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1977-11-16 第82回国会 衆議院 商工委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月十六日(水曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 野呂 恭一君    理事 中島源太郎君 理事 林  義郎君    理事 武藤 嘉文君 理事 山崎  拓君    理事 上坂  昇君 理事 佐野  進君    理事 松本 忠助君 理事 玉置 一徳君       鹿野 道彦君    粕谷  茂君       藏内 修治君    島村 宜伸君       田中 六助君    谷  洋一君       辻  英雄君    中島  衛君       中西 啓介君    楢橋  進君       西銘 順治君    萩原 幸雄君       橋口  隆君    前田治一郎君       渡部 恒三君    安島 友義君       板川 正吾君    加藤 清二君       後藤  茂君    武部  文君       中村 重光君    馬場  昇君       渡辺 三郎君    長田 武士君       玉城 栄一君    西中  清君       宮田 早苗君    工藤  晃君       安田 純治君    大成 正雄君      橋本登美三郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         通商産業大臣  田中 龍夫君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アジア局         次長      枝村 純郎君         外務省条約局外         務参事官    村田 良平君         外務省情報文化         局長      柳谷 謙介君         水産庁次長   恩田 幸雄君         通商産業政務次         官       松永  光君         通商産業大臣官         房長      宮本 四郎君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         通商産業大臣官         房審議官    山口 和男君         通商産業省立地         公害局長    左近友三郎君         工業技術院長  窪田 雅男君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁次長     大永 勇作君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君         中小企業庁次長 児玉 清隆君         中小企業庁小規         模企業部長   井村  功君  委員外出席者         外務大臣官房書         記官      久米 邦貞君         大蔵省主計局主         計官      岡崎  豊君         参  考  人         (日本商工会議         所専務理事)  高橋 淑郎君         参  考  人         (商工組合中央         金庫理事)   秋野 莞爾君         参  考  人         (小規模企業共         済事業団理事         長)      越智 度男君         参  考  人         (石油開発公団         理事)     江口 裕通君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 十一月十六日  辞任         補欠選任   渡辺 秀央君     谷  洋一君   岡田 哲児君     馬場  昇君   清水  勇君     安島 友義君 同日  辞任         補欠選任   谷  洋一君     渡辺 秀央君   安島 友義君     清水  勇君   馬場  昇君     岡田 哲児君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  中小企業倒産防止共済法案内閣提出第一二  号)  日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸  棚(だな)の南部の共同開発に関する協定の実  施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源開発に  関する特別措置法案内閣提出、第八十回国会  閣法第三〇号)      ————◇—————
  2. 野呂恭一

    野呂委員長 これより会議を開きます。  内閣提出中小企業倒産防止共済法案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として、商工組合中央金庫理事秋野莞爾君、小規模企業共済事業団理事長越智度男君及び日本商工会議所専務理事高橋淑郎君の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野呂恭一

    野呂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、御意見の聴取は質疑応答の形で行いますので、さよう御了承願います。     —————————————
  4. 野呂恭一

    野呂委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐野進君。
  5. 佐野進

    佐野(進)委員 今日の経済情勢がきわめて深刻であることは、たびたび本委員会で私は質疑を通じて通産当局ないし経済企画庁長官見解を聞く中で、本委員会として深くその事態を認識いたしておるわけであります。特に今日の深刻なる経済情勢が、それに携わる企業努力だけではどうにもならない事情によって発生しておる、そういうことはそれらの質疑を通じて明らかにされておるわけであります。   〔委員長退席中島(源)委員長代理着席〕 したがって、私どもは、このような情勢下において、政府として、国会として何をなすべきかということにつきましては、それぞれ要求をするところは要求をし、また、みずからそれらに対応する対策を立案する、このような努力を続けてきておるわけであります。  その一つといたしまして、われわれは、すでに第八十通常国会の最中に倒産防止基金制度の検討に入り、政府側に対してもこの制度の実現について強く要請をし続けてきておったわけであります。その結果、今国会に、延長前のぎりぎりではございましたが、きょう提案されております倒産防止共済法案が提案されたことを私どもは大変喜ぶものであります。したがって、本法案に対しましては、私ども基本的には賛成の立場に立ちながらも、しかし、われわれが当初考えておりました法案内容からいたしますると、大変不満足な点がたくさんあるわけであります。したがって、それら不満足な点について質疑を通じて明らかにするとともに、今日深刻なる経済情勢の中で、中小企業がみずからの努力をもってしてはいかんともなしがたい事情のもとに倒産に追い込まれる事態をどのようにして防ぐかということについて質問をしてみたいと思うわけであります。  まず第一に、通産大臣質問をいたします。通産大臣とは景気問題についてすでに何回もこの国会の中で議論をいたしております。したがって、その議論を踏まえた上で質問をいたしますので、御答弁をお願いをしたいと思うわけであります。  今日の円高傾向、構造的な不況に加えて円高傾向は、毎々指摘しておるとおり、きわめて深刻な情勢となり、昨日はついに二百四十五円を割るという情勢に陥っているわけであります。これに対して政府は、たびたび対策会議を持つ中で、ドル減らしと申しましょうか、いわゆる円高を防ぐ措置として輸入を促進する、そういう努力を続けているにもかかわらず、何らその効果はあらわれないということについては、政府の全くもって怠慢ではないか。特に福田内閣総理大臣経済政策は、もはや完全に行き詰まり、完全に失敗をしているのではないか。経済福田と言われるその政策が、財政的にも経済政策においても完全に失敗したということを私どもは指摘せざるを得ないのでありますけれども経済担当通産大臣として、一体この前のわれわれの追及質問を受けた形の中でどのように閣内において努力してきたか、この点をまず明らかにしていただきたい。
  6. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの日本経済状況というものは、御案内為替円高によりまして、ただでさえ構造不況の非常に深刻な情勢下にありまして、これを脱却いたしますために、経済界産業界全力を挙げておるところに、一層深刻の度を加えておるような次第でございます。  御案内のとおりに、中小企業はその中におきましても全企業数の九九・七というような高率の分野でございまして、これに与えます信用の弱さというものは、補完制度その他政府のいろいろな援助対策にもかかわりませず甚大な打撃をこうむっておるような次第でございます。  政府といたしましても、特に中小企業の問題につきましては、当面の政府系機関によりまするいろいろな特別措置中心といたしました、あるいは金利の引き下げあるいはまた条件緩和というもののみならず、何といいましても企業の大部分というものが市中銀行に依存いたしております関係から申しましても、この信用補完制度整備充実に心をいたしまして、そしてこれらの問題についてのきめの細かい各対策をとってまいったのでございます。さらに加えまして、円高に基づきます緊急対策は先生の御承知のとおりでございますが、ここにそれだけではなく、新しい一つ制度といたしまして、今回の中小企業に対します共済制度連鎖倒産に対します共済制度の御審議をお願い申し上げたような次第でございますが、われわれ政府といたしましても、業界とともどもに、わが国企業に活力を与え、そうしてこの冷え切った、しかもあらしの吹き巻くる中におきまして、産業再建とそして中小企業の強化のために全力を挙げて闘っておる次第でございます。  なお、きょうは重要な御審議でございまして、中小企業といたしましても最も重大な日でございまするが、一言お断りを申し上げておきたいのは、ちょうど中小企業庁長官のお母様が亡くなりましてお葬式のときにぶつかったものでありますから、申しわけない次第でございますが、私並びに次長その他関係政府職員をもちまして御答弁に当たらせていただきます。よろしくお願いいたします。
  7. 佐野進

    佐野(進)委員 大臣、一番最初の質問だったから、ついかた苦しい質問になりましたけれども、どうですか、こういうことをあなたはおやりになる御決意はございますか。  かつて経済企画庁長官であった福田総理が総需要抑制策を堅持した経済運営をやったときに、通産大臣であった河本さんは経済刺激策とまではいかないけれども積極策をしばしばこの委員会で表明して、二人の見解の中に相当の開きがあったことを私ども認めておるわけです。  しかし、いま考えてみると、あの当時、われわれもそうだったのですけれども通産省あるいは商工委員会一体となってあの苦境を乗り切るために何を求めているか。もちろん財政金融面におけるところの支援も必要だろうけれども仕事を与えてやる、いわゆる景気を刺激するという、そういう形の中での対策をとることか必要でないかということを口を酸っぱく言っていた。お互いに言い合っていた。そして、福田さんにもその点を強く指摘していたことが私はいま記憶にも明らかなんですか、あなたは、今日の経済情勢の中で、倒産防止のためにこの法律をつくることはもちろん大切だと私は思いますからこれから質疑するのですが、もっと原則的に、その倒産の起こり得ないような経済情勢をつくるために、通産大臣としてもっと積極的な刺激策というか、外圧をはねのけて経済を安定発展させるために積極的な行動をとるべきじゃないか、こうわれわれは判断するのです。あなたは困った困ったと頭を抱えているだけで、その点についての努力がむしろ不足しているのではないかと私は思うのです。福田内閣総理大臣一体過ぎるのではないかという気がいたしますが、その点どうですか、あなたは。
  8. 田中龍夫

    田中国務大臣 われわれのいたしております中小企業対策にせよ、あるいはまたその他の政策にせよ、根本景気対策でございまして、この景気がよくなりまして仕事が与えられる、そして活発に企業が動き始めるということがもう何にも増して大前提でございます。私どもの説明の際にも、従来は、景気浮揚景気回復ということが根本でございますがということをまくら言葉に、あらゆる政策を申してまいったのでありますが、余り一つ事を繰り返してばかりおりますので、ただいまは省略いたして申し上げておりますが、景気回復こそが基本でございます。その上に立って、それに向かいます道程といたしましてのいろいろな措置である、かようにお考えおき願いたいのでございます。河本通産大臣にいたしましても、あるいは商工委員会にいたしましても、一体となられまして景気浮揚政策をおとりになりましたことはよく存じております。  私も、当初からたびたび申し上げるように、景気浮揚こそが通産行政根本である、かように存じまして、政府といたしまして努力を払っておる次第でございますが、たまたま私の立場は、商工委員会あるいは通産省というものに、さらに政府それ自体も加わりまして、三位一体となって福田内閣におきましては景気浮揚政策全力を挙げておる、三位一体でありますことをどうぞひとつ御了承願いたいと存じます。
  9. 佐野進

    佐野(進)委員 もう一つ大臣、もうちまたの声は、経済福田だなんと言ったって、福田さんに経済を任しておいたらどうにもならぬわい、もう少し打つ手打つ手を、後手後手じゃなくて積極的に先手先手を打ってもらわなければ、もう福田さんなんか経済福田だというその言葉はやめてもらいたい、こういう声が経済界にあふれているのですよ、あなた、お聞きになっているかどうかわかりませんか。そうすると、あなたは福田さんと最も仲のよい閣僚の一人だ、こうちまたでうわさされているんだから、これは事実かどうかわかりませんが、そうしたら福田さんに遠慮することなく、あなた、もうこんな経済政策運営で行き詰まっているなら、やめようじゃないかというような決意でやめることが——もっとも十一月末にどうだこうだ、こう言われていますが、福田さんはやめないつもりだから、あなたか、おたくばかりやめよと言って自分でやめていってもつまらぬでしょうから、そこまで言えるかどうかわかりませんが、いずれにせよ、もう少し積極的に地位をかけてでも福田さんに、忠臣が諫言すると言うと言葉が適切じゃございませんが、やはり言うだけのことはおっしゃった方がいいと思うのですよ。  この円高だって、あのときここであなたは、ドル減らしのために積極的にやりますよと何回もお話しになりました。ところが、それが福田さんに通じたか通じないかわからぬが、福田さんは相変わらずのらりくらりしているから、結局二百四十四円台に入ってしまう。これはいつまでどこまでいくか、私はまさか二百四十五円を割るなんてことはないと思ったら、そこへいってしまう。私はここであなたに激励をしている。こういう法律を通してくれ通してくれじゃなくて、こういう法律を不必要とする世の中をつくるために福田内閣が、特に通産大臣が積極的にやっていただかなければならぬために、きょうこの委員会を終わって福田さんに会うんでしょうけれども委員会でもってこういうことを言われたと言って、もう少し腰を据えて景気浮揚のためにがんばってくれるように進言するお気持ちがございますかどうか、この点、最後にこの問題の締めくくりとして聞いておきたいと思います。
  10. 田中龍夫

    田中国務大臣 景気の浮揚問題は、私かむしろ総理からハッパをかけられておるような次第でございまして、就任当初から常々そのことを特に中心朝な夕なお話をしておるような状態でございます。御意見、まことに私どもも感銘するものがございます。さらに総理を十分に補佐し、激励いたしまして、この不況を切り抜けていかなければならぬ、覚悟を新たにいたしましてお答えといたします。
  11. 佐野進

    佐野(進)委員 この点まだ言いたいのですが、こればかりやっておると時間がなくなりますから、次に進みます。  高橋さん、きょうは御苦労さまです。あなたにきょう出ていただいたのは、法案内容についての質問もいたしたいと思うのですが、それだけではなくて、あなたは商工会議所専務理事として、現在の経済情勢の中で大企業初め中小企業全体に対する経済実態について詳しく知っておる立場にあります。そのあなたに私は御質問をいたしたいということは、一体どうしたら今日のこういう経済情勢の中で日本商工会議所として経済の発展に役立つ企業のあり方、企業として求めるその政策一体どういうところにあるのか、あなたが常に悩んでおられると思うし、会長である永野さんは世界じゅう飛び回っていろんなことをやっておられるようでありますけれども、あなたはじっくり国内に腰を据えてそれらの点を見ておられるわけでございますので、日本経済再建のために、この苦境を乗り切るためにどのような対策が必要であると判断しておられるか。いいですよ、福田内閣ではもうだめだ、あんな経済政策をやっておる内閣はやめてもらった方が一番景気がよくなるということであるならば、そういう答弁でもいいのですが、ひとつ勇気を持ってこの席上で、あなたの商工会議所専務理事としての立場に立つ見解をお示しいただきたい。
  12. 高橋淑郎

    高橋参考人 私は、第一に、不況業種に対する対策をとるということ、それから第二は、現在のこういう急激な円高相場になった、そのよって来る原因をよく突き詰めて、そしてこれは国内措置だけでは対策がとれませんので、これこそ国際的な話し合いが必要である、この二点がいま一番大事なポイントであろうと思います。そして商工会議所立場といたしましては、当面緊急な対策税制面金融面、いろいろな面でとるということのほかに、その当面の対策基本的な問題の解決とどういうつながりを持って行われるかということを常に考えながらやっていかなければならないということで、いろいろと対処いたしておるわけでございます。  最初申し上げました構造不況業種に対する対策は、これは過剰設備の処理ということがポイントだろうと思いますか、これにはよほど腰を据えて大きな金額で措置をしませんと解決ができない問題ではないかと思います。  それから、今日の円高相場下において輸出産業中心にして非常に大きな影響を受けて苦しんでいる、これからますますその影響か大きくなる、こういう事態に対して当面手当てをするということのほかに、先ほど申し上げましたように、こういう異常な円高相場になった、あるいはこれから先もまた再びこういう場面が展開されるということのないように基本的な対策をとるべきではないか、このように思います。     〔中島(源)委員長代理退席山崎(拓)委員長代理着席
  13. 佐野進

    佐野(進)委員 あなたも中小企業庁長官をおやりになった経験をお持ちになっておられるのだから、いろいろなことでお考えをお持ちになっておられると思うけれども、いまの答弁では、私としては全く不満足と言うより言いようがないわけですね。しかし、立場上やむを得ないことだと思うのですよ。ただ、こういうことが言われていることについて、あなたはどう御判断になりますか。  たとえば、経団連にしてもあるいは商工会議所にしても、今日のこの経済政策運営ではもうどうにもならない、構造不況業種だけでなく、いろいろな面でもうどうにもならない段階に来ているということを、われわれはあらゆる場所においてよく聞くわけですね。各産業界からあなたはお聞きになりませんか。構造不況業種だけでなく、まだ構造不況業種と言われない段階における産業界においても経済転換を強く求めているというお話をお聞きになりませんか。あるいはあなたとしてはその転換をせざるを得ない状況に来ていると御判断になりませんか。
  14. 高橋淑郎

    高橋参考人 仰せのとおり、そういうお話をしばしば聞きますし、それからそういう重大な局面に遭遇しておるということは私も身をもって感じております。  ただ、前から言われておりますように、それでは事業転換をどういうような青写真のもとにやるか、その青写真をなかなか示せない。これはやはり個別の業種で、個別の業界の中でいろいろ考えて、それをやりやすくするような環境づくり政府にしっかりやってもらうとか、あるいはいろいろなことがありますが、要はやはり当事者かやるということが基本ではないか。ただ、その事業転換を行っていきます場合に、残る人、それからどうしても残れない人、その経過、その撤退の際の摩擦、被害をいかにして最小限に食いとめるか、これがやはり一番大事なところではないかと思います。
  15. 佐野進

    佐野(進)委員 あなたにひとつ思い切って意見を出してもらおうと思って質問をしておるわけですが、まあやむを得ないことでしょう。後でまた質問をいたします。  小規模企業共済事業団越智さんあるいは商工中金の秋野さんには、それぞれこれから具体的な内容について質問をしてみたいと思います。座っていて大変退屈だろうと思うのですが、しばらくそのときの来るまでお待ちをいただきたいと思います。  そこで、中小企業庁次長にこれから具体的な質問をいたしますが、長官は、さっき大臣お話のように御不幸で来られません。実は私は長官とこの法案審議についてじっくり議論を闘わしてみたいと思っておったわけですが、やむを得ない事情でありますのであなたのところへいかざるを得ません。しかし、あなたもきょうは長官代理ですから、私の質問に対して中途半端な答弁はできない立場にありますし、そういう点については、ひとつその腹構え答弁をしていただくよう、まずもって要請をしておきます。しかし、余りあなたに無理な質問をしてみてもしようがありませんから、その点については私も配慮しながら質問をしてみたいと思います。  まず第一に、先ほど来大臣ないし高橋専務理事質問しておることをあなたお聞きになっておられると思うのですが、今日の経済情勢はきわめて深刻であり、その深刻な情勢をもたらした責任が政府にあり、特に福田総理にあるということは内外ともに認めておることだと思うのであります。そういう中で、われわれは倒産防止の当面する緊急対策としてこの法案の成立に全力を尽くしておるわけでありますが、先ほど申し上げたとおり、私どもはこの法案そのものは大変不満足であります。不満足だということを前提にして質問をするわけでございますが、まず第一の大前提として、今日の企業倒産実態及びそれに対してどのような対策中小企業がおとりになっておられるか、この点について原則的な答弁をいただきたい。
  16. 児玉清隆

    児玉政府委員 お答え申し上げます。  まず、いまの御質問企業倒産の最近の実態でございますが、御存じのように、最近の中小企業の景況は、一部の業種を除きまして、軒並みにその売り上げあるいは収益水準におきまして依然停滞を続けている現状でございます。そういう中にありまして、企業倒産は、この十月の倒産件数も千五百九十八件ときわめて高水準を続けているわけでございまして、特に、民間の信用調査機関による調査によりますと、負債総額一千万円以上の倒産は五十二年の三月がピークでございまして、これが千七百五件と過去の最高を記録いたしております。  御存じのように、倒産企業の中身についてみますと、ほとんどが中小企業でございまして、倒産規模も、同じ中小企業の中でも大口化しておるというのが最近の特色でございます。資本金規模で見てまいりましても、資本金五百万円から五千万円といった、いわゆる中小企業の中でちょうど中堅どころというところに倒産集中化が最近起こっておる状態でございます。こういった実情にございまして、私どももいろいろ倒産原因別分析等を行っておりますが、やはり経営不振といった不況型の倒産が非常に多うございまして、特に、関連倒産というものも一〇%を超すというような最近の状況でございます。  こういうことを背景といたしまして、最近私ども政府一体となりまして中小企業倒産防止対策ということで講じておりますものは、御存じのとおりでございますけれども、かいつまんで申し上げますと、金融面における措置中心といたしまして、たとえば政府系機関の貸し出し運用に当たりまして、その弾力化を図るということに意を用いているわけでございます。たとえて申しますと、返済猶予等につきましても弾力的な措置を行うということが第一点でございます。  それから、中小企業信用保険法に基づきますところの倒産企業の指定制度というのがございまして、それと取引をいたしております中小企業を救済するための措置でございますけれども、その倒産企業の指定、これもきわめて迅速かつ機動的に実施するということを行っております。  以上申しましたようなことは、資金調達面におけるところの円滑化ということでございまして、今回特に不況対策として不況業種の指定をさらに拡大しようということで、十月一日にその措置をとっております。具体的に申し上げますと、六十四業種が従来の指定業種でございましたが、これを九十二業種に大幅に拡充をいたした次第でございます。  それから、信用保険上の特例ということで、十一月一日から、不況業種に属しますところの赤字の中小企業の、政府系中小企業金融機関から借り入れておりますところの既往借入金について、これの利子の軽減という措置を特例措置として講じております。  それから、先ほど御指摘がありましたような円高という問題によりまして、相当中小企業にあおりが来ておりますので、そういった輸出関連の中小企業救済ということで手を打つ必要がございますので、十一月四日に、従来ありました中小企業為替変動対策緊急融資制度というものにつきまして、金利の軽減を閣議決定する等の十項目の円高緊急対策を講じておりますけれども、その中で、特に円相場の上昇による影響をできるだけ軽減したいということ、先行きの成約がうまくいくための措置を補完的に講じたいということで、現在も鋭意検討中でございます。  そういったあらゆる施策を機動的にかつ総合的に組み合わせるという方向によりまして、倒産防止の一助にしておる次第でございます。
  17. 佐野進

    佐野(進)委員 次長、いまのような答弁は私の質問がそうだったからやむを得ないのだけれども、これからは端的な質問をいたしますから端的な答弁、簡単明瞭な答弁をしてもらいたい、こう思います。  そこで、いまのような話の中でこの法案審議するに際して、あなた方が検討された内容がそれぞれあろうと思うのですが、いま倒産の危機に瀕している業種、いろいろありますね。たとえば造船関連の下請企業であるとかあるいは平電炉関係企業であるとか、繊維の中でもそれぞれ業種別に差があります。それで最も深刻な状態業種があるわけですが、今次のこの法案がもし通った場合、どの程度それらの業種の人たちが救われるか。これは数カ月後において実効をあらわすことになりますから、緊急の対策にはなかなか間に合わないということになりますけれども、その時期に焦点を合わせてもよろしいのですが、最も効果的な措置として発効でき得るそういう業種を指摘してくれませんか。
  18. 児玉清隆

    児玉政府委員 これはあくまでも予測でございますので……(佐野(進)委員「五つくらいでいいよ」と呼ぶ)最近の倒産傾向を業種別の面から見まして、最も効果を発揮するであろうと私どもが期待しておりますのは、まず繊維関係、これが最近倒産状況が急ピッチでございますので、繊維関係がございます。それから機械の関係の一般機械でございますが、これの部品関係等がございます。特に、機械産業におきましては組み立て産業でございますので、そういった下請加工群というのがございます。それから商取引関係で、小売関係で申し上げますと、現金取引を主としております一般の小売商はそう大したことはないと思いますが、法人組織をとっておるような、相手方が法人である、あるいは手形による取引をやっておるような小売関係、こういったものが特にこの法律を切望いたしておりますし、効果の面からいきましても大きな効果を期待しておるわけでございます。
  19. 佐野進

    佐野(進)委員 次長、五つばかり挙げてくれと言ったんだけれども、ついでだからあと二つ挙げてもらいたいと思います。たとえば繊維なら繊維の中におけるどの業種ですか。繊維はいっぱいありますね。その中におけるどこに該当しますか。
  20. 児玉清隆

    児玉政府委員 お答え申し上げます。  特に産元との取引関係にございますところの織物関係、これは絹、人繊関係及び綿スフ関係を含めましての話でございますが、そういった織物関係、それからニット関係でございます。これも取引先の指示に従いまして製造委託をやっておる分野が非常に多うございますので、相手方商社ないし製造元の倒産によるところのあおりというものが多いかと思います。以下、あと繊維部門で考えられますのは、やはり染色整理等も問題になろうかと思います。
  21. 佐野進

    佐野(進)委員 次長、もしあれだったら部長なり課長に聞いてもいいですよ。私が五つ業種を挙げてくれと言うのは、次の質問に関連があるからそう言っているわけですが、最も関係があってこの法律の適用に該当する業種として、次長が、後でもいいから課長から資料を求めて、ひとつ五つ挙げてください。これを要求しておきます。  そこで、私がなぜこのような質問をするかというと、今日の不況下、防止共済法が適用をするその業種、特にそれを期待しておる業種に対してこれを生かしていきたい、こういうような考え方が強くわれわれの頭の中にあるから、そういうような質問をしておるわけであります。  それでは、原則的な質問としてもう一つ聞いておきたいと思います。後の質問に関連いたしますから。  たとえば政府がいま倒産防止に対して、これは中小企業庁だけじゃございませんね、各それぞれの省庁が積極的に対応しておるわけですが、なかなかその効果が上がらず倒産に至る企業が多いわけですね。特に中小企業は多いわけです。その中小企業原因別分類ですね。たとえば先月千六百件の倒産があった。一千万以上の負債額を持って倒産したのがあった。こういたしますると、その倒産の占める原因別分類はおおむねどのようになっているか、この際ひとつ明らかにしてください。
  22. 児玉清隆

    児玉政府委員 お答え申し上げます。  先生御存じのように、実際の倒産につきましては、単一の理由によるものが少のうございまして、むしろ複合形態によるものが多うございます。強いてこの原因を単純化いたしまして販売不振、放漫経営、連鎖倒産というぐらいに分けてまいりますと、販売不振につきましては、年度のとり方によって数字が違ってまいりますが、一番新しいもので五十二年の一月から九月までの累計で見てまいりますと、販売不振が四一%でございます。それから、売掛金の回収難というのが四・四%でございます。それから、放漫経営というのが二二・二%でございます。それから、いま問題になっております連鎖倒産か——これは連鎖倒産かこれたけというふうに誤解されると困りますか、一応連鎖倒産が引き金といったものを見ますと、一二%でございます。そのほか過小資本あるいは設備投資の過大といった他の原因等が一〇%前後ございます。
  23. 佐野進

    佐野(進)委員 大臣、いま私は、この法律審議するについて必要な企業経営悪化の実態と、さらに倒産に至る経過について質問を続けてまいりました。結果的に、私は五つの業種を挙げてもらいたいということでございましたが、三つの業種しかまだ挙がっておりません。しかし、その方向はこの三つの業種の中においても明らかに示されておりますが、これは五つではなくして、もう十でも二十でも、さっき不況業種の指定をしたと言われている業種全体や指定をされていない業種にまで及ぶほど深刻な倒産の危機か押し寄せてきていると私は思うのであります。そういうような状況の中で具体的に倒産に至る原因の追及を行いましたところ、中小企業庁、いわゆる役所の調査におきましても、販売不振ないし放漫経営ないし連鎖倒産という形の中での倒産がその倒産件数の大部分を占め、なかんずく販売不振というものかいかに大きいかということを意味している調査報告がいまなされたわけであります。  私は、連鎖倒産防止法というこの法律の持つ意味は非常に大きいということを先ほど来強調しておるわけでございまして、その考えはいまだ変えてはおりませんし、ますます強くなっておりまするけれども、いずれにせよ、販売不振と言われているのと放漫経営と言われているこの六三%に及ぶ倒産原因、これはどうしてこの倒産状況を除くかということについて努力をしなければ、この法律をつくってもどうにもならない結果が引き続き起きていくであろうということが予想されるわけであります。私は、そういう意味において、倒産防止に対する全体的な対策を考える措置を今後も積極的にとっていかなければならぬと思うのでございまするが、この販売不振ないし放漫経営ないし連鎖倒産、そのうちの連鎖倒産はこの法律をもって救われまするが、他の業種に対してどのような対策をおとりになったらよいかということについて、その見解をお示しいただきたい。
  24. 田中龍夫

    田中国務大臣 先生か御指摘のとおりに、根本は販売不振、この状況をまず根っこを芟除しなければだめだということは、全く御指示のとおりであります。この連鎖倒産も去年は十二カ月で九%であったものが、ことしは一月から九月のわずか九カ月間で一二%を超えるということは、同時にまた連鎖倒産というものがいかにだんだんと深刻化していくかということを物語りますが、その根本原因は、基本的には景気の落ち込みであり、さらにまたその原因別から申すならば、構造不況のものもございましょうし、さらにかてて加えて為替円高に基づきます非常なショック、こういうものがあるわけでございます。  私ども、今日までの対策といたしましては、一部にその業態自体を補強いたしまするための金融関係あるいは信用補完関係の諸制度をつくり、あるいはまた、きめの細かい行政指導に入っておりまするが、同時にまた、税制の面におきましてもこれとうらはらに制度的な問題を解決しなければならぬ、こういうふうにも考えておりますか、根本は、冒頭先生がおっしゃいました景気基本的な刺激策、積極的な景気浮揚政策をば真剣にとらなければならないという思いを新たにいたすものでございます。
  25. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、次長質問いたしますが、私どもは、今日の経済情勢ないし倒産の実情を検討した結果、このような連鎖倒産を防止するということだけでは足りない。結果的に六十数%ないし連鎖倒産に数えられる一二%を除いた大部分の倒産の中で、放漫経営を初めその企業の全くでたらめな運営によって倒産に追い込まれるものは別として、正常な努力をしている、その中で対外的あるいは取引先の情勢等々によって倒産に追い込まれる場合、それをどうやって倒産させないで済むか、こういうような意味での倒産防止基金制度というものを当初考えて、これを法律として今国会で成立させたい、このように考えておったわけでありますが、そのわれわれの希望と相反して連鎖倒産防止という形の中だけでこの法案が処理されていった。  そういうような経過について、どのような政治的判断でそうならざるを得なかったのか、もう少し全体的な倒産防止を行うに足る法案として提案をすべきでなかったかと考えるわけですが、次長見解を承りたい。
  26. 児玉清隆

    児玉政府委員 お答えを申し上げます。  社会党で提唱してこられました倒産防止基金と、このたび審議をいただいております私ども政府案との間、いずれも御指摘のように中小企業者の、しかもまじめに一生懸命努力をしておりましてある日突然あおり倒産を食うといういわゆる連鎖倒産というものについて、緊急に何らかの救いの手当てをやるということで、その基本的な枠組みあるいは考え方におきまして差はないというふうに考えております。  それで、私ども政府案を検討するに当たりましても、事務局におきまして社会党案も十分に参考とさせていただいたわけでございます。ただ、社会党案で言っておられますところの保険的な一時金の支給案につきましては、大きく言いまして二点ございますが、現段階ではまだ保険事由の発生率を算定するということが非常に困難でございまして、それから第二点といたしまして、悪意あるいは逆選択等の防止を図る上におきまして、そういったやりっきりの一時給付金というものにつきまして成案を得るに至らなかったわけでございます。
  27. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは、もっと砕いて質問をしてみましょう。  成案を得るに至らなかったという点については、まあ時間的に余裕がなかったということと、調査が不十分だということについてわれわれは認めるにやぶさかではないのですが、将来の問題として保険制度というものが必要であると判断せられる時期は、私どもは必ず来ると思うのでありますが、そのような状態が来たとき、これを採用することに対して、通産当局として、中小企業庁として障害になるべき要件は何なのか、その点をひとつこの際明らかにしておいていただきたい。
  28. 児玉清隆

    児玉政府委員 まず一番問題は、いわゆる事故発生率でございますが、これにつきましては相当な経験を経ませんと的確な数字を解明できないという点かございます。それから、これも一つの考え方でございますけれども、保険制度を取り入れましたときの中小企業者自身の負担能力の点がございます。と申しますのは、掛け捨てになるというのが一般則でございますので、保険の場合に掛け捨てで、たとえばこれは全くの仮説でございますが、仮に一千万円の保険金受取額を想定いたしまして、毎年の掛け捨てが、これも私どもの単なる仮説でございますけれども、五十万円といった相対関係で考えますと、余りにも掛け捨て分が大きくなり過ぎはしないか。そういった点で、現在ありますような、私ども、あるいは社会党案としても取り入れておられます共済制度の運用の実績を十分見まして、その上でよく勉強する必要があろう、このように考えております。
  29. 佐野進

    佐野(進)委員 私どもは基金制度を考えたとき、先ほど来質問申し上げているように、結果的に連鎖倒産だけでなく一般の倒産を防止する、そういう役割りを果たすための基金制度を創立することが、今日経営の不安の中に内外の不測の条件変化によって倒産に追い込まれる企業を救済する上に最も必要ではないかという判断に基づいてそれを考えたわけであります。いま次長答弁と関連をいたすわけでございますが、この保険制度そのものが今日時期的にいろいろな調査その他の面で採用することは尚早である、こういう判断に基づいて今回は提案されなかった、そういう説明がいまなされておるわけでありますが、そうすると、この制度そのものについては将来とも不必要だと判断しておるのか、それらの条件が克服された場合は将来は採用する考えであるのか、その点について原則的にひとつ答えていただきたい。
  30. 児玉清隆

    児玉政府委員 お答え申し上げます。  今回提案されております共済制度も、そのときどきの経済情勢に即応いたしまして、長期の制度でございますので、やはり一定の期間を経過するごとに見直す必要がございます。そういった意味で、今回提出申し上げております法案におきましても見直し規定を設けた次第でございまして、いま御指摘のような点も含めまして、基本的事項につきましては、今後の利用状況あるいは特別会計の収支状況等々、制度運用の過程での経験あるいはデータを積み重ねながら所要の検討をしてまいりたい、かように考えております。
  31. 佐野進

    佐野(進)委員 そうすると、二十一条が設けられているという意味は、この共済制度も長期にわたる段階の中で五年を一つの区切りとして再検討する、この中で保険制度導入についても十分検討をする、そういう考え方としてこの二十一条を理解する、そういうことでいいということですね。
  32. 児玉清隆

    児玉政府委員 具体的ないま御指摘のテーマを、即この条文にリンクさせましてこれをやるということももちろん重要かと思いますけれども、総合的に全体の制度、これも、共済というのは一つの方法でございますので、共済制度内部にも問題ございましょうし、あるいはいま御指摘のように、もう一つの新しい方式を取り入れたらどうだというような議論も途中過程として当然出てくると思いますので、対象に入るというふうに御理解いただいて結構でございます。
  33. 佐野進

    佐野(進)委員 参考人の御三方、御出席をしていただいておるわけですが、先ほど来私がこの共済法案内容について中小企業庁次長質疑を行っておるわけですが、その経過の中で御三方とも一つの認識をお持ちになられたと思うわけでございまするが、今日の経済情勢の中で共済法に対する御三方の考え方、同時にまた、この法案がきわめて不備な内容をそれぞれ持つと私は考えておるわけでございまして、特に連鎖倒産を防止するということに力点が置かれ、先ほど来質疑の中で明らかにされた一般的な倒産、連鎖でなくしてその他の倒産に対する救済という形についてはきわめて不十分であると考えるわけでありまするが、今日の経済情勢の中で倒産防止共済法という法律をつくることについての意義と、それら不備について、実務に携わる御三方としてどのように補強されたらよろしいというお考えがあるかどうか、この際、秋野さん、越智さん、高橋さん、それぞれお考えをひとつお聞かせいただきたいと思います。     〔山崎(拓)委員長代理退席中島(源)委員長代理着席
  34. 秋野莞爾

    秋野参考人 お答え申し上げます。  実は理事長が、八戸の出張所の開設がございまして、昨日からちょっと出張をいたしておりますので、私、秋野でございますが、かわって出席をさしていただきました。  ただいまの先生の御質問は大変に次元の高い御質問でございまして、われわれ金融機関の一理事といたしましてお答えがなかなかむずかしいかと思うのでございますが、ただ、私どもの方で、今年度に入りまして倒産は確かに非常に増加をしております。私どもの方の取引先だけで見まして、現在二百九十一件ほど今年度に入りましてから倒産がございます。その中で、この連鎖倒産というのはかなりの大きなウエートを占めておりまして、全国の数字では、先ほど中小企業庁の方から一二%ということでございましたが、私どもの方の取引先といたしましては二八%ほどが連鎖倒産というような形になっております。相当の高いウエートでございます。もちろん一番大きいウエートといたしましては売り上げの不振ということでございます。その意味では、先生が先ほどから御指摘のように、やはり日本経済全体の景気振興という問題が非常に大きくかかわっていると思うわけでございますが、その辺の問題につきましては、どうも私どもなどが何か申し上げることはちょっと立場の上からもひとつ御遠慮さしていただきたいと思うわけでございます。  しかし、その中で連鎖倒産というものが非常に大きなウエートを占めておって、これに対する対策というものは確かに急を要するわけでございまして、今回の法案につきまして細かな点は私どもまだよく存じ上げてない面が多いわけでございますけれども、こういった取引先の倒産によってせっかく一生懸命仕事をしている中小企業の方々が不慮の災害を受けるということを防止するという意味で、これは趣旨としてまことに時宜を得たものではないかというふうに考えるわけでございます。
  35. 越智度男

    越智参考人 お答えをさしていただきます。  根本的には、先ほど田中通産大臣もおっしゃいましたように、景気の振興ということで解決しなければならないわけであると思っておりますが、先ほどの要因分析にもございますように、連鎖的な倒産というのも少なからざる比重を占めておりますし、それに対応する施策としていま倒産防止共済制度の案が進められているわけだと思います。しかし、率直に申しまして、これが実施に入って、どのぐらいの規模で、どのぐらいのスピードで、どのぐらいの共済事由というか事故の発生で展開するかということは、なかなか予断を許さないものでございますので、とにかく発足するということがこの際非常に必要ではないかと思っております。  現在、私の方は、小規模企業共制度運営に当たっておりまして、先生御承知のように、すでに十二年間の実績を得ているわけでございますが、共済制度というものも大分なじんでまいっておりますので、やはり目的は違いますが、中小企業倒産防止のためにとにかく共済制度を実施していくということは、それなりに意義のあることだと考えるわけでございます。  もとより、金融施策あるいはその裏づけの保証制度といったものもすでに行われているわけでございますけれども、そういった現行制度があるのに加えてこの中小企業倒産防止制度が考えられているゆえんというものは、やはり通常の金融という仕組みで処理をすると、非常に緊急措置を要する場合に時間的にもそれが間に合わない。その結果連鎖的に倒産事態になるというようなことを防止する点にあると思いますので、私の方としては、法律が制定されましたならば、その法の規定するところによりまして運営に当たることを仰せつけられるわけでありますが、迅速に事務処理をする、そうして少しでも苦境に対して対応していくというふうに事業団挙げて進めてまいりたいと思っております。  ただ、先生御承知のように、事業団は東京に事務所があるだけでございます。そして中小企業は申すまでもなく全国津々浦々に、存在していらっしゃるわけでありますから、従来の小規模企業共制度運営の例のごとく、やはり中小企業関係の諸団体あるいは商工中金を含める各種金融機関の御協力を得て、ただいま申しましたような迅速な処理に当たってまいりたい。  ところで、五カ年以内に再検討という規定もございます。先ほど申し上げましたように、どういう量でどういうスピードで展開していくかということはなかなか予断を許さないわけでございますので、数年の実績を踏まえてよく検討し、足らざるところがあれば、政府なり国会等の御審議を得まして制度の改善が図られていくべきものだと思っておりますが、とにかく、制定されましたならば一刻も早くこれをスタートさせて、先ほど申しましたように迅速、的確なる事務処理に当たりたい、このような心構えでございます。  以上でございます。
  36. 高橋淑郎

    高橋参考人 中小企業倒産防止共済法でもって中小企業倒産を、放漫経営を除くそういう倒産を防止するのに万全ではないであろうという御指摘は、私もそうだと思います。ただし、この法案の意味というのは非常に深いと私は思いますし、会議所を初め、中小企業団体各位はこの法案の早期の成立と実施を熱望して、お願いをいままでし続けてきたわけでございます。  と申しますのは、本当に自分が一生懸命やっておるのにあおりを受けて関連倒産するというような不安がつきまとっている。それに対して、将来、こういう制度があって、この制度があるから、あるところまでは救済措置か講ぜられるのだ、こういう受けざらといいますか、そういうものがあって、それに支えられる心理的な救いというものも非常に大きいと私は思います。  また、冒頭申し上げましたように、この法案、必ずしもすべてをカバーするものではないとは申しましたけれども、もしその全体をカバーできるような何か措置をつくるということになりますと、そういう恩恵にあずかるといいますか、あるいは制度の受益者に対応しまして、その制度を成り立たせるためにやはりお互いが負担しなければならぬ。その負担が一体どの程度の大きさになるかということは、これはやはり非常に大事なことでありますので、先ほど来お話が出ておりますように、この制度が発足してから経験を積み重ねて十分に検討していくべき問題ではないか、このように思います。
  37. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは、大臣、いま三人の参考人からも意見を聞き、次長から答弁を求めておるわけですが、いわゆる共済制度と保険制度の併存というのは現時点の中では準備不足でできないけれども、五年の見直しの中ではこれの処理については十分考えたいという次長答弁参考人もそれぞれ見解があったわけであります。私は、二十一条か設けられたということはそのことを意味している、また、そのように次長答弁をしておるように聞いておるわけでありまするが、この制度が何か中途半端なものではないかという中小企業者、特にいまお話しのように、関連倒産に苦しまんとする状況の中にある中小企業者にとって、そういう制度も将来考えられるということであれば、積み立てによる意欲も非常に大きくなってくるのではないか、さらに、この制度そのものに非常に大きな明るい将来への展望を与えるのじゃないか、こう私は判断しておるわけです。  先ほど来の質疑を通じての私どものその希望に対して、大臣はどう御判断なされるか、この際、明らかにしていただきたい。
  38. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えをいたします。  今日までの小規模共済のあり方は、むしろ先生のおっしゃった保険的な面の方か大きかったかとも存じますが、今回、さらにそれを改めまして、中小企業全体に対しまする共済制度に切りかわってまいったわけであります。  その間におきまして、中小企業庁の方ともいろいろとこの問題につきましては議論もいたしました。ことに、当面いたしました倒産防止、さらに、それに対する救済制度、これに対しましては、ただいま次長からお答えいたしましたような趣旨でございます。しかしながら、共済制度と保険制度とが併存できないかというような議論もございましたし、あるいはまた、保険制度のいいところ、共済制度のいいところ、おのおの一長一短あるところでございまするし、ことに、この枠から申しまして、共済制度の方がより資金を効率的に出し得るといったような論議もございます。  しかしながら、御案内のとおりに、本制度は五年ごとの見直しの点もございまして、当該制度を実施をするに当たって、いろいろと一長一短出てくるだろうと存じます。こういう際に当たりまして、慎重に功罪を検討いたしまして、さらに少しでもいいものにしてまいりたい。私は、この共済制度というものが、非常に新しい試みでもあると同時に、この制度が大いに有効に活用されたい、かように念願をいたしております関係からも、決してこれでなければいかぬと言って理屈ばかりを申しておるわけでもございません。少しでもいいものをつくりたい、そういう点では、どうぞ今後ともに御一緒に御協力をいただきたいとお願いいたします。
  39. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは、次に進みたいと思います。  先ほど来、この制度が新しい制度として設けられることについての私の意見を申し述べ、見解を求めてまいったわけでありまするが、しかし反面、この制度そのものが何か関連する中小企業者のものではなくて、むしろこの制度を利用してメリットのあるのは金融機関であり、あるいはまた、その他これの運営の衝に当たる人たちだけではないか、これは単なる絵にかいたもちに終わる可能性すらあるんではないか、こういうような危惧もあるわけであります。私どもは、そういうことはない、絶対この制度の持つ意味は非常に大きいものがあるし、同時に、効果というものは大変大きいということを言っておるわけでありまするが、そういう批判の生ずることのないよう、この制度の発足に対しては慎重な配慮をしなければ、制度そのものが、つくったけれども結果的に活用されない、こういうことになろうかと思うわけであります。  次長質問をいたしまするが、本制度の運用についてどのような配慮をもって対応しようとしておられるか。批判にこたえる意味における原則的な見解を、この際明らかにしていただきたい。
  40. 児玉清隆

    児玉政府委員 いま御指摘のように、この制度は全く中小企業者のための共済制度ということでございますので、確かに金融機関の損害防止という付帯的といいますか、反射的利益は当然あるかとも思いますけれども、この法律自身の目的はあくまでも中小企業者のためということでございますので、窓口それから本部の徹底した指導等によりまして、いま御指摘のように、この本来の趣旨に沿うような実際の効果を上げ、かつ、運営が確保されますように注意してまいりたい、このように考えております。
  41. 佐野進

    佐野(進)委員 次長、だから、そのためには具体的にどのような措置を考えているかということを聞いておるのです。精神はわかっているのです。
  42. 児玉清隆

    児玉政府委員 具体的に申し上げますと、まず、共済契約の中小企業者で考えられますのは、手形の場合で申しますと、取引先の金融機関からその金融機関が割り引きました手形についてのいわゆる買い戻し請求を受けるわけでございます。したがいまして、最終的には金融機関にその共済金は回るわけでございますけれども、いずれにいたしましても、現実に資金繰り難が中小企業サイドで非常に大きな問題になりまして、その金が払えないためにその企業全体に対する信用が急減するわけでございますので、極端な場合には連鎖倒産にまで至るという事態がございますので、そういったことを回避するということに機動性を持たせるということでございます。  いま申し上げましたように、そうは言っても金は金融機関に還流するということでございますけれども、確かにそうでございまして、ただ、この制度自身の運用に当たりまして、共済金の当該金融機関への支払いを手形割引の条件にするといったような事態が起こらないように十分配慮したいというふうに考えております。  それから、特に共済事由の確認事務を中小企業団体に委託するわけでございますが、その際にも、いま申し上げましたような点が十分担保されるように指導してまいりたい、このように考えております。  それから、共済金をどこの金融機関の口座に入れるかという具体的な問題にしましても、実際の窓口におきまして共済契約者である中小企業者の希望する口座ということに確保していけるような指導を十分やっていきたい、このように考えております。
  43. 佐野進

    佐野(進)委員 大蔵省にこの際聞いておきたいと思うのですが、来ていますね。  突然のことで、あなたに対して質問することが適切かどうかわかりませんが、きょうはあなただけだということですから、あなたに質問してみたいと思うのです。  いま、次長質問いたしました。この制度は結果的に金融機関の損害を防止する。結局金融機関が、たとえば関連倒産連鎖倒産をしようとする場合、当然救い得るべき条件にあるにもかかわらず見殺しにして倒産をする例も、これはなきにしもあらずだと思うのです。いや、公的にはないということになるでしょうから、ここで答弁、あるだろうなんと言ったって、ありますとは言えないでしょう。いずれにせよ、そういう場合もある。しかし、この制度ができれば、結果的にこの制度によってある程度、倒産に陥る条件の場合、これをてこにして救済するということ、救済するというかそこの状況に陥らないということは間違いない。とすると、この制度の運用に当たって、関係金融機関の持つ役割りというか意味というものが非常に重要になってくると思うのです。たとえば、一千万の不渡りが出そうになった、出る。これを、制度によって九百万の救済を受けることができる。百万円ならばいいだろう、二百万円ならばだめだとか、そういうようにいろいろな判断がこの法律施行後において運用の面で出てくると思う。そうしないと、もう倒産はさせてしまう、おれの方ではもらうだけのものはもらってしまうということで、その利益を金融機関だけが受けていく。この取り扱い金融機関というものが、御承知のとおり、政府系機関とさらに信金ないし信組だという形、まだ法律内容は決まっておりませんが、そのようになるような方向であります。そうすると、それらの関係金融機関を監督する立場にある大蔵当局としては、非常に重要な役割りをわれわれの立場からすれば担ってもらわなければならぬ、いわゆる指導してもらわなければならぬ。  そういう問題について、先ほど来の質疑を通じて私の考え方をあなたにはおわかりになっておられると思うが、この運用についてどう判断され、どう対応していかれようとしているか。その基本的な考え方をこの際明らかにしておいていただきたい。
  44. 岡崎豊

    ○岡崎説明員 金融機関を監督いたします立場といたしましては、実は銀行局があるわけでございますけれども、たまたま参っておりませんので、私がとりあえずかわりに答弁させていただきます。  おっしゃるとおり、本件の運用につきましては、金融機関の果たす役割りというのは非常に大きいと思います。したがいまして、本件の運用につきまして法の趣旨にそぐわないような運用があってはならないわけでございまして、その点につきましては、通産省とも相談いたしまして、業務を委託する場合の金融機関のいろいろな考え方、あるいは業務委託されないまでも、本件の適用によりまして反射的に利益を得るということも考えられるわけでございますので、中小企業者の意思にそぐわないような制度運営ということに陥らないように通産省とも協議いたしますとともに、私ども地方には財務局等もございます。通産省は地方には通産局もございますので、運用につきましていろいろ随時協議して、適切な運用、改善に当たっていくということは基本的な態度であろう、こういうふうに存じております。
  45. 佐野進

    佐野(進)委員 大臣、いまの点ですが、非常に重要な運用面において、この制度が、取り扱い金融機関、銀行等の損害を防止する、それだけに役立つ可能性があるわけでありまして、これは本法が発足して、まあ余談になるからやめまするけれども法律というものはとかくその発足後においての運用でその性格が大きく変わる場合もあるわけです。私ども質疑応答を乗り越えた形の中で運用される面もあるわけでありますが、それらの点の歯どめについて十分御配慮していただきたい。いまの大蔵当局の見解もございますので、関連してお答えしていただきたい。
  46. 田中龍夫

    田中国務大臣 大変重要な御質問でございまして、私もただいま大事だと存じまして、大蔵省の御答弁をメモをいたしたような次第であります。これは通産当局の方とも繁密に連絡をいただきながら法の目的を貫徹いたすように協力をしていただきます。
  47. 佐野進

    佐野(進)委員 次長、次の質問に入ります。  この制度は、あなたが先ほど来言っておるとおり、多くの中小企業者が渇望している法律制度だと思うのです。にもかかわらず、この制度は何か、果たしてそこへ入っていいのか悪いのかという心配もある内容を含んでおると私どもは思うわけです。  そこで、あなたの方では、この制度ができた場合、どの程度の加入者があると予測をされておりますか。その数字をこの際明らかにしていただきたい。
  48. 児玉清隆

    児玉政府委員 お答え申し上げます。  初年度におきまして十万件、五年間で約七十万件の加入を一応推定いたしております。
  49. 佐野進

    佐野(進)委員 小規模企業共済事業団越智さん、あなたはどのように予測されますか。
  50. 越智度男

    越智参考人 お答えいたします。  私は、元来この質問は非常にむずかしい問題だと思っております。ただ、その前提に立ちまして、特に初年度については特例措置もございますので、急速にかつ大量の加入が期待されるわけでございます。それこれ考えまして、初年度十万件ぐらいの加入になるだろうという中小企業庁次長の御答弁と、大体私も感覚は同じでございます。  ただ、それから先の問題でございますが、まあ話は違いますけれども、現在の小規模企業共制度においても七十七万件という加入累計でございますが、十二年間でそうでございます。これが違った理由であり、中企業まで拡大されるわけでありますけれども、そんなに大きな数字になかなかならないんではないかという感じがするのでございますが、これは全く感覚的な問題でございまして、五年ぐらいで何件になるかということは、ちょっと私は予測が非常にむずかしゅうございます。  以上でございます。
  51. 佐野進

    佐野(進)委員 あなたが実務担当者になる予定だからそういう答弁でやむを得ないと思うのですが、私は、まああなたであれば、むずかしいということだけじゃなくして、この制度内容が周知徹底され、その周知徹底された上に大きないわゆる政府の強力な後押しによってこの制度が発展していくのだということであれば、中小企業庁次長よりもむしろ大きな予測数字を出さなければいかぬし、そういうような積極姿勢を持ってあなたはやってもらわなければ困ると思うのです。いまのような、次長よりもっと内輪の心配ですなんと言われる程度ではあなたに仕事は任せられない。この法律の実施団体をほかにかえなければならないということになるので、答弁技術としてその程度のことしか言えないということは別として、もう少しこの制度を生かす上において積極性を持ってもらいたいということを注文をつけておきたいと思うのです。  そこで、私は、いま質問をいたしておりますように、越智さんの答弁をいただいたり次長答弁をいただいたりする中で感ずることですが、結果的にこの制度が、そういうように将来予測の数をはるかに飛躍し、多くの中小企業者が喜んでここに加入するようにするためには、政府のこれに対する対策というものが非常に重要になってくると思うのです。ところが、今回の予定では、掛金のほか、政府出資の基金というものが非常に少ないように私どもは考えるわけです。来年度においても政府出資要求は二十億円と承っておるわけでありますけれども、この程度の政府出資の基金によって、果たして七十万、百万、二百万という多くの中小企業者を吸収してこの制度が発展していくということについて自信をお持ちであるかどうか、次長見解一つ聞きたい。
  52. 児玉清隆

    児玉政府委員 お答え申し上げます。  いまお話しございましたように、五十三年度の基金要求といたしまして二十億円を計上いたしておるわけでございます。資金の額の多寡につきましては、果たしてそれで十分かどうかということにつきましては、実際に制度がスタートしてみまして、その運営状況を見ながら適切な規模というものをはかっていく必要があろうかと思っております。当面は、いま要求いたしております二十億円でかなりの事態にも対処し得る、このように考えておりますので、とりあえず初年度として二十億円ということでございます。
  53. 佐野進

    佐野(進)委員 大臣、いま私、次長答弁を聞いたわけですが、二十億円というとやはり何となく心細い。まあ、次長は最初十万人、そして七十万人、理事長はこれは将来を予測できないということでありますが、私どもはそれ以上の数の人たちに入ってもらいたい、こういう気持ちからすると、この出資金の増額について格段の努力をすべきではないか、こういうように考えるわけですが、大臣見解をひとつお聞きしておきたいと思います。
  54. 田中龍夫

    田中国務大臣 私どもは、先生方と御一緒にこの制度をここまで持ってまいったわけでありますけれども、本当に中小企業者の方々から喜ばれる制度として、ひとつこの制度ができるだけ有効に活用されますことを心から念願をいたしておる次第でございます。
  55. 佐野進

    佐野(進)委員 出資金をふやしたらどうかということなんですがね、大臣
  56. 田中龍夫

    田中国務大臣 その点につきましては、なおまた御相談をし合って、そして政府の側におきましても、さらに今後これが推移を見ながら流動的に考えていきたいと考えます。
  57. 佐野進

    佐野(進)委員 煮え切らない答弁しなくても大丈夫ですよ。やはりその制度が発展していけば出資金がふえるのは当然なんですから、制度を発展させ、出資金をふやすというように努力しますという答弁であればそれで足りるわけで、私どもとしてはそうなるようにひとつ希望を申し上げておきたい。大臣もふんどしを締め直してがんばってもらいたい。  さて、そういうような制度の運用を図る上に必要な体制をつくっていただくわけですが、今日の小規企業共済事業団を中小企業共済事業団と改組し、これに対応していただくということになるわけですが、先ほど理事長さんのお話にもありましたとおり、東京だけにしか事務所がない、こういう状況の中でこれだけの大事業を、将来への予測として考えられる大事業を運営するということは、私どももこの制度を発足させる法案審議するこの場においてはきわめて不満足であると言わざるを得ないわけです。したがって、この改組と関連してどのように機構、人員、予算を強化する考えであるか、次長にその見解を聞いておきたい。
  58. 児玉清隆

    児玉政府委員 お答え申し上げます。  事業団の業務量の増加に伴いまして、事業団の組織、人員の拡充を図る必要がございますので、五十三年度予算要求におきまして、四十六名の職員の増員、それから組織といたしまして二部四課の増設を現在要求中でございます。
  59. 佐野進

    佐野(進)委員 理事長、それで運営できますか。
  60. 越智度男

    越智参考人 お答えいたします。  ただいま中小企業庁次長からお答えがありましたように、五十三年度予算としてただいま四十六名という返事がございましたが、一人の理事を含めるかどうかで四十六、七名になりますが、そういう増員要求をいたしております。現在の小規模企業制度のために九十名程度の役職員がいるわけでございますので、それの五割増しぐらいになるわけでございます。共済制度の事務処理におきましては、ある程度経験を積んでまいりましたので、この経験を生かし、とにかく現状よりも——現状は現在の仕事で大変多忙をきわめておりますので、その人員を充てることはきわめて困難でございます。どうしても現在の規模の五割増しぐらいの規模にして新しい制度に対応したい、このように考えるわけでございます。  なお、来年度の補助金の要求といたしましては、新しい制度のための事業団の事務費の全額補助として十三億三千八百万円を要求いたしているわけでございまして、このほか先ほどお話に出ました二十億の出資要求でございます。それでやってまいりたいということでございます。
  61. 佐野進

    佐野(進)委員 この制度がそのような体制の中で発足します。先ほど来質問したその精神を踏まえて運営がされるわけです。  そこで、そうなった場合最も心配される事態は、さて、制度は発足した、掛金もある程度積んだ、そしてその資格が得られた。しかし、その条件がいわゆる連鎖倒産という状況に見舞われそうになった。そしてその手続を開始した。請求を始めた。しかし、役所の対応ないし取り扱い金融機関の手抜かり、不親切な対応、こういうような状況が積み重なった形の中で加入者自身が倒産してしまったという事態が起きる、こういうようなことは当然この制度の持つ意味からして考えられるわけであります。そういうことに対する歯どめというものが十分配慮されていなければ、この制度は、結果的に、事務的なあるいは取り扱い上のミスによって、掛金をした中小企業者が救われない、こういうことになる可能性もあるわけでありまするが、そういう点についてはどのような措置を講ぜられようとしておるのか、この点ひとつ見解としてお聞きしておきたい。
  62. 児玉清隆

    児玉政府委員 いま御指摘の歯どめの点が大変重要でございますし、この制度の趣旨を真に生かすためには、簡易迅速に事務の運営処理をやるということが一番の重要課題でございます。先ほど来話が出ておりますように、人員、機構の強化、事務処理関係の補助の面で十分手当てをするということと同時に、並行いたしまして一委託先との連携プレーを的確に行っていく。それから指導体制も機敏にこれを行うというようなことによりまして、御指摘のように、せっかくの共済制度ができて、その共済契約者でありながら、さらにあおり倒産を受けるというような事態が万々出現いたしませんように十分に留意していきたい、このように考えております。
  63. 佐野進

    佐野(進)委員 だから、万々ないようにするためにはどう考えているか、そういう対策をとるためにはどう考えているかという具体的な点を一つ、二つ挙げてください こう言っているんですよ。
  64. 児玉清隆

    児玉政府委員 一番問題になりますのは、中小企業者自身の地域的分布が日本全国にまたがって非常に広いわけでございますので、ネットワークをどういう密度で張っていくかという点がポイントになろうかと思います。したがいまして、現在小規模関係でも六千対象団体を委託してやっておりますが、そういった末端に至るまでの店舗が十分活躍いたしますように、委託の対象を十分数をふやすということが第一でございます。それからいろいろな手続の点で細かい点がございますけれども、それの取り運び方についてのマニュアルあるいは制度のPR等々についても、契約締結の当事者、それからこれを取り扱う機関の間でそごが生じないような十分な体制をしいていきたい、このように考えております。
  65. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、その点についての取り扱いに遺憾なきを期していきたいということについて私は質問してみたいと思うのですが、この手続をする場合、その簡易迅速化を図るために先ほど四十六名の増員をするということでこの制度の発足に備えるという事業団、この事業団の委託を受けてその業務を行う団体があるわけですね。委託を受けなければ全国津々浦々にある中小企業に対応できないわけですが、その委託をする団体をどのように想定しておられるか、この際ひとつ明らかにしてもらいたい。
  66. 児玉清隆

    児玉政府委員 現在法律制度に即しまして考えておりますのは、指定三団体ということで商工会議所、商工会、中央会等を中心といたしまして各種団体、中小企業者が身近に組織いたしておりますところの団体、それから金融機関というものを委託先として考えております。もちろんその委託の内容につきましてはいろいろ検討して、委託団体の場合はこう、金融機関の場合はこういう面ということで整理はいたしませんけれども、対象としては、いま申し上げましたように、広く団体及び金融機関ということで考えております。
  67. 佐野進

    佐野(進)委員 商工会議所、商工会あるいは中央会というもの、さらに金融機関というように言われておりますが、その具体的な金融機関と称する段階をこの際明らかにしていただきたい。金融機関というのは何なのかということをこの際明らかにしていただきたいと思います。
  68. 児玉清隆

    児玉政府委員 お答え申し上げます。  いわゆる金融機関ということでございまして、一般の都市銀行から中小企業の民間の専門金融機関までも含んだ広い範囲を対象に考えております。
  69. 佐野進

    佐野(進)委員 そうすると、この金融機関と先ほど説明のあった三団体との関連はどういうことになるのか。
  70. 児玉清隆

    児玉政府委員 まず、金融機関に対する事務の委託内容でございますが、一口に申し上げますと、金銭の出し入れにかかわる部分を金融機関の委託事務として考えております。それから実際の加入あるいは給付原因の発生に当たりまして、それの確認事務等につきまして三指定団体を中心として一般の団体、このような区分で考えております。     〔中島(源)委員長代理退席、林(義)委員長代理着席
  71. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、そのいまの答弁に対する質問になるわけですが、いわゆる金融機関と三団体との中においては歴然とした取り扱い上におけるところの差があるわけです。そうなりますと、私どもは、当初この取り扱い機関として商工中金はこのいわゆる委託業務を三団体と同じような条件の中で取り扱えるものと、あらゆる検討を加えた結果、むしろ三団体——特にここに商工会議所専務理事が来ておりますから申し上げたいのですが、商工会議所はとかく政治的な偏向に基づく中小企業対策をやっているのではないか、こういう批判を私どもはよく聞くわけであります。いわゆる中小企業対策——もちろん大企業から中小企業まで加盟会員として入っておるわけですから、中小企業対策は専門的でないということはよくわかります。しかし、ともすると政府の業務を委託を受けてその仕事をやる立場にある商工会議所が、この種業務の委託を受ける際、特定の人たちに対して特定の便宜を図るけれども、それ以外の人たちに対してはきわめて冷淡、かつ中小企業対策としては不適当なる感覚に基づいてその業務を行っているという例があるということをわれわれの関係する団体その他の人たちから聞くことによって、この業務はそれら関係する団体に、いわゆる商工会議所を初め三団体に業務の委託を行わせるのではなくて、むしろ純粋なる金融機関として、しかも預金あるいは出資等、それらの行為を行うに最も適切な政府系機関として商工中金にこれ単独で行わせたらよいのではないか、こういう考え方が私どもの当初基金制度を発足させるに対しての基本的な考え方であったわけであります。  しかるに、いま次長答弁では、商工中金はその委託業務の中には単なる金融機関としての位置づけだけであって、先ほど申した業務委託の面については何らそれは行われないということについては、われわれはきわめて不満足である。この点については、必要があるならば、本法案を修正してでもそれについて対応しなければならぬほどの強い決意を持っているわけです。  そういう点について、商工会議所高橋さんの方から、それら偏向的な行為があるということに対する批判に対してどのように御判断になり、どのように基本的に対応せられようとしておるかということの御返答をいただきたいし、秋野理事からは、商工中金がそれに対して不適切であると判断されるか、あるいは業務を行おうということであれば行い得る体制にあるか、その点についての見解を聞いておきたいと思います。
  72. 高橋淑郎

    高橋参考人 商工会議所の活動につきましては、商工会議所法に定められておりますとおり、営利を目的とせず、また、特定の個人、法人その他の団体の利益を目的としないという規定に基づきまして、日本商工会議所としてもまた各地商工会議所としても、その法の精神に沿って活動いたしておるつもりでございます。  いま具体的にということでその例を申し上げますならば、小企業等経営改善資金の運用につきまして、これは会議所の会員であろうと会員でなかろうと、御要望に応じて公平に仕事をいたしております。  今回、この法律の定めに従いまして、他の団体同様に業務の委託を受けました場合には、公平、公正ということを旨にいたしまして、できる限りの努力をいたすつもりでございます。
  73. 秋野莞爾

    秋野参考人 お答えいたします。  商工中金といたしましては、日ごろから貸し出しの金利が非常に割り高だ、もう少し安くならぬかということで業界からよくそういう御希望を承るわけでございますが、私どもの方は商工債券という比較的高い金利で資金を集めておりますので、こういう業界の方の御希望に沿うためにはできるだけ経営の効率化を図ってまいらなければならないということがございまして、実は人員の面でもできるだけしぼってこの運営をいたしているわけでございます。もちろん金銭の授受というふうな業務につきましては、これは私どもの方の本来業務でございますので、もういかようにでも御協力をいたしたいと考えているわけでございます。  しかし、商工会議所、その他三団体に委託されるお仕事、たとえば加入資格があるかどうか、その認定というふうなお仕事になりますと、実はわれわれが日ごろほとんどなじみのない仕事でございます。そういう面で、大変に窮屈な人員で窓口を構成しているという関係からいたしますと、ちょっと負担と申しますか、混乱と申しますか、そういう面が起こりはしないか、そのためにいろいろな面で業界の方に御迷惑をかけることになりはせぬかというふうな心配をいたしているわけでございます。もちろん委託三団体のどういうお仕事であるかという細かい点はこれから詰めがあろうかと思うわけでございますので、そういった細かな点はまだちょっとよくわからないわけでございますけれども、現在承っている範囲では、商工中金の窓口、いまの比較的ぎりぎりの人員で対応していくにはなかなかむずかしさがあるのではないだろうかなというふうな感じがいたしております。
  74. 佐野進

    佐野(進)委員 これは法律事項ではございませんから、今後の運用の面について質問をしているわけですが、高橋参考人は、人柄といい、われわれもよく知っておりますから、あなたの見解はそのとおり承っていいと思うのですが、とかく商工会議所の全国的な運営の中でそのような批判もありますので、この際、委託業務をあなたの方でおやりになるということについて、われわれがそれをやってはいかぬということではございませんが、中小企業庁の方もそれぞれこれからいろいろ検討されることであろうと思いますが、この機会に、とかくそのような偏向的運営ということではないと思いまするけれども、十分慎重なる配慮をもって臨んでいただきたいと思います。  大臣、この問題については、いま申し上げましたとおり、この制度の運用によって委託業務の持つ意味が、金融機関の取り扱いの持つ意味が非常に大きいわけでありまするが、これらについては運用上の面について万全を期していただかなければならぬ、こう考えるわけです。特に取り扱い三機関商工会議所、中央会あるいは商工会等の取り扱いの機関に委託する場合において十分慎重な配慮を必要とするわけですが、その見解をこの際聞いておきたいと思います。
  75. 田中龍夫

    田中国務大臣 非常に広範囲のお仕事でありますので、この業務をお願いいたしておりまする金融機関並びにその中核をなします三団体等におかれましても、今後なお一層の努力をいただかなければなりませんが、御案内のとおりに、一般の民間金融並みに預金業務を行っておりまする商工中金につきましても、現在の小規模企業共済の制度と同様に、掛金の収納事務を中心とする関係業務をお願い申し上げるわけでありまして、特にこれらの皆さま方には今後緊密な御連絡を申し上げ、同時にまた、いろいろと行政的な指導もいたしまするが、なお一層、大悟一番と申してもよろしいような新しい制度の運用でございますので、強力にしかも希望を持って、と言ったらおかしゅうございますが、事の重大性を十分自覚していただきまして、一層の馬力をかけていただきたいと考えております。
  76. 佐野進

    佐野(進)委員 最後の質問に入りたいと思いますが、四点ばかりあるわけであります。  さて、いままで質問を続けてきた中で、本制度が発足することによって関係する中小企業者が非常に大きな期待と希望を持って入会してくる、その道を開かなければならぬ、こう思うわけです。その最も大きな魅力のあることは、いわゆる貸付限度額を掛金の何倍にするか、その比率によって非常に大きなメリットがあると思うのであります。これは当初一万五千円を二万円にするという措置をおとりになったという形の中で上限は非常に大きく広かったわけでありまするけれども、しかし、それにしても、掛金の十倍ということであれば一千二百万、最高の掛金をした中小企業者としてもその程度であります。  今日、もちろんその程度といっても、それだけの金が掛金の範囲内において貸し付けられることになることは、倒産の危機に瀕する中小企業者にとっては大変救いであろうということは考えられるわけでありまするけれども、もう一つ進んで、この十倍を十五倍にする程度のことは、緊急的な応急の措置としてでも考えてもしかるべきではなかったかと思うわけであります。これは現在提案されている法律事項でございますから、私どもかこれをいまここでどうだと申し上げることもでき得ないと思いますか、将来この限度額を引き上げる、そういうことについて検討なさったことがあるかどうか、これを次長にひとつお答えをいただきたいと思います。
  77. 児玉清隆

    児玉政府委員 お答え申し上げます。  当面の制度発足に当たりまして、中小企業者のものとしてのこの制度の安定性を基本に考えておりまして、あくまでも相互扶助の制度でございますので、安定して自己回転できるという必要最小限度の条件を満たす必要がございます。そういった観点からいたしまして十倍という貸付倍率を設定いたしたわけでございますけれども、御指摘のように、この制度は長期的な制度でもございますし、発足いたしましてある程度の期間が経過いたしまして、さらに安定的な運営がもう少し倍率を上げてもあるいは継続的に確保できるというような見通しか得られました場合は、御指摘の貸付倍率を初めといたしまして、いろいろな点を含めた改善策の検討を図りたい、このように考えております。
  78. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは次に、この共済金の償還期間は五年ということになっているわけであります。私どもは、この五年という期間がそのように危機に瀕した中小企業者が返済するにはきわめて短いのではないか、少なくとも一年据え置き、七年程度で償還するということが望ましいのではないかと強く主張し続けてきたわけであります。結果的には半年ということにする予定だということを聞いておりまするが、この据え置き期限を一年にし、償還期限を七年にする、こういうようにすることが望ましいと考えるが、そういう考えがあるかどうか、これまた次長に聞いておきたい。
  79. 児玉清隆

    児玉政府委員 御指摘のように、もうちょっと長い償還条件というものも当然考える必要があろうかと思いますが、最初、私どもが発足に当たりましての体制といたしましては、いろいろな前例等も参考にいたしまして、一応五年、据え置き期間六カ月ということで考えております。  一つの例として申し上げますと、現在の信用保証の特例制度の平均保証期間がおおむね三年ないし四年でございますか、そういったものを勘案いたしまして、それより少し長くという感じを持っております。それから、政府関係の中小三機関の特別貸付制度、これの運転資金に関する償還期間は現在五年を最高にいたしておりまして、そういった通例がございます。さらに、無担保、無保証のマル経の資金につきまして、現在、運転資金は据え置きはございませんけれども、一応二年ということになっております。  以上、申しましたような既存の制度よりも、少なくとも少しでも有利な条件ということで、安定性その他の点から考えまして、一応五年ということにいたしております。したがいまして、現在あります制度の最高限度あるいはそれ以上のものというふうに考えております。もちろん絶対的にこれでいいということは言えないわけでございまして、状況によりまして、私どもは、やはり収支バランスか——中小企業者のものでございますから、中小企業者のためにせっかくつくったものがすぐパンクするということでは非常に困りますので、そういった収支の見通しがはっきりつかめる段階になりまして、もう少し償還期間を延ばしましても収支の赤字発生がそう懸念すべきものでないというようなところになりましたら、十分検討するにやぶさかではございませんけれども、少なくとも現段階におきましては、やはり中小企業者のための安定性を図るために、この会計自身の基礎を十分確立するという点で、可能な最大限ということで五年を設定したわけでございます。
  80. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは、時間があと数分を残すのみとなりましたので、二つの点を一括して質問してみたいと思います。  これは、次長質問をし、あと大臣に答えていただきたいと思うわけですが、この制度の中でいろいろな特例をつくっておるわけでありまするけれども、この掛金の一括前納と共済貸し付けの特例、いわゆる附則第二条、これを制度発足当初の一年としたのはどういうわけかということであります。この制度をPRするだけでも半年や一年かかってしまうのでありますから、これは実際上の取り扱いを担当される三機関におきましても、一年の間でこのような措置を浸透するということはなかなかむずかしいのではないか。したがって、制度が軌道に乗るまでの暫定的な取り扱いとして、少なくとも二年程度の特例を認めることか必要ではなかったかということを考えるわけでありまするが、どうして一年に区切ったのか、その点。そして、二年にするような実質的な措置として、それができるようなことができないのかどうか。この点をひとつお聞きしておきたいと思います。  さらに、この特例措置の場合、割引手形が不渡りになったことだけに限定しているわけでありますけれども、手形期間が長過ぎるため、通常の金融機関で割り引いてくれないような手形を受け取った弱い立場中小企業は、これでは救済されないのじゃないか。これを救済するためにどのような補完的対策を講ずることが必要であるか、このことについて次長からお答えをいただき、実際の取り扱い機関の代表として出席されておる高橋専務理事の方から、この点について、一年間という形の措置と補完的な措置についてどうされた方がいいと御判断になるか、この点をひとつお聞きしておきたいと思います。
  81. 児玉清隆

    児玉政府委員 お答え申し上げます。  最初に、一括納付の限定を一年間ということにした理由と、これをもう少し延ばせないかということでございます。  この点につきましては、この制度自身か中小企業者の相互扶助の精神に基づいた共済制度でございまして、およそ一般の共済制度におきましては、事前にその掛金を納付する、そして、まだ到来しておりません期間の利益を先取りするというような形でやっている例は実はございません。しかし、今回の不況の現状、それからこういった共済法の提案をお願いするようになりました背景等を考えまして、特例中の特例ということで、一年ということで特別の一括納付の制度の道を開くことをいまお願いしているわけでございますが、こういった必要性は、御指摘のように、現下のきわめて熾烈なこういう困窮状態不況の深刻状態、そういったことを踏まえまして、こういった特例は必要である、それはやはり当初一年間、特に必要であるというふうに考えております。もちろん、一年間だけ特例を認めたからといって、一年以内に発生した事故に対してのみ有効というわけではございませんで、これは五年間にわたりまして、やはり事故発生した場合には、一年以内に契約した人の期間の利益というものは十分、五年効いてぐるわけでございますので、その点からも一年という特例措置がいいのではないか、このように判断したわけでございます。  それから第二点の、手形事故に限定しておりますこの特例措置の場合は、割り引かれた手形ということに限定いたしておりますけれども、それだけで救済されないものについての措置でございます。  まず、手形だけに限定しました主たる理由でございますが、先ほども触れましたけれども、相手方が倒産いたしましたときに、まず翌日回ってまいりますツケといたしましては、割り引かれた手形の買い戻し請求でございます。その他の債権が決して追求が緩いというわけではございませんけれども、すぐ翌日という形で責め寄られてまいりますのは、そういった割引手形の買い戻し請求でございますので、まずこれを緊急に払いのけるだけの援助措置が必要ではないかというふうに特に考えたわけでございます。そのほかの点まで広げますと、やはり御指摘のように、いろいろ安定性の点で問題がございますので、しぼったというのが実情でございます。  しからば、その制度の、しぼったために出てくるはね返りでございますが、そういう点につきましては、御存じのように、倒産防止のための緊急融資制度等、あらゆる他の制度を動員する、さらに、その制度の拡充を図っていくということによってつないでいきたい、このように考えております。
  82. 高橋淑郎

    高橋参考人 私も、この暫定取り扱いは、現在のまことに深刻な不況下においてとられる特例中の特例だと存じますので、やはり原案のように一年でやむを得ないのではないかと思います。いま先生御指摘の、この制度を普及させる、周知徹底させるための努力、これはわれわれとして本当に最善の努力をしていかなければなりませんので、  これは一生懸命やらしていただきたいと思います。
  83. 佐野進

    佐野(進)委員 大臣、先ほど来二時間にわたって質問を続けてきました。私の質問した事項については、それぞれ各項目ごとに大臣答弁をいただいてまいりました。この制度は新しい制度として発足するわけでありますから、私どもはきわめて不満であるということを前提にして質問してきたその意味は、これを強化したいという願いであります。  締めくくりの質問として大臣に、この法案の成立後において積極的にひとつ前向きの姿勢をとりながら対応していただきたいということを強く要望するとともに、大臣見解をお聞きしておきたいと思います。  なお、参考人には長期間にわたって質問に応じていただきましたことを感謝申し上げたいと思います。
  84. 田中龍夫

    田中国務大臣 本制度が皆様方の非常な御期待を持って提案せられ、そしてその間には、まだ未熟であるかもしれませんけれども、一応の御意見はまとめて立法化せられつつあるわけでございます。この制度の発足とともに、中小企業がただいま当面いたしておりまする非常な苦境あるいは深刻な状態というものを考えまする場合に、これはその対策一つでありまして、御案内のとおりに、われわれの政府系機関によりまするいろいろな措置、あるいはまた、この問題のみならず、信用保険法に基づきます不況業種の指定、それに伴いますいろいろな措置倒産防止に対しまする特段の緊急措置、さらに本制度と相まちまして各種の制度ができております。また、円高の問題につきましては、御案内の緊急融資制度もございまするし、経営安定化の新しい制度も考えられております。  こういうふうなたくさんの中小企業制度ができておりまするが、同時に、このことだけはひとつ考えたいと思いますのは、こういう制度をせっかくつくりましても、非常な不況に追われておりまする小規模企業あるいは中小企業の経営者の方々がよく御存じない面が多いのではないか、そういう点で中小企業庁には特段に申しておりまするが、こういう制度があるのだということを何とかして周知徹底していただいて、商工会あるいは商工会議所その他都道府県等におきましても、不況業種の方々の御指導を私どもと御一緒にきめ細かくすることによって、初めてつくりました制度が有終の美をなすと思うのでありますが、そのPRと申しますか、周知徹底方もあわせて真剣に努力してまいりたいということをこの機会に申し上げたいと存じます。  本制度の速やかな御審議と成立を心から期待をいたしまして、今後とも御協力のほどをひとえにお願い申し上げます。
  85. 林義郎

    ○林(義)委員長代理 参考人各位には、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。心から御礼申し上げます。御退席いただいて結構でございます。
  86. 林義郎

    ○林(義)委員長代理 鹿野道彦君。
  87. 鹿野道彦

    ○鹿野委員 現在のわが国の経済情勢はまことに厳しいわけであります。特に中小企業者は、果たしてこれからどうなるのだろうか、こういうふうな不安な気持ちが強いわけであります。そこで、政府といたしましても、この不況から何とか脱却しようということでいろいろな不況対策を考えられておるわけですけれども、なかなか思うようにいかない、こういうのが現況であると思います。なぜうまくいかないかというと、大きな壁があるのではないか、こういうふうに私は感じております。  その一つは過剰在庫であり、一つは過剰雇用であり、一つは過剰借金であり、一つ過剰設備である、こういうふうなことから再生産は落ち込んでくるし、どうしても稼働率が上がらない。人も借金も減らしていこうということからどうしても減量経営になりがちである。また、十三兆円とか十七兆円というふうに言われておる需給ギャップがある。そういうところから設備投資意欲もなかなかわかない。こういう状態からして、現時点においては、わが国の経済全体といたしましてどうしても縮小の形態にあるのじゃないか、こういうふうに私は認識をいたしておるわけでありますが、その点につきまして政策当局の方から御見解をお聞きしたいと思います。     〔林(義)委員長代理退席中島(源)委員長代理着席
  88. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 ただいまの経済状態が現出しております基本的な要因の中で一番大きな問題は、資本ストック調整というのがまだ行われていない、十分完了していない過程にあるという問題であることは、確かに先生御指摘のとおりでございます。これを脱するためには何よりも内需の拡大ということが必要であるわけでございまして、こういった観点から、御案内のとおり、九月三日に総合経済対策を決定いたしまして、事業規模約二兆円の公共事業等の追加を行うという政策を発表しておるわけでございます。その後、依然として円高問題等もございますが、先般補正予算も御審議いただきまして成立しておりますし、こういった公共事業等の早急、確実な実施を図っていくことが現在での政策の一番肝要な問題点ではないかというように私ども理解いたしております。
  89. 鹿野道彦

    ○鹿野委員 こういうことを前提といたしまして、中小企業倒産防止共済法案について御質問をさせていただきたいと思います。  まず、現在のこういう状態からして、中小企業の人たちはまことに苦しんでおられます。中小企業の苦しんでおられる方々のために、どうしてもこの対策は一刻も早くやらなければいけない、こういうことでありますけれども、先ほどの佐野委員の御質問にもありましたが、中小企業倒産の現況というものをどのように把握されておるか、また、今後の推移をどのように考えておられるか、お聞きしたいと思います。
  90. 児玉清隆

    児玉政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの中小企業状況でございますが、一部の業種を除きまして売り上げ状況もきわめて不振でございますが、それにも増して利益水準というものが大変に落ち込んでおりまして、それが不況感を非常に強めております。さらに今後につきましても、中小企業者として余り明るい希望が持てないというのは、以上申しましたような利益感が全然ないというところに起因しているかと思います。しかも、伝えられますところの倒産件数が、三月の千七百件をピークといたしまして、その後も依然として勢いが衰えておりませんで高水準で推移している、これが非常に不安感を助長しておるというふうに考えております。  御存じのように、いま申し上げましたような倒産企業実態でございますけれども、これを若干月別によって見てまいりますと、三月の千七百五件というのが史上始まって以来最高の数字でございまして、その翌月の四月には若干落ちまして千五百八十三件ということになりましたけれども、これで終息したわけではございませんで、その翌月になりましたら、五月でございますが、また千六百五十二件ということではね上がっております。十月は千五百九十八件ということで、一般的に危機ラインと言われておりますところの千五百件の水準を上回る状態がこの六、七カ月間継続しておるという状況でございます。  それからもう一つ憂慮すべき事態は、一件当たりの負債金額が非常に大きくなってきておりまして、昨年の五十一年の一件当たりの負債金額の平均でございますが、一億四千五百万円でございますけれども、これが一月以来十月までの累計を平均いたしまして一億六千三百万円という大きな数字になっております。  したがいまして、そういった倒産原因ということか問題になるわけでございますけれども、これはいろいろな面が重なり合っていることが非常に大きいわけでございます。強いてこれを大きい頂で申しますと、たとえば販売不振とかあるいは連鎖倒産とか、そういった不況型の倒産が非常に多うございまして、設備投資の過大あるいは在庫投資の過大というものももちろん要因としてはございますけれども、主としては、先ほど大臣からもお話し申しましたように、販売不振等、いわゆる景気下降現象によるところの倒産という特徴をそのまま持続しておるということでございます。
  91. 鹿野道彦

    ○鹿野委員 いまいろいろな御説明かあったわけでありますけれども中小企業者の倒産原因もお聞きしたわけであります。しかし、その倒産をするには、いろいろな面にわたって倒産という形かあると思うわけでありますが、その中で、今回特にその連鎖倒産中心としたところのこの法案を制定しようというふうなことになりましたのは、どういうところにあるかを御説明していただきたいと思います。
  92. 児玉清隆

    児玉政府委員 お答え申し上げます。  一般的に、倒産防止基本施策はやはり景気振興によるところの需要拡大ということでございまして、その基本策は変わらぬわけでございますけれども、現在、特に中小企業問題として見ました場合に、一番大きな問題はやはり不安感でございます。中小企業者の間にびまんしておりますところの不安感というものを一掃したいということでございます。  なぜかと申しますと、不安が不安を呼ぶという形になりますと、非常に層の広い、かつ数の多い中小企業者の間で、全体的な経済情勢というものに対してゆゆしき影響がございますので、不安感を除くため——それは企業意欲というものを減殺しておりますので、それが景気の低迷状況にさらに拍車をかけるおそれがあるということかございます。不安感で一番原因になっておりますのは、自己努力ということによって解決できない面でございます。端的に申しますと、取引の相手方の事情によって、他律的にいつ倒産するかわからぬといった感じがいわゆる不安感の一番の根源になっている、このように考えたわけでございます。  したがいまして、その不安感を除去するためには、やはり連鎖倒産防止制度をとりあえず緊急にやる必要がある、このように考えたわけでございます。もちろん倒産全般の基本対策としては景気振興対策を打っていくということでございますけれども、特にこういった制度をつけ加えたという点は、いま申し上げましたような自己努力の及ばない原因によるところの倒産の不安感ということでございます。
  93. 田中龍夫

    田中国務大臣 鹿野先生のせっかくの御質問でございますので、私からも一言。  根本的には景気対策ということが最も重大な問題でありまして、同時にまた、減速経済に入りました構造的な問題の抜本的な解決をしなければならないことは当然でございます。  それから、ただいま次長が申しましたような中小企業における不安感、倒産の問題に対する連鎖の問題、こういうことでございますが、その間にいままで中小企業倒産防止につきましてとってきました対策は、倒産関連の保証の特別制度を実施いたしまして、指定倒産企業倒産関連中小企業に対しましての保証枠を通常の二倍まで拡大をするというような処置を講じますとともに、ことしの四月に入りましてから、中小企業倒産対策の緊急融資の制度を特に実施いたしまして、総額三百億円の資金の融通を行ってまいったのでございます。  さらに、ことしに入りましてからも、倒産件数がただいま御説明申し上げたように非常にふえてまいりまして、そこで中小企業の先ほど申しましたような構造不況の問題に始まり、あるいは各関連の不況産業に対します一般的な各処置をあわせまして、今後経済環境がより一層厳しいものとなることを思いますと、どうしてもここに連鎖倒産防止に対しますそれ自体の、緊急融資制度だけではなく、さらにみずからの共済制度をつくっていこう。さらにまた、今後御審議をいただかなければならない経営安定化の制度もこれとあわせまして御審議をいただく、さらにまた、将来のビジョンということから申しまして、転換の御審議をいただく、こういう一連の中の当面の一環といたしましてこの共済制度のお願いを申し上げておる次第であります。
  94. 鹿野道彦

    ○鹿野委員 ただいま通産大臣からも御答弁いただいたわけでありますけれども次長の話にもありましたが、不安感をなくすため、こういうふうなことで緊急にという言葉かあったわけであります。しかしながら、先ほどの倒産の現況、ここ数カ月千五百件を超しておる、こういうふうなことが継続しておるというようなこと、また、いままで長い間、石油ショック以来、関連倒産というような形で大変あおりを食って苦しんだ方々がたくさんいるのじゃないか、こういう中において政府がこの倒産防止対策として今回の立法のような措置を講ぜられたということは、私どもとしましては、大変遅過ぎたのじゃないか、こういうふうに感ずるわけでございますか、その辺のところの御見解をお聞きしたいと思います。
  95. 児玉清隆

    児玉政府委員 お答え申し上げます。  いま大臣から御説明いたしましたように、従来、一番努力を集中いたしておりましたのは倒産本体の防止ということでございます。倒産するおそれのある企業に対しましていろいろな特別の金融措置でつないできたということが実情でございまして、現在、特段の措置として今回加えようとしておりますものと似通っていると申しますか、それの一応はしりとして現在まで私ども使ってまいりましたのは、特に指定倒産企業制度というものでございます。これは平たく申しますと、取引先のA企業倒産企業として指定してまいりますと、それと取引をしております中小企業のたとえば百社なら百社というものが特別の信用補完のための保証の枠をもらえるという仕組みでございますけれども、こういう制度によって金融ベースの補完措置でつないでまいったわけでございます。これが有効でないということはございませんで、やはり非常に大きな力を発揮しておるわけでございますけれども、ただ、問題は、あくまでも金融ベースということでございますので、担保の問題あるいは利子の問題等々が非常に金融ベースの制約条件下でむずかしいということが現象として非常に強く出てきております。  そういった推移を見てまいりまして、金融ベースだけで解決しない分野として、迅速にして簡素化された制度、しかも緊急出動が非常に機動的にできる制度というものがぜひ必要ではないかという声が世論としてもほうはいとして起こってまいりまして、政治的に私どもも強い要請を受けたわけでございますが、私ども自身におきましても、信用補完制度、現行のものだけではやはり不十分であろうというふうな事態認識をいたしまして、今回の特に自己共済と申しますか、お互いの相互扶助の精神に基づいてやる制度でございますので、余り金融ルールとかなんとかということにとらわれないで、機動的に発動できる簡素化された制度という点を満たせるというふうに考えております。  ただ、御指摘のように、時期的にいままで余り様子を見過ぎて遅きに失したのではないかというような問題ももちろんございまして、その点は私どもも深く反省をする必要がございますけれども、いままで私どもの展開しましたのは、金融ベースの措置をできるだけ拡充するということでやってまいりましたが、それにつけ加えて新しい制度をやるということがぜひ必要であるということでございますが、おっしゃいますように、これは一年前にできていればもっと有効に働いたろうという感じはございますので、特にこの一年間に限り、一括積み立てという制度で、期間の利益を、五年間たたなくても一年間以内にそういった期間の利益を前取りできるような仕組みを特例制度の中に特例措置を含めるということによって対処している次第でございます。
  96. 鹿野道彦

    ○鹿野委員 この制度が今日までなってしまったということの理由はいろいろあると思いますが、やはりこのような厳しい経済の流れは毎日毎日動いておるわけであります。一歩のおくれが十歩のおくれにもなる、こういうふうなことにもなると思いますので、まことに私といたしましては残念に思っている次第であります。  そこで、中小企業者の人たちは、この制度を一刻も早くというふうなことで待っておるわけでありますけれども、この制度の効果というふうなものは、具体的にはいつから生じてくるのでしょうか。
  97. 児玉清隆

    児玉政府委員 端的に申しますと、来年の四月一日から動き出しまして、特例措置は三カ月の凍結期間を置きますので、七月からの倒産に対処できるということでございます。  なお、つけ加えて申しますと、三カ月というのは特例措置の場合でございまして、一般則の場合は六カ月の凍結期間を置いておりますので、その意味では、四月一日という点で、これもたとえば共済手帳を発行するとか、あるいはいろんな電算システムで緊急に手当てするためにそのソフトウエアを組むとかいろいろな点がございまして、四月はぎりぎりの線でございますが、四月から六カ月という時期を待てませんので、特例としまして三カ月ということで七月ということになろうかと思います。
  98. 鹿野道彦

    ○鹿野委員 来年の四月、実質的には七月、こういうふうなことでありますが、まことに中小企業の人たちは苦しんでおられるわけであります。これからも大分あるわけでありまして、いま短くならない、こういうような御説明でございましたが、何とかこの期間をもっと早くならないか、こういうふうなことと、暮れも迫っておりまして、ことしの年末にかけての中小企業の方々に対しての金融等も含めまして、つなぎ資金に対して政府としましてはどういうふうな処置を講ぜられるか、格別なることを考えていらっしゃるかどうか、お聞きしたいと思います。
  99. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のとおりに、政府系機関が通年いたしましての貸出枠は本年三兆六千億でございますが、その中におきましても、特に十−十二に対しましては、年末ということもございまして、重点形成するようになっておりまして、大体一兆三千三百億の枠でございます。そのほかに年末融資といたしまして、昨年のごときは多分四千七百億であったかと思いますが、例年出ておりますので、大体のところ、枠の点におきましては支障はないものと存じます。  ただし、その問題は、枠を使い切る、使い切らないという問題の方が非常に重大でございまして、現在倒産件数も非常にふえ、また、落ち込んでおります経済に対しまして、むしろ資金需要というものが減っておるということが非常に気遣われる次第でございます。
  100. 鹿野道彦

    ○鹿野委員 大分実質的に効果を発揮するまでには時間がかかりますので、年末にかけての中小企業の方々に対しまして格別なる処置を講ぜられますことを要望しておく次第であります。  次に、時間の関係上簡単にお聞きしますけれども、毎月の掛金というものを、五千円、一万円、一万五千円、二万円、こういうふうに四つにされたわけでありますが、なぜこういうふうなことにされたか、あるいは貸し付けの共済金の最高限度額を一千二百万円、こういうふうなところに置かれた根拠はどこにあるのか、御説明していただきたいと思います。
  101. 児玉清隆

    児玉政府委員 御説明申し上げます。  掛金の月額につきましては、取引先企業倒産に遭遇しました中小企業が幾らぐらいのつなぎ資金が必要かということと、それから中小企業者の毎月の負担能力というものがございます。この両面から考える必要があるということでございます。それからもう一つ、別の側面といたしまして、この給付金は無担保、無保証による貸付給付というふうになっておりますので、そういった貸し付けを内容とする共済制度の安定性をどうやって確保するかという点がございます。  したがいまして、必ずしも多ければ多いほどいいということにまいりませんもので、いま申し上げましたような三つの観点の調和点といたしまして、最高限千二百万円の共済金の限度額、それから月額を四つのグループに分けまして最高二万円クラスということで四つのコースを考えたわけでございます。  いま御質問になりましたどういう根拠かという点でございますが、強いて申し上げますと、いろいろな角度から検討してみたわけでございますけれども、たとえば現在の信用保険制度によりますところの保証額、これの総平均が大体六百万円でございます。それも上回る必要があろうという配慮をいたしました。それから大型倒産企業を指定いたしまして、それと取引のある中小企業を救うといういわゆる倒産企業の指定制度、これによりますところの平均保証額、これが九百六十万円でございます。これは現在御提案申し上げておる制度と質的に非常に似ておる制度でございますが、それによる平均額が九百六十万円ということでございます。それから、さらに申しますと、取引先におきますところの売掛金債権の額は九百万円以下である中小製造業者、これの数を比率で出してみたわけでございますが、それが大体九〇%ということでございますので、現在、売掛金債権を保有しておる中小企業者の中で、いざ事故が発生した場合に救済の対象になるものが大体八割ないし九割程度はカバーできる。いわば大部分の中小企業者をこの千二百万円という限度であれば救済できるのではなかろうか、このように考えたわけでございます。
  102. 鹿野道彦

    ○鹿野委員 この最高限度額一千二百万につきましては、先ほどの次長の御答弁にもありましたが、関連倒産の負債金額も大きくなっておる、こういうふうなことであります。今後の経済の流れに応じまして対応していっていただきたい、こういうふうに要望いたしておきます。  次に、共済契約者は掛金の十倍の範囲内でこういうふうな共済金の貸し付けを受けることができるというふうな項目の中で、「倒産企業との取引依存度か高い場合においては、取引高の減少による影響を緩和するために必要な額を加えた額」、こういうふうに説明をしてあるわけでありますが、これにつきまして御説明をしていただきたいと思います。
  103. 児玉清隆

    児玉政府委員 いまの御質問の中で、ちょっと誤解を生ずるといけませんので……。  私、舌足らずであれでございましたが、先ほど一件当たりの倒産金額の御紹介をしましたときに、一億六千万円と申し上げましたが、これは倒れた企業負債総額でございます。したがいまして、それと取引をいたしております。たとえば二十先が取引をいたしておりますと、それが二十先にばらされるわけでございます。そういった点がございます。  それから、いま御質問になりましたなぜ十倍かということ、それから必要な額を加味するという条項でございますが、十倍という点は、これはもういわば最高限の保証倍率でございまして、それからその下に被害額というのかございまして、被害額が十倍に達しない場合に若干の配慮をいたしまして上乗せが可能になっております。  それは、どういうことかと申しますと、実際の取引額が依存度が非常に高いような場合に、立ち上がり資金として必ずしも被害額だけで救済できないような場合がございます。被害額だけにしますと、新しい取引先を探します間のつなぎ資金が足りないというようなことがございますので、たとえば私がA企業に対しまして六〇%のシェアで取引をしておりまして、その六〇%の相手先が倒れたというような場合に、被害額が仮に六百万だといたしますと、六百万だけをカバーいたしましても、六〇%も占めるような月商高の相手先をさらに新しく埋めていくという開拓努力をしますのに時間がかかるわけでございまして、そういったことで、取引先との取引の度合いの強いものにつきましては、やはり被害額だけでは不足する場合がございますので、上乗せの道を講じておる、こういう趣旨でございます。
  104. 鹿野道彦

    ○鹿野委員 この点につきましては、返済条件というものは同じであるかどうかというふうなことと、取引依存度というふうなものは大体どのくらいのもののパーセンテージが多いかというふうなこと、その点どういうふうに考えておられるか、簡単に御説明をお願いします。
  105. 児玉清隆

    児玉政府委員 第一点の返済条件は、同じでございます。  それから、二〇%という依存度は相当高い方でございます。相手先一社だけで二〇%を占めるというのが多いのであります。
  106. 鹿野道彦

    ○鹿野委員 この制度運営というふうなものは、中小企業共済事業団か主体となって運営されるわけでありますが、特に中小企業者というものは地方に非常に多いわけであります。そこで、中小企業共済事業団というふうなものに対しては、運営をしていく場合に地方において手足があるのかどうか、その自主的な窓口等も含めまして、その点はどのようにお考えになられておるのか、お聞きしたいと思います。
  107. 児玉清隆

    児玉政府委員 お答え申し上げます。  現在、小規模企業共済事業団は本部だけでございまして、手足を持っておりません。したがいまして、今回の制度を動かしますときは、業務委託ということで第三者的な団体及び金融機関のネットワークを末端において使う、こういう方式でカバーしていきたいと考えております。
  108. 鹿野道彦

    ○鹿野委員 私はこの点をなぜ心配するかといいますと、余りにも金融機関というふうなものに頼り過ぎる、こういうふうなことになりますと、自主的に中小企業者の方々がわからないというふうなことか多いわけであります。過去の例からいたしましても、こういうような制度が果たしてあるのかどうか、こういうふうなことで、そういうふうな制度がつくられたというふうなことも全然わからないで過ごしておるような方々が地方においては非常に多いわけであります。  そこで、先ほど大臣佐野委員に対する御答弁にもありましたが、この点は大いにPRしていただきたい。そして、せっかく要望によってつくられるところの制度でございますので、多くの方々が大いに活用されるようにぜひしていただきたい、こういうふうに特にその点は強く要望しておく次第であります。  次に、共済金の貸付条件としまして、無利子、無担保、無保証、こういうふうなこと、この点はまことに結構だと思います。ただ、返済期間の五年というふうな点でございますけれども、これは運悪く取引先の倒産によって影響をこうむるわけでありますので、これも五年というふうなところは何とかもう少し長くならないのかというふうなことにつきまして、再度確認しておきたいわけであります。
  109. 児玉清隆

    児玉政府委員 償還期間は五年といたしておりますが、そのうち据え置き期間は六カ月置いておりますので、均等償還に入りますのは六カ月を経過しましてから五十四カ月で均等償還するということにいたしております。これは結論から言いますと、五年というのは現段階で考えられる最高限度ではなかろうかというふうに私どもは考えております。  その根拠といたしまして、現在信用保証特例制度がございますが、そこで実績をいろいろ調べてみまして、保証協会における平均の保証期間が大体三年ないし四年というところでございまして、それと比べましてもう少し長くしたいということを、この五年の中に願望として込めているわけでございます。  それからもう一つは、現在金融ベースで政府系の三機関の特別貸付制度がございますけれども、その制度の中でも、今度対象としておりますところのいわゆる運転資金につきましては、やはり特例制度でも最高限を五年ということでやっております。  運転資金の場合に、通常ですと一年、あるいは先ほど申しましたように保証の場合で三、四年という特例が一般でございますが、これを三機関の最高限度の五年というところに焦点を合わせたわけでございます。  それから、現在無担保、無保証ということでやっておりますマル経資金でございますが、これも運転資金と設備資金とございますけれども、運転資金につきましては、据え置きはございませんが、返済期間が二年となっております。それから、ちなみにマル経の設備におきましても、やはり五年というところまではまだ達成いたしておりませんので、そういった無担保、無保証という制度で既存のものと比べましても、五年というのは相当飛躍的に優遇した制度ではなかろうか、このように考えております。  しかし、そうは申しましても、五年で十分ということは申せないと私ども考えておりますので、この事業会計の赤字が発生しないという安定感がある程度証明されるような段階になりましたら、十分考えられる事項かと思います。少なくとも現段階でのマキシマムのラインでスタートさせていただきたいということでございます。
  110. 鹿野道彦

    ○鹿野委員 特例といたしまして一括前納、こういうふうな点も設けられるわけでありますけれども、その場合には受取手形の不渡りに限定してあるわけであります。不安な気持ちから一刻も早くということで無理して一括納入ということになるわけでありますので、そういうふうな方々に対してなぜ受取手形の不渡りに限定をされたのか、お聞きしたいと思うわけであります。
  111. 児玉清隆

    児玉政府委員 本来でございますと、共済制度の一般原則からいたしまして、階段を一歩一歩上るような形で五十カ月あるいは六十カ月積み立てていくのが一般の原則でございます。しかしながら、現在はそういった悠長なことを言っておれませんので、一年間に限りという特例を開いたわけでございます。その際に一番心配されます点は、悪意によりまして特に危ないものだけ持ち込まれる、それを引き当てに五年分を一括積む、考えたとおり事故かすぐ発生したということで事故が多発いたしますと、善意の加入者に大変な迷惑をかけるわけでございます。そういった悪意によるもの、あるいは逆選択等の余地が、一括納入制度を導入した際に非常に大きいわけでございます。そういった可能性を封ずる必要かまずございます。したがいまして、まず銀行が手形割引をしてくれたというようなものにつきましては、外形標準として一応そういう悪意の推定あるいは逆選択の余地というものはそう考えなくてもいいのではなかろうかということを第一に考慮したわけでございます。  他方、中小企業者の立場から考えてみますと、取引先企業倒産が生じました場合に、その企業から受け取りました手形を金融機関で割り引いてもらった。ところが、相手が倒産したために金融機関から翌日買い戻し請求を受けるということで、すぐ翌日の話でございますので、緊急に措置しなければいけない。それが何よりも重要であるということで、やはり手形債権のものは一番緊急を要する。順位をつけますとそういうことになろうかと思います。したがいまして、とりあえずの資金繰りといたしまして、割引手形のものについてやるというのがこの特例措置を置いた緊急性の点からもいいのではなかろうかと考えたわけでございます。
  112. 鹿野道彦

    ○鹿野委員 いずれにしましても、思いもかけない取引先の倒産によって大変苦しんでおる中小企業者が非常に多いわけであります。そういう点から一刻も早くこの制度が効果を生ずることかできるようにしていただきたい、こう要望しておきます。  最後に、石油ショック以来、特にわが国の経済におきましては中小企業の人たちが大変厳しい情勢下に置かれまして、毎日毎日苦しい状態を続けておるわけであります。政府といたしましても、景気に活を入れる目的でいろいろ対策を講ぜられておるわけですけれども中小企業に対してはなかなか思うように効果が及んでいない。自主的に中小企業金融公庫が本年七月から九月まで取引先を対象にして調査した結果におきましても、売り上げ、受注は製造業を中心にして伸び悩んでおる、また在庫調整も進んでいない、先ほど申し上げましたとおりに大きく四つの壁というものがある、利益水準も低下する、こういう状態で、業績回復の兆しが四月から六月期よりも後退しておる、こういう状況であります。そういうところから、来年三月にかけての見通しも、円高等の問題も含めましてまことに暗い、こういうことが言えるのではないかと思います。そこで、一刻も早くこの制度の効果を生じていただき、そしてまた、この制度をつくってしまえばいいんだという考え方ではなしに、それから一歩前進していただき、なぜこのような制度を設けなければいけないかという根本的な問題に積極的に触れていただきまして、中小企業対策について前向きの姿勢でぜひ政府としましては前進を続けていただきたい、このことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  113. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 午後二時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時二十九分休憩      ————◇—————     午後二時三十六分開議
  114. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  第八十回国会内閣提出日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部の共同開発に関する協定の実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源開発に関する特別措置法案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りをいたします。  本案審査のため、本日、参考人として、石油開発公団理事江口裕通君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、御意見の聴取は質疑応答の形で行いますので、さよう御了承願います。     —————————————
  116. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員長代理 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村重光君。
  117. 中村重光

    ○中村(重)委員 法案審議は、相当時間をかけて慎重に審議を重ねてきたわけでございます。その間、同僚諸君の質疑に対します政府答弁を伺ってきたわけですが、本来的にこの石油共同開発の区域設定に無理かあった。その無理を無理と認めないで、強引にこれを押し通していこうという政府の姿勢というものが私は露骨に出ているという感じがしてならないのです。国際関係もあることですから、それらの点を十分配慮した形において、誠意をもって政府は対処していく姿勢というものが私は必要だろうと思うのです。さすかに名前のとおり、鳩山外務大臣はハト派的な答弁というもの、言葉をかえれば誠意のある答弁というものも見受けるのですけれども、また、その答弁というものか質問者によって変わってくるという点も感じられる。名前を挙げては大変恐縮なんですけれども、中江アジア局長は、大変無理な余りに高姿勢の答弁というものが見受けられるわけでございます。  私どもも、今日エネルギー不足のときにおいて、石油開発そのものというものを否定しようとは考えていないのです。問題の大陸棚の共同開発というものが、日本の国益という点からいってどうなのだろうか、また、中華人民共和国であるとかあるいは朝鮮民主主義人民共和国などと、共同開発をしようとする韓国との国際的な関係というものがうまくいくのだろうか、また、外務大臣答弁になりましたように、開発権者というものが不安のないような操業ができるような体制というものが必要であるというお答えのとおり、全く不安のないような状態というものをつくり上げていくということでなければいけないというような観点から議論もし、お尋ねもしておるわけでございます。したがいまして、そういう姿勢で政府答弁に当たっていただきたいということを要請をするわけでございます。  同僚諸君があらゆる角度から質問をいたしているわけでございますから、重複をするような質問はできるだけ避けたいというように感じておりますが、どうしてもただしておかなければならないという点にしぼってお尋ねをしてみたいと思うのですが、政府は韓国との関係ということで、何というのか、追い詰められたという表現が当たるのかどうかわかりませんけれども、日韓癒着というように言われているようなもろもろの点があるだろう。そこで、泣く子と地頭には勝てないという言葉もありますけれども、韓国の無理を余りにも政府が受け入れ過ぎたのではないか。そのためには日本の国益というものを阻害をした、権利の侵害といったようなものまでも容認をしたというような形で、韓国の一方的な要求をなぜに受け入れて、共同開発を大幅に日本経済水域であるというようなところに認めるということにしたのかという点。それから南と北の関係、これもまた矛盾をした取り決めというのかあるわけでございますから、南部地域と北部地域のことでありますか、それらの点について端的にひとつお聞かせをいただきたいというように思います。外務大臣からお答えを願います。
  118. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 昨日も御論議があったわけでございますが、共同開発に至った経緯につきましてもう一度ここでくどくど申し上げることは省略させていただきますが、御承知のように、大陸棚につきましての韓国とわが国との見解がどうしてもこれは調整のつけようがなかったということから、この地域の開発を急ぐ上では双方で共同して開発をしたらどうだ、こういう意見が出て、急速にその方向で固まったという経過でございますが、石油をフィフティー・フィフティーの管轄権のもとで共同して開発するというのは、なかなか世界にも珍しい例である。実際に協定をつくってみまして、これは法律的にも大変入り組んだ問題が出てまいりまして、大変むずかしいものであった、大変な苦労があったということは、これも御審議の過程で明らかにされたところでございます。  しかし、二つの国が事実上共同して石油開発しておるという例は世界に非常にたくさんあるわけでありまして、日本も樺太の沖合いでも最近成功いたしましたけれども、ソ連と協力をいたしまして油の開発に成功しつつある。しかし、この場合にはやはりソ連の管轄権のもとに入って日本開発をしているという形をとっておるわけで、今回は大陸棚の法律的な性格からしましてフィフティー・フィフティーの管轄権のもとに共同開発する、こういう意味で法律的には大変むずかしい方式をとったわけでありますけれども実態といたしまして二つの国が共同して石油開発するのだ、そのこと自体双方の国にとってこれはそれぞれ利益があることであり、しかもこれは石油というこれから大変不足ぎみになっていく、一九八五年になりますと需要の伸びに対しまして供給の方はふえない、こういうことになってくると言われておるときでありますので、したがいまして、現在の状況、国際環境下におきまして開発を進めるためにはどうしても両国で妥協し合って開発するしかない。しかも両国が開発をすることによりましてやはり両国国民の双方の利益になるんだということで、これが非常にマイナスであるというふうに考えることは私はどうかと思います。  仮にこの共同開発が成功した場合にその生産物も半々になるではないかということでありますけれども、投下する資本自体も半々でありますし、そういう意味で、これが経済的に成り立つかどうかということも、これは必ず石油開発経済的に成り立つという保証もございません。     〔武藤(嘉)委員長代理退席委員長着席〕 そういう意味で、それぞれ資本も持ち寄り、そしてその結果として生産物も半々にするというような開発は世界のどこでも行われていることでありますから、それが国益に非常に反することであるというふうには私どもは解しておらないのでございます。
  119. 中村重光

    ○中村(重)委員 大臣日本の国益に必ずしも反するとは思わない、これがプラスであってマイナスでない。問題はそれの判断の問題なんですね。いま石油を掘っていないんだから、共同開発をすることによって石油を幾らかでも開発をすることができるんだということだけを考えれば、それはプラスという形になるだろう。しかし、やはり大陸棚というもの、これは国際法というものによってきちんとしているということですね。その点について、この共同開発というものが、韓国は日本寄りで共同開発をするだけにそれだけプラスになる、日本の側に入ってきただけ日本はいわゆる国益的に見るとマイナスになるということだけは否定できないということになるんじゃないか。  それと問題は、韓国は大陸棚が続く限り自国の権利が及ぶといういわゆる自然延長論をとった。日本としては等距離中間線論をとって、いまお話があったように政治的妥協ということになった。北部地域の方はこういう形になってない。そこに矛盾の一つというものも実はある。  ところが、同僚諸君から何回も繰り返し繰り返し質疑が行われたように、日本と韓国だけの問題ではないというところに国際的な問題というものが起こってくるし、いわゆる紛争というような形に発展をしているということは私は否定できないと思う。しかも条約局長は正当性を強く、まあ確信みたいな形でもって答弁をしているその答弁内容を考えてみましても、この境界線というのは国際法によって確認された境界線ではないんだ、非常に慎重に実は考えてこれを決めた、言いかえると主観的に境界を決めたということに中国の抗議というものが起こってきているというように思うのです。  私もいろいろな資料を実は調べてみたわけでございます。海図であるとかいろんな資料でもって勉強をいたしてみましたが、これは時間の関係もございますから、またそのことについては同僚諸君の質問にも重複することになりますから避けます。恐らく大臣も同じような気持ちをお持ちではないかと思うのですが、長崎県の五島から鹿児島県の奄美大島まで、これは八千二百万平方メートルの海域に及んでいる、こんな広い海域ですね。そして、これは朝鮮半島の南側からこんなに遠く離れている海域に韓国の開発権を認めたということは大体余りにも無理だったということ、そこにまた中国の、何回も申し上げますが、中国がこの日本と韓国との協定に対して、韓国の大陸棚が自然延長しているということについては異議がある、中国の大陸棚というものも自然に延びてきているんだ、だからして日韓共同開発というものは中国の権益を阻害するものであるということですね。私どもがいろいろな地図であるとかなんとかを見てみましても、そういう中国の主張というものに説得力がある感じがいたします。  そのことをアジア局長だって否定できないのじゃないですか。国際法に照らして確固たる方針を持って科学的にこれが決められたということではないということを、これは昨日の答弁でもあなたはお答えになっているのですから。慎重には考えたけれども、これは日本の主観によって決めた中間線であるということです。それでもって中国の主張というものを退けるということにはならぬ。余りにも高姿勢である。外務大臣は、中国に対して理解をしてもらうために誠意をもって当たりたい、開発をする者が不安のないようにしたい、そういうことで接触を持ちたいということで努力をしてきたんだ、またそうしたいんだ、中国も訪問したいんだというような答弁をなされておる。しかし、アジア局長は、了解とか了承というものじゃないのだ、そういうものでないということを中国に知らしめるために、これを説明するために会おうと二十回くらい繰り返したけれども、そういう接触をすることにならなかった、こういうことを言っているんでしょう。  そのことを考えてみただけでも、中国が言っていることは間違いである、当たらないのだ、そう退けることにはならないのじゃないか。やはり関係国、日本と中国と韓国とそれから北朝鮮も関係があるわけでありますから、それから関係国が集まってテーブルについて、そして話し合いをするという場をまず持つということが必要であった。それをやらないで外務委員会における協定を強行してしまったというところに、今日中国から数回にわたって抗議というものがなされておるというように考えるのです。そのことまで否定なさいますか。外務大臣、いかがですか。
  120. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この大陸棚の開発を平穏に円満に実施をいたしたい、こういうふうに私、真剣に考えておるわけであります。そして中国側にこの大陸棚の共同開発区域に対しましての本当に理解を得たい、これはもう真剣にそう考えております。  ただいま中国側の見解というのが、これは大平外務大臣が先方に御説明をした後で、先方から外交部スポークスマン声明の形で出されたわけでありますけれども、そこで中国は、アジア大陸と申しますか中国の沿岸であります中国側から発達をした大陸棚は、すべて中国の主権の及ぶ大陸棚であるという見解をどうもとっているように見えるわけであります。御承知のように大陸棚は、日本もそうでありますが、朝鮮半島も日本も同じ大陸棚の上に乗っておると解しております。それに対しまして中国の方は、中国大陸の方から発達した大陸棚である。そういたしますと、日本は大陸棚というものは一切全然持たなくて、中国の大陸棚が日本の下までずっと発達しているというところまで主張しているやに見えるわけであります。これは領海はもちろん除かれると思いますけれども、そういうように東シナ海、中国流で言えば東海でありますが、東海に発達しておる大陸棚は中国の主権の及ぶ範囲だ、こういうような解釈をとったやに見受けるわけであります。  その点につきましては、日本といたしましては、これは発生過程がどうであろうか、地形がどういうふうにできたであろうかということではなくして、やはり同じ大陸棚に乗っている相対する国というものはその中間線で区切るのが妥当なところで、そのほかの区切り方につきまして何らかの話し合いがあり、あるいはその中間線以外のところに線を引く方が妥当であるというような、何らかほかの要素があれば別でありますけれども、そういうものがない場合を考えますと、お互いやはり半々というのが常識的なところであり、現にソ連の漁業水域につきましては、日本海全体につきまして等距離中間線をもってその限界とするということで、ソ連は線引きをしておるわけでございます。そういう意味で、それぞれの国が、これは当然自分の管轄権の及ぶ範囲である、こういうふうに考えて、それぞれの国が国内的な措置をとりましたり、あるいは隣国とその点につきまして協定を結んだりすることは、現在の国際法制度のもとにおきましては当然ある程度認められておるところであろう。その開発区域を決めるに当たりまして、これが万が一にも中国の主権を侵すようなものであってはならないということで、これは慎重に配慮をいたした。  昨日も議論がありました座標の六、七、八という点が、これは日中の間の本当の等距離をはかった線として、そういう線をかいたということでありますけれども、仮にいま中国が自然延長論、韓国が自然延長論をとったという場合に、問題は、沖繩海溝がありまして、その沖繩海溝で日本側の大陸棚は切れているはずだ、中国側の大陸棚、韓国側の大陸棚が沖繩海溝まで続いているんだ、こういう解釈であるといたしますと、中国と韓国との間に同じ大陸棚は海溝、みぞがありませんから、やはりそれはお互い中間線で引くしかないではないかという考えをとっておりまして、日本は、沖繩海溝というものはひだにすぎないから、中国も日本も同じ大陸棚に相対しておるという解釈をとって、日本といたしましては、中国との間にその真ん中で線を引くべきだ、こういうふうに考えておる。こういうことで、しかし、もし沖繩海溝というものでそこは切れているんだという解釈がありとすれば、そこは韓国と中国との間に真ん中に引かれるべきことであろう。  そういう意味で、どっちから考えましても、中国の主権的な権利、管轄権的な権利というものをこの案は決して犯していないんだ、こういうことを申し上げておるわけでありまして、そういう意味で、その点をよく中国側に理解してもらえれば、私は、この開発というものは必ず円満に開発することができるというふうに考えておるところでありまして、そのために私自身はあらゆる努力をいたさなければならない、いたすべきであるというふうに考えておるのでございます。
  121. 中村重光

    ○中村(重)委員 大臣からいまお答えもございましたように、共同開発地域の周辺というのは、日ソであるとか日朝ソであるとか日中であるとか日韓であるとか、そういう大陸棚が非常に複雑に入り込んできているということなんですよ。自然延長論の問題も韓国も言っているし中国も言っている。だから、韓国とだけ話し合いをやって中国の主張というものに耳を傾けないで強行した、してから話し合いましょう、こういうことは私は余りにも一方的過ぎるということを言わざるを得ないのです。また、いまの大臣答弁にいたしましても、こう思う、こう思った、こういうことです。国際法に照らして確立したものがない。その確立した上に立って対処していないというところに国際紛争というものが起こってくる原因があると私は思うのです。雇いは、藤山さんが中国においでになって、そして廖承志さんとか李先念副首相に会ったときも、相当強い調子で中国側の意見を言われたのだと思うのです。ちょうど藤山さんが北京においでになったその日に私は北京を立ったのですが、孫平化さんと私も会ったのです。私から言い出したのではなくて、孫平化さんから相当強い口調で、余りにも日本は一方的過ぎる、数回にわたって抗議をしているにもかかわらず日本は誠意を示さないのだ、私どもはこれを無視するというような強い調子であった。二十名の団で、私が団長で行ったわけでございますから、実はみんなそのことを聞いているわけです。  これではいけない。協定の方は強行してしまった。しかし、まだ批准はなされていない。特別措置法が商工委員会にあるわけだから、この国内法の審議の中で、できれば審議に入る前に、前国会で一巡するという形で一応審議に入って継続審議になっていたわけですけれども、これ以上やらない段階において中国との話し合いをしていくのでなければ、日中平和友好条約の締結の問題もあることだから、ともかく日本はもっと誠意を示して話し合いをすべきである、私はそういう考え方を強く持って帰ったわけでございます。  このことは、要は政府・与党がどうするかという問題ですよ。恐らく十六日には議了しようというような形で与党といたしましても慎重審議の時間を認めてきたということもあるわけでございますから、私どもといたしましては慎重審議をし、答弁を伺ってみてもこれを成立させるということは無理なんだ、国内法だけでも残しておく必要があるという考え方の上に立っていますけれども、どうしても与党はきょうこれを議了しよう、採決しようという構えでございましょうから、まあこれに対しましては、物理的抵抗をやろうとは考えていません。ただ、政府・与党が本当に真剣に、慎重に対処していくのでなければいけないということだけは繰り返し申し上げたい。やはり正当性がない、非常に合法的でないということだけは、答弁を何遍聞いてみましても私どもは納得できない。  また、朝鮮民主主義人民共和国に対しましても、きのうアジア局長も、それは南と北の関係だ、そちらで片づけていらっしゃい、そういう言い方です。朝鮮民主主義人民共和国が言っているのはそうじゃないのです。中国の主張のような、具体的な大陸棚の問題について自然延長であるとかなんとかという形で言っているのではなくて、南北朝鮮というものは統一をしなければならないのだ、そういう考え方の上に立って、南北朝鮮の統一を阻害するようなそういう態度をとるべきではないのだということを言っている。だから、国連でも南北朝鮮の問題は議論になっているのです。日本も北朝鮮との間に国交がないんだというようなことで簡単に片づけるべきものではないのであって、早く接触をして国交を結ばなければならぬということになるわけです。  しかもアメリカと北朝鮮との間にはもう折衝が行われているのですよ。かつては中国に対しましても強い姿勢で臨んでおった日本、ところがニクソン訪中、こういうことになって、もうにわかにあわてふためいて国交回復をやらなければならぬという形になってやったということも、私はお忘れにならぬだろうというように思います。この日韓共同開発を無理をすることによって日本政府には非常に重い負担がのしかかってくるであろうということについても十分配慮し、反省もしていただきたいということを私は強く要請をいたしておきたいというように考えます。  そこで、昨日土井委員から質問をいたしましたことについて触れてみたいと思うのですが、この関発区域の画定、いわゆる線引きですね、これは座標各点を順次に結ぶ直線によって囲まれた大陸棚の区域とするというようにこの協定で定めているわけですね。それで付属書類としてこの地図でもって表示されているのです。これに対して、三海里から十二海里になった、そして日本の領海に食い込むことになった、だから、これは国際法によって領海の中に共同開発区域を設定すべきではないという点から、これを口上書でもって変更する、それを確認し合う、こういう形になっているわけですが、口上書の性質とか性格、有効性というものはどういうことになるのでしょうか。
  122. 中江要介

    ○中江政府委員 冒頭に先生から、私の過去における答弁が高姿勢であるという御批判をいただきましたが、私自身は決して高姿勢で答弁しているという意識はなくて、ただ、物事ははっきり申し上げた方が誤解がなくていいかと思いまして、一つ一つの問題にはっきりお答えしているということでございますので、そこは誤解されませんようにお願いいたします。  ただいまの御質問の口上書の性格、一口で口上書の性格といいますと、これは外交文書の一種でございまして、いろいろに使われるわけでございますが、いま問題になっております口上書といいますのは、御指摘の大陸棚の共同開発に関する部分の、共同開発区域の中の日本の領海が十二海里に延びることによって大陸棚でなくなる部分がどこかという問題について、韓国との間で誤解のないために、念のためにその場所をはっきり確認するという目的で交わされた口上書である、こういうふうに御了解いただきたいと思います。
  123. 中村重光

    ○中村(重)委員 問題は、協定の中に一から二十までの座標ではっきり規定しているのですよ。それを三海里から十二海里になったということで、これは食い込むことになりますから、この変更を口上書でやってよろしいかどうかということです。協定の中にはっきり明記していなければ別ですよ。協定の中に明記してある。それを、協定で直さないで口上書だけでお互いにこれを交換して確認をするということか許されるだろうか。あなた方はその協定を国会にお出しになったのです。それでもって国会審議したのです。ところが、その後変更しなければならないということになった。それを国会とは関係なく、政府政府でもって口上書を交換した、これで変更した、そういうことが私は合法的であるとは考えません。口上書ではだめなんだ。協定に明記されているから、やはりそのことを変更するということで国会に御提案になって、そして国会の議決を得るということでないといけない。  しかも、きのう土井委員がここで指摘をいたしておりましたが、きょう資料としてお出しになりましたけれども、この商工委員会には資料すらお出しにならなかったということ。そのように、政府は、国会に出して協定書をまたやり変えるということは大変問題だ、こういうことで、口上書で済ましてしまおうということでしょうけれども、それは議会軽視です。私は、行政訴訟が起こったならば政府は間違いであるという形で敗訴するだろう、こう思うのです。そういうような便宜主義的なことをおやりにならないで、正式に協定書の変更を議案としてお出しになって議決を受けるということが必要ではないでしょうか。きのうは土井委員商工委員会の名誉にかけてということで御質問になっておられましたが、商工委員会審議をいたしておる特別措置法は協定を受けているのですから、大体商工委員会そのものの直接的な問題ではないわけなんです。しかし、関係があることは事実なんです。実質的に影響を受けることは間違いありませんから、したがいまして、もう協定そのものからこれを直していくということでないといけない、私はそのように考えます。それまでも否定なさるということは私はおかしいと思いますが、いかかですか。
  124. 中江要介

    ○中江政府委員 これは協定を御審議いただきましたときに国会でも御議論いただきました点でございますけれども、この共同開発に関する協定の第二条の柱書きのところに書いてございますように、「共同開発区域は、次の座標の各点を順次に結ぶ直線によって囲まれる大陸棚の区域とする。」、こうなっております。この「囲まれる大陸棚(だな)」という部分でございますけれども、この協定が署名されましたときは、囲まれているところは全部大陸棚であったわけでございます。  この協定の前文のところにございますように、この協定の対象といたしますのは「両国に隣接する大陸棚(だな)」、つまり日韓両国に隣接する大陸棚の主権の重複するところを共同開発しようということでございまして、国に隣接する大陸棚という観念が、これがなかなかわかりにくいということで御批判いただいていると思うのですが、国際法によりますと、一つの国に隣接する大陸棚といいますのは一つの国の陸地から隣接しているというのではなくて、国際法上の大陸棚というのは、領土がありまして、そこに領海という海の部分がありまして、領海の外縁からさらに沖に向かって延びているところで大陸棚と称する部分があれば、それが国際法上の大陸棚。ですから一音で言いますと領海は除かれておる。地質学上の大陸棚から領海部分を除いた領海の外縁から外が大陸棚、こういうことにこれは確定しておりますし、いまの海洋法会議審議を待つまでもなく、従来ございました大陸棚条約にはっきりそのことが書いてあるわけでございますので、これは国際的には誤解のないことだ、こう私どもは言っておるわけでございます。  したがいまして、大陸棚である部分がその後領海の幅が拡張されることによりまして領海に組み込まれますと、これは国際法上当然に大陸棚でなくなる。したがって、この協定の第二条でこういう直線で囲まれておる地域の中で大陸棚でなくなる部分は、これはいかように線で区切りましても大陸棚でないので共同開発の対象にならない。したがいまして、協定を調印しましたときに三海里の領海であるという場合には大陸棚ではあったけれども、十二海里に延びますと大陸棚でなくなるという部分ができる、この部分はこの協定で書くと書かないとにかかわらず国際法上当然に大陸棚でなくなるのだからこれは自明の理でございますという御説明をしましたところが、それでは一体どこがそうなるのかはっきりしないじゃないか、韓国はそれでいいと言っているのかという御疑問がございまして、これは韓国も日本も現行国際法に拘束されるわけでございますので、それでは、その点は韓国も同じだと思うけれども、念のために文書でもって確認しましょうと言いまして、韓国も、大陸棚でいかに直線で囲まれていましてもその部分が領海になりますとこの対象から外れるという考え方は日本と同じだし、その部分は、日本の今回の十二海里拡張に伴って大陸棚でなくなる部分は、北緯、東経で示せばこういうことになるということを文書で確認したのが口上書、こういうことでありますので、口上書は、先ほど申し上げましたように、誤解を避けるために日韓両国ではっきりと確認し合ったもので、この口上書を待つまでもなく、また、この協定を改定するまでもなく、現行国際法上当然の帰結として領海になった部分は大陸棚でなくなる、こういう立場日本政府立場である。  そうは言っても一般の人にはどこかどこだというのはなかなかわからぬじゃないかと言われる点、これは私どももそう思います。ここに座標かこう書いてございますけれども、これが一体どこかということは、地図に照らして専門家でないとなかなかわからないのでございますけれども、考え方としてはそういうことである。その誤解を避けるためにそれでははっきりと紙に書いてみればどうなるだろうかというのが、御提出しました資料にある地図でございます。
  125. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまのあなたの大陸棚と境界との関係、それは国際法上の問題としては説明をされていることはわかるのですよ。ところが、三海里ということでちゃんとこの協定の中に座標でもって直線で一線を引いて、協定の単なる付属資料ではなくて、協定そのものとしてお出しになっていらっしゃるのだから、それがその途中で変更になった。それを政府間、政府だけの何と言うのか口上書でもって変更したのを確認し合った、こういうことだけではだめなんだ。だから、国会にそれを出して、国会で議決をされてそれが変更されたのだから、変更されたならば改めてまたその変更した姿によって手続をとって処理していくのでなければいけないのだ、こう私は指摘をしているわけなんです。  変更されている区域でボーリングでもしようということになると、区域のラインがはっきりしていないとこれは間違いを起こすということだってあり得るわけなんだ。だから、国会とは無関係でそれをおやりになるということは私は間違いであるというふうに考えるのです。これは余りにも厄介なことは避けていこう、そういう考え方でおやりになる、そこに私は問題が起こってくるというように思います。だから、あなたがおっしゃるとおりだから、それならばそのとおりの手続をなさいよ、こう私は言うのです。政府政府の口上書ということだけではだめなんだということを指摘している。その場合に、協定を受けてやる特別措置法でありますけれども、関連する法律案として私どもがいま審議をやっている真っ最中なんだから、だからそういう手続をされなければ無効であるということを私は指摘をいたしておきたいというように考えます。外務大臣、これは重要な問題点であるわけですから、私の指摘ということが間違いだとお考えになりますか。
  126. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 御指摘のような協定自体を修正するということが一つの方法であることは、私は否定するものではございません。しかしながら、大陸棚というものは領海部分を除いたものだ、このような解釈をすることで合意が得られるならば、これはわが国にとりましても一番国益に合致するところであるというふうに考えるわけであります。なぜならば、一度これはこのように区画として約束をしたものであるということになった場合には、これは仮に韓国側がこの区域でなければだめだ、こういうふうに主張された場合にはなかなかめんどうな問題になるわけでございます。そういう意味で、両方の解釈として大陸棚という観念が双方として領海部分を除く、こういうことで双方で見解を統一するということが、私は日本といたしましても一番国益に合致するところであろうというふうに思うわけでありまして、幸いに、先方もそれにつきましては同じ理解を示してくれたわけであります。  さて、しからばこの協定を見た者が非常にわからないではないか、こういうお話でありますが、これに直接関与いたしますものは鉱業権者でありますので、鉱業権者につきましては十分この趣旨を徹底することができる、この口上書もよく付して、このようになっているということで理解を深めることができるわけであります。  それから第三には、この区域はそれぞれ現実の鉱業権の対象になるわけでありまして、それは小区域についてこれが定めてあるわけでありまして、現実に鉱業権の対象といたす場合におきましては、その点は誤解のないように、はっきりした区域を示して鉱業権の対象にすべきものというふうに考えているところでございます。
  127. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまのお答えでありますけれども、私は、協定の変更という形で法的な手続をすべきである、そうでなければ無効であり、違法であるということを指摘をいたしておきます。  次に、進んでまいりますが、その前に外務大臣から、中国に理解をしてもらいたい——外務大臣言葉をそのまま申し上げると、理解をしてもらうために誠意をもって話し合いをしたい、そうでないと、開発に当たって不安というものがあってはいけない、こういうことでございますから、中国との折衝というものは今後どう進めていこうとお考えですか。
  128. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 中国側に対しましては、あくまでも礼を尽くしまして、中国の主権をいささかも侵すものでないということを私自身もあらゆる努力を払いまして、この点は理解を求めたい。特に、先ほどお触れになりました藤山愛一郎先生の御一行に対しまして李先念副総理が言われました点は、私どもといたしましては、きわめて心外と申しますか、大平外務大臣が説明をされた経緯等につきまして、もう一度これはよく理解をしていただかなければならないし、また、共同開発区域自体の性質につきましても、これは十分理解を得なければならない、このように考えて、なるべく早い機会におきまして、私自身もその点は十分説明をいたしたい、このように考えております。
  129. 中村重光

    ○中村(重)委員 理解をしてもらうために誠意をもって対処していきたい、こういうことですか、それであるならば、この国内法の成立をむしろ保留をして、そして中国との折衝をすべきである、こう私は思いますが、大臣見解はいかがですか。
  130. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 それは、共同開発の協定自体が国会の御審議をいただいた、そして円満な開発、合理的な開発を進めるためには、どうしても国内法が必要である、こういう観点に立って国内法の御審議をお願いをしているわけでございます。国内法をこの国会でぜひとも御承認を賜りたい。そのために全力を尽くしているわけでありますが、この国内法の御承認をいただきました暁におきまして、私といたしまして中国側によくこの点につきまして日本政府の考え方を理解してもらう。これが物事の順序であろう。万一、この国会で御承認いただけません場合におきまして、この先どのようなことになるかわからないわけでありまして、したがいまして、ぜひともこの国会で御承認をいただいて、その上に、中国との間におきまして、日中国交のための阻害要因にならないように最善の努力をいたしますとともに、もう一つの懸案でありますところの平和友好条約の早期解決という点につきまして、あわせて努力をいたしたいというのが率直の気持ちでございます。
  131. 中村重光

    ○中村(重)委員 いつごろ訪中をする御予定ですか。
  132. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 訪中の時期につきましては、政府・与党で御検討の上決定をされるものと期しております。
  133. 中村重光

    ○中村(重)委員 そうすると、外務大臣としては、訪中をして理解をしてもらうための努力をしたいという考え方は間違いないのですね。
  134. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 そのように努力をいたします。しかし、ぜひともこの国会でこの法案は御承認をしていただきまして、その暁におきまして努力をさしていただきたいのであります。
  135. 中村重光

    ○中村(重)委員 同じことの繰り返しになりますから、このことについてはこれ以上申し上げませんが、国際信義というのか、外交というものが、そういう既成事実をつくって、そうして、こうしたからのみなさい、そういうことで相手に理解させようとすることそのものが私どもの常識では考えられません。ましてや、外交ということになればなおさらではないか。中国が言っていることも韓国が言っていることも、自然延長論という点については同じなんだから、韓国の言っていることだけをあなた方は受け入れて、中国の言っていることは否定をして、ただ関係国だから理解をしてもらうように努力をしよう、そういう考え方というものが、外交的な手段というのか、儀礼というのか、そういうことであり得る姿であろうかというように考えますと、間違いであるということを私は申し上げたいわけでございます。
  136. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまの点は、お言葉を返すようでございますけれども、韓国が自然延長論を言っておる、中国も言っておる、こうおっしゃいますけれども、そうであるならば、韓国と中国ともし同じ自然延長論に立つのでありますと、韓国と中国との間は当然韓中の中間線というものがあるわけであります。日本がもし、韓国と同様に、中国との間に共同開発をしよう、そういうような発想があるとするならば、いまの共同開発地域から南の地域についてでございます。そこは、中国が自然延長をして沖繩海溝のところまでが自分の大陸棚である、日本は沖繩海溝より東の部分が日本の大陸棚だ、こういうような主張があるとするならば、そうしてその地域をもし共同開発をしようとするならば、その地域におきまして、日本はまさしく韓国と同じように日中と主張が対立するわけである。そしてもしそこの地域を早急に開発しよう、そうしてお互いに主権を譲れないということになった場合に、もし共同開発をするということになれば、日本は中国との間に、それは韓国は全く関係なしに、日本と中国との間で共同開発協定を結ぶことが、これは理論的に可能な地域であって、それは韓国とは全く無関係のことだということが言えるわけであります。  したがいまして、いま韓国との間に自然延長論でやった、中国も自然延長論じゃないか、韓国の自然延長論はとって、中国の自然延長論はとらないのはおかしいじゃないかとおっしゃれば、いま私が申し上げたように、それはいまの共同開発区域から南の区域はまさにそういう区域なんだ、もし中国が日本共同開発をしましょうということになった場合に、恐らく同じ方程式が使えるかもしれないと思います。しかし、そういうことよりは、境界線をはっきり決めた方が、お互いにその境界線で割ったところで開発をしようという方が私は好ましいと思いますけれども、そういう関係にあることだけは御理解をぜひお願いをいたしたいのであります。
  137. 中村重光

    ○中村(重)委員 また延びますから多く申し上げませんが、私はそうは思わない。いわゆる韓中の関係だというのではない。中国は韓国の大陸棚自然延長はないということを指摘をしているし、私どもが持っているいろいろな資料を見ましても、韓国の大陸棚が自然に延びておるというようには考えていない。中国の主張というものはきわめて説得力がある、自然であるというように考える。仮にあなたが言われるように韓中の問題であるとするならば、韓中との間に問題があるのだから、だからして韓国と日本との間において共同開発をするということは一方の主張のみを認めたという形になるわけでございますから、それは合法的ではないということを指摘しておきたいと思います。  次に、これは外務省にも通産省にも関係をすることでございますが、この共同開発区域の東半分は水深二百メートルから一千メートルの大陸棚傾斜面に当たるというように言われているのです。西半分はその大部分が隆起帯に当たる。いずれをとりましても掘削には適しない海底条件ではないかというように実は考えるわけでございます。私どもの資料を見てのことでございますから、外務省としてあるいは通産省として、この点はどのような資料によって掘削適正の海域であるというようにお認めになったのかはわかりませんけれども、平均水深が二百メートル、そうすると採掘条件としては非常に悪いのじゃないかというように思います。こうした条件が悪いということになってくるとコストも割り高になる、投資効果というものも非常に低いのではないかというように思われますが、この点に対してはどのように理解をしていらっしゃいますか。
  138. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 私たちの承知いたしておりますところでは、この共同開発区域の水深は七十メートルから千百メートルの間にあるというふうになっております。その六〇%から七〇%までが水深二百メートルより浅い地域である、かように理解いたしております。いままでわが国の周辺大陸棚でいろいろ試掘をやっておりますが、たとえば常磐沖におきましては水深二百十一メートルのところで試掘に成功いたしております。それからまた、世界的には、七六年にタイの沖合いにおきましてエクソンが千メートルを超える試掘実績も持っておる、かようなこともございますので、この地域の水深が試掘に支障を来すというふうには考えておりません。ただ、御指摘のように今後の調査結果にもよるわけでございます。どの程度コストに影響するかということは、さらに本格的な探査、試掘等を行った上でないと判断できないかと考えておるわけでございます。
  139. 中村重光

    ○中村(重)委員 そのことについてはこれ以上触れません。平行線になるだろうと思います。  掘削による汚濁についてお尋ねをしますが、掘削による汚濁は、黄海から日本海沿岸にわたる非常に広い地域に漏油事故というものが起こったら大変なことだというように感じるのです。ところが、海洋汚染防止及び除去に関する交換公文というのがあるわけですね。日本側としては既存の法律もあるわけですし、また交換公文によって万全を期していかれるであろうというように感じるのですが、韓国はこの交換公文によってどのような汚濁防止に対するところの措置をとっておると理解をしておられますか。
  140. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 ただいま御指摘のとおり、日本だけでなく、韓国も当然この交換公文に定められておる基準に従って万全の措置をとる義務を負うわけでございます。  その点で、現在韓国で実際にどういう法令の整備が進められておるかということを簡単に申し上げますと、まず、日本の公害対策基本法に相当するものとして公害防止法というものがございます。これは一般的に大気汚染でありますとか騒音、水質汚染というようなものについて規制いたしております。  次に、海洋汚染防止法でございますが、これはまだ韓国では制定されておりませんが、すでに現在開会中の韓国の国会に提出済みであるというふうに承知いたしております。韓国側から私どもが聞きましたところによりますと、近いうちに保健社会委員会に付託されて、十二月のなるべく早い時期に議了していただきたい、こういうふうに思っておるということでございました。この海洋汚染防止法は船舶及び海洋施設などから排出する油、廃棄物等の規制を定めるものでございます。  次に、海底石油開発に直接関係いたしますものとしましては、先生御案内の一九七〇年一月制定されました海底鉱物資源開発法というものがあるわけでございますが、ここの第二十九条におきまして公害防止及び航行の妨害禁止について定めております。また、その第三十三条でございましたかに、この海底鉱物資源開発法に定められているものを除いては鉱山保安法を準用するということがございます。  この鉱山保安法につきましては、これの施行規則として鉱山保安施行規則というものが商工部令で決まっておるわけでございますけれども、これは主として炭鉱その他陸上で採掘する鉱山に適用されることを前提としてつくったものでございますので、現在、石油鉱山保安施行規則というものの制定を準備中でございまして、これは国会にかける必要のない商工部令ということでございますので、近いうちに制定できるのじゃなかろうか。この石油鉱山保安施行規則におきまして、この交換公文に定められておりますような噴出防止装置の設置義務であるとか、そういう詳細が決まってくるということのように承知しております。  このように、韓国といたしましてもこの交換公文に従ってこれを満足させるような十分な規制措置を現在法令上整備しておるというふうに私ども理解いたしております。
  141. 中村重光

    ○中村(重)委員 水産庁の恩田次長に御見解を伺ってみたいのですが、交換公文によって韓国側もいろいろ汚濁防止に対する法的措置をやっているということではありますが、まだこれからということだ。同時に、注意しなければならぬことは、油汚染事故の公海上の措置に関する条約というものも日本は批准をしているが、韓国は批准をしていない。いろいろ不安というものがあるわけであります。     〔委員長退席山崎(拓)委員長代理着席〕  ところが、きのう恩田次長答弁を聞いていると、いかにも水産団体は、条件は出しているようでございますけれども、積極的にこれに賛成しているかのような印象を受けるような答弁というのがなされている。大体水産業者が、アジであるとかサバであるとかブリであるとかあるいはタチウオであるとか、そういったいろいろな魚の産卵地で油の採掘をやるということについて、水産業者という立場からこれに賛成をするということはあり得ないのじゃないか。非常な不安はあるけれども、これは国益であるというようなこと、いまエネルギー問題というのが非常に重大な問題であるからやむを得ない、これこれの点を満たしてもらえるならばまあ納得をするという気持ちで、消極的な警戒的な態度でなかったのかということ、その点はどう把握をしていらっしゃるか。  昨日長崎の例をお出しになって、長崎の漁業団体が集まって議論をして、これを受け入れるようにしたというようなことでありますが、私も漁連会長であるとか信連会長であるとか、多くの方々と接触をいたしました。やめてほしい、けれども、この共同開発日本が拒否するということになると、日韓漁業条約というものが破棄されるということになるのではないか、そうしたら大変なんだから、それだけは何とか防止したい、こういうことで、共同開発そのものには反対だけれども、これを拒否した場合における報復というか、そういうことをおもんぱかって、やむを得ずこれの反対に立ち上がっていないということが事実であろうと思うのでありますが、その点をどう把握しておられるか、そのような漁民の不安をなくすために、今後どのように水産庁の立場から対処していこうとお考えになっていらっしゃるのか、伺ってみたいと思います。
  142. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 私ども関係の漁業者といろいろお話しした際に、やはり関係漁業者といたしましては、漁業の面のみを、特にその地域の漁業の面のみを考えれば決して好ましいことではないということは、何遍も言っておられるわけでございます。先生御指摘のございましたように、日韓のいろいろな漁業の関係、その他の全体の情勢からやむを得ないという御判断で、ただしこういう条件は絶対満たしてくれなければ困るよということで示されたのが三つの条件でございます。  その三つの条件を繰り返しますと、鉱業権の設定、開発計画の実施等に当たっては関係大臣と十分協議してほしいということ。それから二番目が、公害の発生のないよう十分な措置をしてくれということと、さらに万一不幸にして事故が発生した場合には損害賠償の措置を十分にとってほしい。それからさらに三番目といたしまして、漁場の喪失、漁業活動の制限等の事態に対しまして補償をしてほしい、こういう条件でございました。  私どもはこれを受けまして、関係各省といろいろ御協議を願ったわけでございまして、まず第一番目の、鉱業権の設定あるいは開発計画の実施に当たっての関係大臣との協議ということにつきましては、特にこの協定の中にも、あるいは法律の中にも十分入れていただいたとわれわれは考えておるわけでございますけれども、まず、日韓の両国の開発権者が共同開発事業計画をつくることになっておりますが、この事業計画のうちの一つの必須事項といたしまして、漁業との調整という項目を取り上げていただいております。  この項目につきましては、通産省ともいろいろお話し合いをいたしまして、まず第一番目に、日本側の漁業者との接触は日本側の企業が当たること。それから二番目といたしまして、探査に当たりましては漁業者と協議の上盛漁期を外すこと。それから第三番目といたしまして、坑井を掘削される場合には、個々に関係漁業者の了承を得ること。それ以外にもございますけれども、まずそういうことを基本方針として、共同開発事業契約の中にうたっていただく。これは当然のことでございますが通産大臣の認可ですが、その認可をされる際には、漁業との調整の問題につきましては、農林大臣と協議していただくというふうにしておるわけでございます。従来一般の場合にもほぼ同様な措置が指導のもとにとられてきたわけでございますが、今回は協定あるいは法律によってこれらの事項が明白に法定化されたということは、一つの進歩であると考えております。  それから二番目に、公害の発生しないような措置でございますが、これは先ほど御議論のございました海洋汚染の防止のための措置として交換公文が交換されているわけでございまして、その中に噴出防止装置あるいは油の排出、汚染の防止及び除去等、講ずべき措置に関してうたわれているわけでございます。これらは十分守っていただけるものとわれわれは考えておるわけでございます。  それからさらに、もし万一不測の事故が起きまして漁業その他に損害が生じた場合には、これは当然なことながら、漁業者としては損害の補償の訴えを起こすことに相なるわけでございますが、これらの補償につきましては、両国の開発権者が共同して無過失連帯責任を負うということが協定の上にうたわれているわけでございます。  さらに、損害を受けた日本側の漁業者は、日本の裁判所に損害賠償の訴えを提起することが可能でございますし、この裁判所におきましては、日本の法令に従って裁判が行われるということになっておるわけでございます。  さらに、漁業活動の制約についての問題でございますが、これは先ほど申し上げましたように、それぞれ坑井の掘削に当たって個々に漁業者の了解を得るということになっておりますので、それらの過程において漁業者の不満は解消し得るものだというふうに考えておる次第でございます。
  143. 中村重光

    ○中村(重)委員 通産大臣にお尋ねをいたしますが、開発に伴う資金は莫大な資金需要が考えられるわけであります。これをどう試算をし、この資金の調達についてはどのようにお考えになっていらっしゃるのか、お聞かせをいただきたい。
  144. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 いわゆる特定鉱業権を与える場合に、その事業を円滑に実施し得るための技術的能力とあわせまして、経理的基礎も審査することにいたしております。具体的に事業計画あるいは資金計画といったものが出てまいった上でないと、われわれとしても判断し得ないわけでございますが、主としてこの事業は非常にリスキーなものでございますので、そのかなりな部分が安定的な資金で確保されるようなものでなければ、その事業計画を遂行することはむずかしいのじゃなかろうかというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、特定鉱業権を設定する段階におきまして、まず資金的能力ありやいなやということを判断することにいたしております。
  145. 中村重光

    ○中村(重)委員 私が大臣ということで質問を申し上げる点は、大臣からお答えをいただきます。  政府は、必要資金の投融資の窓口として石油開発公団を考えておられるのかどうか、この点、通産大臣どうですか。
  146. 田中龍夫

    田中国務大臣 今日までの経過にかんがみまして、別途新しい組織をつくるということよりも、むしろその方が効率的ではないか、かような話が、今日はその線において進んでおります。
  147. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは、石油開発公団を窓口にしないで、別の融資の窓口をつくろうとおっしゃるわけですか。
  148. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 石油開発公団を活用するかどうかということは、鉱業権者の方がそれを希望するかどうかということが前提になってくるわけでございまして、その資金計画の中に開発公団からの出投資を希望するかどうか、具体的な計画が出てきてからでないと、その限りにおいては判断ができない、こういうことになろうかと思います。
  149. 中村重光

    ○中村(重)委員 この日韓大陸棚石油開発開発公団を鉱業権者が望んだ場合、これに対して投融資をすることになりますか、大臣
  150. 田中龍夫

    田中国務大臣 そのような場合、ただいま長官がお答えいたしたごとく、開発権者の方からそれの要望がありましたような際におきましては、開発公団の関係を私どもは改めて考えなければならぬ、かように考えております。
  151. 中村重光

    ○中村(重)委員 一九七五年五月の公団法の改正で、この日本近海の大陸棚開発にも投融資の道が実は開かれたわけであります。大臣は同僚諸君の質問に対して、このことは十分御理解になっていらっしゃるのでしょうが、この公団法の改正法案を通します際に、紛争のおそれがある地域には投融資を行わないという附帯決議をつけたわけでありますが、この点については大臣もその通り理解をしておられるのだろうか、いかがですか。
  152. 田中龍夫

    田中国務大臣 さように伺っております。ただし、その場合、まず第一点は開発公団を活用するかしないかということが第一点でありまして、その際にもし活用するとするならば、その附帯決議がついておりますことも存じております。
  153. 中村重光

    ○中村(重)委員 第一点が開発公団を鉱業権者が活用しようとするかどうかという点、これは活用しないということであれば無理に押しつけて投融資をするわけじゃないのでしょうから、望んだ場合ということを前提として申し上げているわけであります。その場合に、委員会の附帯決議を承知をしているということでございますから、その附帯決議は尊重されなければならぬと私は考える。したがって、日韓大陸棚共同開発に対して、鉱業権者が望んでも投融資はすべきではないということについては、大臣もお認めになりますね。
  154. 田中龍夫

    田中国務大臣 その際におきまして、紛争地域とは、この大陸棚の地点が紛争地域であるかどうかという点がまず一つ問題であろうと存じます。  なお、その紛争は、たとえば今日お話を承っております中国からのいろいろな御希望なり御要望等々が、必ずしもそれをもって紛争と申し得るかどうかということは、これは考えてみたいと思っております。  次に、その紛争というものは国際法上の紛争というもので当然あるべきであろうと思うのでございますか、これらの問題は、その時点において——まだそういう大陸棚の協定もできておりません。それから、できた暁におきましても、その開発権者がそれを要望するかしないかの問題があり、さらにそれが要望があったという場合におきまして、その時点において考えなければならぬ問題である、かように考えております。
  155. 中村重光

    ○中村(重)委員 時間の関係がありますから端的に申し上げるのです。共同開発区域に対する石油開発公団の投融資の問題は、ここにある附帯決議、これに紛争のおそれがあるところに対しては投融資をしないというふうに書いてある、それだけお読みになってそして紛争の定義ということでお答えになりましても、私どもは納得できるものじゃないのです。議論をして、その結果として全会一致でもって附帯決議はつけたわけであります。  しかも、いまお話がありました紛争の問題、戦争ではないのです。明らかに中国は数回にわたって抗議をしている、異議を唱えている、認めない、こう言っている。ならば、これは戦争ではありませんが、紛争であることだけは間違いはないんだ。  日本政府は誠意をもって、法律でも採決をしないで話し合いをするという誠意のある姿勢をお示しになろうとする考え方がない。鳩山外務大臣に至っても、まず声明をする、それを持ってきて、こうしたから聞きなさい、これは誠意をもって理解を求めるものじゃありません。そういうことで中国が納得をするということは考えられない。この紛争の定義を国際的にどうだこうだというような、いまの通産大臣答弁というものは納得できません。この附帯決議をつける前にどのような質疑応答がなされたか、それを承知の上であなたはそういう答弁をしておられるのか。橋本長官は、大臣に対してどのような説明をいままでしてこられたのか。私はその誠意を疑わなければならぬと思う。議事録をお読みになったならば、どういうものかということはおわかりでしょう。  それを読み上げますが、日韓大陸棚に対する石油開発公団の投融資については、第七十五回国会石油開発公団法の一部改正の際の当商工委員会の附帯決議をつけるに当たって、このような質疑応答が当時の河本通産大臣との間に行われております。他の同僚委員質疑をなさったのでありますけれども、私が質疑をした点について申し上げます。  私が日韓大陸棚の共同開発について、中華人民共和国及び朝鮮民主主義人民共和国から異議が出ている事実を明確に指摘し、このような国際紛争のおそれのある地域に対して石油開発公団の投融資は行うべきではないと指摘し、これに基づいて附帯決議ができたわけでありますが、それに対して当時の河本通産大臣は、「これは私も当然そうしなければならぬと思います。繰り返して申し上げますと、紛争のある地域及び紛争のおそれのある地域、そこでは開発業務、投融資というものは見合わせるということにしなければいかぬ、こういうことでございます。」と答えているのであります。  さらに、私の確認する質問に対して、河本通産大臣は、「紛争を生じておるところ、または紛争を生ずるおそれのあるところ、その間は行わない、こういうことであります。」こう答えているわけであります。  ところが、通産大臣は、同僚委員質問に対しましても、私のただいまの質問に対する答弁にいたしましても、このような質疑応答、あなたの前任者である河本通産大臣答弁を全く問題にしない、無視するというような考え方の上に立っての答弁としか受け取れません。これをあなたは無視なさいますか。
  156. 田中龍夫

    田中国務大臣 私の申し上げておりますことは、その開発が公団においてなされることになり、同時にまた、その開発をいたす時点におきましてという、時点においてということを特に私は考えたいと思うのでございます。外務大臣も誠意をもって中国との交渉に当たると言われておりまするし、その開発の時点において、もはや中国側におきましては紛争というものがないような客観情勢ができておれば、それはちっとも構わないことだろうと思います。
  157. 中村重光

    ○中村(重)委員 時点も何もないですよ。私どもがこの石油開発公団法の改正案の審議の際に、中国からは、この日韓大陸棚石油共同開発に対しては異議がある、そういう抗議が行われていたわけです。だから、私どもはそれを頭に置きながら議論をして、そしてただいま申し上げたような河本通産大臣答弁となって、その質疑応答の上に立って全会一致でもってこの附帯決議をつけたのです。だから、その段階も何もないのです。中国との間で鳩山外務大臣が誠意をもって話し合いをして、そして中国も了承してそういう問題が解消されておるときに、初めて石油開発公団の投融資というものが行われるべきものであります。その段階において、そういうごまかしをもってこの委員会をあなたは乗り切ろうとなさいますか。附帯決議を、前任者の質疑応答をあなたは無視をすることができますか。いかがですか。
  158. 田中龍夫

    田中国務大臣 これは大陸棚の問題につきましての中国側の関係が、日中の関係のいろいろな調整によりまして、その時点においてはもはや紛争の地点でないかもわかりません。そうなれば、中村先生のおっしゃるような紛争の前提となることがなくなってしまうと思うのであります。私どもはそれを希望いたしておるのでありまして、まだこれから幾多の紆余曲折と申しますか、経緯のあることでございます。私は、開発公団がもし適当であるということになりましてそれを担当するように相なりましても、その紛争なるものが、また中国の御了承なるものが、これを開発する時点においてはもう解決しておるということを心から待望いたしております。
  159. 中村重光

    ○中村(重)委員 そう回りくどくお答えにならないで、端的に言っているんだから端的に答弁しなさいよ。  中国が理解を示し、了承をして、この問題が円満に解決をするならば、融資をしても投融資をやってもこの附帯決議の線に沿ってやったということになるのですよ。しかし、現状のような状態の中では、これは河本通産大臣と私との質疑応答から見ましても、それを受けた全会一致の附帯決議からいたしましても、投融資をすべきではないということは明々白々たる事実なんです。やってはいけないことは。だから、現状のような状態解決をしない限り、委員会におけるところの質疑、前大臣答弁、全会一致のこの附帯決議を尊重して対処いたしますとあなたは御答弁になるのがあたりまえじゃありませんか。いかがですか。
  160. 田中龍夫

    田中国務大臣 私は、冒頭申し上げたように、これが実際に始まるまでの間に両国の間の解決が円満にまいることを心から希望いたします。  それからまた、ただいまの時点はどうかという問題でありまするが、これはまあ見解の相違かも存じませんけれども、外務省がるる申し上げておりますように、中国側の方の希望なりなんなりは二十回にわたってのお話し合いがあったようでありまするが、これをもって紛争と規定するということにつきましてはいささか考えておる次第であります。同時にまた、一日も速やかに解決することを心から希望いたします。
  161. 中村重光

    ○中村(重)委員 その紛争の定義とかなんとかということをいま改めてあなたに聞いているのじゃないのですよ。この附帯決議をつけたときの状態と現状とは、むしろ中国は日本政府の態度に対して憤りを感じている、さらに問題はこじれている、そういう意味の紛争の状態というものはさらに深刻化している、あなたが願望されるようなそういう状態じゃない。将来にどういうことが起こるであろうか、これがうまくいくであろうか、さらにその紛争というものが激化するであろうか、そういうことをいまあなたに聞いているのじゃない。現状において、この公団法の改正の際に行われた質疑応答、それを受けて行った全会一致の附帯決議、これを尊重することが議会制民主主義を尊重するということになる。あなたは、議会人として、また政府の担当大臣として、これを尊重するということはあたりまえじゃありませんか。これを尊重いたしますか、これを無視するのですか、こう聞いているのだから、それに対して答えていただきたい。
  162. 田中龍夫

    田中国務大臣 私は、日中の関係というものはだんだんと正常化いたしつつある、のみならず、近い将来においてぜひ両国の国交の正常化を実現しなければならないと思っておるのでございます。そういうことを踏まえまして、河本通産大臣の中村先生の附帯決議の御要望のときの時点とは、私はむしろ改善されておる、このように思っております。しかし、具体的な計画が出されました段階におきまして、附帯決議を尊重いたしまして、国際法上の紛争の地域の一般の定義も参考にいたしながら慎重に検討してまいりたい、かように考えております。
  163. 中村重光

    ○中村(重)委員 そう回りくどい逃げ口上みたいなことはよしなさいよ。公団法の改正のときに行った質疑応答、当時の河本通産大臣答弁、それを受けて全会一致の附帯決議がつけられたのだから、この附帯決議を尊重すると言うのがあたりまえじゃありませんか。尊重するかどうかということ、尊重しなければならないはずだから、あなたは尊重するかこれを無視するのか、そのことだけをお答えになればよろしいのです。
  164. 田中龍夫

    田中国務大臣 もちろん尊重はいたします。
  165. 中村重光

    ○中村(重)委員 ただいまの大臣の御答弁によって、日韓大陸棚共同開発に対しては、現状の状態というものが解消しない限り、中国と朝鮮民主主義人民共和国の理解、了承、そういうものがない限り、石油開発公団の投融資は行わないということが確認をされました。  私は、最後に結論として申し上げたいのでありますが、ともかくこの日韓大陸棚石油共同開発は、紛争の素質や汚職の素質を十二分に持っていると考える。ソウルの地下鉄事業のような、いわゆる日韓協力という形においてあのような事業が行われ、日本がこれに協力をするということになってまいりますと、これに関連をするような政党とかあるいは政治家は潤うでしょう。事業者も潤っていくでしょう。だがしかし、そのために国民は犠牲を受ける。国民に対して大きな不利益を与えるということを肝に銘じていただきたいということを強く指摘をしておきたいと思います。しかも、先ほどの協定そのもの、いわゆる口上書によって合法的に行われたという形のものは不当であるということを私は重ねて申し上げておきたいと思います。この協定の改正ということについての手続をおやりになると同時に、この特別措置法というものは、そういったような面からいたしましても採決をすべきではない、そのように私は考え、政府・与党の猛省を促して、私の質疑を終わりたいと思います。  以上です。
  166. 山崎拓

    山崎(拓)委員長代理 板川正吾君。     〔山崎(拓)委員長代理退席中島(源)委員長代理着席
  167. 板川正吾

    ○板川委員 日韓大陸棚共同開発に関する特別措置法に関して質問をいたします。  私の質問は、主として、その母法となった日韓大陸棚協定がまことに不当な内容であり、いかに国益を損なうものであるかという点について、国際海洋法会議の動向などから明らかにしていきたい、こういう立場質問をいたしてまいりたいと思います。  まず、この協定締結に至るまでの経過について、私は次のように理解しておりますが、念のために私の理解を申し上げて、それから質問に入ります。     〔中島(源)委員長代理退席、林(義)委員長代理着席〕  東シナ海の海底石油が注目されるようになったのは、一九六八年十月十二日より十一月二十九日までの四十八日間、国連アジア極東委員会の下部機関であるアジア沿海鉱物資源共同探査調整委員会が、スーパーカーによる調査を行ったことに始まる。  エカフェが調査を開始したころ、韓国は東シナ海大陸棚の領有権の設定につながる海底鉱物資源開発法を制定する動きを示した。これに対し、日本政府は、六八年十一月韓国政府に、法律内容、ことに大陸棚の範囲はわが国と直接関係があるので、十分協議するよう申し入れた。  しかし、韓国政府は、日本の申し入れを全く無視し、前述の法律及びそれに基づく施行令をそれぞれ一九七〇年一月及び五月に一方的に制定、公布するとともに、七つの鉱区を設定、米系企業に海底租鉱権を与えたのである。  そこで、わが国は、七〇年六月、一方的な開発を黙認することはできないと、韓国政府に対し抗議と話し合いを申し入れたのである。以後、大陸棚の境界をめぐり、日韓間の話し合いは三回にわたって交渉が行われた。この交渉では、大陸棚境界線の引き方について、日韓間で基本的に異なり、わが国は、日韓両国間の等距離中間線によって境界を画定することが、国際法上最も妥当な方法であるという立場をとった。  わが国は、一九七二年五月、この大陸棚紛争の法的解決のため国際調停に付すか、あるいは、国際司法裁判所に付託するかを提案したが、韓国は消極的態度を示して応じなかった、解決の見通しが立たなかったという判断をしたわけです。  そして、七二年九月ソウルにおいて、第六回日韓定期閣僚会議が開かれた際、当時の大平外相が、朴大統領に表敬訪問をした折に、朴大統領から、日韓両国の法的立場をたな上げにして、石油資源を両国で共同開発するという構想が示された。そこで九月八日、後宮駐韓大使が原則的にこれの合意の意思を先方に伝えた、こういうふうな経過をたどって、日韓大陸棚共同開発協定が成立をした。  こういうふうに私は理解しておりますが、別に政府側からこれについて異論はないと思いますが、いかがですか。
  168. 中江要介

    ○中江政府委員 大筋においてそのとおりでございますが、恐らくこれは私の聞き違いかもしれませんが、国際司法裁判所に提訴することを含めまして司法的解決を提案いたしましたのは、私は昭和四十七年五月といま聞きましたが、これは四月のことでございますので、それが四月であれば正確かと思います。  それからもう一つ、自然延長論と中間線論が並行して議論はそのまま解決を見なかったということでございますが、これは御承知のように、日韓両国にまたがります大陸棚のうち、北の半分についてはこれは中間線論で合意ができておりまして、いま先生のおっしゃいましたのは、主として南の方の話である、その二点を除きまして正確だ、こういうふうに思います。
  169. 板川正吾

    ○板川委員 四月が正当なら、それはそれで訂正をしておいてください。  外務省にお伺いをいたしますが、韓国が日本の協議申し入れを無視して、七〇年一月一日、海底鉱物資源開発法を制定して一方的に鉱区を設定したということは、これは南部開発ですが、大陸棚条約をどのように解釈をされた結果でありますか、韓国の主張というものを明らかにしてもらいたいと思います。
  170. 中江要介

    ○中江政府委員 あるいは詳細は条約局の方から補足していただいた方がいいかもしれませんが、韓国が主張いたしましたのは、その当時、またいまも有効でございます大陸棚条約の大陸棚の定義の部分は、これはこの条約の加盟国であると否とを問わず、一般国際法になっているという前提でございまして、これは日本も韓国も同じなんでございますが、この大陸棚条約の定義に従いますれば、日本と韓国とは一つの大陸棚をはさんで相対している部分と相対していない部分とがある、北の方は一つの大陸棚をはさんで相対しているから中間線で結構だ、しかし、南の方は、これは韓国の方には大陸棚はあるが、日本の方には大陸棚の権利主張の根拠はない、したがって、話し合うまでもないということで、韓国の海底鉱物資源開発法を制定したことにつきまして、特に主権的権利が重複しているとして日本が文句を言いましたいまの共同開発区域に当たる部分につきましては、韓国は、これは韓国が一方的に開発し得るもので、日本はこれに対して主張し得る根拠はないはずだ、なぜなれば日本は大陸棚を持たないから、こういう主張で一貫した次第でございます。
  171. 板川正吾

    ○板川委員 この南部の開発地域、いま問題を一応そこにしぼって言いますが、大陸棚条約第一条から、日本はこれに対する権利を主張することができないという解釈になりますか。
  172. 中江要介

    ○中江政府委員 日本は、申すまでもなくこれに基づいて権利主張ができるという立場をとって、そこで論争になったわけでございます。
  173. 板川正吾

    ○板川委員 韓国は、日本の九州西方に沖繩から北上して水深二百メートルから八百メートルぐらいの海溝が横たわっている、この海溝は日本と大陸との間を切断をしておるし、その西側にある大陸棚は朝鮮半島から延びた大陸棚だから、自然延長として韓国のものである、こういう主張をされたのでありますか。
  174. 中江要介

    ○中江政府委員 そのとおりでございます。
  175. 板川正吾

    ○板川委員 それでは、ちょっと伺いますが、この南部大陸棚の座標九、この周辺、南部の地域は一体水深がどのくらいになっておりますか。
  176. 古田徳昌

    ○古田政府委員 当該共同開発区域全体につきましては、七十メートルから千百メートルぐらいでございますけれども、先生御指摘の地点につきましては、千メートル前後の水深ということになっております。
  177. 板川正吾

    ○板川委員 韓国が七鉱区として、これは韓国の大陸棚である、こういう指定をした地域と、この日韓共同開発で決めた区域はほぼ同じでしょう。どうなんですか。
  178. 中江要介

    ○中江政府委員 詳細な微調整はあったかもしれませんが、ほぼ同じになっております。
  179. 板川正吾

    ○板川委員 条約局長、伺いますが、この大陸棚南部の、しかも南部は、私の海図によりますと千百七十メートル、千八十八メートル、千八十メートル、九百七十二メートル、こういうふうに南部の相当部分は千メートル以上の地域ですね。この千メートル以上の地域は、これでも韓国の大陸棚と言える根拠はどこにあるのですか。
  180. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 当該地域が韓国の大陸棚であるという主張は、われわれはいまも認めておらないわけでございますが、韓国側が主張いたしました理由としましては、一九五八年の大陸棚条約、これは日韓双方とも締約国ではございませんけれども、その第一条等に関しましては、それまでの慣習国際法を成文化したという意味におきまして一般国際法のルールとみなされますから、日本も韓国もそれに準拠することは差し支えないわけでございますが、五八年条約の当時におきましては、水深二百メートルあるいは開発可能な限度までという規定ぶりになったわけでございます。これは大陸棚条約を交渉いたします際に相当な議論が行われたところでございまして、結局妥協の産物といたしまして、当時技術開発の先行きがどうなるかということが十分見通しが立たないということで、二百メートルまでは問題がないけれども、しかし、二百メートルで区切るのも妥当でないということで、開発可能な限度といういわば若干伸び縮みの可能なような概念をさらに入れまして、そのような規定にしたということがございます。  ところが、五八年以来技術進歩というものが一方にございまして、また各国がそれぞれ大陸棚の開発に伴って境界画定等を行い出しました結果、必ずしも非常に浅い二百メートルあるいは三百メートル水深の部分ではなくて、千メートルを超えるような深い海底も大陸棚とみなしまして境界画定を始めたという国際慣行が始まった。したがって、韓国もそういう慣行にのっとりまして主張をいたしたというふうに理解いたします。     〔林(義)委員長代理退席山崎(拓)委員長代理着席
  181. 板川正吾

    ○板川委員 こういうことになるのでしょう。韓国が一方的に第七鉱区として設定した地域、そしてその南部は千百七十メートルの深海、水の深さを持っておる。これは、二百メートルまでの水深またはこの水深の限度を超えているがその天然資源の開発を可能にする限度までであるものの海底、こういう大陸棚条約第一条の規定を援用して、韓国としては千メートルの深海であっても開発可能である、こういうことで第七鉱区を設定したんだろうと思うのですね。  そうしますと、じゃ、この日本の九州の海溝と言われるものは、私の海図を見ますと、甑列島周辺は七、八百メートル、それから大隅群島周辺は六百メートル、それからトカラ群島周辺は六百から七百、こういうところで、水深はかえって日本の大陸棚が切断されておるという韓国の主張よりもはるかに浅いのですね。  日本側は五、六百メートルから八百メートルぐらいの水深を持っている。だから、これは大陸棚は切断されているんだ。しかし、開発可能の限度とするというならば、日本だって七、八百メートルから千メートル、韓国でできるなら日本だってできるんじゃないですか。だから、これは日本の大陸棚の延長という解釈が当然日本だってできるんじゃないんですか。韓国には千メートルの海底、千百七十メートルの海底は開発可能だと言う。日本だって七、八百メートルの海底開発は可能だ、こう言えば、日本の大陸棚としてこれは主張できるんじゃなかったのですか。韓国は千百七十メートルまで、開発可能だと、韓国が一方的に認めてそういう鉱区を設定しているんでしょう。しかし、日本はそうじゃない、もっと浅いんだ。これは開発可能でない、こういうことを韓国が一方的に決めるのは不当じゃないですか。これはどう思いますか。
  182. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 韓国側がそのような主張をいたしましたのは、いま先生が御指摘の、水深がどれだけあってそれが開発可能であるというふうな根拠に基づくよりは、むしろ、一九六九年の国際司法裁判所の判決に出ましたような自然の延長論の考え方というものかより強い裏づけになっておるというふうに思われるわけでございます。事実、その後の国際慣行によりますと、その開発可能の限度までということは、ほとんど意味も非常に明瞭でない。技術進歩によって非常に変わるということで、現在行われております国連の海洋法会議におきましては、そのような考え方というのはもう一切姿を消しておるわけでございます。したがいまして、わが国の周辺の海の深さがどれだけあるとか、あるいは韓国が主張しております地域の最後の地点が千メートル以下であるというふうなことよりは、韓国の、韓半島と申しますか、その陸地から自然の延長がどこまで延びているかということに韓国側は着目いたしまして権利主張をしたということでございます。  一九六九年の北海大陸棚事件におきます国際司法裁判所の判決によりますと、ある国がその大陸棚に対して権利を認められるのは、その国の陸地領土または領土主権が海中へ向かって自然に延長または拡張しているとみなされる事実に基づくというふうに言っておりまして、それがどれだけの深さかということはもはやこの大陸棚事件の判決では国際司法裁判所は論じておらないわけでございます。そこで、韓国といたしましては、韓半島からの大陸棚の自然の延長が終わるとみなされる地点までである、そこがたまたまいま先生御指摘のとおり千メートル以下の区域になっておるわけですが、そこまでが韓国のものであって、沖繩からはそのような自然の延長はない、その意味におきまして沖繩海溝をもって日韓の大陸棚が区切られるべきである、このような主張をしたということでございます。
  183. 板川正吾

    ○板川委員 開発可能の議論を出したのは、あなたの方でさっき言ったんですよ。水深二百メートル、その先は開発可能だ、千メートルまで開発可能だと言って韓国がここまで一方的に鉱区を設定した。あなたの方で言ったんじゃないですか。だから、その第一条の論理を日本側に当てはめれば、九州からこの開発地域はまさに千メートル以下しかない。だから、これは日本だって開発可能なんだから、これは日本の大陸棚の延長と見て日本の主張ができたんじゃないか、私はこういうことを言っているわけであって、そうしたら今度は自然延長論を出しておりますが、私は別に自然延長論を否定しようというんじゃない。自然の大陸の延長だということは、自然延長論というのは私もそれはもう当然だ、否定するものじゃない。  しかし、韓国流の自然延長論というのはそう世界に通用するものじゃないですよ。自然延長論というのは、御承知のように、拡張解釈論と制約論があるんですね。もし拡張自然延長論、そしてさらに韓国の言う開発可能の議論、こういうのが拡張解釈をされていったならば、全くこの国際法の原則である「衡平と善」の原則に反するような結果になるんじゃないですか。私は、そういう意味で韓国流の自然延長論というのは大きな間違いだ、こういう考え方を持っておりますが、以下明らかにしていきたいと思います。  先ほど来、一九六九年の西ドイツとオランダ、デンマークの間の大陸棚紛争で国際司法裁判所が下した判決が自然延長論を説いておる、これが韓国側に有利であって、中間線をとった日本には不利だ、争ってもこれは勝ちみがない、将来も自然延長論が世界の体制だから長引かせても有利にならないという考え方を外務省はとっておられますが、この六九年の西ドイツとオランダ、デンマークの大陸棚紛争に関する国際司法裁判所の判決の趣旨をもう一度言ってみてください。
  184. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 本件の国際司法裁判所の判決は、大陸棚の境界画定にいかなる原理が適用さるべきかということを示すことを主眼にいたしておりまして、現実に裁判所が線引き自体をやるということはやっておらないわけでございます。しかしながら、大陸棚制度の根幹にございます基本的な考え方につきまして非常に重要な点を述べております。  まず第一点は、沿岸国の自国領土の海中及び海底への自然の延長を構成する大陸棚に対する権利は領土主権に基づいて事実上かつ初めから存在するものである、その領土主権の延長として海底を探査しあるいは開発するための主権的権利の行使が認められる、これが国際司法裁判所として大陸棚に関する法のすべての規則のうちで最も根本的なものと考える、これが第一点でございます。  それから第二点といたしまして、デンマーク及びオランダは大陸棚か沿岸国領域に従属することを基準として近接性を主張したけれども、近接性の観念よりも一層根本的なものは、沿岸国の完全な主権のもとにある陸地領域の領土主権の公海への自然の延長または連続という原則である、ある海底区域が沿岸国の陸地領域の自然の延長をなさないときは、たとえその領域が他のいずれの国の領土よりもその国の領土の近くにあっても、その海底区域は当該沿岸国に属するものとみなすことはできない、このような点を判決の中で述べておりまして、これが私が先ほど申し上げました大陸棚の自然の延長及びこれに対する沿岸国の主権的権利に関する司法裁判所の判決の要旨でございます。  なお、その他この判決は等距離中間線というものをどれくらい尊重すべきかというふうな点も種々論じておりますけれども、その点は省略いたします。
  185. 板川正吾

    ○板川委員 まだ抜けておるところがあるのですよ。確かに六九年の国際司法裁判所の西ドイツ、オランダ、デンマークに対する判決は、自然延長の第一条の権利が基本的な権利であるということを言っております。また、第六条に対しては、これは発生の過程が必ずしも第一条、三条と同じような規範的な性格を持たないのだという意味も確かに言っております。言っておりますが、しかし、この大陸棚を画定するについてすべてに強制的にできる国際法はないと言っているのですね。だから、まず話し合いをして、そして衡平の原則のもとに話し合いで決めなさい、こういう主張をされておるんじゃないですか。  だから、確かに自然延長論、これがこの基本的な沿岸国の権利であることはわれわれも否定するわけじゃないし、その後の海洋法会議でもこれが強化されておることも事実です。しかし、話し合いによって境界の画定をすべしということがその判決の中にあり、大きな柱になるのじゃないでしょうか。その場合、韓国が一方的にこれはおれのものだから話し合いは必要ない、こういう態度をとることは、この六九年の国際司法裁判所の判決はこういう趣旨を了承したものではないと思うのですよ。この場合にはオランダ、デンマークというのが西ドイツと隣接国であります。韓国と日本の場合には対向国と言っていいくらいなんであって、どうも六九年の国際司法裁判所の判決から韓国の主張か正しいという結論はおかしいと思うのです。それはその後の国際海洋法会議の動きから見ても私は妥当でないと思うのです。いかがですか。
  186. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 境界画定に関しましては、確かに先生御指摘のように、この大陸棚事件に関する判決によりましては、領土の自然の延長ということにさらに加えまして、合意によるべきであるということと、それからいろいろな地理的状況等も勘案して衡平の原理に従ってその境界を画定すべきである、したがって、他国の領土主権の自然の延長をできるだけ侵害しないようにしつつも合意によって妥当な解決を図れということを言っておるわけでありまして、自然の延長というものをただ唯一の基準としてやれということは何ら言っておらないわけでございます。  なお、このようにして各国の主張が重複するとか合意によって決められた結果ある特定の部分が残るというふうな場合には、たとえば共同利用とか共同開発をしてはどうかというふうなことも示唆しておるわけでございます。  いずれにいたしましても、私どもは日韓交渉の過程におきまして、この大陸棚事件に関する判決というものは自然の延長の考え方を非常に明確に打ち出したということによりまして、韓国側の主張を裏づけ得るような一つの論拠として韓国が言ったという事実は認識いたしましたけれども、東シナ海におきます状況と北海におきます状況というものは決して同じではございません。したがって、この国際司法裁判所の判決というものをよりどころに韓国がいたしました主張に対しては、これに対して種々の反駁を加えたわけでございまして、私どもが国際司法裁判所に提訴しようということを韓国に提案したのも、これは北海とは異なった区域における問題であるという認識と、わが方の主張が正しいという認識があったからでございます。
  187. 板川正吾

    ○板川委員 この一九六九年の国際司法裁判所の判決で、この大陸棚第六条については規範的な効力が弱いという意味のことを言われておるのですが、その後、この「大陸棚境界画定の法理」という尾崎重義氏の論文にはこう言われておるのです。   大陸棚条約第六条に規定されている合意・等距離・特別事情の規則は、一九五八年以後の国家の実行によって広範かつ一様に受容されており、今日では、慣習国際法の規則として十分に確立していると結論することができる。大陸棚条約第六条は、採択当時の慣習法の規則を宣言したものではなかった。それは、本質的には立法的な規則として採択されたのである。しかし、その規則、すなわち合意・等距離・特別事情の三つの要素から成る境界画定の規則は、大陸棚の境界画定の現実に良く合致していたので、その後の国家の実行を通してその規則は多くの国家の受容するところとなり、比較的短期間で慣習法化したといいうるのである。 こう言っておりますね。ですから、一九六九年の国際司法裁判所のその判決は、六条を国際慣習法ではないと言っておったわけでありますが、すでに今日では国際慣習法化している、こういう説がございますが、これに対してどう考えておられますか。
  188. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 この大陸棚条約の六条自体が国際慣習法と言えるかどうかという点に関しましては、やはり当時の国際司法裁判所の判決というものの考え方が妥当であるというふうに思われるわけでございます。判決は、特別な事情なき限りというふうな不確定概念を入れているとか、あるいはこの六条に留保か許されているとか、あるいは大陸棚条約自体に対する締約国の数が少ないというふうな諸点をいろいろ挙げて、これは一つの準則ではあるけれども、慣習国際法とは言えないということを示したわけでございます。  確かに御指摘のとおり、その後の各国の慣行を見ますと、大陸棚の境界画定につきましては二十以上の条約が結ばれておりまして、その相当部分は中間線あるいは中間線に準ずるようなやり方で境界が画定されております。そういった意味におきまして、中間線というものが国家間の慣行としてかなり広範に受け入れられてきたということは言えますけれども、目下の海洋法会議におきます大陸棚あるいは経済水域の境界画定の議論を聞いてみますと、どちらかといいますと、等距離線あるいは中間線の考え方が五八年条約よりもさらに後退いたしまして、衡平の原則という概念か非常に表面に出ておるように思われるわけでございます。  すなわち、五八年条約では、特別の合意がなければ中間線あるいは等距離線というふうに定めておったわけで、これが恐らく大陸棚条約に対する締約国の数が少なかった一つの大きい理由と思われますけれども、これに比べますと、衡平という概念は、もっと海底の地形であるとか島の存在であるとかといったような諸要素を入れまして分配をしろという考え方が諸国間に強まっているのではないか、そのように思われるわけでございまして、先ほど先生がお示しになりましたその学者の考え方というのは、いまの国連海洋法会議におきます議論に照らせば必ずしも妥当な見方ではないというふうに私は考える次第でございます。
  189. 板川正吾

    ○板川委員 どうも話が、その辺か私と違うのだけれども、大陸棚条約第六条はこういうふうに言っておりますね。「向かい合っている海岸を有する二以上の国の領域に同一の大陸棚か隣接している場合には、それらの国の間における大陸棚(だな)の境界は、それらの国の間の合意によって決定する。合意かないときは、特別の事情により他の境界線が正当と認められない限り、その境界は、いずれの点をとってもそれらの国の領海の幅を測定するための基線上の最も近い点から等しい距離にある中間線とする。」等距離中間線とする。これは中間線が非常に弱くなっておって、これが国際慣習法化していないとあなたはおっしゃられるようであります。  それから二として、「隣接している二国の領域に同一の大陸棚(だな)が隣接している場合には、その大陸棚(だな)の境界は、それらの国の間の合意によって決定する。」合意によって決定することが前提です。「合意がないときは、特別の事情により他の境界線が正当と認められない限り、その境界は、それらの国の領海の幅を測定するための基線上の最も近い点から等しい距離にあるという原則を適用して決定する。」第二は、隣接する場合には等距離である。前は等距離中間線である。こういうふうに言われておって、これはまあ中間線説ですね、等しい距離も中間線になるでしょうから。  この中間線の説が世界の大勢から後退しているとおっしゃるのですか。それはどうも解せない。まあ、それは後から議論いたしましょう。  それでは、今日まで二十四の国が二国間協定で大陸棚境界を画定した、それらの国の境界画定方式をもうちょっと明確に言ってみてください。あなた、相当部分とか、何かあいまいな表現をしておるのですが、では、一つ一つ取り上げて言ってくれますか。
  190. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 それでは一つ一つ申し上げます。  まず最初に、イギリスとノルウェーの一九六五年の協定、これは中間線によっております。  それからイギリスとデンマークの協定、一九七一年でございますが、これも中間線によっております。  それからノルウェーとデンマークの間、一九六五年の条約でございますが、これは中間線でございます。  それからノルウェーとスウェーデン、一九六八年、これは中間線でございます。  イギリスとオランダの間の協定、これは七一年の協定で、中間線でございます。  それからドイツ、デンマーク、一九六五年の条約は等距離線をとっております。  それからドイツ、オランダ、一九六四年は等距離線をとっております。  それからデンマークとドイツとオランダ、これは一九七一年に中間線を、先ほどの国際司法裁判所の判決の後で再交渉の結果、かなり大幅に修正したものを採択しております。  それからソ連とフィンランドは、これは二つの協定がございますが、原則として中間線をとっております。  それからソ連とポーランド、一九六九年でございますが、原則として等距離線をとっております。  それからソ連とノルウェー、一九五七年、中間線を一部に選択的に採用いたしております。  それからイタリアとユーゴスラビアの一九六九年の条約は、原則として中間線でございます。  イランとカタールの一九六九年の協定は、中間線でございます。  アブダビ、カタール、一九六九年は、等距離線をとりつつ、部分的にこれを修正いたしております。  それからサウジアラビアとバーレーンの一九五八年の協定は、中間点の方式をとっております。  それからイランとサウジアラビアは、一九六八年の協定で、原則として中間線をとっております。  それからインドネシアとマレーシアの一九六九年の協定は、中間線をとっております。  それからタイ、インドネシア、マレーシア間の一九七一年の協定は、中間線及び等距離線を併用いたしております。  それからアラフラ海におきます豪州とインドネシアの境界画定は、一九七一年に定められた部分は中間線をとり、七二年のチモール沖に関しましては、チモール側に存在いたします海溝を考慮いたしました結果、中間線ではなくて、境界線がインドネシア側に寄った線になっております。     〔山崎(拓)委員長代理退席委員長着席〕  それから大西洋におきましては、これは古い条約で、トリニダードトバゴとベネズエラ間の協定がございまして、原則として中間線によっております。  それからカナダとデンマークの間が、一九七三年の条約で、原則として中間線でございます。  それから最後に、アルゼンチンとウルグアイの協定が、七三年のものでございますが、中間点の方式をとっておる。  以上でございます。
  191. 板川正吾

    ○板川委員 等距離線というのも、これはある意味では中間線でしょう。対向してないから等距離という表現を使ったのであって、これもある意味では中間線になる。  そうすると、この中間線あるいは等距離線でない原則で決まったというのはどことどこがあるのですか。世界の二十四のうちに幾つあるのですか。
  192. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 先ほど申し上げました一九七二年におきます豪州とインドネシアの間のチモール沖における境界画定か、その唯一の例外でございます。
  193. 板川正吾

    ○板川委員 チモール沖の海溝が深さが五百メートルから二千七百メートルばかりあります。そして幅が百五十キロから二百キロあって、こういう深い海溝があった。だからインドネシア側に寄った中間線か決まった。だから、それは等距離中間線じゃありませんが、おまえのところは海溝があるからそこで切れているんだ、それからこっちは全部豪州のものだ、こう言ってないんですね。これも条件つきの中間線だろうと思うのです。韓国が主張しておるように、隣接国あるいは対向国があったのに一方的に自然延長論で境界画定したというところはどこにもないんじゃないですか。あなたは中間線が大勢ではない、こうおっしゃっているけれども、世界のこの先例から見ますと中間線がほとんどじゃないですか。どういうお考えですか。
  194. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 実は問題が二つあると思われますので、整理して申し上げます。  まず最初に、私が中間線が必ずしも国際的なルールになっていないということを申し上げましたのは、むしろこの最近数年間におきます国連海洋法会議議論におきましては、中間線あるいは等距離線という考え方が後退を示しておるということを申し上げたわけでございまして、確かに二十四の協定の大部分が中間線あるいはそれに準ずるような規則によっていることは確かでございます。  ただ、先ほど御指摘申し上げるべき点であったと思いますが、大陸棚条約の第六条一項におきます非常に重要なポイントは、向かい合っている海岸を有する二以上の国の領域に同一の大陸棚が存在している場合に中間線によるということでございまして、この同一の大陸棚という点こそまさに日韓が争ったところでございます。両方が同一の大陸棚という認識を持っております北部に関しましては、まさに等距離中間線の原則によって境界画定を行ったわけでございます。ただ、南部に関しましては、これは海溝の存在ということもございまして、韓国の立場からいたしますと同一の大陸棚ではないという立場をとったわけで、わが国は、同一の大陸棚であるから中間線によるべきである、こういう主張がぶつかったということであります。
  195. 板川正吾

    ○板川委員 それでは、この海溝なりあるいは——これははっきり言いますとイギリスとノルウェー、これはノルウェー側に海溝があった。海溝があったから、そちらの大陸棚は切れているんだから延長ではない、こういう説、それからいま言ったチモール沖における豪州とインドネシアの関係、二千七百メートルも深い海溝があるが、しかし、それを考慮して中間線を若干インドネシア側に不利なように寄せて、理屈から言えばやはり中間線だ。だから、韓国の言うように、海溝があるからあるいは二百メートルを超えた水深があるからその大陸棚の権利は主張できないんだ、こういうような主張をしておって決まった国は世界でどこもないんじゃないですか、どうですか。
  196. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 まさにイギリスとノルウェーの間の協定におきましては、ノルウェー海溝というものを飛び越えた合意がされておるわけでございまして、この深さと申しますのは大体四百メートルから七百メートルということでございます。この点はわれわれといたしましても、もちろんかつての交渉におきまして韓国側に指摘したところでございます。ただ、一九六九年の先ほど申し上げました国際司法裁判所の判決におきましては、このイギリスとノルウェーの間の合意に触れまして、これを裁判所としては国際法に十分合致したと認める立場はとらない、もちろん国際法違反であるという立場もとっておらないわけでありますけれども、ノルウェー海溝程度の深さ、あるいは幅は五十ないし百五十キロメートルでございますが、これを無視すべきかあるいは勘案すべきかということについては、司法裁判所が判決に何らの明示的な意思を示さなかったという意味におきまして、この英国、ノルウェーの先例があるからすべてこの種の海溝は無視すべきであるという国際慣行ができたというところまでは言い切れない点か残るわけでございます。  それから、先ほどのチモールの点に関しましては、やはりこれは相当大幅にチモール側に寄っておりまして、かつ、その寄っておる理由というのは、やはり海溝があるという事実によるものと思われます。すなわち、豪州の海岸からはかりますと二百キロ以上に対しまして、インドネシア側からは恐らく六、七十キロというふうなことでございましょうから、これは中間線という原則はこの際には逸脱したと言わざるを得ないというふうに考えております。
  197. 板川正吾

    ○板川委員 しかし、その中間線の比率が違うだけで、いずれにしても相手の国の大陸棚の領域を認めているのじゃないですか。だから、私は、韓国が言うように、海溝があるからその大陸棚の権利は全然ないのだ、しかも話し合いもせずに一方的に境界を画定し、鉱区を設定するということは、私は国際的な関係からいっても不当な行為であると思います。この点は私は断じて納得するわけにはまいりません。  そこで、先ほどからお話が出ましたが、第三次海洋法会議第六会期も終わりまして、新しい海洋法のあり方か各国の合意を得て、七月十九日非公式統合交渉草案としてまとまった。その新しい国際法による大陸棚の定義というのは一体どういうふうな方向にあるのでしょう。これをお伺いいたします。
  198. 久米邦貞

    ○久米説明員 先生がただいまおっしゃいました第六会期終了の後に出されました非公式統合交渉草案の第七十六条に大陸棚の定義がございまして、これは大陸棚の一般的な定義でございますけれども、沿岸国の大陸棚とは、海底地域の海底であって、その国の領海を越えその陸地の自然の延長をたどってコンチネンタルマージンの外縁までの部分またはコンチネンタルマージンの外縁までの距離が領海の幅員を測定する基線から二百海里ない場合には二百海里までの部分を言うという定義が入っております。
  199. 板川正吾

    ○板川委員 私が配付いたしました資料の四枚つづりの三枚目を見てもらいたいのですが、この新しい大陸棚の定義は、御承知のように、水深二百メートルの基準が撤廃されておりますね。水深二百メートルでなければ大陸棚としてつながってない、こういう基準が撤廃されておりますね。これが一つです。それから沿岸からの距離二百海里基準が新しくできた。この距離二百海里基準が新設されると、共同開発区域の南部は韓国の基線から言うと二百海里をはるかに越えております。第三として、対向する国のない場合は二百海里を越えてコンチネンタルマージン、いわゆる大陸の深海に達する縁までということですね。  これがここにあるA図です。A図は、沿岸国の大陸棚はその国の領海を越えてその領土の自然の延長全体にわたりコンチネンタルマージンまで、Cのところまで二百海里を越えております。確かにこれは自然延長論の拡大でありましょう。  対向国とオーバーラップする場合にはこれは中間線とするというのが、これはDですね。aとbが相対してオーバーラップをしておる場合には、その中間線である。  それからBで、コンチネンタルマージンが領海の幅を測定するための基線から二百海里の距離に達しない場合は、同基線から二百海里までの海底区域、二百海里までは深海でも、これはこの大陸棚から二百海里まではたとえ深海でもその国の主権の及ぶ範囲とする。  Cが、aとeが相対している場合で競合していない場合、オーバーラップしない場合のことをCでは示しておるのでありますが、この解釈、図面による説明、解釈は間違いありませんでしょう。どうなんですか。
  200. 久米邦貞

    ○久米説明員 先ほど私が読み上げました統合交渉草案第七十六条の大陸棚の定義は、これは一般的な定義ということで申し上げましたけれども、主としてその大陸棚が外洋に向かっている場合を想定して書かれた定義だと思われます。二国間に隣接する、あるいは相対する二国間に大陸棚がまたがっている場合につきましては、別途規定がございまして、それは八十二条に規定がございます。したがって、第七十六条の先ほど読み上げました定義は、相手国と向き合っている場合はどうであるとか、向き合っていない場合はどうであるとかいうことを言っている定義ではないわけでございます。
  201. 板川正吾

    ○板川委員 一番上にありますが、国連海洋法条約の非公式統合交渉草案の第七十六条の大陸棚の定義、それから八十三条による隣接国または対岸国間の大陸棚の境界画定の方式、これを図面であらわすとこのようになるのじゃないですか、これは間違っていますかと、こういうことを聞いているのですが、いかがですか。
  202. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 先生がお示しになりましたDという場合は、まさに八十二条の適用の対象となる区域であろうというふうに思われるわけでございます。したがいまして、その場合には、適切な場合には中間または等距離線を利用し、あらゆる適切な状況を考慮に入れるということはございますが、あくまでこれは衡平の原則に従って、合意によって決定するという方が基本的なルールなわけでございます。  そこで、この日韓大陸棚の場合にこれを当てはめて考えてみますと、衡平の原則というものを韓国がどう考えるかということになってくるわけでございまして、この日韓大陸棚の場合には、沖繩列島からわが国の大陸棚というものは少なくとも自然の延長ということから言えばほとんどないのに対して、韓半島からの自然の延長は長い。したがって、その中間線によるのはむしろ衡平を欠くのであって、衡平の原則から言えば韓国が広範な大陸棚を自己のものにすることは当然である、このような主張をする根拠が、この第八十三条の規定ぶりから見ると出ておるわけでございます。  わが国は、海洋法会議におきましては、できる限り中間線理論をもってこの種の境界画定が行われるべきであるということで、各種の委員会あるいはその他の交渉グループにおきまして、もっと中間線あるいは等距離線原則を前に出せということを数度にわたって強く主張してまいったわけでございますが、残念ながら、世界の大勢はそのような中間線を重視するという考え方を退ける方向にあることは先ほど申し上げましたとおりでございまして、その結果、前会期におきましてもこの点が議論され、わが国は中間線を主張しましたにもかかわらず、前回あるいは前々回の原案どおり衡平の原則というものが表面に出てしまったということでございます。  なお、その場合に、七十六条は、先ほど海洋法室長が申し上げましたように、これは境界画定の原則よりも大陸棚そのものの定義を定めておるわけでございますが、この第七十六条ができました経緯を若干振り返りますと、やはり自然の延長という考え方がまず出てまいりまして、それに対して一部の……
  203. 板川正吾

    ○板川委員 わかっています。時間がないから……。それはわかっているのです。別に自然延長論に盾突いているわけじゃない。私は初めから言っているとおり、それは世界の大勢である。しかし同時に、この距離基準がお互いにオーバーラップしている場合には中間線。中間線というのは、対向者がない場合には中間というのはないのですから、これは距離基準が原則で、対向があった場合にはその中間線という意味です。ですから、距離基準説がずっと強くなっているんじゃないのですか。この場合でも二百海里まで、しかもその大陸棚外縁までということになれば、これは確かに延長論でありましょう。しかし、今度は二百海里まで、たとえ深海でも大陸棚とする、こういうふうになって二百海里という説が、まあ距離基準というのが強い一つの柱になってきた。しかもオーバーラップするときはその中間だということになって、距離基準というのが大勢になってきているんじゃないですか。  そこで伺いますが、では、経済水域の境界はどういう基準になりますか。
  204. 久米邦貞

    ○久米説明員 第七十六条の、先ほどの定義の規定におきますこの距離基準と自然延長の基準の関係でございますけれども、七十六条の規定は、これはもう一度はっきり読みますと、領海を越えて陸地の自然延長をたどってコンチネンタルマージンの外縁までの部分というのがまず出ておりまして、その外縁が二百海里の内側にある場合には二百海里までできるのだというふうになっております。このことから申しましても、この第一義的な基準は自然の延長が第一義的な基準である。しかし、海洋法会議に参加しております国の中には、非常に自然の延長が短い大陸棚しか持っていない国もございまして、そういう国の主張で、自然の延長のない国も二百海里まではとにかくとれるのだということで、この二百海里の距離基準が入ったわけでございます。現に、過去の会議におきましても、この順序をひっくり返せという提案が幾つかございまして、つまり距離基準の方を第一基準にして自然の延長を補助的な基準にするという趣旨の提案がございましたけれども、現在の草案では距離基準の方がむしろ副次的な基準になって、自然延長が第一義的な基準として扱われるような規定ぶりになっております。
  205. 板川正吾

    ○板川委員 距離基準と延長論をひっくり返せという説があって、この第六会期で決まらなかったという報道はありますから承知しておりますが、この新大陸棚の定義の中で重要なのは、水深二百メートルという水深基準が削除されたことですよ。水深の基準がなくなったのですよ。だから、いままで韓国の唯一の主張点は水深が二百メートルで、それが大陸棚の連続である、日本の方は水深が深いから、これは切断をされているのだ、こういう主張が韓国側の大陸棚条約の解釈の基本的な柱だったのですね。しかし、新しい大陸棚条約の定義では、水深がすでに削除されている。水深基準はないのですよ。だから、この水深基準がないということは、そのために距離基準ができて、距離基準というのはお互いに対向する場合には中間線。中間線の理論か少数化し、大勢でないという論理はおかしいじゃないですか、どうですか。
  206. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 先生のおっしゃいました点で二つの点があると思うのでございますけれども、まずその第一点の方は、韓国がこの区域に関する主権的な権利を主張しました際におきましては、必ずしもその二百メートルの水深ということに非常に重点を置いて主張したわけではございませんで、やはり二百メートル以上の水深の部分も含めまして、朝鮮半島から自然の延長であるということに非常に重点を置いた主張を行ったわけでございます。  それから、中間線に関しまして私の申し上げましたことは、先ほどの繰り返しになりますけれども、衡平の原則という考え方が非常に強く浮かび上がった、この点を申し上げているわけでございます。
  207. 板川正吾

    ○板川委員 衡平の原則は、これはもう国際法の基本的な理念ですから、だから、われわれの言っておるのは、衡平の原則からいってこの大陸棚は日本のものじゃないだろうか、こういう考え方なんですよ。衡平の原則を逸脱しておると思うからわれわれ議論しておるので、韓国だけが一方的に衡平の議論だと言うなら、なぜ話し合いをして合意を求めて境界を画定しないのですか。特に日本が国際司法裁判所に提訴しようと言ったときに、それだけ向こうに根拠があるならば国際司法裁判所に応訴したらいいんじゃないのですか。応訴しないというのは韓国側にそれだけ不利な根拠がある、こういうふうに考えているからだろうと思うのです。  時間かないから先へ進みます。  経済水域という概念も、基線より二百海里、オーバーラップする場合にはその中間線、魚も海底資源も沿岸国のもの、経済水域もそういう規定になっておるわけでありますが、この中間線というものは衡平の原則を裏づけていると私は思うのです。そこで、この経済水域で、カラカス会議では百二十五の国が参加をした。この経済水域二百海里に対して反対したのはわが国一国だ、こういうことになっておるのですが、これはなんか海洋法会議における世界の物笑いじゃないですか。世界の大勢が経済水域二百海里と言っておるのに、日本だけただ一国反対をしておる、これはどういうことなんですか。これは距離基準が不利と見たのですか、どうなんですか。
  208. 久米邦貞

    ○久米説明員 第三次海洋法会議の第二会期でございますカラカス会議におきまして最後まで反対したのは日本一国であったという点は、御指摘のとおりでございますけれども、この日本の反対というのは、遠洋漁業国としての日本立場ということから、日本代表団としては、二百海里の経済水域の設定制度には当時は強く反対せざるを得なかったという事情があると思います。
  209. 板川正吾

    ○板川委員 要するに、新大陸棚の定義も沿岸二百海里の基準ができ、経済水域の境界も二百海里になってきておる。しかも水深の規定はなくなってきている。韓国は水深二百メートル以内だからわが方の大陸棚である、こういう根拠を持ったわけですから、その意味では、私は、この沿岸二百海里という説が大陸棚や経済水域の基準になってきている、これを見逃してはいけないと思っております。  そこで、ちょっと伺いますが、もしその新大陸棚条約の定義で日韓の境界を画定したならば、共同開発区域は全部日本の主権的権利の及ぶ範囲となる、こういうふうになると思いますが、いかがですか。新大陸棚の定義によればそういうことになりませんか。
  210. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 先ほどお答えいたしましたことの繰り返しになりますけれども、この問題はあくまで第八十三条の境界画定の問題でございますので、衡平の原則に従い、適切な場合には中間または等距離線を利用して、またあらゆる状況を考慮に入れながら合意によるということでございますので、現在の共同開発区域と全く同じ境界画定になるかというふうなことは必ずしも申し上げられない。むしろ、境界画定の問題は別途たな上げにするということが、今度の日韓協定の第二十八条に明記されておるわけでございます。
  211. 板川正吾

    ○板川委員 韓国が話し合いをして協議して決めたのなら、問題ないのですよ。最初から協議を無視して、一方的に鉱区を設定して、そして大陸棚自然延長論、水深二百メートル説なりで日本を押しまくって、日本がやむを得ずそれに合意したということになるのでしょう。だから、この新大陸棚の定義によれば、共同開発区域、これは全部中間線から日本側なんですよ。だから、日本の主権の及ぶ範囲になるはずだと思うのです。今日ならそういう状態に決まるだろうと私は思うのです。そればかりでなくて、経済水域、これは魚も地下資源も沿岸二百海里という経済水域の論理からしても、この地域は日本の主権の及ぶ範囲である、区域である、新しい海洋法会議の動向はそういう方向にあるのじゃないですか、いかがですか。
  212. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 経済水域の問題は、目下なお交渉中でございますので、必ずしも過去の大陸棚のように、過去において確立したいろんな慣習というものもないわけでございますが、仮に仮定の話といたしまして、近い将来海洋法会議がまとまるという場合には、わが国も合法的に経済水域を設定し得ることになると思われます。ただ、その場合におきまして、残念ながら、海洋法会議の従来の議論あるいは目下の統合草案等におきましては、大陸棚という制度あるいは概念と経済水域という制度及び概念を別個のものとして扱っておるわけでございます。また、議論の出発点といたしましても別個に出てきたものでございます。そういったことで、規定ぶりもそれぞれ別の制度ということになっておりまして、しかも相互の優劣関係等を調整する規定は現在もございませんし、また今後もそういった規定はできないのではないかということが過去の議論から想像されるわけでございます。  したがいまして、経済水域の制度を採用いたしまして、わが国が主張する管轄権の主張とそれから大陸棚の制度というものを根拠に置きまして韓国がいたすであろうと想像されます主張は、いずれも国際法上それぞれ根拠がそれなりにあるということで、お互いに競合するという状況が生じてまいります。これは現在の区域におきまして大陸棚の制度に基づく日韓の主張が競合したというのと似たような状況になるわけでございます。その場合にどちらの主張が優位に立つかということが問題になるわけでございますが、少なくとも大陸棚の主張という方が経済水域よりも劣位に立つというふうに考えられる理由は必ずしもないわけでございます。  先生御存じのとおり、大陸棚制度と申しますのはトルーマン宣言以来定着しているものでございまして、五八年条約というものによってすでにいろんな定めもできておることでございます。しかも海底資源の開発を対象としてそもそもできた制度であるのに対しまして、経済水域の方は、どちらかといいますと、上部水域の漁業資源を管轄するという考えから、だんだんとその管轄権の範囲がより広くなって、海底資源とかあるいは汚染の取り締まりというふうな考え方がさらに取り入れられてきたということでございます。そういった意味におきまして、現在の統合草案等におきましても、いろんな規定ぶりから見まして、たとえば沿岸国の管轄権の行使が、大陸棚制度によって経済水域に関する問題も行われるべきであるというふうな規定ぶりが入っておるということでございます。したかいまして、いずれにいたしましても、日韓間で現在の大陸棚の中間線論と自然延長論の争いにかわりまして、経済水域論と大陸棚論の争いということになる。結局、日韓が何らかの合意を図って解決するという以外には、自動的に日本が勝つとか韓国が勝つというルールは、海洋法の進展によっても出てこないということが現状の認識であろうというふうに考えます。
  213. 板川正吾

    ○板川委員 この十年から十五、六年のうちに、海洋法秩序というのが非常に変わりましたね。御承知のように、領海も変わり、それから経済水域もでき、大陸棚あるいは深海底開発、こういうように非常に変わっております。これは十年か十五年の間ですね。しかも今度の協定は、五十年にわたってその大陸棚を共同開発をして、その利益を半分分けようということになる。これから五十年、どんなに海洋法秩序というのが変わっていくかわからないじゃないですか。それを今後も変わる見込みはないとか、そういう断定がどうしてできるのですか。日本があらゆる海洋国際法の交渉の中で常に立ちおくれをしておるのは、その見通しの誤りからじゃないですか。五十年も今後両国間の決定をする、しかも経済水域が優先するような考え方は絶対にないなんて、そういうことは言えないのじゃないか。どんなに変わるかわからないじゃないですか。  かつて経済水域も、戦後南アメリカのチリですか、経済水域二百海里と言ったら、何と非常識な要求をするのだと言って世界の笑い物にしたというのですね。しかし、それがいまや称賛の声に変わっているというのですよ。こういうように海洋法秩序というのは大きく変わっているのじゃないですか。それを、五十年の契約をしながら、しかも将来も変わる見込みがないなどという、そういう断定が実は今日の対韓国外交の失敗をもたらした原因だと思うのです。この共同開発区域を韓国に占領された、奪い取られた原因はそういう見通しにあるのじゃないですか。いかがですか。
  214. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 海洋法の秩序がいろいろ進歩してきたということは確かでございまして、私も、海洋法のいろいろな制度が今後変わらないということを決して申し上げているわけではないのでございます。ただ、経済水域と大陸棚という二つの制度が海洋法会議において議論されまして、それが平行線をたどっておるという状況は変わらないということをまず申し上げ、また、大陸棚というのは非常に歴史の長い制度でございまして、それに基づく沿岸国の主張というものは、たまたま最近この数年間出てまいりました経済水域という考え方によってすぐに代替され、消え去るようなものではないということを申し上げたわけでございます。  その証拠といたしましては、この大陸棚の共同開発区域に対して中国が自然の延長という立場から依然としてわが国に対して異議を申し立てているということは、経済水域という問題が国連海洋法会議で出てきたにかかわらず、中国が依然として自然の延長という考え方を主張しておるということにまさに明らかであろうと思うわけでございます。
  215. 板川正吾

    ○板川委員 伺いますが、共同開発することによって日本が得るものは何ですか。これによって日本が利益を受けるというのは何と何ですか。
  216. 中江要介

    ○中江政府委員 韓国と日本との間で主権の争いのありますこの紛争を話し合いによって解決するということによって、この地域にあります資源を日韓両国で有効利用できる、それが日本の得るところである、こういうふうに思います。
  217. 板川正吾

    ○板川委員 まあ日本は得るところはないでしょう。外務省が言っておるように、中東に匹敵する石油が出るならば、その半分を韓国に持っていかれるわけでありますからね。それは時間がありませんから先に進みます。  韓国では、中間線から自国側に一から六までの鉱区を設定して、租鉱権を外国企業に売り渡しております。いまは採掘をやめている、こう言われておりますが、一から六まではなぜやめたのですか。結局七鉱区、いわゆる中間線から日本側だけが残っておるのです。だから、一から六は一つのおとりみたいなものだ。七鉱区をかっぱらう一つのおとりみたいなものじゃないかと思うのですが、なぜやめたのですか。韓国の事情ですが、わかりますか。
  218. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 七鉱区を除きます第一鉱区から第六鉱区のうち、現在開発が行われておりません租鉱権が切れておりますのは、第二鉱区、第三鉱区、第四鉱区及び第六鉱区でございまして、第一鉱区と第五鉱区につきましては、なお租鉱権が設定されておるというふうに了解いたしております。  次に、お尋ねのどういうことでこういうふうに、全部ではございませんけれども、一部の鉱区について租鉱権が現在設定されていないかということでございますが、法律的に申しますと、一九六九年あるいは七〇年ごろに、租鉱権者と韓国政府が結びました開発契約というものが期限切れになって、更新されなかったということでございます。どうして開発権者の方か更新を希望しなかったかということにつきましては、私どもも一応の調査をいたしましたが、必ずしも詳細は判然といたしておりませんけれども、得られました限りの情報を総合いたしますと、経済的な理由ではなかろうか、つまり商業的な開発に適さないという判断をこれらの企業がしたというふうに理解いたしております。
  219. 板川正吾

    ○板川委員 結局やめてしまって、残るのは日韓中間線の日本側の区域だけだ、こういうことになったわけです。  伺いますが、韓国が設定した鉱区の中で、日本企業がすでに鉱業権を設定した四、五、六の地域があるわけでありますが、この地域でもし韓国が将来開発をやろうというときには、この中間線から韓国側に寄るのですが、この場合には日韓共同開発をする御意思があるのでしょうか。また、わが国の希望があれば向こうでも受け入れるでしょうか。中間線から日本側は共同開発である、では中間線から北側も日韓で共同開発しようというときに、韓国側では受け入れる条件があるかどうか。大臣、どうでしょうか。
  220. 中江要介

    ○中江政府委員 実際問題といたしましては、韓国側がそれを受け入れる用意はない、こういうふうに思います。
  221. 板川正吾

    ○板川委員 全くこれは衡平の原則に反すると思います。いまやこの中間線なり二百海里で経済水域なり大陸棚の範囲が決まってくる。水深規定はなくなってきているというときに、日本の中間線から内側には韓国が共同開発をする、日本はこれを容認せざるを得なかった。では、それから北の方にもしあるということになった場合に、共同開発しようと日本が申し入れても向こうは受けつけない。村田参事官、こういうのは衡平の原則に反しますよ。  時間がありませんから先へ進みますが、これは時間がなくなったからちょっと詰めて申し上げますが、韓国が急遽一方的境界画定という不法な行為をとった背景というものを考えてみますと、一九六七年国連におけるマルタ提案以来、国際的に大陸棚条約の抜本的な改正が叫ばれてきた、それが国際間に顕在化すると不利になると韓国は考えて、それが一般化しないうちに自然延長論を一方的に解釈をして、わが国南部の広大な大陸棚を自国のものとしようと考えたと思われる。  これは私の推察ですが、大陸棚条約は、御承知のように、一九五八年第一次海洋法会議で、領海、公海、漁業資源の保存に関する条約とともに、ジュネーブで八十六カ国で採択をされた。次いで、一九六〇年に第二次海洋法会議が八十八カ国で開かれたが、領海、漁業水域の問題は取り上げられたが、採決の結果三分の二の多数にならずに、意見が合意せずに散会をした。その後、領海の幅や漁業水域の画定が各国ばらばらになり、海洋無秩序時代が続いた。この無秩序時代を解消して新しい海洋秩序を確立しようという声が各国の中で高まって、一九六七年、国連におけるマルタ提案になり、海底平和利用委員会が設けられることになった。この海底平和利用委員会は一九六八年から七〇年まで連続して開かれた。  この海洋新秩序をめぐる国際的な動向について、わが国の世界的な海洋法の権威である小田滋教授、海底平和利用委員会日本代表として参加している小田滋教授の論文があるわけであります。この小田教授は、朝日新聞の昭和四十七年八月二十五日号で、これは日韓共同開発協定が四十九年一月三十日ですから一年五カ月も前ですが、こういうことを朝日新聞に寄稿しておるのです。  その中から要約をいたしますと、「昭和四十年代の海底開発技術の進歩は目ざましいものがある。各沿岸国が自ら独占し得る制度上の大陸棚の一応の前提と考えられていた水深二百メートルという限界も、技術の進歩の前にはたやすく乗越えられることが予想されるようになった。そして、いわゆる深海海底開発の新時代が来る。」「昭和四十二年のマルタ国連代表バルドの提言は、国連史上に残る画期的なものであった。その年の国連総会の決議で設立された三十五カ国からなる海底平和利用委員会が、今日の九十一カ国委員会のはじまりである。」そして「昭和四十六年と四十七年の四会期、二十週間に及ぶ会議を経て、海底平和利用委員会の得た成果」について、こう言っております。   深海海底は大陸棚の終るところに始る。そうだとすれば、大陸棚の範囲はきわめて重要である。これまで考えられていた二百メートルの水深の再検討は不可避である。先進国の間でも海底について深さではなく距離で沿岸国支配の範囲をはかる考えが支持を得はじめている。フランスさえもが二百カイリを示唆するに至った。   以上にみてきたように、「狭い領海、そしてその外には自由な海」という伝統的なテーゼは発展途上国のはげしい攻撃にさらされて、まさに風前のともしびである。これは「強者」の論理としてしか彼らの目にうつらない。領海十二カイリを前提として、その外に、経済水域、汚染防止水域など、機能ごとの沿岸水域か設定されてゆくことは必至である。国際海底についても強い権能をもつ国際機関がもうけられることになろう。 そして、   現在の漁業の問題は、十二カイリの外に、沿岸国がどのような権利をもつかにかかっている。第二次世界大戦後間もなく、チリ、ペルーなど中南米の国々が二百カイリの海洋主権を主張した時に、世界の多くはその違法と非常識を非難した。しかし、今やその非難は、発展途上国の間では称賛に変ろうとしている。   アジア、アフリカの発展途上国のほとんどすべてが、各沿岸国は自国沖合の広大な水域に漁業の独占水域を設定する権利をもつという思想に傾いた。この思想は海底平和利用委員会の夏会期におけるケニア提案となった。二百カイリの経済水域の主張である。こういう論文を四十七年当時、すでに世界の海洋法の動きというのを報道しておるわけであります。  そこで、この一九六七年、国連におけるマルタ大使の提案というのをどういうふうに——時間がありませんから、恐縮ですが私の方で読んでみますが、マルタ提案の中で主要な点を言ってみますと、第一委員会の一般討論で、こう言っております。  急速な科学技術進歩のために、海底の調査、占拠及び開発が可能となった。現在の国家の管轄権の限界以遠のこれらの海底が、国家的利益のために専有される事態は避けられなくなっている。従って取返しのつかない事態が生ずる以前に、海底に対する国際的管轄権及びこれに対する管理を創設することか賢明ではないか。これは皆さんに配った資料の中にもありますが、その中でまたこんなことも言っております。   現在の国際法は、国家に対して海底を専有することを放任していると云えよう。一九五八年の大陸棚条約に規定されている大陸棚の範囲については、制限的解釈と拡張的解釈とがある。東北大学の小田教授は「大陸棚条約の下では大陸棚の外境ないし大陸棚以遠の地域について議論すべき余地はない。なぜならば、同条約の定義により世界の全ての海底は大陸棚となりうるからである」と述べている。 これは私が先ほど言ったように、開発可能だという議論を拡大するならば、「世界の全ての海底は大陸棚となりうる」、こう言っておるのです。「この解釈によれば、沿岸国は科学技術の発展に伴ないその管轄権を対岸の沿岸国との距離の中間点まで伸ばすことが出来ることになる。」  さらに、最後の方で、「明確な大陸棚の定義が規定されるまでの間、現行の管轄権の及ぶ範囲以遠の海底に対する主権の要求は凍結すべきである。」こういうように私の配った資料の中にありますから読んでいただきたいのですが、一九六七年、マルタの国連における海底平和利用委員会を設置しろという提案の中に言っておるのですね。ですから、当時からすでにいまの大陸棚では十分ではない、大陸棚の規定ではだめだ、こういうふうに新しい海洋法会議の招集が主張されておって、しかもそれが世界の大勢となりつつあるわけであります。  それで、この国連海底平和利用委員会における小田教授の論文や六七年マルタ提案、こういうのを見ますと、今日の海洋法の動向というのは六七年当時からすでに芽を出しておって、それで世界が合意に向かって世界の大勢となりつつあるときに、韓国の自然延長論なんて世界どこにも通用しない大陸棚理論を拡張解釈をして、そしてそれが自然延長論であって仕方がないのだ、あるいは開発可能な地域を含んでいるのだから仕方がないのだ、こう言って韓国の横車に日本が応じてしまったということは、日本外交の重大な失敗じゃないかと私は思うのですが、いかがですか。
  222. 中江要介

    ○中江政府委員 海洋法秩序が先生がおっしゃいますように日々流動している、またある意味では発展しているということは事実でございますし、小田教授は日本が生んだ世界的な国際法学者でございますから、小田先生の所論というのは尊重するに値するものだと思いますが、その小田先生ですら、南米の国が二百海里を主張しましたときには、御自分で書いておられるようにこれを激しく非難した一人であったわけです。そういうふうに世の中は動いておりますが、動いているからといって、それがとどまるところまで待てる問題と待てない問題とがあるわけでございまして、たとえば漁業資源の問題にいたしましても、やがて漁業水域ができる、やがて領海が広くなる、そういうことを言っておりましても、毎日毎日やはり魚をとらなければならない、そういうことがございます。  本件の場合ですと、海底の石油資源にエカフェの調査報告以来刺激されましてこの地域の諸国が関心を向け始めた、そして現実に掘ろうとしている、その現実に掘ろうとしている韓国が、いま先生がおっしゃいましたのと同じような考え方に立って、それはひとつこの辺は待とう、やがて海洋法会議で結論が出るまで待とうという立場をとるなら別ですけれども、韓国がそれを待たずに一方的に開発するということをとめる手だては、また他方ないわけでございます。そういたしますと、われわれ実務を担当しております立場からいたしますと、現実に起きている問題をどう処理するか、そうなりますと、その処理する時点において有効な国際法秩序に基づいてこれを処理する、そういう観点からいたしますと、今回の大陸棚協定は、韓国の自然延長論をまるのみにすることなく、これを中間線まで半ば後退させた、そしてわが方の主張を中間線から半ば後退させた、双方が半ばずつ譲り合って共同開発に落ちついた、こういうことでございます。
  223. 板川正吾

    ○板川委員 もう一、二問、持ち時間がありませんから簡単に言いますが、座標六、これは中間線を示すのですか。これは中間線でなくて、日本側が中間線と考えているということであって、中間線というのは合意をしないうちに決まるものじゃない。これはきのうも言われたとおりです。そこで、この座標六をどこからとったかというと、日本の男女群島の女島ですか、韓国の馬羅島、中国の童島の中間の接点である、こう言われておるのでありますが、たとえばとった中国の童島より——これは海上保安庁の海図二百十からとったというのですが、海上保安庁の海図二百十にすべての島が入っているわけじゃないのです。鮫瀬が落っこっておったりするわけですから。将来中国と話し合うことになった場合に、この童島よりもさらに東の方に生活可能な島があった場合には、この六、七、八の区域は当然動かざるを得ない、こういうふうに思いますが、その場合にはこれは動くことですかどうかということを伺っておきます。
  224. 中江要介

    ○中江政府委員 全く仮定の問題としてお答えいたさざるを得ないのですが、仮定の問題として、いまおっしゃいますような島が万一もっとこちらに近いところにございますれば、六、七、八の座標は動きます。その六、七、八の座標が動くことの可能性は協定の第二十八条で理論的には留保してある、こういうことでございます。
  225. 板川正吾

    ○板川委員 終わりますが、大臣、私はあえて答弁を求めなかったのですが、私が言わんとしているのは、韓国の一方的な境界画定は、国連におけるマルタ提案後の世界の海洋法会議の動向を察知して、事前に自然延長論を拡大解釈して既成事実をつくり上げて有利な条件を確保しようとした、こういう国際情勢を把握して韓国に有利な立場にした。韓国としては当然かもしれない。しかし、日本は、この国際情勢でもし交渉で時間をかせぐなりしていくならば、国際海洋法会議の秩序は完全に中間線、沿岸から二百海里説ということになりつつあるわけですから、もう少し時間をかせげば、これは私は韓国のこうした一方的な横暴に対抗することができたと思うのです。  それをどうも日本の外交は、怠慢といいますか、そういう小田教授の論文などにも指摘されているのに、そういう情勢をつかまないで、韓国の自然延長論が大勢であるからやむを得ないとか、日本は海溝があるからこれまたやむを得ないとか、こういうような韓国の主張に一方的に屈した、こういうことが言えると思いますね。そして九州の二倍に当たる広大な地域を、本来中間線で、わが方として日本の主権的権利の行使できる区域を韓国と共同開発せざるを得ない羽目になった。これは私は日本外交の重大な失敗である、こう思います。あるいは一部の政治家による日韓癒着による主権放棄、売国的行為によるものではないかと思いますが、結果はいずれ時間が正しい審判を下すだろうと思います。  われわれは共同開発協定に反対しますので、国内法にも当然反対するという立場を表明して、終わります。
  226. 野呂恭一

  227. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 私は、この前の第八十国会の最後にこの問題について若干質問したわけでありますけれども、その際幾つかの問題について留保をいたしております。きょうはそれを中心質問を申し上げてまいりたいと思いますが、一番最初に外務大臣にお伺いをしたいと思います。  先日の当委員会質疑応答の中で、外務大臣は、中国との関係については共同開発区域を開発するに当たってきわめて重要なかかわりがある、したがって、これを円満に遂行するためにも、可及的速やかに外務大臣みずからが北京に赴いて十分な了解を得たい、そういう努力をしたい、こういうお話がありました。その時期の問題ではございませんで、私がお伺いをしたいのは、いま中国とわが国の間で懸案になっております日中平和友好条約、これを締結するその際に北京に赴く、そしてついでにこの問題についても了解を得たい、こういう趣旨なのか、そうではなくて、この前ここでいろいろ質疑応答が交わされたわけでありますけれども、いま問題になっております日韓共同開発区域の開発を推進するためにはどうしても中国の了解を得なければならぬ、そういう立場でこの問題で訪中をされる、こういう意味なのか、その点がこの前の質疑応答ではきわめて明確さを欠いたわけであります。その点をまず最初にお伺いしたいと思うのです。
  228. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいま御指摘の点でございますが、私が共同開発区域につきましての日本の考え方、これを中国側に理解をしてもらう必要があるということを痛感いたしましたのは、先ごろ藤山愛一郎先生御一行が李先念副主席に会われたときの応答ぶりを聞きましたので、そのような理解では日本と中国との間の国交という意味でこれは大変心配になった次第でございまして、そういう意味で、この点につきましての日本側の考え方、日本側の理論なりまたその正当性につきまして中国の首脳部の理解を得たい、こういうことを考えた次第でございます。  たまたま日中間にはもう一つの問題もあるということでありまして、それは日中間に平和友好条約の締結の問題があります。これも日本政府といたしましてなるべく速やかに双方の満足し得る形で結びたいという、これは一貫した考え方を持っておるわけでございます。この問題につきましても、数点についてやはり解決すべき点があるということでありまして、どちらが主でありどちらが従であるということではなしに、いずれ訪中をいたしたいと考えておる、そういうわけでございまして、この問題につきましては、円満な開発をいたしますためにはやはり中国側の理解を得ておいた方が好ましいという点につきまして、全くこの問題として考えておるということでございます。
  229. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 私は、いまあえて日中平和友好条約と絡んでこの問題の外務大臣見解をお伺いしようと思っておりませんが、この平和友好条約にしましても、何か一進一退、進んでいるようでさっぱり進んでないような、全くその点が不明であります。しかし、いまこの法案審議しているに当たりまして、先ほど来の議論の中にもありましたように、たとえば附帯決議の問題で先ほどからずいぶん長時間にわたって議論がありました。そういうふうな状況の中でとにかく円満に開発を進めるためには、一刻も早く中国側の完全な了解を得なければならぬのだ、理解をしてもらわなければならぬのだ、こういうことをおっしゃっておるわけです。そうでなければ実際の開発も実務的に進まないだろうというふうな前提が、その答弁の中にははっきり出ておるわけです。  そうしますと、重ねてお伺いすることになりますけれども、日中平和友好条約を締結するその機運が高まって、しかもお互いの外交当局の話が詰まっていって、たとえば調印をする、こういうふうな時期にならなければ、この問題について鳩山外務大臣が訪中されるということはない、こういうふうになるのでしょうか。それとは切り離して、この問題についてはきわめて重要だ、したがって、場合によったらこれ単独でも速やかに訪中して了解をつけなければならない、こういうふうな決意なんでしょうか。いずれですか。
  230. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 これは二つの全く別個の問題であると私どもは考えておる次第でございまして、この点につきまして、速やかな開発ができるという態勢になりました場合には、これはやはり外交当局者といたしまして中国との間に理解を得ておくことが、私どもの務めであろうと考える次第でございます。たまたまもう一つの条約問題というものがありますので、これが時期的にどうなるかということが他方にございますけれども、問題は別個の問題というふうにお考えいただきたいと思います。
  231. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 外務大臣は後でちょっと席を外されるそうでありますから、この際、重ねて大臣から見解を承っておきたいと思います。  この共同開発をめぐって、韓国と日本だけの問題ではなくして、中国からたび重なる抗議声明が出されておりますように、この問題は非常に大きな問題になってきたわけでありますけれども、いままで外務省の当局からは相当詳しく中国との折衝といいますか、その経過がずっと話されました。時間の関係もありますから私はそれを繰り返しませんけれども、その中でとりわけ、韓国と日本がこの協定に調印をする前に、異例なことではあるけれども、他の用事でたまたま訪中をしておった当時の大平外務大臣が、中国側の姫鵬飛外交部長ですかに対してその経過を話し、了解を求めたのだ、こういうふうな経過があったわけです。したがって、それ以降も幾たびかあるわけでありますけれども、わが方は非常に誠意をもってやったのだ、こういうことで一貫した答弁がなされてまいりました。  しかし、外務省当局がみずから言われておりますように、まさに異例な説明を当時の大平外務大臣がなさったと言いますけれども、そういうふうな了解を中国側から得たい、得なければならない、そういう認識があったから、この協定調印前にそういう話が当時の外務大臣から中国側になされたのだと思うのですよ。しかし、このことを考えてみますと、先ほども議論がありましたように、この協定が日韓両国で調印をされた当時の状況と今日の状況では、国際的に海洋法をめぐる状況というものは非常に変化をしてきていると思うのです。当時は三海里の状況が今日は領海十二海里、こういうふうになっているところにも端的に示されておりますようなそういう状況の中で、中国側が説明を受けた当時、これは十分に研究、検討をしてみたい、こう言うことは余りにも当然だと私は思うのですね。  ですから、日本の外務当局がそのときあるいはそれ以降何回か説明をしようと思ったけれどもその機会が求められなかった、相手がそれを与えなかった、こういうことについては、何か相手側がきわめて不誠意であるかのような非常に強い印象を受ける答弁が繰り返しなされておりますけれども、これは話が全く逆ではないか、こういうふうにいま私は思うのですよ。この点についての外務大臣の御見解を賜りたいと思います。
  232. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 過去のことにつきましては、あるいは中江アジア局長から御説明いたした方がよかろうと思いますが、私どもの承知いたしております範囲内におきましては、これはやはり中国と協議をいたして決める、こういう態度で臨んだわけではなかったわけでございます。大平外務大臣にいたしましても、日韓間の問題といたしましてこれを中国側に御説明をいたした、そしてその実態につきまして理解を求めた次第でございます。  これに対しまして、わが方はそういう意味で誠意を尽くしてきたわけでありますけれども、中国側といたしましては、協議を受けるべきものというふうに解釈をいたしておりますと、先方から見ればまた不満な点もあったろうかと思います。それは双方の見解がその点では一致していないと言わざるを得ないのでございまして、私どもといたしましては、日本立場といたしまして誠意を尽くしてきた、こういうふうに考えておるのでございます。
  233. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いまの問題に関連しまして、ことしの五月二十五日のこの商工委員会の中で、外務省の大森アジア局次長が次のように答弁をしているわけです。関係のないところは省略をしますが、「現実の問題といたしまして、関係国と申した場合に、たとえばわが国、中国、韓国あるいは北朝鮮という国が考えられるわけでございますが、」こういうことを関係諸国としてずっと述べていきまして、そして、本当はそれらの関係諸国が相集まって協議して決められれば一番いいのだ、しかし、外交関係がない。これは外務当局が一貫してずっと説明されておりますように、外交関係のない国もあるのでやむを得ず次善の策としてやったのだ、こういうふうに明確に答弁されているわけですよ。  ですから、本来はわが国と中国は外交関係が明確になっているわけですから、これと事前に十分に話し合いをする、こういうふうな態度は当然わが国としてとるべきであったと思いますし、でき得れば、仮に国交関係かないにしても、こういう重要な共同開発というふうな問題になれば、いろいろな形を通した話し合いをやって、そして十分な了解を得る、これが外交当局としてとるべき当然の策ではなかったか。それが現実に行われていない。したがって、抗議声明が発せられるのは当然になってくる。しかも、これは単に抗議声明が発せられたというだけではなくして、今後この共同開発というものが進められる中において大きな禍根を将来に残すだろう、紛争の火種になるだろう、こういうことが現実に心配されているわけです。その点はどうなんですか。
  234. 中江要介

    ○中江政府委員 大森前アジア局次長がこの席で申し上げて、いま先生がお読みになりましたところはそのとおりだと私は思います。私どもも、関係諸国が集まって、この大陸棚の境界を合意によって画定するのが最も理想的である、この考えはいまも変わりませんし、その点につきましては、中国と日本とは完全に意見が一致しておるわけでございます。  ただ、それが実現できないときにどうするか。それが実現できないときには、それが実現できるまで待てる国と、それが実現できるまで待てない国とがある。待てない国はどうするかといいますと、その待てる国の権利を害さないで、待てない国同士で話をして解決できる部分があればそれを解決する、これが国際的に行われているところでございますので、日本といたしましては、韓国と話し合って済むところだけを話し合った。したがって、いま先生がおっしゃいましたように、日本と中国は外交関係があるわけでございますから、日本と中国で話し合って境界を画定すべきところは、当然日本は中国と話し合う用意がございますし、現に中国側に対しまして、日中間の境界画定の話し合いをする用意は日本側にありますということも申し入れているわけでございます。ただ、中国はまだ待っている、こういうことでございますので、日中間の境界画定の話は現実の問題になっていない。  それでは、日韓で話し合ったところは、一体中国と相談しないで境界を画定してしまったのかという点につきましては、これはたびたび申し上げておりますように、北部の協定は、協定の名称にもございますように北部の境界画定に関する協定ということで、これははっきり日本と韓国が合意によって、大陸棚の境界を画定してしまっておるわけで、これはもう国際法的に固定した協定でございます。ところが、南側の方は合意によって境界を画定することができないわけです。したがって、いまでも境界が画定されていないわけです。境界が画定できないで、しかもその部分の資源を有効利用するために何らか実際的な解決はないかということで求めたのが共同開発で、この南部の共同開発協定の前文のところにはっきり書いてございますように、これが実際的解決であるということで、しかも第二十八条のところで、この大陸棚の境界を決定するものでもないし、また、大陸棚に対する主権的権利の主張、立場を害するものでもない、したがって、将来中国と韓国が話し合える状態になりまして、日、韓、中で境界の画定の話をいたしますときには、いまのこの協定は、第二十八条に基づきまして、それぞれの国の主張を害するものでないことになっておるわけでございます。  それで、この協定の前提が、先ほど私が申し上げましたように、日韓で話し合える部分に限定するということは、翻って申しますと、韓国と中国との間の中間線の韓国側に限らなければならぬ。ところが、韓国と中国の中間線というのが、韓中間に外交関係がないために実際に合意で置けない、合意で画定ができない。したがって、その部分については中国としても意見があるかもしれない、そういうことでございますので、日韓大陸棚協定の共同開発区域を囲む直線、これは何度も申し上げますけれども、大陸棚の境界を画定する線ではございません。共同開発区域という法律的な立場をたな上げにした境界を囲んでいます直線について、これは中国によくお話をしておかなければいけないということで、大平外務大臣、次いで、署名をいたしましたその日の午後、私は、中国の在京大使館の参事官を呼びまして、ここにございます「千九百五十五年十二月の日本国海上保安庁海図第二百十号」、まさしく使用いたしましたこの地図を示しまして、そして私ども立場を説明した、こういうことでございます。
  235. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いま局長がずっと説明されましたけれども、これはいままで何回も、日本の外務省の見解として私どももお聞きをしております。しかも、いまもお話にありましたように、今度の協定はそれぞれの国のいわゆる主権の主張を害するものではない、こういうふうなことも明確になっておりますから、その点は私どもも理解しておるのです。理解した上で御質問を申し上げているのですから、時間もありませんし、ひとつ簡潔にお答えをいただきたいと思います。  それでは、話がちょっと飛びますけれども、ずばりお聞きしたいのですが、たとえば座標の六、七、八を結ぶ直線、それから八、九、この線のいわゆる中間線下に、その真下に有力な油層が発見された、こういうふうな場合にどのように措置されますか。     〔委員長退席山崎(拓)委員長代理着席
  236. 中江要介

    ○中江政府委員 御質問の趣旨が、その線の真下というよりも、共同開発区域内ではあるけれども、その線に非常に近いところに発見されたときはどうするかということであるといたしますと、それを開発する権利は日韓双方で持っておるわけでございますけれども、これは韓国と日本の中間線、つまり北部の境界線のときにも議論になりますが、その境界線の近くで発見された油層が境界線を越えて横たわっているというようなときにどうするかということは、別途手当てをすることになっておりますので、それに準じた扱いをするのが常識的であろう、こういうふうに思います。
  237. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いまお話のあった別途手当てをするというのは、具体的にどういうことですか。
  238. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 先生の御指摘は、ただいまの共同開発区域の西側を画定しております線にまたがって、たとえば有力な油層が発見されたという場合に、どういうふうにわれわれとして対処するかという点をお尋ねだと思います。  この点は、日韓大陸棚協定は日韓両国間の取り決めでございますので、第三国との関係ということはあえて規定いたしておりません。しかしながら、実際問題としてそのような地質構造というものが発見された場合、中国との関係も十分考慮いたしまして、政府としては韓国政府とも協議しました上で、日韓の開発権者が共同開発区域外の区域にある石油、天然ガス資源まで開発して吸い上げてしまうということがないよう、十分指導していく考えでございます。もちろん、そのような場合に中国側と協議するということが望ましいということもまた当然でございます。
  239. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 これは後でもう少し詰めたいと思いますが、時間の関係がありますから、先へ進みます。  この共同開発区域における石油の埋蔵量の問題、これは資源エネルギー庁になると思いますが、この問題についてちょっと簡潔にお答えをいただきたいわけです。  政府の出しておりますパンフレット、あるいは外務委員会での質疑答弁、同じく外務委員会参考人を呼んでお聞きした意見、さらにまたこの商工委員会、この中で言われておる数字がその都度違うんですね。これは五つの前提があるとかなんとかおっしゃいますけれども一体政府として明確にこの共同開発区域内でどれだけの石油の埋蔵量を推定しているのか、可採埋蔵量、これをはっきりしていただきたいと思うのです。もし一貫していますと言うならば、私はいままでの議事録を全部読み上げながら、いかに違った数字を挙げておるかということを一々立証しますけれども、明確にしていただきたい。
  240. 古田徳昌

    ○古田政府委員 通産省石油及び可燃性天然ガス資源開発審議会で、わが国周辺海域につきましての石油、天然ガス埋蔵量の試算を行ったわけでございます。この試算によりますと、究極可採埋蔵量が全海域につきまして十二億九千六百万キロリッターという数字がございます。この共同開発区域を含めましての沖繩・東シナ海地域では六億八千二百万キロリッターという数字になっております。それから、この審議会の試算結果を踏まえまして、さらにその他の資料等も参考にしながら私どもの方で一つの試算をしてみたわけでございますが、これは石油開発公団の技術陣の協力を得ながら行ったものでございますが、共同開発区域に限定して数字を試算をしてみますと、前提の置き方によってその試算結果も異なってくるわけでございますが、二億三千五百万キロリットルから三億七千六百万キロリットルという結果が出ております。  なお、これは先ほど言いましたように、究極可採埋蔵量ということでございまして、石油の埋蔵量につきましては、たとえば賦存量、これは原始埋蔵量でございます。それからただいま述べた数字でございますが、究極可採埋蔵量、それから確認埋蔵量というふうな幾つかのとらえ方がございます。ただいま私が申し上げましたのは究極可採埋蔵量でございますが、その可採埋蔵量を算定します前提としましての賦存量といいますか原始埋蔵量、全体の埋蔵量としてとらえてみますと、先ほどの審議会の数字でございますと沖繩・東シナ海域で十三億七百万トンという数字が出ております。これを前提としまして私どもの方で一つの試算をしてみますと、共同開発区域について七億二千二百万トンという数字があるわけでございます。私どもとしましては、従来究極可採埋蔵量の面から沖繩・東シナ海域で約七億キロリッターというふうに言っていたわけでございますが、外務省の方としましては、この私どもの試算結果をもとにしまして、賦存量つまり原始埋蔵量をとらえまして、共同開発区域につきまして先ほど言いました七億二千二百万トンという数字を前提としまして、約七億キロリッターというふうな説明をしているというふうに承知しております。
  241. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 また少し数字が違ってきたようなんですね。これはあくまでも推定ですから実際掘ってみなければわからぬ、こういうふうにあなた方の方でおっしゃるわけなんで、実際はそうなんです。  実際はそうなんですが、たとえば、これは時間がありませんから全部は言いませんが、外務委員会参考人として出席なさった帝石の吉岡専務は、共同開発区域内で大体七億キロリットル、そのように推定される、こういうふうに明確に言われたわけです。  それからことしの五月二十五日の本委員会で、石油公団の倉八総裁、これも埋蔵量の計算には五つの方法があって、数値のとり方によってその数字は非常に動く、しかし油、ガスを含めておおむね七億キロリットル、こういうふうに言っておられるわけです。  それからついせんだって、十一月八日に本委員会参考人として出席されました東京大学工学部の河井教授、これはその意見の中で、共同開発区域の石油埋蔵量は安全圏を見ると二億キロリットルから三億キロリットル、このように言っておるわけです。  参議院での審議段階では二億四千万キロリットル、こういうふうな話も出ておりますね。  それから、石油部長答弁なさっておるわけですけれども、あなたも四月二十二日の外務委員会の発言、これは非常に微妙です。いま読み上げませんけれども共同開発区域内なのか、あるいはそうではなくして、いまあなたがおっしゃいましたように、西南の海域を全部含めてこの一帯のことを言われておるのか、どうもその点が非常にわかりにくい。  それから、あなたが同じ五月二十五日の商工委員会では、九州、沖繩西側水域ですからこれは共同開発区域そのものではないと思うのですが、ここで七億キロリットル程度以上の可採埋蔵量が期待されるという計算もあったと、これはどこかで計算したことを検討されたのだと思うのです。そういう言い方。  そして十一月一日の商工委員会では、前提のとり方にもよるけれども、究極可採埋蔵量は三億七千六百万キロリッター、こういうふうに答弁しておられるわけです。  一回一回違うのは一体どういうことなんですか。明確にしてくださいよ。
  242. 古田徳昌

    ○古田政府委員 先ほど言いましたように、埋蔵量のとらえ方によって、まず数字が変わってまいります。それから、前提として置きますたとえば炭化水素量の比率あるいは集積率というふうなものがございますけれども、そういうふうなものの数値の置き方によって変わってくるわけでございますが、全体について申し上げますと、先ほど私が御説明したとおり、石油及び可燃性天然ガス資源開発審議会の試算と、私どもの方でそれをもとにしましてこの共同開発区域に限定して一つの試算をしてみたものがあるわけでございまして、その数字の関連につきましては先ほど御説明したとおりでございます。
  243. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いままで外務省も含めて、政府のPRといいますか、そういう点をこの共同開発法案を通過させるためにいろいろ苦心なさりながら天下に公表されましたやり方は、掘ってみなければわかりませんけれども、私は非常に甘く、過大にPRされているんじゃないか、こういうふうな危惧を非常に強く持つわけです。もし掘ってみなければわからぬなんということを言うのであれば、軽々しく推定埋蔵量をPRすべきでない、私はこう思うのです。むしろこの問題は慎重の上にも慎重を期して、そして石油対策、あるいは一時オイルショックの際に政府が節約の一つの施策なんというものを打ち出しましたけれども、そういった面も含めながら、この点は非常にシビアに考えていかなければならぬと思うのです。それをただこの法案を通しさえすればいい、そのために非常に甘い見積もりをやりながらPRする、こういうやり方については、私はどうしても納得することができません。  こういうことを考えておりますと、たとえば昨年の一月一日ですか、韓国の迎日湾における油田発表の際には六十九億バレル、つまり約十億トンになりますか、この埋蔵量があるという宣伝が大々的にされました。この点はもう皆さんもおわかりでありますからいまさら言う必要がないのですけれども、実際その後の結果はどうですか。問題にならない。たとえば韓国の石油専門家の分析の結果としては、かなり過大な評価をしてみても九千万バレル程度しか掘れないだろう、こう言われているわけですね。  こういったかっこうで日韓大陸棚共同開発のこの協定を通過させるためには、あるいはそれに伴ういま審議しております特別措置法を通すためには、やはりどんどん過大なPRをして幻想を国民に与える、こういうことではならないと私は思うのです。この点はきわめて科学的に、できる限り慎重な検討をやって、そしてこれを明らかにするということでなければ、法案さえ通過させればどんなPRをやっても構わない、そんないいかげんなことでは困ると私は思うのです。エネルギー庁長官、それはどうですか。
  244. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先ほど来石油部長がお答えいたしておりますように、石油の埋蔵量の判定は非常にむずかしいわけでございます。したがいまして、ただいま御指摘あるいはおしかりを受けたような事態になったわけでございますが、決して法案を通したいためといった便法的なものではございませんで、いろいろ前提を置いて果たしてどの程度あるだろうかということで計算あるいは推計いたしたものが御指摘のような結果になったということであろうかと思います。  ただ、御指摘のように、こういった問題について特に慎重に配慮する必要があろうということについては、私も全く同じ考え方でございます。
  245. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 次に、この前少し留保した問題に入りますが、海洋汚染にかかわる問題であります。  これは先ほどもちょっと答弁があったわけでありますけれども、わが国の海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律に相当する韓国内の法制化は、先ほどの御答弁によりますと、いま韓国の国会にかかっておるというお話があったのですが、そのとおりですか。
  246. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 わが方の在ソウル大使館員が先方の商工部でございますかに赴きまして確認したところによりますと、そのとおりでございます。
  247. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 この問題は、私、五月にお聞きしたのですが、その際にもう二つのことをお聞きをいたしました。  あれから約半年たちますが、一つは、油による汚染を伴う事故の場合における公海上の措置に関する国際条約に韓国はその後加盟の手続をとられましたか。  それからもう一つあります。油による海水の汚濁の防止のための国際条約、これに対しまして韓国の態度は六カ月後どうなりましたか。
  248. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 御指摘の二つの条約のうち、油による海水の汚濁防止のための国際条約の一九六二年の改正条約に加盟する方針で現在準備中である。ただ、これに加盟するための手続は来年開催の国会になろうと承知いたしております。  他方、船舶からの汚染防止に関する国際条約への加盟については、まだ検討されるに至っていないということでございます。  思いますに、海洋汚染防止法の制定でありますとか、現在進めております国内法令の整備を待ってこういうものに加盟できる体制を整えたいというのが韓国側の立場であろうかと存じております。
  249. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 この協定の締結交渉に当たりまして、外務省以外の関係各省庁、たとえば通産省であるとか農林省であるとか環境庁であるとかの代表の方が外務省と一緒に参加をされましたか。
  250. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 私の記憶では、通産省はもちろんでございます。当時鉱山石炭局の担当の方が御参加になっております。それから運輸省からは、たしか海上保安庁の方に常時参加していただいていたと承知いたしております。
  251. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 協定に調印するまでの間、外交レベルでこういう共同開発でやろうという原則的な同意をなさってから協定までの期間が約一年半あるわけですけれども、この間に相当何回も実務者会議が行われておるわけですね。その都度いま言ったような各省が実務者会議に入っておられるのですか。
  252. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 個々の記録に当たってみませんと正確な御答弁は申し上げかねるのでございますけれども、十回にわたって開かれました実務者会議への代表団の構成は、ほとんどすべてただいま申し上げたようになっていたと承知いたしております。
  253. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 次に、この共同開発事業が進んでいく中で、万一不幸にして汚染事故が起こった場合の損害賠償の能力が開発企業にあるというふうにお考えでしょうか。
  254. 左近友三郎

    ○左近政府委員 開発企業につきましては、日本の特定鉱業権者を認めるときにその経理的な能力を審査いたしますが、その際においては、当然万一に起こりました補償を支払うに足る財力を持っておる者が審査基準になろうかと考えております。  なお、世界的な通例でございますが、海洋の石油開発をやる事業者は、事故に備えまして民間の保険に入っております。したがいまして、こういう新しい開発を行う場合にはそういう保険に加入をして事故に備えることにもなろうかと思いますので、今回の開発権者については、賠償能力ありというふうに考えております。
  255. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いま本法案の十八条の関係のいわゆる「経理的基礎及び技術的能力」、これを言われたのだと思うのでありますけれども、附則第二項の関係と関連をして、これは私どもは、これから通産省に対して認可を求めていくその際の優先権を持っている企業、この取り扱いに関する条項が第二項に書かれていると思うのでありますけれども、こういう点を現実的に考えてみまして、いま御答弁ありましたようなこの賠償能力というものは十分にある、こういうふうにお考えでしょうか。
  256. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 附則第二項に規定いたしておりますいわゆる経過措置でございますが、これは現行の鉱業法に基づいて出願しておる者、いわゆる先願権なるものがその陰において財産的価値がある、いわゆる私有財産の保護という問題が出てまいるわけでございますが、一方、この地域を日韓で共同開発をする、その二つの調整点をいかなる点に求めるかということからいたしまして、ただいま御指摘の附則第二項にございますように、通常の場合と異なりまして、地域等の告示があった後三十日以内に申請をしてもそれをもって直ちに不許可としない、こういう扱いでございまして、その他の優先出願者以外の者は告示があって以降三十日を経過してからという点が異なるわけでございます。その限りにおきまして、優先出願者につきましては、ただいまの事業を遂行するに足る経理的基礎あるいは技術的能力を持っているかどうかということの審査につきましては、その他の申請者と全く変わらないわけでございます。したがいまして、ただいま立地公害局長からお答えいたしましたような立場において、この優先出願者につきましても厳正に経理的能力があるかどうかということを審査いたす、こういうことになるわけでございます。
  257. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 もしこの共同開発区域の開発権者といいますか特定鉱業権者、こういった会社が途中で解散などをしてしまってそして賠償に応じられない、こういったような状況になった場合には、日本と韓国の両政府がこれにかわった形で賠償の責めを負う、こういうかっこうになるんでしょうか。
  258. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 賠償に当たる者は、やはり原因者負担の原則に照らしまして、その両当事者が連帯して無過失賠償責任に応ずべきものだと理解をいたしております。
  259. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 それはわかりますけれども、私が質問しましたように、当初は厳重な審査をやられて、そうして経理的な基礎がしっかりしておる、いかなる場合でも賠償の責めに応ぜられる、こういうふうな確信を持って許可をされるのだろうと思うのです。法律はそういうふうになっていますから。ですけれども、万が一それが私がいま言ったような、一つの例を申し上げたのですが、可能性を喪失した、賠償の能力を持ち得ないような状態になってしまった、こういうふうな場合にはどうなるんですか、こういう質問なんです。
  260. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 万々さようなことがあってはならないと思うわけでございますが、万が一さような場合には、日韓両国の間に設けられます共同委員会でその取り扱いについて協議する、かようなことになろうかと思います。
  261. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 時間が非常に少なくて、この海洋汚染の問題、まだまだ申し上げなければならぬ問題があるわけですけれども、あと一、二お伺いをしたいと思いますが、万が一事故があって、たとえば流出した油が中国の沿岸に流れるとかあるいは中国側の漁業者に損害を与える、こういった場合の措置について、具体的にどのようなことを考えておられるか、お伺いをしたいわけです。  時間がありませんから続けて申し上げますが、その場合に、韓国側がオペレーターの場合あるいは日本の場合、それからこれまでの中国の抗議声明などとも関連をして、この点を、いま言った内容を総合的にお答えいただきたいと思う。
  262. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 そのようなケースに関しましては、この協定自体は特に何らの定めを置いておりませんので、一般的な国際法あるいは国際私法の原則によって問題が処理されるわけでございますが、まず、国家間の任意義務の問題というのが一つございます。  これは現在海洋法会議におきましても議論されておるところでございまして、現在の統合草案等によりますと、国家は海洋環境の保護に関して国際的な義務を実行する責任を有しておるというふうな規定ぶりがございます。したがいまして、このような義務違反から生じた損害で国の行為にも帰せられる、たとえば国が十分の注意義務等を怠ったというふうな結果第三国に損害を与えたというふうな場合には、その意味で国家間の責任というものが理論的には生じるということが、海洋法会議でも議論されておるところでございます。しかしながら、国の賠償責任というものはどれだけあるかというふうなことについては、現在なお審議中でございまして、明確な結論というものはまだ出ておらないということでございます。  一応その問題を差しおきまして考えますと、本来これは民事責任の問題であるというふうに考えられるわけでございまして、その場合におきましては、具体的な損害賠償の訴訟という手続がとられるというふうになるわけでございます。その際には、まあいろんな国際私法上のルールがございますけれども、たとえば事故の程度はどれぐらいであるとか、あるいは故意、過失等があったかどうかとか、あるいは被害の態様がどうであるというふうな、具体的な状況に即してそれぞれの処理ぶりが異なると思われますので、一般的なことだけを申し上げますと、裁判管轄権につきましては、通常、損害発生地国の管轄が広く認められておるところでございます。また、準拠法に関しましては、無過失責任の問題等なお国際法あるいは国際私法的に議論はございますが、当該行為が不法行為に当たるという場合には、不法行為地法主義というものがとられておるというふうなことでございます。  そこで、現実にこの区域から汚染が行われて、それが中国の海域に流れて中国の漁民に損害を与えるというふうな場合には、これは損害の発生地というのが中国であるというふうなことで、中国の裁判権が及ぶという場合もあり得ると思われますが、この辺につきましては、国際法及び国際私法上の完全なルールというものはなお世界的に確立しておらないところでございますので、そういった事故がもし発生いたしましたならば、中国側と十分協議をして、仮にその救済の方法は民事責任の追及ということで裁判によるといたしましても、やはり政府政府でもってよく話し合うということが必要になろうというふうに考えております。
  263. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いまの問題一つとってみましても、これはやはり、繰り返すことになりますけれども、この沿岸の関係諸国と十分に話し合いをし、あらかじめ了解をしておかなければ、大変な問題になると思うのですよ。これはもちろんわれわれは万が一つにも事故があってはならない、こういうふうに考えます。しかし、これは絶対あり得ないなんということはないのですから、この前の北海油田のああいったような非常に不幸な事故にも見られますように、これは絶対にあり得ないということはないのですから、そういったような点からいっても、これは十分にやはり関係諸国と事前に打ち合わせをしなければ、こんなことは簡単に決められないのだ、こういうふうに私どもは思うのです。  それで、少し技術的になりますけれども、この共同開発区域における海中操業といいますか、それの技術的な問題でありますけれども、具体的にこの地域、当該共同開発区域、この地域での海中操業の技術については、日本の場合に万全であるというふうなお考えをお持ちですか。
  264. 古田徳昌

    ○古田政府委員 わが国企業は、日本周辺の海域におきまして、昭和四十六年以降約五十坑のボーリングをしております。そういう経験もございますし、それからそのボーリングの結果、たとえば新潟県の阿賀沖ではガス田を発見しております。また常磐沖では同じくガス田の発見をしているわけでございます。そういうことで、海洋におきます油田の探鉱技術につきましては十分の経験も踏んでおり、またその水準も一流のものであろうかと承知しております。
  265. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 たとえば阿賀沖の場合とかあるいはいま言われましたような例、これは水深二百メートル前後ぐらいまで、こういうふうに私どもはいままで常識的に認識をしておったわけでございますけれども、それよりももっと深い深海部における生産操業技術の開発については、いま十分に進められておるのでしょうか。もう少し具体的に言いますと、たとえば通産省の工業技術院、この辺で深海部の生産操業技術の開発の研究体制が十分に整って、しかも研究が実践的に進められて万全の自信があります。こういうふうに言い切れる状態になっていますか。
  266. 古田徳昌

    ○古田政府委員 従来、石油の探鉱活動は、大体水深二百メートル以浅で行われていたわけでございます。そういうことで、二百メートル程度の深さまでは従来のいわゆるプラットホーム方式による生産が行われるわけでございまして、これにつきましては、先ほど申し述べたとおり、わが国企業におきましても十分の経験があるということでございます。ちなみに、阿賀沖の場合は水深八十メートルでございます。  それから、二百メートルを超えまして三百メートル程度より以上深くなりますと、これは従来方式のプラットホームのやり方では生産がむずかしいということで、ただいま先生御指摘になりましたような海底石油生産システムの開発が必要になってくるわけでございます。このシステムの開発につきましては、最近世界的に各国が努力をしているわけでございまして、わが国におきましても、この研究は従来から石油開発公団等においても行われていたわけでございますが、現在私どもの方としましては、来年度から七年間の予定で、工業技術院の大型プロジェクト制度によりましてこのシステムの研究開発を行いたいということで、関係方面に要求を出してその実現に努力しているところでございます。
  267. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 どうも後追いのような気がするわけですよ。こういう協定が調印をされ、あるいは国会を通す、それから今度は国内法をそれに伴ってどうしても一刻も早く通してもらいたい、しかし、そういう技術開発については残念ながらまだ十分でない、そしてこれから、来年度から本格的にやらなければいかぬ、こういうふうな状況がはっきりしていると思うのですよ。たとえば今年度の予算を見ましても、工業技術院でこの種の関係の予算要求があったのじゃないですか、結局それは削られたという経過があるのじゃないですか、私どもはそういうふうに認識をしているわけです。  それから、続いてお聞きをしますけれども、この開発が緒についた場合に、パイプラインの敷設は可能だと考えておられるかどうか。それから、いますでに想定しておられるとすれば、受け入れ基地の候補地はどこに考えておられるのか、一カ所でなくてもいいですよ。その点を明らかにしてもらいたい。
  268. 古田徳昌

    ○古田政府委員 どこの地域で油田を発見するかということは今後の探鉱活動にまつわけでございまして、その発見された油田との地理的な関係で受け入れ基地についての検討が行われることになるかと思います。したがいまして、現時点でどの地域に対して受け入れるかというふうなことについては、全く決まっていないということでございます。  それから、パイプラインによる輸送につきましては、世界的に見ましても、すでに水深四百メートルの海底にパイプラインが敷設された例がございます。現在の技術水準では、大体水深六百メートル程度までは敷設することが可能だと言われておりますので、共同開発区域からわが国にパイプラインを引くことは技術的には十分可能ではないかというふうに考えております。
  269. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 実は水産庁の資料「南部共同開発区域に係る魚礁等分布図」をいただきました。これを見ますと、ほとんどの主要な魚礁は、いま技術的な問題を二、三お伺いしましたけれども開発可能な地域に重要な魚礁がずっとたくさんある、深海部にはほとんどない、こういうふうに考えられますけれども、これをどのように認識をしておられますか。漁業との関係です。
  270. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 先日お出しいたしました資料にございます魚礁の位置でございますが、これは大小にかかわらず一応挙げておるわけでございまして、このほかに二百メーターの等深線に沿いまして小型の魚礁群があるということでこれを御説明申し上げているわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、一番重要なのは二百メーター等深線を前後とした帯状のもの、それからさらに各地に点在しておりますうちでも大型のもの、これが魚礁としては重要なものだと考えております。
  271. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 つまり、はっきり申し上げますと、海の浅い部分に大部分の魚礁が見られる、非常に深い部分についてはほとんどない、端的に言えばこういうことでしょう。
  272. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 大体二百メーター以浅の地域につきましては砂地あるいはどろ、これか大体の海底の底質でございます。大陸棚斜面、いわゆる二百メーター水深から深みにいきます場合には、岩礁か相当多くなっておりまして、そういう意味では、特に独立した魚礁といいますか、独立した岩礁なりその他のものにつきましては、二百メーター以浅の方か数としてはより出てくる。特に二百メーター以浅の場合には、この漁場では以西底びきが非常にたくさん操業しているものでございますから、そういう底びきの意味から小型の魚礁もはっきり位置が明示できる、こういうことでございます。
  273. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 これは繰り返して言う必要ないと思うのですが、「日韓大陸棚協定の対象となっておる海域は、わが国漁業者がみずから開発をし、着実な漁業成績を上げておるわが国でも最も優良な漁場であります。」こういうことを五月十日の本会議で国務大臣の長谷川さんか述べておられるわけです。これは非常に有力な漁場なのだ、こういうふうに言われておるわけであります。したがって、この地域を開発するというのが今度のこの協定であり、国内措置法なんですから、そういう意味では漁業との調整の問題はきわめて重要な内容を持つのではないか、こういうふうに私は思うのです。  あと時間がほとんどありませんから、ここで一つ二つ聞いておきたいと思うのでありますけれども、水産庁が先ほど答弁で述べられておりましたけれども関係の漁業者から政府が御意見をお聞きになったのは一体いつですか。説明をされて十分に意見を聞かれたのはいつですか。
  274. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 最初に漁業者の方にお話しいたしましたのは、たしか四十九年の秋ごろだと考えております。なお、そのほかいろいろな状況関係もございまして、本年に入りましても数回、長崎に関係者に集まっていただき、あるいは東京の大日本水産会を中心に会合を開いております。
  275. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 四十九年の秋とおっしゃいましたが、四十九年の三月に関係業者から話を聞いたというふうにあなたの方では言っておるわけです。それで、長崎には水産庁から人を派遣していろいろ話し合いをしました。これは四十九年の話ですね。いまの答弁ですと、ことしに入ってもおやりになった、こういうことなんですけれども、これは大日本水産会を通して、個々の小さな協同組合といいますか、あるいは個々の漁民、こういったところの意見をまとめた、こういう形なんですか。それともすべての——すべてと言えば非常に数は多くなるかもしれませんけれども、大方の漁業協同組合とは十分に話し合いをやった、こういうことですか、どちらですか。
  276. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 私どもは、大水を中心にいたしまして、関係の以西底びき網漁業者あるいはまき網漁業者あるいは全国の沿岸漁業の代表者でございます全漁連、こういう方と一応御相談して、それを現地にそれぞれお持ち帰りいただきまして、関係の漁業者の方とお話ししております。そのほかに、私どもの方から、特に関係の深いであろう長崎県の漁連あるいは一部の関係地区にも、現地に参りましていろいろ御事情をお伺いしておる次第でございます。
  277. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
  278. 山崎拓

    山崎(拓)委員長代理 松本忠助君。
  279. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それでは、まず最初に、私は、竹島の問題について主として外務大臣、続いて日韓大陸棚の共同開発の問題につきまして、外務大臣通産大臣にお伺いいたします。その後、日韓大陸棚の共同開発の北部の境界画定の問題について外務大臣に主としてお伺いしたい。最後に、自衛隊の海外派遣等の問題につきまして防衛庁、外務省並びに海上保安庁にお伺いしたいと思っております。  まず最初の問題でございますが、ただいま申し上げましたように竹島の問題でございます。  これは大臣もすでに御承知と思いますけれども、十月二十四日の韓国の東亜日報に報道されておりますが、竹島に韓国の漁民が移住しまして、定住のための住民登録をしていることが明らかにされております。外務省は、この問題につきまして事実関係調査して、その上で対処すべきと私は思うものでございます。また、五十二年十一月八日の朝日新聞の記事によりますと、AP電でございますけれども、種々の写真が載っておりまして、裏づけの資料として私どもは見たわけでございますけれども、このような記事を見ましたときに、韓国側がいま竹島が自然自然に自分の領土であるかのごとき振る舞いをしている点、そしてまた竹島に警備隊を駐留させるとかアマチュア無線が乗り込んで、こちら韓国領独島というような電波を発信しているというような報道があるわけでございます。     〔山崎(拓)委員長代理退席中島(源)委員長代理着席〕  こうした点を考えまして、いま竹島に対してとっております韓国の問題に対しまして、昨日の委員会におきましても海上保安庁から目視調査をしたというような結果報告も出たわけでございます。しかし、私どもは、この竹島に韓国側が構築している構築物の撤去、こういう問題につきまして政府として厳重な申し入れをすべきではないかと思います。きのうも質問の中でこの問題が出てまいりまして、口上書で申し入れたというようなことが出ておりますけれども、そのような目視の調査、言うならば、船が出て竹島の周りをぐるぐる回って双眼鏡で竹島の状態を見て、それで調査したなんというのは、本来の調査ではないと私は思います。  そうした目視調査でなくて、政府としてこうした問題に対してそのままにしておいてはならないとするならば、当然竹島へ政府調査団を派遣して、その実態というものを確実に掌握してくる、そのことによりまして韓国に対して正当の手続をとるべきではなかろうか、私はこう思います。それらの点につきまして、まず外務大臣からお伺いをいたしたいと思います。
  280. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 竹島に政府としての調査団を派遣せよ、こういうお話でございますが、その前に、先ほど御指摘のありました二、三点につきまして、たとえば漁民が移住をしたというようなことが韓国紙に報道されたというような記事がございまして、その点につきましては、早速ソウル並びに東京におきまして、韓国側に厳重抗議をいたしましたところ、先方は、漁民は決して移住をしたものではない、こういう返答がありましたことを申し上げます。  その他、構築物あるいは警備員等の問題につきまして、これは新しい事実が出るたびに厳重抗議をいたしておるところでございます。  調査団の点につきましては、御提案でございますので、いろいろ検討をしてみたいとは思いますが、しかしながら、竹島問題が、このように韓国並びに日本との間でその領有権につきましていわば紛争といいますか、日本と韓国との立場が全く相入れない立場にある、こういう事態でありますし、この問題は、韓国と日本との国交正常化の際におきましても、これは解決することができなかった問題でございます。そういう意味で、そういう事態のもとに日本と韓国とが国交の正常化をいたしたわけでございます。  したがいまして、日本政府といたしましては、あくまでも平和的な手段によってこの問題を解決しなければならない、こういう立場にあるわけでございまして、この問題につきましては、韓国政府とよく話し合いました上で適切な措置を考えたい。日本といたしまして、古来からこれは日本の領土であるという立場を崩しておらないことは御承知のとおりでありますし、また、今後いろいろな事実の積み重ねによりまして日本立場が弱まるということは、私どもとしてたえ得ないところであります。そういうことから、新しい事実の積み重ねに対しましては厳重な抗議をし、そして、将来いつの日にか、国際司法裁判所等の判定を受けるべきものであろうと考えておるところでありまして、それに対しまして、日本が決して立場を損じないように最大の努力をいたしたいと考えておるところでございます。
  281. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 大臣、すでに御承知でございましょうけれども、竹島は日韓国交正常化の交渉の中でも片がつかなかったわけでございますし、また、六五年に結ばれました日韓基本条約におきましてもたな上げにされているという事実でございます。  いまもいろいろとお話がございましたが、韓国側の態度というものは、既成事実というものを一つ一つ積み上げていって、そうして韓国の領有を既成のものにしょう、こういうふうに印象づけようとしている、こういうふうに韓国はしているものと思われるわけでございます。日本政府の態度としては、相入れない立場にあるこの竹島の領有問題に対して平和的な手段によって解決する、話し合いをする、こういういま大臣の御答弁でございます。しかし、それは将来いつの日のことか、全くわからないわけでございます。  大臣、それをいつの日と限定できますか。将来ということは、長い長い先のことなのです。そんなことでは私はならないと思うのです。それにはどうしても政府調査団を派遣すべきである。実態調査をすべきである。そして、実態調査をした結果、もう一度はっきりと韓国に対して言うべきことを言う。これは私は当然日本の主権を守る上からもやるべきことではないかと思うわけです。  したがいまして、私は結論をお伺いします。この調査団、政府調査団、これを実態把握のために竹島に派遣する。そのことをするかしないか。もししないとするならば、やらない理由を明確におっしゃっていただきたいと思います。
  282. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 調査団を派遣するにいたしましても、これは韓国側と話をつけた上でなければ、実際問題として派遣するわけにいかないわけであります。そういう意味で、どういう目的のために派遣をするのか、これがまず第一にいろいろ問題になろうかと思います。そして韓国側は、もう当然自国の領土である、このように主張をいたし、また現実行動をとっているわけでありますから、それを全く否認する立場におきまして調査団を派遣するということも、なかなか先方は了承をいたさない、かように思うわけでありまして、この点につきましてはやはり韓国側と話し合ってみなければ実現できない。また、私どもの感じといたしまして、韓国政府はそのような申し出には応じないという感じがいたします。しかし、これは折衝をしてみなければわからないところでございますので、その点は考えさせていただくということ以外に申し上げようかないのであります。
  283. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 回りくどい説明は要りませんから、私がお伺いしていることに答えていただければよろしいと思うのですよ。     〔中島(源)委員長代理退席委員長着席〕  それで、いま大臣は、竹島に調査団を派遣するのには韓国との話し合いをしなければならない。  竹島はどこの国の領土なんですか。
  284. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 竹島は、もう御承知のような状態でありまして、韓国側は韓国の領土であると考えて、現実にその行動をとっております。日本政府日本の領土である、このような状態にあるわけでありますから、こういう点で、調査団が生命の安全のもとに調査できるためには、やはり話し合いをしなければ現実に参れない、このように考えるわけであります。
  285. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 私がお伺いしているのは、どこの国の領土か、これをお伺いしたわけです。  私は、日本の国の領土である。しかも、かつては無人の状態であったことも事実です。しかし、そこへ韓国が無法にも先ほど申し上げたようないろいろな施設をつくり、人間を派遣し、アマチュア無線家、そうした者を上陸させているという事実があるわけです。しかし、現実にあの竹島というものは日本の領土であったわけです。であるとするならば、私は、韓国に交渉をして調査団を派遣するということ、これを申し入れをし、そして実現に移しているというのが当然ではないかと思いますが、この点いかがでございましょうか。それをおやりになるお考えがございませんか。
  286. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この席におきましてそういうことは全く考えていないと言うほどにいま決めているわけでは決してございません。いろいろ検討させていただきたいと申し上げておるのであります。
  287. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 検討と言いますけれども、これが一番問題なんです。重大な問題なんです。私が日韓大陸棚の問題に入る前になぜ竹島の問題を取り上げているかというのは、そこなんです。問題は。そこに問題があるからこそ、私はあえて竹島の問題を最初に取り上げているのです。私は、日本独自の立場調査する、当然のことだと思いますけれども、それができない。できない理由、それをいろいろと大臣も申し述べておりますけれども、あえて申し上げますならば、調査団を政府が竹島に派遣をした場合には、話し合いができないままにした場合には、韓国側が実力をもって阻止する可能性がある、こういうふうに外務大臣判断するがゆえに竹島にわが国の政府調査団を派遣できない、こう私は認識してよろしいですか。
  288. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私は、いろいろ想定したもとに言っておるのではございません。現実におきまして海上保安庁が調査をしているわけでございます。これは上陸——上陸といいますか、島には上がっておりませんで、周りを回遊をいたしまして調査をしております。そういうことが現在日本がやっていることであります。したがいまして、民間の人が調査団として平穏に竹島に韓国政府と何らの連絡なしに行けるという状態にはないと私は判断をいたします。
  289. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 ですから、私がお伺いしたのは、韓国政府が実力をもって日本調査団を阻止するというようなおそれ、そういった可能性がある、そのような判断があるからなんでしょう。どうなんですか。——外務大臣か答えればいい、アジア局長じゃない。外務大臣
  290. 中江要介

    ○中江政府委員 実力をもって阻止する以前の問題といたしまして、韓国はあの竹島は独島という名前で自国の領土であるという立場をとっておりますので、何の手続きもなしに入りますと、日本からは自分の領土に行く、渡航するということになりますが、韓国から見ますと不法入国の疑いがある、こういう関係になるということでございます。
  291. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 委員長にお願いします。外務大臣に私は答弁を求めているんだ。ですから、アジア局長に指名する必要はないと思います。  私がいま竹島の問題を取り上げておりますのは、いろいろの問題点が竹島を中心としてここにあるわけです。両国の間に。わが方は竹島はわが日本の領土だ、韓国の方では独島だ、こう言って、韓国は自分の領土であるかのごときいろいろの施設をし、そしてそのことを証拠づけようと思って、積み重ねの事実をやっておるわけだ。そういう点から、行かないということ、民間でなく、政府として調査団を派遣することができないという理由をいろいろと述べておりますけれども、韓国は竹島の領有は日本との間に武力紛争も辞さないという姿勢を持っている、そういうことが懸念されるから日本としては行きたくないんだ、私はそう思いますけれども、それに対して、間違っているか間違っていないかだけ答えてください。
  292. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 韓国がそのようなことを考えているということは、私は存じておりません。
  293. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 武力紛争も辞さないというような姿勢を持っているというふうにわれわれは認識しているけれども、そういう認識が外務大臣はないとするならば、堂々と韓国政府要求し、そして平和のうちに上陸して調査をすべきじゃないですか。
  294. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 韓国政府と話し合いの上でできればそういうこともできようかと思います。これはしかし、話し合った上でのことでありますし、そのようなお考えにつきましては検討させていただきたいと先ほどから申し上げているのでございます。
  295. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いままでこの竹島の問題についての五十数回の抗議を韓国にしているというようなことを私は聞いております。それが事実としたならば、五十回もこうした抗議を繰り返していながらいまもって解決しない問題、それをあくまでもこちらが誠意だ誠意だと言ってもそれに対してこたえてこない韓国、これを相手にしていたのではいつになってもらちが明かないと私は思うのです。  そこで、政府はこれまでもこの竹島の領有問題に対しては何とか外交交渉を通じ、そして正式の交渉も行ってきたことと思います。しかし、こうした交渉の経過というものをいまくどくどしくここにおいてお伺いしていても、これは大変な時間を食うことと思いますので、結論だけお伺いしますが、五十数回にわたる抗議に対して、韓国側は日本政府の交渉の申し入れに応ずる気配を示したのか、示さなかったのか。
  296. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 先ほど、この九月に行いました日韓定期閣僚会議におきましても、この問題につきまして話し合いをいたそうという申し入れをいたしました。しかし、韓国側といたしまして、この問題につきまして話し合う用意がない、このようなことで交渉には至らなかったわけでございます。このような状態でありまして、いつの日にこの問題が解決できるかという点は、いまここで見通しは立っておりません。しかし、私どもといたしましては、この問題は、いずれ外交交渉で決着がつかない場合には、調停にかけるなり国際司法裁判所に決着をつけてもらうよりいたし方のない問題である、このように考えております。
  297. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 大変失礼な言い分になるかもしれませんけれども、私は、日本の外務大臣として日本の国益を守るという立場から、もっと積極的にこの問題の解決のために外務大臣努力されるのが当然だと思うのです。  いつまでも堂々めぐりをしていても始まりませんから、先に進めますけれども、重ねてお伺いいたしますが、政府見解は、竹島は日本の領土の一部であるということは再三言ってきております。それはそのとおりですね。竹島を将来ともに放棄するようなことはないと思いますけれども、確認の意味において改めてここでお伺いしておきたいわけであります。
  298. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 将来のことにつきましていま私がここで申し上げてもどうかと思いますけれども、これは私どもとしてそのようなことは、外務省のどの人でも放棄するというようなことは毛頭考えておらないと思います。
  299. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 私は、将来のことはわからないなんという逃げ口上を言わないで、日本の国の外務大臣とするならば、将来ともにこの竹島の領有については日本の領土であると明確にここで言っていただきたかったわけであります。しかし、そう私も理解いたしまして、次に進めます。  一九六五年の日韓基本条約の際に、紛争の解決に関する交換公文というものがつくられました。これは御承知と思いますけれども、昭和四十年の六月の二十二日に東京で署名され、国会で同年の十二月十一日に承認されて、同年十二月の十八日に効力を発生しておるあの紛争解決に関する交換公文でございます。この交換公文は要するに紛争が起きるというおそれがあって相互にやりとりされた、私はこういうふうに思っているわけでございます。  政府は、この竹島の問題については、この交換公文によって解決すべきものであるというのがいままでの政府見解でございましたけれども、これは間違いございませんか。これはアジア局長でも結構。
  300. 中江要介

    ○中江政府委員 間違いございません。
  301. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 そこで、日韓基本条約を審議した際の衆議院の特別委員会におきまして、当時の椎名外務大臣が、この交換公文が作成されたいきさつというものはもっぱら竹島紛争だというふうに言明しておられます。韓国もこれに合意しているはずだと思います。したがいまして、交換公文が取り交わされたわけでありますから、この交換公文並びにただいま申し上げました椎名外務大臣の発言、こうしたものが現状からすると踏みにじられていると私は理解しますが、いかがですか。
  302. 中江要介

    ○中江政府委員 二つの点で当時日本側が考えておりましたとおりになっておらない。一つの点は、韓国側が紛争でないという立場をいまでもとっているということでございます。もう一つは、日本は紛争である、紛争であるならばこの交換公文の手続にのせるべきであるという立場にかかわらず、この手続にのっておらない。この二つの点でおっしゃいますように、踏みにじられているという表現はどうかといたしまして、実現されていないということは認めざるを得ないと思います。
  303. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いまのアジア局長の話しでもわかりますけれども、とにかくこの交換公文、要するに紛争の解決に関する交換公文というものが取り交わされたということの背景にはこういう問題があったわけです。  そこで、いまもお話がございましたけれども、とにかく竹島の領有の問題についてはその当時明確な答えが出ない、わが方は紛争だ、向こうは紛争ではない、こう言っているようでございますけれども、とにかくこの交換公文によりまして竹島の問題を解決しようということは両国が合意したと私は認識しているのです。この点はどうですか。
  304. 中江要介

    ○中江政府委員 韓国側との間に竹島の問題をこの交換公文で解決しようという合意があったかという点は、私はなかったと思います。韓国は、これは紛争でないという立場をそのときも言っておったわけでございます。ところが、一般国際法上、一方の国が紛争であると言い、他方が紛争でないと言った場合は、それは国際紛争であるというのが確立されておるわけでございますから、韓国が何と言いましょうとも、日本がこれは国際紛争であるといって交換公文に基づく解決要求することは可能であるし、当然である、こういうふうに思います。
  305. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 紛争であると認められるならば、私は、この交換公文を盾にとって堂々と主張するところは主張すべきであると思うのであります。もしそれをやらないとするならば、韓国は明らかに条約の不履行だ、こう私は思うわけでございます。また、ことしの予算委員会におきましても、政府は、韓国は条約不履行であるという言明をしております。私はそのような認識はいまも変わらないと思いますけれども、この点はいかがですか。
  306. 中江要介

    ○中江政府委員 この紛争の解決に関する交換公文の第一段階である紛争がありますと、まず外交交渉によりという、その外交交渉により解決しようという姿勢で、先ほど大臣もおっしゃいましたように、日韓定期閣僚会議の席上でも、閣僚レベルの話し合いのときに、外交交渉で解決しようということを申し入れておりますのに対して、先方が応じてきていないということは非常に遺憾なことでありますし、この交換公交に沿った対応であるとは言えない、こういうふうに思います。
  307. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 ということは、繰り返しになりますが条約不履行ですね。ことしの予算委員会において発言されておりますけれども、韓国は条約不履行であるという言明があったわけです。その言明はいまも変わらないかと私はお尋ねしているわけです。
  308. 中江要介

    ○中江政府委員 条約不履行という用語の問題は別といたしまして、韓国が応じていないという実情は変わりはありません。
  309. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 そこで、条約不履行であるということになれば、条約の不履行に対する外交的な報復措置というものをとる権利が発生するのではないかと私は思います。韓国に反省を求めるという意味と同時に、竹島の公正な解決を図るためにも、何らかの外交的な対抗の措置をとるべきではないかと私は思いますけれども、この点は外務大臣はどのように思いますか。
  310. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、この竹島問題は、韓国との間の正常化の際にも解決し得なかった問題で、その後引き続き未解決の問題である、そういう事態が続いておるわけであります。このことはまことに残念でありますけれども、この問題はまた韓国内におきましても非常に問題になっておるところであります。したがいまして、この問題はやはり粘り強く処理をしていかなければならない。  わが国といたしまして大変忍びがたい点もあるわけでありますけれども、これに対しまして報復措置をとるということにつきましては慎重に検討いたしませんと、日韓の国交自体につきまして非常に重大な影響が出てくる問題である、こういう認識のもとに、この問題の処理につきましては、日本立場を害しないように、将来国際司法裁判所等に出訴いたしましたとき、そういったときにおきましても日本が不利な立場に立たないように留意しつつ、他方粘り強く韓国側と折衝する、こういう態度で進んできたわけでありまして、報復措置につきましては、よほど慎重な考慮を要すると考えておる次第であります。
  311. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 私は、直接的な報復措置をすぐとれと言っているのじゃないのですよ。報復措置をとる権利が発生するのではないかとお尋ねしているのです。その権利は少なくともあると思いますけれども、権利もありませんか。そしてまた、さらに私の質問は、韓国の反省を求める意味からも、また同時に竹島の公正な解決を図るためにも、外交的な対抗措置というものを当然ここで考えていいのじゃないか、実行に移していいのじゃないか、この決意をお尋ねしているわけなんです。
  312. 中江要介

    ○中江政府委員 交換公文には、もう先生も御承知のように、まず外交交渉、その次に特別の合意、それもなければ調停、こういうふうになっておりますので、日韓間の紛争解決の手順といたしましてやはり尽くすべき手を全部尽くして、その努力にもかかわらずそれが実現を見ないというときには、あるいはそういう報復なり何なりということも考え得るかもしれませんが、いまのところは、まず入り口の外交交渉をやろうというところで粘り強く交渉の糸口を探しているという段階でございますので、すでに権利が発生しているかという点はちょっとまだむずかしいか、こういうふうに思います。
  313. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 竹島の領有の問題につきましては、少なくとも十二年以上にわたってこの問題が再三問題になっているにもかかわらず、何ら解決していません。前進をしていない。こうしたことではまことに遺憾でございます。その一方で、韓国側は、先ほどから申し上げておるように、いろいろな既成の事実を積み上げているわけです。こうしたことを許しておいたのではいけません。話し合いにさえ応じようとしない。こうした態度はまことに遺憾だと思うわけでございます。  そこで、政府として、先ほども外務大臣は、将来ともにわたって竹島は日本の領土であると宣言されたと私は受け取っております。したがいまして、この竹島が日本の領有に帰すべきものであるといういまの外務大臣見解、これに基づいて交渉をしていくという単なる公式論だけでは解決されない。それならば、この交換公文にもございますように、外交交渉に移るべきではないか。その外交交渉も、わが方と韓国の間だけでは十二年間もやっていて一歩も進展していないです。この事実は認めるでしょう。だとしたらば、何かほかの方法にもよってやるべきではなかろうか、そういうことを何も考えないで十二年以上もほったらかして、自分の領土だ、日本の領土だと言いながら常に韓国側に先手先手と打たれている現状を、私はまことに残念に思うわけでございます。  したがいまして、この交換公文にございますように、「外交上の経路を通じて解決」、そしてさらに、「これにより解決することができなかった場合は、両国政府が合意する手続に従い、調停によって解決を図るものとする。」というこの後段のくだりに対して何か具体的な行動を起こしたか、こうお尋ねしたい。ところが、何もそんなことをやってない。日本と韓国との間で粘り強い交渉だ、粘り強い交渉だ、やっているだけの話で、いつになってもらちが明かない。もう十二年間以上やっておるわけであります。  そこで、私は、いま申し上げましたような外交経路で解決されなかった場合には調停によって解決する、こういうふうに交換公文にも書いてございますので、この際アメリカに調停を依頼するという考えはないか、またその時期ではないか、こう思いますけれども、外務大臣、いかがでございましょうか。
  314. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 わが国といたしまして、これが調停というようなことに持っていければ、現状のような状態よりは好ましいという考えは私どもも同じ考えでございます。ただ、調停をお願いするには、やはり韓国政府とともにそのような意思決定をしなければならぬわけでございますし、そういう方向に韓国政府が同意をするような環境に持っていくべきであろうというふうに考えておるわけであります。
  315. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いまの外務大臣のお答えをこのまま繰り返していくと、これから十二年も十五年も同じことです。いつになっても解決されない問題だと思うのです。だから、私は提案をしているのです。要するに、この際アメリカに調停を依頼することを考えるべき時期に来ているのではないか、こういう私の質問なんです。それに対して、その考えはありませんとかありますとかいうお答えが返ってくるかと思えば、依然として、両国間の合意を取りつけて、そして調停によって解決したいなんというふうなことを言っていらっしゃる。私の提案は、アメリカに調停を依頼することを考えるべき時期に来ているのではないかと私は思いますから、外務大臣のお考えはどうなんですかと聞いているのです。
  316. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 そういうことができれば大変望ましいと思います。
  317. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 そうすると、外務大臣はそういうことは不可能だとおっしゃるわけですか。やってみないで不可能だとおっしゃるわけですか。それとも、何か瀬踏みをしてみたんですか。
  318. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 調停をお願いするというのは、やはり両国がお願いをするわけでありますから、したがいまして、韓国政府がそれに応ずるようなそういう環境に持っていきたい、こういうことを申し上げているわけであります。
  319. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 なかなかそれでは問題がかみ合いません。私は、韓国側がこの問題に対しまして誠意のある態度をとっているとは思えません。そうしたときにアメリカに調停を依頼しようといっても、韓国が合意しなかったらその調停もできない。だから、いまの問題はとても不可能な問題だとおっしゃるわけです。  そこで、日本だけで決定される問題でございますけれども、日韓経済協力を考え直すということも一つの方法ではなかろうかと思いますけれども政府のお考えをいただきます。
  320. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 竹島の問題は竹島の問題として解決を図る、こういう意味でその交換公文もできておると私どもは理解をいたしております。したがいまして、この問題と他の日韓間の国交問題中でも経済協力関係は大きな問題でございます。この問題と絡めて処理をするということになりますと、これは大変重大な影響が出てこようかと思います。この点につきましては、やはり慎重に検討すべきことと考えております。
  321. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それでは、外務大臣は竹島の問題は小さな問題だとおっしゃるのですか。日韓経済協力の問題、そういう問題を一つのてことして、一つの方法ではないかと私は訴えておるわけなんです。この日韓経済協力の問題を考え直すときだ、考え直すということも一つの方法ではないか。そういうことを政府として韓国側に通報し、そして竹島の問題の解決を図るという考えはないのか、こう伺うわけです。ところが、外務大臣は、竹島の問題は竹島の問題、経済協力の問題は経済協力の問題、だからこれを一緒にはできないんだ、こうおっしゃってお逃げになっていらっしゃる。私は、先ほど外務大臣が竹島は日本の領土だということを言明なさった以上は、日本のその主権を守るためにも断固たる処置をとるべきではないかと思うのです。  そこで、その経済協力の問題についてもお考えがないようでございますので、次の問題を提案します。  韓国の警備隊の退去だけでも強硬に要求すべきではないかと私は思うわけです。竹島の領有が最終的に解決するまでは、竹島を無人の状態に置く、あるいはまた暫定的な措置として共同管理の状態に置くというぐらいのことは申し入れられるのではなかろうかと思います。こうした最小限のわが国の提案に応じないとするならば、さしあたり経済協力の中止、日韓閣僚会議の無期延期、大陸棚協定の解消、こういった問題に発展するのもやむを得ないのではないかと私は思いますけれども、この点について外務大臣のお答えをいただきたいと思います。
  322. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この竹島問題の経過から見まして、竹島問題を解決できないで日韓の外交関係、国交の正常化を図った、こういう経過でございます。したがいまして、この竹島問題をもってまた日韓関係が断絶状態になるというようなことは、これは日本といたしましてやはりよほど慎重に考えなければいけないことであろうというふうに考えているわけでございます。
  323. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 慎重も度が過ぎますとおかしなことになります。日本の人たちがどれぐらい竹島の問題で憤激をし、その憤激を胸の中へこらえているか、外務大臣、おわかりがない。私のいまの提案の第一は、韓国警備隊の退去、これも要求をしてはどうか、あるいはまた、領有が最終的に決定しない、もういままで十二年もかかっている、まだこれから何年かかるかわからない、こういう状態ですから、最終的に解決するまでは竹島を無人の状態に置く、暫定的な措置として共同管理の状態に置く、これぐらい私は段階を下げて、そして提案申し上げている。その三つさえもやろうとしない。また韓国に申し入れてもとても合意できないからだめです。そういうことで、常に常に日本が申し入れながら、口上書で言いながら、何にも解決しないまま韓国は一つ一つ既成の事実というものを積み上げてきているのが事実じゃありませんか。  だとしたならば、こうした最小限の提案にさえも応じようとしない、そうした韓国の態度に対して、経済協力の中止であるとか、日韓閣僚会議の無期延期であるとか、大陸棚協定の解消など、こういうことをとるのは当然じゃないかと私は思うわけでございます。重ねてこの点を明確にお答えをいただきたい。
  324. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいま最初にお述べになりました警備員の退去、このようなことは、日本政府といたしましてこれは厳重に申し入れてあります。ただ、実現をしない場合にいかなる措置をとるか、こういうことでございますが、わが政府といたしましては、そのような事実を確認するたびに厳重に申し入れているということでございまして、決して先方が事実を積み上げるのをただ手をこまねいておるということではなく、日本といたしましても、抗議の数を重ねることによりまして、日本の抗議というそういう事実を積み重ねているわけでございます。  ただ、それとほかの事項を絡めてでも実行せしめよ、こういうことになりますと、この問題の発端、経緯を考えますときに、これは日韓関係に容易ならぬ事態が出現をする、こういうことでありますので、その点は慎重に考えさせていただきたい。ただ、当方が抗議すべき事項につきましては厳重に抗議を繰り返す、こういうことを続けているわけでございます。
  325. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 際限のない話でございますから結論に入りますけれども、竹島の問題に対しての政府の弱腰かはっきりしました。まことに遺憾でございます。いまのような状態で竹島をいつの間にか韓国の領土にしてしまう、これはもう容易ならぬことだと思います。日本の交渉というものは全く紳士的な交渉であります。向こうはそれに報いるのに全く実力行使で、こちらは紛争だと言う、向こうは紛争じゃないと言う。しかし、これはもう明らかに紛争だというふうに先ほどアジア局長言われているわけですから、この竹島問題の解決日本政府の責任としても当然やらなければならない問題でありますし、先に日を延ばすというそうした悠長なことは許されないと私は思う。  そこで、この問題ばかりかかっておるわけにいきませんので、結論を言いますけれども共同開発ということは相互の信頼関係の上に成り立つものと考えるわけでございます。お互いに不信の状態にあっては万事うまくいくものではないと思うわけでございますけれども、こめ点は常識的なお考えとしてどのようになりますか。
  326. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 おっしゃるとおりであろうと思います。
  327. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 私の意見を述べて、そのとおりだとおっしゃるわけでございます。相互の信頼関係の上に成り立っていくわけでございます。しかしながら、竹島問題を例にとりますと、交換公文を踏みにじられています。一方的でございます。そして既成事実を積み重ねていく、そして自国の領土というふうに主張する、このような国と共同開発をやってもうまくいくわけがないと私は思うわけでございます。  竹島の問題を解決するという気力はあるけれども、それに対して具体的な措置というものは全くとらない日本政府、それを思ったときに、この竹島問題を私が冒頭の質問にいたしましたのも、共同開発をしても、相互の信頼開係の上に成り立つものでなければこの共同開発というものはうまくいかないだろうと思う。しかも共同開発なるもの、世界で初めての例です。いろいろな危険、リスクを伴うということは、もうすでに皆さん方の質問でわかっている。しかもお互いに不信の状態がある、こうした状態の中でやってもうまくいくわけがない。  でありますから、竹島の問題さえ解決できないようなことで、これからどんなことが予想されるかわからないようなこの共同開発という問題これは私は大変政府として本末転倒のやり方ではなかったかと思うわけです。この竹島の問題が解決し、そしてしかる後にこの共同開発というふうに移っていくなら当然の話でございますけれども、竹島の領有問題さえも解決しないで、この共同開発という問題に踏み切った政府のやり方というものは、私は本末転倒もはなはだしいと思うわけでございますけれども、この点に対する御見解はいかがでしょうか。
  328. 中江要介

    ○中江政府委員 竹島問題につきまして、韓国側がわが方が思っているように対応してこない、それを遺憾とし抗議を重ねているということは一方において事実でございますし、その点ははなはだ遺憾だと私どもいつも思うわけでございますが、他方、一九六五年に正常化いたしました日韓関係全般を見ますと、竹島問題についての意見の相違はございますけれども、その後各種の協定を結び、事実上の関係は発展してきておるわけでございます。  したがいまして、この大陸棚協定の問題も、ともに主権を争う部分について実際的解決をして資源開発を図ろう、その限りにおいては、韓国との間にこの大陸棚領有に関する紛争を話し合いによって解決した、紛争解決の交換公文の精神にのっとった一つの紛争解決の姿であろう、こういうふうに私ども受けとめておりまして、これがあるからすべてがいいとは申しませんけれども、これも一つ解決の仕方で、国家間には諸般のもろもろの紛争はございますけれども、それの一つ解決しないからといってほかを待つということもできないわけで、現実的な対処といたしまして、竹島の問題は引き続き解決努力をすると同時に、大陸棚協定につきましては国会で御承認いただきましたことでもあり、関連国内法案をもって円滑な実施を期待をしている、こういうことでございます。
  329. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 私は、そこまで聞いているのじゃないのですよ。よけいなことをアジア局長答弁をする。何も国内法を通してくれとか通さないでくれとか、そんなことを聞いているのじゃないのですよ。いまのその竹島の問題さえ解決しないでいる、しかもこれから何年先になるかわからない、そういったお互いに不信の状態がある、こうした状態の中において共同開発をやってもうまくいかないだろう。うまくいく確信があるのですか。外務大臣、これを答えてください、うまくいくというなら。  こんな不信な問題、お互いにたった一つの竹島の問題さえ解決しないでもう十何年、これから先何年たつかわからない、そういう状態の中で、世界にもまれな、全く初めてとも言えるこの共同開発というものをこれからやろう。この共同開発というものは相互の信頼がなければできないのだということは、大臣も私の質問に対してお答えになった。明白にそうだ、相互の信頼がまず大事だ、こう外務大臣も言われている。にもかかわらず、この竹島の問題一つを例にとってみても、全く相互に、紛争だと言えば紛争じゃないと言う。こっちが外交交渉によって解決しようと図っていても、それをはねつけている。だから、私はさまざまな提案をしました。しかし、その提案についても、慎重に熟慮するとか、考えるとか、実行に移す考えが何もない。そうした中で、いま竹島の問題がこれ以上長引いていく、これが解決する時期というものはまだまだ先のことだ。そうした中にあってこの共同開発という問題がうまくいくかどうか、そのうまくいくという確信があるなら結構です。うまくいきますと、そう言ってください。うまくいかないというならうまくいかないで結構でございます。いくかいかないか、その二つのうち一つ、どちらでも結構でございますから、外務大臣お答えください。
  330. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 共同開発がうまくいくかどうかということでございますか。
  331. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 不信という状態があって……。
  332. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 不信という状態は、私は必ずしも共同開発に当たりまして日韓両関係者が不信を持っているとは思いません。  竹島問題が未解決であるということは、これは日本におきまして国民的な願望である。これは領土の問題でありますから、ぜひ解決を図りたいというこの国民的な熱意はもう当然でありますが、韓国は韓国として、やはりこれは絶対自己の領土である、こういう国民感情を持っているわけであります。したがいまして、竹島問題につきまして議論するときには、これは両方とも見解が一致しないわけであります。しかし、そのことが全体に日本と韓国との間にみんな不信があるのだ、こういうことにはならないということを私は率直に申し上げたいと思います。
  333. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 外務大臣、私の質問をよく理解してくださらないようであります。なかなかピンとした答えが返ってこない点は残念に思います。私は、竹島の問題について日韓双方に紛争が起きているのだ、こういう認識です。外務省もその認識だと思うのです。ところが、向こうはそうじゃないと言っている。お互いに不信という状態です。不信という状態は共同関発というような仕事の上においてはあってはならないことだ、こういうことを私は前段の質問でも申し上げた。そして外務大臣もそれを肯定なさった。ところが、この日韓大陸棚、この共同開発という問題に対してうまくいくわけがないと私は思っているけれども、外務大臣はうまくいくという確証があるのかどうか。竹島の問題、そういう問題が前段にあるわけですから、そういう国との間にこの共同開発というような問題をしてみてもうまくいかないでしょうというのが私の考え方なんです。だから、外務大臣は私の考え方に反対なさって、そしてうまくいきますとおっしゃるならうまくいきますで結構なんです。その二つに一つを答えてくださいというふうに申し上げているわけでございますので、重ねてその点だけ簡単にお述べいただいて、次に移りたいと思います。
  334. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この共同開発の問題につきましては、両国の間でいままで大変むずかしい協定、条約を手がけてまいったわけで、これは完全に双方が信頼し合って仕上げてきた仕事である、このように考えて、うまくいくと存じます。
  335. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 次に移ります。  とてもじゃないけれども、いまのような状態でこの大陸棚共同開発という問題をやっていれば、いままで数日間の質疑を通じましていろいろな問題点が起き、その問題点を一つ一つ同僚議員が指摘したわけでございますけれども、その問題点についての認識がまだまだ政府側は薄いように思います。  そこで、これから質問いたします問題は、ひとつ簡単にお答えをいただきたいわけです。それは、もう時間も非常に少のうございますし、先ほど冒頭申し上げましたように質問が五つございますので、それらの点を考えていただいて、明快にそして簡単にお答えをいただきたいわけでございますが、この大陸棚の共同開発につきまして韓国が非常に急いでいるということは、情報でわかっております。そしてまた、日本側に対し再三にわたりまして、早期批准をしてくれとかあるいは関連国内法の成立を求めてくれとか、こういうことが伝えられております。そこで、もし日本での特別措置法の成立がおくれて共同開発ができないようになった場合に、韓国は一方的に開発に踏み切るようなこともあり得るかないか、むずかしい説明は要りませんから、簡単にお答えください。
  336. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 その点は韓国のことでございますから、私どもの方からとやかく推測することは適当でないと思います。
  337. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 まあ、協定が成立しているんだから、向こうが一方的に開発に踏み切ってくるようなことはないだろう、こういう答えですね。
  338. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 韓国側の行為でございますから、私どもがここで申し上げることは適当でないということを申し上げたのでございます。
  339. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 外務大臣、私が聞いているのは、一方的に踏み切ることがあるかないか、それをお尋ねしているのです。その見通しをお尋ねしているのですよ。わが方がこうやって、きょうも国内法の成立ができるかどうか瀬戸際にあるわけでございます。しかもまた、批准の問題についてもきのうの質問の中で再三繰り返された問題です。そして、この特別措置法の成立がおくれた場合にも、共同開発というものができないような状態になったようなときでも、協定があるからといって韓国側が一方的に開発に踏み切るのか踏み切らないのかわからない、これは韓国のことだからわからないというのですか。
  340. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私ども立場から申し上げれば、一方的な開発ということは絶対に日本政府として容認できない、こういう立場であります。しかし、韓国政府の行為をどう考えるかということにつきましては、他国のことでございますからここで申し上げることは差し控えたいと申し上げているのであります。
  341. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 韓国側が再三の日本側に対する要請、要望、そういうものをしておりますけれども、韓国側がもうとても待ち切れなくなったときに仮に一方的に開発を行うということがあった場合、これは国際法的にはいかなることになるか、純法理論的にひとつお述べをいただきたい。これは条約局長ですか。
  342. 中江要介

    ○中江政府委員 純国際法的に言いまして二つの見解があって、そのどちらが優勢になるかきわめて微妙だという感じがいたします。  一つの考え方は、協定まで結んで平和裏に開発しようという準備ができているのに、その発効を待たずに着手したのは遺憾である。つまり、もう約束ができているのにそれを待たずにやるのは遺憾である、こういう考え方でございます。  もう一つは、協定を締結して三年余り、近く四年になりますが、四年間相手の批准を待ったけれども、相手が批准するという確約もないし、実際批准も行われないのであるから、この場合は日本のことでございますが、これは日本にこの協定を実施する意思なしと判断して韓国が一方的に踏み切った。そのことによって第一の見解によって韓国側にある種の違法性がありますが、それが国際法的に阻却されるかどうか、これが第二点。  この二つの見解があり得る、こういうふうに思います。
  343. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 もし韓国側かそうしたことをわきまえながら一方的にやった場合、日本側としては待ったをかけられないのかどうか、この点をお伺いします。
  344. 中江要介

    ○中江政府委員 もちろん日本政府といたしましては、先ほど大臣も言われましたように、第一の見解に基づいて待ったをかけるばかりでなく、遺憾であるということを言うと思いますが、その迫力は年月がたつにつれて少なくなる。迫力といいますのは、その持つ法的効果は少なくなる。これは客観的に見て当然だと思います。
  345. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 そこで、先ほどから問題になっておりますところの一九六五年六月二十二日のこの日韓基本条約の際につくられましたところの紛争の解決に関する交換公文というものは、そうした問題が起きた場合に紛争になる、その解決をする、その解決をする場合にこれが韓国に要求するよりどころになりますか。
  346. 中江要介

    ○中江政府委員 いま私が申しましたような見解について日韓間で対立いたしました場合に、それをどう解決するかというときには、この紛争解決に関する交換公文は一つの手続を示唆している、こういうふうに思います。
  347. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 竹島紛争が解決しないということは先ほどからるる申し上げております。こうした現状から見まして、外交上の経路を通じましても解決しなかった場合、両国政府が合意する手続に従って調停によって解決を図るものとされていますけれども、それもできなかった。こうしたことになった場合の次のとるべき手段というのはどういうことになるのですか。
  348. 中江要介

    ○中江政府委員 ちょっと御質問の趣旨か——外交交渉によっても解決しない、調停に移そうというときに、その交換公文にも書いてございますように、両国間で合意する手続により調停に付する、こうなっておりますので、調停に付するということになりましてもその手続を両国間で合意する必要がございますので、相当の期間はかかるということは覚悟しなければいかぬと思います。  そういう手続によって調停に入りますれば、その結果は受けなければ、これは全く文字どおりの約束違反ということになって、これに対しては国際法上いろいろその責任を追及する方法か出てくる、こういうふうに思います。
  349. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 そこで、私は、先ほどの問題につきましてもとても合意を得るなんということはできないとするならば、ひとつアメリカに話し合いの間に入ってもらったらどうかという提案もしたのはそこにあるわけでございますけれども、いずれにしましても、この問題について私どもは非常に数々の疑問点を持っております。しかもこの大陸棚の開発について、その前提条件と言っては私どもの考えが違うと言うかもしれませんが、われわれは、この日韓両国の間に置かれているいまの竹島の問題さえも解決できないような状態においてこの大陸棚の開発に踏み切ることは非常に危険だ、いろいろの問題点が起きてくる、だからこの問題を先に解決しなさい、こう言っているのだけれども、その解決に対して日本政府の弱腰がはっきりしました。私は非常に残念に思います。  次に質問を進めます。  中国が、東シナ海の日韓大陸棚の共同開発に対して再三抗議をしていることは事実でございます。  日韓大陸棚協定が調印されました四十九年の中国外交部のスポークスマンの声明、これは大綱を申し上げれば、御存じと思いますけれども、「東中国海における大陸棚をどう分割するかという問題については、協議を通じて、中国と関係諸国によって決定さるべきである」云々。二番目に、「日韓共同開発区域の画定は、中国の主権を侵犯する行為であり、中国は同意できない」。三番、「日韓共同開発によって引き起こされたすべての結果に対して全責任を負わなければならない」などという意見が明らかにされています。  また、ことしの六月十三日には、日韓大陸棚協定が自然成立した際でございますけれども、中国外務部の声明によりまして、「日本政府は、中国政府が再三表明した意見を無視し、中国の主権と中日関係発展の利益を顧みずに同協定を発効させ、故意に中国の主権を侵犯する行為をとった」、このように厳しく抗議をされています。さらに、「いかなる国も、中国政府の同意なくして東シナ海大陸棚で開発活動を行うことはできない。」そのようにするものには、「それによって生ずる結果について全責任を負わなければならない」と警告をしております。  このような中国の声明に対しまして、政府は中国がどのような考えのもとに再々にわたってこのようなスポークスマンの声明あるいは外交部の声明がなされているかということをよく御認識していると思います。この問題について、簡単で結構でございますが、まず外務大臣からお答えをいただきたいと思います。
  350. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 中国側の東シナ海に発達しております大陸棚につきまして、中国が、自然の延長にあるものはこれは中国の大陸棚である、中国が権原を持つ大陸棚であるというような考え方を固めたやに私どもは理解をいたしております。  その点につきましては、私どもは、国際法的に、これは自然的に発展したものである、地質学的に発展したものであるということではなしに、日本あるいは朝鮮半島、これは同じ大陸棚に乗っておるんだ、こういう考え方を持っておるわけでありまして、その点につきましては、根本的に、中国大陸から発達しているところの大陸棚につきましては関係国といいますか相対立する国は何ら権原を持たないということには、私どもは承服するわけにはいかないと考えております。  しかし、わが国といたしまして、今度の共同開発区域につきまして、これは国際法的に認められたわれわれの地先沖合いに発達しております大陸棚につきまして、日本なり韓国なりか国際的な常識のもとに開発を許されておる地域であるというふうに私どもは確信をしておるところでありまして、この点につきまして中国側に十分理解を求めたいというのが先日来申し上げている態度でございます。
  351. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 先般からいろいろの同僚委員質問によりまして、そういった問題について中国側の理解を求めたいというふうに外務大臣は言われております。その理解を求めるという問題については、後でもう少し私は詰めてみたいのでありますけれども、とにかくこの二つの声明、スポークスマンの声明あるいは外務部声明というものを見たときに、この文面の中から、私は、中国側が実力を行使することを全面的に否定したものではないと受け取っておりますけれども政府はどう思いますか。
  352. 中江要介

    ○中江政府委員 私どもはそういうふうには受け取っておりません。と申しますのは、もし日本政府と南朝鮮当局がこの区域でほしいままに開発活動を進めるなら、それか招く結果のすべてに責任を負わなければならないという、その語調が非常に強いというところからあるいはそういう御推測もあり得るかと思いますが、外交の通例といたしまして、権利を争う場合の抗議の仕方にはこういう用語をよく使うわけでございますし、他方、日中間には一九七二年九月二十九日の日中共同声明というものがございまして、この共同声明の中で、日本と中国はともにあらゆる紛争は平和的に解決しようということを誓い合っているわけでございますので、中国が実力を行使して紛争に決着をつけるということを考えているとは私どもは思わないわけでございます。
  353. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 回りくどい説明でありますけれども、私はこの強い文面の中からそのように受け取れる。そういうことになるということは、日中両国間に築き上げてきたところの平和友好条約をいま締結しようという直前に当たって、こういう問題でトラブルを起こしてはならない、こう思うからこそ私は質問をするわけです。  そこで、さらに五月二十七日、何英外務次官が当時の小川大使に対しまして、この協定の国会通過は日中関係に有害であり、中国政府は絶対に容認できない、二番目として、日本側が日中友好関係を重視し、中国政府意見を慎重に考慮するように希望する、こういう申し入れが伝えられております。日本政府として、中国側との間に将来国際紛争になり得るようなことがこういった問題によって起こってはならないと思いますけれども政府としては国際紛争になるおそれがあると考えるか、ないと考えるか、どちらかです。
  354. 中江要介

    ○中江政府委員 ただいま日本政府がとっております立場からいたしますと、ないと考えております。
  355. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 少なくとも私は国際紛争のおそれありという認識には立つと思いますけれども、どうですか、一歩下がって。
  356. 中江要介

    ○中江政府委員 これは、いまの立場で中国といろいろ話し合った結果いかんによって、紛争になるおそれは全くないとは言い切れないと思います。
  357. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 一歩譲って、仮に紛争のおそれがありと言われるような状態になることを恐れるわけでありますし、ましてや、いま日中平和友好条約というものがもう眼前に来ているわけです。そういう点から考えてみて、私は、紛争のおそれがあるとすれば一ないとは言えないわけてありますから、おそれがあるとするならば、やはり中国側に対して日本側から了解を取りつけなければならない。こういう点について、外務大臣も訪中なさるというようなお考えがあるようでございますけれども、とにかく中国側は、これらの一連の態度によるならば共同開発というものは容認しておりませんし、日本側から了解も取りつけてないからこそ外務大臣は訪中をなさろうとするわけです。中国側の了解なしに共同開発を行うということは、私は国際紛争の原因になりかねないという大きな危惧を持つわけでございます。  それと同時に、もう一点は、今回の共同開発区域よりも石油、天然ガスの埋蔵量がはるかに多いと言われている中国との間の大陸棚を将来開発するような可能性があるけれども、中国との関係を無視して今回の共同開発を進めるようなことは、将来中国との関係を悪化させることになりかねないのではないかと思うけれども、その見通しは外務大臣どうですか。
  358. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 共同開発区域になっておりますところから南にわたります部分につきましては、中国と日本との間に横たわる大陸棚であるということは明らかでございます。そして、これらの地域はまた有望な地域であるとされておるわけでありまして、本共同開発区域よりも南方の地域の開発が急がれる段階になった場合には、中国との間にこの点につきまして交渉を持つ必要があるということは、私どももそのとおり感じておるところでございまして、したがいまして、今回のことが日中間の国交につきましてマイナスにならないように、私どもといたしましては最大限の努力をいたすつもりでございます。万一これが紛争になったら困るではないかという御指摘でありますが、そのようなことはないように私ども全力を尽くさなければならないと考えて、その線に沿いまして努力をいたしたいと思っております。
  359. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 外務大臣言葉でありますけれども、それは全くの希望的な観測であって、中国の指摘しているのは、再々申し上げますけれども、中国を全く除外した日韓大陸棚協定に基づく開発を認めていないわけです。この協定が今後の日中関係を阻害する可能性があるということを、向こうははっきりと指摘してきているわけです。ですから、政府としても、中国側の了解を得ないままに韓国との間の共同開発を進めるということは非常に危険があるのじゃなかろうか。日中間に紛争が起きる可能性があるのではなかろうか。少なくとも、一歩譲っても、紛争のおそれが発生するようなことがあってはならないと思いますので、私は再々にわたってこの問題をお伺いしているわけでございます。日中間にこの問題について紛争が起きないということが明確にお答えできるなら結構でございます。  しかし、そういうことは恐らく不可能でしょう。そうなってくると、日本と中国の間の大陸棚というものが、今後将来にわたって開発される可能性がある、そちらの方がより有望な鉱物資源があるということが言われていますが、そうした点から考えてみたときに、日中間の友好関係というものはさらにさらに増大し、増進させていかなければならない。その前に、いま話題になっております日韓の大陸棚協定というものをやって、そしてこれによって開発が起きた。そして中国を全く除外してこれをやるというならば、われわれはそういう開発を認めない、こういうことを言っているわけでございますから、日中関係が明らかに阻害される。また、そうしたことが起きてはならないからこそ、外務大臣は中国に行こうとおっしゃっているわけであります。こうしたことを考えてみたときに、将来にわたって紛争のおそれなしというふうに御理解していらっしゃるならば結構でございますけれども、その点についての明確なお答えを外務大臣から伺って、次に進みたいと思います。
  360. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 本共同開発区域につきまして、日本政府といたしましても、中国の権益を侵すものでないということにつきましては、私どもは自信を持ち、確信を持っておるのでございます。しかし、中国側からたびたびただいま仰せのような抗議が出ておるということも事実でありまして、この点につきましては、中国側に本件の国際法的な性格、これを十分説明し、そして理解を求めたい、そのために努力をいたしたい、このことを日中間の国交のために障害にしてはならない、こう考えておるわけで、その点につきまして努力をいたしたいということであります。
  361. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 外務大臣が訪中して理解を求めたいというようなことを再々答弁されております。その訪中の時期というものについても可及的速やかに、こういうふうな発言でございます。しかし、その時期というものは特別措置法の成立前でなければならないと私は思うわけでございます。成立後の訪中というものは、結果的には事後報告ということになると思います。したがいまして、鳩山外務大臣か訪中される時期というものは、少なくともこういうことを考慮した上で決めなければならないと思うわけでございますけれども、その辺はいかがでございますか。
  362. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 たびたび申し上げているのでありますけれども、この国会でこの国内法はぜひとも御審議を願いたい。それは、日本といたしまして、開発の準備が整った段階におきまして先方に日本政府の考え方をよく御説明して御理解を賜る、これが最も好ましい手順であるというふうに私は考えているのでありまして、事前に了解を取りつけるということは、日本といたしましてなかなかむずかしい問題だというふうに思っておるのでございます。
  363. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それでは、外務大臣の訪中の時期というものは成立後であるというふうに理解いたしておきます。  その訪中の意思というものは、先般来の質問の時点と今日におきましても全く変わっていませんね。訪中をしようという意思、しかもそれはいまの場合は成立後に訪中しようという意思、これは変わりませんね。
  364. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 その点は真剣に考えておるのでありまして、変わっておりません。
  365. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 ですから、訪中するからには成立前に行くべきだと私は言っているわけですけれども、外務大臣はこれが成立してから行くのだとおっしゃるわけです。そこに大きな見解の違いがあるわけであります。  とにかく訪中し、理解を取りつけるということが大事なことだ、こう言っていらっしゃいますけれども、理解ということは、単にお話をして、そして向こうがわかった、そしてやってもいいよということならば、私は理解できなくて合意だと思うのです。理解を求めるということは、行って話したけれども、向こうが了解しない、了解しなくても話すだけは話した、だから私の方はやります。こういうことなんですか。合意ということを取りつけなければ何にもならない。向こうに理解を求めても、理解しなかったらそれで終わりだ。あくまでもこの法案の成立前に訪中し、合意を取りつけ、そしてしかるべき後にこの法案審議をされるのが順序ではなかろうかというふうに思うわけであります。訪中し、そして理解を求める、こういうことをたびたび言われておりますけれども、私は合意を求めるのが当然ではなかろうかと思うわけでございます。この点についていかかでございましょうか、外務大臣からお答えをいただきたい。
  366. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 本件の性格が、たびたび申し上げておりますように、日中間で中国の合意を得なければできないものではないというふうに理解をいたしておるところでございます。そして、日本がこの開発区域につきましては韓国との間に国際約束をいたしたわけでございます。そして、その実行のためにいま国内法をお願いしているわけでございまして、そういうことにつきまして、国際法的に見て日本と韓国との共同開発というものが正当な論拠のあるものであるということにつきまして、中国側の理解を得たいということを申し上げておるのでございます。  中国側のそれがなければ、現実におきましてこれから開発に当たります場合に、中国側が依然として強硬な先般の李先念発言にありますような考えをお持ちであれば、これからの開発というものが円満に進められない危険かあると思うのでございまして、そういうために、この開発を円滑に実施をしていくために、これは中国側の理解か必要だ、こう申し上げているのでございます。
  367. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 要するに、わが方の言うことは間違いないんだ、国際的に見ても間違いないんだから、中国さえ理解してくれれば私の方はそれから始めますよ、こういうことですね。しかし、それでは私は日中関係を阻害すると思うのです。それを阻害しないという確証がございますか、外務大臣
  368. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 理解か得られることを私どもは期待をし、最大限の努力をいたし、そしてそれによりまして日本と中国間の国交につきましていささかの障害にならないように努力をいたしたい。  また、なおこれは御質問ではございませんけれども、先ほど来いろいろ御議論がございましたように、二百海里の時代がもう訪れてきておるわけでございます。その点の関係につきましても、これから日中間ではどうしてもこの問題につきまして協議をいたす時候か迫ってきたわけでございますから、これらにつきまして篤とお話し合いをしたいというのが私の真意でございます。
  369. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 よけいなことを答えていただかなくても結構なんです。  要するに、訪中するからには合意を取りつけて帰ってこなければ何にもならない。ただ理解を求めた理解を求めたと言うけれども、その結果中国が承知しなかった、しかし、国際法的に見ればわれわれの方はやっても構わないのだからやります。そういうことになってやった場合には、日中間に大きな外交上のトラブル、紛争が発生するおそれがあるから、それを私たちは危険である、心配であるというようなところから、外務大臣が訪中する時期というものは少なくともこの法案の成立前でなければならないし、また、訪中したからには当然のこと、その結果を、はっきり合意を得て帰ってくる、それからこの国内法の成立を図り、そして批准をし、始めていくというなら話がわかるわけで、外務大臣はそうじゃない。あくまでも法律案を出して、協定が通っているのだから国内法も上げてもらいたい、その上で私が行ってお話をしてきます。  話をしたけれども、外務大臣はあくまでも誠意をもって中国側の理解を取りつけてくると言っているけれども、理解を取りつけられるようならば再三にわたって中国は抗議をしてくるわけがないので、スポークスマンか言い、外務省か言い、それから外務次官ですかが言っているというように、幾つも幾つも積み重ねをして、中国側としても重大な関心があるからこそ日本に対して言ってきているわけです。そういうことを考えないで、外務大臣は何でもかんでも中国へ行けば理解をして、それで了解をしてくれるもの、こう思っているようでございますけれども、私は非常に危険だと思います。少なくとも私は、この法案提出の前に、成立の前にそれをなすべきであって、それを後からすること自体が順序を踏み違えていると思うわけでございます。  そこで、私は委員長にお願いしたい。外務大臣は訪中は速やかに行うという意思表明をしております。現在もその考えに変わりはないとおっしゃっております。私どもは、本法案の成立前に訪中し、中国側の理解でなくて合意を得よ、こういうふうに言っているわけであります。そうして合意を得た上で審議をするのか当然と考えております。それもしないで審議に入ったこと自体が私はおかしいと考えるのでございますけれども、現に審議をしているわけでございます。そこで、中国との合意が成立するまでは、少なくとも採決を延期すべきであると考えるわけでございます。外務省が中国との合意に達したという証拠を本委員会に提出した後、それを確認し、しかる後に審議し、採決するのが当然と私は思うわけでございます。そこで、委員長の真意をお伺いしたいわけでございます。  重ねて申し上げますか、本委員会といたしまして、外務省が中国側と交渉し、明確なる合意を取りつけるということが先決であり、それを待って本委員会審議を再開するのが正しい行き方だと私は思います。したがいまして、本委員会の意思として、外務省が中国と交渉し、文書をもって合意を得たということを確認した上で審議に入り、しかる後に採決を行うのが当然ではなかろうかと思うわけでございます。この件を本委員会の決定としていただきたいと思いまして、委員長にお取り計らいをお願いするわけでございます。したかいまして、それがなされてから私は次の質問に移りたいと思うわけでございます。
  370. 野呂恭一

    野呂委員長 松本君のお尋ねに対して申し上げます。  すべて委員会運営理事会の議を経て運営いたしておるわけでございまして、今日の日程はすでに理事会の決定どおり運営をいたしておりますので、そのようにお答え申し上げます。
  371. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 私は、理事会を開いていただいて、そしてこの問題をお諮りを願いたいと思います。当然のことだと私は思うわけであります。したがいまして、私は、その後において次の問題に入りたいと思います。どうかひとつよろしくお願いいたします。お取り計らいをお願いいたします。
  372. 野呂恭一

    野呂委員長 再度お答え申し上げます。  すでに本日の日程につきましては理事会で十二分に討議をし、検討いたした結果、運営に入っておりますので、さよう御了承願いたいと存じます。
  373. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 私のいまの動議です。私は、委員長にお取り計らいを願いたいと言っております。少なくとも私は、理事会を招集していただいて、そしてそのことをお諮りいただくのが当然だと思います。それからにしていただきたいと思います。
  374. 野呂恭一

    野呂委員長 日程はすでに理事会において決められておりますので、日程どおり進行いたしております。——議事進行を願います。(「理事会、理事会」と呼ぶ者あり)松本君にお願いします。どうぞ質問を続けてください。(西中委員「議事進行。ただいまの発言どおりに理事会を開いて、ただいまの提案を討議してもらいたいと思います」と呼ぶ)  速記をとめてください。     〔速記中止〕
  375. 野呂恭一

    野呂委員長 速記を起こして。  ただいま理事懇談会を開きまして、松本君からの直ちに理事会を開いて協議されたいとの提案について協議をいたしましたが、午前の理事会、午後の理事懇談会における申し合わせもありますので、引き続き質疑を続行されんことを望みます。松本君。
  376. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 私は、委員長にお願いしまして、私が申し上げましたことをひとつ事前に諮ってやっていただきたい、そのことについて理事会を開いていただきたい、そして外務大臣が訪中するならば、訪中する時期というものは少なくともこの審議が終わる前に行くべきである、そして中国側の理解を得るのでなくて合意を得た上でするべきである、それが当然のことではないか、こういうふうにお願いしたわけでございます。そして、そうしたことを文書をもって合意を得たということが確認できたそのときに審議を続行する、これをお願いしたわけでございます。しかしながら、私の意見が取り入れられなかったことははなはだ残念でございます。  私は、先ほど冒頭に申し上げましたように、竹島問題を初めといたしまして、日韓大陸棚の共同開発の問題あるいは北部の境界画定の問題、自衛隊の海外派遣の問題等々につきましてお伺いをする予定でございました。しかしながら、私としてこれ以上質疑を続けることは不本意でございまして、できません。したがいまして、私はこれをもって質疑は取りやめます。
  377. 野呂恭一

  378. 佐野進

    佐野(進)委員 私は、ただいまの委員会運営状況を見るにつけても、この大陸棚協定に基づく特別措置法を審議する商工委員会としては、私も昭和四十二年に初めて議席を得、商工委員会に席を持って以来初めて経験する異様な雰囲気であります。以来、商工委員会は、その立場の相違はあれ、ともに国の経済を発展させ、国民生活を安定し向上させようという願いにおいては、与野党そのところを変えたとしても、共通の立場に立って真剣に討議を重ね、円満なる運営を図るために、お互いに譲り合うべきところを譲り合うよい風習がこの商工委員会の伝統であったと思うのであります。私どもは、この大陸棚協定に基づく特別措置法か提案されまして以来、長い間、そのよき伝統を守りながらこの法案審議をどのようにして円滑に進めるかということについて、心を砕いて努力をしてきたつもりであります。にもかかわらず、私は今月の一日に始まった審議の経過の中で、そのわれわれの努力を裏切るがごとき状況が毎日のように繰り広げられていることに対して、商工委員会を愛する一人として心悲しみながらその運営に当たってまいりました。  一体、その原因はどこにあるのか。通産省か提案した法案であるけれども、その提案した法案の裏には何があるのか。私は、長い質疑の時間を通じて各委員質問を聞きなから、結果的に、このような協定を結び、このような協定に基づく措置法を提案した、不見識な、国を憂うる気持ちのない、無原則的な協定締結当時の外務省当局の責任を厳しく指摘せざるを得ないと思うのであります。私は、そういう見地から、この委員会に外務当局の出席を求めなければ質疑ができないということは、協定に対する質疑が十分行われないで強行採決をした外務委員会におけるところの審議の方法もあったでしょうが、同時に、それに対するところの努力を十分果たさなかった現外務大臣を初め外務当局の姿勢に、今日のこのようなきわめて厳しい、われわれ商工委員会としてはまさに唾棄すべき状況を導き出した原因があると思うのであります。  私は、その意味において、外務大臣並びに外務当局かこの委員会に臨みなから答弁をし、いま松本議員の質問に対してその満足を得ることができ得ず、会議を中断せざるを得ないような状況の中でいま私の質問が始まろうとしておるその原因が、挙げて外務当局のその姿勢にあるということを、この際強く指摘しておかなければならないと思うのであります。  けさほどの中村委員質問に対して、アジア局長は、私の持っている個性ですがという表現で答弁もしておったようでございますけれども、私は、少なくとも外務当局のこの場におけるところの答弁の姿勢が、商工委員会における経済関係官僚の答弁とは全く違う、異質の状況の中において、議会を軽視し、議員に対してまさに誠意のない答弁に終始しているという事実をもって、松本議員のあのような状況の中における発言を引き出したのだと断ぜらるを得ないのであります。  私は、そういう意味において、外務大臣に、よき慣行を持つこの商工委員会に対してこのような異様な空気を持ち込み、このように混乱させた責任をどのように感じておるか、これから質問をするに当たって外務大臣見解を聞き、かつ外務当局のその姿勢についていささかなりとも反省する気持ちがあるのか、ないのか、この際明らかにしていただきたい。
  379. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この大陸棚の共同開発につきまして、この国内法につきまして商工委員会の皆様方に大変な御迷惑をおかけしておることを恐縮に存ずる次第でございます。私どもといたしまして、この大陸棚の協定は、これは長い沿革のある協定であり、そしてこの協定につきましては大変な努力を傾けてきたところでございます。この協定自体につきまして、外務委員会におきましても大変長い審議時間をかけて審議かあったのでございます。しかし、残念なことに、野党の一部の委員の御出席のないまま採決をされたという経過がございます。したがいまして、この問題につきまして、当委員会におきまして、協定自体につきましてもあわせて真剣な御審議をいただいたことはまことに恐縮に存じております。本来ならば、協定自体につきましては、これはもう御審議をいただかなくて、そしてその国内の実施だけにつきまして御審議をいただくべき筋合いのことであろうと思いますが、外務委員会等におきます経過かございましたものでございますから、協定自体につきまして非常に長い御審議を当委員会においてお煩わしした、こういうことでありまして、その点はまことに恐縮に存じておる次第でございます。しかし、私初め外務省の者はみな真剣に取り組んでいるのでございまして、誠心誠意御審議におこたえをしておるということは、これはぜひ御理解を賜りたい。心からお願い申し上げる次第でございます。
  380. 佐野進

    佐野(進)委員 私は、理事としての立場でこの法案委員会にかかってから一日も欠かさず出席し、外務当局の答弁を聞いておりました。結果的にこの長い日数をかけて審議された、慎重審議の経過の中で明らかにされたことは、全くこの法案は不備な状況の中に提出され、不十分なる準備の中で、時間は長くかかったけれども、その行うべきことを十分行わずして提案されたのである、こういう印象を強く受けたわけであります。  特にこの協定を締結するに際して、当時のわが国の状態、韓国の状態等を比較しながら、なぜこの協定が結ばれたかという質疑が激しい論戦の中で進められました。その結果、結果的には、当時のわが国が不用意にも日韓癒着と称せられる忌まわしいうわさの種になりつつある条件を背景として、この共同開発構想がわが国の方から持ち出されていった、そういうような形跡かあり、きわめて不明朗な印象を強くせざるを得なかったわけであります。同時にまた、外務当局がわが国の等距離中間線の主張を自主的に撤回することとなる共同開発方式に踏み切ったり、あるいは中国との合意なき中間線を勝手に設定したり、わが国の国益を損ない、国際紛争の種をまくような拙劣きわまる外交政策を展開していることか明らかにされたわけであります。  そこで、このような事実か明らかにされ、大臣答弁もきわめて不十分であるという状況の中において、この際、この法案についてはむしろ撤回をし、新しい協定締結を図る形の中でこの法案の提案をなすべきではないか、こういうような印象すら私は強く持つわけであります。外務当局、そして通産省は、このような条件下において、これまでの質疑を通じた結論としてこの法案を撤回し、協定を練り直し、現在の新しい情勢に適応する協定を結び、そしてまた、その協定に基づくところの措置を講ずるお気持ちがあるのかどうか。私は、むしろこういう協定は必要ない、破棄——批准する前に破棄ということは不適切かどうか知りませんけれども、もう一度再交渉する必要があるように考えるのでありますけれども、そのことについて外務当局並びに通産当局見解を両大臣に聞いておきたいと思います。
  381. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 共同開発の協定はすでに国会の御承認をいただいたわけで、これは批准書の交換を待っているわけであります。その交換は、国内法を通していただきまして円滑な開発ができますように、それが日本として好ましいことでございますので、ぜひともこの国内法の御承認をいただきたい、こういう事態でございまして、これは韓国との約束事でございますので、これを直すということは考えておらないのでございます。
  382. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御意見のあった件でありますが、政府といたしましては、わが国のエネルギー問題の重要性にかんがみまして、本大陸棚の協定については貴重な幾多の御意見を拝聴いたしまして、なおまた、これを参考といたしながら、ここにぜひとも本提案を御了承賜りますように、ひとえにお願い申し上げます。
  383. 佐野進

    佐野(進)委員 この質疑を通じて明らかにされた矛盾点は、そのような一片の答弁をもってしてはなかなか克服でき得ない幾つかの要因があろうと思うのです。ここに自民党の議員各位も役所の関係者もたくさんおるわけであります。この議員の方々あるいは役所の担当者の方々が、この質疑に本当に身を入れて参加しておられたとするならば、将来の日本と中国の関係、あるいは将来あるべき正常な状態になったときの日韓両国の関係、あるいはまた朝鮮民主主義人民共和国との関係の中において、この協定に基づく措置法がきわめて大きな禍根の種を残すことにならないとは、だれしも否定でき得ない気持ちをお持ちになっておると思うのであります。しかし、恐らく外務大臣もそうであろうと思うのでありますが、行きがかり上これを処理しなければならないというお気持ちの上にこの法案を提案し、審議に当たっておる、こういうぐあいに私どもはあなた方の心情を推測するならば感ぜざるを得ないわけであります。にもかかわらず、先ほど来松本委員初めほかの人たちの質疑にありましたとおり、この問題はまだまだ解明をしなければならない、事前に努力をしなければならない内容をたくさん含んでおるわけであります。そういうような状況の中で、いままさにこの委員会における審議は最終の段階を迎えようとしております。  そこで、この委員会における審議は、国会の会期の問題と関連して、本法案が本委員会でもって通過するといたしましても、もはや今国会において成立することは不可能であるという判断にそれぞれの国対関係者を初め政府首脳も傾きつつある状況の中で、昨日も問題になりましたけれども、外務省首脳という名のもとに外務大臣である鳩山さん自身が、大陸棚の国内法が未成立であっても協定批准はあり得るというコメントを発表し、その中で、実質的に本法案が不成立に終わった場合においても批准を強行しようとする悪意ある下心を内外に宣明したと受け取ってもいいような表現をなさっておるようでございますが、一体この真意はどこにあるのか、お聞かせをいただきたいと思うのであります。
  384. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 昨日も申し上げましたけれども、私は、国内法が未成立の場合に批准を考えるというようなことを申したことは全くございません。国内法の成立が非常に危なくなったのではないかというような観測が一部にありまして、一体どうするのだという話があったわけでありますけれども国内法が成立しない場合には日本政府として大変苦しい立場に立つ。なぜならば、韓国側からは国会の承認があった協定であるのに政府はなぜ批准しないかということで迫られておる、こういう事態にあるので大変困った事態に立ち至るということを申したのでございます。それが国内法が成立しなくても批准について考えざるを得ないようなことまで書かれたわけでございまして、これは全く私の真意ではございません。国内法の成立に最善の努力を傾ける、こういうことを申した次第でございまして、ただいまおっしゃいましたことは全く私の真意でないということを申さしていただきます。
  385. 佐野進

    佐野(進)委員 しかし、この発表された文面によりますれば、もちろんあなたの名前を直接出してはおりません、外務省首脳という形での発言になっておりますけれども、これは既成的な事実として各方面に定着している。もしきのうあるいはきょう委員会がなかったとするならば、この問題は新聞発表どおり実質的な裏づけをもって評価されるようになっていくであろうということは当然考えられるわけであります。したがって、私は、あなたの真意はそのことを予想してアドバルーンを揚げたのだ、こう判断しても決して判断のし過ぎでないような気がするわけであります。  もしこのことが事実でない、批准は国内法の成立を待って行うのだという確固たるあなたの信念がおありであったとするならば、この記事について取り消しを求めるなり、そのようなことがないという具体的な証明をすることのできる行動をおとりになってしかるべきだと思うのでありますが、そういう行動をとる考えがあるかどうか、この際、明らかにしておいていただきたい。
  386. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私は、特定の新聞社に対しまして単独的に会ったということは全くございません。大ぜい各社いる中で懇談がありまして、その後に特定の記者だけに特定のことを話したということは絶対にございません。全社が皆いるところでそういう話が出たわけでございまして、それに対しまして若干の尾ひれがついたというのが実際のところでございます。したがいまして、あの文面を読んでみましても、私がこういうことを言ったというふうには書いてないのでございます。そういう意味で、なお文面も調べてみますけれども、そのような直接の私の引用として記事は書かれておらないということは確かでございます。
  387. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは、それらの問題についてはまた後で一番最後にまとめて、具体的な問題についてこの際二、三質問をしてみたいと思います。いままで各質問者において質問されなかった点をできるだけ中心にして、質問してみたいと思います。  まず第一に、防衛庁に質問をいたします。  防衛庁長官は、去る十月二十七日の内閣委員会で、共同開発区域の施設に対する武力攻撃は自衛権発動の対象になり得る旨の見解を明らかにしているわけであります。これは操業管理者がいずれになるかによって法令の適用関係となることにかかわりなく、共同開発区域のすべての施設を意味するというように私どもは考えるわけでございますけれども、防衛庁の見解をこの際お聞かせいただきたい。
  388. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 自衛権の発動というのは、わが国の施設あるいは国民の生命、財産を守るために発動されるものでございますので、共同開発区域にある施設といえども日本の施設以外には発動することはないわけでございます。
  389. 佐野進

    佐野(進)委員 そうすると、共同開発区域の中における韓国の施設とわが国の施設というものを、どのようにして判別するのですか。
  390. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 私どもは、まだ具体的にどういう形になるかということは承知いたしておりませんけれども、御質問に私ども長官がお答えしましたのは、日本の施設が公海上にあって、そしていわゆる自衛権の発動の三つの要件というのがございますが、この一つは、急迫不正の侵害があったとき、すなわち武力による直接の攻撃があったとき、二番目には、他に適当な方法というものが全くないとき、そしてさらに自衛権の発動というものは必要最小限のものに限るべきものである、この三原則というものが公海上にある日本の施設に対しても発動されるということはあり得るということを申し上げたわけでございます。
  391. 佐野進

    佐野(進)委員 それが公海上である共同開発区域の中で、いずれの操業管理者がその施設を運営しているか判別しにくい状況があらわれてくることは当然であります。そのような状況の中で、自衛権の発動もあり得るというその表現は、これが公海であり、かつ日中両国の間においてこの問題がいまだ明確に処理されていない状況の中でこのような発言をするということの意味は、このような地域の持つ特殊性から考えてきわめて危険な状況を醸し出す可能性をあえて肯定しているように受け取られるわけであります。このような発言は、あなたは防衛局長ですから長官が発言したことについてとかく言うこともできないわけでしょうけれども、私としては、この問題を明確にせずしてこの法律が成立することは将来きわめて大きな禍根を残す要因になる、こういう危惧をいたすわけでありますが、その点についていま少しく明快に、私の質問の線に沿ってお答えをいただきたい。
  392. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 二十七日の委員会におきましては、公海上にあるこういった施設に対しても自衛権の発動というものがあり得るのかという御質問でございました。したがいまして、長官がお答えしましたときにも、これは具体的な事実に即して判断しなければならない問題でありますけれども、公海上にあるわが施設がいま申し上げましたような自衛権の発動に該当する三つの要件を備えているような場合には、発動する場合もあり得るということを御説明申し上げたわけでございます。
  393. 佐野進

    佐野(進)委員 そうすると、自衛隊が発動対象になるような場合は、米軍の出動の根拠となる安保条約第五条の適用関係はどういうことになるのですか。
  394. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 共同開発区域に関しましては、これがあたかも国家の主権が全面的に及びまする領土あるいは領海と同じようなものではないかというような議論が一部行われておりますけれども、この区域は、上部水域は公海でございますし、また、海底は国際法でいう大陸棚でございますので、領土と異なりまして、わが国あるいは韓国は、これは探査しあるいはその資源を開発するという、非常に限定的な目的のための主権的な権利を行使するというところでございます。したがいまして、これは安保の関係で申し上げますと、安保第五条に申します「日本国の施政の下にある領域」というものには含まれないわけでございます。したがいまして、仮に共同開発区域にある船舶あるいは施設等に関しまして第三国からの武力攻撃があるというふうな場合を仮定いたしましても、それがその施設等に限定されておる限りにおきまして、安保条約の第五条の対象となることはあり得ないのであります。
  395. 佐野進

    佐野(進)委員 安保条約における第五条の対象にはなり得ないということは明確になったわけでありますけれども、しかし、共同開発区域の施設に対する武力攻撃の場合には、韓国軍の出動が当然考えられるわけであります。わが国で自衛隊の出動すら可能であるとするならば、韓国軍の出動は当然それ以上鋭敏に反応していくことは考えられます。そういたしますと、米韓相互防衛条約第三条により米軍出動の可能性もあると判断して差し支えないと思います。こうしてみると、共同開発区域は日米韓による共同防衛地域ということになるのではないかという考え方も自然的に出てくるわけであります。  共同開発区域という名のもとに、公海上における特定の地域が、その地域の上に存する施設を守るという形の中において、日米韓の共同防衛地域というふうに発展的に解釈されていくとするならば、当然関連する地域におけるところの近隣外交がきわめて複雑、かつ険悪な情勢になっていくであろうということは予測されるにやぶさかではないと思うのであります。これらの点を当然考慮した上での防衛庁長官判断であろうと思うのであります。このようなことを前提としての判断であるとするならば、防衛庁の見解はまさに危険きわまりない、こう思わざるを得ないのでありますが、危険きわまることでないという具体的な説明ができるならば、この際、ひとつ防衛庁当局から答弁を求めておきたいと思います。
  396. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 いま先生から、三国の共同防衛地域ということを前提にして自衛権の発動の問題を説明したのではないかというお話でございますが、それは全くございません。したがいまして、再三申し上げますが、あのときには、こういう公海上にある施設で組織的なあるいは継続的な攻撃というものがあった場合には、自衛権の発動の対象になり得るということを御説明したにすぎないものでございます。
  397. 佐野進

    佐野(進)委員 この問題で時間をとるわけにはまいりませんが、防衛局長、私の先ほど来の質問の意味は御理解願えましたね。防衛庁長官によく伝えて、誤りない態度をもって対処せられるよう強く要望しておきます。  次に、「指定区域における採掘等の制限」の問題について質問をいたしたいと思います。  漁業との調整については「指定区域における採掘等の制限」に関する制度がございます。しかし、操業管理者が日韓いずれかによって法令の適用が異なることになっているので、韓国企業が操業管理者となった場合は本法は適用されず、指定区域の制度は、その小区域についてはないことになる、こういうぐあいになろうと思うのでありまするが、この制度は漁業保護の上に実効ある唯一のものでありますが、韓国の法令にはこれに相当する制度があるのかどうか、この点ひとつ明確にしていただきたいと思います。
  398. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 韓国の法令につきましては、海底鉱物資源開発法、これの第二十九条に、「鉱害防止及び航行の妨害禁止」という項目がございまして、海底鉱物を開発するに当たって次のような活動を不当に妨げてはならないということを定めております。その中の第二号として「漁労」、第三号として「海洋生物資源の開発及び保存」ということが定められております。  いずれにいたしましても、この大陸棚協定の第五条の定めますところによりまして、両締約国の開発権者は、事業契約を結ぶに当たって漁業上の利益との調整を図る義務を負っておるわけでございます。また、合意議事録の第四項におきまして、自国の開発権者が自国民の漁業上の利益との調整をするということも定められております。こういうことによって実際上漁業の利益との調整が図られるという仕組みになっておるわけでございます。
  399. 佐野進

    佐野(進)委員 農林省来てますか。——後で聞きますから。  そうすると、韓国の法令では海底鉱物資源開発法にその問題について規定がある、こういうような答弁でありましたけれども、本来日韓中間線より日本側の区域で、しかも操業管理者がいずれになるかという偶然の理由で、漁業保護に甲乙が生ずるというような不公平が出てくる可能性があると思うのでありますが、そういう心配はございませんか、農林省と外務省にお聞きしておきます。
  400. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 先生御指摘のように、指定区域の制度につきましては、韓国側が操業管理者となった場合には、法的には拘束するものではございません。ただ、私どもといたしましては、指定区域の制度そのものが漁業に対する被害を防止するための一番大事な措置だと考えておるものでございますので、この点については、韓国側においてもこのような措置が十分尊重されるようにいたしたいというふうに考えております。このため、両国の開発権者が締結いたします共同開発事業契約におきまして、坑井を掘削する場合には個々のケースにおいて漁業者の了解を得るということになっております。これらの点を十分勘案いたしまして、韓国側でもこのような趣旨が生かしていかれるようにしてまいりたいと思いますし、また、漁業者に対しまして十分そのような指導をしてまいりたいと考えております。
  401. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 協定の第二十七条に、「共同開発区域における天然資源の探査及び採掘は、共同開発区域及びその上部水域における航行、漁業等の他の正当な活動が不当に影響されることのないように行うものとする。」これは協定の義務でございまして、協定第三十条にも特記してありますように、「両締約国は、この協定を実施するため、すべての必要な国内措置をとる。」ということが定められておるわけでございます。ただいまの関連国内法案の中に定められております指定区域の制度も、日本側としてそのような義務を果たすための一つであろうと思うわけでございます。  先ほど水産庁次長から申し上げましたように、両締約国の開発権者が結びます事業契約の締結に当たりまして、「漁業上の利益との調整」ということを特にうたうように規定されておるわけでございます。また、合意議事録の第四項におきまして、この調整をするのは自国の開発権者が自国民の漁業上の利益との調整をするということになっておりまして、つまり日本の漁業者との利益の調整というものは日本側の開発権者か当たるということでございますので、個々に行政指導なりいろいろな手段で漁業上の利益を十分尊重するように措置できるものと考えております。
  402. 佐野進

    佐野(進)委員 いずれにせよ、この開発行為が進む過程の中で韓国と日本の漁業者に不公平が起きたりあるいは漁業者が不当なる災害を受けたりすることのないように配慮されるものと私どもは考えておりますけれども、特に水産庁当局に対しては、この点、この協定発効にかかわりなく、十分な配慮をもって対処されることを望みたいと思います。  次に、通産省石油公団に質問をしてみたいと思います。  共同開発事業に対するわが国の対応の仕方であります。本案附則第二項においては、経過措置として、鉱業法による鉱業権設定の出願をしている者について、特定鉱業権設定許可の基準を緩和することにしております。しかし、協定締結の経緯等から見るならば、民間企業共同開発事業を行わせることは適当とは言いかたく、特に中国等との円満な関係を前提としている場合においてはその感を強くするわけでありまするが、この点について通産当局ないし石油公団はどのように判断して対応しておられるか、この点をひとつ聞いておきたいと思います。
  403. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 現行の鉱業法に基づきます先願権は、そのもの自体が財産的価値を持っておるわけでございます。そういった観点から、いわゆる私有財産の保護という観点と日韓共同開発の目的との調整点として、ただいま御指摘になりましたような附則第二項をもって経過措置を講じたわけでございます。  その内容といたしましては、一般的には地域等の告示があって後三十日以降申請することができることになっておるわけでございますが、いわゆる先願者につきましては、三十日以内に特定鉱業権の設定について申請をいたしましても、そのこと自体をもって直ちに不許可にするということではないということでございます。特定鉱業権設定に当たりまして、事業を円滑に遂行し得るに足る経理的基礎あるいは技術的能力を持っているか否かという点につきましては、一般の申請者と異なることなく、厳正に審査いたす所存でございます。  なお、御提言の石油開発公団云々の問題につきましては、御提言として今後検討させていただきたいと思います。
  404. 江口裕通

    ○江口参考人 公団のたてまえといたしましては、いわゆる民間主導型、民間の活力を運用するということがたてまえでございます。したがいまして、原則といたしましては投資もしくは融資の形で民間の力を養うというたてまえでございます。  ただ、例外的に、五十年の六月の改正によりまして、直接利権取得という道が講ぜられておりますけれども、これはたまたま非常に時間が急迫しておる場合あるいは相手方の要請がある場合という場合でございまして、ある一定の期間経過後、具体的には一年でございますが、その場合には直ちにその取得した権利を譲渡するというたてまえになっております。したがいまして、原則といたしましてはあくまで民間の活動を通じてやるということで、公団は必要な資金あるいは技術の面でお手伝いをするという考え方をいたしております。したがいまして、いまの段階においては検討はいたしますけれども、たてまえとしては一応そういうたてまえになっておるわけでございます。
  405. 佐野進

    佐野(進)委員 質問の趣旨を履き違えているのじゃないかと思うのだが、われわれは、公団がこの問題に出てきてその金や何かがここに投入されることについては、この前の公団法改正のとき附帯決議として厳重に注意をしており、午前中の質問を通じて通産大臣はこれを尊重しますという答弁をしておるわけです。私の言わんとするところは、この特定鉱業権設定許可の基準を緩和することないし先願権を認めていること、そのことによって持定の人たちに特定の利益を与えておるのではないか、したがって、持定の利益を与えているがゆえに、この法案が成立しそうになるとその特定の企業は株価か上がってみたり、それが不成立に終わると株価は下がってみたりするような現象すらあらわれておるということを私どもは聞くわけであります。したがって、この共同開発事業は、特定先願権を持つ人を、その利益を守るためにこれが行われているのだ、そのように言われておる筋もあるわけであります。私どもは、そういうような疑惑を払拭する意味においても、このような措置について厳格なる態度をもって対応していかなければならないのではないか、そういうような見地から質問をいたしておるわけであります。したがって、このような経過措置を講じておることに対するそういう問題については、この際再検討をし、新たなる見地に立ってそれぞれの問題に対応していくべきではないかと考えるわけでありますが、通産大臣見解をこの際聞いておきたい。
  406. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御指摘のごとくに、これらの先願権の有権者につきましては、私有財産の保護の関係から一応の権利は認めておりますけれども、事後の処理につきましては、あくまでも公正に、しかもただいま御指摘の疑惑等がございませんように、万々注意をいたしまして当たりたいと存じます。
  407. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、私は再び外務省に質問をしてみたいと思うわけであります。  わが国周辺の大陸棚の石油資源開発は、内外のエネルギー情勢を考えれば、きわめて重要な政策課題であるということはだれしも否定いたしません。にもかかわらず、この日韓大陸棚の共同開発は本委員会において厳しい批判を受けております。先ほど来申し上げておるとおり、この問題に釈然としていないその空気は、もはや蔓延しておると思うのであります。  昨日でありましたか、当委員会における審議の過程の中で、外務省のアジア局長自身、日韓大陸棚の共同開発協定は日韓両国にとって大失敗である旨の答弁をいたしておるわけであります。アジア局長がこの協定自身が大失敗であるという答弁をすることは、韓国にとってはどういう意味を持つものかわかりませんが、わが国にとっては大失敗であるということは間違いない事実であることを、いまや白日のもとに露呈しつつあると思うのであります。  大臣、アジア局長の大失敗であるというその発言の意味をどのように御理解なさっておるか、そして、少なくともこの大失敗を是正する方法としてどのようなお考えが最も適切であると判断しておられるか、この点ひとつお示しをいただきたい。きのうここで答弁したわけですから……。
  408. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 昨日の中江アジア局長答弁を私も聞いておりましたが、言葉が適当でなかったというふうに私自身も考えております。アジア局長もその後その趣旨を申し述べましたけれども、もし必要ならば、もう一度本人から答弁をさせたいと思います。  この大失敗であるとかいうことは、恐らく、日本国内におきましても—————————————を指して申したのであろう。韓国内においては、——————————————————————があるわけです。したかいまして、そういう趣旨、日本が譲り過ぎたということと同じように、韓国といたしまして単独開発をする計画だったところが単独開発かできなかったという点につきまして、韓国内では大変な批判があり、そういう意味で申したというので、その表現自体は私も修正いたすべきものというふうに考えます。
  409. 佐野進

    佐野(進)委員 アジア局長、ちょっと待ちなさい。  大臣、大失敗であるということは韓国にとってもということをいま御答弁になりました。私の質問は、韓国のことはしばらくおくと言っておるわけです。私どもには関係ないわけですから。  わが国にとって大失敗であったということは、大失敗である協定、その協定に基づくところのこの法案はまさにナンセンスという言葉以外の何物でもないということを、外務当局がその責任ある立場において明らかにしておると思うのであります。いまここで前言を訂正すると言ってみたって、私は何もその訂正を求めているわけじゃないのです。私も、そうだろう、アジア局長、あなたの言うとおりだろうということを認めた上でいま質問をしておるわけです。だから、この大失敗であるということの前提に立って外務当局としては何をするのかということをお聞きしておるのです。別に、韓国にどうしてくれこうしてくれということじゃないわけです。ひとつもう一度答弁してください。
  410. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この共同開発地域は韓国と共同開発する、こういうことにつきまして————————————でありまして、そのことを指して申したのであろう。しかし、私は、———————————適当でない、これはむしろ直すべきである、そして局長自身かその点につきましては後で弁明をいたしておるのでありますから、その趣旨を御理解賜りたいと思います。
  411. 佐野進

    佐野(進)委員 弁明というのは、私も聞いておりましたが、補足だったと思うのですよ。真意はやはり大失敗であったと思うのです。この席上で協定が大失敗だと言うようなことは、単に口が滑ったということだけでは済まされない重要な問題じゃないか。したがって、やはりアジア局長の責任はきわめて重要であり、国会審議に与えた影響はこれまたきわめて重大であると思うのです。したがって、その点について大臣が、いま言ったようにあれは後で訂正したのだからいいというようななまはんかな態度でお過ごしになるということは、この法案に対するあなたの繰り返し言っている真意と大分かけ離れたお取り組みではないかという気がするわけでありますが、どう処置をされるか、御見解をもう一度明らかにしてください。どういうぐあいに処置をするか、この言葉の使い方について。
  412. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ———であるという表現は、これは訂正いたすべきものであると私は考えております。本人の申した趣旨は、————————があるという趣旨で申したのでありまして、これは、本委員会の先生方がおっしゃいますのがそのような趣旨の御発言が多いものでございまして、そういうことを指して、——————があるというふうに本人は言うつもりで申したと私は聞いておったわけであります。
  413. 中江要介

    ○中江政府委員 私の発言の中に不穏当な言葉がありましたためにいろいろ物議を醸しておりますことにつきましては、私の不徳のいたすところでございまして、おわび申し上げます。  それで、この点につきましては、外務大臣からその直後に厳しく注意を受けまして、私も反省しておりますが、どういう意味であの言葉を使ったかということは、昨日の議事録に即してお読みいただきますと、私の言おうとしたことが、言葉は不十分でありましたか、おわかりいただけると思います。  その意味は、日本が中間線論を貫き得なかったことが大失敗だとおっしゃるのであれば、韓国が自然延長論を貫き得なかったことは大失敗であろう、こういう趣旨で申し上げたわけでございまして、決してこの協定全体が大失敗であるという趣旨でないことは、議事録に即してお読みいただきたい、こういうふうに思います。  いずれにいたしましても、私の発言が不行き届きであったことにつきましては、ここで謹んでおわび申し上げます。(発言する者あり)
  414. 野呂恭一

    野呂委員長 御静粛に願います。
  415. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、外務大臣ないしアジア局長は、この問題について、大失敗であるという、そしてこんなつまらないものを押しつけられてという気持ちが根底にあったからああいう言葉も出たのではないかと、先ほど来私どもは感じておるわけでありまするが、これは大臣、このように大失敗であると思われるような事態に遭遇した場合は、やはりその遭遇した事態において的確なる判断を示して、適切なる処置を講ぜられることを強く要望しておきたいと思います。  さて、私はなお幾つかの点について問題を指摘いたしたいのでありまするけれども、それぞれ時間の関係もございますので省略をいたしまして、あと二点について質問をしてみたいと思います。  先ほど松本委員質問にもありましたとおり、この問題の最大の難関は、難関というよりも最大の課題は、この問題によって日中両国の関係が重大な段階に逢着するのではないかという杞憂であります。いや、杞憂ではなくて、事実の問題としてそうなる可能性があるわけであります。私も五月に中国へ参りまして、中国の要人と会談をするたびごとに、この問題について強い指摘を受けて帰ってきた経過もございます。したがって、このような状況の中でこの協定か批准され、この特別法が通過するということになりますれば、将来、当然日中間の紛争の種をまくことは明らかであろうと思うわけであります。しかも、この点については先ほど来質問が続けられておりまするから、私はその点を指摘することのみにとどめたいと思うのでありますが、それに関連して、次のような事態が起きた場合これはどのようになるか、その見解を明らかにしていただきたいと思うのであります。  たとえば、共同開発区域には中国の漁船を認めた事実が明らかになっております。いわゆる公海上であります。とすれば、公海上に中国の漁船が来ることも当然であり、中国はこの地域を自国の大陸棚の延長であると認めておる限りにおいては、そこに漁業を行い、そこに権利を設定することもまた当然の行為として行われる可能性がございます。その場合、漁業との関係は、日韓両国の漁業のみでなく、私は先ほど日韓両国の問題について質問をいたしましたが、中国との漁業の問題も当然起こり得ることか明らかになっているわけであります。公海上でありまするから。そして、中国が漁業として操業をいたす地域の中にこの施設が設備せられ、そこの中に来ることができ得ない状況が発生して、国際的な紛争かそのことによって起き得ることが当然予測されるわけでありまするが、そのことに対してはどのように措置をされてこられたのか、これから措置をしていこうとするのか、この点について見解を明らかにしていただきたい。
  416. 中江要介

    ○中江政府委員 御承知のように、この共同開発区域が設けられておりますところは、漁業の観点から言いますと公海でございますので、公海漁業、こういうことになるわけでございます。日韓間には、日韓漁業協定に基づきましてこの地域の漁業秩序が維持されておるわけでございますし、日中間では、日中漁業協定に基づいて漁業操業の秩序が保たれている。この漁業協定に基づき、日中、日韓の間で行われております秩序というものは、これは公海漁業の中における特定国の合意に基づく操業秩序として引き続き尊重されるということでございまして、この公海は漁業だけではなくて、公海使用の自由というものか古来認められておりまして、大陸棚開発のためにその公海の一部を使用するということも、これまた国際法上認められているところであります。したがいまして、公海を使用することによって使用の態様の違う部分にどれだけの配慮をするかということは、これは国際法上の公海制度によって律せられていくべきもの、こういうふうに理解すべきものと思っております。その結果としてたまたま何かが起きましたならば、これはどこの漁船でありましょうと、どこの船舶でありましょうと、一般国際法に基づいて、もし責任があればそれを免責されるべき措置をとるということになる、こういうことでございます。
  417. 佐野進

    佐野(進)委員 先ほど私は、防衛庁当局に、武力による攻撃があった場合はその攻撃に対して自衛権の発動は当然である、こういう防衛庁長官答弁を基礎にして、この地域におけるところの自衛権発動の限界について質問をいたしました。  この地域において中国の漁船が操業をしておる、これに対して、韓国の操業地域であるといたしますと、当然韓国側の操業管理者によって排除の措置がとられ得ると考えます。排除の措置がとられた場合においては、当然それに対して、みずからの漁業権を守る立場において、公海上における権利を行使する上で中国がこの問題について保護をする行為がもし発生したといたしますならば、韓国と中国との間におけるところの紛争ということに相なることは明らかであります。韓国と中国との紛争は、必然的にこの地域全体に対する日、米、韓三国におけるところの共同行為というものが発生することになります。といたしますると、この地域の中におけるところの一漁業権の問題としてのみ、いまのように軽々に判断することはきわめてむずかしい状況を惹起する可能性を持っているわけであります。  したがって、公海上における漁業権を守るというわが国の基本的な立場に立つところのそのあり方と対応してみても、中国のその行為に対して何ら抗議を申し入れる余地がないと判断するならば、これらの問題についても中国との間に明確に話し合いをし、その了解を得た後においてのみこの協定ないし特別措置法の発動がなされなければならない。いや、この法律の制定までの間に処置をし、その後においてそれが行われなければならない、このように私は考えるわけでありまするが、外務大臣通産大臣はどうお考えになっておられるか、この際、見解を明らかにしていただきたい。
  418. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまお挙げになりましたいろいろ想定された事案につきましては、やはりその具体的な事案に基づいて、もしそれが国際的な争いになるような場合につきましては、それぞれの原則に立ってこれは決定されなければならない問題であろうと思います。しかし、ただいまお挙げになりましたようなことが国際的な紛争になるということは、私としてはちょっと想定ができないわけであります。なお、法律的な問題等につきましては条約局等から御答弁申し上げますけれども、このようなことが紛争になろうとは私は思えない。  ただ、後段におっしゃいました日中間の国交が阻害されるというようなことは、これはあってはならないと私は思います。そのためには、今後できる限りの努力をするということはたびたび申し上げているところでございますけれども、ささいなことが、私どもといたしましては、日本といたしまして当然の権限ある行為である、こう考えておることにつきましても、中国側の理解が得られておらないという感じをいたしておりますので、その点につきましては今後真剣に努力をいたしたいと思うわけでございます。
  419. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの御意見は、まことに恐縮でございまするが、一つの仮定でございまして、具体的なさような問題がもし万々一でも起こりました場合には、外交関係によって処置をしていただく以外にはないと存じます。
  420. 佐野進

    佐野(進)委員 私に与えられた時間が参りましたので、これで質問を終了したいと思いますが、私は、先ほど来いろいろな経過を踏まえた形の中で質疑が行われた内容も参考にしながら質問を続けてまいりました。結果的に本法律が成立したとするならば、いままで答弁にもありましたとおり、一つ一つの項目について満足のいくことのでき得るような答弁をいただいておりません。大きな可能性を持つ危険を私どもは感ずるわけであります。したがって、この法律が成立し、実施される、協定が施行せられる、批准せられる、こういうような状況の前に、まず何としても、先ほど来あるいは一日以降この委員会審議せられた最小限中国の了解を得ることなくしては、この法律を実行することは全く誤りである、いや事実上不可能である、不可能な状況を導き出すものである、こういうように判断せざるを得ないわけでありますが、それについて最後に再び外務大臣通産大臣見解をお聞きいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  421. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 本件の国内法につきましては、韓国との間の協定の実施のために、これを円滑に実施をするためにはぜひとも必要な措置でございます。そして御指摘になりましたような、特に日中関係につきまして大変御心配をいただいております点につきましては、私どもといたしまして、この問題が日中関係の国交につきまして阻害を来すようなことがあってはならない、また、そういうことがありますと円満な開発もむずかしい、こういうことになりますので、この問題につきましては責任をもって中国側の理解を得るように最善の努力をいたしたい、このように考えて、この法案はぜひともこの国会で御承認を賜りますよう心からお願いを申し上げる次第でございます。
  422. 田中龍夫

    田中国務大臣 当省といたしましては、所管でありまするエネルギー問題の重要な一環といたしまして、技術的に万遺漏なきを期する次第でございますが、国内法といたしましてのいろいろな貴重な御意見に対しましては、それを体しまして、今後の運営に支障なきことを期しながら操業いたしましてまいりたい、かように考えております。
  423. 野呂恭一

    野呂委員長 関連して、中村君の質疑を許します。
  424. 中村重光

    ○中村(重)委員 先ほど佐野委員の大失敗論に対して大臣の釈明があり、また、いまアジア局長から大失敗論の真意について御答弁がありました。  その御答弁の中で、こういう意味であったということで改めてお答えになったのは、韓国としては自然延長論を貫き得なかったのは大失敗であった、日本としては中間線を貫き得なかったのは大失敗であったという意味で答えたんだということでございましたね。  そうなってまいりますと、日本も中間線を貫き得なかったのだからこれは失敗である、韓国も自然延長論を貫き得なかったのは失敗だということは、あなたは失敗をお認めになったということになる。そうすると、いままで共同開発地域の設定というものは正しかったと一貫して御答弁になってきたわけですが、そのいままでの答弁というのはすっかり崩れてしまう。この責任をどう処理されるのか、きわめて重大な問題でございますから、この点は看過できない。はっきりしてもらわなければなりません。
  425. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 アジア局長の発言につきましては、私自身不適当な発言であったと思いまして、昨日もその点は本人に注意をいたしたところでございます。この説明を申し上げますと、またこれややこしくなりますので、どうか、この説明自体が大変不適切であったと私も考えまして本人にも厳重注意をいたしましたので、何とぞ御了承賜わりたいと存じます。
  426. 中村重光

    ○中村(重)委員 大失敗論というものは間違いであったということで、こういう意味でありますといって答えられたのが、もう一度繰り返しますが、日本の中間線論を貫き得なかったのは失敗であった、韓国が自然延長論を貫き得なかったのは失敗であったということだから、そうすると、いままでは、いままでの日韓大陸棚共同開発のこのラインというものは正しかった、正当であるということを、正当性を同僚委員質問に対し終始一貫して答弁をしてこられた。ところが、失敗であるというととをみずから是認しながら、そう信じながら、言葉としては正当であったということを主張してきたのだから、改めてこういう真意でありましたといった答弁が、いままでの答弁と完全に食い違ってしまった、崩れてしまった。  これは重大な問題でありますから、このままの状態でこれを採決をするということは私は問題であると考える。理事会において、このことに対しての処理をしていただきたい。
  427. 野呂恭一

    野呂委員長 以上で本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  428. 野呂恭一

    野呂委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺三郎君。(「理事会を要求しておるじゃないか」と呼び、その他発言する者あり)——渡辺三郎君。(発言する者あり)——渡辺三郎君。(発言する者あり)  速記をやめてください。     〔速記中止〕
  429. 野呂恭一

    野呂委員長 速記を起こして。  渡辺三郎君の討論を許しましたが、この際、先刻の佐野進君及び中村重光君の質疑に対する鳩山外務大臣及び中江アジア局長の発言中、不適当な部分につきましては、後刻速記録を調査の上、委員長において取り消すことにいたします。  なお、この際、鳩山外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。鳩山外務大臣
  430. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいま委員長から御指摘のありました私と中江アジア局長の発言に不穏当な個所があったことを、心からおわび申し上げます。(発言する者あり)
  431. 野呂恭一

    野呂委員長 渡辺三郎君。(中村(重)委員委員長」と呼ぶ)発言を許しておりません。(「中村(重)委員「適当ではない、委員長の処理は。不穏当な発言の問題じゃなくて本質論なんだから、その速記録を取り消すということについては同意しかねるということを申し上げておきます」と呼ぶ)  速記をとめてください。     〔速記中止〕
  432. 野呂恭一

    野呂委員長 速記を起こして。  渡辺三郎君。
  433. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました日韓大陸棚共同開発に関する協定の実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源開発に関する特別措置法案に反対の討論を行うものであります。  言うまでもなく、この特別措置法案は、さきの第八十国会で成立したいわゆる日韓大陸棚共同開発協定に基づいて提案されているわけであります。  ところで、その共同開発協定そのものは、昭和四十九年の第七十二通常国会に提出されて三年余、その間、廃案、再提出、継続審議三回、そして第七十八臨時国会ではまた廃案、第八十通常国会に再々提出され、その中では、御承知のように、質問者を数多く残したまま、強引、変則的な外務委員会での採決が強行され、次いで、ごり強いの会期延長が図られ、参議院の審議も経ないまま自然成立に持ち込まれたものであります。  これらの経過が端的に物語っておりますように、余りにも問題の多過ぎる協定であり、それに伴う特別措置法案であります。しかも、それらの問題点は、協定案の審議及び本特別措置法案審議を通じても、ほとんど解明されておりません。  以下、私は、その問題の主だった点を指摘をしながら、項目を挙げて反対の理由を申し述べます。  まずその第一は、協定並びに本特別措置法案が、当初国会に提出された当時と今日を比較するとき、海洋法をめぐる国際動向が大きく変わってきており、そこから来る矛盾についてであります。  領海三海里時代の産物であったこの協定は、すでに国会審議の過程で、本来は協定そのものを修正しなければならない十二海里時代に移ったわけでありますが、それに伴って生じた共同開発区域そのものの変更をあいまいにし、単なる日韓両国の口上書をもって当面を糊塗したことは、皆さんの記憶に新しいところであります。協定第二条第一項のこの問題は、当然そのまま本特別措置法の第二条第二項にかかわって、瑕疵ある法案と言わざるを得ないのであります。  次に取り上げなければならないのは、もともとこの区域は、日本と韓国が共同して開発しなければならない何らの確たる理由がないことであります。  政府が主張するように、本来は当然にわが国の主権の及ぶ範囲内の区域であるならば、韓国が単に次々と勝手に鉱区を設定してきたので、このままにしておくことができない、だから結論的には共同開発区域にすることを協定したなどという理由は、厳正なるべき相互の国の主権を考えるときに、とうてい了承できるものではありません。  大陸棚の境界画定について、国際法上合意が前提であるが、これまでの経緯からして共同開発はやむを得ないものであるというのであるならば、初めから中国との十分な協議のもとに決めるべきものであり、今後長期にわたっての国際紛争のもとになる火種を残したものと言うべきであります。  第三は、この共同開発区域内の石油及び天然ガスの埋蔵量推定は、必ずしも明確でありません。  これまでの審議の過程でも明らかなように、むしろこの本協定による共同開発区域よりも南西寄りの広大な地域にこそ有力な石油資源の賦存が各種の調査から確信されていることを考えるならば、いま多くの疑惑を残したままこの区域の開発を強引に進めることは、この開発によって生ずるであろう中国との諸問題をあわせ考えるとき、とるべき良策とは決して言えません。  政府は、石油不足を大義名分として、とにかく開発を急ぎ、少しでも掘り当てることが先決だという姿勢を貫き、すべてをそこから出発させているわけでありますが、そのことは逆に、あらゆる面で無理なやり方を誘発することになり、何よりも、長い目で見た場合、将来にわたる東シナ海大陸棚石油開発そのものに大きな支障を来すことになるでありましょう。  第四は、海洋開発に伴う汚染防止及び万一事故などの生じた場合における汚染防止の除去についての対策を見ましても、とりわけ韓国側の措置に多くの不十分さを指摘することができます。  また、この共同開発区域の開発ということで考えた場合、わが国の深海操業技術はまだ万全とは言えません。  第五には、漁業との調整の問題であります。  政府自身が言うように、この共同開発区域はまさにわが国にとって最も優良な漁場であります。それに対する措置は本案の第二十一条にありますが、その内容は、これまた十分とはとうてい考えられませんし、補償制度についても万全とは言えません。  さらに、開発の資金面においては、少なくとも今日までの審議の中で十分な体制を確認することができません。ましてや、先ほどの質疑答弁の中で明らかにされましたように、当該開発区域が現に国際上の紛争のおそれある区域であって、公団の投融資も債務保証も事実上できない状況のもとで、この効果的開発には相当の無理が伴うことかはっきりしております。  以上、私は、きわめて重要な問題だけにしぼって申し上げましたが、問題はこれだけではありません。さらに十分な時間をとって究明しなければならない点が多々あり、そうしたことが残されたまま採決することはきわめて遺憾であります。  冒頭にも触れましたように、今日二百海里経済水域という海洋新秩序の時代の中で、この共同開発区域はまさにその中にすっぽり入るわが国の主権的傘下にある区域であります。しかも、その広さは九州の二倍にもなる広大なものであり、これら権益区域を事実上韓国に売り渡すような協定、それに基づく本法案を断じて承認できないことを強く主張し、私の反対討論を終わります。(拍手)
  434. 野呂恭一

    野呂委員長 中西啓介君。
  435. 中西啓介

    ○中西(啓)委員 私は、自由民主党を代表して、日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定の実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源開発に関する特別措置法案に賛成の討論を行うものであります。  本特別措置法案は、法案の名称にあるとおり、前国会で承認されたいわゆる日韓大陸棚開発協定の実施に伴い、共同開発区域における石油資源の開発事業に関し、鉱業法にかわる特別の制度を定めようとするものであります。  同時に、本特別措置法案が成立しないと、日本側の開発権者を許可できないことや、石油天然ガスの分配及び費用の分担を日韓で折半すべきことを担保できないこと等、協定の基本をなす内容の実施が不可能となるのであります。  したがいまして、基本である日韓大陸棚開発協定がすでに第八十国会において承認され、国会の意思が確定している現在、可及的速やかに本特別措置法案の成立か図られるべきでありまた、国会の意思が異なって出ることは国際的にも国内的にも好ましくないものと考えます。  特に国際的には、協定が日韓両国調印後実に三年半後を経てやっとわが国国会において承認された経緯があり、さらに国会承認後すでに五カ月以上を経てなお批准書交換を行うことかできないでいる現状は、国際外交史上例を見ないような事態であり、国会の責任を問われるものと考えます。  翻って、世界は資源有限の時代を迎え、一九八〇年代後半には世界的な石油の供給不足か生じ、いわゆるエネルギーの谷間の時代に突入すると見られています。このときに当たり、日本のエネルギー事情を振り返ると、輸入エネルギー依存度九〇%、石油依存度七三%に達しており、特に石油については九九・七%を海外に依存しておる現状にかんがみ、国内産原油の開発は急務であります。  当該共同開発区域が存する東シナ海大陸棚には、エカフェ等の調査によると、豊富な石油資源が埋蔵されており、将来一つの世界的な産油地域になるであろうと推定されております。そして当該共同開発区域は、東シナ海大陸棚区域の北部に当たっており、数億キロリットルの埋蔵量が期待されております。  目下、わが国は、経済の安全保障のために、九十日備蓄、すなわち、昭和五十四年度末において八千万キロリットル程度の備蓄を目指しております。そのことからいたしましても、数億キロリットルの石油共同開発することの意義はまことに大なるものがあります。  本特別措置法案審議もすでに三十六時間に及び、十分問題点も解明され、審議も尽くされましたから、この上は速やかに本委員会において可決されんことを切望し、賛成討論を終わります。(拍手)
  436. 野呂恭一

    野呂委員長 長田武士君。
  437. 長田武士

    ○長田委員 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となっております日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定の実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源開発に関する特別措置法案、いわゆる日韓大陸棚特別措置法案に対し、反対の討論を行うものであります。  以下、その主な反対の理由を申し述べます。  反対の理由の第一は、海洋法会議の過程において、もはや世界の趨勢となっている二百海里の大陸棚及び経済水域制度から言えば、わが国の大陸棚としてもあるいは経済水域としても明らかに主権的権利の及ぶ可能性のある海域に、この共同開発区域が設定されたということであります。  すなわち、将来、海洋法の動向によってはわが国の権益を損なうおそれがきわめて強く、いかなる理由があってわが国だけが早々と主権的権利を一方的に放棄してまで韓国との共同開発を急ぐのか、常識ではとうてい理解できないのであります。  第二として、南部の共同開発と同時に、北部の大陸棚の境界を画定する協定を定めておりますが、南部と北部とでは相矛盾する考え方が平然とまかり通っていることであります。  すなわち、北部の大陸棚の境界を画定する協定では、中間線によって境界が画定されております。ところが、韓国にきわめて近いところに深い海溝かあるのであります。韓国が南部の共同開発区域をみずからの大陸棚と主張し、わが国の大陸棚の権利を否定したのは、わが国の近くにある沖繩海溝の存在を理由にしたことを思うと、全く相矛盾した考え方であります。政府が、この矛盾をただすことなく、韓国の主張に一方的に屈したのは、全く不平等、屈辱的と言わざるを得ないのであります。  第三の反対の理由は、この協定が、たび重なる中国の抗議にもかかわらず、これを無視して採決が行われたからであります。  国際紛争が明らかに予見されているにもかかわらず、あえてほおかぶりして協定の採決を行った政府の態度は、国際紛争をみずから招くものであって、わが党としてはとうてい黙認するわけにはいかないのであります。  中国は、昭和四十九年二月四日に、すでに外交部スポークスマン声明をもって、共同開発区域は中国の主権を侵害する行為であると抗議しております。その後、何度も同趣旨の意向を明らかにしておりますか、政府は、共同開発区域は日中中間線の日本側にあり、中国の権利を侵していないと述べるのみで、中国政府と積極的に交渉して問題を解決しようとする熱意か全く見られないのであります。  もし、政府の理論を一方的に押しつけることができるならば、韓国との間でも当然その主張を通すべきであり、韓国か認めない日本の主張を中国には話し合いをしないまま押しつけるというのは、はなはだしく矛盾するものであるばかりではなく、中国を軽視する態度であり、将来の紛争の種をまいたと言わざるを得ません。  さらに、本年六月十三日には、従来の外交部スポークスマン声明より強い外務省声明の形で強硬な抗議が行われており、これすらも無視するとすれば、せっかく積み上げてきた日中友好関係を大きく後退させることになることを憂うるものであります。したがって、先般来主張しておりますとおり、批准については中国との合意か得られるまで待つべきであると主張するものであります。  第四に、油漏れ等の汚染事故が起きた場合、その影響がきわめて広範に及ぶことを深刻に憂うるものであります。  外務省のPR用パンフレットによれば、海底油田の開発に伴う海洋汚染については、防止のため世界各国とも厳重な規制を行っております。今日まで海を汚染した例は日本には全くない。世界でもきわめてまれである。サンタバーバラ事故は噴出防止装置をつけていなかった例であると述べ、さらに、共同開発区域ではこのような事故が起こる可能性はないと強調しておりますか、私は、政府のこの見解は、科学的、技術的根拠のない単なる気休めにすぎないのであって、このような例示だけでわれわれはとうてい納得するわけにはいかないのであります。  そのやさきに、世界的技術の粋を集めた北海油田で油漏れ事故が発生し、一日四千トンの原油が海上に流れ出し、長さ二十三キロ、幅五キロの帯状をなして海上を汚染したのであります。  共同開発区域は、黒潮が日本海と太平洋に流れる分岐点で、アジ、サバ、イカなどの産卵地であり、豊かな漁場であります。もし同じような事故が起きた場合、漁業に及ぼす影響は甚大であり、また、黒潮に乗って太平洋と日本海の海岸の双方を汚染するのであります。  政府は、海洋汚染の防止及び除去に関しては、両国で交換公文を結び、万全の備えをすると述べておりますが、果たして取り決めだけで事故は防げるでありましょうか。韓国には、わが国の海洋汚染防止法に相当する国内法はありません。さらにまた、韓国は、油による汚染を伴う事故の公海上の措置に関する条約及び一九五四年の油による海水の汚濁の防止に関する条約にも加入してないのであります。一体法律もなく、また国際条約にも加入してない韓国が、何を根拠に万全の措置をとり、責任を負うという確認が持てるのでありましょうか。  第五に、まだまだ十分な審議が尽くされていないのであります。  わが党の強い要求にもかかわらず、外務委員会及び農林水産委員会においては、当商工委員会に対し連合審査の申し入れをすることが決議されず、また、学識経験者よりの意見の聴取は、打合会の形によりわずか二名にとどまり、わが党が要求した多数の学識経験者の意見の聴取ができなかったのであります。このようなことは、国の主権的権利にもかかわる重要法案に対する審議の態度とは言いがたいものであります。  まだまだ問題点はたくさんありますが、ともかく、現在、海洋法秩序の生成過程における大陸棚あるいは経済水域制度の見通しからいって、この共同開発区域がわが国の主権的権利を主張できる海域であることは明らかなのであります。何の必要があって、わが国だけが早々と主権的権利を一方的に放棄してまで韓国との共同開発を急ぐのか、とうてい理解できないのであります。  石油はどこにも逃げはしません。天然の備蓄としてとっておけばよいではありませんか。そして、十分な調査と準備を行い、十分な安全確保の見通しを立てた後、わが国の主権的権利として認められた大陸棚及び経済水域において独自に開発すればよいではありませんか。そのために、まだ国内的にもまた国際的にも効力を発生してない日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定の締結を取りやめるべきであることを強く主張するとともに、それに伴う当該国内法案にも反対するものであります。(拍手)
  438. 野呂恭一

    野呂委員長 工藤晃君。
  439. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 私は、日本共産党・革新共同を代表しまして、ただいま議題となっておりますところの日韓大陸棚協定関連国内法案に対する反対討論を行うものであります。  初めに、この委員会はこの法案を慎重審議するということであったはずなのに、私及び安田委員質疑に関しましても、多くの問題が残されたわけであります。たとえば、日石開発、テキサコ、シェブロンの間の共同事業開発契約につきましては、私か入手した資料をここに提出し、こういう資料こそ委員会に提出して初めてこの協定や関連国内法に対する評価が決まるはずであるのに、これらが出されないまま審議されるのはきわめて遺憾であると強く要求したものでありますし、また、安田委員質疑に関しましては、あの協定の十九条関連で、探査やあるいは採掘の際のオペレーターが韓国側であったときの適用される法令の範囲というのは一体どこまでなのか、この問題につきましては、鳩山外相と法制局当局との間で明らかに食い違いもあった、こういう重要な問題も残されているわけであります。  多くの反対理由がありますが、簡単に申し上げます。  第一に、この協定並びに法案は、日韓癒着の中心となって動いた日韓ロビイストや日韓協力委員会のメンバーの動きによってわが国の外交の筋を大きくゆがめた、これもまた一つの産物にほかならないということであります。  八十国会の当委員会におきまして、私の質問に対しまして、当時日韓協力委員会事務総長でありました田中通産大臣答弁は、その事実を肯定的に答えました。また、毎日新聞その他で矢次一夫氏の証言などがこの事実をいよいよ明らかにしているわけであります。まさにこの日韓癒着の産物であるという点こそ、いよいよ究明されなければならない点でありますが、その点につきましては、これまでの当委員会質疑におきましてもいよいよ明らかになったわけであります。  第二に、協定及びこの国内法案内容でありますが、一口で言いまして、メジャーの既得権を五十年の長きにわたって守るためにわが国の主権を放棄するものである、こういう点であります。  もともとこの大陸棚問題の仕掛け人は、メジャー及びアメリカ資本でありまして、テキサコ、シェブロンやシェルのごときは、日本側、韓国側両方から有望だと思われるところに鉱区を設定し、そしてこの紛争の仕掛け人となったわけであります。  日本側の会社日石開発あるいは西日本石油開発、これらは、私がこの委員会におきまして示しました共同事業契約がはっきり示すように、まさにこれらのメジャーが日本の鉱業法をくぐり抜けて日本に設立したところの、完全にコントロールされる会社にほかならないわけであります。日石開発は、その鉱業権の処分さえテキサコ、シェブロンの言うままになる、こういう実態すら明らかになったわけであります。  したがいまして、この共同開発なるものが行われ、日本側もこのようにメジャー側に完全にコントロールされる会社であり、向こう側もメジャー側の企業であるとするならば、ここで日本側の発言権が四分の一残されるどころか、十分の一も残されてないという実態が明らかにされたわけであります。  さらに、七三年九月、共同開発の取り決めが日韓両国政府において行われてから、両国のワーキングレベルミーティングが何度も行われましたが、そのいきさつか明らかになったところは、たとえば重複鉱区ごとの方式をとったことや、税金やロイアルティーを高い方にならすのでなしに、そういう均等化を排除したことや、あるいは坑井掘削義務の軽減を行ったこと、これなどはまさにメジャーの要求がそのままここに盛り込まれたわけであります。そしてこの法案によりますと、鉱区税などはこれまでも日本の鉱区税がきわめて安いにもかかわらず、六分の一にも減らされるということになったわけであります。まさにメジャーの言いなりになってしまったという具体的な内容が、ここにあらわれたわけであります。  こうして、この法案によりますと、国内法によって特定鉱業権の設定許可を受けることになっているのに、この法案の附則で、これまでのメジャー系二社を含めて三社か必ず既得権を守れるような仕掛けになっているわけでありますし、両国交換公文でも九つの小区域の両国の鉱業権者が既定のものとされている、こういうことにもなっているわけであります。坑井掘削義務についても、国内法で通産大臣告示で定めることになっているのに、すでに詳しい内容が交換公文で取り決められてしまっているわけであります。まさに国内法はもぬけのからとなっているわけであります。そして、すでにつばをつけた巨大な石油資本、それによってその少数者の利益が思うままに超法規的にこの中に実現されようとしているわけであります。  第三に、オペレーターが韓国側となるならば、わが国側の大陸棚であるにもかかわらず、当事者間の話し合いでは全域一〇〇%韓国側の法令が適用される事態も考えられるわけであります。しかも、この適用される韓国側の法令という中には、韓国政府とメジャー系の私的な資本との契約も法令と扱われる、こういうことも入っており、しかもこの何であるかも示されないわけであります。  また、第十九条で、探査、採掘に関連する事項について一方の締約国の法令が適用されるということになっております。安田委員質問か明らかにしたように、プラットホームなどでわが国の国民が、労働者か働くときに、そこに韓国の法令が適用される。しかも、適用される法令の範囲については、この時点でまだ政府は不一致なのであります。外相の方はいわゆる探査、採掘に関連するそれ以外は属人主義であろうという想像で物を言われ、法制局当局は、オペレーターが韓国側となった以上、労働関連法以外もすべて韓国の法令になり、領土と同じようになると全面適用の回答をしたわけであります。そうなれば、反共法や国家保安法、大統領緊急措置九号などで、まさに思想信条のいかんで、ちょっと友だちに誘われたことだけで逮捕され、罪に問われ、そして重い刑罰を科せられる、こういう基本的人権にかかわる弾圧法にわが国の国民がさらされる、こういう事態が生ずるわけであります。  このことは何を意味するのか。まさにこういうことになっていることこそ、この協定そのものが欠陥協定であるということと、第二に、政府がわが国国民に対して、憲法に定められた基本的人権を守ろうという決意の薄いこと、二百海里経済水域以内あるいは中間線以内の大陸棚で働くそういう国民が政府によって保護されない、憲法が適用されない、ここにこそ協定、国内法の特徴も見られると言わざるを得ないのであります。  時間がありませんので、もっと多くの事実を挙げ、もっと多くの側面について触れなければなりませんが、省かなければなりません。  しかし、この協定は世界に例を見ないものであります。世界に例を見ない仕方で国家の主権を放棄するものであります。それは二重の意味であります。一つは韓国政府に対して、もう一つはメジャーなどアメリカの石油資本に対してであります。これほど国民の利益を裏切るものはないと言わざるを得ません。いまわが国はエネルギー危機の中にあって、いまこそ、これまでの対米従属的な、しかも無計画な総合性のないエネルギー政策はやめて、本当に自主的立場でわが国国内及び大陸棚の資源の開発を強力に行わなければならないときに、この協定と国内法はまさにこの国民の利益を代表する方向を大きく裏切るものなのであります。逆行するものなのであります。多くの問題が究明されなければならないのに採決をするということは、まことに遺憾であります。  わが党は、最後に、この大陸棚協定を破棄すること、この国内法の撤回を要求し、私の反対討論を終わるものであります。(拍手)
  440. 野呂恭一

    野呂委員長 大成正雄君。
  441. 大成正雄

    ○大成委員 私は、新自由クラブを代表いたしまして、協定が承認、議決されているにもかかわらず、なぜ国内法に反対せざるを得ないかの理由を明らかにいたしておきたいと存じます。  反対の第一の理由といたしまして、本協定は、強行通過はいたしましたが、その内容にはわが国の国益を将来に及んで損なう重大な欠陥があるからであります。  その第一といたしまして、韓国の大陸棚自然延長論のみを正しいとして、世界の海洋法の趨勢としている経済水域理論と衡平の原則を否定した上でなされた協定であります。したがって、当然日本の主権の及ぶ海域を、共同開発区域として本法第二条第二項の区域としている点であります。  第二点は、共同開発区域の座標第六、第七、第八による日中中間線のゼロ地点は、日本側の一方的押しつけでありまして、政府は中国には何らの関係のない海域であると主張し続けてきましたが、中国側の数次の厳重な抗議にもあるごとく、中国側の合意を得ないまま本開発行為を強行することは、日中間の子々孫々に至る友好と親善のために禍根を残すこととなることを憂慮するからであります。明春の日中漁業協定の更新やあるいは目先の日中平和条約の締結に好ましくないことはすべきでないと考えるからであります。協定成立以来すでに六カ月を経過しておりますが、この間、政府は、誠意のある対中交渉に何ら見るべきものもなかったことは、きわめて遺憾と言わなければなりません。  第三点といたしまして、東シナ海南部、尖閣列島の領土主権は中国との間においていまだ不確定でありますけれども、この周辺海域のわが国の権益を将来に及んで確保するためにも、中国との円満な合意なくして本法を発効させることは、国益上重大な誤りを犯すことになるからであります。  第四番目といたしまして、本協定並びに本法は五十年間もわが国の主権を拘束する気の遠くなるような協定であり、またその協定に基づく本法であります。交通安全の標語に「狭い日本そんなに急いでどこへ行く」、こういう標語がありますが、「無資源国日本そんなに急いでどこへ行く」と言いたいのであります。本当にあるかないかは、これは探査をしてみなければわからないことでありますけれども、よしんばそこに石油が、ガスがあったとしても、わが国の当面する石油事情あるいは中期的展望において、隣国中国の友好を阻害してまで急いでこれをやる必要はないと思うのであります。  第二の反対の理由といたしまして、日韓両国は、一衣帯水の隣国として、健全かつ明朗な国交の関係でなくてはならないと思います。  本協定成立の背景として、金大中事件を初めとした不明朗な問題が数多く指摘されております。かかる疑惑が何ら具体的に究明されることなく、日韓両国の共同行為を五十年間も固定することに問題があるからであります。政府は、進んで日韓間の疑惑を晴らすために、積極的に努力をすべきであることを要求いたします。  反対の第三の理由といたしまして、漁業に及ぼす影響と被害の防止についてきわめて不十分であるからであります。  私が水産庁に要求をして本委員会に提出された魚礁分布図を拝見いたしましても、重要な魚礁が数多く存在することが明らかとなりました。本法第三十六条による制限区域の指定もいま現在明らかにされておらない現状において開発行為か進められることは、被害が出たら賠償するといった金銭では済まされない重大な問題がそこに含まれております。本法成立以前に関係漁民との協議によって制限区域を明らかにすべきであると存じます。  以上、この国内法がいま直ちに成立することに反対する三つの理由を挙げて新自由クラブの立場を明らかにし、反対をするものであります。(拍手)
  442. 野呂恭一

    野呂委員長 以上で討論は終局いたしました。     —————————————
  443. 野呂恭一

    野呂委員長 これより採決に入ります。  日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部の共同開発に関する協定の実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源開発に関する特別措置法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  444. 野呂恭一

    野呂委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  445. 野呂恭一

    野呂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  446. 野呂恭一

    野呂委員長 次回は、来る十八日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後十一時二十一分散会