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1977-10-14 第82回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月十四日(金曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君   理事 小此木彦三郎君 理事 栗原 祐幸君    理事 澁谷 直藏君 理事 細田 吉藏君    理事 山下 元利君 理事 安宅 常彦君    理事 武藤 山治君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    伊東 正義君      稻村左近四郎君    越智 通雄君       奥野 誠亮君    鹿野 道彦君       片岡 清一君    金子 一平君       川崎 秀二君    木野 晴夫君       藏内 修治君    櫻内 義雄君       始関 伊平君    白浜 仁吉君       中村  直君    福島 譲二君       藤井 勝志君    堀内 光雄君       松澤 雄藏君    松野 頼三君       井上 普方君    石野 久男君       上原 康助君    大出  俊君       川俣健二郎君    小林  進君       佐野 憲治君    多賀谷真稔君       藤田 高敏君    谷口 是巨君       広沢 直樹君    伏屋 修治君       二見 伸明君    大内 啓伍君       田中美智子君    寺前  巖君       大原 一三君    菊池福治郎君       田川 誠一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         通商産業大臣  田中 龍夫君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 長谷川四郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       小川 平二君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      宇野 宗佑君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         科学技術庁長官         官房長     半澤 治雄君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省条約局長 大森 誠一君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         大蔵省国際金融         局長      旦  弘昌君         国税庁長官   磯邊 律男君         通商産業大臣官         房長      宮本 四郎君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         中小企業庁長官 岸田 文武君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省職業安定         局長      細野  正君         労働省職業訓練         局長      岩崎 隆造君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治省財政局長 山本  悟君  委員外出席者         参  考  人         (成蹊大学教         授)      肥後 和夫君         参  考  人         (日本労働組合         総評議会事務局         長)      富塚 三夫君         参  考  人         (全日本労働総         同盟書記長)  前川 一男君         参  考  人         (三菱商事株式         会社会長)   藤野忠次郎君         参  考  人         (前税制調査会         会長)     小倉 武一君         参  考  人         (東京経済大学         経済学部長)  富塚文太郎君         参  考  人         (全国公団住宅         自治会協議会事         務局長)    岡田 隆郎君         参  考  人         (東京大学経済         学部教授)   貝塚 啓明君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      森永貞一郎君         参  考  人         (日本住宅公団         総裁)     澤田  悌君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 十月十四日  辞任         補欠選任   木野 晴夫君     福島 譲二君   笹山茂太郎君     鹿野 道彦君   根本龍太郎君     堀内 光雄君   松野 頼三君     中村  直君   森山 欽司君     片岡 清一君   浅井 美幸君     谷口 是巨君   矢野 絢也君     伏屋 修治君   安藤  巖君     田中美智子君   寺前  巖君     不破 哲三君   大原 一三君     菊池福治郎君 同日  辞任         補欠選任   鹿野 道彦君     笹山茂太郎君   片岡 清一君     森山 欽司君   中村  直君     松野 頼三君   福島 譲二君     木野 晴夫君   堀内 光雄君     根本龍太郎君   谷口 是巨君     浅井 美幸君   伏屋 修治君     矢野 絢也君   不破 哲三君     寺前  巖君   菊池福治郎君     大原 一三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十二年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十二年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十二年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三件を一括して議題とし、本日は、財政経済問題について政府並びに参考人に対する質疑を行います。  午前中の参考人として、成蹊大学教授肥後和夫君、日本労働組合評議会事務局長富塚三夫君、全日本労働同盟書記長前川一男君の出席を願っております。  参考人各位には、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して、厚く御礼を申し上げます。  参考人各位には、委員質疑にお答えを願う方法で御意見を承ることにいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥野誠亮君。
  3. 奥野誠亮

    奥野委員 私の持ち時間は三十分間だけでございますので、もっぱら肥後教授にお尋ねをいたしたいと思います。若干私見を交えてお尋ねすることをお許し賜りたいと思います。同時に、簡潔にポイントだけお教えいただければ幸いだと考えます。  このごろ、私、来年の春卒業いたします学生諸君から就職の相談をたくさん受けております。ある商社は、七十数人採用すると言っておったのが、ごく最近になりまして、先行き見通しが立たないから十数人に減らしましたという話がございました。また、ある有力な企業はことしは採用しないというような方針を聞かされたりもいたしまして、大変厳しいなという感じを持っているわけでございます。  企業の中には、経済先行きについて自信を喪失していると見られるところもあるようでございます。世界的な経済構造変化を伴った混乱の時代でございますから、やむを得ないとも思われるわけでございます。それだけに、新しい日本経済のあり方、新日本経済論といったようなものが学界や民間から打ち出されてまいりまして、人心を前向きに転換させる必要があるのじゃないかと思っているわけでございます。  それはそれといたしまして、九月初め、政府総合景気対策を立てまして、七項目事業費二兆円、公定歩合〇・七五%引き下げを決めたわけでございます。これに関連いたしまする補正予算案が当委員会におきまして審議されております。その過程で、この程度の経済政策財政政策では不十分じゃないか、あるいはまた六・七%経済成長、その率を達成することは疑問じゃないか、あるいはまた、政府公債依存度三〇%歯どめにこだわり過ぎているではないかというような意見が出されておるわけでございます。  そこで、まずこの三点を中心所見をお伺いいたしておきたいと思います。
  4. 肥後和夫

    肥後参考人 いまの奥野先生の御質問に対して、その分ではないかもしれませんが、私見を述べたいと思うのでございます。  今度の不況は、一般に言われておりますように、オイルショックで油が四倍に値上がりしたということを直接のきっかけにしているわけでございますが、従来の高度成長重化学工業中心にして、それが牽引力になりまして高度成長が続いていたわけでございますので、このエネルギー消費型の重化学工業牽引力がなくなってしまった。そこで一〇%の経済成長率がほぼ半減するということになったわけでございますが、重化学工業中心のこのような高度成長型の経済構造を変えない限りは、資源エネルギー価格が上昇したという環境下での日本の新しい経済軌道というものがなかなか確立できないのではなかろうか。そういう意味で、今回の景気回復は、たとえばよく言われますように、四十年度の不況からの景気回復とは全然性質が違うものではなかろうかと思っております。そういう意味で、かなり息の長い対策が必要ではなかろうか。  かつて第一次欧州大戦輸出の増加をてこに非常な高度成長をしまして、その後、大戦後の世界不況の中で日本経済体質改善に要しました期間はほぼ十年かかっておりますが、今回どのくらいかかるかということは別にしまして、このような高度成長から一転して安定成長軌道を模索しなくちゃならないという意味では、かなり時間がかかるのではないか。その意味で、やはり短期決戦景気回復を考えるということは将来に非常に禍根を残すのではないか。  そのような考え方から申しますと、その三〇%というガイドラインの根拠は何かと言われますと、特にありませんけれども、三〇%という公債依存度は、まさにその第一次大戦後の景気回復に当たりまして高橋財政がとった景気刺激、そのときの一般会計依存度がやはり三〇%台でございまして、それ以外になかったわけでございます。それで、高橋財政は確かにあのときに劇的な効果をあらわしましたが、その前十年間、かなり体質改善の悪戦苦闘がありまして、それがあったからこそ効いたのだというような見方があると思うのでございます。しかし、その高橋財政も、ではもっと長期に見て果たして成功であったかといいますと、結局、日銀引き受け公債発行というような、いわゆる公債劇薬であるというタブーを高橋財政はあえて破られて、自分が破った後その公債漸減政策に命をかけられたわけですが、結局、財政需要、当時は軍備でございますけれども、その拡充に対して歯どめができなかったということがございますので、やはり三〇%といいますと高橋財政をほうふつさせる依存度でございますから、これはかなり大変な公債依存度である。外国の現在の公債依存度日本の半分以下、フランスあたりになりますとはるかに小さいわけでございますから、こういうことからしましても、やはり三〇%ラインというのは守るべきではなかろうか。  このような財政規律が必要な理由は、やはり一つは、現状のようにすでに三年間赤字国債を発行しておりますが、その利子負担が増高する危険がある。これは財政収支試算の五十五年度の姿を見ましても非常にその危険があります。利子負担が非常に大きくなりますと、これは硬直化を起こしまして、財政機能を阻害すると思うわけです。  それから、やはり公債は麻薬でございますから、劇薬でございますから、痛みどめには効きますが、公共部門サービス民間部門サービスとの選択は、税金を負担するという痛みを通して、そのどちらを選ぶかという選択を厳しくやっていかなくちゃならない。それがその動機が欠けてしまいますので、やはり政府部門を肥大化させる危険が非常にあると思います。結果としては、最終的に、では詰まってきたらどうするかというと、結局インフレを起こしてつじつまを合わせるよりほかなくなるのじゃなかろうか。  それから将来の資本蓄積という点でも、現在、税で賄うべきサービスを税で賄わないということは、それだけ将来の生産力を阻害するということになりますので、世代間の不公平という点でも問題が起こってくるということでございまして、一般会計でとにかくやれる限度は、やはり三〇%というようなガイドラインの中でやりくりするよりほかないのではなかろうか。  当然、それで足りない分は財投を使うということになりますが、財投につきましてもやはり原資に限界がございます。その限度内で財投を使うべきではなかろうか。しかしながら、財投にもそのように限界がございますので、それを超える部分につきましては、これは民間に金が余っているわけでございますから、この民間資金を活用して、たとえばエネルギー電源開発に使うとか、その他先生がおっしゃいますように、住宅に使いますとか、いろいろそういう対策はあろうかと思うのでございます。  どうも前後しましたが、その住宅でございますけれども、今度の経済企画庁経済見通しの改定によりますと、さっき申し上げましたような重要な経済基調変化がありましたために、民間設備投資民間在庫投資は当初経済企画庁が想定したような見通しどおりにはなっていないわけでございまして、これが大幅に下がっておる。したがいまして、いま期待できるものは、民間投資あるいはその他民間部門で不足しているところの電力部門設備投資あるいは備蓄その他ということになろうかと思っております。
  5. 奥野誠亮

    奥野委員 長期的に対応していかなければならないというお考え方、私もよく理解できるわけでございます。本年度当初、政府経済見通し国際収支赤字を予定しておったわけでございますけれども、今日、大幅な黒字を続けております。国外では日本経済への批判も強まっておりますが、この批判にもこたえ、他面、国内景気の高揚を図る、そのために経済拡大政策を講じているところであるわけでございます。  ところが、十月に入りましてから円が急に上がり出しまして、二百六十六、七円だったのが、きのうは一時的には二百五十三円というような相場も出てまいってきているようでございます。このように急激な高騰が出てまいりますと、輸出がダメージを受けるわけでございます。また、外に品物がはけませんから、国内で競合して値段が下がっていくということにもなりますので、試算をする人の中には、円が十円上がるとGNPが一%下がるというようなことを言う人もあるようでございます。私はちょっとこれは強く影響を見過ぎている、こう思いますけれども、しかし円高デフレ効果を持つことは言うまでもないと思います。  いずれにいたしましても、せっかく景気浮揚を図っているさなかにこのような急激な円高は、この経過を削り取ってしまうことになるわけでございます。したがいまして、さしあたり短期的にはドル減らしに最善を期することが大切だ、こう考えております。  政府もすでに九月の二十日に「対外経済対策の推進について」というものを公表いたしまして、ドル減らし対策なども明らかにしておるわけでございます。しかし、私はもっと大胆かつ速急にこれを実施していかなければならない、こう考えるものでございまして、政府が決意すればできるものは、食管会計の小麦でありますとか、畜産振興事業団の牛肉でありますとか、こういうものはできるわけでありますから、繰り上げ輸入が可能だし、場合によっては長期契約を結んだらいいじゃないか、資金の前渡しもやったらいいじゃないか、価格はそのときどき決めればいい、こんな考え方も持っているものでございます。  やや長期的には住宅投資拡大を急ぐべきだ、こう思います。わが国は高い貯蓄性向を示しているわけでございます。私は消費をふやしてこれを減らすという考え方よりも、貯蓄を有効に使う工夫の方が大切だと考えておるものでございます。国民経済をマクロに見ました場合には、貯蓄企業設備投資に向けられる、在庫の積み増しに向けられる、住宅投資に向けられる、国や地方政府赤字に向けられる、公債を発行してこの貯蓄を使っていくということであります。その残りが国際収支赤字になったり黒字になったりしていくものだ、こう考えているものでございます。  現状国際収支黒字が大幅にふえておるわけでございまして、むしろ控え目にしていかなければならない国際情勢でございます。そうしますと、貯蓄を積極的に企業設備投資に向ける、政府赤字に向けていく、あるいは住宅投資に振り向けていくということになるわけでございますが、企業は萎縮して設備投資を期待することは困難でございます。国や地方赤字も、いまお話しになりましたように、限界を考えていかなければなりません。そうなりますと、住宅投資に振り向ける以外にはないではないかということになるわけでございます。日本現状は、衣食住のうち住がまだ不十分でございます。この現状にもマッチしている、こう考えるわけでございます。政府施策住宅ばかりじゃなしに、民間自力建設などにつきましても十分な配慮が望ましいと思います。  住宅金融公庫融資を例にとりますと、これまで戸数に力を入れて、せっかくありました土地融資を打ち切ってしまいました。限度額を上げてきたものの、まだ五百万円が限度でございます。やはり家の建つだけの金額の融資の道を早く打ち出していかなければならない。と同時に、自動車をつくりましても道路がなければ走れません。やはり宅地の問題が大切だと考えております。このままにしていきますと、やがて宅地不足が生じてくるのじゃないか。いまにして宅地供給総合施策を打ち立てていかなければならない、こういう考え方も持っておるものでございます。  私は、日本経済現状に対しましては、短期的にはドル減らし、やや長期的には住宅投資、これに相当な力を注いでいかなければならないと考えておるものでございますが、簡潔に御所見を伺いたいと思います。
  6. 肥後和夫

    肥後参考人 まさに先生のおっしゃったとおりでございまして、やはり日本経済としましては、私も貯蓄を有効に活用して生産性を上げていくようにするというのが一番大事なことではなかろうかと思います。そして長期的にはやはり住宅に相当な力を注げという先生の御指摘にも賛成でございます。この総合経済対策、私は、四十一年度に比べましても、総合経済対策の七項目というのは、実に微に入り細に入り、一応現在の三〇%ガイドラインの中でとり得るあらゆる手段をきめ細かくとっているという点は、評価せざるを得ないと思っております。しかしながら、住宅金融公庫融資、それから民間金融機関住宅ローンを使ってとにかく住宅政策をどんどんやっていくということは大事であると思います。財投には限界がございますので、民間資金を活用することは大事だ。  その際に、もう一つ神経を使わなくちゃならないのは、住宅の地価が必要以上に上がって、そしてこれが個人住宅建設を阻害する結果になってはならないというふうに私は思っております。そういう意味で、従来の土地税制は、四十七、八年のあのブームに水をかけるために使われたわけでございますが、土地の仮需要の抑制と供給の促進についてはかなりきめの細かい対策を講じているのではなかろうか。土地供給余力はやはり大都市圏近郊農地ということになりますが、こういうものについてはかなり特別控除するとか、分離課税をするとかということをやっておりますし、有効な宅地供給に現在の土地税制阻害要因になっているかどうかの判断は非常に慎重であるべきではなかろうか。さらに、土地利用計画との兼ね合いもありますので、その辺を慎重にお考えになるべきじゃなかろうかと思っている次第でございます。
  7. 奥野誠亮

    奥野委員 土地税制のことをお伺いしたわけじゃございませんでしたが、私は、土地税制を大いに手直しをしなければならない、こういう判断をしておるものでございまして、ここでは議論を避けておきたいと思います。  次に、日本経済長期的に見ました場合には、私は研究投資に大いに力を入れるべきだという判断をいたしております。  参議院選挙アメリカに参りまして、私がダットサンに乗っておった。これを駐車させておきましたところが、アメリカ人が何人も何人も、ダットサンだということで、いかにも欲しそうに中を何度も何度ものぞき込んでいる、そういう姿に接しました。また、シカゴで日本テレビ輸入急増、これが大問題になっていたときでありますけれども、ソニーに関しましては、値段が高い、品質も評価されている、何ら問題になっていない、こういうことも知ったわけでございました。  そういうところから、同じような種類の品物を安く売り込むとなりますと、ダンピングなどの批判が起こってくる。外国に生産されていないようなものを売り込んでいく、品質の違うものを売り込んでいくなら問題は生じてこないのじゃないか。日本はこれまで欧米の文化を学びながら、欧米に追いつき、追い越す努力をしたわけでございます。これからは新しいものをつくり出していく、創造に力を入れて、創造を通じて世界に貢献する日本になっていかなければならない。そうなりますと、学術研究にうんと金をつぎ込んでいこうじゃないか、こう思うわけでございます。その成果は技術革新を生むわけでございますし、技術革新設備投資にもつながっていく、こう考えるわけでございます。  そういう意味で、小さい話ですけれども、租税特別措置法研究費全額控除などの制度は残していかなければならない、私はこんな気持ちを時っているわけでございます。今度の補正予算でも景気浮揚のために公共事業に力を入れていますけれども、同時に私は、研究投資もそういうことで活用できたのではないだろうか、サンシャイン計画などにも研究投資が振り向けられればよかったんだがなと、こんな感じも持っている一人でございます。  若干話はそれますけれども、イリノイ大学の数人の教授といろいろ懇談をいたしました。その際に、コンピューター関係のある教授は、日本では通産省から企業補助金が交付されている、しかしこれは研究助成のようだ、しかし通産省から企業補助金が交付されているものだから、日本企業国家が加担をして輸出攻勢をかけているんだ、不当な競争をしていると非難していますよ。だから、研究助成なんだから文部省に移しかえて、文部省から、条件が同じなら、個人であっても企業であっても助成の対象にしますと、こういう姿勢をおとりになればいいじゃありませんかということを、口を酸っぱくして強調されておりました。  今日なお日本経済の運営につきましては海外から多くの批判がなされておるわけでございます。日本経済もこれだけ大きくなったわけですから、私はここで具体的な例を挙げていくことは避けておきますけれども、従来のやり方に甘えていないで、また目先の利益にとらわれないで、国際的かつ長期的な視点に立って国際経済の友好関係を確立していくための努力、それを企業政府も行っていかなければならないんじゃないか、こんな気持ちを持っているものでございます。  この研究投資についてどのようなお考えをお持ちか、簡単にお話をいただきたいと思います。
  8. 肥後和夫

    肥後参考人 エネルギー消費型の産業構造を省エネルギー型に変えていくための技術開発が必要である、それから現在の景気停滞の一つの大きな原因は、すでに三十年代以降導入された新技術が一巡してしまっている、やはり新しい技術革新のための相当な投資が要るということは、先生のおっしゃるとおりでございまして、そういう意味で、租税特別措置のうちの研究開発に関する措置が、効率的に、前向きに使われるということは非常に望ましいことではないかと思っております。そのようにひとつ御努力をお願いしたいと思います。
  9. 奥野誠亮

    奥野委員 次に、国と地方の財政の関係についてお尋ねをしたいと思います。  私は、これは車の両輪のような密接な関係にあると考えておりますし、今度の政府総合施策の中でも、わずかではありますが、単独事業債千五百億円が掲げられまして、二兆円の片棒をかついでいるわけでございます。来年度地方団体が施行を予定しておったけれども、ことしに繰り上げて施行してもよいというようなものなど報告を集めて積み上げたものだと思います。したがいまして、工事の施行は確実に行えるわけでございますから、景気浮揚には地方団体も協力していくことになると考えるわけでございます。  五十二年度当初の地方債計画の中で市町村の道路事業債二千五百億円、また六月に景気浮揚を兼ねまして都道府県の道路事業債に千五百億円追加され、今回また千五百億円追加になったわけでございます。こういう道路事業債などは、道路の延長で地方団体に資金を配分する。どの道路に使うかは地方団体に任せる、起債の許可だけはするという運営がなされておるわけでございます。一件一件審査をしてくちばしを入れるようなことをしないわけでございますから、地方債について許可制度がありますけれども、地方団体の自主性が尊重される。私は、やはりこういうかっこうで運営されていかなければならない、こう考えているものでございます。  先ごろ東京都知事は、東京都が地方債を起こす場合には自治大臣の許可を受けなければならない、これは違憲だ、訴訟に訴える、こういう姿勢を示しておられたようでございました。地方自治法には、地方公共団体は地方債を起こすことができるとしながら、他の個所で、当分の間、自治大臣の許可を受けなければならない、こう書いている。「当分の間」と言いながら、もう三十年もこれを続けているじゃないかというようなことも、私は違憲訴訟を考えられた原因の一つのように伺っているわけでございます。  私はこういう衝に当たってきた人間でございまして、日本が戦争に負けましたときに、占領軍から、内務大臣が地方団体に持っている許可権限洗いざらい出してこいという命令を受けたわけでありまして、そして地方債についての自治大臣の許可権限も外せ、こう言ってきたわけであります。ところが、司令部の中で経済科学局、ESSの方では、そんなことをされるとインフレが促進すると反発が起こったわけでございまして、司令部の中でGSとESSの対立の結果、当分の間許可を受けなければならない、こういう規定になったわけでございまして、私は、財政の役割りとしては景気の調整や資源配分などがあるわけでございますから、地方債の発行総額やその資金の事業別の振り向け先などは国と一体的な考えで運用することがより効果を上げるのではないか、こう考えておりますし、その接点というものが許可制度になるのではないか、こう考えておるわけでございます。許可制度は残すけれども、この運用に当たっては一件審査はなるたけやめて事業費ごとに枠配分をしていく、それでそれをどこにどう使用するかは地方団体の自主性を尊重していく、こういう行き方が望ましいのではないか、私はかように考えておるわけでございます。  たまたま起債訴訟などが持ち出されておるわけでございますので、私は、地方団体が孤立的な地方自治運営に堕さないようにしていきたい、国と地方が責任をなすりつけ合うのではなくて、助言と協力の関係で行政効果を上げていく工夫をすることが都民のためにも国民のためにも大切ではないか、こう考えておりますので、これについて所見を御一言いただければと思います。
  10. 肥後和夫

    肥後参考人 日本の国と地方の財政関係は、アメリカやイギリスの場合と違いまして、行政事務が重層的に、国の事務も地方の事務も最終的には地方の窓口を通じて行われるという形になっておりますので、地方自治を強く主張される地方団体と、それから全国的な視野で物を考える国とで立場が違いまして、必ずしもその円滑な協力関係が現在確立しているとは残念ながら言えないわけでございますが、先ほど御指摘のように、曲がりなりにも、地方交付税が足りない場合の貸し借りの問題でありますとか、あるいは景気調整についての特別地方債の発行でありますとか、そういう形で現在協力関係ができていることは事実でございまして、やはり地方自治の立場を尊重しながら国と地方との間に本当に適切な関係というものを樹立していく努力が今後も必要であると思います。  現状では、国の場合も地方の場合も、高度成長が十五年も続きましたので、高度成長型の体質を持っておりまして、これを変えていかなくちゃならない。それは相当時間がかかるのではないか。その中でやはり限られた資金を国と地方とで分け合う、あるいは地方の中で富裕団体とあるいは貧困団体とで分け合う、そういうような必要という点からいきますと、現在にわかに許可制度を撤廃するというのは時間尚早でありまして、現在の枠内で、将来景気回復が起こった場合にクラウディングアウトが起こる危険は非常にあるわけでございますので、それに備えて適切な資源配分の努力を国と地方の間で重ねていくというふうに私は期待したいと思っております。
  11. 奥野誠亮

    奥野委員 ありがとうございました。
  12. 田中正巳

    田中委員長 次に、多賀谷真稔君。
  13. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 本日は、労働四団体から一緒にきていただきまして、大変ありがとうございます。  そこで、現在の深刻な雇用情勢、また、将来にわたりましてもだんだん中高年齢者の労働力が多くなる、こういうことを考え、また一方においては資源の制約あるいはまた先進諸国における貿易のいろいろなわが国に対する批判、さらに発展途上国からの追い上げ、プラント輸出をすれば逆にまた逆輸入をされる、こういう非常に深刻な状態を考えると、今日もあるいは将来も雇用問題についてはなかなかむずかしい情勢にあると思います。  そこでまず、総評の事務局長の方から、現在の雇用情勢について労働団体としてはどういうように把握されておるか、お聞かせ願いたい。
  14. 富塚三夫

    富塚(三)参考人 現在の失業の状況、状態をどう見るかということでありますが、七月の完全失業者は百五万人、失業率は二・一三%というふうになっています。これは一九五九年以来最高の水準であって、七月という時期に百万人の完全失業者を出したというのは過去に例がないというふうに見ています。しかも中高年齢層の失業が目立っている。さらに八月以降もますます悪化していくという方向が政府統計によっても示されているというふうに見ています。  以上のように失業問題が深刻な局面を迎えまして、大きく社会問題化されつつあることをわれわれ労働者側は深刻に受けとめています。この短期的な情勢の深刻さに加えまして、中期的に見ても日本の雇用情勢はきわめて暗いというふうに見ています。  その第一は、経済の中期的な見通し、すなわち経済の成長率、物価あるいは雇用問題などの見通しがきわめて不確定であり、暗いということであります。いまやスタグフレーションは世界的問題となっていますが、輸出依存型の成長はもう望めないというように考えています。また今日、個別企業がやっています減量経営方式といいましょうか、これは縮小再生産型であって、これからの日本経済も、また雇用の問題も悪化する一方だろうというふうに見ています。  いま心配されていますのは、減量で生産性を上げましても、競争力をつけるだけであって、それはマクロでは円高になるだけであり、円高という問題はさらに新しく中小企業や産業の淘汰を引き起こして、社会不安も起こしていくものと見なければなりません。したがって、労働者の雇用の不安もさらに増大をする、増幅をするというふうに見ています。  結局、マクロの立場では、労働組合や野党各党の皆さん方が主張しているように、個人消費拡大したり、福祉の充実を図ったり、生活基盤型公共投資を積極的に行っていくことを基礎とするような日本経済の転換、このことが大事ではないか、そのことが展望を切り開いていくことになるのじゃないかと考えています。  このように国内需要の充実に何よりも重点を置かなければならないのに、私どもから見ますと、政府の対応は非常に立ちおくれているだけでなくて、福田総理を中心とする自民党内閣の政治姿勢、さらには個別企業への対応は、逆の方向、反対の方向を向いているのじゃないかというふうに見ています。すなわち、政府が発表した九月初めの総合景気対策や今次臨時国会に提案をされています補正予算案も、今日の雇用危機の深まりに有効に対応できるとは見ることができないと思います。  第二に、低成長時代への転換はまだ終わっておらず、これからもさらに構造不況業種の拡大や二次産業から三次産業への転換など、雇用の総量の問題だけでなく、雇用の産業間流動はなお続くという危険性が残っていると見ています。雇用の構造上の変動が引き起こす雇用不安の高まりは一層顕著になっていくだろうというふうに考えます。  以上のことを考えてみますと、労働四団体は積極的に共闘を組んで、労働者のこの深刻な雇用課題に取り組まなければならない。画期的に労働四団体で具体的な政府要求の内容についてもまとめ上げまして、本日午後に政府に対して申し入れる運びになっています。  私ども総評としては、特にこの秋から冬にかけて、この失業、雇用問題を深刻に考えまして、四つの方針を考えてみました。  一つは、この国会で一兆円の公共投資を中心にする補正、または一兆円の減税というようなことを考えられないか、その中で個人消費ということの拡大を図って雇用対策に充てることはできないか、これが第一であります。  第二は、構造不況業種対策として、失業防止雇用確保臨時措置法を成立をさせていただきたい。この点はいろいろな議論がされていることも承っております。  第三は、これらの産業に働く労働者に生活を維持するためのいろいろな救援活動を行っていきたい。  そして第四には、構造的な不況地域といいましょうか、失業が多発している地方、地域に対しまして、雇用対策を強化していきたい。すなわち、北海道などは二百海里問題で深刻な影響を受けている、九州の筑豊地帯は炭鉱離職者問題で大きな影響を受けている、あるいは沖繩は軍事基地の離職者が出ている、あるいは東北、山陰地方は誘致された企業が倒産をして離職者が出ているということなどについて、積極的な対応策を考えたいと思っています。  また、労働組合の当然の要求といたしまして、企業主に対しまして、経営者に対しまして、政府も奨励しているように、定年延長問題、そして週休二日、週四十時間に向けての労働時間の短縮、そして残業を規制して雇用の拡大を図るということなど、われわれは具体的な方針も打ち出しています。また、雇用確保のために労使間で労働協約の締結などを図るよう強く要求をしています。  大体こんなことを考えておるのでありますが、特に先ほども申しましたように、総評のみではなくて、同盟、中立労連、新産別——私と前川さんはきょう参考人ですが、中立労連の岡村事務局長、新産別の富田書記長は随行人で参っておりますので、労働四団体が失業防止ないしは雇用維持拡大について具体的な取り組み方の意見を統一をいたしました統一的な方針については、後で同盟の前川書記長の方から具体的に御説明させていただければ幸いと存じます。  以上であります。
  15. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いま富塚参考人からお話がありました労働四団体の統一要求について、同盟書記長前川さんから陳述を願いたいと思います。
  16. 前川一男

    前川参考人 同盟の前川でございます。  当面の雇用の問題が私どもにとって大変重要であり、そして緊急な問題であります。その意味で、労働四団体では十分な相談を経まして、そしてむしろある程度遠慮ぎみな気持ちを心に秘めながら、今度の臨時国会で雇用問題の重要な課題について十分な御審議をいただきたい、こういう観点で統一要求をつくりました。  今日の雇用情勢は、いま富塚さんからも話がありましたけれども、大変に悪化の傾向にあると思います。ちょうど二年前ごろには、むしろ明るさといいますか、そういうものに期待するという考え方が強かったわけでありますけれども、今日ではますます悪化をしていて、その見通しを立てることが大変に困難だという状況にあるかと思います。そして、社会全体の風潮としましては、雇用対策の強化ということについて、マクロの意味では全部が一致して私は賛成だと思います。しかし、具体的にミクロの面に入ってまいりますと、消極的な面が大変に強いというように考えるわけであって、雇用の改善と、そして今日の雇用不安の問題を除去していくということは大変重要な課題であろうかと思います。  その解決を図っていくためには、幾つかの視点からこれをとらえていかなければならないように考えます。すなわち総合的な対策を行っていかなければなりません。  まず第一番には、福田総理も主張しておられますように、五十二年度は六・七%の経済成長を達成するということであります。GNPも確かに数字の上では上昇いたしていることは事実であります。その中で、やはり業績の比較的順調であると考えられる企業というのは何らかの形でいわゆる雇用者を増加していく、そしてそのための社会的責任というものに対応してもらう、こういう姿勢をやはり国全体の中で確立をしていってもらわなければならないと思います。政府にしてもあるいは経営者団体にしても、やはりそのための指導、こういうものが必要かと思います。  それから二つ目は、構造不況対策は緊急の課題として私どもはとらえざるを得ません。ゆっくりした考え方はとても、これは問題が将来に大きく残ると考えております。したがって、今回の臨時国会におきまして臨時措置法の制定をぜひとも成立をさせていただきたいわけであります。可能ならば超党派的にひとつやっていただきたいという気持ちでございます。  そして、なぜ一体この構造不況業種を中心にいたしまして臨時措置法のお願いをするのかという点が一つ問題点としてはあります。考え方によっては、相当多くの部分というのは現行法の改正なりそれを補っていくことによってできるのではないかという意見もしばしば耳にすることがあります。しかし、それだけではとてもいまの状態に十分対応できる、そういう現状にはないのではないだろうかと思います。  そして、この臨時国会で、もし本当に国会が臨時措置法を制定をしていただけるということになれば、幾つかの点があると思うのです。  第一は、全体の雇用不安の解消に大変効果的なのではないかということを挙げます。  それから雇用関係法、いろいろこれは分散してあるわけでありますけれども、当面する重要課題についてそれを総合的に取り上げてもらったという効果も考えられるわけであります。  それから、予算との関係になってきますと、重要なことをやってまいりますと相当程度の予算のかかる分野もあります。そうなりますと、現行法を中心にして補っていくということになりますと、なかなか実際には十分な予算措置もできがたいといういまの実態にあるのではないかと私は考えるわけであります。  同時にまた、この問題は先ほど申し上げたように緊急性のある問題でありますから、これをゆっくり、どうもじりじり一つ一つ審議会にかけてすべて相談をしているというわけにいかない、そういう緊急性を持っていようかと思います。  同時にまた、構造不況の問題については、もちろん考え方はいろいろあるでありましょうけれども、従来の経営姿勢に甘さがあったということを私は否定はしないわけであります。しかし、同時にまた、今日、石油ショックをきっかけにしまして国際情勢の急激な変化に対応していくという問題が派生をしていくのでありますから、したがって、これをすべて企業なり産業だけに期待をするといったような対策では、とうていこれは本格的な解決が望めない、そういうものなのではないかと思いますし、また、漁業のいわゆる従事者の場合には、これはやはり今日特殊事情にあるわけでありますので、この点も後から若干触れますが、慎重な御配慮をお願い申し上げたいと思います。  そこで、私どもが要求案として確認しました内容の概要について申し上げてみたいと思います。  以上のような前提を置きまして、まず第一に、積極的な景気回復政策の実施、雇用政策の全面的な見直し、これをお願いしたいわけであります。景気回復政策につきましては、私から特にここで申し上げることはないかと思いますが、もう一つの雇用政策の見直しの問題につきましては、もうすでに今日まで雇用対策基本計画が検討されて、そしてその方向に沿って実施に移されているわけでありますけれども、この情勢というのは、もうすでに大変大きな変化をしていることは間違いのないことであります。当時と今日の雇用情勢というのは、大きな変化をしております。当時は、この雇用問題というのは、緩慢ではあるけれども一歩ずつ改善の方向に向かっていくということが基本姿勢になっていたわけでありますけれども、しかし、それからもうすでにずいぶんと月日もたちましたが、むしろ全体的には、当時二%と言われた完全失業者は、昨日産労懇でお伺いしたところ、経済企画庁の方からの資料によれば、二・一%になっているというのが現状でございます。  それから二番目は、構造不況業種離職者対策臨時法の制定をぜひともお願いをしたいということでございます。構造不況業種として、雇用安定事業の指定業種、こういうように考えているわけでございますが、二年間の時限立法ということで、五十二年の十二月から発効するような努力をぜひともお願いを申し上げたいわけであります。もちろん時限立法ということについてはいろいろあります。先ほど申し上げたほかに、すべてを恒久立法にする必要はないという中身も当然あるわけでありますので、とりあえず二年という考え方を持つわけでございます。  中身は幾つもございますが、一つは職業転換給付金についてであります。指定業種を雇用安定事業の指定業種とすること、年齢制限の撤廃、就職促進手当の上限の撤廃、そして失業給付と同額にすること、訓練手当の大幅な引き上げなど、たくさんな問題がここにはあるわけでありますけれども、現在は雇用関係法がいろいろありまして、こういう重要な問題に対処するためには、指定業種にしてもある程度レベルを全体でそろえていきたいという考え方を強く持っているわけであります。  それから、雇用保険法第二十三条の個別延長給付を五十三年の一月以降もさらに二年間延長していただきたい。従来までやっていただいたわけでありますが、それをさらにひとつ延長していただきたいということと、年齢制限の撤廃などの問題であります。  三番目は、失業給付の期間を構造不況業種の離職者に限って九十日間延長をしていただきたいということでございます。私ども、いろいろこういう雇用情勢の悪化の中で、失業給付問題についてはずいぶんと検討してまいりました。今日までお願いもしてきたわけでございますが、財源その他を含め大変むずかしい問題もいろいろありますので、そういう点の配慮などを十分にしまして、今日の事情から見て、特に構造不況業種に限ってやはりある程度の延長をしていただきたいという考え方を持つわけであります。私どもとしては、保険料の引き上げについては、これは受けて立つという、そういう姿勢をとろうということが確認をされております。  次に、構造不況業種の離職者についてでありますけれども、離職者はやはりどこかで採用してもらわなければならないわけですが、その採用を促進するに足るいわゆる助成金の制度をつくっていただきたいわけであります。雇用してもらった場合には、その事業主に助成金を支給していただきたいという問題であります。同時に、助成期間は一年間と考えております。しかし、助成期間が終わったらまたやめてもらうというのでは、これはまた失業が出るわけでありますから、少なくともその後一年以内は義務的に解雇をしてはいけない、こういうものにしていただきたいと思っております。  職業訓練、再教育の問題につきましては、従来のものをさらに具体的に充実をしてもらう。同時に、それぞれ訓練を受ける人たちの力というものもみんな違っているわけですから、十分その人たちに対応できるような姿勢、あるいは地域によってはそういう施設のないところもあるわけですけれども、そういうものを含めて十分整備をお願いしたいということでございます。  なお、離職者多発地帯、再就職困難な地帯について、これはひとつ十分な措置をお願いしたいということであります。  それから大きな三つ目としては、雇用の拡大と安定措置についてということで、定年延長、継続雇用奨励金、高年齢者雇用奨励金、これを大幅に引き上げていただきたいと思います。同時にまた、現在、中高年法によりまして六%の高年齢者の雇用率を達成するために努力がされておりますけれども、はかばかしく進んでいないように思っているわけでありまして、身障者の雇用制度に準じて納付金制度を新設をして、そういう義務づけを行っていただきたいと思います。  雇用安定事業の運用に当たっては、給付の終了後、事前に労使協定なくして解雇をしてはならないというのは、先ほどのものにも関係をいたします。  同時にまた、雇用対策法に定める大量解雇の届け出、これについてもある程度のはっきりした目安を確立をしていただきたい、かように考えるわけでございますが、終わりに当たりまして、同盟として一、二の実態というものについて若干触れさせていただきます。  一つは繊維関係でありますが、ゼンセン同盟から寄せられた資料で申し上げますと、四十九年の二月から五十二年の八月までの三年半の調査におきまして、いわゆる事業所の縮小、それから倒産、閉鎖が六百八十八件起きております。雇用の変化としては、繊維関係だけで平均的に一七・七%の減を見ております。特にその中で紡績関係は三一%減でございます。同盟に加盟をしているゼンセン同盟の組織は、一番最高のときには繊維関係だけで五十七万四千人の組合員がおりましたけれども、五十二年の現在では四十一万七千人ということになっている実態は、いろいろなこの種のいわゆる雇用問題、そして雇用不安を起こしている現状を如実に物語っているのではないかと思います。  もう一つの例としては漁業関係でございますが、二百海里時代に突入をしまして、国際的な規制によって大変な問題が起きてきたことはもうすでに十分御承知のとおりでございます。そして船員の場合にはすべて船員法の中で運輸行政が行われているわけであって、雇用保険法もありませんので、したがって雇用安定資金もないわけでございます。あるいはまた、雇用対策法では、いわゆる船員は除外をされるということが法律の文章にはっきりうたってあります。そういうことが考えられまして、かつて厚生省の関係の法案などについても、いわゆる船員の場合には特別に二本立ての法律をつくった例もたくさんあるわけでありますけれども、それらを含めまして、漁業の離職者については特に慎重な御配慮をいただきたい、かように考えるわけでございます。  以上で、労働四団体で確認をされました内容の骨子についての御報告を終わりたいと思います。
  17. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 先ほど富塚参考人から、総評は、あるいは北海道における二百海里問題がもたらす失業問題、あるいは石炭を中心とする筑豊の依然とした不況状態、さらに東北あるいは山陰における誘致企業の倒産問題さらに沖繩における基地労働者の離職問題等について現地調査をした、あるいはする、こういうお話ですが、その実態はどういう状態でありましたか、お聞かせ願いたい。
  18. 富塚三夫

    富塚(三)参考人 十月の三日、四日、北海道に行ってまいりまして、総評調査団、現地の協力を得ましてやってまいりました。  私ども、行ってみまして、北海道は二百海里問題の影響が非常に大きいということを感じてまいりました。稚内、釧路、室蘭、小樽、いずれのところでも三割前後のいわゆる操短にならざるを得ない状況のもとでの失業者が出ている、ふえています。北海道全体で五十万人ぐらいの影響があるのではないか。これは五百万人の人口ですから、約一割が影響を受けているというふうに見てまいりました。そして現に二十九万人が季節労働者、出かせぎに出るという、そういう状況になっている。これは知事も認めておられました。そういう状況で、やはり前川さんも言いましたように、船員といいますか、漁船に携わっておる労働者の失業が、また魚を加工するというその関係者の失業が目立っているということなのであります。これは冬季を迎えるというこの時期にありまして、かなり深刻な状況であります。  ただ、道知事との交渉の中でも、正確な失業者の実態をつかみ得ないという弱さを実は持っています。保険の適用によってようやく掌握するといったようなことなどがあって、必ずしも十分になっていない。だから、私どもも協力をして十分実態調査を進める中で実態を掌握して、適切な援助を行って、対策を行っていくべきだろう、こう思っています。  それから、きのう帰ったのでありますが、一昨日ときのう、九州の筑豊地帯に七十八人の調査団で、実は二班に分かれて行ってまいりました。  ボタ山と老人だけが取り残されているというあの筑豊地帯、大変な状況だというふうに、私も初めて行ったのでありますが、見てまいりました。ほとんど老人たちは夢や希望を持てないという状況の中で毎日の生活を送っています。あの地帯で大体五万人前後の不完全就労者がいる。そして一万八千人前後が失対就労者ということの状況であります。これが来年になると半分に減らされる、失対事業の打ち切りという問題が大きな問題になって出てきそうであります。その不安は一層増大をされている感じであります。御存じのように、いまから十数年前、石炭産業、つまりエネルギー転換という中で失対事業を具体的措置としてとってきたのでありますが、それも打ち切られるという状況のもとでは、大変深刻に受けとめておられるというふうに見てまいりました。  福岡県知事の亀井さんは労働省出身で、労働対策、そういう問題にはかなり積極性を持っておられるというふうに思いますけれども、私ども、労働側とあるいは関係団体との間に雇用対策委員会等を設置することも、相談をして決めてまいりました。しかし、知事からも強い要請を受けたのは、産炭地補正問題はどうしてもこれは頼むということを実は知事からも言われてまいりました。  ほとんどあの地帯の地方自治体を扱っておられる市長さん、町長さん、保守、革新を問わず、あるいは労働者の代表、全体に出迎えていただいたわけでありますが、感じますことは、福岡を中心にするあの地帯の経済的な開発はできないのかどうかという課題が一つの大きな問題になろうと思います。公共事業投資の課題も再検討してみることができないのか。そうしませんと、ボタ山と老人だけが残されて、若い労働者はほとんど東京や大阪に転出をしているという状況で、一体どうなっていくのかということだと思います。  したがいまして、私どもはこの福岡の筑豊の地帯、あるいはこれから沖繩と山陰、東北も逐次十一月までに現地調査をして、具体的に問題点を拾ってみようと思いますが、かなり地域的に、こういった事情にあるところについては、構造不況業種対策ということの面にばかりとらわれると、忘れられてしまうのじゃないかということが非常に心配なんです。だから、ぜひその問題も同時に考えていただきたいと、強い願望でわれわれは訴えられてまいりました。  したがいまして、これらの地域に対する対策としては、一つ公共事業の見直しによる雇用の吸収拡大を図っていただけないか。あるいは失対事業の抜本的な見直しによる雇用の吸収を考えてもらえないか。あるいは地域経済開発による雇用機会の創出をしていただけないか。あるいは失対給付の改善。これは額の引き上げ、もちろん給付期間の延長というふうになります。こういうことを政治の場で、国会の場でぜひ真剣に受けとめていただきたい。  重ねて申しますけれども、構造的な不況業種対策にのみ目が走って、こういった失業多発の状況に置かれている地域に対する対策がおろそかにされないように、私ども総評の立場からも強く訴えておきたいというふうに存じます。
  19. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ちょっと関連をして政府にお尋ねしたいと思いますが、いま前川さんからも富塚さんからもお話がありました漁業労働者及びその加工業者、この離職者は、どうもいまの保険法にもなじまないし、また、政府のいろいろな政策の外にある、こういうことをおっしゃっておるわけです。  わが党も漁業労働者離職者に対する特別措置法を法案として成案を見ておるわけですが、政府としてはこれは一体どういうようにされるつもりか、これをお聞かせ願いたい。
  20. 石田博英

    ○石田国務大臣 加工業者につきましては、これは雇用安定法のらち外にはありません。われわれの方で当然一般の失業者と同様の取り扱いをしておるので、御質問の意味がちょっとわかりません。  それから、漁船の方は、これは三十トン、たしか三十トンだったと思いますが、未満の漁船については、やはり私どもの所管でございます。しかし、それ以上の船の船員は、これは運輸省の所管であります。  ついでに申しますが、先ほどの富塚さんのお話の中に、九州の失対事業就労者が半減されるというような話がございましたが、そういうことは絶対いたしません。自然減耗あるいは他に就職というようなことがございますので、若干予算要求の人数は減っていますけれども、一律半減をするなんというようなことは絶対に考えておりません。これははっきりこの機会に申し上げておきたいと思います。
  21. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 漁船の労働者あるいは比較的短期的な労働者、これも法律の外にあるのですよ、現実は。その人が短期で終わってまた次の船に乗っていく、こういうので、現実に労働省の方でも、自分のいろいろな救済をやろうとするけれども、その外にあるのでどうにもならないと言っている。これは労働省でも運輸省でも言っているのですよ。今度の場合はことに二百海里という国の政策における失業者ですから、それに加工業者も入るわけですが、これは何か特別措置が必要じゃないですか。
  22. 石田博英

    ○石田国務大臣 加工業者については、先ほど申しましたとおり、他の業種と区別はいたしておりません。ただ、いまのお話は、二百海里問題によって生じた離職者の中で、船員法からも、両方から外れている人をどうするか、こういう御質問だと承っております。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕 これについては適用する道を何とか見出したいと思って、いま検討中でございます。
  23. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いまから見出したいと言いましても、これはやはり保険に入ってないのですから、手当か何かの方法を政府が講じなければいかぬでしょう。これは大きな問題になっているのですよ。まだ事務当局はいまから検討するくらいですか。答弁してください。(「いまごろからか」と呼ぶ者あり)
  24. 石田博英

    ○石田国務大臣 いまごろから始めるのじゃないのです。もう始めておりまして、大体めどがついてきつつあるわけでございます。転換給付の対象にするようにめどがついているので、まだ最終的な、ここで申し上げられるような結論には達しておりません。結論から言えば、転換給付の対象にするような方向で結論に近づきつつあるということであります。
  25. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 二百海里問題というのはもうずいぶん前に起きておるでしょう。労働者は失業しておるでしょう。それで何のめどがつくかというと、次の再就職のめどがつくのではなくて、まだ手当をやる方法について検討しておるというのはちょっと遅いじゃないですか、これは。では、この国会に法律を出しますと言うか、政令で変えましたと言うか、あるいは特別手当を出すことにしましたというか、今度の予算に盛りましたと言うか、いずれですか。
  26. 石田博英

    ○石田国務大臣 金の問題は雇用安定資金の中で処理をいたします。これが足りなくなれば予備費から支出いたします。それから給付の方法については、最終段階に来ておりますから、転換給付を支給するようにいたしたいと思います。
  27. 細野正

    ○細野政府委員 お答えいたします。  職業転換給付の問題は、一般会計の問題でございます。これにつきましてはかなり煮詰まっておりまして、その実施についても、ごく近い将来に私どもの結論を得られるという状況にございます。
  28. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私も質問予定しておったわけではないのですが、参考人のお二方がおっしゃいましたのでちょっと政府に聞いたのです。ですから、大臣も十分な答弁がなかったのですが、やはり大臣、このくらいは知っておかなければいけませんよ。  次に、富塚さんがおっしゃったのは、急に半分くらいに減るのではないかということを心配しているというのは、恐らく五十三年度までは緊急就労もあるいは産炭地就労事業もあるでしょう、しかし、あれはいろいろな関係から、五十四年度からは全然決まっておりませんよ、だから非常に心配しておるのだという声なんですよ。ですから、大臣がここで、いや、そんな心配は要りません、それは五十四年度もずっと続きますと、こうおっしゃってもらえばその心配は解消しますから、どうぞ。
  29. 石田博英

    ○石田国務大臣 質問の中にはなかったのですけれども、誤解や不安を呼んではいけないから明確に申し上げたのです。  雇用、失業の状態が、特に福岡県その他の産炭地の事情が現状のまま改善を著しく見ない限りは、さようなことは考えません。
  30. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 わかりました。  そこで、せっかくお二方からの提起がありましたので質問したわけですが、いま雇用問題はきわめて大きな日本の政治問題である。そこで、労働者側と政府側でいわゆる政労交渉というのをなさっておるわけです。ところが率直に言いますと、労働組合の窓口は労働省でしょうから、労働省等がおやりになっておりますけれども、これはやはり内閣が取り組むべき問題だと思うのですね。そこで、雇用問題というのは、後のしりぬぐいの方は労働省がやるだろうけれども、肝心な産業はどうするのですか、あるいは各省どうするのですか、あるいはまた大蔵省金を出すのですかという問題は、各省一体になって、総理みずから陣頭指揮しておやりにならなければならない問題だ。  そこで、官房長官来ておりませんが、まず当面の産業政策の通産大臣、それからいわば財政を握っておられます大蔵大臣、ひとつ政労交渉において政府全体として取り組むかどうか、この決意をお聞かせ願いたい。
  31. 石田博英

    ○石田国務大臣 いわゆる産労懇の場において、いま御発言の趣旨のような提案が宮田鉄鋼労連委員長からございました。そういう観点から実際どういうぐあいに取り扱っていこうかということを政労懇の幹事会で御懇談がありまして、その結課として、問題の種類によって関係閣僚の出席を求める、そして問題の種類ごとに検討していこうというのが全体の意見としてまとまったのであります。したがって、政労及び使用者側の懇談会の席上あるいはその後の運営の場合に、それぞれ問題の種類によって関係閣僚の出席を求めたい。それから特に構造不況に関する問題となりますと通産だけではないので、運輸も農林も関係をしてまいるわけであります。したがって、その問題ごとに関係閣僚に出席してもらうという運営の仕方が適当だろう。窓口はやはり私の方が商売でございますから、私どもにやらしていただきたい、こう考えます。
  32. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいま労働大臣が申されましたように、先般の産労懇のときにも私に出るようにというお話がありまして、出るように予定をいたしておりましたところが、ちょうど御承知のジェンキンズが参りまして、会談の時間がラップしたものですから出ませんでした。  政労の問題につきましても、労働大臣がただいまお話しのように、政府代表としてのチャンピオンが労働大臣でございますので、労働大臣の御指示に従いまして、閣内の必要に応じまして喜んで参上いたします。
  33. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  雇用問題が現下の政治経済の問題の中で最も大事な問題の一つであるということはよく理解しております。そこで、今日までもいろいろな政策をとってまいってきましたけれども、財政政策、金融政策等につきましては、その政策の照準を雇用の問題に当ててまいったというのが私ども今日までよく申し上げておることで、この点はよく御理解をいただいておると思いますが、そういうようなことでございますので、財政当局といたしましても、この問題につきましては関係大臣、関係省庁とよく連絡をとってまいっております。  そこで、労働者団体四者というものですか、三者というのですか、その行うお話し合いでございますが、その話し合いにつきましては、やはり私は石田労働大臣が言われましたように、政府のこの問題についての代表者である労働大臣が出席をいたしまして、そして御懇談を申し上げるということで足りるものであり、かつまたその方がはっきりするものであろう、かように心得ております。
  34. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 雇用問題を最大の問題として考えておりますということで、今度二兆円の公共投資ということですが、参考人に後から質問をいたします。  その前に政府に、今度は二兆円のこの事業規模で一体雇用はどのくらいふえるのですか。
  35. 石田博英

    ○石田国務大臣 二兆円の公共事業、それから金利の引き下げによって企業負担の減少というものが一兆二千億と言われるわけであります。労働者一人当たりに要する賃金その他の経費、平均をいたしますと概算して約三百万円以下ではないか。ただそれぞれの業態が非常に違っておりますものですから、それによって何人が新規に雇用されるという計算が非常にしにくい。それから、した方がいいか悪いかという点もあるわけであります。  それからもう一つは、公共事業は、よく御存じのとおり、予算成立後実際それが発注され、仕事になって効果をあらわすまでに一定の時間がかかる。先ほどから雇用情勢はずんずん悪化していると申しますが、七月から八月にかけてはほんのわずかですけれども好転をしておる。ほんのわずかですけれども求人倍率はやや好転している。そのやや好転をしている分は建設業で、これは、やはりその効果があらわれたことだと思っております。本来ならば、人の面でも計算すべきじゃないかという議論が出てくるわけでありますが、前期計画で六%強の年々の成長を続けていくということは、一・三%程度の完全失業率というようなものを目指しているわけでありますが、いまその逆の作業、つまり雇用吸収力がある部門はどこであって、どの程度のものであるか、それから、いわゆる構造不況と言われるところはどのくらいの人数で、どの程度の数字の削減が行われれば健全化するか、そういう作業をするために雇用関係閣僚会議を設けまして、いまその作業を進めているところであります。
  36. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どこの国でも、今度はこれだけの公共事最をやります。そうして九十万人労働力を確保します。こういうものを発表するわけですね。これはイギリスだってアメリカだって全部そういう発表をするんですよ。ですから、日本だってできないことはないのですよ。たとえば、道路ならこれだけの予算で、労働者は幾ら使う。昔はかなり労働力を使っていましたが、いまはブルドーザーやその他使うのですから、このくらいしかいかない。ですから、これは一億円投資をすれば大体常用労働者は幾らと出るのですよ、全部。あなたの方は、建設省は全部単価を、労務費をはじいているのですから、民間住宅をつくれば直接幾らか、それによって波及の労働力がどのくらいと計算するか、それが出るんですよ。鉄鋼だったら、二兆円の規模であるならば百四十万トン鉄はちゃんと出しておるのですから。ですから、人の問題を考えないんでしょう。そういうところに私は問題があるのだと思うのです。  きょうは参考人ですから、私は言いませんけれども、失業者の問題でも、投資をする場合に、ここは失業者がこのくらいおるから、補助率が高い、ここは同じ公共事業でも失業者が少ないから補助率が少ない、こういう、要するに失業の多発地帯というのが補助率が高いというのは、しかもかなり区分をして皆その補助率が違っているんですよ。そういう政策がやはり必要なんですよ。ですから、人の問題というのは全部ネグレクトしておるでしょう、日本の政治というのは。ただ、物がどうだとか、こういうことを言っているけれども、一体この事業というのは、同じ金を出すにしても労働力吸収度が高い事業をやるのだとか、こういうことがいまの時代必要じゃないでしょうかね。ですから、計算できなければ、もうずっと前から私は言っておるのですが、いまだに計算ができないというならまあいいです。  そこで最後に、私の時間もありませんが、構造不況業種それから多発地帯の失業者、いろいろありますけれども、やはり最終的には私は中高年齢者問題じゃないかという感じがしますね。昭和六十年になりますと、全体に労働力人口が一割ふえるのですけれども、五十五歳から六十四歳までの層は五割ふえるのです。  そこで定年制ですけれども、それは富塚さんと前川さんに聞きたいのですが、労働組合としてはどういうように対処をされるのか。いろいろな方法がありますよ。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕 アメリカのような先任権のような問題、それからドイツあたり、欧州でやっておりますけれども、先任権でありませんが、労働協約を結びまして、そうして十五年以上とか何年勤続した者で何歳以上の者は解雇はしないとか、あるいはまた、いまアメリカでやっていろいろ論議を呼び起こしております年齢による雇用差別制限法という、要するに男女の性別の制限は禁止をしたのはILOでしたけれども、そのILOのときでも年齢が非常に問題になった。年齢によってあなたは雇いませんとか、あるいはあなたはもうやめてもらいますとかというのは、本人はどんなに健康であってもただ年齢によって差別するのはどうなんだというのが非常に議論になって、ついにILOでは採択できなかった。そこで、アメリカはそれを持ち帰って年齢による雇用差別制限法というのをつくったのですね。それが今度六十五が七十になるというので大問題が起こっておるのですが、そういう方法もあるわけですよ。  それから、いまこちらに出ております定年延長をせっかく政府がやるというならば、ひとつ身体障害者のような納付金を取ってやったらどうかという問題もある。いろいろ考えられるのですが、労働組合としてもいろいろ苦慮なさっておるでしょうけれども、現実に整理をするということになると、やや定年に近い人からやめてもらおうかということになるのですね、現実問題としては。そこでこの問題は、ひとつ四団体がそろって定年延長の問題はがんばっていただきたいと思いますが、どういうように対応されるのか、これは両方からお聞かせ願いたい。
  37. 富塚三夫

    富塚(三)参考人 私ども、定年延長問題は大分早い時期から政府に対して要求をしてまいりました。昨年の暮れも労働大臣は、現状ある法律の中で、中高年齢層雇用促進法ですか、その中で内面指導をしたいという領域から出ませんでした。したがいまして、近い将来にぜひ何らかの法制化の道を考えていただきたいというふうに実は思っています。  問題は、公務員の場合あるいは民間労働者の場合にもいろんな意見のあることも実は承知をしています。しかし、いま明らかに日本の失業問題は中高年齢層にしわ寄せがされておりますし、反社会的な階層性が貫かれているこの状況について、やはり定年制問題の延長は避けて通れない大きな課題でありますので、労働四団体でも積極的にこの問題を統一した方向でこれから取り組んでいくようにいたしたいというふうに考えております。
  38. 前川一男

    前川参考人 定年の問題でありますが、さきの通常国会で参議院、衆議院ともに社会労働委員会で特別の決議をしていただきまして、大変にありがとうございました。  この考え方の基礎になっているものは、いま多賀谷先生から言われました、外国の語例から見ても、とてもそういうものを論じるようなところまで現在の定年延長がいっていないということなのだと思うのです。五十五歳とか、五十七歳とか、五十八歳とかが大半を占めているわけですから。そういう状態でありますから、いつでも雇用の問題というのは重要な、特に中高年問題が派生をしているということであって、国全体の経済の成長と雇用の問題との関係を考えた場合には、少なくとも定年延長を、当面六十歳までなっていないところはどうしてもやってもらわなければならない。日本企業全部でひとつやってもらいたい。それはやはり定年問題についての日本の中におきます位置づけの認識の変化を社会に求めていかざるを得ないだろうと思います。せっかく国会での特別決議もあったわけでありまして、私ども同盟としましても、いま検討中でありますが、まだ六十歳までなっていないいわゆる労使関係、そういうところはすべて六十歳までしてもらうように、はっきり申し上げて労使の交渉を進めていくというふうに考えているわけであります。これは労働四団体全体の統一的な考え方ともまた一致をしている問題であるということを申し上げておきたいと思いますし、先ほど富塚さんが言われましたように、将来の問題としては、全体の社会情勢の変化の中で法制化問題なども検討していただきたい、かように考えております。
  39. 田中正巳

    田中委員長 次に、広沢直樹君。
  40. 広沢直樹

    ○広沢委員 きょうは参考人の皆さんには大変御苦労さまでございます。  言うまでもなく、今国会は経済国会と言われておりますように、その中でも雇用問題というのは最大の問題として取り上げられておるわけでございますが、きょうは率直に労働界の皆様方の御意見をお伺いして、皆様方の意見が十分生かされるように私ども努力してまいりたい、このように考えておるわけでございます。  ところで、富塚参考人は先に退席されるそうでありますので、短い時間でありますが、二、三問ちょっとお伺いさせていただきたいと思います。  今日の不況は、石油ショック以来四年の長期にわたっておりますけれども、この間の雇用情勢というのは、すでに指標に出ておりますが、たとえば五十年度をとらえてみましても、有効求人倍率は〇・五九、あるいは失業者数も百四万、それから稼働率も八三・四と、中間では少しずつ出入りはありますけれども、最近では、この八月も完全失業率が二・一ですか、それから有効求人倍率も〇・五三、あるいは失業者数は百六万人、このようにして三年間変わりがありません。こういう状況の中で、いま具体的に四団体の要求として法改正もあるいは新しい法律の立法も要求されていらっしゃるわけですが、この三年間、労組としてどういう具体的な態度をとってこられたのか。いまの状況はずっと続いておるわけでありますから、その点ひとつお聞かせいただきたいと思うわけであります。このことは後でまた労働大臣に、この間の労働行政のあり方についてはお伺いいたしたいと思いますけれども、一応その点先にお伺いいたしたいと思います。  時間の関係で、三点でございますから、重ねてお伺いいたしますけれども、先ほど前川参考人から統一要求については全部御説明がございましたが、その中で特に、「失業給付の期間を構造不況業種の離職者に限って九十日延長すること(この場合、保険料の引上げについては検討する用意がある)」、こういうふうに明記されておるわけであります。これは今後いろいろな問題として提起されてくる問題だと思いますので、この点についてもう少し深くお聞かせいただきたい。  それから最後に、労働界の中には、いわゆる賃金と雇用問題、その両方の問題に対して、雇用問題は最大の問題である、私もそう思いますが、そういうことで、今後の二つの問の考え方についてはやはり雇用を優先しなければいけないのじゃないかというお考えがあるやに聞いております。これは一つの反響を呼んでおるわけでありますが、これに対して総評としての御意見を承りたいと思います。
  41. 富塚三夫

    富塚(三)参考人 雇用問題の取り組みの問題については、われわれは毎年の春闘の段階において、実はここ二、三年いろいろな角度から検討してまいりました。特に経済が低長下に入りまして、失業、雇用問題が深刻な方向に向いているということで、それを受けとめていろいろな角度から討議をしてきたのでありますが、具体的には、時間短縮とか、定年制延長とか、あるいはその企業内における労使間の中で失業の歯どめをかけるとか、失業給付の拡大とかといった観点で統一的に失業を防止して雇用を確保する、そういうふうなところまでの運動というのは不十分であったことを率直に反省しているわけであります。しかし、冒頭に申しましたように、雇用問題は非常に深刻な時期に来ていますので、労働四団体は今日まで雇用問題については限定共闘ということで政労間の交渉を中心に進めてまいりましたが、今度はそんなことを言っておれない、非常に深刻な事態であるので、政府に対する要求もあるいは具体的な行動についても統一して行っていくことにしたいということで、今回はこのように皆さん方に要請をする場を考えていただいたということであります。  ここでちょっと、先ほどの政労交渉の問題で申し上げておきたいのですが、産労懇というのは労働大臣の諮問機関なのですね、政労交渉の場ではないのです。そこが大変マスコミなどで取り上げられるものですから。産労懇に出席している人は全部個人の立場で出席されておるわけで、われわれ労働四団体はそれぞれの組織を代表しているものであります。政労交渉は八月八日にやりまして、労働大臣は、雇用安定資金の弾力的な公平な運用を期すということと、雇用問題は引き続き政労間で話し合いをしようということを約束したのですが、どうも労働大臣や政府の姿勢が産労懇の話し合いの場にばかりいってしまって、そこが政労交渉というふうに理解されるのは遺憾だと思っています。これは改めて労働四団体から労働大臣に具体的に抗議をして申し入れをするつもりであります。  同時に、私どもお願いしたいのは、たとえばきょうも四時ごろから四団体が政府と交渉をして、四団体の雇用の申し入れをしたいのですが、労働大臣、官房長官が出席するだけで——これは非常にいい方でありまして、ほとんどの場合は労働大臣と官房副長官、あとは忙しくて出れないということになるものですから。本当は通産大臣にも自治大臣にも大蔵大臣にもわかっていただきたいわけですね。そういうことの誠意ある態度をきょうは表明されたものと私は理解をいたしますが、問題点を明確に整理して対応していただきませんと組織的に困難を生じますから、その点だけ申し上げておきます。  御質問がありました第二の点、四団体でまとめました中の失業給付の期間の延長についてでありますが、構造不況業種にしぼって九十日間延長をするということになりますと、約千五百億円の予算が必要になるというふうに想定をしています。その場合に、保険料千分の三程度の引き上げが必要になってくる。これは現行では労使折半、半分ずつ負担をしているわけでありまして、その場合の負担は当然労働側にもかぶってくるということになるわけであります。そのことも十分検討する用意があると、前向きにわれわれは四団体で議論をしているということであります。  それから、雇用問題が大変深刻な時期であるだけに、賃金問題については自粛をすべきではないか、あるいは銭か首か、かつては雇用か賃金か、物価か賃金かといって、大分キャンペーンを張られた時期があるのでありますが、私どもは冒頭申し上げましたように、ミクロの立場、つまり個別企業の立場では賃上げを自粛することによってなるほど雇用拡大に有効に作用するかもしれません。しかし、マクロの全体的な立場に立ちますと、これはいわゆる個人消費拡大しなければ雇用拡大ということはなし得ない、そういう観点に立つならば、賃上げ自粛論をとることは雇用確保につながらないという観点を大事にとっているつもりであります。したがって、マクロの立場では当然公共投資の拡大、あるいは賃上げによって個人消費拡大する、減税によって個人消費拡大するという政策をとっていただくことが基本的には正しい道筋であるというふうに考えています。  加えて、私ども労働者の側に立ちますと、実質生活を維持する、さらには改善をするということになりますと、当然、物価上昇率に見合うものは、生活の維持には賃上げを認めていただかなければならない。また、日本の賃金体系上定期昇給という制度が現存します。これも当然であります。そして福田総理は六・七%の経済成長率になお自信があると言われておるようでありますが、経済の実質成長率が続いている限り、これは全体的に世間並みの暮らしはよくなるのですから、労働者の実質的な生活の改善に充てるのは当然だ、これは労働者の賃金を要求する基本的な立場ということに相なるわけであります。したがいまして、来年の春に向けましても、賃金、雇用問題は大きな課題になると思います。  ただ問題は、民間の産業、業種間あるいは地域間も含めてですが、大きな格差の出てくることも十分われわれは考えなければならないいまの状況に置かれているということであります。しかし労働者は、あくまでも雇用確保のためには、幾つかの問題提起をいたしましたように、個人消費拡大させる政策をとってもらいたい。そして賃上げは当然労働者の実質生活の維持ができる、改善ができる、そういう観点で国家あるいは企業主は考えていただくというのは当然でありまして、そういう観点に立ってわれわれはこれから運動を進めていきたいというふうに考えておるわけであります。
  42. 広沢直樹

    ○広沢委員 どうもありがとうございました。
  43. 田中正巳

    田中委員長 次に、寺前巖君。
  44. 寺前巖

    寺前委員 せっかくおいでをいただいておりますのに、皆さんに質問をするだけの時間がございませんので、残念だと思いますが、富塚さんにだけ一言、先ほどからの御論議の補足的な意味で御答弁をいただいたらありがたいと思います。  それは、先ほど富塚さんは、構造不況業種だけにとらわれるなという問題を御指摘になったと思う。労働大臣は現行法でいけるという態度を当予算委員会でもお述べになりました。私は、現行法ではいかぬと思うのです。今日のように八月の完全失業者数が百六万と、前年同月に比べて三万人もふえ、そして連続八カ月百万人台を記録するという時代、実際の失業者数は三百万とも四百万とも推定され、中小企業の倒産も連続二十五カ月一千件台が続いている、こういう状況のもとでは、やはり全体的に考える必要がある。  そこで、きょうも野党の間で、当面の雇用、失業問題について新しい立法を緊急的に出そうじゃないかという相談をすることになっています。この相談に当たって、そこでちょっとお聞きしたいのは、緊急措置法をわれわれが提起する場合に、構造不況業種に対する対策問題とあわせて、政府が現行法でいけると言っている、その現行法についても改善を提起しないと積極的な役に立たないのじゃないか。もう一つ言うと、首を切られた結果対策だけではだめなんじゃないか。雇用の拡大なりあるいは解雇の制限なり、積極的な施策も打ち出していかないと、今日のこの対応策にならないのではないかという意味で、法案をつくる場合に、総評としてはそういう問題についてどういうふうに緊急措置法で検討してもらいたいとおっしゃるのか、これが一つです。  それから、私どもの党としても、十二日に緊急対策を発表さしていただきました。特にいまの問題と関係するのですが、たとえば現行法でも、解雇の届け出という制度はあります。だけれども、チェック制度がないから、したがってこれはしり抜けになってしまいます。あるいはまた、積極的に雇用の問題について、時短の問題が基準法にあります。だけれども、これも何も規制はありませんからしり抜けになっている。現行法には、こういうふうに、高齢者雇用の問題だって義務化がないからしり抜けが起こっている。こういうしり抜け問題についてどういうふうにお考えになっているのか。  それからまた、基本手当の給付日数というのが、特に若い人たちの問題に対して現行法でも余りにも低いのじゃないか。あるいは先ほども少しお述べになっていましたが、失業者の就労事業の内容の改善という問題も、附則二条を撤廃して積極的にそのあり方も改善せよという問題が従来から論議になっていますけれども、われわれはこの際に、積極的にそういう問題も含めてやらないことには対策にならないという立場に立って対策要綱をこの間発表さしてもらったわけですが、総評としてはこの問題についてどういうふうにお考えになるのか、お答えをいただきたいと思います。
  45. 富塚三夫

    富塚(三)参考人 私どもは、いま構造的な不況業種に対する対策ないしは失業が多発している地域に対する対策というものも緊急性のあることは十分承知をしています。しかし問題は、日本経済が再び高成長に戻って、雇用が以前のような状況になることはなかなかむずかしいだろうと基本的に判断します。経企庁も、経済の動向がどうなるか、物価問題や雇用問題もなかなか見通しを立てることができないやに聞いているだけに、輸出依存型の日本経済は大変深刻な事態になお発展していくのじゃないかというふうに考えます。そういたしますと、将来に向けての雇用保障体系というものをどういうふうに確立するかということを、基本的にいまこの国会でも、継続する国会でも議論をしていただきたいし、われわれもそういう観点で取り組んでいくべきだろうというふうに考えるわけです。そういたしますと、今回の四団体でまとめました構造不況業種離職者対策臨時措置法という問題も、あるいは自民党さんの考えられていることも、あるいは労働大臣が、政府が現行法ということを言われたということも、公明、民社さんも提起されている、いろいろ承っております。社会党の案のあることも聞いています。しかし問題は、不況業種が仮に五十四が七十になるとか、構造不況業種が十三とか十二とか、いろいろ意見がありますけれども、私どもは、限定をされたいま苦しい状況のものだけに手を出すあるいは手を貸すということじゃなくて、やはり全体的に、将来のこれから深刻になっていく方向に向けての対応をどう考えていくか、おのずからその幅は広げて対応してもらわなければならない。いずれこれは前川さんの方からも、質問があれば後で詳しくお答えをいただきますけれども、そのように実は考えています。  また、これからは、社会的にチェックする機能といいますか、機構というものをつくる必要があるのじゃないかというふうに思うのです。この国会で取り上げられた、法律ができた、ではどういう状況になっていくのかということを具体的にチェックをしていく機構というものをつくらないと、これはうまくないんじゃないか。先ほど北海道の例を申し上げましたように、道当局も失業者の実態を十分つかめないわけですね。残念ながら労働組合もつかめないのです。雇用失業保険の給付を受けている労働者の数だけをつかんで大体想定をしているということなんですね。これをどういうふうに全体を掌握をするかは、国も地方自治体も、あるいは経営者も労働側も一緒になって問題点を正確に掌握をするという体制をつくってもらいたい、それがために雇用保障委員会を設置してほしいという提唱を総評はいたしまして、全国的にはかなりの県段階で、地方自治体のレベルでやっています。きのう北海道の知事も九州の福岡の知事も約束をしてくれました。ただ問題は、雇用保障委員会あるいは対策委員会というものをつくりましても、現実にそれは開店休業の状態になる傾向があるわけです。それは、政府地方自治体も逃げの一手で、余り都合の悪いことには口出しなり顔を出したくないという傾向が出てくることを心配するのであります。ですから、その点は、今回の法律には間に合わなくとも、雇用保障体系をどう整備していくかという観点では、国家の課題として、私はイデオロギーの問題ではないと思うのです。だから、そういう観点でそういう社会的にチェックする機能、機構というものを十分考えていただきたいということを私どもとしては考えておるということであります。  以上であります。
  46. 石田博英

    ○石田国務大臣 寺前さんが、私の方で現行法で処理できる、それだけを言ったように御指摘でございますが、私はそういう答弁をしてはおりません。いま御指摘のように各種の案が出ております。その各種の案の中の多くの部分は現行法で対応できると思うし、同時に、政府案として出す場合には、これは各省間の調整が必要です。時間的に問に合いません。そうしたら御質問の中で、それじゃ議会の方で決議をしたらどうか、こういうお話でございますから、議会の方で立法措置をとられるならば、これはいいも悪いもない、それに従って執行するのが私どもの役目だ、こういうことです。
  47. 田中正巳

    田中委員長 肥後参考人及び富塚参考人には、御多用中まことにありがとうございました。御退席願っても結構でございます。  次に、藤田高敏君。
  48. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 もうすでに雇用問題を中心として、多くの同僚議員から質問があったところでありますが、特にきょうは、労働四団体の代表の方においでをいただいたわけですけれども、都合によりましてお二人だけにしか質問できない形になりましたことを残念に思っております。  そこで私は、時間的な制約もございますので、主として先ほど総評なりあるいは同盟の代表から説明のありました、労働四団体が統一した形で政府に要求書を本日提出する、この四団体の統一要求の中身についてお尋ねをいたしておきたい。と申しますのは、私ども社会党の立場から言わしていただきますならば、今日の雇用問題に対処するために、雇用対策臨時措置法案ということで、独自の法案をもうすでに用意をしておるわけであります。この中身について説明するいとまはありません。たとえば事業主及び国の責務、責任といったものを前提といたしまして、大量解雇の規制をいかにして行っていくか、また、労働基準法の特例によって雇用問題と時間外労働といったような労働時間との関連をどうするか、こういうような観点から、独自の法案を用意いたしておるわけでありますが、これらの問題については、いずれ野党間においても具体的な折衝をしなければなりませんし、また、労働団体からいま要求されております構造不況業種離職者対策臨時措置法の制定、これは緊急的な法案としてやってほしい、こういう要求もございます。こういう要求にこたえていきますためには、この要求内容の基本的な性格についてしかとした認識を持ちたい、こういう前提で、以下質問をいたしたいと思います。  まず第一の質問でございますが、先ほども若干説明があったのですけれども、この構造不況業種難職者対策臨時措置法の制定について、構造不況業種という指摘がございます。この構造不況業種というのは、雇用保険法の雇用安定事業の適用指定業種全体を指していると私は考えるわけであります。言いかえれば、いわゆる一般的に言われておる構造不況業種とは違って、それよりも幅の広いものとなっていると理解をするのでありますが、そういう理解の仕方でよろしいのかどうか、この点をひとつ、まず前川さんからお答えをいただきたいと思います。
  49. 前川一男

    前川参考人 お答えいたします。  御指摘のとおり、一般的にいま言われております。たとえば十二とか十三とか、いろいろ言われておりますが、その意味での構造不況業種よりも幅の広いものであります。ここにも明確に記載されておりますけれども、その内容というのは、いわゆる雇用安定事業の指定業種全体であるということでございます。  そこで、構造不況業種の指定業種というのは、これはたまたま今日の段階ですと、雇用安定事業の指定業種は労働大臣が一番いわゆる力を持って指定をしている。ところが構造不況業種の場合には、どうも通産大臣が一番力を持って指定をするようである、こういうことでは大変に困るというものが一つあります。  それからもう一つは、現在の雇用安定事業の指定業種というのは、今日の情勢を踏まえたところのいわゆる構造不況なり全体の不況、その総合情勢を勘案されてやはりこういう指定ができ上がっているわけでありまして、これを構造不況対策ということで構造不況業種を余りにも厳しく扱ってしまうと、そこには一体接点はどこなのかということが逆に大きな不公平を呼んでくる、こういうことがまた雇用不安を増大する、こういう情勢下にあるのではないだろうかと考えておりまして、その意味で御指摘のとおりでございます。
  50. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 性格づけにつきましては非常に明確なお答えをいただいたと思います。  そこで私、せっかくの機会ですから、参考人からだけ意見を聴取するのではなくて、参考人意見に対する労働大臣なりあるいは通産大臣、こういった各省の責任者の御意見もこの機会に伺っておきたいと思うのですが、いまの不況業種に対する労働団体の認識ですね、いま答弁のありましたそういう認識で労働省としては対処されるつもりかどうか。特に今日時点では、すでにこの予算委員会でも、雇用保険法に基づく業種指定につきましては、たとえば事業転換業種についてはたしか五十四、あるいは雇用調整給付金制度の対象業種になるものが四十九というように、それに近いところを聞いておるわけでありますが、今日段階においてはそういうものだけれども、いま前川参考人の答弁にもありましたように、現状の雇用情勢からいけば、残念なことですけれども、その枠はさらに拡大せざるを得ない、そのように認識してよろしいかどうか、念のためお伺いをしておきたいと思うわけです。
  51. 石田博英

    ○石田国務大臣 いま前川さんのお話にもありましたように、実際構造不況とは何ぞやという規定の仕方が非常にむずかしいわけであります。それから、そこで働いている数がどれくらいあるか、どれくらいが余る、余ると申しますか過剰雇用であるかということは、業種によって非常に違うのですね。その調査はそれぞれいたしておりますし、それから先ほどもお答えしましたように、通産省所管ばかりではないわけであります。私どもの方で五十四種の業種指定をしましたのは事業転換の業種指定であります。そういう意味であります。
  52. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいま労働大臣からお話しの事業転換雇用調整関係五十四種でございますが、その中で通産省関係が三十九業種でございます。それからまた景気変動等雇用調整事業の関係が四十九業種でございますが、その中で通産関係が三十八種というふうになっておりまして、これはまた必要に応じまして業種指定ということの追加もできるわけでございます。
  53. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 いま労働大臣あるいは通産大臣から、特に通産大臣からも、これからの情勢いかんによって追加もあるという一つの性格規定が一応はっきりしましたので、第二点について質問をいたしたいと思います。  この統一要求によりますと、先ほども説明がありましたが、臨時措置法制定の中身について、雇用保険法二十三条の個別延長給付を五十三年の一月以降さらに二年間延長してもらいたい、これが一つですね。今日の雇用保険法は、言うまでもなく年齢区別によりまして給付日数が最低九十日から三百日というふうに分かれておりますが、それにプラスをして、個別延長する場合に、五十五歳以上の個別延長については、今日の不況の性格なり見通しから判断をして、年齢制限の撤廃をするとともに、五十五歳以上については無条件で適用しなさいということがこの要求の中味の一つだと思うのですね。  それといま一つは、失業給付の期間を構造不況業種の離職者に限っては現在六十日であるものを九十日に延長しなさい、いわゆる三十日間上積みしろという性格の要求であるやに理解するわけですが、そういう理解でよろしいでしょうか。
  54. 前川一男

    前川参考人 第一点については、全く御質問のとおりに御解釈をいただきます。  それから第二点の九十日延長というのは、現行に対して九十日プラスする、そういう考え方でございます。
  55. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 わかりました。第二点の方については六十日の上に九十日延長、こういう上積みですね。性格を理解することができました。  そこで労働大臣にお尋ねをしたいのですが、現行法によりますと、この個別延長給付の年度は、来年、五十三年の一月までとなっておるのですけれども、この臨時国会始まって以来の雇用問題を中心とする議論を通じても明確でありますように、今日の雇用情勢からいけば、いまの不況はまだかなり長引くと判断をせざるを得ないだろう。こういうことになると、これは労働団体の側から要求が出てきて、それではひとつ受身の立場でこの五十三年の一月までというのを検討してみようかということではなくて、今日の情勢の中から判断すれば、行政の側からむしろ積極的に、その期限については、二年にするか三年にするか、あるいは一年にするかは別でありますが、労働団体がいま主張をいたしておりますような対応の仕方を打ち出すべきではないか、それでこそ初めて国としての積極的な雇用対策というものが現行法の体制のもとにおいても補充をされていくのじゃないか、こう思うのですが、どうでしょうか。  そこで、せっかくの機会ですから、この機会を通して、この期限を延長する御意思があるかどうか、お尋ねしておきたいと思うのです。
  56. 石田博英

    ○石田国務大臣 失業給付の個別延長の期限がちょっといま食い違っておりまして、私どもは一月ということに覚えておったのですが、そうでなく十二月三十一日だという説もありましたので、打ち合わせしておったところでございます。  いずれにしましても、そんな短期間に雇用情勢は好転するとは思いません。したがって、われわれはこの個別延長の適用期間を延ばすという方向をすでに決めて、それにどう対処するか考えておる次第でございます。
  57. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 その方向性はわかったわけですけれども、これはいわゆる法律行為ではなくて労働大臣の指定によってできるわけですから、こういう機会を通して、たとえば当面二年だったら二年間ぐらいは延長する。延長しておりましても、雇用情勢が好転すればこういった問題についても十分弾力的な考え方というものがそこでとられると私は思いますので、この延長問題について、一月だと言ってみてもあと十一月、十二月ですから、約二カ月そこそこしかないわけですから、少なくとも二年だったら二年間ぐらい延長するということを言明してもらった方が、精神的な意味においても少し安定感を持つことができるのではないかと思いますが、どうでしょうか。
  58. 石田博英

    ○石田国務大臣 延長しなければならぬ事情にあることは十分認識しております。ただ、これはお金が伴うことでありまして、やはり関係省との調整をしなければなりませんから、具体的な数字をここでいますぐ言えと言われましても、ちょっと言う立場にない。関係省の了承を得なければ、財政法上のたてまえもございます。しかし、その方向に向けて現状に合うように対処をいたしたいと思っております。
  59. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 それではぜひ、この臨時措置法を制定することにも関連をいたしますが、この措置法が制定をされなくとも、いま指摘いたしました個別延長給付の問題については、この労働四団体が要請をいたしておる方向に沿ってせっかくの努力をやってもらうことを、労働省はもちろん、大蔵省も何らかの形でチェックするかもわからないと思いますが、関係各省のせっかくの努力を要請しておきたいと思います。  そこで第三点は、先ほども若干質問に出ておりましたが、この統一要求の中で「雇用の拡大と安定措置について」という中に、定年延長奨励金、継続雇用奨励金あるいは高年齢者の雇用奨励金を大幅に改善すること、引き上げること、こういう要求項目がございます。ここで私は定年制に対する労働団体の基本的な認識を聞かせてもらいたいわけでありますが、定年延長の問題は、ややもいたしますと個々の労働者の労働条件の維持改善という非常に狭義な意味に理解されがちでありましたけれども、今日のわが国のこの経済情勢下において、なかんずく今日の不況下における雇用問題という観点から考えれば、この定年制の延長の問題はひとり定年を六十歳にするという個々人の労働条件の維持改善というものではなくて、マクロの面から見れば、総労働時間というものを含めて、これはもう非常に大きな社会問題、政治的な問題という観点からこの定年問題というものを検討すべき時代を迎えているのではないだろうか。特に国際経済、なかんずく国際貿易というような観点から申します場合に、諸外国の労働団体からもダンピングの問題がやかましく言われておる今日、定年制延長の問題は前段指摘いたしましたような、そういうわが国の社会問題というような立場から取り組んでいく必要があるのではなかろうか。労働時間との関連等を含めて労働団体の御意見を聞かせてもらいたい。  私の質問する前提に立ちますと、率直に申し上げて、この要求は非常に消極的といいますか、失礼な言い分ですけれども、労働団体としてはきわめて消極的な要請であって、もっと思い切って、国としては定年制をしいておる事業団体については定年を六十歳にしなさいという、定年制法制化といいましょうか、法制化に踏み切るくらいな要求をすることの方がむしろ妥当ではなかろうか。特に先ほども御指摘のありましたように、ことしたしか四月と五月であったと思いますが、衆参それぞれにおいて定年制を六十歳にするように強力な指導を国としてもやれ、こういう決議がなされておるような状況下でございますから、労働団体としてはもっと思い切った要求をしてもよろしいのではないかと思うのですけれども、そのあたりの認識についてひとつお聞かせをいただきたい。
  60. 前川一男

    前川参考人 お答えします。  定年制に対する認識というのはやはり時代の変化とともに大変大きく変わってきていると思います。労働組合次元から考えました場合にも、かつては労使関係の労働条件の中の一つ項目、こういう認識が一般的に大変強かったと思います。しかし、御指摘のとおり今日では定年制問題というのは、完全雇用を目指す関係であるとか、あるいは総労働時間の関係であるとか、あるいはまた人間の、いわゆる人としての寿命が大変に延びたといったようなことからの生きがい、働きがい、こういう面全体を含めて新たな位置づけをしなければいけない、そういう時代を迎えている、そのことも全く御指摘のとおりでありまして、私どもはそのように考えております。したがいまして、昨年労働四団体におきましては雇用の限界共闘の中の第一番目の問題として定年制の延長問題を取り上げたわけでございます。そのときの考え方は、可能ならば法制化をしたいということで実は政府にも申し入れをしました。各政党にもお願いをしました。しかし、現実の社会情勢から見て一気に法制化というのは大変無理があるということで、通常国会の社会労働委員会で、当面六十歳までという、いわゆる国としての全体の指導的立場を決議をしていただいた、そういう時点がついせんだってのことでもございます。  したがって、そういう今日までの経過を踏まえまして、将来は私どももぜひとも法制化をしていきたい、こういう気持ちは労働四団体ともに変わっておりませんけれども、当面は、当面の情勢の中で労使関係で交渉しなければいけない点は交渉する、それから政府としても国会の決議に従ってできるだけの行政的な指導の強化を図っていただく、そういうところに大きな重点を置いてあります。  したがって、当面の問題としては、先ほども申し上げましたけれども、定年制を実際にそれぞれ企業が実現していけるような、こういう体制をつくっていくための今日の幾つかの問題点、これをとりあえずもっと充実をしてもらいたい、こういうことで、消極的に見えるような文章、説明ではありましたけれども、そういうものをお願いした、こういう経緯になっているわけであります。以上です。
  61. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 ここで労働大臣にひとつお尋ねをしたいのですが、この雇用保険法現行法のもとにおいて、いわゆる雇用改善事業の中に定年延長の問題に対する奨励金等の措置が講じられることになっておりますね。私の調査によると、せっかくこういう制度をつくっても、たとえば、定年延長奨励金は五十一年度の予算で見れば約三十億、高年齢者の雇用奨励金で言えば五十五億九千万、継続雇用奨励金が三億五千万。ところが、実際にこの奨励金を出しておるのは、定年延長奨励金でわずか二億四千万で、実際に使っておるのは予算額の八%、高齢者の場合は予算額に対して十四億で二五%、継続雇用の場合はたった四千四百万で一二・六%、全体ひっくるめて見ますと、予算額に対して実際の実績というものはわずか二〇%足らずなんですね。ですから、私はここに非常に問題があると思うのです。労働団体が大幅に引き上げろというのはもっともな要求だと私は思いますね。そういう実績から見ても、これは当然こういう制度をつくって、政府が本腰を入れてこの定年問題を解決していく。私はやはり統計的に見ても、五十七歳から六十歳までの間、五十五歳が五十七歳に向けて定年がやや延長しかけてきた、ところが年金受給資格までの、六十歳までの間が高齢者のいわゆる雇用不安が一番大きな問題点だと思うのですよ。そこへ向けてやはり定年延長をやる、行政的にも定年延長の奨励措置を講じるということであれば、中小企業の場合に一年間一人十二万円、大企業の場合は一人九万円、いずれにしてもこんなものではとてもじゃないが奨励措置にならない、こう思うのですが、この点は積極的に労働四団体の要求にこたえる御用意があるかどうかお聞かせをいただきたい。  時間の関係もありますので、それを受けて、これは特別会計でやるわけですから、特別会計でやる以上保険金でやるのだから、一般会計から金を出すわけじゃないので、大蔵省の坊大蔵大臣がそんなににらみをきかすことはないと思うのだけれども、やはり大蔵省というのはこういうものに対してもチェックしなければ気が済まぬという省だろうと思うので、大蔵大臣の見解もひとつ労働大臣の見解にあわせてお聞かせをいただきたい。
  62. 石田博英

    ○石田国務大臣 定年制、時間延長の問題については前川さんの御意見と私は全く一致しております。  それから、ただもう一つつけ加えたいのは、やはり年次有給休暇を効率的に正確にみんなとってもらうように指導したいと思っておるのです。実際問題としては、かつて六七、八%であった五十五歳定年がいま四七%ぐらいに減りました。片一方の六十歳定年がかっては二〇%台であったものが三七%程度にふえておるわけであります。  それから御指摘のように、せっかく設けられております各種の助成金、給付金の制度は利用度が非常に低い。私は今度労働省に参りまして、各地の経営者の団体その他に聞きますと、そういう制度があること自体を知らぬ人の方がうんと多い。したがって、早速制度を普及、知悉せしめるような努力を命じておるところであります。  それから、それぞれの給付金の金額の問題でございますが、これは今度の概算要求の中で増額を要求いたしております。増額の承認を要求しております。というのは、特別会計だからおまえ勝手にやればいいじゃないか、こうおっしゃられても、財政法のたてまえで大蔵省の承認が要るわけでございます。
  63. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  大蔵省は一般会計も特別会計もこれを見ていくようにということに相なっておりますので、御理解を願いたいと思います。  ただいま御意見によりまする定年延長奨励金、それから継続雇用奨励金につきましては、人口がだんだん老齢化していくというようなことにかんがみまして、そういった観点から額の引き上げ、その他改善を図ってまいりましたところでございます。非常に少ないというお話でございますが、精いっぱいの引き上げをやってまいったことでございますが、このあり方につきましては、むろん予算の御要求もなすっていらっしゃるというようなことも承っておりますが、今後は労働省ともよく相談をいたしましてこれに対処してまいりたい、かように考えております。
  64. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 大蔵大臣に重ねてお尋ねをしておきますが、いまの御答弁は一応前向きで検討するという程度のニュアンスだろうと思うのですよ。端的に言って、通り一遍の、この質問を何とか通り抜ければそれでいいというものではなくて、いま私がせっかく指摘したように、国として制度ができておっても、その中身というものが非常に微温的なものだと、それではいまの雇用情勢に適合した形の定年であれば定年、あるいは高齢者であれば高齢者の奨励措置としての実効性のある効力を発揮してないのですね。ですから、効力の発揮できるような措置を財政当局としても十分考える、こういう明確な答弁が出ないと、これはやはりいまの雇用情勢に適合した政府の態度にはならぬのじゃないでしょうか、どうですか。
  65. 石田博英

    ○石田国務大臣 ちょっとその前に。  いま各種の奨励金が予算額よりうんと少なくしか支給されてないという実情は労働省としては恥ずかしく思います。それは一つには確かに御指摘のような要件があるとは思いますが、最大の要件は制度が周知徹底されていないというところにある。したがって、そういう点、金額の増額も概算要求はいたしておりますが、それと同時に、その制度の周知徹底に全力を挙げて利用していただくということが必要だ、お金の額だけではない、こう思っております。
  66. 坊秀男

    ○坊国務大臣 重ねて藤田さんにお答えを申し上げます。  実は御案内のとおり、いま五十三年度の予算のまさに編成中でございます。そういった時期におきまして、大蔵省といたしましては、この事項に限りませず、いろいろの予算の要求事項に対しまして大蔵大臣といたしましてこの段階でこれをどうするとかこうするとかということを明言をさせていただくということはひとつぜひ差し控えさせていただきたい、それを御理解願いたいと思います。(発言する者あり)いや、あらゆる事項につきまして何とも申し上げるわけにはまいらないということでございます。どうぞひとつ……。
  67. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 あと二分ですね、時間が来ましたので私なにしますが、大蔵大臣、いま私が指摘しましたように、そういう逃げ腰の形では雇用問題の解決にはならぬということだけ申し上げておきます。  いま二つばかり質問しようと思ったのですが、時間が参りましたのでこれで終わりますが、最後に、私は特に政府に要望しておきたいのです。  言うまでもないことなんですけれども、好況、不況にかかわらず戦後一貫して国民各階各層、なかんずく労働者、勤労者が生産の担い手として日本のあらゆる産業の中で経済発展の主役を果たしてきた。この労働者が今日こういう厳しい不況期の中で雇用問題に取り組まざるを得なくなっておる。この実態というものをさらに認識を深めてもらって、労働四団体が要求しておりますこれらの語事項というものを緊急課題として正しく受けとめて、早急な効果ある対策が実現できますように私の立場からも強く要請をいたしまして、質問を終わりたいと思います。  参考人の皆さん、ありがとうございました。
  68. 田中正巳

    田中委員長 次に、広沢直樹君。
  69. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは前川参考人にまずお伺いいたしたいと思います。  最初に、円高によります今日の影響の問題について労働界としてどういうふうに対応なさろうとしておられるのか、きょうの新聞に出ておりますように、四十八年七月九日ですか、一ドル二百五十四円、これに近づきつつあるような状況になってまいりました。ロンドン市場ではすでにそれを切っているというような状況になってきております。  そういうことで、繊維産業を初めとして相当な影響を受けるわけでありますが、すでに経済対策を立てておりますけれども、それについてはなお一層見直して強化しなければならぬのじゃないか、こういうようなこともいま言われるような状況になってまいりました。まさにこういう不況打開という段階の中ではこれは大変問題だろうと思うのでありまして、雇用問題に与える影響も深刻な問題が重ねてあろうかと思います。そういう観点で円急騰に対する意見を、どう対応するかお聞かせいただきたいと思います。
  70. 前川一男

    前川参考人 いま御指摘のとおり、大変に円高の傾向が続いております。二百五十円台に入ってまさに記録的になりつつあるのではないかと思います。私どもとしましては、円高傾向というのがじりじりじりじり続いていく、そういう状態だけに甘んじるわけにはまいりません。やはり日本経済全体の安定的な成長を求めながら、そして特に中小企業中心にしまして雇用問題などを解決していくということになれば、いわゆる円レートというのはある程度安定的な方向を求めていかざるを得ない、これが一つの問題点だと思います。  それからもう一つは、日本の外貨の準備高というのも大変記録的であります。もうすでに百七十億ドルを超したということでありますし、あるいはまた本年に入ってからの、たとえばアメリカの貿易赤字日本の場合の貿易黒字というのはもう大変対照的な、いわゆる赤字国であり、黒字国である、こういうものが出ております。もちろん日本の場合には貿易立国でありますから、当然貿易問題について最大の関心が本来なければなりませんけれども、今日の世界的ないわゆるスタグフレーションの中でこういう事情が起きているというものを一体どう解消していくかというのも大変重要な問題ではないかと思います。  個別にはいろいろな問題も私はあるのではないかと思います。特に労働組合の方から見ますと、先ほど来の質問にも若干は関連しますけれども、富塚さんも言われましたように、週休二日制などを考えてみますと、たとえばいま銀行の週休二日制問題が金融制度調査会で論議をされていますけれども、この調査会の審議の結果が出るのが、いまの見通しですと恐らく来年のいまごろになるのではないか、早くてそのぐらいになるのではないか。こういうふうに一つ一つを見てみますと、対応の仕方といったものが大変におくれているのではないだろうかと私自身は思います。銀行をただ土曜日閉店しただけでは雇用には結びつかぬじゃないかとは言われますけれども、当然これは雇用に言びつくようなあり方といういわゆる週休二日制もあるわけでありますから、そういう将来を踏まえた段階的なものをやっていくというのも国際的視野から見ても、これは大変重要な問題だと思います。労働時間もやはりそういう関係に該当するのではないだろうか。いろいろな問題がありますけれども、円レートの問題というのは、いまフロートしているとは言いながら、余り大きく変化し過ぎる状態というのは、大変に弱い企業に対して雇用不安をさらに増大する、企業の存立にも関係してくる、こういう問題を厳しく見て、政府そして国全体としての対応姿勢をより強化していただきたい、かように考えております。
  71. 広沢直樹

    ○広沢委員 先ほど参考人から、いわゆる労働四団体の統一要求をるる御説明がございました。そこで、その中にありますことを二、三伺いたいと思うのです。  第三次雇用対策の基本計画に触れられまして、今日の情勢から見ると大きな変化があるので、全面的な改定作業に着手するように、こういう要求があります。確かに私はこの基本計画の中に問題が幾つかあろうかと思います。昨年の六月に、雇用対策法に基づいてこの基本計画ができた。この基本計画の中に、昭和五十五年までのいわゆる労働雇用対策、その問題がすべて網羅された形でつくられておるのですが、これが狂ってしまいますと基本的な問題があるということもよくわかります。その点について若干御説明をいただきたいと思うわけであります。
  72. 前川一男

    前川参考人 先ほども実はちょっと報告の中で触れたわけですけれども、基本的な雇用情勢についての見方というものがもう狂ってきているのではないだろうかというふうに考えております。これはもちろん実際的にはいわゆる五十年代の前期経済計画、そういうものを踏まえながら、いわゆる第三次雇用計画が検討されてきているわけであります。ところが、私もたまたま税制調査会などにも関係しているということもありまして、五十年代前期経済計画がすべての基本になっておりますけれども、この中でまず出てくることは、今後の雇用情勢というのは景気の着実な回復に伴って漸次改善されていく、こういう考え方を打ち出したのはもう大分前になるわけですね。それを踏まえてやってきておりますから……。ところが当時のいわゆる完全失業率、政府の統計で二%というのが、きのうのお聞きした資料によりますと二・一%になっているというのは、これだけの時間的な経過を経て、しかもいろいろな対策をやっているのだと言いながら、二・一にふえたというのは大変な問題だと思うのです。  それから、いまの情勢というものは、当時と違って、たとえば景気回復のテンポと雇用の回復テンポというものはどうも必ずしも一致しない。そういう情勢が明らかに今日出てきているということになれば、やはり景気回復景気回復で絶対に必要なものではありますけれども、同時に雇用対策全体について見直しをしていく、そして緊急の課題については立法措置を講じていただくとか、いろいろな手当てを総合的に考えていかなければいけない時代に入ったというように思います。したがって、いまの雇用計画というものもやや古い、そういうものになりつつあるのだということだと思うのです。したがって、時宜に応じまして、機敏にそういう対応姿勢をとってもらうことが、また雇用不安をある程度緩和できる、そういうものにも私は結びつくのではないかと思います。
  73. 広沢直樹

    ○広沢委員 それで、労働大臣にこの問題について一言だけ、時間もありませんけれどもお伺いしておきたいと思いますが、この第三次計画ではインフレなき完全雇用の達成、維持を目的といたしておりますね。そこでいまお話がありましたように、五十年代前期経済計画に基づいてこの計画はできているわけでございますが、私はこの中に具体的に数字といいますか、計画をどう具体化していくか、確かにいろいろな問題点の意識は網羅されていると思うのですが、それを具体的にどうしていくかというプロセスが欠けているのではないだろうかと思います。そうして最終的に完全雇用の状態が、五十五年度のところでは一・三というような状況になるということを描いておりますが、果たしてそういうことが実現できるかどうか、これさえもまたあいまいなのでございますね。その点につきましてひとつ労働大臣の御意見を聞かせていただきたい。
  74. 石田博英

    ○石田国務大臣 私どもは五十年代の前期五カ年計画というものに従っていろいろと作業もし、そういう見通しのもとに対策を講じていることは事実でございます。ただ、私はもう一つ必要なものがあると思う。つまりこれからのいよいよ進んでいく高齢者社会あるいは高学歴社会、そういうようなものと産業構造の変化、現在の段階で先般長期信用銀行の調査によりますと、投資意欲が一番強いのはいわゆる省エネルギー部門だ、ところがそれは投資意欲としてはあらわれてくるけれども、雇用にはどういう影響を与えるだろうか。それから、これから雇用吸収力のある部門はどこで、どれくらいの力を持つかというものを見直していかなければならぬ。われわれの到達すべき目的は完全雇用でありますが、完全雇用といっても、まず一%か一・三%は移動のための失業という状態は当然ありますから、それはそうですか、そういう意味の見直しをした上で雇用対策というものを考えなければならぬ。そこで私が提唱いたしまして、経済企画庁が幹事役になって、いま雇用対策閣僚会議を開いて、そういう面からの検討を進めているところでございます。
  75. 広沢直樹

    ○広沢委員 時間ですから、終わります。
  76. 田中正巳

    田中委員長 次に、竹本孫一君。
  77. 竹本孫一

    ○竹本委員 参考人の皆さんは、きょうは御苦労さまでございます。時間が十分しかありませんので、前川参考人にまとめて質問をいたしたいと思います。  第一点は、これからの雇用不安というものをどの程度厳しく受けとめられておるかという問題なんです。私は政府経済政策に対していろいろ批判をしてきておりますが、いまのままでいけば、そういうことがなければよろしいけれども、場合によっては来年の三月、いわゆる経済の三月危機というものが来はしないかということを心配しておるのです。その三月危機の第一の要因は、言うまでもなく雇用不安である。第二は信用不安、金融機関の問題である。第三は外圧、アメリカを初めとする外からの圧力によって日本が非常に苦しい立場に立つ、こういうことを心配しておる。  その第一の雇用の問題につきましては、先ほど、ゼンセン同盟が五十七万が四十一万に減った、すでに十五万か十六万人減っておるというようなお話も出ましたけれども、構造不況業種だけでも、仮に四百万おるということにしまして、そのうちの二割がこれから街頭に投げ出されるということになれば、八十万の人が出てくる。百五万、百六万と言っておりますけれども、来年になれば失業者が二百万になるという心配がある。これは雇用の重大なる不安があるという点を心配しておるが、先ほど来二・一%の問題も出ておりますが、これからの雇用の問題についてどの程度の深刻さを持っておられるかという点をひとつ伺いたい。
  78. 前川一男

    前川参考人 お答えいたします。  先ほど、雇用情勢が改善されるどころか、むしろ見通しが立ち得ない、そういう状況にじりじり行っているのではないかということを申し上げました。私ども、たまたま同盟の資料ではありますけれども、各組合に連絡をとって状況把握などをもちろんいたしているわけであります。その一つの例として、先ほど冒頭にゼンセンの関係とそれから漁業の関係、これを申し上げたわけでありますが、金属の関係でも、あるいは化学の関係でも、あるいは私どもに加盟をしている一般同盟の一部の組合、その他多くのところが大変大きな問題を抱えているわけであります。もちろん造船関係におきましても、現在すでに大変困難な事情を迎えているわけでありますけれども、たとえば、現在の運輸省の勧告をしている操業ベースということで見た場合にも大変なことになるわけです。これはまさに来年の三月以降、大体春ぐらいからはどんどん失業者が出てこざるを得ない、こういう時期を迎えてきます。したがって、そういうように見てまいりますと、いま緊急の問題として、いわゆる雇用、特に構造不況、これを解決をしていく、あるいは見通しを立てていくというための対策をこの臨時国会の中で固めていただきませんと、来年の春を待っていたのでは大変なことになってくるというように私どもは考えております。したがって、その意味で、ぜひともこの臨時国会におきまして、臨時措置法の制定のために最大限の努力をお願い申し上げる次第でございます。
  79. 竹本孫一

    ○竹本委員 企業内がいま抱えておる過剰労働力は、あるいは二百万と言い二百五十万と言い、正確な数字は必ずしもないのですが、いままでは無理をして抱えてきておるものが、もうこの段階になると投げ出さざるを得ないという危機的状況に立っておる。倒産が減らない、逆にふえておるのもそういう関係で、私は経済の前途に対して非常に心配をしておるのでございまして、労働大臣もいらっしゃるので、ひとつこの点は真剣に考えていただきたいと思っております。  そこで、いま問題の臨時措置法についても、これは四団体統一の体制で案をつくっておられる、また国会内においても各党もこの問題の重要性についておおむねコンセンサスができつつあるし、お話しのように、臨時国会でぜひともこれは実現したいと考えております。  そこで、先ほど来内容の具体的な問題について藤田さん初め各同僚議員から御質問がございましたが、あるいは解雇の制限、あるいは年齢の問題、あるいは指定業種の問題、あるいは手当の期間の問題、あるいは定年の問題、いろいろと問題はありますが、この中で同盟として一番重点を置いておられる点はどれであろうか、またこれだけのものを四団体が統一して要求をされるという、そのまとめる過程において最も苦心をされた点はどの点であるか、結論だけで結構ですから簡単にお願いしたい。
  80. 前川一男

    前川参考人 重点の置き方というお話でして、率直に申し上げて大変にお答えしづらい点でございますが、私どもとしては、実は労働四団体がそれぞれ政府に要求を出してまいりました。同盟、総評、それから中立労連と新産別が一本のもので、三つの要求が出ておりまして、この三つの要求というのは中身も決して似通ったものとは言い切れない、相当の開きのあるものも中にはあったわけであります。その中で、いろいろ時間をかけて、特に実務担当責任者によって詰めた結果が、こういう結論が出ているわけです。したがって、考え方としては、私どもはこの中のものについて可能な限りひとつ生かしていただきたいという点をお願いするわけです。  ただ、問題点として最後まで残りましたものは、先ほど申し上げた九十日延長という問題がありますし、それからもう一つはいわゆる個別延長給付二年間延長、これは意見は合っているわけであります。両方とも意見は一致したのですけれども、財源などの関係を踏まえましてどうなのかということについていろいろ検討しました。その結果、いわゆる個別延長給付の方は、従来もやってきているし、それから額もそんなに膨大にはなってこないということもありますので、これはできるのではないか。それから片方につきましては、先ほど富塚さんからも言われましたけれども、約千五百億ぐらいのものになるのではなかろうか、いまの国の財政の中でどんなものかという点が一つ大きくぶつかったわけでありますけれども、私どもは政府におんぶするということではなくて、雇用保険法の掛金がその分ふえてもいいということははっきり割り切るのでぜひともお願いをしたい、こういうことで最終的に意見の一致を見たわけで、全部につきまして結果的には完全な意見の一致を見て、そして大変に無理なものについては、むしろこの際私ども四団体としては取り上げない、こういう方向でこれを固めたという経過でございます。
  81. 竹本孫一

    ○竹本委員 先ほどすでに議論をされましたけれども、二年前に策定された第三次雇用基本計画、これはある意味において前提というが非常に重要な関連のある前期経済計画そのものが、われわれから言えば行き詰まってしまっておる、そういうことも含めまして、構造不況の問題、それから二・一%の問題等いろいろありますので、どうしてもこれは改定すべきであろうと私も思います。また同盟も先ほど来そういう点をはっきり言っておられるようでございますが、もう一度確認をしておきたい。  それから同時に、実は前期経済計画というのは、関係者がいらっしゃいますから申し上げますが、閣議了解事項と閣議決定とは、基本的な分析において私は少し変わっておると思うのです。要するに閣議了解事項の方が経済見通しとしては正しい。それを後で政府が強気になって、そこまで言ったのでは心配だ、不安が不安を呼ぶというようなことになっては困るということで、少しごまかしたというか、強気の姿勢に閣議決定の前期経済計画はなっているのです。ところが、実際の動きはその前の閣議了解事項でやったときの分析の方が当たっておると私は思うのです。  これは経済計画そのものの策定の問題ですが、そういうふうに客観的なもの、根拠のない計画を立てても現実にはだめだということと、それからもう一つは、先ほどもちょっと出ましたけれども、いままでの計画というのは大体すべて生産計画が中心で、一つの特色は財政的裏づけがない。もう一つの最も遺憾な点は、先ほど来おっしゃる、人の問題ですね。雇用計画をあらゆる経済計画の真ん中の柱に立てるという認識なり努力なりが足らないという点を私はここで強く指摘しておきたいと思うのですが、三次雇用基本計画についてのお考えをもう一度確かめておきたいと思います。
  82. 前川一男

    前川参考人 もう私から詳細に申し上げることはないと思います。ただいま指摘をされました点について、私どもも、全くそのとおりである、そういうように考えております。
  83. 竹本孫一

    ○竹本委員 一つだけですが、前川さんはいろいろ税調その他に御関係もありますので、労働者の立場から、来年度の予算編成あるいは税制改革について強い御希望があろうかと思いますが、一言だけおっしゃっていただいて、終わりにしたいと思います。
  84. 前川一男

    前川参考人 特に来年度の予算に関連をして、税制問題については一言申し上げておきたいと思いますが、労働四団体の書記長間におきましても意見交換だけはしてあります。来年度はぜひとも、一つは、いわゆる不公正税制と言われるものについて最大限の努力をお願いしたいという点と、それから、物価調整減税、これについてはぜひ実現をお願いしたい、以上二点について申し上げておきたいと思います。
  85. 竹本孫一

    ○竹本委員 ありがとうございました。
  86. 田中正巳

    田中委員長 次に、寺前巖君。
  87. 寺前巖

    寺前委員 先ほどから労働四団体の皆さん方から、定年制の延長の問題が今日の雇用不安の中においても非常に重要な位置として指摘がありました。その点について、労働大臣自身も過般来当委員会においていろいろ述べてきておられます。当面六十歳定年制が実現するようその促進に努めているところである、こういうお話でした。  振り返ってみますと、労働省自身も、昭和四十八年五月十八日に労働事務次官通達で、都道府県知事や都道府県労働基準局長に、「定年延長の促進について」という文書を出しておられます。これを見ますと、「本人が希望する限り公的年金により老後生活の必要な保障が本格的になされる年齢までは、その希望に応じた職業が確保されるようにすることが望まれる。その意味で現在の五十五歳定年は適当でなく、当面、今後五年程度の間に六十歳定年が一般化することを目標として、定年延長を促進することとすること。」という方向で指導をしておられるようです。  いよいよ今日の事態においてこのことがきわめて重要な位置を占めてきていると思うのですが、私が一言だけ聞きたいと思いますのは、民間企業に対してこういう指導方向をしているときに、直接政府が指導監督をしているいわゆる政府関係機関の特殊法人の分野においてこのことが貫かれているのかどうか、これは私は政府の態度を調べる上において重要な位置を占めると思うのです。  過般政労協関係の団体が出しておられる資料を見せていただいておると、就業規則で六十歳定年になっていないところが半分近くもある。これは一体どういうことになっているのだ。今後五年間を目標にしてやっていきたい、こうおっしゃっておられるのに、もうその五年も追ってきている、それなのにこれは一体どうなっているのだろうかということで気になって仕方がないわけです。やられる以上はやはり徹底してまず内部から指導していくということが重要だ。  そこで私は、きょうは所管する大臣に、特に六十歳と言わなくても五十五歳を明確に就業規則で載せておられるところの幾つかの省の大臣においでをいただいて、この問題について事実はどうなっておって、どうするつもりだということを、労働大臣の言っているようなことは関係ないんだと言われる態度をおとりになるのかどうか、この際にはっきり聞かしていただきたいということで、二、三の大臣においでをいただいたわけです。  そこで、お聞きをしたいと思いますが、科学技術庁は、原研が五十五歳という就業規則になっているのです。これは一体どういうふうにされるつもりなのか。  それから、通産大臣にお聞きをします。これは所属が間違っておったら御指摘いただいたら結構ですが、建材試験センター、ここは五十五歳、女子は四十歳ということになっておる。これはまたちょっと違うのです。中小企業保険公庫は五十五歳、中小企業金融公庫が五十五歳ということになっておりますが、変わっておったら御指摘をいただいたらありがたいですが、とりあえず二つの大臣にお願いをしたいと思います。
  88. 石田博英

    ○石田国務大臣 その前に一言だけ申し上げておきます。  御指摘のような実情にありますので、私どもの方はこれを改正してもらうように呼びかけておりましたが、去る十月の五日だったと思いますが、日にちは正確には覚えておりませんが、特に関係各省の担当官を呼びまして、さらに強く改正方を要望いたした次第であります。
  89. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 原研は仰せのとおりでありますが、実質は五十六歳ということになっております。しかし、現在改善策を原研当局において講じておる最中で、具体的には、年度内にこのことを労働組合に示しましょうという話し合いもなされております。私といたしましては、こうした原研当局のさらに努力されることを望みながら、今後定年制の進むべき方向に即しまして考えていきたいと、かように存じております。
  90. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  私の方も科技庁と同じように聞いておりますので、労働省の方針に即し、同時にまた大蔵当局ともすり合わせをいたしまして、その方向に向かって努力いたしましょう。
  91. 寺前巖

    寺前委員 労働大臣も、十月の五日ですか、やったとおっしゃるし、いまそういうお話がありました。中身を見ると、明確に六十歳の定年延長というふうに必ずやりますというお返事ではなかったようですから、労働大臣としても立てられた方針について政府部内の関係各省が貫かれるように、改めてもう一度ハイレベルで検討していただくことを要望して、私の発言を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  92. 田中正巳

    田中委員長 前川参考人には、御多用中御協力をいただきまして、まことにありがとうございました。  午後二時再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十八分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  93. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午後の参考人として、三菱商事株式会社会長藤野忠次郎君、前税制調査会会長小倉武一君、東京経済大学経済学部長富塚文太郎君、全国公団住宅自治会協議会事務局長岡田隆郎君、東京大学経済学部教授貝塚啓明君の御出席を願っております。  なお、富塚、貝塚両参考人は少しおくれて御出席の予定でございます。  参考人各位には御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  参考人各位には、委員質疑にお答え願う方法で御意見を承ることにいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊東正義君。
  94. 伊東正義

    ○伊東委員 私は、参考人の方々に財政、経済景気の問題、あるいは貿易の問題、税の問題等お伺いいたしたいと思うのでございますが、持ち時間三十分でございますので、非常に短い時間でございます。できるだけお答えは簡潔にお願いいたしたい。あらかじめお願いを申し上げておきます。  実は、富塚先生、貝塚先生もおいでになると思いまして、御質問しようと思っていたのでございますが、いま委員長のお話ですと後刻ということでございますので、藤野参考人は、これは経済界の大御所でございますから、ひとつその分までお願いいたしたいと思うわけでございます。  藤野参考人に為替その他の問題をお伺いをします前に、一般景気対策につきまして、若干私見も入れるかもしれませんがお許しを願って、御意見を聞かしていただきたいと思うのでございます。  御承知のように、先般政府では総合経済対策を樹立したわけでございますが、それは二兆円の規模の公共投資、金利の引き下げということを中心にしました対策をつくったわけでございます。御承知のように、経済企画庁の最近の月例報告を見ましても、雇用関係で、有効求人倍率も〇・五三ぐらいで伸びない、完全失業者も百五万ぐらいいるということで、雇用情勢も回復しておらぬ。あるいは倒産件数も千五百件を数えて、明るい指標が出てこない。製造業の稼働指数も四十五年を一〇〇にしまして八五、六ぐらいのところだというようなことで、個人消費も余り伸びない。設備投資のメルクマールでございます機械の受注もほとんど横ばいだというような指標が出ているわけでございます。ただ、若干明るいのは、公共事業の前倒しといいますか、そういうことをやりましたので、公共事業関係の支払いがふえるとか、あるいはセメントとかコンクリート製品の出荷がふえるとか、建設関係の雇用が伸びている。若干明るい指標は出ておるわけでございますが、まあまあ不況感というのはやはり免れないわけでございます。  今度の経済不況というのは石油ショック以来の世界的なことでございますので、日本国内だけの対策とか一時的対策ということではいかぬわけでございますし、また、企業も自力で反転するという能力をなくしているというような状態でございます。経済白書でも循環的な不況と構造的な不況が重なったということを言っているわけでございまして、そういう意味では、いわゆる構造不況業種、よく十三と言われているわけでございますが、こういうものの対策といいますか、過剰設備というものの再編成をするとか、そういうことをやらなければならぬと同時に、いままでの不況でございますと、輸出が伸びれば設備投資がふえるとか消費がふえるとかいうことがあったわけでございますが、今度はそういうこともない。昭和五十年前期の経済計画を見ましても、六%の経済成長率ということを前提にしているわけでございます。これは先進国の中では高いのでございますが、日本の過去の経済成長率から見ますと約半分でございますので、やはり好況感というのはどうしても出てこない。でございますので、個人消費もそういう情勢で余り伸びない。最終需要の増大、経済力の拡大につながる設備投資もなかなかふえないというような情勢でございますので、やはり財政が——金融は、金利の引き下げをやりましたのでもちろんでございますが、国の財政主導型で、景気の呼び水政策として、今度の補正予算でも公共事業費の一兆円を中心としまして十万戸の住宅でございますとか、地方の単独事業でございますとか、合わせて二兆円の事業規模の公共投資をやろうということをやって、財政主導で呼び水政策をやっているわけでございますが、御承知のようにそれだけ税収があるわけでございませんから、小倉参考人の方から出されましたものでも書いてありますが、なかなか税収が上がらぬということで、建設公債を積極的に活用してことしも来年も経済刺激をしていこうということをいまやっているわけでございます。  藤野参考人にまずお伺いしたいのは、こうした公共投資というものを中心にした景気刺激というやり方について、まだ経済界としてはこういうことも考えるというような方法があれば御意見を聞かしていただきたいし、またその場合の公債依存度でございますが、三〇%以内ということでやっているわけでございますが、これは単年度でそう考えるか、二、三年で三〇%になればいいじゃないかというような弾力性を持たせてもいいじゃないかという意見もあるわけでございます。そうしたことについてまず御意見を承りたいと思います。
  95. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 いまの日本経済不況、これはこの前の昭和の初めのときの不況の実態と根本的に性質が違う。たまたま私は、昭和の初めのときのあのときは不況を超えたパニックで、ニューヨークにおりまして目の当たりに不況の状態を見たわけです。当時、昭和五年の初め、あのころはアメリカでも、非常に銀行が倒産する、それから企業はつぶれる、失業者は累積して、失業者じゃなくてこじきになった。現に、ニューヨークの町を歩くと、あの当時たまたまコーヒー一杯五セントでしたが、五セントのコーヒーが飲めないためにこじきになっているというふうなことを私は目の当たりに見たのです。あのときに日本も同様のことが起こったのですが、あの不況の解決策は、経済政策というより、当時は満州出兵、あれによって一夜にして日本国内景気は変わったということがあるわけであります。ところが、今度は世界的に征服、被征服ということができない。ことに神様から見た場合に、三人が図抜けて金持ちだから、この三人が何とか世界景気を刺激する車になってくれ、こういうこともあります。  それにしてもいま日本としては、政府としてはまずやるべき刺激策はほとんど十分やったのじゃないか。それの効果が上がらない、だからもっと何かやれということもありますけれども、絶えずインフレの問題、少しよくなれば、七%以上超えればこれからはインフレ、仮に五%以下になれば失業者、そこで狭い範囲を、五%か七%、この狭い範囲を縫って歩かなければならぬというような性質を持っているわけで、これに無理がいくとどちらかに偏った結果が起こるのじゃないか。せっかくおさまりかかったインフレの再発というものもあるし、多分にいまは企業自体、全体が神経衰弱的で、われわれも朝から晩まで寄るとさわると泣き言。これはアメリカの場合とちょっと違って、アメリカの場合には、業種のいかんを問わず——私はこの一月の初めから統計をとっているのですが、来るアメリカ人全部がほとんど楽観的、そうして、いろいろアメリカがひとり先に進んではおりますけれども、伸び悩みということはあるけれども、あと半年か、せいぜい一年たてばおれの方は大丈夫だ、財界全体が一応そういう気持ちを持っています。  ところが、日方の場合には、これがいつ曙光が見えるのだかわからぬといったような神経衰弱的の気持ちであって、一向積極的の気持ちになれない。ただし、これにはただ泣き言ばかり言っているのではなくて、これは調べてみますと、オイルショックの起こる直前、あのときを一〇〇としてみますと、企業の利益ですが、アメリカは今日現在で企業の利益の平均は一五八に近くなっています。ですから、企業の利益平均は相当回復しているわけです。その次が西独であって、西独の場合には一二〇、これも一〇〇は超えて回復しているが、日本の場合にはまだ九五、こういう数字も一応出ますので、これは単なる精神的の泣き言ばかりでなくて、企業自体に非常に、もちろん特殊な企業は別ですけれども、平均すると日本が非常におくれている、こういうことがあると思うのです。  この際、やはり方法としては、国債の問題にしても三〇%とか一応の目標はあって、これはもっと思い切ってやってみたらどうだということも考えられますけれども、またその逆効果ということもあり得ますし、ただ、それよりももっと急務は、一応日本が孤児になっているから、こういった日本経済が破産するかどうか、金を持ちながら破産するかどうかという非常に大事な瀬戸際に来ていて、世界世論の一応孤児になっている。これは何とかしなければならぬ。いま世界から孤立して生活する道はないわけですから、ことに先ほど申しましたように、国際的にも征服、被征服、植民地の関係はだれも考えているはずはないし、できもしないことですから、できないことが幾つかあるわけで、この際かえって、輸出しなければ食っていけない国民に対して、輸出するのはけしからぬから原価を上げろ、これも無理な話ですけれども、そうは言っていられないくらい彼ら自身が若い層の失業者と破産を抱えているわけですから、これはやはり輸出をある程度、やむを得ない、できるだけ非常手段として、自由主義の基本は変えるわけじゃないにしても、譲歩していく。持てる者はやはり持たざる者をある程度救済していくというふうな気持ちでないと、ただ日本だけの経済を考えてどうしたらいいかということをやっても効果が薄いし、やるならばそのことを事前に、比較的ゆとりのあるアメリカ、西独、日本が同時に、時を同じくしてそういう施策をやるということでないと、ばらばらにやると、すでにやったように、アメリカがひとり先に進んだために結局日本輸出がふえる、ドイツの輸出がふえる。で、アメリカは三百億ドルぐらい貿易の赤字になるのじゃないかと最近になって騒いでいる。ああいうことが起こるので、私は当時から心配していたのですが、ゆとりのある国が世界経済の回復に寄与、貢献するならば、そのやり方は各国いろいろあるだろうけれども、タイミングは同時でなければならぬということだろうと思います。  はなはだ失礼しました。
  96. 伊東正義

    ○伊東委員 次に、いま国際経済のお話が出ましたので、貿易の問題についてお伺いします。  日本は貿易の均衡を図ろう、国内景気をよくして輸入を増大しようというような国際的な約束をしたわけでございますが、現状は、御承知のように一月から八月を見ましても、貿易収支でたしか九十八億ドルぐらいの黒字、経常収支で五十三億ドルぐらいの黒字になっているわけでございまして、おっしゃったように相手の国から保護貿易の風潮が出たり、非難を受けているのは御承知のとおりでございます。そこに最近の異常な円高が出たわけでございます。  これの原因はいろいろあるのでしょうが、日本銀行がもう乱高下でも一切介入をしないんだというようなデマが流れるとか、あるいはアメリカが非常に経常収支赤でございます。ことしもおそらく百四十億ドルぐらい赤になるだろう、来年もそうだろうというようなことで円が高くなったのだというようなこともありますが、基本的には私はおっしゃるような黒字円高の原因だろうと思うわけでございます。それで、こういう情勢になりますと、円建てで輸出をしておりますたとえば船舶とかプラントとか、こういうものはほとんど影響はない。競争力の強い自動車とか家電とか、こういうものも大した影響はない。もろに影響をこうむるのは、輸出関連の中小企業の繊維とかあるいは雑貨とか、そういうことをやっている人が影響をこうむるわけでございますので、そこで私は藤野参考人に聞きたいのは、大体円高見通しの問題、あるいは円為替の安定対策輸出関連の中小企業に対してどうしてやったらいいかというようなこと、あるいはもう一つ、これは御感想を伺いたいのですが、円が強くなりましても輸入物資が余り安くならないのです。私の知っているだけでも配合飼料がつい最近トン五千円下げたなんということがありますけれども、ほかのものは下がらないわけです。国民から見ますと、円高というのは輸出関連の中小企業が困る、あるいは円高になってもうける人があるけれども、消費者はさっぱりもうかってない、その恩恵を受けられないぞという感じを受けるわけでございますので、円が強くなっても輸入物資の値段が下がらぬということについての御感想と、円高見通し、あるいは円為替の安定対策をひとつ時間が余りございませんので簡単にお願い申し上げます。
  97. 田中正巳

    田中委員長 藤野参考人、お座りになって結構です。
  98. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 御承知のとおり、円高になった引き金、きっかけは、日本の経常収支が初め約七億ドルくらい赤字じゃないかと予想されていたものが六十五億ドル逆に黒字になるということ、それとまた、たまたま時を同じくしてアメリカの貿易収支がことしは三百億ドルくらい赤字になりはしないかということが引き金になって、急にそこで円が暴騰といいますか、上がってきたということ、それからやはり日本日本らしい頭痛はずいぶんあるわけですが、全体から見ると、日本がともかく外貨準備も百七十数億ドルあって、ちょっと見たら不況の状態がわからない、町を通って歩いても、何をしても。海外旅行は依然として多いし、ほとんど生活に変化がないじゃないか。エネルギーも自制していると見えない。日本景気が悪いんだ悪いんだということも誇大に言っているのじゃないか。われわれがずいぶん実情を説明しても、つい最近までヨーロッパ、アメリカ人には日本経済の実態がつかみにくかったわけです。だから、これを繰り返し言って、ようやく最近、なるほどなと少しわかりかかってきたというところなんです。  先ほど問題の、円が上がってきて為替差益が出て、その利益が一般大衆に還元しないじゃないかというお話かと思うのですが、これはさっきもちょっと申しましたが、根本的には非常に海外の事情、日本経済世界経済のほとんど一環になっていて日本で起こったことがすぐわかるということになると、本当を言えば三百六十円のものが二百五十円になればそれだけ安くていいわけなんだから、そうすると、いま起こっていることは海外にそれが即刻わかるわけですから、今度は海外の売り手が値を上げてくるということもあります。  それからこれは特定の企業のことばかり言ってもいけないと思うのですけれども、いま現実の貿易を重要な点について見ますと、輸入の場合、ほとんど原材料ですけれども、たとえば油とか鉄鉱石、こういうものは為替の損益負担が全部これはいわゆる貿易商社でなくて工場、メーカー自体にいく。それから輸出の場合はせいぜい半分、全体の五〇%ぐらいが商社の勘定。そうすると商社の扱う部分はごく少なくて、商社には輸入もあるし輸出もあるから、それでマリーということが起こってくるわけですけれども、為替上の差損、差益というものは実際は商社にはそれほど起こらないわけです。そうすると、現実に三百六十円と二百五十円、百円も違うのに小売値段は一向に下がらないじゃないかということですが、これはただ一概にそうとばかり言えないのは、向こうがすぐに値段を上げてしまう、非常に敏感に、早くする。それからこちらの方も為替の変動が将来どうなるかわからぬという不安を持っていますから、ここで急に上がったんだから逆に急に下がってくるかもしれないという不安感情があるものですから、為替レートに対する不安ということになると、一般に商売がそこで停滞しちゃって、だれもリスクをとらない。やることの原則はもう決まっておるので、円が高くなると思えば輸入をできるだけ見合わせる、あるいはもっと高くなるかもしれぬから輸入する時期を繰り延べる。つまり極端に言えば、二百五十円の物が二百円になるかもしれぬじゃないか。そんなに高くなると思っている人はいないでしょうけれども、そういうふうに円が先高になると思えば、先が高くなるのだからどうしても支払いを延ばすようになる。そういうふうなこともまた影響してくるだろうと思うのですね。  したがって、これはもう今日のようなことになってくると、政府それから各企業がよほどよく話し合って、ぼくが国際的にもと言ったのはそれなんで、国際的にも三人で同時に何か施策をやらなければ、結論ばかり出してもだめで、出たら、それを実行するのは同月ごろからというふうなことを決めて——いまそこら辺まで来ちゃったので、特定の企業だけがやってもこれは国内問題だけでは済まされない、相手の問題が非常にあるわけですから。相手が意識的にやっているかもしれぬ。どうしても円を高くしなければおれは承知しない、百七十七億ドルもかせいで一向にこれを経済協力にも使わぬじゃないかという声が非常に強いわけですから、そういう広い見方でないと、これは解決できないと思うのですがね。
  99. 伊東正義

    ○伊東委員 もう時間がありませんので、藤野参考人への御質問を終わります。  小倉参考人にお伺いしますが、もう時間がありませんから、簡単に二点だけお伺いします。  一点は、この前、税制調査会で今後の税制のあり方の答申がございました。拝見をいたしました。あの中で、簡単に申し上げますと、一般消費税の導入ということを国民の選択に任す、その前提は不公平税制の改善、あるいは勇断をもって行政機構の改革をやれ、恐らく人減らしまでやれということだと思いますが、そういうことをやった上で、五十年代前期の経済計画をもとにした財政収支試算からいけば、五兆円ないし七兆円ぐらいの税収で、いまの税体系の自然増収で賄えぬものが出るのだから、片っ方に社会保障とか公共サービスとかいろいろやらなければいかぬのだから、どうしても公債依存ということをやめるには増税をしなければいかぬということで、所得税とか住民税と一般消費税と並べられて、選択一般消費税の方に踏み切られたわけでございます。  拝見をいたしましたが、これは非常に問題がございまして、逆進性の問題とか、あるいは物価を上げるのではないかという問題とか、あるいは中小企業の事務の負担量というのが非常にふえるのではないかとかいろいろな問題もございますし、あるいは免税点の問題、非課税品目の問題、除外する中小零細業者の問題とか、いろいろ問題があると思いますので、これはわれわれ慎重に検討せねばならぬと思いますが、前会長の小倉参考人としましては、物価とか景気の問題あるいは準備の問題が皆関係するわけですが、いつ、どういう時期にあれを実施したらいいとお思いになって答申されたかということを一点お伺いしたいのと、もう一点は、この委員会でも問題になっているのでございますが、住宅供給ということが、これは国民のニードから考えても、あるいは景気対策から考えても、今度は十万戸の住宅供給するということがあるわけでございますが、その中で宅地供給ということが非常に問題になるわけでございます。この宅地供給につきましては、なかなか供給がふえないということで、人によっていろいろ議論があるところでございます。線引きの問題、いま持っている土地というのは大部分は市街化地域以外の土地なんだから線引きを考えなければいかぬという議論もございますし、あるいは公共公益施設の負担というものが事業費の大体半分を占めているのだから、そういうものを地方公共団体なり国なりでめんどうを見てやらなければ宅地供給はできないのだという議論もございますし、また一部には、御承知の税制、法人の譲渡益の重課の制度、あるいは特別土地保有税の問題の緩和をしなければだめだということを言われる人もあり、この委員会でも問題になりまして、政府では枠組みを外さぬ範囲で検討してみようということを言われたわけでございますが、この土地税制をどうお考えになるか、ひとつ前税制調査会個人意見で結構でございますが、一般消費税といまの土地税制の問題、二点だけ簡単にお答えを願いたいと思います。
  100. 小倉武一

    ○小倉参考人 最初の一般消費税の導入の時期についてのお尋ねでございますけれども、税制調査会では、どういう時期がいいかという抽象的な考え方については若干の議論をいたしましたけれども、何年から導入すべきである、あるいはした方がよろしいというような具体的な考え方は示しておりません。無論、物価に及ぼす影響とか、お話しのように一般的な景況の問題でありますとか、考慮すべき事項はたくさんございますので、恐らく、新しく発足する税制調査会で、その点などを考慮して、一般消費税を考える場合の仕組みなり、また、したがってその時期についても、政府に御答申申し上げる、こういうことになろうかと思います。ただ、前の調査会といたしましては、延ばせば延ばすほど事態は悪化する、できるだけ早い方がよろしいという、一般的な方針というか、そういう気持ちは持っておった次第でございます。  次の土地税制、特に法人の保有しておる土地についての税制についてでございますけれども、私ども昨今新聞で拝見するようなこと、国会での御議論もそういう報道を通じてのみ知っておるわけでございますが、その問題について税制調査会で特に審議したことはございません。恐らく、新しく発足する税制調査会で来年度の税制をいかにするかというときに検討さるべき一つの事項であろうと思います。宅地供給の問題のほかに、いまの土地利用についてのいろいろなことにも関連がございますし、あるいは金融の問題にも関係をするというような事項でございますけれども、税制の面からも何か検討して、宅地供給その他について寄与できるということであれば検討に値する課題である、こういうふうに考えております。
  101. 伊東正義

    ○伊東委員 質問は終わりました。
  102. 田中正巳

    田中委員長 次に、安宅常彦君。
  103. 安宅常彦

    ○安宅委員 私は、多国籍企業の問題について二、三藤野さんにお伺いしたいのですが、なぜこんな細かい質問を会長にされるのかなというようにお考えになるようなことなんですけれども、私ども、多国籍企業というものについて基本的な討議をしたいというそのときに、多国籍企業日本における代表である三菱商事の会長さんから、ぜひこういうことぐらいは聞いておきたいなと思ってお伺いいたしますから、ぜひひとつそういう立場でお答え願えればありがたいと思います。  固有名詞を出してぐあい悪いのですけれども、富士石油という会社があります。これはバーミューダ島にリソーセスといういわゆる現地法人を持っております。これは一〇〇%出資なんですが、これを政府を通じて私がそういうところにリソーセスという会社を持っておられるかということを言ったら、ない、こういう返事で、私どもの調査で、あることがわかりましたから確認したら、今度はある。そして、実は富士石油がこれを経営しているのではなくて、親会社のような立場にあるアラビア石油の仕事をしているのでございまして、われわれとは関係がございません、こういう返事が返ってきたんです。何か、多国籍企業が現地法人を持っていることは世間の指弾を食うのではないかという、恐れをなして裏口でこそこそやっているような立場をとられているからこんな返事が来るんじゃないかと思うのですが、たとえば富士石油一〇〇%出資で、そして実は親会社同様のアラビア石油の仕事をしているんですなどということは、一般商慣行というのでしょうか、会社経営の原則というのでしょうか、そういうことはあり得るものかどうか、ぜひ会長さんの、三菱商事という立場で、多国籍企業を問わず、経営全般、会社のあり方全般について見識のある、そういう立場で、こんなことあり得るんだろうかということで疑問を持ったものですから、ぜひお伺いしたいと、こう思います。
  104. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 ただいまの御質問ですが、たぶん御質問の御趣旨は、俗に言うペーパーカンパニーということだろうと思うのです。そうすると、これは例の、タックスヘーブンと俗にいいますけれども、たくさんある国の中で相当数の国が、非常に法人に対する税金が安い、あるいはないに等しいというような国が相当あるわけですね、これを俗にタックスヘーブンと言いますが、ただ、その国々はみんなそれぞれ主権を持って法律を持ってはいるのですけれども、そういう状態がまずある。そうすると、われわれの方にもそういう一見ペーパーカンパニーみたいなものはありますが、しかしその目的は、たとえばある資源開発とか探鉱事業、それをやるために会社を設立する。設立する場合に、こういうタックスヘーブンの国だと非常に設立の手続が簡単で登記料も安いとか、いろいろな便宜があるわけですね。それでそういうところに会社を立てて、実際の事業は、ある資源開発の探鉱とか、われわれもそれをやっておりますが、相当日本でも、世界じゅうにそういうことの組織があるわけです。ただし、それに対する設立、送金その他についてはやはり国内政府機関の許可が必要である。これはそういう条件を経てやっているわけですね。ですから、このタックスヘーブンの……(安宅委員「そういうことはあったとしても、隠す必要があるでしょうかというのが私の質問なんです」と呼ぶ)隠すことはないと思いますね。
  105. 安宅常彦

    ○安宅委員 しかも、アラビア石油は親会社同然だからそっちの仕事をしているので、富士石油が自分で一〇〇%出資してアラビア石油の仕事をしているんですなんという、商慣行上あるのかどうかということです。そんなことはないんじゃないでしょうかね。
  106. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 それは何かの誤解かもしれません。それは特にわれわれも隠してないし、発表していますし、それから政府にはわかっているのだから、許可をしているわけですから、だから、隠す点は一つもないと思うのです。
  107. 安宅常彦

    ○安宅委員 私、聞きたかったのは、富士石油の現地法人がアラビア石油の仕事をしている、そういうことはあり得るでしょうか、商慣行上あるいは会社の経営、経理の関係上。そんなことはないんじゃないかと思うのですが、いかがなものでしょう。こんなことはないんでしょうね、会長さん。
  108. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 それはアラビア石油に直接聞いてみないとよくわかりませんですが、何か特殊事情があるかもしれません。
  109. 安宅常彦

    ○安宅委員 どうも名答弁で恐れ入りました。  ただいまちょっと触れられましたが、次は、週刊東洋経済が出した「海外進出企業総覧」というのですが、あなたの方と鋼管さんと、それから神戸製鋼ですか、それから川鉄さんとの共同で、三菱商事が六九%くらいの出資をしているイースタン・アトランチック・アイアン・オーア・カンパニー・リミテッド、こういう名前の会社がありますね。これはバハマにあるわけです。会長、いま探鉱なんかするときにそういう都合でやる場合もあるといみじくも言ったのですが、この会社のことじゃなかったですか。
  110. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 これも一つでしょうね。これはもともと目的は、アイボリーコーストという国の鉄鉱石資源開発、探査、それからもし所期の数量が万一出たら、鉄鉱石をさらに粒状のペレットにしようという目的で、日本側が合計で約四〇%、それからアメリカ、フランス、英国、欧米側が六〇%、それで大きなコンソーシアムをつくって事業を進めよう、こういう構想なのです。
  111. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは従業員は何人バハマにおられるのですか。
  112. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 これはもう相当たちますけれども、ことに最近の景気は悪いし、現実にやっている技師はアイボリーコーストで探査を続けているという程度ですから、大した人員はあるわけじゃないので、まだ探査の過程です。実際果たして一これの目標が十億トンというのですからね。千億トンなければなかなかこの事業はうまく進まないような気がいたします。
  113. 安宅常彦

    ○安宅委員 そういう重要な会社なんですが、このあれには「象牙海岸の鉄鉱山調査」となっています。バハマ諸島が幾ら税制上の有利やその他の有利な条件があったとしても、アフリカの探鉱調査をするためにバハマ島に、従業員はゼロだと思うのです。これは書いてませんからね。このごろ景気が悪くてゼロじゃなくて、初めからこれはゼロなんですよ、会長さん。だから、それは余りひど過ぎるじゃないか、何ぼペーパーカンパニーといったって、ペーパーも何も、何もないんじゃないか。そういうことはやはり考えてもらいたいな、私どもはこう思っていのるです。いかがなものでしょう。
  114. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 その目的は、先ほど申しましたように鉄鉱石の探査、それはアイボリーコーストでやっているのです。事業はアイボリーコーストで探査を続けているのです。一体バハマの方は、これはバハマでただ会社があるだけで、その会社を設立するのに非常に便利で早いからというだけの話であって、もし後日これがあれば、これは当然アイボリーコーストの政府の要求によって、アイボリーコーストへ会社を移転せざるを得ないでしょうね。
  115. 安宅常彦

    ○安宅委員 それはおたくの会社の事情はわかりますが、しかし従業員ゼロで、事務所だけ持っていて、まあ机一つぐらいあるのかどうか、私は行ってみたことはないけれども、幾ら何でも多国籍企業の現地法人という——合法かもしれませんよ。合法かもしれませんが、これはできたのは七一年六月ですよ。不景気になったから人がいなくなったのじゃなくて、これは初めからゼロですよ。これは何ぼ何でも、大三菱がやることにしてはけちくさいし、余りに世間の聞こえがよくないんじゃないかなと私は思っているのでございますけれども、議論していると時間がなくなりますから、そういうことがあるということだけお認めになったのだったら、それは結構でございます。
  116. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 この問題につきましては、いろいろ諸外国の例もあるわけなんですが、ひとつ別に私も数字や何かはっきりわかりませんから、後ほどそういう数字やあるいは書類なり調査してお届けしたらいかがでございましょう。
  117. 安宅常彦

    ○安宅委員 いや、わかりました。書類を届けてもらうつもりで言ったのじゃなくて、三菱という大商社が、そういう何ぼ何でもゼロの会社を名前だけ、何ぼもうけるために便利だか知らないけれども、そういう手段までしなくたっていいじゃないか、私は素人考えとしてそう思ったからお伺いしたので、後は結構です。  大蔵大臣おられますから申し上げますが、こういうことについて、これは証券取引法なりその他商法の規定によって、上場会社はすべてこういう現地法人といいますかペーパーカンパニーを含めて全部報告しなければなりませんな。それで大蔵省印刷局の発行で、有価証券報告書総覧というのを出していますね。全部出しているのですよ、三菱さんも全部出しています。ところが、このことについて質問しようというと、あなた方の部下は、これは守秘義務で、そういう会社があるかどうかも、どんな経営状態かもそれはもちろん、どういう会社の形式かも、従業員何人いるかも守秘義務でございます。通産省はもちろん、資源エネルギー庁の石油部長なんというのは断固としてだめ。そうして今度は日銀に聞いたら、大蔵省からそういうことについての報告を受けた場合の処理の仕方は委任をされているけれども、大蔵省の許可がなければ発表することはできないと言っているのです。反面、法律によって有価証券報告書総覧には全部載せておりながら、国会議員が聞くときには守秘義務だ、こんなことが通用するかどうか、これは大蔵大臣、断固として聞かなければならない。どうですか。
  118. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま三菱商事さんのことについて御質問がございましたけれども、これは特定の個々の会社のことに属しますので、そのどうであったこうであったということについてここで詳しく申し上げることは差し控えたいと思いますが、一般的の問題といたしましては、これはこういうことになっております。  海外に関係の会社と申しますか子会社と申しますか、そういったような会社を持っておるのは、大マンモス会社にえてしてそういうものが多いのでございますけれども、そういったような会社、海外にある子会社とここでは申しましょう、その子会社が子会社の名においていろいろな仕事をやって、そうして無論……(安宅委員「発表し得るのかどうかということです。時間がなくなりますから」と呼ぶ)それじゃもうそんなことを抜きにして、守秘義務のことだけ申し上げます。  税務職員は所得税法、法人税法によりまして、一般の……
  119. 安宅常彦

    ○安宅委員 ちょっと待ってください。簡単に言います。もう一回。よけいな原稿書いてくるからだ。——ちょっと待ってください。そんなこと時間に入らない。そんなことをして答弁席に来て耳打ちするとは無礼じゃないですか。  答弁はこういうことなんです。片一方では、法律に基づいて有価証券の関係も含めて、すべて会社の支社から現地法人に至るまで有価証券報告書総覧というもので大蔵省印刷局が出している。しかも今度は民間ではちゃんとこういうものまで出して、その中には税制上有利だから私の会社はここでやっていますと、これは堂々たるものですよ。冊子、こんな厚いものが売られている。そういう中で、法律で決まっているのになぜ大蔵省の官僚や日銀が——何ぼもうけたか何ぼ損したか、脱税したかなんて私は聞くのじゃないんですよ。そういうものがあるかないか、どういうことをやっているのか、それさえも守秘義務でございますというのはおかしいじゃありませんかということを聞いているのです。
  120. 坊秀男

    ○坊国務大臣 有価証券の報告書というものは、これは公開をいたしております。(安宅委員「その範囲内のことは守秘義務じゃないのでしょう」と呼ぶ)有価証券の報告、それはちゃんといまおっしゃられましたとおり公表いたしております。
  121. 安宅常彦

    ○安宅委員 大臣、ちょっと聞いてください。有価証券なんといったって、そんなことでごまかしてはだめなんですよ。この報告書の中には、どこに支店なりあるいは現地法人なりがございますということをこの月報に書いてあるんです。書いてないというんだったら、こういうものを民間で堂々と発行されているのに守秘義務でございますといって通るような世の中かと聞いているのですよ。
  122. 坊秀男

    ○坊国務大臣 だから、そういったようなものについては公表されておりますから、そういうような公表されておる限りは、これは守秘義務でございません。
  123. 安宅常彦

    ○安宅委員 それではいままでそういうばかみたいなことを言ったのは、日銀なり大蔵省が、国際金融局長なんというのは、第三課長だったかな、もう顔色変えて言うんですが、そういうことは今後ないというふうに確認してよろしゅうございますな、大臣。これで終わります。それだけ答弁してください。
  124. 坊秀男

    ○坊国務大臣 有価証券報告書の内容のことでありますならば、これはここで御報告を申し上げます。
  125. 安宅常彦

    ○安宅委員 わかりました。
  126. 田中正巳

    田中委員長 大出俊君。
  127. 大出俊

    ○大出委員 御苦労さんでございます。  きのうこの委員会で、私は藤野さんに改めて証人ないし参考人でおいでいただくということで理事会で御相談いただくことになっておりますから、きょうは別な角度でという理事会のお話でございます。  ただ、私は一般論として、外国法人、三菱の皆さんもたくさんの外国法人をお持ちでありますけれども、これらの法人に累積をされているドル、利益に基づくドルでありますが、これを徴税当局が捕捉しかねている現状であります。したがって、これは対国民ということになりますと、何とかして正確にこの利益はとらえて捕捉しなければならない、徴税をしなければならない、これは責任があると思うのです。そういう意味で、この国会を通じまして制度的な手直しあるいは法律的な手直しをしなければならない、私はこう思っております。そこに焦点を合わせて、かつ、これは具体的にお聞きしないと、その方法は生まれてまいりません。  そこで承りたいのでありますが、ジャマイカにおいでになる英国国籍の方、英国人でありますが、ぱイコール社というのを、これはバハマでございますけれどもおつくりになっておる。これは全額出資でございます。三菱さんとの取引は大変長いのでございますか。
  128. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 相当長期にわたる取引先だと思います。私もはっきり覚えてないのですけれども、さように記憶しております。
  129. 大出俊

    ○大出委員 山一証券、野村証券の方々とも、これまた長いおつき合いでございますか。
  130. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 もちろん両社とは相当長いつき合いでございます。
  131. 大出俊

    ○大出委員 そこで承りたいのですが、四十七年から五十二年にかけまして、MIC、つまりミツビシ・インターナショナル・コーポレーションですか、アメリカ三菱と言ったらいいのだろうと思うのでありますが、ここが仲に入りまして日本の証券市場で株をお買いになる。これはいまおつき合いが長いとおっしゃっております山一あるいは野村証券さんほか六社ぐらいおありになるようでありますが、私が調べましたところ、テレックスでMIC、つまりアメリカ三菱から本社に入ってくる、それによって株の取引が行われる、これがパイコール社という取引先。実はこういう形だというのでありますが、(発言する者あり)一般論を詰めるのには、具体的なことを言わなければ詰まらぬでしょう。  つまり、こういう関係になっていて、六十億、これはもう表に出ているから申し上げるのです。新聞にも書いてあるのですから。いま私が言ったことはすべて新聞に書いてある。六十億、税金を修正申告されておられる、これは重加算税を含めまして。地方税が九億ありますから六十九億ですね、これを三菱がお払いになったわけです。  私は、これは率直に申し上げてこの際はっきりしていただきたいのは、将来こういうことがあってはならぬという気がするので、やはりこれは三菱さんの利益なのか。お払いになったのだからそうだろうと思うのでありますが、そこらのところはこの際はっきりしておいていただきたい。というのは、パイコール社というのはペーパーカンパニーなのか、あるいはそれに準ずるものなのかという問題がありまして、私どもが調査した限りは、この出資は一〇〇%英国人が払っておりますから、しかし、といってペ−パーカンパニーに類するものではないという証明にはならない。そこらをこの際はっきり願えないかという気がするのでありますが、いかがでございましょうか。
  132. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 この問題につきましては、ただいま御質問の要旨はこの間のいわゆる脱税の問題だろうと思うのです。これは率直に申し上げまして、昭和四十九年かあるいは五十年の初めに、私は社内で昭和四十八年度の税務調査においていろいろ問題があるということを初めて聞きました、これは内輪話ですが。  そこで、当時当該係を呼んで、そして前後のいきさつをいろいろ聞いたわけです。もちろんいろいろな角度から、社長も私と同時に二人で係を呼んでいろいろ実情を聞きましたが、結局これは、たとえば普通商事会社の売買の場合には何か対象の商品があるわけです。あるいは機械だとか、あるいは金属とか繊維とか。単に情報提供というような業務はやったこともないし、それで契約書もないということもありますし、結局、社長も私も意見の一致した判定をしたのは、これは実質的に三菱商事の行為と見られても仕方がない。ですから、これは思い切って申告のやり直しをやったらどうだということに方針を決めまして、それで本件の重加算税、幾らでしたか、約六十何億円ですかを、払ったのは五十年ですか、五十年の初めかと思っていますがそういうことになっている。したがって、重加算税を払った以上は当然これは社会的に見て脱税と言われても仕方がないじゃないかという腹を、まことにぐあいが悪い話ですけれども、社長も私も結論は同じ判定になりましたのでそういう措置をとった。これはいろいろ世間を騒がしてまことに遺憾である、かように考えております。
  133. 田中正巳

    田中委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  134. 田中正巳

    田中委員長 速記をとって。  大出君。
  135. 大出俊

    ○大出委員 理事諸君から聞いていますが、一般論を申し上げるには具体的なことを一つぐらい挙げなければしょうがないでしょう。
  136. 田中正巳

    田中委員長 ですから、今後の質疑の基調についてひとつ御注意願ったわけです。
  137. 大出俊

    ○大出委員 ちょっと待ってください。いま私が例に挙げたのは新聞に全部出ていることで、隠されていることでも何でもないのですよ。
  138. 田中正巳

    田中委員長 理事会の議題としてはそういう申し合わせになっておりまするから、そういう基調に合わせてひとつ御質疑を進めていただきたい、こういうことでございます。
  139. 大出俊

    ○大出委員 だから前もってお断りしたので、一般論となっているようだから、一般論の詰めをやるのに例を挙げさせていただくと言っただけじゃないですか。えらいまた皆さんはむきになるね。多国籍企業の脱税なんというものは余り隠さぬ方がいいのだよ、はっきりした方が。国民だってみなん税金を取られているのだから。そうでしょう。しかし、いま私はそれ以上深追いをする気はない、そう見られてもいたし方ないと結論を会長おっしゃられたから。きわめてはっきりしている。対国民という意味でそういう点ははっきりしておかなければ、天下の三菱さんのためにもなりませんよ。ですから、それで私は了解をいたしますからよろしゅうございますよ。  そこで承りたいのですが、きのう実は磯邊さんがお忙しくてぐあい悪いとおっしゃられるので、怒られまして御遠慮をいたしましたが、時間が多少ございますから一言お答えいただきたいのでありますが、外国法人の税金の捕捉というのはどうしてもやっていただかなければ、零細なところで青色申告まで取り消されているような企業もたくさんあるのでありますが、三菱さんの場合は取り消していないでしょう。不公平でございます。したがって、これはきちっとやっていただきたい。  そこで承りたいのでありますが、外国法人がどのくらいあるかということになると、皆さんの資料によると四千四百ぐらいになりますね。ただ、これは資料別に違いますから、ダブりがあると思うのです。タックスヘーブンということになると千二百ぐらいあると思いますけれども、四千四百ぐらいあります。私の手元の資料によると。どのぐらいあって、そこに積み立てられているドル利益、皆さんは全く捕捉していないのか、あるいは捕捉する方法があるのか、ちょっとここで答えておいていただきたい。
  140. 磯邊律男

    磯邊政府委員 わが国の海外における子会社、これは資本金を二五%以上出資している会社でございますが、それとその中でいわゆるタックスヘーブン国に存在している会社の数はただいま先生のおっしゃったとおりで大体間違いないと思います。(大出委員「千二百ぐらい」と呼ぶ)はい。ただ、その場合に、その海外の子会社がどういった資産内容になっているかということ、これはなかなか調査しにくい問題でございます。私たちはできるだけ実態をつかまえたいと思いまして、本邦の法人、つまり親会社の調査のときにはできるだけそういったことについて聞いているわけでございます。しかし、御承知のように海外にある外国法人の内容でございますから、れを調査権限の正当な行使としての調査はなかなかやりにくいというのが実態でございまして、これについての把握は余りできていないというのが実態でございます。
  141. 大出俊

    ○大出委員 四千四百と申しましたが、それはどうですか。
  142. 磯邊律男

    磯邊政府委員 それはわが国のいわゆる資本金一億円以上あります会社が二五%以上出資している会社の数でございまして、それの内容というのは的確につかんでおりません。
  143. 大出俊

    ○大出委員 大体ダックスヘーブンということになりますと千二百ぐらい。私が四千四百と挙げましたが、いまの御説明で、ダブり等があるから正確な数字ではない、こういうことになりますね。  そこで、もう一点だけ承っておきますが、例を挙げます。四十七年の三月に新日鉄の株を一千万ドルの投資をして日本の証券市場で買う。当時レートが一ドル三百四円、新日鉄の株価が五十三円、だからこのドルを日本円に換算しますと、投資額三十億四千万円、これで株を買った。この金が一体どういうふうにふえていくか。この後、いま四十七年三月と申しましたから、鉄鋼、電力の株はもうまさに棒上げに上げた。翌年の四十八年二月には五十三円の株が百八十八円になった。約三倍強の利ざやがここで出てきた。かせぎ高七十七億円です。そうすると、元手百七億九千万円、つまり三千五百五十万ドル、こういうふうにふくれ上がるわけですね。これはべらぼうな利益であります。ところが今度はこのときには、レートは一ドル三百四円が二百八十八円になっている。だからドルに換算しこれをアメリカにあるある会社に送金をすると約三千七百万ドル、つまり為替差益が入りますから、最初の投資資金が四倍になってしまうのですね。そしてこれを今度は別なところにあるもう一つの会社に——そこが出資した、つまりそこが買ったということで、アメリカのある会社を経て買ったと称する会社に送る、そこがタックスヘーブン、いまの千二百社の一つ、ということになりますと、普通ならば、株の場合は、利益を上げれば法人所得の四〇%税金を取られるのですね。これは取られません。つまりそっくり税金に見合う金までふところに入ってしまう。ここで四〇%浮いてしまうわけですね。こういう仕組みになっているわけですね、いま私が一つ例を挙げたのですが、このいま申し上げている例でいきますと。つまり、こういうことになっているとすれば、これは株式投資で七十七億円の利益を上げた、為替差益で五億七千万の利益を上げた、所得税相当額三十一億円が浮いてしまう、三段仕掛けの荒仕掛け、ウルトラCです。こういうことを千二百あるところが大なり小なりみんなやっているということになると、これはあなたの方で、ここから税金を取らないなどというばかなことは、国民に対する責任においてあり得ないはずなんです。どうしたら取れると思いますか。
  144. 磯邊律男

    磯邊政府委員 法律的には、やはりその所得の帰属するのが海外の外国法人であるということになりますと、原則として法人税というのはわが国では徴収できないということになるのは御指摘のとおりであります。  私たちとしてはいろいろなことを考えておりますけれども、その中の一つとして、それが単なるペーパーカンパニーであって、一応外国の法人に帰属する形になっておるけれども、実態はその親会社である本邦法人に帰属すると思われるような場合には、現在の法人税法の第十一条というのを適用いたしまして実質課税の原則でやっております。しかし、これはやはり事実の判定であるとか、あるいは相手方企業の、つまり親企業なりその現地の子会社の納得ということが必要でございますので、法人税法第十一条を適用するというのは、事実認定の問題も絡みまして、やはりなかなかむずかしい問題があるということでございます。
  145. 大出俊

    ○大出委員 私が三菱さんの例を一つ挙げたら細田さん大分怒ったけれども、いま具体的に数字を挙げたのは、全く似ていますけれども、三菱さんそのものを申し上げているのじゃない。こういう形になると申し上げただけです。それを同じものだとおとりになろうとなるまいとそれは御勝手だが、これでは困るのですね。  そこで、四十七年から五十二年まで十大商社の修正申告、これは幾らぐらいになっていますか。脱税、脱漏、名前はどっちでもいい。
  146. 磯邊律男

    磯邊政府委員 この数字はすでに法人税法の規定によって公表された数字でありますから、あえて先生のおっしゃる守秘義務というのには抵触しないと私は考えております。それだけお断りして数字を申し上げたいと思います。  それは四十七年九月期から五十二年三月期まで、いわゆる十大商社の中で修正申告が出されました。その修正申告は、当初申告と修正申告との差額、合計いたしますと二百二十四億二千四百万円ということになっております。
  147. 大出俊

    ○大出委員 ちょっと内訳を言いますと、あなたの方で肯定なさるかどうか承りたい。  三菱さんが百十億円、伊藤忠さんが十二億円、三井さんが四億円、住友さんが十六億円、丸紅さんが十四億円、日商岩井さんが十三億円、トーメンさんが三十億、兼松江商十七億、日綿三千万円、安宅産業四億六千万円、合計二百二十四億になりますが、間違いございませんな。
  148. 磯邊律男

    磯邊政府委員 ちょっとお待ちください。これは各社ごとのトータルを出しおりませんし、ちょっと先生のおっしゃるような数字出しておるところで若干違いがありますけれども、ちょっと念査さしていただきます。——申し上げます。これは当初申告と修正申告の増差額であります。  三菱商事百十八億六千九百万円、これは先ほど言いました四十七年九月期から五十二年三月期までです。丸紅十七億二千三百万円、伊藤忠商事四億一千九百万円、住友商事四十二億八千五百万円、日商岩井二十四億三千万円、日綿実業五億二千六百万円、トーメン十一億七千二百万円、以上合計が二百二十四億二千四百万円でございます。
  149. 大出俊

    ○大出委員 はっきりしたようでありますが、これは十大商社さんだけでありまして、その半分が三菱さん、こういうことになるわけであります。三菱さんということで申し上げませんけれども、私はこういう金が、いま私が一つ例に挙げたようなシステムで外国の法人にドル利益の形で積み立てられている。ある面、これを称してブラックマネーと、こう言う。この金が方々へ流れていく。  そこで一つは、いまの捕捉の仕方、これは一番最後に承りますが、制度的に何かこれは考えなければ国民感情として捨てておけません。これはどうしてもやっていただきたい、これが一つ。  もう一つは、この金の流れ、これがやれ何とか癒着だ、ちょうちんだということになる。そこで、またすぐおしかりを受けるかもしれませんが、一つだけこれは例を挙げさしていただきます。  実は、韓国に大星産業というのがありまして、趙さんという方が社長さんです。この方は韓国の米の輸出入組合の理事長さんを兼ねております。この方が実は、土地改良組合がございまして、これが圃場をつくろうということで韓国の国会の予算がっくということで、実はこの間にいろいろなリベートが行ったり来たりするのでありますけれども、ところがこれは輸銀の融資を受けなければならない。総額九億円の融資を受けようというわけであります。その場合に、一億四千万円、つまり一五%を納めた証明書がなければ輸銀融資は成り立たない、借りられない。そこで、さてこの金に困ったというので相談をした。ここでこの金を送ったのは、ほかならぬ皆さんと法人人格関係ないのですけれども、MIC、アメリカ・インターナショナル・コーポレーション、ここが金を送っているのですね。  私は不思議に思って、この送ったはいいけれども、この後の穴埋めはどうするんだと言って聞いてみたら、交互計算というのをやるという。交互にやりとりするという交互、交互計算。交互計算というのはどういうことかと言ったら、他の取引を含めて記録する裏帳簿をつくっておいて、そしてそこに載せていく。そうして、五千ドル以下ならばノーチェックだから分割すればそれで埋まる、こう言う。こういうふうなシステムで、これは一例でありますけれども金が流れていく。ということになると、これはいかなるリベートでもいかなる献金でも、やろうとすればできる。だからこれらの金の流れ、これは三菱さんという意味じゃありませんよ。つまり流れている金をブラックマネー、積み立てられている金をブラックマネーと言うわけであります。この流れ、このシステムというものをどこかで何とかしなければこの種のことは絶えない。  二点目でございますが、これも後でひとつ皆さんの方から……。皆さんが考えてないとすればうそなんで、どうすればこれらを捕捉できるか。     〔委員長退席、澁谷委員長代理着席〕 ノーチェックじゃこれは捕捉できないが、輸銀融資をめぐってきちっとチェックすれば、ドル建てでたとえばMICが送ったってわかるんだから捕捉ができないことはない。だから本来なら、このいまの話の百十億だって、それがどういうふうに使われているかというのをながめてみなければいかぬのだけれども、たまたま不服審査なさらぬからこれはわからぬわけでありますが、不服審査なさればわかってしまう。だからそういう点をやっぱりあなた方も御研究いただきたい。その成果を聞きたい、二点目に。  そこで三菱さんに別な問題を会長さんに承りたいのでありますが、気になることがございまして、支店長さんが韓国においでになりますが、中川忍一さんという方がおいでになる。この方と御一緒に金炯旭さんにお会いになったことおありでございますか。その点についてちょっと、お会いになったかならないかという点だけで結構でございますから一言だけ触れておいてください。
  150. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 中川君と一緒に会ったことがございます。表敬訪問したことがございます。
  151. 大出俊

    ○大出委員 それ以上承りません。お会いになったことがあるとおっしゃられればそれで結構でございます。  そこで私はここで、後発三菱の皆さんが韓国に大変なシェアをお持ちでございます。これは多国籍企業三菱さんというのは日本経済その他に大変大きな貢献をなさっているわけでありまして、本当に心からその点は敬意を表するわけでありますが、どうしてそういうふうな後発の皆さんが大きなシェアをお持ちになるようになったかという御経験を簡単にひとつここでお述べいただきたいのです。
  152. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 まず第一に、三菱商事と韓国の取り扱いですね、これがそう大きいとは私は思いませんがね。過去五カ年の統計で、実際は日本全体の韓国への輸出あるいは韓国からの輸入、これに対して三菱商事のシェアというのはどっちも一〇%いってないですよ。せいぜい七%半あるいは五、六%というところであって、そうおっしゃるように三菱と韓国との商売が圧倒的に多いということは実際はないわけですね。あの統計は通産省、大蔵省その他の統計で見てもわかりますし、われわれ自身も統計を持っていますが。ただ比較的いろいろのプラントをやったということは、たまたま日本が早く重化学工業化が終わった。化学工業の先進国になった。韓国は後から来て少しずつ工業化したいという需要があって、それがちょうど需要供給がマッチしたということの方が本当は原因であって、そうでなければ商事会社の商売がもう少し多くあっていいわけです。多くないですから、現実には。だから、おっしゃったように圧倒的に韓国の商売が大きくなったということはありません。
  153. 大出俊

    ○大出委員 双竜セメントから始まりまして浦項の製鉄所に至りますまで、美進化学さんだとか韓国化成さんだとか三養油料さんだとか、いろいろなものをお手がけになっておられますが、そこらの具体的な問題は別の機会にさしていただきます。  そこで私は、さっきのブラックマネーというのがいろんな流れ方をしておるのを追っておりますのでどうも心配になるので、最後に一つ、さっき二つ申し上げましたが、何かそれについてきちっとチェックする方法はないか。いままでそういうことを御研究になっていないとすれば、これは皆さんの責任怠慢だということになる。その点だけ二点お答えいただきます。
  154. 磯邊律男

    磯邊政府委員 先生の御指摘、二つあると思いますが、一つは交互計算を利用して、そういったいわゆるブラックマネーというのが海外へ流れる問題、それのチェックのやり方でございます。私たち、やはりこういった海外取引が非常に多い企業の調査につきましては、交互計算の内容をできるだけチェックする、それが果たして正当な取引による送金であるか否かということに対しましては、これは調査項目の重点の一つとしてやっております。  それから、その次は、そういった行き先を追及するというものでございますけれども、御承知のように私たちとしては、そういった金が流れていった場合に、それが一体どういった性質の金かということをまずきわめますけれども、それによっては手数料その他によって正当に法人税の損金に算入されるものもございますし、それからまた交際費あるいは寄付金課税あるいはさらにそういったことで限度計算する場合もございます。それからまた、使途がはっきりしないような場合については、それは損金性を否認して当該法人に法人税をかけるというものでございますけれども、いずれにしましても私たちが行き先まで追及するということは、その行き先が私たちの権限の範囲内において課税に結びつくかどうかという場合でございまして、課税に結びつく可能性のあるような場合には行き先を追及いたしますけれども、それがわが国の納税者の課税に結びつかないような場合には、そこまではなかなか追及できない、また、していないというのが実態でございます。しかし、先生おっしゃいましたように、こういった使途不明であるとか、あるいはいろいろな手数料の正当性の問題、それにつきましては、それを支払った本邦法人の課税に重大な影響がありますから、その点については十分に私たちとしても実態を究明して適正な課税に持っていくように気をつけているつもりでございます。
  155. 大出俊

    ○大出委員 終わります。私、今申し上げたブラックマネーだ云々だというのが野放しになっているところに、あるいはいささか政治的な意図を持ってかもしれませんけれども、はっきりしないところにいろいろ癒着だ云々だということが言われる根源が出てまいります。制度的にこれは抑えなければいかぬ、こう思っておりますので、その点に触れさしていただいたわけでございまして、今後ともそこのところはひとつきっちり御研究いただきますようにお願いをいたしまして、終わります。
  156. 澁谷直藏

    ○澁谷委員長代理 次に、武藤山治君。
  157. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 先ほども為替差益の問題で与党議員から質問がありましたが、きのうあたりもまた円高ドル安で二百五十五円台と大変な事態になってきたように思います。ことしになってから、この年の初めが二百九十二円程度だったのが二百五十五円というと一三・七%以上円高になったわけですね、一三%以上。商社は大変輸入の金額が多いわけでありますから、この差益は大変なものになると思うのですね。おたくの会社のことで恐縮ですが、ことしのこの一三・七%も円高になったことによって、かなりの利益がふえそうだという感じですか。
  158. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 御質問の御趣旨ですが、もし商社がそれを本当に扱っているのならばそういうことになりましょうね。しかし、御承知のとおり日本への輸入というのは、大きなものは食糧とか油とか鉄鉱石とか粘結炭とか原材料がほとんど大半なんです。これは商社は無関係なんです。だから全然為替は無関係なんですから、そういうものの為替の損益は油会社なりあるいは製鉄所なりそういうところが、上がっても下がってもそっちの危険ということになっていて、商社は無関係なんですよ。ですから輸入の大半はそういうものですから……。
  159. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、三菱さんの証券報告総覧を読んでみると、輸入輸出をちょっと調べてみると、輸入が年間三兆三千三百六十七億円、輸出が二兆七千九百六十三億円、やはり輸入の方が額として多いんですね。商社のマージンは何%か知りませんが、商社は仮に二%なり三%のマージンが乗るだけで、一切為替差益というのはこの輸入金額の中にないんだと。そうすると、たとえばいま政府円高の圧力を何とか解消するためには、具体的に輸入品目まで明らかにしないと相手が信用しない。一生懸命政府は努力しております。内需を喚起しておりますだけではなかなか信用してくれない事態にもう来ちゃったと思うんですね。やはり具体的に輸入品目なども政府が姿勢をはっきり示さないと……。商社活動をずっと続けておって、会長としては、国民のニーズにこたえる品目で、あるいは国家的将来のために輸入しておかなければならぬと思われる品目で、まだこういうものならあるんだが、政府はなかなかそこまで踏ん切らないなあ、何かそういう品目の心当たりのものとすれば、たとえばどんなものがありましょうか。
  160. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 やはりそういうものは全然役に立たないもの——一時アメリカがイタリアに対して昔やったことがありますけれども、トマトを輸入してわざと海に捨てる、日本自体にそれだけの余裕はないわけですから、やはり将来役に立つというものでなければ——油とか食糧とかそういうものに限られるだろうと思うんですよ。しかし根本的には、みんなが一緒になって非常に働かないと無理があるのは、いま日本は責められているわけですが、貿易黒字はけしからぬということになっておりますが、大体私は、二国間だけで貿易の均衡をとるということは本当は不可能だと思うのです。というのは、日本はどうしても資源がなければ食っていけないという特殊な国ですから、原料をどうしても入れるのですから、そうすると原料を入れるということになると、たとえば発展途上国でなくても、カナダとかオーストラリア、あんなりっぱな国からでも絶えず原料を買うから、日本は入超ですよ。幾ら言ったって、われわれはずいぶん向こうに文句を言ったことがあるが、それは直せない。それを何とかしょうということなんだから、ここで一通りや二通りのことでは私は不自然だと思う。だけれども不自然だと言っていられない客観情勢がいま起こってきているので、それでわれわれの方もいろいろな方法を通して、アメリカまでもわざわざ何回も出しているのですけれども、今度もまた買い付けミッションというものをわざわざ出すわけですよ。しかし、なかなかうまい買い物がないんですな。日本で何でもできるのですから、無理があるわけですよ。
  161. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 とにかく私、四十五分までですから、会長、できるだけ短く簡単にお願いしますが、新聞の報道を見ると、三菱商事さんの今度の決算は大変成績がよくて、申告所得が四百四十八億円、日本で第五位のもうけの会社なんですね。前期が百九十九億ですから、大変な利益が出たわけなのです。こんなに景気が悪いのに利益がこんなに出ちゃうんかなあという素朴な国民の見方があるわけですね。こんなにもうかった最大の原因は何でしょうか。
  162. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 それは一つです。それは、御承知のように日本経済が急に大きくなった一つの最大原因は、日本経済重化学工業化したということが根本ですね。それについてはどうしても日本の姿を変え得ない。つまり資源がない、貿易依存度が非常に高い、したがって天然資源の輸入、あらゆる原燃料の輸入は至上命令であるということに一般より早く気づいて、私自身も中南米、中近東、海外で三十年生活をしたわけですが、あらゆる国を歩いてそれが早かった。したがって、日本で必要な資源開発に関連したことがよそよりは早かったということだけだろうと思うのです。あとはほかの普通の近ごろの構造不況とか、これは全部悪いです。悪いことに変わりないです。ただそれだけが違います。
  163. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 次の三番目の問題は、さっき土地問題をやはり伊東さん質問しておりましたが、四十六、七、八年ごろ土地ブームで大変土地を、銀行までが土地買いあさりを皆やったわけですね。国会でも狂乱物価で大変ここで議論したわけですが、三菱さんはそういう点姿勢はよかったのでしょうか。やはり土地を買い占めちゃって、いま売れないで弱ったなというような問題もあるのですか。
  164. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 あの当時私は一つの原則をつくって、ただ単なる転売の目的で買ってはならぬ、必ずこれを開発するとか、はっきりした目的がなければいかぬということでやったのですけれども、それでも寝ている土地があるようですね。
  165. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 寝ている土地があるようですね一なかなかこの会長正直で、私はいま大変好意を感じているのですよ、質問しながら。お年もお年ですから私はできるだけ丁重に質問したいと思っているのですが、この有価証券報告書総覧を見ると営業用の土地が三十五億あるのですよ。貸借対照表に載っている金額が二百七十九億七百万円となっているのですね。ですから、この営業用土地土地全体の金額との差額が結局まだ売れないで持っているたな卸しの土地じゃなかろうかという感じがするのですよ。二百四十四億円ね。しかし、個別問題であなたの会社がどうのこうのという質問はしません。そういうような状態が方々の大企業にみんなあるんじゃないか。だから総理大臣も土地の問題を何とかしなくちゃというので、税金を安くするかなんということをいま言い出しているのですが、これは果たしていまの税制をちょっといじれば全部需要がついて売れるものと見込めるのか、それともやはり、土地供給させ宅地政策が完全に発展するためには、個人の農家の持っている土地、これの税金を安くしないことには宅地政策の観点から言った土地は出てこないと見るのか、法人だけの重課税をやわらげれば土地政策は何とかうまくいくと見るのか、財界の大御所としてその辺の土地問題についてどんなお感じでしょうか。
  166. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 まず第一に、御質問の中の三菱商事の関係の土地のお話ですが、私も正確にはわかりませんけれども、実情はこうなんです。  当社の営業用土地は事務所、社宅、厚生施設、油槽所、倉庫等の敷地として利用している土地でありますが、その金額は昭和五十二年三月末現在二百七十九億円でございます。三十五億円はその中の事務所用の土地であり、差額の二百四十四億円は社宅、厚生施設、倉庫等の土地でございます。つまり土地がふえているわけじゃないわけですね。そこのところをまず……。
  167. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、たな卸しの土地は三菱商事としては全然ない、別な不動産部門で、三菱不動産の方で一切やっておるので買い占めはやらなかった、こう理解していいですか。追及はしませんよ、きょうは。とにかく答えてください。
  168. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 販売用土地、商品勘定百六十八億円あります。
  169. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 結局百六十八億円のまだ売れない土地があるということがやはりそれぞれの企業の足を引っ張るわけですね。たとえば、合併をした住友銀行関係のこの間の安宅産業にしても、それからいま蝶理もかなり土地を買い込んでしまって、新聞ではもう大変不安な状態で、銀行が六百億も支える、あるいはまた兼松江商もいまとかくの不安がちまたに流れている。そうすると、一応商社として絶対安心だと言われているのは三菱商事と三井物産しかなくなってしまっている。あとの商社は末端の中小企業のうわさでは、どうも商社といえどもいつどうなるのかわからぬなといううわさが流れている。それが信用不安に広がっていっているのです。だから、いまは単なる不況だけじゃなくて、そういう信用不安がだあっと広がりつつある。もちろん商社金融の占めた位置、あるいは商社が与信をしていた、信用補完をしていた部門というのは非常に広いし、強力なものであった。これが安宅の問題以来かなりそういう体制が揺らいできてしまっている。そこに非常な信用不安がある。そこが倒産の原因にもなっている。そのことによって信用不安からどんどん締まっていってしまって、取引がこわくなったりして銀行も警戒をしてさらにつながない、いまこういう状況ですね。そういう情勢は、会長として一体いつごろになればそういう信用不安というのは消えるだろうか。一年ぐらい続くのだろうか、あるいは二年ぐらい続くのだろうか、そうはいかないうちに何とか商社間でお互いが話し合ってうまい共同の歩調がとれるような体制ができるという見通しがあるのか。何かそこらの不安解消策というのはあるものでしょうか。
  170. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 これは重大問題で、私の方の会社だけを例にとりましても、先ほどおほめのお言葉があったのですが、実態は体質はやはり弱くなっている。それはなぜかと言うと、中小企業関係の取引先が約二千軒あります。これに対して四、五千億の与信を与えているわけですから、これを引き揚げるわけにいかない。ですから、それだけみんなが苦しむと同じようにこちらも母体が傷つくわけなんです。その意味においては。しかし、日本経済全体がアメリカのように実力がないのだから、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、どうしてもこの際はできるだけ落後者をつくらないようにしていく。つまり、みんながそれぞれの商品の設備過剰、平電炉にしても砂糖にしても、みんな本人がよく知っていますよ。設備が過剰過ぎてだめなんだ、だけれども自分だけが先に死ぬのはいやだ、工場閉鎖をするのはいやだというふうな感じですから。これはもうどこの企業とか、大中小にかかわらず、きめ細かく政府民間との協力、話し合い以外に乗り切れないと思うのです。
  171. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 もうあと五分ですから。  いま国の制度の中に海外投資等損失準備金というのがあります。会長御承知のとおりで。国内日本にある会社が利益が出ると、その利益を国内に置けばそっくりそれに税金がかかります。四〇%の法人税がかかります。それを海外に持っていくと、投資をすると、従来は大体五〇%、今度改正になって一〇〇%のものを、銅山とかそういうものの開発は一〇〇%、投資額そっくりが五年間税金猶予、そうして六年目から五年間で払えばいいという法律があるわけですね。この海外投資等損失準備金があることによって、姿勢のいい企業はいいけれども、国内で税金取られたのではつまらぬから、では韓国へ行って投資してしまえ、税金だけは十年とにかく引き延ばせるわけですから、最終的には。ひどいのは税金の全然かからない国、バハマ、バーミューダー、ケーマン、こんなような国ですね。さらに、法人税がうんと安い国はまだずっとありますね。香港なんというところは、香港に現地法人をつくって日本と取り引きしたり外国と取り引きすると、何ぼもうかっても税金ゼロなんですね。そういう国もあるわけですね。だから、行儀の悪い企業はそういうところへどんどん出かけていってしまって、四千社もあれやこれや投資会社ができたのだと思うのですね。ですから、もう日本の行儀が悪いということは世界からもたたかれているわけですから、海外投資等損失準備金というのは、もう本当の資源の銅とか鉄鉱石とかいう、日本に全くない資源、そういうものを開発するものだけにして、あとのものはもうそろそろ外していいんじゃないだろうか。会長としてはそこらの感じはどうですか。
  172. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 その点は国内の事情、いまお話しになった点はよくわかりますが、今度は国際的な問題、こっちの方も同時に考えなければぐあいが悪いと思われるのは、日本は自分だけひとりで金をためて、一向に経済協力に使わぬじゃないか、政府は〇・七ですか、民間は〇・三、合計一%、これが非常に達成が日本はおくれている、英国よりもおくれておる、けしからぬということをずいぶん日本は言われているわけなんですが、それの原因の一つは、やはり企業の投資が少なくなったわけですよ。政府は余り変わりないので、民間景気が悪いから、いまおっしゃったのは非常に景気のいいときにはそういうことはあったかもしれませんが、いまそんなゆとりのある企業はないので、毎日をごまかしていくのがやっとなんで、本当に私はこんな満五十三年、今度のような不況の形は初めてです。失業者とインフレの両方の板ばさみで、どこの企業も苦しい。常務会をやるのですけれども、あと五億出さなければつぶれる、しかし、返せないことはわかっているのです。しかし、まだ実力がないから、もしそこが破綻すれば波及効果が起こる。そこがアメリカと違うので、アメリカは一軒や二軒破産したって知らぬ顔して平気で発表しますけれども、日本の場合にはここが破産したということになると、いまもともと不安観念でいっぱいな最中ですから、さあっといってそこに取りつけが起こる、どこまで大きくなるかわからぬという不安があるから、これは会社のレコードに残しておけと言って、私は常務会でもそういう綱渡りをやっているのが現状ですから、とてもいま海外投資といったってよほどの会社でないとできないのじゃないのですか。
  173. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それはそれとして、しかしもうかり過ぎている会社もあるわけです。日産やトヨタのように一千億ももうかってしまって笑いがとまらぬという会社もあるわけですかち、もうかり過ぎた会社はやはり考えますよ。だから跛行性は非常にありますね、一口には言えないです。  最後にぼくは、きょうは実は藤野会長がおいでになるのでは少しとっちめなければいかぬなと、実は内心、ここに来ていま聞くまではそういう気持ちでおったのです。しかし冒頭に、いま大出委員の質問に対して、重加算税を取られたのだから、これは脱税と認定されてもしようがない、世間を騒がして申しわけないと、率直に会長はここで反省されましたね。私は会長みずからがそういう姿勢ならば、今後副社長や常務の諸君に、会長は国会ではっきり申しわけないと言ってきたんだ、君たちもそういう姿勢で、今後なければいいのだから気をつけたまえと、会長としてぜひ部下に言ってもらいたい。というのは、あなたの部下の加藤副社長が、絶対に脱税じゃないと言って最後まで言い張って、国税庁の役人が読んだら大概胸くそ悪くなって怒り出すような、脱税絶対してないとがんばっているのですよ、この議事録を読んでみると、最後まで。ただ証拠がなくて書類がないから、国税局にやられたからしょうがない納めたのだ、納めたのも三菱が納めたのじゃなくて、X会社が金を送ってよこして、その分はもらったんだなんて答えているのですよ。これは小学校四年生が読んだって、こんなばかなことが許されるか。反社会的行為というものに対する率直な反省がなかったんだ。きょう会長がここでああいう表現がなかったら、ぼくはそれをとことんやろうと思ったのですけれども、会長は申しわけないと一応国民に対して意思表明しましたので、ぜひひとつ会社内も今後そういうふうに統一していただきたいと思います。  私の質問を終わります。
  174. 澁谷直藏

    ○澁谷委員長代理 次に、小林進君。
  175. 小林進

    ○小林(進)委員 私に与えられた時間は十二分でございまして、十二分ではどうしても質問になりませんので、かいつまんで二つだけ申し上げます。しゃべっていると十二分過ぎますから。  やはりわれわれ日本にとっては韓国の経済の動きが一番気になります。そこで一つは、私はいまの藤野さんが韓国で——これはちょっと事件が違うかもしれませんよ、言葉じりをとらえぬでください。何か韓国の横断鉄道の電力化の問題で大変苦労されて、相手はフランスの企業であって、大変努力されたが最終的にはフランスに負けて、その事業の入札は落とせなかった。勝った話はどこでも聞きますけれども、韓国で負けたという話は珍しいものでございますから、しかも大変苦労されたというので、これは今後の日本と韓国との投資の状況等のあり方についてわかりますので、ひとつこの点を詳しくお聞かせをいただきたい。  いま一つの問題は、これもやはり韓国と日本経済の結びつきでありますが、現状で申し上げますと、もはや雑貨、特に繊維それから軽工業、全部韓国に追いまくられて、これが日本不況一つ輪をかけているわけです。だから、人によりましては、韓国で日本企業が活躍することは日本国内における失業製造事業だ、皆さん方が韓国に伸びれば伸びられるたびに、したがって日本に失業者がふえてくる、こういう意見が非常に強いわけです。私は個々のことを言っているのじゃありませんから、三菱さんが雑貨や繊維や軽工業の方に韓国で伸びていらっしゃるかどうかわかりませんが、現在はそれで日本の失業が出ている。  いま一つは、先ほども重工業のお話がありましたが、大変いま韓国も重工業に力を入れております。これはやはり将来の日本と韓国の関係で、現在は軽工業で失業者を出しているが、将来は今度は重工業を中心にしてまた日本企業が追いまくられて、いわゆる失業者が生まれるのではないか、こういう心配がありますので、その二つの問題で、これはあなたの答弁には時間の制限がありませんから、ひとつごゆっくり詳しく、特に私はそれ以外に、日本と韓国の経済関係、この中で三菱さんに聞きたい問題が実は山ほどあるのであります。言ったのでは余り時間がありませんから、これはちょっとお上げしておきますから、この中でも見ていただいて、なおできればこの中で御答弁いただければなおさらでございますが、あなたの御答弁には時間の制限がございませんから、どうぞごゆっくりひとつ御答弁をいただきたいと思うのであります。
  176. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 ただいまの御質問の御趣旨ですが、これは必ずしも日本と韓国ばかりの関係じゃなくて、発展途上国、ASEANを含めた、あるいは中南米、さらには将来はアフリカ、こういう広い問題の一端がたまたまあらわれているのだろうと思うのです。これは不必要な摩擦はできるだけ避けるべきですけれども、世界全体として、はっきり言えば発展途上国がいま戦後過去三十年のうちに独立国として主権を持っている、これが少なくても百五十ぐらいできたわけですね。日本が戦争に負けたときには世界の国は五十ぐらいしかなかったのが、いまはみんながあっちこっち独立しちゃったから、百六十幾つかがある。ところが、こういうことを国会で申し上げてはぐあいが悪いかと思うのだけれども、相当数の独立国の中には、初めから多分に、法律的には独立主権、しかし経済的あるいは政治的にはなかなかひとりではやっていけない、そういうのが相当多いことは多いわけですね。ところが、生まれた子供は全部維持育成するというのが国際的に通念になってしまいまして、もう征服、被征服の関係が起こらないということ。国内も同様に、不具者であろうと何であろうとこれを保護していかなければならぬという福祉国家にならなければならぬ、こういう根本があります。だから自分は、日本自身が明治維新から約七十年の間に一等国になっちゃった。それで戦争が始まったらまたすかんびんになって、大東亜戦争で一文なしになった。今度は三十年ぐらいの間に一等国になっちゃった。自分はなっちゃっておいて人の国が、発展途上国がみんな経済成長して——中東でもそうです。あれは砂漠をはだしで歩かせたくない、将来順次ゴムぐつくらいはかせてあげたい、自分の名前ぐらい書けるようにしたい、こういうことを為政者はみんな思っていますから、つまり一言で言えば、みんなが経済成長したい、これを助けようということが基本になっているから、おまえは生意気だから経済成長するのはやめておけ、こういうことはどうしてもできない。本当は韓国なりあるいはシンガポールなり、この辺のASEANがどんどん日本と同じようによくなるということが望ましいことでしょうが、ただ、その過程においてはいろいろの、やはり生糸を制限するとか、日本でもまたちょうと待ってくれとか、いわゆる水際作戦というようなことも起こりますし、過程においてはいろいろのナショナルインタレストのぶつかり合いということはありますが、太い線としては、やはり日本のように先進工業国ともなれば、発展途上国が次々に進歩していくということに協力するという太い線でなければ日本自身がやっていけないというふうに思うのですね。  ただ、そういう過程においてもできるだけ話し合いを繰り返す。私は本来異国の、異質の二国がうまく意見が合うということはないと思っています。これは私の長い外国生活で、三十年でつくづくいやな思いもずいぶんしています。いまちょっと言うのをはばかるようなこと、いろんな差別待遇も受けました。しかしそれは忘れちゃったとして、これは結局経済ばかりでなくていろんなことの、ほかに方法がないので、何回も会議を繰り返す。おまえと話するのはもういやだと言って別れることができないという現実を認めざるを得ないので、それから黙れと言うことができない。そうである以上は、もうこれに協力していって、彼らの発展も助けて、自分も努力を怠らないように発展していくという考え方でないと、すべての問題が解決しないんじゃないかとぼくは思うのです。おれの邪魔になる。当然そうです。いままでなかったような軽工業、これからもう少し韓国も日本のようになるでしょうね。一番悪い場合には、日本と同じようになるかもしらぬ。人口も少ないし、それから化学工業がどんどん発達して、輸出がある程度制限を受ける。だからそこのところは、韓国は、発展するのはいいけれども、日本の轍は踏まないようにすべきでしょうな。日本もまたいろいろ日本として生き残らなければならぬ。(小林(進)委員「どうして生き残りますかな、そうなったら」と呼ぶ)日本くらい進んでしまっていれば、日本人は自分で幸福だと思ってないですけれども、はたから見た場合には、何てぜいたくなやつだ、こういうふうな感覚です。今日現在、はっきり申すと。私も現に外地をずっと何回も回っていますが、回って帰ってくると、日本に帰ってきていまだにほっとしますから。電気を幾らつけたって、フランスならぱっと消えているはずですが、消えてないということですね。(小林(進)委員「いま一つ入札の問題をやってください。いま申し上げましたフランスとの入札競争」と呼ぶ)これは、日本は大体国内競争が非常に多いので、なれてないわけですよ、外国への輸出のときに。最近ですよ、ようやく、困っちゃって、みんなが共同してコンソーシアムをつくって、それで当たる。ところが欧米はわりあいになれてますからね、だからそういうときにさっとベルギーやなんかと一緒になって、フランスは平気で他国と一緒になって、そしてやる。日本は、わが社の特質をみんなが言い合って、なかなかうまくいかないということがあって、それで負けるということはあります。最近浦項製鉄でも、あれですよ、実際は御質問にはないですけれども、あれは辛うじて全体の費用のうち、あれを建てるについての所要資金のうちの約六〇%が日本で四〇%が欧米ですよ、あんなところでも。
  177. 澁谷直藏

    ○澁谷委員長代理 よろしゅうございますね。
  178. 小林進

    ○小林(進)委員 きょうは私はこれで……。
  179. 澁谷直藏

    ○澁谷委員長代理 藤野参考人には御多用中まことにありがとうございました。御退席を願っても結構でございます。  次に、広沢直樹君。
  180. 広沢直樹

    ○広沢委員 最初に私は、前の税調会長であります小倉参考人に二、三お伺いしたいと思います。  税制調査会は約三年にわたりまして審議をしておりましたいわゆる中期税制の答申につきまして去る四日に答申をされたわけであります。正直に申しまして、私は、大変な労苦があったろう、このようには感じております。きょうはまだこの増税問題が具体的に国会に提案された問題ではございませんので、内容にわたっての具体的な問題については議論をいたしません。     〔澁谷委員長代理退席、山下(元)委員長代理着席〕 ただ、そういう答申をなさった背景とかあるいは基本的な考え方につきまして、二、三伺ってみたいと思うわけでございます。  大変失礼な言い方になりますけれども、この答申を読ましていただきまして、一言で申し上げますと増税の予告書じゃないか、こういうふうに感ずるわけでございますが、この問題がさきの国会開会のときに代表質問でも取り上げられまして、一体そういうような情勢になっている中で、いつからこういうことは実行しなければならないのだということに対します総理大臣の答弁は、やはりいつからやるとはまだ考えてもない、したがって、それは経済情勢だとか諸般の情勢を十分慎重に考えなければならぬということで答弁がございました。したがいまして、この審議に当たられた税制調査会としても、やはり現下の経済情勢を的確に判断されて慎重に扱っていかなければならないというお感じは持っていらっしゃると思います。特に税制の問題に当たりましては、申すまでもありません、国民の権利の基本の問題でありますし、私は民主政治の根幹であろうと思っております。したがって、大幅に増税をする、あるいは税制を変えなければならぬ、こういうことになりますと、よほどの国民的コンセンサスというものがなければ、これはスムーズにできるものではございません。そういった観点から考えますと、今日はわが国経済は大変な転換期にあり、苦悩しているわけでありまして、そこでこの提案をなさるということはやはり大きな反響を呼んでいるわけでございます。それがゆえに、いtu どうなるだろうということは大変な関心は持っておるわけでございますが、その点について、まずこれをお出しになったときの税調の基本的な考え方についてひとつお伺いをしておきたいと思います。
  181. 小倉武一

    ○小倉参考人 ただいまのお尋ねでございまするけれども、増税の予告ということでございましたが、私どもとしては、むしろ国民に対して増税の必要を訴えるという趣旨を込めておったつもりでございます。そこで、その時期でございまするけれども、これはいわゆる中期税制ということでの答申でございまして、いつどういう増税をお願いするかということにつきましては、その当該年度年度の税制調査会で御審議なり、そしてまた政府に答申申し上げ、国会の御審議を得る、こういったようなことになろうかと思います。したがいまして、増税についていろいろの項目が大小ございまするけれども、時期としましては、次に設けられるといいますか任命される新しい税制調査会で検討される、税制調査会に関する限りはそういうふうに考えております。
  182. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこでもう一点お伺いいたしますが、いま御答弁ございましたように、具体的な時期あるいは内容については、今後の各年度の税制改正に関する答申で具体的に盛り込んでこられる、こういうことでございますが、五十三年度の税制改正、まさしくもう間もなく審議をしなければならない、こういう段階になっておりますし、御存じのように、来年度予算の概算要求はもうすでに行われておる、こういう状況でございます。したがって、目下の焦点というのはそこに集まっているのではないかと思うわけでございますが、その点についていまからどうだということは答えにくいのかもしれません、次の税調会ができた時点で決めなければならない、したがって、いまお答えできないかもわかりませんけれども、私はやはり税調の答申というのは、基本的な考え方はずっともう継承されていかなければならない、こう思います。その都度その都度、具体的な問題については変わることもありましょうが、基本的な考え方については変わってはぐあいが悪いのじゃないか。  そこで、「五十二年度の税制改正に関する答申」、これは小倉参考人会長でお出しになったわけでございますが、この中にも「基本的な考え方」といたしまして、五十二年度は大幅な増税を行い得る時期にはないので、現行税制の仕組みの中で各般の増収を考えていく、こういうふうに申されまして、その具体的な理由としては、いわゆる当面する経済情勢が適当でないと認められるということをおっしゃっていらっしゃるわけですね。これは昨年の暮れの答申であります。したがいまして、もうすでに御存じのように、経済が低迷している、四年続きの不況で、三年で大体脱するのではないかと言われたのが今日まで続いておりますし、五十年あるいは五十一年、五十二年の今日まで見ましても、まだまだその点は、いわば長いトンネルに入ってまだ出口が見つからぬというような状況にあると言っても過言ではないと思います。そうしますと、いわゆる経済情勢というものを考えてみますと、基本的な考え方からしましても五十三年においてはなかなかむずかしい問題ではないか、こういうように思うわけですが、税調の基本的な考え方をひとつお聞かせいただきたい。
  183. 小倉武一

    ○小倉参考人 五十二年度の税制改正についての答申でございますが、これは五十二年度について当面どうするかということに重点がございまして、そのころもうすでに中期税制のあり方について検討をしなければなるまいということで基本問題の小委員会を設置しておったということもございまして、一般的な増税の必要は感じながらも、そのことについては次の年度以降に譲るという趣旨で当面の措置を五十二年度に答申したわけでございます。  その後、引き続いて税制調査会が再開されまして、先般、お話のような答申をいたしたわけでございますが、無論五十二年度のときの経済状況の判断から申しまして、当時はなかなか一般的な増税がむずかしかったということはお話の中にございましたとおりでございます。  今後につきましても、無論この増税によってさらに景気が沈滞するというようなことになってはこれは恐らく困るということでございましょう。そこで、時期をどうするかということは非常に重要かというふうに存じます。ただ、一方におきましては、増税のことですから、どういう時期がいいと言っても、これはなかなかいい時期というものは私はないのじゃないかという気がいたします。と同時に、また財政の状況等から見ますと、できるだけ早い機会に増税に踏み切らなければ、いよいよむずかしい財政上の問題に当面をするということでもございますので、事情が許す限りできるだけ早い機会がよろしいのではないかというのが税制調査会の中期税制答申の趣旨であろう、こう存じております。
  184. 広沢直樹

    ○広沢委員 財政事情につきましては、私も私なりにいま大変な状況にある、確かに一般会計に占める公債の割合も三割に近づいている、こういう状況でございますから、これは大変なことは十二分にわかるわけであります。しかし、いまお話がございましたように、この答申によりますと、できるだけ早い時期に一般消費税といいますか、それを選択するようにというような答申になっているわけであります。その背景は、後から私はこれは述べるつもりでありますけれども、五十年代の前期経済計画をもとにした財政収支試算というものが大蔵省から参考資料として出されておるわけでありますが、それによりますと、いまの前期経済計画を実行しようと思えば、どうしても財政的に問題があるということがあの表でもわかるわけであります。したがって、できるだけ早い方がいいとおっしゃる意味もそれを踏まえてのことではないか。そうなりますと、今日の経済情勢から考えて税収が予定どおり入ってこない、もう過去のような自然増収がないことは常識でありますけれども、そうすると五十三年あるいは五十四年、五十五年と、もう三年しかないわけですね。だからできるだけ早い時期ということは、この中でということをお考えになってのお気持ちなのか、その点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  185. 小倉武一

    ○小倉参考人 中期税制という名前にも関連することでございますが、お話のように五十五年ころまでの時期を頭に置いての話でございます。スタートになりますと、もう過ぎた年度も入ってくるわけでございますが、来る年としては五十三、四、五と、こういうことでございますから、その間には無論何らかの税制改正を行ってという趣旨でございます。そこで、早い方がいいということになれば五十三年度ということになるわけでございますが、お話のとおり、一般的な増税ということで考えるならば、これは税制を具体的に仕組むという問題もございます。したがいまして、国民各層の意見を反映するというのもいろいろな場を通じまして必要であるというようなこともございまして、相当の日数を要するということかと思います。そこで、余り早急にやるということではかえって事をし損ずるというようなことも恐らく考えなければなるまい、かような実は感じでおるわけでございます。
  186. 広沢直樹

    ○広沢委員 それから、もうすでに新聞等にもこの増税問題を中心としていろいろな論評が載っているわけでございますが、やはりこういう税制改正に当たっては、まずその前提条件というものをはっきりしなければならぬ。したがって、また前提条件と申しますのは、それぞれ増税をするについての目的といいますか、いまの財政試算等から言いますと、過去のいろいろな赤字がこれだけできてきているわけですから、それを埋め合わせるのではないかというような考え方が持てるわけでありますけれども、それではやはり納得されるわけではないと思いますね。具体的に国民に大きな負担をかけるということになれば、それなりの計画というものがやはり前提になければならない。これだけのことをするのだから、したがってこの財源をどうしようか、それが何に求められるか、いまのわが国の中心的になっておりますいわゆる所得税に求めるものか、もちろん法人税もそうでありますが、それからいわゆる一般消費税というそういう形に求められていくものかという、そこからの議論が始まっていくのではないかと思うわけでございます。  それからもう一つ、いま実施の時期につきましていろいろお話をいただいておるわけでありますけれども、やはりその前提条件の一つは、どういう状況でこれができるだろうか。財政事情というもの、財政だってどうにもならなくなれば、これは経済に大変な影響を及ぼすわけでありますから、いつまでもというわけにはいきませんでしょうけれども、しかし、前の答申にもございましたし、また総理の答弁にもありましたように、現在の経済事情というものを十分考えてみなければならない。そういうことになりますと、税調の中でも、現在の経済情勢については十分分析なさったのではないかと思われます。指標を一つ一つ言っていると時間がございませんが、何といっても、現在の景気を盛り上げていくためには個人消費支出を盛り上げていかなければならぬ。いずれにしてもそれが大きな課税になってまいりますと、その点どういう影響を与えるか、いまそれがいいのか悪いのか、あるいは物価の動勢についてもどうだろうか、こういうことを十二分に検討されて、大体この時限においてはそういうことはコンセンサスが得られるのではなかろうか、こういうような一つのラインといいますか、そういうお考えがあるのかないのか、この点もひとつお聞かせいただきたいと思うわけであります。
  187. 小倉武一

    ○小倉参考人 中期税制の答申に盛られている増税を中心とした趣旨を実行して法制化していくというような場合に考えられなければならぬのは、いまお示しのとおり経済事情、物価の問題なりあるいは景況の問題なりあるいは失業の問題なり、その他多々あろうかと思います。もう一つ重要なことは、歳出の方のお話もございましたけれども、一体何に使われるのだというようなことも、無論これは重要なことであります。また、これまでの歳出がやむを得ない経費に限られておるのだろうかどうかというようなことについての検討もお願いしなければならぬ。あるいは行政の合理化というようなこともお願いしなければなりません。あるいはいわゆる不公平税制の是正というようなこともお願いしなければならぬというようなことで、多々あるかと思います。  これらがどういうようなことで進むかは、これは今後のことでございまするけれども、恐らくその中の相当のものはもう来年度から実施していただくというようなことになることが必要じゃないかというふうに思います。ただ、条件とか前提条件といいますと、これは話がぎこちなくなりますけれども、同時並行といいますか、その辺は緩急あるいは実行の難易という点なども考慮して措置されなければならぬじゃないかというふうな考え方をしておった次第であります。
  188. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは時間の関係でもう一問だけお伺いいたします。  これは多少内容に入るわけでありますが、けさ労働界の代表の方からいろいろ御意見を聞いた中で、来年度の予算について要望を聞いたわけでありますが、その中にやはり物価調整減税ということを要求したい、こういうお話がございました。この物価調整減税につきましては、過去の税調答申の中にもこの必要性を力説されたときもあるわけであります。しかしながら、情勢が変わってくれば、今回の中期答申の中では、物価調整減税についてはもはやその必要はないやに書いていらっしゃるわけですね。私は、基本的な考え方にまた大きな変化があったのではないか、こう思います。物価調整減税は、この名のとおり、物価が高騰している、非常に上昇中である、そういったととろに対する国民に対する配慮であろうと思うのですね。ところが、いま物価は確かに横ばい、鎮静の方向に向かっているとはいいながら、まだ非常に高いわけであります。そういう折に、いま社会問題として一つ問題になっておりますが、金利の目減り問題、さらには、いわゆるこういう恒常的な物価高で相当な影響を受けている、それからいまお話がありましたように、将来には相当な負担をかけなければならぬのではなかろうかというようなこういう問題、この三つの問題から考えましても、やはりいま国民に対する配慮というものがあってしかるべきじゃないだろうか、労働界の要求というのは当然のことではなかろうか、こういうふうに思うわけでありますが、その点についての御答弁をいただいて、小倉参考人に対する御意見を承ることは終わりにいたしたいと思います。
  189. 小倉武一

    ○小倉参考人 物価調整減税についてのお尋ねでございまするけれども、これはもう、いま御質問の中にございましたように、過去何回か税制調査会でもその討議になったことで、またその都度処置をしてきたこともあるわけでございます。今回の中期税制の答申の中におきましては、物価調整減税は必ずしもやる必要がないのだという趣旨をうたっておるということも御指摘のとおりでございますが、他方、物価調整減税は当然やるべきだという御主張も、これは税制調査会の内外にあることもまた事実でございます。  その点について、どういう考え方で中期税制の答申ができているかということを申し上げますと、一般的な増税をお願いしなければならぬという際に考えられることは、企業課税ということもありまするけれども、やはり所得税あるいは一般的な消費税というふうなことでなかろうか。無論、不公平税制の是正というようなことによっての増収ということもありましょうけれども、大きな筋としては所得税と一般消費税であろう。そこで、どちらに重点を置いて考えたらよろしいかという際に、答申では、どちらかと言えば一般消費税に重点を置いて、そちらに増税をお願いしたらどうだろうかという趣旨になっておるのでございますが、なぜ所得税よりは一般消費税ということになったかと申しますと、一つの理由は、所得税は負担感が多いとかいったようなこともございまするけれども、いまお話にございましたような、名目所得の増大によって、税制をいじらなくてもおのずと所得税については負担が重くなっていくというふうなことがございまして、この一般的な増税をお願いしなければならぬというときに、一般消費税の増税をどの程度お願いするかということも関連がございまして、物価調整減税はひとつがまんしていただきたいというのが答申の趣旨かと思います。  なお、これは一般消費税をどの程度お願いするのか、あるいは政府の方針、おやりになること、そうお間違いになるとは思いませんけれども、今後の物価がどの程度上昇していくのであろうか、またその上昇の持続がどの程度になっていくのかというようなこととのにらみ合わせで考えなければならぬことだと思います。
  190. 山下元利

    ○山下(元)委員長代理 小倉参考人には、御多用中まことにありがとうございます。御退席を願っても結構でございます。  広沢君。
  191. 広沢直樹

    ○広沢委員 大蔵大臣にいまの問題に関連してお伺いいたします。  いまの税調答申は大きな条件がついております。それは国民のコンセンサスを十分得られるように特に配慮しろ、こういうふうに言われております。これは当然のことでございますが、その具体的なことにつきましてどういうふうにお考えになっているのか、当局の責任者としての御意見を賜りたい。
  192. 坊秀男

    ○坊国務大臣 税制の改正というものは、これは国民に負担を求めることでございます。個人的に考えてみましたならば、この負担ということはもうこれはつらいに決まっておるのです。私は大蔵省におりますけれども、私もまた増税をされるということは、これはつらい。しかしながら、いまの日本の諸般の経済情勢等から見まして、詳しいことは申しませんけれども、中期に当たりましては、何らか国民の負担を増していかなければならないという事態にあるということは、財政全体の状態から見ましてよく御理解いただけることだと思います。来年どうするとかこうするとかということでなくして、これはあるいはやるかもしれないし、あるいはやらないかもしれない、そういう状態にありますが、そういったようなことについて、一体いついかなる種類の税をいかなる範囲においてやるかということは、何といたしましても、これは国民の皆さんの御選択を願わなければならない。何らかの形においてこの非常に痛いことをごしんぼう願わなくてはならぬということになりますと、ぜひともひとつ御選択を願いたい。その御選択を願うのは、これは民主主義国家におきましては、国会を通じて、あるいは政党と政党の話し合いというように、非常に進歩発展しておりまする政治のいろいろな施策、方法というものはありますので、そこでよく御審議を願うということを考えております。
  193. 広沢直樹

    ○広沢委員 今国会は経済国会と総理みずから言っておりますように、この審議を通じて、いわゆる政府が出しております総合経済対策、それに含まれている補正予算中心として、これからの経済見通しがどうなるか、こういった問題を中心に論議が重ねられてきたわけであります。わが党の正木委員が先日も質問いたしましたように、現在の深刻な経済情勢におきましては、何よりも大事なことは、これから国民の前に先行きの展望を具体的に示すことである。これがいまの国民の不安を一応取り除く。目標を決めれば多少苦しくてもそれは努力いたします。そういうことで目標をはっきりしてもらいたい、こういう話をいたしましたが、なかなかそれも具体的なところがまだ明らかになっておりません。  そこで、私はまず、先の展望と申しましても、この景気対策がすなわち来年度の予算にそのまま連動していくものである、いままでの論議でも明らかになりましたように、いわゆるこの補正で今日の景気を大きく引き上げていくということは非常にむずかしい、下支えをしていくというようなことは考え得るのじゃないかということでございます。そこで、その来年度予算についてまず大蔵大臣からお伺いいたしたいと思うのですが、すでに総理も来年度の経済成長は六%に一応考えていきたい。と申しますと、やはり大体ことしと同じように、そこまで相当積極的にやらなくてはならないということを展望されていることだろうと思うのですが、来年度の予算について、景気刺激的な財政、私はそうならざるを得ないのではないかと考えるのですが、その点はどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、ひとつお伺いさしていただきたいと思います。
  194. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  来年度の予算でございますが、御案内のとおり、ただいま大蔵省におきまして鋭意検討を続けておるという事態でございます。いま申し上げられますことは、とにもかくにも日本の財政を健全化していかなければならない。と申しますことは、もうしばしば申し上げておりますとおり、三〇%に近い、まさに天井を打つような公債依存度を三年間も続けてきておるというようなことをこのまま続けてまいりますと、これは財政が硬直化公債収入は公債費にどんどん食われてしまう、こういうようなことになりましたら、財政の役割りというものはとうてい果たすことができないことは火を見るより明らかである。こういうような事態からできるだけ早く脱却をしていこうということで、歳入の見直しもやらなければならないし、歳出については、これはもう徹頭徹尾スクラップ・アンド・ビルドというような考え方に徹してこれをやっていくというようなことで、鋭意作業を続けております。  そこで、その予算の骨格に対していかなる肉をつけるか、いかなる血を流していくかということが、どういう政策をつぎ込んでいくかということでございますけれども、そのことにつきまして、今日ただいま予算の編成の真っただ中でございまして、財政当局の端くれ——私は端くれではないですね、その責任の座に座らしていただいておる者が、一番これのどこに力を入れるのだということを申し上げますと、非常にまた影響と申しますか、今後の編成が非常にまたむずかしくなるというような点もあるいは生ずるのじゃないか。そこはひとつ、あなたに申し上げて大変失礼でございますが、以心伝心でもって御理解のほどを、今日ただいまは申し上げるわけにはまいりませんけれども、いずれは、先ほど申し上げましたとおり、各党の皆さん方に衷心を披瀝いたしましてお願いをすることと相なろうと思いますので、何分ひとつ御理解と御協力のほどをお願い申し上げます。
  195. 広沢直樹

    ○広沢委員 いろいろなことを言われましたが、以心伝心でわかれと言いましても、はっきりお話をしないとわからないわけでございます。いずれ細かいことは、おっしゃるとおりこれから検討され、詰めていかれるところだと思うのです。しかし、いま補正予算を検討し、景気対策を十分検討して、しかしこれで終わりではない。やはり一番近くは、来年度予算の方向がどうなるかという大枠といいますか、その線だけはわかっていかなければならないと思うのですね。ですから、あとの細かいことは、公共投資がどうなるか何がどうなるかということは、またこれから詰めていかなければならない問題だと思うのです。ですから、総理も経済一つの大きな枠組みとしては六%台の成長になるだろう、またそう持っていかなければならないと思う、こう判断なさって、この間私は予算委員会で聞いておりましたけれども、そのとおりお答えになっておられたわけであります。  そこで、すでに概算要求が出ておりますが、これも新聞で詳しく私も読ませていただいたわけでありますが、それによりますと、一五・九%になっている、こういうことでございますね。大体いまの経済は、いわゆる政府支出、まあ輸出もありますけれども、輸出は後からまた問題にしますけれども、政府支出を柱にして引っ張っていく以外にはない。苦しい財政の中ですけれども、それがいまの柱になっておりますね。ですから、来年度六%の経済ということになりますと、やはり財政におきましてもその点は十分加味したものをつくらなければならぬということは申すまでもないと思います。そこで、要求で言いますと一五・九%になっている。その金額も明確に出ております。一般会計が三十三兆三百八十九億円、こういうことでございますが、それに公務員の給与とか公債の問題というのを加えてまいりますと、やはり三十四兆近くになるのじゃないか、一九%近くになるのじゃないか。ことしが大体二二%でありますから、抑えたとしてもその程度になるのじゃなかろうか、このように思うのですが、どうでしょう。
  196. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申し上げます。  要求につきましては大体おっしゃられたようなことになろうと思う。私もまだ細かく精査しておりませんけれども、そういう見当になろうかと思います。
  197. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、経済企画庁長官にお伺いいたしますが、これも直接聞いたわけでありませんけれども、経済企画庁においては、すでに来年の予算を展望して経済見通しを一応試算されているやに聞いておりますが、その点いかがでございましょうか。
  198. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  来年度の経済見通しについては、まだ私の方で作業いたしておりません。と申しますのは、今回の総合対策効果を十分見守っていきたいというのが第一点でございまして、この総合対策の中で構造不況対策であるとかその他の対策について十分アフターケアをやっていくということをまず第一にやりたいと思っております。  来年度の見通しについては、私どもとしては、ただいま御指摘のとおり、なるべく早くそういう見通しをつくり、また予算編成の基礎ができるようにしたいという願望は持っておりますけれども、今日の国際情勢も非常に動いておりますし、これから個人消費あるいは設備投資の動向、あるいは住宅その他いろいろな要件がございますので、そういうのをもう少し見きわめないと、来年度の財政がどういうことになろうかというようなことを判断するのは非常にむずかしいのではないかと思っておるわけでございます。しかし、相当財政に大きな負担がかかってくる、どこまで財政がそれに耐え得るかという問題があろうかと思います。
  199. 広沢直樹

    ○広沢委員 ちょっと私の質問の意味を取り違えられたのかもしれませんが、大蔵省が来年度予算の概算要求で各省に示したいわゆるガイドラインというのですか、それが大体一三・五%の伸びである。これは閣議でも了解されていると思うのですが、それをもとにして一応来年度のいわゆる実質経済成長試算してみると、大体五%程度にしかならないだろうというのが企画庁の試算としてすでに報道されているわけであります。この点についてはどんなものでしょう。
  200. 倉成正

    ○倉成国務大臣 私はそういう報告を聞いておりません。内部でいろいろ勉強はいたすと思いますけれども、私どもの申し上げる数字ではございません。
  201. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは大蔵大臣に重ねてお伺いいたします。  大蔵大臣はこれまでの答弁の中で、国債の依存率は三〇%以下に抑えていきたい。私は、その三〇%がいい悪いという理屈を言うよりも、そこに一つのめどを置いて財政健全化を図っていこうというところは私も同感でありますけれども、もしもそういう形をおとりになるとしたら、先ほど申しましたように、総枠が今年度並みか、あるいは今年度よりも私が申し上げた二、三%低い形になりましても、いま概算要求に出ておる三十三兆ないしは三十四兆に予算枠がなるのじゃないか、こういうことで私はいろいろ試算をいたしてみました。税収の見積もりにつきましては、いま財政試算に盛られておりますような弾性値一・八三、こういう伸びがあるということは考えられません。現在の状況から見ても当然考えられませんし、あるいは日経センターの五十三年を展望したそういう計算の中にも、それは当然出てまいりません。ですから、それをもっと低く見て、弾性値が一・二、あるいは税収の伸びが一九%、ことし並みぐらい、こう考えてまいりましても、いわゆる歳入不足というのが一兆円を超えて出てくるのじゃないか、これも大枠わかるわけであります。もう当然いま作業にかかっていらっしゃる皆さんも、そういう枠設定の中で、どこをどうやりくりするかということを検討していらっしゃると思うわけでございます。  そこで、いま大蔵大臣がこの国会で申されておりますように、来年度の予算につきましても国債依存率を三〇%以下にするといいますと、この一兆円を上回って出てまいります歳入不足、これを何で埋めていくかということが一つの問題になろうかと思いますね。一兆円というのは、いままでやったような、少々不公平税制を見直すとか、そういったことではこれは解決しない問題であります。予算をもっと抑えていくか。抑えていけば、先ほど言ったように経済の状況というものはどうなっていくかという問題が出てまいりますし、さらには、いわゆる国債をいま考えないということであれば、したがって、一兆円を埋めるというのは増税しかない。そういうことをずっと試算してまいりますと、これは大変な問題があろうと思うのですが、その点はどういうふうにお考えでしょう。
  202. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  御指摘の点が一番むずかしい点でございまして、私も頭を悩ましております。だがしかし、とにもかくにも、先ほど申し上げましたとおり、財政の健全化ということはやっていかなければならないということを考えております。そこで、先ほど来申しておりまする歳入の見直しということももちろんのことでございますけれども、歳出につきましては、とにかく今日の歳出を徹底的にスクラップ・アンド・ビルドの考えで検討をしてまいっておる、補助金だとか行政整理だとかというものだけではなくて、もうその原点からこの歳出事項というものをいま見直しておるような次第でございますが、そういったようなあらゆる手段を講じまして、そうして今度の予算を、日本の将来の国民に残して、よくやったなと言われるような予算に持ってまいりたい、かように考えております。
  203. 広沢直樹

    ○広沢委員 いままでと違いまして、当然予算を編成するに当たっては、そういう政治、経済情勢からお考えいただいても、やはり先を展望した大枠の中で——あと細かい問題は財政当局によって詰めるとしても、そういったところを具体的に示さないところに現在の不安があるといいますか、問題があろうかと思うのです。したがいまして、この問題は議論のすれ違いになります。ただし、私はきょうは指摘いたしておきます。ここにいま言った一つの大きな問題が出てくるのだということでございます。  そこで、それに関連して、財政試算の問題を通じて経済計画あるいは財政計画をこれから具体的につくっていかなければならない段階だと思うのでございますが、それについて二、三伺っておきたいと思います。  昨年の二月、いわゆる今日の財政事情からして、財政法にない赤字公債をどんどん出されていく、これでは財政の健全化が思いやられるということで、具体的な財政のあり方を示せという要求がありまして、それに対して、財政収支試算というものを国会に参考資料として出されたわけでありますが、それは五十年代の前期経済計画に示されましたいわゆる経済成長率あるいは公共投資額、租税負担などから、歳入歳出の規模、これを単純計算して財政の姿を大づかみにしたものが出ておりますね。しかし、財政危機はこれだけ深刻化してきているわけでございますから、政府のやりくりだけではこれは済まされないわけであります。いままで自然増収がある、あるいは公債をどんどん発行していくということでございますから、それなりに今日までやってきたわけでございましょうが、今日そういうことであったからこういう財政危機を迎えているのではないかと私は思うのです。したがいまして、こういった問題についても財政再建の方途というものは、やはりその年度年度で簡単に解決するものではございません。そしてまた、今日出されました大づかみの財政試算のように整合性、数字的なつじつまは合っておりますが、実際に考えて不可能なことをあらわさなければならないような、こういうものでは困ると思うわけであります。それはなぜ財政的にこういう問題が、つじつまが合わなくてもつくらなければならなかったかと言いますと、やはり五十五年という五年先の一つ経済計画に合わせてつくったからだということになりましょう。ですから五十一年も五十二年も、現実には矛盾していると考えながらやはりそれで推移してこざるを得なかったわけですね。  ですから、そういう意味におきましては、こういう具体的な、試算ではなくて財政計画、これを出して、そうして財政のあり方といいますか、それを明示していく段階ではなかろうか、このように考えるわけでございますが、その点について大蔵大臣はいかにお考えでございましょうか。
  204. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  五十年代の前期経済計画というものが一応つくられまして、それを足がかりといたしまして財政収支試算をことしの三月ですか、国会へお出しいたしまして御検討を願ったものでございますが、一応それを手がかりといたしまして、そしていろいろな計画を立てております。  そこで、今度年初以来のいろいろな財政政策、これに金融政策も伴いますが、そういったようなもの、さらに今度の総合経済政策といったようなものを盛り込みまして、そして考えてまいりますと、五十二年度は六・七の成長率を保つ、それで五十年代の前期におきましては大体六%強の経済成長率というものが保たれるというふうに私どもは見込みをつけておりますが、そういったようなところから、五十五年には何としてもこれは赤字公債から脱却できるというような見込みを立てまして、いま鋭意それに向かいまして諸般の政策、諸般の健全化、諸般の見積もりといったようなものをやっておるわけでございます。そういうようなことをやってまいりますことと、いま非常に御強調なさいます中期の財政計画と申しますか、そういったようなものをつくって国民の目の前に示したら国民も安心するしいいじゃないか、これは私も大変結構なことであり、かつてそれはぜひともやっていかなければならぬ問題だと思っております。  そこで、これにつきましては、大蔵省といたしましては、財政審に財政運営基本問題小委員会というものをつくりまして、そこで現在これを勉強していただいておるということでございますが、いずれにいたしましても、この中期の財政計画というものはなかなかむずかしいものでございまして、これは歳入歳出についての本当にきちんとした計画を立てていくということでございますので、毎年の予算編成に当たりましては、明年度の経済見通しというものを一応つくって、それで予算をつくっていっておるわけでございます。そうすると、そういったようなものを長期にわたってつくっていくということはなかなかむずかしいことでございまして、西ドイツだとかイギリスでも、その財政計画をつくるに当たりまして、十年くらいの日子を使いましてどうにかそういったような姿が整っておるというようなことのようでございます。私どもも、それはあるにこしたことはない、あるべきはずのものだということについては全くお説のとおりに考えておりますが、現在は非常にむずかしいということを申し上げまして、お答えとさせていただきたいと思います。
  205. 広沢直樹

    ○広沢委員 時間がありませんので、この問題については結論だけもう一度お伺いいたしますけれども、要するにこれはOECDでも話題としてそういう要望が高い。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕 もちろんアメリカにしても西ドイツにしてもフランスにしても、それぞれ計画をお持ちになっている。これは計画ですから、何もぴたっと合わなければ問題であるという問題ではございませんで、やはりそれは五年先がどうなるという先の見通しではなくて、毎年毎年見直して、ローリングシステムと言うのですか、そういう形でやっていくということがいいんじゃないかというふうに言われておりますね。ですから、ほかのところが長いことかかったからこっちもかかるのだというのじゃなくて、それは財政審の方でも検討されているということでありますから、早急にこれを立てなければ、これからいろいろなことを財政問題として論議しなければならないときに、これはむずかしい問題にしてもやはり御努力いただかなければならないと私は思います。  これは経済企画庁長官、経済計画もやはりこれに準拠しなければならない。というよりも、経済計画がなければ、それの肉づけであります財政の問題もできないわけでございますから、いま大蔵省の方はそういうふうにして検討されているということでございますが、企画庁はどうですか。
  206. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えしたいと思います。  私どもの経済計画では、内外諸条件の長期展望のもとに、計画期間内における望ましい経済発展の姿を明らかにいたしまして、目標年度における経済の輪郭を示しております。毎年毎年のものはつくっていないわけでございます。したがってもしお説が、毎年毎年のものをいろいろな数字であらわしたらどうかという意味であれば、これだけ経済が激動しているときに、一々の項目について、毎年毎年の各項目についての数字を挙げるということは、どうも現実的ではないのじゃなかろうか。やはりこれは毎年、全体の計画に沿って考えていくのが適当ではなかろうかと思うわけでございます。  ただ、広沢委員がさらに一年ずつ計画をずらしていくローリングプランというようなお気持ちであれば、これは一つ考え方ではなかろうかと思いますけれども、まだ私の方でそこまでの踏み切りはいたしていないというところでございます。
  207. 広沢直樹

    ○広沢委員 倉成長官、そこでいまお話がございましたように、たとえて言いますと、出口と言えばいまありますが五年先の計画、それから入り口と言えば毎年の計画ですね。中がない。中はいろいろ変動するから、それは任せてくれとおっしゃるのがいままでの考え方だと思うのですよ。ですから、やはりこれだけ激動してくるからこそ出口と入り口の中をきちっと計画を立てて、そこからはずれていくことに対しては、どういうわけではずれた、だからこれはもっとこう直していくんだと言えば、いまお話がございましたようにローリングシステムというのですか、少しずつ軌道がずれていってもそれがはっきりしてくるのではないかということが言われるわけです。いままで五年計画の経済計画は、これは高度経済成長期にはぐんぐん伸びておりましたからそれもあったのでしょうが、大体二年かそこらで改定ということになりました。それは経済が伸びていいように改定しているわけでありますけれども、今回の場合は、これは経済一つの変動でございまして、長期的な不況でしょう。そういう中においては、特に国民はあるいは産業においてもそうでございますが、目的というかあるいは目標というものの設定が一番大事になってくる。ですから、やはりそれはだれがつくったからだれの責任だというのではなくて、お互いにその目標に向けて努力するということを考えていくならば、その計画というものはお示しになるのが筋ではなかろうか、これはひとつ前向きに検討いただきたいと思うわけでございますが、もう一度お答えいただきたいと思うのであります。
  208. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  毎年毎年の数字を、五年計画を立てた場合に、五十一年、五十二年、五十三年、五十四年、五十五年とそれぞれの項目について細かい数字を決めるということはどうも現実的ではないのではなかろうか。これだけ経済が動いているわけでございます。したがって、毎年毎年経済見通しということを立てまして、そしてこれについていろいろ御批判もいただくし、またその毎年の経済計画を一年立てましても、今回のように改定しなければならないというようなことにもなるわけでございますから、その方が現実的ではなかろうかと思います。しかし、いま御提案のお気持ちは相当大きな幅を持って考えたらどうかということであれば、それは一つ考え方ではないかと思いますけれども、ただいまのところ私どもそういう考えをとっておりません。
  209. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは次は、日銀総裁に参考人としておいでいただいておりますので、円高の問題について若干お尋ねをいたしたいと思います。  すでに御承知のように、きょうは円相場は高騰いたしまして、四十八年の七月九日のレートを上回るという高値になってしまいました。そういうことで、先行きがどうなるかということが大変心配されるわけでございます。  そこで、まず総裁にお伺いしたいのは、最近の円高現象が一時的なものであるのか、それから恒常的なものと見ているのか、この辺に来たのだからしようがないだろうとお考えになっているのか、いや、もとへ戻っていく、これは一時的な現象なんだ、こうお考えになっていらっしゃるのか、その点からお答えいただきたいと思います。
  210. 森永貞一郎

    ○森永参考人 お答えいたします。  円の為替相場は、先月末二十九日から上がり始めまして、本日は引け値は二百五十三円でございます。約十三円円高になったわけでございます。その背景といたしましては、基本的には何と申しましてもわが国の国際収支、貿易並びに貿易外の経常収支の黒字幅がかなり大きな規模に達しておるということがあるわけでございますが、それに加うるに、先月末ごろからアメリカでブルメンソール財務長官が円の黒字の問題を取り上げると同時に、アメリカ国際収支、経常収支の見通しはかなり大きな赤字になるだろうというようなことを話しましたのがきっかけになりまして、ドル安感、円高感がにわかに台頭してきたような感じがするわけでございます。  その結果、まず海外からの円買いが起こりまして、それに加うるに、国内でも若干思惑的な動きが加わってまいりました。また円シフトの模様ながめといったようなことも現実に起こってまいりまして、為替銀行もポジション調整を急ぐというようなことがございまして、市場の需給関係が大きく変化して、それがこの十日余りの間に見られましたような大幅な円高の原因になっておると思うのでございます。  今後それがどう落ちつくか、どう推移するかという見通しでございますが、なまじっか憶測を申し上げますと、その憶測がまた憶測を生むことにもなりますので、私どもの立場といたしましては、将来の予測は差し控えさせていただきたいと思うのでございますが、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、フロート制のもと、相場の決定は原則として市場の需給の実勢にゆだねるという方針でおるわけでございまして、その方針には今後も変わりがございません。ただ、投機的な要因等が加わりまして市場に乱高下的な要素が起こってまいりましたようなときには、それをなだめると申しますか、ならすと申しますか、そういう混乱を防止するための介入を辞するものでは決してございません。たとえば本日の市場の動きなど、アメリカの財務長官がどうも円の切り上げ幅がまだ少ないんじゃないかといったような不用意な発言をいたしましたことがやや投機的な動きを生んだというようなこともございまして、私どもといたしましても、こういうようなことによる乱高下にはやはり介入をもって臨むべきである、介入を辞すべきではないと考えておる次第でございまして、その辺の方針は従来どおり変化がございませんことを申し上げましてお答えにかえる次第でございます。
  211. 広沢直樹

    ○広沢委員 日銀総裁、確かにその点についてはお答えにくいのもわかります。わかりますが、一応本年から考えましても約一五%も上がっておるわけでございますし、四十六年のスミソニアンのレートから考えますと、もう二割を超えて上がっているわけでございますね。ですから、そういうような状況、それは乱高下では、変動相場制においても、一応それを調整するための介入はよろしいということで、それ以外はもう実勢にお任せするのだ、こういう御説なんですね。これはわが国だけではなくて、西ドイツのマルクもそれからスイスフランもずっと上がっていっている。それでいわゆるドル安という傾向が出てきている。したがって、欧州においては、ドイツ連銀もこれは買い支えをやっている、こういう状況にございます。  そういうふうにわが国のように実勢にそのまま任していく、いわば変動相場制とは言いますけれども、完全フロート的な色彩にならざるを得ない。私はやはり、いま総裁おっしゃいましたように、最大の問題は、経常収支の黒字があるということが諸外国から一つ大きく圧力として言われていることだろうと思いますね。しかし、それが対策がおくれればおくれるだけ、それをいたし方がないもの、だとして見過ごしていっていいものだろうか、それはやはりある程度の限度というものも考えてみなければいけないんじゃないか、その線がどこだということは聞きませんが、その腹はあるのかどうかということでございますね。その点をひとつお伺いいたします。
  212. 森永貞一郎

    ○森永参考人 お答えいたします。  ことしになりましてからの経常収支の幅が非常な大幅になっておることは御承知のとおりでございまして、そういう基本的な事情のもとに今日の円高を余儀なくされているのもやむを得ない状態であろうかと存ずる次第でございます。ただし、無限に円高が続くということには、そうもなりますまいけれども、またいろんな問題も起こってくるわけでございますので、やはり根本対策としては、黒字幅をできるだけ早く縮小するような手を具体的に打っていただくということが何よりも根幹ではないかと思っておる次第でございます。景気がよくなってまいりますれば、自然輸入もふえるというわけでございますし、それにも大いに期待したいわけでございますが、それには若干の時間がかかるわけでございます。その間日本国際収支黒字に対する相手国のいらいらはますます助長するようなこともあり得ないことではないわけでございますので、この際としては、ありとあらゆる、たとえその効果は金額的には小さくても、できることから逐一取り上げて実行していただく、それによって諸外国の信をつないでいくということが、この際とるべき態度ではないかと思っておる次第でございまして、政府にもそのことをお願い申し上げておる次第でございます。
  213. 広沢直樹

    ○広沢委員 いま総裁がお答えになりましたように、確かに国内景気が上昇していく、内需が喚起されていく、輸入もふえていく、これは基本的な問題でございまして、そうあるべきであろうと思うのですね。そこで、それに期待している、こういうお話でございますが、通産大臣、いまも言うように、確かに総合経済対策では七項目対策を立てて景気対策をやっております。そしてその中の一つである対外対策、この問題については九月の二十日に黒字減らしといいますかそういう対策を講じられておる。しかし、それが具体的な効果が上げられるだろうかというところに疑問があって、そういう場合も一つの原因ではないかと思うのです。その点についてはどうなんでございましょうか。何か具体的な対策をお打ちになって効果が具体的にあらわれたという例がございましょうか。
  214. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいま御質問の黒字幅の減少の問題でありますが、結局、対外的には輸入のあらゆるものをいろいろと検討いたしまして促進を図っていくという問題がございますが、これとてもいままでの中で先生も御承知のとおりに、作文といたしましてはすでにもう十分に検討され尽くされておる。具体的にはそれをいかにして強力に実行し、ある程度まで無理があってもそれに対して努力していくか、こういう実践の問題が、私の方の所管事項としての通産行政では、黒字の削減ということになるわけでございます。  以上、お答えいたします。
  215. 広沢直樹

    ○広沢委員 いまいろいろお話ありますけれども、そういうところに具体的な対策があらわれてこない。したがって、通貨当局におきましても、そういうものを一つの目当てとした今日の円相場の急騰ということであれば、これはそのまま黙認せざるを得ない、介入はできない、こういうような状況です。いままでだったならば、ある程度なにすれば、それを支える用意があるというような意思表示もなさっていらっしゃったわけでありますが、今日においてはそれはできないという状況である。そういったことでいまの四十八年のあのレートをまだどんどんと超えて上がっていくんじゃないかという不安があろうかと思うわけであります。先ほど総裁からいつまでもというわけではないというような意味のお話がございましたけれども、その点については、通貨当局として襟度ある態度で臨んでいかなければならないのじゃないか、このように思うわけでございます。  時間が来ておるようでございますので、日銀総裁にもう一点だけこれをお伺いしておきたいと思います。  それは先刻からもずっと問題になっておりますいわゆる金利の問題でございますが、今回の公定歩合の引き下げ、それから金利の引き下げということで、先刻来も問題がありましたように、片方には大きな利益があらわれる、国民一般はその目減りで大変だ、こういうことに対して、それは政策当局じゃありませんからそれに具体的な手をこうやった方がいいという政策はございませんでしょう。金融当局ですから、景気の調整に合わせて金利を操作する。しかし、現実に出てくる結果というのは、そこに一つの大きなひずみをこしらえていくことになるわけでございまして、それに対して何の配慮も考えないということではまずいと思うので、御意見だけ聞かせていただきたいと思うのですが、やはり金融当局者として、そういう問題に対して何らかの金融の目減りといいますか、それに対する配慮というものが考えられてしかるべきじゃないだろうか。われわれはいつも具体的な問題は別の機会に主張してまいったわけでありますが、日銀総裁としてのお考えをひとつお聞かせいただいて、もう時間が過ぎたようでありますので、残念ですが終わりにいたしたいと思います。
  216. 森永貞一郎

    ○森永参考人 預金金利を引き下げます場合には、物価との関係でいつも目減りの問題が問題にされることは御承知のとおりでございます。私どもといたしましては、預金金利もやはり金利体系の重要な一環でございますので、金融政策的に引き下げが必要な場合にはやはり金利独自の観点から弾力的に考えることが必要だと思っておる次第でございまして、ことしに入りまして二回ほど引き下げをお願いしたのもさような観点に出るものでございます。  私は、目減りの問題は、根本的にはやはり物価を上げないという対策しか実はないのではないかと思っておる次第でございます。預金金利を下げると申しましても、既往のものにつきましては、その契約期間は尊重するわけでございまして、下げないわけでございます。下がるのは将来の契約にかかるものでございますので、将来の物価が問題になるわけでございますが、その将来の物価につきましては、できるだけこれを上げないようにという毅然たる態度で政府においても対処せられること、それが根本ではないかと思っておる次第でございます。私どももまた、金融政策の運営上できるだけ物価が上がらないようにということで対処していかなければならない問題ではないかと思っております。よくブラジルなどで行われましたようなインデクセーションなどの話も出るのでございますけれども、私は、インデクセーションということになりますと金銭債務全般に及ぶ問題でございまして、物価に対する守りがかえって薄くなるのではないかというような感じもいたします。また経済の運営も混乱いたしますので、なかなかむずかしい問題じゃないか、やはり要は物価をできるだけ上げないようにという一事に帰するのではないかと思っておる次第でございます。
  217. 田中正巳

    田中委員長 次に、竹本孫一君。
  218. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は大体円高中心に質問をしたいと思うのでございますが、参考人にはきょうは御苦労さんでございました。  最初に、日本の政治というものは全般的に情報の収集ということのウエートが少ない。特に国際政治、富塚参考人の専門である国際経済問題等については、情報の収集というのがほとんど遅いか間違っておるかということなんですね。これはいままでの日本の歴史を顧みてみてもすぐわかります。たとえば、外務大臣は見えていますね。沖繩の返還のときでも、アメリカの大使館の情報というのは核抜き早期返還ということはむずかしいということであった。これは下田君が中心だったと思うのだけれども、そういうことだった。それから繊維交渉のときにも、政府の集めておった情報は大体間違っておった。これは当時の木村官房長官と私は何度も話をしたが、木村さんがいろいろコンフィデンシャルに教えてくれた情報というものは大体間違っておった。ぼくが違いますよと言ったら、そのとおりになった。  それからその次に考えてみるとニクソン・ショックがある。ショックというのは、情報収集が足らないで突然聞くから青天のへきれきでショックを受けるので、ニクソン・ショック、それからドルショック、それから石油ショック、今度は円高ショック、こうなるわけですね。日本の政治というのは大体ショック専門ですよ。これは政治がしっかりしていない証拠だ。だから、もう少し政治というものはまじめにグローバルな情報を集めて、しかも一つの立場を持って、的確な情勢判断の中でやってもらわなければ困る。でありますから、いつも日本の情勢判断が間違ったり、何とか五カ年計画が狂ったりするのはきわめて当然ではないかと思うんです。また、今度の円高問題もそういう意味で、私は後で申しますけれども、情勢判断が甘過ぎると思うんだけれども、円高問題だけではなくて、やはり国際経済の中での日本経済でございますから、グローバルな経済情報というものをつかむべきであると思うが、その点について遺憾な点がありはしないか。まず第一に富塚参考人にひとつお伺いしたい。
  219. 富塚文太郎

    富塚(文)参考人 政治その他の面についてのことはわかりませんが、私が見ております経済、金融等の範囲で申し上げますと、私の感じでは、基本的な判断を下すための情報が不足しているという感じは実は余り持っておらない。むしろ与えられている情報をどういうふうに判断するかということの方が大事なのではなかろうか。もちろんいろいろと欲を言えば、もっと細かい情報あるいは普通では入手しにくい情報もあった方がよろしいということは申せますけれども、大きな流れをつかむ上での情報は非常に不足していたというふうには私には思えないのでございます。
  220. 竹本孫一

    ○竹本委員 判断力は、私に言わせれば、一つの社会思想的な立場を持たないとこれからの複雑な経済判断できない。ただ、情報というものは大体において右の情報と必ず反対する左の情報が入ってくるのです。それを判断するのはその政治家なら政治家の見識というものだから、これは内閣の見識の程度の問題で、私は判断力はおっしゃるように非常に足らないと思うのです。  そこで、まず通産大臣に一つ伺うが、たとえば最近においても日本輸出に対して、あるいは鉄鋼に、あるいはベアリングに、あるいは家電に、次々にこういうふうにアメリカが攻め立ててきておる。アメリカだけじゃない、ヨーロッパも攻め立ててきておる。一体こういう厳しい国際経済情勢の動きに対して通産省は前もって何を予測しておられたか、予測されたとおりであるか、感じだけを承りたい。
  221. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの御質問は非常に厳しい御質問でございますが、われわれは対米関係の調整という問題については、福田内閣当初からカーター大統領のところにまずもって会見を申し込み、日米間の調整に対しては全力を挙げてこれが努力を払っておると同時に、そのことはさらに経常収支の問題等につきましても、対米関係のいろいろなケース・バイ・ケースの問題については具体的に話を進めたい。ことに先般、御案内のとおりに、日米間におきまして貿易の関係の促進懇談会を特に設けまして、いろいろなわだかまりにつきましてはできるだけ早期に話し合いをしていこう。また、昨日会いましたジェンキンスに対しましても、ECとの関係に同じような懇談会を設けましていたしておる次第でございますが、独禁法その他の問題がございましてなかなかむずかしい段階でございます。
  222. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは内閣の問題になると思うのですけれども、外務大臣にちょっとお伺いいたしますが、日本の施策を決める場合に、いま私が言うようなグローバルな情報収集機能というものは内閣では一体どうなっておるか。どこから大体情報を集めて、その情報が各閣僚にも間違いなく伝わるようになっておるか。  まず第一は、情報収集のルートを福田内閣はどういうふうに持っているのか、どこで集約をしているのかという点をひとつおわかりならば教えてもらいたい。  それからもう一つ、たとえばカーター政権ができた。私が聞いておるところによれば、カーターの核政策がこれだけ厳しいということはだれも想像していなかった。カーター政権ができて、あれほど熱心に核の問題に、再処理の問題も日本はすぐ直接問題があるわけですけれども、出てくるという情報を外務省はつかんでおられたかどうか。  それから、カーターの選挙演説をいまごろになってどこかでは取り寄せて、なるほどカーターは選挙のときからこれだけ熱心に核の問題には取り組んでおったんだ、いまごろそう言うならあたりまえだということを民間のまじめな研究者は言っておる。政府にはそう言うだけの準備があったか。予想外にカーターは姿勢が強いではないかなんというようなへまぬるいことでは話になりません。そういう意味で、情報収集の機能はどうか。カーターが核政策についてこれだけ強いという姿勢を前もってどの程度見ておったかということが二つ。  もう一つ、私の見るところでは、カーター政権の周辺、カーターの周辺はカーター・チームと言われておるが、カーター・チームは全部円高チームなんですよ。たとえばクーパーというのは、日本に来ましたけれども、あのクーパーは、もうアメリカはやるべきことは皆やった、今度は日本の番だと言うて、最近になれば赤字計画まで立てろというようなことまで考え出しておる。それからクライン教授も同じように円高論者であって、一〇%日本が円を切り上げれば世界経済はGNPが実質〇・一%伸びるだろうなんと言ったこともあるが、これまた猛烈なる円高論者です。クラウス博士もそうである。カーターのチームというか、カーターの周辺は全部円高論者なんですよ。管理されたるフロートだなんというのはただ雑誌の上の論文の話であって、管理そのものなんですよ。そして管理して日本の円を高くしなければだめだ。これは先ほど来話が出たような、後で分析しますけれども、日本黒字アメリカ赤字の問題もありますが、カーターの周辺というものは全部大体において管理された自由フロート制だ。ところが、管理されたの方に力があって、フロートの自由な方はないのですよ。そういう点をどこまで見ておったかということをちょっと聞きたい。この三つです。
  223. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 外務省の情報能力が不足しているではないかという御指摘でございます。私ども、自分の省のことでございますから、これで十分でございますということは申し上げるつもりは毛頭ございません。日本アメリカの非常な違いは、これは先ほど来お述べになりましたが、アメリカという国柄は大統領が絶対的な権限を持って、そして大統領直接の補佐官その他の能力を持って、そして勇敢な政策変更を行うこと、これはもうニクソン・ショックの際に日本もよく経験したことであって、その前に数日間山にこもって、政策を決めて、ぱっと打ち出すというようなことができる政治体制である。それに対しまして日本は、これは各省協議の上で政策を決定をするということであります。そういう意味で、私ども情報の収集には極力努力をいたしておりますけれども、そのような大変機敏なる経済政策が打ち出されるという点につきまして、それは情報がおかしかったのじゃないかというようなおしかりを受ける場合も多いという気がいたすわけでございます。また、核に対するアメリカにおきます世論というものが昨年来非常に高まっておる。核の拡散と申しますか、これはインドの核実験以来急に起こった問題でありますし、これはフォード前大統領も厳しい政策を打ち出しましたし、カーター大統領も打ち出したということで、これはもう私どもが申し上げるまでもなく昨年来大変問題になっていたことでありますし、その情報等は当然私どもも知っておった次第でございます。  また、最後の点におきましても、これはアメリカの政治のあり方、これにつきまして、私ども特に円高の問題につきましては、これは大蔵省にお譲りしたいと思いますけれども、私どもといたしまして、このような大幅な貿易収支の黒字、これに対しまして、いまカーター政権は日本に対して知日派が多いわけであります。知日派が多いだけに、日本に対して期待するところも大きい。その期待に対しまして日本の対応の仕方がなまぬるいというような感じは確かに持っておるわけでありまして、最近の円高につきまして、いまおっしゃいましたような、特に財務省を中心とした強い意見が出ておるということも事実でございます。  以上、お答えを申し上げる次第であります。
  224. 竹本孫一

    ○竹本委員 余り答弁にはならぬようですけれども、とにかく日本が私の言うショック専門にならないように、ショックを受けるということは備えがないということなんですから、それだけのことをやってもらいたい。  それから、大統領に権力が集中しておるという問題、だからこそカーターが勝つならカーターが勝つという、選挙の最中から、このカーターという人はどういう人物でどういう考え方を持っておる人かということについて、もう少し前もって準備、研究が必要ではないかということを、これは要望しておきます。  次に、今度は円高の問題に入りますが、御承知のように、円はいまねらい打ちをされておるというか、十字砲火を浴びておるというような形でございますが、本日のいろいろの論議、あるいは国会の予算委員会における論議を聞いてみても、どうも一つもはっきりした対応というか決め手というものがない。これはひとつ経済企画庁長官にお伺いしますが、いまもいかにして黒字を減らすか、それが一番円高対策ではいいのだという基本的な、教科書みたいな議論ばかりよく出ておりますけれども、しかし、私は黒字を減らすためには、何としても日本経済の内需を、国内市場を豊かにしていかなければならぬと思うのです。すなわち、内需をもっともっとふやさなければならぬ。そこで、経済企画庁長官にお伺いするのだけれども、今度の五十二年度の経済の改定見通し、あれは二兆円の景気刺激政策は織り込んであるのか、それからあれは内需中心という考え方は織り込まれておるのか、この点だけちょっとお伺いしたい。
  225. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  今回の総合対策における二兆円の事業費効果でございますけれども、これは私どもの国民経済計算によりますと、大体この一年間ぐらいのうちに約三兆円の需要創出効果を持つと判断いたしております。その三兆円のうちの一兆五、六千億が五十二年度中に出てくる、そしてあとの半分の一兆五千億程度が後半、五十三年度の上半期に出でくる、五十三年度のさらに下半期にも若干の効果が出てくる、そういう計算をいたしておるわけでございまして、五十二年度の六・七%成長というのは、この総合対策を実施した結果、こういう成長率になるということでございますので、今回の改定の中には織り込んでおる次第でございます。
  226. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで、富塚参考人にひとつお伺いしますが、今度の経済見通しを見ると、いまのお話のように、政府黒字も減らそう、内需中心にいこうという、またそのための二兆円の景気刺激政策の効果も織り込んである、こういうことになっているのですね。ところが、私が見るところ、織り込んでいるけれども、これまたさっぱり余りぱっとしないと思うのですね。  その一つの証拠を申し上げますと、まず第一に、七十億ドルの貿易収支というのが一遍に百四十億ドルになっていますね。そこで、七十億ドルの貿易収支の黒字が一遍に百四十億ドルにふえているから、その中身を今度分析してみると、何で七十億ドルにふえたかというと、輸出を五十億ドル予定よりふやして、輸入を二十億ドル予定より減らしたのですよ。国内の内需がふるわないから輸入がふえないので、二十億ドル減らした。生産力は過剰設備を持っておるような状況ですから、何とかして動かなければいかぬし、借金経済は自転車操業もしなければいけないから、GNPは四苦八苦して伸ばさざるを得ない。その伸ばされた製品というものは輸出へ持っていく以外にははけ口がないから、五十億ドル輸出がふえた。輸出が五十億ドルふえて、輸入が二十億ドル減っているような経済見通しというものは、内需中心、そして世界経済の中における日本の職責を果たすというような方向のものとはちょっと違うのではないか。もう少し、文字どおり内需中心でいかなければ、過剰な日本生産力というものは、能力GNPというものは大きいのですから、やはり依然として輸出中心にならざるを得ない、こう思いますが、先生の御意見はいかがですか。
  227. 富塚文太郎

    富塚(文)参考人 ちょっと御質問の趣旨がはっきりしない点がございますが、今後の経済が要するに内需中心でいくか、あるいは依然として輸出中心でいくのではないかという御趣旨だと理解いたしまして、その点で申し上げたいと思います。  内需がどれくらい刺激され盛り上がるかということは、もちろん今回の総合対策効果をどの程度に見るかということにもかかわりますが、同時に、現在の、あるいは最近の国内経済情勢をどう見るかということに非常に深くかかわることだと思います。その点で申しますと、私は経済は最近、やや具体的に申しますと、ことしの春以来また悪くなってきておるというふうに理解しておりますので、今後、たとえば今年度内を考えてみました場合に、内需がかなり活発に盛り上がってくるということは余り期待できないというふうに私は理解しております。  しからば、いままでと同じように輸出主導型で経済拡大していくということになるのかというふうに申しますと、これは先ほど来問題になっておりますように、急激に円相場が上昇してきているということがございます。あるいはアメリカにおきまして、鉄鋼についてのダンピング提訴というようなことがございまして、むしろこれからは、いままでほど輸出は伸びないという状況に入りつつあるのではないかというふうに考えております。そういう点で申しますと、輸出主導ということも従来のようには期待できないというふうに思いますので、ひっくるめて申しますと、内需、外需含めますと、かなり憂慮すべき状態ではなかろうかというふうに考えております。
  228. 竹本孫一

    ○竹本委員 内需を伸ばしていかなければ、雇用問題の不安も激化するし、外国の期待に沿うこともできない。六・七%というのはGNPの総決算、トータルの決算ですから、六七・七になっても、中身が輸出中心で伸びていくのか、あるいは内需中心で伸びていくのか、いや、なるほど内需が六%だとかいう説明もあるんだけれども、しかしながら、現実にいわゆる集中豪雨的な輸出というものを見れば、外国はそこをとらえておるのですから、それに対する答案にはなかなかならぬのではないかというふうに思います。  そこで、富塚先生に伺いたいのですが、円はいま、スミソニアンで三百八円だったと思いますが、二百五十三円までいっちゃった。新記録をつくったという、ロンドンの為替市場等も驚くべき円高になってしまったわけですが、このままでいけば一体どこまでいくだろうか、これがみんなの持っておる一つの心配ですね。それからもう一つは、この円のそこまでいくことの中に、先ほどアメリカの責任者が不用意に発言したためにこうなったというような日銀総裁の答弁もありましたけれども、投機的、要素がある程度加味されておるかいないかという点についての先生のお考えをちょっと伺いたい。
  229. 富塚文太郎

    富塚(文)参考人 最初の円の為替相場がどこまで上がっていくのであるかということは、はなはだお答え申し上げにくい問題でございます。具体的にはちょっと控えさせていただきますが、ただ、現実に黒字が非常に急速にといいますか、近い将来に大幅に縮減されるというふうには考えられませんから、もし通貨当局が本格的な介入、これはしないというたてまえになっておるわけでございますが、介入をしないといたしますれば、もうしばらく円高の方向に向かうと考えておいた方がよかろうというふうに理解しております。  それから投機が入ったかということでございますが、これはいろいろな情報あるいは報道をもとに判断いたしますと、相当大規模に入っておったというふうに申してよろしいと思います。しかし、ただ単に投機だけで一時的に上がったということでありますと、これはまた円相場は反落するわけでございますけれども、その投機が、基礎にある日本国際収支黒字ということをいわばバックにして出てきておるわけでございますから、その意味では円の堅調ということはかなり根強いものがあると考えてよろしいのではなかろうかと思います。
  230. 竹本孫一

    ○竹本委員 介入しなければ、私は残念ながらというか二百五十円くらいまではいってしまうという心配を持っておるわけですね。これでひとつまず介入の方からいきますか。——その前に、やはり投機がある程度あることは当然なんですね。投機というものは一つ経済の必然性の上に乗って投機をやるのですから、必然性のないところへ投機なんかありませんよ。投機があるところはあるべくして投機があるというのだから、それはいまの日本黒字の大きさ、アメリカ赤字の大きさというものを見ればすぐわかる。そういう意味で投機は必ずあるだろうし、やらなければやらない方が間が抜けているので、国際資本家は皆やるに決まっている。やったからといってけしからぬと言うよりも、そういう条件をつくっている方が問題なんで、私はあると思うが、ただ一つ、国際会議の場合に、先ほどの情報収集の問題と関連をいたしまして、日本はいつも出ていくと大体一人になってしまうのですね。十カ国の首脳会議経済会議をやっても蔵相会議をやっても、スミソニアンのときもそうだったけれども、あけてみたら結局、アメリカのドルに対してみんなが攻撃を加えるのかと思ったところが、逆に円がたたかれて三百八円に持っていかれたというのが事実のようですが、今度の場合にもアメリカと西ドイツに一つの密約があって、そういうことで共同作戦と言うと言い過ぎかもしらぬが、たたかれておるのではないか。たたかれるというか円高に追い込まれておるのではないかという考え方も一部にあるようですが、外務大臣、何かそんな情報をとっておられるかどうか、まずそれをひとつ聞きましょう。大蔵大臣でもいいですよ。
  231. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 そのような情報は得ておりません。
  232. 竹本孫一

    ○竹本委員 まあ私もそれは必ずあると言っているわけじゃありません。あるかないかを聞いているわけです。なければ結構です。  そこで、マルクは最近においては一ドルは二・二九マルクということについて一つの線を守っていますね。で、管理されたるフロートというのは国際会議におけるコンセンサスになっているはずなんだ。そういうことから言えば、管理の内容によってどうにでも説明がつくわけだけれども、マルクは二・二九マルクということで一ドルをちゃんとコントロールしている。後ろに下がるというか前というか知らぬが、線を引いている。  そこで大蔵大臣に伺いたい。  一つは、日本は管理されたるフロート制という言葉をどの程度、どういうふうに解釈しているか。先ほど言うようにカーターの周辺のカーター・チームというのは全部管理されたというふうに力を入れているのです。それで現に管理して、日本はもう少し介入して円を高くしろとやっているじゃないですか。マルクは一ドルが二・二九マルクというところで線を引いて抑えている。だからマルクは余り乱高下しない。日本政府というか当局だけが、極端に言えばばか正直に、介入してはいけない、管理してはいけないというフロートの方だけにアクセントを置いている。一体、日本政府は管理されたるフロートという言葉にはどちらにアクセントを置いているか。管理されたの方にアメリカは置いている。ドイツも管理されたという方に力を入れている。日本は一体どっちに力を入れているかということを伺っておきたい。  それから、これは富塚参考人にも伺いたいのだが、先ほど日銀総裁に言わせると、乱高下をやったときは介入します。あるいは介入せざるを得ないようになるかもしれない、こういう答弁だった。ところが、乱高下というときには何か基準がなければ、みだりに高いとかみだりに下とか言えないでしょう。乱高下の基準がなければ、乱高下という言葉は出てこない。したがって、日本の円は一ドル二百六十円が大体相当だといまの段階において判断するかしないか、あるいは六十五円と見るか五十五円と見るか。何かそうした物差しを持たないで、仮に乱高下を介入して抑えるということさえもぼくはできないのじゃないかと思うが、その点について、基準のない乱高下論とか、基準を持たない管理とか、あるいは介入ということがあり得ると思うかどうか、この点を伺いたいのです。大蔵大臣、先に言ってください。
  233. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  いま管理されたるフロート制というお言葉でございますが、どうも管理されたるフロート制というのは、この間私はロンドンのサミットへ行ったときに、やはり管理されたる自由貿易、オーガナイズド何とかというのは、これはジスカールデスタンが言っておりましたが、これはどういうことかちょっと理解をいたしかねたのでございますけれでも、とにかく竹本さんからは、大蔵大臣は……(竹本委員「いや、アクセントはどっちにあるか、そこだけ言ってもらえばいい」と呼ぶ)私はこのフロート制のもとにおきましては、これに対して何とか一線を引いてそれをもたしていこうというようなことは考えておりません。
  234. 富塚文太郎

    富塚(文)参考人 管理されたフロートに対する管理と申しますか介入の基準でございますが、その前に、管理されたフロートをどう理解するかということがございます。いまの竹本委員のお話でございますと、むしろアメリカの方が管理という点にウェートを置いて考えており、日本の方がむしろ自由変動ということにウェートを置いて考えている、あるいはそういうふうに行動しているのではないかというお説でございました。確かにアメリカが、たとえば日本の円相場はもっと高くあるのが当然だというふうに考えまして、実際にそういうふうな発言もいたしました。そういう点を見ておりますと、何かアメリカがやはりある為替相場水準というものを念頭に置いて相場を誘導していこうという意図を持っているというふうにうかがえますから、その意味ではアメリカは管理という点にある程度ウェートを置いているというふうにもとらえることができると思います。しかし私は、実際の為替相場を具体的に日常的に運営していくという点では、アメリカ判断の方から申し上げますと、むしろアメリカの方はフロートといいますか、自由変動の方にウエートを置いているとみずからは考え、その立場からむしろ逆に日本の通貨当局が管理にウエートを置いているというふうに見てきたのではなかろうかと理解しております。したがいまして、その点からどうも、日本国際収支黒字ということから見れば、円はもう少し早くから上昇してしかるべきであったにもかかわらず、日本の通貨当局が介入することによってそれを低く抑えてきた、したがって、そういう日本の管理にウエートを置かれた為替相場政策を変更させて自由変動の状態に持っていけば、おのずと円相場が上昇するというふうに判断していたように思われます。恐らくその根拠と申しますか証拠という点では、アメリカは、やはり過去二年近くの間に日本は外貨準備を積み増ししてきていたということを見ておったのではなかろうかと思います。  それは前提でございますが、それを前提といたしまして、しからばこの市場の乱高下に対して介入する、そういうことで相場変動をスムーズにするという場合、基準なしにそういうような操作、あるいは介入することができるかどうかという御質問でございますが、私は、実際上は管理されたフロートと言っております場合には、つまり完全な自由変動でないといたしますならば、そういうふうに乱高下に対して介入いたします場合も、事実上ある適正な為替相場が念頭に置かれているというふうに考えます。そういたしませんと、ただいま御指摘のように、この変動をスムーズにするといいましても、一体どっちの方向に向かってスムーズにするかということが恐らく決められないということになるのだろうと理解しております。
  235. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは国際会議では必ずたてまえ上は自由なフロートということでなければならないし、またそうあってほしいと思うのですが、本音がどこにあるかということが大事なんですね。いま参考人の言われるように、外国は、日本はむしろ管理していると思っているだろうし、それからアメリカの方がむしろ管理論として少なくとも日本に対しては強く出てきておる。それからドイツもある程度管理はしておる。また極端に言えば、管理しないでどうなっても、自分の国の経済の根本がこんなに揺れて平気でおるなんというばかは世界じゅうにいないと私は思うのですが、これはたてまえと本音として、たてまえ論はどこでも自由なフロートでなければならない、それは異論はありません。しかし現実は、余り日本だけが人のいいようなぼんやりしたことを考えておるとすっかりやられてしまいますよということは警告をしておきたいと思うのですね。  これは余談になるかもしれませんが、フロートになった最初の瞬間からぼくはフロートには反対なんです。それで、愛知君が大蔵大臣だったときに、あの当時まだ三百何円といったころですが、大体二百六十五円ぐらいのところで一線を引いて、これを守るということのために経済の全体を引き締めなければ、たとえばいま繊維産業その他は一ドル二百七十五円ぐらいで採算の目標を立てている。それがいま五十五円まで来たら二十円でしょう。五億ドル輸出している事業は百億円の損ですよ。それがフロートでどこまでいくかわからないということではなお困る。これでは経済運営はできません。会社経営はできませんよ。だから企業者にはちゃんと、六・七も一つの目標でしょうが、為替相場はこの辺になりますよということをぴしっと目標を示さなければ、採算のそろばんの基礎がない。  そういう意味でぼくはフロートというものは余り賛成じゃない。しかしながら、世界情勢はそうなっておる。しかし最近になって蔵相会議で、これは坊さんもそうだったかもしらぬが、ドイツの大蔵大臣は、フロートには弊害の方が多いということを言い始めたようですね。それはなぜかというと、まじめに働いた、ドイツ人的に言えば、マナーのいい国は、いまのように日本は一生懸命働いて一生懸命まじめに輸出をしたとする、事実、そうだと思うのですが、そうすると円をどんどん上げなければならぬ。怠けた者というか、経済の矛盾を中に持っている者の通貨がどんどん下がるということになれば、まじめに働いた者が損をするというか、正しく報いられないということになる。あるいは、ある場合には、今度は円を切り上げろという議論にもなってくるかもしれませんが、マナーの悪い者のためにこちらが切腹をするというような議論は、私は前から反対をしておりますが、そういうことにもなる。ドイツは、周辺国家のマナーが余りよくないのに、おれのマルクだけが犠牲を受けるのは困ると堂々と言っているじゃないか。そういう意味で、フロートというものはまじめな者がある意味においては損をする。ふまじめな者がへたな得をする。そして国際経済全体では、国内企業においても経営の目安を失わせるし、国際社会においては混乱を大きくする、こういうことです。だから管理されたという言葉が上にくっついているんだろうと思う。非常に問題だと思いますが、きょうは時間もありませんから私の意見だけ述べておきたい。  そこで、問題の黒字減らしですけれども、たとえば日本アメリカに対して一月から七月ぐらいまでの間だけでも四十億ドルからの黒字だ、アメリカはその間百四十九億ドルの赤字だということが今度の一つの大きな基本的な、基礎的な原因にもなっているんでしょう。そうなると、やはり日本輸出を減らすということになるのか。いわゆる黒字減らしというのは何でやるのか。  そこで二つ聞きたい。  第一は、政府が七項目か何かの中にもいろいろうたっておりますが、たとえば石油の備蓄をふやすとか、ウラン鉱石をひとつ早く繰り上げて買い込むとか、あるいはトウモロコシを買うとか、いろいろ政府も考えがあるようですが、そんなものをまとめてみても、十億ドルを超えるということはまずむずかしい。そこで、たくさん買っても一体どこへ入れるのです。施設がないじゃないですか。一体どうするのだというような意味で、黒字減らしについては一体どうすればいいかということについて、一つ富塚参考人の御意見を聞きたい。  一つは、政府がいま七項目で考えているところの黒字減らしで、十億ドル、二十億ドルのドルを減らすことが果たしてできるかどうかということについて、確信があるところをひとつ聞かしてもらいたい。
  236. 富塚文太郎

    富塚(文)参考人 黒字減らしにどういう方策があるかということでございます。  一つは、先ほど来御指摘のように、国内経済を発展させることで内需が旺盛になり、そして輸入がふえるというのが一つの基本的な方向でございます。  それから、いまの為替相場が上昇するということ自体が、これは黒字を抑える政策、そういう効果を持った方向だと思います。  それから、私はいまの時点でそういうふうに申すのは必ずしも適当ではないと思いますが、去年あたりから日本の幾つかの商品がヨーロッパあるいはアメリカに対しましていわゆる集中豪雨的に輸出増加が生じまして、そのことで相手国との間に非常な摩擦を引き起こしていたという時期がございます。そういうようなことが今日の円高に結局つながってきているわけでございますが、そういうような時点におきましては、ある意味では必ずしも好ましいことではありませんけれども、緊急の措置としてあるいは輸出税を課するというようなこともやむを得なかったのではないか、そういうようなことを考えたこともございます。  ただ、いまの時点では相当円高になってきておりますので、やはりいま内需の振興策ということを別にいたしますれば、直接輸出にあるいは輸入に影響するような措置をいますぐ急いでとるということは、どうも必要ないのではなかろうか。むしろいまの円高あるいはアメリカで問題になっておりますダンピング課税問題その他の成り行きをしばらく見る、様子を見た上で次の対策を考えるというのが適当なんではなかろうか、私はそのように理解いたしております。
  237. 竹本孫一

    ○竹本委員 先ほどお尋ねしたのは、七項目で今年度内に一体何億ドルのドル減らしができますかということが一つ聞いてありますから、それが一つ。  それからついでに一緒に申しますが、円シフトが起こって、円売りドル買いでひとつ円を下げるような効果も円シフトにはあったわけですが、これも必ずしも期待したような効果がないように思うが、一体その後円シフトはどうなっているかということを聞きたい。  それからもう一つ、時間がないから一緒に申しますが、輸出の集中豪雨を抑えるという意味で、一方には自主規制ということが非常に真剣に叫ばれておる。ところが、また一方には輸出税をひとつ考えたらどうか。同時に、アメリカへ持っていってダンピング税でもかけられるぐらいなら、国内でそれだけ取れば、赤字財政の今日役に立つではないかという議論もあるわけです。私が賛成とか反対とかいうことを別にして、議論がある。  そこで、いまその輸出税について大蔵省はいかなる考えを持っておられるか、この三つを伺いたい。
  238. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  七項目でもってどれだけ効果があるかという御質問でございますが、いまこれで幾ら効果があるということを申し上げるだけの材料もありませんけれども、しかし今日、やはり何としてでもドルを減らしていこうということを考えますと、どうしてもそれを何とかして七項目の諸般の政策を遂行していくということが非常に私は大事なことだと思います。  それからもう一つ、円シフトにつきましては、これは事務当局からお答えさせます。  そういうようなことで、この黒字減らしの政策というものはなかなかそれは簡単にそうまいるものではありませんけれども、(「はっきりしない限りこの圧力は消えないぞ」と呼ぶ者あり)それをはっきりと言え言えと言われますけれども、これまたはっきりと言えないところに非常にむずかしいところがあります。円シフトにつきましては、事務当局にお答えさせます。
  239. 旦弘昌

    ○旦政府委員 円シフトについてお答えいたしますが、確かに先生の御指摘のように、八月、九月のころには日本長期金利がかなり下がってまいりましたので、その点である種の業種につきましてはかなりの円シフトの動きが見られたところであります。しかしその後、最近円高がかなり進んでまいりましたので、その金利の面の格差を埋めるような効果が起こってまいりましたので、正確に数字的には押さえておりませんけれども、円シフトは一とんざしたと言えるのではないか、かように考えております。
  240. 竹本孫一

    ○竹本委員 大蔵大臣の御答弁は努力をするという、それこそ努力だけの話になりまして、望々洋々でよくつかめませんが、やはり先ほど来言われるように具体的な戦略目標をつくって、それにやはり全力を挙げて戦うのでなければ外国は信用しない。特に、日本は現にもう前科一犯か二犯かわからぬが、前科何犯ですよ。たとえば最近の経済見通しでいっても、総合収支は七億ドルの赤字と言ったじゃないか、それが今度の改正では六十五億ドル黒字だ、それも六十五億ドル以上になるかもしれない、だから日本の言うことはこの程度に信用ができないのだという、むしろ日本の信用を失う方にプラスの役割りをしている。そういうことばかりを積み重ねておったのでは私はどうも国際的な信頼の獲得にはならないだろうと思って非常に憂慮しておりますから、ひとつまじめにこの点は考えていただきたいと思うのであります。  時間がありませんので参考人にもう一つ伺いたいのですが、世界経済のこれからの動きを参考人はどういうふうに見ておられるか。いろいろな要素があります。一つは、最近の各国の経済の動きが、ドイツなんかも五%と言ったが、もう最近は、この間私は八月にドイツに行きましたが、もうみんながみんな四%だろうと言っている。それから数字を言うのはへただとか危ないとかいう話を先ほど来大蔵大臣以下言われるが、一番言ってはならぬところで日本が一番はっきりした数字を言っているのですね。六・七%を国際会議で約束したのは日本の総理大臣ですよ。それに対して外国は皆驚いた、日本の総理大臣は神様だろうか。六%やるというならわかると言うのだな。七%いくということもわかると言うのだ。六・七なんというふうなことを、顕微鏡的、コンピューター的な数字をびしっと世界会議において約束するなんというものは一体どういう神経だろうかと言って外国の人は驚いたんですよ、皆さん。そういう情報が入っているか入っていないか知らぬけれども、私は現地で聞いてきたんです。だからその点はりこうなシュミットさん、ドイツは五%努力をします。うまく行けば五%になるかもしらぬ、しかしならない場合もある、特にドイツは輸出中心だから、近隣諸国がドイツの輸出は困ると言うのならば五%は行きませんよと言って、責任は外国に転嫁しているのですよ。それを日本の総理大臣だけは六・七、コンマ以下の数字まで言っている。それほど国際会議で数字が言えるなら、日本の国会でもう少し数字を言いなさいよ。ドルはどれだけ減らします。黒字はどれだけ減らしますということを言わなければ話にならぬじゃないか。  まあそういうことは余談として、参考人にお伺いしますが、とにかく世界経済は、ドイツは五%と言ったものが四%になるように、各国で非常に内部的な悩みが出てきた。それでOECDなんかも四%と見るのかあるいはもっと下へいくと見るのかということがいま問題になっておるようですが、先生はどういうふうに見られるかということと、それからそれを左右する、たとえばOPECがまた値を上げるという問題がある、一方には累積債務の問題もある、そういうものも先生は専門家でございますから含めて、世界経済の動きというものをどういうふうに見ておられるか伺いたい。
  241. 富塚文太郎

    富塚(文)参考人 当面の問題とやや中期的な問題とあろうかと存じますが、先に中期的な方向から申し上げますと、御承知のように石油価格が非常に高騰いたしまして以来、それぞれの国がそのことによって非常に大きな影響を受けております。特に国際経済という観点から見ました場合には、石油輸入国が全体として見まして非常な赤字に陥っているわけでございます。これはいわば構造的赤字というふうに申してよろしいかと思います。恐らくこの赤字世界経済にとって持ちます非常なマイナスの意味といいますか、発展を阻害する重みというのは、私は戦争直後の非常な構造的な不均衡に匹敵するのではないかというふうに思っております。そうでありますから、そういうような基礎がございますので、この問題を解決するには非常に長期を要すると思いますが、その問題の展望が少しずつ開けてくるまでは世界経済の発展は非常に緩やかなものにならざるを得ないのではないか。  そういう点で言いますと、御指摘のように、最近OECDあるいはEC、いずれの場合も、従来考えておりましたよりも成長率をやや低目に修正する傾向が強うございますが、やはりそういうふうに見なければいけないのではなかろうかと思います。  そういう意味で言いますと、石油を中心とするエネルギー対策、省エネルギーをどの程度推し進めるかとか、あるいは代替エネルギーをどの程度に転換していくか、要するにエネルギーの転換期における新しい技術革新をどの程度進めるかということによって、このむずかしい状況を突破できる展望がより具体的に開けてくるのではなかろうかと思っております。  短期的な点で申しますと、一つ気がかりな点がございます。と申しますのは、私は先ほど、日本の場合にこの春以来やや景気が下り坂に向かいつつあるのではないかという疑念を表明いたしました。似たようなことがどうもやはり春ごろからECを中心とする西ヨーロッパ諸国について見られるわけでございまして、その点では西ヨーロッパと日本、先進国のうち非常にウエートの大きいこの二つの地域において景気が冷却しつつあるように思われます。現在のところはアメリカが依然として上昇を続けておりますが、こういうような状況のもとでアメリカだけが果たして明年にかけて景気上昇を持続できるかどうか非常に微妙な段階に入ってきておる。そういう意味で私は非常に短期的にも警戒を要する局面にきているのではないかと見ております。
  242. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間がありませんから終わります。どうもありがとうございました。
  243. 田中正巳

    田中委員長 富塚参考人には、御多用中まことにありがとうございました。御退席を願っても結構でございます。  次に、寺前巖君。
  244. 寺前巖

    寺前委員 参考人には遅くまで長時間ありがとうございます。  私は、今度の補正予算は、特徴点は何といっても今日の不況とインフレでみんなが困っている問題をどうするのかという対策だ、政府はその中に重要な位置づけとして景気浮揚効果住宅問題に求め、そして庶民生活の改善にも効果をあらしめたいとして予算その他を組んできたというふうに言えると思うのです。公共事業について二兆円からの予算を組んだ。その中を見ても、住宅関係が八千億円余りというふうに、内容的には持ち家制度の導入ということになりますが、そこに一つの力点を置いている。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕 果たしてこの力点が国民、庶民大衆にとってお役に立つ対策であるのかどうか、このままでいいのかどうかという点について、全国公団住宅自治会協議会の岡田事務局長さんに御説明をいただきたい、こう思います。
  245. 岡田隆郎

    ○岡田参考人 景気対策住宅問題の関連ですが、その前に当たって、この補正予算全体あるいは来年の予算に向けての関連で、一言先に私の以下の答弁の立場を言わしていただきますと、この補正予算の全体が、これからの増税、あるいは国鉄、健保の値上げ、あるいは最近行われた金利の引き下げ、庶民のふところを寒くしていく方向の中で景気対策もないのではないか、こういうふうに考えていることを冒頭申し上げたいと思います。  その上で住宅問題ですが、まず住宅そのものが、国民はいろいろな角度から住宅需要を持っているわけですが、これが景気対策というときだけに浮上してくる、このこと自身、私は住宅の問題の角度から見て一つの疑問を持っている、そういうことも一つ前提としてはあるのですが、それはそれとしまして、当面の金融公庫の十万戸の追加予算、これがどういう意味を持つかという御質問だと思いますが、結論から申しまして、私は公庫の十万戸そのものは決して否定するものではありませんが、これが景気対策あるいは住宅需要に正しく見合っているか、国民の要求に合っているかという点では非常に不足であり、あるいはもっと先にやるべきことがたくさんあるのではないか、こういう考えを持っております。  まず一つ、この予算そのもので公庫関係で十万戸、八千億円というような大きな数字も出ておりますが、内容的には、今年度で財投融資されるのが二千八百億円というようなことで、あとは来年度回し、あるいは民間金融に頼る、こういうふうなことで、八千億円が住宅対策ということは、それ自身金額的に非常に中身の水増しがあるのではないか、こういうふうにこのものを考えます。あわせて、今回住宅対策と言いながら、住宅公団に対する財投は当初予算を五百億円削っております。こういうところから見ても非常に大きくお金をつけたということは十分なうなずきはできないと言わざるを得ません。  それから、では十万戸の公庫そのものが需要に満ちて、十分な形でこれが消化されるかということでは、この公庫を含めて政府の見方と業界の見方でいろいろ住宅建設の予測にずれがあるようで、政府の方は楽観的に見ようとしていますが、業界の方は厳しく見ている。どうしてそういうふうな需要があるかないか心配が出るかといいますと、せっかく十万戸ということがあっても、公庫そのものを借りたい人も、限度額が四百五十万円、マンションで六百五十万円ですか、こういうふうな限度額でいま家が建つはずがないわけです。また土地を持っていなければ貸し付けがされない、あるいは限度額を超える分の五百万円なり千万円なりは民間のローンを借りなければならない。ところが、金利は下がったけれどもローンの利下げは比較的少ない。こういうふうな中で、これからの不況、物価高という中で大きな借金をして返していく自信があるかどうか。あるいは第一借りる資格を持つ人が、やはり月収四十万円ぐらいの収入がなければ、生活をしながらこの借金を返していくことができない、こういう実態でありまして、こういう需要そのものを否定はしませんけれども、庶民の住宅政策に光を当てた対策だとはとうてい言えないというふうに考えます。  それから、ではどこに光を当てるのが庶民の住宅対策かということでは、これも結論から申し上げますと、やはり公営公団を中心とした公共の賃貸住宅を大量に建てるべきじゃないか、これが政府のやることじゃないかというふうに考えるわけです。ところが、いまも住宅に力を入れたという反面、ことしの予算で、公団住宅で言えば六万戸の予算で二万戸が消化できないというような話があります。公営住宅でも一万二千五百戸が宙に浮いている、こういう話があります。来年の建設省の予算要求を見ますと、要求の段階から公団住宅はことしの六万戸に対して四万戸に削減しています。公営住宅はことしの八万五千戸の要求に対して最初から七万戸に削減しています。つまり、その中で特に公団住宅の場合二万戸削減しているわけですが、そのうち賃貸住宅を大幅に切っています。ことしの場合二万七千戸予定していたのですが、来年の場合は四万戸のうち賃貸住宅の要求は一万戸に減らしている、こういう実態ですね。そういうところで、同じ政府の公共住宅でも持ち家中心、あるいは収入階層の比較的上の部分の人たちには光は当たるかもしれないが、またその人たち自身も、いま言いましたようになかなか借りる自信と資格がない人が多いのですが、もっと収入の真ん中から下の人たち、これはどんどん放置されていくのじゃないか。ではそういうところに需要がないのかといいますと、建設省の白書でも、去年のでありますが、住宅を何とかしなければいけないと考えていると答えた人が百五十万世帯ぐらいいるんですね。ところが、これがどうしていいかわからないと大半の人が答えているわけです。つまり、自力で建てられないということですね。そういうことを一つとってみても、庶民に光を当てた公共賃貸住宅中心とした住宅政策あるいは住宅建設景気対策をやるならば、そこをもっとやるべきではないか。そういう点で、今回の景気対策住宅に力を入れたということは非常に看板に偽りありと言わざるを得ないというふうに考えております。  そういう中で、とりあえずは公庫に対しては、せっかく十万戸の予算を組むならば、限度額を直ちに引き上げてほしい、あるいは土地を持っていなくてもそれについての手当ても貸し付けをしてほしい。あるいは民間のローン、これがたとえば公定歩合はことしに入って三度、二・二五%下がり、預貯金の利率は一・五%下げられているわけですが、ローンの引き下げは一・〇八%、いまだに八%近い金利を取られる、こういうようなことをさらに下げ、あるいはこれまで一〇%前後で借りている人たちにもさかのぼって金利を下げる、こういうふうなことを含めて、公庫そのものにちゃんと建てさせるための手当てをしてほしい。それから、少なくともことし当初に揚げた公営公団住宅の建設はやり抜くという政府の基本姿勢をはっきりさせてほしい。それから民間の自力建設をせざるを得ない人たちに対してもそれなりの援助の手を差し伸べてほしい。さらに、景気対策と言うならば、公営公団の発注事業を中小業者の人たちにももっと門戸を開くべきだ。以上のように考えます。
  246. 寺前巖

    寺前委員 いま岡田参考人から幾つかの問題が出されましたが、この際、政府の方からも指摘された問題点についての見解を求めたいと思います。  公庫の限度額が抑えられているという問題、これはたしか三年間頭打ちが抑えられたままだと思うのですね。この三年の間には物価も上がっている、金の値打ちは下がっているということの中で、持ち家制度をここへ導入してきたって、この限度額を高める措置をとらなかったならば、庶民の期待にこたえることにならぬではないか。あるいは土地も対象にしなければいかぬのじゃないか。あるいは金利の面においても、ことし一つとってみても、公定歩合は二・二五%も下がっているのに住宅ローンの方は一・〇八%しか下がっていない、半分にも満たない。ですから、そういう面を総合的に対策を組むことを抜きにして十万戸という問題提起だけではだめなんじゃないか、こういう御意見だったといま私聞いておったわけですが、これは大蔵大臣ですか、お答えをいただけますか。
  247. 山岡一男

    ○山岡政府委員 ただいまのお話の中で、事務的な問題がございますので、私から最初に御報告をしたいと思います。  まず金融公庫の融資額を三年据え置いておりますのは事実でございます。ただ、これは四十五年には大体八十八万円ということでございました。それを逐次上げてまいりまして、三年前に四百五十万まで上げたわけでございますけれども、現実の問題といたしまして、財投資金の活用でございますので、最後になりますと、融資枠をふやすのがいいのか、戸数をふやすのがいいのかという二者択一を迫られておりました。われわれといたしましては、いままでやはり戸数の増の方に重点を置いたということでございます。  現在、公庫で住宅をお建てになっておる方の大体の状況を申し上げますと、大体年収三百万円ぐらいの方が八百二十万円ぐらいの上屋をおつくりになっている。それに対して四十数%の公庫融資になっておるというのが現状でございます。先生おっしゃいますとおり、額についてはもっとふやす方が好ましいわけでございますが、今後大いに努力してまいりたいと思っております。  それから、土地費に対する融資でございますけれども、これにつきましては、公庫融資を始めた際に土地融資もいたしておりました。その際に、スプロール助長というような状況が起きてまいりましたので、その後優良な宅地を購入なさる方には土地費をつけるということで、現在も土地融資はいたしておりますけれども、その他のものにつきまして、たとえばオールジャパンでやるものにつきましては土地の準備ができた方ということを優先にしておるわけでございます。  公庫関係の答弁といたしまして、先に私から申し上げます。
  248. 寺前巖

    寺前委員 大蔵大臣、御答弁いただけますか。  本当に十万戸を持ち家としてやらせるということになったら、それに即応してそれじゃお金の準備を片方でやらなかったら、持ち家というのはできない。その場合に、いま出てきたような問題が出てくるわけです。金利とかそういう細部にわたっての問題はもう再び言いませんが。ですから、そういう準備を、万全に改善をするようにするのかしないのか。それなしにはこの政策というのは実効が上がるということにならないという指摘があったわけです。どうです。
  249. 徳田博美

    ○徳田政府委員 先生御指摘のまず最初の資金の問題でございますが、御承知のとおりの財政事情でございますので、限られた財政資金の有効な利用という意味では景気対策の面、住宅政策の面、両面から考えなければならないわけでございますが、その場合においては、限られた財政資金を極力多くの方に均てんする必要があるということと、それから景気刺激政策効果の点では、極力土地融資よりも住宅融資に向けた方がいいというようなことがございまして、本来この問題については予算策定時において検討すべき事柄ではございますが、現在の時点では、このことは慎重に考えるべきもの、このように考えております。  それから、先生御指摘の第二点の民間金融機関住宅ローンの金利でございますが、先生御指摘のように、住宅ローンの金利というのは国民の生活に非常に密着した大事な金利でございますけれども、御承知のとおり、本年八月に〇・二四%、また十月に〇・二四%、合計〇・四八%下げまして、現在七・九二%になっているわけでございます。御承知のとおり、定期預金金利は現在五・二五%でございますが、前回四十七年七月ごろ同じく定期預金金利が五・二五%であったときに、住宅金融の金利は九%でございまして、それに比較しましてもかなり大幅な下げになっているわけでございます。また、世界的に見ましても、現在住宅金融の金利が七%台なのは日本とドイツでございます。したがいまして、金融機関の経理上あるいは二十年の長い金利であることから見まして、これ以上の金利の引き下げは非常にむずかしい、このように考えております。
  250. 寺前巖

    寺前委員 解説はもうすでに参考人がされたのだから、そんな解説は聞くことはないのだよ。ちゃんと本人は、余りにも少ないじゃないか、上げるか上げないのか、こういう問題提起だ。  次に参考人に聞きてたいと思います。  低家賃の公営住宅を国民は望んでいます。ところが、先ほど参考人も御指摘のように、五十二年度予算でも公営住宅一万五千戸がたな上げになろうとしておる。公団も八万戸の削減、来年度も三万五千戸の計画削減が起ころうとしておる。だから、こういうことに公共の賃貸住宅がなってきておるということはゆゆしき問題だという御指摘があったわけですが、それではこれを改善するために何をしたらいいかということについて、端的に御指摘いただきたいと思います。参考人にお願いします。
  251. 岡田隆郎

    ○岡田参考人 公営と公団住宅があるわけですけれども、一つには、土地の高騰とか、あるいは建設資材の高騰、こういうインフレあるいは地価の問題、これを政策的に抑えていただくこと。それから第二には、国の財政支出をもっとふやすべきであるというふうに考えます。特に公団住宅の場合は、ほとんどが一般会計からの補助がないというような中で、際限のない高い家賃になっておる。この高い家賃を下げなければがらあき団地なども出るわけですし、そういう点でもっと財政支出をするべきであるというふうに考えます。それから、特に先ほど申し上げましたように、公共賃貸住宅がいかに不足しておるかという点では、片方では高いがらあき団地が出ておる反面、公団では既存団地の空き家に対する応募は年間四、五万戸募集があるのに対して百十八万人ですか、二十数倍に当たっております。これを一つとってみても、賃貸住宅に対する需要は非常に大きい。それからまた公団住宅なんかの場合に、分譲を買おうとしますと、即金で二千八十九万円、これは千葉市のみつわ台団地というところですが、この場合の基準月収が三十九万円、頭金百万円、最初の五年が九万八千五百二十円、六年目からが十三万六百五十円、十一年目から後二十年間は十五万二千六十円払う。トータルしますと五千百二十四万円払わなければいけない。ところが、これが労働省の統計では、四十九年に入社した場合の平均的なサラリーマンは生涯で一億八百三十七万円かせぐ。つまり生涯の収入の半分ぐらいを公団の分譲に入るためにつぎ込まなければいけない、こういう実態の中では、やはり賃貸住宅を大量に建てる、そのための財政対策土地、建設資材の高騰抑制、これが不可避であり、それらをやった上で、第三期住宅建設カヵ年計画における公営公団住宅の目標、あるいはことしの、政府が、私たちから見れば非常に少ない数なんですが、当初掲げた、先ほど申し上げた数字、これをこの補正予算あるいは年度内の努力を通じてやり抜く、この決意をぜひしていただきたい、こういうふうに考えるわけです。
  252. 寺前巖

    寺前委員 私は、公団住宅と公営住宅が両方存在しておるところをずっと見てきて、つくづく思うのですが、きょうも朝テレビでやっていました。値段がものすごく違う。公営住宅は安いし、公団は非常に高い。公営住宅の方が計画どおり進まないという原因について、自治体の長に聞いてみたら、いろいろ関連する施設をつくらなければならぬ、生活道路、下水道、公園、学校、保育所など、こういうものをずっと総合的に対策を組むということになると大変なんです。ですから、そういうものを建設することが、住宅をつくると同時にできるようにしてもらわなかったら進まぬのだという話を聞くのです。  そこで私は、公営住宅の建設を進める一つの問題点として、いまいろいろの補助金を出すのに、縦割りで建設省やそれ厚生省ややれ何省やといってこう出るけれども、この公営住宅をつくる地域は、一つの新しい町づくりの問題として、こういうものを住宅予算にセットして、一つの町づくり予算という形で総合的なものを出すという、そういうやり方をやって、積極的に公営住宅の建設を進めさせるというような施策は考えられぬものなんだろうか、建設大臣なり自治大臣なりお答えいただきたいと思います。
  253. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 公共施設、要するに生活関係の件については、いままでもかなりのことをやってきておりますけれども、さらに来年度からというか、今年に入りまして、公共事業全体に対する問題を、いま言われた公共、公益、この方に国の方でなるべく援助していこう、そういうようなことを考えていまやり始めておるところでございます。  さらにまた、これらの問題の解決のために長期低利資金の確保をする、またはさらに民間の優良宅地造成に対する政策金融を拡充していこう、さらに公共、公益施設の整備助成の促進を加えていこう、そういうような三項目を加えて精力的にこれに対して今後の問題と取り組んでいく考え方でございます。
  254. 寺前巖

    寺前委員 私は、セットで予算を出して新しい町づくりをやるというやり方というようなものを考えなかったら自治体の建設は進まぬのじゃないかということを考えるのだけれども、自治大臣、気楽な形で一回意見を聞かせてください。
  255. 小川平二

    ○小川国務大臣 確かに御指摘のように関連の公共施設を整備いたしますための財政需要に迅速に対応できないということが一つの問題点だと存じます。したがって、地方公共団体の財政負担を軽からしめるための各省の施策というものを総合的に実行してほしい、これはかねてから願っておるところでございます。
  256. 寺前巖

    寺前委員 いや、どうもすっきりしないのだけれども、物事を、縦割りでこう補助金を出すやり方を、公営住宅、新しい町づくりをするときには、総合的予算としてセットにして予算を出すのだというやり方を新しく検討してみたらどうかという提案をしているのですよ。どうです。
  257. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 セットにして行おうという決定はしておりませんけれども、いずれにしても、何とかそういう方向づけをすることができないか、もっと簡明に行うことができないか、両者とも協議の上に立って負担をかけないようにできないかということで、各省からも出席をいただきまして、省内に協議会を設けて、いませっかくの努力をしているところでございます。
  258. 寺前巖

    寺前委員 検討するね。——時間がないので残念なんですが、せっかくお見えなので、現実の公団住宅は空き家が多い、それから私もこの間見せてもらって、長期にこういうものの補修をしないままにほっておいていいのだろうか、あるいは狭いままでたくさんの子供がおるけれども、これでまともな住宅生活と言えるのだろうかと私は気になってしょうがないのです。  住宅公団の総裁お見えですか。——お見えだったら、簡単にいまやりたいことはこれこれだということを説明していただきたいと思うのです。
  259. 澤田悌

    ○澤田参考人 御指摘のように、現在いわゆる未入居住宅、これが一万七千戸見当ございます。それから保守管理住宅の戸数が一万八千戸以上あるわけでございます。これはまことに遺憾なのであります。その保守管理には費用も要りますし、投下資本が果実を生みませんから、その面で重大問題でございます。これが解決に全力を挙げておると同時に、その保守管理にも遺憾のないように努力をいたしておるところでございます。
  260. 寺前巖

    寺前委員 公団住宅の問題でいま総裁がああいう問題を提起しただけなんだけれども、それでいいのですか。せっかくの機会ですから、参考人にお聞かせをいただきたいと思います。
  261. 岡田隆郎

    ○岡田参考人 結論から言いますと、公団当局が住民には非常に後ろ向きな態度でしかないというふうな感じを受けます。このがらあき団地に端を発していろいろ社会的な批判が出たというような中で、建設省が八月二十四日ですか、建設省の中に、がらあき団地、未入居団地対策というような言葉だったかと思いますが、これの対策としてこれをどう埋めるかということで建設省が出した方針の中に、高い方を引き下げる、がらあきを埋めるために古い家賃を上げる、こういう方針が発表されました。私たちとしては、なぜ公団の新しい団地が高いのか、その原因にメスを入れないまま、ただ高い方を後追いするように、あるいはプールだとかなんとかというかっこうで古いのを上げていれば、やがては新しい、いま高いと言われている団地も、また数年後にはさらに高い団地が出てくれば、これもプールだということで、際限のない値上げが繰り返されるのじゃないか、こういうことで非常に住民にとって、あるいはこれから公団住宅を望む国民にとって不安な事態になってきた、こういうふうに考えて、私たちとしては、がらあき団地対策として出てきたプール家賃あるいはその値上げにはどうしても反対せざるを得ない。  こういうふうなことで、実はきのうも東京で六千人ほど全国から集まって大会をするような不幸な事態を招いているわけですが、けさも公団総裁あて、それから建設大臣あてに七十八万人ずつの署名をそれぞれ代表が提出する、こういうかっこうで、私たちは単に自分たちの値上げが困るということじゃなくて、日本住宅政策あるいは日本の家賃のあり方、公共住宅の家賃のあり方、これをどうしていくべきかということについて積極的な提言もしたいし、また政府に国民本位のそういう政策をとってほしい、こういうふうに考えております。  これに対して政府や公団がしていることというのは、そういう立場からではなく、もうどんどん責任を転嫁し、居住者あるいは国民に負担を転嫁する、こういうことなわけですね。そういう点で、資料もちょっとお配りしましたが、最近の家賃の高さというのは、たとえば赤羽北団地では、三DKで当初家賃が六万九千六百円、十年後には十二万六千六百円になる。こういうものをほっておいて、それで古い方は格差があるからとか、そっちが高いからどうだとかいうような値上げはとうてい認められない。また古い団地の住民にとっては、住宅が昔団地サイズなどといって畳一畳が百六十センチちょっとぐらいしかないというような中で、六畳といっても関西あたりの昔の四畳半ぐらいの印象しかない。こういうような中で二DKがほとんどで、子供が大きくなってくるともう勉強部屋もない、あるいは子供が結婚すると行き先もない、こういうような中で、狭さの問題、あるいはもう老朽化してきて非常に傷みが激しい、あるいはまた環境が悪い、交通が不便だ、こういうふうなことで非常に悩んでいるわけです。そういうふうなことを前向きに解決するのではなしに、ただ新しい方の穴埋めに値上げするとか、あるいは格差があるから云々というふうなことはとうてい認められないというふうに考えます。問題なのは、やはり高い家賃をいかに下げるかということだと思います。  きょうちょっとグラフを持ってきたのですが、これは四月の衆議院の建設委員会で公団の理事さんが発表した数字をグラフにしてみたのですが、現在の公団住宅の家賃、五十一年度管理開始の家賃で見ますと、原価家賃というのは五万四千九百円、これは傾斜をかけて、最初は一万八千円ほど低いところから出発させているようですが、この中身が、私たちは家賃というと、かかったものを少しずつ返すんだなというふうに考えているわけですけれども、こうやってよく見ますと、建設費の借入金利それから土地の造成のため、あるいは取得のための借入金利、これが家賃にはね返っている分が、公団の正式な発表でも、それを計算しますと、家賃全体の六五・七%を占めるという異様な事態です。元金の返済分というのは全体の中の一・五%、八百五円だというようなことですね。こうなってくると、公団の経営というのは、借金に次ぐ借金、それを利息をつけて返す、金利払いのための運営がされているのじゃないか。現に公団の借金の金利の支払いだけでも年間三千五百億円に達する。一日に直しますと九億八千万円ずつわれわれの家賃から利息払いがされている。こういうふうなことについてもっとメスを入れないで、高い家賃を放置しておくというふうなことは非常に問題があると考えます。それを、先ほど言いましたように、国の財政支出をもっとふやすとかあるいは土地対策をもっと強めるとか、そういうかっこうではなくて、住民や国民に安易に転嫁するプール家賃だとか、そういうかっこうで来ることを私たちは納得できない。  仮にプール家賃というようなかっこうで値上げがされるとしても、公団あるいは建設省といろいろ話し合っているのですが、結局はいまある高い家賃はそんなに下がりませんよというような話。それから古い団地の修繕をしますと言いますが、では具体的に何をしてくれるのですかと言うと、それはこれから考えますと。つかみ金のようなかっこうでとにかく来年は二百億円増収をしたいのだ。こんなかっこうで、二百億円といいますと、いま言った金利払いの二十日分を補てんさせられるだけの話なんです。ですから、本気で公団の経営を立て直そうとするならば、際限のない家賃の値上げ、いま平均五千円というふうなことが言われていますが、こんなものでは公団の経営は立て直らない。そういう点で、家賃の値上げで経営が立て直ることにもならない、あるいはがらあき団地の解消にもならない。  一方ではよく言われていますように遊休土地、これは会計検査院が指摘もしましたが千六百ヘクタール、これは高等学校を建てれば八百校建つ土地を、最近の新聞ではぼろ地というふうにも言われていますが、そういうかっこうで抱えていて、この金利だけでも年間七十数億円、使い道のない土地のための金利ですね。こういうふうなこと、あるいは公団の経営上の天下りとかいろいろな問題、そういうことが改善されないまま、ただ二百億円の増収を図るというふうなことでは、何が一体どうなるのか。つまり家賃だけはこう上がっていく。公団の家賃が上がれば、さっき言いましたように、公共住宅需要がありながら削減される方向ですから、やむを得ず民間住宅に追いやられる人がまだまだふえてくる。そうしますと、民間の方の家賃も、公団、公営ですら上がるのだから上げてもらいますということで、いまでも非常に高い民間の家賃がさらに上がっていく、こういうふうな悪い波及効果があります。  何よりも公団住宅というのは、いまでこそ一万円ぐらいの家賃は安過ぎるとかなんとか言っていますが、当初はそのときそのときに非常に高い家賃だったわけです。それが何より証拠には、住宅公団法ができる年の昭和三十年の六月十五日、衆議院の公団法に対する附帯決議がされているわけですね。「政府は公団住宅の家賃をなるべく低廉ならしめるよう考慮すること。」いまでこそ安いとかなんとか言われる家賃がそのときにいかに高かったかということが、国会の皆さんのこの附帯決議一つとってもわかるわけです。あるいは公団法の中に、大量な住宅を建設して国民生活の向上と福祉の増進を図ることを目的とするというふうに、第一条に目的があるのですが、そういう角度から見ても、今回の値上げとか、あるいはがらあき団地を生ずるような高い家賃、こういうものはいかがなものかと言わざるを得ません。そういう点で、どうしても公団の基本的な姿勢の立て直し、こういうことを住民あるいは国民と十分な話し合いをして、そして修繕の問題だとかあるいは狭さの解消の問題だとか、そういうものも十分住民と、国民と話し合って、納得ずく、合意ずくで公団のあり方あるいは日本住宅政策のあり方、家賃のあり方、これを今後見ていく必要があるのではないか、こういうふうに考えます。  そういう点で結論的には、私たちがすぐ政府や何かがするべきだと考える問題点を幾つか申し上げますと、一つは、いま言ったような全体の改善にならない、それで際限のない値上げルールをつくることになるプール家賃制度の名による公団の家賃値上げ方針を直ちに撤回していただきたい、これが一つです。  それから第二には、何度も言いました高い家賃の引き下げを本当にやってほしい。このためには、たとえば年々上がっていく傾斜家賃ですね、これに年間二百億円の国の補助が追加されれば、傾斜は直ちにことしから凍結できる。これは公団の数字でも出ております。そういうふうなことで、直ちにとりあえず傾斜家賃の凍結、そして五十年度以後に建った高い家賃の団地については、現行家賃そのものをもう少し引き下げる、こういうようなこと。  それからもう一つは、具体的にできるに違いない政策としては、入居者が契約するときに敷金を取られます。これが、普通ですと、さっきの赤羽北の団地の例で言えば、普通敷金は三カ月ということになっているのですが、六万九千六百円から出発するので、その三倍の十八万何がしだというふうに考えるわけですけれども、こういうところに限っては、敷金を最終年度のつまり十二万六千六百円掛ける三倍、つまり三十八万幾らの敷金を取る、こういう悪徳家主みたいなことをしているわけですね。ですから、せめて敷金は当初家賃の三カ月以内にする。こんなことは公団の試算でも三億円あればできるということなんですね。そういう点で、まだまだできることが山ほどあるのにこれをしない。金利についても、たとえば国鉄の場合は昭和五十年までの借金の三兆一千億円をたな上げする、こんなこともありました。公団についてももっとたな上げする方法あるいは削減する方法、こういうことがあるのではないか、こういうふうに考えます。これが第二点。  それから、先ほども話がありましたように生活関連公共施設、これを自治体に対してもっと国が援助するべきだ、こういうこと。  それから第四点は、住民ともっと公団が十分話し合いをするべきだ。一方的な値上げだとか一方的な管理はやめてほしい、こういうこと。  そして最後に、繰り返しになりますが、公共賃貸住宅を基本とした住宅政策を立て直してほしい。  以上であります。
  262. 寺前巖

    寺前委員 時間が来ましたので、お約束どおりやめます。せっかくの参考人の御提起でありますので、政府当局もよく検討されることを要望して終わります。
  263. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 ちょっと私も一言。  ただいまのお話につきまして、今度の家賃というか、値上げを幾らかしてもらおうかということは、ただプール制で行っていこうという考え方ではないのです。不均衡を少し是正してもらえないか。もう二十有余年もたっている家だから傷んでいるところもあるだろう、それは修理をしようじゃないか。したがって、いまお話がありましたが、五十一年だけでも一戸平均その負担金というものは二万四千円を負担をしておるのでございます。それともう一つは、そのほかに今年度は国の方からも金を出そうじゃないか。そうしてその住民、住んでいただいておる方々のお気に召すような方法をとっていこうじゃないか。お話し合いということがありましたけれども、十分話し合いをしなければならないことで、政府が勝手に決めるということじゃないので、そういうことも考慮に入れて御相談に乗っていただきたい。これがいまわれわれが考えておるところであります。
  264. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 岡田参考人には、御多用中まことにありがとうございました。御退席を願っても結構でございます。  次に、大原一三君。
  265. 大原一三

    大原(一)委員 貝塚先生には最初から長い時間お待たせしてどうも申しわけございませんでした。私は、時間がございませんので、できるだけ先生の御意見を多くお聞きしたいと思います。  問題点は大体四つございます。  まず第一に、経済の実体認識の問題、第二番目はそれに対する経済政策のあり方並びに財政政策の対応の仕組み、それから三番目には大きく、いま非常に問題になっております公債発行論についてお伺いしたいと思います。最後に、時間がございましたら増税論に触れていただきたいと思います。  以上の構成でお願いしたいのでありますが、まず第一番目に、先生の現在の経済の実体認識、これをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  266. 貝塚啓明

    ○貝塚参考人 日本経済の実体は、一言で申しますと、日本経済は悪循環に陥ったままで、そのままの状態で現在推移している。それはどういうことであるかと申しますと、輸出に余りにも依存して経済が辛うじて成長を保っている。そのことの結果として、国際収支黒字基調というのは依然として大幅である。その結果どういうことが考えられるかと申しますと、すでに諸外国においては輸出規制を日本に求める、あるいは現実にいま大幅な円高が起きているわけであります。したがいまして、この悪循環というのは容易に解消できないということであります。これが第一点。  それから第二点は、これは政府経済計画の方で考えておりました日本経済のコースからかなり外れた面がある。それは民間設備投資が残念ながらほとんど増加しない、明年度経済に関してもこのおそれは十分にあるということであります。  それから第三点は雇用に関してでありますが、雇用は今年度に入りましておよそすべての指標が悪化の傾向を示している。たとえば就業者はふえているわけですが、臨時的な雇用で、主として女子労働が増加している。常用雇用者といいますか、パーマネントに雇われる人々はどうであるかといいますと、零細小企業においては多少ふえていると思われるわけですが、三十人以上の雇用規模の企業では減少しているということであります。したがいまして、輸出依存の傾向が依然として続き、そして民間設備投資は出てこない。雇用に関しては、雇用状態は悪化しつつあるというのが現在の日本経済の状況でありまして、日本経済はそういう意味で悪循環に陥ったままの状況で推移しているというのが私の現在の経済に関する現状判断であります。  それにつけ加えまして、今回の補正予算によってどういう効果が出てくるかということになりますと、辛うじて六・七%の成長率は達成されるというふうに考えます。しかし、いま申しました日本経済の悪循環というものから容易に抜け出せるきっかけが今回の補正予算によって得られるとは考えません。そういう意味で、今回の補正予算景気を下支えする効果を持つ。しかし、それ以上の効果は残念ながら持っていないということであろうと思います。
  267. 大原一三

    大原(一)委員 現在の経済の実体、私も先生の御認識とほぼ同じでございますが、ちょうど自動車でたとえてみますと、トップとセカンドだけついて、ローのない、サードのない自動車に私いままで乗っていたと思うんですね。それがいきなりスピードを落とさなければならない。横で急にブレーキを踏んでしまったら、ノッキングを起こしている。なかなかうまいペースに乗っからないという状態が私はいまの日本経済の実体であろうと思います。  そうなりますと、いろいろ経済の悪循環の指標というものがたくさん出ておるわけでありますけれども、いまおっしゃった先生の御議論の中に設備投資というのがございまして、これは福田総理も九〇%くらいに持っていきたいとおっしゃったのでありますけれども、現在の設備稼働率指数というのは八四・七ですか、八五%内外の指標といいますのは四十五年を一〇〇にした指標であります。この数字は、実は四十五年の実体の設備稼働率というのはやはり九〇%くらいだったろうと思うんです。そうしますと、四十五年を一〇〇にして議論したってこれは本当の稼働率をあらわしていないという感じがするわけです。つまり、それからマイナス一〇%、七五%ぐらいの水準が現在の企業の実際の設備稼働率であろう。それを九割水準に上げていくということは、これはもう大変なことだと思うんですね。しかし、上がらなければ日本企業は倒産に追い込まれる。売り上げ高はふえておるけれども企業赤字経営だというような実態が結局倒産件数を多くしておるわけでございますけれども、こういう経済状態、物、金、人を減らして、そのノッキングしつつある日本経済が安定路線に乗るのは一体いつごろになると先生は考えていらっしゃいますか、お教え願います。
  268. 貝塚啓明

    ○貝塚参考人 この問題を考えます場合には、やはり政府の政策の運営がどういう運営であるかにかかわってくると思います。これは明年度以降の経済であるわけでありますが、経済現状を考えますと、明年度以降は輸出が余り伸びない。それは先ほど申しましたように輸出規制あるいは円高の問題があります。そういたしますと、輸出の依存という形の経済が、実を言うと明年度はそれほど強く期待できない。そういたしますと、日本経済を支えている輸出というものの強さが弱まるわけでありますと、残るところは、期待できるのは財政であります。したがいまして、明年度以降に関して申しますと、財政がどの程度の規模で景気を下支えするか、それが第一の重要なファクターではないかと思います。  もし、そういうある程度積極的な財政政策がとられますと、私自身は、これはむずかしいのでありますが、やはり昭和五十四年あるいは五十五年くらいになって、現在かなり構造不況業種と言われておるもののある部分は転換をして、あるいは操業率が上がっていって、そこで一つの安定路線へ乗るきっかけがつかめるのではないかというふうに考えます。
  269. 大原一三

    大原(一)委員 私も大体同じような考え方でございますが、現在の経済についていわゆる構造的な不況が出ておるという議論がもっぱらなんであります。その構造不況を典型的に十二ないし十三の業種にしぼって議論するのがいまの一般的な議論の仕方であります。確かに私もあの十二業種、十三業種は大変だと思うんです。しかしながら、私が先ほど申しましたような前提から申しますと、全部の企業が構造不況ではないか。つまり、経済成長率を実質で議論するのは、私は企業の収益なりあるいは採算ということを考える場合には余り適切でない。結局名目成長率で議論をすべきではないかという考え方。といいますのは、四十八年の成長率は非常に高くて、名目で二二%だったと思うのです。今度の見通しで一二、三%というところでございますね。ということは、二二%の売り上げを持っていた日本経済株式会社が、一二%しか売り上げがなくなった。しかも高度成長時代には二二%の発展テンポでないと企業採算が合わない、つまり人、雇用者ですね、それから物、在庫、同時に金融をつけて採算を合わしておった、売り上げを伸ばしておったわけですけれども、それがいきなり一二%という半分近いところへ落ち込んだ、そこに基本的な不況の理由があると思いますけれども、現在の日本経済で、その半分に落ち込んだ名目成長率へ順応していく諸条件、これは一体どういう条件があったらいいと考えられますか。
  270. 貝塚啓明

    ○貝塚参考人 むずかしい御質問でありますが、私はすべての業種が現在不況になっておるとは考えておりません。ある業種はやはり好況の業種が依然としてあるわけです。構造不況業種と言われておりますものは、日本経済の中で申しますと、やはり一つは、かつての経営者が日本経済の成長率は高いというふうに見込んで行った設備投資、それは実を言うと最新鋭の設備投資であったわけでありますが、その設備投資エネルギーをずいぶん食う設備投資であったわけであります。そういう意味で、日本の現在構造不況業種のあるものは、実を言うと、いまから三年か四年前あるいは五年前の水準で言えば、非常に採算上は有利なものである、現在はそうでなくなったということではないかと思います。したがいまして、こういう構造不況業種は、そういう意味では徐々に、現在の普通の言葉で言えば減量経営を行わざるを得ない。そういたしまして、その場合必要なことは、経済政策全体としては、やはり成長率をある成長率に保って、現在言われている構造不況業種が円滑に転換できる、そういう状況を経済全体としてつくるということが重要ではないか、そういうふうに考えるわけです。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕
  271. 大原一三

    大原(一)委員 先生は先ほど今年度の予算でもっては景気の下支え、つまり六・七%をようやく達成する程度である、来年は輸出条件というものが必ずしも楽観的な見通しに立っていない、そちらの方から景気を引っ張っていく要素も沈んでいくだろうということになりますと、来年も再来年も大変悲観的な見通しになるわけでございますけれども、財政がこれに対してアプローチをしていかなければならないということになりますと、その財政のアプローチの仕方、これは一体どのような規模で、たとえば経済成長率が来年、ことしと同じ程度であれば、どの程度財政が牽引力になったらよろしいか、その辺めどが立ちましたらお教え願いたいと思うのであります。
  272. 貝塚啓明

    ○貝塚参考人 私は、計量モデルで正確に計算をしているわけではありませんが、先ほど申しましたことから考えますと、明年度の経済を六%台に維持するためには、国債依存度三〇%の範囲内で財政を運営していくことによっては達成が非常にむずかしいのではないかというふうに考えております。三〇%という国債依存度を固定したままで、その範囲内で、実を言うと現在の政府の財政投融資その他の財源を考えてみましても、もはや余裕はないわけです。したがいまして、一般会計で国債依存度三〇%を上回ることを覚悟して財政政策を行うことによって、六%以上の成長が維持され得るというふうに考えます。  ただ、財政政策以外に政府がなすべき点がいろいろありますが、それは後でまた申し上げます。
  273. 大原一三

    大原(一)委員 財政政策に入る前に、いま先生おっしゃいましたけれども、その他の経済政策の発想の転換が必要である。先生のお書きになったものを読ましていただいたこともあるのでありますが、私もそう思うのです。財政政策以外で現在の不況を乗り切って、いま非常にぎくしゃくしている経済を一応安定路線に乗せる処方せん、これについて先生のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  274. 貝塚啓明

    ○貝塚参考人 ただいま申し上げましたのは、短期的な財政政策以外ということでありますが、日本経済がいまのように悪循環に陥っているというのは、たびたびここでも指摘されておりますが、経済の将来に対する不安と申しますか、不確実性、そういうものが非常に多いということが一番の原因であります。その結果、民間企業あるいは消費者、あるいは労働組合すらも非常に防衛的な立場でそれぞれの生活を考えている。  そこで、現在政策にとって一番要請されることは、短期的に財政政策景気を下支えすると同時に、やはり中期的なはっきりした経済政策の焦点を出すことである。  その点はどういうことかといいますと、いま申しましたように民間経済の不確実性をなるべく除去する方向に政策の運営を向けていく。第一の今後対処すべき問題はエネルギーの問題であります。エネルギーについて、あと十年たてばそのエネルギー日本の場合原油に頼ることがかなり困難になってくる情勢があるというふうな指摘がよくなされるわけでありますが、その点に関しては、やはり政策の中で最大のウエートは、現在そういう省エネルギーあるいはエネルギー確保のために、あらゆる手段を使って、たとえば税制とかあるいは補助金とか、そういう形で政府がある程度政策をはっきり提示することが第一であろうと思います。ただ、直接に民間企業に対して政府がそのまま指示をするというわけではありませんが、間接的に現在の税制あるいは補助金を使って省エネルギーあるいはエネルギー源の確保ということに関して政策を考える、これが第一であろうと思います。  それから第二は、やはり現在の社会保障のシステムに関して言いますと、日本の現在の社会保障の水準は、実を言うと近い将来においてかなりの水準に達するわけでありますが、この点をはっきりと政府は国民に保障するということが重要であろうと思います。生活設計にとって重要なのは、社会保障が確実に実現するということであります。  それからもう一つつけ加えて申せば雇用不安の問題がありますが、雇用不安の問題に関して言えば、現在の雇用保険その他を拡充していくということが重要であろうと思います。  もう一つ、第三番目の問題は国際収支の問題でありますが、国際収支黒字基調が容易に縮小する見込みがないわけであります。この点に対してどういう対応策があるか。一番正攻法は、内需を拡大していって輸入をふやしていく、そうして輸出を減らしていくというのが正攻法でありますが、この正攻法は現在の段階では直ちにそれを実現することはかなり困難だろうと考えられます。  そこで、考えられる対策としては、やはり国際収支に関して言えば、国際収支の中でたとえば海外に対する直接投資を奨励する、あるいは場合によっては公的ベースの対外援助をふやしていく。ですから、資本勘定の中で長期資本の流出を図る方向をある程度考えるべきではないか。私はいまそういう三つを申し上げたわけでありますが、結局、民間経済主体、民間経済を覆っている不確実性を、ある部分を政府がそのリスクの肩がわりをするということをはっきりさせることによって、そして同時に、財政政策によって景気の下支えを行う、そういう政策のパッケージといいますかそういうものを提起することによって、日本経済の現在の悪循環からできる限り抜け出すきっかけを見つけるということが重要ではないかというふうに考えるわけです。
  275. 大原一三

    大原(一)委員 先ほど先生は、やはり有効需要をふやして財政によって景気を下支えし、徐々に安定成長へ軟着陸させていくという御発想だったと思うのですが、その際、公債論に触れられました。私もある程度、大蔵当局として、財政当局としては、三〇%ラインを超えたらずるずる引っ張られてしまって、どこまで公債発行がいくかわからないという不安、懸念は当然よくわかるのでありますが、経済の理論としては三〇%ということにどれだけの意義があるのか、私はやはり問題だと思います。といいますことは、政府の今度の経済見通しの修正を見ましても、一三%ぐらいの設備投資が、どの民間調査を見ましても五、六%の設備投資にしかなっていないのですね。したがって、GNPの修正も六%ぐらいのラインに修正をしております。ということは、これはやはりずっと一貫してこの不況に入りまして、貯蓄超過経済になっておるということだと思うのです。つまり、貯蓄が、意図せざる在庫貯蓄は別といたしまして、それも含めてでありますけれども、いわゆる銀行、生命保険等々の金融的貯蓄、そういったものが非常にたまっておる。一方、それに見合う設備投資はない。逆に、意図せざる在庫投資というような形で企業は金利負担のかかる貯蓄をしておるという形になっておると思うのです。そういう意味で、ここ当分日本経済の内生的要因、外生的要因によって輸出がだめ、設備投資もだめということになりますと、残るところは財政しかないわけでありますので、そういういわゆる貯蓄超過分を財政が吸い上げて、それを有効需要へ転化するということは理論の筋道として当然であろうと私は思うのです。その点につきまして先生の御意見をお伺いいたしたいと思うのです。
  276. 貝塚啓明

    ○貝塚参考人 私は、ただいま大原さんが言われました点については賛成であります。公債の問題は、日本の場合は個人貯蓄率が非常に高いということの結果、政府がある程度支出せざるを得ないという構造になっているわけです。公債の問題について、三〇%というのは、いわばいまでは非常に象徴的な水準になっているわけですが、経済の理論の中でこれを正当化することはむずかしい、これはそのとおりであります。  しからば公債の問題についてどういう点が心配として残っているのかということになりますと、これは経済の問題というよりは、むしろ政治の問題であるというふうに私は考えています。それは、財政支出の効率化を保つためには、もし税負担がふえていく形で財政支出がなされる場合には、これは財政支出に対して世論あるいはいろいろな人々は財政支出の内容をよく吟味する必要があると考える。ところが、もしそうでない場合に関して言えば、財政支出がふえていくことは受益の関係で言えば非常に結構でありますから、そういう意味では人々は容易にそれを認めるだろう。そこで、その結果として財政支出の効率というものが落ちていく、むだ遣いがなされるということであります。これはむしろ、私は元来政治の問題であるというふうに考えています。確かにそういう問題がありますから、長期的には財政のディシプリンというものは必要だろうと私は思いますが、その問題と現在の短期の経済政策の問題とははっきり仕分けをして考える必要があるというのが私の見方であります。  短期の経済政策というのは、したがって、公債依存度というものに初めから制約を置いて、そしてもし政策をとりますとどういうことになったかといいますと、これは過去のここ二年ばかりの経済政策というのはそういうものである。最初から制約があるぞという形で、そして景気政策をやるのだということになりますと、これは景気政策としての実効性は薄れるわけであります。特に心理的に民間経済に対して与える影響としては実効性が薄れる。その結果として日本経済は、私どもが考えますところでは、昨年のある時期までは日本企業家あるいは消費者でも労働組合でも、将来に対してある種の強気を持っていた人がかなりいるはずであります。そのときに、財政の面で申しますと、積極的な財政政策をとることによって日本経済は悪循環から抜け出る転機をつかみ得たのではないかというのが私どもの考えておることでありまして、そこのチャンスを逸したということであります。  今後の日本は、したがいまして、どういう形で考えるかといいますと、財政政策に関して言いますと、短期的には公債依存度の制約というものを考慮しないで行い得るシステムを考えるべきではないか。それはやはり一つは中期財政計画であります。中期財政計画によって財政支出についてある種の歯どめをつけておく。そして単年度主義の財政運営を少しずつ改めていく。それからそういう手法によって長期的な財政のディシプリンと短期的な経済政策とが両立するような方向を求めるというのが、財政の面から見た場合の重要な改革の方向でないかと思います。それをやることによって、実を言いますと、民間経済の方は政府経済政策というものに対してもっと信頼感を持つことができる。信頼感のある景気政策が行い得るシステムをつくるということが重要ではないかと思います。それと、先ほど申しましたように、財政のディシプリンと両立するような方向、方策を考えるということが重要ではないかと私は思います。それから、先ほども申しましたように、現在の日本経済の状況においては、将来の日本経済先行きに関して、最も問題のあると思われる分野について中期的な政策の処方せんをはっきり出すということによって、その結果、民間企業あるいは消費者、そういう人々が将来の先行きに対してもう少し確たる見通しを持ち得るように政策を運営する、これがもう一つのポイントであります。財政政策に関して、信頼性のおける景気政策ができるシステムをつくるということと同時に、先ほど申しましたような中期的なその他の経済政策の分野における政策の処方せんをはっきり出していくということが重要ではないかというふうに考えます。  そういう形で、公債に関しましては、短期的には制約を考えずに、しかし中期的に財政計画で歯どめをつけ、そして経済全体のバランスは、いま問題のある分野に関してできる限り政策を重点的に傾倒するという形で経済全体として貯蓄、投資バランスが徐々に改善の方向に向かうような政策の体系をつくり上げるのが現在重要ではないかというふうに考えるわけです。
  277. 田中正巳

    田中委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  278. 田中正巳

    田中委員長 では速記をとって。  大原君。
  279. 大原一三

    大原(一)委員 私も公債発行論者のように言われて多少辟易しているのでありますが、われわれも公債発行三〇%を超えてもいいんだという議論は、どこまでもふやせという議論ではなくて、三〇%ぎりぎりにあえてこだわらなくてもいいではないか。余り国庫主義的な物の考え方に立ちますと、国庫が優先して経済が振り落とされていく。問題は、経済が主であって国庫は従なんだという物の考え方、そこまで突っ込んで考えなければ、私は現在の不況は乗り切れないと思います。二二%の売り上げから一二%の売り上げに落ちて、月々千五百件の倒産を生んで、いまだかつてない失業を生んでいる。この失業統計も問題ですけれどもね。月末一週間のうちに一時間働いたら失業にならないという日本の統計は世界一です。それはともかくといたしましても、そういう状況の中へ追い込まれている日本経済を救済する道は、やはり財政が、外生要因として輸出に圧迫が来るならば、もっと大きく政策の転換をやっていかなければならないだろう。それがためには行政改革の問題、さらにはまたゼロ・ベース・バジェットの問題等々ございます。大蔵大臣聞いていらっしゃいますけれども、来年はとにかく有史以来りっぱな予算をつくると先ほどここでおっしゃったのですから、御期待申し上げるわけでございますけれども、そういった問題も十分解決していかなければならぬことは当然でございますけれども、やはり中心経済であります。従が財政であります。そういったことを考えていきますと、三〇%ラインぎりぎりという議論は余りにも国庫主義的物の考え方ではないか。一体これでもって日本経済がずるずるいって、経済企画庁長官等、国会答弁でしょうからおっしゃるのでございましょうが、大丈夫だ、大丈夫だと言っていらっしゃいますけれども、私はその答弁に非常に不安を持つわけでございます。  そういう意味で総理も、要するにドイツは五%が四%、今度は修正して三%になりそうだ、日本は六・七で非常に高いのですとおっしゃいますけれども、いままでとベースが違っておったのですね。日本の六・七のその前は実質成長で一二%内外というところでございますから、これも半分です。そういったことを考えますと、まだ日本企業というのは現在の景気になれていない。ある意味ではいきなり真空状態にほうり込まれて足が地についてない。一体これからどうなるかわからない。そういう条件の中にあると私は思うのです。その一番端的な例が損益分岐点が世界一高いということです。これは高度成長になれた企業の経営姿勢、ビヘービアであって、売り上げをしても金利を払わなければならない、さらにまた人をたくさん抱えているからたくさん賃金を払わなければならないというような、さらにまた物、在庫の水準もかなり高いというようなことから抜け出していって六・七%へ軟着陸するまでは、財政というものはある程度みずからの節度を破ってもいいと私は思うのです。そういうところに私の公債発行三〇%論を批判する基本的な理由があるわけでございます。  ところで、先生のお立場ですから、学問的に公債発行三〇%にどういう意味があるかということは私もなかなかむずかしい問題だと思います。ただし、私はそういう景気浮揚をやった後、中長期見通し先生のいまおっしゃった中において、将来の財政の姿勢を直すということは当然だと思うのです。いままでは、均衡財政時代は企業が借金をして、企業が不均衡財政であったのですね。企業が借金経営で八五%も八六%も他人資本でもって経営していって、国の財政は均衡財政でとんとんで黒字を生んでおったわけなんですね。いまむしろその財政と企業のビヘービアを反対に持っていく、そういう意味で私の公債論があるわけでございますけれども、将来企業が真空状態から抜け出し、現在の安定成長じゃなくて、私は六・七というのはきわめて不安定成長だと思うのです。それになれたときに安定成長が可能になると思うのです。それに軟着陸して、それから企業自身が物減らし、金減らし、人減らしをやって、これから企業の経営が安定する段階になったら、将来が見通しができるようになったら、私は増税もやるべきである、こういう考え方でございますが、時あたかも一般消費税の答申が出されております。これをいつ実施するかということが当面非常に大きな問題でございますが、以上申し上げたような点から、先生はこれについてどうお考えですか。実施の時期はもとよりでございますが、一般消費税を導入すべきかどうかという基本的な問題についても同時にお触れいただきたいと思うのであります。
  280. 貝塚啓明

    ○貝塚参考人 今回の中期税制の答申の中で私が一番不満に思っている点は、やはり経済がある程度順調に回復して初めて増税が可能である、その留保条件がはっきりしていない点ではないかと思います。したがいまして、たとえば数字として言えば、GNPの伸び率で言えば七%を超したときには増税をする、そういうふうな条件つきで大幅増税は考えられるべきではないかと思います。増税の内容につきましては、税制調査会の答申の中では、所得税か消費税かどちらをとるべきか、そしてその場合に所得税を増税することには限界があるから一般消費税を採用する方向が望ましい、そういう答申が出されているわけでありますが、この点に関しては、私は次のように考えております。  戦後の日本の税制というのは所得税を中心に立てられてきたわけであります。消費税をそこへ導入するということはかなり異質な税制をそこに導入するということであります。その場合に、現在日本の納税者あるいは国民の人々が考えている税制、一体どういう税制が一番望ましい税制であるかということをどういうふうに考えているかと言いますと、やはり所得税が公平な税制であるというふうに考えていること、それは多分間違いがないのでないか。そういたしますと、今回の消費税を導入するという考え方は、実を言うと所得税中心主義の税制を大きく変えるわけでありまして、負担に限界があるからそこで消費税を入れるというのは、別の言葉で言えば、現在の税制というものは、もっと所得税の課税で公平な課税を行って、そしてその状況のもとで、たとえば制度として言えば納税者番号制度を入れるとか、そういう所得税制の課税の補強を含むかなり改革案を出して、そして国民にそれでいいかどうかを判断を聞いて、そしてそれでもなおかつ所得税課税の増税は望ましくないという答えが戻ってくるならば、そのときに消費税を導入すべきであるというのが私の立場であります。ですから条件つき賛成ということになりますが、そういうふうに私は考えております。  消費税というのは、ある意味では納税者の負担感が薄いわけであります。そうしますと、消費税というのは税率を上げることがわりあいと簡単である。そうなってくると、消費税というのは申すまでもなく逆進性があるわけですので、課税最低限以下の人々に対してやはり税負担がかかるということになります。そういう問題点を含んでいるわけですので、やはり消費税の導入に踏み切る場合には非常に慎重な考慮が必要であり、国民の選択を問う。それはいろいろな形で、所得税課税の強化としてこういういろんなやり方があるのだということをある程度示して、そういうことを条件にして、それでもなおかつやはり消費税で負担する方が望ましいということであるならば消費税を導入すべきであろうというのが私の考えであります。
  281. 大原一三

    大原(一)委員 先生、実は二十四分までになっておりまして、時間がありませんので、簡単にお答えいただきたいのでありますが、消費税は一般売上税、一般消費税という仕組みになっております。これは二つの課税様式を選択的に書いておりまして、そのいずれにするかはまだ決まっていないわけでありますが、中小企業問題ですね、これはたとえばアメリカ式に消費税は幾らでございますと明示させれば、これは中小企業が完全に消費者へ転嫁してしまうのですね。ところが日本の場合は、課税してしまって、あなたは売り上げが幾らですから税金は幾ら納めなさいといった場合は、中小企業は売れない場合は自分で税金を消却しちゃうのですね。転嫁ができない。大企業は転嫁できるというような状態になりますと、これはまた一つ問題があろうと思うのです。その点についてはいかがお考えになりますか。中小企業対策としては大変問題のある税制であるということですね。  それと、もう時間がございませんが、増税をしようとするならば、消費税を若干目的税的に設定したらどうだろうか。たとえば福祉教育税とか、そして一カ所得税の増税のかわりに富裕税を創設するということをセットにしたら、むしろ一般的な了解が得られるのではなかろうかというようなことも考えるわけですが、この二点についてお答えいただきたいと思うのです。私の質問はこれで終わりますけれども、よろしくお願いいたします。
  282. 貝塚啓明

    ○貝塚参考人 第一の御質問は、中小企業を課税の対象から外すべきか否かという問題であろうと思います。私は、消費税といたしましては、ECが採用しております付加価値税が経済の中立、資源配分の中立性から見て一番望ましい。ですから、現在行われているすべての企業活動に対して中立的な税制としてはEC型の付加価値税が一番望ましいというふうに私は考えます。日本の場合、それを直ちに適用するかどうかがまさにいまおっしゃた論点になると思いますが、私は、財政学者から考えますと、やはり一般消費税の持っているメリットというのはなるべく生かしたい。それは消費税をなるべく広い範囲にわたってかけるのが望ましいというふうに考えているわけです。  中小企業の問題については、もちろん零細企業は対象から外すべきでありますが、あと、小企業、中企業の範囲をどこでとるかということになりますと、これは大原さんがあるいはよく御存じかもしれませんが、税務行政上の問題だろうと思うのです。範囲を広くとれば、税務行政上コストが非常にかかるということであろうと思います。その問題が重要でありますが、原則としては消費課税の範囲を広くとるのが望ましい。これはそういうふうなやり方が消費税としてはすぐれているということは認めざるを得ないというふうに考えます。  それから、最後の目的税につきましては、私は次のように考えております。現在、日本の財政のシステムの中で社会保障支出というものは、実を言うと、社会保険の勘定というのがありまして、その中で保険料を拠出してそして保険を給付しているという形になっております。それで、日本の社会保障のシステムはその中で国庫負担の比重がかなり大きい。したがって日本の社会保障は、現在としては、目的税として一般消費税を採用するよりは、社会保障のシステムをはっきりと受益者といいますか社会保障に加入している人の保険料負担と給付というものが見合った形にする。そういう形で整理をして、社会保障のシステムをそういう形ではっきり分離した方がいい。そしてその中で保険料なら保険料の引き上げを図る。したがいまして、現在の体裁でいきますと、保険料を引き上げるかわりに一般税を引き上げるという形になるわけですね。そういう形ではなくして、保険会計の中で保険料を引き上げ、一般課税としては税率の引き上げはなるべく避ける方が望ましいのではないか、そういうふうに考えております。
  283. 大原一三

    大原(一)委員 ありがとうございました。質問を終わります。
  284. 田中正巳

    田中委員長 貝塚参考人には、御多用中御協力をいただきまして、まことにありがとうございました。  これにて参考人に対する質疑は全部終了いたしました。     —————————————
  285. 田中正巳

    田中委員長 この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。  明十五日、参考人として金属鉱業事業団理事長の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  286. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次回は、明十五日午前九時三十分より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十五分散会