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1977-10-25 第82回国会 衆議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月二十五日(火曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 金子 岩三君    理事 今井  勇君 理事 片岡 清一君    理事 菅波  茂君 理事 山崎平八郎君    理事 竹内  猛君 理事 美濃 政市君    理事 瀬野栄次郎君 理事 稲富 稜人君       愛野興一郎君    加藤 紘一君       久野 忠治君    熊谷 義雄君       佐藤  隆君    染谷  誠君       玉沢徳一郎君    中野 四郎君       羽田野忠文君    福島 譲二君       向山 一人君    森   清君       森田 欽二君    小川 国彦君       岡田 利春君    角屋堅次郎君       柴田 健治君    島田 琢郎君       新盛 辰雄君    野坂 浩賢君       馬場  昇君    松沢 俊昭君       武田 一夫君    野村 光雄君       吉浦 忠治君    神田  厚君       津川 武一君    菊池福治郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 鈴木 善幸君  出席政府委員         経済企画庁物価         局審議官    柳井 昭司君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         水産庁長官   岡安  誠君         運輸省船員局長 高橋 英雄君         海上保安庁次長 向井  清君  委員外出席者         外務省アジア局         北東アジア課長 遠藤 哲也君         中小企業庁計画         部金融課長   松尾 成美君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ――――――――――――― 委員の異動 十月十二日  辞任         補欠選任   武田 一夫君     矢野 絢也君 同日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     武田 一夫君 十月十四日  辞任         補欠選任   津川 武一君     不破 哲三君   菊池福治郎君     大原 一三君 同日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     津川 武一君   大原 一三君     菊池福治郎君 十月十七日  辞任         補欠選任   吉浦 忠治君     浅井 美幸君 同日  辞任         補欠選任   浅井 美幸君     吉浦 忠治君     ――――――――――――― 十月二十日  漁業水域に関する暫定措置法の一部を改正する  法律案内閣提出第九号) 同月十八日  水産庁釣り人課新設に関する請願瀬野栄次  郎君紹介)(第四五号)  昭和五十三年度水田総合利用対策適正化等に  関する請願外一件(芳賀貢紹介)(第五四  号)  北海道に対する昭和五十三年度稲作転換目標面  積の配分に関する請願外二件(芳賀貢紹介)  (第五五号)  同(島田琢郎紹介)(第九三号)  同(村上茂利紹介)(第九四号)  昭和五十二年産米全量政府買い入れに関する請  願外三件(芳賀貢紹介)(第五六号)  同(島田琢郎紹介)(第九五号)  農業経営発展基本施策確立等に関する請願外  一件(阿部昭吾紹介)(第一一〇号)  中国食肉輸入禁止解除に関する請願(石野  久男君紹介)(第一六五号) 同月二十二日  米国サクランボ輸入阻止等に関する請願(  阿部昭吾紹介)(第三八三号)  中国食肉輸入禁止解除に関する請願松沢  俊昭紹介)(第三八四号) 同月二十四日  農業経営発展基本施策確立に関する請願(有  島重武紹介)(第四六八号)  水産庁釣り人課新設に関する請願稲富稜人  君紹介)(第四六九号)  同(稻葉修君紹介)(第四七〇号)  同(横山利秋紹介)(第五五六号)  米国サクランボ輸入反対に関する請願(渡  辺三郎紹介)(第五五五号)  農業経営発展基本施策確立等に関する請願外  二件(渡辺三郎紹介)(第五五七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十月十三日  農業経営発展基本施策確立等に関する陳情書  外八件(  第五三号)  食糧自給体制確立等に関する陳情書  (第五四号)  総合食糧政策確立に関する陳情書  (第五五号)  飼料用麦国内生産拡大に関する陳情書  (第五六号)  農業構造改善事業の推進に関する陳情書  (第五七号)  農業者年金基金制度改善に関する陳情書  (第五八号)  林業振興に関する陳情書  (第五九号)  山村振興事業拡充強化に関する陳情書  (第六〇号)  漁業振興対策充実強化に関する陳情書  (第六一号)  沿岸漁業振興対策拡充強化に関する陳情書  (第六二号)  漁港整備計画実現等に関する陳情書  (第六三号)  魚の安定供給及び魚価の安定に関する陳情書  (第六四号)  漁業専管水域設定に伴う損失補償に関する陳情  書外一件(  第六五号)  鹿児島湾赤潮被害に伴うハマチ養殖業者救済  に関する陳情書  (第六六号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  漁業水域に関する暫定措置法の一部を改正する法律案内閣提出第九号)      ――――◇―――――
  2. 菅波茂

    菅波委員長代理 これより会議を開きます。  委員長の指名により私が委員長の職務を行います。  漁業水域に関する暫定措置法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨説明を聴取いたします。鈴木農林大臣。     ―――――――――――――  漁業水域に関する暫定措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 漁業水域に関する暫定措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  漁業水域における漁業に関して拿捕した外国漁船については、適当な担保提供により早期釈放するという措置をとることが国際的に一般化しつつあり、また、今国会におきまして承認をお願いしております日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定においても、このような措置をとるべきことが規定されております。  このような状況にかんがみ、漁業水域に関する暫定措置法等違反により拿捕した外国船舶及びその乗組員に関し、適当な担保提供によりこれを早期釈放するための制度整備を図ることとし、本法律案提出した次第であります。  次に、この法律案の主要な内容について御説明申し上げます。  第一に、漁業水域に関する暫定措置法等違反に関し船舶拿捕が行われた場合には、政令で定める取締官が、その船長及び違反者に対し、担保金またはその提供を保証する書面提供があれば違反者釈放され、船舶その他の押収物返還される旨及び提供すべき担保金の額を告知することといたしております。  第二に、担保金またはその提供を保証する書面が告知されたところに従って提供されたときは、取締官または検察官は、遅滞なく、違反者釈放及び船舶その他の押収物返還に必要な措置をとることとしております。  第三に、提供された担保金は、主務大臣保管し、違反者が求めに応じて出頭しなかった等の場合には、国庫に帰属することとしております。なお、国庫に帰属しなかった担保金は、事件に関する手続が終結した場合等その保管を必要としない事由が生じた場合には、返還することとしております。  最後に、経過措置として、この法律施行前における拿捕に関して提供された担保金またはその提供を保証する書面は、この法律に基づいて提供されたものとみなすこととしております。  以上が、漁業水域に関する暫定措置法の一部を改正する法律案提案理由及び主要な内容でございます。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきまするようお願い申し上げます。
  4. 菅波茂

    菅波委員長代理 引き続き、補足説明を聴取いたします。岡安水産庁長官
  5. 岡安誠

    岡安政府委員 漁業水域に関する暫定措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  この法律提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由説明において述べましたので、以下その内容につき若干補足させていただきます。  第一に、漁業水域に関する暫定措置法規定違反した罪その他の政令で定める罪に当たる事件に関して拿捕が行われた場合には、取締官は、拿捕に係る船舶船長またはその代行者及び違反者に、遅滞なく、担保金またはその提供を保証する書面主務大臣に対して提供されたときは違反者釈放され、船舶その他の押収物返還される旨を告知するとともに、提供すべき担保金の額を告知することとしております。ただし、事件政令で定める外国人が行う漁業または水産動植物の採捕に係るものであるときは、この制度は適用されないこととしております。  なお、取締官とは、司法警察貝である者であって政令で定めるものを言うこととしております。  第二に、告知する担保金の額は、事件の種別及び態様その他の情状に応じ、政令で定めるところにより、主務大臣の定める基準に従って、取締官が決定することとしております。  第三に、告知した額の担保金またはその提供を保証する書面が、政令で定めるところにより主務大臣に対して提供されたときは、主務大臣は、遅滞なく、その旨を取締官または検察官に通知することとし、取締官または検察官は、この通知を受けたときは、違反者釈放及び押収物返還に必要な措置を講じなければならないこととしております。  第四に、提供された担保金は、主務大臣保管することとし、違反者がその求められた期日及び場所に出頭せず、または返還された押収物提出を求められたものがその求められた期日及び場所提出されなかったときは、その翌日から起算して一カ月を経過した日に国庫に帰属することとしておりますが、その国庫に帰属する日の前日までに、当該期日の翌日から起算して三カ月以内の特定の日に出頭しまたはその押収物提出する旨の申し出があったときは、担保金国庫への帰属は停止することとしております。しかし、この場合においても、その申し出に係る特定の日に出頭または提出がなかったときは、担保金は、その日の翌日に国庫に帰属することとしております。  第五に、担保金国庫に帰属しなかったものは、事件に関する手続が終了した場合等その保管を必要としない事由が生じたときに返還することとしております。  第六に、主務大臣は、政令で定めることとしております。  最後に、附則におきましては、経過措置として、この法律施行前に漁業水域に関する暫定措置法等違反する罪に当たる事件に関して拿捕された船舶船長その他の関係者から提供された現金またはその提供を保証する書面で、改正後の漁業水域に関する暫定措置法規定する担保金またはその提供を保証する書面に相当するものは、同法の規定により提供されたものとみなすこととしております。  以上をもちまして、この法律案提案理由補足説明を終わります。
  6. 菅波茂

    菅波委員長代理 以上で、趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 菅波茂

    菅波委員長代理 質疑申し出がありますので、順次これを許します。野坂浩賢君。     〔菅波委員長代理退席山崎(平)委員長代理着席
  8. 野坂浩賢

    野坂委員 いま御説明がございました漁業水域に関する暫定措置法の一部を改正する法律案をめぐる請問題についてこれから質疑をしたいと思うのでありますが、最初に外務省に来ていただいております。  時間がないようでありますから、まずきょうの新聞をごらんいただきますと、竹島韓国漁民定住をしたという記事が出ております。ソ連の二百海里水域設定に絡んだその際にも北方領土問題、あるいは韓国とは竹島の問題をめぐりまして、今後漁業にあるいは領土に重要な問題を呼ぶであろうということが本委員会でも大きく議論をされたことは御案内のとおりであります。この竹島につきましては、私も地元鳥取県でありますから、その歴史的な経過はよく知っておりますけれども外務省の方々も十分御了知だと思いますので申し上げませんけれども、私たちは、竹島は島根県の隠岐郡五箇村である、こういうふうに理解をしておるわけであります。  政府もこの発表に基づいて、竹島日本固有領土であり容認できない、こういうふうに述べられておるわけでありますが、この定住をめぐって韓国側の見解は、「これまで国際地理学無人島であったこの島にサイさん一家が移住したことは、有人島かどうかを判断するきっかけになることは間違いない」、こういうふうにソウル大学の講師は述べておるわけであります。  これについて政府は、民間の人が定住をされた、しかも届け出がされておるわけでありますから、いつこの状況把握をし、また把握をしたならば韓国に対してどういう措置をとってきたのかということをまずお伺いをしたいと思います。
  9. 遠藤哲也

    遠藤説明員 野坂先生指摘のけさの新聞でございますけれども、これのもとになりましたのは、実は昨日、二十四日の韓国の東亜日報という夕刊紙記事でございます。これは若干の部分は新聞でキャリーされておりますけれども、御参考までにその要旨を簡単に御報告いたしますと、まず、「わが国」、わが国というのは韓国の場合でありますが、「わが国東たん領土である独鳥に、史上初めてサイ・ショウトク及びその家族三人が住民とう録を移し定住していることが、二十二日この島を訪れた「ウツリョウ島・独島学術調査団」によって明らかにされた。」二番目が、「これにより、独島は政治地理学上や国際地理学上の無人島から有人島とみなされるきっかけとなった。」三番目に、サイさんというのは定住した人でございますが、「サイは、もとウツリョウ島道どうで漁業を生業とし、数年前から独島に海女をつれて出かけ、アワビ、ワカメ、サザエなどをとってくらしていたが、今年の春から独島西島に簡易家おくを建てて妻と海女五名とともに住んでいる。二十日前には前記ウツリョウ高道どうに出向き住民とう録を移し、建国以来はじめての「独島住民」となった。」四番目に、「政治地理学者」、これは先ほど先生指摘ソウル大学先生でございますが、「任トクジュンは「サイの居住が独島の有人島判定のために契機になることだけはまちがいない」とその意義を述べた。」、こういう記事でございます。  この記事は、早速きのうの夜、在韓大使館から電報で報告してまいりまして、いまのような事実がわかったわけでございますが、先生指摘のとおり、竹島は、これはもう歴史的に見ましてもあるいは国際法上に照らしましても、わが国固有領土であることは間違いないわけでございます。したがいまして、韓国の国民が住民登録を移して竹島定住したというこの記事がもし事実であるといたしますと、わが国領土主権に対する大変な問題であろうかと思います。したがいまして、もしそれが事実であるとしますれば、わが国としましては、このような事実はとうてい容認することはできないという立場でございます。  そこで、政府といたしましては、この事実関係、これは実はきのうの夜わかった事実関係でございますが、この確認を大至急行いまして、それを踏まえまして、韓国政府に対して速やかに抗議をする所存でございます。
  10. 野坂浩賢

    野坂委員 事実確認はきょうじゅうにできると思うのでありますが、その事実確認をし、抗議をする。抗議をするということはわかるわけでありますが、抗議をしてどのようにするのか。たとえば退去をしてもらうのか。この点についてはこれから話し合いになると思うのでありますが、政府方針は、そのサイさんの取り扱いはどのように進めていくのか、交渉をするのか。
  11. 遠藤哲也

    遠藤説明員 まず、事実確認はとにかく大至急に行うわけでございますが、この事実を踏まえまして、住民登録の移しか見といいますか、もとへの返還、それから、もしそれが事実であるとしますれば、その撤去というものを申し入れるつもりでございます。
  12. 野坂浩賢

    野坂委員 わかりました。早急に措置をして、委員会に報告していただくことを望んでおきます。  次は、この法案に関連をしてでありますが、今度のこの一部改正法案についての問題の基本日ソ漁業暫定協定あるいはソ日漁業暫定協定、これはうらはらのものであるというふうに認識をしておるわけですが、そのとおりであるという認識でよろしいか。
  13. 岡安誠

    岡安政府委員 今回の暫定措置法改正をお願いしております趣旨は、いわばソ日暫定協定に関連するわけでございまして、わが国漁業水域の中で外国漁船が操業する場合、違反をした場合には拿捕その他の措置をいたすわけでございますが、早期釈放をするということはすでに国際慣行にもなっておりますし、またソ日協定にも記載されておるということでございますので、それらの制度を今回新たにはっきりさせたいという趣旨でございます。
  14. 野坂浩賢

    野坂委員 それはわかっておるのですけれどもね。岡安さん、このソ日漁業暫定協定、それはわが国の二百海里の水域内でソ連漁業をする、あるいは日ソ漁業協定というのは向こう側水域わが国漁民が操業する、こういううらはら関係で、日ソ漁業暫定協定なりソ日漁業協定というものは法文的にはほとんどうらはらの問題である、そういう関係ですね、そういう認識でよろしいですね、こう言っておるわけです。そうですね。
  15. 岡安誠

    岡安政府委員 ちょっと御趣旨を取り違えて恐縮いたしました。  お互いに二百海里水域を設定いたしまして、お互いにその水域内に自国の漁船の入漁を認め合うというために日ソ協定があり、ソ日協定がございますので、そのとおりうらはら関係になっておるわけでございます。
  16. 野坂浩賢

    野坂委員 この中で問題になろうと思いますのは、違反をした者が拿捕されて、担保金を積んで、そして直ちに釈放されなければならぬ、こういうことになっておりますね。最高刑というのは罰金だ、こういうことが原則でありますが、二十三条の二項に、政令を定めて、その取り締まりの担保金といいますか罰金というものは、主務大臣の定める基準だと書いてありますね。やはり政令が出なければ、そして、それが中心になり、釈放なりそういう問題が出てこないと具体化しないということを厳しく言ったせいか、きょう政令の見込みが出てきましたね。二十三条の二項は、罰金最高額違反の性質、程度というものを考慮してやるということですが、大体、基準というものは内々お決めになっており、それはソ連側通告をされるわけですか。国内法として相手側には通報されないわけですか。どうでしょう。
  17. 岡安誠

    岡安政府委員 この法律が通過成立いたしますれば、お話しのとおり、二十三条の二項によりまして、事件種類及び態様等につきまして担保金の額を変えるわけでございますが、その事件種類及び態様等に応じて変えるべき基準等は、まず政令で決め、その政令に従って主務大臣がいろいろ基準をつくりまして実際に運用をするということでございます。したがって、私どもは現在準備中でございまして、この法律施行するときには、当然政令並びに主務大臣の定める基準を同時に公布いたしたいと思っております。  なお、その内容等につきましては、これはやはり国際慣例等に従いまして、公表すべきものではないというふうに思っております。
  18. 野坂浩賢

    野坂委員 これからつくられる、そういうお話でありますが、ソ連船拿捕状況は、われわれに資料が示されておりますけれども、十月の一日から二十日まで四件拿捕事件がございますね。これについては操業日誌の一部不記載ということで大体五十万円ということになっておりますね。これは内規があるということですね、内規がなければ決定できないわけですから。それについては公表しないということになると、向こう側通告をしないと、一方的にこれだけだ、これだけだということになるわけで、そういう点は明らかにしておく必要があるんではなかろうかと思うのですが、その点はどうでしょう。
  19. 岡安誠

    岡安政府委員 先ほど申し上げましたように、担保金を具体的に取締官が決定いたします基準等につきましては、政令、それから主務大臣が決めて、これは公表されるわけでございますが、その基準の具体的な運用、これはそれぞれ完全に取締官等の随意ということではなしに、どこの国でもそうでございますけれども、大体内規といいますか、内々の方針がありまして、それによって情状に応じて担保金の額を決定することになるわけでございます。しかし、そういうような細部運用方針等は公にしないということが通例でございます。  私どもは、運用に当たりまして、この法律違反最高が一千万円の罰金でございます。その範囲内ということと、それから没収その他があり得るということでございますので、そういうようなあり得る可能性等も一応参考にいたしまして、情状に応じて取締官担保金の額を定めて運用するということにいたしてまいりたいと考えております。
  20. 野坂浩賢

    野坂委員 ソ連側水域わが国拿捕される状況もたくさんあるわけですが、それについても日本側にはわかっていないわけですか。
  21. 岡安誠

    岡安政府委員 いままでソ連側によりますわが国漁船拿捕というのは、最近までの合計で百二十三件ございます。それらはいろいろなケースによりまして罰金が科されておりますが、金額は非常に多様になっております。必ずしも私ども同じ違反ケースで同じような罰金額が示されているというふうには考えられないケースもございますので、非常に不審に思いまして、どういうような方針運用しているのかということをソ連側にただしたことはございます。ソ連側は、確かに同じようなケースと思われる場合でも罰金の額は変わっているということは認めております。それはソ連側に言わせれば、違反状況、それから相手方の船長情状その他を勘案いたしまして、一応一定の幅の中でソ連側取締官の裁量にゆだねているというようなことを言っております。したがって、私どもソ連側細部運用基準というようなものは正確には承知いたしておらないというのが実情でございます。
  22. 野坂浩賢

    野坂委員 担保金提供による拿捕船舶釈放制度図解を私たちはいただいております。これはいま御説明があったように、拿捕すると、担保金額の告知をして、そして外国船舶担保金または保証書提供依頼提供者にお願いをして、そして、その保証書提供主務大臣通告をし、主務大臣取締官にその旨を通知して釈放する、こういうことになっておりますね。これはソ日協定に基づく日本側水域における図解ですね。言うなればそういう制度になっておる。きわめて合理的ですね。ソ連水域における日本漁船のこれらのやり方というのは一体これと同じですか。いまはいわゆるソ日協定日ソ協定うらはら関係であるというふうにおっしゃったわけですから、こういうこともやっぱりこれと同じようにやらなければ非常に矛盾と問題点が出てくるんではないかと私は思うのですが、向こう側ではどうなっておりますか。
  23. 岡安誠

    岡安政府委員 わが国漁船ソ連取締官によりまして拿捕された場合には罰金の申し渡しがありまして、通例その場で現金を支払うということになっております。万一現金の持ち合わせがない場合には僚船から借りるとか、また僚船がいないような場合には一時帰港をいたしまして、日時、場所等を打ち合わせて、罰金を持ってまたそこへ戻るというような運用が行われております。  先生は、わが国外国漁船拿捕した場合、こういう図解のような方法で担保金提供またはそれを保証する書面提供を受けて釈放することを考えているならば、わが国漁船ソ連船拿捕された場合にも同じようにすべきではないかという御趣旨と思いますが、一応形式的な相互主義と言うならば、そういうことも主張し、そういうことを決定することも一つの意義があるかと思いますが、実際問題として考えた場合に、このような方法をソ連の官憲といいますか権威ある機関と約束いたしましてこういう制度にした場合、果たして早期釈放が行われるかどうか。現在は現金を払いますれば直ちに釈放いたしまして、そのときから操業が継続できるというのが実情になっております。もし、わが国外国漁船にとっておりますと同じような方法で、外国の官憲がその間に介在をするというような方法で釈放を求めるということになりますと、外国の官憲の事務処理のスピードいかんによりましては、一日なり二日なり、もっと漁労ができない期間が発生するということもあるわけで、どちらが有利であるかということもございます。したがって、私どもは直ちに、わが国外国船にとるようなこういう制度ソ連にとってほしいというようなことを求める考えはございません。
  24. 野坂浩賢

    野坂委員 ただ、日本側ソ連船拿捕したときには大体担保金は五十万円ということですが、いまお話があったように、六月以来わが国漁船拿捕されたのは百二十三件もある、一億円を超える、こういう状況にありますね。しかも、たとえば六月二十四日、北海道の忠誠丸は停船命令に違反した。これは現金は二十万円である。同じく六月二十六日、同じ場所で停船命令を聞かなかったということで百万円だ。こういうふうに、同じような金額はないですね。ほとんど違いますね。二十万円であったり三万円であったり、あるいは四百万円であったり、こういうことになりますと、何か基準というものは日本側も知らない、だから言いなりだということでは、これではやはり問題にならぬじゃないかと思うのですよ。特にあなた方は八月二十三日、水産庁の海洋漁業部長が日ソ漁業暫定協定の実施についての指示通達というのを出しておりますね。これはこう書いてあります。「罰金賦課に関する漁業監督官の決定に対して十日以内に人民裁判所に控訴することができることとなっている」、こういうことになっていますね。「なお、違反の取調べを受けるに当たっては、ソ連側に当方の事情を十分説明するとともに、ソ側の調書のなかに被疑者である船長の意見を記入する欄があるので、取調べの内容について異議がある場合は、必ずこの欄に異議の内容を記載しておくことが望ましい。」こういうふうにありますね。  あなたのお話を聞くと、向こうの内規といいますか規則というものは日本側はよくわからぬが、提示をされる。二十万円もあれば三万円もあるし、同じようなことで操業日誌記載等は、日本のように五十万円じゃなくて、非常にまちまちですね。これはたくさん問題があるけれども、その範囲内で情状酌量等でやっておるのだということになりますと、帰ってきた船長あるいは船主はそういう情報をいろいろ知っておりますから、これは高いではないかというかっこうで、領収書があったにしても非常に疑心暗鬼もある。そういう点については一体どうしたものであろうかという現場の人たちの率直な声があるわけですね。これについての対処の仕方。しかも、日本水産庁なり農林省は、向こうと折衝して基準の明確化も何もやっていない。言うならば現場任せだということ、それでは困るという声がありますね。それが一点。  それから、十分説明してその欄に記載をさせるということですけれども、話がわからぬですから相手の言うことが十分理解できない、こういうふうな点があるわけですね。それについての対応の方法、この二点を伺いたい。
  25. 岡安誠

    岡安政府委員 まず、ぜひ御了解をいただきたいと思っておりますのは、二百海里時代になりまして、それぞれ沿岸国が沿岸に自国の漁業水域を設定する。その場合に、その漁業水域の中におきましては、取り締まり等に関しましては沿岸国が主権的権利を持っているということがはっきりいたしております。その主権的権利の内容といたしましては、それぞれの沿岸国の法律制度、また刑罰等の場合にはその刑事手続等によりましてみずから決定をする権限がある、これは承認せざるを得ないわけでございます。ただ、私ども余りにも納得できない点がございますので、どうして同じようなケースにばらばらな罰金が科されるのかということを質問いたしたことは再三ございます。ただ、向こうの回答は、先ほど申し上げましたとおり、違反の事例によりまして、相手方の船長情状、それから累犯であるかどうかとか、いろいろなことを勘案して幅を持たせて、その幅の中で裁量する権限を第一線の取締官に与えているということ、こういうように言われますと、それはいかぬ、けしからぬとかいうようなことは、われわれとして言うべき立場にないわけでございます。したがって、その点はまず御了解を得たいというふうに思っております。  それから、違反の場合には向こうから事情聴取をされまして、納得できないものは否定をするし、納得できるものは肯定をし、それで調書ができ上がるわけでございます。その調書作成の場合には、先生おっしゃるとおり、自分の主張は十分言う、必要な記載事項は記載をするということを指導しております。ただ、その場合、ロシア語等が不十分な場合には意思が十分通じないことも考えられますが、簡易なロシア語のテキスト等はすべての漁船が持っているようでございますし、それらを活用いたしまして十分自分の意思を述べるということにしていただいて、調書ができた場合にはその調書をもらって帰ってくるということを指導いたしております。最初におきましてはソ連側取締官もすべてのわが国漁船に対しまして調書を渡すという事例がなかったようでございますので、これは私どもが十分意見を言いまして、すべての場合に調書の写しを渡すようにということを要請し、ソ連側も了承いたしております。  そういうようなことによりましてよけいなトラブル、不当な紛争がないように今後気をつけてまいりたいと思っております。
  26. 野坂浩賢

    野坂委員 いまお話があったように、よけいなトラブルとか、よけいなことを言わないように、余り言ったら損するぞといったような指導ですからなかなか言えない。しかも、言葉がなかなか通じないから、十分それに記載をしてもらうことができない、こういううらみがありますね。だから、水産庁の監視船といいますか監督船には全部ソ連語のできる通訳を乗せてそれに対応する。それから、ソ連側もそういう相互主義で十分話し合いが通じ、納得ができるという国際信義というものは必要なんですから、話し合って、ソ連の監視船には全部日本語のわかる通訳を乗せる、日本水域の場合には全部ソ連語のわかる通訳を乗せる、こういうことにきちんとしてもらわなければ――ソ連側には日本語のわかる通訳がおりますけれども、乗っていないこともあるわけです。乗っていない船にも何回か出会っておるわけです。だから、うちの方もソ連語のわかる者を全部乗せておいてもらわぬとやはり話が詰まらない、こういうことがあるわけですから、その点は全部きちんとしてもらうように話し合い、わが日本側もきちんとそういう向こうの意見は聞いて、そういうことができるような体制というものは、漁民の権利義務という上に立っても政府としては当然やるべきではないか、こう思いますが、どうです。
  27. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 野坂先生がいま御指摘になっておる点は重要な問題でございますので、私からも長官の説明につけ加えまして明確にしておきたいと思います。  第一点は、向こうの罰金を科する基準、これは国際慣例等もございまして、関係国にこれを示すということになっておりません。しかし、ここで言えることは、ある一つの基準がある。たとえば漁業日誌の記載漏れであるとか、そういう場合に対しては一つの基準があろうかと思います。その一定の基準の適用に当たって余りばらつきがあるようなことであってはいけない、やはりその基準に沿って正しく不公平なくやってほしい、これは要求できる問題でございます。  第二の点は、臨検等があり、違反として摘発された場合、調書をとられるわけでございますが、ある監督官は違反に問われた者にちゃんと調書の写しを持たせて帰すという場合もございますし、そうでないものもある。やはり調書は当該漁船に持たせてよこすということが望ましいわけでございまして、第一点の基準を正しく公平に運用してもらいたい、それから調書はこれを当該漁船に交付してもらいたい。このことは、今回モスクワの長期協定交渉に参りました松浦海洋漁業部長からソ側に対して強くわが方の立場、わが方の要請を伝えまして、善処方を求めておるところでございます。
  28. 野坂浩賢

    野坂委員 いま大臣からきわめて明快に御説明をいただいたわけでありますが、いまお話の中にもありましたように、わが国水域でも、わが国ソ連側水域拿捕されたのも、違反というのは操業日誌が大半ですね。その日誌の関係を見ますと、十八万円から三百七十万円までずっと幅がありますね。そういうかっこうになっておると非常に矛盾を覚えます。したがって、日誌関係だけでももっと簡便にやってもらうように、午後一時から正午までというふうにありますが、夜の操業もあるので、そういうような日誌関係はきわめて詰めて、明快にしかも簡便にやってもらうようにという漁民の声でありますから、措置をしてもらいたいということが一点と、それから、いまお話をいただきましたけれども、そういう調書あるいは堂々と渡り合える、こういう意味で通訳をきちんと両国ともに乗せてもらう、そういうことについては善処していただけるかどうか、大臣に伺いたい。
  29. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 わが方の監視船あるいは取締船におきましては、水産庁の取締船にはロシア語のわかる人間を全部搭乗さしております。海上保安庁の方に対しましても、全船にそういうロシア語のできる人をできるだけ配置してもらいたいということを要請をいたしておりますが、いまどの程度それがなされておりますか、後で海上保安庁の方と連絡をいたしまして御報告を申し上げたいと存じます。  なお、ソ連側の監視船に日本語の達者な者、わかる者がどれだけ乗っているかということにつきましてはどうも十分でないように思いますので、今後わが方からその点はソ側に要請をしたい、こう考えております。
  30. 野坂浩賢

    野坂委員 保安庁の方はわが国水域ですからソ連側の立場を考えてやってもらえば結構ですが、ソ連水域の中で向こうのわかる人はもちろんですが、私どもの方も監視船が入るわけですからそこに乗せてもらわなければ、漁船にはなかなか一人一人乗れぬわけですから、東京外大や大阪外大の人を漁民にというわけになかなかなりにくい点もありますから、そういう監視船、指導船というものに全部乗せて、向こうが日本語をわかっても、いろいろあって感情的になって、そんなことだめだと言われれば一言もないわけですから、わが方の監督船に、水産庁の監督船に乗り込ませる、そして拿捕があったらそこに行ってソ連側と折衝させる、船長日本側の通訳官と話をしてさらに詰めていく、こういうかっこうにしなければ一つ一つ改善できませんからそうしてもらいたいというのが全部の漁民の声ですから、措置をしてもらえますか、こういうことです。
  31. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御趣旨のように私ども考えておりますし、今後ともその体制を整備するように努力をいたします。
  32. 野坂浩賢

    野坂委員 時間がなくなりましたので飛びますが、朝鮮民主主義人民共和国が七月一日に発表されたことでありますが、八月一日から経済水域二百海里の設定をやるということが明らかにされて、日朝議員連盟の皆さんが北朝鮮に赴かれて、日朝漁業協議会と朝鮮の東海水産漁業協同組合との間に暫定合意書というものが成立をいたしました。  これに対して政府はどういう評価をなさっておるか、まず聞きたい。
  33. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 予算委員会におきましても安宅議員の御質問に対しまして私、御答弁申し上げたところでございますが、朝鮮民主主義人民共和国の本年八月一日からの二百海里経済水域の実施については、同水域においてわが国漁船が多数操業しており、きわめて重要な漁場であることから、政府としても憂慮いたしておったところでございますが、先般超党派で日朝友好促進議員連盟の派遣団が訪朝され、漁業問題についても暫定的合意がなされ、一定水域においてわが国漁業の継続が図られたことは大きな成果であったと考えております。暫定合意において、朝鮮民主主義人民共和国が操業水域を軍事警戒線を除く水域に限定したことは遺憾であると考えておりますが、当該水域においてわが国漁業の継続が認められ、また漁業者の負担増となる入漁料が徴収されないことは、わが国漁業者にとってまことに喜ばしいことであると考えております。  また、各種海難事故または災害の場合に、双方が可能な限り便宜を図り、保護すること、さらに民間の水産科学技術資料の交流等を行うことがうたわれたことはきわめて有意義なことであると考えており、政府としてもこれについての側面的な協力を惜しむものではございません。  さらに政府としては、今後とも日朝の民間レベルでの話し合いが行われることにより、わが国漁業の継続と安全の確保が図られることを期待しているものであり、これまで日朝漁業協議会から政府に対し民間漁業交渉につき指導要請があり、技術面等でのアドバイス等を行ってきたところでありますが、今後も同協議会からの援助要請があれば、可能な範囲で援助する考えでございます。
  34. 野坂浩賢

    野坂委員 よくわかりました。  ただ、この暫定合意書は一九七八年、来年の六月三十日までが有効であるわけですから、それまでにわれわれは日本漁民の権益確保という意味で、いろいろと折衝を民間協定であろうと進めていかなければならぬであろう、あるいはこの合意書というものをさらに延長し、あるいは前進をさせるという必要があろうと思いますが、政府はその際に、たとえば協定になるという場合については、積極的に指導し、助言をし、協力をするという考え方であるというふうに考えてよろしいわけですね。
  35. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 そのとおりでございます。
  36. 野坂浩賢

    野坂委員 次に、この朝鮮の水域設定に従って、ちょっとわからないと思うのですけれども、北緯四十度六分二十七秒、東経百三十三度三十四分三十八秒、この地点、それから北緯四十一度四十六分十三秒、東経百三十一度三十一分四十五秒、こういうふうに基線が引かれております。長官、大臣、御存じだと思いますが。ここのいま述べましたところの緯度のところには北大和堆というところがあります。この辺は非常にソ連側と朝鮮とが錯綜しておるので、カニがたくさんとれるわけですが、これがとれぬではないかという認識が私どもの地方の漁民の中である。ソ連の監視船がここまでは行ってもいいと言うのですけれども、またつかまって罰金を払ったら元も子もないということで、うろうろしておる。この辺について私はきちんとしておると思うのですが、どうでしょう。そして、そのきちんとしておるという政府見解があれば、地元の漁民によろしいんだということを明らかにしてもらいたい。ちゃんと地図にはいいんだというふうに出ておるはずですけれども、どうでしょうか。これは見てもらってもいいのですが、持っておられるですね。
  37. 岡安誠

    岡安政府委員 北大和堆を中心といたしますベニズワイガニ漁に関する御質問だと思います。この北大和堆周辺の漁場につきましては、ソ連邦の二百海里が関係をいたしますし、今回朝鮮民主主義人民共和国が設定をいたしました二百海里漁業水域にも関係いたしますし、日本の沿岸部分にも関係するというところでございます。そこで、私どもは、ソ連水域につきましては、ベニズワイにつきましてわが国漁船が操業するクォータ、それから出漁する漁船の隻数等を決めてございますので、許可証等を所持しておればクォータの範囲内で漁業できます。それから、朝鮮民主主義人民共和国関係水域につきましては、先生指摘のとおり暫定漁業水域というものが明らかになったようでございますが、この水域におきましては許可証その他を何も用意しないで従来どおり操業ができるというふうに聞いております。したがって、北大和堆周辺の漁場におきますベニズワイガニ漁業は何ら差し支えなく継続ができるというふうに私どもは考えております。
  38. 野坂浩賢

    野坂委員 よくわかりました。そういうことをわが方にも、わが方といいますか、漁民の皆さんに徹底してほしいということをお願いしておきます。  それから、無害航行の問題、無害通航の問題でありますけれども、北方四島がらみの三角水域というのがありますね。ここを真っすぐ通って帰ると相当早く母港に帰港できる。ところが、その辺についてはいまもって大きく迂回をして帰っておるというのが実態で、二日、三日も違うというのが現地の漁民の声ですね。  私たちは、この無害航行については国際法上、もう魚はとっていない、きちんとシートでもかぶせて、旗でも立てておれば問題はないというふうに考えておるわけですけれども、その点については、現状、その四島がらみの三角水域は航行していないというふうに私どもは現場の皆さんからよく聞くわけです。  それについては水産庁、農林省としては、いなくそこは通れるんだ、こういう認識だと思うのですが、そのとおりですか。
  39. 岡安誠

    岡安政府委員 御指摘の南千島の択捉、国後、色丹島に囲まれました水域のうちの十二海里の外の漁場、いわゆる三角水城と言われておりますけれども、そこから根室港等に帰港いたします際、従来から太平洋側を迂回をするということに指導いたしております。これを迂回をしないで三島の間を無害通航して帰ったらどうかという御指摘でございますけれども、やはり私どもは事故の未然防止という観点もございますので、従来と同様、今後とも迂回をして帰港するようにという指導は続けてまいりたいというふうに思っております。これは理屈その他のことは別といたしまして、やはり事故を未然に防止するということが先決であろうというふうに考えまして、そういう指導をいたしておるわけでございます。
  40. 野坂浩賢

    野坂委員 事故が起きればめんどうだから迂回をせよ、それは二、三日かかってもしようがないじゃないか、こういう意見ですけれども、理屈はどうあろうとということでありますが、理屈としては無害航行の場合はいいんじゃないか。また、漁民がそのことを望んでおる、ぜひそうしてほしいという要望が強いわけでありますから、その方法は法律にも違反をしないという前提に立って四島がらみの三角水域というのは通らせてももいいじゃないかということが、どこがいかぬのですか。具体的にどこが法律に抵触して、どこで問題が起きるのか。事故があったらという仮の想定はわかりますが、そこを通ったらなぜいかぬかということがよくわかりません。その点を明確にしてもらいたい。
  41. 岡安誠

    岡安政府委員 いま先生法律にどこに違反するかというようなことをおっしゃいましたけれども、これは先生十分御承知のとおり北方四島がらみの問題でございます。北方四島はわが国固有領土であるという立場ですべてを解釈すれば、無害通航どころの騒ぎではなく問題はないわけでございます。しかし、現に北方四島はソ連の占有下にあるということも事実でございますし、またソ連邦としましては、あの四島の周辺に領海が設定されていると考えていることも事実のようでございます。そこで、そういう水域を無害通航と称して通航するとはいえ、事故が起これば問題でございますので、私どもはそういうところは通過しないで迂回をして帰るようにということを指導いたしておるわけでございます。
  42. 野坂浩賢

    野坂委員 時間が来ましたので、あとは同僚にその問題をまた追及をしていただきますから、これで終わりますが、あと三分ありますから……。  こういう状況で世界の漁業状況というのは二百海里の時代を迎えた、すでに入った、だから相手側の、相手国の、今回もニュージーランドの副首相がおいでになりまして、輸入問題に絡んで二百海里水域の問題が出ておりますし、韓国でも話があるということになって、わが国漁民漁業しておる各国の二百海里の水域、いまは公海であっても設定をされれば、それでとっておるのが全漁獲高の大体三九%と言われておりますね。だから、言うなれば、これからは人の庭先で魚をとるという時代に入ってくる、そういう時代に入ってこようとしておる。この日ソ漁業協定なりソ日協定というもの、あのどろなわ式ではなしに、水産庁もあるいは農林省も、それに対応して法律整備なり水産庁の機構の改革なり強化というものを図っていかなければならぬじゃないか、こういうふうに思いますね。  それから、日本の二百海里内、日本水域ですね、この中でどう沿岸漁業を振興するかというような問題ですね。あるいはイワシにしても三分の二以上はみんな飼料や肥料になっておる、こういう問題をいま取り上げられておりますけれども、この沿岸漁業の振興整備七カ年計画ですか、それにしてもたった二千億を七カ年でやるというようなチャチな方法では、これからのたん白資源の確保ということについても重大な影響があるわけですから、これらの整備を早急に、しかも大規模に実施をするという必要があるのではないかと思うわけです。  これが最後でありますから、農林大臣にそういう見解を聞いて、私の質問を終わりたいと思うのです。
  43. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 野坂さん御指摘のように、急速な二百海里時代を迎えまして、わが国漁業は重大な転換期に立たされておるわけでございます。したがいまして、この厳しい二百海里時代に対応して漁業外交を積極的に展開をする、また御指摘日本列島周辺のわが国二百海里の専管水域内の漁場を積極的に開発整備をして、資源をふやし、さらに進んでは育ててとる漁業を振興して、この二百海里の中でできるだけ漁獲を上げていく。幸いにして、日本列島周辺の二百海里水域というのは、世界でも六番目の広大な水域であり、しかも暖流性と寒流性の魚がとれる好漁場でございます。この恵まれた条件を生かすということが、今後水産政策、漁業政策の大きな課題でもある、このように考えております。さらにまた、多獲性の魚種をできるだけ高度利用する、これも一つの大きな問題でございます。  こういうような施策を強力に今後推進、展開してまいりますために、それに対応するような水産行政機構の整備、拡充、強化ということが要請されておるわけであります。私は、農林省は総合的な食糧庁という認識を持っておりますが、漁民諸君の中で、漁業日本として漁業省あるいは水産省があってしかるべきだという御主張もありますが、農林水産省、そして、その中における水産行政部門を拡充、強化をして、この新しい二百海里時代に対応する強力な施策を展開するように最善を尽くしてまいりたい、このように考えております。
  44. 野坂浩賢

    野坂委員 これで終わらなければなりませんが、一言だけ、三十秒お許しをいただきたいと思うのですが、この間、農林水産委員会の第二班として、私たちは鳥取県の境港を訪れました。自民党の片岡清一君が団長でありまして、そのときにソ連水域との問題あるいは朝鮮民主主義人民共和国の水域との問題に絡んで非常に漁獲高が減少した、そういう状況を踏まえて、北海道その他では当然五百六億にわたる緊急融資もされておるわけですから、そういう脈を含んで緊急融資といいますか、いわゆる近代化資金といいますか、運転資金といいますか、あるいは離職者の問題等含めて、早急に融資対策をお願いしたいというので、自民党から共産党までおいでになりまして、団長から、それはぜひ実現をしなければならぬ、こういうまことにりっぱな御答弁がありまして、水産庁の方にも団から申し入れをしておるはずでございますから、それについてはぜひ善処をしてもらうように大臣なり水産庁にこの際お願いをしておきますので、善処してもらうように農林大臣から御答弁いただければありがたいと思うのです。
  45. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 朝鮮民主主義人民共和国の二百海里宣言に伴いまして、わが国漁船漁業上制約を受けております。それは日朝友好促進議員連盟の皆さんの御努力によって、来年の六月三十日までいままでどおり操業できるわけでございます。ただ、私どもが遺憾に存じておりますのは、その中に五十海里の軍事警戒ラインというものが設定されまして、その中には入れない、こういう状況にございます。その影響の度合い、またイカ釣り漁業は北海道を含めましてことしは全国的に非常に不漁でございます。そういう状況もございますが、関係漁民の影響の度合い等をよく調査、把握をいたしまして、漁業経営安定資金等の低利、長期の資金等の融通等について対処をしてもらいたい、このように考えております。
  46. 野坂浩賢

    野坂委員 ありがとうございました。  終わります。
  47. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 新盛辰雄君。
  48. 新盛辰雄

    ○新盛委員 ただいま提案されました漁業水域に関する暫定措置法の一部を改正する法案の問題に関連をしまして、私の方からは日ソ漁業交渉後の諸問題、水産行政についての若干機構改革を含める諸問題、さらには、ただいま提案されている一部改正による拿捕に伴う処置によって、国際漁船救援会という関係について、さらに減船補償の問題、南太平洋フォーラム諸国への対応策、魚価、流通対策について、大体五十分の間ですけれども、かいつまんで質問をしたいと思います。  まず、日ソ漁業交渉、いわゆる日本外交の側面から見てある意味では非常に成功した、ある意味では失敗をした、こうした面のとらえ方はいろいろございますが、われわれは今日のソ日協定なりあるいは日ソ暫定協定などを見ました場合においても、その後の取り扱いをめぐってきわめて日本の側に不利であるし、内容によっては漁獲量の削減による減船、北方四島周辺における事実としてソ連の規制が及ぼされておるということ、第三に、当初の、漁業を守るという国民世論を背景にしてがんばっていただいたのですけれども、その後は領土の問題に移り変わったという、そうした中におけるあいまいな面が残されておったという面から、結論的に申し上げれば、日ソ漁業暫定協定ソ日漁業暫定協定も、日本にとっては厳しい制約と制限を受けているとわれわれは理解をしているわけであります。     〔山崎(平)委員長代理退席、菅波委員長代理着席〕 その件について、まず大臣の姿勢についてお伺いしたいと思います。  もちろん、外交上の欠陥、これは従来から厳しい二百海里時代を迎えるであろうということは想定はされておりましたし、ソビエトがEC諸国との漁業交渉の際においても、もはやその結論から見て日本の側にきわめて厳しい制約をするであろうことも当時から予想されていたわけであります。そうした面の日ソ漁業交渉に重大なかかわり合いがある諸情報が、事前の適切な調査その他等においてきわめて欠くるところがあったのではないか、そうした面もございますし、これから先の、後ほど問題提起をします南洋水域における諸問題と兼ね合わせて、これからの水産外交の面においてどういうように日本の立場を貫いていかなければならないかという基本的な問題についてお伺いをしておきたいと思います。
  49. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 日ソ漁業暫定協定ソ日漁業暫定協定、これの評価の問題でございますが、これは厳しい客観情勢の中で、特に北方四島の領有権をめぐるソ連側との根本的な問題が解決をされていない、こういう厳しい困難な状況下においてなし得る最善の努力を払った、こう思っておりますし、また各政党も、党派を超えてその事情をごしんしゃくの上で満場一致で御承認をいただいたということに対しまして、私、感謝をいたしておるわけでございます。そういう意味で、満点ではなかったと思いますけれども、とにかくこういう条件の中で最善を尽くしたということが各政党の方々の評価でもあった、そういう御理解を賜ったということを、私、当事者として感謝をいたしておるところでございます。  特に私自身も残念に考えておりますことは、漁獲量の問題でございます。これはソ連も、アメリカ、カナダ、EC、ノルウェーその他の国々から大幅な漁獲量の削減を受けておる、そしてソ連の大漁船団も操業の場を失って、それを北西太平洋の自国の二百海里水域内で稼働せざるを得ない、こういうような背景等もございまして、非常に厳しいものがあったわけでございます。全体の過去の実績に比べまして三十数%の削減を強いられた。また、わが方も、日本の沖合いの水域につきましては三二%程度の削減ということで、お互いにこういう厳しい二百海里時代に対応しての漁獲量の割り当て、つまり余剰配分の原則ということがその基礎になっておるわけであります。  とにかくそういうようなことでございましたけれども、漁獲割り当ての問題につきましては、多数の漁船の休漁あるいは減船というような事態を招かざるを得ない。また、乗組員の皆さんにも下船等の職場の転換もお願いをしなければならない。さらに、加工業者その他の関係者の面に対しても、大変厳しい状況下に立たされたわけでございます。そういう面につきまして、私は、今回の漁獲割り当てというものが非常に厳しいものであったということを痛切に感じております。ただ、この救済措置につきましては、政府としてはこういう厳しい困難な財政状況にございますけれども、私としては最善を尽くしたつもりでございます。  これを総括いたしますと、二百海里時代の厳しさというものを私どもは痛切に身をもって体験をいたしたわけでございますが、これを教訓として、今後、南太平洋フォーラムとの漁業交渉の問題あるいは隣接する諸国との交渉、こういう問題につきましては最善の努力を傾けまして、できるだけその影響を少なくする、関係漁民に与える打撃を少なくするように、最善を尽くしてまいる所存でございます。
  50. 新盛辰雄

    ○新盛委員 その評価のあり方については、また、この後いろいろな問題提起がなされる際に続いて行いたいと思いますが、時間がありませんので先に急ぎます。  この水産行政の問題で、新しい海洋秩序の時代を迎えた、それに即応して現在までの水産行政の体制整備という面においては、これは反省もあればあるいは利点を総括することができる面もあるでしょうが、現実の問題として、水産行政の基本を、国民に対するたん白食糧の安定的な供給と漁業就業者の生活と経営の安定に置かなければならないことは当然であります。そうした面のわが国の重要食糧産業としての位置づけからいけば、ここに水産の面における食糧基本法などという基本的な問題についても考えなければなりませんし、国民の期待にこたえる行政機構という形の中で改革に大胆に着手しなければならないではないか。先ほどの大臣のお答えの中でも農林水産省などという積極的な言葉が出ておるようでありますが、そうした面における機構改革を含めて、この五十三年度予算編成に対する態度として水産庁はどういうふうにお考えになっているのか、また、その基本的な態度についてお伺いしたいと思います。
  51. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 食糧問題を考えます場合におきまして、たん白食糧の五一%以上を魚肉たん白に依存しておるわが国としては、食糧問題の観点から見ましても、水産業の発展、また、これに従事する漁業者の立場、これは非常に大事な役割りを担っておる、私はこう考えております。  なお、二百海里時代を迎えましてわが国漁業政策はどうあるべきかということは、先ほどお話し申し上げたところでありまして、質問のお時間等もございましょうから、これは重ねて申し上げません。  そこで、農林省の中で水産庁の体制を整備、強化する、この問題につきましては、第一点は、漁業外交を強力に推進いたしますために、どうも一国、一国と交渉をやっていくというような、そういう余裕がない場合がございます。同時に、二国、三国と並行して同時交渉をそれぞれやらなければいけない、こういう事情もございまして、漁業外交に当たる審議官等、これを増員をし、その体制を整備いたしたいというのが第一点でございます。  それから第二点は、日本列島周辺の二百海里水域内の漁場の調査及び沿岸漁場の開発、整備、また栽培漁業等の振興、そういう面が非常に大事になってまいりますので、それを専管する部を新設いたしまして体制を整えたい、このように考えております。  なお、今後、水産の科学技術的な研究、開発、こういう問題も重要になってまいりますので、そういう面にも力を入れてまいる考えでございまして、二百海里時代に対応する行政機構の面における水産庁整備、充実ということを中心にいたしまして、来年度予算編成の際には行政機構の問題も当然俎上に上るわけでございますので、いま申し上げたような考え方を基本として対応してまいりたい、このように考えております。
  52. 新盛辰雄

    ○新盛委員 そういう前向きな姿勢でぜひひとつお取り組みをいただきたいと思います。  次に、この一部改正として出ております拿捕に伴う諸問題の取り扱いの中においてでありますが、北海道の業界などからも強い要望があるので、私どもとしても当面この内容がどうであるかという面を十分検討しているわけでありませんが、国際漁船救援会、こういう組織をおつくりになって、そして現在、漁船特殊保険あるいは漁船の損害補償、そうした問題についての設置を促されているのかどうかわかりませんが、この内容についておわかりになっているならばお知らせをいただきたいと思います。
  53. 岡安誠

    岡安政府委員 いまの御質問は、最近の拿捕事件その他の多発によりまして、漁業者が多額の罰金を支払う、非常に困っている、何とか対策はないかという声がございまして、その対策いかんという御質問だと伺いますが、従来、御承知のとおり漁船保険の分野におきます特殊保険といたしまして拿捕保険、それから漁船員、乗組員に対する拿捕関係の保険等がございます。ただ、これは外国との間で結ばれました協定違反するとかわが国のすでに決まっております法令に違反するとかいうこと、そういう場合には拿捕保険の対象にならないということに法律上も定まっております。したがって、たとえばソ連の二百海里内で操業して不幸にして拿捕されたという場合には、この保険の対象にはなりがたいわけでございます。  そこで私どもは、一定の条件のもとではございますが、民間で相寄りまして、たとえば各県にございます漁船保険組合等を通じまして一定額の負担金を納付し、これを中央でプールをする、それで、ケースによりまして、漁船保険組合を通じておのおのの関係者に見舞い金というような形でこれを交付するというような形が仕組めないかということで、現在検討いたしております。そういうような組織が仕組めた場合には、国におきましても中央のプール機関等に対しましてその事務処理に要します費用の一部等につきまして私ども助成をいたしたいということで、現在五十三年度予算において要求をいたしておるところでございます。
  54. 新盛辰雄

    ○新盛委員 時間がありませんので……。  内容の面も少し触れたいと思っているんですが、救済対象となるライン侵犯、言うならば、両国で決められているラインを入ったから拿捕された、しかし担保設定すれば釈放される、操業はめちゃくちゃにして、つかまったら保証金を払えばもう出てくるんだ、そういう式の、国際間のあり方として罰金さえ払えば漁獲量の面においては一定の量を上げたからいいんだとか、そういうふうな仕組みのことが果たしていいのかどうか。そういう面で、こういう国際漁船救援会などというのがあるわけですが、これは言ってみれば、無謀な操業をすることを一面許しているじゃないか、そういうことにならないような国際間の規制というものを考えていくことは、将来の大きな問題だと思うのです。二百海里時代を迎えておりますから、先ほどの庭先で魚をとることになるのかという非常に厳しい条件に追い込まれているときだけに、金さえ払えばいいんだ、ラインを侵犯したらそれはもうそれで金さえ払えば済むんだ、そういう式の形ですべてが拡大をされるということは、私は好ましくないと思います。その面についてお答えいただきたいと思います。
  55. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 新盛さん御指摘のように、協定は相互の間の信頼と誠実な履行によって二国間等の協定が正しく運用されるわけでありまして、そういう観点からいたしますと、この定められた操業の条件で手続等に違反するような行為があってはいけない、私もこの点は関係漁業者の諸君も厳しく冷厳に受けとめて対応してもらいたい、このように考えております。  ソ連漁船わが国の監視船等に臨検、違反として摘発をされた案件もございますが、ソ連の場合におきましては、そのような違反を起こした漁船船長は下船を命ぜられておる、なお払ったところのいわゆる罰金は自分の給料の中から天引きされる、こういう厳しい措置をとっておるようでございます。私は、やはり協定違反というようなものはそういう厳しさをもってお互いに自粛操業をしていかなければいけない、これが基本だと考えております。  ただ、いま民間の漁業団体等で考えておりますのは、違反をすればその罰金は共済制度でもって補てんしてもらうというようなことではなしに、いろいろ彼我の見解が食い違って結論が出ない、必ずしもわが方に違反として非難さるべき条件がない、こういうような場合に、そういう気の毒な事情にある者についての相互の共済と申しますか、救済措置を考えていこう、私はそういうぐあいに聞いておるわけでございまして、違反をしたらどんどんそれでもって罰金も払ってやるのだ、補てんしてやるのだというようなものではないということを伺っておるわけでございまして、十分業界の指導にも当たってまいりたい、こう思っております。
  56. 新盛辰雄

    ○新盛委員 次に、減船補償の問題についてお尋ねしますが、けさのラジオ報道を聞いてみますと、現地の浜の声はきわめて生々しいのです。二百海里で揺れている北海道の稚内だけでも北洋漁船十四隻が減船となり、二百八十名が下船を余儀なくされているという。しかし、この二百八十名の漁船員の再就職はもちろん、退職金なども幾らもらえるのか前途は暗たんたるものである、そして全く途方に暮れているというのが現状であり、船主との話し合いだけに期待を寄せているという。この漁業離職者救済措置の法制化などというものを今度議員立法としてわれわれも考えているわけですが、そういう面に対する基本的な考え方も示していただいていない。現在、関連企業に移ろうとしても、いわゆる職業訓練をして転換をしていくということでも、漁民漁民としてその関連企業の中に働くにしても、水産加工業もすべてこれの影響を受けているという現状で、もうどうにもならない、全く困り果てているという現状をきょう訴えておりました。  そういう立場から、いままで政府がおとりになっている漁業者救済対策等について、六月二十一日閣議了解の中で、二十三業種千二十五隻、乗組員八千二百二十三人、この減船に伴う処置として政府交付金を約七百九十七億円、そしていわゆる共補償として五百四十六億、こういう処置をしたというふうになっています。しかし、外交交渉の結果、漁業許可を消滅をさせて減船をさせたという面においては少なからずこの影響は大きいわけですし、漁業法に基づいて、そうした場合においては当然減船に対する補償を完全に行うべきであるというふうにわれわれは理解をしているわけであります。その面についての対策はどういうふうになっているのか、お聞かせをいただきます。  さらに、この補償のあり方、組み立て方でありますが、第一に、補償をする場合には、生存権やあるいは漁業労働者が働く労働権、そうしたものは憲法で保障されているわけですから、少なくとも漁業許可制というのは営業権に匹敵するようなものですし、生活権に匹敵するようなものでありますから、そういうものを奪われた際にはどういうふうに処置をするのだという一つの考え方、さらに、補償の内容においては、従来ニシン漁業の不振のときに補償しました労務費、いわゆる漁業従事者あるいは労務者に対して、その補償は材料費とかいろいろございますけれども、この与えている基準内容――読んでいる時間がありませんが、ここに一応その指示がしてあります。しかし、前回のように額の面で明確にしていない。どうなるものだろうかと、そうした心配を持っている北洋漁業者がいるわけでありますが、そうした面についてまずお尋ねをしたいと思います。  さらに、この補償を全部やるとすれば、恐らく一兆円を超すことになるだろう。一兆円を超すということになると、国の財政的な面から見ましても大変なことでございまして、そうした面に対して当然事業団体をつくって、それで長期にわたる返済方式をとるとか、そういう幾つかの方法はあるかと思いますが、既存の大日本水産会とか全漁連とかいろいろな大きいメーカーや企業があるわけですけれども、こういうところでは減船になったその配分にすべてが追われていて、現実、浜の声は、もう船に乗ることはできない、私どもはどうなるのだ、金を下さい、あるいはそれで職業転換をも含めてやってみたい。そういうつながりが、国の行政と末端の浜の声とが全く密着していない。ここに今回の減船補償に対する不安が高まっているのではないかと思うのです。そうした面について、いま申し上げている各項にわたってお知らせをいただきたい。その上でまた質問いたします。
  57. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 北洋漁業の漁獲量削限に伴う漁業補償の問題につきましては、当委員会でも私がしばしば申し上げましたように、政府としては、こういう財政困難なときではあるけれども、救済の措置につきましては最善の努力を尽くしますということをお約束申し上げて、努力を重ねてまいったところでございます。  この七百九十七億の救済交付金を含めた救済措置を決定いたしますまでには、各業種別団体等と中央において、またその団体は各地域においてそれぞれ内部で検討もされ、政府との間で、ここまで農林省としてもやってくれるものであればというような線で話し合いがまとまったものでございます。  私は、先ほど漁業権、そののれん料というものをどういうぐあいに考えるかというお話もございましたが、この面につきましても、年間の純益、純所得というものを考慮に入れまして、五年間その分を救済交付金の中で計上する、そういうことまで実はやっておるわけでございます。  なおまた、減船をされました漁船のスクラップ化等につきましても、漁船のスクラップに伴うその収入と簿価との、船価との間の差額につきましては国で補償する、こういう措置も講ずることにいたしておるわけでございます。  なお、乗組員の方で下船、転職を余儀なくされたお気の毒な方に対しましての退職金も今回の救済交付金の中には織り込んでおるわけでございます。  ただ、いま残されております点は、転職を余儀なくされた方々の給付金の問題あるいは年齢の制限の問題、こういう問題につきましても運輸省並びに労働省との間で検討が進められております。たまたま構造不況業種等においても同様な転職者等が相当出る、それに対する給付金等の改善という問題も出てきておるわけでございまして、そういうものとにらみ合わせながら私どもとしてはできるだけのことをいたしたい、こう考えております。  なお、政府がとりました救済措置のほかに、業界の仲間同士で上乗せをしてひとつ救済をしようではないか、こういう動きもあるようでございます。これはどの船に減船の方に手を挙げてもらうかということにつきましてなかなか決まらない、そこで業者同士でそれに上乗せをしてとにかくやめていただく方を選抜する、こういう必要があったようでございます。  そこで、政府の救済交付金並びに業者同士でやります救済金につきましても税法上の問題について御相談がございました。これを民間のものも含めて一時所得といたしまして、従来二年の間にそれを新しい投資、設備等に向けない場合には税法上の恩典がないことになっておりましたが、現在のような経済状況等も勘案いたしまして、二年を四カ年に延長するという措置も講ずることにいたしまして、きょう閣議でそれを決定いたしまして、近く政令が公布されることとなっております。
  58. 新盛辰雄

    ○新盛委員 減船の補償措置、いわゆる救済資金の措置でいまお答えしていただきました。支払い方法にはいろいろあると思いますけれども、労務費の問題で、なぜ前のニシン不漁の際と比較して明示されないのか、現地の方ではこうした面をきわめて不満に思っているわけです。業種ごとに積算の内容に相違が出てくることは当然でしょうが、そうした賃金の支払いが労使の話し合いによって決まる、そういうような面もいろいろあるのでしょうけれども、これは行政措置として、従来もそうしていたわけですから、明確に額を示すべきではないか。その面について長官のお答えをいただきます。
  59. 岡安誠

    岡安政府委員 いま大臣からお答えいたしましたとおり、今回千二十五隻に及びます減船をいたしますが、それに関連いたしまして、救済費交付金として交付いたします金の中に労務費関係、いわば休業いたしておりました当時の労務費関係及び退職金相当額等が含まれているのでございます。  この内容につきましては、私どもは一応標準的な経営を想定いたしまして、そこで、給与につきましては、準備期間については固定給を計上する、そから漁期に当たる期間につきましては固定給のほかに歩合給の一部を織り込むというようなこと、退職金等につきましては、季節操業の業種につきましては固定給と歩合給を加えた額の二カ月分、それから周年操業の業種につきましては固定給の六カ月分を織り込んでいるというような基準につきましては、すでにそれぞれ交付対象の漁業者にも通知いたしますと同時に、全日海関係の方々にもお知らせしております。  そこで、いまのお話は、具体的にどれだけの金額が入っておるかをなぜ明示しないのかという御質問でございます。特に、前例としまして、ニシン等の減船に当たってそれを明らかにしたではないかという御質問でございますが、ニシンの減船をした場合には金額等を明らかにいたしましたけれども、これは単発の業種といいますか、業種が複雑でないわけでございますので、私ども明らかにした例がございますが、今回のように相当広範囲にわたりまして減船の対象業種が及んでいるというようなこともございますので、この場合、先例に従って金額を明らかにすることは問題がある。むしろ労務費はもっぱら労使間の話し合いで決まるというのが最も理想的な形であるというふうに考えまして、今回は基準を示すにとどめ、金額等は明らかにしないということに決めているわけでございます。
  60. 新盛辰雄

    ○新盛委員 それは労使の交渉で決まることなんでしょうけれども昭和五十二年八月十七日付五二水海第四五一〇号のこの交付金交付要綱及び要領ですね、これを資料としてぜひ出していただけませんか。金はいろいろ事情があるとおっしゃいますけれども、これは現実に漁業従事者、いわゆる労務者が一番困っている内容について、労使の話し合いをするにしても入り口論議でどうにもならない、こうなっているわけですから、ぜひ資料を要求したいと思います。よろしいですか。
  61. 岡安誠

    岡安政府委員 いまの資料を提出いたしたいと思っております。
  62. 新盛辰雄

    ○新盛委員 時間をさらに十分間いただきましたので、続いてそれでは南太平洋フォーラム諸国の対応策についてお伺いしたいと思います。  御承知のように、先ほども大臣の方からお答えがあったわけでありますが、いま日米あるいはカナダ、日ソ、そうした第二ラウンドの交渉段階に入っているわけであります。そうした中において、南方諸国の対応策に事欠けているのではないか。私は鹿児島ですから、特にカツオ・マグロの問題を中心にする枕崎あるいは串木野の皆さんは非常に不安に思っておられることです。日ソ漁業交渉が難産に次ぐ難産で、最終的には、先ほども大臣の方からお答えがありましたが、これからの各国の外交姿勢というのは、その戦略目標は魚にあり、言うならば、魚を武器にして農畜産物の輸出増大を迫ってくるだろうということは容易に想定できます。そうした面の南方水域におけるいわゆる南太平洋フォーラム諸国等における今日の動向はいまどうなっているのか。そうした面について関係機関の調査を求めましても、なかなか答えが出ません。ちなみに、いま私どもの方でカツオ・マグロ、まき網、トロールあるいはイカ釣りなど、フォーラム諸国海域における漁獲実績、こうしたものをとってみますと、五十一年度で約二十五万四千トン、そういうような状況であります。そして、オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、西サモア、ナウル、フィジー、トンガ、こうしたところまで矢継ぎ早に二百海里を宣言してきておりますし、すでに法案整備を図っておるというふうに言われております。さらに、このフォーラム以外の諸国では、ミクロネシアなどはもうすでに二百海里の新法案をつくるという状況であります。  こういうような状況の中にありますだけに、これから南方洋上における漁獲高というのはそれこそ大変な打撃を受けるであろう、そうしたことに対して政府として総合外交のための調整機関を内閣の責任においてお持ちになる意思があるのか。あるいは今日まで二百海里の宣言を各国が行ってきて、一時総退却をせざるを得ないという状況も生まれてくるのじゃないか。漁業者及び漁船乗組員に対する救済措置ももちろんのことでありますが、現実、ニュージーランドのあたりでも入漁料を払ってやっているわけでありますから、そういう面に対する補償措置についてどのようにお考えになっているか、お伺いしたい。  そして、わが国のカツオ漁船の好漁場でありますこうしたところで、現在すでにカツオ一本釣りにしても七千百三十トン、マグロにしても三万トンは優にとっていたわけですし、まき網にしても四千七百トンはこうしたミクロネシアの周辺でもとっていたという実績があります。それだけに、先ほど申しましたフォーラム諸国の二十五万四千三百トンというのは、これは大変な漁獲量でもございますし、これから南の方に向かってどのように日本漁業外交をお進めになるのか、お聞かせをいただきたいと思います。  さらに、高度回遊魚、これはカツオ・マグロでありますが、この定義づけ、これは今回の海洋法会議でも、その方向は沿岸国の主権的管轄権が及ばないとなっているようでありますが、これはどうなのか。そしてまた、これからのこうした沿岸国に対する日本の立場、その管轄権、こうしたことについてあるいは協定を結ぶとかいろいろな取引をしなければならないわけでありますが、そうした面に対する御見解をお伺いしたい。  以上です。
  63. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ミクロネシア諸島を含めた南太平洋海域の漁場は、新盛さん御指摘のように、わが国海洋漁業にとりましても非常に重要な漁場でございます。先般、南太平洋フォーラム諸国が会合を持ちまして、明年の三月三十一日までにフォーラム諸国は二百海里水域を設定するということが話し合いをされたようでございます。ニュージーランドはいち早く十月一日から二百海里宣言をいたしておりますが、当面その実施はこれを見送る、しかし底魚等に対する必要最小限度の禁漁区はこれを設定をする。そして、今年中に関係国、漁業の実績を持つ関係国との間に協定を締結する用意がある、こういうことを言っておるわけでございます。いずれ豪州もあるいはニュージーランドと同様にやるでありましょうし、パプアニューギニア、ソロモンその他も同様の歩調でやってまいると考えておりますが、わが国といたしましては重要な漁場でもあり、今日まで長年にわたりまして技術援助あるいは経済協力、いろいろな面で友好関係を発展させるように努力をいたしてきておるところでございます。  ただ、ニュージーランドにおきましてはマルドーン首相の声明、今回はまたトルボーイズ副総理がお見えになりまして、日本とニュージーランドの貿易関係を中心に話し合いを行っておるところでございます。私も三回にわたって会談をし、きょうはまた福田総理と最終的な話し合いをする、こういうことに相なっておりますが、私ども政府方針といたしましては漁業問題は漁業問題、農畜産物の貿易関係は貿易関係、これは切り離して話し合いによって解決すべきものだ、こういう基本的な方針でこれに臨んでおるところでございます。たとえば、具体的にニュージーランドから牛肉の輸入量を下期五万トンの割り当てをすべきである、あるいはまたバターあるいは脱脂粉乳等を大幅に日本が輸入すべきである、こういう希望が表明をされております。おりますが、新盛先生御承知のように、わが国の酪農畜産は非常に農業の中でも大事な分野でございます。三年前のあの深刻な畜産危機をようやく乗り越えて、そして日本の畜産業は今日どうにか安定的な成長を遂げてきておるわけでございます。したがって、病後のこの日本の畜産というものは外圧に遭った場合に非常に抵抗力が弱い。私は、やはり日本の畜産というものは日本農業の中でも大事な分野でございますから、これを育成し、伸ばしていきたい。そのために国会で御決定をいただいておりますところの畜安法、それに基づくところの畜産振興事業団の一元輸入、価格支持政策、こういうものもございます。また、乳製品に対しましても、安定帯価格を上回って暴騰し、または暴騰するおそれのある場合でないと外国から輸入ができないという法律制度もあるわけでございます。したがいまして、そういうことを放てきして、あるいは法律改正まで言って――これは国会の御承認を得ることはできないと思っておりますが、そういう日本法律制度を変えても輸入量を拡大すべきだ、こういう要求、そして、これを二百海里問題に絡めてくるというようなことでは、今後のニュージーランド、日本の友好関係と経済的な発展に必ずしもプラスになるものではない。漁業問題は漁業問題として、日本としてはあらゆる御協力を申し上げましょう、そして畜産等の肉や酪農品の輸入についてはやはり日本制度、仕組みというものを理解を願って、その範囲内で国内の需給の関係をにらみ合わせながら日本としても努力をいたします。こういうことで対応いたしておるところでございます。  豪州に対しましても、漁業漁業、その他の農畜産物等の貿易問題は貿易問題、こういう形で対処してまいりたいし、また今後豪州等に対しましては、新盛さんも御承知と思うのでありますが、向こうが今後は合弁事業を中心として日豪の漁業関係を組み立てていきたい、こういう考え方もあるようでございますから、そういう点もよく要望を検討いたしまして遺憾なく対処をしてまいりたい。  いずれにしても、大使館、外務省を通じまして絶えず接触もし、情報もとっておりますし、農林省の駐在官、アタッシェ等もおりまして絶えず情報の交換や接触もしておる、いろいろな面で今後緊密にやってまいる考えでございます。
  64. 新盛辰雄

    ○新盛委員 力強い御回答をいただいたのですが、漁業漁業、農畜産物貿易は貿易、こういうことで、取引はしないのだ、これは別個の問題であり、これからの漁業外交の面においても、そうしたことにおいては政府としても責任を持ってやっていきたいということでございますので、ぜひひとつ漁業問題として、いま二百海里時代の中における日本の位置はきわめて厳しくなっているし、漁獲量が年々減っていくだろう。それに想定される入漁料やあるいはそれに伴う補償、そうしたようなことについてはぜひともこれはこれからの問題として、漁業者やあるいは従業員たちが身銭を切らなければどうにもならないということにならないように、これは南方水域におけるそうしたカツオ・マグロなどをとっていく場合にもそうでありますが、これからの対処についてぜひとも具体的な施策を明らかにしていただきたいと思います。まだ、いまだに南方水域におけるこれからの取り扱いの問題については不十分でありますし、早急に情報網をまんべんなく尽くしてぜひとも早急な、後手後手にならない対策をお立ていただきますように要望をしておきます。  時間をもらいましたが、あと七分くらいしかございませんので、次の問題に入ります。  魚価の問題、流通関係についてでございますが、経済企画庁来ていらっしゃるのですか。――経済企画庁にさきに設置されました魚価対策班、これによってあの大変な値上がりを見せましたことしの三月から六月、狂乱魚価というまでに言われておったわけですが、この高値安定の構造のまま鎮静化したようであります。しかし、再度こうした狂乱魚価が再来をするという、そのことに対してもう国民の中に非常に不安が高まっています。また、魚価対策班をおつくりになって一生懸命やっておられるようでありますが、その面における今後の見通し、そしてまた水産物価格高騰のそういう値上がりを見せた原因は何であったか。魚隠しや魚転がしやありとあらゆる、従来石油ショックの際もそうでありましたが、今回魚の場合もそんな問題が発生をいたしたことは非常に遺憾であります。その面に対する魚価対策のこれまでの経過並びにいまから先どのように変貌し、また安定をしていくのか、その面についてお聞かせをいただきます。
  65. 柳井昭司

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  五十一年の夏以降、アジ、サンマ等の多獲大衆魚の不漁に加えまして、五十二年に入りまして日ソ漁業交渉の難航等によりまして先行き不安というようなことからいたしまして、従来上昇傾向にありました魚価が四月以降異常に高騰する、こういう情勢にあったわけでございます。このような情勢にかんがみまして、政府といたしましては、五月の十三日に物価担当官会議を開催いたしまして、当面の物価対策の重要な柱の一つといたしまして魚価問題を取り上げ、主要魚種の販売、在庫等の実情調査あるいは在庫の放出、値上げの自粛、取引のあっせん、輸入の拡大というような諸対策を講じてきたわけでございます。  それとともに、経済企画庁におきましても、これらの対策の一環といたしまして、十分な調査体制をつくる必要があるということで、魚価対策班等も設置いたしまして、水揚げ量とかあるいは入荷量、価格の動向というようなものの把握やあるいは関係業界等からの事情聴取、また水産庁とも協力いたしまして販売、在庫状況等の実地調査を行ってきたわけでございます。  今回のこの異常高騰につきまして考えますれば、やはり今春来の魚価高というものは、いま申し上げましたような多獲性魚の不漁とかあるいは日ソ漁業交渉の再度にわたる中断、こういうことによります供給の減少、それから先行き不安等、需給事情がやはり大幅に変化したものであるというふうに考えられますとともに、私たちで実施いたしましたそういう調査からいたしまして、的に需給関係を撹乱するような過大な在庫の保有とかあるいは転がしというような事実は認められなかったわけでございまして、このようないろいろの努力とともに、五月末に日ソ交渉が妥結いたしました。そして、供給量の回復、先行き不安の緩和、こういうようなことからいたしまして、魚価も六月以降おおむね、一部の魚種を除きまして鎮静化してきておるわけでございます。  また最近におきまして、一部の魚種におきまして、昨年の不漁を下回るような供給量の減少というようなことがございまして、若干高くなっておる。ただし、塩干物につきましては、八月、九月と前月比で減少しておる、こういうふうな状況にあるわけでございます。  今後の水産物の需給の見通しということでございますが、これにつきましては何分にも漁業交渉等にかかわる問題でもございまして、その数量を申し上げることはなかなかむずかしいのではないかというふうに考えるわけでございますが、いずれにいたしましても、二百海里の問題の影響というものはますます厳しいものというふうに考えられるわけでございます。  そのような観点から、今後の水産物の供給の確保ということがまず何よりも重要ではないかというふうに考えておりまして、漁業外交等を強力に推進していただきまして、その漁獲量の実績を確保していくということやあるいは沿岸漁業の振興等によりまして国内資源の開発を行っていく、さらには、いわゆる水産加工の面におきまして歩どまりを向上するとか、あるいは多獲性大衆魚を食卓に供するような普及を行う、こういうようなこと等、まず供給量の確保が重要であると思うわけでございますが、今後の魚価の高騰というようなことにつきましては、魚価班も設置されてございますので、水揚げ量の動向とかあるいは価格の動向、そういうようなものを十分注視してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  66. 新盛辰雄

    ○新盛委員 では、最後に資料提出をお願いをしておきます。  漁協系統十四団体あるいは業種別の十四団体で構成をしております全国輸入対策協議会、これが昭和五十二年八月に「水産物の秩序ある輸入対策に関する要望書」を私どものところにも持ってきました。これはこの狂乱魚価を鎮静させる一環としてでありますが、この輸入割り当て制度、IQ物資、この水産物の輸入の促進策についてどのように取り扱っているのか、また品目ごとに輸入数   価格、輸入業者、輸入物の国内流通ルートなど、そうしたものを明確にすべきであると思っているのですが、ぜひひとつこの面の資料の提出をお願い申し上げて、質問を終わります。
  67. 岡安誠

    岡安政府委員 調査の期間等もございますと思いますが、できるだけ整えて提出いたしたいと思います。
  68. 菅波茂

    菅波委員長代理 岡田利春君。
  69. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 初めに農林大臣にお伺いいたしたいと思うのですが、実はきのう、日本時間ではゆうべになりますけれどもソ連のノーボスチ通信のカチューラ評議員が論文を発表した。この論文によりますと、来年度の漁獲の割り当ての量につきましても今年度と全く同じである。したがって、この論文の示すところによれば、来年度の漁獲量は八十万トン台、まあ八十四万トン程度、漁場の規制についても当然ことしと同じ方向で行く、こういうような論文が実は発表されておるわけです。前回大臣は、大体通年百万トンベースを確保した、こういう報告を国会になされたわけですが、こういう状況をどう一体判断をされておるのか。  あるいはまたサケ・マスについては漁業協力協定が結ばれるわけですが、特に現在行われておるアンカレジのアメリカ、カナダとのサケ・マスの問題については、公海上の操業は禁止をする、こういう非常に厳しい態度であることは御承知のとおりであります。あるいはまた今年度の海洋法会議において、ソ連の発言は、公海上のサケ・マスの漁業を禁止をする、こういう積極的な発言が行われておるわけであります。一方、海洋法会議の非公式単一草案によれば、公海上でサケ・マスを漁獲する場合においても、その国の経済に混乱を与えることを最小限度にとどめなければならない、こういう意味のことが草案に実は盛られておるわけです。したがって、これらと関連をしてこれからのサケ・マスの問題については非常に厳しい状況が続いていくだろう、こう判断せざるを得ないわけです。  したがって、これらの報道に関して大臣の心境と、これから来月十一日ですか、漁業交渉を始められるわけですが、これに臨む政府としての姿勢について、この機会に承っておきたいと思うのです。
  70. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ノーボスチ通信が漁獲量の問題で一九七八年の見通しといいますか、そういうものを報道をしておるということも私、承知をいたしておりますが、しかし、この交渉は十一月の十日ごろから始まる日ソ間の合意に基づくクォータの交渉、さらに日ソ漁業協力協定、この交渉にかかっておるわけでございます。機械的に今年度の六月から十二月までのわが方に対する許容漁獲最、これを月割りで算術計算をいたしましてこれぐらいになるだろうとか、いろいろ憶測等もあるようでございますけれども、御承知のように、六月以降の対象魚種と一月-六月の対象魚種とは、魚種も違う面もございますし、組成も違う。また、その期間における漁業状況、そういうものも違うわけでございまして、これは各魚種別に、また時期別に具体的な交渉が行われる。さらにまた、操業海域の問題がこのクォータの問題には非常に重要な関連があるわけでございます。こういう問題でわが方としてはぜひソ側の理解も求めて、操業海域についての改善もわが方としては要請をしたい。また、これは日本の沿岸、沖合いにおけるソ連漁船の操業のクォータ並びに操業海域の問題とも微妙に絡んでくるわけでございますから、相互の一九七八年の操業海域の問題やあるいは漁獲量の問題、これは並行して十一月交渉でやってまいる。私どもは今年度の厳しい漁獲割り当てというものが業界に対し、関係漁民に対し、深刻な打撃を与えたことを踏まえまして、来年度のこれらの問題の改善、打開につきましては全力を尽くして努力をいたしたい、このように考えております。  なお、サケ・マスの問題は、これは御承知のように、アメリカもカナダもそしてソ連も母川主義、遡河性の魚種につきましては母なる川という主張をやっておりますことはもう御承知のところでございます。私は、現在行われております日米加三国の漁業交渉、これは何といってもサケ・マスが中心の課題になっております。この交渉に対しましては、農林省としてもあらゆるデータその他資料を整えまして、米加の考えとの間に円満な調整、妥結を見るようにいたしたいということで、いま努力をいたしておるところでございます。そのことがまた対ソ交渉におけるサケ・マスの問題にも微妙な影響を持つものと私考えておりまして、日米加三国のサケ・マス交渉、これに全力投球をしたいと、このように考えておるところでございます。
  71. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 サケ・マスに関する大臣の認識は全くそのとおりだと思うわけです。したがって、私どもも現在の日米加漁業交渉に重大な関心を払っておりますので、せっかくの努力を期待いたしたいと思います。  同時にまた、いま触れられた問題点で、私は前からソ日暫定協定、さらにまた長期協定、これがへたをすると再びタイムリミットで無協定状況に入る可能性なしとしない、こういう点で指摘をしておいたわけですが、残念ながらやはり十一月の十日から交渉が始まるということは、今日の論文発表の状況からいっても、タイムリミットに立った上でこれからの交渉をせざるを得ない状況に入っておる、こういう厳しい認識をしなければならないのではないか、こう思うわけであります。そういう意味で、約五十日間、五十一日間あるわけですが、この点、無協約情勢の中で出漁ができなくなる、こういうことのないように、対ソ交渉に対してはせっかくの努力をこの機会に強く要望いたしておきたいと思います。  本題の方に入りますけれども、初めに六月十八日以来今日まで百八件の九千九百十九万一千円の罰金徴収ということがソ連三百海里海域で起きたわけであります。このような相当程度の件数、そしてまた罰金の徴収になった理由は、一体水産庁としてどのように理解をしておるのか、どう受けとめておるのか、承っておきたいと思います。
  72. 岡安誠

    岡安政府委員 いま先生の御指摘ソ連水域ソ連二百海里水域内で拿捕された漁船の数、最近集計いたしますと百二十三件ということで一億円を超えるような金額になっているわけでございます。  なぜこういう大量の漁船拿捕されたかということは、まず一つには、わが国の出漁漁船が非常に多いということもございますが、日ソ双方とも最初の経験でございまして、お互い慣習の違い、それからふなれ等が重なりまして要らざるトラブルが起きた結果であろうというふうに思っております。私どもは、残念ながらこういう経験を経たわけでございますので、できるだけソ連側と数多く接触をいたしましてお互いの誤解を解き、整々と漁労ができるように努力をいたしておるつもりでございまして、すでにナホトカ並びに先般モスクワにおきまして二回にわたり専門家会議を催し、私どもの不審と思われる点をただすと同時に、おかしいものは直してもらうという交渉をいたしておるわけでございます。  今後ともできるだけそういうトラブルの発生を未然に防止するように努力をしてまいりたい、かように考えております。
  73. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 もちろん両国の初めての経験、したがって徹底の不十分ということもその理由に挙げられることは当然だろうと思います。ただ、私は水産庁で、たとえば当初、係官が説明をした場合に、操業日誌のつけ方の説明では、つづり方の変更の取り決めはないから書き損じた場合には別の用紙を使って、ほかは焼却しなさい、こういう指導が実は行われた事実があるわけです。その後八月十五日から六日間、ナホトカで日ソ専門家会議が行われて、そして取り締まり基準についてさらに改めて五点にわたって説明が行われておる、こういう経過もあるわけです。しかし、それ以降も違反船の立入検査また罰金の徴収は依然として続いておる、こういう状態を考えます場合に、一体これは漁船主あるいは船長の責任にすべて帰するものかどうか。いわゆる指導徹底の不十分さ、こういうもの、あるいはもちろん両国相互で十分理解がいかなかったという理由もあるでしょうけれども、そういう徹底が不十分だという面に帰する件数が非常に多いのではないか、こう私は指摘せざるを得ないわけですが、この点についてはいかがですか。
  74. 岡安誠

    岡安政府委員 百二十三件に及びます違反事項の内容を分析してみますと、先生指摘のとおり操業日誌に関します案件が非常に多いことは事実でございます。この点につきましては、わが国漁船は従来漁獲量の規制を受けた経験が乏しいものですから、操業日誌のつけ方一つにいたしましても必ずしも厳密ではなかった。ところが、ソ連邦の漁船につきましては、従来から漁獲量等につきましてはきわめて正確なチェックをいたした経験がありまして、操業日誌を正確につけていたというような経験の違いがございまして、たとえばとじひもの末端をどういうふうに処理するかという点、これは全くわれわれの想像とは違った処理の仕方をしていたということがございます。そういう点につきましてはいままで全く合意がなかったことでございますので、私どもの指導が徹底するまでの間は、操業日誌のとじひもの処理については違反として問わないというようなことを約束いたしまして、私ども、その間各地におきまして講習会等を催し、趣旨の徹底に努めるということはございます。ただ、それ以外のことにつきましてもお互いにふなれであるということはたくさんあったというふうに思います。たとえば停船命令無視といたしまして高額の罰金を科された例も、やはり相手方の停船命令についての信号等を注意して聞いていなかったということがあるのではないかと思われる節もございますし、また無許可操業等もございますが、これは非常に不注意であったということだと思います。  ただ、私どもは、たとえば魚の分類、キチジとメヌケの取り扱い等につきましては、当然主張すべきものは主張し、直してもらいたいということで交渉いたしておりますし、またビルジ排水等の違反につきましても、根拠等が明らかでないということで抗議その他をいたしておるわけでございます。  そういうような懸案の問題もなお残っておりますので、これはできるだけ早く解決をいたしまして、お互いに円滑に操業ができるように一日も早くしたいものだというように考えております。
  75. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そうしますと、ソ連側罰金徴収の中で不当な件数は一体何件あると考えられていますか。
  76. 岡安誠

    岡安政府委員 不当と言われますといろいろ問題がございますけれども、いままでの例で日本側抗議をいたしまして、その結果罰金を徴収しないことになったもの、または罰金を返してもらったもの、これは二件ございます。  それ以外、不当として分類するのは適当ではございませんが、たとえばなお協議を要するもの、私どもがよくわからないということで抗議をいたしまして、その釈明を求めて協議中であるというようなものが、たとえばビルジ排水が協定違反であるのはどういう理由であるかとか、そういうのが三件ございますし、キチジが小メヌケというものと一緒であるかどうかというような問題とか、それから食糧として持参したハタハタの処理に関する件とか、その他協議をして決めなければならない件数がなお相当残っているわけでございます。
  77. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 北海道の水産部では、もちろんこの件数はふえていると思いますけれども、四十六件、五千万に及んでいるわけです。そのうち不当罰金徴収件数は五件である、こう水産部長が明確に道議会で発表いたしておるわけです。したがって、罰金返還ソ連に交渉するということも実は言い切っておるわけであります。もちろんいま長官が述べられた二件というのは、洋上会談で罰金返還されたケースだろうと私は思うのです。いま二、三の問題点について水産庁長官も述べられましたけれども、しかし道議会で五件は不当徴収だ、こう言い切っているわけですから、この点、水産庁と、特に過半数の件数を持つ北海道の水産部長の態度といいますか、どうもそれがぴしっと合わない。これは非常に明快に道議会で答弁されておる事実もありますから、水産庁にも当然上がってきているものだと思いますし、この交渉は政府で行わなければならない問題でありますから、こういう点についてはいかがに思いますか。
  78. 岡安誠

    岡安政府委員 いま北海道の水産部長が、北海道の漁船に係る拿捕のうち五件が不当であるという発言があったと伺ったわけでございますが、私どもその内容を承知いたしておりません。これは直ちに北海道庁の意見を聴取いたしまして、不当というのは問題がございますが、問題として処理すべきものは当然御指摘のとおり外交ルートによって処理すべきものと考えておりますので、私どもの責任において解決いたしたい、かように考えております。
  79. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この問題は先ほど私申し上げたように、わが国違反に問われた漁船の報告だけではいずれに非があるのか的確につかめない。そこで、どうしても必要なことは、違反に問われた際における案件処理についての調書、その写しを確実に漁船に渡してもらう、こういうことを励行してもらいませんと、どうもその辺の判定というものが明確にならない。したがって、これを相手国に交渉するにいたしましても、こういう調書にこういうことが記載されておるが、これは条件並びに取り扱い等を決めたものと違うではないか、こういうことも言えるわけでございますから、私は先ほど来申し上げますように、調書を確実にわが方に渡してもらうように、これを強く要請をいたしておりますし、向こうも前向きで善処しよう、こう言っておりますから、これらの問題も逐次改善されるものと考えております。
  80. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私も、わが国漁民の場合、国際漁業条約に対する認識というものにまだ非常に甘さがあるのではないか。いままでも、たとえばアメリカでも沿海州でもカムチャツカでも、領海侵犯ほどの事件も実は統計上あるわけであります。そういう意味では、やはり二百海里時代というこの新しい時代に対応して、思い切った認識の転換を、講習会をやるなりして徹底をする必要がまずあるだろう。特に漁期等の関係も考慮して、これらを政府はまず徹底して行わなければいかぬのではないか。それに先ほど大臣も野坂委員に答弁をいたしておりましたけれども、もちろん調書の問題やあるいは通訳官をできるだけ乗せるとか、そういうことも対策でありましょう。  いずれにしても、こういう状態が続くということは、二百海里時代の国際漁業情勢から考えて決してプラスにはならない案件だ、こう私は思うわけです。したがって、これらに対する政府の、事故を未然に防ぐ決意のほどをこの機会に承っておきたいと思うのです。
  81. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この点は御指摘のとおり非常に大事な問題でございます。したがいまして、日ソの間また日米の間、その当局間におきまして取り締まり等に関する意思の疎通、また行き違い等のないように、改善の必要のある点は相互に改善をしていく、こういう関係国との当局間の話し合いというものを今後も続けていく必要がある、こう考えておりますし、また関係漁民に対しましては、御指摘のように、二百海里時代の秩序ある操業の確保ということで、関係漁民に、取り決められた規制の措置あるいはその他の手続上の問題等につきまして今後とも十分指導を徹底をいたしまして、二百海里時代の厳しさ、これに対応する漁民の心構え、そういうものを今後ともさらに指導を徹底するように努力をしてまいりたいと考えております。
  82. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 先ほど同僚委員の質問に対しても、今回の日本漁船罰金救済対策について大臣は触れられて述べられたわけです。長官も述べられておりますし、また九月二十二日の参議院の農林水産委員会でも、これらについては検討していく、互助機関というものをつくっていきたい、ただし、これは関係漁業者による機関である、こういう意見も実は述べられているわけです。  そうしますと、いまの前段の質問との関連から言って、たとえば違反件数を見ますと、わが国漁業違反に該当する案件も、少ないわけですけれども、あります。また、領海侵犯等の問題もございますので、一概に言えない面はこの内容を見ると当然わかるわけであります。ただしかし、やはり過渡的なこととして、たとえば日誌の記載の問題は水産庁説明会そのものも違っておったわけですね。たとえば日誌のつづり方は何も協定してないのだから、これは別の用紙に書きか見て結構です。他のものは焼きなさい、こういって説明しているわけですから、そういう不十分さもあるわけですね。したがって、大臣は先ほど一応の考え方を述べられたのですけれども、過渡的な、そういう意思の疎通がなかなかできなかった、そういう中での説明をしたけれども説明をしたことが違反に結びついた、こういうような事実もあるわけですから、こういう点についてはやはりある程度考えざるを得ないのではないかという意見を私は持っているわけです。先ほどの大臣の、罰金救済対策の互助機関などをつくる方向でやりたい、また政府もこれに対して若干考えて来年度予算を要求している、こういう観点について整理をする必要があるのではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  83. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 事故の態様、これにはいろいろのケースがあるであろうと思います。水産庁の指導が万全でなかったという点もあるいはあるかもしれません。しかし、その後ナホトカに係官を派遣したり、またはモスクワでの交渉を通じて国情の違い、また相互の考え方の違い、そういうものを調整をし、今後そういうことが再びないようにということで努力をいたしておりますが、違反を問われて罰金を納めた者に対する措置ということにつきましては、先ほど長官からも御説明申し上げたように、業界の中でも、関係業界で自主的に互助制度といいますか、そういうものをつくろうという動きがございます。これに対しましては、政府としても事務費の一部等を援助する、協力するという考えも持っておりまして、来年度予算に若干の所要の予算要求もいたしておるところでございます。
  84. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 海上保安庁が参っておると思うのですが、わが国の暫定水域法実施以来の取り締まりの体制ですね、これは領海以外は初めてのケースであります。さらにまた、外国船の立入検査、問題はこの立入検査で四件の件数が保証金の徴収になって報告されておるわけであります。立入件数はさらに多いのではないかと思うのですが、その状況、さらにまた、この処分について今度新しく法改正が出ているわけですが、保証書をとる、そして保証金が支払われる。四件目についてはまだ時間があるようでありますから保証金は払われておらない、こういう報告になっておりますけれども、こういう点についての説明をひとつお願いをいたしたいと思うのです。特に取り締まり上これから考えなければならない点、特に対策を検討しなければならぬ問題点があれば、この機会にお聞かせ願いたいと思うのです。
  85. 向井清

    ○向井政府委員 お答え申し上げます。  海上保安庁といたしましては、船艇、航空機の整備状況は、ただいま現在のところ三百十隻の船艇、三十五機の航空機を保有しているわけでございますが、これを効率的に使用いたしまして、各般の海上保安業務を運営しておるということでございます。  いまお話ございました漁業水域関係の取り締まり業務というものが今回新しく大幅に加わってまいったわけでございますが、海上保安庁といたしましては外国漁船の操業実態というものを十分調査勘案いたし、効率的な取り締まりを行うという趣旨にのっとりまして、先ほど申しました現有勢力の重点配備ということを心がけまして、それぞれの所管の管区のみならず、他の管区からも極力応援派遣体制をとるという体制をとって、警備体制の強化に当たっております。たとえて申しますれば、北方海域、これは房総半島沖合いから北へかけての広大な海域でございますが、この中での北海道南岸海域等におきましては特に重点的に巡視船艇の配備を行っており、北海道東南海域におきましては常時五、六隻の巡視船を配備いたしております。  現在のところは、そういうような警備体制のもとにほぼ円滑な業務運営を行っておるわけでございますが、今後の問題としては、やはり体制の整備をより一層図っていかなければならないというふうに考えております。  それから、取り締まり状況でございますが、ソ連漁船関係の取り締まり状況について申し上げますと、八月十六日からソ連漁船に対します取り締まりが行われたわけでございますが、現実にソ連漁船わが国漁業水域にあらわれましたのが九月十八日でございまして、それから現在までの状況を申し上げますと、わが方の巡視船並びに航空機で視認いたしましたソ連漁船の数が約六百七十隻でございますが、このうち立入検査を行いましたのが二十隻でございます。このうち、さらに検挙いたしましたのが、先ほどお話ございました四件ということでございまして、内容的に申し上げますと、操業日誌の一部不記載ということでございます。それぞれにつきまして、先ほどお話ございました担保全五十万円というものを徴収しております。うち三件についてはすでに支払い済みでございますが、一件につきましては現在保証書の形でもって残っておる。これらの検挙いたしました案件につきましては、さらに十一月一日以降に出頭口を設定いたしまして呼び出しをかけておるという状況でございます。  海上保安庁といたしましては、先ほど申し上げましたように、現在のところ総力を挙げて重点的な配備を行い、現在のところ取り締まり体制の万全を期しておる次第でございますが、今後の問題についてはさらにいろいろ検討いたしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  86. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 ソ連の場合、四件、担保全五十万、日本の場合には、これは七十八件報告されておるデータで、六千六百六十九万三千円ですか、こういう金額になって、一隻当たりに直しますと八十五万五千円、もちろんこれは七万から三百八十万までもあるわけです。したがって、相互主義の原則から言って、法的には一千万まで、こうなっておるわけですから、いままでのソ連の日誌記載の違反案件に対する罰金、それからソ連船わが国の立入検査による操業日誌記載違反、これに対する罰金五千万円、こういう点については大体相互的に妥当だと思われておるのかどうか。わが国は一体どういう基準取締官がこの最終判定を下しているのか、その根拠は何か、説明願いたいと思うのです。
  87. 岡安誠

    岡安政府委員 まず、現在のような罰金を科されている状況、または徴収している状況が妥当であるかどうかという御質問でございますが、ちょっと説明不足なので資料について説明を付加させていただきますと、わが国漁船拿捕された場合の原因の分類に際しまして、操業日誌関係として分類してございますのは、操業日誌関係だけで拿捕され、罰金を科されているものではございません。それ以外にも違反事実ありといたしまして罰金を科せられているものも、主たる違反事実が操業日誌であるということでそういう整理をされておりますので、単純に一件当たりの金額の多寡をもって論ずるわけにはまいらないというふうに思います。  それから、現にどういうふうに運用されているかは保安庁の方からお答えがあると思いますけれども、現在御審議いただいております改正法律による担保金につきましては、先ほど御説明いたしましたとおり、態様等によりまして、また情状等によりまして、それぞれわが圏の場合にも担保金の徴収の額が決まるわけでございますが、その基準等につきましては、あらかじめ政令または主務大臣が決めて、後は情状により取締官が決定をする。それも、現在わが国の二百海里法に定まっております罰金最高額が一千万円、それから没収に値するような物件の価額等を総合的に勘案をいたしまして担保金の額は決めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  88. 向井清

    ○向井政府委員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げました四件の検挙案件につきまして、具体的な違反内容でございますが、ほぼ金部同じでございますけれども、魚種あるいは漁獲量の記入が何日分かなされておらないということで、暫定措置法の第十条、制限、条件違反ということで検挙いたし、処置をいたしたわけでございます。
  89. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 いま私聞きましたのは、違反案件に対して五十万円の罰金を科するというその根拠について、どういう基準でやられているのか、こうお聞きしたわけです。
  90. 向井清

    ○向井政府委員 お答え申し上げます。  罰金額最高額一千万円ということになっておりますが、先ほど申し上げましたような違反内容でございますと、いわゆる形式犯ということでございまして、やはりそのような内容から考えましても、先ほど申し上げました罰金最高額から考えましても、大体その辺のところが一つのめどであろうかということを踏まえまして、担保金の額を一応五十万円ということにしたわけでございます。
  91. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 本法律改正によって政令が決められるのですけれども、こういう基準については具体的に決められるのでしょうか。内規みたいなものがあると思うのですね。その内規を準用するという考えでしょうか。これは公表できないものでしょうか、いかがでしょう。
  92. 岡安誠

    岡安政府委員 先ほど申し上げましたとおり、この運用につきましては、政令によりまして態様その他の区分をすると同時に、主務大臣の定める基準によりまして計算方法を示すということにとどめまして、実際の担保金の額の決定は、いま申し上げました基準の範囲の中におきまして取締官が決定をするわけでございます。細目等につきましては、国際慣例から言いましても、これは外に公表すべきものではないというふうに私どもは考えております。
  93. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 次に、北洋漁業関係の処置についてお伺いいたしたいと思いますけれども、まず初めに、北洋関係の特別緊急融資の取り扱いの問題でありますが、すでに早いものは六カ月間で期限が来るわけであります。今回の補正予算に際しても、水産加工その他についての措置がそれぞれなされておりますから、これとの関連で緊急融資を一体どう扱うのか。さらにまた、水産庁所管以外で関連業種対策、これは貸付期日がおくれていますから期限はまだ余裕がありますけれども、これも同様、来春早々問題になってくるわけであります。これらについての緊急融資対策の期限切れの取り扱いについて説明を願いたいと思うのです。
  94. 岡安誠

    岡安政府委員 まず、漁業者に対します緊急融資につきましては、現在、六カ月の期限をもちましてつなぎの融資をいたしているわけでございます。これらにつきましては、六カ月の期限が参りまして、政府から交付金その他の交付を受けたり、その他返済が可能な方々からは当然返済をしていただきます。返済が不可能な方々には、もう一度六カ月間融資期間の延長をいたしたいと思います。それで、来年度におきましては、これは来年度の予算でございますが、できるならば私どもは、それでもなお返済ができない方々につきましては、長期低利の資金に借りかえるということを現在検討いたしているわけでございます。  それから、加工業者関係の方々のつなぎ融資、これも六カ月でございます。これにつきましては、先般成立いたしました補正予算におきまして、総額二百八十億円に及びます長期低利の融資に借りかえの措置ということを考えておりますので、返済が可能であるかどうかということを検討いたしまして、不可能な方々はそれによって借りかえをするということを考えておるわけでございます。  なお、直接の加工業者以外の水産関連業者の方々につきましても、現在、中小企業金融公庫その他の機関からつなぎ融資が出ております。これらも六カ月間の期間で融資が行われておりますが、これは返済不可能な方々は一応年度末まで延長をする。それから、来年度につきましては、これは中小企業庁におきまして、やはり長期低利の資金に借りかえるということを来年度予算の中で検討をいたしておるわけでございます。
  95. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 水産加工関係については、魚価高、そして特にサケ・マスは、ばば抜きみたいなもので、最後は高いものをつかんでしまって、大変な経営困難に陥っている業者も非常に多いわけであります。いま言われた点は、水産加工の経営状態と言えばマクロ的にすべて入るんだと思うのですね。そういう認識でこの対策が講じられる、こういう理解でよろしいですか。
  96. 岡安誠

    岡安政府委員 水産加工の問題は、まず直接的に北洋関係の操業が非常に削減をされました結果、原料不足ということによりまして休業という状態でございます。さらに、操業度が非常に落ちるということがございまして、私どもは一応つなぎでもって対策を講じましたけれども基本的には、過剰と思われますような施設につきましては、これをスクラップ化するということがまず必要であろうと思いまして、それらに対しまして必要な予算措置を講じております。  さらには、既存の施設を転換をする、たとえば新しい材料による製造に転換をするというような場合等につきましても、私どもは、それらの方々に必要な資金が供給できるような、そういうことを現在検討をいたしております。  さらには、私ども、全く新しい、たとえばイワシ、サバ等の赤身の大衆魚等を原料とする加工業に転換をするという場合にも、新規機械の導入等につきまして、できれば長期のまた低利の資金が融通できるように、そういうような配慮をいたしまして新しい時代に対応する加工業者が生きていけるように私どもは検討をいたしたいと思っております。  要はやはり加工業者の中から再建計画をつくりまして、どういう形で再建をするかというような計画を樹立していただきまして、その計画に沿って政府が援助をするというような形を現在考えておるわけでございます。
  97. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 もちろん原料不足で経営が悪化したのもありますし、魚価高になって、最後に高いものをストックしちゃって大変な経営困難の状態もあるわけですよ。それはマクロ的に扱わざるを得ないでしょうと、こう言っておるのですよ。率直に言ってください。
  98. 岡安誠

    岡安政府委員 先ほども御質問がございましたけれども、日ソ関係協定交渉がストップするとかいうようなことがございまして、一時異常な魚価高ということもございました。しかし、現在は一応落ちつきを取り戻しているわけでございますので、いわば一時的な魚価高によります経営の不振等につきましては、私ども、一応経営の合理化といいますか、それで対処していただくということが第一でございますし、それでも十分でないときには、一般的に経営の再建計画をつくりまして、たとえば一時帰休をするとか、それからまた人員を整理するとかいうような再建計画で対処していただくということではなかろうかというふうに思います。私ども、そういう暴騰、暴落というような事態が起こらないように配慮はしておりますけれども、価格の変動によります企業におけるショックというものは、第一義的には企業者自体が吸収する努力をしていただきたいと考えておるわけでございます。
  99. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 時間がなくなって、長官知っててまともに私の質問に答えてないと思うのですが、まあいいでしょう。しかし、経営ですから、結局私はそうなるだろうと、これは深刻な問題なんですよ。実態を長官もよく御存じだろうと思うんですね。だから、そうなるでしょう、そういう点も含まれざるを得ないでしょうということだと私は思うのです。ここでとどめておきましょう。  減船補償の算定基礎は、当然各種別にあると思うのですよ。したがって、その算定基礎というものはかっての抱卵ニシンの漁業者救済等の交付金の交付、これに全く準じてこういう方式でやられた、こう私は思うのですが、間違いありませんか。
  100. 岡安誠

    岡安政府委員 いま御質問の救済費交付金、いわば政府交付金の算定の基礎のお話、特に労務費のお話ではなかろうかと思いますが、私どもは、今回の救済費交付金を決定するに当たりましては、一応標準的な経営というものを想定いたしまして、そういう標準的な経営におきまして、まず休漁等に伴いまして、どういうような資材を購入したか、どういうような手当てをしたか、それから労務費をどういうふうに払ったか、また退職者が出るような場合にはどういうような退職金を支払うであろうかというようなことを想定いたしまして積算をし、額を決定いたしたわけでございます。一応の積算の基準、たとえば労務費につきまして休漁期間中はこういうことでございますよ、それから退職金につきましては周年操業の方々はこういうような基準で、また季節操業の方々にはこういう基準でということもすでにそれぞれの対象漁業者並びに組合関係の方々にもお示しをいたしているわけでございます。  ただ問題は、労務費の額そのもの等につきましては、抱卵ニシンの際には示した例が確かにございます。これは抱卵ニシン等一、二の業種にかかる減船対策でございましたのでそういうことを明らかにした例はございますけれども、今回は非常に多岐にわたる業種につきまして一時に交付金を交付するのでございますので、中に含まれます労務費等の内訳につきましては織り込みました基準を示しまして、額につきましては示さないで、むしろこれは労使の間でお決めいただくということの方がより実情に合うというふうに考えまして額はお示しをいたさないということにいたしておるわけでございます。
  101. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 政府交付金と、いわゆる俗に言う共補償、これをやっているのは北転船と沖合い底びきとあと鮭鱒関係ですね。ほとんどこれに限られておるわけですよ。あと全部単独政府交付金なんですね、ニシンを初めその他の魚種については。そういう補償方式でしょう。補償というか、交付金の方式ですよ。私は、共補償がある場合には、いま長官の答弁である程度理解できると思うのですよ。しかし、減船の救済がすべて政府交付金によって賄われるという場合には、乗組員に対しても当然これは給与について一定の額を示すべきじゃないですか、全部税金なんですから。しかし、鮭鱒とか北転とか沖合い底びきの場合ならまだ共補償があるわけですから、労使交渉の面もあるでしょう。また、標準を示しただけで共補償だってやっているわけでしょう。これは上回る傾向にある。上回ったら当然これはまた融資の対象にするんでしょう。私は、そういう意味では、船主、漁業者に対しては親切だけれども、どうも漁船員に対しては親切ではないのではないか。共補償でない部面はやはり政府として明確なものを示すべきじゃないですか。いかがですか、見解は。
  102. 岡安誠

    岡安政府委員 先生、ちょっと誤解があるんじゃないかと思いますけれども、たとえば北転船の場合を例に挙げられまして、確かに北転船の場合には救済費交付金のほかに共補償等がございます。しかし、共補償はいわゆるのれん権の補償に充てるものといたしまして、残存漁業者が農林漁業金融公庫から資金を借りましてこれを補てんをし合うということでございまして、それ以外の必要経費の補てん、必要な労務費の補てん等につきましては、救済費交付金の中で積算をし、交付をいたしておるわけでございます。したがって、御指摘の労務費関係につきましては、北転船であろうが沖底船であろうがその他のものであろうが、それぞれの標準経営を想定いたしまして、私どもは積算をし、交付をいたしておるわけでございますので、業種によって考え方が異なるということはないわけでございます。
  103. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 交付金だけで処理する場合、それから共補償の場合、のれん代と言いますけれども、労使交渉でまた額は違ってくるわけですね。これは当然だと思うのです。この分け前を要求されることは当然だと思いますからね。ただ私は、交付金だけの場合には、抱卵ニシンの場合でもずっとみな基準金額を示しておるわけですから、標準金額は示して当然だと思うのですね。それぞれ違うと言いますけれども、標準的なものは示していいのじゃないですか、税金で交付金を出すのですから。そのくらいの親切な行政であってほしい、このことをぼくは強く、これは今後も問題がありますので、特に要請しておきたいと思うのです。時間がありませんから残念ですが……。  私は、そういう意味で、水産庁と業界との話し合いはよく行われているのだろうと思うのですが、しかし、そういう面の配慮はどうも足りないのではないか。そういう中から、結局たとえばペーパー船主に対してまで交付金を出す、こういう事件が起きているわけですね。たとえば根室のような場合には五十年、五十一年、十七隻の減船のうち、これはもう十隻しか操業していない、こういうような実態もあるわけです。二十一日に技官が根室に入っていま調査をしているようでありますけれども、そういう点で何か水産庁のやり方に対して、もう少しわかりやすくやってほしい、こういうのが一般的な漁民の声であるわけです。  ここに交付要綱がありますけれども、申請書だって「交付金の受領に関する事務を委任する場合は不要である。」と書いてあるわけです。そういう措置で行われている。「交付金の交付に関する細目については、別に水産庁長官が定める。」「交付金の額は、各漁業種類の実情等に応じ、別に農林大臣が定める。」こうあるわけです。こういう点が結局どうも従来の流れにさお差しちゃって、新しい二百海里時代に対してもう少し親切にやる、こういう姿勢に欠けているのではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  104. 岡安誠

    岡安政府委員 先生のお言葉ではございますが、私の考えをちょっと述べさせていただきたいと思います。  まず、労務費の額を示さないのが不親切であるのではないかというお話でございますが、これは私はそうじゃないというふうに考えます。やはり先ほど申し上げましたとおり、労務費、特に賃金または退職金等の決定はもっぱら労使間の交渉で決まるということが本筋であって、これをたとえば標準的な額とはいえ、示すということはいずれかに影響を与えることで、これは労使それぞれにとって得したり損したりするということで、これは適当ではないという考え方は変わっておりません。したがって、そういうことは不親切でやっていることではなくて、やはり適当な額の決定を願ってやっておるわけでございます。  なお、御指摘の、たとえばペーパー船主についての政府交付金の交付があったのではあるまいかという御指摘でございますが、確かにそういう新聞報道がございましたので、現在私ども現地に係官を派遣をいたしまして調査をいたしております。私どもが決めました補助金の交付の要綱、細目等に違反するものがあれば、当然これは返還をしてもらわなければならないというふうに考えまして、これは現在厳正な調査をいたしている次第でございます。
  105. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 限られた交付金の場合には、これは減船して船主も仕事をやめるわけです。その場合には中労委の裁定だってあるのですよ。労使の交渉だけで決まるというのは原則であって、それはやはり中労委が裁定を示す、あるいは公共事業体のような場合はあらかじめ一つの線を示すということもあるわけですから、あながち労使の問題だといって逃げるだけが能ではない、私の見解を申し上げて、今後ぜひ検討していただきたいと思うわけです。  時間がありませんので、あと二点だけでとどめておきますけれども、一点は、離職者の発生状況はどうなっておるのか、同時にまたこの対策について一体どう措置をされておるか。特に漁業再建整備特別措置法では四十歳という年齢制限もございます。雇用保険法もそうであります。そういう意味で、これらについては弾力的な運営をする、こういうことも伺っておるわけですが、一体、実際上どういう扱いをされるのか。  それから、失保の資格者は、いまの離職者の発生には資格を持っておる者がどの程度おるのか、この点について伺っておきたいと思います。
  106. 岡安誠

    岡安政府委員 失業保険の件につきましては、これは厚生省所管でございますので、厚生省から御返答いただくということにいたしまして、労働対策等につきまして御報告を申し上げたいと思います。  これはしばしば大臣もお答えしているとおりでございますけれども、今回の千二十五隻に及びます減船によりましてどれだけの離職者が出るであろうかということ、これは今後の推移を見なければ確定し得ないことではございますけれども、私どもの算定では、それぞれの業種の減船の隻数に船の乗員の定数等を掛けて検討いたしましたところの八千人を超えることはあるまいというふうに考えております。  では、現在どのくらい離職者が出ているかということを中間的に、たとえば北海道の場合を申し上げますと、雇用が継続しなかった者の数が現時点で大体二千七百人ございます。しかし、そのうちですでに離職いたした者はまだ千五百人でございまして、あとの残りは今後離職が予定される者ということになっております。ただ、すでに離職をいたしました者の中でも、道内関係者につきましては再就職をされた方々が相当ございます。たとえば、すでに離職をいたしました千五百人のうち、道内の関係者は千二百人であり、そのうちの千百人はすでに大半が海上に就職をするという形でもって再就職を果たしているわけでございます。したがって、今後不幸にして大量の離職者が出るかもしれないということは、今後の問題にかかわっているわけでございまして、私どもは慎重にその推移を現在注視いたしているわけでございます。  なお、対策につきまして、現在、労働省、運輸省等と相談をいたしております。たとえば、職業転換給付金につきましては、現在、政令によりまして四十歳以上と、四十歳の限界がございます。これにつきましては組合の方から、引き下げるように、むしろこれを撤廃するようにというような要望もございますが、これは現在検討が重ねられております構造不況業種対策というものとの絡みもございますので、私ども、組合その他の御要望を体しまして、今後とも労働省、運輸省とも話し合いをしてまいりたいと思っております。  それから、資格要件等につきまして、従来漁業関係につきましては、一年の就職の期間または半年ずつ二年間というような条件がございます。しかし、たとえばサケ・マスの臨時従業員等につきましては、これでもなかなか問題があるということでございますので、これをさらに実態に即して緩和できないかというようなことも現在相談をいたしております。  また、年齢制限が残った場合に、若い方々が訓練を受けて再就職を図るというような場合には、訓練前または訓練期間中におきましても職業転換給付金と同じような何らかの給付金が得られるように、これも労働省、運輸省とも相談をいたしております。  私どもは、できるだけ、転職を余儀なくされた方々に対しまして、再就職が円滑にできるように諸般の準備をし、労働省、運輸省とも相談をいたしている次第でございます。
  107. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 時間がありませんので、最後に大臣にお伺いしておきたいと思うのですが、先般、マルは大洋の社長とイシコフ漁業相との間に、スケトウ及び鯨肉等水産かん詰めのプラント、漁網プラント、それから五百トンの冷蔵庫を二基、これはバーター契約が成立しているということが報告されておるわけです。したがって、これはIQ品目にこのスケトウはなるわけでありまして、この成約に対して大臣は認可を与えるお考えであるかどうなのか。特にスケトウの原料というのは、一時的には、長期的には転換はできるのでしょうけれども、短期的にはスケトウの原料確保ということは、水産加工基地経済にとって非常に重要な影響があるわけです。そういう面を配慮して、こういう問題についてどう対処されるのか。あるいはまた、これ以外それぞれ申請があると思うのですね。そういう意味で、大臣のお考えをこの機会に承っておきたいと思います。
  108. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ある漁業会社のプラント輸出とスケトウダラとをバーターする問題、うわさには聞いております。しかし、これは御承知のように、スケトウダラはIQ品目でございまして、まだそういう申請もございませんし、これに対して私はいまのところ何も考えていない。  それから、私も釧路等に二度ばかり参りまして、現地の製造加工業の工場等も視察をいたしましたが、ことしはイワシも比較的漁があった、またサケ・マスも比較的順調にいったというようなこと等もございまして、工場の稼働状況はわりあいに私は心配したよりも順調にいっておるように見受けまして、安堵をいたしたわけでございますが、問題は一-三月の時期において、これは主としていままでスケトウダラを原料とする時期でございますから、この時期に原料不足で工場が操短あるいは休業、休止というような事態が起こるかどうか、この問題を私、大きな関心を持って見守っておるところでございます。  最近、スケトウダラのすり身加工の問題につきましては、変化が出てきておるように思うわけでございます。  一つは、従来は鮮魚だけを原料にしておりましたけれども、技術的にも大分改善を加えまして、冷凍したものも原料にするということが進んできておる、これが第一点でございます。  それから、どうせ原料は不足するであろうというようなことから、加工業者の業界では非常な努力をいたしまして、歩どまりの向上ということを努力をいたしておるようでございます。そこで、水産庁に調査をさしておるわけでありますが、すり身の需給事情、これから年末、また来春にかけましての需給事情を見ておるわけでありますが、いまのところ、前段で申し上げたようなすり身加工業のいい方面への企業努力、そういうようなこととも相まちまして、かまぼこ原料になるすり身の需給事情というものはおおむね均衡しておる、こういう調査結果が出ております。しかし、産地における加工工場の問題でございますから、その推移を見ながら、輸入の問題につきましても、必要に応じて弾力的に対処していきたい。  さて、その場合に、全くばらばらに無秩序に認めるのかという御懸念があると思うのでありますが、私は、やはりこういう際でございますから、秩序のある輸入を図る必要がある、こう考えまして、水産加工団体、全漁連等を中心とした必需者の団体で需給協議会というものをつくってもらいまして、そこでこれだけのものはどうしてもこの時期に輸入する必要がある、こういうような話し合いの結果、結論が出れば、それを踏まえて水産庁がIQの輸入割り当てをしてまいりたい、秩序ある輸入をしたい、このように対処してまいる考えでございます。
  109. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 終わります。
  110. 菅波茂

    菅波委員長代理 この際、午後二時十分再開することとし、暫時休憩をいたします。     午後一時五十三分休憩      ――――◇―――――     午後二時十六分開議
  111. 金子岩三

    ○金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。美濃政市君。
  112. 美濃政市

    ○美濃委員 漁業水域に関する暫定措置法の一部を改正する法律案につきまして、若干の質問をいたしたいと思います。  まず最初に、この法案審議参考資料をいただきましたが、この法案趣旨とは反対に、わが国漁船がかなり拿捕されまして、総額一億円に近い罰金をとられておる。これはその内容を見ますと、操業日誌の不実記載というのが一番多いようでありますが、この中身はどういうことになっておるか、お聞きしたいと思います。
  113. 岡安誠

    岡安政府委員 操業日誌の不実記載というのは、正確に記載されなかったもの、または記載漏れ等が含まれますが、それ以外に、操業日誌のとじ方が、たとえばとじひもの先が固定されていないとかいうようなことを理由にいたしまして罰金が徴されたものでございます。
  114. 美濃政市

    ○美濃委員 このほかに拿捕されて、もちろん協定に基づいて出漁しているわけですから「拿捕はされたが、調べた結果、いわゆる操業に対する違反事項なしということで釈放された件数はどのくらいあるんですか。
  115. 岡安誠

    岡安政府委員 実は私ども、取り締まりを受けまして違反事実ありとして罰金を徴された例は、事が重大でありますので金部調べておりますけれども、臨検その他を受けまして問題がなかったというようなことはあると思いますけれども、私ども、何件ということについて現在は調べておりません。
  116. 美濃政市

    ○美濃委員 これはやはりソビエトの取り締まり体制を判断する上からも、そういうデータもひとつ可能な限り、何でもなかったのだからそういうものは調査してない、わからないというのじゃなくて、やはりそういうものの件数が掌握できると、二百海里以内における警備の体制が、日本の体制とソビエトの体制の比較等もそういうデータの上でできるのではないかと思いますので、そういうものも、そう手間も金もかからぬはずでありますから、掌握するようにしていただきたい。  それから次に、初めて行われることでありますから、いろいろ行き違いもあるということは想像できますし、するけれども、この拿捕関係が将来件数を減らすことができるかどうか。たとえば、一番件数の多い不実記載、それから許可証の不所持だとか、許可証を持ってなくて出漁しておった、忘れていったのではないかと思うのです。こういうのは全く許可証がなくていわゆる密漁的に入っておったのか、それとも出漁に当たって許可証の所持を忘れていったのか。総体百八件の案件を見ますと、停船命令違反、こういうものがいろいろ目につくわけですが、これらに対する指導、特に一番多い操業日誌の記載要領なりそういう点の指導にも欠けて、単に違反を起こして罰金をとられたというのじゃなくて、制度になれないでこういう件数になっておるのではないかとも想像されるのですが、そういうものの見方はどうなっておりますか。
  117. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 美濃先生指摘のように、この違反事故が頻発をするということは、日ソの将来に向かっての漁業関係、ひいては日ソの友好関係にも好ましからざる影響を与えることになるわけでありまして、私ども極力違反事故の起こらないように関係漁業者に行政指導を行っておるところでございます。午前中にも申し上げましたように、ソ連側におきましても、わが国の沿岸、沖合いにおける操業に当たって違反事故を起こさないようにということで非常に厳しい指導をやっているようでございます。違反事故を起こした船長は下船を命ずる、また罰金も、船長等の不注意によって起こったことであるから、その罰金は給料の中から政府に分割支払いをせよと、こういう厳重な指導をやっておるわけでございます。わが方は、何分にも数千隻に及ぶ多数の漁船でございますから、なかなか末端まで周知徹底を図るということは困難な面もございますが、東京におきましてもあるいは札幌におきましても、また漁業の根拠地である稚内、釧路、八戸、塩竈、函館等々におきましても、関係漁業団体、漁民の諸君に十分周知徹底を図るよう努力をいたしております。  なお、日ソの間の慣習なりあるいは国情の違い等によりまして若干の食い違い、考え方の違いがあったように思いますので、ナホトカに係官を派遣をし、日ソの間で十分改善を要する点は改善をする、相互の理解の食い違っておるところはそれを是正をする、そういう点を係官が帰国いたしましてから再度関係漁業団体等を集めましてその改善を加えた点について指導も行っておるところでございます。  今後とも違反事故の起きないように一層の努力を払ってまいりたいと考えております。
  118. 美濃政市

    ○美濃委員 次に、この法律関係について、若干質問したいと思います。  まず第一点、この担保金とは、洋上で拿捕するわけでありますから、ですから金を持ってないと思うのですが、この担保金のとり方はどうなりますか、どういう方法と手段、持っていれば別だと思いますが、持っている場合、持っていない場合、いろいろ想像されますので、担保金の徴収はどういう手段と方法によるものか。
  119. 岡安誠

    岡安政府委員 当然、担保金を課した場合、相手漁船現金を持っている場合には、これは現金で受け取って収納をするということになると思います。ただ、ソ連漁船の場合には、これは大体現金を持っていないというのが通例でございます。現在もすでに担保金の告知をいたしておりますが、現在は保安官が船長に対しまして担保金の額を知らせますと、船長がそれをソ連の場合にはウラジオの極東漁業総局というところに無線で連絡をいたしまして、その極東漁業総局から海上保安庁長官あての担保金支払いの保証書というものをソ連の在日大使館に電報で送付してまいります。そうしますと、大使館はこの電報に、これがソ連漁業機関による真正な保証書であるという証明をつけまして、海上保安庁に提出をします。海上保安庁から現場に通知がいきますと、そこで釈放がされるというようなことになっておりますので、ほかの国につきましても現金またはこのような方法になるのではあるまいかというふうに考えております。
  120. 美濃政市

    ○美濃委員 その担保金を徴収した後の法的措置ですね、これは日本国内法によると解釈するわけですか。具体的にどういう法的措置がとられるのか、これを聞いておきたいと思います。
  121. 岡安誠

    岡安政府委員 これは改正法律案にも規定してございますけれども、この担保金は自後の刑事的手続の進行を担保するわけのものでございます。したがって、何日までに出頭をしろというような通知をいたしまして、そのときまでに出頭がなされれば、そのときにおいてはその担保金返還する事由が発生するわけでございますが、また一回で済まない場合に二回、三回という場合には、それぞれその担保金が有効になりまして、それぞれ出頭を確保するように、また、それが起訴になりまして裁判手続等に入りますと、これは裁判手続の進行を担保するようにこの担保金が有効に働くということになるわけでございます。  これがもし出頭期日等に出頭しないというような場合には、これは一定期間後に国庫に帰属をしてしまうというようなことになりまして、出頭しないためにわが国の場合には自後の刑事手続の進行がとまるわけでございます。一応それでそのケースは終了、完了をするということになろうかと思っております。
  122. 美濃政市

    ○美濃委員 担保金とは、いまの御説明によりますと、国内措置の保釈金に該当するのですか。保釈金とも違うようですね、没収するというわけだから。ですから、出頭しなかった場合はどういう解釈になりますか。略式命令という解釈になるのですか、どういう解釈になりますか。没収すればそれで一件落着ですか。あとは追及しない、担保金を没収してそれで一件落着と、こうなるわけですか。
  123. 岡安誠

    岡安政府委員 担保金は、先ほど申し上げましたように、一定の期日に出頭を命じたり、また提供すべき物件の提供を命じたり、それの担保として提供されるわけでございますので、出頭がなかったり押収物提供がない場合には没収されます。  その後はどうなるかということでございますけれども、事実上本人が出頭してこないということになりましたり、また押収物提供されないということになりますと、自後の刑事手続を進行することができない。たとえば、起訴等ができ得ない、また裁判が維持できないということになりますので、事実上そこで終わりになる。一方、担保金国庫に帰属するという事実が発生するということで御理解をいただきたいと思っております。
  124. 美濃政市

    ○美濃委員 もうちょっと聞いておきたいと思いますが、本人が出頭して刑が決まりますと、恐らくこの種のものは体刑にはならぬと思うのですが、たとえば罰金、その額が決まれば、当然担保金ですから、担保金と決まった罰金とは相殺されることが予想されますけれども、原則的にはそうなるわけですか、出頭した場合は。
  125. 岡安誠

    岡安政府委員 担保金提供されまして、本人が期日に出頭するということで自後の刑事手続が進行しまして、結果的に何がしかの罰金刑が確定したということになりますと、理論上はそのときに担保金は本人に還付されます。それから改めて罰金の納付が行われるということで、担保金をそのまま罰金に充当するというところまで制度は期待をしていないわけでございます。
  126. 美濃政市

    ○美濃委員 次にお尋ねしたいことは、いまの時点で二百海里法が各国で施行されて、五十年あるいは五十一年と対比して、日本の二百海里の外ですね、わが国も二百海里法をしましたから、あるいは遠洋漁業と言ってもいいのですが、二百海里の外における漁獲は、暫定協定等がございますけれども、ことしの漁獲量の見込みはどの程度になるのか。従来の漁獲量と比較してどれだけ減少するのか、これをお聞きしたいと思います。
  127. 岡安誠

    岡安政府委員 わが国の二百海里外の漁獲量がどうなるのかということはやはり締めてみないとわからない点でございますけれども、明らかでございますのは、日米、日ソの間におきましては協定が結ばれまして今年中の漁獲量、クォータが決まっております。アメリカの場合につきましては総額百十九万トンということで、前年対比一一%の減でございます。これは大体十四、五万トンの実質減ではあるまいかというふうに思います。それから、ソ連の場合には、これは六月から十二月末まででございますが、四十五万五千トンということで、それを昭和五十年と対比いたした数字でございますけれども、大体七十万トンとの対比になりますから二十五万トンぐらい減になる。合計いたしまして少なくとも四十万トン前後は、米それからソ連との関係におきまして減るということになるわけでございます。  その他いろいろございますけれども、でこぼこがございまして、はっきりしたところは推定が困難と言えるかと思っております。
  128. 美濃政市

    ○美濃委員 増加するところがありますか。前年実績よりも増加するところがあるかないか。いまはっきり推定はできなくとも、大勢としては減るのか、その増加する面が何ぼかでもあるのか、これを聞いておきたい。
  129. 岡安誠

    岡安政府委員 増加する部分があるとするならば、漁況が非常によくて豊漁であるというような結果増加することが考えられますが、先ほど申し上げましたとおり、やはり結果を見てみませんとわかりませんで、総体としてふえるということはなかなかむずかしいのではないかというふうに思っております。
  130. 美濃政市

    ○美濃委員 これは大臣にお尋ねしたいと思いますが、過般ニュージーランドの副総理が参りまして、私ども各党の理事が院内でお会いしたわけです。そのとき、暗に日本が希望する漁獲の問題に触れて、魚はとってもいいという返事をして、十五年間も延び延びとなって懸案になっておる乳製品や肉をある程度買ってくれるという約束をしないで、魚だけとってもらってもいいという約束をして私は国に帰ることができない。国に帰ったら副総理はやめねばならぬ。そのときの話の全部は、ここでは時間の関係で申し上げません。そういう何か開き直ったような、特に十五年前から日本は約束を実行しない、さも延び延びという、話の中では半ば開き直ったと受け取れるような表現もあったわけです。  これは大臣もお会いしていると思うのですが、この関係はどうなりますか。魚をとらしてもらって乳製品や何か買うんですか、どうですか。
  131. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御指摘のように、ニュージーランドの副首相トルボーイズさんがわが国を訪問しておられまして、私も三回にわたって会談をいたしました。福田総理も、きょうもお会いになりますから、二回会談をいたします。鳩山外務大臣も会談をする。主として、お話しのように、ニュージーランドは酪農国である、であるからニュージーランドの乳製品あるいは牛肉をいままで以上に大幅に買ってもらいたい、ニュージーランドの二百海里水域日本漁船の操業はその結果を見た上で考えたい、こういうお話のようでございます。  私は先ほども申し上げましたように、漁業の問題は漁業の問題として解決をし、農畜産物の貿易問題は貿易問題として処理をするということが日本政府基本的な方針である。わが国には畜産農家が六十万世帯、働いておる関係の農民の方々は百八十万人近い方がある。そして、三年前には深刻な畜産危機に見舞われてようやく立ち直ったばかりであって、日本としてはこの畜産業の振興ということが日本農業全体の観点から見ても非常に重要な地位を占めておる。これに対して保護政策をとっておりますから、そのために畜産物価格安定法もあり、また乳製品に対しても支持政策がとられておる。こういう制度は国会においても超党派の合意によってできておる畜産業振興保護政策であって、これに悪影響を及ばすようなこと、あるいは日本のそういう制度を変更してほしいという要求、そういうものはとうていわが方としてはのめない。しかし、現在の制度並びに法令のもとにおいて、国内の需給事情とにらみ合わせながらできるだけのことを考える、こういうことは日本とニュージーランドの将来の友好関係の発展にも寄与することであるから考えたいけれども、ニュージーランドは酪農国であるから、この地位を認めて、そして国際分業的にニュージーランドの位置というものを位置づけて、酪農品はニュージーランドから、鉱工業製品は日本から、そういう国際分業的な御要求にはとうてい応じられない、こういう話し合いを私は率直に申し上げておったところでございます。  漁業の問題につきましては、相当前から日本は技術援助あるいは経済協力もやっております。今後においてもやってまいりたい、こう考えておりますが、そういうぐあいに漁業の分野における協力関係漁業問題として相互にやっていこうではないかというのが、私のニュージーランドに対する対応、率直に申し上げましてそういう対応をいたしておるところでございます。
  132. 美濃政市

    ○美濃委員 いま大臣のお話を聞いて大体私どもも同感であり、これからも、いまのわが国の、国際情勢を取り巻く経済の中で、やはり農業問題は、もう大臣のいまの考え方、所信を強く貫いていただきたい、こう思います。  それから、前段で申し上げましたように、これから先も漁業協定は続くわけでありますから、操業違反が起きないように未然に指導体制をひとつ高めていただきたい。同時に、いまわが国もやはり二百海里漁業海域を設定したわけでありますから、それに対する日本国としての毅然たる態度も堅持して、この前も申し上げたと思いますが、行く先は、何か最近新聞によりますと、サケ・マスについては二百海里を超えた資源維持の漁獲調整が行われる、それでアメリカ、カナダ、ソビエト、日本ですか、そういう会合が開かれているという新聞が出て、かなり厳しい条件を突きつけられているようであります。いずれにしても、わが国の二百海里外の海の漁獲というものは先行き拡大されるという見通しは薄いのじゃないか、やはり制限が強化されるという方向に向くのではないかと思いますので、これは来年の予算編成とも関連してきますが、育てる漁業にできるだけ力を入れて、将来の展望をきちっと構えてこの問題に対処していただきたい、こう思います。  時間がございませんので、以上申し上げまして、私の質問を終わります。
  133. 金子岩三

    ○金子委員長 野村光雄君。
  134. 野村光雄

    ○野村委員 久しぶりに鈴木大臣に直接御質問をする機会を得ましたので、ただいま提案されている問題について、端的に幾つかの質問をいたしていきたいと思います。特に私は北海道出身でもございますし、最近の罰金問題が北海道漁民の最大の課題になっておりまして、去る八日の日から数日間にわたりまして、現地の根室、釧路方面の漁業組合並びに関係漁民とひざを交えて懇談もし、実態を聞いてまいりました。そういう曲々しい現地の実態を踏まえた上で、実例を挙げながら具体的に質問をいたしますので、ぜひひとつ具体的な御答弁をいただきたい、最初にお願いをいたしておきます。  まず第一点としてお聞きしたいのは、今回提案されました暫定措置法の一部改正法律案内容について若干疑問がございますので、最初質問をいたしますけれども日本の方でソ連漁船違反者をつかまえた、それに対して担保金またはその保証をする書面提供があれば、違反者はまずそこで釈放する。そして、その担保全なり書面提供というものに対して関係大臣である主務大臣がそれを保管しておく、そして違反者が求めに応じて出頭しなかった場合に、その担保金国庫に帰属するんだ、概略こういう趣旨のようでございます。  日本語の立場で、私は法律家でございませんけれども担保というのは、大臣御存じのとおり、われわれの主観的な常識からいきますと、代替として預かりおく、こういうのを担保と考えておるわけです。本物を返したら担保の物件は返さなければいけない、これがわれわれの常識なんです。日本法律という立場から考えた場合に、揖保として主務大臣が預かる、すなわち「保管」ですから、これは預かっている。まだこっちのものになっていないわけですね。不服があれば出てこい。出てこなかった、そのときは法律でもって自分のものにする。出てきて、日誌なら日誌の不備が、まさしく間違っておりました、訂正いたしますと言って訂正して持ってきた、許可されていない魚をとったことによって罰金を科せられた場合は、許可されていない魚なり余分にとった魚を持ってきた、こうなりますと、この担保金とかそういうものは返さなければならなくなる、こうなるんじゃないかと思うのですが、この項の解釈なり担保の定義というものを、この際ひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。
  135. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 国によって制度が違うわけでございまして、ソ連は行政罰も加えられるようになっており、また行政罰に対して不服の申し出をした場合には裁判をやる、こういう両方の制度をやっておるわけでございます。まず、行政的に違反を起こした場合に罰金を科する。それがどうも不服であるということで提訴した場合には、今度は本人も出頭し、証拠物件を提示して裁判をやる、こういうたてまえです。  日本の場合は、行政罰の制度をとっておりません。そこで、この担保金というようなものは、刑事的な手続の進行を担保する、こういう性質でとるものでございまして、本来これはあくまで裁判によって決着をつける、こういうたてまえであるわけでございます。しかるところ、本人が出頭しない、あるいは証拠物件の提供もしない、こういう場合にはその担保金国庫に収納される、こういうような仕組みでやろうというのが、今回、改正をお願いしておる点でございます。
  136. 野村光雄

    ○野村委員 私も大体やむを得ないというか、日本法律そのものは日本でなければ使えないから担保ということにせざるを得なくなったんだろうということで、半分ぐらいわかるのですけれども、やはりわれわれは日本的な立場で考えると、何かの違反を犯したから普通ならば罰金としてとるべきものが、罰金として科せられないから担保にする。しかし、担保ということになると、その違反なり何かは、とり過ぎた魚を日本に返してよこせば違反が消滅する、こうならないのですか。向こうにそうとられないのですか。
  137. 岡安誠

    岡安政府委員 こう御理解いただければいいと思いますが、先ほど大臣が申し上げたとおりでございますけれども先生のおっしゃることと違う点は、とり過ぎた魚を返せばすべてが消滅するわけではございません。やはりとり過ぎた魚、その他違反事件があった場合には、これは二百海里法、漁業水域に関する暫定措置法によりまして罰金が科されるということでございます。ところが、日本罰金を科する場合は、取り調べをいたしまして、証拠を整えて検察庁に送付し、検事が起訴をいたしまして裁判にかけられ、裁判には本人が出頭して公開による裁判を受けて、その結果、裁判で罰金が確定をするという手続が必要になります。ところが、日ソの漁業協定でもそうですし、ソ日漁業協定でもそうでございますし、世界一般的に、二百海里時代におきましては、違反をした場合に拿捕された船長並びに船は、担保金等の提供があれば速やかにこれを釈放しなければならないという国際的な慣習が一般化しておるわけでございます。また、ソ日協定にもそう書かれてあります。  そこで、本来わが国の裁判にかければ、これは長い期間がかかり、国際慣習として一般化され、またソ日協定に書かれておりますように、速やかに釈放するとか船を放すというわけにはいかない。そこで、私ども担保金という制度をここに設けまして、刑事手続の進行を担保するという形で担保全を預かり、それが担保されない場合にこれを国庫に帰属をさせるということによりまして、速やかに船長並びに漁船員、船等を釈放するということにいたしたわけでございます。
  138. 野村光雄

    ○野村委員 それでは、本論に入らしてもらいますが、私は、あえて、今回提案されましたこの改正案が反対とかなんとかという立場にはございません。むしろ遅きに失したのじゃないか、これぐらいに思っているわけでございます。  そこでもう一点、大事な問題をここで大臣に最初にお尋ねをしておきたいのでありますけれども、午前中来の各委員の質問にもございましたとおり、日本漁船が、特に零細漁民の方々が百数十件にわたりまして、短期間にソ連の監視船によりまして、われわれから言うならば非常に納得のいかないような問題の中で多額な罰金がすでに徴収されております。  そこで、まず基本的なことを大臣に聞きたいのでありますが、私が現地に行って聞いてみますと、この罰金の中で、特に日誌のつけ方、これが百数十件に及ぶところの約七〇%の件数を占めておりまして、われわれから言うと、こういう非常に軽微な問題の中で五十万、百万という多額な罰金をとられているわけですけれども、この内容を見ますと、漁民日本政府から、日誌のつけ方はこういうふうにつけるのですよと言われたとおりやっていながら、なおかつ罰金をとられている問題が数件ございます。いいですか、言われたまま、指導どおりやって、それで罰金をとられている問題がある。それから、水産庁から全然指導、徹底がなされていないでとられている罰金、こういう二種類があります。もちろんもう一種類には、水産庁からきちっと指導されていながら、わかっていながら違反を起こした、こういう三種類に分かれているわけです。  そこで、水産庁の方の指導どおり行っていながら罰金をとられたものと、それからきちっと指導しておかなかったためにとられている罰金、これは何といっても政府にその責任があると私は思うのですけれども、こういう問題に対して大臣はどういう認識をしていらっしゃるのか、また、どういう責任をとろうとなさっていらっしゃるのか、その点をお伺いいたしたいのであります。
  139. 岡安誠

    岡安政府委員 いまのお話で政府の指導云々ということがございまして、その中で特に違反の件数の多い操業日誌関係の御指摘がございましたので、まず事実関係を申し上げたいと思います。  百二十三件の違反のうち、操業日誌関係指摘は八十三件ございます。そのうちで最も多いのは一部の記載漏れでございまして、これが三十四件、これはどうしてもいたし方がない。その次に多いのが漁獲量を正確に記載していなかった、いわゆる不実記載というもので、これが十三件である。その他、判こをついていないとか、訂正個所に印がないとか、それから船長確認の印がないとかいう、いわば注意をすれば防げたであろうような事例、これが大部分でございます。  なお、先生が恐らく御指摘になりたいと思いました水産庁の指導がなかったという点、これはたとえば操業日誌のつづりひもにつきまして、その末端を表紙に張りつけて封印をするというようなことは、これはわが国の従来の慣習からはそういうことが行われていなかったことでございますので、私どもも当然そういうことをするというふうには理解していなかった。ところが、一方ソ連側では、つづりひもの末端を表紙に張りつけて封印をすることが通例でありまして、それが励行されていたというような、いわば相互の認識の違い、慣習の違い等によるものが八件ございます。これは確かに私どもそういうことを承知しておらなかったものですから、そういうふうにしろという指導はいたしませんでした。しかし、操業日誌関係事件の大部分は不注意によって起きたというふうに私どもは考えておりまして、これは注意さえしていただければ今後発生を免れることができるものというふうに考えておる次第でございます。
  140. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ただいま水産庁長官から、違反に問われたものの事実関係について御説明を申し上げたわけでありますが、農林省といたしましては、二百海里時代の新しい操業秩序を守っていこうという際でありますので、協定に盛られております漁業の条件並びに手続を定めた交換文書、この中の取り締まり関係等につきましては、東京、札幌あるいは稚内、釧路、八戸、塩竈等の場におきまして、関係漁業団体並びに漁民の諸君に十分説明会も開きまして、できるだけの周知徹底を図ったところでございます。しかしながら、何分にも数千隻に及ぶ多数の漁船であり、末端の漁民にまでそれが漏れなく徹底をしたかどうかということにつきましては遺憾な点もあったのではないか、こう思います。  さらにまた、長官からも申し上げましたように、日本ソ連との間の国情の違い、また考え方の違い等で、お互いにこういうことはもう当然日本ソ連も同じようなやり方でいくんだ、こういうぐあいに認識しておったことが、国情、習慣の違いでそれが実際には食い違ったものであった、こういうようなことも判明してきたわけでございます。  そこで、ナホトカに関係係官を派遣いたしまして日ソの間のそういう諸問題についての調整、また改善を要する点は改善をするということで話し合いもいたしまして、その結果をもちましてまた再度漁業団体等にそれを報告し、周知徹底を図るように努力した、こういう経過に相なっておるわけでございます。  私は、そういう両国の世帯、物の考え方の違いやあるいは形式的なちょっとした手違い、そういうようなことで違反事故として罰金等が徴収されておるということはまことに遺憾なことでございまして、今後ともさらに関係漁民の指導には万全を期するようにいたしたい、このように考えております。  なお、ソ連側に対しまして、違反事犯として調書をとられた、罰金をとられた、その際の調書を、必ず違反を問われた漁船の責任者に写しを交付してもらいたい、こういうことを今回長期協定交渉で参りましたところの松浦海洋漁業部長に命じまして、ソ連側と話し合いをさせたわけでございます。こういうことが漏れなく励行されますれば、どういう具体的な事柄によって違反に問われたかというようなことが、日本違反を問われた漁船の報告、そしてソ連側から交付された調書、そういうものを相互に照らし合わせることによってどちらに非があるのか、こういう点も明確になると思います。  いずれにしても、この違反事故というものは、できるだけ関係漁民と十分協力し合いまして、事故が発生しないように今後とも努力してまいりたい、このように考えております。
  141. 野村光雄

    ○野村委員 ただいまの水産庁なりまた大臣の御趣旨から申しますと、確かにこれだけの問題を広く全漁民に徹底することは、説明はしたけれども、果たして全漁民にくまなくその趣旨が徹底したかということに対しては自信もなさそうでございますし、また、これらの形式的な問題に対しては今後二度とないようにナホトカに対する再度の交渉をまたやる、概略言ってこういう趣旨の御答弁でございました。  ただ、私は、今後さらにこういう形式的な問題でトラブルが起きない交渉なり、また、わずかなことで罰金をとられないような漁民に対する日誌のつけ方の趣旨の徹底は、今後再度やることは当然だと思いますけれども、すでにそのことで行われた事実、先ほど水産庁長官みずからおっしゃったように、このとじひもを、ただきちっとテープで両方へ張ってとめてなかった、これだけで四十万とられていますね、御存じと思いますけれども。こんなことは当然いまおっしゃったように、水産庁が指導してないことでとられていろ。  さらに、具体的な二、三の例を挙げますけれども、漁獲物の記入欄に、オヒョウというのは「その他」の欄に記入してもいいと水産庁では指示があったので、この漁民はオヒョウは書く欄がないのでカレイの欄に記入をしておいた。ところが、それで五十万とられた。それから、水産庁の方ではカニの記入は何匹という匹数で記入する欄はあるけれども、これはトンで記入しておいていいんですよ、こういう指示があったので、カニは匹数でなくてトン数で記入しておいた。ところが、匹数の欄に記入してないということで百万円罰金をとられた、こういう実例がございますね。さらに、ヒトデ、これは日本で言うと、ヒトデというのはむしろ漁民にとっては害虫的な立場でいるわけですけれども、これがたまたま混獲されて、そういう問題で五十万とられた、こういう実例がございます。これはいずれも水産庁の指示どおり、指導どおりにやっておって、なおかつそれで罰金をとられた、こういう実例がたくさん出てきているわけです。  こういうものに対しては、私は、漁民に責任があるのでなくて教え方に誤りがあったのか、またナホトカの日ソ間におけるこういう細部の交渉の中で勘違いして水産庁の者が帰ってきておったのか、いずれにしても漁民に責任のない問題でとられた罰金は国でその罰金額を支払うべきだ、こう思っているわけですけれども、こういう実例に対して当然国が払うべきだという点は、大臣、どんなふうにお考えでございましょうか。――実例は何ぼでも出しますよ。
  142. 岡安誠

    岡安政府委員 いや、私ども実例は全部承知いたしております。たとえば、オヒョウとカレイの点でございますが、確かに私どもはオヒョウはカレイと同じではないかというようなことで、取り扱いについてソ連側と意見を異にいたしております。そこで、現にそういう事態によりまして罰金を科されておりますが、私どもは外交ルートを通じ、現にナホトカでも、その後モスクワでも先般も交渉いたしておりまして、私どもの主張が正しいというふうに考えて、なお向こうと協議をいたして、私どもは私どもの主張が正しいというふうに考えております。  それから、カニの記載でございますけれども、これは私ども尾数で記載しないでよろしいという指導をした覚えはございませんので、トン数で記入する欄と尾数で記入する欄と両方があるということになっておるわけでございます。  それから、ヒトデとかツブ、これにつきましてはソ連側は混獲をした、これはやはり大陸棚の資源である、大陸棚の資源をとることはいかぬということで罰金を科されております。私どもはその主張については意見がございましたけれども、その後話し合いをいたしまして、ヒトデはおっしゃるとおり有用な動物ではございませんので、たまたま入ってきたらこれは海中に投棄をするということで、今後そういう処置によりまして違反のような事態の発生を防止するというような話し合いもつけてございます。  私ども、先ほど申し上げましたように、確かに操業日誌についてのとじひもの末端処置等につきましては、これは慣習の相違で承知しておらなかったのでございますが、それ以外に大幅な指導の誤りをしたというふうには実は考えておらないのでございます。  私ども、意見の分かれるところは分かれるところといたしまして、現在外交交渉を続けておるというところでございます。
  143. 野村光雄

    ○野村委員 補償するのかしないのかということを聞いている。オヒョウの記入は「その他」に記入していいということは、ソ連との交渉でわれわれの主張は正しいということはわかった、それはあなた方とソ連の間であって、漁民水産庁の言うとおり記入したわけでしょう。それでとられたものは、確かにわれわれの指導には誤りなかったというだけであって、しかしとられた現実に対してはどうするのかと言っている。国が払うべきではないですかと私は言っている。どうなんですか。
  144. 岡安誠

    岡安政府委員 オヒョウとカレイにつきましては、私どもはオヒョウはカレイの一種であるからカレイの欄に記入するということで、私どもは現在ソ連側と交渉をいたしております。まだ決着がついておりませんという、いわば懸案になっている事項であるということを申し上げたのでございます。
  145. 野村光雄

    ○野村委員 そうすると、話し合いがつけば、とられた罰金は返ってくるという見通しがあるということですね。確認しておきますけれども
  146. 岡安誠

    岡安政府委員 相手方が誤りで罰金を科したものは返してもらうという主張をいたしておるわけでございます。
  147. 野村光雄

    ○野村委員 それでは、こういう関係漁民には必ず水産庁が責任を持って罰金は返してもらう、こういう交渉でいま進んでいる、こういうことで当面理解をいたしておきます。  次に、操業日誌の中で非常に私は腑に落ちない点が一点ございまして、ここで確認させてもらうのですが、この操業日誌、これは全部漁民に与えていますね。これは水産庁でつくって、様式を指示して、全部こういうふうにできております。この一番冒頭に、船長の留意すべき事項という欄がございます。ごらんいただきたいと思います。いいですか。この第二項に、操業日誌の記載に鉛筆の使用は許されない、また操業日誌の訂正も許されない。こういう厳しい条項をソ連側との話でのんできたのかと私は思うのですが、御存じのとおり、そう言ったら失礼かもしれませんけれども漁業者というのはやはり暗いから暗いまで実務として海の上で働くのが専門でありまして、ペンや筆を持って書くことは非常に不得意の方が多いわけです。そうしますと、当然記載が間違う場合が多々あるわけです。間違った場合も訂正することもできない、もちろんまた訂正したということで罰金とられている人もいる。こういうことを水産庁としてこの日誌の記入に対しては一字一句も訂正することも許されないんだぞというふうに徹底なさっていらっしゃるようですけれども、ちょっと漁民にとっては、また一般の日本の事務的手続からいっても、間違った場合には訂正なり削除なり判を押せばちゃんと通用できる手続、方法等があるにもかかわらず、訂正することも許されないということを一漁民に記載方法として強要することは、ちょっと行き過ぎじゃないかと思うのですが、どういう考えでこういうことを強要なさっていらっしゃるのか、御説明いただきたいのです。
  148. 岡安誠

    岡安政府委員 御指摘操業日誌の最初のページに、船長心得事項というのがございまして、御指摘のとおり二項目には、漁労日誌に鉛筆で記入することは認められない、漁労日誌の訂正も認められないと書いてございます。  まず、二項の最初の鉛筆は、これはやはり書いた跡が消えてなくなるとか、改ざんその他が非常に容易であるということで、これは大事な書類を鉛筆で記入してはならないということはきわめて常識でございます。そういう意味で、これは鉛筆では記入しないということになっておりますし、その下に書いてございます日誌の訂正も認められないということは、鉛筆で書いたようなものを消しゴムで消したり、それから削ったりということではならないということで、訂正の方法はやはり訂正の線を引きまして、あとに認め印を押すということで訂正をする方法は認められております。いわば書いたものを消したり削ったりして訂正してはならないという趣旨であるということは通達をいたしているわけでございまして、一応これは向こうとの話でもって、訂正も認められないぐらい厳重なものであって、それは消したり削ったりして訂正してはならないという趣旨だということで通達をいたしております。
  149. 野村光雄

    ○野村委員 そうすると、訂正をして、そのためにとられた罰金というのは返してもらえるわけですか。
  150. 岡安誠

    岡安政府委員 具体的なケースは覚えておりませんけれども、その場合は、恐らく訂正をしまして判こが押してないとか、そういう正規の訂正がなされていない訂正のために罰金をとられたケースがあるのではあるまいかというふうに考えております。
  151. 野村光雄

    ○野村委員 水産庁にこの機会に、前後するかもしれませんけれども確認しますけれども日本漁船が、そういう形式的な問題で五十万だ百万だと、ぼんぼん、ぼんぼんとられている。これは御存じのとおりソ連におけるところの最高幹部会で決まった内容によって向こうは取り締まりをやっているわけでしょう。そうでしょう。いま日本の国民というのは、日本でつくった法律でさえも、なかなか周知徹底というのは全国民にしないものですよ。それを、ソ連の幹部会で決まったことを、日本漁民に周知徹底するわけですから、なおさら複雑だと私は思うのです。この複雑怪奇きわまりない、しかも一朝間違えばすぐ漁民に利害として、罰金としてあらわれてくる重要な問題なんですが、このソ連幹部会において決まったこの細部的な事項を、いつ、どのような方法で、だれが、どこで、どういうふうにして、この記載要領を周知徹底を図ったのですか、まずその点、一回確認しておきたいのです。
  152. 岡安誠

    岡安政府委員 確かに日本漁船というのは、従来から、許可証等は持って操業はいたしておりますけれども、漁獲量等を正確に操業日誌に記載をするとか、そういうような習慣が比較的薄かったわけでございます。ところが、二百海里時代になりまして、それを厳格にやらなきゃならないということで戸惑いがあろうかというふうに思いまして、私どもは、日ソの漁業協定が発効いたしまして漁船が出漁するに当たりましては、操業日誌の記載の方法も含めまして、六月から七月の間に、東京、札幌、稚内、釧路、八戸、境港、福岡その他の個所におきまして、協定内容の詳細につきまして、各漁業種類ごとに説明会を開催をいたしまして、十分趣旨の徹底を図ったつもりでございます。その後におきましても、私の名前で指導通達を各関係漁業団体、それから指導を担当しております関係都道府県を通じまして漁業者にもお知らせをいたしているわけでございます。  もちろん、先ほど大臣からもお話し申し上げましたとおり、何分にも出漁漁船が多数にわたったこと、それから急いで出漁された漁船が相当あったこともございまして、必ずしも十分末端まで趣旨が徹底したかどうか、これは反省をしなければならない問題だというふうに考えております。  なお、その後問題が起こりまして、先ほど大臣がお答え申し上げましたとおり、ナホトカにおきまして日ソの専門家の会議を開きまして、いろいろ打ち合わせをした結果等につきましても、八月下旬に関係漁業団体、関係都道府県を通じまして指導の徹底を図っております。また、今回モスクワにおきましてさらに交渉をいたしましたので、それらの結果につきましても、できるだけ早く末端に徹底をいたしたいというふうに考えております。  私どもも努力は今後とも続けまして、なるべく正確に協定内容その他記載事項の内容等が末端まで伝わるようにしてまいりたい、かように考えております。
  153. 野村光雄

    ○野村委員 次に、この際ちょっと大臣にお聞きしたいのですが、御存じのとおり、水産庁の方から日本で起きております罰金のいろいろな状況を掌握なさいまして、私どもとしては、ソ連日本に科してくる罰金金額の根拠、こういうものが非常に何か統一されてないような感じです。われわれは具体的にはわかりませんから、そういう感じで受けとめておりますけれども。たとえて言うと、最近あったのは、カニが十匹で百万の罰金が来たとか、また百万の罰金が時計を三個やったら三十万になったとか、いろいろなことが言われているわけです。時計によって三十万に少なくなったことがよかったのかどうか、それは別として、いずれにしても根拠は非常にあいまいな根拠であるというふうに私たち認識しております。  大臣としては、いま日本漁船に科せられている罰金の根拠に対してどういう認識をしていらっしゃるのかということ、これが第一点。
  154. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 罰金等の基準、これは国際慣例としてこれを公表しない、こういうたてまえになっておりますから、基準を示せということをソ連側に要求することはできないことでございます。しかし、言えることは、一定の基準がある。そうすると、その基準に沿うて、同じような違反の事案というものは公平にそれが処理されなければいけない。一つの基準があって、同じような事案でいろいろ罰金の量刑が大幅に違うというようなことは、何といってもこれは常識に反することであり、納得できないことでございます。  そこで、先般モスクワにおきまして、長期協定交渉に参りましたところの松浦海洋漁業部長がその点をソ連側に強く求めまして、その点についてはソ連側も十分末端の取締係官に徹底をするようにする、こういうことで向こう側改善をすることになったわけでございます。
  155. 野村光雄

    ○野村委員 次に、大臣にこの機会にもう一つお尋ねいたしたいのでありますけれどもソ連の最近のこういう日本漁船に対する罰金攻勢というものが非常に数多くなってきております。そういうことで、日ソ間のやはりどこまでも連携を密に保つためにも、この際思い切ってナホトカに水産庁から関係係官でも常駐させて、頻繁に起きてくるこういう罰金問題に対して、現地で即刻連携がとれるような体制をとるという、こういう必要があるのではないかと私は思うのでありますが、係官の当分の間の派遣、常駐というものはお考えになっていないのかどうなのか。
  156. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 野村さん御指摘のように、私もその必要を認めまして、ナホトカに日本の係官を常駐させたいということで、ただいま外務省を通じましてその後、交渉中でございます。ぜひ実現をしたい、こう考えております。
  157. 野村光雄

    ○野村委員 前向きな御答弁をいただきましたが、ぜひ関係漁民のためにも一日も早くひとつ常駐させて、時間をかけないで、また形式的なことでいたずらに紛争が起きない、これを早急にひとつ御手配をいただきたいと思います。  最後に、時間が迫ってまいりましたので海上保安庁にお伺いをいたしたいわけでありますが、御存じのとおり、先ほど来から出ておりますとおり、日本漁船がこういう大幅な罰金攻勢を受けておるわけです。一方、海上保安庁の立場としては、今度はソ連漁船を監視、取り締まりをしていただく立場であります。しかるに、二百海里の問題、十二海里問題が先般国会内で大きな国民の課題になってまいりました時点から、私は再三にわたりましてこの席上で、やはり二百海里に対応できる海上保安庁の大幅な思い切った装備、警備の拡大を図っていくべきだ、これを早急にやるべきだ。さらに、それとあわせまして、特にソ連に対してのロシア語の通訳官が現地に非常に少のうございます。私が根室に参りましても、たった一名しかおりません。これだけ頻繁に起きるような紛争の中で、ソ連語でしゃべれるのがたった一人。しかも、それは海上保安庁にいるだけで、まだとても船に乗って行く余裕がない、こういう状況でございます。こういう情勢の中で、いまだに混迷したこういう中で、装備の拡大または通訳官の増員、こういう配置づけがきちっとなされていないようでありますけれども、これの現況はどうなっているのか。さらに、今後の対応策について伺いたいと思います。
  158. 向井清

    ○向井政府委員 お答え申し上げます。  先生いま御指摘のように、わが海上保安庁といたしましては、八月十六日のソ連漁船に対する取り締まりの開始以来、実際には九月の十八日からソ連漁船わが国漁業水域において操業を開始したわけでございますが、鋭意取り締まり体制を整備いたしまして、これに対処をいたしております。  その結果といたしまして、立入検査の件数二十件、検挙件数四件という実績も上がっておるわけでございますが、警備体制そのものの内容を申し上げますと、現在ございます三百十隻の船艇、三十五の航空機というものを重点的に当該海域に配備いたしまして、全管区挙げましてこれに応援をして、一生懸命体制の整備に当たり、取り締まりに当たっておるというのが実情でございます。  現在のところ、非常な困難はございますが、一応円滑な業務処理が可能になっておりますけれども、やはり今後長期にわたりましてこのような警備体制を継続することには困難があることは当然でございまして、先生指摘のように、やはりここで抜本的な体制の整備ということがどうしても必要になるわけでございます。  海上保安庁といたしましてもその点に留意いたしまして、すでにその整備に乗り出しているわけでございまして、五十二年度当初予算におきましては、計上された分として、ヘリコプター搭載巡視船一隻、これは旧船の代替でございます。それから、三十メートル、三十ノットの新しい高速巡視艇二隻、このうち一隻は代替でございます。それから、大型航空機一機、中型ヘリコプター一機というものが五十二年度当初予算に計上されております。それから、中型飛行機一機も計上されております。  それから、さらに情勢の推移によりまして補正予算におきまして成立した分といたしましては、ヘリコプター搭載型の巡視船が一隻、それから新しい型の新鋭巡視船でございますが、千トン型の巡視船五隻、それから三十メートル、三十ノットの高速巡視艇二隻、大型飛行機二機、中型ヘリコプター二機というものが増強されることになったわけでございまして、これらを合わせますというと格段の警備体制の充実が図られることになったわけでございます。  今後の問題といたしましては、このような五十二年度予算、当初予算並びに補正予算で整備しましたような種類の有効適切な船艇、航空機の種類につきまして、情勢の推移を見ながら積極的に財政当局とも折衝して整備に努めてまいりたい、このように考えております。  それから、御指摘ございました通訳の問題でございますが、確かに取り締まりに当たります際にはソ連語に堪能な者がいませんというと取り締まりの実が上がらぬということは当然でございますので、海上保安官の中にそのような者を急遽養成いたしまして現在全体で九名おります。この九名はもうすでに取締船に乗りまして、海上においてソ連船に乗り込んで取り締まりに当たっておるわけでございます。それからさらに、今後の問題といたしましては、東京で五名の人間について集中的な教育を行っております。さらに、海上保安大学校という学校が海上保安庁にございますが、これにおいても特別の講座を設けてロシア語の教育を充実しておる。それから、今後の問題といたしましては、五十三年度で約二十五名ばかり養成をするということでいろいろ検討を進めておるところでございます。  この通訳の問題につきましては、先ほど申しましたように、相手方の船に乗り込みまして実際の取り締まりをやりながら通訳をする、しかも、その乗り込みます際には外洋の波が荒い海洋でもって立入検査をするわけでございますので、通常の通訳というわけにはまいりませんで、やはりどうしても海上保安官としてのロシア語に堪能な者を養成するということが必要でございますので、その線にのっとりましてわれわれとしてはいま申し上げましたような線で鋭意努力をしておるということでございます。
  159. 野村光雄

    ○野村委員 いま海上保安庁から、装備の増強をいま計画中である、ロシア語を大学でいま一生懸命学生が勉強している最中だ、こういう、われわれから言うと気の長いような、遠くなるような対応のように聞こえるのですが、御存じのとおり、もうすでに約三百隻近く日本としても許可を与えているわけでしょう。いままで聞くところによりますと、約三十数隻、その中で検査したのはわずか十一隻ですか、その十一隻のうち四隻違反漁船があったわけでしょう。それが今度近い将来、魚群がどんどん押しかけてくるようになりますと、許可いたしました約三百隻がどっと漁場に、ソ連漁船が一挙に来たときにどうするんですか。いまはわずか三十隻くらいしか来てないからまだいいけれども日本の方は遠慮なくどんどん取り締まられて、片っ端から罰金をとられているのですよ。わが国の方は巡視船は少ない、乗り込んでみてもソ連語でしゃべる通訳官がいない、いま大学に行っているんだ。船はもうすでに入っている、漁業交渉はもうできて操業はもう開始しているんでしょう。魚群さえ来れば入ってくるんでしょう。いまは角群が来てないから、三十隻だからのんびりあなたしてらっしゃいますけれども、いつ大挙して、許可した二百、三百の漁船がなだれ込んでくるかわからないのですよ。それに二名や三名の通訳官でどう対応するのですか。  こういう日ソ漁業交渉の中でやはりいろんな問題が変わってきたわけですから、それに対応する対応策が、海上保安庁としては全くもって現代の急務に適応しまい、私はこう思っているのですけれども、いつをめどとして、昭和何年何月をめどとして何名まで確保できるのか、また五十二年に予算化いたしました船というのは実際現地で警備につけるのは一体いつの時点なんですか、そういう点をもう少し具体的に御答弁いただきたい。
  160. 向井清

    ○向井政府委員 お答えいたします。  先生いま御指摘のように、現在ソ連漁船は連日ほぼ三、四十杯来ておるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、九月十八日から現在までの間に海上保安庁の船艇、航空機で視認いたしました隻数の累計は六百七十一隻ということで、一日、平均いたしますと二十隻でございますが、最近少しずつふえておるということでございます。  これに対しまして、立入検査実施件数は先ほど申しましたように二十件でございます。これに対して、検挙四件という数字が上がっておるわけでございますが、やはり外洋における立入検査というのは技術的になかなか困難な問題がございます。海上保安庁といたしましてもいままで港内におきます停泊船の立入検査というものは常時やっておりましたが、外洋における立入検査というものは余り経験等もございません。今回のこういう事態になりまして、われわれとしてもその辺の事情を相当いろいろ考慮して準備をしたわけでございます。いま現場の職員としても非常に士気が高く一生懸命やっておりますが、ようやくこの外洋の立入検査になれかけてきておるということでございまして、これからはいままでより以上の能率を上げてやっていけるのではないかというふうに考えております。  そうは申しましても、確かに船艇、航空機の数等、先ほど若干申しましたけれども、まだまだこれらの整備というものが必要でございまして、五十二年度に予算化しましたものについても五十三年度ないし五十四年度に船なり航空機ができてくるということでございますので、まだ若干その間がございますが、その間はさらに現場の努力によりまして先ほど申しましたような立入検査の励行あるいは違反があった場合の検挙の励行ということに努めてまいりたいと思います。  また、ロシア語につきましては、先ほど申し上げましたように、現在九名の者が当該海域に張りついておりまして一生懸命やっておるわけでございます。これにつきましては、先ほど申しましたように、やはり外部から急遽間に合わせるというわけにまいりませんので、海上保安官としてのロシア語堪能な者の養成ということに努力をするということで、これはもうできるだけの努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  161. 野村光雄

    ○野村委員 時間でございますので、以上で質問を終わります。
  162. 金子岩三

    ○金子委員長 瀬野栄次郎君。
  163. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 漁業水域に関する暫定措置法の一部を改正する法律案について、農林大臣並びに運輸省関係当局に質問いたします。  本法審議にあたり、農林大臣に最初にお伺いいたしますけれども、本年六月十日、日ソ漁業暫定協定の発効以来九月末日までの約百日間において、ソ連水域内においてソ連監視船の臨検を受けて罰金を徴収されたわが国漁船の隻数は一道十四県に及び、すでに九十五隻、たびたび論議されましたが、その金額は約八千四百二十六万三千円に達しておることは御承知のとおりであります。一方わが国漁業水域内において拿捕したソ連漁船は四隻で、その担保金が二百万円となっておりますけれどもソ連監視船による罰金徴収はいかなる基準によるのか。これは後にも関係しますのでまずお伺いするわけですが、政府認識を私もあえてお聞きしておきたい。というのは、ソ連側が一方的にやっておるものですから、いろいろ罰金の額がどうも納得いかない点が多いので、ただいまも質問がありましたけれども政府ソ連罰金についてはどういうふうに見ておられるのか、その点を大臣からまず最初にお伺いしておきたい。
  164. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ソ連は行政罰に基づく罰金刑、それに対して不服を申し立てた場合におきましてはそれを裁判において決する、こういう二段構えのやり方をやっておるわけでありますが、その行政罰における罰金基準、これは明確でございません。わが方におきまして今回の法律が通過した場合におきまして政令基準を決めることになっておりますが、これも公表をいたさない国際慣例になっております。したがいまして、その基準ははっきりいたしませんが、しかし少なくとも一定の基準、それに該当するような違反事犯というようなものは同様の処罰を憂くべきことがこれは当然のことでございます。その一定の基準に、同じような事犯が起こっているのに、それがまちまちな、非常にばらついた取り扱いを受けておるということは、何としてもこれは承服ができがたい、このような観点から、今般モスクワにおいて日ソの交渉が行われました場合において、松浦海洋漁業部長から強くこの点を申し入れをいたしました。ソ連側も今後基準の厳正な、適正な適用、運営をやるということを約しておりますので、改善をされるものと期待をいたしておるところでございます。
  165. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 厳正、適正な処置をするということでございますが、それでは大臣、一ルーブルは現在日本円で幾らと政府は見ておられますか。御存じのように、ソ連のルーブルは国際通貨ではないのでなかなかわれわれもはっきりしておりませんが、従来の例で言うと、おおむね一ルーブルは四百円と言われますけれども、われわれは実質三百五十円ぐらいじゃないかと思っておりますけれども、幾らというふうに見ておられますか。
  166. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 円の値打ちも上がっておりまして円高になっております関係で、三百六十五円程度であるそうでございます。
  167. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 一ルーブルは一応三百六十五円として、それでは、御承知のように、ソ連側罰金というのはソ連最高幹部会で決めて、そして一万ルーブル以内として、ソ連のいわゆる取締官の権限で徴収できる、かようにわれわれは認識いたしておりますけれども、この点については間違いございませんか。
  168. 岡安誠

    岡安政府委員 そのとおりでございます。
  169. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、今回ソ連側拿捕の中で一隻当たり最高金額が四百九十八万三千円というのがあります。中には最低三万円というのもありますが、この罰金を徴された船、これは私は、いま岡安水産庁長官がそのとおりとおっしゃいましたが、ソ連取締官の権限を逸脱したものではないか、かように思うわけであります。すなわち、一ルーブルが三百六十五円、仮に四百円にしてもこれは当然オーバーいたしております。これに対しては日本政府はいかなる対応をしておられるのか、この点も明らかにしていただきたい。
  170. 岡安誠

    岡安政府委員 いまお話しの四百万に近い罰金を払ったケースでございますが、二つ理由があると思います。一つは、そのケースにつきましては罰金のほかに、違法に魚をとったということで損害賠償の金額を加算されてその金額になった、こういうふうに向こうから言われていることが一点ございます。それからもう一点は、当初におきましてはソ連側はルーブルと円との換算につきまして公定レートによらないで、たとえば四百円なら四百円というような換算をして徴収をしてきた例がございます。  後者の点につきましては、これははなはだおかしいわけでございますので、強く私どもが申し入れまして、ナホトカ会議の結果、自後公定レートでもって換算をして罰金を科すというふうに話し合いがついております。  そういうことから、先生指摘のように、三百九十何万円というような罰金といいますか、金額が科されたものというふうに推定されます。
  171. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そうしますと、一ルーブルは大臣は三百六十五円ぐらいであろうということで、これは国際通貨でないのではっきりしない点もありますけれども、円高の関係もある、こうおっしゃいましたが、仮に四百円としても、いわゆるソ連取締官の権限というものは一万ルーブルですから四百万です。そうすると、四百九十八万三千円ですから、九十八万三千円は当然権限外にとっている。返してもらわなければいかぬ。また、仮に三百六十五円とすれば、百万円以上の金を返してもらわなければいかぬということになるわけで、この辺がどうも納得がいかぬわけですが、午前中からいろいろ審議をしてきたけれども、あえてこの点を私つけ加えてお尋ねするのですけれども、これはまた交渉されるわけですから、日本の方へ返すということになるのですか、そういうふうに理解していいのですか。
  172. 岡安誠

    岡安政府委員 先ほど三百九十何万というのは間違いで、四百九十何万でございますが、それは先ほどお答えいたしましたとおり、一万ルーブル以下の罰金、それで科されたほかに、違法に魚を採捕したということを理由にいたしまして損害賠償の金額を加算されました結果、四百九十何万という金額を科されたというふうに私どもは聞いております。したがって、ソ連取締官が一万ルーブルを超えまして罰金を科したものというふうに一概に断定するわけにはまいらないというふうに思っております。
  173. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 どうも納得いかぬ答弁だけれども、それならば、あとたくさん問題がございますので、いまの件については、というふうに聞いておりますじゃ困るのです。今後、例を引くし、やはり相互主義に基づいてはっきりすべきだと思いますので、その点について中身をきちっとひとつ検討されて、はっきりしたデータを資料として出してもらいたいと思う。いいですか、どうですか、長官。
  174. 岡安誠

    岡安政府委員 どうも、と聞いておりますと言ったのは、私、係の者から聞いたからそう申し上げたわけでございますが、このケースにつきましては調書の写しをもらってきております。それによりますと、損害金といたしまして、それぞれ違法に採取した魚の尾数に損害金を掛けました金額、それをやはり内容として記載をされているわけでございます。そこで、このケースにつきまして、一応私ども、もちろん推定にしかすぎませんが、調書の内容を見たところ、ソ連の係官が幹部会令等に違反をして不当に高い罰金を科したということは言えないと思います。
  175. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 その点についてはまた後日その資料を見せていただいて、私、分析したいと思いますけれども、後々にまた影響する問題ですから。  次に、運輸省にお伺いしますけれどもわが国漁業水域におけるソ連漁船違反を見ますと、十月一日に中型まき網船が百六十三トン、十月三日は同じく八百十トンの船が、また十月九日、大型トロール船が三千三百四十七トン一隻、十月二十日に中型まき網船が五百四十五トン一隻、この違反内容は四隻とも操業日誌の一部不記載になっておりまして、担保金もすべて五十万円になっておりますが、トン数が百六十三トンの場合も三千三百四十七トンの場合も同じとはどういうわけか。これは当然差があっていいじゃないか。小さい船も大きい船も同じ担保とは、これはどういうことか、私はこう思うわけです。もちろん操業日誌の一部不記載ということでありますから、大きくても小さくてもそういう点で共通、こういうふうに考えておられるのか、その点がどうも納得いかない。すなわち、わが国ソ連漁船に対していわゆるソ日漁業暫定協定第六条3、日ソ協定では第七条3に相当するのですが、これに基づいてボンド条項の趣旨に即して処置しておるわけですけれども担保金を取る基準に問題があるのじゃないか。本法が近く成立するということで、それまでは遠慮しておるのか何か知らぬが、この点が納得いかないけれども、運輸省の場合は保安官でしたか、この点はどういうふうに認識しておられるか、お答え願いたい。
  176. 向井清

    ○向井政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のように、いままで四件の検挙件数がございますが、そのいずれも漁業日誌の一部不記載ということで、それぞれにつきまして五十万円の担保全を課しまして、うち三件はすでに支払われておるという経緯をたどっておるわけでございますが、この担保全の額五十万円と申しますのは、やはり罰金との対応という問題と違反行為の種別の問題と、この二つに着目して決めるわけでございまして、先生おっしゃいましたようにトン数がかなり違うのに何で同じかという問題でございますが、まず、その違反行為の種別という点で見ますと、やはり一種の形式犯として同じ態様をなしておりますので、これはどうしてもやはり同じような額になってしまう。それから、五十万円そのものの額につきましては、これは罰金最高額一千万円ということになっておりまして、それとの対応もございますし、先ほど申しましたように、形式犯ということから考えましてこの辺のところが妥当という判断をいたしたわけでございます。
  177. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 納得いかないけれどもまあ一応聞きおくとして、さらに海上保安庁にお尋ねしておきますけれども漁船違反に伴う拿捕隻数がソ連に比べてわが日本の方はかなり多いわけですね。違反事実が、ソ連の方の違反が少なくて日本漁船拿捕が多い。事実ソ連の方のそういった違反が少なければこれはもう当然でありますけれども、国民の批判というものは、取締船が不足しているとか、あるいはまた活動不足じゃないかとか、こういったこともよく批判されているわけですね、素朴な質問ですが。しかし、政府側に言わせますと、漁船割り当て隻数が、ソ連側から日本に対しては六千二百五十五隻に対して、日本の方からソ連に対して二百七十六隻と隻数も少ないし、片や九月からだけれども日本は六月からいろいろやっているので単純比較はできないというような意見もありますけれども、先ほどもいろいろ討論があったので詳しくはもう答弁は必要ありませんけれども、これに対しては十分対処するだけの取り締まりをしてもらいたいし、来年度予算にはどういうような要求をされておられるのか、その点、若干補足して御説明いただきたい、こう思います。
  178. 向井清

    ○向井政府委員 お答え申し上げます。  ただいまお尋ねの、まず取り締まり状況でございますが、先ほど来お答え申し上げておりますように、九月十八日、ソ連漁船があらわれまして操業を開始いたしましてから立ち入り検査の件数二十件でございます。その間、ソ連船が一日平均二十隻くらいのものが視認されておる。最近は三、四十隻にふえているという状況でございますが、われわれといたしましては極力許す限りの立ち入り検査を実施しておる。検挙につきましては、もちろん違反がなければ検挙しないということでございますが、いままで、先ほど申しましたような違反が四件摘発されておるということでございます。  それから、この際ちょっと申し上げておきたいのは、先ほどちょっと御説明申し上げましたが、やはり外洋における立ち入り検査というのは予想以上に困難でございます。これは停泊船でございますと舷梯というものをおろしまして、そのはしごを上がって大きな船に乗り移るということが可能でございますが、何せソ連漁船は小さなものでも数百トン、普通のもので二、三千トン、大きな母船になりますと一万数千トンというものでございまして、これに対して立ち入り検査を外洋で実施することはかなりの技術的な困難がございます。現実にはなわばしごをおろしてもらいましてそれに飛び移って、非常に揺れる波の中を飛び上がっていくということを繰り返しているわけでございまして、現場の職員としてはそういう困難な事情に耐えつつ、きわめて高い士気のもとにいままで二十件の立ち入り検査を励行してまいったということでございます。  今後の問題としましては、やはりだんだんなれというものもございますし、方法についてもいろいろ研究いたしておりますので、いままで以上に能率が上がるのではないか、このように考えております。  それから、今後の船艇、航空機の整備につきましては、すでに五十二年度当初予算、五十二年度補正予算におきまして大型巡視船、高速巡視艇、大型飛行機、中型ヘリ等の最もこういう取り締まりに適しました新鋭の船艇、航空機の整備が始まっておりまして、このペースを今後も続けましてなるべく近い将来において警備体制の完備を図ってまいりたいと考えている次第でございます。
  179. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次は、岡安水産庁長官にお尋ねしますけれども日ソ漁業暫定協定第七条3にはいわゆるボンド条項、すなわち「適当な担保又はその他の保証が提供された後に遅滞なく釈放される。」ということですが、ソ連監視船の罰金徴収の根拠は、先ほども大臣に答弁していただきましたが、この規定によるものではなくて、同協定第六条によっておるわけです。すなわち、第六条の「ソ連邦の法律に従い責任を食う。」というこの規定によりまして、昨年十二月十日付のソ連最高会議幹部会令第七条に基づく行政罰を適用しております。そこで、日本船はこの罰金の徴収を拒んだ場合、許可証を取り上げられたり連行されたりいろいろな不測の事態を避けるために、ソ連の行政罰適用に対して日本漁船が自衛手段として現金を所持して支払っているというが、これでは外為法上の問題にもなりかねないと思うわけでございますが、何か別のよい手段はないのか、お尋ねしたい。
  180. 岡安誠

    岡安政府委員 ソ連漁業水域内で操業しております日本漁船は、先生指摘のとおり万やむを得ず自衛手段といたしまして現金を所持をしながら操業しておる例が多いわけでございます。もし、これをやめるということになりますと、洋上において直ちにたとえば罰金刑を科された場合に支払いができないということになり、そういたしますと、長い間ソ連側に拘束をされるということになるわけでございます。そうなりますと、もちろん本人が不自由であるばかりでなく、操業をしないことによります経済的な損失、これも莫大に上ることが考えられるわけでございます。したがって、現状は万やむを得ない緊急避難的な措置であるというふうに私ども考えているわけでございますので、事情御理解をいただきたいと思っております。  なお、洋上におきます現金の支払いにかえまして何か簡便な方法はないかという御指摘でございますが、目下そういう方法につきましてもソ連側と協議をいたしております。ただ問題は、そういう支払い方法等のルートの中にソ連側の機関等が入ってまいりますと、そのソ連側の機関に速やかに処理してもらえれば別でございますけれども、何かの事情でもって速やかな処理ができかねるということになりますと、結果的には勾留される時間が長くなるということにもなります。そこで、速やかに処理ができる、なおかつ現金を処持しないで済む、そういううまい方法があるかどうか、これはなかなかむずかしい問題かと思いますけれども、なお検討はしてまいりたいと考えております。
  181. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この件については、水産庁長官から答弁いただきましたが、重要な問題だけに私はあえてこれ以上見解を求めませんけれども、将来の問題としてさらにソ連側とも交渉を重ね、慎重に検討していただきたいことを強く要求しておきます。  次に、第二十四条、第二十五条にかかる問題ですけれどもソ連漁船拿捕した場合、担保金を徴収したら釈放するというその時点で、出頭時期、場所を明示することになるわけでございますけれども、その後の対応について、一つは出頭しない場合、二つには出頭した場合の二つがあるわけですけれども、この点を会議録に残しておきたいので、ひとつ国民にわかりやすく簡単に説明をいただきたい。
  182. 岡安誠

    岡安政府委員 まず、担保金を徴する際には、御指摘のとおり次回の出頭期日を告げまして、それから違反者釈放するわけでございます。御指摘の、決まりました出頭期日に出頭がなかった場合担保金はどうなるかということでございますが、担保金はその日の翌日から一カ月を経過した日に国庫に帰属をするということになります。それから、定められた期日までに出頭した場合には、当然担保金は返済可能でございますけれども、その後の刑事手続の進行ということもございますので、刑事手続の進行が完了するまでの間は担保金は引き続きわが国の側に保留をされます。したがって、すべてが終わったときに返還がなされるということになるわけでございます。
  183. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 担保金はその日の翌日から一カ月後に国庫に帰属するということでございますが、歳入科目はもちろん雑収入となるわけですか、確認のためにお聞きしておきます。
  184. 岡安誠

    岡安政府委員 国庫収入になるわけでございまして、恐らく雑収入というふうに処理をされるというふうに思います。
  185. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、「担保金等の提供による釈放等」という第二十三条の二に「提供すべき担保金の額」2として、「前項第二号の担保金の額は、事件の種別及び態様その他の情状に応じ、政令で定めるところにより、主務大臣の定める基準に従って、取締官が決定するものとする。」となっているが、政令で定める基準内容についてお伺いしたいのですけれども、御承知のように、中身のほどは国際信義に関するけれども、どういうことを政令で考えているかということについては当委員会で大臣から答弁できると思います。たとえば、罰の重い者といえば無許可とか禁止事項の違反、漁具、漁法の違反、船の大小とか、初犯か累犯か、こういった罪の態様でも違ってくると思いますし、また操業日誌不記載等の形式犯もあると思います。これら基準となる事項はどう考えておられるのか。その中身については、これはもちろん当然国際的な問題でございますから答弁の必要はありませんが、どういうことを考えて検討しておられるか、この点を本席で明らかにしていただきたいと思う。
  186. 岡安誠

    岡安政府委員 いまお尋ねの、具体的に政令でどういうことを定めるつもりかという御質問と承りますが、御指摘のとおり、私どもこの政令におきましては、たとえば違反行為の類型、それから初犯、累犯の別、それから不法に漁獲いたしました漁獲物の量などを担保全額の決定要素として主務大臣基準を定めなさいという趣旨のことを政令に記載をいたしたいと思っております。
  187. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、担保金基準の中身についてはいまも若干触れられましたけれども、相手国に対する配慮もあり、また明らかになし得ない点は十分了解しますが、あくまでも相互主義に基づいて、わが国漁船ソ連に支払っている罰金と均衡がとれるものであるべきだと思う。この点は冒頭から質問してまいりましたように、私は強く言いたい。いわゆる相互主義に基づいたことを、今後の交渉に当たってあくまでも踏んでいただきたい。また、処理の方法についてもぜひそうしてもらいたいと思うのですが、大臣はこの点は十分心にとどめて対処してもらいたいと思うが、あなたの見解をお伺いしたい。
  188. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ソ連日本の場合は、先ほど申し上げましたように、制度も違うわけでございます。向こうは行政罰、罰金が主体であり、そして不服を唱えた場合に裁判にかける。日本の場合は行政罰でございませんで、刑事手続の進行を担保するという意味で担保金を徴収するということでございますから、罰金担保金の額というものは本質的に違うわけでございます。しかし、私どもは、瀬野先生のおっしゃることも十分わかるわけでございますから、今後慎重にその点は検討してまいりたい、こう考えております。
  189. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大臣は慎重に検討してまいりたいということですが、国民もこういった点については大変批判的な目で見ておりますので、わが国ソ連に対して厳しい態度で臨まれることについて、あくまでも相互主義に基づいた均衡のとれたことになるように最大の努力を払っていただくように重ねてお願いをいたすわけでございます。  そこで、さらにお伺いしておきますが、今回の本法の政令委任事項として、担保金の額を定める基準の考え方とかはいま御答弁いただきましたけれども改正法案によると、主務大臣を定める規定であるとか、取締官に関する規定、ボンド制度を適用しない外国人に関する規定担保金等を提供する期限等、いろいろ政令に委任しております。どれもこれも重要な問題があるのですけれども、これについては、先ほど政令事項が政府から配られましたけれども、この中で、特にボンド制度を適用しない外国人に関する規定、それから担保金等を提供する期限、こういったことについてどういうふうにお考えであるか、水産庁長官から重ねて答弁をいただきたいと思います。
  190. 岡安誠

    岡安政府委員 まず、法二十三条一項ただし書きでございますが、「政令で定める外国人は、当該外国周辺水域において拿捕された我が国漁船及びその乗組員に対し早期釈放措置を講じていないと認められる外国に属する外国人を定める」、こういうふうに政令委任事項に書いてございます。これは要するに、拿捕された場合に適当な担保等を提供すれば早期釈放されること、これは一般的な国際法といいますか、慣習になっておりますけれども、あえて相手国がそういうことはしない、自分のところは担保金提供しても早期釈放するつもりはない、正規の裁判にかけてじっくるやるのだというようなことを言われた場合には、わが国もやはり相互主義でございますので、そういう国の人間、いわゆるそういう国の外国人につきましては、この担保制度を適用して早期釈放することはしないつもりでございますので、そういう外国人に対しましてはこのただし書きによりまして指定をいたしまして、担保金を徴収しないで正規の刑事手続に入るということを考えておるわけでございます。  それから、提出期限等でございますが、担保金または担保提供を保証する書面提出期限は、大体、告知をいたしました日の翌日から起算いたしまして十日間ということを考えております。したがって、十日以内に現金またはそれを支払うということを保証する書面等を提出してもらえば、この制度を活用いたしまして早期釈放するというようなことを考えているわけでございます。
  191. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、日本漁船拿捕された問題等で、先ほどわが党の同僚委員の野村委員からもいろいろ指摘されたので、私はこれに重複をして申し上げようとは思いませんけれども、いわゆる操業日誌関係違反だとか、こういった単純な形式犯がかなり多いということでございますね。この中身を見ると、イカ釣り船等がほとんどであるというようなことが言われております。操業日誌を簡単にしたらどうかということも当然でありますけれども、御承知のように、ことしの八月ソ連のナホトカで開催された日ソ漁業専門家会議で一部改善措置がなされたけれども、その後かなり違反が起きているというのも事実でございます。  それで、私さっきからいろいろ質問のやりとりを聞いておりまして、私もソ連に三年ぐらいいたことがございますが、実際に相互主義の問題でも、いまも大臣おっしゃったように、なかなか国柄が違うというようなことでございます。  私は一つの案として提案しておきたいけれども日本で言ういわゆる模範定款例みたいな、こういうつづり方で、こういう様式で、こういうようなことが記載されていれば、もちろんロシア語と日本語と書いて、こういうものであれば違反ではないという、向こうにつかまっていろいろ問題になったときに、ソ連側に、君の方から出ている権威あるこのプリントを見せて、このとおり書いているの、だからこれは違反ではないというような、何かそういう模範定款例みたいなものをソ連側につくらせて、それによってきちっと書かせるというようなこと、つかまったときにはそれと一緒に見せる、そうすると向こうも納得するというふうにすればこれは単純明快にわかるわけですが、何かそういうことの交渉をして、漁民に、こちらの操業日誌と、向こうの示したこれならば間違いない、こういうふうにしてあればいいというのを、経費はわが国が出してつくってもいいわけですから、向こうがきちっと証明したものをつくらせて船に積み込んでいつも携行しておく、こういうふうなことにすれば相当問題が解決するのじゃないか、私はこういうふうにも思うわけです。また、こういう違反が挙がらぬのじゃないかと思います。もっともこの違反の中には、漁民も、いろいろかっこう悪いのをいわゆる操業日誌違反ということにしてあるのでふえている点もあるのじゃないかと思いますけれども、都合の悪いのは操業日誌不備ということで、これは漁民の報告によって数字がまとめてありますから、その辺もわからぬわけじゃない。その辺余り詳しく言いたくございませんが、そういったことで、やはり零細な漁民、いままでふなれでもあるし、つけるのがなかなかややこしいということでございますから、簡潔にして、何かそういったものを提示すればソ連も納得するというようなことにしたらどうか。そうしないと、通訳をつけると言ったって通訳もなかなか養成できません。私は、通訳は簡単にいかぬから、海上保安庁の保安官、または水産庁、農林省関係の監督官、そういった方たちが勉強して、なるべくしっかりやってもらいたい、こういうふうにお願いしたいわけですけれども、それも端的にはまいりません。何かそういったことで漁民を守るために努力していただきたい。一つの提案でございますけれども、どうでしょうかね、岡安水産庁長官、大臣からでも結構ですが。
  192. 岡安誠

    岡安政府委員 確かにいままでの違反の事例を分析してみますと、簡単な形式的なことにつきまして、それを守らないために罰金を科されるというような事案が非常に多いわけでございます。ふなれであるというようなことが原因の大半を占めるのではあるまいかというふうに考えております。したがって、私ども、周知徹底すると同時に、御指摘のように、できるだけ定型化いたしまして簡潔に記載ができるというような交渉をさらに進めまして、形式犯による違反というものの発生は極力防止していきたいというふうに考えておる次第でございます。
  193. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 一つの提案をしたわけですが、ひとつ十分検討されて、漁民がたくさん拿捕されて罰金刑を科せられないように最大の努力を、今後長く続く問題でございますので、知恵をしぼって対策を講じていただくように、重ねて強く大田にお願いしておきます。  最後に、二点お伺いいたしますが、日ソ漁業長期協定の締結について、日ソ漁業暫定協定及びソ日漁業暫定協定はともにその有効期限は御承知のように本年十二月末日までとなっております。また、一九五六年以来の日ソ漁業条約についても、ことしの四月二十九日、ソ連から条約廃棄の通告があったことも御承知のとおりであります。一カ年を経過して終了するということも、これはもう確定しておるわけでございます。  そこで、来年から日ソ及びソ日漁業暫定協定にかわって日ソ間の漁業秩序を維持するとともに、公海上のサケ・マス漁業のことが問題になってくるわけでございますけれども、こういった問題について、今後のスケジュール等を踏まえて、大臣はどういうふうに考えておられるのか。また、いわゆる両国の技術協力という問題もございます。先般の百日交渉というようなことから見ますと、相当長引く公算もございますし、われわれも大変心配しております。このことについてはいまから十分対策を講じていかなければならぬと思っておりますけれども、この点について、こういう機会に大臣からお考えをお聞きしておきたい、かように思います。
  194. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御指摘のように、現在の日ソ漁業協定並びにソ日漁業協定、これは一九七七年十二月末日までの暫定的な協定でございます。そこで、今後の日ソ間の漁業の安定的な発展を希望いたしまして長期協定を結びたい、こういうことで先般来モスクワにおいて交渉を行ったところでございます。  その結果、結論から申し上げますと、日ソ漁業暫定協定ソ日漁業暫定協定、これをそれぞれ一カ年間延長する、ただし、それに協議条項というものを書き加えまして、一九七九年のことにつきましては一九七八年の適当な機会、まあ十一月かそこらになるでありましょうが、その際に協議をして、再延長するかどうかということを協議をするという方式で、議定書の案文が最終的に合意されたわけでございます。この協議条項は、カニ・ツブ協定の先例にならったものでございまして、わが方としては、本来なら五年ぐらいの長期の協定にしたいという願望を持っておったわけでございますが、ソ側としては、この日ソ漁業暫定協定の基盤になったソ連最高会議幹部会令、これが国連海洋法会議の結論が出るまでの暫定措置である。この暫定的な幹部会令にのっとったものであるから、どうしても暫定協定の一年間の延長、こういうことにせざるを得ない、こういうことでそういう線で合意をしたわけでございます。  一方におきまして、それと並行をいたしまして東京でソ日漁業協定の交渉をやりました際に、イシコフ漁業大臣と私との間でモスクワ協定、東京協定に盛られていないことについて、ぜひ将来に向かって日ソの漁業関係を発展をさせたいというようなことから、協力協定を結ぼうではないか、こういうことで基本的に合意をしておるわけでございます。  わが方のその協力協定についての考え方は、一つは日ソ漁業共同委員会を設置をする。これは北西太平洋の漁業資源の科学的調査並びに評価、資源保存の措置等々について定期的に協議をしていく。それから、その上に立って漁獲量等も適正に決めていくということが望ましい。このようなことで日ソの間に漁業共同委員会を設置しようではないか、これが第一点であります。  第二点は、日ソ間において漁業問題に関する広範な漁業協力を進めようではないか。それは栽培漁業、増養殖漁業等の技術協力あるいは試験調査等の資料の交換、技術者の交流、それから冷蔵、保蔵あるいは加工等の分野における協力あるいは場合によれば合弁も考える。そういうような広範な日ソ間の漁業協力をやろうではないか。  第三点は、二百海里の外における公海上のサケ・マスの資源調査並びに資源の評価、また保存措置を考えながら持続的生産性を確保する限度において適正漁獲量を定めてやる、こういうことを協議をしたい。  こういう三つの柱を中心としたわが方の漁業協力案というものを提案をしておるわけでございます。  これに対するソ連側の案というものはまだ固まっておらないようでございまして、十分評価ができる問題であり、これを検討させてもらいたい、そして一九七八年の漁業クォータの交渉と並行して日ソの間の協力協定も交渉を進めようではないか、こういうことで合意をしたわけでございます。  サケ・マスの問題につきましては、アメリカ、カナダ、ソ連とも御承知のように母川主義を主張しておりまして、公海上におけるサケ・マスの漁獲の問題はなかなかむずかしい要素を含んだ問題でございまして、私どももしっかりした腹を決めて交渉に臨まなければならない、このように考えておるところでございます。
  195. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が参りましたので、これで終わりますが、いま大臣から力強い決意がございましたが、いまおっしゃったように、今後に残された問題としては、十一月の十日以降に交渉が始まるということでございますが、来年度の漁獲割り当て、それからサケ・マスの漁業の今後のあり方、きのうの松浦海洋漁業部長がモスクワから帰ってきたときの記者会見でもかなりソ連側は厳しい、しかも公海については禁止に固まりつつあるということで、何か大変われわれは不安がって見ておりますけれども、こういうふうな条件でございますから、大臣もよく御承知だと思いますけれども、いま日ソ共同委員会等三つのことについていろいろと今後やっていく、結構なことでございますので、どうか強力に進めていただいて、来年度いわゆる漁期前に決定しなければならない問題でございますので、サケ・マスについても公海において従来の六万二千トンが確保できるように努力をしていただくというようなことで、さらに努力してもらいたいと思いますが、その点、最後に大臣一言どうですか、十分対処していただけますね。
  196. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございまして、瀬野先生のお考えもよく承知をいたしておりますから、私も最善を尽くしてまいりたいと考えております。
  197. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 以上で終わります。
  198. 金子岩三

    ○金子委員長 津川武一君。
  199. 津川武一

    津川委員 ソ連がこの三月一日から二百海里を実施しまして、それから十月二十四日現在で日本漁船は百二十数隻、軍服を着ていかめしく乗り込んできたソ連取締官に点検され、監査を受け、倉庫を探され、こちらはびっくり仰天し、心臓がおののいて、あげくの果てに一億一千万円もの罰金をとられ、そのために家族も眠れない思いをしております。こんな思いはもう御免だ、こんな思いをするなら、いっそのことソ連の二百海里内に行かない方がいいと、規模の小さいイカつり船は二百海里内操業をあきらめて、ムラサキイカに集中しております。  私は、そんな漁民を励まし、漁民の苦情を聞いて、日本漁業を守るために当委員会の現地調査にも参加して、鳥取県の境港、また私自身の特別な調査として塩竈、気仙沼、八戸、大畑、青森県の小泊、釧路などに出かけていってみました。そうして、こうしてはいられないと思ったのでございます。  それは、北転船が漁場がなくなって減船をする、サケ・マス漁船も減船する、イカつり漁船まで減船を考えております。加工業者は材料の入手難と材料の値上げで企業縮小を余儀なくされ、首切りまで始めております。加工業者は公害防止のために造成した団地の負担に耐えられなくなっております。団地をつくった自治体も団地の施設の償還に事を欠くありさまになっております。一方政府は、ソ連に対して領土問題では正しい主張、必要な対策を具体的に打っていないというのが、私が接した漁民たちの意見でございます。そして、十一月十日からは日ソ、ソ日の暫定漁業協定を一年延期して漁獲高の割り当ての協議に入ろうとしております。そこで、提案された法案にも関連して、若干の質問をしてみたいと思います。  第一は、日ソ長期漁業協定の交渉、漁獲量の割り当てでございます。操業水域が七水域に限定されたのはこの間の日ソ協定で、東西カムチャツカ、西樺太などが除外されております。一方、ソ連国内法、これは七七年三月、ソ連漁業省令でございますが、北西太平洋のソ連邦沿岸に接続する海域における外国の漁労実施暫定規則、こういうのがありますが、これでは五十三度以北を操業禁止にしているだけで、東西カムチャツカ、西樺太などは操業禁止区域に入っておりません。これらの漁場は、日本にとってきわめて大事な漁場でございます。特に北転船にとっては、いまは千島海域が割り当てられておりますが、海底の状況が非常によくありません。魚群が非常に薄いなどから、東西カムチャツカの割り当てが非常に切実な要求になっております。知事会議漁業団体も、この要求はきわめて切実にわれわれに訴えております。  十一月十日から始まる日ソ漁業交渉の場で、この操業水域の拡大、改善が何よりも必要となっております。今度の十一月十日からの割り当て会議でこの点がまず第一に主張されなければならないし、がんばっていかなければならない一大眼目的な国民的要求でございます。これに対して政府はどうなさいますか。
  200. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 津川さんから、カムチャツカ東海域、西海域の現在北緯五十度線に制限をされておる今年度暫定協定の操業海域を、五十三度までソ連の法令によれば認められる余地が残されておるのであるから、この漁場は非常に重要な漁場であるから、漁獲量の問題とあわせて操業海域の拡張について最善を尽くすべきだ、こういう御意見でございます。私もその重要性を十分認識をしておりますので、最善を尽くして努力をしたいと思っております。
  201. 津川武一

    津川委員 この海域と関連して、もう一つは、スケソウと同じように関係漁民の心からの要求は、西樺太、沿海州の海域で操業できるようにすることです。これはイカでございます。イカは、割り当て量は割り当てられても、この海域で、特に間宮海峡でとれなくなると、どんなに削り当てられてもその割り当てられた分だけとれない。ここが八戸から下北半島、日本海全部における漁民の切実なる要求でございます。  この間、九月五日でしたが、八戸に行ったら、先生、見てごらんなさい、いまごろは間宮海峡のイカ釣りで満杯になって帰ってくる船が、それがとれない、仕方なくムラサキイカに行っている、ここはどうしてもスケソウと並んで確保しておかなければならない漁区、海域だ、こういう痛切な腹からの叫びでございます。この問題が解決されると、日本海沿岸のイカ釣り漁船のかなりのものが解決される、ここまで言っております。  この西樺太、沿海州の沿岸、わけても間宮海峡はどんなことがあっても主張しなければならないと思いますが、重ねてお答え願います。
  202. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 イカは、今年度全国的に非常に不漁でございます。北海道並びに本土太平洋岸、さらに日本海あるいは先般二百海里宣言をいたしました朝鮮民主主義人民共和国の二百海里海域、これもイカの漁場としては相当重要な漁場でございますが、いずれもことしはかつてないほどの不漁でございます。でありますから、すべてがこの日ソ漁業協定に基づく操業海域に原因があるというぐあいには言えませんけれども、しかし津川さんが御指摘になりました間宮海峡周辺の漁場は、イカ釣り漁業としては非常に重要な好漁場であることは御指摘のとおりでございます。私どもはそのことも十分認識をしておりますし、今度の来るべき交渉においては、これも一つの大きな改善を要する問題海域として努力をいたしたい、こう思っております。  この機会に申し上げておきますが、操業海域を拡張させる問題は非常に厳しい状況にあるようでございます。また、相互主義に立っております関係で、わが方が向こう側に漁場の拡張、開放を要求すれば、向こうもまた日本の沿岸、沖合いの漁場の開放を要求する、こういうような問題も絡んでまいっております。しかし、先ほど来津川先生から御指摘のありました漁場はいずれも重要な漁場でございますし、漁民諸君の要望も強い点でございますから、最善の努力を傾けたい、こう考えております。
  203. 津川武一

    津川委員 カムチャツカ沖の五十度から五十三度の区域の漁場と樺太の西、間宮海峡の漁場は非常に大事な漁場である。大臣もこの席上でも繰り返し繰り返し言っておるように、北西太平洋の漁業権は私たちの先輩が血と汗でかち取った権益だ。だから、権益を擁護する点においていささかもひるまないでがんばっていただかなければならないことを重ねて申し上げて質問を続けていきます。  これと関連して、アメリカ海域の漁獲量の配分についてでございます。ことし分について日本トロール協会と北転船の配分を、当初の北転船八万四千トンに三万トン上積みした。北転業界は十万トンの上積みを要求していたのにこうなったわけであります。来年分については、私のところに塩竈機船漁業幹部から、ことしの約十一万トンを二十万トンまで上げられないか、それを国会で要請してほしい、こう言われておるのであります。二十万トンあれば二次減船はやらなくても済みそうだ。もともと日本トロール協会と北転船の配分の仕方は、北転船が主としてソ連領海、日本トロール側は米側、こういうことでございましたが、ことしはこれが崩れてしまいまして、北転船の漁場がソ連から締め出されてしまったので、来年分については、農林省はこの間多少の配慮をしてくれましたが、この配分がまたかなり大きな問題になってまいりました。北転船に二十万トン程度の割り当てをどうしてもやるべきだし、母船式のもの、トロール協会のものと北転船はともに営まなければならない、こういう状況になっております。北転船に二十万トンやったとしても、日本トロール協会側はまだ百万トン前後の割り当てが残りますから、そちらの営業の方には大した影響はありません。それで深刻に影響を受けて深刻に苦しむ人たちに対して幾らかでもその苦しみをやわらげる意味において、北転船に二十万トンのベーリング海での漁獲量を割り当てることが非常に妥当になってまいりましたが、この点で御見解を承ります。
  204. 岡安誠

    岡安政府委員 いま御質問の、アメリカとの交渉において決まりましたクォータの国内配分、特にベーリング海域での大手トロールと北転船との間の配分の問題でございます。  これは先生指摘のとおり、昭和五十一年、割り当てを受ける前の年でございますが、それは総漁獲量で約百二十三万トン、そのうち北転船は四万三千トンでございまして、全体の三・五%が北転船のシェアであったわけでございます。五十二年は全体で約百五万トンの割り当てということになりまして、原則は過去の実績を基準として配分をするということでございましたけれども、お話しのとおり、北転船についてソ連海域における削減が非常にひどかったということもございましたので、その後配分を若干変更いたしまして、結果的には百五万トンのうち北転船の占める部分を約十二万五千トンといたしまして、シェアを三・五%から一一%に上げたわけでございます。  今後どうするかということでございますが、もちろん以上のような事情は余り変わっていないわけでございますので、そういう事情を勘案しながら、五十三年の割り当てにつきましてはアメリカとも折衝してみたいと思っております。  ただ、先生に御承知いただきたいと思っておりますのは、北方トロールの船は大体数千トンという規模の船でございます。ところが、一方、北転船は大体三百四十九トン型、こう言われておりまして、船型がきわめて小さいわけでございます。したがって、おのずからその操業の範囲は制約されるということも当然でございますので、そういうことも当然考えまして、五十三年の割り当てにつきましてはアメリカと折衝してまいりたい、かように考えております。
  205. 津川武一

    津川委員 五十二年分の割り当てで三万トンをふやしてもらうときには鈴木農林大臣に格段の決意をしてもらった。その割り当ては、北転船がソ連の漁場で主として操業しておったときの割り当てなんだ。今度事情が変わったのです。この変わった事情というのはきわめて深刻なんです。あのとおりカムチャツカの沖を締め出されておる。したがって、ここのところで当然割り当てに対して考えていかなければならない。なるほど水産庁長官の言うとおり、規模は小さい。北転船の皆さんに会って相談してみました。ベーリング海の西側の近い方から行ってくださると何の心配もない。しかも、こちらの方に大手のトロールまで来ている。このわがままをこのままにしておくのは、日本漁業界全体として二百海里でこれだけの打撃を受けたときに正しくはない、こういう意図なのであります。三万トンふやしたことはいいけれども、やはり二十万トンかそこいらに、彼らはどうでもこうでもしようがなければ十五万トンでもいいがと言っているが、ここがきわめて深刻なことで、これで二次減船が食いとめられると言っております。こうなってまいりますと、非常に大事なことなので、この点はもう一回重ねて大臣から答えていただきます。
  206. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私も状況が大きく変わってきておりますことを認識いたしておりますし、北転船等の立場というものも、非常に苦しんでおられる状況も心得ておりますので、事情を十分しんしゃくいたしましてこの調整にはできるだけのことをいたしてまいりたい、こう思っております。
  207. 津川武一

    津川委員 北転船の希望と苦しい現状をよく存じて、それにこたえていただける、そのつもりである、こう解釈していいですか。
  208. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 そういう認識、北転船の立場というものを十分承知しておりますから、私としてはこの配分には十分な考慮を払ってまいる考えでございます。
  209. 津川武一

    津川委員 次に、ソ連の二百海里内で操業しておる日本漁船拿捕罰金などについて少しお伺いしますが、本当に漁民は困っています。行くと、最初に出るものはこの問題だ。それで、停船命令を受けて、監視官が船に入ってくる。倉庫も探される、材料箱を見せろと言われる、出してやる。相手はソ連という国家、こっちは、イカ釣り船はたった五十トン以下の小さな船なんだ。それも一家だけで行っている。これが現状で、何とかならないかということがきわめて痛切な腹からの叫びなのでございます。  ここで非常に問題になって、彼らが言うのも無理はないと私も思いますけれども罰金百万円と言い渡されて腕時計三つ献上したら三十万円になったというのですね。こういうことが出てきたらどうなるかということを非常に心配するものでございます。ソ連罰金基準というのは、こういうふうに腕時計三つで百万から三十万円に変わっていいのか、ここのところはきわめて大きな不審であります。もし、こういう事実があるのでしたら、政府もこの点はきちんと明らかにして、まず日本国民の不審を取り除かなければならぬと思いますが、この点はいかがでございます。
  210. 岡安誠

    岡安政府委員 いま御指摘のような事実があったかどうか、私ども聞いておりません。しかし問題は、本日何回となくお答えをしておるわけでございますが、ソ連罰金は行政罰で、現場の取締官が即決で決めているというのが現状でございます。したがって、どういう基準でどういう罰金を科しておるかということは、これはなかなかつまびらかになるはずのものではございません。ただ、同じようなケースの場合に同じような罰金が科されてしかるべきということは当然のことでございますので、私ども不審に思いました点についてそれぞれソ連に申し入れをいたしまして、明らかにするように話したわけでございますが、ソ連の言い分によりますと、ある程度の幅を持たせて現場の取締官にゆだねてあるというような話もございます。それは相手方の違反状況情状等を勘案いたし、それからもちろん違反である漁獲物の量等すべてを総合勘案いたしまして、一定の幅の中で取締官の裁量が許されているというような話も聞いております。  いずれにいたしましても、私ども日本漁船がきわめて不審を抱くような非常にでこぼこの罰金が科されることのないように、なるべく公正に妥当な罰金が科されるようなことは私ども常々申し入れているわけでございまして、今後ともその点は心がけてまいりたいと思っております。
  211. 津川武一

    津川委員 いままでの質問でこういう基準のことは何回も繰り返されたと思いますが、事が大事なのでもう一、二例指摘してみます。  これは八月二十六日、青森県大畑町の第一長運丸九十六トン、もう一つは八月三十日、八戸の第十三新生丸、そして九十六トンの長運丸は罰金が五十四万五千四百五十四円、四十九トンの新生丸が七十二万七千二百七十二円。そうして、違反した事実を見ると、大きい方の長運丸が操業日誌記載違反、つづりひも封印なし、ボールペン使用、漁獲量記載なし、イカ釣り台数に問題がある。それよりも小さくて四十九トンの新生丸、これは鉛筆使用、未記入個所二つです。この二つの違反が七十二万七千二百七十二円、しかも規模は四十九トン。大きい方の九十六トンの方は四つの違反があって五十四万五千四百五十四円。しかも、これが同じ青森県で、青森県の漁業会の中で何ぼ取られたか、何したんかと話し合いになって、これが二つ比較されてまいります。そうすると、きわめて明確な不審が出てくるわけなんです。この罰金基準の不統一、不明確、不明瞭さ、これはこの二つの事件について、私はぜひ直接ソ連に聞いて実態を明らかにして、国民からこういう問題の不審は取り除くべきだと思うのです。ほかにもこういう事例はたくさんありますが、この事例一つだけにとどめます。水産庁、どうされます。  それから、先ほどの百万円の罰金で、時計三個やったら三十万円になったという事件、これは外務省ソ連にこういうことを言えるかどうかという外交上のルールは私わかりませんが、こういう指摘が国会でなされたがどうなんだということを聞いて明らかにするのも、一つのこれからの大事な大事な、日本漁船を安全操業させる上に必要なことだと思うのでございます。  最初に水産庁、次に外務省に答えていただきます。
  212. 岡安誠

    岡安政府委員 実は、いま先生指摘違反事件で、八月の二十六日に大畑町の所属船で長運丸九十六・九トン、これが五十四万五千円の罰金を払ったということはわかりますが、もう一隻がいまちょっとよくわかりませんので……。もう一隻は何という名前ですか。(津川委員「第十三新生丸」と呼ぶ)ちょっとそれは調べてみます。
  213. 津川武一

    津川委員 それじゃ、ちょっと待ちます。
  214. 岡安誠

    岡安政府委員 わかりました。  どの程度つまびらかになるかわかりませんが、機会を得ましてソ連側に問い合わせてみたいというふうに思っております。
  215. 津川武一

    津川委員 その次、不当な罰金だと思われる例です。八月十五日から八月二十日まで開かれた日ソ漁業専門家会議、これはナホトカで行われましたが、合意された後でも不当な罰金の請求がなお続いております。例の第一長運丸でございます。つづりひも封印なしは、ナホトカ会議では封印しなければならないと決まったわけです。これはよろしい。この長運丸は封印していなかった。そのために罰金とられた。ところが、このことが専門家会議で九月末まではやらない、九月末までにそのことをやればよろしい、それまでは封印なくてもよろしい、こういうことになって二十日で会議が終わっておりますが、この長運丸は八月二十六日に封印なしでやられているのです。ここいらあたり明らかに向こうの、何のために会議開いたのか、向こうに徹底されてないんじゃないか、こういう点をよくよく向こうとも詰めなければならぬ。こちらの方にも教えなければならぬ。これはどうなっているんでございます。
  216. 岡安誠

    岡安政府委員 いまの御指摘は八月二十六日に処罰されました長運丸のお話だと思いますが、私どもの報告では、操業日誌関係でございますが、イカ釣り台数の記入漏れということと累計の記入漏れと二つのことで五十四万五千四百五十四円の罰金に科せられた。さらに、この際、船員手帳が押収されたという報告でございまして、先生のつづりひもの件は私の方にまだ連絡がないわけでございます。
  217. 津川武一

    津川委員 この長運丸はほかにもやっているけれども罰金とられた違反の項目としてつづりひものことが出ているのです。これは全然問題にならないわけなんです。つづりひもで罰金とられている。これは間違いなく県の方からも報告を受けている。とすれば、私は、やり直してこの分だけ、五十四万五千円の中のつづりひも分だけは減額してもらわなければならないと思います。笑っていますけれども、この小さなことが大事なんです。彼らは軍服をいかめしく着ていてやる。こっちは泣きの涙でのむというからいけない。決まったことをきちんとやらせるということが大事なんで、これはやってくれますか、どうです。
  218. 岡安誠

    岡安政府委員 長運丸につきましてはそういう報告を受けておりませんので、これは調べてみます。  ただ、御指摘のナホトカ会議でもって合意いたしまして、御指摘のとおり一定期間、周知徹底のためにつづりひもに関係する部分については、これは不問に付するという約束にもかかわらず、その後ソ連船がそれを指摘した例が二、三件ございます。それにつきましては私どもは遺憾であるということで抗議をすると同時に、早速周知の徹底を図るように強硬に申し入れてございます。
  219. 津川武一

    津川委員 もう一つ、今度は政府の言うとおりにやったら罰金とられた。これは八戸市の第十一正進丸、八月十日に四百万ほど請求されて、交渉したら三十七万引いていますね。まけさせた。こういう例でありますが、キチジ、キンキンですね、これを「その他」の欄に記入した。ソ連はメヌケの小さいものだからとしてこれに罰金した。水産庁は「その他」の欄に記入せよと指導してやらした。水産庁の指導でキチジを「その他」の欄に書いた。ソ連は「その他」の欄ではなくして、これはメヌケの小さいものだからメヌケの小さいものとして書けと言った。これで三百六十三万請求されておる。これは忠実に政府方針を守ったわけです。これに対してはどうされますか。私はこの点では国が責任を持って補償すべきだと思うのでございます。いかがでございます。
  220. 岡安誠

    岡安政府委員 御指摘のとおり、私どもはキチジにつきましては「その他」の欄に分類するように指導いたしました。ソ連がそれはおかしいということで、これはナホトカ会議でもって相談をいたしまして、それはそれでよろしいということになったわけであります。  このケースは、向こうがキチジは「その他」の欄に記入するのはいいけれども、それはキチジではなくてメヌケであるということで、これは違反として依然として存在をするということで罰金はそのままというケースでございます。
  221. 津川武一

    津川委員 これはキチジかメヌケか、そこのところはどうなんです。日本の学会の分類からいってこれはきわめてはっきりしたキチジなんだ。ソ連は小さいメヌケだと言っている。ここいらをほったらかしておいている。この点の両方の合意はできているか。だれもが、これは日本のどの学会の本を見てもキチジ、こういうことになっているわけです。これは再交渉してみる必要があると思います。いかがです。再交渉の結果、罰金がどうかということの罰金の処分というものをどうするのか、重ねて答えていただきます。
  222. 岡安誠

    岡安政府委員 これは当該魚種がキチジであるかメヌケであるかという事実認定の問題でございますが、私どもは、漁民の言い分どおりとするならば、それはキチジであるということを現在でもソ連側に主張しております。ただ、事実認定の問題になりそうでございますので、なかなか早急に解決は困難かと思いますが、私どもは先般のモスクワの会談におきましても、引き続きその主張は続けておるというところでございます。
  223. 津川武一

    津川委員 現在これは係争中で、ソ連と交渉しているということでございますか。ぜひこちらの要求が通るように、ひとつがんばっていただきたいと思います。  その次に、とられる物が船員手帳、海技免状の押収なんです。十月二十日に第二十八新栄丸、これは青森県の小泊です。漁労長の船員手帳が取り上げられているのです。この点も向こうと相談ができているはずなんですが、依然としてこういうことがたくさん、こればかりじゃありません。船員手帳がとられているのは、ほかにも幾つかの例がございます。たとえば、この第十一正進丸、それから第十三新生丸、それから二十八新栄丸、こういうものなんですが、この点はもう大丈夫ですか、きちんとさせましたか。
  224. 岡安誠

    岡安政府委員 おっしゃるとおり、違反事件が発生した際に許可証を取り上げる等はともかくも、船員手帳というのは問題外でございますので厳重に抗議をいたしまして、相手方はそれは了解をいたしております。  ただ、これはナホトカ会議で了解が得られたのでございますが、その後も二、三なおとられた例、確かに御指摘のとおりございます。これは私ども周知徹底ができていないということで、厳重に抗議をいたしておるところでございます。
  225. 津川武一

    津川委員 その次は停船命令。停船命令違反はかなり罰金が重いのです。ところが、夜のためにわからない。後ろから停船命令が来る。払暁のためにわからない。向こうは、監視船というのですか、その標識がついていないからわからないのです。したがって、これは無視されてしまっている場合が相当多く出ております。  こういうことに対して、夜間のやつには取締船の標識をつけるとかどうするかということ、もう一度協定を決めていただかなければ、知らないでやったものは、やはりこちらで何らかの手当てをしなきゃならぬと思いますが、この点はいかがです。
  226. 岡安誠

    岡安政府委員 御指摘のとおり、停船命令違反というのは、どこの国でもこれは最高罰金刑に当たる罪でございます。したがって、これは重大な事件でございますので、私どもは原則としまして、停船信号を知らない漁船もいるから、できれば停船命令違反というものは、漁船が逃亡するなど明らかに信号を無視した場合に限るようにという申し入れはいたしております。  ただ、これも今後の交渉、また別途外交ルートによりまして、どういう方法で停船命令を現在出しているのかということを照会いたしましたところ、ソ連側はまず国際信号旗を上げる、次にサイレンを鳴らす、その次にサイレン以外の音響の信号を発する、順次そういう信号を発して、しかる後停船しない場合を違反としている、こういうことを言ってきたわけでございます。  これに対しまして私どもは、これでは必ずしも信号が明確に確認されるわけでもあるまいということで、もう少し明らかな信号をしてほしいということを申しましたところ、ソ連側は、そのやり方について日本側に近く提示をすると言ってきておりますので、その提示を見てからまた判断をいたしたいというふうに思っております。
  227. 津川武一

    津川委員 もう一つの問題は、日本水産庁の指導船ですか、監視船ですか、交渉してくれて、問題解決してくれた例が幾例かあるんです。この人たちの言うことを聞くと、さっぱりしたと言うんです。あの広い大洋の中でソ連の国家を相手にしているときに、水産庁なり海上保安庁の船がおると、どんなに助かるかわからない。おっただけで、もう地獄で仏様に会ったみたいなものだと言う。この点で、トラブルの問題もあるし、正しい指導をする意味においても安全操業する意味においても、水産庁の指導監督船がもっと入っていなければならない。  この点で、水産庁の指導監督官十分かと聞いたら、十分でないと言う。どうしていると聞いたら、林野庁の人に仮に免許をやってやっていると言う。この人たちが向こうに行ってもわからない。したがって、こういう点での指導監督船を十分ふやして漁民を応援することと、あるいは体格もよくてロシア語もできて、ひげの出てかっぷくのいい人たちがいると、かなり向こうも変わってまいりますので、水産庁の指導監督船、海上保安庁の監視船、こういうものがもっと多く出てくれれば、日本の二百海里に入ったソ連のものを罰するのも必要だけれども、それ以上にこちらの方が望まれておるという、これが一つ。  もう一つは、一億一千万の罰金をとられている。それで、土十日に四十七トンか九トンの小泊の船が三百六十二万とられている。もう一生うだつが上がらない。そこで、このとられた罰金政府はこれを国際漁船救済会で何か互助方式でやろうと思っておりますが、これを漁民は国がうんとこれに援助してくれなきゃならぬ、事務費などは当然国が全額負担していかなければ、これはついていけないということが一つ。もう一つは、拿捕保険に罰金を含ませるような形に直してくれぬか、こういう要求がきわめて強いのであります。この二点を質問して、私の質問を終わります。
  228. 岡安誠

    岡安政府委員 いまこの水域水産庁の指導船は、官船、用船を含めまして五隻おります。現在まで百二十三件の違反事件がございますが、その十のケースにつきましては水産庁の指導船が立ち会っております。今後ともできるだけ立ち会いたいとは思っておりますが、何分にも五隻では不足でございますので、今年度中にも増隻をいたし、またできれば来年度もふやしまして、できるだけ御要望に沿いたいというふうに思っております。  それから、罰金の支払いの負担が大きいから何か方法はないかという御指摘でございますが、先ほども御質問がございまして、大臣からお答えしたわけでございますが、明らかに違反をした結果の罰金、これを補てんするような制度を考えるということは問題があろうかというふうに考えます。ただ、境界線等がございまして、境界線の測定等について機器の誤差があって、お互いに主張が離れているというようなケース等があり得るわけでございます。そういうようなケースにつきましては、互助制度といいますか、漁民が負担金を出しまして、これを全国機関でプールをして、見舞い金を払うというような制度を考えたらどうかというふうに考えておりまして、できればその全国プール機関の事務費の一部は国が補助したらどうかということで、五十一年度予算の中で検討をいたしておるというのが実情でございます。
  229. 津川武一

    津川委員 農林大臣、ソ連の二百海里内で操業する日本漁民の安全操業に、国として全力を挙げることを要求して、私の質問を終わります。
  230. 金子岩三

    ○金子委員長 神田厚君。
  231. 神田厚

    ○神田委員 漁業水域に関する暫定措置法の一部を改正する法律案に関しまして、御質問を申し上げたいと思っております。  まず最初に、いま世界各国が相次いで二百海里宣言等を行っておりまして、日本の水産業をめぐる環境というのは非常に厳しい状況になっておりますことは、大臣もすでに十分に御承知のことと思われますが、これに対応するわが国政府の姿勢が、遺憾ながら非常に受け身であるというふうに考えざるを得ません。この法律案改正に際しまして、二百海里全体の問題につきまして、この漁業問題の現在置かれている問題を御質問申し上げたいと思うのでありますが、これは一面では経済外交と一つのものとして考えられる部分もあるわけでありまして、そういう意味におきましてはこれから先の漁業外交というものがそれぞれ形の違った側面を持ちながら進められていくだろうというふうに考えられるわけであります。  まず考えられますのは、一つには日本ソ連との関係、この問題、それから日本とアメリカ、カナダとの関係、そしてさらには日本とニュージーランド、オーストラリア、パプアニューギニア、これらの南大洋州諸国との関係、さらには北朝鮮との関係、そして中国との関係、非常に多岐にわたりますそれぞれの諸国との、あるいはグループとの問題を、それぞれにいろいろと勘案しながら進めていかなければならないのではないか、こういうふうに思うわけであります。  それで、順次それらについての御質問をさせていただきたいと思いますが、まず最初に、ソ連との、日ソの問題につきましては非常に御苦心をなさっていろいろと御努力を大臣続けられてまいりましたけれども、これから先の漁業の長期協定というものをめぐる状況は非常に厳しいわけでありますが、ひとつこれに臨む基本的な態度、立場をお聞かせいただけたらと思うのであります。
  232. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 日ソ間の漁業問題は、国会の御協力を得まして、一九七七年の十二月末までのモスクワ協定並びに東京協定ができたわけでございますが、これは今年限りの暫定協定ということでございます。したがいまして、今後、世界における二大漁業国である日ソの漁業関係、これを長期にわたって安定的なものにしていかなければならない。しかも、この日ソの漁業関係の円満な発展ということは日ソの友好関係にも大きな影響を持つ重要な問題でございますから、そういう認識の上に立って日ソ間の漁業問題に取り組んでいきたい、こう考えております。  今後残されております問題は、北西太平洋の資源の評価、資源の調査、あるいは持続的生産性を確保するための適正な漁獲量の決定、つまり資源を守りながら、保護しながら、日ソ両漁業国が今後漁業として安定した発展ができるようにということで取り組んでいかなければならない、こう思います。  それから第二の問題は、日ソ間の漁業に関する広範な協力関係を私は築き上げていきたい、この相互の協力関係というものがいろいろな面で円満な、漁業に関するクォータの問題でもあるいは操業の確保の問題でも影響があると思うわけでありまして、日ソ漁業の広範な協力関係、これを確立をしたい。  それから第三点は、ソ連もサケ・マスにつきましては母川主義、母なる川の母川主義ということを主張しておりまして、これは二百海里の外といえどもソ連起源のサケ・マスに対する管轄権を主張しておる、こういうことでございますが、二百海里外の北西太平洋の公海というのは日本起源のサケ・マスもおるわけでございます。また、アメリカ系のサケ・マスも混淆しておるという特殊な海域でございますから、その実態に即するような二百海里外のサケ・マス漁業の操業体系というものも、これも日ソ間で十分話し合いをしていかなければいけない、こういうことについて、私は日ソの今後の漁業問題として重大な関心を持ちながら、日ソ友好親善関係ということを踏まえて今後取り組んでいきたい、漁業外交を展開していきたい、このように考えております。
  233. 神田厚

    ○神田委員 ソビエトとの関係で大変御苦心をなさっておりまして、この長期協定がなかなかむずかしいであろうということは十分わかるわけでありますが、いま大臣がおっしゃられましたような形の中で、このソビエトとの日ソ漁業協定の一番障害になっておるものは一体何であるというふうにお考えでありますか。あるいは政府全体として、この漁業協定を推進するために日本政府として何らかの形で側面的なプッシュといいますか、そういうものができるものがあるというふうにお考えでありますか、その点お聞きしたいのでありますが……。
  234. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 日ソの関係は何と言っても戦後未解決の問題である北方四島の領土の問題、これを私は大局の上に立って話し合いによって早急に解決できるように、これなくしては漁業問題だけではございません、すべての問題について、やはり日ソの間にはぎくしゃくした関係が続いていくような感じがしてならないわけでございます。やはり根本の北方四島の問題を何とかひとつこれを早く解決し、そして日ソ平和条約の締結を行うということが根本の問題である、こう考えております。
  235. 神田厚

    ○神田委員 続きまして、次に、日本とアメリカ、カナダとのこの問題、これはアメリカが二百海里を宣言いたしまして、これから新しい状態を迎えようとしているわけであります。このアメリカとの日米漁業協定に関しましていろいろと問題があるわけでありますけれども、これらの問題につきましては、いつごろからどのような形で交渉というものをお始めになるのか、その日程的なものにつきましてひとつお考えがありましたらお知らせいただきたいと思います。
  236. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 日本とアメリカ、日本とカナダとの漁業関係でございますが、これは日本ソ連とのように両国が大きな漁業国という関係ではございません。日米関係も日加関係も非常に長い間の友好的な関係の上に基礎を置いておるわけであり、かつまたアメリカもカナダも必ずしも遠洋漁業国ではないということでございます。したがいまして、今後日米、日加の漁業交渉というものは、いわば沿岸国であるこの両国に対して、遠洋漁業国であるわが国の立場を理解をしてもらいながら、過去におけるわが国の伝統的な漁業実績を確保するという交渉になるわけでございます。その中で一番むずかしい問題はサケ・マスの問題でございます。アメリカもカナダも、アメリカ並びにカナダの起源のサケ・マスについては二百海里の外まで管轄権というものを主張しておる、こういうことでございますので、サケ・マスの交渉が非常にむずかしい、こう考えております。しかし、日米の間におきましては、今年度の割り当てにいたしましても比較的理解ある配慮をしてくれたわけでございます。  来年度の漁獲量につきまして、ただいま係官を派遣いたしまして交渉をやっております。  ここで、アメリカといえどもだんだんこれからむずかしくなると思いますのは、アラスカその他の漁業州の沿岸の漁業管理委員会等の主張が年々だんだん高まってきております。私どもはこのアラスカ等の漁民の諸君の資源保存に対する考え方といったものを十分認識をし、理解をして、そして、これに対応していかなければならない、こう考えております。  サケ・マスにつきましては、いろいろアメリカ、カナダにもそれぞれの主張、要求というものがございますし、わが方としても過去の実績等を踏まえましていろいろの要求もございます。それらを調整をいたしまして、サケ・マスにつきましてもわが方の実績ができるだけ確保できるように努力をしてまいりたい、このように考えております。
  237. 神田厚

    ○神田委員 遡河性魚種の管轄権の問題が非常に大事でありまして、これの中でアメリカとの、あるいはカナダとの交渉というのは、ただ単に日本とアメリカ、日本とカナダとの交渉だけではなくて、ほかの国に対しましても非常にそれらの影響があるわけであります。したがいまして、日程的にいまアラスカで進められておるのでしょうか、この会議の成り行きというものを非常に注目している。ですから、これについて農林省といたしましてどういうふうな態度で、いつごろをめどに、どういうふうな決着をつけたいというふうなことで、これは交渉ですから相手がありますけれども、これが余りおくれてしまうと日ソのサケ・マスの交渉もずっとおくれてしまうという懸念も一部でされておるわけでありますけれども、その辺のところはいかがでございますか。
  238. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 神田さん御指摘のとおりでございまして、サケ・マスに関する日米加三国の交渉の成り行きというものが、今後の日ソのサケ・マス交渉にも大きな影響を持つものと私は考えておりまして、できるだけ早くいい結論が出るようにということで、いま最善の努力を払っておるところでございます。
  239. 神田厚

    ○神田委員 次に、日本とニュージーランド、それからオーストラリア、パプアニューギニア、いわゆる大洋州諸国との漁業の問題につきまして御質問申し上げたいのでありますが、この問題につきましても、先ごろニュージーランドから副首相が来られまして、大臣にいろいろと要望を言いながらその状況について御要求があったようであります。  それで、この大洋州諸国におきます日本の遠洋漁業といいますか、このものもだんだん厳しい環境に追い込まれてきておる、こういう中で、私ども基本的に、いわゆる開発途上国に対する農林省の漁業外交の姿勢というのはどういうふうなことであるのか、そしてさらに、このニュージーランドの副首相との間で漁業の問題についてはどういう話し合いがなされたのか、お聞かせいただければと思うのであります。
  240. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御指摘がありました南太平洋フォーラム諸国との漁業問題についての今後の対応の問題でございますが、南太平洋フォーラムの中に入っております国で、その中心国と開発途上国と、こうあるわけでございます。開発途上国に対しましては、いろいろな経済援助でありますとか技術協力でありますとか、いろいろ向こうからも日本側に協力も要請してきておりますから、私どもは、開発途上国の経済の発展、民生の安定のためにあとう限りの協力もやる、こういうようなことで日本漁業実績というものに対して理解を持ってもらう、こういうアプローチの仕方があるわけでございます。中心国におきましてはなかなかそういうようなことでございませんで、いろいろの要求があるわけでございます。ニュージーランド、豪州は、かつてはイギリスの植民地ではございましたけれども、中心国である。そして、日本とニュージーランドの貿易関係は、おおむね均衡をいたしております。わが方は幾らか入超になっておりますし、豪州の場合はこれは圧倒的なわが方の入超、年間三十億ドルも入超しておるという状況にあるわけでございます。  ニュージーランド、豪州のわが方に対する共通の要求は、牛肉並びに酪農品その他の農産物を現状以上に相当量買うべきである、こういう要求をしてきておるわけでございます。ニュージーランドのトルボーイズ副首相と私、三回にわたって会談をしておりますが、工業国である日本は、酪農国であるニュージーランドから畜産物、乳製品を買うのが当然である、現在、日本は国内の酪農家、畜産業者のために金に飽かしていろいろな保護政策、助成政策をとっておるが、そんな無理なことをしないで、この酪農国であるニュージーランドのバターなり脱脂粉乳なり肉なりを買うべきである、こういう主張をしてきておるわけであります。そういう要求に対して日本が理解と行動をもってこたえなければなかなか二百海里問題もむずかしいですよ、一言で言うと、そういうことでございます。  しかし、私どもは、現在の畜産あるいは略農等に対する日本政府のとっておる政策は、これはわれわれだけでなしに各党のコンセンサスの上に立ってやっておる政策でございまして、変えるわけにはまいらない。だから、わが国法律なり制度なりというものを前提として、その許される範囲でお互いに相互補完をやっていく、こういう範囲でなければいけない、こういうことを私は言っておるわけでございます。その辺がなかなかかみ合いにくい問題でございまして、とにかく二百海里の問題にそういう問題を絡めていろいろやってくるというむずかしさがあると、私はなかなか大変な交渉になると考えております。  それから、ニュージーランドの場合は、トロール等の底魚の漁業が非常に重要であり、またイカ釣り船団も行っております。ところが、その他のパプアニューギニアでありますとか、あるいは豪州、ソロモン等はむしろカツオ・マグロというような高度回遊魚が主体になっておるわけでございまして、これらは漁業内容も違う、アプローチの仕方も自然に違う、いろいろ日本との関係を十分分析し、掘り下げて、向こうの考え方も十分われわれくみ取りながら、今後漁業外交を適切に展開をしていきたい、こう思っております。
  241. 神田厚

    ○神田委員 大変御丁寧にありがとうございました。  このニュージーランドの問題といいますのは、日本側の漁場をどんどん失っていく中で、大変貴重な漁場になるわけでありますから、長い交渉になるかもしれませんけれども、粘り強くひとつがんばっていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  続いて、時間が余りありませんので、簡単に北朝鮮の二百海里の問題です。これはいろいろ議員団が行きまして結んできました中で、政府保障や何かの問題がたくさんありましたけれども、これらのその後の問題はうまくいっているのかどうか。あるいは軍事境界線などの問題もありますけれども、その北朝鮮の二百海里の中の問題というのは現在どういうふうになっておりますか、簡単で結構でございますから、ひとつよろしく。
  242. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 八月の一日から朝鮮民主主義人民共和国が二百海里の宣言をいたしました。わが国は国交がございませんので、しかも、あそこの漁場も非常に重要な漁場でございますので、非常に憂慮しておったところでございます。しかるところ、超党派の日朝友好促進議員連盟の各位が訪朝されまして、大変なお骨折りを願いまして、軍事警戒ラインを除くその他の海域につきましては、当面いままでどおり操業をしてよろしい、来年の六月三十日まで操業を認める。ただ、軍事警戒ラインという問題を二百海里の中に設定をするということは世界の国際慣例にもないことでございまして、これは非常に遺憾なことだと考えております。しかし、私どもは来年の六月三十日までに、日朝友好促進議員連盟の皆さんや民間の日朝漁業協議会等の民間団体の交渉等を側面から援助、協力をいたしまして、そして日朝の間に民間漁業協定が円満にできるように今後とも努力をしてまいりたい、こう考えております。
  243. 神田厚

    ○神田委員 この関係では、二百海里の全体的な話では最後にしたいと思うのですが、話によりますと、中国が二百海里をそろそろ準備している、こういうふうな報道が伝わってきておりますけれども、それについての考え方あるいは対応はいかがでございますか。
  244. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 日中の間には現在日中漁業協定がありまして、何らの操業上のトラブルなしに円滑にわが国漁船の操業の確保がなされておるわけでございます。衝突事故等が年間せいぜい四、五件起こっておりますが、これも話し合いによって処理されておる。でありますから、わが方としてはこの日中漁業協定というものをあくまで大事にして、東シナ海、黄海のわが国漁船の操業を確保してまいりたい、このように考えております。  なお、中国側が二百海里宣言をやるかどうかという問題につきましては、絶えず接触もし、情報の交換をいたしております。確かに検討もやっておるようでございますけれども、しかし中国政府としては日本との漁業関係は何とか円満にやっていきたいというような御方針のようでございますので、今後とも緊密な連携を続けまして、西日本漁場の確保に最善を尽くしたい、こう思っております。
  245. 神田厚

    ○神田委員 いま全体的な二百海里をめぐる日本が対応しなければならない漁業外交につきまして、基本的な話を伺ったわけであります。それぞれの対象国に対しましてそれぞれのいろいろな問題点を含んでおるわけでありますから、どうかひとつそういう面を十分に御吟味いただきまして、日本漁業を守る立場で御努力をいただきたいというふうにお願いをいたしたいと思います。  次に、法案内容につきまして御質問を申し上げます。もうすでに多くの委員の方から御指摘があって十分審議が尽くされているとは思うのでありますけれども、この法案内容の中で一番の問題は、ソ連水域内において日本漁船が非常に多くの罰金をとられている、その罰金の支払いの状況が非常にまちまちである、こういうことでありまして、たとえば操業日誌の不備という問題一つをとりましても罰金の額が非常に違うわけであります。  こういうことを考えていきますと、一体ソ連はどういう基準でこの罰金をとっているのか、それから、このような形で違反状況がたくさん出てきているわけでありますから、それらについて再交渉する意思があるのかどうか、お聞きをしたいというふうに思っております。
  246. 岡安誠

    岡安政府委員 先ほど来ソ連当局のわが国漁船に対します罰金請求額が非常に不統一でばらばらであるという御指摘がございます。特に操業日誌関係でそれが見られるという御指摘でございますが、これは先ほどもお断り申し上げたわけでございますけれども、私どもが現在まで百二十三件に及ぶ拿捕漁船の分類をする際、操業日誌関係というふうに分類はいたしておりますが、その分類は操業日誌関係だけで罰金を科されたものだけを集めたものではございません。操業日誌関係違反のほか、ほかの違反もあわせて罰金請求の対象になっているという例が多いわけでございます。したがって、その分類の中で非常にまちまちであるということは当たらないと思いますけれども、それにいたしましても必ずしも統一性を持ったものとは言われがたいものもございます。  そこで、私どもはナホトカにおきましても、また最近モスクワにおいて行われました専門家会議の席でも、ソ連側がどういう考え方で罰金を科しているのか、統一がとれていないのは遺憾であるということは申し述べているわけでございます。それに対しましてソ連側は、やはり第一線の取締官に一定の幅をもって権限をゆだねている、したがって取締官違反状況違反者情状その他を考えまして、一定の幅で罰金請求額を決めているから差が出るのは当然であるというような言いぶりでございます。  私どもは必ずしもそれで納得でき得ない点もございますが、今後さらにソ連側の考え方をできるだけただすという努力はしてまいりたいというふうに思っております。
  247. 神田厚

    ○神田委員 八月の十五日から二十日までナホトカで会議が開かれまして、それでかなりの合意事項というのができているわけであります。この合意事項ができているにもかかわらず、その後もやはり非常に多く日誌のつけ方やいろいろな問題で罰金をとられている。これに関しまして水産庁の海洋漁業部長が通達を出しておりますけれども、これは八月二十三日に出しておりますけれども、そういうものが本当に各船に伝わって、きちんと指導されておるのかどうか、この辺はいかがでございますか。
  248. 岡安誠

    岡安政府委員 いまの各般に伝わって指導がなされているかという御質問は、恐らくソ連側の指導が徹底しているかという御質問だと思います。私ども、ナホトカで合意いたしましたものがございますが、それがその合意後も、二、三の例にすぎませんけれども、依然として違反として罰金を科されておるという例がありましたので、下部への徹底方、これは厳重にソ連抗議をすると同時に督促をいたしております。
  249. 神田厚

    ○神田委員 そうすると、日本の方の漁船にはそういうふうな操業日誌のつけ方やあるいはここで合憲された事項については全部通報されておるわけですか。
  250. 岡安誠

    岡安政府委員 モスクワ会議の後におきまして、各業種別団体、都道府県等を通じまして、出漁漁船に速やかに徹底するように指導いたしておる次第でございます。
  251. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、八月二十三日にそういうものが出た後も、とにかく現在までやはり操業日誌なら操業日誌不備で相当罰金をとられておるわけですよね。こういうふうなことを考えますと、私は必ずしも日本の方でもいわゆるナホトカの合意事項についてきちんとした指導がされていないのではないかというように思うのでありますが、いかがですか。ここにあるだけでも、九月の十九日ごろまですでに五、六件、それから八月の終わりごろから見ますと、二十件近く日誌の不備でつかまっておりますね。こういうところはどういうふうにお考えになりますか。
  252. 岡安誠

    岡安政府委員 違反漁船が八月が一番多くて、九月が非常に減りまして、十月もそんな多くはないわけでございますが、依然として違反の事例が後を絶たないのは、御指摘のナホトカで合意した事項が徹底してないということよりも、本来操業日誌のつけ方について守られるべきものが守られていないというようなものも相当あるやに私どもは考えております。むしろ私どもは、合意事項の徹底はもとより、操業日誌その他ソ連の二百海里水域内で操業するに当たっての心構えといいますか、これをさらに末端まで徹底しなければならない、かように考えておる次第でございます。
  253. 神田厚

    ○神田委員 私、どうも釈然としないのでありますけれども、ひとつソ連側についても、そういうふうなことであるならば、そちらが徹底されてないということならば、それなりの話をすべきであるし、日本の方におきましてもやはりもう少し徹底した指導をすべきであるというふうに考えるわけであります。  さらに、この問題に関しましてアメリカあるいはカナダ、こちらの方においてはどの程度の違反状況、あるいは罰金の総額というのはどのくらいありますか。
  254. 岡安誠

    岡安政府委員 米国水域の中におきましてことしの三月一日から九月末までにおきます違反事件は全体で十九件でございます。それに対しまして、警告をされただけで済んだもの、未決のもの等がございますが、罰金を科されたものは四件、四万三千ドルでございます。  カナダではことしの五月と八月にそれぞれ一件ずつでございまして、それぞれ警告、それから許可の取り消しという処分になっております。
  255. 神田厚

    ○神田委員 まあ四件で四万三千ドル、一件で平均すると一万ドル、内容がよくわかりませんから、そういうふうな単純な計算はできないでしょうけれども、これもかなりな罰金をとられておるわけですね。  こういうふうな中で、先ほどほかの議員の方からもいろいろと御質問がありましたけれども、やはり拿捕保険を適用できないものか、あるいはそれが無理だというふうな話でありますならば、それにかわる、民間団体なら民間団体が基金を集めましてそういう一つの救済機関をつくろうというものに対して前向きに考えていただきたいということを私は要望したいわけでございます。先ほど長官の方から御答弁がありましたので、大体の考え方はわかっておりますけれども、そういうふうな形でおやりになる御意思がございますか。
  256. 岡安誠

    岡安政府委員 御指摘のとおり、現在の拿捕保険につきましては、法令違反は免責事由に該当いたしますので、対象にはなり得ないということでございます。そこで、民間の側におきまして、法令違反による罰金お互いにこれをただ補てんをするというための機構ということでは問題があるわけでございまして、境界ラインにつきまして計器の誤差等によってやむを得ずといいますか、不本意ながら処罰されたというようなケースを拾い上げまして、民間におきまして互助組織というようなものができないかということを現在検討いたしておるわけでございます。
  257. 神田厚

    ○神田委員 次に、この法案関係しまして、北方四島をめぐっていわゆる外国人漁業の規制に関する法律というのがございまして、この問題につきましては、わが党の曽祢益議員が本会議におきまして、日ソ漁業暫定協定の質問の中で御質問を申し上げたのでありますけれども、明確な答弁がなされていないわけであります。  外国人漁業の規制に関する法律の中で、第二条に「この法律において「本邦」とは、本州、北海道、四国、九州及び農林省令で定めるその附属の島をいう。」というふうに書いてありまして、さらに、この外国人漁業の規制に関する法律施行規則の中では、第一条で、「本邦に含まれる附属の島」というのは「外国人漁業の規制に関する法律第二条第一項の農林省令で定める附属の島は、本州、北海道、四国及び九州に附属する島のうち、当分の間、歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島を除いたものとする。」と書いてあります。こうしますと、現在日本は全体的に二百海里を引いております。しかし、この施行規則の中によりますと、その部分だけは除かれているというふうな法律上の矛盾が出てきている、こういうふうに考えるのでありますが、その辺のところはどういうふうにお考えでありますか。私は、この施行規則そのものをやはり変えなければいけないのじゃないかというふうに思うのでありますが、どうでありますか。
  258. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 重要な問題でございますから、私から最初にお答えをいたします。  外国人漁業の規制に関する法律の制定当時には、沖繩、小笠原、北方四島等の島にはわが国の施政が及んでいなかったので、わが国の施政が及ぶまで当分の間、これらの島を本法の適用除外としたものでございます。その後、沖繩、小笠原は、施政権の返還に伴い、本法の適用水域としたが、北方四島は現在も事実上施政が及んでいないので、本法の適用水域から除外しているものでございます。  一方、漁業水域に関する暫定措置法に基づく漁業水域につきましては、北方四島周辺海域に現実にわが国の施政が及んでいないという事実は否定できないところでございますが、北方四島はわが国固有領土であるというわが国基本的立場は、日ソ漁業交渉においても貫いてきたところであり、また今後もこれを主張していくという観点に立って、同水域漁業水域から除外せず、同法第三条第三項の政令により除外した海域は、日韓漁業協定、日中漁業協定により相互に円滑な漁業秩序を維持してきている韓国中国との関係水域に限定したものでございます。
  259. 神田厚

    ○神田委員 いまの御説明で私ちょっとわからないのでありますが、私は筋といたしましては、やはり施政権云々よりも、とにかく北方四島は日本固有領土であるという主張をしているわけでありますから、この外国人漁業の規制に関する法律施行規則の第一条、これは変えるべきではないかというように思っているのですが、どうですか。
  260. 岡安誠

    岡安政府委員 ただいま大臣から申し上げたとおり、外国人漁業規制法とそれから漁業水域に関する暫定措置法の北方四島に対する扱いが違いますのは、まさに歴史的な所産であろうというふうに考えております。この扱いは、先生のおっしゃるように、おかしいと考えればいろいろ問題点はあろうと思いますけれども、では果たしてこれを直したらどうなるかというような問題、果たして実益があるのかというような問題等もございます。現在、必ずしも例にはならないかもしれませんけれども外国人漁業規制法と同様に、北方四島に対しましてその適用を除外している例といたしましては、関税法とか外国為替管理法、検疫法等もございます。したがって、現にソ連邦が占有している状態をどういうふうに理解をするかということによって、この法律措置が決まってくるというふうに考えております。漁業水域に関する概定措置法をあえて日本固有領土を含む地域の周辺に設定をいたしましたのも、先ほど大臣が申し上げましたとおり、日ソ漁業交渉における経緯というものを十分踏まえた結果であるということで御了解をいただきたいというふうに考えております。
  261. 神田厚

    ○神田委員 どうも時間がなくなってきたので、余りこの問題を追及できないのでありますけれども、私は、これはこの法律の根幹にかかわる非常に大事な問題だと思うのであります。そして、このままこういう形でこの法律を放置しておくということは、やはり日本の意思といいますか、北方四島に対する領有権の主張といいますか、こういうものを非常に弱めてしまうというふうな考え方も持っているわけでありまして、ひとつ政府は決断をふるいまして、この北方四局の問題につきまして、この施行規則の改正をするように要望したいというふうに考えております。  一番最後になりましたが、以上二百海里をめぐる問題につきましては、いまの漁業の問題というのが非常に大事になってきております。これはちょうど昭和三十三年ごろに漁業の転換の時期がありましたときに、漁業制度に対する調査会というものをつくりまして、非常に多くの大事な提言やあるいは答申を得て、漁業問題についていろいろと沿岸漁業整備も含めまして措置されたわけであります。昭和三十三年五月十日に漁業制度調査会設置法というのができております。こういうふうな中で、ひとついまの時期に漁業法全体を見直す、これはこの間の国会の委員会決議の中にも書いてありますけれども漁業法全体を見直し、抜本的に改正する時期に来ているのではないか、こういうふうに思うのでございまして、最後に大臣の方から御答弁をいただきまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
  262. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 神田さん御指摘のように、急速な二百海里時代の到来を迎えまして、わが国漁業水産業界は重大な転換期に当面をしておるわけでございます。国会の委員会の御決議の趣旨も体しまして、私、農林大臣の諮問的な機関として懇談会を四つ現在つくっております。  日本の二百海里漁業水域、この漁場は、暖流と寒流が交錯する、暖流性、寒流性の魚もとれる、しかも世界で六番目の広い有望な海域である。このわが国の二百海里水域内の沿岸漁場を開発整備をする、資源をふやし、積極的な栽培漁業等の振興を図る、これは何といっても重要な柱であると考えます。これに対する施策を強力に進めますために、各界の専門家を集めまして、いま御検討を願っておるところでございます。  第二の問題は、各国の二百海里の制約を受けない公海上の未開発漁場の資源の調査並びに開発の施策をどうしたらいいか。この問題につきましても一つの研究グループをつくりまして、いま鋭意検討を願っておるところでございます。  さらに第三の問題は、多獲性魚種等を中心とした高度利用を図る、そのための製造加工技術の新しい開発も促進する必要がある、そういうことで、これまた食品加工その他の専門家にお集まりを願って、その研究も進めておるところでございます。  それからさらに、資源調査や水産の技術的な振興を図るということも大事でございますので、そういう分野につきましてもいま検討を進めております。  それらの御答申をいただきまして、総合的な二百海里時代に対応するわが国の水産政策、漁業行政を再吟味をして、誤りない対応を進めていきたい、このように考えております。
  263. 神田厚

    ○神田委員 どうもありがとうございました。
  264. 金子岩三

    ○金子委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  265. 金子岩三

    ○金子委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  漁業水域に関する暫定措置法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  266. 金子岩三

    ○金子委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     ―――――――――――――
  267. 金子岩三

    ○金子委員長 この際、本案に対し、美濃政市君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブの共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。美濃政市君。
  268. 美濃政市

    ○美濃委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブを代表して、漁業水域に関する暫定措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     漁業水域に関する暫定措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、左記事項に留意して本法の施行にあたるべきである。     記  一、本法に基づく担保による釈放制度については、わが国漁業水域における外国漁船の操業違反の防止に実効を期しうるよう、適正な担保額の決定その他厳正な運営を確保すること。  二、ソ連水域内におけるわが国漁船の操業違反の未然防止のため、講習会の開催等指導の徹底に努めるとともに操業日誌の記載方法等をさらに改善するようソ連邦との交渉にあたること。  三、わが国漁業水域内における外国漁業に対する取締りが厳正に行われるよう監視取締体制を整備強化すること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じ、すでに各位の十分御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  269. 金子岩三

    ○金子委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  本動議に対し、別に御発言の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  美濃政市君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  270. 金子岩三

    ○金子委員長 起立総員。よって、本案に対して附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について政府の所信を求めます。鈴木農林大臣
  271. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨を尊重いたしまして、遺憾のないよう対処してまいる所存でございます。
  272. 金子岩三

    ○金子委員長 なお、本案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  273. 金子岩三

    ○金子委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  274. 金子岩三

    ○金子委員長 次回は、明二十六日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二分散会      ――――◇―――――