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1977-11-02 第82回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月二日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 西宮  弘君    理事 加藤 紘一君 理事 片岡 清一君    理事 金子 みつ君 理事 武部  文君    理事 中川 嘉美君       愛知 和男君    鹿野 道彦君       関谷 勝嗣君    中西 啓介君       堀内 光雄君    湯川  宏君       馬場猪太郎君    長田 武士君       宮地 正介君    藤原ひろ子君       依田  実君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局経済部長 妹尾  明君         経済企画庁調整         局審議官    澤野  潤君         経済企画庁国民         生活局長    井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      的場 順三君         農林省畜産局食         肉鶏卵課長   甕   滋君         農林省食品流通         局砂糖類課長  牛尾 藤治君         資源エネルギー         庁公益事業部業         務課長     上杉 一雄君         物価問題等に関         する特別委員会         調査室長    曽根原幸雄君     ――――――――――――― 十月二十九日  輸入品に係る国内販売価格引き下げに関する  請願井出一太郎紹介)(第一三二四号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第一三二五号)  同(倉石忠雄紹介)(第一三二六号)  同(小坂善太郎紹介)(第一三二七号)  同(清水勇紹介)(第一三二八号)  同(中島衛紹介)(第一三二九号)  同(羽田孜紹介)(第一三三〇号)  物価対策に関する請願井出一太郎紹介)(  第一三三一号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第一三三二号)  同(倉石忠雄紹介)(第一三三三号)  同(小坂善太郎紹介)(第一三三四号)  同(清水勇紹介)(第一三三五号)  同(中島衛紹介)(第一三三六号)  同(羽田孜紹介)(第一三三七号) 同月三十一日  物価高騰抑制に関する請願安田純治紹介)  (第二〇〇五号) 十一月一日  物価対策に関する請願中村茂紹介)(第二  二三七号)  同(原茂紹介)(第二二三八号)  輸入品に係る国内販売価格引き下げに関する  請願中村茂紹介)(第二二三九号)  同(原茂紹介)(第二二四〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十月三十一日  物価安定対策に関する陳情書外二件  (第一  七七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ――――◇―――――
  2. 西宮弘

    西宮委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。愛知和男君。
  3. 愛知和男

    愛知委員 きょうの新聞にも大分円高の問題が報道されておりまして、ついに二百五十円も割り、東京でも二百四十七円、ロンドンでは二百四十五円ですか、大変な騒ぎになっておりますが、経済担当大臣でいらっしゃいます長官も、何かとこの問題につきましては御心労も多かろうと存じますけれども、まず最初に、この円高の最近の問題について、特にこの二、三日の動きについて、大臣の率直な御感想をお伺いしてみたいと思います。
  4. 倉成正

    倉成国務大臣 いま御指摘のように、円高が急激に参っております。この背景は、愛知委員がよく御承知のように、日本における貿易収支経常収支の大幅な黒字、またアメリカにおける貿易収支の大幅な赤字、こういうものが背景になっていると思うのでございまして、ことしの一月から九月までをとりまして、アメリカ貿易収支赤字は百九十二億九千八百万ドル、なおそのうちで対日の赤字が五十八億ドル強ということになっておるわけでございます。こういう基本的な背景があるわけでございます。  それにいたしましても、最近の円高傾向というのは、非常に急激に来ておるというところで、日本経済に、特に輸出比率の高い産業中小企業、また輸出にほとんど依存しているというような業界にかなり大きな打撃を与えているというのが事実でございます。したがって、私どもとしては、基本的にはやはり貿易収支経常収支黒字幅を減らしていく努力をいたしますとともに、当面のこの円高によって打撃を受ける業界に対する手当てに万全を期してまいりたいと思っておる次第でございます。
  5. 愛知和男

    愛知委員 この円高影響というものは大変いろんなところに次々と出ているわけでありますけれども、その一つに、日本のいまの景気を何とかして回復させなければならないという大変大きな課題を抱えているわけですが、そのために九月の初めに政府総合経済対策を発表されたわけでございますけれども、これに対する影響もまことに大きなものがあるのではなかろうかと思われます。その辺はどのように判断をしておられますでしょうか。
  6. 倉成正

    倉成国務大臣 円高がこのような急激な形で参りますと、当然これは日本経済全体に大きな影響を及ぼしてくると思います。したがって、理論的に申しますと、円高によって輸出が減っていく、また輸入がふえていく、こういうことになるのではなかろうかと思います。  そこで、輸出がどの程度減っていくかという問題になるわけでありますけれども、御案内のとおり、輸出成約はかなりの期間をもって契約をいたしておりますから、円高があったからすぐ輸出が減るというものではないという点が一つございます。それからもう一つは、やはりこの円高の推移がこれからどうなるだろうかという問題があるものですから、いま直ちに計量的に輸出がどの程度減るだろうかということを判断するのは、非常にむずかしいのじゃなかろうかと思います。このような状態が長く続くというようなことになりますれば、むしろ、その影響は来年度以降にかなり大きな影響を及ぼしてくるのではないかという感じを持っております。それからもう一つ、やはりいま非常に国内操業率が低いという状況のもとでは、円高で出血でやっても輸出を減らすわけにいかないというのが、輸出に依存している中小企業その他の実情ではなかろうかと思います。  それから輸入の面でありますが、これは、当然これだけの円高になれば輸入がふえてくるのが経済の原則でありますけれども、しかし同時に、わが国輸入構造が御案内のとおり原燃料を中心にしておるわけでございまして、消費財というのが非常に少ないという点がありまして、石油を入れたりあるいは食糧を入れるにしましても、石油の場合で例をとりますと、国内のこれを入れるタンクがあるかどうかという問題にもぶつかりますし、また、飼料食糧小麦等を入れるにいたしましても、やはり国内のサイロが十分あるのかどうか、そういう問題とも関連してまいりますので、なかなか急激に輸入がふえるというわけにもまいりません。したがって、何かいい知恵を出して輸入をふやす方法がないだろうかということで、ことしの九月二十日に対外経済政策ということを発表いたしまして、七項目にわたる政策を私ども考えたわけでございます。  その主なるものを、概要を申しますと、第一は、東京ラウンドに積極的な取り組みをする。これは、東京ラウンドは合意された交渉日程があるわけでありますけれども関税率引き下げたりあるいは非関税障壁軽減に取り組むということでありますけれども、一応の交渉のスケジュールは、関税引き下げ計画について合意するとともに、明年の一月十五日までに交渉した各分野でのオファーを提出することにいたしておるわけでございます。ただ、これをもう少し早めてやることはできないだろうか。もちろん早めた場合に東京ラウンドの中にカウントされないと問題でありますから、そういうことをカウントしてもらうということを前提に、この東京ラウンド関税引き下げであるとかあるいは非課税障壁軽減等に取り組むというのが第一の問題でございます。  それから第二は、やはりドル減らしということで輸入を促進するということでありまして、まず第一は原油貯油量積み増しを実施するということであります。ことしの秋までに過去最高貯油量程度まで積み増しを行うということでありまして、八月末で貯油の水準は原油換算で約六千九十万キロリットルとなっておりますけれども、ことしの秋までに過去最高貯油量まで積み増すということになると、あと三百六十万キロリットル程度積み増しが行われることになるわけでありまして、この三百六十万キロリットルを金額にいたしますとおおよそ三億一千万ドルということになるわけでございます。  それから非鉄金属備蓄拡充ということで、銅とか亜鉛地金民間資金による備蓄拡充ということを考えておるわけでありますが、これは御承知のように金属鉱物備蓄協会に直接融資をいたしまして、約三百億、これによって十月中に第一回の買い入れ融資を行って、逐次これを継続するということで、おおむね五十二年度中に約一億ドルの輸入をする。  それから三番目にはウラン鉱石輸入の促進ということで、計画中のウラン鉱石について、日本原子力発電株式会社アメリカ鉱山会社との間で、一九七八年から一九八〇年の三年間のウラン鉱石購入契約が成立しました。これは五十二年で約一億三千万ドル程度のものになろうかと思います。  それから航空機の安定的輸入確保ということで、五十三年から財政資金を活用するということも検討いたしております。  それから農林大臣からすでにお話がありましたように、トウモロコシコウリャン年度内に四万四千トンを繰り上げて輸入をする。それから飼料用大麦について年度内三万トンを年内に繰り上げて輸入するということで、トウモロコシコウリャンが約五百万ドル、それから飼料用大麦については三百八十万ドルということで、農林関係物資では八百八十万ドルということでございます。  そのほか残存輸入制限品目輸入枠拡大等のことを考えたり、あるいは輸入製品常設的展示事業充実強化を図っていくというようなことが輸入拡大項目でございます。  それから輸出面については、集中豪雨的な輸出については各業界で節度を持ってもらうという注意を喚起したいと思っております。  それから第四番目の大きな柱としては、資本取引及び経済協力につきまして円建て外債の発行を促進するということで、極力ペースを早めて起債規模拡大してまいりたいと思っております。この詳細は資料がございますけれども、また繁雑になりますので、後で御質問があればお答えを申し上げます。  それから経済協力を促進するということで、せっかく交換公文が交わされましても、ディスバースがおくれている面がありますからディスバースを促進する、あるいは新規プロジェクトの発掘に努める、また、商品援助をやるということになりますと、これはすぐ外貨にも響いてくるわけでございますから、これをやる。  それから国際機関資金協力をする。IMF、世銀等出資等について積極的に協力をするということを考えておりますし、為替管理を簡素化するというのも項目一つでございます。  そのほか万般の対策を講じてやっているわけでありますけれども、ただいま申し上げましたようなものを全部合わせまして約七億ドル強ということになろうかと思います。ただ、これだけでは今日の円高背景になっているドル減らしとしてはまだ非常に不十分でありますので、何かいい方法がないだろうかということをいろいろいま研究をいたしておるところでございます。これが現状でございます。
  7. 愛知和男

    愛知委員 大変細かい御丁寧な御答弁をありがとうございました。  ただいま大臣お話にもございましたように、政府としても大変この対策に苦慮して、いろいろと努力をしておられることはよくわかるのでございますけれども、いろいろ新聞報道などによりましても、一つ対策をとろうとすると必ずそれに対して反対が出るということで、なかなか話は進まないということが言われております。こういう事態において何か対策をとろうということは、結局いろいろ世の中の経済のバランスを変えるということでありますから、必ずどこかから反対が出てくるのはあたりまえの話で、そこを乗り切っていくのが政治の力じゃなかろうか、こんなふうに思うわけで、いまこそ強力な政治的な指導力といったようなものが大変大切なような気がするわけであります。  それと同時に、こういう事態になったわけでありますから、小手先対策ではなくて、極端に言えば、いまから十年ぐらいの計画を立てて、その間で産業構造をどう変えていくかとか、あるいは農政問題なんかも大きな転換をあるいは必要とするかもしれません。そういう問題をはっきりと打ち出して、その中で当面どういうことをやっていくかということになりませんと、やはり小手先対策にしかすぎないのではなかろうか、こんな非常に素朴な感想を持つわけでございますけれども、この際、ひとつ非常に長期的な日本経済の立て直しと言いますか、そういう計画などをお立てになるようなつもりはおありにならないでしょうか。
  8. 倉成正

    倉成国務大臣 まことに私も同感でございます。いまの愛知委員のお考え同感でございまして、日本がこれから世界の中で生きていくには、やはり日本産業構造転換も図っていかなければなりませんし、また世界国々、特に追い上げております途上国との関係、あるいは先進国との関係、あるいは南の国々との関係ということを腰を据えて対応していかなければならないと思うわけであります。今回の円高は、ある意味において日本経済に非常に大きな苦痛を与えるわけでありますけれども、しかし同時に、この苦痛を乗り越えて、積極的に日本経済体質改善をこれから図っていくことが大切であろうかと思いますので、そのためにはやはり長期の展望に立ってもろもろの政策を図っていくことが必要だと思います。  ただ同時に、これらの政策を進めていく場合に、あるものは非常に得をし、ある者は非常に苦しい思いをするということのないような配慮が政治として必要であろうかと思いますし、やはり国民各界各層の御理解と御協力がなければなかなかできない問題でありますので、これらの点については、政府としても最善の努力をいたす決意でございます。
  9. 愛知和男

    愛知委員 いま日本経済で最も大きな課題は何と言っても景気回復ということであると思います。先ほどもお尋ねをしたのでありますけれども総合経済対策も、試算によりますと、今度の円高によって、たとえば二百五十円というのが定着いたしますと、その期待した効果が半減すると言われております。そういう中で何とか景気回復させなければいけないということでいろいろな方策が考えられているわけでありますが、最近になりまして、またその一つとして減税の問題なんかも話題に上りつつございます。  そこで、その減税についてちょっとお伺いをしたいのでございますけれども、ことしの夏三千億減税というのが新しい政策として採用されました。これは、この減税によって景気が大いに刺激をされるのじゃないかと、大変大きな期待を持たれた政策であったわけでございますけれども、この三千億減税効果がどうであったかということについてどのような判断をしておられますか、お示しをいただきたいと思います。
  10. 倉成正

    倉成国務大臣 今回の三千億の積み増し減税でありますけれども、理論的に言えば、減税をやるということは、可処分所得を増加させるという面におきまして、これが消費を増大させる。したがって、その面において景気に対する好影響を及ぼす、こういうことになるのじゃなかろうかと思うわけであります。ただ、どういう時期にどういう規模でどういうやり方減税をやるか、また、その国の消費性向がどういう状況であるかということによって、非常に効果が異なるのじゃなかろうかと思うわけでありますけれども、今回の特別減税は、これまでにない減税やり方でありまして、給与所得については給与と合算して還付されたということもございまして、特別減税のみを取り上げて、どの程度個人消費支出影響があったかということを計量的に把握するのは、非常に困難じゃなかろうかと思うわけでありまして、日本の場合には非常に貯蓄性向が高い状況でございますので、やはり貯蓄に回る部分もかなりあったのじゃなかろうかという感じもするわけでございます。  したがって、減税効果については決して否定をいたしませんけれども、これがどの程度であったかということを判定するには非常にむずかしいことじゃなかろうかと思っております。
  11. 愛知和男

    愛知委員 計量的に判断するにはちょっと無理だというお話でございますけれども、いま挙げられた例として、タイミングがボーナス時期と重なったというような形、あるいはやり方がそういうものと一緒になったために把握しにくかったという御指摘でございますが、規模の問題としてはどうなんでしょうか。三千億という規模が、たとえば小さかったから余り効果は出なかったという判断なのか、あるいは基本的には十分そういうような刺激効果があったと考えられるけれども、しかしながら、そういうタイミング等々でその効果を計量的にはっきりあらわすことができない、つかみ切れないということなのでしょうか。
  12. 倉成正

    倉成国務大臣 その規模の問題は、一兆円の減税をやった場合、三千億の減税をやった場合どうかということになれば、やはり大きな規模減税が行われた場合には、かなり相当部分これが貯蓄に回るという可能性の方が強いのじゃなかろうかと思います。しかし、規模によってどの程度その効果が異なるかということも、なかなかこれは実際問題として計算をすることは非常にむずかしいような感じがいたすわけでありまして、私どもは、同じ金を使うなら、アメリカやヨーロッパのように、もうすでに社会資本が充実して公共投資をやろうとしてもなかなかその火種が見つからない、そういう国と違って、非常に社会資本がおくれている日本としては、その方につぎ込んだ方がよいのではなかろうか、そういう判断を基本的にはしておったわけでございますけれども各党合意のもとでの減税でございますし、これを減税に踏み切ったという経過がございます。したがって、この効果もやはりあったとは存じますけれども、それがどの程度であったかということは残念ながら十分把握し切れないでおるというのが事実でございます。
  13. 愛知和男

    愛知委員 財政当局のお考えでは、いま日本財政状態が大変悪いということのために、主にそういう理由から、今後当面所得税減税考えられないという方針を打ち出しておられるようでございますけれども経済担当大臣としまして、経済を何とかこの不況から回復させるという観点から、やはりこれから減税というものを検討していく価値がある、そのようにお考えになりますかどうか。
  14. 倉成正

    倉成国務大臣 私は、政策手段一つとして減税というのはやはり検討する価値があると思います。ただ、わが国の場合に、私は大蔵委員を務めたりあるいは大蔵政務次官もやったことがございますし、そのときに酒、たばこの値上げをたまたまやらなければならぬというような状況を経験したわけでありますが、そういう私の体験から申しますと、減税はかなり賛成が多いわけですけれども、増税ということになると大変な抵抗があるということを考えますと、これだけ財政が不如意な場合に、また、これから税負担の増加を何らかの形でお願いしなければならないときに、減税に踏み切るということについては、よほどの決意とよほどの長期への見通しがなければ、なかなか財政当局としてはそれだけ踏み切る勇気が出てこないのじゃなかろうかと思うわけでございます。  しかし、税の公平という形から見まして、こういう一般的な所得減税ということは別といたしまして、やはりある部門については調整を図っていくというようなことは大切なことであろうかと思います。
  15. 愛知和男

    愛知委員 大変長期的な見通しとかたい決意が必要だというお話でございますが、こういうときこそ、あらゆる面でそれが大切な時期だと思うわけでございまして、見通しとかたい決意が必要だからなお実行が不可能だという方向ではなくて、ぜひともそういうような見通しなり決意を持っていただきたい、こんなふうに思うわけでございます。減税の問題、もう少し触れたいと思いますが、ちょっと時間が足りませんので別な問題に移らしていただきます。  先刻、九月十日ですか、総合経済対策後の五十二年度の経済の姿というのを企画庁で発表されておりますが、その中で一番目立ちますのは、卸売物価上昇率が当初の見通し五・七%から二・二%程度ということで大幅な修正をされたわけでございます。そして同時に、消費者物価の方は依然として八・四%程度ということで修正がなされていないわけでございますけれども、外国の例を見ましても、卸売物価消費者物価がこれほど開いているという例はほとんどないわけでございます。この消費者物価卸売物価が非常に開いているという姿は、かつて日本高度成長期にそういう姿だったわけでございますけれども、そのときは卸売物価が非常に低かったというのは、当時は工場をどんどん規模を大きくして量産によってコストダウンが可能であったから、そういう姿で日本経済もうまく運営されていたと思うのであります。ところが、今日すっかり経済状態も変わっているわけでございますから、卸売物価消費者物価がそのときと同じパターンであるということは、果たして日本経済にとって望ましい姿なんだろうか。端的に申しますと、卸売物価がこんなに低いということは、景気回復が望まれる今日、必ずしもこれはいい姿ではないんじゃないか、こんなふうに思うのでございますけれども、この辺の判断はどのようにされておるでしょうか。
  16. 倉成正

    倉成国務大臣 愛知委員がすでに御承知のとおり、卸売物価企業段階から見た物価であり、消費者物価消費者段階から見た物価であるということで、その構成内容が非常に異なっておるわけでございます。御案内のとおり、卸売物価の中で生産財が半分以上を占めておる、それから消費財の方では、サービス部門並びに季節商品合わせますと四割以上の比率を占めている、こういう基本的な違いがまずあるわけでございます。  そして、いま仰せになりましたように、卸売物価消費者物価の乖離の状況を歴史的に見てまいりますと、昭和三十年から三十五年までの間、卸売物価消費者物価というのはともに安定をしていった時代でございます。これはいまお話しのように、大量の設備投資効果があらわれた、あるいは海外の原材料の輸入価格が非常に落ちついておった、非常に下がってきた、それからまた新技術の導入が行われたといったような原因がございまして、需要面からもあるいはコスト面からも物価上昇圧力がなかったということが、両物価が安定した原因であったわけです。  ただ、これがだんだん乖離してまいりましたのが昭和三十六年から四十年にかけてでございまして、卸売物価は安定したけれども消費者物価上昇率が目立つようになってまいりました。これは、この時代には、御承知のように、需給と輸入物価については三十年代の前半とほとんど変わらなかったわけでございますけれども賃金コストの面でやはり労働生産性の伸びを上回る賃金上昇というものが行われたわけでございまして、労働生産性が非常に高い産業においては賃金コストをカバーできたわけでありますけれども生産性の低い分野、農業とかサービス製造業の中でも中小企業、そういうものはやはり生産性の格差があった、その点がやはりその乖離の原因であった。また、三十五年までは労働力が非常に過剰ぎみであったわけでありますけれども、三十五年くらいからはだんだん高度成長になってまいりまして、労働力が不足してきた、そういう背景があるわけでございます。  こういった経過を経まして、一応経過だけをちょっと簡単に申しますと、四十一年から四十七年は卸売物価も緩やかながら上昇を示すことになり、消費者物価との乖離はやや小さくなる時期であります。それから四十八年から四十九年は、御承知のように狂乱物価時代でありますから、両方とも高くなった。そして五十年以降がその狂乱期を脱しまして正常な状況に戻っていく時期になるわけでありますけれども、今日の段階では、卸売物価は非常に落ちついているけれども消費者物価はまだ依然として相当高い水準にあるというのがいまの実情でございまして、御指摘のように、諸外国に比して大きいということが言えると思うのであります。  そこで、この原因でありますけれども、基本的には生産性に格差があるということ、すなわち、生産性の高い分野で支払うことができる賃金生産性の低い部門についても支払うという意味において、そういう生産性上昇格差がやはり両物価の乖離をもたらしておる一つ原因であるというふうに申しても差し支えないと思いますが、その上に、卸売物価は非常に不況のために落ちついておるという面と、海外の輸入物価が、最近は海外市況がちょっと盛り返してまいりましたけれども、海外市況が非常に落ちついておった、それに御案内のように円高、そういう三つの要因が重なりまして、卸売物価が非常に落ちついてきたわけでありますけれども消費者物価の方は、円高にいたしましても、わが国輸入構造から見まして消費財が非常に少ないというような点もありますし、また、輸入物価の直接の影響を受ける生産財、これから——消費財から一番遠いところにあるわけですが、これが消費者物価に響くまでには時間がかなりかかる、タイムラグがある、そういう問題があるわけでございまして、消費者物価卸売物価と共通の品目であります工業製品というものは、ほぼ同じような傾向を示しておるということがあります。  したがって、今後はどうなるかということでありますけれども、今後は、国内景気回復して需給の改善が見込まれ、あるいは海外市況が下げどまりという今日の傾向を見ますと、卸売物価はやや上昇していくのじゃなかろうか。今日は、十月で昨年の同月比で〇・二ということですから、横ばいの状況ということですから、この状況回復してくると思うわけでございます。  それから消費者物価の方は、卸売物価の下落の状況がだんだん消費者物価にも波及していくということもありますし、御案内のとおり、十月の東京都の消費者物価は前年同月比七・六%、九月の全国もやはり同じく七・六%というふうに、だんだん落ちつきの傾向を示してきておりますので、両者の乖離はだんだん縮まっていくというふうに考えております。
  17. 愛知和男

    愛知委員 政策として非常に問題があるかもしれませんけれども景気回復という目的から、卸売物価をむしろ意識的に積極的に引き上げていくというような政策をとるお考えはないでしょうか。
  18. 倉成正

    倉成国務大臣 いまお話しのように、卸売物価が非常に落ちついておるということ、これがある意味において企業マインドというか、非常に価格が安いものですから、企業になかなか景況感を起こさせないということはあるいは事実かもしれません。ただ、政府の立場としまして、卸売物価が落ちついたのには落ちついただけの理由がやはりあるわけでございますから、政府卸売物価を上げてしかるべきだというようなことを言ったら、それこそ大変なことになるわけでございまして、政府としてはあくまでも物価の安定を期待いたしておるわけでございまして、経済の実際の動きに合わせて卸売物価上昇していくということを否定いたしませんけれども政府がこれに拍車をかけるような姿勢をとるのはいかがであろうかと思うのでございます。
  19. 愛知和男

    愛知委員 残念ながら時間が来てしまいまして、きょうは、実は先日政府が発表されました国民生活白書について、大変興味のあるいろいろな指摘もありますし、お尋ねしてみたいところもいっぱいあったわけでございますが。当面円高が非常に問題になっておりますので、それに関した御質問をさせていただきまして、時間が来てしまいました。その点についてはまた新たな別な機会に政府の御見解を承りたいと思いますが、最後に一つだけ、ちょっと円高の問題に関連して、これから具体的な問題については同僚の中西委員がいろいろお尋ねをすることになっておりますが、その中で一つだけお尋ねをして終わりにしたいと思います。  たとえば為替の切り上げということ、西ドイツなどではたびたび行われているわけですが、伺うところによりますと、西ドイツなどでは、マルクが切り上がりますと、即日店に並んでいる品物の値段がその分だけ価格を修正して下がるというようなことが日常茶飯事のように行われていると聞いております。それに比して日本の場合には、為替が切り上げになっても、いつまでたってもその効果というのが庶民の日常生活に実感として出てこないということで、非常にいらいらがつのっているのが今日の姿だと思うのであります。  たとえば、先週でしたか、専売公社の方がお見えになりまして、たばこの値段のことが話題になったわけでございますけれども、そのときの御答弁によりますと、たばこは本来は値上げをするべきところだったのだけれども、ちょうど為替の差益が出たので値上げしなかった、それがその効果なんだという御答弁もあったわけであります。やはりそれはそれでそうかもしれないのですけれども、そういうことでございますと、いつまでたっても庶民が実感として切り上げの効果というものをはだで感ずることができないわけです。ですから、それこそ政治の力だと私は思うのでありますけれども、たばこなどは政策的にこの際引き下げるとか、あるいは小麦なども外国から多数買っているわけでありますから、これの政府の売り渡し価格を下げるとか、そしてパンの値段が下がるようにするとか、政府の力でできることというのは、政府の力で政治的な判断からできることは、まだまだいっぱい身近なところに転がっているような気がするわけであります。決断次第だというような気がするのでありますけれども、このことにつきまして長官の率直なお考えを承って、私の質問を終わりたいと思います。
  20. 倉成正

    倉成国務大臣 お話のように、円高の結果をすぐ国民にわかりやすく還元していく、こういうことが望ましいということ、私も愛知委員と全く同じ意見でございます。  ただ、西ドイツの場合、ちょっと御理解いただきたいのは、完全な自由化をしておりまして、そしてECの中での消費財輸入がかなり多いのです。したがってこれはすぐ響いてくる、流通機構もそうなっておりますし、輸入する物資も非常に多いわけでございますけれどもわが国の場合の貿易構造で、輸入の中に占める消費財というのは三・八%を占めているにすぎないわけでございます。非常にそういう点がもどかしさを感ずる原因一つであるという点もひとつ御理解いただきたいわけでございます。  それからいま小麦のお話等ございましたけれども、小麦に相当の差益が出ておる、これをすぐ小麦の価格に反映してパンを安くするというのは素朴な国民の気持ちかもしれません。ただ同時に、お米が過剰で、ことしどうも千三百万トン超す状況の中で、お米と麦との比価をどうするのかというような問題、こういう問題があるものですから、なかなか割り切った形で政策が行いにくいという環境があるわけでございます。その中の接点をどうやって求めていくかというのがまさに政治課題ではなかろうかと思うわけでございまして、基本的には愛知委員のお考えと私は同じ考えを持っております
  21. 愛知和男

    愛知委員 どうもありがとうございました。
  22. 西宮弘

    西宮委員長 愛知和男君の質疑は終了いたしました。  次は、中西啓介君。
  23. 中西啓介

    ○中西(啓)委員 倉成長官や政府委員の皆さんにおかれましては連日大変御苦労さまでございます。愛知議員とはニュアンス的には若干重なり合うような質問もあるかと思いますが、ひとつ国民の皆さんにお答えするつもりで、わかりやすくお答えをいただければと思います。  私も、最近の物価問題、とりわけ円高などを中心に質問を進めてまいりたいと思います。  その前に、先月二十六日の夜でありましたが、NHKで「総理にきく」という番組が放映されました。これは全国民が非常に注目をしていた番組であると私も思っております。そのときに婦人評論家がお二人出られたわけです。最近の苦しかった台所の問題とか、そういう消費者が総理にいろいろ忌憚のない質問をするというのがねらいであるような番組だ、私はこう思っていたわけです。もちろんその二人の評論家は家庭の主婦であり消費者でもあるわけでございます。しかし、それ以上に評論家だというふうなニュアンスが表面に出てしまい過ぎて、何か総理と第三者が話し合いをしておって、一般国民、すなわち消費者がらち外に置かれたような、そんなニュアンスを私自身も非常に感じましたのをちょっと残念に思ったわけですが、その番組の中で、何か総理の回答が非常に迫力がなかったように私自身感じるわけです。  その中で、質問者の方が、例の西ドイツの赤軍のルフトハンザ機乗っ取り事件に触れまして、その対応の仕方、措置のとり方、これは是非は別にいたしまして、事前にそういうふうなアクシデントを想定して対応策を十二分に検討していた、その点を非常に彼女はほめていたわけですね。それでさらに、物価の問題にもこうした事前の研究といいましょうか、対応の体制づくりというものが必要であるということを非常に強調されていた点は私も共鳴を覚えたわけです。  ところが、総理はどのようにそのときにお答えされたかといいますと、西ドイツはこれまでもいろいろな事件が起こっているから、こんなふうに言われているわけですね。日本はいままでそんな事件が全然起こっていなかったかというと、そうでもないわけです。あるいはまた、西ドイツの国民は、われわれとは全く法に対する考え方が違うのだ、法に対する理念が違うのだ、こんなふうに答えただけにすぎなかったわけです。これも非常に迫力に欠けてがっかりしたわけですが、そういうことで、この際、総理はきょうお見えになられていないわけですが、ひとつ政府を代表する倉成長官に、今後も間違いなく続くであろう物価高に対する事前の対応策を、国民が聞いていると思ってわかりやすくひとつお答えいただきたい、そんなふうに思うわけです。  それから、物価政府のいろいろな手だてによって安定するはずなんです。しかし、ずっと上昇して、いまのところ一応高値安定みたいなところで落ちついておりますが、さらにまたぐっと上がっていきそうな、そんな感じがする。少なくとも下降線をたどるなんということは、全国民だれ一人として思っていないと私は思うのです。ですからこの際、物価上昇に対する基本的な理念、対応策、それをまずお聞きしたいと思います。そして、この対応策をお聞きした上で、若干円高の問題についてお聞きしてまいりたいと思いますので、よろしくひとつお願いいたします。
  24. 倉成正

    倉成国務大臣 いま当面する私どもの最大の課題は、雇用の安定と物価の安定、その二本柱の一つ物価でございます。私たちは前期五カ年計画の中で物価をどういうふうに考えたかと申しますと、最終年度の昭和五十五年度において六%以下にしたい、こういうことを消費者物価について考えました。この基本的な背景は、よく世間で言われますように、せめて一年ものの定期預金の金利より少し低いくらいに物価というものは落ちついてしかるべきじゃないかという素朴な庶民感情と対応するものだと思うのであります。ただ、御案内のとおり、消費者物価の場合は、卸売物価と違いまして、先ほど申しましたようにサービス料金が三三%、季節商品が八%強を占めておりまして、両方で四〇%以上あるわけでございます。そこで、やはりサービス料金あるいは季節商品をどう考えるかということになってまいりますと、この辺を完全に抑えることができれば物価はかなり落ちついてくると思うわけでありますけれども、ここに非常にむずかしさがある。すなわち、必ずしも生産性が十分向上しない部門について、賃金は他の生産性の向上する部門と同様に上がっていかなければならないという問題があるわけでありまして、たとえば床屋さんやあるいはパーマネント屋さん一つとりましても、床屋さんがいままで五十分で摘んでおったのを急に三十分にするというわけにいかない。昔の軍隊のように十五分でトラ刈りにするということになったらお客さんは来ないわけでありますから、そういう意味でおのずから生産性向上に限度がある。また、農業一つとって考えてまいりましても、明治以来お米の生産が二倍以上になったというのには相当の期間がかかっているわけですね。他の工業製品とは違う。そういう問題があるわけです。しかも、豊作貧乏ということも商品作物にはあるものですから、消費者物価の安定ということはなかなかむずかしい問題があります。したがって、経済が成長していく過程においてはある程度上昇は許容しなければならないというふうに基本的に考えておるわけでございます。  ただ、最近時点で考えると、五十一年度の消費者物価上昇については、季節商品の値上がり、これは魚の価格の値上がりとか、あるいは異常寒波、長雨のために野菜の値段が上がったとか、いろいろな理由がありますけれども、同時に、公共料金が昨年の九%の物価上昇の中で三・一%占めました。これはどういうことかと申しますと、狂乱物価時に、とにかく火を消すために公共料金を抑えなければいけないということで、非常に低く抑えたわけです。この低く抑えたのをある時期に少しずつ正常な状態に戻していかなければならないということで、特に昨年公共料金の値上げ調整というのがかなり大きく行われた。やはりこれが昨年の消費者物価上昇一つ原因になったということを、率直に認めなければならないと思うわけであります。  しかし、ことしは公共料金の値上げというのが、確かに電電の積み残しとかあるいは一部の公共料金がございますけれども、昨年のような大幅な値上げというのがない。また、電力、ガスというようなものがことしは据え置きであるということを考えてまいりますと、今年度に関しては公共料金が消費者物価上昇の引き金になるということはないわけでございます。したがって、季節商品その他についてわれわれが慎重な配慮をしてまいれば、政府が目標としております来年三月の前年同月比七・六%の目標というのは達成できると考えておるわけでございまして、東京都の十月の消費者物価は御承知のとおり七・六%、九月の全国の消費者物価上昇率は前年同月に比較しまして七・六%ということになっております。したがって、来月はそう下がらないかもしれませんが、さらにここ二、三カ月の間というのは前年同月に比較しますと消費者物価はかなり下がってくるのじゃないかという感じがしておるわけでございます。そういうことでありますから、われわれは消費者物価の安定ということに最大の関心を持ちながら努力をしていきたいと思います。  同時に、先ほど申しましたように、これらの政策をやっていくとともに、やはり基本的なものにもメスを入れていく必要がある。たとえば流通機構の改善の問題、お肉の値段が高い、これはいろいろな原因がありますけれども、流通機構についてもう少し合理的な方法がないだろうか、あるいは農業その他の低生産部門についての生産性を向上するにはどうしたらよいかという問題、あるいは輸入政策をもう少し活用して、先ほどお話しの西ドイツのような形で消費者物価を安定していくにはどういう方法があるだろうか、そういう万般の政策を活用いたしまして、消費者物価の安定を期してまいりたいというのが政府の基本的な姿勢でありまして、基調的には落ちついてきていると判断して間違いでないのではないかと思います。
  25. 中西啓介

    ○中西(啓)委員 しかし、長官のお答えで果たして国民が納得をするかどうか、私自身非常に疑問に思います。実際、総理も石油ショックは全治三カ年で治してみせるとたんかを切られたわけですが、全然治らない。景気も八月になれば回復するというふうなこともおっしゃられましたが、全く回復していない。相当末期的症状に来ているように私は思います。ですから、ひとつ必死の御努力を長官にも皆さんにもお願いをいたしておきたいわけです。  いま長官のお話の中で公共料金のことが出たので、この際、電力料金についてお聞きをいたしたいと思います。  今度の異常な円高によって、きのうはポンドの急騰で二百四十七円ですか、もう専門家筋の間では二百四十円台が定着するというふうな大変ショッキングな記事が新聞にも出ておりましたが、電力九社は輸入燃料に関する為替差益が、大手ガス三社も含めて今年度の合計が八百八十億円にも上ると言われているわけです。そこで、電力料金が昨年六月から九月にかけて平均二二・五%値上げをされたことは御承知のとおりでありますが、そのとき各電力会社のはじき出した為替レートは一ドルが二百九十八円と非常に甘い見通しであったわけです。これに対して通産省の試算では、今年度上半期の平均レートは一ドル二百七十一円八十二銭、上半期分だけで電力九社の為替差益は四百二十七億円という計算をしているわけです。しかも、原油の値上がり分を引いても上半期の差益は実に二百四十二億円。もちろん下期については論を待ちません。しかし、こうした差益金について、各電力会社とも、一年前の値上げについては余り触れないで、今後料金据え置きという形で消費者に還元してまいります。こういうふうに言っておるわけです。これは公共料金の値上げが相次いでいる現状では非常に歓迎すべきことでありますし、消費者としてもこの際もっと値下げをしてほしいという気持ちを持っていることは手にとるようにわかるわけです。ですから、この際、円安に転じることが当分予想されないわけでありますから、いつごろまでその料金の据え置きを指導されるのか、通産省の方にそこら辺の腹づもりを簡潔にわかりやすく御説明をいただきたいと思います。一部では五十四年の後半ぐらいまで据え置きたいと言っておられるように私も聞いておるわけですが、ひとつはっきりした見通しを明示して、国民の皆さん方を安心さしていただきたい、こんなふうに思います。
  26. 上杉一雄

    ○上杉説明員 先生御指摘のとおりの為替差益を通産省として試算しておりますが、これを電力料金の総コストの割合で見ますと、五十二年度上期の二百四十二億円というのは〇・九%程度かと思います。今後につきましては、この電力料金の総合的なコストの動向がどうなるかということを考えなければならないわけでございますが、一つには為替レートがどうなるか、これ自体が不安定であろうかと私ども考えております。かつまた、たとえばOPECによる原油の値上げの問題あるいは資本費とか人件費、こういった今後の動向が非常に不確定でございまして、現時点におきましては、いつまで据え置くというような具体的な数字はちょっと考えにくい。できるだけ長期にというのが私どもの通産省としての方針であります。
  27. 中西啓介

    ○中西(啓)委員 できるだけ長期というお話でございますが、五十四年後半までというふうな話を聞いたわけですが、何か根拠みたいなものはあるのですか、通産省の過去のいろいろな話し合いの中でそういうふうに言われたようなことは。
  28. 上杉一雄

    ○上杉説明員 いまの御指摘の期間につきましては、私ども承知しておりません。私どもとしてはあくまでもできるだけ長期というふうに考えております。
  29. 中西啓介

    ○中西(啓)委員 円高がずっと続くことはもう間違いのない情勢が続いておりますから、非常に長期にわたって据え置かれるものと期待いたしております。どうぞよろしくお願いします。  それでは、今度は円高の問題についてちょっと聞いてまいりたいと思います。  ことし初め一ドル当たり二百九十一円八十五銭であったのが、昨日ポンドの急騰で二百四十七円になってしまった。これは史上最高の高値であることは間違いないわけです。こうした円高相場によって、わが国石油ショック以来全く内容の違った、質の違った形で大変な影響が出てきておる。非常な被害をこうむっているわけです。これについて、「総理にきく」の番組で総理自身が、予測できなかった、こんなふうに言われているわけですね。アメリカでさえ予測していなかったじゃないか、こんなふうにも言われていたわけですが、しかし私、実は円がまだ二百七十円台のころに田中前総理にお会いしたときに、円は二百四十円台になるぞ、こんなふうに言われたわけです。私の選挙区も繊維だとかあるいは皮革だとか輸出関連産業がひしめいておるものですから、これは二百四十円なんかになったら大変なことだとびっくりして、そして名前は申し上げませんが、経済企画庁の方二人と、それから大蔵省の方一人に、円は二百四十円台になるやろか、こういうふうに聞いてみましたら、それは可能性としたらないとは否定できない、しかし実際問題としてそんなことはあり得ませんよと言下に否定をされたわけですね。しかし現実にもうわずかの間にみごとに田中前総理のいわゆる予測が的中したわけです。だから日本の大ぜいの官僚の皆さん方は、大変優秀であるわけですが、それは認めますが、いろいろなケースを想定して、こうなったときはこのように対処するのだというふうな、いわゆるそういう努力を非常に怠っているんじゃないか、私自身こんなふうに感じられるわけですね。まあこれは私のうがった見方だと言われるかもわかりませんが、東大法学部を卒業して国家公務員の上級試験の甲種に合格して、中央官庁に行って、そしてとにかく失敗がなければ何十年か後には大なり小なり絶対天下を取れる。これはもう国民がひとしく認めるところなんですね。だから、絶対失敗さえなければという大前提条件がつけば、もうとにかくそんな煩わしいことをやらずに、ただ先輩がやってきたことを踏襲していくという姿勢にならざるを得ないと私は思うのですね。だから、私は、それはいろいろな面において非常に大きな一つの壁になっているような気がしてならないわけです。だから、そこら辺、これから、物価問題だけではなくて、ハイジャックの問題もありましょうし、外交の問題もありましょうし、いろいろな方面にわたっていろいろなケースを想定して、そういうふうな場面に直面したときはどういうふうに対処していこうかというふうなことまで考えながら、ひとつ日本のかじ取りの責任を果たしていっていただきたい。  とにかく、いまの円高対策を見ても、非常に後手後手に回っていてどろなわ式の感じを非常に強く受けるわけなんです。ですから、西ドイツ政府が乗っ取り機に対する事前の対応策を考えて十分準備をしていたほどの事前研究をしながら、国民経済回復をひとつ図っていっていただきたい、そういうことをぜひお願いを申し上げるわけです。  それで、将来、この種のパターンに対して、倉成長官の基本的な考え方、私の言っていることが正しいか、あるいは私の言っているような方法でこれから十分検討していくというふうにお答えいただけるのか、そこら辺の基本的な考え方を、簡潔で結構ですからひとつお願いいたします。
  30. 倉成正

    倉成国務大臣 為替相場を見通せなかったじゃないかというお話、結論から申しますと、まさに私どもこのような急激な形で円が高くなるということは全く考えておりませんでした。その点は、見通しについては十分でなかったということを率直に申し上げたいと思います。  これからどういう対応の仕方をしていくかということでありますけれども、やはりこの現実を踏まえて、われわれがなし得る最善のことをやるということが私どものとる現在の立場ではないかと思うわけであります。  基本的には、先ほどもしばしば申し上げましたように、日本貿易収支経常収支の大幅な黒字、それからアメリカ貿易収支赤字、これが基本の背景になっておりますから、この条件が改善せられない限りにおいては、円高の要素というのが残っているということでありますから、これらの問題に取り組んでいくと同時に、やはり国内対策について、このような急激な形で出てまいりました円高影響をできるだけ少なくするという努力をしていかなければならない。また同時に、これを逆に、早晩産業転換をしなければならない産業については、積極的に、雇用の問題を配慮しながら新しい道を切り開いていくということではないかと思うわけでありまして、私ども今日の事態を深刻に受けとめております。
  31. 中西啓介

    ○中西(啓)委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。  それから、過去にも何人かの方も御質問をされた牛肉の問題について、二、三御質問を申し上げたいと思いますので、農林省の方々よろしくお願いを申し上げます。  貿易収支黒字で、日銀が先月の二十八日に発表した九月の国際収支の確報では、貿易収支は十六億九千三百万ドル、経常収支は十一億四千二百万ドルの黒字となって、また再び黒字幅がいま増大しておるわけですね。きょうの新聞にも出ております。幾らになっておるのですか、百九十億ドルぐらいになるというふうに書いておったと思うのですが、そこで、貿易は黒字政府はいま一生懸命黒字減らしをやっておるわけです。黒字減らしに大変苦労して、よその国から見たらぜいたくなことをしておるな、こういうことになろうかと思うのですが、しかし、国内物価はこれから長官を中心に一生懸命鎮静の方向にやってくれるという話でございますが、いまのところ全く下がっていない。これについて国民の不満は爆発寸前のところにまで来ていると私は思うのです。たとえば牛肉なんですね。ブラジルなんかも、私ことしの夏にちょこっと行ってきたのですが、あそこは日本の牛肉の市価で売られている平均の価格と比較しますと十五分の一ぐらい、べらぼうにまたあそこは安過ぎるわけですが……。牛肉の値段が高いということがいま非常に注目を浴びているわけですが、その牛肉の高い悩みを解消するためには、新聞なんかでも再三指摘しているわけだし、だれが考えても最も考えやすいイージーな方法だと思うのですが、何で余った金をそっちの方へ回せないのか、こういうふうな疑問を皆さんお持ちだろうと思うのです。オーストラリアなんかで販売されている牛肉の値段と比較しても、大体五、六倍日本はしている。だから、一方では黒字を抱えながら、消費者の皆さんが外国よりもとにかく世界じゅうで一番高い牛肉を買わされている、こんな矛盾したことがあるものかというふうな感じを恐らく持たれていると思うのです。この事実について、農林省はどんなふうに考えておられるか。もちろん、事業団のあり方がどうのこうのというふうな問題もありますが、シンプルにひとつ答えていただきたいと思うのです。基本的な考え方として。  同時に、オーストラリアとかアメリカとかEC、こういう国の牛肉の小売の平均価格、それが大体幾らしているのか、また、ついでに、わが国の価格は幾らしているのか、なぜそのような価格差がついてきているのか、それをあわせてひとつ簡単に——簡単にというよりも、わかりやすく答えてください。
  32. 甕滋

    ○甕説明員 牛肉の消費はふえてきておりますが、それに対応いたしまして、私どもとしては、長期的に安定供給していくということが基本的に重要であろうかと思っております。そこで、供給の七割ないし八割を占めます国産牛肉につきまして、その育成を図りまして供給力をふやしていくということを基本的に考えておりますが、ただ、それだけではふえていく需要に対応できません。そこで、当然一定割合の輸入は安定的にいたしまして、供給全体として安定させていくという考え方を持っておるわけでございます。その際、畜産振興事業団が国産牛肉と輸入牛肉とを調和させて全体需給を安定させ価格安定を図るということが現在の制度でございますが、その中で、国産物につきましては、各種の生産振興対策を通じてコストダウンを図っていく。これは現在頭数も次第にふえてきておりますし、一戸当たりの飼養頭数もふえてきているという状況で、私どもとしてはやはり牛肉については国内の資源を使って育成できるというものでもございますので、基本的にはその方向で力をつけていきたいと考えておるわけでございます。  ただ、輸入牛肉の取り扱いにつきまして、非常に安いものがどうして高くなるのかという疑問が投げかけられるわけでございますが、これは、国内の牛肉の七、八割を占める国産牛肉との関係で、輸入牛肉につきましても国内のその品質に応じた時価が形成されているという実態がございまして、したがいまして、買ってまいりますときは海外の時価で当然買ってまいるわけですけれども国内で出します場合には国内の時価になってしまう、また、それが全体として、現在決められております価格安定帯に照らしまして妥当な水準に安定をさせていくという作用を持っておるわけでございます。価格安定帯自体が高いとか安いとかいう議論は別途ございますけれども、これを前提といたしますと、現に中心水準ぐらいのところまで鎮静化してきているということでございます。  ただ、卸売価格の問題と、もう一つ、末端の小売価格がどうも高い。いまの比較も小売価格の比較であろうかと思いますけれども、そういった点を、やはり卸売価格が安定してくれば小売価格も安定するという形でわかりやすくしていく必要があるのは、私どももそのように考えておりまして、事業団の指定店制度を通じて目安価格の徹底を図るとか、あるいは内外価格差から発生いたします差益につきまして、生産対策もさることながら、消費者が直接わかるような形で使うということも、国産牛肉の特別販売事業というようなことを通じて現在努力しておるところでございます。  そういったことで、基本的に内外の格差ということが、これはある程度はどうしても乗り越えられない生産条件の違いがあるわけでございますけれども、この点は牛肉、豚肉、鶏肉、そういった肉全体のバランスの問題も片一方でございますので……。ただ、牛肉が割り高だという感じがあるのは私どもも否めないと思っております。  そこで、申し上げましたようなやり方のほかに、さらにこれを引き下げる方向でなすべきことはないのかという点につきまして、広く御意見も伺わなければいかぬということで、畜産振興審議会も特に近々開くとか、その他関係機関とも早急に相談を進めるとか、現在努力をしておるところでございます。
  33. 中西啓介

    ○中西(啓)委員 私なんかも、選挙区へ帰りまして、それで帰ったときは座談会をずっと開いていっているわけです。そのときに、肉の問題なんかも必ずと言っていいくらい質問に出るのですが、そのとき私が答えるのは、ぼくたちは責任政党に所属する人間です。野党の方みたいに一部だけを味方に引き入れてあとは敵に回してもいいんだという、そういう発想のできる政党ではない、だから輸入の自由化を完全に実施すればそれは牛肉の値段は下がるでしょう、恐らく七分の一ぐらいになるのですかね、しかし、そういうふうなことをしたら消費者は確かに喜んでくれるわけですが、日本には何十万戸といういわゆる畜産業者の方々がおられるわけですし、そういう方々に、おまえたち死んでしまえ、首つって死ねと言うことと同じ意味合いを持つことにもなるから、そう簡単にはできないな、と。しかしいまのやり方は、何か彼らに説得力を持たぬわけですね。もう少し何かやって、少しでもいいから下がった、政府も一生懸命やっているな、そういう感じを持たせるということが非常に大事じゃないかと思うのですね。  この間、またテレビの話になりますが、今度調整金が十一月一日から二百五十円上がったわけでしょう。その調整金のことで、NHKのドキュメンタリー「輸入牛肉を追う」かな、何かやっていたと思うのです。そのときに、日畜という会社のおじさんが出てきていまして、二百五十円調整金を今度上げるわけだけれども、農林省はそれを小売価格には絶対転嫁させません、現状で維持してまいります。こういうふうに言っておりますというふうにアナウンサーが説明しているわけです。ところが、日畜のおやじさんというのにNHKの人がインタビューに行ったら、必ずこの二百五十円の調整金は小売価格に転じられます。これは絶対間違いありませんよと、そのおやじさんは自信を持って言っているわけですね。そこら辺、どうなるのですか。調整金が今度二百五十円上がったことによって小売価格が上がりますか。上がらずにこのままで抑えていけますか。そこら辺ちょっと、ひとつ課長さん教えてください。
  34. 甕滋

    ○甕説明員 調整金の引き上げにつきましては、この委員会でも御論議がございまして、お答え申し上げているわけですが、中間段階の利潤を事業団が本来の機能として吸収するということが本旨でございまして、末端価格につながるべきものではない。で、実際にしかしつながってしまってはいけませんので、年末にかけましてのチルドの輸入量はふやしておりますし、それから目安価格等についてもさらに徹底を図るということを考えておるわけでございます。ただ、目安価格につきましては、一般に指定店以外のルートで流通しておりますチルド牛肉に比べますと、やはり私どもの方で事業団と一緒に厳正な計算をして目安を示すというやり方をとっておりますから、低目にこれが決められているのは事実でございます。そこで、今度、一般流通の方を含めまして上げないというために、指定店に流れる目安価格の基礎になっている調整金についてどうするかという問題については、現在検討中でございまして、目安価格が全体のチルド牛肉の引き下げのための指標として有効に機能するように、調整金については現在検討して早急に結論を出したいと考えております。
  35. 中西啓介

    ○中西(啓)委員 ぜひひとつ値上がりせぬような形で必死になってやっていただきたいと思います。  時間がないのが非常に残念なんですが、昭和三十一年にかつて輸入の自由化を図ったこともあるわけですから、そこら辺も一遍、反省みたいなものがあったら、次の機会にいたしますからまた聞かせてください。それから輸入差益金と調整金を、一遍年度別に示していただいて、それがどのような形に使われているか、そういうことも具体的に今度聞かせてもらいたいと思います。  最後にそれでは一つだけ、大蔵省の方もお見えになっておられますので、基本的な考え方だけで結構ですから、ちょっとお聞きしたいのです。  今度、小中学校の教科書の無償配付というものを有料にする、こういうふうに大蔵省は言われておるわけです。そうすると、年間にして一人平均千七百十二円の負担、月にして百五十円ということになるのですか、こんなふうに発表されておるわけですが、教科書は四月の新学期に購入するものだし、いままで全く無償だったものを、金額にしたら千七百円というのは大した金額じゃないにしても、新たに払わなければならぬ。必死になっていまこの物価高に挑戦している国民にしてみたら、大変愚弄した話じゃないか、納得しかねる、こういうふうな気持ちだろうと私は思うのですよ。確かに財政も逼迫してきておりますけれども、国民にツケを回すというか、国民を軽視して財政至上主義でいくという基本的な考え方にはぼくら反対なわけです。だから、そこら辺も、時間が来ちゃったからあれですが、簡単にひとつお聞きしたいと思います。
  36. 的場順三

    ○的場説明員 御指摘の点は来年度予算編成に関する事項でございます。御承知のとおり、財政状況は大変厳しい状況でございますので、既定の施策をも含めて見直しを行っているところでございます。  義務教育の教科書の無償給与制度の取り扱いということにつきましては、制度の趣旨、それからいままでの経緯等いろいろございますので、文部省と十分に検討してまいりたいと思っております。
  37. 中西啓介

    ○中西(啓)委員 十分に検討してください。どうもありがとうございました。
  38. 西宮弘

    西宮委員長 中西啓介君の質疑は終了いたしました。  午後二時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。     午前十一時五十三分休憩      ————◇—————     午後二時三十分開議
  39. 武部文

    ○武部委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。馬場猪太郎君。
  40. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 昭和四十九年の十二月に日本と豪州との間に砂糖協定が結ばれました。そしてその協定は、日本の三十三メーカーを代表して三井、三菱の両社を中心としてCSRと契約を結ばれましたが、契約を結んだ時点ですでに値下がりの動きを示しました。そして、五十年の七月から実際に砂糖を受け取る段階になったときには相当な大幅の値下がりをしておった、それに端を発して、こういったものの値下げ交渉というものが始まってもうすでに一年半、二年近くなろうとしております。そして、最終的にはロンドンの砂糖協会への提訴というような問題もあったけれども、先月の末に何とか妥結に導かれたというふうに伺っておりますが、そのときに政府も文書を豪州との間に交換していらっしゃるわけですから、そのときの経過について、ひとつ文書をお示しいただきたいと同時に、当時の状況をお教えいただきたいと思います。
  41. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 ただいま先生おっしゃいましたように、日豪砂糖協定、昭和四十九年の十二月に民間協定として締結されたものでございます。その当時の砂糖の状況は、先生御存じかと思いますが、国際的に非常に価格が高騰しておりました。昭和四十八年の秋ごろに比べて五倍から六倍くらいの価格に上がっておったわけでございます。これは砂糖だけではなくて他の輸入農産物にもございましたけれども、やはり重要な輸入農産物の安定供給ということで、政府は、砂糖も重要な農産物でございますので、安定供給ということにつきましてはいろいろ指導をしてまいりました。それで、この日豪砂糖協定は、そういう政府の指導方針に沿って締結されたものでございますが、その内容は純然たる民間協定でございます。  先生いまおっしゃいました政府間の書簡の交換でございますが、その書簡の内容、これは外務省の事項でございますので、私から趣旨だけ御説明させていただきますが、この協定に伴いまして両政府がそれぞれ国内措置をとる必要が生ずるわけでございます。たとえば、オーストラリア側は、砂糖の輸出は連邦政府の許可を要することになっております。そこで豪州側の書簡は、この協定に基づく砂糖の輸出については、連邦政府は許可を与える用意があるということを日本側に通報したわけでございます。日本からオーストラリアあての書簡の内容は、やはり日本がとろうとしております国内措置についてでございまして、この豪州糖の輸入に伴いまして必要となってまいります輸入のカルテル、これを認可する用意があるという点が一つと、それから砂糖の価格安定等に関する法律というのがございますが、そこの平均輸入価格の算定の際に、この契約で価格が固定されましたその価格、これを算定の中に織り込みますために政令を改正する用意がある、こういうそれぞれの国でとろうとしておる措置を通報したものでございます。
  42. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 純然たる民間協定だけれどもわざわざ政府間で文書を交わされたというのは、どういうところに意味があるのですか。いま国内法と言われたのですが、やはり政府としてもある程度これに関与する、あるいは指導するとか、そういう立場で関与されたわけですか。
  43. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 先ほど申し上げました砂糖の安定供給につきましての長期契約は、日本とオーストラリア以外にも、たとえば南アフリカでありますとか、タイでありますとか、ブラジルでありますとか、かなり長期契約が結ばれております。ただ、日本とオーストラリアの長期契約が他の国との長期契約と異なりますのは、これはオーストラリア側の事情もあったわけでございますが、契約期間内に数量のみの契約でなくて価格も決めておきたいというのがオーストラリア側の強い要請であったわけでございます。先生御承知のように、砂糖の国際価格はかなり変動するわけでございますので、そういう点につきまして、特に現在現実に砂糖の国際価格は値下がりしておるわけでございますが、やはりこれ以上騰貴した場合に豪州が輸出を許可するのであろうかとか、それから国内で国際糖価が下がったときに引き取らないという人が出たらどうするかとか、そういう問題がございましたものですから、豪州側の輸出許可あるいは日本国内でも輸入カルテル、そういうことが政府としても必要であったわけでございます。  それから書簡の交換が行われましたのは、当時の石油パニックと一口に言われますそういう状況の中で、日本とオーストラリアの間で長期契約が締結されるということは、両政府ともこれを歓迎するところでございましたので、豪州政府の要請に応じまして歓迎する旨の意思を表明したものでございます。
  44. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 純然たる民間協定とはいえ、やはり国際的な友好関係ということもあるでしょうし、そういう意味では後で悔いを残すことのないようないろいろの措置というのは当然必要だと思います。特にいま課長言われたとおり、砂糖というのは相場物であるということは御承知のとおりですね。その相場物で非常に激しい変動を伴うものということがわかっておりながら、あえて固定価格になったという理由はどういうところにあるのでしょうか。
  45. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 長期契約を結びました当時の国際的な砂糖の需給関係を申し上げますと、かなり在庫が減っております上に、当時の生産見込みと需要見込みとに三百ないし四百万トンのギャップがある、こういう見通しでございました。したがいまして、その当時の状況のもとにおきまして、安定した供給先から安定した数量を確保するためには、やはり先方の意向をかなりしんしゃくしなければならなかったことがあろうかと思います。  当初オーストラリヤ側の意向としましては、エスカレーションクローズとか言っておりますが、毎年輸入価格が十数%上昇をするというふうな契約にしたいということでございました。日本側はむしろ反対に、こういう国際的な砂糖の需給ギャップは次第に解消していくであろうから、当初価格を高くしてだんだん価格を下げていくというふうな応酬もあったように聞いております。その結果といたしまして、砂糖の価格が年によって高い低いはございましょうけれども、やはり民間の契約当事者といたしまして、五年通して見ればまずまずこういうところかということが頭の中にあったようでございます。結局、その当時、砂糖を最も緊急に増産し得る国としてはまず第一にオーストラリアが考えられましたので、少々危険は——逆に申し上げますとあるいは有利になる可能性もまた逆にあったわけでございますが、そういう価格が上がる下がるの危険もございましたけれども、砂糖の輸入を安定的に確保するという見地から、当事者でそれに踏み切った、こういうのが経緯でございます。
  46. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 ただ、そのときに、韓国であるとかシンガポールであるとか、そういったほかの国々は一年間だけ固定価格で後は変動価格で契約を結んでおりますね。いま課長言われたように、恐らくこんなに高値は続かないという見通しを農林省は持っていらしゃったはずですし、五年間も固定価格で契約を結ぶという危険性ということは全然お感じにならなかったでしょうか。
  47. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 いま先生例示されました韓国、マレーシアの長契でございますが、これは私ども正規に契約の内容を見たわけではございませんが、いろいろな方向から調べましたところ、固定価格と言っても五年間一本価格ではございませんが、やはり五年間の長期契約でございまして、毎年毎年の価格は事前に数字で決まっております。契約日本よりも数カ月早かったことから、初年度は現在の日豪長期契約の線よりも低うございますが、毎年十数%から二〇%ぐらい価格が上昇していく、こういう契約でございまして、一本価格ではございませんが、毎年毎年の価格は事前に固定されております。
  48. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 当時の前後一、二年の経過を見ますと、非常に乱高下しておりますよね。にもかかわらず、五年間も、しかも毎年六十万トンということで固定契約を結んだことによって何らの危惧も感じられなかったでしょうか。経済企画庁も、こういうときどうなんでしょう、こういう長期契約を結ばれるときには、ある程度農林省からも御相談を受け、先の見通し、そういったことについて何らかの御相談をなさる、あるいは協議をなさる、調整をなさるというようなことがあったと思うのですが、企画庁としての見通しはどうだったのでしょうか。
  49. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 四十九年の豪州関係長期契約の締結の際に、農林省から私の方にも連絡がありました。当時は一般的に石油パニックの後で、非常に物の需給が逼迫しているという中で、特に砂糖については、十一月でしたか、六百五十ポンドという非常に高い値段をつけたときでもあったわけでございます。こういうことで、この長期契約の話も進められたかと思うのでございますが、全体として、いま申し上げましたように当時の情勢からいいますと、砂糖に限らず食糧全般について、やはり安定的な供給を確保するという考え方が非常に強かった。それは、日米間で食糧の取り決めも行われた時期でございますから、そういうような時期であったということもありますし、それから国際糖価の状況がそういう状況でございましたので、私どもの方としては、やはり長期契約によって物の安定的な供給の確保が図られるということと同時に、当時の値段から見まして、この辺の価格であるならばこの長期契約を結ぶことについては問題なかろう、こういうふうに判断していた次第でございます。
  50. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 契約が十二月に調印されておるわけですから、恐らくその前に、一カ月、二カ月以前からずっと交渉はなさったと思うんですね。ですから、そのときから見れば、確かに十一月は最高値を示したかもわかりませんけれども、調印をする時点で五百六十六ポンドから、もう十二月には四百五十九ポンドに下がっておりましたね。そして、そういうふうな、そのとき時点でも相当な乱高下が起こるということは予想されておったわけですから、その危険性というものは感じられなかったのですか。そして、それがもし感じられたとしても、そのときの情勢、確かにあの石油パニックの直後の情勢に巻き込まれたというふうな見方もできるわけですが、危険性というものは全く感じられませんでしたか。
  51. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 危険性と申しますか、そういう四百ポンドというふうな相場が五年間続くというふうにはもちろん感じなかったわけでございます。現にその当時の、たとえばロンドンにおきます砂糖の先物価格、約一年半ほど前まで立っておるわけでございますが、すでに三百ポンドを割っておりました。したがいまして、先物相場がそのまま現物に下がるかどうかは別にいたしましても、四百五十ポンド、五百ポンドという価格が五年間通ずる——そのときの契約価格は、当時の為替レートで参りますと二百三十ポンドぐらいでございますから、五年間通じて二百ポンド以上もうかる、そういう甘いことはなかったわけでございます。したがいまして、五年間のうちにはかなりの低下もあるだろう。しかし、平均してみると、その当時の為替レートの二百三十ポンドというのは、買い手側にとっても、売り手側のオーストラリアにとってもまずまず両方ともが納得し得る価格だ、その当時ではそう感じたようでございます。その後三年間のうちに国際糖価がかってないまでに急激かつ大幅に下落いたしました。ロンドンの価格だけでも、三年間に約六分の一になっております。為替の変動を入れますと、三年間に、円表示いたしますと約九分の一になっております。幾ら砂糖が国際投機商品と申し上げましても、いままでこれだけ急激かつ大幅な変動はなかったということもございまして、現在になってみれば、あるいは見通しが甘かったとか誤っていたとかいう御批判もあろうかと思いますが、その当時の関係者としては、売り主、買い主ともに、まずまず納得した線だというふうに聞いております。
  52. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 もしそういう場合に、民間協定だとはいえ、農林省の方では、これは危ないぞと思ったら、とめることはできるのですか。
  53. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 そのとき、客観的に見てきわめて不当——買い主にとってか、売り主にとってかは別にしまして、不当であれば、あるいはそういう指導を行うべきであったかもしれません。ただ、そのときの関係者は、まず当事者も納得する、それから当時のあるいは新聞論調をごらんいただきましても、これで国内の価格も安定するであろうということで、かなり歓迎されていたということもまた事実だったわけでございます。したがいまして、危険性はもちろんありましょうけれども、五年間なら五年間通してみましたときに、現在ほど大きな傷を負うとは、これは予想もしておりませんでした。
  54. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 一応不当だと思う場合、とめることはできるわけなんですね。そういう権限はないのですか、あるのですか。
  55. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 権限というよりも、やはり農林省は直接のコマーシャルな当事者ではございませんので、大所高所からと言うと語弊がございましょうが、いかにもおかしいという場合はアドバイスを与えることはできると思います。
  56. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 ただ単なるアドバイスであって、それでも民間協定で取引業者がそれで行こうということになれば、そういう場合はやむを得ないわけですか。
  57. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 結果としてはそういうことも、残念でございますが、やむを得ないというふうに考えられます。
  58. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 当時の三井、三菱の代表の中の三井の社長さんが、三当二落だと言っておりますね。五回の五年間の取引で、三年間どこかで利益は上がるけれども、二年は損するだろう、はっきりそういうことを言っているわけですね。ですから、危険性を察しながら、しかも、もし失敗した場合のしりぬぐいは国がやらなければならないのでしょうか。もし国が価格協定とか政策協定に関与しておって、そして最後の責任を持つということならわかりますけれども、民間協定でありながら、その民間協定が、農林省としても、これは全くおかしいなと思いながら、あるいは経済企画庁からでもそういう注文をつけられてとめることができるなら、それはまた後の責任も担わなければならぬ点もあるのです。そういう権限も指導力もない、ただ単なるアドバイスだけだということで失敗した場合に、国が責任を持たなければならぬというふうになるのでしょうか。
  59. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 確かにそのときに三勝二敗、あるいは極端な場合、二勝三敗という言葉がございました。それは、まさに平均してみて契約価格が妥当であったと関係者が考えたことだろうと思います。そういう国際糖価が契約価格を下回ることは当然あり得る。また、そうでなければオーストラリア側がなかなか契約に応じないと思います。そういうときに備えまして、オーストラリアからの輸入糖につきまして輸入カルテルを締結したということも、国際糖価が値下がりの場合の危険に備えまして、認可権限は政府側でございますけれども業界としてやはりカルテルを結んでおかないといけない、こういうこともあったわけでございます。  それから、その三勝二敗なり二勝三敗の負けておるときに、政府が何かの措置ということは、私は、当然にはないと思います。あるいは先生は、現在農林省がいろいろ考えております法律措置あるいは援助措置、そういうことについてのお尋ねではなかろうかと思うわけでございますが、これは民間協定のいわばしりぬぐいという意味ではなしに、オーストラリアの現在……
  60. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 まだそこまで言ってないですよ、そこのことはそれはそれで別に後でお聞きしますから。一般論として言っているのです。一般論としてはそういうことはあるのかないのか。
  61. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 一般論としては、民間の契約の結果における見込み違い、それを政府が措置をするということはいかがなものであろうかと考える次第でございます。
  62. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 両国が文書を交換するということは、それぞれの国内法の整備のためだと言われたわけです。そして日本国内においては輸入カルテルの関係で文書を交わしたと言われる。当然公正取引委員会とも協議をなさったと思いますが、公正取引委員会でそのときの経過がおわかりだったら教えていただきたい。
  63. 妹尾明

    ○妹尾政府委員 砂糖の輸入協定は輸出入取引法に基づく協定でございまして、私どもは、主務官庁の方で協定を認可されます場合に一応協議を受ける、こういう立場になっておるわけでございます。協議につきましては法律に要件が定めてございまして、どういう事態のときに結べるとか、それから影響等につきまして、必要最小限でなければならないとか、あるいは輸出業者であるとかわが国輸入業者の国際的な信用を著しく害するおそれがあってはならないとか、輸入貿易の健全な発展に支障を及ぼすようなおそれがあってはならないなどという要件があるわけでございまして、これとの関連で問題があるかないかということを公正取引委員会の立場から検討いたしましてお答えする。当時はいろいろ検討した結果、委員会としては要件に照らして問題はないだろうということでお答えしたということでございます。
  64. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そのときには、取引委員会としても事務的に処理されたということですね。
  65. 妹尾明

    ○妹尾政府委員 公正取引委員会は主務官庁ではございません。いわば受け身の立場でございますので、特に問題がある場合は格別でございますけれども、通常は、影響等につきまして問題がなければ、一応協議に応じておる、こういうことでございます。
  66. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 その少し前を見ますと、たとえば四十六年ごろは、オーストラリアは二一%しか輸出しておりません。ところが、キューバは四六%。四十七年には、キューバが三二%、オーストラリアは二五%。契約のときの四十九年も、キューバが四三%、オーストラリアは一一%です。それが今度日豪協定で急激に変わりましたね。それはどういう経過があったのでしょうか。
  67. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 砂糖の輸入実績を見ますと、昭和四十七年、四十八年当時は、オーストラリアから六十万トンをやや上回る輸入実績がございます。六十万トンという年間契約数量は、四十七年、四十八年あたりの輸入実績を参考にして決められたと聞いております。  それから、キューバの砂糖のウエートが非常に減ったということも御指摘になりましたが、そのとおりでございまして、大体年間百万トンぐらいございましたものが、昭和五十年から大幅に減っております。この理由は、昭和四十九年の末、五十年ごろ、国際的に砂糖の需給がきわめて逼迫いたしました際に、キューバから日本長期契約の申し入れがございました。これはそのときの非常に高かった国際糖価にさらに若干のプレミアムをつけるというふうな内容でございましたので、わが国関係としてはとうていこれを受け入れられないということで、キューバとの取引が細まりまして、その間、オーストラリア、タイ、南アフリカ、ブラジルなどの長契がどんどん進んでいきまして、結果的にキューバの輸入実績が激減したということでございます。
  68. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それは純然たる価格問題でそういうふうになったわけですか。
  69. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 先ほど申し上げましたように、砂糖の長期安定供給ということで、オーストラリア初め各国と長契の交渉がずいぶんあったわけでございます。そのときに、オーストラリア、タイ、ブラジルなどと長契ができまして、キューバと長契が成立しなかったのは、その最大の原因は価格関係にあったと聞いております。
  70. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 こういう価格変動の多いときには、経済企画庁は当然御相談をお受けになったと思います。ところが、国内的に見ましても、当時は売り惜しみ、買いだめという問題が社会的な問題となっておったような状況ですし、ある程度目先に追われてオーストラリアペースでちょっと無理な契約を結んだ。その当時はそれはわからなかったかもしれませんが、いまから考えてそういう感じがするのですが、その点いかがでしょうか。
  71. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 先ほど申し上げましたけれども、当時の情勢というのは物の需給についての心配が非常に強かった時代でございまして、そういう時点で、価格の方も、豪州糖についての当時の価格水準と市場で見られます国際的な糖価との関係から見ますと、著しく低い価格であったわけでございます。  先のことはどうかということですが、市況のことですから多少下落していくようなことがあるにしても、当時長期契約の対象となった価格は非常に低いものですから、それは大丈夫であろうという感じがあったであろう、私は当時のあれは知りませんけれども、そういう判断が当然そのときあってもよかったのではないかといまでも思っております。ただ、最近の事態で市況が著しく低下した、これは先ほど農林省のお話にもありましたように、異常な事態だと思いますけれども、そういうときにこの契約の履行がぶつかったという点は非常に不幸なことだと思いますが、当時としてみれば、やはり国全体としての自給率を高める、それは安定供給という面も含めてですけれども、そういう方向には沿っていた措置ではなかったかと思います。
  72. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 本来ならば、そういう暴騰のときこそ糖価安定事業団がある程度その穴埋めをしてやらなければならぬのですが、そのときの糖価安定事業団はどういう機能を果たしましたか。
  73. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 糖価安定事業団の機能の重要なものの一つに、国際糖価が上限価格を超えました際には、事業団の売買を通じまして原糖の輸入価格を安定帯の中におさめるという機能がございます。それで、昭和四十七年ごろだったかと思いますが、国際糖価が上限価格を超えてまいりまして、事業団はそれまで数年にわたって積み立てました安定資金を売買を通じて放出してきたわけでございます。おおむね二百数十億円であったと記憶しております。ただ、昭和四十八年の暮れあたりから、国際糖価の上昇が一層激しくて、安定上限価格を超える差額全部を事業団の安定資金で賄うことは不可能に相なりましたので、事業団の売買操作にかえまして、政府といたしまして関税の減免措置を講じまして、昭和四十九年二月の中ごろから関税減免措置に切りかえたわけでございます。したがいまして、国際糖価が上限価格を超えた場合の措置としては、事業団は、二百数十億円の安定資金の放出、そのほかに関税減免額、これはおおよそ一千七百七十億円ぐらいになるわけでございますが、そういう措置をもちまして糖価の安定に努めてきたわけでございます。
  74. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 輸入粗糖と国内の問題と二つの機能を持っていると思いますが、実際にあれだけ暴騰したときには、事業団は事業団としての本来の機能を結果的に言ったら発揮したのかしていないのか、どうなんですか。
  75. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 昭和四十九年の末の、あの六百ポンドと言われるときだけを考えますと、事業団単独としては機能を発揮できなかったわけでございます。ただ、昭和四十七年から四十八年にかけまして、やはり国際糖価が上限価格をずっと超えておったわけでございます。そのときは、事業団の機能は、まさに法律の予想したごとく十全に発揮されたと思っております。
  76. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 国内産糖価の支持と、それからある程度国内産糖の保護という面がもう一つの機能としてありますね。実際にはそれだけてこ入れしていっても、どうなんですか、国内の方の保護しがいのあるような内容になっておったのかどうか。
  77. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 先生おっしゃいました糖価安定事業団のもう一つの大きな機能として、国内産糖の保護育成があるわけでございます。国内産甘味資源といたしましては、北海道のてん菜、それから奄美、沖縄のサトウキビがあるわけでございますが、てん菜は北海道の畑作経営におきます輪作体系上基幹的作物でございます。また、奄美、沖縄におきましては、そこの土地条件から見まして、いわゆる内地の米に匹敵すべき最重要作物でございます。糖価安定事業団は、国の交付金と輸入糖から徴収しました調整金によって価格支持を行っております。この具体的な価格水準などは、これは政府が直接決めるわけでございますが、四十八、九年ごろを底といたしまして、最近二、三年、面積、反収当たりまた増加傾向にございます。価格対策、生産対策両々相まって、てん菜及びサトウキビの振興に努めてまいりたいと思っております。
  78. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 努めてまいりたいでなしに、機能を果たしておるのかどうかという点でお伺いしているわけですが、肝心なときにはなかなか事業団は機能どおりの仕事ができておらないじゃないか、そういうふうに思うのですが、いかがです。
  79. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 私は、糖価安定事業団は法律どおりの機能を果たしていると思っております。現在国内産糖の方で問題があるとすれば、糖価安定事業団が生産費を反映した買い入れ価格で買いまして、それを相手方に輸入糖と調整した価格で売り戻しておるわけでございますが、国内の市価が輸入糖との調整をした価格以下に大幅に下回っておる、そのところが問題になっておると思いますが、これは糖価安定事業団の機能、収支からはいかんともしがたいところでございますので、国内糖価の安定がなければ、その点について若干問題が生じてくるわけでございます。ただ、現在の法律では、輸入糖との価格調整を行ったその価格を基準にして市価を参酌するというふうになっておりますので、その点については、事業団は十分機能を果たしておると思っております。
  80. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 おととしでしたか、行政管理庁から勧告が出ましたね。それはどういう意味なのですか。
  81. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 行政管理庁のおっしゃった御趣旨としては、糖価安定事業団については、国際糖価の動向を勘案しつつ、できるだけ速やかに糖価安定制度及びその運営の検討の一環として、事業団のあり方を検討する、こういう御趣旨でございました。五十年十二月現在を見ますと、ちょうど国際糖価が安定上限価格と国内産糖合理化目標価格の間に位置しておりました。これは現在の糖価安定法の規定によりますると、その間は輸入糖についての価格調整を行わない時期に当たっております。そういうこともございますし、他方昭和五十年の暮れごろは、やはり国際糖価の先行きにつきまして、まだ下方硬直性があるとか、そういうふうなことが——これは砂糖だけではございません、いろいろなものについて言われました。そういうことから、もしそういうことであるとすれば、糖価安定事業団の機能としては問題なしとしないじゃないか、糖価安定制度全体を見直してはどうか、運営全体を見直してはどうか、その検討の一環として事業団にどういう機能を持たすべきか、こういうような御趣旨だったように承っております。
  82. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 次に、何か十月に国際砂糖協定が結ばれましたね。これは現在日本は入ってないわけですか。
  83. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 まずお答えいたしますと、国際砂糖協定には日本はずっと加入いたしております。ただ、昭和四十八年までだったと思いますが、経済条項がございましたが、それ以後経済条項が切れておりまして、行政条項といいますか、あるいは砂糖の統計資料の収集とか、そういう条文だけが現在効力を持っておるわけでございます。  先生おっしゃいました十月に国際砂糖協定がまとまったとおっしゃいますのは、一たん切れました経済条項をもう一度つくり直す、こういうことについての合意ができた、そういうことでございます。
  84. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それじゃ、わが国は新しい経済条項について加盟してないということなんですか。それも入っているのですか。
  85. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 新しい経済条項につきましては、十月、先月に内容が合意されたばかりでございまして、現在外務省当局を中心に、まずそれに対する参加の署名あるいは批准、そういう準備をされておるところと承っております。
  86. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それじゃ、新しい経済条項の中には、いまのところでは日本はその協定に参加していないということになるのですね。
  87. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 まだ準備中ということでございます。
  88. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 じゃ、入ってないということですね。
  89. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 関係各国とも参加したところはまだないように聞いております。各国とも準備中であるというふうに聞いております。
  90. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そうすると、いまのところは経済条項については無協定状態だということですか。
  91. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 そのとおりでございます。
  92. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 この協定が今後どういうふうな影響を及ぼすという見通しを持っていらっしゃるのですか。
  93. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 この協定は恐らく来年の夏ごろまでには発効すると見込まれておりますが、この協定で、最高価格、最低価格を設けまして、そうして最低価格に近づいた場合あるいは国際糖価がそれをさらに下回る場合、輸出国が輸出数量を調整していく、こういう措置になっております。したがいまして、安定帯の中に急速に回復するかどうかはわかりませんけれども、長い目で見てまいりますると、上下限価格、国際協定の最高価格、最低価格の中に近づいてくるものと思っております。
  94. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 安定価格帯の中に入ってくるということは、それはわが国にどういうふうな影響を及ぼしますか。
  95. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 その影響といたしましては、下限価格が大体十一セントくらいでございます。現在の国際相場が七セントでございますから、その意味から見ればかなり大幅な値上がりになるということでございます。それからもう一つは、現在の砂糖の価格、国際価格百ポンド割れとかあるいは六セント台とかいいますのは、どの輸出国にとってみても生産費を大幅に割っておるような状況でございます。したがいまして、こういう国際協定によりまして、輸出国としても最低の水準を価格的に確保するということができますれば、やはりその生産がある程度安定して続けられるということにもなりますから、ひいては一昨年、一昨昨年のような大幅な国際糖価の上昇、国際的な砂糖の供給不足という事態もまた緩和されるものと思っております。特に今回の協定では、約二百五十万トンの備蓄制度もできておりますので、やはり砂糖の価格の、現在から見れば水準はあるいは上がるとも言えますけれども、国際糖価の安定ということについては大きく寄与するものと思っております。
  96. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 経済企画庁としても、この新しい協定の経済条項がどういう影響を及ぼすかということについて、分析もしていらっしゃると思うのですが、どういう見方をしていらっしゃるのでしょうか。
  97. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 いま農林省の方から御答弁があったとおりでございますが、砂糖の国際価格が非常に乱高下しているというような状況等については、これはやはり安定していくという方向で生産国、消費国ともにそれぞれ協力していかなければならないと思いますが、そういう協定の内容についてはこれからよくフォローして、十分の対応をしていきたいと思っております。
  98. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 安定していくということは、消費者の立場から言えば上がるということになりますね。物価政策上から言えば上がるということになりますね。ですから、ただでもいまの日豪協定で高い、時価の、国際価格の倍の分をいま引き取っておるわけですし、さらに国際価格が新しい協定によって上がるわけですから、今後の物価上昇見通しということになると、上がる一方になっていきますね。さらに、その以後に、今度日豪の新しい協定が一応業界と合意に達したということが出ておりますが、この内容をひとつお知らせいただきたいと思います。
  99. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 先日両当事者間で合意に達しました新しい長期契約の内容は、まだ詳細には公表されておりません。したがいまして、いままで公表されましたところだけかいつまんで申し上げたいと思います。  合意がありましたのは十月二十六日でございまして、六十万トン五年間の、旧協定といいますか、以前の協定、そのうちの残り三年分の百八十万トンについて、四年間に各年四十五万トンづつ引き取るというのが内容の一点でございます。それから第二点は、さらにその四年間に毎年十五万トン、合計六十万トンの新規契約を結ぶということでございます。  初めに申し上げました四年間毎年四十五万トンの砂糖の価格につきましては、現在の価格といいますか、旧価格と申しますか、それのおおむね七%ほどをディスカウントするということでございまして、それから、後で申し上げました毎年十五万トンの砂糖の価格につきましては、国際相場基準でございますが、その一部については国際相場に、価格帯と申しますか、上限価格、下限価格を設けて、原則としては国際糖価基準でやる、こういうのが内容でございます。
  100. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そうすると、最初の契約、四十九年に結んだ契約のあと三年分を四年分に引き延ばしたということですか。ですから、六十万トンをその分だけ、四年分ですから四十五万トンにしたということですね、一つは。それはどういう影響を与えますか。
  101. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 わが国砂糖業界の現状を見ますと、その豪州糖の割り高な部分がこれは実際に生産費としてかかっておるわけでございますが、それを市価に反映できない状況でございます。これをわずかでございますが価格の引き下げを行い、さらに三年間を四年間に延ばしていくということになりますれば、一般の国際糖価、グローバル糖と申しますか、それとオーストラリア糖、これをメーカーが両方引き取っておるわけでございますが、それの平均のコストで価格が安定すれば国内糖価の安定ということが可能でございますが、一方が量も多くかつ非常に高いということから、これが国内糖価の安定を乱しておる。これを、ディスカウントと、それから六十万トンを四十五万トンにしていくということから、業界の経営はかなりある意味で楽になりますし、ひいては価格の安定にもプラスになる、こういうように考えております。
  102. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 またしかし、四年間に引き延ばしたということは、四年間それだけ責任を引き延ばしたということになるし、そのほかにまた別枠として十五万トン余分に輸入しなければならぬという内容になっているわけでしょう。そうすると、当然、七%引きがあったとしても、いまの国際価格から見れば倍以上ということでしょうから、ということは、高いものを長い間買わなければならぬということで不利になるんじゃないでしょうか。
  103. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 追加契約いたしました十五万トンは、原則が国際糖価基準でございますから、これは有利、不利という問題はそれほど大きくはございません。  それから、三年を四年に延ばしたということではございますけれども、やはりある意味で割り高となっておるオーオラリア糖の総量、これは百八十万トンでございますので、その意味から不利になったとは考えておりません。むしろ、今後の国際糖価の動向、現在のような百ポンド割れの価格が続くものか、さらに先ほど申し上げました国際砂糖協定の影響などございまして、むしろ割り高な豪州糖に若干でも接近していくのか、そういうところの方がむしろ大きな問題になろうかと思っております。
  104. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 この新しい契約も前と同じようにやはり民間同士ということなんですか。
  105. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 そのとおりでございます。
  106. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それに対してやはり交換文書を交わすわけですか。
  107. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 オーストラリア連邦政府から外務省に対して、前回と似たような趣旨の書簡の交換をしてほしいという申し出はあったように聞いております。
  108. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 先ほど前回の経過もお聞きしましたところ、国内法との関係で交わすということに前回はなっておりますね。今回はそういうことはないのですか。
  109. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 これは外務省からいま御相談を受けておるところでございます。論理的に交わさなければならないということでもないようでございますけれども、前回の協定が大幅に変わった、前回の協定について国内措置の通報という意味で書簡の交換があったことにかんがみまして、今回も、内容が変わったことについて書簡の交換を連邦政府としては希望する、こういう話があったわけでございます。これからどうするか、関係各省間でもよく相談して取り扱いを決めてまいりたいという段階でございます。
  110. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 私どもの印象としまして、政府同士が交換文書を交わすということは、ただ単なる国内法の整備とか国内措置というだけじゃなしに、やはり国と国との約束事というような感じも持つのですが、そういうことは一切含まれていないのですか。
  111. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 たとえば前回の書簡でございますが、これも国と国との約束事になっておりますとすれば、こういう国内措置をとるということを通報した、それだけでございまして、それ以上に、たとえばこの協定をエンドースするとか、保証するとか、そういうふうな文言は入っておりませんでした。
  112. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 しかし、実際には国民感情としては、相手の国側も、値下げ交渉をめぐって二年近くもめている間というのは、国民感情というのは、政府がある程度裏判を押したような形で保証しておきながら、日本という国は契約も守らないんだということで、悪い印象を与えるような結果も起きているわけですね。そうすると、契約そのものは業者のものだけれども日本政府としても何らかの関与をしているというような印象を与えるということは事実なんですから、その間にやはりある程度業界との話し合いなどがあって、前回に起こったいろいろなトラブルが起こらないような、そういう措置というのは講じておく必要があると思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  113. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 先ほど申し上げましたような、このような急激かつ大幅な国際糖価の暴落がなければ、日本の精糖業界は当初契約は完全に遵守したと私は思っております。残念なことに、国際糖価の大幅な暴落、それに業界の若干の過当競争、そういうものが重なりまして、日本の精糖業界、現在のところ千三百億円あるいはそれ以上の欠損を有しております。おおむね業界全体の資本金の五倍強でございます。そういう状況のもとでございまして、契約を守るにも実質問題として守りがたいという状況になりましたから、豪州と民間ベースによって価格引き下げ交渉が始まったわけでございます。その間、日本政府としましても、その交渉を側面から援助してまいりました。これは書簡の交換があったからとか、その内容がどうとかという問題ではなしに、やはり農林省の所管する業界が非常な窮地に、またこれが事を一歩誤ってまいりますと、砂糖あるいは農産物全体、これの日豪間の友好関係にも問題なしとしない、こういう見地からいろいろな交渉を側面から支援してまいったわけでございます。  今後の問題も先生御指摘になりましたが、現在国会で御審議いただいております砂糖の売り戻し特例法、こういうものの適切な運用によりまして、残りの契約期間中再びこういうことにならないようによく指導してまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  114. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま言われた売り戻し特例法はきょうは衆議院を先ほど通ったわけです。これから参議院に参るわけですが、先ほどお話のあったとおり、業界にただ単なるサゼスチョンするだけで、農林省の指導だとかあるいはある程度の拘束力の働くというようなことはできないと言われているわけでしょう。そうすると、その売り戻し特例法案というのは、今後それは業界との関連についてどういうふうに働いていくのでしょうか。
  115. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 今回の売り戻し特例法案につきましては、おおむね三年間の時限立法といたしておりまして、法案の内容を簡単に御説明することになろうかと思いますが、糖価安定事業団が輸入糖の売買をいたしますときに、通常年の数量より多い売買を申し込んだところがあれば、それは農林大臣に報告をする、農林大臣はそういう通常年の数量より多いという報告がありました際に、需給事情その他いろいろな事情を見まして、その申請どおり事業団の売買をするとすれば砂糖の需給の安定に悪影響があるということになります場合に、その多い分のうちの一定数量を一年以内の一定期間、事業団の相手方に対する売り戻しを延期する、こういう内容でございます。したがいまして、その間砂糖の国内需給にきわめて大きな悪影響が生じることを防止いたしまして、砂糖の需給の適正化、したがって価格の安定を図る、こういうのが今度の法案の骨子でございます。
  116. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 売り戻し特例の法案ができることによって、通常年と言いましたね、通常年を超えると——通常年というのはどういう意味なんでしょう。
  117. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 通常年と申しますのはまさに通常の年でございます。したがいまして、砂糖の需給、特に国内産糖の生産、そういうものから見まして、どういう年が最も需給が安定しておったかというふうな点から具体的に判断していくことになろうかと思います。現在、昭和何年と何年をどうとるというところまでまだ作業は終えておりません。現在具体的な数字についてまだ検討中の段階でございます。
  118. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そうすると、その通常年に合わして、それ以上の、これは需給に影響するという場合には一年間延期されるということは、いままで砂糖は自由化商品だと言われておったのが、一定の制限を設ける、非自由化になるというような可能性があるんだというふうに読んでいいわけですか。
  119. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 この法律は、いま先生おっしゃいましたような輸入規制ということにならないように、対外関係を最大限に配慮したつもりでございます。現行糖安法に基づきます事業団の売買機能を活用することにしましたのもそのゆえんでございます。したがって、この法律は従来の輸入に関する形態は何ら変わっておりません。どこの国から幾ら以上輸入してはいかぬ、こういうこともないわけでございます。そして事業団に一たん売り渡しますと、これは通関は自由に相なっております。そしてその自由になる、つまり外国貨物から内国貨物になった砂糖について、事業団が国内需給に特段悪影響があるような特殊な場合に若干の調整を行う、こういうことでございます。また、こういう事業団が売り戻しの時期の調整をできますのは、糖価安定法の規定によりますと、国際糖価が国内産糖合理化目標価格より下回っているときに限られるわけでございます。そういうふうなことの配慮をしておりまして、国際的に輸入規制というふうな非難をこうむることには直接にはならないのじゃなかろうか、こう考えております。
  120. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 オーストラリア糖の輸入比率の高いところは、できるだけほかの、先ほど言われたグローバル糖ですか、他の国から国際価格で安いものの比率の方が多くなれば、その企業にとっては負担が軽くなるわけですね。そういう意味では他の国から自由に買える低い価格のものを買おうとしますね。そういう場合に、それが一定の量を超えておった場合には買えないという事態が起こってくるのじゃないですか。
  121. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 豪州糖との関係でおっしゃいましたけれども、やはり豪州糖を含めて全体の砂糖の事業団への売り渡し申込数量が、通常年の数量を超え、さらに、その超えるために国内需給に悪影響があるという場合には、この調整を発動せざるを得ないというふうに考えております。
  122. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そうすると、いまこの売り戻し特例法に基づいて、まずこれをきっかけにして、過当競争をやり設備投資の過剰な企業をある程度健全にしようと思えば、いまのシェアに基づいてかどうかわかりませんが、ある程度減らさなければなりませんね。企業にとってその割り当て数量というのは変わってくるのじゃないでしょうか。  それともう一つは、いま言いましたようにできるだけ負担を軽くするためには、時価相場で買えるような、国際価格で買えるようなものを多くしょうと思っても、オーストラリア糖と合計をして、そして超えるものは一年間の繰り延べをするということになれば、事実上輸入制限をすることにはなりませんか。
  123. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 現在までのところ、通常年の国内供給を超える国内供給がかなりあったがために、業界全体としては生産費を大幅に下回るような価格が実現しておるわけでございます。現在平均的な生産費はおおむねキロ百九十五円程度考えられますが、現実の市価は百七十五円程度でございます。個別の会社から見ますれば、操業率を十分あるいは十二分に上げまして固定費の節減を図る、あるいは安いグローバル糖を入れることによって価格を下げるということが一つの戦略になりましょうけれども、そういうことが相互に重なりますれば、国内の全体の価格が非常な不安定に陥るわけでございます。したがいまして、私ども、現在の砂糖の価格につきましては、とにもかくにも価格の安定が第一であるというふうに思っておりますので、豪州糖のウエートが高い会社はある意味で気の毒かもしれませんけれども、それはその会社の経営の責任で豪州糖を買い付けたわけでございますから、その部分までを他の会社に迷惑をかけてということもまた問題があろうかと思います。私どもは、全体として需給を調整して価格を適正な水準に持っていきたいと思っておるわけでございます。  それから輸入規制ということでございましたけれども、先ほどお答え申し上げましたとおり、直接的には輸入規制でございません。そして国内全体で需要に合わせた供給を図る、そして需要から見て余分なものが仮に——これは政府として別にカットするわけじゃございませんけれども業界自身の判断で需要を超えてまで輸入するということがなくなるということがありましても、これは輸入制限というべきものじゃないと私は考えております。
  124. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 業界によって、三十三社のうち二社倒産して三十一社ですか、その中でも黒字のところと赤字のところとありますね。そして、赤字のところは大体においてオーストラリア糖に依存している会社が非常に多いですね。ですから、時価で買える会社は比較的黒字のところが多いですね。そうすると、赤字部分を減らそうと思えばグローバル糖を買いたい、これはだれでも意欲的にそうなると思います。ところが、オーストラリア糖の方は契約どおりとらなければならぬとすれば、どうしてもそれはオーバーするわけですね。そのオーバーしたときには、これはもう一応一年間の繰り延べ措置に遭うわけでしょう。そうすると、企業努力として安い物を買って、そしてそれをミックスして少しでも安くという、そういう企業努力というのは許されないことになりますね。
  125. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 個別の企業としましては、自社のコストを下げるための最大限の努力をすべきだと思っております。ただ、現在のところ、砂糖業界が最も安易にできますのが、需要以上に製造をする、それによって平均コストを下げるということになろうかと思います。これは、平均コストが下がった分以上に市価が下がっております。したがいまして、個別の会社にいいことが全体としては悪いような、まさに代表例のようなものでございまして、そういう各社の安易なコスト引き下げ努力、これが価格を不安定にし、国内産糖にも多大な悪影響を与えておるとか、そういうことが現実にあるわけでございます。私どもは、需要に必要な数量、それをさらに切り込んで価格をつり上げるようなことはもとより避けるべきでございますけれども、需要を超えた供給、それによりますコストの低下、これは価格の低下等マイナス要因を伴うだけでありますので、そこは放置し得ない問題だ、このように考えます。
  126. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 時間がなくなりましたのでこれ以上余り進められないのですが、精糖業界の過剰投資と過剰設備、そして乱売というようなことがいろいろ問題になっているわけです。この特例法を機会に体質改善をやっていかなければならぬと思いますが、せっかくこういうふうにして特例法をお出しになった限りは、体質改善をやって、そしてそれが正常な価格をつくって、消費者の利益に還元するというふうになってこそ初めてこれの意味があるのですが、果たしてそういう保証があるのかどうか。お聞きするところによると、業界自体の過剰設備が四割とか四割五分とか言われておりますが、自主的な合理化というのは二割ぐらいしか考えておらないというふうに聞いておりますが、そういう点は農林省はどういうふうに指導なさるのか。  それからもう一つ、総需要量の七〇%近くは加工食品関係とかその他のものの、直接食べるものではなしにそういったものに多く使われておると言われております。ただ単なる砂糖だけじゃなしに、その他の糖化製品の問題も考えていただかなければ、砂糖問題というのは解決しないと思うのですが、そういう点はどういうふうにお考えになっているのかということを最後にお尋ねしたいと思います。
  127. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 まさに先生おっしゃいましたとおり、この砂糖の業界は体質の改善が必要だろうと考えております。この法律を三年間の時限立法としましたゆえんもまたそこにあるわけでございます。具体的には、商標の統一とか委託生産とかそういうことからまず始まって、過剰設備問題にまで手をつけていかなければならぬというふうに考えております。これも、雇用問題などございますので、急速にやるよりも、業界全体としての方向づけをしながら地道に進めてまいりたいと思っております。現在、過剰設備率は通称四〇%くらいと言われております。私もその程度かと思います。ただ、砂糖につきましては、かなり大きな工場もございますし、万が一の事故の場合、さらには年間におきましても砂糖の需要期、不需要期がございます。そういうアローアンスを考えなければいかぬと思いますので、大体二〇%ぐらいを設備として調整すれば需給上のギャップはまず問題がないんじゃなかろうかということで二〇%ということも申し上げておるわけでございます。  それから、先生御指摘になりましたように、砂糖の需要の四分の三近くは食品に回っております。したがいまして、食品関係から見ますと、当面あるいは砂糖の価格が値上がりというふうな印象を持たれるかと思います。現在のところ、先ほど申し上げましたように正常なコストを考えまして、キロ当たり百九十五円になるべきものが、二十円コストを下回る乱売になっております。そういうことが、需要者から見れば安いにこしたことはないとも言えますものの、キロ当たり二十円の欠損を累積していって、長い目で見て砂糖の安定的な供給はできないと思っております。現在の価格から見れば、あるいは値上がりということもあろうかと思いますが、半年前あるいは一年前、そういう価格から見れば、乱売で下がった分がもとに戻るということでございますので、先生御指摘体質改善ども含めまして、長い目で見て糖価の安定ということで食品関係にも理解を求めてまいりたいと思っております。
  128. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いよいよ時間が過ぎましたので、最後に長官、今度は総理じきじきに糖業界の問題についても対策閣僚会議もおつくりになって研究をしていらっしゃると思いますし、物価を守る責任官庁として、ひとつ企画庁長官としての糖価安定問題について考え方をお知らせいただいて、終わりたいと思います。
  129. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 私どもは、この法案の施行に当たりましては、いずれにしてもこれは臨時特例の措置だと思います。そういうことで、これによります影響が最小限にとどまるような努力をしていきたいと思っております。したがいまして、この法案が施行されます場合には、需給の見通しをつくったり、それからまた命令を発動したり解除したりという措置がとられるわけですけれども、その段階につきまして農林省と十分相談してまいりたいと思いますし、それから市価の動向等を厳重に監視して、そしてこの措置によっての影響が、先ほど申し上げましたように最小限にとどまるような方向でいろいろやっていきたいと思っております。
  130. 倉成正

    倉成国務大臣 いま物価局長が申しましたように、豪州の砂糖を長期契約を結んだ、そのときはよかれかしと思って結んだのでありますけれども、今日に至って考えると、これが現在の糖業界の非常に大きな混乱の原因になっておるというのが実情でございます。したがって、いまるる農林省から申しましたように、今日非常に乱立している、そして過当競争している砂糖業界が、このままいくと結局はいろいろな形でまた消費者にはね返ってくるということでありますから、せめて平均生産費はカバーする体制をつくって、長期的な糖価の安定を図りたいというのがこの法律の趣旨でございます。したがって、糖価が平均生産費を上回って推移する場合には、本法案によって命令が取り消されるという歯どめの条項がございますから、ここを十分見ながら、農林省と協力しながら糖価の安定に努めてまいりたいと思います。
  131. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 終わります。
  132. 武部文

    ○武部委員長代理 次回は、来る四日金曜日、午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十九分散会