中止になるかどうかということになる。どっちみちはっきりしなければならないのが日本の態度であります。  重ねて要求いたします。ちょうど時間になりましたから、政府の統一見解を今晩じゅうに出していただきたい。これは重要なことです。予算委員長、できないですか。きょうは統一見解できませんか。――これはもうだめだ。ここに座っている。何も引き延ばそうなんて考えているんではない。今晩じゅうに統一見解出してくれればいいのですから。
  366. 田中正巳

    田中委員長 安宅君に申し上げます。  本件は非常にデリケートな問題を含んでいるようでございますので、今晩じゅうとおっしゃられると、これは政府側で回答ができない由でございますので、できるだけ速やかに回答ができるようひとつ理事会でいろいろと協議をいたしたいと思います。いかがでございましょう。
  367. 安宅常彦

    ○安宅委員 私はこんなことでひっかかると思いませんでしたが、これは重要な予算上の問題で、莫大な金がかかることでありまして、これはことしすぐ補正予算関係ありませんが、公害の問題なり環境破壊の問題なり、いろいろなことが重なって論議をして、そして最終的に政府が責任を持って決めた閣議の決定でございますよ。いまさらこれは政府が引っ込めるわけにもいかない。はっきりした態度をとっていただきたいということなんです。予算委員会は総合的なそういうものを論議する委員会ですから、銭金に関係ないことじゃないか、いつだっていいじゃないかという気を起こさないでください。これは政府の外交政策上重要なことですから、今晩じゅうに統一見解を出していただきたい。
  368. 田中正巳

    田中委員長 安宅君に申し上げます。  理事会で協議をいたします。ただし、今晩じゅうに御返事を申し上げるということについては私は困難だと思いますので、そういう安受け合いはいたしませんが、理事会では完全に協議をいたしたいと思います。
  369. 安宅常彦

    ○安宅委員 安受け合いとは無礼だ。何が安受け合いだ。私のことは、そのほかにも不穏当な言葉があると言ったのはあなたじゃありませんか。安受け合いとは何だ。
  370. 田中正巳

    田中委員長 私の安受け合いという意味でございます。
  371. 安宅常彦

    ○安宅委員 おかしいじゃないか。無礼じゃないですか。――それじゃ結構です。それはあなたがそうおっしゃるなら委員長の采配どおり従います。しかし、本当にそういうこと何にも考えないでかっこうよい決定をしなさんなということ、これだけ言っておきますよ。
  372. 田中正巳

    田中委員長 これにて安宅君の質疑は終了いたしました。  この際、去る十三日の坂井君の質疑に関し、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。渡辺厚生大臣
  373. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 先般、公明党坂井議員から御指摘のございました焼却式屎尿処理施設の通知につきまして御報告をいたします。  通知に示しました焼却方式の屎尿処理施設につきましては、市町村からの設置の要望に基づきまして生活環境審議会廃棄物処理部会の専門委員会を二回開催し、その意見を聞いた上で検討を行いましたところ、維持管理費が高額であるなどのため一般的に広く普及させることは好ましくない、しかし、浄化に必要な水の不足、適当な放流先がないなどのことのため、地域的な条件として特別な理由がある場合に限り国庫補助の対象施設とすることができることとして、その旨を都道府県に通知をしたものであります。  この通知の趣旨は、厚生省に協議のあった当該焼却方式の屎尿処理施設を検討いたしました結果、所要の要件を満たした場合には国庫補助の対象となり得るということを知らしめたものにすぎないものでございますが、方式、機械等を明確にするために特定の会社名を明らかにした結果、特定会社の特定機械をあたかも国が推奨しているがごとき誤解を与える余地があったことは否定できません。したがいまして、この通知につきましては、このような誤解を解くとともに、他の会社の機器でありましても、所要の検討を行い、適当であると認められた場合には国庫補助の対象とすることができるものであることを改めて通知させることにいたしたいと考えております。
  374. 田中正巳

    田中委員長 坂井君。
  375. 坂井弘一

    ○坂井委員 御回答いただきましたので、あらましを了といたしますが、私がこの問題を提起したのは、行財政改革の一環としての国の、特に入札のあり方、実は、これは相当いろいろな問題があるわけです。やはり本来的には競争入札、つまり国が物品を購入する、あるいはまた国有財産を売却する、その他いろいろな契約行為は、原則的には競争入札。しかし、それが指名競争入札、それからだんだんと随契がふえてきておる。そういう中で、一つの端的な事例として、実はこのような通達が、業者名、メーカーまで指定して通達を出す。ちょっとこれは常識で考えられぬことですけれども、そういうことが現実に行われておるという一つの事実を指摘する中で、少なくとも今後の行財政改革に当たって、総理も非常な決意を持ってということで言われているわけですけれども、実は、これまたなかなか大変困難な問題です。この困難を克復していくために、行財政改革を本当に実りあるものにするために、やはり身近なところから改めるべきものは改めていかなければならぬというようなことで、一つの事例として申し上げたということなんです。  何か新聞を見ますと、総理が、通達まで出すととはね、これは相当なもんだねなんて、大変感心というか口あんぐりで、あいた口がふさがらぬということだろうと思うのですが、これは人ごとじゃございません。ただ、これは厚生省だけの問題かと言うと、そうではない。各省に同じような似たような問題がある。通達を出すまでもないけれども、行政指導だというわけで、電話でもってある特定のメーカーを指定して、それがよろしい、こういうようなことになりますと、一番問題になってくるのは、今度は市町村、地方自治体、国の方、中央官庁が通達でもってそういう指示をする、ちょっと考えられぬことだけれども、そういう通達が来る。じゃ、われわれの方でも現場の方で、とかくこの不況の折、いわゆる公共事業を推進していこう。とりわけ生活関連公共事業、この消化に当たって地方自治体一生懸命ですよ。そんな中でこんな通達を出されたら、いいかげんに、とにかくまあまあ、まあまあ、あるいは癒着とまで言えるかどうか知りませんけれども、そうした業者との間であるべき厳正な行政の姿というものが損なわれていく。そのことを私は非常に心配するわけだ。ですから、そういう点も十分ひとつ留意されまして、この際ひとつ御提案しておきたいと思いますけれども、各省庁でこの種のようなことが行われていないかどうか、改めて一度点検される必要があるんではないかということをひとつ御提案して、総理から御答弁をいただきまして一応終わりたいと思います。
  376. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 坂井さんのおっしゃることは、これは一々ごもっともなことでありますから、さようにいたします。
  377. 坂井弘一

    ○坂井委員 わずかな時間ですからあれですけれども、このメーカーが特に優秀であるとか、これに限らなければこの種の屎尿処理というものはできないんだというのではまたないんですね。ほかにも業者はあるのですよ。私の方で調べたらメーカー五つあります。この通達を出しました、指定されましたメーカー以外のメーカーの機械を使って、そして非常にうまく運転しているところもあるのですね。むしろほかの方がいい。きのう、おととい、私の方へ地方自治体から実は電話が殺到しておりますよ。私の国元からもあるのです。これ以外のところを使っているんだ。それで、国から通達が来た。通達の来たメーカーと、それからまた別のメーカーと比べていろいろ実験してみた。別の方がよろしい。それがいま正常に運転されておる。指定したメーカーは、実は第二プラントは欠陥品で、腐食をした。いま修理しています。いずれも特許をとっているのです。五つある。非常に優秀なものができておりますよ。そういうこと等も考えますと、これは一行政の課長がこんな常識で判断され、できないような通達を、決して課長の裁量でしたのではない、やはりいろいろな政治的なといいますか、そういうものがその背景にうごめいておる。その辺の姿勢を正しませんと、行財政改革だと幾ら号令をかけてみたとて、実際問題として役所の課長さん、現場に実際当たっている役人の皆さん方、非常にお困りだ。  言いたいことはいっぱいある。実情もいっぱいある。しかし、そのことについてはあえてきょうは申し上げません。したがって、そうした点もこれはひとつ十分お考えの中に入れていただいて、みずからの姿勢も正し、行財政改革の本当にあるべき方向を見出すためにも、これをひとつ大きな教訓にしていただきたいということをあえて強く要請をいたしまして終わりたいと思います。
  378. 田中正巳

    田中委員長 次に、去る十一日の小林君の質疑に関し、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。鳩山外務大臣
  379. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 昭和五十年四月二十三日の衆議院外務委員会におけるアジア局長答弁につきましては、日中共同声明第七項の冒頭に、日中正常化は第三国に対するものではないとの趣旨を明らかにしているとおり、覇権条項の問題は、わが国としては、わが国と第三国との関係や、第三国間の関係とは全く関係なく、もっぱら日中両国間の問題として処理すべきものであると考えております。したがいまして、アジア局長答弁については、説明が不十分であった面もあるやに存じますが、政府としては、日中条約の問題はかかる見地に立ってその締結を図るべきものであると考えておりますので、御了承をお願いいたします。  今後の条約締結の方針については、再三申し上げているとおり、政府としてはできるだけ速やかに双方の満足する条約を締結すべく努力を重ねてまいる決意であります。具体的な段取り等については鋭意検討を進めており、ただいま御説明申し上げる段階にはありませんが、私といたしましては最善の努力を払い、国民の理解と支持のもとに一日も早く条約が成立して、日中友好の基盤が完成することを期したい所存でございます。  以上でございます。
  380. 田中正巳

    田中委員長 小林進君。
  381. 小林進

    ○小林(進)委員 私の質問に対してただいま外務大臣から御答弁がありましたが、私はいまの御答弁はいささか前回の答弁よりは前向きであるということだけは認めるのにやぶさかではございませんが、まだ二、三疑点が残るところがございますので、あえてこの問題をひとつ総理に御質問をして、明快な回答を得たいと思うのであります。  第一点は、御承知のとおり、外務省元アジア局長、いま聞きましたら、審議官で相当高位の地位にいられるそうでございますが、この人が覇権問題を解説をいたしました。いま外務大臣の言われたとおり、元総理大臣、それから元外務大臣、官房長官等が中国へ行かれて、この日中共同声明の第七項というものをお決めになってきたが、その第七項の冒頭に、日中正常化は「第三国に対するものではない。」ということを明確に言葉を言って、そして二つの国はこれからひとつ覇権国家には反対をしよう、覇権国家にはならないことにしよう。特に日本に対しては、アジアの諸国が侵害を受けたという、日本の帝国的な侵略のもとに大変大きな迷惑をかけて、いまなお経済大国になった日本が再びアジアの諸国を侵略してくるのではないかという懸念に立っているのだ。その意味においても、日本は再び覇権国家にはならないということを明確にしようという大変筋の通った共同声明、覇権反対の明文を列記してこられた。その列記してこられた文章を、いまも言うように高島アジア局長が、この覇権反対というものは、すなわち米ソ両超大国を目標にして言った言葉である。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕 両国がどう考えようともわれわれは――われわれはという表現で、高島個人ではない。われわれはという言葉には外務省という言葉を裏づけしている。外務省は、両国がどう考えようと、これは二つの、いわゆる米ソを目標にしたものであると解釈しているという答弁があった。これは、この条約を締結をせられた内閣それ自体の行動を否認することであり、田中総理、大平外務大臣、二階堂官房長官の条約の本文趣旨そのものを否定するような、実に不穏当な言葉なのでありますから、私は了承できないということで外務大臣答弁を求めたのでありますが、そのときに外務大臣は、いや、あれはもう古いことでございまして、いまは考えが違いますなどと言って、古きに名をかりてそれを軽く流そうとしたから、私は了承できない、正確な答弁を持ってこない以上はこの予算に幕を引くことはできないと言ったら、いまこういう答弁書をお持ちになってまいりました。  そこには、確かに、アジア局長答弁については説明が十分ではなかった、これは十分でないのじゃない。実は故意にこれは曲げたのでありますけれども、私にも一片、少々武士の情けがありますから、まあまあそこまで追い詰めぬでも、将来に禍根を残すようなことはない、ここで精神を入れかえてりっぱにいくのならば、武士の情けでおさめてやろうかという気持ちもあるのでありますけれども、しかしこういうことをしばしば繰り返されたのではたまりませんので、もはやこの問題はこれでおさめるというきちっとした言質といいましょうか、政府の最高責任者としての総理大臣の見解をここでいただいておかないと、私はまだ安心できませんので、ここで御答弁を願いたいと思うのであります。
  382. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日中共同声明の解釈の問題のようでありますが、これはいろいろいきさつがあったようであります。しかし、ただいま福田内閣のこの問題についての解釈、それはただいま鳩山外務大臣からお答えをしたとおりである、このように御理解願います。
  383. 小林進

    ○小林(進)委員 私が総理にお伺いいたしておりますのは、実はこの覇権問題に対する解釈をお伺いしているのではないのであります。総理は頭脳明晰で、戦後最大の明晰な総理だと私は思いまして非常に尊敬をいたしておりましたが、どうも最近お疲れになっておるのか、だんだん総理答弁に少し曇りが出たようでありまして、一歩、二歩ずつ後退をせられた。内閣を創始された当時の三、四カ月当時のあのクリアな答弁がどうも返ってこない。これはいささか健康を害されているのではないか、頭脳に曇りができたのではないか。いかがでございますか。大丈夫でございますか。すべからく明確にわれわれの質問を御理解、御判断ないただいて、さっさっと快刀乱麻の御答弁をいただくように私はお願いをいたしたいと思うのであります。  私が聞いているのは官僚なんであります。高級官僚と称する者が、せっかく政府の最高首脳部、政治の最高首脳部がぴしっと決めてきたその精神、その意思を巧みにこね回して、右の解釈でいく素直な解釈をみんなひん曲げて左へ持っていく、そして国の政治をおかしな方向へ持っていくというこの習性を、内閣総理大臣あるいはここに並んでいる最高の首脳部である各省大臣は――そういう官僚のひね曲げた、大臣の趣旨までも曲げてしまうようなこの危険、これをわれわれは官僚政治と言うのであります。この官僚政治の弊害を二度と繰り返さないようにとどめていただかなければならぬぞというのが私の質問の趣旨なのであります。  あえて、これば外務省だけじゃございません。事のついでに申し上げますが、このたった七日間の審議の過程においてわれわれ一番問題にしたのは何でありますか。いまも問題になったのは何ですか。やはりまず文部官僚だ。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕 文部大臣はそのために頭を下げたり、青くなったり赤くなったりしておりましたけれども、わが同僚安宅君が言っているのも、文部官僚がいかに大臣の趣旨を間違えて、勝手ほうだいなことをやっているかというその質問で終始いたしました。  きのうも私は運輸大臣質問をいたしました。運輸大臣への質問の趣旨は何ですか。運輸大臣は、いわゆる公営競技でありますギャンブルに対しては、あくまでもその弊害を除去して、公正妥当に国民の世論にこたえるために私は誠心誠意を尽くす、ことしの三月から繰り返し繰り返し運輸大臣答弁しておられた。その答弁の陰に回って、その下の運輸官僚は何だ。大臣の意思とは全く逆のように、いままで運輸省管下にあるギャンブルはいささかも間違っておりません、りっぱに整整と行われております。改良する余地は一つもない、まことにりっぱでありますという、これ称賛、賛嘆をする、そういう主張を一回ならず二回、三回と週刊誌に述べているじゃないか。そうでしょう運輸大臣。これなども運輸行政、自分の指揮下にあるそういうギャンブル行政に対して、大臣の意向とは全く違った方向へ官僚が気楽に答弁をしている。そして国の政治を誤っているじゃないか。それを今度は私が、これじゃ大臣の意思と反するから、運輸官僚それでよろしいかと言ったら、何と言った。私は一生懸命にその新聞の取材に応じたのでありまするけれども、私の取材に応じたとおり週刊誌が書いてくれなかったんだから、私の責任はありませんと言って、一つも反省しないで逃げている。これが官僚の姿勢です。これをもし大臣が擁護することがあれば、私はきのうは了承できないと思ったが、厳重に私は訓戒を与えた、いいも悪いもそういうマスコミの種になるようなことをしゃべること自体がいかぬと言って厳重に訓戒を与えたと大臣が言ったから、私は矛をおさめたのでありまするが、きのうもそんなことで、この委員会の審議はまさにストップするばかりだった。官僚の間違いじゃありませんか。  なお私は、いまも言う、今度出てきた厚生大臣、何です。長々と弁明の文章を読んでいたけれども、聞くにたえぬから、私はその間にトイレに行った。帰ってきたら、まだやっていた。これもいわゆる官僚の通達じゃありませんか。大臣の意思じゃないでしょう、あなたの意思じゃないでしょう。あなたの意思ですか、あの通達は。意思じゃないでしょう。それを官僚がそういう大それた通達を出して、しかも厚生大臣の選挙区の一番重要な地元だ、そこに特殊な、このいわゆる廃棄物の処理の機械を、これを使いなさいなんと言われれば、だれが何と言ったところで官僚じゃなくて大臣がやったんだ、選挙運動をやったんだと人は考えるだろう。そういうこともいまの官僚は公然とやっているじゃないですか。その姿勢をいまにして正さなかったら国の政治はどうなるのでありますか。私はこれからもやりますよ。まだきょうは予算委員会だけれども、この予算委員会だって、そのとおりだ。  大蔵大臣、あなたきのう私に何と言って答弁したか。あなたは三月ここで、ギャンブルの金は公金だ、その使用方法に対しては研究の余地があるから私は研究をいたしますと約束したじゃないか。その約束を半年たってきのうは何と言った、時間がないからやめたけれども……。そういうことも、都合が悪ければ大臣をみんな孤立させて、官僚はちっとも協力をしないということなんです。官僚は、自分の意思に沿わなければ大臣一人おっぽり上げておいて、知らぬ顔してわき道を歩いているということなんだ。これも官僚政治の弊害を如実にあなたはきのう示してくれた。悪いのは大蔵官僚ですよ。  もっと言えば、主税局長、主税局長がこの三月の通常国会の予算審議に言ったことを私は全部控えておりますよ。実に国会を無視し議員を軽べつし、まさにわれだけが、官僚が日本の政治を動かすような思い上がった態度で思い上がった答弁をしている。もしその証拠が欲しいと言うなら、いつでも示してやる。いいですか、かくのごとく一つ一つ官僚によってみんな大臣の意思と違った方向へ政治を持っていかれているじゃないか。  それから、この次にまた出てくるのは警察庁長官でしょう。私に対する答弁があるでしょう、答弁を聞いてから私はまた論じましょうけれども、これも官僚だ。警察庁長官も官僚です。現長官がこれを言い、もう長官をやめていけば前長官がこれを言う。二つの話が右と左に分かれているというような様子も、一体民主主義下における国の政治としてこれが好ましいのかどうか。  一つ一つ例を挙げていけば、総理大臣、この短い一週間の審議の中にも、いかに官僚というものが大臣を無視し、国会を無視し、議員を無視して勝手ほうだいなことをやっているかということは、これだけでも明らかじゃないですか。もっと例を挙げろと言うなら、幾つも挙げますよ。もっと挙げましょうか。余りにも思い上がっているから、この際、外務官僚のこの行き過ぎたやり方を一つの契機にして、総理大臣から明確な歯どめを示していただかなければならないということで、あなたの答弁を求めたのであります。  いいですか、そのクリアなあなたが、私がこんなに長々と説明をしなければ問題の所在の理解がつかないということは、まことに少し判断力がにぶられたのではないかということで、私は一葉の悲しみを、落魄の悲しみを感じたわけでありますが、御理解をいただきましたら、ひとつ明快な答弁を私はお願いをいたしたいのであります。
  384. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 よくお話の筋は理解できました。政治につきましては、政府それから事務当局、一体として動くようにいたします。そのように全力を尽くしますから、ひとつ御理解願います。
  385. 小林進

    ○小林(進)委員 総理のお言葉をいただきましたから、この問題に関連して。そういう外務官僚が、いわゆる総理大臣や外務大臣の意向とは逆の方向に持っていく。その持っていく意図がどこにあるかといえば、日中平和友好条約をそういうことでやらない。こういう考え方でやっていると思ったから、私は第二点として外務大臣にお伺いした。どうなんだ、外務省の考えはどうなんだと言ったら、いまの御答弁の中には、、こういう答弁があった。いわゆる、何でありまするか、再三申し上げているとおり、政府としては速やかに双方の満足する条約を締結すべく努力を重ねてまいる決意であります。具体的な段取り等については鋭意検討を進めております。けれども御説明を申し上げる段階ではありません、と言う。私はその内容を詳しく説明せいとは言わぬけれども、鋭意努力をしていると言うが、努力の様子は一つもない。本当にやられる気があるのかないのか、言葉だけなのかどうか。肝心の外務官僚は、やるといういまの外務大臣の話までも左の方に持っていくという実例が幾つもあるのでありまするから、この問題も、ひとつ総理大臣、いま一歩、本当に具体的な、いま促進のための行動を起こしていられるというこの外務大臣答弁を正しくあなたは裏づけしてくださるかどうか、承っておきたいのであります。
  386. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 国会の閣僚の答弁は、それはいいかげんなものじゃございませんです。これは外務大臣も、この問題につきましては十分検討いたしまして、そして誠心誠意答弁をいたしておるわけであります。私も外務大臣と同じような考えでおることをつけ加えておきます。
  387. 小林進

    ○小林(進)委員 総理の御答弁がありましたから、私はこの問題は一応ひとつ了解をすることにいたしましょう。
  388. 田中正巳

    田中委員長 これにて昭和五十二年度補正予算三件に対する質疑は全部終了いたしました。     ―――――――――――――
  389. 田中正巳

    田中委員長 日本社会党安宅常彦君外十一名及び日本共産党・革新共同寺前巖君外一名から、それぞれ昭和五十二年度補正予算三件につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が提出されております。  これより、両動議について順次その趣旨弁明を求めます。武藤山治君。     ―――――――――――――  昭和五十二年度一般会計補正予算昭和五十二年度特別会計補正予算及び昭和五十二年度政府関係機関補正予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  390. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和五十二年度一般会計補正予算の編成替えを求める動議につきまして、その提案の理由及び概要を御説明申し上げます。  動議の案文につきましては、すでにお手元に配付いたしてありますので、御参照いただきたいと思います。  まず、動議の主文を朗読いたします。   昭和五十二年度一般会計補正予算昭和五十  二年度特別会計補正予算及び昭和五十二年度政  府関係機関補正予算については、政府はこれを  撤回し、別記要綱により速やかに組替えをな  し、再提出することを要求する。   右の動議を提出する。  まず、その理由を申し上げます。  理由の第一は、わが国経済不況はますます深刻化し、国民生活は倒産、失業とインフレ物価高の中で重大な危機にさらされております。これは石油ショックのみによってもたらされたものではなく、大企業中心、重化学工業偏重の経済成長が生み出した矛盾の累積によるものであり、持続的なインフレ物価高、富と所得の格差拡大、独占・寡占体制の強大化、生産と需給のギャップ、経済の二重構造など、構造的原因によるものであります。その上、最近数年間の自民党政府経済政策が、依然として大企業の利益を中心とした金利引き下げや大型公共投資を増大する反面、勤労国民に対しては、一昨年来賃上げの抑制、消費者米価や公共料金の大幅引き上げ、所得減税の回避などを続けた結果、勤労者の実質所得の切り下げ、個人消費の伸び悩みが続き、需給の不均衡に拍車をかけ、不況を激化させたことは明らかであります。またその結果として、輸出の増大、輸入の停滞により、国際収支に大幅な黒字を生み、海外から円買いの為替攻撃を受け、異常な円高のため、わが国経済を一層の窮地に陥れるに至っているのであります。  政府は、本年度当初予算においてもわれわれの政策転換の要求を受け入れず、財界の要望に従って大型公共投資や公定歩合の大幅引き下げなど旧来の方式による景気対策をとったため、個人消費、民間設備投資などが伸び悩み、年度当初の経済見通しが大きく狂い、事態をますます悪化させ、一部の大企業が巨額の利潤を得ている一方、中小零細企業は続々整理倒産し、雇用不安を深刻化しております。  理由の第二について申し上げます。  わが党は、昭和五十二年度当初予算編成に当たっても、当面の緊急課題として、不況とインフレから国民生活を防衛するため、雇用の安定、国民生活優先の政策を主張し、一兆円の所得税減税、社会保障の充実、失業保障対策の強化、生活環境の整備、地方財政危機の打開等を重点課題とする予算を要求しましたが、この方針の正しさはますます明白となっております。  本補正予算の編成に当たっても、当初予算の際と同じ立場に立って、特に最終消費需要の拡大、生活環境整備の推進、雇用の創出、拡大、構造不況業種への対策などを重点にするとともに、歳入面においては、財政の健全化とインフレの防止のため、国債依存率は極力抑制し、減債方向を明確にすべきであります。  なお、今回の予算補正は、時間的にも財源的にも制約を受けているので、応急の事項に限られますが、われわれはこの方針を昭和五十三年度予算に引き継ぎ、さらにこれを発展させようとするものであります。  特に、円高対策としては、輸入の拡大で国際収支のバランスを図る必要があり、景気回復を図って内需を拡大するため、来年度予算編成に際しては、国民生活基盤整備費の拡大、個人消費を拡大するための所得税減税を基本とすべきであります。  次に、予算編成替えの基本方針について申し上げます。  以上に述べた理由により、われわれは、本補正予算は次の方針に従って編成すべきことを要求するものであります。  一、国民の生活水準の確保と最低生活保障を達成すること。  二、積極的に雇用を創出するプランを作成し、国及び地方自治体の責任で雇用を拡大すること。  三、公共料金の値上げを抑制し、物価上昇を抑える措置を講ずること。  四、住宅の増設、教育、福祉施設の充実、生活環境の整備を図ること。  五、農業、林業の再建、沿岸漁業の振興により、食糧の自給度を高め、中小企業対策を強化すること。  六、科学技術の研究開発を拡充し、省エネルギー、新エネルギーなどの研究を進め、新技術、新製品、新業種を開発すること。  七、不公平税制を是正し、社会的公正を図るとともに、財源の確保に努めること。  八、地方財政確立のため、国、地方の税財源の適正化、自主財源の増大措置を講ずること。  以上の目標と方針のもとに、国民生活防衛の観点から編成替えを求める要点を申し上げたいと思います。  第一に歳入関係でありますが、一つは不公平税制を是正し、資産所得者の課税を強化するため、昭和五十三年一月一日より利子配当所得の源泉分離選択税率を引き上げることであります。  二つは、有価証券取引税の税率を三倍に引き上げること。  三つは、金融保険業の貸倒引当金の引き当て率を直ちに千分の五に圧縮すること。  四つは、会社臨時特別税を復活し、昭和五十二年十二月決算法人から適用すること。  五つは、日本輸出銀行日本開発銀行及び住宅金融公庫を初めとする公庫など政府金融機関の貸倒準備金制度を抜本的に洗い直し、財源を確保すること。  六つは、資金運用部が抱えている国債を売却して、財政投融資の原資を確保し、中小企業、地方自治体への融資を拡大することを要求するものであります。  次に、歳出関係について増額を求めるものについて申し上げます。  その一つは、今日緊急の課題となっております雇用の確保であります。  まず、雇用・離職者に関する臨時措置法を制定し、解雇制限、失業防止、職業訓練の強化、失業給付日数九十日間延長を行うとともに、不況産業の離職者に対し二年間の就職促進手当の支給を初め諸施策を講じ、労働者並びに離職者の生活の安定を図ることと同時に、定年制の延長、時間短縮に対する実効ある措置をとること。さらに自治体を中心として、植林、福祉関係従事雇用の増大など雇用創出プランを策定し、その実現を図ること。ことに、失業多発地域においては雇用創出事業を行うことであります。  二として、社会保障の改善であります。  早急に老齢福祉年金月額一万五千円を一万八千円に引き上げ、かつ関連する障害、母子年金も引き上げること。同時に保険料の増額をもくろむ健康保険法の改正は取りやめるべきであります。  次は三として、公共事業の追加拡大であります。  公共事業と言いましても、われわれの要求は、国民生活の基盤の整備を優先するものであり、下水道、生活道路、市町村の地方道の補修、改修、公園などの整備予算を増額し、その補助率を引き上げるとともに、高校校舎の新増設など文教施設費、保育所建設、老人ホーム、病院建設など社会福祉費を増額することであります。さらに、工業高校、高専、大学、試験所、職業訓練所などの機械設備を更新し、このことによってあわせて不況業種である工作機械の需要をつくり出すことであります。また、災害の復旧については、改良復旧を基本とし、初年度三〇%という従来の方針にとらわれず、三年継続事業を二年に短縮するなど復旧の早期完成を図ることを要求するのであります。  四としては、住宅建設の促進を図ることであります。  1 公共賃貸住宅の全体に占めるシェアを高め、関連公共施設整備のための特別の補助制度を設け、たな上げされている一万数千戸の公営住宅を計画どおり建設すること。  2 住宅公団新設団地の家賃の引き下げ措置を行い、来年度を目標に家賃補助制度を確立すること。  3 住宅金融公庫融資は、戸数の追加とともに、個人貸付限度額を増額し、金利の一%引き下げを図ること。  また、来年度を目標に、個人貸付限度額を建設費の八〇%、返済期限を木造建築で二十五年にするなど貸付条件改善を図ること。  4 国民が必要とする住宅建設のための宅地の安定供給を図るため、中期的展望に立って、土地値上がりを防止する土地税制、土地保有税、土地譲渡益課税の存続、公的機関による宅地開発促進などを図る等々であります。  五としては、円高対策についてであります。  それは、円高対策として秩序ある貿易政策を確立すること。輸出依存度の高い中小企業への影響を最小限に食いとめるため、中小企業為替変動対策緊急融資制度の見直しを行い、中小企業倒産を防止すること。円高による為替差益を消費者に還元するため、輸入商品の値下げの行政指導を行うことであります。  六の構造不況業種対策としては、過剰設備の廃棄促進のための助成措置を講ずること。構造的な要因で行き詰まった業種に属する企業の事業転換について、金融、税制面からの援助を行うとともに、従業員の職業訓練のため積極的な助成を行うこと。  七の中小企業対策については、連鎖倒産などを防止し、社会的損失を最小限にとどめるため、中小企業倒産防止共済制度を創設するとともに、当面の救済対策として財政措置を講ずること。  官公需については、中小企業向け発注枠を当面五〇%まで拡大するとともに、受注者が下請発注を行う場合、下請単価、支払い手形等について監督すること。また、競争入札指名業者の新規登録受付や審査制度改善すると同時に、可能な限りの分離、分割発注及び共同組合など中小企業者の自主的組織に対しての発注を行うこと。  年末金融対策として政府系三機関の貸出資金量五千億円を確保し、貸出金利の引き下げ、貸付条件改善を図ること。  既往の貸付金利の引き下げ、担保の見直しを図り、小企業経営改善資金融資は、商工会、商工会議所などに所属しない中小企業も利用できるよう改善すること。  下請中小企業を保護するため、下請中小企業振興法を改正し、下請企業の組合の設立と下請単価について親企業との団体交渉権の確立、下請代金のうち労賃部分は現金払いとすることなど、下請中小企業保護制度を実現すること等々が緊急に求められているのであります。  八には、農林漁業対策でありますが、二百海里漁業水域設定に伴う漁業、加工関連産業者並びに労働者の救済を行うこと。  沿岸漁場の整備、開発、海洋汚染の復旧を行うとともに大規模な魚礁を敷設すること。  有珠山爆発による農林漁業災害を補償するため、民生、金融など救済対策のため特別措置を行うこと。  農山村の雇用促進と木材の生育を高めるため、国有林、民有林の間伐を早期に行うこと。  米の消費拡大を図るため、学校給食等に対する助成を増額することであります。  九には、今後の重大問題でありますエネルギー対策の強化についてであります。  省エネルギー政策の一環として、地域小規模水力発電、地熱発電、風力発電など新エネルギー源開発研究の推進を行うとともに、ソーラー施設の公共施設への設置、省エネルギー施設導入に対する融資措置を行うこと。  エネルギーの効率利用を図るため、低燃費自動車、排熱利用、廃棄物の循環利用の研究開発を推進すること。  新エネルギーの開発、省エネルギー政策の推進、エネルギーの供給基本計画を確立するため、エネルギー基本法を制定することであります。  最後に、地方財政政策についてでありますが、学校建設など公共建設に対する補助率を引き上げ、枠を拡大するとともに、地方自治体の起債許可制を外し、自由化することを要求いたします。  続いて、歳出の減額について申し上げます。  その一つは、防衛関係費の削減であります。この際、新規防衛費の増加はすべて取りやめるべきであります。すでに既契約の分が多いため、大幅に減額することが困難となっておりますが、防衛増強費、その他一切を含めて一千億円を削減すべきであります。  第二として、一般行政費のうち、施設費、補助金、物件費等の中から全体の一%程度を削り、予算の効率的な使用を行うことを要求するものであります。  以上、日本社会党が提案いたしました組替えを求める動議の理由と要求事項の概要を申し上げましたが、これらは当面緊急を要する最低限度のものであります。  政府は、速やかに今回の補正予算を撤回し、国民の立場に立って組み替えを行い、再提出されることを要求するとともに、委員各位の御賛同をお願いいたしまして、提案趣旨の説明を終わる次第であります。(拍手)
  391. 田中正巳

    田中委員長 次に、寺前巖君。     ―――――――――――――  昭和五十二年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十二年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)につき編成替えを求めるの動議     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  392. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、政府提出の昭和五十二年度補正予算三案について、政府がこれを撤回し、編成替えをするよう求める動議の提出をいたします。  その趣旨概要を御説明申し上げますが、別途内容はお手元に配付しておりますので、簡単にしたいと思います。  中小企業倒産や深刻な雇用問題に代表されるように、長期不況とインフレのもとで、国民の生活と経営は困難の一途をたどっております。いま国民が国政に求めておるのは、この困難からの脱出の道筋をはっきり示し、そのためのあらゆる手だてを講じてほしいということに尽きます。  しかし、政府補正予算と総合経済対策は、この国民の切実な要求にこたえるものとはなっておりません。政府対策は、大型公共投資の拡大や公定歩合と預貯金金利の切り下げに代表されるように、すでにこれまでたびたび繰り返された失敗が明らかとなった財界本位の景気刺激策の量的追加にほかならず、これでは国民生活がますます圧迫され、不況を一層長引かせる結果になることは目に見えております。  本動議は、このような補正予算三案を根本的に見直し、国民本位に再編成することを要求しているものであります。  動議の第一の柱は、生活密着型公共投資の促進と、物価安定、福祉の充実による国民の購買力向上によって、不況とインフレの同時解決を進めることであります。  具体的には、当初計画どおりの公営住宅建設を確保するため、関連公共施設整備の特別の補助制度を設けること、国鉄運賃を値上げしないこと、健康保険の改悪をやめるとともに、老齢福祉年金を月額一万八千円に引き上げることなどであります。  第二の柱は、大企業の社会的責任を明確にし、中小企業の危機を打開するとともに、農漁業、エネルギーの再建など、長期的見通しを持って構造政策への第一歩を進めることであります。  特に中小企業については、利子補給の措置をとって、政府系中小企業金融機関の既往債の金利を全面的に引き下げること、連鎖倒産防止保険制度を創設すること、下請保護や官公需の中小企業発注を強化することであります。また、円高の重要原因である一部大企業製品の集中豪雨型輸出を抑えるため、輸出均衡税を創設することであります。  第三の柱は、財源を不要不急経費の大胆な削減と不公平税制の緊急是正によって賄い、さらに国債発行を当初予算よりも縮小して財政再建に着手することであります。  次に、その財源について述べます。  防衛庁主要装備費、研究開発費、米軍基地移転集約費などの未執行分、YX開発費や総合開発事業調整費など、もっぱら大企業向けの補助金や工事費の未執行分などなど、削り得る対象は数多くあります。これを進めることであります。  さらに、税制の面では、来年一月からの利子配当の源泉分離選択税率を四〇%に引き上げることや、有価証券取引税を倍程度に引き上げることなどであります。これは十分可能なことであります。こうするならば、国債増発をやめて、逆に一千億円程度を当初予算から減額もできるのであります。  以上、動議の要点のみを簡単に御説明申し上げましたが、これは国民にとって緊急かつ最小限の要求であります。  委員各位におかれましては、本動議に御賛同くださらんことをお願いいたしまして、趣旨説明を終わります。(拍手)
  393. 田中正巳

    田中委員長 これにて両動議の趣旨弁明は終了いたしました。     ―――――――――――――
  394. 田中正巳

    田中委員長 これより討論に入ります。  昭和五十二年度補正予算三件及びこれに対する撤回のうえ編成替えを求めるの動議二件を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。山下元利君。
  395. 山下元利

    ○山下(元)委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております昭和五十二年度一般会計補正予算外二件に対し賛成し、日本社会党及び日本共産党・革新共同提出の補正予算の編成替えを求めるの動議にそれぞれ反対の討論を行うものであります。  昭和五十二年度予算成立後のわが国経済は緩やかな回復基調にあるとはいえ、依然として個人消費、民間設備投資が伸び悩み、また業種により収益の著しい不均衡が生じ、特に雇用面では、八月現在有効求人倍率は〇・五三と深刻な状況にあります。  一方、国際収支面の黒字問題が諸外国から批判の的となり、その結果円の異常な高騰を招き、輸入促進対策を早急に確立する必要に迫られるなど、未曾有の厳しい試練に直面しております。  このような経済情勢を早急に立て直し、景気の着実な回復を図り、雇用安定を確保し、あわせて対外収支の均衡を図るには、九月三日に政府が決定した公共投資を含む七項目の総合経済対策を着実に実施することが、何よりも緊要であると考えるものであります。したがって、この総合対策の一環として編成された本補正予算が、でき得る限り早期に成立し、実施の段階に移されることを強く望むものであります。  次に、本補正予算の内容について、簡単に所見を述べることといたします。  第一点は、公共投資の追加についてであります。  今日の経済情勢では、政府主導型による内需喚起の必要があり、そのためには公共投資が最も有効な手段であることは言うをまちません。このたびの総事業規模二兆円の公共投資は、需要創出効果が今後一年間三兆円と見込まれており、またその配分に当たっては、国民生活により関係の深い環境施設整備等、社会資本に重点を置き、特に住宅建設のように関連産業の広い部門に多くの資源配分が行われている点を高く評価するものであります。  第二点は、雇用対策についてであります。  今回の不況が単なる循環的不況でなく、高成長から低成長への移行に伴う構造上の不況の性格をあわせ持っている点から、その回復には非常な努力と苦労を伴うことは必然でありますが、本補正予算は、政府資金を追加投入することにより経済の底上げを図り、雇用の安定に資することをその大きな目的にしております。  また、九月五日に実施された公定歩合の引き下げも、企業の金利負担を軽減し経済の活力を強め、雇用の面にも少なからず好影響を与えることは当然であり、財政、金融両面からの総合施策として賛意を表するものであります。  なお、政府においては、今般発足した雇用安定資金制度を積極的に活用し、雇用問題の解決に機動的に対処するよう心から希望するものであります。  第三点は、構造不況業種についての対策であります。  不況業種は多業種にわたっておりますが、特に中小企業に対しては、中小企業関係金融機関における貸し付け、利下げなどについて弾力的措置を講ずるとともに、中小企業信用保険公庫に対する出資の増額、輸出関連中小企業救済のための為替変動緊急融資制度貸付枠の拡大、過剰設備に対する信用補完及び雇用対策を含めた措置がとられており、これらきめ細かな諸施策が適切に機を逸することなく実施されることを期待するものであります。  なお、北洋漁業対策については、漁獲割り当て量の削減等に伴い影響を受けた漁業者及び水産加工業者の救済のため、さきに措置した減船救済などのほか、今回は離職者に対する職業転換対策等も講じております。  第四点は、歳入についてであります。  国の財政は、多額の公債発行を余儀なくされておりますが、公債発行の歯どめのない財政はインフレにつながるものであります。したがって、苦しい財政の中にあって、今回建設公債二千五百十億円を追加する一方において、特例公債を一千百二十億円減額し、公債依存度を二九・九%にとどめたことは、財政に節度を保つ上で必要であったと考えます。また、輸銀、開銀、北東公庫の貸倒準備金の準備率を変更し、この資金を一般会計の財源に充てることとしたことなど、評価することができると思います。  今回の補正予算による追加措置は、これが機動的に実施されるならば、経済の本年度実質成長率六・七%の達成は可能となるのでありますが、景気の安定的回復を実現するためには、不況業種対策等、なお多くの問題が残るものと思われます。  他方、同時に、赤字財政の健全化を図ることも決して忘れてはならない問題であります。したがって、今後政府が確固たる見通しの上に立って、適時適切な経済財政運営を図ることが何よりも望まれるのでありますが、これとともに、国民の理解と協力を得ることが一層必要であると痛感するものであります。  これらの問題は、来るべき昭和五十三年度予算に引き継がるべき課題でありますが、今日の危機を突破するためには、立法府も政府と一体になって、その方途を見出すため、ともに努力すべきときであると考えるものであります。  最後に、日本社会党及び日本共産党・革新共同からの提出による本補正予算の編成替えを求めるの動議については、政府は限られた財源の中ででき得る限りの施策を行っており、また動議で主張された提案には、防衛費の削減などわれわれの容認できないものがあり、遺憾ながら反対するものであります。  一刻も早く本補正予算が執行されることにまり、当面の諸問題が解決されることを心から願い、政府原案に対する賛成の討論を終わります。(拍手)
  396. 田中正巳

    田中委員長 次に、上原康助君。
  397. 上原康助

    ○上原委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました政府提出の昭和五十二年度一般会計補正予算昭和五十二年度特別会計補正予算及び昭和五十二年度政府関係機関補正予算の三案に反対、日本社会党提案の三予算案の編成替えを求める動議に賛成、日本共産党・革新共同提案の同編成替えを求める動議に反対の意思を表明し、討論を行います。  現在のわが国経済の深刻な危機は、政府の言うように、すべてを世界経済の不況に起因させられるものではなく、基本的原因日本資本主義経済の高度成長の矛盾からきており、その認識を誤った自民党政府の政策によって増幅された政策不在の結果であります。  このことは、本年度当初予算の審議に当たっても指摘し、その対策を提示したにもかかわらず、いまなお政府は今回の総合経済対策経済は立ち直り、回復過程をたどると強弁しております。  しかし、百万人を超える失業者、毎月千五百件を上回る企業倒産がなくなるような経済の実態ではありません。しかも、これまでの景気を支えていた輸出も諸外国からの批判を受け、一ドル二百五十円台という円高となり、厳しい輸出環境に直面しているのであり、文字どおり抜本的経済改革を実現しない限り、日本経済はどろ沼的危機に転落する危険があります。  経済財政の総合的な中期計画を明示し、各種の制度的改革に取り組む姿勢と意欲を打ち出すことが必要であるにもかかわらず、その第一歩さえこの補正予算案には見られないのであります。  それは予算内容の規模以上に質の問題が重要であり、その方針は来年度予算編成と一体のものとして位置づけられ、改革の芽と発展の方向づけを持つ予算が必要でありますが、政府の総合経済対策を見ても、GNP六・七%の成長率達成にすべてを押し込み、パイの中身は空洞となっており、経済の失速を防いでどこへ進むのか、一向に明確にされていないのであります。  その観点から、補正予算案の問題点を指摘してみたいと思います。  第一には、景気不況対策予算としてはきわめて不十分な内容となっていることであります。一般会計三千九百億円の支出による事業規模は一兆円にすぎず、残りは住宅金融公庫の融資を主体とした住宅建設に期待しておりますが、年度内完全消化の保証はありません。つまり、財政支出による公共事業のあり方としては誇大宣伝にしかすぎないのであります。  また、中小企業対策費は百億円、構造不況業種対策費はわずかに五億円の支出にすぎないのであります。中小企業の信用保証枠の拡大もなく、既往借入金金利の引き下げ措置赤字企業のみに適用する片手落ちな対策では、将来展望は全くありません。当面の雇用改善の具体的内容も明らかにされず、貿易の黒字減らしの効果も示されない上に、民間設備投資は冷え込んで上昇気配はなく、企業の金利負担を一兆二千億円も軽減した金利引き下げ政策も糊塗策の域を出ることなく、景気の安定的推移は期待できないのであります。  第二は、公共投資拡大による景気の下支え政策ですが、いわば展望を欠いた政策を続けていることであります。公共投資の内容が住宅建設中心に移行していくことは、国民生活基盤の整備及び産業構造の転換の面からいって明らかです。しかし、その建設は公共住宅の量と質との拡充でなければならないにもかかわらず、今回とられた措置は、これと逆行した個人の持ち家建設の促進であり、公共建設の縮小であります。  土地対策も確立しないままに持ち家政策を推進するならば、地価の上昇を引き起こし、住宅問題解決の不可能なことは火を見るより明らかであります。土地政策を明らかにし、公共住宅建設の主体を地方自治体に置き、そのための財源と補助率のアップなど、積極的に国が保障していく方向こそ必要であり、それを基礎にして個人住宅資金融資制度を拡充していくことこそ、あるべき住宅投資の姿です。  いまこそ住宅、教育施設、社会福祉施設の計画的整備のため公共投資政策が欠かせないのであります。  第三は、国民の生活難にさらに追い打ちをかける予算になっているということであります。  政管健保の保険料値上げ、国鉄運賃の来年一月からの値上げを前提にするだけでなく、社会保障、社会福祉の充実は一顧だにされておりません。預貯金金利の引き下げで、国民は四千一百億円の損失をこうむり、物価は八%を超えるインフレ状況が続き、低い賃金上昇率と相まって、国民、なかんずく低所得層の生活は日を重ねるにつれて切り下げられようとしております。  国民はGNP六・七%成長率を食って生活しているのではなく、実質所得の確保で生活しているのであります。政府の公共料金値上げ、金利の引き下げ政策は、国民生活を一層圧迫するものであります。その上、円高による輸出関連の中小零細企業の打撃を救済する措置がなく、今後においても期待できません。円高対策は国内需要喚起、すなわち、国民福祉の充実であり、生活基盤の整備でもありますが、政府にはその認識が欠けているのであります。  第四は、補正予算案編成過程における野党の意見に真摯に耳を傾け、積極的提言を受け入れていないことであります。  当面の緊急政策は、雇用の確保、就業保障のために雇用創出プランを作成し、そのプランに基づいた雇用対策を講ずるべきでありますが、小手先の対策の域を出ていないのであります。いわゆる構造不況業種対策だけでは、今後の経済のもとでの雇用は確保できないのであります。  また、中小零細企業対策の一環として、中小企業倒産防止基金制度の創設を行い、末端の小零細企業まで救済措置を講じていくことが緊急政策として欠かせませんが、そのような発想は見られません。  さらに、財政危機の打開の基本は不公平税制の是正に即刻着手することですが、抜本的是正はかけ声倒れの一語に尽きます。年度途中を口実にした見送りが許される財政状況にないことは、政府自身十分承知しているところであり、これでは来年度も不公平税制温存かと危惧せざるを得ないのであります。  以上、政府予算案に反対する主な理由を申し述べましたが、福田内閣は経済福田を自認し、物価を抑え、景気も回復させると国民に公約したにもかかわらず、もはやなすべきを知らずといった状況に陥っているのであります。しかも財政危機打開の国民の期待にこたえ得る展望もなく、来年度予算の基本的な編成方針も持てない事態を招いており、いまや経済のかじ取りを自民党政府にゆだねるわけにはいかないと言っても過言ではないのであります。  また、経済の転換は行政改革を不可欠の課題としていることは言うまでもありませんが、行政改革断行の決意はどこに吹っ飛んだのでありましょうか。別途検討すると言うだけでは指導力、統治能力の限界を示すだけで、国民の不信を倍加させ、政治そのものに対する不満をうっせきさせるだけであります。  今日ほど国民生活を直視し、国民に率直に実情を訴える勇気ある政治が求められている時期はありません。しかるに、今回の補正予算審議の過程で明らかにされた自民党政府の政策は、国内政策においては勤労国民収奪の政策をとり、対外政策においては日韓の癒着の疑惑が解明されないまま協力関係を緊密化する一方、円高にあらわれた輸出偏重の貿易政策で国内中小企業にその犠牲としわ寄せをもたらそうとしております。旧来の自民党経済政策の破綻を認め、わが党提案の予算編成動議を受け入れ、この補正予算案を契機に、国民生活最優先の経済運営に転換することこそが政治の責任であると強調するものであります。また、去る九月二十七日、横浜市に墜落した米海兵隊のファントム機によって幼い子供さんのとうとい生命を奪い、多大の被害を与えたにもかかわらず、原因究明に最も大事な事故機のエンジン等を米本国に持ち去ることを政府が事実上認めたことは、断じて承服できるものではありません。  なお、日本共産党・革新共同提案の動議につきましては、今日の経済財政危機克服の観点から見ますと、その具体的内容で相違するものがありますので賛成できません。  以上の諸点を指摘して、私の討論を終わります。(拍手)
  398. 田中正巳

    田中委員長 次に、広沢直樹君。
  399. 広沢直樹

    ○広沢委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十二年度補正予算三案に賛成、日本社会党、日本共産党・革新共同からそれぞれ提出されております補正予算案の編成替えを求めるの動議に反対の態度をまず明らかにして、討論を行います。  公明党・国民会議補正予算三案に賛成の態度を表明する理由を端的に申し上げますと、今回の補正予算は財政的にも制限があり応急の事項に限られているばかりでなく、現下の困難な経済情勢の克服は一刻の猶予も許されないと認識しているからであります。  当面する経済情勢はきわめて深刻であります。中小企業倒産は負債総額一千万円以上に限っても一日当たり五十件を超え、また完全失業者も増加の一途をたどり、今年の八月は昭和三十四年八月以来のきわめて高い失業率を記録しているのであります。構造不況業種の企業が日に日に経営破綻の危機に追い込まれております。こうした状況の中で、多くの勤労者は、生活を切り詰めることを唯一の防衛手段として耐乏生活を強いられ、かつは毎日失業の不安にさらされているのであります。  われわれは早くから今日の事態を予想し、すでに本年六月二十四日に、政府に対し、速やかに補正予算の編成を求める見解を発表いたしました。これに対し政府は、景気対策を発表した八月三日の段階においてさえも、補正予算の編成について言を左右にして今日に至ったことはきわめて遺憾と言わざるを得ません。政府のこの態度が経済を一層深刻化したと言っても過言ではありません。  しかしながら、今年度後半の財政経済、国民生活の現状に立ってみたとき、日本経済を景気回復の軌道に乗せ、失業の不安と生活の不安を最小限度に圧縮するための補正予算としては、不満足ではありますが、これを次善の策として政府案を速やかに成立させ、景気回復の実現に取り組むこととが国民の期待に沿うものであると判断したのであります。  これまでわれわれは、国民生活の実態から、施策の充実を追求することに全力を挙げてまいりました。その結果、政府・自民党が、公明党・国民会議、民社党、新自由クラブの共同要求によって、住宅対策についてさらにきめ細かく、実態に即して積極的に推進することを確約いたしました。こうしたことは、与野党伯仲国会において国民の立場に立った話し合いの政治を一歩前進させるものであり、国民に利益をもたらすことを確信するものであります。  もちろん、このことによって福田内閣の経済政策を認め、今日の総合経済対策を全面的に肯定するものではありません。むしろこの機会に、福田内閣の経済運営に対し、猛省を促しておきたいのであります。  本年に入ってからも、総理は、夏ごろには着実に景気は回復に向かうなどという発言を繰り返したことに見られるように、経済見通しを誤って判断したこと、そのために、景気対策が絶えず後手後手となったこと、さらには、われわれが当初予算段階から、景気を着実に回復させるために、生活関連公共投資とあわせ、個人消費の喚起策をとらなければならないことを主張したにもかかわらずこれを軽視したこと等を挙げれば、枚挙にいとまがないのであります。いまや国民の福田内閣の経済政策に対する不信と、先行きに対する不安は増幅するばかりであると言わざるを得ません。この点については、本会議の代表質問及び予算委員会において明らかにしたとおりであります。  以下、わが党が本補正予算案に賛成する理由を整理して、具体的に申し上げます。  第一は、さきにるる述べましたとおり、補正予算の編成は景気対策上、必要不可欠であり、その早期の成立が緊要の課題であるからであります。もしも補正予算が編成されなかったり、その成立がおくれたならば、さらに不況は深刻化することは必至であります。  第二は、住宅金融公庫融資において、特に今年度における低所得者に優遇措置を講じ、来年度からの住宅金融について、貸付総枠並びに貸付限度額等を含め、金利負担の実質的な引き下げを積極的に推進することを政府に確約させたことであります。住宅金融公庫の貸出枠十万戸追加は、景気対策の目玉となっていることは申すまでもありませんが、この措置が低所得利用者の持ち家建設の負担の軽減を実現するのみならず、景気対策としての効果の促進に寄与するものであると確信するものであります。  さらに、低所得者向けの賃貸公共住宅の建設は、きわめて重要なものでありますがゆえに、来年度予算においては、これが充実に政府努力がなされるよう要求するものであります。  われわれは、今後とも公共住宅政策の確立とあわせ、住宅金融公庫を含め、住宅ローンの軽減に全力を挙げるものであります。  第三は、今回の補正予算は、これまでのわれわれの主張を幾つか取り入れられていることであります。十分とは言えないものの、政府関係機関の貸倒引当金を取り崩し、一般会計財源への繰り入れを実施し、また地方財源の減額分を財投で補てんし、将来の臨時地方特例金とする措置をとったこと等がそれであります。  わが党は、政府関係機関の貸倒引当金の取り崩しにつきましては、第八十国会において提唱したほか、昭和五十年度予算の参議院における修正案でも同様の主張をいたしてまいりました。予算計上の仕方には工夫する余地があるものの、政府の決断に一定の評価をするにやぶさかではありません。  また、地方交付税の減額分につきましては、補正予算の範囲においてはこのような措置でやむを得なかったと思うのでありますが、来年度においては、地方財政の窮状にかんがみ、地方交付税率の引き上げを強く主張するものであります。  以上が、本補正予算三案に賛成する理由であります。ただし、われわれがこの際明確にしておきたいことは、この補正予算案に賛成することが、国鉄運賃改正法、主任手当を具体化するいわゆる教員給与改善に関する法律案等、政府提出の法案のすべてを認めることにはならないということであります。これらの法案に対する態度は、補正予算案と立て分けて留保するものであることを明確にいたすものであります。  次に、日本社会党、日本共産党・革新共同からそれぞれ提出されております補正予算案の編成替えを求めるの動議につきましては、若干考えを異にいたしますので反対をいたします。  最後に、さらに今後の経済情勢の推移の中で、必要な場合には速やかに第二次補正予算の追加を含め、景気対策を実施すべきこと、また、国民の先行き不安を払拭するために中長期の経済見通し、さらには財政計画を提出するよう政府に強く要求し、討論を終わります。(拍手)
  400. 田中正巳

    田中委員長 次に、大内啓伍君。
  401. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、民社党を代表し、ただいま議題になりました昭和五十二年度一般会計補正予算、同特別会計補正予算並びに政府関係機関補正予算に対し、一括して賛成の討論を行います。  なお、この立場から、日本社会党並びに日本共産党・革新共同から提案されている昭和五十二年度三補正予算組み替え動議に対し、反対の意を表明いたします。  わが党が補正予算案に賛成する第一の理由は、現在の最大の課題である不況克服、景気回復について、国民の立場から一刻も早くその対策を講ずる必要を痛感するからであります。もとより、今回の政府補正予算案は、内容的になお不十分な点があることはよく承知しておりますが、その早期成立を図り、これを直ちに実行に移すことが、国民経済にとっても、国民生活にとっても大きなプラスになると確信いたします。  顧みますと、昭和四十九年以降現在までなお続いている日本経済の低迷は、まことに深刻なものがあります。たとえば、生産設備の稼働率指数を現在と昭和四十七年当時とを比較してみますと、当時は九三・五%であったものが、現在では八四・八%と大幅に低下しております。失業者数も、当時の七十三万人が現在では百六万人と高水準にあります。さらに企業倒産を見ましても、かつての五百件台が、いまは一千五百件台と三倍にも激増しているのであります。これら二、三の数字を比較してみても、いかに現在の不況が深刻なものであるかがわかるのであります。  このような不況の長期化の原因は、大きく分けて四つあったと考えます。第一は、石油ショックによる影響であります。第二は、高度成長から急激に低成長に移行したことに伴う産業構造の適応のおくれであります。第三は、資本主義経済に本来的につきまとう循環的景気変動の下降局面にあったことであります。そして最も重要な第四の原因は、政府・自民党の経済政策の失敗であります。  すなわち、昭和四十七年、八年当時の異常とも言えるインフレ政策の推進がその後の石油ショックの影響を倍加し、石油ショック後は、昭和五十一年に典型的に見られたように、不況下における増税政策という全く近代経済理論を無視した失政を行ったことであります。さらに、福田総理はかつて日本経済を称し、全治三年の病であると診断いたしましたが、この余りにも楽観的かつ無責任な診断こそ、現在の混迷を招いている最大の原因であったと申さなければなりません。われわれは、景気の一刻も早い回復を願う立場から、ここに政府提案の補正予算に賛成しますが、福田総理は、この際、改めて過去の政策について厳しく反省を行い、現在の深刻な不況の実態を認識して、今後に対処すべきことを強く要求する次第であります。  私ども補正予算案に賛成する第二の理由は、今回の政府補正予算が民社党の要求した諸点を不完全ながらも取り入れ、実質的に民社党案に相当近づいたものになってきていることであります。  わが党は、すでに九月三日、補正予算のあり方、内容につきまして党の方針を発表し、その後、与野党折衝などを通じてその実現に努力してまいりました。その内容は、現在の深刻な不況を踏まえ、補正予算規模を一般会計で九千億円、財投で六千億円、合計一兆五千億円の補正とすることを要求し、特に住宅など生活関連公共投資の追加、中小企業、構造不況業種に対するきめ細かな施策並びに雇用安定対策、さらには地方財政援助などの諸対策を実現すべきことを主張してまいりました。  政府は、補正予算規模については、財投を大幅増額することによっていわゆる二兆円の公共事業を追加したのでありますが、なおわが党の立場から見ますと不十分なものであります。特に、一般会計において国債依存率の三〇%にこだわる余り、思い切った施策を打ち出すことができなかったことはまことに遺憾ではありますが、しかし、政府の従前の政策に比較して一歩前進した予算規模になっていることは、率直に評価いたします。  また、内容を見ましても、中小企業信用保険公庫への百億円の追加出資、平電炉、繊維産業の債務保証基金への五億円の補助金、十万戸の住宅建設追加、さらには低所得者向け住宅金融公庫の優先貸し付けなど、わが党や公明党あるいは新自由クラブ等が強く要求してきた諸対策が、不十分ながら実現していることば一歩前進だと評価いたします。  以上がわが党が政府補正予算案に賛成する主な理由でありますが、最後に、この際、補正予算案の成立に当たり、次の四点を政府に強く要求しておきたいと思います。  第一は、補正予算成立後には直ちに公共事業など諸施策を実行に移すとともに、年度内完全消化を図ること、並びに公共事業等の発注に当たっては可能な限り中小企業事業者に優先発注し、中小企業の経営安定に寄与するよう行政指導を徹底することであります。  第二は、補正予算面では余り考慮されてありませんが、現下最大の問題である雇用安定対策について、わが党が他の野党と協力して提案する特定業種離職者臨時特例法を補正予算と一体のものとして位置づけ、政府は万難を排し、今国会での成立に努力すべきことであります。  第三は、今後の景気回復政策の重大な焦点である構造不況業種について、業界の自主性を尊重しつつも、政府の指導性のもとに設備廃棄などの構造改善計画を推進し、かつ、思い切った財政援助も行うことなどの対策を講ずべきであります。  第四は、目前に追っております来年度予算編成について、依然として景気回復に対する財政の役割りが高いことを十分に認識し、積極的財政政策を展開するとともに、一方において、財政再建の第一歩として不公正税制の是正、行政改革の断行など、抜本的な対策を盛り込んだ予算にするよう、特に強く要請しておきたいと存じます。  以上、わが党の四点の要求が今後政府の施策に十二分に生かされるよう強く要求し、補正予算に対する私どもの賛成討論を終わります。  以上であります。(拍手)
  402. 田中正巳

    田中委員長 次に、寺前巖君。
  403. 寺前巖

    ○寺前委員 最初に、日本共産党・革新共同は、政府提出の補正予算三案に反対であることを表明します。同時に、重ねてわが党の編成替えを求める動議に真剣に耳を傾けられ、御賛成をいただきたいと思います。  反対理由を述べます。  それは第一に、景気対策のため公共事業を起こすという名目で、一般会計三千九百五億円のほかに財政投融資六千二百六十二億円という巨額の公共事業費を追加し、大企業優先、財界の言いなりの性格を強く持っていることであります。財政投融資は、自動車高速道路、新幹線、電電公社などの建設事業が最優先にされており、苦しんでいる中小企業に緊急な対策を図るものではありません。逆に、生活に密着し、また国民の強い願いである公共事業とも言うべき公営住宅、公団住宅建設については、五十二年度当初建設計画分さえそれぞれ一万二千五百戸、二万戸もたな上げし、自分の家は自分でつくりなさいという持ち家主義を奨励するのでは、国の住宅政策を放棄したと言わざるを得ません。さらに、国民の住宅難解消をますます遠ざけるものと言わなければならないのであります。  第二の理由は、国民の生活を安定させ、経済を立て直すために国民の購買力を高める物価安定対策を放棄している点であります。  政府は、国鉄運賃の来年一月からの一九%値上げ、さらに健康保険料をボーナスからも徴収し、病気で苦しんでいる患者からも三倍以上にもなる一部負担金を取るなど、諸物価に重大な影響を及ぼす公共料金の値上げを強行しようとしているのであります。いま必要なことは、むしろお年寄りや低所得者のために、福祉年金や生活保護費を引き上げる努力をすることであります。しかるに、本補正予算案は、社会保障、福祉の改善は一切しようとしていないのであります。これでは景気対策どころか、それに逆行するものと言わざるを得ないのであります。  さらに第三の理由は、本補正予算一般会計の半分余りの財源を千四百億円の国債増発で賄おうとしていることであります。これによって一般会計の国債発行は八兆六千二百億円となり、国債に対する依存度は二九・九四%とさらにふくれ上がったのであります。政府は三〇%以内に抑えたと言っていますが、これによって財政の累積赤字は五十二年度末で何と三十一兆円となり、これが財政危機とインフレを促進し、福祉の切り詰めや、一般消費税創設の企てもすでにあるように、近い将来国民からの税収奪の強化を図ることに直結することは明らかであります。  このように本補正予算は、現在の日本経済の構造的危機を救うものではなく、国民にさらに犠牲を強いるものであることは明らかであります。  いま国民にとって緊急に必要なことは、すでにわが党が提出した編成替えを求める動議のように、公営住宅や公団住宅を当初計画どおり確保するため、関連公共施設整備の特別の補助制度を設けること、公共料金の値上げをやめ、老齢福祉年金を月額一万八千円に引き上げることなど福祉の拡充を図ること、そのために必要な財源の確保を防衛費や大企業を優遇している不公平税制を改めて、国債発行を減額することであります。  以上申し述べましたように、政府三案はとうてい容認できるものではありません。したがって反対、日本共産党・革新共同提出の編成替えを求める動議に賛成の意見を述べて、私の討論を終わります。  なお、社会党提出の動議には多くの点で賛成できますが、なお検討すべき点もありますので、棄権をさしていただきます。  以上であります。(拍手)
  404. 田中正巳

    田中委員長 次に、大原一三君。
  405. 大原一三

    ○大原(一)委員 私は新自由クラブを代表して、ただいま上程されております昭和五十二年度補正予算案三件に賛成し、日本社会党及び日本共産党・革新共同からそれぞれ提出されております編成替えを求める動議に反対の討論を行おうとするものであります。  賛成の理由は、当面する経済の重大さにかんがみ、一日も早く政府の総合対策の実施が必要であると考えるからであります。しかし、現在の景況の深刻さを考えるとき、今回の政府措置は必ずしも十分なものと言えません。私は、景気の落ち込みと今回の対策の間にかなりのずれがあると考えるものであります。それと同時に、これまでの政府対策の対応のおくれを指摘せざるを得ません。しかも、国際通貨不安を契機に、今回の補正予算策定時には予期できなかった国内経済の新たな深刻な事態が発生しつつあります。政府は速やかに補正予算並びにそれに関連する総合的対策を実行に移すとともに、新たな事態に対処しても逐次適切な措置を果断に行うべきことを強く要望いたします。  もしこれらの措置にもかかわらず、特に雇用、企業倒産等について事態の改善が行われない場合には、政府はわれわれの要求を待たず、追加の補正予算を提出することも必要であろうと考えます。  第二に、今回の補正予算は、国鉄運賃の一月からの値上げ及び健康保険法の改正を含んでおります。われわれは、これらの点については今後両法案の審議の過程で十分討議し、一定の修正を求める所存であります。  われわれの国会運営に関するこれまでの主張は、予算関連法案を予算委員会と並行して審議すべきであることを提案しているのでありますが、この際、改めてその点を強調しておきます。  最後に、さきの自民党を含む四党申し合わせ事項であります低所得層に対する住宅金融公庫の融資内容の改善については、政府側において責任を持って申し合わせどおりの実行をされるよう十分に見守っていくことを申し上げて、政府案に賛成いたします。  なお、日本社会党及び共産党・革新共同の編成替えを求めるそれぞれの動議に対しては、若干考え方を異にしていますので、遺憾ながら反対いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)
  406. 田中正巳

    田中委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  407. 田中正巳

    田中委員長 これより採決に入ります。  まず、安宅常彦君外十一名提出の昭和五十二年度補正予算三件につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議を採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  408. 田中正巳

    田中委員長 起立少数。よって、安宅常彦君外十一名提出の動議は否決されました。  次に、寺前巖君外一名提出の昭和五十二年度補正予算三件につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議を採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  409. 田中正巳

    田中委員長 起立少数。よって、寺前巖君外一名提出の動議は否決されました。  これより、昭和五十二年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十二年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三件を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  410. 田中正巳

    田中委員長 起立多数。よって、昭和五十二年度補正予算三件は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  お諮りいたします。  委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  411. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  412. 田中正巳

    田中委員長 この際、一言ごあいさつを申し上げます。  去る八日補正予算の審議開始以来、終始真剣な議論を重ね、本日ここに審議を終了いたしましたことは、ひとえに委員各位の御理解と御協力のたまものでありまして、委員長といたしまして、衷心より感謝の意を表する次第であります。  ここに、連日の審査に精励された委員各位の御苦労に対し深く敬意を表し、ごあいさつといたします。(拍手)  本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十二分散会