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1977-10-26 第82回国会 衆議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月二十六日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 小渕 恵三君    理事 小泉純一郎君 理事 野田  毅君    理事 保岡 興治君 理事 山下 元利君    理事 佐藤 観樹君 理事 山田 耻目君    理事 坂口  力君 理事 永末 英一君       愛知 和男君    池田 行彦君       大石 千八君    鴨田 宗一君       後藤田正晴君    佐野 嘉吉君       砂田 重民君    丹羽 久章君       原田  憲君    村上 茂利君       毛利 松平君    山崎武三郎君       山下 徳夫君    伊藤  茂君       大島  弘君    川口 大助君       川崎 寛治君    沢田  広君       村山 喜一君    大久保直彦君       貝沼 次郎君    宮地 正介君       高橋 高望君    荒木  宏君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 坊  秀男君  出席政府委員         経済企画庁調整         局審議官    澤野  潤君         大蔵政務次官  高鳥  修君         大蔵省主計局次         長       松下 康雄君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省関税局長 戸塚 岩夫君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省証券局長 山内  宏君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         大蔵省国際金融         局長      旦  弘昌君         国税庁次長   谷口  昇君         厚生省社会局長 上村  一君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君  委員外出席者         大蔵大臣官房調         査企画課長   大竹 宏繁君         厚生省医務局総         務課長     森  幸男君         厚生省援護局庶         務課長     吉江 恵昭君         農林省農林経済         局国際部長   志村  純君         中小企業庁長官         官房総務課長  中澤 忠義君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部施         設課長     岩橋 洋一君         建設省道路局企         画課長     渡辺 修自君         参  考  人         (日本住宅公団         理事)     星野 孝俊君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国の会計税制及び金融に関する件      ————◇—————
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  まず、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、国の会計に関する件について、本日、日本住宅公団理事星野孝俊君に参考人として出席を求め、その意見を聴取したいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小渕恵三

    小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村山喜一君。
  4. 村山喜一

    村山(喜)委員 けさの新聞を見ますと、きのうの東京外国為替市場では、円がドルに対しまして二百五十一円七十銭、その記事によりますると、日銀が二億ドルドルの買い支えをやったように書いてあるわけであります。  そこで大蔵大臣お尋ねをいたしますのは、第一に、最近の円相場というのは円の実勢を反映しているというふうに見ておいでになるのかということでございます。それと、二十日間に一〇%も乱高下している。そして十日間に十億ドルの資金が流入をしておる。そういうような原因は一体何なのかということに対してもお答えをいただきたいと思います。それに対しまして政府としてはどういうふうに対処しているか、この対処の仕方についても説明を初めに願っておきたいと思います。
  5. 坊秀男

    坊国務大臣 最近の大変な円高相場でございますが、これは九月の市況における円高が契機となって今日の状態になってきたわけでございますが、それにはもちろん若干の投機というか思惑というか、そういったようなものも介在するであろうと思いますけれども、基本といたしましては、わが国輸出が非常に堅調であるとともに、一方、アメリカの将来の赤字というものが非常に懸念されるというようなことから起こってきておるというふうに私は感じております。  こういったような状況に対しまして、これもフロート下相場形成という体制にあるわけでございますが、そういったような場合にこれに対しまして日本が何らか介入する、何か線を引いてここまで行こうとか、あるいはこういうふうに指導しようというようなことはやるべきでなく、またやってはおりませんけれども、まあ非常な乱高下がある場合には、そういったようなものをなだらかにしていかなければならないということでございますので、日銀で介入ということもあろうと思います。どれだけどうやったというようなことにつきましては、ここで申し上げることを差し控えさせていただきたいと思います。
  6. 村山喜一

    村山(喜)委員 基本的には円の実勢を反映しているんだという認識なんですね。  それで、続いてお尋ねをいたしますが、大蔵大臣ロンドン会議に行かれましたね。そのときに経常収支が、まだ改定になる前でございましたから、経済見通しの問題については、七億ドル経常収支の赤になるであろうというのを持っていかれて、そこで先進七カ国首脳会議福田総理大臣がそのことを演説をされた。ところが、私も五十二年度の当初予算審議に当たりまして、実勢はそうではないのではないかという質疑をいたしまして、そのときにも経済企画庁長官は、そういうような状態になりつつあるということを認めたわけです。私はそのことも、問題を参議院の予算委員会で追及をされましたのを、あえてここでまた取り上げようとは思いませんが、それに対しまして今度は、六十五億ドルという経済見通し改定版ができましたね。  そこで、国際金融局長お尋ねをいたしますが、九月末の実績が出ていると思います。幾らになっておりますか。
  7. 旦弘昌

    旦政府委員 九月末の経常収支黒字は、約五十五億ドルということになっております。
  8. 村山喜一

    村山(喜)委員 五十五億ドルですか。六十四億八千万ドルではございませんか。
  9. 旦弘昌

    旦政府委員 五十二年度上半期経常収支は、五十五億八千三百万ドル黒字となっております。
  10. 村山喜一

    村山(喜)委員 上半期と言いますと九月までですね。そうなると、月ベースに直しました場合にはどうなりますか。
  11. 旦弘昌

    旦政府委員 五十五億八千三百万ドルでございますので、これを六カ月で割りますと、月平均では約九億ドルということになるかと思います。
  12. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますと、五十二年度の経済見通し改定版ですから、それが六十五億ドル、いまのままのやり方が続いていくとするならば、月に九億ドルくらいずつふえていくという勘定でまいりますると、百億ドルくらいの経常収支の黒ということになりませんか。
  13. 旦弘昌

    旦政府委員 現在のトレンドがそのまま続くということで見ますと、確かにそういうことになろうかと思います。しかしそれに対しまして、九月三日に発表されました総合経済対策及び九月二十日の対外対策の大綱がございまして、それに基づきます種々の施策を講じていく、あるいは景気浮揚施策を講じていくことによりまして、輸入拡大し、輸出伸び率が下がってくるというようなことで努力してまいりたい、かように考えておるわけであります。
  14. 村山喜一

    村山(喜)委員 そうすると、いわゆる政府外貨減らしというのは、約四十億ドルくらいをそういうような努力によって減らしていこうということのように聞こえるわけでございますが、その外貨減らしの方策というのは、われわれがいままで承りましたのでは、政策輸入増加、それと内需の振興、あるいは海外援助とかあるいは投資とか、いろいろな方法があるのでしょうが、どういうような方法——このまま放置した場合には計画よりもオーバーするであろう約四十億ドルをどういうふうにして減らしていくのですか、その内容は。
  15. 旦弘昌

    旦政府委員 基本的には、ただいま御指摘がございましたように、補正予算等によりまして公共事業を増額していくという景気対策によります内需拡大が第一でありますが、その他ただいま政府部内で輸入拡大、それによる黒字減らしということを鋭意検討いたしておりまして、それらによりまして黒字減らしを進めてまいりたい、かように考えておりますが、細目につきましては、なお検討中でございますので、どれだけになるかということをただいま申し上げる段階には至っておりません。
  16. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、この前の緊急輸入によりましても八億ドルぐらい、あるいはアメリカの方から輸入関税大幅引き下げの問題であるとか、農産物の輸入割り当ての枠の拡大の問題であるとかというような問題が仮に消化されましても、なお黒字は依然として続いていく、経常収支黒字基調というのはそんなに変わらないのではないかというふうに考えるわけでございます。  そこで、この問題はじゃ、日本だけがそういうような努力をすればいいのであろうか、アメリカがなぜそういうような状態になっているのであろうかということも考えなければ、今日の状態の中ではやはり国際的な通貨体制が動揺をするのではないだろうかということを私は考えるのです。  というのは、九月の貿易収支見通しが大体四十億ドルぐらいの赤字になるであろうと新聞にも伝えられておりまするし、アメリカの年間のいわゆる貿易収支赤字幅が三百億ドルぐらいになるのではないだろうかと言われているそういうような状態の中で、日本の円に対してだけドルが安くなっているんじゃなくて、主要通貨に対して全面的にドルが安くなっているということは、それだけドルの地位というものが低下しているのではないだろうか、そういうように認識をすべきだと思うのでありますが、大蔵大臣、どういうようにお考えになりますか。
  17. 坊秀男

    坊国務大臣 よその国のことを余り申し上げたくもありませんけれども、御指摘のことは私はそのとおりだと思います。さようなことで、円高ドル安と言いますけれども、とにかくどこの通貨に比しましても世界的にドルが安くなっておるということが考えられると思います。  そこで、私どもといたしましては、アメリカドルが安くなって流れてくる、日本黒字が集まってくる、日本の円が高くなるということにつきましては、これは何も日本アメリカ赤字を全部——全部じゃない、大部分日本黒字で集めてしまったからというようなことではありませんで、一例を申し上げますと、アメリカがいま原油ですか、石油ですか、そういったようなものを懸命に集めておるというようなことが一つの大変大きな理由になっておると私は思う。そういうようなことに対しましては、世界の国際的なエネルギー政策エネルギー対策、そういうような観点から、ぜひともそういうようなことでないようにひとつこれは持っていきたい、こういうふうに考えております。  数字等については事務当局からお話し申し上げます。
  18. 村山喜一

    村山(喜)委員 数字はいいですが、やはりマイケル・ブルメンソール発言に見られまするように——それに対しては厳重に警告を発せられたようでございますが、しかし、アメリカ貿易収支が大変な赤字になる、経常収支赤字になるという中で、アメリカ赤字原因というのを調べてみると、どうもOPECに対する石油急増、それと日本との間のいわゆる貿易収支赤字、その他はそう注目すべきものはない。  それで、問題は石油の急激な輸入ですね。大体四十八年は日本と同じ程度入れておった。それがいまでは日本倍輸入をしている。こういうような形で自分たち国内にそういうようなエネルギーの資源を温存をしながら、貿易収支赤字になろうがどうなろうが、OPECの国々から石油を買い付けていく。こういうようないわゆる政策やり方の中からドルが安くなって、日本の円が高くなっていく。こういうような姿の中で、対外的な競争力のある企業は別として、中小企業がばたばたとつぶれるというようなことになるならば、当然アメリカに対して、そういうようないわゆるめちゃくちゃなやり方はやめるべきであるというような忠告は、大蔵大臣としてもなさるべきではないだろうかと思うのですが、そういうようなお考えはございませんか。
  19. 旦弘昌

    旦政府委員 アメリカ貿易収支は、ただいま御指摘がございましたように、昨年の一−八月とことしの一−八月、これを季調済みベースで調べてみますと、昨年の一−八月では、貿易収支で二十二億九千万ドル赤字でございました。ことしの同期には、それが百七十五億八千万ドル赤字になっておるわけでございます。したがいまして、差し引きしますと、同じ期間に百五十二億九千万ドル赤字急増したわけでございます。その中身を見てみますと、鉱物性燃料輸入額でございますが、この大部分石油でございますけれども、昨年の一−八月には二百十五億六千万ドルでございました。それがことしの一−八月には二百九十五億ドルになっております。したがいまして、その間約八十億ドル輸入がふえたということになっております。したがいまして、先ほど申し上げましたように、貿易収支では百五十二億九千万ドルでございますから、その半分以上がこの鉱物性燃料輸入の増ということになっておりまして、それに対しまして対日の貿易収支を見てみますと、昨年が一−八月で三十四億二千万ドル赤字、それがことしは四十九億九千万ドル赤字でございますので、そのふえ方は十五億七千万ドルでございます。したがいまして、非常に大きな部分がおっしゃるとおり、石油等輸入急増によるものであるということはそのとおりでございます。  第二点といたしまして、私ども日本経常収支の黒が大きいということにつきましては、確かにそのとおりでございますから、その点につきましてはわが国といたしましても、今後とも経常収支の縮小に努めるという努力をいたします。他方、アメリカに対しましては、有効なエネルギー対策等の実施によりまして、国際収支の大幅な赤字を減らすようにしてもらいたいということは、先般八月に東京で行われました準閣僚会議におきましても、その点を私どもは主張しておりまして、早くエネルギー対策を適正に実施してもらいたいということを指摘したところでございます。
  20. 村山喜一

    村山(喜)委員 準閣僚会議の話の内容は私も聞いておるわけでございますが、大蔵大臣も、日米閣僚会議ですか、あるいは国際的な会議というようなものが予定されておるとするならば、当然あなたとしても、そういうような準閣僚級ベースに任せるんじゃなくて、政府の重要なポストにいらっしゃるあなたの方からも、ブルメンソール米財務長官あたりには進言をされてしかるべきではないだろうかと私は思うのですが、いかがでございますか。
  21. 坊秀男

    坊国務大臣 もちろん、いま事実は国際金融局長から申し上げたとおりでございますが、私も日本財政金融の責任をあずかっておる人間といたしましては、もうお言葉のとおりでございまして、そういう機会がありますれば強くそういう発言をしたい、かように考えております。
  22. 村山喜一

    村山(喜)委員 ちょっとお尋ねをしておきますが、今回の試算内容でございますが、「輸入海外への所得」いわゆるGNP控除項目でございます。その項目内容は、円建てはドル換算をしてまいりますと、これは二百六十六円で計算をしたんだ、こういうふうに聞いておりますが事実ですか。
  23. 澤野潤

    澤野政府委員 お答えいたします。  との試算をいたしますまでの円のレート平均をとってみますと、先生のおっしゃる程度の数字でございます。
  24. 村山喜一

    村山(喜)委員 二月の段階では二百九十五円、今回の改定では二百六十六円、約一〇%の違いがあります。しかし今度は、ドルと円の実勢価格というものは、先ほど大蔵大臣お尋ねをいたしましたら、これは円の実勢を反映しているものと基本的に考える、こういう御説でございます。私もそう思います。とするならば、二百五十三円、四円という二百五十円台の低い数字、こういうことが基礎になってくるのではないだろうかと考えるわけです。  私はそれで、二百五十三円で「輸入海外への所得」を割り崩してみました。計算をやり直してみたんですが、そうなりますと、二十二兆二千百三十三億円という数字が出てまいります。したがいましてその差が、前は「輸出海外からの所得」の二十五兆六千億と「輸入海外への所得」の控除項目の差が約二兆円ございます。今回は、そういうような計算でやってまいりますと、三兆四千億という大きな数字になりますね。  というのは、その三兆四千億は名目GNPの一・七%に当たるわけです。ということになりますと、今回の国民総生産名目で一三・一%ふえるということになっております。なっておりますが、実際はそういう控除項目がございますから、その残りがどういうふうに差があるかということは、これは名目上の外貨としては資産が残るけれども、実際に国民消費に向かう、そういうような面から見てまいりますと、そのGNP構成の中でその分だけ差し引いて物を考えなければならない、こういうことに実際の経済の規模といいますか、そういうような実体面からいいますとなる、こういうふうに見て間違いございませんね。
  25. 澤野潤

    澤野政府委員 確かに先生のおっしゃいますように、円高基調というものが相当長期間続く場合には、これはやはりわが国にとりまして、輸出数量減少傾向をたどると考えられますし、また輸入増加する傾向になると思いますので、その円高との関係につきましては、これからどの程度長期的に続くかということを十分にながめていかなければ、いまおっしゃいましたような結論にはならないと思います。現在の状況で見る限り、先ほど国際金融局長からも御答弁がございましたように、対外経済対策等をとりました場合に、国内需要増加に伴う輸入増加というようなものも出てまいりますので、われわれといたしましては、この数字で推移するものと考えております。
  26. 村山喜一

    村山(喜)委員 大臣、百九十一兆のGNP名目の中では、そういうような使えない、外貨としてそこに備蓄をされるということを考えますと、三兆四千億円の差があるわけですね。したがいまして、実質成長率GNPは六・七ということになっておりますけれども、これは理論数値の上の数字でございまして、実際はそういうような点から円高のために差が大きく開いてまいりまして、外貨がそれだけ蓄積をされる、それがそのまま使われないということになりますと、国民実体経済の上からは下がってくる。だから、GNP実質は、前の二月の場合と今回の改定の場合と同じだからいいじゃないか、こういうふうに言われましても、実際面としては実体経済では下がっておる。そして円高によってGNP実質も下がらざるを得ない、こういうふうに私たちは見るのでございますが、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  27. 大竹宏繁

    大竹説明員 この「輸出海外からの所得」というのは、GNP構成一つ項目でございます。GNPといいますのは、ある期間に……(村山(喜)委員「詳しい説明は要らない。あなたに聞いているんじゃない。大臣に聞いている。簡単にやってくれ」と呼ぶ)これはやはり海外に物が売れるわけでございますから、その意味では、日本経済にとってそれだけ所得がふえるということでございますから、輸出増加したことによりまして、あるいは経常余剰がふえたことによりまして、成長率が落ちることはないというふうに私ども考えております。
  28. 澤野潤

    澤野政府委員 ただいま大竹課長からもお話がございましたけれども、今度の総合経済対策の結果、六・七%の寄与率の内訳といたしましては、これはもう予算委員会などでよく出ておるのでございますけれども国内需要が六・〇、海外需要が〇・七ということでございます。総合経済対策によって国内需要を振興することによりまして、輸入もふえますし、また個人消費支出等流通効果をもたらすものでございますから、六・七%の実質成長率は十分達成できると確信いたしておる次第でございます。
  29. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういうようにならないのですよ。それはドル建て国際収支ドルベースでやった場合のものと、それから円ベースの上の国民総生産との関係の中で、控除項目輸出輸入のバランスシートを見てみたら、前は二百六十六円で計算した場合には二兆円の差がある。今回は二百五十三円で計算すると三兆四千億の差が出てくる。こういうような割合からまいりますと、一三・一%というその名目成長率よりも、これはそういうような差を織り込んだものとして計算はしているわけでありますが、今度の円高によってさらに国際収支の中の経常収支黒字の幅が大きくなれば、それだけ実体経済の面では、外貨という貯蓄はふえるけれども資産勘定においては国民の資本は残るけれども消費面としては、それだけ使わなければ名目成長のその数値皆さん方が見ているものよりも少なくなる、こういうことなんです。それはお認めになるでしょう。
  30. 澤野潤

    澤野政府委員 長期的には確かにおっしゃるとおりで、もし円高が長期に続きますればそういうことになるんじゃないかとは思います。しかし長期的と申しますのは、短期的にはタイムラグがございますので、本年度中に果たしてそういう効果が出るかどうかということにつきましては、もう少しそういう事態の推移をながめなければはっきり申し上げられないと思います。
  31. 村山喜一

    村山(喜)委員 その問題ばかりやっておってもしようがありませんが、国際金融局長お尋ねいたしておきますが、五十一年末現在の国際貸借に関する決算報告についてお聞きをしたいと思います。  内容は、四年ぶりに純資産残高増加をした、こういうことでございますが、そのとおりでございますか。
  32. 旦弘昌

    旦政府委員 さようでございます。
  33. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、そういうようなことで経常収支は、誤差の脱漏とかあるいは評価の調整を別といたしました場合には、それが黒字で集積されていけば対外純資産の増減と一致する、こういうふうに見て間違いございませんね。
  34. 旦弘昌

    旦政府委員 基本的にはさようでございます。
  35. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、四十七年末は百三十八億六千七百万ドル、そのころは一ドル三百八円のレート換算をしておりますから、資産としては四兆二千七百十億円の資産があった、こういう計算ができると思うのです。今回は、一ドル二百五十四円で計算をしてまいりますと、純資産残高が九十五億七千四百万ドルでございますから、円に換算をした場合には二兆四千三百十七億円、こういうことでよろしゅうございますか。
  36. 旦弘昌

    旦政府委員 この対外資産負債残高計算に当たりましては、レートは、過去におきましてもまた今回の五十一年末のものにつきましても、一ドル三百八円のスミソニアンセントラルレートを用いております。
  37. 村山喜一

    村山(喜)委員 三百八円で今日も計算しているのですか。それは実体面から見ましておかしいじゃございませんか。
  38. 旦弘昌

    旦政府委員 確かにそのときどきのレート計算するのが実態に即したものではないかという御意見もそのとおりでございますけれども、何分にも現在のシステムにおきましては、スミソニアンの三百八円というレートはまだ生きておりますので、それで一貫して計算しておる次第でございます。
  39. 村山喜一

    村山(喜)委員 それは名目上は生きているかもしれないけれども対外資産国際貸借に関する決算報告を提出されて、閣議でこれは了解を受けていらっしゃるわけでしょう。そうすると、一体国民資産というものがどういうふうになっているのかということを正確に知らなければ、純資産の割合というものが国民一人当たりで計算をしてまいりますと、日本の場合にはイギリス並みということになっているんじゃありませんか。そういうような状態の中で、アメリカからやんやん言われるような実体面でないということも証明をしながら、あなた方としては、フローの面だけで問題を取り上げるのじゃなくて、ストックの面からも問題を提起して論議をされるというのが本当のやり方じゃないでしょうか。そういうような点についてはどうお考えになりますか。
  40. 旦弘昌

    旦政府委員 確かにおっしゃいますように、実態はそのときどきのレートでというのも一つの御意見であろうかと思いますけれども、一応三百八円ということで計算いたしまして、たとえばことしの年初におきましても、二百九十四円ぐらいであったと思いますが、そういうことで、最近急激に円価格が上昇したということで、その問題は確かにクローズアップされておりますけれども、現行のやり方といたしましては、三百八円で計算をいたしております。したがいまして、その実力がどうかということにつきましての国際的な比較をいたしますようなときには、おっしゃるような御指摘の点を勘案する必要もあろうかと思いますけれども、外為会計資産等の評価に当たりましても、一応三百八円で計算をしておる次第でございます。
  41. 村山喜一

    村山(喜)委員 大蔵大臣、三百八円という今日では存在しないようなので計算をして、国際貸借に関する決算報告が承認をされる。それは形式的なものと実質的なものと違いますが、盛んに日本黒字国だということで攻撃をされているわけです。ところが、一人当たりの純資産を調べてみると、アメリカが、四百三十八に対して日本の場合には、五十一年の数字によりますと八四・五だと言っているのです。だから、フローの面とストックの面と両方から問題をとらえなければならないと私は思うのです。そういうようなものをやはり基礎に置きながら、あなたとしては国際的に対処される必要があるのじゃないだろうか。これはあなたの当然の責任だと思うのですが、その点お答えいただきたい。
  42. 坊秀男

    坊国務大臣 御指摘の件は非常に重大なる問題だと思います。そこで、この点につきましてはこれから慎重にひとつ考えてまいりたい、かように思います。
  43. 村山喜一

    村山(喜)委員 時間がありませんので、あと税制の問題についてお尋ねをいたします。  今回、予算委員会を中心にいたしまして、税制改正の論議がなされておるわけでございますが、衆議院なり参議院の予算委員会審議の模様を聞いてまいりますと、一般消費税の導入については総理は、慎重を期する、こういうようなお考えが表明されております。五十三年度の税制改正の方向というのは、私が知る限りにおいては、閣議で大蔵大臣が医師優遇税制に対して言及をされまして、かねての御所論のように、これをやらなければ、不公正税制をやらなければ、増税という客観的に避けられないような状態の中で、どうしてもこの大きな重い石を除かなければならないというような意味の発言をなさっていらっしゃるようでございまして、私もわが意を得たりと考えているわけです。  そこで、きょうのテレビを見ておりましたら、建設省と国土庁の方の意見として、法人の土地譲渡重課税の問題について、これは来年度の税制改正の中でどうしても実現を図らなければならないというような意見を述べておりました。そういうようなのが今日取りざたをされる程度でございまして、来年度の税制改正についての方向づけというものはなされていない。この臨時国会でやらなければ、大体の方向が出てこなければ、来年度の税制は、予算編成が始まりまして、そして法案がまたまとまって出てくるというような段階の中では、いわゆる国民意見というものを表明する段階が過ぎてしまう。だから、今度の国会においておおよその方向というものは、政府の方が国会に対してこういうふうにいま考えているという方向だけは明示をしておく必要があるのではないかと考えるのです。そういう立場から私は質問をいたします。  そこで、経済情勢は非常な不況を迎えて、二兆円の公共事業等を中心とする不況打開の政策が今度の国会でとられた。景気の拡大をやらなければならない。内需の振興をやらなければ、先ほどから申し上げてまいりましたように、外貨だけが集積をするという姿の中で問題を考えてまいりますと、いま大蔵大臣の頭の中にあるのは一体何だろう。それはこの際、法人税や所得税の増税はむずかしいとお考えになっていらっしゃるのではないだろうか。とりあえず今度やらなければならないのは、不公正税制に対する是正をやらなければならないと考えていらっしゃるのではないだろうかと私は推測をするのでございますが、どういうお考えで今日の経済情勢の中で、来年度の税制改正の方向というものを頭の中で整理をされているのか、お答えをいただきたいのです。
  44. 坊秀男

    坊国務大臣 中期的立場から税制調査会が答申をしてくれたその答申については、村山さんよく御存じのことと思いますが、その中で将来の日本考えてみると、このままではもちろん自然増収に頼って諸般の政策を実行していくこともできないし、また財政の健全化もできないということでございます。そこで、中期的には国民に対して何らかの負担をしてもらわなければ、ふやしてもらわなければならないということでございます。私の頭の中では、それをどうしてもやらなければならない、かように考えております。  しかしながら、あの広範なる提言の中から何を取り上げて、どういう体系をつくっていこうかということは、五十三年、五十四年というふうに各年度における日本の国の経済情勢、財政の内情といったものを考えて、それに即した具体策を考えていかなければならないというふうに考えておるのでございますが、それにいたしましても、とにかく税制をいじっていくためには、長い間皆さんからも論議をいただいておりますし、税制というものは公平であるということが、制度の上においても執行の上においても何よりも大事なことだと私は思います。その点を避けて通るということではどうしてもいけない。さような考えから、各年度における財政事情あるいは経済事情といったものは、来年度の経済見通しが固まってくれませんと、どうしようかという体系は頭の中へなかなか出てきませんけれども、何にいたしましても、税制の公平化ということは何よりも大事なことである、かように考えております。
  45. 村山喜一

    村山(喜)委員 税制の公正化というのに重点を何よりも置いてお考えになるとするならば、内容的にいまあなたの頭の中にありますのはどういうふうなものがあるのでしょうか。たとえば給与所得控除の青天井はちょっとおかしいのじゃないか、実態調査をやってみようかとか、あるいは有価証券の取引の関係で、証券会社に源泉徴収の義務づけをさせるような形でやった場合には、取引の実態が正確に把握できるのではないだろうかという問題や、あるいは自動車とか電機とかいうところは国際的に大変競争力が強いけれども中小企業で構造不況業種になっているようなところはどうにもこうにもならない、こういうような非常にアンバラな姿の中で、会社臨時特別税というようなものは何かの形で考えられないかとか、あるいは医師の社会保険診療報酬等の論議の中にあるような租税特別措置の洗い直しの問題、あるいは無記名、架名による預金の問題等、そういう問題をどういうふうにするかとか、不公正というものの認識の仕方もいろいろ違いますが、そういうものはどういうふうに検討したらいいであろうかというようなことをお考えになっているのではないだろうか。ただ医師の診療報酬の問題だけが新聞に大きく出ましたけれども、この社会保険診療報酬課税の特例等の問題だけでなしに、ほかの問題もお考えになっていらっしゃると思うのでございますが、その点はいかがですか。
  46. 坊秀男

    坊国務大臣 いま数々の、これが不公平だとお考えになっておる事項についての御指摘がございましたが、これはやはり私どもといたしましても、その中には必ずしも不公平ではないというものもあるかもしれませんけれども、そういったようなことについて考えていかなければならない。村山さん御指摘になりましたけれども、不公平ということについての観念というか、考え方というか、その辺は各方面において大分違っておりまして、そこに一つの決定的な概念がしっかりしていない点も、これは一般的に申すのですが、あるわけです。  そういったようなこともよく考えてみまして、いずれにいたしましても、税を公平化じていくためには、その中にはかつては意義があったというものもありましょう。ところが、一たんそういったように大変優位になると、それはそのときには日本の国の政策遂行上、税の公平ということは若干犠牲にされたりあるいは妥協をさせられたりといったこともありましょう、しかしそういったものについては、すでにその政策目的を達成し、あるいは事情が変わったためにその必要がないというようなものでも、優位な地位にあるものは何としても置いておきたい、これは人情のしからしむるところでありましょうが、そういったようなものも私は多々あろうと思います。これは現在の時代に即してどうしても直していかなければならない。その中には、衆目の見る前で不公平税制という、そういう姿をさらしておる税制もあるいはあるかもしれない。そういったものを処理するということが一番大事なことであろう、かように考えております。
  47. 村山喜一

    村山(喜)委員 一般論的な物の言い方は、わかったようでわからないのです。あなたはどうお考えになるのか。新聞であるいは閣議で取り上げられたのは医師優遇の是正、これははっきりしておりますから、その点は確認をしておきたいと思います。そのほかに、あなたがいまお考えになっているものは具体的にございますか、ございませんか。
  48. 坊秀男

    坊国務大臣 決してそのほかには何もないとは申しません。それはたくさんあります。そういったようなものについては慎重に検討してまいりたい。いまのところは、先ほども申しましたとおり、私の頭の中で、何を取り上げて、どうして今度の体系をつくっていこうかということにまでは参っておりません。そういう段階までは来ていないということを申し上げます。
  49. 村山喜一

    村山(喜)委員 そうすると、医師の優遇税制是正の問題は、頭の中にちゃんと入っておるのですか。
  50. 坊秀男

    坊国務大臣 それは、不公平税制の中の一つの最も代表的なものであるということです。
  51. 村山喜一

    村山(喜)委員 わかりました。これは大蔵大臣のかねがねの主張でもあったというようにわれわれは記憶しておりますし、一番頭の中に入っていらっしゃる問題でございますから、わが党としてはそういうような立場で、大いにそういう方向になることを期待しますが、考え方としてはたくさんあるとおっしゃるその内容が、ほかのはまだ発表になっておりませんけれども一つぐらいはこの席で言われたらどうでしょう。
  52. 坊秀男

    坊国務大臣 一つ申しますと、一つが二つ、二つが三つということになりますから……。
  53. 村山喜一

    村山(喜)委員 ではここで、大臣はなかなか言いづらいでしょうから、主税局長にちょっとお尋ねしておきます。  新聞等によりますると、今度大蔵省も大衆に説得をして、大衆の理解と協力を得なければなかなかむずかしいということから、何か審議官を中心にして一般消費税についてのPR活動をなさっていらっしゃるというふうに伝えられておるわけでございます。そのことは事実でございますか。
  54. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 御承知の中期答申をいただきましてから、その中で特に新しい税目として一般消費税が取り上げられておりますけれども、一般消費税の具体的な内容がまだ固まっていない、一番大事な点で固まっていないという面がございます。御承知の免税点をどこに置いたらいいのか、それから累積型と非累積型のどちらが本当に日本の場合にいいのだろうかということが、いわばまだ白紙の状態になっております。  私どもとしましては、中期税制の答申の全体の基本的な考え方についてぜひ国民に十分の理解を求めるように、政府としても格段の努力をしろということは答申自身に書かれておりますが、それを受けまして、各方面からの説明会に来てほしいという御要望は全部お受けをするようにということを申しておりまして、ただいまのところ、審議官を一応それぞれ派遣して御説明に当たらせているという状態でございます。
  55. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、一般消費税のパターンなんですが、いまお話がありますように、累積税方式あるいは単段階税方式あるいはECの付加価値税方式、これは二つ大きく分ければ、いまお話がありますように累積型と非累積型ということになるのでしょうが、その内容説明をされます場合に、どういう内容説明をなさっていらっしゃるのでしょうか。たとえばいろいろな分類の仕方があると思うのですが、大規模売上税とかあるいは取引税とか、そういうような形なのか、先ほど免税点という話が出たのでございますが、製造者消費税という形でお考えになるのか、あるいはEC型の付加価値税という姿の中で説明をされているのか。その内容説明は、税調の答申、あなた方が原案は書いたのですから、そういういわゆる答申の内容を見ましても、きわめて漠然としているわけです。一体日本の今日、直接税を中心にしている税構造が、今度間接税を一般消費税という形で取り入れていく場合に、どういうような対応の仕方をしようとしているのだろうか、それは税体系の構造の転換をねらっているのではないだろうかというふうに見られる節もあるのです。そういうような説明はどのような説明をなさっていらっしゃるのか、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  56. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 できるだけ簡単にお答えいたしたいと思いますが、最初の問題は、答申にございますように、昨年の十二月の部会長報告、これが公表されておりますが、その段階でございました四つのタイプ、製造者消費税、EC型付加価値税、大規模売上税、大規模取引税、そのいずれでもない一般消費税のタイプというものが、ある程度の骨格を示されているというふうに私どもは理解しております。大規模売上税そのものでもないし、大規模取引税そのものでもないし、EC型付加価値税でもない、しかし製造者消費税という考え方は、その審議の途中でドロップされたということははっきりしておるかと思います。  そこで、現在御説明申しておりますのは、答申に書かれているのは、基本的考え方、そのほかの問題を省略いたしまして、一般消費税そのものにつきましては、結局累積型か累積排除型か、それはなお議論をしようということになっているので、それぞれを特質を御説明しながら、たとえばきょうお集まりの皆さんの業界では一体どちらの方が実情に即しますかということを伺う機会を持ち続けているわけでございます。  免税点についても同様でございまして、免税点は売上高基準でつくるのか、資本金基準でつくるのか、従業員数基準でつくるのかということは審議を願って、審議の結果として、売上高基準が最も適当だというところまでは答申に書かれておりますから、なぜそうなったかという御説明をする。同時に、お集まりの皆さんの間では、売上高基準で物を考えるときに、答申の中にある、その設定の水準いかんでは競争条件が撹乱されるということがある。どの辺ならば競争条件の撹乱という問題が非常に深刻な問題にならずに済むのか、そういうこともいますぐお教えいただければありがたいし、そうではなくて、こういう問題としてお考えいただくならば、ある時期に私どもに業界としての率直な考え方を教えていただきたいということをいま申し上げている段階でございます。  それから御質問の第二点の、体系が非常に変わるのかという御質問でございますが、この点は私は実はそうは受け取っておりません。と申しますのは、今度の答申では、負担増加をお願いする場合に、負担配分が累進的であるということが絶対に必要であるとするならば、それは所得税なんだというふうに言われておりまして、しかし所得税の法律上の増税というものにはおのずから限界があるであろうから、問題を解決するためには一般消費税もやむを得ないではないか、またそれには十分の理由があるという答申になっております。仮に負担配分が累進的でないということで一般消費税を取り上げないのであれば、それは所得税でいいのだ、それには十分理由があるのだという答申でございますから、体系を変えてしまおうという思想は出ていないと思うのです。つまり、それは納税者なり国会の場なりで、一体負担配分の累進性ということと所得税増税の現実的可能性ということとをどうお考えいただくかという問題として、なお問題は選択として残されているのだ、税制調査会は選択をした、それが本当に現実にどういう選択になるかはこれからなお議論を詰めようという趣旨の答申だと思っております。
  57. 村山喜一

    村山(喜)委員 累積税方式という過去の姿の中では、取引高税というものが昭和二十三、四年に一応できたのですが、すべての取引の段階でも課税をする、流通機構が複雑であればあるほど不利になる、競争条件が不公正になるというような問題がありまして、実施がされなかったということが記憶に残っております。そういうような意味から、非累積型のものをというふうに考えていらっしゃるのでしょうが、それはやはりメーカーが申告、一回だけという形の中でとらえられているとするならば、そういうものについて内容の面をあなた方がどういうようなことで考えてPRしていらっしゃるのか。そのことを国会の前でも明らかにしてもらって、そしてそれに対する論議をしなければ、先取りみたいなかっこうで世論をつくっていくような方向を是認をすることになると思うのです。  そういうような意味から、いまの物品税の体系というものについて、もう個別物品税では限界に来ているのだという認識の上に立たれているとするならば、そういう認識に立つに至ったその結果というもの、判断の基礎材料というものをやはり国会に提出をされてしかるべきではないかと私は思うのです。やはりいまの物品税については相当検討をしなければならないし、またやる中から、一般消費税のような逆進性のそういうふうな税構造というものに対しては私は大きな疑問を持っておりますので、物品税については洗い直しをやってみる必要があるなあということを感じておりますので、そういうような資料を提出をされるように要請を申し上げまして、時間が参りましたので、私の質問はこれで終わりたいと思います。いかがですか。
  58. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 資料の件でございますが、物品税についての考え方は、答申にも第二の部分で触れられております。それ以上に数字的な資料というものは実はないわけでございまして、計数的な資料につきましては、個別になおどの品目のこういうことという御指示がございますれば、私どもできるものはお出ししたいと思いますけれども、一般論としては答申に書かれております考え方を御参照いただきたいと思います。
  59. 小渕恵三

    小渕委員長 村上茂利君。
  60. 村上茂利

    ○村上(茂)委員 ただいま村山委員からも税制についての質問がございましたが、私も税制、特に社会保険診療報酬課税の特例に関する問題につきまして、お尋ねを申し上げたいと存じます。  先般、税制調査会のいわゆる答申があったわけでございますが、その中では、たとえば一般消費税を提案をいたしまして、しかもその内容については、いつどの程度の規模で実施をするかという点については政府にげたを預けた、こういうようなかっこうになっておりまして、いわゆる不確定な部分がかなりあるように思われるのでございます。  そこで、この十月四日という時期に答申が出されまして、しかも内容が具体的でないという面もございまして、この答申をめぐりましていろいろな議論が展開されておるわけでございます。ある種の報道機関などは、早速その一般消費税などについてのアンケート調査をする、内容がまだ確定をしていない、にもかかわらず、その税制についての意見を紹介する、こういうようなことでさまざまな波紋を描いておると思うのでございます。  そこで、答申が出ましたけれども、これにどのように対応していくのか。まず、時間的に来年度予算の編成と関連をいたしまして、どのような手順でまとめていくのか、そのスケジュールを大体見当がつきましたらお示しをいただけないか。  また、答申に対する考え方につきまして、これは決まり文句でございますけれども、答申を尊重しますという言い方もあれば、慎重に検討するという言い方もございますれば、あるいはどの部分についてどうこうという意見表明はいまの段階では申し上げられない、いろいろな言い方があると思うのでございます。総理が予算委員会で慎重に検討するという答弁をなさったようでございますが、それが一般消費税の採用などについてきわめて消極的である、こういうような印象を持つ人もあるわけでございますが、そういう意味合いにおきまして、今後どういうふうに取り扱いを進めるか、この答申に臨む態度をどのようにおとりになるかという点について、お聞かせをいただきたいと思います。
  61. 坊秀男

    坊国務大臣 現下の財政経済の事態におきまして、この中期的立場に立った答申というものは、税制のほとんど全般にわたりまして非常に広範なる提言をしてもらっております。だから、私どもといたしましては、今後の税制考えていく、税制体系をつくっていく上におきまして、一つの非常に有力なる指針というふうに心得まして、そうしてこの趣旨を尊重いたしまして、その中でどれをとっていくかということについて、これは尊重するかゆえに軽々にこれを考えずに、慎重に——慎重ということは決して消極的なことを考えておるものではございません。とかく日本では慎重とかなんとかと言いますと、非常に消極的に聞こえますけれども、さようなことは考えておりません。これを尊重して、何といたしましても五十三年度以降におきましてその趣旨を実現していきたい、具体化していきたい、かように考えておりますが、いまどういうふうにやっていくかというそのスケジュールにつきましては、主税局長からお話し申します。
  62. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 御指摘のとおり、今回の答申では、一般消費税を導入することが避けがたいのではないかというところまでが言われておりまして、具体的な内容につきましては、かなり重要な部分がなお今後の検討にゆだねられております。それは、ただ政府にげたを預けるということではなくて、税制調査会自身が次の税制調査会にバトンタッチをしたという御趣旨でございます。それは税制調査会内部でずいぶん御議論がございまして、たとえば先ほど御質問にございました累積排除型にするのか累積型にするのか、そこも決めようかという御意見もございましたけれども、やはりある程度非常に広い範囲に影響を及ぼす問題であるだけにその点はむしろ今後の論議にゆだねておいて、十分各方面の御意見を聞く機会も持って、その上で次の税制調査会で具体的に詰めていく、そういう手順を踏んだ方がいいではないかという御意見の方が多かったわけでございます。  同時にまた、そういうやり方が、これだけの新しい税につきましては、たびたび当委員会でも御指摘かございましたように、いきなり法案が出てくるというのではなくて、まず考え方が公表されて、それにいろんな方々の御意見を伺う機会を持った上で、具体的な法案に進むということにすべきではないかという御指摘にも沿うものだと私どもとしては考えているわけでございます。  そこで、次の税制調査会は、現在まだ委員の人選中でございまして、発足いたしておりませんけれども、私どもとしましては、なるべく早く発足していただいて具体的な検討に入っていただきたい。またその場合には、中期答申を新しい税制調査会がどう受けとめられるかということはまずどうしてもやっていただかなくてはなりません。また、仮にその中期答申の線を新しい調査会も是認するということになりました場合には、当面は五十三年度税制改正で、大臣しばしば申しておられます。非常に広範な提言の中のどこを具体的にどの幅で取り上げるかということの作業にかかっていただかないと、時間的には間に合わないというふうに考えております。したがいまして、それにつきましてはもう少し時間をいただきました上で、事務当局の方から、五十三年度予算についてどういう感じで作業が進んでいるかということをまず申し上げて、その上で税制改正の御判断をいただくということになろうかと思います。
  63. 村上茂利

    ○村上(茂)委員 大蔵大臣のこの中期答申に対する臨み方、了解をいたしました。さようであろうと私どもも存じます。また、今後の進め方についての主税局長のお考えも私は理解できるのでございますが、ただ答申の中にきわめてはっきり言っている部分がございます。その典型的な一つは、社会保険診療報酬課税の特例は廃止すべきである、これはきわめて明確に見解を表明しておるのでございますが、この問題について私はお尋ねをしたいのですが、その前に、現実に病院で、税をとります場合の申告をいたします段階で、社会保険診療報酬の部分と、たとえば特例が適用がなっておりません労災保険の医療費の問題、あるいは自由診療の部分とかいろいろまざっておるわけですね。それをどのように仕分けし、どのような必要経費の算定をしてやっておられるか、その実態をお聞かせ願いたいと思います。
  64. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 ただいまの御質問で、医師課税の特例が問題になっているんだけれども、実際の医師課税の実態はどうなっているのだ、こういう御質問だと思いましてお答えを申し上げます。  個人開業医の医業によります所得と申しますのは、事業所得といたしまして、御承知のとおり、総収入金額から必要経費を差し引いて所得金額を計算する、こういうことになっておるわけでありますが、御質問のとおり、社会保険の診療報酬については、この実際の必要経費の額によりませんで、社会保険診療報酬の七二%によることもできるという課税の特例がございます。このため医師においては、医業の収入、経費を、社会保険診療報酬分と、ただいま御質問にありましたように自由診療分とに区分をいたしまして、社会保険診療分の必要経費につきましては、区分された実際の額と七二%相当額とを比較いたしまして多い方を採用しておる、こういう実情でございます。したがいまして、社会保険診療報酬について課税の特例を受ける医師は、その報酬の二八%相当額、これは所得部分でございますが、それから自由診療分の実際の所得金額の合計額を、医業による事業所得の金額として申告をし課税をされる、こういうことになっております。  そこで、この社会保険診療報酬につきましては、御承知のとおりに、課税上の特例を受けます場合には、確定申告書にその旨を記載をしていただく、こういうふうになっておりまして、現在の確定申告書の所定欄には、租税特別措置法二十六条という記載をいたしております。その該当欄にお書きいただければ、その方については社会保険診療報酬課税の特例がございます。そうでない場合には、先ほど申しましたように、自由診療という形で、実際の必要経費というものが収入から引かれて差し引き所得が出る。この合計額を両方それぞれある方にはしていただく、こんなふうになるかと思います。
  65. 村上茂利

    ○村上(茂)委員 私のお尋ねしたいのは、たとえば同一の外科病院で、健保の患者のたとえば膝関節以下の切断の手術をするとします。一方労災保険で、業務上の負傷をして、運び込まれまして、膝関節以下の切断をしたという場合に、かかる経費はほとんど同じだと思うのですが、その場合、労災の方の必要経費をどう見るか、こういう問題なんですよ。伺いますと、内々の基準のようなものを事務の指導要領としてお出しになっているんじゃないかということも伺っておりますが、個別に一々労災保険の医療費について具体的な必要経費の計算をなさっているのか、あるいは五〇%くらい見ろとか四五%見ろとか、大体のことでやっておられるのか、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  66. 谷口昇

    ○谷口(昇)政府委員 先ほど御答弁いたしましたように、社会保険の診療報酬については、その七二%を必要経費とすることもできるというふうになっておりますが、この医師課税の特例は、租税特別措置法二十六条に列記されております法律の規定によります医療給付等につき支払いを受ける者に限られておりますことは、言うまでもありません。その中には、先生がただいまお話しになりました労災部分はございません。そこで、したがいまして、私どもあるいは通常世の中で自由診療と言っておりますものは、細分すれば自費による、そういうもののほか、先ほどお尋ねの労災保険による診療とか、あるいは公害補償診療等の公費負担によるものも含まれる、こういうわけでございます。  したがいまして、先ほど申しましたように、社会保険診療報酬として租税特別措置法に列記されております健保でありますとか、あるいは共済組合法でありますとか、船員法でありますとか、そういう列記されております幾つかの保険法の規定がございますが、その規定にかかわる分については社会保険診療報酬、そこに列記されていないものにつきましては、労災保険も含めまして、これは自由診療分として、まず必要経費という形で別個になるわけであります。  そこで、その次はその自由診療分についてはどういうふうになるか、こういうことでございますが、これにつきましては私どもは、収入に対してその所得が幾らあるかということは、全国でいろいろ調べをいたしまして、その結果現在、所得率を出しまして、それに基づきまして計算をしておるという形でございます。  それからなお、ただいまのものにつきましては、実は青色申告と白色申告とを問いませんけれども、自由診療分については、青色申告の人であれば手続をとっていただければ、それに相当する経費を引きます。こういうことでございます。
  67. 村上茂利

    ○村上(茂)委員 その手続はわかっているのですよ。ぼくは、同じ医療行為をやりまして、労災の方の必要経費をどう見るかという問題について聞いているのです。必要経費は、必要に応じたものをその都度調べて控除しています。それはわかっているのです。しかし、ほぼ四〇%か五〇%か、見合いの見当があると思うのです。  私がこれを質問しているのは、私は労災補償部長と労働基準局長を合わせて十年間やりまして、その間この労災の点数、単価の問題で医師会と非常に折衝したし、この特例を適用しろということをいろいろ言われたのです。そのやった経験をもとにして、いま御質問しているのですよ。  そこで、いろいろ見方はありますけれども、同じ医療行為をやりながら、必要経費の見方に非常に差があるというのはおかしいじゃないかというのは、実は私らもまいったところなんです。しかし私どもはこういう考えをとりました。まず点数、単価の採用の仕方が適正であるかどうか、それとの関連においてこの特例というものを考えましょうというので何年間もやったのです。労災の場合は、点数、単価の決め方が都道府県ごとに決まっておりまして、そして医師会の方は慣行料金でやってくれということを強く要望いたしました。慣行料金とは言いながら、支払いの計算の物差しがなければいけませんから、そうしますと、やはり単価と点数というものが考えられる。その場合に、単価というのは計算の基礎ですから、一とか十とか百とか簡単なやつがいいのです。点数だけでも計算できるようにするのが一番簡単なんです。  それはいろいろ見方はありましょうが、問題は、点数、単価が高いから医療の支払いが多いかというと、実はそうでないということが、昭和三十四年に、同じ疾病、たとえば指の第二関節から先の治療にはどれぐらいの医療費がかかったかとか、あるいは片足切断のときにどれぐらいの医療費がかかったか、入院日数は何日か、それから休業補償給付は何日かというのを各県調べてみたのです。その結果、点数、単価と医療費の支払い額とはかかわりが全くない。むしろ点数、単価の高いところが、入院期間が短かったりいたしまして安上がりだ。特に医療の支払いと休業補償の支払いがありますから、休業日数がぐっと短くなりますと、支払いの総額としてはぐっと減るわけなんです。たとえば労災保険で申しますと、療養補償で支払っているのが昨年は千三百四十四億円です。ところが、休業補償で療養のため休むのが七百六十三億と、その半分は休業補償なんです。ですから、入院期間ががらっと短縮されますと、これは支出がぐっと減るので、保険の総支出としてはプラスになるのです。  そういう意味で、私ども点数、単価と医療の支出の実際のあり方というものを丹念に調べたところが、そう大した関連性はない。いわば空気を抜いた風船の片一方を押さえたようなもので、押さえたと思っておったら、ほかでふくれているのです。そういう意味で、点数と単価と、それから医療行為、つまり治療の内容の問題が絡み合っておりまして、そういう意味でできるだけ適正と申しますか、総合的に判断した立場の適正という態度をとりつつ労災保険の点数、単価を決めさせていただいた。ところが、現実には健保と全く同じ点数、単価を採用した県もある。しかもそれには特例が適用されていない、こういう問題があったわけでございます。現在もほとんど同じ点数、単価ですが、ただ現在は、単価の方が十二円になっているということで、健保の方よりは有利だ、かようになっておるようでございます。  そこで、いろいろ問題はございましょうが、同じ治療行為をしながら必要経費の見方に非常に差があるということはやはり問題なんですよ。そういう意味から、私どもは従来いろいろ関心を持ってまいりました。しかし、この特例につきましては、社会保険の診療報酬の適正化というものがもう一つ関連性を持って議論されておるわけでございますから、その適正化を図るということは非常に大事な問題になってまいります。それを税の方は税だ、これは大蔵大臣の所管だ、これは厚生大臣の所管だ、ばらばらでやっておりますと、なかなか問題の全面的解決に至らない。これを今後どう進めていくかということは非常に問題でございますけれども、もとに戻りまして、中期答申の中で特例を廃止すべきである、かようにはっきりうたっておりますが、その根拠はどういう点にありますか、お聞かせ願いたい。
  68. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 中期答申では、御承知のとおり、三カ所にわたって社会保険診療報酬課税の特例の是正が強調されておりますが、具体的な提案としましては、廃止すべきであり、少なくとも昭和五十年度の税制調査会の答申にある段階的改善案を早急に実施に移すべきであるというのが提言でございます。  五十年答申にございますのは、一律控除という仕組みは残したままで、しかし収入が非常に大きくなる場合には控除率を四段階に下げるという、非常に中間的な改善案でございますが、少なくともその中間的な改善案を早急に実施しようというのが今回の答申でございます。  そういうふうに繰り返し言っておられます背景は、答申そのもので、やはりこれは税制の角度から見る限り、負担の公平を害しているということは明らかなので、今後一般的に税負担の増加国民にお願いする機会には、どうしてもこれを避けて通るわけにはまいらないという判断があって、そのような強い答申が出たというふうに理解しております。
  69. 村上茂利

    ○村上(茂)委員 その四段階の案も承知しておりますが、ただ、私が承知しておりませんのは、そういう数字が出てきました根拠はどのようなものでございましょうか。
  70. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 実は五十年当時、私、国際金融局長をやっておりまして、詳細を承知いたしてはおりませんけれども、一番低い控除率が御承知のように五二%ということにされておりまして、その五二%という率につきましては、その当時の状況での平均的な経費率がどの程度であろうかということが参考にされているように思います。それから、収入の一番低い部分をいままでどおり七二%という控除率を存続しておる答申になっておりますのは、当時の状況で見てかなりの数の保険医は現状と変わらない、とにかく高額の収入を持っておられる方が正常化に向かって一歩進むということが非常に現実的であろうという配慮がされたのではないかと思います。つまり、一番下は現状のまま高い七二だ、一番収入の大きい方は大体平均経費率などを考えながら五二まで下げていこうという思想であるように理解しております。
  71. 村上茂利

    ○村上(茂)委員 そのような四段階考え方を採用するにつきまして、これは厚生省にも直接かかわりのある問題でありますが、何らかの連絡、明示あるいは黙示の意思表示、厚生省の了解を得つつ御承認いただいたのかどうか、いやそれは全然連絡はしてないということなのですか、そこら辺をお聞かせ願いたい。
  72. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 申しわけございませんが、私、当事者でございませんでしたが、横からながめておりまして、当時の主税局長が非常に精力的に関係方面のところへこの案の御説明に回っておったようでございますので、その中には、その医療関係の方も当然入っておったのではないかというふうに考えております。
  73. 村上茂利

    ○村上(茂)委員 そこで、厚生省の方にお伺いしたいのですが、この特例を設定したいきさつはもう御承知ですから私からは申し上げませんが、これについては診療報酬の適正化ということが条件になっておるわけでございますが、この問題についてどのように今日まで取り扱ってこられましたか、その経過と考え方をお示しいただきたい。
  74. 八木哲夫

    ○八木政府委員 診療報酬の適正化の問題につきましては、そもそも診療報酬はどうあるべきかという基本の問題に結びつくわけでございます。従来から診療報酬のあり方の問題につきましては、中央社会保険医療協議会、中医協と言っておりますけれども、ここで御審議を賜り、ここの御意見を伺っているわけでございますが、基本的な診療報酬のあり方としましては、やはり国民経済力を勘案しつつ、さらに物価なり賃金なりの上昇を加味し、さらに医学、医術の進歩に適応するというようなことで、中医協の御意見を伺いながら、診療報酬の改正の都度、適正化の方向に努力をしているわけでございます。
  75. 村上茂利

    ○村上(茂)委員 いまの抽象的なことはわかっているんですよ。そうではなくて、いつどの段階でどのように手直ししてきたか、そして今後この税制問題と絡みまして、いまのままでいいのか、何らかの対応を考えておるのか、その点についてお答え願いたい。
  76. 八木哲夫

    ○八木政府委員 従来、診療報酬の改定の際に、診療報酬のあるべき方向は、点数の中身においてできるだけ技術料を重視するということで、適正化の方向でその都度努力しているわけでございます。しかし、いろいろな御意見もございますし、適正化ということになりますと基本的な問題になろうというふうに思われます。  それから、最近におきます診療報酬の改正というのは、おおむね全体の額としましては、賃金の上昇なり物価の上昇なりに伴うスライド的なギャップというものが中心でございます。  なお、厚生省のサイドにおきましては、診療報酬の税の問題等につきましては、医療制度全般にかかわる問題であるということで、現在、医療問題専門家会議においてこの問題を検討していただいておるという段階でございます。
  77. 村上茂利

    ○村上(茂)委員 今日までいろいろな経過をたどっていまの診療報酬は決まっておるわけでございますから、先ほど申し上げましたように、私も労災医療の問題でいろいろ苦労したことがあるのですけれども、要は考え方の基本の問題ですね。私は、日本医師会の武見会長を初め皆さんに御理解いただいたと思っているのですけれども、医療は、単に医療する行為自体の問題じゃないのですね。労災の考え方としては、損失のてん補ですから、できるだけ早く原状に戻す、原状回復というのが前提だ。早く治してちょうだい、しかも瘡面治癒だというのではなくて、機能回復するように整形外科もあわせてやってください、リハビリもあわせてやってください、これを一貫して私どもは主張してきたのです。ですから、健保で点数を認めていないリハビリとかそういうものについても、労災は早くから点数を設定したのです。その考え方ですね。正常な状態に戻るようにいろいろ手を尽くし、できるだけ早くもとに戻すということで、それを可能ならしめるいろいろな医学の進歩の技術というものを是認して、是認して先取りしていくという態度と、いや、認めない、認めないという態度でいくかということは、私は非常に大きな問題だろうと思うのです。そこに非常な不信感が生まれてまいりますし、なかなか問題が片づかない。しかも私らはそろばんをはじきますと、早く治していただいた方が入院料の方がぐっと減ってしまうのです。休業補償も少なくなるのですから、もうかるのですよ。また、やけどして五本の指がくっついたまま瘡面治癒、癒着、これは治った。しかしそれでは治ってないのだ。整形外科も継続してやるべきだ、リハビリもやるべきだというような考え方をとったかどうかというような過去の経過の中に、私ども十年間も扱いまして、そう反対をいただかなかった根本の原因というのはそういう点にあるのじゃなかろうか、単なる点数、単価の技術の問題じゃない、私はさように思っておるわけでございます。  もう各方面から医師の優遇税制だ。医師全体の優遇税制ではなく、社会保険だけの問題でございますけれども、そういうような扱いを受けて、そうして不公正税制だ、その典型的なものとして取り扱う、そして答申にもきわめてはっきり廃止すべきである、こう言っておるわけでございますが、しかし私は、診療報酬の問題をめぐりまして基本に不信感がある、これは何とかして早く脱却しなければならぬ。国民の医療ですから、その不信感の中に国民の大事な生命、健康というものが扱われるということは大変でございます。そういう意味で私は、この問題を何かの時期に何かの方法で解決をする必要があると思うのでございますが、この税制改正を契機にいたしまして、税制の問題とそれから医療費の適正化の問題ということを私は真剣に取っ組んで御処理を願いたいものだと思いまして、御質問を申し上げる次第でございます。  非常にむずかしい問題ですが、これはやはり大蔵、厚生両方、二人三脚でいかなくちゃいかぬところだと思いますが、最後にこの問題についての大蔵大臣の御所信を伺いたいと思います。
  78. 坊秀男

    坊国務大臣 いま御指摘になった問題、大変これは重大な問題だと思います。しかしながら、何らかの機会にこれは国民が信頼できるようなものに持っていかなければならぬという結論をおっしゃられたわけでございますが、私はできるだけ早くこれを御意見のように国民から不信でない、信頼をされるといったような制度に持っていくということに懸命の努力を払いたい、かように考えております。
  79. 村上茂利

    ○村上(茂)委員 終わります。
  80. 小渕恵三

    小渕委員長 午後一時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後一時九分開議
  81. 小渕恵三

    小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き質疑を続行いたします。川崎寛治君。
  82. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 午前中村山委員から、円高の問題についてもそれぞれ質疑があったわけであります。本日は、通貨当局の責任者であります森永日銀総裁にも御出席願いたい、こう思っておりましたが、きょうソウルの方に出かけられるようでありますし、いずれまた機会を改めてこの委員会にもおいで願って質疑をいたしたい、こういうふうに考えております。  そこで、まずIMFの問題について少しお尋ねしてみたいと思いますが、この九月末のIMF総会の開かれます前に新聞等に見られた点でありますが、大蔵省筋ということで、今度のIMF総会は問題の少ない総会だ、こういうふうに大蔵省の諸君が、だれがしゃべったのかわかりませんが言って、それが記事になっておるわけです。この問題の少ない総会だという大蔵省の認識であったと思うのでありますが、IMF総会に臨むに当たって大蔵省としてそういう考えであったのかどうか、まず国際金融局長に伺いたいと思います。
  83. 旦弘昌

    旦政府委員 新聞で一部にそういう報道がなされたことは存じておりますが、私どもといたしまして、決して問題が少ないというような印象は持っておりませんでした。と申しますのは、御案内のとおり、八月には日米の準閣僚会議がございまして、その席におきましても、日本黒字の問題などは指摘されておりますし、さらにさかのぼりますと、五月のロンドンにおきます首脳会議におきましても、特に経済の強い国々の成長率の問題を中心としまして、各国の成長率についてかなり真剣な論議がされたというような事態でございますので、そういう背景のもとにおきまして、決してそういう安易な会議であるとは思っておりませんでした。
  84. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 それでは大蔵大臣お尋ねしますが、九月二十六日、IMF総会で代表演説をなされた後大蔵大臣は記者会見をされておるわけでありますが、その記者会見の記事を拝見しますと、各国は日本景気対策、つまり九月三日決定して持っていかれました総合経済政策を言っておるわけでありますが、日本景気対策について十分と考えていないかもしれないが、日本は精いっぱいやっていると評価してもらえたと思うと、わりあい楽観的な総会についての認識をしておられる、こういうふうに思うのです。その点いかがですか。
  85. 坊秀男

    坊国務大臣 私は、IMF、世銀総会にも出ましたし、その他の会合にも出ました。私がスピーチをやったのは総会でございますけれども、いろいろ各国の代表の方々とは話をし合いました。その席上で、総合経済対策等につきまして一生懸命にやっておるのだということは機会あるごとに申しました。それにつきましては私は相当評価されたと思います。ただしかし、それでもって十分内需を刺激するというようなことができるかどうかということについては、いろいろ質問を受けましたが、しかし、今日とっております対策は、日本としては非常に窮迫した中において懸命の努力をしてこれをやってきたのだということを申したわけでございますが、その点については私はよく了解してもらった。新聞記者会見において申し上げたことは、決して自分が感じていないことを言ったわけではございません。ただ問題は、日本黒字がどんどんたまるじゃないか、国内内需を刺激するなり何なりすることによって何とかして輸出を抑えて、そして輸入をできるだけ力を入れてもらいたいということは、相当強く要求をされたり要請をされました。帰ってまいりまして、政府の方針といたして対外経済対策というものを決めまして、そしていま関係各省において鋭意それの実現方を努力しておるというわけでございます。
  86. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 国際会議というのは、特にIMFにおいてもそうでありますが、固定制が壊れまして、そしていま変動制に入っているわけでありますけれども、こうした国際経済の混乱というものの中から国際会議というのが頻繁に開かれるようになったわけです。ことしの国際会議を見てみましても、三月の日米首脳会談、あるいは五月のロンドン先進国首脳会議、これは蔵相も出かけられたわけであります。そして今度の九月のIMF、どれをとってみましても、国際会議で国際経済調整ということが議論になっておると思うのです。そしてそこで、たとえば日本黒字の問題についてもいろいろと意見の交換もあるし論議もあるし、そして方向を決める。しかし、国際会議の後にいつも円に対する攻撃というのがかけられて、しかも外圧というのが日本においてはきわめて鋭く円高をもたらしてくる。それはどういうわけですか、国際金融局長
  87. 旦弘昌

    旦政府委員 今般のIMFの総会におきましては、為替レートの問題につきましてはほとんど議論がなかったわけでございます。ただ議論の焦点は、強い経済の国、たとえばドイツでありますとか日本でありますとか、それらの国々の黒字が非常に大きい、特に日本が大きいということにつきましては、しばしば指摘をされたわけでございます。いま大臣が御答弁になりましたように、それに対しましては日本としては、九月の初めに発表いたしました総合経済対策、あるいは二十日に発表しました対外対策を今後実施していくので、これを見守ってほしいという説明をしたわけでありますけれども、それが果たして言われるがごとき成果をおさめるかどうかということにつきましては、必ずしも皆さんが信頼してくれたとは言えないわけでございまして、そういうことが残っておりましたやさきに、アメリカ貿易収支が悪くなるというような見通しが発表される。それがIMFの総会が終わらんとするころであったり、いろいろその後の発展がございまして、今日のような通貨の変動が起こってきておるのは事実でございます。  ただ、国際会議がありました後には必ずそういうことが起こるのか。そういう例も多々ございますけれども、今般の例ではそういう結果にはなっておるわけでございます。ただレートの問題自体につきまして、IMFの総会その他の関連の会議では特に話はなかった次第でございます。
  88. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 なかったということは、一昨年のランブイエで通貨の問題については非常に議論になり、ジスカールデスタン大統領がアメリカとやって、米仏ということに対してアメリカ側の要望で日本もそれに入ったわけです。日米仏、こういうことで通貨制度の問題については議論があって、それで一応の方向が出てきた。それからいけば、大体安定した方向に行きつつあったというのが国際的な認識であろう、こういうふうに思うのです。しかしそれが今度の場合には、アメリカ国際収支が悪くなった、日本はたまり過ぎる、あるいは価格の問題その他で、IMF総会の最中あるいはそれ以後かけられてきたにいたしましても、このアメリカ側からの攻撃のかけ方というのは、そういう通貨の安定ということを考えれば私は非常に異常だと思うのです。そしてみずからがいま陥っているわけです。それを考えますと、IMFの総会でレートの問題が出なかった。だから、じゃ、国際収支の問題等レートの問題についてそう大して心配は要らなかったのかと言えば、そうではないと思うのです。IMF総会の最中に、大蔵省の国際金融局幹部ということになっておりますが、これほど日本についての発言が多いのは日本の地位が高まった証拠だ、こういうふうになって得意になっておるのですね。だからその辺の認識というのは、今度の総会は大して問題がないのだ。総会でいろいろ日本が出てくると、いや日本の地位は高まったんだ、こういうふうに大分鼻をうごめかしていたんじゃないかと思うのですが、そこらの認識が、いま立ち入っている状態というものから考えますときに、非常に認識のずれがあったのじゃないか。いかがですか。
  89. 旦弘昌

    旦政府委員 先ほど申し上げましたように、今般のIMFの総会は大したことはないという認識をわれわれは持ってはおりませんでした。と申しますのは、先ほどちょっと日米準閣僚会議は八月と申し上げましたが、実は九月の十二、十三でございましたけれども、その直後にそのIMFの総会があったわけでございますから、そういうようなことで、日本黒字幅の問題、あるいはこの日米準閣僚会議でもレートの問題につきましては、円が切り上がる方向にあるときにはこれを妨げないでくれというような要請もありまして、私どもとしてはいろいろな問題があるということは覚悟しておったわけでございます。  いま先生指摘のIMFの中における、あるいは世界経済の中における日本経済の地位が高まったということは事実でございまして、だからといって、われわれが慢心しているわけではないので、その地位が高まったということは逆に申しますと、国際経済に対する日本の責任というものが非常に大きくなったということでございますので、そういう意味でわれわれは受けとめておるわけでございます。したがいまして、世界経済の中における日本の責任を果たすのにはどうしたらいいかという問題を、今後われわれは真剣に考えていかなければならない、かように考えておりますので、別に特段自慢をしておるとかそういうような考えではございません。謙虚に日本の責任を感じてそれを果たしていくべきである、かように考えております。
  90. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 それじゃ、午前中も問題になりましたが、ブルメンソール発言等の問題をめぐっての点について触れてみたいと思うのですが、ランブイエの合意というのは、フロート下における為替相場の安定化という方向を目指したわけですね。そしてそれはフロートに対する国際的な管理というものの強化、その方向であった、こういうふうに思います。そういたしますならば、今度の二月八日のクライン教授の発言の場合もそうでありますが、特に今度の相次ぐブルメンソール発言というものについては、日本は円の管理の自主性というものについては堅持してよろしいと私は思うのです。きちっと持っておるべきだ。ドイツやスイスはその点、つまり自分の姿勢というものをきわめて明確に持っておりますね。特にヨーロッパの場合には失業問題というものについて国策の最重点を置かれているわけです。だからドイツにしましても、あるいはセイトウィラー・スイス国立銀行総裁等にしましても、ドルの低下の問題についてはきわめて明快に立場というものを主張しておりますね。そういうあれからいきますならば、円の管理の自主性というものがブルメンソール発言等に対してはあってよかったのじゃないか。それは実勢に任せるのだ、こういうことであのときに見過ごした。見過ごしたというか、あのときの態度は弱かったということが、円の投機というものをもたらしたと私は思うし、後になって福田総理もあるいは森永日銀総裁も予算委員会では、あのブルメンソール発言はけしからぬことだ、だから抗議を申し入れた、こう言っておりますけれども、そのときはもうすでに円は完全に投機の対象として急上昇している、こういう状態ですから、私はやはりあのとき間髪を入れずにブルメンソール発言に対して厳しく抗議すると同時に、円管理の自主性というものをきちっととられるということが——それは円のレートの問題については日米間でもいろいろ議論があると思いますよ。しかし、日本の失業の問題なりあるいは日本の産業の問題等あるわけでありますから、国民の生活を守るという立場からは、管理の自主性というものを明確にすべきであった、しかしなぜあのときにもたついたかということを私は痛感をするわけです。その点はいかがですか。
  91. 旦弘昌

    旦政府委員 ただいま御指摘のございましたブルメンソール長官の発言でございますけれども、これは、その発言が行われました記者会見の際の発言わが国に伝えられまして、その日市場が混乱をいたしましたが、その日の昼に即刻ワシントンの財務省に対しまして、財務長官の発言として伝えられた報道が東京市場に混乱をもたらしたことは遺憾であって、その報道の内容について問い合わせの電話をいたしたわけでございます。時差の関係もございまして、ちょうどワシントンの真夜中でございましたけれども、財務省の幹部に対しましてそういう措置をとりました。相手側からも、そういう報道が誤解を招くものであったことは遺憾であり、また今後慎重に扱いたいという申し入れがございました。したがいまして、私どもとしては即刻そういう手続をとっております。  また、その後介入が手ぬるかったのではないかというような御指摘かと存じますけれども、もしそういう御趣旨でございますれば、私どもとしましては従来からの方針は全然変えておりません。ただ立場上、いつどれだけの介入をしたかというようなことを発表できない立場にございますから、そこのところが御説明むずかしいわけでありますが、私どもの立場はその当時から今日まで全然変わっておりません。乱高下がありました場合には相当の量の介入もあえてしておるわけでございまして、その後特にそれが変わったということではございません。一貫してそういう趣旨でやっております。ただ、市場の実勢というものはやはり尊重せざるを得ませんので、そこのところは、乱高下をなだらかにならしていくという意味での介入を続けてまいっておるというのが事実でございまして、全般においては、何もしなかったということでは全然ございませんので、そこのところは御理解いただきたいと思います。
  92. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 しなかったと言っているのじゃないのです。ただタイミングが少しずれたのじゃないか、そういう場合の毅然とした姿勢といいますか、それの不足があったのじゃないか、こういうふうに思いますね。  午前中村山委員の質問に対して、アメリカ赤字の問題については、赤字解消の問題はエネルギー対策だ、こういう点について日米準閣僚会議アメリカ側に申し入れている、こう言っておるわけでありますね。そうしますと、今度の日本国際収支がたまり過ぎている、こういうことで、ドルのたまり過ぎに対してアメリカ側から攻撃があり、円高になっておるわけですけれども、しかし、円高によってアメリカ赤字解消というものが可能なのかどうなのか。日本黒字減らしも少し長期の問題、短期にできない問題ですね。アメリカ赤字解消も長期の問題、そうすると、長期の問題を円高によって急速にアメリカ側が日本の円にねらい撃ちをしてくる。九月の十二、十三でしたか、日米準閣僚会議エネルギー対策については申し入れた、こういうことですが、しかしその理解が、日米間の意思が疎通してない。だから、日米間のそこの意思が疎通しているのであれば、坊大蔵大臣も、九月三日のあれがIMFでは十分に理解されたと思う、こう言うわけでしょう。それは十分じゃなかったわけだ。そして十二、十三の日米準閣僚会議でも申し入れた、こう言う。そうすると、お互いが長期の問題を持っているわけですね。アメリカ側は、お互いの長期の問題というものを進めるのに短期の勝負に出てきた。そうすると、そこの問題解決ということに対してはどうするお考えですか。これは大蔵大臣に。
  93. 旦弘昌

    旦政府委員 日本では黒字が多い、それからアメリカ赤字が多いということにつきましては、まずアメリカ側の赤字につきましては、午前中お答えしましたように、何といいましても第一は、石油を中心とした燃料の輸入が増大しておるということであろうと思います。これに対しましては、九月の準閣僚会議でも申し入れをしておりまして、それに対して向こう側といたしましては、エネルギー政策を新たに確立をして、その関係法案の議会での成立を急ぎたいということでございます。したがいまして、この問題はおっしゃるとおり、時間のかかる問題であることは確かでございます。それから一方、日本黒字の問題でございますが、これは景気対策をとる、あるいは緊急に物資を輸入するというような方途があろうかと思いますが、前者につきましては、やはり景気の上昇に伴って原材料の輸入がふえるというのには若干日にちがかかるわけでございますが、短期的な効果のある施策がないかといいますと、それはある種の物資につきまして緊急に輸入するという手があるわけでございまして、必ずしも全部長期的な対策のみであるというふうには言えないと思います。しかし、日米間の貿易の格差、黒字赤字の問題は、これはアメリカの景気の方が先行した、日本の方がおくれておるという点もあるわけでございまして、そういう意味で、日本はそれに追いつくように施策をとろうということでございます。したがって、全部そういう施策が短期にきくものではないという認識ではございません。これを第一に申し上げておきたいと思います。  それから、今度の通貨の波乱がアメリカに仕掛けられたというのは、私どもアメリカ政府がどうしたというふうにはとっておりません。これはアメリカ貿易収支が来年もまた赤字を続けるであろうとか、あるいは日本黒字がかなりの額に達しておって、これを減らすのにはなかなかむずかしい問題があるというようなこと、あるいはその他のいろいろなうわさが立ちまして、それがもとになっていろいろな投機筋が動いたというのは事実でございますが、アメリカ政府がねらい撃ちをしたというふうには私どもはとっておりません。  それから第三に、為替レート円高になりましても、これは直ちに日本輸出が減る、直ちにそのために輸入がふえるという構造でないことは、御指摘のとおりでございます。
  94. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 短期にというか緊急に輸入できるものがあるのだ、だからそれをいろいろと検討するのだ、こういうことですが、これは五十二年度の財政経済の方針あるいは通商政策というもので、五十二年の最初からそういう方向でいくならまだ話はわかるのですよ。しかし、今度のIMFの総会が終わり、十分に理解されたと思うのだ、こう言っておったのだが、そうじゃなくてぼんぼこ上がり出した。そこで総理があわてて七億ドル輸入じゃ足らぬから十億ドルにせいの、二十億ドルにせいの、あるいは三十億ドルと、そして各省におまえのところがアメリカから買える物資は何があるかというふうなことで緊急に集めている。ウランの鉱石にしてもスポット買いをやろうというようなことですね。  外貨がたまったと言ったって、これは自然にぼこぼこたまったわけじゃなくて、中小の輸出業者というのは本当にねじりはち巻きで汗を流してためているのですよね。それをそんなスポット買いなどでやるということは、黒字減らしが必要だ、緊急の課題だということにしても、余りにもこれはその場しのぎではないか。つまり長期の展望がない、長期の政策がない。だから、四十六年のニクソン・ショックのときもそうですけれども日本経済の進め方についてのそうした特に対外関係というものについては、日本の姿勢というものが大変あいまいじゃないだろうか、その場しのぎをやっているのじゃないだろうか。だから、もうけられるときはたたかれても知らぬ顔してもうけていこうということになるから、こういう場面にぶつかってきて、結局しわを受けるのは弱い者が受けるわけです。いまの緊急輸入の問題についても、結局長政策のなさを暴露したものだ、私はこう言わざるを得ないのですが、その点については、そういうふうに自己批判といいますか、認識されますか。大蔵大臣、いかがですか。
  95. 坊秀男

    坊国務大臣 対外対策にしましても国内対策にしましても、これはいつもおしかりを受けておりますが、手おくれのないようにやっていくということが非常に大事なことだと私は思います。しかし、今度の場合ですが、決して過ぎたことを弁解するわけではございませんけれども、そういったようなことがぜひともタイムリーに、本当に有効適切にやっていかなければならぬということは、私も身をもって体験いたしております。今後もこういったようなことにつきましては、特に戒心いたしましてやっていこう、かように思います。
  96. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 改心ということは、間違っておったということですね。
  97. 坊秀男

    坊国務大臣 いや、そうじゃないです。心を戒める戒心の方です。
  98. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 では次に、クウェートからの情報あるいはロンドンからも情報が流れているようですが、OPECが原油の価値表示を値打ちの下がった米ドルからSDRに切りかえる問題を検討する、これを十一月七日からウィーンのOPEC経済委員会でクウェートの方は提起する、こういう話が出ておりますね。私はアラブに参りまして、アラブ各国、クウェートなりアブダビなりイラクなり、そうした各国の石油大臣なり外務大臣なり話し合ってまいりましたけれども、要するに先進工業国、なかんずくドルの値下がり、それに対して自分たち石油戦略をとらざるを得ないんだ、こういうことで来ておるわけですね、最近アラブのドル離れというのは相当あるわけですけれども。時同じくして十一月七日というと国際決済銀行も十一月七日じゃなかったかと思うのです。そうしますと、一方国際決済銀行が開かれる。一方OPEC経済委員会が開かれる。ブルメンソール財務長官も中東とかあっちこっち回るようですけれども、このアラブのドル離れというものがこういう形で検討され、そして十二月のカラカスのOPEC総会に提案をされてくる。そしてドル表示からSDRに切りかわるということになるとしたら、それはドルの信認がいま落ちている、その中でこの問題はどう考えるべきか。つまりドルの信用の揺らぎというものを決定的にするのか、あるいはドルの安定につながるのかという考え方ですね。それから、このことは国際通貨制度の準備資産としてSDRの役割りをより大きくするものであると思いますね。それらの点について国際金融局長考え方を伺いたいと思います。
  99. 旦弘昌

    旦政府委員 御指摘のように、アラブが石油輸出する際に、現在ではほぼドル建てになっておりますけれども、最近のドルの減価に伴いまして、これをSDR建てにするのではないかということは、かねてから私どもも聞いておるところでございまして、もしそういう決定になりますれば、単にアメリカだけの問題でございませんで、私どもドル建てで現在はアラブの油を輸入しておりますけれども、それがSDR建てで価格が認定されるということになりますれば、ドル換算では高くなってくるわけでございます。最近は円が高くなって円価値が上がっておりますが、しかし、それによる受益がその分だけ減るということは十分考えられるところでございます。ただ、何と申しましても、世界で一番強い通貨は現在でもなおドルでございまして、それは、アラブが石油輸出します単位といたしましてSDRをとったからドルが揺らいでくるということではなくて、アメリカ経済の実体の問題でございます。そこで、アメリカ貿易収支が改善される、あるいはエネルギー政策が確立されるというようなことで先行き明るくなってきますれば、何と申しましてもドルは一番強い通貨でございますので、そのドルの信認というものはなお続いていくのではないか、また、そのようにアメリカ政府も措置をとるであろうとわれわれは期待するわけでございます。  それから第二点の、これを契機にSDRの役割りがふえるのではないかという点につきましては、もしそういうことが起こりますれば、確かにSDRというものの価値が見直されてくるということになろうかと存じます。
  100. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 そこで次には、円高をもたらしたドル安が、今度はヨーロッパでも全面的なドル安ということで大変深刻な状況になりつつある。その赤字原因というのは、先ほど来お話しのようにこれは短期間に簡単に解決するものではない、こうなりますと、これは日本アメリカとか、あるいはドイツとかアメリカだけで済まない、そういう問題になってくると思うのですね。そうしますと、主要通貨の当局がドルの下落を防ぐために協調して介入ということになるのではないか、こういうふうに観測をされるわけですけれども、IMFというのが国際経済調整機関ではなくなっている。今日では、要するに通貨の供給機関、しかも、当初短期のを供給しておったわけでありますが、今日においてはむしろ民間銀行が、特にアメリカは民間銀行が発展途上国に対しても少し野放図に融資をやり、それが累積債務にもなっておるわけでありますけれども、そうなると、そういう今日の混乱をした問題を調整をする機関というのは何なのか。その機会はどこに求められるのか。あるいは各国の中央銀行がそれぞれ連絡をとり合ってやるわけでしょうけれども、世界中央銀行というのか、そういうふうなものも構想されるのかどうか。そういう今日の国際経済調整ということ、特に通貨の問題について考える場合に、非常に緊急な課題というものと、それから長期の安定の方向に持っていく国際的な調整の問題ということについてどうお考えになりますか。
  101. 旦弘昌

    旦政府委員 いま御指摘のございました、IMFが国際通貨制度の調整機能を失ってしまったのではないかということでございますけれども、結論から申しますと、私どもはそう思っておりません。と申しますのは、IMFが発足しましてからすでに三十年たちますけれども、三十年間の中でかなり強い権限を持ってIMFは行動をしてきたと思うわけでございます。特に固定制でございました時代には、固定制といいますのは何と申しましても、各国の政策がその固定相場を守るということでかなり強いディシプリンを求められるわけでございますけれども、その後フロート制になりましてからすでに四年半ぐらいになりますが、その間におきましていろいろなことがございまして、その際にIMFが発揮しました指導力というのは決して劣ってはいないのではないか、弱まっていないのではないか、かように考えております。  特にオイルショック後におきまして、主要先進国の中でも日本、ドイツのような国はかなりうまくそれから抜け出したわけでございますが、今日もなお抜け出し切れないでいる国々がございまして、その国々に対しまして、経済の安定政策というのを強く求めて指導してきましたのはIMFでございます。それからまた、なおその石油ショックの後遺症として残っております国際金融上のいろいろな問題につきまして、信用供与を強化すべきであるというイニシアチブをとったのはIMFの専務理事でございまして、その努力によりまして先般御案内のように、八十六億SDRに及ぶかなり巨額な新しいいわゆるウィッテフェーン・ファシリティーというのが創設されることになったわけでございまして、そういうことを振り返りますと、IMFの機能というものは決して地に落ちたとか、あるいは衰えてきたということは言えないのではなかろうか。それからまた、IMFの第二次改正がもうすでに国会の御承認を得ておりますけれども、それが発効いたしますれば、IMFの国際収支上のサーベーランスの権限というものがはっきり文言でうたわれておるわけでございまして、あとそれがどういうふうに実施されるかということにかかっておると思いますが、そういう意味で、IMFの権限も強化されておりますし、方向としてはやはり国際金融制度の調整役としての地位は揺るぎないものではないか、かような認識でございます。
  102. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 IMFについてのあなたの見解は伺ったわけですが、当面の国際通貨の不安というものについては、日本政府としてこれにどう対処しようという考えですか。
  103. 旦弘昌

    旦政府委員 当面の国際金融制の不安につきましては、これは単に日本だけの問題ではございません。したがいまして、先ほど来申し上げておりますように、アメリカに対しては求むべきものを求めるということが必要でありましょうし、また、その他経済の弱い国につきましては、安定化政策をさらに進めてもらうということが必要であると思います。  われわれ日本としましてどういうことをそれではすべきかという点につきましては、日本としては、相場政策といたしましては、繰り返して申し上げていますように、あくまでもIMFの介入についてのガイドラインの線に沿いまして基本的には市場の実勢に任せるが、乱高下がある場合にはこれは介入をしていくという方向で行くべきであろうと思います。それから、その他の政策につきましては、黒字を何とかして早急に減らす方向で持っていくという努力をさらに続けていくべきではないか、かように考えております。
  104. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 それで、為替相場の安定というものを長期的に考える場合に、IMFの役割りというものについていま国際金融局長は述べられたわけですね。私は、その点についてはいささか疑問を持つわけです。IMFというのがそういう機能を失ってきているのじゃないか。最近のIMFの動きというのは、やっぱり中期の金融というか、役割りとしてはそういうのが強まっておりますね。だから、そうした点からしますならば、いま言われたような方向に果たして行くのかどうか。スミソニアン体制が壊れ、さらにランブイエ以降、フロート制のもとにおける為替相場の安定を求めてそれぞれ苦脳しておるわけですけれども、そうしますならば、いま言われたような方向でIMFというのを考えるなら、現在のフロート制というものから固定制の方にまた戻る方向に進めようと日本考えるのかどうか。フランスは非常にそれを要求しますね。日本はその点はどういう考え方なのか。アメリカはあくまでもフロート制。固定制に対しては反対しておりますね。特にアメリカの議会にはそれが強いわけだけれども、そうしますと、日本がフロート制のもとにおける為替相場の安定化というものを求める場合に、日本としてはどういう方向を考えるのか。
  105. 旦弘昌

    旦政府委員 現在のIMFの協定というのは、やはり基本的には固定制を基本にしておるわけでございまして、現在とっておりますフロート制というのは、本来はIMFが予想してなかったものでございますことは御案内のとおりでございます。第二次のIMF協定の改正におきましては、協定が成立いたしましてから一定の期間の中で、加盟国はフロート制をとるかあるいは固定相場制に戻るか、いずれかを選択する自由があることになっております。各主要国間におきまして、フロートか固定制かということにつきましていろいろな意見のあったことは先生御案内のとおりでございますが、それではその協定改正が実現しましたときに日本がいずれをとるかという問題につきましては、率直なところまだ態度をはっきりいたしておりません。固定制には固定制のよさがありますし、それから変動制には変動制の弾力的なよさがあるということでございますので、その事態になってみましたときに真剣に考えてみたい。また、たとえば固定制の場合には、すでにしばしば経験したことでございますけれども、一度ある国の通貨が弱くなりますと、大変な介入をしてこれを買い支えるということをいたしますとともに、ある日突然たとえば一〇%とかかなりの率で下がってしまう、その際にはしばらくの間マーケットが閉鎖されるというような無用の混乱を生じる点でございます。変動制でありますと、そこのところはなだらかに実勢に沿った線に持っていくことができるし、また、市場を閉鎖してのいたずらな混乱を避けるということもできるわけでございますので、その辺は今後なお検討して、国益に沿う線で決定してまいりたい、かように考えております。
  106. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 それでは次に、具体的なと言うか、急激な円の上昇で打撃を受けているわけで、七月の十二日にこの調査をしましたね、その調査をして以降、これらの円高から打撃を受ける中小の輸出産業対策本部を設置をし、また最近も始めておるようでありますけれども、そもそも七月段階からこういう対策に対して具体的に進めてきたのかどうか。どうも問題が起きたら対策本部ができるわけですね。だから七月のときのやつは、もう過ぎたからと言ってやめておったのかどうか。そこらの通産省の考え方、それから対策の立て方。  さらに、時間があとなくなりますから少し重ねて聞きますが、五十三年度の通産政策というもの、いまの問題と関連しますけれども、そういう方向について伺いたいと思います。
  107. 中澤忠義

    ○中澤説明員 私から先生御質問の第一点につきましてお答え申し上げます。  七月に本年に入りまして第二回目の円高になったわけでございます。中小企業庁といたしまして、全国二十二の産地を選びまして、円高によります影響等につきまして聞き取り調査を行いました。担当官を派遣いたしまして主要な産地についての影響調査をしたわけでございますが、その後八月、九月と逐月調査を続けておりまして、また、十月に入りましてからも今回の円高調査をしたわけでございます。  九月以来の調査によりまして、非常に成約が落ち込んでおります上に、今回の円高になりましたので、成約の発注率あるいは為替差損ということが非常に影響が大きいという事態がはっきりいたしましたので、七月以来の対策といたしまして十月一日から、中小企業の中で特に輸出比率の高い業種を選びまして、それに対しまして政府系の三機関を利用いたしまして、別枠の緊急融資制度を設定しております。これを中小企業の為替変動対策緊急融資制度と申しておりますが、中小公庫につきまして二千万円、国民金融公庫につきまして五百万円の別枠の融資制度をとりまして、それを十月一日から発動しております。  また、そのほかに産地対策といたしまして、都道府県で県別に中小企業の信用保険公庫の融資基金を活用しておりますところに対しましては、信用保険公庫から融資資金を応援するということによりまして支援する。また十月一日からは、民間の金融機関に対しましてもそれぞれ通達を出しまして、つなぎ資金の円滑化の協力要請を行っておるという状況でございます。
  108. 島田春樹

    ○島田政府委員 御質問の第二点についてお答え申し上げます。  最近の状況にかんがみ、五十三年度の通産政策の基本的なフレームワークあるいは方向はどう考えているかというお尋ねかと思いますが、最近の為替相場の円高傾向というものにつきまして、その対策につきましては、いま中小企業庁の方から御説明いたしましたように、当面特につなぎ融資というものを中心にいたしまして、成約不振あるいは為替差損に対する措置というものを逐次講じておるわけでございます。しかしながら、今後基本的にはさらに幾つかの、それぞれの業種、業態によっても違うかと思いますが、いわゆる品種の高級化あるいは合理化、あるいは場合によっては価格の引き上げ等々、各種の対策を業種、業態においてとらなければなりません。ただ抜本的に業種の中では、構造不況と言われるような業種につきましての構造不況対策というものを考えなければなりませんし、また中小企業につきましては格段の措置が必要なわけでございます。  ここいらにつきまして私どもといたしましては、五十三年度の通商産業政策におきましても、厳しい内外の経済環境というものを考慮いたしまして、いま申しました構造不況対策を初めとする景気の対策というものと、たとえば疲弊した産地に対して企業を誘致するというような点を中心にいたしました産地対策というものを含めました各種の中小企業対策の強化というものを、五十三年度の政策の最重要課題というふうに私ども考えておるわけでございます。したがいまして、来年度の当省の通商産業政策の基本的なフレームワークにつきましては、こういったいま申しました方向というものを、最近の新たな事態を勘案いたしまして、よりきめ細かく政策を展開していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  109. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 せっかくおいでいただいて少し御質問したいのですが、ちょっと時間がなくなったものですから、大変恐縮ですけれども、ありがとうございました。  農林省にお尋ねしたいのですが、四十六年のニクソン・ショックの後もまた大量の牛肉の輸入をやりまして、鹿児島では自殺者も出ているのです。畜産農家は大変な打撃を受けたわけです。最近の緊急輸入だ、大いにドルを減らさなければいかぬという中で、農産物の輸入の自由化ということもずいぶん議論になってきております。たとえば牛肉の輸入自由化というふうな問題等も出てきておりますが、私はそんないいかげんなことを簡単にできるものじゃない。つまりその方向というもの、これは坊大蔵大臣にも、財政経済政策というか、今度の見通しの問題等についても冒頭触れましたけれども、やはりきちっとした方針というものが明確でなければならないと思うのです。これまで畜産農家の育成というのをやってきているわけですが、正直に言っていま非常に不安を与えていると思います。二十万の畜産農家ぐらいがどうこうされたってというふうな議論まで、極端な論もなされるわけですが、それではいけないのではないか。これは各国とも農業という問題はそれぞれ悩みを持っておって、それぞれ国内政策というのは保護政策をとっておるのです。どこでもそうなんです。ですから、この円高傾向の中で、残存輸入制限の二十七品目のうち二十二品目が農林省関係だ、そういうふうなことでいろいろ問題も出てきてもおるわけですが、今日の情勢の中で、農林省としての農畜産物に対する育成というか政策、そういうものの基本的な方向というものを伺わせていただきたいと思います。特にアメリカからは、柑橘類や牛肉の輸入の自由化というものが強く圧力がかけられておりますから、明確にしておいていただきます。
  110. 志村純

    ○志村説明員 ただいまの川崎先生の御質問にお答えいたします。  ただいまの御質問の御趣旨、私どもとしていつもこういった問題に直面するたびに、いろいろと問題のあるところでございますけれども、われわれが農業政策の基本を検討するに当たりましては、先生の御趣旨と同じようなことで考えておる次第でございます。やはり長い目で国民食糧の安定的確保ということを考えた場合には、余り短期的な配慮で農政の基本ということを動かすわけにはいかないということで、まず長期的に国内の農業生産体制を確立していく、そして自給率を高めるというのが農政の問題であろう、こう考えております。  それで、残存輸入制限品目の問題を含めましたいわゆる輸入政策というものは、こういった国内の農業政策とうらはらの関係でありまして、いま申しましたように、国内の農政について長期的な見通しというものを立てていった場合には、輸入政策につきましても、まず国内への影響ということについて十分配慮した上でなされるべきだと考えております。ただ御承知のように、国土資源の制約で、何でもかんでも全部自給できるわけではありませんで、やはり国内の生産が非常に限られておって、安定的に供給の確保を図らねばならない大豆のようなものとか、そういうようなものにつきましては、これは主要輸出国との間の話し合いで、安定的な輸入ということに努めていく必要があろうかと思います。また、その他の品目で国内でも相当生産のあるものにつきましては、国内の需給事情を見まして、輸入量等を考える場合には、国内への影響が大きくなってくる、つまり国内の生産農家に打撃を与えるようなことがないように配慮しながら、政策を進めておる次第でございます。  これは非常に一般論でございますが、一つ一つの問題の検討に当たる際、特に今度のような問題に対処する際にも、そうした基本的な考え方に立ちまして個別の問題を処理していこうかと、こう考えておる次第でございます。  以上でございます。
  111. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 ありがとうございました。  残り時間が少なくなりましたので、大蔵大臣お尋ねしたいのですが、主税局長は、大蔵大臣の直属の官制上の部下ですね。そうすると、税制調査会と主税局長関係というのはどういうことになりますか。つまり主税局長は、税制調査会の事務局長としてまとめをやるわけですね。その税制調査会の中期税制についても、審議会の委員の皆さんに大蔵大臣が諮問をする。諮問をされた委員が、大倉主税局長を中心に作業をする。そしてできたものを今度大蔵大臣に答申するわけですね。だから、大蔵大臣と主税局長との関係税制調査会と主税局長との関係、これは非常に……(「総理大臣の諮問機関だ」と呼ぶ者あり)それなら、大蔵大臣は総理大臣の直属のあれですからね。  そこで、これはくどくどと議論をすると時間がありませんが、これは前々からこの委員会でも問題になっているし、また大倉主税局長も最近いろいろなところで、雑誌等で座談会をやっても、しょっちゅうこの問題が出てきておるのです。そこで、特に税というものは、封建社会から近代社会に移ります場合にも、一番大きな政治の課題なんです。革命のあれにもなるわけですから。そうしますと、この委員会でも議論になっておりますように、税調は独自の事務局を持つべきだ。社会保障制度審議会の事務局は、各省にまたがるから、まとめとしての社会保障制度審議会の事務局が必要なんだ、こういう言い方をする。しかし、税調は大蔵省一本だからそれは必要ないんだ、こういう言い方をしておりますが、私はこれは問題だと思うのです。フランスではコンセーユ・デタという専門技術的な審議会があるわけです。専門の人間がおりまして、政府がこのコンセーユ・デタに諮問しなければならないのは、法律案、それから授権命令、それから命令事項を規定する法律を改廃する場合における独立命令たる政令で、そういうものは必ず諮問をしなければならないことになっておって、そこにはきちっとした権威のある事務局があるわけです。だから、これは当委員会で何遍も議論になっておりますが、内閣委員会あたりでもまたいずれ議論しなくちゃならぬだろう、つまり審議会の改廃という問題等とも絡みますけれども、そういう意味で、大蔵省が税調の事務局としてやることは適当でないと私は思う。大蔵大臣、いかがですか。
  112. 坊秀男

    坊国務大臣 税制調査会が大蔵省の委員会でなくて内閣総理大臣の諮問機関ということでやっておることは、いまそういう御発言がありました。そのとおりでございまして、そこでその税制調査会は、国税と地方税とありますから、大蔵省主税局長と、本当の名前は自治省税務局長ですかね、自治省税務局長がその税制調査会の庶務と申しますか、いろいろな資料を提供いたしましたり、あるいは委員各位の御注文、御意向、そういうものを承りまして、いろいろな件について御指示によってまとめをやっておるというような仕組みでございます。今日までそういうふうに長くやってまいったことでございますが、いまおっしゃったような御議論があるということを、私も承知をいたしております。今日までこの大蔵省の主税局と自治省の税務局が、そういったようなことをやってきておることにつきましては、もうこれは全く御指示、御命令を受けましてやっておることでございます。日本の税につきましては、事務的にはいずれも長い間修練をいたしました主税局であり、また税務局であるということで、私は今日のところ、いまの制度で欠陥があるというふうには考えておりません。
  113. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 時間が参りましたから、最後に一問。  医師の優遇税制がけさほど来問題になっておりますが、前にも大蔵大臣に質問したことがあるのですけれども、三木内閣がこの問題を処理するに当たって、昨年の四月、閣議決定をしておるわけですが、その閣議決定をそのままにしてこの医師優遇税制の改正ができるのかどうか。昨年四月の閣議決定というのは変えなければ、つまり方針を変えなければ、税制改正というのができないのかどうか、その点についてお尋ねします。
  114. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 昨年の閣議決定は、厚生省に医療問題専門家会議をつくって、その検討をも踏まえた上で適切な措置をとるという表現になっております。そのときに私どもとしましては、できるだけ急いでやっていただきたいということをお願いしておったわけでございます。当委員会で御質問がございまして、厚生省の政府委員から、おおむね二年程度を目途にという御答弁を申し上げた経緯がございます。厳密に申せば、まだ二年たっておりません。おりませんけれども、けさほど来の御質問にございますように、一般的に税の負担の増加を求めざるを得ない状況で、いよいよこの問題についても私どもとしては避けて通れないという考え方で、ぜひ急いでほしい、どうしてもそれが間に合わないなら、検討も踏まえてということであって、検討の結果が出なければやらないということではないのではないか、ひとつ決意をしてほしいということをいま厚生省の方にはお願いをしておる、そういう状況です。
  115. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 検討を踏まえてというのは、まさにそういうことで解釈できると思いますね。だからそういう方向で、大蔵大臣も重要な課題であると明言しているわけですから、その点は実行してもらわなければならないと思います。ただ、やはり厚生省側は、これに対してはいろいろとブレーキをかける面もあると思いますね。厚生省も来ておりますが、その点、いま審議を九回やりましたか、これの見通しを伺いたいと思います。
  116. 森幸男

    ○森説明員 お答え申し上げます。  いま先生お話しのとおり、これまで医療問題専門家会議は九回やってまいりました。今週の金曜日にまた十回目をやることになっております。  取り上げております問題がいろいろございます。医療情報システムの問題、あるいはプライマリー・ケアの問題、いろいろございます。あと、これからもこの医療に関する重要問題を検討することは多いかと思いますけれども先生おっしゃいますように、私どもといたしましても、できるだけ早く結論が出るように期待しておるというのが現状でございます。
  117. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 終わります。
  118. 小渕恵三

    小渕委員長 坂口力君。
  119. 坂口力

    ○坂口委員 昨日、わが党の宮地議員が大蔵大臣に対しまして、来年度予算の編成に当たっての御意見を承ったわけであります。大臣は、現在鋭意進めているところだということで、具体的なことはお触れにならなかったと私、そばから聞かせていただいたわけであります。  きょうある新聞を拝見いたしますと、「福田首相の来年度予算の年内編成指示を受けて大蔵省は二十五日、編成方針の骨格をまとめ、直ちに作業に入った。」という記事が出ているわけであります。これは事実こういう段階に来ているのかどうかということをまず一つお伺いをしたいと思います。
  120. 松下康雄

    ○松下政府委員 新聞の点につきましては、私も詳細を承知しておりませんけれども、来年度の予算編成作業につきましては、まだただいまのところ主計局におきまして事務的な査定作業を続けている段階でございまして、八月、概算要求の提出に当たりまして一応各省に対して、来年度予算要求についてのこういう心構えでお願いをしたいという方針のようなものはお示しをいたしましたけれども、その後具体的な方針の決定というようなことはいたしておりません。
  121. 坂口力

    ○坂口委員 新聞に出ておりますこと、これを全部決定をしているということではないといまおっしゃるわけでありますけれども、昔から火のないところに煙は立たないという言葉もございます。記者の皆さん方が全部が全部予測で記事をお書きになっているとは思えないわけでありまして、ある程度のニュースがこれはもう流れているのであろうというふうに思うわけです。この前も社会党の議員のどなたでありましたか、ちょっと記憶はありませんが、この委員会で、こういう重要な問題についてのここの論議というものがこの委員会においては非常に軽くいなされると申しますか、済まされて、そしてマスコミ関係にその翌日あたりに非常に大きく出るというようなことがあっては困るじゃないか、もう少しこの大蔵委員会でこそその真剣な論議をされるべきじゃないかということが指摘されたことがあったと思うわけです。私、またあえてこの問題を取り上げさせていただきたいわけでありますけれども、その点もう少し、現在の進み状態等についてきょうは詳しいお話をちょうだいしたいと思うわけです。  大臣、もし何かございましたら、ちょっと先にお答えいただきたいと思います。
  122. 坊秀男

    坊国務大臣 私も新聞記者崩れと申しますか、新聞記者出身でございます。だから、こういったような場合に記事を書いてきた人間でございますが、新聞の記事が全く思いつきででたらめだということは私は申しません。いろいろな客観情勢からながめまして、そしてそういったような見当をつけるということは——何もかにも発表したものを書いておったのでは、これは新聞になりません。そこのところは私もよくわかるのでございますが、実は、二十五日に総理から何らかの指示を受けたということは、大蔵大臣の私も二十五日に総理から指示を受けたということはありません。ただ、先般の閣議の席上、総理から、五十三年度予算の編成は何としてでも年内にやってもらいたいという強い御要請でございますか、そういったようなことは確かにお受けいたしております。私もそのつもりになっておりますが、二十五日に特別に何か指令とか指示とかを受けたという覚えはございません。
  123. 坂口力

    ○坂口委員 その骨格とするところにつきましては、先日来の予算委員会におきましても、総理初め各大臣のお言葉の端々にこれは見受けられるわけでありますが、福田総理は確かに、来年度予算というのは景気維持型予算というふうな意味合いの発言をされたというふうに私記憶をいたしております。経済成長率につきましても、六%台というお話があったというふうに思いますが、こういった骨格ですね、総理から閣議でひとつ年内に急げというお話があったということでございますけれども、それは当然のことだと思いますが、もう少し骨格とするところ、大体こういうふうな骨格でどうだというようなお話し合いはどこまで進んでおりますか。
  124. 坊秀男

    坊国務大臣 景気対策と関連して、来年度の予算をどうするかということにつきましては、まだそこまでいっておりません。これは正直に申します。要するに、予算内容をどういうところに主眼点を置いて、一つあるか二つあるかこれは別といたしまして、そういったようなことを考えながらやっていくためには何よりも、やはり始まる五十三年度に最も近い、さりとてそんな直近したときに内容を決めるなんということは、これはできるわけではありませんけれども、前広にやることも大事なことであり、相当近づいたときにやるということ、これも大事なことである。そこで、五十三年度、来年度の経済見通しというものができるわけでございまするから、それが固まったところで、いま申し上げましたような内容について固めていくというような方針をとっておりますので、ただいまのところは、内容はどうだということにつきましては、ここでお話し申し上げるだけの段階にはまだ達しておりません。
  125. 坂口力

    ○坂口委員 物を決めていきます順序にはいろいろの方法がございますが、来年度予算の編成に当たって、現状における来年度の予測、それから現在までのいろいろの情勢分析というものは、これはもう皆さん方、大きな情報網を持っておみえになるわけでありますから、お持ちになっているわけですね。この現在までの情報、それから来年度への予測、これに基づいて皆さん方はまずこういうふうな方針でいこうじゃないかという一つの大きな目標を決めて、そしてそれに従って具体的な操作に入っていかれるのではないのですか。それでなしに、いろいろの積み上がってくるものを全部だんだん、だんだん吸収して、最後の果てに方針を決めるという行き方なのですか。それだったら逆になりはしませんか。総理大臣なら総理大臣の政治的姿勢、あるいは大蔵大臣の政治的姿勢というものを反映させるということができないじゃないですか。先に題字をつけてそれから作文を書くか、作文を書いて後から題字をつけるかということになるだろうと思うのですけれども、少なくとも大蔵大臣の政治姿勢というものを示されるためには、まずこういう内容のものにしたいのだという大きな方針があって、それに従って来年度予算というものは組み立てられていくのではないか、こう思いますが、いかがですか。
  126. 坊秀男

    坊国務大臣 たとえが悪いかもしれませんけれども、おっしゃることは、予算の骨格と申しますか、デッサンと申しますか、それは何だ、それも何もなしに予算を組むということは、それはもう行き当たりばったりのことであって、それはだめじゃないか、私は御意見そのとおりと思います。それでやっていかなければならぬ。  それで、予算の骨格、デッサンにつきましては、とにかく今日まで三年にわたりまして、予算が大変異常なる姿で骨格ができておる。と申しますことは、公債の依存度が三割になんなんとするものを三年間も続けておるというようなこと、これをこのまま続けてまいりますと、まあ詳しいことを申し上げなくともそれはよく坂口さんおわかりのことでございますが、予算が硬直化してしまいまして、公債費を支払うために公債を出すというようなことになってしまったのでは、予算の機動性というか予算の機能性というか、それをまるで失ってしまうということでございますので、どうしてもこの三割の依存度というものは縮小していかなければならないということを今日考えまして、そのためにはどうすればいいか。これも具体的にどうということではございませんけれども、既定の今日までの予算における各項目の経費等を十分検討いたしまして、そしてもちろん新たなるものは新たなるものとして厳選をいたしまして、いかにこれが現在のこの事態に有効であるかどうであるかというその価値判断をやりまして、そういったようなものは取り入れる。取り入れるけれども、いままでのものにつきましては、補助金もありましょうし、その他のものについて、もう徹底的にスクラップ・アンド・ビルドという原則に徹しまして見ていくとともに、一方歳入の面におきましては、これも何回も申しておりますからいまは申しませんけれども、最も適切なる措置をとってまいりたい。こういうことでもってそういう骨格を決めて、その上に政策的な肉をつけたりあるいは血を通わせたりというようなことに相なろう、そういうふうに考えて、いま各省の概算要求につきましては、主計局を中心として鋭意検討を重ねておりますけれども、それがいまどう決まったということの段階には達していない。要するに、そういったようなことを決めていくのは、先ほども申しました繰り返しになりますけれども、来年度の経済見通しというものを固めていただいて、それと相呼応いたしまして血を盛り、肉をつけるということを考えておる次第でございます。     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕
  127. 坂口力

    ○坂口委員 大蔵大臣、ずいぶん長く説明していただきましたが、どうも大臣のデッサンが粗っぽ過ぎまして、この絵は馬になっていくのやらヌードになっていくのやら全然わからない。  余りこれを議論しておりますと、こちらの方がよけいわからなくなってしまうものですから次に進みますが、予算委員会で総理は、来年度も実質六%程度の成長をねらうという御発言、それから、製造業の稼働水準を示す稼働率指数をいまの八五ぐらいから九三ぐらいに引き上げる、こういうことを言っておみえになるわけでありますが、これは一般会計及び財政投融資を本年度の補正後予算伸び率程度、このぐらいというふうに理解をしていいということなんでしょうか。
  128. 大竹宏繁

    大竹説明員 明年度の経済成長率そのものにつきましては、ただいまお話がございましたように、まだ作業が詰まった段階ではございません。これから種々の指標あるいは民間の企業の動向、いろいろな要素を勘案しまして詰めてまいるわけでございます。  政府政策運営を行っていきます一つの指針といたしまして、昭和五十年代の前期経済計画があるわけでございますが、これでは政策目標といたしまして、需給バランスを改善して安定成長路線を定着していく、そしてその成長率は六%程度であるというふうなことになっておることは御承知のとおりでございます。私どもこれから経済見通し、まあ主として企画庁の方で作成をされるわけでございますけれども、その辺を一つのめどとして、あるいは手がかりとして今後作業を進めてまいることになるかと思うわけでございますが、具体的にそれでは、来年度の稼働率は幾つであるとか、実際に成長率が何・何%だというようなところまでの詰めばもう少し先になるかということでございます。したがいまして、そのときの描かれた姿の中で、財政がどのような形になるかということも、そのときでないと具体的な姿がきちっと想定できないということかと思いますので、たとえば一般会計伸び率は幾らというようなことにつきましては、現在のところまだ頭の中にはっきりしたものがない状況でございます。
  129. 坂口力

    ○坂口委員 大蔵省が概算要求の段階で各省庁に示しました政策的経費の伸び率、一三・五%余でございましたか、来年度一般会計予算伸び率とみなした場合に、経企庁の方は、実質経済成長率は五%程度になるだろうということを言っておりますが、現在の情勢を踏まえて、この経企庁の試算というものをどういうふうにお受け取りになりますか。
  130. 大竹宏繁

    大竹説明員 私ども、企画庁の五%程度になると仰せられた試算につきましては承知いたしておりませんので、ちょっと意見を申し上げられないわけでございますが、まず、五十二年度の姿が十二月くらいになりますともう少し実績に近い数字がおいおい出てまいりますし、その辺を踏まえながら来年度の見通しを立てるというところであろうと思います。
  131. 坂口力

    ○坂口委員 大臣、ことしの当初から現在までの経緯を見ました場合に、やはり内需がなかなか伸びてこない。そういったことから、どうしても公共事業重視という姿勢を五十二年度の補正予算でも示さなければならなかった。こういう経緯を考えましたときに、現在の示された姿勢というものは、やはりもう少し延長してこれはどうしても考えなければならないのではないかとわれわれも考えるわけなんです。これから来年度にわたりまして特別な事情が起これば別でございますけれども、いまのような経済情勢が続くと仮定いたしますれば、当然そういうことになるだろうと思うのです。また、いまのところ特別に大きな変化が来るような要素というものも非常に少ないというふうに思うわけです。けさからも円高の問題が非常に議論されましたけれども、この問題がこれからどう進展していくのかということは大きな問題ではありますけれども、しかし、来年度予算のデッサンとして公共事業重視ということは、これはどうしても現時点においても描かれなければならないことの一つではないかというふうに思うのです。このことに対するお考え方を一つ。  それから、これも巷間伝えられることで、まだそんなことは考えていないとおっしゃるだろうと思うのですけれども公共事業を重視する反面において、社会保障関係予算というものにやはりメスを入れなければならない。たとえば老人医療の問題でございますとか、あるいは薬剤費の一部負担の問題でございますとか、そういった問題にどうしても手を加えなければならないといういろいろの話が出ているわけでございます。余り荒っぽいデッサンではなしに、その辺はあらあらこういう方向にしていくというぐらいのデッサンをお示しいただきたいと思います。
  132. 坊秀男

    坊国務大臣 予算編成に当たりましては、いまの事態に即してどういうことを重大視していくかということは非常に大事なことでございます。そこで、いま仰せられました二、三のことに対しましては、公共事業を軽視するなんていうことは考えておりません。しかし、いろいろな問題の中で何をどれだけ重要視していくかというようなことについては、これはいまはっきりとまだ決まってないときに申し上げることは非常に軽率だと私は思います。ことにまた、社会福祉関係で、老人に対する対策をどうするかといったようなことについては、これは原局の厚生省において委員会か懇談会か何かそういうものをつくられて、そこでしさいにこれを検討しておるというような過程にあることもお聞きいたしております。いまのところ、そういうような段階にございますので、財政を切り盛りしてまいることになっておる私が、ここでそういったようないろいろな諸般の事項について、どれを一番大事に持っていくんだということを申し上げることはちょっとまだ早い。しかしながら、社会保障にいたしましても公共事業にいたしましても、あるいはまた教育でございますか、まだその他にもたくさんありましょうけれども、いずれにいたしましても、そういったようなことはやはり重大視していかなければならぬ項目であろう、かように考えております。しかし、一番何にアクセントをつけろと言われましても、ちょっといまのところそれを申し上げかねるような段階でございます。
  133. 坂口力

    ○坂口委員 先日、「貯蓄に関する世論調査」というパンフレットをちょうだいいたしまして、中をいろいろ細かく見せていただきました。国民各層の、そしてまた各年齢によりますいろいろの貯蓄の動向、そしてそれぞれの職種の人々のビヘービアと申しますか、そういったものがこの中に書かれているわけでございますが、どうしても内需が上がってこないというこの原因を追求していきましたときに、いろいろの原因はあると思います。しかし、その中の一つに、やはり将来に対して不安を持つと申しますか、あるいはまた、災害や病気のときに対する不安ということもございましょうけれども、それらも含めて、将来に対する不安というものが国民の中に強くあることだけは事実だと思うのです。  この「世論調査」の中を見せていただきますと、たとえば老後の生活につきましても、職業で申しますと農林漁業の方、それから自由業の方、それから特に小零細企業で働く皆さん方、こういういわゆる国民年金にお入りになっている層の皆さん方のところが、老後のためにということを一番多く挙げておみえになるわけであります。これは当然と言えば当然の結果かもしれませんけれども、こういったどちらかと言えば、福祉にあずかっていない層の皆さん方が貯蓄により多く励まれているということをこの中から見ることができるわけなんです。  こういう時期でありますので、その点を私は来年度予算の編成に当たっても十分配慮をしていただきたいということを申し上げたいわけであります。確かにいろいろの問題点が出ていることも事実でありまして、たとえば病院に行きましたときの薬の問題にいたしましても、非常に多いではないかというような話がすぐ出るわけでありますけれども、これらのことは福祉が充実し過ぎているために起こっていることではなくて、むしろ社会保障の整備のおくれ、そのために起こっていることだと私は思うわけです。ですから、その辺のところを、誤解をせずにと申しますか、よくわきまえて予算編成に当たっていただきたいと私は思うわけであります。  そういうふうな意味で私この問題を取り上げさせていただいたわけでありますが、金が足らないから老人医療はぶった切ろう、何でもかんでもこういうふうなことになってまいりますと、老後に対する不安というものはいま以上に大きくなる。こういうことになってまいりますと、またどうしても貯蓄の方に回る、そして内需が上がらないという悪循環にもつながってくると思うわけでございます。この辺のところに深い御理解をお持ちの大蔵大臣でありますから、いまさら申し上げるのは失礼かと思いますけれども、あえてまたきょう私申し上げたところでありまして、この辺の御決意を聞かせていただければ、次に進ませていただきたいと思います。
  134. 坊秀男

    坊国務大臣 国家の財政が苦しいときにいろいろな施策を手厚くしていくということは、非常にむずかしいことでございます。しかしながら、どうしても大事なことは、財政というものは人間生活と申しますか国民生活の一つの手段でございまするから、手段を先にして目的を後にするということは考えておりません。ただ問題は、その施策をやっていくに当たりまして、どうせこれは国民の支出してもらったお金がかかるということは間違いないことでございますから、そのお金を目的に向かって最も有効適切に使っていかなければならない、これだけは財政としては考えなければならない。もし世間で言われておるがごとく乱診乱療が行われておるということであるならば、それにはメスを入れなければならない。それにメスを入れて、そこから出てくる余剰のものはまた有効適切にそれを回していかなければならぬということが、財政の上においては非常に大事なことであろうと私は思います。だから、一つ施策をやるに当たりまして、それに対しての——無論坂口さん、さようなことはお考えになっておりませんでしょうけれども、それが多々ますます弁ず、そこへとにかく十分余るほどつぎ込んでいくというようなことはお考えになっていないと思いますけれども、そこに十分注視をいたしまして善処しなければならない、かように考えております。
  135. 坂口力

    ○坂口委員 けさからもいわゆる医師税制につきましていろいろ御質問がございました。詳しくは社会保険診療報酬の租税特別措置法にかかわる話でございますけれども、一昨日でございましたか、参議院の方で厚生大臣が代案と申しますか、これを解決する一つ方法と申しますか、三点ばかり実はお挙げになったわけであります。お挙げになったその内容につきまして、私以前にこの大蔵委員会で一度取り上げさせていただいたこともあるものですから、これが大蔵省とのある程度の話し合いのもとに行われたものか、それとも厚生大臣お一人のお考えによって発言されたものかということも私よくわかりません。  そのときにおっしゃったのは、医療法人の法人化をしやすくする、医療法人許可の促進ということを一つ挙げられました。それからもう一つは、診療所、建物などの償却期間の短縮、それから医療機器の償却期間の短縮、この両方の償却の短縮の問題を挙げられたわけでありますけれども、このお話はいわゆる診療所の話ではなくて、病院と言われる部分のお話だと私思うわけです。ですから、特別に社会保険診療報酬の租税特別措置法とかかわった話ではない、別な話だとは思うわけですが、ただ一つ医療法人許可の促進という問題はかかわってくると思うのです。  この医療法人の中にも御承知のように、単なる医療法人といわゆる特別の医療法人というややこしい形がございます。厚生大臣は、いわゆる医療法人をできやすくするということを言われたのか、それとももう一つ進んで特別の医療法人にしやすくするという意味をおっしゃったのか、これは私もちょっとはっきりいたしません。医療法人の話でございますと厚生省サイドの話になりますし、特別の医療法人の話になりますと租税特別措置法の第六十七条の二に当たりますか、大蔵省に非常にかかわってくる話になるわけでございまして、その辺のところ、ある程度お話の上で何かあったものかどうか、まずお聞きをしておきたい。
  136. 坊秀男

    坊国務大臣 渡辺厚生大臣が参議院の予算委員会でしたかあそこで、いまおっしゃったようなことを発言されたことは私は耳にしております。しかしそのことにつきまして、これより以前に私が厚生大臣と何らかの話し合いをしたかというお尋ねでございますが、それはございません。
  137. 坂口力

    ○坂口委員 この制度の仕組みも非常にややこしくなっておりますが、きょうは厚生省にお越しいただいておりますので、現在のあらあらのお考えをひとつお聞かせいただきたいのと、それからもう一つ、特別の医療法人と単なる医療法人との間で、実際の医療面において何か行うことに差があるのかどうかということの二つについて、ひとつ質問させていただきます。
  138. 森幸男

    ○森説明員 お答え申し上げます。  先ほど先生おっしゃいました三点の中で、厚生省の関係は医療法人制度の活用の問題、第一点の問題かと思います。  この医療法人制度におきましては、現在、病院または医師が三人以上の診療所を開設するというものに限って設立されることができるということになっておるわけでございます。そういう制限がございますので、この医療業につきましても、他の自営業と同じようにいまのような制約をできるだけ外し、法人による経営ということも医療機関の希望によっては選択しやすいということをできるようにすることが必要であるということを、恐らく大臣発言されたのだろうと思いますが、この点は私どもの方もそういうふうに考えております。そういう意味で、この医療法人制度の活用につきましては、いろいろ制約、条件等がございますが、当面現行の法人制度というものを、税制面も含めましてできるだけ魅力あるものにしていくということが必要かと思いますが、先ほど申しましたような厚生大臣発言がございますように、この医療法人制度の医師三人というような要件の緩和ということにつきましても、これは今後の一つの方向を示されたものだというふうに考えておりますので、この点は十分に検討していきたいというふうに考えております。  それから第二点目の、医療法人と特定医療法人に何か医療上の差異があるかどうかという御質問がございました。この特定の医療法人ということの要件は、先ほど先生も御指摘のように、租税特別措置法の方で決められておるわけでございますので、当然その要件を満たすということがこの特定医療法人になるための前提でございます。そういう意味での制約はございますけれども、それ以外に、たとえば医療上の何らかの差別あるいは差異というようなものは特にないというふうに了解をしております。  以上でございます。
  139. 坂口力

    ○坂口委員 それほどの打ち合わせがなかったということがわかったわけでありますが、いま厚生省の方から説明していただきました特定の医療法人と単なる医療法人とを比較しました場合に、いまもお話がありましたように、医療面における差というのは全くないと言ってもいいのではないかと私も思います。また、その特定の医療法人になりますときには、ベッド数が四十ベッド以上とかなんとか、いろいろそういうふうな細かななにはあると思いますけれども、しかし大方におきまして、これは変わらないと思って差し支えないと思うわけです。  ただ、そういうふうな同じような法人なんですけれども、一方におきましてはこの特定の医療法人の方は、法人税として二三%ということになっております。それから単なる医療法人の方は、普通法人と同じように四〇%ということになっております。私は、どちらが高いとか低いとか言えるだけの材料をいま持っておりませんけれども、ただ、同じような医療機関で、片方が特定の医療法人という形になっている、片方はならないという場合に、税制がこういうふうに二つ非常に違うということは、大変問題がありはしないかと思うわけです。  一例を申しますと、特定の医療法人の場合には、出資する者がその出資持ち分を放棄するという項目があるわけなんです。ですから、聞くところによりますと、中にはぜひ特定の医療法人にしたいと考えておられる方もあるわけなんですけれども、たまたま十人なら十人の人に出資をしてもらって医療法人をつくる。その中の一人でも持ち分を放棄することは困る、こうおっしゃられると、これもできないわけでありまして、そういうこともあるようでございます。同じ医療を行い、同じようなことを行いながら、わずかその辺のところだけでこの税制上大きな違いがある、四〇%とか二三%とかいう話は別にいたしまして、違いがあるということ自体にも問題がありはしないか。医療制度の問題を言われております中で、病院等も含めて一遍検討をしなければならない問題ではないか、こう考えるわけでございますが、御意見ございましたらお伺いしたいと思います。
  140. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 技術的な問題でございますので、私からただいまの制度の趣旨を御説明させていただきたいと思います。  御指摘の二三%の税率というのは、他の公益法人と同じ税率でございます。考え方の基本にございますのは、医療というものは非常に公共性の強いサービスである、したがって、公益法人が仮に収益事業をやったときに負担を求めている二三%という負担率と同じでよろしいではないかという議論が一つあるわけでございます。それにつきまして、特定医療法人という制度を特に設けまして、公益法人が収益事業をやったときと同じ負担を求めることにしているというのが、ただいま御指摘の措置法の制度でございます。  したがいまして、公益性を確保する基準が何であろうかということを、税法上、法律、政令、省令で規定をしておるということでございまして、公益法人の公益性というものを認めるために、やはりそれは財団であるか、あるいは、持ち分放棄ということでなくて、持ち分の定めのない社団かという組織にしてほしい。また、出資者が自分で利益が戻ってくるようにコントロールできるのでは困りますということで、特別利害関係者についての制限がございます。また、非常に公共性をたっとぶという主張からいたしまして、患者さんからいただく報酬の方を社会保険診療報酬と同一基準にしてください、自由診療的な収入の場合には、それは公益性というところからいうと問題ではございませんでしょうかというシステムになっている。以上のような考え方からできておる制度でございまして、税率そのものは、普通法人の税率が一方である、片一方は公益法人の税率を適用しておる、そういう差になっているわけであります。
  141. 坂口力

    ○坂口委員 言われる意味は私も理解できますが、いまおっしゃったように、特定の医療法人あるいは医療法人の病院というのは非常に公共性が強いわけでありまして、したがって、一般の医療法人におきましても利益配当というのは禁止されております。これは当然のことだろうと思うのです。ただ、一般の医療法人の場合には、利益配当が禁止されておるということは、これはほかの法人と違うところでございますけれども、一般の法人の場合には、この利益配当がございますし、それから、その配当が資本金一億円以下のときには年七百万まで相当分は二二%、それ以上の場合には三〇%というふうに配当軽課税率というのが適用されているわけであります。ところが、医療におきます医療法人の場合には、配当が禁止されておりますから、当然こういったことがないということもございまして、医療法人等の経営者の中からは、その辺のところ、一般の法人との間にも格差があるじゃないかという意見も出てくるわけでございまして、非常に微妙な問題を含んでおりますが、そういう点も実はあるわけでございます。  それともう一つ、特定の医療法人の場合には、さらにこの公共性というのはまた強まるわけでありまして、たとえば赤十字病院でありますとかこういった病院と大差がないと申しますか、全く同様な感じに一般国民も受け取っている場合が多いわけでありまして、この場合には、このいわゆる医療保険業は当然に収益事業から除外されるべきものであるという主張もあるわけでありまして、これも主張としてはごもっともな主張ではないかと思うわけでございます。  非常に込み入った改正になっておりますけれども、この辺のところを含めまして、大臣一度、私は厚生大臣発言もあったものですから、あえてきょうここに取り上げさせていただいたわけでございますが、御検討をいただく必要がありはしないかと思うわけでございます。
  142. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 配当軽課税率が普通法人の場合適用になります。ただ、医療法人につきましては、そもそも配当が禁止されているために適用の余地が出てこないということでございます。したがって、医療法人について利益の配当というものを認めるかどうかという問題は、ちょっと私どもではお答えのできない問題でございまして、医療というものをどう位置づけるのかという非常にむずかしい問題であるというふうに考えますけれども、それを一部配当したと同じような状況にできないかという点は非常にむずかしい問題でございまして、いまの配当軽課というものの仕組みからいたしますと、そういう一種の便宜的な方法というのは非常にとりにくいのではないかというお答えをせざるを得ないかと考えております。  それからまた、医療の公益性に着目して、そもそも医療によって出てくる所得を非課税にするということは、それは法人ならば非課税でよくて、個人ならば課税するというわけにはとうていまいらない。やはり税全体の考え方といたしましては、いかに公益的な目的を持っているにせよ、結果として収益が生じた場合には、それはやはり税を負担していただきたいということを申し上げざるを得ないかと考えます。
  143. 坂口力

    ○坂口委員 大臣、何かございませんか。先ほども申しましたとおり、厚生大臣発言もあったものですから取り上げたわけでございまして、これは、いま申しましたようなことがある程度解決できませんと、厚生大臣がおっしゃったことは前進しないわけでございまして、そういう意味で私も申し上げたわけでございます。私の申し上げるのも、少し前後いたしましてわかりにくかったと思いますけれども、あらあら了解をしていただければ、それに対するコメントをいただいて、あと一問だけやらしていただきたいと思います。
  144. 坊秀男

    坊国務大臣 大変むずかしい問題でございまして、ひとつ御趣旨のあるところを私も考えさしてもらわなければ、いますぐお答えを申すだけのあれを持っておりません。さよう御了承願いたいと思います。
  145. 坂口力

    ○坂口委員 もう一つだけお聞きをして終わりにさしていただきたいと思います。  非常に小さい問題でございますけれども、最近地方自治体におきまして、身体障害者の皆さん方の自動車重量税その他のことにつきまして、いろいろおやりになっているというふうに聞いているわけであります。すでに自動車にかかわります物品税でありますとか、あるいは取得税でありますとか、自動車税等は免除されているわけです。このほかにいわゆるガソリン消費税というものについて、特に足の御不自由な身体障害者の皆さん方がいわゆる足がわりに車を使われる、最近では車いすに乗られる皆さん方も自動車であちこちに行かれるというふうになってまいりましたが、このガソリン消費税の免除の問題が、地方自治体でも取り上げられまして、これにかわる方法としていろいろの検討がされているようであります。なかなか地方で税を免除というわけにまいりませんから、これにかわるべきものとして、非常に苦心をしてつけているというところがふえているわけでございます。  こういう財政の厳しいときでもありますけれども、こういった問題は、やはり厳しい中にも積極的にお取り組みをいただく姿勢をお示しいただいてもいいのではないか、こういうふうに思うわけでございますが、いかがでございますか、最後といたしまして……。
  146. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 大臣からお答えいただきます前に、身体障害者の方々がいわば足がわりに車をお使いになるときに、税負担を何とか軽減できないかという御要望はかねてからもございますし、私どもといたしましても、できるだけそういうことを考えたいという気持ちはあるわけでございます。  ただいまのところ、そういうことを技術的にやれるものにつきましては措置をいたしているわけでございまして、たとえば物品税では免税ができる、地方税でも自動車税なり軽自動車税では免税ができるということにいたしております。ガソリン税は、やはり道路を走っておられる消費量に応じて負担をしていただくということでございますし、蔵出し課税でございますガソリン税につきまして、末端のスタンドでお買いになる方が、身体障害者がお使いになるときのガソリンであるというふうなことがなかなかあれできないということで、そこまで手が回っておらない。自動車重量税も、これは一種の道路損傷税として構成されておりまして、どなたがお使いになるかということで区分していくことには非常に問題が多いということで、その両税については、そういう措置が技術的にも非常にむずかしくてできない。技術的にできるものはできるだけ御要望にこたえているというのが現状でございます。
  147. 坂口力

    ○坂口委員 大臣、お答えいただきます前にもう一言だけ言わしていただいてお答えいただきたいと思いますが、技術的に非常にむずかしいということは私も存じ上げているわけです。地方におきましても、技術的にむずかしいものですから非常に困っておるわけです。しかし、困りながらなおかつ、その中で何とかそれにかわるべき、あるいはそれを補うべき方法はないかというので、いろいろ検討をし、実際になっておるところが実はあるわけでありまして、きょうはそれを細かく申し上げる時間的余裕がございませんので、そのことをあわせて申し上げて、答弁をいただきたいと思います。それで終わりにいたします。
  148. 坊秀男

    坊国務大臣 主税局長もそういうような方法があればということを言っておるのですが、ぼくは、税の性質上なかなか技術的にやれないというものもあろうかと思います。そういうようなことをよく考えてみます。
  149. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。
  150. 山下元利

    山下(元)委員長代理 永末英一君。
  151. 永末英一

    ○永末委員 過般、バングラデシュのダッカで日本赤軍派なるものが日航機のハイジャックをいたしました。これに対しまして福田内閣は、彼らの要求どおり犯罪人を釈放し、身のしろ金を払いました。大蔵大臣は、この身のしろ金を払う方にはかかわり合っておられますね。どういう気持ちで身のしろ金を出すという御決定をなされましたか。
  152. 坊秀男

    坊国務大臣 あのときに私はアメリカへ行っておりました。しかし、私が東京におっても、結果は断腸の思いで、ああいうふうなことに対して私が一人で反対をするということはできなかったであろうことを率直に申し上げます。ただし、この閣議決定のときにはちょうどIMFへ行っておりました。しかし、おったところで同じことだと思います。  そこで、国民の血税の中から十六億でございますか、それを出したということにつきましては、私はまことに遺憾に考えております。だけれども、あのときの事態を考えてみますと、大ぜいの命がかかっておるということから考えてみますと、何かむずかしい言葉で言えば超実定法でございますか、緊急避難的な行為でございますか、それをやらなければならないということは、ちょうどあのときの身柄釈放だとかなんとかという法律の規定が、緊急避難的に一時これが緩められたというのと同様に——そもそも国民の、国庫のお金を出すということは、きわめて妥当であって、合法であって、法律でそれを決められたということ以外には出すわけにはまいらないものでございますけれども、しかしあの場合としては、国民の皆さんにはまことに申しわけのないことでございますけれども日本人を初め外国人の方々の命にかかわることだということで、まさに断腸の思いでやむを得なかったであろう、かように考えます。
  153. 永末英一

    ○永末委員 閣議決定の場合には、大蔵大臣はその場には座っていなかったということは事実でございますが、よく内容はわかりませんが、超実定法的措置を閣議がやられた場合に座っておった法務大臣は、理由は定かではありませんが、要するに辞職をされましたね。あなたはそのとき座っておられませんですけれども、この種の問題が出たらまた超実定法的措置に賛成されますか。
  154. 坊秀男

    坊国務大臣 かようなことが二度と再び起こるということは、これはもう絶対にないようにしなければなりません。ところが、いまそういうようなことが起こった場合にどうするか、こういうお尋ねでございますが、これは大変むずかしいことでございまして、超実定とか緊急避難ということでなくてやったことなら、私は一つの例になろうと思います。ところが、緊急避難だとかあるいは超実定法、法を逸脱するとかというようなことが何度もそんなに行われるということにつきましては、そのときどうするかと言われましても、これはちょっと私はお答えいたしかねます。そのときにどういうふうに出ていくかということについては、いまここであらかじめそれに対してお答えを申すわけにはまいらない、かように思います。
  155. 永末英一

    ○永末委員 その措置が超実定法、つまり実定法にございませんから、その意味で超実定法と言われたのでしょうが、現実に金を出す手続はどうしてやったのですか。
  156. 松下康雄

    ○松下政府委員 事柄の緊急性にかんがみまして、予備費の使用によって支出をするということにいたしまして、九月二十九日の閣議決定によって予備費として支出をいたしました。
  157. 永末英一

    ○永末委員 予備費にはそれぞれいままでの慣行上支出基準があって、それに基づいてそれぞれの段階大蔵大臣が判断して出すわけですね。こういうようなのは支出基準にありませんな。
  158. 松下康雄

    ○松下政府委員 この種の支出を行うことを予算におきましては予想いたしておりませんので、おっしゃいますように、支出すべき項目は当初予算ではなかったわけでございます。したがいまして、予備費支出に当たって項を新設いたしまして、支出の手続をとったわけでございます。
  159. 永末英一

    ○永末委員 項を新設されますと、先ほど大蔵大臣も、いままでこんなことはなかったが、例となるという旨の答弁をされましたが、どういう項を新設したのでしょうか。
  160. 松下康雄

    ○松下政府委員 「組織外務本省」におきまして、「バングラデシュ人民共和国ダッカ空港事件特別措置費」という項を新設いたしたわけでございます。もとより前例とすべきものでございませんので、今後の予算編成におきましては、このような項は残存させないということでございます。
  161. 永末英一

    ○永末委員 そうしますと、決算上これは合法性ありという大蔵省の判断ですな。
  162. 松下康雄

    ○松下政府委員 予備費の支出につきましては、これは緊急の事態に対処するために、あらかじめ御議決をいただいております予備費の範囲の中から支出をするわけでございますけれども、これは後刻決算上、予備費支出の承認を国会においてお受けをいたさなければならないことになっております。
  163. 永末英一

    ○永末委員 この種の緊急な事件が起こったので、特に項を新設して予備費の支出をし、その一年限りでやめてしまったという例は、いままでございますか。
  164. 松下康雄

    ○松下政府委員 支出の原因なり内容なりにつきまして、これに類した例はございませんけれども、その他の場合におきまして、新たに項を新設して支出をいたした例はほかにございます。それは、予備費を支出いたしますときには、既存の項の中で金額が予測できなかったものを、後になりまして金額が確定したがために支出をするというものもございますけれども、また中には、金額、内容ともに予測ができなかったものを、予算編成後に生じました事情によって支出をする場合もあり得るわけでございまして、そういう場合には項の新設を行うわけでございます。
  165. 永末英一

    ○永末委員 大蔵大臣、彼らはああいうことをやったのですが、あれらは何をしていると思いますか。
  166. 坊秀男

    坊国務大臣 私も、赤軍派と称する者が具体的に何をしておるかということについては、つまびらかにもつまびらかでないにも存じ上げませんけれども、貴重な世界各国の秩序体制に対して、何か反体制と申しますか、反逆を試みておるということでございますが、いかなる目的でもってそれをやっておるかということについては、まことに判断に苦しみます。
  167. 永末英一

    ○永末委員 彼らが現体制に反逆をしておると言われましたが、彼らは戦争しておるわけですね。つまり、彼らは彼らなりの世界観に基づいて、世界同時革命を考え世界革命統一戦線をつくっておる。その有力な一翼であるから、現在の国家であるとか、国家のつくっている秩序とか国際間の秩序というものを一切無視しておる。したがって、金をとろうと刑務所におる者を取り出そうとそれは戦争行為であって、一切のそういう言論、秩序の破壊行為は戦争の名によってジャスティファイされるという考えを持っているらしい。そうしますと、戦争にたやすく金を出すというのは、敵に塩を送った故事もございますけれども、その金がまたいかに使われるかということになると、金を出すということも非常に重要なことですね。彼らの架空の戦争を、敵軍を、われわれは援助しておるということになりますから、大蔵大臣は金で済むことならとはまさかお考えにならぬと思いますが、しかも主税局長が苦労して国民から税金を取ってくるわけでございますので、これは真剣に考えてもらわなければならぬ問題だと思いますが、あなたはそう思われませんか。
  168. 坊秀男

    坊国務大臣 感じはまさにそのとおりでございます。
  169. 永末英一

    ○永末委員 この種のことを何とかして根絶することが、いまいろいろな秩序のもとに生きており、秩序の基本の原則はいろいろございますけれども、やはりわれわれ人類社会の共通の務めだと思います。  さてこの機会に、架空の戦争に触れましたので、既存の戦争に関してちょっと聞いておきたいのです。  厚生省の援護局の方来ておられると思いますが、過般の三十年前の戦争で日本軍が戦闘いたしました地域に厚生省が建てた慰霊碑がありますね。何ぼございますか。
  170. 吉江恵昭

    ○吉江説明員 私どもが過去に日本軍が戦闘いたしました地域に慰霊碑を建てておることは御指摘のとおりでございますが、ざっと分けて、最近建てておるものと、かつて昭和二十八年ごろ初めてこれらの地域へ慰霊巡拝、象徴遺骨の収集に行ったときに建てたものと二つございます。  最近建てておりますものは、昭和四十五年の硫黄島、四十七年のフィリピン、四十八年のサイパン、この三基既存のものがございます。これは、最近本格的な遺骨収集をやっておりますが、戦後三十年を経過したことでもございますので、完全な収骨を行うことが困難であるということを踏まえ、遺族の御心情それから国民感情を考慮して、現地に赴いて戦没者に慰霊の誠をささげていただこうという趣旨で建てておるものでございます。  それからもう一つのものは、先ほど申しましたように、昭和二十七年に講和条約が発効いたしまして、二十八年から旧戦闘地域、これは主として中部太平洋、南太平洋、アリューシャン列島の方面でございますが、ここへ、当時日本の社会状態は必ずしも安定しておらなかったわけですが、とるものもとりあえず出かけて現地で追悼を行い、そこに記念の碑を設置し、それから象徴遺骨を収集してまいった、そういう一環として置いてまいったほんの小規模な記念碑と申しますか、この二つがございまして、前者はさっき申し上げはしたように現在三基建っておりますが、後者の記念碑的なものは約二十基ばかりあると承知しております。
  171. 永末英一

    ○永末委員 かつてこれは戦闘地域でございましたが、現在はよその国の領土ですね。そのよその国の領土に日本政府のつくったものが建っておるわけでございまして、建てたときは日本政府の費用で建てられたと思いますけれども、建てた後、最近のものも何年かたっておるだろうし、二十八年ということになると実に二十年、三十年近くの月日がたっておる。これはだれが管理しておるのですか。
  172. 吉江恵昭

    ○吉江説明員 最近の三つの碑につきましては、硫黄島はいまや日本に返還されましたので、これは海上自衛隊の基地の分遣隊に管理をお願いしております。それからフィリピンについては、国家関係機関の国家電力公社にやっていただくということで、いま細かい詰めを行っております。サイパンについては、北マリアナ連邦政府にお願いをしております。  それから、昭和二十八年から三十三年ごろまでに建てました約二十基のものにつきましては、先ほども申しましたように、本格的慰霊碑として設置するというよりは、そういう意味ももちろんございますが、追悼の意を込めた記念碑的な、遺骨収集にここまで足跡を伸ばしてきたという意味で建てたものでございますし、また、各国おのおのの事情とか、あるいはそのときの日本の国際社会における地位というものもございましたので、これらについては実を言うと、一律一定の措置方針というものを持たないまま現在に至っておる。したがいまして現在、たとえばサイパンに置いてまいりましたのは、その後建てましたサイパンの本格的な慰霊碑の中に設置がえして安置しておりますし、それから、地元の土地所有者が非常に丁寧に安置してくださっておるところもございますが、まあ原野に記念碑として残されておるというものもあることは事実でございます。現在までのところ、私どもは一定の方針による措置というものを実はとっておらないというのが実情でございます。
  173. 永末英一

    ○永末委員 一定の措置方針にのっとっておらぬ。わかりやすく言えば、ほったらかしてあるということですよね。現場へ私も行ってみましたよ。そうすると、ほったらかしてあるわけだ。しかし、そのあるものについては、原住民、そこの土地の人が清掃している、あるいはそこに至る道をちゃんと保守しておるということがあるわけですね。そこの人の話によると、日本政府というのはここへ来てそういうものをつくっておきながら一切知らぬ顔をしておる、こういうことになる。これは日本政府の信用問題としてゆゆしき重大事ではなかろうか。土地は小さいのでございますよ。その付近の人々も少ないかもしれませんが、いやしくも政府がつくった、日本政府がつくらせていただいたものについて、何らも管理の実を示さないということは私は許されないと思いますが、大蔵大臣、どう思われますか。
  174. 坊秀男

    坊国務大臣 やはり戦地、古戦場で散華された日本の方々のために、記念塔と申しますか、つくったものは、これは後世の日本人がそれに対して本当につくったときの気持ちというものを忘れないで、これを見守っていくということが必要であろうと思います。
  175. 永末英一

    ○永末委員 大蔵大臣は見守っていくことが必要だと言われましたので、よく心にとどめておきます。  さて、援護局の方に伺いたいのですが、その政府がつくったいろいろな碑の周辺に、日本のいろいろな諸団体あるいは各個人の建てた記念碑がやはりあるわけですね。これは日本政府としては一体どう考えておりますか。
  176. 吉江恵昭

    ○吉江説明員 各旧戦域にいわゆる戦友会とかあるいは遺族会、郷土部隊の方々等がそれぞれの慰霊碑をお建てになっておるということは、私どもは仄聞をいたしておりますが、その団体の方々がそれぞれの方法で土地を確保されてお建てになり、お守りになっておるというように了解をしておりまして、全体については私どもは詳細に把握しておりません。ただ、二、三それらのこういう民間の方がお建てになった碑についての維持管理その他に問題があるというような例は耳にいたしますので、その都度私どもはその団体に御連絡申し上げまして、さようなことなきようお願いしておりますし、それから、こういう碑の建立計画があるということを耳にいたしました場合には、私どもは特に後々の維持管理ということを完全に、確実に考えておやりいただくように強力にお願いしておるところでございます。しかしながら、全体についての詳細は私どもはただいまのところ把握しておりません。
  177. 永末英一

    ○永末委員 厚生省にお願いしたいのは、なるほどあなたの責任で建てたものではございませんが、相手方の国民からいたしますと日本人が建てたことには間違いない。そうしますと、政府が建てたものでないから政府は責任がないということでは通らぬのであって、これはあなたの方の所管になるか外務省になるか知りませんけれども、やはり何らかの責任は日本政府として持つべき問題ではなかろうかと思います。それはひとつ外務省と相談をして、ほったらかさぬようにしていただきたい。  それから大蔵大臣が先ほど申されましたこと、これはまさに現実ほったらかしてあるわけです。それはわずかの支出ですから、少なくとも日本政府の責任で建てた碑に対しては、後は保守をしていくという誠を示されることが、日本がこれらの諸地域の国民との外交あるいは信頼を得る上で重大なことだと私は思いますので、そのようにお心がけをいただきたいと思います。  さて、円高問題が非常に問題になっておりますが、この点について大蔵大臣の所信を伺いたいわけです。  大蔵大臣、ある学者がこう言っておるわけです。第二次世界大戦前は、それまで続いてきた金本位制がぐらついた。同時に、そのことのために各国は保護貿易に走った。保護貿易に走ると、好景気よりはむしろ不況になってしまったというので、戦争で決着をつけたという、これは一つの粗っぽい素描でございますが、これをひとつ頭に描いていま考えますと、IMF体制が崩れてしまって、IMFは金からSDRへの移行をしようとしておりますけれども、要するにいままでのドル為替制度がなくなってしまって、いまや変動相場制になっておる。そしていま日本の国が黒字だというので、われわれが要求せられているごとく、世界は、いろいろ言っておりますけれども、要するに完全な自由貿易時代ではなくて、いろいろな意味での貿易に対する制限をお互いが出し合ってやっておる。そして各国はまた不景気である、不況である。似ておる。だから、この辺で国際経済の筋道をちゃんとしないことには、重大なことが起こりはせぬかと心配しておる学者がおるわけですね。そんなことを頭に置きつつ、このごろの異常な円高原因は何だと把握しておられますか。
  178. 坊秀男

    坊国務大臣 何回もお答え申しておりますけれども、最近における大変な円高というのは、九月ですか、あの世界市況で円が非常に高くなってきた。その後そういったような経過をたどり、多少の一進一退はむろんありましたけれども、最近に至りまして本当に千古未曾有の円高になってきたということであります。  それには、あるいは若干の思惑とか投機とかいうこともあったし、それからまた、ブルメンソール長官の不用意な言葉もあったということもありますけれども、その基本は何と申しましても、やはり日本国際収支輸出が非常に堅調である、それに引きかえまして他方、アメリカ赤字が将来だんだんふえていくといったような予想が市場にみなぎったということで、このようなことになったというふうに見るよりないと私は思います。
  179. 永末英一

    ○永末委員 いま大蔵大臣は円とドルとの関係で言われましたが、いま御説明の後段の話で、アメリカ国際収支赤字を重ねておるという一つ原因を挙げられましたが、ドル自体が一般的にきわめて弱くなっておる、そういうことが基本的な原因なのか、それとも日本黒字原因でなっておるのか、この辺のつかみ方はこの解決策を考えるのに重要なところですが、どっちにウエートがありますか。
  180. 坊秀男

    坊国務大臣 円だけでなしにヨーロッパ、ECの相場においても、ドルが非常に安い。ことにここ一両日はヨーロッパ各国の通貨が高くなっておるということから考えますと、やはりこれはドルが非常にドル安ということですが、これはどうですかね、永末さん、それはどっちがどうだからということじゃない、隻手の声と言いますけれども、そういうことを考えなければ、そういうふうにどっちがどうだということよりも、まさに隻手の声というふうに、それが世界にこだましておるというふうに私は考えております。
  181. 永末英一

    ○永末委員 事務局の方で結構ですが、今月になりましてから円とドルとは、どんどん円が強くなって相場が変わってまいりましたが、ヨーロッパの通貨、たとえばマルクやスイスフランも同じ上げ幅で強くなっていますか。
  182. 旦弘昌

    旦政府委員 九月の二十八日以来、円、マルク、スイスフランがどのぐらい対ドルで引き上がったかという数字を申し上げますと、昨日、二十五日現在では、終わり値ベースで円は六%引き上がっております。それからスイスフランが五・二%、マルクが二・八%でございます。
  183. 永末英一

    ○永末委員 この数字からいたしますと、やはり円がねらわれているみたいな気がしますが、大蔵大臣、どう思われますか。つまり、一般的にドルが弱くなっているんではなくて、やはりある意味では円に集中されておるという感じがいたしますが、いかがでしょう。
  184. 旦弘昌

    旦政府委員 必ずしもそう言えないのではなかろうか。と申しますのは、円が六%、スイスフランが五・二%でございますので、多少開きはございますけれども、かなりスイスフランも高くなっておるということだろうと思います。それに比しまして、マルクはわりあいに上がり方が今回は少ないわけでございますが、これは経常収支ベースを見てみますと、ドイツは一昨年は、これは歴年でございますが、三十八億ドル黒字でありましたのが、その翌年三十億ドルになりまして、ことしの歴年では、OECDの見込みでは二十五億ぐらいに下がるのではないか、むしろ経常収支黒字がだんだん減る傾向にあることは明らかになっております。それに対しましてスイスの場合には、七四年には二億ドル経常収支の黒が、七五年に二十六億ドルに、それから昨年が三十五億ドル、ことしも同じぐらいのベースではないかということが言われております。それから日本は、七五年には七億ドル赤字でございましたが、昨年三十七億ドルになった。OECDのこの夏の見通しでは、本歴年では日本は七十億ドルぐらいに上がるであろう。傾向といたしますと、スイスと日本とはわりあいに似た傾向である。ドイツは、黒字ではありますけれども、だんだん減る傾向にあるというようなことが、この引き上げ幅にあらわれているんではないかというふうに感ずる次第でございます。
  185. 永末英一

    ○永末委員 いまの御説明は、それぞれの国の経常収支を比較した場合に、その黒字幅の増量に従ってその国の通貨が強くなる、こういうお話でございますが、先ほどから大体、わが方の為替相場に対する態度としては、実勢価格を見ておるんだ、しかし乱高下があれば介入する。乱高下という、その乱というのはどういう場合を言うのですか。
  186. 旦弘昌

    旦政府委員 乱高下が一体どういうものかというのは、なかなかいろいろな要素がございまして、海外から短資が急激に流入してきまして、投機的に円買いを始めるというようなのも一つの要素だろうと思います。そのほかいろいろな心理的な要素でありますとか、あるいはだれか枢要な人物が何を言ったとか、そういうようなことが市場に影響することがありますけれども、要するに、通常考えるよりも相場の動きが急激かつ激しいということでございまして、それじゃ何%だったらどうなのかということになりますと、そこはなかなかむずかしい問題でございますが、最近はとりわけその乱高下の模様が強いのではないかというように考えております。
  187. 永末英一

    ○永末委員 介入をいたすということは、わが方はこれで円を買うわけでございますから、何ほかの分量が動きますね。これだけ動かしたらこれだけ円のあれがとまるということを考えて介入するわけでございましょう。そうしなければ介入する意味がない。そうしますと、大体ある一定の時期で相場が少し上がってきたなと思う場合に、それほど上がらないようにしようという場合には何ほか介入する。その場合には、望ましい決着点を頭に想定していられると思いますね。たとえば二百五十八円の場合、二百五十五円になりそうだけれども、介入して二百五十六円で食いとめておこうという場合には、二百五十六円が望ましいというので介入されておると思います。さてしかし、ここ二週間くらいの経過を見ていますと、どんどん下がってきて、介入をしておられるけれども、何を望ましいと考えておるのかよくわからない。いまの時点では、どの辺が望ましいのですか。
  188. 旦弘昌

    旦政府委員 介入をいたします際の私どもの基本ルールは、何か望ましい目標を設定いたしまして、そこのところにとどめておこう、そこまで引っ張り上げよう、あるいは下げようというようなことではございませんで、基本的なルールは市場の実勢に任せるということが、これはIMFの介入のガイドラインの第一に出ておりますが、そういうことで、実勢に任せるというのが原則でございます。  それから第二に、しかしその中で先ほどお触れになりました乱高下がある場合には、これはそのガイドラインにおきましても介入すべきものだとされておりますので、それに沿って介入をしておるわけでございます。  したがいまして、二百六十五円が望ましいからそこに引っ張っていこうというような意図は毛頭ございませんで、その市場の実勢に任せるということでございます。ただ、乱高下は防ぐということで介入をするということでございます。
  189. 永末英一

    ○永末委員 つまり、望ましい終点を設定しておるのではない、乱高下だ、こうなりますと、乱高下というものを先ほど御説明をいただいたところ、別に何%でもない、要するに一、二、三、四というようなものを挙げられましたね。しかしおのずから、たとえば三円もぐっと上がっては困るとか、三円五十銭なら困るとかというものが頭にあるから——原因はいろいろありましょうね。だれかがしゃべったとか、金が流れてきたらしいとか、あなたが言われたようにいろいろございましょう。しかし、流れてこようとしゃべろうと、相場が動かなければいい。その相場が動き出した。その場合に、何円か動き出したらこれはいかぬと言って発動するんだと思います。それは何円ですか。
  190. 旦弘昌

    旦政府委員 その辺は非常に微妙なところでございまして、大蔵大臣が市場の介入政策を決められるわけでございますが、実際の実務といたしましては、日本銀行が委任を受けてやっておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、毎日その市場の実勢につきましては日本銀行と協議の上、随時適切にやるということでございまして、何円ならばどうするということを決めて、何が何でもそこのところにきたら介入するということは決めておりません。そこはきわめて弾力的にやっておる次第でございます。
  191. 永末英一

    ○永末委員 随時適切弾力的というのは、大蔵大臣なかなかわかりませんね。いまはどう考えておられますか。実勢に任すと言うけれども実勢というのはいろいろなファクターで動いてきておる。恐らく輸出をやっておられる日本企業家の皆さん、それからそこに働いておる労働者の諸君も、二百五十一円まできたがこれは二百四十円台になるのではないか、うわさによればもっと下がるのではないかという説がある。その場合に自分のつくっているものは売れない。先ほど通産省はいろいろな対策を言っておられるようですが、基本は為替相場ですね。だから、いまわが国政府の方針として、いや二百四十五円になろうと四十二円になろうと実勢に任すんだ、ただその間急激な乱高下があればそれは介入するんだということなんですか、それとも二百四十一円とか二円とかになってはならぬ、二百五十円台を死守しなければならぬ、こういうことで構えて向かわれるのですか、御方針がございますか。
  192. 坊秀男

    坊国務大臣 大変むずかしいことでございますが、やはり一定の水準を頭に置いて、そうしてそれに近づけるとかなんとかということではないと私は思います。それで乱高下というのは、短期間のうちにこれが非常に、思惑や何かもそれはあるでしょう、そういったようなことで、実際の相場の形成が乱高下が余り短期間にそう動きがあるということではぐあいが悪いから、そこでそういったようなものを見て、それは幾らにとどめようとか、どういうふうに持っていこうとかいうことでなしに、つまり乱高下でございますね、そういうふうにならぬようにしていこうということのように思います。
  193. 永末英一

    ○永末委員 いままで何ドルぐらい介入したんですか。
  194. 旦弘昌

    旦政府委員 介入の時期及び介入額につきましては、各国政府、中央銀行いずれも発表いたしておりません。そういう問題、非常にデリケートな問題でございまして、相場にもまた逆のいろいろな悪影響もございますので、発表いたしておりませんので、御容赦いただきたいと思います。
  195. 永末英一

    ○永末委員 先ほど大蔵大臣は、この円高を食いとめるための一つ方法として、経常収支における努力を言われました。しかし何も経常収支だけではなくて、わが国がいまのような形でどんどんドルを保有していることは間違いない事実でございますから、このドルが別の形で消化されていくということが必要でございますし、たとえば論をなす者の中には、ひとつ外国政府や国際機関の円建て債の発行をもっとどんどんやったらどうか、現在ございますが、そういうことをもっとやったらどうかとか、あるいはもっと外資の導入を——いろいろなことで外資の導入には反対ですけれども、いろいろなことを言っておりますが、何かわが方が輸出を規制をしあるいは相手方が輸入制限を増すとかという単なる輸出入だけではなくて、資本収支についても方針がありますか。
  196. 旦弘昌

    旦政府委員 もちろんいま御指摘の長期資本収支の問題は非常に大きな要素でございます。ただいま問題になっていますのは、日本経常収支黒字であるという問題でございますけれども、単にそれだけでございませんで、長期資本収支で資本の流出を図れば、基礎収支ではその経常収支の黒を消す要素になるわけでございますから、そういう意味で御指摘の長期資本収支の問題は非常に大きな問題でございます。  いまお触れになりました円建て債の問題でございますが、円建て債につきましては、年初は日本の長期金利が高かったものですから、われわれとしてはある程度円建て債が出てもいいんではないかと思っておりましたけれども、そういう要望が非常に少なかったんでございますが、この夏以来長期金利が下がってまいりまして、急激に円建て債の発行が活発になっております。われわれはそれも一つ実勢でありますので、それについては妨げることのないように長期資本の流出を促してまいりたい、かように考えております。
  197. 永末英一

    ○永末委員 大蔵大臣は国際会議に行かれまして、よその国の人が円が強い強い、わが国輸出をやりまくっておる、こういうような感覚を持っておるかもしれませんが、わが国は大体油を百億ドルも支払い超過の状態で買うているわけですね。産油諸国と、産油諸国から油を買っている他国のバランスを見てみますと、バランスにならぬようなものを売りつけているわけですね。わが国は何ともこれバランスを取ってみると、百億ドル以上ここ三年ほど年々支払いを続けておる。そうしますと、算術計算をやりましても、よその国に百億ドル以上輸出超過をやらなければ、これはわが国赤字になりますね。そういう事情をよその国はよく知っているのでしょうか。そんなことは考えないで、要するに日本の国が自分のところへ自動車を売りつけてくる、テレビを売りつけてくるという文句を言っておるのですか、どう受けとめておられますか。
  198. 坊秀男

    坊国務大臣 御指摘のように、日本は原料を買ってあるいはエネルギーを買って、そしてその原材料を日本で加工してこれを輸出するというので日本経済というものは成り立っていっておるわけなんです。ところが、それでもとにかく若干の黒字がなければこの循環ができないということは、私はその事態はよくわかっておると思います。わかる、わからないにかかわらずこの事実はある。しかし、それがやはり過ぎたるは及ばざりけりですな、余りにも黒が残るということに対しまして——世界で黒字国、赤字国というのが起こっておるのは、とにかくほかの国に赤字が生ずる。たとえばアメリカ赤字が生ずる。これは日本が余り黒字をためるからじゃないかというふうに考えられることに対しましては、私はまことに心外でございます。そうではない。決してアメリカ赤字日本黒字を残すから、それが唯一の理由でそういうことになるということではないということだけは理解してもらいたいと思います。
  199. 永末英一

    ○永末委員 私どももその辺が一番問題であって、アメリカからわれわれがねらわれている、そしてわれわれの輸出品に対していろいろダンピングの疑いをかけられたり、輸入課徴金をかけようということを考えたりいろいろなことをやられて、それに忙殺をされておる。しかし、何もアメリカ赤字日本が唯一最大の原因でも何でもないわけです。それと同じ問題はヨーロッパ諸国でも、なるほど日本の自動車が入って、自動車産業がよたよたしている国もございますが、もともと自動車産業のないEC諸国の中には日本の自動車を歓迎しておる国もあるわけでございます。一律にはまいらない。だから、わが国の方針も、彼らに原因があるものについてまでわれわれは責任を持つ必要はないのでございますから、その辺は、理解してもらいたいじゃなくて、理解させなければなりませんな。いかがですか。
  200. 坊秀男

    坊国務大臣 それと同時にやはり黒字が、過ぎたるは及ばざりけりでございますから、世界経済の観点から申しまして、これはできるだけ減らしていくということはやりながら理解をしてもらう、こういうことのように考えます。
  201. 永末英一

    ○永末委員 せっかく御努力を願います。
  202. 山下元利

    山下(元)委員長代理 荒木宏君。
  203. 荒木宏

    ○荒木委員 私は、きょうは低成長時代の財政のあり方ということについて、二、三お尋ねをしたいと思うのでありますが、最近、臨時国会になりましてから地域から要請を受けました幾つかの事例、こういったものを引用しながら、まず福祉と負担という問題についてお尋ねをしたいと思うのであります。  財政が大変危機の状態になるということになりますと、増税は避けられないのではないか、あるいは福祉は見直すべきではないか、こういった議論がなされておるようでありまして、確かに当面の財政運営という点から見ますと、三割近い公債依存率でありますから、歳出は少しでも削りたい、あるいは歳入を図るべきものはどこかに少しでもないかということで、財政当局がいろいろ検討しておられるということは言われるわけであります。同時に、そうした当面の措置とともに、目先の収支ということから大きく損をするということはないか、私はそうした点について、福祉の中の重要な一つであります老人医療の無料化を続けてほしい、こういう強い要請、陳情を最近再び受けましたので、初めに厚生省に伺いたいと思うのですが、老人医療の無料制度が果たした役割り、財政的な中長期にわたるその効果並びに見通し、あるいは従来の事例、こういったことにつきまして私どもは、全国的に十分調査したわけではありませんけれども、しかし、たとえば長野県の八千穂村というところで十八年間予防医療のために財政支出をつぎ込んで努力をしてきた、その長年にわたる努力、その経過の中には、もちろんその歳出が果たしてどのような実りを生むか、当面の財政運営の点から、スケールは小さいといいながらいろいろな論議があったことは想像にかたくありませんし、私たちも聞いておるところですけれども、しかし、今日に至りまして、同じ規模の同じ地域の郡内平均から見ますと、一九七〇年度で老人医療が一人当たり医療費五万七千円少なくて済む。国保医療費は年間で一万四千円安くて済む。したがって、国保の保険料が千五百四十一円安くて済んだ、こういったような事例が報告せられております。  厚生省はこうしたことについて、ほかにも事例があろうかと思いますけれども、どのように見ていらっしゃるか、また、老人医療無料化制度の見通しについて、いま言いましたことも含めて御意見を伺いたいと思います。
  204. 上村一

    ○上村政府委員 いま例にお引きになりました長野県の八千穂村というのは、保健婦や医療機関が中心になりまして、老人の保健相談なり保健指導が非常に活発に行われておる。そこには、佐久総合病院という農村の保健について非常に関心の強い、しかも活発な活動をしている病院があるわけでございますが、その結果、御指摘になりましたように、老人医療費自身が昭和五十年度で全国平均よりも二万円少ない十二万二千円というふうなことになっておるわけでございます。  それで、そのほかにもどういう地域があるかということでございますが、私ども長野県のこの村と同じようによく引き合いに出されますのが岩手県に沢内村という村がございます。ここは健康管理について村当局が精密な健康診断の実施等をやっておるわけでございますが、この村自身の医療費の動向については、いま手元に資料がございませんのでつまびらかでないわけでございます。  それで、老人医療の無料化制度を導入しましてから数年たっておるわけでございますが、この老人医療の無料化というものを導入いたしましたのは、御案内のように、日本の人口構成がどんどんと老齢化してまいる。老人というのは、当然のことでございますけれども、生物的に見まして健康がだんだん衰えていく過程にあるわけでございますから、病気がちである。一方、所得は働いておる人に比べまして高くはない。一方、戦後世の中が変わってまいりまして、財布の実権というのは老人から離れていった。そういうことから、病気がちの老人が医療を受けやすいようにするためには、この老人医療について医療費の公費負担制度というものを導入するということは、私、時宜にかなった措置であったというふうに思うわけであります。  その結果、これまで受診率の低かった老人の受診率が向上することになったわけでございますが、問題は、先ほども申し上げましたように、わが国の老人というのは急速に増加しておる。現在、働いている人間九人で一人の老人を養っておりますのが、近い将来には四人で一人を養わなければならないような状態になる。こう考えますと、老人の扶養、具体的には所得保障なり医療保障になるわけでございますけれども、それの国民負担の増大はどうしても避けられない。その意味で、財政的にも大きな問題になることは無視できないのではないかと思うわけであります。  そこで、これからの老人の健康を守る対策というものはどういうふうに進めていくか。これまではどうしても医療費の負担を軽くするというところに重点を置き過ぎたきらいがあるわけでございまして、これからふえてまいります老人が健やかで豊かに老いていくということのためには、病気や老化を予防することを総合的に検討することが必要ではないか、こういうふうに考えるわけでございまして、昨年の三月来、厚生省に十三人の専門家からなる懇談会をつくりまして、この問題について鋭意審議しておるところでございます。これまで二十回ばかり会合を開きました。きょうも三時から会議を開いておるわけでございまして、順調にまいりましたら、きょう最後の取りまとめが行われるのじゃないか、そして意見書がちょうだいできるというふうに考えておるわけでございまして、厚生省といたしましては、いただきました御意見を参考にして、これからの老人保健医療対策というものをどう進めていくか、総合的に検討してまいりたいと考えておるわけでございます。
  205. 荒木宏

    ○荒木委員 開会中、社会局長には大変御苦労でございましたが、いまの御答弁を受けて主計局にお伺いしたいのですけれども、確かに高齢化社会、老人関係財政支出の増大、言われておるとおりであります。同時に、いま厚生省の局長から御紹介もありましたような予防を含めた総合的な老人対策ですね、そのための財政支出、これが中長期に見れば大きな得ということにつながっていく。具体的な事例の御紹介も一、二ありましたが、いまそういう観点が同時に必要ではないか。十人に一入が病気であるような状態をそのままにしておいて医療費の増大を云々するのは、むしろナンセンスだとも言えるのではないか、こういう議論さえありました。厚生省の調査では老人有病率が九割だという調査もありますし、それでいて受診率がまだ半分そこそこだということでありますから、そういう無料化制度が受診の増大につながって、そのことがひいては医療費の軽減をもたらしたという、こういう面の検討が同時に非常に重要なことではないか。本年一月、財政制度審議会の中間報告もありましたが、いまの指摘を受けて主計局の見解を伺いたいと思います。
  206. 松下康雄

    ○松下政府委員 老人医療の問題につきましては、財政当局といたしましても、もちろん財政的な観点からも関心を持っておるところでございますけれども、同時にこの問題は、ただ医療の一局面だけから判断をいたすべきものというよりは、老人福祉対策全体の一環として位置づけながら検討すべきものであろうという御議論もいただいておるところでございます。ただ、私どもの立場上いろいろと申し上げますことが、財政資金の効率的な使用という点にとかく重点を置いて受け取られますために、いろいろと言われる点もございますけれども、私どもといたしましては、ただいまお話がありましたような、厚生省において専門家を集めていまこの問題について御検討をしておられる。この結論が出ますとこの次の段階といたしましては、しからばこういう御意見を受けて厚生省当局としてはこの問題についてどういう施策考えていくかということの検討であろうと思います。私どもといたしましては、厚生省の御検討の結果を待ちまして、現在及び将来の国民負担、財政負担ということも制度の健全な維持運営のためには、これは無視できない重要な問題でもありますから、そういった問題をも十分考えながら、厚生省と十分に御相談をいたし、事態に対応してまいりたいという気持ちでございます。
  207. 荒木宏

    ○荒木委員 上村局長、お忙しいところどうも御足労でございました。結構でございます。  いま福祉と負担という問題について、安易な目先の収支対策ということで大きな損をもたらさないように、こういうことを申し上げたわけですけれども、私は、これは投資あるいは建設の面でも同じようなことが言えるのじゃないかと思うのです。  私は最近、第二阪和国道というところの建設促進についての強い要請を再々受けたわけですが、これは大臣関係地域ですから御承知と思いますけれども、昭和三十八年に建設承認になりました。そして万博の年といいますから昭和四十五年に完成予定ということだったわけですね。ところが、その工事の途中で、遺跡の発掘でありますとか、あるいは区画整理に伴うさまざまな問題とかいうのが出てまいりましたが、そのときにもちろん、単年度の予算上の制約その他条件はいろいろあるのですけれども、その都度その都度、そういったようなことで対応が当面の収支ということに制約をされたがために、今日なお全く寸断状態でありまして、いまなお完成のめどが十分に立っていないということで、地域の人たちとしては、国の施策あるいは政府の財政運営のあり方について大変な批判が高まっておるところなんです。  そこで建設省の方から、従来の経過とそれからその上に立った反省並びに今後の見通し、こういったことを簡潔にひとつ御報告を願いたいと思います。
  208. 渡辺修自

    ○渡辺説明員 ただいまお話ございましたように、事業の実施調査に着手いたしましたのが三十八年でございます。四十四年ごろから本格的に工事を始めたわけでございますが、五十二年度末で全延長三十二・八キロメートルのうち、二十・七キロメートルということが使えるようになっております。全体の六三%でございますが、ただ細切れになっておりますので、六〇%というような感じは持っていただけないかと思います。  いままでおくれてまいりました理由といたしましては、特に岸和田市から北につきまして、土地区画整理事業によりまして用地を取得しよう、これは幹線道路をつくると同時に周辺地域の整備を行おうということで区画整理を考えたわけでございます。これがおくれましたこと、それから文化財の関係、そのほかにもいろいろ砂川厚生福祉センターというような問題もございます。大阪府な初め関係方面といろいろ協議を進めておりまして、早期に解決を図りたいと考えております。  いまの予定といたしましては、残っておりますのは三地区ございます。岸和田地区につきましては五十四年度までに終わらせたい、それから和泉と泉大津地区につきましては五十五年、最後に一番南の端の泉南市の地区でございますが、これは五十六年度までにそれぞれ供用開始することにいたしたい、このように考えております。
  209. 荒木宏

    ○荒木委員 いま地元の側におくれた問題、原因があるかのような説明がありました。私は決して否定はしませんけれども、しかし、実際にその話をしてみますと、予算上の制約があるというのが建設当局側の回答でありました。そういう点から言いますと、同じ金を使いながら、当初の予定では大体百億余りということを見ておったのですけれども、いまではそれの数倍以上ということ、これはもちろん建設費の値上がりその他の事情もありますけれども。ですから、そうした面で、財政運営の本当の効率化といいますかそういう面が、いまの時期に、目先の収支じりを合わせるということだけではなくて、非常に重要なことではなかろうかと思うのです。  同時に、まずい例ばかりではございませんで、同じ地域でありますが、国鉄の大阪外環状線の建設問題というのがあります。これも最近ずいぶんと要請を受けましたのですけれども、これは、新大阪から杉本町までという当初案がいろいろ問題があるということで、それよりも財政支出はかなりふえるけれども、しかしさらに南の方に延長しようというふうな検討がなされておるやに聞いたのです。運輸省の方からそうしたいきさつ、今後の見通しについて御報告願いたいと思います。
  210. 岩橋洋一

    ○岩橋説明員 大阪外環状線と申しますのは、現在ございます国鉄の城東貨物線及び阪和貨物線、これはいずれも単線でございますので、これを一線増設の上、旅客運輸営業を行うというものでございます。昭和四十六年十二月の都市交通審議会の答申第十三号の中で、新設すべき路線の一つとして答申を受けております。  現在の国鉄財政の現状からは、本計画を直ちに実施に移すということはなかなか困難でございますし、上記の答申もございますので、現在国鉄において種々検討を加えているところでございます。  その中で、ただいま先生おっしゃいましたように、答申では本路線を新大阪−放出−加美−杉本町となっておりますが、終点の杉本町での阪和線との接続につきましては幾つかの問題がございますので、さらに南の方で接続するルートの選定を含めまして今後検討するということで、ただいま国鉄の方で勉強しておるというふうに聞いております。
  211. 荒木宏

    ○荒木委員 運輸省と建設省、もう結構でございますので、お引き取りいただきたいと思います。  主計局にお尋ねいたします。いまのような一、二の例を報告いただいたわけですが、建設あるいは投資に当たって、なるほど当面の収支から言いますとプラスマイナスそれぞれありますけれども、しかし、中長期に見ての効率とか社会的なアセスメントというような点から見まして、ずいぶんと検討し直すべき点が多々あるのではないかという気がしておるわけです。そうした点についてのいまの例を含めての見解を伺いたいと思います。
  212. 松下康雄

    ○松下政府委員 ただいまの個別のお話につきましては、私も十分承知をいたしておりませんので、考え方につきましてお答えをいたしますが、公共事業関係の個々の事業の採択に当たりましては、もちろん私どもとしましては、財政資金の効率的な使用という見地から、その採算性あるいは経済性、あるいは地元に対する便益の程度というものをよく検討した上でこれを決定してまいらなければならないと思っております。ただ、ただいま申しましたように、地元の便益とこの費用との関係考えてまいります上に、それは当事者あるいは専門家でありますところの各事業の実施主体の意見、これは重要な判断の材料でございますから、よく御意見を伺いながら採否の決定をいたしてまいるように努力しておるつもりでございます。
  213. 荒木宏

    ○荒木委員 こういう点は公企業の経営、運営についても私は同じようなことが言えるのじゃないかと思うのです。最近国鉄が乗客離れということが言われまして、これは皆さんもよく御承知と思いますけれども、値上げをしたために収入がダウンをする、秋の連休でも昨年に比べてよろしくなかった。住宅公団もまた空き家の増加ということが言われておりまして、参考人として昨日もお見えいただいて御答弁いただいたわけですけれども、私ははっきりしていただきたいのは、きのうは、参考人の御答弁によりますと、公定歩合の引き下げによる公団の金融コストの軽減は、いろんな前提を置きますし、仮定の上ですけれども、三百四十億円余り計数が出てくる。家賃の計算は一応仕組みが決まっておりますから、いまの仕組みを前提にしますと、後での補給金による精算ということになりますから、そのまま結びつけることはいろいろ問題のあるところかと思います。しかし、財政当局の方にしますと、当初見通しとしては、従来の引き下げ前の公定歩合、金利水準ということを前提に財政支出が考えられるべき筋合いのことでありますから、居住者の方は常識的に考えて、金利負担の軽減をそのままにしておいて旧入居者の家賃を引き上げるのはいかがなものかという要望が非常に強いわけですね、先日も大きな集会がありましたけれども。したがって、家主である住宅公団の方として財政当局に、この金融費用の軽減を家賃も含めて居住者還元をしたい、財政当局もその方向で検討してほしいという要望の努力はなされてしかるべきではないか。公団だけで決めるということはできかねる仕組みかもしれませんけれども、そうした点についての公団の姿勢といいますか、それをあわせて伺いたいと思います。
  214. 星野孝俊

    星野参考人 昨日も御答弁申し上げたわけでございますが、今回金利水準が引き下げになりました。先生も十分御承知のとおり、この新しい金利水準の適用というのは、新しい金利水準が適用される日以後の新規の借入金についてのみ適用になるわけでございまして、従来からの借入金については従来の利率で金利を支払うことになっているということであります。したがいまして、昨日申し上げましたのも、実は私どもとしてはそういう計算をしておりませんので、大変お答えを申し上げにくい御質問であったわけでございますが、そういう実現の困難性ということは一応差しおいて、仮にそういう前提を置いて機械的に計算したらどういうことになるか、こういうことで数字を申し上げたわけでございます。したがいまして、五十一年度末の借入金残高に一律に新しい金利を適用し、それから古い金利を適用した場合の差額ということで申し上げたわけでございまして、これは実現性のある話ではございません。あくまで仮定の話でございまして、現実には先ほど申し上げましたとおりに、新しい金利というのは新しい借入金のみ適用になる、こういうことでございます。  それから第二の御質問でございますが、昨日もお答え申し上げましたとおり、公団の賃貸住宅でございますが、これの家賃の算定に当たりましては、すでに借入金の利率とは一応関係なく、回収コストを年利五%もしくは四・五%、こういうふうに定められているわけでございまして、面開発市街地住宅並びに団地高層住宅については現在四・五%の金利を適用して家賃の算定をしておるわけでございます。  これは申し上げるまでもなく、できるだけ家賃を低く抑えて入居者が負担しやすいようにするという政策的な配慮によって決定されているのでございまして、したがいまして、借入金の金利が変更したからといって、直ちにこれが家賃に影響するというふうな性質のものではございません。従来も金利が数次にわたって引き上げられたことはございますが、その場合でも、家賃に占めます回収コストというものは固定されておりまして、それによって低家賃の実現を図る、こういうふうにされてきたものでありますので、今回金利が下がったからといって回収コストが下がる、そういう性質のものではないわけでございます。  なお、昨日も申し上げましたとおりに、私どもとして、もちろん金利が大切であるということは十分承知しておりますが、やはり金利だけでなく、私ども公団自身の内部努力もさらにさらに行うべきものであろうと思いますし、公団の努力によりましてできるだけ建設費の圧縮を図る。また、現在公団住宅を建設しますと、いろいろ地元に対しまして負担金等の御要請がありますけれども、そういうものにつきましてもできるだけ合理化を図って家賃への負担を少なくする。また、住環境整備事業につきましても五十三年度、ただいま予算要求中でございますが、そうしたいろいろの努力によりまして、できるだけ家賃を抑制するように今後とも努力していきたい、このように考えておるわけでございます。
  215. 荒木宏

    ○荒木委員 しかしそれでは答弁になりませんね。あなたきのう、家賃も含めて居住者還元に努力をすると、ここで答弁をされましたね。数字は、これは仮定の前提を置いているからそのとおりいくかいかないか、これはよくわかっていますよ。これはしぼむかもしれない、今後のことですから。しかし、それが出た場合には、方向としては、仕組みは仕組みで家賃の仕組みはあるけれども、居住者還元に努力する。参議院予算委員会の総裁の答弁を引用してお尋ねしたら、あなたはそのとおりだと、こうおっしゃった。一夜明ければ答弁ががらっと変わるのでは、私はこれは誠実な質疑応答というふうに思えません。  時間の関係がありますから、委員長、私はきょうはこの点はひとつおかしていただきますが、引き続きまたお見えいただいて——こうその答弁か一日置きに変わったり、同じ一回の答弁の中で、きのうだってそうですよ、変わるというようでは私は納得ができぬ。ですから、この点の質疑は、委員長もお聞きいただいて、昨日の第一回の答弁と二回目の答弁、それからいまの参考人の答弁は違っておることはお聞きいただいておるとおりだと思いますが、この点は私は留保しておきたいと思うのです。  時間ですから、最後に一言、主税局長お残りいただきましたので、一般消費税について、どういうふうに理解を得るか、PRを進めるかという具体的な中身のお話があったと思うのです。業界の皆さん方のところではどういうやり方がよろしいかと、こういうふうにして尋ねていくのだ、こういうことをおっしゃっておったように思うのですが、そういう質疑の中で、同僚議員からも指摘がありましたが、韓国の事態、商店の閉店があるとかいうああいったことについて大蔵省はどう思うかという質疑が出た場合には、どういう説明をなさっているのでしょう、そのことをひとつ伺いたいのです。  それから、伝えられるところによりますと、不公正税制の是正という中で、大臣はしきりと医師課税のことをおっしゃっておるのですが、医師課税についてはそれぞれ各党ともに見解が出されております。先日のある討論会でも、不公正税制の典型がこの医師課税である。問題があることは、これはもうそれぞれ各方面から指摘されておるとおりでありますけれども、何かいけにえ的といいますか、スケープゴートといいますか、そういうものとしてやり玉に上がっているような感じがする、これは何人かの学者の人からの指摘があったように思います。そうして今度は、それを進めるために土地税制の緩和と絡めてやろうとしておるというふうな話も耳にするわけでありますが、そういうことについては大臣としてはどうお考えになるか。この二つを伺って終わりたいと思います。
  216. 坊秀男

    坊国務大臣 不公正税制の中で代表的なものであるということを申し上げておるのは、何も感情的に言っておるのではございません。税制調査会の調査の結果によりますれば、すでに長い間これは不公平であるからできるだけ早くこれを是正するようにという答申結果が出されておるということでございまして、元来、これは不公平であると私個人としても考えておりますけれども、決して感情的にこれをやり玉に上げるといったようなつもりは毛頭ございません。
  217. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 御質問の第一の韓国の実情でございますが、現在、私どもの在韓の日本の大使館の担当官に実情をなるべく早く把握して報告してほしいということを頼んでおりまして、恐らく今週中にはまず第一回目の報告が参るかと思います。それによりましてまた適当な機会に御説明することができるかと思っております。  各所で開かれております説明会などで具体的にそういう御質問が出たかどうか、実はちょっと私ども、派遣した者からはそういう報告はまだ受けておりません。  それから、御質問の最後のところで、土地税制との関連の御指摘がございましたが、私どもは、土地税制につきましては終始一貫しまして、税というのは非常に補助的な手段なんで、優良宅地の供給を税が阻害しているということであるならば、それは阻害しているところは直さなくてはいけないだろう。ただ、どういうふうに阻害しておるのか、直せばどうよくなるのか、それをちゃんと主管官庁からまず私どもが納得できるような説明をしてくれ。私どもがなるほどと思えば、それによってまた関係方面にお願いをして立法手続を経て直していくべき問題なんだ。まあ言葉は悪うございますが、サルが出てくるような山の中を買っちゃったけれどもどうしてくれるという話を私の方へ持ってこられても、それはだめですよということを再三申しておるわけでございます。
  218. 山下元利

    山下(元)委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十四分散会