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1977-10-26 第82回国会 衆議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月二十六日(水曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 野呂 恭一君    理事 中島源太郎君 理事 武藤 嘉文君    理事 山崎  拓君 理事 上坂  昇君    理事 佐野  進君 理事 松本 忠助君       鹿野 道彦君    粕谷  茂君       藏内 修治君    田中 六助君       辻  英雄君    中西 啓介君       西銘 順治君    萩原 幸雄君       林  義郎君    前田治一郎君       渡部 恒三君    渡辺 秀央君       板川 正吾君    岡田 哲児君       加藤 清二君    後藤  茂君       清水  勇君    中村 重光君       渡辺 三郎君    長田 武士君       玉城 栄一君    西中  清君       宮田 早苗君    工藤  晃君       安田 純治君    大成 正雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 龍夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 妹尾  明君         公正取引委員会         事務局審査部長 野上 正人君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁物価         局審議官    水田 治雄君         大蔵省国際金融         局次長     宮崎 知雄君         通商産業政務次         官       松永  光君         通商産業大臣官         房長      宮本 四郎君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         通商産業大臣官         房審議官    松村 克之君         通商産業省通商         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省通商         政策局次長   花岡 宗助君         通商産業省貿易         局長      西山敬次郎君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省立地         公害局長    左近友三郎君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         通商産業省機械         情報産業局長  森山 信吾君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁次長     大永 勇作君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君         中小企業庁長官 岸田 文武君         中小企業庁次長 児玉 清隆君  委員外出席者         大蔵省銀行局銀         行課長     吉田 正輝君         大蔵省銀行局特         別金融課長   藤田 恒郎君         参  考  人         (日本綿スフ織         物工業組合連合         会会長)    藤原 一郎君         参  考  人         (日本化学繊維         協会会長)   宮崎  輝君         参  考  人         (商工組合中央         金庫理事長)  影山 衛司君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 十月二十六日  辞任         補欠選任   安倍晋太郎君     渡部 恒三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 野呂恭一

    野呂委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  本日は、不況対策問題等につきまして、参考人として、日本綿スフ織物工業組合連合会会長藤原一郎君、日本化学繊維協会会長宮崎輝君、商工組合中央金庫理事長影山衛司君、以上三名の方々に御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  ただいま本委員会におきましては、特に不況対策問題等について調査を行っておりますが、参考人各位におかれましては、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  なお、議事の順序でございますが、初めに御意見をそれぞれ十分程度述べていただき、次に委員質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。  それでは、まず、藤原参考人にお願いいたします。
  3. 藤原一郎

    藤原参考人 私は、日本綿スフ織物工業組合連合会会長藤原一郎でございます。  本日は、大変御多忙の折から、商工委員会の各先生方に私ども業界の諸問題に対しての意見を聞いていただく機会を賜りまして、まことにありがたく、厚く御礼申し上げる次第でございます。  御承知のごとく、私ども綿スフ織物業界は、全国、東北より九州まで六十四産地を形成し、企業数約一万七千五百、織機台数約三十四万台、日本繊維産業の中で織物生産関係では中核的存在であります。そして、大部分の産地家族従業員中心とする中小零細業者であり、雇用問題も含めまして、地域経済社会発展に直接貢献しておるものでございます。  私ども業界の歴史はまことに古いものでありますが、特に、戦後から今日までのわれわれ業界を振り返りますと、幾多の難問題が山積いたしましたが、その都度、私ども綿工連中心となり、全国業者が一致団結して事に当たり、解決してまいりました。その間、国会政府並びに各方面の温かい御指導、御援助を賜ってまいりました御好意に対し、この場をかりまして厚く御礼申し上げる次第でございます。  御承知のごとく、現在、われわれ綿スフ織物業界は大変な危機に立っております。昭和四十八年のオイルショック後の内外の急激な経済変動による影響、加えて、後進国の追い上げによる輸入の増加、最近の円高による輸出減少等により、もはや構造的不況業種であることが決定的となりました。  現在、われわれ業界は約三〇%の過剰設備を抱え、その日その日の経営に苦しんでおる状態であります。特に本年五月に、中京地区の商社、紡績等関連業界における倒産による関連倒産が多数続出して、名古屋、静岡の私ども産地パニック状態となりました。  私どもは、現在の構造的不況克服のため、綿工連中心として全産地の総力を挙げて実施してまいりましたが、もはや限界に来ております。今後は、一日も早く、国並びに政府におけるわれわれに対する救済策を樹立していただきたいと心からお願い申し上げます。  次に、私ども業界先生方に早急にお願いいたしたい事項を申し上げたいと存じます。  その第一は、積極的な景気振興対策を図り、国内需要の増大を図っていただきたいこと、このことはずいぶん前からも言われてきましたし、国会におきましてもずいぶん御努力をいただいておりますけれども、いまだその効果があらわれてないという状況でございます。  第二に、設備共同廃棄についてであります。  私どもは、昭和五十二年度を初年度といたしまして、少なくとも二年間のうちに約七万台の織機廃棄して構造的不況からの解消を図りたいといたしております。このことにつきましては、先生方の御指導をいただき、また通産当局の適切な御指導をいただきまして、買い上げ価格の決定、それから負担者方式による買い上げ実施等すでに決めていただいておりますけれども、各府県との交渉段階におきまして、必ずしもわれわれの希望どおりいかない地域もございますけれども、大体その緒についた状態でございます。このことはできるだけ早く実施することがその効率を上げるゆえんでございます。したがって、今後におきましても中小企業振興事業団共同廃棄資金の活用を考えておりますが、今後、同資金の確保、返済条件の緩和等積極的な施策をお願いいたします。  第三に、最近の円高に対する対策でございます。  われわれ、輸出を七〇%以上生産しております。たとえば兵庫県の播州地区先染め織物、それから静岡県における天龍社地区の別珍、コールテン、あるいは一部遠州織物における先染め等、いわゆる輸出を重点に生産しておるところにつきましては、全く壊滅的打撃でございました。大体、先染め織物というものは三月先を契約していくわけでございますが、一月の中ごろまでの成約はおよそできておると思いますけれども、それ以降あの円高状況から一ヤードのものも製作できておりません。このことにつきましてはいろいろな状況の中でお話があると思いますけれども、何とかいわゆる安定を図っていただきたい。われわれの希望するレートは二百七十五円と申しておりますけれども、とにかく安定さしていただくということと、それから緊急融資、これに対する長期、低利な融資をお願い申し上げたい。安定さしていただきたいということと融資の問題との二点でございます。  第四には、輸入問題でございます。  この問題につきましては、織機を買い上げ、廃棄する、いわゆるわれわれが交通整理をいたしました後、海外から無制限に入るということになりましては、この効果も半減いたします。この輸入問題等につきましては、われわれ、輸入組合と自主的に二カ月に一回ぐらいの話し合いをしながら、秩序ある輸入ということで話を進めておるわけでございますが、この共同廃棄をいたします五十三年以降につきましては、輸入問題、特にこれを完全に実施していただくための関税にまで触れていただきまして、何とか秩序ある輸入ということの実現に御努力をお願い申し上げたい。  また、構造改善資金制度融資既往借入金償還猶予並びに返済期間延長につきましては、すでにいろいろの立場で実施していただいておりますけれども、さらに、われわれの業界が立ち直りますまで、この問題につきましてもよろしくお願い申し上げたい。  最後に、政府系金融機関既往借入金に対する金利の軽減につきましては、先ほど実施していただきましたけれども、われわれのいまの状況の中ではまだまだ高いと存じますので、軽減についての一層の御努力をお願い申し上げたい。  以上、私どもの希望を申し上げましたが、よろしく御配慮をお願いいたしまして、私の意見といたします。
  4. 野呂恭一

    野呂委員長 次に宮崎参考人にお願いいたします。
  5. 宮崎輝

    宮崎参考人 宮崎でございます。  化合繊業界は、最近になりましてこれもまた構造不況産業だというレッテルを張られておりますが、まだまだ成長力のある産業ではございます。これがなぜ構造不況かと言われますと、一つには、最近急激な値下がりがあるということでありまして、それは昨年の十一月からかけまして、キロ当たり大体百円以上下がっております。総生産年間には大体百四、五十万トン能力がございますが、そのうち半分が国内でございますので、それを一部操短しておりますから、まあ去年の十一月ごろから百円と計算しますと、年間に計算して大体六百億ぐらい下がっておるということが第一でございます。  それから第二は、先ほどお話がございましたが、円高影響でございまして、これが去年は一年間為替レートが大体二百九十六円でありましたけれども、これが昨日は二百五十一円。それが仮に二百五十二円ぐらいと計算いたしましても、全生産量の半分を輸出しておりますから、もちろんこれは加工品も入りますが、大体年間に四十二、三億ドル輸出でございますが、これを二百九十六円と仮に二百五十三円としまして、その差額で計算して、そしてこれの八割が化合繊でございますので、やりますと、千四百四十五億という数字になります。約千五百億でございます。ですから、この円高影響というのは、一年間に仮に同量が出ると仮定いたしますと、とにかく予定の千五百億減るということでありまして、値下がりと両方合わせますと、約二千億減るわけでございます。これが非常に合繊業界を圧迫しておる大きな原因になっております。  ですから、私どもとしましては、まず自分でできることは自分で当然やるべきでありますし、また、やる意思でございます。  まず、やっておりますのは、他国でできない、特に輸入に対して対抗できる製品、つまり特殊性のある製品をまず糸綿段階でつくっておりますが、これが大体全体の二五%は発展途上国でできないような物をつくっております。これをわれわれは五割まで持っていきたいというふうに考えておりますが、仮に五割だけ発展途上国でできないものをつくりましても、やはり一般のどこでもできる商品がどうしても要るのでありまして、五割は発展途上国と競争しなければならない素材になります。そういう努力をしておりますが、やはりこの合繊工業というのは非常に機械が進歩してまいりまして、機械を上手に使いますと、いわゆるGP物、われわれはゼネラルパーパスと言っておりますが、それは発展途上国でも日本並みの物はできるということでありまして、先ほども綿工連の方がやはりお触れになりましたように、これが輸入問題等に逢着している原因一つでございます。  次に、われわれがいま自分で実施しておりますのは操短でございますが、これは役所の力によりまして十二年目、鉄鋼がかつてやりましてから十二年目に合繊につきましての勧告操短が行われまして、十月から発足をしております。これによりまして、ようやく価格の下落は停止するという状況になったのでありますけれども、しかし、先ほど申しましたように、円が急激にしかもドラスチックに強くなりましたために、結局輸出は五割ですから、この輸出が十二月までは成約しておりますけれども、一月以降はほとんど成約ができません。大体二百四十円台の値段でないと契約できませんので、それではとうてい採算に乗りません。ですから、十一月、十二月ごろになって、一月—三月の輸出ができませんと、危機的様相を帯びるという状況になってきております。だから、そういう意味で、この操短による効果が全く減殺されつつある。操短国内向け生産操短しておりまして、輸出は自由になっておりますが、その自由になっている輸出が削減されますと、全体としての操短率が高くなりますから、自然操業が落ちます。そうすると、固定費が上がりますから、コストが上がります。同時に、労働者が余ってまいります。そういう意味においては雇用の問題を惹起する状況になっておるわけでございます。  そういうふうにして、自分でできることは、いまのとおりスペシャリティーのある製品をつくることと、役所の力を拝借しながら操短をすることによる応急措置と、両方を併用いたしますとともに、やはり合繊といえどもようやく過剰生産の気配が出てまいりました。したがいまして、この過剰対策をどうするかということを、私ども社長会を開きまして、昨日もいたしましたけれども、この問題を真剣に検討をすることにいたしました。しかし、これは仮に二割あるいは三割を凍結または廃棄しますと、やはり一万数千人の余剰労働力を生じます。いま現在、恐らく一割ないし二割の余剰人員をわれわれは抱えております。しかも、相当な人間が減っておりますが、私の記憶によりますと、繊維全体で二百七十五万人労働者雇用しておりますけれども、それがいま二十数万人減りました。ゼンセン同盟傘下組合員でも十五万人減りました。これは三割に近いのですが、そういうふうにしていま繊維業界全体の雇用がどんどん減少しておりますが、私ども過剰設備凍結または廃棄を仮にいたしますとしますと、当然に一万数千人の労働力の過剰を生じてまいります。この対策が、一番われわれが頭が痛い問題でございます。  そこで、われわれがどうしてもできないことば、先ほど申しました円高対策でございますが、われわれ民間人としては円高をどうすることもできません。しかし、私は、日本の円が真に強いとは決して思っておりません。私どもの実感では、もうかる輸出というものは、先ほどは二百七十五円という話がございましたが、ドルショックのときに私は三百円と申し上げましたけれども、当時、非常に競争力がある時代でも、やはり三百円でございました。と申しますのは、原価には工場原価比例原価、総原価とございますが、総原価をカバーして利益が出るのには三百円が当時でも必要でございましたが、いま二百七、八十円では総原価をカバーすることはとうていできません。しかも、少なくとも現在の二百五十円というのは日本の円の実力を決してあらわしているものではない。投機またはある意味他国からの攻撃によるものと私は思っておりますが、これに対しては適切な方策、これは根本的にはいわゆる内需の喚起によるのが第一でありますが、緊急輸入をされましても日本景気がよくなるわけではございません。  仮にドルを減らそうと思えば、八月末で百七十七億ドルあったドルが、対外債務が百二十二億ドルございますから、差し引くと日本ドルは五十五億ドルしかございません。それでこれは、ドイツは、マルクは三百億ドル純粋の外貨があるわけでございまして、その三百億ドルを持っているマルクは余り動かないで、五十五億ドルしかない日本の円が非常に上がっているということは、まさに異常だと思っております。このことに対しましては、私ども民間としての力が届きませんので、どうか、ぜひひとつ政府を督励していただきまして、この円の実力を離れた異常高に対する対策を、諸先生方はもう十分御存じでございますが、これをぜひお願いしたい、これが緊急の措置だと思います。  それからもう一つは、日本合繊原料は結局石油から出ますナフサでございますが、ナフサが大体アメリカよりも七千円高かったのですが、最近の円高によってさらに差が出てまいりまして、ヨーロッパよりも五千円高かったのですが、最近は七千円以上高くなっております。われわれの方に入ります韓国製品が大体五千円高いのですが、これは政策的に決められております。そういう意味では、このナフサ価格を国際的に競争し得る値段にぜひやっていただくことが必要であって、これは現在は標準価格ではございませんけれども、一応標準価格の設定によって決まったものがそのまま据え置かれておりますので、この問題を解決するのには、私どもお互いのネゴシエーションによってやれるものではございません。やはり油種間の、灯油その他の値段調整によるものでございますし、また、円高による差と両方ございますが、これは大きな税金を、石油関係関税その他ガソリン税等を納めておりますので、そういう税金との調整も考えて、石油精製業界と共存し得るような価格体系をお願いするしかしようがない。これは私ども民間だけでできる問題ではないというふうに考えております。  その次には、先ほどお触れになりましたが、国際協定の発動でございますが、よく世間では繊維業界輸入規制を主張しておるということを言われますけれども、あれは非常に不穏当でございまして、大体、国際協定というのはガットルールによってできた規定でございまして、あの規定を発動するということは、従来のガット十九条を発動すると全く同じでございますから、必要によって、条件に合えば国際ルールを発動していただくということは、これは何もガットルールに反することではないわけでございます。これはやはり私ども民間ではできない問題でございます。しかし、もちろん角間はわれわれお互いに相携えまして輸出国との間に話し合いをしておるわけでございますが、こういう点をお願いいたしますとともに、私どもはわれわれでできることは自分で全力を尽くしてやりますから、ぜひひとつそういうわれわれのできない点に御配慮をいただきたい。  特に、最近は信用不安の問題がございまして、けさも新聞紙等で報道されておりますが、このディーラー、産元等に信用不安の問題がございます。われわれメーカーがいろいろなてこ入れをしておりますが、遺憾ながらメーカーも、最近はわれわれ自身が力が尽きてまいりましたので、ここらあたりに対しましても政府は非常に適切な手を打っておられますけれども、ひっきょうするに不況のために起こるのが多いのでございまして、経営のミスというよりも、構造的な原因による不況、それに基づく信用不安というのがございますから、われわれメーカーもできるだけ努力いたしますが、これはどうかひとつ諸先生方の御尽力によりましてこの危機を脱するようにしていただきたいと思います。  これで私の公述を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  6. 野呂恭一

    野呂委員長 次に、影山参考人にお願いいたします。
  7. 影山衛司

    影山参考人 商工中金理事長影山でございます。  私は、不況業種に対する金融措置円高に関連する金融措置について陳述をさせていただきます。  不況業種に属します中小企業皆さん方は、本来的な構造的な過剰設備等の問題を内蔵しております上に、不況四年目に当たります景気停滞影響によりまして、体力も限界に来ております上に、円高影響、これは先ほど来、藤原さんあるいは宮崎さんからもお話がございましたように、私ども調査によりましても非常に大きな影響を受けておりまして、年が明けてからの成約等について非常な不安があるというような調査結果にもなっておるわけでございまして、こういう不況業種皆さん方は三重苦にあえいでおられるような現状でございます。また、そのほとんどが御承知のように産地を形成をいたしておりまして、地域社会に及ぼす影響も非常に大きいものがあるのでございます。  私ども商工中金といたしまして、これらの不況業種に属される中小企業倒産に追い込まれることのないように、金融面から可能な限りの下支えをして差し上げておるような次第でございます。私ども実態調査によりましても、こういう金融緩慢の中におきましても、調査対象企業の三分の一が資金繰りが非常に苦しいということを述べておられるような状態でございまして、私どもといたしましては金融面からの下支えをしておるような次第でございます。この下支えをしております間に景気対策が速やかに中小企業段階あるいは地域産業段階に浸透いたしまして、景気が立ち直り、また、政府指導あるいは業界努力によりまして構造改善が進捗することを期待をいたしておるような次第でございます。  私どもの行っております下支えの例を申し上げますと、まず、減産資金あるいは在庫凍結資金の供給でございます。  たとえば合板業界に対しましては、全国の七地区工業組合に対しまして在庫凍結資金を八十九億円を貸し出しておるとか、あるいは繊維につきましても、産地に対する減産あるいは凍結資金を富山県の絹業組合あるいは十日町あたりを初めといたしまして、御相談をいたしながらやっておるような状況でございます。  また、平電炉に対しましても、ビレットを担保といたします二百億円程度の減産資金につきましても、業界の方あるいは通産省とも検討をいたしております。  また、変わったところでは、内航海運業界につきましては、現在、過剰船腹二十万トンを共同解撤をしよう、共同廃棄をしようという計画がございまして、それに対しまして私どもは五十億円の融資をしておるというような状況でございますが、造船業界も、こういうふうに内航海運がそういうふうに過剰船腹に悩んでおられるというような状況でもございます。  また、大手のタンカー等につきましても、受注はもうなくなっておるというような状況でございます。相当深刻な状況でございますが、たとえば長崎県あたりにつきましては、県の方の不況対策委員会あるいは転換融資を県の方で計画しておられますが、そのうち九〇%程度を商工中金の方でこなしておるというような状況でございまして、減産資金あるいは在庫凍結のお手伝いをさしていただいております。  それから第二番目は、償還条件等の緩和でございますが、各企業の償還能力に応じまして、個々の実情を勘案いたしまして、過去におきます特別融資分を含めまして、返済猶予あるいはたな上げを行っておるような次第でございます。  また、先般、通産大臣の指定されるところの十八の不況業種の既往長期の貸付金利の軽減措置につきましても、中小公庫と同程度の〇・八%ないし〇・九%の引き下げを十一月一日から実施をするということにいたしておるのでございます。  また、中小企業倒産対策緊急融資制度というのがございますが、これは、御承知のように、健全な中小企業関連倒産によりまして倒れるようなことを防止するための必要な運転資金の供給でございますが、これは条件の変更あるいは金利軽減を含めまして対応いたしておりまして、商工中金だけでこの四月から九月の間に実行いたしました累計が、二百七十二件、六十億三千二百万円というような金額に上っておるのでございます。  それから五番目でございますが、先ほど触れました円高に対する対策といたしまして、十月一日から中小企業為替変動対策緊急融資制度というのが生まれまして、政府系の三機関におきまして十月一日から実施をいたしておりますが、商工中金の現在までの実情でございますが、申し込みが七十五件で十二億二千六百万円という申し込みが参っておるような次第でございます。  また、これは政府の方の御指導をいただきまして行っているのでございますが、私どもといたしましては都道府県等地方公共団体の各地の産地産業対策にも御協力を申し上げておりまして、この県等の制度融資の御協力をいたしておるわけでございます。現在のところ、各地方公共団体から約六百億円の預託を全体でいただいておりまして、これを三倍ないし四倍に広げて融資をいたしております。大体二千億円くらいの残高を現在持っておるのではないかと思うわけでございまして、政府系の金融機関の中で地方公共団体から預託を受けて制度融資の協力をできるというのは商工中金だけでございますので、今後とも地方公共団体に協力をいたしまして、きめ細かな産地産業対策のお世話をさせていただきたい、こういうふうに考えております。  これに関連いたしまして、中小企業庁の方で明年度の予算要求といたしまして、中小企業経営安定資金助成制度というのを要求いたしておりますけれども、これは、たとえば政府の方から百二十五億、地方公共団体がそれに対応する百二十五億、合計二一五十億を四倍くらいに広げまして一千億円の融資をする。これを商工中金その他地方銀行等に預託をいたしまして実行するわけでございますが、これには利子補給も伴いまして、非常にきめの細かな融資ができるのではないかというふうに考えております。これはぜひ実現をしてもらいたい、こういうふうに思っております。  また、これと並行いたしまして、各中小企業皆さん方は一生懸命自己努力をしておられますけれども、なかなか体力も限界に来ておりますし、担保能力も非常に少なくなっておりますので、保証協会、それに関連しますところの保険公庫の充実というものを特段にお願いをいたしたいというふうに考えておるような次第でございます。  以上、まことに簡単でございますが、不況業種に対する金融措置及び円高に関連する金融措置につきまして陳述をさせていただきましたような次第でございます。  どうもありがとうございました。
  8. 野呂恭一

    野呂委員長 以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  9. 野呂恭一

    野呂委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  なお、委員におかれては、質疑の際、まず質疑する参考人の氏名をお示し願います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺秀央君。
  10. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 大変限られた時間でございまして、いろいろお聞きをいたしまして、今後の方策につきましては意見の交換あるいはまた考えてみたいというような感じもしたのでありますが、何しろ十五分くらいの時間でございますので、個条書き的にお聞きをしてお答えをいただかないと、どうも意見の開陳に対する十分な質疑にならないような気がいたしますので、大変恐縮でありますが、私も前後の飾りなく御質問をいたしますので、よろしくひとつお願いを申し上げたいと思うのであります。  何といいましても、きょうの参考人の皆さんは、大体繊維関係の皆さんでありますし、商工中金の影山理事長におかれましては全般的な不況業種に対するいろいろなお考えもおありだろうと思いますが、主として繊維関係に対して私は中心的に御質問をしてみたいというふうに思うわけであります。  そこで、影山理事長から先にお聞きをさせていただきますが、御案内のとおり、繊維はいわゆる不況という段階をもうすでに逸して、いつ死滅するかというような段階に末端では来ております。今日まで政府の方でもいろいろな施策は施しておられますけれども、現状を認識いたしますに、金融の面においててこ入れをしていくということだけで、果たしてこの繊維構造不況が克服されるかという問題点はあることは承知はいたしております。しかし、現実にこれまでのいわゆるドルショックやオイルショックあるいはまた対米繊維交渉等々において行われましたいろいろな繊維業界に対する幾多の風波、こういう中で耐え忍んできて、かつまた、その都度政府からのあるいは政府融資機関からの援助をもらいながらもまあまあ命をつないできた、そして今日決定的な段階を迎えてきているというふうに私は現状認識をしているわけでありますが、そういう中で、いままでせっかくこの業界融資をしてこられた立場で、現実問題として一体これから何年後に市況が回復し、あるいはまた回復することによって元利合計返済の可能性があるのかどうか、その辺の認識をどういうふうにとらえておられるかということについて、まず第一点お聞きをしたいわけであります。  私は、実はそのことに対しては非常に厳しい考え方を持っておりまして、先ほど理事長は、御説明の中に、第三点として、産地あるいはまた業種によっては融資のたな上げ、返済猶予等やっておられるというような御説明もありましたが、にもうその段階、元金のたな上げあるいはいわゆる金利のたな上げ等もしてもらわなければならない段階に来ているのではないか、こういうふうに思うわけでありまして、その辺の理事長の現状に対するお考えをお聞きいたしたいというふうに思うわけであります。
  11. 影山衛司

    影山参考人 繊維業界に対します現状認識につきましては、渡辺先生と全く同じように考えておるような次第でございます。  何年後に不況が回復し、償還がいつごろになったら十分できるようになるのかという御質問でございますが、何分、今回の不況は従来の経済学者でも予想しなかったような状況が出てきておりますので、先に対する予測というものは非常に立ちにくいのでございます。そういう点で、今後不況がいつ回復するかというようなことにつきまして、はっきりしたことは申し上げられません。そこで、私どもといたしましては、たとえば償還猶予等をいたしますにつきましても、大体二年ぐらいずつを見ながら、その区切り区切りで考えていこうかというふうな態度をとっておるような次第でございます。
  12. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 そこで私は、この際ひとつ思い切って政府に対して、構造不況に対するいままでの融資に対して全面的なたな上げと、そして一部金利たな上げ、あるいはまた大幅な低金利の実現を来年度予算に積極的に織り込んでもらうような働きかけをなさる御意思がおありかどうか、その辺を承っておきたいと思うわけであります。
  13. 影山衛司

    影山参考人 お答え申し上げますが、中小企業庁の方ともよく相談をしながら推進をいたしたいと思っております。
  14. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 ありがとうございました。  次に、化繊協会の宮崎会長にお聞きをさしていただきたいのでありますが、全く今日まで、化繊業界さんはかつて日本のいわばドルかせぎの担い手であったというような花形産業であったわけでありますが、そういう中において大いに国家に対して貢献され、あるいはまた国民生活にも非常に広範な利益をもたらしてきた過去の功績、実績等を勘案しながら、今日のオイルショック以後の構造不況に対しまして、私自身も繊維業界に対していささか理解をさしていただいている一人として、先ほどの商工中金の影山理事長の御説明でも御案内のとおり、きわめて先の見通しがつきにくい状態の中で、会長は、業界ぐるみの努力をされるという先ほどの御決意とそれから政府に対する御希望等もあったのでありますが、当面の問題といたしまして、いわゆる急激に輸出輸入がフィフティー・フィフティーの今日の業界の実情の中で、たとえば円高によって輸出は非常に窮地に立ち、そして国内不況によって国内の消費が急激に拡大されていくというような希望もなかなか持ちにくい状態だと思うのです。そういう中で、何かそこに政府に対して抜本的なあるいはまた当面の措置といいましょうか、そういうような一つの方策としてお考えがないものか。  たとえば四十七年でありましたか、バングラデシュに対して政府が具体的に物資によって援助をした、こういうような実例もかつてはあるわけでありますが、この種は大した数量を消費するようなことにはならないかもわかりませんけれども、しかしながら、先般総理が東南アジア、ASEAN諸国を歴訪して相当金円的に援助額を決めてこられましたが、そういう中で繊維の物質援助、実質援助というようなことを業界としてひとつ働きかけてみられたらいかがかというような感じもいたしまして、たとえばそういうこと一つにしましても、相当幾つかの産地で、短期間でもあれ、一つの活気というか、そういうようなことも見出せるのではないかという、まことにつまらないことでありますけれども一つの問題として、たとえばという事例として申し上げてみたわけでありますが、その辺のお考え、業界として積極的に、そしてまた大胆に、ひとつ政府に対して合繊業界の市況回復のための具体的な提言をこの際おやりになって、末端の業者に対して希望を与えていただくような方策はないものでありましょうか、御意見を承っておきたいと思うわけであります。
  15. 宮崎輝

    宮崎参考人 先生のおっしゃるとおりでございまして、バングラデシュに贈与いたしましたときには、私ども関係いたしまして、政府にお願いして買ってもらったのですが、これはもちろん大きな影響はございませんが、こういうことは、やはり少しでも中小企業がつくります製品を買い上げてもらうわけでありますから、大変にいい案だと思ってこれを非常に推進をしたいのでございますが、やはり向こうで希望されますのは医薬品だとかそういうのが多うございまして、衣料を必ずしも喜ばれないということがございまして非常に困難を感じておりますが、しかし、そういう点がありましたら非常に結構でありまして、私は、先生御指摘のとおり、これはぜひ実現したいと思っております。  ただ、抜本的に先生方にお願いいたしたいことは、やはり先ほど触れましたが、円高対策をどうしていただくか、それには景気刺激策でございますが、いまのような予算編成の方針では、財政の関係で例の三割の依存度というものの壁がありますから、やはり本当の景気を刺激する予算ができないということで、常にあの三割にぶつかりまして、これは財政当局としての方針はよくわかりますけれども、税収はふえる見通しはないのだし、それから行政経費を節減するといっても行政改革も行き詰まっておるような情勢でございますので、やはりあのところにメスを入れない限り、少なくともこの緊急事態を乗り切るための景気刺激策はできないのじゃないかということを感じておりまして、この点、予算の編成に対して力をお持ちの先生方は、行政当局の意向はよくわかりますが、政治的配慮からこの線を破られまして、何とかひとつ景気刺激を抜本的にやっていただく、これをぜひお願いしたいと思います。
  16. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 どうもありがとうございました。  時間がなくなってしまいましたので、綿工連藤原会長さんにも一つだけお聞きを申し上げたいと思うのであります。  末端の企業、零細企業の皆さんは、先ほどお話がございますとおり、本当に深刻な状態であります。そこで、今後の問題としまして、現況はお互い認識しているわけでありますが、業界立場から、一つは流通機構に対して対応策を、こういう機会に化繊協会あるいはまた商社関係等々と話し合われて、この流通機構の整備をし、そしていわゆる生産段階において大きなしわ寄せをもらわなくてもやっていけるような構造体制をつくり上げることが大切なことではなかろうかという感じがいたしまして、もっと私は金融面においてもいろいろお聞きしたがったのでありますが、時間がありませんので、その件に関してちょっと一言お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  17. 藤原一郎

    藤原参考人 われわれ生産業者と流通関係の問題でございますが、ただいま御指摘のとおり、昨年度の繊工審でも御答申になっておられますように、いわゆる流通の迂回性ということが問題でございまして、われわれの中ではそういうことで、きょうもお話し申し上げましたように、輸入商社との定期的な懇談会も開きましたし、それから紡績、いわゆる川上、川下の関係における紡績等とも毎月一回の定期会談を開きまして、輸入の問題も含めまして流通問題についてもお話をしておるようなことでございますので、今後におきましても、いま御指摘のようなことは力いっぱい進めていきたいと考えております。
  18. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 最後に、商工中金の影山理事長にお願いといいましょうか、希望を申し上げておきたいと思うのであります。  御存じの構造改善事業でいろいろ御協力をいただいてまいりました。しかし、御案内のとおりの状態で、倒産が続出いたしておる現況であります。そこで、倒産しました場合に、組合が借り入れをする場合の保証をやっておることは御案内のとおりでありますが、これが非常に災いをしておりまして、倒産企業の肩がわりを組合がし、かつまたその連帯責任を組合員が負っていくということは、死者にむちうつ形になることはもう御承知のとおりであります。せめて今日の段階でお願いを申し上げたいことは、また十分中小企業庁との話し合いも進めていただきたいことは、倒産した特殊企業あるいは内整理をした企業、いわゆる特殊企業といいましょうか、こういう企業の実態を把握していただきまして、これらに関しては元金、金利ともにたな上げをしていただいて、そして健全な、あるいはまたこの苦しい中で一生懸命生き抜こうとして努力しておられる企業に対して何とか活路が見出せるように、ひとつ御措置をお願い申し上げたいことを、これは陳情になりますけれども理事長に一言お願いを申し上げまして、私の質問を終わりたいというふうに思います。
  19. 影山衛司

    影山参考人 渡辺先生のただいまのお話、たとえば栃尾あたりにつきましてもそういう実情があるわけでございまして、十分承知をいたしておるような次第でございます。  組合融資とそれから組合役員等の連帯保証という問題は、組合金融、組織金融の根本に触れる問題でございまして、なかなかむずかしい問題も含んでおるわけでございますけれども、先生が先ほどおっしゃいましたような窮状は理解できますので、できるだけ残存組合員の負担を軽減できるような措置につきまして、中小企業庁の長官ともよく相談をしてまいりたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  20. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 ありがとうございました。
  21. 野呂恭一

    野呂委員長 佐野進君。
  22. 佐野進

    ○佐野(進)委員 昨日に引き続き、参考人各位にお忙しいところを御出席いただきながら、私ども不況対策についていま全力をもって取り組んでおるわけでございます。そういう意味において、短い時間でございますが、三参考人に対して具体的な質問をしてみたいと思います。  昨日来いろいろお話を聞いて、各不況業種の窮状についてはよく理解をしておるわけですが、きのうきょうを通じて私ども感じますことは、苦しいから何とかしてくれという御提言、御意見はあるのでございますが、さて、それをどうするのかということについては、当面する措置について御見解の表明があられ、業界全体としてこうすれば将来こうなるという——もちろんそういうことがいまむずかしい状況下にあることはよく知っておるわけでございますけれども、大変少ないわけであります。したがって、私は、その観点に立って逐次質問をしてみたいと思います。  最初に、宮崎参考人にお願いをいたしたいと思います。  いろいろお話を伺いました。業界の持つ将来への発展性はまだ相当あるということについて私どもも理解いたします。当面する窮状を切り抜ける形の中で、化繊業界が発展していくための措置として幾つかの御提言がありました。私どもその御提言の実現に向かって努力してまいりたいと思うのでございますが、根本的な問題として、わが国の政策の一つといたしましていわゆる輸出を増進する、その一つとしてプラント輸出を非常に強力に取り上げておるわけであります。結果的にいま五割の線でとどまっておると言われておりますけれども、これが将来推進いたしますれば、やがて七割、八割になることも予想せられるわけであります。化繊業界がその存立をかけていろいろ努力されるとするならば、当面応急の対策としての諸方策を打ち出されることは結構でございますが、プラント輸出に対する取り組み等将来の発展に対して政府あるいは関係方面にどのように努力なさっておられるかという点が一つ。  さらにまた、紡績と違って化繊業界の持つ特殊性は、同じ赤字が出たとしても、その赤字の幅が非常に少なくて、いまなお紡績業界に比較いたしますれば発展の余地を残し、利益を吐き出すにいたしましても、その条件は若干相違があると思うわけであります。といたしますならば、この条件下において化繊業界が困難を乗り切るために、自主的な努力といいますか、いわゆるぜい肉があるならばどのような形の中においてのぜい肉を切るのか、いわゆる人員整理その他でなくして、外圧をはねのけるとともに内圧をはねのける諸方策として、どのような方策をお持ちになるかということが重要な課題になってきておると思うのであります。その点についてひとつ御見解をお示しいただければ、われわれの今後の取り組みにきわめて参考になると思いますので、以上、二点御質問を申し上げます。
  23. 宮崎輝

    宮崎参考人 一つは、プラント輸出お触れいただいたかと思いますが、プラントの輸出の件でございますが、実はもうプラントを買うのはほとんど共産圏でございます。大体、合繊及びその原料関係はほとんど出尽くしまして、東南アジア等にはもう大体出まして、いま共産圏が主になっておりますが、結局これらは両刃の剣でありまして、私どもがプラントを輸出いたしますと、その製品がやがて出ますので、私ども輸出先の市場を失っていきます。逆に今度は彼らがつくった製品日本に逆流してまいりまして、ある意味においては苦し紛れにプラントを売りましてその技術を売るわけでございますけれども、そのときには金が入りますが、何年かの後においては逆にはね返ってくるという矛盾がございまして、プラント輸出というものは、長期的に見れば日本としては、われわれのような製品をつくるメーカーとしては望ましいことかどうかはなはだ疑問である、機械をつくって売られる方は商売になりますからいいのですけれども。そういう大変な矛盾に悩んでおりまして、いま現に極東三国から入りますいろいろな製品は、ほとんど日本から入ったプラント及び技術の輸出による製品でございます。  それから、抜本策でございますけれども合繊業界といえども赤字は大変なものでございます。合計しますと、恐らく一年間に一千億の赤字が出ていると思います。合繊の中でもいろいろな特殊な合繊、あるいは繊維以外のものとか、そういうものの黒字でカバーしておりますのと、それから流動資産を売却しておるということによりまして、ある限られた会社は何とか配当を維持しておりますけれども、もうほとんどそろそろ限界に来ているという段階でありまして、これに円高が加わりますと、来年一月以降の輸出が減りますと、来年の三月期は大変むずかしいなという心配を私はしております。  ですから、抜本策は、先ほども申し上げましたように、余っております設備廃棄するのか凍結するのかという問題がございまして、これには何といいましても、廃棄になりますと金が要ります。この金をどうして調達するか、そしてまたその金利をどうするかという問題がありまして、そうしてある設備を簿価ででも買ってやるということ、それから労務者対策ができるということになりますと、案外に、一部廃棄するかまたはもうこの工場はとめてもいいという人があるいは出るかもしれないという気がいたしておりますが、簿価で買い上げる金とその金利負担の金をだれが負担するかということと、労務者対策で、解雇するとしてもこのごろは世話するにも職場がない、そういう問題がございまして、この問題は非常に大事な問題でございますが、いまもっぱらわれわれが真剣に検討している段階でございます。  ですから、抜本策は、まだ合繊は将来がございますので、どうしても国内でもう少し売れるような需要喚起と、それから国外への輸出が五割ですから、その輸出でもうかるだけの輸出、これはコストダウンには全力を挙げております。エネルギーの節減から、人減らしから、全力を挙げておりますが、円高のような年に千五百億も影響するようなものをどうしても吸収する道がありませんので、これは何としても私どもの力の限界を超えた問題であって、諸先生方にお願いする以外に手はないというふうに考えております。
  24. 佐野進

    ○佐野(進)委員 影山参考人にお伺いしてみたいと思います。  きょう、実はあなたの場合は、不況の業種の方方から意見を聞くのではなくて、政府糸金融機関の代表として御出席いただいた。実は日銀にも出ていただきたかったのですが、事情があって出られませんでしたので、あなたが代表するような形になるわけですけれども、実際上の問題として、政府系三金融機関に対して、当面する不況下における倒産を防止したり、あるいはみずから自立再建ができるような努力に対して積極的に対応してもらいたいということで、われわれは大いに期待をいたしております。しかし、期待をしておるにもかかわらずなかなかその実が上げられず、倒産件数は毎月増大をする、企業はまさに四苦八苦の状況にある、こういう形の中で先ほどあなたからいろいろ御意見を聞いたわけでありまするけれども、私どもは、もう少し勇敢に、倒産企業共済法等をつくるために努力をいたしておりますけれども、金融機関の担当者として、この際こうあらねばならぬじゃないかという、厳しい状況下であればあるほどあなたの方で御判断なさっている点があろうと思うのであります。他の政府糸金融機関に比べて、金利の引き下げ等具体的な措置について積極的に対応されておるその姿勢に対しては敬意を表するとともに、まだ何か一つ足りないんじゃないかという気がいたします。それらについてあなたの方から、こうすればいいんだというような御見解があれば、いまの評価は評価として、いまの意見の発表は発表として、いままでの努力を評価することは評価することとして、何か一つ物足りないという形の中であなたの御見解を聞いておきたいと思うわけであります。
  25. 影山衛司

    影山参考人 お答え申し上げます。  私ども政府系の金融機関が、冒頭陳述を申し上げましたように、こういう深刻な状況に対しましてまず一生懸命やっておりますことは、中小企業に対する下支えをしてあげまして、その間において構造改善あるいは景気の立ち直りを期待いたしておるような次第でございます。さらに積極的に、たとえば構造改善問題等につきましても、振興事業団が一役買っていろいろと設備廃棄等もやっておりますけれども、そういう点につきましても商工中金も協調いたしまして融資をさせていただきたい、お手伝いをさせていただきたい、こういうふうに考えておりまして、きめ細かく小さな努力の積み上げをやはりしていかなければいけないのではないか、こういうふうに考えておるような次第でございます。  また、先生からもいろいろ教えていただきまして、私どもやってまいりたいと思います。
  26. 野呂恭一

    野呂委員長 加藤清二君。
  27. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 委員長のお許しを得まして、与えられた時間短こうございますけれども、簡単に御質問を申し上げたいと存じます。  大変な不況でございます。言語に絶すると言っても差し支えございません。この休会中に、私は野呂委員長のお供をいたしまして国政調査をいたしました。また、例年の例でございまして、地元愛知県の知多織から一宮毛織、尾西毛織初め、藤原さんの郷里の泉南から、京都の北の丹波、但馬から、福井、石川、泉南だけでも私この休会中に三回行きました。大変な不況です。大企業までが青息吐息です。株価を保つために、流動資産のみならず、不動産まで売って帳簿を合わせてみえる、大きな紡績が。しかし、中小零細企業になりますと、機械を売るどころの騒ぎではない。工場の中の屋敷の土地を売っているのです。そうして帳簿を合わせている。したがいまして、言えることは、このままの状況が半年推移いたしましたならば、繊維倒産はもう数限りなく出てくるだろうと思います。息を引き取る一歩手前という企業が非常にたくさんあります。全く憂慮にたえません。  そこで、原因が一体何であるだろうかということを調べてみますると、いろいろございまするけれども、銘柄別に集約すると、こういうことが言えるのです。新聞、ラジオ、テレビから雑誌、経済学者は構造不況と言っておる。私はそうは思わないのです。それば、一部は構造不況でありましょうけれども、実はこれは政策貧乏であり、政治不況なんです。  これは質問のバックになりますから、簡単にその実例を申し上げますと、こういうことです。  シルクの場合は原料高の製品安でございます。生糸は世界プライスが五千円から六千円であるにもかかわりませず、内地は一万三千円。だれが決めているかといったら、これは政府が決めている。通産省じゃない。農林省なんです。世界プライスが五千円から六千円なんです。これは勝負になりません。  次に、合繊でございますが、合繊も原料高の製品安でございます。宮崎参考人がいらっしゃいますから、釈迦に説法になると思いますけれどもナフサ一キロについて最低五千円、幅の大きいところは一万円、平均とって七千五百円、これだけ違いましては、これは勝負になりっこないのです。なぜそうなっているか。これは通産省が指導してそういう値段を仕切っているからなんです。同じ国内業者といえども、直接ナフサ輸入して、世界プライスで仕入れている企業日本にあるのです。にもかかわらず、繊維の材料のナフサに関する限りは、世界プライス上乗せ七、八千円から一万円、勝負になりっこないんだ。  綿工、スフ、毛工、これも同じことが言えます。ここはまた農閑期利用の幽霊織機やあるいは無籍織機のおかげで過剰設備が発生してきている。これも農林行政の不足を補うというたてまえから行われておりまするが、これはやはり農林行政とも総合して救済策に臨まないと適当な措置ができないではないか、かように存ぜられます。  そこで、時間がございませんから、本日は主として直接関係の宮崎さんにお尋ねしますが、はそれぞれ努力をしているのです。直接当たってみますると、大変な苦労をしてみえる。にもかかわらずこの不況。私は、あえてこれは政策貧乏から来るところの政治不況と申し上げますが、したがって、局間がどんなに努力してもできない相談がたくさんございます。  そこで、お尋ねしたいのは、宮崎さんが通産大臣になったら何をおやりになりますか。大蔵大臣になったら何をおやりになろうとなさいますか。つまり、政治家がなすべきこと、行政官がなすべきこと、これを民間側からながめて教えていただきたい。要すれば、あなたが社会党の委員長になったら社会党にどういう政策をやらせるつもりですかと、こういう観点からでも結構でございます。どうぞひとつお教え願いたい。
  28. 宮崎輝

    宮崎参考人 なかなかむずかしい御質問でございまして、私は大臣になる資格もございませんからなんですが、結局、私、こう思うのでございます。  私ども民間から政治を見ておりまして、はなはだ批判がましいことを申して恐縮でございますが、まず第一は、政策の決まるプロセスに問題があるのじゃないか。と申しますのは、日本では、政治といいますか、法案の原案をつくるのはほとんど官庁であるということでございまして、外国のように議員先生みずからが法案をおつくりになるということは必ずしも多くないという点でございます。行政の延長でございますね。ですから、私は、さっきもちょっと触れましたように、いま一番の大きな焦点は、これは大蔵大臣のつもりで申し上げますが、恐らくいまの大臣だったら落第でございましょうが、私が先ほど申しましたように、予算の国債依存度というものは三割だ、これは一つの線だ、これはわかりますけれども、しかし、常に三割というものを維持していこうとすれば必ず予算規模に制約ができる。だから、やろうと思っても仕事ができないということでありますから、こういう緊急事態に処するために一時あの線を破って、そして国の景気をよくして三割が二割五分とか二割八分に下がるというように、少し長期的に三割を平均的に見ていくという政策が必要かと思いますが、何ぼ私どもが申し上げましても、現在は自民党の内閣でございますが、これはむずかしい。しかし、私は、あの線が守られないということは、守ることができないということは、大蔵省の方々もその他の方々も知っておられると思うのです。そういう点がファイナンスの点から一つの大きなポイントでありますが、もう少しあそこに融通性が要るのではないか。これはどこか政府当局の方でそういうことをはっきりとおっしゃる方はいないのだろうかということを思います。  それから、通産のいろいろな行政に対しましては、たくさん注文がございます。  私どもできないことといいますと、さっきナフサ値段の御指摘がございましたが、ナフサ値段というものは、やはり民間ではどうにも交渉ができないのですよ。いま標準価格じゃありませんけれども、これは標準価格で決まって、それがそのまま据え置かれておりますが、ナフサ値段を下げる方法としては、灯油を上げるというような油種間の値段の問題、あるいは灯油を上げることができなければ灯油に助成金でも出すかということになりますが、それをどうするか、あるいは石油の備蓄の資金をどうするかという問題がありましていその資金源としていわゆる道路に使われておりますいろいろな税金——道路は、私の記憶では三兆二千億円ぐらいあると思います。それと関税が千八百億ございますが、こういうものを、たとえば関税をやめると、石炭の方では怒りますけれども、そうすると千八百億浮きます。あるいは道路の方に建設国債を出して、それで灯油の値上げに補助金を出すというようなことが仮にできますると、いまの建設国債が、さっき言いました三割の枠の中にひっかかってしまうということになります。  私は、やはり道路という問題は非常に大事でありますが、原料を下げるという産業政策の問題、それからいまの備蓄の問題、これはナフサというより石油という問題、そういう問題を調和していくのが政治でありますから、そのためにはどうしてもやはりいまのような灯油を上げて、民生の方を圧迫といいますか、抑えて、そしてナフサを下げて産業競争力を増す政策をとるか、灯油の方に何か助成金を出すか、助成金を出すなら財源が要る、こういう問題になりますから、どうしても私は通産行政と大蔵行政との間に密接な関係がああること、これは当然でございますが、そういう点を非常に感じます。  それで、景気刺激という問題は、何回も触れますように、私は現在やり得るものは財政しかないと思う。公共投資はもちろんですが、公共投資といえどもやはり財源の問題になります。それともう一つ、やはり税金を一体どうするのかという問題がありまして、減税ということは非常にむずかしいと言われますが、一方、取引高税なり消費税を上げようとしておられますが、そういうような財源措置でいかれると、逆に民生を圧迫するという問題がありますから、やはり最後は何としても国債という問題が出てくるということになりますので、それでなければ、赤字国債は減らすためには人件費を減らす、となると行政整理となりますが、これは野党の先生も決して御賛成ではないと思いますが、そういう非常にむずかしい問題があります。私は、やはりいま幾多のかんぬきが入っておりますが、それをしばらく破ってやるしかないというように思っております。
  29. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 結構な御高説をいただきましてありがたい幸せでございます。  私は、宮崎通産大臣、宮崎大蔵大臣というのは、これはお世辞でもなければ、うそでもなければ何でもない。戦後、私は、通産大臣、大ぜいのお方とつき合いましたが、最高のお方は高碕達之助先生です。自民党です。あのときに一番しっかりした基本が確立して日本経済が上向きになってきました。あのお方は原稿を読まれないのです。頭の中から案を出される。あるいは宮崎先生は何度もここへ来ていただいて質問をしますが、いつでも原稿を読まれないのですね。頭の中から政策が出てくる。そういう意味において、私は、高碕先生にかわる人は宮崎さんだと、かように思っておるわけでございます。  したがって、何と申しましょうか、総論をさっき聞きましたのですが、今度は各論について承りたい。  第一番、三〇%の壁を破れということ、これは社会党の委員長だったらちょっと言えないことでございますが、しかし、社会党の場合といえども公債世代論を適用することに反対したことはございません。したがって、公共投資にこれを行うとか、あるいはナフサの値下げのために、あれこれありますが、たとえば政府が備蓄を行うとか、あるいは倉庫、タンクを持たない輸出企業に対して設備をつくって差し上げるとか、こういうことならば決して反対ではございません。いわんや、この輸出振興のために国際プライスに合わせなければならない、そのためにはかくかくのことをしなければならぬという前例は金液にございます。輸出関係に使う金液だけは世界プライスで業者に渡しております。これも社会党が原案をつくってこれを実行させたことでございます。  さてそこで、ナフサについて、灯油との関係がございましたが、備蓄の問題について、どこまでどの程度するとおよろしいでございましょうか、お尋ねいたします。
  30. 宮崎輝

    宮崎参考人 備蓄の問題は、先生御承知のように、いま通産のエネルギー庁でいろいろ御検討していらっしゃるのですが、大変多額の金が要るということでございますが、私どもがいろいろ報道で聞いているところによりますと、少なくともガソリン税に関係した、たとえば一兆八千億でございましたね、あれの半分ぐらい使いたいというようなことが報道されておりますが、仮に半分といたしますと、毎年九千億ですね。道路全体が、先ほど申しましたように、三兆二千億と記憶しておりますが、三兆二千億のうちで、たしか一兆八千億がガソリン税の関係のものだと私記憶しておりますが、あるいは間違いかもしれませんが、石油関係で原重油の輸入関税を千八百億と思いますが、そのほかに一兆八千億ぐらいのガソリン等の税金を納めておられますが、これだけの税金の相当分を石油に還元すべきではないかというふうに思っております。  その還元するときに、先生御指摘のとおり、備蓄設備に還元するということが一つ。それから、備蓄設備に還元せられるときに、たとえば五割を還元されるのならば、その一割を油種間の価格調整にぜひ私は使っていただきたい。そうすると、灯油を仮に値上げをしても、あるいはそれの補助金になるし、あるいは灯油を上げなくても、関税を千八百億をゼロにされますと、われわれのナフサ値段を五千円下げることが、すぐ直ちに実現できるわけであります。だから、そういう意味におきましては、備蓄と油種間の価格調整に、ガソリン税あるいは原重油の輸入関税を適当に使うことによって、実現可能になるのではないか。  そうすると、当然に道路財源が不足してくる、あるいは石炭に回している金が不足するということになりますから、道路財源こそ、先生が御指摘のとおり、子孫に残るものでございますので、これは建設国債でいいじゃないか。建設国債を出そうとすれば、さっき言いました三〇%にまたひっかかるということになりますと、何をやるにもあそこでひっかかってくるわけです。  そういう意味で、私は先ほどから申し上げておるように、この線が一体守れるのだろうか、特に、こんなに緊急事態になって景気刺激をやらなければならぬときに、今度の補正予算がたかだか一兆二千億、波及効果が二兆円と言われますけれども輸出は五十二年度は八百億ドルの予定になっております。その八百億ドルが四十円為替レートが上がりますと三兆二千億でございますね。三兆二千億手取りが減るという計算になりますので、二兆円の波及効果は全部吹っ飛んでしまいます。諸先生方が大変御苦労なさいまして通していただきますこの補正予算の効果は、いまの情勢では完全に霧消、解消するという情勢でございます。  だから、そういう意味におきましては、これはやはり円高というものだけによる影響国会で御審議いただく補正予算の効果がなくなるほどの大きな問題でございますから、この問題を解決していただくのには、これは財務当局だけではなくて、何としても日本輸入を増大するように景気をよくしていただくことが第一でありまして、大急ぎで輸入を増大してドルを減らすということは、これはまことに芸のない話でありまして、先ほど申し上げましたように、日本ドルの本当の保有量はたった五十五億ドルでございます。ですから、これは石油を三カ月分輸入したら一遍になくなるようなものでございまして、風前のともしびのような日本の外貨だものでございますから、その意味において外国為替管理法というものが問題でありまして、この外貨をみんな一遍に集中して相殺したものはわれわれにはわかりませんので、ついそういう百七十七億ドルとかあるいは百八十億ドルあるように錯覚を起こしている。そういうところから為替管理法の問題もわれわれは検討すべきではないかというふうに考えております。
  31. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 与えられた時間がもう迫ってまいりましたので、急いで質問したいと思います。  ガソリンといえども、灯油といえどもナフサといえども、これはみんな政策値段でございます。農業にはガソリン税の戻しが与えられております。石油精製企業に対しては、脱硫装置に対する戻しが行われております。したがって、ナフサの関係は、やはりそういう前例にかんがみて再検討を要する時期が来たと存じます。補正予算をどんなに早く通したって、これで景気は直りません。次の本予算に対してどう臨むかということのために、あと二点だけお伺いします。  輸入規制、特に繊維輸入規制。アメリカの繊維輸入の歴史は、日本に対する制限の歴史でございます。アメリカが行っている、つまりガットやIMFをつくった御本尊が行っていることが、日本でなぜ行われないだろうか。  次に、信用不安、これが倒産を一層誘発しているようでございます。そのまた原因は、銀行が寝ている病人のふとんをめくるだけでなくして、貧血患者から、前に貸した金だというて血液をもぎ取っていく、これがいまちまたに現実に行われている具体例でございます。そこで、信用不安はますます倒産を増加させているからどうすべきか。  以上でございます。
  32. 宮崎輝

    宮崎参考人 MFAの問題でございますが、これは私もちょっと冒頭陳述に触れましたように、国際協定ができましたときには、私がちょうど前回の化繊協会のお世話役をさせていただいておりまして、この問題に終始タッチいたしたわけでございますが、ガット十九条を発動するのが普通である、これは現にいまヨーロッパは、ECは極東三国に対してガット十九条を発動しようかということを言っております。しかし、ガット十九条では代償を払わなければならないというので国際協定ができたわけでございますが、この国際協定というのはガット十九条にかわる繊維の特例のガットルールでございます。これがこの十二月末に切れますので、これを継続するについていま交渉が行われておるのでございますが、この条項を、三条と四条があることは御存じのとおりでございますが、そのいずれかを、特に三条を発動することは、ガット十九条によく類似しております。ですから、これを発動してもらうことは何ら輸入制限条項違反ということにはなりません。  ですから、私ども政府に希望したいことは、韓国がいま増産を盛んにやっております。ちょっと最近不況で中止いたしたように聞いておりますが、日本がこの国際協定の少なくとも三条を発動するという意思を明確に出しますと、韓国は、あんな、ある意味輸出だけのための増産を大きくやるということはないと思います。現に私どもは、韓国の業界の方から、ぜひ日本から韓国の政府にそういうことを言ってくれということを頼まれている人がおるわけでございます。日本だけがいまオープンマーケットでございますが、ガット十九条を発動すると同じ意味でございますので、私は、日本もこれを発動する意思を明確に表示していただくことが、同時に韓国あたりがたくさんの増産をされるということを防止して世界の秩序が保てるということだと思っております。  それから、信用不安のことでございますが、御指摘のとおり信用不安がございまして、特に産地にその問題がございます。特に、いわゆるある意味のリーダーでございますが、その信用不安が同時に取引の停滞を来しております。これは、私ども合繊メーカー製品も常にその危機にさらされておりまして、何としても信用不安はやはりなくしていただきたい。商工組合中央金庫の理事長もここにいらっしゃいますが、特に産地方面における信用不安はぜひ一掃するようにしていただきたいように思っております。
  33. 野呂恭一

    野呂委員長 中村重光君。
  34. 中村重光

    ○中村(重)委員 どうも不況の中に大変御苦労さまでございます。  宮崎参考人にお尋ねをするのですが、先ほど化合繊競争力といった問題についてのお話も伺って、ある種の期待感というものも持つことができるわけですが、その化合繊産業というのは従来とも出血輸出というのが相当あったわけですね。ですけれども、何といっても装置産業ですから、減産をするということになってくると、先ほど意見の中にもございましたが、コストが高くなる。それから、過剰労働力をどうするかといった問題等も起こる。そういったことから、減産をすることよりも出血輸出の方がむしろましなんだといったようなことで、相当無理な輸出もしてこられたと思うのです。けれども、先発メーカー機械類の減価償却もやっているからややまし、しかし、後発メーカーということになってくると、償却費が非常にかさんでくるということになるわけですから、したがって、出血輸出というのも限界がある。現在は限界ぎりぎりというような状況、あるいはまたそれ以上の問題に当面をしているのであろうと思うのです。  そこで、輸出のあり方なんですけれども、いまのように貿易収支で黒字が見通しをはるかに超えて、七億ドルの赤字といったのが、いまのままの状態でいきますと、八十億ドルにも百億ドルにもなるといったようなことになってまいりますと、これは個別の産業輸出ということだけではなくて、輸出の総量規制みたいなものをやらざるを得ないという状態になるのではないか。そうした際に、たとえば名前を挙げて変なんだけれども、自動車産業のように、あるいは家電のように、円高になっても競争力は十分あるという、これらのものは競争力があるから輸出はさらに強まってくるという形になるだろう。そうすると、競争力のない、きわめて伝統的な、歴史的な繊維産業といったものが淘汰されてくるということになっていくんじゃないか。そこらあたりのコントロールというのが私は必要になってくるのではなかろうかという感じがするわけです。     〔委員長退席、中島(源)委員長代理着席〕  従来の化合繊産業がとってきたいわゆる減産操短の方向よりも出血輸出がましであるというようなことで、無理をしてこられた。深刻な不況の現在の状況の中で従来とってきたような無理はもうできないのか、できないであろうと私は思うのでございますけれども、いわゆる総量規制というようなことを輸出の場合にしなければならないという場合において、私が申し上げたように、競争力のあるものと、繊維産業のように伝統的な、歴史的な産業を守っていくというような点から、当然輸出の面においてコントロールして、繊維産業を守っていくということが私は重要な課題ではないかと思うのでございますが、それらの点に対して、綿スフの場合も同じような条件にもあるわけでございますから、宿崎参考人藤原参考人からお答えをいただきたいというふうに思います。
  35. 宮崎輝

    宮崎参考人 先生の御指摘はまことにごもっともでございますが、いま日本ドルは、御指摘のとおり、経常収支のマイナスの七億ドルが、非常に大きな六十五億ドルとか百億ドルプラスになるということは、ある意味における競争力のある御指摘のような商品の輸出増ということが原因である。したがって、これを総量規制して、そして日本の黒字を減らして、そうすることによって円高を防ぐ。そしていわゆる限界利益で輸出しているような繊維業界輸出がもうかるようにしたらどうかという御指摘でございますが、これは非常にごもっともでございますけれども、実は、仮に自動車産業を例にとりますと、自動車産業というものは非常にすそ野の広い産業でございまして、私ども合繊メーカーとしては現にタイヤコードを使ってもらっております。あるいは石油化学も、構造不況と言われておりますけれども、これらの合成ゴムを大きく使ってもらっているのは、タイヤでありますから自動車産業であります。その他部品は、プラスチックその他無限にございますので、このすそ野の広い自動車産業というものは、日本のみならず、大変大きなすそ野を抱えた産業でございますので、この産業が栄えてくれることは、私は、せめて日本で自動車の輸出が伸びているということは、国民の一人として、また合繊でタイヤコードなり合成ゴムをつくっておりますが、その一人として非常に富んだわけでございます。  それで、いまのような消極政策ではなくて、本当は輸入をふやすことなんですよ。輸入をふやすということは、何といいましてもやはり景気をよくすることなのです。景気をよくすることは、アメリカがやったのですから、日本一つもできないはずはないんですよ。われわれは無限の働く労働力があります。無限と申しますか、非常な能力がある。そして意欲も商い。この人たちをわれわれは整理しておる。涙ながらにやめさせておるのですが、私どもはやはりこの人たちに仕事を与えたい、これは私ども、単に利益を上げて税金を納めることだけじゃなくて、企業家の良心として、本当に妻子のある人の首を切っていくほど悲しいことはございません。それをあえて私どもは、私の会社だけでも何千人というのをこの二、三年のうちに減らしました。これは自然減耗だけじゃございませんよ。本当に仕事をしたがっている人をやめさせていっております。これは繊維業界だけじゃございません。この人たちにやはり職が与えられるように、設備が三割も余っているのでしたら一〇〇%操業し得るように、また、新しい仕事をやる意欲がわれわれにあって、その物が売れるように、それで国民がもっと安心して、安定した雇用と、そして物を買う力があるし、金を使ってもいいという気持ちにしてやることが大事ですが、これが諸矢生方に一番お願いしたい政治だと私は思いますから、どうかひとつ輸入ができますように、そして景気がよくなって、私ども限界利益から利益が出るように、自動車がますます力を持つように、そして日本全体に足らない住宅なり下水なんかもっとできますように、そういう積極的な政治を展開していただいて、この暗い日本の政治をぜひ明るいものにしていただきたいということを、私は心からお願いいたします。
  36. 藤原一郎

    藤原参考人 ただいま宮崎参考人から申し述べたとおりでございまして、お説のとおりでございますけれども、総量規制というものはなかなかむずかしゅうございますので、われわれはわれわれの中でできるだけの努力を続けていきたい、こういうふうに思います。
  37. 中村重光

    ○中村(重)委員 御高見のように、輸出重点ということよりも国内需要を充足していく、そのために必要なあらゆる施策を講じていくということ、それが低成長時代における健全な経済政策であるということについては、私どもも同感であるわけです。そうしたことについては、時間の関係もございますから、御意見をこれ以上お伺いをする余裕がないわけであります。したがいまして、業界における現状ということにしぼって御意見を伺うということ以外にはないわけでありますから、その点はあらかじめ御了承をいただきたいと思います。  そこで、国際競争力の低下の要因というのは何かということになってまいりますと、第一に挙げることができるのは、原料の問題でございましょう。なかんずく化合繊ナフサの問題である。次には、日本労働者の賃金は必ずしも高いとは思いませんが、開発途上国といったようなことからいたしますと、賃金の差があるわけであります。これが第二に挙げることができる賃金の問題です。第三は、装置産業でございますから、この装置産業が老朽化しているこの設備をどうするかといった問題ではないでしょうか。次に挙げることができるのは、円高により輸出価格が高騰しておる。それらのことが私は国際競争力低下の要因であると思うのでございます。  その中の第二に申し上げましたナフサの問題、これは御意見の中にもございました。ところが、この問題は、供給側との関係でなかなか話し合いがつかないというので、いつも混乱をするわけでございますが、御指摘のとおり、日本ナフサ価格というのは非常に高い。これをどういう方法で調整をやったならばこの問題が解決をするのか。これは繊維業界その他ナフサの需要業界にとってはきわめて重要な問題点でもあるわけでございますから、非常に見識の広い宮崎参考人、これらの点に対しての御意見というものもあろうかと思います。御提言という形で結構ですから、この点に対する考え方をひとつお示しいただきたいと思います。
  38. 宮崎輝

    宮崎参考人 ナフサの問題は、私は、その都度のお互いの交渉によって決めるべき問題ではなくて、一つのプリンシプルを確立すべきだと思います。そのプリンシプルと申しますのは、国際価格ドル建てで決めるということでございます。国際価格とは何ぞやということになりますが、これは、アメリカは原油が安うございますので、ナフサがどうしても安いんです。しかし、これは私どもそこまで言うのは無理じゃないかと思いまして、ヨーロッパのロッテルダムの値段を国際価格と申したいと思っておりますが、あの値段ドル建てで輸入しておりますから、私どもはそれに適正マージンをプラスして、ドル建ての値段でリファイナリー業界とわれわれが契約をするということでございます。  もう一つは、輸入の自由化でございます。これは、石油業法の関係で簡単にわれわれユーザーがナフサ輸入できません。しかも、私どもはタンクを持っておりません。そういう意味で、ほかの製品は全部輸入が自由ですから、国内商品が非常に高くなるときには外国から輸入をいたします。競争の結果、自然に国際価格に落ちつくわけですが、石油だけは、石油業法の関係で需給関係が決まっておりまして、私どもは自由にできませんので、その輸入の自由化による国際価格がおのずから狂うことと、第二は、繰り返し申し上げますが、国際ロッテルダムプライスをドル建てで決める。したがって、いまのように円高のときは安くなりますが、円が安くなったらわれわれの円の支払いはふえてもこれは仕方がない、こういうふうに考えております。
  39. 中村重光

    ○中村(重)委員 藤原参考人にお尋ねをするのですが、現在の綿スフの合繊生産能力というのは約千百四十万錘ですね。五十五年の過剰設備というのが百九十二万錘と言われているわけなんですが、輸入比率が二三%と推計をいたしますと——この輸入の比率というのはずっと上昇の一途をたどっているということで、四十五年までは五%未満であったのが、五十一年は一一%に達するということでございます。この点は開発途上国の追い上げで輸入が非常に伸びてきているということにあるわけです。  私は、先般中国に二週間行ってまいりまして、絹織物製造工場であるとかあるいは毛布をつくる製造工場あるいはデパート等、主として繊維関係についての調査をしてまいりました。非常に中国は繊維産業の振興に力こぶを入れているのですね。それから、いま中国で配給制をとっているのは、お米と食用油と肉と、それから綿なんです。綿は少ないので配給制をとっているのかというと、そうではなくて、外貨をかせぐためには綿を輸出しなければならない。しかもその綿は綿花よりも綿糸である、それよりもまず繊維品であるというように、できるだけ中国の方で労働力というものをフルに生かして、製品化して輸出をするという方向にある。中国の現在の取り組みからいたしますと、相当強い競争力を持ち得るのではないかというように私は感じているわけなんですが、いまいろいろ御調査になっていらっしゃいましょうが、それらの点に対してはどのような見通しをお持ちになっていらっしゃるか、ひとつ御意見を伺ってみたいと思います。
  40. 藤原一郎

    藤原参考人 お答えいたします。  この百九十二万錘という、紡機の方は私の方でちょっと承知いたしかねるわけであります。私は綿スフの織機の方でございます。生産の方でございますので、その方はちょっと承知いたしかねるわけでございますが、ただいま中国のお話が出ておりました。われわれも綿工連がことしの二月に中国を訪れまして、われわれの業界といたしましては、一番こわいのは中国だ、と申しますことは、採算にかかわらず国策でどうだこうだというようなことになりますと、一番われわれの業界として脅威を受けるのは中国でなかろうかというようなことで、われわれ中小企業のこうした小さいものがこういうような状態でやっておるということで、向こうの、もちろん先生らの行かれた相手とは違いますけれども、もっと下の人といろいろ話し合って、綿工連に刺激を与えるようなことは中国としてもいたしませんというような、お互い同士の話し合いをしたこともございますし、それから、私は播州の先染めの産地でございますので、先般韓国にも参りました。  いま賃金の問題等も出ておりましたけれども、とにかく昨年同期に行きましたときに四十万平方メーターほどの生産量が、ことしの同期に行きますと約四百万平方メートル、これは先染めの特殊織物でございますが、そういうように一年間に十倍の生産量になっておる。それも、いまお話のございましたように、賃金が大体一万八千円から二万円、しかも一年三百六十三日まで、二十四時間操業でやっておるというような実態を見てまいりますと、われわれは後進国の追い上げというものがいかに厳しいか、われわれはどうにも仕方がないところに追い込まれておるのじゃないかというような、一面から考えると非常に悲観的な見方もしてまいりましたが、われわれはさらに付加価値の高いものへということで、われわれの将来展望はそういうことを持っておりますけれども、いずれにいたしましても、そういうようなことで足元が非常に脅かされておるというのが現状でございますので、そういう面におけるただいまの輸入問題等も話したわけでございますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
  41. 中村重光

    ○中村(重)委員 影山参考人にお尋ねをしたいのですが、時間の関係がありますから、宮崎参考人に、アメリカの繊維産業に対する助成計画、私も十点ばかり調べたのがあるのですが、資料が古いので、アメリカの繊維産業に対するところの助成計画、主要な点について、日本の助成計画との比較の中で特徴的に、あなたが、アメリカはこうなのに日本はこの程度のものだということで、特に業界立場から政府に注文しなければならぬという点、二、三の点で結構でございますから、お聞かせをいただきたいと思います。
  42. 宮崎輝

    宮崎参考人 私の承知しておる範囲でアメリカの助成というのはいろいろあるようでございますが、日本もある意味においては相当至れり尽くせりの助成がされておると思います。しかし、基本的にアメリカと日本の助成と申しますか、国の政策として違いますのは、輸入に対する政策でございます。これはアメリカは、ケネディ大統領以来綿製品を、LTAの協定以来一貫して、国内の消費の中に占める輸入のシェアがある程度以上になった場合には必ず割当制をしいております。これは業界に対する大変な安心感を与えるものでございまして、非常に値段の安いものが輸入されましても、それは一定枠で必ず抑えられますから、それ以上入らないから、あの人方は安心して、大きなアメリカのいわゆるアパレル産業日本の七倍の消費を持っておりますが、そういう大きなアパレル産業でも、一部だけは輸入が入りますが、あとは全部国内で消費されますから、全部製品がアメリカで消費される、安心して設備投資もできるという、これが一番大きなアメリカの保護でございまして、少しぐらいずついろいろな小さな各州ごとにある保護政策ということよりも、糸綿から末端までいく大変な大きな国家としてのポリシー、これが一番日本との差であると思っております。  それから、これを機会にちょっと一言、さっき私の申し上げたことに少し敷衍させていただきます。  ナフサをロッテルダム価格プラス適正利潤と申し上げましたが、あれはロッテルダム価格という意味でございますから、その点は訂正させていただきます。
  43. 中村重光

    ○中村(重)委員 影山参考人に三、四点お尋ねしたかったのですが、実は私の時計の間違いで、もう時間が来たようでございます。しかし、一点だけ。  商工中金が政府三機関の中で余りかたくなな態度をおとりにならないで、きわめて弾力的に中小企業並びに団体に対して融資をやっておられるということについては高く評価をいたしたいと私は思うのです。  そこで、政府三金融機関の融資ですが、商工中金は預金を取られる関係で貸し付けが弾力的にやりやすいのではありますけれども、合理化資金というのを政府三機関というのは現在のシステムから融資をなかなかやらない。設備資金と運転資金というふうに限る。特にその中でも、中小企業金融公庫にいたしましても、運転資金というのはシビアなんです。今日のこの不況状態の中で、政府三機関というのは合理化資金、たとえば退職金もそうなんですが、そういうものの融資に踏み切らなければならない段階にあると私は思う。民間の金融機関というのは後ろ向きでなかなか融資をやろうとしない。そういったような点に政府三機関というものはできるだけこれを誘導する意味においても融資をしていく。もちろん、その貸し付けというものは焦げついてしまって全く償還の可能性なしというような極端な場合は別といたしまして、ある程度の社会性というようなものを持つところに政府三機関の存在の意義がある、そのように私は考えます。現在のような融資のあり方ということについて、中小企業庁長官までやっておられた影山参考人としてはどのようにお考えになるか。もう何十年も前のシステムを全然変更しないで、現在のシステムをそのまま固守していくというのはこの際改めなければならないと私は思うのでありますけれども、その点に対する御見解を伺って質問を終わりたいと思います。
  44. 影山衛司

    影山参考人 私ども政府系の金融機関、特に商工中金といたしましては、事態の推移、実態に応じて弾力的な対応を常にいたしておるような次第でございます。  合理化関係の運転資金、これは長期運転資金になるかと思うわけでございますが、私どもの商工中金の貸出残高は、現在四兆円でございますけれども、そのうち設備が一兆円、それから長期運転資金が一兆円、それから短期資金の残高が二兆円というようなことでございまして、長短合わせますと三兆円でございますけれども、そういうふうな運転資金に対しましても積極的な貸し出し態度をとっておりまして、こういう情勢でございますので、最近はそういう合理化的な投資、いわゆる後ろ向き資金を含めまして非常に多いわけでございます。そういう点につきましては私どもは弾力的、積極的に対応いたしておるようなつもりでございます。
  45. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 松本忠助君。
  46. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 公明党の松木でございます。  昨日に引き続きまして、本日も、当商工委員会不況対策問題につきまして参考人から意見を聴取することになります。長引く不況円高問題に対しまして施策がどうあるべきかについてのお尋ねをした次第でございます。御多忙の中を御出席をいただきまして、ありがとうございました。  時間が限られておりますので、先に藤原さん、宮崎さん、両御参考人から御意見を承り、後半に影山商工中金理事長から伺いたいと思っております。  まず第一点でございますが、藤原参考人にお尋ねをいたします。  先ほど宮崎参考人の発言の中で、円高問題に対してはみずからの手ではどうにもならないけれども、それ以外はやれることはやってきたという発言が再三ございました。藤原参考人からは、私の聞き漏らしかもしれませんけれども、そうした御発言がなかったわけでございますが、藤原参考人は、みずからの手でこの不況を乗り切る対策についてお持ちであるのかないのか、伺いたいわけでございます。ただ、政府に対して長期の低利の融資、あるいはまた輸入制限とかの御要望はございましたけれども、みずからの手では何をおやりになろうとしているのか、その点をひとつ御発言をお願いいたしたいと思います。
  47. 藤原一郎

    藤原参考人 お答えいたします。  円高の問題につきましては、当初の意見開陳の中で申し上げましたように、われわれの手ではどうにもできないということでございますから、何とかレートの安定を図っていただきたい。したがいまして、われわれのところは特に輸出産地の多い産地を抱えておりますので、その輸出産地の多いところでは、ほとんど正月明けの商売が一ヤールもできていない。いま大体一−三の商売に入る時期でございますから、少なくとも一−三の商売の対策というものを立てなければならないが、いまの状態ではどうにも仕方がない。そのことはまずレートの設定、これを強くひとつお願い申し上げたいということでございます。  それから、みずからの手で不況対策の実施をどうしておるかということは、ただいま当初にそれも意見開陳の中で申し上げましたとおり、われわれはいわゆる共同廃棄事業をやりまして適正な生産需給調整を図りたい、これがまずことしのわれわれの重大目標であり、適正な生産調節をするということで共同廃棄を取り上げて、しかもこれは政府も取り上げていただきましたので、それを実施していきたい。  それから、いま御質問のございましたみずからの手でどうするんだということになりますと、われわれの団体といたしましては、まず共同廃棄過剰設備の処理をしたい、これでございます。
  48. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 続いて藤原参考人に伺いますが、輸入制限についてお話がございました。秩序ある輸入ということは重要であろう、私も同意見でございます。この輸入の制限につきましてさまざまな問題がつきまとうこと、これまた御存じのとおりでございます。この輸入制限措置をスムーズに実施する上において具体的な御提案があれば、お伺いをいたしたいわけでございます。
  49. 藤原一郎

    藤原参考人 輸入制限の問題につきましては、これも先刻申し上げましたように、われわれがいわゆる過剰設備を整理して適正生産をするということになりますと、景気のいろいろな動向で海外輸入品が入ってくるということになりますと、せっかくやりました整理というものの効果を失ってしまう。したがいまして、輸入制限というものはどこまでもやっていただきたいということでございますが、輸入制限というものもなかなかむずかしゅうございますし、現実にいま二次製品なんか相当のものが入っておりますけれども、チェックする機関がない。それから、どれだけ入っているかという資料がありますと、それに対する対策は立てられますけれども、それもないということで、この問題は結局は、いま通産当局にもいろいろ申し入れていきまして、何とかその実態がわかるような資料を整えていただくような方策をということを申し上げておりますが、秩序ある輸入をするのには、それがどれだけ入って、どういうようになっておるという実態をまず把握することが一番大事でございます。  それから、いまも宮崎参考人からもいろいろ御意見がございましたように、輸入制限というものは非常にむずかしゅうございますが、これを本格的にやっていただくためには、やはり関税是正をやっていただかなければその真の効果が出ないんじゃないか。だから、われわれは、輸入制限は即関税を改正してもらうところまでやっていただきたい、こういう希望を持っているわけでございます。
  50. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 宮崎参考人にお尋ねをいたします。  過剰設備廃棄に伴いまして余剰の労働力の整理が避けられないというお話がございました。宮崎参考人も頭が痛いというような御表現がございました。現在国会で特定業種の離職者対策というものを考えているわけでございます。これにつきまして、業界といたしましてはこの雇用対策に対しましてどのようにお考えなのか、お伺いをいたしたいわけでございます。
  51. 宮崎輝

    宮崎参考人 これは先生方ももちろん御承知でございましょうが、私どもは何でもないときでも余剰労働力を抱いております。統計はいろいろございますが、日本で二百万ないし二百五十万の余剰労働力があると言われておりますが、平均賃金を四百万円といたしますと十兆円でございます。つまり、日本の公共投資に見合うだけの大きな余剰労働力の賃金を民間企業が負担しまして、そして日本の失業保険がカバーされているというのが実情でございます。それがだんだん抱くだけの力をわれわれ失いまして、そしていま労働力をどんどん外に出しておるわけでございますが、さらに、御指摘のとおり、設備廃棄とか凍結をいたしますと、その分に関する人が皆余ってまいります。これが数万、一万人、二万人という数字が出てまいりますが、これをどうするかということが一番の問題でございまして、いままで何千人という人を減らしましたけれども、新しい職場を探して全部世話しておるのですが、しかし、もう新しい受けざらがございません。結局は退職金で解決するしかないという実情になってまいります。  退職金というのは、御承知のとおり、会社の規定による自己都合、または会社の都合による解雇という一番高い規定のほかに、少なくとも二年分ぐらいの賃金を払えというのが組合の要求でございますが、大変な退職金が要ります。そのために人間も簡単に整理できないというような実情でございます。  承るところによりますと、与野党一緒になって雇用対策に対する議員立法が出るやに私は伺っておりますが、新聞等の報道によりますと、ある意味の解雇制限的な条文が織り込まれそうだというふうに聞いておりますけれども、たとえばドイツでは反社会的な解雇というものは規制しておりますが、大量解雇のときには一定のチェックシステムがございまして、それができるようになっておるそうでございます。雇用問題につきましては、最近立法されているいろいろな訓練をする費用であるとか、あるいは出向したときの費用の半分であるとか、ああいう補助というものでは何らの解決にはなりません。解雇されていく人に対して、私たちは過去の日米繊維交渉後にいわゆる政令を出してもらいまして、いわゆる失業保険の給付期間を三年以内まで延ばしていただいたことがございますが、ああいう方法をまず考えていただくか、あるいはもっと抜本的に、日本では制度がございませんが、日本式な雇用関係を維持しながらやるレイオフの制度というようなものはないかというので、私どもは実は私ども自身で法案の準備をしたことがあるぐらいでございますので、こういう点をこれから基本的に考えませんと、どうしても雇用問題の本当の解決はできないと考えております。
  52. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 引き続いて宮崎参考人にお尋ねいたしますが、構造不況を乗り切るためには過剰設備廃棄とあわせまして、川上から川下まで、業界ぐるみの構造改善を進めなければならないと考えるわけでございますが、参考人はこの構造改善をどのように進めるべきだと考えられるか、具体的にお示しをいただきたい。
  53. 宮崎輝

    宮崎参考人 これは話を繊維産業に限りたいと思いますが、世界を見まして、いまもうかっている繊維産業といいますのはデュポンとコートルズでございます。デュポンは売り上げの三割が繊維でございますが、利益は七%でございます。それほど利益の低い産業であります。コートルズがもうけておりますのは、これは垂直的な結合をやっております。原料を自給しておりません。買っております。そして、どちらかと言えばコートルズの成績がいいのです。あとの合繊メーカーは全部世界的に赤字でございます。ですから、これから見ますと、繊維産業の生きる道はコートルズの方式が一つのサンプルになるかと思っております。それは私ども糸機メーカーから、紡績あるいは織り、それから編み、そして染色、アパレルという一つのグルーピングができておりまして、そしてその間に非常に適正なコンバーターが介在するというような式で幾つかのグループをつくると、あたかも英国におけるコートルズのようになるのでありますが、こういう式しかないかなといま考えております。そこまでいくのには、その組織をつくることと、それに合った人材が集まることと、販売のチャンネルができることでございまして、大変にむずかしい。ところが、私どもと同時に、合繊メーカーはいわゆる資材、タイヤコードとかその他の産業用資材をやっておりまして、これまた全然違ったシステムになりますから、衣料用と産業資材用によってやはり道が違うと考えております。
  54. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 藤原参考人宮崎参考人、お二人にお尋ねいたしますが、設備共同廃棄事業にかかわるところの中小企業振興事業団融資制度の弾力的運用を要望していいと思います。具体的に御意見があれば承りたいわけでございます。
  55. 藤原一郎

    藤原参考人 お答えいたします。  弾力的ということは、御承知のように、九五%まで大臣特認によって融資を受けることになりました。ただ、支払いの償還の面におきまして、いま聞くところによりますと、来年度、六年据え置きの十二年というようなことになっておるようでございますけれども、現状では四年据え置きの十二年払い、この償還方式をできるだけ傾斜方式にお願いしたいということが一つの要望でございます。
  56. 宮崎輝

    宮崎参考人 私は、傘下にいろいろ中小企業がたくさんございまして、仮よりの廃棄をしたことがございますが、あのときには特殊な制度で、十六年の年賦で金利ゼロという制度がございましたね。あれで、私の記憶では二十三億だったと思いますが、廃棄したことがございます。あの制度は非常にいい制度でございます。あれを中堅企業に適用するような方法はないか。  たとえば資本金十億ぐらいといいましても、設備廃棄して特損が出ますから、その特損をカバーすることはできない。それから、これはほとんど借金の担保に入っておりますから、やはり借金も返さなければならないということで廃棄ができないわけです。大企業も同様でございまして、大企業も自己廃棄するについては、私もいろいろ案を考えておりますが、自分で勝手にやめていく分には問題ないのですよ。大変な特損が出ます。それから、労務者の雇用の問題もありますが、そして、その廃棄した金を金融機関に返していくということになるわけですが、どうしても私は、ある意味の組織をつくりまして、買い上げ機関を。そして株を払い込みまして全体保証してそいつを買い上げる。それに残存業者が払っていく。これも一つの案と思って検討をほんの個人的にしておるわけでございますが、そのときに資金をだれが出してくれるか、それから、それじゃ残存業者が保証するのだったら、その金利をどうするのかという問題があります。その金利を政府に利子補給をしてもらうかということになりますと、過去において船舶等において例がございますけれども、利子補給というのはなかなかむずかしい。そうしますと、やはり残存業者設備を買い上げて、長期に金利を払っていって、そして十年か十五年後にはもう廃棄してしまうのですから、何も価値のない債務ですね。そういうものだけ子孫に残るということになりますので、どうしても特殊な買い上げ機関と、仮に残存業者が負担するという制度にいたしましても、非常に低金利または無金利で貸してやるような制度ができますと、おのずから自分でやめたいというところも必ずしもないわけではございませんので、赤字ばかり出てどうにもならぬというのは、設備自体が特損にならない、そして、それに雇われている人に対してのいろいろ特殊な雇用対策なり退職金の制度ができますと、相当やめるものが出る、そう思っておりますが、そういう施策を、これは企業だけではできないので、企業政府なりその他が合同して、いわゆる中小企業だけではなくて、中堅企業または大企業の場合の設備廃棄並びにそれに対する措置をつけていく方法をこれから考えるのが、一番大事な構造改善一つの方法ではないかというふうに考えております。
  57. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 藤原宮崎参考人の御意見まことにありがとうございました。  それでは、影山参考人にお尋ねいたしますが、商工中金で今月三日に、ことしの九月中旬に実施いたしましたところの中小企業の年次景況観測を発表なさいました。この中で、引き続いた企業の景況悪化傾向にもどうやら底打ち気配が感じられそうになってきた、このようなくだりがございます。しかし、それ以後円高傾向が顕著になるなど、状況も大変変化しております。昨日も毎日新聞の記事によりますと、日銀の三億ドルの買い支えがありましたけれどもドル売り殺到で二百五十一円、このような報道がございます。状況の変化は認めるわけでございますけれども、今後の中小企業の景況観測をどのように参考人は見ていらっしゃるか、簡単にお答えをいただきたいと思います。
  58. 影山衛司

    影山参考人 お答え申し上げます。  一言に申しまして、中小企業皆さん方は採算状況が悪くなってきておるのが実情でございますので、その採算がよくなるということが実現いたしませんと、なかなか景気がよくなったという実感は持てないのではないか、こういうふうに思っておりますが、政府等におきましては、そういう意味で、中小企業皆さん方が少しずつでも実感を持って自分たちの経営がよくなっておるのだというところまで持っていっていただかなければいけない、こういうふうに思っておるわけでございます。
  59. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いろいろ意見もありますが、後のお伺いしたいこともありますので、その辺にとどめておきます。  それから、十月の一日から中小企業の為替変動対策緊急融資制度が発足をいたしました。先ほど参考人からもお話がございまして、七十五件の申し込みですか、それから二億六千六百万円の融資をしたというようなお話があったように記憶いたしますが、実は昨日御出席参考人お話によりますと、まだ実際には運用されていないというようなお話でございました。先ほど影山参考人の御意見と昨日御出席参考人お話に食い違いがありますので、お尋ねをいたすわけでございますが、実際上どうなのか、また、この制度の利用及び効果、これはどの程度と見ていらっしゃるのか、参考人からお述べをいただきたいと思います。
  60. 影山衛司

    影山参考人 為替変動対策融資が実施がおくれておるのではないかというお尋ねと思いますが、実施は十月一日からでございます。また、二百五十円台の円高へ急変動いたしましたのが九月の終わりごろで、急なことでございましたので、体制の整備あるいは申し込みの方の準備というようなこともございますけれども、しかしながら、商工中金に関しましては十月一日から迅速に対応いたしておりまして、短い期間ではございますけれども先ほど申し上げましたように、七十五件、十二億二千六百万円でございますが、申し込みがございまして、御相談を申し上げておるような次第でございます。  これにつきましては、中小企業庁あるいは通産省、政府の方も非常に敏速な融資制度を実施されたのではないか、今後もこれは効果を持ってくるというふうに思っております。
  61. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 実施されてまだ期間が短いわけでございますし、これからのせっかくの御努力を希望しておきます。  それから、引き続き影山参考人に伺いますが、中小企業庁が先般実施いたしましたところの産地における円高影響調査、この中で金利の引き下げを要望する声が多かったように私ども伺っております。これに対しまして、引き下げるべきかどうか、参考人はどのようにお考えか、伺いたいわけであります。
  62. 影山衛司

    影山参考人 円高に関連いたしました金利の引き下げでございますが、為替変動対策融資の制度が早急の間に実施をいたされましたので、政府系の三機関とも通利で融資をいたしておるような次第でございますが、これは中小企業庁の方でも実態をさらにお調べになっておりますので、影響の大きさにもかんがみまして、この金利の面につきまして特利を適用するかどうかということにつきましては、中小企業庁の方とも積極的に御相談をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  63. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それから、先ほどお話がありました中小企業倒産対策緊急融資、これは来年の三月三十一日まで延長になったわけでございます。この制度の利用状況について先ほど御説明を伺ったわけでありますが、確認をいたしたいので、もう一度参考人から数字を伺わせていただきたい。
  64. 影山衛司

    影山参考人 お答え申し上げます。  中小企業倒産対策緊急融資は、四月からの実績でございますが、四月から九月の間に実行いたしました累計が、商工中金におきまして二百七十二件で、六十億三千二百万円ということになっております。
  65. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 私の聞き違いでなかったわけで、二百七十二件、六十億有余ということでございます。実際問題としてこの程度の緊急融資中小企業倒産対策の実が上げられるかどうか。年末まだまだこれから中小企業倒産が続出するというようなことが予想されておりますので、この点について効果が期待できるかどうか、率直な御意見を承りたいわけであります。
  66. 影山衛司

    影山参考人 この制度につきましては、条件変更あるいは金利の軽減も含めまして対応をいたしておるような次第でございますが、ただいま申し上げました数字は、中小企業者の方から中小企業倒産対策緊急融資に乗せてほしいというお申し出でございます。私どもといたしましては、それ以前からも現在も、ほとんどもう私どもの仕事は中小企業倒産対策をやっておるようなものでございますので、そういう点から申し上げますと、数字は少のうございますけれども、実際は非常に大きな融資をして差し上げておるように思っております。さらに、この中小企業倒産対策緊急融資がせっかくできておるわけでございますので、私どもに申し出がございましたらそれに乗せていきますように御相談をしていきたいと思っております。
  67. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 最後でございますが、商工中金が十一月一日から既往の金利について引き下げを実施することに御決定になったと思うわけでございますが、商工中金としてこの実施の内容をどのようになさるおつもりなのか、伺いたいわけでございます。あるいは対象の業種であるとか、どの程度まで金利を引き下げるのかというようなことを含めまして、お話を伺いたいわけでございます。
  68. 影山衛司

    影山参考人 既往長期の貸出金利の軽減措置につきましては、通産大臣の指定しておられます十八の不況業種でございます。これは信用保険公庫法上の指定業種でございます。これにつきまして十一月一日から実施するわけでございますが、既往のものの金利〇・八%ないし〇・九%を引き下げまして、たとえば一年から五年の長期のもので組合貸しを九%あるいは構成員貸しを九・二%くらいまでは持っていきたい、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  69. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それから、これは一つお願いでありますけれども、金利別の貸出残がわかる資料がありましたら、後ほどで結構でございますがお届けをいただきたいわけでございますが、お願いできましょうか。
  70. 影山衛司

    影山参考人 ただいま手元に持っておりませんので、至急に研究いたします。
  71. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 お三人の参考人の方々には、御多忙の中、貴重な御意見をいろいろ拝聴させていただきましてありがとうございました。以上をもって私の質問を終わります。
  72. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 宮田早苗君。
  73. 宮田早苗

    ○宮田委員 まず、影山参考人にお伺いをいたします。  それは、金融面から見られました需要の動向について所見を伺いたいわけです。  一つは、政府予算で投資活動というものが相当に含まれておるわけでございますけれども、それに対する需要の動向、同時に、今度決まりました補正予算に対する予測といいますか、そういう問題についてどのような御所見をお持ちか、まずお聞かせ願いたいと思います。
  74. 影山衛司

    影山参考人 私どもの窓口から見まして、一口に申しまして、前向きの資金需要というのは、特に設備等の資金需要は非常に弱うございます。しかし、後ろ向きの資金は依然として強いということでございますが、公共投資等の前倒しの効果でございますが、これは私、商工会議所等にも参りましていろいろと話を聞いておりまして、やはり年度当初におきましては手続等の関係で実行がおくれておったわけでございますけれども、前倒しの効果がやっと出てきたなということを中堅建設業者あたりから聞き出しましたのは八月ごろからでございます。そういうふうに徐々に需要喚起の効果が出てきておるというふうに実態を考えております。  また、補正予算につきましても、補正予算が通過いたしました後、何分、御承知のように、経済はずうたいが大きくなっておりますので、これが中小企業段階あるいは地方段階まで浸透いたしますのに時間がかかりますので、これを早く何とか実行を早めていただきますならば、引き続き需要のその面での落ち込みということはないのではないかというふうに期待をいたしておるような次第でございます。
  75. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一つは、民間の投資に対する関係といいますか、大手と関連企業、親企業とそれにまつわるところの企業、特に構造不況業種に対しまして、親企業自体で、大手自体で下支えといいますか、仕事の面、資金の面である程度の配慮というものは当然のこととしてされておるのではないかと思いますが、そういう面についてどのような状況になっておるものか、影山参考人金融面から判断をされるとどうかということをお聞きいたします。
  76. 影山衛司

    影山参考人 親企業と下請け企業との関係でございますけれども、こういう不況状況になってまいりますと、親企業と下請企業との運命共同体と申しますか、むしろそういうふうな機運が出てきておりまして、親企業の方も苦しい中で下請のめんどうを見ようではないかというような機運も非常に出てきておりまして、非常に結構なことだと思います。私どももそれを側面から御援助申し上げたい、こういうふうに考えております。
  77. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、藤原参考人宮崎参考人にお伺いをいたしますのは、まず、余剰人員対策という問題についてであります。  いままでもいろいろそれに対します対策ということで大変苦心をされておるんじゃないか、こう思っておるところなんですが、その経過と、それから、これからまたそれ以上の大きな問題が起きる可能性というものが、悪いことですけれども、あるわけでございますが、そういう面についてどのような措置を、企業自体として、産業自体としてお考えになっておりますか、お伺いをいたします。
  78. 藤原一郎

    藤原参考人 お答えいたします。  私たちの方は、当初に申し上げましたように、中小零細業者でございまして、実際問題として余剰人員を持ってどうというような企業は非常に少ないわけでございます。したがいまして、今回の共同廃棄におきます人員の問題につきましても、ほとんどのところが労働組合が入ってどうだというようなところはないわけでございまして、もちろんその中には一部廃業するというところもございますけれども、そういうところでは事前に十分話し合いをいたしておりますし、また、綿工連という団体といたしましても、ほとんど繊維産業でございますので、ゼンセン関係でございますが、あすもこの問題につきましてゼンセンとの話し合いをするという機会をつくっておるわけでございますが、余剰人員で物議を醸すというようなことにはならない小さい企業である、こういうように御承知いただきたいと思います。
  79. 宮崎輝

    宮崎参考人 私ども余剰人員問題が一番の問題でございまして、何でもないときでも設備をだんだん省力化投資をしていきますから、だんだん人が余ってくるのです。したがいまして、そういう人を新しい工場をつくってそこに移しまして、そして従来は人間の問題を解決しておったのですが、最近は新しい設備ができませんものですから、そのまま余ってくるわけです。ですから、何でもなくても余るのですが、それを最近は設備はだんだん操短をしていきますから、操短した限りにおいて現場の人が余る。  同時に、最近非常に問題なのは、本社の人が余ってきまして、つまり研究部門であるとか管理部門であるとかいう人が非常に余ってきまして、本社におる人は相当給与の高い人です。この人たちを一体どう処置するかということが一番問題でありますが、従来やりました方法は子会社に全部出すわけです。  しかし、子会社にまた相当な人がおりますが、この人たちに年をとるとやめてもらうということにするのと、それからもう一つは、五十五歳以上になって、定年ですけれども、これが準社員といいまして、二年ないし三年おる。これは退職金をやめるときやらないのですが、その人に退職金を出しましてやめてもらう。それから奥さんと主人と働いている人には奥さんにやめてもらう、そういうことで何千名というのを減らしたわけですけれども、受けざらがこれからなくなりまして、それでもう世話するにもどこも採用してくれるところがない、どこもみんな余っておるのですから。ですから、そういう意味では、これから本当に深刻になってきて、退職金だけで職を失う人が出る。  大体、年齢の若い層はどこかに行って何とかなりますけれども、年とって妻子のある、一番子供の教育に金の要るような人たちは、一時金をもらってもすぐなくなりますから、この人たちに対しては、何らかの失業保険の延長、あるいは再訓練をしましてもいろいろな仕事はできませんから、私どもは新しい子会社をつくりまして、そのときには賃金は七割ぐらい落ちるのです。しかし、五十五歳で七割ぐらい落ちて、女子の従業員と一緒に喜んで新しい職場で働きますから、そういう職場をつくって、賃金を七割ぐらい下げますとペイする仕事はまだあるのです。だから、そういう意味では、仕方がないから、新しい工場を、別会社をつくりまして、そこに賃金を下げて採用をしておるというようなことをやりながらやっておりますが、それももう限界に来たというのが実情でございます。
  80. 宮田早苗

    ○宮田委員 大変な問題というふうに思っておるわけですが、何しろ業界自体あるいは企業自体での努力というものも、これから特に必要なことというふうに思います。  そこで、もう一つお聞きいたしますのは、構造規制に対しまして業界自体でいろいろ対策を立てておられると思うわけです。その対策について、藤原参考人宮崎参考人、両方にその点についての御説明をお願い申し上げたいと思います。
  81. 藤原一郎

    藤原参考人 みずからの企業努力でございますけれども、われわれの組織体におきましては、ただいまも申し上げましたように、いわゆる需給調整を図る、川上から川下までの一つの整理、こういうことで、ことしはまず共同廃棄によって適切な台数にする、これが一番大きな問題でございまして、われわれの企業努力として、綿工連という大きな全国組織の中でまず取り上げた問題が、この共同廃棄の問題でございます。  その後今度はどうするかということについて申しますと、いつかもだれかがお話がありましたように、日本繊維産業というものを将来どうしたらいいんだ、全く根本的な問題までさかのぼって、日本繊維産業連盟というものがございますが、そういう一番大きな中央組織の中でこういう問題を論議してもらう時代に入っておるのではないか、それから、それぞれの企業のそれぞれの努力というようなことも、もう限界に来ているのではないか、こういう考え方をしておるわけでございますので、近く開かれます繊維産業の総会におきましてもこの問題を提起したい、こういうふうに考えております。
  82. 宮崎輝

    宮崎参考人 ただいま御説明もございましたように、一体日本繊維産業をどうするかという問題でございます。百年の歴史がございますだけに、たくさんの雇用者がこれで生きておりまして、労働者二百七十五万人と言われておりますが、家族を入れると大変な数でございますが、この人たちを現在の繊維産業全体で依然として養っていく力があるかどうかということが問題でございます。  問題は、日本でどの程度生産をするか、どの程度輸出し、どの程度輸入をするかというこの三つが需給関係を決めます。それにプラス、将来どの程度需要が伸びていくかというもう一つの問題がございます。  そういう点を想定いたしまして考えますと、考えようによっては、私ども一番川上の合繊工業というのは、大体世界でアメリカ、EC、日本というふうになっておるわけでありますが、これが輸出を減らして輸入をふやしますと、設備が五割余るのです。現状においては、五割輸出しまして、それから輸入はある程度——相当いまふえてきましたけれども、それでもいまほぼ二割五分なり三割の操短をしておりますから、これは確実に余っておるわけなんです。ですから、そういう合繊工業をこれからどういうふうに一体持っていくのかということは、これは私ども経営者としての本当に悩みであります。  しかも繊維産業は、合繊も利益がございません。先ほど申し上げましたとおり、世界でもうかっているのはコートルズとデュポンだけでございますが、デュポンも利益が非常に低い。あれは非常な保護を受けて、アメリカのような、原料が安くて、輸入が制限できて、しかもモノポリーであるというデュポンですら、利益率はほとんど比較にならないほど他の業種よりも低い。しかもヨーロッパではほとんどの企業は赤字である。わずかにコートルズが黒字だ。  こういう情勢でございますので、私どもがこの合繊工業の将来に対して考えておりますのは、私の会社では繊維外の分野を非常に高くやっておりますので、繊維はもうとんとんでいい、利益を出すよりも赤字を消すだけに精いっぱいだ、そうしたら非繊維で生きていく、こういう会社もございますし、どうしても繊維自体で配当してベースアップをしていかなければならぬという事業もございますし、そういう川上のいろいろな種類がございまして、これがわれわれがこれから本当に取り組むべき重大な課題でございまして、消極的に設備廃棄するだけではなくて、発展途上国のできないものをつくるということでございますが、われわれ糸綿以外に、アパレルメーカーというのが日本では、先ほども触れましたが、アメリカの七分の一しか生産がございません。そういう意味では、つくった糸綿を輸出せざるを得ないという運命になっておるわけでございまして、このあたりもアメリカとは基本的に産業構造が違います。ヨーロッパとも違います。しかも極東三国を抱えておるという困難な情勢にありますので、これは私ども英知をしぼって対策を考えたいと思って、できることからいま実施をいたしております。
  83. 宮田早苗

    ○宮田委員 最後に、もう一つ宮崎参考人にお伺いをいたしますのは、関連会社の対策といいますか、もちろん倒産対策というのがいま一つの大きな問題と思いますが、それと同時に、やはり関連会社というものに対する育成強化というものも行わなければならぬ、こう思っておるところなんですが、その辺について、さっきも影山参考人にある程度そのことについてお聞きしたわけでございます。言い方は悪いですけれども、いろいろめんどうも見ておるわけでございますが、特に最近の情勢の中での関連会社に対する倒産対策、あるいは関連会社のいろいろな発展の対策といいますか、お互いに生きていかなければならぬという対策、親会社といいますか、業界は非常に大きな責任があるというふうに思っておりますので、その点についての御所見をお伺いをして、質問を終わりたいと思います。
  84. 宮崎輝

    宮崎参考人 日本のまことに違った習慣がございまして、私どもメーカーは、糸、紡績糸というものを、賃織り、賃紡、賃編みと申しておりますが、私ども加工品だけ引き取って、そして売っておるわけでございます。そういう意味でたくさんの系列を持っております。産地と言っておりますが、産地に対する系列、そういう意味においては国家のやるような仕事を私どもがやっておるわけであります。それで運転資金がうんと要るわけであります。それから、労働問題の解決から、いろいろな問題を皆やっておるわけでございまして、私の企業だけでも、計算してみますと、系列全部を入れますと、これは非繊維も含みますけれども、家族を入れますと約三十万人おります。     〔中島(源)委員長代理退席、山崎(拓)委     員長代理着席〕 それだけの人を養っておるわけでございまして、それだけに、本当にこういう不況のときになると苦労いたしますが、私どもは一番心配をしますのは、機屋さんでございますね、北陸三県あたりの。あの機屋さんが、加工費ですから、私どもはもうからなくなると加工費を下げますので、それであの人たちも苦しいわけです。それともう一つ産地における産元といいますか、そういう人たちが非常に困難な情勢にある。特にディーラーに問題がある。それから大きな商社にも、いろんな企業で問題がある。  そういうときに、私どもは債務の保証をさせられるのですが、これは保証にもおのずから限度がありますから、これは保証限度があって、それはある一定以上はできない。それから保証しているうちに赤字が出ますから、それをどうして私どもが負担しなければならないかという問題になります。ですから、金融機関と私どもの間に、どうしてその損失を分担し合うかという非常にシリアスな問題が起こりまして、私はいまそういう問題を幾つか抱えておりますが、あたかも銀行のごとき仕事を私どもがやっておるのです。一部は。ここに影山さんがおられますけれども、大変お世話になっておるわけですが、そういう意味においては金融機関もいま大変なんです。金は貸したけれども金利は取れないというのがだんだんふえてきまずから。ですから、私どもも保証したために全部払わにゃならない。もちろん、その製品を安く売ってやって、あるいはリベートを払って助けてやるとか、まあこういうことで中小企業を抱いておるわけでございますが、ディーラーまでそういう問題にいまぶつかっておりまして、そういう意味においては、自分が生きていく以外にそういう系列と一緒に生きていかなきゃならないという意味においては、これは金融機関と同じような苦労を私どもはしておるわけでございます。
  85. 宮田早苗

    ○宮田委員 終わります。
  86. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員長代理 安田純治君。
  87. 安田純治

    ○安田委員 参考人の方々、大変長時間われわれの同僚委員の質問に対してお答えをいただきまして、ほとんど残された時間もございませんし、お伺いする点はないと思うのですが、二点だけちょっとまあ確めるという意味でお伺いしたいんですが、まず、藤原参考人にお伺いしますけれども先ほど意見を伺う中で、織機の七万台ですか、廃棄計画、これはまあ買い上げ単価などいろいろ決まっているけれども、各都道府県の実施段階において何かネックがあるようなお話をちょっとされたように伺うのですけれども、その中身について御説明をいただければ幸いと思います。
  88. 藤原一郎

    藤原参考人 お答えいたします。  御承知のように、府県の負担率が、一一・八七五%府県から資金を出していただくという制度でございます。したがいまして、先般、全国の関係六十四団体、組合があります中の関係府県から寄っていただきましていろいろ協議しました中で、結局大体五十二年度の予算がとれておるという県が五県でございます。愛知、静岡、石川、新潟、兵庫県だけが大体予算措置ができておる、あるいは二月の補正予算で何とか考えるということで御回答があった五県、そのほかの希望が相当出ておりますけれども、現在大阪府それから滋賀県、岡山県等ではいままだ交渉しておりまして、必要であればわれわれも出向いていくということにしておるわけでございますけれども、そういう面で、当初われわれが計画いたしました五十二年度の中で実現しにくい府県の関係がある、こういうことでございます。
  89. 安田純治

    ○安田委員 そうしますと、五県だけで、それ以外のところは、いわば県が動かないといいますか、財源措置をしないというか、そういうことになるわけだと思うのですけれども、五十三年度の目標まではだめだ、しかし、関係県では一応五十三年以降では見込みがあるのでしょうか。
  90. 藤原一郎

    藤原参考人 お答えいたします。  もちろん、十分われわれも話をいたしておりますし、いろいろなことをやっておりますが、府県におきましては、財政的に御承知のように非常に困った状態もございますので、五十二年度が無理だということでございまして、五十三年度では大体実施していただける予定にいたしております。
  91. 安田純治

    ○安田委員 次に、影山参考人に、これも確認のために伺うわけですけれども先ほど松本委員から質問いたしましてお答えいただいたのですが、この中小企業の為替変動の緊急融資制度ですね。これは七十五件、十二億二千六百万円申し込みがあったとおっしゃるのですけれども、これで実際融資されたのは何件、幾らになりますか。
  92. 影山衛司

    影山参考人 お答え申し上げます。  ただいまのところ、七件の三億七千八百万円ほど実行いたしております。
  93. 安田純治

    ○安田委員 終わります。
  94. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員長代理 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  午後二時委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時十六分休憩      ————◇—————     午後二時五分開議
  95. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより政府に対し質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐野進君。
  96. 佐野進

    ○佐野(進)委員 臨時国会が開催されて、今回の国会不況国会である、こういうことで、予算委員会衆参両院を通じて景気問題、不況対策についていろいろ議論があったわけであります。私ども、そういう議論を通じて、通産当局がこの状況の中でどのように対応され、そしてまたどのように政府部内において努力をされ、その実績を上げてこられたのかということについて、その質疑を通じて慎重な態度を持ちながら見てまいったわけでございます。そしてその間、できればこの商工委員会としても、予算委員会の最中であっても委員会を開いて景気対策についていろいろ対応していきたい、そう念願をいたしておりました。しかし、時期を得ずして、きのう参考人意見を聞き、きょう集中的に経済問題について質問をする、こういうことになったわけであります。そこで、私ば、まず第一に、いままでの討議を通じて明らかにされた条件状況等を踏まえながら、大臣並びに各局長に対して質問をしてみたいと思うわけであります。  最初に、いまの不況は構造的な不況である、構造不況としての形の中でどうしても脱却でき得ない諸条件があるんだ、こういうようなことがよく指摘をされておるわけでありまするが、私ども、この問題については、この商工委員会の席上で、もう多年にわたって、当時の福田副総理あるいは河本通産大臣と議論を続けてきておるわけであります。  結果的に、その議論を続けてきた経過の中で私ども景気対策についての指摘が、当時副総理であった福田さんにしてもあるいは河本政調会長にしても、われわれの指摘が誤りでなかったということをいまこのごろになってお感じになっておられる。いや当時も感じておられたのかもわからぬけれども、どうにもならなかった。そういうことで受けとめていいのかと思うのでありますが、まさにそのような状況になってきておるわけです。  たとえば一つの問題を取り上げれば、二年ばかり前のこの委員会の中で、総需要抑制策が最も必要な対策であると福田さんが強調せられておられた。一年前のこの商工委員会等においても、景気対策の中で消費を増大させることこそ最も必要な対策ではないか、こういうことをわれわれが指摘をいたしました。それに対して、あなたもそうだったと思いますし、その前の河本さんもそうでありましたが、プラント輸出を含む輸出の増進こそ最も必要な景気対策であって、消費の増大はいましばらくしんぼうしてもらわなければならぬというようなニュアンスの答弁があり続けたわけであります。  結果的に輸出の増進政策は他国に対して非常に大きな脅威を与え、今日の円高を招くような状況を導き出す大きな要因になっておることば間違いないわけであります。とすると、打つ手打つ手が何かちぐはぐになっていっているような感じがしてならないわけであります。もちろん、世界的な景気の動向の中で、わが国が一定の条件の中で恵まれた状態にあることは間違いないわけでありまするけれども、そういう点からのみ見て、本来打つべき手を打たなかった、そして不況下に苦しむ産業界を初め国民生活、こういうものに対して今日の状態を招いたということについてはいささかも反省がないような感じが強くしてならないわけであります。  そこで、まず大臣にお尋ねをいたしたいのでありまするが、予算委員会を通じ、あるいはまた現在各産業界その他において置かれておる状況下の実態を認識する中で、大臣はいま日本経済を発展させるために最も必要な要件は何であるのか、私は批判を込めて質問をいたしておるわけでございますので、その批判の意を含めながらそのことに対する御見解をひとつ明らかにしていただきたい、こう思うわけであります。
  97. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  大変に根本的な御質問でございますが、ただいまお話がございましたように、何と申しましても、このOPECの石油問題というものは、単に日本のみならず、世界全体にわたりまして非常な影響を与えてまいったのでございまして、このOPECのショックからいかにして脱却するかということが各国ともに非常な問題になっておる中におきまして、特に資源のない日本といたしましては、海外から全部をもらっておりまする原料、材料、燃料、これに対しましてどう対処するか。しかしながら、この世界不況の中におきましても最も深刻な打撃を受けたのはわが国であろうと存ずるのでございます。  そういうことから申しまして、ただいま御指摘のように、日本経済それ自体の構造の面におきましては、数年前までのような高度成長の姿から構造的な大変革を遂げざるを得ない。それに基づきまするひずみが非常に出ておる。これの影響といたしましては非常な不況が伴ってまいったのでありまして、この不況から脱出いたしまするためにそれではどうしたらよろしいかという場合に、帰するところは、今日の日本経済といたしましては、内需をふやすこともございましょうし、あるいはまた外貨の獲得の問題もありましょうし、これはいろいろな打開策を講じたのであります。  ところが、その外貨の獲得という面におきまして払いましたわれわれの努力というものが、今度は過度の集中豪雨的な批判をこうむりまして、あるいはECなりアメリカからの非常な厳しいこれに対しまする反発を買ったことは御案内のとおりでございます。そういうことから、経常収支の面におきましても非常に黒字のたまり過ぎておるということがさらに厳しい世界的な批判を招きまして、そしてただいまのような円高の問題を招き、同時にまた、ただでさえ不況のどん底にありました中小企業中心にいたしましたわが国の産業界に甚大な打撃を与えておるわけであります。  この不況脱出の方法といたしまして政府としてとりましたのは、何といいましても、財政主導型の景気回復を行ったわけであります。さような意味におきまして、公共投資を中心といたしました前倒しと申しますか、そもそもの経済の回復の端緒をこの公共投資から造成してまいろう、こういうふうな方途を講じ、あるいはまた、皆様方の御議論によりましては、内需の拡大のために公共投資よりも減税がいいんだというような御意見も拝聴いたしたような次第でありますが、何はともあれ、今日の日本経済というものは、一方におきましては政府資金散布によりまする財政主導型の立場をとり、他面におきましては、厳しい批判は受けながらも、外貨の問題で、さらにわれわれはこれを国際的な意味におきましての対外経済協力という面にまでも広げることによりまして、アジアあるいはまた世界全体のニーズの喚起、ひいてはこれに対しまする経済の復興を考えておる次第でございます。  大体以上のようなことが、今日までたどってまいりました日本経済の歩みであろう、かように考えます。
  98. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大体大臣の答弁はそれなりに受けとめられるわけでありますが、私がいま聞かんとするところは、今回の国会不況克服国会である、経済問題を中心とした国会であると銘打って開かれ、特に補正予算につきましては類を見ない審議の促進が図られ、そしてその中でもう可決、成立を見ているわけであります。そういう状況下における状態を踏まえて、もう予算委員会が終わったという段階で開かれているこの商工委員会において経済問題を集中的に論議している。こういう情勢下において大臣は一体何をなすべきかという御判断がその積み重ねの中に出ておられるかどうかということをお聞きしたかったわけです。いまのことはいままでやってきた経過報告でありまするから、それはそれなりに評価をいたします。  お聞きしておきますが、たとえば、不況対策として打ち出された補正予算は、円高問題がいまだ出ていない状況の中において組まれた補正予算だったと思うのであります。ここ一カ月足らずの間に急激に円高が進行し、その影響は顕著に各方面にあらわれておるわけです。したがって、そういう情勢下において景気対策を論ずる場合においては、もはやあの補正予算だけをもってしては足りないのではないか。補正予算だけというか、補正予算の審議を通じて示された対策だけでは足りないのではないか。当然新しい情勢というものが、大臣は——これは後で質問しますから、ここでやるとまずいと思うのですが、円高問題をきわめて短い数カ月の間におけるところの現象として見られるかどうかということになってくるわけです。これは後でじっくり円高問題で質問してみたいと思いますからここでは触れませんが、いまお聞きしていることは、原則的な問題として、いわゆる補正予算において景気対策を図ろうとしたその対策はもはや若干時間的におくれをとっているのではないか、新しい対策を考えるべきではないか、こういうようなところへ来ているとわれわれは判断するわけですが、そういう観点について、大臣は補正予算が編成された当時といまなお変わらないお考えであるかどうか、このことについてお聞きしておきたいと思うのであります。
  99. 田中龍夫

    田中国務大臣 円高の深刻な影響というものが広がってまいっておりまする現時点におきまして——御案内のとおりに、今日の円高の緊急対策というものが作案されましたのは大分前のことでございます。レートから申すならば二百六十五円当時に、まずわれわれは、これは危険だということで対策を講じたり調査をいたしたりいたしましたが、今日は御案内のとおりに二百五十円台になっております。そういうことから、当時とりましたわれわれの緊急措置、つなぎ融資対策といったようなものも、あるいはその幅において、あるいは最において不足じゃないかというような御意見もあるかも存じません。  しかしながら、円高の問題につきましては、十月一日を目しましてスタートを切りまして、現在、二十二産地を目標にいたしました調査も約七十カ所ほどのものに広げまして、そうして円高に基づきまする緊急対策本部を通産省の中に設けまして、臨機応変な機動性を持った対策を行いたい、こういうふうな機構上の問題もいたしました。しかしながら、これらの当面の円高の問題とともに、御案内のとおりの構造不況の問題も並行いたしまして、十月の初めから今後数カ月にわたりまして、あるいは繊維業界あるいは平電炉業界その他各業界に対しましても、これから設備の買い上げその他のいろいろな問題が起こり、さらに業種の転換の問題も起こると同時に、雇用の関係から申しましても、これからますます労働省あたりと緊密な連絡のもとに、少しでも影響が出ないように、出ざるを得ないでありましょうが、その中でも激しい姿にならないように、われわれは中小企業対策の基本的な問題と、それからまた構造不況対策の問題と、さらにまた円高の問題と、この三重苦と申しますか、なかんずく一番深刻にしわが寄っておりまする中小企業対策中心といたしまして、機動的にしかもきめの細かい対応策を講じてもらわなくちゃならない、かように考えておる次第でございます。
  100. 佐野進

    ○佐野(進)委員 もう一回原則的な面で質問しますが、大臣は、今日の予算の審議等を通じてきた経過の中で、円高問題を初めとする不況の深刻化の情勢に対応するために、通産当局としては、政府の内部において政策の転換を含むいわゆる積極的な景気対策をさらに進めるために具体的に御努力をなさる御決心であるかどうか、この点についてまずお答えをしていただきます。
  101. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの御質問の中に政策の転換を含むという言葉がございましたけれども、私どもといたしましては、現在、いろいろと努力してまいりました諸政策がいよいよこれからスタートを切って、各方面整合性を持って実施に移る段階に入っておるようなわけでございます。なお、ただいま申し上げましたように、その総合経済対策というものを基本に置きまして、機動的な、しかも臨機応変な処置をこれからもとってまいらなくてはならない、こういうふうにも考えておるのでございまして、御質問の基本的な考え方の転換という問題はただいま考えておらないような状態でございます。
  102. 佐野進

    ○佐野(進)委員 産政局長に質問します。  大臣のいまの答弁は原則的な答弁だと思うのですが、あなたは産業政策局長として実務に携わり、今日の不況下においての産業政策を展開する上に幾多の障害をお感じになっておられると思うのです。したがって、その障害の中で、特にいまあらわれてきた円高状況というものがいかに深刻な影響を——単に構造不況のために苦しむというだけでなく、加わってきたこの新しい要素は、日本経済の中で円高において潤いを持つ業種があるよりも、むしろそれによって苦難を増す業種の方が多いという判断下において、あなたとしてはこのままの政策の展開をもってしてはどうにもならないのではないかと私は判断するわけでございますけれども、大臣もそのことを言うのですが、いわゆる政府の一員、閣僚としての形の中で、まさか福田内閣の政策を転換しますと言えないから、あのような答弁になっている。答弁の内容を聞けば当然何かしなければならぬというようなことを言っておるわけですが、実務にみずから携わる産政局長としてどう御判断なさっておられるか、ひとつ原則的な面でお答えいただきたい。
  103. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  私は、ただいま御指摘のございました円高問題というのが、九月の末から今月にかけまして、この六月ございましたのに引き続きまして再び日本経済にいろいろな影響を与える可能性を否定するものではございませんが、ただ、円高問題というのが具体的に日本産業あるいは企業にどれだけの影響を与えるかということにつきまして、私どもまずその実態を十分把握することに努めることが第一だろうと思います。  御案内のように、中小企業中心といたしまして二十二産地につきまして中小企業庁で中間的な調査の取りまとめをいたしましたが、私どもは、今週の月曜日、省内に円高対策推進連絡本部というのを設置をいたしまして、中小企業関係につきましては新たに七十六産地、これにつきましてさらに突っ込んだ実態把握に努めたい。それから、その他日本の主要産業がこの円高問題をどう受けとめてどういう対処をするか、それから輸出にどういう影響があるかということについて詳細な調査分析をしてみたいと考えております。これは私ども事務当局として第一に取り組みたいと思っておることでございます。  それでは、政策の方向はいかがかという御指摘、御質問でございますが、私は、大臣からただいま御答弁ございましたように、当面の基本的な政策の方向は、九月の初めに決定になりました総合経済対策、ここに盛られております対策をきめ細やかに実施をしていく、その中心はやはりいま諸外国からいろいろな意味での批判を受けております大幅な黒字をいかにして減らすか、国内的にはいわゆる需要の喚起、二兆円の新しい事業規模の事業追加を積極的に進めまして、早く経済をより安定したこの次の成長軌道に乗せるという政策の方向は決して変わるものではない、かように考えておるわけでございます。
  104. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それ以上の答弁は、大臣がしているのに局長にしろと言ったって無理だと思うのですが、ただ、こういうことば言えるのでしょう、大臣。今度の予算は、円高を予想しないで、今回の不況を克服して景気を回復しよう、経済を安定的に発展させようということで組まれたわけでしょう。それについていろいろな方面からの論議があって決まったわけですね。それに対して、その審議の始まったころから円高が始まって、急激にきのう二百五十一円七十銭というところまで行ったわけですよ。そうすれば、当然その影響経済にプラスに出るかマイナスに出るかという諸要件というものが判断されるわけですね。これはいまマイナスの要因の方がプラスの要因よりも強く前に出ているわけですね。そうすれば、補正予算で前の状況の構造的な不況を克服するために景気対策として打ち出された。それではこの新しく出た要因はカバーされ得ないわけです。だから、この新しく出た要因を何によってカバーするのかということが当然考えられなければならぬでしょう。それは政策の転換だと言うならば政策の転換で、言いにくいということなら言わなくてもいいけれども、しかし、通産省というのは、由来経済の回復については非常に積極的な意見を出しているわけですよ。あなたの意見は、積極的な意見を出すのが差しさわりがあるから消極的な意見でおこうとしておるのか、そうでなくて、実際上もうこれ以上手の打ちようがありませんよ、あの予算でたくさんなんですよというような形の中で終わろうとしておるのか、その点どうなんですか。
  105. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のとおりに、今回のこの補正予算をつくりましたのは、九月の三日の総合経済対策の閣議決定を踏まえまして、九月の二十日にはさらにこれを一層積極的に行う具体的な諸施策を講じてまいったわけでありますが、ただいま先生の御質問は、今回のこの予算というものは、この円高の問題は審議の過程の中において新たに加わった要素であるから、これは今度の補正予算には考えられていないケースであるからというような御意見もあるやに承りまするが、私はそうとは思いませんで、今回の補正予算それ自体も、円高の傾向を考えの中に入れながら、いろいろな施策を講じてまいったと思うのでございます。というのは、アメリカにおきまする赤字の増大、あるいはまた日本の経常収支の黒、さらに貿易の問題に対しまするECやアメリカ方面の厳しい批判、こういったことがこれをさらに激化させておると思いまするけれども、しかしながら、その中におきましても、全力を挙げて輸入の増大を図り、さらにまた輸出に対しましても、われわれは、集中豪雨的な瞬間風速の非常に激しいような輸出に対しましては、業界の反省を求めるとか、いろいろな措置を講じながら、今日まいったのであります。そうして、いよいよおととい予算をおかげさまで成立させていただいたというような時点でございますので、そういう点におきましては、私は、今回の補正予算のありようをまだまだ注視をして経済全般を見ていかなければならない、そうして、その間に当面いたしましたいろいろな輸入の促進その他の具体的な政策をあわせて行うことによりまして、円高の問題もそれ自体を解消の方向に向けてまいりたい、正常化をいたすように全力を挙げてまいらなければならない。内政の面におきましても、あるいは対外的な面におきましても、両々相まってこれを目標にして努力をいたしたい、かように考えております。
  106. 佐野進

    ○佐野(進)委員 これは後で問題として取り上げますので、いまの大臣の答弁と食い違いないように、そのときにおいて御答弁をいただければいいと思うのです。  そこで、私は、そういう大臣の答弁を受けながら、実は積極的にいま少しく対応する努力、当然そういうことを言わなければならなくなるということを前提にしながら、いま冒頭の質問をしておるわけですが、大臣何か勘違いしているのか、あるいは警戒しているのかわかりませんが、私というよりも、ここに通産行政を担当している皆さん方共通してそのことを考えておられる点の原則的な問題として答弁を聞きたかったわけですが、いまの答弁はきわめて不満足でありますので、そのことだけを申し上げて、次に進みたいと思います。  それでは、円高の問題によって新しい不況要素が加わった。それは構造的な不況状態に対してさらに追い打ちをかける厳しい情勢である。したがって、その厳しい情勢は、いままでの予測をはるかに超えたものとして出てくるのではないかということが当然予見されるわけであります。その予見される状態に対してどういう手を打つかということは、当然通産当局としては考えておかなければならぬ問題だと思うのであります。  そこで、私どもは、昨日、きょう二日間にわたって、構造的不況業種と思われる業界の代表者の方々をここへお招きをして、それぞれの意見を聞いたわけであります。異口同音に悲痛の叫びを上げておられました。そして、その前途に対しては全く希望の持てない、ただここ当面の苦しみをどうやって脱却するか、その当面の苦しみに対してこうしてもらいたいということのみでありました。長期的なビジョン、長期的な展望に立つところの構造不況業界としての見解は、遺憾ながらお一人の方からも聞くことはでき得ませんでした。私は、それほど当面の問題にそれらの方々が困っておられると思うのであります。したがって、そういう点についてこれから関係各局長に若干、きのうの参考人意見開陳等を前提としながら、質問をしてみたいと思うわけであります。  まず、基礎産業局長にお尋ねをしたいと思うのでありまするが、今日の不況下における各産業の中で、特に基礎産業部門に関係する業種はきわめて悪いと言われております。したがって、この方面の業種の方々は、まさに断頭台に立たされていると言っても過言でないような状況の中において、日夜苦労しておられるわけであります。私は、その中で、きのうの参考人意見とも関連して、明確に要望が出され、われわれもそのことが必要ではないかと感ぜられる見解として、アルミ関係について三年から五年間の特別立法をしてもらって、その間輸入を抑えるとともに、借入金の金利の問題、あるいはまた、この間電力料金を特定の対象として措置してもらいたい、こういう見解の表明があったわけでありまするが、この特別立法ということをどのようにあなたは判断しておられるか、この際ひとつお答えをいただきたい。
  107. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 特別立法の内容につきまして、業界の詳しい考えはまだ私は聞いておりませんけれども業界の主たる要望が、電力価格について特別の安い価格を出していただくこと、それから輸入について何らかの制限措置を講ずること、それから金融関係についての負担を経減すること、こういうところにあるということは承知をいたしておる次第でございます。  そこで、それではこれらの一つ一つにつきまして、法律上いかなる施策を打ち出すことが可能であるかということになるわけでございますけれども、まず第一番目の電力価格につきましては、これは資源エネルギー庁の方で御検討いただかなければならないわけでございますけれども、電力料金体系のいろいろな原則があるわけでありますので、そういう原則なり従来の政策体系の中で、一体いかにしてどの程度アルミニウムに対して特別の料金を出すことができるのかということにつきましては、私の方でお答えできる立場にはないわけでございます。アルミニウム業界の要望はよくわかりますけれども、それに対して直ちに法律をもってこたえるというような答えを直ちに出し得る状態にはないわけでございます。  次に、輸入制限の問題でございますが、これにつきましても、現在の国際情勢、日本の黒字に対して非常に強い国際的な風当たりがある中におきまして、しかも東京ラウンドを目前に控えておる状態の中で、日本輸入制限に踏み切るということが一体いかなる意味合いを持つか、それがアルミニウムを超えた日本の国益と一体いかなる関連を持つかということも重々考えなければならないところでございます。仮にそこを踏み切るといたしましても、現在のガット体系のもとにおきましては、輸入制限をする場合には、ガット十九条によりまして何らかの代償を出すということが必要になります。日本に対するアルミニウムの主要輸出国は、オーストラリア、カナダ、バーレーン、アメリカ等々でございますが、こういう国々に対しまして、具体的に果たしてどのような品物を代償として提供することが可能であるかということを考えてみますと、これまた軽々に法律をもって輸入制限をし得るというようなことば、業界の要望はよくわかるのでございますけれども、直ちにこれに対しまして肯定的な答えを出し得る状況には残念ながらないという状況でございます。  非常に苦慮いたしておりまして、産業構造審議会のアルミニウム部会等でも現在いろいろ議論を行っておるところでございますが、まことに残念で心苦しい次第でございますけれども、いまのところまだ、法律によって輸入制限をしたりあるいは電力料金を云々したりするような、そういう明確な案は、めどが立っておらないという状況でございます。金利の問題につきましても、何か徳政令のようなことができれば、アルミニウムの金利負担は年間三百億円以上に上っておりますから、アルミニウムの損失赤字額をカバーするのにちょうどいいぐあいな見合いになっておりますけれども、しかし、そういうことは通常の経済社会においてはよほどのことでもない限り行いがたいことかと思うわけでございます。  そういうわけで、はなはだ苦慮をいたしておる次第でございますけれども、いまのところ明確なお答えを申し上げるわけにはいかない、そういう状況でございます。
  108. 佐野進

    ○佐野(進)委員 あなたの担当する業種は、申し上げたとおり、構造不況の中で最も厳しい条件下の中に置かれている業種が多いわけですね。アルミの問題もその一つでございまするが、もう一つの問題としては、いわゆる化学肥料の問題、さらにはまた、きのうこれに関する意見の開陳がありましたいわゆる化学部門全体にわたる問題、あるいは合繊問題等いろいろあるわけです。したがって、これらの問題について一々お尋ねをするということになると大変長時間を要しますから省略いたしますが、私は、いまのアルミの問題とともに、あなたが担当する業種がこの不況を脱却するために共通して何が一番必要なのかという原則的な面をこの際ひとつお聞きをして、その次に具体的な問題にもう一回入りたいと思います。  いまの問題は、最初に具体的な面に入りましたので、原則的な面についてあなたの取り組んでいう苦悩の中から得た一つの考え方を明らかにしていただきたい。
  109. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 多くの基礎産業が現在直面いたしております困難は、まず第一番目には、エネルギー価格の高騰というところから参っておることは疑問の余地のないところでございます。オイルショック以後石油価格が四倍以上に急騰をいたしたわけでございまして、それに伴いまして、アルミニウムの主要な原料と言ってもいいと思いますが、原料である電力費が高騰をいたしましたわけですし、あるいはナフサ価格が高騰いたしまして国際価格を上回っておるというような状況にあるわけでございます。したがいまして、その基本的な原料なりエネルギーなりが急速に値上がりをいたしたわけでございます。ところが、製品価格の方はこれに対応して上がっていない。そういうわけで、価格とコストのはさみ打ちに遭いまして、基礎産業の多くが非常な苦境に呻吟をしておるという状況でございます。
  110. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、だからそれを脱却するためにあなたとして何が必要かということについてお答えをいただきたい、こう言っているわけです。後で一緒に答えてください。  そこで、いままでの答弁の中でも、そしてまた昨日来の参考人意見開陳の中でも共通して言えることは、いわゆるオイルショック後におけるところの石油価格の問題が不況を引き起こす大きな引き金になっているということは繰り返し聞かされておるわけであります。その中で当面する最大の問題はわが国のナフサ価格の現状、アメリカに対して七千円、あるいはヨーロッパに対しては五千円、いままた七千円近くになったと言われておるわけでございますが、これだけの価格の差が諸外国と存在するわが国のナフサ価格をもって製品をつくり、その製品を売るという形になれば、必然的にその売れ行きに対して一つの障害が起き、結果的に赤字を出さざるを得ない、こういうことを繰り返し説明を受けておるし、私どももそのとおりだと思うのです。  今日、円高となり、石油輸入価格は必然的に差益となって各元売り会社、石油会社、精製会社を含めて潤っていると言われております。とするならば、この問題の解決こそ、さっき大臣に聞きましたけれども、今回補正予算編成時には見られない一つの大きな経済問題として、不況を脱却させるために最も手近な方策として、この問題をどう処理するかということは通産当局に対して課せられた大きな条件ではないか、こう思うわけであります。  そこで、そういう面についてどのような努力をなされたか、その面に対してどうお考えになるかということについては、エネルギー庁長官、産政局長、このお二方に、あなたはどう御努力をなさっておるかということ、お二方にはどういうお考えを持っておられるかということ、この点をひとつここで明らかにしていただきたいと思います。
  111. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 石油価格の高騰は、マーケットメカニズムを無視して働いてくるところの産油国からの圧力によりまして急激に動いておるわけでございます。ところが、日本国内におきましては、石油精製業にしろ、石油化学工業にしろ、資本主義経済の当然の前提といたしまして市場のメカニズムに従って動いておる。ところが、一方から市場メカニズムを超えた強力な力が働いてまいりますので、市場と非市場的な力との相克というものがどうしてもあらわれざるを得ないわけでございます。そういう相克を緩和するための一つの手段として標準額というものが行われたわけでございます。  しかし、石油製品、それから石油化学製品、さらにその石油化学を使うまたいろんな品物、こういうものについてすべて標準額的な干渉を行ってまいりますと資本主義経済が麻痺してしまうということになりますから、きわめて例外的な措置として例の標準額なる制度が昭和五十年十一月に行われたと考えておるわけでございます。したがいまして、われわれとしては標準額に基づくところの価格に応じた価格体系が逐次浸透していくということにこれまでいろいろな努力を傾けてまいりました。たとえば、いろいろ評判が悪い点もございましたが、ガイドライン政策であるとかいうようなことを通じましていろいろ価格の形成に努力をいたしてまいったわけでございますが、現在のところ、石油化学製品の末端におきましては、まだ二万九千円に対応するような価格体系ができていないというようなそういう状況でございます。  他方、この標準額を設定した当時三百二円であった円レートは現在二百五十円台にまで円が上昇する、こういうことになりまして、著しい状況の変化が起こっております。この為替レートの変動とそれから石油製品価格との関係を一体どうするのかということは、政策上のきわめて大きな問題であるというふうに考えます。     〔山崎(拓)委員長代理退席、中島(源)委員長代理着席〕 われわれの石油化学の方の業界立場から申し上げますならば、石油化学製品の約二割強が輸出されておりますけれども、これは為替リスクを負っているわけでございます。ドル建ての輸出でございますから為替リスクを負っておる。要するにドル建てになっておる。これに対しまして輸入の原料であるところのナフサの方は円建てになっておる。要するに輸入輸出が違った建て値になっておりますために、円為替が上昇する場合に売り持ち分と買い持ち分が相殺されることなくして為替リスクをもろにかぶる、こういうことになってきておるわけでございますので、この辺につきましては基本的に建て値をどうするのかということをよく検討すべき問題であろうかというふうに思います。わが方としては、そういうことをかねがね資源エネルギー庁の方にもお願いをいたしておるわけでございます。  それからもう一つの問題といたしましては、コストが上昇するのに製品価格の方の上昇は思わしくないということは、これは産業組織の問題であるというふうに考えております。と申しますのは、石油化学製品のユーザーは自動車、家電等に代表されますような巨大企業が多いわけでございます。ところが、石油化学工業におきましては、エチレン及び樹脂の段階におきましては大企業、といいましてもとうてい自動車等には比べようもない規模ではございますが、一応大企業ではございますけれども、加工メーカーのところにいきますと中小企業ないし零細企業、こういうことになりまして、マーケットにおけるバーゲニングパワーが著しく弱いという状況でございます。したがいまして、どうしても市場において自動車、家電等のそういう強いバーゲニングパワーを持っておるところに押されてしまいまして、価格の上昇が思わしくない。したがいまして、石油化学工業というのは、一方ではOPECという巨大な圧力によって押される、それからもう一方の端の方では自動車、家電等の非常に強い市場における力によって押さえつけられる。この両者の間でスクイズされて、そのために構造不況になるという面を持っておりますので、今後ともこういう産業組織の弱点につきましては、長期の問題ではございますが、改善に努力する必要があるというふうに考えております。
  112. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 円高基調によりまして、石油業界でも為替メリットが出ておることは事実でございます。ただ、これを相殺する要因としてのコストアップの方もどのようになるか、両方合わせて検討する必要があろうかと思います。  御承知のように、ことしの一月と七月のOPECの原油価格の引き上げによりまして、本年度を通じまして大体五千億円程度のコスト上昇になるだろうと見ておるわけでございます。そのほかに備蓄、防災、保安関係のコストの上昇あるいは関税の増徴、こういった要素がございまして、これを合わせますと千五百億ぐらいになるのではなかろうかといったことで、大体六千五百億円ぐらいが製品コストを引き上げる要素になっておる、かように見ておるわけでございます。  それに対して為替メリットがどの程度出てくるかということになるわけでございますが、仮に二十円程度の円高であるならば、キロリッター当たり八十五円のメリットがあるといたしまして、本年度中に五千億円程度、かような計算になるわけでございまして、この二十円の基調がどの程度まで変化していくかということと関連が出てくるかと思います。  私たちとしては、為替レートがかなり流動的なものである、そういったこともよく見てまいらなければならないわけでございますが、一方、民族糸だけでとりましてもことしの三月末にまだ七百億の赤字を残しておる、それからコンビナートリファイナリー、これは全国で九カ所ございますが、これだけとりましても百三十五億円の繰越損を残しておる、こういう状況でもあるわけでございます。  したがいまして、私たちといたしましては、ナフサ価格につきましては両当事者間で話し合いをしてもらいたいといったことで、側面からこの交渉の進捗状況を見ておる、あるいは状況によってはアドバイスをしておるといったような段階でございまして、政府が直接ナフサ価格に立ち入るということは、現在時点では必ずしも適当でない、かように考えておるわけでございます。  一方、輸入量につきましては、当初の計画では年間七百五十万キロリッターを考えておったわけでございますが、今回これを九百万キロリッター、百五十万キロリッターの輸入増を決定いたしまして、その方向で手続を進めておる、こういうことでございますので、御承知のように、たとえばロッテルダムと申しますのは、ECでのナフサの使用量が全体で三千万キロリッター程度で、ちょうど日本一カ国分ぐらい、そのうちの八%程度をロッテルダム市場で扱っておるわけでございますので、一挙に買いに出る場合には、また一面価格を引き上げるといったような要素もございますので、この輸入の問題につきましては、当面、現在増加輸入を考えております百五十万キロリッター、これの成り行きを見てまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  113. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  ナフサ問題につきましては、ただいま基礎産業局長及び資源エネルギー庁長官から化学工業界及び石油精製業界がそれぞれ抱えております問題についての御説明がございました。  この問題は、要するに需要者の側から見ますといわば産業の原料という非常に重要なウエートを持っておるものでございますし、この問題が現在の不況問題解決の一つの大きなポイントであることも私は重々存じております。しかし、一方、石油業界側も、ただいまエネ庁長官の御説明にございましたように、OPECの値上げの関係その他のコスト要因、あるいは石油業界の内部の民族糸企業とその他の企業との関係等、いろいろな複雑な問題を持っておりますので、私どもといたしましては、省内に構造不況問題に対する対策本部も持っておりますし、この問題は関係者で相談をしながら対処をしていきたいと考えておりますが、当面のところは、ただいまエネ庁長官お話しのように、総合経済対策で決められましたラインに沿いまして、まず、輸入の弾力化、百五十万キロリッターの当初計画に対する追加を行う、そして、その後の価格問題につきましては、現在新聞等にも伝えられておりますが、それぞれ担当原局を通じまして業界同士の関係者の間の話し合いをしばらく注視をしている、なお、総合経済対策に書いてございますように、必要がある場合にはこの両者間の話し合い調整を進めていく、こういう態度で対処をしていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  114. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それでは、エネ庁長官に再度お尋ねしますが、あなたは、円高の現在の状況の中で、アメリカ、ヨーロッパと七千円という価格差が存在すること自体に矛盾はお感じになりませんか。     〔中島(源)委員長代理退席、委員長着席〕
  115. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 海外市場における国際競争力という観点からいたしますと、まさに御指摘のように、原料であるナフサ価格差があるということはそれなりに大きな問題だと思います。ただ、御承知のように、エネルギーの価格体系と申しますのは、結局それぞれの国におけるエネルギーの需給構造、これは必ずしも各国共通のものでもございませんので、その限りにおける差というものはある程度出てくるのじゃなかろうか。特に、いま御引用になりました七千円、せんだってまでは四、五千円と言われておったわけでございますが、このいわゆるロッテルダム市場と申しますか、EC市場と、それから日本を含めての東南ア市場とでは、ペルシャ湾のところで一応市場的には分かれておるというようなことも一般的に言われておりますし、かたがた、EC諸国では、単純にナフサの需給価格だけではなくて、天然ガスだとかLNG、こういったものも含めて価格形成が行われておるといったような点、そういった点もわが国のナフサ事情と異なる点があろうかと思います。  そういった問題点はあるわけでございますが、石油化学業界あるいは化学肥料業界が非常な苦況にあるということ、あるいはその限りにおいて輸出競争力が減殺されておるということも十分私たちとしても理解いたしておるわけでございますので、この両者の間に何らかの建設的な意見調整ができるようにわれわれとしても配慮してまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  116. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣、いまナフサ問題について、構造不況一つの大きな要因である問題について、それぞれの責任ある立場局長から御答弁をいただいておるわけです。  大臣、どう思いますか。いま産政局長は、必要があればそれぞれの措置について、勧告するとまでは言わないけれども、やはり現在の日本構造不況を脱却する上に必要ある措置として積極的に対応する必要があるということは、それぞれのニユアンスの違いはあれど言っておるのですが、大臣、どうです。公平な立場で。
  117. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまお話が出ましたように、量的の問題につきましては、御案内のとおりに、七百五十万トンを九百万トンという、量は増量いたしました。しかしながら、その価格の問題でございますけれども、これはいわゆる化学工業部門の業界がユーザーといたしまして元売りの石油業界の方と折衝をしてもらわなくてはならないのでありまして、われわれの方といたしましては、その価格問題に対しまして容喙をいたす気持ちはございません。しかしながら、ぜひとも両者の円満な妥協と申しますか、ユーザーと供給業界の方とのお話し合いが進みますようにわれわれといたしましては努力を希望いたしております。
  118. 佐野進

    ○佐野(進)委員 非常に歯切れの悪い答弁で不満足ですが、時間の関係で次に進みます。これはまた後で出てくるかもしれませんので、一応保留しておきたいと思います。  そこで、生活産業局長にお尋ねをしたいのですが、生活産業局は、基礎産業局とともに、今日不況産業の最も大きな柱の一つであると言われている繊維を初め、貿易に関連するそれぞれの業種を抱えておるわけであります。特に段ボール等それぞれの困難な状況を抱えている不況下においての通産行政の中では、基礎産業局と並ぶきわめて困難な役割りを担っておるわけでございまするが、きのう意見をそれぞれ聞いてみましても、当面、金融の問題は別にして聞きまするけれども、一番大きな問題は、何としても輸入を何とかしてもらえないかといった声が圧倒的に強いわけです。これについては、すでに当委員会としても、たびたび議員立法をしたりその他の方法を講ずる中で対応してきておるわけでありまするが、今日繊維産業全般の抱える問題として、化学繊維を含めた繊維産業全体の問題として、この不況を脱却する上にあなたは一体何が一番必要であると御判断になり、どういうような対策をとっておられるか、この際、原則的で結構ですから、余り時間をかけないでひとつ的確に答弁をしてください。
  119. 藤原一郎

    藤原政府委員 お答え申し上げます。  いまお話のございました私の方の所管産業でございます繊維産業あるいは段ボールその他、確かに目下円高傾向の中で非常な苦況を迎えておるということは事実でございます。いま先生のお話のございました特に繊維産業につきまして、輸入の問題というものが非常に叫ばれておるわけでございますが、これは非常に古い、古いといいますか、年来の問題として提起されておるわけでございます。しかしながら、繊維産業について申し上げますと、現在わが国の場合、繊維産業につきましては、輸出が約四十億ドル見当に対しまして、輸入が十六億ドル見当という数字になっております。特に、非常に問題になっておりますところの合成繊維等につきましては、糸綿段階での輸出が全生産の約四〇%、二次製品まで含めますと約六〇%が輸出に依存をしておる、こういう状況でございます。したがいまして、簡単に輸入制限ということは、場合によりますとかえって妙な結果を招来するという可能性もあるわけでございます。  ただ、繊維につきましては、国際的に、一般の通商関係と違いまして、ガットの特例としての多国間繊維取り決めというものがございます。いわゆるMFA協定でございますが、非常にラッシュいたします場合には、これによりまして当面の相手国と二国間協定を結ぶとか、いろいろな方法が開かれておるわけでございます。  それで、この問題につきまして多年繊維工業審議会等でも議論をいたしておりましたが、昨年の十二月に提言が出まして、輸入につきましては繊維工業審議会の中に需給貿易部会をつくり、その中に調査委員会をつくりまして、これによって事態に即応してやっていこう、こういうことに相なっております。したがいまして、現実に非常なラッシュ状態というふうなものが特定品目に生じました際には、直ちに対策をとる構えに相なっております。  現実はどうかと申しますと、本年度は、昨年度に比べますと、現在のところ昨年より輸入は減少いたしております。したがいまして、当面のところ差し迫ったそういう問題はないというふうに考えるわけでございます。ただ、繊維全体といたしまして需給がアンバランスになっておりまして、御承知のとおり、不況カルテル等を結んで需給調整をやっておりますが、設備全体が非常に過剰になっておりますので、設備の過剰状態を解消いたしまして需給調整をすることが、当面の基本的な課題であろうかと思います。  その設備を非常に減らしました際に、それを埋めるように輸入がラッシュするということになれば、設備調整なり需給調整効果は無になるわけでございますので、その辺につきましては、そういう事態を迎えそうになりましたならば、MFA協定の線に沿った形で輸入問題を考えていく、こういうことになろうかと思います。
  120. 佐野進

    ○佐野(進)委員 生活産業局長のいまの答弁は、私はきわめて不満足だと言わざるを得ない。みんな不満足なんだけれども、特にいまの答弁であっては、繊維産業はつぶれるまでつぶしてしまえ、つぶれて、もうほとんど影や形が見えなくなるようになったらそれぞれの手続をしようじゃないかと言わんばかりの、これは言い過ぎかしれませんが、しかし、とりようによっては、最もせっぱ詰まっている人たちから見ると、そういうように受け取られても仕方がないと思うのです。過剰設備があればそれをどんどん廃棄させる、廃棄させた上で、なおかつ輸入が増加してきてその効果がなくなったということになった場合においてはやむを得ない、やむを得ないから提訴するんだ、取り上げてもらうんだ、そうなれば、なおその事態が進行していって、ほとんどなくなってしまう。ほとんどなくなるなどということは、これまた私の言い過ぎですが、そう言われても仕方がないと思うのです。  これは多年にわたって繊維産業共通の問題として論議されていることですから、それらの点については、あなたも私がもう質問せざるともよくわかっておることだと思いますが、今日の繊維業界全体の要望に対応して、いまのこの時点で、特に円高というものが加わったこの時点の中で、何をなすべきかということについてはもう私が言わなくてもおわかりだろうと思うのですが、その点についての見解をひとつ聞かしてください。
  121. 藤原一郎

    藤原政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの円高、非常に短期的な問題といたしましては、これはやはり輸出に依存している面が相当多いわけでございますので、それに対する金融的な援助というふうな問題であろうかと思います。
  122. 佐野進

    ○佐野(進)委員 政府対策は何か、こう言うと、最後には金融だと言ってすべてが逃げられてしまうし、また、当面する対策ということになると、関係業界の方々も金融だという形で話が終わってしまうわけであります。  私は、金融が絶対必要じゃないということを言っているのじゃないのです。金融は絶対必要だ。だがしかし、今日繊維産業を初めとして構造的不況業種を持つ通産行政の中にあっては、後ろ向きの対策と同時に前向きの対策をやはり勇敢に打ち出していく、その指導性、そのリーダーシップを通産行政がとっていかなければならない時期に来ているんじゃないか。繊維の場合においても、客観的な情勢に左右されるだけであってはならないということを、もう三年か四年前の繊維構造改善事業の法案を審議する際、われわれは口を酸っぱくして言っているわけです。にもかかわらず、相変わらずマンネリの状況になっている。少しよくなれば設備がまたどんどん増加していく。悪くなるとそれを買い上げてくれ。それで言われることは知識集約型であり、アパレル産業の導入であり云々という形の中で当面を糊塗し過ぎるのではないか。わが国の長期的な需要、そしてまた外国の市場の需要状況等を判断しながらわが国の繊維産業のあるべき姿をはっきりと打ち出して、打ち出した中で通産行政がそれに対して指導性を与えていくということでなければ、いつまでたっても同じことの繰り返しであり、その中で苦しみ悩む多くの人たちを生んでいく、そういうことになるのじゃないか、こう思うわけです。  これは私もいろいろ陳情、要請を受けるけれども、生活産業局長、そんなに細かいことは言いませんけれども、ここらについてはいま少しくあなたは積極的な態度をもって、それぞれの業種の中においてもそれぞれ必要ある業種については大いに育成強化する手段をとる、この業種はもはやどうにもならないということに対して勇敢に、その業種が他の業種へ転換する道を開く等々、新しい情勢に対応する積極的な措置を行うべきであろうと思うのであります。構造不況という名のもとに一言に片づけて、ただ単に同じような対策を繰り返すことはきわめて不適当だと思うのでありますが、局長の答弁と大臣のこの問題に対する決意をひとつお示しいただきたい。
  123. 藤原一郎

    藤原政府委員 お答え申し上げます。  いま先生のおっしゃいましたことはまことにごもっともでございまして、当面の対策ということで輸入問題を含めて御説明申し上げましたが、繊維の基本的な対策ということにつきましては、昨年一年かけまして繊維工業審議会でるる検討いたしまして、その結果、昨年の十二月に提言をいただいたわけでございますが、それはまさに現在の構造改善立法の趣旨を再確認したというふうな形でございまして、いまおっしゃいましたアパレルを中心といたしました縦型の構造改善というものを推進して、実需にマッチした、日本の一億一千万の人口にマッチした繊維産業というものを新しく築き上げていくということにあるということは申し上げるまでもないわけであります。  ただ、御承知のように、非常に一般的な不況の波をかぶっておりますので、なかなか需要が思ったように進まないというところに悩みがあるわけでございますが、とは申しましても、構造改善事業は、年々やはり百件くらいの振興はいたしておるわけでございます。予定いたしました予算を十分に消化できないという状態にあるのははなはだ残念でございますが、その方向で極力進めまして、新しい繊維産業の再生ということに努めてまいりたい、極力そういうふうな方向で進めてまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  124. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま局長からもお答えいたしましたように、また、先生もこの面におきましては最もよく御承知でございますように、当面みんなが言っておりまする問題は、金融ということに帰着いたしましょうけれども、これの構造の問題、また、置かれておりまする産業界におきまする立場という問題、われわれは真剣に悩み悩んでおる次第でございますが、しかし、何といいましても、一億一千万の人口というものは、内需だけでも相当大きな市場でございますので、これを新しい面におきまして打開いたしてまいりまするような、要するにもっと高度の転換ができないものだろうかということを真剣に考えておる次第でございます。
  125. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、先ほど生活産業局長が金融問題について触れられましたし、私もこれらの問題は必然的に金融問題に発展していくということも当然考えておるわけでございますので、それらの問題について若干質問してみたいと思います。  今日の不況状態になってきた原因はいろいろあるわけです。OPECの値上げの問題あるいはその他種々あろうと思うのでありまするが、結果的に言うならば、このような状況をつくり出す上に非常に大きな役割りを果たしたのは、やはり巨大銀行、金融機関、あるいは巨大商社と言われるようないわゆるわが国においては一番大きな力を持つ大企業の行動が今日の不況を生み出す一つの大きな要因になっているということは、これはだれしも否定し得ない現実であろうと思うのであります。いわゆる思惑的な投資が生み出した一つ経済的な不況であると言っても差し支えない諸条件があるわけでありまするが、こういうような状況になってまいりますと、金融機関である大銀行、銀行全体を含めてもいいのでありまするが、あるいはまた大商社、商社全体と言ってもいいのでありまするけれども、それぞれの動向が各業種に対して非常に大きな影響を与えていることは事実であろうと思うのであります。  たとえば木材産業にいたしましても、その他繊維産業にいたしましても、いろいろ影響を与えておるわけでありまするが、こういう状況になってきた今日の状態の中で、商社なり銀行なりというものは、きわめてみずからを守るということにのみきゅうきゅうとして、その起きてきた原因については責任を感ぜず、その系列化におけるところの企業の存立をも、生殺与奪の権を握るがごとく、必要があっても気に入らない場合は切り捨てる、こういうような行為を続けておるような場合も多々あるわけでございます。私は、安宅産業自体は、そのまま倒産してしまうような形の中で企業合併が行われたということでございまするから、この安宅自体をどうだこうだというわけではございませんが、これに関係した系列会社がどれだけ悲惨な状況に置かれているかというのはよくわかるわけでございまして、安宅を含めてそれぞれの企業の存立を左右し得たのは大銀行であったと思うのであります。  したがって、こういうような状況下において、今日の通産行政として果たすべき役割りは、これら大商社、大銀行等に対して積極的に対応していくその姿勢が必要ではないか、銀行については大蔵省でございまするが、大蔵省からも来ておるようでございますので、この点について産政局長、大蔵省の方から、それぞれひとつ基本的な考え方についてお示しをいただきたい。
  126. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のいわゆる大商社あるいは金融機関、これと不況問題、とりわけ構造不況問題との関係は、私ども御指摘のような問題意識を持つわけであります。  まず、商社との関係でございますが、いわゆる商社の持っております金融機能、これば営業上の与信でございますとか、あるいは直接的な融資、あるいは保証というような行為を通じまして、いわゆる製造業界に与えておる金融機能は非常に大きなものでございまして、私ども、今回の不況問題、特に構造不況問題と絡めまして、大商社九社に対しましてこの構造不況問題にどういうようにかかわり合っているかの若干の意見聴取もいたしました。結論的に申し上げますと、現在九大商社で構造不況と言われております平電炉、それから砂糖、合板等の主要業界に与えております与信の数字は、約七千億弱と記憶しております。それで、商社がそういう意味で構造不況業種に対する下支えの機能も果たしておるわけでございます。特にこの問題の解決には商社自身が大変な関心を持っておるわけでございまして、たとえば平電炉業界等の過剰設備の処理問題につきましても、十分に商社それぞれの立場から、私どもの考え方、今後の方向を求めるに当たりましての協力をしております。私どもは、そういうことで、いわゆる大商社の持っておりますそういう社会的、経済的な機能というのを、構造不況問題の解決の中で十分な協力を仰がなければならないと思いますし、そういう意味で私どもは今後とも十分な接触をいたしまして、この商社の持っている力を構造不況問題の解決にうまく使っていくという方向で対処をしていきたいと思っております。  それから、銀行の問題がございますが、いま先生御指摘のように、私ども、銀行に対しまして直接どうだこうだという権限、権能は持ち合わせておりませんが、今回の構造不況問題の処理に当たりまして、銀行側の協力を得るということは、これはまさに重要なことでありまして、そういう意味では、大蔵省側から御答弁があると思いますが、私ども、大蔵当局あるいは日銀当局と、構造不況問題を含めました景気問題については十分意見の連絡をやっておりますし、あるいは個々の銀行につきましても、業種あるいは個々の企業の問題につきまして、必要に応じて連絡を密にしておりまして、今後ともそういう方向で私ども進めていきたい、かように考えております。
  127. 吉田正輝

    ○吉田説明員 先ほど来から先生御指摘のとおり、構造不況業種問題というのは、日本の産業界にあって大変な問題でございますし、大蔵省としてもきわめて関心を持っておるところでございます。  ただ、ただいま産業政策局長の方から申し上げましたとおり、個々の企業の中でも影響力の強いものあるいは地域的にかなりの傘下の企業ないし人員を擁しているようなものにつきましては、日銀あるいは通産省ともよく協議しながら、個々別別に対処したり、あるいは金融界におきましても大変憂慮しておる事態でございますので、金利の減免措置とかあるいは緊急融資のような個々の対策はとっておる次第でございます。しかし、御指摘のとおり、過剰流動性時代の設備投資のような問題もございますが、基本的には石油危機後の原燃料価格の高騰とかあるいは後進国の追い上げなど、短期的に対処いたしましてもどうにもならない問題が多々含まれているようでございます。そこで、こういう状況に対処しますためには、業界としての対応策が長期的展望として立てられることが——長期的な構造要因でございますので、そういう自助努力がなされることがまず必要かと思います。そのような対応がとられることを前提といたしまして金融機関から円滑な融資が行われることは必要なことだ、かように思って、そのように対処したいと思っております。  つけ加えさせていただきますと、構造不況業種というのは、原則として借入金が大変多うございます。したがいまして、政府及び日銀としましては、ことし、この三月以降も公定歩合を二・二五%引き下げる、それに対応いたしまして金融機関の貸出金利をまず引き下げていきますと、これが構造不況業種の金利負担を軽減するというようなことで、その体力の維持とか構造改善あるいは転換等に、基本的な点でまずその点を確保することが大切だと思います。そういう基礎的な上での、とりました上で、今後政府といたしましても、関係者とよく協議いたしまして、業界としての対応策が定まるとか、自助努力がなされておる企業に対しましては、今後とも円滑な金融がなされますように十分配意してまいりたい、かように存じております。
  128. 佐野進

    ○佐野(進)委員 金融面におけるところの対策が、不況業種、構造不況業種を初め今後の日本産業に対して非常に重要な意味を持つことはいまの御答弁でも明らかだと思うのでありますが、同時に私は、中小企業庁長官にこの際尋ねておきたいのでありまするが、中小企業関係はこの不況状況の中で最も多くの犠牲を強いられるわけであります。これはやむを得ないと言えばやむを得ないのでありまするが、さればこそ、私たちは、中小企業対策について、中小企業庁長官に対して積極的に協力をする姿勢をとり続けてきているわけであります。今日そういうような努力をしているにもかかわらず、中小企業倒産はますますその数をふやし、円高の現況を加えるならば、この暮れあるいは来年の春等、どのような状況が現出するかはかり知れない状況であります。大企業においても、参考人意見にも明らかなように、それぞれ人員整理をしなければならないというような状況下において、中小企業はまさにそのまま全員が失業者になってしまうということもあり得るわけであります。でありまするから、私は、この際、二つの問題について長官の見解をただしておきたいと思うのであります。  一つは、大企業中小企業をもちろんといたしまして、中小企業の業種の転換、これはわれわれは転換法を賛成して通しましたけれども、その実績はどうなっているのか、それに対する今後の対策はどう進めるのか。これは無理に進めるということじゃなくして、申請し、頼みにいかなければならないということだけであってはならないのではないか。不況業種倒産に瀕しているような業種に対して積極的にその対応をしていくことが必要ではないか、こういうようにも考えられるので、それらについての対策はどうなっているかということが一つ。  いま一つは、懸案になっておる中小企業連鎖倒産防止共済法案であります。この法案は、出すぞ出すぞと言っていながら、もうきょうは二十六日。一体いつ出すのか。われわれもこの法案は積極的に賛成であるという意味において、この法案ができたからすぐ即効的にその効果をあらわすとは言い得ないけれども、少なくとも心理的に中小企業者に与える影響はきわめて大きいと思うにもかかわらず、この法案がいまだ提出の状況に立ち至っていないということは、中小企業庁当局の怠慢であると言っても差し支えないような気がするわけですよ。長官はどのような取り組みをし、いつごろ出すのか、この際、その見解を明らかにしていただきたい。
  129. 岸田文武

    ○岸田政府委員 第一にお尋ねのございました事業転換の問題でございますが、お話しのとおり、昨年の十二月に事業転換法ができました。今年の春にその適用対象となる業種の指定を行いました。業種指定としましては、全国業種六十六、地方業種六、合計七十二業種が指定をされたわけでございます。その指定を受けまして、現に各府県を通じまして、この転換法をうまく使っていきたいということで指導をいたしております。今日までに、この転換法によりまして都道府県知事の事業計画の認定を受けました計画が、合計で二十五出てきております。当初は、諸般の準備、勉強等のために必ずしも出足は良好でございませんでしたが、このところ、九月が五件、それから十月が二十日までに五件という形で、次第にこの制度が普及しつつあるというふうに認識をいたしております。ちなみに、いわゆるドル対法によりまして転換の助成をいたしましたときには、五年間で合計六十五件でございましたから、それと比べましても、事業転換法に対する関心が非常に深まりつつあるということが言えると思います。  ただ、そうは申しましても、これからの中小企業の前途を考えてみますと、やはり中小企業自身もどうやって生き延びていくかということを真剣に考えざるを得ない時期に来ております。その意味におきまして、事業転換法をうまく使っていくということのために今後とも努力を重ねていきたい。そのためにも、従来どういう転換事例があるのか、それはどういうふうにしてうまく成功に結びついていったのか、また、失敗をした場合にはどういう場合が失敗をしたのか、こういう事例を少しでも多くの方々に知っていただく。また、相談に見えたときには、各府県の窓口あるいは振興事業団の窓口で懇切に相談に応じられるような体制をつくる。これがまずもって大事なことではないかと思っております。今後とも努力をしてまいりたいと思っております。  それから、第二番目にお尋ねのございました関連倒産防止のための新しい共済制度の問題でございますが、私どもも、最近の中小企業倒産動向については大変心を痛めておるところでございまして、従来からも金融面の諸般の対策をできるだけ機動的に講じまして、この倒産を少しでも少なくするように努力をいたしておりましたが、やはりそれをこの際一歩進めるために新しい共済制度を用意しようということで、この夏以来、通産省の中には特別の倒産対策室という室を設け、この問題に鋭意取り組んでまいった次第でございます。  当初は、来年の通常国会に提案するように心づもりもしていた時期もございましたが、私どもとしても、一日も早くこれを実現をしていきたい、また、中小企業の声もまさにそれを望んでおるということを受けまして、私どもとしては何とかこの国会に御提案を申し上げ、御審議を得たいということで、目下最後の努力をいたしておるところでございます。まだ提出期日がいつになるということを確定するまでには至っておりませんが、私どもはそういう心づもりで、何とか今国会に提出をしたいというつもりで努力をいたしておることを御了解いただきたいと思います。
  130. 佐野進

    ○佐野(進)委員 御了承を得たいなんと言ったって、今国会といってもあと指折り数えたら幾日あるのかと言うんだ。結局出せないのじゃないかということになるわけです。先ほど申し上げたとおり、中小企業庁長官、少しがんばってもらわないといけない。どんなことがあっても今月中に出すぐらいのことをここで答弁してもらいたい。  その点は後でもう一回聞きますが、この際、公正取引委員長先ほどからお待ちでございますので、質問をしてみたいと思います。  いわゆる前々高橋委員長そして前澤田委員長、ともに、まさに生命をかけたというとちょっと言い過ぎになるかどうかわからぬけれども、われわれが見ていても悲壮な状況の中でいわゆる独禁法の改正をやったことは、あなたもお聞きになっておられたと思うのでございます。そして、ことしの第八十国会で成立を見ました。その成立を見た直後における委員長であります。この運営についてはまさに各方面が注目をしていると思うのであります。そして、時たまたま構造的不況と言われている深刻な経済情勢に直面しております。中小企業を初め大企業ともに、独禁法の運用、公正取引委員会のあり方に対してはきわめて大きな注意をしていると思うのであります。あなたはそのようなときに就任された公正取引委員長として、今後の委員会運営についてどのような御所見を持っておられるか、この際、お尋ねをしておきたいと思います。
  131. 橋口收

    ○橋口政府委員 独占禁止法は、御承知のように、昭和二十二年に法律として成立をいたしまして、満三十年を経過したわけでございます。公正取引委員会も発足以来ちょうど三十年を経過いたしまして、ようやく一本立ちをしかかった状態であろうかと思います。ただいまの御質問の中にもございましたように、前々国会におきまして画期的な改正独禁法が無事成立を見ておるわけでございまして、その施行ということが現在公正取引委員会に与えられました最大の課題である、そういう認識を持っておるわけでございます。  御承知のように、法律の規定によりまして、十二月二日が最終の施行日ということになっております。残すところはわずか三十数日でございます。いま鋭意その施行のために必要な準備を進めておるわけでございまして、政令の内容とか、あるいは運用基準とか、ガイドライン等の内容につきまして、各省との折衝を含めまして、鋭意作業を進めておるところでございます。  現在、公正取引委員会に与えられました最大、緊急の課題はこの点でございますが、せっかくの機会でございますから、今後の独禁法の運用につきましての多少の所見を申し上げさせていただきたいと思います。  第一には、現在のような不況経済が進行いたしております過程におきまして、不況対策との関連において独占禁止法の運用をどういうふうにやったらいいかということが問題であろうかと思います。この点につきましてはいろいろな論議があるところでございますが、基本的には、経済及び産業界の実態を十分把握いたしまして、法に定められた権能を迅速かつ適正に運営してまいりたいということでございます。  それから第二点でございますが、これは申すまでもないことでございますが、独占禁止法は自由主義経済の基本的な秩序を定めたものでありまして、すべての経済政策の基礎をなすものだ、こういう基本的な考え方のもとに三十年経ちました独占禁止法が、本当に国民経済や国民生活の中に定着するように、公正取引委員会としても一層の努力をしてまいりたいというふうに考えておりますのが第二点でございます。  第三点は、わが国の現状認識に関連をいたしまして、減速経済過程なり、あるいは安定成長軌道に日本経済が軟着陸いたしますのを側面的に援助するという考え方を持つ必要があるのではないかと思います。これはただいまも触れましたように、すべての経済政策の基礎をなす基本的なルールでございますから、他の経済政策の基礎をなすものではございますけれども、しかし、日本経済の現状認識とも関連いたしまして、他の経済政策、産業政策や財政政策、金融政策との調和を図って運営してまいりたいというふうに考えておりますのが第三点でございます。  それから最後の点は、国際関係を重視したいということでございます。御承知のように、多国籍企業その他国際関係にまたがる企業規模の拡大や、あるいは企業活動というものが生じてまいってきておりますので、一国だけの独占禁止法の運用では十分その効果を達成できないという場合もございます。そういう点から申しまして、独占禁止法を持つ諸外国との連携動作を一層強めてまいりたいと考えておりますのが第四点でございます。  以上申し上げましたような基本的な考え方で独占禁止法の運用をしてまいりたいと思いますが、もう一つ付言させていただきますと、独占禁止政策の要諦は、要するに公正にして自由な競争の促進ということに尽きるわけでございまして、こういう経済状態で独占禁止法の運用というものが実は大変むずかしい問題に直面をいたしておると思います。独占禁止政策でございますから、経済が好況状態にあろうと不況状態にあろうと、本来その政策に変更がない性格のものでございますが、しかし、不況状態の方がより独占禁止法の運用に困難が多いことも事実であろうかと思います。そういう点から申しまして、一言で申しますならば、独占禁止法の運用につきましては緩ならず厳ならず、こういう姿勢でいきたいと考えておるわけでございます。
  132. 佐野進

    ○佐野(進)委員 委員長とはもう少し議論をしてみたいと思ったのですが、時間がございませんので、きょうはこの程度にとどめて、次期に送りたいと思います。  そこで、いま一つ、円筒の問題についていろいろ議論をしてみたいと思いますが、時間が迫っておりますので、一部だけ質問をしてみたいと思います。  まず最初に、大蔵省、中小企業庁、両方に関係するわけでございまするが、政府系三金融機関というのは、今次の円高情勢の中で、構造的不況下といわれる中で、ますますその役割りが大きくなっていることは、もうだれしも認めているところであります。私どももこの原資の確保について積極的に協力を申し上げたいと思い、かつ、その努力を続けているものの一人でありまするけれども、この政府系三金融機関のそれぞれの立場におけるところの努力に差があるような気がしてなりません。特にその差のあることは、それぞれの持つ事情からいって当然であろうと思うのでございまするが、特に象徴的に言い得ることは、商工中金の場合、預託金があるとはいいながら、その金利の引き下げについては積極的に対応されておるにもかかわらず、大蔵省の直接所管である中小企業金融公庫、国民金融公庫においてば、その金利引き下げに対する努力が、商工中金に比較いたしまするときわめて少ないとわれわれは判断をいたします。今日、構造的不況下において金利の低下が最も強く望まれているとき、政府系金融機関がこのような態度であってはならないのではないかと判断するわけですが、これについてどのような努力をなされておるか、現状はどうなのか、中小企業庁長官、大蔵省から答弁を求めます。
  133. 岸田文武

    ○岸田政府委員 中小企業にとりましては、の量もさることながら、資金の質というものが非常に関心の的になってきております。それと申しますのも、企業経営が非常に苦しい、その中で金利の負担というものが企業経営一つの圧迫要因になっておるということが背景にあるのではないかと思います。その意味におきまして、私どもも、政府系金融機関の金利につきましては、下げられる環境を少しでもつくり、そして、その環境の範囲内でできるだけ下げていくということで指導もし、また大蔵省ともお打ち合わせをしてきたということが率直な経緯でございます。  私自身もいろいろ様子を聞いておりますが、私自身いま感じておりますところでは、もう下げられるだけは下げていくという態勢でいまやっておるというふうに感じておりますし、その間におきまして、三機関の中に特に差があるというふうには思っておりません。各機関とも、それぞれ経営が苦しい状況の中で、やはり下げるだけの努力を一生懸命やっておるというふうに感じておるところでございます。今後ともそういう環境を少しでもつくり、また、下げられるように私どもも注意をしていきたいと思っておるところでございます。
  134. 藤田恒郎

    ○藤田説明員 ただいま中小企業庁長官からお答えがございましたので、特に補足するまでもないのでございますけれども、ちょっと事実だけ補足させていただきますと、最近の金利引き下げに伴いまして、先生の御指摘にございました、中小公庫、国民公庫についても、商工中金と同様、金利の引き下げを行っております。すなわち、本年三月ベースで八・九%の貸出金利でございましたけれども、これを現在七・六%まで引き下げております。これは運用部の金利を原資としております金融機関にとりましては、運用部のコストが七・五%から六・五%まで一%の下がりがございますが、それに比べて一・三%という、そのコストよりも余分に引き下げる、民間金融機関の最優遇の金利水準を維持しておる、こういうことでございます。
  135. 佐野進

    ○佐野(進)委員 時間が参りましたので、最後の要望を申し上げ、大臣の答弁を得て終わりたいと思います。  先ほど来質問を続けておるわけでございまするが、まだまだこの質問をもってして十分意を尽くせなかったということは、私の質問が下手だったせいかと思っておるわけでありまするが、しかし、いずれにせよ、先ほど来私が質問している趣旨については、大臣はよく御了解になったと思うのであります。構造不況と言われ、円高下に苦しむ中小企業者を初めとする経済界の苦悩、こういうことを考えたとき、今日の通産省は新しい立場に立った政策の展開が当然求められてしかるべきであろうと思うのです。また、これは産政局を初め当局としてもそれぞれ研究をしておられると思うのでありますけれども日本経済をよりよく発展させるためにも一層の努力を願いたい。このことを強く求め、さらにこれから法案審議あるいは一般質問等の機会がありますので、大臣と一層論議を深めてまいりたいという要望を申し上げまして、大臣の決意を聞き、質問を終わりたいと思います。
  136. 田中龍夫

    田中国務大臣 当面いたしておりまする日本経済の最も重大な問題に対しまして、中小企業を初め、あるいは構造不況の問題といい、さらにまた円高の問題、これら一連の問題につきまして非常に御研究になり、また、私どもを御激励いただきましたことを厚くお礼を申し上げます。  私どもも、本当に体を張って、命がけで当面の日本経済のために日夜努力をいたしておる次第でございまするが、ただいま御指摘がございました共済制度といったようなものも、一日も早く成案を得まして御審議をいただきたい、かように思っておりまするし、また、今後の四囲の情勢に応じましていろいろの問題について御相談を申し上げる機会も多々あると存じますが、その節はくれぐれもよろしくお願いいたします。  本日は、まことにありがとうございました。
  137. 野呂恭一

    野呂委員長 上坂昇君。
  138. 上坂昇

    ○上坂委員 構造不況産業一つと言われる化学肥料の問題について、若干端的にお伺いを申し上げます。  化学肥料の現況について、硫安、尿素、高度化成肥料、主たるものでいいのですが、それについて御説明をいただきたいと思うのです。
  139. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 一言にして申し上げますと、化学肥料の現状は非常な苦況にあるわけでございます。  苦況に陥りました原因はいろいろあるわけでございますが、第一番目には、供給力が非常に過大になったということであります。過大になりました理由は、アンモニア、尿素設備の大型化が高度成長の過程において急速に進みましたこと、それから、硫安を併産する分野、すなわち、化繊原料の製造工程あるいは鉄鋼業、公害対策工程などの拡大に伴いまして、供給能力が内需を大幅に上回るというような事態になり、窒素肥料の輸出依存度は六〇ないし七〇%というような高い割合に達しておりまして、しかもこの輸出の七割くらいが中国市場に依存する、こういうような状況になっておった次第でございます。  ところが、この輸出市場である中国あるいは東南アジア諸国におきまして、肥料の自給化が急速に進展いたしました。また、中東諸国がそこのガスを利用いたしまして肥料をつくり、輸出国として進出してまいるというようなことがございまして、わが国の肥料輸出は近年非常な圧迫を受けておる、縮小傾向にあるわけでございます。特に、石油危機以後におきましては、仮需の反動もございまして輸出の減少がはなはだしく、尿素でいいますと、操業率が四十九肥料年度には九三%であったものが、五十一肥料年度には三七%まで低下するというような状況にございます。  また、コスト面におきましては、石油危機後、窒素肥料の原料であるナフサ価格が約四倍に高騰いたしましたため、肥料の製造コストが大幅に上昇いたしました。尿素について申し上げますならば、コストが約二倍に上昇いたしましたため、安い天然ガス等を利用しておる欧米及び産油国等と比べましてコストの上昇が著しく、国際競争力が低下する、それが輸出減退の一因になっておる次第でございます。  その結果、かくして輸出価格及び国内価格はいずれも製造コストを下回っておるというような状況にございます。五十一年度の尿素、硫安部門におきましては、約四百五十億円に上る赤字を出しておるというような状況でございます。
  140. 上坂昇

    ○上坂委員 国内消費の場合はそんなに伸びるはずはない。といって、輸出先は、いま御説明があったように、各国の自立体制というのですか、自給体制が次第次第に確立されていくということは、これは先がわかるわけなんですね。当然のことだと思うのです。それにもかかわらず第一次、第二次のいわゆる大型化がどんどん進められてきて、こうした大きなギャップが生じてきているということについて、私は非常に不思議に思うわけなんです。  特に、肥料の場合には、戦後は食糧増産という意味もありましたけれども、非常に保護された時代がありました。二重価格制などがとられて、非常に保護されてきた。その後も、輸出の問題が出てきてからは、肥料価格安定臨時措置法等がとられる、あるいは硫安輸出会社ができるというようなかっこうで、農林大臣、通産大臣がこれにタッチをしていくという形で、ある一面では非常に保護をしてきたという面があったと思うのです。同時にまた、指導というものも非常に強力に行われてきたのじゃないかと私は思わざるを得ないわけでありますが、それにもかかわらず需給の関係でこれほどの大きなギャップが生じてくるということについて、通産省としてはいままでの指導体制についてどのようにとらえておられるのか、お伺いいたしたい。
  141. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 肥料の大型化行政指導が行われましたのは、第一次合理化が昭和三十九年から昭和四十一年まで、第二次合理化が昭和四十四年から昭和四十六年まででございます。この時期は、いまから振り返ってみますならば、高度成長が最も急速に進行した時代でございまして、その当時、市場の先行きにつきまして楽観的な空気が支配をいたしておったと思います。それからまた、肥料工業は低廉な肥料を国内農業に安定的に供給するというような使命を負っているわけでございますが、当時の状況からいたしますと、できるだけプラントの大型化を行い、それによりまして、いわゆるスケールメリットを利用して、コストを切り下げるということが最も合理的な生産方法であると考えられたものと私は思っております。  その結果といたしまして、日本の肥料価格は、オイルショックが起こるまでは一貫して緩慢に低下する、この物価が騰貴しておる時代におきまして、肥料の価格は一貫して非常に緩慢ではございますが低下するという傾向を示したわけでございますから、オイルショックまでのところは、肥料の大型化ということは、その目的を達しておったと考えておる次第でございます。  しかしながら、昭和四十八年末に起こりましたオイルショックに基づく石油価格の四倍の高騰ということは、残念ながら、それ以前におきましては予測すべからざる事態であったと思うわけでございます。この予測すべからざる事態が起こりまして、ナフサに依存する日本の肥料工業は非常に不利な状況に陥る。他方、需要面におきましても、先ほど申し上げましたように、中国、東南アジア等で、特にオイルショック以後、自給の傾向が急速に進むというようなことがございまして、事後的に、いまから振り返ってみますならば、結果として第一次、第二次合理化の過程におきまして設備の拡張が急速に過ぎたというふうに反省をいたすわけでございますけれども、しかし、それじゃ人間が何年もさきにオイルショックが起こることを予測できたかどうかといいますと、そこのところは予測できないような非常事態が起こったということではなかろうか、言いわけになりますけれども、そういうことではなかろうかというふうに考えております。
  142. 上坂昇

    ○上坂委員 オイルショックはだれも予測できなかったと思うのです。しかし、国内の食糧の生産量あるいは外国の食糧の需要、そういうものが大変な形で伸びるというふうにはなかなか考えられないわけですね。たとえば一千万トンの食糧がいま一千三百万トンになっても、それは三百万トンのふえ方であって、それが一千八百万トンになるというような形じゃないわけである。ところが、肥料の状況を見ますと、いまお話がありましたけれども昭和二十五年度で、硫安の場合、アンモニア工業の場合にはもうすでに戦前の水準を突破しているわけです。そして二十七年から二十八年ごろにはもう過剰生産が現実に起きてきている。そして硫安の輸出問題が起きているということは御承知のとおりであります。そうなりますと、そうした状況がもうすでにいまから約十七、八年、二十年近くも前に生じているのにもかかわらず、ただ国内価格安定ということを中心にして、あるいは安定供給というものを中心にして、そうした大型化を指導し許可をしてきたというふうに言われるということになると、どうも見通しが悪過ぎるんじゃないかという感じがするわけなんです。そういう意味で一体その根拠というのはどこにあったのか。  これは、肥料の場合、特にアンモニア工業の場合には、最初は肥料が中心であったから、肥料を主として工業用を従にするという考え方があったわけです。それがだんだん工業が主になって、肥料の方が従になるという形でアンモニアの大型プラントができて、そこへもってきて、エチレン三十万トンプラントですか、そういうものと組み込まれてきた、こういうふうに概して言われておるわけなんです。それにしても余り見通しがなさ過ぎるんじゃないかというような感じがするのです。  したがって、いま国内におけるところの肥料の需給という問題で、一体今後どの程度のものを確保していけばいいのか。そうしますと、現在の生産能力あるいは実績の生産量からいって、どのくらいのものが国内ではオーバーになっているのか、過剰になっているのか、また、輸出の点でもやはり同じことが実際に言えるんじゃないか。今度中国との五十四万トンの契約ができたそうでありますが、これらについての見通しもどういうふうになっているのかということをお伺いをいたしたい。
  143. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 御指摘のとおり、肥料の内需につきましては今後横ばいないし微増というところで推移するものというふうに、われわれも農林省も考えておる次第でございます。他方、輸出につきましては、現在のような日本の肥料のコスト、それから海外における自給体制の進展等を考えますと、これにつきましても余り大きな期待を抱くことはむずかしいと思っております。それでは数量的にどのくらいかと示せと言われましても、中国等の事情がどういうことになっておるのか、特にあそこは市場経済の国でもございませんから、われわれとして中国等の今後の需要を長期的に見通すということは困難でございます。しかしながら、余り楽観的な見方はできないということにつきましては、先生御指摘のとおりでございます。
  144. 上坂昇

    ○上坂委員 輸出の七割が大体中国だったということを言われておりますし、実際にそうでありますが、中国との関係というのがなかなかうまくいかないわけですね。福田首相がいろいろ悩んでいるのか悩んでいないのか、その辺よくわからないんだけれども、日中の平和宣言もなかなかできない、条約も結べないという形で非常に困っておる。そのほかにもいろいろな国際的な問題が出てきている。そうなりますと、主要な輸出先である中国との関係がますます困難になっていくというようなことがもしあるとすれば、これは将来、肥料産業にとっては非常に大きな障害になるのじゃないかというふうに思うのです。したがって、中国との関係というものを正常にしていくということが、アンモニア工業ないし肥料工業にとって非常に大きなファクターを持つものではないかというふうに私は思うわけであります。そういう意味で、大臣は、アンモニア工業の前途、肥料工業の前途から見ても、中国との関係をどういうふうにされることが一番いいかということについて御意見をいただきたいと思います。
  145. 田中龍夫

    田中国務大臣 日中の関係におきましては、われわれ通産省といたしましては、両国の間のあらゆる面におきましてますます接触もし、また、貿易と言わず、あるいはプラント輸出と言わず、推進をしていかなければならぬと考えておりますが、ただいま御質問の当該肥料の問題に関しましては、プラント輸出等々の御要望もございましょうけれども、中国におきます肥料の需要というものはまだまだ大きなものがある、私はこういうふうに考えております。いま御指摘の五十六万トンの契約が成立いたしたことも非常に喜ばしいことでありますが、われわれとしましては、この市場に対しまして、肥料の面におきましてもさらに積極的にこれが販路の開拓を進めてまいりたい、かように考えております。
  146. 上坂昇

    ○上坂委員 具体的にどうなるかと言われれば、正常化に努力をするという答えしか出てこないと思いますから、いまの答えをいただいておきたいと思います。  そこで、基礎産業局長にお伺いしますが、いま過剰設備の問題が実際に出てきているわけでありますが、尿素とアンモニア、硫安、そうしたもので一体どのくらいの過剰設備になっているのか、これをひとつ御説明をいただきたいと思うのです。
  147. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 どれだけを過剰と見るかということにつきましては必ずしも定義があるわけではございませんので、現在の生産能力と生産量とを申し上げさせていただきます。  尿素の生産能力は現在三百八十七万トン、これに対しまして生産量は百四十四万六千トン、したがいまして稼働率は三七・四%でございます。いま申し上げました数字は五十一肥料年度でございます。  次に、アンモニアでございますが、生産能力は四百四十三万四千トン、生産量が二百五十二万四千トン、稼働率は五六・九%でございます。
  148. 上坂昇

    ○上坂委員 尿素は三七・四%で、アンモニアは五六・九%、五七%ですがこうなりますと、これはいまのところかなり生産を落としているというふうに言ってもいいと思うのです。もう少し前には大体八〇%くらいのところで動いていた工場が多かったと思うのですが、いまはこういう状況になってやむを得ない状況だろうと思うのですが、このままの形でずっと推移していけば、企業としては当然やっていけなくなるような状況が続くと思うのです。そうなりますと、当然そこにはいわゆるスクラップ化しなければならない問題であるとか、あるいは設備廃棄問題というものが生じてくるというふうに見ざるを得ないわけでありますが、その点についてはどんなふうにごらんになっているか、お伺いいたしたい。
  149. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 先ほど申し上げましたような海外のマーケットの状況、あるいは原料面からするコスト面の不利というようなことから考えますと、中長期的に見ましても、日本の肥料に対する需要に関しまして楽観的な見通しを持つことは困難であるというふうに考えざるを得ません。そういたしますと、現在ある設備の相当部分が過剰であるということになろうかと思います。ただ、これをどの程度過剰かと見ることは、役所が一方的に判断するわけにはまいりませんので、やはり経営者がどれくらい過剰であるかということを判断し、その判断を役所も尊重せざるを得ないということかと思います。いまそういうわけで、この肥料の基本問題研究会というものをつくりまして、その場におきまして、一体どの程度過剰と見るべきか、それから、もし過剰であるとすれば、それに対してどのような対策を講ずべきであるかというようなことにつきまして、よりより検討を始めておるというところでございます。
  150. 上坂昇

    ○上坂委員 いまのような状況の中では、構造不況産業だからやむを得ないだろうという形ではほうっておけないということは、これはきのうからの参考人意見なり、あるいはそれに対する質疑なりで十分わかっているわけだが、なかなか目玉になるような対策というのは出てこない。実際問題として、金融対策しかないというような状況だと思うのです。したがって、要するにこうした設備廃棄などのできないような状況に少しでもしていかなければならないというふうに思うのですね。  そういう意味で、私は、今度また政府が打ち出しているいわゆる米の生産調整、これについては非常に疑問を持つわけなんです。片方に非常にお米が余るからということだけで生産調整をやる。一千三百万トンの生産量で百万トンか百五十万トンぐらいの生産調整をやろう。これに対して農家は非常に反感を持って反対をしている向きがある。そういうものをやらないでいくということが、少しでも肥料の需給というものを正常化する問題につながってくるのじゃないか、これは非常に単純な考え方かもしれませんが、そういうふうに思わざるを得ないわけですね。その点については大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  151. 田中龍夫

    田中国務大臣 生産調整の問題は、これは私の方から云々することは差し控えますけれども、同時にまた、この米にしろ、あるいはまたその他の蔬菜にしろ、非常に栽培方法が高度化いたしまして、金肥の需要というものは、これはやはり相当な程度まで需要を持続するものであろう、かように考えておりまするが、いまの当該米の問題につきましての今後の推移に対しましては、私どもの方ではちょっとお答えいたしかねます。
  152. 上坂昇

    ○上坂委員 肥料にもたくさん種類があります。いろいろ、カリ肥料、燐酸肥料、窒素肥料、たくさんありますから問題だと思いますが、やはり趨勢としては高度肥料の方に向いているというのが趨勢じゃないかと思うのですね。そうしますと、どうしても単肥みたいな形のものは、これはだんだん余っていくという形にならざるを得ないのじゃないか、私はそういうふうに簡単に思っているわけであります。したがって、肥料全体の伸び方というものは、いまの生産そのままの能力を持つとすれば、これはますます余ってくるというふうな形に考えざるを得ない。そこで、輸出ということにどうしても目を向けざるを得ない。  ところが、先ほどから話しているように、輸出の面ではなかなか思うように伸びていかない。相手もまた見つからない。むしろ市場がだんだん狭められていく傾向にある。こういう形になってくるとしますと、やはりそこに——しかし、そうは言っても、まだまだ食糧の足りない国はたくさんあるし、肥料を要求している国々はたくさんあるわけであります。そういうところに今度はいわゆる海外経済協力の問題というのが出てくるだろう、こういうふうに私は思うわけでありますが、この経済協力の場合に、いわゆる食糧そのもので経済協力をやった方がいいのか、肥料というものを中心にした形での経済協力というものをやった方がいいのか、そこら辺のところは基礎産業局長、どんなふうにお考えになりますか。
  153. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 経済協力に関しましては、私が余り申し上げる立場にはないのでございますけれども、希望として申し上げますならば、発展途上国におきましては、その経済発展の正常な姿としては、何と申しましてもしっかりした農業を築き上げるということが根本であろうというふうに考えます。そこで、その農業を健全に発達させますためには、日本からいろいろな形で経済協力をし、そこで農業の技術も資材も肥料もあるいはいろいろなノーハウ、ソフトウエアも組み合わせて経済協力をし、援助をするということが非常に意味のあることではなかろうかというふうに、私は、何と申しますか、局外者ではありますけれども、考えておる次第でございまして、そういう農業に関する経済協力の一環といたしまして肥料も組み入れていただいて、発展途上国の農業発展に寄与することができるならば非常に幸いであるというふうに考えております。
  154. 上坂昇

    ○上坂委員 時間が参りましたから、最後に一つだけちょっと簡単にお答えいただきたいのですが、非常に円が高くなりました。この円が高くなったことによって肥料業界はどんな形に追い込まれていくのか、簡単に一言だけお答えをいただきたい。
  155. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 申すまでもないことでございますが、肥料の輸出ドル建てで行われておりまして、したがいまして、円高になるといいますことは、肥料業界が為替差損をこうむるということでございます。既契約につきましては十数億円の為替差損が発生するというふうに考えております。また、新規の契約につきましては、現在でもこの変動比すれすれというような状況輸出をいたしておるわけでございますから、この円高ということは、その採算を一層厳しくするという問題を含んでおるわけでございます。
  156. 上坂昇

    ○上坂委員 終わります。
  157. 野呂恭一

    野呂委員長 松本忠助君。
  158. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 経済の福田であるとか自他ともに許しておる福田総理が八十二臨時国会を召集されまして、予算も一昨日、参議院において成立をいたしたわけでございますが、これを契機にいたしまして、政府の総合景気対策というものもすべて出そろったわけでございます。  総合景気対策発表後に著しい変化が起きていることは、大臣、御承知と思うわけでございますが、それは円高でございます。この対策円高によりまして吸収されてしまうのではなかろうかというような意見がいまあるわけでございますが、こうした面をどのようにお考えであるか、お伺いをいたしたいと思っております。  河本政調会長も、補正予算の成立後に、新しい景気対策が必要ではなかろうか、このような趣旨の発言をなさっているようでございます。大臣といたしましては、日本経済を担当する通産大臣としてどのような所見をお持ちか、まず第一番目にお伺いをいたしたい。
  159. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御指摘のような円筒によりまして、せっかくの諸対策効果が吸収されてしまったのではないかという御質疑でございますが、私どもは、この円高の問題に対しましては、何分にも一昨日景気対策の予算を通したばかりでございます。のみならず、この九月以来の経済総合計画によりまして、景気の回復と、同時にまた、その間には為替の問題も七月ごろからだんだんとアップしてまいっておりますので、その中において、あるいは経常収支におきまする黒字減らしと申しますか輸入の振興方策やら、その他いろいろの対策も立てながら参ったわけでございます。  御承知のとおりに、通産省といたしましては、この円筒に対しまする調査を七月来、二十二産地におきましてずっとフォローしてまいりましたが、その後ますます急騰をいたしてまいるに当たりましても、さらにこの七十数カ地点の調査をいたしまして、こういった各産業別、産地別の影響の情報を迅速にとってまいりました。  御案内のとおりに、円高に対しまするつなぎ融資の問題は、緊急融資の制度をつくっていたしておりますが、最も深刻な打撃をこうむっておりまする輸出産業あるいはまた繊維工業、こういうものにつきましては、この不況業種に対する信用補完の問題をいろいろな緊急制度もいたしました。  さらにまた、数日来われわれの方は円高に対しまする応急の推進対策本部というものを設けて、各地におきまするいろいろな状況を把握して、そうしてそれに対しては機動的にいろいろな対策を講じてまいるというきめの細かい処置をとりつつあります。  全体といたしましての通産省の守備範囲におきまする諸措置は、以上申し上げたような次第でございます。
  160. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 大臣の御答弁もわかりますが、昨日、坊大蔵大臣が、衆議院の大蔵委員会におきまして、景気策の追加は行わないという答弁をいたしております。このことを引用いたしまして重ねて通産大臣に伺うわけでございますが、この著しい円高という状態、特にきのうの二百五十一円という大変な状況が現実に起きているわけでございます。第二次、第三次の景気対策を立てるというふうな姿勢がわれわれは必要じゃなかろうか、このままではとてもじゃないが大変なことになると思いますので、重ねてお聞きいたしますが、それでも二次、三次の対策というものをお立てになる必要はないとおっしゃいますか。
  161. 田中龍夫

    田中国務大臣 その点は大変むずかしい問題でございますが、御案内のとおりに、為替の変動相場制をいたしております日本といたしましては、これに対して緊急のとき以外はその国際相場に対して順応いたしていく以外にはございません。しかしながら、ただいまのお話のように、初めの考え方と違って二百五十円台になった、こういうことに対する国内的な処置は、ただいま私がお答えいたしましたように、通産大臣としての所掌範囲において全力で投球いたしておるのでございまして、坊大蔵大臣のお考えなりあるいはまた最高の御判断をなさる総理の今後の御指示を待って、われわれといたしましては万般の対策を考えておる次第でございます。
  162. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 御承知のように、現在著しい円高傾向が続いております中において、中小企業者はどうしても二百六十円台は維持してほしい、こういう強い要望がわれわれのところに寄せられております。先ほども申し上げましたように、昨日午前、二百五十一円という新しいレートが出ております。最高値が記録されたわけでございます。しかし、ここで通産大臣として為替レートの将来につきましてどのような展望をお持ちであるのか。二百六十円台を維持すべきではないかという考えをわれわれは持っておりますけれども、大臣といたしましてはこのまま放任しておくのか、あるいは何とか二百六十円台に復活させるための政策をおとりになるお考えがあるのか、また、そういうことを閣内において発言なさる御意思があるのかないのか、この辺をひとつお尋ねいたします。
  163. 田中龍夫

    田中国務大臣 大変むずかしい御質問でございますが、ただいま申し上げたように、日本といたしましては変動相場制を採用いたして今日までまいっております。これに対しましての日銀あるいはまたその他最高の方針は総理のところでお決めいただかなければ相ならぬのでございまして、また、通産大臣といたしましてはお答えのできる範疇を超えておるような気がいたしますので、この点で御容赦をいただきとうございます。
  164. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 昨日ときょうの午前中、二日にわたりまして、当委員会におきましても参考人の方々の御出席をいただきまして、構造不況業種、こうしたもの、また円高問題等についていろいろと貴重な意見を伺ったわけでございます。そこで出されました意見をもとにいたしまして、以下、若干の問題について大臣にお尋ねをいたしたいわけでございます。  まずその第一は、平電炉業界におきましてお話がございましたが、過剰の在庫分を政府が賢い上げて、商品援助として発展途上国への供与をしてほしいという意見が出されたのであります。この点につきましては、昨年度も棒鋼をエジプトあるいはフィリピン等に援助した前例もございます。相手国の要請いかんにもよるものと思いますが、そうした要請があった場合に通産当局といたしましてはどのようになさいますか、お伺いをいたしたいと思います。
  165. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のとおりに、対外経済援助の中におきましても、われわれは商品援助というものをぜひいたしたいと、強く大蔵当局の方と交渉をいたしてまいったのでございます。先般のASEANの会議におきましてもタイ国が商品援助を強く要望いたし、先般もスリランカの方から大臣が見えられまして商品援助の要望がございますので、通産省と外務省とでいろいろいままでの援助項目の中を分析、集計いたしてまいりますと、相当な商品援助もございまして、在庫品に該当するものもあると存じますが、私は、むしろ在庫調整なりあるいはまた不況対策の上から申しましても、われわれといたしましてはそういう御要望に応じて、この際は商品援助を強く進めてまいりたい、かように考えております。
  166. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 第二点は、中小企業為替変動対策緊急融資制度の問題であります。  これは昨日も出ましたし、きょうも午前中、商工中金の影山理事長が出席されまして、ここで中小企業為替変動対策緊急融資制度についてお尋ねをいたしたわけでございますが、十月一日からの実施でございますので、日も非常に短いし、その実効が上がっていないのではなかろうか。きのうの参考人からの御意見では、そういう話は話としてはあるけれども、実際運用がなされていない。きょうそのことについて影山参考人に尋ねてみましたところ、実施後日が浅いのでまだ十分なことはできない。七十五件ほどの申し込みだ、こんなお話がございました。  大臣にお尋ねしたいのは、その中の金利の問題なんでございます。これは通常金利になっているわけでございますが、この金利の引き下げをしてほしいという意見がきのうも出ております。私もこの措置については必要と考えるわけでございますが、大臣の御意向を伺いたいわけであります。
  167. 田中龍夫

    田中国務大臣 今回の処置は、御案内のとおりに、為替の急変に伴いますつなぎ融資という意味を持っておりまして、さような意味で通常金利ということでございます。通常金利そのものも三回にわたりまして引き下げましたその金利でございます。  なお、構造不況の問題と申しますか、あるいはまた、特に冷え切っておりまする中小企業対策のいろいろな政策もございまするし、融資制度もございまするし、そういうものを総合的にこの不況業種に向かって、特に円高の風の当たっておりますところに向かってはきめの細かい指導をしていかなければならない、かように考えておりまするし、その新しい制度の周知徹底につきましては、通産局を初め商工会議所、商工会、その他末端の市町村におきましても御協力を願わなければなりません。  ただいまのお話のさらに詳細なことにつきましては、中小企業庁の長官も参っておりまするし、政府委員の方から詳しくお答えいたします。
  168. 岸田文武

    ○岸田政府委員 ただいまお話にございました為替変動対策緊急融資制度は、私どもが、夏以降円高の傾向が明らかになってまいりましたのに応じまして産地調査をいたしましたところ、各産地とも円高に伴って受注が大分落ち込んできておる、したがって、何らかのつなぎ融資が欲しいという声が各産地で聞かれましたので、大蔵省とも相談をいたしまして採用をした制度でございまして、御承知のとおり、十月一日から実施をいたしました。  その使用状況につきましては、昨日も、また本日もいろいろ御質疑があったかと思いますが、私どもはある程度これは使われておると思っておりますし、また、今後も相当使われるのじゃないかというふうに感じております。と申しますのは、先般各産地調査を行いました際にも、この制度は皆よく知っておるという答えが来ておりますし、これを利用したいという声も各産地からいろいろ出ておりました。もう一つの理由といたしましては、これと同じような形で実施しております連鎖倒産緊急融資、この利用状況が非常に活発でございます。こういったことを勘案いたしますと、かなりの程度今後とも利用されるのではないかと思っておるところでございます。  金利引き下げの要望があることは私ども承知をいたしておりますが、なおしばらくこの実施状況を見た上で考えていきたいと思っておるところでございます。
  169. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 金利の問題を私お尋ねしたわけでございますが、直接的に大臣から金利の問題について幾らにするというお答えが出るとは私も期待はできませんが、この問題について閣議で発言をなさる御意思がございますでしょうかどうでしょうか。この点を重ねてお尋ねをいたします。
  170. 田中龍夫

    田中国務大臣 中小企業を担当いたし、また、深刻な不況を抱えておりまする私の通産行政といたしましては、当然必要のある際におきましてはかような問題も申さなければならぬ、かようにも考えております。
  171. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 時間の関係もありますから次に参りますが、やはり参考人からの意見で、円高対策として非常に強い希望が出されましたのが、特定業種のいわゆる集中豪雨的な輸出を何とか調整してもらいたい、こういう御意見でございます。  通産大臣は、この集中豪雨的な輸出調整する具体策をお持ちになっていらっしゃるかどうか、この点を具体的に伺いたいわけでございます。
  172. 田中龍夫

    田中国務大臣 集中豪雨的なと申されまする中には、あるいはアメリカに対し、あるいはECに対しまする鉄鋼でありますとか自動車でありますとか、あるいは家電でありますとか、いろいろな銘柄のものであろうと存じまするが、これらの問題につきましては、御案内のとおりに、アメリカに対しましても両国の間でできるだけ貿易の摩擦を少なくするように委員会もつくっておりまするし、これはむしろ輸入促進の関係でありまするけれども、また、ECとの間にも、先般もジェンキンズが来ました場合にも相談をいたしましたし、国際関係の正常化を乱すような、なかんずく経済的な打撃を非常に与えるようなものに対しましては、政府といたしましても、行政的に考えられるものがあれば何とか考えたい、かように考えております。
  173. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 なお、参考人意見でございますが、しかし、この問題は通産大臣の直接的な所管ではないわけでございますけれども、現在国会で論議されておりますいわゆる構造不況の特定業種、こういうものに対します離職者対策のための立法を望む意見がきのうも出てまいったわけでございます。構造不況業種として離職者対策を急がれておる、これは当然のことだと思うわけでございますけれども、通産大臣として、こういう立法の制定にどのような意見をお持ちでございましょうか、伺いたいわけであります。
  174. 田中龍夫

    田中国務大臣 離職者対策と言われますると、いわゆる雇用関係におきまする転換のお話であろうと存じまするが、この点につきましては、企業の転換対策と相まちまして、労働省の方ともいろいろと相談をいたしております。  なおまた、この具体的な詳細につきましては政府委員からお答えをいたしましょう。
  175. 濃野滋

    ○濃野政府委員 私からお答え申し上げます。  現在、構造不況業種に対しまして労働省で持っておられます諸般の雇用対策、主として十月一日から発足をいたしました雇用安定資金制度でございますが、この安定資金制度の運用によりまして、いわゆる構造不況業種雇用対策は、かなりの部分が十分カバーできるのではないかとは私ども考えておりますが、ただ、現在、今国会に、野党各党及び与党自国党の中にも、議員特別法、臨時法の制定につきまして御議論になっておるやに承っておりまして、私どもも、考え方といたしまして、不況対策の一環としての雇用問題の重要性というのは今後ますます大きくなってくる、こう考えておりますので、こういう考え方に対しましては私ども前向きに考えておる、こういうことでございますが、その内容がどうかということにつきましては、これは国会の中の問題でございますので、私どもとしての意見は差し控えさせていただきたいと考えております。
  176. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 ただいま四、五点につきまして、きのうの参考人意見に対する政府側の考え方というものをお伺いしたわけでございます。きのうも、参考人の方々は終始熱心にわれわれの質問にも答えてくださいましたし、また、御自分たちのお考えも述べられたわけでございます。こうした参考人の方々の述べられた意見を、私も四、五点にわたりまして大臣に伺ったわけでございますが、われわれとしましても、本当にこれでいいのかしらと思われるような点がございます。所管事項以外のものについてはやむを得ませんとしましても、こういう点について、参考人の方々、業界の方々は、大臣のきょうの答弁を非常に期待しておったのではないかと思いますので、この点については、また明後日、一般質問もございますので、そうした中において取り上げたいと思っておるわけでございます。  次にお伺いいたしたい点は、大臣が参議院の予算委員会で、石油製品の値下げを実現したいという趣旨の答弁をなさったわけでございますが、昨日も化学工業界代表の方から、ナフサ価格の引き下げに対する強い要望が出てまいりました。     〔委員長退席、山崎(拓)委員長代理着席〕 この石油製品の値下げの問題につきまして、大臣はどのようにお考えでございましょうか、具体的な措置をお伺いいたしておきたいわけであります。
  177. 田中龍夫

    田中国務大臣 私は、為替差益の問題につきまして、総論的に、広い意味で何とか国民生活に均てんしたい、こういうふうな気持ちを持っております。  しかしながら、ただいま先生の御質問の問題は、予算委員会におきますナフサ価格、灯油価格でございますか、私のお答えいたしたことは、いまお話し申し上げたような気持ちを私は持っておりまするけれども、この灯油の価格の問題はなかなかむずかしい諸般の問題がございますので、いろいろと今後の将来の推移を見なければ、軽々には申し上げかねると存じます。
  178. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 大きな立場での大臣が石油製品の値下げの問題を実現したいという趣旨の御答弁、こういうわけでございますが、きのう出ました問題は、ナフサの値下げの問題が出てまいったわけでございまして、関連して伺ったわけでございます。  それでは次に、問題を移しましてお願いいたしたい点がございます。  円高の問題に関連いたしまして、中小企業に非常に多大の被害を、そして負担を与えている事実がございます。特に輸出依存型の産業におきましては、非常に顕著な例が出ているわけでございます。御承知のように、そうした産業は大部分が一つ産地を形成して、その地域の基幹産業になっております。したがいまして、その地域景気対策にも大きな影響を与えるわけでございます。見逃すことができない問題であろうと思うわけでございます。その一例といたしまして、私は、輸出双眼鏡の業界の問題を取り上げてみたいと思うわけでございます。  これは単に一双眼鏡業界だけの問題ではなくて、輸出に依存している産業全体についても言えることではないか、こう思うからでございますが、この輸出双眼鏡の業界におきましては、国内生産量の八五%を輸出に頼っている典型的な輸出依存型の産業でございます。この業界の方々が、円高になりましてから、私のところに頻々として訪れてまいります。事実、私の選挙区の中の板橋区はこれらの主要なる日本国内産地でございますので、そういう方々との接触も多いために、これらの方々が本当にわれわれのところに苦衷を訴えてくるわけでございます。  こうした方々のお話を聞いておりますと、一体通産省はわれわれのことを本当に考えてくれるのかと言います。その話の発端は、日本の外貨が不足しておった当時には、われわれのしりをはたいて、外貨を獲得するためのホープとして一生懸命輸出の増大のためにやれ、やれ、こういうお声がかりであった。ところが、国際収支が黒字になりましてゆとりが出てまいりますと、知らぬ顔の半兵衛を決め込んでおる。今度のように円高になりますと、ドルをかせぎ過ぎる、そうした輸出はよくない、こういうふうな態度が見られる。こういうふうな態度を見ると、この通産行政に対して、業界の方々は、まことに無責任きわまりないと憤激をしておるわけでございます。ひどい人になりますと、ネコの目行政だ、こういう批判をしているわけでございます。  いままでの業界に対する行政指導は、通産省として一本の筋を持ってやってこられたと私は思うのでありますけれども、どうも外貨獲得のために努力させられた時代、そしてまた今度のように円高になってくると、手のひらを返したように態度がくるくる変わってくるようなことがあってはならないと思いますので、改めてここで、この輸出双眼鏡の業界に対して、通産省としていままでどのような行政指導をしてきたかについて伺っておきたいわけでございます。
  179. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまお話しのように、板橋を中心といたしました八三%ほどの非常に輸出依存度の高い業界でございます。もちろん、中小企業庁を初めあらゆる努力を傾注いたしまして、これが対策に一生懸命になっておるところでございます。  政府委員からお答えさせていただきます。
  180. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生からお話のございましたように、わが国の双眼鏡の生産のうちの九割近くのものが輸出でございます。したがいまして、私ども原局といたしましては、双眼鏡イコール輸出という考え方が中心になりまして、輸出をいかにスムーズにやっていくかということに観点を置きまして行政を進めてまいりました。  特に輸出につきましては、先生御高承のとおり、その仕向け先はアメリカが圧倒的に多うございまして、約五割でございます。正確に申し上げますと、一九七六年、つまり昭和五十一年度におきまして四七%と圧倒的なシェアを占めておりますので、アメリカ向けの輸出がスムーズにいくことを行政の主眼としているわけでございます。  なお、アメリカにおきましては、輸入の双眼鏡につきましては比較的高関税政策をとっておりますので、これが日本からの輸出に対する一つの大きな問題点であるという観点から、現在アメリカ政府に対しまして、日本政府といたしましては双眼鏡の関税問題が非常に高い関心事であるという話もしておるところでございます。
  181. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 関税の問題もさることながら、現在置かれている円高の問題に対しまして、現在契約の調っております分につきましては何とか赤字を出してもこれを実行していくことはできるけれども、今後の契約については非常にむずかしい、難航が予想される、こういうふうに言われております。  この双眼鏡の業界の成り立ちは、もうすでに御承知と思いますけれども、まことに小さい中小企業で主軸が形成されております。したがいまして、外国のバイヤーとの交渉などにつきましても、大企業主軸の業界と違いまして、全く押されっ放しというのがいままでの状態でございます。そうした中において降ってわいた円高、これで輸出双眼鏡の業界の屋台骨が揺すぶられているというのが現状でございます。  この業界の試算によりますと、現在一台当たりの輸出価格でいけば、採算輸出レートが二百七十五円ないし二百七十円、これ以下では赤字の輸出になると言われております。業界としては、のバイヤーとのねばり強い交渉によりまして、徐徐ではあるけれども、値上げを獲得をしていきたい、こういう自主的な戦いをしているわけでございますが、その内容は、要するにバイヤーとのがまん比べ、一言でこういうふうに言われているわけであります。そのがまん比べに勝っていくためには、やはり資金力を業界挙げて要望しているのが事実でございますけれども先ほど中小企業庁長官からも伺いましたが、十月一日実施されました中小企業緊急融資制度は、この業界のバイヤーとのがまん比べの一助になるものかどうか、対象になるものかどうか、こうした点を伺っておきたいわけでございます。
  182. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私どもが先般二十二産地につきまして円高影響調査をいたしましたときに、その一つとして板橋の双眼鏡を取り上げまして、実情をいろいろ調査もいたしました。そのときの結果の概要を御報告いたしますと、確かに円高によっていろいろな影響を受けておる、ただし、これは機種によっていろいろ違いまして、高級品の場合には比較的影響が少ないけれども、中級品、低級品という分野にはかなりの影響が出るだろうということがおおむね言えるのではないかと思います。手持ちの受注残も、平常であれば九十日であるところが、三十日程度に落ち込んでおるということでございまして、いまお話にございましたように、がまん比べのためのつなぎ融資の必要性というものが当然あるのではないかと私どもは思っておるところでございます。為替変動対策融資制度の存在は知っておる、また、これを利用したいという答えが出てきております。したがいまして、今回用意をいたしました融資制度、これは業界のためにもお役に立つのではないかと思っておるところでございます。     〔山崎(拓)委員長代理退席、委員長着席〕  余談でございますが、私もかつて双眼鏡の担当官をいたしたこともございますし、またその後も板橋の方々とは御縁が続いておりまして、ときどき様子を聞かしていただいております。輸出を今日まで持っていくために、規格の統一であるとか、あるいは合理化であるとか、あるいは販売チャンネルの整備であるとか、ずいぶん努力されたことは私どももよく知っておりますし、その努力を無にしないように、今後ともよく接触を続けて指導していきたいと思っておるところでございます。
  183. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 そこで、先ほども森山政府委員からお話がございました関税の問題について伺っておきたいわけでございます。  先刻御承知のように、韓国あるいはまた香港、こういうところがアメリカに向けても相当の輸出をしておりますし、しかも後進国、この国々の関税の税率というものがゼロというような状態、特恵関税。ところが、わが国の輸出するところの双眼鏡に対しましては、二〇%という非常に高率な関税がかかっているのが実情でございます。いままでも再三にわたりまして、政府側でもいろいろと対策を講じて交渉をしているようでございますけれども、相対する国の問題でございますので、なかなか進展をしていないようでございます。こういう点についてわれわれも注意深くその成り行きを見守っているわけでございますが、同じ光学機械といいながら、カメラの方は七・五というような状態でございまして、双眼鏡が二〇%というのはいかにも高い、こういうことをわれわれも承知しているわけでございますけれども、この関税問題についてもう一度担当局長から最近の交渉の状況についてお知らせをいただきたいと思います。
  184. 花岡宗助

    ○花岡政府委員 お答えいたします。  先生御承知のとおり、現在新国際ラウンドと言われておりますいわゆる東京ラウンドの多角的な貿易関税の交渉がジュネーブにおいて本格化しておるところでございまして、その一環といたしまして、先生いまお話のございました米国の双眼鏡の関税引き下げの問題につきましても、米国政府との交渉におきまして、われわれといたしまして最大限の努力をいたす所存でございます。
  185. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それでは、通産大臣に対する質問の最後でございますが、きょうはこのいわゆる輸出双眼鏡の問題につきまして取り上げたわけでございますけれども、なおこの問題以外にも円高に苦しんでいる業界がたくさんございます。政府通産当局のきめの細かい行政指導及び施策というものが今日ほど要請されているときはないと思いますが、こうした不況円高、ダブルパンチを食っているわけです。特に双眼鏡の業界については、そこへもっていって関税というトリプルのパンチを受けている状態でございます。こうした苦しんでいる中小企業に対しまして親身になって施策を実施していただきたい、このことが私の大臣に対する要望の最後でございます。どうかひとつ大臣の確信のある御答弁をいただいて、大臣に対する質問を終わりたいと思います。
  186. 田中龍夫

    田中国務大臣 申すまでもなく、今日の冷え切った経済の中におきまして非常に苦しんでおられる中小企業、その中におきましても当面の為替の問題、この厳しい風にさらされておりまする輸出企業につきましては、私ども、本当に全力を挙げてこれと今後取り組んでまいる所存でございます。  なおまた、いろいろとこれらの対策につきましてもきめの細かい施策をいたしますけれども、至らざるところがいろいろとあるだろうと存じます。これらにつきましては、また先生方のいろいろと御忠告なりあるいはまた御策案につきまして御協力のほどをひとえに改めてお願いを申し上げます。
  187. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 大臣のお答えはきわめて抽象的でありますけれども、私は、今後の施策について大きに期待をいたしております。よろしくお願いいたしたいと思います。  それから、公取委員長さんに以下何間かについてお伺いをいたしたいと思います。公取委員長さん、御就任になりまして初めてきょうは当委員会に御出席をいただきました。これからまた公正取引委員長といたしまして、この不況下の独禁法の運用について御所信を伺いたいと思うわけでございます。  御承知のように、現在独禁法の運用というものは重要な時期に直面していると思います。非常な打ち続くところの不況でございますし、この独禁法の精神というものが根本的にゆがめられるようなことがあっては一大事だと思います。将来に禍根を残さないためにも、公取委員長の御就任のまず第一声として、不況下の独禁法の運用についての所信を伺いたいわけでございます。
  188. 橋口收

    ○橋口政府委員 独占禁止政策は、先ほども申し上げましたように、経済の基本的なルールを決めたものでございますので、経済が好況状態にあろうと不況状態にあろうと、あるいは高度成長期であろうと安定成長期であろうと、本来変わりはない性質のものであろうと思います。  ただ、それでは現実の独占禁止政策の運用上の問題といたしまして、経済が好況の状態の場合と不況状態の場合と、どちらのその運営にむずかしさがあるかと申しますと、これは端的に申しまして、やはり不況状態が継続いたしておりますときにはその運営に大変むずかしい問題が生ずるというふうに考えておるわけでございます。  ただ、独占禁止政策は、公正にして自由な競争の促進、競争条件の維持ということが基本的な精神でございますので、仮に経済不況状態にありましても、その精神を見失ってはならないと思うわけでございまして、したがいまして、たとえば不況カルテルの認可の問題等につきましても、将来の日本の自由な経済社会あるいは自由な企業組織の維持にマイナスになるような措置は適当でない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  189. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いま公取委員長からお話がございましたように、不況下におきましても不況カルテルが結ばれる、それによって将来寡占化が著しく進むというような事態は、これは避けなければならないと私は思います。  そうした意味合いから伺いたいことは、最近合販会社の設立が現実に起こっているわけでございます。この合販会社の設立等の問題につきまして、委員長の御見解を伺っておきたいわけでございます。
  190. 橋口收

    ○橋口政府委員 共販会社と申しますのは共同販売会社という意味でございますが、独占禁止法の適用で申しますと、合併とかあるいは営業の重要な部分の譲り受けということになるわけでございますから、その結果として一定の取引分野の競争が実質的に制限されるということになりますと、これは問題が生ずるわけでございます。そういう点から申しまして、構造不況業種の分野において生じた問題といたしましても、考え方は同じであるべきであると思います。  ただ、一般的に共販会社と申しましても、問題は一定の取引分野でどのくらい市場を占拠するか、市場占拠率がどの程度であるかということがやはり考え方の中心をなすわけでございまして、もちろんそれだけで一定の取引分野における競争が実質的に制限されたと判断するわけではございませんが、やはり市場占拠率がどのくらいであるかということが考え方の中心になるわけでございまして、これは従来から公正取引委員会の内部の基準といたしましては、合併なり営業の譲り受けの結果として二五%の市場占拠率を超える場合には、これはより一層の厳重な審査が必要になる、こういう考え方で対処いたしてまいりたいと思います。
  191. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 次にお伺いいたしたい点は、やみカルテルの取り締まりの問題についてでございますけれども、御承知のように、合法的な不況カルテルというものは数多く認められておる現状、このことによりましてやみカルテルまで野放しにされるようなことが絶対にあってはならないと私は思うわけでございます。しかしながら、ここで公正取引委員会の最近のやみカルテルの摘発状況が余りにも少ないのではないかと私は思うわけでございます。  例外が認められていると原則が弱くなる、これが世の中の常でございます。したがいまして、やみカルテルにつきましてなお積極的な取り締まりをすべき任務があると私は思うわけでございますが、この状況並びにその積極的に取り組む意思があるかないかについてお伺いをいたしたいわけでございます。
  192. 橋口收

    ○橋口政府委員 日本の独占禁止法は、御承知のように、一般的な不況要件に該当いたしました場合にはカルテルを認めるという制度をとっております。したがいまして、公正取引委員会といたしましては、民間の事業者が本当に共同行為を必要とするような状態が生じました場合には、できるだけ速やかに独占禁止法のテーブルに着いていただきたいということを申し上げておるわけでありまして、私どもが一番警戒する必要があると考えますのは、いまおっしゃいましたように、共同行為というものが水面下に水没をいたしまして、表面にあらわれないということでございます。これはもちろん、独占禁止法上の不況カルテルだけでなくて、中小企業団体法に基づく共同行為でもよろしいわけでございますが、いずれにしましても、法律のテーブルに着いていただくということを熱望いたしておるわけでございます。  不況カルテルの認可が一方で行われながらやみカルテルが相当あるんじゃないか、それに対して最近は摘発のケースが余り多くないという御指摘でございますが、この点は私ども内部でいろいろ検討いたしておるところでございまして、確かに、おっしゃいますように、昭和四十八年の石油ショック以後、四十八年、四十九年が、カルテルに対します勧告件数、カルテルをやめるようにという勧告件数でありますが、これが大変多くなっておりまして、昭和四十八年が六十六件、四十九年は四十一件でございますが、だんだん減ってまいりまして、昭和五十一年は二十一件というふうに減ってまいってきておりますし、ことに本年に入りましてからも大変激減をいたしております。  この理由でございますが、いろいろな理由があると思うのでございますが、やはり一つは、昭和四十九年の二月に石油連盟関係のカルテル行為に対しまして告発をあえて行ったということが一つあると思います。  それからもう一つは、前々国会で成立をいたしました改正独禁法によりまして、課徴金という制度が設けられておるわけでございまして、一般にやはりカルテル行為が違法行為であるという認識が逐年徹底をしてきておるということが一つ評価できるのではないかと思います。  ただ、もう一つの問題といたしましては、こういうことを申し上げるのは適当かどうかわかりませんが、やはりカルテル行為の行動につきましてだんだん巧妙になってまいりまして、立件調査をいたしましてもなかなか物証が得られない、立証に難渋をするということが出てきております。つまり、着手件数に比べましてどうも事件として実を結ぶのが少ないということを考えますと、やはり多少好ましくないことでございますが、全体として巧妙になってきたのではないかということが一つ考えられます。  もう一つは、不況状態がこれだけ進みまして、なかなか共同行為すらできない、話し合いすらできないというような現状があるのではないかというふうに考えられますが、理由はいずれにいたしましても、やはり水面下に沈んだ件数があるということは、これは決して好ましくないことでございますし、また、公正取引委員会の使命から申しまして、決して摘発の手を緩めるというような態度をとるつもりは毛頭ございません。
  193. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いまの御説明で、件数が年々減少してきたということは理解できるわけでございますが、これは一面考えてみれば、やはり巧妙なやり方によってそれが発見されないようにやっているわけでございまして、その上を行かなければこの摘発というものはむずかしいわけでございますから、限られた人間の中でこの問題に取り組んでいらっしゃるところの公取委員会の御苦労は十分わかるわけでございますけれども、なお一層努力をしていただきたい、こう思うわけでございます。要するに、卑俗なたとえ話でございますが、お巡りさんとどろぼうの関係などよく出てくるわけでございます。やはり逮捕する方が一歩進んでいかないと、どろぼうはますます悪知恵を発揮して、いろいろな悪いことをたくらむわけでございます。一歩一歩先へ回るぐらいの心構えをもって、ひとつ取り組んでいただきたいことを重ねて御要望申し上げておくわけでございます。  次の問題でございますが、円高差益というものが消費者に還元されていない、どうも流通機構の中に入ってしまうんじゃないか、こんなことの話がここのところ頻繁に起こっております。言われるところの流通機構にメスを入れなければ、この円高差益というものが消費者に還元されるのは一体いつの日かというふうになるわけでございます。そういった意味で、並行輸入等を積極的に進めなければならないと私は思うわけでございますが、公取委員会といたしましてこの問題について御意見を伺いたいわけでございます。
  194. 橋口收

    ○橋口政府委員 ある業者円高の差益が生じました場合に、それをどうやって消費者に還元するかという問題につきまして、直ちに公正取引委員会措置をとり得る権能は持たないのでございますが、やはり円高の差益が生じております場合には、これは何とか消費者に還元するという方角に委員会といえども協力をすべきであるというふうに考えておるわけでございます。  このためには、迂遠な方法でございますが、やはり流通段階における競争を一層活発にさせるということが必要であろうと思いますが、ただいま御質問の中にございました並行輸入の問題も、やはりこれは公正取引委員会として当然取り組むべき問題であろうと思います。輸入総代理店契約の条項の中に、ともすると並行輸入を阻害するような条項というものが忍び込む可能性というものは間々あるわけでございまして、これは国際的な契約の審査の際に十分注意をいたしまして、そういう並行輸入阻害要件を持っておりますような条項には削除を命じておるわけでございます。  ただ、一般に国際的な契約を公正取引委員会に届け出るということについての習慣と申しますか心構えというものが、必ずしも十分民間の業界に徹底をいたしてないきらいがございまして、この点われわれの努力が不足という面もございますので、さらに一段とその徹底を図りたいと思っておりますし、もし並行輸入を不当に阻害するような条項がございます場合には、これを排除する等の措置をとってまいりたいと思います。もちろんそれだけではなくて、実際に並行輸入が阻害されておるような状況があります場合には、当然公正取引委員会として権限に基づいて並行輸入の促進方の指導なりあるいは措置をとることが必要になってくるわけでございます。  ただ、いま御質問にもございましたように、限られた人員で、一体どこに並行輸入が阻害されておるような状況があるかということを、広範に包括的に調査をするということは困難な面もございますから、これは経済企画庁その他関係省庁と十分相談をいたしまして、情報とか資料の交換については万遺漏なきを期して、能率的な行政の成果が上がるように努力をいたしたいというふうに思っております。これはぜひそういう行動をとりたい、できるだけ効果が上がるように努力をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  195. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 時間もあと二分と迫りましたので、最後の質問でございます。  いまの円高の差益がどこへ流れ込んでいるかがわからない、こういう問題については公取としても非常にやりずらい問題でしょうし、権限もない。そういう中で、少ない人間で、この問題もぜひひとつ経企庁とも相談をしながらやっていただきたいと思うわけでございます。  最後にお伺いいたしたいことは、十二月からこの改正独禁法がいよいよ施行される段階になってまいります。この準備の状況を御説明をいただきたいと思うわけでございます。
  196. 橋口收

    ○橋口政府委員 改正法の施行期限は十二月二日でございますから、あと三十数日しかないわけでございます。施行のためには、政令の制定、運用基準、ガイドラインの制定等が必要になるわけでございますし、また、衆参両院の決議にもございますように、そのうち必要なものは外部に公表するという心組みで、いませっかく準備を進めているところでございます。そろそろ関係省庁との折衝も始めておりますし、いまの目途といたしましては、一応十一月二十日を目途に政令の制定を行いたい。施行日は十二月二日でございますが、できるだけ早い時期に一般に明らかになるような形をとりたいという意味で、一応の目標としましては十一月二十日ということで現在作業を進めておりまして、いまここではっきりしたことを申し上げることはむずかしいのでございますが、恐らくはそうおくれない時期に政令その他施行のための準備を完了することができるだろう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  197. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 御答弁を伺いまして、十一月二十日の政令の施行並びに十二月二日の改正独禁法の施行というこのプログラムに対して、どうかひとつ十分の対応を示していただきたい。前国会におきまして長年の問題でございました独禁法の改正ができたわけでございますが、この実施をめぐりまして、いわゆる仏つくって魂入れずということであってはならぬと思いますので、ひとつ十分御検討の上、われわれの意を体していただいて、この改正案の実施に踏み切っていただきたいことを要望申し上げまして、私の質問を終わります。
  198. 野呂恭一

    野呂委員長 宮田早苗君。
  199. 宮田早苗

    ○宮田委員 本国会の使命は、申すまでもありませんが、超長期にわたります不況からの脱却と、不幸にも職場を失った労働者をいかにして救済するかという、日本経済が直面をしております問題解決にあると思います。私どもはこういう観点から、規模において不満を残しつつも、二兆円の事業規模の補正予算の早期成立に協力してまいったところでございます。  しかし、ここにきて日本経済は異常とも言えます円高に見舞われたわけでございます。産業界は再び失速の状態に追い込まれておる、こう思います。特に経営に占めます輸出比率の高い中小企業ほど苦況に陥っておると思います。政府中小企業為替変動対策緊急融資制度の創設等で対処しているわけでございますが、これも言うなればつなぎの措置にすぎぬじゃないか、こう思います。私ども、これからの五十三年度予算編成の過程でいろいろ注文をつけているわけでございますが、その骨格は、中小企業対策として五十二年度比一五・六%と、これだけの増の予算要求として出てきておるのじゃないか、こう思います。円高対策だけで言うのではございませんが、五十三年度予算の伸び率を一五・六%ということでなしに、二五%くらいまで底上げをしてはどうか、この点いろいろ意見も多いわけでございますが、中小企業関係の伸び率二五%というくらいの考え方を持っておられるかどうか、この点について長官にお伺いいたします。
  200. 岸田文武

    ○岸田政府委員 来年度の予算編成におきましては、いわば国全体の非常に財源難の時期でございまして、各省の要求におきましては、それぞれ一定の枠を用意しまして要求するという形をとったわけでございます。事業費につきましては一三・五%増しの範囲内にする、それから事務費につきましては五%増しないしは物によっては前年並みというような一定のルールをつくって要求をするという形になったわけでございます。  その結果といたしまして、通産省全体の予算要求枠は前年の実績に対して一一・八%に相なっております。ただしその中で、現下の情勢を見ておりますと、やはり中小企業対策には特段の重点を置かなければならないということから、関係各局の協力も得、官房において調整をしていただきまして、中小企業庁におきましては、いまお話しございましたように、一五・六%の伸びを確保したという形になっておるわけでございます。私どもとしましては、財源難の事情はよくわかりますものの、中小企業対策の重要性はいまさら申し上げるまでもない状況でございまして、与えられた枠の範囲内でいかにうまく予算を確保し、それをいかにうまく生かしていくかということに最大限の努力を払っていきたい、かように考えておるところでございます。
  201. 宮田早苗

    ○宮田委員 中小企業庁としていろいろ苦心をなさっておることはわかるわけでございますが、一定のルールということでいろいろ対照を前年度と、これは毎年のパターンじゃないか。しかし、世の中はもう百八十度変わったわけでございますので、新しい観点で予算が立てられてしかるべきじゃないか。特にきのうきょうの不況業種の代表者による参考人意見を聞きましても、円高によります破綻というのが予想外に大きいことが、それぞれの委員から意見として出ておるわけでございます。為替レート一つをとりましても、希望として二百七十五円、また三百円でないとという意見もあったわけでございますから、こういうことを考えますと、いま新しい観点で思い切って中小企業育成のための予算を組んでよろしいんじゃないか、こういうふうに思いますが、その点についてどのような見解をお持ちですか。
  202. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いまのお話にもございましたように、中小企業行政というのはいま非常にむずかしい時期に差しかかってきております。一方では、この長い不況の中でいかにして生き延びていくかという課題、他方では、これから安定経済成長の中にあって中小企業としてどういう活路を見出していくか、当面の問題あるいは中長期的な問題、両面をにらみながら、中小企業政策を進めていかなければならないという時期であろうと思います。  その意味におきまして、私どもも五十三年度の予算編成におきましては少し早目に準備を始めまして、この際できるだけの知恵を出してみようではないかということで、関係課が相当努力をいたしました。その結果といたしまして、従来いろいろございました制度の中で、使用実績等も勘案をしましてこの程度の伸びでよろしかろうというものは極力節約をいたしました。そのかわりに、少し新しい知恵を出そうではないかということで、たとえば倒産の共済制度でありますとかその他従来になかった新規事項がかなり含まれておるわけでございます。私どもは、こういう新規事項が新しい情勢に応じてうまく生かしていけるということを期待をいたしております。その意味におきまして、これから予算折衝の詰めに入るわけでございますが、この新しい構想を何とか実現まで持っていきたいというふうに考えておるところでございます。これらの諸制度につきましては、中小企業団体も非常に熱望いたしております。こういう期待にもこたえてまいりたいと思っておるところでございます。今後とも御支援のほどお願いいたしたいと思います。
  203. 宮田早苗

    ○宮田委員 中小企業問題についてもう一点お伺いをいたします。  政府も今国会に間に合わせるように、連鎖倒産防止共済制度というものを提出する準備をしておいでになると聞いておるわけですが、細かな点については審議の際お伺いするとして、二つほどお尋ねをいたします。  一つは、共済掛金の額でございます。零細中小企業者向けに一月三千円というコース、または倒産の大型化に対処するために二万円のコース、これを設けるべきだという声が非常に強くなっておるように思います。  もう一つは、末端の業務、これを商工会議所あるいは商工会、これだけでなしに業界団体にもやらせたらどうか、これは手続の簡素化というものもあると思いますが、その二点についてお願いいたします。
  204. 岸田文武

    ○岸田政府委員 第一点にお尋ねのございました連鎖倒産の防止のための共済制度の掛金の額につきましては、実はいま私どもも案を練っております最中で、断定的なことは申し上げられませんが、私どもは、基本的にはなるべく簡素な制度に持っていきたい、しかしながら、やはり実情はよく踏まえて決めていきたい、こう思っておるところでございます。当初の原案としまして、五千円コース、一万円コース、一万五千円コースと三種類の案を用意し、関係中小企業団体の意見も聞いておるところでございますが、率直に申し上げますと、低い方を設けろという声は余り強くないような感じもいたします。ただ、それとは逆に、もう少し限度を上げてほしいという声はいろいろなところから私どもの耳に入ってきております。そういうような実情も踏まえまして、最後の詰めをいたしたいと思っておるところでございます。  それから、第二点にお尋ねのございました実際の事務処理を行うときに商工会、商工会議所以外にいろいろな団体を使う道はないかという点は、私どももそういう道を開くことが実際に適するのではないかと考えまして、どういう団体を選ぶべきか、その辺のところの詰めをいまいたしておるところでございまして、少しく工夫をさせていただきたいと思うところでございます。
  205. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、わが国の鉄鋼輸出問題について通産大臣、また関係部局の政府委員にお伺いするわけですが、ここで私は、わが国の対アメリカ、対ヨーロッパ等の貿易の不均衡を論議をしようというふうには思っていないわけですが、主としてアメリカとの関係について二、三お伺いをするわけでございます。  アメリカのUSスチール社のダンピング提訴に見られますような、アメリカの鉄鋼輸入に対する強硬手段の背景についていろいろ観測がされておるわけであります。保護貿易主義の台頭だとか、米国鉄鋼業界内部の問題とか、あるいは政治問題だ、さらには日本、ECの輸出攻勢による失業問題、いろいろな要素が複雑に絡み合っていることだと思いますが、政府はこれをどう分析をして受けとめておられるか、まず、その点についてお伺いをいたします。
  206. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えをいたします。  わが国といたしましては、日米の鉄鋼貿易の重要性にかんがみまして、両者の安定的な関係を維持したいということに全力を傾倒いたしておるわけでございます。また、御指摘のUSスチールでありますとかギルモア等々のダンピングの問題は、性格的には個別企業の問題でありますとはいいながら、影響はきわめて大きいのでありまして、そうした見地から政府としても解決にできるだけの努力を尽くしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。  なお、本件につきましては、現地の方にも参りまして詳細検討を遂げ、また、帰りましてからもいろいろと本件につきまして担当いたしております政府委員から、詳細に御報告申し上げたいと存じます。
  207. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 アメリカで、日米間での鉄鋼貿易に関しまして摩擦が増大をいたしておるわけでございますが、これの原因につきましては、非常に複雑でございますけれども、第一番目に、石油危機以後、アメリカのみならず、世界全体の鉄鋼業が非常な苦況に陥っておるということが基本的な背景であろうと存じます。七四年の世界全体の粗鋼生産は七億九百万トンでございましたが、それが七六年には六億八千三百万トンというふうに落ちております。米国について見ますと、一億三千二百万トンであったものが一億一千六百万トンに落ちておる、そういう状況でございます。  他方、生産能力はふえておりますので、各国とも稼働率が低下をいたしまして、固定費の負担に苦しんでおる。特にアメリカについて見ますと、米国の鉄鋼業の設備の老朽化が著しく進んでおるわけでございます。したがいまして、米国の鉄鋼業としましては、いま新規設備投資をするということが大きな命題、課題になっておるのでございますけれども、ところが、米国国内におきまして公害の規制が非常に厳しい、そういう問題もございまして、新規設備投資のコストが非常に高くなってきております。ところが、世界全体で稼働率が低下いたしておりますので、アメリカに安い鉄鋼がどんどん入ってきておる。そういたしますと、とても新規設備投資などはできないのみならず、むしろ首切りまでやらなければいけない、こういう状況に現在なってきておりまして、米国の鉄鋼労使はいまや保護を要求する大合唱を行っており、米国国会の多数の議員が保護主義の方に引きずられておる、そういう状況でございます。  わが国といたしましては、自由貿易のたてまえを貫きたいところでございますけれども、しかし、日米鉄鋼問題が政治問題として紛糾することは回避しなければならないと思っておりますので、何らかの円満な打開策を講じたいと模索をしておるところでございます。
  208. 宮田早苗

    ○宮田委員 カーター大統領は、数量規制は求めない、こういうふうに言っております。あくまでダンピング法での処理を表明しておる、こう思います。そうなれば、調査段階で問題にされております六品目の原価公表が焦点になってくるのじゃないか、こう思います。日本業界輸出の自主規制を打ち出しているわけでございますが、政府としては業界をどう指導していくのか、この点についてお答え願いたいと思います。
  209. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 二国間の非常に複雑な問題でございますので、余り明確な御答弁もできかねるところもあるのでございますけれども、まず、数量規制について申し上げますと、われわれといたしましては、米国政府が希望しないと言っておることを無理に押しつけるということは、やはり無理があろうかと存じます。その上、仮に自主規制を日本がやればアンチダンピングの提訴が取り下げられるという保証もございません。さらにまた、日本が一方的にやった場合には、米国独禁法に抵触するおそれもございます。そういうわけで、米国政府の意向を無視して一方的な数量規制をやるということは、現段階においてはやはり問題があるのではなかろうか。将来へ米国政府の方でOMA等をやりたいという意向が出てまいりますならば、その際は前向きに対処したいというふうに思いますが、現段階で全く一方的な自主規制をやるということに関しましては、やはり慎重でなければならないのではなかろうかという感じがいたしております。  次に、アンチダンピングの問題でございますが、米国のアンチダンピング法二百五条のBによりますと、日本国内でコスト以下の販売が行われているかいないかということが問題になってまいります。で、提訴者はコスト以下の販売が行われているというふうに言っておるわけでございますから、日本として反論する場合には、コストに関するデータを出すということが必要になるわけでございます。ところが、日本企業といたしましては、当然のことでございますけれども企業秘密にまで触れるような莫大なコストに関するデータを米国に提出するということはできないというふうに断っているわけでございまして、これもまことにもっともなことであるというふうに思います。  しかしながら、今度は、完全にデータの提出を拒否いたしますと、米国の提訴手続上におきましては日本側が不利になるおそれが大きいわけでございます。したがいまして、私は、この問題につきましては余りかたい態度をとるべきではなくて、弾力的に対処する必要があるのではなかろうかと思います。たとえばコストに関しましても、個別の企業の個々の品目のデータに関する証憑書類等まで出すということはもちろんできないと思いますけれども、何か個々の企業の財務諸表等に基づくような、やや一般化されたデータというようなものは出す余地があるはずでございますから、その辺は弾力的に対処すべきではないか。しかしながら、これは基本的には個々の企業の判断に属する問題でございますから、私たちはそういうことを勧めてはおりますけれども、それで特にぜひともそうしろというようなことまでは申しておりません。
  210. 宮田早苗

    ○宮田委員 すでにダンピングの事実ありとして仮決定されている厚板、中板、このケースから見ましても、USスチール社の提訴の前途も厳しいと思う見方があるわけです。最悪の場合を想定して、対米輸出製品の大半が影響を受けるようになりますと、日本の鉄鋼業の生死にかかわるというふうに思うのです。アメリカ政府日本メーカーとの関係ということで放置しておけないのじゃないか。まさに二国あるいはまたEC諸国を入れた多国間の政治問題、こういうふうに見るわけでございますが、その点政府はどう考えておられるか、お聞きします。
  211. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 最初申し上げましたように、私どももこの鉄鋼貿易問題が紛糾するということは非常に憂慮しておるところでございますから、何らかの解決策、打開策というのは考えなければならないと思っております。  ただ、この問題は相手があることでございまして、いわば相撲の立ち合いのようなものでございまして、一方だけが立ち上がるというわけにはまいりませんので、今後米国等の出方をよく見ながら、弾力的に対処したいというふうに思っております。
  212. 宮田早苗

    ○宮田委員 やはりこのアメリカとの問題は、ECを含めてでございますけれども、一番問題になりますのは、お互いがそれぞれの立場の理解不足にあるのじゃないかという気もするわけなんです。そういう意味におきまして、政府がとっております措置は十分と言えないのじゃないか。アメリカでの設備老朽化といいますか、高炉一本とりましても、もう十五年前の高炉がほとんどでございましょう。あるいはまた投資意欲を怠ったという問題もございましょう。わが国の労使で努力しておりますその実態、こういう問題についても思い切って十分に理解をさせる活動というのが特に必要じゃないか、こう思っておるわけです。そういう面について、きょうお答えをいただこうと思いませんが、十分留意をしていただくようにお願いをする次第です。  最後でございますが、私は、通産大臣に御所見を承っておきたいわけです。  アメリカの鉄鋼輸入規制の強い姿勢は、ただ鉄だけの問題としてとらえるべきでない、こう思います。カラーテレビと特殊鋼が輸入制限品目となっておりまして、いま鉄鋼に波及してきておるわけであります。ダンピング提訴問題をどう扱うかといった直近の問題解決に全力投球しなければならない、これは当然でございますが、要は、中長期にわたる日米またヨーロッパの三極経済関係をどうするかを政治は絶えず考えなければならぬ、こう思います。これからの経済外交にこれは特に必要と思いますが、どう推進するおつもりか、この点をお答え願いたい。それで私の質問を終わります。
  213. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御質問いただきましたことは非常に重大な問題でありまして、特に鉄鋼関係のごときは、日米関係において現在懸案がございますと同様に、ECに対しましても対米関係同様の問題がございます。もちろん日米の関係は日米の関係、また、ECの関係はアメリカとECの関係でございますが、とは申しながら、やはり立場の上から申しましても、あるいは今後の外交政策の上から申しましても、緊密な連絡を必要とすることは申すまでもございません。先般も、ECのジェンキンズ委員長が見えましたときにもそのような話もいたしましたような次第でございますが、しかしながら、わが方といたしましては、アメリカのこういった保護貿易主義の動きに対しましては、あくまでもよく理解を深めて、そうして誤解がないように、また、自由貿易体制というものを今後ともに堅持してまいりたいという心持ちで、外交的にもあるいはまた通商的にも当該案件に対しましては考えております次第でございます。
  214. 野呂恭一

    野呂委員長 工藤晃君。
  215. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 私は、日本共産党・革新共同を代表して、最初に円高の問題について特に企画庁長官に伺いたい問題があります。長官おいでですか。
  216. 野呂恭一

    野呂委員長 もうすぐ来ますから、後にしてくれませんか。
  217. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) それでは、その問題は後にすることとしまして、本年一月一ドル二百九十二円だったのが、いまや昨日は二百五十一円と高値を更新して、この切り上げ幅が一六・三%になりますが、これはあのニクソンショックのとき、三百六十円がスミソニアンの三百八円へ切り上げられたときの一六・九%の幅に匹敵する大幅なものであります。しかも、そのときも不況のときと重なりました。そういう意味で共通性がありますが、今回は比較にならない深刻な長引く不況である。そういうもとにこの大幅な切り上げが行われたわけであります。そして、九月三日の総合経済対策が実は一ドル二百六十八円のときの対策であって、その後の切り上げの影響を考えるならば、その効果と言われるものもきわめて薄くなるということが言われております。  昨日来、この委員会におきまして、各業界の代表者に参考人としておいでいただきまして、大変貴重な意見が述べられましたが、そこでも、結局円問題は、二百五十円にもなったこのもとでの不況に対してどういう緊急対策をやるかという問題と、もう一つの問題としまして、そもそもこんなに二百九十二円からずるずる切り上げられていく、こういうことに対して歯どめができないのか、こういうことでも御意見が出されたと考えます。中小企業庁が行った五十二年十月十九日の産地における円高影響調査を見ましても、「採算レートは、二百七十五円又は二百七十円とする産地が多い。」このように伝えられております。  そこで、私がきょうここで質問したいことは、このように円がずるずると切り上げられたこと、あるいは今後もそうなるおそれに対しての対策ということを中心にして、まず質問したいわけであります。  実は、この円高がどう起きたかということを最初に企画庁長官にもいろいろ伺いたかったのですが、その質問は後にすることにいたしまして、今度の円高が実はアメリカからの官民協調と言われるような対日攻勢、一つのシナリオ、作戦を持った攻勢のもとで行われたことはもう明らかであります。ブルメンソール米財務長官の円の相場に影響を与えた発言を考えてみても、たとえば六月二十四日、九月二十九日、それから十月十三日、これは後で取り消したと言われておりますが、そういうふうに続いておりますし、あるいは八月半ばにはニューヨーク連銀の前副総裁のチャールズ・A・クームズ、この人は外国為替の専門家でありますが、この論文は、ともかく円をねらい撃ちして、円だけを切り上げさせろ、全般的にやるとドル自身が危なくなってしまう、これが作戦として行われたわけであります。  これほどアメリカ側の日本に対する攻勢がはっきりしていたにもかかわらず、日本政府、特に通貨政策をとる責任である大蔵省並びに日銀は一体どういう対策をとったのか。今回の円急騰時における政府、日銀の介入姿勢を見ると、明らかに、二百五十円に近づいてから初めて本格的介入に入ったと見られるわけであります。それは、たとえば森永日銀総裁の十月五日の記者会見を見ても、投機的動きがあるけれども実勢に任せるんだ、この方針を貫く、こういうことを言っておりますし、また、投機的な動きもりっぱな需要であるから、市場の需給の実勢に任せる、こういうことが伝えられましたし、少なくとも十月十四日ごろまでの報道を見ますと、日本銀行総裁の言明は不介入の方針であった。ところが、その後十月十八日、参議院予算委員会で日銀総裁は、今後とも投機的な乱高下に対してはちゅうちょなく介入し、市場の平穏化を期すると、ここで初めて積極的に介入する。ちょうど二百五十円に近づいたところであります。  そこで、私は大蔵省に——きょう、実は日銀総裁に参考人で出ていただくことを要望しましたが、海外へ行かれるというのでそれができませんでしたが、なぜ二百六十円で本格的介入しないで、二百五十円になってからやっと本格的介入に出たのか、その政策の根拠は何か、これを私は質問するものであります。
  218. 宮崎知雄

    宮崎(知)政府委員 お答え申し上げます。  最近の円高原因でございますけれども、これには二つあると思います。やはり日本の国際収支の黒字が非常に大きいということが一つでございますし、もう一つは、アメリカの国際収支の赤字が非常に大きい、また来年もこの赤字が続いていくのではないかという、そういう二つの原因が特に今回の円高の背景にあるわけでございまして、ただいま対日的な戦略で円が上がっているんだというふうなお話がございましたけれども、私どもはそういうふうには見ておりません。  それから介入の点でございますが、御承知のように、わが国は、ただいま為替相場政策につきましては変動相場制を採用しております。それで、これは御承知のことと思いますが、IMFの理事会で決定しましたそのフロートのガイドラインというものがございまして、フロートの制度の場合には為替相場というものは市場の実勢にゆだねる、そして市場に乱高下があった場合には、それを防止ないし緩和するために介入を行わなければならない、こういう国際的な一つルールがあるわけでございまして、私どもはそのルールにのっとって従来ずっと為替相場政策を行っております。これは本年初めから最近に至りますまで同じ政策で、このルールにのっとって介入政策を行っているわけでございます。
  219. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) その市場の介入を、いま乱高下ということを言いましたが、その日の市場の乱高下だけで介入するというのは大変おかしいわけでありまして、先ほど言いましたように、二百七十円からどんどん切り上がっていく、これが日本不況に対して、とりわけ中小企業に対して非常に深刻な影響を与える、そのときに、ただその日の乱高下を抑える範囲の介入というような政策は、これは大変奇妙なものであります。しかも、先ほど私が指摘しましたように、二百五十円ぐらいまできたときに介入に入ってきたということが、これまでの毎日の特に東京市場の動き方を見ておりますとわかるわけでありまして、したがって、二百六十円段階では介入が行われず、二百五十円になってやっと介入が行われた、こういう問題があるわけであります。  ところで、大変短い時間なので、私は、一つの重要な事実をここで質問しなければならないのですが、わが党が得た商社筋からの信頼すべき一つの情報としてこういうことがあったわけであります。商社は十月六日の朝から一斉にドル売り円買いの投機に出ました。なぜ出たかというと、それは、十月五日に松川財務官が帰国された。その松川財務官はIMF総会に出られ、そして七カ国の高級官僚会議にも出席した。それで、この松川財務官が帰国してから直ちに省内会議が開かれて、そして福田総理にあることを報告し、了解を求めたんだ。じゃ、どういうことを了解を求めたかというと、円は二百五十円まで持っていくことを合意してきたということがそこで了解を求められたんだ。それが商社の側の反応としては、たちどころに、二百五十円まで上がるからというので、十月六日一斉に、これは午前中に集中するわけですが、ドル売り円買いに走ったわけであります。  私は調べてみましたところが、東京市場の直物の出来高を十月三日以後ずっと見ますと、五億二千四百万ドル、四日が四億八千四百万ドル、五日が三億二千百万ドル、六日が七億五千百万ドル、このように異常な円買いが集中したわけであります。  そこで一つ問題なのは、もちろん、これでそういう密約があったということを私はここで断言しているわけではありませんが、あの当時盛んにこういううわさがあって、それが新聞記者会見などで否定されてきたわけでありますが、ここで改めてこういうIMF総会における二百五十円までは認めるというような密約があったのかどうかということに対しての疑惑を私は持たざるを得ません。それで、仮にそういうことがあって商社に漏れたとすればこれは重大問題になるし、仮になくて単なるうわさであるということであったとしても、少なくとも商社の間でそういうことが内部で問題とされ、それが十月六日の異常な投機に走った、その動機になったということだとしても、あの当時こういううわさがあったのですから、なぜ政府の方はこのうわさをはっきり否定する、これは記者会見なんかで否定するというのでなしに、それこそこれに対して立ち向かうということで対応しなかったのか。以上の点について私は伺いたいわけであります。
  220. 宮崎知雄

    宮崎(知)政府委員 お答えいたします。  ただいま御質問ございましたアメリカとの間で何か為替相場一ドルを二百五十円台に持っていくというような約束は、一切ございません。そのことは、一部IMF総会の末期ごろにアメリカの方でうわさが出まして、それにつきましては、アメリカ現地で松川財務官が記者会見を行いまして、その席上で、はっきりそういう事実がないということを表明しております。
  221. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いずれにせよ、この六日に大変な投機が殺到したということは明らかでありますし、その中心は商社であります。そして、その商社の中で、先ほど言いましたようなことが、それだからわれわれはこういう行為に走ったんだということがはっきり出されている情報、しっかりした情報を私たち持っているわけでありますから、そうである以上、いまお答えになったこと以外の、このころの商社がどのような投機を行ったのか、なぜそういう投機に走ったかということは、大蔵省並びに通産省の方でどうしても調査していただきたい、このように要求するものであります。
  222. 宮崎知雄

    宮崎(知)政府委員 私どもも、毎日毎日の市場の動き、それからそれの原因がどこにあるかというようなことについては、従来からずっと調査をしております。為替銀行あるいはその他のルートを通じて私ども調査をしておりますが、現在までのところは、商社筋の動きにつきまして、たとえば輸出前受金の動きというようなものを見ましても、従来の月とそれほど大きな変化はございませんし、それからまた、輸出予約、輸入予約の動きも大体バランスしているというような状況でございまして、現在までのところ、私どもは商社筋がそういう投機的な動きをしているというふうな心証は持っておりません。どちらかといいますと、海外からの円に対する需要というのが非常に強いということが一つの大きな原因になっております。
  223. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 通産大臣、どうですか。
  224. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御指摘でございますが、こういうふうな円高についての思惑的な行動があったかないかというようなことでございまするが、これはむしろ、どうも私の方と申しまするよりも、通貨当局の方でお調べを願い、お答えを願う以外にはないと存じます。
  225. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いまのお答えは二つとも大変不満足でありますし、この調査を改めて要求するものでありますが、時間が少なくなりましたし、企画庁長官最初においでの予定が質問が後になったため、もっとゆっくり質問したい問題がありますが、きょう委員会理事会の許可を得まして資料を配りましたそれに基づいて、いまの円高原因と背景の問題について最後に質問をいたします。  それで問題は、もしアメリカと日本と比べて、アメリカの方がインフレが激しくて日本の方がおとなしい、それで円が強くなるというならば、ある意味では経済の実体の反映なのですが、これはお渡ししていない資料で、スミソニアンのレートが決定された七一年十二月を基準としてことしの八月の卸売り物価を見ますと、日本は一七一、アメリカが一六九とほとんど同じでありますが、消費者物価は日本が一八九、アメリカが一四九と日本のインフレの方が大変激しいわけであります。したがって、いまの円が強いという問題は、円の方がインフレを激しく起こしたにもかかわらず、為替レートの関係では逆の結果が出てくるということになるわけであります。  そしてそのことを考えるときに、いま変動為替相場制ですべてが相対的になってしまっているというときに、日本の側の問題だけでなしに、アメリカの側の問題もはっきり見なければならないということで、アメリカの国際収支の表をここに配ったわけでありますが、時間の関係から調査結果について要約して述べますと、アメリカの国際収支を見ますと、七一年から七六年まで、経常収支は七五年を除いて全部赤字である。  その要因に入ってきますと、貿易収支が赤字の年がこの間四年間もあるわけであります。そして、一方において投資収益のバランスを見ますと、実に一九七六年なんかは百四十四億ドルと異常にふえております。海外からの投資収益はますますふえております。そして、この投資収益のバランスと貿易収支とを比べますと、こちらの方が多いのですから、本来経常収支が黒字になっていいのですが、なぜそこが赤字になるかというと、その後の(a)、(b)、(c)の項目、直接防衛費、軍事贈与、政府贈与、これがベトナム戦争にアメリカが敗れて以後も実際上まだかなり多い、こういうことになってくるわけであります。  それから、貿易収支がなぜ悪くなってくるかという問題で、第二表の中にアメリカからの輸出とアメリカの多国籍企業の海外子会社からの売り上げの比較を見ますと、アメリカの企業というのは、いまやアメリカ本国で製造したものを輸出する国ではなくて、海外へ進出した子会社の売り上げ、輸出というのが、このように本国からの輸出を大きく上回るようになってきているわけであります。  それに加えて、いまのアメリカの貿易収支の悪化の理由というのは、言うまでもなく石油輸入でありまして、最近の備蓄政策によって七五年は二百四十八億ドル、七六年は三百十八億ドルと、七十億ドル増にもなっているわけであります。  そしてこれに加えて、第一表にもあるように対外投融資が異常にふえているということで、これがまたドルのたれ流しになってきているわけであります。  したがって、日本の円問題を考えるときに、日本の自動車とかカラーテレビとか一部の巨大産業、巨大企業の国際競争力が余りにも強いという問題に対して、われわれは輸出均衡税くらいかけろということも言っているのであります。それと同時に、アメリカの国際収支がこういうふうな最近の経済構造の変化、それから力の政策の継続などによって悪化している、それ自体もうアメリカの責任で解決すべきものまで日本にしわ寄せされて、そして日本の為替がつり上げられる、こういうことになってきているわけであります。  そういうことで、企画庁長官に最後に伺いたいことは、こういうアメリカの国際収支問題、アメリカ自身の責任に対して政府はどう見ているのか、これまでアメリカに対してこの問題でどのようなことを主張してこられたのか、この点を最後に質問したいと思います。
  226. 倉成正

    ○倉成国務大臣 先生からいただいた資料、サーべー・オブ・カレント・ビジネス、何月号を御引用になったかよくわからないわけでございますけれども、この中で、対外投融資については資本収支に入るものではなかろうかということで、経常収支……(工藤(晃)委員(共)「政府資本と民間資本、アメリカの資本です」と呼ぶ)アメリカの資本でございますか。——それから、直接防衛費は移転収支の概念に含まれるのじゃないかと思いますけれども、いずれにしましても、この表をいただきまして、これをもう少しチェックしないと私ども十分論評することはできないと思うわけでございます。  要するに、工藤委員お話は、アメリカの国際収支の赤字が石油の備蓄政策であるとかその他の政策によって出ており、それがドル安をもたらしている、それをどう思うかということに尽きるんじゃなかろうかと思います。この点は、他国経済政策、石油の備蓄政策等について私どもが批判する立場にございませんので、ここで論評は差し控えたいと思いますけれども、国際経済全体の中で望ましい通貨の安定ということは私どもの関心事でございますから、いろいろな会議の席上で通貨当局等がいろいろ話し合うことはあろうかと思いますけれども、いま私の立場で、アメリカのとっております現在の政策について、これは適当でない、これはいかがかということを論評するのは差し控えさせていただきたいと思います。
  227. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 時間が参りましたので、このあとの質問はこの後の一般質問で続けさせていただくこととしまして、きょうは為替差益、差損のことでおいで願った方もございまして、質問がそこまでいかなくて失礼いたしました。  これをもって終わります。
  228. 野呂恭一

    野呂委員長 大成正雄君。
  229. 大成正雄

    ○大成委員 最後でございますので、焦点をしぼりまして御質問申し上げます。  最初に、石油化学の現状と問題点について、大臣並びにエネ庁の長官、それから基礎産業局長に御質問を申し上げます。  先ほど来の御答弁を承っておりますと、ともかく政府不況対策として話し合いをしてもらう、そして場合によったら調整に乗り出す、こういうことだということでございますけれども、今日のナフサ価格の国際指標との対比実態等からしますと、明らかに石油業法十五条の発動をしてしかるべき状態ではないか。十五条の内容は、皆さんよく御存じのとおりでありますから朗読しません。その十五条に定めておる内容、文言等からしましても、明らかにこれは標準価格を新たに設定して一つ業界の秩序をつくるべきだ、こういう判断をしてもしかるべきだと思います。特にエネ庁長官先ほどの御発言は、去る八日の石連と石化との話し合いの中における情報として伝えられる石連側の言い分そのままであるというふうにも理解していいと思うのでございます。  そこで、通産大臣はこの十五条の発動はなぜしないのか、あの条文に照らしてまだそこまで行っていないという判断の根拠は何なのかを承りたいと思います。
  230. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  法律上の発動の要件と申しますものは、「石油製品価格が不当に高騰し又は下落するおそれがある場合」ということでございますけれども、ただいまわれわれが考えております段階は、為替の非常な変動がございますけれども、これはいま直ちにその発動をするというような気持ちは持っておりません。むしろ、この円高の傾向を見守りまして、同時に業界同士の話し合いというものを促進してまいりたい、かように考えております。
  231. 大成正雄

    ○大成委員 大臣のおっしゃるように、確かに円高によって拍車がかけられたことだけは事実です。しかしながら、今日のは、円高によって四、五千円ぐらいのギャップがさらに七千円を超えるようなギャップになってきたという、より一層その状態を悪くしたという問題だと思うのです。特に十五条制定の趣旨から言うならば、石油の関連商品の価格というものは自由な競争によって決められるということが正しいと思うのですが、一方において二万九千円ということでふん縛っておき、また、石化業者には輸入権も与えないで自由競争をしろと言ったって、これは自由な価格ができっこないと思うのです。ですから、完全に競争の自由が奪われているという認識のもとで考えるならば、これは十五条の発動に値するような状態ではないかと思うのですが、もう一回、大臣ひとつ。
  232. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のとおりに、ナフサ輸入の枠につきまして七百五十万トンを九百万トンに、再五十万トンの増枠をいたしたような次第でございます。なおまた、これの輸入につきましても、業界同士話をしていただくように、われわれの方からは両者の方に働きかけておる次第でございまして、かような問題は、できる限り円満な業界相互の信頼と、また日本経済に対しますまじめな考えからのお話し合いの妥結を期待してやまないものでございます。
  233. 大成正雄

    ○大成委員 基礎産業局長に承りたいと思うのですが、この精製側と石化側との話し合い、特に精製系の石油化学との内々の話し合いが進んでおるのじゃないか、千円か千五百円あるいは二千円ぐらいの値下げでどうだというような話し合いが進んでいるというように聞いておりますが、そういった話し合いがあるのかどうか、また、そういった一部の話し合いを認めるのかどうか、これをお聞きしたいと思います。
  234. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 石油精製糸の石油化学会社は、石油精製会社の一〇〇%の子会社でございますので、その間の内部の経理、決済がどういうことになっておるかということにつきましては、われわれは的確な情報を得ておりません。
  235. 大成正雄

    ○大成委員 それで、エネ庁の長官にいまのことを承りたいと思います。
  236. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 私たちの承知いたしております限りでは、需給両当事者に個別に話し合いをしておるという段階でございまして、まず一律的な話し合いでないことは当然でございます。その進捗状況等につきましては、まだ必ずしもはかばかしくはないようでございますが、両当事者で良識のある健全な解決点が見出されるものと期待しております。
  237. 大成正雄

    ○大成委員 過般の政府の決定として、ナフサ輸入の拡大の問題が打ち出されております。先ほども百五十万トン輸入枠を広げる、こういうことでございますが、この輸入枠を広げることについて、この輸入権者である石油精製業界はこれを了解し、なおかつこれに協力する考え方であるのかどうか、承りたいと思います。
  238. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 御承知のように、ナフサは自由化されておるわけでございますが、石油製品は互いに連産品の関係にあるわけでございまして、各種製品ともに安定的供給を確保しなければならないという立場からいたしまして、いわゆる石油の供給計画に基づきまして画的に輸入いたしておる、こういう段階でございまして、石油業界が入れてやるとか入れてやらないといった問題ではないわけでございます。
  239. 大成正雄

    ○大成委員 政府計画の枠は広げたけれども、自由化されておるのだから、輸入業者が、輸入したいという人たちが輸入したくないと言えば、それだけ政府施策効果が出ないということでしょうか。特に、石油業法によりますと、輸入する場合には十二条によって輸入計画の届け出をすることになっております。その点はどうでしょうか。
  240. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 石油製品の供給計画に基づいて計画的に輸入をやることは、私たちといたしましては、内外の需給状況を見ながら、需給両当事者の愚見を徴しながら、その範囲内において輸入いたしていくことにしております。御指摘のように、そういったものについて、輸入する人については届け出を受理するという形で、いま申し上げましたような計画輸入との関係をチェックしておる、こういうことでございます。
  241. 大成正雄

    ○大成委員 もう一回長官にお伺いしますが、そうすると、政府の出した方針は、場合によったら、いまのナフサの需給の実態等からしても実行されない場合もあるということでしょうか。
  242. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 いまの情勢からいたしまして、私は百五十万トンの増量手配はできるものと思っております。ただ、御理解いただきたいのは、国内における各種連産品との関係もありますが、よく例に出されますロッテルダム——EC全体でナフサの使用量はせいぜい三千万キロリットル程度でございます。ロッテルダムで扱っておるものはその八%程度と承知いたしておるわけでございますが、一挙に多くのものを輸入するようなことをいたしますと、他の国に影響を及ぼす、あるいは価格が必要以上に上昇するという問題がございますので、私たちといたしましては、当面、方針として決定いたしました百五十万キロリットルの輸入手配状況を見ながら、さらに必要とあらば、国内の各関連産品との調整がつくならば、その時点において弾力的に対処したい、かように思っておるわけでございます。
  243. 大成正雄

    ○大成委員 次に、ナフサの国際価格石油化学業界の国際競争力の問題について承りたいと思うのです。  政府が国際指標として最も信頼するという、ナフサの国際価格は何を根拠にしておられるのですか。
  244. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ナフサにかかわりませず、石油の各種製品価格は、それぞれの国あるいは地域の需給状況によって違ってくると思います。日本のエネルギーの需給構造とアメリカあるいはEC諸国との需給構造は異なるわけでございますから、その限りにおいて価格は必ずしも一致していないというのがむしろ現実じゃなかろうかと思います。  国際的な水準は何かと言われても、そういった意味では少々困るわけでございますが、一般世上的に言われておるのはロッテルダムの価格でございます。ただ、これは先ほど申し上げましたように量的に少ないということと、それからどちらかというとスポット的な価格であるということ、それからナフサにかかわらずLNGあるいは天然ガス、こういったものとの需給関係がロッテルダムプライスとして出てくる、反映しておると私たちは理解しておるわけでございます。
  245. 大成正雄

    ○大成委員 いまの常識的な考え方からするならば、スポット物は別として、長期契約物の価格として、ともかくいまの円ドル平価で計算していけば七千円を超える差があるとわれわれは理解しているし、業界の皆さんもそう言っておられるわけであります。  そこで、基礎産業局長さんに承りますが、日本石油化学の国際競争力を推しはかるそのナフサ価格の根拠は何に求めておられるのですか。
  246. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 日本石油化学の国際競争と申します場合に、一つの相手はアメリカの石油化学工業であり、もう一つの競争相手はヨーロッパの石油化学工業、こういうことになります。  ところで、アメリカの石油化学工業はその原料を主として天然ガスに依存をいたしておりますので、この天然ガスの価格ナフサに換算いたしますと、おおむね二万一千円くらいのところではないかと考えます。したがいまして、日本とアメリカの石油化学工業及びアメリカとヨーロッパの石油化学工業の間では競争力に相当の差がございます。したがいまして、現段階では、アメリカの石油化学工業と日本石油化学工業とが全くフリーハンドで競争いたしますと、日本は相当なダメージを受けることになるだろうと思いますが、これはアメリカの国内における天然ガスの価格政策によっておりますので、ある意味ではいかんともしがたい問題でございます。  他方、ヨーロッパの石油化学と日本石油化学とは、いずれもナフサを原料にいたしております。このナフサのもとは中東から来る油であるということになりますと、おおむね同じ条件であることになるわけでございます。ところが、ヨーロッパのナフサ価格は、現在日本と比べまして数千円安い、こういう状況になっておるのでございます。  この際、ヨーロッパのナフサ価格の一体何を競争の指標にすべきかという御質問かと存じますが、われわれは、ヨーロッパの石油精製会社と石油化学会社との間で取引されている長期契約物の価格、コントラクトプライスと言っておりますが、コントラクトプライスを一つの指標とすべきではなかろうか、一番有力な指標とすべきではなかろうかと思っております。
  247. 大成正雄

    ○大成委員 そうしますと、有力な指標という表現は、一つの有力なよりどころというふうに解釈してもいいと思うのですが、そういう意味で、日本石油化学の国際競争力を見た場合には、今日大変な状態であることは御理解のとおりであります。基礎産業局の石油化学工業国際競争力研究会の中間報告によりましても、わが国の石油化学の輸出がもし仮にゼロだとした場合に、生産額の減少が約四兆円、雇用の変化、失業は潜在失業等を含めて三十五万人、局長のところの資料にそういう数字が出ておるわけでありまして、そこに誘導製品等も含めての大きな背景を持っておるこの業界の今日の実態に対して何らかの対処をしていかなければならない、こういうことでいろいろとお聞きを申し上げておるわけであります。  そこで、先ほどアメリカ、ヨーロッパの状況お話しされましたが、サウジであるとかシンガポール、イランあるいは韓国、こういったところの石油化学プラントがフルに動き出して、そして国際シェアに割り込んできた場合に、今日の状態において日本石油化学というものは成り立つのか成り立たないのか、その輸出競争力がゼロなのかあるいはまだ幾らかプラスがあるのか、その辺のところを承りたいと思います。
  248. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 いま先生が御指摘になりました幾つかのプロジェクトのうち、最も現実化するのが早いのが韓国と次いでイランでございます。ところが、韓国及びイランにつきましては、相当の国内のマーケットを持っておりますので、余り輸出市場に出てくることはないであろう、要するに輸出市場に対する影響度というものはそう大きくはないであろう、こういうふうにわれわれは考えております。  次に、シンガポールにつきましては、現在のところまだ誘導品に関する計画はでき上がっておりませんわけですから、一体いつごろになってこの誘導品がどういう形で動き出し、どの程度マーケットに影響を与えるかということは、現段階におきましては予測困難でございます。  さらに、サウジアラビアにつきましては、まだフィージビリティースタディーも行われていない段階、これから検討しようということでございますから、いまのところ、サウジアラビア計画が一体世界市場なり日本なりにどういう影響を及ぼすであろうかということを予言することは困難でございます。  したがいまして、いまのところは、むしろこれから将来の世界の石油化学需給において非常に大きなインパクトを持つのは、多分アメリカであろう。何となれば、先ほど来申し上げておりますように、アメリカの石油化学が原料等におきまして非常に有利な立場に立っておるからでございます。もっとも、この有利性というのは次第に時とともに縮まる可能性もあると思いますけれども、現段階で考えますと、アメリカの石油化学の動向がむしろ大きな影響を持つのではなかろうかというふうに思われます。
  249. 大成正雄

    ○大成委員 大臣に承りますが、いま石油化学業界は、ナフサ輸入権を石油化学にも与えてもらいたいということを言っておるわけです。同時にまた、ドル建て円払いにしてもらえないか、こういうことであります。同時にまた、この円高の問題は別として、円安になった場合にそのリスクももちろんしょうという決意でそういったことを言い出しているわけでありますが、この石油化学に輸入権を与えるとかあるいは円建ドル払いにしていくとか、そういったことに関して、大臣、これは直接大臣の許可ということになるのでしょうけれども、その最高の責任者としてどのようにお考えでしょう。
  250. 田中龍夫

    田中国務大臣 御質問の点につきましては、私どもの方に、まだ何も正式にも、またあれにも参っておりません。さような関係のみならず、当該案件は非常にデリケートな問題でございますので、エネルギー庁長官の方から詳しくお答えさせていただきます。
  251. 大成正雄

    ○大成委員 では、ただいまの点は、ひとつ長官からもお答えをいただきたいと思います。  それで、せっかく長官が御答弁いただくのでしたら、先ほど、この円高差益の還元の問題で、民族系の企業の赤字が七百億くらいあるんだ、こういうことでありますが、一体全体この石油の関係のそういった民族系赤字の七百億、これをナフサ価格で何とか吸収していかなければならないという、そういう責任があるのかどうか、また、そういう筋合いのものなのかどうか、このことをひとつ承りたいと思います。  同時に、だぶつきぎみであるし、激しい販売競争下に置かれておる、バッタ物なんかもずいぶん出回っておるようでありますが、ガソリンの価格、これとの関係についても、ひとつついでに御答弁を願いたいと思います。
  252. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 まず、輸入権の問題でございますが、いわゆる輸入権なんてあるのかないのかという問題がございますが、先ほどお答えいたしましたように、輸入に当たっては、計画的に安定的に輸入するという方針をとっております。そういった観点から、国産の各樺製品との関連性を結びつけて考えざるを得ないということもございまして、いまのところ、石油関係企業輸入をするというたてまえをとっておるわけでございます。  それから、ドル建て円払いの問題は、これはやはり需給両当事者で支払い条件一つとして決めるべき問題でございまして、われわれの立場からそれに対して肯定否定をすることはなかろう、かように考えるわけでございます。  それから、民族系の赤字をナフサで消すのか消さないのかというお尋ねでございますが、そうした直結した問題ではないわけでございまして、かつて、四十九年、五十年を通じまして、資産償却等で、資産を処理することによって二千億円程度の処理をいたしておりますが、それでもなお経常損失といたしまして二千億円の赤字を持っておったわけでございます。それがようやくにして、ことしの三月末におきまして、民族系に限って申し上げると七百億まで減ってきておる、こういうことでございます。これをナフサ価格を下げないでカバーするといったような問題じゃございませんで、現在の為替メリットと、それから他方コストアップ要因、これはお互いに相殺する関係にあるわけでございますが、そういった関係を見ながら、石油が安定供給できるかどうかというような観点も取り入れて判断すべき問題だと思います。  それから、四番目に御指摘のガソリン価格の問題でございますが、どちらかといいますと、軟調ぎみと申しますか、本来あるべき価格よりも若干下回っているのじゃなかろうかというのが私たちの認識でございまして、これは七、八月ごろに若干需要が停滞いたしまして、供給過剰ぎみになっておるといったものが、現在その影響として出てきておるのではなかろうかと思うわけでございますが、私たちといたしましては、昨年国会を通過いたしましたいわゆるスタンド業法等によりまして、安定的に業界の秩序が維持されるように指導してまいりたい、かように考えております。
  253. 大成正雄

    ○大成委員 時間が来ましたので、他に予定している質問は全部次回に繰り越すとしまして、一つだけ最後に承りますが、もし石油化学が、国の需給計画の枠内において、そしてナフサ輸入をしたいという意図のもとに、また、それを受け入れるべきタンクやバースその他の設備もして申請を出した場合に、法律には石油化学には許可しないとは書いてないわけですから、これは許可することもあり得るということでしょうか。その辺の解釈を承りたいと思います。
  254. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、いわゆる石油の供給計画の中で適正な輸入量を決定していくといたしますと、結局は、国内での精製業者が、各種石油製品について、どのような得率でどのような量を生産するかということと直接関連して考えざるを得ないということでございますので、そういった立場でわれわれは輸入計画的に秩序正しく導入できるように対処してまいりたい、こういうことでございます。
  255. 大成正雄

    ○大成委員 いまのような御答弁では、結局自由な競争によって価格が成り立つというわけにはまいらないし、結局は、石油化学だけがこのバーゲニングパワーを全く失ったまま、その力関係で振り回されなければならぬということになろうかと思います。  この是非その他については、次回にもう一回論議をさせていただきます。  終わります。
  256. 野呂恭一

    野呂委員長 次回は、来る二十八日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時二十分散会