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倉成国務大臣 いま当面する私
どもの最大の
課題は、雇用の安定と
物価の安定、その二本柱の
一つが
物価でございます。私たちは前期五カ年
計画の中で
物価をどういうふうに
考えたかと申しますと、最終年度の
昭和五十五年度において六%以下にしたい、こういうことを
消費者物価について
考えました。この基本的な
背景は、よく世間で言われますように、せめて一年ものの定期預金の金利より少し低いくらいに
物価というものは落ちついてしかるべきじゃないかという素朴な庶民感情と対応するものだと思うのであります。ただ、御
案内のとおり、
消費者物価の場合は、
卸売物価と違いまして、先ほど申しましたように
サービス料金が三三%、季節商品が八%強を占めておりまして、両方で四〇%以上あるわけでございます。そこで、やはり
サービス料金あるいは季節商品をどう
考えるかということになってまいりますと、この辺を完全に抑えることができれば
物価はかなり落ちついてくると思うわけでありますけれ
ども、ここに非常にむずかしさがある。すなわち、必ずしも
生産性が十分向上しない
部門について、
賃金は他の
生産性の向上する
部門と同様に上がっていかなければならないという問題があるわけでありまして、たとえば床屋さんやあるいはパーマネント屋さん
一つとりましても、床屋さんがいままで五十分で摘んでおったのを急に三十分にするというわけにいかない。昔の軍隊のように十五分でトラ刈りにするということになったらお客さんは来ないわけでありますから、そういう意味でおのずから
生産性向上に限度がある。また、農業
一つとって
考えてまいりましても、明治以来お米の生産が二倍以上になったというのには相当の期間がかかっているわけですね。他の工業製品とは違う。そういう問題があるわけです。しかも、豊作貧乏ということも商品作物にはあるものですから、
消費者物価の安定ということはなかなかむずかしい問題があります。したがって、
経済が成長していく過程においてはある
程度の
上昇は許容しなければならないというふうに基本的に
考えておるわけでございます。
ただ、最近時点で
考えると、五十一年度の
消費者物価の
上昇については、季節商品の値上がり、これは魚の価格の値上がりとか、あるいは異常寒波、長雨のために野菜の値段が上がったとか、いろいろな理由がありますけれ
ども、同時に、公共料金が昨年の九%の
物価上昇の中で三・一%占めました。これはどういうことかと申しますと、狂乱
物価時に、とにかく火を消すために公共料金を抑えなければいけないということで、非常に低く抑えたわけです。この低く抑えたのをある時期に少しずつ正常な
状態に戻していかなければならないということで、特に昨年公共料金の値上げ
調整というのがかなり大きく行われた。やはりこれが昨年の
消費者物価上昇の
一つの
原因になったということを、率直に認めなければならないと思うわけであります。
しかし、ことしは公共料金の値上げというのが、確かに電電の積み残しとかあるいは一部の公共料金がございますけれ
ども、昨年のような大幅な値上げというのがない。また、電力、ガスというようなものがことしは据え置きであるということを
考えてまいりますと、今年度に関しては公共料金が
消費者物価上昇の引き金になるということはないわけでございます。したがって、季節商品その他についてわれわれが慎重な配慮をしてまいれば、
政府が目標としております来年三月の前年同月比七・六%の目標というのは達成できると
考えておるわけでございまして、
東京都の十月の
消費者物価は御
承知のとおり七・六%、九月の全国の
消費者物価の
上昇率は前年同月に比較しまして七・六%ということになっております。したがって、来月はそう下がらないかもしれませんが、さらにここ二、三カ月の間というのは前年同月に比較しますと
消費者物価はかなり下がってくるのじゃないかという
感じがしておるわけでございます。そういうことでありますから、われわれは
消費者物価の安定ということに最大の関心を持ちながら
努力をしていきたいと思います。
同時に、先ほど申しましたように、これらの
政策をやっていくとともに、やはり基本的なものにもメスを入れていく必要がある。たとえば流通機構の改善の問題、お肉の値段が高い、これはいろいろな
原因がありますけれ
ども、流通機構についてもう少し合理的な
方法がないだろうか、あるいは農業その他の低生産
部門についての
生産性を向上するにはどうしたらよいかという問題、あるいは
輸入政策をもう少し活用して、先ほど
お話しの西ドイツのような形で
消費者物価を安定していくにはどういう
方法があるだろうか、そういう万般の
政策を活用いたしまして、
消費者物価の安定を期してまいりたいというのが
政府の基本的な姿勢でありまして、基調的には落ちついてきていると
判断して間違いでないのではないかと思います。