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前川参考人 同盟の
前川でございます。
当面の雇用の問題が私どもにとって大変重要であり、そして緊急な問題であります。その
意味で、労働四団体では十分な相談を経まして、そしてむしろある程度遠慮ぎみな気持ちを心に秘めながら、今度の臨時国会で雇用問題の重要な課題について十分な御審議をいただきたい、こういう観点で統一要求をつくりました。
今日の雇用情勢は、いま
富塚さんからも話がありましたけれども、大変に悪化の傾向にあると思います。ちょうど二年前ごろには、むしろ明るさといいますか、そういうものに期待するという
考え方が強かったわけでありますけれども、今日ではますます悪化をしていて、その
見通しを立てることが大変に困難だという状況にあるかと思います。そして、社会全体の風潮としましては、雇用
対策の強化ということについて、マクロの
意味では全部が一致して私は賛成だと思います。しかし、具体的にミクロの面に入ってまいりますと、消極的な面が大変に強いというように考えるわけであって、雇用の改善と、そして今日の雇用不安の問題を除去していくということは大変重要な課題であろうかと思います。
その解決を図っていくためには、幾つかの視点からこれをとらえていかなければならないように考えます。すなわち総合的な
対策を行っていかなければなりません。
まず第一番には、福田総理も主張しておられますように、五十二年度は六・七%の
経済成長を達成するということであります。GNPも確かに数字の上では上昇いたしていることは事実であります。その中で、やはり業績の比較的順調であると考えられる
企業というのは何らかの形でいわゆる雇用者を増加していく、そしてそのための社会的責任というものに対応してもらう、こういう姿勢をやはり国全体の中で確立をしていってもらわなければならないと思います。
政府にしてもあるいは経営者団体にしても、やはりそのための指導、こういうものが必要かと思います。
それから二つ目は、構造
不況対策は緊急の課題として私どもはとらえざるを得ません。ゆっくりした
考え方はとても、これは問題が将来に大きく残ると考えております。したがって、今回の臨時国会におきまして臨時措置法の制定をぜひとも成立をさせていただきたいわけであります。可能ならば超党派的にひとつやっていただきたいという気持ちでございます。
そして、なぜ一体この構造
不況業種を
中心にいたしまして臨時措置法のお願いをするのかという点が
一つ問題点としてはあります。
考え方によっては、相当多くの部分というのは現行法の改正なりそれを補っていくことによってできるのではないかという
意見もしばしば耳にすることがあります。しかし、それだけではとてもいまの状態に十分対応できる、そういう
現状にはないのではないだろうかと思います。
そして、この臨時国会で、もし本当に国会が臨時措置法を制定をしていただけるということになれば、幾つかの点があると思うのです。
第一は、全体の雇用不安の解消に大変
効果的なのではないかということを挙げます。
それから雇用関係法、いろいろこれは分散してあるわけでありますけれども、当面する重要課題についてそれを総合的に取り上げてもらったという
効果も考えられるわけであります。
それから、予算との関係になってきますと、重要なことをやってまいりますと相当程度の予算のかかる分野もあります。そうなりますと、現行法を
中心にして補っていくということになりますと、なかなか実際には十分な予算措置もできがたいといういまの実態にあるのではないかと私は考えるわけであります。
同時にまた、この問題は先ほど申し上げたように緊急性のある問題でありますから、これをゆっくり、どうもじりじり
一つ一つ審議会にかけてすべて相談をしているというわけにいかない、そういう緊急性を持っていようかと思います。
同時にまた、構造
不況の問題については、もちろん
考え方はいろいろあるでありましょうけれども、従来の経営姿勢に甘さがあったということを私は否定はしないわけであります。しかし、同時にまた、今日、石油ショックをきっかけにしまして
国際情勢の急激な
変化に対応していくという問題が派生をしていくのでありますから、したがって、これをすべて
企業なり産業だけに期待をするといったような
対策では、とうていこれは本格的な解決が望めない、そういうものなのではないかと思いますし、また、漁業のいわゆる従事者の場合には、これはやはり今日特殊事情にあるわけでありますので、この点も後から若干触れますが、慎重な御配慮をお願い申し上げたいと思います。
そこで、私どもが要求案として確認しました内容の概要について申し上げてみたいと思います。
以上のような前提を置きまして、まず第一に、積極的な
景気回復政策の実施、雇用政策の全面的な見直し、これをお願いしたいわけであります。
景気回復政策につきましては、私から特にここで申し上げることはないかと思いますが、もう
一つの雇用政策の見直しの問題につきましては、もうすでに今日まで雇用
対策基本計画が検討されて、そしてその方向に沿って実施に移されているわけでありますけれども、この情勢というのは、もうすでに大変大きな
変化をしていることは間違いのないことであります。当時と今日の雇用情勢というのは、大きな
変化をしております。当時は、この雇用問題というのは、緩慢ではあるけれども一歩ずつ改善の方向に向かっていくということが基本姿勢になっていたわけでありますけれども、しかし、それからもうすでにずいぶんと月日もたちましたが、むしろ全体的には、当時二%と言われた完全失業者は、昨日産労懇でお伺いしたところ、
経済企画庁の方からの資料によれば、二・一%になっているというのが
現状でございます。
それから二番目は、構造
不況業種離職者
対策臨時法の制定をぜひともお願いをしたいということでございます。構造
不況業種として、雇用安定事業の指定業種、こういうように考えているわけでございますが、二年間の時限立法ということで、五十二年の十二月から発効するような努力をぜひともお願いを申し上げたいわけであります。もちろん時限立法ということについてはいろいろあります。先ほど申し上げたほかに、すべてを恒久立法にする必要はないという中身も当然あるわけでありますので、とりあえず二年という
考え方を持つわけでございます。
中身は幾つもございますが、
一つは職業転換給付金についてであります。指定業種を雇用安定事業の指定業種とすること、年齢制限の撤廃、就職促進手当の上限の撤廃、そして失業給付と同額にすること、訓練手当の大幅な引き上げなど、たくさんな問題がここにはあるわけでありますけれども、現在は雇用関係法がいろいろありまして、こういう重要な問題に対処するためには、指定業種にしてもある程度レベルを全体でそろえていきたいという
考え方を強く持っているわけであります。
それから、雇用保険法第二十三条の個別延長給付を五十三年の一月以降もさらに二年間延長していただきたい。従来までやっていただいたわけでありますが、それをさらにひとつ延長していただきたいということと、年齢制限の撤廃などの問題であります。
三番目は、失業給付の期間を構造
不況業種の離職者に限って九十日間延長をしていただきたいということでございます。私ども、いろいろこういう雇用情勢の悪化の中で、失業給付問題についてはずいぶんと検討してまいりました。今日までお願いもしてきたわけでございますが、財源その他を含め大変むずかしい問題もいろいろありますので、そういう点の配慮などを十分にしまして、今日の事情から見て、特に構造
不況業種に限ってやはりある程度の延長をしていただきたいという
考え方を持つわけであります。私どもとしては、保険料の引き上げについては、これは受けて立つという、そういう姿勢をとろうということが確認をされております。
次に、構造
不況業種の離職者についてでありますけれども、離職者はやはりどこかで採用してもらわなければならないわけですが、その採用を促進するに足るいわゆる
助成金の制度をつくっていただきたいわけであります。雇用してもらった場合には、その事業主に
助成金を支給していただきたいという問題であります。同時に、
助成期間は一年間と考えております。しかし、
助成期間が終わったらまたやめてもらうというのでは、これはまた失業が出るわけでありますから、少なくともその後一年以内は義務的に解雇をしてはいけない、こういうものにしていただきたいと思っております。
職業訓練、再教育の問題につきましては、従来のものをさらに具体的に充実をしてもらう。同時に、それぞれ訓練を受ける人たちの力というものもみんな違っているわけですから、十分その人たちに対応できるような姿勢、あるいは地域によってはそういう施設のないところもあるわけですけれども、そういうものを含めて十分整備をお願いしたいということでございます。
なお、離職者多発地帯、再就職困難な地帯について、これはひとつ十分な措置をお願いしたいということであります。
それから大きな三つ目としては、雇用の
拡大と安定措置についてということで、定年延長、継続雇用奨励金、高年齢者雇用奨励金、これを大幅に引き上げていただきたいと思います。同時にまた、現在、中高年法によりまして六%の高年齢者の雇用率を達成するために努力がされておりますけれども、はかばかしく進んでいないように思っているわけでありまして、身障者の雇用制度に準じて納付金制度を新設をして、そういう義務づけを行っていただきたいと思います。
雇用安定事業の運用に当たっては、給付の終了後、事前に労使協定なくして解雇をしてはならないというのは、先ほどのものにも関係をいたします。
同時にまた、雇用
対策法に定める大量解雇の届け出、これについてもある程度のはっきりした目安を確立をしていただきたい、かように考えるわけでございますが、終わりに当たりまして、同盟として一、二の実態というものについて若干触れさせていただきます。
一つは繊維関係でありますが、ゼンセン同盟から寄せられた資料で申し上げますと、四十九年の二月から五十二年の八月までの三年半の調査におきまして、いわゆる事業所の縮小、それから倒産、閉鎖が六百八十八件起きております。雇用の
変化としては、繊維関係だけで平均的に一七・七%の減を見ております。特にその中で紡績関係は三一%減でございます。同盟に加盟をしているゼンセン同盟の組織は、一番最高のときには繊維関係だけで五十七万四千人の組合員がおりましたけれども、五十二年の現在では四十一万七千人ということになっている実態は、いろいろなこの種のいわゆる雇用問題、そして雇用不安を起こしている
現状を如実に物語っているのではないかと思います。
もう
一つの例としては漁業関係でございますが、二百海里時代に突入をしまして、国際的な規制によって大変な問題が起きてきたことはもうすでに十分御承知のとおりでございます。そして船員の場合にはすべて船員法の中で運輸行政が行われているわけであって、雇用保険法もありませんので、したがって雇用安定
資金もないわけでございます。あるいはまた、雇用
対策法では、いわゆる船員は除外をされるということが法律の文章にはっきりうたってあります。そういうことが考えられまして、かつて厚生省の関係の法案などについても、いわゆる船員の場合には特別に二本立ての法律をつくった例もたくさんあるわけでありますけれども、それらを含めまして、漁業の離職者については特に慎重な御配慮をいただきたい、かように考えるわけでございます。
以上で、労働四団体で確認をされました内容の骨子についての御報告を終わりたいと思います。