○
河村委員 また私の質問に
答弁をなさっていないんですよね。私は、GNPが六%ぐらいふえている、
経済の枠が去年もことしも広がってきている、ところが
生産も消費もちっとも上がらないのはどういうわけかということを聞いたのです。
お答えにならないようですから私の方から申し上げましょう。
経済企画庁でおつくりになっている
経済白書というのは、私は、非常に綿密で正しい分析をしていると思います。この
経済分析を生かして政策を立てれば、いま政府のおやりになっていることとはずいぶん違った
方向に行くのであろう、そう思うのです。いま、GNPの枠が五十一年以降だんだんふえて、六%前後の
成長になっていながら
生産も消費もちっとも上がらないというのは、やはり
需給ギャップが大き過ぎるから、要するに供給力が大き過ぎる、需要との差が大き過ぎるということですね。だから、公共投資をやりましても、それは余り需要
ギャップが大きい、過剰設備を抱え、過剰雇用を抱えておるものですから、どうしても売れなくても物をつくって、それで
在庫が多いわけですね。だから、せっかく公共投資をやりましても、いま
建設資材が一部
出荷等の
動きが出てきたとおっしゃいますが、今日までは、せっかく公共投資、財政でがんばりましても、それから輸出でがんばりましても、それが
生産につながらない、最終需要につながらないから、ちっとも
需給ギャップが縮まらなかったんですね。それを、ちょっと過去のことですけれども、どうも
総理は、いまの
不況なりインフレなりを全部
石油ショックのせいにしてしまって、
石油ショック後の
対策は、
わが国は先進国の中では一番優等生であるというようなことばかり強調されて、過去の政策の失敗の反省がどうもないようだ。だから、その反省を求めるためと、それと本当に
実態認識をお持ちになっていただかないとこれからの
対策に
影響がある、その二つの理由で、少しくどいけれども、私は
経済白書の中身を簡単に引用させてもらいます。
経済白書で言っておりますことは、きのう多賀谷さんもちょっと触れましたけれども、四十七、八年の過剰流動性、これがやはりすべてのもとになっているんですね。このころ
総理はどういう立場であられたかは私ちょっと調べてこなかったのでありますけれども、とにかく四十六年のニクソン・ショック以後の円切り上げを避けるための調整インフレですね、これで過剰流動性をたくさん生んだ、これがすべてのもとになっている。その過剰流動性がインフレの引き金になったことは去年の白書で分析をして、今度の白書ではこういうことを言っているんですね。「過剰流動性と
日本列島改造ブームを背景に四十七年下半期来
わが国経済は名目でもまた実質でも
かなりの拡大をみた。こうした状況下依然として高度
成長の持続を前提とした
かなり高目の需要見通しが行われた。
昭和四十八年度を初年度とする
経済社会基本計画」、これは政府がおつくりになったものです。それでは九・四%の実質
成長率を見たんですね。それで、いろいろな基礎産業等につきましても過大な需要見通しを発表した。それに
企業が乗りまして、それで、それがちょうど過剰流動性のさなかでございますから、それと異常な物価高の中でだんだん供給力が不足になるような感じがあったものだから、
企業は一斉にこの需要見通しに乗って過大な設備投資をやった。本来ならば、この
石油ショックでこういうものはやめるはずであるけれども、やはりその中の多くのものが続行された。だから、四十八年暮れの
石油ショック以後、四十九年は完全にマイナス
成長なのですね。マイナス
成長の中でも設備投資はどんどんどんどん行われた。設備投資というのは、一方で需要
効果も持つけれども、これはあるタイムラグを置いて供給力
効果を持ちますね。ですから、
石油ショック以後
不況になってからでも引き続いて四十九年、五十年と供給力が拡大していったわけですね。そういうことですから、GNPで一生懸命がんばりましても、供給力が一方でだんだん拡大していくということで、追っつけない。だから、締めくくりとしてこの五十二年度の白書では、「五十年春以降回復に向かったが、需要の増加テンポが鈍いものであったため大幅な
需給ギャップは目立って縮小しなかった。」非常に大きな
需給ギャップをつくっちゃって、それが五十二年の春まで解消していないというのが
経済企画庁の分析ですね。これはもう明らかに、この過剰流動性をもたらした政府の責任、四十八年の政府の見通しの甘さの責任ですね。
それからもう一つは、これは
不況の方でありますけれども、この過剰流動性が
石油ショックの火種になって、このために狂乱物価が起きたわけですね。ですから、インフレの山を高くして
不況の谷を深くした。これは政府の政策責任なのですよ。それに対する反省を持たれなければおかしいと思います。
そうして、こういう状況があったものですから、これは
総理も同情すべき立場だと思いますが、狂乱物価退治の方に先に主力を注いだから、
景気のてこ入れがおくれたということが今日のおくれおくれの原因になっているわけですね。ですから、ことしの春までまだ
需給ギャップが縮小していない、こういうのが
経済企画庁の分析なんですよ。いよいよ
景気回復の
軌道に乗せるか乗せないかというのはこれからなんですね。だから、
総理の言われるように、大体もうこれで平均的にはよくなったというものではないということに相なるので、ここまでの
経済企画庁の分析というものは、政府でおつくりになったものだから、大体こういうものであったということは
総理もお認めになるでしょうね。まず、それを一言だけ聞きます。