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渡部(一)
委員 時間がなくなってきたので、私は話を余りうまく詰められないのですけれども、私の意図しているところは、こうした鉄、造船、
自動車、電機、特に造船の中では、海運業も含めまして、まさに集中砲火と言っていいような状況が生まれておる。たとえば、鉄鋼ではギルモア・スチールのダンピング提訴あるいは
アメリカ鉄鋼協会のマーシャル・レポートによる
日本に対する総攻撃、USスチールによるダンピング提訴、このダンピング提訴の後ろにはCIAレポートというのがあって、CIAレポートによれば、
日本鉄鋼企業による
アメリカ鉄鋼企業に対する重大な影響性というものがるる書かれておる。また、
アメリカの
自動車で言えば、大手部品メーカー、バット社のチャーリーズ会長は、部品については全部
アメリカ製にしろ、
日本車の輸入抑制をせよと言い、米英両国においては、
自動車関係業界に対しては輸入企業に対して政府に働きかけると決め、カーター大統領は、輸入車に対するものは前年までの規模にこれを抑えるという表明を行い、シュレジンジャー・土ネルギー担当補佐官は、輸入会社の規制は明確にすると述べ、こうしたものは枚挙にいとまがない。そうして、おまけに今度は家庭電器の方では自主規制をして一時的にはストップしたようですけれども、これについての提訴はまだ下げられていない。
日本の主要品目については
アメリカ政府が公的に言っているのとは全く違って、こうした攻撃が一方的に加えられておる。まさに一部の
新聞が述べているように、鉄鋼戦争あるいは造船、海運戦争、
自動車、家電戦争と言っていいようなものが
日本の主要輸出品をめぐって起こっておる。これは
日本では不況品目ではない。造船を除いては不況品目ではないにもかかわらず、一番出しているところについて、
アメリカ、ECなどにおいて朝野を通じての大反攻攻勢がかけられているテーマである。これに対して対策がうまく立っているのか、それをむしろ私は関係各大臣に十分伺いたかったのです。
ところが、これがいずれも適切でない。この対策が立てられていないだけではなく、こうした問題に対して
日本の諸官庁は明快にそれら政府に答えていない。それらの国々に対するマスコミに対しても明快に説明していない。こうしたことが悪条件として重なっておる。したがって、
日本悪者論はかつての
日本黄禍論を超える規模となって定着しつつあるというのが
実情だと思うのです。私はこれは指摘するにとどめて、政府にこれから別の
委員会等でも申し上げますけれども、これはちょっとお考えいただかなければいけない。
日本は内需に対して、内需を振興して何とかすれば何とかなるというような考え方ではなくて、世界じゅうの非難の的になり始めて、世界の中で生存することはできないという、この外側から見た
日本の経済政策というのを考え直さないと危ないではないか。まさに胸を張っておられない。
日本で輸出がうまくいった、そしてドルがたまった、ああ
日本は結構であったということは言えない。逆に、いまの段階では、たまること自体がもう最大の害悪であり、けしからぬことであり、
日本の他国に対する収奪でありという声が、ただに先進国からも起こってきているだけでなく、後進国からも起こってきている。世界の非難の中で
日本は孤立しておる。浩然と孤立して、まるでサンドバッグがプロレスラーから殴られているように、殴られっ放しで殴られておる。ひたすらもうけておる。そのあらしをかいくぐってまたもうける。また黒字がふえていく。これは政策でもなければ政治でもない、経済でもなければ
外交でもない、まさに根本的変革を要する問題であろう。だから私が、経済の専門家であると言われておる
総理に申し上げるのには気の毒な質問です。しかし、事
外交問題から見る限りは、これは致命的な欠陥だと言うしかない。これはひとつぜひともお直しをいただきたい。もう徹底的に直していただかなければとんでもないことになる。
その例として、それは基本的な話なのですが、豪州とニュージーランドとの関係を最後に
一つだけ触れておきたいのです。これは豪州からいま砂糖の船がやってきて、東京湾の上に十五隻たまっておるのです。この約二、三十万トン近い砂糖船が航路の支障になり始めた。もうこれ以上は東京湾に泊まってもらいたくないというので、今度神戸の方へ砂糖の船を回すというんですね。向こうからはどんどん遠慮会釈なく入ってくる。そうして両者との間の砂糖の協定というものはできない。そうして
日本側は、協定はもう破棄すると述べておる。そして、これは商売人がやっておると言うけれども、
日本の農林省の重要なサゼスチョンと介在と強圧によってつくられた砂糖協定でありまして、これは過去の失敗をいまさら言っても仕方がないですけれども、後ぬぐいをしなければいけない。それがされていない。これはぜひ片づけていただきたい。
そしてまた肉ですね。肉の輸入のシステムが、先方から言えば乱暴をきわめている。十二万トン輸入した年があったら、その次の年はゼロにした。オイル・ショックの後ですけれどもゼロにした。これはオーストラリアの農民が文句を言う方が正しいだろうと私は思います。十二万トン輸入して、ゼロなんといったら、向こうの農業も畜産業もぶっつぶれてしまう。そうしておいて、今度はどういうふうにしたかというと、いま六カ月の輸入割り当てはするけれども、今度実際に要る段になると、一月ごとにフローズンビーフを何丁、チルドビーフを何丁、これはビーフの種類でありますけれども、その種類を細かく刻んで、ちょこっちょこつと毎月少しずつ言う。そうすると向こうは、一体何を何トンいつ用意しておいていいかわからない。私は、オーストラリアにこういうしわ寄せをするということは、わが国の
外交政策から言っても安全保障政策から言っても、これは危険なやり方である。これは農林省に任せるだけの問題としては違うのではないかと思うんですね。
また、もう全部固めて言ってしまうのですけれども、ニュージーランドでは、ECから切り離された、イギリス連邦から切り離されて、売るものと言えばチーズであるとかあるいは牛乳であるとかあるいは木材であるとか、ごく少数のものである。ところが、木材の規格がちょっと
日本の規格と違うというので入れない。税金を高く課する、あるいはチーズやその他については、向こうがもう
日本は一遍に買ってくれないというので、今度はしょうがないからというので二百海里宣言を行って、約八万トンに近い大きな魚の海域をクローズして、そこから
日本船を追い出そうと、そしてソ連に接近してソ連政府にこの魚をとらせるように交渉するとまで息巻いておる。こういうもうとげとげしい関係になってしまって、不況はまさにこの国全体を破産状態に近いところへ追い詰めておる。私は、わが国の酪農を守り、わが国の農業を守るということも事実ですけれども、こうしたことはやはりトータルで考えられなければいけないのではないか。そして対策というものが立てられないと、
日本は農業を守って国をつぶすことになりかねない。消費者をかばおうとして生産者をつぶしたり、生産者をかばおうとして消費者をつぶしたりすることは、しばしば当
委員会でも論議が出ているけれども、周辺の諸国との安定的な関係を構築するということは、この不況対策あるいは黒字減らしの大問題の中でもかなり神経を使ってやるべきことではないか、こう思っておるわけなんです。その辺、もう一歩ももう二歩もの前進をお願いできぬだろうか、もうちょっと愛想よくできないかというのが、まあいろいろ技術的な困難性はきわめてある問題であるにもかかわらず、私の持っている感想なんですが、いかがですか。