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1977-10-12 第82回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    十月十二日  坪川信三委員長辞任につき、その補欠として  田中正巳君が議院において委員長に選任され  た。 ————————————————————— 昭和五十二年十月十二日(水曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君   理事 小此木彦三郎君 理事 栗原 祐幸君    理事 澁谷 直藏君 理事 細田 吉藏君    理事 山下 元利君 理事 安宅 常彦君    理事 武藤 山治君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    伊東 正義君      稻村佐近四郎君    越智 通雄君       奥野 誠亮君    片岡 清一君       金子 一平君    川崎 秀二君       木野 晴夫君    北川 石松君       藏内 修治君    櫻内 義雄君       笹山茂太郎君    始関 伊平君       白浜 仁吉君    関谷 勝嗣君       津島 雄二君    根本龍太郎君       原田昇左右君    藤井 勝志君       古井 喜實君    松澤 雄藏君       松野 頼三君    湯川  宏君       阿部 昭吾君    井上 普方君       石野 久男君    上原 康助君       大出  俊君    川俣健二郎君       小林  進君    佐野 憲治君       多賀谷真稔君    藤田 高敏君       権藤 恒夫君    斎藤  実君       武田 一夫君    広沢 直樹君       二見 伸明君    大内 啓伍君       河村  勝君    荒木  宏君       寺前  巖君    東中 光雄君       大原 一三君    田川 誠一君       西岡 武夫君    山口 敏夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 瀬戸山三男君         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 渡辺美智雄君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  田中 龍夫君         運 輸 大 臣 田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 長谷川四郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       小川 平二君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      園田  直君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      藤田 正明君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      西村 英一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 三原 朝雄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 田澤 吉郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         警察庁長官官房         長       山田 英雄君         警察庁警備局長 三井  脩君         行政管理庁行政         管理局長    辻  敬一君         防衛庁参事官  平井 啓一君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁衛生局長 野津  聖君         防衛庁経理局長 原   徹君         防衛庁装備局長 間淵 直三君         防衛施設庁長官 亘理  彰君         防衛施設庁総務         部長      銅崎 富司君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         科学技術庁原子         力安全局長   牧村 信之君         沖繩開発庁総務         局長      亀谷 礼次君         法務大臣官房長 前田  宏君         法務省民事局長 香川 保一君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君         法務省入国管理         局長      吉田 長雄君         外務省中近東ア         フリカ局長   加賀美秀夫君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵大臣官房長 佐上 武弘君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         大蔵省国際金融         局長      旦  弘昌君         国税庁次長   谷口  昇君         国税庁調査査察         部長      藤仲 貞一君         文部大臣官房長 宮地 貫一君         文部省初等中等         教育局長    諸沢 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省体育局長 柳川 覺治君         厚生省医務局長 佐分利輝彦君         厚生省年金局長 木暮 保成君         農林大臣官房長 澤邊  守君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         林野庁長官   藍原 義邦君         通商産業大臣官         房長      宮本 四郎君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         中小企業庁長官 岸田 文武君         運輸大臣官房長 山上 孝史君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         郵政省貯金局長 高仲  優君         郵政省経理局長 浅尾  宏君         労働省職業安定         局長      細野  正君         労働省職業訓練         局長      岩崎 隆造君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治省行政局長 近藤 隆之君         自治省財政局長 山本  悟君         自治省税務局長 森岡  敞君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      森永貞一郎君         参  考  人         (年金福祉事業         団理事長)   高木  玄君         参  考  人         (日本住宅公団         総裁)     澤田  悌君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 十月十二日  辞任         補欠選任   伊東 正義君     津島 雄二君   奥野 誠亮君     湯川  宏君   金子 一平君     原田昇左右君   白浜 仁吉君     片岡 清一君   坪川 信三君    小此木彦三郎君   松野 頼三君     関谷 勝嗣君   森山 欽司君     北川 石松君   浅井 美幸君     斎藤  実君   坂井 弘一君     権藤 恒夫君   矢野 絢也君     武田 一夫君   寺前  巖君     東中 光雄君   安田 純治君     荒木  宏君   大原 一三君     西岡 武夫君   田川 誠一君     山口 敏夫君 同日  辞任         補欠選任   関谷 勝嗣君     松野 頼三君   津島 雄二君     伊東 正義君   原田昇左右君     金子 一平君   湯川  宏君     奥野 誠亮君   権藤 恒夫君     坂井 弘一君   斎藤  実君     浅井 美幸君   武田 一夫君     矢野 絢也君   東中 光雄君     寺前  巖君   西岡 武夫君     大原 一三君   山口 敏夫君     田川 誠一君 同日  理事田中正巳君同日委員長就任につき、その補  欠として小此木彦三郎君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  参考人出頭要求に関する件  昭和五十二年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十二年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長の指定により、私が委員長の職務を行います。  この際、申し上げます。各大臣及び政府委員は定刻に必ず出席するよう求めます。  昭和五十二年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十二年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三件を一括して議題とし、質疑を行います。河村勝君。
  3. 河村勝

    河村委員 きょう私は、現在の深刻な不況をどうやって打開をして安定成長軌道に乗せるか、その問題を中心にしてお尋ねをいたします。  昨日の総理答弁を聞いておりますと、現在の不況実態認識について比較的楽観的な見方をしておられると思います。全体としての経済は平均としてはよろしいけれども、残るものは構造不況業種であって、これが景気感の足を引っ張っている、こういうような見解であったと思います。そうしますと、総理はかねてから、この不況全治三年と言っておられたわけですね。ですから、全治三年といいますと、すでに今日は三年も過ぎて、普通ならもう退院をして、それでひとり歩きができるという段階になっているはずでありますけれども、実態はなかなかそうはまいっておらない。総理も、もうすでに退院して後はアフターケアだけやればよろしいというようなお考えではないと思うのでありますが、実際の経済実態というのは非常に窮屈でございまして、特に最近になりましても鉱工業生産出荷、いずれもずっと停滞が続いておって、一進一退、昨年のいまごろと余り変わらない。そのほか倒産件数とか失業数、これらも同じことですね。特に製品在庫在庫率というものが、最近になりましても、四十五年に対比しますと一三一から二ぐらいですね。ですから、これは史上最高在庫率、こういうことでございまして、これではとても回復の軌道に乗ったと言えないような、そういう数字になっているわけです。  ですから、総理は一体現在の実態認識を本当に、ただ一般的にはもうよくなっておるけれども、構造不況業種だけが残っているから、それを全体の経済かさ上げして、そして環境づくりをやって、構造対策だけやればよろしいんだというふうに聞き取れましたが、この経済実態認識というものが、診断が間違っておりますと、当然処方せんも違ってくる。それは現在行われております総合経済対策についても言えるし、それから昭和五十三年以降の予算を含めた対策にも影響してくるわけです。  そこで、もう一度こうした経済指標等を踏まえて、一体いま入院加療中なのか、それとももう大体退院してアフターケアでよろしいのか、その辺の認識をまず最初に伺いたいと思います。
  4. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、日本経済世界経済の一環である、これを離れて日本経済動きということを論ずるわけにはいかぬ、このように思いますが、まあ私は、世界経済の前途というものを非常に厳しく見ておるんです。いままでのような、とにかく工夫さえすれば、それがまたうまくいけば経済はどんどん発展していくんだという情勢でなくなってきた。つまり、世界の人々が先々を展望すると、資源問題、エネルギー問題、これは大変なことになってくる。それとうらはらをなしてナショナリズム的な動きというものがかなり露骨に出てきておるわけです。石油ショックというようなものもその象徴的なものでもあり、他の資源にもそういう動きがあり、近ごろは海洋にまでそういう動きが波及してきておる。こういう世界流れ展望してみると、世界経済というものはもう非常にこれから先波乱重畳だ。そういう展望の中でわが国経済をどういうふうにかじ取りをしていくか、こういうことが必要である、こういうふうに考えまして、私は経済全体の環境というものにつきましては、これはもう非常に厳しい見方をしておるわけなんです。  しかし、そういう世界の転換期の流れの中では、私は、過去三年半余り、つまり石油ショック後の処置、これはかなり日本といたしましてはうまくやってきた、こういうふうに思うわけですよ。国際社会でもそういうふうに見ておる。客観的にそう見られておる、こういう状態です。昨年がちょうど三年目になったわけですが、昨年度の動きを見てみれば、一番基本的な国際収支、これはまあとにかく世界から怒られるくらいよくなり過ぎちゃった。物価も落ちつき基調をずっと進めておる。成長はどうだというと、先進諸国の中では最高水準を示しておる。こういうのですから、私は変動期に臨む日本経済の骨格は整った、こういうふうには見ておりまするけれども、しかし、それで日本経済が全部正常化したかというと、そういう見方はしていないことはるる申し上げておるとおりであります。  そういう中で、私は、新しい展望の中の世界情勢影響、この影響を非常に受けている業種というもの、それはいい影響を受けているものもある、しかし悪い影響を受けているものもある。それで、いまわが国経済社会企業の間には、二つの非常に明確な分類ができるような状態になってきておるように思うのです。好況業種構造不況業種、こういう状態構造不況業種問題を明快に解決いたしませんと、日本経済の中に安定感は出てこない。私は構造不況対策というものを非常に重視しておる。ことに、その構造不況業種に連なる中小企業の立場、これは非常に深刻です。これに特段の配慮をしなければならぬ。  そういうことを考えまするときに、やはり構造不況対策環境づくりもしなければならぬ、それは日本経済かさ上げをすることだ、こういうふうに考えまして、年初来六・七%成長ということを内外に対して言っているのですから、これは何が何でも実現をしたい。そして企業全体の操業度を上げていきたい、特に構造不況業種の、そういう間において何とか立ち上がるための改革を行いたい、こういうふうに考えておるので、決して私は楽観はいたしておりません。この構造不況対策なんというのは企業側の理解も要るし、政府側の努力も要るし、非常に深刻、重大な問題である、そういうふうな考えを持ちまして、全体のかさ上げをする中で構造不況業種問題を初め、いま当面大きな問題から一つ一つ片づけていきたい、そして早く日本経済全体としての安定感が持たれるような状態にしたい、こういうふうに考えておるわけです。
  5. 河村勝

    河村委員 どうも大変長い御答弁でありましたけれども、私の質問に対する答弁にはそうぴったり合っているわけではない。それは国際環境が厳しいことも承知しているし、またその中で、他国に比べればGNPの伸びはよろしいというようなことも知っておりますし、もちろん、構造不況業種対策が大事なことも知っております。ただ、具体的に製品在庫が戦後最高史上最高在庫を抱えているという現状需給ギャップが十三兆とも十七兆とも言われておりますけれども、これがまだ縮まっておらないので、これは構造不況業種の持っている需給ギャップだけではなくて、全体としてまだかなりの大きなギャップが残っている。ですから、そういう認識に立てば、まだまだ本当の景気対策はこれからが本番であって、だから、全体の経済かさ上げをするということにおいては同じ考えですけれども、そのかさ上げ程度、方法が認識の相違によって非常に変わってくるわけです。ですから、まだ非常に大きなギャップが残っておって、まだ実際はちっとも在庫調整が進んでいないから、昨年あたりと少しも変わっていないのだと言うほかはないと思うので、その辺の認識に立たないとこれからの対策が手ぬるいものになりはしないか。私はそういう意味でお聞きしておるのですから、もっと端的にお答えいただきたい。
  6. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいま申し上げましたような考え方のもとに公共事業中心とする需要喚起政策を、特に年初以来ずっと強力に進めてきておるわけであります。その効果、これは逐次あらわれてくる。けさ経済閣僚懇談会で最近の企画庁の見る報告を聞きましたが、いよいよ公共事業前倒し効果というものが出る段階になってきた。いま経済を動かしておる力の中で、公共事業かなり強い力を持つようになってきておるわけです。そういう影響を受けまして、建設関係資材需給なんかはかなり改善される、値もしっかりしてくる、こういうような状況が出てきております。  今度さらに総合対策を進める。これも公共事業中心になるわけです。これも前倒しの欠落を補って、この力を持ち続けさせる効果があるであろう。また住宅政策公共事業とあわせて進めておるわけですが、住宅かなり進んでまいりました。家ができ上がるというような段階になりますれば、さあいろいろな調度だ何だといって、これが景気にずっと波及してくる。いままでは八月までしか指標が出ておりませんけれども、だんだんと経済指標改善されるであろう。特に、きょう月例経済報告企画庁から報告された点で特色といいますか注目されるのは、在庫関係ですね、いま河村君が御指摘になった。これはかなり改善方向に来ておるんですよ。特殊なものを除きまして、だんだん正常の在庫量、こういうような傾向になりつつある。  そういういろいろな動きを大観いたしてみまして、とにかくむずかしい問題を抱えておる、特に  一番むずかしいのは構造不況、こういう問題で、それから出てくるところの雇用の問題、これも深刻な問題でありまするけれども、大観いたしまして経済は着実に改善方向に向かいつつある、こういう判断をしておるわけであります。
  7. 河村勝

    河村委員 八月まで史上最高在庫を持っていたものが、そんなに急に正常に戻るわけはないので、それは恐らく総理考え違いでしょう。  企画庁長官けさ新聞、私も見ましたが、わずかに出荷建設資材関係で動いたというのは新聞で出ておりましたが、ただそれだけのことでしょう。総理はまともにお答えにならないけれども、企画庁では最近需給ギャップが大体十三兆円くらいであろうというような試算をされたというが、十三兆円の需給ギャップの中で、構造不況業種の持っておるギャップとそれ以外のものと、これは一体どのくらいの割合になるのです。
  8. 倉成正

    倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  ただいま総理から申されました在庫の問題は、河村議員の御指摘のとおり、在庫率指数が七月の  一三二・八から一三一・四に下がっておる、その中身についてお話があったわけでございまして、建設資材、特に銅、塩ビ紙パ、そういうものの在庫正常在庫に戻りつつある。それから鉄、アルミ、合繊、こういう素材産業の面はまだ高い水準にあるので、やはり十−十二月にかけての在庫調整が行われるということで、在庫調整動きが非常に急ピッチになってきた。その間に若干の格差はございますけれども、正常在庫に戻りつつあるものが非常に多くなってきたということがただいまのお話でございまして、在庫調整が終われば、やはり景気が明るさを増してくることは間違いないことでございます。  それから需給ギャップお話でございますけれども、需給ギャップと申しましても、これをどういうとらえ方をするのかということは、定義も非常にむずかしいことでもございますし、また稼働率にいたしましても、たとえば合繊やその他の稼働率というのは、スピードを上げればかなり生産能力が上がるということもございますので、これを計算をいたしまして公表いたすことについては、われわれちゅうちょいたしておるわけでございまして、いろいろ勉強いたしておりますが、正式の企画庁需給ギャップというのを発表いたしてないというのが現状でございます。ただ、御案内のとおり稼働率指数が八月で八四・八、もっともこれは不況業種を合わせた稼働率指数でございますから、不況業種だけでありますともっと低い、それから一般のものはもっと高いということになるわけでございまして、かなり需給ギャップがあることは事実でございます。
  9. 河村勝

    河村委員 私が聞いているのは、構造不況業種の持っている需給ギャップとそれ以外のものとの割合はどのくらいかということを聞いているのです。
  10. 倉成正

    倉成国務大臣 稼働率指数の中で構造不況業種と称せられるもの、構造不況業種をどこまでとるかという問題がいろいろございますが、たとえば鉄鋼の中でどの部分構造不況ととるかという問題がございますが、非常に大胆に試算すれば、稼働率指数部分で申しますと一四、五%というところではなかろうかと思います。
  11. 河村勝

    河村委員 私の言うことに一つも答弁になっていないんですよね。全体の需給ギャップの中で、総理は、大体一般需給ギャップは解消して、残るのは構造不況業種だけだというような見通しを述べられている。しかし、私はそうは思っていないのですよね。まだまだ、いままでの経過を見れば、全体としてさっぱり需給ギャップは今日まで解消していないんですよね。だから、構造不況業種だけじゃないのです。総理のような見方から言えば、これからただわずかな手当てさえすればだんだん経済は順調にいくであろうということになるのですけれども、その実態がはっきりしてくれば、決してそう簡単なものではないはずだと私は思う。総理は今日まで、昨年もことしも大体六%前後の実質経済成長をしながら——経済成長したということは経済の枠が拡大をしてきたことですから、普通なら生産も消費も上がるわけですね。ところが、それが去年もことしも上がってこないというのは、どういうことに基づいてそういうことが起こっているか、それをどうお考えですか。
  12. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 需給ギャップですね、この問題、これを数字的に言うことはなかなかこれはむずかしいのですがね。——ちょっと聞いてください。  そこで、いま河村さんのお話を伺いましてちょっと気がついたんですが、稼働率指数、これを私はじっと見ておるのですが、いまこれが八五ぐらいですか、その程度数字になっております。これの中でいわゆる構造不況業種稼働率は一体幾らで、それから他のものはどうだというようなことをにらんでおくことは必要であろう、こういうふうに思います。これはそういう計算ができるかどうか知りませんけれども、大事な点でありまするから調べてみることにいたしたい、こういうふうに思いますということをまずつけ加えさしていただきます。  それから、私も非常に大局的に話を申し上げているのですよ。構造不況業種だけ、これが需給ギャップがあるので、他の産業にはないのだ、こんなことを申し上げておるわけじゃないのです。構造不況業種においては需給ギャップが非常に大きいんだ、こういうことを申し上げているのです。たとえば鉄鋼業なんかをとってごらんなさいよ。これは構造不況業種とは言っておりません、おりませんけれども、ずいぶんこれはまだ稼働率が低いわけでございます。そういうような一つ一つのことにつきまして私がここで言っているわけではないので、大局的に見まして構造不況業種問題、これが非常に大事である、その大事な根源というものは、あそこに需給ギャップというものが大きく残っておるという大局観を申し上げておるわけで、それは、その他の産業に需給ギャップがないんだということを申し上げておるわけではないのです。その他にもいろいろ問題がある、よく承知しております。
  13. 河村勝

    河村委員 また私の質問に答弁をなさっていないんですよね。私は、GNPが六%ぐらいふえている、経済の枠が去年もことしも広がってきている、ところが生産も消費もちっとも上がらないのはどういうわけかということを聞いたのです。  お答えにならないようですから私の方から申し上げましょう。  経済企画庁でおつくりになっている経済白書というのは、私は、非常に綿密で正しい分析をしていると思います。この経済分析を生かして政策を立てれば、いま政府のおやりになっていることとはずいぶん違った方向に行くのであろう、そう思うのです。いま、GNPの枠が五十一年以降だんだんふえて、六%前後の成長になっていながら生産も消費もちっとも上がらないというのは、やはり需給ギャップが大き過ぎるから、要するに供給力が大き過ぎる、需要との差が大き過ぎるということですね。だから、公共投資をやりましても、それは余り需要ギャップが大きい、過剰設備を抱え、過剰雇用を抱えておるものですから、どうしても売れなくても物をつくって、それで在庫が多いわけですね。だから、せっかく公共投資をやりましても、いま建設資材が一部出荷等の動きが出てきたとおっしゃいますが、今日までは、せっかく公共投資、財政でがんばりましても、それから輸出でがんばりましても、それが生産につながらない、最終需要につながらないから、ちっとも需給ギャップが縮まらなかったんですね。それを、ちょっと過去のことですけれども、どうも総理は、いまの不況なりインフレなりを全部石油ショックのせいにしてしまって、石油ショック後の対策は、わが国は先進国の中では一番優等生であるというようなことばかり強調されて、過去の政策の失敗の反省がどうもないようだ。だから、その反省を求めるためと、それと本当に実態認識をお持ちになっていただかないとこれからの対策影響がある、その二つの理由で、少しくどいけれども、私は経済白書の中身を簡単に引用させてもらいます。  経済白書で言っておりますことは、きのう多賀谷さんもちょっと触れましたけれども、四十七、八年の過剰流動性、これがやはりすべてのもとになっているんですね。このころ総理はどういう立場であられたかは私ちょっと調べてこなかったのでありますけれども、とにかく四十六年のニクソン・ショック以後の円切り上げを避けるための調整インフレですね、これで過剰流動性をたくさん生んだ、これがすべてのもとになっている。その過剰流動性がインフレの引き金になったことは去年の白書で分析をして、今度の白書ではこういうことを言っているんですね。「過剰流動性と日本列島改造ブームを背景に四十七年下半期来わが国経済は名目でもまた実質でもかなりの拡大をみた。こうした状況下依然として高度成長の持続を前提としたかなり高目の需要見通しが行われた。昭和四十八年度を初年度とする経済社会基本計画」、これは政府がおつくりになったものです。それでは九・四%の実質成長率を見たんですね。それで、いろいろな基礎産業等につきましても過大な需要見通しを発表した。それに企業が乗りまして、それで、それがちょうど過剰流動性のさなかでございますから、それと異常な物価高の中でだんだん供給力が不足になるような感じがあったものだから、企業は一斉にこの需要見通しに乗って過大な設備投資をやった。本来ならば、この石油ショックでこういうものはやめるはずであるけれども、やはりその中の多くのものが続行された。だから、四十八年暮れの石油ショック以後、四十九年は完全にマイナス成長なのですね。マイナス成長の中でも設備投資はどんどんどんどん行われた。設備投資というのは、一方で需要効果も持つけれども、これはあるタイムラグを置いて供給力効果を持ちますね。ですから、石油ショック以後不況になってからでも引き続いて四十九年、五十年と供給力が拡大していったわけですね。そういうことですから、GNPで一生懸命がんばりましても、供給力が一方でだんだん拡大していくということで、追っつけない。だから、締めくくりとしてこの五十二年度の白書では、「五十年春以降回復に向かったが、需要の増加テンポが鈍いものであったため大幅な需給ギャップは目立って縮小しなかった。」非常に大きな需給ギャップをつくっちゃって、それが五十二年の春まで解消していないというのが経済企画庁の分析ですね。これはもう明らかに、この過剰流動性をもたらした政府の責任、四十八年の政府の見通しの甘さの責任ですね。  それからもう一つは、これは不況の方でありますけれども、この過剰流動性が石油ショックの火種になって、このために狂乱物価が起きたわけですね。ですから、インフレの山を高くして不況の谷を深くした。これは政府の政策責任なのですよ。それに対する反省を持たれなければおかしいと思います。  そうして、こういう状況があったものですから、これは総理も同情すべき立場だと思いますが、狂乱物価退治の方に先に主力を注いだから、景気のてこ入れがおくれたということが今日のおくれおくれの原因になっているわけですね。ですから、ことしの春までまだ需給ギャップが縮小していない、こういうのが経済企画庁の分析なんですよ。いよいよ景気回復の軌道に乗せるか乗せないかというのはこれからなんですね。だから、総理の言われるように、大体もうこれで平均的にはよくなったというものではないということに相なるので、ここまでの経済企画庁の分析というものは、政府でおつくりになったものだから、大体こういうものであったということは総理もお認めになるでしょうね。まず、それを一言だけ聞きます。
  14. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 経済企画庁の過去を回顧しての分析は、私はそのとおりだ、こういうふうに思います。
  15. 河村勝

    河村委員 そうであれば、私は、まずことしの総合経済対策、これに対する政府の取り上げ方も違ってくるはずだと思うのですね。今度の総合経済対策の基本になっているのは、財政のてこ入れをする際に公債依存度三〇%を絶対にオーバーしない三〇%を切るというのが大前提になって、その中で六・七%という総理のおつくりになった目標を達成しよう、そういう考え方ですね。しかし、私は考え方が逆立ちだと思うのです。私は、公債依存度をどんどん高めていけば、これは破滅的な様相になって、ひとり財政が破壊されるだけではなくて、日本全体を大インフレに陥れるであろうということはよく承知もしております。だから、ある時期に増税を含めた財政立て直しをやらなければならない、そういう時期には私どもは協力をする用意があります。しかし現在は、現実に個人の貯蓄率は二十数%という非常に大きいものが続いておる。民間設備投資は非常に少ない。ですから、いま公債を発行したからといってインフレの危険というものはまずない。そういう時期でありますから、ただ無理やり公債を発行せよというのではなくて、まず考え方として、この需給ギャップを若干でも縮小すること。それから、国際問題がございますね。IMFのついこの間の総会での非難、最近の急激な円高の傾向、これはかなり作為的なものがありますね。これはアメリカの対日戦略の一環のような感じでありまして、黒字国日本を攻めてやろうという意図がございますけれども、とにかくそうしたむずかしい環境にある。そうであれば、私は、国債依存度三〇%にこだわるのも間違いだし、同時に六・七%にこだわるのも間違いだと思う。六・七%というのは、国内的には確かに総理の公約であり、対外的にもそうですけれども、しかし対外的には六・七%だけで意味があるものではないのですね。これは経常収支において七億ドルの赤字にする、それとセットになって初めて国際的な公約であって、六・七%になったからといって、別段外国が評価するわけでも何でもない。だから、これだけ対外的な批判が強くなって、下手をしますと、現在日本からの輸出規制あるいはダンピングの訴訟その他いろいろな動きがございますが、これがさらに広がって、アメリカだけでなしにECまで含めてもっと報復措置が強くなるかもしれない。私は六・七%にこだわるのもおかしいと思うのです。だから、この際は、とにかくインフレにならないという限度において、将来の財政再建というものはもちろん頭に置きますけれども、いまはそれよりも、景気を一日も早く回復させて安定成長軌道に乗せるのにはどこまでやったらよろしいか、それを前提にしてものを考えるべきである。  どうも今度の総合対策というのは、そういう意味では財政主導型といいますか、財政で三〇%以内という枠が決められてしまって、それでつくり上げられたものであって、私はこれでは不十分だと思う。そういう考え方は、総理、間違いだとお思いになりませんか。
  16. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 考え方の基本は、河村さんのような考え方でいいのじゃないでしょうか。つまり社会経済あっての財政なのです。財政は社会経済の秩序を維持発展させるための手段ですからね。それでいいのじゃないかと思いますが、しかし、いま財政が三〇%公債に依存をしておる、そういう形で動いておる、これは非常に不健全な形じゃないかと思うのです。先進諸国の中でも、そんな国はどこを探したってありはしません。経済の運営が余りうまくいっていないというような国でも、財政の節度というものについては非常に注意深い関心を払っておる。わが国は、財政のほかの部面は、ほかの国に比べますとよくいっておると言うことができると思うのです。ところが、そのしわ寄せが財政に来ておる、そう言っていいと思うのです。  私は、この状態を放置しておきますと、財政は社会経済を支える一部にすぎませんけれども、その一部から社会経済の崩壊ということにつながってこないとも限らぬ、そのことを心配しておるのです。三〇%だとか、あるいは六・七%だとか、そういうことにこだわるわけじゃありませんけれども、目標は、とにかくいま当面するわが国の国内の経済社会をどうやって正常化し、発展させていくかということ、これを一挙にやろうとする、財政を犠牲にして八%も九%もなどというようなことを考える、これが果たして日本国のために、日本国民のために幸せなことか。私はそうは考えません。  それから、国際社会におけるわが国の立場、そういうことを考えますと、いま河村さんがお話しになりました国際社会わが国の黒字過剰の点について非常に批判がある、これは私が一番心配している点なんです。何とかしなければならぬ。それには国内の景気もよくしなければなりませんけれども、同時にあの手この手、あらゆる手段を尽くして、輸入をこの際緊急の措置としていろいろ工夫をしてみる、こういうことはいまいろいろ考えているようなわけであります。しかし、これとても今日この状態から見まして、一挙にこの黒字を解消するというわけにいかないのです。下半期になりますれば、本年度においてすでに黒字幅縮小という傾向が出てくるだろう、私はこういうふうに思い、またそうさせたいと思っております。そうなりますれば、まあまあ国際社会においてもわが国の施策に理解を持つことになるだろう、私はこういうふうに思いますが、いずれにいたしましても、経済社会を維持発展させる、そういうための施策を総合的に考えておるわけでありまして、財政が至上命令だ、その中で三〇%が至上命令だ、あるいは経済成長にいたしましても六・七%が至上命令だ、そういう考え方じゃないのです。  いま申し上げました世界の中における日本丸の運営といたしまして、とにかく三〇%というものはこの際守っていく、またそれによって健全な社会経済の維持発展ができるのだ、また、世界の中における日本の責任というようような立場から見まして、また六・七%成長で、下半期においてとにかく黒字幅の縮小という傾向が出てくれば、国際社会においてもこれを理解してくれるだろうというようなことで、いま申し上げておるような施策を進めておるというので、あくまでも社会経済に目標があるのであって、他の点に焦点を置いて事を進めておるというのじゃないのだ、他の点は社会経済を健全に維持発展させるための手法としてその辺をにらんでおるのだ、このような御理解を願います。
  17. 河村勝

    河村委員 私は別段八%、九%に拡大しろというようなことを言っているわけではありません。考え方として、それはいまの二兆円の事業規模を前提として議論をしましても、もう少し財政の枠にとらわれなければ有効なことができるであろうということを言いたいのですね。同時に、いま六・七%成長対策をとれば対外的な黒字もだんだん減るだろうとおっしゃいますが、しかし実際、個別の輸入対策には限界がありますからね。ですから、内需の拡大以外にいまそう有効な手はない。ならば、わずかの公債の発行にとらわれないで、それで打つべき手は打ったらよいではないかというのが私の主張なんです。  ですから、今度の総合経済対策を見ましても、二兆円の事業規模ということで打ち出したのは心理作戦として非常によかったと私は思います。やはり何となく非常に多いような感じがしますしね。だけれども、そうであれば中身もそれなりに充実をすべきものであって、この中でも、二兆円とおっしゃいますが、実際一番目玉になっております住宅建設ですね、これに対して住宅金融公庫で八千七百億の事業規模で仕事をやると言っております。しかし、現実には今年度に出すものは、八千七百億の事業規模を実行するためには財投で四千五百億要るわけですね。ところが、今年度で出すものは二千八百億だけしか出していない。だから、十万戸つくると言っても、三万戸ぐらいはことしの話ではないのですね。ですから、二兆円には偽りがある。  それと、地方単独事業というようなものを千五百億当てにしておりますね。しかし、これもただ縁故債でおやりなさいというだけで、地方でできるかどうかわからない。これもやはり帳じり合わせに入れているわけですね。こういうものは期待をしてもいいけれども、それはプラスアルファに考えるべきであって、せめてその千五百億のものは補助事業に加えて、それで六百億か七百億の一般会計からの金を出せば、もっと有効な仕事ができるわけですから、何も三〇%、きっかり二九・九%にこだわって、せっかくのできることまで控えるということはないじゃないか、そういう常識的な主張を私はしているのです。そのくらいのことはおやりになりませんか。いかがでございます。
  18. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 先ほどるる申し上げましたが、財政のこともこれは相当真剣に考えなければならぬだろう、こういうふうに思うのですよ。それは財政が国家発展のための手段である、これは私はそのようには考えまするけれども、この手段が崩れ去ってしまうというところからまた全体としての日本社会を壊す結果になることを恐れて、とにかくどこかの関門でこれを際限ない膨張を抑えておこう、こういうせめてもの心遣いであるというふうに御理解願いたいのですが、といって、他に手段がなければ、そういう問題もあるいは踏ん切りをつけなければならぬかもしれない。しかし、いろいろ工夫いたしまして、手段がある、それで二兆円事業規模の追加対策をする、こういうことにしたわけです。  それから、河村さんは、何かこの二兆円というのには偽りがあるようなお話がありましたが、そんなことばありませんよ。これはもう正真正銘二兆円、その波及効果を入れれば四兆円を上回る、そういう規模のものですよ。そういうもので、事業規模二兆円に何か細工があるとかなんとか、そんなようなものじゃありません。  いま住宅お話がありましたが、住宅だって、それは住宅公庫と個人との間で契約ができた、こういうことになりましても、さあそれから、家をつくる設計をするとか、いろいろ準備が要る。ですから、時間がかかるのですよ。だから、現実の支払いとすると五十三年度にいくものがあるかもしらぬ。そういうようなことで予算の中には乗っけない部分が一部ありますけれども、これは景気対策といたしまして作用するということはもうはっきり申し上げることができるわけであります。  それから、地方単独事業につきましても同様な御議論でございますが、これは地方自治団体がぜひしたい、こう言うのですよ。何か架空な計画をこの二兆円の中に差し込んでおるというような御印象でございましたが、そうじゃないのです。これは地方自治団体が、ひとつ単独でやりましょう。この前、道路につきまして千五百億円の単独事業をやった、地域住民に大変喜ばれた、今度は道路以外の部面でひとついたしましょう、こういうことで、これは現実に単独事業として行われる。その財源等につきましても、政府はこれに協力する、こういうことでございますので、これも景気対策といたしまして大変有効に働いてくる、こういうふうに私は思っておるので、決してこの二兆円に何か見せかけがあるというようなことはないものであるというふうにお考え願います。
  19. 河村勝

    河村委員 普通、来年度まで入れたものはその年の計画には入らないのです。まあとにかく来年引き続きやるんだから二兆円の中に入れたと言えばそれまでだけれども、やはりその辺のところに細工はあるわけですよね。それは大蔵大臣も認めているはずだ。そうですね。お認めでしょう。——まあいいでしょうよ。  そこで問題は、ことしだけではないんですね。私は、いまの経済実態というのは非常に厳しく見ておりますから、来年、再来年が非常に大事だと思う。ですから、どうしても来年の五十三年度予算、五十四年度予算、これは景気に対して積極型、端的に言えば景気刺激型、なるべくこれでもって、不況業種構造対策を進めていく上におきましても、この際は成長率を高目にして、それでいろいろな雇用不安、倒産、その他の摩擦を少なくしながら安定成長軌道に乗せるというのはいまの経済戦略であろうと思う。であれば、来年度も再来年度もまず七%くらいの経済成長総理は、五十三年度実質六%ということをきのうお答えになっておりましたけれども、いまの内外の情勢、これを考えればやはり七%くらいの経済成長を目標とする財政支出、これを前提とした予算を組むべきである、そう考えておりますが、総理の見解をお伺いします。
  20. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日本経済自体が、いろいろ施策をとりまして、いま曲がり角に来たというか、これからいろいろな面において改善方向へ行くだろう、こういうふうに思うのです。  五十三年度の予算につきましては、年末ごろの時点で、ことしの経済がどういうふうに動いて来たか、それからそれを受けて来年はどういうふうにしたらいいか、こういうことを判断した上、来年の成長率を決めるということが順序なんでありまして、今日この段階で来年は何%だなんということを予断するということは、これは妥当じゃない。ただ、申し上げられることは、資源エネルギー、そういうようなもの、それから国内の諸施策をこれからどうやって正常に進めていくかということを考えてみますると、この十年間ぐらいですね、昭和五十年代、この平均的な成長目標は六%くらいの程度に置いた方がよかろう。しかし、いま河村さん御指摘のように、これはデフレギャップというか、過剰設備が相当ある。そういうものの処理し切れない段階、つまり前期の段階ですね、五十年代の初期の段階ですね、この段階においては、その平均よりも高い成長率が必要であろう、こういうふうに私は考えておるわけでありますが、さあ来年具体的に何%にするか、できるか、これは世界経済動きなんかもよく見きわめなければなりませんし、年末までの国内の動き、これもよく見きわめなければいかぬし、ここでお答えすることはできませんが、基本的にはそういう考え方だということをもってお答えといたします。
  21. 河村勝

    河村委員 来年度はこれから先に行ってからとおっしゃいますけれども、しかし、もうあと一ヵ月かそこらですね。私は、きのうから議論になっておりますけれども、総理はこの際、中期的な見通し、これをやはり国民の前に明らかにすべきだと思うのですね。何かきのうから伺っておりますと、五十年代前期経済計画、これを原則的には踏襲するのだというお話でありますけれども、ただ五十五年のGNPその他の経済指標を並べたもの、それだけ見たって国民にとっては何の足しにもならないのですね。いまこの不況の中で、経済が停滞をして、なかなか先行きの見通しがつかない。この停滞の原因の大きな一つは、先行きの見通しがつかないものだから、企業も個人も行動に迷っているということが大きいわけでしょう。だから、来年、再来年くらいのことすらも言えないようじゃ、企業は設備投資をやろうといったって、一体先行きがどうなるかわからない。国民もそうですね。これから本当はいまの二四%を超える貯蓄というものをだんだん消費に移していかなければ、日本経済は成り立たなくなっているわけですね。高度成長時代は高い貯蓄率と、経済語で言えば家計部門の貯蓄超過、それと民間設備投資、これはちょうどバランスがとれて成長ができたし、バランスがとれていた。しかし、いまは個人の貯蓄率だけは依然として高い。民間設備投資はもう三分の一くらいに減ってしまっている。これが大きな需給ギャップ大原因でしょう。  ですから、先ほど総理は、財政にしわ寄せばかりしてはならないとおっしゃいましたけれども、民間設備投資が、これからも減速経済下においてそんなに大きな伸びがあるはずがないのですね。GNP規模で言えば、せいぜい一五、六%くらいのところが限度なんでしょうから、そうなれば、民間貯蓄率がこのくらい高いということになりますと、その需要不足を財政で補うほかないのですね。財政で補わなければその需要不足というのはデフレをつくるもとになっていくだけである。だから、いま財政にしわ寄せしてはいかぬといっても、この二年ぐらいはいや応なしに財政に頼らざるを得ない。それをどうやって一体国民に、今後そう貯蓄をしないで、老後の年金あるいは住宅、こうした日本で一番おくれている福祉施設、こういうものをこれから政府としてはこういう方向でつくり、かつ制度を整備していくのだ、それでナショナルミニマムの生活は維持できるのだという目標をつくる、そういう中期的な展望をつくるべきなんですね。それでないと、いつまでたっても国民は迷うばかりです。  増税をやるというお話であるが、増税も国民全体としては、減速経済下で福祉を高めていこうと思えば、やがて増税を含めた財政立て直しが必要であろうということは一般的には理解はしているでしょう。しかし、大蔵大臣が言われるように、来年増税をできればやりたいなんというようなことを言われれば、これは国民にとってば大変なショックですね。  ですから、そういうものをひっくるめて、特に政府も、昭和六十年までのエネルギーの見通しを改定をされました。このエネルギーの見通しに立って、エネルギーをどうやって開発していくかということもこれから作業を始めなければならないでしょう。それは来年がそのスタートですよ。だから、ここら辺でもって、総理はこの席で、経済審議会なんかでいろいろな数字をいじるのは後でよろしい、むしろこれからは、この不況をどういう手段によって乗り越えて安定成長軌道に乗せるか、その政策は自分としてはこういう政策で臨むのだ、それから先の見通しについては、大体財政立て直しはこういう方向でやる、その後増税をやる前にはそれなりの歳入歳出の合理化もやる、将来に向けては、日本国民にとって一番大事なものについて優先順位をつけてやります、そういうような輪郭についての構想、それはいまの日本総理大臣にとって、ここでもって国民の前に明らかにされることが一番大事なことじゃないか。そういう御意思はありませんか。
  22. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私としては、かなりはっきり、これからの日本はかくあるべしということを申し上げておるつもりです。つまり多少の時間的なずれとか、そういうものはありますよ。ありまするけれども、五十年代前期五ヵ年計画、あの線で政府は日本経済社会の諸施策を運営していく、これはもう私は多少のずれということを否定するわけじゃございませんけれども、まあ、あの線でずっと諸施策は動いておる、こういうふうに見ておるわけであります。これから先々の、いろいろ諸指標を示せ、こういうお考えでありますが、あの前期五カ年計画の線に沿って国政を運営したい、こういうふうに思っておるわけです。ただ世界情勢を離れてわが国というものは存在しません。ですから、そういうことから、いろいろ変化は日本の社会にも起こってきます。それに応じて、どういうふうに政府は政策的に対応すべきかというような点につきましては、前期五カ年計画をにらみながらも、あの計画につきましてフォローアップというか、そしてまたこれをどういうふうに修正するところがあるかというような点は、しさいに検討してまいりたい。しかし、当面あの施策を基本としての考え方というものに立っての経済運営だ、こういうことで御論議を願いたいと思います。
  23. 河村勝

    河村委員 大変残念でありまして、前期計画、五十五年ではもう間に合わないのですね。石油の需給見通し、エネルギーの需給考えていけば、やはり六十年ぐらいを見通して、少なくとも今度は五年ではなしに六十年ぐらいまでの計画をつくり直さなければ、企業やなんかでも計画のつくりようがありませんね。あの前期計画をつくられてから年数はそうたちませんけれども、非常に大きな変動があったわけですから、石油の見通し一つだって、もう前期計画とは完全に狂っちゃってるわけです。一番大事なエネルギーの見通しが狂ってる計画です。ですから、この辺でもって六十年までの計画を早急におつくりになる、それで、いろいろな細かい数字の裏打ちは抜きにしても、とにかく早急に国民の前に、政府の目標、それに到達するための政府の政策の全貌、そうしたものを総理大臣はここでお示しになる、それで、この不況の中で非常に混迷している企業に対しても、国民に対しても行動の指標を与える、そのくらいの抱負経綸がなければいかぬと私は思うのですが、いかがですか。
  24. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 抱負経綸というか展望というか、それは先ほど申し上げたとおり昭和五十年代前期経済計画というものがあるわけであります。これは何も五十年代の前期五年だけをとっているわけじゃないのです。五十年代十年間の展望の中で具体的に前期の五カ年をとってみまして、この五カ年ではどういう具体的な諸施策を進めるべきかということを申し上げておるわけでありまして、もっと先のことを展望する、その中での一こまなんです、これは。ですから、そういう御理解を願いたいと思うのです。  それからエネルギーの計画が変わってきたじゃないか、こういいますが、エネルギーの計画は確かに原子力エネルギー、この点などを調整というか変更いたしました。変更いたしましたけれども、変更した結果、私が先ほどから申し上げておる五十年代における六%毎年度の成長、これに支障はないわけでありまして、あれはかなりゆとりのある計画が当初立てられておったのです。それを下方修正をしたわけでありますが、それで六%成長が何らの支障を受けるかというと、これば全然そういうものじゃないのです。その辺は十分検討の上、諸施策を進めておるわけであります。
  25. 河村勝

    河村委員 五十五年までなら、そういうマクロの見通しではなくて、もっと具体性がなければいけないのですね。現実に景気の調整と増税、こうしたものが目前に控えているのですから、もっと具体的に言うべきなんですね。私どもはこう考えているのです。総理の見解をお尋ねをしたい。  私どもは、五十三、四年は経済不況から脱出して安定成長軌道に乗せるまでの調整期間、同時にそれは財政立て直し、増税、こうしたものについての準備期間である。だから、この五十三、四年は、とにかく景気を回復することに力点を置くべきである。だから先ほど申し上げましたように、この三、四年については七%くらいの成長を維持するような財政をつくる。それで、ここでは増税というような景気回復に逆行するような、また民間消費を落とすような、そうした逆行するようなことはやってはならない。そのかわり、この二年間に増税、財政立て直しの準備をおやりなさい。  その準備というのは、一つは行政改革であり、一つは不公平税制の是正。やはり、やがて増税しなければならぬという一般的な理解があっても、本当に国民が納得していただくためには、歳入歳出を徹底的に合理化をしなければならない、これは総理も前々から言っておられるとおりですね。国民がみんな苦しんでいる時期です。国民も企業も苦しんでいるのですから、国としても、できるだけのことをやる。それがこの五十三、四年の二年が準備期間。  それで五十五年から、これは一般消費税という問題がいいか悪いかという問題は、まだ検討の要があります。しかし何かの形で財政立て直しはしなければならないでしょう。私どもはそういう前提で、現在は三〇%の枠にこだわり過ぎてはならない、そういう主張をしているので、五十五年以降には、そういう時期が来るであろう、それについては、われわれも協力の用意がある。五十五年以降が財政立て直しの期間、そういうように考はているのです。大体そういうような構想でやる以外に方法がないだろうと私は思う。もし、この五十三、四年の景気調整期間に、いいかげんなこと、手ぬるい方法をとっておれば調整期間が長引きます。そうすれば財政立て直しをやろうと思っても、その時期はさらにおくれる、私は、そういうことになるであろうと思う。  私どもの見解を申し上げましたが、総理の見解をお尋ねをします。
  26. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 お考えは私、一つの御見識だ、こういうふうに思います。それから考え方といたしましても、それを具体的にどういうふうに当てはめるかということは別といたしまして、そう私も変わった考え方を持っておるわけじゃないのです。私は、五十年代は大体わが国世界の中の日本経済というような立場から六%成長だ、しかし前期には高い水準をとるべきだ、こういうことを言っておるので、それをあなたがおっしゃるように七%とか、そういう固定数字ではいまこの段階では、なかなか言いにくいということを申し上げておるわけです。  ただ、少しあなたと考え方が違いますのは、財政というか、こっちの方への配慮を、私は、いまの日本の公債依存財政、この姿を非常に心配しているのですよ。財政を膨張させよう、そのために三〇%というようなかんぬきを外してしまえ、こういうようなお話でございますが、それは、ねらうところは何だといえば、そうして景気をよくすることでしょう。景気がよくなったら、一体すぐ、この公債を引っ込ませるというわけにいきますか。私は、これは逐次引っ込ませることはできると思いますよ。そのときには今度は設備投資が始まるのですから、国と企業が資金の奪い合いという問題が起こってくる。そのときが非常に危険な状態、インフレの危険が起こってくるわけです。そんなようなことを考えますと、公債の問題をそう野方図に考えるというのはどうだろうか。私は、これは非常に神経質に考えていかなければならぬ問題であるというふうに考えます。  しかし大局におきまして、河村さんの御提案の御趣旨は私はよく理解もできますし、また、御見識だというふうに考えております。
  27. 河村勝

    河村委員 公債依存度が大きくなることを心配しておることにおいては同じです。ただ、私がいま五十三、四年と言っているのは、五十三、四年までは、いわゆるクラウディングアウト、民間資金と国債との競合、それはまだそこまではならないはずだ。ですから五十五年以降本格的に考えたらいいではないか。ただ三〇%を野放しにして四〇%も五〇%も出せなんて言っているのじゃありませんよ。非常識なことを言っているのではない。公債依存度にこだわり過ぎて、本当に必要な手を怠ってはいけないということを言っているわけです。ですから、その点をよく御承知をいただきたいと思います。  次に、構造不況対策に入ります。  福田総理は、きのうから構造不況対策をもっぱら強調しておられます。確かに今度の不況は循環的な不況だけではございませんから、この問題を解決しなければならない。それに臨む態度なんですけれども、個別のことを余り申し上げている時間はございませんが、どうでしょうか、やはり、ここでもって、私がいま調整期間と申し上げた二年間くらいで、構造不況業種を、必要なものは設備廃棄、凍結あるいは事業転換、そういうものを含めて、とにかくこれを処理する、そういう目標で政府も積極的に臨んだらいかがであるか。自由経済体制でありますから、民間の企業、産業界の自主的な合意が前提になるということは、そうかもしれない。だけれども、やはり、いまわが国の場合、安定成長軌道に一刻も早く乗せるということが非常に大事で、そこまでいきませんと国際的にも問題がなかなか片づかないのですね。ですから、二年間で処理するという決意を表明をして、それで民間の自主性を尊重するけれども政府がもっと積極的に介入をする、不況業種の目先の救済にとらわれずに、将来の望ましい産業構造に持っていくのだという、いままでのやや消極的を積極的にやる方向に転換したらいかがかというのが私の提案でございます。
  28. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日本経済安定感を持つというためには構造不況業種問題を解決しなければならぬ、これを私は強調しているわけですが、そういう考え方に立てば、この問題は消極姿勢ではいかぬというふうに思います。政府も積極的な構えで業界の指導に当たらなければならぬ。しかし、政府の指導だけでなかなかむずかしい面もあるのです。これは業界の気分がそこへそろいませんと、たとえばカルテルをまず発動するといいましても、アウトサイダーが残るなんというようなことでは、カルテルを発動した意味をなしませんから、そういうようなことで業界の協力もまた必要でありますが、特に政府におきましても積極的な構えでこの問題を処理する。業種によりましては二年を待たずして解決できるものもあろうと思います。あるいは二年以上かからなければならぬものもあるだろうと思いますが、意気込みはまさに河村さんのお話しのような姿勢でやっていかなければならぬ、そういうふうに考えております。
  29. 河村勝

    河村委員 積極的だというお話ですけれども、たとえば設備廃棄などを見ましても、繊維とか平電炉については一応体制ができて、政府もこれに乗り出して、金も出してやっているわけですね。ところが合板業界みたいなのは、業界でまとまっても政府が積極的な手当てをしないものだから、金の面で行き詰まって、できない。金といっても、そんな大きなものを要求しているわけではない。そういうものもあるのです。ですから、そういうものを一体どう考えておられるのか。  それから時間の関係もありますから一括して申し上げますが、石油化学、アルミなどというものも、石油化学のナフサが国際的に高くて競争ができないというような問題は、これはむしろ行政不況でしょう。同じ原油を輸入して、日本のナフサがヨーロッパより高いというのは、本当は理屈に合わないわけですから、むしろその石油の価格体系の行政指導が間違っているのかもしれない。むしろこれはそうした観点で国がとらえてやるべきものだし、アルミについても同じことでしょう。アルミなんかも、これは戦略産業として、いまぐらいの規模で残すか残さないか、これはやはり政府の決断が先ですね。ですから、残すと決まれば電力の政策料金をつくるとか、そういうこと以外にはないわけですから、こういう種類のものは、むしろ政府がはっきり態度を決めてやればよろしい。  それから造船、海運というようなものですね。造船などは世界一の競争力を持ちながら世界不況の中で過剰設備を持って困っている。これは、すそ野が広い産業ですから、これの影響は非常に大きいわけです。しかし、世界不況がそう急に解決するわけのものでもない。だから、こういう期間を利用して、この競争力は維持しなければならぬわけですから、海運の方は逆に人件費が高くなってしまって国際競争力がないとい、う状態ですから、この際、思い切って古い船をスクラップ・アンド・ビルドをやって、能率のいい船につくり直すというようなことを、こういう時期にやることが景気対策にもなるし、また将来の海運の体質改善にもなる。  そのほか公害対策とかいうようなことを、この際、解決する手段にも、やる方法はいろいろあると思うのです。ですから、政府で積極的に乗り出すべきものはどんどん乗り出してやるべきだと私は思いますが、いま申し上げた問題で、もし御見解があったら簡単にお答えをいただきたい。
  30. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいまの構造不況対策におきましては、もちろん高度成長から低成長への転換の問題がございまして、このカットダウンということは重大な問題でございます。しかし、それを非常に消極的な姿においてとらえておるのではございませんで、政府といたしましては速やかに、ただいま河村さんが御指摘になりました銘柄の、あるいは平電炉、あるいは合繊、アルミ、おのおのやはり特色のある関係でございますから、その業種業種に応じた適切な姿をフォローしなければなりませんし、同時にまた経済は自由経済でございますので、政府の積極的な気持ちはありましても、直接指導という点では、まず業界の自主的な面を誘導しなければならぬ、こういううらみがあります。そこで、お話しの合繊の問題につきましても、あるいは政府が勧告操短といったように、まとまらない業態においては、やむなく積極的な指導体制に入っております。それからまた平電炉でありますとか、その他いろいろな銘柄のもので、自主的にできます面については、できるだけその促進をいたしております。  それから、いま御指摘の中で、平電炉、繊維はできておるが、なお、ほかにアルミであるとか、あるいはまた段ボールであるとか、あるいはいろいろな、まだ何も目安が立っておらないではないかというような御指摘でございます。その面につきましては、御承知の産構審、産業構造審議会におきまして、銘柄別にこの再建計画というものをただいま着々として作業をいたしておりますので、それができ次第、政府といたしましては積極的に、あるいは生産価格の調整でありますとか、あるいはまた、それに対する切り捨てでありますとか、それに対する債務の保証でありますとか、転換でございますとか、さらに労働関係の雇用の面に至りますまで、丸みをもって銘柄別に積極的な体制で進めております。  ただいま申し上げたいと存じますことは、構造不況対策を消極的な面でとらえないで、日本経済の再建という一つの大きなテーマに向かって積極的な姿においてこれに取り組んでいくという形でございます。合板の点におきましては、私の方の所管でなく農林大臣の方の所管でございまするし、あるいは造船関係その他は運輸大臣の所管関係でございます。しかし、政府といたしましては、各省ともに積極的な意図のもとに景気回復の重大な一環として取り組んでおることだけは申し上げておきます。
  31. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 合板産業、これも河村さん御指摘のように構造不況産業として、いま非常な苦境に立っておるわけでございます。昭和四十九年ころから建築の事業量が落ち込んでまいりまして、その上に、さらに業界の過剰設備を抱え、過当競争をやっておるというようなことで、ますます合板企業は大変な事態に相なっておることは御指摘のとおりでございます。  そこで政府としては、中小企業信用保険法でありますとか、雇用保険法でありますとか、あるいは中小企業事業転換法でありますとか、そういうものの指定業種にいたしますと同時に、政府関係の三金融機関の融資の面につきましても特別な配慮を行い、さらにまた中小企業団体法に基づきます不況カルテル、これを数次にわたって適用をいたしてまいったわけであります。ところが、その不況カルテルをやっております間は、やや価格等も安定するのでありますけれども、期限が切れますと、また同じような状態になっておる。十月から、さらに六カ月間この不況カルテルを認可することにいたしておりまするし、農林大臣の事業活動規制命令も発動するというような措置も講じております。  しかし、本質的にはやはり過剰の設備を抱え、過当競争をやっておるというところにございますので、業界を指導して、その構造改善、体質の強化ということをいま進めております。幸いにして業界内部でも、ようやく機運が熟してまいりまして、若干の問題が残っておるようでありますけれども、大体一二%程度の、この際、設備の廃棄をしようという方向に向いておりますので、政府としても、これを十分バックアップをいたしまして、業界の体質強化、構造改善に最善を尽くしたい、このように考えております。
  32. 河村勝

    河村委員 雇用関係をお尋ねしたいと思いましたけれども、時間の関係がありますから一言だけお願いしておきます。  きのうの答弁で、離職者対策は、政府の方では既成の法律の運用でできると思うが、あなたは国会の御自由だというような話でございますから、われわれとしては離職者対策、特定産業についても、それから特に漁業関係ですね、これは雇用保険法の適用も受けない、船員保険法の適用も受けないというようなものもありますので、これは現行法でやれるとは思いませんが、こういうものは、われわれの方でやることにいたしましょう。ただ、これからが本当は雇用安定の正念場ですからね、長期で考えてほしいということ。だから、その雇用安定資金関係のものも出向給付は一年見てありますが、そのほかの給付はみんな半年ですね。だから、これはやはり、まず企業内で、ほかの給付についても一年は抱えて、それで、あとまた離職者対策でさらにつないでいく、どうしてもそういう考えでいかなければならないと思いますので、雇用安定資金の運用についても、出向給付だけではなしに、ほかの給付についても百五十日ぐらいの期間の延長、これはぜひ考えてほしい。これを一言だけ。
  33. 石田博英

    ○石田国務大臣 雇用問題は、これからが正念場だということは私どももよくわかり、覚悟をいたしております。ただ、雇用安定資金という制度は、この十月に発足したばかりでございます。しかも、その運営に当たっては中央職業安定審議会で関係労使の合意を得て決まったものでございます。まだスタートをしたばかりでございますので、そのスタートの様子を見まして機動的に善処をいたしたいと考えております。
  34. 河村勝

    河村委員 公定歩合の引き下げの関係で一つだけお尋ねをしたい。これは大蔵大臣ですね。  先般、政府の構造不況業種対策の一部になっているようですが、新しい契約の分の利下げは当然ですが、政府関係金融機関の既契約分の利子を下げる指導をされるということを聞いております。どうも聞くところによれば、それが非常にわずかであって余り効き目がなさそうだ。中小企業金融公庫からの貸し付けを受けている中小企業というのは、これはいわゆる構造不況業種だけではなくて、やはり循環的な不況で、かなり苦しんでおります。しかも政府関係金融機関の対象としている中小企業というのは、相当厳しい調査をやって、その上で担保も取って貸しておるところですから健全経営。しかし、何しろ二次下請以下が多いですから、構造不況業種のみならず、減量経営の過程で二次下請以下に下請代金を非常に切り詰めるわけですね。その上に長期の手形。ですから健全経営をやっていながら、資金繰りで黒字倒産する面が非常に強い。ですから、いわゆるその構造不況業種に限定せず、かつ九%以上のもの云々という話がありますけれども、政府が少し金の手当てをしてでも、この際、八%見当まで既契約の分を下げてやる、これが私は必要なことだと思うのですが、大蔵大臣いかがですか。
  35. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  今度の金利水準の引き下げに当たりまして、政府関係金融機関の既往の金利について、もっと下げたらどうだ、こういう御意見でございますが、すでに御案内のとおり、これは通産大臣が指定する不況業種の中で、一生懸命やっておるけれども赤字でもって苦しんでおるというようなところに対しましては、既往の九%以上の金利に対しまして大体の引き下げは八・九%までいっておりますけれども、中小企業に対しましてはさらに〇・三%引き下げるということで、八・六%ということにしておることはすでに御承知のとおりでございますが、それにつきまして、いま九十二業種というものが適用されておるが、もっとそれをふやしたらどうだ、それからまた、赤字で苦しむといったようなものでもなくても、それに対して枠を取っ外したらどうか、こういうお話でございます。     〔田中(正)委員長代理退席、細田委員長代理着席〕 そういうことにつきましては、あるいはケース・バイ・ケースでいろいろな話し合いが債権者と債務者の間にやられるかもしれませんが、一般的にはこれをやるということにつきましては、やはり政府関係の金融機関に対しましては、利子の補給、それから政府の出資といったようなものもあるわけでございまするから、その資金には、これは早い話が国の税金というものがいっておるというようなことから考えますと、黒字の経営をまだやっておるというようなところへもっていって、そういったようなお金を持っていくというようなことになることは一体どういうことかというような考慮の余地があるということで、今日のところはそこまでいっておりませんけれども、今後いろいろなことにつきましては、いまはさように考えておりませんが、また必要に応じてはいろいろなことが考えられることもあるかもしれないということでございまして、現在のところはそれをやっておりません。
  36. 河村勝

    河村委員 それじゃ困るのですね。赤字を出さなければだめだというのは常識に反するので、それはみんな赤字を出せばすぐ銀行との関係がまずくなりますから、だから苦しくても何とか黒字までいかなくてもとんとんにはするんですよね。努力してとんとんにしたら利子はまけてもらえないというのじゃ、これは理屈に合わないのですよね。ですから、実際に実態をごらんになればわかるんです。いま二次下請以下の中小企業の請負金額の切り詰められ方、それの手形の長さ、そうした実態に即してやらなければ生きないですよね。本当にいまこの大事な時期に本当に健全経営をやっている中小企業をつぶしたらだめですよね。放漫経営で倒れていくのはやむを得ないけれども、本当に一生懸命やって先行きの見通しもあるのに単なる資金繰りで倒れるというようなことがあっては、これは政治の貧困だと私は思いますよ。ですから、そういう事務的な答弁ではなくて、政府で資金手当てをしてももう少し幅を広げかつ下げ幅を広げてほしい。いかがですか。
  37. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御意見はよく承っておきます。
  38. 河村勝

    河村委員 御意見を承られただけじゃ何にもならないのですよ。総理、いかがですか。これはほんのわずかな心遣いで本当に生きてくる政策ですよね。大蔵大臣の職分は侵せませんか。
  39. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 なかなか手がたい大蔵大臣であります。  過去の金利問題につきましては、非常に慎重な態度をとられておったわけでありますが、それは理由があるのです。     〔細田委員長代理退席、田中(正)委員長代理着席〕 預金金利の引き下げ、これはいままで預金をしておるというものには触れないわけで、新しい預金から新しい低い金利になる、それと見合う貸し出しの方の金利でありますから、そう無原則に貸出金利の引き下げの方を過去に遡及するということはできないことはきわめて明瞭でありますが、そういう中におきまして、やはりいま大蔵大臣が申し上げたとおり、中小企業対策はそういうような見地から必要なものだけを取り出しまして特別のことをやろう、こういうようなことで精いっぱいのことはやっておる、こういうふうに私は理解しておりますが、一つ一つのケースにつきましては、これは貸し出しの条件全般にわたりまして弾力的な運用をしたい、そういうふうに考えます。
  40. 河村勝

    河村委員 ここで決断ができなければやむを得ませんけれども、これはもう少し実態をよく研究をされて、それで生きた施策にしてほしい、これは要望をいたしておきます。  少しテーマは飛びますけれども、行政改革の問題をお尋ねをいたします。  総理は行政改革を主たる公約の一つにされておるわけですね。ところが先般、中央省庁の統廃合でちょっと一とんざした。先般発表された政府の決定をされた「行政改革について」という閣議了解事項というのは、これはもう単なる作文ですね。こんなものはいままで何遍もつくられて、さっぱり実行されたことはない。もう行政改革については何遍も何遍も審議会や何かの答申が出て、中身はわかっておるのですね。あとは実行だけなんです。決断だけですね。一体本当におやりになる気があるのかないのか。きのうからおやりになるとおっしゃっております。しかし私は、総理のあの手のつけ方、行政改革に非常に疑問を持っているのですよ。機構いじりから手をおつけになった。機構改革というのは機構の縮減、定員の削減。念のために申し上げておけば、すぐ解雇するというふうにとられやすいけれども、やはりまず定員を減らして、減耗不補充というようなことで逐次減らしていく。いずれにしても国の経費が節約にならなければならない。それがいま国全体を挙げて非常な減量経営をやっておるときの国の責任ですね。ですから、そういう行政の減量経営につながらない行政機構改革というのはナンセンスだ。  ところが総理は、国土庁と何とかを合併してエネルギー省をつくるとか、すぐつくる方が先に来ちゃったんですね。だから、私は総理の意図というものが非常に疑わしくなってきた。機構というのはなくすもの、縮減するもの、それをまず決めて、それで新しいものをつくるというのは後のことでよろしいんです。大体行政機構というのはいじり回して余りいいことにはならないんですね。やはり縦割りでできた役所の機構というのは、これをエネルギーとかなんとかいって横割りにすうっと抜こうとしても、だるま落としみたいにすうっときれいには落ちなくて、それをやるとまたマイナスの面もいっぱいあって、結局差し引きゼロで、ごたごたしただけマイナスだという結果が多いわけです。ですから、新しくつくる方は慎重でなければならない。まず減らす方から先にいかなければいけないんですね。その点が私は、総理の決意というものが、いままでの経過を見ますと非常に疑わしいと思っている。いかがでございますか。
  41. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 行政機構問題につきましては、九月の初めに政府の考え方を発表しておりますが、これはお読みになってくださったんだろう、こういうふうに思いますが、この発表には政府の行政機構の考え方をまず明らかにしているわけです。行政機構というものは高度成長下に非常に膨大化した。これの整理という問題が差し迫ってある。いま世界じゅうの社会経済環境というものが変わってきて、それに、変わった環境に各分野で対応を迫られておるわけなんです。わが国においてもしかり、構造不況産業の転換問題なんというのは非常に顕著な例でございますが、とにかく経済界におきましても大変な努力をしておる。そういう際に、政府、地方公共団体が旧態依然、高度成長体制でいいのかということが行政改革の出発点でございます。でありまするから、二つ結論としてはあるわけであります。一つは、スクラップ・アンド・ビルドというか、環境が変わってきたことへの対応という行政機構の問題、そういう側面、それからもう一つは、ふくれ上がって国費の負担につながっておる、そういうことを考えて、冗費節約というかそういう効果を上げる。この二つがねらいどころになってくるわけでありまするが、そういうことを踏んまえまして、そしてどういうことをやっていくのだということになりますが、その問題点は六項目に分けまして当時これを明らかにしておるわけであります。中央省庁問題、これはとにかくちょっと影が差したというだけであれだけの騒ぎが出るのですから、なかなか処理するのが容易なことじゃございません。ですから、これは別途検討だというようなことにしてありますけれども、その他の問題につきましては、いま行政管理庁それから大蔵省また関係各省、これが相協力いたしまして具体化の成案を急いでおる、これは着実にその作業が進行しておる、こういうふうに御理解願います。
  42. 河村勝

    河村委員 私ども民社党としましては、行政改革についての提案というものを政府に行っております。ごらんいただきましたか。
  43. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 拝見いたしました。
  44. 河村勝

    河村委員 中央官庁の統廃合ももめたのは、どちらかと言えばビルドの方でもめたんでしょう。ですから、なくす方はそんなにもめるはずがないですね、これはもうなくすだけのことですから。ですから、あちこちから抜いたり入れたりして何かやろうとするから問題が起きる。だからなくす方を先にやればよろしいわけですね。国土庁、北海道開発庁、沖繩開発庁、まあ沖繩、北海道の場合はもう完全な二重機構ですし、国土庁も、おられるときに本当に失礼な言い方だけれども、四十九年に国土利用計画法ができた当時にできたけれども、別段一省つくらなければならない切実な理由はなかったはずですね。ですから、いまやっている仕事がむだなことをやっているという意味じゃありませんよ。新しく役所をつくるということになりますと、管理費の増大というのは大変なんですね。ですから、中央官庁においては、まずそういうものを節減するのが一番肝心でありまして、だからなくす方を先にやったらよろしいのです。いかがでありますか。
  45. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そのなくす方が大変なんです。この問題は重要な問題であるので、私も各界の人また各政党の皆さんからいろいろ御意見も承っておるわけでありまするが、恐らくなくす方に対しましてはかなり御異論があるのじゃないか、そういうふうに思います。新しくつくる方につきましてはむしろ賛成する人の方が逆に多いのじゃないかというくらいに感ずるのでありまするが、しかしあえてなくす方もする、こういうことにしなければ、これはまた私が先ほど申し上げました高度成長下の膨大化された行政機構等の改革というその趣旨にそぐわない、そういうものだろう、こういうふうに思いますので、やはりスクラップ・アンド・ビルド、これは両方相並行して進むということになり、その間において冗費の節約という実を上げる、こういうねらいでなければならぬような感じが私はします。
  46. 河村勝

    河村委員 そうおっしゃっておったのじゃ行政機構改革というのはできないです。やはりいま私が三つ例に挙げましたけれども、いずれも新しいもので、それぞれ親元があるわけです。そこにおられる職員の方々は帰るところはありますから、原省に復帰すればよろしいわけで、それほど私は問題があるとは思わないし、だからこれは政府の決断でできることだと思うのです。それはなくされる当事者にとっては、何か要らない仕事をしているように思われますから、抵抗があろうと思います。しかし、仕事そのものがいい悪いの問題ではなくて、省庁を独立させるということに非常なむだな経費があるから、だからそれをやめろというのが行政機構改革の趣旨ですね。ですから、私はぜひそこまで踏み切っていただかなければならない、そう思うのです。  それから、ここでもって申し上げたいのは、役所の場合、中央官庁は古い歴史を持っておりますし、定員の逐次削減というようなこともあって、私はまずそうむだな人間を抱えているとは思わないのです。ただ地方の出先機関、これは人数でいいますと全体の国家公務員の三分の二が地方機関であります。これもいろいろ言い出しますとたくさん問題がございますが、地方のブロック機関、通産局とか財務局とかいうそういう種類のものですね。戦前の昭和十、十一、十二年、要するに戦時体制に入る前の日本の戦前の一番バランスのとれていた時期、この時期になかった出先のブロック単位の機関というものは、これは私はなくしてもよろしい、なくすことができる、そう考えているのです。あのころは、たとえば大蔵省でも税務監督局しかなかったのですよ。財務局というのはないのです。通産省も鉱山監督局しかありません。運輸省は陸運局、海運局ともにないですね。鉄道局だけですか。それから農林省は営林局だけ。だから皆数え上げますと、大体現業をやるところ以外にはほとんどないのです。ところが、戦争中になぜできたかというと、戦時統制立法を執行するため、それともう一つは、戦争中いろいろ交通通信が不便になるというようなことでできたものが大部分ですね。ですから、戦後になったらこれは廃止すべきものだったのです。ところがなぜ残ったかというと、これは多分地方自治体に対する不信感なのでしょうね。それで残しただけでなしに、逆に強化をしてしまった。管区警察局なんというのはその後に新しくできたりしております。ですから、こういう役所というのは一遍全部なくするのだという前提に立って、それでおやりになる、それが私は行政改革の一番有効な結果を得る道だ、そう思いますが、いかがでございますか。
  47. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 行政改革のかなめというか、その一つは私はやはりいわゆる出先機関、こういうことにある、こういう認識においては私は河村さんと全く一緒でございます。ただ、その改革を戦前の昭和十年ですか、あの辺のところまで持っていくかと、こういうことになりますと、これはなかなか私は現実的じゃないと思うのですよ。  と申しますのは、行政がかなり細密というか、きめ細かなものになってきておる、中央だけで全部これをこなせるかというと、これは戦前の状態とは非常に違ってきておる、そういう感じがします。しかし、逆に交通、通信、こういうような関係におきましては、戦前と大変違いまして、いま中央と地方との関係、連絡が大変迅速に動くような状態になってきておる、そういうふうに思いますが、漸を追うてじゃないかと思うのです。そう急に戦前の状態まで、これは言うべくしてなかなか実現はそう簡単ではない、こういうふうに思いますが、いまとにかく一つ一つこの問題は処理する、こういうことで行政管理庁が中心になりまして具体案の詰めに移っておる、こういう最中です。お気持ちはよくわかりまするけれども、どうも一挙にそういうようなことまではというような所感でございます。
  48. 河村勝

    河村委員 実際はその辺に手をつけませんと、本当の行政機構改革というのはできないのですね。  大蔵省は、一人二役ではないが、歳出を大いに節約しようという立場において、行政改革は大いに推進してもらわなければならぬ立場ですね。同時に、される方の側、行政改革の対象にもなる。あなたは財務局、あれはなければ仕事はできないと思っておられますか。
  49. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答えを申します。  大変重大にしてむずかしい問題でございますが、大蔵大臣は、いま御指摘いただいたように、国庫大臣と各省大臣と申しますか、この両方に足をかけておるという立場もございますけれども、さようなことを抜きにいたしまして、現在ある財務局、これは昭和十一年ごろにはおっしゃるとおり税務監督局というものがございまして、それで国税の件とそれから金融及び管財といったようなものを一つでやっておったわけでございますが、その後、あれは戦争時代に戦時体制において統制をするために二つに分けたのだ、こういうお話でございますが、あるいはきっかけはそうであったかもしれませんが、そうでなかったかもしれません。戦後、非常に行政の分化というものが、いま総理がお答になりましたように、複雑にして細かくなってきておるというようなことで、現在二つになっておることば、これはもう全然、あれ二つを一つにしていいものだというふうには、私は国庫大臣としてもそこまでは考えておりません。と申し上げますことは、財務局の仕事というものが、これは地方ブロックにございますけれども、それぞれ地方的色彩を持った行政ということでなくして、全国の統一的な考えに基づいて、これは北海道の財務局も九州の財務局も近畿の財務局も、地方的色彩ということよりも、全国的な、全体的、総合的な観点に立ってやっておるというようで、しかも大変な複雑にしてきめの細かい仕事をいまやっておりますので、今日行政整理をやるということに際しまして、これをひとつもとの税務監督局のように国税局とそれから財務局とを一緒に統合したらということに対しましては、ちょっと踏み切りかねるように考えております。
  50. 河村勝

    河村委員 それは理屈は、どうせやめてもよろしゅうございますという返事があるわけはないので、ここで聞く方が無理でしょう。しかし、余りないのですよね、どうしてもやらなければならぬ仕事というのは。たとえば財務局で言えば、金融機関の監督といえば信用金庫の監督だけでしょう。信用組合は府県だし、地方銀行以上は中央ですね。信用金庫はどっちにくっつけてもいいんです。地方にくっつけるか中央にくっつけるか、そういう種類のことが多いんですね。おまけに中央というのは、権限を局に渡したかのごとくであって、実際はなかなか本当に任せませんで、ちょっと大事なものは局では片づかないで、本省までみんな来るんですよ。ですから、実際これだけ交通、通信網が発達し、特にコンピューター時代に入って、私は中間にある意味というのは余りないと思うんですよ。だから、中央と地方に分かれればよろしいんです。どうもそこに働いておる方には非常に耳ざわりかもしれませんけれども、やっておることが無意味ではない。ないけれども、どうしてもなければならぬかと言えば、そうでもないのであって、そういう絶対的な理由がなければやめないんだと言い出せば、これはやめるものはありませんよ。これは相対的なものです。ですから、費用対効果の問題ですね。だから、置いておくことによる効果と置いておくことによる費用のかかり方と、これを比べて、費用の方が多いと認められるものは、これはやめるというふうに考えなければ、それはできませんね。そういう考えでぜひおやりをいただきたい。  公社、公団も同じでございます。これは私は提言の中で、鉄道建設公団と宅地開発公団を例として挙げたものですから、非常に両公団からしかられましたけれども、しかし別段これはその二つが特にどうだということじゃなくて、総裁、副総裁以下そろって、わりと人口に膾炙しておるところを代表として選んだだけであって、実際はこの二つは、仕事はどっちかと言えばしておる方だと思います。だけれども、まあ要らないんですね、やつ。まり。  宅地開発公団ができたのは、これも列島改造論に便乗ですね。あれは宅地開発は、道路公団の宅地部にやらせればよろしいんですよね。それを宅地公団をつくった途端に総裁、副総裁、理事何名、部長何人ということになるわけですから、その管理機構に要する費用は年間二十億は超えるでしょう。鉄道建設公団にしたところが、いまは青函トンネルその他新幹線の仕事とか、仕事の内容はこれは大事なことをやっております。しかし、これも鉄道建設公団でやらせなければならぬかと言ったら、これは別の問題なんですね。もともとあれは、国鉄に置いておくと赤字ローカル線をちっともつくらないから、だから公団をつくって、そこで赤字線をつくろうという目的でつくられたものですね。でき上がりますと、これはやはりパーキンソンの法則というものがございまして、役所というのは、公団も同じですが、つくれば仕事がふえてくるんですね。それで今日に至っておる。  しかしこの二つは、まだ仕事がある方です。もっとお洗いいただければ、公社、公団は、これも一応全部なきものとして、そこからスタートしてお洗い直しになれば、費用対効果考えれば、本当に管理機構に要する費用というものはばかにならないものでして、公団で総裁、副総裁、理事を置けば、これはそれに伴った付属人員も要りますから、いまここで計算したものはございませんけれども、それだけでも十五億を下るというものは私はないと思いますね。そういうふうにお考えをいただきたい。いかがでございますか。
  51. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 考え方におきましては、私の考え方とあなたの考え方、少しも違いはありませんが、さてこれをどういうふうに実行するかということになると、相当これは困難な問題ではあるのです。しかし、行政機構の改革、その一つのかなめといたしまして公社、公団の問題をどうするか、こういうことは当然かなめとして考えられなければならぬことである、こういうふうに考えております。いま行政管理庁でどういう処置をずるかということにつきまして鋭意検討をいたしているという最中でございます。
  52. 河村勝

    河村委員 行政改革の中には補助金等の整理の問題も当然入ってくるのですが、補助金の問題を議論しますとなかなか時間がかかりますが、とにかく十兆弱に上る補助金、一般会計の三分の一を占めるものですね、これにやはり手をつけませんと歳出の合理化はできませんね。鋭意おやりになっているのだと思いますが、これもやはり一遍洗い直して、ゼロからスタートしないとできない問題だと思います。ですから、どうでしょうか、五十三年度五%削減、そのくらいを達成するという決意でおやりになったらいかがでしょう。
  53. 坊秀男

    ○坊国務大臣 行政整理の一環として補助金を削減していくということは、私どもも非常に重要な問題である、かように考えております。そこで、すでに、補助金はどうしても一遍洗い直していかなければならないというような見地に立ちまして、ことしの夏から主計局を中心といたしまして、全部の補助金に取り組んで、これを検討いたしておる次第でございます。結局は、予算編成に際しましてこれの結論をつけてまいりたい、かように考えておりますが、一つ申し上げておきたいことは、これは決して後ずさりをしているというわけではございません。ただ、問題が重要な問題だけに申し上げておきたいのですけれども、いまおっしゃられた五十二年度のベースにおきまして総額九兆六千五百億、三分の一の補助金総額でございますが、その補助金の内容を申し上げますと、大体社会福祉だとか、それから文教、科学技術、それから公共事業といったような面に対する補助が全体の八三%ございます。それからそういった補助金が裏づけされておるのが、法律と法律によらざるものとがございますが、法律によるものが八四%ございます。そういったようなものの整理でございますので、これはどうしたって国会の皆さん方に御協力と御理解をいただくことが何よりも大事なことでございますが、そういったものに向かいまして懸命に取り組んでおるということでございます。ぜひ私どもも一大決意をもって本当にこれを洗い直していかなければならない、かように考えておりますので、結果がどういうことになりますか、おっしゃられるように五%といったような、初めからそういうふうに決めて、それに向かってこれを実現していくということにつきましては、方法論といたしましてはやや私はむずかしいことであろうと思いますが、全力を挙げていまこれの作業をやっておるところでございますので、何とぞひとつ御理解と御協力のほどをお願い申し上げる次第でございます。
  54. 河村勝

    河村委員 これも本当にむずかしい仕事です。やはり文教だ、福祉だ、公共事業だ、それぞれみんな有力な理由があるわけです。だけれども、それもやはり発想を変えませんとなかなかできないと思うのです。例として適切かどうか知りませんが、学校給食に対する補助、これなどは当然のこととして恐らく皆さん受け取られておるであろうけれども、これでも本当に分析をしてみますと、施設や器具の補助なども一食当たりにすると二円五十銭ぐらい……
  55. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 河村君、時間が参っておりますから簡潔にひとつ……。
  56. 河村勝

    河村委員 まだあるよ。おかしいじゃないか。
  57. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 間違えました。すみません。
  58. 河村勝

    河村委員 一食当たりにすれば二円五十銭ぐらいです。そうすると、一体一食二円五十銭の補助を受けて家計のどれだけ助けになるであろうか。合計すれば百億ぐらいになるわけですね。それから貧困家庭に対する援助というのがありますが、これは全世帯の五%ぐらいに対して給食を無料にしております。しかし、本当に五%も貧困世帯があるのだろうか。ある村では郵便局長を除いて全部貧困世帯で、学校給食を無料にしてもらっているなんというのもあるのですね。だから、申告制度でこういうものをやっているのではやはりむだもあるし、一方で児童福祉手当とか保護家庭に対する手当もある。そういうものを総合して考えないと、こういうところも矛盾があるのではないか。だから、学校給食のような大事なことについてさえ、分析をしてみるとやはり私は疑問が出てくると思う。そういうようなつもりで補助金の整理というのは取りかからないと、結局ほとんど何にもできないのじゃないか。いかがでございますか。
  59. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  いま御指摘になられましたような、補助金の中には今日もうすでにその補助金としての役割りをまずまず果たしたというものだとか、あるいは今後これは諸般の事情から削ってもいいといったようなものも、しさいにこれを検討してまいりますれば、ある程度はあると思いますが、いまとにかく主計局でこれを鋭意検討中でございますので、どういった経費をどういうふうにやめるとかあるいは削減するとかいうことをここで申し上げる段階にはなっておりません。とにかく一生懸命にその作業はやっております。
  60. 河村勝

    河村委員 この行財政改革というのは大変な仕事でございますけれども、しかし、今後増税時代を控えて、やはり国民に納得して増税を受け入れていただくためには、国はこの辺から思い切って手をつけていきませんと、なかなか増税というものは受け入れがたいものになるであろう、そう思います。ぜひともひとつ勇断をもってやっていただきたい。最後に要望しまして、時間ですから終わります。(拍手)
  61. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 これにて河村君の質疑は終了いたしました。     午後一時再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  62. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  一言ごあいさつを申し上げます。  先ほどの議院の本会議におきまして、予算委員長に選任されました。まことに職責の重大なることを痛感する次第でございます。  ことに、ただいまは重要なる補正予算の審議中でございますので、委員各位の御協力によりまして、この重責を全ういたしたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  63. 田中正巳

    田中委員長 この際、理事補欠選任についてお諮りいたします。  ただいま理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  これは先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたします。  それでは、小此木彦三郎君を理事に指名いたします。     —————————————
  65. 田中正巳

    田中委員長 質疑を続行いたします。荒木宏君。
  66. 荒木宏

    荒木委員 九月の二十七日のことでありますが、米軍のファントム機が横浜の市街地に墜落をいたしました。小さい坊や二人の死亡を含めて、重傷者が三名、軽傷の方が四名、大変な被害が発生しました。重傷の方は現在もなお病床で苦しんでおられますが、私たちは早速お見舞いをいたしました。そういたしますと、被害者の方が一番最初におっしゃったことは、現場に来た海上自衛隊のヘリコプターはなぜ米軍を助けたのですか、そういう話があったものですから、私たちも早速調査をしたのです。なるほど被害者の方がおっしゃるのはもっともだ、こういうふうに思いました。  米軍機は墜落したのですが、乗っていた米兵はパラシュートで降下しました。ここに、パラシュートでおりた米兵と、それから小さい子供さん、それからそのお母さん、御婦人方を含む市民の被害者がある。こちらは加害者ですね。一方は被害者である。米軍の方は、言うまでもなく屈強なソルジャーです。市民の方は、いたいけない一歳半と三歳の坊や、それから御婦人方なんです。米軍の方は人数が二人で、しかもこれはほとんど無傷なんです。おりて、自分がつけていたパラシュートを肩にかついでヘリコプターの方にやってきたというのですから。市民の方はもう大変な重傷で、その後二人亡くなられた。しかも米軍の方は、先に別の米軍ヘリが現地へ行っているのです。地上十メートルくらいのところまで降下をしまして、大丈夫か、元気だ、こういう確認までしたというのですが、一方、海上自衛隊のヘリは消防署に火災の連絡もしなかった。  私は防衛庁の長官に伺いたいのです。なぜアメリカの軍人を、それも無傷の加害者である人を先に助けたのか、被害者、市民の皆さんにどう申し開きをなさるか、これからどういうふうな手だてをとろうとしているか、説明を聞かせていただきたいと思います。
  67. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  まず、お答えをいたします前に、大きな犠牲を出しました事故に対しまして、心から弔意を表しますとともに、お見舞いを申し上げる次第でございます。  そこで、先生からの設問でございますなぜ米軍を助けたか、そして現地には大変な事故を起こしておったではないかという点がございます。  実は、海上自衛隊の救難ヘリが離陸いたします時点からのことを少し申し上げてみたいと思いまするが、事故が起こりました通報を受けましたのは、まず緊急事態になりました事故機から、緊急事態の通報があっております。それと相前後いたしまして、上空を飛んでおりました米軍のヘリから通報があっております。なお、管制をいたしております横田基地から、やはり相前後して通報を受けておるわけでございます。そこで、厚木の海上自衛隊といたしましては、すぐ緊急事態対処の発令をいたしておるわけでございます。  そうしたことでございまするが、そこでなお、上空を飛んでおります米軍ヘリから、この地点で事故機が墜落をしたというような通報に接したわけでございます。それを得て、緊急発令をいたしまして離陸をさして、海上自衛隊のヘリコプターを救難に発進をさしておるわけでございます。それは一時二十三分と承知をいたしておるのでございます。そして三十分ごろ、海上自衛隊のヘリは現地の上空に飛んでおるわけでございまするが、その際に、現場の状況を視認をいたしております。なおまた、その際に、上空を飛んでおります米軍機から、事故機の落ちました地点を連絡を受けております。したがって、海上自衛隊のヘリは、その乗員が墜落をいたしました時点でこれを収容して、それが約一時五十分ごろでございますが、厚木に帰投いたしておるのでございます。したがいまして、自衛隊がとりました処置につきましては、私がいま申し上げましたように航空事故に対しまする救難措置を行ったものと思うわけでございます。  しかし、ここでいま先生が御指摘になりましたように、地上においてはそうした非常に悲惨な事故が起こっておるのに、なぜそれの処置をしなかったのかという点でございます。この点につきましては、私どももいま御指摘の点については、その状況を十分反省をいたしておるのでございまするが、航空救難に出向きました海上自衛隊機につきましては、いま申し上げましたような航空救難の処置に出ておる。その後帰途において、上空において現地の救難活動が進められておるということを視認をいたしてまいっておるわけでございまするが、それにしても、私どもといたしましては、なぜ一応そうした救難処置をして帰投、着陸をしたならば、もう一遍引き返していくことをやらなかったのか、あるいはまた、厚木におりまする部隊にいたしましても、十八キロございまするけれども、その十八キロが遠かろうと近かろうと、そういうことは問題なしに、やはり現地に救難に赴くべきではないかというようなことも反省をいたしておるわけでございます。したがいまして、現地においては非常な事故が発生いたしておるのに、海上自衛隊の救難機としては処置が適当ではなかったのではないかといういまの御指摘については、いま申し上げまするような、やったことについては万全の処置はいたしておると思いますけれども、そういった点について、反省事項として私どもはこれを指摘をいたしてまいっておるわけでございます。  なお、米軍ヘリがその上空を飛んでおったならば、なぜそうした処置をしなかったかということにつきましては、米軍機は武装ヘリでございまして、乗員を乗せる余席を持ったヘリではございません。そういうところに問題が一つあったと思うのでございます。  そうしたような事情でございまして、結果的に見ますれば、私どもとしては十分反省しなければならない事態であったということは承知をいたしておるところでございます。
  68. 荒木宏

    荒木委員 私は、いま指摘をしました事態がどういう事態であるかということを、政府の皆さんにもよく知っていただきたい。表にしてまいりましたから、委員長のお許しをいただいて提示をしたいと思いますが、これがそのときの米兵の状態と、それから置かれておった小さい坊やと市民の状態なんです。先ほど私言いましたが、片や加害者で片や被害者でしょう。片や火ぶくれで重傷で時期を失すれば命が危ない、片方は屈強な人たちでほとんどけがはなかったというのです。どちらを助けたか。いま説明ありましたけれども、常識的に考えて、その事の理非、結論は私は明らかだと思うのです。  さらに問題は、この被害者、重傷者五人が、近所の市民の人によって病院へ運ばれたのですが、町の病院に収容された、突然のことですから。大変な三度以上のやけどの重傷の人が五人一度に町の病院に収容された。これはジェット燃料のやけどですから、普通のやけどとは違うのです。皮膚だけが焼けるのじゃなくて、中の筋肉まで焼けてくる。これはなかなか一般の町の病院の手当てでは、そこまで十分手が回り切れない。ですから、小さい坊やは、私も被害者の皆さんにお話を伺いましたが、全身包帯をされて、痛がって暴れるものですから、手や足をベッドにくくりつけて、それでも痛いものだから、のけぞって水が欲しい、水がいけないというならジュースでも欲しい、こう言い続けて、その日の夜の十二時ごろに上の坊やが亡くなったのです。続いて明け方の四時ごろに、今度は下の坊やが息を引き取った。お父さんのお話なんですが、あんなに水を飲みたいと言っていたのなら思う存分飲ませてやればよかった、こう言っておられましたけれども、やけどの手当てに一番大事な最初の二十四時間、私は専門家の皆さんに聞きましたが、なかんずく初めの六時間が決定的だというのです。そのときに防衛庁の皆さんや国の皆さんが、どうしていま苦しみと闘っておる、何とか生きようとしている小さい生命に援助の手を差し伸べようというふうにされなかったのか。後から果物や何かを持ってきてもらいたくない、こういうふうなお話だったのですが、私、そのとおりだと思うのです。  それで調べてみたのですが、先日できました防衛医大、これは所沢にありますが、ここには皮膚科で権威の先生がいらっしゃる。世田谷には防衛庁の病院もありましょう。ジェット燃料を扱っているものですから、まさかのときのその道の権威の方がいらっしゃるのです。先ほど言いましたこの対比をごらんいただいてもわかると思いますが、自衛隊の最高指揮官は総理ですから、私は、総理からこの事態についての御意見を伺いたいと思うのです。
  69. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 総理のお答えの前に、私から具体的な点についてお答えをいたしたいと思います。  先ほど来は海上自衛隊のヘリの行動についてのお尋ねでございましたから、現場の状態に触れませんでした。いま先生御指摘のように、非常な被害でございまして、現地におきましては、私の方の防衛施設庁並びに横浜施設局が早速はせ参じて応急の処置をいたしておるわけでございます。しかし、その処置等につきましても、私は海上自衛隊についての反省を申し上げましたが、いま御指摘のような点等から、細かく私自身も最善の努力をしておるけれども、皆さん方の意向を聞いてみると、万全の措置という点においてはやはり幾多の欠けた点はなかったか、非常な被害があり、草草の間でございまするので、できるだけの処置をしたと言うけれども、その点において抜かりはなかったかというようなことも、私は翌日の午前中に参りまして、処置をお尋ねをしたり今後の対策等もいたしたのでございます。  そういう点で、現地の防衛施設局なり施設庁はそのときの処置をいたしました。現場のことにつきましては、第一次的には警察並びに消防の国家機関が参加を願っておったわけでございまするが、聞きますれば、当然すぐ、いま申し上げまするように防衛庁の担当機関もはせ参じてまいっております。  なお、いま申されました医療機関の問題でございます。とりあえずは、警察あるいは区長さん方の処置によりまして救急病院に入れてもらい、一方においては昭和医大の付属病院に御収容願っておったのでございます。そこで、私といたしましては、現場に参って、こういうおけがをなさった方については、医者が足りませんので、すぐ私は自衛隊病院から医師の派遣を要請をいたしました。翌日の午後には自衛隊から参らせました。なお、それ専門の隊医もおりますので、私は防衛医科大学の方から、非常な距離はございますけれども、一佐でございまする隊医を派遣することに処置いたして帰ったのでございます。そうした処置をいたしたのでございます。
  70. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今回の米軍機墜落事件、それによりまして市民の中に生命を失う者、また傷つく者、また財産を失う者が多数出ましたことはまことに残念しごくでございますが、ただいま防衛庁長官からも申し上げましたように、この事態に対する措置がどうであったかということをよく検討いたしまして、そして今後は過ちなきを期してまいりたい、こう申しております。  政府といたしましても、いま防衛庁長官が申し上げましたような立場に立ちまして今後に対処してまいりたい、かように考えます。
  71. 荒木宏

    荒木委員 防衛庁の長官は最善を尽くしたと言いますが、しかし、この事故のあったその晩は、町の病院では当直の医者は一人ですよ。入院していた患者さんは十数人おるのです。そこへ重傷の人がどっと担ぎ込まれたのです。ついていた看護婦さんはアルバイトだといいますよ。一番大事な初めの六時間、さっき言いましたね、その晩をどう越すかといっているときに、皆さんはどうしたのですか。私はそのことを考えますと、普通の人なら、もっとできるだけの手当てをしてあげればよかった、これが人情じゃないでしょうか。やることはやりましたと、自分の方のその責めをかばう言葉だけが先に出るというのはいかがなものでしょう。私はそうした点から、現地で関係者の皆さんのお話も伺い、このことについてはこれからまだまだ政府に対して要求もし、見届けていかなければいかぬと思いますが、いま政府の話がありましたから……。  さらに重大な問題を指摘したいと思うのですが、問題はその米兵の裁判がどうなるかということです。果たして裁判にかかるんだろうか、それとも有罪になるのか、あるいは無罪になるのか、責任の所在はどうなるか、こういう問題であります。  いままで米の軍用機の墜落事故がありまして、昭和三十九年の四月五日ですが、これは町田市に墜落事故があって、四名の方が亡くなりました。同年九月八日には大和市に墜落事故がありまして、これは五名の方が亡くなっております。  警察は捜査したのですよ。業務上過失致死だというので捜査したのです。ところが、検察庁に送ったら、これは第一次裁判権がアメリカにあるといって不起訴にしてしまった。それじゃアメリカではこれをどう処理したんだと私は聞いたのです、法務大臣、法務省にこれを聞きましたら、法務省には何人職員がいらっしゃるか知らないけれども、だれ一人として知らないのです、その裁判の結果がアメリカへ行ってからどうなったか。米兵が釈放されたのか、それともその原因の究明がなされたのか、その後日本にいて取り調べが進んだのか、すぐにアメリカへ帰っちゃったのか、法務省の中にだれ一人知った人がいないというのは、これは一体どういうことなんでしょうか。  事は日本の国内で行われたのです。そして何人という人たちがそのことによって、何の責任もないのに突然命を奪われたのです。警察は業務上過失致死ではないかというので捜査まで始めた。私は、法秩序の問題がいろいろ云々されておりますけれども、こういうことがあってはとても主権国とは言えないんじゃなかろうか、だからこそ今度の問題ははっきりしなければならぬ、こう思うのですが、重大な問題、疑惑があるにかかわらず、いまそういう兆しがない。  私はまず一つの問題を提示したいのでありますが、委員長、お許しいただいて図面を提示したいと思います。  これが当日の米軍機の航跡であります。この左下にありますのが厚木の基地です。皆さんのお手元に資料の一として図面を配っておりますからごらんいただきたいのです。普通の練習をしておる、訓練をしておる米軍機は、この1の線の航路を通ります。離陸をしてすぐに右旋回をするわけです。ところが、本件事故機はそのまま北進をしました。そうして通常の航路よりもうんと北の方へ行ってから右へ旋回をしております。問題はここなんです。なぜ右へ旋回をしたか。  私がなぜここの点を問題にするかといいますと、この右するか左するかという点につきましては、現地ではもう十年以前から大きな問題になっておりました。そうして神奈川県の渉外部の資料によりますと、昭和四十二年の十二月七日、住民の安全のために、厚木の基地を離陸した軍用機は左に旋回してほしい、こういう申し入れをしました。四十三年二月六日に米側から回答がありました。そうして、北向き離陸後左旋回して、より人口の少ない地域の上空を飛行することにする、こう回答したのです。  いま見ていただきましたこの図面は、これは横浜市から共産党の市会議員の斉藤恒彦さんがもらわれて私に提供された図面の写しなんですが、もう一つ、この地形図をごらんいただきたい。  厚木の飛行場を中心にしまして、右旋回をしますと、言うまでもなく京浜の臨海工業地帯、横浜、川崎、東京、人口一千万の人口密集地帯です。左旋回をいたしますと、相模川の河原、それから丹沢山地、絶対に危険がないとは言いませんけれども、しかし両方比べてみれば、どちらの方が危険が少ないかということは、結論はおのずから明らかだと思うのです。だからこそ住民の人たちや自治体は、離陸後せめて旋回は左にしてほしいという要求を出して、そのことが決まっておったわけです。なぜ本件事故機が右旋回をしたのか、より危険な方向に進んだのか。仮にそれを東京湾まで行って飛行機を海に落とそうとしたというのであったとしても、そのことが可能であったのかどうか。途中に危険いっぱいということです。事故のときには地上の危険を回避するために最善の手だてを尽くさなければならぬというのは、これは言うまでもないことです。こういう点について現在の調査はどうなっているか、簡潔にお答えをいただきたい。
  72. 亘理彰

    ○亘理政府委員 お答えいたします。  九月二十七日の事故につきましては、直ちに合同委員会から事故分科委員会に付託されまして……(荒木委員「いまの点についてだけ」と呼ぶ)はい。事故原因の究明と対策について早急に検討するように指示されておるわけでございます。  ただいまの点につきましては、なぜ滑走路を北に上がって右旋回したかの点につきまして、私どもも米側にただしておるところでございますが、現在の段階で具体的にその理由を確かめるところまでいっておりません。  北に向いて飛びましたのは、北東の風が吹いておったということによるわけでありますが、飛び立ちまして後は横田の管制に従っているわけでございます。横田の管制が右旋回を指示しておるわけでございますが、これが横田の管制がその周辺の空域の状況を判断して右旋回を指示したものと思われますけれども、その辺のつまびらかな状況につきましては、米側に目下問い合わせ中でございます。
  73. 荒木宏

    荒木委員 いまの答弁は私は重要だと思うのです。横田の管制、これは米軍の管制であります。そして、その辺の空域の状況からして右旋回を命じたのではないか、こういう答弁ですが、米軍がコントロールしている空域で、空域の都合からということは、つまりほかのアメリカの飛行機に妨げになるから横田コントロールが右旋回を命じたのではないか。もちろんまだ断定はされておりませんけれども、そういう疑いがあります。  それだけじゃありません。本件については、すでに御承知と思いますが、九月三十日の朝日新聞の夕刊で、「占領軍意識」として、脱出が早過ぎたのではないか、こういう疑問が公然と提起されております。十月九日の神奈川新聞では、「脱出に余裕があった 被災者新たなる怒り」ということで、これまたさらに厳しい疑問が提起され、指摘をされております。十月八日の読売新聞では、神奈川県警の調べによれば脱出が早過ぎたのではないかという、公的な機関の疑惑まで提起されております。そして赤旗もまた、その点については詳しい調査をし、事実指摘をして、疑問を提起しております。  こういう幾つかの新聞や報道や公的機関の疑惑というもの、これは私は徹底的に解明しなければならぬと思うのです。納得のいく調査をして、本当に避け得た事故であったのか、避けることができなかった事故なのか、国民が判断できるような状態に置かなければならぬと思います。これは再発防止のためにもです。この点について、防衛庁長官あるいは施設庁長官は納得のいく調査をして、そしてそのことを国民が判断できるように国会に報告を求める、そしてここで論議をして、この予算委員会は一つの重要な場でありますから、委員会終了までに中間報告を提出をされるように求めたいと思います。
  74. 亘理彰

    ○亘理政府委員 ただいまの事故原因並びに当日の事実関係の解明というのは、今後の再発防止対策考える場合に非常に重要なポイントであると思っております。したがいまして、事故分科委員会におきまして単に米側の調査結果を聞くというだけではなしに、私どもは、技術的な専門家を交えてその内容を点検し、まず当日の事実関係がどういう状態であったのか、また事故の原因はどういうことに発しておるのか、それを踏まえて事故の再発防止について万全を期するように考えておるわけでございます。この点につきましてはアメリカ側とも先日の合同委員会において了解済みでございますし、その結果については事故分科委員会から合同委員会に報告がありまして、それに基づきまして国民の皆さんの御納得のいくような調査結果を公表することについても合意済みでございます。  いつまでに事故原因が解明されるか、非常に技術的な事情がございますので、いつまでと申し上げることはできませんが、明らかになり次第これを公表する、また時間が非常に長くかかるようであれば中間的にも発表することについて米側と調整をいたしたいというふうに考えております。
  75. 荒木宏

    荒木委員 この委員会中に中間報告をせよと言っているのです。
  76. 亘理彰

    ○亘理政府委員 御趣旨は承りました。これにつきましては関係各省と相談し、米側とも相談いたしたいと存じます。
  77. 荒木宏

    荒木委員 あなたの権限で説明しなさいと言ったのです。あなたのできる範囲で中間報告をやりなさい、こう言ったのです。
  78. 亘理彰

    ○亘理政府委員 事故原因の解明は、合同委員会の下部機構である事故分科委員会でいま取り扱われておるわけでございます。したがいまして、この事故分科委員会における解明を踏まえてということで、御報告できる点については極力御報告いたしたい、そういうふうに考えております。
  79. 荒木宏

    荒木委員 予算委員会終了までに中間報告しますね。やるかやらないか、結論だけ。
  80. 亘理彰

    ○亘理政府委員 ただいまの御要望は承りまして、よく相談させていただきたいと思っています。
  81. 荒木宏

    荒木委員 だから、相談してどうするか。しなさいと言っているのです。
  82. 亘理彰

    ○亘理政府委員 事故原因の解明でございますから、これはある程度の時間がかかるわけでございます。したがいまして、どこまで御報告できるかということはわかりませんが、よく相談させていただきます。
  83. 荒木宏

    荒木委員 相談をして……
  84. 田中正巳

    田中委員長 荒木君、許可を求めてから発言してください。
  85. 荒木宏

    荒木委員 わかりました。  あなたは事柄の重要性はわかっているでしょう。三十九年のときに、警察が犯罪だと思って捜査をして検察庁に送っているにもかかわらず、不起訴になった。不起訴になって向こうに行ってしまったら、資料なんか何にもありはせぬでしょう。犯罪じゃないかと思ったって、資料がなくてどうできますか。だから、いま徹底的に調べて、そのことをいま論議している国会に、この委員会に報告しなさい。それは全部を報告できるかどうかわからぬよ。わかっている限度で、その時点で明らかになったことを報告しなさい、こう言っているのです。
  86. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 予算委員会終了までに中間報告を要請されました。もちろん、そうした御要望の線に沿って私自身米側と相談をして、できるだけそういう線に沿って努力することをお約束いたします。
  87. 荒木宏

    荒木委員 いろいろ問題がありますけれども、その中間報告を伺って、また委員会において賠償問題、裁判権の問題、その他論議を続けたいと思います。  私は一言関連して申し上げておきたいのですけれども、朝鮮半島からアメリカ軍が地上軍を撤退するやの報道がありますが、同時に、しかし海空軍の強化ということが言われている。ですから「コンステレーション」も本月の八日ですか、横須賀に来ておるのです。演習が強化される、激化される、当然事故、被害がふえることが予想されるわけでして、私たち共産党は、そういう意味で国の主権と平和を守るために安保条約の廃棄と基地撤去を要求しておりますけれども、しかし立場が違っても、人命尊重という点でだれも異論がないと私は思うのです。そういう点から再発防止策その他についても早急に取り組むことを求めます。  同時に、人命尊重という点から言いますと、ハイジャックの問題もこれもまた許すことができぬ問題だと思うのです。絶対にああいうのは許せぬと思いますよ。それについては、わが党のハイジャック対策特別委員長であります東中議員が関連質問をいたしますので、お許しをいただきたいと思います。
  88. 田中正巳

    田中委員長 東中光雄君より関連質疑の申し出があります。荒木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。東中君。
  89. 東中光雄

    東中委員 赤軍を名のっておるいわゆる赤軍派、私たちはこれは暴力犯罪者集団と言ってもいいと思っているわけでありますが、これらの連中がやったハイジャックは全部で三回になっています。御承知のように最初の「よど号」事件、続いて四十八年七月二十日のいわゆる日航ジャンボ機ハイジャック事件、この事件が起こったとき、総理の言われる、鉄は熱いうちに打て、ということだったと思うのです。一月余りで政府が対策要綱を発表しておられます。  この状態を見てみますと、「ハイジャックを防止するための最も有力な決め手」は「まず武器を機内に持ち込ませない」ことだ、こういうふうに対策の中で言っております。そして、たとえば「持込手荷物検査およびボディ・チェックの徹底」ということを掲げて、「当面東京空港の国際線においては、出発ゲートおよび搭乗ゲートにおいて、二重のチェックを実施することとする。」というふうになっています。また、ほかの項目では、「外国空港における持込手荷物の検査については、各国それぞれの検査制度によって実施されているが、その万全を期するため、日航独自の検査を検討し、実施することとする。」というふうになっています。  四十八年八月三十一日にこういう閣議の了解決定がなされて四年たちますけれども、今度のボンベイからのあのハイジャッカー五名の乗り込みがもう間違いなしに推認されておるわけでありますけれども、ここではここで言われたようなチェックは全然やられていない。対策要綱で政府が決めて、そして、その決めたことが実施できないことであるのに実施するものとするというふうに決めたのだとすれば、これは無責任きわまるということになると思うのです。実施できることを今度はこの四年間何にもしてなかったということになれば、これは全くの怠慢ということになると思うのです。それで、熱いうちに打つのはいいのですけれども、対策をつくるだけでこういう状態に置かれてきて、今度の最も凶暴な再発といいますか、三回目のハイジャックを許した。私は、これは政府の重要な責任だと思うのです。その責任をはっきりとさせた上で次の対策を決めなければだめだと思うのでありますが、総理の責任及びその決意というものをお伺いしたいと思います。
  90. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ハイジャックは今回が初めてじゃないので、ハイジャック並びにこれに類似した事件がいろいろあったわけです。それにかんがみまして、政府におきましては、これの再発防止のための何十カ条という多くの施策を講じたわけでありますが、いま御指摘のありましたダブルチェック、これなんかにつきましては、今回痛感されたところでございますが、実施されておらぬ。つまり外国空港におけるダブルチェックの問題です。これは実施されておらぬ、こういうことを率直に申し上げることができると思うわけであります。今回の事件がそういうところから起こったのか起こらないのか、これはまだ原因分析ができておりませんから、はっきりは申し上げられませんけれども、とにかくその辺にも今後の問題として問題がある、こういうふうに考えまして、これをどういうふうに実施するか、それについて目下協議中である、こういうことでございます。
  91. 東中光雄

    東中委員 今回の対策本部の幹事会で六項目の緊急対策というのが、一応幹事会の案としてすでに発表されております。それを見ますと、チェックが決め手なんだというふうに前の対策要綱では書いてあったわけですけれども、今度は「日航機が寄港する外国空港のチェック体制について実情を緊急調査する」というのです。だから、まだわかってないということなんです。しかもその次に「寄港地で日航の手によるダブル・チェック実現のため各国に協力を要請する」と書いてある。四年前には「実施することとする。」と書いてあったものが、今度はこれから調査し、そして要請をする、日航でやるとは書いてない。これはえらい後退なんです。本気でやる気になっているのか。本当に決め手だと閣議了承で前の対策で言ったことを、いまどういう姿勢で臨んでいるのだということを私は思うわけであります。  同時に、チェック、チェックというかっこうで一般乗客に迷惑を及ぼす、あるいは人権を侵害するというふうなことになってはいかぬわけであります。だから、X線の透視検査装置あるいはいわゆる金属探知器、こういうものの性能を上げ、科学的に迅速に、迷惑をかけないような努力が非常に大切だと思うのです。そういう点で、いま出されておる緊急対策というのもまだ決定にはなっていないようでありますけれども、それは非常に後退した状態になっている。私はこのことを指摘し、どういうふうにやっていくのか。この前の対策会議は法務省も運輸省も、あるいは外務省も、大蔵省まで入って、内閣官房も総理府も入った。今度も構成はほとんど同じであります。その同じ構成でやっておる対策会議の幹事会が、前のことを承知しながら、それより後退した線を出してきておるというのは私は非常に問題だと思うのです。そういう点についてどういうふうに考えておられるか、姿勢をどういうふうにとっておられるか、お伺いしたいと思います。
  92. 園田直

    ○園田国務大臣 再発防止に関してはいま仰せられたとおりでありまして、われわれも十分それを考慮してやっております。  いま言われました、前の対策本部を解散して、十月五日に新しく本部をつくったわけでありますが、これには実際の航空関係の人も幹事会に入っているわけで、とりあえず新聞に出ましたのは、その幹事会で集めたことが書いてありますので、方針としては三つ、一つはその根源をどのように突きとめてやっていくか、二つ目には国際的な協力、三つ目には国内的な防止の諸問題、こういうことに分けて、いま仰せられた新しい機械等も入れてこれを必ず防止するということをやっていきたい。  なお、今度の委員会は、その対策をつくるだけではなくて、これを逐次実行していく、こういうことに今度の対策本部の使命があると考えておりますから、そのように御報告をいたしたいと思います。
  93. 東中光雄

    東中委員 すでに緊急対策六項目という形で世間にはもう報道をされているわけです。その内容が私が申し上げたようなことになって後退になっている。それから、実施が実際にやれるような保証をせにゃいかぬというふうに思うのでありますが、この点を強く要請しておきたいと思います。  それからもう一つ、こういうハイジャックをやるいわゆる赤軍派あるいは日本赤軍と称している連中を国内的あるいは国際的に泳がしてきたのじゃないか、本当に取り締まってきたのじゃないのじゃないかということを、この間の本会議でも田中議員が指摘をし、総理は、抗議するとまで言われたのでありますけれども、このことに関連してお伺いしたいのでありますが、昨日の本委員会での政府側答弁で、警察庁は、海外逃亡中のいわゆる赤軍派の人数について、約二十名ぐらい、そして、国内に支援組織があるようだ、こういうふうに言われておりますが、私は、この海外逃亡中のハイジャックなんかをやる暴力テロ集団、この集団で警察庁がICPO、国際刑事警察機構への手配をやっておるのはどの程度やっておるのかということをお聞きしたいわけであります。  逮捕手配書は出しているかどうか、出しているとすれば、それは何名に対して、だれに対して出しておるか。情報照会手配書は出しておるか、出しておるとすれば、何名に対してどういうふうに出しておるか、このことをまずお伺いしたいと思います。
  94. 三井脩

    ○三井政府委員 海外におる日本赤軍約二十名と申し上げたわけでございますが、このうち、いまお尋ねのICPOを通じて手配をしておる者は五名でございます。ICPOの手配の種類は四種類ぐらいありますけれども、いまここで問題なのは逮捕手配と情報手配ということでございますが、御存じのように、逮捕手配はわが国はできない法律制度になっておりますので、現在やっておりますのは情報手配でございます。  逮捕手配と情報手配とどう違うのかといいますと、われわれの方ではこの五名については全部逮捕状をとっております。したがいまして、これが国内に来れば、わが方がみずから逮捕できる、国外におるので逮捕できない。しかし逮捕状があるという旨を、ICPOを通じて加盟国に通知をしてございますので、その国では、これが日本では逮捕状を持っておるのだ、こういう情報手配ではありますけれども、内容は、日本は逮捕できるものである、こういうことを承知しておるわけでございます。  したがいまして、すでに日本赤軍関係わが国に送還になりましたのは九名ございます。日本赤軍に準ずる極左集団まで含めますと十名になりますし、その他の者で極左集団ではないかと外国において疑って、外国の法律制度によって送還した者まで含めますと十二名送還されてきておるということでありますので、逮捕手配ができない、しかし情報手配はやっておるということでありますが、ただいま申したように、それぞれの国が日本赤軍の凶悪性を十分に自覚をいたしまして、その国の法律制度でできる最大限の活用によりまして、わが国に、ただいまのように、すでに日本赤軍だけで九名送還された、こういう関係になっておるわけでございまして、ただいま申しました五名というのはまだ手配のまま残っておるという現状でございます。
  95. 東中光雄

    東中委員 現に二十名国外に逃亡しておることを知っておって、そうしてそのうちの五名、重信と奥平、それから吉村、丸岡、和光、この五名しかしていない。なぜ、ほかの十五名についてはしないのですか。これは事実上強制送還、そして、いわばインフォーマルに送還されてきたという人たちも、今度の釈放犯人というかっこうでまた国外へ出さざるを得ない状態になっている。これは非常に奇妙な状態であります。なぜほかの十五名についてやらないのですか。本当に真剣に取り組むのだったら、国際的にも皆よく知っていると言っておるのでありますが、そういう手配をしないのかということを聞きたい。
  96. 三井脩

    ○三井政府委員 ただいま五名手配しておると申しましたのは、ICPOの定める手配制度にのっとってやっておるものが五名で、そのうち日本で逮捕状を持っておるというものが五名であるということを申したわけでございまして、日本赤軍のメンバーとしてわれわれが考えておる者、またそのメンバーに準ずる者につきましては、世界の主要な各国に対しましてICPOを通じまして情報は提供しております。写真とか過去の犯罪歴とか、その他は提供しておりますので、それはICPOによる協力でありまして、ただいま申しました情報手配とか逮捕手配という手配でございませんけれども、実質的な資料は提供しておるわけでございます。  それではなぜ正式の手配、決まった型にはまった手配にのせないかと申しますと、海外に行ってからわれわれが逮捕状をとるべきそういう犯罪を行っておらない、また逮捕状をとるだけの材料がわが方にないというものでございます。しかしながら、いま申しましたように赤軍のメンバーもしくはこれに準ずる者で、はなはだ危険な者であるということは各国に知らしておりますので、ことにヨーロッパ各国では日本赤軍のそういう資料を十分に持っておりまして、日本のわれわれと同じように日本赤軍については詳しく承知をして、日ごろ警察活動をしておる、こういう状況でございます。
  97. 東中光雄

    東中委員 「警察学論集」という専門雑誌があるわけですが、そこに当時の警察庁の国際刑事課長が論文を書いております。それによりますと「ハーグ事件に関連して、日本警察がはじめて赤軍メンバーの国際手配を思い立ち、昨年六月」要するに五十年六月ですが「六人のメンバーに対する正式の手配を申請した」。これは実際に八月に手配をしたようであります。思い立ってやった、こういう姿勢なんですね。しかも五十年八月までやってなかった。そしてまだ今度五名についてだけ、そのときやったうちの日高が死んだから、いま残っている五名が指名手配中だということになっておるわけですね。もっと真剣に取り組むべきじゃないかということが一つ。  それからもう一つは、逃亡犯罪人の引渡条約あるいは犯罪人引渡法、日本のこの法律が非常に困難な、古典的なやり方であって、まさかのときに間に合わないんだということで、一回も使われたことがない。そういう状態で、ICPOへ手配するにも、相互主義がありますから、日本ではなかなかいかぬということで、非常に控えている、逮捕手配もできない、こういうことになっているわけですね。だからいま言われたように、国際的にも恥ずかしい、しかも国際的にもよく知っているような凶暴なこういう犯人について、それもできないようなそういう状態は早急に抜本的に検討しなければいかぬじゃないか、こう思うわけでありますが、その点はいかがでしょうか。
  98. 三井脩

    ○三井政府委員 日本赤軍による事件は今回のハイジャックまで含めまして七件起こっております。主として人質事件でございますが。そのうちハイジャック事件が今回のまで含めて三件でございます。ただいまおっしゃいました、五十年になって初めてICPOの手配を活用したということでございますけれども、それ以前はICPOのその手配をするような状況でなかった。つまり、四十七年のドバイ、ベンガジのあのハイジャック事件のときには、犯人がリビアに投降いたしまして、リビアにおきましては、これを取り調べの上裁判にかけた、途中で消えてなくなりましたけれども。その犯人につきましては、犯人の持っておる偽造の旅券と指紋を送ってまいりましたので、これが丸岡修であることが確定いたしました。したがいまして、これは手配すべきものでなくて、現に犯人がつかまり、裁判にかかっておるということであったので、指名手配といいますか、ICPOの手配をしなかったわけでございますけれども、その後前回のクアラルンプール事件につきましてはリビアにおきまして身柄を拘束しておるということでありましたので、身柄は現におる、逃げておりませんので、これまた手配をしなかった、こういうような状況でありまして、その他の、たとえばパリ事件を契機にして起こったハーグ事件といったようなものについてはそれぞれ措置をしておるところでございます。
  99. 東中光雄

    東中委員 いろいろ弁解を言われますけれども、もっとできるべき問題があるはずだし、本当に真剣に取り組むべきだと思います。特に、この間新聞で報道されておる対策本部の緊急対策六項目の中の一つに、日本赤軍の人相書きなどを外国官憲に急送して協力を依頼する。いままで送られた写真ということを先ほど言われましたけれども、まともに本当に犯人手配のような、あらゆる角度から撮った写真を送るということさえも十分していなかったということを私たちは聞いておりますけれども、それに対応して、急送して協力を要請するというふうなことがいまごろ出されておるということについても、私はやはり国際的な泳がしをやっておったと言わざるを得ない。  ついでに申し上げておきますが、国内的に言っても、いわゆる内ゲバ事件なんかを見てみますと、たとえば昭和五十年に発生した件数は十五件ありますけれども、そのうちに送検されたものがたったの四件であります。これは殺人事件ばかりですよ。だから検挙率は二七%ということになるわけですね。一般の殺人事件で言えば九六%の検挙率であります。傷害致死事件でも九〇%の検挙率です。うんと低いわけです。五十一年からことしの九月まで八件発生しております。死亡者十二名、しかしその検挙率はゼロです。未検挙です。こういう事態というのは、一般殺人事件の検挙率が五十一年は九五%、こういう状態を私たちは泳がせだ、こう言っているわけであります。  福田総理がこの間本会議でああ言われましたので、特に申し上げておきたいのでありますが、福田総理自身が一九六八年十月のNHKの政治座談会の席上で、当時わが党の書記長だった現在の宮本委員長が、自民党内に日共対策上トロツキストは泳がしておいた方がいいという考えがあるということを指摘したのに対して、自民党の中にもいろいろな議論があるのは当然だ、泳がせという議論があるのは当然だというかっこうで、いわば肯定的な発言をされておるわけです。私たちは、こういう集団テロ、暴力集団は政治犯でも確信犯でも思想犯でも何でもありません、明白な刑事犯でありますから、徹底的厳正な取り締まりと根絶を強く要請したいと思うのであります。  私の質問は終わります。
  100. 三井脩

    ○三井政府委員 今回の事件が起こりましてから人相書きその他を急送するということでありますが、いままでも十分やっておりました。今回新たに十一名がああいう形で国外へ出ましたので、この十一名について急送するのが主たるねらいでありますので、格別のあれではない。最もタイムリーにやっておるつもりでございます。  それから、ただいま内ゲバ事件についての検挙率が悪いということが何か泳がせ云々というようなことでございますけれども、これは事実関係を申し上げますと、そういうことではございませんで、一般殺人並びに傷害致死が九〇%以上の検挙率を誇っておるわけでございますが、この内ゲバ殺人の場合につきましても、内ゲバ事件が発生いたしましたのは四十四年からでありますけれども、今日まで四十五件内ゲバ殺人が起こっておるわけであります。そのうち四十八年までのものは全部解決、検挙いたしております。四十八年以降のものが、この性質上、他の殺人事件と違いまして、大変計画的に組織的にやるものであり、また被害者並びに攻撃側が数が多い、組織同士で守られておる、こういうようなむずかしさがあるために、時間はかかっておるわけでありますが、したがいまして、今日まで四十五件発生いたしました中で二十二件解決を見ておりますので、四九%の解決であります。ただ、挙げられましたように、最近の一、二年のものについてはなかなか解決しておらないということはありますが、これは時間のずれということで、われわれとしては、すでに犯人を割り出しまして指名手配しておるというものもあるわけでございますので、そういう意味で、セクトを問わず厳正な態度で取り締まりに当たっており、かつその成果が上がっておる、その結果、いままで殺人事件は、昨年及び一昨年の数分の一に減っておる、こういう状況でございます。
  101. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ハイジャック犯人のような非人道的な凶悪なテロリスト、これについては、これを泳がせる、そのようなことは考えも及ばざることなんです。これは草の根を分けても、こういうことばがありますが、捜しまして、そして再びこういう事件が起こらないというための万全の措置をしなければならぬというのが政府の決意でございます。
  102. 東中光雄

    東中委員 終わります。     —————————————
  103. 田中正巳

    田中委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  参考人として日本住宅公団総裁から意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————
  105. 田中正巳

  106. 荒木宏

    荒木委員 いま人命尊重という点を主にしまして、米軍ジェット機の墜落事故の問題、ハイジャックの問題、政府の姿勢と施策をただしてきましたが、私は、理念としては同じような、生活を守る、暮らしを守る、人の生活、命を大事にしていく、こういう点から、経済の問題についてお尋ねしたいと思うのです。  その第一は、金融対策、預貯金金利の引き下げの問題であります。  初めに一言伺っておきますが、きのう日銀の総裁は、この政府の今回の措置によって資本金一千万円以上の企業が一兆二千億円利益を受けるであろう、こういうお話があったように思いますが、そのうち大企業は幾らで中小企業は幾らか、内訳をおっしゃっていただきたいと思います。
  107. 森永貞一郎

    ○森永参考人 お答えいたします。  昨日お答え申し上げましたのは、総体で一兆二千億と申し上げたわけでございますが、うち資本金一億円以上の企業に係るものが八千五百億円、資本金一千万円から一億円までの間のいわば中堅中小企業に属するものが約三千五百億円ということになっております。資本金一千万円未満の中小企業及び個人企業につきましては、統計がございませんので、残念ながら推計ができないのでございますが、これらいわば零細中小企業の金利負担経減額もかなりの額に上るのではないか。したがいまして、三千五百億円はもう少し上回る結果になるのではないかと思っております。
  108. 荒木宏

    荒木委員 私、姿ははっきりしたと思うのですね。いまの日銀総裁の話で、大企業は八千五百億円、中小企業、中堅企業の倍以上をそれによって利得を受ける。それじゃ一体、それはだれの犠牲において利得を受けるのか。これはきのう政府から報告がありましたが、預金者のそれによる損失は約四千百億、こういう話でありました。ですから、端的に言えば預金者のいわばふところから大企業の方に移る、こういう姿になると思うのです。これは総理、公約違反じゃないでしょうか。預貯金金利と物価の上昇率の問題について、総理は衆議院でたびたび言明をされました。五十年の一月二十四日、副総理の当時の経済演説で、五十二年の三月、本年三月ですね、それまでに物価上昇率よりも預貯金金利の方を上に持っていきたい、つまり物価上昇率は預貯金金利よりもさらに低いものに持っていきたい、こうおっしゃっている。また、五十年の二月に予算委員会の分科会で論議がありまして、このときに繰り返しておっしゃっているのです。物価上昇率というものが預貯金金利の水準にあるということは非常に高いと思っている、だから預貯金金利の水準よりも物価上昇率を低く持っていく、つまり物価上昇率よりも預貯金金利の方を高くしなければならぬ、目減りの問題が出ないようにしなければならぬという説明までつけ加えておっしゃっています。一昨年の六月にも予算委員会がありまして、そこでまた繰り返してそのことを確認していらっしゃる。二月のときは、たしか現閣僚であります倉成長官が質疑者になりまして、当時副総理としてお答えになっておるのです。  ですから国民から見ますと、総理はその後、いや金利というものは変動するものだ、こうおっしゃいますが、経済福田と言われてなさるのですから、金利が変動するものだということは先刻御承知のはずだと思う。それを承知の上で、物価上昇率よりも上に置くんだということを、国民の代表に本院の論議で三回もお約束になっている。おととしのことです。当時副総理であられて、その後引き続いて総理をやっておられる。途中しばらくの間、三木おろしのときはお休みになっていたようですけれども、ずっと引き続いて経済関係については責任者の立場におったのですね。ですから私は、これは総理の国民に対する約束、公約違反ではないか。しかもその当時よりも開いておるのです。物価上昇率と預貯金金利の差は、当時は一・六五でありました。いま二・四五に開いてきておるのです。これはひとつ、総理の約束違反ということに対しての見解を伺いたい。私はもとに戻すべきだと思うのです。約束は守っていただきたい。いかがでしょう。
  109. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 公定歩合というか金利水準と物価水準関係は、金利の方は変動するものですからいまお話しのような議論も起こってきますが、私が大蔵大臣当時の願いは、あれは六・七%ぐらいの金利水準でしたか、そういうところ、それよりも下に物価水準は持っていきたいな、その時期は二年先とか、そういうようなことを申し上げたわけであります。ところが、金利水準の方がどんどん下がっちゃう、また下げざるを得ないというような状態だ、それに物価水準というものがなかなか追いついていけない、こういうのが今日の状況でございます。  私は、こういう状態は非常に残念だ、こういうふうに思うわけでございまするけれども、しかし現下の経済状態を一体どういうふうに打開していくんだというようなことを考えますと、金利水準は下げなければならぬ。しかし、一方において金利水準と物価との格差が広がっていく、こういうことになるのですが、これは非常に異常な状態でありますので、これは速やかに物価の方を下げる努力をしなければならぬ。それから金利も正常な状態になるということを期待し、いわゆる目減り問題がそう深刻な問題にならないように経済運営をしていくことが大事である、そういうふうに考えております。
  110. 荒木宏

    荒木委員 私は、約束を破られたのではないでしょうかと、こう伺ったんです。約束を破ったか守ったか、その返事をいただきまして、破ったけれどもかくかくしかじかの理由があった、取り返すためにはこういうふうにいたします、私はこういうのが普通の話じゃなかろうかと思うのですね。総理の方はいろいろ御説明があったんですけれども、私には言いわけとしか聞こえなかったのですが、ただ本院の論議でも、いや、これが雇用につながるとか、いや、これがやがて投資に向かうであろうとか、いや、これによって景気がよくなっていくだろうとか、いろいろな説明をされておりました。  そこで私は、果たして本当にそうなるのだろうか、政府の皆さん方がそれぞれの所管のところで、本当に総理がおっしゃるようになりますよと、調査をし検討して確信を持っていらっしゃるか、私、調べてみたのです。そうしますと、お金は大体みな企業へ行くわけですから、企業を扱っている通産省に聞いたんですよ。そうしますと、どこも調べてないと言うのです。産業政策局に聞きますと、いや、全くそういうことは調べておりません。生活産業局はどうだと、こう聞きますと、申しわけありませんが、それはわかりませんと、こう言うのです。  通産大臣、どうですか。今度の金融措置によって金利負担が助かる。それだけお金が、大企業に八千五百億ですか、日銀総裁が言ったのが行くのでしょう。これを一体何に使うか、通産大臣調べましたか。調べたか調べなかったか、ひとつ返事をしてください。意見じゃございませんよ、調査したかどうか……。
  111. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの件につきましては、私自身は当該問題について調査を命じておりませんけれども、貸し出しと、つまり借入金と繰越金との比率の構造の点から申しまして、当然そういうことは考えられることだと存じます。
  112. 荒木宏

    荒木委員 それは大臣だめですわ。私、原局の方にずっと伺いましたが、それは申しわけないがわかりませんと言うのです。ぼくは通産省だけだろうか、ほかの省は少しは調べているところがあるのではないかと、こう思いまして、日銀の当局にも伺ったのです。そうしますと、いや、それはお金には色がついておりませんからわかりませんということなんでしょうね。そこで、これは企画庁の問題ではなかろうかというので企画庁に伺ったのです。そうしますと、企画庁はさすがになんでして、ちょっとおっしゃることがむずかしかったのですが、これをフォローすることは非常にむずかしゅうございます。こういうお返事です。私は、それがそれぞれの省庁を代表していらっしゃる正式な御意見とは思いません。思いませんが、ここではっきりしていることは、総理は、これで雇用にも回るでしょう、合理化しようと思っていたのを抱えることになりましょうといろいろおっしゃったけれども、それはすべて総理の願望であり希望的観測であって、ここにいらっしゃる閣僚の皆さん方がそれぞれ所管していなさる分野では、それに対する実際の調査はほとんどなされていない、これが私の調査の結果なんです。  方法はいろいろありましょう、聞き取り調査もありましょうし。労働省に至っては、私、ちょっと驚いたのですけれども、労働大臣いらっしゃいますね。私、お聞きしますと、そう言えばそういう話がありましたねというお返事なんですね。雇用問題を一番真剣に考えていただくべきところならば、企業にそれだけのゆとりができた、これは何としても雇用問題の方に道をつけていかなければならぬとお考えいただくべしと思っておったのですが、私の伺った限りではそういう返事だったのです。  そこで私は、これは政府の皆さんには任しておけぬと、十分な力はありませんけれども、私どもは自分でできる限りの調査をしようと思って調べたのです。それがお手元に差し上げてありますこの資料の二番目になるのです。  時間が余りありませんから、結論だけ申し上げますので、閣僚の皆さんもごらんいただきたいのですけれども、「金利引下げが景気に及ぼす効果についての聴きとり調査」、まず一番多かったのが消極的意見なんです。これは総理、少し願望に沿わなくてあるいはいかがかと思いますけれども、運転資金に回しますというのが一番多かったですね。電気事業連合会、伊藤忠商事それから三井物産、日本鋼管、住友金属、これはいずれも財務部の担当者の方あるいは資金運用の責任者の方、こういうことでお願いをしたのです。借入金が減るでしょう、これは関西電力でした。収益の下支えになるでしょう、これは丸紅です。しかし、総理がおっしゃったように、これで雇用をやりますよ、投資に行きますよと、こういう御意見はほとんどなくて、野村総合研究所の方では、こういう減量経営のもとでは景気刺激策は非常に少ないのではないでしょうか、むしろ否定的な意見の方が強かったわけです。わからないという御意見、ここにありますようないろいろな御意見がありました。政府の皆さんはまず調査をされていらっしゃらない、それでいて総理はああいうことをおっしゃる。私ども、ごく一部ですけれども、調査をしてみると反対の御意見が多い、これはこのままでいいんだろうかというふうに考えているのですよ。  むしろこういう例がありました。これは私、はっきり具体的な事実を申し上げますが、池貝鉄工という企業がありました。そこの職場の労働者がいるのですが、日本興業銀行、ここがメインとして乗り込んできたと、こう言うのです。まるで占領軍のように乗り込んできて、そうして協和銀行それから太陽神戸銀行、こういうところが一緒になって、労働者を減らしなさい、三百人減らしなさい、こういう話なんだそうです。そこで三百人の希望退職を募るということになりまして、職場では大変だったわけです。もちろん労働者の諸君は銀行へも、そういうことを言うな、してくれるなということで交渉にも行きました。しかし、ずいぶんと肩たたきその他がありまして、とうとう三百人ちょっと超えるぐらいの退職者が出たのです。これは去年からことしにかけてですが、そうすると、どうですか、今度は銀行の方は、さあその退職金はうちへ預けてください、こういうことを言ったというのですよ。そうしてそれが全部作業が終わった段階で次の融資がなされました、こういう話なんです。  ですから、私は総理に申し上げたいのですが、こういう結果を生んでおる預貯金金利の引き下げは、約束どおりもとへ戻されるべきではないか。もしそれがどうしてもできないというのなら、金利を引き下げた結果こうなりますよと、事実を調査をして、調査した結果を分析をして、それによってだれもがわかるように説明をされるべきではなかろうか、こう思うのですが、御回答をいただきたい。
  113. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま荒木さん、こう資料をお示しになられましたが、こういう結果が出ようとは私は思いませんね、これは。恐らく企業に聞いたら、みんな歓迎しますと、こういうことじゃないかと思う。いま企業状態は、自己資本が一五%、それから借入資本などが八五%、この金利負担というのが非常に重圧になっているわけです。その金利が下がる、こういうのですから、これはもう皆さんが、みんな大変いいことです、ありがたいです、また人減らしも幾らかこれで手心もできます。こういうふうな答弁になるに違いないと思うのですが、何かこう誘導的な質問でもされた、あるいは質問の仕方がこういうふうに仕組まれてされたのじゃないかというような感じがしてならないということを申し上げます。  それからさらに、預貯金利子の引き下げを撤回せよと、こういうお話でございますが、るる申し上げておるとおり、これは万やむを得ざる措置である、緊急の措置である、こういう考え方でありまして、これを撤回することはいたしません。
  114. 荒木宏

    荒木委員 総理、調査方法についての疑念の指摘ということで答弁をそらされたように思うのですが、私は調査が完全無欠であったというようなことは申し上げてないのです。私たちも調査の力は必ずしも十分ではありません。しかし、皆さんが全くなさらないものですから、われわれとしてはできる範囲でやろう、こう言ったのです。やはり事実をもとに物をおっしゃっていただきたい。全く調査をしないで、そしてせめてということで少しばかり力を尽くして調査をしたそのやり方を根拠もなしに論難をして、そして自分の結論だけおっしゃるということは余りフェアではない、私はこう思うのです。それで二度お尋ねしたのですが、結論は変わらぬようです。  郵政大臣に伺いたいのですが、この郵便貯金の貯金者の利益を守る立場に政府の中ではあられると思うのですね。しかもこれは零細な大衆の預貯金であります。また公定歩合と必ずしも連動するものではない。五十年の四月から八月にかけて三回下がりましたが、あのときには郵便貯金の利子の変動は連動しておりません。大企業が郵便貯金をしているという話も余り聞かぬわけですから、大衆の生活を支える預貯金は郵政大臣が政府の中でもがんばるということでなければ、私はがんばる人はだれもなかろうと思うのです。一体預金者の立場を守るためにどういうことをされたのでしょうか。福田総理が、いや、万やむを得ぬ処置だ、下げろ、こう言うので、へなへなと預金者の利益を守る立場を捨てて追随をされたのかどうか、私はこれははっきりしていただく必要があると思うのです。あなたは預金者の立場を守るべき郵政大臣として何をされたか、これからどういうことをされようとしているか、はっきりとおっしゃっていただきたい。
  115. 小宮山重四郎

    ○小宮山国務大臣 お答え申し上げます。  郵便貯金の金利の引き下げについては、まず第一に、要求払い預金と通常預金、これは除きまして、定額預金についてはいままでの預け入れの金額については金利を移動してないということも一つございます。しかし、先生のおっしゃいます預金者の利益を増進するという郵便貯金法第十二条の規定もございます。しかし、その後段の中に、一般金融機関の利率に配意せよという問題もございます。しかも一番大きな問題は、郵便貯金三十三兆の八割強を占めるものが定額貯金で、かつ、それが財投の中で大きなウエートを占めております。今回の財政金融政策、特にこの不況対策に対して一番大きな根幹を示す財投資金の中で郵貯のそういう仕事の重要性を認識いたしますと、今回金利の引き下げを郵政審議会に諮問して、皆様方の御審議をいただいて、認めていただいたわけであります。今後ともそういう意味でも大変重要なことであることも私存じておりますし、自分自身も大変悩みました。しかし、経済的な弱者の方方、老齢福祉年金等の受給者の立場の方々については、来年五月までいままでの金利を適用しようということで対処しておる次第であります。
  116. 荒木宏

    荒木委員 私、皆さんによく考えていただきたいのですが、いま郵政大臣も話がありましたけれども、郵便貯金は財投の原資になっておりますね。それが政府の関係機関、住宅とかその他いろんなところへ回る。ところが、郵便貯金の利子を年に二回も下げてしまうものだから、いまどうですか、郵便貯金離れとでも言えるような現象が起ころうとしているでしょう。民間と時期がちょっとずれました。ずれましたから、ことしの春は四千億、今度は三千億駆け込みがありましたよ。それはしかしほんのつかの間の時期がずれたという特別な現象でありまして、さあこれから財投の原資は大丈夫と言えるだろうか、郵便局への貯金は心配がないだろうかということを、これは大蔵省の理財局の方もいろいろ心配をしておるという話ですよ。現に私、新聞を見ますと、こういうのがあります。貯蓄を推進する気になれぬ、婦人団体おかんむりで協賛返上の動きだ。十月は郵便貯金月間だそうですね。もうそんなに利子をどんどん下げるのなら応援をするのはやめだという婦人団体がついつい出てくる気配だと、こう言うのです。それはそうでしょう。一兆何千億という、これは金一封といいましょうか、預金者の犠牲において、お盆でもなければお中元でもないそういういまの時期にそれだけのお金のものを持っていこうというのでしょう。それは企業の方のいわば好きに使ってください、総理の話だったらそうでしょう。私どもは、郵便貯金の利子を上げる、そうすると預金を郵便局へどんどん安心してなさるということになるだろう、生活を守ることになる、財投の原資もふえる、それを国会で、財投をさあどう使いましょうか、国民の代表が意見をして、本当に役に立つように使おうじゃありませんか、そのためには、郵便貯金の利子を、いま総理のおっしゃるように下げるのではなくて、もとへ戻す方がいい、こう言っているのです。私は、われわれの考え方も申し上げましたし、総理は依然として先ほどのなにのままですから、この続きの論議はまたそれぞれの委員会でなにしますけれども、私たちは、そういうふうなやり方がいまの行き詰まりが来ている経済を立て直していく金融面における民主的な政策の一つじゃなかろうか、こう言っていることをひとつ十分念頭に置いていただきたいと思うのです。  第二は公共投資の問題であります。公共投資の問題は、景気との関連では、言うまでもなく倒産をなくし失業をなくしていくという、こういうことだと思うのですが、一番多いのはやっぱり中小企業ですね。ですから、失業、倒産をなくしていく、それが多い中小企業の分野を守り立てていくということになりますと、官公需の確保ということがこの際どうしても重要なことになる。  そこで資料をごらんいただきたいのですが、第三表ですけれども、「官公需の中小企業発注比率」、これが工事の分野で通産省、それからサービスの分野で運輸省、物品の分野で郵政省がそれぞれ五十年に比べて五十一年が低下しているのです。通産大臣と運輸大臣と郵政大臣、ここになぜこれが下がってきたのか、ひとつ簡単にわかりやすく説明をしていただきたいと思うのです。
  117. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のとおりに、官公需の問題につきましては、昨年の三四%を三五・二に先一般も引き上げたような次第でございますが、私の省内におきます対前年の低下につきましては、担当の政府委員からお答えをいたします。
  118. 宮本四郎

    ○宮本(四)政府委員 お答えいたします。  通産省関係の官公需におきますところの中小企業関係の発注につきましては、五十年度の三百十九億から五十一年度の三百八十九億に、そのシェアが六一・四%から六二・八%に上昇いたしております。ただし、ただいま先生御指摘のように、この中に物品、役務、工事と三種類ございまして、工事につきましては若干の低下を見ております。工事全体につきましては相当の増加となっておりまして、特に中小企業におきましても三一・八%の増加となっておりますが、その原因は主として技術的な理由によるものでございまして、たとえばアルコール専売特別会計におきまして公害防止のために排煙脱硫装置を設けたとか、あるいは金属鉱業事業団におきまして精密探鉱の調査をやったとかいうことがふえたということの理由でございます。
  119. 浅尾宏

    ○浅尾政府委員 お答えいたします。  昭和五十一年度の中小企業向け発注割合は、全体といたしましては五十年度の四六・八%から四八・五%というぐあいに増加をしておりますけれども、個々の内訳で見てみますと、物品の発注割合が五十年度が六八・四%、それから五十一年度が六一・一%というぐあいに、先生御指摘のように減少してきておるわけでございます。  そこで、この理由でございますが、これは郵便貯金窓口会計機だとか、あるいは簡易保険の総合機械化だとか、あるいは郵便自動読み取り区分機等の機械化関係経費等で、中小企業向けに発注するに適さない経費が大幅に増加したためでございまして、絶対額におきましては中小企業向けがやはり五十八億円増加しております。パーセントで申しますと一〇%の増加になっている、こういう実情でございます。
  120. 山上孝史

    ○山上政府委員 運輸省におきます五十一年度の役務の発注につきましては、先生も御指摘のとおり、五十一年度は五五・七%が中小企業向けでございました。したがいまして、対前年では五十年度が六〇・四%でありますので、中小企業への発注率が若干低下いたしました。  その理由といたしましては二つあります。特に五十一年度におきましては環境対策、騒音が主体でありますが、この関係と、それから航空保安無線施設の設置基準等の調査の外注、それからもう一つは電子計算機を利用して行う試験研究のための解析プログラム、これの開発、それから計算の外注、これが前年度よりも増加いたしました。これにつきましては、航空関係や試験研究にかかわる特別の知識を必要といたしておりますので、遺憾ながら中小企業に発注しがたいというのが実情でございました。このような理由によりまして、五十一年度は対前年で若干低下いたしましたが、今後は調査等の内容により、できる限り中小企業への発注の増大に努めるように努めたいと考えております。
  121. 荒木宏

    荒木委員 委員長にお願いしますが、答弁は質問の要旨をよく聞いていただいて、そしてそこにしぼって答弁願いたいものです。全般の一般的なことの説明を、なるべく聞いていないことを前段に置かないように、政府委員の皆さん、御留意願いたいと思うのです。  そこで、いま聞きましたところによりますと、指摘をしたところはいずれも低下をしているということは認めておるわけです。ただ、中小企業ではなかなかこれは受けにくかろうということを一般的に答弁をしておるわけです。しかし、本当に中小企業がそれでは受けることができないのかどうか、そこに政府の皆さんとして何らの工夫はないのか、私はこの問題を一つ提起をしたいわけです。  その例としまして、ここに表をつくっておりますが、去年の特定品目で実績を検討してみますと、努力、工夫をしたところは成績はよくなっている、やらなかったところは逆に中小企業の方が愛想を尽かして低下をしているという傾向がある。たとえばここにありますが、厚生省は、これは本委員会でも論議がありまして、当時わが党の野間友一議員が指摘をいたしました。その後、参議院で安武議員も取り上げまして、それぞれ医務局や病院で地方ごとに数量を分けて注文するようになった。そうすると、ある程度中小企業でも賄える数量になりますから、中小企業のこの発注の率が三・四%から九三・六%に飛躍的に上昇した。これは看護婦さんの白衣などの例です。ところが、国鉄のように、いや、北海道も九州も同じ服を着ておらなければいかぬ、それには北海道から沖繩までおしなべて本社が全部一遍に発注するんだ、こういうふうななにをやっておるところは一四%から一〇%に下がっておるわけです。法律のたてまえはどうでしょうか。いろいろ工夫をせなければならぬ、努力をせなければならぬ、こういうことになっておるわけですね。  そこで、本当にそういう努力がなされておるかどうか。中小企業庁からいただいた各省庁の官公需担当官名簿というリストがあるのです。これはずっと聞いてみたんですよ。こういう回答がありましたね。どこの省庁かはその方のなにになりますから私はちょっといま御遠慮しますが、官公需を中小企業にふやすように努力なさるおたくの省のことしの目玉は何ですか、こう聞いたんです。特にありません。どうしてですかと言うと、前任者からかわって間がないと言うのですね。それでは引き継ぎを受けられましたか、何にも受けてません、こういうところがありました。それから、もっとひどいところは、ここに担当官として名前が出ていますのに私が連絡しますと、担当官はどなたでしょうかと伺いますと、全然別の人だ、会計課長はこうおっしゃるのですね。ですから、政府の皆さん方には、法律は決まっているけれども、どうもその自覚がないのではないか。つまり、分割だとか共同で受注するとかあるいはそういうのを援助していくとか、それをやらなければ、計算機で結果だけを集計するのが仕事じゃないのですから、いま大事なのは私はそれだと思うのですね。  そこで、一々の省庁についてどういうところが問題かということは全部調べましたから、このリストの中に皆載っています。時間がありませんから私はこの席上ではそれぞれの大臣にここはこうですということは申し上げませんけれども、この論議が終了しましたらぜひもう一度御検討いただきたい。  その一つに、まず内部の取り決めがあるんです。これが資料の最後の部分です。「官公需に関する中小企業の受注確保の事務規定」全く事務分掌で規定のないところがあります。これは自治省、総理府、運輸省。会計に関する法令事務、こういうところで賄っておりますのが、私はこれはちょっと無理だと思うのですが、大蔵省、法務省、建設省、厚生省。それから官公需の資料の取りまとめとして事務を分掌規定しておりますのが文部省、郵政省、労働省。中小企業にふやしていく、確保していく、増進していく、それを進めていく、こういう趣旨の規定をしてあるところがわずかに通産省、中小企業庁、外務省、農林省、これだけしかない。しかも、これを専門にやっている人は——国等の官公需案件どのぐらいになりますか、一年間に地方まで含めて百万件超えるんじゃないでしょうか。専門にやっている人は何とわずかに二人なんですよ。二人でどうして何百万件をいろいろ工夫して進めることができるでしょうか。事務分掌規定を改めること。それから内部の体制を、できれば必要ならば専任の体制もとって、そして単に資料の取りまとめだけではなくて、そのことが進むように強力に推進するということを求めたいわけであります。これの責任は通産大臣ですか、通産大臣と、それから全省庁にまたがりますから総理答弁をいただきたいと思います。
  122. 田中龍夫

    田中国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、通産省、中小企業庁といたしましては、できる限り中小企業に官公需を向けたいということから、いままでの比率からいいますと、毎年だんだん上がっておりまして、四十九年の三〇・三から三二・六、三四と、昨年のごときは……(荒木委員「聞いたことを答えてください」と呼ぶ)それで、いまの担当の問題につきましても、あるいは細かい分掌規定の点につきましては担当官から申し上げますが、分割発注でありますとか、組合の共同受注、こういう点を特に推進いたしてまいるのでございます。  なおまた、五十二年分につきましては、二兆六千六百十億という膨大な数量にもなりますので、この点はまた担当官から詳細申し上げます。
  123. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 官公需の中小企業への発注につきましては、特にこの数年来非常に努力をしてきておるのです。その努力の成果ももう数字にも明確に出ておる、こういうような状態でありまして、しかし、いま経済が非常に不況状態である、そういう中で中小企業の立場も非常に深刻だという際であるだけに、この問題はさらに在来の方針を推し進めていきたい、強化していきたい、そういうふうに考えます。
  124. 荒木宏

    荒木委員 問題は、具体的にそういうものを実行し、その体制をとるかどうか、こういうことですね。私は予算委員会で問題提起いたしましたし、この点は従来からわが党が引き続き取り上げてきておる問題でありますから、経過をさらによく見きわめていきたいと思うのです。  そこで関連をしまして、こういう民主的な近代化、高度化といいますか、中小企業における活力が増進をしていくという、こういうふうな姿がこれからの日本経済の姿ではないか。いままでのように大企業がまずいろいろなことをやり出して、それから中小企業に回る、そういうのではなくて、大企業に匹敵する力を、中小業者がお互いに力を合わせて団結して、活力を出して、知恵も出して、それが日本経済の基礎を支える、私どもはそういうところに将来の展望を見出しておるわけです。それを十分やらなかった、いや、十分じゃなくてまるきり在来型でやってきたところに、今日の構造不況業種と言われる皆さんの苦しみがある。  私はその点に関連して総理に伺っておきたいのですけれども、たとえば業種の一つとして繊維が取り上げられておりますが、これは発展途上国から、少し市況が戻ればすぐに追い上げを受ける。いま設備廃棄をして、そして業界が立ち直ろうという話がありますけれども、少しよくなれば、またそういうことで脅かされるということについての不安やそれから要求が非常に強く出ています。私もそれは当然だと思うのですが、たとえば輸出に強いと言われる自動車などは、どんどん低い関税で輸出をしていく。そして綿製品の場合には、たとえばアメリカもECも一五%という高い関税になっておるけれども、日本の方はどんどん途上国から入れてくる。それでいて鉄鋼などは、余り輸出が強過ぎるというので、アメリカで今度は逆に罰金をかけられるというのでしょう、平たく言えば。ダンピングのクロの判定を受けるということで、アメリカ財務局がこれに対して重い金銭的制裁をかけるということを言っているわけですが、向こうで税金を取られるぐらいだったら、そういう輸出輸出ということを言って、ほかの業種や輸出関連中小企業が困っているのに、なりふり構わず自分だけもうけているところを、国内でむしろ輸出均衡税をかけて、それをたとえば繊維の不況業種対策に回すとか、あるいは円高で困っている中小業者のそこの対策に回す、バランスをとるという処置は、私は当然ではなかろうかと思うのです。そういう意味合いで輸出均衡税というものを提唱したいのですが、これを検討する用意があるかどうか。  それからなお、構造不況業種の設備廃棄に関連をしまして、廃棄資金が出るけれども、機械が担保に入っていますから、せっかく金は出るわ、それはすぐ右から左へ銀行へいっちゃう。そういう事態に対して一体どういう対策をとるのか。それから設備廃棄資金が出ますけれども、たとえば年度内に出た分については課税してそこからまた税金を取るのかどうか。どういうふうに考えておるのか。この二点について政府の答弁を求めたいと思います。
  125. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまのお話の分でありまして、特に繊維に例をとってまいりますれば、御承知のとおりに構造不況の問題でありまして、設備その他の買い取りということは、振興事業団で融資を組合に出しまして買い取ります。  いま御指摘のように、その物件が担保に入っておる、これを滌除して、さらにまたそれに必要な再建のための運転資金をという問題でございますが、これは債務保証基金は繊維工業構造改善協会というふうなところに対しまする特別融資をいたしまして、その融資によりまして次の再建の資金に充てるわけでございます。でありますから、その担保に入っておりまする分につきましてはこれを抜き、同時にまた、配置転換その他転換につきましての所要資金を別途この構造改善協会の方に特別融資をいたしまして、この再建を図るという問題でございます。  それから輸出の税をかけよというお話でございまするが、この問題につきましては、まだ検討を遂げておりません。
  126. 荒木宏

    荒木委員 だから、検討する用意があるかどうかということを聞いているのです。
  127. 田中龍夫

    田中国務大臣 そのような議論もございましたが、もちろんあらゆる問題につきまして、大蔵省当局その他関係方面とも十分打ち合わせをしなければならぬ問題でございます。いま、この問題はその段階にまで達しておりません。
  128. 荒木宏

    荒木委員 では、大蔵大臣、どうです。
  129. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  いまの問題でございますが、これは議論は承っております。これに対しましてどういうことに持っていくかということについては、検討をしてまいりたいと思っております。
  130. 荒木宏

    荒木委員 しっかり検討して、ただでさえ財源がないと言っているのですから、責任のある回答を求めたいと思うのです。  私は、こういう中小企業の活力を引き出していく、特に構造不況業種が立ち直るように全面的にその援助をしていくということが重要であるとともだ、そこの職場の労働者の生活、職場を守るということがこれに劣らず大事だと思うのですよ。  雇用の問題。きょうわが党は、国対委員長の記者会見で、雇用に関する緊急措置法案要綱というのを発表しました。これは皆さんのお手元にも差し上げると思いますが、そういうわが党の提案ですね。ここには大量の解雇規制という問題もあります。それから構造不況業種の労働者をどうするのだという問題もあります。緊急な問題です。それから失対事業をいまのように狭い範囲にしておかないで、もっと広げていく、公共事業をふやすというのだから、そのときにうんと仕事の間口を広げる、仕組みを広げていくという問題もある。こういうふうな提案をしておりますが、これはわが党の一つの提案です。それ以外に労働四団体からも提案が前にありました。こうした提案、わが党の提案も含めて労働大臣は真剣に検討をされて、そして実施をしていく、こういう決意があるかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  131. 石田博英

    ○石田国務大臣 現在の雇用問題、雇用情勢に対応するために、自由民主党、社会党、民社党、公明党、それから共産党はきょうお出しになったそうです。労働四団体からも出ておることは承知しております。それを目下対比しながら役所の中でも検討を続けているわけであります。ただし、私どもといたしましては、雇用安定資金制度がこの十月に発足したばかりであります。それからこの安定資金制度の中には御承知のように二通りありまして、一つは景気変動等に対する雇用調整を目的とする事業、もう一つは、いま御指摘構造不況産業、いわゆる事業転換に伴う雇用安定事業、この二通りございます。その後の方は実はこれからが本番であると覚悟を決めておるわけでございまして、その実情をつかまえるのにいま躍起になっております。おおよそ通産省所管の雇用不況事業で約二百八十万、それから運輸省及び農林省所管を合わせますと五十万をちょっと超える数字になるわけでありますが、その中には流通部門が入っております。そこで、私どもの方として現在業種指定をいたしておりますのは五十四種、二百六万でございます。そこまではつかめるのでありますが、さてそれぞれのいわゆる不況事業においてどういうこれからの雇用計画を持っているのかという段になりますと、労使関係その他を配慮されてなかなかその正確な数字をお出しにならないというところに困難な点がございます。  それから先ほど金利の引き下げ等によってどれだけの雇用増が見込まれるかという御質問、これはもう私どもの方でほったらかしにしておるわけではございません。大体人間一人を雇用いたしますと、賃金を加えまして一人当たり約三百万円弱と単純計算をしますと、一兆二千億で四十万ということになるわけでありますが、しかしこのお調べの中でもおわかりのとおり、各企業によってそれぞれ事情が違うわけなんです。これから整理をしようという整理の度合いをとめるところ、新規に雇い入れるところ、いろいろあるわけでございます。したがって、計量経済学的な、一定の基準を決めて、何ぼの金利が下がったら何ぼ新しい雇用が出る、幾らの公共事業をやったらどれくらいの新しい雇用が出るという計算が簡単にできない、個々のケースが非常に違うということも御理解をいただきたいと存じます。
  132. 荒木宏

    荒木委員 だんだんにお尋ねをしていきまして時間が近づいてきたのでありますが、私は、最後に中期展望について伺っておきたいと思うのです。  それは、いまいろいろ政府の説明を聞いておりますと、世界は大変混乱をしておるけれども、日本はそうではないということで総理お話もありました。しかし、いま危機に直面しておるもの、危険信号が出ておるもの、在来型のやり方を続けてきたためにもう矛盾、破綻がだれの目にもはっきりしておるもの、決して少なくないと思うのです。国の財政がそうです。三〇%ということで、もういままでにない借金財政になっている。そういう穴埋めとして一般消費税という話が出ておるのですが、私どもは一般消費税は絶対反対です。大衆に犠牲をかぶせていく、逆進性を強める、それから物価を押し上げる、いまの時期に生活を破壊する一般消費税は同時に経済も撹乱していくと私は思うのです。そのもとになっておるのは不公正税制であります。  私はここにグラフを持ってまいりましたけれども、これは私たちの計算じゃないのです。これは大蔵省の計算したものをそのまま、昭和四十六年から五十年までグラフにしたものでありまして、資本金百億円以上の企業の実際の税負担率、これをごらんください。真ん中は一億円から百億円まで、つまり中堅企業と言われるところであります。一億円以下、これは中小企業です。もう明らかに、四十六年から五十年まで大蔵省の計算によればみんな同じ姿です。資本金百億円以上のところは中堅企業よりもうんと低い。この姿がいつまでたっても直らない。いままで皆さんは、これはやれ政策税制であります、あるいはその都度見直しをしております。それはそれでいいかもしれぬと私は思うのです。ただ、こういうふうに何年も何年も同じ姿が続くとなりますと、やはりミクロではなくてマクロとして、この姿がいいかどうかということを考えなければいかぬと思います。そうした一般消費税の問題を論ずる前に、まずこれを、大きいところそして強いところ、そこが正しく負担するような姿に改めることが先ではないか、当然のことじゃないか、私はこういうふうに思うのです。そして税負担をしかるべく求めて、それをこうして国会で論議をして、本当に役に立つところへ再配分をしていく、それが経済の発展の原動力、潤滑油になっていく、そういう姿が必要なんじゃないでしょうか。こういう不公正な税制の、この姿ですよ、この姿を正しく是正するように税制調査会に諮問なさるかどうか。これは総理の諮問機関です。同時に、十月から委員がかわるところですけれども、これは総理大臣にひとつ伺いたい。私は、そういう趣旨の諮問をなさるべきだと思いますが、どうですか。
  133. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いわゆる不公正税制、実質的に不公正がある、こういうものにつきましては逐次是正をしてきておるのですが、五十二年度予算のこの審議、これにおきましていろいろいきさつがあった。そのいきさつの中で、五十三年度においてはこの不公正税制の再検討をするということを政府としても自由民主党としてもお約束をいたしておるわけでありまするから、このお約束に従いまして厳正な検討をする、こういうことに考えております。
  134. 荒木宏

    荒木委員 私が伺ったのは、この逆累進の結果を是正するようになさるかどうか、これを伺ったのです。どうですか。
  135. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  いま総理からお答えがございましたが、租税が公平であるということは、これは制度の上から申しましてもまた執行の上から申しましても、最も大事な点だと私どもは考えております。さような意味におきまして、今日まで租税の不公平論、これを公正化すべしという強い議論が常に行われておりますが、これは本当に耳を傾けなければならない、かように考えております。ところが、租税の不公平という概念と申しますか、その考え方と申しますか、それはきわめて混乱しておるのです。どういうものが不公平か、どういうものが不公正であるかというようなことが大変混乱をしておる。  そこで私どもが考えますのに、租税が公平であるかないかということ、租税は言うまでもなく国民に負担をかける、その負担は公平でなければならないのでありますけれども、あるときあるケース、ある場合におきまして、政策の目的でもってある税について、一番大事な公平ということに対しまして、多少それを損なうとかそれを犠牲にするとかというようなことで、その政策目的達成に妥協をするというような制度ができておる。そういったようなものにつきましては、これは徹底的に検討をいたしまして、そして今日この事態において、今日のこの経済情勢において、果たしてそれでもって通るか通らぬか、それは妥当であるかどうかということを考えまして、私は、いまの税制の中にはとうていさような妥協を許されない税もあろうと思います。そういったようなものにつきましては、これは不公平の税制ということで徹底的にこれを是正してかからなければならない。それを前提として、いわんや租税負担を国民にひとつ増加させていこうということが仮に行われるということであるならば、なおさらその点を厳しく考えていかなければならない、かように考える次第でございます。
  136. 荒木宏

    荒木委員 私が言いましたのは、そうした不公正税制の是正、だれが見てもはっきり姿としてわかるこれを直さずに、一般的消費税の問題は論外じゃないか。国債が大変な増発で財政危機になっておりますが、それだけでなくて、きょうは時間の関係で大変御無礼しましたのですけれども、国鉄の経営もまた値上げによって客離れということになっている。この秋の八日、九日、十日の連休も、これもまた去年よりも減収なんです。住宅公団も空き家がどんどんふえて、そして中に入る人がないという状態、いわば眠り地代がそこへどんどん加算をされていく。つまり、普通の経営の常識からいったって、もう危険ラインということになっているのです。一方郵便貯金は、先ほど言いましたような動きがありますし、皆さんがしきりに宣伝なさる国債もそうでしょう。個人消化が中小の証券会社はもう引き受けられない、予定はとても消化できませんから、売れませんから返します、こういう動きだって出ているじゃないですか。ですから、私が言いたいのは、そういう在来型のとどのつまりまで来たやり方じゃなくて、この不公正税制を是正して財源を確保して、そして福祉も保障し、物価も抑えて、個人消費が下支えじゃなくて経済の一つの推進力になっていく、そして中小企業が活力を持って、そういう点から設備投資の意欲を持って経済の一つの大きな力になっていく、そういったような方向で「日本経済への提言」というのを私どもは中期計画として発表しました。これは倉成長官もたしかお読みいただいたという話ですけれども、そういう方向考え方、中期計画に沿って、今度の補正予算に対してはきょうわが党の国対委員長が組み替えの動議案というのを発表いたしました。政府もそうした声を十分くんで、きょうの論議を施策の上に実施させることを私は強く要求したいと思うのです。最後にその点の総理答弁を伺って質問を終わります。
  137. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 荒木さんの御所見、御提言、これは採用というか受け入れたら大変よかろう、こういうものがありますれば、これは採用をいたします。ただ、大企業敵視というか、そういう考え方じゃ経済は動かぬと思うのです。中小企業もりっぱに立ち行く、大企業も立ち行く、双方相まって経済を動かす、こういう考え方でないと円滑な経済運営はできないという感想を申し述べてお答えといたします。
  138. 荒木宏

    荒木委員 これで終わりますが……
  139. 田中正巳

    田中委員長 時間を延ばしたんでしょう。
  140. 荒木宏

    荒木委員 終わります。ただ、金炯旭氏の証人の申請……
  141. 田中正巳

    田中委員長 それは、いまの話に関連していればいいけれども……
  142. 荒木宏

    荒木委員 わかりました。  それじゃ終わります。
  143. 田中正巳

    田中委員長 これにて荒木君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次に、西岡武夫君。
  144. 西岡武夫

    西岡委員 質問に入ります前に、委員長に一言申し上げます。  私どもは、これからの政治課題の重要な問題の一つとして行政改革があるというふうに考えております。政治が行政改革に取り組むためには、まず、みずから国会のあり方について改革を加えなければいけないのではないか、このことを新自由クラブとしてさきの通常国会においても主張をしてきたところでございます。  具体的に申しますと、わが国の国会が常任委員会制度をとっているのに、委員会の運営が、予算委員会が開かれているときには予算委員中心であり過ぎるのではないか。その間……(「議運でやれ」「総括中だけだよ、そんなのは」と呼ぶ者あり)その間他の委員会がすべて機能を停止している。たとえば今度の国会も会期はわずか四十日間でございます。もっと他の委員会がそれぞれの役割りを果たすように、予算委員会に全閣僚の出席を求めてそこに拘束してしまうという今日までのやり方は改めるべきではないかということを主張してきたわけでございます。しかし、残念ながら、いまもいろいろお話が出ておりますように、全党の、全政党の合意がいまだ得られておりません。また、議長のもとにおかれては、議会制度調査会においてこの問題の取り扱いについて現在御検討いただいているということでございますので、きょう私どもが新自由クラブとして予算委員会の審議のあり方を直ちに改めることは事実上不可能な状態でございますので、どうか委員長におかれましてもこの問題について積極的にお取り組みをいただきまして、少なくとも次の通常国会においてはこの予算委員会の審議のあり方を改めることができますように御検討をいただきたい。委員長のお取り扱いについてのお考えを承りたいと思います。
  145. 田中正巳

    田中委員長 本件につきましては、前国会からいろいろ新自由クラブからの御主張がございました。先ごろの理事会においてもこの問題を討議いたしましたが、ただいま西岡君の申したとおり、各党のコンセンサスを得ることができませんでした。今後理事会においてこの問題の解決のために精力的に検討、協議をいたしたいと思います。
  146. 西岡武夫

    西岡委員 よろしくお願いをいたします。  初めに、ハイジャック事件についてお尋ねをいたしたいと思います。  この問題について総理を初め関係閣僚の皆さん方が大変な御心痛をなさったことについて心から感謝を申し上げたいと思います。  私どもは、今回のハイジャック事件に関して超実定法的措置がとられた、このことは結論としてはやむを得ない措置であった、このように考えます。しかし、少なくとも、やむを得ない処置であったけれども、正しい処置ではなかった、このように理解をいたしております。これについて総理の御見解を承りたい。
  147. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは超実定法といいますか、緊急避難行為といいますか、まあ緊急避難に準ずる行為であったことは、これは事実でございます。しかし、これが正しくないのだ、こういふうに私は思いません。ちゃんと法理にかなった人命尊重というコンセンサスを踏まえての行動であった、こういうふうに思いますので、正しくない行動であったというふうな理解はいたしておりません。ただ、それが実定法を超えた行動であったということはそのとおりでございますが、これはおまえ正しくないことをやったのじゃないかといっておしかりを受ける行為である、こういうふうには思いません。
  148. 西岡武夫

    西岡委員 私どもがやむを得ない措置であったと考えます理由は、前回のクアラルンプール事件以来これを防止する具体的な十分な対策がとれていなかった、また私ども自身も議員の一人として、こういう問題について、これまでのクアラルンプール事件のときの教訓を生かして、これにどういう具体的な対策をとるかということについて取り組み方が少なかったという反省も込めてやむを得ないと考えるわけでございますが、しかしいま総理お話でございますけれども、超実定法的な措置をとられるということについては、これが乱発されてしかるべきものでないことは当然でありますし、そういう観点からいたしますと、少なくとも正しい措置ではなかったということは言えないのでしょうか。
  149. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 つまり、正しくないということは違法である、こういうことでしょう。そうじゃないのです。私どものとった行動は違法性は阻却されておる、こういう見解です。つまり、これは緊急避難といいますか、人命尊重上とってもやむを得ない措置と一般考えられておる、そういう法理に従ってやった行動である、こういう理解でございます。しかし、こういうことがあったことは非常に残念ですよ、それを否定するわけじゃありませんけれども、おまえ、正しくないことをやった、違法の措置をやったと言われると、違法じゃないのだ、法理にかなった行動をやったのだ、こういうふうに理解しております。
  150. 西岡武夫

    西岡委員 その点については私は若干総理のお考えには承服できない点がございます。  今回のこの事件は私どもに二つの課題を残したと思います。一つは、再びこのようなことが起こらないようにしなければいけない、もう一つの問題は、再びこのような措置がとられることがないようにしなければいけないということであろうと思います。  第一の点については、政府は直ちにこれまでの反省に基づいて非常に敏速な措置をおとりになろうとしておられます。これには敬意を表します。しかし第二の点については、ただいま総理の御答弁にもございましたように、これは法理にかなっている、そうであれば、再びこのような措置がとられることはこれからもあるのだということを前提にした、これからの総理のこの問題についての基本的な姿勢というものが非常に不明確になってくる、そう申し上げざるを得ないと思うのです。私は、人命尊重という問題と法の秩序を守るという問題が、二者択一、どちらかをとらざるを得ないという問題ではないと考えております。法の秩序を守るということはまさに国民の生命と財産を守るということであって、人命を尊重するということを貫くためにも法の秩序は厳然として守らなければならない。そういう観点からいたしますと、これはどちらをとるかという問題ではなくて、あくまでも基本的な考え方としては法秩序をどこまでも守っていくのだ、こういう考え方に立つべきだと思うのです。この問題についての、法治国家と人命尊重、法秩序をどのように守るかということについての総理のいわば哲学は一体どこにあるのか、これを重ねてお尋ねをいたしたい。
  151. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、法秩序も維持されなければならぬし、人命も尊重されなければならぬ、こういうふうに思います。それが、一つが立てば一つが、他は立たぬ、こういう性格のものではないと思うのです。そういうことであるべきだ、こういうふうに思います。そういうことが両立するという方向へ全力を尽くすべきものであるというのが私の基本的な考え方です。
  152. 西岡武夫

    西岡委員 しかし、今回のような措置が今後もたびたびとられる可能性が残されているということになりますと、長い目で見て、これは人命を軽視するということにも結果的にはつながるのではないか、この点をどうお考えでしょうか。
  153. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ですから、今回のような事件が反復しないというために全力を尽くすということが私は正しい態度である、そう考えています。
  154. 西岡武夫

    西岡委員 昨日来の他党の質問を通じて、政府がいまとられようとしておられます、こういう事件を未然に防止するということについての措置は、かなりきめの細かい徹底したものであろう、このように理解をいたします。しかし、法務大臣も御指摘になりましたように、十分な対策がなされてもなおかつやはり絶対に起こらないということはなかなか言えない、そういう可能性がやはり残されている問題でもあると思うのです。そうであるだけに、今回の措置は仕方がなかった、やむを得なかった、しかし今後はこういう措置はとらないということを、不退転の決意で総理がお示しになることが、未然に今度のような事件を防ぐ基本的な問題ではないのでしょうか。
  155. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今回のような事件が再発しない、そのためにきめ細かな、すき間のない万全の措置をとるということが、これは私は政府の責任である、それをやってのけることが正しい道である、そういうふうに考えております。
  156. 西岡武夫

    西岡委員 私が申し上げたいのは、超実定法的な措置が今後もなおとられる可能性が常に残されているのだというような姿勢で法治国家としての国体が守れるのか、こういう問題が教育界あるいは法の秩序を守るために日夜御苦労をいただいている関係者の皆様方にどういう大きな影響を与えているか、こういうことを考えますと、いまの総理の御答弁では、私はどうも納得しかねると申し上げざるを得ません。それでいいのでしょうか。
  157. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 西岡さんは、またこういう事件が起こるかもしらぬ、こういうことを前提といたしましていろいろ話をされていますが、そんなことを私は予想したくないのですよ。そんなことが起こらないようなための万全の措置をとる、これが正しい態度でなければならぬということを申し上げておるわけなんです。
  158. 西岡武夫

    西岡委員 現に釈放犯人も含めた十一名が、日本の立場からいたしますと放置されて外国にいるわけです。彼らが明らかに宣言をしているように、今後もこういう行動をとろう、とるということを言っているわけでありまして、この十一人をきちっとした形で処置をしない限りは、常にその危険はつきまとっている、こう見ざるを得ないわけです。これは万全な防止を行うということは当然でございますけれども、私が申し上げているのは、法治国家についての総理のいわば哲学のようなものを、ここで国民全体の前に明らかにされることが最も大事なことではないのかということを申し上げているわけです。再度御答弁をお願いいたします。
  159. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ああいう非人道的な行為が行われる、これがあってはならない、その再発を防止する、それに責任を持つということが政府の正しい態度でなければならぬ、こういうことを信じ、それを申し上げておる、こういうことです。
  160. 西岡武夫

    西岡委員 それでは総理は、もう一度お尋ねをいたしますが、今後超実定法的な措置はとらないということはここではっきり御宣言はなさらないということでございますか。
  161. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 不幸にして万が一またそういうこの種の事件が起こったという際においてどういう態度をとるか、これはそのときの置かれておる客観的ないろいろな条件がある、それを考えてその場で判断すべき問題であって、いま、また超実定法的な態度はとるとかとらないとか、そういうことを予断すべきものじゃないんじゃないですか、そのように考えています。
  162. 西岡武夫

    西岡委員 私は、総理のいまの御答弁には全く納得できません。しかし、押し問答をこれ以上続けているのもどうかと思いますので、それではお尋ねをいたしますが、前法務大臣福田さんはどういう理由でおやめになったのでしょうか。
  163. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今回の措置には、政府のとった措置には賛成だ、しかし、とにかく拘置されておる犯人が釈放されるというようなことになりましたことはいかにも残念だ、そういう意見の人が一人ぐらい閣僚におってもよかろう、こういうことでやめられた、こういうことでございます。
  164. 西岡武夫

    西岡委員 前法務大臣は、法務大臣の責任において今回の超実定法的措置をとられたわけではない、これは総理大臣の責任においてとられた、このように理解をいたします。そうでしょうか。
  165. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  166. 西岡武夫

    西岡委員 そうであるならば、法務大臣がおやめになったのは責任をとられたとかということではなくて、情緒的な理由でおやめになったのでしょうか。
  167. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まあ情緒的というと言葉がどうでしょうかと思いますが、とにかく責任という問題じゃないと思います。いろいろ立場を考えられまして、身を引くがよかろう、こういうふうに判断をされた。つまり政府の行動には、これは福田大臣は賛成されたわけですよ、これ以外に道はない。しかし、いかにも残念だから、また残念だという気持ちを持つ、そういう人が一人ぐらい閣僚の中におってよかろう、そういうことでやめられたのです。
  168. 西岡武夫

    西岡委員 それでは、総理を初め他の閣僚の皆さん方は、残念とも何とも思われなくてということになるわけですが、それはとにかくといたしまして、しかし、そういうようないまの総理のお考えで一体法治国家の尊厳というものが保たれるのでしょうか。
  169. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、法治国家につきましては全責任を負っていますから、法を乱るというようなことはいたしません。また、法を乱る者があれば、その法に従って処断します。
  170. 西岡武夫

    西岡委員 どうも総理は私が質問をいたしておりますのにまともにお答えいただいていないわけでございますが、私が重ねて申し上げたいのは、こういうような超実定法的な措置というものは今後絶対とらないんだという毅然たる態度を総理がお示しにならなければ、わが国の法秩序というものはだんだん目に見えない形で崩れていくのではないかということを恐れるのです。法務大臣、どのようにお考えでしょうか。
  171. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 その前に、先ほど来総理との質疑応答を承っておりますと、今回の事件について、私はその当時は閣僚でありませんでしたけれども、内閣が決定したいわゆる超実定法的措置、これが正しいのか正しくないのかという御議論がありました。私は物事を、これは正しいか正しくないかというときには、何を基準にして——尺度がなければ、それを基準にしてこれが正しいとか正しくないということにならないと、判断の基準が立たないのじゃないか、こう思っております。  そこで私は、いわゆる法治国家というものは、憲法という、国の、国民生活の大方針について原則を定め、その原則に従ってもろもろの凡百の法律、規則を定める、これが通常実定法という、実際に条章に基づいて規定をする、こういうことだと思っております。それを通常いわゆる法治国家、現在憲法下による法治国家と言われておると思います。でありますから、この基準に従うと、今度の処理はいわゆる刑法あるいは刑事訴訟法、裁判所法その他に従って措置をしたものを一部破ったことになっておる、そういう意味においては法律に反しております。しかし、ここが私は大事なところだと思うのです。なるほど実定法によって万般のことを決めますけれども、西岡さんも当然御理解いただけると思いますが、すべての万象を実定法によって決めることは、いかに人知が発達しても不可能であります。でありますから、そこにはいわゆる法理論、法の解釈、法の運用ということが出てくるわけであります。人命を尊重するということは、人間の世界でありますから、これを最高の目標としてわれわれは生きておると思います。したがって、憲法もそういうことを決めておる。したがって、人命を汚す者は最高の犯罪として取り扱われるようになっておるのは、そこにあると思います。それは非常に大事なことである。しかし、国家を経営し国民生活を平和に安定した暮らしをさせるために実定法でいろいろ決めておる、これは国民の約束である、あらかじめのおきてであり、約束であります。でありますから、できるだけあらかじめ決めた約束を実定法によって示すということが法治国家のとるべき道である、国民もそれを理解しておる、それに従って生活をし活動をする、すべてそうなっておるというわけであります。  しかし重ねて申し上げますが、森羅万象をすべて実定法によって決めることはできない。でありますから、そこにそれ以外の法理がある、こういうことにならざるを得ない。人間の知恵で決められない問題が出てくる場合があるわけでありますから、そのときには法理に従って問題を解決せざるを得ない。この前の事件はまさにそういう場合に逢着したものである。私は閣外にあってあの事件を見ておりましたが、どなたもそう理解しておられると思いますが、非常に残念であるけれども、実定法上はやりたくないけれども、いわゆる人命尊重、ああいう場合に、百数十人の人が現に非常な危険に瀕しておる、何とかこれを救わなければならない、これも一つの理でありますから、そういうことをすべてをくるめて、やはりこの際は涙をのんでこうしなければならない、こういうふうになったのだと、私はそう理解しておって、これは閣外におりましても、やむを得ない事態であった、しかしきわめて残念なことである、再びこういうことを繰り返してはならない、こういうことも総理も言っておられるわけでありまして、私はそういうふうに事を分けて考えないと、この問題の正しいか正しくないかということは理解できないのじゃないかと思いますから申し上げたわけでございます。
  172. 西岡武夫

    西岡委員 現在、この事件を起こした犯人たちは日本の手の届かないところにいるわけでございます。これについて今後どういう措置をとられるのか、こういった問題に関連をいたしまして、同僚の山口議員から関連の質問を、委員長、お許しをいただきたいと思います。
  173. 田中正巳

    田中委員長 山口敏夫君より関連質疑の申し出があります。西岡君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山口敏夫君。
  174. 山口敏夫

    山口(敏)委員 政府の措置によって人質が解放されて一応の解決を見たわけでございますが、その後、政府は、アルジェリア政府に対して、犯人と六百万ドルの身のしろ金を日本政府に引き渡すことを希望する、二番目として、当面アルジェリア政府が犯人を出国させず国内に拘禁し、六百万ドルが利用されないような措置をとるよう要請する、三つ目としてアルジェリア政府側の措置、犯人に対する情報や捜査資料の提供を求める、この三点を政府方針として決定して、福田総理は、この三項目が、政府方針についていろいろあったけれども、これが政府として最初にして唯一の見解だ、こうおっしゃっておるわけでございますけれども、そう理解してよろしいわけでございますね。いまの三項目の政府方針が政府の最初にして唯一の見解だと総理はおっしゃっているわけですけれども、そう理解してよろしいわけでございますね。
  175. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私からちょっとお答えさしていただきたいのですが、第二点目でありますか最初でありますか、六百万ドルの身のしろ金につきましては、これは返還を要求はいたしておりません。
  176. 山口敏夫

    山口(敏)委員 利用されないように……。
  177. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 そういう趣旨でございます。
  178. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 最初にしてというところはちょっとひっかかるのですが、まあとにかく最終的な方針であるということはそのとおりです。
  179. 山口敏夫

    山口(敏)委員 このアルジェリア政府に対する政府の方針に対して、アルジェリア側の回答について外務大臣からお答え願いたいと思います。その後の経過……。
  180. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 アルジェリア政府は、わが方の宮崎大使を呼びまして、この日本政府の申し入れば、その前に、着陸前に日本政府と約束したことと趣旨が合わないということを述べまして、そして結論といたしまして、この日本政府の要望は受け付けるわけにいかない、こういう返答をしてまいった次第であります。  わが方といたしまして、事件があのような、決着というわけではありませんが、あそこで一応の、犯人がアルジェリアにおきまして乗員の命と引きかえられたわけでありますけれども、その直後でありますので、わが方の態度といたしましては、しばらく時間の経過を待って、冷却期間を置いた上で相談をいたしたい、このように考えておるところであります。
  181. 山口敏夫

    山口(敏)委員 先ほど総理が、最初にして唯一の統一見解という問題に対して、最初にしてという言葉がひっかかるということもおっしゃったわけでございますけれども、これは十月六日付のAPS、アルジェリアン・プレス・サービス、アルジェリア政府に近いニュースの記事を読み上げてみますと、いわゆる東京での宣言、発表ですね、先ほどの日本政府の決めた三項目に続いて、JALハイジャック事件の幸運な解決と人質及び乗組員解放の後で以下のことを呼び起こすことも意義あることであろうということで、以下四項目にわたってアルジェリア側の意向を伝えているのですね。  それを読みますと、「アルジェリアは、日本政府の要請に基づき、双方が合意した条件でこの事件に関与した。」二つ目として、「この関与は、重大な危機にさらされた人命を救助するために、厳密に人道的な立場で行われたものである。」そして三項目目として、「アルジェリアは、日本当局と同様に、この問題の幸運な解決に満足しているものであり、日本政府は、最も権威ある発言において、アルジェリア政府がとった措置に謝意を表明している。」そして「この事件に関するすべての措置において、アルジェリアは、双方が合意した手段と方法を忠実に実行に移したものである。」こういうような趣旨の見解を述べておるわけです。  四日の日に閣議が開かれて、そしていろいろな閣僚の方々の発言があったようでございますけれども、中においては、犯人の身柄引き渡し要求をすべきだ、アルジェリア政府と少々ぎくしゃくしても仕方がないじゃないかというような意見に代表されるように、大変閣議で混乱をして、官房長官も総理も、外務省の事務当局の責任という立場において、政府としての統一見解でアルジェリア政府に以下の三項目を要求したわけですね。私は、これは国民感情としては当然だと思うのです。しかし、すでにバングラデシュのダッカにおいて説得をしておる最中に、内々において官房長官が対策本部として十数カ国に受け入れを要請をした。次の措置としては当然のことですね。その犯人の要求を受け入れるという時点で、最終目的地までの一つの段階で人質を解放させなければならぬということは当然のことでございますけれども、その中にあって、ハイジャックの飛行機をアルジェリア政府が承認して受け入れたということに対して、政府の判断といいますか、きのうも予算委員会の答弁総理が、ハイジャック事件によって大変国際的に赤恥をかいた、こういうことをおっしゃったわけでありますけれども、その後の政府のとった措置というのは、やはり外交的にも政府みずから恥の上塗りをしたのではないか。外交的措置を超えて、アルジェリア政府が、いろいろ批判を受けるのを承知で日本政府の合意に基づいてハイジェックを受け入れた、しかし、日本政府はそれを一外務官僚の判断という形にして、そして国と国との外交関係の上の合意を無視して、また第二のノートを送った、こういう形になるわけですね。これはもう単に福田前法務大臣辞任にとどまらない、政府の外交に対する無定見といいますか不見識というものがこの事例の中に指摘できるのではないか。まして国民感情の中で、一部の狂信的なファンがゲームに熱中してグラウンドにビールびんや空きかんを投げ込むのと違って、閣議の席というものは少なくとも日本の国の最高方針を決定するきわめて重大な場所だと私は思うのですね。そこでまさに床屋談義的な、犯人の引き渡し要求をしないのはけしからぬ、アルジェリア政府はけしからぬ、これをまた対策部長総理も承知をしておったということをあえてそこで披瀝をなさらなかったのはどういう政治的な御判断があったのか、総理からお伺いしたいと思います。
  182. 田中正巳

    田中委員長 議事の途中でございますが、ただいまロイ・ジェンキンズEC委員委員長御一行が本委員会の傍聴にお見えになりました。御紹介いたします。     〔拍手〕     —————————————
  183. 田中正巳

    田中委員長 審議を続行いたします。園田内閣官房長官。
  184. 園田直

    ○園田国務大臣 ただいま御質問は総理にということでありますが、直接私が担当しましたから、お許しを得て経過を御報告いたします。  まず第一に、三項目のアルジェリア政府と日本国政府との約束は、一外務官僚が勝手にやったものではございません。この点は明瞭でございまして、その経過を私も総理も聞いておりまして、最後の段階であります。そこで、それ以外には方法はなかろう、その場になったらそういう線で臨機応変にやれという了承を得てありましたので、外務省はその了承の線に従って訓令を出し、宮崎大使は向こうと約束したわけでありますから、この点は一外務官僚の独断で勝手にやったことではございません。  そこで、その後の閣議及び対策本部で決定しましたことは、その日本政府の意思を外務省を通じ、宮崎大使を通じて向こうと約束したことを覆したわけではありません。その約束は約束としてやったことではある。そこで、幸い乗客は全部解放されたし、この事件はその時点においては一応解決いたしましたけれども、それよりもっと大事なのは、二度と再びこういう事件を起こさせてはならぬということが大事でありますから、約束はいたしましたけれども、再発防止の観点から、ひとつできたら犯人は取り調べの上引き渡してもらえぬか、金もまた没収したら返してもらえぬか、それもできなかったら、お金はアルジェリアの国で没収をして、犯人が再び行動を起こす資金にならぬように、あるいはまた犯人の方は引き渡しができなければ、これは約束ですから仕方がありませんから、できぬとおっしゃるならばアルジェリアの国でその身分を拘束してもらえぬだろうかというお願いをしたということで、前の政府の意思決定と後の相談とは、これは外務省とも十分相談してやったことであり、みんなの意見でありまして、前の意思を決定し、国際慣例を無視してやったことではなくて、約束は約束としてわれわれは承知しておりますけれども、再び起こさないためにこのような御協力をお願いできませんかという相談をしたわけであります。そこで、その相談はああいう約束があるから受け付けられぬということであります。そこで外務大臣から、さはさりながら大事なことであるから、今後時期を見ながら絶えず努力をしたい、こういう答弁があったわけであります。  以上、経緯を申し上げます。
  185. 山口敏夫

    山口(敏)委員 こうした、いかなる動機、目的があろうとも、人命をもてあそぶハイジャックのひきょう卑劣な犯罪行為に対して、これは国民的な合意の中で再発防止をしていかなければならないという立場から、私は政府に対してこの問題で追及してどうのこうのという考えで申し上げておるのではないわけです。しかし航空保安官をつくるとか、あるいは手荷物を制限するとかいろいろありますけれども、やはり要は、こうした問題は国際的な信頼、信義の中で解決をしていかなければならない。しかるに、日本の政府首脳が、それだけ皆さん方お歴々が集まっておりながら、外交的な不定見といいますか、混乱の中で、相手政府に対して第二ノートを送らざるを得なかったということはきわめて明確でありまして、私どもは、こうした問題を通じて、このハイジャック等の問題に対しても、やはり福田内閣の腰のぐらつきというものが、先ほど西岡委員からの御指摘のように、一つの確たる理念の上に立った解決という立場での対処でなかったのではないかという反省を求めつつ、この再発防止の問題に対して超党派的に取り組まなければならない、こういう立場から、一応この問題を明らかにしつつ政府の反省を求めておきたいと思います。  最後に総理から一言……。
  186. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この問題も本当に、本会議でも申し上げましたが、断腸の思いでああいう判断をしたわけであります。やむを得ざる判断であった。しかし政府の責任は非常に重い。その責任を尽くす道は何だ、こう申し上げますれば、これは再びこのような事件を起こさないために全力を尽くす。そのためにとにかく考えられるあらゆる措置を講ずる。しかも鉄は熱いうちに打て、こう私は強調しておりますが、こういうものは時間がたちますとどうしても手の打ち方がおろそかになります。緩みが出てきます。早急に結論を出して早急に実行する、そういうことで責任をとっていきたいと思います。
  187. 山口敏夫

    山口(敏)委員 終わります。
  188. 田中正巳

  189. 西岡武夫

    西岡委員 ハイジャックの問題については以上で終わりますが、最後に重ねて一言だけ申し上げますと、きょうの総理の御答弁は非常に遺憾だと私は思います。先ほども申し上げましたように、長い目で見て法の秩序はあくまでも守るのだ、再び超実定法的な措置はとらないという決意をお示しになることが人命を尊重するゆえんである、このように私は確信をいたしますので、総理の御答弁についてはどうしても納得できないということを申し上げてこの問題は終わりたいと思います。  次に、当面の経済運営についてお尋ねをいたします。  他の政党の皆様方から多くの御議論がございましたので、できるだけ重複を避けて話を進めさせていただきたいと思います。  現在のわが国経済の置かれている状況というものはきわめて困難な状況にある。それにお取り組みをいただいている総理を初め閣僚の皆様方の御苦労を本当にお察しいたします。  私どもは、特に財政問題について二つの大きな課題がかけられている。一つは、財政危機をどう解決していくかという問題、その財政が同時にまた、現在の不況からどのように脱出することができるかということについてどのような具体的な役割りを果たしていくか、こういう非常にむずかしい問題に直面をしている。この問題につきましては、総理がいまの日本経済の状況を具体的にどのように把握しておられるか。具体的に申しますと、スタグフレーションということがよく言われてきたわけでありますが、最近の経済指標が示しております状況は、いわゆる不況下の物価高と言われるスタグフレーションの様相から日本経済がだんだん脱出しつつあるという状況ではないだろうかと私は考えております。この点についての総理の御認識を承りたい。
  190. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この問題は西岡さんと私は見解は同じでございます。つまり、石油ショック直後のあの状態というもの、一、二年は典型的なスタグフレーション、不況でありまた物価高である、だんだんそれが克服され、物価は鎮静化の方向にある、また経済活動、これも緩やかではありまするけれども成長路線をたどっておる、こういうので、スタグフレーションから脱却の過程にあるのが今日の日本経済である、そういうふうに考えております。
  191. 西岡武夫

    西岡委員 それではお尋ねをいたしますが、ということは、スタグフレーションのもとにおいて、いままで相当の効力を持っていたと言われていたケインズ的政策はなかなか有効ではないんだということが言われてまいりました。しかし私は、いま総理もお述べになりましたような日本経済現状から、ケインズ的政策の有効性が出てきた、こういう状況だというふうに認識をいたします。その点はいかがでしょうか。
  192. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これも同感と言ってもいいのですが、もう少し詳細に言いますれば、やはりいまの日本経済状態というものは設備過剰ですよ。これはつまりスタグフレーションです。そういう現象があるわけであります。設備過剰で設備も余っておる、また企業は過剰の雇用を抱えておる、こういう状態です。でありまするから、とにかく需給の調整、バランスがとれるような状態に早く日本経済を持っていかなければならぬ。その過程がだんだんと進んでおるのです。  それではその需給調整はどうやってとるのだといいますれば、需要を造成すること、それから設備を構造不況産業みたいなものについては抑制をする、あるいは廃棄をする、こういうようなこと、それでいわゆるデフレギャップを縮めていく。もうその作業がずっと進んでいる。そしてその牽引車、その作業というものはいろいろありまするけれども、需要をつくる、その面におきましては、設備が過剰なんですから設備投資というような手法を使うわけにはいかぬわけですね。ですから、結局何だというと、これは政府の力、財政とかあるいは金融とか、金融による住宅政策ですね、特に財政力を使って需要を造成して、そして一刻も早く需給調整というものができ上がる、こういうことになるのだろうというふうに考えております。
  193. 西岡武夫

    西岡委員 ケインズ的政策の有効性が出てきたということを総理もお認めになったわけでございますが、私どもは、ことしの初めの段階、当初の段階から、もっと思い切った景気浮揚策をとるべきである、あえて国債を増発してでもこのデフレギャップを埋めていく努力をすべきであるということを提言をいたしました。しかし、総理はなかなか慎重な構えで、私どもの提案には乗ってこられなかった。いままでの総理の御苦労は私どもも十分理解をいたしておりますけれども、少なくとも今度出された総合経済対策、これがいささか時期おくれであった、もっと早く発動をすべきであった、中身についてもいろいろな議論がございますけれども、そのことはさておきまして、そういう反省と申しましょうか、もう少し早めの大胆な経済政策を展開すべきであったなというような感じをお持ちでしょうか。
  194. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、今度の政策は、時期から見ましても精いっぱいの時期選定をやったというふうに考えますし、内容につきましても、これまた精いっぱいのことである、こういうふうに考えています。つまりどういう内容の政策をとるかということにつきましては、日本経済現状というものをよく分析してみなければいかぬ。またその分析の上に立って、将来がどういうふうに動いていくかということを見定めなければならぬ。そういうようなことで、細切れに思いつきのまま適時にどしどしと政策をというようなわけになかなかいかないのですよ。ことに日本経済がどうなるか、これはもう世界じゅうが注目をしている。そういう中で、今度は自信のある決定的な施策だということになりますると、それはもう準備のためにも時間もかかりまするし、またそれを実行するという際にも、決めたらすぐ実行しなければならぬ、その準備もありまするし、そうてきぱきとも動かぬ。こういうふうな状態で、私としてはまず適時適切な対策をとった、こういうふうに考えています。
  195. 西岡武夫

    西岡委員 総理、そうおっしゃいますけれども、実際には十月に入ってからの円高の状況、きょうの相場は若干落ちついたというふうに言われておりますけれども、この円高の状況についてどのようにお考えになり、これからの見通しをどのようにお持ちかお尋ねをいたします。
  196. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、円高は思ったよりも急速な動きが出てきたというふうな感想を持っておりますが、その原因は、わが国国際収支が非常に大きな黒字基調で動いておるわけです、そういうこと。これは他面から言いますと、日本経済が大変しっかりしているという一つの証拠でもあるわけでございまするが、しかし国際社会の中では、これは黒字過剰だという批判を受けるようなまた別の面も出てきておるわけです。そういう動きかなり出てきておるのです。そういう状態があること。それからもう一つは、これは円、ドルの関係です。そのドルの方です。これが、アメリカは逆に国際収支、特に貿易収支が膨大な赤字である、こういうようなことがだんだんと言いふらされてくる、こういうこともある。両々相まちまして円高、こういうことになってきたのだというふうに思っておりますが、さあこれからの展望を示せというようなお話でありますが、私が為替相場について展望を示したら、これはえらいことになりますから、私は申し上げません。  しかし、それに関連する問題でありますが、今度私どもが総合対策を打ち出した。そして国内の需要を活発化させるわけですよ。経済の見通し、経済企画庁がつくっておる六・七%成長でも、その六・七%の中で今度は内需が六%を占める、外的要因は〇・七だというくらいに内需要因によるところの景気政策、成長政策を進めるわけですから、これはわが国の黒字基調に対しましては、上半期に比べまして下半期におきましてはかなり黒字減少の方向に進むであろう、こういうことは私はぜひしなければならぬし、またそうなる、こういうふうに考えています。
  197. 西岡武夫

    西岡委員 通産大臣にお尋ねをいたします。  今回出されました総合経済対策につきましては、大体円の動向というものがじり高になっている、しかし政策を立案する過程の中では、まさかこんなに早く二百六十円を割っちゃって二百五十円台に突入するというところまでは見込んでおられなかったと思うのです。八月ごろのある証券会社の調査では、二百六十円台になった場合にわが国中小企業にどういう影響を与えるか、百品目の調査のうち七十品目が大変な打撃を受けるという回答をしていたという調査がございますが、二百五十円台になったということを踏まえて、さらに通産省としてどういうような中小企業対策についての施策の追加が必要と考えておられるのか、円高の中小企業に対する影響についてお考えを述べていただきたいと思います。
  198. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいまのお話でございますが、七月に円高の傾向がすでに出ましたので、当省といたしましては、輸出産業をいたしておりまする二十二ヵ地点に対しまして現実に係官を出しまして、輸出産業の動向を調査いたしました。その結果、だんだんこういうふうに非常に激しくなってまいりましたが、対策といたしましては、対象と考えられまする五十九業種に対しまして、御案内のとおりに中小企業対策としての通常の諸処置はいたしておりまするが、さらにそれに加えまして、まず通常の貸出限度のほかに中小企業金融公庫にありましては二千万円、国民金融公庫にありましては五百万円の別枠の融資限度を設定いたしました。その条件にいたしましても五年以内、据え置き期間は一年といたすような貸付条件のもとに、担保徴求に当たりましても弾力的にこれを配慮する。また貸付金利は七・六%、これは従来の貸し付けと同じでございますが、ただいま申し上げましたように、特にこの十月一日から昭和五十三年の三月三十一日までの期間に緊急為替円高につきましての融資対策というものを特段にとった次第でございます。これらの諸処置によりまして、目下動向を検討中でございます。
  199. 西岡武夫

    西岡委員 私がお尋ねをいたしておりますのは、また要望をいたしたいと考えておりますのは、やはりこの二百五十円台という状況はかなり続く、ある予測には二百五十円ぎりぎりまでいってしまうのではないかという予測すらあるわけでございまして、いまお述べになりました対策は二百五十円台を前提とした対策ではないので、これについてもさらに追加の施策を御検討いただきたいということをお願い申し上げておきます。     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕  総理にお尋ねをいたしますが、先ほどからのお話の中で、いまのところ考えられる十分な施策を出したつもりだという御判断だったわけでございますが、私は、もっと思い切った需要の喚起を行わなければ、六・七%の実質経済成長があったとしても、現在のデフレギャップ、製造工業の稼働率八四・八%というものを解消していく方向にはならないのではないか。  そうなると国債というものについての問題になるわけでございますが、私どもは、特に建設国債についてそうおっかなびっくりの運営をする必要はないのではないかという考え方に立っております。三〇%の壁というものを設けているがために、何か中途半端な形で、国債は発行したわ、景気はなかなか思うように回復しないということになれば、これは全く悪循環に陥るのではないか。この点についてどういう展望を持っておられるのか。私どもは、少なくともここ三年ばかりの先を見通した具体的な経済政策、総理の見通し、判断というものを国民の前にいま明らかにすべきではないかと思うのです。もちろん個別の施策についても、政府が今度の政策の一環として出されております中小企業関連の諸政策、またこれから新しく創設されようとしておりますいろいろな新しい制度、構造不況業種に対する対策中小企業関係の施策はかなりきめ細かに行われていると思うのです。それは私どもも評価をいたします。しかし、そういう政策も大事なんだけれども、同時にまた、五十三年度は一体どうなるのか、五十四年度はどうなるのかという見通しがなければ、なかなか日本経済が活力を盛り返すことができないのではないか、こう考えるわけです。他の政党の御質問の中にもございましたけれども、もっと具体的な中期的な見通しをやはりこの際政府は明らかにすべきではないか、このことについて、重複をいたしますけれども、重ねてお尋ねをいたしたいと思います。
  200. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 中期的な見通しを持て、これは私、もう全く同感でありまして、そのとおりにしているのですがね。ただ、西岡さんはそうは言いながら、この際国債をうんと出してひとつ一挙にやっちゃえ、こういうこともおっしゃる。どうも真意がどこにあるのかよくわかりませんが、私は、公債をとにかくいま三〇%出している、この状態は非常に不健全な形じゃないかと思うのですよ。わが国経済がとにかく世界でも非常に高く評価されるような状態の今日、そのしわ寄せというか犠牲が財政に来ているのです。三〇%も公債に依存している、こういう状態、これは非常に関心を持つべき時期じゃないか、こういうふうに思います。私はとにかく基本的に、経済あっての、また社会あっての財政だ、こういうふうに思います。思いまするけれども、経済社会を支えるその財政が崩れ去ってしまうということになったらこれは大変なことになりはしないか。さっき共産党の荒木さんからも、公債が店頭でなかなか売れないような状態が出てきているというようなお話がありまして、私はその実相は定かには知りませんけれども、さあ急に公債をうんと出してそうして景気がぐっと上がった、そうして民間の設備投資需要だ、それから国債だ、地方債だ、社債だ、そういうような需要が殺到するというようなことになったら、これは大変なことになってくる。そういうことを考えますと、私は公債政策、これには本当に慎重で節度を持った考え方をしなければならぬ、こういうふうに考えます。  ただ、中、長期の展望を持たなければならぬ、これは全く同感で、この三年間につきましては昭和五十年代前期五カ年計画、あれをにらみながら、あれがどういうふうになっているか、これはときどきというか頻繁にそれをチェックしながら、そうしてやっていきたい。そうしてとにかく一刻も早く日本経済安定成長基調に乗せたい、こういうふうに考えております。
  201. 西岡武夫

    西岡委員 私は決して国債をむちゃくちゃに出してしまえということを申し上げているわけではないのです。三年ぐらいの中期的な見通しの中でもう少し弾力的なお考えを持たれたらどうですかということを申し上げているわけです。  そこで、冒頭に申し上げたように、日本経済現状はケインズ的な政策の有効性が出てきているということ、お尋ねしたのは実はそこにあったわけです。そういう考え方に立てば、確かに国債がそうたくさんむちゃくちゃに出てしまうということは、財政の危機でありますから、これはできるだけ抑えた方が望ましい。ただ、現在貯蓄の超過が十兆円あると言われている。一方、財政の方が不足をしておりますのは、国庫で大体八兆四千億から五千億、地方を入れるとこれは大体十兆と見ていい。そういうバランスを考えれば、一定の限度内においてもう少し弾力的に国債問題に取り組んでいいのではないか。そして同時にまた新自由クラブとしては、ここ数年後に日本経済が一定の安定成長路線に乗った段階で増税問題について国民の皆さん方の合意を求めていかなければならない、そういうときが来るだろうという認識をいたしております。新自由クラブとしても、この問題については積極的に取り組んでまいりたい、このように考えております。そのことを前提として、もう少し柔軟な、積極的な、大胆な政策をおとりになった方がいいのではないか。  先ほど総理もおっしゃいましたように、いまの円高の状況というもの、これに対応するためには内需の喚起を行わなければいけない。これは、構造不況業種がある中で公共事業を盛り上げていくだけではなかなか手の届かないところがあるわけですけれども、総理も再三、日本経済の全体の底上げをしていかなければそういう構造不況に対する施策も十分ではないのであるからというふうにおっしゃっているわけで、それをもう少し思い切った施策をなさる方が結局は財政の健全化にも、租税のGNP弾性値一・二というようなこれまでの経験則から言っても、そのことにつながるのではないか、こういうことを申し上げているわけです。この点はいかがでしょうか。
  202. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、経済社会第一主義者でありまして、財政は経済社会を運営するための手段である、こういうふうに考えておるのですよ。もうずっと長い間そういうふうに考えておる。ところがこの経済社会、これを維持するための方策としての財政というか、これが崩れ去るということになってもまた全体の経済社会が大変なことになりますからね。しかも何といいますか、公債が消化されない、こういうような状態が起こってきたらえらいことになってくる。それは一挙にここで公債を出して、そして公共事業をやります、減税もやりますと言ったら、景気はずっと盛り上がると思いますよ。しかし、そのときにはすでに公債の消化のための資金需要、また設備投資のための需要、またいろいろな民間の諸活動のための需要、こういうものが殺到するわけですから、これはもう大変なことになってくる。その辺をよほど私は慎重に考えているのですよ。  私は、今度とった施策は、かなり思い切った施策をとったつもりです。総額二兆円、しかも、それによって六・七%成長が実現される。世界の中で、とにかく飛び抜けて高い成長になってくるわけですね。日本と並んでヨーロッパでは西ドイツ、これはそういうことになっておりますけれども、西ドイツでも三%ちょこちょこぐらいのところに転落しはしないかというようなときに、わが日本はとにかく六・七%、倍の成長を目指しての施策なんですから、決してこれがそうしみったれたというか、そんなようなものであるとは私は思いません。相当思い切った施策だ。しかし、ことしあればそれでいいんだという日本じゃありませんよ。来年もなければならぬ、再来年もなければならぬ、未来永劫になければならぬ日本ですから、そのことを考えながら、とにかく慎重にやっているのです。精いっぱいやっているのです。御理解を願いたいと思います。
  203. 西岡武夫

    西岡委員 私は、現在のデフレギャップが存在をしている状況のもとでは、三〇%の国債依存度の壁というものは理論的根拠がないという意味で申し上げているわけで、これを、もっとめちゃくちゃに出してしまえということを申し上げているわけでは決してございませんから、誤解のないようにお願いをいたしたいと思います。もう少し弾力的に考えるべきではないかということを申し上げているわけでございます。  構造不況の政策については、先ほども申し上げましたように、現時点におけるかなりきめの細かい施策が行われていることは私どもも評価をいたしますけれども、これは対症療法的な措置であって、長い目で見れば、ある業種はどうしても撤退を強いられる。そうなると、日本の産業構造を大きく変化していかなければいけない。その場合に、単なる産業構造の変化というよりは、社会構造の変化というものにこれはつながっていく問題であろうと私は思います。  そこで、労働大臣にお尋ねをいたしますが、そういうようなことを考えますと、将来、日本の社会を具体的に一体どういう方向に持っていくのか。現在、構造不況と言われている業種、これは単なる景気の循環ということではなくて、もうもとには戻らないという業種も相当あるわけで、そういうことを考えれば、そこでの就業人口というものをどういう方向に誘導していこうとするのかというものがなければいけないと思います。これについての労働大臣の御見解を承りたい。
  204. 石田博英

    ○石田国務大臣 これまでの御質問をなさった方方にお答えをしてまいりましたが、私どもは、まずこの雇用問題を、短期的にいまぶつかっている問題、それから中長期的に日本の社会構造の変化に対応する問題と分けて考えなければならないと思っております。  そこで、いまぶつかっている雇用問題の中で、対象業種に二通りあるわけです。いわゆる景気の変動によって生ずる雇用の問題、それからもう一つは、いま御指摘のような構造不況によって生ずる雇用問題と、この両方あるわけであります。前者に対しましては、雇用調整給付金等の制度を利用いたしまして、なるべく失業をしないように、つまり景気の回復を待つことができるように、そういう処置、あるいはその内部において職業訓練等が受けやすいような処置、これを講じておるわけであります。これは雇用安定資金会計からやっております。  それから後者に対しましては、これは当然事業転換による移動を考えなければなりません。それから業種の転換も考えなければならない。したがって、職業の教育訓練というものの果たすべき役割りが非常に大きくなるわけです。特に、いろいろな諸条件の変化に伴いまして、その訓練の科目をこれに応ぜられるようにすることが必要であります。  それからもう一つは、中、長期的に考えますと、これから当然予想される社会は高年齢社会であります。しかもその高年齢化の速度は、アメリカやイギリスが三十年ないし四十年かかった速度を十年間でやっておるわけです。しかも、それが今後ともその速度を増しこそすれ、緩める気配は余り見られないわけであります。  それからもう一つは、いわゆる高学歴社会であります。今日私ども一番むずかしくぶつかっている問題は、いわゆる大学卒業生の就職問題でありますが、これは直接は私どもの所管ではなくして、その責任は当該の学校に第一義的にはある。しかし、雇用問題全体として考えるときには、これは無視できない。現在、四年制の大学を卒業して就職を希望しておる人の人数は、おおよそ二十七万であります。それに対応する求人は二十七万よりはかなり多いのです。多いけれども、どうして大学卒業生の就職問題が出てくるかと言えば、その卒業生の就職の希望の方向及び職種と、それから求人する側の希望及び職種に大きな開きがある。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕 つまり大企業、上場会社あるいは千人以上の企業だけにとってみると、そこだけを二十七万人が希望いたしますと、六人に一人しか就職できません。それから主として管理事務部門に就職を希望いたします。ところが、全産業別に見て管理事務部門というのは何%くらい必要か、そういう調査をいたしますと、多く出る数字でも二六%前後であります。そこへ大体四〇%近い大学卒業生が全部殺到していくということになれば、必ずそこにはギャップが出るのは当然であります。特にサービス、セールスの部門の大学卒業生に対する求人倍率は五・七くらいで、非常に高い。ところが行きたがらない。それから五百人以下の規模の企業の大学卒業生の求人意欲が相当あるわけです。そのギャップを埋めてもらうことを教育行政の上で考えてもらわなければならない、そう考えておるわけであります。しかし、この二、三年来、就業人口というものはやはり逐次伸びております。交代者も含めますと、大体二百六十万人ぐらい新規の雇用が年々あるのであります。そして一般的に減少していると言われる製造部門においても百万人ぐらいある。ところが、残りは大体が第三次産業であるというところに特色があるわけであります。  しかも最近におきまして、去年とことしとを比較しますと、去年は一年間で六十八万くらいの新規雇用の増がありましたが、今度は上半期だけで六十二万人くらいであります。したがって、前年よりはかなり好転をしているということが言える。言えるけれども、先ほど申しましたような職種間のアンバランスがあるわけであります。  それからもう一つは、百万人を超える完全失業者が出ておる反面、技能労働力の不足が七十万くらいを数えられる。そういう間の調整をこの過渡期にやらなければならぬ。特に構造不況業種については、やはり西岡君御指摘のとおり、日本を取り巻いておる諸条件の中でこれからは転換を余儀なくされるものが相当ある、あるいは縮小を余儀なくされるものが相当ある。そういうものをつかんで、中、長期の対策を立てなければならぬ。いまのところは雇用安定資金で用意いたしておりまする予算の範囲内において応急の処置は講ぜられると思いますが、これからが本番でございますので、この本番に対応するだけの処置をいたしまして、なお不測の事態を生じましたら、そういう事態に対応しなければならぬ。したがって、どこにかわりを求めるかと言えば、結局は第三次部門、特に消費関連第三次部門、製造業の幅がそれだけ狭くなってくるわけでありますから、消費関連第三次産業に指向していく傾向にならざるを得ない。ただ、政府自身が新たに直接的に雇用の創出を図るということは、いろいろ将来の問題を考えました際、検討を要することでありますので、いまのところはいま御説明申しましたような方向で対処をいたしてまいります。
  205. 西岡武夫

    西岡委員 私は、先ほど来国債の問題をめぐって、もっと大胆にということを申し上げましたのは、一つは、これまでの日本経済の発展の過程の中で生活関連の社会資本というものがまだまだ整備されなければいけない。またこれからの日本の安定した経済発展ということを念頭に置けば、これまで立ちおくれていた芸術や文化というような面、あるいは社会体育であるとか社会教育であるとかというような面について、もっとお金を回していかなければいけないのではないか。こういうことと並行して、たとえばいま労働大臣が御指摘になりましたそういう労働を取り巻く諸条件を考えますと、新規の大学の卒業生にも具体的には現在の日本のこの不況の状況というものがかなり長期的に覆いかぶさってくるであろう、こういうふうに思うわけです。そのときに、もちろん私どもは行政改革ということについて真剣に取り組まなければいけませんけれども、構造不況の状況の中で、日本不況の長期化の中で、日本の社会構造も変化させていかなければいけないとすれば、行政の部門においても就業人口の移動を促進するような役割りを果たすべきではないか。いま労働大臣は、サービス部門というものがこれからのそういう受けざらだということをおっしゃったわけでございますが、具体的な一つの提案を申し上げたいと思うのです。  昨日文部省が発表いたしました学校の基本調査、これは総理もごらんいただいたと思いますが、中学浪人が一万人を突破している。学校ぎらいの子供たちが非常にふえてきている。これにはいろいろな問題がございます。しかし、この問題を提起いたしますのは、教育の問題を基本的に論議するのが中心ではございませんので、長く申し上げませんけれども、私が提案をいたしたいのは、いまの学校教育の中で、子供たちの落ちこぼれの問題だとか、いろいろな問題が起こっております中で、長い間の懸案の一つは、教職員の定数法というのがございます。これは学校の学級編制、現在は小学校、中学校一クラス四十五人の子供たちを上限というふうに決めているわけでございますが、それで教職員を配置しているわけです。これを少なくとも当面四十名にすべきではないかということが教育関係者の長い間の念願でございます。もちろんこれは財政的な大きな壁がございます。しかし、きめの細かい教育を行わなければいけない。昨日文部省が発表したような学校ぎらいの子供たちがどんどんふえている、そういう中できめの細かい、目の行き届いた教育をするためには、もっと有能な教職員を教育界に送り込まなければいけないのではないか。  これを具体的に申しますと、これは一昨年の数字でちょっと古うございますけれども、たとえば現在の教員養成の制度にもいろいろな問題がございますけれども、大体学校で教員免許状を取っております学生が、これは五十年の卒業生の数字でございますけれども、二十二万二千三百人の学生が免許状を取得いたしております。これは幼稚園から高等学校までの教員免許を全部合わせてでございます。その中で実際に教職についているのは、わずか三万八千九百人就職しているわけです。結局免許状というものは相当遊んでいるということになります。こういうことを考えれば、現在の雇用の状況が非常に厳しい状況になってきた、日本の将来が、私どもが主張いたしておりますように、まさに教育にかけられているということであれば、それをお認めいただけるならば、こういう際に教育界にもっと人材を招致するというようなことも、現在の日本経済の状況のもとでとられてしかるべき政策ではないだろうか、こういうふうに考えるわけです。これは、いま申し上げたように芸術や文化の、あるいは社会体育や社会教育の諸施設を公共事業として大いにいまのうちにやっておくということと関連をして、こういう施策もあるのではないだろうか、こういう考え方について総理のお考えを承りたいと思います。
  206. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 教育、特に教員の数の問題をいまの経済問題の処理という一環の中でとらえていくというのはどうでしょうかね。私は、やはり教員の問題は教員の問題、教育の問題という角度から論ずべきであって、いま雇用というような問題がある、それの一環としてというような扱いをするような問題じゃないのじゃないかと思いますがね。私は、雇用の問題は、全体とすると、わが国の雇用の状態というのはそう悪い状態じゃないと思うのですよ。悪い状態じゃないというのは、あなたからいまお話がありましたが、教員になりたいなりたいという希望の人がおる。ところがその希望が全部満たされない。その職種ですね、つまり職種だとか、あるいは年齢だとか、あるいは性別でありますとか、そういうようなことで需給がかみ合わぬ。こういうところに非常に大きな問題がいまあるのだろう、こういうふうに思います。そういうようなことを考えますと、やはり労働の需給について細かいいろいろな工夫をするということによりまして雇用問題というのはかなり解決されていくのじゃないかと思いますが、とにかく雇用が窮屈だから教員の数をふやそうという、そういう発想にすぐいくというのはどうだろうかなという感じがします。とにかく私、とっさのお問いでございまして、権威あるお答えをいたしかねますが、私の感想はそうでございます。
  207. 西岡武夫

    西岡委員 総理、私は、短期的にいまの不況の状況、雇用の現状ということと単純に結びつけて申し上げているわけではないわけです。いままでもこれは長い懸案であったわけですけれども、なかなか財政の方もこれに伴わない。やはり大変な施策でございますから決断ができなかった。先ほど申し上げたように、日本の社会構造が大きく変化する過渡期にある、その中でその変化を先取りするというような観点がなければ、なかなか雇用問題一つにしても具体的な解決策がないのではないか。これは一つの例です。なかなか受けざらとか将来の展望、十年、二十年、三十年という将来の展望の中で日本の社会構造、産業構造の変化というのは、論としてはございますけれども、具体的なイメージとして、それでは具体的にどうだということになると、なかなか具体的なものは示しにくい点がございます。そういうような中で、こういう考え方もこれからの施策の中で生かしていただきたいということで、一つの例示として申し上げたわけでございますので、御理解をいただきたいと思うわけでございます。  この経済の状況についての議論で、もう一つ申し上げたいのは、建設国債の取り扱いなんです。これは、もっと景気を刺激する、景気調整策としてこれから建設国債というものがかなり大きな役割りを長期的に果たしていかなければいけない、こういう日本経済の状況に来ていると思うのです。民間設備投資等がいままで果たしてきた役割りというものをこれからも同じように果たしていくということでないとすれば、かなりヨーロッパの先進諸国とは違って、社会資本の充実がまだまだ十分でないわが国の場合には、公共事業中心とした、政府の責任で行う、経済を引っ張っていく力というものは相当な役割りがまだまだ残されている。そういうことを考えますと、建設国債を一般会計から切り離して、特別会計というようなものを設けて、これは社会資本整備あるいはエネルギー等の安全保障等を加味した、そういう大きな網をかぶせてもいいと思いますけれども、とにかく社会資本整備特別会計みたいな形で建設国情というものを処理して、そこから発行する、現存特定財源としてございます揮発油関係の税等はその特別会計の収入にする、そういうような形で、その特別会計の発行をした建設国債を少し弾力的に、いつでも景気の動向を見ながら政府が活用できるというような仕組みを考えるということは、これからの日本の財政の運営の面から御検討に九ってしかるべきではないかと思いますが、こういうようなことについて御検討をいただけないかどうか、御感想を承りたいと思います。
  208. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 財政は、これはなるべく総合的がいいのです。建設公債を財源とする公共投資ですね、それを引き離して特別会計にする、何かそこまであえてするメリットがあるのでしょうか。まあとにかく私は、あなたがいまおっしゃるとおり、これから社会資本投資が相当大きくなると思います。国の財政の中でも相当のシェアを占める要素、その要素を、これを一体どういうふうに扱うか、これは総合的に一般会計の財政の中でながめていく、これは非常に重要な問題だろうと、こういうふうに思うのですが、それをわざわざ引き出して特別の会計にしちゃう、どこにメリットがあるのか、ちょっと私、理解できませんがね。なおお話があるなら承らしていただきます。
  209. 西岡武夫

    西岡委員 私が提案をいたしておりますのは、公共事業の投資が景気調整の役割りを相当これからしていかなければいけない。それを機動的に行う、機能的に行っていくというためには、いまの一般会計の中で処理をするというよりは、ここ当分の間残念ながら日本経済の見通しの中で、建設国債の発行は、これは一定の限度は避けられない時代がかなり長く続くだろうと思う、相当将来にわたって。これはお認めになると思うのです。そうであるならば、それを公共事業の部門を切り離して、景気の動向の中で機動的に運用できるという形にしておく方が景気調整に寄与をするやり方としてはいいのではないか、そういうような意味で御提案を申し上げたわけです。そういうことで、きょうこの場で御答弁をいただくのは無理であろうと思いますので、そういう考え方もあるということを御認識をいただきたいと思います。  それから、私どもは、次の大きな課題として、当然行政改革という問題が政治の大きな課題であろうというふうに考えております。  私どもが主張をいたしておりますのは、現在のこの日本経済の状況、財政の状況の中で、やはりいずれは税の問題に真っ正面から取り組まなければならない時期が来る。そのためには幾つかの前提が必要だろうと思うのです。その最も大きな前提として、行政改革にどこまで真っ正面から取り組んでいけるか、このことがなければ増税を国民の皆さん方に納得をしてもらうということにはなかなかならないのではないか、このように理解をいたしております。したがって、新自由クラブとしても、この問題に総理が全力を挙げて取り組まれることには全面的に御協力を申し上げたいと考えております。ところが、そうは申しましても、総理も相当な意気込みで行政改革にお取り組みになるということを言われたわけですけれども、なかなかそう簡単なことでないことも私どもは承知をいたしております。  そこで、かねて新自由クラブが提案をいたしておりますのは、やはり政治がみずからを改めていくということがまず必要なのではないだろうか。具体的には、この際国会議員の定数をみずから削減するというくらいの決意を持たなければ、政治が行政に大胆な転換を求めていくということはできないのではないかということを考えております。新自由クラブは、他の政党の皆さん方が御賛成になれば、これはもういつでもできる。私どもはすでにみずから宣言をいたしております。このことを地方自治体に当てはめて申しますと、地方自治体の場合、ここ十年ばかりの間の統計を見ますと、大体都道府県、市町村段階の議員全部の数をずっと見ておりますと、昭和四十一年から五十一年、昨年の十二月三十一日までの定員は、大体この十年間に、これは地方公共団体の議会全員の数でございますが、七千人定員が減っております。地方自治体においては、地方の議会はそれぞれの地域の財政状況、それぞれの市町村段階での財政状況、あるいは合併ということもございましょう。そういう中で、現実にこれだけの数を減らしてきているわけです。わが国の国会の定数がそれでは他の国と比べて一体妥当なのかということを調べてみますと、アメリカの場合は、御承知のとおり、日本の衆議院に当たります下院の議員の定数は四百三十五名でございます。参議院に相当いたします上院は百名でございます。人口の規模等から申しまして、日本の国会議員の定数と比較すればかなり低い、少ない水準にございます。したがって、わが国の場合も、何もアメリカにならう必要はありませんけれども、減らす余地があるというふうに考えるわけであります。この問題について総理の御見解を承りたい。
  210. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 西岡さんの政界建て直しというか刷新というか、そのための御熱意、これは深く敬意を表します。そういう御熱意の一環といたしまして、国会議員の定員を減らそうじゃないかと、こういう御提言、これも御見識として非常に感銘を受けながら拝聴したわけでございます。私、ここでこれは非常に機微の問題ですから御回答は申し上げませんけれども、傾聴したと、このことだけははっきり申し上げさせていただきます。
  211. 西岡武夫

    西岡委員 いずれ自民党総裁としての福田総理のこの問題についてのお考えをまた承る機会があろうかと思いますので、きょうの段階では問題提起をするにとどめておきたいというふうに思います。  こういう決意のもとで行政改革に取り組むということになれば、これはできると私は思うのです。またやらなければいけないというふうに考えております。これについて、具体的にはどの時点で総理総理のお考えの行政改革の案を、先般まとめられたような抽象的な形ではなくて、来年度予算に向かってどの時点でその方針を明らかにされるのか、具体案を明らかにされるのか、承りたいと思います。
  212. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 考え方並びに具体的な方向につきましては先月初めに公表いたしましたが、これをいかに具体化するかという手順は、いま鋭意進行中であります。そしてなるべく、その中の多くの部分が恐らく法律案という形をとるものが相当あると思いますが、そういうものにつきましては、次の国会に法律案として御提案、御審議をお願いする。また予算だけに関係するものもかなりあると思います。そういうものにつきましては五十三年度予算編成の中に織り込んでまいる、こういう考えであります。
  213. 西岡武夫

    西岡委員 ぜひ思い切った行政改革についての案を提示をいただきたいというふうに要望をしておきたいと思います。  同時にまた、総理が御心配になっております財政の現状を見ますと、いままでの予算編成のあり方というものを変えなければいけないのではないか。これは私がさきの通常国会においても申し上げたわけでございますが、総理は余り関心をお示しになりませんでした。ここで改めてもう一度お尋ねをいたしたいと思うのですが、現在の予算編成のあり方というものは増分主義ということで、昨年度より幾らふえたかというところだけを査定するというやり方で来ているわけです。これでは、なかなかこれまで行ってきた施策というものを洗い直していくというような大胆な政策の転換ということもできませんし、不必要な行政経費というものをチェックできない。この増分主義というものを改めることが予算編成の上でどうしても取り組まなければいけない時期に来ているのではないかと思います。ところが、これも政府だけに求めてもなかなかそう簡単にできることではないだろう。そこで、来年度の予算を編成するに当たって、基本的な路線についてやはり国会の意見というものをもっと聞く、そういうやり方をとるべきではないか。これは決して政府の持っておられます予算編成権を侵すというようなものではなくて、こういう日本経済の置かれている非常な困難な状況の中で国会も予算の編成について幾分かの責任を負うのだ、そういう意味で野党の意見ももっと取り入れて予算の編成に取り組んでいただいたらどうかということをさきの通常国会では提案を申し上げたわけでございますが、こういうような問題について総理のお考え方を承りたいと思います。
  214. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま西岡さんの話は、私の考えている考え方そのままなんです。私は連帯と協調という政治姿勢でやっていくのだ、国会においてもその精神で各党と話し合っていくということをずっと申し上げてきておるわけであります。問題がありましたならばなるべく野党の皆さんとも話し合っていきたい、こういうふうに考えて、たとえば行政機構の問題につきましても、西村長官が皆さんのお話を承るような機会があったかと思うのです。それから今度の補正予算中心とするところの景気対策、これにつきましても、河本政務調査会長が皆さんと話をする機会があったことと承知しておるわけであります。その報告も私はよく受けております。今度五十三年度の予算というと、これは補正予算と違って非常に重要な問題でありまするから、この問題につきましてはもっと前広に各党の皆さんの御意見も拝聴したい、こういうふうに考えております。ただ最後的にはこれは与党というか、私ども政府の責任に属する予算編成でありまするから、最後はお任せ願うほかはありませんけれども、過程におきましてなるべく前広に皆さんの御意見を拝聴し、そして本当にいい予算ができたなといってほめられるようなものにしてみたい、かように考えております。
  215. 西岡武夫

    西岡委員 どうもいままで野党と政府与党との話し合いが実質的なものであったとは、残念ながら申し上げることはできません。もっと中身のある実質的な、そういう総理のいま言われた話し合いの場というものをつくっていかれるということを強く要望をしておきたいと思います。  次の問題でございますが、もう時間があとわずかになりましたので……。  もう一つは、不公正税制をどうするかという問題であろうと思います。この問題につきましては、新自由クラブとしては、少し集中的に別の機会に私どもの考え方を申し述べて、総理の御見解を承りたいと考えておりますので、きょうのこの段階では議論をいたしません。しかし、この不公正税制と予算編成のあり方を改革する問題、そうして行政の改革、こういった問題に私どもがやはり積極的に取り組まなければいけない時期に来ている。もう遅いくらいだ。そういうことを片っ方でやりながら、大きな産業構造の変化のみならず、社会的な構造の変化をいま見ようとしている日本の将来に向かって、思い切った施策を片っ方では展開をしていくというような姿勢でなければいけないのではないだろうか、こういうことを考えているわけでございまして、現実を踏まえた中に将来を見通した、そういう総理の政治に取り組む姿勢を強く要望を申し上げておきたいと思います。  もう一点、最後に教育問題について総理及び文部大臣考えをただしたいと思いますが、その前にエネルギーについて少しお尋ねをいたします。  エネルギーの問題は、これはもうこの十年を待たずしてわが国がくぐらなければならない大変大きな困難な問題であろうと思います。そういうことを考えますと、どうも政府のいままでのエネルギー政策というものがきちっとしたものでないような気がしてならないのです。いろいろなエネルギーについての長期見通し等が出されておりますけれども、どうもこれまでのところ、私どもが感じますのは、数字合わせみたいなものに終わってしまっていて、たとえば総合エネルギー調査会の暫定見通し等を見ましても、一体こういうような見通しで昭和六十年度の予測が、たとえば節約を、一〇・八%省エネルギーをやった場合においてでも石油が四億三千二百万キロリットル必要だ、それだけ入ってくるという前提で計算がなされている。この計算は、原子力エネルギーについては三千三百万キロワットが予定をされている。ところが、現実にこれすらもなかなか思うようにならないだろうということが言われているわけです。  一方、省エネルギー、これが日本が持っているある意味では一番手っ取り早いエネルギーであろうと思うのですが、省エネルギーについての取り組みも非常におくれている。通産省でいろいろなことをいま御検討になっていると思いますが、あの石油ショックからすでにもうこれだけの年月がたって、そのことがいまだに制度としても十分生かされてないというのは、これは世界でも日本だけだと言ってもいいのではないかと思うのです。もちろん産業界においては、それぞれ省エネルギーを目指した企業の努力がなされているわけですけれども、国の施策として、たとえば今度の臨時国会においても当然私どもは政府から省エネルギーについての新しい制度というものが提案されるのではないかと考えておりました。こういった問題について少し取り組みが遅いのではないか。総理のこの問題についての御認識と今後の取り組む方針について承りたいと思うのです。
  216. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 エネルギー問題は、これはもう本当に国家生存の基盤であるというくらいな構えをもって取り組んでおるわけですが、この問題は二つの側面があるのです。いま御指摘の省エネルギーという政策を大いに進める必要がある。反面におきまして、また、石油にかわる新しいエネルギーの開発、原子力でありますとか地熱でありますとか石炭でありますとか、そういうものの開発、それからさらに長期的にもう準備をすでにやっておかなければならぬもの、長期展望の太陽エネルギーの問題とかあるいは核融合とか、いろいろありますが、当面そういう手をつけ得るものをどんどん進めていかなければならぬ、こういう二つの問題があると思うのですが、それらの施策を進めておるわけでございますが、ただ省エネルギーの問題です。これは私非常に頭が痛いというか扱いがむずかしいといいますか、ちょっと気にかかる点は、ここで極端な省エネルギーというものを本当はやらなければならないのですよ。そういう立場にあるのです。あるけれども、他方において景気問題があるでしょう。この景気問題にこの省エネルギーというものは激突をするわけだ。その辺がさばきが非常にむずかしいのです。景気問題にもそうさわりが来ないように心しながら省エネルギー政策を進める、こういう考え方をとらざるを得ないわけでありますが、そういう配慮をしながらでありますけれどもとにかく省エネルギー、景気が本当にもうこれで大丈夫だという段階になれば、もっと強力な省エネルギー施策を進めなければならぬと思います。新しいエネルギー、いわゆる代替エネルギーの開発はまた皆さんの御協力も得ながら積極的にこれを切り開いてまいりたい、かように考えています。
  217. 西岡武夫

    西岡委員 エネルギー問題についてはもう少し議論を深めたいと思いますが、時間がありません。  最後に教育問題についてごく簡単にお尋ねをいたします。  いま国民の多くの教育問題についての関心は、やはり大学の入試がどのように改善されるかということに集中していると申し上げていいと思います。この入学試験制度の改革がやはり当面の教育の最大の課題の一つであろうというふうに考えております。その中で、昭和五十四年度から国大協を中心とする共通一次試験が始まろうとしているわけですが、これはこれまでの入試のあり方を変えていく、落とすための奇妙な試験問題ばかりが出ているということをある意味では科学的に処理をしていくという意味で一つの前進でございますが、なお幾つかの問題がございます。  これは御承知のとおりに国大協だけが、国立大学だけが中心になって共通一次試験が実施されようとしている。あとは公立の大学がこれに加わる程度であって、わが国の大学の大部分を占めております私学はそっぽを向いている、こういう状況の中で大学入試の改善が一体行われるのかという問題が一点であります。  それからもう一つは、各大学が行う第二次試験というものが非常にばらついている。場合によってはかえって二重負担をもたらすのではないかというおそれすらある。やはり共通一次試験を導入するからには、各大学が行うところの二次試験は、やるとしても原則として一科目ぐらいにしぼるべきではないかというのが私どもの考えです。ところがなかなか実態はそうなっていない。これが大学入試の改善に一体つながるのかという疑問が出てきているわけです。  それともう一つは、共通一次試験の実施時期の問題です。現在計画されておりますのは、毎年十二月の末だということである。そうなると、一体文部省も積極的に取り組んだこの共通一次試験というものが高等学校の三学期というものを全く無視した形で行われるということになる。これは文部省みずからが高等学校の三学期というものはもう必要ないのだということを具体的にあらわしたのと何ら変わるところがない。これは重大な誤りであると思います。それではどういう解決の方法があるのか、これについて私どもは早くから、大学の新学期だけを他の小学校、中学校、高等学校と切り離して九月からにすればいいではないか、これはこれだけ学術教育の面での国際的な交流が非常に深まっている中で、国際的にも非常に都合のいいことである、こういうことを考えれば、九月にするということは、決意さえすればごく簡単にできることではないか。これは国立大学の関係の皆さん方もそのこと自体には賛成だということをおっしゃっております。そういうことを考えますと、何も十二月末に高等学校を無視した形で共通一次試験をやらなくても十分時間は出てくるわけであって、こういった問題について、文部省に改める考えがおありかどうか、文部大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
  218. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 第一点の大学の入学試験制度の改善につきましては、御指摘のように私立大学の参加を願うことが望ましいわけで、文部省といたしましては、ただいま私立大学側に対しても、でき得る限りこの第一次試験に参加してもらうように要請を続けておりますし、私立大学側もそれを検討しておると聞いております。  第二点目の共通一次試験が終わった後の二次試験の科目についてでありますが、国立大学協会が定めましたガイドラインに従って、ほとんどの大学が科目の整理をいたしました。正確に言うと、一つの大学を除いて他の国立大学のすべてが科目を減じますとともに、二次試験は学科試験で行わないで、たとえば実技だけで済まそうとか、あるいは面接とか、あるいは小論文とか、そういった方向考えを変えて、負担を重くするということじゃなくて、適切な選抜をするという、要するに一回のペーパーテストで片をつけるのではなくて、幅広く奥深く受験生の立場に立って、その人の資質を選抜するという方向に向かっておるとわれわれは承知しておりますし、今後ともその問題は努力をしていきたいと思います。  なおもう一点、高校の三年生の三学期は要らないと考えるかとおっしゃいましたが、決してそのようなことは考えておりません。三学期まですべてを含めて高校の教育課程であると考えておりますが、現在のところ、御承知のように三月三日に大学の二次試験の発表をしたいといういまの制度があります。そして昭和五十四年度は第一回の試みでありますから、万全を期していろいろな準備をしたと思いますけれども、西岡さん御指摘のように九月に願書を出すということ、あるいは十二月に共通一次試験を受けるということについて高校側からの厳しい要望もございますし、また前国会の御議論を通じても、私どもいろいろな立場の御批判があることを承っておりますから、現在そのことにつきましては、でき得る限り高校生活を侵害しないような時期に願書の提出なり一次試験なりを行う時期をもっと弾力的に考えることはできないか、こういう検討を前向きに続けております。  最後の、九月から新学期にしたらどうか、その面だけに焦点を当てますと、国立大学協会側も確かに賛成する意見もございましょうし、いろいろな利点があることは事実でございます。しかし、他の政策との整合性とかあるいは、では高等学校を卒業して大学へ進学しない半数以上の人々のその間の期間はどうするのかとか、あるいはそのほかのいろいろな社会の仕組みの中の問題等もございますので、この問題は検討をさせていただきたい、こう考えます。
  219. 西岡武夫

    西岡委員 最後にもう一問文部大臣にお尋ねをいたします。  わが国の教育の抱えている問題は非常に多岐にわたっておりまして、これを一つ一つの細かい施策だけで解決できないところに来ていると思うのです。  そこで、私どもは具体的な提案として、現在の六・三・三・四の学校制度自体を変える中で日本の教育の大改革が必要な時期に来ているのではないか。もちろん、そのほか教員養成のあり方を変えなければいけない、いろいろな問題がございますが、とにかく、福田内閣が教育の重要性というものをお認めになるならば、いまそのことを手がけなければいけない時期に来ているのではないか、このことについて文部大臣の御見解を一言だけお聞きをいたしたいと思います。
  220. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 一言ではまことにむずかしい問題でありますけれども、たとえば中高の教育課程の一貫性の問題とか、六・三・三・四の区切りの問題について、文部省といたしましても、いい点あるいは困難な点、壁を見つけて鋭意検討を続けてまいります。
  221. 田中正巳

    田中委員長 これにて西岡君の質疑は終了いたしました。  次に、武藤山治君。
  222. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私は、通告をしております各項目にわたって、総理中心に、時間の許す限り質問をしてみたいと思います。  最初に、総理もお読みになったと思いますが、日経新聞や朝日新聞が今回の国会のいろいろ論評をして、社説で評価をしております。  その中で特に印象に残るのは、総理答弁が大変もどかしさを残した。これは日経でありますが、いろいろ世界経済の中では日本は優等生だと盛んに強調しても、「それにもかかわらず、不況がいつまで続くのか、それとも現状を常態とみるべきなのか」、六・七%ならもういまの状態がやむを得ないんですよという「常態」なのか、そういう点をさっぱり総理は明らかにしていない。国民が聞きたい点なんだ。これは日経。  朝日新聞では、「いま日本経済なり国民生活がどのような方向へ舵(かじ)をとられてゆこうとしているかを飲みこんだものは、国民の中でどれだけいるだろうか。暗くさえぎられた国民の視野を開くものではなかった」、総理の演説、答弁の中になかった。「国際環境の変化に対応する国民各層の「血のにじむ」ような努力に言及し、その「困難と苦悩に満ちた新しい時代への対応をやり遂げるか否か」に日本の将来がかかっている、と述べている。」けれども、その困難さや、なぜ苦悩しなければならぬかという国民の知りたい点に答えてない「視界不透明な福田演説」、これは朝日新聞です。いわゆる視界が、本当にこれから行く先日本はどうなるのだ、そういうことについての掘り下げた明確な答弁がない、まことに残念だ、こう社説で書いている。恐らく総理も社説ですからお読みになったと思いますが、この批評についての御感想いかがでございましょうか。
  223. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 新聞の社説というものは、政府の行動をそう評価するというか、ほめない傾向があるように思います。つまり、やはり政府を鞭撻して、いいことをやってもなおもっといいことをやれ、こういうところへ持っていきたいという気持ちがあるのだろう。だから、社説というものが常にいま武藤さんが読み上げられたような調子のものであることは私は理解できますが、しかし政府としては決して展望をちっともはっきりさせないというようなことではございません。いま今日世界は激動しておる、その中ではかなり日本状態というものは評価されていい状態にある。あるのだが、しかしすべての問題がここで解決されているというのではありません。非常に深刻な問題がある。それは日本の政府を含めて、各界各層が世界のこの変化した状態に姿勢を切りかえなければならぬ、そこに問題があるのだ、こういうことを指摘しているわけであります。
  224. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私もこの予算委員会で聞いた範囲、また本会議総理の演説、答弁を聞いた限りでは、これから二年先あるいは五年先、本当にこういう手だてでこうすれば明るい視野が開けて、国民の皆さんこうなりますよ、そういう納得のいく総理答弁は私も耳にしないのです。ほとんど席を離れず、ずっと聞いておるのでありますけれども、そういう答弁はほとんどない。きのうの多賀谷政審会長の質問に対しても、総理はちょっと都合が悪くなると、国際経済が大変な状況にある、国際経済が大変混乱をしていると、五回言っているんです。きのう多賀谷政審会長に対する答弁の中で、国際経済を引っ張り出して、困難性、むずかしさ、混乱、そういうことを言っているのですね。しからば、それをどういう手だてで、どうして解決をする決意であるかは一言も述べてない。雇用をどうしましょう、不況業種をどうしましょう、中小企業対策は大変です、産業間の跛行性が問題なんです、そういうことは言うけれども、しからば今日の不況の根本原因が、もちろん国内の政策手段の誤りにあることも一つありますが、根本的には今日の不況というものは国際経済から来ているのじゃないでしょうか。世界不況の一環としてまずとらえる。同時に国内の総需要抑制政策がどういう意味を持ったかの評価が、第二の問題として不況とのかかわりで必要であります。そういう国際的な原因というのは、総理、今日の不況原因について軽く見ているのでしょうか、いかがでございましょう。
  225. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 多賀谷さんの御質問に私が五回も国際経済、国際経済と言っているというのです。それでもはっきりおわかりになるとおり、国際経済の中の日本経済である。国際経済というものが非常に今日のわが国経済に重大なかかわりを持っておるということを強調しておるわけであります。
  226. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そこで、そのかかわり合いのある度合い、様態、内容、国民が聞きたいのはそれじゃないんでしょうか、総理。そういうかかわり合いの中身を全然しゃべらないで、ただ国際経済が大変なんだ、混乱なんだ、容易じゃないんだ、どなたが総理になったってなかなか容易じゃありませんよと、参議院の答弁かなんかで開き直った答弁新聞に出ておる。私もわかります。だれが総理大臣になったって、そんな腹の減ったときに一挙に飯食って腹がきつくなるようなうまい政策はありません。日本に一億一千万の人間がいて、りっぱな官僚もおる、優秀な学者もおる。だれもこの経済をこういう方法でこうすれば三年後こうなりますという青写真をかいた人は一人もいない。経済の専門家の福田さんでもそれが示せない。そこに国民のいら立ちがあるのですよ。そこに不透明な、不確実性な世の中に対する国民のいら立ちがあるのです。それを少しでも解消しようというのが、一国の総理大臣の地位にある人のとるべき努力の方向じゃないかと私は思うのであります。そういう中身について総理、適切におれは答えてきたよと自信を持って言えますか。これから私、国際経済論を少しやりたいのでありますが、答えてますかね、内容について、様態について。
  227. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 御質問がありますれば何でもお答え申し上げます。しかし、武藤さんがおっしゃるような、そういうような角度の質問がないものですから、不幸にして私はお答えをする機会を得なかったということでございます。
  228. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 総理は本会議で施政方針演説の中で「世界経済現状は、先進工業国であると発展途上国であるとを問わず、楽観を許さない状況であります。この状況を打開しないと、経済的混乱は、やがて政治的混乱に発展し、世界の安定と平和そのものを脅かす事態となることが憂慮されるのであります。世界経済の安定こそは、最大の急務と言わなければならないのであります。」、この認識で、しからば、どうしてこの経済的混乱を政治的混乱に発展させずに食いとめるかという手段について、処方せんについて総理が述べているのは「日本、北米、西欧の三地域が、すべての問題について」「密接な協調と協力の体制を維持することが重要であります。」これが処方せんなんだ。(福田内閣総理大臣「いや、まだある」と呼ぶ)いや、後を読んでみると、「同時に、このような協力を通じて達成される世界経済の安定と発展の基盤の上に、南北間の対話を進め、両者の調和的発展を実現するように努力いたしたいと存じます。」ここまで、大体国際経済を述べている。あとはアメリカと日本関係だけの相対関係を書いている。しかし国民は、世界経済大変だ大変だと言うが、具体的に世界経済の何が大変なのか、これを新聞で読んだだけでわかりますかね。  そこでまず総理、しからば国際経済の何が最も大変だ、混乱だ、政治的混乱に発展する危険があると思う、それば具体的に何物ですか。
  229. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 世界経済が、今日失業という問題、これはもう世界全体を通じての問題ですが、失業、それからインフレ、不況、この三つに脅かされておる、こういうことです。このことを放置しておきますと、これははからざるいろいろな問題が出てくる。私が一番心配しておりまするのは、プロテクショニズムといいますか保護主義体制といいますか、あるいは経済ナショナリズムといいますか、そういうような動きが出てくる、そういうことになったら、世界は総沈みになる、そしてこれはもう政治的な大混乱になる、そういう認識を述べておるわけであります。
  230. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 不況からの脱出、不況にもかかわらずインフレが続く、この社会をどう抑制するか、インフレでありながら失業者が減少しない、どうして解決するか。私も同感です。この三つだと思います。総理、なぜそういう不況が出てきたのか。
  231. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私がそういう世界的な問題についての認識を述べない述べないとこう言っておりますが、私は経済企画庁長官、副総理といたしましても、また総理大臣になりましてからも、そういう今日の世界的な状態については述べておるのですよ。私が大蔵大臣時代からも、今日の状態を予見しながら言っておるのですよ。そしてそれを繰り返しながら言っておるから、今度の臨時国会の所信表明ではそのことには再び触れなかったのですが、私は、この状態をほうっておきますと、第二次世界大戦争がなぜ起こったかというあのいきさつを思い起こさざるを得ないのです。  あれは、一九二九年にアメリカの恐慌が起こったわけでしょう。それがヨーロッパに伝播したわけでしょう。そして世界の基軸通貨であるポンドが金本位を離脱するということになったのでよう。そして各国が保護主義体制をとりたがる傾向になってきた。これを何とか打開しなければならぬというので、同じロンドンで世界経済会議が開かれた。ところが、この世界経済会議が各国がみんなばらばらな態度で、そしてついに合意が見られない。結論を得ないままに、議長たる英国の首相は休会のまま散会をする、こういうことになってしまった。それからみんなまた保護主義、保護主義、保護主義とこういうことになって、世界経済は総沈みである、こういうことになり、その不況から脱出するというあがきですね、これが戦争へと発展した。これは大方の人がそう見ておるのです。  私は、その第二次世界大戦争を犯したあの愚かさを、ここでまた再び今日の世界の指導者たちが繰り返してはならぬ、こういうことを力説しておるのですよ。その考え方は私は国会でも、副総理のときですか、述べておるところでございますので、今回は省略したまでだ、こういうことでございます。
  232. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 福田総理、私がいま質問しているのは——一九二九年の恐慌のことは、この後、最後の方で聞くのです。私は当時まだ三歳ですから、わからない。福田さんは二十何歳ですから当時の状況を知っていますから、後で世界恐慌の実態をよく聞きますが、私がいま聞いているのは、今日の不況の原因は何かと聞いているのですよ。なぜ世界不況になっているのか。それから日本不況をやがて聞くわけですから、原因を聞いているのです。
  233. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私はこれは遠因と近因があると思うのですよ。遠因といいますか、非常に基本的な背景は、やはり世界人類の間に資源有限という意識が定着してきたことだ、こういうふうに思います。それから近因といたしましては、その背景の中であの石油ショック、あれによって世界経済が非常に大きな衝撃を受けた。その衝撃からまだ立ち上がれないというのが今日の世界経済の状況である、そういうふうに考えております。
  234. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大蔵省国際金融局長、おりますね。——OECD加盟国二十四カ国の対外債務の累計は今日どのぐらいあるか。もう一つ、開発途上国の対外債務は合計どのぐらいになるか。さらに、アラブが今日の状況で収支黒字の額が年間どのくらいになり、累計どのくらいたまっていると計算できるか。大蔵省でも通産省でもよろしい、わかっている者は答弁してください、数字ですから。——それでは来るまで、総理大臣、大蔵大臣、通産大臣、これは常識だと思いますが、OECD加盟の国々の対外債務の合計、大体どのくらいあると思いますか。すなわち先進国です。その話は恐らくロンドン会議でも出たと思いますね。出ないですか。——よろしい、時間がなくなりますから先へ進めましょう。大きな問題だけだから先へ進めましょう。総理は六時半までしかおれないので……。  総理、アラブ産油国がいま黒字になっておる金額が、OECDの発表でもIMFの発表でも、アラブの石油の国々だけで年間四百億ドル黒字になっておるわけですね。さらに、日本が仮にことし七十億ドル、西ドイツが六十五億ドル、この三地域だけでも約五百億ドルの黒字になる。その分どこかが赤字になる。特にアラブの場合の四百億ドル、日本円にすると約十兆数千億円ですね。この金が購買力にならずに黒字のままアメリカの市中銀行やドイツの銀行や、あるいは日本の国債なども幾らか買っておると思いますが、四百億ドルが購買力にならないのですね。世界の貿易の、物を売ったり買ったりする金に使われない、現在アラブのこの四百億ドルが。これがここ二、三年たまっていく。世界貿易が縮小するのはあたりまえですね。もしこれが完全に世界貿易が均衡が保たれていて、不均等発展がない状態ならば、その四百億ドルは購買力になって、金が世界じゅう歩くわけですね。物の交換になるわけですね。ところが片や赤字の国がたくさんでき、黒字の四百億ドルが購買力にならないというところに、今日の大きな不況からなかなか出られない、世界貿易が大きくなれない大きな原因が一つあると私は思う。すべてではない、一つあると思う。私はそう思うが、総理の見解はどうですか。
  235. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 アラブに行ったドルが購買力にならないという、そういう論理ですね。これは私、ちょっと疑問だと思うのです。思うのですが、結論は私はあなたと同じです。つまり、アラブに金が集中をした。アラブは国際収支の大黒字国ですよ。その反面におきまして、今度は赤字国が出るわけです。赤字国は国際収支が赤字ですから、景気政策をとろうなんと言ってもとてもそういう施策はとれない。いろいろ輸入をしようといいましても、その輸入政策は遂行できない、こういうようなことで、世界の交流を非常に圧迫しておるのがドルの偏在、こういうことだろう、こういうふうに思います。
  236. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうでしょう。私がいま聞いているようなことが世界不況の原因に幾つかある、そういうことについて国民に、ぼくらチンピラが言うのと総理の口から発表したのでは、国民の受け取り方は真剣さが違う。本気で国に協力をしようという体制に国民がなるためには、真実を国民に知らせなければ、総理、私は協力体制というものは生まれてこないと思う。これからそういう意味で不況が続いて財政も苦しくなり、増税もしなければならぬというときに、不況の根本原因からしてはっきりさせないことには、なるほど大変なんだ、容易じゃないんだということを国民は承知しないですね。やはりいままでの惰性で政治を眺めていますよ。そういう意味で私は、この国際経済論をどうしても少しやらなければならぬと自分では考えた。  いまの一つの原因はわかった。そこで、この問題を解決するのに首脳会議をすでにもう三回開いた。ロンドン会議福田総理が出席した。世界のそういう首脳は、最も先進国と言われる自由陣営のチャンピオンたちは、この問題を国際的にどう処理しよう、このアラブの黒字をどのようにうまく国際流動化をさせ、あるいは貿易にこれが転化できるような方策を考えるというような会議、議題にもならないのでしょうか、どうでしょうか。
  237. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この問題は先進国首脳会談、これでももちろん話題になるが、これはもうあらゆる会議において、このドルの偏在という問題をどういうふうに打開するかということが議題になるわけなんです。先進国首脳会談は、大体申し上げますと、いま世界経済の病根は一体どこにあるのだ、こういう認識をひとつ統一しようじゃないか。これは先ほど申し上げました失業とそれから物価、インフレですね、それから不況だ、この三つがいま世界を覆うている病根である。さて、それに対して一体どういう政策をとるのかというと、第一は、これは各国が世界状態の中で明らかにしておる今年度の経済目標、これをとにかく達成することである。この国際会議のにらんでおるところは、米、日、独あたりが焦点となっておるところではないかと思います。このいわゆる機関車論的な考え方です。これが掲げた経済目標を達成すること、それから断じて保護貿易体制に移っては相ならぬ、こういうこと、それから南北問題、この解決、これを図らなければならぬということ、それから資源エネルギー、この問題を協力して解決していきましょうよ、こういうこと、その五つの項目について合意を得た、こういうことでございますが、その後のレビューがいま進んでおる、そういう段階でございます。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕
  238. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 総理、やはり答弁が核心を突いてないのですけれども、やむを得ませんが、外務大臣、CIEC、産油国と先進国との間の国際経済協力会議で、もうちょっとましな前進的な答えが出るかと実は私は期待をしていたのが、どうも最終的には共通基金の十億ドル創設、その程度で終わってしまって、産油国は大変先進国に注文を出して激しい議論などもして、どうも期待するような四百億ドルの黒字も世界貿易を拡大するような方向には動かない。これからこの国際経済協力会議現状から見てどんな状況になるか、現状とちょっと先の見通しを……。
  239. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 CIECの会議は、先般の会議をもちまして一応その任務を終了したわけでございます。必ずしも南北問題あるいは石油関係の問題、これらの問題につきまして、はっきりした結論を得ないまま一応任務を終了したということになりました。これからは国連の場あるいはUNCTAD等の場におきまして、従来これは大きな問題でございますから、この問題につきましてやはり話し合いの何らかのフォーラムがつくられることが期待されております。しかし、まだどういったところでこの問題を引き継いでいくかというところまで結論が出ておらないというのが実情でございます。そして、いま先ほどからおっしゃいました産油国の資金、この資金の世界経済に対してもっと有効な使い方という意味では、むしろIMF等の場が中心になって検討が続けられておる、そして一応の成案ができたというふうに考えておるところでございます。
  240. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 成案ができたと申しますが、この四百億ドルのアラブにたまる黒字をどのように使うかということの成案ができたのですか、私はそうは見てないのですが。まだ先進国と石油産出国との間の合意ができない、そう私は報道では聞いておるのですが、できたのですか。
  241. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 産油国にたまります四百億、あるいはロンドン会議のころは、これは四百五十億ドルというふうに見ておったわけでありますが、ほぼ四百億程度だろうと思います。これらにつきまして、これを完全に使おうということはなかなかむずかしいことでありまして、IMFにおきましても、極力産油国の協力が得られるように努力をしておるというのが現状であろうと思います。
  242. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いまの答弁を聞いただけでも大変困難。困難だということは、世界不況かなり長引く、そういう一つの要素になるわけですね。ですから、まず一つ、不況からそう簡単に抜け出られないという覚悟を持つ必要がある。  もう一つ、石油の出ない開発途上国の債務ですね。——来ましたか。今度は金額はわかりますか。ちょっと明らかにしてください。
  243. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 石油を産出しない開発途上国の昨年の経常収支の赤字額はほぼ三百三十億ドルというふうに見られ、ことしは三百六十億ドルくらいになろうかというふうにOECDの方で見ております。そしてこれがまた援助等がありますので、その公的移転関係を調整いたしますと、昨年が二百四十億ドル、本年が二百六十五億ドルくらいになるのではないかという見通しであります。そしてこの債務の累積がどうなっておるかということになりますと、昨年末で千二百九十億ドルというような数字になっておりまして、そのうち民間の債務が七百二十二億ドルある、こういうことになっております。
  244. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 第二番目の問題点は、開発途上国で石油の出ない国ですね、これの債務がどんどん累増している。この問題がやはり世界経済の拡大の足を引っ張っているわけですね。国際収支が赤字であり、対外債務がどんどんふえる。金利だけで大変なことになる。一九八五年になると金利だけで二百五十億ドル払わなければならぬと言われている。とてもそれは市中銀行から借り集めたってもう間に合わない。じゃ、IMFでそれだけの供与ができるのか。できない。いまの方法でいったのではできない。しかし、インフレを覚悟すれば別ですよ。通貨をどんどん増発してインフレ覚悟で処理しようというなら話は別ですが、いまのようなインフレを起こさせないでこれらの国々を救済しようということは大変困難ですね。そういう国は、今度はIMFから金を借りると、IMFはちゃんと条件をつけますね。財政運営をきちっとしなさい、貿易収支をとんとんにしなさい、対内対外債務を起こさないようにしなさい。いろいろなそういうきつい条件がIMFの融資には条件としてつく。どうしてもそれは輸入制限をして国内の体制を締める以外にそういう国は手がなくなってしまう。だから、世界不況というものを長引かせる要因として、この開発途上国の累積債務というものの処理がうまくできないと、これもまた大変なことになる。これは総理、首脳会議においてどんなぐあいにみんなで相談して片づけようという、将来のビジョンはどういうものなんでしょうか。
  245. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 首脳会議でありますから、そういう個々の政策につきましての結論的なものは出しておりませんけれども、とにかく発展途上国の累積赤字、この問題はまあIMFが中心にならざるを得ない、こういうふうに思いますが、そういうしかるべき国際会議の場において解決していこうじゃないか、こういうふうな意向であったわけであります。
  246. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 どうも答弁が歯切れが悪いのでありますが、とにかく二千億ドル近いその債務を抱えた発展途上国の問題が大変な事態であって、こういうものが本当に処理できないと、世界景気をよくするなんということはなかなかできないし、一国から保護貿易主義に転ずれば、これが一九二九年のような恐慌へのテープを切ることになるし、ここらはやはり首脳会議の中で各国首脳がもっと突っ込んで真剣に、南北問題などという感覚でなくて、世界経済そのものがこれによって停滞しているという大きな要素になっているわけですから、そこらから片づけないと長期的な安定成長というようなものは実現できない。外国の要因で国内の安定成長路線なんというのは常に動かされている、そういうことになってしまうのですね。  ですから、私はいまの総理答弁大変不満でありますが、こればかりでは時間がかかってしまいますから先へ進みますが、最近、ヨーロッパにおいてもECにおいてもあるいはアメリカにおいても、日本に対する風当たりが大変強くなって、自動車もあるいは鉄もベアリングも造船も、ヨーロッパではほとんどもう協定を結ばされて、あるいは自主規制をさせられて、今度はアメリカで提訴されて、鉄がいま大騒ぎになっている。毎日のように新聞をこれがにぎわしている。ついに新日鉄の株が百円を割ったということで、株界でもかなり騒いでいる。そういうようなもろもろのいまのこの輸入制限の動きですね。自由貿易というものが破壊されていっている。もうどんどん破壊されて、丸くなっちゃっている。自由貿易論というものはかなり角を取られちゃっている。  ロンドンの会議の共同コミュニケをちょっと読んでみると、文章は短いけれども大変重要なことが示唆されている。世界経済の構造変革を考慮に入れるということが書いてある。これはフランスのジスカールデスタンの考え方を首脳会議の中で議論をして、いわゆる個別協定貿易主義、あるいは管理と組織の貿易、そういうフランスの考え方を共同声明の中に、世界経済の構造変革を考慮に入れるということが書かれている。これは非常に重要なことであります。すでにヨーロッパはこの考え方に基づいて日本製品についてどんどん個別協定を皆要求して、大きな品物は皆自由貿易なんという姿ではないじゃありませんか。やがてアメリカがそういう傾向にこうどんどん進んでいっている。これは貿易収支がまずいからじゃないのですね、これらの国は。失業問題が原因なんですね。ですから、自由貿易論というものが崩されていく原因には幾つもある。外貨が不足して、赤字で貿易ができない、そういう国の態度と、失業問題が政府の存在を危うくするという危機感から貿易を管理的に転換をしていく。特にヨーロッパは、総理も御承知のように、単独政権で絶対過半数をとっている政府というのはない。非常に脆弱であります。連立政権であります。ですから、社会民主主義の勢力もかなり発展をしていて、政権を持っている。一党で絶対勢力を持って政権がぴしっと安定しているという政治情勢がないのですね、ヨーロッパは。そういう政治的な要因から出てくる管理貿易論というものが今日かなり強くなってきている。その辺の認識は、総理はどうなされておるのでしょうか。ちょっと総理の見解を聞かせてください。
  247. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は武藤さんのこの問題のとらえ方、まことに正鵠を得ているとらえ方である、このように思います。つまり、いま保護貿易とかあるいは輸入に対する苦情でありますとか、そういう問題の根底は、国際収支の問題もそれはあります。ありまするけれども、基本的にはその国の雇用状態、これを守る、こういう意識から出発しておる、このように見ております。
  248. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 総理と期せずして見解が一致したようであります。私は社会主義者で、総理は自由主義者で、現実を見る目においては一致したということですから、そこの処方せん、手だて、そういうものについて少し突っ込んで、まずそういう自由貿易論に反するような管理と組織貿易論、こういうようなものについて、どうすればこれを思いとどまらせ、日本のような資源のない、貿易に頼らなければならぬ国の生きていく道を世界の原則に認めさせることが可能であるのか、それはむずかしいということになるのか。アメリカは結局失業問題から日本品の制限をしている。今月の十八日号、まだ十八日になりませんが、エコノミストで、アメリカのマーチン・ブロンヘンブレンナーという、これは日本の税制改革のときシャウプと一緒に日本に来た学者でありますが、この人が「米国が保護主義に走る十三の背景」。十三のいろいろ背景がある。全部読み上げる時間がありませんが、やはり日本品がどんどんアメリカに入ってくると、アメリカ人の素朴な国民の気持ちは真珠湾を忘れるなと思い出す。これが一つ。素朴な人種的偏見が、白人と黄色人種という偏見が大衆の中に根強くある。第三は、日本は二国間貿易で物を決めても、陰でこそこそやっていて、ずるいやつらだという感覚がアメリカの大衆の中に強い。さらに、労働者が非常に強い力をアメリカは持っておる。外国製品が入ってきて自分たちの職場が脅かされる、そうすると、日本は安い賃金でおれらの国へ品物をどんどん持ってくるという不満が出てくる。さらに、日本人は働き過ぎて奴隷のようにあくせく働く生き方だから、安い品物がアメリカに来るのだ。さらに、日本の租税負担がアメリカと比較して安過ぎる。だから日本は安い製品をどんどんつくる。さらに八番目に、日本銀行が外為市場に介入をして円の買い支えをやっている。第九のポイントは、割り当て数量を不公正な、日本語で言えばずるいやり方でごまかしてしまうという批判がある。十番目にはダンピングの批判である。そういうようなことを具体的にこの学者は日本に来て講演をしていますね。  ですから、アメリカの自由貿易論というのは、国際収支が年間百数十億ドルの赤字だということも一つあるかもしれないが、より大きな要素は失業問題、ここから出てきている。こういう点で果たして日本福田総理が自由貿易論を盛んに主張し、来年の東京ラウンドで一括関税率引き下げをやる、あるいはいままでの制限品目をある程度緩める、いろんなことを国会で答弁をしているけれども、そんなことで簡単にいまの管理貿易体制の方向というものを食いとめることができるのだろうか。国民は大変これに不安を持っている。アメリカとヨーロッパと大体同時歩調をとって日本に総攻撃している。総理はいみじくも先ほど、戦前のような体制なら戦争だった。私もそう思う。だから、私はいま、不況は戦争よりはまあいいなとがまんをしているわけであります。不況はいやです。反対です。気に食いません。しかし戦争するよりはまだましだ。その中で公平な分配、公平な取り扱い、平等な法的恩恵、そういう方向に従ってこういう時代にはもろもろの政策を変えていく以外にないのではないか、そんな感じを私は持つのであります。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕 総理のその辺の自由貿易論に対する、管理組織貿易論に対抗する今後の処置は、手荒い戦争はできないのですから、どういう方法で世界に納得をしてもらうか、決意のほどを伺いたいのであります。
  249. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 やはり制度的に保護体制をとるということは、これは非常に私は危険なことになっていくのだろうと思います。これは一波万波を呼びますね。特にヨーロッパの諸国なんかは、大体、ではないでしょうか。国民総生産の三割くらいを貿易に依存する、こういう国である。わが国は、そこへいくと一一、二%依存度だ。こういうところへもっていってヨーロッパは、そのように貿易に対する依存度が強い。そのヨーロッパで、もし保護貿易体制なんというようなことを言い出すと、また実行するということになれば、これは本当に世界は大変悲劇的な総沈みの運命になっていくだろうというふうに私は思うのです。ですから私は、ヨーロッパの指導者たちにも、アメリカの指導者たちにも、そんなことをしては大変なんだ、これは万事問題があれば話し合いで解決しようじゃないか、話せばわかるということはわが国では言われるが、国際間においてもそうじゃないでしょうか、こういうことを言い、同時に、わが国がまた、保護貿易主義の世界的な台頭に対しまして、その口実を与えるようなことがあってはならぬ、こういうふうに考えまして、そうしてどうしてもわが国とすれば秩序ある輸出という体制、これはもう本当に厳格にその姿勢をとらなければならぬだろう、こういうふうに考えております。同時に、いまとにかく国際収支は、経常収支で言うと、黒が六十五億とかあるいは七十億と武藤さんはおっしゃいましたけれども、多額に出る。出ますけれども、その出たところの黒字に対しましては、資本収支の方でこれをまた調整をする、そうして総合収支においてはそう黒字は出さぬという姿勢をとるべきであるというふうに考えておりまするし、またそれはとっておるのです。そういう資本収支の方の調整努力をとりながら、経常収支の方につきまして、内需を振興する、あるいは輸入を臨機応変にやっていくというようなことをしながら、この経常収支の側面の改善といいますか、調整努力を進めておるというのが現状ですが、いずれにいたしましても、世界が管理貿易体制ということになれば、これは世界はもうどうにもならぬ。それを何としても食いとめなければならぬ。そのための口実をわが日本として与えるということになってはならぬ。と同時に、世界にも粘り強く何というか保護体制の危険というものを警告し続けなければならぬというふうに考えております。
  250. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 わかりました。そうすると、総理の見解では、秩序ある輸出は自由貿易である。私は、秩序ある貿易ということはすでに組織貿易である、管理という概念が半分入った、管理プラス組織の貿易である。野放しではない。自由貿易ではない。ジスカールデスタンが言うような考え方にやや近い姿勢。だとすれば、それはだれがそういう一定の方向づけをするのか。政府がするのか、業界に任せるのか。秩序ある輸出の場合は、通産省が一定の枠を決めて、ことしは鉄鋼はこの程度、テレビはこの程度、これはこの程度という六%成長にふさわしい貿易の伸びを、政府としてはガイドラインをつくるべきだと思うのですが、それはいかがでございますか。
  251. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは、要するに、一時日本がテレビあるいは家電製品について集中豪雨的な輸出をした、こういうふうな批判をされましたが、確かに私はそういう面があったと思うのです。そういう点はしかし是正はいたしました。そしてこれは、各商品ごとにお互いの国と話し合えば、この辺が妥当だというのは大体見当がつくのです。その見当に従って行動されるということになればいいわけでありまして、わが日本貿易界におきましても、そのことは心しながらいま対処しておる、こういう状態でございます。
  252. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私は、一九二九年の世界不況という当時のことを書物で読むと、イギリスが世界自由貿易から脱落をして、帝国特恵制度というのを新たにつくった。そのうちに今度はアメリカも追従をして輸出統制を実施してきた。初めに保護貿易をやる国はある程度利益を受けるけれども、やがて次から次へそのゲームが発展をしていったときには世界経済機構というものが破壊されてしまうことは、この一九二九年の例でよく経験をしたところでありますが、しかし、今日イギリスやフランスやイタリーという先進国はそこまでやらないにしても、あの当時といまとは独立国家の政治情勢と数がまるで違う。百五十カ国になんなんとする国連加盟国がある。皆、民族自決権を持ち、自分の国の資源は自分たちが自由に値段をつけて売れるという、国際カルテルを結成するだけの強い力を持った石油産出国も出現をした。政治情勢が全然違っていますね。そういう中で開発途上国が保護貿易に何カ国かが切り込んだときに、やはりかつてのような事態が起こらないと保証できない。いやイギリスやフランス、イタリー、ドイツ、日本あたりが踏み切らない限りそういう心配はないと言い切れましょうかね。私は大変危険性があると見ているのです。  福田さんは最近、来年の経済なんかわかるもんかなんてちらっと言ったこともありましたけれども、何か二十一世紀を展望しようという懇談会を総理官邸で開いたと新聞で見ました。三年先、五年先がむずかしいのに、二十一世紀の何を模索しようとするのか。二十一世紀を展望してどんな社会像を総理は描いているのでしょうか。戦後三十年あるいは二十五年間の世界の大きな変化、いろいろな変化がありましたね。西側先進工業国内は、より開放的かつ人類平等主義的社会ができてきた。すなわち不遇な人々の社会参加、教育の機会の拡大、労働組合勢力の伸長、社会民主主義政府の拡散、個人の自由の拡大、多様な生活様式の容認、ウーマンリブ運動の広がり、とにかくこの二十五年間の社会的変化というものは大変大きなものがあります。権利付与の革命時期と言っても私は間違いではないと思うのであります。この二十五年間の歴史と以前の二十五年間の歴史を比較したときに、個々の人間の自由というものが拡大された、そういう新しい組織体制があらゆる分野に広がった。いいことであります。人間の自由が拡大されるというのは歴史の必然であります。ヘーゲルはいみじくも、歴史は自由の進化であると教えている。カントがそれをさらに引き継ぎ、マルクスが引き継いできた。そういう歴史が、いまこの戦後の二十五年間にあらゆる面でそういう参加とか権利付与の革命が成就されたと私は思うのであります。それだけに政治当事者はむずかしい。要求が多様になり、圧力が強くなり、自由の要求というものは当然として社会的に容認をされる時代が来た。  私はそういう二十五年間の変化を自分なりに理解をしてみて、一体これから二十一世紀、二十三年後はどんな社会になるのだろうか、大変私は不安であります。政治の方向、かじ取りを誤ったときに、その国の運命が二十一世紀にどうなるかということを大変憂える一人であります。エジプトの文化が、インカ帝国の文化が、あるとき突然地球上から消え去った、なぜだろうか、自問自答して日本の運命を私なりに案じております。総理、二十一世紀の日本の社会像はどんな社会ですか。総理の描く二十一世紀の社会像のほんのエキスだけでよろしい、簡単にひとつお聞かせいただきたいと思います。
  253. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 二十一世紀と言えば二十三年後のことになりますが、これは私は、いまの世界の指導者たちがどういう歩みをそれまでしていくかということで決まってくると思うのです。いろいろなケースが想像されると思う。最悪のケースは何だといいますれば、これは本当に資源エネルギーの谷間にはさまっちゃって、非常に窮乏した経済環境の中で世界全体が生きていかなければならぬ、そういう時代じゃないかと思います。その姿が一体どうなるか、こういうようなことにつきましてはもう思いも及びませんけれども、しかし、そうならしちゃいかぬわけでしょう。そういう二十一世紀にしないために今日の指導者たちはどういうことをしなければならぬかというと、やはり私は、世界のみんなが協力して新しいエネルギーの開発をやっていかなければならぬと思うのです。そういう展望が切り開けられますれば、いま当面の世界のいろいろな困難な状態について武藤さんからいろいろお話がありましたが、それは当面のことです。しかし、非常に大きな展望といたしまして、世界はなお続き得る、こういうふうに考えております。
  254. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 国際経済問題はちょうど一時間過ぎてしまいましたので、この辺で中断をして、先に国内不況の原因と対策、これもいやだけれども、また不況の問題を論ぜざるを得ません。  総理は、ことしの三月三十日に本委員会で私の質問に答えて、「私は昭和五十二年度予算、またそれに先立つ五十一年度の補正予算、これが実行に移されるという段階になりますると、景気は回復過程に向かうというふうに考えておりまして」、こう答えています。もうすでに実行段階半ばになりつつある。景気は回復過程に向かわないで、六・七%の見込みすらどうも危うい。これは見通しが甘かったのか。いや、総理の責任じゃない、経済が悪いんだよ、経済がうまくいかないので、おれのせいじゃないと、全然反省はしませんか。  さらに企画庁長官企画庁長官はやはり私の質問に答えて、二月十二日、私は、この予算は個人消費を過大に見過ぎる、民間設備投資の見積もりも過大である、したがって、年の途中でこれは蹉鉄を来すだろう、この見積もりは私としてはどうも容認できない、そういう質問をあなたと三、四十分やりました。そのときに倉成国務大臣は、「そうしておおむねこの程度のものは期待できる、そういうことで積算をいたしまして提出をいたしておる次第でございます。」、すなわち、当初の経済見通しはおおむねその程度は期待できるという答えを、二月十二日議事録五ページでちゃんと答えている。今日、六カ月を経過しないのに閣議で決めた経済見通しを改定しなければならぬということは、あなたにとってはまさに断腸の思いであるはずである。あなたの今日の反省の弁を聞きたい。
  255. 倉成正

    倉成国務大臣 お答えいたします。  武藤委員指摘のとおり、五十二年度の経済見通しについて私どもが考えました点で、今日の段階で振り返りますと、見通しが違った点は、やはり民間の設備投資、民間が設備投資についてはもう少し意欲を持ち得る、そういうふうに判断したわけでございますけれども、民間の気持ちが非常に冷え切って減量経営ということで、この先行き不安のために設備投資を十分なし得なかったという点が一つの相違点でございます。それから個人消費支出につきましても、所得の伸びが当初の見通しよりも若干低かったという点が今回の改定の見通しの中心になるわけでございます。したがいまして、民間の需要がわれわれが当初考えたよりも出なかったという点については私の見通しが十分でなかったと思っておるわけでございます。  それからこの背景としては、今回の不況がやはり落ち込みが非常に激しかったということで、在庫が非常に多かった。これは流通在庫製品在庫あるいはユーザーの在庫、すべての点について在庫が非常に過剰でありまして、公共支出等が在庫に食われましてなかなか実需に結びつかなかったという点でございます。しかし、最近におきましてこれがようやく在庫の面にも影響が出てまいりましたし、実需にも若干出てきた、雇用にも建設面等については若干出てきたというのが現状でございます。
  256. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そこで、今度の改定見通しを見ると、これもまたこのとおりいきそうもないのであります。しかしそれを論ずる時間がありません。  そこで、長官にちょっと数字のことをお尋ねしますが、この昭和五十二年第一・四半期、四月から六月の生産水準を見ると、消費財部門は比較的よろしい。四十八年同期より一〇%高い。しかし投資財部門はマイナス四・四、生産財部門はマイナス五・三と出ている。企画庁の統計数字を私ずっと調べてみたのです。特に問題になるのは、投資財と生産財両部門で日本の製造業全体の三分の二のウエートを占めているわけですね。だから、この部門のマイナスあるいは落ち込みということは全体の見通し、計画に非常に大きな影響がある。これを見落とすと、また改定した見通しというのは狂ってくる。  しかし、倉成さんは非常に堅実な人でありますから、当初予算民間設備投資一一二・二の伸びを今度一〇六・〇にしたわけですね。絶対額にして二十五兆二千五百億円を二十三兆八千五百億円に縮小する、差額が一兆四千億円。民間設備投資を削る分が一兆四千億円。国際収支の方のふやした分だけ、ちょうどここへ来ているわけですね、民間設備投資の金額に。約五十億ドル分ぐらい。二百五十円にして——それよりちょっと多いですか、六十億ドルぐらいになりますか、一兆四千億円。それがここへ入ってきておるわけですね、落とした分に。個人消費の方は一二二・七を一二二にする。これで需要が七千五十億円減。当初見積もりより七千五十億円減にする、こういう操作をしてあるわけであります。これも先ほど申し上げましたようなことをいろいろ勘案すると、どうもむずかしいような気がいたします。しかし、それは論じません。  総理、現在の不況についていろいろな解釈が成り立っておりますが、マルクス経済学者は、これは景気循環の不可避的な変動の一局面なんだ、いわゆる資本主義経済の周期的長期波動なんだ、こういう考え方の人が多い。すなわちコンドラチェフの波、そういう考え方ですね。しかし、私はそうは見ないのであります。今日の不況は資本主義の周期的に訪れる不況ではなくて、意図された政府の管理政策により起こった不況である、それに国際的な不況がプラスになっている不況である、そう私は認識をするのであります。  その点について、総理は、まず国内の不況の原因を資本主義一般の周期論と見るか、総需要抑制政策を四十九年から極端にやり過ぎて、しかもそれを長期にやり過ぎて、高い二階から一挙に下までおっこっちゃった、八分目で一たんおりて、踊り場へおりて、それから徐々におりて六%成長にするという過程を通らなかった。平均一一から一二の実質成長率から一挙に六%へ落とそうとする大変厳しいおり方をしたわけですね。そういうところに今日の不況が来てしまった。これはつくられた不況である、政策不況である、私はそう思う。資本主義の循環不況ではないと私は思う。総理の見解はいかがですか。
  257. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今日のこの状態がいわゆる景気循環、そういう性質のものではない、このように思います。しかし、それが政策的につくられた不況だ、こういうふうには私は思いません。戦後の、戦後というかあの石油ショック後の経済運営というものは、これはかなり成功した方じゃないか、私はこういうふうに考えておるのです。それくらいこの石油ショックというものは国際的にまた国内的に非常に深刻な影響を及ぼしておるものである、こういうふうにとらえておるわけであります。資本主義下における経済循環とは考えませんけれども、後段の、これはつくられた不況であるという見解には私は賛成できません。
  258. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私が国際経済論からあれしたのは、国際的不況に原因が一つある。国内は、やはり石油ショックで四倍に石油の値が上がり、有限時代が来た、さあ大変だ、これに対応しようというので一挙に経済成長率を落としたわけでしょう。これは人為的に、政策的に落としたのだ。その落とし方が非常に極端であった国と極端でない国ではあらわれ方がやはり違うのですよ。  西ドイツと日本をちょっと比較しても、西ドイツの一九六〇年から七〇年までの成長率をずっと見ても、あるいは古いGNPの伸び率をずっと見ても、高くて六%、三・五%、四%前後、その辺をずっと続けてきている。日本は実質で十年間が一〇・八、一一%の高さなんだ。ドイツの三倍近い高い率で日本経済成長してきた。それを一挙にその半分の六に落とすわけです。しろうとが考えたって、どこにも摩擦が起こらない、けががないはずがない。たとえば日本のGNPをずっと調べてみても、名目で見ても実質で見ても、日本昭和四十年からの全部統計を見たのでありますが、四十四年一六・八、四十五年一七・三、四十六年一一・七、四十七年一六・一、四十八年二二の名目成長。それを総需要抑制をやって五十年に名目を九・七に、半分に落としたわけです。いわゆる伸びる率が一挙に半分に減ったら、やはりどこか足りないところが出てきます。いままでどおりの伸びで予想して企業をやっている人が、その伸びが半分に減ったら、いろいろな方面に摩擦が起こり、混乱が起こるのは当然じゃありませんか。その混乱を収拾するのに、当時の福田大蔵大臣全治三年と言ったのだと思います。しかし、三年たってもその病が治り切らない。もう四年になってしまった。これは病が非常に重いのです。だから福田さんは、梅雨時期になって、梅雨が明ければ景気がよくなると最初言った。そのとき国民は、それは参議院対策に言っているのだろうと余り信用しなかった。そのうちに今度は、いや、八月になれば何とかなるさ、明るくなる。倉成長官などの週刊誌の婦人との対談を読んでみると、非常に楽観。いまは暗い暗いトンネルの中にいるけれども、間もなくこのトンネルから飛び出ると洋々とした大平原に出るのです。女の人はちょろっとだまされてしまうね。これは週刊誌に書いてある。  問題は、トンネルだから、永久にトンネルでないのだから、必ずいつかは明るいところに出てくる。肝心ないつ出るかを倉成さんは書いていないのですね。あれではしっぽをつかまえられない。おれはいつ出るかとは言っていないのだ、十年先か五年先かというのは言っていない。そう言えば話はおしまい。しかし、読んだ国民は、いまは暗いトンネルの中におるので、あたかもすぐ間もなく福田さんが言うように、八月になれば晴れ、そして景気は回復、みんな安心したまえ。総理、私はそういう経済成長率を、伸び率を一挙に半分に落としたところにまず国内不況の大きな原因の一つがあると見ている。総理の見解はどうですか。
  259. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 あのときとった措置、あれをとらなかったらいま一体どうなっていますか。これはインフレの退治ができなかったじゃありませんか。とにかく経済を立て直す、その最初の、第一の柱はインフレの退治でなければならない。インフレがあの調子で三年も続くということになったら一体どうなったか。これはもう社会的な不公正の問題、またいろいろな社会悪が出てまいりまして、もう収拾できないことになっただろうと思う。私は、高度成長であった日本でありますから、低い成長であった諸外国とそれは置かれた環境は違う、こういうふうに思います。ですから、インフレ退治のために立てた施策、それが非常につらいことであったことは、私は、ほかの国よりもそうであった、こういうふうには思いますけれども、あの施策をとらなかったら、今日一体どうだったのでしょうか。私は、今日の日本があるのは、あのときあのような施策がとられたからである、これは信じて疑いません。
  260. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 だから私は、物価を鎮静させるために、下げるために管理政策を徹底したから不況が来たというのですよ。それは事実でしょうが。物価は成功した、しないということはまだ質問していない。物価を鎮静させるために行った管理政策を極端にぎっちりやったから不況になっちゃったんですよ。この事実は認めざるを得ないでしょうが。物価で成功した、あなたがファイアマンだということは認めますよ。そのことはこれから後でほめようと思っているのだ、物価の問題は。私はいま不況の話をしている。話をごまかしちゃいけない。不況原因の一つにそういう政策が原因となってないかといま聞いている。全くなっていないと言い切れますか。そんな答弁したら世界じゅうに笑われますよ、総理大臣。やはり素直に、世界の学者が全部認めているように、各国とも管理政策をきちっとやり過ぎて不況が深刻になったとみんな自己反省しているのですよ。  ではほかに方法があったかというと、これは死んだ子の年を数えることなんです、総理。二二%の物価上昇を一挙に五%にしようとか七%にしようったってできない。もし死んだ子の年を数えるような議論をここでやろうというならば、二二%をまず一八ぐらいに落とす、一八ぐらいをさらに一六、一五に落としていく、順次なだらかに落としていけば、それは刺激は少ない。しかし日本にはそういう手だての法律をつくってなかった。西ドイツは経済安定法もつくってある。いろいろな手だてを考えてある。だから臨機応変にそういう政策措置なんかも対応できる。日本にはそれがない。一年の収入は一年に全部使ってしまうという財政です、日本は。そういう手だてもきちっと歴代保守党内閣はつくっておかないで、おれは物価問題で成功したから不況の問題については答えないというのは、ぼくはおかしいと思う。不況になった原因の一つにある。もし総理がそう言い張るなら、私は実数でちょっと伺いたい。  具体的に申しますと、たとえば昭和四十八年のGNPの伸びは名目で二二、実数で前年と比較して二十兆八千八百三十一億円、二十兆円。四十九年のGNPも絶対額で言うと二十兆六千億円。前年よりちょっと減った程度。五十年はどうなったかというと、十三兆二千三百二十億円に減ったわけですね、GNPが。前年と比較して十三兆二千三百二十億円、これだけ前年と比較してGNPががぐっと減れば、中小企業だって大企業だってかなり影響を受けますよ。従来と比較しても七兆円差がある。そういうものが今日の需給ギャップという中の根底にずっとあるわけですよ。総理はきのうから、需給ギャップ数字なんというのはわからない、企画庁までそんな数字を示したことはないなんて言っている。しかし新聞や何かでは、あるいは民間の専門機関だって、需給ギャップがどのくらいあるか、おおよその数字はみな発表している。そういうものが、需給ギャップはわかりませんと言っていて、どうして新しい需給ギャップがないようなバランスのとれた経済ができますか。処方せんが書けますか。そんなことでは無責任きわまりますね。私は、いまの二十兆ずつ伸びてきたGNPが十三兆になったという事実だけでも、日本全体のそれだけの需要というものなりあるいは支出なりみな減ってしまった、そうなれば物はその分だけ売れなくなってくる、売れなくなってくれば設備投資はそれだけ控えるようになる、そういう悪循環がまだずっと続いているのですよ。私の見解は間違っているでしょうか、総理。私は、総理が間違っているとかいいとか言っているのではない、事実をまずはっきり確かめようとしている。死んだ子の年などを数えようと思っていないのですよ。今後の新しい政策をつくるためには、その事実をきちっと踏まえなければ新しい政策が出てこないのです。総理の見解をちょっと聞かしていただきたい。
  261. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私はインフレをそのままにしておいて景気が維持できるというふうには考えません。インフレが続いたらもうそれは半年、一年は景気がいいかもしれない。しかしながら、二年、三年たてば景気自体がインフレのために押しつぶされる、そういう見解です。  でありまするから、あのとき物価の安定に成功したことは大変よかったことである、そのように考えております。
  262. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 総理とあと五、六分しかありませんから、このことだけで論じていることはできませんが、いずれにしても、今日のデフレ効果というのは、そういう総需要管理政策という中から生まれてきていることはもう世界の学者の通説であります。総理が言い張るのですからやむを得ません。  そこで総理、いまは六・七%の経済成長を達成する、それは今度の補正予算でややできるというのが福田総理大臣の見解でありますが、こういうような、いまの失業の百万人以上、あるいは中小企業がばたばた千五百件以上倒れている、こういう現象、いわゆる不況、こういうものは何年ぐらい続くと見たらいいのでしょうか。日本の失業者が百六万人から六、七十万台、いわゆるノーマルな姿になる、そういうためには何年ぐらい先なんでしょうか。もし総理に無理なら、企画庁長官だね。
  263. 倉成正

    倉成国務大臣 完全失業率を五十五年度において一・三%にしたいというのが前期経済計画の目票でございます。ただ、今日のような状況でございますから、この目標に向かって最善の努力をいたしたいと思っておる次第でございます。(武藤(山)委員「いつごろ」と呼ぶ)昭和五十五年というのが前期経済計画の目標でございます。したがいまして、私どもはいま前期経済五カ年計画の目標に従って経済の運営をやっておりますので、この目標を達成するために最善の努力をいたしたい。多少ずれることがあるかもしれないと思います。
  264. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私が聞いているのは、不況が五十五年までこのまま続くということですね、私がいま質問しているのはそのことを聞いている。不況が何年このまま続くかと聞いているのですよ。五十五年までか。
  265. 倉成正

    倉成国務大臣 不況がどのくらい続くかというお話でございますけれども、現在相当な需給ギャップがあることは事実でございます。したがって、私どもは、前期経済計画で考えましたのは、前半において高い成長率をもって需給ギャップをなるたけ早く縮小する、そして計画期間五年間を通じて六%強の成長を続けていきたいというのが、前期計画の描いている路線でございます。これはエネルギーの制約とかその他の条件を考えまして、今日の経済も財政の相当な支えによって成り立っておるわけでございますから、財政というのがどこまで経済の下支えになり得るかということが一つの問題点であろうかと思うのでございます。
  266. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 経済の神様福田総理大臣総理大臣の見解では、いまの六・七%の経済成長というのは、もうロンドン会議で約束したことだから至上命令、六・七%は実現できる情勢にある。現在ありますよ。そこで、六・七が実現しながら、なおかつ失業者が百六万人おり、倒産がばたばた続き、こうある。これは六・七を実現してもこういう現象はやむを得ない、そういう認識を持つべきなんでしょうか。それともそういうものがなくなるように、さっきからいろいろな質問が出ているように、財政投資をもっとどんどんふやして、そういうものは一挙にある程度片づけるようなことをやれば、一〇%、一二%に成長率がまたなっちゃうでしょう。そういう選択をすべきなのか。それはインフレの方向を選ぶか安定成長を選ぶかの分かれ道の大変な議論のあるところだと私は思うのですね。六・七%の成長がいいと前提を立てた内閣ならば、現状にこうもろもろの現象が起こっているのは、やむを得ざる摩擦と心得ろと言う以外にないのじゃないですか。どうでしょうか、総理大臣
  267. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日本経済全体としては、まあまあとにかくいいところを走っておる、こういうふうに思うのです。ただ問題は、解決されない問題がある。それは、しばしば申し上げているのですが、構造不況業種、こういうものがあって、景気感、こういうものに非常に大きな障害をなしておる。そればかりじゃありませんけれども、それが主軸になっておる、経済に対して非常に不安感を与えておる、こういう状態かと思うのです。特にそういう中で、これは大企業の方も相当、低成長四年でありますから、くたびれてはおりまするけれども、特に構造不況業種に関連する中小企業、こういうものの立場は非常に深刻な状態だ。そういう問題に手当てをしながら進んでいきますれば、私は、日本経済というものは、やがて安定軌道に乗り得る、こういうふうに思っておるわけなんです。  ですから、いつになったら景気が回復するかというようなお尋ねでございますが、私は、これは、いつばあっとというようなことでなくて、だんだんとそういう方向に行くであろう。  それから、完全就業、そういう状態はどういう状態を言うのかということに問題がありますが、大体一・三%失業の状態、これはもう避けられないところであろう、こういうふうに言われておるわけですが、それをもって完全就業という状態だ、こういうふうに見れば、それは昭和五十五年度ぐらいには実現をしたい、こういうふうな考えであります。
  268. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 総理は退席されるようでありますので、総理の後を一〇〇%守備をしていただきたいのでありますが、各大臣、よろしゅうございますか。  まず最初に、数字はこれは国際金融局長にお尋ねしておきますが、最近の円高ですね。ことしの初めころは二百九十二円、二月が二百八十円台、四月が二百七十円台、六、七も二百七十円台を割るか、かつかつのところ、今回十月に二百五十八円、このように円高ドル安ということになりました。日本がかつて昭和四十六年に円の切り上げをさせられたときが一六・八八%だと記憶しておりますが、スミソニアン・レートで三百八円と、一応国際的なガイドラインというか、合意を得た。スミソニアン・レートと比較して最近の円高は何%ぐらい上がったことになるのか、それからことし一年間で円は何%ぐらい高くなったのか、この二つの数字を明らかにしてください。
  269. 旦弘昌

    ○旦政府委員 本年の当初から比較いたしまして、円が十一日現在で一三・六九%切り上がっております。年初に比較いたしましてそれだけ上がっております。それから四十六年十二月のスミソニアン・レートに比較いたしますと、一九・九八%切り上がっております。  それからなお、先ほど御質問がございましたOECD二十四カ国の経常収支等につきまして、おくれましたが、ただいま回答させていただいてよろしゅうございますか。——申し上げますと、OECDの事務局がことしの七月にエコノミックアウトルックを発表いたしておりまして、その中の数字でございますけれども、これは暦年ですべて出しておりますが、一九七六年のOECD諸国の経常収支の合計でございますが、赤字が二百六十五億ドルでございます。それから七七年、本暦年の見通しでございますが、同じくOECD諸国合計で三百億ドルという見通しでございます。  それから御質問のOPECの諸国の経常収支でございますが、同じ資料で七六暦年で合計四百二十億ドルの黒字でございまして、七七年は四百十億ドルの黒字と見込んでおります。  第三に非産油開発途上国の数字でございますが、七六暦年で二百三十億ドルの赤字、それから七七年で二百二十億ドルの赤字になろうということでございます。  なお、非産油LDCの公的債務の残高がどのくらいになるかというお尋ねだったと思いますが、世銀の年次報告によりますと、これは七五年末の数字しかございませんけれども、コミットしましてまだディスバースもしてないものも含めまして、世銀では千四百十五億ドルの債務残高であるということでございます。そのうちディスバースをすでにしたものは千七億ドルの残高であるという数字を発表いたしております。
  270. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 為替レートがことしに入っていま発表のように一三・六九%円高になった。これは中小企業にとっては大変なことでありますが、今度の融資制度程度でこういう問題が処理できるのでしょうか、通産大臣
  271. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの御質問でございまするが、当省で行っております輸出の緊急措置、御承知の二千万、五百万というふうな問題につきまして、これがどこまで全面的に解消できるかという問題については、非常にむずかしい問題でございまして、いまここで御即答は申し上げかねますが、調査をいたしまして、御報告いたしましょう。
  272. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 通産大臣中小企業省が日本にはないので大変残念でありますが、中小企業の輸出割合というのは大変なものですね。大臣の常識的にいま考えている中小企業で輸出というのは何%ぐらい占めているか、説明してください。
  273. 田中龍夫

    田中国務大臣 計数のとり方いかんによってでございまするが、中小企業の直接輸出するもの、それから間接に中小企業の手を経て輸出するもの、大体六〇%から七〇%、こういうふうに見ております。
  274. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 通産省からもらった資料でも、ずっと暦年でもらってありますが、最近時でも重化学工業で六六・六%占めていますね、中小企業で製造されているのが。他のものを見ると、木材、木製品、衣服、繊維、家具なんといったら大部分中小企業であります。ですから、円のレートが一年間に一三%も上がったということは大変な打撃である。収益分岐点やなんか、通産省の調査では、中小企業製品というのは、どのくらい上がっても輸出競争に耐えられるという、いままで調べていた積算では何%までぐらいは競争力があると見ていたのですか、大ざっぱに。
  275. 田中龍夫

    田中国務大臣 政府委員からお答えいたします。
  276. 岸田文武

    ○岸田政府委員 円高の中小企業に与える影響につきましては、七月に二十二、三日について調査をいたし、その後八月、九月とアフターケアを行っております。それによりますと、影響の特に大きいと思われますのは繊維、雑貨関係でございますし、特にその中でも中級品、低級品を扱う産地において影響が多いというふうに感ぜられるところでございますが、各産地の実情を見ますと、七月の調査、八月の調査では、受注が非常に落ち込んでおるということが一様に言われております。いままで持っておった受注残を食いつないで仕事をしておる。九月になりまして注文が若干入ってまいりました。しかしながら、その注文が非常に値が安いというようなことから、いろいろ問題が起こっておるようでございます。  いま、十月の実情について調査中でございます。十月になりましてからさらに円高が進んでおりますので、恐らく、新しい事態に対して中小企業はどう思うかというような点について新しい情報が得られるのではないかと思っております。従来得られました調査によりますと、二百六十円台が続くということはかなり影響が大きいというような答えが出ております。
  277. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 通産大臣、融資を従来の倍額認めるようにしたと言っても、いま中小企業は金を借りられるのですか。担保はなくて——大体いままでに中小企業はほとんど借金目いっぱいですよ。家屋敷も担保に入ってしまっている、工場も。親戚のものまで借りて、みんなこう入れてしまっている。しかし、今度のこういう緊急融資、担保なしでは貸さないのですね。担保なしで貸すのですか、大臣
  278. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの問題でございますが、御承知の構造不況等々の問題に対しまして、振興事業団の方で、設備その他のことについて関連いたしまして担保が入っておりまする問題に対しましては、御承知の構造対策の協会というような信用保証の制度をとりまして、あるものは金融機関からの担保を滌除するというような処置を講じておることは御承知のとおりでございますが、同時に、中小企業全体としますと、年初に枠を設定いたしました三機関の三兆六千億とか、あるいはマル経の四千七百億とか、そういうふうなものが実際の問題としましては取り切ってないということは、中小企業自体が仕事量がそれまでない、仕事の量がないという問題もこれは重大な問題であろうと存じます。冷え切った不況に対しまして、仕事量がない、そういう点も御検討をいただかなければならぬと考えております。  なお、詳しいことは長官がおりますから、お答えいたします。
  279. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 総理がいないので、あと五分ぐらいというのですが、通産大臣、大蔵大臣、実は野党と与党の政審会長会談の際に、私どもは強く河本さんにお願いをしました。それは、今回の金利措置が既往の債務、昭和四十九年、五十年の高いときに借りた借金の金利がべらぼうに高いわけですね。商工中金で当時の貸出金が一〇・三、不動産銀行なんというのは一一から一二%ですね。ですから、長期金融機関の貸出金は皆一割を超えているわけです。三公庫でも九・四%、九・四、九・九。開発銀行は九・九。こういうように国の三機関でも非常に高い金利だった。こういう古いやつを引き下げなければ公定歩合を引き下げた意味もない、こういうことで強く政調会長に要望したのでありますが、今回の政府がいま十一月一日からとろうとしているこの措置、これはまことに私は不満であります。不況業種で引いてくれるのは赤字の会社だけだというのです。これではせっかく総理と私がこの二月の予算委員会で約束したことが泣きますよ。ここで私と総理との約束は、会社更生法の適用を受けた場合に、その関連企業が皆手形を持たされて安い配当で泣かされておる、総理はそういう私の質問に対して、あなたと同じように私も会社更生法の適用というのはどうかと思う、今後前向きに勉強させてくださいと言って答えた。それでできてきたのが一つはこの共済制度。で、古い金利の問題についても、そのとき、だからできるだけとにかく長期のものもめんどう見るようにしよう、そういうことを当時約束したのです。それが今度は、赤字が続いている企業というように限定されたのはまことに不満でありますね、通産大臣。いまその三機関が全部、開発銀行まで入れて全部一律一%下げたとしても一千億ですね。だから赤字と限らずに不況業種だけに決めたって二、三百億じゃないですか。今度のように不況業種で赤字でなければ引き下げしないということだったら、幾らこれで一体該当者が出ますか、その数字も出してください。これは大蔵省と両方かな、三機関。
  280. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答えします。  武藤さん、お尋ねの件でございますが、あなたがいまおっしゃられたとおりの数字でございまして、通産大臣が指定して、それが一生懸命にやっておるけれども赤字といったようなものに限られております。  そこで、それで一体幾らになるかということでございますが、どうも黒字の会社に対しましてそういったような利子の引き下げをやるということがやはり黒字の会社に一種の補助を出す、そういうようなことになるわけでございまして、いまはそれをやっておりませんけれども、金額幾らになるということについては私も覚えておりませんので、事務当局からお答えします。
  281. 徳田博美

    ○徳田政府委員 お答えいたします。  中小三機関の現在の融資金額の総額でございますが、これは商工中金は長期だけでございますけれども、七兆一千億ございまして、そのうち今度の金利引き下げの対象となる金額は五兆三千億でございます。ですから、このうちのかなり部分が該当するのではないか、このように考えております。
  282. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 違うよ。不況業種で赤字の会社しか金利措置をしないのですよ、今度の政府案は。そんなものはもうみみっちい、ほんのわずかだ。大体大ざっばに幾らぐらいになるかと質問したのだよ。まあ大蔵大臣はわからぬと答えたからいい。きょうあと残余の部分は、総理、外務両大臣いないので、次の機会にやらしていただきます。
  283. 田中正巳

    田中委員長 これにて武藤君の質疑は、保留時間を十五日に繰り延べることとし、一応終了いたしました。     —————————————
  284. 田中正巳

    田中委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  明十三日、海外経済協力基金、日本住宅公団及び年金福祉事業団から参考人の出席を求め、その意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  285. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたします。  次回は、明十三日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十七分散会