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1977-10-15 第82回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月十五日(土曜日)     午前九時三十一分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君   理事 小此木彦二郎君 理事 栗原 祐幸君    理事 澁谷 直藏君 理事 細田 吉藏君    理事 山下 元利君 理事 安宅 常彦君    理事 武藤 山治君 理事 近江巳記夫君       足立 篤郎君    伊東 正義君       石川 要三君   稻村左近四郎君       越智 通雄君    奥野 誠亮君       金子 一平君    川崎 秀二君       木野 晴夫君    藏内 修治君       櫻内 義雄君    始関 伊平君       島村 宜伸君    白浜 仁吉君       谷  洋一君    塚原 俊平君       中村 弘海君    葉梨 信行君       林  大幹君    藤井 勝志君       堀内 光雄君    松澤 雄藏君       森山 欽司君    阿部 昭吾君       井上 普方君    石野 久男君       上原 康助君    小川 国彦君       大出  俊君    川俣健二郎君       小林  進君    佐野 憲治君       多賀谷真稔君    藤田 高敏君       玉城 栄一君    広沢 直樹君       二見 伸明君    古川 雅司君       青山  丘君    大内 啓伍君       河村  勝君    柴田 睦夫君       寺前  巖君    藤原ひろ子君       大原 一三君    田川 誠一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 瀬戸山三男君         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 渡辺美智雄君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  田中 龍夫君         運 輸 大 臣 田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 長谷川四郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       小川 平二君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      園田  直君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      藤田 正明君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      西村 英一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 三原 朝雄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 田澤 吉郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         行政管理庁行政         監察局長    川島 鉄男君         防衛庁長官官房         長       竹岡 勝美君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁経理局長 原   徹君         防衛庁装備局長 間淵 直三君         防衛施設庁長官 亘理  彰君         防衛施設庁総務         部長      銅崎 富司君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁国民         生活局長    井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁企画調整         局長      信澤  清君         環境庁水質保全         局長      二瓶  博君         国土庁長官官房         長       河野 正三君         国土庁計画・調         整局長     下河辺 淳君         国土庁土地局長 松本 作衛君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省中近東ア         フリカ局長   加賀美秀夫君         外務省経済局長 本野 盛幸君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 大森 誠一君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         大蔵省国際金融         局長      旦  弘昌君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省学術国際         局長      井内慶次郎君         文部省体育局長 柳川 覺治君         文部省管理局長 三角 哲生君         厚生大臣官房長 山下 眞臣君         厚生省公衆衛生         局長      松浦十四郎君         厚生省環境衛生         局長      山中  和君         厚生省医務局長 佐分利輝彦君         厚生省児童家庭         局長      石野 清治君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省年金局長 木暮 保成君         厚生省援護局長 河野 義男君         農林大臣官房長 澤邊  守君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省構造改善         局長      森  整治君         農林省農蚕園芸         局長      堀川 春彦君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         農林省食品流通         局長      杉山 克己君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁長官   岡安  誠君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省立地         公害局長    左近友三郎君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         中小企業庁長官 岸田 文武君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         運輸省航空局長 高橋 寿夫君         気象庁長官   有住 直介君         労働省職業安定         局長      細野  正君         労働省職業訓練         局長      岩崎 隆造君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省都市局長 中村  清君         建設省河川局長 栂野 康行君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治大臣官房長 石見 隆三君         自治省行政局長 近藤 隆之君         自治省財政局長 山本  悟君         自治省税務局長 森岡  敞君  委員外出席者         内閣官房内閣参         事官      角田 達郎君         大蔵大臣官房審         議官      米里  恕君         日本国有鉄道常         務理事     尾関 雅則君         参  考  人         (金属鉱業事業         団理事長)   平塚 保明君         参  考  人         (新東京国際空         港公団副総裁) 町田  直君         参  考  人         (新東京国際空         港公団理事)  角坂 仁忠君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 十月十五日  辞任         補欠選任   越智 通雄君     塚原 俊平君   金子 一平君     葉梨 信行君   櫻内 義雄君     石川 要三君   笹山茂太郎君     林  大幹君   根本龍太郎君     堀内 光雄君   古井 喜實君     谷  洋一君   松野 頼三君     中村 弘海君   藤田 高敏君     小川 国彦君   浅井 美幸君     玉城 栄一君   矢野 絢也君     古川 雅司君   河村  勝君     青山  丘君   田中美智子君     藤原ひろ子君 同日  辞任         補欠選任   石川 要三君     櫻内 義雄君   谷  洋一君     古井 喜實君   塚原 俊平君     越智 通雄君   中村 弘海君     島村 宜伸君   葉梨 信行君     金子 一平君   林  大幹君     笹山茂太郎君   堀内 光雄君     根本龍太郎君   小川 国彦君     藤田 高敏君   玉城 栄一君     浅井 美幸君   古川 雅司君     矢野 絢也君   青山  丘君     河村  勝君   藤原ひろ子君     柴田 睦夫君 同日  辞任         補欠選任   島村 宜伸君     松野 頼三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十二年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十二年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十二年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三件を一括して議題とし、質疑を行います。武藤山治君。
  3. 武藤山治

    武藤(山)委員 総理大臣、きょうは補正予算内容について具体的に伺いたいと思っておりますが、冒頭に、円高予想以上早く、しかも二百五十三円という予想もしなかった大変な円高になりました。これは補正予算を組んだ当時の情勢判断とまるで変わってしまってきた。特にこの円高によって中小企業輸出産業、そういうところの影響というのは甚大だと思うのであります。総理はこの事態に対して、きのうですか、おとといですか、閣僚会議でいろいろ対策を立てたようでありますが、具体的に七億ドル輸入をふやすというようなことが報ぜられておりますが、具体的には速やかにどのくらい輸入をふやすんだ、そういう金額的な目安、それはどの辺に、アメリカやヨーロッパがまず承知ができるような数字をちゃんと発表できるのかどうか、現段階で、輸入増の額ですね。  第二には、いま動揺している中小企業、今度はますます構造不況業種がふえると思うのですね、それに対する対策を緊急に何か考えなければならぬと思うのだが、この二点について総理の見解を伺います。
  4. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今回の為替の動揺は、これは一つわが国貿易収支、この見通しが相当大幅な黒字基調である、こういうことになっておること。それからもう一つは、アメリカ貿易収支は逆に世界全体の立場からいいまして大変な赤字になりそうだ、こういう円高ドル安両面の要素がある、こういうふうに思うのです。私は、こういう状態が続くということは、これは世界の安定のためによくない、アメリカ国際収支改善のために努力すべきと同時に、わが国もまたこの大幅な黒字基調に向かいまして、これを是正するというための最善努力をすべきである、こういうふうに考えまして、いろいろ対策を練っておるわけでございますが、とにかく輸出を抑えるなんといったって、そんなようなことは国内景気から見ましてもそう簡単にはいかない、結局輸入をふやすほかはない。そこで、いま原油でありますとか、ウランでありますとか、あるいは非鉄金属でありますとか、そういうものを買って、おきましても、どうせこれはわが国の財産、資産になるわけだ、日本銀行ドルを持っておるというのと同じ価値があるものでありますから、そういう考え方のもとに、ひとついろいろな工夫をしてみたい、こういうふうに考えまして、各省に対しましてその検討を指示しておる、いま鋭意各省においてそれを検討しておるというところでありまして、まだ、どのくらいの規模になるか、その規模までは、これはここで申し上げる段階まで来ておらぬ、こういうことでございます。
  5. 武藤山治

    武藤(山)委員 中小企業あるいは不況業種に対する影響もかなり甚大だと思うのです。その点についてはいかがですか。
  6. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 こういう結果が定着するとかあるいはさらに進んでいくとか、そういうようなことになりますれば、これはわが国経済全体に非常に影響が出てくると思うのです。特に中小企業、またもとより構造不況業種、そういうものに対する影響は特に深刻であろう、こういうふうに考えておりまして、これは特別融資枠制度というものをいまやっております。中小企業、それが円高によって輸出が弱体化するということに対しまして、別枠融資制度、こういうことをやっておるわけでございますが、情勢を少し見まして、変動為替制でありますから、これはどういうふうに情勢が動いていくか、まだ見当つきません。われわれがとっているこの為替対策上の施策、そういうものがどういう影響を持ってくるか、そういうことをよく見定めまして、対策の方も、これも本当に臨機応変の措置をとっていくという構えでございます。
  7. 武藤山治

    武藤(山)委員 アメリカブルメンソール財務長官は、日本の円はまだ安過ぎる、もっと円高になっていいんだ、こういう演説をアメリカでしゃべった。そのために投機的な気持ちを、アメリカ銀行世界じゅうの傾向をあおり立てた。だから、アメリカの戦略的なものが、ぼくはこの財務長官の話の中に読み取れるような気がするのですよ。ですから、私は、やはり円高というものを、ある程度風圧を抑えるためには、早く日本政府が具体的に、とにかく三カ月なら三カ月の間に二十億ドルぐらいの輸入をふやしたいとか、そのためにいま最善努力をしているという、金額表示をある程度しないと、アメリカ人などは信用しないのではないか、日本に対する不信感から。そのためにいろいろ苦労があり工夫をしているということはわかるのですけれども、やはりある程度目安金額総理が号令をかける、そうしないと、具体的にアメリカは理解してくれないのではないかという心配がぼくはあるのですが、その点はいかがですか、総理
  8. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私が、特別輸入幾らする、こう言ったら、これは為替には相当強い影響が出てくると思います。それができるように、いませっかく努力をしておる、そういう段階でございます。
  9. 武藤山治

    武藤(山)委員 とにかくきょうは二十五分しかありませんから、補正予算の中身について一、二大蔵大臣に伺っておきますが、まず第一に、大蔵大臣構造不況業種対策と称して今回の補正予算に具体的に盛られている金額は、幾らですか。
  10. 坊秀男

    坊国務大臣 お尋ねの構造不況対策については、中小企業振興事業団による設備共同廃棄事業に対する無利子融資などを通じまして所要の措置を講じたところでありますが、現下の経済情勢等にかんがみ、今回、五十二年度一般会計補正予算等においては、構造不況対策に要する経費として新たに五億円を計上いたしております。
  11. 武藤山治

    武藤(山)委員 構造不況業種対策にわずか五億円。  それから次に、大蔵大臣中小企業対策について予算幾ら支出を計上しましたか。
  12. 坊秀男

    坊国務大臣 お答えいたします。  武藤さん十分知悉の上でお聞きのことと思いますから、結論だけ……。  中小企業信用保険公庫出資金に百億円、それから繊維工業構造改善事業協会出資金に一億五千万円。
  13. 武藤山治

    武藤(山)委員 総理大臣中小企業対策は今回の補正で百一億五千万円。いま円高のあらしやあるいは構造不況業種で大変苦しんでいる業者が多い。政府構造不況対策に力を入れておって、これがうまくいけば景気は六・七%の中成長が達成できて安心なんだ、暗いトンネルから出られると再三楽観論説明しておるのでありますが、国民がこの数字を見たら、構造不況対策五億円では何をやるのか。これは利子補給ですけれどもね。では、利子補給をするからといって一般会計で五億盛ったが、貸出金額の方の総額はふえているかというと、この補正では一銭もふえていない。中小企業金融公庫国民金融公庫も、財投説明では、今度の補正では一銭もふやしていない。そうすると、従来の貸出枠の中で操作をしようということでしょう。間違いですか、大蔵大臣
  14. 坊秀男

    坊国務大臣 そのもとのあれはふやしておりません。おっしゃるとおりです。
  15. 武藤山治

    武藤(山)委員 だから、もとの貸出総額の枠は同じで、五億円利子補給分をつくったからといって、これがそう対策になるとは思えないのですね。それから具体的に、この中小企業信用保険公庫に対する百億も、各県の保証協会にこれが保証枠として広がる。いままで各県が保証した金額の七割を保険公庫が保証していたわけですね。それを八割に持っていく。今度は一〇%保証割合をふやします。そのために百億かかったわけですね。  ところが、実際は、保証協会保証枠を広げたといっても、貸し出すときには担保がなければ貸さないのですよ。保証協会はいまは無担保で保証しないのです。無担保ができるのは八百万まで。さらに不況業種で指定されたものがそれの倍額だから、無担保で融資できるのは千六百万円まで。いまの手形のサイトからいって、四カ月ものが圧倒的に多くなっているときに、無担保で借りる力がない。担保があるかと言えば、目いっぱい借りて担保がない。だから、こういう対策だけではとてもいまの不況産業を救済することは不可能に近い。従来の惰性とほとんど変わっていない。効き目は二階から目薬程度だと私はよく言うのでありますが、まさにそんな感じなんですね。  しかし、時間がありませんから次に進みますが、第三番目に、今回の予算節約の分を差し引いた純増額、純粋にふえた金額一般会計幾ら純増はありますか、財政投融資純増幾らありますか。
  16. 坊秀男

    坊国務大臣 お答え申します。  これも御存じのことだと思いますから、くどくどと内容を申しませんが、補正予算純増額が二千七百一億円でございます。それから、財投純増額は七千三百六十四億円でございます。
  17. 武藤山治

    武藤(山)委員 いま大蔵大臣が発表しましたように、一般会計で今回純増金額は二千七百億円、あとは当初予算に盛ってあったものをへずって支出に回しているわけですから、国全体から見ればふえていないわけなんです。当初予算にあるものを削って今度の補正の方に持ってきているわけですから。ですから、GNP全体から見たらふえる分は二千七百億円なんだ、一般会計では。わずかなものなんだ。さらに、財投で七千三百六十四億円と言いますけれども、このうち二千八百億円は住宅金融公庫ですね。住宅金融公庫はこの年度内に二千八百億支出するわけじゃない。この年度内三月までに支出予定されるのは、二千八百億のうち一体何ぼですか。これは建設大臣ですか、大蔵大臣ですか、答えてください。
  18. 田中敬

    田中(敬)政府委員 二千八百億円全額支出の予定でございます。(武藤(山)委員「三月いっぱいに」と呼ぶ)さようでございます。十万戸追加をいたしまして、一戸当たり融資額平均が大体四百万程度になります。そうしますと四千億の財投資金が必要となるわけでございますけれども、年度内に契約をし、かつむね上げ等の工事の工程に応じまして支出する見込み額が二千八百億円、それを財源手当てしたものでございます。
  19. 武藤山治

    武藤(山)委員 いままで私が承知している範囲では、十万戸募集しても、三月までに金の支払いが行われるのは、二千八百億なんかとても全額出ない。これは支出が完了するのは、家ができ上がってから出す部分がかなりまだあるわけですからね、三割も。だから、三月までに支出されるのは、とても二千八百億なんか出るはずないですよ、理財局長住宅金融公庫、いませんか。私は、いまの説明は実態を知らない答弁だと思いますよ、理財局長。後で詰めますけれども、きょうは時間がとにかく二十五分しかないから……。  そういう計算をしてみると、実際の純増分というのは幾らもないのですね、総理予算節約や何かを差し引きずると。だから、全体の景気をこの予算で底上げがかなりできると見るのは少し楽観過ぎると思うのですよ、私の感じでは。だから、今度の補正予算は、日本景気をよくしよう、あるいは不況産業中小企業対策をぎっちり立てようというのが先行したのじゃなくて、財源が限られておるから、その財政措置の可能な範囲内においてのみ考える。順序が逆なんです。景気対策優先でなくて、財源の許す範囲ということが優先をしておる、だからやむを得ざるこういう予算になってきたと私は思うのであります。総理はその辺どう感じておりますか。
  20. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今回の措置の根本的な考え方は、これは武藤さんがおっしゃるのとは違うのです。これは何としても経済全体を底上げしよう、そういう中で構造不況問題、中小企業問題等を解決していこう、こういうことであります。それで、二兆円規模公共事業などを中心とした追加需要を喚起する。この措置によりまして、国民経済に対しましては四兆円を上回る需要喚起波及効果を含めるとそういうことになってくるわけなのです。しかし、それには時間がかかる。そこで、年度中にどのくらいの波及効果があるだろう、そういうことを見てみますると、一兆五、六千億くらいのものになるわけです。そういうことになれば、とにかく六・七%成長はこれは大丈夫だ、こういうことになるわけでありまして、財源がこれしかないからその限度内においてつじつまを合わせるのだというような、そういう安易な考え方ではございませんです。
  21. 武藤山治

    武藤(山)委員 しかし、残念ながら、結果はそういう態度をとらざるを得ないという苦しい財政事情にある。それを論争するともう時間がありませんがら、次に進みます。  中小企業連鎖倒産防止対策を今後きちっとやる、こういうことを閣僚会議でも決めておるようでありますが、いっその法案は提案されますか、総理。今国会に出したいと新聞報道にずっとありますが、共済制度ですね、中小企業連鎖倒産防止に対する法案を今国会に必ず提出しますか。
  22. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この問題につきましては、各党におきましても、やや類似な考え方をもちまして、いろいろな構想があるやに聞いておるのであります。そこで、各党の御意見等もよく伺いまして、どうせつくるそういう制度でありますれば、これは本当にいいものにしなければならぬ、こういうふうに考えておるわけなのですが、できることなら今国会で提案をして、そして今国会で成立して、準備を急いで、これは準備に相当時間がかかる、こういうふうに言われますが、なるべく早くこれを発足させたい、こういうふうな考えであります。
  23. 武藤山治

    武藤(山)委員 福出総理、私と総理でことしの二月十二日、この本委員会で、会社更生法適用を受けたときに、その下請関連企業はかなり切り捨てられて気の毒だ、不公平だ、私がこういう提言をしたら、総理も、私も前々からそう思っていた、したがって速やかに勉強したい、そういう答弁をしているのですよ。その結果、通産省は、総理のその答弁を踏まえて早急に関連倒産防止の法律をつくらなければならぬということで、前向きにいまやっている。それは私は高く評価します。総理のそういう見解を通産省が直ちに法案にしようということについては、高く評価したいのであります。しかし、あのときの私と総理とのやりとりは、会社更生法の適用を受けたときのその下請関連企業のことが中心だったのです。ところが、今回通産省が考えているこの連鎖倒産防止共済制度なるものは、そういう会社更生法適用企業についての配慮というものが全然なされていない。倒産一般論として、月五千円、一万円、一万五千円という掛金を毎月掛けさせて、五年間掛けたのが最高で、その掛けた時点の十倍を無担保無保証で貸しましょう。最高額は九百万です。国民金融公庫で取り扱われる範囲よりも少ない最高九百万なのです。こういう法案を実はいま通産省が作業しているのです。私のところにも通産省からいろいろ説明が来ているのでありますけれども、これだと、総理と私のここでの一応口約束じゃないが、やりとりの趣旨が生かされないのであります。総理はいま、いろいろ検討をして、野党の意見も聞いて、法案提出には時間がかかる、今国会に出すとも出せないともまだ答えなかったのですけれども、もし今国会に出せないとすれば、そういう抜本的なものも含めた点で通常国会に出すということになりますか、その点もう一度確認をしておきたいと思います。
  24. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 とにかく連鎖倒産問題は非常に差し迫った問題ですから、できることなら今国会で成立させていただきたいと、こういう心持ちをもちまして立法化を急いでおる、こういうことでございます。  会社更生法になりますと、これはいろいろむずかしい法律論がありまして、私はどうも法律論にそう詳しくないものですから、私どもののみ込めないようなむずかしいいろいろな議論があるのです。そういう問題でありますれば法務省当局からも、むずかしいいろいろの問題があるその問題点を申し上げてもよろしゅうございますが、この国会で成立を期そうという中に、会社更生法によるところの中小企業の立場をどうするか、そういうことまではとても包括しきれない、かように存じます。
  25. 武藤山治

    武藤(山)委員 もう時間になりますから一問だけでやめます。  もう一つ不況業種における古い借金、既往債務、四十九年、五十年の一番金利が高かったときに借りた長期借入金、それの金利を下げるべきだということを河本政調会長と野党との会談の中でも社会党は強く要望した。政府は来月一日から、十一月一日から下げたい。中小企業金融公庫は最高のときから見れば一%下がりますね。中小と国民金融公庫は一番高かった九・四のときのものを八・七まで下げる。商工中金はそれよりもちょっと高いランクで一〇・一のものを九・二に下げる。そこまではいいのですよ。下げることは大いに結構。社会党はいまの金融公庫の住宅ローンの六・五%も下げろ、五・五も下げろということで百八十億円、われわれの要望の中にその損失金を計上しているわけなんです。社会党案は。ところが、今度実施するということは一歩前進、前向きであるけれども、通産大臣、これ聞いてくださいよ。総理不況業種で赤字の業種だけなんですよ、この措置が適用になるのは。決算が赤字でない企業はだめなんですよ。これじゃ既往債務の金利を引き下げたといったって全国で五十億かそこらだね、それは赤字会社だけなんだから。赤字にならないけれども、下手するとこれはもう苦しくて赤字に転落しそうだというようなものまでこれを適用してやらぬと……。不況業種でしかも赤字だけだ、これはもう一回検討する必要があると思いますが、大臣の見解を伺って、持ち時間を終わります。
  26. 坊秀男

    坊国務大臣 既往の金利でございますが、武藤さん、おっしゃられたとおりです。非常な不況業種でそして赤字の企業というものに対して、いまおっしゃられたような金利の引き下げをやるということでございますが、黒字でやっておる会社に対しましては、いずれにいたしましてもこの金利を下げるということは利子補給といったような関係のあることば御存じのとおりであります。そういうようなことから考えてみまして、そこまで広げていくということについてはちょっと、公平であるかどうかということも考えなければなりませんし、目下のところはこれは実施しておりません。
  27. 田中正巳

    田中委員長 これにて武藤君の質疑は終了いたしました。  次に、川俣健二郎君。
  28. 川俣健二郎

    ○川俣委員 予算委員会始まって集中審議を入れて五日間、総理大蔵大臣経済企画庁長官、そして総理みずから経済は私に任せてくださいということで総理が登壇したわけですが、大変に関心を持って経済論議を聞かせてもらいました。  それで、大変勉強にはなりましたが、それじゃ国民の側からすれば、一体これからどうなるのだろうかということは、それぞれの立場で不安であります。円高ドル安になって、これの対策を内閣がやると言うが、それじゃ一体物価はどうなるのだろうか。それからこの論議を聞いてわかったことは、次の二つはわかりました。  というのは、いま大変苦しいのだ、トンネルの中に入っておって、いつごろトンネルから出るのだ、五十四年ごろだ、長い長いトンネルであるわけですが、ただ、そのトンネルの中におって、耐久力のある階層はトンネルを出るまで間に合うでしょう。ところが、トンネルの中でトンネルを出る前に窒息しちゃう。トンネルを出たら雪国があったという話があるが、むしろいまは逆に越後の方から上州の方に早くトンネルを抜け出さなければならない、こういう場面だと思います。日本の場合は。  ところで、わかったことのもう一つは、こういうふうに長いトンネルに入れられたのは、窒息しそうになったのは、やはり管理政策から来ているのじゃないのか、こういうことを社会党を初めとして野党の方は言う。そうすると総理は、いや、これは世界経済全体なんで、日本の場合はいい方だということで体をかわす。これは政治の場面じやその論議はちょっと通らない。評論家の場面ではそれは通るかもしらぬが、それじゃ一体国民は、それぞれどうするのだということになるわけなのでありまして、そうなると具体的に聞いてみないとわれわれはどうにもならない。特に、予算委員会が終わると、各委員会に法案が出ております。それぞれ重要な法案が出ております。この法案を論議するにしても、いまトンネルの中だから、多少の値上がりでも、あるいは保険料の値上げ、医療費の値上げその他もがまんしてもらって、やがてトンネルから出ると楽になるのだという言い方はわかるにしても、しかし、トンネルの中にいる間に窒息してしまう階層はどうなるのだろう。こういう意味で、いわばトンネルから出る前にもう耐久力がなくて弱ってしまって、トンネルを出たときはもう終わりという人方の立場から見るとどうなるのだろう。こういうように考えてまいりますと、いろいろと問題があります。  まず一番先に、全員が苦しいからみんながまんしよう。ところが一番苦しいのは、底辺にある人方が一番苦しいわけだ。底辺の中でも中高年対策一つ取り上げましても、高年齢の人方、そしてそれが病気になった場合、そうなると当然老人医療という問題が取り上げられて、具体的にこの場面に出して総理考え方を聞いていった方が、さらに一層いままでの経済論議が明らかになるなというように考えまして、まず最初に、私は老人医療の問題を取り上げてみたいと思います。  そこで、総理は老人医療問題もかなり詳細に検討されておるようでございますが、一体この問題をどう総理は考えておるのかということと、この不況の中においての老人医療をどう思うだろうか、こういった面をまず一応大まかにお話をお聞きしたいのです。
  29. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、これからの日本社会を展望してみますると、急速に老人階層というものがふえてくる、この老人の問題にどういうふうに対処をしていくかということは非常に大きな問題で、あるいはこれはひとり健康管理というような問題だけの問題じゃないのだ、雇用の問題も非常に重要な問題になってきまするし、老人に対する所得をどういうふうに確保していくかというようなことも大変大事な問題になってくるし、老人問題というものを非常に広範な角度で考えなければならぬ、そういうときに来ておる、こういうふうに思っております。  そういう中で老人医療問題、これについていろいろ世間でも関心を持つようになってきまして、病院がどうも老人に占拠されちゃって、普通の緊急の病人が行っても受け付けられないというようなケースがあるが、これは何とかならぬかとか、いろいろの声も出てきているというような現象もあります。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕 しかし、私は、総体としていま老人医療問題というものは無料化体制の中でかなり手厚いことになっておる、こういうふうに思います。しかし、老人問題というのは、これはひとり医療だけの問題でなくて、先ほど申し上げました各般の角度の問題がありまするから、その総合的な施策の中で医療問題も解決していく必要があるであろう、こういうふうに思います。  そのような考え方で、厚生省では大臣に対する権限というか、そういう性格のこれらの問題についての懇談会なんかもつくりまして鋭意勉強してもらっておる。そういう勉強会の結論というものを踏まえまして、厚生省で幅広い見地でこの問題に取り組んでいくという構えをとっておりますが、私はこれは妥当な構えである、こういうふうに評価しております。
  30. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それじゃ担当の厚生大臣に伺いたいのですが、私は、老人問題というのは単に医療だけじゃなくて、もちろん第二の職場、その他いろいろと問題はこれから出していきますけれども、ただ、老人医療をめぐる諸問題、いまどういう問題が起きているだろうか、特にこの不況とかなんとかということもさることながら、それ以外に老人医療をめぐる諸問題というのは大臣、どういうようにとらえておりますか。
  31. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 老人の問題につきましては、御承知のように、日本の平均寿命というのがここ三十年の間に男女とも二十歳も延びた、これは世界の歴史に例のないような話なんです。したがいまして、たった三十年間に二十歳も寿命が延びるんですから、いろいろそこに問題が出ておることも確かでございます。今後老人の率というものはもっとふえていく。  そこで、あなたのおっしゃったことは、この老人の医療というような問題について非常に金がかかるということで、これが各保険を相当圧迫しているのではないか、何とかこれは別なことを考えられないかという問題が一つ出てきております。  それから老人の問題は、老人になりますと、どなたも多少の欠陥はだれでもできるわけでございますから、欠陥が起きたからといってみんな病院に入るのがいいのか。ともかく病院に入ってもなかなかそう簡単に治るという問題でもない。したがって、病院でなくて、もっと適当なところで病人の老人の介護のできるようなことが何か考えられないかというようなことも出ておるわけです。また、家庭においてその家庭の人が自分のおじいさんなり、おばあさんなりをもっとめんどう見やすくする何かお手伝い、こういうものはできないかというようなことなど、いろいろな老人医療をめぐる問題が提起されておるわけであります。
  32. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは、むしろ厚生大臣から伺えると思いましたが、話が出ませんでしたが、老人が非常に病院に殺到するようになった、それは無料になったということからくるのだというニュアンスの話もありました。そうすると、無料になったということは、医者の方がただになったのじゃなくて、どこかで負担しなければならない。そうすると、当然国民健康保険という町村の国保の財政におぶさってくるわけだ。そうすると、自治大臣の方から見てこれは非常に大きな問題だと把握しておりますか、国保財政と自治の問題を。
  33. 小川平二

    小川国務大臣 国民健康保険が現在まことに深刻な状況に立ち至っておりますことは御指摘のとおりでございます。  現在の国民健康保険の決算の状況でございますが、実質収支から繰出金、繰入金等を差し引きいたしましたいわゆる再差し引き収支が五十年度で二百二十七億円、五十一年度になりますと、これが四百九十一億円という数字になっておるわけでございます。それからまた、保険税の方は五十年度で一世帯当たりの市町村民税が二万五千七百円でありますのに対して三万九千七百十六円。もうこれは負担力の限界に来ておると言わざるを得ないまことに深刻な姿になっておるわけでございます。  この問題につきましては、制度の抜本的な改正ということについて関係省において検討なさっておるわけでございますが、さしあたっての問題といたしましては、国の助成を強化してもらうほかない、かように考えまして、臨時財政調整交付金の大幅な増額を要請いたしまして、五十二年度においては六百八十三億円が九百四十八億円、三八・八%、相当大幅な増額になっておるわけでございます。  自治省といたしましては、今後地方公共団体に対しまして合理化によって経費を節減してもらう、同時にまた、保険税の適正な徴収に引き続いて努めてもらう、こういう指導をいたしまして財政基盤の強化に努めていきたい、かように考えておるわけでございます。
  34. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大蔵大臣、負担力としてはもう限界だ、したがって、抜本的改正をこの辺で考えてもらわないことにはどうにもならない、これに対して大蔵省はどういうような認識ですか。
  35. 坊秀男

    坊国務大臣 お答え申します。  いまのこの健康保険諸制度の現行のままでは、国庫補助と申しますか国庫負担といいますか、それはまさに限界に達しておるというふうに考えます。国民健康保険には、御案内のとおり四五%という国庫の補助というか負担金がかかっております。それで……(「個人負担が限界だと言っているのだ、国庫の負担を言っているのじゃない」と呼ぶ者あり)いやいや、個人負担の限界を下げていくためには、どうしても国庫の負担というものをふやしていかなければならない、こういうことでございますので、それはもうすでに限界に来ておる、こういうふうに考えざるを得ないのです。(発言する者あり)
  36. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 御静粛に願います。
  37. 川俣健二郎

    ○川俣委員 老人医療の特殊性というのに、また総理大臣に話を戻すのですが、結局どこかでだれかが負担しなければならない。個人が負担するか町が負担するか国が負担するか、こういうところまでは一致したが、ところが、せっかく総理大臣のお書きになった「続・これからの日本 祖国新生論」福田赳夫編、これは大変熟読玩味をさせてもらいました。そこで、どうも総理は言葉では言うのですが、認識の把握が——これからいろいろの制度を各委員会で検討する上において総理大臣大蔵大臣のお出ましというのはめったにないことですから、この機会に総理の本当の気持ちを聞いておきたいのです。というのは、こういうことなんです。  老人医療を無料にすべきだという世論が喚起されて、そして四十八年の一月から無料になった。そこで、無料になる前の受診率と無料になってからの受診率の比較というのが総理の書かれた本にも出ております。四十七年はたとえば政管健保は本人は負担するものがないわけですから、四十七年政管健保の場合は八二・九というのを示しておる。ところが、国保で入っておる人は六四・九ということで低かった。ところが、四十八年一月になって無料になったら、政管健保の方はほとんど変わらぬが、国保の場合は七五・一九と上がっていった。そして五十年度ではやがて政管健保の受診率八九に対して国保も八三になった。ははあ、これは無料になったから受診率が上がったのだ、こういうように思われておりますか、どうですか。
  38. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 無料の場合にはいろいろな影響が出てくるだろうと思います。そういう影響一つとして病院が老人で非常に混雑している、こういうような傾向も出てきておる、こういうふうに常識的に考えられますけれども、しかし、私は老人医療無料化、これは必ずしも悪い制度だ、こういうふうには思っておりません。老人医療無料だ、多少弊害が出てくる面もある、あるにいたしましても、とにかく老人に対して手厚い制度である、こういうふうに考えておるわけであります。しかし、老人の医療をどういうふうな方向に持っていくか、これからどうするか、そういうことになりますと、これは医療という面だけの問題でなくて、所得の確保をどうしていくか、それに関連して年金、これをどうするか、あるいは雇用問題の一環としての老人対策をどういうふうにするか、広範な問題の中の一つと、こういうふうなとらえ方をして考えることが妥当である、こういうような感じがいたしておるわけであります。  いま川俣さん八〇年委員会の冊子を取り上げられましたが、これは私どもが世話人になりまして、八〇年委員会という代議士同士の勉強会を持つことにいたしたのです。その場で各界の権威ある人のいろんな立場からの御意見を承る、そういうことが多かったわけでありますが、それらの権威ある人々の所見をただ聞きっ放しにしておくのはこれは残念だ、これをひとつ記録にとどめておこうというので一つにまとめたのがその冊子でございまして、私がこう考えておると、こういうことじゃないのです。こういうことを述べられた学者、専門家がおられたというその記録である、このように御理解願います。
  39. 川俣健二郎

    ○川俣委員 内容に入る前に新生論の編集の問題に入ったから申しますが、これはどう見たって、委員長の席からだって福田赳夫編というのが大きく書いてあるわけです。小さくは一九八〇年政策委員会とも書いてあるが、これは福田赳夫編と大きな字でこう書いている以上は、私らは、どう言ったって国民から見れば、ああ福田総理大臣のお考えが大きくこれにあるのだなと思うのは当然じゃないですか。  そこで、私はなぜこのように細かい具体的な話を聞くかというと、大きな経済談議を聞いている間は、やりましょう、これは真剣にやらなければならない、トンネルの中だからみんな苦しいんだということはわかる。具体的になってくると具体策が出ない、雇用対策も出ない。そうなると、私もやはりこういうものをつかまえて聞くしかない。しかも、このタイトルはどういうタイトルかというと「問題だった老人医療の無料化」でしょう。これは日本語の解釈として、問題だった医療の無料化ということになると、だれが考えたってこれは医療の無料化をしたことが問題だったということじゃないの。  しかも、内容を読んでみましょうか。「つまり、供給が需要を呼ぶという医療サービスの特殊な性格から、高齢者の受診率が一挙に増大してしまった。」、受診率が一挙に増大してしまったのは、無料になったから増大したんだ、こういうことなんだよ。ところが、それはちょっと片手落ちじゃないか。有病率と受診率と比べてみなければならぬじゃないのか、こういうように思います。  特にその本に書いてあるじゃないですか。さっき申し上げました四十七年の受診率との比較だからちょっと、これだけで細かい話は終わりますけれども、たとえば十五歳から二十四歳、若いときですから、これは受診率は三・八八で有病率は三・六四だったというのです。これはうなずけることなんだ。ところが七十五歳以上は、一八・五六が受診率だが有病率は三六・七〇だというんだ。だから、この数字から言えば、もっと受診者が来るべきだという数字なんだ。そうでしょう。倍あったっていいんだよ。なぜかというと、若い者は有病率と受診率はほとんど同じなんだ。ところが、七十五歳以上になると、受診率が有病率の半分なんだ。ここを考えると、ただになったから病院に行くのだという考え方はちょっとおかしいんじゃないか。その点ひとつ、もう少し釈明してくださいよ。  しかも続けますが、だから、政治家の話というのは、国民がよく当てにならないと言うのはそのことなんだ。具体的になるとどういうことになるか、口なんかどんなことだって詭弁はできるよ。だけれども、こういうように書いてある。こういうように結んでおるんだ。「いわゆる「革新自治体」が無料化を掲げたことに端を発して、大勢がなだれを打ってしまったのだが、いまわれわれは、このことを痛恨こめて反省しなければならないと思っている。」、こうなれば、やはり医療無料化という問題にメスを入れるんだなというように感ずるのは当然じゃないですか。これが福田赳夫編なんです。どうですか。
  40. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 先ほども申し上げましたが、その冊子は福田赳夫編なんですよ、著じゃないんですよ。編というのは、著書とは違った性格のものであるということ、これは常識なんです。先ほど申し上げましたように、いろいろな人の貴重な意見、それを収録したものである。その収録作業のことを編と言うのでありまして、私がその冊子について一つ一つ責任を持つという、そういう立場のものじゃないのでございます。自余の問題につきましては、厚生大臣の方から申し上げます。
  41. 川俣健二郎

    ○川俣委員 厚生大臣はいいです。そういう言い方をするところに、やはり具体的にはどういうことになるんだろう、国民が何ぼ経済論議聞いたってわからないということになる。  それじゃせっかく厚生大臣に総理からの御指名だから、貴重な時間だからちょっと聞いておきたいんですが、これでこの問題は大体終わろうとするんだが、やはり広義の公平の負担から見ても、いま政管健保、組合健保、日雇い、船員、共済、国保と、こういうように分かれておるんだが、いま町も村も国保税——通称国保税と言います。それほど過酷なものであるということと。それから財政を見ると、このままでいったら、総理はなかなかはっきり口では言われないんだが、無料になったために病院がいっぱいになっちゃった、ほかの人は受け付けられないほどいっぱいになっちゃった、あれはサロンに行くんじゃないか、話し合いに行くんじゃないか、本当に病気で行くんだろうかというニュアンスのことを、著じゃなく編に書いてあります。  そうなると、それはそれとして、問題は、いま現実に地方財政は、もう負担力としては限界に来たといわれるように、これはもうどうにもならないというところまで来た。それじゃその国保の性格というものを見ると、若いときに元気で働いておる間は健保、そのときには有病率もない、いわゆる罹病率も少ない、したがって、財政の帳じりが潤沢である。ところが、さっき厚生大臣がおっしゃったように、老人ですから機能障害が多かれ少なかれ出てきた、そして退職になる、町村へ帰る、そして国保に入る、それを負担しなければならぬ、こうなるわけですから、そうなると、一体七十歳以上の加入者の割合というのは、国保とほかの方の組合との割合はどのぐらいになっているんでしょうか。
  42. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 昭和五十一年度の状況で言いますと、七十歳以上の老人の加入者の割合は、国保が七・四%、被用者保険が三・一%、その中で政管保険を見ると三・四%、率から言うと国保の方が大体倍以上老人の加入者が多いということになります。
  43. 川俣健二郎

    ○川俣委員 こういうように国保に全部苦しい面が集まってきているということなんです。経済論議から言わせると、長いトンネルの中でみんながまんしよう、やがてトンネルから出る時期までがまんしようというところまでわかった。ところが、がまんするといったって、限界に来ている底辺の人方をどうするかという一つの例なんですね、これは。その場合に大蔵省はどういうようにこれに財政の手だてをするかということにならなければ、私は、具体的な経済論議が政治の場における予算との結びつきの予算委員会にならないんだと思います。きょうはこの予算委員会というのは学習会じゃないわけだから。  そこで、時間もありませんのでさらに厚生大臣に伺いたいのですが、やはり老人医療というのは、老化の促進する要因を研究したり、あるいは老人特有疾患の予防、診断、有効治療法、能力開発等の調査研究、こういったものを総合的に見ないと、ただ、あそこが痛いから、そうか診てあげようかという、一般の人方の、健康年齢の行く病院と同じ窓口で取り扱うところに問題があると思うんだ。したがって、私らは、なかなか総理大蔵大臣委員会ではお伺いする機会がないからあえてこういう問題を出すわけですが、やはりこれは、日本の場合では急速に年齢もふえた、これにどのように対処しようか、老人医療無料化は問題だったと言うけれどももとへ戻すのか、そうでもない、だとすれば、これはいよいよ老人自体の医療保険制度というものを別建てでつくる段階になったんじゃないだろうか、こうそれぞれの関係者で論議されてきておるわけです。これに対して厚生大臣はどう思われますか。  それから、ついでですからもう一つ。この老人医療というのはゼネレーションから来ているのか、日本の歴史から来ているのか。あんま、はり、きゅう、マッサージ、指圧というのが非常に多い。りっぱなのが議員会館にもあります。総理は明治三十八歳だとおっしゃるから、あんま、はり、きゅう、マッサージ、指圧等にどういうあれを持っているか知りませんが、これを保険で見るとなると大変だということに当然なる。ところが、はり麻酔というもので非常に中国のあれが世界的に注目を浴びてきた。そうなると、東洋医学の研究機関もぼつぼつ日本で考える時期になったのじゃないんだろうか、こういう問題が世論として出てきましたので、この問題も、厚生大臣、少し聞かせてください。
  44. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 老人の医療の問題につきまして非常に市町村の財政が圧迫されておる、これにつきましては、御承知のとおり、日本ではかなり国庫財政から補助しているわけです。つまり、大体四五%、プラス臨調がありますから三%、合計四八%ぐらいのものを出しておるわけですから、言うならば百円のうち七十円が給付されて、そのうちの七割ぐらいが国費で負担をされておる。このことは社会健康保険を実行しているドイツやフランスなどではとうてい見られない状態であります。大体フランスやドイツは医療保険には補助金を出しておりません。ですから、そういうようなところで国はぎりぎりのものは出しておるということだけはまずお認めいただきたいわけでございます。  しかしながら、それでも非常に苦しいというので、老人医療を何か別建てにしてはどうだ、私はこれは一つ考え方であると思います。その負担をだれがやるかという問題が一つ出てくるわけでございます。これはドイツなんかの場合だと、退職医療につきましては年金から支出をしておる。年金受給者の総額の一一%ぐらいを現在年金に加入している人が負担をしておる。別に国庫補助は出しておりません。しかし、日本でその制度を入れるというわけにも急にいくわけのものではない。しかしながら、やはり国民全体が間違いなくいつかは老人になるのですから、自分もなるのですから、ですから、これはやはり国民全体の問題として、この老人医療の問題は、別建ては別建てにして、あなたがいまおっしゃったように、予防の問題からリハビリの問題から、あるいは別なこと等も含めてやってはどうかということはまことにりっぱな意見でして、これは真剣に実は取り上げられておるところでございます。したがって、これは老人医療問題懇談会等においてもいろいろ検討されて、本当にこれは近々、年を越さないうちに、一カ月以内に結論が出ることに実はなっておるわけであります。そういうような専門家の意見に従って、負担の問題は一番大きな問題なんです。負担の問題はぜひとも御協力をいただくということで考えてまいりたい、こう思っております。  なお、東洋医学の問題でございますが、この東洋医学というものば日本で非常に貴重がられておるわけでございます。これにつきまして、厚生省といたしましても、北里研究所、東洋医学総合研究所、こういうようなものに補助金等も出しまして役立つような研究をやっていただいておる次第でございます。
  45. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それで総理、ちょっと席を外されている間に、医療問題というのは、特に老人医療、これだけじゃないのだが、やはり総合的にどうするかという検討を早くやらなければならないというか、言われてからもう十何年たっているわけだ。したがって、いま厚生大臣もいみじくも言われたが、総合的にやってみて、国は何ぼ出す、県は何ぼ出す、そうして各自もどのぐらい出してくれということになって初めてこれは審議だと思うのです。そう思いませんか。総合的に抜本的な検討を加えた上で、それじゃ国民にはどのぐらい負担してもらうか、これがやはり政治じゃないか。総理、どうです。
  46. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 老人医療問題はいろいろな面、総合的に考えるべき問題である、その考え方は私は川俣さんと一緒でございます。さらにもっと総合的に、つまり老人医療問題ということだけでなくて、老人の所得をどういうふうにするかとか、雇用問題はどういうふうにするかとか、そういうものまでこれは含めまして大総合した上の検討、これが本当は望ましいと思うのです。たとえば、いま川俣さんが老人医療の有料か無料か、こう言っておられますが、これは雇用が一体どうなっているか、所得がどうなっているかによって結論、考え方は変わってくる、そういう性格のものだと思いますが、いまそういう広い立場からどうするかということを厚生大臣が検討されておる、こういうことでございます。
  47. 川俣健二郎

    ○川俣委員 厚生大臣はそういう考え方で検討されておるのですが、ただ大総合ということになると、そこまで用意してなかったのですが、やはり総合的に、そこで総理が言った雇用問題も当然出てくるということなんで、せっかく話が出たから雇用問題に移らしてもらいたいと思いますが、この五日間、きのうの集中審議でもかなり出ました。そこで、長いトンネルの中に入っている間に苦しいのは、第二の職場を求めて、これがやはり問題だと思います。そこで私は、高齢者の対策、これは労働大臣もいろいろと所見は述べておりましたが、具体的に聞いていきますよ。  たとえば定年延長、アメリカでは六十五歳を七十歳にするという制度を下院は通った。上院でいろいろと論議はされるだろうけれども、下院は通った。アメリカの衆議院では通った。それから社会労働委員会で特別決議もあった。衆参両院であった。そこで、時間もないから端的に聞いていきますと、定年制を法律にうたうということは何か不都合が来たすのだろうか、こういうような疑念をはさまざるを得ない、いままでの論議を聞いてみると。その辺、労働大臣どう思いますか。
  48. 石田博英

    ○石田国務大臣 この問題は、もうたびたび議論になって、たびたびお答えをいたしているのでありますが、定年を六十歳にする、そして社会保障と連動させるという方針はもう確定をいたしておりまして、その方向で努力中であり、かつ順次効果も上がってまいっております。  現状におきまして依然として五十五歳定年制をとっておる企業の割合は、かつての六十数%から四七%程度に下がっておりますし、六十歳定年を実行しておりますところも、かつての二〇%台から現在は三七%ぐらいまで変わってきております。五十五歳定年というものが始まったのは、日本人の平均寿命が四十歳台であったときのことでありますから、現在は不適当であることは言うまでもありません。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕  ただ画一的にこれを法制化するということになりますと、まず定年制それ自体が労使の協議によってできているものが非常に多いということが一つ。人事管理がいい悪いは別として、長い間五十五歳定年というものでできておりましたために、人事の停滞というものとの関係、それからもう一つは賃金原資分配の問題、これは年功序列型賃金あるいは退職金その他の問題との関連もありまして、短日月で一挙に実現するということになりますと非常な摩擦を生じます。しかし、現実にその方向に向けて努力はいろいろな企業の実態に応じて行われつつあるのが実情であります。またそれと同時に、定年延長奨励金とか、高齢者雇用のための助成金その他の制度が設けられております。しかし、この制度は残念なことにはまだよく周知徹底されておりませんので、利用度が非常に低いのです。こういうものを総合的に推進してまいりまして、一定の時間的経過をやはり必要とするのではないか。前国会の決議が、法制化ということでなくて、定年の六十歳までの延長という決議になったということも、そういう点を御勘案いただけたものと考えておる次第であります。
  49. 川俣健二郎

    ○川俣委員 労政のベテランの石田労働大臣ですから、いろいろと考えてのことだと思うのだが、ただ、労働省、ほかの官庁もそうなんだが、画一的に法制化するところにと、こう言葉じりを取り上げるのですけれども、それじゃ法律化されたものは全部一〇〇%守られておるか、労働基準法はどのぐらいの遵守率があるかというところになると論議が深まってくるけれども、家内労働法という法律をつくったとき労働省は何とおっしゃったか。まず一応めどをつくって、これに従うように労働行政指導をやるのだと。港湾労働法のときもしかりなんです。ところが、事定年制の問題になると、雇用対策法があるじゃないか、行政指導でできるじゃないかとおっしゃるものだから、私は、なぜこれを法制化しないのだろうかということになって、これはいろいろと不都合がくるのだろうか、定年制をきちっとしくとそれ以上勤める人方にはちょっと不都合を来すだろうかという懸念があるのだろうか、こういうように考えられると少し考え過ぎじゃないだろうか。  雇用対策法だってこういうように書いてある。「労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、」と。労働者が能力を発揮するということは、五十五歳なら五十五歳までの経験からきたその能力をこれから発揮しようとする。そのためにちゃんと国の施策では「高年齢者の職業の安定を図るため、定年の引上げの円滑な実施」、こういうように書いておるのに、周知徹底してないということになると、それじゃ労働省の体制が悪いのだろうか、機構が不備だろうか、こういうように考えざるを得ない。  職安の法律をざっと見ると十四もある。各地方には職安というのがある。その数一万五千人、それが職安局という一つの局で所管しておる。これでいいのだろうか、こういうところまで発展していかざるを得ない。  そこで、その論議をしていくと時間がなくなるから、例の公務員法の百三条によって、公務員の営利企業への転出というのは速やかに国会に報告されなければならないという法律があるわけですから、報告を受けておるわけですけれども、その場合、これは一般の労働者には当てはまらないのだろうかと思うのは、こういう項目です。「私企業からの隔離」という、これはうまい条項なんですね。「隔離」だ。「私企業からの隔離」。これはこういうように書いてある。「職員は、離職後二年間は、営利企業の地位で、その離職前五年間に在職していた人事院規則で定める国の機関と密接な関係にあるものにつくことを承諾し又はついてはならない。」と規定してある。これを見ると、これがちょっと逆なんだな。密接な関係についておるから会社からお迎えが来るのじゃないの、天下りという。ところが、なるほどエリートの皆さん方がつくるのは違う。次に第三項がある。「前二項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、」この限りにあらずということで、これでやっている。だから密接な関係を持っているということは、その能力というのは仕事からきた経験だから、この仕事からきた経験は、いわゆる高級官僚以外の一般の職員にもあるのじゃないだろうか、こういうように考えます。  その一つの例です。これも委員会でいつかやったことがありますから、どなたが答弁されるかわかりませんが、総理、こういう話なんです。新聞はこういう見出しです。「音の異常で発見 レール欠け、あわや脱線 国鉄OBのカン衰えず」「宮城県仙台市の国鉄長町駅構内で東北線のレールが欠けているのを近くに住む国鉄OBが寝床の中で、いつもと音が違うと気づいて発見、事故を未然に防いだ。」という美談なんです。これは美談では済まされない。これは経験から来た勘でやったと思うのです。  そうなると、この「営利企業への就職の承認に関する年次報告書」の内容というのは、いわばほとんど局長以上なんです。一般の公務員にこれを適用できないんだろうか。ということは、三十年も四十年も勤めたその経験を生かす、たとえばレールの安全、国鉄の安全という委員会をつくる、そのメンバーにするとか、そういった面を考える必要がないんだろうか、こういうように思うのだけれども、どなたが答弁されるか……。
  50. 尾関雅則

    ○尾関説明員 お答え申し上げます。  国鉄におきましては、御指摘のような安全とか車両の検査、線路の保守といったようなことにOBの力をできる限り使っております。その形は、工事の請負というようなかっこうで現在はやっておりますけれども、御承知のように、工事の会社に大ぜいのOBが再就職いたしまして、その工事を通じて、御指摘のような検査あるいは修繕といったことを通じてその技能は発揮されております。しかし、それだけでは十分とは思っておりません。今後ますますそういう業務がふえますし、また、OBもふえるわけでございますので、なお別な形で、たとえば保全というものを請け負うというような形でやることができないか、いろいろ問題がございますけれども、そのような方向で現在部内で検討を進めておるところでございます。
  51. 川俣健二郎

    ○川俣委員 では、ついでにあなたに聞きます。高級官僚以外にも結構やっておりますと言うけれども、数字は、どの程度やっているのです。たとえば本省の課長とかそれ以上か。私の言うのは、この国鉄のOBの勘というのはいわば保線労務者がこの対象なんです。
  52. 尾関雅則

    ○尾関説明員 お答えいたします。  私が申し上げたのも本社の課長とか地方の部長とかいう職員ではございませんで、現場で長年線路の検査とか車両の検査を担当しており、退職の時分には、現業の管理者あるいは管理局の課長といったようなクラスの職員を対象にしてお答えを申し上げたものでございます。
  53. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それは数字を後で——いまわかりますか。
  54. 尾関雅則

    ○尾関説明員 ただいま手元には数字を持っておりませんので、後ほど先生のところへお届けいたしたいと思います。
  55. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それで、五十一年度にいわゆる会社へ就職の承認を得たのは、この人事院からの報告書によると百五十九件、そのベストファイブが、運輸省十五、通産省十五、農林省十四、国税庁十四、大蔵省四十四、こうなっております。  そこで、これは十月五日の新聞をお借りするようですが、「公団役員に厳しい規制 今月中に閣議決定 任期六年、六十五歳定年」。私はこれをとがめているんじゃないですよ。とがめているんじゃなくて、さっきからの論議は、能力がある者は高級官僚であろうが何であろうが、それをやはり活用するという方向づけを定年制の法制化に結びつけようとして聞いているのです。  そこで、この新聞によると、いかにも定年制があるやに思われるのですが、一体天下りのこの規定というのはどこでどうやってつくられるものですか。
  56. 角田達郎

    ○角田説明員 お答えいたします。  特殊法人の役員の人事の運用につきましては、それぞれ任命権限を持っている所管省で第一次的に行いますけれども、その運用を適正にするために、昭和四十年五月に役員の選考に当たっての留意事項というようなものを閣議口頭了解で定めております。  それで、その特殊法人の役員についての留意事項につきまして、現在でもそれが適当かどうか、そういう見直しをいろいろと現在行っておるところでございます。その見直しの中の一つの項目に、「清新な気風を反映させるため常勤のポストについては、高齢者の起用はつとめて避けること。」というような現在の留意事項がございますが、その一応のめどといたしまして、役員の在職時の年齢というものに一応のめどを定める必要があるのではないかということで現在検討しておりまして、総裁とか副総裁、そういうような方を除きまして、一般の理事、監事につきましては六十五歳に達するまでと、一応原則として一これも原則でございまして、要は適材適所というのが人事運用の基本でございますので、その辺を一応のめどとしたらいかがかということで現在検討を加えておる、こういうことでございます。
  57. 川俣健二郎

    ○川俣委員 総理府ですか。
  58. 角田達郎

    ○角田説明員 内閣の参事官です。
  59. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それじゃ、いまのあれというのはどこで何年ごろつくったのか。
  60. 角田達郎

    ○角田説明員 現在の留意事項は、四十年五月閣議口頭了解でございます。事務は内閣官房でやったわけでございます。  いま検討しておるのは、私どもの内閣官房で検討させていただいております。
  61. 川俣健二郎

    ○川俣委員 担当大臣に聞きますけれども、公社、公団、公庫に行く、そういったような服務規定は、昭和四十年に決めたまま口頭了解だ、こういうことかな。天下りの定年制というのは昭和四十年につくった口頭了解で片づけているわけか。どうなんですか。
  62. 園田直

    ○園田国務大臣 特殊法人の役員の人選については、いま申し上げましたとおり、四十年五月の閣議了解に基づいてやっておりますが、その後各委員会で御注意があり、それから担当大臣からも発言がありまして、人選それから任期等については十分留意をして、各界各層の意見を承りながら人選することにいたしております。
  63. 川俣健二郎

    ○川俣委員 時間がないですけれども、結局労働大臣、ちょっと遠回りしてきたのですが、いわゆる一般に言う高級官僚の天下りは昭和四十年の閣議の口頭了解で定年制を決めておりますということだ。それを一般の人方が見た場合、労働大臣の法制化をしないと言う意味はその辺にもあるのじゃないだろうかというふうにこれは勘ぐりたくなる。したがって、私は、しつこいようですが、一応のめどとして、五十五歳なら五十五歳までの経験を生かす、能力をさらに発揮させようという意味においても、一応のめどの定年制というものを日本にしく段階になってきたんじゃないのかと思う。  大臣は、これは明治の遺物だ、五十五歳の定年というのは寿命が四十数歳ころの遺物だ。そうなれば、七十何歳の寿命だったら、いまもっと高いところに定年制を置かなければならぬと、そういうところまで私は言っているのじゃないが、いまの雇用対策法だけでは、とてもじゃないが定年制のあれというのは私は無理だと思う。やはり一応めどをつけて、そのめどに従わない者を罰するほどの法律をつくれとまでは言わないが、奨励金もあってもいいでしょうし、あるいは注意勧告もあってもいいでしょうが、そのくらいの強力なものをやらない限りは、私は、老人の第二の職場というのは安全に確保されないんじゃないんだろうかという考え方でずっとやってきたわけなんです。経験豊富な労働大臣、ひとつその辺をもう少し聞かせてもらいたいと思います。
  64. 石田博英

    ○石田国務大臣 考え方としては川俣委員のお考え方に全く同感です。すでに高年者の雇用率というものを定めておりまして、その雇用率の実現のための行政指導はやっております。  それから、いろいろな促進のための諸施策の周知徹底がおくれていることは、これは労働省としてはまことに申しわけないと思っておる次第でありまして、私は、今度就任をいたしまして、その度合いの低さに実は驚いて、いま極力周知徹底に努めさせているところであります。したがって、社会保険等の受給開始年齢と連動させる、つまり、六十歳までにするという方針、それからそれを助長するための奨励制度、逆に申しますと高齢化社会になるということは、将来若年労働力が相対的に少なくなるということなんですから、早い時期に中高年労働力の管理の問題を検討することは、経営の側から言っても必要なことであるということで誘導して、指導をいたしております。  それから、めどを早くつけて、そのめどに向かって努力をさせるという考え方も必要でありますから、いま申しましたような一定のめどは示しております。  拘束力をにわかに持たすことの実情にないことは御理解をいただいておるのでありますが、ただ、全く私は意外に受け取りましたのは、高級官僚あるいは高級役員の定年とかいうようなものとつなげて考えているんじゃないかという御質問でありますが、そういうことはいま初めて私はむしろ知恵をつけられたようなもので、考えたことはございません。
  65. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それは、そう思わざるを得ないほど一般の老人の第二の職場というのは大変だということなんです。大変なんですよ。百五十九名というのはうらやましいという段階なんです。そうなると、定年制をきちっとされると、ははあ定年制を法律化するとあの人方は早くやめなければならぬからと、こういうように思わざるを得ないほど一般の人方は苦しいのです。決して知恵をつけたわけじゃありません。  そこで、この老人の問題はもう一つで終わりますが、このごろシルバー奉仕隊、それから老割と、いろいろと出てきた。寿命が延びれば当然そういう新しいものが出てくる。シルバー奉仕隊一つ取り上げましても、これは日本の法律は何ら適用しないで、窓口はどこになるか知らぬが、ただ、第二の職場を東南アジアに求めようなんということでは老人輸出じゃないかというように言われざるを得ない場合も出てくる。この問題は、事故が起きた場合は必ず恐らく労働省に返ってくると思う。労災はどうなるだろうか、東南アジアに行っている間に年金は保険料を納めておったんだろうか、これからどうなるだろうか、これは厚生省の問題だけれども、いろいろと出てくると思うが、それは時間がないから……。  ただ、能力がある、経験がある、第二の職場を海外に求めようという安易な意味のシルバー奉仕隊なら必ず悔いを残しますから、その問題と、もう一つ老割に対してどの程度考えておるのか、この二つを聞いてこの問題は終わりたいと思います。
  66. 石田博英

    ○石田国務大臣 シルバー奉仕隊のことについては、新聞を通じて私も承知しております。シルバー奉仕隊に限らず、海外で働いておる人に対する労働災害の補償の問題は、一年ほど前に適用することに決定をいたしました。  ただ、シルバー奉仕隊の場合は、事業主責任を負う人がだれであるかということに問題が出てくるわけで、たとえば三井物産の社員として外国へ行っておって、そこで障害を受けた場合は、三井物産が使用者責任をずっと負ってきておるわけですから、だから、それは問題が残りますが、新聞等で承知している限りにおいては、その事業主責任を負う者も確定をして、そして海外へ出かけていくようになる模様でありますし、また、そういうふうに行政を指導したいと思っております。そうすれば、それによって海外で起こった事故の補償を国内にいる勤労者の諸君と同じように受けられることになるわけであります。
  67. 田村元

    ○田村国務大臣 実は、国鉄の諸種の公共割引につきまして、いま総洗い直しをしておるのです。  私自身の考え方としましても、公共割引というものは各省庁に予算をつけて、政策割引で、政策予算できちっとすべきだという意見でございまして、国鉄が非常に苦しいときでございますから、そのことの是非を論じるよりも、そういうけじめをつけるべきだという考え方に立っていま整理をいたしております。
  68. 川俣健二郎

    ○川俣委員 経済企画庁長官に聞いておきたいのですけれども、いま円高で大騒ぎですけれども、国会ではどうするか。経済論議に乗せられるのだろうが、一般の人方は、物価はどうなるだろうかということが早いですね。そうなると、さっぱり安くならない、洋酒が少し下がった程度でさっぱりだ、果たしてこれは流通機構にメスを入れているのだろうか。ここで私はわかりやすく、いまの書き入れどきのリンゴを持ってきたが、そうしたら委員長にだめだと言われたので実物は出せませんが、きのうわざわざ雨の降る中を買いに行ったら、「陸奥」が一個五百円。後ろにありますよ。出しちゃいけないというから……。出しちゃいけないんでしょう。委員長、どうですか。
  69. 田中正巳

    田中委員長 現物がなくても御質疑ができると思いますので、その種の現物についてはお控えを願いたい。後刻理事会でこの種の取り扱いを協議する所存であります。
  70. 川俣健二郎

    ○川俣委員 現物を見るとわかりやすいのですがね。  そこで、ちょうど五百グラムかかった「陸奥」というリンゴが五百円で、これをずっと追跡していったら、果樹組合の軒下で八十円だった。八十円のものが千疋屋で五百円なぜするのだろうかと、当然こうなるわな。その辺の流通機構はどうなっていますか。果たしてどこでどのくらいの値段になり、どこでどのくらいの値段になるか、こういうことです。
  71. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 川俣さんが千疋屋でお買いになった「陸奥」のお話は、確かに銀座の目抜きの日本一高い土地の上に建ったああいうところでございますから……。しかも、千疋屋のものは、御承知のように、贈答用あるいは病気等の見舞い用というような特殊な用途に使われております。一般のリンゴの価格、流通は一体どうなっているかと申しますと、これはもう御承知のように、農業団体等が集荷をしまして、それを卸売市場に出荷をする、青果市場において競り売り等をやられて小売の段階に入る、こういう経路をたどっておるわけでありますが、大体小売価格の中で農家にどれだけ利益が入っているかと申しますと、リンゴの場合におきましてはおおむね五〇%程度。これは統計情報部で追跡調査をいたしました結果でございまして、リンゴだけが特に不正常な形にあると思ってはおりません。大体五〇%程度になっておるわけでございます。  しかし、流通の問題は消費者物価の問題に関連もございますので、選果場、施設の整備の問題でありますとか、あるいは通い箱の利用を拡大するとか、流通関係における諸経費の節減、合理化等今後とも図ってまいりたい、このように考えております。
  72. 川俣健二郎

    ○川俣委員 だから、私が経済企画庁に聞いたのは、そうなっていないと言ったって、現になって、私が買ってきているからね。レシートをもらってきているからね。しかも、それは軒下で八十円だからね。いや、それは千疋屋だから高いんだと言うのなら、一般にどのくらいするかということを追跡調査してもいいが、これは後ほどやるにしても、その場合にGNPはどれが入るんだろう。GNPの数字はどこが入るんだろう。最終価格の五百円か、八十円か、途中のか。
  73. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  リンゴをたとえば五百円で買ったということになれば個人消費支出に入ります。したがって、GNPの中に計上されることになります。ただし、いまお話しのように、千疋屋のリンゴが非常に高い。たとええばメロンを桐の箱に入れて贈答品として贈るという、一種の芸術品みたいな形のものでございますから、この価格で一般のことを判断するというのは適当でないのじゃないかと思います。
  74. 川俣健二郎

    ○川俣委員 この論議は、時間がありませんから後でさせてもらいます。  そこで、経済のオーソリティーである総理大臣に伺いたいのですが、産業から見た場合、構造不況というのは一体どういうことなんだろうか。おれの産業は構造不況だろうか、循環不況だろうか、構造不況に今度は手だてをしてくれるようだ、構造不況の労働者は、当然、そうか、もう少し待ってみるか、国が予算をくれるそうだということを言っている。構造不況というものは私らの産業は入るんだろうか入らないんだろうかといろいろと論議されているのが国会の外の論議。構造不況というのは大体どういうことなんですか。
  75. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 非常に異常な需給のアンバランスに当面いたしておる、異常なですよ、異常な需給のアンバランスに当面しておる業種、そういうことでありますが、その原因をあれしますと、これは原油価格が暴騰した、それに直接連なる産業もあります。あるいは高成長下にのみ正常な運営ができるようなもの、これが成長が低くなってきちゃう、そういう環境の中で存立がむずかしくなってきた、こういうようなものもあります。また、いわゆる発展途上国、それとの競合関係、それの競争に耐えかねる、こういうようなものもあります。いろいろ原因はありますけれども、異常に需給の調整がとれないという状態に立たされておるところの業界、業種、そういうものを構造不況業種と言っているのですが、そういうのは一体具体的に言えばどうだ、こう言うと非常にむずかしいのですが、さしあたり繊維でありますとか、平電炉産業でありますとか、アルミ産業でありますとか、造船あるいは海運だとか、そういう十三の業種、これを一応構造不況業種であるというふうに申しておるわけであります。
  76. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、きのうも話が出たのですが、構造不況産業の方にばかり目が転じて、ほかの方の産業なりその労働者がこの不況にあえいでいるのでどうしてくれるかということ、集中審議にもその話が出たそうですね。  そこで、私は具体的に言いますが、たとえば非鉄金属鉱山、この資源です。資源の問題に対しては、総理が資源有限ということでいろいろと御高説は聞かせられておりますが、これは想像以上だ。かつては日本の国というのは鉱山の経済に占めるポジションというのは大きなものだったし、その鉱山数も労働者数も一かなりなものだったが、いま取り上げているのは非鉄金属です。  そこで、総理に伺う時間がございませんので、常々伺っておるので通産大臣に端的に直接聞きますが、これは世界的な趨勢であることは否めないので、この世界的な趨勢の上に立って解決策というものはいま考えられておると思うのですが、そういった面を少し聞かせてもらいたいのです。
  77. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  世界規模におきましてはUNCTADの面におきまして取り上げられまして、同時に、また、日本といたしましても、こういうふうな銅でありますとか、その他金属鉱山等の業態というものが、あたかも構造不況産業に指定されました業種と同じような非常な苦境に立っておりますこともよく承知いたしております。  そういうふうな関係から、九月から、備蓄の積み増しでありますとか、雇用調整給付金の対象業種に指定いたすような措置を講じましたり、また、新鉱床の探査費用の補助の増額の要求をいたしましたり、こういうふうな構造不況に準じますような扱いを当省といたしてはとっておる次第でございます。
  78. 川俣健二郎

    ○川俣委員 構造不況ではないが構造不況と同じような取り扱いをする、したがって財政措置も考えるであろうということだと思うのですが、ところが、世界的なUNCTAD等を待ち切れない、いわゆるトンネルの中でまいってしまうという現状であり、しかも、鉱山というのは、石炭でも経験したように、一遍廃山するとなかなかまた復活させるということはできない。しかも、この技術というのは特殊な技術だから、蓄積されてきた技術なんで、歴史的な技術なんで、一遍なくしてしまうとなかなか戻らない。したがって労働者の職業訓練項目には鉱山という技術はないというように、とうてい理屈では教えられないのが鉱山技術である。これは石炭でも経験したとおりなんです。  そこで、鉱山を廃山すると一体どういうことになるのだろうかといった面を、きょうあえて金属鉱業事業団の理事長をお願いしておるので、その辺の見解をちょっと聞かせてもらいたいと思います。
  79. 平塚保明

    ○平塚参考人 金属鉱業事業団の理事長をいたしておりまする平塚でございます。まことに潜越でございまするが、御指名がございましたので、ただいまの川俣先生の御指摘の点について意見を申し述べさせていただきます。  ただいま先生から、鉱山は一度閉山したら再開は困るだろうという関係の御指摘がございましたが、御案内のように、日本の鉱山の大部分は坑内掘りでございます。したがいまして、一度これを休山をいたしますると、坑内は水没し、また、この切り羽は崩壊して、後々これを再開しようと思いましても大変な困難が伴うわけであります。また、御案内のように、大部分のものは山間僻地にございます。したがいまして、これを再開するには大変な努力が要りますことはただいま先生の御指摘のとおりでございます。  また、鉱山の技術の面でございまするが、鉱山労働者は特殊の産業に従事しているというような関係で、一度これが地方に分散してしまいますると、再開するときにこれを集めるのは容易でございません。  また、御案内のように、今日、日本の金属関係は多くのものを海外から入れておるわけでありまするが、最近、資源ナショナリズムの思想は、単に資源を持つ発展途上国ばかりでなく、先進国においてもこの思想はほうはいとして起こっておるわけでありまして、かようなことから、安定した金属の供給がいつ妨げられるか。過去の経験においてもこれはしばしば繰り返されたことでございます。  かような意味で、将来は資源を持っておる発展途上国に協力をして、これらの持つ資源を日本の技術をもって協力してともに開発する、これによってその国の経済の発展に寄与するばかりでなく、同時に、出たものの一部を日本に入れることによって、日本の必要量を賄うという方向で今日通産省も指導をされておるわけでありまするが、この技術屋が、鉱山がつぶれればそれを維持育成する拠点を失ってくるわけであります。かような意味で、その拠点をなくさないような努力が必要であろうと考えるわけであります。  また、鉱山事業は御案内のように地下の資源を掘り起こしてまいるわけでありまするから、したがいまして、採掘が進めばいつかは鉱量が枯渇し、廃山の運命に至る。これは鉱山業の宿命であって、やむを得ないのでありますが、しかしながら、今日かなりの鉱量を持ち、かなりの品位の鉱石を多量に持っておりながら、一時的な経済の変動によってこれが閉山に陥るというようなことに相なりますれば、今日までこれらを探鉱し開発してまいった苦労が全くむだになる次第であります。  かような意味で、ただいま先生の御指摘の点は、今日、国におかれてはいろいろの手をもって鉱山の育成、温存に努力されておられまするが、なお一段とお骨折りをいただいて、せっかくの資源をむだにしないようにお骨折りをいただければ私どもまことに幸いだと考える次第であります。  まことに簡単でございまするが、これをもってお答えといたします。
  80. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうもありがとうございました。  そこで、時間がないからあれなんですけれども、総理、結局、言葉じゃなくて具体策だということから、私の質問が細かく入って時間をいただきましたが、やはり施策を具体的に示さないと、この予算委員会で幾ら聞かせても、終わった後どうなるかということになるのです。  そこで、いま時間がなくて鉱山の話をそれぞれの担当大臣に伺うことができないのですが、いままでいろいろと施策はしてきたわけだ。いまも通産大臣が、構造不況産業じゃないが同じように取り扱っていくという姿勢をも示された。あるいは、かつては大蔵省が減耗控除制度というものもつくった。そして三段階的な探鉱方法もやってきた。関税の問題もやってきた。CIPECとの関係もいろいろとやってきた。ところが、どういうわけか、歴史的に農業には基本法がある。林業にも基本法がある。しかし、鉱山には、いろいろな派生的な法律はちょこちょこつくられておりますけれども、基本的な施策、法律というものはないのですね。これはやはりいろいろと問題じゃないかというので、関係労働団体も含めて論議されておる時期なんです。これは構造不況の産業でないからいかぬとか、循環のものだからもう野たれ死にだろうとか、だからというのでカンフル注射をして生かしておる、こういう状態じゃいかぬので、日本の資源というものに対して毅然たる態度で臨まれる総理大臣ですから、そういったものを考えると、やはり鉱山にも基本的な制度、施策というものをこの期に打ち立てないと、長い暗いトンネルにいる間に死んでしまうのじゃないかということも私は感じて、あえて最後に総理大臣の御高見を拝聴したいところなんです。
  81. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 大変重要な御提案だ、こういうふうに思います。鉱業と申しましてもいろいろな種類のものがありまして、それに統一的な指針を出すという問題、これはなかなかいろいろむずかしい点があるのではないか、そのような感じがしますが、なお政府においても勉強させていただきます。
  82. 川俣健二郎

    ○川俣委員 終わります。
  83. 田中正巳

    田中委員長 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。  次に、大内啓伍君。
  84. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、きょうは日米貿易、それからエネルギー、さらには核再処理の問題等をお伺いしたいと思ったのですが、まず冒頭に、このところの円高問題についてお伺いをいたします。  政府の行政を見ておりますと、あのニクソンのショック以来、ドルショックあるいは石油ショック、さらには最近においては核再処理ショック、そして今度の円高ショックとショック続きでございまして、どうもショック専門のように思われてならないのでございますが、それはやはり一つには情勢の的確な分析が行われていない、つまり情勢判断の誤り。確かに国際経済等も激しく動いておりますが、その見通しがやはり誤っているからショックが起こるのであります。  そこで、まず昨日来のこの史上最高の円相場を見ておりまして、当面二百五十円の攻防が続かざるを得ないというふうに思われます。しかし、他方においては、日本国際収支の大幅な黒字が急になくなるというような状態はないわけでありますから、この月末にかけましてじり高情勢が続くのではないかと見られております。総理はこれについてどういうふうにごらんになっていましょうか。
  85. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私が相場の先行きにつきまして見解を述べたら、これは世界的にも相当の影響のある問題になってくるから、これは勘弁させていただきたいのですが、いまの円高ドル安、これは相関連していると思うんですよ。つまり、わが国国際収支は大幅な黒字基調である、どうもこれが続きそうだ、あるいは見方によるともっと広まりそうだというような見方がある。反面におきまして、アメリカが大変な膨大な赤字を露呈しておる。そういうようなことから、ドルに対する見方、これが弱含みじゃないかなんというような見方が出てくる。それが重なり合いまして今日のような状態になってくる。私は、しかしこの状態を放置しておきますと、これはえらい重大な問題になってくることを心配しておるのです。世界的な混乱、いま経済が非常に混乱しておりますが、それがさらにこの為替不安を加えて激化してくる、こういうようなこと、そういうことを考えますと、ここで日米欧よほどしっかりと意見調整をして、そしてこの不安をどうやって除くのだ、この体制というものが非常に緊切である、こういうふうに考えておりますが、さしあたりわが国として、だれが考えてもなすべきことは何だ、こう言いますれば、やはり予見されるところの大幅な国際収支の黒字、これをとにかくできる限りそういうものにさせないための努力をしなければならぬこと、これはもう当然だろうと思うのです。  その方法は一体どうだというと、輸出にブレーキをかける、こういう行き方、これはちょっと私は基本的には問題だと思うのです。集中豪雨的な輸出をしてはならぬ。そんなようなことは当然慎まなければなりませんけれども、解決の糸口は、輸入をこの際拡大する。いま経済諸施策、総合政策を進めておる。それなんか一つの大きなその問題の解決のためのてこになるわけでありまするけれども、この際、特別輸入、たとえば先ほどもちょっと申し上げましたが、ウラン鉱でありますとか、あるいは原油でありますとか、あるいは非鉄の各種の金属類でありますとか、その原鉱石でありますとか、まあその他いろいろ工夫すると考えられることはありますが、そういうものの緊急輸入というか、それを相当思い切って考えなければならぬと思っておるのです。そういう問題が打ち出されるというようなことになりますれば、だんだん気分的にも、また実質的にもこの問題の解決、この糸口は出てくるのではあるまいか、そんなような感じがしております。
  86. 大内啓伍

    ○大内委員 いま総理は、この問題の解決には日米欧が緊密に連携をとらなければならぬ、こういうふうにおっしゃった。私もこれは同感なんであります。ただ問題は、今度の円高一つの背景として、アメリカの重要な政府の閣僚であるブルメンソール財務長官の、いまのマルクと円の相場ではまだアメリカの保護主義を抑えることはできない、あるいはまだ円高は小幅であるといったような発言が非常に大きな影響を与えていると見られているのですね。また昨日も、日銀総裁は、これは不用意な発言である、こういうふうに憤激の色をあらわしておられました。私は、こういうような通貨問題でアメリカの閣僚が円高を刺激し、しかも他国の通貨政策に対して事実上介入すると思われるような言動に対して、これをただ見逃しておくというわけにはいかないのじゃないか。少なくとも、向こうの政府の閣僚が言っているのでございますから、国会の場において、こちらの政府としてもこれに対して遺憾の意を表明するぐらいのことがあってしかるべしだと思いますが、いかがでしょうか。
  87. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 為替相場というもの、これはもう心理的な要素というものも非常に大きいのです。でありまするから、私は、円相場の前途はどうなるなんということは、せっかくのこの予算委員会の場でありまするけれども、その見解を差し控えさせていただいておる。世界全体の通貨安定ということを考えて、非常に慎重な態度をとっておるんですよ。私は、世界じゅうの責任者がそういうような態度をとっていただきたい、こういうふうに思っておるのです。  御指摘の米国の財務長官があのような発言をされたということは、私はちょっと不用意な発言じゃないか、こういうふうに思います。全く大内さんと同感でありまして、また日本政府といたしましても、そういうようなことはちょいちょい起こっては困るのですから、そういうことの反復されないように必要な処置をとっておる。これは大蔵大臣がよく承知しておりますから、詳細に述べられるかどうかわかりませんけれども……。
  88. 大内啓伍

    ○大内委員 そこで、なお円高対策の問題でございますが、これは日銀マターでございますが、昨日は五億九千万ドルの出来高のうち、大体三億五千万ドルくらい日銀が介入したのではないかというふうに見られております。これは日銀の当局者でないものですから、政府としてはお答えしにくいと思うのでございますが、少なくともこのような状態が続くうちは、政府としては介入する必要がある、つまり日銀として介入する必要があるというふうにお考えかどうか、大蔵大臣いかがでしょう。
  89. 坊秀男

    坊国務大臣 お答え申します。  これは何と申しましても日銀マターでございまして、大蔵大臣がここでこれをどうするこうすると申しますことは、私は大した者じゃございませんけれども、日本大蔵大臣がこう言ったということは大変な影響を及ぼすことと相なりますので、ひとつ申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  90. 大内啓伍

    ○大内委員 その言外の意味は十分にわかります。少なくともいまの事態において当然政府としては介入しなければならぬでしょう。しかし、それだけでは問題は解決しない。  そこで、昨日総理は、八閣僚を集めて、いま申された緊急輸入の拡大あるいは円高差益を消費者に還元するための輸入たばこ等の値下げ等々を指示されたと聞いておりますが、新聞報道等によりますと、その緊急輸入の枠は大体十億ドルくらいじゃないかというようなお話もあって、農林大臣の発言もございました。たとえば小麦については十万トン入れるのだとか、あるいは大麦は三、四万トン入れるのだとか、あるいは飼料用の穀物は十万トン、計二十三、四万トンは入れるのだというお話もございましたが、農林省としては緊急輸入についてどういうことを具体的にお考えでしょうか。
  91. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 この黒字減らし、貿易の均衡をできるだけ改善をするという問題は、当面非常に重要な課題に相なっております。特に日米関係の問題でございますが、御承知のようにアメリカからは、わが国は小麦三百万トン、大豆三百万トン、飼料作物八百万トン、こういうように年間安定的に輸入をいたしておるわけでございまして、アメリカから見まして日本が最大の農産物の輸出国である、こういうことは高く評価をいたしております。先般、カーター政権のバーグランド新長官がお見えになりまして会談をしたわけでありますが、この点は米側としても高く評価をいたしておるところでございます。ただ、個別品目として、いろいろオレンジの問題でありますとか、あるいはサクランボの問題でありますとか、そういうものはございますけれども、しかし、いま申し上げたように、日本は最大の輸入国である、こういうことでございます。  そこで当面の課題としまして、私どもは今年度分の第四・四半期の輸入を前倒しにしょう、さらにまた備蓄等も、家畜の飼料を中心としまして備蓄をするということは、国内の畜産農家にとりましても歓迎すべきことでございますので、いま大内さんがおっしゃったような点につきまして、前倒し並びに備蓄の増強というようなことで対処してまいりたい、こう考えております。
  92. 大内啓伍

    ○大内委員 いま農林大臣にお伺いをいたしましたが、総理にお伺いしたいのは、緊急輸入を昨日指示されまして、大体いまの状況のもとで総額どのくらいの程度おやりになりたいというふうにお考えでしょうか。いまの段階でそういう数字を伏せられても余り意味がないと思うのです。やはりこういうことは重要だと思いますので、できればはっきりお答えいただきたい。
  93. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 新聞にいろいろ数字が報道されておりますが、政府としてはああいう示唆は与えておりません。いま申し上げたような重要資源、これの緊急輸入ということが大体中心になるわけでありますが、さあそれをできる限り大幅にということでいま見当をつけるように勉強しておりますが、これは早急につけたいと思う。そしてこれをまとめて発表しなければならぬと思っているのですが、その額は、やはり日本はやったなということを世界じゅうに印象づけるような規模のものでなければならぬという考え方でやっております。
  94. 大内啓伍

    ○大内委員 思い切った緊急輸入をやるという御趣旨だと思います。  そこで、言うまでもなく、今度の円高によりまして中小企業、特に繊維、雑貨あるいは機械の一部、また輸出産業、大変な被害を受けるわけでございます。さきに救済融資等が決定されておりますが、これの動向いかんによっては、さらにその緊急融資を追加する必要があるのではないかというふうに思われますが、大蔵大臣いかがでしょう。
  95. 坊秀男

    坊国務大臣 この点に関しましては、関係各省とよく相談をいたしましてやっていきたいと考えております。
  96. 大内啓伍

    ○大内委員 私どもの判断では、いまの情勢が続いてまいりますと、明年度の予算はいずれにしても景気刺激型にならざるを得ないのではないか。ことしの当初予算は御存じのとおり一七・四%増プラス補正予算ということでございました。もし来年度も景気刺激型の予算編成をやるということになりますと、つまり一七%以上の予算編成の伸びを実現しようと思いますと、当然国債の三〇%の枠という問題が起こってくると思うのです。  今度の予算委員会の質疑におきましても、総理は、これをやたらに崩すことはできないのだ、だから一応守っていくというようなお話があったのでございますが、これは本当にそう受けとめてよろしゅうございますか。つまり、政府としては、来年度の予算編成に当たって三〇%以内に国債を抑えるということを、政治約束としてここで言明されますか。これは総理マターだと思いますのでお伺いいたします。
  97. 坊秀男

    坊国務大臣 私が先に……。  景気と関連して来年度の予算規模をどうするかということでございますけれども、今日の状況におきましては、まだ明年度の経済見通しというものも固まっておりません。そういったようなものを、だんだん固まってきたものを踏まえまして、だんだんと予算の方も固まってまいるあるいは固めていく、こういうことでございますが、大内さん御存じのとおり、今日の日本のこの財政、予算でございますが、とにかく御指摘のような、公債の依存度が三〇%になんなんとするというような事態を三年間も続けてまいっております。     〔委員長退席、栗原委員長代理着席〕 これは申し上げるまでもなく、世界に類例のない異常なる依存度でございまして、どうしても何とかしてできるだけ速やかに脱却をしていかなければならないというのが、いずれにいたしましてもこれは財政における至上命令だというふうに私どもは心得ております。  さようなところから、今度の補正予算におきましてもお目にかけて御審議を願っておるように、そういったような歯どめと申しますか、それを踏み越えぬように苦心惨たんをいたしたわけでございます。いま五十三年度の予算につきましては鋭意検討を続けてまいっておりますが、要するに、そういう目的を何とかして踏み越えない、その範囲において予算を作成するというようなことで一生懸命にやっておる次第で、そのためには、どうしたって歳出面におきましては、何としてもスクラップ・アンド・ビルドと申しますか、そういったような思想に徹しまして、経費の節減あるいは経費の選択というようなことをやりまして、一方、歳入の面におきましては歳入も見直していくというようなかたい決意をもちまして、そういったような方針に従いまして、今日ただいま予算編成に鋭意力を尽くしておるということでございますので、そういったようなことにつきましても、ひとつ御理解と御協力のほどを切にお願い申し上げる次第でございます。
  98. 大内啓伍

    ○大内委員 いまの円高問題はきわめて重要な問題でございますから、政府は、これから政策を誤らないように適切な措置をお願いしたいと思うのであります。  その背景の重要な問題として、やはり日米貿易における日本の黒字問題というものがあると思うのです。十月十三日に、鉄鋼特別会議というのがアメリカにおきまして、これはホワイトハウスで行われたのですけれども、ここでは、いまの鉄鋼のダンピング問題あるいは数量規制の問題について、労使代表、消費者代表あるいは関係閣僚、政府からはカーター大統領初めブルメンソール財務長官、ストラウスSTR大使等々が出席して行われて、この問題も非常に重要だと思うのでありますが、その前に、日米貿易のインバランス、これは昨年度たしか貿易収支で五十五億三千百万ドルぐらいの黒字だったと思うのでありますが、ことしはどのくらいの黒字になりそうでございますか。これは田中通産大臣、どうですか。
  99. 田中龍夫

    田中国務大臣 日米貿易の今後の黒字の幅の問題でございまするが、いろいろとアメリカ側の方の発表もございまするし、新聞等にも出ておりますが、これまたいま軽々に当局といたしまして予測を申し上げることは慎まなければならない、こういうふうに考えておる次第でございますが、できるだけ輸入の増加のために、日米両国間で先般来貿易の促進についての委員会をつくりまして、関係者集まって輸入促進、黒字減らしということに全力を挙げる所存でございますので、以上お答えといたします。
  100. 大内啓伍

    ○大内委員 ことしに入りまして、一−八月ですでに四十九億八千八百万ドルの黒字が出ているわけでございますから、きわめて常識的に考えましても、大体七十億ドル近辺の貿易収支の黒字が起こるであろうということはもう想像にかたくない。したがって、これはやはり日米関係においては非常に重大な事態だと思うのです。そして九月の十二、十三日に行われました準閣僚会議におかれましても、アメリカの当局者は、日本に対して輸入拡大というものを非常に強く要請してきておる。したがって、これに対して何らかの答えというものを日本としても出さざるを得ない状況に入ってきたと思うのでございます。  農林大臣、ちょっとお伺いいたしますけれども、アメリカからの輸入拡大の問題として、具体的に牛肉、農産物あるいはサクランボ等々の農林関係の輸入拡大が要求されておりますが、これに対しては、農林大臣としてはどういう答えを出そうとしているのですか。
  101. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 先般、準閣僚レベルの日米の話し合いが持たれたわけでございますが、個別品目につきましては、いまのところ、米側から日本側に対して具体的な要求はなされておりません。  いま御指摘の品目につきましては、御承知のように、牛肉はグローバルクォータとしてこれを輸入をしておりまして、各国別の割当はいたしておらないわけでございます。わが国としては、国内での生産の自給力を高め、畜産農家の経営の安定を図るということを重点にしまして農政を進めておるわけでございますが、しかし、自給率は七五%ないし八〇%という段階でございます。したがいまして、あとの足らざるところは安定的にこれを輸入をする、こういう考えでやっております。アメリカの牛肉の一般枠の中におけるシェアは、大体一万トン余、年間七万トン前後入れておりますが、そのうちの一万トン余というものを米側がシェアを持っておる。それからそのほかにホテル用として若干の高級の肉を日本に出しておる、こういうことでございます。  それからサクランボにつきましては、これは御承知のように、昭和三十五年に自由化がすでになされておるわけでありますが、コドリンガという害虫が国内に入ってきてはいけないということで、植物防疫の見地から今日まで輸入を停止いたしてきておるわけでございます。これが技術開発等が大分進んできておりまして、わが国の専門家もある程度それを評価をするような段階に来ておりますが、今後国内の生産の立場を考えながら慎重に対処してまいりたい。  オレンジ等につきましても、御承知のように温州ミカンを中心に非常に国内の生産が伸びてきております。摘果等もやって生産調整をやっておるという段階でございますので、そういう点に配慮しながら慎重に対処していかなければいけない、このように考えております。
  102. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、いま対アメリカの膨大な黒字を減らすという有効な政策というのはなかなかむずかしいのじゃないかと思うのです。特にバイラテラルな関係において常に黒字、赤字の均衡を図るということはなかなかむずかしい。アメリカにおきましても、昨年はECに対してたしか七十七億ドルぐらいの黒字を持っているわけでございます。日本においては、豪州、ニュージーランドその他については一方的な赤字を背負っておるわけなんです。したがって、もう少しグローバルな形でこの問題は解決しなければならないと思いますが、それにつけても、対米の黒字はやはり少し大き過ぎる。しかし、この七十億ドルに達するであろう黒字を半分以下にするというような措置を緊急にとることはむずかしい。そして、アメリカもそういうことは必ずしも求めてはいない。アメリカが求めているのは、アメリカ国民に対して、日本政府努力しているということをアメリカ政府としては説明できるような材料が欲しいと思っているのですね。そういう意味では、何かのシンボリックな措置というのが非常に重要だと思うのです。総理としては、これはやはり日米関係の基本に触れるだけじゃなくて、世界経済全体に触れる重要な問題でございます。すでにアメリカは、いま私が一つだけお伺いいたしました農林関係のほかに、製品輸入であるとか、あるいはカラーフィルム、コンピューターの関税引き下げであるとか、あるいは小さな問題かもしれませんが、厚生省関係の柑橘類防腐剤のTBZの解禁の問題であるとか、いろいろなことをもう具体的に提案してきている。そして恐らくいまの状態でまいりますと、早晩この問題を交渉するためにストラウスSTR大使も見えるんじゃないか。したがって、タイムリミットといたしましても、そうずるずるとこの問題を延ばしておくわけにはいかない。これらの措置について総理としてはどういう措置がこの際必要だというふうにお考えになっているか、お聞かせいただきたいと思います。
  103. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日米間の問題はありますが、それより前に、世界全体に対するわが国の貿易の黒字問題、それに私は、さあ黒字の幅についての基調が変わってきたなあという印象づけが行われるような措置が必要である、こういうふうに考えて先ほど大まかなことを申し上げたわけですが、特に、日米間がぎしぎししますと、これはまた世界にも相当大きな影響が出てくる、こういうふうに思うのです。そういうことで、日米間の経済関係というものは、どうしても協力関係、そういう関係はどこまでも維持しなければならぬと思います。  貿易戦争だなんというようなことを言われますが、そういうような状態に持っていっちゃいかぬ。そのためには、なかなかこれという手を——これを早急にというと、先ほど申し上げましたような、重要資源の相当部分をアメリカに期待する、こういうようなことも考えられます。しかし、そういう大型の輸入、その措置のほかに、アメリカが関心を持っておりまする、非常にセンシティブ、こういうふうに言われますが、そういう問題につきましてもよほど考える必要があるのじゃないか、そのような感じもいたしておるわけでありますが、そういう問題はまた逆に日本といたしましてもセンシティブな問題でありまするから、その結論を出すこと、これは非常に慎重な配慮のもとにしなければなりませんけれども、そういう問題なんかの処置も非常に重要な段階になってきておる、こういうふうに存じまして、一つ一つ結論を早急に出してみたい、かように考えております。
  104. 大内啓伍

    ○大内委員 その日米貿易の中で非常に重要な問題として、鉄鋼の問題がいま急速に起こってきているのです。さっきちょっと私が触れましたのですが……。  この十月十三日の鉄鋼特別会議、ホワイトハウスで行われたこの会議におきましては、やはりアメリカも相当な決意をし始めている。カーター大統領はこう言っております。不公正な対米輸出には米国ダンピング防止法を強力に適用する。そしてこの十三日の前日には、御存じのように上院において決議が行われまして、米鉄鋼業を不公正な競争から守らなければならない、ダンピング規制強化を米政府に要求する、これは強い決議が出てきている。またこの十三日の鉄鋼特別会議におきましては、スピア米鉄鋼協会会長は、ダンピング問題に関し政府が間もなく何らかの行動を起こすと期待している、こういうふうに述べられておるわけであります。  いまアメリカのスケジュールを見てみますと、すでにギルモア・スチール社の高炉五社に対する厚板のダンピング提訴は、御存じのように十月三日に三二%のダンピングがあった、こう一応認定を仮決定をしました。そしてUSスチール社のダンピング提訴に対しまして、これは九月二十日に提訴が行われておりますので、通常でございますと大体一カ月でございますから、十月二十日近辺にはそのダンピング提訴を受理するかどうかを決定する、こういう重要な段階に入ってきております。そしていまの状態では、このUSスチール社のダンピング提訴というものを認めることはまず確実であろう。こういうことになりますと、鉄鋼の調査特別委員会であるアメリカのソロモン委員会は、それらを見ながら恐らく早ければ十月の末、遅くても十一月の初旬にはカーター大統領に対して一つの報告書を提出し、カーター大統領もその段階で決断を下さなければならぬ、こういう一つのスケジュールの中に入ってきていると思うのです。  といたしますと、日本側といたしましても、これに対しては何らかの対応を示さなければならない。すでに日本の鉄鋼業界は自主規制という方針を打ち出しているようでございますが、いまアメリカが本当は問題にしているのは、そういう数量規制ということよりか——というのは、数量規制をやりますと、アメリカの物価が上がってくる、あるいは自由貿易の原則がそこから崩れてくるということから、カラーテレビの問題にこりて、アメリカもやはりこの問題は価格規制の問題でやりたいなと考えているときに、日本の方は、いや、数量規制で自主規制をやるのだ、これはどうもちぐはぐのような感じもいたします。  この鉄鋼ダンピング問題に対応する日本としては、どういうふうに処置をされようとするか。通産大臣、いかがでしょう。お願いしたいのでございますが、私もできるだけ電報文で聞きますので、電報文で答えていただきたいのです。
  105. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  お話のとおりに、数量規制よりも価格問題だというのがアメリカの態度でございますが、当方といたしましては、ダンピングによる輸出は当然すべきではない。しかしながら、何がダンピングであるかということにつきましては非常に複雑な問題もありまするし、特にアメリカの現在のダンピング法制についてはガットの上でも問題がございます。したがいまして、問題の公正な解決のために今後もさらに努力をいたすべきでありまするが、最終的にはアメリカ政府の鉄鋼貿易に対しまする方針が、ソロモン委員会の報告等を踏まえまして、より誠意を持って最大限の協力の方向をわが方といたしましても考えてまいらなくちゃならぬ、こういうふうに考えておりまするし、ストラウス大使の一行が来日する前に、何とかして対日輸出の拡大、鉄鋼貿易の問題につきましては円満な解決を図ってまいりたい、全力を挙げて努力する所存でございます。
  106. 大内啓伍

    ○大内委員 そういたしますと、鉄鋼問題、それから先ほどの輸入拡大問題については、ストラウスSTR大使が来日される段階までに日本の案を固めておくというふうに理解してよろしゅうございますか。
  107. 田中龍夫

    田中国務大臣 その間におきましてもあらゆる努力を尽くしまして、速やかな妥結に達したい、そういうふうに考えている次第でございます。
  108. 大内啓伍

    ○大内委員 それでは、時間も経過しておりますので、次の問題、つまりエネルギーの問題についてお伺いをしたいと思います。  総理は、この十月三日の所信表明において次のように演説されております。つまり、エネルギーの問題につきまして、これらの問題は危機が現実のものとなってから対処するのでは手おくれとなる、長期的視点から基本対策を確立し、国民の合意を図りたい、こういうふうにおっしゃられているのです。  私は、このお考え、全く同感であります。ただ問題は、今度の予算委員会の討議あるいは本会議の討議をお伺いしておりまして、福田総理は事あるごとにエネルギー問題の重要性を強調されておりますけれども、その政策を遂行する立場にある肝心の政府自身に基本対策が確立していないじゃございませんか。長期エネルギー需給に関する政府の基本対策というのはございますか。だれが責任を持ってそれを推進しているのですか。総理、いかがでしょう。基本対策はございますか、ないと思いますが。
  109. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 エネルギー事情も、世界環境が変わってくるし、国内のいろいろな事情もありまして、なかなか思ったようにまいりませんが、基本政策というと、非常に形式的に言うと、五十年に総合需給の上に立ちましてこういうことをするという政府の方針を決めておるわけなんです。しかし、その中で特に原子力発電、その関係が非常に動いてきた、そういうようなことからどうしても総合需給計画は変えなければならぬ、こういうことになりまして、そして、総合エネルギー調査会におきまして、そういう事情を踏まえて、これはエネルギーの総合政策を変えなければならぬという認識のもとに、いま御検討をお願いしておるのですが、先般、その中間的な報告がありました。これは世に暫定計画、こういうふうに言っておりますが、当面この暫定計画をにらみながらエネルギー政策を進めていきたい。いずれ来年の夏ごろまでには、これが審議会の方もなお検討して、そして本答申、そういうように言っておりますので、その段階になりますれば、暫定が暫定でなくなるわけでございますが、ただいまのところは、暫定需給計画を見ながらエネルギー政策を進めておる、こういうことでございます。
  110. 大内啓伍

    ○大内委員 いま御指摘の、昭和五十年十二月の閣議了解に基づくエネルギー政策、これは総理もいま御指摘のように、重要な主要項目について大幅な狂いが生じてきている。したがって、もはやこの政府のエネルギー政策を基準にして政策を遂行することはできない。  これは決していやみで申し上げるわけじゃございませんが、アメリカのカーター大統領は一月二十日に就任をされまして、それから三カ月後の四月二十日にはカーター大統領の新エネルギー政策を内外に発表されました。福田内閣は成立してから九カ月余たっておりますが、まだわれわれの経済の基本、根底の政策である新エネルギー政策を決定できない。しかも、この重要性を強調される、これはやはり十分お考えになる必要があると思うのであります。そして、その中間報告をにらみながらこれからエネルギー政策を進めるということでございますが、そういたしますと、政府としての新エネルギー政策というのは来年夏の答申を経た直後には出される、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  111. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そのとおりの理解でおります。
  112. 大内啓伍

    ○大内委員 中間報告というのは、御存じのとおり、二つの数字を挙げているわけでございます。一つは「対策現状維持ケース」、もう一つは「対策促進ケース」、どちらのケースをにらんでいかれますか。
  113. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 「対策促進ケース」の方をにらんで推進いたします。
  114. 大内啓伍

    ○大内委員 だんだんはっきりしてまいりましたが、そういたしますと、政府といたしましては、昭和六十年の段階輸入石油については四億三千二百万キロリットル、そして原子力については三千三百万キロワット、省エネルギーについては一〇・八%の節約、それを政策の柱として進めていく、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  115. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 当面、そういうことでございます。
  116. 大内啓伍

    ○大内委員 この中間報告には、ここに書いてありますように「整合性と実効性のある総合エネルギー政策」と書いてあるのです。ところが、確かに作文の数字合わせはできている、その意味での整合性はあるかもしれないのですが、実効性という面については非常に疑問がある。たとえば十月五日、国際エネルギー機関IEAは、閣僚理事会におきまして、一九八五年のIEA加盟国全体の石油輸入目標を御存じのとおり一日当たり二千六百万BDと決めました。これはキロリットルに直しますと大体十五億キロリットル・パー・イヤー、つまり年間にそういうことだと思うのです。  そういたしますと、日本が六十年の時点で四億三千万キロリットル確保するという意味は、いまの五〇%増を六十年の時点において確保するということなのですね。今度のIEAの決定というのは、もちろん日本も参加しているわけでございますが、平均で一八%増でございますよ。日本だけが五〇%増をとれるという特権が何らかの形で合意されているのですか。二国間でも、このIEAの中でも合意されているのでございますか。日本としては、このIEAの決定にかかわる四億三千万キロリットルは確保できる保証があるならちょっと示していただきたいのです。
  117. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  今回のIEAの結論でございますが、御案内のとおりに、これは国際的な輸入石油量でございます。のみならず、その間には、イギリスのごとき北海の油田ができますれば、それに応じて減少いたしますし、あるいはまた日本におきましても、御承知のオハの油田の近くの海底油田あるいは日韓大陸棚等がございますれば輸入量が減少いたします。これは個々の具体的な国別をいたしておるのではございませんで、全体といたしましての六十年のグローバルな輸入量でございます。  また日本といたしましても、御案内のとおり今日は石油の輸入は五百万バレル・パー・デーでございますが、この計画によりましても、現在のところ七百五十五万バレル・パー・デー。それにいたしましても、その間に移動がございますし、国際的にも流動いたしますので、これはグローバルといたしましてこの会議の結論を了承いたしておる、こういうふうに考えております。
  118. 大内啓伍

    ○大内委員 通産大臣の答えは答えになっておりません。もし昭和六十年の時点でこのIEAの二千六百万BDというものが一つの国際的なめどであるとすれば、日本の場合はそのIEA全体の二八・六%の石油をとるということになるのですよ。それでないと四億三千二百万キロリットルは確保できないのですよ。この四億三千二百万キロリットルが確保できなければ経済成長六%はだめになるのですよ。私が聞いているのは、いま使っている石油の五〇%増も昭和六十年の時点で確保されるという保証がどこかでなされているのかということを聞いているのです。なされてないならなされてないと言ってください。
  119. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のとおりに、ただいまもお答えいたしましたように、全体といたしましての決めでありまして、流動性があることが一つ。もう一つは、日本自体というのは液体燃料のほとんど全部を海外に求めておる、その国際的ないろいろな条件の変化もございます。     〔栗原委員長代理退席、委員長着席〕 そういう意味で、先生がおっしゃるようなストリクトな意味においての計算では確保されてない、こう申してもよろしいと思います。
  120. 大内啓伍

    ○大内委員 いま通産大臣のお答えで明確なように、IEA段階において日本の四億三千万キロリットル、これが必ずしも確保されるものではないということが一つ明らかになったと思います。  そこで、総理にひとつお伺いしたいのは、今後日本が必要石油を確保するためには中近東外交、なかんずくサウジアラビア外交が非常に重要だと思うのです。これは例の一九七三年の三木特使以来、日本はある意味での約束をほごにする事態というものを招いてきた。そして中近東諸国、なかんずくサウジアラビアが日本に対して石油を売る条件としては二つのことをはっきり言っているわけなのであります。これは先般わが党の春日委員長が中近東にエネルギー調査をした結論でも明らかなのでございますが、一つは、やはりサウジアラビア等中近東諸国の経済発展のために、日本の持っているテクノロジーというものを供給してほしい、もう一つは、中東和平という問題についてアメリカを鞭撻し、中東諸国の意向ができるだけ通るように協力してほしい、こういう二つの条件が満たされなければ日本の石油について保証することはできない。したがって、そういう意味ではあるいはこれは外務大臣にお伺いした方がいいのだろうと思いますが、これらの中近東諸国の要求に対して具体的にどういうふうにおこたえになろうとするのか。特に、サウジアラビアが求めているいろいろなプロジェクト等がございますが、これに対してはどういうふうに対応しようとしているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  121. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 サウジアラビアが日本に対して期待しておるもの、これは、一つは中東和平に対する日本としての努力であり、もう一つは、サウジアラビアは日本に油を供給する、日本が持っているものはテクノロジーである、日本のテクノロジーを供給すべきである、この二点で、お話のあったとおり私どもも承知をいたしております。  そして、第一の点につきましては、これも本会議でもお答え申し上げましたが、国連のスピーチにおきましても、日本ははっきりアラブの側に立って中東和平に協力をする姿勢をはっきり出し、また、今後の国連外交を通じ、またアメリカとのいろいろな交渉を通じまして日本として努力をいたしたい、現に行っておるところであります。  第二のテクノロジーの問題につきまして、これは、サウジアラビアとの関係は主として民間の企業ベースで話が進められておるのでございます。この民間の近代的な技術を先方が要望しておるわけでありますが、この点につきましては、民間ベースの話でありますので、従来、契約内容にいろいろ問題があったと承っておりまして、この点は、そのために日本の国益が侵されるということもまたこれは困ったことでありますので、民間ベースにおきまして話を詰めてもらいたい、その上で、政府といたしましてはできる限りの協力をいたしたいと考えております。
  122. 大内啓伍

    ○大内委員 石油の確保という問題は、これから非常にむずかしい問題になります。特に、私どもの判断では、アメリカとの競合という問題が非常に大きくクローズアップしてくるように思うのであります。したがって、総理幾らエネルギー政策を確立しなければならぬと言いましても、この石油の供給というものについてはっきりとした見通しを持ちませんと、総理の言う景気の回復も安定成長への軟着陸も不可能になってくる。いまはそういう非常に重要な問題に差しかかってきていると思うのであります。  もう一つ、先ほど私がお尋ねを申し上げました原子力の昭和六十年時点での三千三百万キロワットの確保でございますが、私はこれも非常にむずかしいのではないかと思います。通産大臣、三千三百万キロワットというのは何か根拠がございますか。  ついでに聞いてしまいますけれども、昭和六十年の時点で原子力発電所は総計何基、認可出力は総計何万キロワットになりますか。
  123. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 いまの問題にお答えいたします前に、若干、大臣答弁を補足させていただきたいと思います。  と申しますのは、六十年度における原油の輸入四億三千二百万キロリットルの可能性についてでございます。これは、一言で申し上げますと、わが国が六%の経済成長を維持するためには必要最小限の量ということであり、かつ、私たちといたしましても、輸入は可能であるというふうに考えております。  現状のままで推移いたしますと、六%成長を前提といたしますと、昭和六十年度におきましては約五億キロリットルの石油を輸入せざるを得ない状況になるわけでございますが、それに対しまして、世界の需給状況からいたしますと、五億の確保は困難であるというところから、徹底した省エネルギー政策を進めると同時に、代替エネルギーの開発を進める、その結果としての四億三千二百万キロリットルでございまして、六%経済成長を維持するための必要最小限、こういうことでございます。  この数字につきまして若干御説明申し上げますと、ことしの一月にOECDが発表いたしました一九八五年における数字でございますが、OECDといたしましては、現状のままで推移した場合と、省エネルギーあるいは代替エネルギーの開発を積極的に進めた場合、二つのケースを挙げておりまして、いずれの場合にもOPECのその時点における生産能力を四千五百万バレル、約二十七億キロリットルになるかと思いますが、これを前提といたしまして後者の政策を推進した場合、OPECの必要生産量二千八百万バレルと置いておりまして、その中で日本の位置づけを七百六十万バレル、年間にいたしまして四億五、六千万キロリットルになろうかと思いますが、その後者の中におきましても日本の四億三千二百万キロリットルはその内数になるということで、OECDの数字からいたしましても可能性がある。  それから、総合エネルギー調査会の需給部会における検討過程におきまして、同じく八五年の自由世界の生産量五千九百ないし六千万バレル、年間にいたしまして約三十五ないし三十六億キロリットルになるかと思いますが、こういった数字を踏まえまして、四億三千二百万キロリットルの輸入の可能性はある、かように判断いたしておるわけでございます。  先ほど御指摘になりましたIEAにつきましては、八五年ベースで二千六百万バレルと言っております。OECDはIEAよりも参加国が多いわけでございまして、そういった点も勘案いたしますと、なるほど一般の平均値より日本の伸び率は多くなるわけでございますが、ただいま申し上げましたような数値を総合勘案いたしまして、OPECの石油戦略といったような問題は別といたしますと、四億三千二百万キロリットルの原油の輸入は可能である、かように判断いたしておるわけでございます。  それから、ただいま御指摘になりました原子力三千三百万キロワットの問題でございますが、現在運転中のものは十四基で約八百万キロワットでございます。それから、建設中のものが十基で約九百十四万キロワット、計画段階にあるものが五基で四百七十六万キロワットでございまして、こういったものを合計いたしまして、現在二十九基、約二千二百万キロワットの能力になっておるわけでございますが、目標といたしております三千三百万キロワットの目標を達成いたしますためには、これにさらに十二基程度、約千百万キロワットの開発が必要になってくるわけでございます。これは、必ずしも容易なものではございませんが、現在までにすでに立地調査あるいは環境影響調査を終了したもの、あるいは必要とする土地の全部もしくはその大半のものについて手当てを完了しておるもの、かようなものを努力目標として設定いたしたわけでございます。必ずしも容易ではございませんが、代替エネルギーをここまで開発しないと、経済成長の六%の維持も困難になるといったようなことで、官民挙げて努力すべき問題かと思うわけでございます。
  124. 大内啓伍

    ○大内委員 いまのお話では二十九基、二千二百万キロワットということでございまして、三千三百万キロワットに到達するためにはなお相当の努力を必要とするというお話でございます。たとえば、いま動いている原子力発電所は十四基。四、五、六の稼働率はどのくらいございましたか。七月、八月どうですか。——それでは結構です。私の方から申し上げます。  四、五、六月の稼働率は三〇%です。七月が四〇%、八月が五〇%でございます。つまり、そのように原子力発電所の稼働率はいま非常に低いし、またこれからもそう高くはならない。原子力発電所の性格から言ってそうはならない。ですから、仮に二十九基、昭和六十年の段階で二千二百万キロワットということになって、これに稼働率を掛けたら一体どういうことになりますか。幾ら努力したって、認可出力で別にキロワットが出てくるわけじゃありませんよ。実際の電力供給というのはそういうものじゃございませんよ。しかし、四億三千二百万キロリットルの石油を確保するという前提は、三千三百万キロワットの原子力エネルギー発電が行われるという前提なんですよ。しかもそれは認可出力ではなくて、実際にそれだけの電力を供給しなければ、石油の輸入をもっとふやさなければならぬわけですよ。それは言うまでもないことであります。したがって、原子力発電所の発電能力、昭和六十年の時点で一つ一つ洗ってみればよくわかりますよ、私も電力会社全部調べてありますから。そんな、この中期計画に書いてあるような三千三百万キロワットというものを官民挙げて努力することによって達成するなどという、ただ作文上のお話だけでこの問題を議論しちゃいけません。一番大事なのは、経済の六%成長を達成するために本当にこれだけの石油を確保しなければならない、足りない分はこれだけの原子力発電をやらなければならない、なお足りない分は省エネルギーでそれをカバーしなければならないという具体的なプランの問題なんですよ。たとえば、五十年十二月の閣議了解で、九・四%の省エネルギーをやると発表しましたけれども、それから二年たって省エネルギーはどれだけ進みましたか。産業用の省エネルギーは、産業が不況で苦し紛れに自分で首を絞めて省エネルギーをやったのですよ。政府の省エネルギー政策の奨励によってやったわけじゃありませんよ。しかも輸送用と民生用に至っては、ほとんど効果が上がっていないじゃございませんか。そして今度は、昭和六十年になって一〇・八%の節約をやります。官民挙げてその努力をいたします。そういうことをおっしゃっても、それは結局架空のことになってしまう。福田総理、これはよく聞いておいていただきたいのですけれども、たとえば、カーター大統領は四月十八日に全米テレビを通じて国民に対してエネルギーの節約を切々と訴えていますよ。日本の省エネルギーというのは国民運動本部をつくって細々としたPRをやっただけじゃございませんか。そういう事務局が宣伝をするのと、政治というレベルに立って政府が本当に真剣に、総理大臣がエネルギーの節約を訴えるのとでは大きな効果の差がありますよ。アメリカはエネルギー需要を年率二%以内に抑える、これはなかなかむずかしいと思います。すべての住宅の断熱は九〇%実現する。これは大変な意気込みで省エネルギーを国民に訴えている。しかし総理大臣は、確かにテレビにおいてもあるいは国会の討論においてもそういうことをおっしゃっているけれども、この一〇・八%の省エネルギーが実現しなければ、われわれの石油輸入という問題について一つのネックがある状態においては、日本経済成長というものがだめになってしまうのだ、そういうことを本当に真剣に訴えなければならぬ。またこの三千三百万キロワットというこの原子力発電も、いまのままでは数字だけで終わりますよ。これは実際の姿なんです。そして、中間報告を受けているから、それをめどにして、来年の本答申を待ってエネルギー政策をつじつまを合わせますと言ったって、それは言葉の上での整合性であって、実効性にはほど遠い。私は日本のエネルギー政策を確立していただきたいという意味から、本当に四億三千万キロリットルは大丈夫か、原子力の三千三百というのは大丈夫か、省エネルギーの一〇・八%は本当に大丈夫なのかということを本当は詰めて、積み上げた議論をしたいのです。時間がありませんからできないのです。恐らく総理、この石油輸入あるいは原子力発電、省エネルギーについてもほぼ同様の数字が、結論として、本答申でも出てくると思うのです。それが出てきたときには、本当にそれを実効性ある数字として実現されるために努力するかどうか。その決意を本当に伺いたいと思うのです。
  125. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 大内さんがエネルギー問題に非常に重大な関心を示された。私は、エネルギー問題というものは本当に国の安全保障とも考うべきような重大な問題であるという主張をしているわけです。全く同感であり、敬意を表します。来年まで本計画を立てますが、立てるそのときには、必ずこれを実行するというものでなければならぬ。しかしそれまでの間じんぜんまた日を過ごすわけにはいかないので、一つ一つの電力発電所なんかにつきましても計画がなかなか思うように推進されない、どこに一体隘路があるのだ、こういうようなことをシラミつぶしといいますか、一つ一つ掘り下げまして、その隘路打開をいま精力的にやっておる最中でございます。特にこれから重要になる原子力エネルギー問題につきましても、安全の問題、環境の問題、こういう問題はあります。ありますけれども、本当にこれは国の安全保障上の重大な問題である、こういうことを国民に理解していただきながら、ひとつ施策の推進に努めてまいりたい、このように考えます。
  126. 大内啓伍

    ○大内委員 それと関連する問題で、核燃料の再処理問題について科学技術庁長官にお伺いいたします。  言うまでもなく、十九日からアメリカにおきましてINFCEPの会議が行われるわけであります。そこで、日本はこの核燃料の再処理方式につきましては、いわゆる東海村を見ても明らかなように、プルトニウムの単体抽出というものを基本としたウラン・プルトニウム・サイクルというものを推し進めてきたと思うのです。ただアメリカの動きを見ますと、私ども今度の訪米調査団を通じてモンデール副大統領あるいはその他のアメリカ政府要人と話してみて、今度のINFCEPに対してアメリカは、純粋プルトニウムにアクセスしない再処理というもので合意を図りたい、こういうことを真剣に考えている。これはもちろん混合抽出方式でもウラン・プルトニウム・サイクルですけれども、日本がこれまで考えてきた方式とは少し違う。しかし今度の共同声明では、INFCEPで混合抽出方法が打ち出されたならば、再処理は全面的に混合抽出法に速やかに転換する、こういう文言がございますね。そうすると、アメリカに対して、いま濃縮ウランをお願いしているという日本の立場、さらに、これからはウランも買おうという立場にある日本としては、この再処理問題については相当アメリカの方向も考えなければならぬ。そうしますと、これまで考えてきたいわゆるプルトニウム単体抽出以外の再処理という問題についてもこれから考えるというふうにお考えですか。INFCEPに臨む日本の再処理に対する基本方針を示していただきたいと思います。  時間が非常にありませんので、ひとつ簡単にお願いします。
  127. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 われわれといたしましては、仰せのとおり、プルトニウムサイクルの確立を目指して今日まで来、そのことをアメリカに十分説明いたしましたから、INFCEPに臨む場合におきましても、それを中心として日本は主張を展開して、要はプルトニウムの拡散ができないような方法、これを徹底的にわれわれとしては提案をし、またそのデータも出していきたいと考える次第でございます。したがいまして、その他の方法ということになりますと、INFCEPにはトリウムによるところのサイクルということもございますが、これにも参加すればいいとわれわれは考えております。ただ、アメリカのような資源の豊かな国と資源の小国、なおかつ、私は今回の交渉におきましてもアメリカの代表に特に主張したのですが、これは未確立の技術に対して日本のタックスペイヤーにこれ以上の負担をかけることはできない、わが国としてはそれが一番大切なことだということを申したわけでございますので、こうしたことを自主的に考えながら判断をしなければならない、それがわれわれの態度ではなかろうかと思います。しかし、幸いにも福田・カーター会談におきまして、核の平和利用と不拡散は両立し得るという大きな土俵ができ上がっておりますから、この土俵を中心としてINFCEPに臨むことには、われわれは変わりはございません。  混合抽出に関しましては、はっきり申し上げましてこれに変えようとすれば最低二億ドルはかかります。今日まで再処理施設に費やした費用が二億ドルでございますから、その混合抽出の技術そのものはOTLで十二分に研究はいたしますが、果たしてたとえば七、三でプルトニウムとウランとが抽出できるであろうかということ等々につきましては、まだまだむずかしいのではないかと私は思います。したがいまして、いま読まれましたとおりに、共同コミュニケにおきましては、日米がそういう方法がフィージブル、可能だ、あるいはエフェクティブであるということに対して合意した場合、こうなっておりますので、わが国が自主的にそうしたことも判断をしていきたい、かように考えております。
  128. 大内啓伍

    ○大内委員 時間がありませんので、最後にまとめてお伺いをしておきたいと思うのでございますが、伝えられるところによりますと、日本としてはプルトニウムが軍事的に転用されないために何らかの保障措置が必要であろう、そのための国際管理体制を提唱したいというふうに聞いておりますが、それは事実かどうか、そういう意向があるかどうかということが一つ。  それから、いま長官からトリウムの問題についてもアメリカの研究に入っていっていいんだというようなお話がございました。御存じのように、アメリカはいま核拡散防止という問題に直面しまして、一時ちょっと中途途絶いたしましたけれども、このトリウムサイクルの開発という問題に対していま相当研究し始めてきている。したがって、日本の場合においては、このトリウムサイクルというのは、いままでの軽水炉路線に別のものを持ってこられちゃ困る、それにかわるもので困るなどというインチキな議論があるわけなんです。トリウムサイクルというものは軽水炉路線のかわりにくるものじゃなくて、軽水炉路線は軽水炉路線としてあっていいけれども、さらにこれからのウランの資源の枯渇あるいはその価格の高騰という問題を考えてみますと、やはりその他の燃料を基本とした原子力の問題も当然考えておかなければならぬ。これは日本でも学者の皆さんが真剣に研究しておられますよ。たとえばここに日本原子力学会の雑誌がございますが、こんなに大きな雑誌までつくってこの問題を真剣に検討しているのに、いままで通産省やあるいは科学技術庁は、これを何かそでにしていたという感がなくもない。しかし、やはりこれからの日本の原子力開発の立場としては、このMSBR、トリウムサイクルの問題もやはり真剣に考え、特に日本独自研究もさることながら、やはりアメリカの開発研究に対しても相当入っていくということが必要だと思うのです。ですから、これに対して本当に取り組むかどうか、これが二つ目。  それから三つ目は、総理、この間訪米しましてモンデール副大統領と会ったときに、総理が提唱した核融合についての日米共同研究ないしは開発という問題については、まだ十分御存じでないようでした。そしてその後、科学技術庁長官がシュレジンジャー氏に対してそのことを同様申し入れておりましたけれども、まだまだアメリカは本物ではありません。ですからこの際、本当に総理が核融合、いま申し上げたトリウムだけではなくて、やはり太陽熱、地熱、水素あるいは石炭、ガスといったような一連の新規エネルギーの開発について日米が相当協力して共同開発する、こういう体制が必要だと思うのです。それについて、日本政府としてはどういうプラン、ステップ、スケジュール、方針をお持ちかどうか、この三つをお伺いをいたしまして、時間でございますから、御答弁をいただいて終わりにしたいと思います。
  129. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 プルトニウムの国際管理に関しましては、恐らくINFCEPにおきましても一番重要な問題として議論されると思います。なぜかならば、軽水炉とプルトニウムの関係においても重要であり、さらには高速増殖炉、これは日本のみならず、ほとんどの、ヨーロッパもこれに賛意を表しておりますが、その燃料としてのプルトニウム、そうしたことが今後核不拡散といかに関係するかという問題におきまして、やはりわれわれとしても重要な問題としてそれぞれ検討し、また提案すべきは提案すべきであろう、こういうふうに考えております。  トリウムに関しましては、原研におきまして現在研究はいたしております。ただしこのトリウムの研究は、高温ガス炉の燃料としてのトリウムでございますから、いま大内委員がおっしゃいましたサイクルということになりますと、恐らく液体としてのトリウムも使うかどうかということでございましょう。アメリカはこの問題を非常に研究をいたしておりまして、すでに実験炉の段階まで経たと聞いております。ただ、今日までわれわれがプルトニウムサイクルの確立のためにも約十年の間に九千億ばかり使ってまいりましたから、今後どういうふうになるかということを考えますと、そこら辺におきましてもやはり問題は残るのじゃないかと思いますが、しかし研究は続けていきたいと思います。  核融合は、アメリカと十分話し合いまして、総理の御伝言を伝えた次第でありまして、この十一月に向こうから担当局長が参りまして、具体的に方針を定めていく所存であります。
  130. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいま宇野長官からお答え申し上げたことで大体尽きていると思いますが、代替エネルギー問題は、これは大変重大な問題である、それを各国がばらばらにやるというのは非常に不効率である、こういうふうに思います。代替エネルギーの技術的側面、これは総体的に見まして、どうもアメリカが一番先端を行っているというふうに思いますが、わが国の水準もかなりのところまで行っているわけです。この両者が相協力するということは大変重要なことである、こういうふうに考えております。
  131. 田中正巳

    田中委員長 これにて大内君の質疑は終了いたしました。  午後一時十五分再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十八分休憩      ————◇—————     午後一時十八分開議
  132. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。二見伸明君。
  133. 二見伸明

    ○二見委員 私は、現在問題になっております円高の問題、国際収支の問題について、総理大臣並びに関係大臣の御意見を承りたいわけでありますけれども、その前に、これは防衛庁長官だろうと思いますけれども、一言だけお尋ねしたいと思います。  というのは、けさのある新聞で、自衛隊の次期統幕議長に内定した栗栖陸幕長がきのうの記者会見で、「自衛官の最高位である統幕議長は(天皇による)認証官であるべきだ。園田官房長官には要請してある。二十日に任命を受けたあと宮中へ記帳に行く。これは宮内庁からも許可がでた」、こういう発言をされたそうであります。  私は、ここでこういう発言の事実関係を問題にするのではなくて、長官としては、統幕議長は認証官にするのが当然だというお考えを持っているのか、そういう考え方は全く持っていないのか、そのことだけをお尋ねしたいと思います。
  134. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  先生御承知のように、認証官は法律で決められることでございまするが、防衛庁におきましては、統幕議長を認証官にするということを考えたこともございませんし、検討したこともございません。
  135. 二見伸明

    ○二見委員 きょうの午前の質疑でも円高問題が論議されておりましたけれども、総理大臣、今度の十月に入ってから円が二百五十円台に急騰したということに対して、これはアメリカとEC諸国が手を組んで日本をねらい撃ちにしているんだ、日本は黒字を減らす減らすと言いながらなかなか減らさぬじゃないかといういらいらが高じて、欧米諸国が手を携えて日本の円をねらい撃ちにしているんだという報道、うわさがありますけれども、総理大臣はこの円高について、そうした日本だけが特定にねらい撃ちされたというふうにやはり受けとめておられるのでしょうか、どうでしょうか。
  136. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、アメリカとECが手を組んで円高をねらったというふうな、そういう理解はいたしておりませんです。通貨不安というものは、これはひとり日本だけの問題じゃありません。これはもうアメリカも困る、またECも困る事態になってくるわけでありますから、これをたくらんで円をアタックする、こういう状態じゃないと思うのです。ただ、多少円高の動きの中には投機的な側面があるのです。それはやはり日米双方に原因があると思うのですが、日本国際収支は依然として強過ぎる、こういう見方、それからアメリカ国際収支は容易ならざる状態だ、こういう両面からこういう現象が起こってきておるというふうに見ておるので、そういう認識に立って私はこの問題には対処していかなければならぬ、このように考えております。
  137. 二見伸明

    ○二見委員 午前中の総理の御答弁の中で、現在の事態に対処するためには輸出にブレーキをかけることはできない、またすべきではない、むしろウランだとか原油だとか、そうしたものを特別に輸入することによって黒字を減らす必要がある、輸入をふやす必要があるという御答弁がありました。私もその措置は当然だと思います。ただ問題は、原油を買うにしてもウランを買うにしても、それによって日本の黒字はある程度減少するかもしれないけれども、たとえば原油を買えば、そのドルは産油国に行ってしまうわけであります。その結果、日米間の問題あるいは日本とECの問題、それは解決されぬわけです。そうなると、それだけの処置で果たしていま現在の円の相場の問題が切り抜けられるのかどうか。きょうは為替市場は閉まっておりますけれども、月曜日にはまた開きます。むしろそれだけではなくて、たとえばアメリカ、ECの目玉商品に対して関税を引き下げるんだというような、日本の産業に対してかなり影響があるのは私承知しておりますけれども、そこまでいま踏み切らなければこの問題を切り抜けることができないのじゃないか、そこまで差し迫った事態に追い込まれているのではないかという認識を私はしております。というのは、総理が午前中御答弁されたことは、これは九月二十日に発表された対外経済の問題についての内容と全く同じわけです。九月二十日に発表していながら欧米諸国はそれを全く信用しなかった。あるいは日本がそんなこと言ったってやりはしないよという不信感が恐らくあったんだろうと思います。ということになれば、むしろ関税の問題にまでいま直ちにでも踏み切るだけの決意を固めなければいけない事態に来ているのではないかというふうに私は考えているのですけれども、総理としては、この問題はどうでしょうか。
  138. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 関税問題につきましては、例のガットの東京ラウンド、これを必ず成功させたい、こういうふうに考えているのです。これは非常に基本的なことでありますが、関係省との間にいまその推進の話をしておるわけです。しかし、それを待たず関税引き下げを前倒しにやるか、こういう御提言でございますが、この問題もこういうような客観情勢の変化がありますると、これは考うべきだ、こういうのでいま鋭意検討をしたいと思っております。
  139. 二見伸明

    ○二見委員 九月二十日の対外経済対策推進についての中では、関税については、要するに東京ラウンドとの絡みで関税を考えるということでしたけれども、いまの総理の御答弁は、東京ラウンドを待たずに、現在の事情から考えれば早急にやらなければならないというふうに受けとめてよろしいですか。
  140. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  141. 二見伸明

    ○二見委員 ところで、この円のレートの問題は、日本国際収支改善されるといいますか黒字が縮小されない限り、この円相場の問題はずっとつきまとうわけでございます。  私はここで、日本の現在置かれている立場、それから近い将来の日本経済がどうなるだろうということをお互いに考えるためにも、総理大臣の客観的な見方、見通しをひとつ伺いたいわけであります。  一ドル二百五十円台、二百五十二円とか三円とか、先物では二百五十円を割ったという報道があります。これはいまの黒字が解消されなければかなり長期にわたって、三月とか半年とかそのくらいまで続くおそれもあるのでしょうか。あるいは二百五十円台どころか二百四十円台にもなることもあるのだろうか。この黒字減らしというのは、国民の側もそれなりの協力をしなければならぬわけです。企業も苦しまなければならないし、国民もそれなりの覚悟を決めなければいけない話であります。それについての総理大臣の見通しを聞きたいわけです。私は、戦争中の大本営発表みたいなああいうことばもうできないだろう、事実をありのままに言うことが、日本が新しい事態に対処できる道だろうと思いますので、総理大臣の感触を伺いたい。  さらにまた、こうした事態が続くならば、国際通貨不安というのが、いまは円とドルとの関係でドル安になっておりますけれども、こうした事態が続けば、ドルそのものの不安が増してきて、国際通貨不安、そうした大変な事態にもなり得るのかどうか、そうした危険性もはらんでいるのかどうか、そうした見通し、お考えをお示しいただきたいと思います。
  142. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今日のような世界情勢が続きますと、これは私は非常に先行き不安になってくると思うのです。通貨不安、これはもとよりでありますが、そればかりでなくて、またそれが一波万波を呼びまして経済不安、経済混乱というようなことになってくるおそれがある。ですから、午前中もお答えしたのですが、このところは日米欧、この三地域間の本当に腹からの協力体制が必要な段階になってきた、こういうように思います。  いま、先々円のレートがどんな傾向になるであろうかというようなお尋ねでございますが、これは私の口から申し上げるわけにはいきません。いきませんが、わが国国際収支は今度の総合経済対策、また今度緊急にやろうとしておる輸入対策、そういうことを受けまして黒字基調がかなり変わってくる、黒字が減ってくるという基調になってくる、このように見ております。
  143. 二見伸明

    ○二見委員 通産大臣にお尋ねしますけれども、二百五十円台という大変な事態になりました。午前中も、円が高くなったための対策について、二百五十円台になったので、さらに積極的、弾力的な運営をしなければならぬという総理大臣の御答弁がありましたけれども、一ドル二百五十円台経済ということになると、これに耐え得る企業、耐えられない企業というのが出てまいります。そうしたことについては、通産省としてはもう直ちに調査されているのかどうか。
  144. 田中龍夫

    田中国務大臣 先般お答えいたしました中にも申し上げましたが、通産省といたしましては、二百六十五円台のときにすでに七月に輸出産業を、特に産地二十二カ所に詳細な、いわゆる輸出産業における影響を調査いたしておりました。ところがさらに、ただいまお話しのような状態に相なりまして、果たして今日までとってまいりましたあのつなぎ融資なり何なりの対策でいいのかどうかということをいま早急に検討いたしておる次第でございます。
  145. 二見伸明

    ○二見委員 たとえば、これは日本の繊維業界から来たものでありますけれども、円相場の高騰による被害の救済に関する問題とありますけれども、繊維業界の見方によれば、たとえばことしの七月以降の新規成約の見込みで、ドルが二百七十円が持続した場合には二九%減る、二百六十五円が持続した場合には四四%減る、二百六十円が持続した場合には五九%減るという見通しが出ております。私、午前中に二百五十円台になったらどうなるんだと聞いたら、すでに成約はストップしてわからぬということです。それだけ二百五十円台というのは、特に弱い企業、追い込められている企業にとっては致命的な打撃だろうと思います。私はその実態を一日も早く把握していただきたいし、さらにそのための新たなる対策を講じていただきたいと思います。  実は総理大臣、今回のこの円高というものは、やはり五十二年度の経済政策そのものの失敗があったんじゃないか、スタートにおいて間違いがあったんじゃないかと私は思います。  たとえば、当初の見通しでは経常収支でいけば七億ドルの赤字であったのが、今度は六十五億ドルです。プラスですね。差は七十二億ドルであります。われわれが考える以上に、七十二億ドルの差というのは大変だと思います。しかも総理大臣は、五月に先進国首脳会議へ行って、六・七%経済成長日本は維持する、マイナス七億ドルを約束されてこられたわけです。しかし、二月の時点でマイナス七億ドルという経常収支の見通しを日本政府は立てられましたけれども、マイナス七億ドルという見通しを立てたそこにまず問題があったんじゃないか。たとえば四月には経常収支が十二億ドルの黒字です。五月は七億六千万、六月は七億九千万、七月は十二億ドル、八月は六億ドル。八月まで現在数字がわかっております。来週になれば九月の結果もわかるそうでありますけれども、八月までに四十五億五千万ドルです。総理大臣が先進国首脳会議に行かれた段階のときには経常収支が赤になるような要素はなかったんじゃないか。もうあの段階でマイナス七億ドルという見通しを立て、それを世界に公約してきたところに日本経済政策の運営に無理があったんじゃないかと私は認識をしているわけであります。総理大臣いかがでしょう、これは。     〔委員長退席、澁谷委員長代理着席〕
  146. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 率直に申し上げまして、経常収支七億ドルの赤というふうな見方をいたしたことは、これはもう大変な見方違いをした、こういうふうに思っております。しかし、世界の置かれておる今日の環境の中でわが国経済政策の運営が大筋で間違っておったかというと、私はそうは思わないのです。いまどこの国でも問題を抱えております。日米独をとってみましても、ドイツはどうですか、先進国首脳会談で一番大事な成長率、これを五%と言った。これが今日四%とてもいくまい、こういうふうな状態になっておる、それからアメリカだってドルの赤字がこんなに巨大になろうと、こういうようなことは予定しておらなかったんだろうと思う。わが国におきましては、とにかく経常収支、この点につきましては大変見通し違いをした、こういうふうに思っていますが、大局的に見ると、経済運営の方ではそうそう間違ったことはしておらぬ、このように考えております。
  147. 二見伸明

    ○二見委員 こういう時代でございますから、物差しではかったようなわけにいかぬと私も思います。しかし、マイナス七億ドルの経常収支赤字を見込んだならば、マイナス七億ドルになる、まあならないにしろ、それに向かっての四月からの本気になった努力が必要だったと私は思います。また、先進国にそれだけの約束をしてきたんですから、マイナス七億ドルにするためにありとあらゆる努力を積み重ねていなければならなかっただろう。そうすれば、現在の事態は、来るとしてももっと軽く済ませたんじゃないか。不必要に国内経済、国内の産業を混乱に導くような今日の事態までには至らなかったんじゃないかと私は思います。経企庁長官も、二月、三月の段階では、稼働率はいま八五%だけれども、必ず九〇にいくんだと大みえ切っておられたんですから。実際にはそうじゃないですね。私、そこにやはりただ単に見通しが間違ったというだけじゃなくて、一つはその見通しに近づけようとする努力も足りなかったんじゃないかと私思います。いかがですか。
  148. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたします。  いまお話しのように、鉱工業生産の稼働率指数が非常に低い段階に低迷している、一進一退、少しよくなったかと思うと少し落ち込んでくるということで、八月の段階では八四・八という数字でございます。これは私どもやはり今回の不況というのが、四十年、四十六年の不況に比べて落ち込みが非常に大きかった。すなわち、二割程度の生産が落ちておりますし、それから在庫というのが、流通在庫、製品在庫、あるいはメーカー在庫というのが非常に多くて、これが荷もたれとなりまして、なかなか稼働率が上昇するまでに至らなかったということでございまして、設備投資の動向、あるいはその他の内需の見通し、在庫の調整がもっと早く終わるのじゃなかろうかという点が、私ども見通しよりもずれ込んだということは率直に申し上げたいと思います。
  149. 二見伸明

    ○二見委員 経企庁長官、九月三日に総合経済対策を発表されましたね。そして経済見通しを修正されて六・七%の実質成長は維持する、しかしそのかわり設備投資は下方修正されたし、個人消費支出も下方修正されたわけですね。九月三日の時点では、日本経済というのはドル換算で二百六十円台の円相場であったわけです。しかし現在、補正予算を審議している段階では、九月三日の時点よりもさらに十円高くなっている。二百五十円台だ。そうすると、もしいまのような状態が不幸にして続いたとするならば、まず六・七%という成長率にもかげりが出てくるんじゃないか。設備投資も下方修正されたけれども、その設備投資もさらに下方修正しなければならないのじゃないか。個人消費支出もさらに下方修正されるおそれも出てきているのじゃないかと私は思います。もちろんそうならないように努力はされるでしょうけれども、そうした危険性を非常に持っていると私は認識しておりますけれども、長官はいかがですか。
  150. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたします。  御指摘のように、円高が続いていくということになりますと、特に輸出に依存しております中小企業等に非常に大きな影響を与えることは事実でございます。しかし、先ほど総理も申されましたとおり、事態がどのような形になるかということはもう少し推移を見守る必要があるのではなかろうかと思いますし、また一つの部門だけ、設備投資だけとってどうなるか、個人消費だけとってどうなるかというわけにはまいりません。やはり全体としての需要項目について検討する必要があるのじゃなかろうかと思いますので、いま直ちに六・七%云々ということにはならないと思います。しかし、なお一層諸般の情勢世界経済情勢等についても見きわめながらこれからやっていきたいと思うのでございます。  御承知のとおり、アメリカ経済が非常に伸びますと日本輸出が伸びていくということで、世界経済というのは若干すれ違い現象があるわけですね。時間的なずれがずっと出てくる、そういうこともございますので、やはりもう少し様子をしっかり見きわめたいと思っている次第でございます。
  151. 二見伸明

    ○二見委員 きょうの時点では六・七%はどうなるのだと言われても、長官としてもお答えしにくいだろうと思います。また成長率は、設備投資だけじゃなくていろいろな要素が絡みますから、設備投資だけ、あるいは個人消費だけを取り上げてどうのこうのできないのは私はわかります。しかし、二百六十円台の経済とは違ってくるならば、九月三日の総合経済対策をさらにもう一段、第二次総合経済対策とでもいうべきものをもう一度打ち出さなければならないこともお考えですか。
  152. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  現在われわれがやらなければならないことは、この円高によって具体的にどのような影響が各産業に起きてくるかということを、通産省を中心にいま現地調査その他をやっておるわけでございます。これを的確につかむことでなかろうか。当面出てくる問題はやはり金融の問題だと思いますので、金融関係は、政府関係機関の融資ということにつきましては相当余裕がございますから、十分対処できるというふうに思っております。
  153. 二見伸明

    ○二見委員 この黒字問題というのは、あるいは現在の日本が抱えている構造不況であるとか需給ギャップであるとか、黒字問題ばかりじゃありません、日本が抱えているいろいろな問題は、三月三十一日、年度内にすべてうまくいくという筋合いのものではないと私は思います。黒字一つとってみても、やはり一年、二年、三年と長い目で見ていかなければならないだろうと思います。  そうすると、私たちはいま補正予算で五十二年度の経済について論議しておりますけれども、これはやはり来年度の経済にまで尾を引くといいますか、来年度の経済政策までにらんでいかなければならない問題だと私は認識しております。現在黒字減らしの基調になっているのは、緊急の問題としては輸入がありますけれども、基調はやはり内需喚起、総理大臣がずっと答弁されてきたのが内需喚起であります。私も内需喚起がやはり基調になると認識をいたします。とすれば、来年度経済もやはり内需喚起、国内の経済、国内の景気を少しでも高める、刺激する、そうした政策が中心となっていくのではないかなという予感を私しているわけです。  先ほど午前中には、大蔵大臣は、いまの問題で来年のことはわからぬというお話でしたけれども、お天気なら三月三十一日は雨だけれども明くる日は晴れだということはありますけれども、経済というのはそうじゃないですね。これからずっといろいろな形をとりながらも、ある日ぐっとよくなるのではない。よくなるも、だらだらしながらよくなっていくものだろうと思います。そうすると、現在の政策の延長線上に来年度の経済もあるのではないかと思います。やはり来年も内需喚起刺激型にならざるを得ないという認識をしておりますけれども、総理大臣いかがですか。
  154. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは、大勢といたしまして来年の日本経済は内需が中心で、これを盛り上げる、こういうことにならざるを得ないと思います。
  155. 二見伸明

    ○二見委員 大蔵大臣、来年の予算について、いまいろいろ作業されている真っ最中で言いにくいでしょうけれども、内需喚起といいましても、設備投資が急速に燃え上がるという見通しは余りないわけですね。内需喚起の中心というのは、その面だけ考えれば、財政が場合によってはことし以上に大きな役割りをしなければならないのじゃないかというふうに思います。国債を抱えているという、財政事情が非常に苦しいというもう一つ別の要素はありますけれども、やはり財政が主体となって内需喚起ということにならざるを得ないのじゃないか。予算も、国債を考えれば、大蔵省は緊縮型予算に組みたいのだろうけれども、経済の実態からいくと緊縮型予算というのは組みにくい情勢にあるのじゃないかと推察しますけれども、いかがですか。
  156. 坊秀男

    坊国務大臣 お答え申し上げます。  国内的、国際的な情勢から考えてまいりまして、今日大事なことは、国内的にはやはり着実なる景気を回復するということによりまして内需を刺激していくということ、内需を刺激することによって、もう一つ大事なことは、外に対する輸出圧力を減殺していくということ、それからまた、そういうようなことをやっていくためには、国内の体制というものをどう持っていくかということでございますが、いずれにいたしましても、国内の予算を堅実なるものにしていかなければ、これは両方非常にむずかしい問題でございますけれども、不健全なる体質でもってはどうにもならない。だから、財政というものを非常に堅実な姿に持っていかなければならぬ。この二つの要請がいま日本の国の財政に与えられた一番大きな問題だと思います。  そこで、一体来年の予算をどういうものに重点を置いてやっていくかというお話でございますが、それは私どもといたしましても、基本の方針としてはいま申し上げたようなことを考えておりますけれども、それでは具体的にどこに重点を置いていくかということにつきましては、来年度の経済見通しというものが固まりましたならば、それに従いまして、そういったような目的を持って編成をしていきたい、かように考えておりますので、いま予算内容につきまして、こういうところに重点を置いてやっていくのだということは、ちょっと申し上げる段階ではないと思いますが、基本方針といたしましては、いま申し上げましたように非常にむずかしいところを何とか切り抜けていこうというふうに考えております。
  157. 二見伸明

    ○二見委員 いま大臣の基本方針を聞いておりますと、刺激策のような緊縮のような、両方にとれるわけです。確かに内需喚起という点からいけば刺激策にならざるを得ないだろう。しかし、財政の健全化ということも考えなければならぬというところは緊縮化の方向であります。それは大変なところはわかりますけれどもね。  それでは、国債の依存率を三〇%以内に抑えるということでことしも大蔵省として大変努力されました。補正予算でも二九・九ですから、これは芸術的だと私は思います。来年度の予算編成に関してはその三〇%以内という方針は堅持されるのか、経済見通しによってはある程度弾力的に考えることもあり得るのか、その程度のことはいかがでしょうか。
  158. 坊秀男

    坊国務大臣 とにかくいまの財政でございますが、何遍も繰り返して申しておりますが、三年間も公債の依存率三〇%になんなんとするというような状態は、これはこのまま続けていきますと財政が財政の役割りを果たすことができないようになってくるということを考えますと、どうしてもやはりこの三〇%——それは何も三〇%ということに私はこだわっておるわけではない。それなら三一%はいいか、それはそうはいきません。あの三〇%という数字の観念、これは人間の認識というものは、物の大きさというものは数字でもって表現しなければわからないし、また言う方も聞く方も数字で表現することになりますけれども、実体の物に対する歯どめと申しますか、物に対する限度と申しますか、それはあえて数字であらわしておりますけれども、数字以上に、数字以前に大変私は重大なる意義を持った観念だ。むずかしく言えばこれは理念というのでございますかね。そういったものがあると思いまして、これを破るということは、三一なら大したことはないじゃないかということは、やがて三二なら大したことはないじゃないか、こういうことになっていくということは、結局私は知らず知らずのうちに破綻にいくというふうに考えますので、これはどうしても、大変かたくななようでございますけれども、この限度というものはぜひとも守ってまいりたい、かように考えます。
  159. 二見伸明

    ○二見委員 大蔵大臣、もう一つお願いがありますけれども、確かに三年間三〇%近い国債を抱えております。それから来年も正直言って、三〇%を超えるか超えないかはまた別といたしまして、かなりの国債を抱えたことになります。私たちも国債を無制限に出していいと思いませんし、国債を抱えた財政から国債に抱えられた財政へと言われておりますけれども、国債に抱えられた財政がいいと思っておりません。     〔澁谷委員長代理退席、委員長着席〕 いまは大変なときだから国債の増発もたとえばやむを得ないとしても、しかし三年なり五年なり七年なりの時間をかけて財政を健全にしなければならぬと思います。そうした見通しもなく、やたらにやるべきではないと思います。  私はお願いがありますけれども、五十三年度予算、半年後の話であります。五十三年度予算国会に提出されるときに、それは三年計画でもよいし、五年計画でもいいし、あるいは無理ならば七年計画でもいい。政府としてこれならばできるんだという、もちろんその中には政府の増税計画もあるいは入っているかもしれない、行政改革等による経費の削減ももちろん織り込まれているだろうと思いますけれども、そうした中期といいますか、財政を健全にするための計画というものを私は出していただきたい。ことしも試算を出されました。去年も出されました。しかしあれは数字の計算だけの話でして、実現できるわけがないのです。それは最初からわかっていた。今度は、これならばできる、公債に追っかけられてとんでもなくなるようなことはありません、これならば日本経済をたとえば最低六%台の成長を維持しながらできるという財政再建計画を一緒に出していただきたい。それを見なければ来年度経済の審議というものはちょっとやりにくいんじゃないか、こう思います。その点の努力は払っていただけるでしょうか、いかがでしょうか。
  160. 坊秀男

    坊国務大臣 御意見は、財政計画について少なくとも中期的なものを出さなければ国民も安心できないじゃないか、こういう御意見のように受け取らせていただきます。  私どもも、いまの財政運営に当たりましては、五十年代前期の経済計画、それに基礎を置いた財政収支試算、それを足がかりとしてやっておりますが、そんなものは大したものじゃないじゃないか、こう仰せられるわけでございますが、それも一応、五十五年における日本の国の財政経済の姿を頭に浮かべまして、そこへ到達していくにはどうすればいいかというような考えでやったものでございますが、歳入歳出をきちんと何年度はどうする、何年度はどうするといったような中期の計画を盛ったものではございません。  そこで、おっしゃるとおり、もっときちっとしていくためには中期財政計画をつくれ、こういう御意見、これは私も決して反対などをいたしておるものではございません。そういったようなものが財政運営の一つの大変大事な方針になっていくということは、これは私もそう思います。ところがそれをつくるに当たりましてはなかなか容易ならざるものがある。中期の財政、中期の経済情勢等についての確固たる見通しをやっていかなければならない、いまそれが非常に必要なものであることはよくわかる。しかし現下の情勢におきまして、事実そういったような見通しがつくかどうかということは、これはあわててそれをつけるということには大分むずかしいところ、無理なところがあろうと思います。  しかしながら、これは大変必要なことであろうと思いますので、われわれの方では財政制度審議会ですね、そこへお願いをいたしまして、その財政審におきまして財政運営に関する基本問題小委員会、そういったような小委員会をつくりまして、いまその勉強をやってもらっておるというわけでございますが、御存じのとおりほかの計画と違いまして、歳入歳出を伴う財政計画というものはなかなかむずかしいのは日本だけではない。ヨーロッパにおきましても、西ドイツにいたしましても、イギリスにおきましても、これは十年もかかったということでございます。  さような意味におきまして、五十三年度には間に合わせますとは、なかなか私はここで申し上げる勇気がございません。しかし、これは非常に大事なことであって、努力をしてまいらなければならないということはしみじみと感じております。
  161. 二見伸明

    ○二見委員 ちょっと細かい問題を取り上げて、通産大臣の御見解を承りたいわけでありますけれども、それは九月三日に発表した総合経済対策の中で、民間需要喚起策として消費者信用の条件改善ということが取り上げられております。その内容は、割賦販売条件の緩和だとか、消費者ローンの増加及び金利の引き下げに努力する、こういうことですが、やはり民間需要を喚起することが大事だと思います。  私は、大臣がどうお考えになっているか承りたいのですけれども、要するに、消費者ローンの金利だとか、あるいは割賦販売の手数料というのは高過ぎるという批判がありましたね。それから、たとえば割賦販売の手数料というのは金利体系あるいは景気の動向とは全く無関係である、全然にらまないわけでもないでしょうけれども、どちらかというと景気動向、金利体系とは離れた立場にあるという批判がありました。大臣は現在の、たとえば割賦手数料なんかについては、これはやはり高過ぎるというふうなお考えを持っているのか、この程度でやむを得ないのじゃないかというお考えを持っているのか、その点いかがでしょうか。
  162. 田中龍夫

    田中国務大臣 御質問の根底に金利体系の引き下げの問題と割賦の問題とが関連的にあると存じますが、割賦の手数料というものは必ずしも金利のあれと同断でもないというふうな議論もある次第でございます。ただし、内需の拡大という点から申しますれば、特に割賦販売といったようなものは非常に大きな効果があるだろうと存じますが、それはお話もございましたけれども、考えてみたいと思います。
  163. 二見伸明

    ○二見委員 総理府の貯蓄動向調査によりますと、五十年度には負債保有世帯は全世帯の四四・三%だそうであります。そのうち銀行から借りているものは一五・八%で、月賦とか年賦ですね、これが一七・八%だということであります。ですから、この月賦、年賦というのは国民生活にかなり大きなウエートを持っていると思います。  では、割賦手数料が最近下げられているのかというと、実態は下がったところもないわけではないでしょうけれども、実質的には下がってないのじゃないですか。物によっては三〇%だなんという手数料を取るところもあります。業者に言わせれば、金利と割賦手数料は違うんだという業者の意見は私は承知しております。しかし、金利といいあるいは手数料といい、経済的負担といいますか、買う方にとって見れば負担であり相手にとっては利益という面では、私は金利も手数料も本質的には同じだろうと思う。私は、割賦手数料を調べて、下げてなかったならば下げるようにしてもらいたいと思うのです。そうしなければ、内需喚起をせっかく打ち出されていながら、これは空文になってしまうと思いますが、いかがですか。
  164. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまも申し上げましたとおりに、需要の喚起という点から申しましても、またコストの関係から言いましても、御説のことは非常に貴重な御意見だと思います。その方向で大いに指導いたします。
  165. 二見伸明

    ○二見委員 業界の方もなかなか引き下げはうんと言わないのですよ。割賦販売というと、百貨店なんかコンピューターが前のままだ、そんなことをやったらおれたちはたまったものじゃないという意見も事実あります。だけれども、それは向こう側の言い分でありまして、いまの時点ではそんなことは理由にならないだろうと思います。私は、時間があれば品目別の現在の割賦手数料についても、本来であれば通産省に明らかにしてもらいたいところですけれども、どうせおつかみになっておることでしょうから、私の方もわかっております。ですから、それは引き下げるという大臣の御答弁にお任せして、それをお願いしたいと思います。  いずれにいたしましても、現在のわが国の置かれている経済状態というのはゆゆしき一大事、こういう感じがいたします。中期財政計画にしても、大蔵大臣は五十三年度無理じゃないかという御答弁もありますけれども、われわれとしてはそれはどうしても努力をしていただきたい。  経企庁長官、五十年代前期経済計画というのもありますけれども、新しい時代に立ったのですから、もう一度経済企画庁としても、やはりこれから向こう五年間の日本経済はこうなるんじゃないかという粗々の見通し、そうしたものを私は立てていただきたいと思います。そうしなければ国民は安心しないだろうし、企業の方も安心して企業活動に励めないだろうと思います。いまこそそういうものが必要なんじゃないか、いろいろなむずかしい条件があるけれどもそうしたことが必要なんじゃないか、それに向かってみんなで努力していく、そこに私はこれからの日本経済の必要なことがあると思いますけれども、そういう点はお考えいただけますか。
  166. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたします。  ただいま政府が持っておりますのは前期経済五カ年計画でございます。したがいまして、この線に沿って私ども経済運営をいたしておるわけでございます。しかし、御案内のとおり、この出発の第一年目から非常に国際情勢その他が予見が変わってきたということがございますので、内部の調整をいろいろしておるというところでございますし、また特に雇用のおくれとかあるいは国際収支の大幅な黒字、設備投資の盛り上がりが非常に少ない、そういう問題について掘り下げをいたしておるところでございます。したがいまして、いま非常に不確定な時代に、新しい計画を、すぐ五年計画をつくれという仰せであれば、これはちょっとむずかしいのじゃなかろうか、ただエネルギー等のような五年やそこらで判断するのじゃなくて、もう少し長期の見通しを立てるべき項目があろうかと思いますので、そういうものについてはできるだけ見通しを立てて、そして不透明な時代に不確定な要素を少しでも少なくしていくということが政府の役割りではなかろうかと思っております。
  167. 二見伸明

    ○二見委員 エネルギー政策について御見解を承りたいと思います。  午前中、大内委員の方からエネルギー政策についての御質問がありましたので、ダブらないようにしたいと思いますけれども、総理大臣は午前中の御答弁の中で、昭和六十年代のエネルギーの需給見通しについては、省エネルギー対策を促進して、省エネルギー率が一〇・八%の、すなわちエネルギー石油換算で六億六千万キロリットル、それを目指してこれからエネルギー政策を進めたいという御答弁がありました。エネルギー政策というのは、そういう目標を設定すると同時に、どうも私考えてみるとお金の問題だと思うのです。エネルギー政策がうまくいくかどうか、私は、エネルギーばかりではなくてすべてそうなんですけれども、事日本経済の根幹にかかわるエネルギー政策に関しては、うまくいくかどうかはお金だと思います。総合エネルギー調査会基本問題懇談会資金対策分科会でもって、省エネルギー政策を推進した場合に、昭和五十一年から六十年度にかけて約十年間で全体で六十七兆五千六百億円の金がかかる、そのうち、いまの補助率だとかいまのベースでいけば、公的支出は約一割、六兆九千七百億円だということであります。これだけの金がなければエネルギー対策というのはできないんだというのがこの報告だと思いますけれども、総理大臣はやはりそういう御認識ですか。
  168. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 その数字については伺っておりますが、私自身その数字が果たして妥当なものであるかどうかというような検討はしておりませんけれども、とにかく現在あるいろいろな資金需要枠の見積もりなんかの中で最も権威のある数字ではあるまいか、そのように考えております。二見さんもお話しのように、エネルギー問題というのはずいぶん金のかかる問題でありまして、これから改定長期需給見通し、それに基づくところの諸対策を立てますが、その中で一番大きな問題は、その必要な資金をどうやって調達するかということになってくるだろうと思います。これからの重大な検討問題であります。
  169. 二見伸明

    ○二見委員 もう一つ基本的なお考えでお尋ねしたいのですけれども、資金対策分科会では、この資金対策として一つは国債だ、もう一つは間接税だ、もう一つはエネルギー諸税の見直しだ、こうしたことが資金対策分科会としては検討されております。そしてエネルギー対策の緊要性にかんがみ早急に結論を出す方向で検討する、こういうふうに分科会では述べております。いずれにしても私は、国債を発行するか、あるいは間接税になるか、とにかく増税ですね、何か税源を見つけて、税で財源を考えるか、あるいはいまの石油諸税を道路に使っております。たとえば揮発油税なんかは貴重なる道路財源ですね、そうしたそれを見直すか、この三つのどれかであろうと思うのです。このどれかをやらなければエネルギーというのはだめになってしまうだろう。もちろん総理大臣は、いまおれに答えを出せと言われても答えは出せないとおっしゃるかもしれませんけれども、いずれにしてもこうしたことを考えなければならないだろうと私は思いますけれども、私はその中で特にやはりエネルギー諸税、石油にかかっている税金、これを見直す必要があるんじゃないか、こう思います。私はことしの春の予算委員会のときにこのことを総理大臣に申し上げましたところ、いや、いま道路需要も多いんだから、それはそれなりに大事なんだという御答弁がありました。私は、道路需要がある、そのために揮発油税が道路財源になっている、道路需要が多いということは百も承知しているし、これからもそれに応じた財源対策をしなければならぬと思いますけれども、それ以上にエネルギーのために石油諸税を使うということが大事なんじゃないだろうかと私は思います。大臣いかがですか。
  170. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これはエネルギーだけ取り上げてその財源を考えるというわけにはいかぬと思うのです。やはりエネルギーは非常に大事でありますが、ほかにもいろいろ国の必要とする財政需要があるわけですから、それらの需要を総合いたしまして、そしてそれに対して財源を一体どうするかということを考えるという性質のものでありまして、エネルギーだけでその財源をどうするか、そういう性格のものではないのじゃないか、そのように考えます。たとえばそういう総合的な財政需要それから財源、これを見合わせまして、そして財政需要の方に緩急順序をつけなければならぬ。そしてこの時点では道路が非常に大事だから道路の方にウエートを置く、次いでエネルギーだというような判断が出る時期がずっと続いてきたわけでありますが、いや、もう差し迫って今度はエネルギーが大事だ、道路の方は少し抑えるんだというような時期になるかもしれませんし、その辺の詰めはまだやっておりませんけれども、事はとにかく総合的な財政需要と財源状態を見合わせたその中で決めていくべきだ、そう考えております。
  171. 二見伸明

    ○二見委員 確かに、エネルギーだけを取り上げて財源対策をどうしろと言われても、あるいは総理大臣おっしゃるように無理な話だろうと私は思います。総理大臣は御答弁の中では、エネルギーだけを取り上げるのではなくて、いろいろな財政需要を考えた上でということでありました。そうするとあれですか、これから新しい時代に向かって、エネルギーばかりじゃなくていろいろな需要があります。また要らなくなるものもあるだろう。もうここら辺で減らしてもいいだろうとか切り捨ててもいいだろうというものも私はあると思います。そうすると、もう一度それを全部洗い直して優先順位をつけて、たとえばエネルギーは長期の問題だから、大事な問題だからこのくらいの財源配分をする必要がある、また道路需要についてはこうだ、住宅についてはこうだというような大まかな、細かいものは無理でありましょうけれども、大まかなものを洗い直してわれわれの前に出していただけますか。それはきょうあすということじゃないでしょうけれども、エネルギー政策が固まった段階でも結構だと私は思います。そうしたものをいままでの財政需要を全部洗い直した上で優先順位をつけて、私たちはこういう財源配分でやりたいということをわれわれの前に提示していただけるのでしょうか。
  172. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 五十三年度の予算の編成ということになれば、当然そういう角度で財政需要、その中での優先順位、そういうことを考えなければならぬわけですから、その節は十分御説明いたす考えでございます。
  173. 二見伸明

    ○二見委員 ちょっと石油の話が続いて申しわけありませんけれども、新聞報道によりますと、アブダビのオタイバ石油相が十月五日に内外記者団との会見で、来年一月からの原油価格について、多分引き上げられるだろうとの見通しを明らかにするとともに、アラブ首長国連邦としては穏健なものとしたいが、幅は中東和平による、中東の安定なくして世界経済の安定はあり得ないと強調したというふうに新聞で報道されております。サウジのヤマニ石油相も、中東和平促進のために、石油を経済的武器として使用する用意があるという表明をしたとも報道されております。そしていまの円高ドル不安であります。こうしたことを考えると、ことしのOPECの石油値上げについてどういうような見通しを持っておられるのか、あるいはこれは発言することは影響力もあってまずいのかもしれませんけれども、もし差し支えなかったならばそれをお示しいただきたい。また、いずれにしても石油価格が上がることも考えられます。では、その石油価格が現在の日本景気経済運営にどう響いてくるのか、これは経企庁長官の方からお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。
  174. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 石油の点の前に、ただいま中東諸国は中東和平につきまして大変な努力を続けられているところでありまして、アメリカでも大変な努力をいたしております。それがいい方に進むように見えたり、またとんざしたりというような過程をたどっておりまして、そういうような中東和平を何とか進めたいということから、むしろそのような発言が出るのではないか、私はそのように考えておりまして、ことしの十二月のOPEC総会がどうなるかということは、いまちょっと判断のつかないところでございます。
  175. 倉成正

    ○倉成国務大臣 ただいま外務大臣がお答えされたとおりに、十二月のカラカスのOPEC総会でどういう推移を示すかということは、現在のところはまだ予想がついておりません。したがいまして、その時点において石油の価格がどのようにわが国経済影響を及ぼすかということは計算いたしておりません。ただ、昨年の七月にサウジアラビアまたアラブ首長国連邦が御案内のとおり五%の引き上げをいたしました。大体この二カ国でわが国輸入量の四割強、五割弱の輸入量を占めているわけでございまして、これが大体全体の石油の値上げを二%程度押し上げる、そういうふうに仮定いたしますと、そのときにいたしました計算では、成長率をマイナス〇・一%、それから輸入額の増加が五億ドル、それから物価に及ぼす影響といたしましては卸売物価がプラス〇・二%、これは直接、間接を含めてでございます。消費者物価については大体〇・一%程度、そういう試算をいたしたことはございます。しかし、そのときの経済環境によって非常に影響も異なるわけでございますから、これをこのまま当てはめるわけにはいかない。いまのところはそういうことは計算いたしてないということでございます。
  176. 二見伸明

    ○二見委員 外務大臣、中東と日本との関係というのは、石油の問題を通しても今後とも重要な関係になると思います。大臣、近々中東へ行かれる予定はございますか。大臣はイギリスへ行く途中に寄るのではないかというような話も私は聞いておりますけれども、また私は、積極的に中東を歴訪してもよろしいと思うのです。日本に対するいろんな誤解もあるでしょうし、日本努力が足りないところもあるだろうし、また日本の事情を向こうにわかってもらわなければ困るし、外務大臣が向こうへ乗り込んで、今後の問題についていろいろ話し合ってくることは非常に大事なことだと私は思いますので、そういった計画がもしおありならばお示しいただきたいと思います。
  177. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 中東諸国との友好親善関係を深めますのは大変大事なことであると考えておりまして、ぜひ機会があれば伺いたいと思っておるところでございますが、まだ具体的な計画まで立っておりません。わが国といたしましてどうしても石油の安定供給、これを確保しなければならない、これは当然のことでありますので、なるべく機会をつくって伺いたいと思っております。まだ決まっておりません。
  178. 二見伸明

    ○二見委員 時間がなくなってまいりましたので、もう一点ナフサの問題についてお尋ねをしておきたいと思います。ナフサ問題というのは調べれば調べるほど非常にむずかしい問題だと私認識しております。これは石油政策そのものにもかかわりのある大変な問題だと私はナフサ問題を思っております。現在、ナフサ、石油化学工業が抱えている問題、過剰設備というのは、これは自分自身の責任に帰せられるべき筋合いだと私は思います。しかし、ナフサ価格がいまキロリットル当たり二万九千円という価格に固定をされておりまして、ヨーロッパのナフサ価格よりも四、五千円高い。そのために石油化学工業界が実に大変な苦しみにあえいでいるということも私は見逃すことのできない問題だと思います。特に石油化学というのは、私たちの身の回りの品物、ポリエステル繊維だとかナイロン繊維だとか、あるいはバケツだとか洗面器だとか、われわれの身の回りのものに関係してくる非常にすそ野の長い産業でございますので、設備投資が過剰になったのはおまえの責任だからというふうにはできないだろう。とりあえず当面の問題としてナフサ価格を何とかせなければならぬと思います。政府がお立てになったのは二つですね。一つ輸入をふやすということ。外国の安いナフサを当初は七百五十万トンだったのを百五十万トンふやして九百万トンまで輸入してもよろしいということになって、値段については石油業界と両方で話し合ってやれ、こういう態度ですね。しかし、大臣も御存じのように、石油化学工業界は石油業界と話し合って値段を引き下げるだけの力はありませんですね。バーゲニングパワーがないわけです。おまえのところは高いからおれは外国へ行って買ってくるぞなどということはナフサ業界にはできないわけです。そういう仕組みになっているわけですね。そうした場合にやはり何とかせなければならぬ。石油業界も苦しいだろうけれども、ナフサと比べれば、石油化学工業界から比べればよほどいいはずですから、泣くだけの覚悟は石油業界はしてもよろしいんじゃないかと私は思うのです。大臣、ナフサ二万九千円は何とかならぬですか。
  179. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたしますが、ただいま御質問の中で二万九千円に固定しておるというような話がございましたが、これは今日はもう全然そういうふうなあれはございません。自由でございますが、しかしながら、この前の決定のときに、そういうふうになって外しましてからもずっと惰性として続いておりますことは事実でございます。  そこで価格の問題を、いま統制経済でもございませんので、役所の方で決定するということもできません。しかしながら、今回いわゆる百十万キロリットルの輸入を入れたということ自体でよほどナフサの需要の方は緩和されたのじゃないかと思いますが、ことにわれわれは業界同士のお話し合いを、先生御指摘のようにナフサを使用しておりまする化学関係の業界が、鉄鋼なんかと違いましてユーザーとして弱いのでありますが、今日の段階におきましては、間に経団連等も介入いたしまして、それを指導しつつございまするし、また役所の方といたしましても側面から協力をいたしておるような次第でございます。このナフサ問題は最も重大であり、かつまたむずかしい問題でございますことは御承知のとおりでございます。
  180. 二見伸明

    ○二見委員 二万九千円に固定していることに対して大臣から異論がありましたけれども、五十年の十二月に標準価格を二万九千円と設定して、いまその標準価格はありませんけれども、実質的にはそれで固定されているわけです。それはそれだけナフサ業界の立場が弱いということです。価格交渉力がないわけですね。石油業界に対しては価格交渉力がない。高いものだから、ではそれを高く卸そうとすれば、繊維にしろ何にしろみんな不況ですから、そんなのは受けられるかということで受けられない。間に板ばさみになっているのが石油化学工業、ナフサだと私は思うのです。もしこの二万九千円が下げられない、力関係でどうしてもだめだということになれば、さらに輸入枠を五十万とか百万とかふやすことによって手だてをすることも考えられますか。
  181. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまは業界同士のお話し合い、それからまたその間に経団連の方で仲人役を務めまして折衝を続けておるような次第でございますが、お話のとおりに何とかこの問題をうまい調子に解決したい、せっかくわれわれの方も今後とも努力をいたします。
  182. 二見伸明

    ○二見委員 私は努力されていることをどうのこうの言うのではなくて、石油業界にとってみても大変な話です。この問題をよく調べると、やはり石油価格体系、ひずみはここにあるわけです。その問題はさておきまして、どうしても利害の問題で調整できない。どうしても石油業界としてはこれ以上譲れないというような立場になれば、さらに輸入枠をふやすことも考えられるかというのが私の質問なんです。いかがですか。
  183. 田中龍夫

    田中国務大臣 その間の調整こそが役所の仕事でございますので、今後ともおっしゃるようにいろいろと協力を進めてまいります。
  184. 二見伸明

    ○二見委員 もう一点、ナフサ問題と関係して石油価格体系なんですけれども、昭和四十五年を一〇〇として昭和四十八年にはガソリンが一五八だった。それが五十一年には四五〇だ。もし数字に間違いがあったならば御指摘いただきたいのですが、ナフサは一二二だったのが四六七である。灯油は一一五だったのが二七七、軽油は一二六が三三五、C重油は一二七が三五七、こういうふうに価格体系が変わってきていますね。四十八年当時、オイルショックの直前あたりは大体価格体系はならしてあった。しかしそれ以後かなり格差が出てきた。私はこれはそれなりに意義があると思います。というのは、灯油がこの中で一番低く抑えられているのは非常に政策的配慮があったからだ。国民生活に直接響くものですから政策的に配慮があったというので、これは評価してしかるべきだと私は思います。C重油が低いのは力関係、鉄鋼のように不況産業を抱えているという問題、力関係もあるし、電力のように電力料金に絡んでくるのでという考慮もあってやはり低く抑えられたのだと思います。そのあおりがガソリンとナフサにきているわけです。  一点お尋ねしたいのは、この価格体系、灯油を今後とも低く抑え込んでいくべきだというふうに私は考えますけれども、そのための前提、それを前提とした上での価格体系というものを一度お考えになっていただきたい。大臣いかがでしょうか。
  185. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまのお説のとおりでございまして、これには沿革があるわけでございます。同時にまた、今日ガソリン等におきましては、業転玉といったようなものもありまして、値が売り崩れておるような状態でもあります。その他各銘柄によりましてだんだん時間が経過いたしますにつれまして矛盾も出ております。この点をある段階におきましては何とかしなければならないということは、一番頭の痛い問題でございまするが、真剣に考えておる次第であります。
  186. 二見伸明

    ○二見委員 質問が後先になってちょっと申しわけないのですけれども、先ほどお尋ねしそこなったものが一点ありますので、通産大臣にお尋ねします。  一つは、省エネルギーなんです。省エネルギー対策について大臣の見通しを示していただきたいのですけれども、昭和六十年度における省エネルギー率一〇・八ですね。これは政府としてはそれを目標としている、最終的に決まったものでないというように午前中の質疑から私受けとめておりますけれども、一応一〇・八という目安が出た以上、産業部門、輸送部門、民生部門でどの程度の省エネルギー率を考えているか、その目標値を、大体の目安を明らかにしていただきたい。  もう一つは、省エネルギーはかけ声だけではできないわけです。国民の協力も得なければならない。そのために現在は熱管理法で省エネルギーを進めておりますけれども、その熱管理法の改正も含めた省エネルギー促進法とでもいうようなものを、通常国会にお出しになる意図があるのかどうか。  それから、たとえば自動車ですね。通産省では電気自動車の開発を一生懸命やっておられますけれども、この電気自動車については今後どうしていくのか。  それから建設大臣、省エネルギーは住宅にも関係あります。たとえば公共住宅に断熱材を使うというようなことをお考えになるのか。むしろそうしたことを義務づけるような方向で考えられるのかどうか。民間住宅にしても、断熱材を使うような場合には公庫の融資枠を二割なり三割なりふやす、そうした誘導策もお考えになるのかどうか。  以上、まとめてですけれども、お願いしたいと思います。
  187. 田中龍夫

    田中国務大臣 省エネルギーにつきまして今後法制化をするかどうかというまず御質問でありますが、できますならばぜひしたいものだ、かように考えております。  それからまた、その節約目安の問題はどうかということでありまするが、御案内のとおりに、産業部門が大体一一%程度、民生部門が一四%程度、輸送部門が一〇%程度であります。日本におきます大体の消費は、御承知だと存じますが、五〇、三〇、二〇といったような状態でありまして、アメリカのように三〇、三〇、三〇というのとは大分違います。そういうことから、これらの目標に向かいまして今後指導をしてまいりたい、かように考えております。
  188. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 省エネルギーに対しては、住宅建設物あるいは断熱材の使用促進を図る、こういうようなことで、北海道においては、御承知のとおり防寒住宅建設促進法によってやっておるのですけれども、さらに地方においてもこの省エネルギーという点をさらに考えなければならないだろう、そういうことで、住宅等の建築物に対しての省エネルギー対策を促進するために、われわれいろいろな角度からいま検討は加えておりますけれども、法案をもってこれを示すほどの段階にまだ入っておりません。しかし、現在の省エネルギーという観点からするならば、当然防熱という点について重点を置いた一つ考え方を一般に示していかなければならぬだろう、こういうふうに考えております。
  189. 二見伸明

    ○二見委員 エネルギー問題、経済問題は以上で終わりたいと思います。  話ががらりと変わり過ぎて申しわけありませんけれども、ことし私立医科大学の問題が、長い間かねてから裏口入学があるとか、寄付金が高過ぎるとか、いろいろなことがいわれておりました。いろいろなうわさはわれわれの耳に入っておりましたけれども、ことしに入りましてから、たとえば金沢医大、愛知医大あるいは松本歯科大学、こうしたことが明るみになりまして、ああ、ということで疑惑が白日のもとにさらけ出されたと思います。愛知医大にしろ松本歯科大学にしろ、金沢医大にしろ、こうした問題を見ながら、これは大学当局者だけが一方的に悪玉のように言われておりますけれども、私は、それだけではないだろう。水増し入学をして、寄付金を集めなければ経営ができない私立の医科歯科大学の実態、学力のない者を多額の寄付金でもって裏口入学させなければ大学がやっていかれないという、私立の医科歯科大学の置かれた厳しい立場というものも考えなければいかぬじゃないかなと思います。すると、これはただ単なる不正事件、不祥事件というだけではなくて、私立の医科歯科大学を今後どうするか、それ以上に医師を養成するという国家的な見地をどういうふうに考えていくかという問題にもつながってくるだろうと思います。私は、具体的な問題というよりも、総理大臣はこうした私立医科歯科大学を、極端な言い方をすれば今後育成していくべきだとお考えになっているのか、非常に金がかかるものですから、むしろ国の方に移管させるとか、あるいは自然淘汰を待つとかいう厳しい態度をとらざるを得ないというふうにお考えになっておるのか、基本的な考え方をお示しいただきたいと思います。いかがでしょうか。
  190. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御指摘のように、私立の医科歯科大学を将来どうするのかということでございますが、現在わが国の私立医科大学は二十八校、学生数が三千人でございまして、これは全体の四〇%に当たっております。なお、歯学部の方は十四校、十六学部で学生入学定員二千二百人、これは全体の八〇%に当たっております。今日まで私立学校が果たしてきた役割り、そこから養成された医師が社会的に果たしてきた大きな貢献、そういったもの等を考えまして、私たちは現在一部に起こっております不正事件、不祥事件に対しては徹底的な改革をこの際思い切ってすべきであるというので、幸い、医科歯科大学の協会側も、協会としてこのことを厳しく受けとめて、自主的な改革案も出しておりますが、文部省といたしましても、九月七日にまず入学の選抜の公正を期すること、教学面と経営面とを健全にすること等、厳しい要請をいたしまして、今後とも指導し、建学の趣旨に沿った私立医科歯科大学が医師養成という社会的目的を果たすように育成し指導をしてまいりたい、こう考えております。
  191. 二見伸明

    ○二見委員 その問題についてはこの後論じたいと思いますけれども、その前に、いまの特定の大学の経営については厳しい態度で臨むというお話がありましたので、この問題、けじめをつけるために文部省のお考えをお示しいただきたいと思います。  具体的に、たとえば愛知医大で申しわけありませんけれども、愛知医大に対して私学振興財団を通して、五十一年度に二億二千二百五十五万円の補助金が出されております。しかし、その後大学の経理についていろいろな疑惑があり、一億二千五百万円は文部省に報告されてなかったというようなことも報道されております。そうするとどうなんでしょうか。文部省は、愛知医大から五十一年度の二億二千二百五十五万円のうちから、全額かあるいは一部かわかりませんけれども、補助金の返還を求めるような処置はおとりになるのか、これが一つ。  もう一つ、五十二年度の補助金は、もう半年たちましたけれども、どうするのか。また愛知医大ばかりじゃなくて、こうしたあるいは補助金を不正に取るというようなことがこれからもないことはないだろうと思います。そういう場合には、現在補助金適正化法という法律がありますけれども、そうした法律が適用されて刑事罰が加えられるようなこともあり得るのかどうか。これはけじめをつけるために文部省のお考えをお示しいただきたいのです。いかがでしょうか。
  192. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 最初に五十二年度の補助金について申し上げますが、この数カ月、文部省が実情を調査してまいりましたところ、多額の入学寄付金が入学者選抜の条件になっておって公正を欠いておったと判断される状況が明らかになってまいりましたので、文部省といたしましては、補助金交付を所掌しております私学振興財団に対して、五十二年度は交付しないということで検討をするようにすでに依頼をしております。  なお、五十一年の分につきましては、御指摘のように二億二千万、これは二度にわたって交付済みでございますけれども、五十二年度にこういったことが明らかになっておりますし、また五十一年度の私学振興財団の理事長が通達しております「補助金取扱要領」というものがございますが、それの中にはいろいろな条件がございますので、改めて、本年度補助金の問題とともに、同財団に対して、五十一年度分についても検討するようにすでに求めておるところでございます。  なお、最後の補助金適正法の罰則を受けることがあるのかどうか。ここに書いてありますように、偽りその他不正の手段により補助金の交付を受けるなどという事実が判明いたしますれば、その法の適用は厳正に行われなければならない、かように判断しております。
  193. 二見伸明

    ○二見委員 先ほど大臣がおっしゃられたように、九月七日に文部省から通達が出されたわけでありますけれども、この通達というのはかなり拘束力のあるものなのかどうか。同じような入学金に関する「入学時の寄附金募集の抑制について」という通達は昭和四十九年の一月十七日に出ているわけです。それは何の実効もないままに、また今回こうした問題が明るみに出たわけですね。とすると、九月七日の文部省がお出しになられた「私立大学医・歯学部における入学に関する寄附金の収受等の禁止及び入学者選抜の公正確保等について」という通達はかなり拘束力を持つものなのかどうか。  それからもう一つ、補助金を辞退した大学がありますね。金沢医大と日本歯科大学、それから松本歯科大学もたしか補助金を辞退しております。こうしたところに対しては、これは拘束力があるのかどうか、その点はどうでしょうか。
  194. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御指摘のように、かねて入学時の条件として多額の寄付金を取ることはやめてもらいたいという通達を出していたにかかわらず、今回またこのような事件が起こったではないかとおっしゃいます。今度出しました通達については、これはただ単なる通達ではなくて、私立の歯科大学、医科大学協会側も、社会の厳しい批判を受けて自粛、自戒、みずからも改革しなければならぬというので、対案も用意し、またまさにこの時期に体質改善をしていきませんと、こういった不明朗な問題がいつまでも続くと私は思っております。したがって、これは法律でありませんから、強制力があるかどうかと言われれば強制力があるとは申し上げかねますけれども、この通達は厳しく受け取って、厳重に各大学が大学の良識において守ってほしいと強く願っておりますし、また大学側も、協会を通じて文部省側にいろいろなみずからの案等も出して意見を求め、合意の上でつくってやっておりますから、前回の通達とはそういった社会的背景も学校側の取り組む姿勢も違うわけでありますから、文部省としては、これが必ず守られるように指導を充実していきたい、こう考えておるところであります。
  195. 二見伸明

    ○二見委員 私は、この通達がそのとおり生かされて、私立医科歯科大学が健全になってもらうことを心から要望しておりますし、期待をしております。文部省がかなり厳しい通達をお出しになりました。経理を公開するとか、寄付金は入学募集要項の中に幾ら幾らという金額を書き込めとか、非常に具体的に細かい要請をされました。それに対して今度は日本私立医科大学協会が、医科大学の経理内容の実態というのはこのように苦しいんだという内容を発表されたですね。私はそれを見ると非常にショッキングです。たとえば五十三年度の場合には、既設の大学ですと年に一校平均十五億円くらいどうしても足りなくなる、新設の場合ですと二十億円どうしても足りなくなる。その足りない分を穴埋めするためには、一千万とか二千万とかという寄付金を公然と取らなければ大学はやっていけないんだというのが日本私立医科大学協会が発表した内容ですね。  片一方では入学金は余り取るな、取る場合は募集要項の中に明記しろ、経理の内容も公開しろ、こう厳しい枠をはめた。しかし実態はこんなに苦しいんだというのが大学側の言い分ですね。  そうすると通達を意義あらしめるためには、やはりこの問題に手をつけなければなりませんね。これは文部大臣と大蔵大臣、それからお医者さんの関係で厚生大臣、もう差し迫って来年度の医科大学の入学で、私立医科大学の場合は、入学生はいまのままでいけば一千五百万とか二千万とかという入学金を払わなければならないのです。払わなければ、大学はやっていかれないのです。  ここで私がいま文部大臣と大蔵大臣と厚生大臣にお尋ねしたいのは、入学のときに一千五百万も二千万も払わなければ医者になれない、入り口ですでにこれだけの多額の金がかかるということはどうなんだろう、それぞれの立場からお答えいただきたいと思うのです。
  196. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 今度の改革案を議論しておりますときに、決断するのに一番心を痛めた問題は実はそのことでございます。しかし、途中の経緯は省きますけれども、入学金を安くしておいてあとはということにして、そのことにふたをしてしまいますと、いま世の指弾を受けておる一番の問題の解決にならないのではないか、こう判断いたしまして、実際、医学教育にはお金がかかるということは、これは国立大学でも私立大学でも同じことでありまして、そのかかる分についてこれだけかかるんだということを一度明白に出して、そしてそれをすべて安易に入学寄付金のときに全部取るという方法ではなくて、政府政府なりにできるだけの政策努力もするということで、たとえば私学振興助成法に基づく補助金の交付も、医学、歯学に関しては今日までも傾斜配分になっておりましたが、それは事情の許す限り補助も高める、あるいは入学一時金が高くなるなれば、それを分割払いをして父兄の一時の多額の負担を軽減するような努力もする、あるいはその学校法人が特別奨学事業と申しまして、その学校法人の責任において、教育ローンなんかの考え方を取り入れて特別の奨学資金をやるなれば、それは長く分割して返還することができるようにするとか、いろいろな政策努力を重ねるとともに、学校ごとにやはりいろいろな事情もあるでしょうから、個別に指導をして、また一部の学生には入学金の減免とかあるいは減額とか、そういうきめの細かい措置をすることによって、できるだけ教育費が、高値安定という言葉は非常によくない言葉でありますけれども、明るくしたら高くなっちゃったということ、それはできるだけ努力して納得のいく線に抑えたいといういろいろな角度からの努力を積み重ねていこう、こうしておるところでございます。
  197. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 医科大学にどうしたら金がかからなくなるかということでございますが、大学の方は私の方の所管ではございませんので差し控えたいと思います。  なお、いま文部大臣から詳しく説明がございましたが、まあそういうようなことしかないのではなかろうか、かように考えております。
  198. 坊秀男

    坊国務大臣 私の方は大学の教育に際しまして、経常費の補助までもしておるという立場にあるわけでございますが、いま国民の学問を普及しさらに向上していくためには、補助をするということは国家として間違ったことではない、余裕があればますますそういうことをやっていかなければならない、私もそういう気持ちでおります。  それは何かと申しますと、学校の経営が国の補助によって楽になって、そしてその学校が学問をやらすのに非常にいろいろな点において便宜を講ずるということ、及び学生が勉強をするに当たりまして多額の金の個人的な負担は要らないように、そして学問に専念をするというために補助金があるわけでございますけれども、それがあるにかかわりませず、歯科や医科というものは大変お金がかかることと私は思いますけれども、そういったような制度があって、その制度を利用しながらなおかっそういったような寄付金に頼るということは、その経営の上におきましてもこれは考えてもらわなければならない。もっと合理化もするし、できるだけそういったような費用のかからないようにしていくということを、私は学校当局に期待してやみません。しかし、それにもかかわらず、いつまでもそういった寄付というようなものに頼って、しかも新聞に伝わるがごとく、不当にこれを使っておるというようなことであるならば、そういったような学校に対して国民の税金を使うということはひとつやめさせてもらうというように、これはいまの私の考えでございます。  以上お答え申します。
  199. 二見伸明

    ○二見委員 これで終わります。
  200. 田中正巳

    田中委員長 これにて二見君の質疑は終了をいたしました。     —————————————
  201. 田中正巳

    田中委員長 この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。  本日、新東京国際空港公団から参考人の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  202. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————
  203. 田中正巳

    田中委員長 次に、阿部昭吾君。
  204. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 最初に、大出委員が指摘をいたしましたファントムの墜落、この原因がエンジントラブルではないか、したがって日米合同委員会において十二分な調査をする。ところが、もうすでに伝えられておりますようにエンジン部分はアメリカに送ってしまった。日本側は合同で調査をするということを強く申し入れをしておった。しかし向こう側がすでに向こうに運んでしまった。これでは本当の意味の原因の調査というものは困難なわけであります。したがって、これを送り返さすということをやるのかどうかということをお聞きしたいと思います。
  205. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 米軍の事故機のエンジンがアメリカに空輸されておったという事実を知ったわけでございます。この経過につきましてちょっと申し上げます。  今月の五日の日に米軍から神奈川県警に対しまして、検査のため五日中にもエンジンを米国に持っていきたいという通報があって、神奈川県警がこれに対して異議を唱え、米側は再考、再検討を約した。それから警察庁から外務省の方に連絡があり、防衛施設庁にも連絡があった。この米側の、アメリカに持っていきたいということにつきましての通報があったわけでございます。  翌六日になりまして、在日米軍から神奈川県警に対しまして、日本では精密検査に必要な設備、機材、技術者がいないというので、近日中にエンジンをどうしても米国に持っていきたいという旨の通報が再度ありまして、神奈川県警からはこれに対して異議を唱えてきたところでありまして、七日の日に事故分科委員会が開かれたわけでありますけれども、神奈川県警より在日米軍に対しまして、本件については合同委員会のチャネル、すなわち事故分科委員会において日本側に通報してくれという申し入れを朝してあります。そして、この事故分科委員会の席上におきまして、米軍の調査は日本国内で実施してほしい、しかし、調査の必要上、米軍がエンジン等を本国に移す場合には事前に連絡を得たいということを申し述べ、また、仮に米軍がエンジン等を米本国に移す場合にもその調査結果は必ず日本側に提供してほしいということ、これについて先方は提供を約したと聞いております。また日本側は、調査の必要上エンジン等の検査等を行う必要がある場合には、米側に対し、エンジン等を日本に持ち帰ることを要求することがあり得るということを申し述べてある。こういう経過で、十四日に施設庁から米軍に問い合わせた結果、八日に空輸をしていた事実を確認したと、こう申しておりました。  そして、事故分科委員会、すなわち本日朝でありますが、事故分科委員会の日本政府代表であります施設庁の施設調査官から米側に対しまして、事前に通報のなかったということにつきましては厳重に抗議をしたというのが事実でございまして、本件につきまして、何らかの手違いがあって、事前のはっきりした承認がなくしてアメリカに運ばれたことはまことに遺憾に思うわけであります。  しかし、この技術的な検討が日本の技術あるいは日本の施設では不十分であるというので先方に空輸をされたということでありますので、日本としては、必要があればこれは日本に持ち帰るように、これは分科委員会の席上でも申し述べてあるところであります。後は分科委員会の方でお答えすべきことであううと思いますが、私どもといたしましては、必要があればこれは日本に持ち帰らせること、これは主張もしてありますし、それは実行すべきであろうと思います。  しかし、現状におきまして目下先方で検査中でありますので、その措置につきましては、施設庁あるいは事故調査委員会の方で決定すべきことと思います。
  206. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 いままた赤軍を名のるバスジャックというのが起こっておるそうであります。何か今度のファントムの事故にいたしましても、二人が死に、何名かが重傷を負う、こういうような事故が起こった。日本側は原因を解明するために、エンジンはもちろんのこと、機体、こういうものを厳重に調査できるようにという強い申し入れをしておる。これがちゃんと向こうに送られてしまっておる。いま必要があれば送り返さす、こういうことでありますが、安保というものの体制、国民感情、こういう観点からいいましても、私はやはりどうしても送り返さす、これが当然だと思います。したがって、この政府の見解を十七日までの間に当委員会に報告をしていただきたいと思います。総理大臣いかがですか。
  207. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 十七日ですか。(阿部(昭)委員「はい」と呼ぶ)十七日までにお答え申し上げるようにいたしましょう。
  208. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 それでは農林大臣、この春以来の日ソ漁業交渉あるいは日米漁業交渉、特に日ソの漁業交渉については大臣は大変な御苦労をなさった。二百海里時代というキャンペーンもあり、大臣の人柄もあり、いろいろあって、漁業交渉の失敗ということを糾弾する議論は必ずしも起こっていない。しかし、客観的に見まして、漁業交渉は失敗だったのじゃないか。とにかく日本の漁民に大きな打撃を与え、交渉をやるたびにどんどん縮小されていく。遠洋漁業による漁獲、これでももう百万トン近い漁獲減というのが今度の交渉の結果で出てくる。したがって、鈴木農林大臣の非常な努力にもかかわらず、交渉は失敗だったと思うのであります。そのために今度の補正予算等でも、政府も大変な補償をする、こういう状況にあるわけであります。それよりも、海の人たちがどんどんおかに上がってこなくてはいけない。海の人たちがおかに上がって大きな転換が可能かということになると、それは不可能に近いのであります。これは、鈴木大臣専門家でありますから御承知のとおりであります。  そこで、日ソ交渉あるいは日米交渉——ところが、朝鮮民主主義人民共和国あるいは韓国、中国、マグロなどの主なる漁場である南の海域、この辺の交渉はまだちっとも進んでおらぬと思うのであります。したがって、これなども交渉をやるたびにじりじりと、日本の実績というのはだんだんとしぼられていくのではないか。一体日本の漁業というのはどこまで縮んで、どこで安定させようとしておるのか。それはもう大臣の人柄とか努力とかだけではどうにもならない問題だと思うのであります。したがって、相当長い目での漁業外交というか、これがやはり展開されておらなければならぬように思うのであります。このままでいくと、ずるずるとどこまでも縮んでいく。日本の漁業を一体どこで安定をさせようと考えておられるのか、お聞きしたいのであります。
  209. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 阿部さんから今日までの日米漁業交渉、日ソ漁業交渉、あるいは朝鮮民主主義人民共和国との民間の接触、さらに韓国あるいは中国、さらにまた南太平洋フォーラムの諸国との漁業交渉等についての御質問がございました。  日米漁業交渉につきましては、日米間の友好関係の基礎の上に立ちまして、非常に相互理解のもとに交渉が進みまして、すでに日米の漁業協定ができておるわけでございます。なお、漁獲量につきましても、五十一年度は八九%程度の実績の確保ができたわけでございます。明年度の漁獲量の問題につきましてただいま交渉を継続をしておる。これにつきましても、今年度並みの漁獲を少なくとも確保したいということで、鋭意努力をしておる段階でございます。  なお、日ソ漁業交渉は、御承知のように領土問題がその背景にございまして、大変難航に難航を重ねたわけでございます。その漁獲量の問題でございます。私は、協定そのものは国会でも全会一致で御承認をいただいたということで、御理解をちょうだいしておるわけでございますが、漁獲量の問題につきましては、私自身も大変不満に思っております。相手のソ連邦自体も、イシコフ大臣の言をもってすれば、二百海里時代になって七百万トンの漁獲量の削減を強いられた、こういうことを言っておりますが、向こう側が北西太平洋において相当の漁船隊を投入をし、漁獲をする、そこで補っていこうという背景もございまして、三六%程度の漁獲量の削減ということに相なりました。さらに来年度の問題につきましては、私どもはただいまモスクワにおいて協定の交渉を行い、さらに来年度の漁獲量の問題につきましても、われわれの方としてぜひこうありたい、こうしたいということにつきまして、十分努力を重ねてまいるつもりでございます。  朝鮮民主主義人民共和国につきましては、残念ながら政府間の交渉ができないような状況下にございますので、先般超党派の議員団の訪朝ということがございまして、大変お骨折りを願ったわけでございますが、御承知のように、軍事警戒ラインというような国際慣例にもないような厳しい条件がございます。そういうようなことでこの民間の話し合いも、来年六月末まで、向こうの宣言のとおり、軍事警戒ラインを除くその外二百海里までの間ではいままでとおりの操業をさせてやろう、こういうことに相なっております。その間におきまして、今後各方面の御協力を得ながら、何とか民間協定によってわが方の実績ができるだけ確保できるように努力をいたしたい。  また、日韓並びに日中の間には、阿部さん御承知のように、現在、日韓漁業協定、日中漁業協定がございまして、西日本の漁業はきわめて安定的に、何らのトラブルも起こさないようにやっております。私どもはこの安定した漁業秩序を尊重していきたいということで、わが方の二百海里の適用につきましても特別な配慮を払っておりますことは御承知のとおりでございます。また、常に韓国並びに中国政府とは、あらゆる機会を通じまして接触をいたし、相互の理解を深めておるところでございます。  なお、南太平洋フォーラム、これは先般関係国が会合をいたしまして、三月末までにそれらの国国が二百海里を実施をするという宣言をいたしております。ニュージーランドは十月一日からこれを実施することになっておりますが、この問題につきましては、あらゆるパイプを通じ、あらゆる機会をとらえまして、わが方としてその実績確保に努力をしておるところでございます。
  210. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 農林大臣は専門家ですから、答弁が長くなるのはわかるのですが、時間の関係がありますので、なるべくひとつ……。  そこで、国際捕鯨委員会、ここでは、日本の共同捕鯨、これが一・五船団にしぼられてきておる。そこで一千五百名の解雇の問題が起こる。これはさらに一船団にしぼろう、こういう動きになってきているわけですね。そうすると、さらにまた海の男がおかにはい上がってこなければならない、こういう問題が起こるのであります。したがって、一体日本の漁業はどこまで後退をするのか。いろいろな努力をいたしますと言っておりますが、いろいろな状況が出てくるたびごとにじりじりと後退をしていく。そこで、七カ年計画による沿岸漁場整備開発二千五百億ですか、その実績、実効というものは必ずしも日本漁業の将来展望をはっきり見通しをするという状況にはなっておらぬように私ども思うのです。したがって、二百海里問題がこういうふうに大きくクローズアップをされてきて、国際的なもはや動かしがたい状況になりつつある。こういう段階では、いまのこの七カ年計画を五カ年くらいに短縮をする、あるいは内容も二千五百億、しかもこれは全部補助事業で、地方団体の負担等も非常に厳しいのであります。したがって、こういう部面をもっと、たとえば倍額ぐらいに拡大をして、そしてこの七カ年計画を五カ年計画ぐらいに短縮をする、そして沿岸漁業の水域ごとの魚種、こういうものなどももっと明確にして、日本漁業の将来の展望というものをこの際はっきりさせる必要があるのではないか。私は、遠洋漁業というのは、いま農林大臣どんなに強調されましても、どうも政府の姿勢を見ますと、じりじりと後退の一途をたどっているというふうに言わざるを得ないのであります。したがって、沿岸漁場整備開発、この事業を拡大し、しかもこの計画を短縮して効果ある政策を行うべきである。いかがでしょうか。
  211. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 阿部さんは非常に重要な問題だけにお触れになりますから、こちらも御答弁申し上げなければならない、こういうことになります。  まず、捕鯨問題でありますが、捕鯨問題は一昨年国際捕鯨委員会でああいう大幅な削減がなされまして、それに対応いたしますために、捕鯨各社が個別に継続することができないということになりまして、捕鯨部門を総合して共同捕鯨というものをつくったことは御承知のとおりでございます。     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 しかるところ、今年度またこの国際捕鯨委員会、その背景には御承知のように鯨はとるべきでないという、ああいう国際的な運動、特にカーター政権がこれに対して非常に強い意向を持っている、そういうようなことを反映いたしまして、さらにまた捕獲量が半分に削減をされた、こういうような事態でございまして、わが方としてはこの事態に対してやむを得ないものとして、南氷洋に対する一船団を派遣をするということに企業の縮小を余儀なくされたわけでございます。  しかし、これにつきましては、捕鯨企業というものを将来に向かって存続させますために、政府としてもあとう限りの措置を講じております。また、キャッチャーボート等につきましては、乗組員の関係がございますので、これを水産庁の監視船、あるいは海上保安庁等にもお願いをしまして、できるだけキャッチャーボートも活用することにしたい。さらにまた乗組員の問題につきましては、私どもできるだけ会社側等とも協議をし、さらに職業転換等の問題につきましては、労働省、運輸省と協議をして、できるだけの努力を払っておるところでございます。  なお、阿部さんから、強力な漁業外交を展開しても海外の漁業は縮小を余儀なくされるであろう、これは御指摘のとおりでございます。そこで、それにかわるものとしては、何といっても日本列島周辺の沿岸の漁場の開発整備を図り資源を増強する、そうして生産を高めていく以外に方法はない。幸いにして日本列島周辺の海域というのは世界でも六番目の広大な水域を持っております。二百海里水域は非常に広い、広大な面積を持っております。しかも暖流と寒流がこの沖合いでは交錯をするということで、暖流性の魚も寒流性の魚もとれます。そこで、いまの御指摘の沿岸漁場開発整備事業、七カ年二千億計画をできるだけ短縮しまして、しかも専門家等の英知を結集しまして、効果ある成果を上げるように努力をいたしておるところでございます。
  212. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 ぜひひとつ日本漁業がどんどん縮小されていくこの状況に対して、日本のたん白食糧の非常に有力な原点であります漁業の展望を大胆に開くように努力をしていただきたいと思います。  次に総理大臣総理大臣のところはコンニャクの産地であります。コンニャクは輸入制限をされておりますか、自由品目ですか。
  213. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 輸入を管理しております。輸入管理をしております。
  214. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 いま政府は農業基本法を農政の基本に設定をして、以来十五年間余経過をしたわけであります。ところが農業基本法が描き出した農業の状況、自給率の点におきましても、あるいは農村の構造的な状況、農村の地域社会のコミュニティーの崩壊というか、いろいろな意味で農業基本法が想定をした状況のようには相なっておらぬ状況になっておると思うのです。  特にその中で最も大きな問題は米過剰という問題。この米過剰という問題は、今度政府は十カ年間による生産調整、当面三カ年間を第一期として年間百七十万トン規模の生産調整をやる、こういう方針を定めて全国知事会にアプローチをし、あるいはまた農業団体等々に対してもその協力を呼びかけておる、こういう段階に来ておるわけであります。そこで問題は百七十万トンの減反、生産調整ということですね。これは総理大臣、そうなまなかではできる問題ではないのであります。政府の農業政策に対する農村の側の根本的な信頼がなければ、これはとうてい実現不可能なことだと思うのであります。  そこで、コンニャクは輸入を管理しておる、こういうのですか。私のところでは、ちょうど七、八年前稲作転換をやらなければいけない、そのためには大いにサクランボをやりなさい、こう言ってサクランボをどんどん転作奨励作目として勧めたのであります。そうしたら、今度はこのサクランボを輸入解禁ですということになりました。私はこの間ヨーロッパや米国のサクランボ地帯の調査をしてきました。あのサクランボが現状の状態で日本に入ってくるということは、日本のサクランボ農民にとっては当面決定的な打撃になることは明らかである。稲作の転換奨励として大いにサクランボをやらして、いままた来年から年間百七十万トンの生産制限をやろう。いままで政府が、米過剰ですから大いにサクランボをやりなさい、転換しなさい、こう言って奨励しておいて、今度の輸入解禁。七、八年前政府が奨励するので、営々としてサクランボ、チェリーを育ててきたのであります。やっと実がなろうとしてきておるのであります。そのときに今度輸入解禁、これでは政府を信用せいという方が無理なんであります。私は、この百七十万トンの生産制限ということは尋常一様ではいかない、やはり政府と農民との間に決定的な信頼関係がなければ百七十万トンの生産制限なんというものは簡単に実現できるとは思わない。福田さんはかって、だれよりも農民を愛するという大演説を、私もあそこの武道館で聞きました。ところが農民の信頼を得られるような状況の政策の展開にはちっともなってはおらぬように思われる。  そこで、サクランボの問題については、いままで植物防疫法の関係で抑えてきた、いまからもう十何年前に自由化品目にしておったのだ、いままで抵抗してきたが、これ以上どうにもまかりなりませんというのが鈴木農林大臣の説明なんであります。ずいぶんいままでがんばったのです。しかし、状況から言うと、いま言ったとおり転換奨励作目として大いにやらして、やっとなりごろになってきたら、がたっと状況を変えていく、これは農政不信を増幅する以外の何ものではないと言わざるを得ないのであります。農業基本法の十三条では輸入を制限することも可能なんであります。ガットとの関係やなんかいろいろなことがありますけれども、いま百七十万トン生産制限をやろうという、この米過剰基調は何とかせなければならぬと私も思うのであります。しかしその前提は、やはり転換する作目に対して政治の責任というものが貫徹されておらなければ、そんな簡単なわけにいくものじゃないと思うのであります。そういう意味で、農基法十三条の関係も含めて、やはりこの農政の不信を回復する、これがまず大前提ではないかと私は思うのですが、総理大臣いかがでしょう。
  215. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 農業基本法ができまして以来、この客観状況が相当変わってきておりまするから、あの当時予見したとおりにはいっておりませんけれども、とにかく農村の所得ばかなり向上したということは私は申し上げることができると思うのです。また、減反問題もこれは強権をもって政府が押しつける、なかなかそんなようなわけにはいくまいと思います。やはり政府、農村、これは本当の協力、信頼の上に立って初めてそれが実現できる、それは私は阿部さんのおっしゃるとおりだと思います。
  216. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 サクランボの問題について、輸入を制限することはやりませんか。
  217. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 サクランボの問題につきましては、阿部さんからお話しになったように、農民感情としては私も痛いほどそのお気持ちを推察をしておるわけでございます。しかし、午前中にも申し上げましたように、これは三十五年当時すでに自由化をされておりまして、ただ、コドリンガという害虫が日本に入ってきてはいけないということで、植物防疫上の観点から輸入を禁止しておった。ところが、その後アメリカにおいてその駆除の技術開発が進みまして、十分わが方でもそれに関心を寄せて、情報の交換等、技術者の交流もやりましてやってきたのでありますが、わが国の専門家の間におきましても、おおむねここまで来れば技術的に植物防疫上これに苦情を持ち込むわけにはいかない、そういうところまで来ておるわけでございます。そこで私どもは、自由化された品目でございますから、これを輸入禁止をするということにはまいりませんけれども、輸入の時期の問題あるいは生産、出荷のこれに対応する問題さらに大事なことは、私はやはりそういう外国のサクランボに負けないような優良品種の改良、これには今後農林省も全力を挙げたい、こう思っております。できるだけ生産者の皆さんに打撃を与えないように十分慎重な配慮をしながら今後やってまいりたい、このように考えております。
  218. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 農林大臣、サクランボというのは一年でできないのです。長い期間かかるのです。木を育てて、それからでないとならぬのでありますから、上州のコンニャクよりももっと時間が長くかかるのであります。そうすると、転換奨励作目としてやっといまなり出してくる段階に来たのです。そこへ打撃を及ぼすということは、いま政府が農民に対して年間百七十万トンの稲作転換を何としてもやらせよう、こういう段階にある、そのときに、前のあの段階のときに転換奨励作目としてサクランボをやって、その状況をがらりと外してしまうことは、これは農政に対する不信が非常に大きくなる。その中で百七十万トンやれなんと言っても、そう簡単に事はいかぬようになるのであります。やはりそこに農政の、政治の責任という問題があるのじゃないか。  そこで、総理大臣は自民党の総裁でありますが、いま農業団体、生産者団体は輸入をしてもらいたくないという請願書を国会に出しております。恐らく野党は、この輸入をしてもらいたくないという請願の——自民党の方もみんな紹介議員にはなっておるようであります。そうすると、この請願が国会で採択をされたということになりますと、さっき言った農基法の十三条も含めて、国会の意思のとおりに政府は行動する、こういう御答弁ができるでしょうか、総理大臣
  219. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 請願が採択されただけで、その請願のとおり政府が行動しなければならぬ、そういうことにはなりません。私は別にへ理屈を言うわけではございませんけれども、請願というものはそういう性格のものであります。  ただ、農林大臣がおっしゃっておりましたが、外国のサクランボと山形などのサクランボを比べますと、私ども常識的に見まして品質がずいぶん違うようだ。ですから、輸入が自由化されるということになれば相当打撃はある、これは私どもも承知しております。しかしまた、世界の中の日本経済というようなことを考えますと、外国に対するわが国の姿勢という問題もある。なかなかこれは裁きのむずかしい問題です。  そこで、農林大臣も申し上げておりますが、できる限りこの衝撃がないような配慮をしながら自由化問題を考えなければならぬ段階に来ているな、こういうことなんで、私もとにかくサクランボの今日の品質を考えますと、なかなかこれは外国と太刀打ちできるような状態まで来ておらぬような感じがしますが、できる限りの配慮をしながら、とにかく農林大臣とも緊密に相談しながら、この問題の処理に当たりたい、そのように考えます。
  220. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 総理大臣、いまおっしゃいますように、日本のサクランボと外国の、アメリカのサクランボとを比べれば、それが輸入解禁されて入ってきた段階では大変なことになるという認識は、私も総理大臣と同じなんであります。それをわかっておってそのことをやろうということになると、さっき言いましたように政治の責任問題があると思うのです。転作奨励作目として、米をやめなさい、サクランボをやりなさい、ずいぶん勧めてきたのですよ。したがって、いまの地方の指導者の皆さんは、今度の百七十万トンはやりようがない、この問題が絡んでくるために非常に苦しんでおります。したがって、ぜひひとつ政治の責任論という問題を——私はやはり信頼が本当に回復しなければ百七十万トンの転作なんということはそんな簡単にはいかぬと思うのです。このことをぜひひとつしっかりと認識をしていただきたい。  時間の関係で、農林大臣、いま私が申し上げました転作十カ年計画、私も、大前提として米過剰基調というものを解消する努力を政治はやらなければならぬ、これは当然だと思うのであります。だけれども、米というのはにわかにこうなってきたのではないのであります。もう七、八年前から米の問題というのは農政の大変大きな問題だったのです。米の政策に対して長期的な展望を持たずに、その場限りでやってきたというところに、毎年米の問題で大騒ぎをしなければならぬという原因があると思うのです。現在、御案内のように、麦などは五百万トンからの輸入であります。百七十万トン制限しようとおっしゃる。そこで、今度の知事会や何かに提案した政府の原案によりますと、転換作目のガイドポストを出します。それから地域分担の指標を出します。こう言っておるのであります。私は、この指標を出したり、ガイドポストを出すというような程度で百七十万トンの生産制限、転作なんというものはできないと思う。政府の責任において、これをやりなさい、この地域は米をやめなさい、そのかわり米からこれにかわった場合、この作目についてこういう責任を持ちます。言葉だけでは、農業者の所得にとって米と余り大きな均衡を失しないような努力をいろいろといたしますと書いてある。それならばガイドポストとか指標なんという程度ではだめなんであって、責任において大転換をやらす、そのかわり転換したものについてはかようかような政策的な責任を必ず貫徹します。これがなければいかぬと思うのです。そっちの方はみんなガイドポストとか指標とかといってうやむやに、サクランボと同じように逃げ出そうという構えなんです。全国、雪のないところあるいは面積の大きいところ、いろいろあると思います。大臣や私の方や北陸なども、一年の間に五カ月間は雪で農地は利用されない。先ほどエネルギーの議論が起こりましたけれども、エネルギーを無制限に、雪の中で何をやってもいいというなら、ハウスでも何でもやってもよろしいというなら、積寒地帯といえどもやりょうがあるでありましょう。しかし、雪の中で熱を加えていろいろなことをやるということは困難でしょう。そうすると、百七十万トンの今度の生産制限の特徴は、日本で米以外になかなかやりづらい積寒地帯、東北、北陸、これは正直言うと日本の米作地帯としては、悪いたとえだが、昔で言えば関東軍とも言うべき主力地帯だと思うのですよ。ここに今度百七十万トンの生産制限の切り込みをかけよう、これが政府の方針のように、私はこのあれを読んで感じておるのです。一体大臣、東北とか北陸で米をやめなさいというのは——私はやめていいと思うのです。何をやるのですか。何をやらそうとおっしゃるのですか。このことをひとつはっきり教えていただきたいのです。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕
  221. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 米の過剰基調、この需給均衡を回復しなければいけない、このことは阿部先生もよく御理解の上でお話をなさっておるようでございます。私どもはそれと同時に、ただ米の生産力減らすということでなしに、一方において小麦とかあるいは大豆とか飼料作物とか、そういうような日本の必要とする作目の生産が停滞をしておる、総合的な自給力を高めるという観点で、今回、米の水田利用総合対策ということから一歩踏み込みまして、水田利用再編対策というものを考えておるわけでございます。したがって、今回の場合は、昭和四十五、六年ころにやりましたように単なる緊急避難的に休耕等をすればいいということでなしに、長期にわたってこの転作を定着させる、こういうことを考えながら総合的な食糧政策を展開していこう、こういう考えでございます。  その際に、その手法として、阿部さんは、ただガイドラインだとかガイドポストだとかいうようなことでやってもそれはうまくいきっこはない、むしろ政府の責任においてそれを法的にも、場合によれば命令を出してやらしたらどうかというお考えのようでございますけれども、私どもはそうでなしに、価格の面あるいは政府の土地改良事業その他、あるいは転作奨励金等の拡大強化、いろいろな構造対策等も含めまして条件整備を図って、そして稲作と、一方において他の作目に転換した場合のその相対的な農業収益性というものをできるだけバランスのとれるような条件整備をしながら、農業団体、農民の皆さんの御理解、御協力を得てそれをやっていこう、こういう考え方であるわけでございます。  私も東北の人間でございまして、東北、北陸等において、ああいう積寒地帯、単作地帯においてどういう作物を選ぶか、あるいは大豆であるとかあるいは麦であるとか、まあいろいろなものが考えられるわけでございますが、これは各地域におけるところの生産者、農民の皆さんと地方団体その他農業団体等の御協力を得ながら、政府としても十分御相談をしながら進めてまいりたい、このように考えております。
  222. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 大転換をするとおっしゃっておるのですが、この政府のあれによりますと、転作目標面積、飼料作物、野菜、麦及び大豆、大豆以外の豆類、永年性作物、果樹その他ですね、こういうもので、全部で二十八万ヘクタールなんですよ。二十八万ヘクタール程度のものを転作をする、そういう中では、いま大臣がおっしゃるような足らない麦や大豆やいろいろなものをやりますなどと言っても、そんなものはどうにもならぬと私は思うのです。したがって、やると言うのならば、農業団体と相談をいたしますと、陰でこちょこちょ押しつけをするようなことじゃなくて、政府はやはり政府の判断で大胆な、これでいくんです。これにかわってくれ、そのかわり転換したこの作目については政府はこういう責任を持ちますと、これがはっきりしないで、ガイドポストだの指標だのなどと言って、転換したものの責任はいまのサクランボと同じようにちっとも持たない。しかも、これはもうことしからやろうというのでしょう。やろうというのに、これから農業団体と相談する、どこと相談する、こんな主体性のないことでどうしてこの大問題を解決することができるでしょうか。私はちょっと政府はひきょうだと思うのです。このガイドポストとか指標とかというのは、いつでも責任の問題になるとさっと逃げられる仕掛けだと思うのですよ。転換するんだ、そのかわり必ずこの転換作目についてこれでこういう責任を持ちます。これがはっきりしなければ、いまはもうとてもじゃないが、協力せいなどと言っても、政府をだれも信用していない。全国知事会議はこの提案に対して反対でしたね。ぶつぶつみんな言ってくるんです。農協の幹部も。鈴木農林大臣の方は、いいですか、これに従わなければ食管制度をだめにしますよ、だめになりますよと一面では脅迫をしながら、したがって政府は、まだいろいろやりますから何とかひとつ、これ以外にないじゃないか、硬軟両用でいまじりじりと農業団体を攻めておるようであります。そういうこそくなやり方じゃなくて、これに転換しなさい、転換しなさい、農林省はこれが責任ある方針だ、したがって、転換した作目についてはこういう責任をとるんだから、ぜひひとつこれでやれ、こういうのでなければ百七十万トンの生産制限なんということは、これは困難です。私は、はっきり申し上げておきます。
  223. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 いまの手法につきまして、阿部さんと私の考え方が違うわけでございまして、阿部先生も恐らく農民の諸君から、そういう政府の押しつけでなしに、各地域における農民の意向を十分反映できるような形で、どれを選択するか、そういうことはひとつ地元に任してもらいたい、こういう意向のありますことも御承知のことだと思います。その際に、各集落、各部落等が選択をして、こういう方面に転作をしたいというものに対する転作奨励金その他の助成措置、これならやってもいい、そういう条件整備を政府としてはやろう、そういうようなことでいま農業団体並びに地方公共団体等と御相談をしながら進めておるわけでございまして、何か食管がそうでなければ堅持できないというような脅迫をしておるというようなお話でございますが、これは私が申し上げる前に、農業団体等はそのことを一番心配されておるわけでございます。だから、これは政府も農業団体も一体になって、やはりわが国の食糧の安定供給ということで、食管制度というものは堅持していかなければいけない、こういう認識では一致しておるわけでありまして、私が脅迫とか、そういう大それたことを申し上げておるようなことはございません。御理解をいただいておるということでございます。
  224. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで、いまの政府の打ち出しておる水田転作の内容、いつまでに確定させますか。そのときには転換の方だけが前面に出て、いま転換を要することは明らかであります。しかし、米の問題はいまに始まった問題じゃない。米の需要がどんどん減る。たとえば、農林省がこれだけの頭脳を集めておって、米の米飯以外の利用の仕方、これなんかだってもっと本気でやるならば、もっともっと方法は幾らだって開発されてきたと思うのです。そこはずるずる、ずるずるであります。そして麦、粉食、こういうものがどんどん広がりました。そして、それは一面で言うと、いま問題になっておる貿易黒字、工業貿易の黒字、これとのかかわりで、どんどん、どんどん向こうからも圧力があるでしょう。農産品の日本輸入をもっと広げろという強い圧力ですね。そういう中で、米に対する長期的な確たる政策を持たぬままで、その場限りの対応をずるずるやってきたというところに、いまにわかに百七十万トンの転作をやらざるを得ないという非常に険しい状況になってきた。その責任は政府にあると思うのです。  それから総理大臣、農民をだれよりも愛すると言ったのですが、いま農村で一番弱っているのは、嫁の来手がいないということです。嫁の来手がおらぬような農村、農業基本法制定当時は、昭和五十二年のころには嫁の来手がおらぬような農村にいたしますなんというような農業基本法はつくらなかったはずであります。農業基本法が目指した農村像というか、農業像というか、これが大きく狂ってしまったということを端的に私は示しておると思います。その中で、いま米の過剰問題をどうするかという大問題に直面しておるのであります。麦は五百万トン以上輸入でしょう。かつて日本はたしか三百万トンくらいの麦を国内でつくった時代があるのであります。いま二十万トン台に落ち込んでおるわけであります。米から麦にかわりなさい、かわる地帯はこういう地域です。そうしてかえましたならば、麦をやったのじゃ米より損するのですよ。そのところは、最近若干変わってはきておりますけれども、たしか私の計算では、四十八、四十九、五十の三カ年間で三千百億くらい輸入麦の逆ざやに対して食管会計から銭を払った。  米から麦にかわれというならば、ただはかわらぬのであります。米の方が麦よりもずっと収益率が高いわけでありますから。この分は政府が責任を持ちますということを確立をして、一遍に三百万トンまで麦への転換ができないにしても、十カ年計画くらいで二百万トンとか、そのくらいの麦への転換をする。麦は五百万トンから輸入でありますから、そういう大胆なやり方が求められている時代なんだと思うのです。  恐らくここで言っております。いろいろなものを全部ひっくるめて二十何万ヘクタールなんということの転換では、その中に占める麦というのはささいなものであります。とうてい百七十万トン転換政策は成功しない。いっでも農村現場の中ではトラブルが起こる。政府がもっと責任ある対策を出さなければならない段階に来ておる、私はこう思います。もし三年間たって成功しなかったとき、私がきょうこのことを指摘をしたということをぜひ想起をしておいていただきたいと思います。  それからサクランボ。これはひとりサクランボだけじゃないのです。もしコドリンガが、どうやったこうやったと言っておりますけれども、入ってまいりますと、リンゴにも、いろいろな果樹に、ちょうどアメシロと同じように広がるおそれがあります。もしそれが広がったときの責任というのも、ぜひひとついまからほぞを固めて、この議論があったということを想起をしていただきたいと思います。  それから、時間の関係で答弁は後で一緒にお願いいたしますが、円高の問題あるいは構造不況業種の問題、そうでなくても、低成長下の非常に長期化した不況の流れの中にあるわけであります。そうすると、ことしの年末というのは、私は大変な年末になるのじゃないかと思うのであります。日本の場合には、もとがあって、それから地方に小さな分工場のような、下請工場のような、孫工場のような、こういう組み立てになっておる。したがって、そういう中で今回の円高で一番決定的に打撃を受けるのは、最末端の段階なんであります。私は、年末は相当ひどい状況が起こるということをいま憂えておるわけであります。したがって、年末のそういう状況に対して、特に最末端の中小企業に対する金融、いま弾力的に対応するということは言っておるようであります。しかし、そうは言っても金は簡単に動かぬのであります。信用の保証がなければ、信用の裏づけがなければ、そう簡単に資金は動かないのであります。そういう意味で、私は今度の補正予算に組まれておる、あの程度の保証基金のてこ入れでは、この年末は保証基金に対する対応はとうていできないであろうと思うのであります。したがって、中小企業、零細企業に対するこの保証制度、特にことしの年末は大変だと私は思うのであります。もっと根本的な対策が必要だと思いますが、御答弁を願いたいと思います。
  225. 田中龍夫

    田中国務大臣 阿部さんにお答えいたします。  ただいま御指摘がありましたように、本年の年末対策でございます。  これは御承知のとおり婆毎年歳末特別融資ということをいたしておりまするが、それだけではなく、第四・四半期に出ます資金の量が御承知のとおりに一兆三千三百億というものがございますが、これ以外にさらに年末金融ということを当然考えることは申すまでもございません。  それから同時にこの不況の対策でございまして、ただいま信用保証の問題をおっしゃられましたが、保険公庫に対しまするこの補正予算の百億、これは御案内のとおりに信用保証協会が保証いたしました、それをさらに保証いたしまする再保険、これが百三十億の原資が取りつきまして、それで新たに今度百億を出したわけでございまするけれども、これとても不足いたしました場合におきましては、さらにこれを増すように大蔵当局とは話を進めております。  それからまた同時に、この年末を控えましていろいろと倒産関係や何かが起こりはしないか、こういう問題につきましても、保険法によりまする不況業種の指定、さらに特別の措置を講じまするだけではなく、同時に今度は連鎖倒産の問題に対しましては、これをさらに防止する制度も考えておりますことは御案内のとおりでございます。  そのほかまた円高の現況から、これに対しまする特別措置もございまするし、さらに特にわれわれが考えておりますのは、国が都道府県の方と一緒になりまして保証をいたしまする新しい制度も、お手元に案をお出ししたように考えておる次第でございます。同時に、民間金融に大部分を依存いたしておりまする中小企業に対しましては、さらにその保証の条件等々につきましても、一般市中銀行に対しまする中小企業に対しましての資金繰りを円滑にするような措置を講じておる次第でございます。  以上、こういうふうなものを総合的に運用いたしますことが最も大事な年末対策じゃないか、私はかように考えております。
  226. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 いま通産大臣がおっしゃいましたような弾力的な運用を行って、少なくともことしの年末の中小企業の倒産、こういう状況は去年、おととしよりも減少していくようにやる、こういうことをはっきり言明できますか。
  227. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまおっしゃいましたように、それが一番心配な点でございまして、われわれは全力を挙げてこの年末の不況が深刻化いたしませんように努力をいたす所存でございます。
  228. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 運輸大臣、新東京国際空港の開港が間近、大変運輸大臣ハッスルをしていらっしゃる。私はかねがね申し上げておりますように、ああいう場所に飛行場をつくる、国際空港をつくるというのはばかなことだと思っているのであります。大前提として。しかしながら、あそこまで突っ込んでしまっていまさら引っ込みもつかぬだろうと思うのであります。したがってどうするかというふうに考えますと、一つは、あの飛行場が、いま運輸大臣熱意を燃やしておるように、開港するということになりますと、国際便はほとんどみんなあそこに移る。そうすると台湾航空は羽田に残す。御案内のように足回りのネックがあります。恐らく開港をやっても、五十一号国道から成田までのあのバイパスなどもそう簡単にはいかないと思います。かつては新幹線もやろうなどという話を聞いておったけれども、これもちょっとそんな簡単なわけにいかない。一番の足元がそのとおりでありますから、東関東高速道、湾岸高速道、これとのつながりもそううまくは流れないということになりますと、世界一不便な国際空港ということになるのであります。しかし開港ということになりますれば、各国が増便をしてくれ、あるいはチャーター便も認めろということになるわけであります。同時に日本の側もまた、新空港開港とともによそに対していろんな注文があるのだと思うのであります。たとえば南米あたりには日航の直通便は入っていない。したがってアメリカとの間の以遠権をどうするかとか、いろんな問題が起こるのだと思います。そういう問題は利害いろいろ絡み合う問題でありますから、なかなか航空協定交渉はそうしかく簡単にはまいらぬと思うのですが、その中で、世界一遠い国際空港、台湾航空は羽田に残る、これはアメリカまで行っておるということになりますと、成田まで、世界一遠い空港まで出かけていく前に、やはりみんな台湾航空で羽田から直ちにアメリカへ、したがって台湾航空はいつでも満席、そしてほかのところはがらがら、こういう状況になってくるのではないかと思います。こういう状況を運輸大臣は一体どういうふうに認識をしていらっしゃるか。
  229. 田村元

    ○田村国務大臣 いま三十二カ国から航空交渉の申し込みがあります。これはもちろんケース・バイ・ケースでありまして、政治、経済、文化、いろいろな交流、それからメリット、そういうものを考えて個別に判断しなければならないと思うのです。いまの御質問の台湾の航空会社の問題でございますが、これはちょっと事情が、御承知のように中国との問題がございます。本来なら全部成田でやるのが一番いいのでしょうけれども、そういう特殊の事情がございますので、われわれも因ったのでありますけれども、一応これを羽田。そこで、いまおっしゃったような懸念は率直に言って抱かなければならぬと思うのですよ。でありますから、他の航空会社とのバランス等考えて、十分の配慮といいますか、措置をしていかなければならぬだろう、このように考えております。
  230. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 運輸大臣、いずれにせよ、世界一不便な空港になるのです。私はかねがね言っておりますように、この空港、去年、おととし始まった問題ではないのであります。十年間あったのであります。この十年間はどうせ簡単に開港はならないというつもりで、足回りのことも、いろいろなことも、二期工事のことも、どうせ簡単なわけにいかぬという安易なつもりで対応してきたところに私は今日の立ちおくれがあったと思うのです。  その最大の出発点は、私は何度も言っておりますように、土地収用法の運用を誤ったということを指摘しておるわけであります。いま鉄塔は倒しました。鉄塔というのはあれは何で倒したかと言うと、高い部分が航空法上ひっかかるというので倒すことができたのであって、土地そのものは土地収用法の網を張っておかなかった場所なんですよ。したがって、これから二期工事をやらなければいかぬでしょう。そうすると、二期工事については土地収用法上の事業認定でちゃんと網はかけてあるのです。かけ外れている場所もあるのですよ。とにかく網はかけてある。事業認定をやって網を張ってあるわけでありますが、事業主体たる公団は千葉県土地収用委員会に対して裁決申請をしたけれども、千葉県の収用委員会は、私の記憶では八年間くらいこれをほったらかしてあるのです。そうすると地権者の皆さんはどういう状況が起こるかというと、周りの地価はどんどん値上がっておるのです。裁決申請はやった。私は土地収用法の当時の改正案の審査を担当した時代がありますが、事業認定で網をかけた段階で地価は近傍類地の地価で凍結する、これがあの当時の収用法改正のポイントであります。したがって、網を張って地価は凍結をやったけれども、裁決申請が出てから八年間もたなざらしにしてあって、ちっともどうにもなっておらぬのです。  この際は、私は何度も言うように、あんなところに国際空港をつくるのはばか者だと思っておりますけれども、ここまで来て、あなたの方も、やっぱりばか者だったなといって反省してやめるというわけにいかないでしょう。何とかしなければいけない。そうすると、あそこの皆さんは、いずれみずからの生活のありようや何かを新しく再構築をしなければならない問題を目の前にしながら、じりじりと時間は推移をしておるのです。二期工事も円滑にやろうというならば、前の凍結を解いて、あの大事業全体から見れば大した金じゃないのです。そして大きな転換を図るくらいの決断が求められるのではないか。そういう観点で関係者とのコンセンサスをつくる、こういう努力が必要な時期に来ているのではないかというふうに私は実は最近つくづく感じておるのです。運輸大臣はその辺についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。
  231. 田村元

    ○田村国務大臣 いまさら引っ込みもつかぬだろうという大変温かい御同情をいただいて恐縮に存じておりますが、実は、従来でき得る限り任意買収ということであったようです。いまの御意見まことに傾聴に値するものでありまして、私どもそういう面で、つい先般も二期工事について十分の配慮をしながら慎重に事に処して急ぎなさいということを申したのですが、いまの御意見、私自身の参考にして、これからいろいろとまた考えてみたい、このように思います。
  232. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 小川さんに関連質問を……。
  233. 田中正巳

    田中委員長 この際、小川国彦君より関連質疑の申し出があります。阿部君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小川国彦君。
  234. 小川国彦

    小川(国)委員 私は同僚議員の貴重な時間をちょうだいいたしまして、いま阿部議員から質問をいたしております成田空港問題の当面の主要な二点について総理に見解を承りたいと思います。  いま阿部議員が指摘しましたように、成田空港は昭和四十一年七月閣議決定以来、延々十二年を要しているわけでございますが、政府は当初、本年の十月開港ということを国会の中で言っておりまして、あるいは総理は年内開港ということを言っておりまして、つい最近は年度内開港という形で政府の意思を統一して発表する。こういうことを承っているわけでございますが、その中で、私は、いま開港上の最大の問題となっている銚子のボルタックの問題について総理がこれをどのように考えておられるか、見解をお聞きしたいと思うわけです。  この問題は、昭和四十五年の七月ごろ、運輸省が銚子市に対しまして、飛行機の無線誘導装置としてのボルタックを設置させてもらいたい、しかし、これは太平洋から飛んでくる飛行機にその位置を知らせるためのものである。それからもう一つの目的は、百里基地の軍用機と民間航空機が衝突しないようにその空域を示すためのものである。こういう二つの目的でボルタックを設置させてもらいたいということで、文書をもって銚子市に申し入れをして、ボルタックを設置したわけです。  ところが四十九年ごろになりましたら、政府、運輸省は、今度は、実は御宿のボルタックは羽田のために使用しているので、御宿のボルタックを成田のためには使えない、そして大変恐縮だがこの銚子のボルタックを使用して太平洋から飛んでくる飛行機は銚子上空をぜひ飛ばさせてもらいたい、こういう申し入れに変わってきたわけです。銚子市では、この四十五年の文書は運輸省の東京航空局長の名前で来ておりますし、飛ばないという説明文書までもらって、十万市民に広報で配った、そういう事実があるのに、事ここに至って銚子上空を飛ばさせてくれ。銚子の市長は保守系無所属の市長でございますが、これは政府にだまされた、ペテンにかけられた、こういう言葉を私に言っております。政府がこういう重要な国の政策を行うに当たって、自治体やその地域の住民をだましてボルタックを設置して、つくってしまったら、後になってその上を今度は飛行機を飛ばさせてくれ、こういうことでは、日本の重要な国策と言われる空港政策を進める政府のやり方としてはきわめて非民主的なやり方ではないか、こういうやり方が許されてよいのか、民主主義の政治のあり方としても根本的な国の政治姿勢を問われる問題だと思うわけですが、その点、総理はこの約束違反の問題をどういうふうに政治の姿勢として受けとめておられるか、その点をお伺いしたいと思います。
  235. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 銚子ボルタック問題のいきさつは、いま小川さんがおっしゃったようないきさつになっておるというふうに聞いております。そこで銚子市の上空を飛行することにつきましては、これは銚子市民の理解を得なければならぬ、そういう問題だろう、こういうふうに考えております。そこで、政府におきましては、いま市当局等とその理解を得るための最大の努力をいたしておる、こういうことであります。
  236. 小川国彦

    小川(国)委員 総理の答弁はもっとものように聞こえるのですけれども、政府の姿勢というのは上から下まで一貫していなければならないと思うのです。下部の運輸省の航空局長が文書をもって通りませんと言ったことを、今度は運輸大臣が、通させてもらいたい、私も手をついて謝りますとこの前の予算委員会では申しました。哀訴懇願する、こう言っているのですよ。ですから、下部の官僚機構がうそをついて、幹部が謝ればいいということでは、私は政治の姿勢は一貫しないと思うのです。成田空港が十二年間もかかっているというのは、絶えず住民にはうそをつく、だます。それから航空法違反、公団法違反、農地法違反、消防法違反、こういうふうに政府機関が数々の違法を重ね、うそをつく、だます。こういう形でやってきたところに成田空港が今日に至っても開港のめどがつかないという基本的な問題があると私は思うのです。そういう政府の政治姿勢というものを、少なくも福田内閣ではもう少しきちんとしてもらわなければならないと思うのですが、住民に対して民主的な立場で住民の納得いく形でなければ物事をやらない、こういう基本姿勢をお持ちになる考えがあるのかどうか、この点をお伺いしているわけです。
  237. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 とにかく国の施設を設置する、そういう上におきましては、これはもうその地域住民の理解と協力を得なければできないことでありますから、その理解と協力を得るための最善努力をする、これが政府の基本的な姿勢であります。
  238. 小川国彦

    小川(国)委員 結果的にうそをつき、だましたということについてはどういうふうにその政治責任をお感じになりますか。
  239. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ボルタックにつきましてはいま小川さんが御指摘のようないきさつがあるようです。でありまするから、運輸省当局といたしましては、これはああいういきさつではあったけれども、事情が変わってきて銚子上空を飛行しなければならぬことになってきた、どうかこの事情を理解してもらいたい、こういうお願いをしておる、こういうふうに報告を受けております。
  240. 小川国彦

    小川(国)委員 この問題はまさに、福田内閣といえども江戸時代の殿様のようなやり方でありまして、民主主義時代にはあり得ないことだ、こういうふうに考えられるわけであります。  次に、私はもう一つ大きな問題点をお伺いしたいと思いますが、これは実は先般来国会の質問書の形で五月二十七日、それから続いて八月三日と二度総理に質問主意書を出したわけです。事は、成田空港の施設があれだけでき上がってきております。その中に出店する営業者もすでに内定をしているという答弁書を私は伺っておるわけです。しかも、その内定に当たっては、その内定された業者からそれぞれ負担金を取って、電気、水道、ガス、そうした内部の工事施設の負担金をこれらの業者から徴収しているわけです。私が求めたのは、この営業権者の決定に当たっていろいろ不信や誤解や疑惑を招く点が多い、したがって、私は、国政調査権に基づいて、この成田空港の出店者の一覧を質問主意書で二度にわたって総理にただしているわけですが、そのちょうだいしている答弁書では、空港公団が内定しているが、適当な時期を見て公表すると、国会の調査権を無視したような回答しか来てないわけです。政府はもう年度内開港というような方向を明らかに示している中で、一体その中の出店営業者の選択はどういうふうに行われたのか。公募かというと公募じゃないというのですね。それからまだ決まってないのかというと内定している。しかもその出店者から負担金まで取っている。これは歳入に入っているわけです。そういう業者の名前すら一覧を発表できないというところに、なぜ隠さなくてはならないか、私ども非常に疑問に思うのです。いろいろ、食堂から喫茶店から入る店の配置は決まっているし、その店々に応じたいろいろな排水設備までできている。その負担金を公団は収入として取っているわけです。そういう一覧すら国会議員の要請に対して、調査要求に対して資料を出せないという。総理の考えでは、もう三月とか半年以内に開港したいということをしばしば言外に漏らしておられるわけです。そういう状況の中でこういう事実すら公表できないというのは一体どういうわけなのか。国政調査権の上からいっても非常にゆゆしい問題だというふうに私は思うのですが、そういう点について総理はどういうふうにお考えになっているか。
  241. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは運輸省当局の方から答えます。
  242. 田村元

    ○田村国務大臣 これはしょせん空港公団総裁の責任ということになろうかと思います。  それから、現在では内定の段階でございますので、当然開港前には決定をしなければなりませんから、その時点でどういう事業者が入るかということは公表する、こういうことになっておるようでございます。
  243. 小川国彦

    小川(国)委員 これは内定ではないと思うのですね。それぞれ全部、内定決定者から負担金を取っているのですよ。しかも私の調査の中では、もうすでに地代を取っている業者もあるのです。たとえば羽田には約百五十ぐらいの事業所が空港関係企業でやっておりますが、成田空港の中には、ほとんど公団が建物をつくっておりますが、東京航空食品という会社とコスモ企業という航空機内食をつくる会社が二社、空港のど真ん中に両方ともビルを建てて、すでにそれぞれ相当額の地代を納めている。これも構内営業者なんです。そういう、もう地代を取っている業者の名前すら公表できないというのは、先ほど私が取り上げたボルタックの問題、飛行コースの問題を住民に隠してきている問題と同じように、政府の空港政策の進め方に非常に疑念を抱かせる問題だ、こういうように思うのですが、こういう事実を公表するということは当然のこととお考えになりませんか。これは総理に伺いたいのです。
  244. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 運輸省でもいろいろ事情があって公表しなかったのだろう、こういうふうに思います。運輸省の方から、その事情は御説明申し上げます。
  245. 田村元

    ○田村国務大臣 私が先ほど内定と申しましたのは、仮契約だから内定である。まだ本契約に至っておりません。でありますから、本契約の時点でどういう事業者か、それを公表するということであって、別に他意あるものではありません。
  246. 小川国彦

    小川(国)委員 仮契約なら負担金を取る必要ないんじゃないですか。公団といえども政府機関ですから、仮契約の段階で取り消しがあり得るというのなら、それはそういう負担金を取らずに公団が立てかえ工事をして、決定した段階で金を取るというのが筋でしょう。内定というのに負担金を取っているなら、これはもう決定と同じですよ。  しかも総理に伺いますが、では総理は、一体開港の時期はいつというふうにお考えになっているのですか。
  247. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 なるべく早くと、こういうふうに思っておりますが、まだ正確には決めておりませんです。
  248. 小川国彦

    小川(国)委員 総理は、しばしば、年内あるいは年度内ということを繰り返して言っておられるのです。私が伺うところによると、二十四日ごろ政府の方では閣議で開港時期を決めたいというような話まで聞いているのですよ。ですから、そういうあいまいな答弁ではなくて、少なくとも一国の総理で、ことしの重点の施策として成田空港の開港をするという方針を決めたわけですから、そんなあやふやな見通しでおやりになっているはずはないと思うので、明確な開港時期をひとつお示しいただきたい。——いや、総理に伺っているのですよ。
  249. 田村元

    ○田村国務大臣 私は担当でございますから申し上げますと、開港の日取りについて、まだ私は総理に相談しておりません。総理の、いつ幾日に開港をせよという命令を受けようとは思っておりません。私の方からいつ幾日にいたしたい、いかがでしょうかという相談をかけたいと思っております。でありますから、総理はまだいまのところ五里霧中であろうと思うのです。  二十四日ごろの閣議で決めるというようなことを決めたこともありませんし、私自身いまのところそのように思っておりません。先ほどからお話しのあったように、まだ銚子の問題もあります。でありますから、いつからということをいま明確に答えることができるどころか、私自身まだ明確に決めかねておるというところが真実でございます。
  250. 小川国彦

    小川(国)委員 運輸大臣、五里霧中と言われるのですが、総理もそういう状況でございますか。
  251. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、もうかねがね、これは早く開港してもらいたい、こういうことを運輸大臣に要請しておるわけでありますが、運輸大臣の方からいつという見解の表明がまだない、こういう段階でございます。
  252. 小川国彦

    小川(国)委員 総理、ことしの年頭に開港を急げとおっしゃったあなたが、運輸大臣から報告がなければ総理としてのめどもお考えもお持ちにならない、こういうことでございますか。
  253. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私が万事万端取り仕切っておるわけではないのです。取り仕切っておる人は運輸大臣である。その運輸大臣がまだ見解表明をしない段階ですから、私に見当がつくはずがない。そういうことでございます。
  254. 田村元

    ○田村国務大臣 これは私自身も一日も早くと思っております。思っておりますけれども、総理に、銚子のボルタックの問題は大きい問題ですから、ある程度報告はしてありますけれども、五十一号線がどうだとか関連の街路がどうだとか、そういう詳しいことを逐一報告に行っておるわけではありませんし、説明もしてございません。これは全く技術的な問題でございます。  でありますから、総理にいつだとお聞きになっても、総理はちょっと答えようがないと思うのです。私がわからぬものを総理がおわかりになるはずがない。けれども、一日も早く開港したいという願望を持っておることだけは当然のことでございます。でありますから、私も所管で総理からあずかっておる以上は、子供じゃあるまいし、この街路はこうでございます。この道路はこうでございますと一々言いに行くのは恥ずかしゅうございますから、私の責任でやっておる、こういうことでございます。
  255. 小川国彦

    小川(国)委員 運輸大臣が五里霧中、やぶの中でめどがつかない。総理はそれを頼りにしておる。こういうことだから十二年もできない。恐らくこの年内は無理ということになりましたし、年度内もできない。私はそのやるやらないは政府の責任の問題だと思いますけれども、根本的な政府の政治姿勢だけは、今後の成田空港に取り組む姿勢として、総理にもっとしっかり持ってもらいたいと思うのです。もう十二年もやって、しかも、年じゅうああいう騒ぎを日本じゅうでやっているのは成田だけだと私は思うのです。ベトナム戦争のような騒ぎを日本じゅうでやっているのは成田だけだ。それはなぜやっているか。空港政策があって、住民対策とか住民政策がゼロだからなんです。住民との話し合いもないし、住民にいろいろな事実を隠し、それから国会で国政調査権に基づく簡単な出店者の一覧ぐらいなものを出せない、そういうことまで開港を目前にしておると言っている政府が隠さなければならぬ、そういう根本的な政治姿勢がこの内陸空港の欠陥をどんどん拡大していると思うのです。国政調査権の観点から見て、総理、この程度のことを明らかにすることもできない政治姿勢は誤りだ、こういうふうにお考えになりませんか。
  256. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 どうも私、実感が来ないのですが、とにかく運輸省というか公団といいますか、そっちの方で店舗を一々明らかにすることは支障がある、こういうことでありますから、そういう率直なお答えをせざるを得ない、こういうことになっておるわけでございます。しかしとにかく、あれだけの重要施設をするわけでありますから、地域住民の皆さんの理解と納得それから協力がなければうまく動くはずがないので、そのためには全力を尽くす決意でございます。
  257. 小川国彦

    小川(国)委員 質問を終わります。要請だけしておきます。私は、国勢調査権との観点で——よろしいですか。
  258. 田中正巳

    田中委員長 時間ですから、また後で。  これにて阿部君の質疑は終了いたしました。  次に、佐野憲治君。
  259. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 最初に、総理に見解を求めたいと思います。  今日の地方財政の危機に対しまして、その背景なりその原因、特に短期的な原因、直接的な原因と見られるものあるいは財政構造的な原因と思われるもの、そういう現状に対しまして総理は十分認識しておられると思います。  そこで、まず第一にお尋ねしたいのは、こうした地方財政の危機をめぐりまして、五十一年度の通常国会におきまして大変大きな問題として取り上げられて、特に集中審議も行われておるわけです。そうした集中審議を中心にして真剣な討議が交わされた中で、一つの総括として、この地方財政の危機を打開するために、やはり地方行財政の改正ないしは五十一年から交付税の税率を引き上げる、こういう問題について当時における福田自治大臣は、本年度までには税率を含めて地方行財政制度の改正を検討したい、大蔵大臣は、いまは流動的な経済の状態であるから制度の改正にはなじまないのじゃないか、こういう点を繰り返しておられましたけれども、最後には検討する、このように約束しておられたのでございます。三木総理大臣もまた、大蔵大臣の言うことの意味もよくわかる情勢だ、しかしながら財政、行政の制度の改革はやはりやらねばならない、だから政府も真剣に取り組みます。このように公約しておられるわけです。  ところが、今国会になってまいりまして、私、地方行政委員会の速記録を拝見いたしまして、あるいは質疑応答を見てまいりましても、大蔵大臣も自治大臣もこれらの点に対しまして、そういう約束は私の就任しない前の話だ、こういう形で、明確な責任ある答弁がなされていないわけですね。そういう点に対しまして、総理は当時における副総理でもありましたし、責任の継続性という意味におきましてどのように取り組んでおられるか、その点をまずお伺いいたしたいと思います。
  260. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま佐野さんがお話しになったことは私は大体そのとおりだと思います。私は副総理といたしまして、三木さんの発言また自治大臣、大蔵大臣の発言も聞いておったわけであります。いま、地方財政は非常に窮乏というか困難な事態に立ち至っておる、こういう認識でございます。さて、それに対して協力しなければならぬような立場にある国の財政、これもまた非常に窮乏の真っただ中にある。そういう中で、車の両輪だと私は常々言っておりますが、国と地方公共団体が相協力しながらこの難局をどういうふうに乗り切るか、こういうことは非常に重大な問題でありまして、私はそういう重大な局面にあるという認識につきましては、三木内閣並びにその閣僚の発言と少しも変わるところはございません。
  261. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 では、現在どのような取り組み、検討がなされておるか、この点に対して内閣として。
  262. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 さしあたり五十三年度予算の編成問題をだんだんと手がけなければならぬ、こういうことになってまいりますが、その段階で、どういうふうに中央地方の関係をするか、これは法律の規定まであるくらいな段階でございまするから、真剣に地方財政にどういうふうに取り組むかということについての具体的な考え方を打ち出さなければならぬ、こういうふうに考えております。
  263. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 後からまたお尋ねいたしますけれども、その前に総理、ことしは地方自治施行三十周年だ、総理はまた、ことしは経済の年だ、このように述べておられるわけなんですけれども、そこで私、国会が終わりましたとき、ある地方団体の首長と話し合ったのですけれども、なるほどことしの国家の予算は二十八兆五千百四十二億七千万円だ、ですからごろから言えば二十八兆でこの予算でいい世になる、こういう意味において総理もまた、前回の国会もそうなんですけれども、今度の国会においても、もうしばらくがまんだ、三月ごろが一番つらいんだ、やがて四月、五月、明るい展望が生まれてまいる、この予算において必ず明るい方向へ明るい方向へと希望の持てる、活力のあるわが国の社会経済は立ち直るのだ、こう言っておられますだけに、そういう意味の感慨を込めて、この予算がそういう膨大な予算であり、かつまたそういう性格を持っておるもの、こういうぐあいに理解しておられるのではないかと思うのです。一つは、三十周年を迎えたという意味におきまして、地方財政計画を点検する、地方財政の問題から。そういたしますと、今度の地方財政計画が二十八兆八千三百六十五億円だ、ですから二十八兆円は三たびむごい仕打ちだ、こういうぐあいに感じざるを得ないという、予算のごろ合わせではないですが、内容もまたそうなっているのではないか、こういうことを言われましただけに、私は胸をつかれる思いをいたしたわけです。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕  そこで、総理にお尋ねする前に、大蔵省の方から政府委員で結構ですが、昭和三十六年から昭和五十年まで、この間におけるところの自然増収、特に租税の自然増収といたしまして国、地方別、そしてその総額が一体幾らであったか、こういう点をひとつ説明していただきたいと思います。
  264. 米里恕

    ○米里説明員 お答えいたします。  お尋ねの国の一般会計の税収におきまして、三十六年度から五十年度まで累計いたしまして、自然増収額は十九兆六百三億円、それから同期間におきます純計の減税額は合計二兆九千七百九十一億円でございます。
  265. 森岡敞

    ○森岡政府委員 いま御指摘の期間内におきます地方税の自然増収の累計額は、九兆四千五百九十七億でございます。減税の純計額は、一兆一千七百十八億円でございます。
  266. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 大蔵省の税制参考資料ですか、これと食い違いが起こっているのはどういうわけですか、おたくの方の出しておられる……。
  267. 米里恕

    ○米里説明員 税制関係の資料集に出ておりますのは、決算額から前年度の決算額を引いた数字でございまして、ただいま申し上げました数字予算ベースの数字でございます。
  268. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 当然それは皆さんが公表しておられる税制の参考資料の中に、決算を中心として、明らかに、予算ベースじゃなくて、決算の中でどうなっておるか、そういう点を明らかにして……。
  269. 米里恕

    ○米里説明員 予算委員会に通常提出しております資料は、先ほど申しましたような予算ベースで出しております。決算額になりますと、込みで数字が入ってまいりますので、予算ベースの方がより正確かということで、こういう資料を毎度提出いたしておる次第でございます。
  270. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 しかし皆さんの方が公表しておられる資料ですよ。決算ベースで、それを予算ベースで言う方がなにだと言うのはおかしい。やはり決算で初めて明確になってくるわけでしょう。私の方から言ってもいいのですけれども、これは大蔵省の資料でありますから。  この資料によりますと、昭和三十六年から五十年までには、十九兆五千百三億円、減税額が三兆四千二百九十一億円、地方税の場合におきましては、自然増収が九兆五千三百五十七億円、減税が一兆三千百十一億円、合計いたしますと、二十九兆四百六十億円が自然増収、減税が四兆七千四百二億円、こういうぐあいになっておるわけですね。総理、この数字をひとつ頭に置いていただきたいと思います。自然増収が二十九兆円もある。これに対して減税は四兆七千億円だった。  続いて、行政投資の実績、特に、国、県、市町村に、どのように行政投資が行われてまいったか、この点を、四十五年度の自然増収なりあるいは減税等も比較するのに都合いいと思いますので、そういう意味における、自治省の発表しておられる行政投資実績、これを説明を願いたいと思います。
  271. 石見隆三

    ○石見政府委員 お答え申し上げます。  昭和四十九年度、これは一番新しい、現在の資料でございますが、四十九年度の行政投資の実績の額でありますが、資金の負担別に見ました場合、国費が六兆二千二百億で、全体の四三・八%でございます。都道府県が三兆五千五百八十三億で約二五%、残り市町村が四兆四千二百六十億円、一二%であります。これを事業主体別に見てまいりますと、国が三兆九千五百十二億でありまして二七・八%、都道府県が四兆六千四百二十九億円で三二・七%、残り市町村が五兆六千百三億円で三九・五%という結果に相なっております。
  272. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 総理、いまの自然増収のうち減税にはわずかしか回っていない。そういたしますと、その余裕財源というものは一体どこに使われたか。こういう点を調べるために、行政投資の実績ですね。こういう中で、いまお話ありましたように、国が二九%ですか、県、市町村、こういうぐあいに分けてまいりますと、ここで国のいまの構造的な仕組みというものはどうなっているか、こういうことが明らかになってくると思います。そういう点につきまして、これだけの大きな自然増収があったにもかかわらず、これがほとんど地方を通じて実は消化されておる。いわゆる補助金なりいろいろな誘導措置がここに仕組まれておるということが明らかになってくると思います。  私がこうした中で考えさせられますのは、その間における日本の政策というのは一体どういう方向に向いておっただろうか。こういう面を見てまいりますと、ちょうど国会職員であり、そしてまた衆議院の職員であり、法学博士を勉強しながらやったというまじめな長倉司郎さんという方がおられるわけですね。この方の出しておられる現代政策選書の第三巻「国土建設の政策と立法」こういう形で本当に気まめに、よくもまあこういうぐあいにまとめたものだと思いますけれども、そのときそのときにおける法律、建設行政と申しますか、こういう国土建設行政が提案される国会の提案趣旨の説明、その間で何が起こっておったか、こういうことから内容説明されて、それを体系的に非常に順序よくまとめられておるわけですね。こういうものを見ておりますと、この期間というのは、開発行政なりあるいは高度経済成長に向かって国も地方も、特に地方が動員されてまいった、こういうことが法制的な面から見ても明らかになってくるわけですね。膨大な立法が用意されておる。  私、総理に知っていただきたいと思いますのは、こういう中におきまして、そういう膨大な自然増収から出てきた予算は一体どういうぐあいにして消化されていっておっただろうか。もちろん予算に計上されておる額もありますがね。そういうのはやはり法律を見てみる。同時にもう一つは、そういうものを裏づけるための措置としての委任事務が非常にふえてまいっているということですね。自治法における別表その他も調べてまいりますと、委任事務が府県において百四十三、市町村におきまして百十七、機関委任が府県におきまして三百六十五、市町村におきまして百五十七、合計七百八十二項目。ですから、この七百八十二項目が、委任事務なり機関委任事務として国の政策なり国の方向に地方が動いていかなければならない。こういう支配関係というものを担保する立法となってまいっておる。ですから、細かいところにまでいろいろな規定が置かれているのにびっくりするわけですね。開発行政あるいは高度経済成長政策、この方向に向かって立法的にも、そしてそれを裏づける委任事務、こういう形において地方の行政投資の実績の中にそういう姿があらわれてまいっておるのではないか。  もう一つ、自治省の方の関係の資料を見てまいりますと、補助金というものは一体幾らであろうか。細目は除きまして項目以上だけでも、自治省の調査によりますと一千四百件に上っておるわけですね。昭和三十年後半から四十年の前半にかけまして、このように機関委任事務が急速にふえてまいっておる。と同時に、補助規定と申しますか、こういうものが予算上におきましても一千四百を超えておる。しかも、細目の場合におきましてもいろいろな形において補助金が出ておるわけです。それに対するいろいろな統制が加えられてきておる、こういう形で進んでまいったわけです。総理予算書の中で、そしてまた決算を通じましてのこういう動向に対しまして、どのような感じを持たれますか。
  273. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国昭和三十年代、大体三十年を境にいたしまして、高密度化社会という傾向を非常に高めたと思うのです。もちろん、その背景には経済の高度発展、こういうことがあったと思うのですが、それがいま佐野さんが御指摘になったような現象になってきておる、このように考えております。
  274. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 ですから、いかに中央統制というものが進められてまいったか。過剰と見られる中央統制、世界にない機関委任事務、こういうものが急速にふえてまいっておる。しかも、傍らには補助金行政において、一千四百からの補助金によって誘導されておる、補助金による支配が行われておったわけですね。こういうことをそのまま続けるのかどうか。今年度の予算を見てまいりましても、そういう点に対しましてはほとんど配慮がなされていない。一部の手直しはやっておりますけれども、細目の場合における整理だとかいろいろな形がとられておるわけですけれども、いま、こういうような新しい転換の時代を迎えておると言われるときに、地方に対する行財政とも、高度経済成長時と何ら変わらないままに進められようとしておるわけですね。こういう点において財政あるいは行政制度の改革を必要とするのじゃないか、この点に対して見解を、特に機関委任事務なり委任事務を一体どうしようとしておられるのか、一千四百に上る項目にわたる補助金というものをどのような形において整理して、新しい時代に即応しようと内閣としていま取り組んでおられるか、この点を……。
  275. 小川平二

    小川国務大臣 機関委任事務でございますが、国の事務でありましても、事の性質上、地域住民の身近なところで地域住民の監視のもとに執行せしめるのが適当だと思われるような事務について、都道府県知事を国の機関とみなして事務を委任しておるのが機関委任事務でございますから、そのこと自体が悪だとは私は考えておらないわけでございます。もちろん、まるまるこれを地方にゆだねてしまうのが適当だと思うような事務につきましては、逐次これを整理していくべきものだと考えております。  補助金でございますが、補助金は、国が責任を分担していわゆるシビルミニマムを確保していこう、これが補助金でございますから、これまたそれ自体悪だというわけにもまいりません。まいりませんが、非常に零細な補助金で効果の疑わしいもの、あるいは既得権化、慢性化しているような補助金あるいは同じような目的を持っておる補助金というものは逐次統合整理をしていくべきだ、あるいはいわゆるメニュー化を図っていくべきものだ、このように考えておるわけでございます。
  276. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 これは自治大臣より総理に見解を聞きたいと思うのですが、こういう大体八百に上る機関委任事務、こういうものは国が指揮監督をする、聞かなかった場合には罷免をする、こういう法律を背景としてつくられておるわけですね。自治大臣は、国と地方との利害関係があるから、こう言われますけれども、しかしながら、こういう罷免措置まで規定をしながら、機関委任事務あるいは委任事務を進めてまいる。しかも、それは、見てまいりますとほとんどが開発行政である。それが高度経済成長を支える大きな力となってきておるのだ。  地方に対する過剰な統制というものをこのままにしておいていいのかどうか。立法論から考えてまいりましても、また地方自治体の自治権、もう三十年を迎えておるわけですね。にもかかわらず、いまこういう形をもって地方自治を逆に言うと抑えておる。憲法の地方自治の本旨から考えましても、こういう法律というものは整理すべきじゃないか。単に見直してというのじゃなくて、こういう制度そのものがやはり大きな地方自治、特に民主主義の基盤だと言われる地方自治、その自治体に対しましてこのような法制が存在していること西欧諸国には見られない姿ですね。しかも開発行政から大きくいま安定成長へ変わろうとしておる。そういう中におけるところのいわゆる地方がやるべき仕事、地方として取り組まなければならない問題、非常に多くあるわけですね。ですから、そういう意味におきまして、こういう自治権、地方自治の立場から考えましても、こういう法律というものは少なくとも根本的に変えなければならぬじゃないか。残すというのじゃなくて根本的に改めるべきじゃないか、こういう点を考えるのですけれども、どうですか。
  277. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 佐野さんのおっしゃることは結局補助金に関連してくるわけですが、補助金の数が多い、こういう点に私は中央地方の行財政のあり方として一つ問題がある、そのような感じがしてならないのです。そこで、補助金の必要のないものは整理する、あるいは余り細かく分けて、そして地方の裁量を拘束しておる、そういうようなものは統合して、弾力的に地方が受けこたえができるようにするとか、そういういろいろな工夫をこらすべきものじゃないか、そのように考えます。どうも機関委任事務の組織を全廃する、こういうことになりますと、これは非常に大きな改革になりますので、ここでそういたしましょうというところまでお答えはいたしかねます。
  278. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 制度として、立法論として、機関委任事務は、ドイツの公法学者ギールケも指摘しておるトロイの悲劇だと思います。しかも、わが国の民主主義体制の中にあって、なおもこういうものを残していかなければならない、残すのじゃない、拡大しなければならない、こういう存在理由はないと思います。  と同時に、もう一つ私は総理の見解をお聞きしておきたいと思うのですけれども、いわゆる地方交付税の財政需要額——もちろんそうするために交付税そのものも動員していかなければならい、こういう機関委任事務なりあるいは特定行政に誘導する、支配をする、そのために補助金制度が裏づけとなっておるわけですから、そういうことのために本来地方財源とされるべき交付税も、そういう形において変形していっておるわけですね。こういう点もやはり総理、率直に見ていただきたいと思います。  昭和三十年から四十五年にかけまして、いわゆる測定単位、単位費用、補正係数、これが変わってきておるわけですね。ですから開発行政を受け入れる。このために単なる法律だけではなくて固有の財源である、いわゆる財政調整ないしは財源保障、こういう性格を持っておる交付税そのものもまたこれに動員していく、こういう形がとられてまいっておるわけですね。ですから、補正係数なんか特にそういう意味におきまして大きな変化を一つ示してきておると思いますね。  その結果どういうことが行われてまいったか、こういうのを見てまいりますと、たとえば地方財政全般ですが、県、町村を含めまして、二十九年から五十年を見てまいりますと、たとえば二十九年から五十年、土木費が六%から一七%へ、教育費は四九%から四七%に下がってきております。厚生、労働は一〇%から七%に低くなってきておる。五十年度だけの決算を通じて見てまりましても、たとえば、都道府県の投資的経費と産業基盤関係に対しましては四四%、生活環境関係に対しましては三%、文教関係は九%、国土保全その他が四一%、こういう形に府県の交付税の財政需要額ががらっと変わってまいったわけですね。町村を見てまいりましても、産業基盤には四一%、生活基盤には一三%、文教には一八%、その他となっておるわけです。これは五十年度の決算の分析で、特に立教大学の藤田武夫教授の分析資料です。  こう見てまいりますと、日本のこれまでの歩み方の中に、やはり先ほど申しました機関委任事務なりその他の立法政策からきて自治体を拘束をする、支配をする。特に特定行政目的に対する補助金制度を拡大することによって、いやおうなしに市町村が、県がその方向に向かわなくてはならない、こういう態度をとってきておるわけですね。それでは賄い切れない、こういうので、本来の所有財源である交付税すらも変えてきてしまったわけですね。大変な事態が実は行われてまいった。その力を支えとして高度経済成長が進められてまいった。この跡がはっきりこの数字の中から読み取れるのじゃないかと思うのです。  それで、総理は、新しい時代への転換だ、いままでのような時代じゃないのだ、低成長だ、安定成長だ、こう言われるときに、この時期こそやはり過去の反省を込めて、新しい時代に即応する行財政制度というものは一体どうあるべきか、根本的に考えなくてはならないときに来ておるのじゃないか。ですから、そういう結果といたしましてこの決算を見てまいりましても、もちろん地方団体は三千三百もある、町村だけでも二千何百かある、こういう状態なんですけれども、しかし、総括的にこういう地方団体そのものにいろいろな変化が実は起こってきておると思います。  そこで、私たちはよく言われるのですけれども、高度経済成長に乗った地域、乗ることができなかった地域、いや、知らぬうちに乗せられてしまった地域、こういう地域が決算の中からはっきり出てきておるわけですね。大都市におけるところの公害なりあるいはまた交通問題なり住宅問題、大変な姿が出てまいっておると思います。そうしてまた、高度成長に乗らなかったいわゆる農村地帯を中心にする過疎、これの中におけるところの大変な事態がいま起こってまいっておる。しかし、自然のうちに乗せられた、知らなかったけれども、立法上、財政上そうなっているからという形で進んでまいった、国から金さえ来ればいいのだという形で中央に依存する、こういう形に財政運営をやってきた、こういう姿がはっきり出てきておると思います。  と同時に、日本の国土が一変してしまう大変な変化をもたらした。人口の移動にいたしましても、歴史始まって以来の大移動が行われてまいった。そのことが地域におけるところの経済なり、地域における環境というものに大きな影響を与えてまいったことが明らかになってくるわけです。  そういうことの反省の中から、やはり新しい道を私たちは歩いてまいらなくてはならぬのじゃないか。特にそういう中からながめますと、それじゃ地域におけるところの蓄積はどうだろうか、ほとんど地域における蓄積がないわけですね。それでは生活環境は一体どうだろうか、住民福祉はどうだろうか、この交付税の中身を見てまいりましても、行政投資の項目の中身を見てまいりましても、その中からこれだけ大きな予算を使い、これだけ大きな自然増収を上げながら、しかもこのような惨たんたる国土にしてしまっておるわけですね。私は、やはり問題点はここから出発していかなくてはならぬのじゃないか、こういうことを考えるわけです。ですから、財政構造におきましても、先ほど申し上げましたように、短期的には、直接の原因としてはオイルショックやその他があるでありましょう、そうしてインフレと不況の谷間の中に、前門のトラ後門のオオカミというような形で実は苦悩したというわけです。しかしながら、やはり財政構造的にはすでにもう出てまいっておったんじゃないか、四十五年度からこの財政構造で、しかもインフレが進行していく中で、しかも前にやっていることに対するところの多くの検討が行われてまいった。ですから、財政構造的にもうそういう危機を呼び起こす要素を持っておったのだ、そういうものがすでに姿をあらわしてまいったというのが決算を通じて見る大きな変化じゃないかと思うのです。そういうことを考えてまいりましたときに、やはり総理、率直にこの現実というものを直視しなければならないと思います。ですから、こういう財政構造、制度上の構造このものが今日の財政危機をもたらしておるんだという認識のもとでひとつこうした問題に取り組んでいただきたい。  しかも前内閣が国会の集中審議、特に地方財政の問題のみの集中審議に時間を費やし、その中におけるところの総括を真剣にやってまいったという、その中に各担当大臣が真剣な表情をもって国会に約束された。総理もまた重大な問題だ、経済状態が大蔵大臣が言うように流動的だ、なじまないと言われる。けれども、大蔵大臣はまだやろうじゃないかと言っておられる。当然私もまた内閣の責任において真剣に取り組みます。このような態度を表明しておられるのに、福田内閣ができて日が浅いとはいいながら、そうした行政の責任の継続性という立場から考えましても、しかも地方自治の今日の危機を一体どうするんだ、こういう立場に立っても、やはり速やかに取り組みを始めなければならないんじゃないか。三木内閣が取り組むと言って取り組んでおったのを福田内閣においてはどうなんだ、大蔵大臣はやはり大平大蔵大臣と一緒に、流動的であり、このような時代に制度あるいは財政の改正をするということはなじまない、こういうような表現をやはり委員会の速記録を見ますと使っておるわけですね。それでは一体何のために国会が集中審議をやり、そうした問題に取り組んでまいり、内閣の公約を引き出しておったかということは全く無意味になってしまうのではないか。それに対して総理、率直な見解を述べていただきたいと思います。
  279. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 お話しのとおり、昭和三十年代からずっと国も地方も行政の仕組み、財政の規模、こういうものが複雑かつ膨大化して今日に至っておるわけです。その背景をなした高度成長、それがしかし今日になるともう許されない。そうなりますと、中央もそうですか、地方の方でもいままでのあり方というものについて、ここで反省をしてみる、そういう時期だと思うのです。私が行財政の改革というものが必要だ、こういうふうに申し上げておるのはそういうところにも大きな一つの理由を置いておるわけでありますが、ただ財政面なんかの中央、地方の仕組みをここで根本的に変えてしまうかというと、なかなかそれはそう簡単ではない問題だろうと思うのです。いま政府の方でも地方制度調査会にお願いいたしまして、この問題に取り組んでもらっておりまするが、そういうところの御意見、また国会でもいろいろ御意見がある。そういう御意見、それらを広く伺ったり、また中央と地方がいろいろ意見の交換をしたりいたしまして、どういうふうにこの事態に対処するか、特に、さしあたってもう五十三年度という年が迫ってくるわけでありまするから、それにどういうふうに取り組むか、そういうことを鋭意検討する、こういう姿勢でまいりたいと思います。
  280. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 私は、先ほど来二つのことを思い起こしておるわけですけれども、一つ昭和三十五年自治庁が自治省に昇格する法案が提出されましたときに、私は党を代表して質疑に立ったわけですが、そのときもやはり事務の再配分、いわゆる財源の再配分を中心として質問をしたわけです。そういう中におきまして、そろそろ逆な意味の方向に向かおうとしておるという危険性を考えましたので、自治省に昇格するよりももっと考えなければならぬ問題があるんではないか、こういう国、地方の事務の偏っている姿を変えなくてはならぬ、再配分しよう、とともに財源も変えようではないか、こういう意味におけるところのなにをやったわけですけれども、しかしながら、やはり行政機構、庁から省に昇格する、庁だと法律の提案もない、省になるとみずから法律の作成ができるんだというような理由を述べておられましたけれども、しかしこれから大変なことになるという意味におきまして事務と財源の再配分、こういう形において私は主張いたしましたときも、十分この問題は真剣に取り組んでいくんだ、そのためにも自治省であった方が取り組みやすいんだ、このように述べておられたわけですけれども、それから地方制度調査会は何回となくそうした意味におけるところの答申が繰り返されておると思います。繰り返す中に、先ほど申し上げました高度経済成長へと入っていってしまったんですから、逆な方向へ逆な方向へと実は進んでまいったということは非常に残念だったということが一つですね。  他の一つの面として私思い起こしますのは、いわゆる新しい憲法が公布される。と同時に新しい自治法が生まれてまいった。やはり民主主義の基盤は地方自治にある、こういう意味におきましていろいろな感激を覚えたのは、私は昭和二十年に初めて新しい制度のもとにおけるところの県議会議員に当選いたしました。それだけにやはりそうした問題は非常に多くの情熱を持って私は取り組ませていただいたと思います。そうした中で昭和二十四年、二十五年、いままでの管理的な地方制度に対しまして民主主義の自治、こういう形において問題が投げかけられて大変混迷した中でシャウプ使節団がやってまいりまして、昭和二十四年、二十五年いわゆるシャウプ勧告が出された。と同時にそれを受けまして、昭和二十六年だったと思いますが、神戸正雄教授を中心とする行政調査会が発足いたしまして、十二月にいわゆる答申がなされておる。シャウプ勧告の理念をもっと具体化して日本に適用、こういう意味におけるところの内容だったと思います。そういう中におきまして、やはりシャウプ勧告の中にありますのは、機関委任事務というのは日本は昔からあるんだけれども、こういうものは速やかになくしていかなくちゃいけないという点を強く——地方自治の発展を阻害するのは機関委任事務だ、こういうことも言っておられるわけですね。中央の統制が過剰であることを戒めておられる言葉もずいぶん出てまいります。だから市町村を最優先に置くべきである、こういう点も指摘されておるわけですね。そういう中におけるところの地方自治のこれからあるべき姿というものをずいぶん具体的に示しておるわけですね。私は今日この基本的理念に立ち返ることが一番大事な課題ではなかろうか、かように考えるのですけれども、総理、御意見はどうですか。
  281. 小川平二

    小川国務大臣 シャウプ勧告、仰せのとおりとりわけ市町村に重点を置きました。相当徹底した地方分権の考え方を打ち出しておるわけでございます。ただいまの御論旨には私も全面的に賛成でございます。国、地方それぞれ自分の役割りをはっきりと認識して、協力して福祉の増進に努めていくべきものであることは当然と存じます。現行の法律で定めておりまする国、地方の事務分担にはなお問題がいろいろ残っております。そこで、地方自治の場で解決することが適当だと信じまするものは、そのような事務はこれから先も努めてこれを地方に委譲していかなければならない、そういう方針で臨んでまいりたいと思います。  近年の立法例では公害関係の法律等は、たとえば基準は国が定める、そうしてお金の世話をする。地方公共団体はその基準を実態に合わせてさらに強化するというようなことをやる傍ら事務の実施に当たる。国、地方の役割りをきわめて明確に区別した仕組みになっておるわけでございます。これは非常に結構な例だと思っておりますが、そういう気持ちで今後努力してまいりたいと思っております。
  282. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 私は自治大臣に聞くよりも総理にお尋ねしているわけです。そういう意味においてやはりシャウプ勧告の理念に帰るということ。非常に管理主義であり中央集権的だった日本の地方制度を解体して、新しい民主主義をどういうような形に地方自治の中で生かしていくか、こういう問題点から指摘した勧告だったと思います。このことが、いまのような事態を迎えますと、私たちに大きな一つの基本理念として、その方向を歩まなかったことに対する反省があっていいじゃないかと思います。と同時に、そうであったといたしましても、やはりシャウプ勧告の時代から言いますと大変な違いが出てまいってきておる、大きな変化も行われておる、そういう中におきましての今日の高度経済成長の後始末というものを、暮らしの場である地域と仕事の場である職場、これを包んでおる自治体、これに求められる課題は非常に多いと思います。そういう意味において言えば、シャウプ勧告の理念を中心として、そうした現実的な課題に取り組んでいく。そのためには事務あるいはまた財源の再配分はもちろん必要なんでありますけれども、より以上に地方分権という立場に立ってそういう中央集権的な統制の仕組み、制度というものを改正をしていく、このことが一番大切なときを迎えておると思うのですけれども、総理どうですか。
  283. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 考え方としてはそういうことでしょうと思います。つまり、地域社会に密着したそういう仕事は地方に任して中央がなるべくこれに干渉しない、こういうような仕組み、それが望ましいのではあるまいか、そういうふうに思います。そういうことを実現するのにどういうふうにやっていきますか。これはしかし一挙にというわけにはなかなかまいらないと思いますが、少し粘り強く一つ一つ問題を片づけていく、こういうことじゃないかと思います。
  284. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 この問題に余り時間を費やし過ぎましたけれども、私は、根本的に財政の制度の構造そのものにメスを入れなくちゃならない。やはり日本の社会、経済のメカニズムというもの、システムというものはそういう形になってきておると思います。国中心、企業優先、こういう形の中で地方分権という制度の方向をつくり出していく、このことが一番いま大切じゃないかと思うのです。  と同時に、一つ総理大臣にお伺いしておきたいのは、この間の五十二年度の交付税の問題なんですけれども、これは地方行政委員会で真剣に論議を続けておられました。私も読ましていただいておるのですが、総理から直接私お聞きしたいと思うのです。  交付税法の第六条の三の第二項、財源不足で引き続き著しく異なる場合におきまして、税率並びに制度の改正をやるべきだ、こういう規定を置いておる。これに対しまして各大臣の答弁を聞いておりましても、法律違反ではないんだ、こういうことを言われるわけですが、その点に対しまして、私これは非常に暗い影を与えておると思います。それだけに、総理は、法律違反だけれどもやむを得なかったのか、法律違反でないと思われるのか、こういう点を明確に答えていただきたいと思うのです。
  285. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 地方交付税法におきましてはいま御指摘のような規定がありまして、これはとりようによりましては交付税の税率改正を含め根本的なといいますか、長期的な制度改正をすべきものであるというようなとらえ方もできるように思いますが、また同時にこういうような非常に流動的な時期に一時的な制度改正、それをやってこれが悪いのかというと、それをあえて排斥しておる、こういうようなものでもない、そのように思いますので、いまお尋ねがありましたが、五十二年度において政府がとった措置は違法か違法でないか、こういうことでありまするが、これは違法であるとは考えておりません。
  286. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 政府みずからが法律に違反する、これは重大な問題にもなると思いますけれども、しかしながら、総理、考えてまいりますと今度の四千二百二十五億円、これを資金運用部資金から交付税特別会計が借り入れる、それに対しまして国が二年据え置き、十年間にわたって元利返済をする。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕 ですから返済の要らない借金だ、こういう感じもいたすわけですけれども、このことといわゆる地方交付税に求めていることとどう一致するのであろうかということに対しまして、たとえば速記録を見てみますと四千二百二十五億円に九百五十億円の臨時特例交付金、合わせますと大体三・六%ぐらいになるということをしきりに主張しておられる。しかしながらそれも法定化する、ですから制度改正にもつながるのだ、こう言っておられるのですけれども、総理、一体制度の改正という場合にこの一会計年度しかもたないのだ、次の会計年度に行きましてはそれが継続されていかない、こういう制度の改正があるのだろうか、一会計年度だけが改正されるということになるというのもおかしいと思わないですか、一年間だけは制度の改正に通ずるのだ、そういう点はどうお考えになりますか。
  287. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 地方交付税法には交付税率を変えろというふうには書いてないのです。交付税率の改正を含めて制度改正を検討すべし、こういうふうになっておる。これは申し上げるまでもないところでございますが、こういう客観情勢が流動的なときにそれが一年限りの措置である、こういたしましても、交付税法に言われるところの制度改正といいますか、そういうことの趣旨に反しておる、こういうふうには思いません。佐野さんはどうも違法だ違法だ、こうおっしゃいますけれども、このような客観情勢の中で精いっぱいの措置をしたわけでありまして、これが違法であるというふうには考えておらぬわけであります。
  288. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 制度改正ではない、しかしながら法は財政制度の改正または率という規定をやっておるわけです。ですから地方行政委員会なんかの質疑におきましては、制度改正でもある、というのは交付税法の附則の中に法文化する、だからこれは制度改正につながるのだ、会計年度に継続しないものを制度の改正と言えるかどうかという点が一点。  第二点は率の改正にも通じるじゃないか、事実上三・六%ですか、これに近いものが措置をされておる。しかしながら率の改正にいたしましても、本会計年度だけがそれに相応する措置がとられたとしても、翌会計年度にはこれは継続していかないわけです。そういうのを率の改正と言えるかどうか。
  289. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 五十二年度予算では約二兆円の財源不足が地方自治団体にあったわけです。そしてその半分を実質的には交付税で賄う、それから半分は起債によってこれを充当するという考え方をとったわけであります。税率は確かに変えておりませんけれども、地方交付税法にいわれる措置をとったものである、こう理解してしょうがないのじゃあるまいか。それが二年度以上にまたがらない単年度の措置である、こういうことを御批判されておるようですが、単年度の措置といえどもこれは地方交付税法にのっとっての措置である、こういう理解でございます。
  290. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 私はこだわるようですけれども、制度の改正でもない、率の改正でもない、法が認めておることを、実はこういう数字を合わせる、つじつま合わせのような形では、地方自治団体の皆さん、地域住民の皆さん、納得できないわけですね。まあ説明もできないでしょう。  と同時に、もう一つは、大蔵大臣がしきりにいま述べているのは、総理も少し触れておりますけれども、非常に日本経済が流動的であり困難な時代だ、だから好まないのだ、こういう点を述べておられるのですが、この点につきましても総理、やはりはっきりした見解を示していただきたいと思うのです。  経済が、国の財政が非常に困難な時代だ、そういうときですから制度の改正にはなじまないんだ、率の引き上げにもなじまないんだ、こう言っておられるわけですね。しかしながら、日本経済が困難な状態にある、国庫財政も大変だ、補正予算を抜きにした当初予算は二九・七、いわゆる三割です。それまでの公債を発行しなくちゃならない。こういうときに、いわゆる地方交付税の税率を変えるというのは大変だと言われるわけなんですけれども、しかし、私はやはりここに問題があると思いますのは、この九百五十億円の臨時特例交付金というものと四千二百二十五億円の返済の要らない借金、この二つあるわけですけれども、四千二百二十五億円を資金運用部資金から実は借り入れる。本来はこれが、しかもこれを返済の要らないものとして一般会計で持っていくわけですから、公債の発行と変わらないと思うのですね。そういたしますと、二九・七%にこの四千二百二十五億円を足しますと三一・四%になるわけです。いわゆる特別会計におけるところの公債を発行するのと変わらない一つのやり方をとっておられるわけですね。困難であればあるほど、そのことをひとつ明らかにして、これだけ金が要るんだ、どうするんだ、ここに行政に携わる者も国民も大変な時代であるということが明らかになる。どうするかという問題がここから生まれてくると思います。国債の方は二九・七%なんだ。しかしながら実際は三一・四%の公債を発行しなくちゃならないんだ、こういうことを明らかにすることこそが、私はわかりやすい政治につながるんじゃないか。ここにもやはりそういう意味においてどうも矛盾しておるという感じを受けるのですが、総理どうですか。
  291. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま交付税の五十二年度の処置、これを加味すると公債の発行額が実質的にふえた、こういうようなお話ですが、そういう見方もあると思いますが、しかしだからといって今度五十二年度で交付税の税率改正はしない、しかし交付税の増額をした、この一連の措置が違法である、こういうような見解は私どもは持っておりませんです。
  292. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 どうも国民の立場に立って地方自治体の皆さんにとりましても、これは一体何の金だろうか、返済の要らない借金だ、公債とどう違うんだ、こういう考え方になってくると思います。いわゆる政府の資金運用部資金、財投資金に当たるべきものを特別会計が借り出すわけでしょう。それに対しまして国は、十年間にわたって元本、利子ともに、一般会計から返済していくわけですね。そうすれば、もう公債とちっとも変わらないんじゃないですか。ですから率、制度の改正、そしてまたとられている措置、しかもそれが経済が大変な時代だと言われるなら、大変な時代だということを明らかにすることを恐れて、なぜ法律違反の疑いのある措置をとられるかということが、私納得できないわけです。総理どうですか。
  293. 小川平二

    小川国務大臣 実はのみ込みが悪くて、御論旨が十分理解いたしかねておりますが、政府は別に国債以外に借金はございませんと言っておるわけじゃなかろうと存じますので、何かトリックを弄して国民を欺いておるかのような、私の誤解であれば失礼でございますが、御発言であったと思いますけれども、そういうことではないと思います。
  294. 坊秀男

    坊国務大臣 四千二百二十五億円ですか、これは公債だ、こういうふうにおっしゃいますけれども、これは公債とは違います。その点につきましては、ひとつ主計局の専門家から説明をさせますから……。
  295. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 地方行政委員会における交付税法改正に関する質疑は、全部読ましていただいておるからよくわかるんですよ。そのわかる私たちでさえわからなくなってくるんですから、国民の方はなおさらわからないんじゃないかという点を指摘して、これは水かけ論になりますし、また今後の問題としてそういう態度がいいかどうかという点に対して、一応問題を提起したわけです。そこをはっきりさせていただきたかった。  それで時間もなんですけれども、いわゆる補助金制度と超過負担、しかもこの超過負担の問題をながめてみましても、いまここに「地方財務」という本があるんですけれども、この中に超過負担のワーストテン、こういうのがあるわけですね。主たる額と率、これを見てまいりますと、先ほど申し上げましたような産業基盤関係にはほとんど超過負担がない。しかもテンの中に入っているのは、ほとんどが生活関連の場合が多いわけですね。  このことにつきまして、一つ具体的なことで総理にも頭に置いていただきたいと思いますのは、たとえば公立学校施設ですね。この場合を一つとってまいりますと、これは町の広報で出しておりましたので、私資料をいただいてまいったんですが、ここは新住宅市街地開発法に基づいて実は団地形成をやっている、こういうところなんですけれども、第一小学校ができましていま第二期の小学校だ。次、三つの小学校を必要としておるわけですけれども、その第二期のしかも前半ですね。人口急増町村でありますけれども、順次ふえてくるという、二百四十ヘクタールで、六千戸、二万四千の住宅を建設をしておるというわけですね。こういう小学校の全級十二学級の場合を見てまいりますと、こういう問題が出てくるわけですね。県がこれを立てかえ払い制度でやっておるわけですね。これを見てまいりますと、校舎は四千百九十四平米、これだけの平米を必要とするのは県と市とにおいて一致した。屋内運動場は一千三百十八平米、これが必要だ。しかし実際はどうなっているかといいますと、文部省の補助対象から見てまいりますと、いわゆる対象面積は二千五百七十八平米だ。ですから校舎に対しまして一六二%、六二%の差が出てくるわけです。それから体育館はどうか。体育館に対しましては七百二十五平米しか面積は補助対象にしない、こうなってまいりますね。そうすると、一千三百十八平米との差を見てまいりますと一八一%、これだけが振り落とされるという形になってくるわけですね。ですから、これを見てまいりましても、急増町村でありますので、そうした意味において三分の二の補助だ。これに対して二億一千五百三十二万五千円ということになっておるわけです。詳細、余り細かいことはどうかと思うのですけれども、校舎は一億七千九百万円、屋内体操場は三千六百三十八万円、合わせまして二億一千五百万円、これかけが補助の対象になってくるわけです。  それから起債の場合を見てまいりますと一億一千九百三十万円が補助対象になってくるわけですね。これに対しまして、起債の場合といえどもやはり補助の裏負担、九五%に今度上げておりますが、裏負担分に対しましてだけ起債を認めるということになってくるわけですね。すると、実質的において県が三億五千三百万円を立てかえなければならない。そして六億八千七百六十四万円で実は建設したというのですね。ここにもずいぶん食い違いが出てくるわけです。これに対しまして、県が立てかえている分に対しましては契約書が交わされているわけです。その契約書を読んでみますと、二年間は据え置く、据え置き期間は利子は取る、と同時に、あと十年でこれを返還する、七分九厘の利子だ、こうなっておりますね。そういたしますと、結局これらの利子の立てかえその他を見てまいりますと九億五千万円になるわけです。国からは校舎関係なり屋内体操場で二億一千五百万円。起債が一億一千九百三十万円だということになってまいりますと、九億五千万円なければ学校が建たない。しかし、それに対しまして補助起債が三億三千四百万円だということが超過負担として大きく出てくるわけです。ですから、団地を造成する、しかも人口が、児童が集中してくる、ですから、急増地帯の指定を受ける、こういうことはわかるのですけれども、そういう中におきましてこういうような大きな超過負担が出てくるわけです。そこと同じ団地の中にとられる都市計画街路なりその他は実額精算でやってくる。ところが、学校関係、保育所関係になってまいりますと、標準補助基準がある。その標準補助基準というのは、最も標準的な団体がしかも合理的にやった場合に適用されるという、これは国の方のなんですけれども、これに基づきますと、このような形における超過負担が出てくるわけです。大変なことだと思います。小学校一つを建てるにいたしましても、このような大きな負担をしなければ実は進んでいかないということに対しまして、ひとつ超過負担の問題として考えてみなければならない問題を含んでおるのではないかという点を指摘しておきたいと思うのです。ですから、これもワーストテンの中に入っておるわけです。  それから同じくワーストテンの中に入っておる警察関係の場合を見ましても、一番法を守らなければならない、そういう地域住民と結びついておる警察施設なり警察行政の中においてもまだ大きな超過負担がある、このことがワーストテンの中に挙がっておるわけです。こういう意味において自治省の方におきましても調査しておられると思いますので、簡単にひとつ説明願いたいと思います。
  296. 山本悟

    ○山本政府委員 警察関係の超過負担の問題でございますが、昭和五十一年度の補助金等の実態調査の結果に基づきまして、昭和五十二年度におきましては補助基準面積の拡大あるいは補助対象範囲の拡大あるいは単価の引き上げ等が行われたわけでございまして、また、警察署施設の標準費用の作成につきましても、五十一年度の補助金等の実態調査の結果に基づきまして、現在目下、関係省庁と連絡をとりつつ鋭意作業をいたしている段階でございます。また、警察行政費の点につきましては、各省庁合同での実態調査というのはいたしておりませんが、いろいろと私どもとしても情報も得ているわけでございますので、そういうものがなくなりますように、それぞれ申し入れをいたしまして努力をいたしているところでございます。
  297. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 もっと具体的に数字的には出されておったと思いますが、代用監獄の問題もあるでありましょうし、こういう警察施設なり警察行政の中で、しかも警察法第三十七条において決められておる、しかし、実際に超過負担として地方財政に大きな問題を投げかけておるということに、時間があれば詳しく中に入りたかったのですが、時間がありませんので、総理、警察施設の中にもそういう問題が含まれておるということですね。  同時に、保健所の場合、知事会あたりからずいぶん指摘しておるのですけれども、機関委任事務でありますので、たとえば補助定員にいたしましても、国の総定員削減、こういうのがやはり出てくるわけです。実際において、地域において保健あるいは医療予防、こういういろいろな意味におきましてのなにが多くなってきておる。にもかかわらず、定員削減を一律にやってまいりますので、ここに補助職員の問題、実際の定数と実人員との間に大きな開きが出てまいっておる。しかし、これは国の職員として認めないわけですから補助が打ち切られるわけです。こういう点に対して知事会の方からも具体的な数字を挙げてきておると思いますが、たとえば五十一年度におきましては補助定員数が一万五千四百五十八人だ。実人員は一万八千八百八十三名だ。こういう中におきまして三千四百二十五人が実は定数から省かれて地方自治体がこれを引き受けていかなくてはならない。そうしなければ保健所の機能を発揮することができない。こういう中において国の出先機関、機関委任事務で仕事は委任されておりますけれども、機関委任事務というのは国が計画を発想するわけです。そうして地方に実施に移させるという場合にこういう問題が出てくるわけです。先ほど総理も公害行政の問題を言われましたけれども、たとえば公害行政にいたしましても、地方自治体が条例その他をもってやってまいった。それで生命なり健康に、そうしてまた生活環境ということで公害国会が開かれて、法律ができてまいった。できてまいりますと、途端にこれが機関委任事務になってしまう。それで監督権、罷免権は持っておる。その中におけるところの地方自治体にある程度の基準を守らせる仕事をやらせるわけですね。そうなってまいりますと、それに対する定員なり測量器具なりいろいろな問題が、実際国から出てこない、責任だけは地方に実は出てまいる、こういうことの中から、やはり公害行政の中におきましても大きな超過負担が出てくるわけです。ですから、機関委任事務なりこういう特定行政の補助、こういう中において大変なやはり超過負担ができてまいっておることをひとつ総理も認識しておいていただきたいと思います。  あるいはまた下水道の問題も、総理は生活環境に非常に力を注いでおるのだ、こういう点を言っておられるわけですが、これも予算面その他から見ますといろいろな問題が実は出てきておるわけですね。私が思いますのは、たとえばビクトル・ユーゴーが「レ・ミゼラブル」を出したのは一八六二年、約百十年前だと思いますが、このときにはすでに第二の道路としての下水道、こういうものが描かれておるわけですね。それに対しまして日本はやっと第四次計画がいま発足する。二〇%にしかすぎない、これを四〇%まで五カ年で持っていく、こういう体制を進めておられるわけなんですけれども、この場合におきましても、第四次五カ年計画は七兆五千億、四千億円が予備費ですから七兆一千億円、五十年、五十一年度の予算の配分その他を見てまいりますと、あとの三年間で毎年一兆八千億円ずつの金を使わなければどうにもならないという、こういうことが一つ出てきておるのと、それから予算の中身を見てまいりますと、国費が非常に多くなってきておる、地方負担よりも国費が多い、こういう変則なものがありますので、調べてまいりますと、特別起債と申しますか、五カ年分割の起債だ、そして国がこれを一般会計から支払っていくという形の補助金の分割という制度がとられております関係上、その分割が出てくるということで、国費が多くなって地方費の伸びが少ないという変則的な状況が一つ出てきておるのです。  こういう問題はさておいても、あるいはまた見てまいりますと、この場合におきましても、建設省の場合としては珍しいやり方だろうとも思うのですけれども、たとえば東京都における町村下水道事業財源の内訳を見てまいりますと、一つ出てまいりますのは、ここにもやはり補助対象事業というのが出てくるわけです。この場合におきまして、改正になりましたけれども、七五%、二五%は単独事業だ、こう組み合わせができているわけです。その場合において単独事業がある。しかし、補助対象事業は予算に縛られておる。たとえば先ほど申しました七兆一千億円の配分のとおりいっていないわけです。逆に国の方としては五カ年の分割支払いが多くなってくるということで、予算総額が縛られてまいる。このためにどうしても地方自治体としては、予算に組まれておる、採択される事業対象だけを選ぶか、事業はずっとおくれてしまうわけですね。しかしながら、こういう計画に従ってやっていこうとするのと、いや、そうでない、どうしても下水道事業は急がなければならない、総理もそう言っているのだからということで単独でその事業を進めてまいるということになってまいりますと、これは補助対象にならなくなってくるわけですね。それらの分だけが今度は地方負担がふえてまいる。本来は補助対象になるべき条件にあるものが、実は早くやるために補助対象にならない。だから、これに対する総事業費と補助対象率を見てまいると三四・五%だ、三四・五%を地方が——東京都の町村ですがね、市町村が負担をしなくちゃならない。数字的に見てもどのみち都が持ち出さなければならない。こういう形がとられているわけだ。それらの問題を考えても、こういう中におきましてもやはり超過負担として大きく姿をあらわしてくるわけだ。総理が、下水道事業をやるのだ、七兆一千億円だぞと言われても、末端の町村に参りますとこういうような事態が発生してくるわけです。  同時に、この下水の場合にも、下水の汚泥の問題が非常に大きな問題になっている。西村行政管理庁長官もこの間勧告を出しておられますけれども、この汚泥処理の場合にいたしましても、農地還元ということがしきりに言われておるわけです。しかし、農地還元の問題にも大きな問題があるのではないか。肥料取締法によりましては、普通肥料は化学肥料だ、特殊肥料というのは土壌改良その他の肥料だ。ですから、普通肥料につきましては、製品の分析なり流通に対しましては相当チェックがされておる。ところが特殊肥料になってまいりますと、届け出だけで済んでくるわけですね。しかし、汚泥の中に含まれている状態は一体どういう状態であろうか。いま海洋投棄も困難になってまいった。埋め立ても困難になってまいった。そういう中で肥料還元というものが考えられるのですけれども、この肥料還元の中に非常に大きな問題が含まれておるし、そういう問題の処理に対して非常に苦しんでおるのが現状ではないか。しかも、研究あるいはまたデータ、こういうものもほとんどないわけですね。そこで、東京都なんかにおける処理場から調べてみますと、大変な重金属が入ってきておる。この重金属の問題につきましても、イタイイタイ病による米からくるところのあの恐ろしい病気、あるいは、四十八年におけるところの国会が挙げて魚介類の水銀対策に追われなくてはならなかった、こういう水銀の問題にいたしましても、そういうものがやはり汚泥の中に含まれてきておるわけですね。それを肥料に使うというふうになってまいりますと一体どうなのだろうか。こういう分析なり研究、そういうデータがほとんどない中で実は進められておる。ここらにやっぱり大きな問題を一つ含んでいるのではないかという点だけを指摘しておきたいと思う。  地方債の問題につきましても少し触れさせていただきたいと思ったのですけれども、時間もありません、あと十分だそうでありますので、地方債に対しまして簡単に、総理、どうですか。三十年間も「当分の間」、こういうことにつきましても、シャウプ勧告は、少なくともこうした地方自治体の固有の財源であり、しかも中央の統制は排すべきである、そして自主的に発行できる、と同時にそれは昭和二十五年度、遅くてもその翌年からやるべきじゃないか、こういう勧告を実は出しておったわけですね。ところが、その勧告と違った方向にいってしまったまま三十年間も続いておるわけです。やっぱり起債の固有財源としてそういう許可条件というものを変えなくてはならぬじゃないか、こういう点に対しましても先回の国会でも述べたわけなんですけれども、それは英断をもって、地方におけるところの固有財源だ、ですから、公債依存比率なりあるいは公債費の比率なり、そういう一定の限度を設けて、単独事業その他をなにをすべきじゃないか、包括的ないわゆる起債枠でいいのじゃないか、こういう点に対しましてどうですか、一言だけ。
  298. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 起債の中央統制というか、中央管理といいますか、その問題についてでありますが、国家の公的、私的資金を地方自治団体がその好み好みによりまして分け取るというようなことになりますと、これは相当社会、国家の秩序に対しまして大きな悪い影響があるのじゃないか。そこで、中央である程度の見当をつけまして、そして個々の自治団体への配分、これをにらんでおるというのが現状でございます。そのにらみ方、その手続等におきまして煩瑣な点がありますれば、それは改善をするということはもういたしたいとは思いますが、考え方として野放しというようなことになりますと、これはちょっと大きな問題を引き起こしてくるのじゃないか、そのような感触でございます。
  299. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 その問題は、地方税制の改革とも絡めまして、重大な問題点は次の機会にまたいろいろと意見を述べさせていただきたいと思います。  時間もありませんので、最後に、質問通告はしておいたのですけれども、環境庁と国土庁ですね。というのは、国土利用計画法、それにもう一つ、環境庁におきましては瀬戸内海環境保全臨時措置法、この二つは議員立法として実は成立した。その二つの法律に対しまして私も実は関与いたしておりましたので、取りまとめをやってまいりました者の一人としてお尋ねしておきたいと思うのです。  この国土利用計画法の中でも一番心配いたしたのは、いわゆる土地の騰貴をいかにして抑えるか、地価をどうしたら安定させられるか、土地政策という観点からいろいろ論議を積み重ねて、その中で一番問題となってまいりましたのが日本の所有権の問題だと思います。明治の最初のときにおけるところの賃貸借も物権である、こういう形できたのがひっくり返されまして、絶対所有権という性格が残されておる。ですから、日本の民法なんというのはローマに通ずる、ローマ法がそのまま生き写しになっている、そこに問題が多くあることを知ったわけなんですけれども、それは別といたしまして、どういう規制をやろうといたしましても、一番大切になってくるのは土地利用計画だ。土地利用計画がなければ、遊休地である、未利用地であるという判定もできないし、それから都市的なあるいは地方的ないろいろな施設を配置する、そのために土地利用区分というのは明確に住民の合意のもとにつくられなければならない。そのためには、案をつくる前に町村民の意見を反映させる措置をとらなければならぬという規定を置いて、町村計画が中心だ。その町村計画を中心としながら国の計画なり県計画なりにフィードバックしていく、こういう仕組みを実はとってまいったわけですね。そうしなければ、いろいろなことが提案されましても、実際において土地利用計画ができていない中におきまして規制するというのは非常に困難だ。こういうことの中から一つの大きな柱を立てたわけですけれども、その町村計画の作成はどういう状況になっているかということを一言。
  300. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 お答えいたします。  佐野さん御案内のように、国土利用計画の全国計画につきましては、昨年の五月に閣議決定されたわけでございまして、その後、都道府県計画は全国計画を基礎にいたしまして、市町村長の意向も聞きながら作業を進めたわけでございまして、その策定状況は、五十二年の末においては三十八都道府県が策定完了の予定でございます。それから、五十二年度末には全都道府県の計画が完了する予定になっておりますので、市町村計画は五十二年度以降の早い機会にこれの策定作業を終えたいということで指導しているわけでございます。  そこで、この市町村計画が土地政策の面で一番重要であるということは先生御指摘のとおりでございますから、やはり全国計画あるいは市町村計画あるいは都道府県計画が策定された後にいわゆる土地利用基本計画というものをつくりまして、この二本を土地政策の柱としているわけでございますから、御指摘のように、市町村計画はやはりその地域の実態を踏まえた具体的な計画でございますから、そういう意味から言いますと非常に重要な計画なのでございます。ですから、市町村計画というものは本当に重要なものであるという先生の御指摘のとおり私たちは考えておりまして、そういう意味では市町村計画というものはできるだけ早い機会に策定したい、こういうように考えております。
  301. 田中正巳

    田中委員長 佐野君、時間でございますから簡潔にお願いします。
  302. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 もう時間だけれども、質問をもう少しだけ。  国土利用計画法の中における町村計画の作成の状況を簡単にお聞きしたかったのですけれども、環境庁長官にも質問の通告をいたしておりますので、長官、これは議員立法としてできまして、これ以上悪化しては困る、暫定措置としてあの法律をつくったわけで、三年以内に政府は基本計画を立てなさい、こういうことを明示しているわけですね。それができ得ないというので実は去年二年間の延長をやったわけですけれども、一体明年度におきまして政府としての基本計画が、新しい法律がつくれる準備ができておるかどうかという点だけ一言。
  303. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 次の通常国会に跡継ぎ法を提出すべくいま準備をしております。ただ、臨時措置法をただ恒久化するだけではなしに、新味を加えまして、たとえば、排水の総量規制あるいは規制技術がすでに開発されております燐の制限などを入れまして、他の閉鎖性水域にも範になるような恒久法をつくるつもりでおります。
  304. 田中正巳

    田中委員長 これにて佐野君の質疑は終了いたしました。  次に、多賀谷真稔君。
  305. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、最も基本的人権であります同和行政についてお尋ねいたしたいと思います。  「いわゆる同和問題とは、日本社会の歴史的発展の過程において形成された身分階層構造に基づく差別により、日本国民の一部の集団が経済的・社会的・文化的に低位の状態におかれ、現代社会においても、なおいちじるしく基本的人権を侵害され、とくに、近代社会の原理として何人にも保障されている市民的権利と自由を完全に保障されていないという、もっとも深刻にして重大な社会問題である。」この言葉は、昭和四十年八月十一日の同和対策審議会の答申の冒頭の「同和問題の認識」というところで述べられておるわけです。  この質問は本来ならば八木一男さんがおやりになることになるだろうと思っておりましたけれども、昨年の九月にお亡くなりになり、ここにある「怒濤 八木一男の闘いの記録」という一冊の書物に彼の闘争の記録がまとめられております。これに同和対策事業特別措置法の制定の経過をずっと述べられておるわけであります。当時大蔵大臣でありました福田総理も十分記憶のあるところであろうと思います。  そこで私は、昭和五十三年の三月三十一日に失効されるという同和対策事業特別措置法の延長についてお尋ねをいたしたい、かように思います。  まず第一に、法発足以来今日まで同和対策事業の施行がどの程度に進んでおるのか。すなわち、昭和五十年度の調査において一兆二千億という事業費を政府は出しております。その後どれだけの進捗になっておるのか、そうして、五十三年度予算に予定をしておりましたこの事業を遂行するにはどのぐらいの予算が必要であるのか、これをまずお聞かせ願いたいと思います。
  306. 藤田正明

    藤田国務大臣 ただいまの御質問にお答えいたします。  昭和五十年度に政府の方は、同和対策関係の各省からそれぞれ資料を集めまして、一兆二千八十二億というものを今後の事業量として計算をいたしました。そのうちの国費分は七千六百四十四億であります。これを五十年度から五十二年度実施分、この三カ年分を差し引きますと、事業費として七千三百六億でありますし、うちの国費分は四千八百十三億であります。  御承知のように、五十三年度の方はまだ概算要求をしておる段階でございますので、いま確かなことは申し上げられませんけれども、恐らく五十三年度が終わりまして、特別措置法が失効する、切れる段階におきましては、事業費といたしましては若干五千億を超えると思いますし、そのうちの国費分といたしましては三千億を超える、かように思っております。
  307. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 総理、この同和問題というのをどういうように総理自身は認識をされておるのか。私どもは、たとえば失対事業にこの非解放部落の人々が多い、いろいろ調査をしております。そういたしますと、失対事業の答申でも、初めてついた職業が緊急失対事業であったという報告をかつて見たこともある。ですから、本来ならば失業した人が入るべき緊急失対が初めてついた職業であったという、これは政府に対する報告書にもある。こういうようにちょっと想像できないような面が出てきておる。そして、今日までかなり制度として進んできたわけですけれども、まだまだ多くの問題を残しておる。後から申し上げますが、やはり「地名総鑑」というような本が出て、それが売れておるという、企業が求めておるという状態ですね。こういう点をどういうようにお考えであるのか、まず総理のこの問題に対する認識を承りたい。
  308. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 同じ日本人の社会の中で、どうも同和問題というようなことを言わなければ済まぬというような状態を一刻も早く私は解消すべきである、そのように考えます。佐藤内閣、あれは十年近く前になりますが、とにかく同和対策事業特別措置法ですか、これが成立した。そのとき、御指摘のように私は大蔵大臣だったわけです。感慨深く当時を思い起こしますが、もう本当にこういうことを皆さんと相協力いたしまして、一刻も早く解消しなければならぬ、このように考えます。
  309. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この同和事業が、国の予算が十分でないために地方自治体を圧迫しているという問題がかなりあるわけです。ですから、かなりの部分が単独事業に転嫁をされておる。それから、児童館など用地の補助がないもの、あるいは浴場であるとか隣保館など建物の超過負担を生ずるもの、あるいは墓地新設とか拡張など対象外のもの、こういうことで自治体は同和債というのを発行させてもらっておるわけですが、これが昭和五十年度において、同和対策事業の事業債の現在高が二千八十三億七千九百万、これだけあります。そのうちに十条指定といいまして、元利を支払ってくれるものが四百五十五億一千五百万円、二一・八%しか十条の規定に入らないわけであります。そこで、元利を見ますと、結局同和対策事業の元利償還は、市町村どのくらいやっておるかといいますと、これは百三十一億ぐらいやっておる。しかし、その中で十条指定のものが二十五億程度である。まさに十条指定のものは二一・八%で、それから元利償還は一九・二三%になっておる。でありますから、このことば、私は、自治体としてはなかなか困難な財政の中にある、こういうように考えざるを得ないわけであります。でありますから、八木さんを初めとして各議員が、ぜひひとつ児童館やその他の用地の補助を出しなさいとか、あるいはこれは対象にしなさいとか、何度も、この記録を見ますと国会で質問をし、答弁を求めておるわけです。まあ少しずつは前進をしてきたのでありますけれども、いま申し上げますように、十条指定に元利償還の費用を見てくれるということになっておるけれども、それが一九%しか見られていない。これは自治省から求めた資料でありますから間違いないと思う。一体これを総理はどういうようにお考えであるのか。
  310. 小川平二

    小川国務大臣 いまお述べになったような実態であるわけでございますが、この問題は、国庫補助負担事業の割合がだんだん上昇してきてはおりますが、まだきわめて低いというところに根本の原因があると存じます。そのために国庫補助負担事業に関連をして継ぎ足し実施が行われる、あるいは単独事業が実施される、これが地方公共団体の財政を大きく圧迫しておるというのが実態でございます。  そこで、自治省といたしましては、あらゆる機会に同和対策事業について、全事業を国庫補助負担事業とするように予算措置の飛躍的な拡大を図るとともに、国庫補助負担基準について大幅な改善をしてほしい、これはことしの七月十三日に局長名で関係省へ出しました申し入れ文書でございます。あらゆる機会にこういう努力をいたしておるわけであります。根本的には、この国庫補助負担事業の範囲を拡大してもらうように、各省前向きに努力をしてもらわなければならない、こう考えておるところであります。
  311. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 総理、同和対策事業特別措置法が出るときに、八木さんが福田大蔵大臣にずいぶん質問していますよ。もうできるだけやります。大丈夫です。単価も大丈夫ですと全部答えている。しかし、現実にはそういうような遅々とした状態である。そして自治体が一九%しかせっかく書いてある十条指定の枠に入らぬということは、いま非常に残念に思うのです。これはぜひひとつ進めてもらいたい。一言御答弁願いたい。
  312. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、実態をよく承知いたしておりませんので、よく検討いたします。
  313. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それから、もう時間的に一年しか余裕がないわけですね。そうすると、いまおっしゃいましたように、一応政府の調査対象でもまだ五千億、その後単価も上がっておりますし、まだまだ漏れが相当あると思いますが、これはどうしても法律を延長せざるを得ないと思うのですけれども、一体総務長官はどういうようにお考えですか。
  314. 藤田正明

    藤田国務大臣 九年前、昭和四十三年でございますか、四党協議会というものがつくられまして、自、社、公、民だったと思いますが、この四党で立法措置をよく検討いただきまして、意見の調整の上で政府提案という形でこの特別措置は出たわけでございます。そういう経緯もございますので、まだ時間的余裕もございますし、四党は五党でも結構でございますから、ひとつ各政党間でお話し合いの上でやはり調整をして、そのことをお願いをいたしたい、かようにいま思っておる次第でございまして、いろいろと各政党の方から話もございますから、私の方はそのように一様にお答えを申し上げておるような現在でございます。
  315. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いわば延長、しかも内容的強化の要望も非常に強いわけですから、それは総務長官の方では、大体立法の経過が各党で話し合われたのを政府提案として出したという経過があるから、各党の方で話し合いを進めてもらいたい、そうすれば政府提案として受ける、こういうことですね。よろしいですか、それで。——頭を下げられたんじゃ速記に載らぬですから……。
  316. 藤田正明

    藤田国務大臣 各政党間で意見の一致を見ますれば、これはもう文句なく政府の方で提出をいたすということでございます。
  317. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 続いて、やはり人権問題に関する問題でありますが、戦後三十年以上、しかも仏教で言いますと三十三回忌を迎えて、原子爆弾の被爆者の援護法を制定してくれという悲痛な叫びがいまだにあるということですね。何か私どもは政治家としてざんきにたえないような気がするのですよ。こういう問題がまだ解決をしていないんだろうか。これ一体総理、どういうように思われますか。そして八月近くになると集会がある。御存じのように各地において被爆者援護法をつくってくれ、そういう要求が全国民の要求になっておる。そうすると一体政治家として何をしておったんだろうかという責任を私は感ずるのですよ。これ総理、どういうようにお考えですか。
  318. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 原爆被災者に対しましては原爆特別措置法などを活用いたしまして、これはかなり手厚い国家措置を講じてきておる、このように考えておるわけです。その上さらにいまいろいろ言われておりますのは、国家補償といいますか、そういう観念に立ちましての援護法ということでありますが、こうなりますと、これは戦災者一般との権衡というような問題もある。そういうことで、なかなかこれは考え方としてむずかしい問題でありますが、しかしそうでなくて特別措置法、そういうようなことでかなりのことができます。またやっておるのです。今後とも原爆被災者に対する施策、それは気がついたことはやっていくつもりでございますが、援護法制定ということは、これはなかなか踏ん切りはむずかしい問題である、そういうふうに思います。
  319. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 しかし、本院の社会労働委員会の五月十日のこの決議に「国家補償の精神に基づく被爆者の援護対策についてその制度の改善に対する要望は、ますます強いものがある。よって政府は、このような事情を配慮して、今後慎重に検討するとともに、」云々と書いてある。私は、いわばこの国との特別権力関係、これになぜ固執するのかと思うのですよ。すなわち国に雇用されておった、あるいは雇用されたと同じように準じられておった、これを一貫して固執しておるわけですね。ですから、戦傷病者戦没者の遺族援護法でも、とにかくあれは挺身隊だった、あれは警護団だった、あれは医療従事者だった、あれは徴用だった、一つ一つ国と何か結びつけなければその援護は受けられないということですよ。これは当時のことを考えれば国民総力戦でしょう。あらゆるものが戦争遂行に通じたのですよ。ですから、それをどこかで探してきて、いや、書類があったから、この書類で何か国とのつながりがあるからひとつ入れようというので入れてきたのですね。やはりそういう考え方は、戦後三十年、払拭すべきじゃないかとぼくは思うのですよ。でありますから、御存じのように、西ドイツにおけるこの法律も、空襲によって爆撃を受けた民間の人々も同じように援護をしておるでしょう。しかも年金まで出しておるでしょう。ドイツは戦後すぐそういう体制に入ったですね。日本だけですよ、何か国との関係ばかりを引っ張り出して、そして一つずつ援護をして、拡大してきた。戦後そういうことをする必要はもうないんじゃないかと思うのですね。ですから、民間の戦災者とそれから原爆の被爆者とを区別することは理由がないとするならば、あの戦争中の空襲等によって災害を受けられた人も援護すればいいじゃないですか。もう膨大なものじゃありませんよ。財産なんかしないのですから。ですから、それは十分でないかもしれない、十分でないかもしれないが、そういう時期に来ておるのじゃないか。でありますから、一般市民に対する援護というのは、これはドイツなんかで皆やっているのですよ。そういうのに非常に区別をして、しかもそれに階級制をつけて年金も違うというようなことを言っているのは日本だけですよ。ですから、そういう点はこの際やはり考える時期が来ておるんじゃないだろうか、こういうように思うのですが、どうでしょうか。
  320. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 どうも申しわけございませんけれども、私は考え方は逆なんで、もう戦後三十年たったのだ、それで三十年の後にとにかくわが国の社会というものはこれだけ復興、発展しまして、そして社会保障制度なんというのもずいぶん発達した、高度化してきた、そういうことで、もう三十年前にさかのぼって、また一般の戦災者に何か対策を講ずる、こういうようなことは、行政の仕事の面からいいましても、資料なんかなかなかありはしない、そういうことを考えても、なかなかむずかしいことじゃないか、それでありますから、一般の社会保障体制の中にあの三十年前のことを全部包摂する、そういうような考え方でこの社会保障体制の方を進めていくという方がむしろ現実的じゃないか、そんな感じがするのです。しかし、そう申しましても、原爆の被災者、これは特別な立場にある人だ。こういう人に対しましては、できる限りの手厚い対策をとる。現にとっておるわけですから、もしああせいこうせいというお知恵があり御意見があれば、そういうものも承らしていただきまして、それは政府においてもいろいろ考えますが、とにかく戦災者全体に、いますでに三十二年前のことを思い起こして、そして対策を個別にとっていくという考え方はどうでしょうか。私は、むずかしい問題じゃないか、そういうふうに感じます。
  321. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 逆じゃないでしょうかね。日本の国力がこのくらいになったのですから、ひとつ終止符を打ったらどうですか。時の政府あるいは軍隊と身分関係のあった者だけを拾うて救済をするという物の考え方はもうやめたらどうですか。そうして、これだけ原爆問題が大きくなる、その原爆問題というのがまた核燃料開発のために支障になっておる。まさにカーターはそう言っておるわけでしょう。ですから、そういう面から言っても、これはやはり清算する時期が来ておるのじゃないですか。国家補償としてどうして悪いですか。どこに支障があるのですか。被爆者を国家補償で援護することがどこに支障があるのですか。私は、こだわっているところがどうもおかしいと言うのですよ。総理は依然としてこだわっておられるでしょう。特別権力関係がないということでこだわっておるわけですよ。何もこだわる必要がないでしょう。そうして被爆者はどうしたか。「戦争犠牲者の救済が論ぜられても長い間放置をされ、大部分は救済の外にあった。」これは御存じのように石田判決の主文ですよ。石田さんという人が宮島に武運長久を祈りに行こうとして、ちょうど爆心地の七百メートルぐらいのところで被爆された。そうして体が悪くなった。そうして目が悪くなってそれで原爆の医療法の手続をとった。それが却下されたという形ですよね。それで訴訟された。それに対する判決が昨年の七月にあったわけですが、これだってやはり政府に対して相当批判をしている。内容は読みません。そうして医療法も国家補償の側面を持っているじゃないかということを指摘している。それで被爆者は身分関係が国家とつながっていなかったという理由で救済の外に長く放置をされたということが指摘をされている。この判決は国の責任を問うているのですよ。ですから、やはり思い切って国家補償にしたらどうですか。私は何もサンフランシスコ条約を引き出すようなことはしませんけれども、国がやればいいですよ。総理、非常に困りましても、日本経済はまだこのぐらいの金額はたえていけるだけ力がありますよ。どうですか。やはり福田総理のときにこういうものは終止符を打った方がいいのじゃないでしょうか。もう一度御答弁願いたい。
  322. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 どうもせっかくのお話ですが、考え方としてなかなかむずかしいです。一体、一般の戦災者をどうするのだ、その権衡というような問題、これも考えなければならぬ。しかし、そういうことを考えますと、原爆被災者に対して国家が補償という立場の措置、これはむずかしいと思うのですよ。しかし、原爆被災者というもの、これは非常な不幸な方々です。これに対して特殊、特別の措置をとる、これは当然のことであり、またそのようにしてきておるわけですから、その考え方で足らないというところがあれば、またいろいろ考えましょう、こう言っておるわけでありまして、これをいま一般の戦災者、これとのバランスの問題まで提起するという、そういう問題を含んだ国家補償としての特別援護法をつくるということは私は賛成できません。
  323. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 残念ながら見解が違いますが、しかし、民間の戦災者に対して援護をしようとしないでおいて、それを理由にして被爆者の方は援護しないというのは理由が通りませんよ。全く通らない。一方やろうというならまた話が通るけれども、やらない。民間の方はやりません。それを理由に被爆者援護もやりませんというのは、全く理由にならない。  次に、私は、時間もありませんから、国鉄再建について一言だけ聞いておきたいと思います。  いま国鉄は、御存じのように非常に大きな経営の危機に立たされておる。そこで、労働組合の方も最近は自主再建でやる、それからお互いに自主規律をしなければならぬということで、いま再建の方途をいろいろ探しておるわけであります。そういうやさきに、御存じのように当局の大きな選挙違反もあった。そこで、やはり規律というものを、私はここで具体的には言いませんけれども、内部の規律というものについてようやく組合がそういう方向になっておるのに、当局の方はその規律というものに対して全然何ら手をこまねいて、みずからはやろうとしない。これについて運輸大臣はどういうふうにお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  324. 田村元

    ○田村国務大臣 国鉄の組合幹部が最近微妙に変化をしてきたといいますか、国鉄の自身の問題について、発言あるいは行動等において私は評価してよいと思います。そういうときにああいう選挙違反、大規模なものが起こって起訴された者まで出た。まことに遺憾きわまりないことであります。こういう再建の大切な時期でありますから、この際十分規律を確立していくように私からも強く指導してまいる所存でございます。
  325. 田中正巳

    田中委員長 これにて多賀谷君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  326. 上原康助

    ○上原委員 総理、官房長官、防衛庁長官にぜひ事実関係を確認をして、さらに御所見を承っておかねばいかない点がありますので、十分間時間をいただいておりますので、簡潔に御答弁をお願いをしたいと思います。  最初に、防衛庁長官にお尋ねいたしますが、従来、統幕議長が議長に任命された場合に宮中において記帳を行ってきたのかどうか、事実関係だけお答えいただきたいと思います。
  327. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 事実関係だけをお答えいたしますと、いままではございません。
  328. 上原康助

    ○上原委員 新聞の報道するところによりますと、次期統幕議長に内定をしております栗栖陸幕長は、十四日、記者会見をして、統幕議長は自衛官の最高位であるので、今後は天皇による認証官であるべきだという発言をしたという報道がなされております。これが報道されておるように事実とするならば、私どもはきわめて重大な発言だと言わざるを得ません。そればかりではなくして、きのうの午前中、実は栗栖陸幕長は総理と官房長官にお会いをしておるわけですね、その栗栖現陸幕長と次期陸幕長になる幹部らと一緒に。この後に、しかもいまさっき申し上げたような発言を記者会見で次期統幕議長に就任をしない前にやったということは、私はきわめて重大だと思うのです。しかも、これに対して、この栗栖氏の発言によりますと、官房長官が内諾を与えたというように言っております。この点について官房長官は承諾を与えたのか、また認証官にするように検討するということも確約をしたというようなことですが、いきさつについて、正しく簡単にお答えをいただきたいと思います。
  329. 園田直

    ○園田国務大臣 昨日、新旧、内定をした統幕議長が総理に表敬をした後、私のところへ参りました。このときはあいさつだけであります。  認証官の問題は、私が臨時防衛庁長官代理をしたときに昼食をいたしました。昼飯を食ったときに、最高の地位にある統幕議長が、認証官にしてもらわぬと士気が上がらぬというような話がありましたから、昼食の座談でありましたから、私はそうかなと言っただけでございます。検討するとも、承知したとも言っておりません。(「本人から聞いたのか」と呼ぶ者あり)本人ではありません。
  330. 上原康助

    ○上原委員 いま事実関係については、公式の場でのお答えですから信用せざるを得ませんが、しかしハイジャック事件をめぐるいきさつもあるわけですね。官房長官、失礼ですが、どうも内閣の大番頭としては勇み足が多いようで残念なんですが、総理に重ねてお尋ねをいたします。  現在の自衛隊法から言っても、統幕議長はあくまでも防衛庁長官の補佐的任務、権限しかないと私は判断をいたします。いやしくも、まだ任命もされていない、予定の地位にある人が、天皇による認証官にすべきだというような発言は、シビリアンコントロール、いわゆる文民統制の立場から言っても国民の誤解を招く、あるいはまた自衛隊の存在をめぐっていろいろの意見のある中で、あるべき態度ではないと私は思うのですね。いま冒頭、防衛庁長官も御答弁がありましたが、従来このような経緯はとっていない。また統幕議長が就任前に、私は次に統幕議長に就任するからということでじきじき総理官邸を事前に訪ねて、いろいろ防衛問題とかこういう問題について話をしたのも栗栖氏が初めてだという報道がなされております。この認証官問題を含めて、このような態度に対して、総理はどういう御所見を持っておられるのか、明確にしていただきたいと思います。
  331. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 総理のお答えの前にちょっと事実を申し上げますが、実は認証官の問題につきましては本人から言い出したものではございません。記者から勅任官というようなものを希望するのかというような、記者会見の際の懇談で出まして、勅任官でなくて認証官ではございませんかというふうなことで話が進んだ経過でございまして、決して本人から認証官に云々というようなことを言い出したものではない、そういう経過でございますので、一応総理のお答えの前に私から事実の経過をお答えをいたしておきます。
  332. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 三原長官のいまの答弁とすれば何ら問題はないように思いますが、もし仮に新聞の報ずるように、統幕議長は当然認証官であるべきだというような発言だとすると、これは言葉がちょっと過ぎたことではあるまいか、そのように思います。
  333. 上原康助

    ○上原委員 そういたしますと、従来の方針を政府は変える御意思はないということで理解をしてよろしいですか。御答弁を求めます。
  334. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいま統幕議長を認証官とするというような考えは持っておりません。
  335. 上原康助

    ○上原委員 あと一分ちょっとありますので、次に防衛庁と外務省に要望だけしておきますが、せんだっての質問でちょっと取り残しましたが、沖繩の嘉手納米軍基地にEP3Eという飛行機が飛来をしていると聞いております。  そこで、この飛行機はどういう性能の飛行機なのか、またこの飛行機はどういう指揮系統下にあるのか、現在飛来をしているのか、事実関係について御調査の上で報告していただきたいと思いますが、よろしいですね。
  336. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 いま先生がおっしゃいましたEP3Eという飛行機は、私どもの承知している限りでは、まだ西太平洋に配備されておりません。西太平洋艦隊の航空部隊隷下の第一艦隊の偵察飛行隊、これがグアムのアガナ基地にございます。そこにEP3Bというのが配備されております。しかし、その飛行機が嘉手納に飛んできたということは、私どもは承知いたしておりません。
  337. 上原康助

    ○上原委員 調査の上で報告しますね。
  338. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 はい。
  339. 田中正巳

    田中委員長 これにて上原君の質疑は終了いたしました。  次に、小林進君。
  340. 小林進

    ○小林(進)委員 公営競技の第二次の調査会を設置する意向があるかどうかという私の質問であります。  これはことしの二月、三月、三回にわたる質問でありますが、その質問に答えて二月の十八日、総理は「公営競技に関する御所見をいろいろ承りまして、非常に私も裨益するところが多かったと、こういうふうに思います。調査会の設置につきましては、小林委員の御意見も重要な資料といたしまして、早急に考えたいと、かように考えます。」このようにお答えになりました。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕 だから、調査会の設置について早急にやりたい、かように考えておりますと言われたのでございますが、その後これが一体どのように具体化したか、総理にお伺いをいたしておきたいのであります。
  341. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、まさに小林さんのおっしゃるとおり、小林さんの本委員会における御意見を重要な資料といたしましてこの問題と取り組みたい、こういうことを申し上げたわけなんです。そのとおり総理府で作業を進めております。その段階がいかなる段階になってきておるか、それについては総務長官からお答え申し上げます。
  342. 藤田正明

    藤田国務大臣 確かに本年の二月、三月にそのような御質問をいただきまして、総理からもそういう御答弁があり、私からも答弁したことを覚えております。  そのときに私が申し上げましたのは、調査会をつくるにいたしましても、問題点をまず浮き彫りにしなければなりません、そういう問題点を浮き彫りにした後にその調査会をつくることを考えたいと思います。いまやみくもにつくらなくて、各省の事務官同士の折衝を当分の間行います。かように申し上げたと思います。そういうふうな折衝の過程が大体終わりまして、臨時国会で、さて調査会をつくるかあるいは懇談会にするかということでございましたが、臨時国会という性格が一つございますし、また法律を通すにしては内閣委員会もまだいろいろとお忙しいようでもございますし、ひとつ今回は懇談会を設置していこうではないか、かように考えておりまして、総理の方にも御進言を申し上げまして、懇談会を設置、開催というふうなことで進んでおります。
  343. 小林進

    ○小林(進)委員 大体その程度のことは承ったのでございます。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、いま総務長官の言われる臨時国会という性格と、それから内閣委員会が他の法案があって忙しそうだということだけの理由でこれを懇談会の程度にとどめられたのか、そのほかにまだ理由があるのではないか。あるいはこの公営ギャンブルに関係をいたしております各省の官僚の中に、どうもこれに抵抗しているという風評もだんだん入ってきておりますし、あるいは外部の団体から、命にかけても法律による調査会の設置には断じて反対をしてみせるという意見も聞いてきているのでありまして、私どもはその点の真実を追求するのに非常に苦労いたしておりますが、ただそれだけの理由にあるにいたしましても、一体懇談会というのは何でありますか。その懇談会は一体だれのもとに置くのか。あるいは総務長官のもとに置かれるのか、内閣のもとに置かれるのか、官房長官のもとに置かれるのかは別といたしましても、懇談会などというものは、ただ話を聞きましょうや、言い放し、聞きっ放し、何もそこに法律根拠はないのであります。仮に内閣改造でもあって、あるいは総理府総務長官がおかわりになったとすれば、いまあなたがこのギャンブルの問題に非常に熱意をお持ちになったとしたところで、内閣改造になって藤田長官がかわってしまった、そういうことでまたこれがくるっと変わってしまう傾向がある。私はそういうことをちゃんと聞いているのです。なあにこれは懇談会にしておいて、そのうちに内閣改造があって長官でもかわってしまったら、これはそのままずるずると既定の方針どおりいけるわい。それだと困るのだ、私どもは。その意味において、私はこの問題はひとつどうしても法的根拠を与えて、内閣いわゆる総務長官がかわろうと、官房長官がかわろうと、ちゃんと法的根拠のもとに責任ある答申を出して、その答申に基づいてこれを改革するという方向へ持っていっていただかなければ了承するわけにはいかないのでありまして、総理大臣、いかがでございましょう。この問題を懇談会程度にとどめて、一体ことしの春の国会における私に対する公約がそれで果たされたと総理みずからお考えになっているのかどうか、いま一回承っておきたいと思います。
  344. 藤田正明

    藤田国務大臣 そのほかに理由がありとせばということをおっしゃいましたが、大体いま各省、関係省の事務折衝が終わったと申し上げましたが、それらによりますと、一応昭和三十六年の長沼答申の基本方針を踏襲する、こういうことでございます。これは御承知のとおりに、「公営競技の存続を認め、少くとも現状以上にこれを奨励したいことを基本的態度とし、その弊害を出来得る限り除去する方策を考慮した。」こういう基本方針でございますから、これの上に乗っかって、そしてその弊害の除去に努めようではないか。この弊害も具体的に三、四挙げておりますけれども、そういうふうなものを中心課題といたしまして懇談会を行い、そしてその懇談会における各委員の方々の御意見を参考にして、それを行政に反映させていこう、かような考え方でございまして、いよいよこの懇談会におきましてどうしても処置できないということになれば、改めてまた調査会ということも、これは考慮するわけでございますが、そのようなことで昭和三十六年の長沼答申の基本方針の上に乗っかっていこうという考えでございますので、別に理由がありとするならば、それが一つの理由でございます。決して外部からの圧力だとか各省からの圧力だとか、そういうことではございません。
  345. 小林進

    ○小林(進)委員 特に長沼答申の上に乗っかっていくとおっしゃるならばなおさらであります。長沼答申も、ちゃんとやはり総理府の中に、設置法という法律改正をやって、そして法律的根拠に基づいて長沼委員会というものが生まれて、そして慎重に審議してその答申が行われている。なぜ一体、第一回の調査会にはそのように総理府設置法というものの法律改正が行われているのに、このたびだけはその設置法が法律的にできないのですか。なぜ懇談会にいかなければならぬ。懇談会なんというものは法律根拠もなければ拘束力もないことは、これは法律を知っている者はイロハのイの字で知っているわけで、そんなものを設けて、私の考えでは世間のごまかしではないかと思わざるを得ないのであります。特に、それあるがゆえに私自身が法制局と相談をした総理府設置法の一部改正案というものをちゃんとつくって、皆さん方に配付したじゃないか。真田さん、あなたは言ったじゃないか、完全無欠でございますと。りっぱなこれは法改正でございますよと言った。それを通すのに一体何分時間がかかる、どんなに時間がかかる。ここにもちゃんとありますよ。総理府設置法の中へ、たった文章一言です。いわゆる総理府設置法第十五条の第一項に「内閣総理大臣の諮問に応じて競馬、競輪、小型自動車競走及びモーターボート競走に関する現行制度全般について検討を加え、関係諸問題を調査審議し、並びにこれに関し内閣総理大臣及び関係各大臣に意見を述べること。」というたったこれだけを入れればいいのです。総理府設置法の中に。何で一体時間がかかりますか。総理大臣、時間がかかるとお考えになりますか。議運でも、法案が出てくれば、さっと一秒間で通します。内閣へ送ります。内閣委員会も、出していただければ全会一致でこれを通します。みんな話はできているのだ。いまかいまかと待ち焦がれている。なぜ一体時間がかかるのです。なぜ一体懇談会などという法律の拘束力もない、縛る力もない、そんなものにとどめておかなければならぬのですか。しかもその委員会でやっておいて、もしそこでさらに必要があるとすればその際また調査会を設けますという、いまあなたの答弁だ。一体何という答弁ですか。総理が私におっしゃった答弁がちっとも生きていないじゃないですか。なぜ一体、法的根拠を与えて調査会を設けられないのか。総理、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  346. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まあ懇談会にしたって、別にそう簡単なものじゃございませんよ。これは、これだけ議論があってできた懇談会で、そして答申をする、これはもう審議会と同じような権威ある答申です。とにかく総務長官の方では、早くこれを処理しよう、こういう考え方で懇談会方式ということを考えられたのじゃないか、こういうふうに思います。非常に重大な、スト権スト、あの問題だって、これは意見を聞いているのは懇談会ですよ。何か懇談会だと、小林さん、御不安をお持ちになられるようですが、決してそんなことはない。懇談会で出た結論につきましては、責任を持ってこれを尊重します。
  347. 小林進

    ○小林(進)委員 それは総理大臣、責任を持つとおっしゃるけれども、総理大臣だっていつおかわりになるかわからない。何も永久に続くわけじゃありません。  しかし私は、この問題については、各閣僚の中にだれか足を引っ張る者があっちゃいけないと思いまして、これはまことに悪いが、非公式に運輸大臣にも建設大臣にも通産大臣にも全部聞きました。そうしたら、某大臣と言っておきましょう、これはいま臨時国会中で懇談会にしておくが、小林君、通常国会に入ると今度はちゃんと法的根拠を与えて調査会にするんだ、だからまだこの臨時国会の間だけはちょっと期間的に無理があるから懇談会なんだから、君、了承せよ、こう言われました。それならばまたそれで一つの根拠があるぞ、通常国会は十二月になればもう開かれるのだから、それからは今度は法的根拠を与えて調査会にするということならば了承しましょう。しかしいまの総理大臣の言葉あるいは総務長官の言葉——総務長官だって、私のと立場が違いますよ、あなたの言った答弁は。そういうひきょうなまねをしてはいけません。通常国会の中でもうすべて調査会にするとおっしゃるならば私は了承いたしましょう。どうですか総理、できないことはないでしょう。
  348. 藤田正明

    藤田国務大臣 先ほどから私答弁申し上げているときに、調査会には一切しないんだということは申し上げてないのです。ですから、まず懇談会でやりて、そしてその上で必要があれば調査会にいたしますということを申し上げておる。この前の昭和三十六年の調査会も、あの期間は四カ月なんですよ、あの調査会は。調査会は十回会合をいたしておりますけれども、四カ月であの答申を出しておるのです。ですから、懇談会というふうな形、その前に各省間の調整をやりました。これはもうすでに終わりました。それで懇談会を始めます。この懇談会でどうしてもこなせない、またどうしても調査会が必要だ、こういうことになりますれば調査会をつくるには異存はございません、かように申し上げておる次第でございますから、御了承願います。
  349. 小林進

    ○小林(進)委員 次の通常国会に、調査会に法的根拠を与えますか。次の通常国会でございますよ。
  350. 藤田正明

    藤田国務大臣 ですから、必要がありますればそのようにいたしますということでございます。
  351. 小林進

    ○小林(進)委員 必要はあると私は考えていますから、皆さんこれをお聞きだが、もし調査会などでなく、これがなし崩しに崩すということになれば、私はこれを了承するわけにはいきませんが、あなたの話にはまだちょっとごまかしがあるな。まだ個々の折衝の中における話とちょっとごまかしがありますな。ごまかしがありますよ。あなたは、臨時国会では時間がなくてでき得ないんだ、法律でする根拠がないから通常国会でやると言ったじゃないですか。私にやると言ったじゃないか、あなたは。なぜそんなうそを言う。言ったじゃないですか。  まだ言おうか。建設大臣、あなたも私にそう言ってくれましたね。建設大臣はなかなか清廉潔白、物も道理もわかっている人でありますから、この方のおっしゃることにはうそ、裏表はありません。答弁はできませんか、大臣。できませんか、あなたは。できませんか。
  352. 藤田正明

    藤田国務大臣 いや、私は確かにお話を伺いました。この間、個人的なお話も一伺いまして同じようなことを申し上げたつもりでございます。それで、調査会にしないということは一切言ってないのです。必要があれば調査会にいたします。そして、この弊害は、昭和三十六年にああいう基本方針を持って長沼答申が出されながらも、昭和三十六年の公営競技調査会、公営競技団体五つの団体がございますが、その売り上げのいまや二十倍になっておるわけでございますから、いろいろ問題が生じておることもよく承知いたしております。ですから、この弊害はどうしても除去しなければならぬ、かように考えておりますから、小林先生の御期待に背くようなことはいたしません。ただ、方法としましては、懇談会でできればそれでもよろしいし、それで必要があれば調査会に移ってもそれはいいではないか、かように考えておる次第であります。
  353. 小林進

    ○小林(進)委員 残念ながら私は時間の制約がありますから、これはとことんまで押していく時間がないことは残念ですけれども、それじゃひとつ、私の期待を裏切らないというその言葉だけを胸におさめて、いま一言。ともかく私はもうあと五分ですから、(発言する者あり)何言っているんだ、まだ五分あるんだ。  坊大蔵大臣にお伺いしますけれども、公営競技によって生まれる収益金はこれは公金であるということを、あなたとしつこく議論いたしました。これはこのとおり速記録を参考までに書いたのです。あなたの言ったことがみんなこの中に書いてあるのです。その公金が、中央競馬においてはその一〇%がもう政府の袋の中に入って一般財政の中に組み込まれておる。しかし、その他は三・三%がそれぞれの団体に交付されている。その団体は、いわゆる恣意的にと言っては、いろいろ制約機関はありまするけれども、それぞれ配分をしている。そしてそのほかには別にまた〇・八%が公営企業金融公庫の中に入っているのです。こういうふうに使われているけれども、これに対しては中央競馬以外は国会はもとより会計検査院の検査も全然手が及ばないのです。これは勝手と言っちゃ悪いが、自由に各ギャンブルごとに適当に使われている。このばらばらの配分の仕方は全く好ましくない。そこで、この四つの競技の収益金は、内閣のもとで同一の機関でこれを取り扱って、公平にこれを処分し、そして税金並みに国会及び会計監査の検査を受けるものとすべきであるという質問を私はいたしました。それに対してあなたは、今後検討していくに値するものであろう、かように考えます。あなたにしてはばかにはっきりした答弁をしている。その後の検討はどうなったか、ひとつ教えていただきたい。どうなりましたか。
  354. 坊秀男

    坊国務大臣 検討はいたしております。検討はいたしておりますが、まだ結論は出ておりません。
  355. 小林進

    ○小林(進)委員 まことにあなたの答弁を聞いていると——まあいいです。私はあなたの答弁を求めていませんから。時間がないのにのこのこ出てこられたんじゃ終わりになる。  そこで、運輸大臣に一つお伺いいたしておきます。  最近発行された某週刊誌としておきましょう、某週刊誌。某だって、あなたの坊じゃないんだ。(笑声)九月二十九日号、十月六日号と続いて、公営ギャンブル礼賛論が載っている。大変な礼賛論。その談話の人はだれかというと、運輸省船舶局だ。その週刊誌は、九月二十九日号では、金の成る木は手放したくないし、天下り先を失いたくないというお役人の執着が現在のシステムを温存させてきたようであるという、こういう批判をしている。これは九月二十九日号だ。ところが今度は十月六日号では、これだけ熱烈な弁護論が出ると、運輸省船舶局は某振興会の霞が関分室ではないかと思われるという、こういう批判が出ている。私はこれを読んで、あなたのところの局長に聞いた。余りにもひどいじゃないかと言ったら、いや、これはもう長い話の中の一部分でありまするから、私ども官僚が言ったことを全部出してくれれば、こういう誤解を受ける文章にもならなかったんでございますがという言いわけがはね返ってきた。こういう長々とした言いわけがはね返ってきた。あなたは一体どう考えられますか。役人がこれほどのことをしゃべって、私が長くしゃべったことを全部雑誌が載せてくれなかったんだから私の真意が伝わらないなどということで放言をされたら、世の中やみになっちゃいますよ、これは。いかに考えますか。
  356. 田村元

    ○田村国務大臣 私が報告を受けましたのも、いま小林さんへの御返事のような報告であります。私は、実は週刊誌はあまり読まないのですが、プリントをいただいた。あれを読みまして、たとえその中の経過がどうあれ、船舶局の課長の言としてはいささかこれは浅薄に過ぎる、私はそのように感じたのです。そこで、これは局長を呼んで、十分に私は厳しく警告を発しておきました。たとえその真意がいかようであれ、誤解を受けることはいけません。それから官僚として週刊誌の種になるということもいけません。でありますから、厳しく忠告をしましたし、同時に、この問題と取り組んでおります私は、決して擁護論じゃございません。小林さん一番よく知っておられるとおり、私は擁護論じゃございません。厳しい態度で対処するという決意を持っておる私は運輸大臣でであります。どうぞそこいらを御理解願いたいと思います。
  357. 小林進

    ○小林(進)委員 これで質問を終わります。なかなか名答弁でございました。
  358. 田中正巳

    田中委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。  次に、安宅常彦君。
  359. 安宅常彦

    ○安宅委員 千両役者の後で、大変申しわけありません。  十三日の本委員会におきまして、公明党の坂井さんから、武器の輸出について総理に対する質問がありました。ちょうど去年の二月四日、私忘れることができないのですが、この問題をやっている真っ最中にロッキード事件が起きました。私の質問はしり切れトンボになってしまいました。しかし、この問題は、相当長く続いた私の執念でやっておったものですから、いろいろと具体的な、たとえば経団連の兵器部会なり、兵器工業会なり、経団連自身の幹部の発言なり、こういうことから推して、兵器工業会なりそういうところの資本というものは何とかして軍需産業というものを日本に振興したい、この欲望というものは、軍需産業ほどもうかるわけですから、これははっきりしていますね。ぜひひとつやりたいという欲望がある。この欲望があるうちは輸出三原則があってもなかなか抑えきれない。その都度こういう意図を粉砕しなければならない、こういう立場で質問したわけですね。結局この三原則というものは、これらの資本の代表者の発言などから見て危険な傾向にあるというので、当時の三木総理もそのとおりだという意向があったんでしょう。結局従来の武器輸出の三原則というものに、私がこの武器製造関連設備、これは具体的に言いますと、お配りした一枚目の「参考」というところに書いてありますが、「輸出貿易管理令別表第一の第一〇九項」内容は「兵器専用の工作機械、加工機械及び試験装置ならびにこれらの附属品のこと」でありますが、この輸出も「「武器」に準じて取り扱うものとする。」という一項を入れたのです。坂井さんの質問というのは、さらに武器を戦車何台とか弾丸何百万発とか、こういう輸出というよりも、プラントそのものを向こうに据えつけてみずから投資をする、それから合弁企業体にする、こういうような問題は、一体それよりも大量の武器が今度は外国で日本の資本によってつくられる、これを抑えるべきではないかという、私も当時言ったのです。しかし、そこまでは文章化することができなかった。三木さんはこれを全部ここで、本委員会で読み上げました。これは二月二十七日であります。その間政府といろいろその文章化についても、私と当時同じような質問をいたしました公明党の正木さんと内閣との間でいろいろ文章の調整をいたしまして、できたのが皆さんにお配りした文書であります。しかし考えてみますと、韓国における昌原団地、こういうものは機械工業団地となっておりますけれども、そのときには平和産業の団地である、いろいろなことを弁解しておりましたが、結局韓国の朴大統領が、りっぱな兵器産業の基地になる、これは喜ばしいことだと言って賞賛する、こういうかっこうになったことを一一例を挙げて坂井さんが言っておられる。これはやはり私は考えるに、坂井さんとも相談したのでありますが、この第四項にするかどうかは別として、つまり坂井さんの質問は、日本の企業がみずから投資をする場合とそれから合弁企業である場合と、このことを質問したのに対して、総理は明確に、明瞭にこのことについては許可をいたしませんと断言をされた。大変結構なことだと思っておるのであります。しかしながら、そういう目的を持ちながら平和産業を持っていくかのごとき擬装をして、坂井さんはそう言いませんでしたが、そして向こうで実際的にそういう生産をする、これは外国法人だからという意味でしょうが、総理は、なかなかむずかしい問題で、これは投資先の親企業の影響力を行使するなどの手段をやるほかないのではないか。この辺ちょっと今度は、なかなか容易でないことはわかりますけれども、あやふやになる。そのあやふやになったところに、結局韓国の昌原団地はいまに始まったのじゃない。何年か前からこの構想というものは発表されて、私は累次各委員会でこの質問をしてきたのですが、今日のような状態になっているということになりますとえらいことだと思うのですね。したがって、最後の問題を含めて政府は一体どういうふうにしてこういう傾向を抑えようとするのか、明確な答弁というものは大変私は敬意を表しますけれども、実際、今度はうそを言ってやった場合には、外国法人だから手がつけられません、親企業から影響力を行使するのでありますという答弁になったのか、その場合には、親企業に対してどういう制裁といいますかあるいは指導といいますか、そういうことをして事実上これを阻止するということが可能な方向をあなたは考えて答弁なさったのか、この点について私は確認をしていただきたいと思うのであります。
  360. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 韓国に対しまして、いやしくも武器を生産しますというようなことがはっきりしている、そういうような投資、これはいたしません、これは明快に申上げたわけです。韓国のみではありません、他についてもいわゆる武器三原則というものがある。その精神にもとるような投資、これは厳に抑制をいたします。これも明快に申し上げます。それから、さてそういう方針で投資が行われたというその後におきまして、その投資先の企業が武器生産をした、こういうようなことがあれば、これは投資先でありますから、わが国の親企業は投資先の企業に対しましてはある程度影響力を持っておるわけであります。その影響力を行使いたしましてそのようなことの是正に努める、こういうための指導をいたすということ、その三つの点であります。
  361. 安宅常彦

    ○安宅委員 第二番目に坂井さんがおっしゃった合弁企業も第一番目に言った投資、そのまま百%の投資をする場合にも許可いたしません、こう言っておるのですから、事実そういうことをやった場合は、実際にうそを言って投資したものと同じことなんですね。初めの方は許可いたしませんと言いながら、実際に行ってみたらやっていたということとこれは同じ、別なものじゃないのですよ。ですから同じ答弁になるべきなんですよ、総理。私はそう思うのですが、どうなんですか、矛盾を感じませんか。
  362. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいまの総理の申されたとおりでありまするが、なおその方針に従って行政指導をいたしますことは当然でございます。  いまの点でございますが、われわれが汎用機械を出しまする場合においては、これはもう御案内のとおり何にも問題はありません。ただここに三原則としてはっきりと示されたものであり、同時にまた貿易管理令の外為の問題でございますと、これは御案内のとおり大蔵省の関係でございまするが、その点は私どもと大蔵省とは全く同じでございます。
  363. 安宅常彦

    ○安宅委員 わからないんじゃないかな、大臣。まあいいですよ。ただ総理、坂井さんは三つに分けて質問しているのですけれども、三つに分けた最後のとき、うそを言ってとは言わなかったけれども、事実上やった場合に、それは親企業の影響力を行使するとおっしゃったけれども、性格は一番目も二番目も三番目も同じなんです。よく突き詰めて考えてみたらそうでしょう。許可しない。そんなことを言って許可されなければ大変だから、許可させるために若干ごまかしてやる。その結果そうなった場合と同じことなんですよ。だから、私は兵器産業界の先ほどのような性格からいって、これは必ずくぐり抜けていく、くぐり抜けた結果が昌原団地になった、そのことを私は言っているのです。したがって同じ答弁になるべきで、事実上そうなった場合は、外国法人だから親企業の影響力を行使せざるを得ないなどというのは、特別なものではなくてみんな同じなんで、全部許可しない、許可しないのにやった連中には親企業の影響力じゃなくて、あなたの影響力をどういうように行使するかという答弁になるのが普通じゃないかと私は思っている。
  364. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは外為法で投資の許可ということになるわけですね。その外為法で許可するとき、投資の目的、これが明快にされておるわけです。その明快になっておるところの投資の目的が変更されるわけでありまするから、当然変更のための手続を必要とする、こういうことになる、そういうことを通じまして影響力を行使し得る、こういうふうに思います。  なお、非常に込み入った手続のようですから、場合によったら政府委員から……。
  365. 安宅常彦

    ○安宅委員 いやいや、結構です。時間がありませんから。  それで、この前は武器の定義まで、私ども内閣と相談いたしましてつくったわけです。これが第二に書いてある「武器の定義」というものですね。この定義は観念的ですから、今度は管理令の分で品目を例示したんですね。そこまで詰めたんですよ、総理。それでもだめなんですね。軍需産業界の意図というものは、政府の方針がいかにあろうとも、もうどこからでももぐって、平和というものとはまるっきり反対の方向に行っているということを私は憂えるのです。したがって総理は、ただいまもし変更するような場合、影響力とあなたおっしゃったけれども、その影響力というのは親企業なのか政府なのかということを含めて、武器の製造を目的とする海外投資について、いろんな場合が想定されますけれども、そういう問題について政府の方針を、ちょうど五十一年二月二十七日のような形にして、さらに強化するために改めて今度はさらに具体的に書面にして提出する、こういう考えはありませんか。善処をしていただきたいというのが私のあなたに対するお願いであります。
  366. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私のただいまの答弁で事態は非常に明快になっているのじゃないでしょうか。第一項、第二項、第三項とこう分けて、三項目申し上げた。それじゃ第三項目の影響力の問題はどうかということ、これは坂井さんに対しましては、現企業を通じ、こういうふうに申し上げましたが、きょうは、親企業のみならず政府を通じて影響力を及ぼす、こういうのですから、明快だと思います。
  367. 安宅常彦

    ○安宅委員 そのとおり、答弁は明快です。だから、答弁は明快でも、三木内閣のときは、これをさらに明確にするために書面をもって、武器の定義から例示まで書いて、そうして今度は、いままでのいわゆる武器三原則に追加をして、ある新聞にある人が投書した論文が載っておりましたが、そこまでやったら日本の産業界はどうなるのかと考えないで、野党の安宅ごときに政府が妥協するのはけしからぬという意味の文章が載っかったことがあるのです。しかし、それで私はいいと思っている。そういう声があるのですから、明白だからいいではないか、安宅君とあなたおっしゃるけれども、ぜひ私はそういうことなどを考えて、重ねて文書にして、もぐり出すというのでしょうか、締めるとこの辺からもぐり出す、これを抑えなければならない、こういう意味で書面にして、ぴしっと協議をして、私は、そういう意味では前例に従って坂井さんも入れて結構ですから、担当の政府の方々ときちっと文書にしたこの前の五十一年の二月二十七日のような、そういうものを改めてつくりたいというのが私の願望なんです。あなた必要でないとおっしゃるのですけれども、私は委員長に申し上げますけれども、これはやはり重大なことだと思うのです。重大なことだからこそ、三木内閣のときはそういうふうに処置をとったのです。前例がある。ですから、この点についいてただいま私は名前まで出して言いましたが、これらの諸君と協力をして、そして書面をつくることについて政府と協議する、こういう立場をとって、同じような書面をぴしっとしたい。こういうことについていろいろ意見がまだ一致しないようですけれども、前例があるのですから、予算理事会でそういうことを協議してもらう、ぜひそういうことで御処置を願えないかというのが私の願いであります。いかがでしょう。
  368. 田中正巳

    田中委員長 本件については理事会で御相談いたしたいと存じます。
  369. 安宅常彦

    ○安宅委員 総理の顔を見ていると困難なことを予想されるような気がいたしますが、これはやはり日本の国家の将来のために必要なことだと思っておりますから、ただいまの委員長の処置に感謝をいたします。  次に私が質問したいのは、これは去年の一月三十一日であります。本委員会において、当時荒舩さんが委員長でありました。小林進さんの同じ日の予算理事会においての提案によりまして、在日韓国人のいわゆる政治犯と言われる諸君が大変大量に向こうの地に連れていかれたり、あるいはおびき出されたりして、いろんな手段で向こうに行った。その途中でばっさり逮捕される。そして、何か北のスパイであるとかいろんな理由で死刑を宣告されるという人がうんと多くなっておったわけです。その中で、松戸市の馬橋においてパチンコ店を開いている崔哲教さん、あるいは東京都内で喫茶店やその他を開いている、しかも大韓民国居留民団の有力な幹部である陳斗鉉という人は、彼らが言う祖国の建軍記念日に招待され、副団長として行っているのです。副団長が逮捕される。こういうような、もう明らかにアリバイもあり、はっきりしているこの人たちについて、まあいろいろ政治的な問題はあるでしょうけれども、人道的な立場からこの釈放を要求すべきではないかということになり、理事会でそれを満場一致で決定し、本委員会で荒舩委員長がそこで提議をされました。安宅君、奥さんたちを知っているようだから、ひとつ呼び寄せてくれないかと言われ、あわてて午後から吹っ飛んで行って、買い物に行っている奥さんなんかをやっと夕方間に合わせまして、ここに出頭してもらって、荒舩委員長がここで握手をして、みんなの意見で満場一致で釈放を決議したのだから、あなた方の御主人は必ず助けてあげますと言ったのです。その結果、この決議を尊重いたしまして、政府においても努力をいたしますという、当時の内閣官房長官井出さんの発言がありました。まさに劇的な場面でありましたが、その後政府は一体何をしたのか。私はそういう問題にかかわった一人として、じくじたる思いをこの人たちのお二人の奥さんに対してしているのです。崔哲教という人の奥さんなどは、五人の小さな子供を抱えて大変苦労していますね。アリバイや何かはあるのです。こちらは、日本の法律で言うならば証拠主義、向こうは徹底した拷問などを含めて、そうやらないときもあるかどうか知りませんけれども、自白主義です。ですからどんなことでもできる。あるいはまた、きょうは何も申し上げませんけれども、そのうちやらなければならないのですが、ある人が努力して、朴大統領の特別の許可を得て、そして無期懲役だとかそういう人が突然釈放されてくるなどということができる国家なんです。これは私どもは非常に残念だと思いますね。日本の外交などはよほど腹を据えてかからないとえらいことになる。こういうことが行われているさなかでありますから、私は官房にもあるいは外務省にも、一体どうなっているのだということを何回も催促いたしましたが、遅々として進んでいないようであります。官房長官、このことについて引き継ぎはあったと思います。内閣官房として官房長官がここで釈放に努力をいたしますと言ったのですから、どんな努力をなされたか、その努力の上に立って現在どういう結果になっているかということを御報告願いたい。
  370. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 官房長官の前に所管でございますので……。  ことしの三月十七日にもこの問題につきましてお話がございました。その後の経過でございますが、私も朴東鎮外務部長官との会談の際にもこの点につきましては御趣旨の点を申しました。韓国人が韓国の法令を犯したということで韓国の司法権に服しているわけでありますが、しかし、その家族は日本に長年おられる方である、そういう特殊な関係にかんがみまして、日本政府としても重大な関心を持っているのだということを申し述べたところでございます。なお、その他折あるごとにこの点については申し上げ、わが方の希望を申し述べておるところでございます。  なお、詳細はアジア局長からでも御答弁させていただきたいと思います。
  371. 園田直

    ○園田国務大臣 昨年一月三十一日の本委員会における崔哲教、陳斗鉉氏に関する問題は、申し送りはありませんでしたが、詳細は承っております。ここで決議された次の月の二月四日に、中江アジア局長が向こうにこの決議の趣旨に従って申し入れをした。向こうでは、在日韓国人で韓国で裁判をしたので、これは韓国の司法の問題であるという立場をとっておるそうでありますけれども、しかし、在日韓国人であってもすでに日本の社会構成をしておる一人であり、人道上の問題だからぜひお聞き届け願いたいという努力をし、その後逐次やっておりまして、先般の日韓会談でも鳩山外務大臣はこの問題に触れて努力をしたということでありますが、これ以上は所管外でありますから勇み足にならぬようにいたします。
  372. 中江要介

    ○中江政府委員 本件がこの予算委員会の席上取り上げられましたのが、昨年の一月三十一日の土曜日のことでございまして、これは急を要する問題だということでございますので、すぐに在日韓国大使館に連絡いたしまして、翌週の水曜日の二月四日に、いま園田官房長官が言われましたような申し入れを私いたしまして、先方の反応は、いま申されたとおりです。  その後、機会あるごとに、この件につきましては韓国の司法に介入するという立場からではなくて、日本における関心の重大さ、またこれの取り扱いが長い目で見た日韓関係に及ぼす影響というような高い見地から取り扱ってもらいたいということを繰り返して申しております。ことしに入りましてからは、たとえば五月十四日に大森アジア局次長から在京大使館の参事官に対しまして、このときは、たしか同じく安宅先生から御指摘のございました在日韓国人の向こうでつかまっている者の現況その他についてもっと正確な情報が欲しいということも含めまして、昨年の一月の予算委員会の関心事を繰り返しております。また、七月の十六日にも、外務省の遠藤北東アジア課長から、在京大使館の書記官に同様の趣旨を申し入れております。それにもかかわらず、まだわれわれの関心を満たすよりな結果が出ておりませんので、先ほど鳩山外務大臣が言われましたように、定期閣僚会議の際の両国外務大臣の個別会談の席で正式に取り上げていただきまして、われわれの関心を示しているというのが現状でございます。
  373. 安宅常彦

    ○安宅委員 日本国会予算委員会で取り上げられた問題が何ら効果を奏さない、これは死刑を宣告されているのですね。再審要求をしてやっと受理されておるのですね。普通できないのですよ。だから、そういうことがあったからそうなったかは別として、死刑の宣告をされている。このことについて荒舩清十郎先生が、この間ちょうどそこの席に来ましてね、安宅君、あれはどうなったんだ、私も予算委員長でないからだけれども、あれは六十何人くらいそういうのがいるんだそうだな、君、朴政権はあんなことばかりしていたらひっくり返ってしまうな、こういう話でした。みんな心配しておるのですよ。それで私は言いますが、たとえば崔哲教という人の奥さんが、この間健康保険税、さっき税と言っておると川俣さんが言いましたね。このことで、おやじさんはもうすでに閉鎖をされて、コンピュータから消えておるのだ。だからいないのだけれども、今度奥さんの名前で健康保険税をやる。あるいは不動産に関するいろいろな税金も、おやじがいないのだからあなたの名前だ。不動産はおやじの名前を勝手に変えるわけにいかないでしょう。そして税金を納めるはずだと思って奥さんの名前で来る。それからパチンコの事業のことも、これは奥さんが前から経営しておることがその後わかりましたけれども、すべて奥さんの名前で来る。小さな子供たちは、うちのお父さんはもう死んだのか、そういうことで、教育上の問題から何まで、お父さんは何ら悪いことをしたのじゃないのですよと言っても子供が承知しない。そういうことを考えて、登録令からあるいはまた出入国の問題からいろいろ欠陥があるようです。私は、いろいろな局面でこういう人々がたくさんいるのだということを皆さんにわかってもらうために一例言いましたが、今後も必死になって努力をするつもりでありますが、政府も一片の答弁ではなくて、さらに努力をしていただきたいということをお願いいたしまして私の質問を終わります。
  374. 田中正巳

    田中委員長 これにて安宅君の質疑は終了いたしました。
  375. 田中正巳

    田中委員長 この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。  来る十七日、日本銀行日本住宅公団及び海外経済協力基金から参考人の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  376. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次回は、来る十七日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時二十四分散会