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1977-10-13 第82回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月十三日(木曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君   理事 小此木彦三郎君 理事 栗原 祐幸君    理事 澁谷 直藏君 理事 細田 吉藏君    理事 山下 元利君 理事 安宅 常彦君    理事 武藤 山治君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    逢沢 英雄君       伊東 正義君   稻村左近四郎君       越智 通雄君    奥野 誠亮君       片岡 清一君    金子 一平君       川崎 秀二君    木野 晴夫君       北川 石松君    藏内 修治君       櫻内 義雄君    笹山茂太郎君       始関 伊平君    谷  洋一君       中村  直君    西田  司君       藤井 勝志君    古井 喜實君       堀内 光雄君    松澤 雄藏君       松野 頼三君    阿部 昭吾君       井上  泉君    井上 普方君       石野 久男君    上原 康助君       大出  俊君    川俣健二郎君       小林  進君    佐野 憲治君       多賀谷真稔君    藤田 高敏君       坂井 弘一君   平石磨作太郎君       広沢 直樹君    二見 伸明君       渡部 一郎君    大内 啓伍君       河村  勝君    安藤  巖君       瀬崎 博義君    寺前  巖君       大原 一三君    田川 誠一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 瀬戸山三男君         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 渡辺美智雄君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  田中 龍夫君         運 輸 大 臣 田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 長谷川四郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       小川 平二君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      園田  直君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      藤田 正明君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      西村 英一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 三原 朝雄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 田澤 吉郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      室城 庸之君         総理府統計局長 吉岡 邦夫君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局審査部長 野上 正人君         警察庁刑事局長 鈴木 貞敏君         警察庁警備局長 三井  脩君         行政管理庁行政         管理局長    辻  敬一君         行政管理庁行政         監察局長    川島 鉄男君         防衛庁長官官房         長       竹岡 勝美君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁経理局長 原   徹君         防衛庁装備局長 間淵 直三君         防衛施設庁長官 亘理  彰君         防衛施設庁総務         部長      銅崎 富司君         防衛施設庁施設         部長      高島 正一君         防衛施設庁労務         部長      古賀 速雄君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   牧村 信之君         沖繩開発庁総務         局長      亀谷 礼次君         沖繩開発庁振興         局長      美野輪俊三君         国土庁計画・調         整局長     下河辺 淳君         国土庁土地局長 松本 作衛君         国土庁大都市圏         整備局長    国塚 武平君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君         法務省入国管理         局長      吉田 長雄君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省中近東ア         フリカ局長   加賀美秀夫君         外務省経済局長 本野 盛幸君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 大森 誠一君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省国際金融         局長      旦  弘昌君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省管理局長 三角 哲生君         厚生省年金局長 木暮 保成君         農林大臣官房長 澤邊  守君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         農林省食品流通         局長      杉山 克己君         水産庁長官   岡安  誠君         通商産業省貿易         局長      西山敬次郎君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         通商産業省機械         情報産業局長  森山 信吾君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         運輸省海運局長 後藤 茂也君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君         運輸省港湾局長 大久保喜市君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         運輸省自動車局         長       中村 四郎君         運輸省航空局長 高橋 寿夫君         労働省職業安定         局長      細野  正君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省都市局長 中村  清君         建設省道路局長 浅井新一郎君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治大臣官房長 石見 隆三君         自治省財政局長 山本  悟君         自治省税務局長 森岡  敞君  委員外出席者         外務大臣官房領         事移住部長   賀陽 治憲君         会計検査院事務         総局第五局長  東島 駿治君         住宅金融公庫総         裁       大津留 温君         参  考  人         (海外経済協力         基金総裁)   石原 周夫君         参  考  人         (海外経済協力         基金理事)   結城  茂君         参  考  人         (日本住宅公団         総裁)     澤田  悌君         参  考  人         (年金福祉事業         団理事長)   高木  玄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 十月十三日  辞任         補欠選任   片岡 清一君     白浜 仁吉君   川崎 秀二君     西田  司君   北川 石松君     森山 欽司君   笹山茂太郎君     谷  洋一君   根本龍太郎君     堀内 光雄君   藤田 高敏君     井上  泉君   松野 頼三君     中村  直君   浅井 美幸君    平石磨作太郎君   矢野 絢也君     渡部 一郎君   荒木  宏君     瀬崎 博義君 同日  辞任         補欠選任   谷  洋一君     笹山茂太郎君   中村  直君     松野 頼三君   西田  司君     逢沢 英雄君   堀内 光雄君     根本龍太郎君   井上  泉君     藤田 高敏君  平石磨作太郎君     浅井 美幸君   渡部 一郎君     矢野 絢也君   瀬崎 博義君     安藤  巖君 同日  辞任         補欠選任   逢沢 英雄君     川崎 秀二君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十二年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十二年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ――――◇―――――
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十二年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三件を一括して議題とし、質疑を行います。大出俊君。
  3. 大出俊

    大出委員 外務大臣おいでになっていますね。けさの新聞にもちょっと出ておりますけれども、例のハイジャックに関する釈放犯人六人に関する旅券外務省が出していたということであります。これは現地に行っておられた、大変御苦労さんでございましたが、石井政務次官外務省橋本参事官、バングラのマームド参謀長、こういうふうな方が当時いろいろ話し合われて、生命の安全という意味でこういう措置をとったということなんでありますけれども、私どもが聞いている限りは、出していないということを何回も外務省は言っておられたわけでありますけれども、大変どうもこの点は不見識だという気がするのであります。これは国民皆さん感情もございましょうし、ここのところはひとつ、ゆうべ遅くまで御相談をなさっておったようでありますけれども、はっきりしていただきたいのであります。
  4. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今回の事件につきまして、旅券関係につきまして御説明をさせていただきます。  一昨年の九月のクアラルンプール事件の際には、釈放罪人に対しまして、日本からの出国に際しましてやはり旅券を発給すべきであるというふうに考えて旅券を発給したわけであります。ただし、その釈放罪人クアラルンプールにいる段階におきましてその旅券を返納させた、これは出国の際の必要な手続であるということでクアラルンプールでこれを返納させた、こういう経過であります。  今回の事件につきましては、前回クアラルンプール旅券を返納させたということもあり、出国に際しまして旅券を発行しないで六名の釈放罪人に対しまして出国させたという経緯でございます。そういう点から今回は旅券を発給しないということが新聞に報道されたわけであります。  ダッカにおきまして石井団長は、救援機内におきまして、残った一人の釈放罪人であります奥平に対しまして、ダッカにおいて乗客全員釈放を貫徹することが日本政府の方針であることを強調されたわけでありまして、なお、その際五人はすでにもう乗客交換に機内に乗ってしまった後でございました。その後におきまして、奥平に対して石井団長がいろいろ説得を試みられたわけであります。奥平が乗機後に直ちに犯人等説得すること、すなわちダッカにおきまして乗員を全員釈放してもらいたい、あるいはそのためには団長等人質になるからぜひ乗客全員釈放してもらいたいということを説得をされ、その説得方奥平石井団長がいろいろ話されたわけであります。また、人質として搭乗の上、交換条件として乗客全員釈放ダッカにおいて実現することを強く石井団長要求された。――いまのところは重複いたしましたが、奥平団長要求に理解をある程度示しながらも、即答を避けて、日本政府旅券またはそれに類するものを手渡してほしいということを強く要請したと聞いております。  政府団長は、全員釈放の最後の可能性を尽くすべきであるという緊急の判断によりまして、やむを得ざるものとして、法的効果は全く伴わないものでありますが、単なる旅券冊子でもよいのではないかと判断して、政府団員はこの旅券冊子六冊をその時点で奥平最終説得に当たっておられましたマームド参謀長に手交をいたし、奥平にそれを手渡すかどうかということの判断マームド参謀長に一任をしたものであります。その後、マームド参謀長石井団長との会話の中で、この旅券冊子は手渡されたということが確認されたという経過でございます。その後、念のため、外務省より直ちに全在外公館に対しまして右旅券冊子番号等を電報して、各国政府関係当局に対し、右旅券冊子が有効でない旨を通知したというのが事実でございます。  これを要約いたしますと、旅券冊子が渡っておる、しかし、これは内容が完備した旅券ではないということでありまして、法的意味におきましては旅券を交付したということではない、しかし、旅券と書いたパスポートという冊子が渡っておる、こういうことであります。
  5. 大出俊

    大出委員 きのうから聞いていて、どうもよくないのですな。一つは、どうも二元外交で、外務大臣が二人いるのじゃないかと思うようなことですな。これは園田さん、あなたは昔政務次官をやっていて、逸話になっていますが、山口淑子さんと御主人の仲を取り持ったなんていって、私、あなたと二人引っ張り出されて証人みたいになったことがあるけれども、かといって外務大臣はちゃんといるのだから、幾ら大蔵何とかといったって……。だから、そこのところをはっきりしてくれぬと困る。  身柄の引き渡しあるいは身のしろ金の問題等をめぐっても、どうも官房長官の方にあのときはちゃんと連絡があったようですね。了解をしておられるのですね。ところが、片方で閣議で大騒ぎが起こるという――きのう何か鳩山さんがしきりに手を挙げていたから、言いたいことが二言や三言はあったのじゃないかと思うのですけれどもね。悪者に外務省だけがなったのじゃたまったものじゃないという気があったのじゃないかと思うのだけれども、そこらははっきりしておいてほしいですね。  この点は、今度も官房長官はちゃんと連絡を受けているのですね。いま旅券じゃないと言うけれども、番号が載っとって氏名が載っとって、これが旅券じゃないんですか。旅券というのは旅券番号というのがあるんですからね。そうでしょう。謄本だ何だと間に合わなくたって、写真が張ってないだけでしょうが。「〃変造〃可能な」と新聞が取り上げるけれども、聞いてみればこれはそのとおり。そういう言いわけをしないで、やむを得なかったらやむを得なかったと、さっき経過を私が述べたんだから、はっきりしてくださいよ。そうしなければ国民が納得しようがないでしょう。いかがでございますか。官房長官、一言何か言ってください、二元外交は私は反対だから。
  6. 園田直

    園田国務大臣 おしかりを受けましたが、私、終始外務大臣の職権を越えてやったことは全然ございません。今度の旅券の問題は、私も対策本部長でございますから、責任は当然負いますが、その事実を聞いたのは、道正長官から昨晩初めて報告を聞いたわけであります。  なお、身のしろ金その他については、総理外務大臣は同様の経過を聞いておるわけで、私だけが独断で聞いておったわけではございませんので、どうか御了承を願いたいと思います。今後とも十分注意をいたします。
  7. 大出俊

    大出委員 力のある人はとかく前に出たりするものでございまして、また、これは性格もございましてね、園田さん。まあ、そこから先はやめておきましょう。  ところで、いま聞いてみると、道正長官の話も載っているけれども、きのう聞いたというのは全く不見識きわまる。連絡不十分もいいところじゃないですか。外務省、これは責任がありますよ、きのう聞いたなんというのは。どっちが本当なんですか。下手をまごつくと、だから二元外交になるので、初めからちゃんとやったといま言っているんだけれども、きのう聞いたというんじゃ、対策本部長、何をやっていたんですか。そうでしょう。はっきりしてください。外務省を責めているんじゃないん、だから、はっきりしてください。文句があったら言ってください。
  8. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この旅券冊子ダッカに行っていた。(「旅券じゃない」と呼ぶ者あり)いや、旅券のこういう材料です。旅券冊子ダッカ外務省員が用意して持っていったということは、官房長官は、これは当時外務大臣臨時代理であられましたが、御存じなかったことと思います。外務省の幹部も次官も知らなかったというのが実情でありまして、それは出国の際に旅券が要るのではないかというようないろいろな議論があったと思います。しかし、何かの役に立つかもしれないということで持っていったというのが実情でありまして、これは領事移住部長限りの判断でそのような用意をしていったということでございます。
  9. 大出俊

    大出委員 それでは外務大臣、あなたのところが旅券を偽造したんじゃないですか。旅券材料だなんて、旅券冊子から今度は旅券材料。本人が旅券申請をしたんじゃないでしょう。そうすると、あなたのところが旅券を偽造したことになる。  総理に承りたいんですが、総理、どうもゆうべ聞いたのきょうのというような話をいまされたって迷惑な話だ。大変これは混乱していまして、国民の受け取る感情がありますから、一体これはどういうふうに総理はお考えになり、かつ、今後どういうふうにこの問題について、対国民という意味で御決断をなさいますか。
  10. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいま外務大臣から御答弁がありましたような次第で、ああいう際の臨機の措置としてやむを得ざる措置であった、こういうふうに理解しています。今後は、議論だとか誤解だとか、そういうようなことが起こらないように配慮いたします。
  11. 大出俊

    大出委員 今後この点はすっきりさせていただきたい。非常にこれはこそくでございまして、国民感情というものをひとつお考えいただきまして、善処いただきたいのであります。  時間がございませんから次の問題に移らせていただきます。  総理、これはひとつ冒頭に承っておきたいのでありますが、私の旧選挙区、横浜市緑区でありますが、昨年の暮れまでは私の選挙区でございましたが、二つに分かれましたから旧選挙区でございますが、RF4Bファントムが落ちたわけであります。厚木基地を中心にすると、百五十六回目の事故でございます。これは参議院の本会議総理答弁によりますと、初動において万全の措置をとったと報告が来ておると、こう答えておるのですね。初動において万全の措置がとられたという報告をあなたが受けている、こういう趣旨の答弁をなさっておられる。これはまだ参議院の本会議録ができておりません。新聞が伝えている中身でありますが、これは初動において万全の措置がとられていると私は全く思わない。参議院内閣委員会で、三原長官はミスがあったということをお認めになったのです。万全の措置をとったという報告が行っているとすると、これはちょっと重大問題だ。  きのう話がちょっと出ましたけれども、もうちょっと詳しく申し上げますが、厚木基地海上自衛隊救難ヘリが三機ある。私は確かめてあります。このうちの二機は整備中で飛べない。これもふざけた話でございまして、これは有事即応どころじゃない。一機しか飛べない。一機しか飛べない一機が飛んできた。飛んできたはいいけれども、小手をかざして焼けているところをながめて、ぐるぐる旋回をした。パラシュートでおりた人、一人の米パイロットプロパン屋さんの屋根におっこちた。もう一人は、竹やぶがあって、ここにエノキの木があるが、エノキの木にパラシュートをひっかけてぶらさがっちゃった。こっちをながめて、そっちへ飛んでいって二人を収容していきなり帰っちゃう。おさまりがつきませんよ。  私のこの間までの選挙区ですから、知った人がいっぱいいる。これは私は皆さんから、こんなばかな、自衛隊というのは、あなたは防衛問題を長年やっているけれども、日本自衛隊じゃないのかと言われる。アメリカ自衛隊なのかと言う。それは市民感情としてはあたりまえですよ。家の前に焼け出された、全身やけどですからね、小さい子供さん二人、妹さんと奥さん。妹さんというのは、結納が終わって、花嫁修業でうちにいて、十二月に結婚する予定になっている人です。しかも、どこからも公的機関は来ない。隣に東急建設の宅造現場があって、ここの方が飛んできた。隣の奥さんのエプロンを外してあわててこの林一久さんの奥さんを抱えたら、足を強く握ったらずるっとむける。やけどで、悲惨なものですよ。あわててまた飛んで帰って、飯場を飛び歩いて毛布を四、五枚持ってきて、毛布に包んでやっとこの飯場の方々の自動車病院に運んだ。すぐそばの個人病院に行って応急手当て、それからまた病院に行く、こういうことですよ。何ともこれは悲惨なものです。だから、御主人は言っていますけれども、私の家族は公的な機関のお世話についにならなかったと言っている。そうでしょう。何が一体万全の措置なんですか。一つも万全じゃないじゃないですか。これははっきりしておいていただきたいのですがね。  そして、時間がないからあわせて言いますが、自衛隊救難機には、救難規定があるわけですね。この規定の面からいったら、あるいは指示どおりかもしれない。救難行動をちゃんととったときのうあなたはおっしゃった。そのとおり。それなら、この規定の検討、改正をなぜしません。あたりまえでしょう。あわせて、万全の措置とおっしゃった総理、あなたはそういう報告をされたんならされたではっきりしてください。
  12. 三原朝雄

    三原国務大臣 いまの御指摘、お尋ねの点についてお答えを申し上げます。  御承知のように、緊急事態発生の通報を受けて救難措置に出たことはいま仰せのとおりでございます。そこで、一時二十三分に出ておりますが、三十分ごろと言っておりますけれども、三十分前後だろうと思いますが、事故現場を通過して、すでに消防の自動車などが来ておった状態を見て、これは応急の対策がなされておるというような判断をしたろうと思います。それも私の想像でございますけれども……。したがって、パイロットの救難に向かったということでございます。ただ、ここでまた帰りに現場を見ていっておるのでございますが、上を回っておりましたのは米軍のヘリではないかとも思いますけれども、そこらあたりの状況はいま明確に調査をいたしております。  そこで、私といたしましては、あのときも申し上げましたように、米軍のパイロットを救助して帰ってきた、しかしその後なぜまた引き返して現場に行かなかったかというようなこと、あるいはそういう状況を受けて墜落地における被害状況についてなぜ対処をしなかったかということ、これは自衛隊は陸上も厚木におりまするし、航空もおるわけでございまするから、海上もおるわけでございまするから、そこから出動すべきではなかったかという反省もいたしております。  そういうことでございまするが、御承知のように、第一次的には地元の警察なり消防がお手当てをしてくださる。しかし、いま御指摘のございましたところの、自衛隊にはそれじゃそういうときに一般の救難規定の中にはないのか、これは明確にございます。そういう場合には処置をしなければならないということがありますが、そういう処置に照らしてみます場合に、私は万全な処置だと思っておりません。したがって、そういう規則なり訓令の中にはっきりしたものを持ちながら、対処したことについて万全でないので、この点については再点検をして今後に対処するように指示をいたしておるところでございます。  総理に対しましては、私は、いま申し上げましたように、当時の厚木海上自衛隊としては応急の処置をいたしましたという報告を受けましたので、私から、それに対処する海上自衛隊としては万全な処置を得たと思いますということを御報告いたしたのでございます。
  13. 大出俊

    大出委員 それじゃ、報告を聞いたんだからしようがないけれども、三原さん、あなたの責任だ。しかし、総理がそう言ったことについて、そうでないことをいま答えたわけだから、ミスがあった、反省していると言うんだから、総理の万全の措置というのはちょっとお取り消しください。
  14. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、ただいま三原長官が御報告申し上げたような報告を受けておるのですよ。おりますが、参議院会議で、初動において万全の措置がとられましたというような答弁をした記憶は私はないのですがね。あるいは三原長官がしたのか、どなたがしたのか、私自身としてはいま記憶にありません。
  15. 大出俊

    大出委員 それは、私は会議録を調べましたが、もう三日ぐらいかかるのですよ。だから明確になっていませんが、新聞はそう書いています。したがって、これは新聞に幾つか書かれておりますから取り上げたわけですから、調べて明確にいたします。  ただ、いまの初動において万全の措置でないということはお認めいただきたいのですが、いかがでございますか。救難規定というのは私もよく知っておるのですから。
  16. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私も、非常に瞬間的な技術的な出来事でありますので、判断する見識を持ちませんが、三原長官がおっしゃったとおりに御理解をお願い申し上げます。
  17. 大出俊

    大出委員 救難規定は再点検するということですから、きのう御質問が出ましたけれども、私は、救難規定というものはもう一遍点検をし直しまして整理する必要があると思う。時間がございませんから中身をここで繰り返しません。私も読んでおりますけれども、これはほかならぬ自衛隊ですからね、こうだと指令をすればそうなっちゃうのですから、そこのところはきちっと、日ごろの訓練も必要ですから、はっきりしておいていただきます。  そこで、時間がありませんから何点か申し上げて御回答をいただきたいのであります。  この事故現場にやがて米軍が参りまして、緑警察の署長以下の警察官がいっぱいいる、新聞記者がたくさんいる、私のところの竹田四郎参議院議員も、伊藤茂衆議院議員も現場に行っている、石原守という県会議員も行っている。入れないのですね。緑の警察の責任者は米軍と口げんかになっている。つまり、そう集まっているところにいきなり米軍の大型ヘリでばっとおりてきて、事故現場ですから破片もいっぱいあるところへ砂ぼこりを噴き上げて集団の真ん中におりた。それで警察か何かはどけと米軍は言うのです。占領意識むき出しで、これはいたけだかだ。いまは占領時代じゃないのですからね。新聞記者までノーノーと言って押し出すんだ。立ち入り禁止の措置をとろうとする。一体こういうことを放任できますか。  ところで、さて、一体どこからこれがくるか、ここが重大問題でありますけれども、二十八年九月に合意されている「裁判権分科委員会刑事部会における行政協定に関する事項」、これは二回国会に出されておりまして、二回とも文章が違いますが、「米軍機の事故現場における措置」というのがございます。この「米軍機の事故現場における措置」において、米軍は「必要な救助作業又は合衆国財産の保護をなすため事前の承認なくして公有又は私有の財産に立ち入ることが許される」と、「事前の承認なくして」となっている。これは重大な問題であります。主権国家でございますから、これじゃ全くこの国の主権はどこかへ行ってしまう。  さて、これは三十五年の安保特別委員会に出されたときには、時間がないときにはしょうがないからとなっていた。ところが、四十二年の参議院の予算委員会に出されたときには改訳されていて、承認が要らなくなっていた。これは重大な問題だ。そこへもってきて、「日本国の公の機関は、合衆国の当局が現場に到着する迄財産の保護及び危険防止のためその権限の範囲内で必要な措置をとる。」という合意がある。手は出せない。落っこちてきた飛行機は合衆国財産なんだ。これを保護するという義務がこの合意によって日本側にある。何もできない。だから、合同調査をやったって米側主導にならざるを得ないでしょう。憲法に言う財産権なんというものはここでは認められていないでしょう。これを変えなければいま私が例に挙げたことが起こってしまう。  二十八年のこの合意事項、「米軍機の事故現場における措置」、ここのところに手を入れて――主権国家、憲法はいろいろな議論がありますが、安保に優先することだけは間違いない。安保法体系をつくることは間違い。だとすれば、戦後三十何年もたっているのですから、そこを明確にする責任がある。でないといまのようなことが起こってしまう。明確にしていただきます。簡単に答えてください。
  18. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいまお示しになりました昭和三十五年三月二十五日に衆参安保特別委員会へ提出いたしました基地外の米軍機墜落事故現場における手続に関します合同委員会の合意、これは昭和二十八年十月二十二日のものでございます。これにおきまして、日本文といたしまして、「事前の承認を受ける暇がないときは、」となっておるわけでありますが、英語では「プライヤー ツー オーソリゼーション」という表現になっておる。これは……。
  19. 大出俊

    大出委員 そこでやめてください。鳩山さん、それがあなた間違っているんだ。外務省は少し考えてくださいよ。あなたの方がわからないんだ。きのう私も聞いてきた。四十二年に出した中身がわからないんだけれども、どういうものを出しているのでしょうか。いまあなたは三十五年と明確におっしゃったでしょう。三十五年のはいまのようになっている。「承認を受ける暇がないときは、適当な合衆国軍隊の代表者は」憲法上の財産権を侵害して入ってよろしいことになっている。  これは「承認を受ける暇がないときは」というのは、三十五年三月二十五日の衆参の安保特別委員会に提出した資料なんだ。  ところが、昭和四十二年七月十四日に参議院の予算委員会に提出した資料ではここが変わっている。「事前の承認なくして」となっている。「事前の承認なくして公有又は私有の財産に立ち入ることが許されるものとする。」となっている。合意事項の中身が変わっている。だから、いま新聞の社説を見てごらんなさい。どこの新聞を見たって、みんな四十二年の新しい方を書いているじゃないですか。あなたは何で三十五年のを持ち出すのですか。承認を得る時間がないときにはとなつていた。これは多少なり財産権を認めている。三十五年。それを四十二年に出してきた中では変えちゃって、「事前の承認なくして」になっている。承認が要らない。まるきりこれじゃ安保法体系じゃないですか。憲法優先はどこへ行っちゃうのですか。憲法に保障されている財産権を否定しているじゃないですか。  あなたの方に私の方から質問の中身を言ったら、これは探してみてわからないと言うんだ。いままであなた方は合意事項を出さないでしょう。この部分だけ二回しか国会に出していないでしょう。三十五年の方は、いまあなたが言ったように、承認を得る時間がないときはになっている。承認が必要になっている。時間がなければしょうがないから入る。こうなっている。四十二年のものは必要がなくなっている。「事前の承認なくして」に変わっている。どこでだれが一体変えたのですか。そんないいかげんなことは許しませんよ。
  20. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  多少細かい問題になりますので、私からお答えさせていただきます。  先生の御指摘のように、そこの表現の問題があることは事実でございます。  問題は、いま大臣も申し上げましたように、「ウイズアウ トプライヤー オーソリティー」ということになっておりまして、それは日本側の事前の承認がなしにというのが、そのまま訳せばそういうことになるわけでございます。  問題は、基地の外においてアメリカ側の官憲がいかなることをその事故の現場でなし得るかということでございまして、それは当然に日本側がこれを行うのが原則でございます。それが当然の前提になりまして、しかしとっさの場合に、本当の緊急の事態において日本側の事前の承認を得ることができないという場合のことをここに書いてあるわけでございまして、そういう意味で、「事前の承認を受ける暇がないときは」ということをそこに書いてあるわけでございます。  意味は同じことだと理解いたしております。
  21. 大出俊

    大出委員 英文でもう一遍言ってください。
  22. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 英文は、「ウイズアウト プライヤー オーソリティー」というということでございます。
  23. 大出俊

    大出委員 直訳すれば、事前の承認は要らないじゃないですか。同じ英文であるのに、なぜ二つの解釈を出すのですか。
  24. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 いま私が申しましたのは、二つの解釈ということではなくて、その両者の趣旨は全く同じであるということを御説明申し上げたつもりでございます。
  25. 大出俊

    大出委員 冗談言っちゃいけませんよ。いいですか。「事前の承認を受ける暇がないときは」というのは、受けるいとまがあれば事前の承認を受けるのでしょう。もう一遍読みますよ。「事前の承認を受ける暇がないときは」。いとまがあれば受けるというたてまえでしょう。財産権を認めているでしょう。いとまがなければ仕方がないという解釈でしょう。  もう一つの解釈は、「事前の承認なくして」でしょう。財産権を認めていないでしょう。憲法上の問題だ。直訳すれば、いまのは「事前の承認なくして」だ。そうでしょう。  あなたの方は、世論がうるさくなって都合が悪くなると三十五年の解釈を出してくる。ところが、原文は文字どおり「事前の承認なくして」と解釈できる。今回、私が改めて刑事裁判管轄権に関する合同委員会合意を出せと言ったら、もたもたしておられたが出してきた。出してきたら、何とこれは、世論がやかましくこの問題をついている、新聞の社説はほとんど「事前の承認なくして」になっている、だものだからまたまた三十五年の解釈に戻っている。何でこういうこそくなことをするのですか。ちょうど前の解釈と同じように「暇がないときは」――ここにございますよ。三十五年に戻っている。三十五年には「事前の承認を受ける暇がないときは」となっていた。四十二年には「事前の承認なくして」になっていた。また今回ここへ出したやつは、「事前の承認を受ける暇がないときは」になっている。同じ文章を、そのときの世論をながめて、何でこう使い分けるのですか。原本は出さない。英文は出さない。そういうこそくなことで審議ができますか。統一見解を出してください。
  26. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先ほど御説明申し上げまして御理解をいただきたいと思いましたのは、私どもはその事態に応じて使い分けるというような意向は毛頭ないわけでございまして、原文の趣旨、先ほど申しました「ウイズアウト プライヤー オーソリティー」というのが、これはいま申し上げましたように、基地の外でアメリカ軍がいかなる行動を緊急とっさの場合にやるかということでございますから、当然に原則は日本側がやるべきものでございます。そこで、その日本側の事前の承認を得るいとまのないような本当にとっさの緊急の場合にどうしたらいいかということで、「ウイズアウト プライヤー オーソリティー」である程度のことを米側もやり得るであろうということを定めたものがこれでございます。その趣旨をよくわかるように、その「ウイズアウト プライヤー オーソリティー」を表現いたしまして、事前の承認を得るいとまのないときはというふうにいたしまして提出いたしましたのが三十五年のことでございます。その後、恐らく、そこの「承認なくして」とやりましたのは、その原語の意味をそのまま逐語的に訳したということで違いが生じているわけですが、根本の趣旨は、ぜひこの点は御了解いただきたいのですが、根本の趣旨は同じことを言っておるつもりでございます。
  27. 大出俊

    大出委員 大変な違いじゃないですか。財産権を認めているのと認めていない、明確な違いじゃないですか。  最近また出してきたのは「承認を受ける暇がないときは」。三十五年の解釈と一緒だ。その真ん中に四十二年の解釈、「事前の承認を受ける暇がないとき」から急に変わって「事前の承認なくして」じゃないですか。承認は全く要らないのだ、これは、真ん中の解釈は。三十五年と四十二年と両方とも「事前の承認を受ける暇がないときは」。承認を受けることが原則じゃないですか、こっちは。しかも、真ん中の承認なくして勝手に入れるというのが原文そのとおりの解釈だと言うなら、何でこれ一本で出さないのですか。世論によってなぜこう変えるのですか、同じ文章を。そういうごまかしは許されませんよ。そんなばかなことで審議ができますか。ふざけなさんな。  これだけ大きな問題になっているのに、同じ原文を何で二つの解釈で出すのですか。正反対じゃないですか。財産権を認めるのと認めないのと両方じゃないですか。そんなばかなことありますか。だめだ、これは。(「総理、統一見解」と呼ぶ者あり)こんなことで、これだけ被害をこうむっているのに黙っていられるか。各社の新聞の社説見てみろ。全部承認を要らないのだになっているじゃないか。いま外務大臣もそう答えたじゃないか。そんなばかな話あるか。主権国家だ。占領中じゃないのだ。主権の問題だ。
  28. 田中正巳

    田中委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  29. 田中正巳

    田中委員長 では速記をとって。  鳩山外務大臣
  30. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま御指摘の「ウイズアウト プライヤー オーソリティー」という英文の日本語の訳が二つ出ておるということは、もしそういうことがあれば大変困ったことであろうと思います。私どもは、趣旨といたしまして、この二つの表現、やはり緊急事態のときであるから事前の承認が得られない、そういう環境のもとでそのような若干意訳をしたような翻訳になっておると思います。(大出委員「意訳じゃない、正反対なんだ」と呼ぶ)  そこで、この問題はやはり法務当局とよく検討をいたしまして、直すべきものは直す、またさらに、合同委員会等で検討すべき事項があれば積極的に検討いたしまして、対策を講じたいと思います。
  31. 大出俊

    大出委員 外務大臣、ちょっとこれを見てください。これは今回出したんだから。全然正反対でしょう。――じゃ、午後、統一見解をお出しになるというわけですな。よろしゅうございますね。
  32. 田中正巳

    田中委員長 政府側に申し上げます。  本件についての統一的な見解ないしは中間的な答弁を午後にできるようにお願いいたしますが、できますか。
  33. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 法務当局と至急検討いたしまして、なるべく早く、なるべく本日の午後中に何とか一応の御答弁ができるように、法務当局と至急検討、相談いたします。
  34. 大出俊

    大出委員 これは「事前の承認なくして」というのは事前の承認が要らないんですからね。いきなり人の財産に入れるんですから。それから「事前の承認を受ける暇がないときは」というのは、事前の承認を受けなければならないのが原則であります。主権も財産権も認めている。ただ、いとまがない場合にはということになっている。正反対でしょう。片っ方は主権も憲法上の財産権も認めていない。問答無用で入れるというのが片っ方の解釈。だが、いま出している解釈は、事前に承認を受けるいとまのないときは、承認を受けるのが原則、そのいとまがない場合はということですから、主権も認めていれば財産権も認めている。正反対でしょう。  いま一番大きな問題は、主権の侵害ではないのか。戦後三十何年たって、憲法上の財産権の侵害ではないのか。そこをはっきりしないから、米軍がいたけだかに飛び込んできて、みんな追い出しちゃって、国会議員が入れてくれったって入れないことになってしまう。ここに問題があるというのがごうごうたる非難の中心でしょう。  同じ文章で、直訳すれば事前の承認が要らないんだ、いきなり土足で人の財産に入れる。それを何で事前の承認を受けるいとまのないときはなんといって財産権や憲法を認めたような形の解釈を出してくるのか、同じ原文から。それはごまかしでしょう。許されない。それは事憲法優先なのか安保優先なのかという問題と関連するし、主権の問題だし、財産権の問題だからですよ。わかりますね。総理、この点はおわかりになりますね。――大変残念な、時間を浪費したことになりましたが、問題が問題ですからやむなく長くなりましたが、もう一点だけこの件につきまして承っておきます。  事故件数を見ますと、米軍機の事故というのは、昭和二十七年の講和発効以後今日まで八百九十八件あるんですよ。各基地がありますが、厚木の場合は五十一件あるんです。事故件数は各基地の中で最高なんです。この五十一件というのは墜落ですよ。墜落だけで五十一件。三沢が三十二件で二番目。その他の事故、不時着などを入れますと、厚木は百五十六件あるんですよ。  そこで、二点承りますけれども、米軍は、地面にぶつかる十秒以内にパイロットが緊急脱出をした、こう言っている。米軍の発表です。ところが、実際に横浜市が目撃者あるいは専門家等によって角度その他高度等を調べてみると、どうしても三十秒以上前に脱出している、こういう結果だ。防衛庁が私に出してきた文書によると、一時二十分ごろに墜落した。一時二十分地面に落っこちた。この一時二十分というのは、七日の日の防衛庁における米軍との事故分科委員会、ここで緊急脱出の時間は一時十九分十二秒だという。一時十九分十二秒と米軍が報告している。これが緊急脱出の時間。防衛庁は二十分と言っている。この間に四十八秒あるんだ。米軍は十秒以内、こう言う。横浜市は、三十秒を超えている、それだけの余裕があったと言う。三十・二秒。だとすれば、機首をもう少し右に向けて、隣は広大な空き地なんだから、そこまで飛行機を持っていく余裕は十二分にあったはずだということになる。  ここで問題は、米軍がいままでついに墜落した時間は言わない。緊急脱出時間だけは一時十九分十二秒と言っているけれども、地面にぶつかった時間は言わない。なぜ言わないか。言えば脱出したところから地面にぶつかるまでの秒数がわかってしまうから。十秒以内と言った。防衛庁だって四十八秒の計算になっている。横浜市の計算で三十・二秒になっている。ならば脱出が早過ぎたことになる。人家に、人に被害を与えないような努力が足りないことになる。だから言わない。なぜこれを明らかにしないか。  もう一つ、ブルー14という航空路がある。自衛隊機なんかでも、三沢に行くのは、日光までブルー14に上がっていって、そこから向こうに行く。ミッドウェーは、房総の向こうの方の海上に116という米軍の専用訓練水域がある、そこに入るときに艦載機は全部二つに分けて、三沢に半分、厚木に半分飛ばす。ブルー14に上がっていく。ブルー14というのは、戦後の米軍の専用航空路です。いまここを使っているのは民間のワンルートしかないはずです。あとは千メートル以下のセスナです。自衛隊も、ほとんど目視航行だからこの空路を使わないで済む。いまだに米軍専用、こういう結果になる。木更津から上がってきて山北へ抜けていく、ちょうどいまの横田の管制塔の上を通って飛んでいく民間航路が一つあるだけです。そうすると、このブルー14というのをどう使ってどういうふうにするかということの決着をつけなければ、いま例に挙げた事故のほとんど全部は、このブルー14の中か、ブルー14と厚木基地をつないでその周辺を回る、そこに集中している。ここを何とかしなければ、ミッドウェーの横須賀母港をつくって以来のことなんだからどうしようもない、これは。私は、そういう意味でここのところは明確にしていただきたいのです、ブルー14について。そして横浜市の言うように、調査委員会には市民の代表と専門家等を入れる、市民の声が聞ける、こういうかっこうにする。それから記録計であるとかボイスレコーダー・テープとかいうものは全部出すべきだ。ここらについて最終的にお答えいただきたい。
  35. 亘理彰

    ○亘理政府委員 お答えいたします。  事故原因並びにその前提になります事実関係の解明については、現在事故分科委員会で鋭意検討作業を進めておるところでございます。  先生からお話しの時間的な関係につきましては、現在正確にわかっておりますのは、この事故機が厚木基地を離陸しました時間、これを私ども先般参議院内閣委員会で御報告しましたときに十七分ごろと申し上げておりますが、これは正確には十六分と十七分の間、これは厚木の管制塔で目視しておりまして、秒までの正確なところはわかりませんが、そういうことでございます。  それから、パイロットが脱出した時期は、これは自動的にシグナルによって信号が送られるようになっておりまして、これを横田でキャッチしましたのがいまお話しの十九分十二秒、こういうことでございます。  墜落の時点につきましては二十分ごろということでございますが、正確な時間につきましては、いろいろ具体的な証言でありますとか写真でありますとか、あるいはパイロット、機体その他物件の墜落位置の関係とか、技術的に推定を十分にいたしませんと、正確なところは判明いたさないのかと思います。  そういったことで、事実関係についてはいま厳密にわかる範囲のことを究明しようということでやっておるところでございます。パイロットの脱出が早過ぎたかどうかという点についても大きなポイントでありますので、この点について解明し得る限りのことは解明して、わかり次第お答えいたしたいと思っておる次第でございます。この事故分科委員会におきましては、そういうことでだんだん技術的分野に入ってまいりますので、私どもは、政府部内はもちろんでございますが、できれば政府部外からも技術的な学識経験者も加えて、技術的に十分詰めるべきところは詰めて御報告申し上げたいというふうに思っておるわけでございます。  それからブルー14の問題につきましては、運輸省からお答えいたすのが適当かと存じます。
  36. 大出俊

    大出委員 では、ブルー14の問題は運輸省に言ってありませんから、私が問題提起をしたということで御検討いただきたいのであります。  それから、横浜市が要求をしております市民感情というのがありますから、これは亘理さんに申し上げておかなければなりませんが、私も大変心配だから、翌日すぐ亘理さんのところへお伺いしたはずです。いろいろ御注意を申し上げた。私も事故をたくさん扱ってきていますからよく知っていますから。  そこでおまけに、その翌日、林一久さん、椎葉さんの奥さんがもう本当に大変にひどい。会わしていただけません。全身やけどですから、会うと雑菌があるというんで会わしていただけませんが、お気の毒な状態なんで、何とか防衛庁のしかるべき医師の派遣が欲しい。できれば防衛庁の病院に行きたい。ジェット燃料でございまして、筋肉に入っておりますから、ケロイドができますから、専門の医者が必要だということで、緑区の中村区長から私に電話があり、横浜市渉外部長の臼居君から電話がありまして、何とかしてくれと言う。地元がおさまらぬ。下着を買ってくれと言ったら、三時間もたってまだ結論が出ない。何だといったら、防衛施設庁が会計規程があってそう簡単にいかないと言ったというんだ。これはどうも困ったものだね。しょうがないから緑区長がみんな買ったんだ。焼け出されたから、財産を表に置いておって、消防団が一生懸命番をしている。三日も四日もたって限界がきた。それでも何ともしてくれぬという。そこへ医者の話。しょうがないから、私、朝っぱらから亘理さんに電話をかけて、何とか医者を理屈抜きですぐ派遣してくれないかと言ったら、即座に手を打っていただいて、すぐ御回答をいただきましたが、いま医者を手配したと言う。そうしたら緑区長から電話が来て、本当にありがとうございました、現地はうんと喜んだと言う。何とかかんとかこれで公的な機関でちゃんとやってもらえると言って、本当に喜んだ。  そういう手違いはとっさのときだからありますけれども、ここらは防衛庁長官、そのために日ごろいろいろな出動訓練その他救難訓練も皆さんだってやっているわけでしょう。こういうことでは、それこそ幾らぼくらが気を使ったってやりきれませんよ、これは。そうでしょう。だから、そういう意味で、やはり地元の感情もあるのですから、この委員会に地元の方々を入れる、横浜市が選定した専門家なら専門家でもいいが入れる、そして十分な資料を提供する、そうしてくれませんですか。  コンステレーションという航空母艦がまた入ってきて、しかも十六日に、海軍の記念日だからというので、全艦開放して見せるという。五万人から十万人の人が横須賀に集まるという。これも無神経なんですな。片一方では、きのう電話を入れて聞いてみたら、この方々はまだ命の安全が保証されていない。フィアンセの人まで来て、つきっきりでやっているでしょう。片一方では合同祭だ、海軍のお祭りだといって大騒ぎをやるという。全艦開放して見せるという、新たな空母が入ってきて。飛行機が八十機も載っている。そうでしょう。しかも幾つかの飛行機は厚木にまた飛んでいっている。そういう無神経なやり方というものはやめさせなさいよ。これは市民感情をどう考えるのか、あわせて最終的に一言総理からでも答えてください。
  37. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 本件の起こったことはまことに残念ですが、事後措置が大変大事な問題だと思います。その処置につきましては、市民感情も十分配慮いたしまして処置いたします。
  38. 大出俊

    大出委員 市民感情をぜひくんでいただきたいと思うのです。  そこで、時間がなくなりましたが、三原長官に一、二点聞いておきたいことがあります。  それは、今度アメリカに行きましてブラウン国防長官以下にお会いになっておられますけれども、在韓米軍の撤退というのは一言で言うとどういうことなんですか。たてまえと本音というのがあります。十分ぐらいしかこれに取りかかる時間がありませんけれども、あえて聞いておきたいのであります。  私が調べた限りでは、大統領検討メモ、PRMというのがありますね、PRM第十号。エバンス、ノバック、これは有名なコラムニストですが、これがワシントンポスト等に連名で二回寄稿しております。調べてみましたが、まことに文字どおり間違いない大統領検討メモでございます。PRM第十号、これによりますと、一言で言ってしまいますけれども、カーター大統領の本音は、在韓米軍の撤退というのは、いままで三十八度線を中心にして地上軍依拠体制、アメリカの第二師団依拠体制であった、それを海と空の依拠体制に変えたということだ、それを完了するということだ、段階的に来年暮れまでに六千人撤退する、引き続き撤退していってそういうことにする。つまり地上依拠体制から海と空の依拠体制に変える、このことを完了するということだ、こういうわけです。  つまりそのことは、三十八度線で朝鮮戦争が再発した場合にアメリカが介入するかしないかについてのフリーハンド、自由な立場に立つということだ。明確になっている。これが一つ。もう一つは、北と南の彼我の戦力関係、第二師団がいても、アメリカが撤退しなくても、北の側が奇襲に成功すればソウルは取られる。最終的に勝てると思うが、ソウルは取られる。その意味では同じだというわけだ。これが二つ目。三つ目には、いまの三十八度線を中心にして純軍事的に物を考えれば、南北のいかなる面においても北の方が優位に立っている、こういう前提、大統領メモにはそうなっている。つまり、これが本音だということになると、自動的介入を避けたことになる。つまりアメリカ人の血は極東では流さないということになる。  ところが、防衛白書によると、アメリカの表街道で言っているとおりに書いている。小規模戦争というものは起こるかもしらぬ、だがしかし、彼我の力関係から言って米軍が撤退しても安定している、こうなっている。本音は一体どこにあるのですか。あなたはブラウンさんにも会ってきた。簡単に答えてください。
  39. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  いわゆるPRM10という内容の中にそういう研究の項目があったということは承知をいたしております。したがいまして、私どももその点については意見を交換したいと思っておりましたが、相手からそういうものに触れながら御意見の開陳がございました。それは、従来私どもが防衛白書等において分析いたしております内容を繰り返して説明をしたことになるわけでございまして、決して、いま御指摘のような、いま三点の御指摘がございましたが、そうした分析に基づくものではなかったのでございます。  なおまた、最後につけ加えられたのは、もしも在韓米地上軍を撤退した後において、有事の際には時を移さず応急の対処をいたすというようなことも、大統領から厳重にそうした要請も受けておるということも申し添えておったぐらいでございます。  以上でございます。
  40. 大出俊

    大出委員 要するに表街道で物を言ったということであります。あなたはブレジンスキー補佐官にもお会いになっておられますね。いまのところはその場面ですね。あなたの方から在韓地上軍撤退は米国の新しいアジア政策かという質問をしているのですね。それに対してブレジンスキーさんが、いまのカーターの考え方まで含めて正面から答えている。これはだから表と裏がある。どこでもそうでしょう。たてまえと本音、私が言った大統領メモ十号というのは本音ですよね。だれが考えたってそうでしょう。アメリカは世論があるでしょう。血を流したくないでしょう。  そこで、きちっと答えていただきたいのですが、在韓米軍撤退後における日本の役割りは二つありましたですね、今度おいでになって。一つは、言い方、あなたは恐らくこう言えば訂正すると思いますけれども、まず在韓米軍撤退の補完として、それを補う補完としての経済協力、日本の対韓経済協力、これが一つ。もう一つは、日本の防衛努力、こういうことになる。  時間がありませんからあわせて聞きますが、あなたは、東南アジアその他いろいろなところに、憲法や国内法の制約があって軍備という面、これにおいては限界がある、しかし限界いっぱい努力している、しかし皆さん、聞いてくれなければ困る、日本という国は経済的に、経済援助で安全保障という問題に対する、あるいは防衛という問題に対する大変な貢献をしてきているということをPRされてきている。事実そのとおりでしょう。そこで、経済協力で撤退の補完をしろというのが向こうさんの言い分の一つ。これはもう一つ日本の防衛努力とはうらはら。ここで一つは、岸・カーター会談に基づく、GNPの一%なんというのはけしからぬ、もっとふやせというこれが出てきている。三原さん、あなたも方々で、一%なんというのは五年ぐらい、中期経済計画でそこまでは一%と言った、そこから先のことはわからぬと言っている。  いいですか、ここで聞きたいのだが、一%じゃ――二千四百七十億円かかるんですよ、F15というのを買うのは。いいですか、いま防衛庁が概算要求しているF15の機数からすると二千四百七十億円。P3C、ロッキードも片づかぬのにけしからぬ話だが、P3Cをあなたがお買いになることを決断されたが、これだけで三千五百億円かかるんですよ。いいですか、いま〇・八八でしょう、GNPの。一%以下でやれはしませんですよ、こんなものは。だから後年度負担、国庫債務負担行為がべらぼうなものになる。そこまで想定しているから、将来に向かって一%の枠を外そう外そうとしている。つまりアメリカの言う日本の防衛努力。だから、きのうの新聞に、日本にいるアメリカのマンスフィード大使は、日本の防衛力強化は危険だと言って、日本の軍備をやるということに対して牽制球を投げて、論文を書いてボルチモア・サンに寄稿しているでしょう。これが二番目の問題。  どういうふうにそこをお考えになるか。撤退補完の経済協力、日本の防衛努力をしょってこられたのだから、一%という限界はどうなるか。岸・カーターの会談でアドバルーンを上げている。そこはどうなんだ。  そしてもう一つ、時間がないから申し上げますが、日韓閣僚会議が開かれました。ここで問題は、第四次経済五カ年計画全部で百億ドル。第四次五カ年計画、これは重化学工業重点であります。年間二十億ドル要る。日本に応分の協力をという要請があって、あなた方は、額は決めないが要請を認めておいでになる。ついこの間日本の東京でやった日韓閣僚会議、野党みんな反対した。これは一体何を意味するか。この重化学工業第四次五カ年計画というのは、韓国が自力でどんどん武器、兵器をつくるということなんです。石川島播磨重工だって使節団を出しています。三菱も出しています。そのさなかに朴大統領は、ジェット機と核を除く一切の兵器、武器は自国で生産すると言ったものだから、石川島の使節団だってびっくりしちゃった。えらいところに来ちゃったな。ところが、本年四月二十七日に朴大統領が韓国議会に行政白書をお出しになった。この中で小銃、各種砲等の基本兵器、弾薬の完全国産化に成功した、韓国の南、昌原を中心とする重化学工業計画において。そしてこれは、小火器、砲弾、車両など、消耗兵器等については、国内反乱の鎮圧や小規模紛争に当たっているアフリカ、アジア、中南米、これらの国々に大変な需要があり、引き合いがある。つまり韓国は武器輸出を、本年四月の二十七日の朴大統領の国会に出した行政白書で明らかにしている。  もう一点だけ時間がないからつけ加えておきます。  私の調べました結果によりますと、韓国は大規模な合同演習を六月の二十三日にやっております。ソウルの北方で。ここには軽装甲車が出てきている。七十五ミリの無反動砲が出てきている。二十ミリの対空機関砲が出てきている。迫撃砲が出てきている。全部これは韓国の国産の兵器です。いままではM16自動小銃とか銃弾しかできていなかった。ここまでいっているんですね。そしていま戦車の車体もすでに昌原等ではつくられている。昌原、韓国の南であります。エレクトロニクス、これも馬山でいまつくられている。大変な勢いで韓国はこれから兵器の国産、武器の国産に突っ走ろうという体制にいまある。それが第四次経済五カ年計画です。この五年間で百億ドルの金が要る。年間二十億ドル要るのだが、日本アメリカとの関係で応分の協力をせよ。あなたは、在韓米軍撤退の経済的な意味における援助で補完をする、一つしょっておいでになった。もう一つは、自前の防衛努力である。だから、P3Cについての疑惑晴れやらぬ間にP3Cを決定する、F15を決定する、こういうふうになっている。一%じゃ低過ぎる、もう少し上にしよう。佐世保にはもう一遍アメリカ側から空母の母港ということを言ってきている。コンステレーションがやってくる。予定どおりじゃないですか。  私が解説しましたいまの筋道について、結果的にそうなる、私はそう言っているのだが、あなたの方で二つの問題を答えていただきたい。
  41. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  大出先生の御意見としていま拝聴をいたしておったのでございますが、第一の、韓国との経済協力の問題が在韓米地上軍の撤退の補完だというような受けとめ方をしておられますが、私は、そういう意味ではなくて、総理からアメリカに行きます場合に特に注意がありました。日本のアジアの安定と平和に協力する道は、防衛的に協力することは憲法の枠内あるいは政治情勢等から困難であるぞ、したがって、アジアの平和と安定、日本の平和と安定のためには、ひとつそうしたASEANその他に対する経済協力なり文化的な交流を深めていくという面もあるということを十分含めて話を進めたがよかろうという御指示を受けたわけでございます。私は、そういう点において、韓国も同様そういう観点から見て申し上げておるのでございまして、決して在韓米軍の撤退に伴っての補完作業としての経済協力、そうした立場で申し上げておるのではございません。その点が第一点でございます。  それから第二点のGNPの問題について、一%の枠内でいまこの予算に計上いたしております。来年度の予算に防衛庁として計上いたしました点が、一%の範囲でこなせぬではないかという判断をしておられますが、この点につきましても、数字的なことは担当の政府委員からお答えさせますが、十分そうした中期展望に立ちながら、ピークは大体五十五、六年であろうというような判断もいたしたのでございまするが、十分その中で賄い得る、一%以内で賄い得るという十分な検討の上で処置をいたしたことを申し上げておきたいと思うのでございます。これはわれわれが防衛計画大綱に基づいて自主的に、計画的に防衛力の整備をいたします立場から検討いたした上での結果でございますので、御理解を願いたいと思うのでございます。  韓国の会議で、韓国自体がそうした兵器産業の確立に向かっておるということのお話は聞いておりまするけれども、それはあくまでも私は韓国の自主的な防衛力の整備という立場でやっておるものと思いまして、いま申されましたような輸出云云というようなことについては私はよく承知をいたしておりません。  次に、佐世保基地の問題が出ましたが、佐世保基地アメリカから、議会の予算委員会等の報告等でそういうことが出たことは承知をいたしておりまするけれども、いまだかつて佐世保を提供してほしいというような要請を受けたこともなければ、今後もそういうようなことがあろうという判断はいたしておりません。特に昨年から佐世保基地におきましては基地の縮小をいたしておる米軍の状態でございまするので、いまそういう要請があろうとは考えておりません。
  42. 大出俊

    大出委員 あなたは補完のための経済援助ではないとおっしゃるが、私がさっき読み上げたのは、朴大統領自身が議会にお出しになった行政白書の中にあることを申し上げた。だから、兵器輸出というのは韓国の国策なんだ。生産すれば輸出しなければ経済的に成り立たないですよ。そうでしょう。昌原の重化学工業五カ年計画なんというものは、日本の石川島播磨、三菱初めみんな全面バックアップでしょう。だから、五年間で百億ドルという、年間二十億ドルかかるというものの応分の経済協力をということを、今度の日韓閣僚会議で額は決めないが認めているじゃないですか。口先が違うだけであって、結果的に同じことじゃないですか。そうでしょう。日本の国は兵器輸出は認めていない、三原則がある、憲法もある。ところが、どんどんどんどん経済援助をする中で、この重化学工業を皆さんが援助してどんどん輸出される。いま私が例に挙げた軽装甲車から、七十五ミリ無反動砲から、二十ミリ機関砲から、迫撃砲から、みんな国産されてすでに演習に使っている。しかも戦車の車体まで昌原では生産されている。エレクトロニクスだって馬山でできている。みんな日本の技術でしょう。このことは一体どうなるか。  あなたは国策研究会というところで講演しているでしょう。国策研究会というのは、矢次一夫さんがやっているのじゃないですか。そうでしょう。ここであなたは、一%というのは当面しようがないからそう言っているのだと言っているじゃないですか。これは中期経済計画というものを下敷きにしているからしようがなくそうなんで、だから新聞だって取り上げて「一%以内は当分 三原長官が含みある発言」、そう思ったこともあるといまいみじくもここで口に出したわけだ。思ったことがあったときにしゃべった。腹の中にあることは識線のかなたにあるのでいまの私にはわからない、そうでしょう。国防省をつくりたいなんというようなことを総理に言うたとか言わぬとかいう話が伝わるが、危ないな三原さん、衛生上よくない。だから、こういう物の考え方はよろしくない。  なぜならば、いいですか、いまの問題についての結論を出しますが、九月六日付の韓国の東亜日報は、韓国の第四次五カ年計画に日本の支援を取りつけたのは今回の閣僚会議の成果であるとの解説を掲げ、これは政府系の新聞だが、ソウル新聞が第九回閣僚会議を「経済中心から安保包含へ」という表現で、大成功だ。これは私、将来の容易ならぬことだと思っている。というのは、南北の対話に持ち込むための環境づくりが日本のとるべき態度でしょう、私はそう思います。韓国の南北の対話、これを求めるのが私ども隣国日本、平和国家日本の立場だと私は思う。ところが、武器援助あるいは兵器生産、直接援助云々ということをきらうけれども、金には色はついていない、金で援助すれば色はついていない。こっちに援助すればこっちで金が余る。だから、結果的に兵器生産の助長に日本が手をかす、技術的な援助もする、北の方もやっている、そのことは緊張を高める結果にしかならない。軍事緊張を高める結果にしかならない。私はそういう方向はとるべきでないと思っているのですが、総理、いかがでございますか。
  43. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国の基本的な考え方といたしまして、軍事費援助または軍事的援助、こういうものは韓国のみならずいかなる国に対してもなすべからざるものである、かように考えるわけであります。わが国の対外経済協力、これは私は積極的に世界各国に向かって進めたい、こういうふうに考えておりますが、その際にはそのような考え方を心して、注意しながらやってまいります。
  44. 大出俊

    大出委員 さっき時間をとりましたから時間がなくなりましたので、ソウル地下鉄の車両価格等についての問題に入らせていただきます。  中心点は通常国会まで持ち越す結果になると思うのでありますが、ちょっとお手元に差し上げます印刷物を見ていただきたいのでありますが、実はふところ勘定がございまして五十部しか刷りませんでしたので、記者の方なり各党理事の方なり関係大臣なりで御勘弁をいただきます。  私は、非常に重要な問題をここで提起をさせていただきます。いま国策研究会という話が出まして、三原さん講演なさっておりますが、矢次一夫さんという方がおいでになりますけれども、一遍これは国会にお出かけをいただきたい。証人の形でも結構でございますが、何とかこれはおいでをいただきたいと私は思っております。それはどういうことかといいますと、お手元に差し上げました資料の中の小さい二枚がございますが、この小さい二枚は新国策と言われる、つまり私の聞くところによりますと、どうも矢次さんのところのように受け取れるわけでありまして、ある人が私にわざわざ寝た子を起こすようなことをしてくれては困るじゃないかというようなことがございました。  そこで「ソウル地下鉄問題 金炯旭発言はすべてデタラメ」、こういうところから始まる中に一つ聞き捨てならぬことがまずございます。一枚目の一番上の欄に「韓国国会での答弁の単純な間違いを日本の社会党がとり上げたのを」と、こうなっておる。「韓国国会での答弁の単純な間違いを日本の社会党がとり上げた」、だれが言ったかと思ってこれを見ましたら、十三日にソウルで日本記者団と会見した韓国の方、金聖鎮という方ですが、文化公報相。もってのほかでありまして、私はここに、松浦利尚君の議事録を持っておりますが、四十八年十月九日、韓国の方で、この中身を読んでいただくとわかりますけれども、鉄道庁の次長が、これはよほど頭がどうかした人だと私は思うんですけれども、単位を間違えてしゃべったというのです。一台八千十一万と言ってしまった、三〇%もその間物価が騰貴したと言ってしまった。これはとんでもない、単位の読み違えだ、こう書いてあるんですがね。それはほかの政党がこれを取り上げたところがあるかもしれません。あるかもしれませんが、わが社会党に関する限りそれはございません。きちっと借款に基づく基金の契約その他によって松浦君は金額をはじいております。ちゃんと六千万になっております。八千万なんと言ってはおりません。こんなことを簡単に、本当にこう言ったのだとすれば、日本の国会に対する、天下の公党社会党に対する大変な侮辱でございます。事実に反する限り、これは外務大臣にお調べをいただいて、この真偽のほどをただしていただきたい。新国策というのは矢次さんのところでおやりになっておるように聞いております。日韓協力委員会、この中の国策研究会ですか、ここでやっておられる。  しかも、もう一点まことにけしからぬのは、二枚目をおあけいただきたいのですが、「車輌契約に関する韓国側資料」というものがついている。しかも、第一番目のちょうど中段の真ん中に、一枚目の「金炯旭発言はすべてデタラメ」と書いてある中段の真ん中に「本会はこのほど、韓国権威筋を通じ、地下鉄車輌輸入契約に関する資料の一部を入手した。」こう書いてある。  私は外務大臣に承りたいのですが、あなたはこの間の第九回の日韓閣僚会議で何と言ったのですか。これは世界という権威ある雑誌、総合誌が書いている。「鳩山外相は「日韓癒着という言葉で、日韓両国の緊密な友好を引き離そうとしている勢力が日本国内にいることは事実だ」」、鳩山外相は日韓両国の外務大臣の共同記者会見でこう言っているんですね。「「日韓癒着という言葉で、日韓両国の緊密な友好を引き離そうとしている勢力が日本国内にいることは事実だ」との見解を明らかにしたうえ、「癒着の実態については、国会論議を通じても何一つ証明されていない」」、あなたは私に地下鉄問題で協力すると言ったでしょう。あなたと田村運輸大臣と田中通産大臣はそうおっしゃった。地下鉄の韓国側の資料というものを外交ルートで話して取ってくれと私は言ったけれども、あなたはできないと言った。努力もしていない。あなたは何の努力もしないで、あれだけ地下鉄価格問題で詰めているのに――私の方がみんな調べてきたんじゃないですか。あなたが調べたんじゃないじゃないですか。にもかかわらず「癒着の実態については、国会論議を通じても何一つ証明されていない」なんということを平気で日韓閣僚会議の後の両外務大臣の記者会見で言うとは何事。あなたは政府の外務大臣、そんなことを言っておいて、片っ方の方から、だれがどこから持ってきたか知らぬけれども、「車輌契約に関する韓国側資料」なんというのがのこのこ出てくるというのはどういうわけだ。こんなべらぼうな話がありますか。こんなものは認められやせぬですよ。そこは一体どうなのか、外務大臣にひとつ聞きたい。  それから田中通産大臣に承りたい。あなたは日韓協力委員会の事務総長。ここにちやんと名簿が載っている。そして矢次一夫さんという人は、この役員のメンバーで、椎名悦三郎さんの後の後に書いてある。矢次一夫さん、国策研究会常任理事。しかも、これは日韓協力委員会の理事さんです。田中事務総長のあなたの横に並んでいる人だ、矢次さんは。矢次さんの手に入るこの韓国の車両の契約や何かの資料が、あなた事務総長で、しかも通産大臣で、あなたの所管するところじゃないですか。多国籍企業だってあなたのところの濃野君が所管の局長でしょう。手に入らぬでこんなところから出てくるとは何事ですか。  もう一点申し上げましょう。私が基金に対して、この間の国会で、入札をしたと言うんだが入札の相手はどこだ、二社のはずだが、初めから決まっていたはずだが、価格の見積もりも初めから予定してつくられていたと言ったら、基金はそんなことは言えない、外務大臣もそんなことは言えない、みんなそんなことは言えないと言っている。知らないと言っている。この資料に出てくるじゃないですか。「車輌契約に関する韓国側資料」の下段、一番右から四行目、競争入札の次位単価は云々というので、富士重工のFOB単価七千三百六万六千六百六十六円、これで入札だと書いてあるじゃないですか。商社連合と富士重工のそれだけ、二つだけの競争入札、しかも、これはタイドローンなんですから日本の製品しか買えない。日本の企業しか入札に参加できない。商社の四社連合があって、中には丸紅がメーンで入っている。丸紅は富士グループですよ。こんなところへ富士重工が飛び込んでいって勝てるはずはないじゃないですか。しかも私は人を介して富士重工さんに聞いてみたら、韓国側に要請されたからやむなく参加したと言う。初めから入札する気はなかったのにやってくれと言う。価格もどうやらつくられている。積算していないのですから、富士重工の方は。それをわざわざここに麗々と載っけている。こんな資料が一体何で出てくる。外務大臣田中さんにこの二つの問題についてひとつ釈明を願いたい。これが日韓癒着でなくて何ですか。
  45. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日韓会談の後の記者会見におきまして、ただいま読まれたような発言をいたした背景でございますが、これは日韓関係におきましていろいろな風評がある、私は、日韓閣僚会議におきまして、いやしくも日本と韓国の間に今後このようないろいろな御批判のないように姿勢を正したいということを申したのであります。それに対しまして韓国側の記者から、そういうことはいかにもいままでおかしかったのではないかというような感じを与えると言うものですから、そういう意味で、私は今後姿勢を正したいというのは、いままで国会等でいろいろ御議論がありました、しかし、ロッキード事件等と違いまして、いろいろなそのような違法行為があったというようなことがまだ証明されていないというようなことを申し上げたのは事実であります。しかし私は、趣旨は、今後の日韓関係におきまして、いままでいろいろな点で国会で御指摘のあるようなことが今後全くないように努力をいたしたいということを発言いたしましたので、趣旨はそのような点にありますので、その点は御理解をいただきたいと思います。
  46. 田中龍夫

    田中国務大臣 御質問の、私が日韓協力委員会の事務総長をいたしておりましたことは事実でございますが、すでに一両年前にこの関係は全く縁を絶っておるような次第でございまして、ただいまはどなたかかわった方がなっておられます。そういうことでございます。
  47. 大出俊

    大出委員 岸さんがアメリカへ渡ったり韓国へ渡ったりしておられますが、私は疑うのです、矢次さんと岸さんの関係ですからね。こんな資料がいまごろになってのこのこと出てくる。しかも、ごらんになったらおわかりになると思うのですが、金炯旭さんの韓国にいた年譜までわざわざつけているんですよ。年譜をお読みください、この二枚目に書いてありますから。  七三年四月に金炯旭氏渡米と書いてあるでしょう。その隣、翌月の七三年五月に購買契約締結と書いてあるでしょう。だから、金炯旭は関係ないと、こう言うのですが、冗談言っちゃいけませんよ。七一年八月に借款供与を合意しているんですよ。特別借款ですよ。これは金炯旭さんが言っておるとおり。タイドローン、このタイドローンというのは、日本からしか商品が買えないのです。決まっちゃっているんですよ。七二年の四月に借款協定締結でしょう。そしてその翌年の七三年四月まで金炯旭さんは韓国にいた。しかも国会議員をやっていた。実力がある。七三年五月に購買契約が確かに締結されていて、その前の月にアメリカに行っておられるけれども、中心点には全部おいでになったじゃないですか。いないものを何言うかなんというようなことを新聞に物を言った人がいるけれども、とんでもない。語るに落ちるというのだ、これは。あるところで矢次さんが寝た子を起こした、けしからぬと言って怒ったそうですか、これじゃ寝た子も起きますよ。語るに落ちる。じゃ、何のために岸さんが韓国に行ったのだということになる、こんなことをすれば。  だから、私はまずもって申し上げておきますけれども、後でつけ加えて申し上げますが、国会に改めて、藤野忠次郎さん、田部文一郎さん、両方とも三菱です、それから特に日立製作所の社長の吉山博吉さん、この人にはどうしても来てもらわなければ困る。それから海外鉄道技術協力協会理事長の島秀雄さん、この人にもどうしても来てもらわなければ困る。そして矢次一夫さんにどうしても来ていただきたい。  そこで、特にこっちの方が実は重要だけれども、矢次さんは東洋経済の四十八年四月七日号に、矢次一夫さんの本人の名前で「わが戦後記」というのを書いている。この中には、紛争の火種になっている大陸棚開発について述べておられる。「三村起一を委員長に、エネルギー関係者に集まってもらって、委員会を作った。」と言うのだ、矢次さんが。「尖閣列島のほうは中共を刺激するだろうから、しばらく様子をみることとし、まずモデル・ケースとして、日韓間の大陸棚を中心に話を進めようということになった。ところが、新聞がガ然といってよいほど、この問題で大騒ぎをし、大きく書き立てるものだから、以来極秘というか、忍者的方法でよきタイミングをとらえつつ話を進め、昨年五月」、これは四十七年五月の意味、「昨年五月、日韓協常任委員会がソウルで開かれた際、うまいチャンスがあったので、私が政府首脳者に話を持ち込み、これがトントン拍子にまとまったわけですよ。そこでこれを駐韓・後宮日本大使の手に渡して外交ルートに乗せ、帰国後通産省にも話の内容を伝えた。以後はいっさいノータッチですから」云々アハハというわけですが、こういうことをおやりになっておられるから、この際、地下鉄の問題とあわせてどうしても出て来ていただきたい、証人として。後でお調べいただきたい。  それでもう一点、次の国会までにお調べいただきたいのですが、私がここに持っておりますのは、日立の相当な方が私に中身を知らせていただいたものであります。この中に、日立製作所が受け持った日立の地下鉄の車両というものは、この人は、一というところで、私、日立製作所山口県笠戸工場にてソウル地下鉄の製造に関係した幹部の一人。――相当な幹部でございます。ここから下を読むとわかってしまうから秘扱いにしてくださいと書いてあります。だから読みません。  二番目。昭和四十八年九月当時の工場長、多賀という人。この人が転出をして、後任に島井さんという方がおいでになった。現在、日立の取締役でございますが、着任。そのときは、ソウル地下鉄はすでに一次、二次、三次と製作、出荷されつつありました。  三番目。同工場内での製品出荷の収支決算などに関する幹部会議が月に一ないし二度持たれるのが慣習でございますが、私もかかる会議に出席しておりました、こう書いてあります。その席上、どういうわけかソウル地下鉄の収支決算は公開されませんでした。審議不問に付されたのを覚えております。この問題は工場長と経理部長あたりで処理されていたというのが当時の事情でございます。  そして四番目に、受注製品の中身がいろいろ書いてありまして、これは地下鉄の車両もつくり、電気回りも一緒につくっている、日立は電機を取りまとめたのですから。全部ここに書いてある。その上に、つまり韓国に渡す車に上乗せをしたものがあった。企業側も、まとめの三菱商事も相当の利益を出しました。しかも、政治献金があったと仮定すれば、まさに韓国を食い物にしたことになるというところから――なおもう一枚ございますが、これは私はぎりぎりになれば申し上げますが、実は前の三菱も内部告発がございました。したがって、五一五〇という数字は、私は知っておりました。だからその証拠に、私が書いて出した資料には田部文一郎さんがおっしゃる前に五一五〇の数字は入れてあった。つまり――あと何分もございませんから最後の結論を申し上げます。そしてこれは皆さん責任を問い、かつ、次期国会までに明らかにしていただきたい。あと五分間でございますが――(「そんなにないよ」と呼ぶ者あり)委員部からちゃんと五分といまいただきましたから、そうおっしゃらないで聞いてください、計算してしゃべっておりますので。  いま私がお手元に差し上げました一枚目が、ソウル地下鉄の価格の説明であります。これは前国会で経済企画庁が正式に私に出した資料でありました。この「価格差の主な要因」を読んでいただければわかりますとおりに、車が大きくなったとか、三段式ヒーターだとか、全部天野さんの証言で否定をされました。しかも、交直両用に一千万円かかるというのですが、これも国鉄納入と同じものだということで否定をされました。以下の問題も、総取りまとめ、あるいは試験等の費用以外はほとんど全部否定をされております。だから、経済企画庁を通じてお出しになったこの資料は全くでたらめなんですけれども、この責任は、倉成さん、どうおとりいただけるかという点を明らかにしていただきます。  次に、二枚目をごらんいただきたいのです。「韓国調達庁と三菱の契約の分析」というのがございますが、これは六千三百九十四万ないし九十五万、韓国側資料と一致いたします。これで計算をしていきますと、この計算をお読みいただけばわかりますが、商社連合は一一%余の利益を上げ、使途不明であります。二%しか利益を見ていない、輸出契約申告書には二%ですから。この差額は、税金の面で一体どうなったかわかりませんけれども、自由に使える金になっている。政治献金かもしれない。そして五一五〇という日立と三菱の契約でいきますというと、差額が七百二十万出てまいります。で、モハ四八五という国鉄納入の車、これが二千六百九十八万円ということになっておったわけであります、日本車輌の有価証券報告書で。無料支給品推定価格が千六百八十万円でございました。したがいまして、日本国内並みのものならば、六二対三八ですから、当然七百二十万前後の金は浮いてしまう。不確定だったのは、千六百八十万のモハ四八五の無料支給品の推定価格が、推定となっているところが不確かでございまして、会計検査院にこれをお調べいただきました。国鉄を調べていただいて、私が提起した千六百八十万円に間違いがないという結論が出ました。これが2と書いてあります「前国会以後の調査によると」こうなっておりますので、会計検査院にそこだけお答えいただきます。――会計検査院、先に答えてください。
  48. 東島駿治

    ○東島会計検査院説明員 お答えいたします。  交付材料の価格につきましては、ただいま大出先生おっしゃったような千六百八十万ということは、私ども国鉄を担当しております担当者に調べさした結果でございます。
  49. 大出俊

    大出委員 千六百八十万、確定いたしました。国鉄を全部調べていただいて、無料支給品価格は千六百八十万である。二千七百五十万の日本車輌の有価証券報告書に書いてある韓国向け車両、その中に含まれているのはほとんどわかりましたが、無料支給品、電気回りその他がわかりませんでしたが、これが国鉄並みですから、そうなると無料支給品といわれる電気回りも同じことになる。千六百八十万確定。  その上で会計検査院にもう一問だけ承ります。これで終わります。  その後、会計検査院は基金を通じて日立に、何で一体七百万からの差ができるのかというのを聞いていただいたはずであります。その答えを基金を通じて会計検査院はお持ちのようでありますが、大体どんなことであったかをお話しいただきます。
  50. 東島駿治

    ○東島会計検査院説明員 お答えいたします。  ただいま先生が御指摘の七百二十万につきまして、私どもも資料を基金を通じて求めたわけでございますが、その内容としては、車両の設計費とか車両の取りまとめ、交付材料の取りまとめ費用と、その他追加の交付材料があるので、そういうものがその内容である。ただ、その内訳、金額その他について明確な資料がございませんので、その資料と説明を基金を通じて求めておりますが、現状ではまだ私ども判定するまでに至っていないというのが実情でございます。
  51. 大出俊

    大出委員 時間が参りましたから結論を申し上げて、倉成さんに最後に一言、さっきの答弁の残りをお願いいたします。
  52. 田中正巳

    田中委員長 だめだ、時間です。
  53. 大出俊

    大出委員 これで終わりです。  いま会計検査院から御答弁いただきましたように、前の基金から経済企画庁を通じて出された資料の、値段が高いというのは全部否定をされまして、新しく取りまとめ費用その他という回答が来ているというだけで中身を知らさない。七百二十万の行方というのは、これは全く宙に浮いております。一体このでたらめな資料を出した責任をどうおとりになるのか、ひとつ倉成さんに承りたいのであります。  そして証人について先ほど申し上げましたが、日立の社長さん、それから三菱の、先ほど申し上げました田部さん――もう一遍申し上げましょう。三菱商事の会長の藤野忠次郎さん、社長の田部文一郎さん、日立製作所の社長の吉山博吉さん、それから海外鉄道技術協力協会理事長の島秀雄さん、これだけ申し上げておきます。  倉成さん……。
  54. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  三月八日に当委員会に提出しました資料について、私どもはあの資料の冒頭にも書いておりますように、ソウル地下鉄とわが国の国内用の車両との比較に関しては、本来、規格設計が異なった商品について、しかも継続的な取引があるかないかという事情も異なるものについて、機械的に行うということは必ずしも現実的ではないと考えております。しかし、せっかく委員の皆様方から御質問がございましたので、その線に沿って基金として御説明をしたわけでございます。これは基金が関係方面から車両価格に影響を与える事情について聴取して種々検討した結果、価格差の主な要因を常識的な線で取りまとめたものでございます。ソウル地下鉄の車両がおおむねその範囲のものであるということは、御説明したとおりでございます。したがって、もし大出委員がソウル地下鉄の車両について原価計算というような綿密な立場から求められておるとすれば、それはそうなっていないわけでございまして、基金としては基金の立場からそういう原価計算的なものを提出する、またこれを調査するということは無理であるというのが、私どもの考えでございます。
  55. 大出俊

    大出委員 矢次一夫さんも含めました証人を、委員長、どうお扱いいただけますか。
  56. 田中正巳

    田中委員長 大出君のお申し出については、後刻理事会において協議いたします。
  57. 大出俊

    大出委員 終わります。
  58. 田中正巳

    田中委員長 これにて大出君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部一郎君。
  59. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私はまず、外交問題の中で最大の懸案となっております日中平和友好条約の締結の問題につき御質問をしたいと存じます。  私は、共同声明が両国の間で締結されてからここに五年を過ぎているわけであり、この締結が当初一年くらいで平和友好条約の締結に至るものと予想されていた事態を考えましても、五年の歳月は長過ぎるだけ長過ぎたと思います。しかし、両国関係はある意味で安定化し、この五年の歳月に両国間の意見の相違というものは非常に克服され、共同の理解、共通の理解というのは進みつつあるものと思いますし、両国関係の発展は次の段階へ進むところになってまいったと思うのであります。  先日、日中協会の会合に総理はお越しをいただきまして、日中間には一つの大きな宿題があるとみずから述べられ、それを片時も忘れたことはないと言われました。そしてそれは明らかに日中平和友好条約のことであろうと思います。いろいろな立場から見ましても、いまや日本が日中平和友好条約に向かって最後の決断をすべきときが近づいておると考えるものでありますが、その成否はかかって政府にあり、特に福田総理にあることはもう世の注目するところであると思います。したがいまして、私はこの問題について余り詳しくここで総理の言質をとるというような行き方をするつもりはありません。外交にはタイミングがあり、それ相応の駆け引きもあり、それは当然考慮しなければならぬということを十分配慮した上で、総理の御決断を、総理のお気持ちをお伺いしたいと思います。
  60. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日中問題につきましてはいま渡部さんが申されたような経過になっており、私は渡部さんが、この経過が今日に至っておるそのことについての認識につきましては、正確に御理解を願っておるという感じをいま抱いたわけでございます。とにかく、お話のように日中共同声明が発出されましてからもう五年になる、しかもこの条約がまだ宿題として残っておる、こういう今日でございます。私はしばしば申し上げておるわけでありまするが、この問題は何とか早急に処理しなければならぬ問題である、そのことは私の頭にこびりついておる問題でございますが、しかし、三木内閣のとき両国の外務大臣がニューヨークにおいて会談をした、あのとき以来この問題が両国の直接の話し合いという土俵に上ってこなかった、そのことはまた事実でございます。しかし五周年の記念日、つまり九月二十九日、その翌日三十日、新しい外務大臣鳩山、黄華両氏がニューヨークで会談をいたしておりまして、早期に解決いたしましょう、こういうことで意見の一致を見ておるわけでありまして、私は、大変いい進展を見た、こういうふうに考えておるわけであります。私は、とにかく共同声明を両国が誠実に遵守する、これが日中関係の基本の問題である、こういうふうな認識でございますが、その中でとにかく条約問題が残っておる。そこで私は、宿題が一つ残っておる、残っておる、こう申し上げておるわけでございますが、私はこの宿題の解決にひとつ全力を尽くしてみたい、こういうふうな決意でございます。
  61. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理が御就任をされましてから八、九カ月になろうとしておりますが、その間冒頭の半年は非常にいろいろなことをおもしろくおっしゃった。総理はキャッチフレーズのうまい方ですから、いままでも日本をうならせるような幾つかのキャッチフレーズを言われたのを私も承知しておるのですが、それが必ずしもいい印象を与えませんね。日中関係について、あるときはプラス、あるときはマイナスの印象を持たれました。私がこの間調べましたら、十二回あなたは態度を変えられたように見えるわけであります。これはちょっと回数が多過ぎる。それが非常にプラスとマイナスを上下する印象を先方にも与えましたし、国内にも与えた。それだけ日本国内でも日中平和友好条約に対する期待が高いというふうに、これは見るべきだと思いますし、先方もまた、日本の態度をある意味では非常に多く評価し、頼りもし、信頼もしているというふうにも見えるわけであります。ですから、私の気持ちは変わっていないのにそういうふうにプラス、マイナスにいろいろ判断するのは間違いだとお受け取りになる必要は、私はないと思う。  ただ、その後非常に言葉を選ばれまして、慎重というか、かちかちというか、全く変わらない、共同声明を誠実に遵守するが一つ。もう一つは、この問題について両国の満足のいく形で平和友好条約を結ぶという、この二点だけを繰り返しこの二、三ヵ月言っておられるわけであります。私はこのことは、外交交渉するに当たって大所高所を押さえる立場の総理が、余りごちゃごちゃと細目にまで触れるということは必ずしも賢明ではないと思いますから、それはある意味で正しいと思います。  それであるのですけれども、さて総理はこの日中平和友好条約を進めようとする気があるのかないのかに、いま焦点がかかっているわけであります。それは何かというと、これは単なるジョークと思って聞いていただいて、先日総理にお目にかかりました際に、私がカレーライスは出す前にはにおいぐらいはするものですと申し上げたときに、総理は、カレーライスがまだ台所でにおいがしないのはつくっていないからであり、出そうと思うときはにおいがした途端に出すのが礼儀だと思うというふうに、巧みに答えられました。ということは、カレーライスはにおいがしたらもうテーブルに出すという総理のお考えによれば、日中平和友好条約はにおいがしたときはもう直ちに締結する、こういう意味にとれる。それと同時に、いまにおいも煙も気配もしないところを見ると、全くやっていないし、やる気もないということを示していると、この例は逆にも見えるわけですね。中国側のある人は、カレーライスにひっかけてこう言われました。日本ではカレーライスとライスカレーは同じものであるけれども、福田総理がいろいろなことをいろいろ言われているのをわれわれもよく注目して見ておるのであるが、あるときはカレーライス、あるときはライスカレーと言われるけれども、中身は同じで全く変わりはないと見えるのです、早くお赤飯の赤めしが食いたいなどということを、向こうが言っておりました。  私は、総理がこの問題についてただ原則を繰り返されるだけでなく、準備が必要だと思います。この間中国側は、この問題は総理の決断で一秒でできるというようなことを鄧小平氏は言われておるわけでありますが、あれは決断をするのに何秒もかからないという意味であって、具体的な外交交渉となればそれ相応の時間がかかることは、私は当然だと思います。両国外交官が打ち合わせをするのにも数カ月かかるでしょうし、案文の詰めに、どんなに急いだって、案文がほとんどできておったとしても、一週間やそこらはかかるものでありますし、それは諸協定を見れば明らかであります。また、一番問題な福田総理の率いられる自由民主党の内部の意見をまとめようとされれば、これは失礼な言い方かも存じませんけれども、まことに難物であろうと思いますし、そのための決断をするのに何日かの日を要することは当然だろうと思いますし、その事前工作もあってしかるべきものと思います。そうするならば、総理はいまここでそろそろそのにおいを明らかにされることが必要な時期が来たのではないかと私は思っておるわけでありまして、何の気配も見えない、たとえば自由民主党の中の政策審議会のメンバーにすらそうした問題についての総理の気配が見えない、あるいは総理の後ろに影のごとく寄り添うておられる官房長官にもまだ気配がない。官房長官はひたすらハイジャック担当相みたいな顔をしておられる。私は、そうではなくて、いま、この現下の最大の問題について、総理は何かの指図、何かの意図、何かの準備がもう必要になった時期ではないかと思うのですが、いかがでございますか。
  62. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 渡部さん、いまカレーライス、ライスカレー、そういうお話がありましたが、カレーライスと言ったって、ライスカレーと言ったって、中身は同じなんですよ、これは。その中身が問題なんです。私のカレーライス、ライスカレーの中身というのは、これは呼称はどうあろうとちっとも変わりはしない。これは、日中両国が満足し得る、両国民によって祝福される、こういうような形で、これも一刻も早く締結にこぎつけたい、こういう気持ちなんです。  ただ、これは、私がいろいろコメントいたしますと、国内でもそうでありますけれども、特に中国側にいろいろな反響が起こってくる。そういういきさつのあることを考えまして、最近はなるべく私はこの問題について中身に立ち入った話をしないようにしておるのです。私は、それがこの問題の解決のために有効であり、妥当な姿勢である、こういうふうに考えておるのです。  しかし、私の考えは変わりませんよ、これはもうそういう形でなるべく早くこの問題の決着をつけたいと。要するに、この問題を処理するということは歴史の流れなんです。その段取り、それから条約でありますから、これは相当両国ともお互いに詰めなければならぬ。その詰め、そういうことをどういうふうにするか、こういうことを私本当に真剣にずうっと考えてきておるのですよ。このことをひとつとくと御理解願いたい。大相撲だってそうじゃありませんか。けいこのときなんか人目に立ちはしないのです。土俵に上がったって何回か仕切りをしておりますよ。そしてそう時間のかからない間に決着がつく、こういうことになるのです。私は、十分慎重な準備を周到に、しかも静かにやって、そして、私がかねがね申し上げておるような結論になるべく早く到達したい、そういうふうに考えております。
  63. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、いま日中関係は、何と言うのでしょうか、国際的にいいましても一つの一番いいタイミングを迎えっっあると思います。国内的にいいましてもタイミングを迎えつつある。このタイミングを福田総理は見損なわれますと、一つの政治的な大きな力になると私は思います。そして政界不安定の一つの重大な要因になるだろうと思います。私は、おどかしたりなんかするつもりは毛頭ありませんけれども、本予算委員会の正式メンバーである自由民主党の有力な先生方を含めまして、この間日中議連の訪中団として訪中さしていただきまして、中国側と種々折衝をいたしました。そのときに、私は先方の姿勢で幾つかのポイントについて非常に教えられる点がありました。  一つは、先方はここのところで非常に言いたいことも言わないで、口をつぐんで、福田総理への批判もつぐんで、好意を持って見守っているということであります。外交関係の中で、自分に致命的に影響性のある問題について意見を控え、これを見守っていくという態度をとるということは、中国のような国にとってはかなりむずかしいことであろうと思います。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕 私は、中国のトップからかなりのレベルに至るまで日本側にかなり好意のある態度で見守っておる、これはまさに非常に大きなチャンスであり、タイミングだろうと思います。それから、先方はわれわれの実情についてかなりよく承知しているし、そして日本の国内情勢というのも精密に分析をしつつそれを待っているということを、私どもは考えなければいけないと思うのであります。  私ども日中議連は、いま衆参両院議員合わせて五百二十三名になりました。今国会におきましては、日中平和友好条約の締結のために、これの早期促進のために、いよいよ決議案を提出しようという運びにいまなろうとしつつあります。これは国会の大多数でありますから、いままでの議会上のシステムその他によって妨害するのでない限り、こうした決議は成立をし、大きな国民的なきっかけになる最後のアクションになろうかと思います。私は、そういう状況は国会の中だけに生まれたのではなく、日本の経済界の中でも、あるいは国民各層の中でも静かに生じつつあり、これはもう押しとどめることのできない勢いになりつつあると見ておりますし、総理もそれほど違う感覚では見ておられないと私は思います。  私は、よし悪しは別としまして、総理御就任の直後に起こりましたあの減税問題のときに、総理はここで必死に抵抗されまして、最後に押し切られて無念の涙をのんだ形で減税を承認されたようなかっこうになりました、ああいうかっこうの悪いところで総理に日中平和友好条約をさせたとしたら、これはわが国にとって決してプラスにならない。プラスにならないどころか、それが日中両国間の将来的な安定、あるいは周辺諸国との安定的な関係の上に傷を生ずる、ここは一致して行わなければならない重大な課題だろうと思う。そしてそれは少なくとも日本外交の大きな選択肢の一つとして、中国との関係は少なくともアメリカとの関係並みに重視しなければならない大きな一つの枝であろうと思っておるわけでありますが、これを安定ならしめるためには、追い詰められてやるのではなく、総理御自身の決断によって自立的な判断においてこれをぐいと一歩前進せしめなければならない。私はいま総理に期待をして申し上げておるわけであります。期待して申し上げておるのはここしばらくであるということも御承知いただきたい。私は、もう福田内閣にはできそうもない、だめなのだと言いたくてうずうずしている部分を抑えながらこうやって申し上げておることも御理解いただきたい。私は、もういま微妙な判断で、あなたを信ずべきか信ずべきでないのか、私はそういう判断を横に置いて、福田総理がこの問題について決断されることを求めておるわけであります。その点ひとつ十分御理解の上、この問題についての措置をとっていただきたい。少なくとも自民党の中でこの問題について協議することも行われてないというのは、これは奇妙じゃないでしょうか。全く奇妙だ。そして意見がかなり差があるのに協議もされていないで放置されている。政策としてまとまってない。少なくともこのラインからこちら側にある各党は――よろしゅうございますか、ここからこっち側にある各党は、党としての意見が、表現は違いますけれども大体まとまっておる。社会党も民社党も共産党も新自由クラブも、わが公明党も含めて大体意見は一致しておる。問題は、ここの線から向こう側です。この中で、まことに恐縮な言い方ですけれども、大体、これは早くやった方がいいじゃないかという方が相当部分おられて、ちょっと慎重目にとおっしゃる方が少しおられる。まるっきり抵抗されるということば、最近はまずないやに私は伺っておるのでありますが、そうすると、これはもうお話を自由民主党の中で詰める方向にいかなければならない、私はそう思っておるのです。どうか総理、押し詰められてなさるのではなく、希代の名宰相としての一つの決断をここで示されるときが来たし、それがないと、これから言おうと思っておるのですが、不況対策も何も、いま日本は非常にむずかしいところであります。そのむずかしいときに、さらにむずかしい問題をしょい込まないようにしていただきたいと私はお願いもし御忠告もし、申し上げるわけであります。
  64. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、悪いことであれば押し詰められてもやりません。しかし、日中平和友好条約の締結問題、これはもうくどく言っているじゃありませんか。これは歴史の流れだと、こういうふうに言っておる。いまこの問題を静かに取り進めておる、こういうことなんであります。私は、渡部さんのおっしゃる非常に好意的な御意見、これはよく理解できます。とにかく私は、しばしば申し上げておるような姿勢でこの問題を処理します。
  65. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理、この問題についてこれ以上言うのは総理に対してもどうかと思いますけれども、私も待っているのです。かなりいらいらしておりますけれども、私も待っております。総理がこの問題について非常に巧みに、かつ賢明に処理されるように、もう少し時間をおかししてもいいと私は思っておるのです、確かにいまめんどうな情勢があることも事実ですから。ですけれども、そう長くは待てない。そう長くは無理だろう。少なくとも総理に、いつまで待ったらいいんですかと、本当を言うと私は聞きたいのです。ですけれども、それは聞きません。総理がまた答弁に窮されて、突然何かすごいことを言われると元も子もないと私は心配をいたしておるわけですから申しません。申しませんけれども、総理、だらだらあと半年も一年も何もしないで引っ張ったとしたら、そのときはいまの体制ではもうできないということは、これは十分おわかりの上、対処していただきたい。これだけ、簡単な御返事でいいですから、御返事をいただきたい。
  66. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日中平和友好条約の締結は歴史の流れの問題だというとらえ方のもとで、両国が満足し得るような形、これにおいてなるべく速やかに処理します。
  67. 渡部一郎

    渡部(一)委員 鳩山外務大臣は、この間の九月十六日の外務委員会におきまして、日中条約の締結については首相の高度の政治判断にかかっており、その時は刻一刻近づいておるなどと言って帰られたのです。あの方もときどき追い詰められるとああいうふうにかっこうよく言われるわけでありますが、この答弁もまた、幾ら見ても何だかよくわからない答弁でありまして、要するに総理が全部なさるのです、私は知らないのですと、こういうことを間接的に言っておられるように私たちは聞いておる。まあ、これもやめましょう。こういう話を幾らしても仕方がないかもしれない。ただ、もう決断していただかなければならぬ。  さて、その次に私は、日中問題に関する中で、最後に一つだけ注意をしておきたいと思います。それは三原防衛庁長官の発言であります。  防衛庁長官に対して私は、この問題は外務委員会で取り上げて外務委員会で片づけようとしましたが、今日まで御答弁がないので、この場をかりて一言御答弁をいただいた方がいいと思います。  この間アメリカへ行かれましていろいろお話しになった際に、日中共同声明と全く違反するような表現を記者会見のときになさった。台湾の防衛問題について、私はこういうことを言いたいと思ったという表現で中身をおっしゃったように伺っておるのであります。もちろん記者の言っていることをまた電報で打たれてきて、日本新聞でもう一回載せ直した。その記者は日本の記者でもありませんから真相は明らかではありません。ですから、どうこう言うわけにはいかぬと思うのですけれども、少なくとも日本国憲法には、わが国が外交上取り決めた諸問題に対してはこれは守らなければいけないという国際協定遵守の義務を課しているわけであります。国際的な協定を守らないというやり方はヒットラーや東條さんたちが昔やった手であり、そうしたやり方はよろしくない、少なくとも見識のあるわが国の有力閣僚がこうしたことについて妙な発言をなさるはずはないと私は信じておるわけでありまして、この場で適切に事実と御意見を述べていただきたいと存じます。
  68. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  渡米中の記者会見での発言で渡部先生が非常に御心労を煩わしたということは承知をいたしております。  実は私、ワシントンの公的な用件が終わって他地区に移ります瞬時のことでございましたが、三十分間、海外の記者会見の時間を持ちました。その際に、通訳入りの記者会見でございますので、三十分がほとんど切れるころでございましたが、ある外人記者から、いままでの私と米政府関係の要路の各位との会談の中で台湾問題は出なかったかということでございます。一切台湾の問題については話は出なかったと私は答えたのでございます。次に、それではお尋ねをするが、いま台湾が取られようとしておるが、これをどう思うかというようなことでございました。そのとき言葉が、通訳でございましたけれども日本語で言われた言葉で、これは日本の方でないなという感じがいたしましたのは、その言葉がどうも適当でないようなことも受けたのでございます。しかし私は、この問題については私自身が防衛庁長官でもあるしいたしますので、ここでそういうことについてお答えをすることはできませんというお答えをいたしました。そこで時間が参りましたので立ち上がろうといたしましたが、個人の意見でもいいからひとつ聞かしてくれと言われるわけでございます。そこで私が申しましたのは、この地域の問題は平和的に慎重に処置されることを望んでおるということでございますということを言って、お別れをしたわけでございますが、御承知のように、私自身もいま論議がされておりますように、いま日中の関係というのはきわめて重大な歴史の流れとしてのところに立っておるということを私はみずからも受けとめておりますし、また、中国問題についても十分承知をいたしておるつもりでございますから、そうしたいまの皆さん方が考えておられますような日中平和条約の締結もしなければならぬというような事態に処して、決してそれに背くようなことは考えてもおりませんし、言ったことも、言うはずもございません。以上でございますので、御了承願いたいと思うのでございます。
  69. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理はまだですか。――それでは、総理がいらっしゃらない間に、外務大臣、突然申し上げて恐縮ですが、現在ソ連との間の原子力の平和利用のための協定が行われつつあるように承っておるのでありますが、日本のエネルギーの中で原子力の位置というものは、非常に大きな課題として政府は取り組んでおられ、特に科学技術庁長官は先日アメリカに行かれて、大変御苦労されたと承っております。私どもは、原子力の利用の安全性についてはまだ多くの疑問、釈然としないものを多数持っており、今後も解明していきたいとは存じておりますが、少なくともウラニウムの輸入の選択肢を広げるためには、今後こうした問題の供給先を、一方側に偏っているものを偏らないように世界じゆうに広げていくということはかなり有力な手段ではないかと思います。そのために、原子力平和利用における協力のための日本原子力産業会議とソ連原子力利用国家委員会との間の協定がすでにあるように承っておるのでありますが、この交渉あるいは今後のソビエト製のウラニウムの供給等に関し御見解を承りたい。外務大臣並びに長官に承りたいと存じております。
  70. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいまお話のありました日本原子力産業会議とソ連の原子力利用委員会との間の話し合いは、これはもっぱら民間ベースの話し合いとして進められております。もっぱら技術情報の交換等を内容とするような話が進められておるというふうに伺っておりますが、これからウランの資源として、特に濃縮ウランの供給先としてソ連をいかに考えるかということにつきまして、これも西ドイツあたりはすでに供給を受けているというような情勢も聞いております。これは今後の検討課題として検討さるべきことであろう。なお、専門的には科学技術庁長官からお答え申し上げます。
  71. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 原産会議とソ連国家原子力委員会との間の原子力協定、これはいま外務大臣答弁なさったとおりでございます。現在、ソ連との間におきましては、そのほかに科学技術協力協定というのがございますが、実のところは、四十八年に締結いたしまして、その後具体的な動きというものを示しておりません。近く向こうの大使館からも私に会いたいというふうなアプローチもございますから、そうしたときにそのような話もなそうかと考えております。  御指摘のとおり、わが国は天然ウランは全くありません。同時にまた濃縮技術、いよいよ本年度から人形峠でそのパイロットプラントをつくったばかりでございますので、この二つに関しましてはやはり独自の考えを持って体制をしかないことには、いつまでも言うならば外国に首の根っこを押さえられたままのエネルギー開発であるということでは困る、かように考えておりますので、今後そうした意味合いにおきましていろいろ多角的に考えていきたいと存じます。  ただ、現在といたしましては、では直ちにソ連との間に原子力協定を結ぶかということになりますと、民間の推移をもう少しながめてみたい、こういうふうな考えも持っておる次第であります。
  72. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは次に、国際経済の問題に対して私は少し申し上げたいと存じます。  私は、議員になりましてから約十一年にわたって外務委員会を主力にしてまいりました。ところが、経済問題は余り取り扱ってはおらないのでありますが、最近の不況対策、それから世界的な不況の問題を見ますと、少し見るに見かねておるわけであります。それは当委員会においても主力として議論されているのは国内の不況対策という観点から議論され、それが結論であることは私もわかりますが、その国内の不況対策を達成するためには国際的な環境というものを十分配慮しなければならないし、少なくとも世界不況の大きな波の中で国内不況というものの嵐が引き起こされていることを考えますと、現在の日本のやっている経済政策やその他が特にすさまじいほどの対外的な集中包囲攻撃の嵐の中にあるということは十分理解しなければいかぬと存ずるわけであります。それで、どうしてこんなに対策がのろいのかという奇妙な感じがする。これは外務委員的な感覚かもしれない。外交問題としての感覚が強いかもしれませんけれども、新聞報道によりますと、政府は十二日、閣議を開かれまして、黒字減らしに対して大変な対日圧力が加わる兆しが見えておるので、それに対して特に対外経済政策などについては具体的な黒字減らし対策の推進を強化する方針を決めたと報じられております。私は非常に不思議なのは、それはまさにちょっと遅過ぎたのではないかと思うわけであります。  たとえば政府の今度出された総合経済政策の中で、きょうはいろいろ材料をいただいてきたのですけれども、総合経済政策の七本の柱のうち、財政金融上の措置が一番、二番が民間需要の喚起策、三番が構造不況業種対策、四番が中小企業対策、五番が雇用対策、六番が物価対策、七番が対外経済対策となっておりますが、その七番目の対策を拝見しましたら、これはまことに奇妙な感じがする。といいますのは、いまの外国の日本に対する攻撃や要求というものに余りこたえるようなスピーディーな対策がとられていないのではないかという感じであります。鉄鋼であるとか、あるいは家庭電器であるとか、あるいは自動車であるとか、きのう当委員会にECの委員長であるジェンキンズ氏がお見えになりまして、後ろからこの委員会をじろりと見ておられた。私はあれを見ておりまして、まさにEC諸国の日本への殴り込みだという感じを受けた。また鉄鋼や自動車や造船や家庭電器の、これらの問題に対するECあるいはアメリカ等の企業、労働組合、政府の大合唱、日本は安売りをしておる、黒字対策をやろうとしておらない、経済政策がひとり勝手である、こういう大合唱というものに対して有効にこたえていないんではないかという強い感じを持っているわけであります。まず、この問題に対して総理の御所見を承りたい。
  73. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 御指摘の問題は、これはもう前々から日本の経済政策の中の重要な問題であるというとらえ方をいたしておるわけであります。そういう気持ちを表明いたしまして、ことしの初めにつくりました経済見通しにおきましても、国際収支を赤字にするというところまで意図したわけであります。ところが、その後の推移を見ておりますと、輸出の伸び率は鈍化をいたしてきたものの、輸入の伸びが思ったように進まぬ、こういう背景の中で黒字が累積する、こういう現象になってきたわけであります。そういう中で、この秋にはIMFの総会でありますとか、世界銀行の総会でありますとか、あるいは各種の経済に関する国際会議が行われる、そういう中で日本の黒字問題ということが提起される、こういう状態になってきておるのでありますが、私はいまの世界の情勢を見てみまして、世界じゅうがいま混乱しておる、その中で一番苦しんでおるのはこれは発展途上国です。発展途上国が苦しんでおるその主たる原因はどこにあるかというと国際収支、これから問題が来ておる、こういう状態でございますが、同時に先進工業国の方も、発展途上国ほどの状態ではございませんけれども相当苦しい状態である、こういうようなことであります。ですから、先進工業国同士がお互いに協力を強化いたしまして、とにかくその世界経済の姿勢を整えることに努力する、これはもちろん必要でありますが、同時に並行いたしまして発展途上国問題、これをこの際よほど考えなければならぬ問題であるという取り上げ方をいたしておるのです。わが国は、とにかく世界全体の中でアメリカに次いで第二の経済力を持っておる国という立場で、世界経済の成り行きには非常に大きな責任を持っておる、そういうことを考えますと、先進工業国の中の協力を緊密化いたしまして、世界経済を何とかインフレのない安定、そういうところへ持っていくような協力、努力をしなければならぬ。同時に発展途上国、この問題をよほど日本としても考えなければならぬだろう、こういうふうに思うのです。多少国内の立場と、それは発展途上国に協力すれば国内の施策がそれだけ制約されるではないかというような国民感情があるかもしれませんけれども、まあ世界経済があっての日本でありますから、その辺は割り切って、そして多少日本の国は犠牲を忍んでも発展途上国への協力を強化しなければならぬ、こういうふうに考えまして、そのための対策を相当強化しておるわけなんです。それから同時に、特に日米欧先進工業国、きのうもジェンキンズEC委員長と十分会談いたしましたが、かなめは、やはり日米欧がしっかり協力して、保護貿易体制というようなところへ走らないで、そして貿易を拡大均衡に持っていく、こういうことに努めなければならぬだろうという結論でございましたが、そういう分野においても日本責任を果たしていきたい、かように考えております。
  74. 渡部一郎

    渡部(一)委員 では少し総理のお言葉に乗っかりまして、発展途上国に対して十分配慮すると総理は言われましたから、そっちの話から、ちょっと質問が多過ぎましたが、まただんだん詰めさせていただきますが、わが国の発展途上国に対するいままでの取り組みというのは非常に少ないのではないか。たとえばDAC、開発援助委員会の日本は主要メンバーの一つになっておりますけれども、DAC十七カ国の中で、パーセンテージでいきますと十一二番目、GNP比で〇・七%というのが一昨年で〇・三六、〇・三三と少し下がっているわけでありますが、日本の方はさらに低くて〇・二三、それがさらに下がって〇・二〇にいま下がっておる。これは非常におもしろくない。五年間でこれを倍増以上にしましょうということがすでに政府の方針としてうたわれているようでありますが、これはもう五十二年度の予算の中ではすでに決定されておって、むしろ五十三年の予算の問題になるかもしれませんが、これは低過ぎる。これはもう恐らく総理も意見が一致されておると思いますが、質も非常に悪い。グラントエレメントというのですが、それで言いますと、DAC平均で八八・九なのに、日本は七四・九と、質も悪ければ量も悪い、非常に問題になっておる。これが国際会議へ行ったときに、日本は何もやってないという理由の一つにも、攻撃目標の重要な一つにもなっておる。この辺はどう改良されていかれるか。
  75. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日本はほかの先進諸国と多少立場の違う面がありまして、あるいはヨーロッパの諸国なんか、あるいはアメリカ、これらの国国は戦前は広大な植民地を持っておったのです。その植民地が独立をいたした。その経緯から見まして、旧植民地、いまの独立国、これに対して特別な配慮をしなければならぬという立場、これがわが国のような植民地を持っておらなかった、まあ韓国、台湾という問題はありますけれども、まずまず植民地を持たなかった、そういう国と立場が非常に違う問題があるのです。  それはさておきまして、しかし世界全体の中でわが国の政府開発援助が、いままさに渡部さんがおっしゃるとおり、昨年度におきましてはGNPの〇・二%である、こういう状態でございます。私は、そういう特殊な日本の立場でありながら、わが国は軍事力をもって世界に貢献するということはできない、そういう立場の日本とすると、何をもって世界に貢献するか、それを考えれば、まず第一にこれは発展途上国の社会安定のために協力をする、これが私は最も自然な考え方ではなかろうか、そういうふうに考えまして、ことしの五十二年度の予算におきましては、〇・二%という昨年を〇・二八%に引き上げる、こういう予算を編成しておるわけであります。  私は、しかしわが日本はこの問題についてどういう立場にあるかといいますと、旧植民地というものはなかったけれども、しかしわが国はアジア諸国に対しましては、隣組というような関係がありますから、ここには相当程度のものをやっているのです。わが国の政府開発援助の約半分、これはアジアに回しておるわけですから、そういう点は私は御理解を願いたいと思うのですが、しかし、世界全体に向かって軍備を持たない立場のわが日本として何をもって貢献するか、これはおくれた国々の社会安定に貢献する、これが非常に大事なことだという意識でだんだんとこの援助をふやしておこう、そうしてこれから五年の間にはこの援助額を倍以上にする。倍じゃないのです。倍以上にする。五年に倍というのじゃなくて、あるいは四年で倍とかあるいはもっと短い期間で倍とか、そういうところまで努力していきたい、こういうふうに考えております。
  76. 渡部一郎

    渡部(一)委員 これは総理、それでもやっぱり少ないと思いますね。いまの国際的な評価の中で言えば、日本は防衛をしない、そうしておいてヨーロッパやアメリカの窮乏をよそにして自分だけもうけておる、そうして膨大な黒字を蓄えておるという猛攻撃のある中で、それに耐え得るものでないと私は思うんですね。だから、この額で倍以上というのは、五年後ですから、その間の経済発展というものはどうなるかわかりませんが、五年後で倍以上というのはちょっと先過ぎるような気がいたします。そして少な過ぎる。  特に、無償援助のことをついでに申し上げますが、LDC対象に、GNPで年間五百二十ドル以下の無償援助を行うというやり方で、金額にして五億ないし十億ぐらいのものを日本は出しておるという方針を承ったのでありますが、聞いてみましたら、外務省の持っておるのは二百億足らずである。二百億ドルじゃなくて、円である。したがって、これが余り有効適切に利用されていない、本当の小さなお金になってしまう。病院をやっと一つ建てるというぐらいのものである。この無償援助の部分が、他国と比較すると極端に少ない、これはもうおわかりのとおりであります。そして外務大臣も大蔵省御出身ですからよくわかっておられると思いますけれども、この無償援助がこんな二百億程度で、しかも外務省予算の中に突っ込まれていますから、予算設定の際になりますと、外務省予算の総枠が二〇%アップとか十何%アップで締められてしまうと、この予算というのは絶対ふえる予算にはなり得ない。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕 とうとうしょうがないものだから、食糧援助費であるとか食糧増産援助費などというのは、大蔵省の枠の中へ突っ込んで百十億円いただいてきてやっておる、こんなやり方である。これは予算の策定の方法にも問題がありますけれども、こうした問題を、外務省の省内の電報を打つ予算から海外にいる職員の給料まで一緒にして、その枠の中で推し進めてしまって、こういうふうな急速に伸ばさなければならぬテーマに対して予算がうまくついてないというのはどうかと思う。この二百億というのは少な過ぎる。外務大臣、あなた少し大声で叫んだらどうなんですか、本当に。これじゃ手助けができませんですね。だから、これもひとつ十分御配慮をいただくテーマだろうと私は思います。一言、どなたか。
  77. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま国際社会の中では、わが国はとにかくいい状態だという評価をされておる。そういうさなかでもありまするので、対外経済援助といいますと、これはまあ国民の税金を対外に割くわけでありますから、国民のよほど御理解を得なければならぬ問題ではありまするけれども、世界が変な状態だという中で、わが日本だけがいいというわけには、これは絶対にまいりませんから、そういう意識を持ちまして、対外経済協力、つまり無償援助もありまするし、いわゆる政府開発援助もありまするし、その他の経済協力もありまするが、それらの問題全体をひっくるめて強化してまいる。予算の要求の枠があるからという問題はありますが、枠は厳重に守ってもらわなければなりませんけれども、しかし、最後にそういう枠の中ででき上がる予算案というものは大蔵大臣から提案されますが、全体を見まして、そういう重点的な問題につきましては、私といたしましてはこれを私の責任で対処します。
  78. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまいい御答弁をいただきましたが、問題は、今度は、現在世界じゅうのやり玉に上がっている日本の黒字ですね。対外為替におけるところの黒字をどう減らすか、これが重要課題である。しかも緊急に減らさなければならない。そして円が猛烈なはね上がりを示せば、先ほどから述べられているような構造不況対策の、中でも繊維産業に対する対策なんというのは、円の猛烈な切り上げから見ればほんの小さな処置になってしまって、実際上意味がなくなってしまう。造船不況なんかに至っては、これほど円が急騰すれば、もう一回首が絞まる。ちょうど、首つりにひっかかって、首が縄で絞まっていたのをやっと外したのに、もう一回絞まったみたいなものだ。また、いま自信を持っておりまする自動車やその他にしても決して楽なものではない。特に繊維産業なんかに対しては決定的な、致命的な影響を持つと言えると思うのですね。ですから、円の急騰というものに対して手を打たなければならないのに、日本の日銀の介入というものが国際的な非難の対象になっておって、もう発動するわけにいかないところにまで追い詰められておる状況というものがある。こういう状況のあるときに、黒字を減らすためにどうしなければならないか。そうしてその黒字を減らすために早く対策を立てなければいけない。しかもその黒字をただなくすのではなくて、貿易に多く頼っているわが国の経済基本構造を考えれば、その黒字というものが諸国には目立たないようにしながら、しかもわが国の安定的な経済発展に資するようにしなければいかぬとか、いろいろ条件はむずかしいだろうと思います。ですけれども、対策が立ってないんじゃないか。先ほど申し上げました総合経済対策の第七項、対外経済対策の推進についてなんというのは、ほんの一、二行である。これは官房長官が御発表になったころ、紙までつけて持ってきましたけれども、これは輸入の促進という項目が大きく書いてありますが、これが実際に行なわれなかったら単なる空文であり、ペーパーである。私は非常に心配しておるのです。これに基づいていまどういう緊急対策がとられているか、関係の各大臣に私はお伺いしたいと思う。総理から御指示が出ているそうですから、一体大臣はいま何をしていて、この黒字を詰めるためにどれくらい輸入拡大をやっておられるか、ちょっと伺いたい。項目から言いますと、一は東京ラウンドヘの取り組みで、二は輸入の促進で、まあ輸入の促進の方だけでも結構ですね。一は、原油貯油量の積み増し、二は、非鉄金属の備蓄の拡充、三は、ウラン鉱石の輸入の促進、四は、航空機の安定輸入、五は、備蓄用飼料穀物の繰り上げ輸入、六は、残存輸入制限品目の輸入枠の拡大、七は、輸入製品の常設展示事業の充実ですか、いまのところこんなことですね。これはどこでおやりなんで、どれくらい黒字減らしに効き目があるか、わかりやすく言ってください。
  79. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えをいたします。  先般の対外経済政策の中の項目でございますが、御案内のとおりに昨日来ジェンキンズ委員長も見えまして、本日も朝からこのECとの関係の対外輸入の促進の問題について協議を遂げておったような次第でありまするし、また先般、対米関係におきましても専門委員会をつくりまして、対米向けの輸入の促進について協議をするような新しい機構もつくりました。それから輸入の問題につきまして、当面エネルギー対策との関係におきましては原油の貯油というものが焦眉の問題でございます。特に冬季を控えました今日は大体八十八日ぐらいの貯油分がございますけれども、これに対しましては、さらに御案内のとおりに、九十日という目標のもとにIEAの国際的な取り決めもございます。これに対しましては鋭意建設に取りかかっておるような状態でございまして、タンクその他の備蓄の問題、それからまた、民間の備蓄のほかに政府関係といたしまして国際の石油公団の問題も俎上に上って、努力いたしております。(渡部(一)委員「どのくらい黒字が減るか」と呼ぶ)黒字減らしですか。――いまのこういうふうな問題で目標といたしまして幾らの黒字が減るかということは、いま容易に積算ができませんが、全力を挙げていたしておるところでございます。
  80. 渡部一郎

    渡部(一)委員 どういうことをやっているかは紙も出ているし、知っているのですよ。いま黒字がめちゃめちゃにたまっていて、六十億ドルもたまっていて、世界じゅうのねらい撃ちの対象になっておる。そうして貿易の黒字が今年いっぱいで六十五億ドルと言っていたら、九十億ドルぐらいになりそうなんでしょう。だから、その黒字を何とかかっこうのいい形で減らさなければならぬといま騒いでおる最中じゃないですか。どれくらいになるかわかりませんじゃ済まないじゃないですか。きのう総理から、あなた何と言われたんですか。そんないいかげんな大臣じゃ困るじゃないか。それは不熱心というものです。どういうことをやっているか知っていますよ、そんなこと言わなくたって。そうじゃなくて、どれくらい減らすのだと聞いているんじゃないですか。どれくらい減るのだ、その措置で。ちゃんと返事してくれなければ質問になりはしない。
  81. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 農畜産物の輸入の問題でございますが、これは各国とも農業にはむずかしい問題を抱えておりますように、わが国でもいろいろむずかしい問題を抱えております。しかし、ただいま御指摘のように、黒字減らし、これは大局から考えてぜひ農林省としても前向きで取り組まなければいけない、こう考えまして、今年度中に輸入をいたします飼料作物、これを前倒しで約十万トン、それから小麦も年度内輸入の計画がございますが、これも前倒しで早期に実施をする。大麦も若干ございます。そういうものを合わせまして二千三百万ドル程度になります。
  82. 坊秀男

    ○坊国務大臣 私に関する問題についてお答え申し上げます。  黒字減らしにつきましては、先ほど御指摘もございましたけれども、今度の東京ラウンドにおきまして非関税障壁につきまして、また関税の引き下げにつきまして着々と準備を進めておりますが、すでに関税の引き下げにつきましては、ECとアメリカとにおいてその方式について少し意見の食い違いがあるといったようなものにつきましては、わが方もこの中へ入りまして、個々に意見の調整をすることができたというようなこともこれあります。ただし、それでもって幾ら一体輸入がふやせるのだということにつきましては、相当の仮定があるものでございまするから、これを明確にお答えするということはできません。  それから、先般IMFの総務総会へ私は出てまいりましたが、IMFにおきましていろいろの、日本が世界の金融機関に対しまして日本の出資でございますか、そういったようなものの増額、ことに今度のウィッチフェーン構想につきましては、これに対して日本としてのでき得る限りの協力をするというようなことで協力をするということを決めたような次第でございますが、なおかつIMFでは、それは日本の黒字につきましては相当のこれに対する批判がございましたけれども、そういったようないろいろな手だてを講じましてこれに対処していく方針であるということを申し上げて、相当の日本に対する了解をとったというような次第でございます。
  83. 倉成正

    ○倉成国務大臣 渡部委員の御質問、まことにごもっともでございます。現在、四月から八月までの経常収支の黒字が四十六億ドルでございます。したがいまして、このままの水準でいくと非常に大幅な経常収支の黒字が出てくる。したがって、総合経済対策を実施して内需を起こすことによって経常収支の黒字幅がだんだん減っていくということを私ども期待しておるわけでございまして、内需を起こして景気対策をやって輸入をふやしていくということが黒字減らしの本筋でございます。そういたしますと、大体経常収支の黒字が五十二年度において六十五億ドル、だんだん後半において経常収支の黒字幅が減ってくると考えておるわけでございます。しかし、そうは申しましても、内需の振興によって輸入がふえてくるという問題は、御案内のように日本の輸入構造が原材料を入れるという構造になっておりまして、完成品の輸入というのが非常に限られておるという点で非常にむずかしいわけでございます。しかし対米あるいは対ECとの関係等におきましていろいろな摩擦が出てくるということも考えまして、関係各省の間でいろいろと知恵をしぼって、少しでもそういう経常収支の黒字が減っていく方法はないかということを努力しているというのが現状でございます。
  84. 渡部一郎

    渡部(一)委員 どうも余りはかばかしい対策がこの総合経済対策あるいは対外経済対策の中から出てこないのは、総理聞かれてもおわかりのとおりです。それは項目が大きくて、具体的な事項にまで下がってきて実際の効果を発揮するというのに時間のかかるテーマがあることは認めますが、それにしてもだめなんですね。  私はちょっと詳しいデータを全部持ってまいりませんでしたが、総理府の統計によりますると、マグロですね、マグロがいま非常に輸入されておりますが、マグロ一キログラムの輸入が六百二十五円ぐらいであります。それが六百三十五円、六百四十円とここのところで上がっていくならあれなんですが、逆に下がってきたわけですね。六百四十円ぐらいのが六百二十何円に下がったんです。輸入の上では卸としては輸入原価としては下がったわけです。ところがその一キログラムが実際的に売られるときには三千三、四百円という、もう何というのでしょうか、三倍どころじゃない、五倍近い金額である。細かく切るから値段が上がるというような言い方もあるでしょうけれども、上がり過ぎである、一つは。チョコレートなんというのがある。チョコレートなんというのはこれはやっぱりそうなんですけれども、大体キログラム当たりで言いますと現在小売で千八百円ぐらいである。ところが実際入ってくるときは七、八百円で入ってくる。千八百円という三倍ぐらいの価格になる。これも少し奇妙である。だから入ってくる価格との差、流通問題について何か処理しないと、チョコレートの場合もそうなんですが、ここのところ為替差益があって下がっているにもかかわらず逆に上がっておる。現在輸入している物品の大半というものが食料品に関しては上昇中なんです。小売価格は全部上昇中なんです。下がっているものは一品目しかない。全部上昇中。そうして為替差益が小売の段階で反映されていない。そして輸入物品の実際の小売との価格に物すごいギャップがある。そうした問題について何にもしていない。そうすれば国民は、為替差益がどうなろうと円がどれぐらい高くなろうとも、実際、物品としては安くならないのですから、上がるのですから、世界じゅうでお役所では物が安くなると思っているかもしらぬけれども、実際には値がどんどん上がっていくのですから、だれも買いはしない。買わないのがどういうところへ出てくるかというと、総理、いやな話ですけれども、スーパーマーケットの食品部へ行って聞いてみましたところが、かなり大きなところでありますが、現在売れる食品というのは、野菜にしても魚にしても肉にしても減りつつある。現在一番急上昇した食品は何かというと振りかけだというのですね。振りかけ、つくだ煮、梅干しなんです。梅干しはコレラ騒動の名残があるのですけれども、振りかけが十倍ぐらいふえている。それでつくだ煮である。私は振りかけやつくだ煮を軽べつするわけじゃないけれども、日本国民の中流以下の食生活がどういうふうになっているかというと、御飯をたいて振りかけかつくだ煮かで一杯済ましては働いている人が多くなりつつあるということをこの数字は示している。そういうふうに迫ってきている。そうして食品全体としては、非常に奇妙なことだけれども輸入食料品というのはますます上がる。もう遠慮会釈なく上がっていく。歯どめが全然かかっていない。何が輸入品の増加であるかと思うようなことが私たちの身の回りで起こっている。不況対策が粗っぽい不況対策だ。こういうふうに国民の身近な生活現象のところに何も反映していないということが出てくると思うのですね。この対策は非常に私は対策としては緩い対策、大まかな対策一えらい人だけが考える対策で、実際の庶民のクラスのところに及んでいないと思うのですね。こうしたところをこの流通機構の中にまで突っ込んできてひとつ解決していただかなければならない。これは総理の御指示を私はどうこう言っているのではないけれども、最終責任者としてもうちょっと細かく指図していただいて、実際輸入品はぐっと下がる、輸入品目のいいものはどんと入るようにする、それで国民生活が潤うようにする、しかも対外的な非難を避けられるようにする、この辺御配慮いただきたいと思うのですが、どうですか。
  85. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 その辺は重大な問題として配慮しておるのです。ただ、わが国の輸入構造というものは八割までが第一次製品なのです。この第一次製品、これは何に響くかといいますると、これは卸売物価に響いていくわけですね。たった二割、それが完成品、いまチョコレートのお話がありましたが、そういうものだとか洋服だとかウイスキーだとか、そういうようなものです。しかし、二割という消費者に最も関係のある完成品といえども、これは為替が高くなってきたのですからもう下がらなければならぬ、それだけ下がらなければならぬ、こういう立場にあるわけでございます歩一それをぜひとも下げたいというので、経済企画庁が各省に頼みまして、そしてそういうふうに下がっているかという追跡調査もしたわけです。その追跡調査に従いまして、下がらないというようなものにつきましては行政的な指導もする、こういうことにいたしておるわけです。しかし、卸売物価は、とにかく原材料製品が全輸入の八割だというのですから、これはもろに影響を受けまして、今日はもうほとんど横ばい、こういう状態になってきているのです。卸売物価がそういう状態になれば、やがて半年あるいはそれよりも多少かかるかもしれませんけれども、消費者物価の原価といたしまして、これはまた消費者物価にはね返ってくる。でありますから、消費者物価全体の趨勢としては、下半期におきましては基調がかなり変わってくる、こういうふうに思っておりますが、御指摘の点もごもっともでありますので、鋭意努力いたします。
  86. 渡部一郎

    渡部(一)委員 時間がなくなってきたので、私は話を余りうまく詰められないのですけれども、私の意図しているところは、こうした鉄、造船、自動車、電機、特に造船の中では、海運業も含めまして、まさに集中砲火と言っていいような状況が生まれておる。たとえば、鉄鋼ではギルモア・スチールのダンピング提訴あるいはアメリカ鉄鋼協会のマーシャル・レポートによる日本に対する総攻撃、USスチールによるダンピング提訴、このダンピング提訴の後ろにはCIAレポートというのがあって、CIAレポートによれば、日本鉄鋼企業によるアメリカ鉄鋼企業に対する重大な影響性というものがるる書かれておる。また、アメリカ自動車で言えば、大手部品メーカー、バット社のチャーリーズ会長は、部品については全部アメリカ製にしろ、日本車の輸入抑制をせよと言い、米英両国においては、自動車関係業界に対しては輸入企業に対して政府に働きかけると決め、カーター大統領は、輸入車に対するものは前年までの規模にこれを抑えるという表明を行い、シュレジンジャー・土ネルギー担当補佐官は、輸入会社の規制は明確にすると述べ、こうしたものは枚挙にいとまがない。そうして、おまけに今度は家庭電器の方では自主規制をして一時的にはストップしたようですけれども、これについての提訴はまだ下げられていない。日本の主要品目についてはアメリカ政府が公的に言っているのとは全く違って、こうした攻撃が一方的に加えられておる。まさに一部の新聞が述べているように、鉄鋼戦争あるいは造船、海運戦争、自動車、家電戦争と言っていいようなものが日本の主要輸出品をめぐって起こっておる。これは日本では不況品目ではない。造船を除いては不況品目ではないにもかかわらず、一番出しているところについて、アメリカ、ECなどにおいて朝野を通じての大反攻攻勢がかけられているテーマである。これに対して対策がうまく立っているのか、それをむしろ私は関係各大臣に十分伺いたかったのです。  ところが、これがいずれも適切でない。この対策が立てられていないだけではなく、こうした問題に対して日本の諸官庁は明快にそれら政府に答えていない。それらの国々に対するマスコミに対しても明快に説明していない。こうしたことが悪条件として重なっておる。したがって、日本悪者論はかつての日本黄禍論を超える規模となって定着しつつあるというのが実情だと思うのです。私はこれは指摘するにとどめて、政府にこれから別の委員会等でも申し上げますけれども、これはちょっとお考えいただかなければいけない。  日本は内需に対して、内需を振興して何とかすれば何とかなるというような考え方ではなくて、世界じゅうの非難の的になり始めて、世界の中で生存することはできないという、この外側から見た日本の経済政策というのを考え直さないと危ないではないか。まさに胸を張っておられない。日本で輸出がうまくいった、そしてドルがたまった、ああ日本は結構であったということは言えない。逆に、いまの段階では、たまること自体がもう最大の害悪であり、けしからぬことであり、日本の他国に対する収奪でありという声が、ただに先進国からも起こってきているだけでなく、後進国からも起こってきている。世界の非難の中で日本は孤立しておる。浩然と孤立して、まるでサンドバッグがプロレスラーから殴られているように、殴られっ放しで殴られておる。ひたすらもうけておる。そのあらしをかいくぐってまたもうける。また黒字がふえていく。これは政策でもなければ政治でもない、経済でもなければ外交でもない、まさに根本的変革を要する問題であろう。だから私が、経済の専門家であると言われておる総理に申し上げるのには気の毒な質問です。しかし、事外交問題から見る限りは、これは致命的な欠陥だと言うしかない。これはひとつぜひともお直しをいただきたい。もう徹底的に直していただかなければとんでもないことになる。  その例として、それは基本的な話なのですが、豪州とニュージーランドとの関係を最後に一つだけ触れておきたいのです。これは豪州からいま砂糖の船がやってきて、東京湾の上に十五隻たまっておるのです。この約二、三十万トン近い砂糖船が航路の支障になり始めた。もうこれ以上は東京湾に泊まってもらいたくないというので、今度神戸の方へ砂糖の船を回すというんですね。向こうからはどんどん遠慮会釈なく入ってくる。そうして両者との間の砂糖の協定というものはできない。そうして日本側は、協定はもう破棄すると述べておる。そして、これは商売人がやっておると言うけれども、日本の農林省の重要なサゼスチョンと介在と強圧によってつくられた砂糖協定でありまして、これは過去の失敗をいまさら言っても仕方がないですけれども、後ぬぐいをしなければいけない。それがされていない。これはぜひ片づけていただきたい。  そしてまた肉ですね。肉の輸入のシステムが、先方から言えば乱暴をきわめている。十二万トン輸入した年があったら、その次の年はゼロにした。オイル・ショックの後ですけれどもゼロにした。これはオーストラリアの農民が文句を言う方が正しいだろうと私は思います。十二万トン輸入して、ゼロなんといったら、向こうの農業も畜産業もぶっつぶれてしまう。そうしておいて、今度はどういうふうにしたかというと、いま六カ月の輸入割り当てはするけれども、今度実際に要る段になると、一月ごとにフローズンビーフを何丁、チルドビーフを何丁、これはビーフの種類でありますけれども、その種類を細かく刻んで、ちょこっちょこつと毎月少しずつ言う。そうすると向こうは、一体何を何トンいつ用意しておいていいかわからない。私は、オーストラリアにこういうしわ寄せをするということは、わが国の外交政策から言っても安全保障政策から言っても、これは危険なやり方である。これは農林省に任せるだけの問題としては違うのではないかと思うんですね。  また、もう全部固めて言ってしまうのですけれども、ニュージーランドでは、ECから切り離された、イギリス連邦から切り離されて、売るものと言えばチーズであるとかあるいは牛乳であるとかあるいは木材であるとか、ごく少数のものである。ところが、木材の規格がちょっと日本の規格と違うというので入れない。税金を高く課する、あるいはチーズやその他については、向こうがもう日本は一遍に買ってくれないというので、今度はしょうがないからというので二百海里宣言を行って、約八万トンに近い大きな魚の海域をクローズして、そこから日本船を追い出そうと、そしてソ連に接近してソ連政府にこの魚をとらせるように交渉するとまで息巻いておる。こういうもうとげとげしい関係になってしまって、不況はまさにこの国全体を破産状態に近いところへ追い詰めておる。私は、わが国の酪農を守り、わが国の農業を守るということも事実ですけれども、こうしたことはやはりトータルで考えられなければいけないのではないか。そして対策というものが立てられないと、日本は農業を守って国をつぶすことになりかねない。消費者をかばおうとして生産者をつぶしたり、生産者をかばおうとして消費者をつぶしたりすることは、しばしば当委員会でも論議が出ているけれども、周辺の諸国との安定的な関係を構築するということは、この不況対策あるいは黒字減らしの大問題の中でもかなり神経を使ってやるべきことではないか、こう思っておるわけなんです。その辺、もう一歩ももう二歩もの前進をお願いできぬだろうか、もうちょっと愛想よくできないかというのが、まあいろいろ技術的な困難性はきわめてある問題であるにもかかわらず、私の持っている感想なんですが、いかがですか。
  87. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 渡部さんから、豪州、ニュージーランド等、わが国の砂糖、牛肉、酪農製品等に関する貿易の問題で御質問がありましたが、砂糖の問題につきましては長期契約を結んでおりますが、それが国際糖価が大幅に値下がりをした、そういうことで、日本の糖業界が非常な苦境に立っていることは御承知のとおりでございます。そこで、糖業界の方としては、その価格を引き下げ、条件等について話し合いをしたいということで交渉いたしておりまして、これは政府におきましても業界を指導して、話し合いによって早急に結論を出すようにと、二次、三次にわたってわが方の提案をいたしまして、ただいま最終的な話し合いの段階に入っておるところでございます。  なお、肉の問題につきましては、昭和四十九年に畜産危機がございまして、国会挙げてこの問題につきまして対応をいたしたわけでございます。そういう段階で、一時十二万トンまで入れたものをゼロにしたという経緯はございますけれども、四十九年、五十年、五十一年というようなぐあい一に逐次わが国の畜産も回復の基調になってまいりまして、そういうようなことで大体需要の八〇%程度を国内生産で賄う、あとの二〇%程度を、これを安定的に外国から輸入をするということで推移をいたしておるところでございます。  そこで、豪州の方でも、もってこの問題を安心していけるようにやっていきたいということで、三木内閣以来問題になっておりましたが、今年一月に第一次産業大臣のシンクレア大臣が来日をされまして、私との間で話し合いをつけ、そして昨年度の分は約八万トン、今年度の上期は三万五千トン、下期はいずれ決めることにいたしておりますが、その間ハイレベルの実務者の間で情報交換等もいたしまして、相互に理解をしながら安定的な輸入を図っていくということで合意がなされておるところでございます。ちなみに、豪州と日本との間の貿易関係は、三十億ドルのわが方の入超に相なっておるところでございまして、農産物につきましても、小麦約百万トン、大麦八十万トン、そのほかに肉の七万トンないし八万トンのシェアのうち、恐らく七〇%くらいは豪州が日本に輸出をしておる。綿花も輸入をしているというようなことで、対豪関係につきましては、むしろ日本がトータルで考えましても三十億ドルの入超であり、農産物は相当買っておる。またニュージーランドにつきましては、御承知のように昨年あたりからわが方は少しではありますが入超になっております。その七割は農産物でございます。私は総合的に見まして、日豪あるいは日ニュージーランド間の貿易関係は非常に安定的にうまく行っておる、こういう認識でございます。
  88. 渡部一郎

    渡部(一)委員 農業関係と一番めんどうな問題を抱えておられる大臣に外交上の配慮をせよというのは、これは残酷な話なんですね。これはまあ総理にこの辺のあんばいをよくやっていただいて、外務当局はこれら両国関係がいまや険悪になりつつあることについてきわめて重大な憂慮を持っておられますので、御調整をお願いしたいと思います。  それから、仕事がのろいのが多い。たとえばナフサの価格なんというのはまだごたごたやっておられる。これはがっちりきょう申し上げようと思ったのだけれども、もう時間がないのでこの次の委員会にさせていただきます。総理、この次の委員会のときには、あんなのばんと割っておいて、ちゃんと裁決しておいていただきたい。ナフサ価格で大げんかして、化学工業がこれから成り立つか成り立たぬか大騒ぎしているなんというのは日本の重要な経済基盤を失うものですしね、上の方から不況対策をやっていると底から破れていくようになる。こういう、対策がのろくさくて、責任者がわからなくてごたごたしている問題というのはたくさんあるわけですね。ひとつぜひお願いしたいと思うのです。  最後に私は、総理は首を振っておられますから御答弁いただいたこととみなしまして、時間がないので、ハイジャックの話を最後にちょっと申し上げておきます。  先ほど同僚議員の大出議員が、パスポートを釈放犯に渡したことについて、鳩山外務大臣が知らなくて、外務省の役人がダッカ釈放犯を護送する場合に、パスポートの有無について議論して勝手に旅券冊子六冊を用意した、こういうすさまじい御返事があったのですが、外務大臣の指揮に従わないでそういうことをなさった外務省の役人については、当然外務省は処罰なさるのでしょうね。外務大臣の見識を問います。
  89. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先ほど、午前中に御答弁申し上げましたが、旅券冊子、この冊子ダッカに行く代表団が、外務省の役人が持参をして行ったわけであります。その点につきましては、これは領事移住部長判断に基づいて持って行ったということで、これはできるならば使用しないで済ましたかったのであります。しかし、その点につきましては先ほど御答弁申し上げましたように、現地で人命救助のために、現地の折衝におきましてどうしてもこの旅券の交付を先方が要求をしたというので、石井団長判断によりましてこれを空軍司令官に手交した、こういうことでありまして、現地の措置はやむを得なかった、こういうふうに考えておりまして、したがいまして、この問題につきまして、この交付旅券は法律上の措置として交付をしたものではありませんが、この点につきまして責任を問うということは適当でないと考えておるところであります。
  90. 渡部一郎

    渡部(一)委員 質問時間がありませんから、最後に恐縮ですが質問だけ固めて申し上げます。  外務大臣、まことに恐縮ですけれども、先ほど旅券を渡したのじゃない、外務大臣の判こを押したのじゃない、だから正式な判こが押されていないから、写真も張ってないのだから、番号はついていたけれども、旅券材料を渡されたので、これは旅券を渡したわけではないと言われましたけれども、そういう理屈で言われますと、旅券を偽造し、その偽造旅券を使って国外逃亡した人に対する幇助罪を構成すると私は思いますよ、そういう言い方ですと。だから、この問題に対して外務省は非常に不明瞭な立場をとっておられると私は思います。また法務省においては、監獄法に違反されて、釈放犯人は監獄の入り口で放さなければならないという規定があるにもかかわらず、入り口で放さないで、犯人を向こうまで手錠をはめたまま連れていった。そして向こうで外させた。これは検事の指揮にも従っていない。そして監獄の入り口で釈放しなければならぬという規定にも違反する。そうすると、これは監獄法違反である。
  91. 田中正巳

    田中委員長 渡部君、持ち時間が過ぎましたので、簡潔にひとつお願いします。
  92. 渡部一郎

    渡部(一)委員 だから、これらについて法的な立場を明快にしておくことが必要であり、したがって、法務省、外務省の御見解をもう一回伺いたい。  すなわち、これらの逃走犯人あるいはいわゆる釈放犯人の罪名は何であるのか、そしてこれを手伝った公務員たちに対して免責はどういう形で行われるのか、行われないのか、その二点について両省の御見解を承りたい。
  93. 賀陽治憲

    ○賀陽説明員 ただいまの御質問の点でございますが、現地において手交されましたのは旅券冊子でございまして、これは先ほど渡部先生が御指摘のように、番号は入っておりますけれども、その他の要件は一切記入していないわけでございます。そういう意味合いにおきまして、これは外務省としては直ちに無効の措置をとったものでございまして、その旅券冊子自体は全く無効なものでございます。そういう意味で、犯人がそれを有効に使うという手だてはないわけでございまして、そういう意味では、旅券冊子の交付に伴う法的効果についてはそのように御理解をいただくよりほかないのではないかと考えております。
  94. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 監獄法の規定には確かに違反しております。しかしながら、これもまた法全体の精神からやむを得なかった措置であると思います。今回国外へ出ました六人につきましては一種の逃亡状態になるということに考えております。
  95. 田中正巳

    田中委員長 これにて渡部君の質疑は終了いたしました。     午後一時四十分再開することとし、この際休憩いたします。     午後一時十三分休憩      ――――◇―――――     午後一時四十三分開議
  96. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石野久男君。
  97. 石野久男

    ○石野委員 総理にお尋ねしますが、いま国際的にも国内的にもちょうど不景気の問題が非常に重要な課題になっておりますし、その情勢は、昭和初年のころの紡績がランカシャーを追いまくっていく、雑貨が世界じゅうにはんらんするというような情勢で、日本がぐっと締めつけられてきたとき戦争に突入した、その当時の情勢をほうふつさせるものがあります。そういう点は昨日も同僚議員からも話があり、総理もそのことにうなずかれたわけですが、こういうような情勢のもとで、われわれがいまどのようにして国内の需要を高め、そして国際的には貿易収支のバランスが余り黒字が過大にならないようにするかという問題は非常に重大だと思うのです。  私は、国交回復が行われる前の中国で、お亡くなりになられた毛主席に、日本は紡績製品が非常に過剰になっていて、何とか中国で紡績製品の買い入れをしてもらえないかという話をしたことがありました。そのとき毛主席は、貿易というのは一方だけもうけてはいけない、ちょうど日本が今度の世界戦争前にわが国からたくさんのものを安く持っていって、つくったものを高くわが国に売ったというような、片方だけがもうけて片方が損をするというようなことでは、貿易の促進ということはできません、貿易というのは双方がもうけなければいけないのだというふうなことを言われたことがございます。これはあたりまえのことを言ったわけですが、そのことがいま政治の中で非常に大事なことだと思われるのです。  私は、きょうエネルギー問題で質問したいと思います。エネルギー問題は資源エネルギーの問題として世界首脳会議の中でも非常に大きな課題になっておりまして、総理はこの首脳会議の中でエネルギー問題について一応わが国の分担を約束してきている。いま生産が伸びない。日本の内需が伸びなくて黒字だけが伸びていく、大きくなっていくという情勢のもとで、どんどん生産を伸ばしていくという可能性はない。エネルギーはそれと見合いでどういうふうに見るべきか。私は、いま政府が立てておる長期エネルギー計画はやはり見直されなければならぬ時期に来ているのではないだろうか、こういうふうに思いますが、総理は、エネルギーに対して長期計画の上でどういうふうにお考えになっておられますか。
  98. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 非常に大局的に見ますと、この五十年代はエネルギーによほどの変化がなければこの充足には大体支障ないように持っていけると思っておりますが、さて昭和六十年代、これはある時期になると、特に石油に問題が出てくるのじゃないか。しかも、石油にかわる代替エネルギーの開発がまだ十分でないという段階になる。それから二十一世紀というような時期になりますと、あるいは太陽熱、あるいは核融合とか、在来のエネルギーと全く変わった形の新エネルギーが開発されるようになるのじゃないか。ですから私は、昭和六十年代の中ごろから十年、十五年間、あるいは二十年ぐらいになるか、その間のことをよほど考えておかなければならない状態ではあるまいか、大局的にはそのように見ておるのです。  そこで、しかし、昭和五十年代はどうだ、あるいはこの十年間は大体いけるだろう、こういうふうに申し上げましたが、それには前提があるのです。これは石油の輸入が確保されなければならぬということはもちろんでありますが、しかし同時に、原子力エネルギーをとにかくよほど精力的に進めていかなければならない。もとより石炭エネルギーとか地域の水力エネルギーとか、あるいは地熱エネルギーとか、そういうことも考えなければなりません。なりませんけれども、とにかく大きな問題としては核エネルギーの推進に全力を挙げなければならぬ。また努力すれば五十年代のエネルギーを十分充足し得るような状態、これは石油エネルギーと相まちましての話でございますけれども、それが実現できるだろう、そのように考えて、そのような基本的な考え方に基づいての諸施策を進めておる、こういうことでございます。
  99. 石野久男

    ○石野委員 代替エネルギーとしての原子力の問題については、総理の考え方はわかりますが、その前に、IEAの一九八五年、昭和六十年代に向かっての目標値の設定ということが一応決められて、それに対して日本が協力する、このことは国際的なエネルギー関係の上で非常に大きな責務であろう、こういうように思います。総理は、このIEAの目標値に向けてどういうように協力をするお考えでおられるか、その点をお聞きいたします。
  100. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 IEAの会議にはわが国からも代表が参加いたしまして、そしてああいう結論になったわけでありますから、もとよりこれを尊重しなければならぬ、これは当然のことであります。その協力の方途というものは何かというと、先ほど申し上げましたように、これはわが国が石油依存度をだんだんと下げていかなければならぬ。これは量的にはふえますよ、ふえますけれども、依存度は下げていかなければならぬ。そのためにはどうするかといいますと、石油の効率的な使用といいますか、省エネルギー、この考え方、これを大きく進めていかなければならぬ。先ほど申し上げましたように、その他の代替エネルギーの開発を考えなければならぬこと、これは当然のことであります。
  101. 石野久男

    ○石野委員 省エネルギーの問題はこれからの日本にとって非常に大事な課題であり、それは同時に産業構造の問題にもかかわってまいりますが、私は、省エネルギーの考え方に到達する前に、エネルギーを費消するに当たって、使ったエネルギーが必ずしも生産的に有用化しないで、むしろ非生産的な部門でエネルギーを使い過ぎるというようなことがある、そういうようなことをなるべく排除していくようにしなければいけないんじゃないか。それは省エネルギーの一つにもなりますけれども、特にいま代替エネルギーとして原子力の問題が話がありましたけれども、原子力で百十万キロワットの電力を引き出すために使う石油はどの程度だろうかという計算、鉄鋼からセメントそして工場をつくり、それで発電所をつくりそして再処理工場、それから廃棄物の処理、この一貫する原子力発電にかかわる石油の消費高、使ったものと、それから原子力が電力として活用されるものとのトータルバランスシートというものがなかなか出てこない。これを厳密に検討を加えていきますと、むしろ原子力に使うだけの石油をほかで使った方がかえっていいのではないか。むしろバランスシートとしては、原子力で発電される電力量よりも、火力発電で使った石油で出てくるエネルギーの方がもっと大きいのではないかという、こういう計算が出てくる。そういう説を学者の間で言っておられます。     〔委員長退席、小此木委員長代理着席〕 この問題は一応検討を加えるべき価値のある問題だと私は思うのです。こういう点について政府は積極的に検討を加えるべきでないだろうか、こういうように私は思いますが、政府はどういうようにお考えになりますか。
  102. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 いつもこの問題は議論を呼ぶところでございますが、もちろんそのバランスシートは大変でございますから、今後もわれわれといたしましては鋭意検討いたします。しかし、現状といたしましては、発電所建設に必要とするエネルギーよりもやはり発電するエネルギーの方がはるかに大きい。これは再処理並びに廃棄物処理を含めての計算がございます。われわれもそのように信じております。
  103. 石野久男

    ○石野委員 この問題は、政府が政策科学研究所に依頼して、出た答えを私どもは見ておるのです。しかし、これをここで論議しておりますと時間がありません。このデータのそろえ方の中には、われわれとしては非常に問題が多いと思うのです。他日これは委員会でまた論議をしたいと思いますが、ここで出ておるような結論にはなかなかならないというわれわれの計算があります。これは政府としてもどうしてももう一度その問題についてわれわれの意見も聞く機会を持っていただかなければいけない。そういうことで問題をつかんでいただかないといけない。そのことについては、ひとつそれだけの用意を科学技術庁なり通産省がやっていただかなければなりませんが、その用意はございますか。
  104. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 当然そうした声に対しましても耳を傾けまして、そうした問題につきましては速やかに合意を得たい、かように存じております。
  105. 石野久男

    ○石野委員 総理にお尋ねしますが、エネルギー問題は結局は国民生活を向上、発展させなければならない、そういうことからエネルギーの危機ということを盛んに言われているのだと思います。エネルギー危機というのは、率直に言って、現在のような不況段階においてどういうことを意味しているのか。たとえばいま設備は過剰になっている。失業者は非常に多い。そして物をつくってもなかなか売れないのだ。現在、それではエネルギーを供給する設備が不足しているのだろうか、あるいは将来の見通しとして、その不足はどういう程度に出てくるか、こういう問題についての考え方は、政府が盛んにエネルギー危機、エネルギー危機と言っているけれども、実質的には生産は落ちていく、失業は出てくる、つくった物は外国へ売れない、内需は出てこない、こういう危機的なときに、エネルギー危機というのはどういうことを意味しているのか。
  106. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 五十年代を展望してみますと、大体実質で六%成長ぐらいな経済規模の拡大が予想されるし、これがまた実現されませんと雇用問題等に非常に混乱が出てくる。そういうことを前提としますと、これはそれに必要なエネルギーを整備しておかなければならぬ。これは当然そうなると思うのです。整備の仕方、つまりどのくらいの量を整備するかということにつきましては、もとより省エネルギーというか、そういう努力をした上、幾ばくの新エネルギーを必要とするかということになるわけでありまするが、そういう検討をした上、所要のエネルギーだけは確保しなければならぬ、こういうことでいまエネルギー総合政策というものをつくっておるわけであります。現在の段階、ことしエネルギーで不足がある、そういうような状態ではございません。しかし生産もどんどん伸びていく、国民総生産も上昇する、そういう際にエネルギーがそれに追随できる、このような範囲内において、成長政策にも限界があるわけでありますが、まずまず六%成長というところでありますれば対処できるであろう、こういうふうに考えております。
  107. 石野久男

    ○石野委員 六%の成長率を踏んまえてエネルギーの長期計画を完遂すれば、雇用の問題は完全雇用という状態になり得るという自信があるわけですか。
  108. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 成長論からいいますれば、本当は成長の速度はこれからの世界環境を考えればもっと低い方がいいのですよ。国民にもそれを申し上げて、もう少しいままでと違った低い生活、それで満足してもらわなければならぬということを呼びかける、そうすればそのエネルギー問題に関する態度といいますか、立場は非常に楽になるわけなんです。  しかし、それでは雇用という問題から考えまして、この問題は解決にならないのです。そこで、雇用問題をとにかく何とかして解決するという立場に立ちますと、最低六%の成長を必要とするということになるわけなんです。まあ六%成長がありますれば、いわゆる完全雇用、一・三%の失業率、これが完全雇用の線であろう、こう言われますが、その程度のことは実現できる、こういうふうに考えます。
  109. 石野久男

    ○石野委員 六%ないし六・七%の成長を前提として政府が考えたエネルギーの供給見通しについて、先ほど省エネルギーあるいは代替エネルギーとしての原子力というものが総理から言われておりますが、この原子力問題について、現在まだ技術的にも問題がある。先ほど総理は原子力問題について非常に大きな期待をかけておるというお話ですが、われわれの側からすると、むしろこの原子力はまだ研究段階だ。わが党のたてまえからすると、政府のエネルギーにおける省エネルギー一〇・八%に対して、われわれは一五%方の省エネルギーを考えるべきだ、そして原子力は一応現在のものをゼロという形で見て研究段階に置く、その間代替エネルギーとしては、国産エネルギーで可能な限りそれを充足していく、すなわち水力あるいは火力、地熱というようなもの、すなわち水力の問題では政府の考えているのよりもわれわれは百五十万キロワットプラスで大体四千二百五十万キロワット、地熱は政府が考えている百万キロワットを二百万キロぐらいにしていく、そして、国内の石油あるいは天然ガス等で政府よりも百万キロリットル方多い千二百万キロリットル、国内石炭においても政府の二千万トンを二千五百万トン、全体としてのトータルで、政府の考えている六十年度対策促進ケースの輸入石油六億六千万キロリットルに対して、われわれの方は六億二千九百万キロリットルという形で持っていく、そういう対策を考えて、むしろ水力、地熱あるいは石炭の利用というものに力を入れるべきだと考えている。この点について、国内産業育成の上から言えばむしろそれの方が、国内における産業を育てていくという意味からも、エネルギーの自給の点からいっても、政策的にはそういう立場をとるべきではないかと思います。われわれはそういうように考えているけれども、それに対して政府はどういうように考えますか。
  110. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの石野先生の御見識に対しまして、われわれ政府側といたしましては、先生よく御承知の総合エネルギー調査会によりまして、いろいろな客観情勢その他の問題を検討いたしたわけでございます。しかしながら、ただいま先生のお話しのような水力の開発の問題につきましても、これは立地その他の点におきまして容易ならざる大計画でございまして、これを遂行すること自体でも非常なむずかしい問題もあると私は存じまするし、それから、地熱の場合のわれわれが考えておりまする百万キロワットをさらに増強いたしますとか、あるいはまた国内炭の二千万トンをさらに増量いたしますとか、いろいろとただいまおっしゃいましたような国内的な問題におきましても、現在でも非常にいろいろと問題の多い中であるわけでございます。しかしながら、総合エネルギー調査会におきまして、いろいろと分析検討をいたしましたのが先般お届けいたしました政府側の方の見解でございますので、その点につきましての個々の開発その他の論議に当たりましては、また詳細に、担当長官も参っておりますので、いろいろと御質問いただきますが、われわれといたしましてはこの六億六千万キロリットルの六十年度の現計画を適当であろう、かように考える次第でございます。
  111. 石野久男

    ○石野委員 水力とか地熱とかあるいは国内の石油ないしは天然ガス等の開発の問題は、資金の問題でなかなかやりにくい。われわれの考えるように、原子力に集中している政府の投資等をその方に回していけば幾らでもそれだけの仕事ができるという計算が出る。原子力にかけておる金というのは大変なものです。三千三百万キロワットの発電をするための政府資金というものは大変な金ですよ。これを水力、火力あるいは地熱、天然ガス等に入れる、むしろそれの方がかえって安定的なエネルギー確保の道になるとわれわれは考えるわけです。特に原子力問題では、今度東海の再処理工場等を見てもわかるように、また、原子力の軽水炉のPもBもどちらもですけれども、いずれも技術的に自主性がないために、きわめて不安定な情勢に置かれておる。  こういうことから考えますと、むしろエネルギー確保の道は、可能な限り日本の国内で自給できる体制を確立すべきである、こういうふうに考えるわけです。細かい論議は別としても、考え方の問題として、私は国内資源の開発という問題をもっと積極的にやるべきだと思います。ひとつ総理の所見を聞いておきたい。
  112. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 石野さんのおっしゃる原子力以外の国内エネルギーの開発、たとえば地熱でありますとか、あるいは水力でありますとか、石炭火力でありますとか、そういうものですね、これはもとよりこれを推進する、これはもう大変大事なことである、私はこういうふうに思います。それは推進しますけれども、だからといって原子力エネルギーをおくらせていいんだ、こういうことににはつながっていかないと私は思うのです。ことに後十年、そういう時期になりますると、とにかくエネルギーの谷間の時代ということが言われる。そういうときどうするのだ、いまからこの原子力、これは推進しておかなければならぬ、こういうふうに考えております
  113. 石野久男

    ○石野委員 原子力についての研究をやめろということは言っていません。原子力は、いまもおわかりのように、至るところで事故が続発しておる。後でもまた触れますが、東海の再処理工場だってもう事故が出てきているわけですね。いろんな意味において無理をした発電をしておりますと必ず技術的な側面で行き詰まる時期が来る、かえって安定性を欠く事態が必ず来ると私は見ているのです。それから国際的な関係で、ノーハウの問題でのど元を締められている関係がありますから、自主技術の開発がない限り将来に対する安定的なエネルギー確保の道ではないと私は思っているのです。原子力問題については、私は総合的に研究をし、自主技術の確立のために積極的な政治方針を出すべきだ。それでありませんと、ほんとの意味での原子力におけるエネルギーの確保ということは出てこないだろうというように思うわけですよ。政府の考え方と非常に違うわけですが、もし政府の言うように仮にそういう方向でいった場合に、果たして原子力でうまくエネルギーの確保が、三千三百万キロワットの確保ができるかどうか非常に疑問ですよ。現にこの稼働率なりあるいは利用率の側面を見ましても、政府が要求しているように七五%はとてもいかない。全体として五二%、この最初の原子炉ができてから今日までの間の全体の炉の利用率を見ますると、五二%しかいっていませんですよ。この中にはほんの一ヵ月か二カ月しか動いていないようなものでも一〇〇%になっておりますからこういう率が出てくるのであって、一基一基見ると、たとえば美浜の原子炉のように三十四万キロワット、設備投資だけで三百六十二億円の金を投じたものが現在までどのくらい動いているかというと、ほんのわずかしか動いていない。これではとても電力会社がやっていけっこないですよ。関西電力がこれで黒字が出ているのはおかしい。これは電力料が上がったから、それで利益を上げていますけれども、原発自体から見ればとてもとても賄えるものではないんですよ。  きょうの新聞では、再処理工場で事故が出ておりますね。再処理工場のこの事故の出たことについてもちょっと報告をしてもらいたいんだが、この報告を承るに当たって、大体東海村の再処理工場はパイプで詰め込みのしてある工場なんですが、あの工場の容積がどのくらいあって、パイプの長さはどのくらいあるかということを最初にひとつ聞きたいのですが。
  114. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 詳細なことはいずれ事務局から報告させますが、せっかく九月二十二日にはさみを入れました再処理施設において、ただいま先生事故とおっしゃいましたが、事故ではございません。トラブルとお考え賜りたいと思います。その点だけはひとつ御了解賜りたいと思いますが、その内容も私たちといたしましては予期いたしたところではございますが、やはり初歩の段階でございましたから、いわゆる詰まり現象というものが出たわけでございますから、その点は御了解賜りたいと思います。なお、そのほかのことは事務局から答えさせます。
  115. 牧村信之

    ○牧村政府委員 お答えいたします。  再処理工場の勇断工程で燃料棒の詰まりの点につきましての御質問についてお答えいたします……(石野委員「それはいいのだよ、パイプの長さは幾らあるのだということ」と呼ぶ)パイプの長さは、ちょっと資料を持っておりませんが、約百キロメートルぐらいだったかと思います。  それから、先生おっしゃいましたが、この勇断工場のところは、断続的に操業しておるものでございまして、そこのホッパーが詰まりましたということでございます。機械の故障とかそういうことでは一切ございませんので、あわせて御報告いたします。
  116. 石野久男

    ○石野委員 お聞きしますが、ホッパーで詰まったのは、燃料の切断したものが入ってから何キロぐらいのところで詰まったのですか。     〔小此木委員長代理退席、委員長着席〕
  117. 牧村信之

    ○牧村政府委員 勇断機というものがございまして、そこで核燃料の燃料棒を切っておるわけでございます。切られた燃料体がすぐ配分器というところに送り込まれる、落とされるわけでございます。そこの配分器――私、先ほどホッパーと申しましたが、詰まりましたのは、その配分器、ホッパーのような形をした配分器、そこで詰まったわけでございます。
  118. 石野久男

    ○石野委員 そのホッパーのようなものというのは、この百キロメートルのパイプの中の何メートルのところか何キロのところですかと聞いている。
  119. 牧村信之

    ○牧村政府委員 距離として正確に知ってはおりませんが、いずれにしても、再処理のポンドから燃料が運ばれまして一番最初の工程でございます。したがいまして、距離にしても十メートル以内だと解釈しております。
  120. 石野久男

    ○石野委員 総理、いま再処理工場で、トラブルだか事故だか知らないけれども、詰まったのは、百キロメートルのパイプがずっとある中の、ほんの入り口のところでとまっちゃったんだ。操業して間もない。しかも、わかったのは二日後だというのだね。だから、こういうふうに、技術の側面においても、まだ日本の技術はここまでわかってない。なぜこういうことになっているのだ、研究も何もやらないで、よその機械を借りてきて設備をして仕事をしているからこういうことになるのですよ。研究をやっておれば――だって、切断したものが、百キロもある道のりをずっと歩かなければ、プルトニウムは出てこないのですよ。それだのにとば口でこういうふうに詰まっちゃっているのですよ。日本の技術はかくのごときものなんですよ。  しかも、東海のこの再処理工場を動かすについて、アメリカとの交渉で、宇野大臣は、二度も三度も向こうへ行って、ようやくにして二年間だけの許可認可をもらってきた。それを払いのける力はない。なぜだ、自主技術がないのですよ。技術はないのだけれども、あれがほしいから、あれがほしいからとつくっちゃって、しかも、これはアメリカで抑えられた。設計はサンゴバン、フランスのものなんです。  われわれは、原子力について、原子力から出るエネルギーの大きいことは、もう、言われなくたって、広島でよく見ている。だから、それをどういうふうに使うかという、平和利用の問題では、何よりもまずこの技術の確立ということに力を入れなければ、総理は代替エネルギーに七・四%の比率で原子力を持とうとしておるのですが、自主技術の開発もないままに進んだのでは、やがて必ず行き詰まる時期が来る。  私ども社会党は、決して原子力をもう全部めちゃくちゃにしてしまえと言うのではない、研究しろと言っているのですよ。いまのところ、これはやはりどうしても研究の段階として全力を傾注すべき時期でないかということをわれわれは言っている。ただ開発開発のことだけ言ったのでは、必ずしくじる。二年後に再処理工場がもし動かなくなったらどうしますか。総理はその点について、原子力についての本当の自主技術確立のための政治方針を考えるべきだと思うのですけれども、いかがですか。
  121. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 総理のお答えの前に、自主技術に関しまして御答弁いたしておきたいと存じます。  御承知のとおりに、核燃料サイクルの確立はわが国の将来のために大切でございます。その目玉とも言うべき高速増殖炉の実験炉は、すでに先般臨界に達したことも御承知のところでございます。また、現在使っております軽水炉におきましても、沸騰水型、加圧水型、いずれもいま九〇%以上国産でやっております。そうやってわれわれは将来に備えて必死になって技術の開発もいたしておるわけでございます。東海の再処理施設に関しましても、いま局長が話しましたとおり、今日ただいまは無事運転が続いておりますし、新聞の報道におきましても詳細に報道されておりますから、それを読んでいただければ、どの程度のものであったかということもおわかり賜ると思うのでございます。もちろんそういうことがないにこしたことはございません。今後も自主技術の確立のために努力をする所存でございます。
  122. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいま宇野長官から申し上げたとおりでございまして、とにかく技術が整わないで稼働が始まるわけがないのですから、技術についてはどこまでも努力をする。また安全性それから環境の整備、これも十分整えた上のことでありますが、とにかくこれからの代替エネルギーの主力としては原子力エネルギーであるということだけは、私は皆さんがそうお考えになっておられることじゃないか、こういうふうに思いますので、それはそれとして進行させなければならぬ、かように考えております。
  123. 石野久男

    ○石野委員 再処理工場のホッパーの詰まっているという問題について、いまはもう動いていますよ、新聞を読みなさいということですが、きのうの事故をわれわれが知ったのは新聞なんだから、新聞はまだしっかり読んでない。けれども、宇野科学技術庁長官、原子力についていま問題はそんなに簡単なものじゃない。世界のどこへ行きましても、経営者なり政府の主導型のところでは、問題はどんどん進んでおりますけれども、未解決で残されている問題は数多くあるのですよ。それを抑えておるから進んでいるだけなんですよ。この未解明のものをみんな引きずり出してきたら、とてもじゃない、進めるどころの問題じゃないということを特にコストの問題で――あなた方はコストは非常に安い安いと言うけれども、資本主義経済のもとではコストがもし赤字になれば経営がやれなくなってくるということはわかり切っているでしょう。あなた方が出しているコストの計算は、大体、炉は三十年の耐用年数ということになっておる。そういう年数で計算していけば非常に安いけれども、実際問題として炉の耐用年数は三十年なんかもてる見通しはないはずです。どう考えたって十五年か十二、三年のところだと思います。耐用年数が半分になっていっただけでもコストは倍になりますよ。私たちはそういう問題について、原子力に志向している経営者なり政府の考え方というものにもう少し国民的な立場での考察を入れてほしい。たとえばプルトニウムの工場を操業するに当たって、動燃労組の諸君がこの問題について一応これを認めるという声明を出したときに、労組の諸君は環境への放出低減化について問題提起をしている。「クリプトンなどの除去装置」、「トリチウムの除去」、そして「高放射性液体廃棄物の貯蔵は地域住民への不安を与えるので、現有施設を拡充するよりも早急に固化法を擁立し、かつ国に対してその固化体の管理体制整備要求していく必要がある」、こういうことを条件として認めておるのですね。ところが、こういうクリプトンの放出の問題、トリチウムの除去の問題については、まだ皆さんの方ではこれに対して確たる答えが出ていないでしょう。そういう地域住民に与える非常に大きな弊害があるにもかかわらず、それは大丈夫だと言う。われわれはこういうことを認めるわけにいかないのだ。原子力問題については、総理は代替エネルギーという形でどうしても原子力を置くのだと言うけれども、その前にこういうような問題で解決のできない事情があることを認識しなければいけないと思うのですよ。私は、こういう事情を踏まえて、原子力発電、再処理、廃棄物処理についての総合研究体制というものをむしろ政府がつくるべきだ、こう思います。総理は、安全性の問題について現在の体制でいいとお考えですか。
  124. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 安全性の問題はおおむね整っておる、こういうふうに伺っておりますが、これは人命にも関する重大問題でありますから、この上ともこの安全性については万遺憾なきを期すという態度で臨みたいと思います。
  125. 石野久男

    ○石野委員 動燃労組が言うように、クリプトンだとかトリチウムなどの除去ということについて、これをはっきりさせるということが非常に大事です。そういう問題について長官は、原子力委員会等に対してどのように指示を与え、指導しておりますか。
  126. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 何度も申し上げましたとおり、開発と安全とは表裏一体である。むしろ、今日、原子力の初期の段階においては安全という大きな旗のもとに開発を進むべきだというのが私の信念でございます。したがいまして、特に原子力委員会は今後安全委員会をさらに新設するということも御承知のところでございますし、現在の原子力委員会におきましても、安全に関しましては専門部会等を設けまして、その組織の拡充に努めております。いろいろな面におきまして仰せの点は十二分に検討いたさせております。
  127. 石野久男

    ○石野委員 クリプトンが一日八千キュリーから出るのですよ。そういう放出放射能というものを抑えるということがいま十分できていますか。
  128. 牧村信之

    ○牧村政府委員 お答えいたします。  残念ながらいま研究開発中でございます。すでにこの基礎研究を終了いたしておりまして、詳細設計を現在実行して、この再処理工場が本格操業――本格操業と申しますと、大体能力いっぱいの操業になる五十六年ごろ建設完了するようなスケジュールで計画を進めております。ただ、先生、現在の状況においてクリプトンが相当出るということでございます。それは事実でございますけれども、これは原子力委員会の再処理の安全審査の専門審査会におきまして十分御議論いただきまして、環境に与える影響は非常に少ないということで御許可をいただき、そういう線に沿って再処理工場の運転を行わせておるということでございます。
  129. 石野久男

    ○石野委員 原子力委員会が安全審査を通したからと言っても、放射能が周辺地域にばらまかれることに変わりはないのですよ。しかも、再処理工場の安全審査を通した時点よりも、今日では許容量をぐんと下げていくという世界的な傾向でありまして、もうあなたが言うような情勢じゃないということをはっきり認識しなければいけない。とにかく、地域住民からすれば、そういうように放射能はばらまかれてくるし、トリチウムはどんどん出されるというような情勢ですから、安全性問題を非常に軽視している政府の体制を許すことはできない。そういうような問題を含めて、柏崎の原子炉の許可が行われた。この問題などについても、率直に言って地域住民は非常な心配をしておって、何遍も何遍も政府に対して陳情しておる。ところが許可になったわけです。政府としては、柏崎の原子炉の断層問題について、本当に自信を持ってよろしいということが言い切れるのですか。
  130. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 柏崎の件に関しましては、原子力委員会の審査会及び担当部会において、延べ百四回にわたって慎重に検討いたしております。そして審査会におけるこの分野の専門家を特に増員をいたし、数次にわたる現地調査の実施の結果、安全だと判断した次第でございます。もちろんその間、文献、資料等十二分に調査をいたしております。
  131. 石野久男

    ○石野委員 原子力委員会が設置許可をしたときに、地質問題について大丈夫だということを言っているものだから、東京電力労組は九月の二十日にこういうことを見解として発表している。「気比宮の断層以外は無視できる、仮に気比宮断層が活断層だったとしても、施設の耐震設計はこれに対し安全性で十分余裕があることを示しており、疑問が問われた断層論争に技術的な判断が下されたと考える。」電力労組の諸君に「気比宮の断層が仮に活断層だったとしても」施設の耐震設計はこれに対して安全性は十分だ、こういうふうに信じ込ませるように安全審査会は論じているわけです。素人考えしましても、「活断層だったとしても」原子炉がその上に置いてあっていいというようなことが考えられますか。仮に活断層であっても大丈夫だ、こういう認識を与えるという政府の指導、原子力委員会安全審査会のこの見解に対して、われわれはどうしても納得がいきませんよ。政府はどうなんですか。
  132. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 いま御報告いたしたような結果でございますから、われわれといたしましては、安全と判断いたしております。
  133. 牧村信之

    ○牧村政府委員 お答えいたします。  ただいま大臣が御説明いたしましたように、この問題につきましては、地元の方々からかねてから問題点の指摘を受けたわけでございます。したがいまして、それを受けまして安全審査会では、従来の審査にも増して、安全審査の専門委員の増強を行い、いろいろな御指摘に対して十分審査したわけでございます。  ただいま先生のおっしゃいました真殿坂断層、これがそのサイトの中に延長部分が存在するという御疑問に対しましては、現地調査、ボーリング調査等を実施いたしまして、その結果を安全審査会でいろいろ御議論いただきました結果、この断層はサイト内に及んでいないというような判断をしております。ただ、そのほかサイトの周辺部で断層を持っている地形のところがございますが、それぞれにつきまして専門の検討をいたしまして、たとえば、サイトの周辺のそれぞれの断層につきまして地震の可能性等を調べまして、活断層であるものにつきましては、そこで最大限の地震が起きたときにサイトにどういう影響を与えるか、こういうことも想定いたしまして、耐震設計をどうするというようなことにつきましても十分審査してございます。したがいまして、その審査結果によりまして、今後、設工認等の過程を十分に行うというようなことで、十分安全は保たれるというふうにわれわれは確信しております。
  134. 石野久男

    ○石野委員 局長はいろいろな安全審査に対しては耐震設計をしておると言うのですが、活断層であるということがみんな心配している一番大きい原因なんです。仮に活断層であっても大丈夫なんですか。
  135. 牧村信之

    ○牧村政府委員 サイトの延長線上にある断層については活断層であるという判断ではございません。
  136. 石野久男

    ○石野委員 もう一度聞きますけれども、東電労組の諸君は、「仮に活断層だったとしても施設の耐震設計はこれに対して安全性を十分持っている」からと、こういう判断をしておるわけですよ。そういう見解を発表しているのですよ。そういう見解を発表しておるのは、あなた方の論拠に基づいてこういう見解が出ているのですが、われわれとしてはこういうことはとても考えられないのだ。炉の地下に活断層があるということがわかっているのに、耐震設計は大丈夫だからというようなことでこの炉の設置許可をするという認識が疑われるのですよ。どうなんです。
  137. 牧村信之

    ○牧村政府委員 お答えいたします。  確かにサイトの周辺相当離れたところには活断層として認められる断層がございます。この断層につきましては、その活断層の性状によって起こる地震がどのくらいのものであろうかということを評価いたしまして、それに基づきまして耐震設計等の措置を講ずるような安全審査をいたしております。(「活断層の上でも大丈夫なのか」と呼ぶ者あり)はい、大丈夫でございます。
  138. 石野久男

    ○石野委員 いま局長は、活断層の上でも耐震設計は十分やっているから大丈夫だと、こう言うのですよ。私の方では、これは開発だけが考えられていて、周辺地域の住民の安全に対する配慮が全くない結果出てきておる結論だと思う。総理、原子力の安全性の問題はこういうところに問題があるのですよ。われわれは大丈夫だと思っておっても、もしもわれわれの計量以上の地震が来たらこれは大変なことになりますよ。こういうようなことで安全審査、設置許可が通っていくとすれば、とてもあなた、住民は原子力発電に対して安全感を持てませんよ。信頼できませんよ。どういうように指導しますか。(「活断層の上でも大丈夫だと言うのか」と呼ぶ者あり)
  139. 牧村信之

    ○牧村政府委員 申しわけございません、ただいま私、質問のあれを……。活断層が原子炉を置かれるサイトの下にあれば、これはゆゆしい問題でございます。そういうところに原子炉を設置するということはちょっと考えられないところでございます。(「初めからそう言えばいいじゃないか」と呼ぶ者あり)申しわけございません。訂正さしていただきます。
  140. 石野久男

    ○石野委員 いま局長が言ったように、活断層があれば大変なことなんですよ。にもかかわらず電力労組の諸君に、「仮に活断層があったとしても大丈夫だ」というような見解を出させるような、誤認識を与えるようないわゆる安全審査会の判定があるということに問題がある。労働組合が悪いわけではないのですよ。権威ある原子力委員会のいわゆる裁断がこういうことを誤らしめるようなことになっておるところに日本の原子力委員会の問題があるんだ。政府はこういう問題に対して放置しておきますか。総理どうですか。
  141. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 原子力問題を進めるに当たりましては、安全についてできる限りというか万全の措置をとりまして、その上でこれを進める、これはもう基本的な考え方でございます。
  142. 石野久男

    ○石野委員 原子力委員会のとっておる処置は、開発に目を奪われて安全性が非常に放置されているというふうに思います。近い時期に原子力委員会の安全審査会が鹿児島の川内原発の設置許可の問題を審議するようでございます。  これをちょっと総理に見てもらいますが、枚数がありませんから科学技術庁と通産省と見てください。  鹿児島県で九電が原発の設置許可申請をしております。川内原発は、昭和五十年の十二月に和光大学の生越忠教授と私も同行して実は地盤調査に参りました。調査結果は、当時川内原発の予定地は大小無数の断層と節理のぼろぼろの地盤である、二番目に、川内川に沿い大きい断層が推定される、三番目には、通産省の地質調査所の地図と県の地質図の食い違いが指摘される、こういうことを私たちは提起したのです。九電は四十二年の七月から五十年の九月まで陸上で九十四本、海上で七十五本、合計百六十九本のボーリングをいたしました。約四千百メートルのボーリングをしたと報告しております。  安全審査会は五十一年の八月、追加調査を九電に要求して、九電は何本かの調査ボーリングをしたわけです。生越教授が指摘していることを裏書きするかのように、その後現地で働いている労働者からボーリングコアの差しかえがあったことを一明らかにしてきたのです。いまお手元に差し上げましたこの地図をごらんになっていただきまして、この中に番号が振ってありますから申しますが、四十二年の七月から四十三年の三月まで陸上で第一次のボーリングが行われた。それは日本特殊土木工業というところで行ったのですが、コアの差しかえがあったというのはナンバー一一六、一八、二一二、二〇三、一一五、二〇五、二二四、二〇九、一〇、これらのものがボーリングのコアの差しかえをしたと言われるものなんです。それからその後四十八年の十月から四十八年の十二月までの間に陸上で第二次のボーリングをやりました。西日本地下工業というところがやったわけです。そのときのコアの差しかえというのが四〇八、四一〇、四一一、四一二、四一八、四〇六、四〇七、そのうちの四〇八から四一八のところまで、真ん中に丸のあるのは大体炉心に当たるところなんです。こういうようなところのコアの差しかえは、証人の言葉によると、コアの採集が悪くてぼろぼろになった石がコア中部に詰まってしまう、ロットを引き揚げて詰まった石を砕いて長く延ばしてコアの箱に入れる。コアというのは大体一・五メートルのコアですが、一・五メートルのコアにたった二十センチぐらいしか石が上がってこないのです、詰まっちゃって。それを無理に砕いて延ばしている、こう言うのです。粘土のコアはなかなか上がってこなかった。それで引き延ばしてこれをやったんだ、こういうふうに言われているわけなんです。地元民はこういう事実を数度にわたって訴えております。  五十一年の三月十二日の第四十八回電調審で総理は、当時経済企画庁長官だったわけですが、そのとき総理はこの問題について、「要は原子力の安全性の問題である、安全性の確保等については格段の配慮を願いたい」、こういうふうに言っているわけです。こういうふうな事実があり、そして当時、飯島電発開発官が、「この地点は地質、地盤が問題になっていて、県から要望のあった点を含めて今後科学技術庁、通産省で認許可と、安全審査の段階で地質問題を含めて十分審査していただくことをお願い申し上げ、両省庁ともそういうことで対応していくことを了解いただきました」、こういうふうに言われておる。  科学技術特別委員会では去年の六月の二十四日に現地を調査しました。そして私どももそこへ行って試掘坑に入ったわけですよ。コアの差しかえは非常に重大な問題であり、申し立て人及び関係者にたださなければならないということで、本院でもそのことについてはいろいろ相談をしておるところなんです。安全審査会はこの十月の十七日にこの問題に対して結論を出そうとしておるようでございますが、現状はどうなんですか、長官
  143. 牧村信之

    ○牧村政府委員 十七日に安全審査会が開かれることは事実でございます。そこで川内原発の現在までに各部会で行われた審査状況について報告を受けることになっております。
  144. 石野久男

    ○石野委員 柏崎の許可の場合でも、断層問題について地域住民が非常に心配しているにもかかわらず、強行する形で認可を与えた。川内の問題についてもいわゆるボーリングでコアの差しかえまでして大丈夫だという、こういうような認可をいま与えようとしております。私たちはこれを許すことはできない。しかも、実を言うと地図の塗りかえまでしているのですよ。こんな作為を通じて許可を与えるということは、安全性の問題についてわれわれに非常に疑義を与えます。私はこういうような問題は安易な形で認許可を与えないようにしてほしい。総理、こういう問題について適確な指導をしてもらいたいと思うのですよ。私は安易な形で十月十七日、この問題についての住民の請願を無視した形で認許可を与えないように十分な配慮をして、再調査をしてもらうように私は願っておきたい。簡単な処置をさせないようにひとつ総理からも意見を承っておきたい。
  145. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 柏崎の場合も決して安易に答えを出したものではないと私は存じます。本当に地域住民の声も十分に拝聴いたしましたし、特に国会におきましてもいろいろ議論がなされまして、私も直接聞いておりますから、したがいまして、十二分にその点は心得ての決断であった、私はこう考えております。特に川内の問題に関しましては、すでに御指摘の点もございますから、その点に関しては審査会においても十二分にこの問題を取り扱ってほしいということを私からも申し伝えてございますから、十二分に配慮をして、そして結論を急ぎたいと考えております。
  146. 石野久男

    ○石野委員 長官に、もう一度聞いておきますが、コアの差しかえをしたと言う証人もいるわけですよ。これを無視しちゃいけないと思うのですよ。もし本当にコアの差しかえをして、そして調査結果というものを出しておるとすると、認許可を与えると大きな過ちを犯す。このコアの差しかえの実態というものに対して証人があったら、審査会はその意見を十分聴取する用意がありますか。聞きますか。
  147. 牧村信之

    ○牧村政府委員 お答えいたします。  この七日に地元の方がお見えになりまして、ただいま先生がおっしゃいましたような、コアの差しかえがある、証人はこういうことを言っておるという御指摘を受けたわけでございます。したがいまして、これがすべてが安全審査に使われましたボーリングではございませんけれども、関係のあるボーリングのものもございますので、その全体を含めまして、安全審査会に十分検討していただくようにお願いしておる段階でございます。
  148. 石野久男

    ○石野委員 総理、この問題は疑問を残さないようにちゃんと処理をしてもらいたいと思うのです。  安全の問題について原子力委員会を含め政府も非常に軽視する傾向がある。そういうようなことが、たとえば敦賀のコバルト60の紛失の騒ぎになってきたり、あるいはまたウラン溶液漏れがあって被曝をしてもすぐにそれを地域住民には報告しないというような事態が出てきたり、とにかく事故があっても、地域住民との協定があることを無視して、世間で騒がなければそれを表へ出さないという企業の事故隠しになってくるわけですよ。私は、政府がもう少しこの原子力の安全性の問題について微に入り細にわたる指導と厳粛な心構えを持たなくちゃいけないと思うのです。特に川内原発の認許可について、原子力委員会が十七日にはそれを審議すると聞いておる。これだけの疑義がある問題についてただ一遍の素通りをして、聞き及びましたというような調子のやり方はまずい。コアが差しかえられたというなら、その実態をちゃんと調べた上で、それがそうであったかなかったかと確かめた上で認許可を与えるようにすべきだと思うのですが、そういう指導をいたしますか。総理の意見を聞いておきたいのです。
  149. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 やはり直接責任は原子力委員長でございます。そして私から総理に御報告をして、総理の最終的な許可を仰ぐわけでございますから、いま申されましたこと等に関しましても、私は慎重を期したいと思います。ただ、判断はもう最終段階に来ておるということも聞いておりまするが、そうしたことも含めまして、せっかく地元から言われましたことに対してはやはり十二分に配慮した結論を出してまいりたい、こういう気持ちで臨みたいと思います。
  150. 石野久男

    ○石野委員 安全性の問題はただ地域住民だけじゃないんです。ことに原子力問題は、放射能というのは空中でばらまかれれば色も形も見えない、そういう中で被害が出てくるし、海へ廃液が出ていけばどこまでも広がっていく、こういう性格のものですから、これは非常に重大な関心を持って見なければならない問題である。他の産業とは違うのである。だからそこのところをよく踏んまえてもらわないと困る。私は、そういう意味では、原子力が主として海岸線に設置されることを踏んまえて、やはり海岸におけるところの汚染の問題が出ないことが大事であるということをお互いに、政府もわれわれもともに考えなければいかぬと思うのです。特に二百海里問題を通じていわゆる漁業がだんだん追い詰められて、沿岸、近海漁場に及んできますと、この近海の漁場というものを確保し、それを十分に育成強化していく、そして漁場としての価値をあらしめなければならぬときでございますだけに、私は、海岸線における原子力事故のようなものが出てきてはいけない、こういうふうに思います。  東海村のように再処理工場なんかありますと、あそこへは必ず各原子力発電所から使用済み燃料を積んだ船が出入りするわけです。そういう出入りする港である原子力港がいま原子力発電所の地域内にあるわけです。聞くところによると、いま政府はあのすぐそばにある水戸射爆場跡地に流通港湾をつくろうとしているそうです。この流通港湾構想というのは北関東開発のための非常に大事な地点だという選定をしているということは地域的にはわからないでもありませんけれども、しかし原子力のすべてのものが東海村に集められ、しかも一番危険な使用済み燃料を月に二回も三回も船で運んでこなければならないようなところへ、防波堤一つで隣に二千八百万トンだとか三千万トンだとかいうような大きな港をつくる常識を疑う。原子力のいかに危険であるかということを全然無視した形でこういうものを新たにつくっていくというその常識を疑うのです。いま政府は水戸射爆場跡地に流通港湾構想を持っておるのですか。これは運輸省、どうなんですか。
  151. 田村元

    ○田村国務大臣 いまおっしゃいました港湾は、県それから地元の関係市町村で以前から検討されてきたものであることは事実でございます。また同時に、首都圏基本計画にも入っております。しかしながら、まだ港湾管理者から具体的にこの計画がまとめられて持ってこられたという段階ではございませんから、持ってこられました段階で地元の意向等も勘案しながら対処しなければならないと思いますが、いまの時点で具体的にどうこうと申し上げることのできる段階ではないと存じます。
  152. 石野久男

    ○石野委員 とにかくこの構想は橋本登美三郎氏がまだ自民党の幹事長であられたときの構想として出たものと聞いておるのです。しかし、この問題については総理からもしっかり聞いておきたいのです。東海村というのは原発から再処理工場まで、一切の原子力の生まれてから死ぬまでの間の全部をあそこに抱え込んでおるのです。産湯を使わすところから墓場まで全部あそこに抱え込んでおるのです。すぐそのそばへ二千八百万トンだとか四千万トンだとかいう船を、日立港と流通港湾と大洗港とを含めて全部で四千万トンというのです。四千万トンの年間水揚げをするという港を三つ、しかも直線距離にしてせいぜい四十キロもないところです。そういう近距離でこれだけの船が出入りしますと、これは私は三、四年前にもこのことを聞いたのですが、大体五千万トンぐらいの構想でいきますと、一年間に数万隻ないし十万隻の船が出入りするというのだ。これは竹内港湾局長の当時私に対する答えだ。年間十万隻近い船がそのわずか四十キロぐらいの間に密集しておるところを縫って、月に二度も三度も使用済み燃料を積んだ船が出入りするというようなこと、放射性廃棄物の危険性を考えると、常識ではおかしいのだが、そういう状態のところへ港を新たにつくるという構想が、原子力の安全性を無視した考え方があるのだと思うのです。総理はこういうような問題についてどういうふうにお考えになりますか。そういうような港湾構想が出たときに、総理はどういうふうに御指導なさいますか。総理の考え方をひとつ聞いておきたい。
  153. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まだ具体的に私は話を聞いておりませんが、出てきた場合には国土開発という総合的な見地から結論を出す、その総合的の中には原子力の東海村との関係、そういうものも当然配慮しながら決めなければならぬ問題である、そのように考えます。
  154. 石野久男

    ○石野委員 最後に一言お聞きしますが、原子力船「むつ」の問題について、母港選定のことで宇野長官は走り回られたのですが、その後どうなっておるのでしょうか。その事情をちょっとこの際聞かしておいていただきたい。
  155. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 母港に関しましては、去る通常国会におきまして複数ということを私は申し述べました。まだ現在のところ具体的にどこと折衝を始めたということではございません。これは三年間の「むつ」の修繕の間に母港を認めたい、こういうふうな気持ちで現在もおります。
  156. 石野久男

    ○石野委員 母港の問題はまだ決まらない、それは今度むつの市長が菊池さんと入れかわってあなた方の側の人が出たから、もう「むつ」はあそこへそのまま母港として置いておこうという考え方でじっとしておられるのですか。どうなんですか。
  157. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 今回当選されました河野さんが母港存置をスローガンとして当選されたということは私たちも聞いております。また、御本人からも直接その旨を私はじかに伺いました。それが支援されまして当選なさったということだろうと思いますが、まだ正式に市長に就任もなさっておられませんし、他に県知事あるいはまた漁連もあります。そうした青森三者との間においてどういうふうな意見が交わされるかということも非常に大切な問題でございますから、科技庁といたしましては現在その問題に関しましては正式に話を伺ってからのことにいたしたい、こういうふうに考えております。
  158. 石野久男

    ○石野委員 原子力船の問題については、船自体の問題についてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  159. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 船自体といたしましては、将来何としてもやはり原子力時代の第一ページを開かなければならないわけでありますので、この船は速やかに場所とそうして機会を得て修繕に回したい、かように存じております。
  160. 石野久男

    ○石野委員 総理に原子力行政、特に原発会社の問題について二、三お聞きしたいのですが、その一つは、火力、水力で日本の電力を賄っていた当時は、御承知のように九電力でやっておったわけですよね。しかし、火力、水力というのは、お互いにわかっているように、最高のものでも一基七十万キロワット出すのは容易なことじゃございません。みんな三十万か五十万キロワット程度のもの、そういうことで電力を賄うのが九つの会社であった。それが原子力になりますと、一つの原子炉が百万キロワットとか百十五万キロワットという非常に大きなキャパシティーを持っておるものです。そういう大きい電力供給のできる発電炉を十一の会社がシェアを争っているということは、どうしても、まあ自由競争だからいいのかどうか知りませんけれども、電力行政上から言ってもちょっとちぐはぐな形になっているのじゃないだろうか。私はむしろ原子力問題で先ほど来言っておるように、PWRもBWRもどちらも、技術の問題で、先ほど宇野長官から九〇%まで自主技術は確立しているとはいいますけれども、肝心かなめのところで根っこが押さえられているから動きがとれないのが実情だと思うのですよ。私は、自主技術が本当に日本のものになり得れば、仮にノーハウをGEやウエスチングハウスに握られておっても、いま出ている事故の問題でわれわれが事故を解明するノーハウを持てば、そのときには自主性で対立することができる。それがない限り、根っこを押さえられている実態では、たとえ九〇%の自主開発はできていると言っても最後のとどめを刺される。そういうことから見ますると、電力行政の上で原発が十一の社で争っているということに対しては、何かもっと適確な指導をする必要がありはせぬだろうかということを思うわけです。  それからもう一つは、やはり技術の問題として自主技術を開発するための国家指導、これをもっと積極的にやる必要があるのではないだろうか、こういうふうに思うのです。たとえば原子力研究所が、動燃事業団ができましてからほとんど技術の側面では中途半端なものになっちゃったと私は見ているのです。こういう状態では本当の意味の原子力に関する技術開発、研究開発は出てこない。ここでこういうような諸般の事情を含めて国の主導型によるところの原子力に対する総合研究体制というものをこの際はっきりと指し示す必要がありはせぬか、電力会社に対しても政府は一定の指導をする必要があるのではないだろうか、こういうふうに思いますが、その点について総理は何か所見がございますか。
  161. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この問題は原子力委員会が中心になりまして研究開発の調整というか統括をやっておる、そういう現状でございます。しかし、石野さんのように、また別にそれをひとつ開発機構をつくったらどうかというような御議論がいまあったわけでございますが、よくこれは考えてみます。いま直ちにここで結論というわけにはまいりません。
  162. 石野久男

    ○石野委員 私はこの問題については、原子力に対する戦後の日本の技術の問題、それはほとんど電力会社主導型になっておったと思うのですよね。しかし、いまや電気機器メーカーがこれを受けて立たなければならない時期に来ていると思うのです。戦後の原子力開発についてのそういう推移というものと、それから今日、日本の原発についてのあり方は、たとえば今度の東海村の再処理工場問題で日米交渉をしましたときに、われわれが最も注意しなければならないのは、核拡散に対するわれわれの対応のあり方というもの、これをしっかりつかんでいなければならないということを身にしみて感じたことだろうと思いますし、同時にまた、ここではやはりアメリカとの間に結ばれている日米原子力協定というものが非常に大きなかせになっていることも否めないことだと思うのです。ここからどのようにして日本の自主的な体制をつくるかという問題を考えるとすれば、やはりみずからの研究体制と技術というものを見直さなければならない時期に来ていると思うのです。だから、私は新しいものをつくれと必ずしも言うのじゃないのですよ。従来のもの、たとえば原研なら原研に対してもっと力を入れるとかなにかする必要がありはせぬだろうか。とにかくいまそういうことを真剣に考えなければならぬときです。代替エネルギーは原子力でございますございますと言ったって事故続きでは成果は上らないし、これはなかなか住民はついていきませんよ。われわれだってそれは納得しません。もっとそれを裏づけるような研究体制、そういう姿勢が政府主導型でありませんと、各電力会社の恣意に基づいた競合だけがそこに出てくるだろう。それじゃ一向に効率が上がらない。そういう点の体制をやはりしっかり考える必要があるのではないか。原子力については国が一つに固めた形の体制づくりで一つの大きな研究体制をつくっていくということ、そのことでなければ本当の意味の代替エネルギーとしての原子力は確立しない、こういうふうに私は思うのですよ。総理はそういう意味でもひとつこの際しっかりもう一遍考えてもらわなければならぬのじゃないだろうかと思いますが、どうですか。
  163. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいまのお話のような趣旨でありますと、まさにそういう趣旨でやっていかなければならぬ、そういう重大問題だと思います。研究開発につきましては、さらに一層万般の努力をしなければならぬ、そういう決意でやってまいります。
  164. 石野久男

    ○石野委員 私は、そういう研究所の開発と同時に研究員、いわゆる技術屋なり研究者を育成しなければならぬと思うのです。そういう意味で、特に私は、たとえば原研の場合だと、従来原研では労使関係が順調にいっているとは言えない面がある。雇用の問題が論じられ、定年制の問題が論じられておりますが、科学技術庁関係では、原研労組とか動燃とか情報センター、理研、宇宙研、皆あります。その中で原研労組の定年が、ここだけが五十五歳でとまっているんですね。あとは動燃は五十八歳、それから情報センターが六十歳、理研も六十歳とこういうふうになっている。原研労組の諸君は、この定年の問題で五十五歳というのは余りにも低い、何とかこれを延ばしてくれという要請をしているにもかかわらず、これはむげにけられているんです。これは何か理由があるのですか、長官
  165. 山野正登

    ○山野政府委員 ただいま原子力研究所の定年は五十五歳でございますけれども、実態は五十六歳まで認めております。なお、これを延長するという労組側の希望に対しましては、いま理事者側で検討中という実態でございます。
  166. 石野久男

    ○石野委員 局長、その問題については労組の要望についてあなた方が積極的にこたえてやってほしいんですよ。というのは、原子力については何といっても原研の労組の諸君が熱心に取り組まないと、本当の代替エネルギーとしての原子力にこたえられないんですよ、実際問題いって。そういう意味でもこれはもう一度お伺いしておきますが、労組の要求に対して積極的な対応をする用意があるかどうかを聞かせてもらいたい。
  167. 山野正登

    ○山野政府委員 ただいまの定年制延長の希望、これは理事者は真剣に取り組むとは思いますが、一方原研の人員構成を見ますと、年齢別にかなり高年齢層が多いわけでございまして、この辺を是正しなければならないという別の要請もあるわけでございます。この辺を兼ね合わせながら、今後理事者側で判断していくと思っております。
  168. 石野久男

    ○石野委員 終わります。
  169. 田中正巳

    田中委員長 これにて石野君の質疑は終了いたしました。  次に、井上普方君。
  170. 井上普方

    井上(普)委員 このたびの補正予算を拝見いたしますと、総理の所信表明におきまして、住宅に対する国民の期待にこたえるため、住宅金融公庫の貸付枠を十万戸増加させたのだ。その次に、本委員会におきまして坊大蔵大臣から「弾力条項を発動して住宅金融公庫の貸付枠十万戸の追加に要する資金等総額五千五百五十八億円につき機動的に対処してまいりました」、こうある。それで私も予算書を一応調べてみました。そういたしますと、予算書には、今度の住宅金融公庫に対する補給金が一切出ていないのであります。この説明書を拝見いたしましても、どこを見ましてもそういうことが書けておらぬ。補給金は一体どんなになったのだろう、こう実は不思議に思っておるのでありますが、大蔵大臣、どうでございます。
  171. 坊秀男

    ○坊国務大臣 数字の正鵠を期するために、主計局長からお答えさせます。
  172. 井上普方

    井上(普)委員 数字の正鵠を期するためと、そんなのを聞くのは時間がもったいのうございます。聞きますと、これは金利が下がったのだ、金利が下がったので、それで十万戸分浮いてきたのだ、だから予算書には全然載せなくて済むのだ、こういうお話なんです。余りにも不親切じゃありませんか。少なくとも説明書にはそれくらいは書いてしかるべきであるし、また予算書自体にも、特別会計の予算を見ましても、国鉄にいたしましても電電公社にしても、全部そういうことは書けておる。にもかかわらず、このたびは、予算につきましてはそういうことが一切書けておらぬ。これは予算というのは政策の顔なんです。これを見まして、一体どこからこの金が出てきたのだろう、そして一体どういう仕組みでやっておるのだろうかということは実はわからないのであります。もう少し親切なやり方をやる必要があるのじゃございませんか。
  173. 坊秀男

    ○坊国務大臣 今度の一連の景気対策として金利水準を下げましたから、そういうようなことでそれだけの政府金利が落ちたと、こういうことです。
  174. 井上普方

    井上(普)委員 したがって、そういういきさつをやはり書き込む必要があるのじゃございませんか。総理はいかにも住宅金融公庫十五尺これを出したのが今度の補正予算の目玉のごとく仰せられておる。またそれが非常に効果があるだろうと私は思います。しかし、その利息の浮いた分でやろうというのですから、ちょっとけちじゃないですかと、こう申さなければならぬと思うのです。やはり詳細に書く必要があるのじゃございませんか。しかもこれが最大の目玉商品でしょう。どうでございます。こういうことで国民がわかりますか。わからないように、わからないように書くのが役人の特技でございますけれども、どうです。
  175. 坊秀男

    ○坊国務大臣 予算の説明としてはおっしゃるとおりです。書いた方がよかったと思います。
  176. 井上普方

    井上(普)委員 今後御注意になっていただきたいと思うのであります。  そこで、前回総理はお見えになりませんでしたが、一般質問におきまして、私は日本の住宅政策のあり方につきまして所見を述べ、大蔵大臣あるいはまた建設大臣等々の御意見を拝聴いたしたことがございます。この二月でございます。私の意見と全く一致いたしたのであります。すなわち、日本の住宅事情というものは、これはあくまでもこれから公的賃貸住宅の建設というものに主眼を置かなければならないという主張に対しまして、坊大蔵大臣もそのとおりであるという、何と申しますか完全なる意見の一致をいたしております。今度の場合、この追加予算を拝見いたしますと、――この二月のときにも、それではこの第三次五カ年計画というのは持ち家中心の計画であって、変更する必要があるのじゃないか、こう申しましたら、坊大蔵大臣は、あんばいようこれからやりますからひとつおこらえくださいと、こうおっしゃった。あんばいようひとつ公的住宅について重点を置くのだ、こうおっしゃったが、このたびの補正予算を拝見いたしますと、住宅公団に対する予算というものは五百億円削っておる。そして持ち家の政策である住宅公庫の十万戸をふやしておる。この前のお話とちょっと違いはしませんか、どうです。
  177. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答えを申します。  予算の執行をやっておる間に国民の需要の動向がどこにあるかということを見きわめますと、これはやはり公庫住宅というものに対しまして非常な需要の動向が強い。それから公団住宅というものにつきましては、当初予算で計上いたしました金額につきましても、これは十分消化し切れないというような事情が判明いたしましたので、これはやはりいまの国民の住宅に対する要望は、どうしても賃貸でなしに持ち家の公庫住宅という方向に向いておるというふうに考えまして、そしてこれを尊重するということが一面においては国民の要望にこたえるゆえんであり、かつまたこれが景気を刺激する、波及効果が非常に多うございまするから、そういうようなことを考えまして、そして公庫住宅に力点を注いだ、こういうことでございます。
  178. 井上普方

    井上(普)委員 私はこの前のお話では、公的賃貸住宅を主にした住宅政策を中心に据えなければならないとあなたと意見を一致いたしたのであります。しかしながら、公的賃貸住宅の数が少なくて入る機会が非常に少ない。あるいはまた公団住宅は、御承知のように、遠くて狭くてあるいは家賃が高いというような悪条件が重なっておりますので、国民から忌避せられておることもこれまた事実であります。しかし、これはだれが悪いのでもない。狭くて遠くて、しかも高いような住宅をつくらした責任というものはやはり国にあるのだと私は思う。その公的賃貸住宅に入ることができない。したがって、やむを得ず持ち家を持ちたいのだというのが国民の願いじゃございませんでしょうか。現にいまの公庫住宅の申し込みの状況、これを見てみますと、いかに国民が苦しみながらやっておるかということがわかるのであります。  ここで総理、住宅政策をひとつ転換するためにお聞き願いたいと思うのです。これは総理府が調査いたしました住宅調査であります。この中から抜粋いたしまして、これから日本の住宅の実情を申し上げて御参考にしていただきたいと私は思うのであります。  現在の一家族の中で家族が分離就寝できない状況にある世帯、すなわち六歳以上の子供と一緒に寝なければいけないか、他の家族と一緒に寝なければいけないか、そういう追い込まれております世帯は九百四十七万世帯、三二・五%を占めています。しかも一人世帯の人とかあるいはまた一組の夫婦で子供六歳以下の三人家族の者を除きますと、家族の分離就寝できない状況にある世帯といいますものが実に五一・三%を占めておるのであります。     〔委員長退席、栗原委員長代理着席〕 全世帯数の半分以上がともかく夫婦あるいは六歳以下の子供、三人で一室で眠れないという状況にあるのであります。これがこの日本住宅調査ではっきりと出てきておるのであります。こういう劣悪なる状況にある。  このうちで、家賃のことについて申すのは後にいたしましょう。しかし、その中で、家賃のうちで特に木賃住宅あるいはまたアパート群の中で、設備専用の民営借家は最も家賃が高くなっておるのであります。設備共用の民営借家は、これが一畳当たり千百六十三円と最も高い水準にあるのでございます。  そしてまたもう一つ観点を変えまして、一つの世帯のうちで主な働き手の従業上の地位と住宅というものを見てみますと、すなわち自家営業の人とかあるいは雇われておる人、両方とも勤労者ではありましょうが、自主営業の人でございますと七百七十四万世帯あって、持ち家住宅に住んでおる人が大体七九・九%、借家は一九・一%にしかすぎません。雇用者住宅すなわち使われておる者、勤労者の中で使われておる世帯、これが千九百五十一万世帯ございます。そして持ち家は五〇・一%であります。借家が四八・四%を占めておるのであります。  雇用者の世帯の年間収入といいますものは、これは百五十万円以下というのが千九百五十一万世帯のうちで実は千八十九万世帯になるのであります。五五・八%が百五十万以下の世帯であります。この雇用者世帯のうちで持ち家を持っておりますのは、先ほど申しましたような数字でありますが、この持ち家を持っておる世帯の中で四五・六%が雇用者世帯であり、公営借家では六五%を占め、民営借家では六九%、民営の設備共用のうちの八八・二%の方々がこの雇用者世帯ということに相なるのであります。したがって、五十一年度の国民生活白書、これを拝見いたしますと、借金して家を建てても、所得がふえて支払いは次第に楽になったというのがいままでであったけれども、いまではそうできなくなってきている、家を持とうとする人は返済見通しを従来以上に厳しく考えざるを得ないであろうということを国民生活白書は申しておりますし、かつまた都市居住者の平均では四四%の方々が住宅に不満を持っておるのであります。その不満を持っております方々のうちで持ち家の方は三一%、それから借家の方は六五%不満を持っておる。大きな差をここに持っておるのであります。  そこで、この人たちはどういうような希望をしておるか。借家に入っておる場合、広いところへ入っても家賃が高くなる、そこでやむを得ず家を持ちたいという願望がここから出発しておるのであります。やむを得ずに出てきておる。それじゃその人たちはどれくらいのものを希望しておるかと申しますと、通勤距離一時間程度に百五十平米の宅地面積ですから大体五十坪くらいのものをつくりたい、そして、四室ないし五室ある一戸建て住宅が欲しいんだというはかない希望を抱いておるのであります。しかし、五十一年度の地価公示からいきますと、通勤時間一時間のところでは、大体二十五キロから三十キロ圏、ここになりまして、地価は一平米六万五百円ぐらいになります。そうしますと、百五十平米購入するためには九百八万円の資金が要ります。土地だけに九百八万円。これだけで五十年の大都市圏の勤労者世帯の実収入の約三・一倍になるのです。普通ローンの貸出限度額は年収の三倍以内ということになっています。でございますので、これだけでももう土地は買えない。土地すら買えないということに相なるのであります。土地取得のみでもうすでにローンの貸出限度額を超えるという状況に相なっておるのであります。したがいまして、この国民の願望というものはむなしい結果になってきている。それが、住宅金融公庫の「持ち家取得家計モデル(昭和五十年)」あるいは「個人住宅資金利用者の計量分析」というようなもの、これは部内の資料でございますけれども、これを見ましても、実はそのことがはっきりいたすのであります。  私は、もう一度観点を変えて見ますと、昭和五十一年度の「国民の経済白書」という本がございます。これによりますと、住宅取得難易度指数というのがあるのです。すなわち住宅取得費用の指数を勤労者の所得指数で割ったものを示しておりますが、これによりますと、一九五五年を一〇〇といたしますと、一九七二年、すなわち十七年たった、いまから五年前でございます。これで二六四・九という数字を示すのです。いかに勤労者が自分の家を持つことがむずかしくなったか、このことを示しておるのではなかろうかと私は思います。  そこで、これを分析いたしました。見ますと、こういうことになるのであります。金融公庫への申し込みの数でございますが、比率から言いまして一番多いのが給与住宅に住んでおる方であります。給与住宅に住んでおる方々は実は全世帯数の六・二%です。ところが現在の公庫の利用者の二四・四%が、この六・二%の方々が使っているのです。それから公的借家住宅に住んでおる方が全体の八・一%でありますが、この方は一一・六%が公庫に申し込まれておるのです。ここまではいいのでありますが、それじゃ民間の借家におられる方は、これは所有関係から言いますと三三・八%でありますけれども、公庫の利用者というのは二八・七%にがたっと落ちるのであります。  こういうような関係から見ますと、先ほども申しましたように、住宅で最も困っておられる方々は、これは民間借家にあられる方々。この面積といいますものは、これは平均を出しますと、設備専用のもので三十八・一平米、十三坪ぐらいです。それから設備共用のもので十七・一平米です。しかも、この民営借家に入られておる方々の年齢というものは四十歳以下の、家族三人の方方が七〇%を占めておるのが現状であります。  そこで、勤労者の、公庫に申し込まれております方々の階層の収入は、一般の昭和四十九年の家計調査よりも全般的に高いのであります。それで、持ち家の、公庫に申し込まれる方々の、三十五歳以下の方々でありましたならば、ほとんどが土地というものを実は持っています。土地を持つか、あるいはまた借地権を持っておるのであります。  こういうような状況でございますので、この見方を変えますと、公庫住宅に借金を申し込める人人は、言いかえますならば、かなり裕福な世帯にある、幸せな方々である、こういうことが言えるのでございます。現に、先ほども申しましたように給与住宅に入られておる方々、こういう方々の預金というものはかなりなものができてくる。一面、給与住宅に入りますと、先ほど来問題になっております退職ということがございますので、急ぐ方々もおられるようであります。  このような実態からいたしますならば、持ち家制度、これを中心に考えられておる、このたびの住宅金融公庫の申し込みを十万戸ふやしたとさも誇らしげにおっしゃいますけれども、これは国民の要望とちょっと離れておるのじゃないだろうか、むしろこれは景気回復ということを主眼に置いた政策であって、日本の住宅政策そのものから見るといびつな形じゃなかろうか。先ほども申しましたように、公団住宅の数を五百億円も減らし、片一方ではこういうように十万戸ふやす。そのことについて私はとやかく申しません。しかし、日本の住宅政策それ自体からいたしますと、逆転したやり方ではなかったかと私は思うのであります。  総理の御所見を承りたいのであります。
  179. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 持ち家住宅、また公団、公営住宅、それのバランスの問題でありますが、いままで公団それから公営、こういう方式のものをかなり進めてまいりましたけれども、いまその方で空き家がある、こういうような状態もあるのです。かたがたいま井上さん御指摘のように、不況状態をどういうふうに打開するか、こういう問題も出てきておるわけです。公団、公営となるとそう手っ取り早くできませんわね。また、いま申し上げておるとおり空き家もあるというような状態だ、そういうようなことを考えまするときに、とにかく長い目の施策としては、八百六十万戸でしたか住宅計画をいま進めておるわけでありますが、あの線でずっとまっしぐらにいく、こういう考え方は変えません。変えませんが、当面の措置といたしますと、公庫住宅をふやす。これは申し込みを募集いたしますと二倍も申し込みがあるような状態だ、そういうようなことも考えますと、今回は公庫住宅に重点を置いた、しかし、いま推進しておるところの住宅計画八百六十万戸計画、またその目指しておるところは変更する考えはない、こういう考えでございます。
  180. 井上普方

    井上(普)委員 持ち家住宅につきまして公庫住宅をふやすことについては私も賛成なんです。しかし、この公的賃貸住宅というものを住宅建設の基本に置くべきだと私は思うのであります。それがあなたと意見が違っている。この前、坊大蔵大臣あるいは建設大臣も、いずれも私の説に賛成していただいた。そのとき総理はお見えにならなかったから、もう一遍それじゃ私の持論を復習してみましょう。といいますのは、総理こういうことになるのです。これから低成長時代に入りますと、あなた方の常識的に言いますと、賃金というものは余り上向かないでしょう。いままでほどの伸びはない。高度成長時代だけの賃金の伸びは私は期待できないと思う。これはあなた方の常識だろう。その上へ持ってまいりまして核家族が非常に進行いたしております。したがって、私らの年代までが家を建てるといいますと、親御さんからあるいはきょうだいから援助を受けて土地を受けることができました。これは昭和四十四、五年ぐらいまでできたのです。これが今後は非常に困難になってくる。これもお認めになっていただけると思うのです。その上へ持ってまいりまして地価の高騰は非常なものがございます。これで推移するならば、私は、現在の地価をそのまま安定させて抑えていく、これからの地価の政策というのはそうあらなければならぬ。これは後ほど申しますけれども、そうならなければならぬと思いますが、ともかくいずれにいたしましても、地価が非常に高いので、家というものは持ちにくい。その上へ持ってまいりまして、若いゼネレーションの諸君に対しまして、総理も先般来おっしゃっておるように、これからは増税をしなければならない時代が来るでしょう。これは若い諸君にも大いにかかってくるのです。あるいはまた年金制度にいたしましても、いままでのような積立方式というものはやがて行き詰まることは経済通の総理もおわかりのとおりです。どういたしましても賦課方式に転換せざるを得ない。財政上から見てもそうならざるを得ない。そうすると若い世代の諸君は、税金はふえてきた、あるいは年金の負担もふえてきた、しかし自分の家というもの、持ち家というものを持てない、一体いままでの年とった世代の諸君は何をしておったんだろう、こういう気持ちを私は持ってくるのじゃなかろうか。若い世代の諸君のためにも、いまこういう沈滞した景気のときに公的賃貸住宅を大量に建てて、そして住みよい、しかも遠くて狭くて高いという公的賃貸住宅を解消させていく、この努力が私は必要ではなかろうかと思うのでございます。これは将来に向かって考える場合には、その中心をやはり公的賃貸住宅に置かなければ、若いゼネレーションの諸君はとても家を持つことはできない、持ち家政策というものはできないと私は考える。この説に対して、先般も、一般質問でございましたが、坊大蔵大臣、あるいはまた建設大臣も全面的に御賛成いただいたのです。総理も御賛成いただけませんか。
  181. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 話を伺っていますと、井上さんは今度の二兆円計画、この中で十万戸公庫住宅を追加しよう、これにどうも反対をされておるのじゃないと思うのです。そうじゃないでしょう。そうじゃなくて、長期計画、長期展望、つまり住宅計画の基本といたしまして、公団、公営、こういうものもまた重視しなければならぬ、こういうお話じゃないかと思います。そういうことであれば、私はそのとおりだと思います。そういう考え方にのっとって、昭和五十一年から五十五年までに八百六十五尺その内訳もちゃんと決めてある。その宅地までもこのくらいかかりますというふうにできておるのですよ。それをひっくり返そう、こういうお考えであると、私どもは慎重な答弁もしなければなりませんけれども、それをその線で実行せよ、こういうお説でありますれば、これは全くそのとおり考えておる、こういうことであります。
  182. 井上普方

    井上(普)委員 私は、この第三期五カ年計画がそもそも間違っておると思うのです。この計画は、第二期と比べますと、民間自力住宅に主力を置いた計画になっておる。だから、公団住宅にいたしましても、公共住宅にいたしましても、がた落ちに落としておるのです。公団住宅のごときは第二期に比べますと半分にしておるのです。公営住宅も落としておるのです。そして民間自力の方に主力を移した計画が第三期五カ年計画であるわけなんです。そういう御認識は総理もお持ちになっておられぬのですか。第二期と比べますと、比率をうんと落としておるのです。そして民間自力の方にうんとウエートを置いた計画が昭和五十一年から行われておるのです。この計画それ自体に間違いがある、こう私は主張をいたしましたら、坊大蔵大臣も建設大臣も、居並ぶ閣僚すべて私の説に賛成をしていただいたのであります。私はそういう意味からいたしまして、早くこれを改定しなさい、こう申したのです。そういたしましたところが、坊大蔵大臣は、私はこの計画は間違っておる、確かにおっしゃることに――井上の言うとおりだ、だからひとつ今度この実施に当たってはあんばいようやります、そういうお言葉を実は答弁されておるのであります。この改定を早くして、公的賃貸住宅というものに主力を置いた住宅計画を立てなければ、私は将来の若い世代の諸君に対して申しわけない、こう思うので、あえて総理大臣に復習いたしておるのであります。どうでございますか。
  183. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 御所見のほどは、御趣旨はよくわかりました。ここで私がお答えできることは、民間の方ですね、臨時、緊急的に今回ふやしましたね、それだけ将来に向かっての民間のシェアというものは減る、それだけは公的のものがふえなければならぬ、こういうことにはなりますが、根本的に、思想的にこの計画をひっくり返す、こういうことにつきますと、これは慎重に検討しなければならないので、私はいまあんばいようというような御返事をいたすことはできませんです。
  184. 井上普方

    井上(普)委員 しかし、総理、ことしに入りまして住宅の申し込み数も実は昨年度から比べますと減っておるんですよ。それほど勤労者の諸君の家計というものが苦しくなっている。のみならず、住宅を取得する能力というものがそれほど低下してきている。こういう状況になっているのです。ただ、景気回復のためにという目的で、このたびのこれをやられておるのだと私は認識せざるを得ないのであります。それならば、何と申されましたか、総理は、国民の希望があるのでやられたんだ、住宅に対する国民の期待にこたえるためやったんだ、住宅公庫の枠を十万戸ふやしたんだというのは、ちょっと、羊頭を掲げて狗肉を売るという言葉がございますが、これに近いのではないかという感を私は深くいたすのであります。この五カ年計画について、総理は、変える気持ちはない、考えさせてくれ、こうおっしゃいますが、ひとつ庶民の住宅事情というものをもう少し十分掘り下げて考えていただきたい。  先ほど申しました数字は、総理府から出しておる「日本の住宅」というものの中から出してきた数字なのです。これを見ますと、やはり、所得の格差というものが大きく開いたのは、この土地の高騰によって所得の格差が大きく開いてきた、土地を持っておるか持っておらぬかによって大きく変わってきた。この実情がありありとこの日本の住宅事情というものから私は読み取れるのであります。したがって、いま困っておるこの勤労者の諸君に対しましてこたえるためにも、私はこの五ヵ年計画の再検討をすべき時期が来ておるということを強く総理に申し上げたいのであります。いかがでございますか。
  185. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは長期計画ですね、これはもう住宅計画に限らず、そのとおりにやらなければならぬというものじゃないのです。これは目安というか、見当を示したものであって、その実行は弾力的にやっていく、そういう性質のものでありますから、これから国民のニーズでありますとか、あるいは景気の状況でありますとか、いろいろ見なければなりませんけれども、変えた方がよかろう、こういうことになれば、それは修正をするということにやぶさかではございません。きょうの井上さんの御所見もよく承っておきます。  ただ、今度のは、いま国民も公庫住宅は相当希望はあるんですよ。同時にそれは景気対策に非常に裨益するところがあるものですからこういうことをやったので、これも弾力的措置の一環である、かように御理解願います。
  186. 井上普方

    井上(普)委員 私は、このたびの処置というもの、これは景気回復を主眼に置いた処置ではなかろうかという気がしてならない。日本の住宅政策それ自体よりも、むしろ景気回復というものを中心においた処置である、こう位置づけざるを得ないのであります。  それから、最近「住宅事情と住宅対策の現況」というのを私はいただきました。これば承りますと、建設大臣に聞いてみますが、ここに書いてあるのは、国民の非常な経済事情のために、最近の住宅建設の状況を申しますと、着工新築住宅の一戸当たりの規模を見ますと、これは五十一年では八十二・二平米になっています。ところが給与住宅、分譲住宅は七十七・七平米、七十二・一平米となっているが、借家は五十・三平米になって、依然として低い水準にあるわけであります。これはおたくから出ておるものです。  そこで私はお伺いしたいのだが、第三期五カ年計画は、昭和六十年までには最低国民に対してこれだけの面積の住宅を与えようという計画になっています。それの最低に実はなるのであります、この五十・三平米というのは。これは住宅局長でもよろしゅうございますが、御答弁願いたいのです。このまま推移していいのでしょうか。どうでございましょう。
  187. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 先ほど総理のときのお話ですが、現在と将来というものをあわせ考えみるときに、住宅問題というものは考えなければならない問題であることは当然だと思うのです。大体わが国の国土から見てみましても、住宅に適した平地というものは一万三千平方キロということに言われております。したがって、全領土の三・六%にしかすぎないのだ、そういう数字が出ておるのです。そうすると、いまのような一軒建てそのものでもっていけるかいけないかということは、相当将来に対しては考えなければならない問題だと思います。したがって、そういう点については、井上さんがおっしゃるように、将来を考える場合には相当新たなる構想を立て直さなければならぬ、こういうふうにも考えます。したがって、ただいまのお話にあるように、住宅の所有関係につきましては、基本的には国民の需要動向に即してその施策を行うというのが当然政府としての使命だろうというふうに考えます。そういうような考え方からいきますと、公的援助による住宅の供給に当たっては大体大都市に重点が置かれており、やはり何といってもいまおっしゃるような低所得層というようなもの、社会的流動層には十分な量の公的賃貸を供給するということは、これまた当然なことだと思うのでございまして、私はそういう点については、そういう面についての十分の手当ては手当てといたしまして、また反面持ち家志向の強い層に対しては長期低利の融資を行っていく、そしてその希望する家をつくってもらうということもまた一つの施策でなければならない。両面をあわせて考えていかなければならないのだろう、こういうふうに考えます。  以下、ただいまの五・三%につきましては、局長から答弁させます。     〔栗原委員長代理退席、委員長着席〕
  188. 山岡一男

    ○山岡政府委員 五カ年計画におきましては、閣議の決定の中に将来達成すべき居住水準の目標を示しております。これが第一期、第二期と大変違っておる点でございまして、中に二つの水準を設けておりまして、六十年に達成しなければならない最低水準と、それから平均的な、たとえば国の予算の半分は確保していただきたい望ましい水準と二つを決めております。どちらかと申しますと、平均居住水準の方が最近の欧米水準に近いということになります。先ほど先生おっしゃいましたような最近の住宅の建設の事情から申しますと、持ち家、それから給与住宅、それから分譲住宅等についてはおおむねその水準に近づきつつありますけれども、おっしゃいますとおり、借家について規模がまだ非常に低いという点がございます。その点につきましては、やはり今後そういう点につきましての規模の増等につきます応援を十分にやっていくべきだというふうに考えております。
  189. 井上普方

    井上(普)委員 どうやってやるのです、住宅局長。あなた、いまのこの住宅の現況からすると、昭和六十年の最低水準に達しない住宅が現在たくさん建っておる、これをどうするのです。
  190. 山岡一男

    ○山岡政府委員 最低居住水準の中は、いわゆる人数別に考えております。最低のものにおきましては、最低居住水準といたしまして、一人世帯では十六平方メートル、二人世帯では二十九平方メートル、三人世帯では三十九平方メートルというふうなものでございます。したがいまして、現在の借家の中の五十・三というのも、最低基準で申しますと、夫婦二人、子供二人の大体の最低基準ということになっておるわけでございます。
  191. 井上普方

    井上(普)委員 この最低居住水準というのを半分以下に減らすというのがこの第三期の計画なんでしょう。あなたのお話の最低居住水準の家がどんどんいま建っておる、これが困るのです。これをあなたはどういうように指導して大きいものにさせていくのか。いま建てたのは、八年したら昭和六十年が来るのですよ。
  192. 山岡一男

    ○山岡政府委員 先生のお話のとおり、今回の五カ年計画では、そういう最低居住水準以下のも居住状況を半分以下にするということを目標にいたしております。先ほど私が申し上げましたのは、なるほど着工数字から見ますと五十・三平米ということになっておりますけれども、これは平均の数字でございまして、人数別に見ますと小さい家も必要な点がある。したがいまして、それぞれの柄に合わせたと申しますか、世帯に合わせたような、住みかえその他を大いに奨励していくべきではあるまいかというふうに考えておるわけでございます。さらに、民間の賃貸住宅等に対しましては、優良な資金の交付等につきまして十分今後も努力してまいりたいと考えております。
  193. 井上普方

    井上(普)委員 いま平均が五十・三で、昭和六十年の最低水準になっているのですよ、これでは。いろいろ苦しい答弁をなさっておられますけれども、いまそういう民間借家がどんどん建っている現状、これに対して一体どういう処置をとるんだ。昭和六十年にはこれは居住水準の最低水準になってしまうのです、この計画からいくと。それをいかにして処置するのだということなんです、私が言っているのは。  そのためには、民間の借家に対して低利な金を流すということも一つの方法でしょう。さらにはまた、おたくの指導によって、住宅基準法によって変えることもできるのじゃございませんか。そういうような強権的な方法をあなたはやろうとはしないのですか、どうでございます。
  194. 山岡一男

    ○山岡政府委員 繰り返して申し上げて申しわけございませんけれども、最低居住水準というものの中には、人数別に決めておりまして、小さい家も必要でございます。したがいまして、住みかえの奨励も二つの対策になろうかと思います。  それから、特に劣悪な小さい住宅ができることを防ぐその消極的な手段の一つといたしましては、三十平方メートル以下の住宅については新築減税を行わないというような措置も現在講じております。片一方では利子補給を行うような融資の増進、それから片一方ではそういうふうな反面の制肘、両面を備えながら推進してまいりたいと思っております。
  195. 井上普方

    井上(普)委員 建設大臣、現在の、昭和六十年を目標にしたこの第三期計画の最低水準の家が、借家がたくさん建ちつつあるという現状をひとつお考え願いまして、適当な処置をおとり願いたいと思うのであります。このことは強く申し上げておきたいと思います。  私は、続いて第三次全国総合開発計画、これは総理大臣、この間国土庁からの試案というものを大体お聞き取りいただいて、そしてこれに了解を与えたというお話を新聞紙上、これはまあ伝聞でございますが、承っておるのでございます。そう考えてよろしゅうございますね。――そういう考え方につきまして、これがやがて政府案となるものと私は考えます。したがって、この第三次総合開発計画、三全総によるところの住宅につきまして、ひとつお伺いいたしたいのであります。  国土庁長官にお伺いいたしたいのでありますが、この計画によりますと、昭和六十年から六十五年の全国の目標は、これから新たに千七百万戸の住宅建設が必要と見込まれておる、こうあるのでございます。しかし私は、この千七百万戸という計画は、いままでの出してまいりました昭和五十年代前期経済計画あるいはまた第三期住宅五カ年計画、これを基礎にしてつくった数字じゃなかろうかと思うのでございますが、いかがでございます。
  196. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 お答えいたします。  ただいま御指摘のように、昭和五十一年から六十年までの十カ年間およそ千七百万戸というのは、五十年代前期経済計画に沿うてつくられたものでございます。
  197. 井上普方

    井上(普)委員 しかし、これでは数字が合わなくなるのじゃございませんか。といいますのは、この第三次全国総合開発計画を拝見いたしますと、いままでの計画と違って定住構想という概念が入ってきています。これは流域によって決めるのだという定住圏という考え方が入ってきている。しかも、これからの開発の指向方向といたしては、北海道であるとか東北であるとかいうようなのを平均的に開発させよう、人間を定住させようという考え方にほかならぬと思うのであります。そうすると、家というものはトラックで運ぶわけにはいかぬのです。としますと、いままでのそういうような計画でない、いままでの第三次総合開発計画に基づいたと申しますか、この前期計画というものは当然ここで変わってこなければならぬと思うのです。それを依然として前期計画の延長としてお考えになり、千七百万戸をはじき出しておるのは、私はどうも筋が通らぬと思うのですが、どうでございます。
  198. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 ちょっと言葉が足りませんで、誤解を招いたと思いますが、五十年代前期経済計画に沿うて調整をして進めてまいった計画でございまして、ですから住宅の需要については、普通世帯の動向だとか建てかえの需要だとか、この基本的な算定の方式は同じでございます。  ただ問題は、第三次全国総合開発計画と五十年代前期経済計画との違いは、五十年の国勢調査に三全総はのっとっている。それからもう一つは、五十年代経済計画は五カ年計画で進められているのに、三全総は十カ年計画で進められている。それからもう一つは、先ほど先生から御指摘のありました人口定住化構想によって、確かに地域別の人口だとか世帯数というのは変わってまいります。この点が一番問題なのでございますが、この点につきましては、三全総の実施段階で関係省庁といろいろ打ち合わせをして調整をしてまいりたい、かように考えております。
  199. 井上普方

    井上(普)委員 この第三期の住宅五カ年計画をもとにし、昭和五十年代の前期経済計画というものをもとにして多少は調整したでございましょうけれども、千七百万戸という数字は、これが完全に行われるならば、足らないのじゃないかと私は考えるのであります。  そこで、総理、あなたは三全総の国土庁試案というのをお聞きになって、そして了承を与えたということを先ほどもお認めになりましたが、この第三次総合開発計画をどうごらんになりましたか、御所見をひとつ承りたい。
  200. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まだ了承というわけじゃないのです。これは閣議で決定しなければならぬ問題であり、その前には国土総合開発審議会の御審議があって、その答申を得る、こういう前提があるわけなんです。しかし、定住圏というこの考え方についてはよかろう、これでひとつ審議会といろいろ相談してみたらどうでしょう、こういうことなんです。まだ細かいことをどうとかいうことじゃございません。
  201. 井上普方

    井上(普)委員 それじゃ、その定住圏構想というものについて総理はどうお考えになりますか、御所見をひとつ。
  202. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま私は、日本社会を見ておりまして、ほうっておきますと、これは首都圏それから近畿圏、中部圏、こういうところに人口が殺到して集中する勢い、これが非常に強く進むであろう、こういうふうに思うのです。そうしますときに、日本の文化体系、こういうようなことから見ましても問題が起こりますし、また経済、そういう立場から見ましてもいろいろな問題が起こる。やはりこの辺で少し考え方を変えまして、過密過疎というか、そういうような考え方で象徴されるような考え方、これを強力に導入する必要が出てきた。そして地域住民、ことに若人、こういう方々がその生まれた地域に愛着を持ってそこに定住するというような環境づくり、これを旨といたしましてこれからの国土づくりということを考える必要があるだろう、こういうことなんですね。これが定住圏構想のねらいとするところであるが、まさに私もその考え方は妥当な考え方である、こういうふうに考えております。
  203. 井上普方

    井上(普)委員 人口並びに産業の分散ということにつきましても、私は賛成いたすのであります。しかし、この定住圏構想というものを私は審議会で拝聴いたしておりますと、どうも藩政時代のように、二百四十ぐらいの藩を一つずつつくってやっていくのじゃなかろうか、これをつなぐために幹線道路をつくって、幹線交通をつくってやっていくのじゃなかろうかという気がしてならないのであります。定住圏という考え方をすると、藩政時代の川を中心にしたものと大体一致するのだそうです。しかし、そういうふうにするならば、またよほどの人口移動が行われなければならない、こういうように考えられます。そして、若い者がそこに住みつくということになりますと、この人口移動も、これは逆流するのですから、かなりなものが行われると思います。  そこで、現下の三全総を考える以前からも私は申さなければならないのですけれども、どういたしましても日本の現在の経済状況のもとにおいてやらなければならないのは土地対策じゃなかろうかと私は思うのです。幸いにして経済は安定成長に入りかけています。私は、総理の言うのをそのまま正直に受け取っておるのです。地価はいま鎮静しています。しかし、いつ過剰流動性がここにまた入ってくるかもわからない。こういうときでございますので、いまこそ最も強力なる土地政策を行わなければならない時期が来ておるのじゃないだろうか、こう思うのですが、いかがでございましょう。
  204. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 とにかくこの狭い国土に一億一千万人の人が安定した気持ちの上で安定した経済生活を営む、こういうことでありますから、その生活の基盤である土地問題、こればわが国にとっても最大の問題だろう、こういうふうに思うのです。幸いにいたしまして地価は鎮静化、こういう状態になってきた、この状態はあくまでも堅持してまいりたい、さように考えています。
  205. 井上普方

    井上(普)委員 そこで私は、土地政策を強力に実行する時期が来ておる、こう思うのであります。総理が行政管理庁の長官であられたときに出された答申、これを見ますと、実にりっぱなことが書いてあります。いいことが書けておるのです。あなたはいま行政府の最高の地位にあられるのだから、これを一つ一つ実行したらどうでございます。もうお忘れになりましたか。お忘れになったわけじゃないと思うのです。  宅地対策あるいは住宅、宅地供給の改善のためにというような趣旨、また「地価の安定のための施策として、1三大都市圏全域を対象とする長期間にわたる基準価格による地価の直接統制2基準価格を上回る土地譲渡益に対する一〇〇%ないしこれに近い高率課税」、こういうことをあなたは御自身が御自身で答申されておるのです。こういうのを強力にやらなければならぬと私は思います。  あるいは「市街化区域内農地等の宅地化」、このためには「一定の期間を定めて宅地化および住宅の建設を義務づけることとし、市街地形成の条件に恵まれかつ開発単位としてのまとまりを持つなど特に優先的な利用を図るべきであると認められる地域については、地域を指定し期間を短縮した義務づけを行なう」「これが行なわれない場合には、公的事業主体に収用」ここらあたりが強いのですけれども、「代執行等の権限を与えて事業を実施させ、計画的土地利用を強制的に実現するものとするが、この場合、地方公共団体のほか、日本住宅公団の事業施行能力を活用するものとする。」こういうふうにおっしゃられておるのです。どうです。やられたらどうですか、こういうことを。これが強力なる地価対策なんですよ。
  206. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 土地問題ということが大変重大な問題になってしまった、それは昭和四十七年の夏ごろからなんです。そこで、その暮れごろですか、私が行政管理庁長官になった。私は管理庁長官として土地問題にひとつ取り組んでやろう、こういう考えを持ちまして行政監理委員会にも諮問いたしまして、そういう答申が出た。私はその答申をひっ提げまして、時の総理大臣の田中角榮さんに、これをぜひやってもらいたい、こういうことを強く要請をいたしたわけであります。そこで、田中さんが私の意見を取り入れましてできましたものが国土利用計画法、これなんです。この利用法ができますれば、これは大体いまそこに書いてあるようなことが実行できるのです。つまり、私の基本的な考え方は、土地問題といいましても、全国津々浦々までの土地をどうしようこうしようというふうに考えましても、一つの立法で画一的にそんなものはできるはずがない。問題となっておるのは大都市圏、その土地問題だと思うのです。とにかく東京都圏それから近畿圏、中部圏、この辺を対象にしての宅地対策をやるべきである、こういうふうに考えまして、そしてその三都圏におきましては――その当時は土地が暴騰する勢いだったのです。これを凍結しようじゃないか、凍結するための手法としては、ただいまの土地譲渡利益に対する全額課税をする、これも有力なる手段じゃあるまいか、そのように考えまして、そういう提案をしたわけでございますが、今度、そういう答申の趣旨を受けまして国土利用計画法ができた。そうしますと、国土利用計画法によりまして地域を指定するわけです。土地が暴騰する危険のある地域、それは指定地域として国土利用計画法の指定地域になる、その地域におきましては土地の流通並びに価格の統制をするわけですから、まさに私が提唱したそのことが実現するわけなんです。ただ、その後地価が鎮静したものですから、東京都は国土利用計画法による指定地域として指定する必要のない状態に今日ある、こういうことなんです。
  207. 井上普方

    井上(普)委員 総理根本から認識が違うのです。国土利用計画法というのは議員立法でできたのです。そのときに田中さんが、あれは私が言った国土総合開発計画と同じだと言ったので大問題になったのです。これは議員立法でつくったのです。私も参画した一人なんです。そこのところの根本において間違っておられる。まあ、この点はよろしゅうございましょう。  「土地の計画的利用に関する具体策」というものが、同じくあなたが委員長であって長官のあなたに御答申になっている。これぐらいはひとつやってみるおつもりはございませんか。それには「市街化区域内農地等の宅地化」さらにはまた「既成市街地の再開発」「新市街地の開発」「補助的施策」、これは実に綿密によくできていると思うのです。いまでも通用します。この方をおやりになる意思はございませんか。現にあなたのおっしゃったこの新公団の設立というものは、実は宅地開発公団として発足いたしておるのであります。こういうようなことがやられていないのは、ただ先ほど申しましたように、「土地の計画的利用に関する具体策」、これができてないのです。これさえやれば、私はある程度宅地の供給というものは出てくるのじゃなかろうか、このように思うのですが、いかがでございましょう。お忘れになったのなら、あのときの答申は忘れたとおっしゃって結構です。
  208. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私もそれは精魂込めてつくったのですから、これは大筋を忘れているはずはありません。そのそもそもを申し上げますと、そういう土地立法の構想が政府にあったのです。それはもともと政府部内にあった。それはいわゆる日本列島改造というか、ああいう計画を推進するための総合計画を政府としてつくる、こういう立法が考えられておったわけです。私は、それは結構だ、しかし同時に、土地問題というもの、土地政策というものを支えとしないそういう計画をつくると、これは大変なことになります、そういうので、土地の流通並びに価格の規制、これをねらいとした施策が相並行して必要である、こういう議論を展開し、その議論に立ちまして、行政監理委員会に対しまして土地の流通、それから価格をどうするか、こういうことを御検討願ったのですが、その答申がいま井上さんのおっしゃるものなのです。私は、あの答申はりっぱなものである、こういうことで田中さんにもお願いいたしまして、その立法を自由民主党の政務調査会の方にお話し願って、あれをお進め願った。自由民主党が井上さんに相談したのかどうか、そこまでは知りませんが、そういういきさつでございます。
  209. 井上普方

    井上(普)委員 総理、あの土地規制の手法は使ったのです、土地利用計画法には。この国土総合開発法の土地規制の手法は使ったのです。目的はもう全然違えておるのです。そうして名前は国土利用計画法ではございますけれども、地価鎮静法とでも言うべき法律に議員立法で直したのです。その点ひとつお間違えのないようにしていただきたいと思う。手法として使った、テクニックとして使ったということをひとつ……。  そこで、いまやはり地価が去年と比べますと一・五%ぐらい上がっています。これは物価の上昇から比べますと低いものではありますが、やはり上がろう、上がろうとしておる。特にミニ開発というのがいま行われておる。これに対する規制なんというのをやはり行う必要があるのじゃなかろうか。これは建設大臣、建設省、ひとつ御答弁願いたいと思うのです。  それから、大都市地域における宅地供給について抜本的な再検討が必要なのじゃないか。その最大のネックとなっておりますものは公共公益施設であります。これの負担の問題が出てきておるのであります。  これは建設省の住宅局から「住宅団地建設促進のための新構想」というのをことしの九月に出しておりますが、実に思い切った、私らが言いたいことが書いてある。これはどうしたかといいますと、大体国の政策によってこういうように東京あるいは大都市圏というものをつくったのじゃないか、だから、出てきた事業所に対しましてひとつ税金をかけろという考え方であります。これは先般来、昭和四十七年から、この公共公益施設の負担を一体どうするかということを政府に明確にしろということを申したのでありますけれども、はっきりしない。そのために住宅公団の仕事というものもおくれおくれする、こういう形になっておるのです。あるいは公営住宅を建てるのにも困っておる。これは地方自治体の負担が余りにも多過ぎるからなんです。ですから、いままでの地方自治体は拒否反応を示して、団地お断りという拒否反応がいま起こっておることは総理も御存じのとおりです。この公共公益施設というものの負担区分をひとつ明確にすると同時に、これに対する新税をやはり設けなければいかぬ。この構想は、いままでも通産省あるいは運輸省、自治省、建設省、国土庁等々から住宅団地促進のための新税を設けて、それを財源にしてひとつ関連公共公益施設を充実させろという案が各省からばらばらに出てきておるのであります。何を言いましても、いま住宅団地をつくりますというと、御承知のように、大体四五%から五〇%近くの土地というものが公共公益施設にとられてしまうのです。その上にもってまいりまして、新しい住民でございますので、ここで税金の問題がもう出てきます。若い諸君が入るのですから、住民税なんというのは余り払わなくていいというので格差が出てくる。それで団地お断りというような考え方が出てくるし、片方地方財政というものはもう極端に悪くなってくる。どういたしましても関連公共公益施設というものの区分、そして地方自治体に負担をかけないということをやらなければ、大都市におけるところの宅地供給というものはむずかしいということ、これは私だけが言うのじゃなくて、各審議会すべてが答申いたしておるところであります。関連公共公益施設の負担区分につきまして真剣に取り組みを願いたいと思うのでございますが、建設大臣、この問題につきまして建設大臣としてはどういう考え方で今後進むおつもりなんですか、ひとつお伺いしたいのです。
  210. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 井上さん、私の方からその本が出ていましたか、建設省で、住宅局から。――ああそうですか。そうならば、そのように、私、お話しのような点については十分検討を加えてまいりたいと存じます。その中に税の問題等も含まれておることでございますので、十分検討を加えなければならぬ問題があると思います。そういうふうにいたしたい、こう考えております。
  211. 井上普方

    井上(普)委員 こういうものを住宅局から出しておるのです。しかも関連公共公益施設の負担区分というものが、どういうように負担するかというのが団地建設の行き詰まりになっていることは御存じでしょう。だから関連公共公益施設、長い言葉なんですが、これを一体どう解決していくかというのが大都市における住宅団地をつくれるかつくれないかの大きなネックになっていると思うのですが、これに対する考え方をひとつお示し願いたいのです。
  212. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 その件につきましては、公共事業に対しましては、たとえば上下水道あるいは道路の問題、公園の問題、関連するような問題につきましてはでき得る限りは公共で、私の方がやるようにして、なるべく賃貸家賃の方に重きがかからないように、なるべく軽減するような方途はかねてとってまいりましたが、さらに今後はその問題に対して一層考えなければならない問題だと考えております。したがって、なるべくその御期待に沿うようにするのにはもう少し公共で、国が負担申し上げるというようにしていきたいと考えております。
  213. 井上普方

    井上(普)委員 建設大臣、これは昭和四十七年に衆議院の建設委員会におきましても結論を出し、そして内閣に建議をいたしておるのであります。また昭和五十二年の五月二十五日にも衆議院の住宅問題に関する小委員会がこれまた答申をいたしておるのであります。これをやっていただきたいのです。それにはやはり内閣全体として、この関連公共公益施設というものをどうするかということを根本的に考え直していただかなければならない問題であります。それでなければ団地お断りのこの拒否反応というものは、自治体から出てくるのは当然なんであります。これを真剣にお取り組み願いたいと思うのです。総理大臣、私の申すことはわかりますか。どうです。本当に土地政策をここらではっきり出さなければ、いま鎮静しておるのですから、しかも景気回復のためにも私はなると思うのです。やるおつもりがありますか、どうですか。
  214. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは国会での御指摘もあり、また各界からそういう問題についての御指摘もあり、この問題がいわゆる住宅団地形成の一つの隘路になっておることは私もよく承知しております。それに対してどういうふうに対処するか。これはそう極端なことをやりますと、公平原則というような立場からもいろいろ問題もあります。そういうようなことで、いま世間で言われておるような完全な対策はとられておりませんけれども、これはかなりの助成措置はいまとられておる、そういう状態であります。なおそれが不足であるという議論がかなり強い、これも私はよく承知しておりますが、なおこれは大蔵省にも関係のある重要な問題でありますので、建設、大蔵両省においてひとつよく協議してもらいたい、かように考えます。
  215. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  宅地を手に入れることが非常に困難であるということが家をつくるということについて非常なネックになっておる、こういう御指摘、そのとおりでございます。そこで、宅地を手に入れるのが非常に困難であるということは、るる御指摘になりました関連の公共公益施設といったようなものをつくらなければならないというようなことで、非常にそれが宅地の地価を押し上げる作用をなしておるというようなことでありまして、そういうようなことを何とかして解消するためにいろいろなことが考えられておるわけでございます。それはどういうことかと申しますと、いろいろな御意見がございますが、国庫補助率のかさ上げとか、あるいは地方交付税及び地方債措置の充実だとか、あるいは立てかえ施行制度の拡充とかといったようなことが非常に強く主張されておるわけでございます。  いずれにいたしましても、それは大事なことでありますが、土地を提供する、手軽くというまではいかぬにいたしましても、提供するということにつきましてはいろいろなことを考えていかなければなりません。そのために何といたしましても新たに税をという御意見もありますけれども、ともかく土地を入手するために税ということは、どこまでいきましても補完する方式、主たるものではなくして、土地制度というもの、土地政策というものをやはり中心に考えていかなければならない。その土地政策にマッチする方式を考えていかなければならない。そういうようなことからこれはひとつ両方を渾然一体なものとしての方式を考えなければ、ただ税制だけやっていくというようなことについては、これはなかなか実効は得られない。今日も税が土地の流動を非常に縛っておるから、そこで何とかして税の縛りからはずさなければならないといったような意見が一部にございます。全体的な意見ではございません、それらの一部にございますけれども、そういったようなことだけを切り離して考えましても、これはとうてい土地が入手しやすいということにならないと同様に、ではひとつ新税をつくって、そしていろいろなことに対する財源を得てということも、これまた一方から見たものでございまして、これはやはり土地政策というものの一体として考えていかなければならない、かように私は考えております。
  216. 井上普方

    井上(普)委員 大蔵大臣、あなたは認識が浅過ぎるのではないですか。土地政策、土地制度については無知と言ってもいいぐらいじゃございませんか。現に、多摩ニュータウンのあの地域へ行ってごらんなさい。もう土地は全部買えているのです。しかし、土地が買えてはおるけれども開発が進まないというのは、各市町村が、ここに団地をつくったならばわれわれの財政負担というのがこれだけ要るんだ、財政はパンクしてしまうんだ、だからひとつこの関連公共施設というものを助けてくれ、こういうことを言っているのですよ。団地はあるのです。土地はもう買えておる。それができないのは、あなたのようにじんぜん日を過して、これに対する対策を怠っておったいままでの大蔵省の態度に原因があるのです。  先ほど来、私は申しました。この狭小住宅に住んでおる方々は、多摩ニュータウンが一日も早くできることを首を長くして待っておる。しかし、受け入れ側の市町村は、あんな大きな団地ができても一体財政はどうするんだ、学校はどうするんだ、病院はどうするんだ、下水、上水道はどうしてくれるんだ、こういう要求がどんどんとあるわけなんです。これはまた当然のことなんです。それをまた、道路はひとつ市町村道だから市町村で全部持てと言っても、財政はもたぬでしょう。そういうようなところから問題が起こってきているのです。  だから、公共関連施設というものを大蔵省ないし政府が適確なる指導をやっておったならば、処置をとっておったならば、一例を申せばあの多摩ニュータウンのごときはもう七、八年前に完成しておるでしょう。まだ一割も完成してないのですよ。ここに日本の住宅の困窮度をさらに深める原因があるのです。ここを大蔵省としては、ひとつ決断をもって対策を講じていただかなければならぬと思うのです。関係大臣の御答弁を求めます。
  217. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 御承知のように第三次五カ年計画がありまして、六万三千ヘクタールはどうしても必要である。これに対しましては、いまお話しのような点もございます。しかし地方負担の軽減をということは当然でございますので、これに対して立てかえ施行の制度の改善を強化したり、あるいはまた人口急増市町村等における国庫補助の補助率の引き上げをやる、あるいはまた地方債のかさ上げと利子補給をやる、こういうような点に重点を置いて進めてまいっておりますが、お話しのような点もございますので、地方に負担がかからないような軽減策をさらに進めてまいるつもりでございます。
  218. 小川平二

    ○小川国務大臣 地方財政の現状について十分御認識をいただいておること、まことに心強くありがたく存じております。  申すまでもないことでありますけれども、地方公共団体といたしましては、乱開発を避けて計画的な町づくりをしなければならない。関連する公共施設を整備いたしまするために、急激なまた非常に巨額な財政負担が生ずるということでは、お言葉にありましたとおり財政がパンクしてしまいまするから、そこでいわばやむを得ざる自己防衛の手段として、多くの都市が宅地開発要綱というようなものを定めまして、開発業者から一定の寄付金を徴しておるというのが実情でございます。  自治省におきましても、先ほど大蔵大臣が述べましたように、人口急増補正あるいは建設補正というようなことで交付税で配慮をいたしておりますけれども、交付税は三千三百の地方公共団体のいわば共通財産でございます。それもきわめて乏しい共通財産でございますから、これをどこまでもつぎ込んでいくというわけにはまいりかねるわけであります。現に小中学校の用地取得については、補助の制度が人口急増地についてはあるわけでございます。あるいは小中学校の校舎、幼稚園の園舎、消防の施設というようなものに対しましては、補助のかさ上げも行われておるわけでございます。この問題は、お言葉にありまするように、国土政策の問題でもありまするし、住宅政策の問題でもあります。また、それぞれの公共施設の主管省の問題でもございまするから、各省においてそれぞれ施策を強化していただいて、地方公共団体の負担をやわらげていただくことが問題を解決する根本的な方法であろう、こう考えております。
  219. 井上普方

    井上(普)委員 最後に申し上げますが、こういうように公共関連事業に対しまして非常に熱意がなかったがために、多摩ニュータウンというのはまだできていないのです。これは考えてごらんなさい、きねよりも柄が太いようになっているのです。こういうことをお考え願って、関係大臣においてさらに早急に御協議になって、関連公共施設の解決についてひとつ御努力願いたいことを最後に申し上げまして、質問を終わります。
  220. 田中正巳

    田中委員長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。  次に、坂井弘一君。
  221. 坂井弘一

    ○坂井委員 最初に、韓国に対しますわが国の今後の経済協力のあり方につきまして伺いたいのでありますけれども、最近の日韓の情勢をめぐりまして、幾つかの変化が生じてきておる。つまりその一つは、いわゆる在韓米地上軍の撤退ということをカーター大統領が決めた。同時にまた、いわゆる朴政権に対しますところの、人権抑圧といいますか、そういう点の批判が高まってきた。それに応じて、韓国内では自立と民主化、そういう機運というものが急速に高まりつつあるということ。それから二つ目には、最近の韓国経済というものが大変な勢いで発展をしつつあるということで、海外市場における競争力、それがまたわが国の有力な競争相手になってきた。さらに、あえて言うならば、三つ目には、韓国自体が北朝鮮と、さらに日本あるいはアメリカ、こういう諸国との間において交流のパイプといいますか、そういうものをさらに太くしていかなければならないという必要性に迫られてきたのではないかというような点を最近の変化の情勢として踏まえますときに、さてこれからの日韓経済協力、いわゆる対韓援助のあり方そのものを根本的にひとつ見直してみる必要があるのではなかろうか、ある意味での曲がり角に来たのではなかろうか、こういう感じを実は率直に持つわけでありますが、まずそうした点に対しての総理の御見解をひとつ承りたいと思います。
  222. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 韓国の情勢は、これは坂井さんがいま御指摘のとおり、最近顕著ないろいろの変化がありますが、特に経済協力のあり方、こういう問題についての御質問でありますので、経済の面の変化、これについての私の所感を申し上げますと、かなりこれはこの数年間に顕著な発展をなし遂げ、さらにこれが推し進められつつある、こういうふうに思います。そういうことは隣国日本といたしまして基本的には歓迎しなければならぬところである、こういうふうに考えておるわけであります。ただ、発展途上というか、これからもなお韓国も開発発展の方向を目指して努力しておる、そういうことでありますので、わが国はこれまでいわゆる無償援助を初め、いろいろの協力をいたしてまいりました。韓国の発展の陰にはそういうわが国の協力、これがかなり影響しておる、こういうことも私は率直に考えてしかるべきである、こういうふうに思いますが、さて今後どうするかということにつきましては、いわゆる政府間協力、これを逐次減少いたしまして、なるべく民間協力の線、これを中心でおつき合いをしていくべき段階に来た、こういうふうに考えております。
  223. 坂井弘一

    ○坂井委員 残念ながら、やはり朝鮮半島におきます軍事的な対立というものが今日なお続いておるという中で、在韓米地上軍の撤退という事態が起こってきたということになりますと、韓国にしてみれば、やはりそうした国防力の空白というもの、これをどうしても韓国自身の手で埋めなければならぬ。  韓国側の説明によりますと、防衛費が国民総生産、GNPの七%、全予算の三五%にも及んでおる。そういう中でやはり一番期待するものは、わが国に対して従来の経済協力とは質的に変わった意味で、つまり安保次元での協力を期待したいという気持ちは多分にあるのではないか。もちろんわが国といたしましては、軍事力で韓国の肩がわりをするというようなことは、これは断じてできない。したがって、韓国側は今回の第四次五カ年計画、これをもって、日本の経済協力をこの第四次五カ年計画に取り入れることによって防衛力の強化を目指したい、こういう意図は、これは客観的に一般常識論としてもあるのではないかというのが通常の見方だろうと私は思うのです。したがって、そういう意図ありとするような対韓経済協力になりかねないという危険性、これを持つという見方に対して、総理としてひとつ率直な重ねての御見解をいただきたい。
  224. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 きょうもいろいろわが国の国際社会に対する責任という論議がありまして、その中で、わが国はもっと対外経済協力に熱心であるべきだ、こういうような、先ほどおたくの渡部一郎さんからもそういうお話があったくらいでありますが、わが国は、基本的な考え方といたしまして、やはり今日ここまで来た段階になりますると、世界の平和、繁栄に貢献しなければならぬ、その一番大事なわが国のなすべきことは、おくれた国々、これに対する援助、協力である、こう申し上げたわけでありますが、そういう立場に立ちまして、アジアの諸国に重点を置きましていままでもずいぶん協力をしてまいりました。今後といえどもこの協力の姿勢は、強化するということがありましても、これを引っ込めるというようなことがあってはならぬ、こういうふうに思います。  私は、先般ASEAN諸国を訪問いたしまして、そして訪問した国に対しまして私どものそういう積極的なこれらの国々に対する協力姿勢、これを示してまいりましたが、一番近い韓国はこれは別だ、こういうわけにはなかなかいかぬ問題じゃあるまいか。やはりその基本原則の中の対象国、その一つとしてこの韓国をとらえていかなければならぬと思う。ただ、韓国は非常におくれた国々と違いまして、もうかなり経済が発展してきた、そういう状態を踏まえまして、その協力のあり方というもの、これは民間協力、これを主体としたところの協力にいたすべき時期に来ておる、こういうふうに考えておる、このことを申し上げておるわけです。
  225. 坂井弘一

    ○坂井委員 これまた残念ながら、総理と私は実は認識を異にするわけです。経済協力のあり方としては、発展途上国に対しまして、韓国もその例外ではなく、それは当該国の民生の安定なり、あるいはまた経済の向上に資するために、平和的次元においてわが国が経済援助をするのである、それは基本的な考え方というのは同じです。ただ、先ほど前段で申しましたように、いわゆる日韓関係を取り巻く情勢というのは非常に大きな変化を来しつつあるということ、日韓間は一衣帯水というようなことで言われてまいりましたけれども、確かに他の国とはまた異なった意味合いにおいて、特に在韓米地上軍の撤退という事態を迎えた今日的段階においては、今後の韓国に対します経済協力のあり方は、いままでの延長線上で考えては相ならぬという要素がありますよ。それは何か。つまり軍事力の強化、そのための防衛生産力、これを韓国みずからの手によって、これはおいおい具体的にこの質疑の中で詰めていきたいと思いますけれども、非常にそうした意図が現実のものになりつつある。こういう事態を直視する中で今後の対韓経済協力のあり方というものを考え直していかなければならぬのではないかということを実は私は申し上げているわけであります。  具体的に進めてまいりますが、その順序といたしまして、第三次五カ年計画、これが終わったわけでありますけれども、この第三次五カ年計画が、わが国が韓国に約束をいたしました借款計画、これが具体的に実際的に結果としてどのような実績、決算を得たか、これはあらましで結構でございますから、総額で結構でございますから、援助の結果についてひとつお答えをいただきたい。
  226. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 第三次経済開発五カ年計画におきましてわが国が協力を約束いたしましたものが、十案件で、金額総計で千八十八億四千万円でございます。年次別に申し上げますと、一九七二年に百五十四億円、七三年二百七十八億円、七四年三百十三億二千万円、七五年二百三十四億二千万円、七六年百九億円となっております。  内容をもう少し詳しくは局長からでも答弁させます。
  227. 坂井弘一

    ○坂井委員 結構です。  ただいま外務大臣から政府借款の実績につきましてお答えいただきました。総額で千八十八億四千万円、このほかに、商業信用供与、それから直接投資がございますね。この三つを合わせますと、総額でどうなりますか。
  228. 菊地清明

    ○菊地政府委員 第三次五カ年計画中に行いました商業借款は八億四千万ドルでございます。これは韓国が受け取った商業借款の二八%を占めております。それから民間投資が六億三千万ドルでございます。
  229. 坂井弘一

    ○坂井委員 念のために伺いたいのですが、この三つを合計いたしますと、ドル換算で約十八億ドルというようなことになりましょうか。
  230. 菊地清明

    ○菊地政府委員 十八億ドルでございます。ただし、念のためにつけ加えさしていただきますけれども、例の請求権に基づきます無償と有償が第三次五カ年計画の中にも続いておりますので、その分は上乗せになると思います。
  231. 坂井弘一

    ○坂井委員 第三次五カ年計画の調査団の報告書を見ますと、これは七二年の二月でございますが、韓国側からわが国への援助期待額、これはたしか九億九千五百万ドルであったと思いますが、そうしますと、実績といたしましてはその約倍、十八億ドル、こういうことになるでしょうか。
  232. 菊地清明

    ○菊地政府委員 韓国側からの要請は、五カ年計画全体を通じて幾らということは正式にはございません。あくまでも年次別に要請があるわけでございます。そういう意味におきまして、倍になったというふうにはちょっと申しかねるのじゃないかと思います。
  233. 坂井弘一

    ○坂井委員 これは年次別ですし、暦年ということの計算の違いがありましょうから厳密には出ないと思いますけれども、およその感覚として私は実は申し上げたわけでして、このことについてあえて詰めるつもりもございません。具体的な内容につきましては後ほどに譲りたいと思います。  第四次の五カ年計画、これがスタートしたわけでございますが、日本政府が、わが方が協力しようと考えております総額、これは大体のところは政府においては決まっておるのでしょうか。
  234. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先般、日韓定期閣僚会議を行ったわけでありますが、その際には、金額等は一切決めないで今後の折衝で決める、こういうことにしてありまして、全く決まってないのでございます。
  235. 坂井弘一

    ○坂井委員 これまた念のために伺っておきたいと思いますが、大体韓国側は外資導入百億ドルを期待し、うち二十億ドルを日本に期待するというようなことを漏れ聞くわけでありますが、韓国側からそういう要請はございませんか。
  236. 菊地清明

    ○菊地政府委員 第四次の五カ年計画の総投資額は十八兆ウォンとなっております。約三百七十二億ドルでございますが、そのうち外資導入の予定額が、韓国側の期待額としまして百億ドルございます。この百億ドルは全世界からでございますので、私たちに対して説明のあったところによりますと、その半分が商業借款、それから半分が公共借款と言っておりますが、この公共借款の中には、二国間の援助と、それから国際機関、たとえば世界銀行、アジア開発銀行からの借款を期待しておるようでございます。その内訳は、大体のところ半分半分、つまり二十五億ドルが二国間の援助、それから二十五億ドルが国際機関からの援助というものを期待しておるようでございます。いまお話しの日本自体にどのくらいのものを期待しておるかということにつきましては、正式の要請はございません。ただ、私たち実務者レベルでいろいろ話し合っているのは、第三次五カ年計画のときに日本の民間、政府両方入れまして約二割くらいの資金が供給されているということで、大体第四次五カ年計画の場合もこの程度は期待したいというようなことは向こうの期待として申し伝えられております。
  237. 坂井弘一

    ○坂井委員 わかりました。  そうしますと、第四次が七七年、ことしからスタートしたわけですね。ことしの分につきましては、これは実務者レベルで援助額は決まりましたか。同時に、来年の分、次年度分はどうですか。
  238. 菊地清明

    ○菊地政府委員 つい先月にことしの分といたしまして二百四十億円円借款が決まっております。それから、来年度の分はまだ要請がございませんけれども、その要請は、具体的には来月の大体初めになるかと思いますが、実務者会議が開かれますので、その段階で向こうから要請があるものと思っております。
  239. 坂井弘一

    ○坂井委員 外務大臣にちょっと伺いますが、あなたは九月十六日の外務委員会でこのような御答弁をされています。「私どもはこれからの対韓経済協力におきましても、たとえば農業面に対します協力でありますとか、そのようなことを中核的な問題として考えていきたい、いやしくも軍事的な相関関係というようなものは全く考えておらないということを明確に申し上げたい」、こういう御答弁であります。えらい先を読んだような言い方をして恐縮なんですけれども、これは、つまり政府ベースに限っては農業面等、いやしくも軍事的な相関関係における協力はいたしません、裏返しにして言うなれば、先ほどの総理答弁にもこれは関係してくるわけでございますけれども、民間ベースにおいてはその限りではない、こういうようなことに相なりますか。
  240. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先ほどの第四次五カ年計画でございますが、先ほど米地上軍の撤退等に絡んでというような話がありましたが、私ども、第四次五カ年計画をいろいろ調査団を出したりいたしましたのはもう大分前でございまして、米軍の撤退問題というものと関係がなく五カ年計画というものを韓国はつくっており、それについて私ども検討してきたところでございまして、その後地上軍の撤退という問題が起こりまして、どのような変更とかあるいは実体が変わってくるのか、この点は私どもまだ把握できておりません。私どもといたしまして、従来からとっておりました方式、しかも農業面におきます投資というものが非常に急がれておりますので、これらを協力をいたしたいと考えております。  また、民間関係につきましては、兵器関係につきましては、政府の方針といたしまして日本自体が武器の輸出というようなものはしないということははっきり決めております。また、それと関連して、武器を製造する設備というようなものも日本としては輸出を慎むという政策をとっておりますので、私は、民間だからそのようなことが今後大いに行われるというようなことは全く考えておらないところでございます。
  241. 坂井弘一

    ○坂井委員 見て見ぬふりをするというのか、あえて触れたくないという御意図なのかというようなことを私は疑わしく思うわけですけれども、調査団の報告書も、民間ベース経済協力の役割りは今後ともきわめて大きい、しかも、それは重化学工業部門、これに対する協力は不可欠である、こう言っておりますね。同時にまた、韓国政府の方も一九七三年一月に重化学工業化政策宣言、これを発表した。つまり、第三次五カ年計画を踏まえながら、今後工業構造の質的転換を図る。そのことは、第四次五カ年計画においてこの基本方針を受けまして、第四次五カ年計画の期間中に重化学工業化を大いに推進する。一つは先進工業構造への改編であり、二つ目には、工業各部門間の相互連関性の向上と格差の是正であり、三番目には技術革新と国際競争力の強化、こういう政策目標を韓国は公に掲げた。そういう経緯を踏まえて、いずれにもせよ重化学部門に力点が置かれてきた。これは何かといいますと、機械、電子、造船、そういう重化学工業である。実はこれは大体表向きの話でございまして、たとえばおいおいと申し上げたいと思いますが、ことしの四月六日の朝鮮日報、これを見ますと、鉄鋼生産、機械工業、造船工業、自動車工業などは、そのまま戦車と軍艦、銃砲、弾丸をつくる産業であり、電子工業、石油化学工業は最新武器生産の不可欠の要素となっている、必要に応じていつでも武器生産に転換し得る体制を整えなければならない、これは第四次五カ年計画が軍需産業ときわめて密着をしておるのだということを社説にまず掲げた。こういう記事一つをごらんになりまして、これまた率直な御感想としてどうですか、どうお考えになりますか。
  242. 菊地清明

    ○菊地政府委員 第四次五カ年計画のねらいといいますか、その目標というものにつきまして、私たちの承知しておるところでは三つ目標がございまして、一つは自立成長構造の達成ということ、つまり、国際収支をなるべく均衡させたいという努力、それからその次は衡平の増進ということでして、社会開発の増進、第三番目に技術革新と能率の向上、これが第四次五カ年計画の三つの柱になっております。  それで、御質問の重化学工業でございますけれども、まあ私たちは韓国政府の発表した数字によるほかないわけでございますけれども、重化学工業が韓国のGNPに占めている比率は、一九七五年で一二%でございました。これが一九八一年、第四次計画の最終年では一九・六%。これがGNPに占める比でございますけれども、工業全体に占める重化学工業の比率というものは大体四九%ぐらいになるという計画のように承知しております。
  243. 坂井弘一

    ○坂井委員 せっかくあなた御答弁いただいたのですが、そんな表向きの、かっこうのいい議論なんかしようと思っていないです。御承知のとおりですけれども、つまり、韓国側の第四次五カ年計画の重化学工業基地建設というのは、実は四つある。一つは昌原機械工業基地、二つ目には麗川総合化学工業基地、三つ目には温山基地、四つ目には浦項製鉄所、これは拡張ということを中心にした重化学工業、こういうことであります。  この際、午前中のやりとりの中にも出ましたけれども、昌原工業団地といいますか、ここに焦点をしぼって議論を進めたいと思います。  昌原機械工業団地、これは第四次五カ年計画期間中、年間国内機械類総生産額が四十四億ドル、八一年の機械類輸出予定額が十四億ドル、こういう予定をしております。ここに昌原機械工業基地の、これはどんどん来てくださいという、りっぱなのかどうか知まりせんけれどもパンフレット、これは韓国機械工業公団が出したものです。いずれにしても、いまのような規模といいますと、韓国の機械類輸出の五〇%以上、それから韓国の機械類生産額の四〇%以上をこの昌原工業団地、ここで生み出していきましょう、実は大変な規模の工業基地でありますが、まさにこの昌原機械工業基地の成否が第四次五カ年計画の成否を左右するという革新的な大事業である、これはっとに有名なところであります。  そこで、具体的に伺いたいのでございますが、昌原団地の企業の建設、稼働の実態、外国企業との技術提携等々、その現状につきましては日本政府は把握されておりますか。
  244. 菊地清明

    ○菊地政府委員 韓国政府が、第四次五カ年計画の中におきまして、昌原地区、これは馬山の近くの、新しくつくっておる工業団地でございますが、これに大いに力を入れておるということは、われわれも承知いたしておりますが、日本のどんな企業がどのくらい、すでにその工業団地に入る予定になっているかということにつきましては、正確には把握いたしておりません。あるいは政府部内でまだ把握しておらないのじゃないかと思っております。
  245. 坂井弘一

    ○坂井委員 外務省の御答弁ですか。――お願いします。
  246. 中江要介

    ○中江政府委員 どうも失礼いたしました。  昌原機械工業団地の実態について要点をかいつまんで申し上げますと、本年の七月現在では、この地域に入ることを許可された企業の数は六十二社、この中で、稼働中の企業は二十五社、この二十五社のうちで日韓合弁企業になっておりますのが三社、それから建設中の企業が二十一社、この二十一社のうちで日韓の合弁企業になっておりますのが四社、さらに着工計画の企業が十六社、合計六十二社である。したがいまして、日韓合弁企業はいま申し上げましたように、稼働中のものと建設中のものを合わせて七社、こういうふうにまず実態を見ております。その中にあります日韓合弁企業の種類は、蓄電池関係、鋳物、化学機械、車両、自動車キャブレター、その他いろいろございまして、その資本比率を見ますと、韓国対日本の比率が、あるものは五一対四九であり、あるものは五九対四一であり、あるいは大きな比率では七一対二九、七五対二五というのもございますし、フィフティー・フィフティというのもある、こういうふうでございます。
  247. 坂井弘一

    ○坂井委員 いまお答えいただいたのですけれども、それはどこでつかまれた数字でしょうか。
  248. 中江要介

    ○中江政府委員 これは先ほど先生も言及しておられました昌原機械工業公団の発行しております「昌原団地現況」という文書によって把握している、こういうことでございます。
  249. 坂井弘一

    ○坂井委員 ジェトロもいろいろ調査をされまして、つかんでおりますね。それは御承知ですか。
  250. 西山敬次郎

    ○西山政府委員 昌原団地の実態につきましては外交ルートを通じて調査いたしておりますので、われわれの承知しておりますのは、ただいま外務省からお答えのあったとおりと承知しております。
  251. 坂井弘一

    ○坂井委員 政府が全額出資しているジェトロ、日本貿易振興会、りっぱなことを書いていますよ。これくらいのことは皆さんおつかみになったらどうですか。不勉強じゃございませんか。大変詳しいですよ。これも一つの御参考にされたら結構だと思います。  そこの出資比率をいま触れられましたが、出資比率で日本企業の方が比率の大きいというのはありませんか。外務省お答えください。
  252. 中江要介

    ○中江政府委員 先ほど私、公団の資料によって把握しておりますと申し上げました中には、この出資比率はないわけで、出資比率の方は私どもの方で調べたわけです。それによりますと、日本の方が大きいというのはなくて、五〇・五〇というのが二社ある、こういうことでございます。
  253. 坂井弘一

    ○坂井委員 余りこんな資料をいただかない方がよかったと思いますね。これを外務省からいただいたら、日本企業の進出企業が七社書かれていますよ。それで、いまもうすでに稼働している合弁企業で、韓国側の出資が一〇%、日本側が九〇、同じく韓国側八%、日本側が九二%、一体これは何ですか。あなたの方からいただいた資料です。答えは結構です。これは余りでたらめなという言い方はよろしくないか知りませんけれども、少しこの出資比率なんかについては慎重を期していただきたいですね。  次の問題に移ります。  その前に一言聞いておきますが、韓国に対しましていままで飛行機、ヘリコプター、それから滑空機といいますか、輸出された実績がございますか。あったらそれをちょっと教えてください。何年に何機というくらいで結構です。
  254. 森山信吾

    森山(信)政府委員 お答え申し上げます。  韓国に対しまして航空機の輸出実績は、四十年以降毎年ございます。ただし四十九年は皆無ということでございます。
  255. 坂井弘一

    ○坂井委員 韓国に輸出されたヘリコプターはいかがですか。
  256. 森山信吾

    森山(信)政府委員 航空機とヘリコプターが大蔵省の通関統計によりますと同一の範疇に入っておりますので、詳細は判明いたしませんが、私どもがつかんでいるところによりますと、ヘリコプターも一部入っているというふうに了知いたしております。
  257. 坂井弘一

    ○坂井委員 六六年に二機、七〇年に二機、七二年に一機出ておりませんか。
  258. 森山信吾

    森山(信)政府委員 ただいま先生から御指摘のございました数字は私ども一応了知いたしておりますが、これは通関統計上、先ほど申し上げましたように大枠で計上されておりますので、実態につきましては掌握いたしておりません。
  259. 坂井弘一

    ○坂井委員 一応わかっているけれども、大枠でわからぬからわからぬと言う。もう少しまじめに御答弁いただきたい。そんなヘリコプターが勝手に韓国に飛んでいくはずがないのです。二機や一機のヘリコプターが輸出されまして、それが大枠ではつかんでいるけれども、わからないなんというのは……。まあいいでしょう。いずれにしましても輸出された実績はあるということです。まずそれを踏まえておきましょう。後ほど触れたいと思います。  これはごらんになりましたか、東亜日報、五十二年四月十五日付です。わかりませんので、実はこれは翻訳してもらいました。要点を申します。朴大統領が昌原工業団地を視察しているわけです。この見出しは「戦闘機以外すべて武器国内生産わが軍備はすでに北傀を圧倒朴大統領、防衛産業視察後明かす」こうありまして、記事の内容を申しますと、防衛産業体を視察、各種軍装備を生産している現場を見て回った後、記者と懇談する席でこのように述べた。南北間は軍備競争の時代に入っているが、われわれは大部分の分野ですでに北傀より先立っている。自身の地上対空防衛力強化のため、われわれが量産体制に突入、生産している新鋭対空砲など、必要な武器を企業体の自力で購入、企業体の予備軍をしてこれを操縦する自身の防衛体制を持てるようにせよと指示したという記事の内容であります。  それから、さらに韓国日報があります。これは、間もなく国軍の日、つまり十月一日の行事には、航空機を除き国産化されたすべての装備を見せる計画である。また大統領は、これら業体で生産されている各種武器及び重装備の生産過程、部品組み立て過程、性能試験に至るまで、一つ一つ細かく見、完成された各種砲及び特殊車両などを点検した。こういうふうになっているわけであります。つまり公に、この昌原工業基地でどういう内容のものが生産されているかという実態をみずから明らかにした。それは何かというと武器である、こういうことであります。  こういうことを踏まえまして、先ほど御答弁いただく中で、いまのようなことを踏まえまして、再度、このような大規模な兵器生産が進められているということの御認識は、政府にはあったのですか、なかったのですか。
  260. 中江要介

    ○中江政府委員 ただいま御指摘のような新聞報道その他による情報は、私どもも承知しておるわけでございますけれども、隣国がどういうふうな軍事的な計画を持ち、それをどういうふうに実行しているかということについては、これは私どもとして積極的に調べるということのできない問題でございます。  ただ昌原工業団地につきましては、この中に軍需指定工場があるかどうかという点につきましては、この軍需指定工場を指定するための法律に基づきまして、そういったものは公表しないということになっておりますので全貌はわかりませんが、少なくとも日本が関与しております日韓合弁企業に関する限りは、軍需指定工場とみなされているもの、指定されているもの、そういうものはないということについては確信を持っております。
  261. 坂井弘一

    ○坂井委員 兵器というのは総合組み立て産業ですよ。そのものずばりで、そこでずばんと飛行機ができるものでもないのですよ。大砲ができるものでもないのですよ。これは総合機械ですよ。精密科学なんですよ。そんな認識というのは常識中の常識じゃありませんか。  KIDC構想、御存じですね。日本の対韓武器産業の協力、これがこの中に端的に示されている。このKIDCというのは、浦項総合製鉄所、それからいまの昌原工業基地、これに重点を置いておるということ、それから特にこの第四次計画、これは、韓国の戦力増強五カ年計画、七六年から八〇年に至るこの戦力増強五カ年計画というのは百三十余種類の武器生産を目標としているわけでありまして、これは政府は篤と御存じでしょう。これの補強としてこの第四次計画が進められておる。これも篤と、そういうことは前段に認識としてなければいかぬということをまず申し上げた上で、この昌原工業団地、これがもっぱら工作機械や精密機械、こういうものをつくっているんだとこう言われておったけれども、先ほど示しましたように四月十四日に朴大統領が団地を視察をした。ここでもってM16自動小銃、それから各種の砲、特殊車両、こういうものがどんどんつくられている模様を写真入りで公表までしておる。実は、国際電光、大韓重機、起亜産業、韓国総合特殊鋼、昌原工業、こういう企業は兵器生産企業なんです。これはみずから明らかにしております。進出した日本企業で、技術提携であれ、合弁体であれ、いま申しましたような企業と関係しておるところ、ありますか。
  262. 中江要介

    ○中江政府委員 先ほど申し上げましたように、日韓合弁企業で軍需産業として指定されたものはないということについては確信を持っておるわけでございまして、合弁企業の中にいま先生が御指摘になりましたようなものは含まれておらないということでございます。
  263. 坂井弘一

    ○坂井委員 あなた方も皆御存じなんでしょうけれども、韓国総理府発表の七七年「行政白書」は、これはおわかりでしょうね。これは、防衛産業拡大策として海外各国への兵器の輸出を推進する意向、こういうものをここに明記してありますね。さらに、韓国の商工部重工業次官補、この人は、政府は、機械工業育成のために、七九年までに機械類の自給率を七〇%に高め、品質及び価格面での国際競争力を備え、防衛産業製品の受注体制を確立し、輸出中枢産業として育成するために四つの目標を立て終えておる、こういう発言を公式にしていることについては、御存じですか、御存じないのですか。知っているか知っていないか、それだけで結構です。
  264. 中江要介

    ○中江政府委員 いま御指摘の点は把握しておりません。
  265. 坂井弘一

    ○坂井委員 昌原工業団地にわが国の石川島播磨重工業が進出をいたしまして、韓国の三星グループと合弁企業体で三星重工業をつくるということについては御承知でしょうか。
  266. 中江要介

    ○中江政府委員 いま御指摘の合弁企業は、建設中の中に入っております。
  267. 坂井弘一

    ○坂井委員 どういうものをつくる企業でしょうか。
  268. 中江要介

    ○中江政府委員 私どもの承知している限りでは、業種といたしましては、各種プラント設備、こういうふうに聞いております。
  269. 坂井弘一

    ○坂井委員 表向きは各種プラント、確かに書いてありますな。各種プラントというのは問題なんです。当初は造船所を建設する計画であったというようなことも言われてございますが、途中で計画を中断した。総合機械工場を建設するということになった。石川島播磨重工業というのは、御承知のとおり、T58型航空機用エンジンをつくっておりますわが国有数のエンジンメーカーであります。このエンジンは、V107「しらさぎ」ですね、このV107に搭載されております。そのほかにP2J等のエンジンもつくっておりますが、このV107に搭載されますT58型航空機用エンジン、これをつくっておる。V107は沖繩一〇一飛行隊に配備されておる。実はこういうことであります。この三星重工業でヘリコプターをつくるのじゃないですか。情報としてでも入手しているかいないか、正直にお答えください。
  270. 中江要介

    ○中江政府委員 外務省では詳細承知しておりません。
  271. 坂井弘一

    ○坂井委員 ソウル放送でもありましたね。韓国の三星グループが総合機械生産のために新たに設立した三星重工業は、石川島播磨重工業と合弁で韓国では初めての飛行機生産工場建設を計画しておる。これに対しまして韓国商工省が当日明らかにしたところによりますと、七九年から第二次拡張工事で飛行機生産工場を建設する、こういうことになっている。これは韓国商工省の発表でありますが、そのことについても御存じないんでしょうか。
  272. 中江要介

    ○中江政府委員 外務省では承知しておりませんが、先ほど私が申し上げましたように、もし万が一合弁企業が軍需物資を生産しようということになりますと、一九七三年二月十七日に制定されました軍事調達に関する特別措置法によりまして、軍需産業としての政府の指定を受けなければならない、こういう義務が課せられておるわけでございまして、そういう指定を受けるようなことではこれは日本としては容易ならないことということになりますが、先ほど申し上げましたように、現在までのところ、そういうものは日韓合弁企業に関する限りないということについては確認しておるわけでございます。
  273. 坂井弘一

    ○坂井委員 五十年十月二十四日の当予算委員会におきまして、いろいろな議論がございました。武器禁輸三原則に関してであります。その際政府、当時通産大臣は河本さんでありますが、「韓国内の法人が武器をつくるということは、これは私は日本には関係ない」ことでありますと、日本企業が韓国に進出をした、合弁企業体は韓国法人であります、したがってこれは日本の国内法の適用を受けない、韓国法内の問題だから、そこで武器がつくられようとどうあろうと、とやかくわが方は言うべき筋合いのものではないというかのごとき答弁をされているわけでありますけれども、いま昌原工業基地に対しまして日本企業がどんどん進出する、総合的な形の中でここで武器がどんどんつくられていく、それに技術協力をする、実際にその兵器の生産に、直接、間接であれ加わっていく、そういう形の日本企業の進出に対しまして、いま申しました従来の武器禁輸三原則、この関係において、これは全く有名無実になってしまうと私は思うのですけれども、これはちょっと総理に伺いたい。いまのような形で進行してもわが方は一向に関せずと、こういうのでしょうか。それとも、民間ベースでそういう協力の形でどんどんと武器をつくる、日本の国内じゃなくて韓国を舞台にして、そこで合弁体を構えてつくる、それがまた第三国にも輸出される、これは後でも出ますけれども、そういうところまで韓国は目標を持っておるわけですが、そういう形でどんどんと武器生産が韓国を舞台にして行われるということになった場合、そういう危険性がある場合、総理はどうお考えになりますか。
  274. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そもそもわが国は、武器三原則、これを持っておるわけですから、海外に投資をするというような際におきまして、武器三原則の考え方にのっとりまして、投資先の企業が武器を生産するというような目的のものでありますれば、これは許可いたしません。
  275. 坂井弘一

    ○坂井委員 韓国内において日本企業が武器を生産するという意図を持って合弁体として韓国に進出する場合、それは許されない、こういう見解ですね。
  276. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そういう種類の投資は、わが国といたしましては許可いたしません。
  277. 坂井弘一

    ○坂井委員 防衛産業体と申しますか、そういう民間企業体が民間ベースによる経済協力の名のもとに、どんどんと韓国の武器生産のために進出をしていく、これは許しませんと言ったって、事実そういう形で進出をしていく、これは政府としては何らかの措置によってそのようなことのないような手だてをいたしましょうと、こういうことでしょうか。
  278. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そもそも、武器三原則の精神にもとるような、そういう海外投資、それは許可いたしません、こういうことを申し上げておるわけです。
  279. 坂井弘一

    ○坂井委員 もし韓国内において日本企業が韓国での武器生産に関係をする、生産を行うというような事態が現実に起こった場合には、これに対してはどう対処されますか。
  280. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そういうことは、私はあり得ないと思いますが、もし起こるということになると、これはむずかしい問題になります。韓国企業で、それがわが国の武器三原則の方針に反した行動をとる、こういうことですから、やはりそういう際には韓国に投資をする親会社がありますから、親会社が、武器生産を取りやめるように影響力を及ぼす、こういうことじゃないかと思います。
  281. 坂井弘一

    ○坂井委員 総理に重ねて伺っておきたいのです、これは。実は、もう一回、こういうことについてもひとつ心にとめていただいた上で御答弁いただきたい。  経団連防衛生産委員委員長の昨年の二月の発言であります。「アメリカは韓国から退きつつある。かわって日本が武器輸出、さらに韓国の自国兵器生産力を高めることを含めてお手伝いできないかというのが私の考えである。」ことしの三月、「韓国内での日本の管理する兵器生産を第四次五カ年計画の骨子とし、その兵器を第三国が買いたいと言うのならば売ればよい。」御感想をいただきたい。こういうことを含めて、禁輸三原則、あるいは四原則になるかもわかりませんね、従来の三原則ではなくて。この種の特殊な、こういう形での、日本から向こうへ直接輸出するのではなく、企業体が行く、合弁企業を構える、そこでつくる。舞台は韓国です。韓国法人です。わが方の国内法、禁輸三原則は適用を受けない。したがって、従来の三原則とはいささか変わった色合い、そういう武器に対する歯どめというものを必要とすると私は思うのですけれども、そういう意味では禁輸四原則と、一原則加える必要があるかもわかりません。このような考え方が公式に述べられる、堂々と言われるというようなことに及んでは、まあいろいろなことを聞きますけれどもとか、何とかかんとかうわさがありますけれどもというようなことでは相済まぬと思う。少なくとも、先ほど申しましたように韓国の商工省あたりも正式に発表もしておる、物を言っておる、あるいは七七年白書の中にも出てくるというようなことでありますから、そういうことを踏まえて、重ねてひとつ総理から厳格に、この禁輸三原則の精神を、今回のこのような新しい事態に対して、これも許しませんという明確なる御答弁をちょうだいしたい。
  282. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 経団連がいかように申しましょうとも、武器輸出三原則に反するような投資は許可いたしません。はっきり申し上げます。
  283. 坂井弘一

    ○坂井委員 これはこれ以上の議論はしません。ひとつ念のために御警告というか御忠告といいますか、老婆心だと言われるかもしれませんけれども、総理、十分御認識をしていただきたいと思うのです。  これが現実のものとしてどんどん転がっていくというようなことになりますと、これは私は、冒頭申し上げた三つの情勢の変化があると言ったことはこれからの日韓関係において非常に不幸な事態を招くのではないかと実は心配がしてならぬわけであります。朝鮮半島全体が変わりつつある、そういうときに、いままでの政府ベースから民間ベースに変わるのだ、こう共同コミュニケの上では合意をした。その民間経済協力の内容は一体何なのかといいますと、いまのような実質的な韓国の国防力、軍備、兵器生産、さらに第三国に輸出をする、そういうことに手をかすような日本企業、民間ベースの協力であっては断じて相ならぬというのが私の一貫した主張なんです。ところが、まことに残念なるかな、現実はそうではなくて、まさにそういう心配の方向に動きつつある、そういう幾つかのことが伝えられてくるということでありますから、そういう実情を見きわめた上で、今後の経済協力のあり方ということに対してはよほど慎重であらねばならぬ、こういうことでありますから、こういう危惧が近い将来において現実のものにならないように実は私は念じつつ申し上げているわけであります。どうか、そういう点でいま十分武器輸出に対します、禁輸に対します総理のお考えもお聞きしたわけでありますけれども、こういう現状を見て、ひとつ厳格な政府の責任のあるこれに対する対処をお願いしておきたいと思います。  次に、問題点を変えますが、同じく対韓経済協力、無償援助の部分であります。実はソウル大学校の工科大学に対します無償援助がございますが、最初に韓国側から要請のあった金額、期日、これは幾らで、いつですか。
  284. 菊地清明

    ○菊地政府委員 お答え申し上げます。  昭和四十七年の六月に、一番最初に韓国側から要請がありましたのは十九億八千万円でございます。
  285. 坂井弘一

    ○坂井委員 その後調査団を派遣いたしておりますけれども、調査団を派遣されたのはいつでございますか。及び、その際に韓国側から要請された額は幾らでしょうか。
  286. 菊地清明

    ○菊地政府委員 調査団は四十八年の四月に派遣いたしました。団長は東工大の浅枝教授にお願いしております。  それに基づきまして同年の六月に改めて要請のし直しがなされまして、それによりますと約三十九億円の要請がございました。
  287. 坂井弘一

    ○坂井委員 もう一度正確に申しますが、最初の要請が十九億七千六百三十六万四千円で、調査団が行きまして改めて要請された額が四十億七千六百十五万三千円ではございませんか。そうならそうで結構です。間違いなら御指摘ください。
  288. 菊地清明

    ○菊地政府委員 この調査結果に基づきました年度別の要請を申しますと、四十九年度九億四千三百万円、五十年度十二億二百万円、五十一年度十八億七百万円、合計で三十九億五千二百万円、そのとおりでございます。
  289. 坂井弘一

    ○坂井委員 それはこちらから出した額でしょう。私が言っているのは要請額を言っているわけです。これは予算書のどこに出てくるのですか。
  290. 菊地清明

    ○菊地政府委員 向こうが要請を改正いたしまして、いま申し上げた数字を改めて出してきたということでございます。
  291. 坂井弘一

    ○坂井委員 いまの額は予算書のどこに出てくるのでしょうかと聞いたのです。
  292. 菊地清明

    ○菊地政府委員 予算の各日明細書におきましては、経済開発等援助費というところに出ております。
  293. 坂井弘一

    ○坂井委員 予算では、昭和四十九年度外務省所管一般会計歳出予算各日明細書を見ますと五億、五十年度が五億、五十一年度が十億、こういうことですか。
  294. 菊地清明

    ○菊地政府委員 実は、無償の援助と申しますのは、正式に申しますと経済開発等援助費ということでございまして、これは総額が出ております。たとえば五十二年度ですと百八十億円というふうに総額のみが示されております。
  295. 坂井弘一

    ○坂井委員 これは予算の立て方自体が私は大問題だと思うのですが、せっかくいま目のところまでいきましたから続けますけれども、これは全くわかりませんな。ソウル大学校に出す無償援助であるということはどこを調べても出てきませんね。これはどういうことなんですか。つまり、経済開発等援助費という目です。これを見ますと、四十九年度が百六十九億、五十年度が百五十六億七千六十九万六千円、五十一年度は百六十億、それがおのおの五億、五億、十億とこのソウル大学に対する無償援助が含まれておる、こういうことですね。これは予算を見てわからないのです。明細書を見ても書いてないのです。
  296. 長岡實

    ○長岡政府委員 お答え申し上げます。  無償援助の経済協力関係につきましては、個々の案件の具体的な内容、金額につきましては、原則として二国間の外交交渉により決定されるという性格でございまして、予算を編成をいたしまして国会に提出をいたします段階におきましては、その個別の内容まで確定しておらないのが普通でございます。したがいまして、従来の実績あるいは予算編成の段階における国際的な要請等を考慮して予算総額を定めまして、予定経費要求書におきまして経済協力費のうち経済開発等の援助に必要な経費として総額を計上しておる次第でございます。
  297. 坂井弘一

    ○坂井委員 もう少し国会の論議の経緯を踏まえて責任のある御答弁をしていただきたい。  ちょっと名前を忘れたけれども、社会党のある委員が質問したのです。それは金烏工高の問題なのです。(「岡田さんとおれだ」と呼ぶ者あり)岡田先生です。そのときに、あれは技術高校と書いてあるのです。ここに私は持っているのです。技術高校に対する援助とせめても書いてあるわけです。それでも金烏工高と何で書かぬのじゃ、こんな国会に対してふまじめな予算の明細の説明なんかあるか、これは一体どういうことなんだ、こう聞いたら、政府は、まことにごもっともでございます。これからはこの明細の中には一件一件物件ごとに明らかにするようにいたしますと約束してあるじゃありませんか。それがその後において何にも書いてない。ソウル大学は全くわからぬ。百何十億という総額の中にありましたというだけの話です。国会は、われわれはわからないですよ。交換公文は三回交わしております。交換公文を交わしたたびに、交換公文を持っていらっしゃい、持ってきた、見た、ああこんなところにこんな金を出しているのか、その時点で初めてわかる。こんな不親切な、こんなばかなことがありますか。せめても予算明細書の中にはそのようなことは――経済協力は大事ですし、私は否定するのじゃない。午前中の渡部委員の質問の中にもありましたけれども、もっとやるべきです。しかし、ガラス張りの国民が納得する形の中でやるべきですよ。血税じゃありませんか。それが国会の審議の場所に出す明細書の中にも、そういう内容には一切触れない。触れなかったことがいけないからこれからは明らかにいたしますと言いながら、なおなお覆い隠すようになってきた。これは一体どういうことなんですか。(福田内閣総理大臣「だれがそういう答弁をしたのですか」と呼ぶ)むしろ政府の方から聞いた方がいいでしょう、だれがそういう答弁をしたのか。
  298. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 四十八年の九月二十五日の外務委員会におきまして、水野政務次官の御答弁にいまおっしゃいましたような「特に今回の御指摘の点は外務省の問題でございますので、来年度の予算からでも、こういうこまかい点につきましてもなるべく予算書に明細を書き加えますように注意をしていきたいと思っております。」こういう答弁をされておるわけでございます。「なるべく」というのは、できるならばという御趣旨だろうと思うのでございますけれども、しかしこの経済協力の無償援助の性格にかんがみまして、事前に明細書をお出しするというところまでまいりません。私ども総枠として御審議をいただいて、その枠内でそれを有効に使用してまいっておるわけで、その使用するにつきましては、たしか一定の金額を超えるものは個別的に閣議の御承認をいただいて決定をしております。これらの実績等につきましては、いつでも御報告を申し上げて御審議いただきたいと思いますが、予算の計上方法はこのほかにいたし方がないという点も御了承をいただきたいと思います。
  299. 坂井弘一

    ○坂井委員 余り外務大臣、頭をひねって日本語をそうややこしく解釈をとると、これは余りにも身勝手過ぎますよ。「なるべく」といったって、何で「なるべく」と言ったかというと、いま申しましたように、これじゃ不十分だ、はっきりしなさいよ、こう聞いたので、これからはそのように、なるべくそういたします。「なるべく」と言っているのだから何も書かなくたっていいという、問題のその質問者の意図とそれから答弁者の政府側の意思というものは、これからは国会に対してはできるだけ明瞭になるようにいたします、そういう約束と反して全く書かれていないということに対して、私はいま指摘しているのでありまして、それはどうなんですか、こう聞いているのです。国会の意思は、委員の意思は、はっきりしなさい、明らかにしなさいよ、こう言ったわけです。政府も、ごもっともでございます。なるべく明らかにするようにいたしますと約束しながら、明らかにするどころかよけいに覆い隠そうとするようなこういうやり方、予算の出し方というのはけしからぬということを私は言っているわけです。
  300. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 坂井さんのおっしゃるお気持ちはよく私も理解できます。しかし、予算の編成並びにその予算を実行する仕組み、そういうことをあわせ考えまして、さあ今年度においてはどこそこに対しまして幾らの無償援助をいたしますということ、これをはっきり決めて、そうして予算が編成されるというようなわけにはなかなかいかぬと思うのです。やはり外交交渉でいろいろ駆け引きもあり、そしてその過程においてその対象また金額が決まってくる、そういうようなものでありまして、これをあらかじめ年度間にはどこに幾らの無償援助をいたします、あるいは有償にいたしましてもそうでございますが、それを一々年度の始まるその前に開示するというようなことになったら、これは私は有効な外交というものはできないと思うのです。私は、水野政務次官がそうおっしゃったということ、これはいま速記録を外務大臣が読み上げましたので、とんだ答弁をしたなという感じを持ってびっくりしておるわけですが、これはもしそういうような御答弁があったといたしますれば、それは可能でないことをお答えを申し上げたということで、平に私からお謝りをするほかはない、こういうことでございます。
  301. 坂井弘一

    ○坂井委員 まだ問題がありますので、整理してあと二つ申し上げておきますが、実は金烏工高の場合もずいぶん問題になったわけです。ただ、これは第四回の日韓定期閣僚会議におきまして、共同コミュニケの中には技術高校に対する援助ということではっきりうたってあるのです。ソウル大学の場合は、実は第七回の日韓定期閣僚会議で議題になったと思いますが、まず、なりましたか、なりませんか。共同コミュニケの中のどこを見てもありません。それが一つ。その問題をお答えください。  それからいま一つ、もっと大事な問題です。実はこれは五億、五億、十億と、三年間にまたがりまして支出をしておるわけであります。この予算の立て方が実に私は奇怪千万だと思います。こういうことが果たして許されるのか。最初から頭で二十億を援助しましょうということはわかっておったはずだと思いますよ。わかっておるはずです、二十億。だったら、条約としてどうして国会の承認をとらないのですか。年度年度、単年単年でぶっちぎってしまって、予算は出しました、経済協力百何十億の中に入っているのです。こっちはわからない。わからぬけれども入っておるのです、予算を御承認いただいておりますので出してあります、あなた方の答えはそういう答えなんだけれども、ソウル大学に対する援助というのは、当初向こうから要請があった、ざっと二十億。調査団が行った、それがなぜか知りませんが四十億になった。そこで日本側は二十億の無償供与をしましよう、これは約束したとは言わぬでしょう、言わぬでしょうが、計画がありまして向こうから要請が来たことに対しまして、総額で何ぼ無償で援助しますということが決まらなければ、向こうだって不安でそんな援助受けられませんよ。頭で二十億と決まっておれば、正式に国会に対してこの承認を求める手続をとるべきだというのが私の主張であります。いかがですか。それをぶっちぎって単年、単年、単年でやっていいのですか。  さきの質問と二問お答えください。
  302. 菊地清明

    ○菊地政府委員 最初の質問に関しましては、第四回の閣僚会議でこの金烏工高に対する無償援助を行うということは合意されております。  次に、三年間分初めからわかっていたではないかという御質問に関しましては、こういったわりあい大きな規模の無償援助を行います場合には、必ず事前の調査をいたしまして、大体どのぐらいの規模のものが必要であるかということは、調査団を派遣して、大体の目標といいますか、大体の費用というものは決めるわけでございますけれども、実際に援助をいたします場合にはあくまでも年度別でございまして、たとえばソウル大学の場合、実際には交換公文では第一年度五億円、第二年度五億円、第三年度十億円というふうに交換公文にはなっておりますけれども、現実には各年度につきまして要請が出てくるわけでございます。たとえば具体的に申し上げますと、第二年度分には十一億二千四百万円の要請が出てきておるのに対しまして、いろいろ外交交渉いたしました結果、現実に交換公文で署名した額というものは五億円になっております。そのようなことでございまして、毎年度の無償援助の額というものは毎回そのたびごとに決めている。新たに要請を受けて新たに決めておくということでございます。
  303. 坂井弘一

    ○坂井委員 技術的な問題としてそういう予算の計上の仕方をしておる、これは許されるであろうという事務当局の判断だろうと私は思うのだけれども、しかしそうじゃなくて、少なくとも条約として国会の承認をとるべき事項には三つある。一つは、法律事項を含むところの国際的な約束、二つは、予算、財政支出を伴うところの国際約束、三つ目には、政治的に重要な課題であると目される国際約束、この三つに対しては、当然のことながら事前に国会の承認をとるべきだ。これは政府がいままで国会に条約として承認を求める政府の一貫した基本的な態度であったではありませんか。  私が申し上げておるのは、この二十億の無償援助をするということが、総理、当時あなたはたしか大蔵大臣で第七回日韓定期閣僚会議に御出席のはずであります。その会議の席上で、まず一つは、日韓の閣僚間でこのソウル大学に対する無償援助はいたしましょうということを合意されましたか、どうですか。それを一つ聞いておきたいのです。  それで後の部分に入りますけれども、つまり最初から二十億の無償援助をするということがわかっておるのです。三年間にまたがってやりますということがわかっておるのです。単年度の処理と違うのです、三年にまたがる。来年の予算はどうなるかわからぬ、再来年はどうなるかわからぬ。それを頭で約束してあるわけです。そういう場合には当然国会の承認を求めるべきではありませんか、こう聞いておるのです。いかがですか。
  304. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は日韓閣僚会議に出席したことがありますが、そういう無償援助の話をした覚えはありませんです。
  305. 真田秀夫

    ○真田政府委員 御説明申し上げます。  国際取り決めのうちで、行政取り決めとして国会の御承認なしに行政庁限りで行えるものと、それから憲法の規定によって締結について国会の承認を求めなければならないものと二色あることは御承知のとおりで、しかもその区分ですね、それの両者の区別の基準として、先ほどおっしゃいましたような三つの条件のどれかに当たれば国会にかけるのだというようなことで、国会の外務委員会でもずいぶん御議論があったようです。  そのときに、先ほどお聞きしましてやや私の考えと違いますのは、第一の条件である法律事項を含むもの、これはそのとおりです。それから、次の国費の支出を伴うもの、しかし、これは新たなる国費の支出の義務を伴うものというふうに私たちは理解しております。ですから、単年度の予算としての国会の議決のあったその予算の歳出の執行として行われる部分については、これはもう政府の権限の範囲内でございますので、もちろん行政取り決めでできる。ただ、多年度にわたってといいますか、翌年度あるいは翌々年度にわたって国費の支出を義務づけるような、そういう内容のものが入っておれば、これは国会にかけなければならないというふうに、私たちは非常に厳しく審査といいますか、外務省の方にも申し入れをしております。  それから第三番目は、大体おっしゃったとおりでございます。
  306. 坂井弘一

    ○坂井委員 法制局長官、あなたは余り経緯を御存じないからそういう答弁をされるのですよ。では、その前に一点伺いましょう。  韓国とわが方の間で、二十億にしましょう、いや、結構ですという、政府と政府間の、これは交換公文じゃありませんが、その際に合意はありましたか、ありませんか。内々の打ち合わせ、約束、それじゃ、まあそうしましょう、そういうことが行われましたか、行われませんか。
  307. 菊地清明

    ○菊地政府委員 先ほど申し上げましたように、調査団の結果、それから向こうからその調査団の結果に基づいて改めて出してきた要請、それがあるだけでございます。
  308. 坂井弘一

    ○坂井委員 どういう形で要請が来ましたか、口上書ですか。
  309. 菊地清明

    ○菊地政府委員 文書としてはございません。
  310. 坂井弘一

    ○坂井委員 お互いに合意した何かがあるのではないですか。口約束だけですか。
  311. 菊地清明

    ○菊地政府委員 先ほどから申し上げているように、多年度にわたる約束はできないわけでございまして、そういうことはいたしておりません。
  312. 坂井弘一

    ○坂井委員 韓国側から口上書がわが方には来ておりませんか。
  313. 菊地清明

    ○菊地政府委員 文書として残っておりますのは三つの交換公文だけでございます。(「その中に書いてあるのか、書いてないのか」と呼ぶ者あり)その中にはその年度ごとの援助額が書いてございます。
  314. 坂井弘一

    ○坂井委員 念を押しますが、口上書はないのですね。
  315. 菊地清明

    ○菊地政府委員 韓側国から在日の韓国大使館を通じてその年度分の援助の要請の口上書はございます。
  316. 坂井弘一

    ○坂井委員 要請します。その口上書を当委員会に提出するようにお取り計らいをいただきたいと思います。
  317. 菊地清明

    ○菊地政府委員 これは韓国政府の公文書でございますので、韓国政府に照会いたしまして、向こうでよろしいということでしたら提出いたしたいと思います。
  318. 坂井弘一

    ○坂井委員 予算の審議に関する問題であります。対韓経済協力を含め、わが国の海外に対します経済協力のあり方、これを審議する大事な予算書の内容に関する問題、私たちはこれで是であるか否であるかということを審議するために必要として要請しているわけでありますので、委員長におきましてはぜひこの口上書を当委員会に提出するように計らっていただきたい。
  319. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの口上書は、必要な手続をとりましてお出しできると思います。
  320. 坂井弘一

    ○坂井委員 総理、第七回日韓閣僚会議で話が出ているのですよ。出ましたといって、ちゃんとこれに書いてありますわ。何の偽りもございませんよ、政府の発行したものですよ。第七回日韓定期閣僚会議において「ソウル大学建設機材供与、資金協力を実施」ちゃんと書いてあります。話が出たのですよ。共同コミュニケの中では書かなかったのです。予算書の中にも明細の中にも書かなかったのです。  しかもより大事なことは何かと言いますと、法制局長官のさっきの見解というのは、あなたは経緯を知らぬからそういうことをおっしゃるが、合意があるのです、最初に。これだけ出しましょう。単年度じゃない、三年にまたがる。そんな場合は国会の承認を求めるのは当然ですよ。当然中の当然ですよ。そういうことを知るためにも、いま申しましたような口上書を提出をしてもらいたいということでありまして、この問題につきましてなお細かい部分につきまして触れたいと思いますけれども、実は詰める時間がございません、はなはだ残念でございますけれども。いずれにしろ、こういうような経済協力のあり方、また国会に対する予算の出し方、内容が説明がきわめて不十分である。こういうことはこれから少し改める意思はございませんか、総理。いろいろな背景はわかりますよ。それは一件一件そんなことを一々最初に予算書に、明細に書くことはできないんだとか、いろいろなことはあると思いますよ。対外的な、国は相手は幾つもあるわけですからね。予算の中に項目ごとにぽんと出てきますと、これは何だ、お互いに牽制し合うとか、それに便乗するというようなこともあるかもしれませんね。いろいろなむずかしさはあると思いますけれども、私は、いま一番要請されているのは、きょうは韓国に限って申し上げたわけでありますけれども、とかくこの経済協力のあり方、ここに、たとえばソウルの地下鉄問題等に見られるごとくいろいろな疑惑があり、黒いものがここに介在をし、どうも癒着の関係があるんじゃないか、そういう国民的な、政治なりあるいは政府なりまたひいては国会に対するいろいろな不信といいますか疑いと申しますか、そういうものが非常に根強くはびこりつつある、こういう状態を憂えるがゆえに、せめて国会審議においてガラス張りの中で、出すべきものは正々堂々と出しましょうということを私は主張しているわけでありますから、そういう点をひとつぜひ踏まえられまして、総理として、重ねてそういうことに対します御所見、方針と申しますか、伺いたいと思います。
  321. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 経済協力の内容を予算書に具体的に一つ一つ羅列する、これは事の性質上、不可能であります。これは御理解いただけるのじゃないか、こういうふうに思います。ただ、経済協力案件としてこんなようなことが関係国から要請があるとかなんとか、そういうような説明、これは差し支えのない限りいたす、これは私は努力したい、こういうふうに思います。
  322. 坂井弘一

    ○坂井委員 時間がございませんので、はしょりまして、一つだけ御指摘申し上げておきます。実は、まさかと思うことでございますが、事実でありますので、あえて指摘をいたしたい。  某省としましょう、一通の通達が実はここにございます。どういう内容かといいますと、各府県に対する通達でございますが、国庫補助金を出します、国は補助をつけます、ただしこの補助をつける条件は、〇〇会社という会社の機械――機械と申しますか設備ですね、これを購入する場合に限ってこの国の補助はつけます、こういう通達を出している。どう思われますか。
  323. 長岡實

    ○長岡政府委員 各省が補助金を地方公共団体に交付いたします場合の補助要綱につきましては、私どもすべてについて個別に相談を受けておりませんので、具体的な内容は承知いたしておりません。
  324. 坂井弘一

    ○坂井委員 時間が来ましたから、指摘だけします。厚生省です。厚生省環境衛生局水道環境部、ここから出た通達であります。「環整第六十九号昭和五十二年八月十八日 各都道府県廃棄物処理行政担当部(局)長殿」、明確にいろいろありまして、「今回、国庫補助対象施設とした回転炉式し尿焼却施設は、株式会社〇〇製作所」にしましょう、の云々「を基本ユニットとした焼却施設であること。」明確に一社だけ、これに対しては補助をつけましょう、補助の条件はかくかくしかじかであります。これは通達であります。こういうことが行われていいのでしょうか。問題指摘をいたしまして、御調査をいただいた上で、改めて委員長、回答いただくということで終わりたいと思います。
  325. 田中正巳

    田中委員長 承知いたしました。  これにて坂井君の質疑は終了いたしました。     午後七時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後六時二十分休憩      ――――◇―――――     午後七時一分開議
  326. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。     午前中の大出君の質疑に関し、鳩山外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。鳩山外務大臣
  327. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 午前中の大出議員の御質問にありました合意事項につきまして、法務当局と打ち合わせしました両省の統一した見解を申し述べます。  施設区域外の米軍機事故現場における手続に関する合意事項について。本合意事項は、合衆国軍用機が合衆国軍隊の使用する施設または区域外にあるわが国の財産に墜落したときの緊急事態についての合意であり、一般的に言えば、墜落した場所の管理者の承諾を得た上で立ち入るべきものであることは当然でありますが、このような緊急事態において急を要する場合には、あらかじめその場所の管理者の承認を求めるいとまのない場合もあるので、そのような場合に限り、管理者の承認を得ないで米軍の代表者が事故現場において緊急措置をとるため立ち入ることができることとしたものである。  事前の承認を受けるいとまのないときという訳文は、本合意事項の全体の趣旨に沿った表現であり、事前の承認なくしてというのはより逐語的に訳出した表現をとったものにすぎず、右の訳文の表現の差異いかんによって本合意事項の右に述べた趣旨にいささかも変わりはありません。このことは政府部内で一致した見解であるが、この点につきましてなお米側と十分に趣旨の徹底方を図っていく所存でございます。また、政府といたしましては、実際の事故処理に当たっては、右の趣旨を十分踏まえて対処いたしたいと考えております。  以上でございます。
  328. 田中正巳

  329. 大出俊

    大出委員 一言だけ。  いまのお話、先ほどちょっと案文を見せていただきましたが、つまり三十五年の安保特別委員会、衆参両方にお出しになった解釈、これでいくということになると思うのであります。つまり、承認を求めるのが原則である。しかし、その時間のいとまのない場合もあり得るということだと思うのでありますが、したがって、つまり四十二年七月の解釈は消えるということになると思うのであります。しかし、英語の原文というのは「ウイズアウト プライヤー オーソリティー」ですか、この原文を正面から解釈すれば事前許可は要らないことになる、これは変わっていないですから。この点を米側に対して徹底していただかぬと同じことが起こる、こう思いますから、その点をひとつ、いま一言つけ加えておられましたが、合意したならしたで、徹底したならしたで、その結果を御連絡、御報告をいただきますようにつけ加えまして、了承いたします。
  330. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 私、合同委員会の刑事裁判管轄権分科委員会の担当者でございます。その立場でお答え申し上げます。  合意事項の趣旨は、いま鳩山大臣が仰せになりましたとおりでございますが、年月を経まして末端までの浸透がおかしくなっておるというような御指摘のようでございます。伺っておりまして私も考えさせられております。早速裁判管轄権分科委員会の場におきましてさらに善処し、徹底させたいと思います。
  331. 大出俊

    大出委員 わかりました。了解いたしました。
  332. 田中正巳

    田中委員長 質疑を続行いたします。上原康助君。
  333. 上原康助

    ○上原委員 総理以下各大臣、お疲れの面もあろうかと思うのですが、あとしばらく質問をさせていただきたいと思います。  そこで、私は限られた時間でございますので後で時間がなくなると困りますから、最初に沖繩問題について総理を初め各関係閣僚にお尋ねをしたいと思うのです。  申し上げるまでもなく、沖繩が復帰をしてからちょうど五年の歳月が過ぎて、いま六年目に入っていることは政府関係者が御案内のとおりです。しかし、振り返ってみて、復帰六年目に入った沖繩県民の生活状況あるいは行政面、また振興開発計画に盛られた各般の振興計画等は、ほとんどその計画どおりにいっていないどころか、県民にとって大変むなしい状況というものがいまつくられていると言わざるを得ません。もちろんこの間歴代内閣なり政府各関係省庁の御努力ということに対しても全く評価をしないというわけでもありませんし、いろいろな外圧、内圧の経済状況のむずかしさというものもわからぬわけではありませんが、少なくとも政府の復帰施策というものが県民の期待にこたえていない。また国民の側から見ても沖繩問題が終わったかのような印象というものをぬぐい去れない状況であります。  そういう意味で、いま私が申し上げたようなことを踏まえて率直に総理の御所見を賜りたいわけですが、この五カ年の政府の沖繩施策というものは一体うまくいったとお考えなのか、また現段階で政府としてどのように沖繩に対する御認識を持っておられるのか、今後はどういう方向で振興開発計画なり、後ほど少し具体的に申し上げたいのですが、最も県民の求めておる生活環境の実態あるいは復帰処理の問題等に対してどう処理をしていかれようとするのか、そこらの点から御所見を賜りたいと思います。
  334. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 率直に申し上げまして、政府といたしましては、沖繩の振興開発には全力投球をしてきた、そういうふうに考えます。ただ、さあ実績が政府の思うように、また皆さんが御期待なさったようにいったかというと、そうでない。その原因は、沖繩復帰が実現をいたしました翌々年ですね、あの石油ショックという、日本経済全体を通じましてマイナス成長だ、こういうような事態になり、復帰した沖繩県もその外におるというわけにはいかないというような、非常に予想外の事態が起こってきたわけであります。これが一つ。それからもう一つば海洋博ですね、海洋博景気というようなことで、沖繩経済が幾らか活気を呈しましたが、それが終わりまして、また反動不況的な要素も加わってきた。  こういうような事情もあり、今日の沖繩県の状態というものは、これは日本全体としてもそうですか、その中で非常に困難な状態にある。特に失業の状態、この状態は全国平均の中で非常に高位な失業率を示しておる、こういうような状態です。そういうような特殊な沖繩県の状態を踏まえまして、特殊な対策をとらなければならぬ、そういう段階にある、こういう認識でございます。
  335. 上原康助

    ○上原委員 お言葉としてはわからぬわけではありません。政府としてそれなりの御努力をやってこられた、また全力投球をしてこられたと言うのですが、残念ながら、総理のその御所見とはうらはらに、私たちとしては全力投球がなされてきたとは思われないわけですね。  そこで、いまいみじくも総理もお触れになりましたが、失業、雇用問題は、本委員会でもこの補正予算との関係において構造不況業種の問題あるいは雇用問題というのが各先生方からお取り上げになられたことは御案内のとおりです。そこで、沖繩の失業、雇用問題というのは、もう私が申し上げるまでもなく、本土の現在の全国平均の約三倍以上になっております。目下大体全国平均が一・九%の失業率、顕在失業者は百六万前後だと言われておるのですが、ちょっとだけ数字を挙げてみましても、たとえば復帰前の昭和四十六年の段階では、完全失業者と言われたのはわずかに千人なんですね、約一%。しかし、四十七年に入ってすぐに一万一千人の約三%、四十八年は一万三千人、三・五%、四十九年一万五千人、四%ですね。五十年二万一千人、五・三%、五十一年に至っては二万六千人、六・三%、五十二年は四月の段階で何と三万八千五百人、七・五%という失業に達しているわけですね。八月段階でも依然として七%を下らない。これだけの失業者が出ているという実態について、一体政府は沖繩の――確かに援護措置問題等についてはやってこられたと思うのですが、やはりこれだけの失業者が出るという背景と要因というものがあるわけですね。一つには、何といっても不況の中で中小零細業がばたばた倒れたということ。いま一つは、復帰段階で一万九千人以上おった基地労働者というものが現在八千二百人に減っている、こういう問題。これに対して雇用需要を創出をしていく、雇用の場を創出をしていくという政策がほとんどとられてないんですね。ここに私は大きな原因があると指摘せざるを得ないわけです。  そこで、きょうはほかの問題もありますので、この問題だけに多くを割くわけにはまいりませんが、さっき労働省もある程度、この復帰特別措置法に基づく職業の安定のための特別措置というようなことなども若干援用をして、それらしき対策は立てようとはしておりますが、これだけの失業問題というのをどういうふうに解決をしていかれようとするのか。これまでのような援護措置のあり方なり単なる広域職業紹介というだけでは、この問題は解決しません。一・三%ぐらいに失業率を抑えていくという政府の方針であるとするならば、七%以上になっている沖繩の失業問題というものを具体的にどういうふうに、県側ともお話し合いをする必要はあると思うのですが、やっていかれようとするのか、明確な御答弁を賜りたいと思います。
  336. 石田博英

    ○石田国務大臣 沖繩の雇用情勢はいま御指摘のとおりでありまして、私どもとしても大変残念であり、憂慮にたえないところであります。それで、これに対しまして、沖繩振興開発特別措置法に基づきまして雇用計画の設定等をいま進めつつあるところでございます。  それで、沖繩の雇用情勢の特徴は、一つは失業率が高いということ、第二番目には基地関係者が多いということ、第三番目には若年労働者が多い。他の地域の三十歳未満の率が三十数%であるに比べまして、沖繩は六五%ぐらいに上っておる。  これに対する対策の根本は、やはり何と申しても産業を振興してもらわなければならぬことは言うまでもありません。ただ、われわれが過去を顧みて、さらに一層の努力を要すると思いますことは、公共事業についての無技能者六〇%の雇用率というものの達成について、十分な成果が上がっていないわけであります。これは沖繩だけではありませんけれども、今度の公共事業の発注等につきましては、雇用情勢の悪いところに重点的に発注してくれるように私どもの方から関係各省にお願いをいたしておるところであります。若年労働者が多いということは、ある意味においては広域職業紹介の効果が期待できる余地がある。これが中高年齢層が多いと、その効果はなかなか期待できませんけれども、本土の方へ就職をしてもらうようなあっせんがし得る条件にある。  沖繩に対してはそのほかに、特別に職業相談所を設けたり、あるいは自己営業の資金の貸し付けを行う等、他地方に見られない措置をとっております。  なお、先般出発いたしました雇用安定資金制度の積極的な活用に努めたいと存じます。
  337. 上原康助

    ○上原委員 この問題だけでも一時間ぐらいの時間が実は欲しいのですが、いま確かに労働大臣御指摘のようなことは、私も職安局なりを通してある程度お伺いはしておるわけです。私が、援護措置だけではこの問題はとうてい解決しませんよと言うことは、たとえば雇用保険を受給しているのは、大体先ほど挙げました三万一千以上の中で三〇%程度ですね。それから就職促進手当受給者が大体三一・七%、基地関係と沖特手帳の面もあるでしょう。何と無受給者というのが三八・三%もいるわけです。雇用保険法も適用されない、基地関係、沖特関係の保険も受けられない、全くもう無保険の失業者というのが三八%。これが絶対多数になっているわけですね。ここに深刻な問題があるということをひとつ御理解をしていただいて、ぜひ労働省に御検討いただきたいことは、確かに従来の炭鉱離職者の問題とか、あるいは基地関係労働者とか、あるいは復帰特別措置による関連企業に対する沖特手帳というような面では一定の援護措置の効果はおさめたと思うのですね。あの程度の措置というものをこの無受給者に対して民間の中小零細業に対しても拡大をしていくという措置を直ちに検討していただかないと、本当に大変な社会問題に発展をすると私は思うのですね。この点は御検討いただきたい点ですが、どうですか。
  338. 石田博英

    ○石田国務大臣 沖繩は無論一番深刻でございますが、他の地域も地域によって特殊な問題がございます。それから職域によってもあることは言うまでもありません。そういうことをくるめました検討は現在もいたさせておるわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように根底は産業の振興であると同時に、もう一つは、雇用の場を沖繩というところに限られると非常に問題の困難性を増しますので、でき得る限り本土への就職を、こちらもあっせんをいたしますから、皆さんの方でもそういう気風が起こるようにひとつ御協力をお願い申し上げたい。検討はいたしたいと思います。
  339. 上原康助

    ○上原委員 検討だけでは……。確かに全国ベースの失業対策という面も考えなければいけないと思いますが、いまさっき数字で挙げて申し上げたこの何らの保険の措置も受けられない失業者の対策というものについては、私は、もう少し真剣にお考えにならなければいけないと思うのですね。雇用創出という面については最後にまとめて申し上げたいと思います。その点後ほどまた御答弁を賜りたいと思います。  そこで次に、総理は万般の措置をとられたというようなお答えでしたが、正直申し上げてなかなか復帰処理の問題さえもまだやられていないのですね。沖繩返還協定を審議をする段階での沖繩国会で一番問題になったのは、放棄請求権の問題です。いまの総理は当時外務大臣だったですね、私は忘れもしません。だが、この放棄請求権の問題についても、いまだに政府はどのような措置をおとりになるのか、明確な方針をお出しになっていませんね。しかも、お出しになっていないどころか窓口さえもはっきりしないというような状況なんですね。これも申し上げるまでもないと思うのですが、沖繩県が第一次分、第二次分としてまとめた約十二万件以上の放棄請求権の問題が出ている。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕 総額にして漁業補償を含めて一千六百億、これだけの問題がまだ処理されていないという事実を総理はどうお考えなのか。これはどのように解決をしていこうとするのか。もちろん現在の逼迫した財政状況の中ですぐ一挙にというわけにはまいらないでしょう。少なくともどのような形で早急に解決をするという方針はこの際明確に賜っておきたいと思うのです。これが一つ。  二点目に、つぶれ地補償の問題。これもまあ話すと長くなりますので、おわかりだと思いますので余りたくさんは申し上げませんが、要するにつぶれ地補償というのは、本来公共団体が使用している道路とか公共の用に供されている土地のことを言っているわけですね。国道あり、県道あり、市町村道ありなんです。これが終戦直後から、アメリカの占領当時からずっとそこは個人有地を、道路になったり公共用になったりして使われて、そのまま戦後三十二年の段階まで使われているわけですね。ですから地主の方は一文も土地代はもらっていないという状態。これなんかもいままで解決をしていない。復帰のときにはたしか五年以内にはこの問題は解決する方針をお答えになったと思うのですね。これをどうなさるのか。これも具体的に申し上げますと、大体私有地を初め四百二十二万平米ぐらいある。この補償額として市町村なり沖繩県がまとめたのは締めて八百億円。しかし政府は、これに対しても、全額国庫でやってもらいたいという要求に対して、県道とか国道については何とかめんどうを見るけれども、市町村道についてはどうにもならぬという冷たい態度をいまとっておられるわけです。自治大臣もぜひお聞きになっていただきたいのですが、先ほども地方自治の問題が出ましたけれども、いまの窮迫した地方財政の中で、公共用に供されているそういった道路までそれぞれの市町村で持ちなさいというのは酷なんですね。この点については建設大臣等関係大臣から明確な御答弁を賜りたいと思います。  この二点について、まずお聞かせください。
  340. 藤田正明

    藤田国務大臣 放棄請求権の方から申し上げますが、これは昭和四十八年からこの請求権の問題につきましては実態の調査を進めておりまして、大体概況の調査が終わった次第でございます。  いまおっしゃいましたように陸上部分と海上部分とございますが、陸上部分が十二万件ぐらいございます。おっしゃいましたような金額、一千七十億ぐらいの金額になります。ただ、海上部分の方は一つにまとまりますので、いわば話がまとまりやすかったということもございまして、これはほぼ話し合いが地元とまとまっております。そこで、五十三年度の予算につきましては、十億ほど沖繩開発庁の方から概算要求をいたしております。まず五十三年度から払っていこう、こういう考え方でございます。それから、いまの陸上部分につきましては十二万件からの問題でございますし、非常にたくさんの込み入った問題がございますので、来年は協議会をつくりましてこの問題の整理に当たろう、かように考えております。  それからつぶれ地の問題でございますが、おっしゃいましたように国道、県道につきましては約四百十億ぐらいすでに五十二年度末で整理がつく予定でございます。おっしゃいました市町村道、これが千六百キロメートルぐらいあると思いますが、なお百十キロメートルぐらい追加分としていま現在県の方から出されております。これもことしの五月、六月に出された百十キロでございますので、まだ未調査でございます。この市町村道につきましては、これはいろいろとその道路ができた時期、そしてまたどのようにそれが利用されたか、いかなる理由によってそれがつくられたか、そういうことも今後全部調査をいたしまして、その上においてこの市町村道路をどのように現地になるたけ負担をかけないように処理していくかということを考えたい、かように思っておる次第であります。
  341. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、放棄請求権の陸上部分については、その対策委員会を設けて、窓口は開発庁がなって今後処理する方向で御検討なさるということですね。  それとつぶれ地問題で、市町村道路との関係がありますので建設大臣にお聞きしておきますが、確かにその道路ができた背景というもの、あるいは実態というものを調査をしなければいけないということは理解をいたします。しかし、本来はすでに解決を見なければいけなかった公共に供されている道路であり、あるいは土地であるという面からすると、これはやはり市町村に負担をかけるということは本来的にそぐわない問題なんでね。したがって、調査をした上で、沖繩県から要求の出ている、あるいは市町村会から要求の出ているような方向で、この問題についても国の立場において解決を早急に図るというふうに理解してよろしいですね。
  342. 藤田正明

    藤田国務大臣 放棄請求権の窓口につきましては、沖繩開発庁が今後当たりますし、そして五十三年度にはその協議会を持ちます。そして順次それを処置していきたいと思います。それからいまの市町村道路についてでございますが、これは先ほど来申し上げましたように、でき上がったことの理由、その時期、そしてまたどのように利用されたかということをよく研究しなければならぬ。そして、政府が持つべきものは持つし、そしてまたそうでないものはそのような処置をいたさなければならない。これは研究を要するところだと思いますから、来年度も引き続き研究していきたい。百十キロメートルというものが新たに出ましたので、これを含めて来年度も研究していきたい、かように考えております。
  343. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 ただいま沖繩開発庁から御回答申し上げたとおり、十分われわれは開発庁との連絡をとりながら方向づけをしてまいりたい、こう考えております。
  344. 上原康助

    ○上原委員 後でまとめて総理の方と大蔵大臣からも御所見を賜りたいと思うのです。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕 これは本当はもう解決をしておかなければいかない問題ですね、こういうのは。復帰六年になっても、これがまだ解決する方向さえも見出されていない、方向づけられていないということですね。篤と各大臣、御認識をいただきたいと思うのです。  それと、本委員会でもしばしば取り上げられましたし、私も沖特でも何回か取り上げてきたのですが、旧日本軍が強制接収した国有地問題ですね、一体その後どうなっておるのか。これなども、経過は申し上げませんが、何せ関係地主は二千百人ぐらいいるということですね。しかし、大蔵省が国有財産管理をしているということで検討するということにはなったのですが、これも一体いつまで検討するのか。早目にこういうものも解決をしないといかない問題なんです。いつまでぐずぐずやっているんですか。その点を経過と今後の見通しをはっきりさしていただきたいということ、この点まずお答えください。
  345. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  前々回あたりの国会から大変問題になりまして、これにつきまして大蔵省といたしましては、できるだけ速やかに調査をいたして善処をしてまいりたい、かように考えておるのでございますけれども、もう繰り返してそのことについては申し上げませんけれども、政府といたしましては、旧軍の土地買収は、沖繩本島においても、宮古島及び石垣島と同様、とにかく一応正当な手続によったものと判断しておりますけれども、前国会でも申し上げましたとおり、さらに入念にこれを調査をいたしまして、そして善処をしてまいりたい、かように考えております。
  346. 上原康助

    ○上原委員 いまの御答弁では納得しかねますね。いつまで調査する調査すると、もう三月でもそういう御答弁だった。四月段階もそう。調査するということは何もしないということですか、大蔵省の言い分は。冗談じゃないですよ。  次に、交通方法変更問題でちょっとだけお尋ねをしておきたいと思う。これも総理、また来年の七月にいまの右通行を左に変えようということですね。右寄りの福田内閣が左を好むのもどうかと思うんですが、いろいろ理屈をつけて左に車の通行を変えるということでいろいろやっておられるようですが、ここでこれまでの経過等については、時間がありませんからやりませんが、県民の生活実態からして、三十三年近く、車は右で人は左ですね。そうしますと、私なんか半分半分だから本当にこんがらがってしまうんですが、しかしこの間体臭の話が出たんですが、体質として車は右側を通るものだと思っているんです。特にお年寄りとか児童の対策等については余りやられていませんね。さらにバス企業とかタクシー、交通機関に対する補償というものが十分でないということ。もう一つ大事なことは、大体五十キロ内のスピードを四十キロに落とすというわけですね。四十キロのところは三十キロぐらいに落とす。三十キロは十キロぐらい減速するわけでしょう。そうしますと、三カ月なりその期間は、沖繩の経済活動というものはそれだけ実質的にはダウンするということです。それはまた物価にもはね上がってくる。そういうところまで果たして政府はお考えになっておられるかどうかというのが一つです。  もう一つ大事なことは、いまちまたでささやかれて言われていることは、本土から行く人が困るから早く変えてくれというのが裏でいろいろあるわけです。マイカーを持っていけないとか、あるいは観光で沖繩に行ってもレンタカーをなかなか借りられない。車は右側を通っているからぶつけたら困るということ。もう一つは、左に変えると、カーフェリーなりいろいろなものから、たとえば材木にしても、品物を本土からどっと沖繩に持っていきたいのだが、いまは交通が右だから危なくて行けない。そういうものがどっと行く可能性があるのですね、正直申し上げて。そうしますと、沖繩に住んでいる百万県民は左になれていないものだから、三カ月なり五カ月なりなれようと一生懸命努力をする。ここから行く人は大型でどんどんカーフェリーなりで自家用車を持っていかれたのでは、これはまた海洋博の二の舞をしますよ。これは私は厳重な忠告、警鐘をここで申し上げておきたいのですが、こういうところまでひとつ対策を考えて、県民に与える犠牲なりあるいはそれから起きる経済的損失ということについては政府の責任において措置するというお約束がなければ、われわれ断じてこれは賛成するわけにまいりません。三十年余りなれた交通問題というもの、そこまでやりますね。これは明確に御答弁ください、規制の問題を含めて。
  347. 藤田正明

    藤田国務大臣 交通区分の変更ということは、一番最初は四十八年の九月の閣議で決定されたものでございます。これは五十一年に実施するというふうに決定をされました。それが五十年の六月の閣議で、五十三年の七月末に実施するというふうに変更延期されたわけであります。その閣議の前に、沖繩県側も参加されまして関係協議会を開かれております。その関係協議会の中で、五十三年の七月の末を目途とするということに沖繩県側も同意をされて現在に至り、そして来年の七月を目途としてこれを変更するということになっておるわけでございまして、いま急にこれを言い出したわけではございません。そのようなことが一つございます。  それから物価にはね返るということをおっしゃいましたが、そういうこともあるいはあるかもしれません。そのようなことのないように万全の注意を払ってやっていくつもりでおります。  それから安全教育、幼児とか老人に対する安全教育が不足しているではないか、こういうことでございました。これは政令が出たばかりでございますから、いまから大いにこれはやるつもりでおります。  それから観光客がたくさん来るから、それで本土と同じ交通方法にしなければならぬじゃないか、こういうふうな理由がある、こうちまたで言われておる、こういうことでございましたが、これも一つの理由ではございましょう。しかしそれよりも、やはり三万人に近い人が住所変更を、沖繩から本土に行き、本土から沖繩に行っているというのが、毎年そういう傾向がございます。これが二万七、八千人だと思います。三万人に近い人人、これが住所変更をいたしております。こういう人々も同じ交通、同一交通方法をとることが安全である、こういうふうなこともございます。観光客のことも一つの理由でございましょうけれども、そのほかにもそういう理由もこれございますし、また国際法の同一国内における同一交通方法ということもございます。いずれにしろやらなければならぬことでございますので、来年の七月末にこれを実施するわけでございますが、それまでにはできるだけのことを、安全教育も、そしてまた事故のないような工事の方もあるいは標識の方も十分にやっていきたい、かように思っておりますし、それからおっしゃいましたこのようなことは、沖繩県民が好んでおやりになることではないわけでございますから、沖繩県民の方々に原則的に負担をかけない、こういう方針でもってこれをやっていきたい、かように考えております。
  348. 上原康助

    ○上原委員 どうも総務長官、まるで県側が、これまで政府が進めてこられた交通方法変更にあたかも全面的に賛成をして、協力をしてきたかのようないまの御答弁ですが、ちょっとそれは納得しかねますね。政令公布にしても県は待ってくれと具体的に要請を出したわけでしょう、政令公布の前に実施要綱を明らかにすべきだと。いま私が言ったような本土からいろいろの車が行く、あるいは大型車が行く、そういう面の規制はどうするのか。  もう一つ大事なことは、二万名余りいる米人の軍人軍属はどうするのですか。基地内対策。アメリカはいまでも右ですよね。そうしますと、これなども総理大臣、本当にいま一番交通事故を起こしているのはアメリカ人じゃないですか、軍人軍属じゃないですか。そういうようなことを含めてやっていただかないとこの問題は困る。これは議論しておってもいけませんので、県も政府が進めようとしておられることにはもちろん全面的な反対ではなかったでありましょうが、いろいろ事情があって、しかし、その実施要綱などをまず明らかにして、いま言うような問題等を整理をした上でどうするかということ。さらに特別事業の問題等については、具体的に要請は出されておるが、まだ結論は出していないわけでしょう。そういうものをあわせてこの問題はやっていただかないと困る。あなたは三万と言うが、百万をどうするのか、沖繩の現地にいる県民、それを優先にして交通方法を考えるのが筋じゃないですか。このことはもう少し十分御検討いただきたいと思いますし、あわせて交通機関の問題ですので運輸大臣の御見解も賜っておきたいと思います。
  349. 田村元

    ○田村国務大臣 いかに国際条約上やむを得ない仕儀であったとはいっても、沖繩県民から見ればこれは大変御迷惑であったと思います。率直に言って私ども沖繩県民の御迷惑、その心情をお察し申し上げております。でありますから、この私どもの所管事項に関する限り、関する限りと言うと大変口はばったいかもしれませんが、私は、官僚を督励いたしました。少しでも沖繩県民の負担を軽くせしめようとして一生懸命になりました。もちろん十分の御満足はなかったかもしれませんけれども、折衝に来られた方は私に対していささかの評価はあったものと考えております。五十二年の予算にも盛ります。五十三年度の要求もしております。私なりに精力的に財政当局に話をつけて、御期待に沿うように努力をいたしたい、このように考えております。
  350. 上原康助

    ○上原委員 そこで、あと地籍の問題が残って、これも私、納得しませんが、ちょっとこれだけやるわけにもまいりませんので、地籍問題、先国会で、あれだけ衆参の内閣委員会で激論のあげく強行されたような形で一応地籍法が制定されたわけですね、総理。しかし、これも実施段階においては、いろいろ政令公布に当たっては県側の意向を、今日まで三十年の体験、実際の地籍処理に基づいた体験を含めて政令を公布してもらいたいということ、これさえも無視したのですね、正直申し上げて。ここに心の触れ合いなんかあるのでしょうかね。総理、最近心のことを盛んにおっしゃるようですが、私は余りにも官僚的だと言うのです。政府のやり方は行政的ですね。  そこで、もう地籍問題を議論する時間ありませんので、いま私が申し上げたような問題、地籍問題を含めて交通方法の変更、あるいはつぶれ地補償の問題、放棄請求権、旧日本軍が取り上げた土地の返還問題、どれ一つをとっても、復帰処理、戦後処理ですよね。しかも県民生活と密接にかかわりある重大な経済問題でもあるのですね。これがまだ解決を見ないということ。  もう一つは、一方においては、そういう復帰処理さえも解決されないのに、多くの失業者を出して、経済ももう沖繩全体が構造不況ですよ、島全体が。  そこで私は、総理の改めての御見解を伺うと同時に、経企庁長官の方の御見解も賜っておきたいと思うのですが、確かに振興開発計画というのはありますね。しかし、それだけではもう絵にかいたもちと言っても言い過ぎではないと私は思うのです。現時点において沖繩の産業開発の問題なり雇用創出の問題等含めて、もう一度開発庁なり経企庁なり農林省なりあるいは関係省庁で、沖繩のこれらの諸問題解決のためにどのようにしていくかという政府の今日的立場に立った方針というものを私はつくっていただきたいのです。そうせぬと、これまでのような法律の枠にはめようとか制度にはめようとしたって、そもそも沖繩ははみ出ておったのですよ。その中に押し込めようとするからすべて無理がくる。財政的にもどうにもできないということになっている。そのことをぜひ政府全体としてやっていただかないと困ると思うのですが、この件に対しての総理の御所見を賜っておきたいと思うのです。
  351. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日本全体が非常に不況で低迷しておる、そういう中で沖繩の立場、これはよく私どももわかります。これは総務長官がこの問題を統括的に処理しておるわけでありまするから、沖繩開発庁を中心といたしましてできる限りのことをいたす、このことをお約束申し上げます。
  352. 上原康助

    ○上原委員 できる限りと、これは余り中身のないことですね。私が申し上げましたように、経済企画庁なり開発庁だけに任すのでなくして政府全体として、失業問題なり産業開発なり、いまの放棄請求権等の問題の処理に当たって、縦割りでばらばらじゃなくして、福田内閣として、日本国政府としてこの問題をどう解決するかということに対して、関係省庁に御指示をするお考えもございませんか。そんなに冷たい福田内閣ですか。
  353. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いや、温かい気持ちでやっているのですよ。ただ、政府の機構は担当が決まっているのですから、その担当の大臣が責任を持たなければ何事もこれは進みません。その担当の大臣のところへ関係の各省が寄って、そうして沖繩問題をどうするか、こういうことを相談しよう、こう言っているのですよ。少しも冷たいとかなんとか、そんなことじゃございません。
  354. 上原康助

    ○上原委員 言葉だけ温かくたって実行が伴わないとどうにもなりませんよ、これは。ですから、それぞれの担当の大臣がいろいろやっておるのは私も認めぬというわけじゃありませんよ。それは評価もいたします、敬意も表します。しかし、縦割りでだけやってもいかないんですね。横の方の連絡も密にしていただく。そうでないとこれは解決しない問題があるのですよ。その点を私は申し上げておるのです。くどいようですが、もう一度。
  355. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この席で答弁を通じて関係閣僚に私は申し上げる。総理府総務長官を中心として関係各省は協力して沖繩対策に万全を期す、こういうふうにいたしたいと存じます。皆よく聞いてくれたね。
  356. 上原康助

    ○上原委員 私も当分国会にいると思いますので、いまのことを忘れぬようにひとつやっていただきたいと思うのです。  そこで、次に防衛問題に入りたいのですが、けさ大出先生の御質問もあったのですが、時間もありませんので、まず今回の日米防衛首脳会談の内容なりあり方についてお尋ねしたいと思うのでよ。ブラウン国防長官とはどういう議題でお話をしたのですか。
  357. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  きのうもお答えをいたしたと思いまするが、今回の私の訪米は、五十年に当時のアメリカの国防長官シュレジンジャーと前坂田長官との第一回目の首脳会談があったわけでございます。その際に、ひとつ今後毎年一回交互に、日本でやる場合は日本が担当いたしますし、また次年度はアメリカと、そういうことで定期的に交互に首脳会談をやって、日米安保条約の運用をひとつ効率的にやろうじゃないかという話し合いに基づいてやったわけでございます。それの日本からの訪問ということになったわけでございまして、ブラウン長官の招待を受諾をして参ったということでございます。  したがって、中身は、具体的に課題を事前に決めて、そうして結論を出すというような、そうした性格の会合ではございません。しかし、全然テーマなくして意見交換をするということはどうかと思いまするので、大体一応四項目を決めたのでございます。話し合いながら決めたのでございまするが、第一は極東の情勢でございます。それから第二番目は米国のアジア戦略、三番目は日本の防衛計画の整備の状況、四番目は日米安全協力の問題、そうした四つのテーマを話し合いの中で決めて意見交換をしたというのが中身でございます。
  358. 上原康助

    ○上原委員 巷間伝わっていることとは、いま防衛庁長官の四項目の中身、若干違うのですが、まあいいでしょう。  それじゃ三項目の、ポスト四次防の防衛計画ということでしょうね、日本の防衛計画の実情についていろいろ意見交換をした、日本の防衛構想といいますか新防衛力整備構想の説明といいますか、それはあったわけですね。
  359. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたしますが、具体的に申し上げますると、現在、日本の防衛力整備について具体的にどういうようなことを進めておるかというようなことを当方から説明をした、そういう内容でございます。
  360. 上原康助

    ○上原委員 その内容で、特に日本防衛庁長官が御説明をしたのはどういう事項ですか。
  361. 三原朝雄

    三原国務大臣 御承知のような防衛白書というのをことしも出したのでございまするが、防衛白書の大体の内容が、いまわが防衛庁が防衛力整備の方向を示しておりまするので、三時間というような時間の制約がございましたので、事前に防衛白書の内容等の概要をお渡しをして、それを中心にして現在の防衛力整備の状態を説明いたしました。そしてなおそれにつけ加えまして、概算要求をいたしておりまする五十三年度の概算要求などをあわせて説明をしたというのが内容でございます。
  362. 上原康助

    ○上原委員 その中身を話しなさいと言ったら、ふろしきに包んだ、ふろしきだけ話して困りますが、要するに五十三年度の概算要求を含めてとか、あるいは防衛白書に書いてあるということは、対潜能力の問題とか防空能力の問題、そういうことについて具体的にお話ししたということでしょう。さらに言いますと、次期FXをどうするのか、次期PXLをどうするのか、あるいはそのほかの装備についてもどうするのかということもお話し合いをしたということでしょうね、いまの御答弁は。そういうふうに理解していいですか。そこをひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。
  363. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  防衛白書の中に書いておりまするように、防衛計画大綱の中身の整備を、現在の国内外の情勢あるいは国の財政状態あるいは国の他の政策との調和等を考えながら、防衛計画大綱の中身について、五十二年度はこういうことをいまやっております。五十三年度はこういうような企図のもとに概算要求をいたします、そういうことを説明をしたわけでございます。  したがいまして、いま言われます対潜能力の整備でございまするとか、あるいは防空能力の整備でございまするとか、そういうものに触れてまいり、あるいは後方支援体制の整備であるとか、そういうような問題等を説明したということが具体的な中身になろうと思うのでございます。
  364. 上原康助

    ○上原委員 これに対して、米側の反応といいますか、答えはどういうことでした。
  365. 三原朝雄

    三原国務大臣 なお、御承知のように、米側におきましては日本の防衛力整備について、各界にいわゆる安保ただ乗り論的な空気のあることは私は承知をいたしてまいっておるのでございます。したがいまして、私といたしましては、そうしたものも踏まえながら、日本の財政の厳しさ、三〇%の国債による財政状態であるというような説明でございまするとか、あるいはまた日本のアジアにおける平和と安全に対する安保体制の協力というようなものは、日本の憲法なりあるいは政治的な制約等があって、十分な外国に対しての防衛的な協力、援助はできません。したがって、わが国におきまする最小限度の防衛力の整備については、一つの制約に基づき、また予算的な一つの制約もあるわけでございます。そういう枠組みの中で最大の努力をいたしますとともに、広くひとつ、アジアにおける安全保障の協力の面では、経済的な協力でございまするとか、あるいは文化交流等によります努力でございまするとか、そういう面から、日本の平和と安全とともに、アジアの安全と平和のために努力をいたしておるというような説明をいたしたのでございます。
  366. 上原康助

    ○上原委員 私は、防衛庁長官が説明をしたことを聞いたのじゃないのですよ。アメリカ側の反応はどうでしたかということをお尋ねしているので、反対のことを答えたら困るじゃないですか。  そこで、どうも中身を明らかにされることを余り好まないようですから、私の方から一つずつお尋ねしていきますが、日米防衛首脳会談を二日間にわたってなさったですね。その場合は会議録はとりますか。
  367. 三原朝雄

    三原国務大臣 会議録はとりません。
  368. 上原康助

    ○上原委員 坂田・シュレジンジャー会談の場合、どうでしたか。
  369. 三原朝雄

    三原国務大臣 会議録はとっておりません。
  370. 上原康助

    ○上原委員 会議録と言わないでも、では双方で話し合った会談の内容とか、たとえば三原長官がどういうことを述べて、これに対してブラウン国防長官がどういうことをお答えしたとかあるいは述べたとか、そういうようなものはおとりになりますか。  もう一つ、四十五年九月にたしか最初にアメリカを訪れた防衛庁長官は、元中曾根防衛庁長官だったと思うのですが、中曾根防衛庁長官の場合はそういうのがあったのかどうか、あわせてお答えください。
  371. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたしますが、中曾根長官のときもそうした速記録、記録というものはとっておりません。お互いがフランクに意見の交換をして相互の理解をし合うというのをたてまえにいたしておりまするので、そうした処置でございます。
  372. 上原康助

    ○上原委員 メモもありませんか。
  373. 三原朝雄

    三原国務大臣 お互いのそうしたときに記録すべきものは、メモ的なものはとっただろうと思うのでございます。
  374. 上原康助

    ○上原委員 そのメモというものが実は会議録なんですよね。それはありますね。
  375. 三原朝雄

    三原国務大臣 会議録とかいって両者が見せ合いながら、こういう中身でございましたというようなものではございませんが、お互いが、会議の席に出ておりました二、三の者が要点を記録したものはまとめておるのでございます。
  376. 上原康助

    ○上原委員 それが問題なんですよ。そこで、あなたはないと言うのだが、あるのだ、ちゃんと。それは後で話しましょう。中曾根長官の場合はありますね。シュレジンジャー・坂田長官の場合もあるんだ。これははっきり答えてください。そんないつまでも秘密扱いをしてはならぬですよ。だから防衛問題はテーブルにのらないんだ。
  377. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いま大臣がお答えいたしましたように、正式な会議録というのはございません。出席しておった者がその会談の内容をメモしたというものはございます。
  378. 上原康助

    ○上原委員 それがあるということを一つ念頭に入れてお話を進めていきたいと思うのですが、先ほど五十三年の防衛庁の概算要求、また防衛白書に盛られている新防衛力整備計画に基づいて今度の日米会談を行った。そこで問題は、F15とP3Cの購入ということを五十三年度の予算要求、概算要求でもなされておるわけですが、今度の日米防衛首脳会談でもこれが非常に重要なテーマをなしていますね。国防会議においてはこの問題の決着はどうなっているのですか。
  379. 三原朝雄

    三原国務大臣 今度の会談でP3C、F15が問題の中心であったとは私は思っておりません。  それから国防会議の点でございまするが、いまのところ政府部内において関係省庁と協議を進めて、検討を進めておる段階でございます。それが一応まとまりますれば国防会議にかけるということになるわけでございます。
  380. 上原康助

    ○上原委員 これは総理大臣もぜひよくお考えになっていただきたいのですが、防衛庁長官は非常に重要なことをあたかも余り重要でないようなことで、いま何とか私の質問時間の終わるのを待っているようなことでぐねぐねお答えしていますが、きわめて重要なことなんですね。  といいますのは、特にP3Cについてはロッキード問題とのかかわりがあるということは国民は承知しているわけですね。委員会でも何回か問題になっている。同時にFXについても、時間がありませんので余りたくさんは議論できませんが、皆さんがなぜF15を採用したかということについても、防衛白書なりいろいろなパンフを出して検討した経緯を文書にしたのがありますが、問題は、国防会議でもまだ次期主力戦闘機はどういう機種にするかお決めになっていないわけでしょう。対潜哨戒機については、国防会議であのロッキード問題が出た四十七年以後全く話されていないはずなんですね。それを、防衛庁長官が九月九日にアメリカに行かれるというようなことで、あたふたとして防衛庁段階で決定をして、防衛庁段階で決定したことに基づいてわが国の防衛力はこういうふうにやりますということを、アメリカとはすでにコミットしてきているわけでしょう、防衛庁長官は今回の会談において。しかも予算の問題等についてもきわめて重要な問題があるのですよ。制服が決めたようなことを、防衛庁だけで決めたことをアメリカ側と外交の議題にのせるというのは、まさに防衛庁のシビリアンコントロールの暴走じゃありませんか。これを私が中身を聞こうとしたら、ぐねぐね何をおっしゃいますか。こういうことでは納得できません。  さらにさっき申し上げたそのメモがある、議題があるというようなこと、実はこれが問題なんですよ。皆さんはいつも何もないと言うのですが、中曾根長官が四十五年九月に行ったときには膨大なメモランダムをつくってある。百四十ページにわたっているじゃありませんか。実はこの中に、韓国からの米軍撤退の問題など、沖繩基地をどうするのか、あるいは日本の次期対潜哨戒機をどうするのかということを細かく書いてある。私は、いつの間に私の手元にこれが入ったのかわからなくなっているのですが、これをやろうと思っておったのですが、とうとうちょっと時期を失したのです。こういうようなことで、国民の側には明らかにしないで、全く日米間でやみ取引をするような形で日本の防衛力というものを今日までやっているというのが実態です。その裏返しをまたあなたもやろうとしているのです。これをどうお答えになりますか。
  381. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  いま御指摘のような心組みは全くございません。御承知のように、F15につきましては、すでに昨年防衛庁において決定をし、国防会議にかけたのでございまするが、政府間の連絡、それから審議不十分のために来年にということで、ことしに持っていくということをお決めいただいたのでございます。なお、P3C対潜機につきましては、御承知のように、十一年間実は検討いたしておる問題でございます。したがいまして、早期に、実は対潜能力の欠落的な機能がございまするので、防衛庁としては整備をしなければならないということで十一年間これと取り組んできたことは先生御承知のとおりでございます。したがいまして、米国に今度参りまして説明をしました。説明をするときに、来年度の計画としては、防衛力整備の計画としてはこういうものでございまするが、しかしこれは全く防衛庁庁内でけで決めたことでございます。そのことを明確に申し上げ、これから政府内部のそうした調査検討が必要でございまするし、審議が必要でございます。それが一応事務的にまとまりましても、それから国防会議にかけねばなりません、そして最終的には国会の場において予算審議をしていただいて決まるものである、決してそれは決定したものではありませんということを明確に申し上げてまいっておるのでございます。決して私は、そうした逸脱をした、大それたことをアメリカとコメントするというようなことはいたしておりません。このことは、どうなるかわからない厳しい状態の中で、防衛庁だけがそうした概算要求で組んでおるものでございますということを率直に申し上げてまいっておるのでございます。
  382. 上原康助

    ○上原委員 そうおっしゃっても、実態はそうじゃないわけですよね。コメントじゃない、コミットしてきているんだ。冗談じゃないですよ。  では角度を変えてお尋ねしますが、外務大臣、国防会議のメンバーですね。F15、PXLについてあなたは賛成したのですか。大蔵大臣、それから経済企画庁長官、順にお答えください。それと、いまの防衛庁長官のお答えですと、これは防衛庁単独のいわゆる内定であって、政府全体の決定ではない。これはもちろんですよね、国防会議を開いてないから。そうすると、F15の機種選定についても、あるいはPXL、P3Cの選定についても、変更もあり得るということも理解していいわけですね。これを含めてお答えください。国防会議のメンバー全部答えてください。これについてどういうふうなお考えを持っているのか。
  383. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  あくまでも防衛庁庁内の内定でございます。したがいまして、これから政府内部のそうした検討をやり、国防会議にかけて、その決断をまって最終決定をして、国会の場で予算審議をしていただく、そういうようなことになるわけでございます。
  384. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 F15並びにP3Cにつきましては、来年度の予算の概算要求の段階で国防会議の懇談会に説明があったという段階でございまして、まだ国防会議として決めてはいない段階であります。
  385. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、皆さん防衛庁が計画をしておる五十三年度の概算要求の中で、たしかFX二十九機とP3C十機を計上していますよね。全体でP3Cが四十五機で、F15が百二十三機でしたか。これはいま決まってもいないことを議論するのもちょっとおかしいのですが、しかしこれは防衛費の問題と関係があるのです。何年計画で購入なさろうとするのか。たとえば第一次、第二次の契約をするとしますと、一体すべて輸入に頼るのか、あるいはライセンス生産というようなことも考えておるのか。ライセンス生産をするという場合に、十年なら十年の計画の中でそれぞれどれだけの上昇率を見ておられるのか、単価は現段階で幾らなのか、お答えください。
  386. 三原朝雄

    三原国務大臣 いま御指摘のような一応の見通しのもとに計画を立てたのでございまするが、詳細な数字にわたるような問題もございまするので、政府委員に答えさせます。
  387. 上原康助

    ○上原委員 数字を答える前に防衛庁長官に確認をしておきたいのですが、けさの大出さんの御質問との関連もありますので、これは後で関係をしますからね。防衛費の国民総生産いわゆるGNP比の一%というものが非常に問題になっていますよね。いま政府が、防衛庁が一応内定をしたという防衛計画、P3CとかF15とかAEWもありますね、含めて将来にわたってGNP比一%以内でおさめ切れるという方針に変わりはありませんね。けさの御質問の中ではその点不明確でしたので、あくまで防衛費というものは一%以内におさめるというこれまでの政府の方針というものは変えるおつもりはないですね。これは防衛庁長官からも総理大臣からもお答えいただきたい。
  388. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。     午前中大出議員にお答えをいたしましたが、そのときも明確に申し上げました。昨年の暮れ決定を願っております政府としての経費指標が出ております。当面はGNP一%を超えざることという指標が示されておるわけでございまして、したがいまして、それの線に沿ってそうした計画を進めておるわけでございます。
  389. 上原康助

    ○上原委員 当面というのはいつまでですか。
  390. 三原朝雄

    三原国務大臣 当面というのは当面でございますが、これは私は、現在の国内の経済状態あるいは各国におきまする諸施策の関係等を勘案してやらねばなりません。あるいは国内外の情勢等を勘案してやるわけでございまするが、そういう点を見通せる範囲だと思っておりまするので、私どもといたしましては、そうした情勢が変わらない限り、当面ということは、ここ五年や七年や、そこらあたりではないかという判断をいたしておるのでございます。
  391. 上原康助

    ○上原委員 国会の公式の場で、当面とは見通せるくらいだとか、当面とは当面だというのはちょっと……。では、年度で言うとどのあたりをめどにしておられるのですか。
  392. 三原朝雄

    三原国務大臣 先ほど申し上げましたように、具体的に何年だというようなことを申し上げておるわけではございませんけれども、五年やそこらあたりは見ておらなければならぬかなという情勢判断をいたしておるわけでございます。したがって、五十五、六年というようなものは、私は予算を試算いたします際の一つの経費支出等に対しまする一%の目安等は、そういう点に一つのピーク時期を考えながら問題と取り組んだわけでございます。
  393. 上原康助

    ○上原委員 そう言えば大体私らの頭でも理解できるのです、五十五、六年と。  それで先ほど言いましたように、現段階でのF15の単価は幾らを見積もって予算を計上して概算要求をなさっているのか、さらにP3Cはどのくらいの単価を見積もっておられるかということ、それと最終年度においてはどのくらいの予算になるのか、お答えください。
  394. 間淵直三

    間淵政府委員 私どもの調達を計画しておる単価は、F15に関しましては、補用品のないフライァウエー・コストで約七十五億円、それからP3Cに関しましても、同じくフライアウエー・コストで約七十五億円でございます。
  395. 上原康助

    ○上原委員 そんなむずかしい言葉を使わぬで、みんながわかるようなあれで……。そうしますと、フライアウエー・コストで七十五億それぞれですと、皆さんの概算要求の中に出している予算の額とは違いますね。総体では幾らになるのですか、部品そういったものを含めて。余りわかりにくい言葉を使わぬで、全体で幾らくらいになるということを……。一機七十五億以上の買い物をするのです、防衛庁は。
  396. 間淵直三

    間淵政府委員 お答えいたします。  F15につきましては、補用品のない価格が七十五億円でございまして、補用品を入れますと、その約一五%、十億円増し、一機八十五億円になります。それからP3Cに関しましては、補用品を含みました価格は約九十億円でございます。したがいまして、来年度概算要求に出しておる数字といたしましては、F15に関しましては二千四百七十五億円、P3Cに関しましては約九百億円でございます。
  397. 上原康助

    ○上原委員 歳出は幾らですか。
  398. 間淵直三

    間淵政府委員 歳出は、五十三年度の歳出といたしましては、F15が約五億円、P3Cは約二十一億円でございます。
  399. 上原康助

    ○上原委員 総理 この一例をとってみても、要するに、すべて後年度負担ということで先取りなんですね。先取りというか、まあ後年度負担ということで、当初の頭金はわずかのように見せて、どんどん拡大をしていっているわけですね。しかも、私はこれは春の本委員会でも――あのときは七十二億ぐらいという単価でしたね、あのときよりすでにもう十億以上上がっている。しかも、P3Cについては一機九十億もするのですよ、五十三年度の予算で。これは最低価格はそれだけですが、物価が上がればそれだけ上がるし、ライセンス生産になればもっと上がりますよ、たしか。なぜこれだけ高い買い物をしなければいけないかということに対しての理解ができないわけですよ、正直申し上げて。  しかも、いま御答弁がありましたように、後年度負担としても、五十三年度の概算要求には、F15について、二十九機で約二千五百億組まれる。P3Cは十機で約九百億ですね。そのうちわずかに、この歳出予算として出されるのは五億と二十一億程度のことなんですね。あとは全部後年度負担ということでやっていく。そうしますと、この最終段階では幾らぐらいの予算になるのですか、百二十三機と四十五機を購入するという段階で。その場合どのくらいのコストアップを見ておられるのかということ。そして、いま防衛庁長官が言ったように、一%以内でこれをとめるという場合には、果たしてこういう買い物を、大型プロジェクトをやっていく中で、防衛費がそれだけの枠内におさまってできるかという問題が一つあると思うのですね。もう一つは、F15の場合ですと、いま御説明がありましたように約八十五億。なぜF15でなければいけないのですか。F16にしても、もっと安い要撃機もあるんじゃないですか。  こういうことについても、国会でも十分議論をされていない。ましてや国防会議においてもまだ議論されていないことを、新しい防衛計画はこういうふうになっていますということで最初にアメリカ側とそういうコミットをするという姿勢は、私はまかりならぬと思うのですね。この点に対して予算の面から説明してください。  それと総理は、こういうような高い買い物をしようとしている、しかも、国防会議なり国会でも十分議論をされていない前に対外的にこういう下約束をしてくるということは、国防会議の議長としても、これはよくないですね、こういうやり方は。
  400. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 先ほど来防衛庁長官がるる御説明申し上げましたように、防衛庁長官は何もコミットしておるわけじゃないのですよ。約束しておるわけじゃない。私はこういう考えを持っておる、この考え方は政府として認められるかどうかわかりません、しかし私としてはこういう考え方を持っておるということをお話ししたのです。そういうことを日米安全保障条約の相手国に話す、これは何ら私は責めらるべき問題はない、こういうふうに思います。せっかくワシントンまで行って、そのぐらいのことを話してこなかったら、それの方が不思議ですよ。
  401. 原徹

    ○原政府委員 予算の点について申し上げます。  F15につきましては、百二十三機を買いますとおおむね一兆六百億円、それからP3Cは、四十五機を買いますとおおむね四千二百億円でございます。  それで、先ほど御質問のありました、確かに後年度負担、相当大きいわけでございますが、一体これで一%でできるのかどうかという点についての見通しでございます。御承知のように、去年防衛計画の大綱を決めましたときに、原則として、まあ若干の例外はございますが、部隊の規模は拡大はしない、そういう前提で防衛計画の大綱ができたわけでございます。これは非常に重要な点でございまして、それは要するに、増員につきまして、艦艇の就役とか航空機の取得に伴いまして若干はございますが、大した増員というものは考えられない。と申しますことは、防衛関係費の中で五五%を占めます人件費につきまして、要するに現在のレベル、すなわち、いま〇・八八%のレベルでございますけれども、GNPがどのくらいふえるか、当面、実質六%ぐらいふえるだろうという前提になりますが、防衛関係費の伸び率をGNPの伸び率と同じぐらいにいたしますということは〇・八八%ということでございますが、それで十分人件費は賄えるということでございます。  維持費につきましても、油とかそれから修理費等は、機材が高くなりますと修理費の値段が高くなるということもございますけれども、しかし大体GNPの伸び率と同じであればこれも大体カバーできる。  それから施設とか研究開発、私どもとしては今後重点を置いてやらなければいけないと思いますけれども、それは、五十二年度予算で申しますと、一兆六千九百のうち、施設は四百億円程度、それから研究開発は百六十億円程度でございますから、これは相当ふやしましても、金額としてはそうかさばる金額ではございません。  そういたしますと、装備の点が結局中心になる。装備につきましては、確かに相当金がかかるわけでございますが、いま〇・八八%というのと一%の差額はどのくらいあるかということにまずなるわけでございます。五十二年度のGNPは百九十二兆ほどでございますから、一%というのは一兆九千二百億円でございます。いま、〇・八八%という五十二年度の予算は一兆六千九百億円、差額が大体二千三百億ぐらいあるわけでございます。今後GNPが実質で六%ぐらい伸びるといたしますと、そのいまの二千三百億円という一%と〇・八八%のすき間が、やっぱり成長においてすき間の方も成長するわけでございます。そのすき間の中に一体新しい装備のP3CそれからFXを入れて、入るかどうかというのが問題になるわけでございます。そういう前提でございますと、P3CとそれからFX、たとえば五十五年度には八百八十五億円ぐらい金がかかる、後年度負担を入れましてかかるわけでございます。ところが、その五十五年における〇・八八%と一%のすき間はどれくらいあるかと申しますと、二千七百三十一億円ございますわけで、八百八十五億円使いましても、なお一%に達するのには千八百四十六億円ばかりすき間が残る、こういうことになるわけでございまして、私どもは〇・八八%では済まないと思います。一%に近づくと思います。近づくと思いますけれども、一%は超えることはない、そういうふうに見通しております。
  402. 上原康助

    ○上原委員 総理の先ほどの御答弁ですが、どうも納得しかねますね。そうしますと、あくまで防衛庁が内定をして、そのことについてわざわざアメリカまで行ってきたのだから、話すのが当然だ、そういう認識が私は問題だと言うのですよ。これだけの、一機九十億円もする、あるいは八十五億円もするような飛行機、装備は、専守防衛とか国防のあり方からしてわれわれは疑問を持っているわけでしょう。これに対して十分な解明もしないで、先取りするような形でやる、いますべて既成事実をつくっているじゃありませんか。そうしますと、総理の御答弁からすると、この問題については国防会議では白紙ということでいいですか。
  403. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そのとおりでよろしゅうございます。
  404. 上原康助

    ○上原委員 国防会議では、FXについてもPXLについても白紙ということでいいわけですね。  ただ問題は、ここまですでにいろいろな面で報道がなされてきているし、数を頼りにして何とかなるであろうということが総理の腹の中にあるわけです。私は、防衛問題というものをいろいろ現実的に議論しなさいとか、防衛費の一%問題が、岸さんの発言もございましたね、わざわざアメリカのカーター大統領まで利用して国論を操作しようとする、われわれから言わせれば全くさもしいやり方、こそくなやり方ですね、全く白紙ということで。そうしますと、われわれもこの問題については、なぜF15でなければいけないかということについてまだ十分な理解をしていない。F16でもいいのじゃないかという考えも一部にはある。あるいはわざわざアメリカの最新鋭機P3Cをなぜ日本海上自衛隊が装備をしなければいけないか、これはもちろんいろいろなことがあると思いますよ。あると思いますが、一機百億近い買い物をやろうとしていることに対する、国民側から見る防衛費のあり方あるいは自衛隊の装備のあり方の問題については、もっと国会なり公式の場で議論をした上でないと、アメリカ側とこういう問題についてこうしますとかああしますとかいうことを、よしんば防衛庁という立場でもやるべきでないと私は思うのですね。そこまでは言うべきでない。防衛庁として案を持って国内に発表することはいいですよ。そう思いませんか。
  405. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 せっかくアメリカまで出かけまして、そして防衛の責任者がお互いに意見の交換をする、そういう際に、今後どういうふうにお互いに個人としては考えておるか、もちろん前提がある、これは政府の全体の意見ではありません、私はこんな考えを持っておりますというようなことを話し合わなければ、話し合いする意味がないじゃないですか。防衛庁長官が、自分はこう考えているのだ、しかし、国防会議をまだ経たわけでもない、予算として承認されたわけでもない、そういう前提を置いて自分の率直な考え方を述べる、これはアメリカとの間には日米安全保障条約というものがある、その締約国の相手方ということを考えれば、そのくらいのことはせめて話すということは当然じゃないか、そういうふうに私は思います。
  406. 上原康助

    ○上原委員 これは当然だとおっしゃっても、これから新しい防衛計画をめぐってはいろいろな議論が出てくると思うのですね。出てくると思うのですが、そういう認識ではわれわれとしては理解できませんね。納得できません。  そこで、先ほどのお答えですが、予算の問題ですが、このFXの一兆六百億円というのは、これは現時点ではじき出した数字ですね。どのくらいのコストアップを見ているのですか。四千二百億円の問題を含めてお答えください。  それともう一つ。現在の人件費については大体五五%だとおっしゃっていましたが、仮に昭和五十六年度の段階では人件費はどのくらいを見ておられるのか。ここも今後の議論もありますので、お答えしておいてください。
  407. 原徹

    ○原政府委員 実際に契約をいたしますのは、FXにつきまして二十九機分でございます。それからP3Cにつきましては十機でございます。実際に契約する値段として五十三年度の価格をただいま申し上げたわけでございます。したがって、その次の段階、全体をやりますのには契約を分けてやりますが、その数字は現在のところまだ見込んでおりません。  それからもう一つは、人件費でございますけれども、これは人件費のシェアが現在五五%でございます。五十一年度におきましてはこれは五六%でございましたが、ベースアップの率が比較的マイルドであったために五五%に若干減りました。したがって、私どもは五十六年というのはまだ具体的にそこまで推計をいたしておりませんが、若干ずつ人件費のシェアが落ちていくだろう、こういうふうに思います。
  408. 田中正巳

    田中委員長 上原君、時間でございますので、結論を出してください。
  409. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、いまの一兆六百億でしたか、それと四千何ぼかというのは、現時点における単価の額をはじいているわけですよ。当然これはコストアップするということが言えるわけですよ。そうしますと、やはりここにも防衛費の問題としては非常に矛盾が出てきますので、総理から最後に。  われわれは、現在の国民生活あるいは不況というような面からして、少なくともいまの防衛費というものが一応政治的には一%以内であるべきということが国民的コンセンサスだと思うのです。この方針は政府としては将来とも守っていくという姿勢は確約できますか。
  410. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 内外の情勢で異常な変化がない限り、防衛費は国民総生産の一%以内にこれをとどめます。債務負担契約なんかの関係で初年度は少ない、将来ふえるだろう、そうしたら一%を超えるだろう、こういうような御懸念があるようでございますが、わが厳格なる大蔵省は、防衛庁は概算の要求はいたしておりますけれども、五十三年度におきましても、あるいは後年度におきましても、その一%以内である、こういう政府の基本方針を踏まえて間違いないような査定をいたします。
  411. 田中正巳

    田中委員長 これにて上原君の質疑は終了いたしました。
  412. 田中正巳

    田中委員長 この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。  明十四日、参考人として、日本銀行総裁及び日本住宅公団総裁の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  413. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次回は、明十四日午前十時より開会することとし、財政経済問題について政府並びに参考人に対する質疑を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後八時四十分散会