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1977-10-11 第82回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月十一日(火曜日)     午前九時三十二分開議  出席委員    委員長代理理事 田中 正巳君    理事 栗原 祐幸君 理事 澁谷 直藏君    理事 細田 吉藏君 理事 山下 元利君    理事 安宅 常彦君 理事 武藤 山治君    理事 近江巳記夫君 理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    伊東 正義君      稻村佐近四郎君    越智 通雄君       奥野 誠亮君    金子 一平君       川崎 秀二君    木野 晴夫君       藏内 修治君    佐藤 文生君       櫻内 義雄君    笹山茂太郎君       始関 伊平君    白浜 仁吉君       根本龍太郎君    古井 喜實君       松澤 雄藏君    松野 頼三君       森山 欽司君    阿部 昭吾君       井上 普方君    石野 久男君       上原 康助君    大出  俊君       川俣健二郎君    小林  進君       佐野 憲治君    多賀谷真稔君       藤田 高敏君    坂井 弘一君       長谷雄幸久君    広沢 直樹君       二見 伸明君    正木 良明君       大内 啓伍君    河村  勝君       寺前  巖君    安田 純治君       大原 一三君    田川 誠一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 瀬戸山三男君         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 渡辺美智雄君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  田中 龍夫君         運 輸 大 臣 田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 長谷川四郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       小川 平二君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      園田  直君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      藤田 正明君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      西村 英一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 三原 朝雄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 田澤 吉郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 妹尾  明君         警察庁長官   浅沼清太郎君         警察庁警備局長 三井  脩君         行政管理庁行政         管理局長    辻  敬一君         防衛庁長官官房         長       竹岡 勝美君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁人事教育         局長      渡邊 伊助君         科学技術庁計画         局長      大澤 弘之君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   牧村 信之君         沖繩開発庁総務         局長      亀谷 礼次君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君         法務省矯正局長 石原 一彦君         公安調査庁長官 山室  章君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省中近東ア         フリカ局長   加賀美秀夫君         外務省条約局長 大森 誠一君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         文部省初等中等         教育局長    諸沢 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         厚生省公衆衛生         局長      松浦十四郎君         厚生省社会局長 上村  一君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省年金局長 木暮 保成君         厚生省援護局長 河野 義男君         農林省食品流通         局長      杉山 克己君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁長官   岡安  誠君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省機械         情報産業局長  森山 信吾君         工業技術院長  窪田 雅男君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         中小企業庁長官 岸田 文武君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         運輸省航空局長 高橋 寿夫君         郵政省貯金局長 高仲  優君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省職業安定         局長      細野  正君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省都市局長 中村  清君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治省財政局長 山本  悟君  委員外出席者         住宅金融公庫総         裁       大津留 温君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      森永貞一郎君         参  考  人         (日本住宅公団         総裁)     澤田  悌君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 十月十一日  辞任         補欠選任   稻葉  修君     藏内 修治君   藤井 勝志君     佐藤 文生君   浅井 美幸君     長谷雄幸久君   矢野 絢也君     正木 良明君   河村  勝君     吉田 之久君   山原健二郎君     安田 純治君 同日  辞任         補欠選任   佐藤 文生君     藤井 勝志君   長谷雄幸久君     浅井 美幸君   正木 良明君     矢野 絢也君   吉田 之久君     河村  勝君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十二年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十二年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ――――◇―――――
  2. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長の指定により、私が委員長の職務を行います。  昭和五十二年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十二年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三件を一括して議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出があります。順次これを許します。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 福田総理は、戦後の日本経済の中で長期にわたりまして大蔵大臣企画庁長官経済担当総理を経て総理大臣になられました。総理就任前においても日本経済責任者という立場で、以前のことに返るかもしれませんが、質問を申し上げたいと思います。  本年の経済白書は、五十年から不況からの回復過程に入ったと言い、福田総理も六・七%の経済成長の見込みがついた、他の先進国に比べて日本経済はうまくいっていると本会議で述べられております。本当経済回復期に入ったのかどうか、私は若干の疑問なしとしないのであります。  まず、最近の経済指標を見てみますると、八月の鉱工業生産指数は四十五年を一〇〇として一二三・六で、前月比わずかに〇・九%しか増加しておりません。出荷もまた同じく〇・九増に横ばいでございます。製品在庫指数は一三一で、これは一〇%増加をしておりますが、依然として高い水準でございます。そうして稼働率を見ると、七月で八四・八%で、完全失業者は百五万人から百六万人にふえておる。有効求人倍率は、逆に七月が〇・五二で、八月は〇・五三になっておる。いずれにいたしましても、昭和三十八年、統計をとるようになりまして以来の低水準を続けておるということであります。そこで、今後の経済を占う製造工業生産予測指数も、また依然として景気横含み低迷を続けております。これらの指数で見る限り、福田総理の八月景気回復説は否定をされると思うのであります。本当にこの経済の内容から見ると回復過程に入っていると考えられるのかどうか。まず総理の実感を承りたいと思います。
  4. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 世界がいま非常に混乱をしておる、その中でもアメリカ、日本、ドイツはいい方、だ、そういうふうに言われておるわけです。そういう状態である日本を見ますと、確かに私は、石油ショックからの立ち上がりの基礎工作はできた、こういうふうに思うのです。ところが、問題がありますのは構造不況業種、あの石油ショックによって根本的な打撃、これは直接的な影響もあります、あるいは間接的な影響を受けたものもあります、そういう業種はかなりある。言えば俗に十三業種、そういうふうに言われておりますが、これが非常な低迷状態にあるわけです。  日本経済全体としますと、とにかく国際収支は外国から批判を受けるような黒字状態だ。それから物価はどうかというと、鎮静化基調にずっと進んでおります。この九月の時点なんかは、まだ確報が出ておりませんけれども、これはもう七%台に九月の状態でなる、こういうような状態です。国民総生産、これは六・七%には及びませんでしたが、まあ大体五・九%ぐらいになりそうだ、こういうような状態で推移してきたのです。しかし六・七%成長ということを年度初頭に皆さんにも申し上げた。国際社会にもそういう方向で行く、こういうことを申し上げておりますので、これを実現すること、これは内外に対する期待にこたえるゆえんである、こういうふうに考えまして、とにかく六・七%成長実現するための施策をいま御審議をお願いする、こういう段階でございまするが、とにかく総体としては世界第一の水準でずっとかさ上げが進んでおるのです。ところがその中で、日本企業の中にばらつきが非常に多い。ことに構造不況業種という問題を抱えておる。非常にいいものはいい、ところが構造不況業種の方はずっと悪い。平均としてはいいのですよ。ところが構造不況業種日本経済全体の中で景気感の足を引っ張っておる。この問題の処理というものが私は当面の非常に重大な問題になってきておるというように考え、特にそれに関連するところの中小企業状態、これもよくない、そういう認識のもとに全体の経済かさ上げを行う、そして六・七%成長はこれを実現をする、その中において構造不況の立ち直り、中小企業対策、これを強化する、これが私の基本的な構えでございます。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 全体としては水準はいいけれども、構造不況業種が足を引っ張った、こういうことですが、私は、GNP指標というものが本当景気実態をあらわしておるかどうか、どうも疑問に思うのです。本年の一月から三月までのGNP年率にして一〇%、そうして四月から六月までは年率七・六%、こういういわば比較的高水準になっておる。ところが、景気動向指数というディフュージョンインデックス、DIと言いますが、これを見ると、非常に落ち込んでおる。これは生産動向はもちろん、設備投資在庫投資、輸出入、稼働率金利、株価、二十五の種類を出して、そして総合的に景気動向を見ておるわけで、DIが五〇%というのがこれは平均でありますが、この三ヵ月、ずっと五〇%を下回り出した。すなわち、五〇%ラインは五月で割りまして、六月は二八・〇、七月は二〇・〇と大きく落ち込んでおる。少なくとも三カ月間五〇%ラインを下回っているときは常に景気後退の始まりだと言われておるわけです。また、景気回復過程でこれまでDIが三ヵ月も続けて五〇%を下回ったことは一度もないと言われておるのです。しかも、七月の場合は、もう先見性といいますか先行しておる部分景気と一緒に動く、いわば一致している部分景気の後から従ういわば遅行性部分、この三つの系列全部が五〇%を割っておるのでありますね。果たして本当意味景気回復過程になっておるのかどうか、どうも私は納得できない。もしなっておるとするならば、DIの方の指数が狂っておると言わざるを得ない。これは経済企画庁でお調べになったのですから、どうもその点がきわめてちぐはぐである。ですから、このDIを見る限りは、むしろ下降状態に入っておるのではないか、こういうことが言えるわけですね。それはどういうように御説明になるのですか。
  6. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国経済は、特に企業、これはとにかく石油ショックまではああいう世界に類を見ないような高成長を続けてきた、それが一挙にしてマイナス成長になる、それを取り返しはいたしましたものの、昨年でとにかく五・八%成長である、こういうわけです。つまり、あの石油ショック後、マイナス成長から低成長へ、とにかく一貫して高度成長時代と様相が一変したのです。  そういう中で大企業も、あるいは人件費負担金利負担、そういうようなこと、また、事業量の縮減、過剰設備過剰人員、そういうようなことで大変苦しい経営をしておるわけです。ですから、収益率が非常に低下するわけですね。あるいはマイナスになるものもある。まして構造不況業種ということになると、その状況が非常に深刻である。  景気感というものはどういうことかといいますと、もうかるということなんです。つまり、企業がもうかるということなんです。もうかる、そういう状態がなかなか出てこない、そこに私は、非常に経済界全体を覆っておるいわゆる不況感実態というものがあるんだ、こういうふうに見ておるわけでありますが、これをどういうふうに是正していくかというと、やはり需給バランスをとる、こういうことだろう、こういうふうに思うのです。  この需給バランスが非常に悪い企業、これは構造不況業種ですよね。それからそれに連なるところの中小企業、そういうようなものは特にひどい。平電炉産業なんというのは大変な設備過剰です。これをこのままにしておいて、一つ一つ企業経営というものは非常に苦しいです。もう何とか対策を講じなければ、これは企業の採算というものがとれないのです。まして利益は出てこないのです。この利益がある程度出てくるような企業状態、これが出てきませんと、本当不況感払拭ということにはならない、こういうふうに見ておるのです。  その対策はどういうふうにするかというと、やはり日本経済全体のかさ上げをしていく、事業量を全体として多くする、そういう中で、特に不況業種中小企業等重点を置いて、そうしてそれらの企業需給バランスがとれて、そうしてその上に立って多少の利潤が上がるような企業経営ができるような状態を出現をする、こういうことだろう、こういうふうに思うのです。国全体としてはいい状態に来ておると私は思うのです。世界のどの国よりもいいような状態に来ておると私は思う。ところが、そういう中で世界各国でもいろいろなむずかしい状態を抱えております。特に失業の問題が各国とも非常に深刻であります。特に若年労働者失業問題というのは大変な問題のようでありますが、わが国においてもそれに類似した問題が出てきておる。私は、その解決のかなめは、くどいようでありますけれども経済全体のかさ上げをいたしまして、それを踏んまえまして、またその過程におきまして構造不況業種問題等解決をする、そこで初めてわが国経済は安定する、こういうふうに見ております。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 六・七%が近づきつつある、いまでも五・九だ、そうして日本経済全体は回復基調にある、回復した、しかし不況感は残った、大体こういう説明なんですが、そうすると六・七%が実現したときは、これは総理自身は正常な状態と見られるのですか。  と申しますのは、今度、御存じのように、経済見通しを改定されておりますね。二月につくられました五十二年度経済見通しを改定されておる。それを見ると、民間投資が一二・二から六・〇%に下方修正されている。そしてまた民間在庫増加を約六〇%、五八・三%と見られておる。これはきわめて重要ですね。その民間在庫投資がふえるというのは、景気が底をついて反転をして回復期に向かった、だからひとつ在庫を積み増してそうして商売をしよう、あるいは売ろう、そうしてこれがいままでにおきますと、いわば需要拡大牽引力になってきたわけですね。ですから、そういうことを予定をしてあなたの方ではこれは五八・三%も見込んでおるわけですね。ところが今度の改定を見ると、それが一六・二に修正されておる。ですから、結局そういうような景気回復基調は間違った、こういうことを意味しておるわけでしょう。そうして結局、個人消費の支出も一三・七から一三・二です。これだけでも名目で一兆七千億ですよ。とにかく国民総生産の中で五二%を占める個人消費ですからね。ですからこれだけでも相当の影響があっておるわけです。そうして結局、GNPの六・七%をつじつまを合わせるために、民間投資が半減をした、個人消費が落ち込んだ、それを民間住宅政府出資と輸出でやろう、こういうわけです。  そこで私は、いま民間投資というのは期待できないんじゃないかと思うのですがね、この数字から見ても。どうなんですか。どうも民間投資を伸ばしてとおっしゃるけれども、民間投資はいま期待できないんじゃないか。それは総理自身がいまおっしゃったでしょう。日本経済はあの石油ショックよりも前、非常な高度成長、そうして昭和四十八年から五十二年までのいわば経済社会基本計画では成長率九・四%と組んだ。そこで各産業は皆一斉にそれに従って投資をした。大きな石油ショックが起こった。起こったけれども、もう着工しておる、発注しておる、あるいはいまよりもまたやがて物が上がるのじゃないか、建設費が上がるのじゃないかと、だっと投資は続いたわけです。でありますから、四十八年のピーク時よりも供給能力はぐっと上がっておるわけです。こういう中で今度はマイナスの〇・三に落としたわけです。ですから、普通の国でありますと六・七というのはかなり高い水準ですが、その落ち込みというのは日本の場合は非常に大きいのです。そこで総理がおっしゃる、どうも不況感があるのではないか、そこなんです。そこで、一体需給ギャップというものをどのぐらいに見るのか。十三兆とも言う、あるいは二十兆という話もある。そうすると、結局総理の言う六・七%といっても、結局民間設備投資は回復しないのではないか、こういうように考えられるわけです。一体それで設備投資が回復するか。というのは、総理は一にかかって設備投資設備投資とおっしゃる。ところが、実際はいま投資投資を生まないのです。でありますから、これに重点を置いていろいろな政策をやろうとすると、皆崩れていくじゃないですか。ですから私は、そういう意味では一体設備投資がふえると、こういうように期待をされておるのかどうか。そうして、総理の言う六・七%のGNPで果たして国民生活は安定するのかどうか、これをお聞かせ願いたい。
  8. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま六・七%成長、これを目指したのですが、思ったよりも構造不況業種状態が深刻である。そういう状態を受けまして、これがそこまで行かない。私、余り数字を言うのはどうかと思うのですが、そういう五・九%ぐらいしか行かぬ、これじゃいかぬというので今度総合対策を講じまして、また補正予算の御審議も願いまして、六・七%成長実現をする、こういうわけですが、ことしのいままでの経済の動きを見てみますると、思ったよりも設備投資伸びが非常に少ないのです。少ないけれども、いま設備投資じゃないんじゃないかなんというようなお話ですが、そこらあることはあるのです。つまり、先ほどから申し上げますように、いま率直に言いますと、わが国経済状態は二重構造経済好況業種があるかと思うと一方において不況業種がある。その好況業種の方におきましては設備投資があるわけです。しかし不況業種の方はなかなかそんな状態じゃない、むしろ廃棄をしなければならぬ、こういう状態である。そういう状態でありますので、設備投資全体としてはふえることばふえるのです。ふえるけれども、そのふえ方が思ったよりも進まない、こういう問題が一つあるわけです。  それから、御指摘のありました在庫調整、これも私どもが思ったよりもうまく進んでおらぬ、こういう状態もある。そういう状態がありますので、これは何とかしてこれを補って余りあるようにしなければならぬ、それにはどうするかというと、設備投資期待するということはなかなか恥ずかしい。そこでどうしても政府需要というものが中心になって、そしてその補いをするほかはないじゃあるまいかというので、総額二兆円の財政金融を通ずるところの需要喚起を図る、こういうことにいたしたわけなのですが、私は、そういう施策を講ずることによりまして、わが国全体の経済の規模というものは、これは何もしないでおいた状態に比べるとかなり増進されて、六・七%成長、これは実現されると思うのです。しかし、それで国民経済が全部安定し、そして雇用も改善され、みんな落ちついた暮らしができるかというと、そうはいかない。いかないのは構造不況業種処理の問題というものが残ってくる、こういうふうに考えまして、その辺に私は重点を置いた、メスを入れた施策を進めなければならぬ、こういうふうに考えておるわけです。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、構造不況業種メスを入れて根本的に立て直さなければならぬことは、これは総理と同じです。ただ私は、昭和五十年代の前期五カ年計画でも大体六%の伸びだ、こう言っておる。総理は六・七%にことしはするのだ。そうすると、総理の六・七%というのが、GNPについて言えば大体この状態が正常なんじゃないですか。それをはっきり言わないと国民は迷うんですよ。六・七%というのは、GNPとしてはこれは大体正常なんだ、こういう気持ちじゃないだろうか。それならそれで国民にはっきり言わないと、これは大変な迷いが生ずる。まだまだこれは上げるんですよと、こう言うのか、とにかく五カ年間で六・〇%と見たのだから、六・七というのは、引っ込みもあったからこれで行くのだ、六・七の成長率のところでバランスをとるならとる、こう言わないと、何かまだ回復期で、まだよくなるんだろうという、しかも構造不況業種も入れて六・七ですからね。構造不況業種も入れて六・七になっているわけですから、その点を私は国民にはっきりさす必要がある。ともかく総理の答弁いかんでは倒産する企業だってあるんですよ、失業される労働者だってあるんですよ。総理は一体今後の見通しをどう持っておるかというのが重大です。とにかく国民GNPでは食えぬのですからね。GNPが六・七になっても、国民GNPを食っているのじゃないですから。私はそこが問題だと思うのですよ。あなたは、私は六・七になるかもしれぬ、なると思いますよ。なると思っても、国民経済ががたがたしてうまくいかないというなら、何のために六・七%か。じゃ不況業種だけでいいのですか、あるいは不況業種さえやればずっと回転をして、いわゆる民間設備投資はふえるのですか、昭和四十八年から四十九年に頂点になった設備投資のギャップはどうするのですか。そういう点をひとつ明快にお答え願いたい。
  10. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、稼働率というか、設備過剰、雇用過剰、こういう状態一つ一つ企業経営を非常に圧迫をしておる、こういうふうに見ておるわけであります。その一つ一つ企業で、これが若干の利益が出るという状態にならなければ、経済が安定したとかあるいは好況感とか、そういうものは私は出てこないと思うのです。だから問題は、いま多賀谷さんも御指摘がありましたが、設備過剰のギャップ、これは一体どうなるのだということ、これは非常に大きな問題なんです。そのギャップが非常に大きな業種は何だというと、これは構造不況業種なんだ、こういうことで私は焦点を構造不況業種というものに当てておるのだ、こういうことを申し上げておるのです。  とにかくいま世界じゅうが大混乱、私は戦後三十二年、これは最大の混乱である、最大の危機である、あるいは戦前戦後を含めての大混乱期である、こういうふうに思います。そうして世界じゅうが失業、特に若年労働者の雇用問題で悩みに悩んでおる、そういう状態ですよ。そういう状態の中で、もう完全無欠、そういう日本経済期待するということは私は非常に無理な御注文だというふうに思いますけれども、しかし、とにかくそういう中においてもわが国わが国としてベストを尽くさなければならぬ、こういうのが私の立場であります。  その努力、これはどういうことにあるかというと、六・七%成長実現した、それで一体諸問題がすべて解決されたかというと、まだそうでないのです。私がそういう政策をとってにらんでおるのは、企業の操業度の問題なんです。これがやはり製造業稼働率指数で言うと九〇%をやや超える状態にならぬとぐあいが悪いだろう、理想的には九四、五%だ、こういうふうに言われる。私もそれを目指す。それをことしじゅうぐらいには実現するということを言ってきたのですが、なかなかそういかないので、今日この時点において総合いたしますと、それが八五、六だ、こういうような水準なんです。そこを九四、五%のところまで持っていくことはむずかしいが、何とかして九〇%ぐらいのところには持っていきたいな、こういうふうに思っておるわけなんです。  とにかく私は、私が申し上げておるこの基本的な構え以外に道はないんじゃないか、そういうふうな考え方を持って強力に私の考え方に基づく具体的な施策を進めていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 とにかく操業度が八四、五%ぐらいになってもGNPは六・七ですからね。いいですか、率直に言うと、どうも総理の考え方と、言っておることが違うんじゃないかという感じがするのです。総理は六・七%、これで大体水準としては結構だ、こう思うのでしょう。――うなずかれましたからそういうことですね。それでは六・七%ということになれば、操業度の悪いのも含めて六・七ですからね。そのことがはっきりしなければいかぬのです。これだけの生産力があるのに九四操業してごらんなさい、大変な経済になるのですよ。ですから、日本経済はこれだけの過剰設備を持っておるのだから、本来いままで九四と考えておったけれども、稼働率はこの程度じゃないといかぬのじゃないか、こういう議論だって出てくるのですよ。それはアメリカの鉄鋼だってイギリスの鉄鋼だって、どこだって日本ほどフルに回転しておるのはないのですよ。かなり過剰設備を持っておるわけです。景気のいいときはそれでもうけるわけです。ところが日本は全部フル回転でなければ非常に経営が悪いというんでしょう。どこだって余剰設備というものはかなり持っておるのです。それをあなたのように九四あるいは九五と考えるなんて言ったら、ましてやことしの経済で九四や九五になったら一体需要はどうするのですか、需要はありませんよ。  ですから、総理ははっきり国民に物を言うべきですよ。これだけ膨大な設備になったのだから、六・七になってもまだ設備は残っておりますよとか、はっきり物を言わなければ、投資をしようと思っても投資できないでしょう。現実違うのですから、六・七と現実の経済の姿は。ですから、その点をはっきりしてもらいたい。国民は六・七のGNPでは食えないのですよ。
  12. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、六・七%成長ですべては解決しておりません、解決するわけではありません、と本会議でも私の所信表明ではっきり言っているじゃありませんか。  というのは、その不況業種問題というのは残るのです。この問題を解決いたしませんと、日本経済全体を覆うところの不況感、こういうものはとれてこない。とにかく不況業種では三割だ四割だ、場合によると五割だというような過剰設備を抱えておる。しかも終身雇用体制だというようなことで過剰雇用も抱えておる。そこで業況が非常に悪化しておるわけであります。  この問題にどういうふうに対処するか。つまり、設備を廃棄するというようなことまであえてしなければならぬか、あるいは雇用問題に特殊な考え方をとらなければならぬかというような考え方、いろいろな手法はありまするけれども、私は、この問題が解決すれば、日本経済の姿というものは、これはもういつまでたっても完全ということはありませんよ、ありませんけれども、まあ大方はいいところへ来たな、こういうふうに御認識願えるような状態になるであろう、こういうふうに考えておるわけです。  GNPで飯は食えぬ、こういうお話ですが、それはそうですよ。GNPというのは全体のことでありまして、そうして中にはいろいろのばらつきがあるという日本経済日本企業状態でありまするから、非常にたらふくというような状態の人も一方にあれば、いや何ともならぬという企業もある。それをならす、こういうことがこれからの問題である、こういうふうに考えております。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 問題は、GNP総理が一番こだわっておるのですよ。総理がとにかく六・七、六・七と外国でも言って、総理が一番こだわっている。日本国民の中で総理が一番こだわっている、六・七という実質成長率に。そうして問題は、そのいまの構造不況業種を含めて六・七になっておるのですよ。だから構造不況業種もよくなったら、まだ上がるじゃありませんか。GNPは上がるでしょう。ですから、日本トータルとして見て、一体六・七というのは一応成長水準としては正常な姿と見ておるのかどうかというのをまず聞いておる。六・七という実質成長率は正常な状態かどうかということを聞いておる。
  14. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ことしのこの時点をとらえて見ると、六・七%ぐらいなところがまずまずというところであろう、こういうふうに考えております。ただ、この六・七%実質成長はこれで実現されましたから、日本経済の諸問題がこれで全部解決されたかというと、私はそうじやないと思うのです。つまり、やはり一方において過剰設備、過剰雇用の企業というものが大変存在しておる。その問題の解決処理というものは、六・七%成長実現されたからといってそれで解決されるものじゃないのです。もう少し時間がかかる問題である、こういうふうに考えておるわけです。しかし、これから両三年のことを考えると、ことしはまあ六・七%成長、この辺が妥当なところであろう、こういうふうに考えておるわけであります。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 総理のは、どうもはっきりしないのですけれどもね。もうはっきり国民に言うべきである、日本の実質成長は大体六・七ぐらいがいいのだと。それならば、国民の皆さんはどうしてくれるか、また政府はどうするかということをはっきり言う必要がある。それを隠しておられる。そこが問題なんですよ。普通、高度成長期では、GNPが上がりますと、主要指数はあらゆる指数が上がるのです。だから、いろいろの生産指数も上がるし、稼働率も上がるし、出荷も上がるし、全部上がる。今度の六・七%というのは、経済主要指数の中身はがたがたですね。ですから、このギャップというものを一体どう考えるか。一体六・七というのが国民生活にはどういう影響があるのか、こういう点が明確にならないと、民間の設備投資もあるいは購買力もふえてこないのじゃないだろうか、私はこう考えるわけです。  そこで、一体この六・七%という成長率を来年はどういうように考えるか、あるいは再来年はどういうように考えるのか。それから需給ギャップといわれるものはどのぐらいあって、それが民間設備投資回復にはどのぐらいかかるのか、こういう点、国民が聞きたいと思っておりますから、明快にお答え願いたい。
  16. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 需給ギャップということがよく言われますがね、これは観念としては理解できる問題でありますけれども、数字的にこれを表現することは非常にむずかしい問題です。つまり、これは製造能力と需要の差額、これが需給ギャップでございますから、その製造能力を一体どういうふうに見るのだ、これは非常にむずかしい問題でありますから、これは私は数字では申し上げませんけれども、やはり需給ギャップというものは構造不況産業に非常に高いものがある、こういうふうに見ておるわけであります。これが数字的な裏返しとして見た場合に、数字的な面では、これは製造業稼働率指数なんかに、これも万能じゃありませんけれども、一つの見方のよりどころとして出てくる、こういうふうに言われておるわけでありまするが、それがいま八五%程度のところに来ておる。望ましい水準はどうだというと、これはいろいろ経済の専門家の見方でございますけれども、九〇を若干上回るところだ、こういうふうに言われておるわけであります。これは企業全体としての話でございますが、しかもそれは、そうでこぼこのないというような状態においての話でありますが、いま日本産業界を見ていますと、とにかくでこぼこが非常にある異常な状態なんです。不況業種があるかと思えば非常ないんしん産業がある、そういう状態の中で、やっぱり問題は具体的に処理しなければならぬ、つまり、構造不況業種と言われるものの需給ギャップの調整、これは一つ一つ詰めて、そしてその調整がとれるようにする、これが具体的なやり方ですよ、現実的なやり方ですよ。いまちょっと、この異常な状態の中で、全体の需給ギャップが一体どうなっているのだろう、それをどういうふうにしようというよりは、問題解決へのアプローチの近道は、構造不況業種、その需給ギャップはどうなっているのだ、それをどうやって詰めるのだ、こういうところに置いた方がいいのじゃあるまいか、そういうふうに考えまして、先ほど来、構造不況業種対策というものを重視しておるということを申し上げております。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 企画庁長官、企画庁では需給ギャップをどのくらいと見ておるのですか。
  18. 倉成正

    ○倉成国務大臣 需給ギャップについてのお尋ねでございますが、ただいま総理からお答え申し上げたとおりでございます。GNPの中には、御案内のとおりサービス部門も非常に多いわけでございまして、GNPの物離れということが言われておるわけであります。先ほどから稼働率の問題についていろいろお話がございましたけれども、鉱工業生産がGNPのすべてではございません。そのごく一部分でございます。したがって、われわれは、鉱工業生産についての稼働率指数が、八月で八四・八というところ、そういう意味需給ギャップがあるということは考えておりますけれども、これを数字的に需給ギャップは幾らであるということを計算するのは非常に危険であると思いまして、正式に数字をはじいていないところでございます。
  19. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、もう一度聞きますけれども、今度いよいよ総合政策が出された。この総合政策不況が終わり、景気は回復するんでしょうか。あるいはまた、現状に近い状態の維持程度なんでしょうか。この点をお聞かせ願いたい、どういう認識であるのか。
  20. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この総合対策をとりますと、この総合対策をとらざりしせばわが国経済は五・九%成長の程度のものが、六・七%成長になる。非常に結論的に言いますとそういうことなんですがね。私どもがいままで見ておったよりは設備投資が低くなっておる、そういう状態です。また輸出も思ったよりはふるわない状態である、そういうような状態が出てきたものですから、五・九%というような成長になってしまうわけでありまするけれども、今度の対策をとる結果、政府の支出、政府が喚起するところの需要、また政府の施策によりまして引き起こされるところの民間の住宅需要、こういうようなものがそれを償い、かつ余りがありまして、そうして五・九%成長を六・七%成長に引き上げる。その結果、私どもが非常に重要視しておりまするところの雇用の問題、こういうような問題につきましても、雇用の場をつくるわけですから、いい影響があるであろうし、また同時に、今度の財政を中心とする需要喚起政策のほかに金利引き下げ政策をとっておるのです。これも企業に非常にいい影響をもたらすであろう、こういうふうに私は考えております。大企業といわず、特に中小企業構造不況企業におきましては、四年近い低成長でありますから非常にくたびれておる、そうしてしかも雇用過剰を抱えておる、こういうような状態です。そういう中に今度は金利負担というものが減るのですから、その結果、その金利負担の軽減なかりせば解雇しなければならぬというような状態に追い込まれるのが緩和されるとか、また何か設備の改良をしなければならぬがすることができないという状態が緩和されるとか、いろいろいい影響があるであろう、こういうふうに見ておりまして、今度の施策によりまして、これで完全に日本経済がよくなるのだ、こういうふうには私は申し上げませんけれども、日本全体の規模というものが拡大去れ、かつそういう拡大された規模のもとにおいて初めて構造不況対策等が遂行される、その遂行のいい条件づくり、環境づくりになる、このように考えております。
  21. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 長々とおっしゃいましたけれども、結局どうなんですか。結局、今度の補正を組まないとしたならば日本経済は失速するであろう、それを支えたという程度なんですか。どうもいろいろおっしゃるけれども、結局、結論的にはそういうことなんでしょう。もし補正予算を組まなかったならば失速したであろうことを免れた程度だ、こういうふうに理解していいのですか。どうも端的に、総合的におっしゃらぬで、雇用が出るかと思うと今度は金利がといろいろおっしゃるけれども、マクロで言えばどうなんですか。
  22. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 失速とまでは考えておりませんが、停滞ですね。停滞が続く。その停滞を支え、かつ若干の活力を与える、そういう効果があるんだ、こういうように御理解願いたい。
  23. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、国民はずいぶん期待しておりましたけれども、これは若干環境づくり、若干支える、こういうことなんですか。そうすると、まだ相当苦難の道を国民は歩かなければならぬ、こういうことですね。
  24. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 もうくどいようでございますが、国民国民とおっしゃいますけれども、わが国経済の現状というものは、世界の中でそんな悪い状態でないのですよ。世界では第二の奇跡が日本に起こったというくらいまでいっておるような状態なんだ。とにかくあれだけの石油ショックの打撃をかくも急速にとにかく大筋において解決し、その打撃から脱出した。これは国際社会においてかなり評価されておるのですよ。ただしかし、そういう中におきましても問題がいろいろある。あれだけのショックを受けた後でありますから、そう平常化をしませんよ。いま世界全体の情勢というものが非常な転換期にあるのです。その転換期の対応期というのが今日の時点の問題だ、こういうふうに思うのでありまして、その対応で一番必要に迫られておるのは企業だと私は思うのです。特に構造不況業種である。その構造不況業種等における対応というものができれば、私は日本経済というものは非常に静かな、安定した形になると思う。しかし、その安定した形というものは、夢よもう一度じゃありませんけれども、あの高度成長期のような状態じゃありませんよ、しかし変わった世界的低成長時代、それのもとで安定した状態が出てくる、こういうふうに思っておるわけで、今度の施策ですべてが解決するわけじゃありませんけれども、解決に向かって相当大きな一つのくい打ちをすることになる、こういうふうに考えております。
  25. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 総理はようやく本音といいますか、言われた。総理は一貫して安定成長を言ってきたわけです。ここ最近になってぐあっと景気回復を言って、GNPGNPと言い出した。いまはかってとは違うのですよ、安定成長期における経済のあり方、こうおっしゃった。私はこれが本音じゃないかと思う。それならそれで、そういうふうにおっしゃればいいのですよ。そうすると、今度の政策として、かつて総理が考えられたような、常に公共投資をして、それが民間需要をふるわして、そうして設備投資に向くといういわばいままでのパターンはやめて、パターンを変えなければならぬ時期が来ておるわけでしょう。ところが、五十二年度の予算を見ても同じパターンでいったわけですよ。新幹線にしても本四架橋にしても同じパターンでいってきた。でありますから、パターンを変えなければならぬわけですよ。ところが、全体的にいままでずっと総理がおやりになった公共投資というものはかっての重化学工業、自分は夢よもう一度とはおっしゃらないで、やっておられることはそういう形でしょう。でありますから、こういうパターンを変えていくという時期になっておるのですから、民間主導型の時期ではない、いわば生活を中心とした時期に来ておるのだ。産業優先から生活優先へということ。そうして五十二年度の予算においては何が争点になったか。それは御存じのように減税問題でしょう。これはフォードがやめる前におやりになった。また、西ドイツが今度減税約九百億円を来年度の予算に計上する、こういう時期が来ておるわけです。ところが、総理の方は依然として民間設備投資を過大に見て、それが実はできなかったからこうですよと言う。ですからそういう時期が崩れておるのではないですか。  日銀総裁は先般金融白書というのを出された。金融白書を見ますると、全体の設備がざあっと上がるようなことになれば日本の財政上大変なことになる、ですから全体の設備投資が行われるような状態にはもうしてはならぬ、そうすると財政が困ってまたインフレになる、だから、いまからは新しい製品、新しい業種というものを見つけ出さなければならぬ、たとえばエネルギーの消費節約の産業、こういうふうに書かれておるわけですよ。ですからそういう形で、もとのままに全体に押し上げようとしたら大変です。とてももてないのです。ところが総理のお話を聞くと、いま全体的にはいきそうなんだが、途中で不況業種だけが困っているのだ、こうおっしゃる。そして総理は、いろいろ答弁を聞いてみると、それだけでもないようですね。ですから、言うならば、質問するたびに総理の答弁が少しずつ変わりますよね。  そこで私は、まず日銀総裁に、日本銀行としては金融白書というのを出されて、そうしていわば産業界にも警告を発せられたわけであります。あるいは政界にも私は警告を発せられたと思います。ですから、その趣旨をもう一度ここで述べていただきたい。
  26. 森永貞一郎

    ○森永参考人 調査月報に書きました趣旨は、日本経済が、いままでと違いまして、資源の制約、環境の制約、いろいろな環境の変化に当面しておるわけでございますので、昔のように一たび金融を緩めて景気回復過程に入りますとおのずからエスカレーターに乗ったみたいに景気高度成長の路線を再びとり得る、そういう環境にはないという点を重視したつもりでございまして、資源有限時代あるいは環境保持の必要といったような情勢に即応して新しい日本経済の構造を考えなければいかぬのではないか、それがすなわち今後期待されておる安定経済への道であるという趣旨でございます。先ほど来総理がおっしゃっておられます不況業種の問題は、その構造問題の骨格と申しますか、中心をなすものだと思います。もちろん、そのほかに積極的な、たとえば省資源の産業の助成とか、そういったような面もございましょうけれども、やはり骨格をなすものは、少しあり余っておる産業、需要が設備に伴わないような産業について、需要、供給両面からの対策があると思いますが、それをどういうふうに処置していくか、それがやはり日本経済の将来に安心感を与える一番大きなものであるというふうに考える次第でございまして、先ほど来総理の御所見を伺っておりまして、私は全然同感をいたしておる次第でございます。
  27. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 新しい産業、いわば省エネルギーのような産業、その業種ということは総理は一言も言われない。総理は施政方針演説に総合政策の話は言われた。資源エネルギーの話も言われておる。しかし補正予算にも全然結びつかないですね。芽も出ない。それから政策も芽も出ない。ですから企業家は一体何を投資をしていいかわからない。しかし投資をしろ、投資をしろと言って、とにかく計画にはのせてくる。ですからそういう意味の指針を与えなければ、民間は一体何をやっていいんだろう、一体来年はどうなるんだろう、そういう計画書を出さなければ、私は民間の投資というのは伸びてこないと思うのですよ。一体政府は何をやるんだろう、ことしはとにかくこれだけやった、しかしことしこれだけやって公共投資を食いつぶすと来年は何をやるんだ、くるのかこないのかわからない、ここに私はやはり問題点があると思うのです。でありますから、そういう意味においては、私はこだわるようですけれども、総理がまずいまの状態で言うならば六・七%というのはどういうような状態、これは昔のような状態じゃありませんよ――それならば私どもはこれは公平にやってもらいたいという要求が出るのです。いままでのような高度成長ならばおこぼれがあった、今度は政治は公平にやってもらいたい、こういう要求を出さざるを得ないでしょう。何か総理のははっきりしない。  そこで私は、一つは金利の問題、これは日銀総裁がいらっしゃいますから、公定歩合の問題時間もあれでしょうから、ここで一括してお尋ねしておきたいと思いますけれども、社会党は日銀総裁に申し入れをいたしました。もう六回にわたって公定歩合をずっと下げてきた、ことしも二回下げられて、金利も下げられました、もうこれ以上金利を下げられると大変ですよ、そうしていまの情勢ではわれわれは設備投資に結びつかないと思います、だからひとつ庶民大衆のわずかな預貯金、それが目減りをするようなことのないように、とにかく政治としてどちらが問題点であるかと言えば、金利をこれ以上下げるというのは問題じゃありませんか、こういうように言った。それに連動する公定歩合ですから。ですから、あなたはその前には出番じゃない、こうおっしゃったんですね。日銀は出番でない。出番でないというのは、まだ公定歩合を下げるような情勢ではない、もう公定歩合はこれがどん底だと言わんばかりですよ。ところが、あえてそれを引き下げられた。そして残念ながらそれが連動した。これについて、出番でないと言った時期とその後の情勢が違っておるのかどうか、これもあわせてお聞かせ願いたい。
  28. 森永貞一郎

    ○森永参考人 お答えいたします。  昨年秋ごろからの景気回復の足踏み状態に対処いたしまして、政府のいろいろな施策と歩調を合わせまして、私どもでも三月、四月と公定歩合を引き下げまして、その後の経済情勢の推移を慎重に見守っておりましたころ、公定歩合は出番でないということを申し上げた記憶がございます。  御案内のごとく、公定歩合操作は予告して行うべきものではございませんので、慎重に情勢の推移を見きわめております間は、対外的な発表におきましては、全然考えていないというようなことにならざるを得ないことは多賀谷先生御理解していただけることと存じますが、そういう中間の情勢におきましては、出番でないということを申し上げた次第でございます。  一つには、民需、国内の民間需要の刺激にはやはり財政の方が主役を演ずべきであるということ、それにつきましては、この四月に講ぜられました措置がどういう効果を及ぼしてくるかということを見届けておったわけでございまして、そういう段階におきましては出番でないということを申し上げてまいった次第でございます。  しかるに、その後の推移を見ますと、私どもの調査、四半期に一回ずつ調査いたしておりますが、短期経済観測などの結果に徴しましても、どうも足踏み状態から早急に抜け出しそうにない、特に企業家の心理状態が少し沈潜し切っておるような感じが濃厚になってまいったわけでございます。もちろん、経済全体といたしましては下降線をたどっておるわけではございませんけれども、回復はきわめて緩やかでございまして、その間企業家の心理がきわめて沈滞した空気にある、その沈滞した空気がまた実体経済の方にはね返ってくるということになりますと、心配しておるダウンのことも、やはり非常な心配事になってくるわけでございますので、ここでやはりもう一度景気に対して刺激を与えられる必要がある、政府においても二兆円の対策を講ずると同時に、私どもも〇・七五%の公定歩合の引き下げ措置を講じたわけでございまして、そのことが必要な経済情勢であると見きわめをつけた結果に基づいて措置いたしました次第でございます。  預金金利との関係でございますが、三月のときには預金金利には手をつけませんでしたけれども、四月に一%、今回は〇・五%、一年ものその他定期につきまして通計一・五%引き下げたわけでございます。物価の問題が、まだ全然問題がなくはございません。卸売物価はほとんど落ちついておりますが、消費者物価はなお高い地位にございますときに、その関係が問題であることは私どもも百も承知いたしておりますが、しかし、やはり金利金利そのものとしての体系を重視する必要がある。この辺でやはりもう一度公定歩合を引き下げて貸出金利を実効的に引き下げ、企業金利負担を軽減して、それが雇用問題の解決にも何らかの寄与をし、さらにはまた、企業家の心理状態を高揚していくためには、やはりこの際預金金利につきましても何がしかの引き下げが必要であると考えた次第でございます。  もちろん、預金金利の問題を考えます場合には、先々の物価がどうなるかということが一番大きな関心事でございまして、その点はわれわれとしても十分注意していかなければならぬと思いますし、政府におきましても、その点は十分に御考慮いただいておる次第と考える次第でございます。
  29. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 とにかく昭和四十六年、四十七年のとき、これは消費者物価は四%ぐらいです。今度の場合は、八%ぐらいの消費者物価のときに定期で五・二五という、これはいかにしてもひどい。こんなことで景気はよくなりませんよ。どこを見て日本の政治をやっておるのか。総理、ますます消費性向は下がりますよ。  それは、大体私は五十一年を四十八年と比較してみますと、総理府統計の勤労者世帯で第一分位といって一番低い層、これは実収入がマイナスの〇・一、そうして消費支出はマイナスの三・三ですよ。しかるに、第五分位は収入は三・六、それから支出は五・五、こうなっておる。こういう傾向をたどっておるわけですね。これは五十一年。でありますから、私は、経済企画庁経済白書で、どうもずいぶん貯金を国民はしておる、そうして貯金が異常に高い、この貯金をぜひ何とか国の方にもらって、そうして景気の回復をしたいというような意味経済白書になっているのですけれども、私は、今日、貯金の意義というのは、一つは、何を言っても病気をした、あるいは災害のあった場合、あるいは老後の問題、あるいは日本で言えば教育、住宅、これで貯金をするわけですけれども、しかし、この老後の問題とか病気の問題が心配なければ、私は国民はその分だけは貯金しないと思う。それはやはり私的な責任においてやるよりも公的ルールによって社会保障にやってもらった方が、これはいいわけです。そしてそこには再配分効果がつきますから、私はそういうようにいいと思う。ですから、国民はきわめて賢明ですわね。敏感ですよ。でありますから、今度のように公定歩合を下げられて預金金利が下がると、その分だけ、自己防衛上割り増しをして積み立てをよけいするでしょう。こういうような情勢になる。そうすると、個人消費の方は落ちるです。個人消費が一%落ちてごらんなさい、一兆七千億ですよ。一体どういうような政治を、どこを観点に政治を見ておるのか。いま幾らつついても、民間投資投資投資を呼ぶような状態でない。でありますから、景気をよくすると言うが、一体どういうようにするのか。いま公共投資があっても、設備投資まで回りませんよ。それはそれだけで終わってしまうのですね。公共投資はその分だけで終わりますよ。次の設備投資には回れぬ。いまの設備で十分生産ができるし、在庫が調整できる。企業経営はよくなる。しかし、経済全体がそれによってよくなるという状態には、残念ながらない。財政を出したその分だけはよくなることは間違いない。こういう情勢でしょう。  ですから、私どもは、それはもとから消費をひとつ伸ばしたらどうですか、それが新しい型の日本経済の姿ではないですか、こう言っておるのですがね。どうなんですか。
  30. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日本経済の抱える問題は、当面の問題がある、また長期的な問題があるわけですが、当面の問題としますと、どうしても不況感からの脱出、そういうことを考えなければいかぬでしょう。それには二つ重要な問題がありますのは、やはり過剰設備、過剰雇用を抱えておる一つ一つ企業、これの需給ギャップの調整の問題があるわけであります。それには一方において過剰設備、これに対する調整の施策、これが必要ですね。同時にそういう産業に対する需要の造成、そういうことが必要になってくるわけであります。  それからもう一つ問題がありますのは、これは雇用の問題ですよ。こういう経済の転換期で、不況産業なんかについてそういう施策が進められるという際に特に配慮しなければならぬのは雇用の問題だ、こういうことを考えますと、やはり仕事の場をつくるという問題、つまり国、経済全体のかさ上げをするという問題、これを考えなければならぬ。同時に、いま過剰雇用を抱えておるその企業に、過剰雇用を抱えるだけの力を与えなければならぬ。これは与え切れるという問題じゃありません。ありませんけれども、その特別の施策なかりせば解雇みたいなそういう不幸な状態にならなければならぬものを、そういうところまで行かないで済ませるような状態も当面つくらなければならぬ。  そういうことになりますと、仕事をつくるという問題、これは申し上げたとおりでありますが、同時に、いま企業を圧迫しておる問題は金利の問題である。金利負担の軽減、これが非常に重要な問題になってくるわけであります。そこで金利水準の引き下げ、こういうことを考えざるを得ないわけなんですよ。そこで、日本銀行でも〇・七五%の金利の引き下げを行う、こういうこと。しかし、それに対していま御指摘の預金者の立場、これも考えなければならぬ。預金金利の引き下げは〇・七五%じゃございません。〇・五%にこれをとどめる。しかも、いままで預金をしておるその預金について全部〇・五%の引き下げを行うんじゃないのです。いままで貯金をしておる人の利益というものはそのままになっているわけですよ。新しく預金をする人だけに〇・五%の低い金利になりますよということになる。その上さらに、社会保障対象者については特別の金利をひとつ設けましょう、こういうことにしておりますので、私も、とにかく物価が七%台だというようなことにいたしましても五・二五%の貯金金利だということ、これを考えますと、これは預金者に対して相済まぬような感じもするのです。しかし、このことをやっておきませんと、日本経済、これは雇用の問題を初め、いま当面しておる景気の問題というもの、これは解決しないのです。解決しないということになれば、やはり貯金者に対しましても大変な影響が来るし、これが解決し、そうしてみんなの所得が順調に伸びていくということになれば、また預金する力もそれによって出てくるのですから、そこら辺もいろいろ考えまして、これはいろいろ問題もあるけれども、この際は非常の処置として預貯金金利の引き下げもこれは行わなければならぬな、こういう決断を下したのです。
  31. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 雇用の問題を言われましたり、金利の問題をおっしゃいますから質問がなかなかむずかしいのですけれども、いずれ雇用の問題は後から質問をいたします。それから構造不況も別に後から質問をいたします。  そこで、いま金利の問題が出ましたから、日本銀行としては過去、ことしになって三回公定歩合を引き下げられたんですが、一体企業はそれによってどのぐらい金利が安くなった恩恵を受けたのか、これをお知らせ願います。
  32. 森永貞一郎

    ○森永参考人 ことしになりまして三回、通計二・二五%の公定歩合の引き下げをいたしました。それに伴いまして市中金融機関の貸出金利が下がっておる。非常に急スピードで下がっておるわけですが、その下がりの追随率を過去の事例等に徴して――過去の事例までは必ずいく、それ以上にいくと思いますけれども、過去の事例で計算しました場合に、資本金一千万円以上の会社の金利負担の軽減額は、預金金利が下がりますものを差し引きまして一兆二千億ぐらいになる見当でございます。これは最終的な姿でございますので、いますぐにそうなっておるということではございません。最終的に一兆二千億円ぐらいの軽減になるはずでございます。そのほかに零細企業中小企業等金利負担の軽減もかなりあるわけでございまして、それがプラスされることになるわけでございます。
  33. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、大蔵大臣と郵政大臣に、一体金利の引き下げによってどのぐらい目減りをするのか、これはいろいろのケースがあるわけですけれども、これを別々にひとつお答えを願いたい。
  34. 坊秀男

    ○坊国務大臣 金利の目減りの数字でございますから、銀行局長からお答えさせます。
  35. 徳田博美

    ○徳田政府委員 お答えいたします。  今回の預金金利引き下げによりまして個人の利息収入はどのくらい減るかという問題でございますが、これは御承知のとおり、先ほど総理からも御答弁ございましたように、預金金利すべてが一遍に下がるわけではございませんで、新しく契約がされた分から下がってくるわけでございます。したがいまして、預金金利の中には郵便貯金のように長さ十年というものもあるわけでございまして、当面どこまでの期間をとるかということが問題になるわけでございますが、一応五十二年度中の影響だけを試算いたしますと、これはいろいろな前提があるわけでございますけれども、差し引きまして大体四千百億円個人の利息の取り分が減少する。これは御承知のとおり住宅ローンその他消費者ローンもございますので、これを差し引きますと総額でその程度になるかと思います。特に今回の金利引き下げ〇・五%分でございますと八百億円程度であろう、このように考えております。  いまの金額は郵便貯金も入れた金額でございます。
  36. 小宮山重四郎

    ○小宮山国務大臣 年度内だけを見ますと、約百六十六億四千万円ほどの試算をいたしております。
  37. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いま日銀総裁は過去三回をまとめてお話しになったんですが、郵政大臣並びに銀行局長はどうなんですか。
  38. 徳田博美

    ○徳田政府委員 お答えいたします。  ただいまお答えいたしました四千百億円は、過去三回分の合計でございまして、一番最近の〇・五%引き下げ分につきましては八百億円でございます。これは郵便貯金金利も含めての計数でございます。
  39. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 一・五%の引き下げというのは、やはり庶民には非常に影響が大きいですね。ことに物価が上がっておりますから、非常な目減りをする。約半分まではいきませんけれども、八%で一年定期で五・二五ですから、これは幾ら利子がついても目減りをする、こういう状態になる。やはりこういう政策が私は全体として消費者の需要を伸ばさないんじゃないか、こういうように考える。  そこで、質問を詰めて申し上げますが、総理はこの五十二年度の補正を組んだ後の経済はどういうようになる、そのビジョンをはっきり国民の前に示していただきたい、これをまずお願いいたします。
  40. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まず、わが国経済を動かす要因が内需主導型になる、こういうことであります。その内需の中で最も大きなウエートを占める、それはこれからの経済の中では財政が非常に大きな役割りをなしてくる、こういうふうに考えるわけであります。いずれにいたしましても、内需主導型の経済状態、こういうことになりまして、輸出などの海外要因の占める影響力というものは非常に微弱なものになっていく、その結果、問題の稼働率、これは若干上昇する、そういう結果、雇用の状態にもいい影響をもたらすであろう、こういうふうに見ております。  他方、そういう問題を考える場合に問題になりますのは物価でございますが、物価の状態につきましては依然として安定の基調を進める、こういうふうに見ております。  また、内需主導型の経済というようなことになりますので、対外バランス、これはかなり改善の方向を示してくる、こういうふうに見ておるわけであります。
  41. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 概略的にお話がありましたけれども、やはり仕事をする側、投資をする側はもう少し明快な、はっきりしたものを示していただかないと、景気は回復の方向に行かない。ひとつ明快な経済計画をお示し願いたい。このことを要求しておきます。少なくともこの予算委員会の終わるまでに、もう少しはっきりしたものを来年、再来年度に向かってひとつお示し願いたい。どうですか。
  42. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私どもの長期的というか、正確に言いますと中期的ですが、経済の見方は変わらないのです。やはりわが国は、世界経済停滞の中ではありまするけれども、資源の問題あるいは逆に今度は雇用の問題、そういうことを考えまするときに、六%成長、しかし、その六%も最初の時期はやや高目に、だんだんとそれが低くなるような形の経済成長政策をとっていかなければならぬだろう、そういう中期展望を示しておるのですが、それが多少ずれてきておる、多少のずれがある、こういうことは私も率直に認めざるを得ないのであります。そのずれを早く取り戻そうといって、いま総合経済対策をとったというようなわけでございまするけれども、展望といたしましては、中期経済計画が示しておるその展望に大局においては乗っていく、これがこれからの展望として国民に申し上げて差し支えないところである、私はかように考えております。
  43. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 五十年代の前期経済計画はもう狂っているでしょう。現実にもう狂っている。ですから、前の方にわりあいに高く、こうおっしゃるけれども、前はずっと寝たのですから、狂っておるでしょう。ですから、その点は明確に、もう少し親切に国民に知らせておく必要があるのではないか、こういうふうに要求をするわけです。これは後から理事会でお願いをいたしたい。  続いて、総合経済政策補正予算についてひとつお話をしたいと思いますが、今度非常に苦心惨たんをなさっておる。とにかく、党が、公庫でもあるいは日本開発銀行でも輸出入銀行でも、滞貨償却の引当金があるではないか、このことをかねて主張しておったわけです。全然耳をかされなかった。ところが、突然これが出てきたんですね。新聞ではウルトラCと言うけれども、日本の官僚はこういうことをやるからどうも信用がならない。もうない、ない、こう言っておったのが、忽然と金が出てくるのです。私は、そういう点が本来財政民主主義に反すると思うんですよ。参議院でわれわれは組み替え動議まで出した。滞貨償却引当金が多い、そして本来これは益金になっておるのをずっと積み増し、積み増ししてきておる、国家に返さなければいかぬじゃないか、こう言ったけれども、そのままにしてきた。こういうときになったらぼっと、金がありました、こう言っておる。あったのはよかったけれども、どうもこういうやり口は国民には納得できないですね。しかも国会が侮辱された。この三月に議決した予算ですよ。そうして、いままで引当金は輸出入銀行だって要らなかった。ゼロ、ゼロですよ。そして莫大な引当金を持っておった。これがあるじゃないか。そのときには、そういうことは全然できません、こう言っておった。大平大蔵大臣はそう言った。そうしたら、今度ぼっとそれができます。手品のようなことをされるわけですね。そうして、千分の十六が高いじゃないかと言ったら、やはり要ります、要ります。それを今度は千分の五に落としたでしょう。そういうことはわれわれがこの予算書を見たってどこにもないですよ。ただ産投会計から入ってくるだけです、われわれに書いてあるのは。若干説明書に書いてあるけれども……。それで、われわれにかける予算書というものはそういうものを全然見せない。どんなに探したってないです。そういうような議会政治のあり方というものは許されないと私どもは思うんですよ。これについて大蔵大臣はどういうようにお考えですか。
  44. 坊秀男

    ○坊国務大臣 補正予算の財源といたしまして特別財源、いまおっしゃるとおり、輸開銀の貸し倒れ準備金から産投会計へ戻しまして、産投特別会計から一般会計の補正予算の財源というものに納付させる、こういうことにしたことは御指摘のとおりでございますが、輸開銀等につきましては、従来からこの輸開銀の貸し倒れ積立金というものを一般会計に活用したらどうかという御意見が社会党さんからもあったということは、私の在職中ではございませんけれども、そういうお話は承っておりました。それ以後、この貸し倒れ積立金につきましては積立率というものを漸次減らしてまいってきておりますが……(発言する者あり)わかりました。やりました。――それを漸次減らしてまいってきましたが、今度いよいよ補正予算をつくるに当たりまして、御承知のとおり、この補正予算景気を回復するために、非常にいまの財政の苦しい状態におきまして、何とかして公債というものを増発しない、できるだけ増発しないというような考えから、かねて御提言もありましたこの輸開銀の貸し倒れ準備金の積立率を御指摘のとおり引き下げまして、そしてこれを産投会計を通じまして補正予算の財源ということに活用をしてまいった、こういうことでございますので、その点はひとつ御理解を願いたいと思います。
  45. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 あれだけ金がないと言いながら、こういうことを平気でおやりになる。これは許されないと思いますね。貸し倒れ引当金、政府の方は滞貨償却引当金という名前を正式に使っておりますが、何にしても私は財政民主主義に本来反するという感じを持つわけですね。  そこで、とにかく三〇%以内に国債を抑えたということは、私どもはそれはそれなりに評価をしているわけです。しかし、今日のような情勢の中で、私は、もう少し財源を取る方法があったのではないか、こういうように考えるわけです。われわれは不公正税制と言ったけれども、いまどう考えましても一方においては史上最高もうかっているという企業がある。それがどんどん輸出をするから円高になって、そうしてほかの企業が追いつかないで倒産をしたり、そうしてこの労働者を首切らなきゃならぬという。それは私は、どんどん輸出するというのが悪いと言うのじゃないですよ。非常によろしい。よろしいけれども、そこにそれだけの益金があったら、何らかこれを少し国庫に吸収する方法がないだろうか、こういうことをやはり考えるべきではないか。法人には累進課税はありませんし、この前われわれがつくりました会社臨時特別税は廃止してしまっておるし、財源がないならば何かそういうものを考えるべき時期に来ているんじゃないか。私どもはいろいろ調査をし、精査をしました。そうして、たとえば有価証券取引税でもこれを少し上げたらどうか。財源が出るじゃないですか。そうしてこれを上げることによって、あるいは三倍とか五倍とか言われておるのですが、大体十二月からでも千二百三十二億ぐらいは出るじゃないか、こういう計算もいろいろしてみたわけです。そこで私どもは、こういうような財源を持って、一体、では何に使うか。おっしゃるように中小企業構造不況でしょう。それに雇用、これに使う必要があるんですね。ですから、あれだけ先ほどの質問で強調されたならば、もう少し予算書に出てくればいいのです。残念ながらこの予算書を見る限り、項目は出ております。出ておりますけれども、これで一体そういう構造不況業種が助かるだろうか。中小企業は大丈夫だろうか。中小企業は今度は共済制度をつくるという。共済制度が間に合いますか。共済制度は五年間積み立てて、そうして十倍貸すというのでしょう。ですから五千円の人は三百万円、一万円の人は六百万円、そうして一万五千円の人は九百万円貸しますと言う。いつそれになるのですかと言ったら五年後だと言う。一体これが政治だろうか。次の谷を予想している。次の谷には確かに間に合う。しかし、いまは間に合わないでしょう。だからこれを一体どうするか、このつなぎをどうするか、これが政治ですよ。これが今度の補正予算に組まれなければならない性格のものですよ。一体、中小企業をやると言われるが、どうするのですか。ただ融資だけですか。あなたは武藤議員に約束したでしょう。会社更生法によって、倒れた企業の本体は救われるけれども、関連は救われないじゃないか。関連はどうするんですかと言ったら、何とか方法を講じます。しかし救われませんよね。こういうつなぎの問題をやるべきじゃないですか。雇用だってそうでしょう。後から雇用はゆっくり聞きますけれども、一体雇用について幾らこの予算書に出ているのですか。それは五十二年度の一般会計でいくと言うけれども、いかないものだってあるんですよ。一体それをどうするのか。総理はいまこれだけ雇用雇用とおっしゃっているのですから。しからば、この補正予算書に出てくるはずですね。残念ながら出てきていない。雇用雇用とあんなに声を高らかにおっしゃったけれども、一体どこに出てきておるのか。  それから、先ほど私は金利の問題も聞いたわけですけれども、福祉年金をもらっている人には、今度は来年の五月ですか、それまではいまのままの金利で行くというお話です。それは結構ですけれども、この前、一兆円減税をやったときに非常に残念であったのは、われわれが一番重点を置いた福祉年金が上がらなかったということですね。これは三千円しか上がらなかったんですよ。すなわち、二カ月早くしたわけですから、そうすると、九万円ぐらいもらっている共済の人は、これが六・七ですか、それの上がった分だけ一万二、三千円になりますね。あるいは厚生年金は九・四ですから、それもなります。それから一般の家庭は一万五千円ですから、それもなります。ところが福祉年金は三千円なのです。これは一兆円減税のときに、野党の政審会長が一番頭を痛めたところです。あるいは税金を納めていない人、こういうものだって後片づけをしてやらなければならない財源ですね。これなんか全然欠落をしておる。社会保障なんか今度の補正には全然何にも出ていない。一体総理はどういうようにお考えですか。
  46. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 多賀谷さんのお話を伺っておりますと、補正予算だけのことで論じられておる。私は、補正予算は、これは今度の総合対策の一環だというふうに見ていただきたいのです。ですから二兆円施策、また金利引き下げ政策、その他民間におけるもろもろの需要喚起政策、そういうもの全体として見ていただきたいんですよ。雇用政策ということを福田は力説しておるが、予算に何も出ておらぬじゃないか、これは少しぐらいのことは出ておりまするけれども、そうたくさんは出ておりません、それは率直に申し上げますが。しかし二兆円施策金利引き下げ政策をとっておるということは、つまり雇用のことを考えているんですよ。これが決定的にこの雇用問題に稗益するわけでありまして、これをとらないで小手先で何かやったって、それは小手先だけのことに終わっちゃうわけなんです。その点はひとつ御理解を願いたいのであります。  また、福祉年金のことに触れられましたけれども、とにかく御承知のように、財政も非常に窮屈な際でありまして、通常国会におきましてもあれだけの論議があったわけでございまするけれども、さあ、この段階で福祉年金の額を引き上げる、これも財政上の事情を考慮いたしますと、なかなかそういうわけにもいかない、こういう事情も御考慮願いたいのです。しかし、いろいろ御論議くださる、いろいろ私も勉強させていただくことになりますけれども、事は全体のスケールの中で論じていただきたい、このようにお願い申し上げます。
  47. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私ども、実は総合経済政策を見ました。ところが、これを見ましても、全体的に上げる、その事業規模を上げると言うけれども、そのうちに、御存じのように、住宅等は半分は来年回し。大体経済企画庁が言っているのは一兆二千億ぐらいなんでしょう。本来、住宅金融公庫から借りるのでも、民間から借りる予定のものを、じゃあ待っておこうという、いろいろあるんですね。あるいはこちらの事業に回す予定を別に振りかえる、これもありますね。ですから、新聞によりますと、本年度は一兆二千億ぐらいの事業、こう言っているわけです。そうして、雇用は間接的に上げていくんだという、それも必要ですよね。しかし結びつかなければいかぬのです。あなたはさっきから盛んに雇用雇用と言っている。雇用に結びつかなければいかぬ。結びつきますか。構造不況業種にですね、首を切られた者がすぐ結びつきますか。結びつかないんですよ。結びつけなきゃいかぬのですよ。結びつくようにするのが政治でしょう。どういうように結びつきますか。  中小企業政策だって同じですよ。私は、まあとにかくおっしゃるように今度の補正は景気の下支え程度だと、率直にそういうような気持ちもおっしゃったから、その程度。そうなれば、私は個別的にしっかりした政策を立てなければならぬ。ところが、口では言うけれども、個別的政策は必ずしもぴしっとした的確な政策になっていないでしょう。その点どうなんですか。  では、一つずつ聞いていきましょう。雇用政策はどうなんですか。中小企業政策は何ですか。構造不況政策はどういうようになっているのですか。
  48. 石田博英

    ○石田国務大臣 お答えをいたします。  まず、雇用対策でありますが、御承知のように、前国会で成立を見ました雇用保険法の改正によりまして、雇用安定資金制度というものがこの十月に発足いたしました。これは四百七十七億円計上してございます。これは補正ではありませんけれども、しかし、発足は十月一日でありますから、したがって、五十二年度後半に効果をあらわすものでございます。  現在の段階は、まあいわば構造不況業種の体質改善が進行中の過程でありますので、大体構造不況業種と言われるところに働いておられる方々、大ざっぱに見まして、通産省所管の関係で二百八十万人くらい、それから農林省所管で二十四、五万くらいでしょうか。それから、運輸省所管で造船等含めまして四十五、六万くらいじゃなかろうかと思うのです。ただし、通産省所管の中の主力は繊維であります。繊維が二百七十万、その繊維の中の百万強は、百十万くらいは流通部門であります。そのほかの部門も、流通部門に働いておられる方も含んでおるわけであります。そうすると、繊維だけという部門になりますと、もっと少なくなるわけでございます。これの構造改善作業というものが、いまは先ほど申しましたように進行中でございますので、四百七十七億円の安定資金の運用によって対処できるものと考えております。  それから、今度の予算の中に計上しておりますものは、北洋漁業関係、それから新たに雇用保険特別会計の中から、勤労者の人たちの移動用の住宅を千戸追加いたしました。これが五十五億円くらい、そういう計上をいたしているのであります。安定資金が、雇用情勢の変化によって不足を来さないと思いますけれども、これが不足をもし生ずるようなことがあれば、これは雇用保険特別会計内で処理ができる問題でございます。
  49. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  労働省との関連の関係におきまして、中小企業対策といたしましては、事業転換等雇用調整事業といたしまして、ただいま御指摘の平電炉、あるいは繊維関係だけで十六業種でございますが、十月一日からこの業種指定をいたしましたものは四十九ほどございまして、これが労働省と緊密な連絡のもとに、あるいは特定産業の離職者促進の問題でありますとか、あるいは景気変動等の雇用調整事業の失業対策をいたしております。
  50. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 通産省と労働省、関連をしておりますから、不況産業並びに雇用問題を一緒に質問したいと思います。  まず、最近の特徴というのは、景気が回復しましても、総理、普通ならばまず時間外作業が行われる。それから臨時工や社外工がその次にふえていく。そうしてその次に常用がふえていくのですが、今度はそういうようになっていない。要するに、時間外はふえる、臨時工もふえる、しかし、常用はずっと減っているわけです。常用をずっと減らしながら、パートや社外工や臨時工をふやしていく、あるいは時間外をふやしていく、こういう状態の雇用情勢にあるということですね。ですから、これを一体どういうようにまず労働省はチェックをするのか。常用がどんどん減っていくというのは不安定雇用がだんだん出るということでしょう。これをどういうように考えておるのか、お尋ねいたしたい。
  51. 石田博英

    ○石田国務大臣 現在の状態で前年に比べまして、雇用の総数としては六十万人くらいふえております。就業人口は六十万人ちょっとふえております。ただし、それは主として第三次産業部門でふえているのでありまして、御指摘のように、製造業ではむしろ減少傾向にあります。     〔田中(正)委員長代理退席、細田委員長代理着席〕  それから日雇い、社外工、これは全体として増加の傾向にございますが、しかし、それは主として女子労働の部門でありまして、男子の部門は、詳細な数字はちょっと忘れましたが、昨年七、八十万おりましたのが現在五十五、六万くらいに男子の方は減ってきております。また、社外工などは形としてはそういう形に残っておりますけれども、大体常用化の傾向をたどっております。行政指導としては、その常用化の傾向を強化するように努力をいたしております。  それから、本来社外工、日雇いというのは、実際問題として毎日仕事が安定してあるわけでありませんから、日割りの賃金は常用者の日割りよりも高くなければ安定度が保てません。わが国の場合はそれが逆であります。そういう点につきましても、その数千円のための努力はしております。  なぜ女子の日雇い労務、社外工的労務というものがふえているかと言えば、いまお話しのように、流通部門におけるパート、これが非常にふえ、そのパートによって刺激をされた新たな女子の求職活動というようなものが増加してふえているわけであります。
  52. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その常用がふえておる、しかしそれは第三次だと言う。問題は、やはり第二次も常用がふえなければいかぬわけでしょう。第二次がいわば基幹的な産業ですね。ですからそういう点を見ると、だんだん日本の雇用構造というのは第三次に十分抱えてやらないところに、実は生産性は上がるけれども、外国から非難を受けるのです。外国なんかは三次の話をしているのじゃないのですよ。日本の労働者が有給休暇が少ないじゃないか、労働時間が長いじゃないかと言っているのは三次の話をしていないのです、外国は。外国で話をしているのは製造業の話をしているのですよ。結局、鉄鋼がどうだ、自動車がどうだ、電機がどうだ、こういう話をしておるわけでしょう。ですから、生産性が上がるということは国際競争力がつくのですけれども、相手側から言うと、われわれはこんなに雇用維持のために努力をしておるのだ。それなのに日本はどんどん生産性だけ上げて、しかも生産性を上げて労働者を減らして、それでわれわれのところへ殴り込みをかけるかというのが非難の的なんですよ。向こうだってずいぶん調査をしている。まだきょうもアメリカの鉄鋼の労働組合は大会を開いて、日本製品入れるなと、こういう状態になっているのですから。ですから問題は、一番国際競争力で摩擦のある二次産業の雇用形態をどうするかという、これが問題ですよ。余り外国も日本のを調べていないようですけれども、ただOECDで問題になりましたのは、日本にはセカンドシチズンがおるというのですよ。第二市民、この第二市民がどうも高度成長の秘密じゃないかと言っている。     〔細田委員長代理退席、田中(正)委員長代理着席〕 第二市民というのは何かというと、それは下請である、臨時工である、社外工である。外国は賃金が職種で同じですから、そんな制度はないですよ。そういう制度はないのです。それは同じ職種であれば賃金が同じですから。朝日新聞の印刷部も町工場の印刷部も、賃金が同じだったらそんな下請なんということはあり得ない。同一職種では同一賃金。ですからそういう余地もないのでしょう。しかし、日本ではどこの製鉄所に行っても半分は下請ですよね。しかも下請の方は賃金は低くて六割ぐらいで、災害が三倍です。これは造船でも化学でも鉄鋼でも、全部そうですよ。大体災害率は三倍、賃金は六割ないし七割、こういう労働者を抱えておるわけですから、これがやがて必ず問題になるのです。ですから、その点をやはりわれわれとしては今後十分留意しなければならない。  労働大臣はさっき、そういう人々は本来ならば賃金が高くなければならないけれども低いとおっしゃいましたが、どういうように是正するつもりですか、この二重構造を。
  53. 石田博英

    ○石田国務大臣 いま御指摘のように、賃金が低いということと災害率が高いということ、数字は覚えておりませんけれども、そういう傾向は私も承知いたしております。  そこで、災害率の方は安全衛生法を改正をいたしまして、元請業者に指示、指導の責任、そういうものをとらせることによって、これを行政指導をしておるわけです。それから賃金の問題、これはやはり労使関係で決められるべき問題ではございますけれども、全体の傾向としては、私は、同じ仕事をしている者にそういう差があってはなりませんので、基準法の規定を運用いたしましてその解消に努力をいたしたいと思っております。これは年来の持論でございまして、機会あるたびごとに呼びかけておるつもりでございます。
  54. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 基準法の同一労働同一賃金、大いに期待をしていますけれども、残念ながらその実効をいまだに見ることができない。これはひとつ今後の推移を見てみたいと思います。  そこで、労働白書でも、とにかく労働時間を短かくすることが雇用につながるのだということで、盛んに労働時間短縮ということを言っているのですよ。そうしたら雇用が拡大される。ところがこれも全然結びつかないですね。いま休日も、それから残業をどんどんやっているところがあります。ところが一方においては操短をしておるのです。私は、企業とすぐに結びつけろとは言いませんけれども、口ではうまいことを言うけれども、どうも労働時間の短縮というのと雇用というのが結びつかない。これをどうして結びつけるつもりか。これは労働大臣、いまどういうようにお考えであるのかお聞かせ願いたい。  それからもう一つ、やはり大きい問題は定年制、高齢者問題ですね。総理日本経済がよくなりましても雇用情勢はよくならないとどれにも書いておるのです。国民経済研究協会は、今度は、五十二年から五十五年まで七%成長するだろう、しかし雇用は厳しいですよ、こう言っている。ですから、雇用問題というものが今後の最大の課題になるわけでありますけれども、残念ながら雇用問題は解消の方向に行っていない。それのみか、せっかく労働省がわれわれに対して法律をつくって、そうして何らか定年制の延長をしようとしたけれども、残念ながら全くとんざしておる。すなわち、今度通産省が労働力移動問題調査というのをおやりになったが、これによると、残念ながら定年制を延長したいというのはほとんどないですね。そういう気持ちはありませんと言っておる。ですから、これらの問題を一体どういうように考えているか。通産省はどう考えているのですか。労働省はどう考えているのですか。
  55. 石田博英

    ○石田国務大臣 先ほど一向に改善されてないじゃないかというお話がございましたが、常用化の傾向というものの効果、あるいは労働時間短縮の効果、それから定年制延長の効果というものは、その効果の割合については御不満もありましょうけれども、順次改善をされておるわけであります。ただ問題点は、いま御指摘のように、労働時間は順次減少いたしまして、大体平均して一週四十二時間弱になっていると思います。ただこれか法制化しておる国はアメリカとフランスぐらいでありまして、イギリスは婦人と若年労働について法律がございます。これが直接結びつかない点に、つまり労働時間の短縮が雇用の増大に結びつかないという点に非常に工夫の余地があるように思います。たとえば銀行を五日にするというだけでは、銀行は新しく人を雇わないわけですから、六日店を開かせておいて一人当たり週休二日をとれば、そこで雇用と結びつく、そういう工夫も必要ではないか。それから年次有給休暇の消化率はまだせいぜい七〇%前後である。これは日本人の生活習慣も非常にあると思います。しかし、交代制について検討をしてもらう。たとえば三交代、一交代八時間というもの――一交代八時間は結構ですけれども、四交代というような工夫をしてもらう。そうすれば年次有給休暇もとりやすくなる。それから私どもの方といたしましては、少なくとも夏に一週間程度の休暇をみんなとれるようにしてもらうように、いま基準協会等通じまして呼びかけております。  そこで、定年制の問題でございますが、定年制もかつては五十五歳定年というのは六七、八%くらいありました、十年くらい前に。いまは四七%くらいに減っておりまして、むしろそれの反面、六十歳定年が三四、五%くらい、端数はどうも正確に記憶しておりませんが、大ざっぱな話で言うとその程度になってきております。しかし、定年制の場合は原則として当然社会保障と結びつけなければいかぬ。したがって少なくとも六十歳にしなければならない、厚生年金の受給開始年齢と合わせなければならぬ、そういう方向で努力をしております。それから五十五歳定年がしかれて一般化したのは明治の中ごろで、そのころの日本人の平均寿命はせいぜい四十三歳くらい。だから今日それが不適当であることは、これは言うまでもありません。ところが定年制を延長しているのは中小企業に多い。ところが労働時間となると逆に中小企業の方が長い、こういうのが実情でございますが、これは改善の努力をし、成果も順次上がってきておるつもりでございます。
  56. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  通産省といたしましては、何分景気対策、雇用機会の確保ということに専念をいたしておりまして、いまだ定年の問題にまでこれを対象といたしました検討に及んでおりませんが、労働省と緊密な連携のもとに、今後善処してまいりたいと存じます。
  57. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 通産省は労働力移動問題調査というりっぱなものを発表しておるのです。ですから、新規採用はどうしますか、定年制はどうしますか、全部アンケートをとっておるのです。それで私は質問したわけです。そういうことでは、いかに労働省がやりましても、それはだめですよ。現業官庁がやってくれなければ、全然役に立たない。全く奇妙なことだと思うのですね。  それで、若年の失業者が出ても非常に困るわけです。しかし、日本には先任権というのがない。そして案外終身雇用制よりも、やはり自分は首を切られるのはこの順番だという方が安定しておるそうですね。日本のは口だけが終身雇用制で、いつばっさり切られるかわからないでしょう。そして日本の場合は、切られた場合に、公務員で大会社へ行かれる人は別として、普通、学校を卒業して入ってこないと、中途で採用された者は非常にハンディがあるのですよ。そういう仕組みになっておるのですね。ですから、私は、労働力移動とか定年制というものはやはり積極的に――いま一番大きいものは定年制です。しかも相手は大企業ですから、やりいいのですよ。中小企業は皆大企業からほうり出された人を抱えておるのですから。ですから、なぜこれができないかですね。定年制延長は今後の日本の最大の課題だと思う。これは総理、ひとつ考えてもらいたい。総理から答弁願いたい。
  58. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 法律でこれをどうというのは、非常にむずかしい問題と思いますが、先ほど労働大臣から申し上げましたように、労働省といたしまして、そういう方向でこの指導に当たる、こういう体制を進めておるわけでありますが、今後ともそのような方向を進めてみたい、かように考えております。
  59. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは総理が号令をかけなければ、第一、いま大分若い大臣がいらっしゃるけれども、定年制五十五だといったら、皆さんの中でも五十五以上の人が大分おる。やはり自分のことを考えれば、本当に五十五といえば若いですよね。ですから、これは本当日本の政治として一番の弱点じゃないかと思うのです。しかも、いまからどういう状態になるかといいますと、昭和六十年になりますと、大体一割ぐらい労働力がふえるのですよ。ところが、五十五から六十四までの人は五割ふえるのです。こういう状態ですよ。五十五から六十四までの人は五割ふえるが、一般には一割しかふえない、みんなそこへたまるのですよ。ですから、国としてもそれを活用しなければならぬ。そうして五十五の定年になって職業訓練所に行かすというのも全く愚ですよ。一生懸命職業訓練所に行っていますが、その人たちが一体訓練を受けた仕事で職場につけるかといったら、つけませんよ。みんな三十年もやった仕事だけはできるのですよ。六十までもできる、負けないでできる。ところが、途中で訓練所に行って、半カ月やっても半年やっても、それはできませんよ。  そういう点で私は、もう少し全体的な労働力を活用する意味においても、老後の安心感からいっても、これはひとつ総理、思い切ってやってもらいたい。ことにいま不況なんでしょう。構造不況で首を切られるのは、若い者は残しておきたいですから、どうせ君、定年でやめるのじゃないかというので、五十三とか五十二が切られておるのですよ。泣き泣きやめておるのですよ。どうなんですか、それは。
  60. 石田博英

    ○石田国務大臣 定年制についての考えは申し述べたとおりでございますが、これを一律にやるとなると、業態によっても違いますし、それから賃金原資の分配ということがあります。もう一つは人事管理ですね。人事管理は長い期間をかけて考えないと困るわけです。そういうことを労使の間で話し合いをしていただきながら定年制の延長の実現を図りたい。  それから、いま御指摘のように、やめてしまってから訓練を受けに行ったところで、それは長い間やっていた仕事とは違います。そこで、ブルーカラーの場合は、いわゆる単能工から複能工へ、企業の中で働いている間に訓練を受けてもらう。それから企業によっては、中高年の人で十分やれる仕事とそうでないものとを分けて、別会社にして運用しようとしているところもございます。そういういろいろな実例を参考にし紹介をしながら、少なくとも六十歳定年というものをできるだけ早く実現をしたい。  ただ、これは五年一遍にばっと延長するということになりますと、早い話が、課長さんの……(多賀谷委員「簡単に」と呼ぶ)どうも私の答弁は短い方がいいようでございますから。まあ課長さんが困る、人事管理が停滞するということがあるのですね。だからそういうことも考えて順次直していく。やはりある程度の時間がかかるということを申し上げておきます。
  61. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 若い社長が出ても、序列からいうと追い越して出ても、それは気持ちの問題ですよ。公務員だってそうでしょう。よその公務員はみんな六十とか六十三なのです。外国には六十五もおる。若い次官が出たらどうだ。いや、それは気持ちの問題だと言う。そうなのですよ。やはりそういう状態になっておるわけです。それを序列どおりいかなければいかぬとか、そういうのは変わっていかなければならぬ。  そこで、時間がありませんから……。産業構造の変化が予想される。労働力移動はどういうふうにやるのですか。これは一番大きい問題でしょう。今度の不況業種はどういうように労働力を移動させるのですか。ただほうり出して労働省に預けるのですか。まず通産大臣からお答え願いたい。
  62. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの御質問でありますが、ただいま不況の問題についての対策の中で、中小企業その他の倒産がたくさん出る、さらにまた構造不況といわれる問題の中で多くの失業者が出る、こういうことが出ないように全力を尽くしておるわけでありますが、一例を申すならば、構造不況対策の中におきましても、平電炉とか、あるいはまた繊維とか、非常な苦境に立っておる業界がいろいろございます。それはそれなりに、設備その他の問題につきましては、公取の方にお願いいたしましてカルテルを結成して、そして生産なり価格を維持することによって守ることもできますが、同時にまた、これを不況カルテルといたしましてある程度まで設備を落とさなければならぬ、こういう場合におきましても当該業種の中に、産業構造審議会の方といたしましては個々の業種の新しいルール、新しい活路というものを検討いたしています。そして構造不況によりまして切り捨てました設備その他の問題の中にも、これは新しい活路を転換していかなければならぬ、こういう点で転換法もつくりまして、同時に、その点につきましては鋭意進めておる次第でございまして、いまお話の出ましたような雇用の問題、さらにまた多くの失業の問題を新規に転換し、できるだけ雇用の機会が得られますように全力を尽くしておる次第でございます。
  63. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 長々と答弁をなさっておるのですが、中小企業事業転換計画に従って転換したのはまだ十九しかないのです。転換転換といっても、実際日本全国でたった十九なのですよ。  それから、私は具体的な例を一つ示したい。イタリアではイタリア倒産防止公社というのがある。それはどういうことかというと、そこの工場と労働者、施設と労働者をそのまま預かるわけです。専門家が行って全部産業を変える。日本でも、私の知っているので、雷管をつくっておる火薬工場がありました。ところが、炭鉱地帯にありましたから、全然雷管工場は役に立たない。そこでどうしたかといいますと、その工場は大体百四十人ぐらい従業員がいて、その八割が女子であります。隣にりっぱな、ミサワハウスと一緒になって日本油脂が住宅産業をやったわけです。そうして二年間、男の人は訓練に行って、女の従業員はいままでどおり働いて、女子も含めて全部転換した。もういま益金も出しておる。日本でもやろうと思えばそういうことができるんですよ。火薬の雷管工場が住宅産業をやるようになっているのです。それは政府の援助と事業主の知恵と労働者の協力があればできる。全然首切りがないんですよ。そうしてそのまま転換しておるんですよ。いまから日本産業構造の変化による転換というのはこういうようにやらなければならぬのです。  私は、炭鉱不況のときにドイツへ行きましたら、ドイツのハンボーン地方の炭鉱の隣に自動車のオペル工場をつくっておる。おまえのところの炭鉱がやまったらどうするんだ、いやオペル工場へ行くんだ、こう言うのです。日本のはそういう準備がないんです。首を切ってそれから考えるわけですから。私は、いま日本の通産大臣はそういうことを積極的におやりになって、そうして工場の施設と従業員を抱えながら次の業種にどうして転換をするかということをくるんでやる必要がある、こういうように考えるのですが、どうなんですか。
  64. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまのお話のとおりでございまして、まず倒産をしないように不況業種に対しましては、特に中小企業信用保険法に基づきましてこれをいたしておりまするが、同時にまた、たとえば連鎖倒産のようなことがないように連鎖倒産防止法なり、あるいはまた共済制度をつくりますことも御案内のとおりであります。  先般の山梨県の東洋バルヴ等の実例をごらんになりましても、現地の方に対しましては、当該企業の倒産等々に伴う雇用の転換その他の問題につきましては、通産局を初めといたしまして、地元の県並びに関係方面と全力を尽くしまして、労働組合あるいはまたこれの雇用の転換ということにつきましては非常な努力をいたし、同時にまた、相当の実績が上がっておりますことも多賀谷さんよく御承知のとおりでございます。われわれの方も、ただいまドイツの例のごとく、中小企業庁といたしましては現場におきましてきめの細かい、しかもこれらの倒産に対しまする対策を全力を挙げていたしておる次第でございます。
  65. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 時間がありませんので……。  雇用問題についてわが党は、雇用対策臨時措置法案を提案せんとしている。この大きな問題は、一つは大量解雇のときのいわば制限で、これはドイツの法にありますが、州法から連邦法になりましたが、そういう経過を考えて、そうして雇用問題は企業の責任である、ただ自分のところの経営がよくなればというわけでほうり出すことはまかりならぬ、こういうような手当てをしたかどうか、こういう点を十分雇用調整委員会で検討をする必要がある。これが一つ。  それからもう一つは、給付について。やはり給付の延長をする必要がある。これはできるようになっているんですけれどもね、労働省がやらないんですよ。(石田国務大臣「やってますよ」と呼ぶ)いや、やりませんよ。労働省は四%の失業率でなければ全国一律延長しないと言っている。四%になりますか。いま、こんなに大変だ大変だと言ってもまで二%ですよ。これ以上、倍にならなければ発動せぬというような政令がありますか。これは労働省がサボっておるからわれわれは法律つくらざるを得ない。  それから、労働時間と雇用を何とか結びつける方法はないだろうか。労基法によると、三十六条によって労使で幾らでも協定ができる。しかしこれは、この雇用情勢の悪いときに少し遠慮してもらいたい。国、公的なものが介入するということですね。  それからやはり将来において、次の就職までいまの一年ぐらいじゃ延長が少ない。やはり炭鉱離職者並みにしてもらいたい。  それから一番問題は多発地域における雇用問題です。これはひとつ、農村でもそうですか、市町村がいま努力をすれば仕事はあるんですよ。それはもう漁礁の問題でもあるし、沿岸漁業の問題、それから昔の救農土木のような問題だってあるし、多くの人間を抱えることはできないけれども、知恵を出せば、金を投ずればある程度は解消されていくんではないか。こういういわば雇用造出の問題ですね。沖繩なんかひどいじゃないですか。沖繩は失業率七%ですよ。そうして三年間の促進手当をみんなもらって、そうして最後に切り取る。それもみんな高齢者ですよ。こういう問題だってやらなきやならぬ。  一体それらをどういうふうに扱うか。これはひとつ法律をつくるかどうか。民社、公明の方はまた特定業種といいますか不況産業についての離職者対策法がある。これはひとつ野党がとにかくまとめたいと思う。一体それに対して政府は応ずるかどうか。お聞かせ願いたい。
  66. 石田博英

    ○石田国務大臣 まず、法律の問題でありますが、前国会で雇用安定資金が成立して発足したばかりでございます。それからこれを政府案として提出をいたしますためには、やはり各省との連絡調整が必要でございます。したがって、今国会に間に合いませんし、現行法で行えるものがかなりあるわけであります。それから来年度の予算要求の中に含まれているものが相当ございます。それから各党でお出しになっているもの、労働四団体でお出しになったもの、それぞれ相違点がかなりございます。これは社会党だけでなく、自由民主党からも民社党からも公明党でもお考えになっている。そういうものの御意見の調整を進ましたいと思っておる次第であります。政府として出せと言われてもちょっと困る。  それから雇用保険金の給付の問題、これは個別延長を認めてやっておるのです。全部一律にということはできませんが、個別延長は現にやっております。  それから多発地帯に対する問題、たとえば今度の公共事業の発注等につきましても、地域差を考慮に入れて発注していただきたいということを閣議で私どもからも要請いたしましたし、それから各地方の出先機関に対しても、関係方面とそういう連絡をとるようにとも命じてございます。
  67. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、政府としては出せないけれども、各党がいろいろ出しておるのを調整をしたい、だから、自民党を含んで各党話し合いをしたら政府は乗るわけですね。
  68. 石田博英

    ○石田国務大臣 私どもから現状を考えると、わざわざ法律にしなくても大部分はやれると思っておりますが、各党の間で御調整がついてまとまりましたならば、乗るも乗らないも可決されれば法律になるわけなんでございますから、それに従って行政をいたします。  それから、ちょっとさっきお触れになりました雇用の創出、それはすでに林野庁等とも連絡をとりまして、農村等における植林とか、そういう方法によって雇用の創出ができないか、あるいはそのほかの方面についてもすでに検討は始めております。
  69. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 石田労働大臣はベテランだし、アイデアはなかなかいいのですが、実行ができるかどうか、これが問題で、期待をしておるわけです。  そこで、時間がありませんが、私は、雇用の関係の法律は各党間で調整をつければ政府は受け入れるという話ですから、ひとつ知恵をしぼってみたい、かように思います。  実はエネルギーの問題に最後に触れていきたいと思いますが、御存じのように先進石油消費国で構成をしております国際エネルギー機関、IEA、ここで大体昭和六十年、一九八五年のエネルギー消費を、その輸入量を一日当たり二千六百万バレル、これは一九七四年実績の年率約二%ぐらいの伸びですね。ですから、今日各国が出しております。十九カ国の量から見ますと二五%減になるのです。日本でも、いま日本需給計画の二五%減になるのですよ。こういう重大な問題が起こってきた。しかも、これはOPECが入ってないのですよ。消費国だけで検討しておるわけですね。ですから、OPECの承認を得たのでも何でもないんだ。お互いこうしようじゃないか、こう言ったのです。非常に不安定なものですね。ですから、いままでつくったエネルギー計画というのは御破算になる可能性があるわけですね。政府は、北海からも出るし、イギリスはもうわりあいに産出されるから遠慮するだろうなんて、そんな甘くないですよ、二五%もダウンするのですから。こういう問題を一体どうするのか。  ところが、不思議に日本の海外の石油に対してどんどん投資をしておる、そうして多くのいろいろな会社ができておる。そのうちに幽霊のような会社もあるし、もうすでに清算した会社もある。そうして石油開発公団は融資をしておる。ところが、その世界の石油開発のチャンピオンと言われたアラビア石油の石油が売れないで困っておるのですよ。引き取り手がないのです。こんなばかな政治が一体あるだろうかと私は思うのですね。あれは八億トンと言われている、この埋蔵量は。世界で一番有望なんです。ところが残念ながらあれはパラフィンが多い。重質油が多いのですね。しかし、中国の石油だって重質油でしょう。ですから、一工程ちょっと多いけれども、そのぐらいのことはがまんしなければならぬと私は思うのです。この問題を一体どういうふうに考えておるのか、こればひとつ総理から御答弁願いたい。一体こんなエネルギー政策があるだろうか。
  70. 田中龍夫

    田中国務大臣 IEAの問題につきましては、新聞等で見まして、実は非常に重大な問題でございますので検討いたしておりますが、御案内のとおりに今日のわが国の消費量五百万バレル・パー・デー、八十万キロリッターぐらいであります。いまの六十五年の目安からいいましても、パー・デーが七百五十万バレルぐらいでございますが、いまのIEAの問題につきましては、たとえばイギリスのごときは北海の分が出ますとか、あるいはまた――あれは輸入量の問題でございますので、エネルギー庁の方におきまして当該結論をさらに具体的に日本との間に詳細いま検討中でございます。それからその後のいろいろな推移につきましても精細に情報をとっておる次第でございます。
  71. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは一体アラビア石油をどうするのですか。石油業法を変えるのですか、どうするのですか、具体的には。
  72. 田中龍夫

    田中国務大臣 アラビア石油の問題につきましては、石油それ自体の重質油の問題もありますし、あそこの場所の管轄権の問題もございますので、詳細エネルギー庁の長官からお答えいたします。
  73. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいま先生からアラ石の油の引き取りについて御指摘がございましたが、アラ石を含みまして、わが国がいわゆる自主開発原油といたしまして海外で開発に成功いたしておりますものが一日当たり約七十万バレル、能力的に四千二百万キロリッター程度の開発に成功いたしておるわけでございますが、この自主開発原油のうち、約二千三百ないし二千四百万キロリッターを持ち込んでおるわけでございます。かれこれ五割程度かと思います。  かように引き取りがはかどらない理由は二つあるかと思います。一つは国内が不況であるということ、いま一つは御指摘ございましたように油の性質が非常に重質油である、こういうことでございます。これに対応する道といたしましては、一方でやはり国内の景気の回復という問題もございますが、直接的に重質油対策といたしまして、いわゆる重質分解装置、こういったものを設備いたすことによりまして、重い油を軽い物あるいは中質の油に変えることによって活用を図りたい。  それからいま一つの方策といたしましては、せんだって提言がございました総合エネルギー調査会の中間報告の中に、当面一千万キロリッターを対象といたしましていわゆる国家備蓄を進めるようにということでございます。この国家備蓄を進めるに当たりまして、ただいま御指摘のような自主開発原油あるいは政府間取り決めによりますいわゆるGG原油、こういったものを優先的に確保することによりまして、せっかく開発した安定的な原油を国内に持ち込み得るように促進いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  74. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 現実問題として、ある程度の石油を出さないと、それに伴うガスによって、そこの発電、水、全部供給しているわけですよ。ですからこのままでいけば基地がつぶれるのですよ。大変なことになっている。その認識が、どうも通産大臣が答弁されぬところを見ると――これはきわめて大きい問題ですよ。アラビア石油だって怒りますよ。掘らしてくれ掘らしてくれといって、掘った石油を買わないとは何事かと、こうなる。こういう国際信用にもかかわる問題ですから、これはひとつ総力を挙げてこの問題の解決をお願いいたしたいと思います。  エネルギーの問題は、これは核問題、これは非常に各国とも夫変な状態になっているのです、率直に言いますと。西ドイツだって、経済相の出身の自由民主党、同じ名前ですが、自由民主党は党議で決定した、原子力発電反対と決定した。今度秋にあります社会民主党の大会も反対で、もう新しいものは認めない、こう決定するのですよ。世界はまさにこういう二つの世論になって、国内が大変な世論になっているのですよ。でありますから、これはどういうようにするかというのは、どこも非常にむずかしい、簡単でないのですよ。ですから総理、われわれがいまとにかく安全性の問題からまだ実験段階ですよ、こう言っている。また経済性の問題から、いま十三基のうち動いているのは四基でしょう、経済性からいってもとても採算に合うものじゃないのですよ。しかし、これは研究しなければならぬということはわれわれも認めておる。でありますから、それをどんどん急いでつくるというんじゃなくて、いま物すごいテンポで動いておるのですから、これはやはり慎重に構えるということが一番必要ではないか。もう各国とも一世論は真っ二つに分かれておるのです。  このことを申し上げ、そして当面私は、いまわれわれの付近で一番ありますのは、何といっても石炭です。それは一番国が安定しておるアメリカでしょう、それからカナダ、オーストラリア、それからインドネシアにもありますし、さらに中国、ソビエト、こう、いわば太平洋岸にずっとあるわけです。ですから、これはやはりもう一回輸入石炭というものを見直す必要がある。それがためには国内の石炭が輸入石炭によって倒れることのないような歯どめが必要である。かっての石油が石炭を倒したことのないように、ああいう歯どめが必要である、こういうことを総合的にする必要がある、こう考えますが、これは総理大臣から御所見を承りたいと思います。
  75. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 多賀谷さんの後段のお話は全く同感でございます。  前段の核政策を考え直せ、こういうお話につきましては、どうも私は納得しかねるのです。核政策、これはもうわが国のエネルギー源を確保するこれからの中核をなすもので、これは何とか工夫して、安全も、また核拡散も、そういうことを十分配慮いたしました上の大前提には立ちますけれども、核だけは、わが国の安全保障というような立場からさえもこれを進めていかなければならぬ問題である、こういうふうに考える次第であります。
  76. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私どもは核の研究開発を否定しているのじゃないのですよ。否定しているのじゃありませんけれども、急ぎなさんなと言っているのですよ。いまどんどん入れた軽水炉を見てごらんなさい。みんないまストップしておるでしょう。でありますから、次から次へ新しい物が出て、もう少し慎重にやってもらいたい、こう言っているのですよ。そして百十万という大きなキロワットをどんどん入れていくが、ああいうような安全性の保証もない、こういうものに慎重にやるべきだ、こういうことを言っておるわけです。まだ研究段階です。  それから、もう時間がありませんけれども、とにかく省エネルギーですね、エネルギーを節約する、これが最大の石油開発ですよ。ですから、エネルギーの開発、具体的にフランスだってイギリスだってアメリカでもやっている。日本だけですよ、具体的にやっていないのは。研究開発費が低い。どこの国だって行ってごらんなさい、みんなエネルギーの節約をやっているでしょう。日本だけですよ。それはいま石油がたまたまだぶついておるというのでやろうとしない。これで一体エネルギー政策はできるかどうか。それから一体来年度の予算がどうなるのか。  最後に、私は次のように申し上げたいと思います。  土木や公共事業中心の景気回復政策では行き詰まってくるのじゃないか。安定成長下に入ったのですから、国民が平等に、不公正をなくするような方式で国民生活が平等に豊かになるような方式をとらざるを得ないのじゃないか。もう夢はもう一度でこないのですよ。総理はそのことを言いながら、現実にはそういう政策をとられていないというのが非常に遺憾。ですから、雇用の問題でもお互いに忍びながら、お互いに雇用の機会をつくろうではないか、こういうところに日本の政治を持っていかない以上は、依然として国民の中に不満が出、そして格差が出る、こういうことになると思いますが、最後にそのことをお願いをし、答弁をいただきたいと思います。
  77. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は前々から資源、エネルギー問題、これは真剣に考えなければならぬということを申し上げてきておることは御承知のとおりです。まあとにかく、資源、エネルギー時代、これにこたえなければならぬということを言った最初の人は私じゃありませんか、政界では。私はそのくらい資源、エネルギー問題を真剣に考えているのです。その道は二つしかないのです。これは省資源、省エネルギー、それとまた石油代替エネルギーの開発だ、こういうことなんです。これは多賀谷さんももう十分御存じのはずでございますが、ただ、省エネルギー、省資源という問題になりますと、これを実際に適用するということがなかなかデリケートな問題があるのです。たとえば、さあ、八時になったらもう市街地の電気は消しましょう、そんなようなことは簡単にできますよ。できますけれども、これがまた、いま不況だ、不況だ、不況だと言っておる、その不況の問題との調整がなかなかデリケートな問題ではあるのです。しかし、そういう問題を避けながら、その問題に波及しないように配慮しながら、省エネルギー政策は強力に進めていきますから、これはひとついろいろお知恵も拝借した上、そういたしたいと考えます。
  78. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 景気浮揚の基本的な姿勢……。
  79. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 長期展望ですか。
  80. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 姿勢です。
  81. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 とにかく世界じゅうは非常にむずかしい状態の中ではありますけれども、その中でもわが国はよくやっておるというふうな国際的な高い評価を受けるように私は最大の努力をいたしていきたい、こういうふうに考えます。それには当面の問題を処理しなければなりませんけれども、国民にも中期、長期の展望を示して、そして御安心願うようにいたしたい、かように考えております。
  82. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 終わります。
  83. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 これにて多賀谷君の質疑は終了いたしました。     午後零時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ――――◇―――――     午後零時三十四分開議
  84. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。木野晴夫君。
  85. 木野晴夫

    ○木野委員 補正予算につきまして質問をいたしたいと思います。  日航ハイジャックにつきましては同僚の佐藤委員から関連して質問がございますので、私は補正予算財政金融制度につきまして質疑を続けたいと思います。  御承知のとおり、本臨時国会は不況対策の国会である、このように言われております。不況石油ショック以来でございますから、もう四年になんなんとする非常に長い期間にわたっております。それだけにまた厳しいものがあるわけでありまして、八月の倒産件数も千五百件を超えるというきわめて高い水準を示しております。不況失業を伴うわけでありまして、失業者の数も相当多くに上っておりますし、また、求人倍率も〇一五三倍という状態でございます。さらにまた、来年度の学卒者の就職状況もきわめて厳しいものがあるという状態でございます。本人はもとより、家族の方々も非常に心配しているわけでございまして、こういった状態のもとにおきまして、補正予算が一刻も早く通過することが一番大事なことであると私は思うのでございます。そのためには政府の率直な態度が必要であると私は思うのであります。  考えてみますると、政府は、さきの本予算のときに、この予算が通れば景気はよくなるのだ、さらにまた、公共事業を上期に七三%執行いたしましたが、上期に集中することによって、八月ともなれば景気は目立ってよくなるのだ、このように話があったわけでございます。国民の皆さん方もそのことに大いに期待を抱いておったわけでありますが、八月の計数を見てまいりますと、楽観を許さないものがある。九月三日にそういったことに対しまして総合経済対策がとられましたし、今回の補正もその一環でございます。  私は、ここで政府に対しまして、なぜこの見通しが違ってきたのか、どこに問題があるのか、現状はどうなのか、対策はどうなのかといったことについて率直に国民に話をする、与党、野党に話をする、この姿勢が必要であると思うのでございます。このことが、総理がよく言っておられます連帯と協調を具体的にあらわすものであると思うのでありますが、まず最初に、総理に、現状をどのように見るか、なぜまたこういった問題があるのか、その対策はどのように考えておるのかといった基本的な姿勢につきまして、政府の所信を問うものであります。
  86. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいまの時点における現状認識でございますが、非常に大づかみに言いますと、世界が、世界史始まって以来の変化の時代である、その変化に対する対応、その苦悶の時期である、こういうふうにとらえております。  そういうことでありますから、この経済問題はいまやわが国だけの問題ではない、これは世界全局の問題である。私はロンドンにおける先進国首脳会談に臨んだわけでありますが、この会談はとにかく先進主要七カ国の首脳が集まるのですから、政治的な問題なんかも話に出てよさそうなものだが、出ないのです。何かというと、もっぱらいまの世界経済をどうするんだ。この世界経済の実体は何かと言いますれば、まず雇用問題である、それからインフレと不況の問題である、この三つをにらんで対策を考えなければならぬ、こう言うのです。  さあそれじゃ、そういうことをにらんで対策をとるといって鳩首協議をしますが、その決め手というものがなかなか出てこない。結局、日米欧、特に欧の中ではドイツでございますが、これらの国々が相協調、協力して、そして世界経済を引っ張る機関車的な役割りを尽くすほかはないんじゃないか、このようなことである。でありますから、いまわが国のそういうような世界における役割り、つまり日本も機関車の一つとして世界経済を引っ張る役目を尽くせ、この要望は非常に強いわけです。アメリカに対してもそうです。ドイツに対してもそうです。  ところが、その首脳会談後の動きを見ておりますと、アメリカは大体あの当時六%成長実現します、こう言ったのですが、そのとおりに動いておる。それからドイツはどうだというと、五%成長ということを宣言したのです。ところが、その五%がなかなかうまくいきそうもないというので、その直後すぐ四・五%に成長率を修正しております。ところが昨今は四%もなかなかむずかしい、とてもとても四%にはいかぬ、こういうようなことが言われるような状態です。そういう中で、わが国はとにかく成長はいままでのこの対策状態でも五・九%はいく、物価は鎮静化の傾向だ、国際収支のごときは非常な黒字過剰でありまして、世界からおしかりを受けるような、そういう状態でありますので、総体として見るときには、私は、世界のこの大混乱の中でわが国経済の動きというものは際立った、目覚ましい成果を上げている、こういうふうに見ております。  しかし、いま国内を見てみますると、そういう実感も出てこない。なぜかと申しますと、確かに経済成長という底上げ、これは進んでおります。進んではおりますが、過剰設備、過剰雇用、こういう状態はなかなか解消されない。そういう状態で、一つ一つ企業をとってみますと、なかなか収益の改善というものはないんです。特にいわゆる構造不況業種というものを抱えておる。これもどこの国でもそうですか、特にわが国におきましても、構造不況業種十三業種とも言われるくらいの業種があるわけなんであります。それが非常に深刻な状態にあるわけなんであります。そういうことで、それから醸し出されるところの不況感、これがまた他に波及いたしまして、いま日本経済界というものがなかなか明るい展望でないという状態なんです。  これじゃいかぬ。やはり国際会議、主要国首脳会談でも六・七%と言った、少なくともそこまでは持っていこう、そういうので今度二兆円財政事業を行う、それからまたさらに金利の引き下げを行う、それらの施策を講じたわけでございますが、とにかく日本経済全体のかさ上げを、いま何もしなければこうなるだろうというようなことよりはかなり高くいたしまして、そして国際社会に表明しておる水準実現する。かたがた問題の不況業種、これにつきまして、一つ一つこれが解決を図っていきたい。その不況業種解決ができる、この段階で日本経済の抱える諸問題の大方の解決になるんだ、こういうことでその対策をいま進めておる。その一環といたしまして補正予算案を御審議願っておるわけでありまして、お話のとおりなるべく早くこれが成立をお願いしたい、かようにお願いします。
  87. 木野晴夫

    ○木野委員 時間が限定されておりますので、御回答は簡明率直に、明快にお願いいたすものであります。  ただいま総理から、予算案に臨む政府の立場、また考え方、これについて話がありましたが、私も今回の不況は非常に深刻でかつ世界的な問題である、こう思うわけでありますが、そのためには単に景気がよくなるというだけではなしに、それとともにこの体質改善というものを講じなければならぬ。いま総理の言った不況業種、特に中小企業に対してどうするかという体質改善の問題を積極的に取り上げて、大胆な構想を行う必要があると思うのであります。  総理のいま言われたうちで、世界の機関車であるという話がありました。私は、そういった点を考えてまいりますと、六・七%という経済成長、これは輸出によってなされておるということであるならば、これはまた問題がある。六・七%は世界各国も喜ぶ、そういった形で、内容的にも高い成長率であるとともに、内容のよい経済成長であるというところに問題があると思うのであります。今回の円高問題、これもやはり輸出が伸びておるというのが基盤にあるわけでありますから、この六・七%の議論をされる、それに触れられますときには、このことが基盤でありますが、内容的にも、その方法につきましても、さらに特段の配意を願いたいと思うわけであります。  今回の予算、九月三日の総合経済対策を見てまいりますと、内需に、国内景気浮揚に重点を置くのだ、そうしてそれは公共投資であり、ことに現在の段階では住宅政策だということでありまして、私はこの点につきましては同感でございます。  そこで、すべての問題にわたりまして活力のある対応というものがなされなければならぬ、この点を思うのでありまして、たとえば公定歩合の引き下げ、それに伴う預金金利の引き下げ、それに伴ういわゆる庶民の預金についてどうするかというふうなことにつきましては、活力ある、そうして温かい対応策というものがなされなければならぬ、こう思うわけであります。  それで、時間もございませんので、私は住宅政策のローンについて申し上げますが、実はアメリカに参りますと、アメリカでは生命保険会社がこういった長期の金はまさに自分らの分野である。そこで、生命保険に加入する、それを担保に金を貸す、そうしてまた、その掛金につきましては特段の優遇を払うというふうにしておるわけでありまして、そういったこともこの際大いに考えるべきじゃないかと思うわけであります。  私も一応事例は勉強したことがございますので、保険の掛金につきましては二万円で切り、五万円で切り、十万円で切りというようなことをいたしておりますが、こういった措置法全体をいま見直すときでありますが、こういったところにつきましては、いまの制度と相まって考えていく、財形的な精神を組み入れて考えていくというようなことが必要であると思うのでありまして、こういった点につきまして、いろいろ施策が行われますが、政府も民間も業界もまた個人もそれに応じて活力ある対応策を持っていくという一環として申し上げましたが、総理の御見解をお伺いいたします。
  88. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 国の財政金融政策を進める中で、私企業ではありまするけれども、これはきわめて公的な性格の強い保険会社、この資金の活用ということは非常に重要なことであり、私は御指摘のとおりだと思います。ですから、この資金が住宅なんかにはずいぶん活用されておる。また、その保険事業を伸ばすために、その保険に加入すればこういう見返りを加入者に対していたしますよというようなことも、民間ではかなりやっておる、こういうような状況でありますが、これは長期の資金でありまするから、あらゆる工夫のもとに活用しなければならぬと考えています。  なお、詳細につきましては、御趣旨の線でさらに検討いたしてみます。
  89. 木野晴夫

    ○木野委員 私、いま申し上げましたのは一例でありますが、この対策にあらゆる部門で活力ある対応を示すということをお願いしたい。  それで、中小企業の体質改善でございますが、私たち見ておりますと、中小企業は体質改善をしていくというよりも、中にはやめたい、やめよう、撤退しようというのもあるわけでありますが、そういったのと、政府の住宅政策、公共用地の政策、そういったのを絡ましていくとか、いろいろ配意をお願いいたしたいと思うわけであります。  時間がございませんので、次の問題に移りたいと思いますが、公債の依存度三〇%ということであります。私も財政健全化の立場から一応大蔵大臣の気持ちもよくわかるわけであります。ことに、いまのままで伸ばしていきますと、昭和五十五年には累積国債の額が五十五兆円に上るというのでありますから、私は一つの歯どめをここに求めておるというのはわかるのでありますが、しかし一応問題としまして、この三〇%を緊急避難的に現下の問題を解決するために弾力的に考えるということにつきましてどのようなお考えか聞きたいのでございます。このことは、今回の補正予算の内容を見てまいりますと二九・九四%ということでございまして、非常に無理をしておるという点もうかがえるわけでありまして、一応この三〇%についでどういうように考えているかお伺いするわけであります。  それとともに、五十五年になってまいりますと財政をどのように持っていくのかということでありますから、中期構想を一応論じられておりますが、政府としてはしっかりとした態度でこれに対応する、国民に理解を求める、こういったことが必要であると思います。  それで次に、大蔵大臣にお伺いするのでありますが、新税をどのように考えるか、一般消費税をどのように考えるか、そういった考え方、それからいわゆる不公平税制なるものについてどのように考えるか、それから投資減税と言われておりますが、それについてはいろいろ問題があると思いますが、どのように考えておるか、このことをお伺いいたしたいと思います。  時間がございませんのでもう一点言いますが、それとともに歳出についての十分な検討であります。補助金が九兆五千億と言われております。二十八兆円の予算に非常に大きなウエートを占めておるのでありまして、国民の方々は補助金にメスを入れろという声があります。私も、この補助金につきまして政府において十分な検討を加える必要がこの際あるのじゃないか、こう思いますので、以上の点につきまして大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。
  90. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申し上げます。  大変盛りだくさんの御質問でございますが、時間がないので、それでは御希望によりまして簡潔に申し上げさせていただきます。  まず第一に、御質問は三〇%ということにこだわるな、こういうお話であったかのように思いますが、木野さんよく御案内のとおり、いまの日本の国の財政はすでに三年近く三〇%近い公債依存率を続けてまいっております。そこで、この調子で緊急避難だからことしはひとつ緊急避難をしていいじゃないかというような考え方でまいりますと、これは往々にして一種の歯どめという性質を失いまして、三〇%と三一%と数字においては余り変わらぬじゃないかというような気持ちでもってはとても――私は、これは三〇とか三一とかいうことでなしに、公債に対する依存度が膨張していくことの一つのかたい歯どめというふうに理解いたしまして、これを守ってまいりたい、絶対に守ってまいりたい、かように考えておる次第でございます。  そこで、ひとつそういうことなら中期というか長期というか財政計画を立てて、そしてこれを国民にはっきりさせたらどうか、こういう御意見でございますが、大変ごもっともな点もございます。ところで、これをやりますということは、長期の財政経済に対する見通し、いま年々やっておりますね、それをひとつ見通さなければならないということが容易ならざる問題だと私は思います。しかしながら、これは私どもも財政運用の一つの指針といたしましてそういったような計画が何ら必要はない、そういうようなつもりはございません。そういったようなことで、財政制度審議会にも頼みまして、審議会に財政基本問題小委員会ですか、そういったようなものをつくって、そこでこの問題について真剣に検討をしていただいておるというようなことでございますので、そういったようなものができたときにはできたときで私どもは考えてまいりたい。  ただ問題は、その財政計画を立てますと、将来におきまして、うっかりいたしますとそれがかえって財政膨張というふうな方にいくようなおそれも反面においてあるということも、これは十分気をつけてかからなければならない、かように考えておるのでございます。  それから、新税についてどう考えるか、こういうことでございますが、これはすでに税制調査会から中期的な税制として答申を総理大臣がいただいて、私もこれは見ておるわけでございますが、今後日本の国の財政経済というものは、やはり福祉を中心として国家のサービスと申しますか社会サービスといいますか、そういったようなものはだんだんと充実していかなければならないという点から考えますと、いまのままではなかなかこの要請に応ずることができない。そうするとまた公債政策といったようなものに陥ってくるというようなことも考えますと、中期におきましては何とかして国民に対して負担の増をひとつお願いしなければならないということでございまして、そういった見地から、税制調査会におきましては非常に広範な見地から税制全般についてのいろいろな提言をいただいております。その提言に対しましては、私どもも本当に敬意を表し、かつ尊重してまいらなければならない、かように考えております。  しからば、それをこれから一体いかなる態度でもって、どういう方法でもって実現していくかということにつきましては、これは中期の視点に立った税制でございまするから、五十三年度以後、各年度年度の経済、財政の実情というものをよくキャッチいたしまして、そうしてそれとこうにらみ合わせて具体策を立ててまいりたい、かように考えておるのでございます。  もちろん税制調査会の御答申にも、そういったような国民負担を頼まねばならぬというようなときには、これは絶対にそれの前提と申しますか、そうやっていくためには、基本的態度といたしまして、歳出の面においてでき得る限りの検討を加えて、そうしてこれをスクラップ・アンド・ビルドに徹して抑えてまいるということを言われておりますけれども、私どもももちろんそれが何よりも大事なことだ、かように考えております。  そういうようなことから、その一環としてただいま御指摘の補助金につきましては、これももうすでに木野さん御案内のとおりでございますけれども、その補助金は五十二年度の予算ベースにおいて九兆五、六千億円ということになっておりますが、これをことしの八月あたりから、一々の補助金につきまして主計局を中心として見直しをやっておるというわけでございます。ただ、むずかしいことは、その補助金の中に、公共事業だとかあるいは福祉だとか教育だとか、そういったようなもあについての補助金が、これはどうやら八割以上、それからまた、その補助金の中には法律によって規定されておるものが、これも八割以上ある。こういったようなものについてはぜひとも国会において御協力を願わなければできない、こういうわけでございますが、ひとつこの意のあるところを御了承いただきまして、何分の御指導と御援助を切にお願い申し上げる次第でございます。  まだ申し上げたいことがありますが、時間がございませんからこれでひとつ……。
  91. 木野晴夫

    ○木野委員 今回の補正予算をめぐりまして政府から説明がありましたが、その場合に問題になっておりますのは、具体性に欠ける、こういった意見があります。そうして厳しさに欠ける、こういった意見もあります。  私は、ただいまの大蔵大臣の話を聞いておりまして、歳出に手を加える、補助金はどうするか、こういったことにつきまして、むずかしい問題があるかもしれませんが、一つ一つ真剣な努力を払う、このことが国民の理解を得る一つの手段であると思うわけであります。  行政整理につきましてもこのことが言えると思います。行政改革、これはやるんだ。中央のはどうか、地方のをこうしているじゃないか、中央のは追って出すんだといった、そういった問題ではなしに、やはり行政改革を論ずる場合に、この際何をすべきであるかという、そういった原点に立ち戻って考えてみる必要があると思うのでございます。  私は、総理の行政改革に対する態度は、心中非常に確固たるものがあると思うのでありますが、どうかひとつ、中央も地方も万般にわたって行政改革を考える、そうして人員整理につきましては、こういったときでありますから、その気持ちもわかるわけでありますが、しかしながら、必要なところに人を配置する、こういった点からいろいろ考えるということも必要であろうと思いますし、また、行政改革とともに仕事のやり方を考えていく、役所間の協調と連帯、まあそういったこともひとつ必要じゃなかろうかと思うわけでございます。それがあって初めて国民の共感を得られる、こう思うわけでありますので、補正予算審議に当たりまして、特段の御努力を私はお願いする次第でございます。  時間も大分たってまいりまして、一言お願いいたしますと、ただいまのは中央の話、国の話をしたわけでありますが、地方も同じく困っておる。そこで、中央も地方公共団体も、ひとつ十分な配意をしてやってほしい。公営企業の問題もその一例でありますが、どうかひとつ、役所間の協調と連帯で地方も十分にめんどうを見たというふうなことを考えていただきたい、このように思うのでございます。  時間も参りましたので、私はエネルギー問題につきまして、簡単に政府の所信をお聞きしたいと思います。  エネルギー問題は今後の重要な問題であります。このエネルギー問題は、石油がなくなる、石炭がなくなる、そこでこれでしまいになるんだというのではないのでありまして、新しいエネルギーを開発するんだ、いまはその端境期なんだ、こういうことで、この間に新しいエネルギーの確立に努力する、こういった前向きの態度が私は必要である。そういった一環として、たとえば地熱の問題もありますし、太陽熱の問題もありますし、また大きなウエートを占めるのは原子力の問題であります。  先般、東海村の再処理工場の開始につきましては、総理以下関係の皆さん方の御努力で合意を見るに至りましたが、私ば、そういった問題も積極的に取り組んでいく必要があるんじゃないかと思うわけであります。国民にそういったことを訴える必要があるんじゃないかと思うわけであります。その基盤は、新しい石油を、新しいエネルギーを考えていくんだ、ここに問題をしぼりまして、前向きで取り組んでいくということが必要であろうかと思います。総理は核融合につきましても関係大臣に指示されたということであります。この点はさらに意見を聞く必要がないと思いますが、どうかひとつそういった考え方で取り組んでいただきたいと思うわけであります。  それとともに、天災は忘れたころに来ると言われておりますが、実は石油はいま供給状態が一応安定しております。そこで、省エネルギーの対策について油断をしているんじゃないか、こういうことでありましたならば、私は、いまのことわざが返ってくると思うわけであります。いまこそ、こういった省エネルギーの問題につきまして、政府としましては、省エネルギーの事業に対し、そういったことに対して考えていく、また、一般もそういったことについて積極的に協力していくということが必要であろうかと思うわけであります。  さらにまた、アメリカの経済収支が悪いんだと言っておりますが、これは石油を買っておるから悪いんだと言う人もございます。資源のあるアメリカでも備蓄を大いにやっておるということであります。日本ではそういった点についてどうなのかと思いますと、この際、積極的にエネルギーの問題に取り組んでいくとともに、この前の石油ショックのころを忘れることなく、備蓄、省エネルギー、そういった問題につきまして特段の努力を続けていく、これが必要であると思うのでありますが、この点につきまして、総理の御見解をお伺いいたします。
  92. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今日、とにかく世界が文明史的にも転換だ、そういう時期と言われておるくらいな変動期でございます。そういう中でわが国は、変転するこの環境、新しい環境ですね、それにこたえなければならぬ、対応しなければならぬ。その対応というものをいま一番求められておるのは企業である。先ほどからも申し上げましたが、そうじゃないんです。政府も地方公共団体も、各家庭までもが、新しいこの時代意識というものを持って、これに対応する構えを示さなければならぬ。そういう意味から言いまして、行政改革、行政の面での新時代への対応、これは非常に重大な問題だ、そういうふうに私は考えておるわけでありまして、これはもう何としても政府が責任を持って実現をしなければならぬ問題である、またその決意でございます。  それから、資源エネルギーの問題につきましては、全く御説のとおりでございまして、その方向でやっていきます。まあ、資源エネルギーは有限だけれども、日本人の頭脳は無限であるというくらいな心構えでひとつこの問題に取り組んでまいります。
  93. 木野晴夫

    ○木野委員 財政、経済全般にわたりまして政府の所信をただしましたが、そのほかにも、国防問題、また教育問題、いろいろあるわけでありまして、大事なときに来ておりますから、どうかひとつ政府におきましても、率直に国民に現状を訴え、ともにやっていく、こういった姿勢で問題に対処していただきたいことを重ねてお願いいたしまして、佐藤委員の関連質問に移りたいと思います。
  94. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 この際、佐藤文生君より関連質疑の申し出があります。木野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。佐藤文生君。
  95. 佐藤文生

    佐藤(文)委員 総理初め関係閣僚に、このたびのハイジャック事件を通じて、完全防止ができるよう、今後の政府の所信をお尋ねしたいと思います。  まず、総理にお尋ねしますが、私が言うまでもなく百五十六名、その中にはハイジャッカーらしい五名を含んでおりますが、百五十一名を人質にしてのハイジャック事件であります。しかも、その百五十一名の中に外国人が五十七名いるわけです。アメリカ人が十名、エジプト人が七名、インド人が五名、パキスタン人が六名、フィリピン人が五名等、十七カ国の外国人が乗っておるわけです。このたびのハイジャッカーの挑戦目標というのは、私は、この十七ヵ国に向かって戦いをいどんでいると言っても過言ではないと思うのです。国際的に非常に影響が大きいと思います。  そこで、昭和四十八年の八月に、政府がハイジッャク事件に対して、こういうことを防止しようという要綱ができているのです。いま政府が考えている要綱と同じであります。要は実行なんですね。実行されていない。総理は、副総理としてクアラルンプール事件、それから今度の事件を通じて、人命尊重ということで一本筋を通して、国民的な評価は得たと私は思います。私どももその方針について疑義をはさむものではございません。しかし、一方このようなことが何回も続くなら、日本の法秩序はめちゃめちゃになってしまう、法治国家としてどうなるんであろうかという批判も今度ぐらい大きく上がったこともありません。したがって、この事件を通じて、総理は、今後ハイジャック事件というものを防止するためにどういう決意があるかお尋ねしたい。  そこで、昭和四十八年、私はアメリカの運輸大臣とこのハイジャック事件を話したことがありますが、アメリカは百八十回起こっているんです、国内でハイジャック事件が。そうして昭和四十年代は一年間に四十回から三十回起こっている。現在は一年間に三回ないし十回ぐらい起こっているんですね。そういったように、アメリカは長い経験のもとにあらゆる防止措置をしてもハイジャッカーを根絶することができないほどむずかしい問題でございます。したがって、政府としては継続的に強力にハイジャック防止対策を考えて対策をとっていくかどうかということを国民の前に私ははっきりしていただきたいと思います。
  96. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今回のハイジャック事件につきましては、私も、犯人を釈放してしまう、よって、ハイジャック、犯人の釈放、そういう悪循環を起こすことになるという、法秩序の維持の考え方、また、いまあなたからお話がありましたように、人質の人命の問題、これをどういうふうに処置するかずいぶん思い悩んだわけでありますが、結局、人命尊重、人質の人命を尊重する、こういうことでこの全案件を処理したわけであります。  そういう際に、私は本当に感銘深いのは、あなたを初め公務員の中で五名の方が、私どもが進んで人質になるからあの人たちの命を助けてください、こういうふうな申し出までしてきてくれた、本当に私はこれは忘れ得ざる感銘でございますが、それはそれといたしまして、問題は、再びああいうハイジャックというようなものを起こさせないことにある。  それで、四十八年のハイジャック事件、あのときからずうっと問題が提起されておるわけです。その中のほとんど大部分は実施されておるのです。実施されておりましたけれども、それからさらにクアラルンプール事件が起こってしまった。またその反省の上に立っていろいろのことを考えて実施されたものが多いわけでございまするけれども、しかし、今度の事件を顧みてみまして、やはり新しく考えなければならぬ点が多々ある、こういうふうに思うのです。それは国内的にもある、国際的な協力を求めなければならぬ点もあるわけでありますが、こういう問題は、ややもすれば、むずかしい問題になりますと、時が経るに従いまして忘れられてしまうんです。そういう点が非常に問題だろうと思うのです。それで私は、鉄は熱いうちに打て。そこで今度の問題は、これを反省していろいろなことが考えられる。その考えられるあらゆる問題を今月中に結論を出す、そして今月中を待たずもう結論が出たものにつきましては今週中からでも実行する、こういうことにしたい、こういうので、いま関係各省鋭意相談しているんです。きのうも、休みでありまするけれども集まって相談をしておる、こういうような状態でございます。御所見ごもっともでございますので、今度は本当に熱いうちにこれを打つという実を上げたい、かように考えております。
  97. 佐藤文生

    佐藤(文)委員 園田官房長官に、政府対策部長として、ハイジャック防止対策についての方針をお尋ねします。
  98. 園田直

    ○園田国務大臣 いまおっしゃいましたとおりに、先般の事件の後、対策本部ができておるわけでありますが、要綱その他を決定いたしましたけれども、必ずしも実行されなかったうらみがあることは御承知のとおりでございます。そこで、その閣議で決定いたしましたのを廃止いたしまして、新たに十月五日内閣にハイジャック等非人道的暴力対策本部を設置いたしまして、関係閣僚、警察庁長官、それから海上保安庁長官等関係者をもって構成をし、その下に関係各省の事務関係を充て、さらに、運輸大臣の指名する、実際に人間の輸送に当たる日本航空の職員二名を加えまして幹事会を編成し、すでに一回本部会を、二回幹事会をやって、十月中にその骨子をまとめ、まとまったものは逐次実施をしていきたい。国内と国外の大体二つと、もう一つは原因の探求、この三つに分かれております。  そこで、この本部は、十月中に骨子をまとめたらそれで目的を達するものではなくて、さらに、各党ともハイジャック防止に対しては委員会等で研究をなされておる由でありますから、これ等も参考にし、実行することがこの対策本部の使命であるということを考えてやっていきたいと考えております。
  99. 佐藤文生

    佐藤(文)委員 法務大臣にお尋ねします。  法務大臣、このたびのハイジャック事件の処理に関して、前回同様に超実定法的な措置をとりました。再びこういう事件が起こった場合に、法の番人としての法務大臣はどういうお考えで対処するつもりでございますか。
  100. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 お答えいたします。  今度のハイジャック事件に対する政府の決定は御承知のとおりでありますが、私は非常な苦脳の結論であったと思います。これは当然のことであります。人間の生命を尊重するということといわゆる法治国家の法秩序を守るということは必ずしも両立しない問題であります。しかし、ああいう現場の事態を見ますると、残念ながらああいう措置をとらなければならなかった、私はそういうふうに肯定をいたしております。  今後起こったらどうするか、これはまたきわめて深刻な問題であります。いま総理や官房長官からお答えのように、人間のできることは可能な限りこういうことが起こらないようにするということがもう最良の方法であると思いますが、それにもかかわらず、いまの世界の情勢を見ますると、必ずしもそれが万全であるかどうかという多少の心配をいたしております。そういう際に、これは皆さんばかりでなくて国民全体が考えなければならないのは、一体この憲法のもとに法律を施行して、いわゆる法治国家を経営するというのは、こればすべての国民の生命、財産を保全して、平和で豊かな暮らしをするという、人間の考えた最良の方式として現在行われておるわけであります。これはすべての国民の生命に関する問題だと私は受け取っておるのです。でありますから、これを守るということが国民にどんなに必要なものであるか、国家全体にとって必要なものであるかということを国民全体が真剣に考えなければ、こういう問題は簡単に解決しない。これが一番大切なことだろうと思いますが、私は、こういうことがたびたび重なっていきますと、法治国家の実体はなくなる、こういうことを心配しております。でありますから、これを防ぐことが大前提でありますが、いまおっしゃったように、もし仮に起こった場合はどうするか。その際には、私は、法治国家を守る、このあらゆる国民の生命、財産、平和を守るという、これをゆるがせにしてはならない、そういう決意で臨むべきものである。しかし、それはそのときそのときの状況の判断があります。なかなか一律にはいかないと思いますが、その際の状況、国民感情、あらゆるものを総合して、法治国家を維持するにはどうあるべきか決断をする時期があると思います。そうでないと、法治国家というものは必ず暴力によって屈する、これは私はとるべきでない、かような考えであります。
  101. 佐藤文生

    佐藤(文)委員 鳩山外務大臣にお尋ねします。  ハイジャッカーを輸出する国日本、この汚名を着ている環境、情勢の中で、昨日西ドイツの外務大臣とお会いになったそうでございますが、ハイジャック防止についてどのような話をしたかどうか。それから今後、国際三法、モントリオール条約も含めて東京、ヘーグ、この国際条約に全世界各国が加盟するように、国連を通じ、あらゆる機関を通じていままで外務省はやってきたのかどうか。それを今後やるべきだと私は思う。日本の外交の大きな柱にハイジャック防止外交を展開すべきだと思うので、その所信をお尋ねしたい。  ちょっとお待ちください。もう時間がございませんので、続いて申し上げます。  国家公安委員長にお尋ねをします。  赤軍派の欧州を中心にした実勢、今後の戦略として日本の帝国主義と商社とJALをねらうということは、五十年にすでに日本の新聞記者と向こうのリーダーとの対談の中に出ている。その情勢に対して、国際刑事機構との連携のもとに、どのようにそれを訴え、協力体制ができているかどうか、その実態をお尋ねしたい。  それから運輸大臣、ハイジャック防止対策は短期的には水際作戦である。短期と中期は国内の整備を早急に打ち立てることであると私は思う。刑事訴訟法の改正によってテロリストに対するところの裁判のスピード化を絶対やらなければいかぬ。中期、長期に対しては、国際条約に世界の国国が加盟をして、今度リビアがやったように、モントリオール条約に入ったリビアは今度は犯人を受けつけなかった。このように、条約に入ることがいかにこの防止に役立つかということを見たときに、運輸大臣としては、この一番短期的な水際作戦をどうするのか、私はそれを具体的に聞きたい。  それから文部大臣には、教育を通じて――子供の遊びが人命にかかわる遊びに転化しておる。人命尊重と法律を守るということについて、国民日本の教育をこのハイジャック事件を通じて心配をしている。  以上、関係閣僚に続いて質問いたします。時間がございません。一時三十分まででございますので、それぞれ要点だけをお答え願います。
  102. 小川平二

    ○小川国務大臣 日本赤軍の実態並びに国外、国内における支援組織、現に調査をいたしておりまする警察の当局からお耳に入れます。
  103. 三井脩

    ○三井政府委員 日本赤軍は、海外に約二十名おります。国際的な協力のおかげですでに今日まで九名送り返されてまいりました。国内でそれぞれ刑を終わったり等いたしまして、これが国内で支援組織をつくっております。それが京都大学における立て看板の出現とか、そういう形になってあらわれておるところであります。  私たちといたしましては、今後とも国際協力を推進するために、関係各国の治安機関との協力を緊密化していく、また、ICPO、国際刑事警察機構による手配をさらに実効あるものとするためのいろいろの措置に努めてまいりたいと思いますが、その裏づけとなります国際的な合意の盛り上がりといいますか、こういうものを認めないという気持ちの盛り上がりというものが大切だと思いますので、関係機関とも連絡をとりながら推進してまいりたいと考えておる次第でございます。
  104. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 お答え申し上げます。  第一に、昨日西ドイツの外務大臣と話し合いをいたしましたが、現に西ドイツにおきまして事件が継続中でありますので、この問題についての発言はしないことにいたしました。  それから第二点でございますが、東京、ヘーグ、モントリオール三条約、航空機の不法な奪取の防止に関するいわゆるヘーグ条約が主体となろうと思いますが、これにつきましては、まだ加盟国が七十八カ国ということで、国連加盟国からすればほぼ半数ちょっとというところであります。すべての国がこの条約に加盟することになりますれば、非常にハイジャックが起こりにくくなることは明らかでありまして、この点につきましては、ICAO、国際民間航空機関の場を通じまして、また国連等の場も通じまして、あらゆる国がこれに加盟するように日本として大いに働きかけてまいりたい。また、ハイジャックは国際関係で協力をすべき分野が非常に多いのでありますから、今後この問題につきまして鋭意努力をいたしたいと思います。
  105. 田村元

    ○田村国務大臣 まず最初に、先ほど官房長官が御答弁申し上げた中で一つ私が訂正しておきたいことがあります。それは、運輸大臣の推薦するといいますか、日本航空並びに全日空ということでありますので、その点訂正をしておきたいと思います。  いま現実にやっております予防策というのは、ジェットの入る十八空港におけるボデーチェックとか、あるいは金属探知器、レントゲン、あるいは持ち込み荷物あるいは受託荷物等の開披の検査等もやっておるわけでありますが、これはもっと強化しなければいけない。それから国際線でありますけれども、非常に厳重な国もあります。けれども、日本航空の飛行機が経由するところは、これは先方の了解のもとにJAL自身がもう一回ダブルチェックするというようなことをしなければならぬということも考えたりしております。それから持ち込み品のかばんの制限を厳しくした方がいいのじゃないか。あるいは日本の飛行機が寄港するところのボデーチェックその他の実情の調査ということもこれからしっかりやっていかなければならぬ。いろいろなことをいま考えまして対策を急いでおります。いずれにいたしましても、今後、事日本航空に関してはこのようなことが再び起こらないように、全力を挙げて政府も指導、監督をしてまいりたいと考えております。
  106. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 学校教育におきましては、人間の生命のとうとさということをそれぞれの発達段階に応じて教えておりますが、大切なことは、みずからの正当な権利を主張する人は他人の正当な権利を認めていかなければならぬという義務があるはずであります。権利と義務を明確にわきまえて、人の命に関するようなことに軽々な行動や発想をしないということが何よりも基礎的、基本的に大切である、このことをしっかり指導してまいりたいと考えております。
  107. 佐藤文生

    佐藤(文)委員 総理に最後にお尋ねします。  この事件が起こりました。したがって、国際儀礼上、バングラデシュ、クウェート、アルジェリア、あるいはその他の、そういった非常に御迷惑をかけた国々に当然儀礼的に閣僚クラスの方が出かけると思いますが、この機会にハイジャック防止外交として閣僚クラスの人を政府として出して、この機会に、日本がイニシアチブをとって、ハイジャック事件を国際的になくすための努力をやる意思があるかどうかお尋ねしまして、質問を終わります。
  108. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 御迷惑をかけた国に対する謝罪というか感謝の意を表明する、これは当然しなければならぬことでありまして、いま考えております。  それから、やはりこの問題の事後処置ですね、今後再びこういうことが起こらないようにというためには、これは国際的な協力が必要なんです。その協力を要請するいまが非常にいい時期だと思うのです。また時間がたちますると、受ける側の諸外国の感覚も薄れてしまう、こういうことになりますので、なるべく早いうちにお話しのような処置を進めたい、こういう考えでございます。
  109. 佐藤文生

    佐藤(文)委員 終わります。(拍手)
  110. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 これにて木野君及び佐藤君の質疑は終了いたしました。  次に、小林進君。
  111. 小林進

    ○小林(進)委員 総理にお伺いをいたしますが、日中共同声明が発せられてからすでに五年の歳月が経過をいたしておりますが、今日なお平和条約の締結ができていないのであります。共同声明の第八条に「日本国政府及び中華人民共和国政府は、両国間の平和友好関係を強固にし、発展させるため、平和友好条約の締結を目的として、交渉を行なうことに合意した。」ということがありまして、もはやいま当然これができていなければならないわけであります。特に立法府の一員といたしましてまことに遺憾にたえないことは、この共同声明が出された直後であります昭和四十七年の十一月八日、参議院においては同じく十一月の十三日であります。「共同声明にうたわれた諸原則のもとに、すみやかに平和友好条約の締結等を進め、両国間の恒久的な平和友好関係を確立するとともに、両国の親善友好が、ひいてはアジアの安定と繁栄に寄与し、さらに世界の平和に貢献するよう最大の努力をいたすべきである。右決議する。」という、これは全会一致ででき上がっているのであります。これに対しても何ら政府の反応はいまだあらわれないということは、これは立法府に対する重大な軽視の行為であると思うのでありまするが、総理の所信――所信じゃありません、どこに一体この原因があるのか、原因を承りたいと思うのであります。
  112. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 御説のとおり日中平和友好条約は日中共同声明にうたわれておる。この日中共同声明ができましてから五年になるわけでありますが、その五年の間にかなり努力が行われた経過につきましては、小林さんも御承知のとおりと思います。要するに共同声明を条約化する、この条約化する方途についていろいろ意見が交わされまして、そして国内的にもわが国でいろいろの政治的な変動等もありましたものですから、それでおくれてしまっておる、こういうことかと思いますが、しかし国会の御決議があること、これは私もよく承知しております。また国内の世論の動向、これもよく私も承知しております。でありまするから、しばしば私が申し上げておるとおり、これは日中両国が満足し得るような形でなるべく早くこの条約を締結いたしたい、こういう考え方をいたしております。
  113. 小林進

    ○小林(進)委員 それはいままでおくれたことの理由の解明にならないのでありまするし、いま総理の言われた日中双方の満足というその言葉でありまするが、これは大変どうも考えによっては、やらないカムフラージュの言葉ととられるおそれもある。この問題につきまして、総理も御承知のとおり、日中議員連盟という衆参両院超党的な会合があります。現在五百三十名に近い衆参両院議員を擁しておりますが、この会長の濱野清吾氏を団長にいたしまして、各党の代表がこの九月の七日から中国を訪問いたしました。そこで鄧小平中国の副主席が、日中平和友好条約の締結がおくれている原因は中国側には何一つない、挙げて日本側にその責任があるのである、と発言されているのであります。これに対しては、自民党各派の代表と思われる方々も一人反論する者がなかった、これを認めたということであります。これを受けて濱野団長は、国会の場で、あらゆる時期、あらゆる手段、方法をもって必ずこれを通します、通す確信を持っております。どうぞ信頼をいただきたい、という約束をしてきたのであります。鄧小平氏の発言及び濱野会長の日中議連五百三十名を代表してのこの発言に対して、政府は一体いかような御所見をお持ちになりますか、いま一度総理のお考えをお聞きいたしたいのであります。
  114. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日中平和友好条約を締結いたしまして日中関係を百年の緊密な関係に置く、これはもう私は歴史の流れだとしばしば申し上げているのです。ですから、私もそれをどういうふうに進めていくかということにつきましては、これはこの間本会議でも申し上げましたが、片時も忘れていない。この問題の処理、この問題はそういう方向で静かに進んでおる、こういうふうに御理解願いたいのです。  ただ、私がこの七月でありましたか、新聞社の質問に答えまして、いままでとにかく日夜忙殺されてこの問題を進めるいとまがなかったなんということを申し上げたのですよ。そうすると、またこれが北京でいろいろの反響、私の真意を誤解したかのごとき反響も出てくるというようなことで、私はこの問題の進め方、段取りについては非常に慎重でございます。なるべく静かにこれを進めていくというこの方向、これが両国のためにいいのではあるまいか、そのように考えておるわけでありますが、私が先ほど申し上げましたような基本的な考え方につきましてはいささかの異同もありませんから、その点は御理解のほどをお願い申し上げます。
  115. 小林進

    ○小林(進)委員 どうも慎重にやるとか静かに静かにという言葉は、これは慎重にやらぬという言葉にも通ずるのでございまして、われわれはどうもそれを素直に受け入れる時期はもう過ぎた。福田内閣が成立いたしましたのが昨年の十二月の二十四日であります。それ以来この問題に対する首相を中心とする内閣の動きを見ておりますと、この一年足らずの間に大体一つの形が浮かび出てまいりました。  首相が日中友好条約を進められていく上に障害となっているものが三つある。第一は官僚であります。外務事務官僚。第二番目が自民党の長老と称するいわゆる長老組と青嵐会等に標榜せられる親韓、親台のグループであります。それから第三番目が対ソ問題。これが明らかにされているのが、まず第一番目に一これは時間がありませんから急ぎますけれども、総理が中国問題を明確にされたのは、ことしの一月十日であります。中国を訪れる河野参議院議長に積極的に取り組むとの伝言を依頼されたことから始まった。そういたしますと、直ちに一月十八日、例の宮澤四原則について園田官房長官は、宮澤四原則は原則でも条件でもないということを発表された。ところが、間髪を入れず一月十九日、外務省首脳部は直ちにこれを反論いたしまして、四条件を原則、条件とはせぬが、考え方とは変わらない、宮澤の四原則の考えとは変わらないという宮澤四原則支持の表明をいたしました。これに対し園田官房長官は、一月二十一日、統一見解であるとして、四条件は覇権条項に対する政府の理解であって、今後の交渉のたたき台にすることはないと発表した。ところが、これに対してまた外務官僚は抵抗を示しました。一月二十四日であります。福田首相が竹入公明党委員長に伝言を依頼したその言葉をとらえて、日中双方の意見が一致すれば早期に進めたいということに対し、あの伝言はあいさつであって政府の政策決定や行動を意味しないと反論をしてきた。そこで、翌一月二十五日、園田官房長官、鳩山外務大臣の統一見解だ、二人で会ったんだ、そこで統一見解が発表され、竹入伝言は単なる儀礼ではない、宮澤四条件では官房と外務省に食い違いはないと発表をしたのであります。これでようやく国民は、三木、宮澤の亡霊に踊る外務官僚を引き離して、新しい福田内閣の中国外交の姿勢が出たなということを認識したのであります。そこで一つの期待福田内閣に持った。いいですか。持ったんだ。ところが、その後首相がいみじくも双方満足のいく形でという妙な言葉を言い出されてきた。これが二月二十五日、当時中国の大使であった小川氏が北京へ帰られるときにこれを伝達する形で言われたのであります。ところが、条約の中に満足のいかない条約と満足のいく条約と一体二種類あるのかどうか、私どもはこれほど不思議なことはないのでありまして、これが第一どうも腑に落ちない。これは後から総理にひとつ解明をいただきたいが……。  こうして外務官僚の抵抗をはねのけてきたら、次に抵抗を示したのが青嵐会。五月二十九日だ。姫路会談で首相は保利議長訪中に親書を託すという発言をされたんだが、その直後の五月三十一日、自民党総務会で、この問題で濱野清吾会長と久野忠治、朝鮮民主主義人民共和国に使いをする、この二人と青嵐会の諸君とが大激論を闘わした。この激論が闘わされてくると総理の姿勢が少しずつ後退していく。     〔田中(正)委員長代理退席、澁谷委員長代理着席〕 六月四日、所沢で、親書の委託は未定と変更した談話を発表せられた。次いで六月七日、首相は自民党長老との懇談会を持たれた。これは第三の長老抵抗劇の始まりであります。そこで、長老岸信介氏から、外交は外交ルートでやりなさい、こういうおしかりを受けた。おしかりと言っちゃ総理大臣に対して失礼でございまするが、かつて、いまもそうでありましょうが、親分であり、先輩でございまするから、こういう言葉を使うこともひとつ御了解を得たいと思う。もし悪ければ、注文をつけられたら訂正をいたしましょう。次いで灘尾弘吉氏から、日中条約は党の正式機関でやりなさい、こういう注文を受けてさらに後退せざるを得なくなった。いいですか。それから今度は六月九日だ。第八十国会終了、日韓大陸棚自然成立という韓国ロビーにおみやげができ上がった。このおみやげを持って、七月二十二日、再び首相と党長老との会見が行われた。そのときに、日中は回避できないと首相は長老に真情を吐露された。これに対して岸、灘尾の長老は何と言った。慎重におやりなさいと注文をつけたのであります。この慎重にやりなさいということは一体どういう意味なんだ。親友細田吉藏君がここにおりますから、彼に解説を頼んだ。彼いわく、うまくやりなさいということで、これはやりなさんな、やらぬでもよろしいということにも通じますと解説してくれたのであります。実に名解説であります。ということでございまして、こういう党の長老あるいは青嵐会、親韓派、親台派の歯どめの上に立って首相の発言が、双方の満足いく形で条約を締結したいという言葉を繰り返すように後退をしてきた。これでは困るのであります。  そこで、首相にお伺いいたしますけれども、ところが首相、あなたはお笑いになっている。お笑いじゃないのだ。私は、重大問題ですから、自民党の長老にも全部聞いたのだ。そうしたら、自民党の長老は何と言った。某議長も含めて長老は言った。まあどうも東大出身、大蔵省出身の秀才の頭脳構造はわれわれにはわからぬよと言うのです。こういうことを言われた。けれども、私は、それは長老や某元老の名誉にも関しますから、もしお聞きしたいとおっしゃるなら、こっそり速記をつけないところでお話ししてもいい。これは変わりなき名言であります。東大の秀才、大蔵省秀才の頭脳の構造はわれわれにはわからぬよ、悲しい声で言われた。  こういうわけでございまして、そこで日中共同声明は、双方が満足のいく内容でやりたいと言うが、元へ戻りますけれども、その満足のいく条約、満足のいかない条約、どういう区別があるのかお聞かせを願いたいと思います。
  116. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 共同声明は、両国政府がその政府の姿勢を示した文書でございます。私は、両国ともこの共同声明には責任を持つべき立場にある、こういうふうに考えます。ただ、これを条約に直す場合におきましては、文言をどうするとか、それはいろいろむずかしい問題があるのですよ。そういうことで文言のすり合わせ、そういうものが両方が納得するということがなければどうしたって条約にならぬでしょう。そういうことを言っているのです。やはりいい条約ができたな、これはりっぱなものだ、さすが福田赳夫だ、こう言われるような条約にしたい、こういうふうに考えておるわけでありまして、しかし、基本的な考えにつきましては累次私が申し上げておりますとおりでございます。
  117. 小林進

    ○小林(進)委員 私は総理のいまの御答弁も残念ながら了承することはできません。両方に満足いくような形でおやりになると言っていますが、その文言の修正や条文の字句の修正等が条約に必要なことは三つ子も知っております。それは両方が話し合ったその過程の中に生まれてくるものであります。何も状況はないじゃありませんか。私は北京にも行きました。外務省にも聞きました。何を一体具体的に話をお進めになりましたか。交渉を進めている過程にいま総理の言われることが出てこなくてはならない。何にもしないで、ただ、やるよやるよと、ライスカレーをカレーライスと言いかえただけの発言の中で行動が伴わなければやらぬのと同じじゃないかと私は思う。行動が出ておりますか、総理。残念ながら出ておりません。  そこで、五年前共同声明が行われてからこの五年間、歴代内閣と歴代外務大臣のその姿勢を全部私は調べてまいりました。一体五年後に何が出たか。内閣は田中内閣、三木内閣、福田内閣と三代かわってまいりました。その間に外務大臣は五人出てまいりました。大平あるいは木村、宮澤、それから短期間でありますが、小坂善太郎という名外務大臣が出られまして、その後を受けていまの鳩山外務大臣が出られた。こういう勘定になっておりまするが、これをずっと調べてまいりますと、これはみんな発言録があります。時間がないから、私はやりません。出てまいりますと、この大平外務大臣も、日中共同声明には問題がないと明言をしておられます。木村俊夫外務大臣も、この日中共同声明には問題はない、もはや条約の中に出すべきものは全部出ているのだ、共同声明の中で全部出ているのだからこれを条文化すればよろしいという答弁をしておられる。  ところが、いみじくも昭和四十九年の十二月の何日かに宮澤という外務大臣、三木内閣が出てまいりますると、いままでの両外務大臣の主張がくるっと変わってくるのであります。     〔澁谷委員長代理退席、田中(正)委員長代理着席〕 くるっと変わってくる。(「あれは悪いやろうだな」と発言する者あり)いや、悪いの悪くないのと言ったって、それはともかくお話にもならぬ。いま言いましょう。いま御説明いたしましよう。  いいですか。一九七五年、昭和五十年の三月十九日の外務委員会において、いわゆる覇権問題などというものを初めてここで引っ張り出した。その前の両大臣の中には、覇権などということは一つもない。むしろ木村、大平両外務大臣のときには、極東アジアを侵略した日本が再び極東アジアに覇権国家にはなりませんということを明らかにしたことであって、この覇権反対はむしろアジア住民に対して好ましい一つの文章であるというふうに歓迎の形で受け入れたのであります。受け入れられたその文章を、宮澤はいわゆる大臣になると一変して、その外務委員会で、二国間の条約という形、いま総理が言われているのと同じなんですよ。共同声明の中にそういう趣旨がうたわれていたとしても、私どもはその考えに別段異議があるわけではございませんがと前置きをしておきながら、二国間の条約という形、一応権利義務を定めるという場合において、そのことを書き入れることはいかがなものであろうかと存じますと言って、ここで一つ反対の意見を明らかにした。いいですか。しかも五十年の四月十六日の外務委員会では、覇権反対は故意に特定国を非難したものであるとさらに前進してこれを位置づけた。そうして共同声明としてであればともかく、長い両国の関係を律する条約を考えておりますので、歴史的な変遷等々過去を振り返って将来を考えますと、やはりよその国のことを申すのは適当でないという気がいたすわけでございますと言って、これはまことにこの共同声明に反対だということを明らかにしている。いいですか。そして田中、大平両代表がこれを結んだその共同声明を、よその国のことを申すのは適当でない、こうきめつけている。これじゃ全く、内閣の意思の変更じゃありませんか。こういう変更をされるから、これじゃ、条約を口ではやりますと言って、これはやらないことの明言だ。これを受けて、外務官僚は何と言った。当時高島という、アジア局長か何かいました。いまどこら辺をふらふらしているか知りませんけれども、この政府委員が、五十年の四月二十三日の外務委員会において、ソ連あるいは米国の活動を間接的に問題にしているというように私どもは――外務省官僚は解釈をしております。ソ連及びアメリカがどう考えるかは別として、中国の方から見た国際分析でそういう言葉を使っているように考えますと言って、いまの日中共同声明はソ連、特定国を敵対視しているのだということを、外務官僚は、そう考えるとこれは説明している。これはひどい変更じゃありませんか。しかもこの覇権反対は、後でも小坂発言に出てまいりまするけれども、この上海コミュニケでアメリカ自体が用いた言葉なんです。そのアメリカが用いたということをごまかして、これはアメリカも敵にしているのだと言って、ことさらに外務官僚が事実をひねくってこの外務委員会で発言をしている。こんなことが許されますか。国民を冒涜し、議会を冒涜している。どう思いますか一体。どう思いますか。答弁によってはとても次を続けるわけにはまいりません。この外務官僚の姿勢をどう考えますか。外務大臣、たばこなんか吸っている暇はない、早くいらっしゃい。
  118. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいま小林進先生がずっとお読みになりました経過でこの問題は推移しておるわけでございます。しかし、私どもは、真剣にこの日中平和友好条約を仕上げようという方向で鋭意努力をいたしておるところでございまして、過去におきまして外務省の者がいかような発言をいたしましても、それは過去のこととお考えいただきまして、現在のところ、そのような点につきまして――これはなお問題が全くないというわけではございません。しかしそれは、先ほど来総理がおっしゃいましたように、両国間に本当にこれでできてよかったというような内容のものにいたしたい、このように考えているところでございまして、過去の言動にとらわれないで私どもは取り組むつもりでございます。
  119. 小林進

    ○小林(進)委員 こういう外務官僚がまだ現役でどこかで大使などを務めている、この暴言を、過去のものだから責任を問わないということならば、日本の立法府だ、立法府なら何でも言ってよろしい、言いたいことを言って、そして直ちに大使か何かに栄転していけばよろしいことになる。立法府軽視もはなはだしい。いまの答弁に私は満足できません。  時間がないが、これは理事の諸君、留保しておきますから。あなたが理事会でこの問題を処置してもらわなければ、私は了承できません。これから国会は臨時国会から一般国会へ続くのだ。来年の六月ごろまで行くのでありまするが、この問題だけは……。  委員長、よろしゅうございますか、私の発言を、理事会でひとつこれを取り上げて、是非善悪を明らかにしていただきたいと思います。よろしゅうございますか。
  120. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 理事会で研究、協議いたします。
  121. 小林進

    ○小林(進)委員 まずこういう問題が出ておりまして、なおかつ五十年の五月二十八日には、さらにこの宮澤発言はエスカレートしてくる。いいですか。彼は今度は次のように答えているのであります。覇権条項について、日本にとって中国との友好は大事だが、ソ連と事を構えるわけにはいきません、こういう答弁をいたしております。これはもはや、覇権条項は確実にソ連に敵対しているということを明確に言っていることだ。この共同声明に対するこれは恐るべき曲解です。これを今度はまた引用いたしまして、七月三十一日、外務委員会においてさらにこれを説明した。覇権条項については内外に誤解を生じないよう、わが国としては覇権というものをどう考えているかをはっきりしておかなければなりません。他国がそれに対して持つであろう危惧、これはわが国の責任で解消するための方法をはっきりしておかなければならないと思います。と言って、覇権反対は特定国を目指したものであり、その誤解を解くのがわが国の責任だと言っているのであります。これはいわゆる調印をいたしてまいりました、声明を出してまいりました田中、大平当事者、特に二階堂さんも含めて、大変なこれは調印者の意思をひん曲げた物の言い方でございまして、これはもうやらないということだ。でありまするから、中国はいままで黙って見ておりましたが、これを受けて当時の鄧小平副総理の談話で、覇権が盛り込まれないならばいつまでも待ちます、こういう発表をするに至ったのでありまするが、いよいよこれを受けて、五十年の九月二十四日、ニューヨークにおいて、いわゆる中国外相喬冠華氏と宮澤外相との会談が二回行われて、ここで宮澤四原則などという愚にもつかないような話が持ち出されたのでございまして、まさにこうしてわが日本の日中友好の条約は停滞をいたしました。三木内閣が生まれ、宮澤外相が生まれて一年十ヵ月、これが日中の冷却の時間、暗黒の時間、条約をやらないという期間なんであります。まことに残念至極だ。これを私は総理に聞きたかったんだ。一体これを引き延ばした原因がどこにあるかというのを聞きたかったのがこれなんだ。幸いなるかな、五十一年の九月十五日、宮澤喜一君は追われるがごとく外務大臣をやめてまいりました。今度はかわって小坂善太郎氏が外務大臣になられた。小坂善太郎氏、外務相に就任いたしまするや、直ちにこの宮澤外相の軌道を修正したのであります。何と修正したか。これはすなわち五十一年の十月六日、外務委員会において小坂外務大臣は次のように答えた。いいですか。宮澤前外務大臣の覇権四条件をどう思うかとの質問に答えて、要するに日本の国のやることは日本国の憲法の枠内でしかできないことでございます。他の国がやることも他の国の憲法の枠内で考えることでございましょう、日本憲法の枠内で考えます場合に、攻守同盟あるいは共同行動など、そういうことはできぬわけであります、日本の憲法はさようなことが軍事的にできないようになっている憲法でございますので、そういうことは覇権を承認する場合に問題にならないことであります、こういうふうに思っておりますと、ここで明確に宮澤のソ連敵視の外交を否定している。これはりっぱです。なお、小坂外相は同委員会で、「水野さんもよく御承知のように、あの、覇権という言葉はアメリカと中国との上海コミュニケ、一九七二年二月の共同コミュニケに出ているわけなんです。」ですから「おっしゃるように、何かこじれなければどうということはなかったのです。いわゆる超大国と言われておるアメリカが同じことを言っているし、あれには第三国に対する問題ではない」とはっきり書いてあります。第七項の前の文に書いてあるのです。「要するにこじれちゃったような形なんでございますね。」こういうふうに答えているのであります。だれが一体これをこじれさしたか。中国がこじれさしたんですか。そうじゃないでしょう。この覇権に反対するという素直な立法者の気持ちをこじれさして、特定国を敵対視するようにこじれさしたのが三木・宮澤外交なんですよ。こじれさして、無理に問題を提起して、二年間を浪費された。これを小坂外相が軌道に乗せたというのでございまするが、この経緯をながめてまいりまして、私はまた総理に質問するのでありまするけれども、総理はしかし初めは姿勢はよかった。五十二年二月七日、衆議院のこの予算委員会における、この場における小林進君の質問に答えて首相は、「宮澤四原則という話でありますが、これは原則でも何でもないのです。また、当方から提出した条件でも何でもないのです。当時における宮澤外務大臣が自分の感想を述べた、こういうものでありまして、別にこれに拘束された、こういうような立場はとっておりませんけれども、とにかくわが国にはわが国の憲法があるわけですから、わが国の憲法について中国側に対しましても十分な理解を持っていただきたい、こういうことです。」と答えている。これはりっぱなんであります。それならば、このとおりの精神であるならば、なぜこれをいままで延ばしてこなければならなかったか。字句の修正があったら、修正の作業を命じたらいいじゃないですか。二月七日からじんぜん今日に至るまで同じようなことを、両方が満足のいく、両方が満足のいくとさえずるだけで日を過ごしているのは、その行動の面から見れば、宮澤四原則と両方の満足と同じような形にしか国民にはとれないのでございまして、この点についていま少し総理の気持ちを私は明確に承っておきたいのであります。
  122. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 共同声明が発表されましてから、とにかく五年になっちゃったのですが、その間、小林さんからいまお話がありましたように、これはいろいろいきさつがあったのです。ありましたが、とにかく、私が政権を担当してからは五年のうちまだ九ヵ月でございますから、その点もひとつ御理解のほどをお願いしたいのでありますが、この九カ月の間に私の考え方が変わったかのごときお話がありますが、これはいささかも変わっておりません。私は、とにかくこの条約は早く締結したいのです。それでこの間、九月三十日でしたか、国連総会の場を利用いたしまして、鳩山外務大臣、黄華外交部部長、この両外務大臣の会談が行われたわけでありまして、この会談でも、早くこの条約を締結しましょうということで意見が一致しておるわけであります。さあ、その意見の一致を受けてどういうふうにこの問題を進めるか、こういう次の段階になるわけでありますが、私は、前から考えを申し上げておるとおりの姿勢でこれを進めていきたい、こういうふうに考えておるのです。  ただ、私がとっさとっさに何か言いますと、それが私の言うとおりに伝わらない、また受け取られない、そういうことでいろいろまた波紋を描きますので、なるべく私は、この問題につきましてどういう内容でどういういきさつになっているというようなこと、またそれについて私はどういうふうに考えておるのだというようなことを申し上げないように努めてしておるわけであります。しかし気持ちは、私が内閣を組織したその当初からいささかも変わりはないということをはっきり申し上げます。
  123. 小林進

    ○小林(進)委員 総理は気持ちの精神論ばかりを言われますけれども、もはや総理になられて歳月は十ヵ月、やるやるやるやるとさえずりながら、ついに二年間やらなかった三木内閣と比べて、もはや半分近くの歳月が過ぎておるのでありますから、これが一体いつになったらその決意が行動に移るのか、われわれはそれを聞きたいのであります。行動を見たいのであります。  その行動を起こせない原因がいま一つあるのではないか。それは対ソ関係であります。どうも政府はソ連を恐れて、そのためにこの問題を、じんぜん日を過ごしているのではないかという懸念を私は持っている。それを疑わせるものの一つにやはり宮澤外相の答弁がある。宮澤外相は一九七六年、去年の七月九日、参議院の外務委員会において秦野章氏の問いに答えて、日本の北方領土返還に対する中国の支持は、日ソ間の問題関与であって好ましくないと回答している。日本の要求を支持してくれる友邦に感謝するのがあたりまえでしょう。それを迷惑至極だという物の言い方はないです。国際友好関係においてこれが妥当な答弁、発言なのか、ここにいみじくも三木、宮澤両氏の対ソ恐怖外交がありありと浮かんでいることをわれわれは感ぜざるを得ないのであります。  いま一つ思わせることにはこういうことがある。それは一九七六年一月十日、宮澤・グロムイコ会談というものが行われた。その十日後の一月十九日、三木・宮澤会談で、日中平和友好条約は中国の出方を静観することで一致したという発表をしております。静観ということはやらないということだ。それを受けて外務省は、何でも喜ぶのは外務省です。その次の日に、条約交渉は中国の新首相が誕生するまで中止をすると発表したのであります。これは宮澤・グロムイコ会談の直後だ。だれが考えても、この発言の中にはソ連の影響を多大に受けていることをわれわれは感知せざるを得ないのであります。  そこで、私はお伺いするのでありまするけれども、一体いまの福田総理は、このソ連との思惑でこの日中友好条約をじんぜん延ばしておられるのかどうか、これを国民の前に明らかにしてもらいたい。外交は秘密じゃありません。昔のような天皇の外交でもなければ、宮廷外交でもない。国民とともに進むのが外交です。決してこんなことは秘密にしておく必要はないのであります。  そして、この問題については、残念ながら中国もそう考えている。福田内閣、三木内閣にとって何も問題がない。デメリットが何もない。日本と中国が平和友好条約を結んで失うものは一つもない。得るものは山ほどある。なおかつこれをやり得ない根本の理由は、これはどうもソ連を恐れ、ソ連の妨害に恐怖を感じているのではないかということを国民は感じている。この問題に対する首相の国民に対するお答えをいただきたいのであります。
  124. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国世界じゅうの国と善隣友好の関係を持たなければならない。まして、隣組でありまするところの中国、ソ連、これらの国と友好親善の関係になければならぬということは特に重要であります。そういう基本的な前提の中で日中、日ソの関係をどうするかということにつきましては、日中は日中、日ソは日ソ、これは別に関連させて考えておりません。
  125. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは早くおやりになったらいいと思います。  この問題だけにこだわっている必要はありません。質問は山ほどあるのでございますから先へ行きますけれども、はたからも早くやめろと言われていますのでやめようと思いますけれども、いま一つだけは、重要なことでありますから押しておかなければならぬ。  それは共同声明と平和友好条約とは内容が違うということ、こういうことをいま総理もいみじくも言われた。共同声明は両方の政策を明らかにしたものだ、条約は永久に権利義務が発生してこれを拘束するものであるから、これは字句一点に至るまで明確にしていかなければならないと言って、条約は権利義務の発生であり、これは拘束力を持つ、共同声明は政策の発表だけであって、それがないがごとき発言を、これは外務官僚もやっている。前の宮澤君もやっているのです。これは間違いありませんか。もしこれがそういう解釈でいくといたしますると、日中共同声明の第五項の中で「中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する。」と言っているが、一体この条項はどうなりましょうか。  二十七年、日台条約が生まれたときから中国は言っておりました。日本帝国主義の侵略によって、中国は一千万人の人を殺傷せられた、そして一億人の住む家を焼かれた、破壊をせられた、これによる損害は莫大である、その莫大な損害に対し、さしあたり五百億米ドルの賠償の請求をいたします、その請求権を留保いたしますということをずっと言い続けてまいりました。共同宣言が生まれるその前日まで中国はこう言っておりました。権利はあるんだ、請求権はあるんだ、これほど無残な目に遭ったんだ、こう言っておりました。しかし、その共同声明でいみじくも、いわゆる日中両国友好のために日本に対するこの賠償請求権、一千万人を殺され、一億の家を焼かれたこの概算五百億米ドルに対する請求権を放棄をいたしますと言われた。これはしかし、外務官僚やあなたの解釈のように、共同声明は権利義務の発生はないんだ、条約でなければないんだとおっしゃるならば、まだ中国の請求権は残っていると見なければならぬ。これは重大な解釈であります。これを一体政府はどのように考えられるのか、答弁を願います。
  126. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、共同声明は両国の政治的立場を表明したものです。でありまするから、両国はその共同声明に対しまして政治的な責任を負うわけであります。条約は、それを整理いたしまして、国家と国民、また両国間の権利義務としての形に安定させる、こういう性格のもので、いま小林さんは、何か聞いておると、共同声明とこの条約は全く関係のないような、そんなようなこともおっしゃいますが、そんなことじゃないのですよ、これは。これは重大な関係があるのです。条約を結ぶその基礎は共同声明になるわけなのです。しかし条約に結ぶ以上、これは両国間の権利義務並びに両国においては国家と国民との間の権利義務を決めるのですから、字句についてかなり整理を要する点がある、こういうことを申し上げておるわけでありまして、誤解のないようにお願いいたしたいと思います。  なお、したがって、共同声明第五項にいうところの賠償請求をしないということは、これは厳粛な中華人民共和国の政治姿勢の表明であって、これが条約において変更されるというようなことは私はあり得ない、かように考えております。
  127. 小林進

    ○小林(進)委員 条約において変更されることがあるかないか。共同声明は単なる一つの政策の発表であって、その国々を拘束するものでないとおっしゃるならば、あるいは変更があるかもしれません。しかし、共同声明でも権利義務が発生するというならば、話は別であります。明確にしてください。
  128. 真田秀夫

    ○真田政府委員 御説明申し上げます。  共同声明と条約との関係、異同でございますが、先ほど総理からお答えがございましたように、共同声明と申しますのは、関係国の首脳等の間でその認識、立場等を述べ合うというのが一般でございます。通例は、法律的な意味の権利義務は発生をしないのが通例でございます。これに対しまして条約は、これは法律的効果を発生する条項を含む合意文書でございます。それが一般でございます。ただ、その共同声明の中にも法律的な効力を伴う条項が絶対に入ってはいけないというものではないのであって、それはそういう法律的効果を伴う条項が含まれておっても構わないのです。たとえばいま問題になっております日中共同声明の第二項をごらんになりますと、「日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。」とございますが、これもやはり法律的効果を伴うものでございまして、これをいまから日本がもう承認やめるなんということはできる筋合いでございません。それから第五項の賠償請求権の放棄も、これは一方行為なんですね。放棄というのは。権利の放棄というのは一方行為でございまして、合意ではございません。一方的な宣言でございますから、いわゆる条約の範疇に入るものではございません。しかしながら、中華人民共和国政府は、日本に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言するという一方行為をやりましたので、それに伴いまして法律的効果は出たというふうに解釈されるわけでございまして、これが今後結ばれるであろう平和条約の際にまた蒸し返されるということはあり得ないことであろうと私は考える次第でございます。
  129. 小林進

    ○小林(進)委員 がちゃらがちゃらと言いましたけれども、やはり共同声明には法律効果がないというそういう解釈だけは承りまして、私はこれは重大問題だと思うのであります。いわゆる日本田中総理以下全権が参りましたときに、周恩来総理が招待の宴を張った。そのときに周総理田中角榮氏にささやいた。実は一千万じゃないのだ、一千百万人を殺傷されたのです、こう言った。そうしたら田中総理は、いや、それはどうも御迷惑をおかけして申しわけありませんでした、こう言った。それを通訳が訳してマーファン。あなたも中国にいられたからわかるでしょう。マーファン、こういうふうに訳した。そうすると、その会場にいたいわゆる来客に、一瞬さあっとざわめきが起きた。一体このマーファンという中国語はどういうことか。女性のスカートに水でもかけたときに使う軽いおわびの言葉にしかすぎなかった。これほどの迷惑をかけて、これほど寛大なるわれわれの処置に対して、女性のスカートに水をかけたくらいの軽いおわびの言葉しかできないかということでざわめきが起きた。けれども、偉大なる指導者である毛沢東、周恩来の主席あるいは総理のその裁きによって中国の世論はおさまった。これが今日の現状ですよ。一体われわれは中国に何一つ――われわれは損を受けたか。それを、侵略のためにこれほどの大きな損害を与えながら、第二次世界大戦が済んだその中で、日本から一寸の領土も取らない、一銭の賠償金も取らない国は、一体中国をおいてほかにありますか。それほど寛大なる形で日本に処している中国に対して、どうもいまの政府のやり方は、どっちが一体戦争に負けてどっちが一体戦争に勝っているのかわけのわからないような形に進めている。このいまの政府のやり方は、一億一千万国民は了承しておりませんよ。中国に対してだけはいま少し謙虚な気持ちで、いま再び侵略を起こさないような、覇権はやりません、覇権主義には立ちませんという素直な気持ちでなぜ一体この条約が結べぬのか。これは国民の声です。時間がありませんけれども、総理いかがです。本当に、政治はやはり人心が反映されてなければいかぬ。国民の気持ちを外交の中に示されなければいけません。もうあなたはそんな言葉だけで、やれ両方の満足だの、やれ速やかにとさえずっているときではないと私は思う。ことしじゅうにおやりになるのか、あるいは十一月の三日――私は、九月二十九日、五周年の日に何かの動きがあるでしょうと言った。しっぽを動かすか、頭を動かすか。共同声明ができた五周年目だから、あの福田さんですから、何かしっぽの一つも動かすような行動を見せましょうと言ったけれども、何にもあなたは見せなかった。せめてことしじゅうにでもこの国民の世論を受けて、いわゆる条約の締結に対する何らかの行動をお示しになるかどうか、明確にお聞かせを願いたいと思うのであります。
  130. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 九月二十九日、これは満五周年記念の日であったわけですが、その翌日、もうすでに動きがあったじゃありませんか。両国の外務大臣が会談をいたしまして、条約を早く結びましょう、こういう動きがあるわけであります。私は、とにかく前から言っておりまする方針に従いまして最善を尽くす、このことだけははっきり申し上げます。
  131. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、この問題ではまことにまだ首相の答弁では満足できない。何月何日何時にこれをやるくらいの明確な回答を得るまでは、私は了承することができませんが、きょうのところは時間がありませんから、残念ながらこれをおきますけれども、また次の機会にやらしていただきます。  次に、韓国問題に問題の論拠を移したいと思います。  私はこの十月六日、ニューヨークから電話をいただきまして、それで私の方からかねて要請しておいた――私はことしの八月から三回ニューヨークヘ行っております。そういうニューヨークの直接の話し合いも含めて要請をしておりました、日本国会においていわゆる金炯旭元韓国中央情報部長が、証人に立ってもよろしい、金大中氏拉致事件その他について証人に出てもよろしいという、初めて正式の承諾の返事を受けたことであります。これはもう政府も御承知のとおりであります。これについて、この金炯旭氏が証人に立ってよろしいということに対して、これは自民党総裁としての御所見を私は承りたい。何しろこれは立法府の中で多数を支配されているのでありますから。  なお、金炯旭氏が日本の国会に証人として立つ一つの条件として、氏の安全の保証をすることを提議をしているのであります。これは行政府の責任者としての首相の力にまつほかはありません。  この二つの問題について御所見を承りたいと思うのであります。
  132. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 金炯旭氏の問題につきましては、私は率直に申し上げますが、あの人は八年前に情報部長の職をやめられている人である。そういう立場上、あの人の言っておられることは、伝聞したことを言っておるということが非常に多いように私は見ます。したがいまして、この金炯旭氏の発言は、まあ証拠力、証言力、そういうものに乏しいような感じがいたします。これは私の感想でございます。したがいまして、これを国会で証人として喚問をするということにつきましては、いろいろ御議論があることであろうと思いまするから、その国会のつかさつかさにおきまして、各党間でよく御協議願いたいというふうに思うわけであります。まだ、自民党の総裁としての私のところまで、こういう問題があるがどういうふうにいたしましょうかというところまで段階が来ておりません。  それから、身の安全という問題でございますが、これにつきましては、政府といたしましてはできる限りの措置をいたすということは、これははっきり申し上げます。
  133. 小林進

    ○小林(進)委員 私はいま、皆さん方のお手元に「日韓ゆ着の真相 元韓国情報部長金炯旭氏は語る」という、彼と私が約六時間にわたって会談いたしましたその記事の内容をそのまま書いたものを、参考までにお上げいたしました。そのまま、しかし全部じゃない。全部を私が書けばもっと、日本政府に対して私はむしろ大変不利になると考えた。日本国民の一人として、まあ第一回の私の談話の内容はこの程度でよかろうと、私の良識に基づいて私は書いたのであります。参考までに。お読みにならなければお読みにならなくてもよろしいのであります。ようございますか。  その問題の中にもありますように、総理は八年とおっしゃったが、彼はこの中で言っている。八年じゃない、私がやめたのは六九年だ、金大中由の拉致されたのは七三年だ、やめてから四年目だ、八年とは何事だと彼は反論をいたしております。  まず総理、こういうことからひとつ考えを改めていただかなければならないと思いますし、あなたとも大変面識があるということが書いてある。書いてありますよ。首をお曲げになりましたから、ひとつこの中で書いてある分、これも私はあなたに対して、総理を尊敬するという意味において、非常に好意的に彼の言っていることの一部分を書いたのでります。  「福田首相の心境は、わたしがよく知っている。かれは、わたしのいうことを“伝聞”とはいいたくなかったが、警察がアドバイスしたので、このようなことをいい出した。「八年前にやめた人に何がわかるか」と、福田首相はわたしの発言にケチをつけたが、私がKCIAの部長をやめたのは一九六九年だが、金大中事件の起きたのは一九七二年で四年前のことである。福田首相は韓国のために非常に尽くしてくれた。」ほめてありますよ、これ。「それで一九七二年に福田氏が胆石の病気で手術のあと、箱根で静養している時、わたしは仲間の議員といっしょに見舞にいった。それで箱根でゴルフをやってきた。その時、日本にいった用事は日韓経済協力会議だったか、日韓議員懇談会だったか、長谷川仁参議院議員といっしょに箱根へいったことは間違いない。」ちゃんとあなたのお見舞いに行っているのです。それさえもあなたはうそだとおっしゃるなら、うそでよろしいが、そういうことを加えて、いま日本の国会で、来る国会も来る国会も一番問題になっているのは、この金大中事件の真相を究明するというのが毎国会の中心議題でしょう。この問題について、いわゆる日本の捜査当局は一体何している、行政官は一体何しているのですか。いいですか。六人の男が共同でグランドパレスでやったということが明らかになっている。しかもグランドパレスの地下室には在日韓国人横浜領事の車が待っていた。それに乗せられて大阪に運ばれていった。金東雲一等書記官の指紋があらわれた。そこまで繰り返し証言をしておるのに、五年もたってなおかつ今日まで一人も犯人が挙がっていないということ、これが一体国民に対する政府の責任ある行動ですか。この真相究明のために全力を尽くしてやるのが、これはあたりまえの話でしょう。その真相究明の一端として、金炯旭氏の証人を要請するのが当然ではありませんか。当然じゃないですか。この事件が起きたときに、当時の総理大臣田中さんは何と言いましたか。総理、お忘れになりましたか。あなたも閣僚でいたのですよ。そのときに田中さんは、事件の真相は必ず公表する。いいですか。何人も納得できる筋の通った解決をやる、こういう公約をしているのです。今日までこの公約が一体一つとして実行されていますか。これは国民をだましたことになるじゃありませんか。いいですか。真相も犯人も、いまここで一つも実行されていないじゃないですか。一体、政府というものはそんなものでいいのですか。国民に対してそんなことでいいのですか。お聞かせを願いたいと思います。
  134. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私の認識では、政府が知り得たこの真相、これはみんな国会に報告をしているのじゃありませんでしょうか。(発言する者あり)私はそう思いますが、これは私の認識を申し上げておるわけであります。
  135. 小林進

    ○小林(進)委員 犯人も一つも挙げない、状況もわからない、国民はだれも知っておりません。ただ、国民が知っているのは、ああ、あれはKCIAがやったのだということだけは国民は全部推定をしている。しかし、政府はそうじゃないと言っているのだから、そうじゃないならないだけの確かなる証拠、そして犯人の一つもちゃんと国民の前に出して、それを裏づけしなければいけないでしょう。六人もでやった。車で運んでいった。東海道五十三次だ。白昼公然と持っていかれながら、犯人を一つも挙げない。一体、こういうばかなことがありますか。いまの総理の答弁は、考えてみると、いかにも人をなめた答弁だと思う。そうお考えになりませんか。まあこの問題はそのままにして、その次にいきましょう。  金炯旭氏は伝聞だとあなたはおっしゃる。八年前じゃない、四年前であったということは訂正していただきたいと思いますが、同時に、伝聞だとおっしゃったが、一体、アメリカではどういう扱いをいたしていますか。アメリカのフレーザー委員会という下院におけるいわゆる外交小委員会では、公聴会で彼を証人として呼んでいる。いいですか。呼んでそして証言を求めている。しかもその証言の内容は一体どうであったか。私はアメリカへ行って三回このフレーザー委員長にお会いをいたしております。彼は何と言いましたか。直接私に言ったんだ。金炯旭氏の証言は一〇〇%信憑性があると言う。アメリカの立法府で信憑性があると言われるのであります。そのアメリカの議会、アメリカの行政を通じて信憑性のあるという金炯旭氏を、日本政府と自民党は、話も聞かないで、初めから信憑性がない、伝聞だ、信用するに足らないと言うのは、一体、どういうお考えなんですか。あなたがそんなことを言われたって、国民が素直にそれを受け取るとお考えになりますか。いま一度この問題をひとつお聞かせを願いたい。繰り返して言いますが、アメリカの政府もアメリカの立法府も、彼の証言は一〇〇%信憑性があると言っているのです。お聞かせを願いたいのであります。
  136. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 金炯旭氏の発言というのを報告を受けておりまして、全然これが問題の解決のために役に立たないというわけじゃないのです。特に私どもが注目しておりますのは、金在権公使と会った話でございます。金在権公使は、当時駐日公使であったわけでありますから、その人がどう言っておった、こう言っておったということが金炯旭氏の発言の中に出ておる。ですから、金在権氏に、この発言が本当なのかうそなのか、一体状況はどうだったのだろうかということを調査することは、この問題の解明のために有効であろう、こういうふうに考えまして、いま外務当局は金在権氏との接触に努力をいたしておるということでございます。  小林さんのお考えは、日本の国会に証人として喚問したらどうでしょう、こういうお話でありますが、これは各党のつかさつかさがおりますから、その間で話をしていただきたい、このように考えております。
  137. 小林進

    ○小林(進)委員 アメリカの国会では一〇〇%信憑に値するということに対する御答弁はありませんでした。ありませんが、しかし、その言葉は全部伝聞ではない、中には有用な発言もあろうというふうに若干訂正をされましたが、訂正するのがあたりまえです。もし伝聞だなどと言えば、これはアメリカ立法府に対する重大な侮辱になります。これは訂正されてよかったと思いますが、これは呼ぶべきです。わが日本にこの事件究明のためにいささかでもその証言が有望であるということがあるならば、有用であるということがわかるならば、それは何をおいても呼ぶべきがあたりまえであります。呼んで真相の究明をするのが、わが立法府としての正しい姿勢であります。その姿勢はひとつ崩さないようにしていただきたいと思います。  それから、第二番目に申し上げますが、金在権の話が出ました。総理は金在権の問題についても接触して証言を得たいと言われておりますけれども、この問題についても国民は笑っておりますよ。なぜかならば、それは彼は当時わが日本には公使としていたでしょうけれども、金在権がいわゆる金大中拉致事件の現地における、日本における総指揮官であったことは、国民は皆知っている。国民の側から見れば、これば最大の犯人なんです。わが日本の主権とわが日本の独立と人権を侵害したこの恐るべき張本人、この張本人を何かお客さんでも迎えるように、御意見を承り証言を得たいなどということは、一体、日本の政府は、総理大臣は何を考えているのか。アメリカに比較して全く日本の政府のやり方は疑わしいと国民は言っています。  なぜかならば、同じような事件を起こしたのが、アメリカにおける朴東宣という人である。これもKCIAのメンバーの一員であると言われておりますけれども、アメリカの国会議員二十有余名にいわゆる不正な金をばらまいたというだけの問題だ。この人に対して、アメリカはアメリカ一の全政府機関を動員する、立法府を挙げて上下両院がそれぞれの委員会で、この真相の究明をするためにいわゆる朴東宣の身柄をアメリカに渡せ、いまアメリカの世論は沸き立っておりますよ。渡せ、もしこの身柄を渡さなければ、韓国に対する友好と経済的な援助は一切やめた、アメリカの三万八千名の軍隊も引き揚げるべきだというように、実にアメリカの世論は硬化しておる。  同じような立場にいる金在権に対して、わが日本の政府は、何かひとつお出ましをいただいて御意見でも拝聴すると言う。一体、何という腰抜けの姿か。これで国民に向かう政府の姿勢が正しいとお考えになりますか。彼我を比較してください。あなたの一番尊敬するアメリカの姿勢を、せめてつめのあかでもせんじて飲むぐらいの気持ちになっていただけないかどうか。そうじゃありませんか。もしその形を一歩下がって言うとしても、あなたが金在権に接触して話を聞きたいと言ってから、一体、何カ月たちましたか。その後何を一体おやりになりましたか。言葉だけじゃありませんか。アメリカはいまでも、朴東宣の身柄を引き受けるために、政府機関を韓国へ派遣しても厳重なる抗議を続けております。何をおやりになりましたか、答弁をしていただきたいと思うのであります。
  138. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 金在権氏に対しましては、アメリカの国務省を通じまして接触を依頼しておるのであります。ところが、先方に対して当方から照会した文書に対して、現在のところ、まだ返事が届かないというのが現状でございます。
  139. 小林進

    ○小林(進)委員 これは全く国会をごまかすための答弁だ。アメリカは朴東宣の身柄を引き受けるために、政府代表を韓国まで派遣しているじゃないですか。日本はなぜ韓国へ派遣できないのです。なぜアメリカへ派遣できないのです。  私どもは民間の権力のない一議員にしかすぎないのでありますけれども、八月には金在権がロスにいるというので、私どもはロサンゼルスに二回も参りました。そうしてロサンゼルスに行ったら、ロサンゼルスに金在権の弟がおりましたよ。弟いわく、兄さんは八十有余のお母さんが病気だというので、子供を半分連れていまソウルに滞在をいたしております。こういうことだった。ソウルにいたんじゃ会えないから、残念だ、弟に会って帰りましょうといって、帰ってきた。ところが、今度はまた九月にロスへ行ってみましたら、いま彼は韓国から帰ってきてロスへ来ております。こう言うのです。いま現在ロサンゼルスにおりますよ。  私はこの問題についてフレーザー委員長にも聞いた。日本の政府から何かあなたに対してサウンドがありましたか。何もありません。何もありませんと言っている。一体、アメリカ政府のだれにそれをサウンドしたのか、そういう言いわけのための言いわけはわれわれに対する大きなごまかしでありまして、やめてください。一体、何月何日にその回答書を求めて、どういう回答が来ないのか。  なお私はアメリカで聞きましたよ。アメリカは、FBIもCIAもすべてを挙げて、いま精力的に金在権、金東雲の諸君の証言を全部とっております。調査をいたしております。最近の情報では、もはや金在権に対する一切の調査はアメリカにおいては済んだというふうな情報もとっておるのであります。  それくらいアメリカがやっているのに、日本の政府が何もやれないというばかな話がありますか。何月何日、どういう手続をやって、どのような結果になったのか、ひとつお答えを願いたい。そんなことじゃ私はごまかされませんよ。
  140. 中江要介

    ○中江政府委員 金在権に対します事情聴取の問題について、いままで政府がやってきたことを簡単に申し上げますと、先ほど先生が御指摘になりました金炯旭元韓国中央情報部長の証言の中に、金在権元駐日公使から聞いた話であるということで、いろいろ金大中事件についての証言があったわけでございますので、日本政府といたしましては、この事件が起きました当時日本におりました金在権元駐日公使の話というのが最も事実に近いというふうに判断いたしまして、金在権公使からまず事情聴取しようという方法を考えたわけでございます。  で、この金在権公使は、当時の状況ではどうもアメリカにおるらしいという情報でありましたので、これはアメリカの管轄下にある韓国人の問題でありますので、筋を通しまして、アメリカの国務省に、駐米日本大使館を通じまして、日本政府としては、できることならこの金在権元駐日公使から任意の事情聴取をするために捜査官を派遣いたしたい、こういうことを申し入れたわけでございます。  で、アメリカの国務省といたしましては、その日本政府の考え方のうちで、アメリカ政府は、もし金在権公使が応諾するならば、日本が捜査官を派遣して任意の事情聴取をするということには異議がない。これは捜査官の任意の事情聴取といいましても、一種の主権行為でございますので、アメリカの主権侵害にならないためにはアメリカのはっきりした了解が必要だ、こういう前提で照会いたしましたところ、アメリカ政府としては、金在権元公使がその任意の事情聴取に応ずるというのであれば、これは日本が捜査官を派遣して行ってもらっても差し支えない。問題は、金在権元駐日公使の意思でございますが、これをアメリカ国務省が確かめましたところ、自分は日本政府の捜査官の任意の事情聴取に応ずる義務があるとは思わないけれども、しかし全く応じないわけではない、ただ自分はアメリカでこれから生活を築いていこうと思っているやさきであるので、アメリカでは任意聴取に応ずることは勘弁願いたい、こういう回答がアメリカの国務省を通じて日本政府にもたらされたわけでございます。  そこで、日本政府といたしましては、それならば全く拒否しているわけでもない、ただアメリカでは任意の事情聴取には応じたくない、こういうのであれば、近々金在権元駐日公使はアメリカから外のどこかの国に出かけるような意思があるのかどうか、あるいはそれ以外に、アメリカで応じられないなら、どこの国でどういう条件でなら日本の捜査官の任意の事情聴取に応ずる用意があるのか、それを重ねてアメリカに聞きました。  それに対する返事が参りませんでしたものですから、先週の後半にもう一度在米日本大使館を通じまして国務省に催促いたしまして、国務省では文書をもって重ねて金在権元駐日公使に対しまして、日本政府はこう言っているが元駐日公使の考えはどうかということを照会しているというのが現状でございます。
  141. 小林進

    ○小林(進)委員 長々と答弁になりましたが、期日も入っていなければ日にちも入っていない。そしてあなたの答弁はみなそのとおりです。聞いてみると、みんなごまかしだ。時間がないから、日韓大陸棚なんかの問題も時間があれば私はここで――三百ページの論文を持っておる。あなたを爆撃しようと思って楽しみにしたけれども、時間がないからもうやめちゃう。  そういう答弁だけだ、一方的な。それがどうですか、アメリカは。ああやって金大中拉致事件に対して、いわゆる韓民統の諸君が怪しいといって、ちゃんとアメリカは日本の政府の了承を得て、フレーザー委員会のスタッフがちゃんと二十八日に来て、そして二日にわたって調査をしているじゃありませんか。なぜそのまねができないのです。  これはもう、そんなお客様扱いすることはない。犯人ですよ。疑いが一番深いのだから、いま少し強硬にできればいいだろうし、そういう交渉するにしても、文書のやりとりは、みずから出かけていったらいいじゃないですか、アメリカに。国務省と実際にひざを突き合わして話したらいいじゃないですか。  なお、私どもは、この拉致事件に対して、何も金在権だけ言っているわけじゃない。まだ言いましょうか。それならば、最近の情報によれば、この六人で拉致した中の、そのうちの一人である柳春国というのが、メキシコの一等書記官、現在ロサンゼルスにいて、そして金大中氏を拉致したその行動を具体的につまびらかに、これはアメリカ政府にも話をして、金炯旭氏にも話をしているというが、一体、この柳春国氏に対して、わが日本のいわゆる捜査当局に出頭を要請する意思があるかないか。金在権もそんなお客様扱いで、お話を聞かしてください、任意でお話を聞かしてくださいなんというのじゃなくて、国家権力だ、日本の主権が侵された張本人じゃないですか。いま少し強固な要請は一体できないのかどうか。これは外務大臣。――三井君か、余り好ましくないけれども。
  142. 三井脩

    ○三井政府委員 いま名前を挙げられました柳春国でございますが、この人は事件当時在日の大使館の二等書記官であった人で、すでに文明子女史の事件に関する発言の中に名前が出てきておりますし、また金炯旭氏の本年六月二十二日の米国議会における証言の中でもこの人の名前が出てきております。私たちは、事件当時すでにこの辺のところは調査いたしましたけれども、事件との関係について出てきておりません。  そうすると、今回この人の名前が新たに出てきたものではないということでありますし、ただいまアジア局長から御答弁がありましたように、金在権氏が一応全体の責任者と言われておりますので、この辺の調査の結果を見た上で、柳春国氏に直接聞くかどうか、どういう手だてをするかということは検討いたしたいと考えております。
  143. 小林進

    ○小林(進)委員 これはやらないところの言いわけだけを聞いているようで、まことに不愉快にたえないのであります。せめてアメリカがおやりになっている行動をあなたも少しまねされたらいかがですか。アメリカは国内においてくまなく調査しているじゃないですか。司法関係も、警察関係も、CIAも、FBIもあるいは国会におけるあらゆる委員会も、みんなこの問題の調査のために国を挙げてやっているじゃないですか。なぜ一体その体制がわが日本にとれないか。しかもアメリカよりも日本がもっと大きな被害者なのですよ。日本で起きた事件はもっと大きいのですよ。それにもかかわらず、アメリカが現在行動を起こしていることの十分の一もできないというのは、これは私どもはいやでも勘ぐらざるを得ない。一つ穴のムジナじゃないかと言いたくなる。わが身が怪しいからやりたくないのだろうということを言いたくなるのですよ。そういうようなことを国民に思わせないためにも、いま少ししゃんとした行動を続けてもらわなければいけません。金在権に対して早く、明確に強力な調査方法を講じてもらいたい。これは要望です。柳春国についても同じであります。並行して、直ちにロサンゼルスに行って彼から正しい証言をとるように行動を起こしてもらいたい。これは委員長に要望いたしておきます。委員長、いいですか。国会の予算委員会の委員長に私は要望しているのであります。委員長から政府に、その行動を監視するように、できなければ理事会で決めてもらいたいと思います。いまも言うように、後でも言いますけれども、例の趙君などと言う三人の韓民統の諸君に聞いているが、来ているのはみんなフレーザー委員会のスタッフです、これは向こうの国会ですから。だから、私が言っているのは、政府は政府、国会としてもせめてアメリカの国会に似たような行動を起こすことを委員長として考えてもらいたい。委員長、私の主張、わかりましたか。おわかりになりましたら、御答弁をいただきたいと思います。
  144. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 小林君の御要請につきましては、その取り扱いにつき理事会において協議いたします。
  145. 小林進

    ○小林(進)委員 まことに時間がありませんので、私の用意した質問の五分の一もこなせないで弱っているのでありますが、残りはまた通常国会でやることにいたします。  次に移りますが、国民世界じゅうもKCIAが金大中を拉致したともう決めているが、日本の政府、日本の捜査当局だけはあくまでもまだこれを否定いたしております。先ほども言いましたように、八月十日、私ども社会党代表団はフレーザー委員長のオフィス、下院のオフィスを訪問いたしました。そして金炯旭氏の証言はいかがですかと言ったら、彼は、金炯旭氏の証言はわれわれが他の幾つかのルートを通じて得た情報とほぼ完全に一致しており、彼の証言は一〇〇%真実であります、こういうことを言われた。それならば、日本政府が問題にしている、あなたの言われる伝聞だとかという、その問題にするような点についてはいかがですかと言ったら、フレーザー委員長は、米国――アメリカ政府と言われた。彼は立法府の委員長でありますが、アメリカ政府は、政府という名前を使い、何ら問題とみなしていません、日本政府が言っていることは問題にならないと言っている、こう言い切っておられるのであります。このほかの幾つかの情報という中には、米政府の機関であるCIAの情報あるいはFBIの資料その他を全部総合してこれは言われたものであります。いずれにいたしましても、金炯旭氏の証言の信憑性を問う理由はないということを断言しておられるのでありますが、一体この問題を政府はどう考えるか。金大中拉致事件は、フレーザー委員長並びにアメリカ政府はKCIAがやったことに対して問題はないと断言しているのでありますが、この証言に対しても総理大臣は伝聞であるとおっしゃるのかどうか。アメリカの立法府やフレーザー委員会のことは信用できないとおっしゃるのか。御答弁をいただきたいと思うのであります。
  146. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、アメリカのフレーザー委員会がどういう調査をし、どういう証人を呼んで証言を聞いて、どういう判断をしているかということは、つまびらかにいたしておりません。したがいまして、アメリカの国会における意向、こういうことについてどうこれを評価するか、それをいたす立場にはないような気がいたします。
  147. 小林進

    ○小林(進)委員 アメリカもあくまでも真実を追求して、その結果を国民の前に公表するとするのが政府の責任であり、しかも言葉をもって公約されているのですから、日本に一番関係することが最も信頼するアメリカの国会の中でそういうふうに進められておるとするならば、進んで資料をちょうだいするのがあたりまえじゃないですか。政府みずからがその事実を確かめるのがあたりまえじゃありませんか。寡聞にして聞かないというふうなそんな無責任な答弁じゃ、私は了承することはできません。一体、政府はフレーザー委員会の調査の結果を聞いてないのですか。外務大臣、聞いていませんか。答弁。
  148. 中江要介

    ○中江政府委員 フレーザー委員会がアメリカにおけるKCIAの活動その他について積極的にいろいろ活動しておりますことは私ども承知しておりますし、公表されました議事録その他についてはその都度入手しております。ただ、私どもがフレーザー委員長の意向として伺っておりますところは、フレーザー委員会というのは、いま申し上げましたように、アメリカにおけるKCIAの活動その他米韓関係についての問題をいろいろ調べているということで、フレーザー委員長みずからが、フレーザー委員会としては日韓間の問題を取り上げる意向はないし、また日韓間の問題にいろいろと立ち入って物を言ったりあるいは調べをしたりというようなことは全く考えていないということを言っておるわけでございまして、いままでもアメリカのフレザー委員会の議事録その他では、もうほとんど大部分がアメリカにおけるKCIAの活動でございます。それに関連いたしまして、金大中という人もアメリカにいたときの行動が問題になって、その延長線上で金大中氏が日本で拉致されたことにも言及しているということでございまして、日本政府としてはフレーザー委員会に対しまして、もしそれが日本における金大中氏事件の捜査に役立つものでありますれば、これはフレーザー委員会から提供を受けたいということは、再三申し入れているわけでございます。
  149. 小林進

    ○小林(進)委員 私はフレーザー委員長にお会いしたときに、日本の政府からそういう資料の要求やあるいは証人喚問等の問題についてサウンドがあるかと言ったら、まだ寡聞にして聞いていないという返事でございましたけれども、いまの局長のお話では、何かフレーザー委員会から調査の資料が手に届いているというふうな御答弁のようにも感じられた。あるのならば、この国会にひとつ提出をしていただきたい。われわれ国会議員に隠しておく必要はないのでありますから、これはちょうだいいたしたいと思います。私も持っている。どうぞ、それはよろしゅうございますな、外務大臣。よろしいでしょう、それぐらいのことは。うそを言っちゃいけませんよ、重大な問題ですから。
  150. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私どもの入手しておりますものでお役に立つものがあれば、提出をいたします。
  151. 小林進

    ○小林(進)委員 これはぜひ欲しいと思います。その中には日本に関係する問題がたくさん入っている。ただ、アメリカはアメリカの国ですから、その資料がどう利用されるかは干渉の余地がないけれども、基本としては、あなたの言われる日本の政治に干渉する意図のないことだけは彼はしばしば繰り返しておられます。真実は一つでありますから、真実を追求するためには、世界のどこを問わずわれわれは調査員を派遣して調査する、同時に真実の追求のために日本の政府があるいは日本の国会が協力を要請されればいつでも協力いたします。協力すると言っているんだ。いつでも資料をくれると言っているのであります。どうぞ、その点は手持ちでしょうけれども、全部集めてわれわれにひとつお出しいただきたい。  なお、第三番目に私は申し上げますけれども、金大中の拉致事件につきましては、アメリカのCIAはくまなく調査をいたしております。いわゆるアメリカの中央情報局で詳細な資料ができ上がっておりまして、その結果、このCIAも、金大中拉致事件はKCIAの行為であるという結論を出しておりまして、その資料はいわゆるCIAのターナー・アメリカ中央情報部長官を通じまして、これはすでにアメリカの司法省、それからアメリカの上院情報特別委員会、下院国際関係委員会の国際機関小委員会、下院公的行動規範委員会等に全部その資料が配付されておりまして、いまその資料は全部公表すべきであるという一部の世論にもこたえて、これはどうも近くCIAの資料が公表される可能性が多いということを私ども承ってまいりました。日本政府はこの資料をお持ちになっているかどうか。もうこれはアメリカでも公表されるかもしれませんから、手持ちにあったらわれわれの方にもこれを配付していただきたい。
  152. 中江要介

    ○中江政府委員 ただいま御指摘の資料は、私ども入手しておりません。  それから、先ほど私の答弁で、フレーザー委員会の議事録その他で金大中氏事件に関係のあるものといたしましては、私どもがすでに御提出いたしましたレイナード元朝鮮部長証言その他以降には新しいものはございません。
  153. 小林進

    ○小林(進)委員 これだけの資料も、それならば精力的にCIA――もう公表の寸前にあるのでありまするから、そんなことをやらぬのは怠慢です。自分たちの都合の悪いのは全部なるべく手に入れないようにしておこう、隠そう隠そうとしている態度としかわれわれは疑わざるを得ないのであります。早急に手に入れて早急にわれわれの手に渡していただきたい。  なお、第四番目で終わりにいたしますけれども、ここにアメリカ国防省の資料があります。これは英語です。ちょっと読みましょうか。「ザ・ポリティカル・バランス」というのです。これは何かというと、いわゆる韓国の政治的均衡と称する国防省の報告資料なんです。これはアメリカの国防省第四部が、レイナード元アメリカ国務省朝鮮部長、現在ワシントンで外交政策研究所長をしておられます。このレイナード氏が、アメリカの国防省に韓国問題に対する一つの資料を提出せよという要求をした。アメリカというのはいい国だ。こういう民間の研究団体でもちゃんと公式文書で回答する。その回答したのが「韓国の脅威」という表題をつけたこういうパンフレットです。非常に分厚いものです。その中にいわゆる「政治的均衡」という一章がある。その中に何と書いてあるか。「韓国の大統領は、」これは朴のことです。「幾つかの緊急措置をとって、負託された大権を利用し終身的に大統領の地位に居座り、反対派の政治家を排除している。朴の率いる民主共和党に対抗する政党も幾つかあり、それらの党員は国会議員として国会で活躍しているが、実質的に無力であり、また政府を公然と批判することは法律違反となっている。元大統領のポチョムキン及び一九七一年の大統領選挙に朴の対立候補として出馬し、その後韓国CIAにより日本から誘拐された金大中は、政見を発表したかどで実刑を宣告されている。」こう言っております。これは国防省の文章だ。もう一度繰り返しましょうか。アメリカの国防省は、金大中氏はKCIAによって日本から誘拐されたと明確に言及いたしております。「一九七二年以来、北鮮は大使交換国を倍以上に増加している。(三十六カ国から九十カ国に)」、こういうふうに注訳をつけて論じている。御希望があれば、この文章をおあげしましょうか。  このとおり、アメリカの国防省はKCIAが拉致したと言っておりまするが、この点は日本の政府はどうですか。アメリカの国防省のこの資料は間違っているとおっしゃるのか、まだ入手していないとおっしゃるのか。総理、ひとつ明確な回答をしていただきたい。韓国かわいやで、アメリカの国防省までうそを言っているとおっしゃるならば、うそを言っているというふうにひとつ明確に回答していただきたい。それによって私も考えがあるのでありまするから。
  154. 中江要介

    ○中江政府委員 ただいま御指摘の国防省の文書は私どもも入手しておりますし、いまお読み上げになったとおりの記述がございます。KCIAによって拉致された金大中氏、こういう表現になっておるところはその限りでございまして、その根拠、あるいはどういうふうにして誘拐された、つまりKCIAによって誘拐されたと判断したかという詳細については、その国防省の文書ではいかんともわからないというのが現状でございます。
  155. 小林進

    ○小林(進)委員 誘拐されたと決定づけているものを何も理由までつけてとやかく言う必要はないでしょう。日本は、あなた方はまだ誘拐されていないと言うのだから、向こうはされたと言っているのだから、問題は右か左なのであります。うそならうそと抗議したらどうですか。いやしくもアメリカの国防省という権威あるアメリカの機関がKCIAの行為だと言っているのだから、日本の政府がそうでないと言うなら、なぜ一体抗議を申し込まない。総理。(中江政府委員委員長」と呼ぶ)あなたはもう要らない、そんな説明は。これは政治的高度な判断を頼んでいるのだから、余り出てくるな。総理、いかがです。
  156. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが日本政府が言っていることと違うことでありますから、これは照会いたします。
  157. 小林進

    ○小林(進)委員 これは重大問題であります。これはひとつ照会をいただいて、早急にひとつ御返事をいただくように、これは委員長理事……(発言する者あり)いや、照会した返事はいただかなくちゃいけません。早急にその返事をいただきたい。それによりまして、私はまた次から次へちゃんと新しい資料がうしろにはあるのでありまするから、それをまた出しましてひとついたしたいと思いますので、覚悟の上でひとつその結果をお示しをいただきたいと思う。  私の言うのは、かくのごとくこの金大中拉致事件ではもはや勝負がついているのだ、なぜそれまで日本の政府が頑強に白を黒とまで一体へ理屈をこね回していなければならないかということを私は言いたいのでありますが、時間がありませんから、ちょっと次へ行きます。  次は、私は第五の問題といたしまして、警察庁と公安調査庁といわゆる韓国中央情報部長金炯旭氏との間に協定があったという問題であります。  その具体例の一つとして金炯旭氏は、いわゆる金圭南という、朴の与党であります民主共和党の国会議員、これが一九七二年、スパイの容疑で死刑になった。この問題等を例に挙げて、警察庁とお互いに協定を結んで情報の交換をやっていたというこの問題について、ひとつ警察庁長官の御答弁をいただきたい。――長官はいらっしゃいませんか。長官はいらっしゃらない……。
  158. 三井脩

    ○三井政府委員 事実関係に関することでございますので、私が先に申し上げたいと思います。事実関係を私から申し上げます。  まず、金炯旭氏が日本の警察と秘密協定を結んだと言っておるわけですけれども、報道等によりますと、それは一九六五年というように言っておるようでありますが――昭和四十年です。昭和四十年という言い方でありますが、そして当時の警備局長でありました高橋さんとこれに調印をした、韓国側は金炯旭氏だ、こういうような言い方であります。しかしながら、高橋さんは昭和四十一年に警備局長になったわけでありますので、その前は交通局長でありますから、そういう所掌を担当しておらないというので、これは明らかに間違いであろう。また、事実、そういう協定を結んだこともございません。  なお、金圭南事件について情報をもらったというようなことを言っておるわけでありますけれども、金圭南事件というのは、御存じのように一九六七年のベルリンからの韓国人多数強制連行事件の中で、その捜査の中で、当時ロンドンにおった金圭南のことが明らかになってきたということで検挙に立ち至ったのだということは当時韓国側が詳細発表しておるところでありまして、私たちはこれについて何ら資料を提供しておるというようなこともありませんし、全体として申し上げるわけでありますが、韓国とそのような秘密協定を結んでおるということはございません。
  159. 小林進

    ○小林(進)委員 四十年か四十一年か、彼の談話の中に若干の食い違いがあっただろうけれども、それは年の違いで、何も反論されることはないが、それならばお伺いしますが、日本の警察と韓国のKCIAと秘密協定がないというならば、なぜ行って交流される必要があるのですか。四十一年の十月には当時の警備局長の高橋幹夫氏が韓国のソウルにKCIAの本部を訪問されていますな。その後の行状を言えと言えばもっと言いますよ。四十五年の一月には三井警備局長、あなたも行っているじゃないか。あなたも四十五年一月にはKCIAの本部をやはり訪問をしておられる。なお川島警備局長もその前に行っている。お互いに警察と警察だから、日本の警察が韓国の警察へ表敬訪問するというなら話はわかる。警察とKCIAは異質のものだ。何でその本部をこうしばしば訪問をする必要があるのか。はいこんにちは、さよならで来たわけじゃないでしょう。はいこんにちは、さよならで来たのだとおっしゃると、ちゃんと証拠を出しますよ。なぜ一体行くんだ。そういうような密接な交流をしておきながら、やれ協定があったのないのという枝葉末節で年の違いや年月の違いを口実にされても、われわれ国民の側では了承するわけにはいきません。なぜそう行って交流をするんだ。なぜKCIAの本部を訪問するんだ。異質のものじゃないか。なぜ一杯飲む必要があるんだ。お聞かせを願いたい。
  160. 三井脩

    ○三井政府委員 韓国とわが国とは大変密接に近い関係にありますので、最近の犯罪の情勢から言いまして、密入国を初め密貿易、その他麻薬関係もあるわけでありますけれども、両国が緊密に協力をしなければならぬという情勢にあることは御存じのとおりでございます。したがいまして韓国の治安当局に対して、われわれが現地に視察に行くというようなことがあるわけでございますが、韓国の治安当局といいますのは、わが国の警察庁に匹敵をする治安本部、昔は治安局と言っておりましたけれども、内務部治安本部、現在はそういう名称であります。そのほかに韓国中央情報部、これは情報機関でありますけれども、単に情報をとるだけでなくて、御存じのように反共法あるいは国家保安法等、一定の犯罪については警察と同じ捜査権限を持っておる、こういうことでありますので、日本の警察に匹敵するものは韓国では治安本部プラスKCIAの一部の機能、こういうことになるわけであります。したがいまして、わが方から韓国に訪問、視察に行きます場合には治安本部に行き、ついでにKCIA、中央情報部にも表敬訪問をするというような関係にあるわけでありまして、いわゆる警察実務的に、実務的な関係というのは治安本部との関係にある。中央情報部には単なる表敬訪問、こういうことでございます。
  161. 小林進

    ○小林(進)委員 李下に冠をたださずということで、日本国民が一番恐れているところへ、治安当局に行ったついでに、そういう関係がありましたからのこのこ出かけていきましたなどということで、あなた、われわれが一体疑惑を解くことができるとお考えになりますか。あなた方は、金大中という者は日本にも韓国にも好ましからざる人物であると位置づけた。ちゃんと位置づけた。もっと幾つもの例がありますよ。しかし、残念ながら時間がありませんから、これは次のときの楽しみにとっておきます。この問題は私は留保ですよ。まだあなたの答弁に了承したわけではない。  次に、高橋前警察庁長官の講演の問題も私は聞いておきたい。  五十一年の八月、これは警察庁長官をやめられてから、和歌山県の高野山で開かれた近畿警察官友の会夏季講座、この友の会夏季講座は現役の警察官ですぞ、しかも幹部教育だ。だから決してなまやさしいものではありません。その近畿の警察官の幹部会議で集まった現役の警察官幹部の前で前長官が講演をされた。その講演の内容が十月二十五日付の近畿警察官友の会の部内機関誌の中に発表せられた。その中で彼は「金大中事件、あれは私の一生の中でいちばんいやな事件でした。あの当時から、私は金大中はあぶないと思っておったが、まさかああいうばかなことをやるとは、思っていなかった。新聞あるいは公式には、あれはKCIAではないといっておるが、KCIAであることはまちがいない。金東雲というのはある程度知っておったが、あの野郎がこんなことをやるとは思わなかった。逆手をとられたわけです。」こういう発言をされている。なお続いて、「幸いに金東雲であることがわかったわけですので、」金東雲一等書記官がその犯人であることがわかったので、「それ以上法律に照らして、起訴にして懲役にするとか、日本にもってこいというのは、法律的な解釈だけの問題で、」これは捜査当局の問題ではないということなんです、「金東雲がこうだということが」、客観的に金東雲がやったんだということが「客観的に明らかになれば、それで解決するのが、秘密警察官同士の勝負です」こう言っている。秘密協定を結んだ、こう言っている。これに対して、高橋氏に真相究明にみんな行った。そのときに彼は何と言ったか。否定はしておりませんよ。私は、高橋さんという人を知っておるんだ。これは歴代警察庁長官の中でもりっぱな人だ。人格者です。偉い人がいたものだ。私は、あの人は終身警察庁長官にしておきたいと思ったけれども、やむを得ずやめた。りっぱな人だった。だから、彼は否定はしないと私は思ったけれども、否定しない。いわば非公式な席での気ままな、一種の放言で、当時も、オフレコの話だから文章にしないよう念を押したのだが、最近警察の後輩から、私の講演の内容が印刷されて、配付されたことを知って驚いている、私としては、オフレコの約束のものをどうかと言われても、責任は持てない、こういう答弁だ。私はりっぱだと思うのですよ。オフレコだから責任を持てないと言うならばこれはやはり、言ったことは決して否定はしていない。良心的ですよ。せめて警察の親玉はこれぐらい良心的であってもらいたいと私は思うのでありまするが、これに対して、浅沼清太郎現長官は、高橋さんがそんな講演をされたということを最近ちらっと聞いた、しかしKCIAの犯行であるなど発言したことは本人が否定されたというふうに聞いている。あなたは、否定された、こう言っている。本人は否定していない。前長官と現長官とで重大な証言の違いがあるわけであります。私は、高橋さんにここに来てもらって、前と現と二人並べて、言葉の真実の追求をしたいと思ったが、三十万警察官の親玉を二人呼んでこういうような質問をするのも士気に影響すると思って、高橋さんの方はきょうは遠慮させていただいた。現役の長官としてこの問題をひとつ明確に御答弁いただきたいと思うのであります。――長官に聞いているんだ。長官に聞いているんだよ。長官の発言を聞いているんだよ、あなた。
  162. 浅沼清太郎

    ○浅沼政府委員 お答えします。  ただいま御質問のように、前高橋長官が近畿の講演会におきましてそういうことを言われたということを聞きまして、真意はどうかということで、私の部下が高橋さんに尋ねましたところ、細かい点はよく覚えていない、しかしそういうことを言うはずがないしそういう記憶がない、しかしもしそういうことを言っているとすれば、それはやはりやめた気安さと身内だけの集まりであるということで気安く放言と言いましたか雑談と言いましたか、そういうことである、何ら事実に基づく発言ではない、こういうふうに言われた。私もその話を最初聞きましたときに、そういうことではなかろうかと考えておりましたが、そういう意味で、その後新聞社から電話で問い合わせがありましたので、高橋さんはよく覚えてないということを言われたということを言った記憶はあります。  この金大中事件は、御承知のように高橋さんの長官時代の事件でありますが、当時から政治的な背景とかいろいろなことが言われております。また、世の中一般にいろいろな推測を交えた話が出ております。したがいまして、警察としては、あくまでもこの捜査に当たっては事実を積み上げていく、証拠をもってそれを積み上げて、そして真相を解明しなければならぬ、それが本事件に対する警察の基本的な考え方だ、基本的な捜査方針であるということでありまして、高橋さんは、その基本方針を国会における御質問に対する答弁としても申しておるのであります。その基本方針は、本件に関しまして現在に至るまで警察の方針で変わっておりません。高橋さんもこの発言の後、自分がそういう意味で何ら事実に基づく発言をしたんじゃない、私的な立場で、私的な会合で言ったわけであるということでありまするので、そういう意味では私は、事実をもって論ずる、推測を交えないという基本方針は、現在においても全く変わっていないということを申し上げたいと思うのであります。
  163. 小林進

    ○小林(進)委員 この問題については、高橋前長官と現長官のお話の中では大きな食い違いがあります。やはり事実に基づいていないと言ったと言う。彼はオフレコであるからやったと言う。いまの長官は気楽でやったと言う。片っ方の方は、近畿警察幹部の現職を集めた厳粛な公的な一つの会合であったと言う。大変重大な差がありますので、これは後日、現浅沼長官と前高橋長官にはひとつ証人としてあるいは参考人としてここに御出席をいただきまして、両者対決の上でこの問題の真実を追求していただくことを私は委員長に提案をいたします。これは直ちに本委員会においてこれを取り上げて、私の希望どおり御指示をしていただきたいと思います。いかがでございますか。
  164. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 小林君のただいまの御意見については、理事会で協議をいたします。
  165. 小林進

    ○小林(進)委員 前向きで決定されることを要望いたしまして、これは必ず実現させていただきますことを私ば念を押しておきます。  なお、もう時間が参りまして残念でありますが、私は、特に警察と韓国CIAとの関係について、ここに幾つかの資料を持ってきております。時間がないから申し上げることはできませんが、一つは、いわゆる死刑の宣告をされた例の熊本から出ておりまする李君、これなどは現に警察の捜査当局が李君の足跡を捜査に回って行っている。行っていることがここに幾つも証言が出ております。何で一体、韓国CIAがスパイとしてこれを拉致した、逮捕した問題を、日本の警察がその人の行動を調査する必要があったのか。これは協定があったとみなさなくちゃいかぬでしょう。これは友情ですか。  太刀川君も言っております。太刀川君も、彼は日本人でありますが、韓国へ行っているときにあのとおりいわゆる拘禁を受けて、ひどい痛みを受けて帰ってまいりましたその一人で、彼の下宿屋にちゃんと日本の警察が訪ねてきたり、調査をしにきたり、あるいはいろいろの行動に出たことを彼自身が証言をいたしております。  もしそれがうそだと言うならば、いま私は答弁を聞きますが、この諸君もひとつ本委員会にぜひとも参考人として来ていただきまして、その事実があったかないかを公の前で明らかにすることを私は提案いたします。李君、太刀川君その他、日本の警察によって韓国に不当逮捕せられて死刑まで受けているような諸君に対して、日本の警察が手を貸していることは明らかになっております。よろしゅうございますか。
  166. 三井脩

    ○三井政府委員 熊本の事件は李哲氏に関する問題であると思いますが、この李哲氏が韓国でつかまったということで、熊本県ではこの人を救出するための組織がつくられまして、集会、デモ等が行われておりました。したがいまして、警察としてはそういう意味で、このデモ等についての治安維持という観点から関心を持っておりました。そのうちに御本人の両親、母親であったかどちらか忘れましたけれども両親が、確かに韓国で言われておる時期には大洋デパートで腕時計か何か買ったはずで、そこに資料があればアリバイになる、こういうことを集会あるいはビラ等で言っておるというようなこともわかりましたので、そういうことであれば、それが真実であれば、それが証明されれば、このデモその他もそう問題がなくなるであろうというような観点から関心を持ちまして、大洋デパートに行って調査をしたということはございます。これは事件のずっと後でございます。しかしながら、大洋デパートはその後の火災によって一切資料はないということでありますし、当時その販売に携わった人も記憶がないというようなことでありましたので、それはそれで終わっておるということでありました。  また、太刀川氏関係でおっしゃったことも、警察がそういう意味で調査をしたということはございません。
  167. 小林進

    ○小林(進)委員 いまの警備局長の答弁と、当の熊本の警察の北署長の松田建男氏との談話は全くうそだ。彼は、刑事が出向いたなどということは一切聞いていない、私としては考えようもないと言って、あなたのように好意的に行ったなどということは一つもしゃべっていない。警察がみずからの話をこういう粉飾されるようなことじゃ、われわれは警察を信頼することはできない。  警察の名誉のためにも、やはりいまのこういう李哲証言の問題あるいは太刀川君の問題等を、国会に招致して、いま一回ひとつ私の見ている前で事実を究明していただくことを私は提言をいたします。もう時間が参りました。よろしゅうございますな、委員長
  168. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 理事会で協議をいたします。
  169. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、どうも問題をすっぱり処理できないで非常に焦るのでありますけれども、一つ申し上げますが、御承知の九月二十九日午前十一時、この国会の福田総理の親分といいますか兄貴分といいますか、岸信介氏が朴大統領を訪問された。矢次君と一緒であります。そして約一時間談話をされた。その中でいろいろなことがありますが、一つ金大中拉致事件について言いますると、岸氏はこういうことを言われた。金大中事件は日韓政府間の政治決着はついたことになっているが、日本国民レベルでは決着は必ずしもついていないということを指摘し、これが政治問題化して日韓大陸棚開発促進などに悪影響が出る可能性もはらんでいるという日本の状況を説明している。そして韓国政府が何らかの措置を考えてほしいと要望されたということが明らかになっております。これを総理は一体お知りになっているかどうか。何らかの措置をしていただきたいということは、岸氏はその前にアメリカに行かれた。ニューヨークにも行かれたしワシントンにも行かれた。私はその跡を全部調査して歩いたのであります。行かれて、これはもうアメリカの状況、日本の状況からながめて、この問題はもうほおかぶりができない。だから朴大統領もこの際ひとつあきらめて、金大中氏をいわゆる原状復帰せしむべきことをやらなければおさまらぬぞという政治的判断で私はこの発言をされたと思う。「鳥の死なんとするやその声やよし」でありまして、いよいよ最後の決着をつけようと思って行かれたのではないかと私は判断いたしますが、この問題についていかがでありますか。  総理、ともかく金大中の問題は、事のいかんを問わず、KCIA、いわゆる韓国の国家権力による日本の国家権力への侵害であることは間違いありません。日本の独立と日本の尊厳を侵した事実は間違いありません。この問題の解決は、彼の身柄を原状に復して、そして日本の尊厳を守る以外にないのであります。そのために、朴さんはそのときに何と言った。彼は、いまはもう発生の状況と違っているのだ、いま発生の状況と違って、現在は韓国の国内法に基づいて処置をせられているのですよ、金大中事件は、その発生直後といまとでは別個、異質のものとなっている、金大中氏の現在の状況は拉致事件の延長線にはなく、韓国の法律を犯した犯罪人となっており、金大中氏が反省すればいつでも特赦する用意があります、こういうすりかえ答弁をしているのでありまするが、国際法の問題は一国の国内法に優先することは明らかになっているのでありますが、この金大中氏がKCIAの行為であるということがわかったら、必ず日本に身柄を取り戻すという決意と交渉をおやりになる腹構えが一体あるかどうか、政府の所見を承っておきたいのであります。
  170. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 岸・朴会談の話は私は聞いておりません。おりませんが、この問題はすでに政治的には決着は経ておりますが、事件といたしましては、まだ捜査中でございます。捜査の結果、わが国の主権が侵害されたということが明確になるという際におきましては、また改めてこの問題を見直さなければならない、かように考えております。
  171. 小林進

    ○小林(進)委員 残念ながら……
  172. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 時間、時間……。
  173. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは、いままでの答弁で一つも私の満足を得たものはございませんので、また後日、機会を得てこの問題を繰り返すことを申し上げまして私の質問を終わります。
  174. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 これにて小林君の質疑は終了いたしました。  次に、正木良明君。
  175. 正木良明

    正木委員 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、総理並びに関係閣僚の皆さん方に、主として総合経済対策の問題について御質問をいたしたいと思います。  その前に、先ほども佐藤委員から御質問がございましたが、日航機乗っ取り事件について、主として対策部長である園田官房長官並びに国家公安委員長、法務大臣等に御質問を申し上げたいと思います。  まず最初に、総理にその御見解をいただきたいのですが、実は、御承知のとおり、今回の日航機の乗っ取り事件は、わが国にとっては初めての事件ではありません。「よど号」事件があり、そのほか赤軍の事件といたしましてはクアラルンプールの事件がございます。順を追って申しますと、昭和四十五年の三月には「よど号」事件、昭和四十七年五月にはテルアビブの空港襲撃事件、四十八年の七月には日航ジャンボ機ハイジャック事件、四十九年二月にはシンガポール・シェル石油襲撃事件、またクウェートの日本大使館占拠事件、九月にはハーグ・フランス大使館襲撃事件、そして五十年の八月にクアラルンプールにおける大使館襲撃事件が起こっているわけであります。特にクアラルンプール事件におきましては、いわゆる人質をとって、さらに自分たちの同志である、日本に勾留中ないしは服役中の者の釈放を求めている。実はあれは三木内閣のときでございますが、あのときもいわゆる超法規措置というものが講じられました。そうしてこの超法規措置というのは、人命尊重という人道的立場の上から、まことにもってやむを得ない行為であって、これを再発させないために、二度とこういうことのないようにということが三木総理大臣の話の中に、公式に何回も出てくるわけであります。にもかかわらず、ことしまた同じような事件が、同じといっても今度は航空機でございますが、やはり人質をとって、そうして凶悪犯の釈放並びに身のしろ金の要求、今度は身のしろ金がふえたわけでございます。  これは私は、起こってからとった措置としては、福田内閣がとられた措置はやむを得ない措置であったかと思いますが、しかし、少なくともこういう事件が頻発することは防がなければならぬわけでありまして、そういう意味から言えば、今回の事件が起こるまでに、いわゆるクアラルンプール事件以後、このような超法規的措置という、先ほども法務大臣がいみじくも言明されましたように、法治国家の秩序を保つことができない、法律が暴力に屈するというようなことのないようにするためには、どうしてもやはり再発防止ということに力を入れていかなければいかぬ。ところが、実際においては、クアラルンプール事件の後、その努力というものが見られないような気がいたしますが、そういう点について、内閣総理大臣福田さんではありませんでしたけれども、自民党の内閣として、これは十二分に責任を感じてもらわなければならぬ問題であろうと思いますので、まず総理にその点についての御見解を承りたいと思います。
  176. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国でとにかく関係するところのハイジャック事件その他の暴力事件ですね、これは非常に多かった。特に二年前のクアラルンプールにおける事件、あれを契機といたしまして、かなりのこの種事件の根絶をするための措置は検討されたわけなんです。私もどういう措置が検討されたかということにつきましてはチェックはしてみました。しかし、今回それにもかかわらずまた再び類似の事件が起こってきた。それを見ますと、やはりまだこの種事件の再発防止のための措置が完全でない、そのことを痛感をいたします。そういうことを、具体的にどういう点だというところまで私いまここでは申し上げませんけれども、とにかくそういう点が多々あるように思うのであります。  そこで、まあ事件が一段落したその時点におきまして、再発防止のための対策本部、これをつくりまして、そして私は、その初会合の、去る五日でありましたか、その日には、こういうものは早く処置を決めなければだめだ、そうして早く実行しなければだめだ、そういうことを考えますと、今度の事件を契機として検討されるその措置は、今月中にひとつ結論を出してもらいたい、また、それを受けまして対策本部におきましては今月中に結論を出す、また、今月中というのを待たず、今週中にも決まったものは実施をする、こういう意気込みで鋭意検討しているのです。実はきのうも休みではありましたけれども集まりまして、その検討会を私も参加いたしましてやっておるような次第でございます。本当にこういう事件が起こるということは遺憾千万、国内の治安の問題もありまするけれども、国際的にも非常に恥ずかしい話なんですから、再びこういうことの起こらないようなためのでき得る限りの措置をとってみます。  ただ、この問題を本当に根絶するためには国際的な協力が必要なんです。この問題につきましては、なかなか完全なところまでいくということは相当困難を感ずると思うのですが、これも最大限の努力をしてみる考えであります。
  177. 正木良明

    正木委員 今回の事件の後、精力的に再発防止のために取り組んでいらっしゃるというのはよくわかりますが、私が申し上げたいのは、その以前にその努力が見られなかったということです。要するに、東京条約以外のヘーグ条約だとかモントリオール条約というのは、実はあれは「よど号」事件の後でございまして、クアラルンプール事件の後ではどのような努力がされたかということについては、私たちはほとんどなかったと見てよかろうと思うくらいであります。そういう点ではいまおっしゃったように非常に議論が進んでしまいますが、少なくとも乗っ取りした犯人をどこも受け入れる国がないというような状態をつくることが最も望ましいことでございますけれども、しかし、この東京条約にしろヘーグの条約にしろ、さたモントリオール条約にしろ、これの加盟国というのは、まだ相当未加盟国、いわゆるすき間があいているわけでありますから、今回の受け入れたアルジェリアもその点については加盟国ではありませんね、そういうことでありますから、やはりこれはよその国のことでありますから一挙にはいかないとしても、こういう問題がやはり国連の席上あたりで相当精力的な努力が進められてこなければいけないのですが、外務大臣、どうですか、そんなことやりましたか、クアラルンプール事件以後。
  178. 大川美雄

    ○大川政府委員 国連では、国際民間航空機関が御承知のとおり三条約に関係したわけでございますけれども、おっしゃるとおりすべての国が加入しているわけではございませんので、国際民間航空機関の場において、日本政府としても、従来も今後とも各国がそれに加入するように呼びかけてまいる予定でございます。そのほかに、国連自体におきましても、実は四年ほど前にアメリカの提案でいわゆる国際テロリズムについてメスを入れるための特別委員会がつくられて審議が行われております。それと並行してまた別に、人質をとることを防止するための国際条約をつくろうではないかという案が、昨年ドイツ連邦共和国、西独から出されまして、そのための特別委員会も成立して、この夏に第一回の会合を行ったわけでございますが、日本といたしましてももちろんこの両特別委員会において積極的に審議に参加しております。今後ともそれを継続してまいる所存であります。
  179. 正木良明

    正木委員 まあ語るに落ちるというか、アメリカがやったり西ドイツはやったけれども日本は全然やっていないじゃありませんか。要するにハイジャックの輸出国と言われ、赤軍、あれは日本の赤軍なんですからね。そういう凶悪暴力の輸出国とさえ非難されている日本が、よその国から出てきたものに積極的にその審議に参加しているという程度では、私は国際的にはやはり大きな責任を果たしたとは言えないと思う。これは今後にかかる問題でありますから、日本からも、たとえば公海に関する条約というのがございまして、この十五条から二十一条までは海賊行為の禁止の規定がございますが、これに似たようなものでたとえば空賊ですね、海じゃないのだから空賊だ、ハイジャックだから。ですからそういう防止のための条約を結ぶというようなこと、これが果たして効果があるかどうかの問題もございましょうけれども、少なくとも、そういう日本世界から非難を受けておるという状況の中で、このような凶悪暴力犯というものを根絶していくための努力というものはやっぱりやっていかなければいかぬ。どうですか、鳩山さん。
  180. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ハイジャック事件のように国際的な場で起こる犯罪につきまして、これは国際的な努力をもって防止しなければならない、日本として今回の事件を目の当たりにいたしまして今後最大の努力をいたしたい、こう考えます。
  181. 正木良明

    正木委員 そこで、新聞報道でちょくちょくと話が出てくるのですが、この経過が私たちには正確なことがよくわかりません。これは国家公安委員長か警備局長か、だれでもいい。長官、こういうことです。要するに、どこから犯人が乗ったのか、爆弾とか凶器というのはどこで持ち込んだのか、そういうことがわかりますか。
  182. 園田直

    ○園田国務大臣 犯人が乗り込んだ場所、兵器、弾薬、爆薬等を積み込んだ場所等は、まだ情報の程度であって、調査中でございます。
  183. 正木良明

    正木委員 それは捜査の途中だから言えないという意味ですか、わかってないということですか。国家公安委員長もわからないの。言っちゃいけないことになっているの。
  184. 園田直

    ○園田国務大臣 秘密にしているわけではございません。正直に申し上げまして、ここで報告するまでの程度の確実な情報をつかんでいないということであります。
  185. 正木良明

    正木委員 これは外務省わかっておるのか。わからないですか。本部長がわからないのだから、向こうもわからないだろう、それは。では、自治大臣。
  186. 小川平二

    ○小川国務大臣 ただいま捜査の衝に当たっております警察の当局が参っておりますから、もとよりこれは秘密にすべき何事もございませんので、ありのままを御報告いたさせます。
  187. 三井脩

    ○三井政府委員 簡単に申しますと、目下捜査中でございます。といいますのは、これは国外で起こった事件でございますので、当時の乗組員あるいは乗客等が帰ってまいっております。そういう人たちに聞くということを手がかりといたしまして各種の捜査をいたしておりますが、現在までのところ、一般に伝えられておりますように、五名がボンベイから乗ったのではないかという線が一番濃いように思いますけれども、それが果たして確実であるかということを捜査段階で認定するところまでは至っておらない。  また、凶器は拳銃並びに手りゅう弾が凶器だというように一応言われておりますけれども、その形とか性能とか数とかという詳細についてはわかりませんし、これはまたいわゆるチェックインのときに体につけて中に入ったのか、あるいは別送で持ち込んだのか、あるいはその他の方法により持ち込んだのかという点についても、いろいろ推測はございますけれども、これというところまでまだ固まっておらないのがただいまの現状でございます。
  188. 正木良明

    正木委員 それじゃそれはまた調べて報告してください。聞いてもわからぬでしょうね。しかし、乗客名簿で消去法でやっていけば、後へ残った人間がおりなかった人間なんだからわかるはずだと思うがな。
  189. 三井脩

    ○三井政府委員 消去法でやったところがボンベイからの五名でございます。したがって、一番疑いが濃いと申し上げておるわけでありますが、それだけで犯人と断定するわけには捜査上まいらないということでございます。
  190. 正木良明

    正木委員 そうすると、そのハイジャックをした人と会わない限り、犯人かどうか確かめられぬということですか。そういうことなの。どうもそういうことでしょうね。時間をこんなのでとったらあれですから……。  それで、本部長、政府のハイジャック防止六項目というのを発表しましたね。これは違うのですか。政府の対策ではないのですか。
  191. 園田直

    ○園田国務大臣 先ほど御報告申し上げましたとおりに、十月の五日に閣議決定をして、ハイジャック等非人道的暴力事件再発防止本部をつくりましたが、その中で、本部会合と幹事会がございまして、事務当局が集まって、幹事会で一応いままである要綱、方針等も参考にしながら案を練っているわけであります。二回幹事会をやりまして、その中でできた案が新聞に出たわけでありまして、これはまだ決定された方針ではございません。直ちに数日中に逐次決定し、逐次実施をしていく所存でございます。
  192. 正木良明

    正木委員 私もいろいろ識者と言われる人、専門家と言われる人とどうしたらハイジャックを防止できるかといことをいろいろな機会に議論をいたしましたが、議論をすればするほど悲観的かつこれを防止するための手段というものについてはなかなかめんどうなように思います。私は、この六項目、新聞で発表されたものをずっと見てまいりましたが、少なくともこれはやって差し支えのないものだし、やるべきものであろうと思います。ですから、これはできるだけ早い時期に、追加されても構わないから、やはり決めて実行に移していくということでなければならないと思います。しかもこれは、決めましても、直ちにやれるものとやれないものがあるだろうと思います。たとえば日本航空がダブルチェックをするという問題がございますが、これとても、ダブルチェックすることはそんなに違法のものではないと思いますが、しかし実際問題として、主権の属する外国の空港で検閲したものについて、チェックしたものについて、さらに日本航空がその業務を乗り込む手前でもう一度やるというのがダブルチェックでしょう。これはやはりその国に対してのよほどの了解を得ておきませんと、われわれのやっているチェックが信用できないのかというメンツの問題も出てくるだろう。そういうことになってまいりますと、これをやると決めたから明くる日からできるというものではないだろうと思います。人員の配置も必要でしょう。その国の了解も必要でしょう。ですから、私はそういう意味から言えば、早く決めてできるものからどんどん実行していく、その準備に入らなければいけない、このように考えるわけです。そういう意味から申しまして、精力的に取り組んでいらっしゃるというのはよくわかりますけれども、その点はちょっとまだ遅きに失している面もあるのではないかというふうに感じます。  それともう一つは、国民の理解を得なければならぬということであります。この中では、機内持ち込みの手荷物の極端な制限をしなければならないだろうと思いますし、また、相当めんどうなチェックも念入りにやらなければならないでしょう。いろいろこの方面の専門家の方にお聞きいたしますと、これにそんなにやすやすと協力してくれる人というのは――大体えらい人に多いそうですか、おれの顔を知らぬのかということで、これがなかなかうまくいかない。そういう意味では私はやはりそういう協力が必要だろうと思います。そのための国民に対しての理解を求めるというPRを一生懸命やっていくことも必要でしょう。  それともう一つは、日本の国内の空港の場合、厳重にやればやるほど、これは各航空会社がやっているわけですから、やはり乗客の奪い合いということで大きな競争があるわけでありますから、余り厳しくやると、厳しくやらない方の航空会社に取られてしまう、こういう関係があって、航空会社もできるだけ綿密なものを避けたいという気持ちがないではない。そういうことから思いますと、すでに内々発表されたこの六項目を実行することさえ、よほどの覚悟を持って国民に理解を求めなければできない問題である。そういう点は、もちろん私どもも努力いたしますが、やはり政府の方もその点についての努力が要るだろう、このように思うわけです。そういうことからいって政府としてのお考えをお聞きしたいと思います。
  193. 園田直

    ○園田国務大臣 全く仰せのとおりでありまして、持ち込みも、航空会社の申し合わせによると、過去においてもこうもりがさ、ハンドバッグ程度のものしか持ち込めないことになっておるわけでありますが、お客さんを呼び込む関係上だんだんとふえてきておるわけでありまして、このこと一つでも国民の理解、そしてまた各航空会社の理解を得なければなりませんので、すでに航空会社についてはそういう相談を始めております。その他万般につきましても、お指図のとおり、できたものをどんどん急いで実行に移していくというふうにしたいと考えております。
  194. 正木良明

    正木委員 それと総理、一番根本的に大事なことは、原則を決めるということです。決して願うことではありませんが、今度こういうハイジャックが起こったときにどういうふうに対処するかということの原則をはっきりいま決めておかなければなりません。私はそう思いますよ。そういう意味では、先ほどの質問で瀬戸山法務大臣がお答えになったことが政府としての原則なのか、それとも今回のいわゆるダッカにおけるこの事件に対してとった政府の措置が原則なのか、どちらですか。
  195. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今回の事件に対しましてとりました政府の方針、これは閣議においてそれを決定いたしまして、そしてとった統一方針に基づくものであります。今回の事件につきましてとった措置は、そういうことでもあり、私はやはり国民全体の、まあ大多数のコンセンサスを得た処置であった、こういうふうに考えておりますが、これからはこういうことを再び起こしてはならぬ、そのための万全の措置をとるということが根本的な方針でなければならぬ、私はこういうふうに考えまして、その方へ全力を尽くしてみたいと思います。
  196. 正木良明

    正木委員 それは原則ではないのです。それは当然、私も申し上げましたように、こういうことがしばしば起こることを願っているわけではないわけです。しかし、起こったときにどうするかという原則については、比較的瀬戸山法務大臣は厳然とした態度をとるべきであるという方針を発表されました。その後、その場においてどう措置するかということについては、その場で判断するということを法務大臣がおっしゃったような気が私はいたします。これは赤軍派の、刑務所に入っているとか、拘置所だとか、そういう連中を釈放することと、身のしろ金が条件でしたが、もし仮に、もっと大変な条件が出てきたとき、どうしますか。しかも彼らは、単にあのイスラエル問題だけを問題にしているのじゃありませんよ。今度は天皇制打破ということを問題にしているのですよ。もしやんごとなき方に身のしろ金を持ってこいという条件がついたとき、どうしますか。人命は地球より重いからといって、今度と同じ処置をとりますか。だからこそ、いま少なくとも原則は決めておくべきです。その原則が瀬戸山法務大臣のおっしゃる原則であるならば、そういう原則でいきます。しかしいろいろと問題がその場に当たったときに出てくるでありましょうから、そのときには例外的措置をとるかもしれませんということなら、私、話はわかりますが、いまのところじゃ瀬戸山さんの考え方と総理の考え方、全く違う考え方ですよ。
  197. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 法務大臣にまず答えてもらって、それを聞いてやります。
  198. 正木良明

    正木委員 では、法務大臣。
  199. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 先ほど佐藤委員にもお答えいたしましたが、私はこういう事態が、これはいろいろなハイジャックの形態があると思いますけれども、少なくとも日本赤軍と言われるもののような場合は、これは彼らの目的がどうしても達しられないんだという措置をとらなければ尽きないと思っているのです。具体的な場合はいろいろなことを考えて、さっきも申し上げましたように、これは私は、世界人類あるいは日本国民全体が法治国家というものはいかなるものであるか、これを考えて対処しなければ、簡単なものじゃありません。総理もそういう点を頭に置いてお答えいただいておると思いますが、そういうものを含めて、これはやはりやってもだめなんだということをしなければおさまらない。とにかく、いま恐れ多くも天皇陛下のお話が出ましたが、そういうことも条件になり得ないとはこれは断言できない。あらゆる手段を講ずる。そういうものに目的を達成させないということにしなければ、こういう問題はいろいろな国内的、国際的な技術的、法律的のことを講じなければなりません、防ぐことは事前に防ぐという対策を講じなければなりませんが、いま世界は一つという状況の中で各国の姿を見ておると、それはなかなかそう簡単なものではない。しかし、あした始まるかもわからないのですから、そういうことを見ますと、私は重ねて申し上げますが、長い歴史を経て、人類が考えられる、現代においてはベターな制度が立権法治国ということになっておる。これが暴力によって破壊されるということは、これはもうそれこそ世界人類の問題です。国民全体の問題でありますから、そういうときには、私は法治国家のたてまえを貫く、残念ながらそういうことをしなければおさまらない、これは私は原則だと思っております。
  200. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 正木さんの御質問の趣旨はわかりましたが、法の尊厳、法治国家の立場を守るか、あるいは人の命を守るか、このいずれを重しとするかというその方針を決めておくべきじゃないか、こういうことでありますが、私といたしましては、いずれもこれは大事なことである、いずれも。その事態に臨みましていかなる処置をとるかということは、その時点において、その事件の態様に応じまして判断すべき問題である、かように考えます。
  201. 正木良明

    正木委員 それで了承しておきます。  最後に一つ。これは外務大臣にも関係がありますが、アルジェリアで犯人の引き渡しだとか身のしろ金の引き揚げということの権利を放棄した問題がありますね。これがどうもちまたにふんぷんたる真偽のほどが定かでないうわさが流れておりますが、うわさを問題にしているわけではありませんが、これは外務省の独断でやったのか、対策部長ないしは総理の了解のもとにやったのか、どっちなんですか。
  202. 園田直

    ○園田国務大臣 対策本部でやったことでありますから、私からお答えをいたします。もし違っておったら、外務大臣から違った場所だけ訂正をしていただきます。  まず、対策本部は総理の指示を受けて、バングラデシュで最終解決したい、これに全力を挙げました。そこで、バングラデシュ政府には第一に非常に強く要請したことは、犯人の飛行機の行く先が決まらないうちに離陸をさせると、受け入れ国がなくて人命上大変なことになるから、受け入れ国、受け入れ先がはっきりしないうちは絶対に離陸をさせないでくれ、実力を使っても阻止させてくれということで最終段階を図ろうと努力をしたわけであります。しかし、と申しましても内々には、犯人の暴力かまたは現地の指令で飛行機が飛び立ちますと、飛び立った後の日本航空の飛行機それから乗客、乗務員、これは日本国政府がこれを守る責任がありますから、内々は極秘で外務省で各国に折衝したものであります。相当数の国々に打診をいたしましたが、どこの国も、この前のリビアの事件その他のことを考えて、受け入れると国際的な批判を受けるというので、給油または領空通過、着陸はもちろん、ことごとく拒否をいたしました。そういう段階で、一方には絶対に行く先がないんだ、行く先がないから出さないでくれ、こう言っている関係上、このことは極秘で外務省だけに命じて打診をやっておったわけであります。  ところが、いよいよ最終段階で半数が解放されて、そしてバングラデシュの命令で飛行機が離陸をする段階になったわけであります。そこで、この段階になりまして、極秘で大体行く先に見当をつけて、数カ国にしぼりまして打診をしておったわけであります。  いよいよ離陸をいたしました。そして、犯人とその他との交信あるいは諸国からの情報で、まず第一にロンドンの日本航空の支店長からの情報で、どうもアルジェリアらしいということが入ったわけでありまます。そこで、アルジェリアに着きます間の御承知のクウェートそれからダマスカス、こういうところも、最初は滑走路には自動車を並べまして着陸拒否の態勢をとりましたが、その上空を旋回すると、仕方なしに人道上という立場で滑走路をあけて着陸させて給油をした。そして、いよいよアルジェリアに間違いないということがわかりましたので、そのころから正式の工作に移ったわけであります。  だんだんアルジェリアに飛んでまいりまして、そこで、その数日前からの経過といろんな情報で、外務省からの報告では、どうも受け入れる方はなかなか渋っておる、そして犯人の受け渡し、身のしろ金の受け渡し、こういうことを要求されると国際的な批判を受ける、こういうことで、どうも条件としては身のしろ金、犯人の引き渡しは要求しないだろうな、こういうことがまず条件だ、その次には損害賠償を現地に要求しない、この三つの条件だ。こういうときに、これは総理に報告をして、まあ大体それ以外に方法ないかということで、万やむを得ず、飛行機はだんだん飛んでまいりますし、上空を旋回するということで、最後の段階では臨機応変に処置をやれということを言われておったわけであります。  そこで外務省としては、いよいよ最後の段階に至りまして、前もって方針は了承を受けておりますから、外務省から現地に訓令を出して、現地の宮崎大使は外務省の訓令に基づいてやむを得ず三条件をのんだわけであります。したがって、宮崎大使の現地のアルジェリアとの約束、それからこれに命じた外務省の訓令は、これは間違いなしに日本政府の意思でありまして、これは間違いないところであります。ただ、いままでのいきさつ上、法務省、警察、運輸省その他の関係省に、事が決定した後速やかに連絡し――なお方針は了承されておるところではありますけれども、それが、実行した後には一刻を争って総理に報告するという事務手続上に若干手おくれがあったわけでありまして、その後いろいろ対策本部その他で議論いたしました議論の主たるものは、そういう約束をしたからにはもう何も要求できないのか、こういう議論がありまして、約束したからには約束だから仕方がない、しかし再発防止のことから考えると何とかお願いできないものだろうか、こういうことで、要求ということではなくて、お願いということで何とか再発防止に協力を願って、身のしろ金、それから犯人の引き渡しを願えぬだろうか、それもできなければ、犯人を拘束し、身のしろ金はあなたの方で没収して再発防止をやってもらいたい、こういうお願い、要請をしておるわけでありまして、その事務上の手続と、それから、後の要請の問題でごたごたしましたので、新聞等に間違った情報を与えられて大変御迷惑をかけたわけであります。  なお、最後の段階の場合に、ある新聞に、念のために申し上げておきますが、対策本部の閣僚は自宅に引き揚げて、いなかった、こういうことでありますが、処置その他について手落ちはあったかもわかりませんが、運輸大臣、法務大臣、自治大臣、全部の閣僚は自分の職場に、そして法務大臣のごときは、自治大臣も、五分以内のところにホテルをとって、そこに待機をしておって、最後、全員解放されるまでは全員職場を離れなかったことだけは御了解を願いたいと思います。  以上、御報告申し上げます。
  203. 正木良明

    正木委員 そういうふうに見解を統一されたのでしょうから、それはそれでよかろうと思います。  ただ、私は変に思いますのは、こういう緊急事態のときというのは交渉が必要なのでありますから、これはもう瞬時も待たずにすぐオーケーならオーケー、ノーならノーという返事をしなければならぬ事態というのがあるだろうと思うのです。そういうことが当然想定されるのにもかかわらず、そういう想定されるような、もしこう言ったときにはどう答えるか、こう要求があったときにはどう答えるか、いわゆる受け入れ国ですね、このアルジェリアに限って言いますと。そういうことが事前に対策本部の中で打ち合わせができていなかったというのはちょっと怠慢だと私は思うのですね。もしこれができておれば、法務大臣もそのことは知っているのだし、それは出先の外務省に任せたのだ、だから外務省の判断で身のしろ金、また釈放犯人を放棄する、これはできるし、また後で問題になることではないのに、それがそういう交渉の中ですぐさまオーケーを出さなければいかぬという状況でそういうふうな処置をとった。ところが、それは聞いていないとか、どうだとかいう問題が後で起こってきているというところに問題があると私は思うのです。  ですから、これは統一見解をお出しになったのですから、恐らく鳩山さんもこれを訂正しようなんという気持ちはないでしょう。ですから、それはそれで了承しますが、しかし少なくとも事前にあらゆる場面というのが想定されて――われわれでもそうしますよ、われわれでも、ハイジャックじゃなくても、借金しに行くのにだれかを代理に出したときに、向こうがこういうふうに言ったときにはどう言え、こう言え、これでオーケーしてこい。本当にその金がすぐさま必要だったら、それはもう委任するじゃありませんか。同じですよ。その点で私は手抜かりがあったと思います。まあそれは過去のことを追及しても仕方がありませんから、どうかひとつそういう点については緊密に連絡を取り合いながら再発防止のためにがんばってください。  それからハイジャック事件の陰に隠れて、こんな大事件がちょっと見過ごされている感じがございますが、実はクアラルンプールの日航機の墜落事故です。これは幸い全員死亡なんというような大被害にならずに済んだことを本当に喜んでおるのですが、この間事故調査の中間発表がございまして、どうも操縦士の超低空ミスであったというようなことが言われております。これは運輸大臣に聞けばいいんですが、それを聞いているとまた時間がたってしまいますので――大体これは三十分で終わろうと思っておったのになあ……。  ところで、以上に低空な場合には警報を出す装置というのがあるんですってね。いわゆる対地接近警報装置というのがあるんですって。異常に低空になったときにはビーっと操縦士に警報で知らせるんだそうです。これが高度計のように気圧でやるという場合には非常に狂う場合があるのだそうですか、これは電波を使うので、はね返ってきた電波をコンピューターで計算して超低空かどうか、超低空ならば警報を出す。これはアメリカの飛行機には全部ついているんです。  それで、これを調べてもらいましたらば、これはロッキードではずいぶんみそをつけましたが、全日空はきわめていい成績です。トライスターが十八機の全機、B727二十三機の全機、B737十二機の全機、YS11だけが二十八機の十六機しかついておりませんが、東亜国内航空、南西航空、全部ゼロ。ここで日航は、いわゆるDC10というものですね、これは初めからついてきておったわけですから、ついているはずです。全機ついている。ジャンボは、B747二十七機のうちの五機しかついていません。DC8、これが墜落した飛行機ですが、これが四十三機のうちの一機しかついていません。たまたまこのついているものが向こうに飛んでいたならば、恐らくその警報装置で事故が起こらなかったかもしれないのです。まだ事故調査が全部済んでいませんからわかりません。そうしてB727は、日航の場合は二機ございますが、これがゼロです。  これはアメリカではもう完全に法律で義務づけをいたしまして、余り超低空の場合には警報が出て、そうして操縦士がそのことに気づいて機首を立て直してということができるそうですか、こういう点、ちゃんと整備しろということを日航に言う気はおまへんか、運輸大臣。費用は、配線も全部して一機で二百万か二百五十万です。
  204. 田村元

    ○田村国務大臣 確かにおっしゃるとおりなんです。そこで、来年九月末までにすべてこれを整備するという計画を立てておりますが、おっしゃるとおりのことでありまして、私どももそれよりも早くこれがすっかり整備されるように急がせております。
  205. 正木良明

    正木委員 これは全機ですね。日航だけではなくて、東亜国内もですか。
  206. 田村元

    ○田村国務大臣 全機でございます。
  207. 正木良明

    正木委員 それではハイジャック等、要するに飛行機の問題はこれで終わります。  さて、景気の問題。朝、社会党の多賀谷政審会長がいろいろ御質問なさいましたので、それとはできるだけ重複しないようにやっていきたいと思います。  今度、政府は総合経済対策を立てました。そして、景気刺激のために追加公共事業等事業費で約二兆円、そのほか金利を〇・五%下げる、それから国際収支関係の対策構造不況業種に対する対策等々、総合的に、何しろ六・七%の実質成長率を保持できるようにという考えでおやりになりましたね。これは朝も質問ございましたし、そのことで、余り実りのない質問でございますから、六・七%がどうのこうのということにはあえてこだわりませんけれども、私は、問題は、いまだれが考えてもそんなに奇手妙手というものはないだろうと思うのです。したがって、これはこれなりに成功されていくことを私は願いますがね。こう言ってはなんですが、あの狂乱物価のときに、あの物価を鎮静させるために福田さんが、その当時は総理じゃございませんでしたけれども、福田さんがおとりになった政策、私は実にみごとだったと思うのです。こう言うとあなたは御不快な感をお持ちになるかわかりませんが、福田さんは経済を縮小するというか、ぐっと締め上げて、そうして景気を鎮静させる、過熱状態を鎮静させたりなんかするということについては、ずっといままでの福田総理の御経歴から見ても私は実にはまり役だったと思うのです。ところが、経済を拡大したり景気を持ち直したりするということは余りお得意でないような気がいたしますね。それがどういう形であらわれるかといいますと、いわゆる施策が小出しなんです。施策が後追いなんです。したがいまして、どうしてもこれは遅々たる歩みになってしまうおそれが多分にある。そういう意味から申しまして、実はこの総合経済対策も、二兆円の事業規模の追加ということ等々、私はそんなに多過ぎるとも思わないし、そんなに少な過ぎるとも思っていないのです。私はもうちょっと高いものを望みますけれども……。ところが遅いです。これは恐らく経済企画庁景気動向調査がぐっと下がってきた、ここであわててということでなかったのではないかと私は思うのですが、いまこの景気回復の軌道に乗せなければならない時期としては、余り小出しや、それよりも手おくれというやつ、後追いというのは景気対策にとっては非常にまずい結果が起こってくるだろうと思うのですね。それで、こういうときにはこういう施策が出てくるだろう、こういう施策が望ましいだろうということが出てきたときは、総理、できるだけ早くやるかやらぬかを決めなければいかぬだろうと思うのですよ。経済学は心理学とも言われますが、心理的なものが非常に大きいのです。  そういう意味で私は、あの選挙中におっしゃったことですから、これは全部信用してません、選挙対策としておっしゃったのだろうと思いますが、梅雨明け宣言とともに景気回復宣言ができるだろうとあなたはおっしゃった。ところが実際はできてないのです。だから、本当を言えば、あの時点からわれわれはすでに公共事業十兆余りの前倒しをやっているのであるから、これがずっと前期に集中してくると後で穴があくから、ここで息切れが起こるから必ず継ぎ足しをしなければならないだろう、これをやらなければ、景気回復が仮にずうっと軌道に乗ろうとしても必ず後半で失速するだろう。したがって、竹入委員長は名古屋の記者会見で、失速を防ぐために追加補正が必要だということをもうそのときに明らかに言っております。これはあのときに実は総理が言わなければならなかったことなのです。私はそう思います。だれが考えたって、前倒しをやれば後で穴があいてくるのですから、そこで失速するのです。なぜ遅過ぎたから困るかというと、せっかくああいうふうに前倒しをやりましても、八月で大体六〇%を超えるような成約率、要するに公共事業の契約率がそこまでいっていますが、私はある親しい建設業者といろいろ話してみますと、後がどうなるかということがわからなければ仕事は必ず延ばすというのです。今度この総合経済対策で約二兆円の事業規模のものが出てまいりましたから、まあ何とか五十二年度中はある程度仕事にありつけるかもわからないという目安が立った。そうすると、今度は五十三年以降はどうなるかということが全然見当がつかぬ。したがって、六ヵ月で竣工する工事も工程をずっと延ばして九カ月もつようにするのです。これはどの場合だって私は心理としてそうだろうと思います。  たとえば、総理、私たちがハイキングに行って山の中で迷ったとします。いつ里へおりられるかどうかわからぬ、握り飯が一つしかないというときに、ちょうど飯の時間だからといって全部食いますか。必ず三分の一か半分は残しますよ。そうして次の飯の当たるめどがつくまでその握り飯には絶対手をつけぬです。同じことなんです。ですから早い目早い目――早い目じゃなくても、おくれないように対策をお打ちになることが大切だ。私は、総合経済対策はおくれたと思います。  それから、私どもは〇・五%の公定歩合の引き下げに反対でございました。要するに預貯金金利の引き下げに連動いたしますから反対いたしましたが、しかしこれも下げるならばもっと早く下げるべきだったと思います。いろいろ中小企業だとか、また中には大きな企業の方々もいらっしゃいますが、いろいろ話を聞きますと、もうこれが新聞に出てから決まるまで二カ月以上かかっているのです。そうするとやらないならやらない、やるならやるということをはっきり言ってやらないと、企業家はいま金が要るけれども、いま金を銀行から融資してもらいたいけれども、公定歩合が引き下がるかもわからないから、それが決まるまで待とうということになるのです。そうするとその間の金の動きはぴたっととまるのです。やらぬのならやらぬとはっきり言えば、そのときに現在の利率で、どうせ借りなければいかぬのだから借りるのです。それを決めてやらないものだから、それが決まるまで待とうというのは企業の心理ですよ。  これはまた後で詳しくやりますが、これから申し上げる土地税制もそうです。いま土地税制の問題は大方毎日のように新聞に出ているのです。いわゆる譲渡利益の重課の問題が下がるかもしれぬ、特別保有税も下がるかもしれぬ、撤廃されるかもしれぬというようなものがありますと、よけい土地は動かぬのです。やらぬならやらぬとはっきり言うべきです。そうすると、いつまで待っても、いつまでたっても税金は安くならぬのなら、いまちょうど買い手があるのだから売ろうということになるのです。いま流通はぴたっととまっているのは、土地税制の行方を土地を持っている者がじっと見ているからです。  これは二、三の例にしかすぎませんけれども、こういう景気対策というような、しかもここまで深刻になって、もう落ちようがないかと言われるぐらいの深刻な状態になっているときに手を打つことがおくれた、これは私は当然総理としても責任を感じていただかなければいかぬと思いますが、こんなことを聞いても、そんなことないと言うに違いないと思うが、一回答えてみてください。
  208. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は締める方が上手で、これを浮揚させることは不得手だなんというような前提に立ってのいろいろなお話ですが、私、なかなかそうでもないのですよ。昭和四十年度不況というのは、戦後、当時としては最大の不況です。あのときの景気対策、その主役に当たったのは私ですが、あのときはみごとに景気は半年くらい、私が大蔵大臣に就任し、その施策を打ち出し、半年くらいで景気はずっと浮揚に向かったわけです。     〔田中(正)委員長代理退席、栗原委員長代理着席〕 ですから、そういう先入観はひとつお持ちにならぬようにお願いをいたしましてお答えをいたしますが、まあいまとにかく世界じゅうが大混乱のその中で、さあ日本の国のかじ取りをどうするかということ、これは本当に容易なものじゃないのです。私も本当にサボっているわけでも何でもない。本当に苦心惨たんし、どうしたらいいだろうか、ああしたらいいか。それがしかし一つ一つぽつりぽつりとやった、それでは効果は出ないのです。そこで事は総合的に考えなければならぬ。さあその物価のことも考えなければならぬ、雇用のことも考えなければならぬ、あるいは海外との関係も考えなければならぬ。世界じゅうに、また国のすみずみまで目を配って施策を決めるのですから、事は総合的にいかなければならぬわけなんですよ。そういうようなことで手間暇もかかります。またその前提としては、本当に一体この混乱した世界情勢の中でわが国経済はどういう動きをするのだろうか、その見通しもしっかりとつかまなければならぬ。そういうことになりますと、私は前々から言っておったのです。八月末の時点で事をとらえて、そして必要があれば対策を講ずる、こう言ってきたのでありまして、それが八月がちょっとおくれました。九月の三日になったわけですがね。三日ぐらいのことはひとつ御勘弁願いたい、こういうふうにも思いますが、まあとにかく事を適確にぴしぴしとやれという御助言、これは私もそのとおりに今後ともしてみたいと思いまするけれども、なかなかこれは容易なことじゃないのだ。このことだけはひとつ正木さんにおかれましても御理解を持っていただきたい。御助言につきましては、本当に傾聴いたしました。
  209. 正木良明

    正木委員 実は、私は今年度になってからの話をいたしましたが、古い話を申し上げますと、福田総理が三木内閣の副総理のときに、やはりこの予算委員会で私はあなたといろいろの議論をしているのです。昭和五十年の六月と昭和五十年十月の臨時国会です。このときに私ははっきりと申し上げたことは、これで物価がもう鎮静の方向へ向かったから、今度は相当深刻な不況が私たちの目の前にもう迫りつつある。これは経済指標を見てもそういう空気がずっと出てきていたわけですから。さらに私が心配いたしましたのは、これは大平大蔵大臣と議論をしたことは、必ず歳入欠陥が出てまいりますよ、そのときの財政はどうするのですかということをいろいろ申し上げた。では、その穴埋めは国債でやるのですか。そのとき大平さんは、国債はできるだけ出したくないということをおっしゃった。私はそのときに、どん詰まりになって急激に景気対策をやれば必ずそれがはね返ってインフレに転化するおそれがあるから、きわめてなだらかな形でもう景気対策というところに入ってこなければいけないじゃありませんかと言ったときに、まだ予算ができて三月や四月でそんなことはわかりませんということで済んじゃったのです。これは議事録にはっきりいたしておりますから。そういう点から申しますと、私はもうすでに昭和五十年の六月の国会並びに十月の臨時国会で、もう景気対策をなだらかな形でやり始めなければ大変なことになりますよということを警告しているのです。それは全然やらずですわ。それで、いよいよことしに来て、私は八月じゅうに出すと言ったものが九月三日で、三日おくれただけですとあなたは澄ましておるけれども、そんな問題ではないのです。事ほどさようにそのような結果というものは出てきているということですね。そこらがやはり私は一つの大きな問題点であろうと思うのです。  そうしてその後われわれが執拗に要求をいたしたにもかかわらず、今度は自民党の内紛で去年おくれているのです。これはいわゆるロッキード事件の三木おろしという形でずっと停滞いたしまして、公社、公団は申すに及ばず、これは国鉄運賃と電電公社の料金の値上げが長引いたということもありましょうが、あれで工事の発注がとまった。特例法が通過するかどうかわからぬというので、自治省は各地方自治体に、ちょっと公共事業の執行を待てと通達を流しているはずです。それが去年の十月、十一月に公共事業マイナス五・五という数字経済指標にあらわれているのです。何のためにそれが起こったかというと、一つは政府・自民党が景気対策まで頭がいってなかった。何がいっていたか、ロッキードと三木おろしで一生懸命だったのです。  だからそういうふうに、政策ミスというものとそれから手の打ちおくれというものと、それから小出し、これがやはり結果的には今日の不況を招いているのですよ。ですから、そういう意味からいうと、いまの自民党の内紛なんて別の問題にいたしましても、いずれにしても私は、これは福田さんの性格だと思うんだな。だから、そういう点では私は、あなたほどの秀才でありますから、もうそんな気持ちなんかさっと変えられるんだから、相当思い切った景気対策でそれをやり抜いていこうという決意に立っていただきたいと思うのです。ですから、そういう意味では昭和五十二年度経済見通し、この主要経済指標を重要なものについては下方修正をしなければならなかったということがありますね。  これは経済企画庁長官にお尋ねいたしますが、個人消費、民間設備、在庫増加民間住宅、これは全部減りましたね。これの実態について、またそれの対策についてちょっと話してください。私はこれを修正してもここまでいくかどうかわからないという気持ちがあるのです。
  210. 倉成正

    ○倉成国務大臣 五十二年度の経済見通しをつくりましたときと今日の状況とを比較いたしますと、そのときよりもこれから減っていくと考えられるものが民間の設備投資、それに在庫でございます。在庫在庫調整がおくれている関係上少なくなる、そういうことでございまして、一方、増加するものが政府投資それから民間の住宅投資個人消費はやや減りますけれども、ほぼ同じ水準、やや減りますけれども、それほど大きく減らない、こういう情勢でございます。海外経常余剰が若干当初の見通しよりもふえる、こういうことでございます。
  211. 正木良明

    正木委員 長官、あなたはすぐ個人消費は減るのは少しだとおっしゃいますけれども、金額にすると大変な金額ですよ。たとえばパーセントでいいますと、一三・七%の見通しが今度の修正で一三・二%になったから〇・五%に減ったわけですね。だから〇・五%下方修正したんだというと、だれが聞いたって、ああそうか、〇・五%ぐらいかとお思いになるかもわかりませんが、個人消費は五十二年度の実績でいうと百九兆七千五百億でございますから、この〇・五%は一兆七千億に当たるのですよ。     〔栗原委員長代理退席、田中(正)委員長代理着席〕 一兆七千億、個人消費を下方修正しなければいかぬということなんですよ。民間設備投資におきましては、これはもともと金額が少のうございますから、これで一兆六千億です。これが六・二%の減になるわけです。この方は六・二%の減だけれども一兆六千億。しかし個人消費の方は〇・五%の下方修正だけれども、一兆七千億なんです。これは国民が誤解しますから、この点をはっきり認めて、一兆七千億というような大きな下方修正をしなければならなかった理由を言ってください。
  212. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたします。  個人消費は、五十一年度は実質で三・七%の伸びでございまして、五十年度に比較しますと落ちてまいりました。しかし、ことしの一-三月あるいは四-六月の計数を見ますと、少しずつ回復している状況でございますけれども、全体としての支出の動向を見ますと、若干名目的には減っていくということになるわけですけれども、物価が安定をしつつありますので、したがって、実質的な個人消費の支出についてはそれほど大きな落ちではない、実質約五%程度の成長を続ける、こういう見通しでございます。
  213. 正木良明

    正木委員 それはどういう手でこの個人消費をふやそうとするのですか。これは経済企画庁の仕事じゃないかな。経済企画庁でいいのですか。
  214. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えします。  個人消費をふやすとおっしゃいますけれども、個人消費は、御承知のとおり最近非常に物離れの現象がございまして、そのうちの半分近くはいろいろ教養、娯楽とか雑費とか、そういう支出が非常に多いわけでございます。それからもう一つは、やはり所得間の格差と申しますか、一分位の消費は非常にふえておりますけれども、高分位、第五分位の消費支出が非常に落ちておるということもございます。また、耐久消費財が一巡した関係もございまして、いままでのように特別な商品に集中する消費ということがなくなってきた、すなわち電気冷蔵庫やあるいはテレビその他というのが普及率が五〇%を超してきたということでございますので、そういう問題があります。それからもう一つは、消費者のニーズというのが非常に多様化してまいりました。そういうことから、やはり供給側にも問題がある。消費者が非常によいものを、そして選択眼が非常に強くなってきたということでございますから、この需要に対して供給側がそれに応じる体制がおくれているという点が一つの問題点ではなかろうかと思います。したがって、そういうことについてもこれから研究していく必要があると思います。しかし、基本的には、やはり景気を回復して先行きに対する不安をなくするということと、それから物価が安定するということが個人消費を安定的に成長さしていくゆえんのものであると思います。しかし、個人消費は昨年もことしもなお景気の下支えの役割りを果たしているということは統計の数字上明らかでございます。
  215. 正木良明

    正木委員 それで、私はいまも惜しかったなと思いますのは、これは経済企画庁経済白書の中に出てくるのでございますが、いわゆる減税ですね。減税を、税額控除という形で減税いたしますと大体一・六倍の誘発係数が出るだろうということが言われている。そうすると、あれがわれわれが要求するように一兆円の減税が仮にできていたといたしますと、これは三千億は差し引かなければなりませんけれども、少なくとも一兆六千億の生産誘発係数がここに生まれてきていたはずなんですね。ですから、そういう問題もやはり福田さん、けちらない方が本当はよかったのではないかというふうに私は考えるわけです。  それともう一つは、午前中というかお昼の木野さんの質問で、投資減税の話が出てまいりました。民間設備投資の落ち込みが非常に激しいわけでございますが、これは投資減税というものをやって民間設備投資をふやそうというお気持ちがありますか。通産大臣と大蔵大臣にお伺いいたします。
  216. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  景気浮揚政策といたしまして、われわれの方でも投資減税という問題については検討をいたしてまいりましたが、同時にまた大蔵当局の方ともずっとお話を続けていろいろと交渉をいたしておる次第でございます。
  217. 坊秀男

    ○坊国務大臣 現下の事態におきまして投資減税ということをやろうといたしますと、一体投資減税をして、投資をすることを減税によってインセンティブを与えるということでもって投資が非常に盛んになってくるということが必ずしもいまの事態におきましては考えられない。そこで、もし投資減税をやろうとしますれば、あらゆる業種について投資減税をやろうということも、これは必ずしもいまの経済にとって、ある種の業種に対しまして投資減税をするということはかえって適当でないということもありましょうし、それから投資減税をして減税のメリットを与えられるというのは、ある種のこれはまた、いわば相当盛んにやっておる、利益が多いというような減税の余地がなければ、投資減税というものには効果がないのでございますので、あえて私は、投資減税は、そんなものはというような気持ちではありませんけれども、いまの経済の事態におきましては投資減税をするというような積極的な気持ちは持っておりません。
  218. 正木良明

    正木委員 さあ、それが問題なんですね、その辺が。通産省の方は投資減税をやってもらいたいという、そういう気持ちで大蔵省と折衝している。大蔵省の方は投資減税なんてとんでもないという……(坊国務大臣「とんでもないとは申しません」と呼ぶ)とんでもない、ですよ、それは。要するに減税する財源もなければ、投資減税をするにしたって、どんな投資だって全部減税の対象にしなければならぬからむずかしいとか、反対でしょう、大体。ここらがまた問題なんです。だから投資減税をやらぬならやらぬと決めてほしいわけや。そうすると、これまた企業の方は企業の方で考え方が生まれてくるのです。通産省は投資減税、どんなことがあったってやるぞ、ヨーロッパでもやっているんだから日本でやってけしからぬ話じゃないのだからというふうになる。そうすると、これは減税できるまでちょっと待とうかということになる。  そこで倉成長官、あなたは今後の民間設備投資というのはどういう方面で伸びるというふうにお考えですか。
  219. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたします。  現在基礎資材部門におきましては大変稼動率が低い状況でございますし、在庫も多く抱えているという点がございます。したがいまして、代表的なものは鉄鋼でございますが、こういうものはなかなか設備投資が急に出てくる状況ではございません。しかし、非製造業の部門、たとえば電力あるいは流通関係、特に消費に関連している部門、そういう部門についてはかなりの設備投資の意欲がございます。したがって、製造業においては落ちますけれども、非製造業においては設備投資伸びていく、こういうふうに考えております。
  220. 正木良明

    正木委員 当然のことだと思います。その見通しは妥当だと思います。ということになると、さっきも大蔵大臣が、投資減税をするためにはその投資の減税を適用する企業というものを分けるわけにいかぬからとおっしゃいましたが、それじゃ通産大臣はその投資減税はどこへどういう形で当てはめようと考えておりますか。
  221. 田中龍夫

    田中国務大臣 御指摘のとおりでございます。しかしながら、われわれがたとえば省エネルギーという問題を一つ考えましても、新しい技術の転換等々につきましては、相当これに必要な経費もあるわけでございます。でございますから、一概に減税さえすれば景気が浮揚するとばかりは申しておらないのでありまして、ただいま御指摘のように銘柄をきちんと精選いたしまして、同時に波及効果の多い対象に対して選別的な減税のお願いを大蔵省とはいたしておる。同時にまた、いままでの各国の例を見ましても、ある程度景気浮揚のための投資減税というものも効果をあらわしている面が多々あるわけでありまして、その点は御指摘のとおりでございます。
  222. 正木良明

    正木委員 私は、投資減税ということはもう口になさらない方がいいんじゃないかと思います。一つは、いまこれはもう税調の答申の中に出てまいりますけれども、不公平税制というのは厳然としてあるのです。その整理はできていない。それを五十三年度から始めようとしているときに、またそういう企業減税を上積みしていくのは不公正を大きくしていくだけの話だと私は思うのです。  それともう一つは、産業全般にわたって民間設備投資の意欲があって、これが伸びていくという状況ではありません。たとえば経済企画庁経済研究所の吉富さんが論文をお書きになっていますが、これはなかなか説得力のある論文なんです。昭和四十八年価額でGNPが約九十兆です。あの当時は平均一〇%余りの成長でありますから、成長が九兆ですね。こういうことになってまいりますと、その当時その九兆の生産を増強するために約二倍の設備投資が行われているのです。そうすると、今度は六%台になるわけです、ことしは六・七%という目標でありますが。五十年代前期経済計画で言うと、六%強ということが政府の方針としてありますから、約一〇%と六%を考えてまいりますと四%、というよりも換算して四〇%減るわけです。六割になってしまうわけです。そうすると、二・五倍ということにいたしましても、十年間で十一兆の設備投資だけでいいわけです。そういうふうに――六%台になりますと、四十八年度価額でこの九兆が五兆四千億になるわけです。要するにGNP増加分に対してそれの二倍強ということになると、五兆四千億ですから約十一兆です。二・五倍になると十三兆五千億です。いずれにしてもあの高度成長のときには十八兆六千億の設備投資であの九兆の生産増を支えてきたのですが、六%になるとそれだけ設備投資はがくんと落ちていいわけです。ですから企業家というものはこれ以上、いま経済企画庁長官がおっしゃったように、特に基礎産業部門においては民間設備投資をふやしていくというような考え方はどんなに探しても出てきません。しかも、急速に大きな技術革新が進んだとするならばそれは別であるかもわかりませんが、いまそんな技術革新が基礎産業部門で進むことは考えられません。そうなってくると、どうしても非製造部門における民間設備投資というものは限られてくるわけです。その非製造部門の設備投資は、この設備計画の大体の動向がずっと資料としてございますけれども、それは投資減税をやらなくたって投資は生まれてくるのです。また、投資せざるを得ないのです。同時にまた、仮に投資減税を行うとするならば、そういう民間設備投資伸びる部門に対して減税を行う。そうじゃないと、減税を行わないことになってまいりますと、これまた不公平の助長になってきてしまう。こういう状況ですから、この投資減税の問題は政府はもう考えていないのだということをいまはっきり言った方が企業としても安心できると私は思うのです。そうでなければ、投資減税をやるかもしれないというようなことになってくると、当然伸びるべき非製造部門の設備投資が減税があるまで待とうということになると、また目測が狂ってくることになるということを私は特に申し上げたい。総理、どうです。
  223. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いわゆる投資減税問題については、私はよく正木さんのお話理解できます。つまり、いま日本産業は二重構造なんですね。非常にいんしんなものがあるかと思うといわゆる不況産業というものがある。さて、投資減税をするということになれば、不況産業の方は設備過剰なんですから、それは投資減税をしたって減税で投資が始まるという状態にはないと私は思うのです。それからまた、逆に好況の産業の方は何も減税せぬでも需要が多いのですから、それに応じまして設備の拡張をするということなんで、基本的に私は、投資減税という問題はいまそう差し迫った必要を感じないのですがね。それから同時に、それだけ減税をするとなれば金が要るのですよ、財源が。財源があれば、いま大方、とにかく設備過剰だ、つまり需要が不足しているのですから、需要の創出、造出の方に使うべきである、こういう感じですがね。  ただ、投資減税で効果がある、こういうことがありとすれば、これは技術革新投資でありますとか、あるいは公害というような、これはまあ別途の政策意図がありますが、公害防除投資ですね、そういうようなもの。それらに対しましては、またいま現に減税の措置があるんです。そういうようないろいろなことを考えまして、世間では投資減税、減税と言われますけれども、慎重にこれは対処するということをはっきり申し上げます。
  224. 正木良明

    正木委員 それではまあ投資減税はないものと企業の方も御解釈なさった方がいいと思いますね。結構です。  そこで今度、総合経済対策を御発表になった、そして六・七%実質成長に持っていこうとする。なるかならぬかはわかりませんけれども、政府は努力をなさるでしょう。それはそれでよろしい。ただ私は、あらゆる場所であらゆる機会に主張していることは、総合的な経済のビジョンというか財政の計画というか、そういうものをいまちゃんとつくるべきときではないだろうかというふうに思うのですね。座談会だとか討論会へ参りますと閣僚の方とお会いするわけですが、必ずと言っていいくらい前期計画をおっしゃるわけですね。これがありますということをおっしゃるわけです。ところが、これはほとんど破綻している。それともう一つは、昭和五十五年の最終目標というものについては書いてあるけれども、その間どのような財政運営をしていくか、どういうふうな形に持っていくかということについては、年平均成長率であるとか年平均増加率何%と書いてあるだけで、余りはっきりしていないのです。  そういうことから言いますと、計画をやはりきちんと立てておくべきだと私は思うのです。ですから、今度総合経済対策で二兆の予算も追加なさいますね。そういう中で公定歩合をことしになって〇・五%、〇・七五%引き下げられたわけです。こういうのは、計画があって、その計画に近づけるために――というのは、経済というものは生き物ですから、こっちの思ったとおりに進んでくれるとは限りませんから、そこでそごが来たときに計画に近づけるために使うのがこういう追加補正の予算であるとか公定歩合だとかいうようなものだ、これは道具だと私は思うのですね。そういう意味では、今度もそれを道具にお使いになっているわけです。要するに五十年度の当初見通しであるところの実質経済成長率六・七%にするためにはどれだけのてこ入れが必要であるかということをあなたはお考えになったわけですね。だから再三あなたも朝からおっしゃっているように、もしこの総合経済対策という追加をしなければ恐らく五・九%の実質成長率で終わるかもしれない、これは私は甘いと思いますよ。これはいま議論しませんけれども、大体五・五から五・九までいろいろな数字が各研究所から出ているわけですから、私はもっと低いんじゃないかと思いますけれども、あなたは五・九。そうすると、六・七にするためには〇・八ポイント足りないから、〇・八ポイントを継ぎ足すためには何が必要かというところからこの総合経済対策というのは出てきたんだろうと私は思うのです。それでいいのです。それはそれなりの一つの見識ですから、あなたはこれでできると思ったのですから。われわれはこれではちょっと足りぬと思いますけれども。そういうふうに計画があって、その計画に近づけるために必要な道具、これは機動的に使うべきです。こんな時期のことでありますから、混乱期でありますから使うべきです。ところが、もともとのその計画がなければだめなんです。そのもともとの計画は、五十二年度の経済見通しという計画はあるけれども、五十三年度はどうなるのかというのはこれではわからぬのです。あなたのところの、政府の昭和五十年代前期経済計画です。ずいぶんたくさんりっぱなことをお書きになっているが、このとおりいっているのは少ない。したがって、それはもう少し綿密な計画というものを中期的におつくりになる必要がないのですか。たとえば、国債の三〇%の問題にしろ、私は三〇%が歯どめになるなんということは全然考えていません。ただ、三〇%と大蔵省が言うから、大蔵省が自信を持って三〇を歯どめにしているんだなと思っているだけのことであって、だからこういう時期になったときに自民党の河本政調会長は、これは三年くらいをならして三〇%になるというのであって、単年度で見たときに三〇%の歯どめは必要がないんじゃないかということまでおっしゃった。私はそれはそれなりの一つの河本さんのりっぱなお考えだと思うのです。ただ国債だけ引っこ抜かれると困るのです、われわれにとっては。そうすると、三年ならしの三〇%にするからことしは三二%、三四%でもいい、じゃ来年どうなるのか、来年は何%に抑えるのか、再来年を何%に抑えてならしの三〇%にするのかという計画は出ていないのです。だから、そういう計画というものは、ことほどさように必要なんだ。そうすると今度は大蔵省の方から税調の答申が出て、増税ということに大蔵省の皆さん方は一生懸命になっている。これだって、税収はどうするかということの長期計画がない。恐らく昭和五十五年度には、いわゆる六%の経済成長をして、税収の弾性値を一・二に見れば、六兆六千億の赤字が出るでしょうとか、そういうことの試算が一応行われているけれども、それでは五十三年度どうなるか、五十四年度どうなるか、五十五年度どうなるかということの計画は全くない。これぐらいもう財政が本当に逼迫をして、おしりに火がついているときに、その計画さえつくれないというところに問題があると私は思うのです。どうですか、長官。
  225. 倉成正

    ○倉成国務大臣 前期経済計画五カ年計画におきましては、この計画期間の成長率を実質六%強と考えまして、それぞれ個人消費支出あるいは政府の固定資産形成を七%強、民間の設備投資が七%台、住宅投資を七%強、そういう一つの見通しを立てまして、そして昭和五十五年における物価の安定と完全雇用の確保、すなわち物価は六%以下にする、あるいは一・三%の雇用を考えるというようなことを考え、また同時に社会資本の充実、福祉の充実、あるいは世界経済との調和、あるいは経済的安全の確保、そういう一つの目標をこの五十年代前期経済計画でいたしておりまして、そしてこの目標に沿って毎年の経済情勢に従って経済見通しを立てておるというのが政府の姿勢でございまして、もちろん御指摘のように非常に世界情勢も大きく変わりましたし、また思うように民間の需要が伸びてこないということで、確かに前期経済計画の出発点から若干いろいろな問題点があったことは事実でございます。しかし御案内のとおり五十一年度の成長率は五・八%、それから今度の総合対策によりまして六・七%の成長が確保されるということになりますと、内部のいろいろな問題はございますけれども、大筋としての成長路線はこの前期五カ年計画に沿っておるとわれわれは考えておるわけでございます。しかし問題点が幾多ございます。たとえば雇用の問題あるいは産業転換の問題、エネルギーの制約の問題あるいは国際的な風当たりの問題、国際収支の黒字、そういういろいろな基本的な問題については経済審議会で御検討いただいて、そしてこの計画が誤りなきを期していこうと考えておるわけでございまして、われわれは決して目標なり計画を持たないわけではなくて、この計画を基礎としながら、よりよいものに現実の経済と適応させていこう、これが政府の考え方でございます。
  226. 正木良明

    正木委員 それは大まかなものは出ているわけですよね。たとえば昭和五十五年度の、いまあなたの言われた雇用率、これは失業率を一・三%にしようということが目標ですね。去年は五・九%の実質成長ですよ。ことしは、このままもし追加をしなければ、五・九%の成長だと総理はおっしゃったでしょう。去年と大体一緒です。六%台、六%強というところには、〇・一ポイントないし〇・二、三ポイント足りないかもわからないけれども、しかし事実上失業率は、去年もことしも、むしろ去年よりもことしがふえても減ってないじゃありませんか。そうすると、この六%台の経済成長というものがこのまま続けられていって、どうして昭和五十五年、もうあと三年しかないのに、一・三%の失業率に抑えることができますか。それはできないでしょう、どう考えたって。いまの状況を見てはっきりするじゃありませんか。要するに六%台、しかも六%の前半の平均成長率であるとするならば、これは一・三%の失業率は確保することはできません。いまの状況のままが横ばいの状況で続くだけだと思いますよ。  もし仮にこれである程度雇用がふえたとしても、それは皆さん方がよく言う日本の終身雇用制という特殊な雇用形態の中から、企業が抱えておる過剰労働者、いわゆる潜在失業者が職にありつくということであって、そしてこの完全失業者が再雇用されるというところまで及ばないと私は思うのです。そうなってくると、このいわゆる六%台というのも、果たしてこの雇用という最大の問題を一・三%の失業率に昭和五十五年にするためには、この経済成長率ではとてもだめだということでしょう。だから私はトータルプランの中で、皆さん方は高度成長とかなんとかと非難なさったけれども、しかし少なくとも七・二%の実質経済成長がなければ、いまの雇用の関係については、いわゆる一%ないしは一%を割るような雇用の形態にはできないということを結論を出しているのです。実態を証明しているじゃありませんか。だから、これはこれで一つの見識ですから、それはいいです。しかし、財政再建の計画とか、もっと綿密な計画をお立てになるという気持ちはないのですかということです。  たとえば地方自治体が赤字再建団体になったときに自治省はどれだけの厳しい計画を要求しますか。その赤字をなくして自治体の財政を再建するためには、実に細かい綿密な計画を要求するじゃありませんか。私は、国だって、もう三〇%の国債を発行しなければならぬというその借金財政の中で、歳入欠陥がまだふえるかもしれないというような状況の中で、もう財政再建としては、いわゆる地方自治法にいう自治体の赤字再建団体の指定を受けたのと同じ状態だと思う。ならば、ここで、いわゆる財政再建のための計画をつくるということ。あなた方は、計画をつくって、その計画どおりいかなかったときに、責任をとらせられるから、それで計画をつくらないというのでは、余りにも因循こそくだと思います。そうでなければ、国民も、企業も、来年はどうしてくれるのか、再来年はどうなるのかということがわからないというところに、いまの景気回復の一つの大きなブレーキがあるということを考えていただきたいと思うのです。  私は、皆さん方をやっつけるために言っているのじゃないのです。一緒に知恵を出し合って、本当にいま不況の中で困っている人たちにどうこたえていくかということを真剣に議論したいから申し上げているのです。
  227. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 お話はまことにごもっともだと私は思うのです。長期展望を持って、そしてその長期展望をにらんで諸事万端が動いていく、こういうことになれば大変結構だ。しかし、世界が非常な混乱の時期でありますから、それほど長期の展望はなかなかむずかしいのです。そこで、できるだけの期間の展望、こういうことでいま中期展望、つまり昭和五十年代前期計画というものを持っておるわけですが、この展望というものは経済審議会等におきましても相当精細な検討をいたしまして、そしてできたものだ。しかしそれがそう大きく狂っているというふうには私は思いません。大筋はそれで動いておる、私はこういうふうに思うわけであります。ドイツだってそうじゃありませんか。五%と言った。それが今度、言った直後には四・五%に修正をする。今度はその四%が守れない。三%説まで出てくるという状態で、とにかくなかなかそう書いた計画どおりには動きません。動きませんけれども、とにかくできる限りの期間をとらえまして展望を立てて、なるべくその展望で社会経済が動いていくというようにしないと、国民が先々の読みができないというようなことにもなる。しかし、現に五十年代前期計画ももういろいろの狂いが出てきております。ですから、それはフォローアップいたしまして、そうしてそのフォローアップに基づきまして展望もまた変えていく、こういうような努力をしなければならぬだろう、そういうふうに考えております。正木さんの方もトータルプラン、こういうので一つの展望を持っておりますが、私も読ませてもいただいておりますが、あれも参考にいたしまして、展望を立てたらなるべくその展望に沿うような努力はしてみたいと思っております。
  228. 正木良明

    正木委員 ただ、これは国民向けに説得するためにそうおっしゃったのかもしれませんが、確かに六%、六・七%というのは、外国に比べて成長率は高いと思います。しかし、これだけ取り上げてはいけないのです。一〇%強の経済成長があった日本が六%まで落ち込んだというこの事実。ドイツは五%か四%か知りませんけれども、しかし、もともとドイツにはそんな高度成長というのはなかったわけですから、せいぜい六・五%だったわけですから。それから言うと、ほんの少ししかギャップはないのです。日本はギャップが大き過ぎるのです。要するに高度成長の継ぎが、しわ寄せがいまきているわけですから。私は安定成長論者であったからその責任はとれませんというわけには、福田さん、いかぬと思うのですよ、これは自民党内閣がおやりになったことなんですから。そのギャップで私たちは悩んでいるわけなんですからね。だから、日本がいまの経済成長率を、世界的に比べたときに六・七%が達成できれば大きな経済成長だと肩を張られる気持ちはわからないことはないけれども、それだけではない。その陰に隠れておる落ち込みというものをどうするか、どうして落ち込まざるを得なかったかということ、またそれに対しての適切な施策をどうするかということについては、ドイツやヨーロッパ、アメリカの国々とは比較にならないぐらいのきめの細かい、そして適確な施策日本は講じていかないと本当景気回復にはならぬ、安定成長路線には乗らぬのだということなのです。ここが問題なんです。ここに問題点を求めていかなければならぬ。そのための計画というものを立ててもらいたい、これをお約束いただきたいと思うのです。われわれも、ただむやみにけちょんけちょんにやっつけるだけが能じゃないのであって、ちゃんとできれば、それはそれなりの協力はしたいと思いますから、早急に、経済企画庁と大蔵省、財政再建計画等をよく相談してやってもらいたいと思うのです。どうですか。
  229. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まさに正木さんがいまお話ししておる点が問題なんですよ。つまり、世界環境が変わってきたものですから、そこで企業によりましては設備過剰それから過剰雇用、そういう非常にむずかしい問題が出てきておる、そういう業種構造不況業種と言っております。でありまするから、私はくどく申し上げておりますが、一般の経済をもう少しかさ上げをしたい、しかし同時に構造不況業種対策、これを計画的にまた進めなければならぬ、それが両々相まって初めて日本経済は安定するのだ、こういうふうにも考えておりますが、構造不況業種対策、これを計画的な処置をいたしたい、こういう考えでございます。
  230. 正木良明

    正木委員 総理構造不況――ぼくは構造不況産業さえ解決すれば何でも解決するということじゃないと思いますが、朝から聞いていると、構造不況産業が天下の大悪人でいまの景気の足を引っ張っているように聞こえるけれども、それはその側面がないとは言えませんけれども、だからこそ適確な政策が必要だと私は思うのです。  通常、構造不況産業といいましても、よく言われるように内容は同じではありません。大体三つか四つぐらいに分けているようですね。構造不況産業というのは国際競争力を失った産業と見ていいと思うのですが、一つは、平電炉のように、あの高度成長のときに、ずっと設備をどんどんふやしていって、そしていまや設備過剰になって、その需給ギャップが激しくて、どうにもこうにもならないというグループがありますね。それから発展途上国の追い上げによって、どうしても構造的に不況にならざるを得ないという繊維等のグループがありますね。もう一つはアルミ業界に代表されるエネルギーコスト、原料コストが非常に上がったために国際競争力を失ったというグループがありますね。この三つを個別に、その実態に即してやっていかなければならぬと私は思うのです。  そういう意味から言うと、設備過剰のところについてはその設備の整理ということも必然的な勢いで生まれてくるわけでありまして、そういうことから考えてくると、構造不況産業で一番大きな問題点というのは、一つは雇用問題が一番大きな問題点であると私は思うのです。この数字が正確かどうかわかりませんが、構造不況産業に指定されたところで働く従業員が大体四百万人、一割ということになっても四十万人と言われているわけなんですが、そこで、そのことに関して――構造不況産業対策はまた別に聞きますから。  構造不況産業だけとは限りませんけれども、いま職を失っている方たち、またこれから失う可能性の強い方たち、そういう失業者の皆さん方に対しては、いわゆる雇用安定資金、この十月一日から発効したものを適用していくということをおっしゃっています。これは内容については大分問題はありますけれども、それは適用するということにして、もっと大づかみな問題でお話を聞きたいのは、そういう不況産業から失業した人たち、これに対しては雇用安定資金で失業中の生活保障をしたり再訓練をしたりいたしますね。これも期限がありますからね。そうすると、雇用安定資金でめんどうを見てもらう期間が済んだ人たちは生活保障も何もないわけですから、こういう人たちだとか、また再訓練を受けておる人たち、いずれにしても受けざらがなければどうしようもないわけです。新しい職場というものが生まれてこなければどうしようもないわけなんですね。この受けざら産業と言いますか、そういうものについて、ただ銭さえやっておけば食うに困らぬだろうというだけでは済まない問題ですから、これは労働大臣どういうものをお考えになっておりますか。これは経済企画庁長官も……。
  231. 石田博英

    ○石田国務大臣 おっしゃるとおりでありますが、こういう不況の中でも就業人口は一定の増加を示しております。就業人口総数で申しますと、昨年六十八万人ぐらいふえたのですが、ことし上半期で六十二万人ぐらい増加しておりますから、昨年よりいわゆる就業人口自体はふえてきているわけです。それなのに完全失業率とかあるいは有効求人倍率という指標がよくならないか。これは幾つか理由がございますが、一つには、婦人の労働力化が目立ってまいりました。三十九歳以下の若い婦人の労働力化というのが目立ってきている。いわゆる求職活動が目立ってきております。求人自体も思わしくありませんけれども、そういうところに大きな原因の一つがございます。  そこで、その六十二万人のふえているのを見ますと、製造業では減少しております。ところが六十二万人のうちで、製造業は減っているわけですから、六十万人ぐらいが三次産業であります。したがって、これからのいわゆる雇用力、雇用吸収力をどこに期待するかということになりますと、やはり私は、三次部門、それも消費関連の三次部門というところに期待をしていきたい。  それから、訓練をいたしますときには、いままでと違いまして、本人の性格とか経歴その他を考えまして、訓練種目をこちらの方で指定をする、それからできればまだ職にある間に訓練を受けさせるようにする、それから雇用の予約をとる、あるいは訓練期間中に安定所と連絡をとりまして求人を開拓していく、こういう方向で努力をしております。  それから、製造業部門でも、たとえば自動車なんかは前年比一七%くらいの雇用増になっております。それから電機もある程度の雇用増になっておる。しかし、中長期的に高齢者社会あるいは高学歴社会というものを考えますと、やはり何が、どこが雇用吸収力があるのかということをしっかりつかんで、そこから雇用計画なりあるいは諸般の経済施策というものを展開していく必要があろう。そこで、雇用関係閣僚会議を設置し、また労働省で臨時雇用対策本部を設けて、鋭意その実情のつかみ方にいま努力をいたしておるところでございます。
  232. 正木良明

    正木委員 それで、職を失う人の中には不況で首切られる人もあるでしょう。中には定年制が五十五歳ということで、まだ働く意欲があるにもかかわらず、定年で職場を去らなければならない人もたくさんいるわけですね。その人たちは、こういう非常に緊迫した雇用情勢の中では、再就職の機会というのはほとんどないと言っても差し支えないでしょう。ところが、実際生活保障のための年金というのは低うございますけれども一応ある。厚生年金の適用年齢が六十歳でございますから、五十五歳で退職をすると、どうしても五年間の生活というものについては大変困難がある。そうすると、ここでライフサイクルから考えても、どうしてもこれは定年制を――民間企業の場合、政府が法律でくくってしまうというようなわけにいくのかどうかわかりませんけれども、少なくとも六十歳までの定年制延長、そしてそこから年金生活という、少なくともそれだけの定年延長ということで、いわゆる定年で職を失ってしまうというものを防いでいかなければいかぬだろう。この定年制延長の問題をどうするか。こうなりますと、定年制延長ということは、逆に言うと若い人たちの就労の機会を奪うかもしれない。そういう競合的な関係にありますから、そうなってくると、若い人たちの就職のチャンスというものをもっとふやしていく、いわゆる就労人口というものをふやしていくということになってまいりますと、どうしても必然的に、だれが考えても、短く働いて働き口を多くするというよりほかに方法はないわけです。ここで必然的に週休二日制、週四十時間労働というものをここへ取り入れていかない限りは、この雇用問題の最終的な解決というものは――最終的解決と言えるかどうか、少なくとも解決していくという物理的な数の面での絶対数の面で、これが非常に困難なものになってくるだろう。そういう意味で、定年制延長の問題と就労時間を短縮するという、いわゆる週休二日制等についてどういうお考えですか。
  233. 石田博英

    ○石田国務大臣 まず、定年制の問題について私どもの考えを申し上げたいと思います。  これは午前中の多賀谷委員の御質問にもお答えをしたのでありますが、現在の五十五歳定年というものは明治の中ごろにできたもので、そのときは日本人の平均寿命は四十三歳から四歳という時代の産物であります。それが平均寿命が七十三歳にもなっているのに、依然として五十五歳定年が続いておるということは、これは明らかに不合理であります。それから厚生年金の受給開始年齢と働く年齢とを連動させなければならぬということも当然のことであります。したがって、六十歳定年制の実現を目指していま行政指導その他をやっておるところでありますが、これは大体労働協約によってできておる面が非常に多いのです。それからもう一つは、その五十五歳定年制というものを前提として人事管理が行われている。それから賃金原資の分配が行われている。そういうところに問題がありますので、一律に一遍に立法措置によってやるということは適当ではない。しかし漸次改善を見ておりまして、いまから五年ほど前までは大体六二、三%が五十五歳定年でしたが、いまは四七%ぐらいに五十五歳の定年は少なくなってきました。一方、三〇%以下であった六十歳定年制が、いま三六%ぐらいになってきているわけであります。そういう実効が上がってまいりました。  それから、労働時間の短縮の問題は、これは労働者諸君の福祉の増進のためにも、また国際的あるいは国内的に公正な競争を確保するためにも、私どもは望ましいことだと考えておる次第であります。  ただ定年制の場合は、六十歳定年というのは中小企業に多いのですが、労働時間の場合はその逆でありまして、中小企業の方はいわゆる長時間労働が多い。四十八時間というのがまだ残っているところが多いのであります。全体を平均いたしますと、四十二時間弱に相なっております。ただこれを、たとえば銀行が二日休んで五日間にする、それでは雇用はふえないので、六日開いてもらって、そして一人一人が二日休むということにすれば雇用がふえてくるわけでありますから、そういう方向で銀行界等に呼びかけていきたい、こう考えておるわけであります。ただ、これも実際立法化をしておるのはアメリカとそれからフランスぐらいでありまして、イギリスは女子とそれから年少労働に限っております。これもいまの実情から考えますと、中小企業経営その他の点も考えますと、にわかに画一的な立法措置を講ずるのにはまだ時期が早い。しかし、労働時間の短縮については先ほど申しましたような考えで努力をいたすつもりでございます。
  234. 正木良明

    正木委員 時間がなくなってしまいましたので、余りこの問題を深くやれませんが、一つ重要な問題があるわけです。  それは構造不況産業とも密接な関係のある問題なんですが、実はきょうの夕刊によりますと、またすごい円高で、一ドル二百五十六円までいったそうです。こうなりますと、国際競争力を持っておるたとえば自動車とかカラーテレビなんというのは、これはもう非常に性能が優秀でありますから、円高で実際のドル価格が上がっても国際競争力は十分に持っているだろうと思われますけれども、そのほか繊維、それから食器類というような雑貨は、これはもう完全にこの円高のあおりを受けて、輸出は不可能ではないか、こういう状況がある。しかも、そういう繊維、雑貨類の業者というのは中小企業に集中していると言っても過言ではありません。したがって、この対策をどのようにしていくのか、一つは円高の問題と、そういう円高によって大きな被害を受けた業者に対する対策をどうするのか、これをお願いします。
  235. 田中龍夫

    田中国務大臣 円高の対策につきましては、七月以来そういうふうな徴候がございましたので、全国二十二カ所に対しまして精細な産地別の調査をいたしてまいりましたが、この中で、受注の減少でありますとかあるいは為替差損の負担、資金繰りの困難、こういうふうな五十九業種ほどのものがございます。対策といたしましては、御案内のとおりに、通常の貸付限度のほかに、別枠で中小企業金融公庫が約二千万円、国民金融公庫の方では五百万円、従来の期限を特に一カ年延長いたしまして、経営の実情に応じました弾力的な操作をいたしつつある次第でありまして、十月一日から三月三十一日までの期限におきます追加融資というものにつきましては特段の措置を講じておる次第でございますが、いま御指摘のように、ますますこういう傾向が顕著になるに当たりまして、これがきめの細かい具体的な対策を個別にとっていかなければならない、こういうふうに考えております。
  236. 正木良明

    正木委員 これは繊維関係からいろいろの資料をいただいておりますが、これによりますと、たとえばことしの七月以降の新しい成約の見込みは二十二億七千二百万ドルあるそうなんですが、円が対ドル二百七十円が持続したときには二九%減ってしまう、二百六十五円が持続したときは四四%減る、二百六十円が持続したときには五九%減る。ですから、これがまた下がって、二百六十円を割って二百五十六円ということになると、これはもう大変なことになるだろうと思いますね。そうして推定でございますけれども、この為替差損が、六月末に未成約が十二億一千万ドルあるのだそうですか、これが円が上がったためにその為替差損として、二百六十円の場合で百七十億円出るというのです。これはいま通産大臣がおっしゃいましたように、だから何とか融資とか、そういう方向のもので助成をしてやろうという小手先のことで済む問題ではなくて、むしろ異常な円高相場というものに対して何らかの形での、どれが適正なのかというのはいろいろな尺度があるでしょう、中小企業のこういう繊維とか雑貨の場合には、二百七十五円か二百八十円という対ドル円相場がなければどうにもならないということを言っておりますが、どうですか、ちょっと異常だと私は思うのですが、この円高相場をある程度修正するために何らかの方策、これは相場に直接介入するということが不可能であるならば、そのほかこの円高を何とか防ぎとめるという方策はお考えになっていますか。
  237. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま、為替相場は変動為替制下にあるわけです。そして国際間の合意といいますか、申し合わせによりまして、この変動為替制については政策的な介入をしないということになっておるわけです。ただ、乱高下といいますか、投機が起こって非常な上がり下がりがあるという際におきましては、これに対しまして中央銀行が乱高下防止のための介入ができる、こういうようなことになっており、わが国といたしましてもその原則を忠実に実行しておる、こういう状態であります。どうも最近円高が非常に厳しい、そういうような状態でありますので、乱高下というか、非常な円高、急速な円高が起こりまして、若干先日介入はいたしましたが、しかし、これも余り乱高下と言われるような状態でない限りにおきまして介入するということは妥当ではないわけであります。理論的に言いますと、円が高くなる、そうしますと輸出業者は損をする。損というか、やりにくくなるわけですね。損をする人も出てくるわけです。しかし、輸入業者の方は逆に有利な立場に立つわけであります。したがって物価にはいい影響がある。今日卸売物価はずいぶん鎮静化しております。ほとんど横ばいみたいな状態になっています。その原因としては、海外の商品市況が鎮静化しておる、こういう事情もありますが、同時に、この円高もまたかなり響いておる、こういうふうに見ておるわけであります。そういう状態ですから、物価が鎮静してくる、それが回り回って今度は輸出業者のコストにもまた響いてくる、こういうので、時間がたつとかなり調整されるようなことになってくるわけでありますが、その調整過程ですね、これは輸出業者は非常に苦しい立場に立つ。特に中小の輸出業者は非常に苦しいだろうと思うのです。この調整過程における苦しさをどうやってつなぐか、こういうことになると、これはやはり、いろいろ考えてはおるのですが、金融政策、これでつなぐほかは当面ないのじゃないか、そういうふうな考え方で、為替変動による非常に苦しい立場に立った中小の輸出業者に対する特別融資制度、こういうものをつくりまして対処しておりますが、当面そういう状態において相場の成り行きを見ていきたい、かように考えております。
  238. 正木良明

    正木委員 実態としては確かに円高の場合には輸入が安くなるわけですから、これは卸売物価に響いているということも、それは私は一〇〇%うそだとは言いませんけれども、しかし、実際においては、物価の面に輸入品がすぐさまそれじゃ作用しているかというと決してそうじゃありませんからね。要するに、為替差益としての輸入は、そのまま物価の引き下げ等については余り敏感に反応しない。ところが、輸出業者についての為替差損というのは直ちに響いてくる。  もう一つは、この円高というのは、確かに変動相場制だからというけれども、その背景には何があるかというと、円高にならざるを得ない日本国際収支の異常な黒字幅ということが問題になっているわけです。ですから、要するに昭和五十二年の経済見通しにおいても、いわゆる当初は経常収支においてはマイナス七億ドルというふうに見通しを立てておったのが、これをプラス六十五億ドルに修正をしなければならないというような状況がいま残っておるわけですね。これらがやはり円高というものについての大きな圧力になっていることは事実なんです。そう考えてきますと、結局こういう場合にもどこへしわ寄せがいくかというと、中小零細企業のところへしわ寄せがいく。そうして一般消費者というものはその円高によるところの輸入品の為替差益というものが返ってこない。全く返ってこないとは言いませんけれども、ほとんど返ってきていないと言っても過言ではないでしょうね。こういう状況の中で、ただ確かにあなたのおっしゃることは、それはそれなりに安い原材料を仕入れて安くなっているんだから、それで製造して、売るときには安いので対抗できるのだというけれども、その循環というのは三ヵ月や六ヵ月では回復できるものではありませんね。その間を融資でつなぐというけれども、その融資は先ほど通産大臣がおっしゃったように、ごくごく微々たる金額でしかないわけですから、これはやはり総合経済対策として、急場のものと、それから円高の圧力になっておるところの経常収支を減らすために、たとえば基礎資材の輸入をふやしてそして備蓄をするとか、日本に備蓄する場所がなければ現地において備蓄してもらう、金だけ払っておくというような形のものも考えられておるようですけれども、それがやはり相当有効的に、効果のあるように発動されていかなければ、私はこの円高相場というものは今後も続くと思います。これは一時的な現象じゃないと思うのです。そういうことも含めて、やはりいつも犠牲を受けておる中小零細企業、そういう中小零細の輸出業者というもの、また輸出品を製造している製造業者というものが一方的に被害を受けることのないようにしてもらいたいというふうに考えるわけでございます。どうですか。
  239. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 御説のとおりでございます。  基本的にはわが国の貿易収支が非常に好調である。それからもう一つはアメリカの貿易赤字、これでドルが安くなる、こういうこと。この二つの問題があるのだろうと、こういうふうに思います。アメリカのことは別といたしまして、わが国の貿易収支、これを国際社会の一員という立場で調整しなければならぬ。その方法はやはり内需をふやす、これが一つですよ。それからいまお触れになりましたが、特別の輸入、これにつきましていまあれこれと考えておるわけです。これを急速に実行したい、こういうふうに思います。そういうようなことで、日本国際収支というか、特に貿易収支、これはいまは、ことしをとって言うと六十五億ドル、七十億ドルという黒字になるが、上半期は確かにそういう傾向であったけれども、下半期となると大分変わってきたな、来年を展望するとさらに変わってくるな、そういう見通しが国際社会で読み取れるような状態に早くしたい。そういうことになると、いまの円高問題というのも非常に緩和されるというか、改善されるだろう、こういうふうに考えております。
  240. 正木良明

    正木委員 中期税制の問題、住宅関係の問題、これは住宅公団の総裁と住宅金融公庫の総裁、申しわけございません。ちょっとそこまで入れそうもありませんから、御了解いただきたいと思います。残しました。  一つだけ、これは大蔵大臣国土庁長官にお尋ねいたしておきます。  いま、土地税制の問題、先ほどちょっと触れましたが、譲渡益の問題と特別保有税の問題、この重課税があるわけですが、これが要するに土地を抱えておる企業から相当強い圧力があって、これを緩和しようという動きがあるそうなんですが、新聞の報道によると、どうも国土庁がその震源地みたいなことが書いてありますが、どうですか、考えがありますか。
  241. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 お答えいたします。  土地税制については、正木先生御案内のように、土地取引あるいはまた土地の高騰の激しいときにできたものでございまして、それから国土利用計画法と合わして、土地の投機的取引の規制あるいはまた地価の安定のために非常に大きな役割りを果たしてきたのでございまして、このことによって過去三年間、地価というものは安定的な推移をたどってきているのは御案内のとおりでございます。ですから、総理も本会議でお答えしておりますとおり、土地税制の枠組みについては変えることはいたしません。ただ、土地税制の微調整をすることによりまして、いわゆる宅地の提供が促進されるとするならば住宅問題に大きなプラスになるだろうということで、ただいま検討いたしているということでございます。微調整をすることによって地価が非常に高くなる傾向にあるとするならば、それはあくまで十分検討していかなければならない。ですから、国土庁としては、あくまでも土地というものは投機的な取引の対象にしてはならないという基本的な考え方でもろもろの政策を見きわめていこう、対策を考えていこうということでございますので、御理解をいただきたいと思うのでございます。
  242. 正木良明

    正木委員 それはあなた、大変ですよ。微調整ってどういうことですか、もっと具体的に言ってください。――具体的と言ったって、たとえば譲渡益の重課税がありますね、長官。あれは譲渡益二七%以上のものについての重課税なんです。大体それの適用を外すのは、二七%以下の利益の場合、そうして都道府県が開発許可を出したものないしは優良宅地の場合、宅地の公募が行われるかどうか、この三つの条件がこの重課税から免除される条件ですね。伝えられるところによると、この第一の条件であるところのいわゆる開発利益というか譲渡益が二七%以上のもの、これを外そうとしている。これを微調整というのですか、どうなんですか。
  243. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 法人の重課税については、ただいま御指摘のように、免税の対象としての優良宅地の要件として、適正利益率というものをいま基本にして進めているわけでございます。ですから、この考え方を幾らか見直すことができるだろうかということをいま検討しているということでございまして、決してそれをそうしようなどということではないので、いましばらく時間をかしていただきたいと思います。
  244. 正木良明

    正木委員 これは問題ですよ。これを外したら宅地の供給が円滑にいくというふうに考えているとするならば、これは全くの見当違いですよ。いいですか、大都市やないしは大都市周辺の宅地の供給というものがなかなか思うようにいかないのは、要するにそういう大きな団地を持ってこられたりなんかしたときに、地方自治体がそれの関連公共事業であるとかそういうものの費用、もう一つは、いわゆる賃貸住宅の場合には担税能力の低い人たちがいらっしゃるから、行政コストが高くついて、要するに自治体の財政が赤字になる、だから開発許可を出さないのであって、業者の利益とは全く関係ないのです。地方自治体が関連公共事業を実行するために民間デベロッパーに対して開発の費用を負担させるとするならば、その負担はそのまま全部最終需要家の上へ乗っかってくるだけで、問題は全然別なのです。だから、適正利益率というものが二七%以下であることということに手を入れることが、これが微調整だというと、これは微調整じゃありません、大調整ですよ。これはまた地価の暴騰を招く一つの原因になりますよ。のど元過ぎれば熱さを忘れるような政策では困るのです。  もう一つは、土地の保有税の問題についてはどうですか。これはもう微調整も大調整もないのですか。
  245. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 ただいまお答えしたのは、あくまでも政府部内でいろいろ検討していることでございますので、その点はひとつ御理解をいただきたいと思うのでございます。  そこで、土地保有税につきましても、これは、政策目的としての土地の利用というものについては非課税にしているということは御案内のとおりですね。ですから、これはいまほとんど土地保有税については、六〇%以上が山林でございますから、そういう点でいま非課税になっているのは、森林施業計画の立っているものがいわゆる非課税になっているわけでございますから、そういう点を今後もしも県知事の段階で何らか緩和することができないものだろうかということは検討はいたしておりますが、具体的にそのことはどうしようということではないのでございますから、そういう点はひとつ十分前提を置いて御理解をいただきたいと思うのでございます。
  246. 正木良明

    正木委員 その保有税の問題も、要するに開発もできないような山の中を全部買い占めたのですよ。そこで、あの取得価格に一・四%というところの特別な保有税をかけた。固定資産税では評価額だけれども、それは取得価格にした。そうして税金にたえられなくなって放すためにそれを政策目的としてはやっているのではありませんか。それを外してしまうということになれば、これは何といっても宅地供給がふえるとかなんとかの問題ではなくて、要するに企業の買い占めた土地の税金をまけてやろうということになる。ですから、先ほども申し上げたように、検討もしてませんと言いなさいよ、そんなのは。先ほど申し上げたように、検討しているということになると、税金が、それだともうほとんど重課税はなくなるわけです。知事が開発許可を出したらもうそれで終わりなのですから、利益率なんて問題ではなくなる。そうすると、結局その税金は免除したのと同じ結果が生まれてくるということから考えて、片っ方で増税をしようかというときに何でこの税金をまけねばいけませんか。しかも地価の高騰が予測されるというような重要な、そういう契機になるかもしれないようなものをやろうとしているというところに問題がありますよ。そうすると、税金がかからなくなるまで土地を放すのを待とうかということになる。これは宅地供給を、流通を阻害することになる。だからだめだと言わなければだめです。大蔵大臣、あなたのところだから、あなたのところは増税しようというのだから、そんな税金をまけることないですよ。
  247. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  お言葉にひっかかるようなわけじゃございませんけれども、増税をすることと減税をすることとは、これは同時にやらなければならぬような場合ももちろんあるのでございますけれども、いまの土地税制でございますが、御承知のとおり土地税制は、数年前、土地が暴騰して大変な勢いで流動して、それに対して思惑、とにかく土地を買い占めるというような事態が起こったときに、これは税制上そういうことじゃよくないからということで、余り流動しないように、持った場合には大変高い税がかかるぞといったようなことにやったものでございまして、それを今日ただいま増税しようかと言っておるときに減税をするということはお耳にさわることでございますが、それは私どもといたしましては、いまは大変資金がちまたにだぶついておるというようなときに、また税を外すということによりまして、再び非常な思惑の対象になるということはもとへ戻ってしまうということが考えられますので、これは非常に慎重な態度をとっておりますけれども、一方におきましては土地が手に入らぬために住宅政策が停滞しておるということもある。そこで、大体の土地というものは、これは山の中だとか、住宅地になる適当な土地、そういうものはきわめて少ないと私は思います。そういうものは少ないと思いますが、しかしながら何とか宅地について土地が動いてくるということができれば、それはきわめて局部の話でございますけれども、それはひとつ土地政策、線引きや何かの市街化地域だとかあるいは調整地域だとか土地政策がございますが、そういったようなものもにらみ合わせまして、何かそういう手があればこれはひとつ考えたらどうかということでありまして、ただ、しかしながら、しからばそれをどうするのだ、こういうふうに聞かれましても、目下のところはそこまでいっておりませんということを申し上げましてお答えにさせていただきます。
  248. 正木良明

    正木委員 ちょっと異な、ぼくも言葉にひっかかるわけじゃありませんが、あの法律は流動をとめた法律じゃありませんよ。流動といったって、きわめて変則的な流動、これを俗に土地転がしと言いますが、この土地転がしを防ぐためにつくった法律ですよ。それじゃ適正利益率二七%というやつを外したら、供給増になるという自信がありますか。ありませんよ。転がるだけですよ。結局高いものにつきますよ。要するに二七%以下ならばいいんです。適正利益率二七%以下ならいいんです。それ以上だったら税金がかかるということだから、不当なもうけを制限しようというところにこの法律の、この税の取り方の目的があるのだから、これを外したら地価が高騰するのは決まったことじゃありませんか。そういう意味からいって、それはいろいろの人たちからいろいろの圧力があるでしょう。あるでしょうけれども、しかしそれは国民のために、しかもこれから住宅政策というものが公共事業の中心になって進められていかなければならぬ状況の中で、やはり事の正否、見通しというものをきちんと立てて処理をしていただきたいと私は思います。総理、どうですか。
  249. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 住宅政策はこれから長期にわたってわが国の内政の非常に大きな題目でございます。ですから住宅政策は、私はこれから大いに推進しよう、こういうふうに思っておりますが、そのためには宅地問題を解決する必要があるのです。私は税のことにこだわっているわけじゃありません。何か宅地供給を阻害しておる案件があれば、それについてひとつ検討してみたらどうだ、こういうことを申しておるわけなんです。たとえば調整区域の問題とかなんとか、そういう問題もありましょうし、あるいは公共投資、つまり、関連投資をどうするかというような問題もありましょうし、いろいろ問題がある。とにかく宅地供給がいま非常に鎮静化しておる状態ですが、それを阻害しておる状況があれば、他の政策目的を阻害しない範囲においてひとつやってみたらどうだ、こういう考え方は持っておるのですが、税のことにこだわっておるわけじゃないのです。しかし、税においても何かそういうような状態があれば、それは考えてもいい問題じゃないかとも考えておりまするけれども、しかし、いやしくもこの税を改正して、あるいはその他のいろいろな措置を改正いたしまして、いまとっておる土地政策、その枠組みが崩れる、ことに地価を引き上げるというようなことになったら、これはもう元も子もありませんから、それは絶対いたしません。
  250. 正木良明

    正木委員 引き上がる危険性が多分にあるので、特に申し上げたことでございますので、よろしくお願いをいたします。ありがとうございました。(拍手)
  251. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 これにて正木君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  252. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  明十二日、参考人として、日本銀行総裁及び年金福祉事業団理事長の出頭を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  253. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次回は、明十二日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二分散会