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1977-11-15 第82回国会 衆議院 商工委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月十五日(火曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 野呂 恭一君    理事 中島源太郎君 理事 林  義郎君    理事 武藤 嘉文君 理事 山崎  拓君    理事 上坂  昇君 理事 佐野  進君    理事 松本 忠助君       鹿野 道彦君    粕谷  茂君       藏内 修治君    島村 宜伸君       田中 六助君    辻  英雄君       中島  衛君    中西 啓介君       楢橋  進君    西銘 順治君       萩原 幸雄君    橋口  隆君       前田治一郎君    渡部 恒三君       板川 正吾君    加藤 清二君       後藤  茂君    清水  勇君       土井たか子君    中村 重光君       馬場  昇君    長田 武士君       玉城 栄一君    西中  清君       宮田 早苗君    工藤  晃君       安田 純治君    大成 正雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         通商産業大臣  田中 龍夫君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      前田 正道君         内閣法制局第四         部長      別府 正夫君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アジア局         次長      枝村 純郎君         外務省条約局外         務参事官    村田 良平君         水産庁次長   恩田 幸雄君         通商産業政務次         官       松永  光君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         通商産業省立地         公害局長    左近友三郎君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁次長     大永 勇作君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君  委員外出席者         外務大臣官房書         記官      久米 邦貞君         運輸省船舶局検         査測度課長   辻  栄一君         海上保安庁警備         救難部長    久世 勝巳君         海上保安庁水路         部海象課長   堀  定清君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 十一月十五日  辞任         補欠選任   岡田 哲児君     馬場  昇君   渡辺 三郎君     土井たか子君 同日  辞任         補欠選任   土井たか子君     渡辺 三郎君   馬場  昇君     岡田 哲児君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸  棚(だな)の南部共同開発に関する協定の実  施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源開発に  関する特別措置法案内閣提出、第八十回国会  閣法第三〇号)      ————◇—————
  2. 野呂恭一

    野呂委員長 これより会議を開きます。  第八十回国会内閣提出日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部共同開発に関する協定実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源開発に関する特別措置法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馬場昇君。
  3. 馬場昇

    馬場(昇)委員 私は、日韓大陸棚協定共同開発日本漁業とのかかわりについて、これが第一点、第二点は、この共同開発中華人民共和国並びに朝鮮民主主義人民共和国との関係について、第三点は、この共同開発海洋汚染の問題について質問をいたしますが、その前に一言聞いておかなければならないことがございます。  それはきょうの一部の新聞報道されておることですけれども、十四日の外務省首脳言明として報道されております。それは、日韓大陸棚特別措置法成立しなくても日韓大陸棚協定批准することがあり得る、こういうことを外務省首脳言明をした、こういうような報道がなされておるわけでございます。私どもが承知しておるところでは、国内法成立するまでは批准はしないというのが日本政府の従来の方針であった。しばしばそういう言明をしておられるというぐあいに承知しておるわけでございますけれども、まず、外務省首脳言明として先ほど言いましたようなことを言われたのか、もし言われたとするならば、従来の国内法成立しなければ批准しないという方針を変更されたのかどうか、こういう点について外務省にお尋ねをしておきたいと思います。    〔委員長退席、林(義)委員長代理着席
  4. 中江要介

    中江政府委員 御質問記事、これは見出しのところでは、いま先生がおっしゃいましたように、「「日韓大陸ダナ国内法整備でも 協定批准あり得る」、こう書いてございますが、簡潔に申し上げまして、外務省首脳が、国内法成立しなくても協定批准することがあり得る、またそういうふうに方針を変更したということを言われた経緯はございません。  この記事の、恐らく推測の根拠になっておりますところは、外務省首脳報道関係者との懇談の場で、政府としては、協定がすでに国会の御承認を得ているのであるから、関連国内法は当然速やかに御審議いただけるものであろうし、その成立を待ってこの協定を円満、円滑に発効させたいというその強い願望を言われたときに、もし国内法がそう速やかに成立しなければどうなんだという質問に対しまして、韓国日本批准を一日千秋の思いで三年以上待っているわけでございますので、協定承認を得ているのに国内法成立しないということになれば、また韓国の方で強い希望表明その他があって、日韓間でいろいろ話し合わなければならなくなるだろうというところまでをおっしゃったというのが真相である、こういうふうに私どもは承っております。
  5. 馬場昇

    馬場(昇)委員 いまの答弁によりますと、その新聞見出しにあり、また記事の中にありますところの日韓大陸棚特別措置法成立しなくても日韓大陸棚協定批准することがあり得るということは、言明していない、言っていない、こういうぐあいにいまの答弁を受け取ったわけですけれども、はっきりそうかということを念を押しておきたいと思います。  そして次に、いまの答弁によりますと、国内法成立を待って批准をしたいという従来の基本方針は変わっていないのだということもまた言明されたわけでございますので、これも、国内法成立しなければ批准はしないのだという従来の方針は変わっていない、変えていない、こういうぐあいに理解していいのか。  いまの二点、端的にそのものずばりお聞きしたいわけでございます。  しかし、最後部分成立を非常に望んでおるということを言われたのは事実ですが、それは当然のことだと思うのですけれども、また、成立しなかったならば韓国側が強い要求をするであろう、要請をするであろう、そのとき、私の聞き違いかどうか知りませんが、検討しなければならぬというような意味のように受け取ったわけでございますけれども、これは先ほどの二点の質問とかかわるわけですけれども、そういうとき、議論いたしたにしてももし成立していなかった場合には批准することはあり得ない、ない、こういうぐあいに確認しておいていいのかということを、念のため聞いておきたいと思うのです。
  6. 中江要介

    中江政府委員 第一点でございますが、関連国内法成立を待たずに批准書交換があり縛るのかという点につきましては、そこまでは言っていない、こういうふうに外務省首脳は言っております。  第二点でございますが、それでは関連国内法案成立を待って初めて批准書交換に進むのであるかという点につきましては、政府といたしましては、国会承認は得ましたけれども関連国内法案成立を期待いたしまして速やかな御審議をお願いしているわけでございますので、とにかく速やかにこの国内法の御審議をお願いいたしたい、こういうことに尽きるわけでございます。  第三点の、もし国内法成立いたしませんときには韓国が強い申し入れをしてくるであろう、そのときには国内法成立を待たずに批准するということも考えるのかという御質問に対しましては、私どもは、そういうことにならないようにいま国内法の速やかな御審議決着を期待しておるわけでございますので、それにもかかわらずそういう事態になりましたならば、韓国といたしましては当然韓国側考えを強く申し出てくることも予想されますので、韓国としてはいつまでも待てないということを言ってくるであろうというところまでを外務省首脳は申し上げておるわけで、それ以上のことは言っておらない、こういうことでございます。
  7. 馬場昇

    馬場(昇)委員 新聞に書いてございますから私も使ったわけでございますけれども、いま首脳首脳という言葉局長答弁しております。この首脳という言葉を使っていま私も質問したし、局長答弁されているのです。これは非常に抽象的でございますし、問題が非常に重要でございますので、また責任問題もあると思いますから、だれが記者会見をしたのか、記者会見をしたときこういうことをしゃべったとおっしゃいましたから、十四日にはだれが記者会見をしたのか、そういうことを言ったのかということを第一点に聞いておきます。  それからもう一つ、一番最後の点でものすごく問題になるのは、いまあなたはこうおっしゃったわけですね。国内法がこの国会成立をしないというときには韓国が強く、要請してくるであろう、そういうことが想像できる、そこまでだ、こういう答弁をなさっておるのですが、私の聞いておるのは、このことは韓国の問題じゃなしに日本の問題を聞いておるのです。そして外務省首脳が、あなたはいま否定されましたけれども、とにかく国内法成立しなくても批准するという意向は、間違いであるとおっしゃいましたけれども、言っておるわけです。韓国が言うてくるのは私にもわかっているのです。私が聞いているのは、そのときに、国内法成立しておりませんからこの協定批准国内法成立するまではいたしません、そういう態度日本政府は貫くのかどうかということを聞いておるわけです。  二点について、はっきりお答えいただきたいと思います。
  8. 中江要介

    中江政府委員 第一点の、外務省首脳というのは抽象的だ、具体的にだれかという点は、これは新聞記事を書かれた方が「外務省首脳」と書いておられますので私がそう申し上げておるわけでございまして、私どもの方でだれのどういう記者懇談機会かということについて申し上げておるわけでないわけで、具体的にだれのいつの、これは十四日となっておりますが、記者懇談と私申し上げましたが、いろいろな場面がございまして、この記事に言う外務省首脳がだれかというのは、この新聞社の方に聞いてみないとわからないわけですが、通常こういうときは外務省首脳ということで一貫しております。  私ども外務省の中で懇談がいろいろな場面で行われるわけでございますので、私どもで言っておりますところは、私が先ほども申し上げましたように、国内法成立しないでも批准するのかということに対しましては、そこまではいってない、そこまではいかないということを言っておるというのが限度だということを申し上げておるわけでございます。  それから、日本政府の問題といたしましては、この国会成立しない場合にどうするかというようなことをいま検討しておりません。とにかく先国会協定の御承認を得ておりますので、是が非でも今国会国内法決着をつけていただきたい、こういう強い希望でおるわけで、それ以上先のことは何ら決めていないわけです。要するに、この協定を円滑に実施するためには関連国内法が必要である、こういうことは一貫した態度でございます。
  9. 馬場昇

    馬場(昇)委員 首脳懇談をしたということをあなたは認めておられるわけですから、外務省が十四日に新聞記者懇談をしたのは調べてみればすぐわかると思うのです。これはひとつ調べて出していただきたいと思うのです。  そこで、次の問題ですけれども、あなたはいま私にとっては非常に重大なことをおっしゃったわけですけれども、私が承知している限りでは、日本政府外務省は、この国内法成立しないとその間は批准はしないということが方針としてたびたび言明されておると私は承っておるわけです。ところが、あなたのいまの答弁を聞いておりますと、そういうことは言ったためしもない、そういう方針を持ってもいなかった、国内法が通らなければ、その先のことはその先のことで、何も考えていなかったんだ、私にはいまこういうような答弁に聞こえるわけです。だから、従来これは通らなければ批准しないと絶対言ってはいなかった、はっきりそう言われるんですか。私は、批准しないということを言っておられたというぐあいに承知しているのです。その辺を明らかにしていただきたい。  それからまた、おかしいじゃありませんか、たとえば国内法成立しなければ批准できるものかできないものかという、そのくらいの方針外務省が持たぬというのはおかしな話ですよ。そのときになってみなければわからぬというような、そういう無定見な外務省態度というのは、私には了承できないのです。たとえばこの問題についてはっきり言えることは、協定の効力の発生の日から三カ月以内に開発権者を認可するということになっているでしょう。これは国内法が通過しなければ、可決しなければそういうことを認可なんかできないじゃありませんか。法律の上から言いましてもそういうことはあり得ないと私は思うのです。従来の言明と、そして法律の条文の上から言っても、国内法成立するまではこの批准はあり得ない、これが基本態度であるべきだと思うのですが、それについての見解をもう一度聞いておきたい。
  10. 中江要介

    中江政府委員 先ほど私申し上げましたように、この協定の円滑な実施のためには国内法が必要だ、したがって、前国会から関連国内法案の御審議をお願いし、協定国会の御承認を得ておりますけれども批准書交換をしないで国内法成立を待っているというこの事実によって御判断いただければいいと思うのでございますけれども、繰り返しますが、この協定を円滑に実施するためには関連国内法成立している必要がある、こういう立場に変わりはございません。
  11. 馬場昇

    馬場(昇)委員 これはいま局長答弁である程度理解はいたしました。納得というまではいかないのですけれども、いまの局長答弁は、この協定を円満に実行するためには国内法が必要だ、そのことで通らなかった場合に批准するのかしないのかということは御理解いただきたいというように私はいま受け取ったわけでございます。私の考えとしては、先ほどもちょっと言ったのですけれども国内法が通過していなければ、批准をしたって三カ月以内に開発権者を認可する、こういうことは成立しなければできないわけですから、そういたしますと条約違反になるということはもう明らかでございますので、批准ができないということはもう当然のことだと思うわけでございます。そういう意味でいま一歩はっきりしなかったわけですけれども協定批准のためには、円満な運用のためには国内法成立が必要だという言明で、これが成立するまでは批准はしないという日本政府態度だ、こういうぐあいに理解をいたしまして、この問題に対する質疑を一応終わりたいと思います。  次に、質問の第二点になりますけれども、この日韓大陸棚協定に基づく共同開発日本水産政策漁業政策、こういうものの関連について御質問を申し上げます。  まず、水産庁水産政策基本についてお伺いをしてから、共同開発との関連について各省庁にお伺いをするわけでございますけれども、二百海里時代にいまなっておるわけでございますので、その水産政策についてちょっと聞いておきたいと思うのです。  従来、日本水産政策というものは、御承知のように、沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へ、こういう方向を志向した漁業でございました。しかし、二百海里時代になりましてその方向転換しなければならない。すなわち、沿岸から沖合い沖合いから遠洋、こういうぐあいに志向しておった日本漁業水産政策が、遠洋からまた戻ってきて、近海沿岸を大切にする漁業方向転換をしなければならない、こういうことを鈴木農林大臣は前の国会農林水産委員会で私にも答弁なさっているわけでございます。この沿岸から沖合い遠洋へという方向を、遠洋から近海沿岸へと方向転換する水産政策をとるとおっしゃったわけでございますが、この原則に従いまして現在どのような手を打っておるのかということについて、水産庁にまず聞いておきたいと思うのです。
  12. 恩田幸雄

    恩田政府委員 先生ただいま御指摘いただきましたように、世界の海洋秩序が現在変わりつつあるわけでございまして、それに伴いまして、わが国といたしましても、従来の沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へという政策方向転換をせざるを得なくなったわけでございます。それに伴いまして、私どもといたしましては、従来から遠洋漁業に出ておった船も相当数ございますので、これらにつきましては漁業に関する国際協力も含めまして漁業外交を積極的に推進いたしまして、できるだけ実績の確保に努めるとともに、新たに公海部分におきます。たとえば海山のような新漁場開発に努力してまいりたいと考えております。     〔林(義)委員長代理退席山崎(拓)委員長代理着席〕  さらに、今後沿岸沖合いにつきまして、その見直しをする必要がございますので、沿岸漁場整備開発促進、あるいは栽培漁業を含めました増養殖の充実、漁港の整備、そのほか沿岸沖合い漁業の漁海況の予報事業の強化、さらには日本沿岸大陸棚周辺開発、このようなことを進めてまいりたいと考えております。  さらに、第三番目の問題といたしまして、たん白質食糧確保がわれわれ水産業に課せられた使命でございますので、最近資源の増大しておりますマイワシを中心とした多獲性魚類の十分な利用あるいはそのための技術開発、こういうものを積極的に進めてまいりたいと考えております。
  13. 馬場昇

    馬場(昇)委員 基本的な願望とも言えることはわかったのですけれども、具体的に聞きますけれども、そういう転換をするというようなプランをつくっておられるのか。こういうぐあいに遠洋から近海沿岸を大切にする方向転換をした、そのためにはこういうプランでいくのですという具体的な青写真ができているのか、そのことを聞いておきたいと思うのです。  それからもう一点は、遠洋漁場を失った漁民について、鈴木農林大臣は、漁民漁業で雇用する原則でいくのだ、こういうことを答弁なさったのです。この遠洋漁場を失った漁船、特に漁民沿岸近海漁業で雇用するのだとおっしゃいましたけれども、その状況は現在どうなっているのかということもつけ加えて、二点端的にお答えいただきたいと思うのです。
  14. 恩田幸雄

    恩田政府委員 具体的に申し上げますと、五十一年から七カ年計画でやっております沿岸漁場整備促進事業を進度を速めるように努力して、沿岸漁業整備に努めております。  さらにそれ以外に、栽培漁業におきましても、地域拡大その他ということで、沿岸魚族資源拡大を図って、そこに遠洋におられた方で沿岸に帰られる方を迎え入れるべく努力をいたしておる次第でございます。
  15. 馬場昇

    馬場(昇)委員 あなたの答弁を聞いていると、非常に抽象的なんですね。たとえば沿岸漁業整備七カ年計画を速めるとおっしゃいましたが、何年速めるのか。それから、いま雇用の問題で、栽培その他でそれを雇用するように努力しているのだとおっしゃいましたが、じゃ、何名ぐらい職を失って、そこに何名ぐらい雇用できるのか。そういうことを具体的に聞いておきたいと思うのです。  それからもう一点聞いておきたいのですが、鈴木農林大臣はこういうことをおっしゃっているのです。鈴木さんの言葉をかりますと、日本近海で二百メートル以下ぐらいの水深、そこを開発可能なと定義づけておられるわけですけれども漁場として開発可能な水域が三千万ヘクタールある、現在日本近海では百十万ヘクタールしか開発されていないわけですから、開発可能な三千万ヘクタールの三分の一の一千万ヘクタールを日本沿岸近海開発いたしますと、今日日本の全漁獲高は一千万トン程度でございますが、それに匹敵する魚をとることができるのだ、このことを推進したいというようなことをおっしゃっておられるわけでございます。これは私にも約束されましたが、この三千万ヘクタールの開発可能な海域の中の三分の一の一千万ヘクタールを開発するという開発計画はつくっておられるのかどうか、そのこともあわせて具体的に聞きます。
  16. 恩田幸雄

    恩田政府委員 沿岸漁場整備促進につきましては、来年度予算では、従来七カ年計画でございましたものを少なくとも一年は縮めたいということで、現在大蔵省に要求中でございます。  次に、失業者関係でございますが、これについてはいままだ兼業その他の関係で完全に数字が出ておりません。まだ減船されたものでもほかの漁業に従事しておる関係がございまして、あるいは一部整理が完全に合意されていないと申しますか、船が決まっていないという状況もございまして、数字としてはつかんでおりませんが、私どもが最近北海道庁を通じていたしました調査では、北海道関係で千二百名の減船による整理の者が出たと聞いております。そのうち約千名がやはり海上に従事しておりまして、約百三十名が陸上に就職した、このように聞いております。  次に、沿岸漁場整備のお話でございますが、先生御指摘のように、日本近海は十分利用されるほどまだ開発していないと申しますか、いわゆる漁労作業としてはその地点で十分行われておるわけでございますが、積極的な増殖の手段についてまだ十分行われていないところが二百メートル以浅で千二百万ヘクタールほどございます。  このうち、私どもが現在沿岸漁場整備開発促進しておりますのは、現在の海上におきます土木技術あるいは環境整備技術と申しますか、そのようなものの関係から、大体五十メートル以浅開発可能となっております。この面積を申し上げますと、約四百四十万ヘクタールほどになりまして、私どもが今回七カ年計画でやっております沿岸漁場整備促進につきましては、やはり五十メートル以浅を特に中心に置きながら積極的に開発してまいりたい。  この数字は、いわゆる施設をやるもののほかに、栽培漁業その他によりまして種苗の放流等による積極的なものもこの地域開発してまいりたいと思いますので、それらを合わせまして、生産量としては、現在沿岸漁場整備で大体七十万トンほどの増産が可能だと思いますし、そのほか、栽培漁業につきましては、現在の事業をさらに促進することによって相当の数量が上げられるものと考えている次第でございます。
  17. 馬場昇

    馬場(昇)委員 農林大臣は、一千万ヘクタールの開発をやる、そうすると一千万トンくらいの漁獲高ができる、日本の今日のすべての漁獲高に匹敵するのだ、こういう構想を発表されたのですが、いま聞きますと、それが四百四十万ヘクタールになるし、二百メートルが五十メートルになっているし、七十万トンしかふえない、非常に小さくなっておるわけでございますけれども、このことについては、ここでのことと違いますから、また別の機会に明らかにしていきたいと思います。  そこで、私が水産庁、農林省に聞いておきたいのは、いずれにしても、方針としては、農林大臣方針に従いますと一千万ヘクタール沿岸近海漁場開拓しようという願いがあるわけですから、さらにそれを計画にしなければならないと思うのですが、この水産の計画とこの日韓大陸棚協定にかかわりますところの共同開発区域の設定、そこで石油を掘る、こういう問題とのかかわりですけれども、この共同開発区域で石油を掘ることは日本近海沿岸漁業を盛んにするという水産政策の妨げにならないのかどうか、こういうことについては農林省はどういう検討をなさっておるかを聞いておきたい。
  18. 恩田幸雄

    恩田政府委員 今回の共同開発につきましては、私ども漁業の立場からのみ申し上げる限り、決して好ましいものであるとは考えておりません。ただ、漁業だけが海上で存在するものではございません。全体とのバランスをとりながら漁業の面に影響がほとんどないようなかっこうでの開発というものにつきましては、われわれはある程度犠牲を忍んでも受け入れざるを得ないのではなかろうかと考えておる次第でございます。  したがいまして、私どもといたしましては、地域的にあるいは時間的に漁業に対する被害を最小限にしていただくこと、それから海洋汚染の防止に対して十分な配慮がなされていること、もし不測の事態がございましたならば漁業者にとって十分な補償がなされること、このようなことを考え関係省庁とお打ち合わせをしている次第でございます。
  19. 馬場昇

    馬場(昇)委員 漁業にとって好ましくないということは当然ですけれども、いま後段で、調整をしなければならない、話し合いをしなければならない問題だというぐあいにおっしゃいました。  通産大臣にお聞きしたいのですけれども共同開発の問題と日本漁業政策の問題——外交の問題もあると思うのです。そういう意味で、いま調整という言葉が出て、もともと漁業については余り好ましくないのですけれどもいろいろな配慮があるとおっしゃったのですが、その配慮をなさったかどうかということにかかわって、農林大臣、通産大臣、外務大臣等で水産政策、外交政策開発政策、こういう問題で話し合いをなさったことがあるのか、それで、話し合いをなさった結果がどうなっているのかということについて、大臣にお聞きしておきたい。
  20. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のとおりに、当該ケースは、わが国のエネルギーの資源問題とともに、あるいは漁業あるいは外交上の重要な問題でございます。さような関係で、事務当局間におきましては細かい話の詰めもいたしてまいったのでございますが、私どもは閣議で始終一緒でございますので、特にこの問題だけで三者協議会を持つということの必要性もないわけでございます。さような関係で、もちろん話は相互にいたしておりますけれども、本件だけを取り上げましての三大臣閣僚会議というものはつくっておりません。
  21. 馬場昇

    馬場(昇)委員 通産大臣は大した問題じゃないのだというようなことをおっしゃいましたが、後でずっと質問をしていくのですけれども、私は物すごい大切な問題だと思うのです。閣僚会議をつくれとまでは私はさっき言わなかった。二百海里時代になったわけですから、日本水産政策、そしてまた外交の問題、この開発の問題、こういうことで事務当局は話をしたとおっしゃいますけれども、三大臣が寄って、閣僚会議と言わなくても、十分話し合い、調整をするということは必要じゃなかったのか。私は必要であると思うのです。  それからもう一つ、その次に言っておきたいのですが、ここだけじゃないと思うのですけれども、海洋でたとえば石油資源開発をする、そういう場合の漁業との調整というものについて、日本政府というものは厳とした基本方針というものを持っておくべきだと思うのです。たとえば漁業が非常に大切だというのに、心臓の強い——心臓の強いと言っては語弊があるが、言葉の大きい通産大臣がおって、これの開発が大切だと言って農林大臣を押し切るとか、そのときそのときの力関係、情勢によって結論が変わるのではなしに、漁業石油、こういう資源開発関係基本方針というものを政府できちっと決めておく、あるいはそれを国会で皆さんに相談して了承してもらう、こういうような基本方針を策定する必要があるのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  22. 田中龍夫

    田中国務大臣 私は、本件が非常に重大な案件であるということは特に申し上げたいと存じます。でありますからこそ、われわれは、総理を中心といたしました閣議におきまして、各省の主張というものを整合性を持ってまとめていかなければならないということから、先ほど来申し上げておりますように、閣議の閣僚間におきましての総理を中心としたお話し合いはいたしておりますけれども、いまの三閣僚の事務的なお話ということは、より高度の問題として閣議というものでまとめてまいる、この方がむしろ大事であり必要である、かように考えております。  なおまた、日本近海におきましても、新潟その他の沿岸におきます海底の問題がいままででもあるわけでございますから、その漁業関係水産庁とのお話し合い等につきましては、政府委員から申し上げたいと存じます。  なお、後段仰せられました問題は、これからの問題になりますので、その点もあわせて申し添えます。
  23. 馬場昇

    馬場(昇)委員 時間がありませんので、具体的に個々の例は余り必要としないのですけれども、いま大臣にお聞きしておきたいのは、基本的な問題です。事務は事務的で、閣議で総理大臣が主宰してやるのが高度であるということは私も知っておりますけれども、そうしたら何も経済閣僚懇談会とか労働問題閣僚懇談会とか、こういうものをつくる必要もないわけで、すべて閣議だけでやっていけばいいわけです。公害問題で水俣病対策閣僚懇談会などもつくっておられます。  私が言うのは、漁業開発というものの関係基本方針というものを国で持て、そのためにはそういう関係閣僚会議なんかをつくってそういう一つの体制をつくって、そこでいろいろ具体的に検討して、それを閣議にかけるなり国会にも報告するなりして、そういう開発漁業関係基本方針をつくるための体制といいますか、閣僚会議でなくてもいいかもしれませんが、体制をつくって基本方針をつくる考えはないか。これは今後の問題——いままでやっていないから、いままでのことは言いません。今後の問題としてそういうことはお考えになりませんか。
  24. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  本件に関します限りは、すでに前々からの経過もずっとございますと同時に、またこれはわが国の基本の国策として関係三省の間におきましても共通の意思をすでに持っておりますから、その後のすり合わせをするということは、事務当局同士の事務的なすり合わせは必要でございますけれども、閣僚間の問題といたしましては、事が重大であればあるほどに閣議の場において総理の統裁のもとにお話し合いをするということで十分であろう、むしろその必要が叫ばれるのでございます。
  25. 馬場昇

    馬場(昇)委員 この問題を離れて、先ほどから言っております日本水産政策、いま二百海里時代に入ってぐっと大転換をしようとしておるし、国民の食糧問題は大変な問題ですよ。もちろん石油の問題もあるでしょう。これも大変な問題です。ところが、それが同じ土俵の海というところで行われる。そこで、何らかの調整をしなければならぬ。だから、この関係基本方針というようなものを今後の問題としてつくる必要があるのじゃなかろうかということを大臣にいま言っているのですよ。そうすると、基本方針をつくるためには何かそういう体制をつくって、そこで原案なんかをつくる必要があるんじゃありませんか。そういうことをする気はありませんか。今後とも力の強いところはその都度その都度押し切ってしまうというような方向で、やはりその場その場の場当たり主義でいかれるのですかということを聞いておるのです。
  26. 田中龍夫

    田中国務大臣 その必要が出てまいりますれば、それは私は、決して三閣僚会議というものを否定するわけではございません。しかしながら、今日は、国策としての根本的な基本的な方針は、総理の統裁のもとに閣議でもってそれは決定せられておりますので、ただいま先生がおっしゃいました意味の三閣僚会談の必要は当面いまだない、かように考えております。
  27. 馬場昇

    馬場(昇)委員 これは私は納得できません。漁業水産政策とこういう開発政策というものを、基本的に調整をするような基本方針を国が持つべきなのは当然だと思うのです。その場主義の、その場当たりの、特に今回のような問題は、こういうものは日本の将来にわたって害があって益がないのです。こういうものをたとえば日韓癒着と言われる中で強行する。そういう基本方針がないからまかり通っていくというような状態になっているわけですよ。だから私は、いまの大臣の答弁は全然納得できませんけれども、これにこだわっておりますと時間がございませんので、納得できない、そういうことをやるべきだという主張をして、次に移りたいと思います。  次に、また水産庁から質問を始めて、大臣にも後で聞きますが、共同開発区域に近接する海区、私がここで言いますのは東シナ海区、日本海の西区、太平洋南区、私どもはこれを西日本と言っておりますけれども、いま言いましたこの西日本海区の漁獲量は現在どのくらいですか。
  28. 恩田幸雄

    恩田政府委員 東シナ海区、日本海西部海区、太平洋南部海区における漁獲の実績につきましては、昭和四十八年度で合計二百三十七万トン、昭和四十九年で二百五十六万トン、昭和五十年で二百四十二万トンという数字になっております。
  29. 馬場昇

    馬場(昇)委員 いま数字をお聞きしたわけですけれども、たくさんの魚がここでとれておるわけでございます。この共同開発区域の設定に当たりまして、それだけ漁獲量を上げておる西日本漁民にこれは関係するわけでございます。  私が西日本漁民と話し合いをいたしました中で、西日本漁民はこういうことを言っておるのです。ソ連の二百海里内の魚というのは、そこで私たちが、日本がとっておりますのは百七十万トン程度でございます。日本政府というものは、このソ連の二百海里内で日本がとっております百七十万トンの漁獲量を確保するために、前の国会のことですけれども政府は全力を挙げて領海法をつくったり、漁業水域二百海里法をつくったりしてがんばって、そして幾度となくソ連にも行って、あのような全国民挙げての交渉もやったわけです。百七十万トンをなるべく確保したいということでございました。  ところが、いま言われましたように、この西日本海域では二百五十万トン程度の魚がとれているわけでございます。これについて、まさに西日本漁民にさえほとんど相談なし、万一の場合には、ここで事故が起こりいろいろなことがあった場合には、魚が全滅する可能性がある、こういうことを含んでおるこの共同開発について、西日本漁民に対してほとんど相談がない。百七十万トンのソ連の二百海里の漁業ではあんなに全国を挙げてやる、二百万トン近いものが全滅に瀕するというような危険のあるこういう共同開発の問題について、西日本漁民にさえも一言の話もない、こういうことを言ってておるわけでございます。  そこで聞きたいのは、これは通産がやるのかあるいは水産庁、農林省がやるのか、両方一体となって全力を挙げるべき筋合いのものと思うのですけれども、この共同開発区域設定に当たって西日本漁民と話し合いをされましたか、西日本漁民は結構でございますと言って了解したかどうか、このことについて水産庁あるいは通産両方からお聞きしておきたいと思うのです。
  30. 恩田幸雄

    恩田政府委員 乙の共同開発区域に関連しておりますのは、東海、黄海を中心といたしました以西底びき網漁業、それから同じく東シナ海あるいは九州北岸をやっております遠洋まき網漁業、それからさらに釣り・はえなわ漁業、これは大体東シナ海に面した各地域でございますが、ここらの漁民関係しているわけでございます。私どもといたしましては、これらの漁民の総合団体でございます大日本水産会を通じまして関係漁業者の方々の御意見を伺っております。それからそのほかに、さらに特に関係の深い沿岸漁業協同組合、これにつきましては、関係の漁連その他といろいろお話をいたしまして、その御意見を伺っております。
  31. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 共同開発地域におきます石油開発漁業との調整と申しますか、漁民の利益の保護ということにつきましても、私たち非常に重大な関心を持っておるわけでございまして、先生すでに御承知のとおり、協定あるいは本法案の中にいろいろ漁業との調整の条項が盛られておるわけでございます。ただ、具体的に漁業関係者との話し合いは、私たち水産庁と話し合うことによりまして、水産庁を通じて関係漁業者との話し合いをしていただいておるというのが現状でございます。
  32. 馬場昇

    馬場(昇)委員 大日本水産会を通じて聞いた、関連漁連とも話し合いはしたという答弁があったわけでございますけれども、これは水産庁に申し上げますけれども、この共同開発区域というのは、たとえば一例を挙げますと、冬生まれのスルメイカなんかの産卵場になっていますよ、ここは。この共同開発区域の付近で産卵したスルメイカは、黒潮に乗って、黒潮支流の対馬海流に乗って日本海に入り込んできて、秋田県沖とかあるいは宗谷海峡を、さらには千島列島から三陸沿岸においてこのイカは漁獲されるわけです。また、アジとかサバもこの共同開発区域が産卵場になっております。またブリもそうだ、こういうぐあいに言われておるわけですよ。  そういたしますと、ここで産卵したところのこういうもろもろの魚が、西日本だけじゃなくてほとんど日本全域で漁獲される、こういうことにもなっておるわけでございますし、さらに、この地域というのは、先ほど言いましたように、南から北上してきたところの黒潮が、共同開発区域のところで、日本列島の太平洋岸を流れる黒潮本流と黄海に流れ込むところの黄海暖流、日本海に流れ込むところの対馬暖流、この三つの分岐点にちょうどここがなっているのですね。この共同開発区域が黒潮の分岐点になっているし、もろもろの産卵場になっている、こういうことから考えますと、まさに日本漁業の本当の首根っこに当たるという大切なところがこの共同開発区域のあるところなんです。  また、もしここで万一北海油田のような油の流出事故でも起こった日には、もうこの黒潮に乗って日本海域全域に油が流れ込んでしまう、こういうことにもなるわけでございまして、そうしたら日本漁業は全滅するし、日本漁業だけでなしに、あらゆる環境に与える影響、あるいは本当に陸地にこのことが与える影響も大変な問題だと思うわけです。そういう点から言いますと、本当に全国民の問題であるわけでございますが、特にその中の漁業という観点からとってみましたならば大変なことなんだ。  こういうときに、ここで開発をするといういま、大日本水産会だけに話をした、漁連に話をしたということですけれども、私は、物すごく、ほとんどの全住民というか、こういうものと話をしてやらなきゃならぬ問題だと思うのですが、先ほど聞いておりましたら話はしたということですが、じゃ、この話をした部分、そこは了解したのか、そして西日本関係のある漁民を、たとえば長崎なら長崎、福岡なら福岡に集めて、そこでこういうことを相談してやって、そういうところの人が了解をしたのかというような問題と、さらに言いますと、漁業権というものはないかもしれませんけれども、迷惑するのはあたりまえですから、この迷惑料というような問題とか、あるいはここで万一のことが起こった場合の漁業補償というようなこととか、こういう迷惑料の問題とか漁業補償というような問題とかそういうことも話し合われて、そういうことまでたとえば了解がとってあるのか、全然話し合いをしてないのか、こういう点についてお知らせをいただきたいと思う。
  33. 恩田幸雄

    恩田政府委員 先生御指摘のように、共同開発区域は、浮き魚、たとえばアジ、サバ、ブリのような魚にとりましては、主要な産卵場の一つでございます。そういう意味で、私どもとしても、この海域で開発が行われることにつきまして、関係漁民との間の話し合いでは十分意思が通じるように努力したつもりでございます。  大日本水産会を通じて私どもやりましたのは、これは日本全体の水産関係者の団体であるということ、当然各県漁連の総合でございます全漁連もその会員の一部に入っているということ等を勘案をいたしましていたした次第でございます。  なお、現地に参りまして、特に県漁連を中心に私どもがお話をしておりますが、これは長崎の例で申し上げますと、たとえば五島には約二十ぐらいの漁業協同組合があったと記憶しておりますが、それぞれの組合で一応この問題について話をされて、それを五島の漁業協同組合長会議にかけられ、さらにその結果が長崎県漁連に持ち上がる、具体的にはこういうような経緯をとりまして、一応話が下がりましてさらに上がってくる、こういう経過をとっておる次第でございます。  その際には、当然なことながら、もし不測の事態が生じました場合の漁業補償にかかわりますいろいろな問題、損害賠償にかかわります問題、これについても、その方法その他について、協定あるいは法案に盛ってある内容について御説明を申し上げておる次第でございます。
  34. 馬場昇

    馬場(昇)委員 水産庁次長ですから、あなたはよく知っておられると思うのですけれども、果たして大日本水産会というものに話をしてすべての人たちに話をしたということになるのか。形式的には皆そこへ参加していますから言えると思いますけれども、実態はそうじゃないのです。全漁連と大日本水産会の関係さえ、あなたは御存じのはずだと思うのですよ。全漁連にもしたとおっしゃいますけれども、また全漁連と各単県の漁連、今度は各漁連と単協の関係なんかは、あなたは一番詳しいはずなんです。こういうことをするときには一番下の人たちの意見をよく聞かなければならぬということは、あなたは御存じのはずだと思うのです。  いま最終的には迷惑料の話とか——迷惑料は言われなかったけれども漁業補償の話をしたとおっしゃいますけれども、じゃ、結論だけ聞いておきましょう。本当に漁民がこのことに納得をしたのか。納得をした、あるいは了解したと考えておるのかおらぬのか。あと問題は起こるかもしれませんけれども、いまの水産庁理解の程度を最後に聞いておきたいと思うのです。  そこで、通産大臣にお聞きしたいのですけれども、たとえば共同開発なんかという場合、いまたとえば災害が起きたとかなんとかというような場合とか、あるいは災害が起こらなくてもやはり迷惑をすると思うんですよ、そこに漁民漁場として行くわけですから。そういうときに、言葉はよくないかもしれませんけれども、迷惑料といいますか、そういうことを含めながら、やはり共同開発なんか特殊な場合における合理的な漁業補償の基準というようなものについて、農林省と通産省なんかで、また基準を言いますけれども漁業補償の基準なんかというものを話し合われたことはあるんですか。あったかなかったかということ、今後はやはり共同開発漁業補償という面についても何か話し合いをされて、基準とかなんとかいうのをつくられる必要があるんじゃないか、こういうぐあいに思うんですけれども、これはどうですか。
  35. 田中龍夫

    田中国務大臣 非常に大事な点でございます。なお詳細話し合ってもおりまするし、詳しいことは長官の方からお答えいたします。
  36. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 まず一般的に申し上げまして、漁業の補償につきましては、その作業期間の長短あるいはその地域における魚の種類なり漁獲高といったようなことで、当事者間で話し合うというのが原則ではなかろうかと思います。今回の共同開発地域につきましても、重要な魚礁がどの程度あるか、あるいは漁獲高なり作業期間を考慮して、ケース・バイ・ケースに当事者で話し合うのが大事ではなかろうかと思います。  ただ、現実の問題といたしまして、そういった両当事者の話し合いが円滑に進み得るように、私たちも農林省と申しますか水産庁とよく連携をとりながら、漁民の利益の保護に遺憾のないように努めたいと考えております。
  37. 恩田幸雄

    恩田政府委員 先ほど、いろいろ漁民と話し合いを行いました際の漁民側の要望についてお話を落としましたので、お話しさせていただきます。  大日本水産会からは、水産業界の総意といたしまして三つ出ております。  一つが、「鉱業権の設定、海底鉱物資源開発計画実施に当っては、あらかじめ関係大臣と協議するよう措置すること」  二番目、「開発事業実施に伴って生ずるおそれのある公害が発生しないよう措置することはもちろん、万一発生した場合の損害賠償措置を確立すること」  三番、「漁場のそう失、漁業活動の制約による損害について十分な補償措置を講ずること」  以上の三点の要望がございまして、私どもはこれを踏んまえて関係省庁とお話し合いをしてまいりましたわけでございます。(馬場(昇)委員「後、漁民は了解したのかということ」と呼ぶ)これは、こういう条件が満たされれば了解だというふうに私ども考えております。
  38. 馬場昇

    馬場(昇)委員 その条件は、いま満たされていますか。
  39. 恩田幸雄

    恩田政府委員 実際の補償措置その他につきましては、現実に問題が発生しませんと、これが果たして十分なものであるかどうかということはわかりません。ただ、やはりその仕組みにつきましては、通産省の方にお願いいたしまして、私どもの方としては、その仕組みとしては満たされているというふうに考えております。
  40. 馬場昇

    馬場(昇)委員 私は、いまの話を聞いていまして全然満たされていない。事実、漁民は了解したとは言っていないですよ、現地に行って聞きますと。そのことは、ぜひ知っておいていただきたいと思うんです。これはいざというときになったらどういうことが起こるかわかりませんよ。漁民は物すごい心配をして、その心配が払拭されておりませんので、私が話し合った限り了解をしていないという事実があることを申し上げておきたいと思うんです。  それから、通産省に申し上げておきますけれども、やはり水産庁なんかとよく話し合われて、こういうときの迷惑料とか補償基準とかということについて、もう少し熱心に、しかも漁民の立場に立ってよく打ち合わされて、そういう結果を漁民にきちんと知らせていただいて話し合いをする、そういうことが必要じゃないかと思うのです。基準基準と言いますけれども、やはり漁業補償の基準なんかについても、出てみなければわからぬというようなことでは、これはもう全然話にならぬわけでございますので、事前に十分了解するように努力してもらいたいと思うのです。  海上保安庁に、さっきちょっと言いましたことを念のためにここで聞いておきますけれども、もしこの共同開発区域で北海みたいな油の流出事故が起きたというときに、その日本近海の汚染の広がりというものがどういうぐあいに想像されるのかということについて、検討されておるかどうかを聞いておきたいと思います。
  41. 堀定清

    ○堀説明員 東シナ海には、南西諸島に沿いまして北上してまいります黒潮がございます。この黒潮は、奄美大島の西側の共同開発区域の最南部に当たる海域付近におきまして二つの分枝に分かれます。本流の方は屋久島の南側を通りまして太平洋側に出ます。一方、他の分枝の方は、必ずしも一定したものではありませんけれども、一般的には次のとおりでございます。この分枝は、共同開発区域を北上しまして、済州島の南の海域、すなわち共同開発区域の北端部付近で北東に向きを変えて、対馬海峡を経て日本海に入ります。この間、共同開発区域内での流向は一般にはほぼ北向きで、流速は〇・五ないし一ノットでございます。  この海域で油の流出があった場合は、おおむねこの海流に乗って流れるものと考えられますが、ただし油は風の影響を非常に強く受けますので、一概に言うことは困難でございます。
  42. 馬場昇

    馬場(昇)委員 まあ風の影響を受けるから一概に言うことは困難というようなことを言われたわけですけれども日本を取り巻く海というのは、この流出事故がありますとほとんど全部汚染されてしまう、そう言っても言い過ぎではないという方向に行くのではないかと思うのです。これはこの海流に乗って流れるとおっしゃるが、海流の流れを見ますとちゃんとわかるわけですから、日本を取り囲むようにして流れていくわけですから、そしてまた、日本だけではなしに、中国とかあるいは朝鮮とか、そういうところももちろん汚染されてしまうわけでございまして、まさに日本列島が油づけになってしまうのは当然だと思うのです。そういう心配がございます。  そこで、まだほかに質問事項がたくさんあるのに時間がありませんけれども、私はいま水産問題からずっと議論をしたのですが、大臣、海洋汚染の、油の事故が起こった場合の重大さということから考えてみましても、日本のたとえば食糧事情にとってみても、日本漁民の生活にとってみても、これは物すごく大変な問題で、片一方のメリットということから考えた場合に、いろいろここで議論されておると思うのですが、油がどれだけ出るのか出ないのかという問題がありますし、そのほかもあります。そしてまた日韓癒着というような問題もいろいろあって、私はきょうは水産関係の問題で、それに余り触れませんけれども、どう考えてみたって、何というか、これはメリットはない。  そしてまた、世の中がこのように高度経済成長政策から安定成長に入ろうとしておるという時代に、何か高度経済成長政策の工業優先、農漁業を軽視するという政策を続けてきたわけですから、この協定が結ばれたときもそういう状態だったわけですから、やはり高度経済成長政策の工業優先、農業漁業を軽視するというその路線の上にこの開発協定は乗っているのだ、そうしか考えられないのです。私は、こういうことをやるべきじゃない、これは日本の将来にとって非常に重要なことだ、こういうぐあいに思うのです。だから、水かけ論になりますけれども、やはりこれは時期から考えてみても高度経済成長政策の路線に乗った一つの事業じゃありませんか。このことだけ、大臣、どう考えられますか。
  43. 田中龍夫

    田中国務大臣 いろいろと御意見を承りましたが、私は、本件が高度経済成長政策路線にひた走りに走り、国民生活あるいは食糧問題、漁業問題を軽視しておる、こういうふうには決して思っておりません。  漁業関係から申しましてもたん白資源の大宗をなします水産の重要性、あるいはまたエネルギーの重要性、さらにまたその他諸般の問題を考えましても、私ども考えておりますのは、国民経済、国民生活を最優先に考えました結果が本件と相なっておるのでございまして、先生といささか見解を異にいたしまするけれども、貴重な御意見といたしまして承っておきます。     〔山崎(拓)委員長代理退席、林(義)委員長代理着席
  44. 馬場昇

    馬場(昇)委員 提案者と議論したってしようがないのですが、私は、やはり大臣、歴史が証明してくれると思うのですけれども、では次に移ります。  次は、この共同開発区域の問題と中華人民共和国と朝鮮民主主義人民共和国との関係についてお尋ねしたいのですが、それもまず漁業の問題から入っていきたいと思うのですけれども、この共同開発区域の周辺で中国と北朝鮮がどのくらい漁獲をしておるのか、資料がございますか。あったら知らしていただきたいと思うのです。
  45. 恩田幸雄

    恩田政府委員 この共同開発区域及びその周辺という限定では、中国も北鮮も漁獲量の数字はございません。
  46. 馬場昇

    馬場(昇)委員 次長、中国とか北朝鮮が何で日本政府に漁獲量の通知をする必要がありますか。通知はありませんなんという答弁は、これは話にならない。それはあなたの揚げ足取りみたいだから言いませんけれども、問題は、ではこの海域でゼロですか。全然北朝鮮の方からも中国の方からもこの海域で漁獲行動は行われていないのですか、いるのですか。その辺に下がって質問します。
  47. 恩田幸雄

    恩田政府委員 この共同開発区域内では、一時期若干の中国船を視認したことがございます。ただ、北鮮の船についてはいまだこの区域では見たことがございません。
  48. 馬場昇

    馬場(昇)委員 きちんとした囲まれた区域の中と私は言っているのじゃないのですよ。この周辺も含めて言っているのですけれども、いずれにしても、いまの日本政府が把握しているところでは、この海域には全然ゼロではないけれども余り出漁しておらないとお聞きしたわけでございますが、当然この付近は、北朝鮮の漁民もあるいは中国の漁民も、ここに来てとりたいと思えば来てとれるわけでしょう。そのことが第一点。  第二点は、北朝鮮の漁船の日本の二百海里内の操業を日本政府は認めておるのですか。御存じのとおりに北朝鮮は二百海里の宣言をしておるわけです。そういうこともございますが、北朝鮮漁船の日本の二百海里内の操業を日本政府は認めておるのかどうか。その二つ。
  49. 恩田幸雄

    恩田政府委員 現在の開発区域につきましては、どこの漁業専管水域あるいは経済水域にも入っておりませんので、各国とも来れるものだと考えております。  なお、日本の二百海里内の北朝鮮の操業につきましては、日本海の中央部、正確に申し上げますと東経百三十五度以西の日本海及び東シナ海、黄海を含みます太平洋の西の方では、わが国は二百海里の漁業専管水域を引いておりませんので、ここではどこの船もできるということでございます。
  50. 馬場昇

    馬場(昇)委員 当然のことだと思うのです。この区域に中国や北朝鮮の方から魚をとろうと思って出てこられたって、当然それは行われ得ることであります。  そこで、そういたしますと、その地域は中国でも北朝鮮でも日本でも韓国でも来れるわけです。そこで、ここでいまから石油を掘るわけですから、そうしたら何かお互いに迷惑をしますよね。迷惑を受ける者同士が寄って話し合うということは当然だと思うのですけれども、特に中国と北朝鮮と、この共同開発区域の問題でお話し合いをなさったことがありますか。これは外務省の担当かもしれません。いかがでございますか。
  51. 中江要介

    中江政府委員 この大陸棚開発というもの自身は、漁業を排除してあの区域を排他的に大陸棚開発のために利用するというものではないわけでございますから、公海使用の各種の自由、つまり船舶の航行とか漁業とかいろいろなものはそのまま存続するわけでございまして、私どもがこの大陸棚協定につきまして日本韓国との間で協定を取り結びましたけれども、これに対して周辺各国がいろいろの意見を出しております。  これは大陸棚資源開発にかかわるそれぞれの国の主権との問題でございまして、漁業との調整という問題については話し合ったことはございませんし、そのことは世界のどこでございましても公海使用の自由というものが確保されておりますので、それとの関連で一々話し合う必要があるという立場をとってはいないわけでございます。
  52. 馬場昇

    馬場(昇)委員 当然私の質問は主権の問題を含めて聞いたわけです。だから、漁業の問題であれば水産庁に聞いておったのですが、あなたに聞いたのは主権の問題も含めて聞いたわけでございます。その主権の問題を含めていろいろ議論があっておるわけですね、北朝鮮の方でもあるいは中国の方でも。そういうすべての問題を含めてまだ意見が出ておるという状況もあるわけですが、何の話と言わなくても、そういうすべての問題を含めて北朝鮮や中国と話し合いをされたことがありますか。
  53. 中江要介

    中江政府委員 大体、この大陸棚開発のための主権というのは国際法上の権利でございますので、純粋に法律的にこの日本韓国開発しようとしております区域に国際法に基づきまして主権的権利を主張し得る国がもしありますれば、これは協議をいたさなければなりませんし、協議が整わなければ開発はできない、これは自明の理だと思います。  そこで、この地域開発について日本韓国が話し合いましたときには、再三申し上げておりますように、日本韓国両国の主権が重複する、あるいはその主権の範囲について争いがある、その部分についてのみ話をして韓国との間に円満に妥結しましたところが北部の境界線、つまり二本ございます協定のうちの北部の方は円満に中間線で境界を画定いたしましたが、南部につきましては主権の主張が重なったわけで、この折り合いがつかない。これをいつまでも紛争として争うかわりに、最終的な国際法上の権利は留保した上で共同開発にしようというのが南部協定であることは御承知のとおりです。  この両方含めましても、これは国際法的に見て日本韓国との間で話し合えば十分であるという地域にきわめて慎重に限定をしておるわけです。したがって、いかなる第三国も、この地域について日韓が合意したことに、いろいろ主権侵害であるとか、あるいは協議が整ってないじゃないかということを言う余地がないというのが日本政府の立場であり、また韓国政府もそうですか、現行国際法上これは間違いがないという確信があればこそ国会の御承認を求めた、こういうことでございます。  にもかかわらず、中国の方では、これは中国の主権を侵している、こういう御議論でございますので、それは国際法上そういうことにはならないというわが国の立場を十分御説明いたしましょうということで、過去二十回前後にわたりまして、外交チャンネルを通じて、中国に対してこの日韓大陸棚協定がなぜ現行国際法上中国の主権を侵すことになってないかということを御説明する機会を求めておるのでございます。これは日本基本的な立場からいたしますと、第三国の権利を害してないという自信に満ちた協定であるわけですけれども、日中間はこれから友好関係を増進していかなければならない大事な隣国であるということでございますので、日本政府は誠意を込めて中国側にこの説明を聞いてもらいたいということを二十回前後にわたってお話しておるのですけれども、中国の方でどういうわけですか耳を傾けていただけないで、もっぱらこれは中国の権利を侵すものだということをおっしゃっているだけなわけです。  私どもは、それをほうっておくわけでございませんで、そうではないんだということを何とかじっくりとお話をする機会を今後とも求めてまいりたい、これが日中間の問題でございます。  北朝鮮の方は全く中国とは様相が違いまして、いかように見ましても、この日韓大陸棚協定の対象水域に対しまして、北朝鮮の当局が国際法上主権的権利の行使を主張し得るという根拠はないわけでございますので、これは最初から話し合う必要がないということで臨んでおるわけでございます。
  54. 馬場昇

    馬場(昇)委員 魚の部分から入ったのですけれども、いよいよ主権の問題、外交の問題等につきまして全面的に質問を申し上げるわけですが、いま言われたとおりの事実があるわけです。中国は御存じのとおりでございますけれども、念のために申し上げますと、日本韓国が東海、東シナ海ですけれども大陸棚共同開発区域を設けたのは中国の主権を侵すものであり、同意できない、さっき言われたとおりですが、そういったことを言っております。いかなる国家もしくは個人といえども、中国政府の合意なしに東海の大陸棚開発活動をほしいままに進めることはできない、こういうことを中国が言っておるわけでございまして、これは局長も認められたとおりでございます。  そこで問題は、二十回近く中国に説明をしたいということを外交チャンネルを通じて言ったけれどもまだ話し合いが行われていない、こういうことを言われたわけでございますけれども、中国の態度というのは、この声明にもありますように非常に厳しいわけです。そしてどういう国でもどういう個人でも開発活動をほしいままに進めることはできない、こういうことをおっしゃっていることは、国際紛争の種になるということは当然予想されるわけでございます。今日二十回もこちらが求めているとあなたが言われたのに何も話がないというのは、そこにやはり非常に問題が大きいということが裏返しに言えるのではないか、そこにまたトラブルの起こるという危険性があるということも当然想像できるわけでございます。  そこで、具体的にお聞きしますけれども、外務大臣は、ここの委員会ではなかったかと思うのですけれども、わが党の野坂議員の質問に対して、日韓大陸棚の問題で、私自身か他のしかるべき人が訪中して、中国上層部に理解を求めて話し合う必要を痛感しているということを答弁されたというぐあいに私は聞いておる。これは十一月一日のわが党の野坂議員の質問に対する答弁であったというぐあいに理解しておるのですけれども、そこで、そのことはどうなっているのか。それでは外務大臣はいつ中国に行って上層部に話をして理解を求めるようにするのか、あるいは、私はここの場所に来ておりませんでしたし、また速記録を見ていないのですけれども、外務大臣の訪中の時期とかその段取り、その準備をいまどういうぐあいになさっているのかということについてお聞きしておきたい。
  55. 中江要介

    中江政府委員 先ほど私申し上げましたように、日本政府の立場ははっきりしておるわけでございまして、これは地球上いろいろの側面におきまして、国と国との主権の競合なりその管轄権の分配というものは方々で問題になるわけでございますが、それの決め手になるもの、国際法というものがあるわけでございますので、日本といたしましては、他のいかなる外国が何とおっしゃろうとも、日本が国際法上持っている権利というものは譲るわけにはまいらない、これをはっきりしておかなければならぬと思います。日本国のためにはっきり主張すべきは主張しなければならない、いかにその主張をしている第三国が繰り返しきつい言葉を使っていましょうとも、日本としては国際法上の権利を譲るわけにはまいらない、これははっきりしていると思います。  他方、そうかといって理屈ばかり言って友好関係を阻害するということは外交上賢明ではない。したがって、日本と中国との間でこれからせっかく友好関係を安定していこうというときに、この問題がそれの障害あるいは阻害要因になってはならないという政治的な考慮からいたしますと、外務大臣としてはこれを何かさらに高いレベルで誠意を持って話し合えば理解が得られるのではないかというお気持ちが強いということは、私どもも承っております。  この委員会で外務大臣がおっしゃいましたことも、その気持ちをそういう表現を使って申されただけでございまして、いまの段階では、御承知のように、日中間にはさらに大きな問題もございますし、大陸棚協定の説明のために大臣あるいはそれにかわる者が何月何日に行ってどうするという具体的なスケジュールは検討されておらない、こういうことでございます。
  56. 馬場昇

    馬場(昇)委員 この委員会で外務大臣が言われたのは、いま日中の平和条約問題があるということはだれでも知っているわけです。ところが、日韓大陸棚問題で私自身が、こういうことを言われておるわけですね。いまの話を聞いていますと、日中平和条約等の問題があるからやはりこれだけでは行けないという意味なのですか。そしてまた、外務大臣が行かなければだれかしかるべき人ということも言っておられるのですけれども、とにかく早急にこの日韓大陸棚問題についてだけで外務大臣は行けない、あるいはしかるべき高官も行けない、そういうぐあいにあなたの答弁を聞いていいのですか、それともいや行くんだというぐあいに聞いていいのですか。何か日中平和友好条約があるからこの問題だけでは行けないみたいに聞こえるのですが、その辺はどうですか。
  57. 中江要介

    中江政府委員 私が申し上げましたのは、目下のところ具体的スケジュールは考えられていないということでございます。
  58. 馬場昇

    馬場(昇)委員 そうしたら、野坂議員に対する答弁というのは何ですか。行きたいと痛感しておるというぐあいに言っておられるのですね。答弁のしっ放しで、何ら具体的動きはない。それは無責任じゃないですか。どうですか。
  59. 中江要介

    中江政府委員 これは大臣のお気持ちと、大臣の御答弁でございますけれども、私の推察しているところでは、大臣は引き続きその必要性は痛感しておられる、こう思います。  ただ、いまの段階で、具体的にいつ、だれをというところまではなかなか考えにくいという状況ではないか、こういうふうに推察する以外にはないわけでございます。
  60. 馬場昇

    馬場(昇)委員 考えておるけれども結論がまだいつだと出ていないということでしょう。後でちょっとあわせて答弁していただきたいと思うのです。  次に、北朝鮮に関する部分について聞いておきたいと思うのですけれども、やはり朝鮮民主主義人民共和国も次のように声明をしております。「わが人民は、民族の利益を侵害するいかなる行為も許さないだろう」、こう言って、「いわゆる大陸棚共同開発に関する協定を取り巻いて、朴かいらい政権の売国反民族的策動が一段と悪らつになっており、日本反動支配圏の対朝鮮侵略策動が露骨になっている」、これは朝鮮民主主義人民共和国の発言ですが、そのような発言をしてこの大陸棚協定を北朝鮮が非難しておるという事実はお認めになると思うのです。  まず、この事実をお認めになるかどうかということと、北朝鮮とは何ら外交はまだないわけですけれども、この非難にこたえるという意味の対応というのはしていない、また、とる必要もない、こういう答弁先ほど聞いたようでございます。そういたしますと、北朝鮮のこの非難に対しては、日本政府は、はなはだ失礼だけれども、馬耳東風に聞き流しておくんだ、そういうような態度なんですか。
  61. 中江要介

    中江政府委員 北朝鮮がいま先生がおっしゃいましたような意見を出しておりますことは、私どもは朝鮮通信という通信機関を通じまして承知はいたしております。  その中身でございますけれども、これは、基本的には非常に不幸なことでございますけれども、朝鮮半島が二分されているというところから生じていると言わざるを得ないと思うのです。この日韓大陸棚協定が対象としております大陸棚部分を実効的に支配している領域から延長した大陸棚として主張し得るのは、これは国際法的に見まして、また国際社会の通念から見まして、いかように考えましても、これは大韓民国であるということは明らかだと思います。その大韓民国が主張していることが、これが朝鮮民族全般から見て好ましくない、けしからぬという御議論でありますれば、これは北と南との関係でございまして、これは朝鮮民族の中で話し合いによって解決される、そういう時期を関係国は待っておるわけですが、いまのように現実の支配が南北で分かれておりますときに、この大陸棚協定をもし締結いたしますとすれば、その選ぶべき相手は大韓民国であるということははっきりしている、こういうことでございます。  この大陸棚協定に先立ちましても、御承知のように、一九六五年に国交正常化をいたしまして、日本韓国との間で漁業協定が結ばれておりますが、この漁業協定も、朝鮮半島の沿岸漁業につきましては三十八度から南のところについて日韓間で漁業操業を調整するための協定が結ばれて、これが有効に動いているという事実もございまして、これは、現実に支配している当局との間で諸般の問題を逐一必要に応じて解決していくということは、国際社会において広く認められているところでありますので、現実に支配していない当局が何と言われましても、そのことは国際法的には意味がない、こう言わざるを得ません。  また他方、日本と北朝鮮当局との間には外交関係もないわけでございますので、したがいまして、通信社を通じて知りました意見について何かを言うということは全く考えていない、こういうことでございます。
  62. 馬場昇

    馬場(昇)委員 余り議論はしたくないのですけれども、いまの答弁を聞いておりますと、まさに韓国寄りの立場で、血も涙もないような答弁で、私は非常に遺憾です。  具体的に聞きますが、北朝鮮が八月一日に経済水域二百海里を実施しましたね。この北朝鮮の二百海里水域で、たとえば五十年度を例にとってみますと、九州の漁民は大体年間に千五百隻ぐらい出漁いたしまして、イカとかフグとかヒラメなど六万数千トンの漁獲高を上げておるのです。いまの外務省のアジア局長みたいな血も涙もない話をいたしますと、全然血も涙もない北朝鮮の計らいであれば、この二百海里の中へはもう日本漁船は行けませんね。ところが、北朝鮮の金日成主席は、日朝議連が行かれました際、民間漁業の合意書で、日本の中小漁民にはできるだけ被害を与えない、こういう立場で、そして入漁料も要らない、来てよろしいというような配慮をしてくれておるわけです。血も涙もなかったらこういうことはしませんね。  そういうことで質問をしたいのですけれども、日朝議連の方々が民間漁業交渉をなさった。まあ経過は御承知のとおりでございますけれども日韓大陸棚共同開発について非難をされている、日本の外交姿勢というものにいろいろ疑問を持たれながら非難をしておられるという実情から、民間漁業の合意書作成なんか非常に困難をしましたね。この民間漁業交渉に、日本政府大陸棚協定共同開発でとっておる態度というのは支障がなかったと思っておられますか、支障があったとあなた方は思っておられますか、どうですか。
  63. 中江要介

    中江政府委員 私は、北朝鮮に対して血も涙もないわけではございませんで、北朝鮮の当局が実効支配しております部分につきましては血も涙も持たなければならぬ、またその立場で臨んでおるわけでございまして、御記憶のように、日本の漁船松生丸が不幸な事故に遭いましたときも、これは北朝鮮の実効支配しております地域沖合いでの事故であるということで、何とか北朝鮮の当局と話し合いをしたいということで努力をいたしましたけれども、先方が耳を傾けていただけなかったということでございまして、今回の二百海里にいたしましても、北朝鮮側の発表のとおりだといたしますと、三十八度よりも北の、国際法的にも北朝鮮の当局が法的に主張し得る水域について新しい制度を設けたということでございますので、それなりの意味を私どもも十分認めております。  したがって、何とかその実態の詳細を知りたいということで、ニューヨークの国連代表部の先方のオブザーバーを通じましていろいろ詳細を知ろうといたしましたけれども、なかなか情報がいただけなかった。そこで、日朝友好促進議員連盟の先生方が行かれまして、ある程度のお話をして文書も出されました。その文書の中には、私どもとしては全く誤解に基づくもの、あるいは私どもの承服できない部分もございますし、また漁業に関しましても、軍事警戒ラインというような国際法上認められないものが前提になっておりましたり、また西側の海岸では全く入漁ができなくて、日本海側だけに限られているというような制約がいろいろございます。  しかし、そのことは、先ほども冒頭に申し上げましたように、不幸にも二分されておる朝鮮半島の現状のもとでなかなか不便が多い。その中でも、日本政府としましては、そういう政府以外の機関の御努力もありまして、だんだんと誤解も解け、相互理解が深まって、北朝鮮の当局が実効支配しておられる、またそれに基づいていろいろ主張をし、意見を持たれる部分につきましては十分尊重していきたい、こういう態度で臨んでおるわけでございまして、大陸棚となりますと、これは南の話でございますので、その部分については、遺憾ながらいかなる主張も国際法的に根拠があるというふうには私どもは思えない、こういうことを申し上げたわけでございます。
  64. 馬場昇

    馬場(昇)委員 アジアの平和とか友好的な外交を進めなければならないわけでございますし、中国に対しては、やはり外務大臣が行って、あるいはしかるべき人も行って、この大陸棚協定について説明もしたい、理解も求めたいという姿勢をとっておられる。北朝鮮についても、あなたは血も涙もないように北と南の問題だと言うけれども——それはあなたが言われたように国内問題もあると思うのですよ。これは私の想像ですけれども、たとえば北朝鮮の方が、やはりこういう問題は南北統一して、統一したりっぱな朝鮮と日本は交渉する、そのときでもいいんじゃなかろうかとか、いまこういう分裂状況のときに何で南とだけ早くするのかとか、いろいろなこともあると思うのですよ。そういうことも含めながらも、いずれにしても非難されておるという事実はあるわけですから、これはたとえばあなたの立場からいっても、非難には当たりませんよとかなんとかという説明はしてしかるべきだと思うのです。私どもは、非難される根拠もあると思いますけれども、やはり非難しておる事実はあるのだから、何らかの形で説明をし、理解を求めるということは当然とるべきことだろう、こういうぐあいに思います。  それからいま一つは、北朝鮮に対する日本の外交という問題につきましても、二百海里で、日本漁民が行って魚をとり、生活をしたい、それをまた向こう側が受け入れるというような状況も、民間協定ではあってもあるわけですから、そういうときにはもう少し日本政府が保障でもしてくれる、理解を示してくれるというなら、あの民間協定漁民の願いによってまた前進する可能性があったかもしれない。そういうところで政府保障というようなものも何ら前向きに取り組もうとしない、こういう態度も私はおかしいと思うし、朝鮮政策そのものが、もうアメリカも在韓地上軍を撤退する、そうして北と南との関係において朝鮮政策を変えようという動きさえもある。そういう中で、日本も近所におるわけですから、当然いままでの日本政府がとってきた朝鮮政策というものを、北朝鮮なんかとあらゆる機会を通じて話し合うという中から改善していくというような方法をとるべきだ、こういうぐあいに私は思います。  そういうことですから、誤解であれ何であれ、こういう非難があるのですから、まあ、どういう方法をとられるか、日朝議連の人に頼まれるか、また各政党の人に頼まれるか、交流のある人に頼むかは別として、やはり誤解があり、非難があれば、それに対して理解を求めるという行動はとるべきじゃないですか。どうですか。
  65. 中江要介

    中江政府委員 先ほども申し上げましたように、その問題をもし具体的に話し合うといたしますと、日本が北朝鮮と話し合う以前に南北鮮で話し合っていただきたい、こう私ども思うわけです。それで、その南は南で国際社会において主権国として認められておるわけで、国際法に基づいていろいろの権利主張をするわけでございますから、これはそれとして尊重しなければなりませんし、また北は北でそういう主張がある。たまたま朝鮮半島全域にわたるたとえば漁業とか海底資源とか、そういった問題がすべて朝鮮民族全体の利益であり資産であるというお立場をとられるのであれば、やはり朝鮮民族全体で話し合っていただいて、どうするかということをまず話し合っていただかないと、別々に日本に対してああだこうだと言われましても、日本としては、現状に立脚して問題を解決いたしますと、どうしても日韓大陸棚協定韓国と話をするし、北の漁業水域については北と話をする、こういうことにならざるを得ない、こういうことでございます。
  66. 馬場昇

    馬場(昇)委員 もう答弁を求めませんけれども、こういう国際情勢ですから、韓国一辺倒の日本の外交じゃなしに、朝鮮民主主義人民共和国もこういう非難をしている事実もありますから、理解を求めるというような行動はとっていただく。日本漁民なんかが二百海里の中に入って操業し、そこで生計を立てているという事実もあるわけですから、ひとつ十分考えていただきたいというぐあいに思います。  そこで次は、海洋汚染の問題についてですけれども、もう時間が非常に過ぎましたので、これはもう省略をしたいと思いますが、ただ一つ通産大臣にお聞きしておきますが、流出事故が起きた場合、もちろん被害の補償はするわけですけれども、私は先ほど海上保安庁からも聞きましたけれども、物すごい被害ということも想像できるわけでございまして、そこで、いかなる被害が起きても賠償する能力はあるのか、被害者が泣き寝入りさせられるというようなことは絶対ないんだ、こういうことは言明できますか。
  67. 田中龍夫

    田中国務大臣 その問題を一番心配をいたしておりまして、現地におきまして稼働いたしまする者の資格として一番重大な要件と心得ております。  なお、詳細はエネルギー庁長官からお答えいたします。
  68. 左近友三郎

    ○左近政府委員 いま大臣が答弁申しましたとおり、鉱業権者を許可する際には、賠償のための十分な資力を持っているかどうかという観点も含めまして、事業を的確に遂行する経理的基礎があるかどうかということが許可の条件になっておりますので、この許可を得た者は十分な賠償力があるということでございます。  なお、現在海洋で石油開発実施する場合には、これは世界的な傾向でございますが、民間の油濁賠償責任保険というような保険がございまして、そういうものに入るというのが慣例になっております。操業の際には鉱業権者は当然そういうものに加入すると思いますので、そういう点からいっても大丈夫であろうというようにわれわれは考えております。
  69. 馬場昇

    馬場(昇)委員 次に、外務省にお尋ねしますけれども漁業水域じゃなしに、二百海里経済水域設定の方向に国連海洋法会議が進んでおるんじゃないかと私は思うのですが、この海洋法会議の経済水域設定の模様はいまどうなっていますか。
  70. 久米邦貞

    ○久米説明員 ただいま行われております国連海洋法会議におきまして、経済水域二百海里の制度を認める方向審議が行われておりますことは御指摘のとおりでございます。海洋法会議の趨勢といたしましては、沿岸国が二百海里の経済水域を設定し得ること、及びその二百海里の水域内で資源について管轄権を持ち得る、主権的権利を持つということについては、ほぼ異論はなくなってきておるわけでございますけれども、経済水域を公海とみなすのかどうか、そういった経済水域の法的性格の問題、あるいは資源のほかに汚染の問題、科学調査、人工施設等、具体的にどういう権利を沿岸国が持ち得るのか、その権利の具体的な内容と態様、そういったものにつきましては、なお議論が行われているのが現状でございます。
  71. 馬場昇

    馬場(昇)委員 大臣、いまお聞きのとおりに、国連の海洋法会議というのは二百海里経済水域の方向で話し合いが進んでいっておるということは、もう答弁もあったとおり、御承知のとおりであるわけです。そういう中で、たとえば現在でも北海における海底資源の分轄の協定で、英国とかノルウェーとかドイツ、オランダは経済水域の思想で中間線をとっておりますね。だから、経済水域が国際的に認められるということになってきますと、いまの共同開発区域というのは全部日本の二百海里の経済水域の中に入ってしまう、そういうのがもう方向として見えているというときに、何でこの五十年もの協定をし、それを発効させるために今度は国内法を急がれるのですか。どうですか。
  72. 田中龍夫

    田中国務大臣 この問題は外交上の重大問題でありまするし、わが国にとりましても深刻な利害関係を持っておるわけであります。経済水域の問題といい、あるいは大陸棚の問題といい、中間線の問題といい、これら諸般の問題を総合的に判断をいたしまして、日本国といたしましては外務省が今日とっておりまする方針に決定いたしておる、かように考えております。
  73. 馬場昇

    馬場(昇)委員 何を言われているのか、私にはさっぱりわからない。  では、具体的に聞きますと、この協定というのは、まだ漁業水域とか経済水域二百海里というのがそこまで手の届くところまで来ておるという時代ではなかったわけですね、この協定ができたのは。ところが、大臣、いま外務省は、二百海里経済水域が海洋法会議で決定の方向に行っていると言われた。そうすると、資源の主権というのもそこに出てくる、そういうような方向で行っておられるわけでしょう。そういうときに、それが近いところに来ておるわけですから、この共同開発区域というのは日本の二百海里の経済水域の中に入ってしまう。そうすると、何も共同開発なんかする必要もないし、やろうと思えば日本だけでできるわけでしょう。それが国益というものじゃないですか。それを何でそれがそこまで来ていない前につくった協定を発効させるためにこういう国内法を急いでおられるのか。どうですか、大臣。
  74. 田中龍夫

    田中国務大臣 本件につきましては、皆様方にお願いを申し上げております本案が最良なりという最終的な政府の判断のもとにかように考えておるのでありまして、なお詳細につきましては、これは通産省ではなく、外務省から御答弁をいただきたいと存じます。
  75. 馬場昇

    馬場(昇)委員 私は、通産大臣に聞いているのですよ。国務大臣たる通産大臣に聞いているのですよ。  最良なりというのは、なぜ最良ですか。たとえば、一年先か二年先か知りませんよ、そのときに経済水域ができて、そうしたら全部これは日本の経済水域の中に入ってしまう。資源日本のものだとなる。そういう目の前にある。それで国益でしょう。それなのに、五十年間も共同開発をするというのをどうしていまつくらなければならぬのか。そういう国益について国務大臣たる通産大臣がどう考えるかということを私は聞いているんですよ。何で最良の方法ですか、それを通産大臣に聞いている。
  76. 田中龍夫

    田中国務大臣 御提案申し上げておりまする本件が最良であると考えて、政府方針として決定いたしたのでありまして、なお詳細をひとつ外務省から御答弁をいただきます。
  77. 馬場昇

    馬場(昇)委員 詳細のことを聞いているのではないんですよ。国務大臣たる田中さんに、何で最良ですかということを聞いているんですよ。たとえばあと何年かたったら全部日本の主権だ、日本で単独で石油も掘れる、そういうものを何で五十年先も両方でやるようなことをするのか、それが最良ですかと聞いているのですよ。
  78. 田中龍夫

    田中国務大臣 外務省からお答えいたします。
  79. 林義郎

    ○林(義)委員長代理 中江局長。(馬場(昇)委員外務省じゃないですよ。ぼくは国務大臣たる田中さんに聞いているんですよ」と呼ぶ)委員長からの指名に基づいて発言をしてください。——ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  80. 林義郎

    ○林(義)委員長代理 速記を起こしてください。  田中大臣。
  81. 田中龍夫

    田中国務大臣 経済水域の問題と大陸棚の問題とは別個の問題でございます。また、大陸棚の問題と中間線の問題と両方を判断いたしまして、私どもは御提案申し上げましたこの案が最良である、かように国務大臣としても存じております。
  82. 馬場昇

    馬場(昇)委員 大臣は経済水域と大陸棚の問題は別である。これは別じゃないじゃないですか。大陸棚の概念、そういうものと経済水域は絡んで国連海洋法会議でいま議論されているじゃないですか。別じゃないのですよ。共同開発、別じゃないのです。同じところを開発するわけですからね、大臣。たとえば経済水域が国際的にも海洋法会議で決まって認められる、そうしたらここは日本の経済水域になるじゃないですか。そうしたら日本単独で掘ろうと思えば掘れるし、掘らなければ掘らなくてもいいのですけれども日本の主権になりますよ。それをここで何で、主権を売ると言えば言葉が悪いですけれども共同開発しなければならないのですか。そっちの方がマイナスじゃありませんかと言うのに、あなたはそっちの方がいいんだとおっしゃるものだから、理由は何だということを聞いているわけですよ。あなたが言っているのは別じゃない、一緒ですよ。別だと押し通されるならばそれでいいですよ。
  83. 田中龍夫

    田中国務大臣 私は、かく信じます。御意見は承っておきます。
  84. 馬場昇

    馬場(昇)委員 委員長、これはどういう取り扱いをしていただくかわかりませんけれども答弁には不服というよりも理解できないというのが私の考えでございますが、これをまたいずれの機会にでも理解するように答弁していただくかどうかというのは、委員長に一応宿題としてお願いして、先に進めたいと思います。  それで、では田中さん、たとえばエネルギー問題として考えた場合、あすこは、出るか出ないかということも、まだ、出るという共通認識とか、必ず出るとか、出ないという人もおりますし、いろいろこうあるわけでございますし、また、エカフェの調査でも、最も有望なのは台湾北東から尖閣列島さらに北上して黄海に至る、この共同開発区域よりも四南方の海底で、そこは推定二十億トンだ、こういう結論を何か出しておられるわけでございます。そこの開発というのもいずれ問題になってくると思うのですけれども、そこの開発について日本はどう考えておるのか、こういうのが一つの質問ですけれども、そうなったら、ここでは多分中国なんかと話し合いをしなければならないというようなことになるのじゃないかと思うのですけれども、そういう場合に、日韓大陸棚協定というのはマイナスにならないのかどうか、こういう点について、一言お答えいただきたいと思います。
  85. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 いまの尖閣列島の問題についてお答えする前に、先ほどの大臣答弁を補足させていただきたいと思います。  大臣の申し上げたかったのは、海洋法会議におきましては、いわゆる経済水域の問題と大陸棚の境界の問題については当初から別個の問題として議論されてきた、どちらが優先するかしないかといったような関係にないということでございまして、もう少し具体的に申し上げますと、経済水域が設定された暁におきましても、大陸棚の帰属あるいは境界等については、結局は両国間で話し合わなくちゃいけない問題である、さような意味合いで先ほど大臣がお答えしたわけでございます。  それから、ただいまの尖閣列島周辺の問題でございますが、御指摘の四十三年におけるエカフェの調査、あるいは四十四年から四十六年にかけまして東海大学が実施いたしました調査等によりまして、この地域には第三紀の厚い堆積層があり、石油賦存の可能性が高い地域というふうに指摘されております。こういった地域開発につきましては、ただいま馬場委員から御指摘ございましたように、中国その他との関係、いわゆる諸般の条件が整った以降において、われわれとしてはその開発について前向きに検討いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  86. 馬場昇

    馬場(昇)委員 通産大臣の気持ちを言われていましたけれども、通産大臣の答弁とあなたの気持ち、私は了解できないのです。通産大臣に、先ほどのお答えは保留しておきたいと思うのです。  時間が来ましたので、最後に一つだけ意見を申し上げて終わりたいと思うのですが、これはもう通産省としては、大臣は余り言われなかったけれども、エネルギーを開発したいということが提案理由の中にあるわけでございますけれども、私は、最低譲ってエネルギーを開発するということにしても、まず経済水域というものもあるわけですから、やはり日本の権利で、そしてまた自分で試掘をしてみて、埋蔵量も測定してみて、またこの間安全な開発方法というものを、まだ完全にわれわれ信頼できないわけですから、そういうものを研究しながら、日本石油がないから掘りたいのだという気持ちがあるのだったら、ここに入っておる石油は逃げるわけじゃないわけですから、そこに自然に備蓄しておるのだというような考え方でもって、この問題には長期に国益でもって対処していくべきであると思うのです。  私は、やはり海洋国家として、わが国百年の大計を決めることでもありますし、さらにはアジアの善隣友好ということもこの問題にかかわっておる問題でございます。そして、五十年もの協定ですから、二十一世紀のわれわれの子々孫々にまで影響を与える問題なんでございます。そういうことでございますが、この法律というのは、この質問の最初に申し上げましたが、この法律が通らなくても協定批准するなんというような発言まで飛び出すというような、そういうしろものでは絶対にない。こういう問題でございますので、私は、これはこの国会でこの国内法を上げるということではなしに、いま言ったような立場で慎重に検討すべきであるということを最後に申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  87. 林義郎

    ○林(義)委員長代理 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十分休憩      ————◇—————     午後二時十四分開議
  88. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。土井たか子君。
  89. 土井たか子

    ○土井委員 この節、当特別措置法案質問をいたしますに際しまして、特に外務大臣にまずお尋ねを申し上げたいことがございます。  きょうも実は新聞に一部載っておりましたが、外務大臣のお気持ちの中には、余り韓国側から強く責められますと、ただいま審議中のこの特別措置法案成立しなくとも日韓大陸棚協定に対して批准をしてしまおうというふうなお考えがあるのではないかという、こういう一部情報が流れておりますが、まさかそんなことはないと私は思います。外務大臣、いかがでいらっしゃいますか。
  90. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 けさの毎日新聞記事でございますけれども、あそこで「外務省首脳」というふうに書いてありますが、私は実は昨日懇談をいたしておりますので、そしてその席でもこの国内法の問題が議題として出ましたので、そのときの懇談の中からあのような記事を書いたのであろうと思います。しかし、私は、ただいま仰せのありましたような、国内法が万一不成立の場合にどうするというようなことは、これは一切申しておりません。それははっきり申し述べさせていただきたいのであります。  先般、金韓国大使が見えまして、国内法のこの国会での成立を強く要望をされました経過はございます。そのときの話から発展をいたしたわけでございます。政府といたしましては、国内法成立していただきまして、その上で円滑な開発をいたしたいというのが政府の変わらざる考え方でございます。したがいまして、いまお尋ねのようなことは毛頭考えていないわけでございます。  万一のことはどうかという場合の質問がよくあるのでございますけれども、これはもう政府としては全力を挙げてこの法案の御承認をいただくことに最善の努力をいたしておる、こういうことを申し上げているわけでございます。韓国側の要望で、もしというようなことがあった場合にこれは韓国政府といたしましては韓国の国内でいろいろまた突き上げ等がある、それに対しまして、日本政府がこの臨時国会におきまして努力をしているということで答えている段階と聞いております。したがいまして、この国会で御承認がいただけないという事態になりますと、韓国政府も非常に困った立場になり、また日本政府もきわめて困難な立場になる、こういうことを申したわけでございます。
  91. 土井たか子

    ○土井委員 日韓両国のお互いの政府が大変困った立場になるという状況の御説明をただいま御答弁の中では賜ったわけでございますが、いかに立場が困りましょうとも、やはり国会の意思を無視してこの協定批准するということはあってはならないことだと私は思うわけでございまして、これはあくまで特別措置法が成立しなければ批准はできないということを再度確認させていただいてようございますね、はっきりと。いかがでございます。
  92. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいま政府といたしましては、この国内法をぜひ御承認を賜りたいとお願いを申し上げているわけでございます。そして政府の立場といたしまして、協定が自然成立とはいえ国会の御承認を賜ったわけでございますので、その協定自体の問題といたしまして、批准という、政府の行政府限りで抑えておるということがいつまで抑えていられるかということにつきましては大変苦しい立場に立つ、こういうことを申し上げておるわけでございまして、しからば、それでは国内法がなければ国内法がなくても批准してしまうか、こうおっしゃいますと、そのようなことは現在毛頭考えておらないということを申し述べさせていただきたいのであります。
  93. 土井たか子

    ○土井委員 それは相手国のあることでございますから、外交の場面で種々いろんな御苦労があることは私たちもよく承知している上で申し上げたいと思いますが、その特別措置法というのが成立しない限りは批准はできない、これはどこまでいってもはっきり決まっている問題だと私は思うのです。  ただ、もうすでに自然承認というまことに不自然な形であの協定自身が国会成立しているということで、いつまでこの批准に対して日を延ばしていくことができるかというところが大変これからの苦労のしどころだとおっしゃるわけでありますが、これはそもそも協定自身がまことに不自然なありさまで国会で強行採決のようなことがされるから、実は今日のこのようなかっこうになるわけでありまして、やはりその辺は順を追って問題にしていけば、まず国内でこういう協定を十分に行えるような体制をつくることが出発としたらまず先だった。先の問題をいま後でやっているわけでありますから、したがって、そういう無理に無理が重なっていっているということは言うまでもない話でありまして、そこでの大変な御苦労があることは私たちは承知の上で申し上げますが、これはやはりはっきり外務大臣とされては、いま御答弁のとおりで、特別措置法が成立しなければ批准はできないという線を崩さないようにお願い申し上げたいと思うのです。  これはいろいろ中身から申し上げましても、協定の第三十条では、「両締約国は、この協定実施するため、すべての必要な国内的措置をとる。」ということがはっきり義務づけられているわけでございますし、また、ただいま審議中の特別措置法では、附則で、「この法律は、協定の効力発生の日から施行する。」と決められているわけでございますし、また、協定批准されますと三カ月以内に操業開始をしなければならないということも義務づけられているわけでありますから、そういう相互関係からいたしましてもこの特別措置法が成立しなければ批准はできないという、この点をはっきり御確認をいただくことが大変大事な問題だと私は思うのです。  そこで、先ほどちょっとおっしゃいましたことにさらにつけ加えのような意味で私は御質問をいたしますが、金大使との懇談の席で、早くこの特別措置法の成立をしていただきたいという向こう側からの要請があったということを、大臣いまお答えの中でお述べになりました。そのときに、たとえこの法律成立しなくとも、もう条約は国会成立しているのであるから、協定成立しているのであるから、早く批准をしてもらいたいという要請が韓国からなかったのかどうか。それからまた、他の機会に、この特別措置法が成立しなくてもこの条約、協定だけは先に批准をしてしまおうではないかというふうな話し合いが日韓間であったというためしがいままでにあったかどうか、その辺についてひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  94. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 韓国側の言い方といたしましては、協定国会承認があったのであるから速やかに批准書交換しよう、こういう言い方でございます。韓国側といたしましては、国内法というもの、これは日本政府の立場として国内法開発のために必要だ、こういう考え方でありますが、韓国側の言い方は批准を早くしてもらいたい、こういう言い方でありまして、日本政府国内法成立にいま懸命の努力をしている、それまでとにかく待ってもらいたいということをわが方が申しておる、そういう趣旨で韓国といたしましても国内法を早くこの国会で上げることを期待をいたしておる、こういうことでございまして、先方の言い方は常に、批准書交換を早くしよう、こういう言い方でございます。
  95. 土井たか子

    ○土井委員 いまの外務大臣の御答弁からいたしますと、やはり、結んでしまった、そして成立した協定や条約に対しては、これは遵守するという義務がわが国にはございます。これは憲法でも明示しているとおりであります。特に、やはり誠実に遵守しないということになりますと、相手に対して信義にもとります。したがって、日韓間の友好は損なわれるというかっこうにもなるでしょう。したがって、結んだ以上はこれが誠実に実行できるような状況でなければならない、これは言うまでもない話でありますね。  そういう点から考えまして、早く批准を早く批准をと韓国側から言われまして、そして大急ぎでこの協定だけは先に批准をしてしまう。さてその次に何が始まるかというと、これは三カ月以内に操業を開始しなければならないということでありますから、三カ月以内に少なくともこの国内における特別措置法を成立させなければならないという問題が、いやがおうでも出てくるわけであります。  そういう問題の中でこういう特別措置法に対しての国会審議をするという状況になってまいりますと、これは言いたくはないことでありますけれども、客観的に見た場合に、韓国側からの圧力に屈して、そして日本国会においてはこの法案の審議をしたというかっこうにならざるを得ない。私はこういう好ましくない姿形には絶対持っていってはならないと思っているわけであります。  これは日韓間の友好関係から考えても、相手に対する信義から考えても、一たん締結された条約、協定を誠実に遵守するという日本の国の立場から考えましても、やはり国益ということを考えていった場合に、いま申し上げた点というのは非常に大事だと思いますから、再度、大変くどいようでございますけれども、この特別措置法が成立しない限りは批准はしないということをひとつ外務大臣からお約束をいただいて、次に進みたいと思います。いかがでございますか。
  96. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 日本政府といたしましては、国内法を設けることによりまして、この開発が円滑に実施できるように期待をいたしているわけでございます。一方、協定は、国会の御承認を得られた、こういう段階にあるわけでございまして、協定自体が国会承認が得られているという事実は、これは厳然とした事実であるわけでありまして、したがいまして、その協定実施されるために、ぜひともこの国内法を制定して円滑な開発をいたしたい、これが政府の変わらざる方針であるということでございます。  この国会国内法成立することを強く期待をいたしているものでございまして、もしこの国会で御承認がいただけない、こういうような事態になりました場合には、韓国側としていかなる態度に出でくるかということが問題になるわけでございます。そういう際におきまして、日本政府といたしましてはきわめて困難な立場に立つということは御了解をいただきたい。そういった段階におきましてどのようなことになるかということを私どもは想定はいたしておりません。今日の段階では、あくまでも国内法を制定をしていただきたいということでございます。  以上でございます。
  97. 土井たか子

    ○土井委員 私の質問いたしましたことに対しては、簡単なお答えで済むことを、ずいぶん何だかいろいろな言い回しで、歯切れの悪い御答弁しかいまは出てこないです。これ自身ちょっと私は問題だと思うのですよ。  実は韓国側もいろいろ言い分はあるでしょう。韓国側の立場、あるでしょう。しかし、外務大臣とされては、日本の国益や日本の立場や日本の国民の人権というものをやはり考えていただきたいと思いますよ。そういう点からいうと、日本の法体系というのは崩していただきたくないのです。日本の法体系から考えてまいりまして、いままで、るる外交関係の中で結ばれてきた条約なり協定なり、それぞれの結び方というのはどういうことになってきたか、これはもう私が外務大臣に申し上げるまでもなく、外務大臣がよく御承知でいてくださるところであります。  たとえばILOの百二号条約、これは国内法整備されていないからといって、日本はこの条約を締結することがずいぶんおくれました。国内法整備した上でこのILO百二号条約に対して踏み切ったといういきさつがございます。ILO百二号条約の内容を十全なものにはまだまだ国内法はいたしてはまいっておりませんけれども、一応十分にその内容を満たすまでこの条約を締結するのに踏み切るのを私たちは待ったわけでありますね。それから、御承知のとおりに、人権規約も、現に日本としては国内状態がそれにそぐわないということで、まだこれに対しては締結する段階に来ていないということで、ずいぶんわれわれとしては待たされ続けているわけですよ。  そういうことからいたしますと、私は、この節、鳩山外務大臣に激励の意味で申し上げたいと思うのですが、どうも鳩山外務大臣になってから、いろいろ外交関係ではいままでにないようなおもしろくないことが続いて出てまいります。たとえばきょうも、これは特別措置法というのが成立しなければ批准はできないということに対して、これだけ明瞭な事実をはっきりお答えになれば済む問題を、いろいろ御説明賜るために歯切れの悪い答弁の中身になっておりますから、もう一つはっきり鳩山外務大臣の真意をお聞かせいただいてからこれは言うべきかもしれませんが、何だかこの国内法と条約との関係が、先ほど私が申し上げたILO百二号の例であるとか人権規約の例などに比べますと、逆立ちしたようなかっこうで事が進むことを何かお認めになるのではないかという一連の危惧があるわけです。  それから、もうすでに日本の領海十二海里ということを決める中に、特定水域を設けてわざわざ三海里ということを据え置きにしたままの地域があるというのは、全世界どこを見たって日本だけでございます。こんなことをやっているのは。これも鳩山外務大臣になってからの出来事でございますよ。いろいろな問題が、それは外務省を頭越しにということになっているのかもしれないけれども、それだけ鳩山外務大臣の存在というものが、やはりここで強く認識をされる状況になっているということを一つ申し上げさせていただいて、いまの問題についてもきっぱりと御答弁をここでいただけませんか。これは大臣に対する激励であります。
  98. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 きわめてはっきりいたしておるわけでございます。現在の段階におきまして、国内法成立を見ないまま批准をいたすというようなことは考えておりません。
  99. 土井たか子

    ○土井委員 現在のところはということですが、これは現在も未来も、とにかくもうはっきりとそのことはお認めいただかなければならないと思うのです。今国会中に限りというふうなことではなくて、未来にわたってこのことははっきりお認めをいただかなければならないと思うのです。もう一度答弁ください。
  100. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 現在の段階においてと申し上げた点をおつきになりましたけれども、先々長い将来にわたりましてそのようなことをいまいろいろ決めてしまうのもいかがかと、こう考えておるからでありまして、私自身はそのようなことは考えておりません。
  101. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、このことははっきり外務大臣からただいまの答弁で確認をいたしました。そのように確認をさせていただいて、次にまいります。  この大陸棚共同開発地域の設定に対しまして、中国との間ではいままで理解が得られているのか得られていないのか、この点はいかがなのでございますか。
  102. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 大陸棚協定につきまして、中国側には累次にわたって説明をいたしてあります。しかし、先方の了解というようなものは得られておりません。
  103. 土井たか子

    ○土井委員 了解が得られていないということは、つまりいろいろ説明はされたわけでありますか。そして、いろいろ協議はされたわけでございますか。いかがなんでございますか。
  104. 中江要介

    中江政府委員 過去二十回前後、外交チャンネルを通じまして中国側と接触しております内容は、日本側から中国側の理解を得るためにいろいろ御説明申し上げたいということを申しておるのに対しまして、中国側からそれじゃひとつ話し合いましょうという反応がないままに推移している、そういう意味で、中国側の理解を得るに至っていないというのが現状でございまして、私どもの立場は、もうこれは土井議員も先刻御承知のように、国際法上、この地域開発について、中国側の了承とか承認とか了解とかというものを得なければ手がつけられない大陸棚であるという立場ではない、そのことを中国側によくお話をしたいということを申し入れておるわけでございますけれども、残念ながら、どういうわけか知りませんが、耳を傾けていただいていない、こういうことでございます。
  105. 土井たか子

    ○土井委員 耳を仰けていただいていないと、半ば開き直ったような形でそういう御答弁をされますが、中国側にいろいろ説明をするための折衝をされたのは、一体いつごろからなんでございますか。この日韓大陸棚協定に対して調印をして、いわば線引きが共同開発区域に対してできてしまってから後でしょう、中国側に対して説明をしようという交渉をされているのは。いかがなんですか。
  106. 中江要介

    中江政府委員 これは、日韓大陸棚協定共同開発の仕組みが韓国との間でまとまりまして、まだ調印に先立ちまして、一九七四年の一月四日に、大平外務大臣から姫鵬飛外交部長にこの話をされたわけです。これは日本基本的な立場からいたしますと、調印もされていない協定について第三国に話をするということは通常やらないことでございますし、また、これを外務大臣から外交部長という外交経路の最も高いレベルでこういう話をするというのも累例なことでございますが、これは日中正常化から日中関係の友好を促進強化しようという、そういう大きな日中関係を配慮いたしまして、外務大臣レベルで申し入れて、こういうことになっておりますという説明をされたわけです。  これに対して、すぐその場で中国側の基本的な立場が出たかといいますと、そうではなくて、姫鵬飛外交部長は、中国政府としてはまだ大陸棚制度に対してどういう立場をとるかは検討中である、きょうの大平大臣のお申し出は、これは聞きとどめておきましょうということであったわけでございます。  そこから、いま申し上げましたように、二十回前後にわたって中国側に話をしておる。で、日本側は、協定の調印に先立ち外務大臣レベルでお話をしました後、さらに調印の直前、いよいよテキストはこういうふうになってきたということで話をし、調印の直後に、今度はテキスト全文を地図を添えまして、こういう地形のところにこういうふうに測量して、こういうふうに中国の権利を害さない形でやっていくというところまで説明をいたしまして、それから後で、二月の四日に中国外交部スポークスマン声明というものが出されたわけでございまして、それまでの間は、私どもとしては、協定の条文及び具体的な海図に即しまして、懇切に中国側には御説明したわけでございますけれども、中国はこういうスポークスマン声明にあるような立場を明らかにされた。  その中のポイントは、これは関係国が集まって協議すべきだ、こういう立場でございますが、まず一つは、関係国が全部集まれるような国際環境になってない、これは御承知のとおりでございます。他方、この東シナ海大陸棚の全域にわたって、中国政府承認しなければ、いずれの国も、いずれの個人も手がつけられない、こういう立場を中国は今回の外交部の声明で触れておられますけれども、これは国際法上そういうわけではないわけでございますので、そういう点はよく御説明しなければならぬということで、私どもは、本当にまじめにそういう点を話し合いたいということで、再三再四申しておるのですけれども、中国側は、どういうわけですか、その話をじっくりと聞くという機会に応じてこないというのが現状でございます。
  107. 土井たか子

    ○土井委員 いま大変懇切丁寧にるる御説明を賜ったんでありますが、もしこの法案が成立いたしまして協定批准して後、中国の同意が得られないような場合、日中間は恐らく大変なことになる。私も中国側からいろんなことを直接これに対して聞いているわけでありますが、それでもこの協定は、中国との二国間の関係を損ねても強行すべきだというふうにお考えになっていらっしゃいますか。外務大臣、いかがでございますか。
  108. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 たびたび御説明申し上げておりますように、この地域は、大陸棚といたしまして何ら中国側の管轄権の及ばないところにつきまして日韓間で開発をしよう、こういうことでございますので、中国側に対しましては、その旨をよく理解してもらうということに尽きるわけでございます。そういう努力は、私どもといたしまして今後とも続けるつもりでありますし、このことが、ひいて日中間の国交全般にわたって障害を与えるようなことにならないように、万全の努力をいたします。
  109. 土井たか子

    ○土井委員 努力は、それは払っていただかないとお話にならないわけでありますが、先ほど中江局長の方から御答弁になりましたとおりに中国側の方は認識をしておられないようであります。再三再四私どもがこの問題を質問いたしますと、外務省からの答弁は、いつも、中国の国際法上の権利をいささかも損なうものではないということをいままで言われ続けてまいりました。外務大臣、本当に損なうものではないと、確信を持ってこれは現在までのところお答えになれるわけでございますか。いかがなんですか。
  110. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この今回開発しようという地域につきましては、中国側のいかなる権原も侵すものでないというかたい信念のもとに、慎重な配慮をもって策定をいたしたということをたびたび申し上げているわけでございまして、その点につきまして、必ず中国側の理解は得られるものと確信をいたしておるところでございます。
  111. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、お伺いをしたいと思いますが、この日韓大陸棚協定の二条に共同開発区域を定める座標が定められておりますが、その座標の北緯三十度四十六・二分東経百二十五度五十五・五分という座標六、さらに、北緯三十度三十三・三分東経百二十六度〇・八分、座標七ですね、北緯三十度十八・二分東経百二十六度五・五分、座標八、この座標六、七、八はどのようにして定められた線でございますか。
  112. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 この座標六から八までの線は、海上保安庁水路部の海図第二百十号というものに基づいて作図したものでございまして、座標六は、わが国の男女群島の鳥島、中国の童島から等距離にある点でございます。座標六以南に関しましては、鳥島と童島を基点としました日中の中間線でございます。
  113. 土井たか子

    ○土井委員 これは再度確認の意味もございますから、いまの御答弁と重複する部面が、さらにいただく御答弁の中で出てくるかもしれません。それは昭和五十一年五月七日の外務委員会で、当時の伊達参事官が、「六、七、八は、すべての島を考慮に入れて測定いたしました日本と中国との間の中間線でございます。」と、こう答えられているわけであります。  そこで、このことをまずひとつ確認をさせていただいて、日本側のここに言う「すべての島を考慮に入れて」という「すべての島」はどこでございますか。これをまずお答えいただきたいと思います。
  114. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 座標六のところは、先ほど申し上げましたように、鳥島と中国の童島でございますが、さらに座標七が男女群島の女島と童島を基点といたしました日中中間線でございまして、これの延長が韓国側の鉱区の南の端と交わる点が座標の八ということでございます。
  115. 土井たか子

    ○土井委員 いま私はそんなことをお尋ねしているわけではございません。よく質問をお聞きの上で御答弁をお願い申し上げます。  この外務委員会の昭和五十一年五月七日の伊達参事官答弁というのは、非常に簡単明瞭な答弁なんです。「六、七、八は、すべての島を考慮に入れて測定いたしました日本と中国との間の中間線でございます。」答弁でこうおっしゃっているのです。これを確認させていただきます。まず、よろしゅうございますか。
  116. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 そのとおりでございます。
  117. 土井たか子

    ○土井委員 そこでお尋ねをさらに先ほどは続けたのです。それならば、この伊達参事官の答弁にある「すべての島を考慮に入れて測定いたしました」という、日本側のすべての島はどこでございますかということをお尋ねしたのです。
  118. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 男女群島の鳥島及び女島でございます。
  119. 土井たか子

    ○土井委員 その二つの島が、この外務省答弁にある日本側のすべての島なのでございますね。そうなのですね。  そうすると、それはさらに、どういう海図を用いてそのことに対しての認識をされたわけでありますか。
  120. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 本件協定の合意議事録第二項にございますとおり、海上保安庁水路部の海図第二百十号という海図でございます。
  121. 土井たか子

    ○土井委員 いまおっしゃったのは、もう一度確認をいたしますと、日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部共同開発に関する協定についての合意された議事録の2にある「千九百五十五年十二月の日本国海上保安庁海図第二百十号」、これでございますか。確認をさせてください。
  122. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 そのとおりでございます。
  123. 土井たか子

    ○土井委員 これがわが国の海図なんですね。  ところで、中国側の島はどことどことを考慮に入れてお考えになったのですか。また、中国側の大縮尺海図というものは、何に基づいてお考えになったのでございますか。いかがでございますか。
  124. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 中国側の基点としてとりました島は、童島でございます。中国側の海図というものは使用しておりませんので、どういうものを用いるという問題はなかったわけでございます。
  125. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、これは日中間の中間線と言うわけにはいかないのじゃないですか。日本側の独自の海図で、日本側が勝手に、日本側のすべての島はこれであると考慮し、中国側についてはこれが中国側の島だということを考慮に入れて、そうして線引きをやったわけでありますから、中間線だということに対して、これは双方合意しなければ中間線というのは設定できるはずはないわけであります。中間線だということを中国側にお話しになったことがございますか。いかがですか。
  126. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 ただいま先生のおっしゃいました意味が、日中間で合意した中間線であるかどうかということになりますと、もちろんこれは中国と合意した結果じゃございませんので、そういった意味の中間線ではございませんが、海図に基づきまして非常に慎重にはかった結果引いた線がその線でございまして、そういった意味で、日中の中間線として妥当な線であるとわが方が考えている線でございます。
  127. 土井たか子

    ○土井委員 これは大変な御答弁をなさっていますよ。それは大変苦しいことはよくわかりますがね。  国際会議でも、海洋法会議などは、中間線を策定するのに、合意なき中間線というのをつくることができると考えているでしょうか。こういうことに対して同意のない中間線なんていうのは、実存せぬですよ。日本側が勝手にこれが中間線と考えるという意思表示をしているにとどまるじゃないですか。外務省側が、この日韓大陸棚の特に共同開発に対しての線引きの座標六、七、八について、「すべての島を考慮に入れて測定いたしました日本と中国との間の中間線でございます。」というこの表現は、私は間違っておると思うわけであります。  本当にいま外務省の立場で責任を持って御答弁になってきたことを事実として生かそうとしたら、中国側の合意が必要でございます。改めてこれを中国側に対して協議をするということはどうしても必要だと思うわけでございますが、いかがでございますか。
  128. 中江要介

    中江政府委員 これは、いまの六、七、八のところだけをお取り上げになりますと、そういう日中の間で話し合う部分という側面が出てくるわけでございますけれども、そもそも前提になっておりますのが、日本韓国との間でこの大陸棚協定をいたしますその前提が、韓中中間線というものによって東シナ海の大陸棚が、韓国と中国との間で、もう少し広く言いますと、朝鮮半島と中国大陸との間でまず縦に割られまして、その縦に割られた中の韓国側、つまり朝鮮半島側につきまして今度は北と南で日本韓国とで話をし合う、こういうことでございますので、いまの六、七、八について最終的にこれを合意で決めますときには、確かに中国が言いますように、韓国も加わりまして関係国が集まって決めなければならないということに最終的にはなるわけでございます。  その問題意識があるものですから、この協定でも、第二十八条におきまして、この共同開発区域を画定する境界は、最終的なものでもないし、いずれの国の国際法上の権利を害するものでもないということでございまして、そういうものとしてこの共同開発区域を決めているので、日本としては中国側の権利を害さないように最大の配慮をしているけれども、これで中国として日本との間でさらに南の方まで日中間の中間線を決めますときには、もちろん話し合いをする必要もありますし、いろいろ御説明しましょう、こういうことでございまして、正直言いまして、そういう細部の点について、この地点がどうだとかこの線がどうだとかいうことについて中国側の反応が出てまいりますれば、私どもはいろいろ御説明する用意があって申しておるのですけれども、中国といたしましては、この地域関係国が合意の上で決めなければならないというその前提から一歩も各論に入らないために、いままでそういう状況で推移している。その点は再々大臣もおっしゃっておりますように、日本としては中国と誠意を持って理解を求めなければならない、こういうことになっておるわけでございます。
  129. 土井たか子

    ○土井委員 これはいまさら中国側に何を説明しようとおっしゃるのですか。幾ら説明したって、これがすなわち中間線にはなりゃしませんよ、日中間における中間線という要件を欠いているわけですから。これを日中間における外務省が御答弁のとおりに正確な中間線たらしめるためには、先ほどおっしゃるとおり、六、七、八に対してはとるべき要件というものがあったはずなんであります。それをやらずして、標識を置き、そこに直線を引いて共同開発区域の一画としてそれを設定してしまっているのじゃありませんか。  したがって、問題は二つに一つですよ。この二つに一つというのは、一つは、改めて中国側に対して中間線に対する同意を求める協議をする、それまでこの共同開発区域に対しては凍結をする、これが一つであります。あと一つは、これを日中間における中間線とは認めない、いままで外務省が認識を持ってきたことは間違いであるから撤回する。この二つの一つですよ。いずれをおとりになりますか。
  130. 中江要介

    中江政府委員 六、七、八の部分につきまして、日本が中国と合意の上で、先生がおっしゃいますように、国際法上認められておりますように合意の上で中間線を画定したという認識は私ども持っていないことは、先ほど村田参事官も答えたとおりでございます。これは日本側が注意深く中国の主権を侵害しないように慎重に測定したものである、こう言って中国に申しておるわけですから、もしそれについて、それは島のとり方が違っているとか、線の引き方がこうであってはならないのだという中国側の意見がございますれば、これはそれから協議が始まるということになろうと思いますけれども日本側の説明というのは、六、七、八に限らず、共同開発区域全体について、中国側が東海大陸棚全体についての基本的な立場を明らかにしておりますので、それについて私どもが説明しているということでございます。  他方、六、七、八だけでは日中の中間線にはならないわけでございまして、この六のところは韓中中間線との接点でございます。したがいまして、ここに国際法上画定した境界を持とうといたしますと、これは中国が言いますとおり、私どもも全く同意見なんでございますけれども関係国が集まって、ここで三者あるいは四者が集まって最終的な境界を画定する。ただ、それができない国際情勢でありますので、できるところから手をつけたものである。これは、日本韓国も、中国と違いまして、石油資源の乏しい国であるので、それでこういう開発の話し合いをしたということについてるる説明をしておる、こういうことでございまして、そこには国際法上特に問題があるというふうには思わないし、ですからこそ、事前及びその後何回にもわたって中国に説明している、こういうことでございます。
  131. 土井たか子

    ○土井委員 石油が乏しければ、資源が乏しければ何をやってもいいということになるわけでありますか。こんなむちゃくちゃな答弁など、あったものじゃないと思います。  端的にお伺いしますが、座標六、七、八というのは、日中間の中間線なんですか、どうなんですか。
  132. 中江要介

    中江政府委員 私は、石油がなければ何をやってもいいとは言っておりません。石油がないから、できることからやっているということを言っておるわけで、日本政府は、これはできることだと確信しておるから、やっておるわけでございます。  六、七、八は何か。これは、日本考えまするところでは、これがこの部分についての日中の中間線であるというふうに考えている、そういうことでございます。
  133. 土井たか子

    ○土井委員 日本考えますにはとおっしゃいますが、中間線として設定する一番大切な要件を欠いているのではないですか。先ほどから私が申し上げているのは、その点なんです。国際海洋法会議におきましても、境界画定に対して大事な要件は、関連する状況を考慮に入れる衡平の原則に従って合意により行われるものとするというところが問題なんですよ。中国側も、縮尺海図に従って考えているわけでも決してありません、中国側の島。日韓大陸棚協定考えるために特に問題にされた日本側の海図に従って中国側の島を勝手に想定して、そうしてこのことに対して中国側に何の相談もかけずに、ここに日中の中間線というものを引いた。日本はこれは勝手に言っていることでしょう。したがって、中間線という要件を欠いているのです。  私、先ほどから何度も言うとおりで、伊達参事官が外務省答弁として言われているのは、これは非常に簡単明瞭に言われているのですよ、「六、七、八は、すべての島を考慮に入れて測定いたしました日本と中国との間の中間線でございます。」と。国際法上この中間線というのは通用するとお考えでいらっしゃいますか。
  134. 中江要介

    中江政府委員 先ほど協定の二十八条を引用して私が申し上げましたように、中間線と申しましても、あるいは共同開発区域の境界線と申しましても、これはいずれも国際法上画定した大陸棚の境界画定の線ではないという前提に立っておるわけでございます。
  135. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、これは日本側の一方的な宣言にとどまるわけでありますね。中国側はこれを果たして中間線と認めるかどうかというのはわからないのです。したがって、日中の中間線という表現はこれは正確ではない、このように私は確認をしたいと思いますが、中江局長いかがです。
  136. 中江要介

    中江政府委員 共同開発を囲みますいずれの線も、国際法上大陸棚の境界として画定したものではない、日本韓国の間でも画定したものではない、いわんや日本と中国との間でも画定したものではない。ただ、この線を囲むに当たりましていろいろの測定をしたうち、この部分日本側が日中の中間線と認識して引いた線である、そういうことであります。
  137. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、いままでの伊達参事官を初めとした外務省答弁による外務省見解というのは、ここで修正なさいますか。
  138. 中江要介

    中江政府委員 国際法上中国と合意に達して、大陸棚の境界として画定した中間線であるという答弁はしてなかったと思うのでございます。したがいまして、伊達参事官の簡単明瞭とおっしゃいましたその簡単な表現は、そこにもございますように、日本側が自分で測定してこれが日中の中間線に当たる、そう信じて引いたということで、これが中国と合意に基づき、中国との間の中間線として国際法上画定した中間線という意味ではないわけでございます。
  139. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、これは大変無理に無理を重ねた標識によりまして、その標識の間の直線で結ばれた共同開発区域が設定されたということを問題にしていかなければならないと思うわけでありますが、かつて私、外務大臣に、本会議においても外務委員会においても、相対する二国間で境界を策定しようとする場合、大陸棚について自然延長というものを主張して結ばれた協定というものがございますか、条約というものがございますかということをお尋ねいたしました。  その節、一九七二年のチモール沖の大陸棚、州とインドネシア間の協定がそうであると言われましたが、その協定のどの部分で自然延長論に基づいて協定自身が策定されたということになっておりますかということをお尋ねいたしましても、明確な御答弁をいただけないままに今日に至っております。これが等距離中間線論をとったのではなく、自然延長論をとったのであるという根拠をきょうまでお待ち申し上げておりましたが、聞かしていただいておりません。ひとつこれを機会にお聞かせいただきたいと思うのです。
  140. 中江要介

    中江政府委員 詳細、地図に即しての説明はまた別途申し上げるといたしまして、いまの御質問に粗筋でお答え申し上げますと、チモール海峡の場合には中間線を引かなかった、これははっきりしております。他方、先生がおっしゃいますように、自然延長論だからといって自然延長のぎりぎりのところに線を引いたかというと、それも引かれてない、これも事実でございます。したがいまして、自然延長論で境界を画定した例という意味が、自然延長のぎりぎりのところを境界にした例があるかといいますと、これはないのです。延長論をしんしゃくした結果、中間線に引くことなく、中間線よりも自然延長の外縁の方に境界線を動かしたという意味が、このチモール海峡の場合の境界線の問題点であるわけです。  そこにございますのは、これは自然延長がありまして、その先に大陸棚も何もなければ、そもそも境界の問題は起きないわけでございます。境界の問題が起きるのは、先ほど先生がおっしゃいましたように、一つの大陸棚をはさんで向かい合っている場合、向かい合っているときに、片方は自然延長と言うし、片方は自然延長でない、自然延長でないということは、一方が自然延長が終わっているというところは実は終わってないので、単にみぞがあるだけだ、したがって一つの大陸棚だから中間線だ、こういう議論をするわけでございますから、自然延長のところで境界を画定するということは、実はその限りにおいてはおかしな話なんですが、自然延長を議論している国と中間線を議論している国とが相談の結果、自然延長の外縁でもない、そうかといって中間線でもない別の線を引いた例、その別な線を引きますに当たっては中間線よりも自然延長の方に寄った線を引いている、そういう意味で自然延長論が考慮に入れられた境界線、こういう意味でチモールの例を申し上げたわけでございます。
  141. 土井たか子

    ○土井委員 それで、私は、別にいまのは中江局長にまず先に御答弁をいただく必要はなかったと思うのです。鳩山外務大臣にお尋ねをしたとき、鳩山外務大臣が御答弁で、それは私はまだ調べていなかったからこの点はもう一度調べます。そしてこの協定については外務省に何かあると思いますから、あれば御提出いたしますというふうに御答弁をいただいたままになっているわけです。したがって、外務大臣から再度そのことに対して御答弁をいただいて、次、また質問を続けたいと思います。
  142. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 外務委員会におきまして、土井先生からただいまの点につきまして御指摘がありました。私どもといたしまして、その当時の理解で御答弁を申し上げたわけでございます。チモール沖の場合におきまして、ただいま中江局長から答弁を申し上げたようなことでございます。  なお、具体的な資料につきまして、あれば御提出をいたします。
  143. 土井たか子

    ○土井委員 いまの中江局長の御答弁は、もう一つ鮮明じゃないわけですが、要するに、これは自然延長論を具体的にとった協定ではないということだけははっきり言えますね。自然延長論を明確にとった協定ではないということだけははっきり言えますね。  そうすると、全世界の中で、相対する二国間の境界を策定する場合に、等距離中間線というものを画定して協定の中でそのことをはっきり認めている、この協定二十四ですね。それにただいまのこの問題になっているチモール沖の大陸棚協定、それもつけ加えまして、二十五ある協定すべては自然延長のあり方をとっている協定ではない。自然延長を境界画定としてとっている条約はただの一つも全世界にないということを、ひとつ御確認をまずいただきます。  そうしてさらに、もしただいまの座標六、七、八に対しまして、中国側がこれを日中間の中間線とは認め得ないというふうに認識された場合は、外務大臣、どのような措置を講じられますか。
  144. 中江要介

    中江政府委員 チモールの例は、私申し上げましたように、自然延長論をまるまる一〇〇%尊重して引いた境界線でないということはそのとおりですが……(土井委員「それでいい」と呼ぶ)いや、それでとまってはいけませんので、他方、中間線論でもないというところが問題のところでありまして、自然延長論と中間線論が争点になりましたときに、自然延長の先端でもない、中間線でもない、第三の線を引いた例、これがチモールの例でございます。  日韓の場合は、中間線と自然延長の外縁と両方を採用して、そのかわりその真ん中を共同開発にした、こういうことでございまして、その両方の議論が並立いたしましたときの妥協の仕方といたしましては、御案内のように、海底の地形はさまざまでございますし、油の分布の可能性もさまざまでございますので、そこは衡平の原則に従いまして双方にとって資源の有効利用に損得の少ない線を選ぶ、こういうことでいろいろの妥協が行われている、こういうことでございます。  六、七、八の部分につきまして中国に……(土井委員「鳩山大臣にお尋ねしたのですよ」と呼ぶ)大臣が最終的に締めくくられると思いますが、これは協定の二十八条で、わが方の立場を留保し、最終的な境界線であるとは申していないわけでございますので、話が行われる余地は十分残してある、こういうことでございます。
  145. 土井たか子

    ○土井委員 これは政治問題でございますからね。だから、私は先ほど来外務大臣の御答弁をと申し上げているので、この問題に対しては中江局長に私は御答弁要求をいたしませんでした。政治問題ですから、ひとつ外務大臣、ここで御答弁をいただきます。
  146. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまの御指摘の六、七、八の線は、いわゆる韓中の等距離中間をはかってみますと、それより日本側にあるということは御承知の上ということでお話し申し上げますが、この点につきまして、中国との間に大陸棚の境界あるいは将来日本と中国との間の経済水域の問題がいずれ出てくるかもしれません。こういった場合におきまして中国との間に何らかの話し合いをする必要が将来出てくる場合が当然想定されるわけでありまして、その問題につきまして日本と中国との間に話し合いをいたす、あるいは研究をいたしたい、こういう意向を私どもは持っております。  また、日本と中国の間に大陸棚自体といたしましても、これにつきましてもし境界の画定の話し合いができるならば、これはいつでもいたしたいということを先方にもたびたび申しているところであります。そういう意味で、日中間での話し合いに先方が応ずるということであれば、日本といたしまして喜んで協定に応じたいと考えております。
  147. 土井たか子

    ○土井委員 先に勝手に線引きをやっておいて、後で話し合いに応じてもらえるならば話し合う用意があるなんというのも、勝手なことこの上ないと私は思うわけであります。  それはいずれやるといたしまして、少し確かめたい問題がさらにございます。  竹島というのは、あれは日本の領土でございますか。いかがでございますか。
  148. 中江要介

    中江政府委員 日本の領土でございます。
  149. 土井たか子

    ○土井委員 何県に属するわけでございますか。
  150. 中江要介

    中江政府委員 島根県に属していると了解しております。
  151. 土井たか子

    ○土井委員 ここに私、島根県から出されている竹島のきれいなパンフを持ってまいったわけでありますが、西島、東島、それぞれ写されておるのが表紙になっていて、そして、「国際法によっても疑いもなく日本の島です」、「竹島はわが国固有の領土です」と明確に書いてございます。  ところで、毎年のことだと思いますが、海上保安庁がことし八月三十日と三十一日、巡視船で竹島を調査されたはずでございますが、海上保安庁から御出席いただいておりますね。八月三十日、三十一白の調査内容、調査結果について、できる限りつぶさにここでお聞かせくださいませんか。
  152. 久世勝巳

    ○久世説明員 海上保安庁は、外務省の要請によりまして、本年八月三十一日、第八管区海上保安本部の巡視船「くずりゆう」によりまして竹島を調査したところでございます。  当時の天候は晴れで、海上は静穏、視界は良好でございました。調査は、竹島の距岸大体三百メートルから七百メートルの近くまで香りまして、海上から調査実施したところでございます。  竹島の状況は、ただいま先生御指摘のとおり、東島、西島から成っておりまして、周囲に数十の岩礁を持って囲まれる面積約〇・二三平方キロメートル、日比谷公園ぐらいの広さでございますが、まず、東島には、灯台が一基、それから宿舎と思われますものが一棟、さらに小屋が三棟、それから各種アンテナ、無線アンテナがございます。あるいは国旗を掲揚しますポール、それから飲料水用のタンクと思われますが、コンクリート製の水ためがございました。さらに、石碑とかあるいは銘板、こういうものが主に施設としてございまして、なお、本年は、新たにその頂上に銃座が一基新設されておりました。  西島には、小屋が二棟、それからその岩はだに韓国文字が記入されていたという報告を受けております。  なお、島の上には、韓国の警備隊員と思われる者が巡視船で視認した者が十三名ございまして、このうち九名が武装をしていた、このように竹島の状況を確認しておるわけでございます。
  153. 土井たか子

    ○土井委員 いまおっしゃいましたいろいろな施設なり、アンテナなり、見張り所なり、いろいろおっしゃいましたその施設自身、建物自身は一体どこの国のものでございますか。
  154. 久世勝巳

    ○久世説明員 韓国のものと思われます。
  155. 土井たか子

    ○土井委員 ことしは八月三十日、三十一日とかの地に調査をされたわけでありますが、前回行かれたときと最近八月三十日、三十一日と、あるいはそれ以後いらしたことがあるのかどうか、その辺はつまびらかに私は存じ上げませんが、前回行かれたときと今回いまの御報告の場合とでは状況が変わっておりましたでしょうか、どうでしょうか。変わっていたとするならば、どういう点が変わっていたかということをお教えくださいませんか。
  156. 久世勝巳

    ○久世説明員 やはり昨年の八月中旬に、巡視船により、先ほど申しましたような状態で竹島を調査したわけでございますが、そのときと変わっておるところは、まずなくなったものとかあるいはふえたもの、こういうふうなものがございます。まず撤去されたものにつきましては、デリックとかあるいは風速計とかそういう小さなものが撤去されております。それともう一つは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、駐在の警備員が十三名見えたと申しますが、昨年は一応五名見えたところでございます。それからもう一つは、機銃座が昨年はなかったのがことしは確認された。これが昨年とことしで変わった大きなところだ、このように考えております。
  157. 土井たか子

    ○土井委員 独島は韓国固有の領土であるというふうな認識でもって、韓国領だということを明記した石が、以前はなかったけれども、今回あったというふうなことも実はかいま聞いているわけでありますが、そういう事実がございますか、いかがですか。
  158. 久世勝巳

    ○久世説明員 私ども調査しましたところでは、これは昨年も確認できた、そのように報告を受けておるところでございます。
  159. 土井たか子

    ○土井委員 また、ただいまの御報告をいただいた中にはございませんでしたが、洋上、この島からわずか離れた場所にボンベと申しますか、浮きこと申しますか、そういう標識が浮かされていたということを私たちは聞かされているわけでございますが、そういう事実がございましたでしょうか、どうですか。  そうして、浮いていた場所というのは、もし事実ありとすれば、どれくらい島から離れた距離に浮かされていたか、それもお聞かせ願えませんか。
  160. 久世勝巳

    ○久世説明員 ただいま先生からお話がありましたボンベ、これは漁網とかあるいははえなわを浮かせる浮きでございまして、これが東島の南方約一マイルに、東西にわたって一マイル半存在していたということを確認しております。
  161. 土井たか子

    ○土井委員 また、この調査にいらした節、韓国側のファントム機が飛来をいたしまして、威嚇をしたというふうないきさつがあるということも私たちは聞き知っているわけでありますけれども、そういう事実がございましたか、どうですか。それをひとつお聞かせくださいませんか。
  162. 久世勝巳

    ○久世説明員 八月三十一日に、巡視船が竹島の調査を終わりまして、一応同局付近から帰航中に、大体竹島から約八・五海里離れました海上におきまして、韓国の軍用機二機、これは乗組員の話によりますと、多分ファントム戦闘機であろうという推定でございますけれども、巡視船の上空に飛来したという事実はございます。
  163. 土井たか子

    ○土井委員 これは最初に私お尋ねしたとおり、御答弁で、はっきり竹島はわが国の領土であるということを外務省当局も認識をされているわけであります。このことは、一貫してこの認識をはっきりさせてこられているわけであります。このわが国の領土を調査しに参りますのに、どっかの国に占拠されている建物の調査であって、そうして場合によるとその国からファントム機まで出してきての歓迎というのか何というのか、大変な威嚇を受けながら、戦々恐々として御苦労をされながら調査をするなんというのは、全世界どこを探してもこんな例は私はないと思うわけであります。しかも知らない間に、あそこは日本の領土でございますから、当然あの十二海里に及ぶ海域というのは日本の領海でございますが、この領海の洋上に、魚をとるために用いられるいろいろな漁具の一つでございますボンベ、浮きこが浮かされているという事実というのは、一体どういうことになるのか。外務省とされてはどういう措置を講じられているわけでありますか。これは八月三十、三十一日からかなり日がたちまして、外務省は一体何月何日にどういう措置をそのうち講じられたのかということを、ひとつお聞かせくださいませんか。
  164. 中江要介

    中江政府委員 まず、事実を申し上げますと、八月三十日、三十一日に、海上保安庁がいま御説明がありましたような巡視をいたしまして、三十一日にはいま申されたような韓国のファントム機が上空飛行したということがございまして、この竹島に対する海上保安庁の巡視の結果そのものにつきましては、この報告を待ちましてそれを取りまとめて、十月の二十七日に韓国に対しまして口上書によって抗議をいたしました。  この間、巡視の直後に開かれました第九回の日韓定期閣僚会議におきまして、九月の六日でございますが、竹島問題について、この紛争を早く解決すべきである、日本としては韓国の不法占拠はもちろん認めるわけにはまいらないというお話を閣僚レベルで出しまして、韓国側は、これはもう一つの要素でございますが、日韓正常化のとき以来、韓国はあの鳥は独島という名前で自分の領域だという主張をしておるわけでございますから、韓国の立場からいたしますと、何の不思議もないことをやっているのだ、こういうことになりますし、日本からいたしますと、領域の侵犯である、こういうことになるわけで、明らかな国際法上の紛争である、こういうことでございます。  それから九月の十四日にも、これは全国都道府県知事会議のときに、鈴木農林大臣がわが方の立場を明らかにしておりますが、韓国との間では、九月の二十一日に、今度は逆に韓国の方から、日本海上保安庁の竹島巡視について、これは韓国の主権に対する重大な挑発である、こういう言い方をしております。これは私申し上げましたように、韓国は、あれは自分の領土だ、こういう立場をとっておりますので、そういうことになります。  それから十月の二十四日に、例の竹島に韓国人の漁民が住みついているという報道がございまして、これが国会におきましても取り上げられて、十月の二十六日に韓国にありますわが方の大使館でこの事実を確認いたしましたら、その新聞報道は誤りであるというのが先方の説明であった。そして翌十月二十七日に、いまの海上保安庁の巡視の報告結果に基づく抗議の口上書を先方に提出した、こういう経緯になっておるわけでございます。
  165. 土井たか子

    ○土井委員 いま局長から、日本韓国がともに領有権を竹島については主張しているという御答弁でございますが、ともに領有権を主張している島に対して、現に施設を持ち、そこに人員を常駐せしめ、おまけにその国の国旗までを標識として島にきちっと刻み込んでいるというのは、日本でございますか、韓国でございますか。日本の領有権を主張し、あそこは間違いなく日本の領土であるということを言い続けている竹島に、日本側の何らかの施設がございますか。人がおりますか。いかがでございますか。
  166. 中江要介

    中江政府委員 きわめて遺憾なことでございますけれども、いろいろのことをやっているのは全部韓国側でございます。
  167. 土井たか子

    ○土井委員 これはもう既成の事実なんですね。完全にこのことは日本の主権に対する侵害であるということをお認めになりますか。
  168. 中江要介

    中江政府委員 これは日本の領土主権に対する重大な侵害であるという認識でありますればこそ、五十回に及んで、毎回そういう事実があるごとに文書によって抗議を申し入れ、また口頭によってこれを補足説明し、あらゆる機会にこの紛争の早期解決を訴えておりますけれども、まだその話し合いの段階にならない、こういう現実でございます。  日本は御承知のような体制のもとで、あらゆる紛争は、平和的手段によって解決するという基本方針に基づいて、この平和的な解決のための努力をねばり強く続けていく、これは一九六五年の日韓正常化のとき以来の方針でございます。
  169. 土井たか子

    ○土井委員 それは、答弁でいろいろなつじつま合わせをやろうとしたら、幾らでも詭弁を弄することができるかと思いますけれども、現実は、もうすでに動かしがたい既成の事実がございます。  そこで、先ほどの御答弁で少しお出しになった鈴木農林大臣の十四日の全国知事会議における御発言でございますが、その御発言の内容が、一部新聞にも掲載をされておりました。その内容は、日本韓国がともに領有権を主張している竹島については、韓国側が近く領海十二海里を設定することを考慮している節、竹島については現状のまま固定していきたいという意思をこちらに通達しているという中身でありますが、外務大臣、こういうことが日韓間で話し合われているのでございますか。
  170. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいま鈴木農林大臣のお話でございますが、竹島をめぐりまして三海里の領海を固定するというような話は、外交ルートでは参っておりません。
  171. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、鈴木農林大臣のかの九月の十四日における全国知事会議での御発言というのは、一体どういう状況のもとに得られた情報でそういう御発言になっているというふうに御理解なすっていらっしゃるわけですか。事は、これは大きゅうございますよ。
  172. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 鈴木農林大臣は、新聞報道をごらんになりまして御発言になったものと想像いたしております。
  173. 土井たか子

    ○土井委員 どういう新聞のどういう報道でございますか。
  174. 中江要介

    中江政府委員 ちょっと私の先ほど申し上げたのが舌足らずだったかもしれませんが、私ども承知しております事実はこういうことなのでございます。  十四日の全国都道府県知事会議の席上、鈴木農林大臣がこういうふうに述べたと報道したということでございまして、その鈴木農林大臣が述べたと言われて報道されている内容は、日韓閣僚会議韓国の崔農水産部長官は、韓国の領海十二海里拡大の際竹島はその適用から除外すると発言した、こういうふうに農林大臣が述べたというふうに報道されておるのですが、私どものこの閣僚会議全体の議事の中からは、先方の農水産部長官がこういうことを言ったという記録はないわけでございますので、一つの新聞報道としてこういうのがございましたということでございます。
  175. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣に、それではいまの問題に対しての御意見があれば承りたいことと、竹島問題について今後どういう対処のされ方をなさるか、その点をあわせてお聞かせいただいて、次に進みます。
  176. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 その前に、私の鈴木農林大臣の申されたことにつきましてお答え申しましたことは間違っておりましたので、取り消しさせていただきます。  竹島問題につきまして、これは日本韓国との国交正常化の際に大変問題になったことでございまして、この竹島問題が解決をされなければほかの外交関係は手がつけられないというようなことでは韓国との正常化はできなかったわけでございます。先方はあくまでも韓国側の領有を主張をいたしております。そういったことで、この問題につきましては日本政府といたしましてねばり強く主張をし続けてまいらなければならない。このような問題につきましては国際司法裁判所に提訴をするということが一番望ましいと考えておりますけれども、これにつきましては先方が応諾をいたさない、こういう状態が続いておるわけでございまして、わが方といたしましては、外交交渉をねばり強く続けていく、そして終局的には何らか国際司法裁判所に応訴をしてもらうように努力をいたすべきものと考えております。
  177. 土井たか子

    ○土井委員 さて、そういう難儀な問題が片やあり、事実韓国側に一方的にわが国の領土が占拠されたような状況を抱えながら、わが国はこの日韓大陸棚協定に対して調印をし、そして国会審議をして、さらに今回国内法に対しての整備を一日も早くと政府は言われるわけであります。  そこで、田中通産大臣にお尋ねをするのでございますが、この特別措置法で問題にされる第二条第二項にございます「共同開発区域」とはどこを指すのでございますか。
  178. 大永勇作

    ○大永政府委員 特別措置法におきまして「共同開発区域」と申しますのは、協定第二条第一項に規定する大陸棚の区域を言うのでございます。
  179. 土井たか子

    ○土井委員 協定第二条第一項にいう「共同開発区域」とはどこを指すのか、もう一度お答えをいただきたいと思います。
  180. 大永勇作

    ○大永政府委員 協定第二条第一項におきましては、「共同開発区域は、次の座標の各点を順次に結ぶ直線によって囲まれる大陸棚(だな)の区域」とありますから、この区域を指すわけでございます。
  181. 土井たか子

    ○土井委員 正確にひとつ、その「共同開発区域」の協定第二条第一項に指している内容に対して、もう一度御答弁をいただけませんか。
  182. 大永勇作

    ○大永政府委員 協定第三条第一項におきましては、「共同開発区域は、次の座標の各点を順次に結ぶ直線によって囲まれる大陸棚(だな)の区域とする。」とございまして、座標一から座標二十まで、それぞれ北緯及び東経の線によって示しておるわけでございます。
  183. 土井たか子

    ○土井委員 いま法律上言うならば、「共同開発区域」というのはそのとおりだと考えなければならないと思います。つまり特別措置法で問題にされる「共同開発区域」とは、日韓大陸棚協定第二条第一項にいう「共同開発区域は、次の座標の各点を順次に結ぶ直線によって囲まれる大陸棚の区域とする。」このとおりに法律上は認識をしなければならないと思うわけでありますが、通産大臣、そのとおりでよろしゅうございますか。
  184. 田中龍夫

    田中国務大臣 お示しのとおりでございます。
  185. 土井たか子

    ○土井委員 そういたしますと、「共同開発区域」の中に、わが国の主権が及ぶ領海まで共同開発をすることになってしまうということに相なるわけでございますが、それは本来認めてよいことなのでございますか。認められるべきではないというのが私は大原則だと思うわけでありますが、大臣、いかがでございますか。これは政治的問題ですから、通産大臣にお答えいただきたい。
  186. 田中龍夫

    田中国務大臣 政府委員からお答えいたします。
  187. 大永勇作

    ○大永政府委員 これは、「大陸棚(だな)の区域」といことでございますので、大陸棚に属さない区域は外れてくるわけでございます。
  188. 土井たか子

    ○土井委員 それは一体どこで決まっているのですか。現にこれは法律的に——だから私は念を押したわけでございます。「共同開発区域は、次の座標の各点を順次に結ぶ直線によって囲まれる大陸棚(だな)の区域とする。」でございまして、「次の座標の各点を順次に結ぶ直線によって囲まれる大陸棚(だな)」の中に日本の主権の及ぶ領海が入るわけであります。領海十二海里になることによって領海が入ったわけであります。  したがいまして、いまおっしゃったのはこの協定に対する解釈ですけれども協定の解釈でなしに、協定の条文について特別措置法は問題にしているのじゃありませんか。特別措置法で問題にされている第二条第二項にいう「共同開発区域」とは、この日韓大陸棚協定の第二条第一項にいう「共同開発区域」を指しているわけでありますから、この条文そのものを的確にお読みいただかないと困るわけであります。私は解釈を問題にしているわけじゃないのです。条文を見なければいけない、このように思うわけです。条文を見れば、この「共同開発区域」の中にわが国の領海が入るということに相なります。これは認めざるを得ないのです。しかし、こういうことは本来認められるはずのない問題であります。通産大臣、ひとつこの点について御所見をいただきたいと思います。
  189. 田中龍夫

    田中国務大臣 協定と領域とは一緒の区域でございますので、なお、これには交渉の経過もあることでありますから、政府委員から詳細にお答えいたします。
  190. 大永勇作

    ○大永政府委員 特別措置法の第二条におきましては、「この法律において「共同開発区域」とは、協定第二条第一項に規定する大陸棚(だな)の区域をいう。」ということで、先生御指摘のとおりでございまして、この「協定第二条第一項に規定する大陸棚(だな)の区域」でございますから、協定の第二条におきます「大陸棚(だな)の区域」の内容と全く同じものでございます。
  191. 土井たか子

    ○土井委員 ところが、領海が十二海里になることによって日本の領海の及ぶ範囲というものは大陸棚から除く、こういう趣旨のことが資料全体の中の一体どこに書いてあるのですか。私は、今回この質問をさせていただくに先立ちまして、委員会資料を一式いただきました。その中をくまなく点検をさせていただきました。しかし、ただいま御説明のような、大陸棚から領海を除くという趣旨のことを説明されている資料というものは、何も入ってございません。一体それは何によって認識ができるわけでございますか。
  192. 中江要介

    中江政府委員 いま御説明がございましたように、国内法協定実施するためのものでございますし、その協定につきましては、大陸棚に領海は含まれないという点は、これは協定審議のときに詳しく私ども御説明いたしましたし、御質問にもお答えしたわけでございます。  どこに書いてあるかといいますと、「大陸棚(だな)」という字によってそうなるわけでございます。大陸棚というものは、地質学上の大陸棚をここではいっておるのではなくて、これは日韓両国が国際法上の資源開発の主権的権利を行使し得る対象としての大陸棚でございます。国際法上の大陸棚は領海の外縁から沖に向かって延びる大陸棚、こういうことでありますので、地質学上の大陸棚のうち領海部分は除かれるというのが国際法上の大陸棚の範囲でありますので、「大陸棚(だな)」と書くことによってそのことは明快であるということを、協定を御審議いただきましたときに私ども何度も御説明したとおりでございます。
  193. 土井たか子

    ○土井委員 協定審議の節、何度も私もその点は質問で確かめたところであります。これはどういうことかと言うと、ただいまの質問に対する御答弁大陸棚ということに対してどのように認識すべきであるか、大陸棚というものに対してどう解釈すべきであるかということを、日本国外務省としてこう認識するという説明であります。もう一つ言うと、局長自身の御見解であります。それはこの協定第二条第一項のここにいうところの「大陸棚(だな)」というのは、こういうふうに解釈すべきだという一つの解釈論ですよ。  客観的に、そういうことをだれでもが、この条文を見てそのとおりに察知しますか。私はそうは言えないと思う。条文を見れば、そんなことは一々断り書きはございません。条文を見てそのように大陸棚理解しなさいという付記もございませんよ。第三者がこれを見るわけであります。第三者が見てこの条文をどのように理解するかといったら、書いてあるとおり素直に理解する。そうすると、日本の十二海里になったこの領海が、大陸棚のここに決めてある共同開発区域の中に入るということをどうしても言わざるを得ないのです。  しかし、なぜこういうことに相なったのか。これは大事なところでありますから、この席で何度繰り返しになっても私は御答弁をいただきたいと思うわけでありますが、この協定日韓間で交渉して作成する段階、調印する段階、恐らく領海十二海里になっても日本の領海は共同開発区域の中には及ばないだろうという読みが外務省当局にあって、このような第二条第一項についてのこういう条文を御用意なすったのであろうと私たちは認識をいたしております。それが、ただいまは、この二条一項について、先ほど来るるいろいろと留意をされた説明にきめ細かく聞かせていただかなければならないような状況に相なったのはなぜでございますか。この点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  194. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 本件は、衆議院の外務委員会におきまして、大陸棚協定の御審議の際に議論があったところでございますので、もう重々御承知の上でございますが、繰り返して御説明をさせていただきます。  本件は、使用されました二百十号の海図に、男女群島の南西にあります鮫瀬島というものの記載がなかったという点から事は発しておるということは、外務委員会でも御説明されたところでございます。鮫瀬島を基点といたしますと、十二海里の領海をはかった場合に、ごく一部の地域共同開発区域の一部にひっかかるということが問題になりまして、その点につきまして、これは日本韓国とが共同して開発する区域でありますから、政府といたしまして韓国政府の了解を取りつけるべきであるということで、韓国政府との間に了解を取りつけたわけでございますが、その際に、大陸棚というものは、領海が拡張すれば当然それは大陸棚ではなくして領海になるのだ、こういうことで日本政府は解釈をするが、韓国政府も異存がないかということになりまして、韓国政府もそのように同じ解釈である、日本国韓国との間で共通の解釈をとり得る、こういうことになりまして、口上書をもちましてこの解釈を確かめ合ったということでございます。そして、本件を開発いたします場合には、これは日本国韓国がそれぞれ施行者に対して認可をするわけでありますから、その際にこれらのことを織り込んで実施には支障がない、こういう判断をいたしまして、このような口上書の交換でこの問題の解決を図った、こういう経過でございます。  なお、私の御説明はやや専門でありませんが、もし要すれば、アジア局長から詳細に御説明させます。
  195. 土井たか子

    ○土井委員 ただいま外務大臣御答弁によっても述べられておりますとおりで、この大陸棚について、鮫瀬を基線とする領海十二海里がどういうふうな関係になるかという問題に対しての日本側の解釈を披瀝して、口上書という形式で韓国側に対して述べて、韓国側がそれに対する解釈をまた口上書という形式で日本に対して返してこられた、こういう関係にあるわけですね。  大臣がおっしゃるとおり、解釈なんでございます。したがいまして、その解釈の中身を条文の上で明らかにすることが、私は、条文を的確にするという点からいって非常に大切な問題だと思っています。いまわざわざこの条文を読んで、いま大臣から御説明賜りましたようなことが、第三者からどうしてわかりましょう。その点は理解できません。単純素朴にこの条文に対して読む人からすれば、日本の領海の中に入って共同開発が行われるのである、このようにこの第二条の一項に対しては読むであろうと私は思います。  したがいまして、この点をただす必要があると私は思っているわけでありますが、しかし、いま大臣御答弁のとおりで、この開発区域の図を見ますと、共同開発区域は九州側が若干へこんでおりますが、これはわが国が領海三海里から十二海里に拡大したときにおいても、男女群島の女島、鳥島の領海が共同開発区域に入らないように配慮してこうへこんでいるわけであります。  ところが、共同開発区域の線引きに用いた一九五五年十二月の日本国海上保安庁海図第三百十号にはこの鮫瀬が縮尺上入っていなかったといういきさつがあるために、政府は鮫瀬を考慮に入れずに線引きをしてしまったといういきさつがあるわけであります。新たに鮫瀬を認識いたしまして、鮫瀬を基線とする領海十二海里をはかると、何のことはない、当初このことを予想してもいなかった共同開発区域の中にわが国の領海が入るということが事実として出てきたわけであります。  こういうてんまつなんですよね。これは外務大臣がはっきりお認めになるところなんでありますが、委員長、資料は委員長もよく吟味をなすって御存じのとおりだと私は思うわけでございますが、いまこういう事情について、鮫瀬を基線として領海十二海里が設定をされて、その領海については大陸棚の区域からそれを除いて考えなければならないという旨の資料が添付をされてございますか。また、当商工委員会で審議のための資料として、こういう関係の問題が、この当審議の途中でも結構でございますが、提出をされておりますか。いかがでございますか。
  196. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 後刻、理事会で討議いたします。
  197. 土井たか子

    ○土井委員 実は、こういう資料が整わなければ、本当に正当な審議とは私は言うことが本来できないのじゃないかと思うわけでありますが、こういう資料が提出されるまで、当委員会の審議というものは本来待たなければならないと私は思うのです。これは大急ぎでひとつ理事会をお開きいただきまして、その資料の提出方を御討議願いたいと思います。これは大事な問題ですから。状況が変わってきたのですからね、この協定が当初調印された当時とは。
  198. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 後刻、理事会で討議いたします。アジア局長
  199. 中江要介

    中江政府委員 鮫瀬の問題につきまして、先ほど土井委員が……
  200. 土井たか子

    ○土井委員 ちょっと委員長、待ってくださいよ。私は質問しているわけじゃない。委員長にいま申し上げたわけです。
  201. 中江要介

    中江政府委員 私、委員長の御指名をいただいたので、補足を申し上げておるわけです。(発言する者あり)私は委員長の御指名をいただいたから申し上げておるわけでございまして、先ほど、あれはアジア局長の見解だと申されましたので、その点はそうではないと、確立された国際法の解釈であるということを申し上げるために発言を求めたわけでございます。
  202. 土井たか子

    ○土井委員 委員長先ほど来私は申し上げているのは、やはりこれは資料として当然整っていなければならない資料です。こういうことが整備をされた上で審議を尽くすということが私は必要だと思うのですね。非常に大事な部分が欠落しているのですよ。だから、この欠落したままで審議を続行ということは、本来商工委員会の名において責任ある審議には私はならないであろうということを勘案いたしましてこのように申し上げているわけでございますから、ひとつお取り計らいのほどをお願い申し上げます。
  203. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 領海と鮫瀬の問題の資料につきましては、当委員会に配付されておりません。配付方につきましては、後刻理事会で協議いたします。
  204. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、その問題が決定をされまして、そして御配慮いただいた後に私はさらに質問を続行いたします。それに関係のある質問であと続くわけでありますから、そのようにさせていただきたいと思います。  いま私が申し上げているとおりでありまして、資料に基づいて皆様に御理解いただかなければ、私が質問いたしておりましても、これは何のことやら、当商工委員会の委員先生方におわかりいただかなければ意味がございませんので、その後ひとつ質問をさせていただくことにお願いをいたします。
  205. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 清水勇君。
  206. 清水勇

    ○清水委員 いま領海に関する了解のできない事態が起こっているわけでありますから、本来、私も質問がしづらいわけでありますが、しかし、わが党理事のせっかくのお話でありますので、いささか角度を変えた形で質問をさせてもらうことにいたします。  まず最初に、私は通産大臣にただしておきたいことがございます。  先日、多分十一月一日だったと思いますが、本委員会で、岡田委員がいわゆる紛争状態という問題についてお尋ねをした経過がございます。その際に大臣は、いわゆる紛争というものは、戦争が起こっているとか、あるいは戦争が起こるような状態を指すのである、こういうふうに言われたように私は記憶をしているわけでありますが、これは大臣の余りにも勝手な解釈に過ぎる、私はそういうふうに思いますので、改めてその辺のところを、重大な問題でありますから明らかにしてもらいたい、こう思います。  なお、何か打ち合わせをされているようでありますから重ねて申し上げると、私も参考までに紛争という言葉についてちょっと調べてみたわけです。これは参考程度に聞いていただけばいいのですが、たとえば岩波から出ている広辞苑によれば、紛争とは「もつれて争うこと」である、あるいは「もめごと」である、こういうふうに解釈をしている。角川の新字源では、「ごたごたしているような状態」、あるいは「乱れ争っているような状態」、こういうふうに解釈をされていて、通産大臣が解釈するような解釈はどこにも出ていない。この点明解にしてもらいたいと思います。
  207. 田中龍夫

    田中国務大臣 私が申し上げましたのは、紛争と申しましても、いろいろと内容がまちまちであろうと思うのでありますが、国際法上の紛争地域の一般の定義を基準にすべきものである、こういうことを申し上げたのであります。
  208. 清水勇

    ○清水委員 具体的にどういうことですか、言ってください。
  209. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 一般国際法上は、紛争地域という概念が特にあるわけではございませんけれども、国際紛争という概念に関しましてはいろいろな用法で用いられております。  非常に一般的な使い方といたしましては、二つ以上の主権国家の間で法律上あるいは事実上のお互いの主張が対立しておる状態、これがいわば一番広い意味でございます。  また、きわめて限定的に、国際法上は、国際裁判の受諾義務の対象を、政治的な紛争を含めまして、すべての紛争とするということを避けるために、法律上の紛争のみに限定するという観点から紛争という概念が用いられることもあるわけでございます。  それからもう一つ重要な点は、国際連盟の規約あるいはその後国連憲章によりまして、いわゆる戦争、特に侵略戦争というものが禁止されたわけでございますが、現実には武力を用いた争いというのはいろいろあるわけでございます。したがって、そういうものはかつて戦争という概念が国際法上非常に使われたわけでございますけれども、それにある程度かわるものとして、武力紛争というふうな概念あるいはそういう表現が使われているということでございます。  そこで、本件の決議の紛争あるいは紛争地域という概念が具体的に何を指すかということは、これはまず、国会の方で御採択になった決議でございますから、国会の御意思というものが基本になると思いますけれども、恐らく国際法上のいま申し上げましたようないろいろな用法というものも考えながら、総合的に判断すべきものであろうと思います。  特に、この決議が付されました趣旨等を考えますと、石油開発公団の投融資等が第三国の紛争に巻き込まれるとか、あるいはそのためにせっかくの投資の効果が失われるということは避けるべきであるというのが一番重要な趣旨であると考えられますので、先ほど申し上げました国際法上の紛争という言葉のいろいろな意味の中で、ある程度限定的に、たとえば国連憲章の第三十三条には、これは国際紛争に関する規定でございますが、「その継続が国際の平和及び安全の維持を危くする」紛争、こういう表現があるわけでございまして、具体的な状況をこのような国連憲章三十三条にいう紛争に当たるかどうかというふうな尺度で考えるのが、国際法の見地から見ますと妥当なところではなかろうかと考える次第でございます。
  210. 清水勇

    ○清水委員 この問題では、別の委員からさらに掘り下げてお尋ねをする予定になっておりますから、私は詳しく突っ込んで申し上げることは避けます。しかし、現実の問題として、私は後でも触れるつもりでいますけれども、今日大陸棚協定をめぐって中国からたび重なる抗議が行われる、あるいは主権の侵害に及ぶ行為であるというような非難も行われる、したがって、これがさらに発展をすると、状況のいかんによっては当然紛争に及ぶということが想定されないことはない、少なくともこういうふうに考えております。後段いま参事官が説明されたものは、ずばり言えば戦争のことを言っているのですね。ですから、前段で言われた紛争というものをどういうふうに解釈をすべきなのか。これは附帯決議の意味というものをどのように重んずるかということと不可分の関係ですから、したがって、この間大臣が、中国との間でいろいろあるけれども、そんなものは紛争じゃない、こういうふうに簡単に言われていることは非常に問題がある。この際、大臣はこの解釈についてはきわめて重要にかつ慎重に再検討をして答え直すべきではないか、私はそういうふうに申し上げておきたいと思います。大臣の見解があれば、聞かせてください。
  211. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまお述べになりました中国からのことでございますが、これは、日本の主張に対しましての異議の申し立てといいますか、違った見解を述べておられる中国に対しまして、今日は紛争とかなんとかということではなく、外務大臣みずからも、これは篤とお話し合いをし御了解を願う、こういうことを申されておりますので、私は、これが紛争であるということを申すのは少しどうかと思うのでございます。  なお、このような紛争の状態が起きる可能性と申しましても、私どもは、一日も速やかに中国の方におきまして日本の主張を了解をしていただきまして、事なきを期したい、かように考えております。
  212. 清水勇

    ○清水委員 紛争という言葉をそういうふうに解釈することはどうかと思うというような大臣の答弁ですけれども、そういう答弁の仕方は私は大変どうかと思うのであります。いずれにせよ、後の関連でいまの点はただしていきたいというふうに思います。  さて、それから、五十年の五月でしたか、石油開発公団法の一部改正が行われている。このときの改正点は大要三点に集約をされるのではないかというふうに私は思うのでありますが、従来は、海外における石油の探査に限定をして融資をする、こういう仕組みでありましたが、この改正を通じて、第一に、融資の対象に日本周辺の海域における石油等の探鉱、これに必要な資金を供給するための趣旨、第二には、探鉱だけでなく、採取及び精製にも融資の対象を拡大をする、そして第三には、新たに融資の対象に外国の政府機関とそれに準ずる法人を加える、こういうことが改正の主要点であったように理解をしておるわけでありますが、間違いありませんか。
  213. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの内密の問題につきまして、ことに政府機関云々の点につきまして、政府委員から詳細お答えいたします。
  214. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 御指摘のとおりでございますが、第二番目の精製というのは、産油国の精製、こういう意味だと理解いたします。
  215. 清水勇

    ○清水委員 そうすると、私は大臣に聞いておきたいのですけれども、要するにあのときの改正というものは、今日日韓大陸棚共同開発ということが大きな課題になっておるわけでありますが、これについて、探査、それから生産あるいは精製という点を含めて、つまりその全過程について、しかも韓国政府やこれと契約をするメジャーにまでわが国の政府資金を融資をする、そういう目的ではなかったのかというふうに思わざるを得ないわけでありますが、その点どうでしょう。
  216. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 外国の政府機関に対して開発公団の資金を貸し付けられるという改正点についてお答えいたしたいと思いますが、これはいろんな限定がございまして、相手国政府が、ナショナルリザーブと申しますか、国有鉱区をみずからの手あるいは国営石油会社によって開発するような場合、日本に対する採掘原油の供給を前提といたしまして貸し付け得る、こういうことでございまして、メジャーに貸すとか、あるいは日本に対していわゆる対日供給をしないようなケースについて貸し付けの対象とするということではございません。
  217. 清水勇

    ○清水委員 この点は意見がありますけれども、本題じゃありませんので、先へ進めることにいたします。  さて、そこで私は、特別措置法の中身に入って質問をする前に、言うまでもなくこの法案は日韓大陸棚協定をいわば下敷きにしているわけでありますし、この協定についての疑問点、問題点が数多く山積をしている、きょう午前中からも次々にわが党委員の疑問点に対する解明を求めるという経過がございましたが、どうもはっきりしない部分が多過ぎる、こういうことでありますから、まず最初に改めて疑問点、問題点について質疑を行いたい、こういうふうに思うわけであります。  さて、日韓大陸棚協定をめぐる経緯の中で、エカフェの調査あるいは報告の占めるウエートというようなものは非常に大きい、あるいは決定的に大きい、こういうふうに私は考えます。ところで、エカフェの調査なり報告なりというものは、黄海や東シナ海の海底資源についてなされているわけでありますが、東シナ海大陸棚での新第三紀層の堆積状況、これにも詳しく触れております。私もその報告書を繰り返して読んでみたわけでありますが、一口に言うと、対馬海峡では大体二百メートル未満だが、中国大陸に沿うて南の方に向かうとだんだんに堆積の厚みが増している、尖閣列島付近ではそれが二千メートルを超す厚さとなっている、その範囲も二十万平方キロに及ぶというふうに述べております。つまり賦存量の最も有望な地域はどうも尖閣列島付近なのであって、九州に近い、つまり北へ向かうほどにその量が少なくなっているということを指摘をしていると思います。  そこで、外務大臣なり通産大臣は、この六八年に行われた調査、翌年出されたこの報告、これをどのように読み取っているのか、この点について、基本的な問題でありますが、簡潔にひとつ胸に落ちるようにお聞かせを願いたい、こういうふうに思います。
  218. 古田徳昌

    ○古田政府委員 エカフェの調査は昭和四十三年の十月から十一月にかけて実施されたわけでございますが、この調査方法としましては、三万ジュールという出力のスパーカーによりまして地下の反射を記録いたしまして、地下の構造を把握するということでございました。この調査に使用しました出力が比較的弱かったということで、地下の余り深いところまでは構造が判明しておりませんけれども、この調査結果によりましても、地下二千メートル程度までの地質状況の概略が把握されております。  その概略の把握結果によりますと、この地域一帯につきまして石油の賦存の可能性が最も高いと言われます新第三紀層の堆積が非常に厚いということでございまして、かつ北から南に行くに従って厚くなっているということが報告されております。具体的な埋蔵量等についての、ないしは可能性についてのもっと詳細な見通しにつきましては、さらに一層詳細な地震探鉱等が必要であるということが指摘されておりますけれども、いずれにしましても、この区域の浅い海底が将来一つの世界的な産油地域になるであろうというふうな報告が出されているわけでございます。  なお、このエカフェの調査が行われました後に、一部企業等で行われました北の方についての調査、これはエアガン方式ということで少し調査方式が変わりますけれども、その調査結果等を見ますと、北の方も堆積層の厚さがかなり厚いというふうなことが出ておりまして、現在のところでは、私どもとしましては、北と南につきましてどちらがより有望だという判定を下す段階ではないというふうに考えております。
  219. 清水勇

    ○清水委員 ところで、いまの答弁にもありましたが、いわゆる日韓大陸棚協定でいうところの共同開発区域、これについて、当初外務省石油なり天然ガスなりの俗に言う賦存量七億キロリットルといった説明をしていたわけでありますが、しかし、その後になって、どうも実際は、この七億キロリットルというのは、東シナ海から尖閣列島にかけた南西地域、その全体の埋蔵量であるというような言い方に変えられてきているように承知をしておりますし、先日も当委員会に出席をされた参考人も、ほぼ同様な発言をされておりました。  そこで、私はこれは両大臣にも聞きたいわけでありますが、いまの答弁にもちらっとうかがわれるわけなんでありますが、そういうように言い方を変えられたにもかかわらず、どうも共同開発区域にも非常に豊富な埋蔵量があるなどということが言われていたり、しかし実際には二億三千万キロだとかあるいは三億八千万キロリットルというような言い方をされたりしているんでありまして、この辺がどうもはっきりしない。そこで、掘ってみなければわからないという言い方ではなしに、これだけでかいことをやろうというわけなんですから、具体的な推定をどのくらいにされているのか、こういうことをこの際お聞かせを願いたい。これは後の質問との関係でかかわり合いが深いものですから、ぜひ両大臣からも述べていただきたいと思います。
  220. 古田徳昌

    ○古田政府委員 通産省の石油及び可燃性天然ガス資源開発審議会で、日本国周辺海域の石油、天然ガスの埋蔵量の試算をしたわけでございますが、その試算によりますと、日本周辺海域全海域につきまして約十三億キロリットルの可採埋蔵量が推定されております。そのうち沖繩・東シナ海地域にその大半が集中しておりまして、約七億キロリットルの可採埋蔵量が当該地域で推定されているわけでございます。  なお、石油や天然ガスの埋蔵量の把握につきましては、ただいま申し述べました究極可採埋蔵量のほかに、その前提としまして賦存量、つまり貯留岩中の炭化水素量というとらえ方でございますが、原始埋蔵量というとらえ方がございます。この原始埋蔵量というとらえ方をしてみますと、これは私どもの方で石油開発公団の技術等の協力も得ながら試算をしたものでございますけれども、そのような貯留岩中の炭化水素量というとらえ方で把握をしてみますと、この当該共同開発区域自体において七億二千二百万キロリットルというふうな一つの推計もございます。  したがいまして、外務省としましての約七億キロリットル、この当該共同開発区域におきます可能性としての七億キロリットルといった場合には、ただいま申し述べました賦存量全体についての指摘ということで考えられているというふうに私どもとしては思っております。
  221. 清水勇

    ○清水委員 いまの話の中に出てくる原始埋蔵量ということですが、この原始埋蔵量から実際に石油がとれる、石油になるというのはせいぜい三〇%か四〇%ぐらいじゃないのか、こういう見方がかなり有力にあると私は思うのですけれども、そうなってくると、結果的に実際に、石油が埋蔵されている量というものは二億何千万キロリットルという程度になるんじゃないか、こういうふうに思うのですが、その点はどうですか。
  222. 古田徳昌

    ○古田政府委員 御指摘のとおり、究極可採埋蔵量につきまして当該共同開発区域についての試算をしてみますと、先ほど言いました沖繩・東シナ海海域全体の約七億キロリットルのうち二億三千五百万ないし三億七千六百万という、これは前提としましてのデータの使い方等によって差があるわけでございますが、そのような試算がございます。
  223. 清水勇

    ○清水委員 私もいろんな資料を見ているわけなんですけれども、どうもこの共同開発区域の場合には二億三千万キロリットル程度じゃないのか、こういう見方が有力だというふうに理解をしております。  そこで、この量の埋蔵物といいましょうか、石油なら石油を御承知のように協定によって等分に配分をする、こういうことにしようというわけなんでありますから、いままでよく政府筋の説明を聞くと、この共同開発区域の石油埋蔵量は中東クラスの有望なものであるなんというようなことが言われておりましたが、私は、これはいささか誇大宣伝じゃないか、こういうふうに思わざるを得ないというふうに思いますが、通産大臣どうですか。
  224. 田中龍夫

    田中国務大臣 もちろん掘ってみないことにはわからないのでございます。しかしながら、エカフェの調査あるいはまたその後のいろいろな調査におきましても、相当有望であるということが言われておるのであります。われわれは、何はともあれ、今日の日本といたしましては、石油の問題につきましては、何とかして国内に、また国内になくとも何とかして日本の周辺にこの給源を求めたいという願望は、これはもう先生方でもみな同じであろうと思うのであります。そういうことに比べましても、イギリスの北海油田の実例を考えましても、われわれはまことに羨望にたえない次第でありまして、この大陸棚開発によりまして相当量のものがもし出るとするならば、日本にとりましては私は大変な国家的な意義のあることである、かように考えております。
  225. 清水勇

    ○清水委員 どうも、私の聞かんとしていることと違った答弁が返ってきているわけなんですが、いずれにせよ、私はとうてい中東クラスの油田がそこにあるなどというような認識は持ち得ないわけなんでありますが、それはそれとして、実は商工委員会の調査室で出されたこの資料を拝見をすると、四十八年度のエネルギーの、需給実績は石油換算で四億一千万キロリットルである、こういうふうに報告されております。そこで聞きたいことは、五十二年度の需給実績の見込みはどの程度になるのか、お答えを願いたいと思います。
  226. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 まだ経過途中でございますので確定的なことを申し上げられませんが、御承知のように、不況が長く続いておるといったようなことから、五十一年度に対してさしてトータルエネルギーの量はふえてこないのじゃなかろうかと思います。そういったことを前提といたしまして、全体で、全部石油に換算いたしまして、大体四億キロリットルをやや超える程度ではなかろうかというふうに考えております。
  227. 清水勇

    ○清水委員 いずれにしても、ここまで不況で生産が落ち込んでいる。そういう状況であるにもかかわらず四億キロを超す実績が見込まれている。     〔中島(源)委員長代理退席山崎(拓)委員長代理着席〕 こういう際に、この共同開発区域からの予想される雄産量というのは、私は、これはどう目いっぱいに見ても、僅々三カ月分かその程度ではないのかというような感じを抱かざるを得ないわけであります。そこで、外務大臣がいままでしばしば共同開発についての緊急性あるいは必要性を声を大にして強調をされてきているわけでありますが、どうもそんなに声を大にして強調されるほどのものではないのじゃないか、こういうふうに私は思いますが、いかがでしょう。
  228. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 あるいは外務省で作成いたしました日韓大陸棚協定のパンフレットにおきまして、きわめて有望な海底油田であるということが記してありますし、そこに、この石油埋蔵量は七億キロリットルを超えるものと推定されておりますというようなことを書いたものでございますから、ただいまのような御批判もいただいたわけでありまして、その後、さきの国会でいろいろな御議論がありましたので、この点につきましては、賦存量で見れば七億キロリットルを超えるものとも推定されますというように実は訂正をいたした経過もございます。  しかし、こういった埋蔵量につきましては、実際に石油の存在が確認されましても、なお数本のボーリングをしていきませんとはっきりしたものはわからないということでございますが、ただ、私どもは、石油開発につきまして北海石油の例もございますし、日本近海におきまして有望な油田が開発することができれば、これは日本の経済にとりましてもまことに心強い限りでございます。そういった趣旨で申し上げておるのでございまして、その状況は御理解をいただきたいと思います。
  229. 清水勇

    ○清水委員 私は、ここでちょっと話題を変えてお尋ねをしてみたいのですけれども、この共同開発の経済的メリットという点について聞いてみたいと思います。  ここに十月三十日付の朝日新聞の切り抜きがあるわけでありますが、この報道によると、石油開発公団の某理事は、共同鉱区の埋蔵はせいぜい二億キロリットルどまりである、こういうふうに言い切っているわけですね。私は、繰り返して言うようですけれども、そういう状況であるということは、共同開発区域に商業生産ができるだけの石油がないと見る方が妥当なんじゃないか、私はどうしてもそう思わざるを得ない。そういうところに事もあろうに巷間五千億円とも言われるような巨額な開発資金をつぎ込む、こういう話があるわけなんでありますが、どう見ても経済性の乏しい開発投資だと言わなければならない、こんなふうに思わざるを得ないわけですけれども、この点通産大臣はどういうふうに考えておられますか。
  230. 田中龍夫

    田中国務大臣 その問題でございますが、私どもは、経済性があり、十分われわれの期待に沿い得るものである、こういう考え方で進んでおる次第でございますが、なおまた、最近におきますそういうふうな発表等もございますれば、政府委員の方からお答えをいたします。
  231. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 先ほど来お話が出ておりますように、この共同開発地域にはどの程度の埋蔵量があるか、あるいはどの程度可採可能性があるかといったようなことにつきましては、まだこれから本格的な物探あるいは試掘に着工しなければ、本当のはっきりしたことは言えないわけでございますが、一応先ほどお話に出ておりましたエカフェの調査等によりまして有望な地域とされておるわけでございます。そういった意味合いにおきまして、本法案が成立の後、日本開発権者韓国側の租鉱権者とともにさらに本格的な探鉱活動を続けていくということになろうかと思います。したがいまして、いま五千億という御指摘もございましたが、どの程度石油の層が賦存するか、あるいはどういった水深のところにどのような規模で油層が発見できるかといったようなことを見てからでないと、開発資金がどの程度になるかということを申し上げづらいわけでございます。  ただ、この際申し上げておきたいことは、日本といたしましては、一定の経済成長を維持するためにはそれに必要とするエネルギーをどうしても確保しなければならないということになるわけでございまして、一つの試算によりますと、毎年六%程度の経済成長を続けてまいりますためには、昭和六十年度時点において、トータルエネルギーで一〇・八%の省エネルギーが実現したといたしましても、六億六千万キロリットルのエネルギーが必要となるというふうになっておるわけでございまして、御承知のように、八〇年代後半から九〇年代にかけて石油の増産の限界が来るということも、現在国際的に共通の認識になっておるわけでございます。  その場合、日本といたしまして、一次エネルギーの七三%まで石油に依存いたしておる、しかもその石油につきましては九九・七%まで海外に依存いたしておる、こういうことでございまして、石油の依存度を低減するために、国産エネルギーなりあるいは石油に代替するエネルギーの開発に努力いたしておるわけでございますが、それにおきましても、やはり一定の限界というものがあるということになりますと、石油確保ということも非常に重要な問題になってくるわけでございます。  日本の経済成長を維持するために必要とするエネルギーは、単一のエネルギーあるいは単一の地域から十分確保するということは困難でございます。そういった意味合いも含めまして、周辺大陸棚における石油開発ということは、きわめて安定的な供給ソースでもある、さようなところから、もちろん経済性と申しますか採算性ということも当然頭に入れていく必要がありますが、近くにおいて対日供給のできる、日本に持ち込める石油確保ということも非常に重要なことであろう、かように考えておるわけでございます。
  232. 清水勇

    ○清水委員 そこで、ついでに聞いておきたいのですけれども、結局いま長官のお答えによれば、掘ってみなければわからない、こういうことにもつながるわけなんですけれども、そこで、仮に実際に探査をやった、ところが埋蔵量が意外に少ないということがわかった、どうもこれじゃ採算に合わない、こういうことになれば、つまり商業生産のベースに乗らぬわけなんですから、私は、当然そういう場合は開発見合わせなんということもこれはあり得るんじゃないか、そんなふうな感じを持つのですけれども、いずれにしても、そういう点についてどんなふうな考え方を持っておられるのか、参考までに聞いておきたいと思います。
  233. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 石油開発というものは、私から申し上げるまでもなく、非常にリスキーなものでございまして、いわゆるボーリングの成功率は一八%と言われております。その一八%の中からさらに、御指摘のように商業生産に乗るものが二・七%というのが世界的な平均値でございます。さようなところから、ボーリングに成功いたしましても、さらに精査した後、商業生産に乗るか乗らないかという判断もいたすわけでございます。当然、採算性に乗らない場合には商業生産に入り得ないということも、観念的にはあり得ることかと思います。
  234. 清水勇

    ○清水委員 そこで、さっきも外務大臣にお尋ねをした経過がございますが、これまで緊急性なり必要性なりということがしきりに訴えられてきているわけであります。ところが現実は、協定の第十条の二項でも、探査権の存続期間は八年だという規定がございますね。そこで、常識的なことはわかりますけれども、探査から試掘、そして採掘から生産というのでしょうか、これまでに要する期間というものは、私の承知をしている認識では十年くらい必要なのではないかというふうに考えているわけですが、その点はどうでしょうか。
  235. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ケースによって異なるかと思いますが、平均いたしまして八年半から十年かかっておるわけでございます。  昨年の九月から営業生産に入っております阿賀沖につきましても、ちょうど八年半ほどかかりまして商業生産に入った、こういうことでございます。
  236. 清水勇

    ○清水委員 そうしますと、さっきの長官の説明にもありましたが、調査室の資料によっても、たとえば、十年後は出ておりませんが、六十年度の数字が出ている。これによると、全体のエネルギーの需給計画の中で、六十年度に石油だけで四億八千五百万キロリットルを必要とする、こういうふうに見込んでおるわけでございますが、十年たたなければものにならない、場合によれば商業生産ベースに乗らないというようなこともあり得るかもしれない、こういう状況のものを、先ほど来問題になっているように、どうして非常に準備不足のまま突貫工事を連想させるような形で協定成立を急いだのかというようなことが腑に落ちない。つまりそういう点で言えば、緊急性あるいは必要性、これは大臣は、これから先見通しが悪くなるから少しでも自給体制を確保したい、こういうふうに言われているけれども、そのことは私は否定をしないが、しかし、こうまでして無理な手続を踏んで、緊急性とか必要性という名のもとに押し切っていくということが一体妥当なのかどうか。私は妥当性を欠くというふうに考えるわけでありますが、その辺どうでしょう。  いままでの協定にまつわる外務委員会等で、外務大臣はしきりに力説をされていたわけですけれども、大して埋蔵量もない、しかも十年先のわが国の石油だけの需要量が四億八千五百万キロリットル、ところが、現実の問題として一遍に掘るわけではない、向こう三十年間という生産を協定は想定をしておるわけなんですから、そうなってくれば、単年度における供給量なんというものはごく少量じゃないか、そういうものをなぜこんなに急がなければならないのかというようなことがどうも理解できない。その辺を明らかにしていただきたいと思うのです。
  237. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいま先生が御指摘になりました数字は、一昨年八月の時点の数字でございまして、六十年度の四億八千五百万キロリットルの確保も困難ではなかろうかといったような反省からいたしまして、ことしの八月の総合エネルギー調査会の答申では、石油に期待する必要最小限の量として四億三千二百万キロリットル、かれこれ五千万キロリットル石油に対する依存度を低減しようという努力目標を設定いたしておるわけでございます。  先ほどもちょっと申し上げましたように、さようにエネルギーをめぐる内外の情勢がむずかしくなってきておる。特に石油につきまして、OPECのいわゆる石油戦略といったようなことを別といたしましても、世界における埋蔵量がだんだん減ってくるにつれまして、供給制限と申しますか、増産の限界が来る可能性が強いという認識でございます。  さような意味からいたしまして、御指摘のように、どの程度この共同開発区域から原油を採取できるかということは、断定的なことは申し上げられないわけではございますが、近いところで、しかも日本に安定的に供給される油をできるだけ早く確保したい、こういうことでございます。また、これも先ほど御指摘のように、石油開発における懐妊期間が非常に長いわけでありますから、きょう言って、もう一、二年でというわけにまいらないわけでございますので、そういった意味合いも含めてできるだけ早く開発に着手したい、こういうことでございます。
  238. 清水勇

    ○清水委員 私は、石油に限らず、エネルギー全体についてその安定供給を確保するために打てる手は速やかに打つ、このことを否定するつもりはありません。しかし、だからといって、今日大陸棚協定をめぐり、また開発をめぐってたくさんの疑問が残っている。しかも、外務省は当初七億キロリットルというようなことを言われていたが、現実にあの区域では二億三千五百万キロぐらいではないかというような、こういう見方もされてきている。そういうことになると、何もここで半年、一年を争うというほどの緊急性とか、またそれまで無理をしなければならないという客観的な必要性もないんじゃないか。どうしても、何回説明をされても長官の説明には余り説得力がない、私はそう感ぜざるを得ない。  ですから、たとえばこの協定を強行するとか国内法成立を急ぐというのは、その裏に政治的なものがあるんじゃないか。たとえば日韓癒着の問題などがしばしば批判をされているわけでありますが、しかし、そういう問題もちっとも解明をされない、疑惑がそのまま残っている。あるいは中国との関係一つをとってみても、新しい紛争の火種をつくることにつながりはせぬか、こういう心配がずっとある。ところが、これについてもちっとも解決のめどが立たない。そういうことなどをあわせて考えてみると、私は、政府が繰り返し説明をされている説明というものは余り説得力を持たず、また合理性を欠くんじゃないかというふうに考えざるを得ないわけであります。  さて、そういう前提に立って、私はこの際、外務大臣にお尋ねをしたいことがございます。  あなたは、いままで繰り返し、この共同開発区域は中国とは全く関係のない日本韓国の間のものだというふうに言い切っております。まず最初に、本当に中国とは何にも関係がないのか、この辺を明らかにしてもらいたいと思います。
  239. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 中国とは何の関係もないというようなことは申したつもりはございませんが、この大陸棚地域、東シナ海あるいは東海と言っておりますが、これは日本韓国と中国との隣接する海域であることは確かでございます。この海域につきまして、それぞれ地先沖合いに対しましてどこまで開発できるか、こういうことでございますが、この地域につきましては、これは韓国と中国との相対峙しておる大陸棚と見ますと、その中間線より日本側の地域韓国側地域であるということでありまして、また日本と中国との間をとってみれば、これは中間線よりも日本寄りの地域であるということで、仮に自然延長論という論拠に立ったといたしましても、これは韓国と中国との間の自然延長を両方の立場から、まあこれはやはり協定がなければその中間で線を引かざるを得ない、そしてその韓国寄りの地域である、こういうことでありますし、日本と中国との間は、日本といたしましては中間線をもってお互いの境界とすべき筋合いのものであるという考え方をとっておるわけでございます。  そういう意味におきまして、中間線理論をとりましょうとも、また自然延長論をとりましょうとも、これは中国の大陸棚につきましての主張を損なうものではないというのが私ども考えているところでございまして、その点は、中国側によく御説明する機会があれば、私は必ず御理解がいただけるものと思っております。不幸にいたしまして、詳細御説明する機会を与えられておりませんが、今後ともそのような機会がありますれば、いかなる意味におきましても中国の権原を侵すものでないということを理解をしていただきたい、こう考えておるところでございます。
  240. 清水勇

    ○清水委員 率直に言って、エカフェの調査報告書もそうでありますけれども、東シナ海から九州にかけてのいわゆる大陸棚というものは、地質学的に見た場合中国大陸から張り出している、そういうものであることはこれはもうはっきりしているんじゃないかと思うんですね。だから、中国が自然延長論で中国の立場を主張をしているわけでありますが、少なくとも中国としては、中国と深いかかわり合いのある大陸棚について日本韓国だけで勝手に決めることは許されない、こういうことを言い続けているわけですけれども、これはもう午前中からずっと質疑のあるところですから、私から反復することはしません。反復することはしませんけれども、どう考えてみても、関係国の間で協議をすべきではないかという中国側の主張は私は条理にかなっているんじゃないか、こう思えるんです。  ですから、いま通産大臣は紛争じゃないんだ、こういうふうなお話があるんだが、現実に中国の主張、日本のまあ主張といいましょうか、考え方、不一致であることは間違いない。だから、状況によってはこれが対立をし、紛争に及ぶというようなこともあり得るわけですね。だから、そういう状況であればあるほど、この問題について大臣が本気になって中国と話し合って解決をしていく、こういう用意があるかどうかということを私はこの際聞いておきたいと思うのです。  いまも、中国側の理解を求めるようにいろいろ努力をしたいんだというふうに大臣は言われた。ただしかし、私はここで考えてもらいたいと思うのは、たとえば中国の存在というものを事実上無視をして一方的な線引きをした。そして、あなたの国には関係がないんだからぜひ了解をしてもらいたい、承知をしてもらいたい、こういう話を幾ら持ちかけてみても、私は相手の国、つまり中国なら中国が乗ってくるわけはないんじゃないかというふうに思えてならないのです。  ですから、先ほども問題になったたとえば協定の二条の第一項にかかわる座標の六、座標の七あるいは座標の八、こういう具体的な問題になればなるほど、協議をして解決をしなければならぬというような問題点はたくさんあると思うんですね。本来ならば、事前に中国側と協議をし、話し合って、いわゆる中間線なら中間線の設定をすべきであったはずですが、これがなされていない。  アジア局長の説明によれば、二十回にも及ぶ理解を求める話し合いをしたけれども、どういうわけだかちっとも中国側は耳を傾けてくれない、こういう説明でもありますけれども、しかし、現実の問題としては、中国の立場をおよそ否定をするそういう状況の中であの協定が調印をされる、そしてわかってもらいたい、理解をしてほしいということを幾ら言ってみたって、これは問題の解決にはつながらないのじゃないか。本気になって事態を解決するために、中国側が話し合いを持とうという気分にはならないのじゃないか。ですから、私は、外務大臣がこの際、いままでの誤った態度、皆さんの方から見ればどういうふうに言われるかわかりませんが、私に言わせれば誤った態度を改める、そうして、本来の話し合いをするという、そういう姿勢に立って中国側と接触を持つ、こういう新しい態度をとらなければまずいんじゃないか。  そうでなければ、幾らアプローチしてみても、いまのような一方的なものでは、いわゆる話し合う、協議をするというような場面をつくれないんじゃないか。そういう点について、大臣が再々努力を尽くすことはやぶさかではないと言われているけれども、しかし、そのプロセスに問題があったわけですから、そのことに具体的に触れて、この際、新しい姿勢で中国側と接するという、こういう立場をとるべきではないか、こういうふうに思うわけですけれども、いかがでしょう。
  241. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 中国との間には、わが方の考え方を理解してもらうように今後とも努力をいたします。  ただ、ここではっきりさしておかなければならないことは、それぞれ日本の地先沖合いにおきまして、これは相対する国が中国であるから何らの手もつけられない、こういう理屈もまたないわけでございまして、それぞれ問題にならないという範囲を決めて、そしてそれぞれの活動をしておるのが、これが実際のところであって、そのそれぞれの活動が理屈に合ったものであれば、私は、それは当然行って差し支えないことであろう、このように思います。  そうでなければ、一切東シナ海方面に対しましては日本は何にもできない、こういうことになるわけでございますから、それはまた極端な話であろうと思うのでございます。したがいまして、日本韓国との間にまたがる大陸棚につきましては、あらゆる見地から中国の権原を侵さないように細心の努力をして定めましたこの共同開発区域でございます。したがいまして、この点につきましては、やはり中国に対しましては理解を求める、こういう態度でいくべきものであろう。事前の承認を得て行うべき筋合いのものではないというふうに考えております。その考え方は今日も変わっておりません。しかし、日本と中国との間でございますから、これが日中間の友好関係を損なうものになっては、日中間の国交の問題として、これは好ましいことではございません。そういう意味で、私どもは、中国側の理解を得たい、そして、日中の国交にこのことが支障を生ずることのないように、その方向で努力をいたしたい、こう申し上げているわけでございます。
  242. 清水勇

    ○清水委員 外務大臣、そういうことをずっと前から言われているわけですけれども、中国との話し合いを重視をする、問題の解決のために協議をすることを重視をするということは、エカフェの調査報告でも明らかなように、大陸棚開発と言えば、本命は尖閣列島付近の方にむしろウエートがあるんじゃないか、私はこう思わざるを得ないわけですね。そうなってまいりますと、いよいよもって中国との話し合いの関係ということが一層必要になるし、また重視をしなければならない課題になると思うんですね。  現にいま問題になっている地域について言えば、韓国日本の間の棚であって、中国にはちっとも関係がございませんよとおっしゃるけれども先ほど土井委員質問について、現に座標六から座標八に至る線引きについて言えば、これは中国側が、わが方の主権を侵すことになりはせぬかとか、あるいは一方的に、いわば相談もしないで勝手に決めるなんということは許されない行為だと言って、いわば抗議をする、あるいは日本政府に異議の申し入れをするというようなことはあたりまえのことだと思うんですね。だから、現実にいまここには何も問題がないんだからいいじゃないかとおっしゃるけれども、問題がないのではなくて、現に問題がある。しかも、さらに先行きのことを考えた場合には、もっと中国との間柄というものを配慮をしていかなければならないという重要な要素がある。  だからこの際、単にいままでの経過を説明をし、あるいは日本の立場をわかってもらい、そして了解を求めるというような、これはいわば話し合い——話し合いと大臣はおっしゃるけれども、やはり一方的な態度だと思いますね。話し合うということはそういうものじゃなしに、やはりそれとは違った性格のものなのですから、こういう点で私は、将来のたとえば尖閣列島付近の大陸棚をどうするかというようなことは、必ず次の段階で一つの課題になるはずなのですから、そういう時期のことを想定すればするほど、この際は国内法成立ということにはやるというよりも、焦るというよりも、そういう中国との関係をむしろきちっとしていくことの方へ力点を置くべきじゃないか、それからでも遅くはないんじゃないか、こう思いますが、どうでしょう。
  243. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 共同開発地域より南の方が、これはエカフェの調査におきましても、有望な地域が続いておるわけでございます。そして、この点につきましては中国との間に話し合いをして開発すべきである、その点につきましては私も全く同じ見解を持っております。今後とも中国との間には、この大陸棚の問題につきましていろいろ相談していかなければならないことが出てくるであろう、その点につきましては私も全く同じふうに考えます。  しかし、いま御提案申し上げております共同開発地域につきましては、中国側が仮に自然延長論というたてまえのもとに、東シナ海、黄海等の大陸棚は中国側から発達してきたものである、地勢学的にそうだ、したがいまして、朝鮮半島とか日本列島とかいうものは大陸棚を保有しないものだということにつきましては、日本としては、これはあくまでも認めるわけにはいかない考え方でございます。したがいまして、中国と大陸棚考え方につきまして、本来のアジア大陸と申しますか、それだけが大陸棚を持って、朝鮮半島なり日本という島は大陸棚の権利はないんだという式の考え方は、そこで中国との話をつけろと言いましても、私は、これは日本として引き下がるわけにはいかないことがあると思います。  その点は、日本としてはあくまでも、日本日本の土台であります大陸棚に乗っておる、同じ大陸棚に乗っておる、朝鮮半島もそのように大陸棚を持っておるという考え方をとっているわけでございまして、その点はなかなか話し合いはむずかしかろうと私は考えておるところでございます。しかし、今後とも中国との間に話し合いを続けてまいる、これは日本と中国との友好関係の増進という観点から私どもは願っていることでございまして、しかし、大陸棚につきましての根本的な考え方につきましては、日中友好関係の増進とは別の角度から、やはり私どもは、主張すべきものは主張しなければならない、かように考えております。
  244. 清水勇

    ○清水委員 いま大臣はそう言っておられますけれども、アジア局長がたびたび言われるように、中国側と東シナ海における大陸棚の線引きなら線引き、区分なら区分をどうするかという話を一回もされていないわけでしょう。中国側としては自然延長論をもってこれまで主張してきているけれども、さて日本には日本のこういう主張がある、そのことをお互いにテーブルについて話し合い、あるいは解決をするための協議をされていないわけです。ですから、なかなかむずかしいと言ってみても——それはむずかしいでしょう。けれども、やはりこれは中国側でも、隣接する関係国と話し合って決めるべきであるということを言っているのは事実なのですから、むずかしいと言ってみても、話し合いのテーブルにつくという状況の中で、粘り強くわが国はわが国の立場を主張していく、そういうものを通しながら全体として、いわゆる中間線なら中間線という議論になるかどうか、一つの到達すべき結論を導き出す、こういう努力をしなければいけない。そういう努力を少しもしないで、とても中国側の主張はのめない、しかも、わが国の立場はこういう立場だから、これでやらざるを得ないというようなことを重ねていたのでは、私はちっともらちが明かないのではないかと思います。  ことに、いま大臣がいみじくも言うように、今後尖閣列島付近なら尖閣列島付近をどうするか、こういう場合に、ここで中国との関係を悪化させるというのは、将来のそうした交渉に暗影を投げかける結果になるのじゃないか。だから、そういうことを思うにつけても、将来に禍根を残すことのないように、この際、国内法成立の前に、たとえば大臣がこの間中国へ行くという決意を披瀝されているし、私も大いに激励をしたい気持ちがあるわけですけれども、行くことを通していま問題になっている状態をどう解決するか、この方こそむしろ急ぐべきではないかと私は思う。また、そのことはわが国の百年の大計という立場からいっても非常に重要なことではないか、こう思うので、何かせっかく中国へ行くという決意を表明されたが、その後竜頭蛇尾の感がないとは言えない、この点はむしろ決意を新たにして急ぐべきではないか、こういうことを申し上げたいのですが、どうでしょう。
  245. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私どもといたしまして、中国側の理解を得るために最善の努力をいたしたい、そういう気持ちは変わりございません。しかし、いま、もともとのスタートがおかしかったのではないか、関係国が集まって協議すべきではなかったか、こうおっしゃるわけでございます。中国は関係国が協議して決すべきものであるということを言っておりますが、それでは即座に協議しようということは言わないのでございます。中国は韓国と一緒に協議をする意思はないということも、これまた容易に想像されるところでございます。そして中国側の言うことを推していけば、将来いつの日にか中国が韓国承認し、お互いに国家として認め合って外交関係が樹立されるときまでこれは待たざるを得ないというのは、言外に明らかな事実でございます。  問題といたしまして、しからば韓国側がそこまで開発を待っているかということになりますと、これまた、それは待てない、こういうことでございまして、日本といたしましても石油開発を急ぐという事情にあるわけでございます。したがいまして、日本韓国にまたがっている部分について、しかも中国側に対していかなる見地からも侵害してないという区域に限って日本韓国の責任において開発をしていく、こういうことしか実際問題として手段はないということで、この開発に踏み切ったわけでございますので、将来の問題といたしましては、これからさらに南の地域につきまして、日本と中国との間には大陸棚につきまして境界の画定をいたす必要がある、そういったことにつきましてはいつでも協議に応じようということを先方に申し入れておるわけでございますけれども日本との間で大陸棚の境界をいかにすべきかということにつきまして、中国側の方に協議に応ずる意思がいまあるとは思えないのでございます。  しかし、将来の問題といたしまして、これは経済水域の問題も出てまいりますでしょう、漁業水域の問題も出てまいりますので、日中間におきまして、この水域の問題につきまして、二百海里時代を迎える準備といたしましても協議に入りたい、こういう希望を私どもとしては持っております。先方に対しまして、先方の意思の確認を求めておる、こういう関係にございます。したがいまして、この共同開発区域について中国が歓迎をするということは、私どもとして考えられないところであろうと思います。しかし、この共同開発につきまして、中国側に対してあくまでも礼を尽くして理解を求めてまいるということに私どもは最善の努力をいたします。日中間の国交上この問題が支障にならないように、その点につきましてはできる限りの努力をいたす。もちろん、先方のことでありますから、必ず先方との間で、この問題は大したことではないということを申し上げるわけにはいきません。いきませんが、私どもの立場といたしまして、この問題が日中間の障害にならないように、その点は全力を挙げて努力するということを申し上げるにとどめさせていただきたいのでございます。
  246. 清水勇

    ○清水委員 いずれにしても、日韓大陸棚協定及び共同開発という方式について今日まで中国側は了解をしていない、これははっきりしているわけですね。そうすると、了解を求めるように努力を続けていくけれども、現実には了解が得られないというような場合も想定されているわけですか。
  247. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 たびたび申し上げておりますが、中国側の理解を求めたいと考えておるわけであります。しかし、中国側の了解といいますか、中国側がこれを承認するという意味で、そういう中国側の行為を日本側として求めているわけではございません。中国側に対しまして、日本韓国との共同開発について中国側が理解を示すということ、それを私どもといたしまして期待をいたしているわけでございます。
  248. 清水勇

    ○清水委員 それはわかっておるのですけれども、そのために何をなすべきかということが今日の課題になっているわけですね。そこで、先般当委員会でも、外務大臣みずから、訪中をしてでも理解を得られるように最善の努力を尽くしたいと言われたと思うけれども、そのことについてはその後どうなっていますか。
  249. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私自身の訪中のことにつきましては、まだ時期等は決めるに至っておりません。
  250. 清水勇

    ○清水委員 時期は決まりませんが、訪中して事態の打開に当たるというか、理解を求めるように努力をしたいという気持ちは変わっているのでしょうか、いないのでしょうか。
  251. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 その点は変わっておりません。訪中する機会があれば、この問題につきましても十分な理解をいただけるように最善の努力をいたしたいというふうに考えております。
  252. 清水勇

    ○清水委員 時間がなくなりましたので、最後に一つだけお聞きをして終わることにいたします。  最近、御承知のように、韓国の政情はただならぬものがあるように思います。その不安の度というものがますます増大をしているようにうかがえる。果たして来年はどうなるのか、こういうことすら懸念をする識者がふえてきている。そういうときに、韓国側から早期批准というような要請というか、圧力がかかってきているようでありますけれども、しかし、現実の問題として、先ほどもたとえば領海の問題をめぐってこれ以上審議が進まないような、資料不足というような事態もある。だから、政府考えるほどそう短期間にこの問題が円滑に処理できないということは、これはもう自明の理だと思うのですね。  ですから、私はそういう韓国側の政情不安というような状況を思うにつけても、十分慎重を期する、たとえば先ほど中国と韓国との問題について触れられましたけれども日本韓国日本と中国という二国間同士の話し合いの仕方だって幾らでもあり得るわけなんですから、そういうことなどを重ねながら、言ってみれば今日さまざまな疑問と問題が投げかけられ、かつまた、中国側から抗議等の意思表示が行われておる。朝鮮半島といえば、御承知のとおり、北には朝鮮民主主義人民共和国も存在をする。朝鮮民主主義人民共和国とは何も関係がないのだというような外務省の見解もあるようでありますが、朝鮮半島というとらえ方をすればこれは重大な関係を有する。ですから、今後とも東シナ海の大陸棚開発をどうするか、こういう問題については、隣接をする関係国との間で話し合い、そしてその解決を求めていく、こういう基本的な態度をとるべきことがよりベターな道じゃないか、こういうふうに私は考えているわけでありますが、その点について大臣の最終的な御発言を得て、私の質問を終わりたいというふうに思います。
  253. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 共同開発区域の朝鮮民主主義人民共和国との関係でございますけれども、私どもといたしまして、この共同開発区域については朝鮮民主主義人民共和国とは何ら関係がないというふうに考えております。将来、朝鮮半島が本当に平和的に統一をされるといったことが私どもといたしましても望ましいわけでございます。そのための環境づくり等につきましては、日本政府としても努力をいたすべきものと考えるわけでありますが、現状におきまして、さきに発表されました軍事境界線につきましても、朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる南北の線、その線より北側について設定をされたというふうに私ども理解をいたしております。したがいまして、先々朝鮮半島が統一をされました場合におきましては、当然韓国側の立場というものは新しい政府に引き継がれるべきものである、そういう筋合いのものであるというふうに考えておる、そういう海域に属するものと考えておるわけでございまして、この点は関係のない地域である。  なお、関係国が集まって協議をすべきだという点につきまして、それができればそれにこしたことはないということは申し上げられると思います。しかし、現実問題といたしまして、そういう事態がいつ来るかということは、これはなかなかわからないことでありますので、現状におきまして開発の可能な方法といたしましては、ただいま御提案したような方法しかなかった、こういうことでぜひとも御理解を賜りたい次第でございます。
  254. 清水勇

    ○清水委員 いろいろなお質問事項がございますが、先ほどの未提出の資料の部分ともかかわり合いを持っていることでもありますので、きょうはこれで質問を終わることにいたします。
  255. 山崎拓

    山崎(拓)委員長代理 長田武士君。
  256. 長田武士

    ○長田委員 資源の乏しいわが国にとりまして、自主開発することによって資源確保するということ、それは私は当然だと思いますし、また急務であると考えられるわけであります。したがって、私は、わが国の沿岸における開発について異論を唱えるものでは決してありません。しかし、この日韓共同開発は多くの問題をはらんでおるわけであります。  その第一点は、わが国の二百海里水域内での共同開発であるということ、第二番目には、隣接国である中国との話し合いができていない、そして開発を進めるということ、第三には、隣接国と紛争を起こし得る協定を締結し、それがわれわれの子孫であります二十一世紀の国民を拘束をするということ、これが果たして妥当であるかということは、私たちは非常に疑問を抱いております。こうした観点から私はこの協定には反対であります。そういう点で質問をこれから進めてまいりたいと考えております。  その前に、本日、先ほど同僚委員からも質問があったそうでありますが、報道によりますと、外務省首脳は、日韓大陸棚特別措置法案が未整備でも日韓大陸棚協定批准することがあり得るとの考え方を明らかにした、これは外務省の公式見解と受け取ってよろしいかどうか、この問題について改めて政府の見解を承りたいと思います。
  257. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 本日の毎日新聞に掲載されましたような、国内法が未整備のままで批准することもあり得るというようなことを申したことは絶対にございません。そのことは明白にいたしておきます。
  258. 長田武士

    ○長田委員 それでは誤報ですか。
  259. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 その点につきまして、もしそのようなことであれば誤っておると思います。私は、国内法の問題につきまして、ぜひともこの国会で御承認がいただきたい、そういうことを強く申したわけでございます。  韓国側からは、先般金大使が見えまして、韓国といたしましてはぜひこの臨時国会国内法承認されることを期待をいたしておる、元来協定は、国会承認がありましてから、韓国側としては、一日も早く批准をいたすべきものである、このような主張をしてきておるわけでございまして、わが方からは、次期国会に提出して必ずこの承認を得られるように最大限の努力をいたします。こういうことを申して、韓国側には待ってもらっておるのが現状でございます。したがいまして、私どもといたしましては、この協定実施に伴う国内法をこの国会でぜひとも承認をしていただきたい、こういうことを強く申したわけでございます。  質問として、国会承認できなかったらどうも見通しが暗くなるのではなかろうかというような議論もあったわけでありますが、私どもは最善を尽くします。そういったことから、もし万一国内法につきまして国会の御承認がいただけない場合には、日本政府といたしましては大変困った立場に立つ、従来から、この国会承認をいただけるまでとにかく待ってもらいたいということを言っておるわけでありますから、御承認がいただけないということは、わが方といたしまして大変困った立場に立つんだ、こういうことを申しておったわけでございます。そういったときに、もしそれでは国会の御承認をいただけない場合にはどうするのだというような質問も当然出たわけでありますけれども、それにつきまして、それは仮定のことでございます。私どもといたしましては最大限の努力をして、何とか御承認をいただけるように目下努力中だ、こういうことであるわけでございまして、国内法が未整備のままであった場合に批准はしなければならなくなるであろうというようなことは絶対に申しておらないということを、これははっきり申し上げたいと思います。
  260. 長田武士

    ○長田委員 それでは、国内法が通らない限り、これの批准はあり得ないというふうに理解してよろしゅうございますか。今国会承認が得られなかった、そういう場合、批准はしない、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  261. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私どもといたしましては、いまおっしゃいましたように、国内法をぜひ御承認をいただいて、そして合理的な開発をいたしたい、こう考えているわけでございます。円滑なる開発のために国内法はどうしても必要だ、このような考えをいたしておりますので、ただいまのところ、国内法が通らない段階におきまして批准をするというようなことは考えておらないということを申しておるのでございます。
  262. 長田武士

    ○長田委員 国内法が通らない限り批准はあり得ない。したがって、今国会国内法がもしか成立しない場合、この場合も批准はないというふうに理解してよろしいですね。明確にひとつその点を答えてください。
  263. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 それは仮定の問題でございますから、仮定の場合につきまして、私どもの答えをここで申すべきではないだろうと私は思うのでございます。しかし、率直に申し上げまして、国内法整備してこそ円滑なる開発ができるのでありますから、私ども国内法をぜひとも上げていただきたいということを申しておるのでございます。
  264. 長田武士

    ○長田委員 大臣、はっきりしないのですけれども、私は両方に受け取れるように思うのですよ。もしか今国会成立しない場合においては批准はやむを得ないというような判断に立っておるのか、あるいはそういうことは絶対いたしませんという立場なのか、その点どうなんですか。私は、どちらかということを伺っているのです。
  265. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ですから、私どもは、仮定のことは申し上げにくいので、ぜひともこの国会で法案を上げていただきたい。もし、この法案は上げないでもいいのだというようにおとりになられては大変困るわけでございますから、そういう意味合いにおいて、先ほど来ずいぶん回りくどいことを申し上げているような気がいたしますけれども、これはぜひともこの国会で上げていただきたい。そういうことから申しまして、この国会でこの法案が通らなくとも一向差し支えないというようにおとりになられては、私の方としては大変困るわけでございます。私どもとしては非常に困難な苦しい立場に立ちます。そうして韓国側は、その場合には一日も早い批准要求してくることは目に見えております。そうして、その批准をもしそういう段階でしなかった場合に、韓国側は次にどういう主張をするか、こういうふうに物事は発展をいたすものでございます。  したがいまして、われわれといたしましては、ぜひとも国内法はこの国会でひとつ御承認をいただきたい、こういうことを申しておるわけで、私の気持ちは御理解賜ることができると思います。よろしくお願いをいたしたい。
  266. 長田武士

    ○長田委員 理解理解と言いますけれども、どうもそういう御答弁では理解できません。大臣の何としても会期内に成立を図りたい、その願望はわかりますよ。わかりますけれども、一たん新聞に、国内法が通らなくとも批准をするのだというようなことを外務省首脳が漏らしておるということになりますれば、もしか成立しない場合でもそういうことはあり得るのだ、批准があり得るのだ、当然そう受け取ってあたりまえじゃありませんか。大臣、どうですか。
  267. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私は、そのようなことを申してはおりません。ただこの法案が——首脳というのは恐らく私のことだと思います。昨日の懇談の際に、この法案の見通し等につきましていろいろ話が出たわけでございます。しかし、私の立場といたしまして、この法案が通りませんと、これは大変むずかしい問題になる、外務省は大変に苦しい立場に立つということを申したのでございまして、その先のことは、ある程度推測がまじったことがそこへ書かれたのでありまして、この国会で通らなかったら批准せざるを得ないというようなことは、私は絶対に申してはいないのでございます。
  268. 長田武士

    ○長田委員 これでやりとりしていますと、すぐ時間がかかっちゃいますから……。この点は私は非常に理解できません。どうかひとつ、これから質問に入りますけれども、大臣、明快な答弁をお願いしたいのです。  まず初めに、大陸棚石油資源を他国と共同開発するということは、世界でも例を見ないことなんであります。その例のないことを日韓両国間で行おうとすることに関して、問題を非常にたくさんはらんでおるわけであります。そのため、外務委員会及び当委員会で同僚委員から質疑が行われたわけでありますが、こうした質疑を伺っておりますと、政府特に外務省は、協定を署名したのだから、国際信義上批准を早くしなければならないということで、われわれの質問に対して、何とかごまかせばよいというような態度がありありとうかがえるわけであります。しかし、このような協定をつくって署名をすること自体、そもそも問題があると私は考えます。したがって、外務省としては、むしろ日本の庭先を共同開発することになり、自分たちの力が足りなかったと国民にまずおわびした上で、韓国との交渉過程で共同開発という条件を示すのが精いっぱいだったと、素直に反省を述べるべきだと私は考えております。この点、大臣、いかがでしょうか。
  269. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この共同開発地域につきましては、これは御承知のように、長い経過があるわけでございます。(長田委員「よくわかっております」と呼ぶ)したがいまして、その点はもうここでくどくど申し述べませんが、そのような経過からいたしまして、この地域を本当に急いで開発をいたします場合には、やはり共同開発という方式しかなかったであろうというふうに私は考えております。
  270. 長田武士

    ○長田委員 私にはそれは言いわけにしか受け取れないのですね。私は、外務省のいわゆる反省の弁を伺っているのです。日韓間におけるところの交渉の過程で、精いっぱい努力した、しかし、韓国が譲らなかった、やむを得なく妥協いたしました、そういうことじゃないですか、大臣。     〔山崎(拓)委員長代理退席中島(源)委員長代理着席
  271. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 いまお述べになりましたことが、実際そのとおりであろうと私も思います。
  272. 長田武士

    ○長田委員 では、外務省としては反省はしているのですね、力が足りなかったということに対して。これは国民の多くの人が疑問を持っております。何で日本の庭先を共同で開発しなければならないのか。そういう点について外務省は素直に国民に反省の弁を当然述べるべきじゃないですか。そうして、これこれしかじかであります。どうかその点を御理解願って御審議を願いたいというのが本当じゃありませんか。どうですか。
  273. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 経過につきまして、御承知のような経過であり、したがいまして、日本といたしましては、日本の単独開発し得る地域である、こう考えておりましたけれども、先方との間に妥協せざるを得なかったということはおっしゃるとおりでありまして、その点につきましてはあらゆる機会に御説明を申し上げておる、このようなことで、反省ということがどういうことを意味するのかは存じませんが、私どもは、そういう従来の経緯につきましても極力ありのまま国民の皆様方に御理解を賜っておる、こういう態度でおるわけでございます。
  274. 長田武士

    ○長田委員 では、大臣、理解を求める、理解を求めると言いますけれども、これは完璧だったという感じですか。この共同開発についてはベストであったというふうにお考えですか。
  275. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 開発を急ぐ、それから韓国との間にこれ以上の紛争にならないように、しかも両国ともに利益になる開発を共同で行おう、こういうことでありますから、開発が可能になるという意味では日本にとりましても利益でありますし、韓国にとっても利益である。この点につきまして、このような歴史上大変珍しい協定をつくって、そして共同して開発をする——共同開発の例は各所にあるわけでありますけれども、今回のように双方が大陸棚につきましてフィフティー・フィフティーの管轄権を行使しながら開発をするというのは、私は、これは歴史上初めてのことではないかと思います。そういう意味におきまして、大変な苦労をしてこの協定をつくり上げたわけであります。  そういう意味で、私どもこの地域開発につきまして、日本の立場から言えばいろいろな考え方が成り立つわけでありますけれども両国の間で双方が本当にフィフティー・フィフティーの管轄権を持ちながら開発をするというような、こういう協定ができましたことは、私は歴史上大変珍しい例といたしまして、今後いろいろな面で参考になることであろう、かように考えております。
  276. 長田武士

    ○長田委員 大臣、参考になると言いますけれども、私が言っているのは、この共同開発がベストかどうかということを聞いておるのです。
  277. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 これは日本の立場から言えば、これがベストであるという、そういうことは決してないわけでありまして、両国間にまたがる大陸棚を共同して開発しようということは、これは大変な努力が必要であったことであります。そういう意味で、これしか仕方がなかった、こういうことを申し上げておるのでございます。
  278. 長田武士

    ○長田委員 結論的に申し上げまして、努力いたしたけれども、これしかいたし方なかったという結論ですね。そうですね。  次に、この日韓大陸棚共同開発につきまして、韓国の主張する自然延長論、これを日本側が取り入れたわけであります。この政府答弁を何回も伺っておるわけでありますが、これまで世界の趨勢は自然延長論である、このように政府は説明をしておるわけであります。これは世界の大勢ではありますが、公海に向かっての場合でありまして、境界画定で自然の延長論をもって画定されたというのは一つもないのですね。自然延長論、この点どうでしょうか。
  279. 中江要介

    中江政府委員 境界の画定を自然延長論でやった例はないというのは、先生のおっしゃったとおりでございます。  この日韓大陸棚協定につきましては、自然延長論か中間線論かというふうに単純に言われておるのですけれども、実体は、自然延長論というものをとりますと、日本大陸棚を持たない、この立場につながる考え方なわけなんです。  つまり、朝鮮半島から出ました大陸棚が自然に延長して沖繩海溝のところで深く落ち込む、そこまでが大陸棚で、これは全部韓国のものだ、こういう考え方でございますから、日本からは大陸棚がない。したがって、境界を画定するまでもない。いまの共同開発区域になっておりますところは全部韓国大陸棚で、韓国が独自に単独で開発できる、これが自然延長論でございます。  それに対して日本は、沖繩海溝というみぞは入っているけれども、みぞをはさんで一つの大陸棚があるんで、したがって、一つの大陸棚日本韓国が相対して共有しているから中間線論だ、こういうことでございますので、その場合には中間線まで日本が単独で開発できる。  そういたしますと、落ちつきましたのはどういうことかというと、韓国は自然延長の先々まで単独開発するという権利を自分で制限しました。日本は中間線まで単独開発できるというものを自分で制限しまして、それぞれ半分ずつで手を打った、これが実態でございます。
  280. 長田武士

    ○長田委員 いつも例に引かれますのは、イギリスとノルウェーとか、あるいは豪州とインドネシア、そういう例が引かれるわけですね。私は、そういう点では非常に、外務省は特にそういう点に対しては私たちの理解とは全く逆にしておる、そう考えておるわけであります。  そこで、一九七三年から続いておる第三次海洋法会議の第六会期までにまとまった単一草案の大陸棚の定義、これをひとつ教えていただけませんか。
  281. 久米邦貞

    ○久米説明員 今年の五月二十三日から七月十五日まで開催されました海洋法会議第六会期の終わりましたときに出されました非公式統合交渉草案の第七十六条に大陸棚の定義がございまして、     〔中島(源)委員長代理退席、林(義)委員長  代理着席〕 「沿岸国の大陸棚とは、海底地域の海底であってその国の領海を越えその陸地の自然の延長をたどってコンチネンタル・マージンの外縁までの部分、又はコンチネンタル・マージンの外縁までの距離が領海の幅員を測定する基線から二百海里ない場合には二百海里までの部分をいう。」という定義の条項がございます。
  282. 長田武士

    ○長田委員 この条文は、今後海洋法会議が続けられていく過程で、大幅に変わることがあり得ると外務省考えておるかどうか、この点どうでしょうか。
  283. 久米邦貞

    ○久米説明員 現在、海洋法会議におきましては、ただいま申し上げました七十六条に言っております「コンチネンタル・マージンの外縁」を、さらに具体的にどういう形で定義をするかという問題について議論がしぼられておりますけれども、この七十六条の規定そのものについては、次第に固まりつつあるということが言えるかと思います。
  284. 長田武士

    ○長田委員 私は、恐らく変わらないと思っております。この定義によれば、自然延長論と、もう一方、二百海里に満たない大陸棚の場合でも二百海里の海底区域が充てられる、二つの主張を合わせて考えるものであり、決して自然延長論のみ採用したものではない、私はそう理解をするわけでありますが、その点どうでしょうか。
  285. 久米邦貞

    ○久米説明員 先ほど私が読み上げました七十六条の規定ぶりからもおわかりいただけたかと思いますけれども、第一の基準といたしましては、自然の延長ということが言われておりまして、自然の延長が領海の幅員を測定する基線から二百海里の内側までにしか延びていない場合には二百海里までを主張できる、そういう規定になっております。
  286. 長田武士

    ○長田委員 二つの主張が合わさっておるというふうに理解していいですね。——自然延長と、それから二百海里に満たない場合には二百海里まで獲得できるということですね。
  287. 久米邦貞

    ○久米説明員 主たる基準として自然延長の規定がございまして、それを補う意味で二百海里の基準があるわけでございます。
  288. 長田武士

    ○長田委員 そうなりますと、外務大臣、外務省のPR冊子にもいろいろ出ておりますけれども、いわゆる世界の趨勢というのは、大陸棚は延長である、延長論が非常に強いということでありますけれども、いまの大陸棚の定義を読みましても、いわゆる二百海里に満たない場合でもそれが二百海里当然獲得できるということになっておりますね。この点どういうふうに外務省理解しておりますか。
  289. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この境界をどういうふうに引くかということと、大陸棚の定義というものがどのように関連しているかという点が問題だと思うのでございますけれども、その点につきましては、何ら触れるところがないのでございます。したがいまして、相対しておる国の間におきましては、相互に相談して決める線であるとか、あるいは中間の線であるとか、いろいろなことが言われておるわけでございまして、海洋法会議の結論によりまして今後どのように境界というものが引かれるべきであるかということになりますと、現在のところ、まだはっきりしたプリンシプルというものが見出せないというのが率直なところでございます。
  290. 長田武士

    ○長田委員 はっきりしない答弁で、非常に理解しにくいのでありますけれども、次の機会までペンディングにしておきます。  外務省伺いますが、この共同開発の座標の一から六まで、これは何を示したものでしょうか。
  291. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 わが国と韓国の中間線でございます。別の言葉で表現しますと、わが国がみずからの管轄権を行使し得ると考えております区域の限度の線ということでございます。
  292. 長田武士

    ○長田委員 将来、日本側でまだ線引きをしていない経済水域を設定した場合、座標一から六は経済水域の日韓両国間の境界線になるのかどうか、この点どうでしょう。
  293. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 経済水域の境界画定がいかなる方式で行われるべきかということに関しましては、目下海洋法会議で議論中でございます。現在出ております草案等にあらわれております考え方は、合意に基づきかつ衡平の原則によるということで、適当な場合にはその中間線あるいは等距離線というふうな考え方が示されておりますが、これに関しましても前会期におきましていろいろな議論がございまして、まだ決着がついておらないということでございます。  したがいまして、わが国と韓国の間で仮に経済水域を設けてその境界を画定するという場合には、改めて合意する必要があるわけでございますが、わが国は、従来から、海洋法会議におきましては中間線が妥当であるという主張を続けておりますので、中間線を主張するという立場をとることになると思います。
  294. 長田武士

    ○長田委員 いまの御答弁では、話し合いをする場合でも日本といたしましては当然中間線あるいは等距離線というものを主張するということですね。そうですね。
  295. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 そうでございます。
  296. 長田武士

    ○長田委員 では、そうなりますと、わが国の経済水域の地下は、わが国の主権に属すると考えていいですか。
  297. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 現在の海洋法会議において議論されておりますところから、あるいは草案等から考えますと、経済水域はその海底部分も含むということになっておりますので、当然先生御指摘のとおりだと思います。ただ、その部分が他国、たとえば韓国の自然の延長論に基づきます大陸棚に関する主張と競合する場合にどう処理するかという問題は別問題でございまして、海洋法の場合にはそのいずれが優先するかというふうなルールはできておらないというのが現状でございます。
  298. 長田武士

    ○長田委員 それでは、経済水域内でのすべての地下資源の採掘、開発する権利は、日本に当然あるわけですね。どうですか。
  299. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 いま申し上げたことの繰り返しになるかと思いますけれども、わが国の経済水域の海底の資源というのは、当然わが国に属するべきであるというのが日本の立場になると思います。ただ、その区域に関しまして仮に他の国が他の法理に基づいて主張を行うという場合には、わが国とその国との間の交渉が必要になるという事態はあり得るということでございます。
  300. 長田武士

    ○長田委員 話し合いを全部しないで一方的にいわゆる中間線を設定することは、私は不可能だと思います。当然話し合いが前提でしょう。しかし、日本の立場としては、当然中間線あるいは等距離線を主張するのは、私はあたりまえだと思います。そうなってまいりますと、経済水域内でのすべての地下資源の採掘権、これは日本にあるわけですね。そうしますと、中間線または等距離線で合意がなされた場合、今回の日韓共同開発区域、これはすべて日本の経済水域ということになるわけじゃありませんか。その点どうでしょうか。
  301. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 この区域がわが国の経済水域であるという主張をいたしまして、すべての国もこれを認めるという場合には、すべてその地下資源日本のものになるということは当然のことであります。
  302. 長田武士

    ○長田委員 外務大臣、いまの話を伺ってどうお考えですか。将来経済水域を設定された場合、今回の共同開発区域というのはすっぽり日本の経済水域の中に入るわけですね。この点、大臣の答弁と矛盾しませんか。
  303. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 二百海里の経済水域という制度が確立いたしまして、日本は中間線を主張するという立場からいきまして、当然共同開発区域は日本の主張すべき範囲に入るという点は私もそのとおり思います。そういう意味で、この協定におきましても、日本のそういう権利につきまして、何ら日本の主権的権利と申しますか管轄権、こういうものにつきまして日本が放棄をしたというようなそういったことではないのだということを、この協定の二十八条だと思いますが、そこに明らかに書いてあるわけであります。ただ、この共同開発地域につきまして油の共同開発をしよう、これは日本韓国とが特別な取り決めをした、こういうわけでありますから、この協定の効力といたしまして、仮に国際的に経済水域という制度が確立いたしましても、日本韓国との約束というものは当然特別の約束として残るということになるわけでございます。じゃ、なぜそういう約束をしたかということになりますと、これはもう経過になるわけでございまして、これは韓国側は自然の延長をもって単独開発をする、こういう準備にもうかかり出したわけでございまして、そういう段階になりまして日本といたしまして共同して開発しよう、こういう約束をした、こういうわけでございます。
  304. 長田武士

    ○長田委員 私は、そのような御答弁を伺っても、こういう共同開発というのは、大臣、当然政府レベルでの信頼関係も必要でしょう。しかし、こういう共同開発というのは国民に及ぼす影響というのは非常に大きいわけですね。そうなりますれば、国民の合意が必要だと思うのですね。そういうコンセンサスがなかなか得られない。というのは、やはりこういう疑問点を残したまま、韓国がこう言ったのだからしようがなかったのだというような論理でまいりますと、日本の主権は常に侵されっぱなしである。こういう外交姿勢に対して国民が不信を持つのは当然だと私は思うのですね。  ですから、私が冒頭に申し上げましたとおり、外務省としても、この共同開発については大失敗であった、しかし、行きがかり上こうなってしまったというようなことをやはり明確にした方がよろしいんじゃないですか。これは五十年の長きにわたる協定ですよ。私たちの時代の問題じゃない。後世の問題になってくる。もうそうなりますと、子孫の人たちは言うでしょう、何てばかな協定を結んだのだと。こういう結果になりはしませんか。
  305. 中江要介

    中江政府委員 協定の交渉の一端を担当いたしましたので、大臣の御答弁に先立ちまして申し上げたいと思いますのは、大失敗だと言われますと、私どもといたしましてははなはだ不本意でございまして、先生のようなお立場に立ちますと、韓国の国民は、この協定韓国にとって大失敗だった、こう言っておるわけでございます。なぜかと言いますと、韓国は、自然の延長のぎりぎりいっぱいのところまで自分が単独で開発できる、こういまでも信じておるわけです。また、それを信ずるだけの国際法上の根拠があるわけです。日本は中間線まで単独開発できると信じておりますし、それだけの国際法上の根拠がある。そうしますと、国際法上の根拠が二つあってそれはおかしいじゃないかと言われるのですが、これが残念ながら現行国際法の不備な、未熟な点であったわけです。  だからこそ、これが法律論争になり国際司法裁判所の判決も求めようかというような、きわめて国際法上の法律論議の紛争であった。これが現実でございまして、二十一世紀のためだと言っていまの現実の国際法を無視することができない。いま何かをしようと思えば、やはりそのときに有効な国際法に従って行動しなければならない。それで、一九七一年から韓国と交渉いたしましたその間、海洋法会議もあわせ行われておりましたけれども、この大陸棚と経済水域との間の優劣関係決着はつかない。また、大陸棚の境界の問題につきましても、結局関係国の間の話し合いになる、そういう見通しがあると同時に、他方、国際司法裁判所の判決、国際法上の学説、そういったものを全部見ましても、甲論、乙論ともに優劣つけがたいというのがこの地域大陸棚を具体例ととりましたときの国際法上の争点であったわけです。  それで、一年半、足かけ三年でございますが、韓国ともっぱら国際法上の論争を重ねたわけでございますけれども決着がつかない。そこで考え出されましたのが、韓国も半分譲る。韓国は自然延長の先々まで単独でできるものを半分譲っておるわけです。その点では韓国でも大失敗であるわけです。日本は中間線まで単独でできるものを半分譲っておるわけです。ですから、先生のお言葉をおかりいたしますと、大失敗であるわけです。日本韓国もともに大失敗をして、そうしてそこに妥協を見出したというのがこの協定である、こういうことでございます。
  306. 長田武士

    ○長田委員 日本韓国も大失敗ですか。すごい論理を展開しますね。それだったらやめたらどうですか。
  307. 中江要介

    中江政府委員 先生が、日本の主張を一〇〇%主張できなかったことを大失敗とおっしゃいましたので、そのお言葉をおかりしたわけでございまして、日本韓国も両方ともが一〇〇%自分の主張を通すということが国際法に照らして不可能であるという現状のもとで何とかこの資源を有効利用しようとすれば、やはりそこは譲り合うということが通常求められる道であるわけでございまして、そのときに、オーストラリアとインドネシアのように中間、別な境界線を引くという方法もございましょう。日本の場合には、この地下資源の配分されている有望性を勘案いたしまして、別な線を引くことでなくて、共同開発という方法をとったわけでございまして、これは現在行われております国際法秩序のもとでは求め得る幾つかの次善の策のうちの一つである、こう思います。
  308. 長田武士

    ○長田委員 話になりませんね。韓国は大失敗のその共同開発を何で急ぐのですか。あなた、韓国の弁明をしているみたいですけれども韓国の気持ちはよくわかるのじゃないですか。
  309. 中江要介

    中江政府委員 私は、日本外務省の役人でございまして、日本の国の利益を守るためにいろいろ発言しておるわけでございます。日本韓国との間にまたがります大陸棚日本のものでもなく韓国のものでもない。逆に言いますと、日本日本のものだと主張し、韓国韓国のものだと主張する、それが重なっておる、そのときにどうするかという問題であるわけです。  そこで、いろいろな工夫がございますけれども、国際法に照らして決着がつかない。したがって、この地域石油資源日韓両国でともに有効利用しようと思えば、これはさらにその真ん中に線を引くかあるいは共同開発をするか、いろいろの方法がございましょうが、この場合には、この地域石油資源を有効利用する方法として共同開発という道を選んだということで、これは韓国にとっても五〇、日本にとっても五〇、その目的を達成している。その最初の一〇〇を期待いたしまして失った五〇の方を見れば、これは非常に遺憾なことであるかもしれませんけれども、一〇〇全部を失うことに比べれば五〇を獲得しておる、これが妥協であるというゆえんである、こういうことを申しておるわけでございます。
  310. 長田武士

    ○長田委員 この協定がつくられる以前、韓国の一方的に開発しようという姿勢について、なぜ国際司法裁判所に付託しなかったのですか、その理由説明していただきたいのです。
  311. 中江要介

    中江政府委員 これは、先ほど私申し上げましたように、もっぱら国際法上の主権争いであったわけですから、通常の国際間の慣行に従えば、こういうものは国際司法裁判所に提訴するのが最も妥当な解決の仕方である、日本はそう思ってそれを提案したわけです。この足かけ三年の法律論争のあげくの果てについに決着を見ないなら、これはやはり出るところに出ていってきちんと判決を仰ごう、こういうことを日本は提案したわけです。ところが、残念なことに、韓国という国は国際司法裁判所規程の当事国でもございませんし、また、強制管轄権というものがございまして、どちらか一方が提訴すれば応訴義務がある、そういう手続もとっておらない。そういう二国間で裁判所に持っていきますためには、この場合ですと、日本韓国の間で特別合意書というものをつくりまして、そして裁判所に出ていく、こういう手続が必要なわけです。この特別合意書をつくって国際司法裁判所の判決を仰ぐという手続を韓国がどうしても受けない、その道を選ばないといいますときに、いまの国際法の秩序のもとではこれを強制的に国際司法裁判所の法廷に引っ張り出す方法がない、手だてがない、こういうことでございます。  そこで、日本韓国の間で、国際司法裁判所に行かないで、しかもこの紛争をいつまでも続けることなく、資源の有効利用の方に着目して何らかの別な解決はないだろうかというところで決断されたのがこの共同開発という方法でございまして、日本政府としては最後まで国際司法裁判所に行くのが筋であるということを強く主張したのでございますけれども、いかんせん、いまの国際法秩序のもとでは、韓国を国際司法裁判所の法廷に強制的に出すというすべがない、こういうことでございます。
  312. 長田武士

    ○長田委員 韓国政府には応訴する気があったかどうか、日本政府は確かめられたのですか。
  313. 中江要介

    中江政府委員 もちろん何度も確かめたわけでございます。それで、韓国の中にも両論があったと伺いました。国際司法裁判所に行けば韓国が勝訴する、したがって、国際司法裁判所でむしろ争うべきだという意見もあったように聞いております。しかし、韓国全体、韓国政府全体として最終的に日本に示された韓国側態度は、国際司法裁判所に行くという日本の提案は受けられない、こういうことであったわけでございます。
  314. 長田武士

    ○長田委員 では、いつだれがだれに確かめたのか、そしてその返事の内容、これをお示し願いたいと思います。
  315. 中江要介

    中江政府委員 これは昭和四十七年四月に、紛争の具体的な解決方法として、調停及び司法的解決、すなわち国際司法裁判所への付託を含んで、そういう解決を韓国政府に対して提案いたしました。これに対して、韓国政府は回答を寄せなかったということでございます。
  316. 長田武士

    ○長田委員 日本政府とすれば、当然、国際司法裁判所に付託した場合、勝訴するという見通しを持っていたと思いますが、この点はどうでしょうか。
  317. 中江要介

    中江政府委員 当時、率直なところ非常に判定はむずかしいという見通しでございました。しかし、日本としては、日本の中間線論は十分な根拠ありということで、争うだけ争ってみよう。とにかく文明国といいますか、国際法秩序を重んずる国同士の間では、こういう法律的な問題はやはり裁判所の判決を仰いで、その判決が出れば潔くこれに従う、これがやはり一つの問題の平和的解決の方法ではないかということで、日本政府は国際司法裁判所に提訴するということを提案したわけでございますけれども、必ず日本が勝訴するという自信があったかと言われますと、これははなはだむずかしい判定の問題だ、こういうことで、そういうことでありましたればこそ、日本韓国も長い長い法律論争をしても結末がつけられなかったということでございます。
  318. 長田武士

    ○長田委員 日本は勝訴する勝算といいますか、見通しもあったということも一部いま御答弁がありましたけれども、逆に韓国側も十分勝訴する見込みがあった、こういう御答弁です。それだったら、いっそのこと司法裁判所にきちっと裁断を仰ぐというのが私は筋だと思うんですね。そういう粘り強い交渉といいますか、これはどうしてしなかったんでしょう。
  319. 中江要介

    中江政府委員 これは、国際司法裁判所に案件を提訴いたしますと、特に先ほど申し上げましたように、韓国のように当然国際司法裁判所に出廷の義務を負っている国でない場合、一方がそうでない場合には、特別合意書というものをつくらなければなりません。かつて日本とニュージーランドが漁業紛争で国際司法裁判所に提訴しようといって、そのときは特別合意書をつくらなくてもいいケースでございましたが、そのときでも、何を争点にするかという交渉に一年半かかったわけでございます。特別合意書をつくりますと、それに先立ちまして何年かの期間、国際司法裁判所の判決だとか判例だとか国際法学だとか国際先例だとか、そういうものを調べまして、最も自分に有利な特別合意書をつくりまして、それを裁判所に出して、それから今度は争点を何にするかということについて、弁護人の選定あるいは学者の参考意見、調書の作成、これにまた何年かかかりまして、国際司法裁判所の法廷の審査が、これはそのときの案件の数にもよりますけれども、いろいろ計算いたしますと十年ぐらいかかるのじゃないかということを覚悟しなければならない。  他方、それだけの準備と法廷闘争のためにかかる経費というのは、これはなかなかばかにならないものでございまして、国際的に名の知れた国際法学者の意見を徴したり、あるいは大陸棚の場合でございますと、大陸棚理論について、あるいは地質学的に、あるいは資源学的に、あるいは海洋法の見地からいろいろの資料を集めてやる。それだけの多大の経費と時間をかけても、国際司法裁判所に持っていって十年やあるいは十年を超える期間じっと待っているのが賢明であるか、それともこのエネルギーの逼迫した時代に、もし解決策ができるのであれば、この資源を有効利用した方がいいか、そのために日韓間で何らかの妥協方法を考えた方がいいか、これはまさしく重要な一つの政治的決断を、要する問題であったわけでございます。  日本が国際司法裁判所に提訴いたしまして、韓国が受ければ、これは長く時間がかかっても、金がかかっても、それでやってみようということを一たんは決意いたしました。しかし、韓国の方でそれを受けないということになりますと、次善の策といたしましては、やはりここで妥協の道を見出し資源の有効利用に踏み切る、これも一つの政治的な判断であっただろうと思います。今回、日韓大陸棚協定という、共同開発という解決策に到達いたしましたについては、その最初の法律論争から実際的解決に移行するところに重要な政治的判断があった。その判断のもとで、いまこの協定国会で御承認いただき、その関連法案を御審議いただいている、こういう経緯でございます。
  320. 長田武士

    ○長田委員 結局、外務省ではどうにもならなくなってしまったんじゃないですかね。そして新聞にもありますとおり、四十八年に岸元総理が共同開発構想を金鍾泌首相に提示したということが、実はこの問題の真相なんだということじゃないですか。だから苦しい答弁をこうやって続けているんじゃないですか。この点どうですか。
  321. 中江要介

    中江政府委員 いま御指摘のようなたぐいの報道が二、三見えておることは、私どもも承知しておりますけれども、交渉を担当しております外務省の立場からいたしますと、そういうものがあったかなかったかは別といたしましても、そういうものの影響は一切受けなかった。先ほど来申しておりますように、法律論争を繰り返しまして、そして国際司法裁判所への提訴を提案いたしまして、それも韓国は受けないという。そこで、実際的解決についてどうするかというときに開かれましたのが、一九七二年の九月五日、六日の第六回定期閣僚会議であったわけでございまして、そのときは定期閣僚会議の席上では本件は議論にならなかったわけで、この定期閣僚会議に出席のためにソウルに到着いたしました日本側の閣僚が、朴大統領を表敬訪問いたしました。そのときに、大平外務大臣が日本側の首席代表であったわけですが、大平外務大臣と朴大統領との間で会談がございまして、そのときに朴大統領の方から、共同開発という構想はどうであろうかという話があったわけでございます。  この共同開発の構想というのは、先ほど私申し上げましたように、国際司法裁判所に提訴してもらちが明かないときに、次に考え得る妥協案といたしまして、中間線でもない自然延長の外縁でもない第三の境界線を引くという方法、あるいは両国共同開発するという方法、あるいはジョイントベンチャーのようなもので開発するという方法、私どももいろいろの具体案をもちろん検討いたしたわけですが、その中の一つには、この共同開発という構想もあったわけでございます。  大平外務大臣は、その韓国側の提案を承って、それではひとつ持ち帰って検討してみましょうということで、この閣僚会議の後日本に帰りまして、日本側の最終的な回答は、九月八日の日に在韓後宮大使から金外務部長官あてに、共同開発の構想というものでそれでは一遍作業をしてみようということで、原則的合意をして、この共同開発構想の具体化に交渉の場面が移ったということでございまして、私がいま述べましたこの一連の経緯の中には、新聞あるいは雑誌で言われておりますような、政府チャンネルといいますか、外交チャンネル以外のところから、いかなるサゼスチョンといいますかあるいはプレッシャーといいますか、そういったものは一切なかったということは、これは私は確信を持って申し上げることができます。
  322. 長田武士

    ○長田委員 この共同開発というのは、韓国側の提案であった、こういうことですね。岸元総理、韓国それから日本政府、この三角形の関係共同開発の話が進んでおるというのは、私はそう考えて妥当だと思うのですね。時間的な経過をこれから質問してまいりますけれども、これは見れば明らかなんです。民間レベルで云々という答弁がありましたけれども、このような情報とかうわさというようなものは、外務省は影響を受けていない、左右されていないということですね。耳には入っていたのですか。
  323. 中江要介

    中江政府委員 事後に目と耳に入ったわけでございまして、これが韓国から提案され、日本側が応諾いたしまして、共同開発構想の作業に入りましたその段階では、こういうことが裏にある、あるいはそういうことを耳にしたということはございませんで、日本側が国際司法裁判所への提訴を提案いたしましたときに、それがうまくいかなかったときの次善の案として——事務当局としては当然でございますが、一つの提案をいたしまして、それがうまくいかなかったときの次善の案として、幾つかの実際的解決の方法の一つとして私ども自身も共同開発の構想というものは考えておりました。これに思いついた経緯といいますか動機といいますか、そういうものには、後で聞きましたような筋からの何らかのヒントがあったかというと、それは全くなかった、こういうことでございます。
  324. 長田武士

    ○長田委員 この区域は、大陸棚をどうするかで日韓両国が合意が得られなかったわけですね。外務省としては、そういった情報については非常に関心を持っておった、私はそういうふうに理解しておるのです。そうであるならば、それらについて当然確かめられたと私は思うのですけれども、具体的にどういう話が出てきたのか、あるいは提案がされたのか、その内容について詳しく確かめられたかどうか、この点どうですか。
  325. 中江要介

    中江政府委員 御質問の趣旨が、国際司法裁判所に提訴する以外の実際的解決の方法として、方々でいろいろ考えていたであろうから、そのことを外務省としても知っていたのではなかろうか、こういうことだといたしますと、これは私どもは全く正真正銘に、国際司法裁判所に提訴しない場合の代案といたしまして事務的には幾つかの案を考えておりまして、それには別にどこの意見を求めたり、あるいはどこからヒントを得たりということはございません。後になりまして、いろいろ当時を回想した座談会だとか記事だとか、そういうところで、ああこういうところでもこういうことが考えられていたのかということは、後では承知いたしましたけれども、当時は、私どもが事務的にいろいろ頭をひねって考えておった幾つかの代案の中の一つが共同開発想であった、こういうことでございます。
  326. 長田武士

    ○長田委員 それでは、伺いますが、朴大統領から当時の大平外務大臣に四十七年九月四日に示された、表敬訪問をされてそこで提案された、そういうことでありますが、それまでこうした構想は全然知らなかったかどうか、この点どうでしょう。
  327. 中江要介

    中江政府委員 先ほど申し上げましたように、日本の事務当局の内部では検討していた代案の一つであったということで、知る知らないどころではなくて、私どもが検討していた一つの案であったわけですが、それが韓国からそういうふうに出てくるかどうかということについては、これは正直に言いまして、閣僚会議のその表敬訪問の後で大平外務大臣に朴大統領から出るまで、韓国の非常に強い立場から見て、ちょっと考えにくかったわけでございます。  韓国はそもそも、これは全部自分で単独開発をやるのだ、国際司法裁判所なんかとんでもないというふうに、事務当局は一番最初の強い立場で私どもに接しておったわけです。ですから、これはとても実際的解決といってもむずかしかろう、もう少し論争を続けなければいけないかなというように思っていた段階で、この構想が韓国側から、大統領の口から出たということは、これはそこに韓国側でも高度の政治判断があったのだな、それならひとつ作業してみよう、こういうことで交渉が始まったわけでございます。
  328. 長田武士

    ○長田委員 そうなりますと、九月四日に表敬訪問をされて、九月六日に帰国されたわけですね。そうして九月八日に返事をいたしております。この点間違いありませんか。
  329. 中江要介

    中江政府委員 そのとおりでございます。
  330. 長田武士

    ○長田委員 このような重大な提案に対して、外務省としては当然閣議にかけられたと思いますが、閣議にかけられたかどうか、念のためにお伺いします。
  331. 中江要介

    中江政府委員 私どもの記憶では、閣議に正式にかけた、諮ったという記憶はございません。閣僚会議には通産大臣もソウルに行っておりまして、大平外務大臣が朴大統領から韓国側の提案を四日の日に承って、六日に閣僚会議が終わって帰ってくるその途中といいますか、その期間においても、外務大臣と通産大臣がいろいろ協議をされたという形跡はございますが、いずれにしろ、これは東京に帰って決めようということで帰ってみえたことは、これは確かに記憶しておるところでございまして、東京に帰られまして、担当の外務大臣と通産大臣との間で、まず、こういう提案があったし、いままでの長い法律論争の経過から見て、この実際的解決が果たしてうまくいくかどうか、事務的に検討してみようという原則的合意が与えられましたのが九月の八日であった、こういう経過でございます。
  332. 長田武士

    ○長田委員 なぜこのような重要な問題を閣議にかけなかったのでしょうか。
  333. 中江要介

    中江政府委員 当時の主管大臣の御判断として、こういう取り進め方をなさったものと私どもは承っております。
  334. 長田武士

    ○長田委員 それでは、このような重要な問題について各関係省庁には相談されたと思いますが、どこでどの省庁と相談されたか、その点をお知らせ願いたいと思います。
  335. 中江要介

    中江政府委員 詳細はちょっと記憶いたしておりません。これは日本韓国の間の法律論争ということで、日本政府部内の主管官庁は外務省でありますし、最高責任者は外務大臣、つまり外交問題として処理してきたわけでございます。この共同開発構想でやってみようということになりまして、外務大臣と通産大臣が協議されまして、そして韓国側の申し入れを受けて、実際にうまくそういうものができるかどうか検討してみよう、こういう原則的な合意でございまして、その段階で、日本の国内関係各省庁に及んでまで——これは世界で初めての例と先ほども大臣も申したとおりでございまして、まだどういう姿になるかわからない、まず検討してみよう、こういうことであったように記憶しております。
  336. 長田武士

    ○長田委員 このような重大問題を、たかが二日間で結論を出してしまって韓国側に返事をしているんでしょう。閣議にかけません、あるいは外務大臣と通産大臣で相談して返事したんじゃないかとか、ずいぶんあいまいですね。そういうことでいいんですか。
  337. 中江要介

    中江政府委員 韓国に返事したからといって、どういう共同開発という仕組みが決まるというわけでなくて、一つの共同開発構想というものを双方の事務当局で検討させてみようということで、検討が始まったわけで、このための会議が少なくとも十回事務的に開かれたわけです。そして、共同開発と口で言うけれども、これは実際具体的に白紙に書いていくことであったものですから、大変な作業でありましたが、その共同開発構想をだんだん組み立てていく段階では、これは当然のことですが、関係官庁の御協力を得、御協議をしながら、そして支障のないように、前後十回にわたる交渉をして、そしてこの協定にこぎつけてきた、こういう経緯でございます。
  338. 長田武士

    ○長田委員 それでは、九月八日に後宮大使が韓国に返事をしていますね。その内容を教えてください。
  339. 中江要介

    中江政府委員 これは、原則的に合意する、こういう内容でございます。
  340. 長田武士

    ○長田委員 それでは共同開発をやりましょうという合意ですね。どうですか。
  341. 中江要介

    中江政府委員 これは、朴大統領の大平外務大臣に対する提案も、共同開発構想という一つの構想として提案されまして、その構想で大平大臣より検討してみようということでございまして、それに基づきまして、正式にこの構想を検討することに原則的に合意するということで検討が始まった、こういうことでございます。
  342. 長田武士

    ○長田委員 それでは、共同開発については合意をいたしましたということとは意味が違うのですか。ずっと検討をしてみて、まずい場合にはやめますということも入っておるのですか。
  343. 中江要介

    中江政府委員 これはもちろん、長い法律論争のあげくの果ての実際的解決でございますから、まとめ得るものなら何とかまとめたいという気持ちは双方にございましたけれども、世界で初めての共同開発、双方の国の主権をある程度保持しながら主権の重複するところで共同で開発するという仕組みでございますので、これはどういうふうになるかという点は、実は私どもも確たる見通しというものは非常に立てにくい初めての構想でございますから、そういうものを検討してみよう、こういうことであったわけで、これ以外に絶対考えない、あるいはこれがうまくワークしないなら別のものを考えなければならぬなという余地は、私は当然残っていたと思いますけれども、双方で検討してみましたら、幸いこういうことでならいけるということでいまの協定になった、こういうわけでございます。
  344. 長田武士

    ○長田委員 どうも話がかみ合わないですね。このような重要な問題を二日間で結論を出すというのは、余りにも軽率ではないか。ましてや、このような問題を抱えておりますところのこの共同開発を……。  じゃ、具体的に伺いますけれども外務省のだれが、いつ通産省のだれに連絡をとりましたか。
  345. 中江要介

    中江政府委員 とにかく通産大臣と外務大臣との間で、大体韓国側の提案した構想でやってみようという原則的な合意をしておられたわけでございますので、あとは私どもは事務的に韓国側にそれを通報するということでありまして、いま先生の御質問のように、外務省のだれが通産省のだれにというような、そういう記録にとどまるような大手続をとったという記憶はないわけでございます。
  346. 長田武士

    ○長田委員 おかしいじゃないですか。このような重要な問題を、そんな簡単に外務省は扱うのですか。外務大臣、どうですか。
  347. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 政府部内でいろいろ仕事をしておりますけれども、一々記録はなかなかとれてないのではないかと思います。
  348. 長田武士

    ○長田委員 大臣、このような共同開発、重大問題ですよ。それを帰ってきて二日間で、八日にはやりましょうということをもう回答しておるのです。外務省として結論を出すのは余りにも唐突じゃありませんか。
  349. 中江要介

    中江政府委員 これは私、先ほど申し上げましたように、この年の四月に、法律論争を幾ら延々と続けましても平行線だ、これはもう意味がないということで、国際司法裁判所に提訴するということに踏み切りましたと同時に、これにかわる代案といたしまして、それじゃ法律的解決ではなくて実際的解決ということに方針を変えたらどういうことがあり得るかということは検討しておったわけでございますので、韓国共同開発という構想を出しましたときに、たちますそこで驚いてどうしようかということではなくて、共同開発構想というのは私どもの検討していた実際的解決の一つの構想でもあったわけで、大平外務大臣もそのことは十分承知でございますし、そういうことで韓国側がそれをやってみようと言うなら、わが方もその準備はしておりますから、早速やってみようということで決断されたわけで、軽率であるというふうな印象は、私どもは持っておりません。
  350. 長田武士

    ○長田委員 それでは、水産庁や運輸省には相談されたのでしょうか。
  351. 中江要介

    中江政府委員 共同開発構想が具体的にそれじゃどういう形になるかということがはっきりいたしません段階では、水産庁にいたしましても運輸省にいたしましても、御相談する段階でなくて、むしろ共同開発構想をだんだん字に書いていきます十回に及ぶ交渉の段階で、それぞれ関係各省の御意見を伺い、御協力を得てこの協定をつくっていった、こういう経緯でございます。
  352. 長田武士

    ○長田委員 九月八日に返事をしておいて、それから検討するのですか。おかしいじゃないですか、話が。結論は一緒に共同開発をやりましょうという返事を韓国に与えておって、どことも相談してない、恐らく外務省と通産省で相談したんじゃないかなんて、こういうあいまいでいいのですか。こういう条約は政府しか締結ができないじゃないですか。いつから外務省政府の代理になったのですか。
  353. 中江要介

    中江政府委員 まず第一点といたしまして、共同開発構想は韓国と共同で開発するわけでありますから、韓国と話し合わなければならぬわけです。したがいまして、共同開発構想を具体的に検討いたしますためには、韓国に対しましてその構想を具体的に検討しようというその回答をしないことには話が始まらないから、韓国に回答して、そして日韓で話し合う段階で必要に応じて関係各省の御意見を承り、その御協力を得てこういう構想を具体化した、この順序以外には考え得ないのじゃないかとも思います。  第二点でございますけれども政府の外交は外務省が主管官庁としてやるわけで、その外交交渉なり外交折衝の結果につきまして、必要に応じて内閣なり、またその合意の実体に応じまして国会の御承認を得るなり、憲法の手続に従って処理してまいりますけれども、外交交渉のすべてについて事前に全関係省庁と協議をして始めるということは通常やらない。まず最初は、外交交渉は外務省がやって、その上で御協力を得られればよし、得られなければその外交交渉はそのまま続けるわけにまいらね、こういうことになるわけで、最初の接触、交渉を外務省、外務大臣がやり、また、石油開発の主管大臣である通産大臣と協議をして決意されたということには、不自然なものはないように私は思います。
  354. 長田武士

    ○長田委員 先日、同僚の玉城委員質問したときには、「関係閣僚とそれから事務当局の者もおりましたわけでございますが、それと協議の上、」と答弁していますね。これはどうなんですか。協議したのでしょう。
  355. 中江要介

    中江政府委員 その答弁の模様をいまちょっと聞きましたところでは、日韓定期閣僚会議のときの話ではなかろうかと思います。定期閣僚会議になりますと、関係閣僚がずらっと並んでいろいろ議論するわけでございますから、関係閣僚全部、関係する各省の事務当局と協議をしてその閣僚会議の議題及び対処方針その他を事前に十分検討し、そして発言もいろいろ考えて臨む、こういうことでございまして、本件大陸棚法律論争をどうするかという話はその定期閣僚会議の席上で出た話ではないということは、先ほど申し上げたとおりであるわけです。
  356. 長田武士

    ○長田委員 話がおかしいですね。私が伺っているのは、四十七年九月五日から六日にかけて第六回の閣僚会議が行われておりますね。そのとき、四日に表敬訪問をして朴大統領から提案があったということじゃないですか。そうでしょう。話が食い違っているじゃないですか。ごまかさないでください。
  357. 中江要介

    中江政府委員 私は、食い違っていないつもりでお話ししているのですが……。  要するに、定期閣僚会議のために関係閣僚及び事務当局がソウルに行きました。これは事実でございまして、第六回定期閣僚会議が開かれたわけです。ただ、多くの閣僚が定期閣僚会議の議題に基づいて会議を開いているその席上でこの話が出たわけではないのでございまして、当然、それまで外務省と先方外務部の間で法律論争をずっと続けて、それが平行線で行き詰まりになっているという状況であったわけですから、これは何とか解決しなければならないという気持ちはみんな持っておりましたけれども、この定期閣僚会議の席上で解決しようという態度では私どもは臨まなかったわけです。  先ほど申しましたように、関係閣僚が朴大統領を表敬訪問いたしましたときに、朴大統領と大平外務大臣との間でこの話が出たわけでございます。これに対して大平大臣が、検討しましょうと言われまして、その場には通産大臣もおりましたし、もちろん外務省も通産省も、あと二、三人の閣僚及び事務当局がみんなソウルにおりましたから、これはこういうことでできるかという話は、雑談としてといいますか、内部の事務的な話はやったでありましょうが、それは定期閣僚会議とは別の話でございまして、これは軽々にソウルですぐ決めるわけにいかないから東京に持ち帰ろうということで、東京に帰りまして、改めて八日に正式に日本政府の意思を先方に伝えたということで、定期閣僚会議機会にそのような話があったということでございまして、定期閣僚会議の議題としてこれが出てきたというわけではないわけでございます。
  358. 長田武士

    ○長田委員 ぼくはそんなことを言っているのではないのです。あなたはさっきから、協議はしてない、閣議にもかけてない、こう答弁していますね。間違いありませんね。どうですか。
  359. 中江要介

    中江政府委員 私の記憶では、閣議にかけたということを記憶してないということを申し上げました。それが一つ。それから、通産大臣と外務大臣は密接に協議をされたということは申しました。そのほかについては、記憶が定かでないのでわかりません。
  360. 長田武士

    ○長田委員 それじゃ、この会議録をちょっと読みますと、遠藤説明員が答えております。  九月五日と六日であったわけでございますけれども、到着しました九月四日に先方の韓国側の朴大統領を表敬いたしましたが、その際に朴大統領の方から大平外務大臣の方に、いまの紛争になっておる日韓大陸棚の問題について、これは共同開発という構想は考えられないだろうかというふうな提案があったわけでございます。  そこで、大平外務大臣は直ちに——直ちにというか、帰ってまいりまして、関係閣僚とそれから事務当局の者もおりましたわけでございますが、それと協議の上、この朴大統領からの提案に対しましては、九月の八日に、これは閣僚一行はもう日本に帰ってきた後でございますけれども、当時の後宮駐韓大使を通じまして、この共同開発構想自身については原則的に結構だということを返事をしたわけでございます。 と言っているじゃないですか。どうですか。
  361. 中江要介

    中江政府委員 恐らくそのとおりだと思うのですが、その事務当局と関係閣僚と協議をしてという部分が、私が先ほど申し上げましたソウルにたまたま来ておりました連中と話をしたということであったのか、あるいは東京に帰りましてからそいう話をしたものであったのか、それはつまびらかにはいたしませんけれども、はっきりしておりますことは、主管大臣である外務大臣と直接資源の担当である通産大臣とが協議をされたということと、それから、これを閣議にかけたという記憶がないということを申し上げておるわけでございます。
  362. 長田武士

    ○長田委員 ここでは協議したということが明確に答弁として返ってきてますね。どうですか。あなたは、そういう協議はしてない、恐らく外務と通産と話し合って返事をしたのだろう、そういう答弁をしましたね。どうですか、しなかったですか。
  363. 中江要介

    中江政府委員 私が申し上げましたのは、共同開発構想について、先生の御質問で、たしか水産庁とか運輸省とかと言われたのですが……(長田委員「その後だよ、そのことを言ったのは」と呼ぶ)その前でございますと、この返事をするに当たって協議をしたかという点は、私は、外務大臣と通産大臣は協議されたということははっきりしているということを申し上げたのと、あと、事務当局の協議というのは記憶がないけれども、もしありとすれば、ソウルで、一緒に随行しておりましたから、そういう者の間では話が出たであろうけれども、最終的な結論は東京でやろうということになったということを申し上げたつもりでおります。
  364. 長田武士

    ○長田委員 どうも話がかみ合わぬですね。「帰ってまいりまして、関係閣僚とそれから事務当局の者もおりましたわけでございますが、それと協議の上、」ですよ。協議したんじゃないですか。協議してあたりまえなんだよ、こういう重要な問題だから。
  365. 中江要介

    中江政府委員 いま先生お読み上げの議事録を私も見ておりますが、遠藤説明員の説明は、代表団の中でとなっておりまして、いまここに遠藤君もいますが、ソウルにおいて代表団の中で、事務官僚がついて行っておりましたから、こう書いてございまして、ソウルにおけるその場でのとりあえずの話し合いという意味であったというふうに思います。
  366. 長田武士

    ○長田委員 それじゃ、帰ってきてからというのはどういうわけですか。この日本語は取り消すのですか。
  367. 中江要介

    中江政府委員 帰ってからの部分につきましては、先ほど来私が申し上げておりますように、大平外務大臣と中曽根通産大臣との間で御協議があったことは記憶をしておりますけれども、その他は記憶がないということと、それから、閣議にかけた形跡はないということ以外にはよくわからない、こういうことでございます。
  368. 長田武士

    ○長田委員 帰ってきて閣僚で協議をしたとここに書いてあるじゃないですか。関係閣僚であるいは事務当局も含めて協議をしたというふうに明確じゃないですか。どうなんですか、これは。
  369. 中江要介

    中江政府委員 ここをちょっとよく、そのまま読みますとございますように、代表団長であります大平外務大臣が朴大統領に表敬に参りまして、その際に先方からこういうふうな案が出てきた、そこで、大平大臣はそれを持って帰られましてというのは、表敬訪問からその朴大統領の案を持って帰られまして、代表団の中で、つまりソウルに来ております代表団の中で、これは中曽根通産大臣その他事務官僚がついて行っておりましたから、その中で協議をしまして、それで正式な返事は——正式な返事と申しましても原則的な合意でございますけれども、これは後日、たしか九月八日だったと思いますが、代表団のたった後でございますが、代表団のたった後というのは、つまりもうソウルからいなくなった後でございますがという意味ですが、当時の後宮大使から先方の外務大臣に、原則的にはこれに同意する、しかしながら、何分にもこの協定考え方というのは世界初めてのことでもあり、今後事務的に詰めさせよう、こういうことになったというふうに私は記憶しております。こういう話でございまして、これは、ソウルで大平大臣が表敬に行って帰ってまいりましてというのは、ソウルのわれわれ代表団のたまり場といいますか、そういうところへ帰ってまいりまして代表団の中で協議をして、しかし、これは持って帰って東京で正式に八日の日に返事をした、こういうことだという経緯を説明しておるわけでございまして、先ほど来私が申し上げている説明とそう違っていないように私は思いますが、そういうふうに事態は進んだ、こういうふうに御了解いただければいいかと思います。
  370. 長田武士

    ○長田委員 それでは、帰ってきてというのは、韓国内での話ですか。
  371. 中江要介

    中江政府委員 そのことでございます。
  372. 長田武士

    ○長田委員 私は、そういう点では、この重要な問題を閣議にもかけない、余りにも——たった二日間でこの問題については結論というか返事をしてしまった、そういうところに、私は、大陸棚の条約について常に紛糾するというか、野党の言い分と与党の言い分が食い違ってしまう大きな要因があると思うのですね。私たちからすれば、常に韓国にしてやられているような感を抱くわけであります。  時間がありませんから、次に移りたいと思います。  私も、これまで多数の自民党の議員、それに通産省、水産庁の役人の人たちが、公式の席では言えないが、それぞれこの協定に疑問を持っていると発言しておるということを知っております。通産省の役人だって被害者だと思ってここに並んでおられるのではないかと私は思うのです。悪評ふんぷんたる法案には、われわれも本当にいい迷惑だと考えております。  次に、ここで問題点を変えて、韓国側が一九七〇年に定めた七つの鉱区についてお伺いしたいのであります。  まず、七つの鉱区については、それぞれ海底租鉱権を米系企業に与えておるわけであります。しかし、現在においては引き揚げてしまったということでありますけれども、何の理由で引き揚げたのか、また、各企業ごとに引き揚げた年月日についてお伺いしたいと思います。
  373. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 先生御指摘のとおり、一九六九年から七〇年にかけまして、韓国が自己の国内法に基づきまして第一鉱区から第七鉱区までの租鉱権を設けまして、米系の会社にそれぞれ租鉱権を与えたわけでございます。このうち現在契約切れその他で失効しておるといいますか、存在しておりませんのが第二鉱区、第三鉱区、第四鉱区、第六鉱区でございます。他方、第一鉱区、第五鉱区及び第七鉱区につきましては、いまだに契約が存在しておるという状況でございます。  お尋ねの、契約切れと申しますか、失効した期日でございますけれども、第二鉱区のガルフが持っておりました租鉱権は、一九七七年四月十五日に契約が切れて失効いたしております。第三鉱区のシェルが持っておりました契約につきましては、一九七六年十二月末に切れております。第四鉱区のガルフが持っておりました契約につきましては、一九七七年四月十五日に切れております。第六鉱区のシェルが持っておりました租鉱権につきましては、一九七六年十二月末で切れております。これはいずれも、契約の期限が来て更新されなかったということによって、現在契約が存在しておらないという状況になっているわけでございます。  どうして契約を更新しなかったかということにつきましては、関係企業は必ずしもその理由を明らかにしておりませんので、私どももつまびらかにいたしておりませんが、技術的あるいは経済的な理由が主である。つまり、試掘を行いましたけれども、これまでのところ十分な経済開発に適当であるという結果が得られなかったということのように私ども理解しております。
  374. 長田武士

    ○長田委員 経済的な理由があると思いますけれども、これは採算がとれなかったということですか。
  375. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 実際に採掘にかかって採算がとれないという状況と申しますよりも、それぞれ幾つかの試掘はやったところもあるようでございますけれども、その結果、経済的開発に適するほどの石油が賦存しておるという確信が持てなかった、こういうことだろうと思っております。     〔林(義)委員長代理退席山崎(拓)委員長代理着席
  376. 長田武士

    ○長田委員 そうなると、採算が合わない大きな理由としては、資源が乏しいという御答弁でありますけれども資源が乏しいということになりますと、どのようにして資源が乏しいのか、わが国としては非常に関心のあるところであります。こういうふうに乏しい、どういうふうに乏しいか、具体的に御説明をいただきたいと思います。
  377. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 先ほど申し上げましたように、企業が契約を更新いたしませんでした理由を必ずしも明らかにいたしておりませんので、詳細お答えいたしかねるわけでございますけれども、たとえば第二鉱区では二回の試掘をやっておる、第五鉱区では一回の試掘をやっておる、第六鉱区では三回の試掘をやっておるということでございまして、ある程度の試掘と申しますか、開発努力をやってみたということはあるわけでございますけれども、その結果、必ずしも十分な結果が得られなかった、こういうふうに理解しております。
  378. 長田武士

    ○長田委員 そういうような資源の乏しいといいますか、そういうことになりますと、この共同開発区域においても当然そういう事態はあり得ると思うのです。そうなりますと重大問題であります。そこで、当然アメリカ企業に対して、あるいはアメリカ政府に対してそのような資料を要求したと私は思いますが、その点どうでしょうか。
  379. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 繰り返しになりますけれども、これは私企業のことでございますし、私どもとして十分なデータは得られなかった、こういうことでございます。
  380. 長田武士

    ○長田委員 そのような重大な資料でありますから、当然努力すべきじゃありませんか。
  381. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 私どもも関心を持ちまして、一応韓国政府でありますとかそのほかに当たりまして、今回こういうふうに契約が更新されなかった理由は何であろうかということについて若干の調査を試みたわけでございますけれども、何分にも韓国が、外国政府が与えました租鉱権に基づきまして外国系企業がやっておることでございます。十分な回答が得られなかったというのが実情でございます。
  382. 長田武士

    ○長田委員 どうも主体性がないですね。  資源が乏しいという御答弁でありますけれども、私は、むしろアメリカが中国に遠慮して撤退をしたのではないか、そう思っておる一人であります。そうなりますと、アメリカですら中国に遠慮いたしまして撤退しているにもかかわらず、政府は目先の利益に駆られて日中友好平和条約の締結ムードを大きく後退させておる。日中友好関係促進を損なうようなこの協定、これを結ぶことはわが国にとって非常に大きなマイナスではないか、こう私は考えるわけであります。この点、外務大臣、いかがでしょうか。
  383. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この区域の開発につきまして、もうずいぶん時間がたつわけでございます。日中関係につきましては、本件が日中友好関係に対しまして悪い影響を甘えないように万全の努力をいたす、こういうことをたびたび申し上げておるところでございます。
  384. 長田武士

    ○長田委員 中国に対しては、一方では頭をなで、そして足でけ飛ばしている、こういうような関係じゃありませんか、大臣。努力することは認めます。しかし、現実の対応といたしまして、中国に対してはそういう対応じゃありませんか。
  385. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 中国に対しましては、あくまでこの共同開発の区域につきましての理解を得たい、このように考えております。
  386. 長田武士

    ○長田委員 昭和四十九年の二月四日に、中国政府の外交部スポークスマン声明といたしまして、共同開発区域は中国の主権を侵害する行為である、こういうような抗議が行われております。その後、何回も反対の意思を明らかにしておりますが、本年六月十三日には、従来の外交部スポークスマン声明より一層強い外務省声明の形で抗議を行ってきておるわけであります。それは、「東シナ海大陸棚は中国の自然延長であり、主権を有する。東シナ海大陸棚の区域は中国と関係国家がどのように区分するか、協議すべきである、日韓共同開発協定は不法、無効である。いかなる国家や個人も、中国政府の同意なくして東シナ海大陸棚開発活動を進めるならば、これによって引き起こされるすべての結果について、完全な責任を負わなければならない」としておるわけでありますが、これに対してどういうふうにお考えでしょうか。
  387. 中江要介

    中江政府委員 わが国が友好を深めようとしております国が、わが国に対しまして出しました声明といたしましては大変厳しいものである、これは重く受けとめなければならぬというふうに思っておりますけれども、中に書かれて言われておりますことについては、私どもの承服し得ない部分がございますので、その点は、先般来外務大臣が何度もおっしゃっておりますように、われわれの考え方、われわれがいまの国際法に従ってやっていることに間違いがない点、特に、たとえばいかなる国も個人も、中国政府の同意なくして東海大陸棚、つまり東シナ海大陸棚のどの部分もすべて中国政府の同意がなければ手がつけられない、こういう考え方はいまの国際社会では通用しておらないわけでございますから、そういった点はよく話し合う必要がある、こういうふうに思っておるわけです。  いずれにいたしましても、これが日中関係の友好増進の障害にならないように万全の策を講じていきたい、こういうことでございます。
  388. 長田武士

    ○長田委員 ただいまの答弁にあったような政府の理論を一方的に中国側に押しつける。それならば、韓国との間でも当然その主張が通っていいわけじゃありませんか。韓国でも認めないような中間線理論を一方的に中国に押しつけるということは、全く矛盾していませんか。外務大臣、どうでしょうか。
  389. 中江要介

    中江政府委員 それは矛盾しておらないのでございまして、中国はこういう考え方を一方的におっしゃっておるわけです。私どもは私ども考え方を言っておるわけで、両方の意見がまだ合ってないというだけのことでございまして、一方的に言っている者のどちらかが絶対的に正しいと言うわけにはまいらないわけで、どちらも根拠があって言っているわけでしょうからそれは話し合っていこう、こういうことでございます。  韓国日本との間では、韓国が自然延長論ということを一方的に言って単独開発をしようとしたわけです。それに対してわが方は、一方的に中間線論だと言って、中間線まで開発できるということで国内法でも準備しておったわけです。これをほっておきますと両方が紛争になるから話し合って解決した。しかもその話し合った対象は、日本韓国が話し合って解決すればいい部分に限っている。これは、地球上一つの大陸棚に複数の国が接しておりますときに、その関係する国同士で部分的に解決していくということは行われているわけでございまして、理想を言えば全関係国が集まればいい。これは日本もそう思います。中国が言っているとおりだと思います。しかし、中国は、全関係国が集まるには機が熟してないということも他方言っているわけでありますから、全関係国が集まれないのであれば、関係国で処理し得るところを部分的に解決していく、これは国際社会で行われているところでありますので、日本韓国との間で話し合って一つの解決をした。  そのことについて中国の理解を求めようとしておりますのに対しまして、中国は、およそこの大陸棚のどの部分も中国政府の同窓なくしては指一本つけてはならぬという声明を出しておりますが、これは私どもとして承服できない。これはなかなかいまの国際社会では通用しない議論だというようなゆえんのものを、けんかをするのではなくて、これから友好を深めようという両国ですから、友好を阻害しないようにじっくりと話し合っていこう、そのための機会を持とう、その努力をしようというのが先ほど来外務大臣がおっしゃっておるゆえんである、こういうことでございます。
  390. 長田武士

    ○長田委員 韓国との間は紛争が起こりそうであった、あるいは紛争が事実起きた、そういうことで韓国の言い分でありますところの自然延長を認めた。では、中国と日本がこの中間線論で紛争が起きた場合、わが国は中国の延長論を認めますか。
  391. 中江要介

    中江政府委員 日韓大陸棚南部共同開発に関する部分協定で、日本韓国の自然延長論を認めたということはございません。これは韓国の主張する自然延長論と日本の主張する中間線論の妥協を図ったわけで、日本が一方的に韓国の自然延長論に屈服したというようなことでは絶対ございませんので、誤解のないようにしていただきたいと思います。  そういう次第でございますので、協定の第二十八条で、これは大陸棚の境界の画定を最終的に決めるものではない、日本韓国大陸棚に対する主権的権利の主張の立場はこの協定によって害されないということを明記してあるわけでございまして、将来この地域大陸棚の境界が国際法にのっとって最終的に画定されるときに、いまの共同開発のこの境界がそれに従って修正されるなり変更される余地は十分残されておるわけでございます。  他方、日本と中国が話し合うべき部分、つまりいまよりも西南の方、尖閣諸島にずっと延びております部分は、これは日本と中国が話し合うところでございますが、そのときに、中国はもうすでに自然延長論であるということを何回も言っておりますから、自然延長論を主張するでありましょう。日本はこれに対しまして、韓国に主張したと同じように中間線論を主張する。日本が中間線論を主張することに日韓大陸棚協定はじゃまにならないかという点は、いま申し上げました二十八条で、大陸棚の境界画定に対するあるいは主権的権利の行使に関連する両国の立場はこの協定によって害されないということでありますので、韓国は自然延長論を引き続き持っておりますし、日本は中間線論を持っているということでありますので、中国と将来西南の部分で境界の画定の話が始まりますと、日本は中間線論という理論で中国と話し合うことになる、こういう次第でございます。
  392. 長田武士

    ○長田委員 日本政府の、協定調印の直前に訪中をいたしました当時の大平外相が、直接中国側に事情説明をしておるわけであります。国会協定を上程するために日本の立場を説明してきたわけでありますが、中国の意向まで知った上でいわゆる政府・自民党は協定批准を強行し、さらに国内法整備をしようというのは、中国との話し合いを放棄したものだ、そういうふうに受け取られるわけですが、その点どうでしょうか。
  393. 中江要介

    中江政府委員 ちょっと整理して申し上げますと、大平外務大臣が姫鵬飛外交部長に話されましたのは、国会提出前でなくて署名の前でございますね。署名の前でございまして、一九七四年の一月四日でございます。このときに中国がどういう立場をとっているか、私どもは実は存じておりませんでした。  大平外務大臣は、日本はこういう立場で韓国との間で協定を結んだんだ、近く署名の運びになるということを通報されたのに対しまして、中国側は、中国はまだ大陸棚に対する立場を決めておりません——その時点では決まっておらなかったわけです。日本からの通報はこれはテークノートいたしまして、中国は自分の立場をさらに検討いたします。こういう反応であったわけで、中国がこの大陸棚に対していまのような強い立場をとりましたのは、実は日本が、大平外務大臣が事前に中国に通報しました協定を一月三十日に署名をいたしましたその後の二月四日に、初めて中国側として、中国は自然延長論をとるということを明らかにしたわけでございまして、それまでは、私自身も記憶しておりますが、署名の直後に在京の中国大使館の参事官にこの協定文と地図を渡しまして、こういう次第だということを説明しましたときも、中国はまだ態度を決めていない。日本の説明は承りましたから本国に通報します。こういうことであったわけです。署名しましてその内容がはっきりいたしました二月四日に、初めて中国政府として公式にいまのような態度が明らかにされた、こういう経緯でございます。
  394. 長田武士

    ○長田委員 実は十一月一日に、わが党の西中議員の質問に対しまして、外務大臣は、開発企業が不安を感じない環境整備をしたい、そのために中国の事実上の了解をとる努力をしたいと答弁されました。事実上の了解とは具体的にはどういう状態を指すのでしょうか。
  395. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 端的に申し上げれば、中国側のこの共同開発に対します理解を得たい、こういうことでございます。
  396. 長田武士

    ○長田委員 もし理解が得られない場合はどうなりますか。
  397. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 理解が得られるように、なお努力をいたします。
  398. 長田武士

    ○長田委員 どうも一方通行で困るのですけれども、それは日本の立場でしょう。中国が実際問題として抗議を何回もしてきておりますよ。理解していない証拠じゃありませんか。その点どうでしょうか。
  399. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 まだ理解が得られておりませんから、理解を得るように努力をいたすわけであります。
  400. 長田武士

    ○長田委員 座標の六、七、八、これは何を示すのでしょうか。
  401. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 協定付属の合意議事録に書いてございます海図に基づきまして、わが国が綿密にはかりました結果引きました日中の中間線とわが国が考える線でございます。
  402. 長田武士

    ○長田委員 この中間線というのは、基点と申しますか基線が明らかにされて、初めてこの線引きができると私は理解しておるのです。じゃ、日本側と中国側の基線はどこでしょうか。
  403. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 わが国の場合には男女群島の鳥島及び女島でございまして、先方は重島という島でございます。
  404. 長田武士

    ○長田委員 中国側の基線が定まっていないのに中間線が定まるということは、私はナンセンスだと思うのです。日本側が勝手に中国側の基線を決定をする、そうして中間線を引きました、中国側はこれに対して了解してほしい、こういう論理というのはちょっとおかしいじゃありませんか。
  405. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 大陸棚の境界画定等の線を引きます場合の基線は、各国ともその国の領海の幅員を測定する基線というのをとるのが国際法上のルールでございます。したがいまして、わが国及び中国の領海幅員の基線、すなわち通常は低潮線、海岸線でございますけれども、その線を基礎とするということは非常に妥当な方法であるというふうに考えております。
  406. 長田武士

    ○長田委員 もう一度伺いますけれども、中間線を定める場合、たとえばこの机が日本の場合はここに画定されておるが、中国側はまだ決まっていないのですよ。どうして中間線が画定するのですか、答弁してください。
  407. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 いまの答弁の繰り返しになりますけれども、中間線というものを測定いたします場合の基準と申しますのは、国際法のルールによりますと、各国の低潮線というものを基準にしてはかるというのが一般的な規則でございます。したがいまして、中国の場合も、国際法のルールを当てはめますと、中国の領海の幅員をはかる基線が中国の大陸棚その他の幅員をはかる基線にも当然なる、これが国際法の規則でございますので、わが国としては、そういう基準に基づきまして海図二百十という上に作図をいたしたということでございます。
  408. 長田武士

    ○長田委員 くどいようですけれども、中間線を画定する場合、相手国が了解していない、合意を得ていない、そういう中間線というものは実際あるのですか。
  409. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 私、先ほど申し上げましたように、この線は日中の中間線ということで日中が合意した線では決してございません。そういう意味では日中の中間線と呼ぶべきものではなくて、むしろわが国の立場から見て測定をいたしまして日中の中間線と考えられる線という線でございます。したがいまして、これに関しましては中国の同意というふうなことはそもそも問題にならないわけでございまして、わが国の立場から測定したという線でございます。
  410. 長田武士

    ○長田委員 そうなりますと、日本政府が一方的に日中の中間線と思っている線にすぎないということですか。
  411. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 わが国としては非常に注意深く引いた線ではございますけれども、中国の方はこれを日中の中間線と認める義務は決してない線ということでございます。
  412. 長田武士

    ○長田委員 そうなりますと、中国に対して中間線を主張する根拠というのはどうなんですか。外務大臣は、それに対して理解を求める、中国側には理解を求めます。了解を求めますと、いままで何回となく答弁をしております。非常にこの中間線というのは不安定じゃありませんか。その点どうですか。
  413. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 そもそも、日中の中間線と申しますのは、わが国と中国が交渉いたしまして最終的に決定すべきものでございます。したがいまして、わが国と韓国との間あるいはわが国が一方的に中間線を決定するということはできないのは当然のことでございます。外務大臣が中間線等の問題について中国の理解を得るように努めるという発言をされましたのは、わが国が先ほど申し上げましたような日本の立場から見て中国の権原を侵さないように配慮しつつ引いた線というものを、あるいはわが国がこの共同開発区域のさらに西南部の区域におきまして、妥当な中間線でもって日本と中国の間の大陸棚の境界が画定されるべきであるという日本の立場等について中国の理解を得たい、こういう趣旨で言われたものでございます。
  414. 長田武士

    ○長田委員 日本が引いた中間線ですね。これは間違いありませんね。日本考えておる中間線ですね。中国が考えております中間線ではありませんね。その点どうですか。
  415. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 日本が引いた、測定した中間線でございます。
  416. 長田武士

    ○長田委員 そうなりますと、これから中国の理解を求める、そういうケースの場合、中国がこの中間線に対して、この画定線をもっと西の方に入るなんと言われた場合、どうなりますか。動かしますか。
  417. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 中間線と申しますものは、先ほどの国際法の規則によりまして、それぞれの国の低潮線を基線とするわけでございますから、自動的に一つの中間線というのが理論上はあり得るわけでございます。ただ、これを広大な海洋の中で一本の線を引くわけでございますから、そこに作図その他の作業がもちろん必要でございます。したがいまして、最終的にはその作業の結果というものにまつ必要がございますけれども、わが国の考える中間線と中国の考える中間線が非常に違うということは、そもそもあり得ないということでございます。
  418. 長田武士

    ○長田委員 現実にあり得ることじゃありませんか。私はあると思いますよ。当然、境界の画定については両国間で話し合う、そういうことが前提になっていますね。それを日本は、その話し合いということを放棄しております。そうして、日韓で引いたこの共同開発区域、これに対して開発をするわけでありますから、当然日中間におけるところの紛争が起きないということは断言できない。ということは、合意を得ていないということであります。話し合いが行われていないということ。その中間線を一方的に中国に押しつける、こういうことは国際信義に反しませんか。
  419. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 この座標六から八までの線は、決してわが国が一方的に日中の中間線を決めまして、これを中国に押しつけるという性質のものではないわけでございます。  いずれにいたしましても、中間線と申しますものは、先ほども申し上げましたように、低潮線を基準にするわけでございますから、陸地の形状が一定である以上は必ず一つの線ということになるわけでございまして、これと現実に大陸棚等の境界を画定いたします際の境界線というものは、もちろん交渉の結果によって若干違ってくるということは非常にあるわけでございますが、中間線というものはただ一つあり得るものでございます。
  420. 長田武士

    ○長田委員 それでは、この日本が引いた日中の中間線ですね、これは絶対不変でありますか。変わりませんか。中国との交渉の過程においても絶対に変わらないということですか。
  421. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 これは当然、ある一定の海図の上で作図をするわけでありますから、きわめてわずかな微調整等の問題が全くないということは、恐らく言い切れないのだろうと思います。しかしながら、理論的には、先ほど申し上げましたように、中間線というものはただ一つあるわけでございますので、これは日中双方が話し合いますと、非常に簡単な作業の結果その線というものはおのずから出てくるわけでございまして、そういった意味におきまして、このわが国が慎重に測定いたしました中間線というものが非常に大幅に動くというふうなことは、そもそもあり得ない話でございます。  ただ、ここで申し上げたいのは、いずれにいたしましても、この六から八までの線と申しますのは、韓国が自分の権利を主張できる限界と考えております線、これは韓国の立場から引いた韓中の中間線であるわけでございますが、それよりもわが国の側に寄っておるわけでございまして、そういう性質を持った線であるということを御理解いただきたいと思います。
  422. 長田武士

    ○長田委員 どうもその点、中間線について日本が一方的に引いた中間線であることは間違いない。そうなりますと、微調整もあり得るという御答弁がありましたけれども、私は、まさしくそうだろうと思います。  大臣、以上のように、この大陸棚協定は、私たちは多くの疑問を抱いているわけです。私は、中国と関係国の合意を得るまで本委員会の採決は待つべきだと思いますが、どうでしょうか。
  423. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 いろいろ御審議をいただきましたけれども、中国の申しておるように関係国の協議が済むまでということになりますと、これは恐らく当分の間この地域開発はできない、こういうことになろうかと思います。したがいまして、わが国の立場といたしまして、今回の国内法は、協定国会の御承認をいただいたわけでありますから、この裏づけになります国内法はぜひとも御承認を賜って、しかる後に、中国との間におきましては中国の理解を得て、そして開発にかかる、こういうことがわが国として最も望ましいことである、このように考えております。そういう次第でありますので、御審議、また御承認のほどをお願いを申し上げたいわけであります。  座標の六、七、八の線は、これは決して日本と中国との間の中間線を定めたというものでは決してない。それは二十八条をごらんになっても、当然そういうことまで決めてあるわけじゃなくて、その範囲におきまして日本韓国の間で共同開発をいたしましょうと、こういう線でございますから、したがいまして、韓国と中国との間はなお西側にもう少し寄っておるわけでありますけれども、それらの線ではなくして、日中の中間と思われる線を作図しまして、その範囲におきまして開発を行おう、こういう趣旨でございます。  したがいまして、日本といたしまして中国との間に大陸棚、将来はあるいは経済水域ということになってまいるかもしれません。いつの日になるかわかりませんが、そういった点につきまして中国との間には今後ともこれは密接に協議を続けてまいりたい、かように考えております。
  424. 長田武士

    ○長田委員 それでは最後に。  大臣、私は、隣国との友好ということも大切だということは、もう当然だと思いますね。中国が、外務大臣が努力されても、あるいは総理が努力されても、合意に達しない、理解を求めることができなかった、こういうケースの場合、当然あり得るわけですね。そうなった場合、この批准についてはどうお考えですか。
  425. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 当委員会におきましてもるる御説明申し上げましたとおり、この共同開発につきましては、国際的に見まして十分論拠のあるところでございます。したがいまして、この点につきまして中国側によく説明すれば、必ずや理解が得られるものと思います。  ただ問題は、中国といたしまして大陸棚は、アジア大陸と申しますのですか中国大陸と申しますか、中国大陸から自然につくられた大陸棚である、したがって、中国はその大陸棚のいかなる地点におきましても他の国の開発を許さない。こういう点につきましては、これはそういうことは国際的に通る議論ではない。したがいまして、この点につきましての理解を得るということはなかなかむずかしいことであろうと思います。しかし、今回日本韓国との間に協定いたしました地域共同開発につきまして、日本並びに韓国の立場からいきまして、この地域開発を進めるという点につきまして中国側の理解を得たい、かように考えておるわけでございます。と申しますのは、中国側が自然延長論というものを表面から考え方を変えるということは、これはなかなか容易なことではなかろうと思うわけであります。そういう前提のもとに、私どもといたしましては、韓国日本と中国との間にあるこの地域開発につきまして中国側の理解を求めたい、こういうのが私の真意でございます。
  426. 長田武士

    ○長田委員 そうしますと、中国の理解を得られなかった場合——まあ努力されるでしょう、しかしどうしても理解が得られない、そういうケースの場合でも批准をし、開発を強行するというお考えですか。
  427. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 わが国といたしましては、やはり平穏な状態のもとでの開発を望むものでございます。したがいまして、あくまで中国側の理解を得るように粘り強く努力をいたす、こういうことでございます。
  428. 長田武士

    ○長田委員 そうしますと、中国側の理解を得られるまで開発は着手いたしません、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  429. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この点は、先ほどの議論と同じようなことで恐縮でありますけれども、私といたしましては、円満な開発ができますように最大限の努力をさせていただく、こう申し上げるしかないと思います。
  430. 長田武士

    ○長田委員 どうも非常に私は納得できないのですよ。大臣、自分で御答弁されておって自分自身納得されておるのですか、そういうことで。中国側があれだけ抗議をしてきておる。それは外交努力をし、外務大臣も中国に行かれる——私は努力は多といたします。しかし、どうしても了解を得られないということになりまして紛糾する、それでもなおかつ、日本はこの大陸棚共同開発に踏み切るのかどうかということを聞いておるのです。努力するのはあたりまえなんです。そんなことを聞いておるのではないのですよ。中国の理解を得ることができない、中国が日本の説明に対し、あるいは努力に対してどうしても理解を示さない、こうなるケースだってあり得るわけです。こうなった場合、韓国との約束もある、じゃやるんだということで共同開発するのですか。もう一度明確に御答弁ください。
  431. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 国内法国会で御承認いただけない場合でありますとか、あるいは中国側が理解をしない場合でありますとか、そのような仮定のことにつきましては、ここでいま申し上げるのは適当でないというように私ども考えておりますので申し上げないわけでございます。御提案申し上げておりますこの開発法が必ず国会で御承認いただけるように、また円満な開発を図るために中国の理解を得るために、私ども最後まで最大限の努力をいたします。こういうことを申し上げておるわけです。
  432. 長田武士

    ○長田委員 それは理解できません。現実に中国から抗議が出てきているじゃありませんか。出ているじゃありませんか。それを、仮定の話ですか。仮定なんですか、どうですか。
  433. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私は、中国側に対しましていつでも説明に上がるということを申しておるわけでございます。そういうことでありまして、いまから、中国に伺ってそして理解が得られない、こういうことを前提といたしまして物事をその先まで決めるということは適当でない、そのときになって考えるべきことであると考えます。
  434. 長田武士

    ○長田委員 そのときに共同開発するかどうか、対応策を考えるということですね。間違いありませんか。やらないかもしれない、やるかもしれないということですか。
  435. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 そのときに考えるべきことであろう、いまから予定をすべきことではないと思います。
  436. 長田武士

    ○長田委員 時間が参りましたので、非常に残念でありますけれども、また次の機会をとらえまして十分私も質問をしてまいりたい、こう考えております。  以上であります。
  437. 山崎拓

    山崎(拓)委員長代理 宮田早苗君。
  438. 宮田早苗

    ○宮田委員 日韓大陸棚協定国会承認からもう半年たったわけで、開発着手に必要な特別措置法の成立がおくれておるわけですが、最近の韓国政府の動向について外務省の方にまずお尋ねするわけです。  日本側の対応がおそいことに対しまして、韓国側は、条約批准書の早期交換の督促と申しますか、あるいは韓国独自の開発といったような主張、そういう動きについて新聞あたりでも出ておるようですが、その点についてまず説明をお聞きしたいということです。     〔山崎(拓)委員長代理退席中島(源)委員長代理着席
  439. 中江要介

    中江政府委員 韓国の立場からいたしますと、この協定が署名されましてから三年十一カ月ですかたっておるわけでございまして、ことしの通常国会における協定承認そのものもずいぶん韓国では問題になっておったわけでございます。日本にいたしましても、署名をいたしました二国間の協定国会承認がおくれた例というのは非常に少のうございまして、そういう意味日本も鋭意努力いたしました。ところが、この協定の締結の前後から、日韓間には金大中事件を初めとしていろいろのむずかしい問題がありましたので、韓国側もある程度その日本側における審議のむずかしさというものには理解を示しておりましたけれども、ことしの協定承認のときは、韓国としてはもうぎりぎりいっぱいであったという気魄があらゆる面を通じて私どもに伝わってまいりました。これは、日本の憲法のもとで国会承認をお願いして、日本の独自の判断でこれを進めているのであるということで韓国には説明しておりましたが、率いにして国会承認を得ました結果として、韓国の立場からいたしますと、日本国会は一つでありますので、協定承認した国会は当然その協定を円滑に実施するための国内法は急いでくれるものという大きな期待がある、これは無理ない点だろうと思います。  そういう点につきましては、日本韓国側の立場というものは十分理解しておりますが、最近は、金永善駐日大使も外務大臣を訪ねまして、本件について、これはもっぱら日本の内政であるから内政干渉がましいことはできないけれども、しかし、韓国側としては、一日千秋の思いでもうやがて四年になるその協定の速やかな発効を期待しているというその気持ちは、正式に外交ルートを通じて高いレベルで伝えてきている、これが現状でございます。
  440. 宮田早苗

    ○宮田委員 一連のその動きについてでございますが、もう国会もあと数日を残すだけになったわけです。今国会国内法成立できなかった場合、常識的には来年の通常国会ということになるわけですが、その場合、いままでのその動きに対しまして、韓国側が対抗措置と申しますか独自の行動をとることが予測されるのじゃないか、その点についてはどうお考えになっているかお聞きします。
  441. 中江要介

    中江政府委員 これは、先般この協定自体が国会承認が得られるかどうか非常に危ぶまれたときに、韓国の国内では非常な強い突き上げが韓国政府に対してありまして、いつまで韓国政府は待っているのか、そもそもこれは韓国が単独で開発できるはずのところを、日本が文句をつけて半分に折れたんじゃないか、こういう感じが韓国側にあるだけに、韓国は国内で韓国政府を突き上げる、その結果として韓国政府の立場が非常にむずかしくなる、こういう事態がございました。  この協定承認がありまして一息ついたのでございますけれども、いまおっしゃいますように、国内法審議がまたそういうことでおくれますと、日本の事情がどうであれ、これは国家間の、しかも最も近い、友好であらなければならない隣国同士の問題として、韓国側の不満が強くなって、また単独開発をする、あるいはその他のいろいろの突き上げが韓国政府に対して行われるであろうことは予想されますが、韓国政府は、現在までのところ、日韓の友好関係を阻害してはならないという政治的な立場から、そういったものに対して耐えてきている、こういうのが現状だというふうに把握しております。
  442. 宮田早苗

    ○宮田委員 韓国が耐えておるというのは、わが国の国会でこの法律承認されるという期待があるから耐えておるのじゃないか、こう思うのです。ところが、今国会でどうもむずかしくなったということになりますと、韓国自体が独自の行動といいますか開発といいますか、そういうことを始めるというような予想といいますか感触といいますのはないのかどうか、お聞きします。
  443. 中江要介

    中江政府委員 これは、私ども日本政府の立場で軽々に予測したり観測したりすることは、やはり差し控えることがいいと思います。ただ、韓国側ではそういう圧力が強くなるであろうということと、その期待にこたえないときにそれが韓国に及ぼすであろう一般的な外交上の影響というものは、私どもは慎重に考えなければならぬ。その程度以上に、韓国側が何か単独開発で脅迫している、おどしをかけているというようなことは、これは許されないことでございますので、推測は慎みたい、こう思います。
  444. 宮田早苗

    ○宮田委員 先日来本委員会で集中的に取り上げられております対中国との関係について、重複することがたくさんあると思いますが、若干質問をいたします。  まず、外務大臣は先日の本委員答弁で、日韓協定問題打開のための訪中ということを表明されておりますが、あくまでもこの問題に限ってですね。といいますのは、この開発という問題に限っての訪中という意味かどうか、この点、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  445. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 中国との間にはやはり最大の懸案があるわけでございます。この問題につきまして、現在いろいろ真剣な検討を続けているわけでございますが、この条約問題につきましても、わが国といたしましては、やはりなるべく早い機会にこの問題を解決いたすべきものと考えておる次第でございまして、したがいまして、訪中するということがこれはいまの段階でいつということは言えないわけでございますが、私といたしまして、率直なところ、この二つの問題につきまして努力をいたしたいと考えておるわけでございます。時期がどうなるか、あるいはどちらの問題を先にするとかいうこともまだ検討中でございます。
  446. 宮田早苗

    ○宮田委員 中国との関係につきましては、条約並びに国内法のこれまでの審議を通じまして問題提起されてきたわけですが、振り返ってみますと、日韓交渉の時点で中国側と交渉しておりましたならば処理しやすかったのじゃないか、こう思うのですが、これは過去のことでちょっと質問どうかと思いますけれども、その点のお考えをちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  447. 中江要介

    中江政府委員 これは御承知のように、日本韓国がこの問題について具体的に法律論争を始めましたのは一九七〇年のことでございます。といいますことは、逆に言いますと、日中の正常化前でございます。しかしながら、当時といたしましては、日中の正常化というものはだんだん差し迫っているという国際情勢下にございましたので、日本といたしましては、韓国との交渉に当たりましては、再三申し上げておりますように、中国が主張するであろう大陸棚部分につきましてはこれを慎重に外しまして、国際法上どこから見ても日韓両国で話し合えば済む部分に限定して日韓両国で話し合いをするという方針で進んでおりましたので、その後日中正常化が行われましたけれども、それからすぐに日中交渉を始めるという考え方はなかったわけで、また、その必要は認めておらなかったわけでございます。  しかしながら、日中正常化いたしましたし、これから大事に日中関係を育てていかなければならないという配慮から、大平外務大臣が、異例のことでございますが、署名に先立ちまして、協定案文がまとまった段階で、実は日韓間でこういうふうに協定をまとめてきた、やがて署名に移るけれども、これは中国の権利を害しないように配慮してあるという御説明を先方の外交部長にいたしまして、先方は、中国としてまだ大陸棚についての立場は決めていない、だから検討させていただきます。こういうスタートであったわけで、その雰囲気からいたしまして、全く、日中間で本件が大変な紛争になる、あるいは協議を要することである、あるいは合意を必要とする、そういう問題意識は双方ともになかった、こう私は確信しております。
  448. 宮田早苗

    ○宮田委員 外務大臣のさっきの答弁関連してでございますが、訪中の時期は未定ということでございますが、国内法成立が今度の臨時国会かそれとも来年の通常国会にずれ込むか、そこら辺を見ての判断ということも考えられるわけです。それともまた、訪中をなさるときのタイミングと申しますのは、日中の平和条約交渉ということをやはりにらんでというふうにも考えられるわけですけれども、いま私が申し上げましたことに対しまして、大臣の御所見を承りたいと思います。
  449. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私といたしましては、ぜひともこの大陸棚開発国内法につきましてはこの国会で御承認を賜りたいと切に願っておるところでございまして、この問題と、御承認をいただきました上はこれから先に円満な状態のもとで開発が進められることが必要になるわけでございます。そういうことで、円満な開発につきまして中国側の理解をぜひ得たいということが一つでございます。  また、平和友好条約の締結の問題につきまして、これは目下検討いたし続けておるわけでございますが、この点につきましては、なるべく早い機会に双方が満足できる形のものをつくり上げたい。両方とも同時に考えておるというのが率直なところでございます。
  450. 宮田早苗

    ○宮田委員 そこで、もしこの法律成立した場合、外相の中国訪問が十一月中ということは考えられないと思いますが、韓国との批准書交換は、中国との話し合いが円満につくまで先に延ばす、そのような配慮というものはいま考えておられるかどうか、お聞きいたします。
  451. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この国会におきまして国内法が御承認をいただきました場合におきまして、これから円満な開発をいたしたい、こう考えておりますので、したがいまして、中国側の理解を得るということと批准の時期というものは、ある程度やはり考えるべきであろうと思っております。
  452. 宮田早苗

    ○宮田委員 外務省関係であと一つだけお聞きいたしますのは、開発に伴います海洋汚染についてであります。  夏の国会委員質疑の際にも出ておりましたように、韓国政府海洋汚染防止に関する法体系の整備、これはその後進展しておりますかどうか、お聞きをいたします。
  453. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 韓国における環境汚染防止の法体系でございますけれども日本の公害対策基本法に相当いたしますような公害防止法というものが一九七一年一月以来制定されております。これは大気汚染でありますとか、騒音の防止でありますとか、水質汚染の防止でありますとか、そういったものを取り扱ったものでございます。  次に、海洋に関しましては、海洋汚染防止法、いま法案の段階で、現在開会中の韓国国会に提出済みでございます。また、これの実施規則につきましても、大統領令として現在準備中であるというふうに承知いたしております。もちろん国会のことでございますので、行政府から私ども得ました情報で、必ずしも一〇〇%確実ではございませんが、十一月中旬から保健社会委員会に上程されて、何とか十二月の初めには成立させたい、こういうふうな意向のように承知いたしております。  次に、ただいまの海洋汚染防止法は、主として船でありますとか、あるいは海上の掘削装置でありますとか、そういったものから出ます廃油であるとか、そういったものの規制でございますけれども、現実の今度の共同開発区域に関係いたします海底鉱物資源開発に伴う、そういう探査あるいは掘削活動に伴う環境汚染の防止につきましては、まず海底鉱物資源開発法、これが一九七〇年一月に公布されております。ただ、この開発法につきましては簡単な規定にとどまっておりまして、この法律に規定されているもの以外は鉱山保安法というものの規定を準用するということになっております。この鉱山保安法のもとに、鉱山保安施行規則というものが一九六九年七月の商工部令ということで存在しておりましたが、これは主として陸上の炭鉱を対象にするということで、海底石油開発に必ずしもそぐわない面もあるということで、石油鉱山保安施行規則というものを現在作成中でございまして、これは商工部令として近く制定するということでございます。  かように、協定第二十条に基づきます交換公文で、いろいろ海洋の汚染防止及び除去についてとるべき措置について基準が定められておりますが、それに合致するように韓国の方としてもいろいろ法制の整備に努力しておるように私ども理解しております。
  454. 宮田早苗

    ○宮田委員 外務大臣、まだ食事をしてないようですから、もう結構でございます。  次に、これはエネルギー対策についてお聞きするわけです。  総合エネルギー調査基本問題懇談会の中間報告に関連をしてお問いするわけですが、石油政策の重要な柱として、自主開発原油のウエートを高めることが従来目標とされてきたわけです。自主開発原油等いわゆる政策原油を、昭和六十五年度までに総需要の三分の一程度まで引き上げるべきだという目標の見通し、この点について御説明を願いたいと思います。
  455. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいま御指摘のいわゆる政策原油と申しますか、わが国が自主的に開発した原油、並びにGG原油と申しますか政府間で話し合った原油、こういったものを昭和六十五年度時点におきまして輸入原油の三分の一まで持っていくべきであるという中間報告の趣旨でございます。  その時点における石油の輸入量は一応四億五千万キロリッターというふうに想定いたしておりますので、約一億五千万キロリッターの政策原油を輸入するということになろうかと思います。一方、自主開発原油につきましては、六十五年度までに新たに一日当たり百万バレルの開発を進めたい、現在かれこれ七十万バレルの能力を持っておりますが、今後十何年かの間に二十万バレルぐらい減少していくだろうということで、六十五年時点におきます自主開発原油は一日当たり百五十万バレル、年間約九千万キロリッターということになろうかと思います。  そういう努力目標に対しまして、今後とも石油開発公団の投融資を一つの助成手段といたしまして、さらにはそういった政策原油の引き取りを円滑にするような措置をあわせ講ずることによりまして目標を達成いたしたい、かように考えております。
  456. 宮田早苗

    ○宮田委員 資源エネルギー庁の「石油の安定確保のために」という九月に出しました資料に、自主開発原油輸入量の推移が掲載されておるわけです。  この中で注目しなければならないのは、アラビア石油の推移なんです。五十一年度実績が八百八十八万七千キロリットルで、四十七年度の半分以下、こうなっております。これが影響して、四十九年度に最高の一〇%を記録いたしました自主開発原油の比率が、八・七%まで下がっておるわけです。この貴重な自主開発原油がアメリカ初め他国に流されている事実がはっきりしているわけですが、原因は何かということと、政府は一体国内の精製メーカーに対してどのような指導をなさっておられるか、この点もお聞きをいたします。
  457. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 御指摘のとおり、アラビア石油の輸入量は年を追って減少いたしておるわけでございます。これには幾つかの理由があるわけでございますが、まず、価格の面につきまして、アラビアン・ライトあるいはアラビアン・ヘビーに比べまして、アラビア石油と申しますかカフジ原油が比較的割り高である、いわゆるプライス・ディファレンシャルがその実勢よりも狭いということになろうかと思います。  二つ目は、カフジ原油の性質でございまして、重質油であり高硫黄原油である。御承知のように、日本国内における需要というのはだんだん軽質化の方向にあるのに対して、重質油であるということが第二の原因かと思います。  それから、メジャー等と比較いたしますと、メジャーはいろんな種類の油を持っておりますので、特に軽い油などと合わせて重い油を日本に持ってくるといったようなこともございまして、その点からも差がついておるかと思います。  さらに、御承知のように、ことしの一月におけるOPECの原油価格の引き上げに当たりまして、サウジアラビアが五%アップ、クウェートが一〇%アップといったようなことになりまして、同一の原油につきまして二つの価格が出てきたといったようなことから、国内に持ってまいりましても、いわゆる値決め交渉と申しますか価格交渉が非常にやりづらかったといったようなことも影響いたしまして、特に本年度上期におきましてはカフジ原油の引き取りが減少した、こういうことでございます。  さような実情に合わせまして、今年の四月以降、精製業者に対しましてこのカフジ原油の引き取りについて指導と申しますか協力を要請いたしまして、下期は何とか増量が見込めるわけでございますが、年度間を通じて、昨年の一日当たり二十六万バレルに対しましてせいぜい十数万バレルしか確保できないといったような状況でございます。  さような行政指導による措置のほかに、ただいま申し上げましたように、原油そのものが重質でございますので、これを引き取るためには、国内の軽質化する需要構造に合わせるためにも、重質油分解装置を導入するとか、それに対して国としても助成措置を講ずる、かような方向で、経済的な面においてもいわゆる政策原油の引き取りが容易になるように措置いたしたい、かように考えております。
  458. 宮田早苗

    ○宮田委員 重質油できらわれておるから分解設備の導入というのは必要ということなんでございますが、この問題については技術的にいろいろ問題があるように聞いておるわけですけれども、その点はどうですか。
  459. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 重質油の分解装置の技術的な問題はかなり解明されてきておると思いますが、問題は、むしろ重質分解にかけることによるコストの上昇、一つの計算によりますとバレル当たり三ドルぐらい高くなるのじゃなかろうかということを言われておりますので、むしろそういったコスト上昇を極力低く抑えるといった方向が必要かと思います。たとえば、来年度開発銀行に対しまして、重質油分解装置について財政上の金融措置を講じたい、これにつきましてもただいま申し上げたようなコストアップ要因をできるだけ低くするように、良質の条件のいい資金の供給ができるようにわれわれとしても努力いたしたいと思っておるわけでございます。
  460. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一つお聞きしますが、アラビア石油の五十二年度の見通しについて一体どうなっておるか、お聞きしたいと思います。
  461. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 行政指導をいたすことによりまして、年度間を通じて一日当たり十五万バレルぐらいになるだろうと見ております。
  462. 宮田早苗

    ○宮田委員 私は、ここでアラビア石油の例を引きましたのは、莫大な国の資金をつぎ込みながら、実態は国のエネルギー政策に寄与していないのじゃないかということ、同じようなことを日韓大陸棚石油開発でも繰り返してはならないと思うからでございます。  ところで、エネルギー調査会の長期需給見通しによりますと、昭和六十五年度の国内石油・天然ガスの供給量を八百万キロリットルから千四百万キロリットルとはじいておるわけです。上限の千四百万キロリットルは対策を促進した場合のケースと思いますが、八百万から千四百万の中にはこの大陸棚開発分が含まれているかどうか、お聞きします。
  463. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 いまの御質問にお答えする前に、先ほどのカフジ原油はどれぐらいになるかということを若干補足さしていただきますと、先ほど私が十五万バレル・パー・デーと申しましたのは日本に持ち込む分でございまして、そのほか海外に出すものが約六万バレルございます。合計いたしますと二十一万バレル、年間約千二百万キロリットルぐらいになるかと思いますので、補足さしていただきます。  それから、ただいまの御指摘の点でございますが、総合エネルギー調査会の中間報告におきますところの六十年あるいは六十五年の国内における石油・天然ガスにつきましては、国の基礎調査をベースにいたしまして、これによって得られたデータでもって計算をいたしております。さようなところから、御指摘の日韓共同開発区域のものはこの中には入っておりません。
  464. 宮田早苗

    ○宮田委員 日韓大陸棚開発石油計画の中に入れていないといたしますと、国内石油開発政策促進ケースというのは、どのような政策を想定して上限の千四百万キロリットルになるか、この点をお聞きします。
  465. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 共同開発地域を対象に入れておりませんのは、十分な調査ができておりませんので、それを計算に入れることはむしろ実情に合わないということでございます。  それから、ただいまの千百万ないし千四百万の基礎でございますが、六十年ないしは六十五年度までに五十二の構造に対しまして七十八のボーリングを行うことを前提として計算いたしております。
  466. 宮田早苗

    ○宮田委員 東シナ海の石油探査は、日本韓国はこれまでに相当手がけてまいったと思うのです。しかし、過去の探査ではどうも思わしくないデータが多いようですので、この共同開発区域の方は果たしてどうなのかという、有望性について疑問視する向きも大分出ておるわけです。  そこで、まずお伺いいたしますが、共同開発区域に隣接いたしました韓国の一から六の鉱区、通産省の説明によりますと、このうち三、三、四、六の四つの鉱区調査から、さっきも質問が出ておりましたが、メジャーが引き揚げているということなんです。このメジャー撤退の真相を、重複すると思いますが、もう一度お聞かせ願いたいと思います。
  467. 古田徳昌

    ○古田政府委員 先ほど外務省からのお答えにもありましたように、会社側がその事情をつまびらかにしませんので、私どもも詳細については承知しておりませんが、ただ、先生ただいま御指摘になりました鉱区につきましては、それぞれの租鉱権者が現実に探鉱活動を実施しております。たとえて言いますと、第一鉱区につきましてはカルテックスが一本のボーリングをしております。それから第二鉱区につきましてはガルフが二本、それから第五鉱区についてはカルテックスが一本、第六鉱区についてはシェルが三本のボーリングをそれぞれして、その試掘結果を地質的に見て、今後なお探鉱活動を続ける価値がないということで撤退したというふうに私ども考えております。  なお、この共同探鉱鉱区に関係しております第五鉱区、第七鉱区につきましては、現在なお撤退せずに、租鉱権が有効ということになっておるわけでございます。
  468. 宮田早苗

    ○宮田委員 具体的に言いますと、油やガスの徴候がなかったということなんですか。
  469. 古田徳昌

    ○古田政府委員 詳細は不明でございますが、通常、石油開発会社は一本ないし二本、場合によっては三本程度のボーリングをしまして、徴候がない場合には撤退をするということが通例でございますので、現実にボーリングをしまして撤退をしているという事実を見ますと、先生おっしゃったように推察できるわけでございます。
  470. 宮田早苗

    ○宮田委員 西日本石油開発の五島列島の福江沖での試掘では、若干の油徴があるということですが、この地点の調査結果から共同開発区域の可能性を推定するとどういうことになるか、お聞かせ願いたいと思います。
  471. 古田徳昌

    ○古田政府委員 西日本石油開発が、五島列島の西方福江沖で、四十七年及び四十八年に二本のボーリングをしております。その結果を見ますと、ある程度期待の持てますガス徴と油徴が見られておりまして、会社としましても、さらに試掘を当該地域について実施してみる価値があるという結論を得たというふうに聞いております。  この地域は、日韓共同開発区域に非常に接近した場所でございますので、私どもとしては、エカフェの調査結果等との関連考えまして、この共同開発区域におきます石油、天然ガスの賦存の可能性が非常に高いというふうに考えておるわけでございます。
  472. 宮田早苗

    ○宮田委員 この石油の可能性については、とにかく試掘をやってみなければわからない。埋蔵量についても同じことですが、また油質についても同じことが言えると思うのです。先ほど取り上げましたアラビア石油の例でもありますので質問をするわけですが、中国本土の油質、あるいは日本海の油質から見て、良質の油が期待できるかどうか、この点についてわかっておりますならば、お聞かせ願いたいと思います。
  473. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 御指摘のように、この共同開発地域では、まだ本格的な探査活動は行われておりませんので、的確なことは申し上げかねるわけでございますが、たとえば阿賀沖につきましては、サルファ分が〇・一一%、非常に低硫黄で軽質のものが生産されております。そういったところから、周辺大陸棚におきましては、かなり良質の油が出るのではなかろうかというふうに期待いたしておるわけでございます。
  474. 宮田早苗

    ○宮田委員 次も推定で結構でございますが、コストの問題について、調査から出産までを考えてどの程度になるものか、試算をされたことでもございましたら、お聞かせを願いたいと思います。
  475. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 当該地域につきましては、先ほども申し上げておりますように、まだ本格的な調査活動をやっておりませんので、探査探鉱にどれぐらい要るか、あるいは開発段階に至るまでどの程度の資金が要るかということは非常にむずかしいわけでございますが、たとえば実例的に申し上げますと、先ほど申し上げた阿賀沖につきましては、約一千万トンの埋蔵量に対してかれこれ三百億程度の費用がかかったというふうに聞いております。それから北海に二二アンという油田がございますが、これが埋蔵量一億六千万キロリッッター程度ということでございますが、この開発のために約二十三億ドルの資金が投下されておる。大体さようなところが実例的に申し上げての開発費用ということになろうかと思います。
  476. 宮田早苗

    ○宮田委員 直接この法律関係はございませんが、間接的に非常に大きな関係がございます特にエネルギーの中の石油問題で、大臣も時たまおっしゃっておりますように、タンカー備蓄の問題についていろいろ研究、検討をされておるようですが、大臣の見解をまずお聞かせ願いたいと思います。
  477. 田中龍夫

    田中国務大臣 一般備蓄ではなく、特にタンカー備蓄の御指摘のように存じますが、本件につきましては、当省におきまして、昨年の九月ごろから総合エネルギー調査会の中のセクションを設けまして、タンカー備蓄についても真面目な研究を続けてまいったのでありますけれども、その後、御案内のとおりの黒字減らしというような問題から、今日の備蓄の五十四年九十日備蓄という中で、特に冬季を控えまして満タンの状態でもございます。そういうふうな意味からも、われわれとしましては、応急の問題としましてタンカー備蓄ということが言われるようになりましたが、これにつきましては、運輸当局の方とも折衝を重ねておる次第でありますが、本日も運輸大臣の方とも交渉を続けておりまして、運輸大臣と話をいたしまして、事務当局同士の詰めをさらにいたしたい、こう考えております。  しかしながら、これは簡単ではございませんで、現在考えられておりますのは、二十五万トンタンカー約二十杯、五百万キロリッターというような一応の計算を出しておりますが、これにつきましては、技術上から申しましてもなかなかむずかしい問題がございます。特に保安の問題でありますとか、あるいは制度上の問題等々を解決しなければなりません。ことに、これを今度はタンクに入れましても、船会社と石油会社との間の民間の話し合いにゆだねなければなりませんので——政府備蓄はまだできておりません。これを政府備蓄とする場合には、開発公団あたりの法令の改正が要りますので、現在のところでは民間同士の話し合いということになりますと、さあ、これらの態様のものをどういうところに係留し、どういうふうな方法でやっていくかと、なかなか困難な問題がたくさんございます。  もう一つは、一方におきましては資金の問題で、やはり一千五百億円ほどの資金量を要することになりまするし、あるいは保険の問題からいいましても、先般の三菱の油の流出事故等を考えますと、これに対する補償の問題等も法制的に整備しなければならぬ、かようないろいろな問題がございますことを、中間でございまするが一応御報告申し上げます。  なお、これにつきましては、特に一日も早く運輸省との間の折衝を遂げて緒につきたい、かように考えております。
  478. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一つお伺いいたしますが、民間の方もそういう声が大分強くなっておるようですが、その場合、法的な措置ということが必要かどうかということと、もう一つは、一般備蓄に対するコストとタンカーで備蓄いたしますコスト、どの程度になるものか、試算をされておりますならばひとつお知らせを願いたい、こう思います。
  479. 田中龍夫

    田中国務大臣 アウトラインは私から申し上げましたが、なお、契約あるいは法制あるいはコストの問題につきましては、長官の方からさらに詳細お答えいたしましょう。
  480. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 陸上備蓄につきましては、これはいつ設置されたかという時点によっても差がございますが、大体キロリッター当たり年間四、五千円くらいのコストがかかるのではないかと見ております。それからタンカー備蓄につきましては、これは船主側との話し合いになろうかと思いますが、いまわれわれが計算いたしておりますのは、キロリッター当たり四千八百円ぐらい、それに漁業補償その他の経費などを入れますとやはり六千円くらいになるのではなかろうか、これは一応の試算でございますが、さような状況でございます。
  481. 宮田早苗

    ○宮田委員 法的措置は要らないのですね。
  482. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 法的根拠という意味でございますが、たとえば石油開発公団にやらせるという場合には、公団法の改正が必要になってまいります。  それから民間備蓄の場合、現在石油サイドで気にいたしておりますのは、万が一事故が発生した場合の損害補償につきまして、現状のままで果たしていわゆる油濁賠償保険に付保できるかどうかといったようなことを懸念いたしておるようでございますが、このこと自体が法律問題になるかどうかというのは、まだそこまでは詰め切っておりません。
  483. 宮田早苗

    ○宮田委員 最後の、質問でございますが、通産大臣にお伺いしておきたいのは、今度の日韓石油開発の問題について、いろいろ質問の中から、国際的な問題、特に対外的な問題というのが非常に大きく取り上げられておるわけでございますが、何としてもこの問題については円満にということが前提でないといけないのではないかというふうに思います。大臣自身、開発そのものについての所管の責任者でございますので、通産大臣はそういう点については極力対外的な立場の方の御配慮ということは心がけておかなければならぬのではないか、こう思っておりますので、その点は要望として、また通産大臣の見解がございましたら最後にお聞きして、私の質問を終わります。
  484. 田中龍夫

    田中国務大臣 朝から外務大臣がるる申し上げておりますように、特にこの地域開発に当たりましては、一方におきましては、国家といたしまして緊要な石油資源開発という問題でぜひいたしたいことでございまするが、反面、また外交上の問題としてトラブルの原因等になりましても相済まぬ次第でありまするし、この開発につきましてかようなことがありませんように、政府といたしましては、外交上の問題あるいは採掘上の問題あるいは安全性の問題、あらゆる問題につきましてきめ細かく、しかも全力を挙げて万遺漏ないような努力をいたしたい、かように考えております。
  485. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 安田純治君。
  486. 安田純治

    ○安田委員 質疑に入る前に、十一月一日の理事会で、これは重要法案であるから定足数は充足するということをここにいらっしゃる社会党の佐野理事を筆頭にして確認をしたはずです。そのときに野呂委員長は、自民党だけ、与党だけで半数以上確保するのは無理だろう、しかし、定足数が充足しない場合、質問をストップしてもやむを得ない、こういうことを言われたのですが、委員長、どうでしょうか。いま見ますと、どうも半数いない。私も、一人でも欠けたらというやかましいことは言いませんけれども、自民党さんだけでは過半数は超えないわけですから、そこまでやかましいことを言わないけれども、これでは自民党の委員のうちの半分もいない、こういう状態をどうしてくれますか。
  487. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 ちょっとストップしてください。     〔速記中止〕
  488. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 速記を入れてください。
  489. 安田純治

    ○安田委員 非常に厳重な申し合わせをしたつもりでございますけれども、ぜひあと二、三人集めていただくことを前提にして質問に入らせていただきます。理事会のそういう申し合わせを軽視されては非常に困ると思いますので、ひとつ委員長、厳重に注意をしていただきたいと思います。  大分いままで同僚委員から質問がありまして、協定締結に至る事実経過などについて問答があったわけでございますけれども、私の本論の質問に入る前に、整理的な意味で若干協定締結に至る事実経過、大筋こんなことじゃないかと思うのですが、間違いないかどうか。  まず、エカフェが一九六八年、共同開発地域を含む東シナ海調査石油賦存の有望な地域であるということになった。次に、韓国は一九七〇年、海底鉱物資源開発法をつくり、自然延長論の上に立って勝手に日本近海まで鉱区、第一鉱区から第七鉱区までを決めて、メジャー系その他外国企業に租鉱権者としての権利を認めた。次に、一方日本側でも、幾つかの企業が鉱区の出願をするという事態になった。かくて、日韓両国の権利主張が重複したので、韓国の自然延長論と日本側の中間線論で議論を煮詰めていったけれども決着がつかないので、境界論争はたな上げにして、その点に関する双方の主張はそのままにして、共同開発をすることになった。これが大筋の事実経過だと思いますけれども、それに間違いございませんでしょうか。
  490. 中江要介

    中江政府委員 大筋の中で、共同開発に踏み切る直前に日本側から国際司法裁判所に提訴しようという提案を行ったという重要なステップがいまお読み上げになった中にないということを除きまして、大体そういう経過であった、こういうことでございます。
  491. 安田純治

    ○安田委員 そうしますと、この共同開発というのは、本来日本としては自分の主張が正しいと思っているわけですから望ましくないことだけれども韓国の出方、いま言ったように、韓国が先手を打って単独で日本近海まで勝手に鉱区を設定する、こういう動きがあって、やむを得ず、日本の主張は正しいと信じておるけれども韓国の出方によってこういう協定ができたということに理解してよろしいのですね。
  492. 中江要介

    中江政府委員 こういう交渉といいますか法律紛争に入りますきっかけは、これはエカフェの調査とそれに基づく両国の対応でございましたが、その中で韓国の方が一歩進んでいたという意味ではいま先生がおっしゃいましたような事情がございますが、そこで、やむを得ず妥協といいますかこういう結果に落ちついたことについては、韓国が先手をとったから韓国に有利になったというニュアンスでおっしゃったといたしますと、私どもの受けとめ方はそうではなくて、五分五分で渡り合った結果五分五分の実際的解決に落ちついた、こういうふうに認識しております。
  493. 安田純治

    ○安田委員 しかし、これはあくまでも最初に韓国が先手を打ったためにこういうことになった、もし韓国がこういう主張をしておらなければ、日本の主張はそのまま通ったろうと思うのですが、韓国が自然延長論で強く押してくる、しかも先に日本近海まで鉱区を設定する、こういう事態に直面して日本政府が妥協せざるを得なかったということは、それは事実じゃございませんか。喜んで妥協したのですか。それとも、残念ながら、わが方の主張を通すのは正しいと信じておるけれども韓国という相手もあることでやむを得ず妥協した、こういうことになる方が正しいのじゃありませんか、そういう解釈の方が。
  494. 中江要介

    中江政府委員 時間的経過から言いますと、韓国の方が進んだ国内的な措置をとっていたことは事実でございますけれども、これの実際的解決の前提になります法律的な立場から言いますと、これはどちらがどちらとも言えない、非常に伯仲した対立した議論であった。日本が先に手を打っていれば中間線まで自分のものとして開発できたかということには、仮定の問題ですが、これは相当大きな疑問があると私は思います。
  495. 安田純治

    ○安田委員 ともかく、日本側の中間線論は間違っていたとか、交渉の結果いろいろ考えてみてあるいは引っ込めたとか、そういうことではなくて、その正当性の主張はいまでも維持していることになりますか。
  496. 中江要介

    中江政府委員 その正当性は維持しておりますし、その権利は留保している。同じ意味で、韓国側は自然延長論を引き続き正当だとして維持しておりますし、権利を留保している、こういうことでございます。
  497. 安田純治

    ○安田委員 そうすると、日本側の主張はわれわれとしては正当性を信じておる。しかし、韓国側のいわゆる自然延長論も、法的、理論的に見て全く根拠のない、ナンセンスな言いがかりなのか、それなりに根拠のありそうなものなのか、その点はどういうふうに認識しているわけですか。
  498. 中江要介

    中江政府委員 これは、足かけ三年、わが方が全力を挙げてこれを論駁しようとしたけれども、ついにそれを論破し得なかったぐらいに、自然延長論には相当の根拠がある、これは客観的にそう認めるのが正しいと思います。
  499. 安田純治

    ○安田委員 ところで、中国側も自然延長論をとっていると思われますけれども、どうでしょうか。
  500. 中江要介

    中江政府委員 中国側が自然延長論をとっておることは、私どもも承知しておるわけですが、具体的に論争になりますときは、その大陸棚の地形あるいはその管轄権の範囲、そういうものを踏まえての論争になるわけですので、中国と日本がいよいよ境界画定の話し合いに入りましたときにどれだけの妥当性を持つかというのは、その具体的な案件に即して判断されることと思いますが、一般論として、中国が自然延長論を唱えているその妥当性は、韓国が唱えているのと変わらない、こういうふうに思います。
  501. 安田純治

    ○安田委員 ところで、そういう中国の自然延長論の中身がはっきりせぬわけですけれども、一応ああいう強硬な異議を言っているところを見ると、共同開発区域の中に中国の自然延長論の線も食い込むから言っているのだろうと思うのですね、全く食い込まないのに言うはずはないのであるから。そうなりますと、自然延長論それ自体、地形や何かの細かい点は抜かしまして、自然延長論というのは法的、理論的には相当の根拠があって、三年間議論したけれども、こちらの中間線論も論破されたわけじゃないけれども、向こうの自然延長論も論破できなかったというほど、中国のとっている自然延長論も韓国のとっている自然延長論も、自然延長論という意味では同じことで、相当根拠があるのだろうと思うのですね。  してみれば、どうしても中国側と話し合いをせねばならぬということになると思うので、先ほどから同僚委員質問に対する答弁を聞いておりますと、中国の方の権利は侵していないときめつけているようでございますけれども、これは韓国の自然延長論も中国の自然延長論も、主張する相手が違えば自然延長論の法的根拠がなくなるなんという理論的にばかなことはないのですから、同じ重さを持っているとすれば、これは当然話し合いが前提にならなければならないと思いますが、いかがですか。
  502. 中江要介

    中江政府委員 韓国と中国がともに自然延長論を唱えているからといって、一つの大陸棚韓国と中国が両方とも自然延長論で主権が重複するということはあり得ないわけでございます。したがいまして、韓国日本とが相対しているところで韓国日本に対して自然延長論を唱える、日本と中国が相対しているところで中国が日本に対して自然延長論を唱える、これはそういう意味では同じ論争になるわけです。  いまの共同開発のところは、韓国日本が相対しているところで韓国が自然延長論を唱えている。韓国が唱えているところに中国も同じ自然延長論を唱えるはずがない。だのに唱えているとすればおかしい。そのおかしさはどこから来るかというと、今度は自然延長論同士の韓国と中国との間に中間線が引かれなければならない。その中間線が輪中の間で話されていないから、中国としてその中間線について納得ができないというところから出発しているのではないかと私どもは推測するわけでございます。
  503. 安田純治

    ○安田委員 推測は勝手ですけれども、中国と話し合ってみなければその中身はわからぬわけです。  それはともかくとして、外務大臣にお伺いいたしますけれども関係諸国が集まって話しするのがより理想的であるということは、先ほど答弁されておりますね。しかし、そういう条件がない。その条件がないというのは、つまり韓国と中国との間で話し合いをする条件がないということですか。
  504. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 そのとおりでございます。
  505. 安田純治

    ○安田委員 ところが、日韓大陸棚協定に関する韓国国会会議録仮訳ですね、外務省の北東アジア課でもって訳したものを見ますと、韓国も中国と話し合う用意があると言っているようでございますね。この点については、たとえば慮信永外務部次官ですか、「大陸棚問題に関して中国からの非難があったことは事実ですが、これについては即刻わが方の立場を明らかにしたところです。すなわち、中国が希望すれば何時でもわれわれは中国と協議をする用意がある旨明らかにしてきたが、こうした政府の立場は今も変っておりません。」というふうに向こうの外務部次官が韓国国会答弁をしておる。  このことは当然御存じだと思うのですが、そうなれば、韓国も話し合ってもいいという意味のことを言っているわけですね。善隣外交というふうに盛んに先ほどから強調されておりますけれども、そうしたら、まさに日本が、韓国も中国が話し合う気があれば話し合ってもよろしい、日本日本でいろいろ報告はしておるし、向こうが話し合うなら話し合ってもいいと言っているけれども中国が乗ってこないというのだったら、むしろ日本がイニシアチブをとって——韓国が全然中国に対して目を向けていないなら別ですけれども、こういうふうに国会でりっぱに答弁しておる。それなら、善隣外交と主張する日本政府として、なぜイニシアチブをとらぬのか、その点についてお伺いします。
  506. 中江要介

    中江政府委員 その国会の議事録をまつまでもなく、韓国自身が中国と話し合う用意があるということを言いましたのは、日韓の交渉が始まる前に、すでにそういうことがあったわけです。これは、御承知のように、韓国があの国内法を制定しましたときに、中国がそれに対して文句を言いまして、それは許すわけにはまいらぬ、中国と何の相談もなしにあの大陸棚開発することは許されないということを言いましたそのすぐ翌日に、韓国政府は中国政府にあてまして声明を出しまして、ここで初めて中華人民共和国という正式国名を使ってまでして、中国と話し合う用意があるということを韓国外務部は言ったわけです。それに対して中国はこれを無視したということで、韓国は非常に失望したという時期がございました。そのことをその国会の議事録の中で言っていると思います。それがまず事実関係でございます。  今度それに、そういうことであるならば日本が音頭をとって韓、中、日で話をすることを提案したらどうだという御意見だと思います。これはやってみることの意味はあるいはあるのかもしれませんけれども、いまの中国の対朝鮮半島政策から見まして、その成功可能性といいますか、実現可能性というのは私ども相当悲観的に見ておりますということを、いまの段階では申し上げるほかはないと思います。
  507. 安田純治

    ○安田委員 外務大臣にお伺いいたしますが、いま中江局長がそういう判断を示されましたけれども、一遍そういうアクションを起こしてみる値打ちは全くないのかどうか、悲観的だというお話ですけれども、アクションを起こしてみる値打ちは全くないのかどうか、大臣のお考えはどうですか。
  508. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまの仰せでございますけれども、この問題につきまして中国といろいろ話し合いができる、こういうことになった場合にはいろいろ考えてみる価値があろうかと思います。しかし、いままでのわれわれの関知しているところによりますと、中国は関係国で会議をして決めるべきである、こうは言っておりますけれども、現在は直ちにそのようなことをする意思は中国には乏しい、全くないということは言い過ぎかもしれませんけれども、そういうことができる暁になったらばやろう、こういうことを言っておるやに私ども理解をしているのでございます。
  509. 安田純治

    ○安田委員 この問題は大分同僚委員も聞きましたので、押し問答しておってもしようがないですが、この点についてもう少し後でまた必要が出たら伺いたいと思いまして、次に移りたいと思います。  この探査、試掘、採掘などの技術的な問題について若干通産当局にお伺いしたいと思うのです。  探査船はどういうものを使うのか、どのくらいの期間かかるのか、簡単に御説明いただきたいと思います。簡単で結構です。
  510. 古田徳昌

    ○古田政府委員 大陸棚におきまして石油探査のために試掘を実施します場合には、いわゆる海洋掘削装置を利用するわけでございますが、これは種類として大別しますと、ジャッキアップ型、セミサブ型及びベッセル型ということになっております。これらのリグを使用しまして、一本の試掘に要する期間につきましては、ボーリングの深度によっても異なりますが、大体一カ月ないし三カ月程度ということになっております。
  511. 安田純治

    ○安田委員 この採掘の設備といいますか、現在日本にあるのは第一白竜から第五日竜までと「さくら」というのですか、そういうものがあるようでございます。そうして第一白竜が六十一名の宿泊施設収容能力がある。第二日竜は八十八名、第三白竜は自走可能であって、自分で走るということで百名、第四日竜が九十二名、第五日竜が自走式で九十八名、「さくら」が七十一名、こういうようなことになっているようですが、これに間違いございませんでしょうか。そのほかに日本で所有しているリグといいますか、海洋掘削装置がございますか。
  512. 古田徳昌

    ○古田政府委員 現在、わが国の企業が保有しております海洋掘削装置は全部で六台でございまして、先生御指摘のとおりでございます。  なお、それぞれのリグが持っております宿泊施設の収容能力についても先生御指摘のとおりでございます。
  513. 安田純治

    ○安田委員 韓国側にはこういうリグはあるのでしょうか。
  514. 古田徳昌

    ○古田政府委員 韓国側にはリグを所有している会社はないというように承知をしております。
  515. 安田純治

    ○安田委員 そうしますと、この国内法が発効して三カ月以内に着手をしていくということになりますると、当面この日本にある六つのリグですか、これのうちの幾つかが使われるということになりましょうか。
  516. 古田徳昌

    ○古田政府委員 わが国のリグが使われる可能性もありますが、もちろん外国船が利用されるケースもございます。
  517. 安田純治

    ○安田委員 多分外国の装置もこの日本のいま言った六つの装置とやや似たり寄ったり、大きい、小さいは多少ありましても、全く奇想天外なものはないと思うんですね。  そこで、こうしたリグの上で作業する人は、私ども調査によると、少なくとも日本の持っているリグの場合には、六十各から八十名が三班システムで二週間作業しては一週間休み、こういうようなことでいまやっておる。少なくともいまのリグの操業は、そういうことでございますね。
  518. 古田徳昌

    ○古田政府委員 そのとおりでございます。試掘の期間一カ月ないし三カ月程度でございますが、その期間内は常時六十名ないし八十名程度が働いているということになりまして、これはわが国のリグの場合だけにとどまらず、世界的に見ても大体この程度ではないかと思います。
  519. 安田純治

    ○安田委員 日本のリグの場合、この船籍といいますか国籍といいますか、これはどういうふうになっておりますでしょうか。
  520. 辻栄一

    ○辻説明員 日本のドリリングリグの場合は、日本の国籍でございます。
  521. 安田純治

    ○安田委員 船の場合には船籍は旗国主義で決まると思うのですが、自走式じゃないものも日本の国籍で公海上日本の船舶と同じように扱うのかどうか、その点についてはいかがでしょうか。
  522. 辻栄一

    ○辻説明員 ドリリングリグに対します船舶法の適用につきましては、ドリリングリグは社会通念上の船舶でございまして、船舶法の適用がございます。これは自航、非自航にかかわらず法律の適用はございます。しかしながら、船舶法の個々の規定につきましては、推進機関の有無によってその適用関係が分かれておりまして、推進機関を有するものにつきましてはすべての規定が適用される、推進機関のないものについては船舶の登録等の規定は適用されないということになっております。
  523. 安田純治

    ○安田委員 次に、今度いよいよ採掘の方でございますけれども、生産する井戸の設置方法は、これはプラットホームといいますか、これを海上に設置して、足を大陸棚の底にといいますか、その表面につけて、そういうプラットホームというものを施設してやるというふうに聞いておりますが、そのとおりでよろしいでしょうか。
  524. 古田徳昌

    ○古田政府委員 現在の油田開発の場合は、ほとんどの場合がプラットホームの建設によって生産井の掘削を行い、生産活動を実施しているわけでございます。
  525. 安田純治

    ○安田委員 現在のとおっしゃいましたけれども、もしここでどんどん開発が進むとすれば、それは何年後かわかりませんけれども五十年も先まで約束するわけですから、何年から生産を始めるかわかりませんけれども、もし石油があって経済的に採掘可能だということになれば、これは大体いまのプラットホーム方式と同じような、似たような方式で結局生産されるようになるんじゃないでしょうかね。その点どうでしょう。
  526. 古田徳昌

    ○古田政府委員 現在、世界的に非常に深い海の場合につきましては海底石油生産システムというのが研究されておりまして、これが将来いつごろ実用に供されるかという点が判明いたしませんが、いまの見通しで言いますと、通常の場合はこのプラットホームを建設して油田の採掘を行うということになろうかと思います。
  527. 安田純治

    ○安田委員 現在の技術水準から推定しまして多分そうなるだろうというふうに私も思うんですが、そこで、現在のプラットホームの施設を大体確かめてみたいんですが、阿賀沖の現実に稼働しているプラットホームの場合、宿泊施設の収容能力は六十名である。完成してから以降は常時数名の監視員といいますか、保守の人がいるだけのようでありますが、ペンキの塗装などは必要である、最高百名程度の人間が必要で、六十名はプラットホームで宿泊して残りは船で通勤、こういうような状態であるというふうに聞いていますが、そのとおりでよろしいですか。
  528. 古田徳昌

    ○古田政府委員 阿賀沖の事例につきましては、先生の御指摘のとおりでございます。
  529. 安田純治

    ○安田委員 それから、生産する井戸の改修ですね、これは推定でございますけれども、井戸の中の砂などを掃除するのに三日から一週間くらい、三十名から五十名くらいの人間が必要だ。ただし、この頻度といいますか、一年に何回そういうことをしなければならないか、そう確実ではないけれども、大体そのくらいは必要ではないかというふうに言われておるようですが、それも間違いございませんか。
  530. 古田徳昌

    ○古田政府委員 生産井の改修につきまして、先生御指摘の作業については、三日間ないし一週間という形になっております。
  531. 安田純治

    ○安田委員 そこで、この共同開発地域に対する法の適用関係について伺いたいわけですが、まず、共同開発地域海上、海中、つまり大陸棚以外のところですが、これは公海であるというふうに言ってよろしいかどうか。それは韓国でもやはり海中、海上に関しては公海であるという認識で間違いないのかどうか、この点お答えいただきたいと思います。
  532. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 御指摘のとおり公海でございまして、韓国も同様の認識でございます。
  533. 安田純治

    ○安田委員 韓国の方が同じ認識であるということは、どういう機会でそれは確認しておりますか。
  534. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 本協定締結に至りますまでの交渉の過程におけるいろんな話し合いから明らかでございます。
  535. 安田純治

    ○安田委員 しかし、大陸棚協定に関する韓国国会議事録なんかを見ますと、言葉の上では必ずしもそうともとれないような言葉もちらちら見えるようでございますけれども、その点はいかがでしょうか。確かに海中、海上は公海であるということの認識できちっと一致しておるものかどうか。
  536. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 本件協定は、国際法上の大陸棚というものを日韓両国がいかに共同開発をするかということに着目してまとめたものでございまして、国際法上の大陸棚である以上は、その上部の水域は海面あるいは海中が公海であるということは明らかでございます。そういう前提で交渉が行われたということでございます。
  537. 安田純治

    ○安田委員 ところで、プラットホームを設置した場合の所有権の帰属はどうなるでしょうか。
  538. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 恐らく、その開発に従事いたします会社の所有権になると思います。
  539. 安田純治

    ○安田委員 この場合に、このプラットホームに対する法律の適用でございますが、たとえば民事的に言えば、韓国の所有であるプラットホーム、日本の会社がつくった場合、日本の会社のプラットホームということになった場合に、これはどちらの法律が適用になるわけですか、民事法だけではなくて。
  540. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 まず、一般的なことをちょっと申し上げたいのでございますが、この協定におきましては、両国がそれぞれ自国の大陸棚であるという主権的権利を主張しております立場を留保しながら、このような共同開発という特別の取り決めをしたわけでございますので、当然両国の法令の適用の抵触というものが起こるという事態に直面したわけでございます。そこで、その管轄権行使の抵触をいかに回避するかということに関しまして長時間の交渉を行いました結果、協定上で特に定めがある問題がいろいろございます。たとえば十五条、十六条、十七条等がそれでございますが、もし御要望であれば詳細申し上げますけれども、そういった協定上特別の規定がない場合には、第十九条という規定がございますが、これに従いまして、わが国が認可した開発権者が操業管理者と指定されております小区域におきましては日本国内法令、それから韓国が認可した開発権者が操業管理者となっております小区域におきましては韓国国内法令を、それぞれ、現在の国際法が許す限りにおきまして、石油、天然ガス資源の探査、採掘に関連する限りにおいて適用する、こういうことにしたわけでございます。  そこで、いま御指摘のいろいろな施設でございますけれども、これが船舶の場合には、もちろん船舶に対する旗国主義というルールが一方ございますので、それとの関連の別の問題はございますけれども、一応その点を少したな上げにいたしまして申し上げますと、それぞれの仕分けによりまして操業管理者というものが指定された国の法令が適用される。ですから、その施設そのものの所有権がだれにあるかということは関係のない話でございまして、わが国が操業管理者になるという場合にはわが国の法令が適用されるということでございます。
  541. 安田純治

    ○安田委員 ところで、国連海洋法条約の非公式統合交渉草案というのがございます。この非公式統合交渉草案というものは一応まだ草案の段階ではございましょうけれども、おおむねこの草案の方向に向かって国際法が固まりつつあるというふうに認識しておるのかどうか。それから、たとえばいま国際法上全く未定の分野について紛争が起こり、解釈の指針とする場合に、非公式統合交渉草案なるものが相当解釈の指針に現在でもなり得ると認識しておるかどうかを伺います。
  542. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 現在、お手元にございます統合草案なるものは、過去の何度かつくられました単一草案というものをさらに手直ししたものでございます。そういった意味で、従来の海洋法会議におけるいろいろな議論、特に多数意見その他を踏まえたものであるということは申せますけれども、これはあくまで議長が各委員会の委員長と相談をいたしまして、いわば作業の促進のためにつくったという性格をまだ出ないものでございます。  そういった意味におきましては、この統合草案に盛られておりますいろいろな問題に関しまして、深海海底の開発であるとか、あるいは大陸棚自体につきましてもその外縁の定め方等につきましてあるいは境界画定のルールにつきまして、相当の議論が前回でもあったわけでございます。そういうわけでございますので、この統合草案のラインでほぼ固まるであろうということを予断することは、まだ尚早であるというふうに思われます。  また、そういう性格のものでございますので、この草案が従来の海洋法会議のいろいろな意見のうちで主流の意見等を相当大幅に反映しておるということは言えますけれども、これが現下の国際法の諸問題を判定する基準として用いるべき妥当な文書であるかどうかということになりますと、まだそこまでは成熟しておらないというふうに考える方が正しいかと思います。
  543. 安田純治

    ○安田委員 たとえば非公式統合軍案の中の五十六条を見ますと、「排他的経済水域において、沿岸国は次を有するものとする。」ということで、(b)項の1に「人工島、設備および構築物の設置ならびにその利用。」ということ、こうしたものは「排他的経済水域における沿岸国の権利、管轄権および義務」という条項の中に入っておるわけですね。そうして、大陸棚の方を見ますと、第八十条、「大陸棚上の人工局、設備および構築物」は、先ほど挙げました六十条に「沿岸国はこのような人工島、設備および構築物に対し、関税、財政、衛生、安全および移民上の規定に関する管轄権を含む排他的管轄権を有する。」というのがございままして、これを受けて大陸棚の分に、これは八十条ですが、「第六十条の規定は大陸棚の上に立つ人工島、設備および構築物に対しても、必要な修正を加えて適用される。」こういうふうになっているように思うのであります。  そこで、これは公海上であるけれども、足は大陸棚についておるプラットホームですね。この場合に、先ほど伺いますと、探査、採掘に関する事項については、オペレーター、操業管理者の属する国の法律に従う、こういうふうになっているという御答弁でしたね。そうすると、この十九条の探査及び採掘に関する事項というのはどういう範囲を言うものでしょうか、お伺いしたいと思います。まず簡単に、直接、探査、採掘それ自体か、あるいは非常に間接的なものも含むかどうかですね。
  544. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 具体的にいかなる法令が適用されるかという問題についての御質問かと思いますが、まさに大陸棚に関する各国の管轄権のあり方あるいは国内法の適用という問題は、現在なお海洋法会議で議論しておりますように、完全に国際法上明確な結論が出ておるという問題ではございません。しかしながら、一九五八年の大陸棚条約等の規定もございますし、また、その後の各国の慣行等もございますので、国際慣行の積み上がり方によりまして、一応ある程度の判断はできるわけでございます。  一般論といたしましては、国際法のルールは、天然資源の探査、開発に関する法令は適用できる、これは疑いなく適用できるということでございますが、しからば、何が天然資源の探査、採掘と関係があるかということになりますと、恐らく鉱業法あるいは鉱山保安法等のそういった関係の法令であるとか、あるいは海洋における活動でございますから、当然海洋汚染を防止する関連の法令であるとか、あるいは天然資源の採掘活動でございますので、労働関係の諸法令というふうなものは、その法令の性格からいたしまして、大陸棚の天然資源の探査、開発関連するということがまず疑いなく言えるのではなかろうかと思います。しかしながら、それ以外の諸法令につきましても、天然資源の探査、開発関連する限りにおきまして、もちろんそれはこの十九条の規定に従って適用されるわけでございます。  ただ、その点に関しましては、国際慣行というふうなものもこれから進歩してまいりますでしょうし、それから技術的な進歩というふうなものもございますので、あらかじめ、いまこれこれ法が十九条に従って適用され、これこれ法は適用されないとか、あるいは特定の法律の第何条が適用されて何条は適用されないということを一般的に申し上げるのは非常に困難でございまして、個別に判断する以外にはないというふうに考えております。
  545. 安田純治

    ○安田委員 操業管理者というのはお互いの契約によって決めるようですね。それでまた、操業管理者が変更になる場合もあるということになりますね。そうしますと、この変更になった場合には、がらりと変更された他の国のオペレーターになりますね。その法律が適用になるということになりますか。
  546. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 そのとおりでございます。
  547. 安田純治

    ○安田委員 そこで、一般的に「探査又は採掘に関連する事項」の範囲を決めがたいというのでしたら、一つ一つ伺っていきますけれども先ほど労働法については適用になるのではないかというお話でしたね。労働法にも、御存じのように、労働条件それ自体を決めた保護立法と団結権を保障した法律と、大きく分ければ二つに分けられると思うのですが、韓国の労働基準法、これは勤労基準法というらしいですが、これは日韓を見ると大分違うですね。たとえば韓国の勤労基準法を見ますと、これは五条ですが、日本で言えば労働基準法の三条に当たるのですが、思想、信条によって差別してはならないという例の有名な条文です。当然、日本の場合には日本国憲法を受けて書いているのですが、その中にはっきり、信条によって差別してはならない、こうなっています。これは当然日本国民が享受する憲法上の基本的人権の労働法上の表現だというふうに考えていいと思うんですね。ところが、韓国では、同じ均等待遇に当たる条文は勤労基準法五条にあるわけですが、信条というのじゃなくて、信仰によって差別してはならないというふうになっておるようであります。  こういうふうに勤労基準法と労働基準法でも、基本的人権のところで大分違う。あるいは、日本の労働基準法で言えば三十二条、日本は変則四十八時間制ですが、とにかく一週四十八時間。ところが、全くそっくりなような条文、韓国の勤労基準法によりますと四十二条、これを見ますと、特約で「一週間に六十時間まで労働することができる。」こういうことにもなっております。  このように労働条件に対する保護立法ですね、労働保護法といいますか、これでも大分違うわけでして、しかもそれは、単に国情といいますか、技術的な違いだけではなくて、それぞれ憲法に基づいてこれは受けていると思うんですね。韓国のいわゆる維新憲法を見ますと、基本的人権に関するような定めが若干見えますけれども相当部分法律の留保がついておる。ちょうど日本の戦前の帝国憲法と同じに、法律に定めるによらざれば制限できないというような法律の留保づきの人権なんですね。ただ、維新憲法でも違うところは信仰なんで、信仰のところだけは、何人も信仰によって差別されないみたいな、信仰の自由を保障されると書いてあるんですね。法律の留保がない。そこで韓国では、キリスト教のミサ会とか祈祷会などで——実際は言論を弾圧されているんだけれども、あそこは、信仰の自由ということは法律の留保がないということで、キリスト教会で大分いろいろなミサが行われたりして、その中で政治的演説がされているというようにも聞きますけれども、このようにはなはだしく法体系が違う。単に技術的に違うだけではなくて、基本的人権の範囲といいますか、考え方が根本的に違うわけであります。  たとえば労働組合法を見てみますと、韓国の労働組合の定義、三条の四号ですけれども、「労働者ではない者の加入を許す場合」には、これは労働組合とは認めない。日本にはそういう該当条文はございません。「労働者が主体となって」としか書いてない。それから三条の五号を見ますと、既存労組の正常運営の阻害を目的とする場合には、労働組合とは認めない。そこで韓国では、いわば端的に言ってしまうと、御用組合が一つできれば、絶対そのほかの組合を結成することは許されない、組合とは認められない、それが非常に悪用されているわけであります。ところが、日本にはそういうものに該当する規定はない。韓国の労働組合法の七条の二項を見ますと、「この法律に基づく労働組合でなければ、労働組合という名称を使用することができない。」そして四十八条で、使用した者は、三万ウオン以下の罰金である。日本は、従業員組合と言おうが何と言おうが構わぬし、いわゆる労働委員会に救済される資格がないような組合でも、労働組合と使っても構わない。罰金はもちろんないわけだ。  それから、大変重要なことですが、韓国の労働組合法の十二条を見ますと、「政治活動の禁止」というところがございます。それを見ますと、こう書いてあるんですね。「労働組合は、公職選挙において、特定の政党を支持し、または特定の人物を当選させるための行為をしてはならない。」「労働組合は、組合員から政治資金を徴収してはならない。」「労働組合の基金は、政治資金に流用してはならない。」こういうふうに書いてありまして、これに違反したら、同法の三十二条で解散命令が出せる。日本の労働組合の中では、実際問題として、こういうことを適用されると大分解散させられる労働組合が多いのじゃないかと思うんですね。このように違う。  また、労働組合をつくるについて、韓国の労働組合法によると設立申告というものがなされます。日本は、労働委員会に救済の申し立てをするときだけ資格があるかどうかを認定すればいいのであって、設立は自由なんだ。それからあと、行政官庁が労働組合の規約の取り消し、変更命令を出せるのが韓国の労働組合法の十六条です。それから二十一条では、決議を取り消すこともできるし、変更命令をすることもできる。これは行政官庁ができるわけです。三十条を見ますと、労働組合に対して行政官庁による検査、会計とか業務の検査をすることができる。これに対して四十七条で、こういうものを妨げたり虚偽の報告をしたりすると三カ月以下の懲役あるいは一万ウオン以下の罰金という刑罰に処せられる。三十二条には、先ほど申し上げました解散命令がある、こういう状態です。労働組合法でも極端に違うわけであります。  そこで、伺いたいんですが、先ほど労働関係はオペレーター側の法律に従うだろう、こういうようなことをおっしゃいました。リグもしくはプラットホームの上に宿泊設備もあり、日本人だけかもしらぬし韓国人もまざるかもしれないし、外国人が入るかもしれませんが、少なくとも宿泊設備六十人あるいは百人もあるリグもある。通常、井戸が稼働するようになると保守の二、三人でいいとは言いますけれども先ほど明らかになったように、ペンキの塗装とか、百人くらいの人間が一週間くらいそこにとどまる、こういうことになってきますから、当然こうした掘削設備の上に労働者が住む、そして雇用契約を結ぶ。この協定などを見ますと、雇用に関する件はオペレーター側がやることになっていますね。もし韓国籍のオペレーターになってそこへ日本人が働く場合に、労働組合法がこういうふうに違うわけですよ。もしそこで、そういうリグなりプラットホームの上で、日本人が日本の国内と同じようなつもりで労働組合なんという名前をつけると、三カ月以下の懲役ですか、なってみたり、いろいろなことになってくるわけですね。こういう調整は一体どういうふうになるのか、外交交渉の過程で一体こういうことについて詰められたのかどうか、韓国との間の認識が食い違いがないのかどうか、この点をまず労働法に関してだけ伺います。労働組合法について、労働基準法もまぜて、その信条、信仰のこともまぜて……。
  548. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 そもそもこの交渉の原点は、韓国は、この当該区域は韓国の主権的権利を行使し得る大陸棚である、したがって、天然資源の探査開発に関する限りは、韓国の法令を全面的に適用できるという立場をとっておった区域でございます。それに反して、わが国はわが国の法令を国際法の許す限りにおいて全面的に適用できる、こういう立場をとっておったわけでございままして、その結果として双方の管轄権の抵触という問題が、この共同開発の構想とともに浮かび上がったわけでございます。そこで、その管轄権の抵触を回避する方法としていろいろ考えたわけでございますけれども、結局、この操業管理者方式という方式が最も適当であろうということになりまして、そのように合意をしたということでございます。  確かに御指摘のとおり、韓国の労働法規の中には、あるいは労働法規といっても非常に広うございますから、天然資源の探査開発と全く関係のないような法令等もあるかもしれません。また、いま御指摘の労働基準法に当たる法律が、わが国のそれに比べましていろんな規定ぶりが異なっておるというふうなことがあるかもしれませんけれども、これは、協定第十九条によりまして管轄権の抵触を避ける仕組みをつくりました以上は、そのような方式に従って韓国あるいは日本の法令がそれぞれ適用されるということが、この協定の当然予想するところでございます。したがって、その適用される法律が、特に韓国側の操業管理者の区域におきましてわが国の目から見て妥当であるかどうかということは本来問題ではございませんで、この協定をつくる際に、管轄権の抵触を避けるという目的の上からいきますとそのような方式が最も適当であるという結論からさように措置した、こういうことでございます。
  549. 安田純治

    ○安田委員 これは外務大臣にもお伺いしたいし、内閣法制局にも伺いたいわけですが、なるほど石油開発については、抵触する部分はそういうふうにしたら適当だからいいでしょう。ところが、日本人がそこに働きに行く。     〔中島(源)委員長代理退席委員長着席〕 日本人は当然、それは外国の領土内に入るなら属地主義で、韓国に旅行に行ってたまたま反朴のビラをまいてとっつかまった人がおりますけれども、これは本人が韓国の領土に入るわけですから。ところが、公海上に設置されたプラットホームで、たまたま操業管理者がどっちかが契約で決まる。これは民事上の契約ですね、一対一の共同開発権者同士の。途端に日本人の持っている基本的人権、憲法で保障された信条の自由、こうしたものがぱっと韓国の方の法令に従うのはやむを得ない。しかも場合によっては、いま言ったように労働組合法の違反によって懲役も食うというようなことになってよろしいものでしょうか、どうでしょうか。これは大臣にお伺いしたいし、法制局にお伺いいたします。
  550. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまの点は、法制局なりあるいは専門家の意見に従わなければならないと思いますが、わが国の法令の適用関係におきまして、特に雇用関係、労働基準法、労働組合法あるいはその他の雇用関係に関する法律につきまして、日本の企業に雇用されている者は日本の国籍を有する者であり、日本の企業に適用されるものにつきまして韓国の法令が適用されるということは私はあり得ない、属人的な意味におきましてあり得ないと思うのでございます。しかし、その当該プラットホーム自体につきましてどの法律が適用されるかということを厳密に言いますと、いろいろな問題が出てくるかと思いますが、ごく常識的に言って、日本の国籍を有する者あるいは日本の企業に働く者、これが日本法人であり、そしてその者が公海上で働きます場合におきまして、これにつきまして韓国の法令の適用を受けるということは私は常識的にはないのではないか。  ただ、事業の遂行上掘削に伴うもの、いろいろな技術的な問題につきましてどこの管轄権に服するかという点につきまして、これはそれぞれフィフティー・フィフティーで管轄権を分けたのでありますから、そのような整理がしてあるわけであります。しかし、日本の法令が属人的に及ぶものにつきましては、私は韓国の法令が及ぶことはないものであるというふうに、きわめて常識的に理解をいたしておりますが、この点につきましては、あるいは法制局の方から正確な答弁を申し上げるべきだと思います。
  551. 前田正道

    前田(正)政府委員 大陸棚に対します主権的な権利の主張が競合しておりますために共同開発という仕組みをとった。共同開発という仕組みをとったこと自体は特に憲法に違反する、そういう問題ではないと思いますので、こういう仕組みをとった結果として、オペレーター方式による法令の適用関係ということは、協定の結果として当然そうなるということだと思います。
  552. 安田純治

    ○安田委員 いや、冗談じゃないですよ。当然そうなるなんて簡単に片づけられちゃ困るのでして、いま労働法だけ若干申し上げましたけれども、とんでもない法律がたくさんあるわけですよ、韓国には。労働関係調整法、これは韓国で言えば労働争議調整法ということになりますが、日本にも似たような労働関係調整法がございます。これは公益事業を指定して、労働争議についていろいろ規制しているわけですが、これは公益事業の指定は、日本の場合、国会承認事項なのです。しかも、現行法では油類に関する労働は入っていない。ところが、韓国の労働争議調整法の四条一項二号を見ますと油類が入っておって、四条二項で、これを変えるのは大統領令で変えられる、こういう仕組みになっております。それから、ストライキの場合の予告期間といいますか、これは日本の場合には労働関係調整法の三十七条で、公益事業の場合十日前に予告する、こういうことになっておりますが、韓国の労働争議調整法の十四条を見ますと、一般が二十日前、公益は三十日前に申告しなければならない。そういう場合に適法性の認定があって、却下される場合もある、こういう仕組みになっておるわけであります。そういうものに違反した場合にどうなるかといいますと、日本には体刑はございません。ところが、韓国の労働争議調整法の四十六条から四十九条を見ますと、一年以下の懲役が四十七条、六カ月以下の懲役が四十八条、予告期間のあれやなんかであるのですが、こういうふうに重い体刑がある。  そのほかに、外国人投資企業の労働組合及び労働争議調整に関する臨時特例法というのが韓国にありますけれども日本にはそんな法律はございません。ことに、国家保衛に関する特別措置法という韓国法律を見ますと、四条で、賃金の統制というのがございます。こういうものに違反した場合に一年から十年の懲役、九条に団体交渉権の規制の規定がございます。これは一年から七年の懲役、こういうことになるわけです。  そこで、大陸棚資源開発するのに共同開発の仕組みをしたのは憲法違反でないと法制局の方は言われましたが、その結果として、抵触した場合に日本人が、当然日本国憲法だったら保障されるべき基本的人権を、公海上の、しかも船ではない、そこでもって突然奪われる。問題は、オペレーターが変更された場合にどうなるか。最初から韓国のオペレーターに雇われていくという場合もありましょうけれども、途中でかわった場合など、日本人がそういう物騒なところにいたくないと言えば失業する以外にないわけですね。オペレーターがかわるというのは労働者の意思ではないわけですから。それでも資源共同開発協定は憲法に違反しない、その結果起きたことで日本人が韓国の刑務所に行っても、それはやむを得ないというふうにおっしゃるのですか。
  553. 前田正道

    前田(正)政府委員 韓国の法制の詳細については存じませんけれども共同開発がとられました結果としましては、韓国がオペレーターになっているところへ働きに行かれる方は、そういう前提でいらっしゃるということであろうかと思います。したがいまして、いま先生がおっしゃったオペレーターがかわった場合というときには、また同様の関係になるということだと思います。
  554. 安田純治

    ○安田委員 これはとんでもない見解でして、もしそうだとすれば大変重大な問題だと思います。ことに、最初から行ったのではなくて、オペレーターが途中でかわった場合に、日本人は、いたくない人は総引き揚げ、いる人は覚悟を決めていろ、日本国憲法の方は及ばないということで、そこに就職して働いておる、あるいはペンキ塗りに行っておる、そういうときはどうなるのですか。それはそうでありますと言って済むのですか。これが第一。  それから、そうした労働法以外の問題で市民的自由、市民的権利というものも問題になると思います。これは十九条の採掘に関連する事項になるのかどうか。一週間なり、三日なりにしろ、そうしたプラットホームで人間が何十人か暮らす以上は、当然社会的関係が出てきます。週刊誌を持ち込んで読むとか、いろいろなことが起きます。これを見ますと、たとえば韓国の場合は維新憲法、国家保安法、反共法、集会及び示威に関する法律、国家保衛に関する特別措置法、大統領緊急措置九号、こうしたものでがんじがらめになっておるわけです。これはもうすでに御存じだと思うのです。ことに外国刊行物輸入配布に関する法律というのがある。これはどういうものかといいますと、外国の刊行物を輸入する業者は、登録をして、戦前の日本の検閲みたいなものを受けて輸入しなければいかぬということになっておるのですが、その後ろの方に、「業としない、自己の用に供するために持ち込むものでも推薦を受けなければならない。」ということがあって、日本の週刊誌なんか、朴政権に不利益なことが書いてあったりすると切り抜かれたり、いろいろなことをするわけですね。ですから、そこまで一体十九条の採掘に関する事項になるのかどうか、その辺もぜひお伺いしたいところですが、このように大変厳しい状態にあります。  大統領緊急措置九号を見ますと、一切の憲法批判、大統領緊急措置批判は厳禁、流言飛語を禁ず。しかも注目すべきことは、私、ここに持ってきておりますけれども、ことしの二月二十二日、韓国の統一社会党の元幹部二名と牧師さんや新聞編集局長ら十名を流言飛語として大統領緊急措置九号で逮捕したという報道が「世界」の今年の五月号に載っております。これを見ますと、韓国治安本部の金聖柱という本部長は、「たとえ個人同士の耳打ち話でも国民に危機意識をもたらすものなら処罰の対象となる」と言明したという記事がある。日本の労働者が、ペンキ塗りでも何でもいいですが、とにかくプラットホーム上に行く。韓国人も働いておるかもしらぬ。個人の耳打ちであっても、これは国民に危機意識をもたらすものであるから処罰の対象になる、こういう状態なわけです。  このようなところに日本人が行く。しかもこれは、途中でオペレーターがかわった場合に突然飛び出してくるのかどうか。十九条のいわゆる探査、採掘に関する事項というのは、こういう市民的な生活関係、週刊誌を持ち込んで、労働者同士が耳打ち話をする、うわさ話をする、何だ、おまえのところの朴はおかしいんじゃないかというようなことをたまに言ったりする、そういうことが仮にあったとして——それは十分あり得るのですが、たとえば馬山地区における韓国に進出した日本の企業の労働のトラブルなんかもたくさん報告されております。たとえば朝鮮人労働者に対して日本の中間管理者が、働かないのに飯だけは食うのかと言って、大ストライキが起きている例も報告されております。そういうトラブルは起き得るわけですね。案外レアケースでもないのですよ。ですから、こういうときに一体どういう法律が適用になるかということが大変重要な問題だと思います。  時間がありませんので、一方的にずっと事項を並べて聞きますが、刑法犯罪が発生した場合、これも私、調べてみたのです。南米とかあっちこっちで何件か、韓国人と日本人とのけんかでけがをした人もいるそうですか、刑法犯が発生した場合に警察権の行使はどうなるかという問題もございます。単純に、日本人の国外犯だ、属人主義で行くのだと言っても、警察権の行使はどうなるか。日本人と韓国人がけんかして、どちらかがやられた場合に、単純に、相手方は調べられないけれども、こっち側は属人主義的に調べられるのだと言っても、もしその人が正当防衛権などを主張したらどうなるか。相手が急迫不正の侵害をしてきたために反撃行為を加えたのだというふうに主張した場合に、それが正しいかどうかを調べるには相手方も調べなければならぬ。いいですか、外務大臣、よく聞いてくださいよ。したがって、そういう法律関係についてどうなるか。国際法の一般原則から見てこうだろうとか、大体、こういうところに人工島をつくって共同管理方式でやる、オペレーター方式でやるということは世界に例がないとおっしゃっていますね。例のないことなのだから、トラブルが起きた場合に困るわけです。その辺をどうするかという問題があるわけです。  これは日本と同じような基本的人権が守られている国との間ならいいのですけれども、いま読み上げましたようなたくさんのがんじがらめの法律があって、違反すれば無期にもなる、死刑にもなるというおそれがある。そういう場合に、韓国側との間でちゃんと話し合いをしておかなくていいものかどうか。そういう必要性を外務大臣はお感じにならないかどうか。採掘に関する事項というのは、大まかに言ってこれとこれなんだ。ただ、刑法犯とか治安立法とか、あるいはいま挙げました外国刊行物輸入配布に関する法律、こういう問題、つまり、一般の市民生活上の問題がオペレーター方式でもってそこまで全部及ぶのかどうかですね。そうなったら、この人工島は領有していると同じですね。契約で使う人工島といいますかプラットホームというのは、ほとんどそのオペレーターの国に完全に領有されたと同じような状態が生じますね。単に採掘、探査に関連する事項だけではなくて、刑法も治安立法も一般市民の自由に関する権利もすべてオペレーターの方に属するとしたら、これは大変です。この辺をひとつ詰めてみる必要がないかどうか。外務大臣、そういう必要性はお感じになりませんか、お伺いします。
  555. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この共同開発がフィフティー・フィフティーの管轄権という思想で構成してありますために、いまおっしゃいましたような法令の適用関係におきまして大変ややこしい問題が起こり得る可能性があることは、ただいま御指摘になったわけであります。この実際の開発につきまして、ただいま御指摘のような事態が起こらないような形で開発されることが私は望ましいものと思います。  したがいまして、この操業管理者が日本である場合におきましては、そこのスタッフが日本人によりまして占められる、韓国の操業管理者の場合には韓国で占められるというような形が私は好ましいだろうと思います。まあ、途中で交代になった場合どうするとかいろいろお話しになりましたが、そういうような場合におきましても、もし日本韓国がかわるような場合におきましては、なるべく支障の少ないような方式を選ぶべきだろう。そしてそのようなこと、紛争と申しますかいろいろなけんかとかその他が起こらないように持っていくのは、当然実際に仕事をされる方が心を配られることだろうと思います。協定でも二十五条に、委員会を設けまして、協定の運用につきましていろいろ検討して、必要と認めるときはこの協定の運用を改善するためにとるべき措置について討議して、及び両締約国に勧告すること等々の委員会の仕事が書かれておりますが、これらの委員会の円滑な運用によりまして無用なトラブルが起こらないようにしてまいるべきであろう、このように考えておるところでございます。
  556. 安田純治

    ○安田委員 トラブルが起きないように運用するというのはいいのですが、それだったら世の中に法律は要らぬわけですね。人を殺しちゃいかぬ、人を殺さないのがあたりまえなんで、しかし、人を殺す人がいるからルールが決まっておる。ですから、いま私が申し上げたように、労働関係、公安関係、治安立法関係——週刊誌を持ち込むなんてというのは当然あり得るわけですから、その中に朴政権批判の文書があったら、一体外国刊行物輸入配布に関する法律がどうなるのか、日本人に適用になるのかどうか、これは当然予想されることであります。だから、そういうことがないようにするのが望ましいというのはそうなんですけれども、もし起きた場合のことを考えれば、まさに紛争を起こさないためにもあらかじめルールを決めておく必要があるのではないか。十九条だけでは足りない。あるいは十九条の採掘、探査に関連する事項というものをきちっと労働関係もこうやって、市民的自由に関してはどうなるかくらいはこの協定の中か、あるいはそれ以外の外交上のいろいろなテクニックがあるのでしょうが、一応確認しておく必要はないのだろうかということ。  それから、二十五条を挙げられましたけれども、これは日韓委員会が両締約国に勧告するだけなんですね。委員会自体が何か決断してそれは逮捕しちゃいかぬとかと決められるわけじゃない。両方の政府にそういうことはこうしたらいいのじゃないかと勧告できるだけですよ。だから、この委員会の勧告の結果、両方の意見がまさに韓国の自然延長論と日本の中間論のごとく対立した場合に、今度は共同開発方式で人間が刑務所に入るようにはいかぬですよ。日本の刑務所に足半分、韓国の刑務所に足半分なんという共同管理方式はできやせぬですからね、これは。だから、そういうことになる危険があるから、ぜひ韓国政府との間でそういう労働関係法、治案立法、その他の市民的自由に関する権利、あるいは警察権の行使、一般の刑事犯の場合にどうするか、こういうことを決めておくべきではないか、そういう交渉をする必要性を全くお感じにならないかどうか、お伺いします。
  557. 中江要介

    中江政府委員 いま先生がいろいろお挙げになりましたような問題点は、私どもも問題意識としては持っておりました。これは共同開発をやります以上、その両方の主権が、先ほど村田参事官が説明しましたように衝突するわけでございますから、その衝突を避ける方法として、いまおっしゃいましたような第三者的な基準を設けてそれに従うという方法もございましょうし、あるいはプラットホームなりリグなり、それぞれがもう操業管理者が決まればその国内法がもろに適用する、そのかわり逆の場合は逆ということですっきりするという方法、どちらが実際に実行可能であるか、あるいは賢明であるかということは、私ども交渉の過程でもいろいろ議論いたしましたけれども、結果的に出てまいりましたのは、理論的に割り切ってしまいますと、先生がおっしゃいますような、ちょっと日本から考えると不都合と思われるようなことが起こり得るような割り切り方になっております。  これはしたがって、公海上ではありますけれども、その限りにおいては大陸棚資源の探査開発に関する限りでは、あたかも韓国が操業管理者の場合には韓国内で行っているようなフィクションになります。逆の場合には、韓国人でありましても日本の法令内で活動するということになるわけでございまして、そこのところは割り切ってしまっております。  割り切った結果、日本人には場合によってはシビアになり、韓国人には場合によっては緩やかになる。これを調整するといたしますと、韓国としては、韓国のいまよって立っております体制からして、日本のような自由をそのままもろにこの共同開発地域全域に適用するわけにはまいらない、こういう主張になりましょうし、日本日本のような広い自由が全域に保障されなければならない、こういうことになりまして、結局これはまた非常に複雑な法律の入り組み方になるということで、いろいろ私どもも事務的に検討いたしましたけれども最後のところは、割り切った形にして、そのかわりその適用に当たっては、これは先ほど来申しておりますように、国際法的にあるいは国際社会において先例のないことでございますし、はっきりした基準もない、また、国内法もどこまで適用するのが妥当かということについてもまだ実際のケースが起きていない。したがって、具体的なケースについては、双方ともに目的とするところは円滑に資源開発するということでございますので、その範囲内で良識をもって逸脱しない適用をやっていく、その過程において両国政府も協議はいたしますし、また、共同委員会の勧告も尊重いたしながら遺漏なきを期したいということしかいまの段階では申し上げられない、こういうことでございます。  先生がお挙げになりましたような、たとえば週刊誌を持ち込んでその中にそういう批判記事があったときにどうするかというような問題は、ちょうど週刊誌を持って韓国に渡航する日本人観光客の場合と同じような注意を払うということになろうかと思いますが、そういう問題について、あるいは非常に典型的なものについては韓国側とも事前に話をしておくことによってトラブルを避けるということも、これは十分検討に値する問題点だと私どもも思っております。
  558. 安田純治

    ○安田委員 そうしますと、この十九条の天然資源の探査または採掘に関連する事項についてはオペレーター側の法律が適用になるというのは、ほとんど主権行使と同じですね。探査、採掘に関連する事項というのはいわば飾り文句であって、そのプラットホーム上における法適用についてはすべて領土内と同じであるというふうに伺っていいのですか。外務大臣にお伺いしたい。探査、採掘に関する事項というふうに限られるかどうか。
  559. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 この十九条の趣旨は、現在一般国際法で認められておりますところが天然資源の探査、開発関連する法令を適用してよろしいということになっておりますので、その趣旨を取り入れたものでございます。ただし、どこまでが天然資源の探査、開発関連するかという点につきましては、先般も申し上げましたように、国際慣行等が現在動きつつあるという状況でございます。しかしながら、いかに考えても天然資源の探査、開発と全く関係がないと考えられる事項ももちろんあるわけでございまして、そういった問題に関して韓国側が法令を適用しようということになった場合には、この協定に定めてございます共同委員会あるいは協議条項等の活用によりまして、国際法的に見てもあるいはこの協定の趣旨から見ても妥当でないということを話し合うということは当然のことでございます。
  560. 安田純治

    ○安田委員 時間が来ましたので、外務大臣にぜひお伺いしたいのです。  いま私がるる申し上げましたような問題点が実はあるのです。中江局長も、典型的な例についてはあらかじめ韓国と話し合っておいた方がいいかもしらぬということまで言っておるわけです。これは常識で考えてそうだと思う。しかもいまの参事官のお話だと、一般市民的なといいますか、純粋に採掘、探査に関する事項以外の事項について、韓国がもし韓国国内法を適用しようとした場合は話し合うというような意味のことをおっしゃいましたけれども、事は、たとえば治安立法の場合、刑事事件として逮捕、拘禁ということになりますから、もし向こうが一方的に警察権をぱっと行使して韓国に持っていった場合に、人質をとられて話し合うようなことになってしまうわけですよ。  だから、この範囲のことについて、十九条の探査、採掘に関連する事項というのはあらかじめアウトラインを引いて——週刊誌を持ち込んだというような市民的権利の場合どうなるかということは、これは起きなければ細かいすべてのことが決まるとは言えないと思うのです。たとえば、そこで料理する料理人に日本の調理師の免許が必要かどうかというようなやかましいことを言い出せば何でも出てくるわけですが、そんなことでなくて、少なくとも人身の自由に関する限り、この件に関する限り、あるいは日本国憲法の基本的人権に関する問題に関する限り、これは韓国政府日本政府との間でちゃんと話を決めておくべきであろう。  仮に労働者がそういう韓国のオペレーターのところに働きに行く場合にあいまいであっては、まさに罪刑法定主義というのはそういうところから来ているわけでしょうけれども、自分がどんなことをやったら罰せられるかわからぬ、ただ国際常識だといって労働者はプラットホームに行くことになるのですよ。だから、私は、そのオペレーターによってプラットホームにおける権利に関してはすべてその帰属国の法律を適用するのがあたりまえだという考えはきわめてけしからぬと思いますけれども、仮にその見解を通すとしても、そこに働きに行く日本人の労働者がどんなことをしたら罰せられるのか、どんなことは日本国内と同じに行動してもよろしいのか、そのくらいのことはあらかじめ予想できて行かなければ、国際法を知っていて行くわけじゃございませんから、ぜひ外務大臣、そういう点について韓国と話し合いをし、単に話し合いだけでなくて、鮫瀬の問題なんかについても交換公文もやっているわけですから、そういうことをやる気はないのかどうか、最後にはっきりした見解を承りたい。
  561. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 御指摘の点につきまして、特に十九条に関連いたしまして適用される法令につきまして、私ども常識的に当然これは属人的に決めるべきもの等、これらにつきましてなお韓国側とも今後十分連絡をして、特にただいま御指摘のような治安立法のようなものが日本人に適用されるのはいかにもおかしいという感じがいたすわけでありますので、そのような点につきましては、なおこの開発にかかるまでに十分な打ち合わせをいたすべきであろう、そのように努力をいたします。
  562. 安田純治

    ○安田委員 時間が来ましたので終わりますが、そういうふうに外務大臣はおっしゃる、必要性はお認めになった。である以上は、この法律成立させて三カ月以内に開発権者を決めてどんどんやらなければならないという事態に追い込んでから、韓国日本との間で外務大臣のおっしゃる法適用問題について、ことに治安立法適用問題について話し合って、向こうがノーという答えを出したら大変なことになります。ですから、この法律は少なくともそういう韓国との間の交換公文なり何なりがはっきりするまで、あわてる必要はないと言わざるを得ない。これは、日本人の基本的人権を守るために、日本政府として当然守らなければならない立場だと思います。  そういう意味で、最後にそういう点の外務大臣のお考えをお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  563. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この国内法につきましては、ぜひともこの国会で御承認を賜りたい。いま御指摘のような問題につきましては、これは国内の開発体制が整えばすぐ話のつく問題であろうと思いますので、国内法の御承認はぜひともお願いをいたすわけでございます。
  564. 安田純治

    ○安田委員 終わります。
  565. 野呂恭一

    野呂委員長 次回は、明十六日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時四十五分散会