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1977-11-17 第82回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月十七日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 島本 虎三君    理事 登坂重次郎君 理事 林  義郎君    理事 向山 一人君 理事 土井たか子君    理事 中井  洽君       相沢 英之君    永田 亮一君       阿部未喜男君    木原  実君       矢山 有作君    坂口  力君       竹内 勝彦君    東中 光雄君       工藤  晃君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁企画調整         局長      信澤  清君         環境庁企画調整         局環境保健部長 山本 宜正君         環境庁自然保護         局長      出原 孝夫君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         環境庁水質保全         局長      二瓶  博君  委員外出席者         法務省刑事局総         務課長     吉田 淳一君         厚生省環境衛生         局食品化学課長 宮沢  香君         厚生省環境衛生         局水道環境部水         道整備課長   山村 勝美君         厚生省環境衛生         局水道環境部環         境整備課長   森下 忠幸君         厚生省医務局国         立療養所課長  北川 定謙君         建設省都市局下         水道部下水道企         画課長     高橋  進君         参  考  人         (本州四国連絡         橋公団総裁) 尾之内由紀夫君         参  考  人         (本州四国連絡         橋公団理事)  蓑輪健二郎君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月十七日  辞任         補欠選任   上田 卓三君     木原  実君   田口 一男君     矢山 有作君 同日  辞任         補欠選任   木原  実君     上田 卓三君   矢山 有作君     山本 政弘君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  公害対策並びに環境保全に関する件      ――――◇―――――
  2. 島本虎三

    島本委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
  3. 林義郎

    ○林(義)委員 きょうは私は、公害健康被害補償制度についで若干の質問を行いたいと思います。  この制度につきましては、当委員会でも、いろいろと問題のあるところが野党の諸君からも種々論議をされてきたところであります。  そもそもこの制度は、被害救済迅速化目的として、昭和四十八年の十月に制定され、以来環境庁並びに関係各位、各方面からのいろいろな御努力によって、指定地域内の多数の認定患者に対する補償給付等を通じて、疾病の軽快、治癒の促進が図られてきたことは、環境行政に関心を持つ者として、非常に喜ばしいことだと思うのです。率直に言って、この制度は、世界的にも例を見ないような制度でありますけれども日本の置かれた立場として、評価をしていいのだろうと思うのです。  本制度には、大気汚染による非特異的疾患患者救済目的とする第一種地域と、大気汚染または水質汚濁による特異的疾患患者救済目的とする第二種地域とがありますが、第二種地域の方はさておきまして、きょうは第一種地域に関してお伺いしたいと思います。  この制度をつくったときには、そもそも本制度は、法第一条に定められておるように、「相当範囲にわたる著しい大気汚染」による健康被害に係る損害をてん補するものとされておりますけれども官民一体公害防止努力の結果、大気環境濃度SO2を中心として著しく改善されてきております。  たとえば、指定地域内のSO濃度で見てみると、昭和四十二年度以降漸減傾向にあり、昭和四十八年度よりすべての地域において、指定地域解除要件とされる汚染度一度以下、年平均値〇・〇四ppm以下となっている。また、昭和五十年度においては、SO2の環境基準をも長期評価でほぼ達成している地域が多いのであります。  この状況を判断すると、大気汚染は著しく改善され、汚染による影響は少なくなったものと考えられるわけですが、一方、第一種地域認定患者は、本制度発足直後の昭和四十九年十二月末の一万五千八百六十八人から、本年三月末で五万三千四百十四人にまで増加し、この増加傾向は依然として続いております。  このように、大気環境改善公害病患者救済は、見るべき実効が上がっているが、一方においては、環境改善患者数の増大というきわめておかしな結果が出てきておるのでありまして、この矛盾はますます拡大しようとしておるのであります。本制度が実施されてすでに三年を経過した今日、このような事態を踏まえて、本制度のより合理的な運用を検討すべき時期に来ておるのではないかというふうに考えております。  また、本制度は、言うまでもなく、公害健康被害の迅速なてん補及び患者健康回復目的としているけれども制度の実際の運用を見ると、被害てん補重点が置かれているように思われます。今後は、患者健康回復に効果のある施策に重点を置く必要もあるのではないかと私は思います。  そういった観点について、次のような点につきまして質問を申し上げたいと思います。  まず第一点ですが、先ほど申しましたように、指定地域大気環境濃度が、SOx中心として総合的に著しく改善されたにもかかわらず、患者数は逆に増加の一途をたどっている。このことは、最近の大気環境指定疾病患者発生とが関係ないということ、あるいは少なくなってきているということを示しているというふうに考えるわけでありますけれども企画調整局長専門家でしょうからお尋ねをしたいのですが、その辺を一体どういうふうに考えるのかということでございます。  環境との関係で不確かな患者が入ってくるというところに、どうも私はその問題があるのじゃないだろうかという感じがするわけでして、そういったようなことがあるのかないのか。汚染が進めば疾病がふえるということは、逆に言うと汚染が減れば疾病が減る、こういうことならば因果関係があるということですけれども汚染が減ったら患者がふえるとなったら、患者汚染との関係は、関係なしということが一般的には言えることになるだろうと私は思うのです。その辺、一体どういうふうに考えられるのか。
  4. 信澤清

    信澤政府委員 医学的なことにつきましては、後刻部長から御答弁させていただきたいと思いますが、先生案内のように、いま地域指定をいたしておりますものの中には、非常に古いもの、つまり旧法時代から引き継いだもの、それから新法になりましてから新しく指定したものと、いろいろあるわけでございます。したがいまして、総体的に申し上げますれば、いま先生がおっしゃいましたように、SOx中心といたしまして環境改善というものはかなり進んできているということは言えると思いますが、そういう意味から考えました場合に、いわゆる旧法時代から引き続いた制度があるという地域、この地域については、人口増その他が若干ございますから若干ふえているかもしれませんが、私はそう患者がふえていないと見ております。  問題は新しく指定した地域でございまして、この地域については、制度を適用されて古いものでも三年でございます。したがって、古いものほどふえ方は落ちつきつつある。つまり、新しいところは、いろいろ認定事務のおくれ等々がございまして、その限りにおいて患者はふえてきている、一般的な傾向としてそういうことがあるのじゃないかと思うのです。したがって、現状から判断いたしますといろいろと御議論があると思いますが、三年前なりその前にさかのぼって、その段階における患者発生状況がいまあらわれてきた、こういうふうにお考えいただきますと、ある程度リーズナブルな説明をつけ得る部分もあるのではないか、こういう感じがいたします。  ただし、非常に大気環境改善されたにもかかわらず、なお患者がふえているという事象がある地域もございまして、これにつきましては、現在の法律の中で対応できるいろいろな措置があると思います。これにつきましては、制度全般見直しということではなくて、いわば一つの個別問題として、審議会でもすでに御審議になっておられますし、私どもは私どもなりに研究しているというのが現状でございます。
  5. 林義郎

    ○林(義)委員 いまお話がありましたように、過去の大気汚染影響があるだろう、そういったことであるならば、汚染による影響が生ずるまでの期間というのはあるだろうと思うのですね。汚染というのは、ずっと昔から続いた汚染ではなくて、だんだん汚染してくるのですから、そうすると、それが病気に与える影響ということになると、やはり病気潜伏期間というものがあるだろうと思います。これはむしろ保健部長の方がいいかもしれませんが、潜伏期間は、各指定疾病ごとに、何年ぐらいと考えておられるのですか。
  6. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 お答えいたします。  私ども、現在指定の四疾病個々につきまして、先生お尋ねのような潜伏期間というようなものは、特に調査等でつかまえておりません。と申しますのは、伝染病のように、明らかに病原体が入った時期から発病というような形でとらえられません。また実験的に、汚染地域にある人が住み始めてからどのぐらいでなったかというような調査も、これは今日の大気汚染の態様が、年々の汚染が比較的増加あるいは減少というようなことからいたしまして、なかなかつかむことができないわけでございます。したがいまして、私どもデータとしてはそういうものをつかんでおりませんが、御承知のように、一般的に言いまして指定疾病と申しますのはいずれも慢性経過をたどる疾患でございますので、慢性経過をたどる疾病といたしましては、その個々の人々の感受性あるいは暴露期間というようないろいろな条件が変わるといたしましても、それぞれ数年なりのおくれが出て症状が発症してくるということが考えられるわけでございます。まあ疾病の種類によりましては、たとえばぜんそく等におきましては、その地域に入り込んでかなり早い時期から発病するという人もあるわけでございますが、ぜんそくの場合に、一たんぜんそく疾患にかかりますと今度はなかなか治りにくいというようなことがございます。そういう意味で私ども潜伏期間という形のものを定かにはつかんでおりませんが、相当の時間あるいは年というような単位の時間があって患者発生してくるのではないか、かように考えているわけでございます。
  7. 林義郎

    ○林(義)委員 保健部長さん、年という単位でということでございますか、それとも十年という単位だという――私はまさか十年という単位ではこの制度としてはちょっと問題だろうと思いますが、年という単位で話をされるならばということですか。
  8. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 年というのは、一年というのを単位で数年ぐらいという感じに私は思っているわけでございます。
  9. 林義郎

    ○林(義)委員 そのほかにもいろいろ問題がありますから、後でまとめて申し上げたいと思いますけれども昭和四十八年以降に出生した五歳未満認定患者数並びに同年以降指定地域内に居住等を開始した認定患者数は一体どのくらいあるのかという問題があります。要するに暴露要件の問題であります。また、これらの患者は総合的に大気環境濃度改善された後に出生または居住した者で、本制度に言う著しい大気汚染に暴露された認定患者とは考えられないと思うのです。したがって、患者認定に係る暴露要件については早急に見直しを行うべきではないかと思うけれども、一体当局はどういうふうに考えているのでしょうか。現行の暴露要件では、小児は六カ月から一年の居住認定を受けられるということになっていますが、一体どういうことになっているのか。  それからもう一つは、患者数の中で特に子供、いまの話で数年ということですから、数年という単位暴露要件のなかった人は関係ない。そうしますと、十五歳未満患者数というのは出ていますが、ゼロ歳から四歳未満とかというところの数字は出ていないのですけれども、一体その辺の数字は出せるのですか出せないのですか。
  10. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 昭和五十二年の三月末におきまして、認定患者の中で五歳未満の人の数は総認定患者数の中の約一四%程度になっております。概数でございますが、約七千四百三十二名というような数をつかんでおります。  先生のおっしゃるように、暴露要件の問題につきましては、現在確かに硫黄酸化物汚染状況は大変改善されたわけでございますけれども窒素酸化物による環境汚染程度というのは必ずしも改善されてないというようなデータがそれぞれ出ておるわけでございまして、この疾病影響を及ぼすのは硫黄酸化物のみならず窒素酸化物におきましても、また浮遊粉じんというようなものにおきましても、それらの複合した形で影響が起こってくるのではないかと考えられるわけでございまして、そういう意味では窒素酸化物硫黄酸化物とも改善されるという形がまいりませんと、必ずしも患者数の減り方としては十分減ってこないんじゃないだろうか、こういうぐあいに考えているわけでございます。
  11. 林義郎

    ○林(義)委員 健康影響調査につきましては、本制度によって、第一種指定地域ではこの発足以来三年間に三十九地域というものが指定されて、その地域内の人口は、人口だけとりますと千二百万人、こういうことになっております。日本人口の一割以上、こういう話ですから、大変な地域指定しているわけであります。本制度は、「相当範囲にわたる著しい大気汚染」による被害多発を前提にしており、健康影響調査等地域指定しているということになっておりますが、健康影響調査にはBMRC方式による有症率調査肺機能検査受診率調査等があり、特に有症率調査を決め手にしておるというふうに私は理解しておるのですけれども、これはどちらかというと、聞いてどうだという話の問診調査ということなんで、おまえどうや、病気かというようなことであります。いわば意識調査で、どうも客観性を欠くのではないか。被害補償目的とした制度でありますから、やはり相当客観的な評価をした方がいいではないかと私は思いますし、その辺をこれから詰めて考えていくべき問題だと思うのです。  いろいろな調査がありますけれども肺機能検査結果と統計学的に符合しないというようなものもありますし、また本制度によるところの一種地域指定の是非に係る有力な根拠となるようなものの中では、やはり有症率調査というものをしっかりやるということが一番問題であるし、その調査信頼性というものがないとやはりいろんなトラブルが出てくるだろうと思うのです。そういった点につきまして、一体どういうふうに考えていいのか、環境庁当局の御見解を承りたい。
  12. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 先生承知のように、現在地域指定いたしますときにはいわゆるBMRC方式と申します問診によるせきたん、こういったものの持続性せきたん有症率一つ調査として加えておりますし、さらには過去における、また現在の汚染状況、そのほか肺機能検査、この当該疾病の国保の受診率というような資料をそろえまして、それらを総合的に判断して指定をしておるわけでございます。このBMRC方式というのは一つ問診調査でございますけれども地域問診調査につきましては、当然のことながら医師あるいは保健婦というような医学的な知識を有する人によります面接をいたしております。面接の内容といたしましては、きちっとした一定の形式をもって聞くというふうなことでございますので、イギリスで開発された方法でございますが、意識調査と申しますよりも、そういう意味では内外から方法論について高く評価されているわけでございます。本来的には、指定疾病疾病がどういう率でその地域にあるかというのを調べるべきであろうかと思いますけれども、これには手法上なかなかむずかしい点がございますので、その指定疾病の中でせきたんという症状をとらえる問診という方法でやっているわけでございます。最近自動車沿道調査あるいは複合大気汚染調査というようなものでもこのBMRC方式を使っておるわけでございますけれども窒素酸化物につきましてのこの方法による答えというのは、必ずしも有意の差で出ていないというような点があるわけでございますけれども方法論としては国際的にも通用するものでございますし、その意識の変化というようなものを排除するような形での調査方法はしているつもりでございます。  また、そのほか新しい手法につきましても、一部の学者の間では方法が開発されておりますので、今後そういったものもすべて検討いたしまして考慮してまいりたい、かように考えております。
  13. 林義郎

    ○林(義)委員 このやり方は、慢性気管支炎症状に着目して大気汚染健康被害多発状況判定をする、こういうことなんですね。疫学的にはせきたんの有訴率が最も大気汚染による影響をあらわしやすいということでやっておることなんですけれども、本制度医療救済にとどまらず補償まで行っているという制度でございますから、判定には十分慎重な態度が望ましいと思うのです。単にこの病気が多いとかなんとかという調査をして地域指定をするというだけではなくて、医療救済をする、こういうことだったら、それでもある程度までのことはいいのでしょうけれども補償までもするという話になりますと、やはり補償する以上は相当な厳密性というものが制度論としてあっていいだろうと私は思うのです。被害が多発しているかどうかということは、実際にこのような病気が多いか少ないかにウエートを置くべきであって、もう一遍データ見直して、先ほども話がありましたけれども、いろいろな新しい手法も開発されるということでもありますし、一体どの程度の確かさであるかというものを一遍素直に解明してみたらどうであろうか。要するに統計学の問題かもしれませんし、どの程度の確かさであるかということを確かめてみる必要があるのじゃないか。指定地域以外のところの同様な患者とのバランスというような問題もあるでしょう。あるいはまた難治性疾患、もうほとんど不治の病と言われているような病気とのバランスもあるでしょう。やはり単に公害ということだけでなくて、それに対して国がどういう形でやっていくかということを考えていくことが必要ではないかと思うのです。もう一つ言うならば国費で負担をする、要するに医療をやるという場合と、それからさらに補償までやるという場合と、それからその資金は企業から持ってきてやる、こういうことですから、企業から持ってくるということは、結局は物価とか雇用とかというような関係国民経済全体としてはね返ってくる問題ですから、要するに国民一般負担をどういうふうな形で負担をしていくかという問題にも関連してくると思うのです。そういった非常に広い視野から、余り不公正なことにならないように常に考えていかなければならないし、そういった形で私はもう一遍再検討してみたらどうだろうかという気持ちでございますが、この辺について環境庁当局はどうお考えになりますか。
  14. 信澤清

    信澤政府委員 確かに先生仰せのとおり、この制度は、いわば民事責任を行政的な手法によって解決しているというきわめて特異な制度である、こういうふうに考えるわけでございます。したがって、その運用について厳密適正を期さなければならないことは当然でございます。  先ほど来のお話の中に問題が二つあると思います。一つは、地域指定する場合に、地域指定要件あるいは実際のやり方が適正だったかどうか、この点が一つあると思います。第二番目は、地域指定された場合に、具体的に患者として認定を受ける場合、その審査についてどうであるか。大きく分けますとこの二つがあると思います。先ほど仰せになりました調査問題等は、いわば地域指定する際の問題でございまして、これについては、まあ私どもは私どもなりに市議会その他各方面の御意見を聞いて、今日で万全だと考えられる方法指定をしてまいっておるつもりでございますが、しかしいろいろ御意見もあるわけでございますし、そういうような新しい知見と申しますか調査方法と申しますか、こういうものは絶えず組み入れながら地域指定方法見直しというものをやるべきだというふうに考えております。  同時に、地域指定された場合の患者認定の問題でございますが、これもただ申請があれば認めるということではございませんで、御案内のように県に審査会を置きまして、そこで医学的な判断を加えた上で最終的に決めていただいておるわけでございます。  なおまた非独立性疾病につきましては、実は期限を限っております。御承知のように、ぜんそく性気管支炎については二年、それからそれ以外のものは三年ということになっておるわけで、まだその時期が来ませんので全体的な傾向はわかりませんが、御参考までに申し上げますと、ぜんそく性気管支炎は二年でございますから、昨年の八月ごろにその期限が来ております。その状況で見ますと、非常に大ざっぱな数字で恐縮ですが、約三〇%は申請をされないか、あるいは申請があっても認定されなかった。もちろんこの間には死亡、転居その他の問題があったと思いますが、ともかく三〇%は更新されてない、こういう実態でもございます。ここらあたりもひとつ御理解いただきたいと思います。
  15. 林義郎

    ○林(義)委員 そういった形で非常に問題のある制度というか、いまからいろいろな形での研究を進めていきながらやっていかなければならない制度ですから、私は常に虚心に反省をしながらやっていくことが必要だと思うのです。そうした意味で私は、単に幾らの患者にどう払いましたとかという話だけではなくて、やはりいろいろな点を考えていく必要があるだろうと思うのです。たとえば喫煙歴、この前の参考人意見の中でもありましたが、喫煙歴をどの程度まで把握をしておられるのか。また家族歴、これは家族の中でたばこを吸う人がおりますとパッシブスモーカーズということになりまして、おやじがたばこを吸うと子供影響がある、こういうふうな話なんです。そういった意味でも、家族の中でたばこを吸っている人がいるとかいないとかという問題とか、あるいはアレルゲンというものがあるのかどうか、やはり個々患者について実態をしっかり把握していくことが必要なことだと思います。そうしたデータを出しながら制度全体の運用状況を常に的確に把握してやっていくことが必要ではないか。常にいろいろな角度からの検討をしていくことが必要なんで、制度をつくったからもう後は法律で決められているからその範囲内でやるということでなくて、一つの試行錯誤のもとにできた制度ですから、私はそういった形で十分な実態把握をしていただきたいと思うのです。その辺はひとつぜひやっていただきたいと思いますが、これはどうなんでしょう。
  16. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 患者認定に当たりまして暴露要件がどうであるかということが一つ条件でございますが、当然のことながら、その人の過去の喫煙歴というようなことにつきましては、主治医が患者に尋ねまして、それを記載したものをつけ加えて申請をする、あるいは認定審査会の中でそういった点について疑問のある点につきましては診断をしたお医者さんに問い合わせをするというようなことで、かなりきめ細かにその問題をチェックしながら認定をしておるように各審査会先生方から聞いておるわけでございます。また、この制度先生おっしゃるように、創設されてそう時間がたっておりませんけれども、創設の当初にいろいろな条件の割り切りをいたした上で立っておりますので、今日的な条件からいたしまして幾つかの問題点が提起されております。その辺は十分私ども、有識者の方々の御意見を聞きまして、制度運用につきましては十分検討しながら進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  17. 林義郎

    ○林(義)委員 私が申し上げておりますのは、たとえば喫煙の問題なんかも、いまお話がありましたように審査会先生方は喫煙歴があるかどうかということで調べているということですが、医学者によりましては慢性気管支炎と肺気腫の罹患率はたばこの量と密接な関係がある、これはこの前の当委員会での参考人の中でもそういう意見がありました。これらの疾病の原因は大気汚染よりもたばこ影響の方が大きいのではないかという説もありますし、たばこの害としては肺がんより直接的であるというようなことを考えておる方もおられるのですね。この辺についても私はやはり詰めていくことが必要ですから、たばこを吸っているからちょっとのけておけといってのけておくと、数字には出てこないわけですね。その辺のことはやはり、それはたばこでのけたからどうだったとかいうような程度の話は、データとしてとっておく必要があるのではないか。それをとっておかないと、これからいろいろ制度運用していくときに、あのときにこのデータがなかったからどうにもならない、それはわかりませんということでは、私はいい態度ではないと思いますし、先ほどお話がありましたようにいろいろな割り切りをしてこの制度をつくったわけですから、やはりもう一遍解除要件を考えるときにいろいろなデータが不足をしている状態では私はいかぬと思いますし、そこはぜひ広い立場から考えてデータも集めていただきたいし、またその解析もやっていただきたい、私はこう思うのです。  それと同時に、喫煙と本制度疾病との関係について一体どういうふうに考えておられるのか、率直にお尋ねいたしたいと思います。
  18. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 第一点、喫煙と慢性気管支炎あるいは肺気腫、こういった疾患関係でございますけれども、先般発表いたしました複合大気汚染調査あるいは私どもが各地域指定いたしますときに調査をしているデータ等から見まして、明らかに喫煙によるこれらの疾患に対する影響というのは非常にはっきり出ておるわけでございます。ある地域の一例でございますが、六十歳以上の男子におきまして持続性せきたん、すなわち三カ月以上せきたんが冬の間に続いたというような人を目安にいたしてみますと、喫煙しない人と喫煙する人との間には約倍の開きがあるというようなデータが出ておりまして、明らかに喫煙の問題は慢性気管支炎あるいは肺気腫に対しての強い影響があるということははっきり言えるわけでございますが、現在までのところ、認定患者の中でどのくらいの割合で喫煙しているかというようなことにつきましては、残念ながら現在定かに把握しておりません。  しかしながら、いまのようなデータから考えまして、認定された後のいわゆる療養をしている間におきましても、当然喫煙というのは悪い影響を与える、こういうことが考えられますので、これらに対しましては、その治療に当たっているお医者さんの方々を通じましての療養上の指導あるいは地域保健婦さん等を通じて、その家庭の方々へのいわゆる健康教育といいますか健康指導と申しますか、そういった点で進めてまいり、その療養の実を上げていただこう、こういうぐあいに考えているわけでございます。
  19. 林義郎

    ○林(義)委員 本人が吸って患者になるという場合もありますし、先ほどちょっと申しましたパッシブスモーカーという形で家族等の喫煙によるところの影響というものも無視できないだろうと思うのです。受け身の喫煙ということですけれども、小児等のぜんそく慢性気管支炎関係ありとするけれども、この受け身の喫煙と指定疾病との関係を一体どういうふうに考えておられるのか。また、認定患者中に家族の中でどのくらい喫煙者がおるのかという実態をつかんでおられるならば、この機会にその数字を出していただきたい。
  20. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 患者さんの家族の方が喫煙しているということによって、受け身で子供たちがぜんそくになるとか慢性気管支炎にかかるというような問題につきましては、それほど多くの学問的な研究はなされておりませんけれども、二、三の方々による研究がきちっとなされておりまして、明らかにそういったような問題が提起されております。また、具体的な事例といたしましても、たとえば御主人が喫煙をやめたので奥さんのぜんそくがその年から出なくなったというような実例も耳にしているようなわけでございまして、確かにパッシブな喫煙による影響ということも当然今後考えていかなければならないわけでございますが、残念ながら私ども認定患者家族全体の様子についての調査等をまだ把握しておりませんので、定かにどの程度こういった問題があるかは実はつかんでおりませんが、やはり先ほど申し上げましたように、患者を抱えた家族全体としても、その患者さんの療養に積極的に協力するという意味で、喫煙を慎むという問題につきましてのいわゆる健康教育ということを進めてまいりながら、患者さんの療養ということの指導をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  21. 林義郎

    ○林(義)委員 この問題は春日さんという前の大気保全局長、医学博士が出しておられる話ですから、環境庁当局としても少しその辺は考えてあげられたらどうかと思うのです。  そういった点もはっきりつかめないということですが、やっぱりそういったものをつかんでいろいろやることか、本制度が成立した――いろいろな割り切りをしてやった制度でありますから、いろいろな関連データというか、周辺データというものの整備はぜひやっておくことが必要ではないかと思います。  そこで、喫煙の影響を強く受けると思われる人を公害病患者として補償給付の対象としていることについては、大変影響がある、むしろSOxや何かの影響よりは大きいということからすれば、SOxを出すものから影響が出たということでなくて、大きい方から取るというのですから、たばこから取れというふうな議論というものは当然あるだろうと思うのですが、それについて、補償給付の対象にしているということについてどういうふうに考えているのかというのが第一点です。  第二点は、治療の上からも、少なくとも認定患者には喫煙習慣をやめさせるように指導すべきではないか。  それから、その指導に従わない人については補償給付制限、認定取り消し等を考えてもいいのではないか。  この三つの点、実はこの前、参考人にも同じようなことを御質問したのですが、やはりこれは医者の問題である、医者がどう指導するかということである。そのお医者さんも、たとえばこの話をしているときにたばこを吸いながらやっているのはけしからぬぞというような話まで出たわけでありまして、この辺を一体どういうふうに考えるのか、お答えください。
  22. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 本補償制度の四十二条におきましても、正当な理由がなくて療養に関する指示に従わなかった者、これはお医者さんが療養についていろいろ指導をするわけでございますが、それに従わなかったときには、「補償給付の全部又は一部を支給しないことができる。」という給付制限がございますし、また給付の額についても、他原因の参酌というようなことも四十三条にうたっておるわけでございますので、やはりこの療養の指導をしていただく先生方に十分この辺を積極的に療養するための問題としてよく指導していただこう、こういうぐあいに考えておるわけでございます。
  23. 林義郎

    ○林(義)委員 やはり積極的に指導するような通牒なり何なり出して、はっきりしておいた方がいいだろう、制度のあり方としての姿勢を打ち出した方がいいのではないか、こういうふうに考えています。  その問題はおきまして、次に、地域ごとの費用負担の問題をお尋ねしたいと思います。特に指定地域間の収支アンバランスの問題が各地で起こっていることは、当委員会でも各方面から指摘されたところです。  昭和五十一年で見ましたならば、北九州市の場合には、地域内の固定発生源が三十九億円の賦課金を徴収されている。しかし地元還元は六億円である。同様に、倉敷市においては三十一億円の徴収に対しまして七億円が還元されたにすぎない。一方、大阪市においては九十六億円もの補償給付費を要しているにもかかわらず、地元ではわずかに七億円の賦課金が徴収されておるにすぎない。  このような状況から、北九州市、倉敷市はもとより、大牟田市、玉野市、備前市等の諸都市でも、単に指定地域だからといって、一般地域の数倍の比率で、煙の到達する可能性のない大阪等遠隔の大都市のために負担を強いられるのは原因者負担の原則から見て非常に不合理ではないかという意見が強く出ておるところであります。  地域収支の不均衡是正は一部実施されましたが、本制度の費用負担のあり方については、今後とも合理的な費用負担のあり方を研究して漸次これを実施することにより、一般地域、地方の指定地域、大都市指定地域内にある事業者が、それぞれ多少の不満はあっても、ある程度納得の得られるようにしていかないと本制度運用は非常に困ると私は思うのです。最終的には地域ごとの制度として再構成していくべきものだろう、各地域ごとにやっていくというのが一番納得させられる方法ではないかと思いますけれども、この辺につきましては、一体どういうふうにこれから進めていかれるつもりなのか、調整局長さんいかがでしょうか。
  24. 信澤清

    信澤政府委員 この制度につきまして、国会で御審議をいただきました際にも、いろいろ御意見があったところでございます。先ほどお話に出ておりますように、また私も申し上げましたように、この制度一つの特徴は、民事上の責任を行政的な手段によって一部担保をするということ、同時にその責任は共同責任である、こういう前提に立っているわけでございます。したがって、共同責任という見地に立って物を考えますれば、やはり現在のような全国一律の制度をにわかにやめるということにはなかなかいかないだろう。しかし、実際の運用状況を見ますと、指定されていない地域とそうでない地域の間はもちろんでございますが、いまお話のありましたように、指定された地域の間にすら相当の不均衡が出ている。これはやはりPPPのたてまえから申しますればもっと差を縮めてもいいのではないかという御議論が当然出てくるわけでございます。そこで、本年から収支差の大体二分の一を埋める、こういう趣旨で料率に四段階を設けたわけでございますが、急激な変化はまた困るという意見も片方にあるわけでございますから、四分の一程度に本年はとどめております。しかし、基本的には、審議会でも二分の一まではということでございますから、そこらあたりにつきましてはさらに今後内部的にも検討いたし、かつまた審議会の御意見も聞きながら、できるだけ収支差の不均衡を生じないようなたてまえの方に持っていく必要があろうと思います。  ただ、繰り返すようでございますが、共同責任という観点をこの法律のたてまえから除くということについては、国会でいろいろ御論議があった経緯もございますので、将来の問題として、先生お話しのように、地域ごとに仕組みをつくっていくという方法も当然あろうかと思います。あろうかと思いますが、制度発足して三年ちょっとという現在の時点で、すぐそれに移るような考えをいま直ちに打ち出せるかどうかということについては、十分研究させていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  25. 林義郎

    ○林(義)委員 厚生省おられますね。  近代医学がこれほど進んだというのに、その恩恵から取り残されている病気の代表的なもので気管支ぜんそくというのがありますね。医学者の中には、ぜんそく等を治療するのは近代医学の概念ではなかなかやれない、むしろ全く別の観点からこの治療法を考えなければならないとまで極言する人もおられるようなのです。  このぜんそく等の問題は公害疾患の中に入っておるわけでありますけれどもぜんそく等の非特異的呼吸器疾患について、単に対症療法でやるだけでなく、完治を目的としてやるというのが健康のためには一番必要なことだと思うのです。それは根本的治療法として必要不可欠なものだろうと私たちは考えなければならない。このような治療法を国が主体となって開発していくべきではないか、いろいろな医者の方々がそれぞれに研究しておられるということではなくて、一つの大きな病気の問題と考えて、国が中心になって治療法を考えるべきではないか、こう思うのですけれども、この辺につきましてはどうなんでしょうか。
  26. 北川定謙

    ○北川説明員 ただいま先生御指摘のとおりでございまして、社会的に非常に重要な疾患につきましては、厚生省は国民の健康を守るという立場から、その原因のいかんを問わず、医療の研究あるいは治療体制の整備に対応していくという責任を持っておるわけでございます。ただいま問題になっておりますぜんそくにつきましても、厚生省といたしましては、小児保健の立場あるいは一般的な呼吸器疾患医療という立場等から、現在におきましても幾つかのプロジェクトチームを組みまして、国の研究費を投入してそういう仕事を推進しているわけでございます。  先生十分御承知のとおり、ぜんそくは非常に古い時代からある疾患でございますし、その原因等につきましても非常に多くの要因があるわけでございまして、なかなか困難な疾患であるわけでございますが、呼吸器関係専門家にとっては非常に重要な研究課題ということで、鋭意そういう仕事に取り組んでおられるチームが幾つかございます。  以上でございます。
  27. 林義郎

    ○林(義)委員 私は、ぜんそくというのは確かに昔からあった病気だと思うのですが、いろいろやってもなかなか治らない。がんにつきましてもいろいろな説がありますが、がんの原因は何だといえば、発がん性物質云々とありますけれども、それでは発がん性物質がなかったならばがんは起こらないかといったら、そうでもないわけだと思うのです。どうもぜんそくというのもそれと似たようなものなのかもしれないと思っているのです。  そこで、西洋医学と言ってはおかしいのでしょうけれども、合理的に物を分析して考えていくような医学体系ではなかなか治らない。むしろ人間のトータルとしてながめてやる。これは、いまの厚生省なり行政官庁の中でそんな考え方をしろと言ったところでなかなかむずかしいのかもしれないと私は思いますけれども、抜本的な考え方をしていかないと、プロジェクトチームをつくってどうだこうだとおっしゃいますが、なかなかうまくいかないのじゃないかと思うのです。その辺については、全く発想の違ったところから取り組んでいかないといい解決方法というのはできないのじゃないか。その辺はどうなんでしょうか。
  28. 北川定謙

    ○北川説明員 ただいまの先生の御指摘は確かにごもっともな点であろうかと思いますが、現在のそういう研究所のチームの中でも何人かの専門家は、従来のアプローチの仕方、実験室的なアプローチの仕方だけではなくて、複合的にいろいろなものをとらえているとか、あるいは一つの研究室だけではなくて、日本全国を網羅するいろいろな地域性の問題だとか、あるいは専門の異なる分野の方々が一緒に集まって議論をしていただくとか、そういう雰囲気は現在でも芽生えておる状況にございます。
  29. 林義郎

    ○林(義)委員 ちょっと外れるかもしれませんが、最近セイタカアワダチソウというのが大変ふえているのですね。あれはぜんそく影響があるとかないとかというふうな話がありますが、どうなんでしょうか。
  30. 北川定謙

    ○北川説明員 私も直接の専門家ではありませんので、個々の物質がどうかということについては必ずしも的確な認識を持っていないわけでございますが、花粉とか、そういう大気中にあるいろいろな物質等について、ぜんそくの要因となる可能性が非常に考えられるということで、たまたま私どものところは国立療養所でございまして、呼吸器の疾患についての専門家が集まっている医療機関であるわけでございますが、これが全国に分布しておるものでございますから、そういう自然環境のいろいろな変化とぜんそくの発作の関係というようなことにつきましても、ここ数年来、これもまさにプロジェクト的と申し上げていいと思いますが、そういうアプローチの仕方をしておるチームがございます。
  31. 林義郎

    ○林(義)委員 先ほど保健部長の話がありましたけれどもSOxが入りましてNOxが入ってくる。気管支を通ってずっと入ってくると、やはり気管支を刺激したりなんかしてだんだんぜんそくになってくる、こういうことだろうと思うのですね。セイタカアワダチソウなんというものもやはり非常な花粉がありまして、非常に微粒なものである。しかも相当刺激的なものであるならば、私は浮遊粉じんその他のものと同じような形で花粉が影響するというようなことはやはり考えられるだろうと思うのです。だから何かそういったようなことですから、SOx影響あるとかなんとか、浮遊粉じん影響あるとかと思うような話でなくなっちゃっていることで病気の問題というのは考えていかないと、これだ、これだと言ってこうやっているといかぬので、先ほどお話がありましたように、私は、実験室的なことでやるよりは何かそういったトータルな話としてつかまえていかないと動きの方向を見失うのではないだろうかという感じがしてしようがないのです。厚生省の方でもそれをやっておられるという話でありますから、大いにできるだけ早いうちにひとつ治療法が出てくることを期待しております。  最後に長官にお尋ねいたしますけれども先ほどお話申しましたように、実はこの制度発足して間もない話である。制度としても、日本として非常にユニークな、いいか悪いかは知らないけれども、とにかくユニークな制度で、公害被害補償をしていこう、こういうふうな形で発足した制度です。どちらかというと、試行錯誤でやっていかなければならない制度でありますから、いろいろな問題があることは私たちも承知の上でこれをやっていく必要があるだろうと思うのです。ただ、やはり最初にお話ししましたように、また答弁もありましたように、大気環境改善とは実は関係なく患者増加していくということになります。そうしますと、この本来的な制度は人気汚染にかかわる健康被害補償という制度の趣旨から実態はだんだん離れていくということになりますと、一体何でそんなことをやるのだという、やはり国民的な合意というものが私はできなくなってしまうのではないかと思うのです。そういった意味でも、また公害論一般からいたしましても、患者を積極的に保護救済する観点から、私は、本制度とは別に一般の医療制度、社会福祉制度等を含めた総合的な諸施策をやっていって、いろいろな病気が起こらないようなことをしなければならない。この制度をやったからこれでもって公害の問題をおしまいですということではなくて、やはりこの問題は一般の健康対策、医療対策の中の一つのものだというふうに考えなくちゃなりませんし、そういった形で諸施策が進められていくということがぜひとも必要だろうと思うのです。そういった施策をやっていくと同時に、本制度というものは本来的には大気環境改善とともに漸次縮小していかなければならない。大気はきれいになって依然として健康被害があるというのはこれは非常におかしな話でありまして、私は、この制度自体はそういった性格を持っているものだろうと思うのです。最初から議論いたしましたときもそういう形で私は話をしたのですけれども、一体環境庁長官はこういった私の見解に対してどういうふうにお考えになっておられますか。私は、公害というのはなくしていかなくてはならぬ、あるからそれをやっつけるという話ではないと思うのですね。だんだん、だんだんなくしていくのが公害対策基本法その他の目標でありましょうし、それをなくしていく中での経過的な措置としてこの制度を認める、そうすると、やはりこの制度自身も公害対策環境保全政策が進むに従って本来消滅すべきものだろう、私はこういうふうに考えておるわけですけれども、長官はこの辺どういうふうに考えておられるのか、御意見をお伺いしたい。
  32. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。公害健康被害にかかわりますいろいろな施策というものは、究極の目的として、汚染地域というものの環境改善することで、この制度目的対象というものをできるだけ早く、できるだけ減少させていくということだと思います。そういう意味で、先ほどいろいろ御指摘のありました、私、初めて聞きましたけれども、外来の草であるとか、あるいはどうもいままで積極的な要因に取り入れられていなかった喫煙との関係等も、違った視点から積極的に考慮されるべき問題だと思いますし、いずれにしましても理想的には、この制度というものの対象目的ができるだけ早く減少していくということが、公害による健康被害にかかわる施策の究極の目的だと心得ております。
  33. 林義郎

    ○林(義)委員 終わります。  ありがとうございました。
  34. 島本虎三

    島本委員長 林君の質問は終わりました。  次は、木原実君。  なお、木原委員に申し上げますが、要請しておりました厚生省の森下環境整備課長が向こうを出ているのだそうであります。しかしまだこの場所へは見えておらないようでありますが、それ以外のことから始めていいなら始めていただきます。
  35. 木原実

    木原委員 きょう主として厚生省の担当官に質問をしたいという趣旨で上がっているのですが、いま委員長が御発言のような事情がございますので、環境庁の、これは大気保全局長になるのでしょうか、調整局になるのでしょうか、一つだけお伺いしたいことがあるのですが、自治体等で建設をするごみの処理工場の焼却炉、これは大気汚染防止法に基づくばいじん等の管理、排出規制の対象にはならないのでございますか。
  36. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 大気汚染防止法の規制を受けております。
  37. 木原実

    木原委員 法律は受けているわけですけれども、たとえば集じん装置をつける等の義務からは免除されている、こういうことですか。
  38. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 排出基準に合致しなければなりませんから、まずいまの排出基準は集じん装置なしでやれるような基準ではございません。
  39. 木原実

    木原委員 そうしますと、いずれにしましても法律に適合しなければならないから、それに必要な装置といいますか、それは当然取りつける、こういうことになるわけですね。その場合の処置としましては、大変高い煙突を建てて拡散をするとか、あるいはいま申し上げたような集じん装置、こういうようなものを装置をする、これは当然適合するわけですから、義務化されるわけですね。
  40. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御質問がございましたが、ばいじんの規制基準というものはかなり厳しく決まっておりまして、それに集じん装置をつけるということは何も規則に書いてございません。その基準に合うには集じん装置をつけなければどうにもならない、こうなっております。  それからもう一つ、国が決めておりますのは、全国一律の最低条件というのを決めておりますので、地域によって人口密集地域であるとかそういうところでは相当また厳しくなってくる、上乗せがそれにある場合が、これは法律上認められております。  それからもう一点は、ばいじんのほか、塩化水素の規制がこれから始まりますので、現在はまだ法律上は、いま告示をして猶予期間にございますが、いずれこれは法律の適用になるということでございます。
  41. 木原実

    木原委員 そうしますと、いずれにいたしましても、自治体等の建設をする焼却炉等についても特別な例外の規定があるわけではないというふうに理解してよろしゅうございますね。
  42. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 法的に適用対象外になっておるとか、特別な扱いは一切受けておりません。
  43. 島本虎三

    島本委員長 なお、木原委員に申し上げますが、厚生省の森下環境整備課長が参りましたから、今後の質問はそれに触れても結構でございます。
  44. 木原実

    木原委員 それでは、時間の制約等もございますので、端的に伺いたいのですが、きょう私が問題にしたいと思いますのは、いま少し申し上げましたじんかいの処理場、ごみ焼却場の問題について少しばかりお伺いをしたいと思うのです。  厚生省に伺いたいのですが、これは国の補助対象にいまなっているわけですが、国が補助金を出す場合に満たすべき要件あるいは手続といいましょうか、補助の対象になる場合の満たすべき要件といったものはどういうものがあるのか、お示しを願いたいと思うのです。
  45. 森下忠幸

    ○森下説明員 お答えいたします。  まず手続を御説明いたしますと、市御当局で焼却場などをつくります事業計画をつくります。その計画を県を通じまして厚生省がお聞きいたします。ヒヤリングと申しておりますけれども。それからそれに基づきまして私ども、後で申し上げます所要の要件を検討いたしまして、いわゆる張りつけというのをいたしまして、どこに今年度の補助金を出すかというようなこと、実施計画というものを立てます。これにつきまして財政当局で協議いたしまして、それから実施計画に基づきまして国庫補助の内示をいたします。こういうふうな手続でございまして、内示をした後は、市御当局の方で契約をなさったりして補助の申請をなさり、それに基づきまして私どもは補助金の交付決定をする、こういう手続でございますが、その場合に、まずどういったものを補助対象にするかという、お尋ね要件でございますが、これは、私どもおよそ四つほど考えておりまして、一つは、まず緊急性が商いこと、その場所でごみ焼却場を直ちにつくらなければならぬということ、緊急性が高いということ。それからもう一つは、施設をおつくりになる用地が確保されているということでございます。それから三番目は予算措置、それから必要な法手続、場所によっては都市計画法に基づきます決定が必要でございますから、そういった手続がなされておること。それから第四番目に、施設の建設についての見通しが明らかであること。住民の方々の同意が得られないということで実際に仕事ができないということになると困りますものですから、その辺の見通しが明らかであること。この四つを要件というふうに考えておりまして、この四つが満たされたときに補助金の内示をいたす、こういう手続になっております。
  46. 木原実

    木原委員 先ほどもあなたがおいでになる前に環境庁に一言聞いたわけですけれども、焼却場の建設等につきましては、一番の問題はどうしましても環境上の問題が出るわけです。あるいはまたその地域の状態が大変変わってくる、こういう問題があるわけなんですが、環境基準等につきましては、補助対象の要件を満たす場合に、それの査定といいますか、要件を満たしているという条件の中には環境の問題は入らないわけですか。
  47. 森下忠幸

    ○森下説明員 ごみ焼却施設につきましては、大気汚染防止法の特定施設になっておりますし、それからその施設がいろいろな機械類を持っております場合には、振動規制法とか騒音規制法の規制の対象にもなるわけでございますが、当然のことながら、ごみ焼却施設がこういったいろいろな公害に関連いたします規制を満足するような構造を備えているということが必要でございまして、その構造につきましては、廃棄物処理法の施行規則によりまして構造基準が定められております。それからまた、この基準の細目につきましては厚生省の水道環境部長通知によります構造指針というのが出ておりまして、こういった基準及び指針を満足する構造のものであります場合に国庫補助の対象にする、こういうことになっておりますので、私ども公害面からのそういった問題が起きないように、構造面から施設を担保するというふうなことができておるわけでございます。
  48. 木原実

    木原委員 そうしますと、要件を満たしておるかどうかの判断はやはり出先の県がやるわけですね。
  49. 森下忠幸

    ○森下説明員 こういう規制等につきまして構造基準はもう県を通じて市の方にお示ししてございますので、市がそれに基づきましてお考えになる、それから、私ども国庫補助をいたします場合には、これは厚生大臣が一件ごとに承認をいたすわけでございますから、私どもその構造の詳細について検討させていただくわけでございますし
  50. 木原実

    木原委員 これはたてまえと中身が違う場合がなかなか多うございまして、たとえば焼却場等をつくる場合に最大の問題になってまいりますのは、ばいじんの問題がございます。それからその地域環境にもよります。それからどうしましてもごみを運搬する車の出入りという問題が出てくるわけなんです。閑静な地域に焼却炉ができたために、朝から、場合によれば夜中まで車の往来が頻繁になってくる。当然それに伴う振動とか排気ガスの問題が出てくる。なるほど法律の枠の中の規制ということにはなるわけですけれども、しかし、少なくとも従来よりも環境が一変してしまう、こういう状況が生まれてくるわけですね。ですから、法律のたてまえからいいまして、良好な環境を保全するというたてまえで法律ができており、それに適合するように、こいうことでやるわけなんですけれども、事実問題としましては、なかなか法の枠の入らない形で環境が一変する、こういう状態が出てまいりますし、それからまた、場所の設置等につきましてもこの影響はかなり変わってくると思うのです。人畜の被害の比較的乏しい山の中とかあるいは野原というようなところならいざ知らず、比較的稠密な住宅地等の中につくられようとするというようなことになりますと、なかなか法律のたてまえがありましても しかし、そこであらわれてくる被害だとか影響だとか環境の悪化だとかというようなことは、いまの法律の中ではなかなか枠の中へ入らない要素が出てくる。こういうようなことが、これは言うまでもないのですけれども、この種の施設をつくる場合に、住民の皆さんとの間の利害の対立が起こる最大の原因になっていると思うのです。ですから、過去にも幾つかそういう事例があるわけなんですけれども、きちんとした環境基準、あるいはおっしゃいました構造上の指針だとか措置だとかをやらせるということはもちろん前提ですけれども、やはり焼却炉をつくることによっての場所の問題、それから適合性があるかどうか、そういったようなことについて、厚生省としては何かお考えをお持ちですか。たとえば余り周辺に人家が多いところはやはり避けるべきであるとかなんとかというような考え方はございませんか。
  51. 森下忠幸

    ○森下説明員 一般的にはそういう人家の少ないところへつくるのが望ましいのですけれども地域によりましては、そういうところが必ずしも選べないということがございます。そういうところへ設置するということになりますと、それに相応した公害の対策、それは公害関係法律でも、地域の実情によってそれぞれの規制値に上乗せすることができることになっておりますので、条例に基づくより厳しい規制がかけられた場合には、それに合った構造というもので担保し、さらにそういうものについて私ども国庫補助の方で御支援するということもできておりますので、そういったりっぱな施設をつくり、かつ良好な維持、管理をしていただくということで対処していただきたいと考えております。  それから交通の問題でございますが、交通も搬入路一本だけ使うということでなくて、複数の搬入路を使って、時間も定時収集、定点収集というふうなことで計画的に搬入するというようなことは指導してございますし、そういったことも含めて市町村が御計画をお立てになるよう、私ども指導してまいりたいと考えております。
  52. 木原実

    木原委員 課長は御存じだと思うのですけれども、最近、四国の徳島で焼却場の問題をめぐりまして裁判上の判決が、先月でしたか出ましたね。これは市の方の計画と施設建設の地域の住民の人たちとの正面からの見解の違いが裁判で判断が出た、こういう一つ経過があるわけです。ある意味では、本来自治体は公害を防止しなければならないという執行の立場なのです。そこのやる施設が、裁判上の判断によって、なお不十分であるというような判断を得ているわけです。私どもとしましては、これはまことに行政上恥ずべきことではないかという印象を持ったわけなのです。ですから、徳島の場合が例外というわけではありませんけれども、その間に公害防止上といいますか、環境保全上の対策について十分な指導というものがなかったのじゃないのか、私はこういう印象を免れないのですが、いかがですか。
  53. 森下忠幸

    ○森下説明員 お答えいたします。  徳島の例につきましては、裁判の記録も拝見いたしましたが、そういったいわゆる公害の問題につきまして、市の側で十分な検討といいましょうか、裁判所での十分な説明をしておらなかったというふうに考えております。  ただ、施設そのものにつきましては、あれを計画いたしましたのはかなり前でございますが、市でお考えになっておりました計画としては、当時の排出基準というふうなものは十分満足できる構造になっておったと私どもは思っております。
  54. 木原実

    木原委員 そこでお伺いしたいのですけれども、課長も御存じのように、東京の近郊に松戸市というところがあるわけです。かねてここから、焼却炉を建設したい、こういう計画がございまして、予算上の補助金の措置をしたいということで厚生省の方には申請はもうすでに出ているわけですか。あるいはまた、厚生省としては内示についてもうすでに内約を与えているというような状況になっているのですか。
  55. 森下忠幸

    ○森下説明員 先ほど御説明いたしましたように、国庫補助の内示に至りますまでの手続といたしましては、事業計画のヒヤリングというのをいたします。松戸につきましては、昨年もそういう話がございましたのですけれども、昨年は実施できないということで、五十二年度事業ということでことしの三月に全体の計画についてお聞きしております。これについて補助金の内示ができるかどうかということでございますが、先ほど申しましたように、確かに緊急性も高うございますし、用地は確保されておりますし、予算措置もされております。また、都市計画上の手続も済んでおりますけれども、住民の方々の同意というものが完全に取りつけられておりませんものですから、直ちに着工できるということについては、市も若干不安に思っておるようでございますし、県の方の判断を聞きましても、本日ただいま着工するということはむずかしいだろうというふうなことでございますので、いまのところ国庫補助の内示をする段階にも至っておりません。
  56. 木原実

    木原委員 私どもも、たとえば松戸市のような場合、焼却場が必要でないという判断はしていないわけなのです。しかし、必要であるから何をやってもいいというわけのものではもちろんないわけです。  課長も御承知のように、かねてから住民の皆さんとの間にいろいろ問題がございます。いまお伺いしまして、まだ内示の決定には至ってないというお話でございましたけれども、はなはだおかしいのです。松戸市の市議会等は、どうも厚生省の方であたかも予算化の内示の内約を得てあるのだ、そういう感触を得たのだというような、多少言い回しのニュアンスは違うわけですけれども、そういう報告をいたしまして、市の住民操作といいましょうか、市議会の操作等も実はやっているわけなのです。私どもは、はなはだ多くの問題が残されていると判断をしておる段階で、再度お伺いいたしますけれども、いずれにいたしましても、内示の決定には現在ただいま至ってないという状況にあることは確認してよろしゅうございますか。
  57. 森下忠幸

    ○森下説明員 お答えいたします。  私も、松戸市の全体のごみ処理ということからしますと、これはできるだけ早くつくらなければならぬと思っておりますけれども、そういったいろいろな事情がございますので、本日ただいまのところ内示するに至っておらないということは確かでございますということを申し上げます。     〔委員長退席、土井委員長代理着席〕
  58. 木原実

    木原委員 大変長い経過もございますし、私どもの判断では、本質的な問題は何一つ解決をしていない、こういうふうに判断をいたしておるわけなんです。と申しますのは、市がいま用地を取得したという場所の問題が一つございまして、この場所はいわゆる住居地域なんです。特にこの計画が出ましてからもうすでに両三年たっておるわけですけれども、この間にもマンションその他大変人家が建っているわけです。そして、すぐ隣接をしますのが、行政上の区画が違いまして、沼南町と言うのですけれども、この沼南町の分は第一種住宅専用地域なんです。そうしますと、行政上の措置から言いましても、すぐ隣接するところが第一種住宅専用地域である。取得をしたところは、第一種ではありませんけれども住居地域。住居地域というのは本来、工場等は建てられない。高層の建物については規制が緩やかなのですけれども、本来、工場等は建てられない地域であるはずなのです。だから、われわれからしますと、一体ごみの焼却場というのは工場ではないのかという議論をしたくなるわけですが、実はそういう地域であるということが一つなんです。  東京に非常に近接した地域なものですから、いま申し上げましたように、もう年を追うごとに当然、住宅が密集してきている。当然その周辺には小学校もあり、幼稚園もある、こういう環境なわけです。そういう地域を、ある意味では土地が取得されたからこういう形で焼却場を建設する、そこに実は最初から無理があるわけなんです。それでは市内に、たとえば調整地域等で比較的人畜に被害を与えないでこの種の施設をつくるところがないのかと言えば、私どもから見れば、まだそういう地域はかなりあるわけですね。ただ、用地の取得がたまたまここにできたからということを理由にして、この両三年来、松戸市当局が建設を推進してきている。無理があるものですから、市の行政としてももう無理に無理を重ねているわけですね。ですから、本来、住民の皆さんを説得し、それから協力を求める、こういうことでやるべきなんです。それからまた、住民の皆さんも、反対をしている人たちも話し合いを拒否しているわけじゃないのですけれども、その話し合いがかみ合わないわけなんです。そうしてことしの春などは、機動隊などを入れて――恐らく厚生省と話をする前提の条件をつくるということなのでしょう、耕地整理組合の分野の整地をすると称しまして、機動隊を伴って強制測量のようなことをやる。ところが、住民の皆さんというのはきわめて平均的な市民の皆さんだし、サラリーマンであり、あるいは家庭の主婦の皆さんだ。そういう人たちを相手にして、課長がおっしゃった内示に至るまでのプロセスを整えるためにそういう無理を重ねるということをやっているわけです。それですから、話し合いのつきようがないわけなんです。実はそういう状態に相なっておりまして、しかも、今年度の事業だというので、もうすでに十月、十一月になってまいりますと、かなり無理を重ねているという状態が続いているわけなんです。果たしてそういう無理をしてやって、こういうものがその地域に建設されればその地域はどうなるかというのは、私どもは比較的近いところにおるものですから、その事情がもう手にとるようにわかるわけなんです。わかっていて、なおかつそれをやろうというような状態が続いておるということを、ぜひ補助金を出す執行者である厚生省にも実は認識をしてもらいたいと思うのです。  自治体には、本来、住民との間に話し合いをしてそういう問題を処理する能力がある、こういう御発言がこの委員会の中でもあったように聞いておりますけれども、これは一般論としてはそうであるかもしれませんが、しかし、しばしば住民の意思に反し、もしくは住民とのトラブルの解決に能力を欠く自治体もあることは当然なわけなんです。そういう最もあしき状態になっているという状態が続いているわけなんです。ですから、当初課長が、内示に至る四つの理由を挙げられました。この環境整備につきましても、私どもとしては非常に疑問を持っておるわけなんです。それから、土地の取得等につきましても、これまでいろいろな疑惑の問題が取りざたをされております。それから、ここに設置をする機種等の選定をめぐりましても、特定の政治家の圧力があったというようなことが報道され、市民の疑惑を呼んでおるといったような状態が相重なっておりまして、何よりも環境上の問題から言っても、手続上の問題から言っても、あるいはまた、そういう形で建設された場合の行き先のことを考えましても、私どもとしては非常にまだ問題が残されたままになっていると判断をしているわけなんです。こういうことについて御答弁を求めるのはあれなんですけれども、課長にもいろいろと事情を御理解していただいている面があるかと思うのですが、そういう意味で、条件を満たさない場合には、なお厚生省としてはどういうふうな措置をとられるのか、この機会にお伺いをいたしておきたいと思うのです。
  59. 森下忠幸

    ○森下説明員 お答えいたします。  全く事務的なことから申し上げますと、ただいまのところ、事業計画書の内容は適正なものと私ども考えておりますし、先ほど申し上げました四番目の問題以外については整っておりますので、その四番目の問題、すなわち住民の同意が得られることによってスムーズに事業が遂行できるということの判断ができますれば内示をいたすわけでございますが、先生がいまおっしゃられましたようないろいろな問題があるようでございますので、千葉県を通じまして、なお詳細に調査いたします。その結果、本年度、これはとても仕事ができないということでございますと内示ができないということになりますが、いろいろな角度からごらんになる方もあると思いますので、なお、詳細につきまして、千葉県を通じて調査をいたしたいと考えております。
  60. 木原実

    木原委員 県を通じて調査をというお話でございますので、私は、ぜひ県を指導されまして、それらの詳細について調査をしてもらいたいと思うのです。そうしませんと、いろいろな角度の推進をしたいという、特に市当局は推進をしたいということで一生懸命やっておることは、私ども承知をいたしております。しかしながら、どうしてもわれわれとしては無理があるということですから、これはおっしゃったように、県を通じて少し詳細に調査をなすっていただいて、場合によれば、いま申し上げたように、ここにこだわらなくてもやれる場所があるわけですから、用地の取得ということがなかなか容易ではないにいたしましても、人命にはかえられないわけですから、やはり事が円滑に進むように取り計らいをお願いいたしたいと思います。  それから、もう一つお伺いをいたしておきたいのですけれども環境基準ですね、先ほどお話がございましたけれども、基準を満たしているかどうかということについては、査定をするのは県とおっしゃいましたか。これはもう十分に環境保全上の措置はとられているという判断を下すのは県ですか、厚生省ですか。
  61. 森下忠幸

    ○森下説明員 お答えいたします。  環境基準ストレートではございませんが、環境基準に基づきまして、公害関係法律で排出基準とか排水基準とか、いろいろな出る方の基準が定められております。それにつきましては、技術的にこういう規制値であればこういった装置をつければよろしいというふうなことを、実は私ども指針で示しておりますものですから、それに基づきまして当然、市御当局も発注をなさると思います。それを県もチェックはなされますが、最終的にこのような構造で先生おっしゃいました環境基準にかかわる排出基準などが守られるかどうかということは、厚生省で国庫補助を承認する段階であわせてチェックいたします。
  62. 木原実

    木原委員 そうしますと、再度確認をしておきたいのですけれども、いずれにしましても、環境上の問題の最後のけじめは、補助金を出す厚生省で基準に適合しているかどうかについてはチェックをする、判断をするということになるわけですね。
  63. 森下忠幸

    ○森下説明員 そういうことでございます。
  64. 木原実

    木原委員 あわせてお伺いしておくのですけれども、たとえば焼却場等の、いずれにしても公害を出しやすい工場であることは間違いないわけですが、そういう場合に、位置の決定等については、厚生省としては指導の方法みたいな、中身みたいなものはないのですか。たとえば、いま申し上げましたように、住宅地域でもたまたま市がそこに用地を持っていたということで建設する場合が、松戸市の場合にあるわけですけれども、位置の決定について適否を判断するということは、厚生省としてはないですか。
  65. 森下忠幸

    ○森下説明員 お答えいたします。  これは大変少ない土地の中からお選びになるわけでございまして、自治体でお選びになるということを御存じ申し上げるわけですが、あわせまして、そういった地域につくるということで、公害防止のために特別の配慮をしなければならぬというふうなことについては指導しております。
  66. 木原実

    木原委員 その特別に配慮をしなくちゃならぬというような場合はどういう場合ですか。たとえば近くに病院があるとか小学校があるとかというような条件ですか。明確なあれはありませんか。
  67. 森下忠幸

    ○森下説明員 明確な基準は示しておりませんが、市御当局公害関係法律に基づくかさ上げが都道府県の条例で定められておるというふうな場合に、それにあわせてどのような構造にしたらよろしいかというふうなことについては、いろいろ御指導をしているつもりでございます。
  68. 木原実

    木原委員 これは徳島の場合も、ある意味では位置の問題であったというふうに私どもは聞いておるわけですが、なかなか用地が取得しにくいという事情は、われわれも了解できるわけなんです。ですから、たまたま用地が取得できたというだけを理由にしまして、その周辺にいろいろ無理をしまして緑地をつくったりあるいは温泉プールのようなものをつくったり、そういう施設を併設するのはいいのですけれども、いずれにしましても、まず取得した用地に執着をしまして、後から環境の問題を考えるという傾向が非常に強いわけです。ですから、焼却場等については、たとえば周囲一キロについてこういうものがあるところはやはり無理なんだとかいったような基準ぐらいは示せるのじゃないかと私は思うのです。過去にいろいろな例もありますし、位置の問題等についても、これからの行政上の指導の問題としては考えていく必要があるのじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  69. 森下忠幸

    ○森下説明員 お答えいたします。  一般的にはそういうことでございますが、何分にも狭い地域の中でお選びになるということでございますので、かえってそういうものをつくりましたときに選択の幅が狭くなるということもございますから、自治体の考えを最優先ということで私ども対処してまいりたいと考えております。
  70. 木原実

    木原委員 それではもうこれで質問を終わりますけれども一つだけお願いをしておきたいことがございます。  いま申し上げましたように、この焼却場の問題が起こりましてすでに三年有余が経過をいたしておるわけです。この施設の用地を、近隣の住民の方々あるいは沼南町という隣接をする地域の人たちが、ある意味ではもう地域こぞって困る、こういう強い声を上げておられまして、しかもその事態が何ら解決をしていないわけです。解決をしていないものですから、市の方が大変に事を急ぐの余り無理を重ねる、あるいはわれわれから見ましても、大変に言葉は悪いですけれども、しばしば、ペテンという言葉がいいかどうかわかりませんが、住民をペテンにかける、あるいはごまかすといったような、少なくとも結果においてそういう措置が積み重ねられていると思うのです。そういうことですから、このままでまいりますと、私どもとしましてはこの問題というのは未解決だと判断せざるを得ないような状態になっております。そういう状態でございますから、私どもとしましては、やはり一にかかって環境を守り、そして静安な住民の人たちの生活環境を守っていく、こういう観点と、それから市の方も、その施設をつくる地域の住民の皆さんを敵にして公益上の利益だという形で問題を押しつけるという姿勢を改めまして、やはり別途の努力をすべきではないのか、こういうふうに考えておるわけなんです。いろいろと当局にまたこれからそういう問題が持ち込まれると思いますけれども、課長のお話にございましたように、もう一度県を通じまして十分な調査をし、それから客観的なデータに基づいて御判断をしていただくように、これは要望を申し上げておきたいと思います。  終わります。
  71. 土井たか子

    ○土井委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二分休憩      ――――◇―――――     午後一時三分開議
  72. 島本虎三

    島本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  公害対策並びに環境保全に関する件調査のため、本日、参考人として本州四国連絡橋公団総裁尾之内由紀夫君及び同公団理事蓑輪健二郎君から意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 島本虎三

    島本委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  74. 島本虎三

    島本委員長 質疑を続行いたします。矢山有作君。
  75. 矢山有作

    矢山委員 きょう、まずお尋ねしたいと思いますのは、四十九年十二月でしたか、三菱石油の重油流出事故が起こったわけでありますが、その問題に関連をして最近、去る二十七日だったと思いますが、岡山地方検察審査会が岡山地検に対しまして議決書を送付しております。その問題に関連をしてお伺いしたいわけであります。  まず最初に、法務省にお伺いしたいのですが、御案内のように、戦後、新憲法のもとで検察審査会制度が設けられたわけでありますが、この制度が設けられた意味をお伺いしたいと思うのです。
  76. 吉田淳一

    ○吉田説明員 お答えいたします。  申すまでもなく、その趣旨、目的は検察審査会法に規定があるとおりでございまして、検察官の公訴権の実行、遂行に関しまして、民意を反映して検察官の処分の適正を図るという趣旨で設けられたものと考えております。
  77. 矢山有作

    矢山委員 私は、実はこの三菱石油の重油流出事故に対する岡山地方検察庁の最終処分書といいますか、三菱石油をどういう理由で不起訴にしたのか、その理由を明らかにした書面をもらいたいということを要求したのでありますが、これは慣例として出さないことになっておるといって拒否されました。どうしてわれわれの手元にこれが資料として提出できないのか、その理由をはっきりさせていただきたいと思います。
  78. 吉田淳一

    ○吉田説明員 御指摘の書類は、現在、事件として起訴をしている分と、それから不起訴にしている分と二つに分かれておるわけでございますが、その証拠はいずれも共通しておりまして、いわば一つの三菱石油の重油流出事件全体の捜査書類でございます。あるいは証拠品でございます。これにつきましては、御承知のように、刑事訴訟法四十七条の規定によりまして、「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない。」ということを規定しております。原則といたしまして、捜査書類はこの訴訟に関する書類であることは申すまでもございません。この不起訴にした分についても、それから、起訴をして、間もなく第一回の公判が開かれると聞いておりますが、それに関係する書類も、先ほど言ったように非常に共通している部分があるわけでございますが、それの書類については「公判の開廷前には、これを公にしてはならない。」ということを明文で規定しておるわけでございます。もちろん、ただし書きで国政調査権等「公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない。」ということでこの禁止規定を解除しているわけでございますが、検察当局の判断といたしましては、この捜査書類は、今後行われます水島事件の起訴をした分の公判立証上、その前にこれを公にするということは、その公判の立証に非常に重大な影響を及ぼすおそれがあるということと、それから、不起訴にしたものにつきましては、そのものに対する関係人の人権の保護その他の理由から、この捜査書類を公開するということは適当でないというふうに判断しておるわけでございます。  この判断権はだれにあるかというふうになりますと、その書類を所持しておる検察官にあるというのが通説でございまして、私どもとしては、その検察官の判断はやむを得ないもの、相当なものと考えておるわけでございます。
  79. 矢山有作

    矢山委員 そこで、私は、それに反論したいのです。  御案内のように、わが国の刑事訴訟法は、国家訴追主義、起訴独占主義のもとで、さらに、それに加えて起訴便宜主義をとっておりますね。これは何かというと、その理由は、起訴、不起訴等の処分が官僚の独善に陥らないようにすることを担保するという立場から考えるときに、検察審査会の議決は検察官を拘束する効力を持たないのでありますから、少なくとも検察審査会において検察官の不起訴処分に対して起訴すべきものと議決した事件についてぐらいは、検察官の不起訴処分の理由書を私は国会の論議の資料として提出すべきだと思うのです。それは、たとえば刑訴法の二百六十一条によると、告訴人、告発人、請求人の請求には不起訴の理由を告げなければならぬことになっております。そういう規定があるぐらいですから、したがって、先ほどあなたがお述べになった、原則として公判前には資料を提出しないという意味もわかります。意味もわかりますが、やはり検察官による官僚独善的なやり方を防ぐというこの検察審査会制度の趣旨を考えるなら、不起訴処分にしたもの、われわれが要求したのは三菱石油を不起訴処分にしたその部分についての理由書を出してくれ、こう言ったわけですから、それぐらいのものは出して何ら差し支えないと私は思う。まさにこれを出すことが、現在の公害の状態の中から判断するときに公益にかなうものじゃないのですか。私はそう考えておるのです。どうなんです。
  80. 吉田淳一

    ○吉田説明員 御指摘のように、検察官が起訴を独占しているわが国の法制のもとにおいて、その検察官が官僚独善的なことに陥ってはならないことはもう御指摘のとおりでございます。それだからこそ検察審査会法という民意を反映する法律ができておって有効に機能しておるわけでございますけれども、さりとてこの検察審査会で不起訴不当あるいは起訴相当として議決をされたものの事件に限ってぐらいは不起訴理由、私ども不起訴裁定書と言っておりますけれども、その中に主文と理由が詳しく述べられておるわけでございますが、それを公にするということはやはり適当ではないというふうに考えざるを得ないのでございます。  今度検察審査会が本件事件につきまして議決をなさいまして、検察審査会法四十条によりましてその議決の要旨を公にしておるはずでございますが、その中でも不起訴裁定書は削除されて公にされていないはずでございます。そういうふうに私ども聞いて承知しております。やはりこの刑事訴訟法の規定によって、告訴事件等については、不起訴処分についてその理由等を告げることになっていることは御指摘のとおりでございますが、まさしく刑事訴訟法はそのような限りで、一般の告訴人の利益とそれから捜査、公判という司法上の公益との調和を図ろうとしているものと考えておるのでございます。この点はいろいろ御議論のあることかと思いますけれども、たとえば昨年ロッキード事件がございましたときにも、再三にわたって捜査書類を出しなさいということを国会で御要求なり御要請があったのでございますが、私ども司法の利益を守りそして司法の独立を守るためには、やはりその捜査書類の非公開という原則は今後とも貫かれてしかるべきものである、そうしないと将来の検察運営に重大な支障を来たすおそれがあるということで御説明を申し上げて、まげて御理解をいただいてきたと思うわけでございまして、三菱石油の本件についてのみ例外としての措置をとるということは、私どもとしては適当でないというふうにお答えせざるを得ません。
  81. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、あなたが先ほど刑訴法の四十七条を言われましたが、あの例外規定が適用される場合というのは、一体どういう場合なんですか。
  82. 吉田淳一

    ○吉田説明員 「公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない。」ということでございますが、その最大の事例として国政調査権ということが言われていることは事実でございます。それじゃ国政調査権で公にするべき場合はどういう場合かということでございますが、私どもといたしましては、その国政調査の御要求に応じまして、私どもとして必要な限度で、でき得る限り国会の御説明なり御答弁を通じましてその内容を明らかにする、できるだけぎりぎりのところまでそういうことで御協力を申し上げる。ただし、これから公判に使ったりあるいは不起訴にした捜査書類そのものを国会に御提出するということは、これからの関係人の取り調べだとか関係人の証人尋問とか、その他いろいろなことに影響を及ぼすものでございますので、その点は避けていただきたいということをお願い申し上げているわけでございます。
  83. 矢山有作

    矢山委員 私は、いまの御答弁では満足できません。しかしながら、この問題だけで議論をしておりますとこれで時間をとられてしまいますから、この議論はまた改めてそれぞれの適当な場でやらしていただくということにして、質疑を次に進めていきたいと思います。  ところで問題を広げて議論をいたしますと、時間的な関係からして十分な論議が尽くされないおそれが出てまいります。そこで私は、問題を三菱石油に対する公害罪法――正式には人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律ですが、略称で公害罪法と呼ばせていただきます。この適用にしぼって質疑を進めてまいりたいと思います。  そこでまずお伺いしたいのは、公害罪法制定に至った背景なり経緯、さらにこの法の趣旨について、法務省はどういう認識を持っておられるのか、あわせて環境庁長官はどういう認識を持っておられるのか、お伺いしたい。
  84. 吉田淳一

    ○吉田説明員 御指摘の公害処罰法は、昭和四十五年十二月十八日、第六十四回臨時国会で成立、法律第百四十二号として公布制定されたものでございます。そして昭和四十六年の七月一日から施行されておるわけでございます。  もちろんこの公害処罰法の立法の趣旨は、この法律自身によっても明らかでございますけれども、事業活動に伴って人の健康に係る公害を生じさせる行為などを厳正に処罰するということによりまして、公害防止の他の関係諸法令の規制と相まって公害防止に資しようということでございまして、法務省、検察庁といたしましては、この公害処罰法の厳正な処理を行うべきものと考えておるわけでございます。もちろんこの法律だけでは公害を防止するということはできませんけれども、それの重要な一翼を担いたいということでございます。  そこで、現にこの法律を施行いたしましたときに、全国検察庁に公害係検事をそれぞれ設けまして、公害専門官とも言うべき検事をそれぞれ指定いたしまして、各庁でその諸活動を行っております。現に公害関係のいろんな諸法令、罰則がその後整備されてまいりましたので、それに伴って事件についても相当数の事件を受理し、かつ、起訴しておるところでございます。
  85. 矢山有作

    矢山委員 そんなことを聞いているのじゃないのです。その法の解説なら私もいささか承知しております。それよりも、こういう公害罪法初め公害諸法があえてつくられてきたその背景なり経緯をあなたは何と認識しておるかと聞いているわけです。
  86. 吉田淳一

    ○吉田説明員 説明が不十分だったかもしれませんけれども、この公害処罰法が設けられるに至った背景といたしましては、放置できない公害が各地に続発している、それを現行の法制では不備であるので、このような法律で厳正に取り締まることを含めて公害を防止しなければならない、そういう国民の声にこたえてこの法律ができたものと理解しております。
  87. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 過去に激発いたしました公害が社会に与える影響というものの甚大さというものにかんがみまして、公害の防止に関します他の法令と相まって人間の健康に係る公害というものを防止し、こういった過ちを繰り返すことをできるだけ少なくするためにも大変効果を持つ一つ法律として設定されたと心得ております。
  88. 矢山有作

    矢山委員 こういうことじゃないのですか。時間がないから私の方から言いますが、要するに昭和四十五年当時の状況を考えると、三十年代以来わが国がとってきた経済政策、つまり大企業中心企業利益至上主義というか、そういう政策がとられて、金融、税制の面、あらゆる面で企業に有利なような施策がとられてきた。そういう中で大企業はたくさんなもうけをする、そして巨大化していく。その反面に、考えてみたら公害があちらこちらに大変起こってきた。生活環境を破壊する、人の生命身体は脅かされる。そこに国民の企業の利益至上主義に対する反発が強くなってきている、企業が放出しておる公害から生活環境を守り、人の生命、身体を守ることが優先されなければならないのじゃないか、こういう国民世論を背景にしてこの公害罪法を初めとする公害諸法がつくられたのでしょう。そうじゃないのですか、背景を言うなら。
  89. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 確かに過去に人間の健康を損なう、非常に過激な形であらわれた公害がたくさん存在いたしました。こういうものを防止し、経済もまた社会工学的には不可欠な要因でありますけれども、これをいたずらに優先することなく、こういった問題を引き起こさないために、その防止策の一つとしてつくられたと心得ております。
  90. 矢山有作

    矢山委員 そこで、法務省にお伺いしたいのですが、その三菱石油の重油流出事故が起こった当時、これは大変な世論の非難がわいたわけです。企業犯罪とまで言われて大変な厳しい批判を受けたわけでありますが、その三菱石油の責任を一切不問に付したこの検察の処分に対して、その当時世論がどう反応しておったか、あなた覚えておりますか。覚えておったら言ってください。
  91. 吉田淳一

    ○吉田説明員 検察庁で処理をいたしましたのは先ほど申しましたように起訴と不起訴両方あるわけでございますが、その起訴の点についていろいろ御意見があったことは私も承知しております。一々その内容について申し上げるのもどうかと思いますけれども、いろいろな批判的な御意見もあったということは十分承知しております。
  92. 矢山有作

    矢山委員 私は、その当時の新聞を苦労してひっくり返してたくさん探してみたのです。一致して世論が言っておるのは、検察庁の三菱石油の責任を不問に付するこういうやり方で、全国のコンビナート企業は大変喜んだだろう、これで企業の安全性への無神経ぶりをますます増長させる結果になるだろう、こういう厳しい批判がその当時各新聞に報ぜられております。私も、その当時のことを振り返ってみて、検察庁のやり方はまさにその世論の反発のとおりだと思っておるのです。  そこでお伺いしたいのは、検察庁は、工事の総括責任者だというような見方から、千代田化工建設、タンクを設計施工した石川島播磨重工業の二社と下請の東洋工務店を含む三社の設計工事責任者六人を過失往来妨害罪と岡山県海面漁業調整規則違反で起訴したのみで、重油流出事故の元凶である三菱石油については、タンクの管理保安責任、重油の海上流出防止責任等一切の責任を問うことなく起訴しなかったわけであります。ところが、検察審査会の議決は、三菱石油は公害罪として起訴すべきであり、適用法条は、公害罪法第三条第一項にとどまらず、同法第三条第二項、また同法第四条の両罰規定を適用すべしと言っておるのでありますが、この検察審査会の議決に対する御所見と、三菱石油の責任を一切不問に付して起訴しなかった理由は何であるか、これを伺いたい。
  93. 吉田淳一

    ○吉田説明員 検察庁が社会的に注目されている事件について起訴、不起訴を決定した場合、それぞれいろいろな角度から御批判があるのはやむを得ないところだと考えております。  本件について、検察官といたしましては、基本的な態度は、先ほど申しましたとおり公害処罰法を厳正に適用するという立場で検察の仕事をやっておるわけでございます。検察庁の仕事というのは、刑事責任を追及する、しかもその刑事責任の追及については十分な証拠とそれだけの責任を問えるということがあってそれを裁判所に起訴をするという責任を持っているわけでございます。検察官が慎重な捜査をした結果どうしても刑事責任を認めがたい、あるいは証拠が十分でないというものについて検察官が起訴をするというようなことになれば、これはむしろ大変な問題が起きるわけでございまして、検察官の職責を逸脱するものだと考えております。本件について、事故が起きまして事故調査委員会においても種々調査を遂げられ、警察においても送致に至るまでいろいろ捜査をして、さらに送致を受けた後約一年近く検察庁自身が応援の検事を得てあらゆる角度から捜査をしたつもりでございます。その結果、御指摘の三菱石油につきましては刑事責任を認める証拠なし、認めがたいという判断に達したのでございまして、決して企業をどうするとかそんなつもりでのことでは全くございません。検察官としては全くその事実を客観的にながめて公正に処理しようとした、そしていろんな角度で捜査をした結果、三菱石油について、本件について公害処罰法を適用するに由ないものであるという判断に達して不起訴にしたのでございます。  ただ、それについて検察審査会がその不起訴処分は非常におかしいということで議決をされたのも事実でございます。この検察審査会の議決書について私自身個人の所見は持っておりますけれども、しかし、そのことをここで申し上げるのは適当でないので、それは控えさせていただきたいと思うのでございますが、岡山地検といたしましては、この検察審査会の議決書の送付を受けまして、現在、全く公正な立場で、もう一度捜査をやり直しておるのでございます。議決の趣旨を尊重して、検察庁としてもう一度考え直す必要がないかどうか、捜査が不備であったかどうか、その点を再捜査を行っておるところでございます。いずれ近く検察庁としては、この事件について再度の処理を発表することになると思いますが、それまでしばらくお待ちいただきたいと思います。
  94. 矢山有作

    矢山委員 私は、証拠が不十分だから起訴しなかったというようなことを聞いておるのじゃないのです。証拠が不十分だから起訴しなかったのはあたりまえの話なんだ。ところが、公害罪法を適用するについて証拠が不十分というだけでなしに、公害罪法が具体的に故意犯としても過失犯としてもどういうことで適用ができないという判断を下したのか、その理由を言ってもらいたいのです。私は最初言ったでしょう。三菱石油を不起訴処分にしたその具体的な理由が知りたいから理由書を出してくれと言ったら、あなたはそれは出せないと言う。出せないのなら、国会の論議の場でその理由を具体的に挙げてもらわなければ議論ができないじゃありませんか。それをもやらぬというのなら、まさにあなた、検察官による官僚独善ですよ。議論の進むように、なぜ公害罪法の故意犯、過失犯、いずれも適用できなかったか、その具体的な理由を言ってくださいと言っている。証拠が不十分だからそれは起訴できなかった、そんなことは子供だってわかることだ。
  95. 吉田淳一

    ○吉田説明員 私の御説明が不十分なために申しわけなかったわけでございますが、その不起訴にいたしました要点を申し上げます。  これは検察庁が、三菱石油はもちろん、千代田化工、石川島播磨、その他関係工事業者、関係人あるいは事故調査委員会等の調査結果等々を総合して調べた結果の検察庁の認定では、本件の事故原因は、直立階段基礎工事のための貯槽底部下の基盤沈下の局部的な掘削と埋め戻し転圧が十分でなかったことに帰着するという結論でございまして、それについて問題があるのは、階段基礎の設計及びその施工上の誤りでございます。この点についての過失責任が問えるものといたしましては、この工事に直接関与した者等、あるいは直接工事に関与しておらなくても注文側である三菱石油等について、それらの過失についてやはり監督懈怠その他のことがあったのかどうか、こういうことについていろいろ捜査したわけでございます。その結果、ただいま申し上げました過失原因について、御指摘の三菱石油会社及びその関係者側には過失責任を問う余地がないという判断をいたしたわけでございます。その点も不起訴理由にかなり詳細に述べておるのでございますが、こういうことで、注文側の三菱石油会社側に、ただいまの点の過失責任について、これに関与し、あるいはこれについて適正な指図をしなかったとかいうことによって刑事上の過失責任を問えるかどうか、こういうことについても十分調査した結果、ただいま申し上げたような不起訴になったということでございます。
  96. 矢山有作

    矢山委員 どうも話が抽象的になって、議論がかみ合わないのですが、私は、これは新聞の報道ですから、岡山地検の小村検事正に確認したことでないので、果たしてこのとおりおっしゃったかおっしゃらぬかということはわかりませんが、小村検事正はこういうふうに言っているのです。「小村保秀・岡山地検検事正の話」として「議決書には新しい捜査を必要とする事項も盛り込まれておらず、再捜査の結論も早く出せるだろう。三菱石油の責任について“感情”は理解できるが、公害罪法の構成要件である「通常の業務活動に伴った事故」という解釈を逸脱しているし、予見可能性もないと判断した。」こういうふうに言っておるわけです。この点はどうなんですか。
  97. 吉田淳一

    ○吉田説明員 ただいま御指摘のような記事が報道されていたことは、私も承知しております。ただ、小村検事正がこのような発言をそのとおりしているのかどうかは、私も確認しておらないのでございますけれども、「再捜査の結論も早く出せるだろう。」という趣旨のことを仮に言っているといたしますれば……(矢山委員「そこはいいです。問題にしておるのは、その次、「公害罪法の構成要件である」云々ということです」と呼ぶ)  「「通常の業務活動に伴った事故」という解釈を逸脱しているし、予見可能性もない」という点につきましては、こういう言葉の表現はともかくといたしまして、三菱石油について、先ほど申しましたような捜査の結果によって、この事故について何らかの予見可能性があり、そして結果を回避する義務があったかどうか、そういう角度からも捜査を遂げて、その結果、そのような予見可能性はなかったということも不起訴の一つの重要な理由に実質的になっておるのでございまして、この点につきましては、この言葉の表現が、どういうふうに検事正が言ったかどうかは知りませんけれども、実質的には不起訴の理由そのものにマッチするものと思います。  ただし、それはともかくといたしまして、議決書が出たわけでございますから、これについて改めて予断、偏見を抱かないで再捜査を行う必要があるということは言うまでもございません。
  98. 矢山有作

    矢山委員 この場合重要なのは、公害罪法の適用に当たって、公害罪が成立するための構成要件をどういうふうに理解するかということが、起訴、不起訴を決定する非常に重要な要素になっておるわけでしょう。そこで私はあえて問うたわけですよ。だから、もしあなただったらどう考えるのですか。三菱石油を不起訴処分にしたことに対して、公害罪法の構成要件である通常の業務活動に伴った事故という解釈を逸脱しているとあなたは考えるのかどうか。予見可能性についてはいまお考えを承りました。どうなんです。
  99. 吉田淳一

    ○吉田説明員 まことに恐縮なんですけれども、私個人の考えということを、現在実際に係争中の事件でございまして、それが現在再捜査中の事件でございますので、私の立場として申し上げることは、ちょっと差し控えさせていただきたいのでございます。「事業場における事業活動に伴って人の健康を害する物質を排出し、」というのが、公害処罰法の構成要件でございますが、この「事業場における事業活動」というのは、三菱石油について言えば、三菱石油の事業場における三菱石油の通常の、本来の事業活動に伴ってその物質を排出しているということになるわけだと思います。そこで、人の健康を害する物質を排出したというので一番典型的な例は、よくありますように、あるメッキ工場ならメッキ工場があって、そこからいろいろな処理を行った結果、排出口を通じていろいろな有害性物質を排出する、それがいろいろ蓄積をして公害を起こすというようなケースでございますけれども、こういうような非常に典型的なものでないことはおわかりいただけるかと思います。  本件の過失の原因を一体どこでとらえるかということが、やはりこのポイントだと思います。検察庁が捜査をした結果、認定できたのは、先ほどの直立階段工事の基礎工事について問題があった、それについての関係者に責任があるということでございまして、それは、これに石油を入れて、それから本来の事業活動を行うというのよりか、もう一つ先の事柄でございます。そういうこともこの公害処罰法の構成要件に当たるかどうかというのは一個の問題でございまして、それはともかくとして、先ほど申しましたように、三菱石油については、先ほどの直接の事故原因について何らかのこれに関与したという責任は問えないということを検察庁は判断したわけでございまして、そういうことで公害処罰法の適用はないということを言っておるわけでございます。
  100. 矢山有作

    矢山委員 そうすると課長、あなたのいまの言葉を聞いておると、やはりこの公害罪の構成要件一つとして、通常の事業活動に伴ってというふうに考えておられると思うのですね。そういう御答弁だったと思うのです。それは私は、この公害罪法というものを非常に狭く限定的に、企業に有利に解釈する解釈の仕方ではないかと思うのです。通常の業務活動に伴ってということは、法文の中にはどこにもない。「事業活動に伴って」とあるのです。通常の事業活動に伴ってという場合と、「事業活動に伴って」という場合は、その考えられる範囲というものが全然違ってまいります。一体どうなんですか。
  101. 吉田淳一

    ○吉田説明員 私は、ちょっと言葉を言い過ぎた点がありますので、訂正いたしますが、通常のというのは……(矢山委員「必要ないでしょう」と呼ぶ)必要ございません。事業目的遂行のために必要な活動に随伴して公害が起きたかどうかということが公害処罰法の要件であると考えております。
  102. 矢山有作

    矢山委員 いまのはあなた、言い方を変えただけであって、通常の事業活動ということと同じことの結論になってしまうじゃないですか。ただ言い方をあなたは変えただけです。「事業活動に伴って」というのは、事業活動をやっておる場合に、それが通常のものであろうと何であろうと関係なしに、三菱石油というその事業活動に伴うものとして全部考えられたならば、やはり今度のような重油流出事故というのはその範疇に入ってくるわけでしょう。あなたのは言い方を変えただけですよ。そういうふうな解釈をするから公害罪法が適用できないということなんです。頭をひねることはない、あなた。よく考えてごらんなさい。通常の事業活動という言い方を、二度目にあなたが答弁をされたときには変えただけの話だ。だから、やはりあなたの頭の中には、通常の事業活動に伴って、つまり「通常の」というのがこびりついておるわけだよ。それではこれは、限定的にきわめて狭い範囲でこの法律解釈をやっておると言わざるを得ないのです。  そこで、この公害罪法が国会で成立するときに附帯決議が行われていますね。その附帯決議を読んでみると、「政府は、複雑多岐にわたる公害の実情にかんがみ、不断の努力によりいやしくも企業責任が現場責任者のみに転嫁されることのなきよう努める等適切な運用をはかる」ということが附帯決議としてつけられておるわけです。あなたのように、事業活動というものに伴う公害というものを非常に狭く解釈する、そういうおそれがあるからわれわれはこういう附帯決議をつけておるのじゃないですか。あなたのような解釈だったら、これは三菱石油の責任を追及できなくなる、そういう法律解釈に終わってしまうことはあたりまえの話です。  そこで、一つところにとまって議論をやっておってもなんですから次に移しますが、この法文によると、「事業活動に伴って人の健康を害する物質を排出し、公衆の生命又は身体に危険を生じさせた者」云々と、こうあるわけです。この事故当時、岡山大学の医学部衛生学教室がこれについて調査をしておるのです。これは「重油回収作業に従事した漁民の健康障害の追跡調査結果」ということで、報告書としてまとめられて出されております。その中に、重油回収と人体被害発生との因果関係を疫学的に解明をしているわけです。そうすると、次の構成要件であるところのいま言った「人の健康を害する物質を排出し、公衆の生命又は身体に危険を生じさせた」ということに三菱石油の場合は該当してくると思うのですが、どうなんですか。
  103. 吉田淳一

    ○吉田説明員 ただいまの御質問にお答えいたす前に、「事業活動に伴って」の解釈の問題でございますが、先ほど申しましたように、事業目的遂行のために、あるいは事業に必要な活動に随伴してということで構成要件は充足すると申し上げておるのでございまして、決して狭く解釈しているとかいうつもりではございません。本来その立法の趣旨をそのまま適用すれば適正な運用ができるものと考えております。「人の健康を害する物質」に今度の事件の重油、C重油と言われているようでございますが、それが当たるかどうかということでございます。  これは、一件の処理をまずその前に申し上げておきたいのでございますが、事件の処理といたしましては、この健康を害する物質に当たるか当たらないかということを論ずるまでもなく、事業活動に伴って過失によって排出したということに三菱石油等の関係者は当たらないというふうに検察庁は判断したのでございまして、これから申し上げます「人の健康を害する物質」云々の問題で消極に解したのではございませんことをまずお断りしておきます。  そこで、一般論になるわけでございますが、「人の健康を害する物質」とは、私ども国会でこの法律ができた当時再三にわたってお答えいたしておりますように、人の健康保護の観点から規制の対象としている有害物質のように、人の健康に害のある物質をいう――まあ同じようなことを言っているとしかられるかもしれませんけれども、具体的に申すならば、これは以下申し上げるようなことの物質だけに限られないと思いますけれども、「人の健康を害する物質」として言われておる、法令であらわれておるものとしては、公害対策基本法九条に基づく水質汚濁に係る環境基準とかその他水質汚濁防止法とか水道法等にいろいろその物質が列挙されて、政省令等で列挙されておりますけれども、そういうものを典型的に「人の健康を害する物質」だと解釈しております。
  104. 矢山有作

    矢山委員 「事業活動に伴って」の問題にちょっと返っていきますが、あなたは事業目的遂行に必要な活動に付随する、こういうふうにおっしゃったんですね。そうですね。そうすると、事業目的遂行に必要な活動に付随するというような解釈を「事業活動に伴って」ということでするなら、それは小村検事正の言っておる通常の事業活動に伴ってというのと結論は同じである、そういうことになるということを私は言っておるのです。そういうふうに狭く解釈してはならない、それが私の主張です。あなたの言うように、事業目的遂行に必要な活動に付随すると言ったら、これはきわめて限定的に解釈することになる。それでは三菱石油の責任を問えなくなってくる、それは当然の話です。そういうような狭い解釈をしてはいけない。そういうようなことになるおそれがある、そういう危険性を感じたから、わざわざ附帯決議で、先ほど読み上げたようなものが付せられたわけでしょう。私はそれを言っておるのです。誤解のないように願いたい。これは法律の解釈の問題ですから、これは私の意見にあなたが賛成してくれればこれにこしたことはないのだが、なかなか賛成せぬだろうから、これ以上幾ら言ってもしようがないけれども……。  それから次に、有害物質という場合に、何も法令上に列挙しているものだけを有害物質として考える必要はない。現実に、先ほど言った岡山大学医学部の衛生学教室の調査によれば、重油回収と人体被害発生との間の因果関係が疫学的に解明されておるのですから、人体に被害を及ぼすものは有害なものじゃないですか。それが法令に規定されておろうと、されておるまいと、法令に挙げられておるのは、いわゆる一つのこういうものという例示的に挙げてあるのでしょう。法令の中で何もかも全部抜き出してこれは全部有害なんだといってこういう形で挙げておるわけじゃない。現実に人体に被害を及ぼしておるのだから、人体に被害を及ぼしておるという現実がある以上はこれは有害物質なんです。そうじゃないのですか。法令で挙げられたものだけが有害物質なんだなんて、そんな考え方がありますか。
  105. 吉田淳一

    ○吉田説明員 先ほど法令に挙げられたものだけが有害物質だと申し上げたのではなくて、それが典型的な例として申し上げただけでございます。もちろん、法令に規定されていなくても、そのものの属性として人の健康を害するような物質につきましては、公害処罰法の「健康を害する物質」に当たると考えております。そういうことでございますので、その点は決して法令に限って解釈しているつもりはございません。
  106. 矢山有作

    矢山委員 では、法令に限ってだけ解釈してないなら、現実に、先ほど言った岡山大学医学部の調査によって人体に実際に被害が起こっておるのだから、この重油はやはり有害物質ということになるのじゃないですか。そうじゃないの、そこまで言うなら。
  107. 吉田淳一

    ○吉田説明員 本件重油がここで言う「健康を害する物質」に当たるかどうかという点でありますが……(矢山委員「健康を害しておるじゃないか、現実に」と呼ぶ)害する物質に当たるかということでございますけれども、この点については、御指摘のようないろいろな追跡調査がございます。それから厚生省等でも発がん性のおそれがあるかどうかということについても検査をしたと聞いております。それらこれらを総合的に勘案して、それに当たるかどうかということを決めるわけでございますが、非常に歯切れが悪くて申しわけないのですけれども、現在この事件について捜査中で、検察庁の捜査の処分として、必要があればでございますけれども、必要があればこの点についての判断をいたすものと思います。その前に、私ども法務省の者がこうだということで公にこのことに意見を言うのは、なるべくなら避けさせていただきたいのでございますが……。
  108. 矢山有作

    矢山委員 その点を避けることはないじゃないの。現実に人体被害が起こっておるのだから、これは人体被害を起こした以上、有害なものに相違ない。そういうような、歯切れの悪いと自分でおっしゃったが、まさに歯切れの悪い、あいまいなことを言っておられたのでは、これは困るのですよ。  そこで、今度は検察審査会の議決書を引きながら、あなたの所見をひとつ聞いていきたいと私は思うのです。  検察審査会が三菱石油に対して公害罪法を適用して起訴することが適当であると判断をした、その判断の基礎としてこういうことを言っておるのです。  (一)昭和四九年一二月一八日二〇時四〇分頃発生した本件油濁事故は流出重油を被疑者三菱石油株式会社水島製油所構内および水島港内にとどめ得ないまま、瀬戸内海広域に拡散させた史上最大の海洋汚染事故である。   水島コンビナート地帯は海面を埋め立てた軟弱地盤地帯であるから基礎地盤の不等沈下等による貯槽破断それに伴う重油流出事故の危険は容易に認識できるところであったから結果発生防止可能者である三菱石油としてはその保安管理、保守安全対策に万全を期すべき義務を課せられていた。こういうふうに見解表明しているわけです。これから論議をするのは、いわゆる過失として責任を追及できるかどうかという部分に入っていきます。そのことを御承知いただいて、こういう判断を下しておることに対して御所見を承りたい。
  109. 吉田淳一

    ○吉田説明員 私の所見は控えますけれども、検察庁が議決書のそのような指摘について公正な立場で現在再捜査を行っておるということでございますが、不起訴の処分に至りました考え方といたしましては、御指摘のような地盤のところで直立階段の基礎工事を行った、その基礎工事について設計上と工事施行上のミスがあったということは検察庁自身も認定しておるわけでございまして、そのような点と議決書の指摘する点とが十分かみ合っているかどうか、これは御指摘のように一個の問題でございますけれども、その点について両者の間にそごがあるとすれば、そのそごについてどちらか、もう一度事実関係を究明するということで現在やっておるわけでございますから、間もなく検察庁の処分が決まると思いますので、その点についておまえはどういうふうに考えているかということについては、ちょっといまお答えしにくいわけでございます。
  110. 矢山有作

    矢山委員 何だか処分をやった検察官を呼んでこなれば話にならぬ。しかし、一応問題点は全部これから挙げて、あなたの見解を承ります。  次に、  (二)本件貯槽破壊原因につき、自治省消防庁に設けられた政府事故原因調査委員会昭和五〇年一二月一八日に発表した三菱石油水島製油所事故原因調査報告書(以下最終報告書という。)によれば貯槽基礎の軟弱、直立階段の基礎工事階段取付場所不適、溶接不良、油温不適当等を挙げ、これらの因子が悪い方向へ重畳的に競合して惹起されたものである旨、報告されているにもかかわらず検察官が直立階段基礎工事不良が決定的な事故原因であるとして直截的に結論を出していることについては、片寄った判断として到底首肯できないところである。  次に、  (三)貯槽破壊原因と責任所在に対する考察   1、貯槽破壊の要因として検察官所論の如く基礎地盤改良工事の一環として水張り圧密中に直立階段取付のため貯槽底部下の基礎地盤を局部的に掘削し工事完了後の埋め戻し転圧が十分でなく、その後の油の出し入れ、さらに貯槽負荷による基礎地盤の部分的沈下を促したであろうこと、また直立階段に対面する側板と、アニュラプレートとの隅肉溶接継手のアニュラブレート側趾端部のいわゆる青黒色仮面中央上面に貯槽破壊以前の時期において生じたと認められる部分割れが生じていたであろうこと等については否定するところではないが、最終報告書は「貯槽破壊に介在する問題は必ずしも単純ではなく、多くの因子が互に悪い方向に組合った形で現象の引金になったものと考えられ、諸条件を考慮すると事故の発生を学問的に明らかにすることは難しい。」と報告されており、直立階段の基礎工事、溶接不良のみが過失責任に結びつく決定的な要因とは言っていない。こういうふうに言っておるわけであります。   2、本件事故T-二七〇号貯槽が海岸埋立地の軟弱地盤上に建設されることとなるため基礎地盤の圧密を十分行なって支持力を強化し締固めておく必要があることは、過去における事故例すなわち昭和四三年七月八日の極東石油、昭和四四年六月のアジア石油、昭和四五年の西部石油の貯槽底板破壊等(基礎地盤不良等)をみても明らかなところである。   3、しかるに本件T-二七〇号貯槽はアメリカAPI規格に準拠して設計、建設されたものであり、同規格は基礎地盤の圧密必要期間を四〇日間としているにもかかわらず、余りにも短い四日間で圧密を完了させており、このことから到底満足が得られた地盤が形成されたとは考えられない。こういうふうに主張しておるわけです。したがって、直立階段の部分についてだけ切り離して判断をしておる検察庁の判断が間違いであるということをこれは指摘しているのだと思うのです。簡単に言うなら。どうなんです。この点についての御所見は。
  111. 吉田淳一

    ○吉田説明員 議決書が指摘している点はまさしく御指摘のとおりでございます。検察庁がなぜこのような認定をしたか、先ほど申し上げたような直立階段基礎工事についての設計上、施工上のミスということで認定をしておるかと申しますと、これはもちろんこの事故調査委員会の中間報告及び最終報告、それらも十分検討いたしたわけでございます。  一つの例を申し上げます。この事故調査委員会というのは、結果だけが公表されておるのでございまして、各委員先生方がこの調査委員会でいろいろな意見を交換し合っている、あるいは意見をお持ちになっている、そういうもののそれぞれの事柄は、公表は必ずしもされておらないのでございます。そこで、この調査報告だけではよくわからない、検察庁として最終処分をするのにはよくわからない点がございまして、本件捜査の過程において、私、当時、法務省でまさしくこの担当をやっております刑事課長をしていたのでございますけれども、それにも照会がございまして、諸先生方のいろいろな意見を書いた個人でお持ちになっているメモなどもございましたので、そういうものなども何とか領置したいということで実は参ったわけでございます。それで、私どもといたしましては、そのことを関係省庁にも強くお願いいたしまして、それらを領置することは、刑訴法上で言うと押収ということになりますが、領置することができておるわけでございます。さらに、検察審査会の議決書にもすでに指摘されておりますけれども、その諸先生方に直接会いまして、それらの諸先生方の供述調書を作成したわけでございます。  したがいまして、検察庁の先ほどのような認定が出てきたのは、この調査報告はもとより専門的なものとして尊重すべき事柄ではございますけれども、さらにその中身に立ち入って、そしてそれぞれの諸先生方各自が持っている御意見を十分に拝聴し、その上でこれらの調査報告をも総合的に勘案して、検察庁として客観的な諸状況を集めたものに基づいて先ほどのような認定をしておるのでございます。だから、検察庁としては十分その点について、こんな言い方をしては申しわけないのでございますが、自信があるものと思います。  しかし、議決書について、いろいろな諸要因が悪い方に重なり合ってできたもので、この階段基礎工事だけに責任を持たせるのはおかしいという御指摘がありますので、その点がまさしく再捜査の焦点になっていると思いますが、その点を現在もう一度改めて公正に捜査しているものと考えます。
  112. 矢山有作

    矢山委員 それでは次に、過失犯として成立するかどうかという、直接に関係する部分について指摘されておる点を申し上げてみたいと思うのです。それは、  (五)使用中における貯槽の保安管理上の過失   1、被疑者三菱石油、同渡邊武夫、同伊藤満、同澤登典夫、同大嶋俊夫等は同会社の業務に関しそれぞれの担当部門において、多くの危険性を包蔵している貯槽の保安管理には特段の意を用い事故の発生を未然に防止すべき注意義務を課せられていたにもかかわらず、これを怠り本件T-二七〇号貯槽が軟弱地盤上に建設されたものであることの認識の深い三菱石油は貯槽の基礎地盤沈下乃至支持力等についての保安点検を行なわず、支持力低下極度の不等沈下等を漫然と看過したことは管理上の過失として責めを負わねばならない。   2、使用上における過失   (1)本件T-二七〇号貯槽は重油の維持温度を五〇度Cとして設計建設されたものであるにもかかわらず、貯槽に入れる重油温度が本格的使用を開始してから事故発生までの間おおむね六十五度Cから九十五度Cと計画以上の高温(一〇八度Cに達した日がある。)となっており、不当な高温繰返し負荷が貯槽の側板、底板に加えられたことにより、鋼板の強度が弱められたことも考えられ、高温による熱応力及び温度変化の影響等が貯槽破壊原因の一つとされていることは、最終報告書においても報告されているところである。  なお、つけ加えておきますが、事故発生時の油温は摂氏八十度の温度であります。    (2)事故発生直後隣接するT-二七一号貯槽との油深差(当時T-二七一号の油深約七メートル、T-二七〇号の油深約二八メートル)を利用してT-二七一号貯槽へ重油を移送すべくバルブ操作を行ったところ、大音響とともにT-二七〇号貯槽の底部が破断し大量の重油が流出し、よって同貯槽の油深が急激に低下しT-二七一号貯槽内の重油約六、二八八キロリットルが逆入した結果重油流出量が増加したものであるが底部破断時において即時バルブ操作が行われ交通弁が閉止されたならば海上への流出量も減じられたであろうことは想像に難くない。この即時閉止を行ない得なかった理由も前記2の(2)に述べたとおり不当な高温使用が招いた事態であることを忘れてはならない。  (3)本件事故発生時における油温は八〇度Cであったごとが記録されているが、かりに維持温度五〇度Cで使用されていたとすれば重油そのものの持つ性質が低温度である程粘性が高められるのであるから貯槽からの流出速度は減じられ、また構内のあたり一面、油のガス化、または油しぶきも立ちこめることも第二次的災害発生の危険も生ずることなく、また操油課員等もさして生命に危険を感じることなく、即時バルブ操作を行い得たことであろうと思われる。   以上のようにT-二七〇号貯槽に不適当な高油温使用が被害の拡大へとつながった要因であるから過失として責められるところである。(六)事故後における被害拡大防止措置と過失事故発生後、約一〇時間にわたって約一五、〇〇〇キロリットルの冷却水が三菱石油水島製油所構内の装置にかけられたことについて、検察官が言うように同構内の第二次的災害発生防止のため止むを得ずとった措置であったとしても、仕方がないと言う考え方は、次の理由から肯定できない。  1、過去における我が国の事故例をみても、臨海の陸上施設から発生した流出事故が、重油を広域海上へ拡散したときは、海産物に多大な被害をもたらすことは十分予見されるところであるにもかかわらず、巨大な操業利益を得ていた三菱石油としては余りにも貧弱な防災設備、資材のみの整備態勢であったと言わざるを得ない。   当時三菱石油は法規制は遵守していたと主張するかも分らないが、法はあくまで最低線を示すのみであるから、その法規制を踏まえたうえで客観的に必要とされるまでの安全策を講じておくことが企業に与えられた責務であり社会的要請にも応えるものとして高く評価されるのである。  2、流出重油を製油所構内にとどめ得ず、多量の重油を海上へ拡散し、被害拡大に影響を与えた原因として、   (1)所轄消防署、海上保安部への通報遅れである。このような事故発生の場合、初期活動の如何が被害程度を左右することは、常識的に判断できるところ、三菱石油の日頃の防災体制、訓練の怠慢それに防災意識の欠如と相まって被害を徒らに拡大した。  (2)右通報遅れによる時間の徒過を加え当初海上への流出重油を過少に発表したこと、さらに防災措置に関し指揮命令体制が整えられたのが夜半過ぎというに至っては、日頃からの防災保安管理体制の欠陥を如実に物語るものである。  (3)決定的に被害拡大へとつながった原因としては第二ガードベースンの放流扉が閉止できなかったことである。このことから同ガードベースン内にたまっていた流出重油を冷却水が無制限的に海上へ押し出す結果となったもので製油所構内の各種装置に対する保守管理の懈怠の表れといわねばならない。   (4)防油堤は万一、油の流出事故が発生した場合、その被害が外部へ拡大するのを防止するためのものであるから法規上明文化されていなくとも二重、三重の防油堤を設置すべきであった。  が挙げられ、被害拡大防止に過失があった    ことが認められる。  こういうふうに詳細に三菱石油の過失を指摘しておるわけであります。だから私は、過失犯がこういう論拠に基づいて成立するというふうに考えておる。どうなんですか。時間ですから簡単に言ってください。
  113. 吉田淳一

    ○吉田説明員 本件の起訴した部分につきましては、先ほど申しましたとおり、十一月の二十五日、第一回公判が開かれる予定になっております。いろいろ御指摘の点は不起訴にした部分でございますから、直接の関連はないのでございますが、実質的にはいろいろ関連している事実関係になってくるのでありまして、検察官がどういう証拠に基づいてどう認定しているかということを、そちらの第一回公判の前に影響のあるような事柄を余り内容にわたって申し上げるのは適当でないのでございますが、たっての御指摘でございますので、ぎりぎりの限度でお答えさしていだだきますが、ただいまの御指摘は、使用中における貯槽の保守管理上の三菱石油側に過失があったのじゃないか、それから事故が起きた後に被害の拡大を防止する措置に過失があったのではないか、その点に非常な手抜かりがあったのではないか、刑事責任を追及すべきであるという御指摘になると思います。  この点につきましても、結局、最終的なことは先ほど申し上げたとおりなのでございますけれども、検察庁といたしましてはそれらの点が本件の必須の争点であることはもう明らかでございますので、告訴等についてもその点が十分指摘されておりますし、こういうことでそれらの関係諸帳簿、それから三菱石油の関係人あるいは報告書等詳細にそれぞれ調べておるわけでございます。特に日常の保守管理をどういうふうに行ってきたかという点については、その直接の維持管理に当たる操油課等を中心といたしまして、もちろん各課、ほかの課も三菱石油の関係課ではこれに関係しているものがあるわけでございますが、これらにつきまして帳簿あるいは物件その他関係者につきましていろいろ事情を聞き、検査を重ねたわけでございます。また、いわゆる日ごろの防災体制がどうなっているかという点についても、その防災体制のあり方について検討をしておるのでございます。  それから、第二次防油堤などもつくるべきではなかったかというような点につきましても、つくられている現在の防油堤等も含めまして、そういうことを設けなければ、確かに海上への重油の流出が防止できなかったことは事実なのでございますが、いわゆる刑事過失としての結果の予見可能性及びそれにそういう予見ができたのに結果を回避する義務を怠ったかどうか、そういう意味で第二次防油堤などもつくっていなかったのかどうか、こういう点についても調べております。     〔委員長退席、林(義)委員長代理着席〕  それから、事故後の被害拡大防止の措置などについてもいろいろ御指摘の点はすべて問題点であったのでございまして、ただ簡単に申し上げますけれども、そういう事故が起きた後に、生命の危険にさらされている操油課員ら関係者がいま現場にいるわけでございますが、それらが生命の危険を冒してまで交通弁の閉止の措置をとらなければいかぬというところまで、果たして刑事責任が問えるのかどうか、とらなかったことについて。そういうような客観的な状況もあるわけでございまして、それら、これらを認定して、そのいずれについても過失の責任を問い得ないものであるという認定をしたわけでございますが、改めてこの点について議決書で御指摘を受けておりますので、この点も公正に捜査すべきものと考えておりますし、捜査して結論を出すものと思います。
  114. 矢山有作

    矢山委員 確かに今度のこの検察審査会の議決書を読んでみまして、検察審査会の論断の論拠はきわめて明快だと思うのです。そこから当然三菱石油の過失が問われるべきであると思います。そしてこれをあえて問わないというのなら、この検察審査会のそれぞれの判断に対して、私は明快な反論が展開されなければならぬと思います。それが一つ。  それからもう一つ、過失犯の構成要件一つである予見可能性の問題についてでありますが、この予見可能性ということについては、私は最近の判例の傾向というのは、それが非常に広くというか、言葉が適当かどうかわかりませんが、考えられるようになっておるのではないかというふうに思うのです。その典型的な例の一つが飛騨川バス転落事故訴訟に対する判決の中に出てくるのでありますが、それを読んでみますと、つづめてこういうことが言えると思うのです。判決の要旨を集約して申しますと、当該道路につき交通の安全を阻害する土砂崩落等の災害が発生する危険があり、その危険を通常予測できる場合には道路の設置または管理に当たり交通の安全を確保する措置が講じられなければならず、もしこの点に欠けるところがあったために事故が発生したとすれば、設置または管理の瑕疵による責任が生ずる、こういうふうに判示をしたものであります。つまり、これは従来の過失論で具体的に予見可能性がなければならないという立場ではない。漠然としてでもいいから、起こるかもしれないぞという不安感がある場合には、それはその場合、高度な注意義務が必要とされるのだという、いわゆる新しい過失論といいますか、そういうものが最近の判例の傾向ではないかというふうに考えておるわけです。したがって、そういう点から言うなら、私はこの三菱石油の過失犯は当然のこととして問えるだろう、こういうふうに思っておりますが、どうですか。
  115. 吉田淳一

    ○吉田説明員 検察庁が再捜査をした結果、どういう処理になるかは予断を許さないわけでございますが、いずれにいたしましても、検察庁としては責任ある捜査をして、その議決書についての所見というものは、許される限度で現地その他において意見の表明がなされるものと思います。もちろん、これは先ほど来申しておりますように捜査の内容に関することですから、どこまで言えるかというのは限度があるわけでございますが、法令に許された限度で意見の表明が行われるものと思います。  そこで過失の問題でございますが、この過失の問題で御指摘のような傾向にあることは、私もそうだと思います。ただ、現在私どもがここで問題にしているのは、刑事責任としての過失責任でございます。民事の過失責任は、もう私のような無学の者が言うまでもなく、無過失責任の法理もあるくらいでございまして、その過失の問題というのはある意味では非常にとらえやすい広いものではないかと思います。しかしながら、刑事の過失責任というのは、その人を有罪であれば刑務所に入れ、あるいは高額な罰金刑を科する、こういうことでございまして、やはりその個人、個人についての過失責任があるかという問題でございまして、企業、会社そのものについての過失責任は問えない仕組みになっておるのでございます。そこに刑事の過失責任の追及の問題と民事の過失責任の追及の問題の面が違うところがあるわけでございます。民事でしたら企業の継続性をとらえて、企業自体に対する過失責任を、法人は行為能力を持っておりますからできるわけでございますが、犯罪につきましては、法人は犯罪能力がない。自然人だけが刑事責任のまず第一の対象になって、それについてその責任がある場合に、それが成立する場合に、法人がそれについて監督責任を怠っていたかどうかということでいわゆる両罰規定をかけていくということでございます。しかし犯罪論としては、もちろん法人そのものに犯罪行為の能力を与えて、そしてやるという立法例もないわけじゃございませんで、この問題は、このような世の中の趨勢にかんがみて法務省としても真剣にこの点を検討しなければいけないと考えておりますけれども、現在の刑法典は個人個人のそれぞれの過失責任、予見可能性、注意義務というものをその個人が怠ったと言えるかどうか、その範囲の中でその責任を問うていくということでございますので、かなり厳格な証拠が必要になるわけでございます。
  116. 矢山有作

    矢山委員 そういうふうにおっしゃるだろうと思ったので、そこで私は、岡山地検がとった処置に、そうおっしゃるなら一つの矛盾点があるということを感じておりますので、その点を申し上げてみたいと思うのです。  千代田化工株式会社、石川島播磨重工、東洋工務店を含む三社の設計現場責任者六人を過失往来妨害罪、岡山県海面漁業調整規則違反で起訴したというこのことについて考えてみて、どういうふうな問題があるかというと、千代田化工株式会社が大体工事を総括する責任者であったというふうな考え方に立って検察官は処分をやっておるようでありますが、工事を総括する責任者であっても、タンクの階段が倒れて防油堤を破壊するところまで具体的に予測できたかどうかは疑問であります。従来の過失論で言うなら、今回のこれらの事故の責任は問えないという結論になるのだろうと私は思うのです。したがって、その責任をあえて検察庁がここで問うたというのは、いわゆる新過失論といいますか、そういう言葉が適当かどうかわかりませんが、具体的に予測できなくても、事故に対する不安感があった以上は事故を回避する適切な行動が必要だったという高度な注意義務を求める新過失論に立って初めて私は起訴が可能であったのではないかと思うのです。そうだとするなら、三菱石油の過失責任を問わないということはまさに矛盾撞着であるということを私は感じますが、どうですか。
  117. 吉田淳一

    ○吉田説明員 お尋ねの点は、先ほども申しました十一月二十五日、今月の二十五日、第一回公判を開くまだ起訴状も朗読しない段階の前の検察官の起訴についての考え方のお尋ねでございます。私ども法務省の者といたしましては、公判の始まる前にそのことを申し上げるという立場にはないし、非常に公判に影響かあるのではないかと心配するのでございますけれども、許された範囲で検察の考え方を申し述べたいと思います。  そのことは私どもとしては起訴状の公訴事実についてやはり申し上げざるを得ないのでございます。先ほどのような工事について、その工事の過失かあって不完全なものであるならば――詳細なことはちょっと省略いたしますけれども、その地盤の支持力を失わしめる結果となって、これがため右地盤支持力のない個所における貯槽の側端と底板とに亀裂を生じて、後の重油の出し入れを繰り返すことによって荷が重くなって亀裂を拡大させ、ついには該個所を破断して、重油を貯槽外に流出させるおそれがある、この工事を行う者についてはその予見可能性はあるというふうに検察官は判断しておるわけでございます。決して特に本件についてだけ注意義務を重く課したとかいうつもりではありません。刑法の解釈として予見可能性について、この工事をする者については、当然、その工事の結果が不完全な結果ひび割れなどが生ずれば油が流出する危険がある、そういう予見可能性は十分にある、その辺は回避すべきであったという認定をしたわけでございます。
  118. 矢山有作

    矢山委員 時間がありませんから、最後に私の考え方を言っておきます。  全国民注視の的である三菱石油の重油流出事故という重大な事件について、検察審査会の議決を無視し、三菱石油の責任が問われぬということなら、検察審査会制度創設の趣旨にも反するし、何よりも増して大企業の利潤追求の前に生活環境の破壊も人間の生命、身体の安全も犠牲にして顧みないというやり方を野放しにすることになるし、企業の安全性への無神経ぶりをますます増長させることになり、公害罪法の立法の背景、経緯を無視し、その法の精神に違背し、企業の利益至上主義に対する国民の厳しい批判という世論に抗し、検察庁は大企業擁護に固執するという非難を受けることになると思います。したがって私は、検察審査会の議決を尊重して再捜査の上、三菱石油を起訴すべきである、こういうふうに考えております。  そのことを申し上げておきまして、最後にぜひただしておきたいことがある。それは、私の資料要求にこたえて、「三菱石油水島製油所タンク事故原因調査報告書」をいただきました。ところが、その七ページ十二行目から十七行目までのところに、訂正の文章が張られてありました。その訂正文はこういうふうになっております。「このためバルブの閉鎖ができなくなり、そのバルブが閉鎖される二十三時十五分頃までにT-二七一タンクに収容されていた油のうち約六千五百kc(十五度C換算)がT-二七〇タンクを通じて流出した。」となっておったわけであります。ところが、私はこの検察審査会の議決書を読んでおって、事故のときに摂氏八十度であったということが書いてある。ところが、この調査報告書のどこを読んでみても、事故のときに油の温度が摂氏八十度であったという表現がないのです。そこでおかしいなと思っていろいろ探しておって、いま言った七ページの十二行目から十七行目までのところに張ってあった紙をはがしてみました。そうしたらその報告書の原文はこうなっておるのです。「油温が約八十度Cの熱油であったため、バルブ操作等をしていた操油課員等は、直ちに防油堤外に避難したが、その際、T-二七〇タンクからT-二七一タンクヘ送油するバルブが開かれたままとなっていたため、そのバルブが閉鎖される二十三時十五分頃までにT-二七一タンクに収容されていた油のうち約六千五百kc(十五度C換算)がT-二七〇タンクを通じて流出した。」こうなっておるのであります。  なぜこのような作為が行われたのか、私はこれを疑わざるを得ない。なぜ私はこれを重要な問題として考えておるかというと、検察審査会の議決書中の「使用中における貯槽の保安管理上の過失」の中で言われております高温のため即時バルブ操作のできなかったことが海上への油流出量を増大させたということ、それともう一つ、事故発生時における油温は八〇度Cであったことが記録されているが、」「重油そのものの持つ性質が低温度である程粘性が高められるのであるから貯槽からの流出速度は減じられ、また構内のあたり一面、油のガス化、または油しぶきも立ちこめることも第二次的災害発生の危険も生ずることなく、また操油課員等もさして生命に危険を感じることなく、即時バルブ操作を行い得たことであろう」と指摘をしております。  これらの指摘された点は、三菱石油の事故発生時における貯槽の保安管理上の過失の有無を判断する直接的な重要な点であります。この点の記述を改ざんして報告書を提出するというのは、まさに三菱石油の過失責任をあいまいにしようとする悪意のある意図的行為であると私は言わざるを得ないのであります。こういう行為は許されない。これをだれが一体やったのか、明らかにしてもらいたい。  五十年十二月十八日の「三菱石油水島製油所タンク事故原因調査委員会」の報告書、これはどこが持っておったのか、それからまずはっきりさせてください。これはどこが出したのか、どこが所管しておったのか。
  119. 林義郎

    ○林(義)委員長代理 いま調べますから、ちょっと待ってください。
  120. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 どこであるかは、ちょっと明確にわかりませんので至急調査いたしますが、恐らく消防庁であろうかと思います。
  121. 矢山有作

    矢山委員 そういうあいまいなことでは困る。これは過失を推定する上に、過失犯が成立するかどうかという上においてきわめて重要な部分に対する改ざんでありますから、速やかに調査をしてもらいたい。  その間、質疑を進めてまいります。  参考人の方御苦労さまです。  例の本四架橋事業の環境に及ぼす影響について、公団が環境影響評価書案を作成して地域住民の環境保全上の意見を求めることにされました。そして、五十二年十一月十九日に縦覧公告をし、十一月二十二日から十二月十二日まで三週間縦覧に供する、そして評価書案に対する意見書の提出期間を十一月二十二日、いわゆる縦覧開始の日から十二月十九日まで四週間としております。ところが、私はまだこの評価書案の現物を見ておりません。欲しいと言ったのですが、出してくれないのです。十九日まで出せない、こうおっしゃる。しかし、「児島・坂出ルート本州四国連絡橋事業の実施に係る環境影響評価基本指針」を見てみますと、これは私は相当膨大な資料だろうと思うのです。それをこういう短期間の縦覧で、しかもわずか四週間の間に住民の意見を述べてもらうと言っても、それはちょっと不可能なんじゃないか、余りにも期間の設定が短過ぎるんじゃないか、もし住民に十分理解してもらって、住民の意見を積極的に取り上げていこうというなら、もっと十分な縦覧期間意見書提出までの猶予の期間が要るんじゃないか、こう私は思うのですが、いかがでしょう。
  122. 尾之内由紀夫

    ○尾之内参考人 私どもの事業につきましていろいろ御理解いただいておりますことをまずもって感謝申し上げます。  ただいま矢山先生おっしゃったとおりに、この二十二日から縦覧を開始いたしまして、三週間の縦覧期間、それから意見の提出期間四週間ということで十九日に告示、公示をすることになっております。  このいろいろ期間等を含めました手続につきましては、まだこの環境評価につきましての制度ができておりませんので、今回の児島・坂出ルートの環境評価につきましては、環境庁並びに建設、運輸両省からそれぞれこの評価につきましての基本指針並びに技術指針をいただいております。それに基づきまして手続を進めておるわけでございます。ごらんいただいたと思いますが、それによりますと、私どもの公団が関係の両県と相談いたしまして、その手続を決めるということになっております。私どもは、それ以来内容の準備をいたしますとともに、いま申しました関係両県と御相談いたしまして、また、もちろん該当いたします市、町とも連絡いたしまして、いまお話しのような手続を決めたわけでございます。  これを決めるにつきましては、もちろん監督官庁の御指導もいろいろいただきましたが、私ども過去のいろいろ事例を参考にし、また特に申し上げておきたいと思いますのは、この児島・坂出ルートにつきましては、先生も御存じかと思いますが、すでに昭和四十八年以来私ども、地元の建設局あるいは事務所におきましていろいろ御説明いたしております。その中には工事の計画の問題あるいは環境に関する問題等ございまして、いままで何度もそういう会合を開いております。つまり、すでにかなりこの問題については、地元の関係の方々に御説明をしておる、もちろんこれからしなければならぬことも当然でありますが、環境指針によりまして新たにこういうことも準備しろというものもございますから、そういうものを集大成いたしまして、今回、報告書として提出しました。また、それをごらんいただきますとわかりますが、かなり膨大なものになります。それだけではなかなか御理解いただけませんので、わかりやすくするためにその要約書、あるいはさらにもっと要点をまとめました概要書というようなものをつくりまして、なるべく関係の住民の方に御理解いただくというようなつもりで準備いたしております。  そういうような諸般の状況を勘案いたしまして、いま申しましたような三週間の縦覧期間、四週間の意見提出期間をそれぞれ決めたわけでございます。よろしく御理解いただきたいと思っております。
  123. 矢山有作

    矢山委員 ちょっと私調べてみたのですが、青森県のむつ小川原開発のときには、これは縦覧期間一カ月で、意見書の提出は縦覧開始の日から五週間置かれておりましたね。私は、むつ小川原の開発も大変だと思いますが、今度の本四架橋に伴う問題というのはまだまだもっと大変な問題だろうと思うのです。そうすると、これに対する環境評価がわずかこれだけの縦覧期間で、意見書提出期間で、住民に理解をさせて、そして住民が積極的に意見を出せるだけのことができるのか、これは私はきわめて疑問だと思うのです。だから私は、事業の遂行を円滑にやっていこうと思うなら、やはり十分な縦覧をして、そして意見書の提出についても意見書が提出できるような余裕のある期間を設定をする必要があると思います。したがって、この縦覧期間なりあるいは意見書提出期間について、もう少しこれを延ばそうとかいうようなお考えは、現在のところございませんか。
  124. 尾之内由紀夫

    ○尾之内参考人 ただいま申し上げました期間は、それぞれ両県並びに関係市と十分連絡いたしまして、場所とか時間とかあるいは回数とか期間等を含めまして御相談した結果でございます。  私どもは、先ほど言いましたように、いままでずっと継続していろいろこの問題について地元の方々と接触いたしておりますので、私ども、この期間で恐らく十分できると思いますが、中には聞き落としたとか、あるいは説明に行けなかったという方もあると思います。私どもは、現地に事務所も局もございますので、もちろんそういう方々に対して今後引き続き長くいろいろおつき合い願わなければなりませんので、また関係の県とも御相談いたしまして、そういう方々に対して説明の落ちがないようにいたしたい、かような考えを持っておりますが、目下のところ、公告、公示を予定いたしております期間については、大体この期間でやっていける、こういうように思っております。
  125. 矢山有作

    矢山委員 次に、この環境影響評価書案について説明会を実施して地域住民への周知を図るということで、説明会の日時、場所が設定をされております。私、これを見て感じたのは、その回数なり場所の設定がきわめて不十分で、これで果たして住民への周知徹底が期待できるのか、また十分な意見をくみ上げることができるのかということで疑問を持つのです。それは、たとえば私の直接知っておるところを例にとって申し上げますと、児島地区について見た場合、当該地区の説明会は児島文化センターでやることになっているわけですね。十一月三十日、十二月一日、十二月二日、十二月五日の四日間、十九時から二十一時にわたって行われる、こういうことになっているのです。ところが、鉄道や道路の通過地区となっているところを考えてみると、旧町村で言うなら、旧郷内村、旧児島町、旧本荘村、旧味野町、旧赤崎町、旧下津井町、旧琴浦町、こういうふうになっているわけです。その地域が相当広いのですよ。そういうたくさんの旧町村を通る鉄道なりあるいは道路というものが考えられておるのに、児島文化センター一カ所でこの四日間で説明会をやるというのはきわめて不十分だ、少なくとも旧町村別ぐらいには説明会を持つ必要があるのではないか、こういうふうに考えておりますので、この点について今後、必要がある場合に御配意がいただけるかどうか、その点をお聞かせください。
  126. 尾之内由紀夫

    ○尾之内参考人 これらの場所につきましても、地元の関係市と協議した結果こうなりましたのでございまして、恐らく地元の市でいろいろ判断をされた上で、時間的にも場所的にもこういう場所が適当であろうということで決まったものと考えております。ただ、先ほど申しましたように、この期間で十分行けなかったとか、あるいはそういう機会はなかなかとることがむずかしかったというような方に対して、落ちこぼれといいますか、そういう方に対する事後の説明というようなことにつきましては、できるだけ誠意を持って私どもでそういうことができるようにいたしたい、かように考えております。
  127. 矢山有作

    矢山委員 ところで、鉄道の場合、旧郷内村の木見というところから北、岡山までは路線がまだ未決定になっているのですね。この部分の環境評価というのはどうしたのですか。路線未決定ですから、これは問題があると思うのです。
  128. 尾之内由紀夫

    ○尾之内参考人 この区間は、まだ私どもに基本計画もいただいておりませんから、私どもにこれを公示をするという権限も与えられておらぬ区間でございます。したがって、今回の影響評価範囲には入っておりません。
  129. 矢山有作

    矢山委員 いまちょっとほかからの話があったのでよくわからなかったのですが、環境影響評価の中に入っておらないわけですね。
  130. 尾之内由紀夫

    ○尾之内参考人 入っておりません。
  131. 矢山有作

    矢山委員 この点は、決定をしてからまたやられるということなんですか。
  132. 尾之内由紀夫

    ○尾之内参考人 今回の指針は、私どもが事業をする基本計画をいただいた区間に対する指針でございます。恐らく、新たにそういう計画をいただきましたならば、また改めてそういう方針を政府からいただけるものと思っております。
  133. 矢山有作

    矢山委員 そこで、「環境に及ぼす影響について予測及び評価を十分に行い、その結果を公表して地域住民等の環境保全上の意見環境保全のため講ずべき措置に反映させる措置を講ずる」というふうに言っておるのですが、これは法的拘束力はないのですね、したがって、環境庁としてこの環境保全の措置を確実にやっていけるという保障というものはあるのですか。
  134. 信澤清

    信澤政府委員 まず、法的問題でございますが、先年御案内のように、今回計画されております地域は、国立公園の特別地域を相当数経過いたします。したがって、この地域につきましては、公団は国の機関でございますので、自然公園法上の同意が必要でございます。したがって、その同意の際のいわば条件と申しますか、そういう形で一つの法的担保があろうかと思います。それから、それ以外の環境保全にかかわる問題は、これは法律的に申しますと担保がございません。ございませんが、私どもとしては、私ども審査をいたしまして、必要な限度において監督官庁である建設省、運輸省に対して公団の監督上これだけのことをやってもらいたいということを過去三つの橋についてもやってきたわけでございまして、恐らく今回についても同様の措置をとるということになろうかと思います。
  135. 矢山有作

    矢山委員 公団は、たとえば環境庁の考え方に沿ってそれをやってまいりますね。
  136. 尾之内由紀夫

    ○尾之内参考人 当然私どもはそういう指導のもとに実行する、こういう決意でございます。
  137. 矢山有作

    矢山委員 これを最後にしますが、住民からの意見を聞いた後に、これはもっともだという意見が出てきてそれを取り入れるという場合には、計画変更ということがあり得ますか。もし一たん決めた以上計画変更がないのだということになれば、縦覧をさせようが、意見を聴取しようが、説明会をやろうが、そんなものは何の意味もないのであって、一応ただかっこうつけただけということになってしまうのですが、その点どうですか。
  138. 尾之内由紀夫

    ○尾之内参考人 これまで政府から示されました基本計画、そういうことに関する問題は、これは政府に変更を求めなければなりませんが、それ以外のもので私どもで実行できるものはできるだけ誠意を持って実行する、こういう決意でございます。
  139. 林義郎

    ○林(義)委員長代理 それでは前の答弁をさせます。二瓶水質保全局長
  140. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 事故原因調査報告書、これは消防庁に設けられました事故原因調査委員会がまとめたものでございます。  なお、消防庁では一応担当の課は危険物規制課、これがこのものの担当になっておる、こういうことでございます。
  141. 矢山有作

    矢山委員 そこで、私が問題にしておるのは、その改ざんをされた部分は、先ほども言ったように、三菱石油の過失を問う上においてきわめて重要な部分なんです。その重要な部分が隠されて改ざんをされておるわけだ。一体こういうばかなことをだれがやったのかということなんです。それをはっきりしてもらいたい。改ざんしていま言った七ページの十二行から十七行目までに張ってあった文書というのはここへ私は大事に持っておる。これを一生懸命つばつけてはいだのだから。こんな悪質な改ざんをだれがやったのか、それを明らかにしてもらいたい。
  142. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 消防庁にただいまの件もあわせて聞きましたところ、七ページの十二行から十七行、この点につきましては委員会の責任において修正をして発表した、かように先ほどの消防庁の危険物規制課の担当の者は申しております。
  143. 矢山有作

    矢山委員 それではその担当者を呼んでもらって、どういう理由でそういう改ざんをしたかということを明らかにしてもらいたい。これは冗談じゃないですよ。いま三菱石油の過失責任を問えるか問えぬかという重要な問題なんです。この点は三菱石油の過失を問うための直接的な問題なんですよ。それがわざわざ隠されておる。これは担当者がやったということだけでは済まされぬ。担当者はどういう意図でやったのか、それを明らかにしてもらいたいのです。これはもう時間の問題じゃない。これを明らかにしなければ私は承知しません。この部分は、三菱石油の過失責任を追及する上できわめて重要な部分にかかわる部分の改ざんでございますから、この改ざんをやった理由が明確にされるということ、改ざんをやったのがだれかということ、これについては、私は改めてその担当者を呼んで聞かせていただきます。  三菱石油に対する質疑はこれで終わりますけれども、私は法務省に申し上げたいのは、検察官一体の原則というのがあるわけですから、検察審査会が指摘した問題について何遍も読んでみましたが、まさに私は、現在の新しい過失論の立場から言うなら、これは三菱石油は公害罪法を適用して起訴されるべきが至当である、こういうふうに思います。したがって、きょうの質疑の状態は、私は、十分それを心得ながら今後処理をしていただきたい、こういうふうに思うわけです。  それから、もう公団の方はお帰りになりましたが、本四架橋の問題につきましては、私どもまだその環境評価書案というものを入手しておりませんので、きょうのところはまさに概略的なことだけをお尋ねいたしました。それが公表され、われわれの手に届けられた後にまたこの問題については質疑をさせていただくということで、私の質問を終わらせていただきます。
  144. 林義郎

    ○林(義)委員長代理 竹内勝彦君。
  145. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 私は、さきに琵琶湖に関連して、環境破壊及び水質汚濁について本委員会においてお尋ねをしました。工場排水に関しましては徐々にではございますが規制が強化され、効果が出てきております。しかし、さきにも回答を得たように、日本の湖沼、河川あるいは閉鎖水域におきまして、その水質汚濁環境破壊が年々進行している。特にこの前の回答のように、琵琶湖に関しましては、南湖が横ばいでございます。ところが、北湖においては着実に汚濁が進んでおるという現況でございます。  御存じのように、南湖と北湖とを比べてみますと、これは南湖の十数倍の大きさです。容積にしたならば百四十倍にも当たるほどの大きなものになっております。そういう面から考えて、北湖の汚濁が徐々に進んでおる現況というものは非常にゆゆしき問題ではないか、こういうように考えるものでございますし、さきにその実態質問いたしました。その実態に関連しまして、一体この原因をどう把握しておるか、まず何と何と何が考えられるという面を説明をいただきたいと思います。
  146. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 水質汚濁の面におきまして、この琵琶湖には北湖と南湖とございますが、特に南湖の方が汚れが悪いわけでございます。水質汚濁のメルクマールとしてはCODというのを一応普遍的にとっておりますけれども、南湖の方は五十年の平均で二・九ppm、北湖の方の平均が一・九ということで、南湖の方が悪うございます。  それで、この原因でございますけれども、工場の排水というようなものもございますが、そのほか生活系排水というのもございます。  それから、こういうCODという明確なあれはございませんけれども、あわせて水質の問題ということでトータル窒素なりトータル燐というようなものも調査をいたしております。  こういうものにつきましては、これは汚濁源が非常に多様でございまして、たとえばトータル燐ということを考えますと、一般的な工業、工場の排水、それ以外に山林とか田畑、畜産の関係等々、相当広範囲な汚濁源になっている、かように認識いたしております。
  147. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 いまの工場排水あるいは生活排水、山林や田畑等々を挙げられましたけれども、これに関して、わかる範囲でよろしいですが、私が先ほど申し上げましたように、工場排水に関していろいろと論議か行われ、そうしてこの規制に関してかなり進んできておるように考えておりますが、生活排水等に関し、あるいはそのほかのものに関しては非常におくれておる、こういうふうに解釈しておるわけでございます。したがって、その比率というものを、大まかなもので結構でございます。これを知らせてください。
  148. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 CODの方につきましては、産業系、生活系、これのウエートの関係のものは調べてございませんけれども先ほど後段で申し上げました燐など、特に山林とかそういうのも関係のある汚濁源の広いところでございますが、土木学会が「琵琶湖の将来水質に関する調査」というので推計をいたしております。  その際の比率といたしましては、五十年を一応例にとりまして申し上げますと、まず燐の方でございますが、家庭の下水が三二・四%、それから肥料、これが先ほど田畑ということで申し上げましたそういう関係からと思いますが、一二・六%、工業廃水が二・八、家畜が一六・七、山林が一九・五、それから降雨による負荷が一五・九というのが五十年の燐の琵琶湖に流入をいたしますと推計をされております際の汚濁源別の割合でございます。
  149. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 実態というものがそういうような形でわかったわけでございますが、私はさきの委員会質問をしましたときに、家庭雑排水、こういったものを処理していくための下水処理の普及率が余りにも少ない、建設省からお答えいただきましたけれども、そのときに全国平均は二四%でございます。これでも世界と比べますと非常に少ないものでございますけれども、何と滋賀県はわずか三・九%。あれだけの、日本で最も重要にしておる飲料水として、京阪神の一千三百万の人たちが命の水がめとして飲んでおる、その琵琶湖の周辺におる滋賀県、この滋賀県の下水の普及率というものが何とこういうような四%に満たないという、おくれておる原因は一体どこにありますか。
  150. 高橋進

    ○高橋説明員 お答えします。  おっしゃいますとおり滋賀県の下水道普及率三・九%と非常に低い状況にございますが、その理由といたしましては、一番大きな理由といいますのは、やはり滋賀県内の都市は、従来大津市を除きましてほぼ農村集落を主体として徐々に都市化されてきた、したがいまして、生活環境の悪化や公共水域の汚濁が比較的最近までそれほど著しくは進まなかった、こういった事情のために下水道事業の着手がほかの地域に比べましておくれていたということが大きな原因ではなかろうかと考えられます。
  151. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 いまのような実態でございますし、ことしは特にまた、この琵琶湖の汚染というもので騒がれました。赤潮が、いままで北湖の方には出ていなかったものまでが数回にわたって出てきた。そして御存じだと思いますが、本年五月二十七日、あの今津の養殖池におきまして稚アユが一万匹死にました。長さ二十メートル、幅十メートル、深さは二・五メートルのその養殖池でございますけれども、琵琶湖からホンプで取水しておる養殖の業者が語ったところによりますと、水が茶褐色に濁り、悪臭が立ち込めていた、こういうように言っておりますけれども、この事実を確認しておるか、同時にまた、その原因は一体何であるかということをどのように把握しておるか、お答え願いたいと思います。
  152. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 五月の末に稚アユが大量斃死したということにつきましては一応聞き及んでおりまして、この面につきましては、滋賀県の方にも照会をいたしたわけでございますが、赤潮ということではなく、むしろ近くの工場排水に起因するものである、かように一応県の方からは聞いております。
  153. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 日本の飲料水というものは、世界に誇る山紫水明のこの国土におきまして最も良質の水である、こういうように言われておる状況でございます。その飲料水を、最近、洗剤の歴史というものはこれは非常に新しいものでございます。こういった面もまた論議していかなければなりませんが、そういうもので、あるいはその他の物質で汚染していくということは、現在の私たちだけではなく、その子孫にかかわる影響が出てくるわけでございますし、この洗剤に関しての毒性、こういった面に関しましてはいろいろな論議があるわけでございますけれども、この飲料水に関係が深いという関係から、この洗剤の使用によって、上水道に含まれておる、つまり飲料水に含まれておるLASあるいはABS、これの実態、代表的なもので結構でございます。これを厚生省の方から説明をいただきたいと思います。
  154. 山村勝美

    ○山村説明員 上水道に含まれておるLAS、ABS等陰イオン活性剤の現状についてでございますが、昭和五十年度の水質試験結果によりますと、たとえば東京都、個々の浄水場がございますが、平均的に見まして最小値が〇・〇一、最大値が〇・〇八、平均値が〇・〇四、また大阪市につきましては三つの浄水場につきまして、最小値〇・〇三、最大値〇・〇七、平均値が〇・〇五、京都市が五つの浄水場につきまして、ちょっと内訳がわかりませんが、平均値といたしまして〇・〇二という結果が出ております。  それで、現在の水道水の水質基準は〇・五ppmでございますので、この基準を超えたものはございません。
  155. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 何らかの形でこういうようにABSあるいはLASという形で含有量があるわけでございます。それを私どもは飲んでおるわけでございますが、いまその基準値というものを〇・五ppm、こう規制されておるわけでございますが、それをそのように決めた見解というものはどういったところにございますか。
  156. 山村勝美

    ○山村説明員 陰イオン活性剤の水道水の水質基準につきましては、人の健康に対する安全性という議論よりも、むしろ水道を使った際に発泡するという観点から決められたものでございまして、諸外国の事情を見ましても大体こんな程度になっておるのが実情でございます。
  157. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 昭和五十年、三重大学の三上教授がメダカで実験をしておるわけでございますけれども、これに関して、基準よりもはるかに低い〇・〇七ppmのABSでメダカがふ化せず、しかも奇形が起こったという実験結果が出ております。こういった面に関して、そのほかのいろいろな報告もあると思いますが、そういうようなものを含めて果たして現在のこういった基準でよいものか。世界の例を引きましたが、現実にまだ毒性という問題を論議しておる段階で、そのよしあしを決定する段階へは行っておりません。そういったときにおいて、こういったものでよいのかという面を判断いただきたい面と同時に、こういうような実態が出ておる、こういった面に関してどのように考えますか。     〔林(義)委員長代理退席、委員長着席〕
  158. 宮沢香

    ○宮沢説明員 御説明申し上げます。  ただいま先生が御指摘の洗剤の安全性の問題でございますが、これは昭和三十七年当時非常に問題になったことがございまして、当時の食品衛生調査会におきまして当時の国内、国外のデータ等について全部検討しました結果、通常の使い方でしたら私どもの口に入る洗剤については問題はない、こういうような見解が出されておったわけです。さらに、先ほど来言っておられます洗剤、特にLASなどを動物に塗布したような場合に奇形が出るというようなことが、先ほどの三上教授の関係学会等での発表がありましたので、私どもは四十八年からもう一度新しい技術をもって洗剤のあらゆる面からの安全性について検討をしておるわけでございます。その結果、特に問題になっておりますLASにつきましては、奇形学者、三上先生を含めた日本のトップクラスの四人の先生に合同実験をやっていただいた結果、奇形性についても問題がない、それから長期間慢性毒性、二年以上にわたってやっておりますが、そういう幾つかの実験でも、たとえば最高濃度〇・五ppmまで投与しても全く問題が認められないとか、あるいは塗布した実験もございますが、いずれの実験においても現在のところ問題は認めていない、こういうふうに安全性が確認されております。したがいまして、大変微量でございますと私どもは全く問題ない、こういうふうに理解しております。
  159. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 まあそういうような結果ではございますが、催奇形性というような面から考えても、これは短期間に決定できるものではございませんし、ぜひこの調査というものは今後厳重に検討をしていただきたいと思う次第でございます。  同時に、京都市における上水道の水質に関しての報告があると思いますが、その中の代表的な不純物で結構でございますが、どういうような不純物がどれぐらい含まれているか、その実態を説明していただきたいと思います。
  160. 山村勝美

    ○山村説明員 京都市の飲料水中にどういうものが入っておるかということでございますが、ただいまちょっと手元に詳細な資料を持ってきておりませんが、現在までのところ飲料水の基準に違反するというような報告は受けておりません。ただ、都市によってあるいは時期によって異臭味問題のために少しトラブルがあるというような事実はございます。
  161. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 私は厚生省の水道整備課から資料を要求して、いただいたものがございます。手元に詳しいものがないという御回答でございますけれども、私の手元にあるものでも、たとえばいま、においという問題で、若干出たというような解釈の仕方でございますが、このカビ臭いにおいというものは、ここ数年、京都市においてもあるいは大阪においてもこの琵琶湖の水を飲んでおる人にとっては非常に関心の高いものでございます。そういったものの原因というものを追求していく、あるいはそれに関して今後検討を加えてどのようにやっていくか、厚生省としましてもその面に関しての関心を非常に高めていただかなければならないと思いますし、同時に、ここにいただいた資料でも、たとえば硝酸性窒素が四十六年に〇・〇四、五十一年で〇・一三、こう上がってきておる。塩素イオンが四十六年に八・九、それから五十一年に九・四、濁度においては四十六年に一・〇、五十一年に〇・一、こういうようになっておるわけでございますけれども、そういった面も含めてこういった実態をどう考えますか。
  162. 山村勝美

    ○山村説明員 四十六年と五十一年の資料を先生にお届けした記憶がございますが、その中で、やはり一部の項目について若干ふえておる部分があったかと記憶いたしております。たとえば硝酸性窒素で見ますと、原因はやはりアンモニア系統からの、窒素系でございますが、アンモニアの酸化によってできたものであるというふうに解釈できるわけでございまして、そういう意味では屎尿系の汚染が少し進んだというような理解ができるのではなかろうかというふうに思います。その他の項目、個々にちょっと記憶はございませんが、いずれにしましても、四十六年と五十一年を比べますと原水は確かに悪化してきておりまして、浄水についても京都市の方ではいろいろ神経を使ってやっておるというのが実態のように理解いたしております。
  163. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 飲料水に含まれる不純物という面で、やはりこれは毎日なくてはならない水でございますから、私はこの面に関してはぜひ徹底的に検討をお願いしたいと思う次第でございます。  そこで、琵琶湖の南湖、ここから京都市は疎水を通してこの水を飲んでおります。南湖は大変な汚れ、先ほど述べたとおりでございます。同時にまたそれを河川によって淀川へ全部合流していきます。その水を大阪市の人たちは飲んでおるわけでございます。つまりすべて北湖の方ではなくて南湖の方の大変に汚れた水を飲んでおる、こういった形になっておるわけでございますので、これは決してこのまま放置しておいてよいものではない、私はこのように解釈するわけでございまして、特に飲料水に含まれる不純物の量と取水口付近の湖沼、河川の環境破壊、水質汚濁、こういった面の相関関係というものをどう考えておるか、お答え願いたいと思います。
  164. 山村勝美

    ○山村説明員 原水中のいろいろな不純物と飲料水として含まれるものとの相関関係でございますが、御案内のとおり、その間に浄水施設というものがございます。浄水施設にはいろいろ種類がございますし、かつ同じ処理施設、浄水施設でも、その操作の技術水準といいますか、管理、操作の仕方によってかなりまた出てくる答えが違うというような実情もございます。また水質基準には二十七の細かい項目がございまして、項目ごとにまた浄化機能が違うわけで、なかなか一概に言えないわけでございますが、大別して申し上げますと、一つには細菌類があろうかと思いますけれども、細菌生物類につきましては、かなり高い汚染でも、通常各都市で行っております浄水方法に塩素消毒を加えますことによって十分に処理することができるというふうに考えております。また、濁りのようなもの、濁質につきましても通常の浄水方法で、かなり高濁度でも対応できる。それから、重金属等になりますと、特にそれが水に溶けていないような状態のもの、濁質的なものでありますと、通常の浄水法で取れますけれども、溶解性のもの、あるいは微量なものにつきましては、ほとんど除去できないと考えるのが安全というふうに考えております。また、先ほど御指摘ありましたにおいのような問題、あるいは特殊な人工的な色素、色度でありますとか、また先ほど御指摘の陰イオン活性剤、洗剤関係につきましては、通常の処理ではだめでございまして、活性炭処理のような特殊な処理が必要でございます。大別して、大体四つぐらいのことが考えられるわけでございます。水道としましては、それぞれ浄水施設の種類及び管理水準を考慮いたしまして、一応内々的に原水基準のようなものを持っておりますが、現在の環境基準は大体それを反映してつくられておりますので、その辺を一つの目安というふうにわれわれは考えております。
  165. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 いま原水の水質基準という面で御説明いただきましたけれども、もしもこれがこのまま他の湖沼の例のように、非常に汚濁が進んでいく、環境破壊がますます激しいものになっていく、世界でもその例は御存じのとおりでございます。もしもこれが取り返しのつかないことになってしまってから、さあ、では琵琶湖にかわる飲み水の原水が果たしてあるか、こうなったときにどこにもないわけです。そういう面から考えて、私は、これはできてから、そのようになってしまってから論議をしたのでは遅過ぎるわけでございますので、この原水の水質汚濁の限界というものをどこに置いておるか、これをお伺いしたいと思います。
  166. 山村勝美

    ○山村説明員 極端に申し上げますならば、現在の科学技術をもってすれば、どんなものでも処理できるわけでありますけれども、実際、都市の水道事業等の人的な技術レベルあるいは浄水施設としての実用レベルあるいはコスト、そういうものを考えますと、おのずから限界があるわけでございまして、コストを考えない、技術水準を考えないとすれば無限に考えられるわけですが、基本的にはできるだけ良質であることが望ましいことはもう先生おっしゃるとおりでございます。したがいまして、御指摘の、どこが限界かという問題につきましては、少し申しましたように、浄水施設の種類、操作、その関連で決まるものでございますので、一概になかなか言えないというようなものであろうかと思っております。
  167. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 過去におきまして、河川あるいは湖沼で結構でございますが、この汚濁が進んだために飲料水に適さなくなった、そういうような例がありましたら、その例を挙げていただいて、その対策としてはどのようにしたか、この面を説明願いたいと思います。
  168. 山村勝美

    ○山村説明員 過去において、水道が水質事故によってとまったような事例が実はございます。統計のとり方がちょっと違うわけでありますが、マクロ的に見ますと、四十五年、六年のあたりをピークに、最近は少し改善されてきております。たたとえば最近の例で申し上げますと、昭和五十年度、これはまだ完全に整理されておりませんが、一番新しい数字として申し上げますと、八十七の水道でそういう事故といいますか、水質汚染事故が出ております。  内容的に見ますと、原因が重複するわけで、必ずしもぴたっといきませんが、工場排水でありますとか油、家庭下水、そういった普通の一般的な汚染中心でございます。  これらに対してどうしたかという点でございますが、当然に水質基準に適合しなくなるおそれがあるという事情が発生したわけでございますので、多くの場合、取水を制限したり、取水停止をしたりしておるようでございます。
  169. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そのように余りにも汚濁が進んだ場合には、それを飲料水に利用していくということはもう不可能になってきます。いま説明いただいたように、コストをかければ無限である、もちろんそういうような論議もできるわけですが、しかしそれにはおのずと限界があるわけでございます。そういった意味で、ぜひここで水道水の、たとえばABSの限界基準としては〇・五ppm、こういうように決めておりますが、これはWHOでは〇・二ppm、こういうようになっておりますが、こういった面で、このようにしていったらどうか、あるいはその他の界面活性剤等の水道水に含まれる水質基準というものをどのようにしてやっていったらいいのか、そういった面の考え方を御説明願いたいと思います。
  170. 山村勝美

    ○山村説明員 先ほども陰イオン活性剤の基準の考え方について、むしろ毒性についてはずっと安全率が高いわけでございまして、じゃ口をひねった際にあぶくが浮いておるというような不快感という観点から決めたものでございます。そういう意味で、WHOにおきましても、許容値一ppm、望ましいレベルとして〇・二ppmという数字を出しております。そのほか、アメリカにつきましても〇・五ppm、それからカナダについても限界として〇・五、ソ連についても大体〇・五というような数字か出ておりまして、いまのところ、これで十分ではなかろうかというふうに考えております。  先ほどのABS以外の問題につきましては、それ以外幾つかあるわけでございますが、その安全性については、大体ABS系統と同じ程度ということで、かなり安全があるようでございまして、やはり発泡の問題として考えるとすれば、洗剤中の大部分が陰イオン系でございます活性剤系統でございますので、この主たるものとして決めておけば、実態上支障がなく、基準としても必要十分ではなかろうかというふうに考えております。
  171. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 ここで、合成洗剤に関して論議を進めていきたいと思いますが、このように窒素、燐の流入量、こういった面で、琵琶湖に年々非常に入り込んでいくわけです。特に合成洗剤がトリポリ燐酸ソーダから成る燐というものを多量に出し、赤潮の原因になっているのではないか、こういうように考えられておるわけでございますし、そこで、洗剤の使用量は一体全国で年間どれぐらいになっておるのか。それから、一戸当たりのそれの年間使用量は一体どうなるか。同時にまた、この琵琶湖周辺において、つまり滋賀県の人口と換算していけばわかるわけですが、その洗剤の使用量、つまり年間どれぐらいのものをこの琵琶湖周辺の人たちが使い、それが琵琶湖の中へ入り込んでいくのか、こういった実態をつかんでおりましたら説明いただきたいと思います。
  172. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 洗剤の年間の出荷量でございますが、通産省の方で調べたところによりますと、五十一年は四十五万トンの出荷量に相なっております。したがいまして、一世帯当たりでどの程度使うかということになりますると、全国の世帯数で割り算すれば出るわけでございますが、一世帯当たり大体十三・五四キログラム、この程度は使用されるということでございます。  琵琶湖の際はどのくらいになるかといえば、滋賀県の世帯数から推算をいたしますと、三千五百四十七トン、年間でございますが、その程度は使用をされておるのではないか、かように推算をいたしております。
  173. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 約三千五百トン、いまの下水の普及率がわずか四%、こうしますと、すべて琵琶湖の中にこの洗剤が入り込んでくる。もちろん、下水を普及して処理したものであっても、燐、窒素というものは残っていく。こういった面から考えていくと、今度は一体年間どれくらいの量の窒素あるいは燐といったものが含まれていくのか、流入されていくのか、これを説明いただきたいと思います。
  174. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま申し上げましたのは、洗剤の使用量でございます。先生御存じのとおり、衣料用の粉末合成洗剤にはビルダーを使用しておりますが、このビルダーの中にトリボリ燐酸等が入っておるわけでございます。  それから、純粋の燐の分だけを一応考えてみますと、大体年間二十トン程度のものが琵琶湖に流入をしておる、かように推算をいたしております。
  175. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、長官にお伺いします。  いまの論議を聞いていただいておればわかるとおり、この琵琶湖というものが年々汚染されてきておる。ことしは御存じのように異常な渇水でございまして、マイナス五十センチというような形で、被害水位という形で非常にその水位が落ちこんでまいりました。こうなってくると、いまこの琵琶湖の南湖から疎水を通して京都あるいはほかの地にこの水が送られていっておる。ところが、余りにも低く落ち込み過ぎて取水自体が困難になってくる。そうすると、今度はそれを取水口へポンプで揚水して送っていかなければならない。あるいは湖底しゅんせつによって、その水を取り入れていく。こういうようにしていきますと、沈でんしている重金属があります。いままで琵琶湖にずっと長い間沈でんされたいわゆるヘドロです。ここには鉛、カドミウム、ストロンチウム、銅、コバルト、こういったものが異常に入り込んでおるわけです。この面の論議というものは、どうしようもならぬものにいまなっておるのです。ところが、これが拡散されて今度はPCBなどが水中に広がっていく、こういう事態になったのでは、これはもう飲料水としては非常に影響が出てくる、人体に影響が出てくることは、いま私の説明を聞いておればわかるとおりであると思います。  また同時に今度は、湖沼というものは、一定の基準まで汚濁が進んでいってある段階まで来ると自浄作用ができなくなります。その湖沼自体できれいにしていこうという作用というものが急カーブで不能になってしまいます。そこには限界があるのです。その例が、ちょうどアメリカとカナダの国境にあるセントローレンス、五大湖、その中で最も汚濁が進んだのがエリー湖、次いでミシガン湖、こういったものがひどい状況でございます。あるいはまた、日本の諏訪湖が同じ例でございます。こうなったときに一たん汚濁が始まるともうもとには戻らない。  こういった貴重な教訓というものを――私どもはこれを二度と繰り返してはならない。そういう意味で、この琵琶湖の汚染というものは、ほかの湖沼もそうでございますが、もう着実に進んでいることは間違いないわけでございます。ましてや下水の処理というものはいま聞いたとおりでございますし、そうなりますと、どこかでとめないとこれは大変なことになる。かわりはないのです。どこかでとめないと、これはもう取り返しがつかなくなるわけでございますので、長官として、今後こういった面においてどういう方策を考えておるか、こういう飲料水の原水としておるような重要な湖沼をどう守っていこうとしておるのか、そのビジョンをお伺いしたいと思います。
  176. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 るる御指摘のように琵琶湖が非常に大きな問題を抱えておることはよく承知しております。もうお言葉をここで改めて繰り返すまでもなく、近畿圏における最大の水源でありまして、しかもその周囲の滋賀県の下水の普及事情というものは御指摘のとおりであります。これを京都、大阪というメガロポリスの地域の方々、利水者のためにどう食いとめていくかということは、いろいろ施策もあり得ると思いますが、昨年暮れの予算要求のときにも、ことしは景気の刺激のためにも公共事業というものを非常に大幅に起こすということを政府も言っておりましたが、私はその公共事業の中でも特に生活環境整備ということで下水道に重点を置いていただきたいということを申しました。お話を伺っておりますと、やはり何といっても滋賀県の下水道の普及率の低さというものが最大の引き金になっているのではないかという気がいたします。まあそういったものを他の都道府県とのバランスの上でどういうふうに優先順位を置いていくかということでございましょうが、これは滋賀県だけではなしに、もっともっと広範囲のたくさんの国民の方々にかかわる問題でございます。しかし、この琵琶湖周辺の下水道整備というものは、ある意味で他の地域に比べて優先順位が置かれてしかるべきではないかという気がいたします。これは私の個人的な考えでございますが。それに、さきに中公審に依頼いたしまして総量規制のあり方というものを諮問しておりますが、こういったものも積極的に取り入れていく、同時に、すでにございます琵琶湖総合開発特別措置法というものに基づいて、琵琶湖の特性を生かした水質保全というものを多角的に考えていきたいと思っております。これに関しましては国土庁などと綿密な連携をとりながら、現段階よりも汚染が進行しないように多角的な努力をしたいものと思います。これはあくまで私見でございますが、やはり何といっても下水道の整備が最大の決め手になるのではないかという気がいたします。
  177. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 いまの長官の御発言で――先ほども言ったように、私は決して琵琶湖のみに関して論議をしておるのではございません。あくまでも日本の水というものを守らなければいけない。世界を見てみればわかるとおり簡単に水道の水を飲めるような国というものは少ないのです。ですから、いまのこの飲料水というものを、子孫にわたるまで、日本の特徴である、こういったよいものをどうしても残していかなければならないという立場から、私は、決して琵琶湖だけではございません、他の河川、他の湖沼、すべて飲料水に関係するところはまずこれを早急に対処していかなければならない、こう訴えておるのでございます。ぜひそういうようにお願いしたいわけですが、建設省の方、何か急がれるようでございますので、もう一点だけお伺いします。  この下水処理に関していま長官の話もありましたが、まずそういった面での、これだけ滋賀県がおくれておる状況というものを考え、どういうようにここに優遇措置をとり、あるいはそういった面に関して、滋賀県のみではございません、他の面に関しても処理をしていく決意なのか、その点をお伺いしたいと思います。
  178. 高橋進

    ○高橋説明員 下水道の整備につきましては全国的に非常におくれておりますので、われわれといたしましても現在、第四次の五カ年計画に基づきまして鋭意整備を促進しているところでございます。しかしながら、いま環境庁長官もおっしゃいましたように、琵琶湖につきましては特に琵琶湖総合開発特別措置法という特別法に基づきまして琵琶湖総合開発計画というものが策定されております。その中の一つの大きな柱として下水道事業というものも非常に大きなウエートを占めているわけでございます。したがいまして、琵琶湖につきましては他の地区に比較しまして予算につきましても特に重点的に配賦をしておりますし、今後ともそういったことで重点的に促進してまいりたい、こう考えております。琵琶湖以外の地区につきましても環境基準の設定されておるところにつきましてできるだけ重点的にやるということになっておりますが、特に琵琶湖については重点的に行っているつもりでございます。
  179. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 建設省に関してはまた後ほどやりますので、今回は結構でございます。  そこで、洗剤に関しましていろんな論議がございますが、今回、東京都消費生活モニターアンケートという形で、つい最近でございますが、昭和五十二年七月七日から五十二年七月十七日にわたって調査期間を設けてアンケートをとったものが私の手元にございます。ここには石けんを使用している理由とそれから合成洗剤を使用している理由、あるいはそれの影響等について非常に注目すべきデータが出ております。たとえば石けんを使用の理由、使用上の問題点、こういった面に関してどういうような報告がなされているかというと、安全性に不安がないと思うから、こう思って便っている人が六九%です。しかし使用上の問題点では、お湯でないと使いにくい、こういうふうに訴えておる人が四五%、またにおいが悪く汚れが落ちにくい、このように不満を訴えております。こういうふうに答えた人が三一%。合成洗剤使用の理由としては、溶けやすく汚れがよく落ちるからと答えた人が六一%、だがその反面安全性に不安があると思う、こう答えておる人が七七%もおります。また、その使用の状況でございますが、標準の使用量、こういったものがございまして、これだけの洗たく用にはこれだけの量が必要ですよと、こういったものに関しておのずとその分量というものが決まるわけです。ところが、じゃ、それを標準使用量を守って使用しているかというと、守って使用しているという者は五六%です。これは粉末衣料用洗剤の場合です。目分量で使用しているという人が三九・二、約四〇%おります。それから今度は合成洗剤によって被害を受けた、こういった人に関して、どういうような被害かというと、ひびができたりかさかさになったと答えた者が七四%、皮膚が赤くなったりかゆいことがあった、これが五〇%、こういうような形で、洗剤によって何らかの被害を受けたという人は三七%おります。こういった面から考えてみますと、やはり現在の段階におきましては、洗剤に関して毒性あるいは催奇性その他の面での疑惑が晴れたということを如実に物語るわけにはどうしてもいきません。  そこで、合成洗剤が使用され出してからどれくらいになったのか、合成洗剤の歴史というものは一体どうなのか、これが使用され出した理由というものは一体どうなのか、こういった面をまず最初にお伺いしたいと思います。
  180. 宮沢香

    ○宮沢説明員 厚生省の関係ではないのですが、御指名ですので、御説明申し上げます。  私が聞いているところでは、合成洗剤というものは戦後の物資の乏しい時代には大変貴重なものであった、それが日本に石油化学の灯がともって急に昭和三十年代後半にかけて生産が高まってきたということを聞いておりまして、したがいまして、昭和三十七年ごろにその安全性が最初に問題になったというころが、ちょうど従来の粉石けんと合成洗剤とが入れかわろう、その地位を変えようとしておった時期だというふうに聞いております。  その理由といたしましては、先ほど先生もおっしゃっておられましたように、大変洗浄力がすぐれておる、もう一つは、普通従来の粉石けんですとお湯でないとよく溶けないのに、いかなる温度の水であってもよく溶けるということがございます。それからさらにもう一つ、硬水と申しまして、たとえば無機塩なんか、食塩とかあるいは炭酸塩なんかが入っておるそういう硬水でも、従来の石けんですと析出してしまうけれども、よく溶けて、いかなる性質の水であっても非常に洗浄力がいい、こういうことが非常にたくさん使われるようになった理由だと聞いておりまして、正確に申しますと三十四、五年ごろから使われたとしておよそ二十年弱、このような歴史を持っておるというふうに考えております。
  181. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 合成洗剤の毒性に関して、ABSあるいはLAS、こういったものが皮膚、内臓に浸透していく場合の人体への影響について、どんな報告がなされていますか。
  182. 宮沢香

    ○宮沢説明員 御説明申し上げます。  一部の学者の指摘では、たとえば合成洗剤が肝臓の細胞に対して障害を与えるとか、ミトコンドリアと申します糸粒体、これが減少しておるとかあるいはまた手荒れ等を起こすとかいうふうなことを報告しておる。それから、先ほど言いましたように、塗っても飲んでも奇形性を示すような作用があるというふうに申しておられる学者がございます。厚生省といたしましては、当然、一般の家庭でも広く使われる、そういうものでございますので、その安全性については万全なものでなければならない、こういうふうに考えまして、先ほども申し上げましたように、昭和三十七年当時、全面的にその安全性について検討を加えて、通常の使い方であったら問題はないという食品衛生調査会の結論をいただいたわけでございますが、昭和四十八年からさらに年次的に計画をもう一度立てまして、最も新しい毒性学的実験手技を駆使しまして私どもは現在実験を行っておるところでございまして、いままでのところ相当高濃度で塗布したりしたような厳しい環境下での実験でございますが、特に人体に対する安全性については問題はないというような結論を得ておるわけでございます。
  183. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そのように厚生省が安全性という面に関して特別なものはない、こういうように回答をされておるわけでございますが、事実におきまして、使用したことによって皮膚に影響が出てきたり、その他非常に危険を感じておる、こういった面で不安を感じながら使っておる、こういった実態というものを考えなければなりませんし、同時に厚生省はLAS、これの安全性というものについて確認されておるけれども、私は、ABSに関してはもう一歩いろいろな論議かあるのではないか、こういうように考えております。同時に発がん性という面で、それも促進する疑いがあるのではないか、こう言った学者もございますし、そういった面をどのようにとらえておるか、その面から、現在の経過で結構でございますけれども、見解をお伺いしたいと思います。
  184. 宮沢香

    ○宮沢説明員 御説明申し上げます。  私どもいま行っております実験は、そのものが体内に蓄積するかどうかという代謝に関する試験、それから次世代に対する影響を見る奇形性あるいは繁殖試験と申しますか、それからいまの発がん作用を高める作用があるいはありはしないかということで、発がん物質と同時に洗剤を投与する、こういう発がんの補助試験、それから慢性毒性に関する試験をやっておるわけでございます。先ほど先生が御指摘の点は、恐らく名古屋大学の高橋助教授でございますか、発がん作用を高めるではないかというようなことを数年前に学会に報告されましたことではないかと思いますが、この点につきましても、私どもはABS、LASあるいは高級アルコール系の洗剤であるとか、私どもの周辺にある主たる数種類のものについて、ただいま申し上げましたような実験をすべて実施しておるわけでございまして、その安全性の確認について、私どもは鋭意努力しておりますし、いままでに得られた結果では、発がん補助作用を特に高めるというような結果も得られておりません。
  185. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、これはどちらでもいいですが、ABSは湖沼や河川の自律作用というものを低下させる原因にはならないかどうか。この自浄という面から考えて、その面をどう考えておるか、お伺いしたいと思います。
  186. 宮沢香

    ○宮沢説明員 御説明申し上げます。  台所で大量に洗浄剤が使われるということで、私どもは四十八年に基準をつくりまして、環境での分解の非常に早いものを使用するというふうに基準を設定しております。
  187. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 環境庁の方は何かこれに関してないですか。
  188. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 現在、合成洗剤に使われておりますその本体をなすABSでございますが、これは分解しやすいようにということでLASに四十六年に大体全面的に切りかえをやっております。このLAS等につきましては、特に自浄作用に云々という問題はないようでございますが、やはり富栄養化とかそういう角度からいたしますと、むしろビルダーとして使っておりますトリポリ燐酸、こういうものが大いに影響がありまして、こちらの面では影響がある、かように考えております。
  189. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこでもう一点、いまの自浄作用に関してお伺いしますが、いま消費者センターの消費生活モニターアンケートの中にもあるとおり、石けん使用の理由ということで、安全性に不安がないと思うから、この人たちが七〇%、大半でございます。環境に対する影響が少ないと思う、こう答えた人も二〇%おります。ただ、それが使いにくいということで、お湯でないと汚れが落ちにくいとかにおいが悪いというような面が若干ございます。したがって、どうしても溶けやすく、汚れが落ちやすく、こういった面から洗剤の方に利用が進んでいくわけです。  私は、ここで国民の皆様方が迷ってはならないと思いますし、そこでお伺いしたい点は、合成洗剤と粉末石けんとを比較した場合、環境破壊あるいは水質汚濁、そして湖沼、河川の自律作用、こういった面から考えて、一体どちらの方が環境破壊やこういった汚濁につながっていくかという面から考えれば、合成洗剤と粉末石けんとどちらを使った方がよいのでしょうか。
  190. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 合成洗剤と石けんとどちらが一体水質を汚濁するか、あるいは自浄作用をセーブするかというお尋ねでございますが、合成洗剤の方は、先ほど来申し上げておりますように、補助剤として使っておりますトリポリ燐酸、これが燐分がございますので、富栄養化、そういう面で影響がある、またこれも自浄作用の低下という問題には関連がある、こう思っております。  他方、石けんの方はむしろ燐という問題でなしにCODとかそういうことでございまして、こちらの方はCODベースで物を見ますと合成洗剤の大体二倍から五倍ぐらいCODの負荷量は高いわけでございます。したがいまして、CODという角度でながめますと石けんの方が浄化作用をセーブする、こういうふうに考えております。
  191. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 いまの回答では、結論的にどちらがよいのか、そういったものが出せない状況なんですか。これだけの人たちが迷っておる、確かに不安があるし、影響があると思うけれども、今度は使いにくいし、こういうような面で迷っておるのをそのままに放置しておくというのは、やはり責任者として無責任なことになってしまいます。したがいましてこの面からは、いろいろと状況はあるけれども、国民の皆さんに協力をいただいて、こういうようにどちらかを使ってもらった方がよい、そういう何らかのもう少しはっきりした回答はできませんか。
  192. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 先ほども申し上げましたように、水質汚濁という面での関連から申し上げますと、合成洗剤は燐が問題になるということでございます。さらに粉石けんという角度でながめますと、むしろCODの負荷量といいますのは合成洗剤よりも粉石けんの方が高い、数倍ある、こういう話でございます。したがいまして、水質保全の立場からどちらをとった方が一体いいのか、その辺の線をというお話でございますが、これはいま言いましたように、それぞれの汚濁要因がやや違いますので、一律には言えないかと思います。  それからまた、その地域によりましては閉鎖性の水域というようなことになり、燐の除去とかいう技術レベルというものを考えれば、たとえば琵琶湖ということになれば燐の問題は確かに大きいと思います。ただ、CODの方も現在の二次処理等でも相当これは落ちます。そういうことで、その地域地域の、やはり閉鎖性水域かどうかという角度等から見て判断すべき問題ではないか。したがって、一律にどちらがということはちょっと申し上げかねる、こう思います。
  193. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 時間でございますのでこの論議を終わりたいと思いますが、最後に長官にお伺いしておきたいと思います。  いま合成洗剤がよいかあるいは粉末石けんがよいか、その地域によってもちろんいろいろなものがございます。閉鎖性水域という面から考えていけば、琵琶湖のようにいま最も問題になっているのは燐です。そして富栄養化というもので、いままで発生したことのない赤潮が数回にわたって発生し、稚アユが一万匹も死んでいった、あるいはまたにおいが出てきた。こういうような事態から考えて、私は、この合成洗剤に関して環境庁としてもあるいは厚生省といたしましても、この環境破壊あるいは水質汚濁、水質を守っていくという面から、ここでやはりもう一歩突っこんだ検討をしていく必要があると思います。  また同時に、いまの状況というものはどうしたって合成洗剤が使いやすいようになっている。洗たく機一つを考えたって合成洗剤が使えるようになっている。粉末石けんでやろうとすればお湯でやらなければならない。ではその洗たく機に同時にお湯が出るようなものがついているか、決してそういうようにはなっていません。そういったいろいろな角度から考えなければなりません。  また、いまのテレビ広告等を見ておりましても、あたかも何の心配もないような形で広告がなされておる。だから、非常に安全なんですという形で使ったところが手が荒れてきた、あるいはいろいろと皮膚に炎症が出てきた、あるいは衣類に残留していてそれが吹き出物という形で出てきた。  それで、いま私が論議したような水質という面で飲料水に影響してくるようなことになってはならないと思いますし、そういった面にどうしても長官として、ここでこの問題に関して意欲的に取り組んでいっていただきたいと思う次第でございますので、ぜひその辺の決意のほどをお伺いして、論議を終わりたいと思います。
  194. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 私もかねがね洗剤に非常に関心を持っておりまして、環境庁に就任いたしましたので実は三上先生にも個人的にお目にかかってお話をお聞きしました。  三上先生お話を聞いておりますと非常に恐ろしい症例ばかりで、これはもう非常に重大な関心を示さざるを得ませんが、同時に、これは厚生省でしたか、依頼しました研究グループの中に三上先生も入っていらしたわけですが、西村先生にもその後お目にかかりましてお話を聞きますと、これはまた三上先生と非常に論か対立して、それほどの危険性はない。ここで詳しいことは省略いたしますけれども、非常に意見が対立しているようでございました。催奇性、残留性という洗剤の危険性については、先ほど厚生省の方からも目下新しい技術、方法で検討中であるということで、この毒性について判断するのは厚生省の判断にまちたいと思います。  同時に、御存じと思いますけれども、洗剤の大手のメーカーの中に代表的なのが幾つかございます。その中に、洗剤の低燐化に非常に意欲を持って努めている大手のメーカーと、片方では全然とは申しませんが意欲を感じさせずに、できるはずの努力をしていないメーカーもございます。こういったものはやはり通産省の方にも申し込みまして強い指導をしていただいて、とにかく洗剤が出回っている限りメーカーとしては技術的な努力をして、ほかのメーカーでできていることですから、できる限りそこまでの低燐化というものはとにかく達成させるという指導を、通産省を通じてしてまいりたいと思っております。
  195. 島本虎三

    島本委員長 次回は、来る二十二日火曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとして、本日は、これにて散会いたします。     午後四時七分散会