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1977-11-01 第82回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月一日(火曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 島本 虎三君    理事 染谷  誠君 理事 登坂重次郎君    理事 林  義郎君 理事 向山 一人君    理事 土井たか子君 理事 水田  稔君    理事 古寺  宏君 理事 中井  洽君       相沢 英之君    友納 武人君       永田 亮一君    福島 譲二君       藤本 孝雄君    山崎武三郎君       小川 国彦君    川本 敏美君       山本 政弘君    近江巳記夫君      平石磨作太郎君    東中 光雄君       依田  実君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁企画調整         局長      信澤  清君         環境庁企画調整         局環境保健部長 山本 宜正君         環境庁自然保護         局長      出原 孝夫君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         環境庁水質保全         局長      二瓶  博君  委員外出席者         警察庁交通局交         通規制課長   福島 静雄君         国土庁計画・調         整局計画課長  星野 進保君         国土庁水資源局         水資源計画課長 和気 三郎君         厚生省環境衛生         局水道環境部水         道整備課長   山村 勝美君         農林省構造改善         局計画部資源課         長       泉田  収君         林野庁指導部森         林保全課長   小田島輝夫君         水産庁研究開発         部長      山内 静夫君         資源エネルギー         庁石油部計画課         長       箕輪  哲君         運輸省海運局総         務課長     山下 文利君         運輸省自動車局         業務部長    梶原  清君         運輸省航空局新         東京国際空港開         港推進本部副本         部長      上田  浩君         海上保安庁警備         救難部長    久世 勝巳君         労働省労働基準         局安全衛生部労         働衛生課長   宮野 美宏君         建設省河川局河         川計画課長   小坂  忠君         建設省河川局開         発課長     堀  和夫君         建設省道路局企         画課長     渡辺 修自君         建設省道路局高         速国道課長   佐藤 秀一君         参  考  人         (新東京国際空         港公団総裁)  大塚  茂君         参  考  人         (新東京国際空         港公団理事)  角坂 仁忠君         参  考  人         (日本道路公団         理事)     平野 和男君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月一日  辞任         補欠選任   阿部喜男君     川本 敏美君   上田 卓三君     小川 国彦君   坂口  力君     近江巳記夫君   竹内 勝彦君    平石磨作太郎君   刀祢館正也君     依田  実君 同日  辞任         補欠選任   小川 国彦君     上田 卓三君   川本 敏美君     阿部喜男君   近江巳記夫君     坂口  力君  平石磨作太郎君     竹内 勝彦君   依田  実君     刀祢館正也君     ――――――――――――― 十月二十九日  琵琶湖水質保全等に関する請願竹内勝彦君  紹介)(第八二二号) 同月三十一日  琵琶湖水質保全等に関する請願寺前巖君紹  介)(第二〇〇二号)  同(永末英一紹介)(第二〇〇三号)  同(山田芳治紹介)(第二〇〇四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十月三十一日  ニホンカモシカによる被害防止対策に関する陳  情書  (第一七六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  公害対策並びに環境保全に関する件      ――――◇―――――
  2. 島本虎三

    島本委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。友納武人君。
  3. 友納武人

    友納委員 水溶性天然ガス採掘に伴います地盤沈下の問題につきまして、数点お伺い申し上げたいと思います。  この水溶性天然ガスは、資源有限時代を叫ばれる今日、国内で産出されますエネルギーとしまして非常に貴重なものでありますが、比較的この問題についての国民的な知識が十分でございません。天然ガスは九千カロリー、普通の市販の都市ガスの三倍ぐらいの高カロリーのエネルギーであり、しかも硫黄分を含まないいわゆるクリーンエネルギーであります。この水溶性天然ガスわが国で六億立方メートルぐらい一年間に採掘をされておりますが、その九割は千葉県の房総半島太平洋岸採掘されております。しかも、この天然ガスはいろいろな工業原料を含んでおりまして、特に、ヨードにつきましては、世界のヨード生産の七割をこの房総半島生産をしておるのでございます。しかし、このエネルギー工業原料以外の都市ガスにも使われておりますが、残念ながら多量の地下水、鹹水と称しておりますが、塩水と一緒に産出されますので、この採掘に関連しまして、地盤沈下が起きるという問題がございます。そこで、この地盤沈下をさせないようにこの貴重な国内産のクリーンエネルギーを確保していくということは、非常に重要なことだと思っております。特に、この水溶性天然ガス埋蔵量は四千億立方メートルと言われておりますので、仮に現在採掘されております六億立方メートルを十億立方メートル、約倍採掘をいたしたとしましても優に三、四百年、無限のエネルギー源になるものでありますので、特にこの地盤沈下対策というものが重要であると私は考えておるものでございます。  そこで、まず第一にお伺いしたいのは、この問題について所管通産省エネルギー庁になっておりますが、環境庁設置法等を見ますと、環境庁はこれらにつきましてやはり重大な責務を持っているように思いますので、通産省に対してどういうふうに指導——指導と申すと言葉が悪いかもしれませんが、どういうことをしておられるのか、通産省に任せっ放しなのか、その辺をまず伺いたいと思います。
  4. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 水溶性天然ガス採掘に伴います地盤沈下、これの所管につきましては、ただいま先生がお話しのとおり通産省所管になっております。  やや解説的に申し上げますと、公害対策基本法第二条第一項で地盤沈下典型公害一つということになっておりますけれども、その際に「鉱物の採掘のための土地の掘さくによるもの」は同法の対象から除かれております。しかし水溶性天然ガス採取に伴いますもの、これは土地の掘削によるものではないということで、これは公害対策基本法に言う典型公害一つというふうに見ております。ただ、公害対策基本法上はそうでございますけれども、これが通産省所管になっておるということにつきましては、公害対策基本法が四十二年に制定されましたけれども、その以前からいわゆる鉱害の防止という観点から、鉱山保安行政の一環としまして通産省保安監督等所要措置が講ぜられてきておるということでございます。したがいまして、先ほど申し上げました典型公害一つとされたわけでございますが、それ以後も、それまでの鉱山行政歴史的経緯なりその特殊性なり行政効率性ということを勘案いたしまして、公害及びマイニングの害の両方の面から通産省所管をしておる、こういう経緯に相なっております。  環境庁といたしまして、一体どういう指導その他をやるのかということになりますが、環境庁といたしましては全体的な地盤沈下防止というような観点からいたしまして、天然ガス採取によるものを含めまして地盤沈下の実態の把握等に努めてきているところでございまして、今後とも通産省を初め関係省なり自治体と緊密な連絡をとりまして、必要な措置は講ぜられるように努めていきたい、こういうことでございます。
  5. 友納武人

    友納委員 以上でこの所管の問題はさらに申し上げませんが、私は通産省によります地盤沈下についての防止対策といいますか防止行政というものは非常に不十分なものであるというふうに思っておりますので、以下、御質問申し上げます。  本年の六月に国土地理院指導によりまして千葉県が発表しました房総半島太平洋岸におきまする地盤沈下の数字を見ますと、五十一年度一年間におきまして最高九・一センチメートル、約十センチに近い沈下をしております。しかも、前年あるいはその前年に比しまして地盤沈下範囲九十九里浜北側まで広がっております。この水溶性天然ガスというものは、先ほども申し上げましたように非常に貴重なエネルギーでありますので、大いにこれを採取をして工業原料なりエネルギー源なりにすべきではありますが、前年よりもさらに悪化する、しかも沈下範囲が広がっておるというような事態を見ますると、非常に行政のやり方が不十分なんではないかというふうに思われてならないのでございます。この一番激しい地帯現実に見ますと、一宮川という川がありますが、この川の満潮時に行ってみますと、いわゆる川の表面と岸とがほとんどすれすれになっておるというような、かつては相当な距離があったわけでありますが、そういうような状況であります。こういう点につきましてどういうふうに考えておるか、ひとつ通産省のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  6. 箕輪哲

    箕輪説明員 ただいまも先生指摘のとおり、今年千葉県が発表いたしました地盤沈下の傾向で、長南町、特に芝原地区でもって最大九・一センチの沈下量を測定されたということは事実でございます。  この沈下因果関係につきましてどう見ているかというお尋ねだと承知いたしましたが、先生御存じのとおり、沈下因果関係につきましてはいろいろな複雑な要素が絡み合う場合も多いわけでございますけれども、特に長南芝原地区の場合で考えますと、その周辺で水溶性天然ガス採取が開始されたということもございますので、沈下の主原因と申しますのは水溶性天然ガス採取に伴います地下水のくみ上げによるものであろうというように考えております。したがいまして、通産省といたしましては、今年の八月に排水量を前年実績の二分の一にするような規制措置を実施したのでございますけれども、場所的に広がっておるという御指摘もございましたが、これはいろいろな原因がふくそうしておりまして、また特に南白亀川以南におきましては排水量を増大したという事実もございませんものですから、沈下範囲の拡大というのが全面的に水溶性ガスによるものかどうかということにつきましては、まだ十分データがそろっていないというふうに考えております。しかし、現実範囲が拡大しておるものでございますので、今後も十分究明を進めていきたい、そのように考えておる次第でございます。
  7. 友納武人

    友納委員 いま御答弁いただきましたが、この九十九里一帯は、かつては地質、地盤上隆起をしていた地帯でございます。そういう地帯天然ガス採取に伴って沈下をし出したということは明らかな事実でありまして、それは原因が他にあるんではないかというようなお話でありましたが、こういう点につきましてはもう少し現状把握をされまして、貴重な地下資源というようなものを確保していく上におきましても、地盤沈下についての認識をもう少し持ってやっていただきたいと思います。  時間もありませんので結論を申し上げますが、通産大臣が、「今後の水溶性天然ガス開発のあり方に関する意見」をPEACという天然ガス資源開発審議会諮問をされておるわけでございますが、この諮問答申が五十年の暮れにございました。この答申書内容を見ましても、何度も強調されているのは、貴重な水溶性天然ガス採取、しかも南関東にある、これを採取をしていくためにはこの地盤沈下対策を十分にしていかなくちゃいかぬということを答申の中に繰り返し述べておるわけです。時間がありませんので一々申し上げませんが、これらをよく熟読玩味されまして、いろいろ原因があるんだから、水溶性天然ガスによるものとは思われないというような、そういった現実と非常に離れたような答弁じゃなく、本当に真剣にこの問題を考えていただきたいと思います。また同時に、環境庁におかれましては、この問題につきまして、やはり公害行政の元締めでありますので、どういうふうな権限があるのか存じませんが、通産省を督励をされまして、こういう事態が起こらないようにひとつ特に環境庁に御指導をお願いを申し上げておきます。  次に、主として新東京国際空港設置に伴います航空機によりまする騒音公害につきまして、お尋ねを申し上げます。  この航空機騒音につきましても、環境庁特殊公害課といいますか、そういう課があるようでございますが、その所管にはなっておらず、運輸省航空局所管になっております。これも地盤沈下問題と同じように、端的に申しますと、運輸省航空局に任せっぱなしになっておると言っても言い過ぎではないように思います。  以下、個々の問題について申し上げますが、運輸省航空局お尋ねをいたします。  まず第一に、国際線で使用されておる航空機のうち、一番音の高いものと低いものとはどのくらいの差があるのか、この点についてお答え願いたいと思います。
  8. 上田浩

    上田説明員 お答えいたします。  一番騒音の高い機材は、現在羽田に離発着しております飛行機の中では、DC8、ボーイング707系列の飛行機が一番高うございます。それから低いものといたしましては、ダグラスのDC10、ロッキードの一〇一一でございます。大体その差は十五デシベル程度の差がございます。
  9. 友納武人

    友納委員 わが国国際線に使用するような航空機生産がありませんので非常にむずかしいこととは思いますが、航空機による騒音対策で一番根本的なものは、航空機構造といいますか、サイレントエンジンといいますか、そういうようなものの開発にあると思いますので、この点につきましては特に運輸省におかれましていろいろと留意をされたいと要望しておきます。  次に、新東京国際空港設置に伴いまして、銚子上空飛行するルートにつきまして現在問題になっております。その問題は地元と協議をなさっておるようでございますので、その経緯に待ちたいと思いますが、ここでお尋ねしたいのは、要は、航空機による騒音対策というものはなるべく早く海上に出ることだと思います。銚子というのは、関東地方のあの地形から見まして一番陸地が長いところであります。むしろもっと早く海上に出るルートというものを選んだ方が航空機騒音対策上有利なんではないかというふうに思われますが、どういうわけで銚子というような一番海に突き出しているところにボルタックを置かれて、その上空を飛ぶように航路をお決めになったのか承りたいと思います。
  10. 上田浩

    上田説明員 お答えいたします。  技術的な御説明で恐縮でございますが、出発便につきましては、離陸後安全高度に到着いたしました後、旋回をいたしまして航空無線標識電波コースに乗ること、さらには進入につきましては、アウターマーカーの以遠で計器着陸装置電波に接合することが通常の方式でございます。  成田空港進入出発方式につきましても、当初は御宿設置いたしておりますVORDME、これは無線航空標識でございますが、それを使いまして、主として九十九里浜から進入するという方式を考えていたのでございますが、昭和四十六年一月八日、当時の千葉県知事さんから、県内関係市町に対する航空機騒音を極力少なくするという見地から、航空局に対しまして要望書がございまして、それによりますと、成田空港、新空港進入出発方式については、九十九里浜利根川の間を直進上昇、直進進入するという方式をとってほしい、さらには千葉県内飛行高度は六千フィート以上としてほしい、さらに、先ほど申し上げました御宿からいたします新空港へのアプローチというものにつきましては、利根川までの飛行高度を六千フィート以上確保してほしい、それが不可能であるならば御宿経由ルートは再検討してほしいという申し入れがございました。これにつきまして運輸省におきまして検討いたしました結果、県の御要望の趣旨は、飛行機の航行の安全の見地から、あるいは騒音を極力関係市町にばらまかないという見地から非常に望ましい方式であるというようなことがございましたので、この方式によることにしたわけでございます。そうなりますと、御宿VORDMEを使って進入いたします方式というものを検討を加えざるを得ないという形になりまして、したがいまして、成田空港北側に向かって離陸する航空機飛行ルートといたしましては、利根川の北方に出た後、利根川を伝いながら銚子に出るという飛行ルートを考えざるを得なかったわけでございます。  以上が先生の御指摘のような一番遠いところを飛行する方式をとらざるを得なくなった理由でございます。
  11. 友納武人

    友納委員 航空機騒音で一番問題になりますのは夜間であります。この夜間飛行につきまして、運輸大臣の国会での答弁を承りますと、羽田並みということを言っておられます。そこで、夜十一時までが羽田行政指導による発着時間になっておるようでございますが、現実にわれわれが羽田空港に行きますと、十一時以降に発着している飛行機がございます。現実に過去一年間にどのくらい十一時以降に発着をしている飛行使があるのか、またどういうわけでそういう行政指導は十一時までとなっておるのに十一時以降の発着があるのか、ひとつお答え願いたいと思います。
  12. 上田浩

    上田説明員 お答えいたします。  ただいま先生の御指摘ございましたような羽田におきます運航時間の制限と申しますか、これは昭和三十八年四月一日以降、午後十一時から翌朝の午前六時までのジェット機の離発着につきましては原則として禁止いたしております。原則としてと申しますが、次のような場合にはこの例外というような形で認めているわけでございます。  一つ異常事態にある航空機、あるいは二番目といたしましては乗組員または乗客に異常事態が発生した航空機、さらには捜査救難業務に従事する航空機、四番目といたしましては台風避難その他避けがたい理由により離着陸が必要と認められる航空機につきましては、原則としてこれを禁止から外しているわけでございます。さらにはもう一つ例外規定がございまして、二十二時五十五分までに出発準備を完了いたした飛行機について、管制の承認を待っている航空機については、これは十一時以降の飛行もやむを得ないというような形で認めているわけでございます。  このような例外規定によりまして認めておるのが、大体日に二便ないし三便平均になっております。
  13. 友納武人

    友納委員 この件につきましては時間がありませんのでもうこれ以上申し上げませんが、航空局としてやはり夜十一時という時間を行政指導として設けておるわけでございますので、国際線につきまして非常に日本航空局というのは弱腰であるという批判もございますので、設定した以上はそれを厳格にできるだけ守るようにひとつ要望しておきます。  次に、IATAという国際組織から新東京国際空港運航時間、飛行方法等につきまして何か要望が出されているのかどうか。また、成田空港の開設に伴いまして新規な、現在羽田発着してない国際線増便をすることについてどういう折衝経過になっておるのか、どういう考え方をしておるのか、その辺をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  14. 上田浩

    上田説明員 お答えいたします。  運用時間につきましては、IATA加盟航空会社側は、原則として二十四時間運用ということを強く望んでおります。しかしながら、一方、千葉県の成田市あるいは芝山町におきましては、地元からは、深夜、早朝の運航制限、これは夜の九時から朝の六時まででございますが、運航制限を実施するように強く要望をいたしておる現状でございます。したがいまして、私たちといたしましては、このような地元住民の方々の意向もございますので、国際線運航特殊性を考慮する必要がありますので、騒音対策等についてはできる限りの配慮をした上で、地元の御理解と御協力を得ながら、現在の羽田並みの十一時から朝六時までの発着禁止という運用を行っていきたいと考えておるわけでございます。IATA、キャリアといたしましては二十四時間運用というようなことも考えておるわけでございますが、わが国の環境問題の厳しさというものも十分理解しているようでございますので、このような羽田並み運航制限運用制限というものにつきましては了解していただいておるというように私たちは考えております。  それから、第二番目の御質問でございます。今後の新規の増便等についてはどのようになるかということでございますが、現在、わが国国際協定を結びたいと希望しておる国が三十二カ国ございます。これら三十二カ国とどのように航空協定を結んでいくかという問題につきましては、当該国の政治、経済、文化の交流実績あるいは将来の交流の度合いというもの等を勘案いたしまして、さらには当該国との輸送需要さらには日本航空の事業計画等を勘案いたしまして順位をつけまして三十二カ国の中から航空協定を結んでいきたいと考えておる次第でございます。  それから増便等につきましては、当然原則といたしまして航空協定のいわゆる協定内容という形になるものでございますので、航空協定というものを通じまして逐次増便していきたい、このように考えておる次第でございます。  以上でございます。
  15. 友納武人

    友納委員 あと民家防音工事等あるいは騒音の激しい地域のいろいろな開発利用計画等々につきましてお尋ねしたいと思いましたが、時間が参りましたので、これはまた別な機会にお聞きをいたしたいと思います。  ただ、ただいまの御答弁についてちょっと申し上げますが、この成田空港設置に伴いまする新しい航空便増便という問題は、これは成田空港内陸空港であるという観点から考えまして慎重にひとつ、いろいろな現在の羽田発着している国際便を移して、それによる航空機騒音対策というようなものを十分にいろいろ検討してから増便をするようにしていただきたいと思います。とかく日本航空行政というのは、西欧諸国に押されておるというふうに言われますので、自主的な航空行政を展開されるよう要望いたしておきます。  なお、環境庁に最後に大気保全局長さんにお尋ねいたしますが、環境庁設置法第三条に「環境庁は、公害防止自然環境保護及び整備」云々というような規定がございまして、こういったそれぞれの官庁に権限を移譲して、移譲と言うとおかしいのですが、その窓口を通じて公害いろいろ予防行政をしておられることはやむを得ないと思いますが、そうだからといって環境庁はこれに無関心であってはいかぬと思います。特に先ほど私が申し上げました水溶性天然ガス採取に伴います地盤沈下というものは激しいものがあります。決して私は天然ガス採取をやめろという意味ではありません。貴重な、この資源有限時代わが国に埋蔵されるエネルギー源ですから、この公害対策を十分にすることによってエネルギーの不足を補うことができるわけですから、そういう意味で申し上げておるわけでございますが、そういう意味でも環境庁というものが通産省を、どういうふうな形になるのか私もわかりませんが、その地盤沈下対策についてどういうことをしているか、非常に不十分な態度であると私は見ております。また、先ほど申し上げました航空機によりまする騒音公害につきましても、航空局に任せっ放しというのではなく、どういう実情なのかというような点について、定期的な協議をしたり指導をしたり意見を申し述べたりというようなことをすべきだと思いますが、御所見を伺いまして質問を終わりたいと思います。
  16. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生から大気保全局長ということでの御質問の一部がございましたのでお答えいたしたいと思います。  環境庁といたしましては、一番基本的には環境庁設置法に勧告という問題がございまして、航空機に対しましては昭和四十六年の十二月に緊急勧告をしまして、それから航空機公害の環境の音に対応した対策が公害対策基本法との関連において動き出したという経緯でございます。  続きまして、公害対策基本法の環境基準の設定ということを環境庁はやってまいりまして、御指摘のごとく非常にむずかしい問題でございますが、やはり環境庁はその環境を守るという観点から、よその国でこの「維持することが望ましい」環境基準などというような形で航空機騒音を抑えているのを私は余り知らないわけですが、やはりそれは環境庁がやってまいりまして、あとはこの基本法に基づき、あるいは公害の被害の原因の究明というような形でやってまいりました。やはり航空機の問題に関しましては、飛行機とそれから航行、管制、飛行場、これだけのものが全部一体となって対応しなければ規制ができないという観点に立ちまして、環境庁は環境基準というような立場からのみこれは関与いたしておりますが、先生から御指摘ございましたように、環境基準の達成ということにつきまして環境庁としても積極的に運輸省に働きかけていくということで努力をいたしたいというように思っております。
  17. 友納武人

    友納委員 もう一つ、松戸市の清掃工場につきまして先般御質問申し上げましたが、時間が不足で、もう少しお尋ねしたいと思いましたが、社会労働委員会等でお尋ねする方が適切だと思いますので、せっかくおいでをいただきましたが、社会労働委員会等でまたひとつお尋ねを申し上げたいと思います。  以上で終わります。
  18. 島本虎三

    島本委員長 友納武人君の質問は終わりました。     —————————————
  19. 島本虎三

    島本委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  公害対策並びに環境保全に関する件調査のため、新東京国際空港公団総裁大塚茂君、同公団理事角坂仁忠君及び日本道路公団理事平野和男君、以上の方々を本日参考人として、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 島本虎三

    島本委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、平野参考人につきましては、川本敏美君及び近江巳記夫君の質疑の際、御出席を願うことといたします。     —————————————
  21. 島本虎三

    島本委員長 質疑を続行いたします。小川国彦君。
  22. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、成田空港を中心とする環境保全の問題、特に航空機騒音の対策の問題について石原環境庁長官お尋ねをしたいと思うわけでございます。     〔委員長退席、向山委員長代理着席〕  最初に、私は去る三月十一日の予算委員会におきまして、成田空港の開港が予想される状況の中で周辺の騒音環境対策の問題が非常に重大な問題になってくる、こういう状況で、いま環境庁の持っている環境基準の適用ということが十年先ということを目標ではとてもこの周辺住民の生活の対策というものが成り立ち得ない。そういうことで石原環境庁長官には積極的にこの問題に取り組む姿勢を要望したわけでございます。そのときに石原国務大臣は、この三月十一日の予算委員会第一分科会の中で  〇石原国務大臣 成田が開港しました後に、先生おっしゃられますように、騒音に関しての訴訟が起こったりするようなことになるならば、これは非常に重大な事態でございますし、そういう可能性があるのかないのか、私、現地をまだ見ておりませんし、一回私自身現地に赴いて確かめて、こういった問題に対処したいと思います。  こういう御答弁をいただいておるわけなんです。それからすでにもう、いま十一月でございますから八カ月近い歳月がたつわけでございますが、この間、寡聞にして大臣が成田空港の現地においでになったということを私、聞いていないわけでございます。あるいはひそかにおいでになるということもございますから、ひそかにおいでになったにしましても、いずれにしましても現地をごらんになったのかどうか。それから現地をごらんになった上でこの周辺の住民の騒音環境対策というものについてどういう対処の方針をお持ちになったか、この点をお伺いしたいと思います。
  23. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 大変申しわけないと思いますが、あれから確かに何カ月かの歳月がたちましたけれども、その間、いろいろ視察の依頼もございまして、できる限り赴くところには赴くようにいたしてまいりましたが、どうも折り合いがつかず、いまだ成田には参っておりません。
  24. 小川国彦

    小川(国)委員 私は初めて当選してきたばかりで、一生懸命質問をして、大臣が現地を見るということは、この問題に取り組む第一歩だというふうに理解したわけです。したがって、この三月十一日に大臣がこれに取り組む第一歩を、こういう所信の表明を私の質問の最後にされたわけで、その第一歩がここでなされたというふうに思ったわけです。その第一歩が踏み出されない状況において、果たして環境庁の責任者としてそこの責任が全うできるというふうにお考えかどうか——おつきの人に聞いているんじゃなくて、大臣に聞いているのですから。
  25. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 私、環境問題は現場主義でいきたいと思っておりますけれども、直接の所管運輸省がしておるわけでございますが、運輸省にもいろいろ申し入れをいたしましたし、また今度特別措置法という一つの法案も政府として考えておりまして、そういう形で環境問題の解決ができると期待しております。いずれにしましても、どうも時間の折り合いがつかずに現場へいまだに伺えないということは大変心苦しく思っております。
  26. 小川国彦

    小川(国)委員 何か聞くところによりますと、大臣は春の国会答弁の中で、現地に赴くというのを七カ所ぐらい、たしかお約束なさったそうでございますが、何カ所お約束なさって、行かれたのは何カ所でございますか。
  27. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 四、五カ所参ったと思います。それから、その中の一つは日取りまで決めましたが、緊急の国際問題がありましたので、その調査と打ち合わせに外国へ参りますために例のスーパー林道は行けませんでしたが、これもできれば雪が来る前にと思っております。
  28. 小川国彦

    小川(国)委員 環境庁の方にも伺います。大臣が約束したことを忘れてしまっては困るわけなんですが、環境庁としては、大臣が行くと答弁したのは何カ所で、そのうち何カ所実現したかということを皆さんは認識していらっしゃいますか。
  29. 金子太郎

    ○金子政府委員 国会答弁で大臣がお出かけになるというお約束をされたのはたしか七カ所だったと思いますが、そのうち四、五カ所いままでにおいでになったと思っております。
  30. 小川国彦

    小川(国)委員 行ったところと行かないところとひとつ御答弁願います。七カ所約束したところ、そのうち行ったところがどこで、行かないところはどこか。
  31. 金子太郎

    ○金子政府委員 詳細な資料をただいま手元に用意いたしておりませんが、おいでになったところといたしましては、大阪の四十三号線二回、大阪国際空港、それから環状七号線、それから小笠原の父島、母島など、それから水俣がございます。  それから、そのほか約束されておいでになってないところとして、現在、南ア・スーパー林道と、先ほど言われました東京国際空港などがあったかと思います。
  32. 小川国彦

    小川(国)委員 この二カ所については環境庁の中では討議をされたり、これについてどういうふうな時点でやろうというようなことは、予算委員会答弁なされた後に御相談はなかったのですか。
  33. 金子太郎

    ○金子政府委員 南ア・スーパー林道につきましては、いままで三回ほど大臣においでいただく段取りを立ててまいったのでございますが、その都度支障が生じまして、いまだ実現するに至っておりません。  成田の方は、私、申しわけございませんが詳細なことを計画したことはございません。
  34. 小川国彦

    小川(国)委員 これはまさに環境庁全体が言いっぱなしですね。大臣も言いっ放しなら環境庁も言いっ放しです。成田空港の問題についていま大臣は、これは運輸省所管だ、それからもう一つは、特定空港に対する騒音防止の法律も提出していると言うのですが、三月十一日の段階で、大臣自身が現地に赴いて確かめてこういった問題に対処したいということを言ったわけですよ。大臣というのはやはり約束したことはせめて半年以内には実行するということかなかったら——しかも国会で答弁して約束されたことですよ。どういう日程があるか、大臣はその間に休暇をおとりになっているのですか。
  35. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 もちろん休暇もとっておりますし、その間に来いとおっしゃられれば、その論もあると思いますけれども、ただ、これは飛行場の使い方であるとか、たとえば進路でありますとか、そういうものがあの時点ではまだ決まっておらなかったようでございますし、運輸省があの空港の使用方法その他具体的な案件というものを進めた段階でということで、私、今日まで行く機会を失したわけでございます。私は参ることに決してやぶさかでございませんし、問題が起こってしまってからでは遅いわけですから、私自身多大の関心を持っておりますし行きたいと思っておりますけれども、そういうことで時期というものを選びながら今日に至ったということをひとつ御理解いただきたいと思います。
  36. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 一言だけ事務当局としての説明を申し上げておきます。  大臣御自身は視察をされることにいつも非常に積極的になっておられます。成田の問題につきましては、むしろ私どもの補佐の立場から、もう少し地元のいま大臣のおっしゃったような問題のめどがついて、その段階で行っていただければありがたいということを申していることは事実でございまして、われわれの方が行っていただきたいと言っているのに大臣御自身が行かれないというような事実は毛頭ございません。
  37. 小川国彦

    小川(国)委員 事務当局も一体になってけしからぬと思うのです。  石原さん、私は国会議員になってから一日も休んだことはないですよ。大臣というのは国家の重責を担っておるのですからもっと厳しいと思うのです。この国会の中でわれわれが指摘する問題というのを大臣もそれなりに評価をして重要性を認めたから行くと言ったわけでしょう。行くということの第一歩は見ることだ、こういうふうにお考えになったわけでしょう。それを果たされないで成田空港騒音対策や環境対策をここで議論することができると思いますか。
  38. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 でございますから、行くにつきましても周囲の状況のいろいろタイミングがあると思うのです。私は行くことにやぶさかでございませんけれども、それをどういう時点でとるかということはいままで事務局とも話してまいりましたし、その時を選んで今日に至っておるというのが現況でございます。
  39. 小川国彦

    小川(国)委員 では、そのタイミングはどういうふうに御相談なすっているのですか。
  40. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 先ほどの答弁でも申し上げましたし、また大臣もいまおっしゃいましたが、いまやはり地元運輸省との間でもう最終の非常な努力をしておられる最中のところでございまして、そのことのめどがつくということでないと、またそこで新しい問題が議論の中で複雑になってきても困るということは、これは先生からおしかりを受けることと思いますが、私ども事務当局としましては、運輸省等と話をいたすときにそのような判断を持っておりますので、大臣にそう申し上げているわけでございます。
  41. 小川国彦

    小川(国)委員 全く怠慢ですね、大臣。私も県政から国政へとずっと政治関係の仕事をやってきましたが、家内ですら始終、ひとつ政治家にも定休日か欲しい——床屋さんだって一週間に一遍、月曜日は定休日があるんですよ。だけれども日本の政治家に定休日はないです。休みがないですよ。福田総理の日程を見ていてもおわかりのように、休みがないのです。それぐらい日本の置かれている政治状況は厳しいし、それから環境庁長官の取り組む問題というものは国民の大きな期待があるわけです。そういうような問題に対して、あなた自身が議会で答弁して約束したことを、何ら——内部の人がいまいろいろと説明、言いわけを言っていますよ。しかし、言いわけを言っているより先にあなた自身が国会で答弁したことは、現地に行くと言えば質問がそれで終わるだろう、議会対策の一つだというようなことで、そういう答弁だけしておけばいいというようないいかげんな姿勢でやられたのでは、私がこれから質問しようとする成田空港騒音下でこれからどうなるかと考えている何万何千の人々に対して代表してあなたに質問する気にならないですよ。  それで、あなたは、いつか何か大臣というものはこんな楽な商売はないというようなことをおっしゃったそうですか、こういう約束したことすらやらなければ、私は大臣ほど楽な仕事はないと思うのです。こんな楽な商売はないと思いますよ。もう少し真剣に、国会で約束したことは、三月十一日に約束したことはいつ果たそうかという考えがあなたにあっていいと思いますよ。私は本会議の中であなたに一遍、成田にいつ来られるのですかと催促したこともありますよ。お互いに忙しいからなかなか催促できませんが、途中で一遍催促しているのです。それだってあなたは、その間にそういうことを内部で相談して、いつごろ日程を組もうかということをあなたから提唱したことがありますか。この半年間にありますか。
  42. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 ちょっとお言葉ですけれども、私、大臣が楽でいいとかそんなことを言ったことはございません。それはちょっと誤解だと思います。  それから視察は、これは行くにこしたことはございませんし、行くならば、やはり一番効果の上がる形で、他の関係省庁との絡みで、事務局でやはり煮詰めて効果のあるときに行かなかったら、そう二度も三度も同じところに行くわけにいきませんので、そういう要するにタイミングをとることでいままで時期を費やしてきたわけです。ですから基本的には、行くならばやはり一度行くことで要点を完全に拾い切れる、問題を分析し切れるというタイミングを、私は環境庁としてとるつもりで今日まで時を費やしてきたわけでございまして、私は、現地を視察することを最初から国会対策、その場を切り抜けるつもりで言ってきたつもりはございませんし、現に今まで幾つか約束した視察もしてまいりましたので、そこはひとつ誤解ないようにしていただきたいと思います。
  43. 小川国彦

    小川(国)委員 私は誤解をしているのじゃなくて、率直に物を申し上げているのですが、それではもう一つ大臣にお伺いしますが、今度の八十二国会に特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法という法案が提出になっているのです。これは閣議決定されて国会に提案されているので、恐らく石原大臣も環境庁長官としてこの法案の提出については内容を検討されて閣議決定の文書に判をつかれていると思いますが……。
  44. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 サインいたしました。
  45. 小川国彦

    小川(国)委員 あなたはこの法案にサインするに当たって、この法案によって法案の対象としているところがどこの空港であり、この法案によってその空港がどういう影響を受けるか、こういうことについて内容を検討されておりますか。この特定空港周辺の法案がどこの空港を対象としているか、そのことは御理解なすっておりますか。
  46. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 まず成田を対象でございますけれども、これは実は以前から議論がございまして、やはりその立地規制そのものにいろいろ問題があるかもしれませんけれども、しかし、ただの土地利用計画だけではらちが明かないという議論が伊丹なども参照してございまして、そういう議論の末に出てきた一種の立地規制を盛り込んだ措置法でございますけれども、そういう意味で私は理解しておりますし、それがまず成田に適用されるということで、空港ができることで起こってくる騒音の環境問題というものの防止には非常に有効性があると心得ております。
  47. 小川国彦

    小川(国)委員 こういう法案が出されて、それでもちろんこの法案についてはいままで運輸省空港公団が、特に担当省としては運輸省がこれをやってきているわけですが、その間には当然環境庁との協議というものもおありになっただろうし、その協議の内容というものを長官はお聞きになって、それを理解し納得した上で閣議でこの法案に対する大臣としてのサインをされたと思うのですよ。そのときにあなたは、私が現地を見ることが第一歩だ、そういうことを自分自身が言っており、この法案が成田に始まって成田に終わる法案だと言われる成田空港を対象として、その周辺の住民の環境対策のためにこの法案というものが、所管運輸省で出されてきていますが、環境庁としては重大な関心をもってこの法案の内容を検討しなければならない、そういう立場にあってこの法案をサインする、そういう立場にあるあなたが、この成田の現地を見ないでこの法案というものをデスクの上だけでぺらぺらとページをめくっただけで、この法案に対処して、それで責任が果たせる、こういうふうにお考えになったわけですか。
  48. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 大臣のお答えになりますまでに事務当局としてしたことを申し上げます。  これは運輸省の中の審議会で土地利用の規制についての制度化ということで数年来にわたってやってまいりました。その中に環境庁の方も委員として参加をしております。特に環境庁航空機の環境基準を設けますときに、この審議会としてはやはり土地利用の問題も指摘をしておったわけでございますが、いま大臣もちょっとお触れになりましたように、土地利用の規制という点は権利の規制にかかわって非常にむずかしい問題があるということは御承知のとおりでございます。  ただ、私ども環境庁の大気保全局の行政としましては、やはりどうしても土地利用の規制をしなければ、次から次に騒音地帯に新しい人が入ってきて、それでどんどん騒音公害の規模がふえていく。そこのところは土地利用の規制という面について、もちろん規制をするからにはそれに対応するだけの施策もやはり講じなければならないということも当然でございますが、そのことを当然法制化すべきだということで、環境庁としては積極的にサポートをしてまいりましたし、また閣議決定の前に大臣に御説明を申し上げまして、このことはこの予防適用措置がとれる最初のスタートである、そういうことで、特定空港となっておりますから、どの空港を特定をするかということでまず成田をされるということでございますので、環境庁としては積極的にこの法案が提出されて成立するのを支持するということで大臣に御説明をいたしておったわけでございます。
  49. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 そういう経過に加えまして、中公審の方からもやはり立地規制の側面から何らかの新しい法制度が必要だという意見もいただいておりますので、私はこれに賛成し、これを評価してサインいたしました。
  50. 小川国彦

    小川(国)委員 それで大臣、私は、あなたが少なくともこういう成田空港を特定するという考え方を盛った法案が出てきているので、当然、その法案の審議に入る前には現地へ行って自分の目で周辺の騒音対策というものを見、それからまた周辺の状況を見、それからこの法案と対比して考えるというようなことがあっていいと思うのですが、これから早速にでもあなたは約束したことを履行するというこのお考えはいまお持ちになっておりますか。
  51. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 こういう法案ができてから見に行った方が行政面での効果が上がるか、それともできる前に行った方がいいかということは、いろいろ論があると思いますが、先ほど申し上げましたように、とにかくこういう法案を閣議決定いたしたわけでございますけれども、その上で、この段階でともかく関係省庁との絡みで一番よき時点を選んでできるだけ早く行きたいと思っております。ただ、それがいつになるかということはこれからなお関係省庁と討論して決めたいと思っております。
  52. 小川国彦

    小川(国)委員 自分のやったことに責任が持てないという大臣ですね。自分が言ったことは自分の意思で行動できなければ、私はこれは人間としての基本的な観点に欠けると思うのですよ。私は、自分が行くと約束したことは、周辺の人に納得してもらっても自分は行きますよ。あなたは周辺の御意見を聞いてから自分の意思というものを決めるわけですか。
  53. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 それは、私は私で意思を持っておりますけれども、私がひとりいたずらに独断専行しても行政の実が上がらないということは多々あるわけじゃありませんか。ですから、やはり関係省庁と話をして、環境庁なら環境庁の長官が行くときに、つまり周囲の状況がそろうといいましょうか、物事の要点が一番クローズアップされる時点というものを選んで行くべきですし、そのためには私は十分周囲の人の意見を聞き入れるつもりでございます。
  54. 小川国彦

    小川(国)委員 まず、これは何とあなたが弁解しようと、この法案を検討しようというのに大阪空港成田空港との現地を対比しなくて法案がわかるほどあなたは神様じゃないと私は思うのですよ。やはりあなたも私もお互い普通の人間だと思うし、それからやはり約束したことは守るという信義がなかったら、大臣というものは何年やったって、約束したことは半年たって実行できなくて、これから先もいつやろうという意思を持たないなんて、そういうきわめて無責任な人間が環境庁長官をやっているということは、私は国民のために大変残念だと思います。私どもも成田空港で十一年間住民と一緒にこの問題に取り組んできておりますが、それは現地の農民にしても周辺の住民にしても寝られないぐらい毎日大変な生活をしているわけです。そういうような現地の問題を——あなたがたとえばこの法案で規定しようというのは、この法案の中身に私は入るつもりはないですが、一定ホン以上のところはうちを建てさせない、それからその一定ホン以上のその周りは全部民家防音工事にしようというわけなんです。だけれども、現地へ行けば、いまやっている民家防音工事が一室行われている、二室行われている、現実にあるわけですよ。そういうものを見て、これからあるものはどういうものかということを考えるのにも——あなた方の環境基準の中には、今度の法案の中には民家防音工事をやろうということも入っているのです。だけれども、どんな工事をやっているかも見なくて、あなたは民家防音工事をどんなふうにやっているのか御存じですか。——いや、おつきに聞いているのじゃない、大臣に聞いている。
  55. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 私はもちろんまだ成田に行ったことございませんから成田の周辺のことは存じませんけれども、私の選挙区に羽田がございまして、そこでは防音工事をしております。それは私はよく自分の目で確かめて見て知っております。いずれにしましても、私は行かないと言っているのじゃない、約束をしないと言っているのじゃないのです。現にいままで幾つかお約束したところはできるだけ行ってまいりましたし、現実に時間を決めて、結局流れたこともございますけれども。ですから、そのタイミングをとるためにいままで時期を見、周りと相談してきたので、この法案も閣議決定されましたし、それを含めて関係省庁ととにかく協議をして、一番視察の効果の上がる時期に、できるだけそれは早期に越したことはないと私は思っておりますけれども、周りと相談して、効果の上がる時期に伺うと言っているわけです。
  56. 小川国彦

    小川(国)委員 それなら大臣、視察の効果の上がる時期というのは、この法案を提出する前だったのです。政府の考え方を一つの法案として決定する……。しかも、成田空港騒音対策は、空港決定のときにも関与をしておられた千葉県の友納知事が、先ほどいろいろ環境問題の質問をやっておりましたよ。当時の佐藤総理と千葉県知事成田空港を決定したのは昭和四十一年六月十九日ですが、そのときに話し合ったお二人ですら、十二年たった現在で、また空港航空機騒音の環境問題をどんどんと取り上げていらっしゃる。当時の知事が、いま残されているいろいろな問題点をここで質問しているわけですよ。この環境問題が是正されなくて根本的な欠陥のある成田空港というものをつくった。しかし、その欠陥が是正されないというところに、あれだけ大きな反対闘争があり、いまだに開港のめどのつかないという大きな問題があるわけで、そういうものをどうするかというときに政府が真剣に考えてきたのがこの法案だと思うし、そして、その法案を提出する当事者は運輸省であるけれども、法案の中身としては環境保全の対策が一番主になっているということになれば、この法案の要綱が出たときぐらいに、この話を聞いたときぐらいに、ああ、これは成田に行ってこなければこの法案の中身は検討できないなと思うのが常識的に見て最も妥当なときなんですよ。法案が確定してしまってから、それから現地へ行っても——私はそれでもあなたに来いというのは、それでもまだ中身でやるところがあるのじゃないかと思うから言っているわけなんで、時期から言えばもうあなたの行く時期は失してしまった、こういうふうに思わざるを得ないのですよ。法案が確定してしまった段階であなたが現地を見ても、この法案の中に自分の考え方を加える余地というのはきわめて乏しくなってしまっている、こういうふうに考えざるを得ないのです。その点は私は大臣の猛省を促して、次に進みたいと思います。  それから次に、環境庁の定めている環境基準ですが、これもやはり三月十一日の予算委員会の中で私は大臣に質疑をしたのですが、この環境基準の中で新空港については、成田空港については新設飛行場ではなくて既設飛行場の中に入れてしまった。これは環境基準の達成というもので、新設の飛行場にすると直ちに環境基準を達成しなければならない。ところが、既設の方にすれば十年以内に環境基準に到達すればいい、こういうようなことから、恐らく関係省庁との話し合いの中で環境対策が後退して、成田はまだ完成してないのに既存の空港に入れてしまったというふうに理解したわけなんですが、今度のこの法案を見ると成田空港は新設になっているのです。新設される空港だから、こういうこれこれ周辺に家を建てさせない、それからまたその周りは防音させなければいけない、そういう措置をこれから講じよう、こういうことになっているのですね。そうすると、皆さんの掲げてきたこの考え方は、既設の空港成田空港を入れてしまっているんだけれども、この法案では今度は新設になっているのです。そういう法の前向きの考え方からいけば、あなた方の環境基準というものも新設と同じように直ちに環境基準を達成せよ、こういうふうな考え方にならなければならないと思うのです。運輸省が新設というような判断で進んで環境庁が既設という判断で進んでは、これは政府の閣内の意見が統一されてないのじゃないか、こういうふうに思いますけれども……。
  57. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 新設という意味ではなく、新しく開くという意味に解しておりまして、新設か既設かという議論になりますと、航空機騒音の環境基準の設定のときに、四十八年十二月に環境基準が決まったわけでございますけれども、これは先生の方がよく御存じのような経緯で、実態的にはもう空港ができ上がっておるということで既設の中に入ったわけでございます。そういう意味で法律条文として新設成田空港というものではなしに、特定するときに成田空港を特定をする、成田空港を新しく開くということでございまして、新設と新しく開くとの意味には相違があるというぐあいに私は解しております。
  58. 小川国彦

    小川(国)委員 その辺の環境庁の考え方というものは、この法案に対する取り組みから見ても、環境庁が先行しなければならないのにむしろ後を行っている。  それからもう一つ、私は、この法案を環境庁が同意するに当たって、この法案いわゆる特定空港周辺の騒音対策の法案というのは、いわば航空機需要の増大を伴って経済発展というものがある。そういう形で経済発展がなされて航空需要の増大があって空港というものがどんどん新設されていったのですが、そういうようなものと周辺の住民が調和できるならばこういう騒防法のような新しい法律をつくる必要はなかったというふうに思うのです。これは公害基本法の精神から考えてみても、経済発展とこういう問題との調和ということはとうていなし得ない。なし得ないからこそこういう法案が出てきたというふうに思うのですが、大臣は、この特定空港の法案というものは飛行場優先の考え方の中で後追いをせざるを得ない、こういう状況になってきている、こういう事態から見ると、経済発展ということを調和をさせて、こういう問題を一緒に考えるということは無理で、やはり公害問題というものを優先に考えるならばこういう法律を出すこと自体おかしくなってくる、こういうような観点はお考えにならなかったですか。
  59. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 大臣の御答弁になります前に一言だけ申させていただきます。  いまの先生の御質問の御趣旨は、経済発展のことを考えたらこんなことができないという御意見のように私は受け取ったわけでございますが、やはり空港ができるという現実がそこにあるわけでございますし、そしてまた、日本航空機の環境基準というのは、よその国から見ると、本当にものすごく厳しい。できるかどうかわからぬようなものをやっているのではないかという批判すらあるのでございますが、長期で何とかこれを達成していく、そういうような政策、意思決定でされているものでございます。もしも短期に達成するような目標としましたら、とうてい七十と七十五というような数字は設けることのできないような数字であるというふうに私どもは解しております。ですから、そのような意味で、環境基準を決めたときに、経済との調和などは全く考えなくて決めた一つ典型的な例であるというぐあいに私どもは解しております。  また、それを達成していく場合に、やはり飛行場の周辺の方はやかましい、これは事実でございます。非常にその辺のところは問題がございますので、そこは従来の周辺整備の補償関係の法律がありますし、補償関係の法律だけでは新しく入ってくる人がどうにもならない、それにはやはり土地利用の規制という法制が要るということでございます。土地利用の規制の法制が要るというところでございますが、「維持することが望ましい」というような範囲まで全部権利を規制するわけにもいかないというところで、公害対策基本法の環境基準として「維持することが望ましい」というところまでを出し、それから一番ひどいところに補償関係の周辺整備を出し、その間のところのかなりひどいところに対して、どんどん新しい人が入ってくるのに対処するために、予防的にこの土地利用の規制というのも出して、それ相応の対応をその法律の中でやっているというぐあいに勘案しておりますので、確かに周りの方には御迷惑であると私は思います。それは決して迷惑も何もない、そういうことは毛頭思っておりません。それに対しては、補償と土地利用の規制と長期の努力ということでやっていくことになるというぐあいに御解釈願えればありがたいというように存じます。
  60. 小川国彦

    小川(国)委員 どうも環境庁に聞いていても上ずった話だけで、あなたは補償基準がすぐ行われるようなことを言っておりますが、私が長官に言いたかったのは、いわゆる経済発展というものとそれから公害対策というものが両立できるような考え方を持っているのですが、いまや空港というのは、よき隣人ではなくなって、空港と周辺の住民というのは同居できないような状況になっている。だから、いろいろな空港で、あれほど猛烈な反対運動が起こっているわけで、そういう点では、経済発展だけを考えてきた考え方というものは誤りである、こういうところから公害基本法の精神が生まれてきたのだけれども、その基本法の精神からまた外れ出したようなこういう法案まで出てくる、こういうところは、公害の基本的な考え方というものをしっかり持っていかないと、本当の公害対策というものじゃなくて、私有財産権を制限するような法律に公害対策がなってしまう、こういう点を私は指摘したかった、こういうことでございます。  さて、私は具体的な問題を一つ環境庁の皆さんおいでになるところで、きょうは空港公団の総裁にも来ていただいておりますし、運輸省も来ておりますが、公団の総裁にお聞きしたいのですが、騒音の一番ひどい、この間、騒音鉄塔を撤去したところがございます。これはアプローチエリアのつくられるというところで、これは本来空港の敷地に入れるべきところを入れ損なったということで、皆さん方がいま一生懸命買収をやっておられるようですが、その中で一軒、岩沢正男さんといううちは、ちょうどアプローチエリアの真ん中にあるし、あの騒音鉄塔の建っていた真下に住まいがあるわけで、飛行機が飛んだら恐らく百ホン以上のところで、人間の住めるところではないだろうと言われているのです。あなた方は、一千二、三百万もする高い土地を買って、アプローチエリアの農民に提供しているようですけれども、岩沢正男さんが言っているのは、自分の家の周りに全部畑があって、その真ん中に住んで、家の人が、おういお昼ができたよと呼べば答えられるようなところにたんぼや畑があるというのが農家の理想だと言うのですよ。岩沢正男さんは、芝山町の岩山というところから、その騒音のある鉄塔の真下のところに、自分の畑とたんぼの真ん中に自分の住まいをかたした。ところが、百ホンを超える真下の、アプローチエリアの真ん中に家が残っている。皆さんは、一千三百万もの高い土地を買って、代替地を用意したからそこへ行けと言ったようですけれども、それはみんな土地が飛び飛びで、自分の家がその真ん中にあるような状況じゃない。こういう百姓ができない代替地ではお断りだ、こういうことでがんばっている。ところが、それに対しては、その後何にも手を差し伸べようとしないし、そういうのは切り捨てて開港だけを進めようという姿勢のようにうかがえるのです。  私はそういう問題点をたくさん持っていますが、この岩沢正男さんの問題を一つ取り上げて、これはひどいという問題をお聞きしたいのですが、それに対してあなた方は、農民として農家として移転して営農できる生活状況をつくることについて、話し合いをなさったり、あるいはまたいまの時点でそういう対策をお持ちですか。     〔向山委員長代理退席、委員長着席〕
  61. 大塚茂

    ○大塚参考人 お答えを申し上げます。  岩沢正男さんにつきましては、あの周辺の方々と一体としまして、集団移転ということで私ども話を進めてまいりまして、ほかの十二人の方は御承諾をいただいて移ることになったわけでございますが、岩沢さんだけは同じ条件ではどうしてもいやだというようなことで現在がんばっておられまして、話がまだまとまっていないというのが現在の状況でございます。  おっしゃられますように、農家としてそのすぐ近くに農地を持って、住宅と近接したところで農業を営みたいということはごもっともだと思います。そういう条件にできるだけかなうようにわれわれとしては配慮をしてお話をしておるわけでございますが、ただ現在と全然同じような状況ということには、地理的な現実から無理がございまして、多少離れたところの農地も、ひとつ代替地として受け入れていただかないと——今度移ります先は、現在住んでおるところよりも、少なくともローケーションとしては非常にいい場所ということになります。したがって、地価も現在のところより非常に高いということになるわけでございますので、そういう点も考え、多少現在よりは農地が住まいより遠くなるというようなこともひとつがまんをしていただかねばいかぬのじゃなかろうか。  なお、そういう点については、今後ひとつ話し合いを進めまして、円満に話がつくように努力をしてまいりたい、かように考えております。
  62. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、これはいずれ農林委員会お尋ねしたいと思っているのですが、あなたのいまの答弁に見られるように、地価の高いところへ移してやるからいいのだ、たから多少その土地が離れていてもがまんしてもらう、これは空港決定時のいきさつと全く違うのですよ。農民には現在以上の営農条件を与えるという約束があった。現在より営農条件が悪くなるということは、この一つをもってしても、あなた方は農民のことを本当に考えていない。六百戸の移転した農家の中で農業をやっているのは一割足らずという現実を見ても、あなた方の代替地政策というものがいかに欠陥だらけであったか。これはいずれ農林委員会指摘します。  次に、騒音対策の問題です。政府は聞くところによると、年度内開港で、来年三月ごろの開港を目指しているということですが、いまの岩沢正男さんのように、住めないところ、移転の対象となっている民家が、昭和五十二年三月三十一日現在で、民家三百二十三戸のうち二百五十八戸が移転しましたけれども、まだ六十五戸残っております。それから、民家防音の告示区域で、八百三十三戸の対象農家中、民家防音工事が実施されたのは四百五十二戸で、未実施の民家が三百八十二戸残っているわけです。これはいずれも開港すれば住民生活に甚大な影響があるということで、移転と民防等の対策が環境保全の対策として出されているのですが、政府や公団のやり方では、安心して移れる移転先がない。あるいは、いまやっている民家防音の一室や二室では、農家のようなところは全室防音ができなくては困る。それから原因者が負担せずして、被害者である住民が三割とか半額を負担するのは適当でない、こういういろいろな理由がありますが、いずれにしても、この環境保全対策に対して不満を持った人たちが移転で六十五戸も残っておるし、民家防音で三百八十一戸も残っておるわけです。そういう人たちが環境対策なり移転対策に不満を持って、解決されないということで残っているわけですが、そういう問題を解決せずに皆さん方は開港ということを現実のものとして進めよう——開港前にこれらの問題を解決しようという熱意というものはあるのかどうか。現状を見ると、そういう対策というものは何らとられていないように思うわけなんです。  それから特にいままで行われた対策の中で、野毛平というところとそれからもう一つ長田という部落があるのですが、これは運輸省指導の誤りで騒音の一番ひどいところから、移転区域から騒音区域に引っ越しをさせちゃったわけです。家が新しくなればいいだろうということで、住めないところの人に移転を命令した。移転をさすなら騒音区域の外に代替地を見つけるべきなのに、その住めないところから騒音区域に、五百メートルぐらい部落からずれたところへ引っ越しさせているわけです。だから、それぞれ五十戸ぐらい、約百戸の住家というものは移転したけれども、やはり騒音の中に引っ越しているわけですね。そういう政府の騒音対策の不徹底があるわけです。だから、移転はしたけれども、やはり現実に防音工事をしなければならないところに、家だけはりっぱになったけれども、防音工事をしてない民家が百戸もあるわけですね。こういうものも放置したまま開港しようということですか。環境保全の対策というのはいまの状況では全く切り捨てられたまま開港列車だけが突き進んでいる、こういうふうに私どもは思っているわけですが、開港前にこれを解決するというめどは運輸省、公団それぞれ持っておられますか。
  63. 大塚茂

    ○大塚参考人 最初に先生の申されました防音工事をやった戸数あるいは残っている戸数、移転した戸数等の数字は、千葉県から公団が防音対策を引き継ぎますたしか三月末現在の数字だと思いますが、その後公団で努力をいたしまして、現在、移転でまだ話がついてないのは五十二戸でございます。それから、防音工事について話がついていないのが三百十四戸でございます。  これらにつきましては、私ども個別に何回か勧誘を申し上げておるのでありますが、現在のところはまだなかなか承諾を得られないという状況でございます。しかし、私どもとしては、開港までに中間目標を達成するというのが最初からのわれわれの努力目標でございまして、これに向かってなおひとつ努力をしてそれが達成できるようにしたい。工事能力等の点につきましては、三百十四戸が一遍に防音工事をしてほしいということになったら、三カ月以内に工事ができるようにという態勢をわれわれの方は組みまして、いつでも申し出があることをいま待っておるという状況でございます。  それから野毛平と長田部落の移転の問題でございますが、私が聞いておりますところでは、これは本人たちの非常に強い希望でそこでなければどうしてもいやだということで、当時その関係を担当してやっていただいておりました千葉県でもやむなくそれに賛成をした、こういういきさつであるというふうに聞いております。ただ、その移転をした戸数が全部騒音区域内にあるということではございませんで、その一部が騒音区域内に新しく騒音コンターを引いた時点でひっかかるということがはっきりしたということでございます。これらに対しては、やはり現実騒音がある以上は何らかの対策を講じなければならぬというふうに考えております。
  64. 上田浩

    上田説明員 お答えいたします。  航空局といたしましても、開港までに地元の皆様方の御理解と御協力をいただきまして、何とかしてこの中間目標の防音工事というものを達成していきたいと考えておる次第でございます。
  65. 小川国彦

    小川(国)委員 時間が参りましたので、私は最後に一点だけ申し上げて終わりたいと思いますが、私いま開港までと言いましたが、開港までというともう時間切れになってしまうので、開港告示前にこれらの問題が達成できるように皆さん方は取り組んでいただきたい、そういうふうに申し上げたいと思います。  それから騒音の問題については、いま総裁は一部しか騒音の影響がないようなお話をしておりますが、この間の騒音テストでもこの野毛平は最高値を記録している部落で、これはやはり全体として騒音の激甚地区に入っている、こういうふうに私は理解しております。それから先日の騒音テストは、先ほど答弁しておりましたDC8のような一番騒音の大きい飛行機を使う、あるいは夜間も飛ばす、それから燃料を満タンにして飛ばす、それから人間を乗せなければサンドバックを載せて人間が全員乗った状態にする、真実に近い状態での再テストを早急に私は行うべきだと思います。皆さん方はこの点についても、騒音の真実の実態を把握するためにも、告示前に再テストを行うべきだ、早期に行うべきだと思います。運輸大臣は再テストを早期にやると約束しておりますが、まだその時期が明らかになっておりません。慣熟飛行の中でやるということを言っておりますが、慣熟飛行の中でやってそのまま開港に逃げ込むのではないか、こういう見方を住民はしております。ですから慣熟飛行が行われるにしても、テストは行おうとすれば直ちに行えるわけで、それを大臣の言明どおり早期に行うという考え方があるかどうか、最後にその一点を伺って終わります。
  66. 大塚茂

    ○大塚参考人 先般行いました騒音テスト飛行は、厳密な意味での騒音測定ということを目的とするというよりも、実感として飛行機の音を聞いていただくというのがわれわれの目標であったわけでございます。ただ、予定された三日のうち一日は天候の都合で取りやめになりましたので、その分を補う意味でいろいろの条件を考えて、また、できるだけ実際に近いやり方で行うようにいたしたいというふうに考えております。時期等につきましては、航空会社の機材繰りその他との関係もございますので、そういう点をひとつ相談の上で実施をするようにしたいというふうに考えております。
  67. 小川国彦

    小川(国)委員 終わります。
  68. 島本虎三

    島本委員長 小川国彦君の質問は終わりました。  次に、川本敏美君。
  69. 川本敏美

    川本委員 私は、まず環境庁長官にお聞きをいたしたいのですが、最近低周波公害ということが大きく社会的な問題になっております。この間から新聞などの切り抜きを、低周波公害に関係するものだけを少し集めてみますと、これはまだほんの一部ですけれども、連日のように日本国じゅうのどこかの新聞に、低周波の公害でたくさんの国民が健康を害して困っておられる、こういうことが載っておるわけです。環境庁は、今日のわが国における低周波公害の実情についてどこまで捕捉をしておるのか、そしてその対策をどうしようといま考えておるのかまずお聞きしたいと思います。
  70. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 詳しいことは政府委員から答弁させていただきますが、確かに高速道路とかあるいは道路にかかる高架線とかあるいは大きな工場のいろいろな機械等から出る低周波によって、いろいろな方々が思いがけないところで迷惑をこうむっていらっしゃるということはよく聞きます。それで環境庁でも専門家にいろいろ相談をしておるのですけれども、どうも低周波というもののメカニズムがいまだによくわからない節もございますが、とにかくできるだけ早期にそれを解明いたしまして、この防止策というものを講じていきたいと思っております。また、たとえば中央道のどこでしたか、谷合いにかかる高架から出ます低周波は、その橋の路面を何かコーティングし直すことで防止されたようでございますけれども、いま現在、メカニズムというものがどうももう一つはっきりしないというところで、これを未然に防いでいく措置がなかなかとりにくいというのが実情でございます。
  71. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 概要の方向づけにつきましては大臣の御答弁のとおりでございますが、もう少し事務的なことを申し上げますと、低周波の問題には四十九年度から着目をいたしまして五十年度以来調査を開始いたしました。五十一年度には現地の相当細かい調査をやっておりまして、ことしはこの施設別の、対応するための調査と並行しまして、生理的な影響という問題につきまして調査研究を進めておるわけでございます。  御承知のように、いま先生の御指摘のありましたように、現在、低周波の問題があちこちで起こってきております。この点につきましてはほかの国に比べまして——低周波の問題は、もともとは戸ががたがたいうというような記述でよその国の本にもちょっとありますが、健康問題での議論といいますのは航空機の、軍隊関係で非常に高い音圧の低周波の議論はございます。いま国際的にある文献はそれだけしかございません。いまわれわれが現地で測定しているデータの辺はないのでございます。日本でいまぶつかっている問題は、確かに地べたが揺れないのに、あるいは音がしないのに戸ががたがたするということだけにはとどまりませんで、身体的あるいは神経的、精神的にいろいろ影響があるというぐあいに報道されておりますし、またいろいろ調べてみると確かにそういうことがあるわけでございますが、どの範囲内が確かに低周波の問題で影響として起こっているのか。確かに悪いことは悪いと、われわれも全くそのとおりに思っております。ただ、いろいろ訴えられる中に実は非常に個人差がありまして、悪いことは確かに悪いんだが、どの範囲を低周波の影響としてつかまえるかということは相当な年月がかかると思います。ただ、そういうことを待っておってはこれは対策として話になりませんので、昨年度の調査を起点といたしまして、少しでもはっきりして対応のわかるものはどしどし対応していこう、一つでもできるものがあれば押さえていこう、ただ、低周波の大きさと影響の関係がこれだけだという理論的な解明ができ上がってからしか対策をやらないという方針は全くとっておりません。
  72. 川本敏美

    川本委員 環境庁が低周波という問題と取り組み始めたのは昭和四十九年ぐらいからではないか。いわば四十九年を前後にしてわが国においては低周波公害の問題が大きな社会問題になってきた。四十九年のデータしかありませんけれども、四十九年のデータを調べますと四十九年中に低周波の問題での苦情が百十件ほど出ておるという状態、それが五十年、五十一年、五十二年とウナギ登りにこの公害が全国から苦情として出てきておる。ところがその対策については、いま局長がおっしゃいましたけれども、どうも手ぬるいのではないか。たとえて言いますと、低周波といっても、超低周波があるわけですね。二十ヘルツ以下を大体超低周波と言うというふうに、先般フランスで開かれた音響学会ですかどこかでは世界的にそういうような定義をはめたそうです。ところがわが国においては、この二十ヘルツ以下の超低周波というものは、従来そういう人体に対する健康を阻害するようなものではないんじゃないかというふうに環境庁は当初考えておったんではなかろうかというふうに私たちは思わざるを得ないと思うわけです。  そこで、私もこの間からいろいろ勉強をしてみますと、人間の耳というものはまことに範囲の狭い音しか聞こえない。大体二十ヘルツぐらいから二万ヘルツぐらいまで聞こえると言いますけれども、それでも聞こえない人が多いわけで、二十ヘルツ以下のものは私たちの耳には全然聞こえない。この聞こえない音が私たちの体に大きな影響を与えておるということがいまわかってきておるわけですから、これに対して政府はどのような対策をとるのかというてお聞きしますと、いまお答えのように、その発生のメカニズムがわからない。私は、発生のメカニズムがわからなければこれに対する対策がとれないということではおかしいんじゃなかろうかと思うわけです。  そこで、まずお聞きしたいのですが、現在の振動規制法ですか、振動に対する規制という中で、あるいは特定建設事業あるいは特定工場あるいは道路、こういうものに対する規制を加えておるわけですけれども、これらは全部地面振動でとらえておるわけですか、空気振動でとらえておるわけですか。
  73. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 振動規制法におきましては、地面振動でとらえております。
  74. 川本敏美

    川本委員 私は、そういうところに欠陥があるのじゃないかと思うわけです。なぜかといいますと、先ほどおっしゃいました、大気保全局長が言うた昨年の調査というのは、ことしの調査ですか。小林理学研究所が環境庁の委託を受けて行った調査報告ですね、この報告のことを指しておられるんじゃなかろうかと私は思うわけですけれども、これは私から申し上げるまでもなく、東京、長野、山梨、愛知、奈良、和歌山、広島、福岡、このいわゆる八都県にわたって九十五人の人たちにアンケート調査をしておる。さらに工場六カ所、道路三カ所、新幹線一カ所、この十カ所について測定等の調査をやっておるわけです。  私はこの調査報告を見て、まず一番最初にはなはだ奇異に感じたことが一つあるのです。まず、この測定地点には、これは何県の何という町のどういうところであるという所在地、名称、それに、その調べた工場が何という工場なのか、道路はどこの何という道路なのか、こういうようないわゆる固有名詞というものが全然書かれていない。これは私は悪くとると、全く国民をばかにした報告書ではないか。国民の目から低周波の公害というものを覆い隠そうということがまず基本としてあってこういう報告書が出されたのではなかろうか。この点について環境庁はどのように思っておりますか。
  75. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 私どもが公害問題の調査をする場合には、やはりその測定をされる相手に協力してもらえなければ絶対にまずできないという問題がございます。これは非常にいやがる問題がいろいろございまして、そういうことで、法律で強制して立入検査ができればそういう問題はございません。新しい制度、新しい問題に取り組む場合には、相手の協力というものは不可避でございますので、そういうことで、これは固有名詞を落としております。しかし、国民の目をごまかそうという趣旨ならこれは報告もしませんし、また要求のあった方に差し出すこともいたしておりません。そのような気持ちは毛頭ございません。
  76. 川本敏美

    川本委員 それでは、さらにお聞きしたいのですが、このいわゆる八都県十カ所ですか、これを選定したのはどういう理由で選定したのですか。
  77. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 どういうことで選んだかという御質問でございますが、これは典型的な幾つかの道路とかあるいは工場とか、そういうものがあるわけでございます。そのカテゴリーに合わせまして、しかも苦情もはっきりしておるというところを選びまして、それとともに、やはり協力の得られるところしかこれはできません。また、予算の範囲内というのもございます。そういうことでやったものでございまして、全国悉皆調査とか、そのような意味でやられたものではございません。
  78. 川本敏美

    川本委員 そこで、私はお聞きしたいのですが、この報告書によると、たとえて言えば、地面振動の測定結果では五十二デシベルとかあるいは六十デシベル以下の振動しか出ていない。ところが空気の振動の測定結果では、同じ地点であっても八十五デシベル、九十デシベル、こういうようなものが記録をされておる。そして実際人体に対して影響を与え、あるいは、たとえて言いますと戸や障子ががたがたいう。従来は、戸、障子ががたがたというのは地面振動が原因で戸や障子ががたがたいうのじゃないかという発想から出ておったのではないかと思う。地面振動だけしかとらえていない。しかし、その耳に聞こえない二十ヘルツ以下の空気振動が戸や障子をがたがたいわせ、あるいは耳鳴りをさせ、鼻血を出させ、そういう原因になっておるということを考えると、私は、まず空気振動というものの基準を定めて、それに対する対策を法制化する必要があるのではなかろうかと思うわけでございます。その点について、長官、どう思いますか。
  79. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 長官のお答えになりますまでに一言だけ申し上げます。  御指摘のように、地面振動は小さいけれども空気振動が大きいという現象はございます。     〔委員長退席、土井委員長代理着席〕 それから、いまそれでは空気振動をどうやってはかるのかという問題がございまして、これは、低周波の騒音をやる場合に一番むずかしいのは、発生源がどこであるかがなかなかわからないという問題があるわけでございます。そういうことで、空気振動をはかり、発生源がどこにあるかを調べるというのが、やっとぼちぼち事例としてあらわれてきたという段階でございます。  それで、これは、騒音、振動は全体的に大気なんかに比べると非常におくれております。法律的にも非常に後で発足しております。また、学会としての形成も、実は昨年初めて騒音、振動関係の学会ができたようなところでございますし、また国際学会も一昨年ございましたが、そのときは、日本のような形でまで低周波の問題を扱っておるところはございません。外国の文献の中に、音も何も聞こえない、地面が揺れない、しかし戸ががたがたいうというような常識的な表現の中であるだけでございまして、むしろこの問題は、私は、国際的にやってもらう必要があるということで、WHOの専門委員会に行きましたときに、低周波の問題を国際的にいろいろやってほしいということをはっきり申しておりまして、向こうも取り上げております。ただ、現在、現地の問題解明に組織的に取り組んでいる点におきましては、日本は最も具体的な努力をしておることは事実でございますが、先生の御指摘のように、おくれていることも事実でございます。そういう点で、それでは法律をつくったら押さえられるかということでございますが、どのようにして押さえるかという事例を少し積み重ねをしてみないと、法律だけつくっても基準がなかなかできないということでございまして、そこで、大臣もおっしゃり、私も先ほどの答弁で申し上げたわけですが、一つずつでもわかるものがあればこれをまず具体的に押さえてかかる。その上で法律の押さえ方や基準の問題を見て、法律でこういうぐあいにやれるとあれば、それはそういうぐあいにやろうということでございますが、これはかなりの年月を要するというぐあいに考えております。
  80. 川本敏美

    川本委員 非常に慎重なお答えしか出てこないわけです。しかし、大体こういう低周波とか音響学といいますか、そういう学会というのは大体工学とか物理学の学者の方々が中心である。しかし、人間の体に健康被害が出て、鼻血が出てくる、目まいがする、倒れる、眠れない、こういうようなことになりますと、これはぼくは医学上の問題ではないかと思います。ところが、従来この低周波あるいは超低周波の問題が国際的にも議論をされておるのは、すべて工学、物理学の先生方でして、先ほど局長が言ったように、アメリカのジョンソンさんという教授は、仙台で開かれた五十年の国際音響学会で、いわゆる軍事的な爆発音といいますか、そういうものだけが人体に被害があるように、百三十デシベルあるいは百四十デシベル以上のものしか人体に被害がないような報告をしておる。ところが、現実にはわが国では六十五デシベルから九十デシベルぐらいのもので、これが長期間ずっと続いていくと人体に影響がある、こういうことがある。また、たとえば八尾市の綿実油をしぼっておる工場の場合は、工場の機械が八時に動き出すと、そこから七十メーター離れておる範囲内の人家の方は、機械が動き出すと頭が痛くなる、耳鳴りがする、不快になる、苦痛になる。機械がとまると同時に自分の体の方も正常に戻る。まるで目に見えないあやつり糸であやつられているみたいに、その時間だけ健康が害されておる。     〔土井委員長代理退席、委員長着席〕 こういうようなたくさんの事例が報告されておるわけですから、発生のメカニズムがわからないからとかもう少し具体例を積み重ねなければいけないとかということでは、対策がおくれて、たくさんの国民が健康被害を起こしてくるんじゃないか。わが国における現在までの公害問題は、すべて行政が立ちおくれ、立ちおくれて今日の事態に至っておるわけですから、せめてこの低周波公害ぐらいは、もっと予算も確保して、そして調査費もつけて、早急に、法律が必要なら法律、基準を定める。私たち素人ですけれども、たとえば和歌山市に汐見文隆というお医者さんが住んでおられます。この方は非常に熱心にこの超低周波の公害と人間の健康の問題を調査して歩いて、自分の費用で調査をして研究して、そしていろいろな意見を発表しておられるわけです。こういう方々の意見を聞いても、私たちは、空気の振動が、あるいは六十デシベル以上の場合にはそれが人体に影響がある、健康を害するということをもう立証しておられる事例がたくさんあるわけですから、少なくともそういうことについての対策を早急に考える必要があるのじゃなかろうかと思うのですが、長官は何かちょっと時間早くどこかへ行かなければならぬというような話を理事の方から聞いておりますので、まずこの低周波公害に対する長官の決意のほどをお聞きしたいと思う。
  81. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 私たちは、社会的な体験として、言いかえれば一種の疫学的な体験として、低周波公害なるものが存在するということはもう認知しているわけです。ただ、要するに、先ほど局長が申しましたけれども、人間の耳と違った何らかの機械を開発すれば低周波をキャッチすることはできるのでしょうが、それがどこから来るかとか、さらにその因果関係というものをはっきりつかむための、何といいましょうか、技術の開発あるいは知見というものの蓄積がまだ足りないということで、立法ということにはもうひとついま至らぬ段階にいるわけでございますけれども、しかし、社会的な体験としては低周波公害というものがどうやらあるということは間違いないようでございますので、これはもう御指摘のように、予算をさらに獲得するなりして、新しい公害として積極的にこれを防止、あるいは未然に防止していくという姿勢で環境行政を推し進めていきたいと思います。
  82. 川本敏美

    川本委員 長官からいまお話があったわけですけれども、そういう知見がない、だからそういう具体的なものの積み重ねの上に立って考えていきたいということで、そうしたらその間どうするのかという問題が出てくると思うのです。  たとえて言えば、具体的にこの低周波の公害の発生源はここであるというものが特定されて、それで大体周囲の人が健康に悩んでおるというような場合に、いまではその発生源の機械の運転をとめさせるとか、あるいは機械を取りかえさせる。現在は、たとえば溶鉱炉からも出ておる、発電所からも出ておる、あるいは特定建設事業の機械からも出ておるし、いろんなところから出ておる。先ほど言ったように綿実油の会社の機械からも出ておる、コンプレッサーからも出る、いろいろな機械がある。そういう発生する機械が国内で生産されておる場合は、それをさらに研究して発生しないように装置をさせるというようなことも必要だし、あるいは現実にそれが健康被害を周囲の人に加えておる場合には、その発生源を断っていく以外にない。その立法化をし、基準を定めるまでの期間、仮に発生源が特定され、それによって被害を受けておる何人かの人が出ておるということがはっきりした場合に、環境庁はまだいわゆる知見がないということで知らぬ顔をしていくのか、それともそれに対して何らかのケース・バイ・ケースででも措置をしていくのか、その辺について明確な態度をひとつ……。
  83. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 私は、いま先生の御意見を伺っておりまして、個人の気持ちとしては全く同じような気持ちでこれは考えております。  ただ、行政で相手をぴしっと抑える場合には、その問題を相当解明してかからぬとできない問題がございます。そういうことで、一つずつできるものは抑えていくというつもりに立っておりまして、たとえば先生も御承知でしょうが、和歌山の住金で問題があった場合に、どこから起こるかと確かめて最後に直ったというのが中にあります。それから、ある離島の発電所のディーゼルエンジンのところで起こって、それをいろいろやってみると直った、そういうのがぽつぽつとあらわれております。  そういうことで、そういうものができて、このやり方があるというのがわかるものはそのやり方があると相手に言えますが、やり方がはっきりしないといった場合になかなかそれを法律で規制をして抑えるという点にむずかしさがあるということでございますので、実績を積み重ねていくというのは、対応して対策を打たせていくということも実際の中に入れながらやるつもりにしておりますが、相手の施設をどういうぐあいに強制的にとめてしまうかという問題になりますと、それは、一つは法律上の規制の根拠がなければなりませんし、その点については相手にどのような対策をしていいかをもう少し答えられるような資料を固めていきたい、そのような気持ちでおります。  また、医学の点で先生指摘ございました。私ども環境庁の委託研究の中にも、医学の人で、東大の西脇名誉教授と一緒にやっておられる方が中に関与しておりまして、先生の御指摘のあった和歌山の汐見先生も私ども存じ上げております。やはり、一度ちゃんとその研究班の方も意見を聞く機会を設けた方がいいのじゃないかということも中で話をしておるところでございます。
  84. 川本敏美

    川本委員 五十一年九月二日に設置された低周波空気振動調査委員会のことをいま最後に言われたのですが、西脇仁一東大名誉教授が委員長をしておられるわけです。  私はこの調査委員会というのは、いまおっしゃったように、医学でいままで低周波公害の問題を積極的に、民間で自分の経費で取り組んでおられる汐見先生みたいな方がおられても、その方を委員の中に入れてこの問題を究明していこうという積極的な意欲がないのではないか。いまやっておられる調査委員会というのは、最初に私この報告書で指摘したように、低周波公害というものの発生のメカニズム、こういうものを調査しているようなかっこうは環境庁はするけれども、しかし現実にこれを国民のものとして直ちに取り上げて、そして対策を早急に講じていこうという積極的な意欲があるならば、こういう汐見先生みたいな方も積極的にその委員会委員に委嘱して、健康上の問題を医学的な立場からも取り上げていく必要があるのじゃないかと私は思う。そういう人を故意に除外をして調査委員会をつくっておるというのは、私はどうも納得できないわけであります。だから、物理学の先生だけではなしに、もっと医学の立場からの専門家も含めた、いわゆる専門家会議というかそういうものを機構としてつくって、積極的にこれと取り組むという意欲を長官に示していただきたいと思うのですが、長官、どうでしょう。
  85. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 そういう医学的な見地でこの問題について熱心に取り組んでいらっしゃる先生がおられるということを、私はいま初めてお聞きしましたが、その専門委員会に故意にそういう方を外しておるということはないと思いますし、その専門委員会にあるいはその正式のメンバーとしてお加わりいただかないにしても、委員会としてそういう先生のいままでの研究の成果というものを積極的に聴取すべきものだと私は思います。とにかく社会的な体験として低周波公害というのはどうもあるわけでございますから、そのメカニズムの解明ということのためにも、私は、医学的な見地からそれに取り組んでいらっしゃる方の御意見を積極的に聞くべきだと思いますし、それを含めまして、これは新しい公害一つの要件といたしまして、環境庁としては新しい宿題として積極的に取り組んでいきたいと思います。
  86. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 一言申し上げますが、故意に外しているという考えは全くございません。こちらの研究班の西脇先生と一緒にやっておられる医学の先生が中に加わってやっておられるということだけを申し上げておきます。  また汐見先生も、時間を見て御意見を聞かしていただくようにした方がいいということを私は担当課長にも申しておるわけでございまして、開業しておられる先生は非常にお忙しいということは事実でございます。しかし貴重な体験を持っておられるということですから、私どもは先生方の御意見を聞く機会を委員会の方にまたお願いしたい、そういう考えでございますのでよろしくお願いいたします。
  87. 川本敏美

    川本委員 きょうは日本道路公団の方からも参考人としておいでをいただいておるわけでございますので、まず私は、具体的にお聞きをしていきたいと思うわけであります。  御承知のように、この小林理学研究所の調査報告の中に出ております測定点の一つに、奈良県北葛城郡香芝町地内のいわゆる西名阪高速道路の橋げたが発生源になっておる、超低周波公害の測定が報告されておるわけです。この問題については道路公団は今日までどのような取り組みをしてきたのか、まず御報告いただきたい。
  88. 平野和男

    ○平野参考人 お答えをいたします。  ただいま先生からお話のございました西名阪道路香芝高架における低周波の問題につきましては、昭和四十九年の十二月に地元の地区の方々から道路公団に対して申し出がございました。道路公団といたしましても奈良県の公害課の方等と協力をいたしまして実態の調査をいたしました。その結果、一応低周波振動として五ヘルツぐらいで八十五デシベルというようなものが判明をいたしております。
  89. 川本敏美

    川本委員 この高速道路はいまお話しのように昭和四十四年の三月に対面二車線だけがまず完成をいたしました。完成してから、いろいろ問題はありましたけれども、今日のような低周波による公害というようなものは出ていなかったわけです。ところが、昭和四十六年よりこの道路を四車線にする工事が起こされて、昭和四十七年の十二月に四車線工事が完了したわけです。完了すると同時に、この公害が出始めてきたわけでありまして、戸や障子ががたがた言い出す、あるいは窓ガラスが振動する、夜はその騒音といいますか、耳に聞こえない音もあるけれども、ともかく眠れない、本なんか全然読めない、あるいはもう気分がいらいらして落ちつかない。外へ仕事に行って疲れて帰ってきて、家の中へ座ってしばらくすると気分がいらいらし出すというのですから、これは普通の家庭と逆になるわけですね。家へ帰ると普通は落ちつくわけなんです。ところが、家へ帰ってそして座ってしばらくすると気分がいらいらしてくる、こういうところに超低周波公害の特徴があると思うのです。もちろん耳鳴りがしたり、あるいは耳が圧迫感を感じたり、血圧が高くなり、胃腸、鼻血等、いろいろな障害が出ておるわけです。だから、そういうことで最初二車線のときは何ともなかったのが、四車線になった途端に、いわゆる制限速度が速くなった、上がったわけなんです。そういうところからこの問題が出始めてきて、今日地域の住民では大きな問題になっておると思うわけです。  先般来、被害者同盟が結成されて、そして道路公団の方にもいわゆる要求書が出されておる。一つは、被害住民の健康診断を即刻実施し、医療補償を行ってもらいたい。超低周波の発生原因を究明し、その防止対策を立ててもらいたい。交通量を制限し、特に夜間の大型車の通行を規制して、五十キロに速度制限を行い、四車線を二車線通行にしてもらいたい。完全な防音壁を設置してもらいたい。あるいは残地補償の公正な云々、こういうことは別の問題として、この問題に関する四項目のいわゆる要求が出されているわけです。  そこで、問題として考えなければいかぬのは、四車線にしてから問題が出てきた。その後五十年七月から十一月の間に、遮音壁、防音壁の工事をしておられるわけですね。その防音壁をしたら特に被害がひどくなったわけです。防音壁の工事をして被害が小さくなったのならいいけれども、防音壁の工事をして被害が大きくなった。それで地域の人が騒ぎ出したので、道路公団は、その区間三百七十メートルにわたって今度はその一遍つけた遮音壁をまた取り外しておる。親方日の丸だからつけたり外したりしておれるけれども、民間の事業だったらこんなのはつぶれてしまうと私は思うのです。ところが、遮音壁をつけたらひどくなったので今度は取り外した。取り外したら今度は高速道路から荷物が屋根の上へ落ちてきて、下で安心して寝ていられない、こういういろいろな状態が出てきておるわけですけれども、この問題について公団は、今日どのようにこの要求に対して——発生源は、ここから低周波が出ておるということはまず認めるのでしょう。その認めた上に立って、これに対してどういう回答をされたのですか。あるいはされるのですか。それをお聞きしたいと思うのです。
  90. 島本虎三

    島本委員長 なお、この問題に対しては、的確な答弁を求めます。
  91. 平野和男

    ○平野参考人 低周波の対策ということでございますが、先ほど来お話が出ましたように、この発生機構というものがまだ完全にわかっておりません。ただ、この西名阪道路の場合、橋梁から出るであろうということははっきりしております。したがいまして、どこからそれが出るかということがわかりませんので、どこをどういうぐあいに直したらいいかということも非常にむずかしいところでございます。  そこで、現在、さしあたって当面の対策ということをいろいろ考えておりますが、まず二つの方面から考えておりまして、一つは、発生源である橋梁の改良をやろうじゃないか、これはジョイン卜部の改良とか、路面の平たん性を持たせるというようなことを考えております。それからもう一つは、受音点の対策ということで、家屋の建具に防振材等を施工するということを考えておりまして、いろいろ実験をしておりまして、今後最も適した工法を実施したい、そのように考えております。  その他の項目については、道路公団だけで実施できないものもございますので、関係方面と相談をした上で検討いたしたい、そのように考えております。
  92. 川本敏美

    川本委員 発生源がこの道路の橋げたである、いまおっしゃったようにジョイン卜部分について何か工事を、遮蔽箱みたいなものを取りつけるといいますか、ガラスウール製ですか、グラスウールというのですか、そういうようなものを阿知川鉄橋で取りつけておるから、それと同じようなことをするとかいうようないろいろなお話がありますけれども、いわゆるジョイントの部分が発生源になっておるのではないかと考えておられるわけだ。  だから、私はこれに関連して、建設省の高速国道課長さんがお見えになっておるわけですからお聞きしたいのですが、地元の人は、ジョイン卜部分が発生源であることは間違いないと思うけれども、しかし、もとの二車線からは発生しないで、後の工事をした二車線から発生しておるのだからこれは欠陥道路だと皆思っておるわけです。なぜ欠陥道路かと言いますと、ただジョイントの部分をどうするとか、遮音壁をどうするとか、鉄材をどうするとか、こういう設計上の問題だけではなしに、工事の施工管理が悪かったのではないかということを地元の人は言っておるわけです。たとえて言いますと、生コン車で生コンを運んできたら、大体四十五分とか一時間の間に打設を終われというような仕様書になっておりながら、実際は請け負うた建設業者が下請に出して、その下請業者が、朝八時に着いた生コンのミキサー車を夕方四時までずっと待たしておいて、夕方四時に一時に打設をした、そういうようなことが全体として今日——四十七年に行われた四車線の後の二車線部分からこういう低周波が発生しておるということは、ただジョイン卜部分の改良だけでおさまる問題ではない。橋全体をもうごそっとやりかえぬ限り実際はだめなんじゃないかというふうに思っておるわけなんです。そういう点、建設省としても、発生のメカニズムと言いますけれども、まず設計してその工事をする間の管理監督というものが悪く、手抜き工事をされて、欠陥道路になっておる。全国に何百カ所という高速道路の橋がありながら、低周波が発生しておる橋というのは、いまわかっておるだけでも全国で数カ所です。ともかく、いまの高速道路の橋げたのジョイン卜部分から低周波が出るのだというのだったら、どこでも皆同じように出てあたりまえなんですね。どこも出なくて特定の場所だけ出るというのは、それは橋そのものが欠陥道路ではないか、こういうふうに私たちは断ぜざるを得ないと思うのです。建設省、この問題についてどのように思いますか、ひとつお聞きしたい。
  93. 佐藤秀一

    ○佐藤説明員 お答え申し上げます。  ただいまのお話につきましては、欠陥道路という御指摘でございますが、工事中のそのような問題については、厳密に公団の方でも工事監督をしておるわけでございまして、少なくとも、その道路が施工上の問題によってそういった低周波問題が生じておるというふうには理解しておらないわけでございます。  もう一つの御指摘の問題の、今後そういった事例に対してどういうふうに取り組むかということでございますが、その解明、対策につきましては、設計の段階から十分にこの低周波の騒音が起きないような措置を図るべく指導していくつもりでございます。
  94. 川本敏美

    川本委員 道路公団なりあるいは建設省、両方から私はお答えをいただきたいと思うのですが、まず、そこで健康被害を訴えておられる方々、地域の住民の方々の健康診断をして、鼻血を出したり、目まいがしたりというような方々については応急的な対策をどうするのかということを道路公団は明確にすべきではないかと思うのですが、その点について道路公団はどのように回答しておられるのかお聞きをしたい。  さらにもう一つ夜間、大型自動車が高速で通過する、高速だけではない、五十キロ前後で通過する車両からも超低周波が出されて、それが大きな爆発音的なかん高い音を出しておるというようなことも報告されておるわけですけれども、たとえて言いますと、夕方六時以降朝の五時なら五時までの間、二車線通行にして、スピード制限をするというようなことも、当面地域住民の健康を守る立場からも必要なのではなかろうかと思うのですけれども、その点についてどのように考えておられるのかお聞きいたしたいと思います。
  95. 平野和男

    ○平野参考人 低周波騒音と健康との関連については、いままでも話が出ましたように、現在のところその因果関係というものが全くわかっておりません。それで、その辺の解明をしていただくのは、道路公団としてはちょっと手に余るということで、国なり県なり、その筋の権威のある機関で実態調査をしていただいて、学術的に解明されるのを待ちたい、その辺の因果関係がはっきりすれば道路公団としてもいろいろ対策なりその他を考えていくというような方向でございます。
  96. 川本敏美

    川本委員 先ほど申し上げた地元からの要求に対する回答の文書がゆうべ午後七時に出されておる。その回答の文書を読んだら全く内容がないわけです。「発生源対策として、中央道阿智川橋における諸対策工法の成果を踏まえ、当該香芝高架に最も適した対策を講じることを検討しているところであります。」この阿智川の対策工法の成果はいつ踏まえるのですか。
  97. 平野和男

    ○平野参考人 いまお話しの中央道の阿智川においていろいろな工法を試みにやって、その成果を比較検討しているということで、近くその中間報告が出ると思います。
  98. 川本敏美

    川本委員 近くというのはいつですか。
  99. 平野和男

    ○平野参考人 はっきり申しますと、二、三日中に阿智川の地元には中間報告として報告することになっております。その成果を踏まえてこちらの方でも対策をいろいろ考えたいということでございます。
  100. 川本敏美

    川本委員 その続きを読みますと、「また、その他のご要望につきましては、これら防止対策の実施結果を俟って、その必要に応じて地元県及び町のご協力の元に対処いたしたいと考えております。」これは全く抽象的な文章で、「低周波問題につきましては、未解明な点も多く、当公団といたしましてはさらに関係各機関のご協力を得て解明に取り組むとともにその解決に当ってまいる考えであります」、こんなもの全く回答になっておらぬと私は思うのですよ。だから具体的には、私が先ほど言ったように、いままでもうそういう被害に遭っておられる方には補償しなさいよ。たとえばそこにおられる四十七歳の奥さんは、いままで七十五キロの体重であったのが、四十七年に四車線になってから今日までの間に十七キロやせて五十八キロになっておるわけです。これはもうほっておいたら死にますよ。それに、いま申し上げるようにこういうような抽象的な回答では、私は本当に人間味に徹した対策を考えておられるとは思われないわけです。  だから、その点について、まず健康診断をやる、医学的な手当てもする、そして補償もする。こんなものは、何もお医者さんの薬を飲まなくても、発生源から離せばいいのですからね。一時どこかへ隔離するというか、発生源との距離を遠くしてやったら、こんなものは健康がもとへ戻るわけです。そういうことを具体的に対策としてやっていく必要があるのじゃなかろうか。そうでなければ、この道路は、先ほど言ったように、諸機関と協力してその発生の原因を調べる間使用を中止したらいい。この高速道路の通行を停止して、その間原因を究明するということが誠意ある態度だと私は思うわけです。そういう点について、道路公団の今後の地元に対する誠意ある態度を要望しておきたいと思うのです。  次に、環境庁局長にお聞きしたいと思うのですが、先ほど来いろいろ申し上げたように、香芝町の道路公団の高速道路からもこのような問題が出てきておる。ところが、道路公団の対策たるや、いま申し上げたように全く手ぬるいわけです。私はこの問題を放置しておくことはできないと思うのですが、特にこういう一つのケースがもうはっきりして、発生源は橋げたであるということを認めておられるのですからね。こういう問題について今後具体的に環境庁はその管理者に対して指示、通達等を出していくというお気持ちはないかどうかお聞きしたい。
  101. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 この問題は非常に複雑なむずかしい問題のように思います。先生のお話を伺っていまして、こういう問題に対して誠意のある対処をしてやっていかないと、あらゆるところでの道路の反対運動に対してははっきりこたえられないのじゃないかという感じがいたしております。私どもも、本四架橋のアセスメントの条件の中に、実は低周波の問題を入れております。そういうことで一番のキーの問題は少なくとも手を打つ。ある形の手をどこまで打てるかということは、いま阿智川の報告がもうすぐ出るということですから、それをもとにしてまず減らしてみるということがキーでございます。  それから被害の問題は、これは迷惑をかけていることについては間違いがない。その迷惑をかけていることにどう対応するかという問題はやはりあるのじゃないだろうかと思います。ただ、この病気を補償しろという議論になりますと、これはなかなか解決のつく問題ではないのじゃないだろうかということで、環境庁として文書を出して指示をする云々、これは無理でございます。無理でございますが、道路公団が誠意をもって解決に当たるように道路公団の方にも要請をいたしたいと思いますし、私どもの方は環境庁の立場として影響問題の究明に最大の力を注ぐことと、あちこちの調査データから、少しでもよくなったところがあれば、その知見を整理して対策に移すことに努めていきたいと思います。
  102. 川本敏美

    川本委員 最後に、建設省にお聞きしておきます。  今日、全国各地で高速道路の建設反対とか産業道路の建設反対とかいう住民運動が起こっておる。その一つ原因は、こういう周囲の住民の健康を害するようなことが放置されてきたというところにあると思うのです。だから、こういう問題の解決なくして高速道路や新幹線の建設も、あるいは空港の建設もその他のこともできないのがあたりまえだと思うのです。建設省としては今後こういうことを踏まえて行政を進めるということでなければ道路建設等の工事は前に進まないと思うのですが、その点、高速道路対策としても、道路公団に対してどのような態度でいかれるのか、最後にお聞きしたい。
  103. 佐藤秀一

    ○佐藤説明員 御承知のように、この問題につきましては、しかるべき機関によりまして実態調査が行われると思われますし、学術的にも解明される段階で、私どもとしては今後も十分検討してまいりたいと思っております。先ほど来のお話のとおり、この問題の解決も含めまして、今後高速道路の建設に努めたいというつもりでございますし、そのようなことを道路公団にも指示するつもりでございます。
  104. 川本敏美

    川本委員 終わります。
  105. 島本虎三

    島本委員長 この際、午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午後二時九分開議
  106. 島本虎三

    島本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山本政弘君。
  107. 山本政弘

    山本(政)委員 前回の委員会で、私どもの党の土井委員と長官とのやりとりを聞いておりまして、実は私も長官の気持ちをひとつ聞きたいと思いまして質問するわけでありますが、私は、文学というのは余り知りませんけれども、どうも石原さんの御答弁を聞いておって、文学と政治というのは無関係でもないような気も実はしてきたのです。まあそういうことを言うのは、私、大変僭越かもわかりませんけれども、長官のお書きになった本を読ましていただきました。その中で「化石の森」というのがあるのですが、そこにこういうことが書いてあるのです。「どいつもみんな自分を誤魔化してる。大方自分なんていなくなっちゃってる。相手に感じていることをむき出しにしてやるのが、自分を助けることになるのにな。どうにも嫌いなことや、憎いことがあるのにみんなそれを隠して、押えて、化石みたいになっちまってるんだ。」作家としての石原さんと環境庁長官としての石原さんは別でありますけれども、しかしこれを見ておって、昨今の発言を見ておって、長官ずいぶん思い切ったことをおっしゃるなという感じが私はしているわけなんです。ただ、思い切ったことをおっしゃっているけれども、しかし同時に、その中で私が考えたのは、当然すべきこともやっていないんじゃないかということなんです。  基本法の二十五条と二十六条、二十五条は「設置及び所掌事務」、二十六条は「組織等」というのが書いてあります。そして二十六条の「組織等」ということについては、「会議は、会長及び委員をもって組織する。」「会長は、内閣総理大臣をもって充てる。」「委員は、関係行政機関の長のうちから、内閣総理大臣が任命する。」こういうふうになっておるわけですね。そして二十五条の「所掌事務」の中には、二項の中に「会議は、次の各号に掲げる事務をつかさどる。」と言って「公害防止計画に関し、第十九条第三項に規定する事項を処理すること。」これは承認事項であります。その次に「前号に掲げるもののほか、公害防止に関する基本的かつ総合的な施策の企画に関して審議し、及びその施策の、実施を推進すること。」こう書いてある。  そこでお伺いしたいのですが、公害対策会議というのはかつて開かれたことがあるのかないのか、その点をひとつお伺いしたいと思います。
  108. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 開かれております。
  109. 山本政弘

    山本(政)委員 いつ開かれたか一応お聞かせいただきたい。
  110. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 詳しくは政府委員から答弁させていただきます。
  111. 信澤清

    信澤政府委員 確実な日時まで申し上げかねますが、たしか本年の一月と六月ごろだと思いますが、公害防止計画の承認と見直し等の指示というのがございまして、そのような関係で石原大臣御就任後二度ほどあったと思います。
  112. 山本政弘

    山本(政)委員 長官が経済との調和ということを言われまして、そして経済開発公害行政との関係については冷静にトレードオフ、取捨選択すべき時代に来ている、こうおっしゃられている。私がお伺いしたいのは、つまり公害対策会議というのは公害に対して最高の機関だろうと私は思うのですね、そういうところにおいていま私が申し上げたようなことが議論になっておるのかなっておらないのか。つまり、環境庁長官として経済開発公害行政との関係について取捨選択すべき時代に来ているというようなことをもし御発言になるんだったら、当然その前にこういう会議においてそういうことを議論すべきであろうと私は思うのです。内閣総理大臣が会長である。ですから、そういうことが当然あって、その上の発言であるかどうかということを私はお伺いしたいのです。
  113. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 その会議ではそういうことを議論いたしませんでした。しかし、もうすでにその前から起こっております問題について検討を重ねるなりあるいは陳情を聞き取るなり、そのときに私はすべて冷静な取捨選択をもって陳情を聞き、また行政もそういう論点にのっとって行われるべきだと思ってまいりました。
  114. 山本政弘

    山本(政)委員 信澤さん、私が申し上げた意味で公害対策会議というのは「公害防止に関する基本的かつ総合的な施策の企画に関して審議し、及びその施策の実施を推進すること。」という規定があるけれども、そのことについて一体、つまり二項の二号について審議があったかということなんですよ。つまり公害対策会議というのは、公害防止計画の承認の儀式みたいなことはある。儀式以外のことは開かれていないはずですよ。
  115. 信澤清

    信澤政府委員 私の記憶にある限りにおきましては、先生指摘のように、一号の公害防止計画に係る会議はございましたが、その二号の目的のために会議が開かれたということは存じておりません。
  116. 山本政弘

    山本(政)委員 だから長官、いまの経済条項の問題についてあなたの御判断でなくて——これは大変重大な問題なんです。あなたの御返答いかんによっては私は次に進めたいと思うのですが、つまりこういうあなたがおっしゃるようなこと、経済条項のことにもしお触れになるんだったら、いま申し上げた二十五条の二項二号について、それを会議で諮るのが当然じゃございませんか。というのは、いままであなたがおっしゃっていることは、公害の基本に関することでしょう、そうじゃありませんか。
  117. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 それはおっしゃるとおりでございますけれども、あの調和条項を削除したときも、これがあってもなくても、とにかく環境問題においても、環境的、社会的側面というものを勘案することはもう当然のことであるから、つまりいたずらな誤解を招かぬようにこの条項を取るんだということだったように私は理解しております。  私はこの間から申しておりますけれども、あの条項が削除された後でもなお私は、環境問題の性格からして社会的、環境的側面というものを、環境行政を行うときに環境庁においても十分にしんしゃくされるべき要件だと思います。また、実際にそういう配慮をなくして他の省庁とのどんな話し合いもあり得ませんし、もちろん私たちが第一義に掲げて他の省庁と話し合いをするのは環境の保全でございます。しかしそれでもなお、いままで委員会で御質問の際にるる申してきましたように、つまり社会的、環境的側面というものを無視しては環境問題というものは非常に解決しにくくなっているということで、私は改めてその会議でそれを議論しなくてもそれはすでに一番基本的な認識として、調和条項が取り去られたときから基本的な姿勢としてあることだと理解しております。
  118. 山本政弘

    山本(政)委員 橋本さん「公害対策基本法の解説」これはあなたがお書きになったものだと思うのです。基本法の性格の中に「健康を保護するとともに、生活環境を保全する」こういって、そして「経済の健全な発展との調和」ということがここに触れられておる。その触れられておる中には、実は私がいま申し上げた、健康を保護するということに絶対性があるんだ、あるいは生活環境の保全をするのに絶対性があるんだ、そして経済の健全な発達というものはその中に包含されるべきものであって対立物じゃないんだというふうなことを書かれているのです。つまり私が言いたいのは、公害基本法の基本的な精神というのは健康の保護と生活環境の保護とある、そしてそれが経済の健全な発展との調和ということにおいて対立するようなことがあるなら、もちろん容赦なく経済の面というものは切り捨てられるのだということをちゃんとお書きになっている。これは確認していいですね。
  119. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いまおっしゃいました原文の文章を私定かに覚えておりませんが、公害対策基本法の本来の目的は、健康保護であり、生活環境の保全である、これは間違いないことでございます。  もう一つその解説書のところでごらんいただきたいのは、「経済の健全な発展との調和」とは一体どういうことかというところもございますので、それと両方あわせて御判断をお願いできればと思っております。
  120. 山本政弘

    山本(政)委員 あわせて判断をしたというよりか、あわせて私はそのまま素直に読んだ結果、対立すべきものではなくて、健康と生活環境というものが絶対性があるのだ、こういうふうにお書きになっているということを私は申し上げているわけです。  長官、私が申し上げたいのは、たとえばアセスメント法案の場合も私はお伺いしたと思いますけれども、事前評価に当たっては環境へのマイナス面だけでなくプラス面も重視すべきだということをおっしゃっておると思うのですね。そして、土井委員が質問されたときにもメリット論とデメリット論というのが出たと思うのです。私は、アセスメント法案が出てきたときでも、なぜ出てきたかということを考えてみる必要があるだろうと思うのは、これは開発関係者が、開発のもたらすプラス面だけに目を奪われている、マイナス面を無視した結果環境破壊がひどくなった、ですからアセスメント法案というものが議論になってきたのだろうと思うのですけれども、そういうことについてお考えにならないで、いまさらプラス面を評価をするという長官の発言の意図が私はわからないのですよ。公害基本法にしたってアセスメント法案にしたって、つまり乱開発といいますか、あるいは開発関係者が開発するという、あなたの言葉をかりればデメリットの面が非常に強くなり過ぎたということから、逆にその対策として、いま私が申し上げたようなことが出てきたのじゃないでしょうか。にもかかわらず、あなたがおっしゃっているのは、それをUターンさせると言ったらおかしいかもわかりませんが、打ち消すかのごとくに経済との調和という言葉をお出しになっている。どうもその辺がわからないのですが、もう一遍お気持ちを確認したいのです。
  121. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 私は、過去のアセスメント法に関するやりとりで、開発事業の環境に与えるプラスの面ということは言っていないと思います。つまり、開発そのものの経済的、社会的利益の還元と申しましょうか、そういう面について申し上げたわけですけれども、しかしあえて申しますならば、一つ開発が生活環境そのものに与えるプラスの面もあるわけです。たとえば海田湾のようなああいう開発は、一部予定地域の当事者の方々は非常に強い反対をしていらっしゃいますけれども、もっと大きな視点で見ますと、あの海をよみがえらせて、あそこの経済性を復活させる、それからあの周りのベッドタウンになった方々の一種たれ流しに近い生活排水をあそこで終末処理をする、同時にいままで堆積したヘドロを埋め立てに使うことで先ほど申したように、海を浄化するという形で、環境面にもプラスのある開発もあるわけでございます。  私が前に申したのは、そういう意味で申したのじゃございません。私は、再三申しておるように、調和という言葉に経済優先というニュアンスはみじんも入っていないと思うのです。ですから、これを冷静に読めば、経済が優先する云々ということはあり得ないので、行政というものがいままで犯してきた、たとえば四十二年から四十五年にかけての誤りというものを強く反省し、確固たる姿勢を持てば、いたずらな環境の破壊という事件も起こらずに済んだと思いますし、そういう意味で、私は、すでに七〇年代というものが非常に困難を予想されている時期に、何といってももし予見性があれば、環境問題というものが経済的、社会的側面を勘案せざるを得ない今日のような性格を帯びてくることは予見できたと思うのです。四十五年の改正には結果として社会党、公明党、民社の方々は反対されておりますね。これは要するに環境絶対優先の原則というものを放棄された形でされているわけですし、また与党の議員からも、調和条項を削除するならばOECDの言っている相互主義というような意味で新しい原理原則を入れるべきではないかという質問もあったようでございます。とにかく社会、公明、民社という方々が反対されたということは、つまり環境の絶対優先主義というものがこの中に盛られていない、ということは、新しい原理原則というものが与党のある質問のように具体的な案文として入れられていないにしても、つまりOECDの言っている相互主義というものがそこで暗黙に認められたのがあの改正だと私は解釈するわけでございます。  果たせるかな、それから数年もたたずに今日、いろいろな問題で社会的、経済的側面というものを勘案しなければ解決のつかない環境問題が山積しているわけで、そういう意味で現在の時点で、要するにあの出来事を振り返って見ての印象と申しましょうか、私の所感を述べたわけでございます。
  122. 山本政弘

    山本(政)委員 社会的問題が山積しているというのですが、それでは私がお伺いいたしましょう。  四十二年の「経済の健全な発展との調和」という条項が、要するに四十五年の改正で削られた、その削られたことに対して、いまいろいろ議論になっているわけです。長官が改めて経済との調和ということをお出しになったから問題として出されたわけですが、そのときに野党の質問の中で長官、こういうふうに答弁なされていますね。あの時期は社会全体がパニック状態で、感情的、情念的な衝動が削除をもたらした、そういうふうにおっしゃっている。そうですね。そうすると、四十五年の公害対策基本法改正では、つまり感情的、情念的衝動が削除をもたらしたのだろうかどうだろうか。これは一遍お伺いをしたいのですが、いかがでしょう。依然としてそういうふうにお考えになっているのでしょうか。
  123. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 あの時点に非常に未曾有の高度成長がありまして、それを至上とする、社会すべてと申しませんけれども、大半を制する物の考え方がありました。ところが四日市公害であるとか水俣であるとか、ああいう非常に悲劇的な、非常にドラスチックな事件が起こったわけでございます。その反省とともに、それが短期間に非常に大きな形でクローズアップされたということで、やはり政治の当事者は周章ろうばいもしたでしょうし、とにかく今度は逆にその対処に努めなくてはならない、そういう政治的、社会的状況があったと私は思います。  繰り返して申しますけれども、調和という言葉の中に経済の優先などという意味合い、ニュアンスはみじんも入っていないならば、つまりいたずらな誤解を避けるために云々ということ、つまり誤解はしょせん誤解でしかないわけでありまして、冷静に、理性的に読めばわかることを、そこでまた改めて削除したということで、再三申しておりますけれども新しい誤解のようなものが生まれて、それが今日の環境行政の障害の一つになっているということは否めないということを申したわけでございます。
  124. 山本政弘

    山本(政)委員 私、理性的に物を言っているつもりなんですよ。長官が感情的、情念的衝動と言っている方がむしろ非理性的だと私は思うのです。四十五年に公害対策基本法が改正をされて、二カ所の経済との調和ということが削除されたということは、要するに、おっしゃったようなその当時の公害の現象があったわけですね。水俣病の患者の被害、一任派に対する政府補償案の提示があのころありました。富山の黒部川流域のカドミウムの汚染米のことがありました。それに引き続いてほかのところでもありました。福岡の洞海湾と静岡駿河湾の田子ノ浦港の汚濁の実態がありました。ヘドロです。それから東京でも牛込柳町の自動車の鉛汚染が問題になったことがあります。そして杉並の周辺で発生した光化学スモッグというようなこともありました。実はそういうことがあった中で、いま申し上げた「経済の健全な発展との調和」というものが削除されたと思うので、決しておっしゃるように感情的、情念的な衝動が起こした問題では私はないと思います。事実としてあったわけですね。長官、私はこういうことを申し上げる必要もないと思いますが、公害問題というのは要するに二つの傾向が基軸となっているということも御承知だろうと思うのです。それは、日本の産業構造の急速な重化学工業化ということが一つある。もう一つは、人口の急激な都市集中化ということがあるだろうと思うのです。そういうものが実はもたらしたということははっきりしているわけですね。ですから、そういう中で一体どうしようかということだろうと思うわけです。いま申し上げたように、いろいろなことがあって全国的に収拾のつかないほど公害が出てきたという中から、四十五年までの要するに公害基本法というのは公害防止にとっては何ら有効な働きをしなかった、これは極論かもわかりませんが、そういうことも言えないではないと思うのです。だから四十五年にそういう経済調和条項というものを外したのだろうと思うのです。そしてその結果一体どうなっただろうか。経済発展との調和条項を削除したことによってもたらされた公害行政における直接のメリットというものはどういうものがあっただろうか。これを私は長官に考えてほしいと思うのです。  たとえば環境基準の設定において人の健康保護に係る基準について昭和四十四年に閣議決定をしたSOXの環境基準、これについては一時間値が〇・一PPm以下、一日平均値が〇・〇五PPm以下、こうなっていたわけです。そのことについて厚生省の生活環境審議会環境基準専門委員会では示しておらなかったにもかかわらず緩められている。つまり、通産省を初めとする経団連あるいは鉄鋼連盟からの緩和要求があってこの濃度が年間総時間数の八八%から九三%以上維持されることというようなことが括弧つきで一時間値については入ってきたのです。あるいは一日平均値については年間総日数の七〇から八〇%維持されることというような緩和条項が入ってきているのです。しかしその後昭和四十八年には一時間値が〇・一PPm以下、一日平均値が〇・〇四PPm以下になって、いま私が申し上げたそういう緩和のあれが外されてしまっている。そういう効果が私はあっただろうと思うのです。そういうことを考えると、企業の方でできないと言っておったものが要するに可能になってきているわけです。  あるいは大規模工業基地といいますか、たとえば苫小牧の東部の大規模工業基地あるいはむつ小川原、これなんかを見ましても、やかましくなってきたから非常に基本計画が変わってきているわけです。たとえば苫小牧東部の工業開発規模なんというものは、当初の四十六年のマスタープランでは鉄鋼二千万トンだったのが、五十三年度の基本計画と比べてみますと、五十三年度になると鉄鋼の二千万トンは全然なくなってくるわけです。あるいは石油の精製が百万バーレルが三十万バーレルになっている。石油化学が百六十万トンが四十万トンに減っているということになっているわけです。これは一例ですけれども。あるいはむつ小川原にしてもそうなんです。石油精製が百万バーレルが五十万バーレルに減っているし、石油化学百六十万トンが八十万トンに減っているし、火力発電三百二十万キロが百二十万キロに減っているというようなことになっているわけです。これは私は、やはり経済との調和条項が外された結果こういうメリットが出てきたのではないだろうか、こう思うのですよ。そして、それはまさしく人の健康と生活環境に大いに役立っておるのではないでしょうか。そう思いませんか。どうですか。
  125. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 もう先生御案内と思いますけれども、調和条項というものは、お断りしておきますが、公害の健康項目に関してはかぶっておらず、生活環境という問題についてのみ言われたわけでございます。いま先生がるる言われました四十二年から四十五年にかけての公害の事実、私はそれを認めるのにやぶさかでございませんし、また確かにそのいきさつの中で調和条項というものが一種の隠れみのに使われていたと思います。ただ、先ほど引かれました柳町の問題は、結局これは公害のもたらす一種の社会的なパニックの中で出てきた非常に幻覚的な事件で、結果は何でもなかったわけでございますけれども、それを含めましていろいろな現象がございました。私はそれは事実として率直に認めまして、だれもそれは否定し得ないと思うのです。ですが、それを改善するということは行政の姿勢さえしっかりしておればできたことだと思うわけです。  それから確かに、いまおっしゃられました調和条項を取ったために好転した環境問題というものは幾つかございます。あるいは指定地域が拡大化された云々のことも、それまでできなかったことができたと言われておりますが、しかし正確に言えば、そういう言葉が基本法の中にある存在感というものは法的にもやはりしんしゃくされるべきかもしれませんけれども、しかし、法律的に調和という条項があったためにそれができなかったということにならないと思うので、やはりそれを取ったということの心理的と申しましょうか心情的と言いましょうか、そういう効果がそういう形になってあらわれてきたんだと私は思うわけです。調和条項があったから法律的にできなかったということの行政措置ではないと私は思うのです。その心理的、心情的な効果があって、そういう環境行政の好転を見たということは私は認めますが、同時に、さらに数年たちますと、それを取ったということで先ほど再三申しておりますような一種の新しい誤解のようなものがありまして、調和条項を取ったことではっきりしているじゃないか、すべての開発はすべきじゃないんだというような論があったり、あるいは環境庁の長官はそんなよけいな他の省庁のことを考える必要ないと言われるかもしれませんが、しかしやはり経済という社会工学的に欠かすことのできない国家、社会にとっての要因の、ある意味では非常に大きな要素になる公害防止というもののコストを論ずることが非常にしにくくなったというような声も、他の省庁では聞かれるわけでございます。  それから、さらに午前中友納さんがされました、これだけのエネルギー危機の時代に天然ガスをとるか、それとも生活環境にかかわりのある地盤沈下というものをどういうふうにしんしゃくするかという問題とか、あるいはもうエネルギーの危機が歴然とされていて、アメリカのように世界で最も大きな産出国である国でさえも備蓄というものをいまとにかく積極的に行っているという時期に、たとえば日本エネルギーの備蓄基地をつくろうとしても、そういった心情を背景にして非常にそういうことが困難になっている。私たちは、そういう対処をしなければ、何年か先にそれこそ憲法二十五条でうたわれている最低限の文化生活というものができるかできなくなるかという瀬戸際にもあるわけでございまして、そういう問題をすべて絡めて考えますと、法的には規制力があったとは言えない調和条項を取ってしまったことが、いまになれば新しい誤解を呼んで、そういう問題の障害になっているということを私は言ったわけでございます。
  126. 山本政弘

    山本(政)委員 四十二年の基本法に経済との調和条項が入ったのは、いろんなことがありますが、経団連の強い要請に基づいた結果という歴史的な経過があるでしょう。ここにちゃんと入っているんだ。厚生省の内部資料ですよ。もう一遍申し上げますよ。四十二年の基本法に経済との調和条項が入ったのは経団連の強い要請に基づいた結果という歴史的な経過がある、そこで入った。仮に、経済発展との調和条項が削除されずに生き残っておったならどうなっただろうかという問題を長官は考えたことがありますか。環境基準の設定や大規模工業基地、いま申し上げた苫小牧の東部とかむつ小川原、ここにおける環境保全目標というのは、通産省とかあるいは産業界の抵抗によって本来のあるべき数値というものが値切られたに違いないのですよ。そうしたらどういう結果になるかといったら、四日市とか水島とかあるいは鹿島とかというような状態が現出するに違いないじゃありませんか。当然そういうことが予想されるに違いない。それが結局、経済との調和条項というのが外されたから、いま私が申し上げたようにほぼ電力とか石油精製について半減をされたということが言えるわけでしょう。そうしたら、外されたからということは、経済との調和条項がなくなったということは、必ずしも心理的な影響ではないと思うのですよ。現実の問題として、数字として出てきているわけですよ。  それから、そういうことを長官がお話しになるんでしたらもう一つ私は聞きたいのですが。あなたは、メリットとデメリット論ということをおっしゃるのですけれども、メリットというのは少なくともいま私が申し上げたように、鉄鋼なら何千万トンとか、石油なら何十万トンという数字として出てくるわけですよ。だけれども、アセスメント法案のときに私がお伺いしたように、デメリットというのはこれは計量化が困難でしょう。これは橋本さんも私にお答えになったと思うのです。つまり生態系というものは金銭というものの価値にかえられないものですよ。価値として計算できないはずなんです。計算するとしたら非常に困難を伴う問題なんです。それを安易にメリット論とデメリット論を同次元で計算ができますか。あなたは問題をすり違えられているのですよ。メリット論とデメリット論という言葉の違いだけの話で、片一方は数字で計算ができる、片一方は計算が困難だという問題、これを同次元において計算をされようとしているのですよ。そこに基本的にあなたの誤謬があるのだと私は思うのです。経済との調和条項ということについて。この点いかがですか。
  127. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 私は、アセスメント法に関する論議の中で言いました開発の何らかのメリット、社会的メリット、経済的メリットというのは、単にそこで何トンの鉄が生産されるとか何万キロワットの電力が発電されるとかいうことだけではなしに、そういうものを私たちが、鉄の場合には、間接になるでしょうけれども、つまり自動車に変えるとか何をするとかいうことで、あるいは北海道で生産された鉄がどこで使われるかわかりませんけれども、とにかくつまり建設資材として使われ、新しい橋がかかるとかその他云々で、つまり経済活動を通じて国民の文化生活というものに還元されていく、そういうメリットというものは、これはとても数値で計量できるものではないと思うのです。そういうことを含めて申しましたので、何トンとか何キロワットとか、そういう数値だけを、計量できない環境に与えるデメリットと強引に並べるというふうなすり違えをした意味で私は申したわけではございません。
  128. 山本政弘

    山本(政)委員 だから、橋をつくるにしたって港湾が整備されるにしたって、そういうことは結局は要するに鉄鋼なりその他の生産ということとかかわりがある。そういう生産に従ってそういうものができ上がるわけでしょう。ですから、苫小牧東部の工業基地とかあるいはむつ小川原とかという問題については、これはいま申し上げたように要するに開発ということで、その開発についてはすべて数字で示されているわけですよ。その結果があなたのおっしゃるように便宜が供与されるということでしかないわけなんです。そうでしょう。つまり苫小牧東部の工業開発規模というのは、当初のマスタープランによったら鉄鋼二千万トン、石油精製百万バーレル、石油化学百六十万トン、アルミが百万トン、銅二十四万トン、鉛六万トン、亜鉛十五万トン、自動車五十万台、電力六百万キロワット、こういうものができることによってあなたがおっしゃった便益が享受できるという結果がもたらされるだけの話なんですよ。開発のメリットによる波及効果と言ったらいいのか、そういうことによって要するに享受できるということなんです。しかしその片一方には計算のできないデメリットというものがあるじゃありませんかというのが私の言いたいことなんですよ。おわかりですか、わかりませんか。(石原国務大臣「わかります」と呼ぶ)ですからその辺を簡単にメリットとデメリットで、要するに計量化の可能なものと計量化の、不可能とは言いません、困難なものと一緒くたにしてやられてはかなわぬじゃないか、それは要するに同次元でないものを同次元にして話をすり違えさせようとしているのではないかと私は言っているわけなんですよ。もう一遍聞かしてください。
  129. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 鉄の場合など非常に説明しにくいと思いますけれども、一番簡単だと思われますのは、たとえば発電所のようなものです。この間も橋本局長が伊達の火力の遅滞の問題を一つの例に引いて説明いたしましたけれども、とにかく予備率というものがどんどん下がっていく。ことしは北海道がどういう状況だったか存じませんけれども、とにかくある特定の地域になれば関東から関西へという形で電力を持っていくわけにもいかない地域もあるわけでして、そういうときに、つまり電発の立地というものがどんどんおくれていくことで、何年か先に、たとえば夏季なら夏季に皆さんがいまで言えば最低の文化生活の指標としても差し支えないような夏の冷房というものがとまってしまう。そういう場合に果たしてどうなんでしょうか。私はやはりマイナスの意味で、そこでその電発なら電発というものがあって電力が供給されていれば国民大衆が享受し得た利益、つまりメリットというものがマイナスの形で証明されるわけでございまして、それが供給されている間はごくあたりまえのこととされているかもしれませんけれども、なくなったときは非常に歴然としたマイナスという形の評価が出てくるわけで、一番説明しやすい例がそういうことじゃないかと私は思うのです。
  130. 山本政弘

    山本(政)委員 それはしかし環境庁長官という、まあ国務大臣と環境庁長官と区別があるのかもしれませんけれども、ぼくが申し上げたいのはこういうことなんですよ。要するに公害については規制しようとしても必ず強い抵抗があるだろうし、圧力がかかってくる。これはもう長官も御存じなはずなんですよ。ですから、それを手放しにしておけば非常に大変な公害が国民にかかってくるということ、これは言うまでもないことでしょう。そうすると、その任にある環境庁長官としては、そのことについて最大の努力、要するに公害防止する、そういうことについて最大の努力をするのが長官の任務じゃございませんか。だから、あなたがエネルギーがどうなるだろう、こうなるだろうということをお考えになる前に、私は公害をいかにして防止をするかということをお考えになることの方が先の問題じゃないだろうかということを聞いているのですよ。  たとえば、こういうことがあるんじゃありませんか、時間がないから大変残念ですけれども、大気の現行の環境基準には、人の健康保護とそれから生活環境保全にかかわる基準の区別がないわけですね、水にはありますけれども。大気の場合は、人が原則として住まないような地域を除いては、人は常にいつでも大気汚染にさらされているという基本的な考えのもとに、恐らく人の健康保護と生活環境保全にかかわる基準の区別がないのではないか、こういうふうに善意に私は解釈しているのですよ。そうすると長官がいまおっしゃるように、電力が少なくなっては困るではないか、そういうことをお考えになっているということは、ずばりお伺いしますけれども、長官はやはり経済との調和条項というものは残しておくべきだったという議論なんですか、いかがでしょう。
  131. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 ちょっと申しわけありませんが、もう一度最後のところだけ……。
  132. 山本政弘

    山本(政)委員 繰り返しますと、大気の現行の環境基準には、人の健康保護と生活環境保全にかかわる基準の区別がない、そこで環境庁は、大気の環境基準というものは生活環境の保全をも充足するような基準値であるという見解をとってきただろうと私は思うのですよ、そうですね。そうであるとすれば、いままでの長官のお話をずっと聞いておると、長官の本音というのは、経済との調和条項を残しておくべきだ、あるいはだったと言った方が正確かもわかりませんが、そういうふうなお気持ちなんですかということを聞いておるのですよ。
  133. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 その前に。大気局が扱っております大気の問題あるいは振動の問題というのは、おっしゃるとおり、どこまでが健康項目に類して、どこから先が生活環境の問題になっていくか非常に微妙な問題がございます。私は、そういう場合には、やはり人間の健康の保全というものを優先的にこういう問題はとらえるべきだと思っております。それなら、かつて調和条項かあった方がよかったのかということを言われますけれども、しかし、よかったかよくなかったかということよりも、すでにないわけでございますから、私はそれを取り去ったときのことについてコメントしているわけですし、私はいまになってそれを復活するつもりもございませんし、それはあった方がいいと言っているわけでもございません。ただ、先ほどずっと述べられましたそういう社会的な事件があったということは否めませんし、それから経団連も恐らく何らかの圧力をかけてきたでございましょう。しかし、さらに予見性があれば、今日、環境問題がこういう性格を帯びてくるということは十分予見できたではないかと私は思うのです。すでにあのとき、新しい意味の目的というものを考えなければ、二十一世紀に日本はGNPでアメリカを抜いたって非常にむなしい思いをするだろうということを内外の有識者が言っておりました。しかし、その新しい意味と目的というものの追求は、何も一切経済活動をやめる、開発をやめるということでは私はないと思うのです。それこそやはり、その調和と申しましょうか、つまり環境問題というものを優先しながら、なお社会的、経済的側面というものを勘案せざるを得ないということだと思いますので、いまの時点になってそうせざるを得ない問題がたくさん出てきているときに、私はかつての調和条項の削除の問題についてそういうコメントを言ったわけでございます。  それから、おまえは環境庁の長官だから環境のことだけ主張していればいいではないか、国務大臣か何か知らぬけれどもと言いますけれども、やはりそれは国務大臣であります限り、他の省庁との絡みのあります問題については、国益というものをやはり考えなければならぬ。その国益が一体何であるかということは、これは環境庁としては健康並びに生活環境の保全ということを第一義にして考えはいたしますけれども、しかし同時に、たとえば伊達のような場合にもそうですか、私たちがごく妥当と見ても、なおそこにあります非常に心情的な反対というものには、私たちも、そうしなければ電力危機が来てこういうことになりますよ、そのときにはクーラーがとまるようなことになりますよ、それでもよろしいのですか、それはやはり国民が選ぶことかもしれませんけれども、そういうふうな説明もしながら、やはりその地域の住民の合意を得ていくという努力を私はすべきだと思うのです。そういう意味で私は申しているわけでございます。
  134. 山本政弘

    山本(政)委員 長官の考え方というのは、国民の権利と公共性との関係について、前者の方が少しばかり自由を享受し過ぎるというか、あるいは恣意的過ぎるではないかという意見のように実はぼくは聞き取れるわけですけれども、少なくとも環境庁長官である以上は、この公害基本法あるいは環境庁設置法の趣旨からいっても、やはり公害というものをどう防止するかということを優先的に決めらるべきだ、私はこう思うんです。  それではちょっと観点を変えて質問いたします。  長官は、水銀等汚染対策推進会議の議長ですね。そうですね。この点、私は余り詳しく知りませんが、水銀法から隔膜法あるいはイオン交換膜法というのですか、そういうふうに転換をするということが四十八年の十一月の推進会議で決められて、五十二年度末までには全面転換すべきだというふうにそのときに話があったと、こう思うのですが、いま転換済みの企業というのは六〇%ぐらいあると聞いております。残りがまだ未転換。通産省がこれを三年延長してほしいというようなことで、五月二十五日の会議で延期やむなしとの結論が出ている、通産省の要請を受け入れた形になってそういうふうになっているという話を聞いております。  そうすると、私がお伺いしたいのは、転換の済んだ六〇%の企業というのは、この人たちから言わせれば、何だおれたちは金を使ってばかみたじゃないか、四〇%の人たちはまだ転換をしないで延期ができるのではないか、片手落ちじゃないかという感じを当然持つと思うのですよ。そういう中で、水銀等汚染対策推進会議の議長である長官か延期をされるという——これは恐らく延期されるんでしょうね。まずそれから聞かしてください。延期されるのか、しないのか。
  135. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 政府委員から詳しく答弁させます。
  136. 信澤清

    信澤政府委員 記録を手元に持っておりませんので、やや正確さを欠くと思いますが、お話しのような意見が通産省から出まして、五月の末の推進会議で、一年ぐらいという話もあったと思いますが、延期はやむを得ないではないか、ただし、その間四十八年に決めましたときは一隔膜法に対する転換ということを主体に考えておったわけでございますが、イオン交換膜法という新しい技術が開発されておるようなんで、そちらの方の技術開発に見合って、速やかに転換を図る、それについてのインフォメーションといいますか進捗状況については、会議において報告するというような付帯事項をつけております。
  137. 山本政弘

    山本(政)委員 長官、水銀等汚染対策推進会議の議長ですよ。それがどのくらい延期になるのか、そういうことはおわかりにならないのでしょうか。あなた、議長ですよ。(石原国務大臣「それはよく存じておりますが、ただ経過について詳しく……」と呼ぶ)経過についても、あなた、議長ですから、そのことは大体御存じのはずでしょう。そうじゃないのですか。私は、そういうことだから経済との調和というのが出てくるんじゃないかという懸念をしておるからお伺いをしているのですよ。あなたが経済との調和ということをあれこれおっしゃるけれども、すでにそういうことが優先的に頭の中にお入りになっているのじゃないか。一年間の延長ができますか。私は、これは専門家に聞いたのですけれども、工場のレイアウトだけで一年以上かかると言ってますよ。一年間でできますか、そんなことが。だから、通産は三年以上ということを要求しているのでしょう。あなた方の考え方というのは、そういう点に一番問題があると言うのですよ。どうなんですか。それは一年でできますか。
  138. 信澤清

    信澤政府委員 先生指摘になられましたように、五月の推進会議で、すでに通産省からは、とても五十二年度中ではできない、こういうことは申しておられるわけでございますが、先ほど来お触れになりましたような経緯がございますから、私どもとしては、全体の会議の結論としては、通産省のおっしゃるような期限まで待てない、それが会議の結論だったというふうに聞いておるわけでございます。
  139. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、環境庁というのは常に後追い承認をするということですか。できないことがわかっておって、常に後追いで承認するということですか。これは長官に聞きましょう。できないという答弁がいまあった。しかし、当面経過の上からは一年でやるのだ、こう言っているのだ。そうすると、つまりできたことはしようがないのだということで、あなた方は常に後追いで承認をなさろうとしているのでしょうか。要するに、これが環境庁公害に対する行政の姿勢なのですかどうかということをお伺いしたいのです。  私は、ほかにまだたくさんあるのですよ。たとえば、水質汚濁防止法だってそうでしょう。公害基本法の後に水質汚濁防止法ができている。第二条を見てごらんなさい、二項の二号「水素イオン濃度その他の水の汚染状態(熱によるものを含み、」と書いておる。熱温水、これの排出基準、環境基準というのは、七年たった今日まだ、ことごとくと言っていいほど——ことごとくと言いたいけれども、私は言いませんが、できてないじゃありませんか。だからこんなことが積み重なっているのですよ。その積み重なりの上に経済との調和条項というのが改めて出てくるから、経済優先の考え方というものが、どう弁明なさろうと頭の中にあるのじゃないですかということを私は言いたいのです。そうでなかったら、いまの点答えてください。要するに、環境庁行政というものはいつも後追い承認なんですかということについてのお答えを、長官がちゃんと示してください。
  140. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 決してそのつもりはございません。
  141. 山本政弘

    山本(政)委員 そのつもりでないのだったら、要するに工期が少なくとも一年以上かかることについて、なぜ一年と限定して推進会議でそういうことを決めるのですか。
  142. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 政府委員から答えさせていただきます。
  143. 信澤清

    信澤政府委員 私はいま一年ぐらいと申し上げましたけれども、実はこういう経過でございます。  もうすでにその期間が過ぎているわけでございますが、十月中にイオン交換樹脂膜法の開発のめどについて通産省からの報告を聞く、その上で事後の対策を決める、こういうことであったように思います。しかしながら、お話のように今日でも、正式に持ってきたわけではございませんが、通産省のお話としては三年ぐらい期間が必要である、こういうお話でございます。
  144. 山本政弘

    山本(政)委員 期間が決まっているわけですよ。期間が過ぎており、そして今度は前の言葉を取り消したのかどうか知りませんが、通産の要求に従って三年延長する、こうなっておるわけです。そうしたら、指導に従って六〇%の企業が転換を済ましていることについて、あなた方はどうお考えになるのですか。これは技術的に可能でやった人たちでしょう。四〇%の人たちはむずかしいからとかなんとか言ってやらないわけでしょう。この辺の行政指導は一体どうなさるのですか。ぼくは、そんなちぐはぐな指導というものが絶えずあなた方の環境庁行政指導の中にはあるんじゃないか、そういう危惧があるのですよ。だから、そういう危惧があるから、長官が改めて経済との調和条項ということを言い出したときに、これはまた元にUターンかなというので、さらに危惧が出てくるわけなんですよ。その点どうなっているのですか。そして、七年たっても温排水の排出基準とか環境基準とかができないのは一体どういうことなんでしょうか。これも経済との調和なんでしょうか。その辺を聞かしてください。
  145. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 個々の問題につきまして詳しくは政府委員から答弁させていただきますが、決してそういうつもりで私たち指摘のものがおくれているのではないと申し上げます。こういう時点に、先ほど申しましたように社会的、環境的側面というものを十分勘案する必要があると思いますけれども、私たち、基本的には公害基本法の精神にのっとりまして、健康の維持、環境の保全というものを第一義に話をしているわけでございますが、それがそういう話をする以前にすでに経済を優先するということで御指摘の点が遅滞しているということではございません。  ただ一つ、水銀の問題について申しますと、決してこれは他省に責任を転嫁するわけでございませんけれども、ここにも確かに経済的な問題がございますが、通産省がどういうふうな技術的な分析をし予測をしたか、私は存じませんけれども、イオン交換膜という第三の方法というものに対する開発のタイムアローアンスというようなものを非常に計算間違いをしたのではないかという気がする。今日起こっております問題は、御承知と思いますけれども、アスベスト法ではほとんど産業廃棄物のようなものしかできないという結果になり、またそれは技術的に十分予測されていたにもかかわらず、つまり通産省はそういう指導をしたようでございます。それで、結局つくっても売れない製品はとにかくつくりたくないということで製法転換がおくれていると聞いておりますし、同時にまた、アメリカですかどこかの外国の会社が新しいノウハウを展開しまして、アスベスト法でも非常に純正な製品ができるということのようでございますが、これはたとえば大規模な形で操業を展開しますと、日本の苛性ソーダ界というものは壊滅的な打撃を受けて、それこそ企業だけでなしに労使にかかわる問題になってくるおそれもあるわけで、これはいろいろな問題が非常に絡み合っているというようなこともひとつ御理解を賜りたいと思います。
  146. 山本政弘

    山本(政)委員 時間がないそうですから、残念ですが、私は終わりますが、長官、つまりいまの水銀法のことについて通産省がタイムアローアンスの計算間違いをしたというなら、これは大変な問題なんですよ。そういうことだったらば、要するに当該局長の首が吹っ飛んだっていいくらいだと私は思いますよ。アセスメント法案というものに対して、通産、建設の方と、そうして環境庁の間に対立があった。そして、その当時の局長がやめるという事態が起こっているわけですよ。筋を通した人がやめておるわけです。あなたはそのことに対して、新聞によりますと、「非情な印象を与えたけれども、国民のため、行政の実をあげるためやった。人事の結果は時間を置いてみていただきたい」というふうにおっしゃっている。だけれども、明らかにタイムアローアンスの計算間違いをした人たちがどうにもなっていない。これも私は大変おかしな話だと思うのですよ。計算を間違えたと長官の言葉どおりとれば、計算を間違えて明らかに二年も三年も延長せざるを得ないというような羽目に陥った、そういう該当の責任者というものは要するに平然としておる。そして、筋を通そうとしている人たちは、要するに非情と思われるかもしれないが後ではわかっていただけると思うということで退任をさせられるという事態がある。私は、その両者を比べたときに、どこかが狂っているとしか思えないのですよ。それが実は長官の公害の基本姿勢から出ているとすれば、私は大変なことだ、こう思えてなりません。と同時に、それが経済との調和条項という発言に出ているとすれば、これもまた大変だと私は思うわけです。  かつて、ロブソンという人が来たことがありますが、私は参考のために一言だけ申し上げておきます。人間の健康とか環境とかというものを考えたら、いたずらに舗装道路をつくるよりか、自然のままの、要するに土がある、土が踏める道路というものがあっていいとロブソンが言ったことがありますが、私もちょうどたまたまその会議に出席をしてその言葉を聞いたことがあります。もちろん通訳でありますけれども。そのことも一点、ぼくは長官としてもう一遍かみしめてもらいたいと思います。  終わります。
  147. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 ただいま、タイムアローアンス云々のことがございましたけれども、私は門外漢でございますが、やはり苛性ソーダの製造法については、これは主管はあくまでも通産省でございまして、通産省も、製法の転換を指導するに当たりましては、アスベスト法というものには非常に問題があるということは当然知っていたことだと私は思います。と同時に、それにかわる第三の方法があるということも承知し、それが十分転換の期間の中に間に合うということでそういう措置をとったんだと思いますが、結果としては間に合わなかったということで、私は素人でございますけれども、結果論から言えば、結局その計算にやはりそこがあったのではないかという意味で申し上げたのでございます。  それから、柳瀬局長の人事については、柳瀬さんの立場もございますからこれ以上のことは申しませんが、私は、いま質問のときに引用されました私自身の言葉をもう一回ここで答えさせていただくことにいたします。
  148. 島本虎三

  149. 平石磨作太郎

    ○平石委員 環境庁の長官にお伺いいたしますが、過日、十月二十日、土佐室戸岬南方六十キロの地点におきまして、クウェート船籍のタンカー、アル・サビア号、この船の燃料タンクに亀裂が生じ、油の流出ということで、高知県では社会問題になろうというぐらい、大変問題が起きておりますが、これに対してどう対処せられるか、お伺いしたいと思います。
  150. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 詳しいことは担当の局長からも説明させていただきますが、かねがね閉鎖性水域だけではなしに、実は先般も運輸省の気象庁が日本の専管水域に入りました西太平洋のタンカー航路が非常にオイルボール等で汚染されているという調査をいたしました。私たちは、海の資源の確保ということのためにも、内洋に限らず外洋の海洋汚染というものには重大な関心を持っておりますが、今日このアル・サビア号の事件が私たちの関心なり憂慮というものを裏書きするような形で起こりました。  これに対して、こういう事件が再び起こらないように、多角的に考えていこうと思っております。つきましては、実はその問題で私は先般アメリカ並びに油の積み出し地でありますアラビア湾の沿岸諸国を回ってまいりましたが、向こうでもやはりこういった問題が非常に注目されておりまして、また、カーター大統領も三月十七日にアメリカの沿岸の海洋汚染というものを防止するために、タンカーの構造を規制するという強い要請を出しまして、私はやはりそういうものが実現されることで初めて、日本の専管水域だけに限らず、世界全体の海が浄化されると思いますし、今回の場合には、条約で申しますと一九七四年の人命安全条約と言われております。船の乗組員の生命の安全のための船の機構、検査というものに関する条約なども一時も早く批准して、この種の事故が起らぬように未然に防ぐべきだと思っております。
  151. 平石磨作太郎

    ○平石委員 時間がありませんので先へ急がせてもらいますが、海上保安庁にお伺いをいたします。  今回の事故で海上保安庁も現場でいろいろと調査並びに回収事業その他について大変尽力を願っておりますが、私も過日現場へ参りました。したがって、土佐湾、それから足摺岬へかけまして全体を歩いて回りましたが、この事故について、流出量、それから出した船の名前、それに流出海域、これについてお答えをいただきたいのです。簡単で結構です。
  152. 久世勝巳

    ○久世説明員 お答えいたします。  この事故の概要は、去る十月二十日の午後八時五十二分、室戸岬の南約六十マイルの海上で、ペルシャ湾から神戸向け航行中のクウェート船籍のタンカー、アル・サビア、三万五千七百五十二総トンでございますが、これの右舷船首部に亀裂を生じまして、そこから該船の燃料が流出している、こういうふうに代理店を経由して当庁に通報があったわけでございます。  そして、その後、先生お尋ねの流出量でございますが、該船は実は流出油が沿岸に漂着しないように、なるたけ沖の方へ行くように、そういう行政指示のもとに、大分沖に行っておりましたけれども、大変荒天がございまして、そのために沖で修理がかなわないということで、安全性を十分確認の上、去る十月三十日の朝、小松島の沖に仮泊したわけでございます。ここでいま応急修理をしておるわけでございますけれども、その後船長等、あるいは航海日誌を調査いたしましたところ、現在のところ約千三百キロリッターの燃料油が流出したものと考えられます。
  153. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま御答弁にありましたように千三百キロリッター、この流出で、二十三日の段階で高知県の西部の足摺岬の西南方において漁民が油の流出を発見をしております。したがって、報告があった時点は室戸岬の南方であって、高知県の西部の方の油もやはりいま御答弁にありましたアル・サビア号から流出したものかどうか、これをお答え願いたい。
  154. 久世勝巳

    ○久世説明員 アル・サビアから流出油があったという通報を受けまして、海上保安庁では直ちに巡視船を出動せしめるとともに、翌日は航空機を早朝から派遣しまして、流出油の監視あるいはアル・サビア号の状況の調査に当たったわけでございます。その後、今日に至るまで、ほとんど船艇、航空機によりまして油の状況を監視しておりますので、これは同船から流出した油であるというふうに私どもは考えておるところでございます。
  155. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そこで、被害の状況でございます。私、現地へ参りました。これが廃油ボールとして、こういうように固まって、タール状になってどんどん沿岸に漂着しておる。それから海の中ではこういったものが漂流をして、いま全力を挙げて回収に当たっておるわけです。  ところで、非常に海域が広いということ、それから排出量がいまおっしゃったように多量に出たというようなことから、高知県の沖合い全域にわたって廃油ボールが、きょうの先ほどの電話によりますと、高知県の東部の安芸市あるいは手結、そういったところまでもうすでに漂流してき始めたといったような情報が入りました。したがって、高知県の西部の足摺岬から東部の方にかけまして、全域に入ってき出した。したがって、これの回収についてはすでに松山から回収船、第二清海丸というのが来ておりますけれども、これではもうどうにもならない、非常に拡散をしておる、それから、内海と違って外海であるというようなところから船のローリングが激しい、したがって吸い上げようとしても水中へパイプが入ってしまう、これはいかぬというのでまた上げていくと、エアを吸い込んでしまうというようなことで、これは全く機能を果たしておりません。日本でたった一隻しかない清海丸だそうでございますけれども、せっかく回していただいたけれどもできないというようなことから、高知県の漁連、各単協、漁協において持ち船、漁船を出して人海作戦で、もうすでに百隻余りが出で総出で回収をしておるような現在の状況でございます。そして、回収の量はまことに微々たるものであるというようなとごろから回収がはかどってない、そしてどんどん漁場、沿岸に漂着をしてくるというような現在の状況でございます。予想以上に手間取っておるというようなところで、高知県としてもあるいは漁連としても、漁民としても、非常に困っておるということを私現地で聞いてきたわけですが、こういった漁業に対する被害、これについて水産庁の方は把握しておるかどうか、ひとつお伺いをしたい。
  156. 山内静夫

    ○山内説明員 水産庁といたしましては、事故発生直後におきまして担当官を現地に派遣しまして、できるだけ漁業被害を少なくするような方向で指導してきたわけでございます。現在、先生指摘のとおり、漁船が出動いたしまして、できるだけ沿岸に廃油ボール等が漂着しないように、こういう方向で防除作業を行っておるわけでございます。現在、漁業被害等につきましては、まだ調査の段階でございまして、県の方からわが方には上がっておりません。わが方といたしましては、漁業被害が出た場合には汚染者負担の原則にのっとりまして、補償が円滑に行われるように、こういう指導をする方針でございます。
  157. 平石磨作太郎

    ○平石委員 漁業被害についてはだんだんと拡大をしておる。いま御答弁にあったように、現状においては把握が困難かもわかりませんが、二十八日現在における漁業被害というものが新聞に出ておりますけれども、この報道を見てみますと、漁船の船体の汚染被害を受けたものが三百四十二隻、漁具の汚染が三百二十五個、それから休業しておる、操業できない、こういう漁船が二百四十六隻といったようにこの被害が出ておるようです。したがって、まだまだ被害は拡大をしていくのじゃないかというように心配をしておるわけです。  そこで、こういった回収の費用、あるいは除去、それから被害船に対するところの補償とか、それから漁船の休業補償、あるいは建て網の損害、それから刺し網、大型とかあるいは小型の定置網といったものがいっぱいあるわけですが、こういったものにもこんなボールが付着をして全く用をなさなくなったというような被害も出ておるわけです。問題は、こういうような被害についての補償が問題になってまいります。したがって、こういう補償について、いまのはクウェートの船、外国船ですから、だれを相手にやったらいいのか、この点お示しをいただきたい。
  158. 山下文利

    ○山下説明員 御答弁いたします。  油の事故によります責任問題につきましては、一昨年末御制定いただきました油濁損害賠償保障法という法律がございまして、この法律によりますと、船主は無過失賠償責任を負う、このような規定になってございます。これを担保いたします方法として強制保険制度をとりまして、一トン当たり四万六千円の強制保険を義務づけまして、その保険に入ったことの証明がなければ、日本国内に入れないというたてまえといいますか法律上の義務になってございます。現に、該当船につきましてはその保険に入っております。仮に三万トンといたしましても十四億円の保険には入っております。なお、それにかぶせまして、これを超える損害がもし発生いたしました場合には、世界の石油会社が集まりましてCRISTALという制度を設けてございまして、これが最高三千万ドルまでの補償をするという規定になっております。仮に一ドル二百五十円といたしますと七十五億円までの損害賠償が可能でございます。  それから、請求につきましては、第一義的には船主に対してそのような請求を行うわけでございますが、油濁損害賠償保障法の規定では、直接保険事業者に請求してもいい、このような規定になってございますので、このどちらかに対して請求が可能であろう、このように思っております。
  159. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そういたしますと、この船主代理店であるオーナーズ・エージェント・シー・エフ・シャープ・アンド・カンパニー、これを相手にしたらいいわけですか。
  160. 山下文利

    ○山下説明員 船主は、先ほどから名前がいろいろ出ておりますが、その中のクウェート・オイル・タンカー・カンパニーというところで、これはロンドンに籍がございます。これの保険業者としては、ウェスト・オブ・イングランドと言いまして、ロンドンPIの保険会社でございます。ただ、このウエスト・オブ・イングランドはエージェントを持ってございまして、ドッドウェルという会社がございますが、これはあくまでもエージェントでございますので、実際問題としてはサーベイヤーのロイドの派遣のコーンズという会社が実際に調査に当たっておると伺っておりますし、この関係の弁護士も東京にすでに指定してございまして、このあたりがいろいろ取引の窓口になっておる、このように聞いております。
  161. 平石磨作太郎

    ○平石委員 ところで、この被害の総額、まあいずれにしろわかってくると思うのですが、被害について賠償法でもって保障されるという範囲、これはどういうものが保障の範囲になっておりますか。そのこともあわせてお答えいただきたい。
  162. 山下文利

    ○山下説明員 油濁損害賠償保障法によりますと、あらゆる間接、直接の損害は補償するたてまえになっておりますが、現実には保険でカバーいたしますので、いままでの保険で支弁された実例を見ますと、休業補償あるいは漁具に対する補償、あるいは油除去のための必要な経費、そういうものはすべて補償の対象にはなっておるように、いままでの例では伺っております。
  163. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そういたしますと、大体私が先ほど挙げた被害の範囲については、漁具、漁船、休業、こういったものもその補償の対象に入ってくる。     〔委員長退席、水田委員長代理着席〕  さらに、お伺いをいたしたいんですが、こういった海の汚染、漁場の汚染ということから後遺症が残ってまいります。そういった後遺症について、魚価に影響を及ぼしてくる、あるいは水揚げが休業のために減ったとか、あるいは魚価をたたかれたとか、こういった影響が出てまいります。こういうことについてもその補償の対象に入ってくるのかどうか、もう一回お答えをいただきたい。
  164. 山下文利

    ○山下説明員 保険のいままでの運用では、魚価の損耗分その金額の査定その他は別といたしまして、損害賠償の対象になっております。
  165. 平石磨作太郎

    ○平石委員 先ほど答弁にありましたロイド社がすでに来ております。現地に来て回収状況等をも見ておりますし、さらにその保険会社からチャーターした回収船、先ほど話しました、用をなしませんけれども、回船してきておるというようなことで、現地へすでに入っておりますが、この被害の査定、いわゆる保険会社でございますから、シビアな査定といったようなことが行われるおそれも心配をしておるわけですが、そういった面について監督官庁である運輸省は、そこらをひとつ行政指導をして、いま答弁にあったような範囲について十分にひとつ見てもらえるように行政指導をしていただきたいと思うわけですが、その点あわせてお伺いをしておきます。
  166. 山下文利

    ○山下説明員 当初申し上げました油濁損害賠償保障法というのは、従来商法で民事責任の判断をする規定をこれを特別法化したものでございまして、あくまでルールをつくる話でございますので、具体的な被害者、加害者間の判断、調停、そういったものにつきましては、自主的にやっていただくことがたてまえになっておりますので、官庁としてこれに介入することは差し控えたいと思っておるわけでございますし、特に、保険会社につきましては外国の保険会社でございますので、私どもとしては非常に言いにくい面もございます。それから、船会社につきましても、外国の船会社でございまして、運輸省がこれに対して関与いたしますと、海運自由の原則、そういった問題でいろいろトラブルもございますので、できるだけ自主的によい結果を生むように期待しておるわけでございます。
  167. 平石磨作太郎

    ○平石委員 もちろん、そういった介入というところまでは困難かもわかりません。損害賠償ということはあくまでも当事者間の話し合いでありますから、そこには必ず一致するとも限りませんし、また外国船のことでもあるというようなことから十分な損害についての話し合いの成立というようなことも、初めてのことでありますから危惧しておるというような向きもございます。したがって、そういった面で指導、介入しなくても指導をして、十分この油濁損害賠償保障法が機能するようにひとつ運輸省の方で処理をしてもらいたい。もちろん、最終のところまで云々とは申しませんけれども、結果、裁判にまでというような形で期待をいたしておるというような、そういうことでは漁民は不安でならないわけでして、ひとつ強力な行政指導、そしてこの法律の運用が適切に行われるように指導を賜りたい。もう一回お願いをいたします。
  168. 山下文利

    ○山下説明員 損害の賠償につきましては、あくまでもPI保険、この保険の中身の査定の問題にかかってこようかと思うわけでございます。これにつきましては大蔵省の所管ではございますが、どの程度そういったことができるのかは私どもちょっと伺っておりませんので、いま御答弁差し控えさせていただきたいと思います。
  169. 平石磨作太郎

    ○平石委員 それから、さらにお伺いをいたしますが、こういった情勢がたまたま出てきたわけですが、いま被害について水産庁も十分把握してない、これは当然だと思います。まだ被害が拡大しておるわけですが、このことについてそれぞれいろいろと諸官庁がありますが、ひとつ政府の調査団を派遣をして、この被害状況につき、さらにこれからのこういった事故の起こらないような方法、そういったことをも含めて政府の調査団を派遣してほしいというような要望が非常に強くて、本日も電話がかかってくるというような状況ですが、そのことについて派遣する意思があるかどうか、ひとつお伺いをしたいのですが、これは農林省ですか、水産庁の方へお願いします。
  170. 山内静夫

    ○山内説明員 水産庁といたしましては、事故発生当時、先ほどお話し申し上げましたとおり、担当係官を派遣しましていろいろ指導に当たっているところでございます。今後の補償問題等につきまして、当然いろいろ事件が起こると思いますが、この問題につきましても、今後必要があれば関係漁民と連絡をとりながら調査あるいは指導、こういうかっこうで現地に派遣したい、こう思っております。
  171. 平石磨作太郎

    ○平石委員 水産庁がどのくらい派遣しておられるか知りませんけれども、やはり運輸省あるいは海上保安庁、海運局、環境庁といったような形で各省にまたがっております。したがって、政府調査団として派遣をしてほしい。ただ水産庁だけが漁業被害というようなことだけで行って調査ということでなしに、もっと広い立場から調査をしていくということで政府の調査団の派遣の要請を地元はしておるわけですが、もう一つお答えを願いたい。これは環境庁長官に。
  172. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 直接の所管運輸省でございますので、運輸省と相談して決めさせていただきます。
  173. 平石磨作太郎

    ○平石委員 国土庁にお伺いいたしたいのですが、足摺岬の南方、ああいったところが今度の事故によって汚れたわけですが、このことはすでに漁民が心配をしておったことです。過日も質問があったかと思いますが、今回の三全総の試案の中に、四国の西南地域に工業導入といったような形で挿入されております。これがCTS、いわゆる原油基地の設置ではないかというようなことで心配をし、過日も高知県の漁民が三千人も集まって、これの反対大会も持たれたというように、非常にこれに対して拒否反応を示しておるわけですが、そのやさき、こういった事故が生じたわけです。このことについて三全総の中で、やはり原油基地を設置するということを想定して、その設置に全力を挙げて政府は取り組むというようなことをもちらっと新聞で見たわけですが、国土庁の方がおいでになっていたらそのこともお伺いしてみたい。
  174. 星野進保

    ○星野説明員 御説明申し上げます。  いま御指摘の点でございますが、先生すでに御承知のとおり、四国西南地域について、特段配慮すべき地域だということで、現在、案の中に書いてございます。その中身を御紹介申し上げますと、特に今後その地域が発展するためには、「農業、林業、水産業、地場産業、観光レクリエーション等を振興し、新たに工業等の導入に努め、交通体系の整備を促進するとともに、教育、文化、医療機能を含めた総合的居住環境の整備を図る」べきであるという文言になっております。この中で、新しい工業の導入ということでございますが、私ども考えておりますのは、第一次産業に関連する加工工業、そういったものを特に地域の特性に応じながら育成していくというのが一番基本にあるだろう、と同時に、それだけで雇用機会が十分でない場合にはさらに他の工業も導入する必要があるだろうということが言外にあると思います。  先生が直接御指摘の点でございますが、この三全総の案の中では、石油基地あるいはCTS構想といったようなものについて直接、宿毛湾に置くとかなんとかというような形では具体的には何も言っておりません。ただ、私ども別の観点から、国民生活の基盤と申しますか、エネルギーだとか食糧だとか住宅というのは非常に重要になりますよ。特に現在エネルギー基地につきましては東京湾、瀬戸内海に集中しておりますので、そういうことから考えますと、すでに環境的にも問題がありましょうし、交通的にもいろいろ問題があるわけですから、西日本地域に限って申しますと、瀬戸内海地域以外のところで何かそういうエネルギー基地として受けとめる必要があるのだろうということは別の個所で書いてございます。ただ御指摘の点につきまして、別に、ここの四国西南地域に石油基地等を設置するとか、それを準備あるいは調査するとか、そういうようなことは明記しておりません。
  175. 平石磨作太郎

    ○平石委員 先ほど答弁にありましたように、今回の事故は少なくとも外洋で黒潮の中で起きたことです。したがって、当初は、この廃油がむしろ海の南の方へ黒潮に乗って流れるのではないかということが言われておりましたが、ここにある図面によりますと、これは海上保安庁のものですけれども、二十四日の時点ではすでに高知県の南のところにずっと油膜となって出ておった。二十五日の段階になりますと土佐湾の方へ入ってき始めた。二十七日の段階では同じくこうなり、二十八日の段階ではここまで入ってきた。二十九日の段階ではこうなって、きょうあたりはもうすでに、先ほども言いましたように高知県の全沿岸にわたって、東部にまで入り出した。漁民は潮の流れというのは長年の経験でわかっておる。だから、黒潮は東に流れておるから、原油基地をつくって、もしこういうことが起きても心配はないとお考えかもわかりませんけれども、今回の事故で実証されたわけです。したがって、これから仮に原油基地ができてたくさんのタンカーが入り出すということになりますと、海洋汚染というのはもう当然のこととして、高知県の漁民、一般の県民全体がここの設置については非常な拒否反応を持っておるということを申し上げておきたいわけです。  そこで、今度の被害について、被害状況の把握、そして補償ということの万全を期するように要望いたしまして、時間でございますので、これで終わらしてもらいます。
  176. 水田稔

    ○水田委員長代理 平石磨作太郎君の質問は終わりました。  次に、近江巳記夫君。
  177. 近江巳記夫

    ○近江委員 今日、自動車等によります交通公害問題は、全国各地で深刻な問題を引き起こしておるわけでございます。きょうは非常に限られた時間でもございますので、私は代表的な地域を取り上げて御質問をしたい、このように思うわけでございます。  その中で、特に最近ニュータウンが各地で建設されておるわけでございますが、こういうニュータウンというのは、近代的な計画を取り入れて、よりよい環境のもとに住民が住みやすい状態をつくっていこう、こういうことでいろいろな角度から検討されているわけでございますが、各地域においてニュータウンのそういう問題が起きてくる。これは何といいましても、環境アセスメントを初めいろいろな点で、政府のそうした計画性あるいは指導性といった点において非常に大きな問題があるのじゃないかと私は思うわけでございます。  私は、先ほど申し上げましたように一つの地域を代表的に取り上げてみたいと思うのでございますが、御承知のように大阪の千里ニュータウン、ここはわが国最初の、しかもほぼ完成された団地としましては最大規模を持つ団地じゃないかと思いますが、昭和五十二年の九月末で人日は、豊中市、吹田市両方のニュータウン地域合わせまして十二万九千三十四名、これだけ多くの人が住んでおられるわけでございます。このニュータウンの中に、御承知のように、中国縦貫自動車道、中央環状線、新御堂筋線、さらに北大阪急行電鉄、こうした交通網があるわけでございますが、今日おびただしい交通量になっております。新御堂筋線におきましては昼間一時間二千百台、中央環状線におきましては一時間五千八百台、中国縦貫道路におきましては一日一万七千台、さらに北大阪急行、こういう中で住民は公害で非常に苦しんでおるわけでございます。  それで、住民の間におきましてもいろいろなそうした対策協議会等もつくられておるわけでございますが、この間、豊中市の千里地区交通公害対策協議会というのがアンケートをとったわけでございます。その中でいろいろな意見が出てきておるわけですが、騒音原因にはどういうものがあるか、いろいろございますが、たとえばいま申し上げたそうした自動車あるいは北大阪急行は当然としまして、もう少し中身を申し上げますと、パトカー、救急車のサイレンの音、大型トラック、バス、単車、さらに御承知のように豊中市には大阪空港がございますから飛行機の音もミックスする、急ブレーキのタイヤ音、それから特に雨天の場合のタイヤの音ですね、深夜の騒音、それから深夜、早朝のクラクション、あるいはそういう道路に面しておりますから反射音が非常に大きい、北大阪急行の警笛あるいは駅の中におきます放送、そういう音がこだましてくる。さらに居住性への影響を非常に訴えておりますが、道路面の部屋は使用しない、うるさい、窓をあけないようにしている、ラジオをつけて騒音を逃れている、もうこれ以上の騒音には耐えがたい、ガラス、網戸、家具、敷物等が汚れる、ほこりがよくたまる、地響きがひどい、サッシの腐食が激しい、もう年数がたっていまではあきらめて、なれで住んでいる、来客があった場合には眠れない、このように訴える。こうした非常に強い声が出ております。さらに病気の症状等を訴える人が多いわけでありまして、アレルギー性の鼻炎あるいは結膜炎、頭痛、ぜんそく——これは特に子供に多いわけでございます。それからへんとう腺、せき、たん、湿疹、吐き気、くしゃみ——特にこれは朝夕によく出る、それから耳の異常、かぜによくかかる、胃の調子が悪い、精神的にいらいらする、郊外に出ていくとよくなって帰ると悪くなる、病気の療養中であるけれどもとてもうるさくて悩んでいる、季節の変わり目に特に目に異常が出る、幼児に異常を感じる、夜中に目が覚める、寝つきが悪くなる、睡眠不足で翌日仕事に影響する、また受験勉強等子供に非常に大きな影響が出てくる。さらに排ガス等につきましては、風向きにより非常に強く感じる、窓をあけられない、風のないとき目が痛い、悪臭がきつい。いろいろそういう声が出ておるわけでございます。  こういう計画された、近代的なニュータウンにおきまして、こういう問題が非常に強く出てきておるということにつきまして、一体、建設省さんなり、またこうした環境問題に取り組んでいらっしゃる環境庁さんとされまして、いま全国各地にこのようにニュータウンが建設されておるわけでございますが、こういう根本的な都市計画という点におきまして、どういうように建設省さんと環境庁さんは話し合われておられるのか、その実情につきまして私はお聞きしたいと思うわけでございます。
  178. 渡辺修自

    ○渡辺説明員 お答えいたします。  この地域につきましては、先生御承知と思いますが、計画が決まりましたのが、構想が決まりましたのは昭和三十五年でございまして、ニュータウンの都市計画決定が三十五年から三十九年にかけてでございます。それから縦横に走っております。ただいまお話しの幹線道路、これが都市計画決定が三十七年というような時代であったわけでございます。実はこの時代はまだ自動車の全国の保有台数も約四百万台というようなことで、今日から見ますと、十分の一とは言いませんが九分の一程度というような非常に少ない時代でございまして、むしろこういう大きな団地を効果的に使っていただくために、そういう幹線道路があるということがきわめて望ましい条件であるというような時代であったかと思います。ただ、その後いろいろ各地域の発展がございまして、また経済的な発展がございまして、非常に交通量がふえてまいりまして、いま御指摘のようにここは第二種住専地区でございますが、高層建築といえども音が非常にうるさいというようなことに象徴されますような環境問題が非常に多く発生いたしております。  この対策につきましては、いまいろいろ関係機関寄り集まりまして検討しておるわけでございますが、問題は、こういうような幹線道路と団地といったものを一緒のところにつくるというのがいまや非常に問題があると申しますか、むしろ不適当である、こういうことかと思うわけでございます。最近やっております幹線道路とニュータウンのようなものにつきましては、事前に十分調整をとりまして、環境問題に配慮した道路構造をつくり、あるいは団地側でも道路に面した部分に流通的なものをまとめていただくとか、そういうような調整をいたしております。その例といたしましては、関越自動車道に川鶴団地というのがございますが、これは関越自動車道と十分調整をとりまして環境対策をやっておるところでございます。
  179. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 先ほどの先生の御質問で、どういうぐあいに建設省と連絡しながら対応しておるかということでございますので、若干経緯を御説明いたしたいと思います。  四十六年に環境基準を決めまして、達成努力目標というのが実は五十一年でございましたが、そのときに達成状況が非常に悪い、少しはましになっているがきわめて遅々たるものであるということで、正直に申し上げまして、幹線道路の公害問題にはっきり取り組み始めたのはこの五十一年からでございます。もちろん、それまでにやっておりましたことは、自動車を規制するということに一番力を入れておりました。四十八年規制、五十年規制、五十一年規制、五十三年規制ということで、その根元を押さえるということに力を入れておりまして、残念ながら、その千里のニュータウンのケースをとらえたお話をいろいろ伺っていまして、いま建設省の方もおっしゃいましたが、あれのできたころのその認識と現在ぶつかっている問題とには非常に差があるという状態でございます。その点で、先生も御承知のように、石原長官はこの交通公害の問題に非常に関心を持たれまして、四十三号線、これはもう全国で最悪の道路であろう、しかも両方とも国道であるということで、そこに二度行かれまして、その準備のため、大気局長といたしましては、建設省の道路局長運輸省の自動車局長、警察庁の交通局長と何度も、こちらから参りましていろいろ御相談をいたして、そして最後に長官がこの三局長を直接連れて行かれて現地で対策会議をやられて、この沿道対策の問題と非常に積極的に取り組むという方向にきたわけでございます。  そういうことで、先ほど建設省の方からのお話には、直接お話に余りはっきりされなかったと思いますが、建設省の筋では、沿道整備対策要綱ということで非常に積極的な方向に転じてきておられるように私どもは解しておるわけでございますが、先生のおっしゃったこの第二種住専地区であれだけの住居地域の中の問題としてはまだ非常な努力を要するというぐあいに認識しておるわけでございます。
  180. 近江巳記夫

    ○近江委員 この千里ニュータウンというのは、先ほど申し上げましたように日本最初の最大規模のニュータウンですね。当然これは外国のそうした例も御参考になさってきたのじゃないか、このように思うのですが、外国の場合は、御承知のように、幹線道路等をやむを得ずニュータウンの中に持ってくる場合は、住宅地との間にいわゆる緩衝地帯、バッファーゾーンを五十メーターとか百メーター幅で緑地帯としてとっているわけですね。ところが千里ニュータウンの場合は、そういう幹線道路のそばにもう本当に高層建築が並んでおるというようなことでございまして、どれだけそういう環境という点において配慮されてきたのか、非常に大きな疑問を感じるわけでございます。  実際政府として本腰を入れて取り組みを始められたというのは非常に遅かったという点を答弁されたわけでございますが、やはりそういう見通しという点におきまして、特に環境を守らなければならないという認識において政府は非常に欠けておった。これは済んだことということでは済まされない問題だと私は思うのですね。その点はどのように反省されていますか。
  181. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生からいろいろ御批判のございました点は、確かにそのような節は特に交通公害のところにおいて大きいというように感じております。そういうことで、交通公害対策が今後の私どもの大気保全局の行政としては最も大きな問題になる、そういう認識を持って取り組んでおりまして、各省の関係もできるだけこちらから出向いていろいろお願いもし、物によっては折衝もして進めていくというような努力を重ねておりまして、現在の段階では発生源、特に音につきましては中央公害対策審議会から自動車の音の規制の最終目標値を昨年いただいております。これは加速騒音で五十年九月に第一次規制をやりまして、それから次に五十四年にやります。それからX年後に第三次規制をやるということで、自動車の方はおのおの三デシベル、三デシベル、三デシベルと、エネルギーにすれば半減していくという目標を打ち出しまして進めようとしているところでございます。それで発生源規制としてはもうまずその長期目標が限界であるという認識に立ちまして、そういうことで交通規制の方のものもありますし、これは大阪府は特に交通規制を非常に熱心にやったところでありますが、総量削減としては非常に限界があり、都市周辺の交通削減という形には事実上余りなってないというふうに伺っていますし、そうしますと今度はどうしても道路の構造、いま先生の御指摘のような緩衝地帯とかあるいは防音壁とかあるいはいろいろ道路の本質的な構造があろうかと思います。そういう点で外国のことも参考にしなければいけないということで、この間の国際的な道路会議には私どもの特殊公害課の課員を派遣をいたしましていろいろそこの中で議論されておることも調査をしてまいりまして、いずれことしの秋の暮れには建設省に沿道問題で勧告をしようというような立場に立っております。これは従来の沿道の環境基準の達成の方途の中には、そのような道路対策の事項が全然入っておりませんでした。これは建設省の方が先に積極的に予算的に事業を始められつつ——いまそういうところにあるわけですが、環境庁としてこれを積極的にプッシュしようというような意図のもとに建設省に働きかけよう、こういう段階にあるわけでございます。
  182. 近江巳記夫

    ○近江委員 大阪府あるいは豊中市等が協力しましていろいろ騒音測定等をやっておりますが、いずれもこれは環境基準をオーバーいたしております。さらにまた、要請の基準というのがございますが、それもオーバーしておる。したがいまして、これは環境という点からいきますると最悪の状態に入っているわけです。  そこでいろいろ今後対策をとってもらいたいという声も非常に強いわけですが、いろんな声がありますが、代表的なものを申し上げてみたいと思うのです。  交通総量規制あるいは防音壁をぜひ設置してもらいたい、二重窓とせよ、二重窓ということになってまいりますると、やはりクーラー等についても当然考えてもらいたい、スピード制限夜間の通行規制、そしてまた幹線道路にシェルター等もぜひつけてもらいたい、あるいは特に夜間の交通総量を減らせ、あるいは単車、大型車、バスの通行規制、また、これに対する夜間規制、パトカー、救急車の夜間音の自粛を望む、住民については健康の定期診断、健診をぜひやってもらいたい、また、法律の改正、基準というのは平均のそういうことをとっておりますが、これは最高音にすべきである、また、植樹による防音林をぜひさらにふやしていただきたい、現状の植木というものは防音にはなっておらない、当然そういう被害を受けておるところにつきましては家賃を減額をすべきである、また無公害の自動車の開発に力を入れるべきである、そしてまた建物自体も非常に反響音というものが大きいわけですから、やはり吸音盤等の施行を考えるべきではないか等々の声が非常に強いわけでございます。  これはただ建設省なり環境庁なり運輸省なり一省だけが力を入れても解決できない問題だと思うのです。きょうは関係各省お見えになっていらっしゃるわけでございますが、こうした問題に対しまして、それはそれぞれの地域全部事情が違うわけですから、対策というものも最も適切にその地域に合ったものをやっていかなければならない、私はこのように思うわけですが、大体の事情というものは皆さんも御承知かと思います。  そこで、運輸省としてはどういうことをお考えになっておるか、また建設省としてはどのようにお考えか、警察庁はどのようにお考えか、また環境庁としては、先ほど局長からも答弁ございましたけれども、さらにつけ加えて抜本的な対策についてはどういうことをお考えであるか、こうした点についてお伺いをしたいと思います。
  183. 梶原清

    ○梶原説明員 運輸省といたしましては、先ほど橋本局長がお触れになりましたように、一台一台の自動車から発生する騒音と排気ガスを公道面で低減させる努力をいままで続けてまいりましたし、今後とも環境庁さんと密接な連携をいたしましてその努力を続けてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  また、国道四十三号線で問題になりましたように、幹線道路の周辺地区で関係住民の方々の生活環境が問題になっておるわけでございます。先般も大型トラックによる騒音等の公害対策といたしまして、一方においてトラック輸送の公共性を維持しなければいけないという必要もございますので、たとえば法定速度、法定積載量を完全に遵守するとか、そうした運転マナーの向上を図る、また、問題発生地域における深夜、早朝の交通量を減少させるため、荷主の理解を得ながら可能な限り当該地域の通過時間を調整するというようなことにつきまして、トラック業界に対して強力に行政指導いたしておるところでございます。  いま先生からの御指摘にございました千里ニュータウンの問題につきましては、関係自治体等から十分事情を聞きまして適切な措置を講じてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  184. 渡辺修自

    ○渡辺説明員 建設省といたしましては、特に四十年代の後半からこういった道路に関する環境問題がふえてまいりまして、そのころからいろいろと研究をいたしまして、道路の騒音の問題等、音響学会等と一緒になりまして推定の方法等につきまして研究を行ってきております。そういった結果を利用いたしまして、道路事業につきましては、いわゆるこういう環境問題の予測を行いまして、影響の大きい騒音であるとか大気汚染であるとかに関しまして対策を考えてきておるところでございますけれども、今後とも発生源対策あるいは、交通規制の問題は別といたしまして、道路でできること、すなわち遮音壁の設置であるとかあるいはある程度グリーンベルト的な幅をとる問題等を行いますとともに、つい先日通達を出したわけでありますが、沿道に緩衝性の建築物を建てることを誘導する、それでその後ろ側を守るという施策、それから自動車専用道路周辺住宅に対します防音助成の拡充といったようなことをやりまして、公害対策を推進していく所存でございます。  なお、お話しの千里ニュータウンにつきましては、先日も大阪府の生活環境部と土木部、道路公団も一緒になりまして現地視察等を行っておりますので、具体的な方法を関係機関でいま協議しておるところでございます。
  185. 福島静雄

    福島説明員 御質問の地域につきましては、かねがね周辺住民の方々から騒音等の公害がひどいという訴えがございますし、さらにまた対策の要望行政の側にいろいろと出されておるという点につきましても、警察におきまして承知いたしておりまして、過去に中央環状線につきましての速度規制の強化、これは六十キロから五十キロに下げたわけでございますが、そういう規制の強化を大阪府公安委員会が実施してまいったところでございます。  今後の対策でございますが、何分、非常に重要な幹線道路の問題でございますし、警察の対策だけでなかなか万全を期しがたいという問題もあろうというふうに存じております。私どもといたしましては、当面、所轄の大阪府公安委員会に対して御質問の趣旨を十分伝えまして、どのような対策をとるのがよいか、道路管理者、自治体等とも現地で十分協議いたしまして、よく対策の検討を進めるように連絡をとってまいりたいと考えております。
  186. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 環境庁といたしまして、最も具体的な差し迫った問題は、この秋の暮れに大型ガソリン車及びディーゼルに関係しましたNOの排出規制の長期目標が出ますと、すぐそれに次いで五十四年の騒音規制の許容限度を決めるということを現在計画しておるわけでございます。これで大体三デシベルカットになるということでございまして、われわれの認識はNOX問題以上に騒音規制は深刻であるということで、五十四年規制をぜひともまず達成したいということでございます。  それから、さらにその次の最終規制があるわけでございますが、これは正直に申し上げまして非常にむずかしい基準でございます。いまの大きなトラックや何かは恐らくできなくなるのではないかと言われているほどの問題でございまして、それに追い込んでいきますには、排ガス対策と騒音対策と両面の問題の非常に相反する拮抗がございますので、技術評価をきっちりしながら達成の方向に追い込んでいくということが環境庁として最も具体的なことであると思います。  それからもう一つは、環境庁本来の役割りといたしまして、空港あるいは新幹線に対して勧告をし、環境基準を決めてまいりましたが、幹線道路につきましても、五十四年規制の告示をしましたら、建設省に対しまして勧告をしたいということで、現在準備をいたしておりまして、これは従来とは違って、本来の環境基準達成の方途の告示の中になかった内容のものを打ち出さなければならない、また、第八次の道路五カ年計画が来年早々に決まるということのタイミングを踏まえまして、まず早急に勧告をしてそのプッシュをするということと、もう一つ非常に本質的な問題は、道路わきの環境基準の達成のための方途というものを本格的に改定しなければなるまいというぐあいに考えております。そういうことで、九条三項に基づく環境基準の基礎を検討するための専門委員会を来年度から発足させて、これは三年くらいかかると思いますが、それに基づいて本格的な対策の方向を打ち出したいと思っております。  環境庁といたしましては、各省の関係をこちらからいろいろお願いし、あるいは折衝して歩くということが一番大事なことであると思いますし、また、地方自治体とよく話し合って、しかも住民の方々の声を中央政府の中でできるだけ生かしながら努力をするということが一番大事であるというぐあいに考えております。  以上でございます。
  187. 近江巳記夫

    ○近江委員 橋本さんにお伺いしたいと思うのですが、建設省に勧告をするとおっしゃっておるわけですけれども、その中身として、概要はお話しになったわけですが、特にこういうことを勧告したいのだという点をお伺いしたいと思います。
  188. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 具体的な内容は建設省と折衝もいたさなければなりませんので、いま非常に具体的にまで申し上げるわけにはいきませんが、一番キーのポイントは、従来の騒音対策の中の告示に沿道対策が全然入っておらなかったということでございます。それをはっきり環境庁としてもバックアップをする、強く押してほしいということを打ち出すということと、それから建設省が積極的に幹線道路の沿道対策の要綱も出し、また来年度の要求もしておられますが、環境庁としては予算を獲得するための突っかい棒をしたい。建設省とすればずいぶん迷惑なことを言われるという節もあろうかと思いますが、環境庁の役割りというのは本来そういう役割りが本質的な姿であります。そういうことをもって対応していきたいということでやっておりますので、前の新幹線や飛行場のときのような非常にパンチのきいた勧告という意味ではなしに、これから方針を転換をして、バックアップをしていくということのための勧告であるということだけをひとつ御理解願えればありがたいと思います。
  189. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう方針転換をされるわけでございますから、余りパンチの入ったものじゃないというお話もございましたが、パンチの入ったものにぜひやっていただきたい。特に要望いたしておきます。  時間の関係で締めくくりたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、これは日本最大のほぼ完成されたニュータウンでございます。したがって、ここを政府、関係各省が徹底した調査をされることは、これはすべてのニュータウンにも今後生かしていけることにもなるわけでございます。いま地域においては、大阪府なり地元市なりあるいは道路公団の大阪支所ですか等が中心になってやっていますが、結局お互いの責任のかぶせ合いというようなかっこうで何ら進展がないわけです。  そこで、私は最後に要望したいと思いますのは、関係各省、環境庁、建設省、運輸省、警察庁、ぜひ一度現地の実態を視察をし調査をしていただきたい。その上でどうするかということをさらに実のあるものにするために、ぜひやるべきであると思うわけでございます。その点に関しまして、各省順番に御意見をお聞きしたいと思います。
  190. 渡辺修自

    ○渡辺説明員 先ほど申し上げましたように、すでに地元の方々からの御要望がございまして、地元の私どもの出先機関が現地に参りまして、いまいろいろ対策をやっておるところでございます。先ほど先生が御指摘になりましたようにいろいろな対策の組み合わせでないと実効の上がるものができないかと思います。その点は確かにむずかしいわけでございますが、私どもは、大事故が急に発生したというのと若干異なりますので、地元での協議が相調ったものをよく判断し、関係省庁とも協議をしながら、必要があれば行ってまいりたいと思っております。  なお、単独には、すでに現地は何回か関係の者に見させております。
  191. 梶原清

    ○梶原説明員 環境庁さん、建設省さん等の関係行政機関とよく協議をいたしまして、必要があれば調査に参画をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  192. 福島静雄

    福島説明員 警察につきましては、先生御承知かと存じますが、交通対策の直接の権限は各都道府県公安委員会が持っているわけでございます。したがいまして、本件については私ども地元に十分連絡をいたしまして、とりあえずのところは現地大阪府公安委員会がいろいろ検討もいたしておりますので、それによってさらに対策の進展を図るようにしてはいかがかというふうに考えておるところでございます。  なお、警察庁から現地へ行くかどうかにつきましては、よく関係省庁とも御相談の上検討させていただきたいというふうに考えております。
  193. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま各省からも御意見がございましたが、やはり各省の仕事がはっきり固まるということが中心でございますし、私どもも問題の認識をはっきり固めたいと思います。     〔水田委員長代理退席、委員長着席〕 これは率直に申し上げますが、各省だけが寄って会議をしたらうまくいくかというと、なかなかそういうぐあいには運びませんで、よほどお互いに根回しをして準備をしていってやらないとできないということでございまして、環境庁としては、むしろ問題をよく勉強さしていただきたい。各省との連絡には努めたい。そして、これならいけるという有益なやり方ができるというときが来ればぜひともいたしたいと思いますが、早急にさっとやるということは、いままでの経験から見ましてもなかなか実際の実効を生みがたいし、かえって不信を生むというようなこともございます。そういうことで、各省の関係を密にすることには最大の努力もいたしますし、環境庁としても勉強したいと思っております。
  194. 近江巳記夫

    ○近江委員 石原長官が四十三号線を視察された。私は、キャップが体を張ってそこに乗り込む、これは非常に有意義なことだと思います。この点は高く評価をいたします。そういう点におきまして、ぜひここをよく見ていただくということはすべてになるわけでございますから、いままで挙がっておったデータとかそんなもので分析してまた考えますというのじゃなくして、すでに検討される数値等も挙がってきておるわけですから、ぜひ国としても今後のニュータウン計画等においても、これだけ国民の環境を守るために力を入れている、そういう姿勢が私は一番大事だと思うのです。ですから、これは環境庁さんを中心にされてぜひ行っていただきたい、私はこれを要望いたします。長官ひとつ御答弁いただきたいと思うのです。
  195. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 いま橋本局長からもるるお話しいたしましたが、四十三号線の場合もかなり各省庁がそれぞれ単独で調査いたしまして、環境庁環境庁でも何度か出向きまして、一応機が熟したというところで環境庁の長官が出向きまして、各省の担当の局長が集まって、現場で決められるものは決めたわけでございます。ですからわれわれとしては、それをすることは決してやぶさかでございませんので、どこまで機が熟しているかということを調査いたしまして、しかもできるだけ早い機会にそれをしたいと思います。また確かにおっしゃるとおり、代表的な千里ニュータウンがこういう問題が起こっている。先ほど運輸省の方でも、モータリゼーションがここまで普遍するとはとても思わなかった時点で立てられた計画でございますから、よかれと思ってしたことが悪い結果になっているわけでございますけれども、環境庁が考えておりますアセスメント法にもやはり都市計画というものを対象に入れようということで建設省と交渉しておりますが、そういうことの大きなよすがにもなると思いますので、できるだけ早く機を見て、しかし機が熟したところでそういう調査に現場へ総合的な体制を整えて参るべきだと思っております。
  196. 近江巳記夫

    ○近江委員 長官からきわめて積極的な御答弁がございました。やはり何といいましても、政府の皆さん方が行かれるということが問題解決に一番早いんじゃないか、私はこのように思います。そういうことで、できますれば今年中ぐらいにぜひとも関係各省の代表の方が一応視察をしていただく。と申し上げますのは、何といいましても大体年内予算編成も言われているわけですし、そうしたことをまたこれは組み込んでもらわなければならぬわけですから、年内にできる限りひとつ調査団を派遣していただきたい。もう一度長官にその点ひとつお伺いしたいと思います。
  197. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 各省庁がどれだけの期間、どれだけの頻度でいままで現場の声を聞き取っているか、私つまびらかにいたしませんが、確かにおっしゃるように予算のタイムリミットなどもございますので、できれば貴意に沿うように各省間の事情を聴取いたしましてそのように努めます。確約するというわけにいきませんが、そのように努めさせていただきます。
  198. 近江巳記夫

    ○近江委員 強く要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  199. 島本虎三

    島本委員長 次に、古寺宏君。
  200. 古寺宏

    ○古寺委員 限られた時間でございますので、概略最初申し上げまして、一つ一つ質問申し上げたいと思います。  これは青森市の場合でございますが、昭和四十四、五年ごろから地盤沈下が発生いたしまして、そのために公共下水道の中の古い下水道でございますが、これは合流下水道でございますが、雨水吐き機能というものが低下しまして、少し雨が降りますというと、マンホールから下水が吹き出すというような状況になりまして、この公共下水道の工事を、管渠の入れかえ工事を始めたわけでございます。そのために、第四次五カ年計画の公共下水道事業の中の実に四八・七%がこの地盤沈下対策、合流施設改善事業というものにとられまして、当初の目標が達成できないというような状況になっていることが一つでございます。さらにまた、地下水のくみ上げを抑制するために、現在青森市の上水道は地下水のくみ上げを相当やっているわけでございますが、新しい水源の開発をしなければならない。そういうことで、現在、荒川という川から取水をする予定になっておりますが、この荒川という川は非常に酸性水の川でございまして、そういう泉源対策もやらなければならない、こういうような状況になっているわけでございます。  そこで、環境庁長官お尋ねしたいのは、わが国地盤沈下対策、これについて法制化をどういうふうにお考えになっているのか、まず承りたいと思います。
  201. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 典型公害一つでございます地盤沈下をあちこちに見ているわけでございまして、これを防止するためにいま法律をつくろうと思っておりますが、関係する省庁がそれぞれ地下水に関する法律を持っておりまして、そのすり合わせをいま急いでいるわけでございます。  詳細については局長の方から答えさせていただきます。
  202. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 先生御存じのとおり、地盤沈下防止のための法制、これは現在、工業用水法ともう一つは俗称ビル用水法と言われておる二つの法律があるわけでございます。また、それと並行しまして条例等で地方公共団体が規制をするというようなことが現状でございます。そこで、ただいま長官からお話しございましたように、環境庁といたしましては地下水採取の面につきまして、この工業用水それからビル用水だけではなしに、さらに農業用水なり上水道用水、こういうものも含め、未然防止等もやれるような形の法制を考えておるわけでございますが、ただいま長官からもお話しございましたように、建設省、通産省、国土庁それぞれの省庁におきましても地盤沈下の法制化を考えておられるわけでございます。そういうことで、かねてから関係省庁で調査を進めてまいっておるわけでございますけれども、なかなかそれぞれの立場がございまして、まだ調整ができておりません。できるだけ早く調整を済まして次の通常国会には法案を出そうかということで現在精力的に詰めておる、こういう段階にございます。
  203. 古寺宏

    ○古寺委員 青森市の場合もあと五、六年すると海抜ゼロメートル地帯のところが発生する、こういうふうに言われております。このために下水道事業にいたしましてもあるいは上水道の問題にしましても関連する問題がたくさん発生しているわけです。したがって一日も早く法制化を図って地盤沈下防止し、そしてまた関連するいろいろな事業について対策を考えませんと大変な問題になると思いますので、次期の国会には必ずこの地盤沈下の法制化を提案できるように環境庁としても積極的にひとつ推進してもらいたいと思いますが、大臣、いかがですか。
  204. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 そのつもりで鋭意努力いたします。
  205. 古寺宏

    ○古寺委員 次にお伺いしたいのは水資源の問題でございます。国土庁はきょうですか、第三次の全国総合開発計画について諮問答申がなされる予定になっておりますが、昭和六十年のわが国の水の需給関係はどういうふうになっているか、その内容についてお答えしてください。
  206. 和気三郎

    ○和気説明員 水資源の長期需給見通しにつきましては私どもも現在検討中のところでございますが、現在の見通しといたしましては、昭和六十年までに今後水需要の増大があろうと思います。これからの水需要の増大といたしましては、全国的に約二百億トンオーダーの需要が想定されまして、その水需要に対する供給といたしましては今後、現在実施しております事業を円滑に実施するといたしましても、全国的に約四十ないし六十億トン程度の不足が毎年生ずるのではないかというような見通しを持っております。今後とも私どもといたしましては、水需給の長期的見通しを立てまして長期計画をまとめたいと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
  207. 古寺宏

    ○古寺委員 いま御答弁があったように非常に水不足の現象が将来想定されるわけです。  そこで、水資源の開発の中で、たとえば岩手県の松尾鉱山の、いわゆる北上川の清流化対策あるいは秋田県の玉川の清流化対策、いろいろございますが、青森市で申し上げますと、荒川のいわゆる酸性水を中和処理する、そういう新しい水資源の開発というものが私はぜひ必要じゃないかと思います。と申しますのは、わが国は非常に火山地帯が多いために、せっかく川がございましてもそれを活用できないというところがたくさんあるわけです。岩手県や秋田県の場合には五省庁会議というものでこの対策を検討しておりますが、この堤川の場合、荒川の場合にはそういうような対策がまだできていないわけでございますが、環境庁は水資源開発という立場からいって、この問題についてどう考えておられるのか、また近い将来において、そういう関係機関、関係省庁の会議をつくって検討する意思があるかどうか承りたいと思います。
  208. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 先生からお話がございましたように、この荒川でございますが、これは非常に強酸性の水に相なっております。上流の地獄沼等の温泉とか地下水の湧水、これも非常に強酸性の地下水が出まして、それがこの荒川に注いでおるわけでございます。  そこで現在、荒川の水資源の開発ということから建設中の多目的のダムがございます。下湯ダムということで、県営事業でやっておる、かように聞いております。このダムから上水道用水として日量六万五千トンの水を利用することにいたしておりますが、先生お話しのとおりこの水がきわめて強酸性のものでございますので、青森市の方におきまして浄水場の建設をやっておりますけれども、この浄水場でこの水を取水後、浄水施設で中和をする、かように計画をしておると聞いておるわけでございます。  なお、市の方ではさらに、先ほど申し上げましたような上流の地獄沼、こういうところが酸性の水源にもなっておりますので、そちらでまず、源泉であります地獄沼の方でも中和処理を行うということを検討して現在いろいろ調査実験中、かように聞いておるわけでございます。そういうことで水資源の開発と言いますか、そういう角度でこういう酸性水等を中和処理する等によりまして、まともな水として使用できる形にすることが非常に望ましいことであると思います。  そこで、いまお尋ねのお話は、同じ強酸性で松尾鉱山の毒水によります北上川の清流対策でございます。これは関係の五省庁ございますが、環境庁は世話役みたいな角度でこの面と取り組んでおります。それから秋田玉川の例も出ましたが、これも県の方の強い要請もございまして、環境庁もその辺の関係五省庁及び秋田県と話し合いなどもいたしております。  青森の荒川につきましては、ただいま申し上げたように青森市当局におきまして浄水場の段階で中和処理をするということが一つございますし、先ほど申し上げましたようにさらに酸性の水源であります地獄沼、こちらでもやってみようかということで検討しておる、こういうことでございます。特に市の方からもまた県の方からも、五省庁でやってくれというお話も具体的には聞いておりませんし、またそうややこしい話でもなさそうに思いますので、いまのところ五省庁会議をこちらから持つというようなことはまだ考えておりません。
  209. 古寺宏

    ○古寺委員 建設省では、昭和四十二年から、荒川のダムの調査が始まっているわけですが、もう十年たっているのにまだ本体工事が始まっていないわけです。理由を聞きますと、地盤が悪いとか漏水がどうであるとか毒水がどうだとか、いろいろな理由をおっしゃってこのダムの本体工事に入らぬわけですね。  昭和四十四年には、青森市で大水害がございまして、このダムをつくるとともに、現在の堤川水系におきましては二千二百トンの水を飲むような対策を考えているわけですが、このダムができましてもまだ、恐らく半分ぐらいしか飲めないのじゃないかと私は思う。そうしますと、水害の危険はある、また、一方では地盤沈下のためにどうしても上水道の水をダムから取らなければならない、いろいろな問題があります。そういう非常に大事な問題がどうしてこういうふうにおくれているのか。  それから、農林省も関係ありますが、毒水によって相当減収があるわけです。そういう問題がありながら、お隣の秋田県や岩手県では五省庁連絡会議というものを設けて国がバックアップして対策を講じながら、青森市や県の方から何も言ってこないからそれでよろしいんだというような状態でなぜ放置をしているのか。これはまず建設省、農林省、それから厚生省に御答弁をお願いします。
  210. 堀和夫

    ○堀説明員 お答えいたします。  先生指摘のように、下湯ダムについては、青森市を貫流する堤川の治水対策といたしまして、また水資源対策として緊急を要するということを十分認識して私どもやっておるわけでございます。ただ、ダムにつきまして、八甲田の火山地帯でございますので、いろいろ地質上慎重な配慮を要する点があるということで私ども鋭意調査をしてきたわけでございますが、ようやくそのめどもついてきておりますので、この事業の早期完成を目指して私ども推進を図ってまいりたいというふうに考えております。  なお、堤川全水系の洪水調節といたしましては、本ダムのほかに、さらに横内川あるいは駒込川等のダムで洪水調節の必要性があるわけでございますが、当面まず下湯の早期完成ということで私ども鋭意推進を図ってまいりたい、そういうように考えておるわけでございます。
  211. 泉田収

    ○泉田説明員 お答えします。  先生の御指摘のとおり、現在、荒川から水を取っている地域約千ヘクタールにつきまして、それほどひどい被害ではございませんが、被害を確認しております。五十年度に私どもがやりました調査で承知しております。これは三十五年までの間に、源泉の対策事業、これは鉱毒対策事業でございますが、これをやりまして、その施設が老朽化してまいったということが原因だということになっております。ただいま県単で、これは耕地課サイドでございますが、どういう対策をするかということについて関係方面とも調整の上調査中でございまして、明年度はさらに農林省もこの調査に対して一緒になってやりたいということで現在考えております。
  212. 山村勝美

    ○山村説明員 生活用水の需要増に伴いまして、かねてから水源を確保したいということで市当局で周辺の中小河川についていろいろ調査をしておったのでありますが、御指摘の荒川を初め、水質及び水量的にいろいろ問題がございまして、とても水道水源としては使えないという見通しから、この五十二年の一月かと思いますが、本年初頭に変更認可をするまでは地下水によって生活用水を確保するというような計画で進めてきたわけでございます。本格的に地下水を表流水に切りかえたいという考えが強く出てまいりましたのは、四十九年一月に青森市の地下水くみ上げ等の規制の条例ができましてから本格的な検討をし、たまたま下湯ダムが治水対策として進行中であったということでそれに乗ろう、あわせて、問題であります御指摘の水質問題について一年間調査をした結果、これは使えるという見通しのもとに切りかえることにしたわけでございまして、このダムの建設と並行いたしまして関連する水道施設の整備を図ってまいりたいというように考えております。
  213. 古寺宏

    ○古寺委員 長官、地盤沈下による、たとえば下水道の工事とか、こういうものは当初予定されていない工事なんですね。それがいままでの年次計画の中に食い込んでくるために、面の整備とか終末処理場の施設の整備とか、いろいろできないわけですね。ですから、こういういわゆる鉱害によって発生したもの、地盤沈下等によって発生したものについては、公共下水道事業を推進する意味において別枠でそういうものは事業費を見る、こういうふうにしてもらわぬと——先日も長官は、日本のGNPは確かに先進国だけれども、下水道は後進国であるというお話をしておりました。そういう下水道を推進するためにはどうしたってそういうような対策が必要なんですよ。ですから、来年からはそういうふうに下水道事業は下水道事業として、それからまた地盤沈下とか、そういう鉱害によって発生したものについては別に予算を見てあげるというような対策が必要だと思うのですが、どうですか。
  214. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 詳しくは政府委員から答えさせていただきますが、私も、下水工事というものが地盤沈下という鉱害によって支障を来している例がほかにどれほどあるかよく知りませんけれども、これはそもそもの目的から言っても非常に不本意なことだと思いますし、これは大蔵省が何と言うかわかりませんけれども、積極的に検討してみたいと思います。
  215. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 先生御存じのとおり、下水道の関係の予算でございますが、これは建設省の方で所管をしておるわけでございます。  それで、ただいまお話がございました、いわゆる地盤沈下等に伴いまして合流設備の改善、先ほども青森の市の例を引かれましたけれども、半分ほどそちらに食われて面の方の整備が不十分だというようなお話、確かにそれは事実でございます。したがいまして、環境庁としましては、こういう事業の促進につきまして予算を要求をし、また確保されます建設省の方につきまして、十分その面については強く要請をしていきたい、こう思っております。
  216. 古寺宏

    ○古寺委員 先ほど農林省からお話があったように、かつて農林省は毒水対策というものを手がけたことがあるわけですから、建設省や環境庁関係省庁と連絡をとって、青森市や県からお話がなくとも、関係省庁連絡会議というようなものをつくって、その対策をぜひ考えていただきたいと思います。これは何も荒川の例だけじゃなくて、先ほども申し上げましたように、全国的には、わが国の水資源開発の上からこういう問題が東北地方は特に多いし、非常にたくさんあると思うのです。ですから、そういう面から言っても、環境庁はこの問題を十二分に検討をして、調整をしていただきたいと思います。  それからもう一つは、ダムの建設工事でございますが、むつ小川開発がいま行われようとしています。この場合に高瀬川というちっぽけな川が一級河川に格上げされて、淡水化とかいろいろな問題がこれから始まるわけなんですが、二十何万というような人口を抱え、しかも、国土保全の立場から言っても当然急がなければならないこういうダム工事が十年もかかってもまだ本体工事が始まらないというところは、私どうも理解に苦しむのでございますが、こういう河川こそ格上げをして、そしてダム工事をどんどん進めなければならぬ、こう思うのです。そういう意味で、建設省はそういうことを考えていらっしゃるのかどうか、御答弁をお願いします。
  217. 小坂忠

    ○小坂説明員 お答えいたします。  ただいまお話しの堤川でございますが、ダムの建設がおくれております件につきましては、先ほど開発課長が申し上げましたように地質等の関係もございましておくれておるようでございます。ただ、一般論としてこのように重要な川をなぜ一級河川にしないのだというお話でございますが、私どもの一級河川指定という問題でございますが、一級河川といいますか一級水系は、国土保全上あるいは国民経済上重要な水系について指定するということにいたしておりまして、その指定に当たりましては、その河川の規模それから治水、利水的な重要度のいろいろな要素につきましての判定をいたします。また、それともう一つは、その河川が従来管理されておりました経緯、こういったものを総合的に判断いたしまして、一級水系の指定をいたしておるわけでございます。  堤川につきましては、従来非常に大きな災害を受けたというような経緯もございますが、ずっと一貫して県で管理いたしておりました。その辺の経緯等も考慮いたしまして、二級河川ということでいま管理しておるわけでございまして、現在のところ直ちに一級水系指定ということは、実は考えておらないわけでございます。
  218. 古寺宏

    ○古寺委員 時間でございます。二十二分ではとても質問し切れる問題じゃないので、またこの次の機会にお伺いします。
  219. 島本虎三

    島本委員長 古寺宏君の質問はこれで終わりました。  次に、中井洽君。
  220. 中井洽

    ○中井委員 石原長官にお尋ねをいたします。  もうすでにこの委員会でも何回か繰り返されたことでございますが、私は私なりに、過日からの長官のあっちこっちでの大変思い切った御発言について、率直にお尋ねをいたしたいと思います。ただ、私自身は、長官と記者クラブとのいろいろないわゆる壮絶な争いということに関しては、これはこの委員会には関係がないと考えております。そのことじゃなしに、いわゆる経済との調和条項云々のことについてお尋ねをいたします。  新聞によりますと、環境庁の次官が記者会見をされて、この発言については長官と全く連絡がない、環境庁とは連絡がないんだというような、記者クラブの問いに対して答えをしているようであります。そうしますと、あの発言は長官の全く個人的な御意見である、このように理解してよろしゅうございますか。
  221. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 あの調和条項云々の問題について、環境庁の中で特に限って議論をしたことはございません。そういう意味では、いま環境庁を預かっております私の立場で、私の個人の見解を述べたわけでございます。
  222. 中井洽

    ○中井委員 あの発言の中で、魔女狩り的な要素云々ということに関しては取り消されたようでございますが、その他の調和条項を削ったのはどうであったかということに関しては、前の国会での私の質問のときの長官のお答えの中で、私は非常に印象の深い言葉があるのであります。それはアセスメントに関してですが、長官にこのようにお答えいただいているわけであります。「時代の趨勢というものを無視して、どんなにそれなりに古い価値観で合理的な能率的な行政をやっても仕方ないと思うのです。」こういうことでございます。私自身あの経済との調和条項が削られたころ国会におったわけじゃございませんが、世間全体の趨勢、新しい時代の趨勢、しかも環境庁が新しい行政の先取りという形で思い切ってあの条項を削ったというふうに判断をするわけであります。そういった観点から、またあなた自身の感覚から言って、若い世代の政治家の感覚から言って少し納得ができない点があるのですが、真意のほどはどうでございますか。
  223. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 あの時点で調和条項を削ったということは、新しい価値観にのっとった先取りの姿勢というよりも、むしろやはり四十二年に基本法ができまして、その後、先ほど申しましたけれどもあの条項は確かに隠れみのに利用されて、すべき対策というものを行政がしておらなかったということは否めないと思います。これは否めませんが、しかし、もうすでにあのときに高度成長というものの限界が云々され、先ほど申しましたけれども、次の時代七〇年代が非常に困難な時代であるし、資源有限というようなことも言われておりまして、本当の意味で先取りと言いましょうか先見性があるなら、正当な歴史意識というものを持っておるならば、そういう予想にのっとった配慮がなされたであろうと思いますけれども、ともかく行政というものはやはり起こってくる現実に対処し切れずに、結果として経済優先というような形になっておったわけであります。そういう意味で、私は調和という条項の中に、何度も申しておりますけれども経済優先というニュアンスがみじんもない限り、行政の姿勢というものがしっかりしておれば、これは一つの理想論かもしれませんけれども、あれをとったことでまた新しい誤解を生み、その誤解が現在直面しておりますいろいろな環境問題に対する対処というものを、ある意味で非常に困難にしているうらみがないでもないという結果を招かずに済んだのではないかという意味で申したわけでございます。
  224. 中井洽

    ○中井委員 どうも納得できない点もあるのであります。時間もありませんが、私自身も、日本公害問題が対策としてゼロのところから一遍に百にいった。したがって、たとえば公害防止あるいは環境保全、こういったことで技術的にできない点まで一気にやってしまえというようなヒステリックな意見等に押し流されるということがあってはならないと思いますし、科学技術というものに裏打ちされた中でやっていただかなければならないと思うのであります。しかし、経済との調和条項をとったことに関して国民みんなが大体納得しているのじゃないかと、私はいまの感覚で思うのであります。それをあえてあの御発言をなすったということの真意をちょっと聞きたかったのでありますが、またの機会もあると思います。  また、承りますと何かやめることを覚悟のようなこのごろの御発言でもあるように、私自身は勝手に判断をしておりますので、環境庁の方に、この石原長官の御発言、あるいは次官自体が環境庁とは連絡のないことである、こういった記者会見の答弁があったということについて、どういうふうに思われておるのかといったことについて率直にお尋ねをしたいし、またこういった発言でざわざわすることによって環境行政というものがやりにくくなったりしたことがないか、あるいはやりにくいなと考えておられないか、そういったことについて、お答えにくいかもしれませんが、お答えいただければと思います。お願いをいたします。
  225. 信澤清

    信澤政府委員 中井先生おっしゃいましたように大変答えにくい問題でございますが、大臣もいろいろ申されておりますが、基本法をいま改正をしてあの条項を復活させるのだとかということを申されておるわけではございません。したがって、そういう意味におきましては、庁内に動揺があるというようなことは、私はないと思っております。
  226. 中井洽

    ○中井委員 私自身も新人議員で、この委員会に出てまいりまして一年間たったわけであります。長官もその点は同じであります。残念なことには、いまだに法案が一つも出てこないわけであります。そういった意味で、過日からの石原長官のいろいろな御発言、私は前の国会のときにも申し上げたわけでありますけれども、石原長官独特の考えからの御発言というのは私どもは非常に共鳴する点もあるけれども、ひとつ環境行政が滞りのないような形でやっていただきたいし、あるいは逆に環境庁が言えないようなことを政治家として思い切って発言をして環境行政を進めていくのだ、こういう形での発言を勇気を持ってしていただければ、私どもも大いに賛成をしていきたいと考えている次第でございます。  そういった点で、前の国会で長官自身が大変残念に思われているアセスメントのその後の状況についてどのように処理をなさっておるのか、あるいは大臣としてこの次の国会にはどうしてもこれを出すのだ、そういった点についての意思の御確認というのをいただきたいと思います。
  227. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 これは原則的に閣議了解もいたしましたし、次の通常国会に提出するようにいま努力をしております。案文ができましたのはことしの正月でございますから、それから具体的な交渉に入りまして時間切れという形になりましたが、そこでもやはり非常に大きく関係省庁の対立がクローズアップされまして、中には非常に決定的な対立になりましてにっちもさっちもいかないところまでいったような対立もあるやに聞いております。それをもう一回解きほぐし直す作業をしているわけですが、いろいろ御批判もありますけれども、担当の局長もかわりましたし、また先方の局長もかわった方もおられますが、これは環境庁の基本的な姿勢はみじんも変わっておりません。どういうふうな形でその相手の省庁を説得していくか、一つの山を攻めるにもいろいろ登り口もあると思いますので、説得の方法も変えて次の通常国会に上程するべく、現在も鋭意努力を進行中でございます。
  228. 中井洽

    ○中井委員 アセスメント法が前国会で出されなかったいろいろな弊害あるいは行き詰まりの点というのは委員の皆さんもよくわかっているわけでありますが、それらについて石原長官いわくの新しくかわった局長さん、大体話し合いが煮詰まりつつあるのか、あるいは前と同じく行き詰まっておるのか、そういった点についてお話できる範囲で結構でございますから、実情をお聞かせ願いたいと思います。
  229. 信澤清

    信澤政府委員 この法案と申しますのはひとり企画調整局だけではございませんで、環境庁全体の問題だというふうに考えております。したがいまして、私も当時その衝にあったわけではございませんが、それなりに勉強もさせていただき、かつ国会での御審議の状況も伺っております。  建設省との関係でございますが、冷静に当時の建設省側の言い分等々を見た場合に、やはり私どもとしては考え直さなければならぬ問題が一つあると思います。これは大臣が先ほど申し上げたように、ことしの一月に試案なるものをある意味では公表いたしておりますが、その中で対象事業の中に道路、ダム云々と、それから都市開発事業、それから港湾計画というのが入っているわけですね。つまり、事業としてとらえるものと、港湾計画のように計画としてとらえるものと同じ次元でとらえているわけで、そこで建設省側の御意見を読んでみますと、要するに都市計画については計画を全体としてその決定の前に環境影響評価をやる必要があるのじゃないか、つまり都市開発事業とか都市施設事業というものを個々にとらえるのではなくて、計画段階でやりたい。同時に、都市計画法には、これは先生御承知のように、十六条には案を定めようとするときには公聴会その他によって住民の意向を反映させるとか、あるいは案を決定する場合にはその案について公示、縦覧の規定もございますし、関係市町村の住民あるいは利害関係人の意見聴取、こういう私どもが考えているような法案の中身とかなり内容的に似た、しかし実態は私はわかりませんが、そういう規定もあるわけで、そういう点のすり合わせをやってくれということが基本だったと思います。したがって、いま私どもの考えとしてはやはり事業のアセスメントと港湾計画のような計画のアセスメントとかなり対応の仕方は違う面があると思いますので、そういうことを具体的にどう分けていけるかどうか、これをまず内部的に検討いたしておりまして、具体的な問題としてはまだ建設省と御相談をするという域にまでは至っておりません。  それから、通産省の御主張は、アセスメントに反対しているんじゃなくて、何らかの形でこれを実施し、まあ現在実施しているわけでございますが、ある程度制度の定着を待って法律化したいということが御主張の主なる点だったと思いますが、これは物の考え方だと思いますので、これについてはひとつ一緒に仲間になって入ってくださいということをお願いするということになろうかと思いますが、いずれにいたしましてもまず内部のそういった整理を、従来いろんな形で意見をもらっております。  それから、たまたま建設省と通産省が対象になりましたけれども、ほかの役所もそれぞれ御意見を持っておるわけでございますので、そういう御意見を一応組み入れてみて、そして私どもの考えているものとどう調整できるのか。しかし、私ども基本的には環境影響評価を事業であれ計画であれ事前にやっていただくということ、それからそれについて住民の御意見を聞くということと、それを公表することがあるわけですね、それから同時にその一連の過程を通じて環境庁長官の意見を言う、主たる眼目はその三点ぐらいにあると思いますから、その眼目だけは法案の基本として最後までがんばる、こういうつもりでございます。
  230. 中井洽

    ○中井委員 ひとつぜひとも各省との折衝を乗り越えられて、法案として日の目を見るように御努力をいただきたいと思います。特に地盤沈下防止法から、とにかく環境庁の考えている大きな法案がすべてそういう各省間との話し合いで行き詰まってしまってこの委員会に出されない、法案として日の目を見ないというのは私は非常に残念だと思います。石原長官自体もぜひともそういった意味での世間的な世論をバックに頼むような御発言をしていただいて、この法案を成立させるようにあるいは提出できるように御努力をいただきたいと思います。  もう一つアセスメントについてお尋ねをするわけでありますけれども、委員会の皆さんと北海道あるいは青森あるいは瀬戸内海に視察に行かせていただいたわけでありますが、その各地でいろいろな事業あるいは計画あるいは環境保全の問題、これらの御説明を受けまして、そのときに、公害対策で行くわけでありますから、地元の方々から、環境庁の御指導によりあるいは環境庁の指針に基づきアセスメントをやらせていただいております。このような御説明をいただく。しかし、現実に私どもが住民の一部の代表者の方々から聞くと、このアセスメントのやり方についてどうもずれがある、納得をしていない、こういうことでございます。アセスメントの指針そのものについては私は詳しく聞くつもりはありませんけれども、実施の要領あるいは細かい回数あるいはどういうふうにせいということまで環境庁地元と御相談をなさっておるのか、事業主と御相談をなさっておるのか、そういった点についてお尋ねをいたします。
  231. 信澤清

    信澤政府委員 若干先生お尋ねと外れることになるかもしれませんが、やはりこの制度が初めからございまして、そして新しく計画が出てくる、こういうことで始まりますと余り問題がなかったんじゃないかと思いますが、いまお挙げになりましたような計画というのはある既成事実が先行いたしておりまして、その後環境影響評価をやっていただいた、こういうことがございます。そこにいろんな食い違いが出てきていることがございますが、やはり私は先ほど申し上げたようにこの制度を考えます場合に住民の御意向というものをどう反映させるか、この点が一つの主眼であることは先ほど申し上げたとおりでございますが、そのやり方なりあるいは聞いた後の処理なり、これについて住民の方々の中にかなり御不満なり何なりがあるということは十分承知いたしております。したがいまして、この問題は一つはやり方の問題であると同時に、冒頭申し上げましたように、ある既成事実ができたものに対して途中からあの制度を組み入れてきたということの結果でもあろうと思います。いずれにいたしましても、今後法案をつくります場合の重要な参考事項でございますので、そういう点も十分考慮しながら法案というものをつくってまいりたいというふうに考えております。
  232. 中井洽

    ○中井委員 アセスメントという言葉そのものの理解を大体いただいたというふうに、日本じゅう回って私は思うわけであります。ただし、その実行の内容につきまして、あるいは法案のとり方について、野党間もいろいろあります。政府内にもいろいろあるわけでありますから、いろいろと違いがございます。そういった試行錯誤の中からぜひともいい法案をおつくりをいただきますように重ねてお願いを申し上げます。  それでは、時間の関係で松くい虫の問題に移らしていただきます。林野庁の方お見えになっていると思いますが、前の国会で通りました松くい虫駆除の特例法に関してお尋ねをいたします。  林野庁でつかんでおられる、松くい虫にやられて松が枯れてしまったいわゆる被害面積の何%ぐらいことし散布ができたのか、この点について資料がございましたらお答え願います。
  233. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 お答え申し上げます。  五十二年度の松くい虫防除事業のうち、特別防除事業、いわゆる薬剤の空中散布でございますが、これは計画面積が九万ヘクタールでございます。そのうち実行した面積が約八万七千ヘクタール、これは一回目と二回目を通じまして八万七千ヘクタールでございますので、実施率と申しますか、実績は九七%実行した、こういうことになっておるわけでございます。
  234. 中井洽

    ○中井委員 散布した結果、被害を食いとめておる、あるいは松が枯れて死んでしまうのをとめておる、こういう結果が出ておりますか。
  235. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 お答えいたします。  防除効果につきましては、現在、枯れが進行中でございまして、その枯損が確定しますのはほぼ十二月いっぱいぐらいかかります。ほぼ八〇%ぐらいの枯損は出ておりますが、そういった関係で、十二月末に都道府県から報告が出てまいります。ただ、私どもに参っております写真とかあるいは口頭によります報告によりますと、防除効果はかなり顕著に出ておるというふうに思われます。  後ほど詳しく写真をお見せ申し上げたいと思いますが、これは兵庫県の例でございます。ここに数件持ってきておりますが、こちらの上段の方が空中防除を実施した地域でございまして、効果が出ておりまして赤い点々が余り出ておりませんが、下の方は、人家が密集しておりまして空中防除ができなかった地域でございますが、こういった個所に松枯れがかなり出ておるということでございます。
  236. 中井洽

    ○中井委員 いまお話にございました人家が近くてできない、そういったところをどういうふうに対処をするのかということが一つ。  それから計画のうち少し残っている部分は、何か特別な事情があって散布ができなかった、たとえば反対運動があったとか、持ち主さんがどうしても承知しなかったとか、そういった特別な事情があったのかどうか。その点についてお答え願います。
  237. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 お答えいたします。  まず、空中散布を実施できなかった地域で枯損の出ておる地域でございますが、これはこの後、秋口から来年の春にかけまして立木伐倒駆除を実施するわけでございます。これによりましてかなり被害が軽減できるのではないかと思われております。  それから、計画面積に対しまして実行面積が三%の開差があるわけでございますが、この面積の差でございますが、たばことか養蜂、ミツバチの関係でございますが、そういった危被害の発生しないような配慮をしました結果、当初計画したところを空中散布を中止せざるを得なかったというような事情で、三%ほど実施できなかったわけでございます。
  238. 中井洽

    ○中井委員 前の国会での審議の中で、石原長官は、昆虫あるいは人体、農作物、こういったものに対する被害というものを環境庁環境庁として追跡調査をする、このようにお答えになっておりますけれども、どのような形で調査をなさっておるのか。あるいは調査の結果、昆虫あるいは人体、そういったものに被害があったという報告があったのかどうか、その点についてお尋ねをいたします。
  239. 出原孝夫

    ○出原政府委員 環境庁といたしましての調査はこれからでございますが、特に鳥その他の生態に対する影響が問題でございます。したがいまして、五十二年度と五十三年度にわたりまして空中散布をした地域としない地域、この二つに分けまして比較対照した上で答えを出すというのがその手法でございまして、この調査を五十二年度はその対象地域に巣箱等を設けて、それから鳥の生態等をあらかじめ承知をしておく。五十三年度は散布された地域とそうでない地域とで、その中の昆虫あるいはそれを食物にする鳥その他がどういう影響を受けるかということを比較対照いたしたいということでございまして、まだこれから、いま準備中の段階でございます。
  240. 中井洽

    ○中井委員 これからと言われますと、私ちょっと理解できないんですけれども、空中散布した途端にやらなくていいんですか。
  241. 信澤清

    信澤政府委員 当時私が担当しておりましたので、私から申し上げさしていただきたいと思いますが、確かに、大臣申し上げましたように、いろいろ調査をやるということをお約束いたしました。実はその一部はやったわけでございますが、これは主として被害松林の状態についての調査、それから一般的に薬剤の散布によって鳥類その他にどういう影響が出るか、それについてどんな調査をやったらいいかという基本的な部分についての調査、それから使います薬剤の安全性についての調査、これはいたしたわけでございます。  そこで、先生の御関心の、具体的にまいた前と後でどうなるかという調査をやるべきでございましたが、この問題に非常に御関心の深い野鳥の会その他の方々の御意見を伺いますと、いまからやったんでは間に合わない。ついては、ことしは仕方がないけれども、来年きちっとやってもらいたい。そこで、ことしの予算はないわけでございますが、幸い私がいまやっております企画調整局の方にこの種のいわば研究調査の調整費というのがございます。ことし三億幾らでございますが、その中から約一千万円支出をいたしまして、いま自然保護局長が御答弁いたしましたように、そういう野鳥の会の人たちの御意見にも従ったような調査の設計をやっておる、これを来年に向けて二年度にわたってやっていく、こういう構想でございます。
  242. 中井洽

    ○中井委員 わかりました。それはそれで結構でございます。  私どももあの法案に党内でもいろいろ議論があったわけでありますが、思い切って、松の枯れるのを防ぐんだということで賛成をいたしました。したがって、被害が出たとか効果がないなんて言われると大変困るのであります。野鳥の会の方の御意見を聞かれるのも結構ですけれども、国会の方のお約束どおりひとつぜひ進めていただきたいと思います。  それでは最後に、過日、十月の二十四日、新聞紙上で騒がれました京都の西陣の繊維工場でPCBの大変な残留濃度が見つけられだという問題についてお尋ねをいたします。担当が労働省のようでございます。お答えを願いたいと思います。  新聞によりますと、京都の市の衛生研究所のお医者さんが、二年前にもこのPCBのことについて警告を発したということでございますが、労働省自体としてこの問題に関してこの二年間何か手を打たれてきたのかどうか、あるいは調査をされてきたのかどうか、この点についてお尋ねいたします。
  243. 宮野美宏

    ○宮野説明員 先般、新聞等で報道されました京都市衛生研究所の調査の結果に関します西陣のPCB汚染の問題は、去る十月二十六日から神戸市で開催されました日本公衆衛生学会で二十七日に発表された内容の一部が事前に報道されたものであるというふうに承知いたしておりますが、労働省としましては、関係労働基準局を通じまして学会発表の抄録を入手をいたしまして、目下この内容を検討しているところでございます。  従来はどうかという御質問でございますけれども、今回の西陣におきますPCB汚染につきましては、それが事業場で現に使用されているPCBによるものではなくて、すでに使用を中止したスピンドル油でありますとか、あるいはそれに含まれておりますPCBによるものとされております。作業場内の土間ですとか、あるいは床の木材でありますとか、はりの上の方のほこりでありますとかというようなものが、いまもPCBによって汚染されているというようなことであります。先ほどのこの公衆衛生学会の発表内容等十分検討して、今後必要な措置はとりたいと思っておりますが、従来は昭和五十年にこの問題が起こったわけでございますが、京都市衛生研究所から京都市を通じまして京都の労働基準局に情報として連絡がありまして、血中にPCBが比較的多く検出されるような人のおります事業場につきまして、京都の労働基準局は所轄の監督署に調査をさせました。同研究所のデータによりますと、その当時、総労働者数三十一名中二名に血中のPCBが微量に検出をされておる。それから事業主及び家族は十三名について血中のPCBが検出されたというようなことが判明をいたしました。特に健康障害を訴える者はいなかったわけでありますけれども、なお幾つかの対策を指示いたしまして、作業場のPCB汚染の床板、それから土間の土壌の除去とか、当該汚染物の密封保管とか、あるいは油に汚染されました作業服の取りかえでありますとか、手洗いの励行、こういうようなものについて指導をいたしております。
  244. 中井洽

    ○中井委員 それは御指導いただいておるのは京都市あるいは京都府だけでありますか、それとも全国的にこういった繊維、特に五年ほど前にもうこの潤滑油を使わないようにということになったようでありますが、それまで使っておった繊維業界の各工場について調査をするようにお命じになったのですか。
  245. 宮野美宏

    ○宮野説明員 繊維関係以外につきましては調査をした例がございますけれども、繊維につきましては京都を中心にいたしまして、この西陣について検討を重ねておるということでございます。
  246. 中井洽

    ○中井委員 このPCBを含んでいる潤滑油を使っておったのは京都の西陣だけじゃないと思うのです。全国たくさんの繊維業界があると思うのであります。ひとつ要望いたしますが、全国の繊維、特にこういう業界は小さな業者がたくさんございます。労働省が、あるいは各地が指示をしてもなかなか調査が行き届かないと思うのでありますが、ひとつぜひとも全国的な規模で調査をしていただきますようにお願いをしたいと思います。その点についていかがですか。
  247. 宮野美宏

    ○宮野説明員 京都の例で申しますと、人間への暴露というのが労働者について大変問題になろうかと思いますが、京都の場合には五十年、前回の気中の濃度の検査結果から見ますと〇・二五マイクログラムパー立米ということで、これは私どもの方で製造取り扱いの際にこれを超えてはいけないというような数値が〇・五ミリグラムパー立米でございまして、それに比べますと気中の濃度としては大変微量である、そういうこともございますので、今回はそのような気中濃度の調査が新聞のあれではされておらないような形になっておりますので、その点、京都の例をもう少しさらに検討いたしまして必要な措置をとってまいりたいというふうに考えております。
  248. 中井洽

    ○中井委員 もう一つだけ教えてください。PCB混入の潤滑油というのは日本じゅうどこの工場にももう使われておりませんか。
  249. 宮野美宏

    ○宮野説明員 カネミの油症の事件が起こりました後、潤滑油についてのPCBの混入というものはそのメーカーが自発的にやめたというふうに聞いております。
  250. 中井洽

    ○中井委員 自発的にやめたということでありますが、しつこいようでありますけれども、一度ぜひともこの潤滑油を使っているか使っていないかということについて御調査をいただきたい。特に、先ほど申し上げましたけれども、中小零細ないろいろなところではそういうものを安いときに買ってためてあるところもたくさんあると思います。知識的に行き渡らない点もたくさんございます。私自身こういった繊維の小さな業者をたくさん回っております。よくわかっておりますので、その点について十分な御配慮をお願いしたいと思います。
  251. 宮野美宏

    ○宮野説明員 先ほどのに追加をさせていただきますと、その後私どもの方ではPCBに対する製造取り扱いについては非常に重要な問題だということで許可制度ということにいたしまして、許可がなければつくってはいけないというふうにしておりまして、現在許可の申請が出てきておるものはございません。ただ、先生おっしゃるようなそういう昔のものが使われておるかどうかということは、今回の京都の例をさらに掘り下げたいと思っております。
  252. 島本虎三

    島本委員長 中井君の質問中でございますが、当時環境庁はこの問題に対して具体的に詰めたはずじゃございませんか。当時の事情を知っている人いませんか。三木長官のもとにこれを使用しないというふうにして詰めたはずじゃございませんか。知っている人はございませんか。——ないようでありますから……。
  253. 中井洽

    ○中井委員 そんな資料でもありましたら、ひとつお願いいたします。  ありがとうございました。
  254. 島本虎三

    島本委員長 中井君の質問はこれで終わりました。  次に、東中光雄君。
  255. 東中光雄

    ○東中委員 先日当委員会は、公害健康被害補償制度について参考人にいろいろ質疑をいたしました。  この質疑を通じまして環境庁の姿勢との関係で私いろいろ驚いたことがあるのでありますが、第一に申し上げたいのは補償制度の企業別の負担金の公表問題であります。私がことしの五月十七日に公表について質問をしましたときには、環境庁としては、これは申告納付制度方式なので公表によって企業の納付意欲を阻害するようなことがあってはならない、したがって公表はしない、こういう答弁をされました。  ところが、この点について先日の参考人の質疑で経団連の徳永さんは、政府がそういう態度であるのは初耳だ、この点は経団連で討議したこともない、私のところ——というのは新日鉄でありますが、私のところは聞かれれば答えており、五十二年度で言えば四十億円だ、こういうふうに述べられました。そうすると、環境庁が勝手に企業側の立場というか意思を先回りして推測をして、そして公表を拒否しておるということになるわけですね。まことに理解しがたいことなのでありますが、長官、これは環境行政の姿勢に関することだと思いますので、この点はいかがお考えでしょうか。
  256. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 私、先日の参考人をお呼びになったときの委員会の状況は詳しく聞いておりませんけれども、先般環境庁がそのようなお答えをしたことは記憶にありますし、しかも経団連の代表ですか、新日鉄の幹部の一人がそういうことを言われる食い違いというのは、これは非常にいろいろ問題があると思いますけれども、その間の事情、私つまびらかにいたしませんので、政府委員からお答えさせておきます。
  257. 信澤清

    信澤政府委員 お話にございましたように、五月の先生の御質問に対して公表をいたしかねるということを申したこと、それから先日の徳永参考人のお答えも承知をいたしております。私どもがこれについて公表できませんと申したのは、汚染負荷量賦課金と申しますのは、いわば一種の税金に等しいものでございます。したがって、税につきまして国家公務員法で公務員について守秘義務がございますのと同じような意味合いで私どもこれを公表することについて守秘の義務があるというふうに考えているわけでございます。したがって、一々経団連に御相談して公表するかしないかということを決めるべき筋合いのものとは考えてはおらない、さような意味で経団連と御相談したことはございません。
  258. 東中光雄

    ○東中委員 これは税金と同じようなものだと考えておる、これはゆゆしいことを言われていると思うのであります。これは補償でしょう。そうでしょう。税金じゃないんでしょう。本来は、政府自身も言っておるように、民事責任を踏まえた制度、損害賠償原理が基本になっておる、この制度自体じゃなくて、その性格を言っているのですけれども、これは税ではない。そういう点から言えば、本来公表すべきものだし、それから、いま局長答弁はちょっといただきかねる。徳永さん自身が、自分の会社については聞かれれば積極的に答える、こうまで言っておるのに、それを何か隠しておく、秘密にするという。税金なんかの問題とは性質が違うんだから、そういう点で支障のない、性格上から言っても公表をするという方向に変えるべきだと思うのですが、この際、前に答弁したからといってそれに固執しないで、態度を変えるべきじゃないか、こう思うのですが、いかがでしょう。
  259. 信澤清

    信澤政府委員 先生、私は税と同じだと申したわけではございませんで、税のごときものであるという趣旨で御答弁したつもりでございます。つまり、あの法律をごらんいただきますと、あれを滞納いたしますと、国税の滞納処分の例によって徴収することができるというような、確かに補償のための負担でございますが、その徴収なりあるいは納付の義務については税金とほぼ同じような考え方で処理しているわけでございますから、さような意味のことを申したわけでございます。  それから公表の問題は、徳永さんのお話を私まだ十分速記録を見ておりませんが、伺っているところによりますと、自分のところで公表するのは結構だ、しかし、いろいろな考えの人がいるので、自分の一存で全部公表しますということをここで申し上げるわけにはいきません、たしかそういう御答弁もあったと思うわけでございます。したがって、私は、企業が公表してもいいというものをしてはいかぬということを私ども申す、これはできないと思いますし、そういう必要もないことだと思います。したがって、先生おっしゃるように徳永参考人のそういう御意向を引用しておっしゃるのでございましたならば、私は、もう一度徳永さんを含め経団連が本当にそういうことなのかどうか、それを確認した上で、みんながよろしいとおっしゃるならば、これは何ら私どもは守秘義務を負うわけでございませんから、公表をするにやぶさかでないというふうに考えます。
  260. 東中光雄

    ○東中委員 あなたは税金のごときものとおっしゃったけれども、税金というのは憲法上の納税の義務があって、それから来ていることでありますし、公害のこの補償というのは、これは本来不法行為に関連したものとして民事上の補償というところから来ているわけですから、これはごときものではなくて、全く性格が違うのだ。そして経団連としては、そういうことは議論になったこともない、こう言っているわけですから、そんなものを意思を確かめるとかなんとかいうことじゃなしに、この人が自分で関係しているところでは、積極的に新日鉄としては答えております。こういう答弁をしているのですから、いま一々意思を確かめてということを言われましたけれども、意思を確かめるまでもないわけですね。性格からいったら民事補償という性質のものですから、これは改めて確かめるとかなんとかいうようなことは、この間わざわざ参考人としてここへ出てこられて、そしてそう言われているわけですから。長官、これは長官の公害というものについての、公害行政についての姿勢の問題だと思いますので、改めて一々確かめてから公表してもいいというなら公表する、これは公表しないのを原則にしているみたいなことになりますから。経団連の方は逆のことを思っているわけですね。そんなことになっているのですか、初耳だ、こう言っているのですから。その点は本来性格的に言えば公表すべきものだから、公表するということを長官としてはどうでしょう。
  261. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 徳永さんはこの間は経団連の代表ということで来たのですか。
  262. 東中光雄

    ○東中委員 経団連の副会長で、経団連の公害対策委員長ですね。そしてそういう立場で来て、参考陳述の中で、私の質問に対しては、この点は経団連で討議したこともない、そういうふうに、経団連の公害対策の役員といいますか、責任者として、経団連として討議したこともない、そういうことは政府の方で言っているというのは初耳だというようなことまで言われておるわけですから。だから、討議したこともないからいままでほかの企業のことは意向は聞いていないというふうに言われておるわけであります。  正式に申し上げますと、経済団体連合会環境安全委員会委員長代理徳永久次さんであります。
  263. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 この問題に関しまして、経団連が何も決定的な発言権を持っているわけではないと思いますし、大体これを徴収するのは商工会議所に依頼していると聞いております。  それで、これは税金ではないにしても公害に対する加担ということの賦課金で、公権力をもって徴収する一つの、ペナルティーではないにしても、何というのでしょうか、いまも官房長と話をしていたのですが、チャージというのでしょうか、そういうことになるわけで、つまり、一体この賦課金の制度の民間側の受け方がどこであるかということがはっきりし、それがこの賦課金を払っている企業側の総意というものをまとめられて、要するに結構だということだったらそれは公表もしましようが、一つの公権力をもって徴収するお金であるということの性格の上で、この業務そのものを促進する上でも公表の必要がないという環境庁の姿勢であると私は理解しております。
  264. 東中光雄

    ○東中委員 環境庁は企業の納付意欲ということで、納付意欲を阻害するようなことがあってはならぬからということをこの間答弁されているのですね。納付意欲という点で言えば、企業の、産業界の代表として来た徳永さんの陳述では、そんなことは夢にも思っておりません、論議もしたことがありません、初耳です。こう言っているわけですから、だから公表しなければならないということになっているわけでも何でもないのですね。あるいは公表してはいけないというようになっているわけでもない。実際上、公表しないだけのことなんですから。そういうことは、余りにも企業の納付意欲ということを勝手にそんたくをして、そして何とか発表しないでおこうという姿勢をとっておられることになる。もともと公害企業が補償する、そして公害自体を発生源からなくしていくということだから、その内容を明らかにすることは、むしろ公害をなくしていくということにプラスになってもマイナスになるわけではないのですから。いまいろいろ企業のことを聞いてみて検討するというのだったら、いまの時点ではそれしかしようがないのかもしれませんけれども、これはやはり姿勢に関することだと思いますから。納付の性格の問題から言えば補償の問題だ、あくまでも補償の問題だということです。
  265. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 おっしゃることは非常によくわかります。わかりますが、徳永さんの場合には、日本に冠たる新日鉄の重役でございまして、とにかく一般のこういう賦課金を払っている中小企業とはまた、この問題に対する姿勢なりその心機はずいぶん違うのじゃないかと思うのです。そういう意味で、一般に中小企業に当たってみますと、公表してほしくないという意見が非常に圧倒的に多いようでございますし、またこれは補償のためのお金でございますから、払うものを積極的に払ってもらいませんと、補償という大事な目的を達成できませんので、そういうことで、環境庁としては前に述べました見解をとっておるわけでございます。
  266. 東中光雄

    ○東中委員 中小企業を一々公表しろというところまで、われわれ言っているわけでもありませんので、いま局長が言われましたように、ひとつこれは意向もただしてもらって、それで企業が、個々に聞かれたら公表しますと言っておるのに、環境庁は一生懸命、守秘義務だなんて言ってふたしているというのは余り芳しくありませんので、先ほど局長が言われたような検討をひとつしてもらえますか。
  267. 信澤清

    信澤政府委員 税のことをまた持ち出すといけませんが、性格は、先生おっしゃったように違うわけですが、少なくとも公権力によって徴収していると、これははっきりしていることだと思っています。したがって、そういう意味で、公権力の行使に当たっている私どもには税と同じような守秘義務がかかっている、こういう意味で申し上げたわけでございます。したがいまして、税でも、御本人が御協力をなされた場合に、そういうことはいかぬということを申しておるわけではございませんので、同様に、企業が自分のところはこれだけ払っておるということを公表されることは自由でございますし、そういうもので公権力の行使に当たる立場にあり、国家公務員法上、守秘義務を課せられておる私どもが、勝手に出していいかどうかということに問題点があるわけで、ただしかし、先生のおっしゃっておる御趣旨はよくわかりますから、徳永さんの御意向を含めて、それでいいのかどうかということを、本来確認する必要がなかったことだと思いますが、せっかくのお話でございますから、再度そういう御意向の向きをきちっと確認しまして、そして対応したいというふうに思います。
  268. 東中光雄

    ○東中委員 税だって一千万以上は公表しているわけです。租税だってしているわけですからね。
  269. 信澤清

    信澤政府委員 お言葉を返すようでございますが、これは法律に明文の規定がございます。
  270. 東中光雄

    ○東中委員 だから、そういう処置をとるべきだ。あれは税だから、性質が違うからと、全然公表をしない。守秘義務だということだけではない原理があるということを私は指摘しておるのであって、何かえらいつべこべ言われるようだから、あえて言っておくわけですが、検討してもらいたい。  次に、時間がなくなってしまいますので、この間の質問で、昨年の六月の経団連月報に、補償制度について「政府も本制度の見直しの必要性については基本的に了承」しているというふうに書いてあるけれども、それはどういうことなのかということを、経団連の環境安全委員会委員長代理の徳永さんにお聞きしたところが、環境庁が専門家の委員会をつくり、ようやく問題に取り組み始め、ああやっと始めたなと理解しているが、そのことだと思う、専門家の委員会をつくったという趣旨の発言をされたわけで、去年の六月のことでこういう委員会ができておったのかどうか。それも一私人が言われているのではなくて、委員会でこういう立場の人が言われたことでありますので、どういう目的でどういう委員会か。要するに、制度の見直しについての専門家の委員会というのはあるのかないのか。あるとすればどういうものなのか、お伺いしたいと思います。
  271. 信澤清

    信澤政府委員 一つの制度ができましてそれが何年かたってくると、必ずそこに問題が起きてくるわけでございます。御承知のように本制度の運用につきましては、被害を受けられた方々、それから地方公共団体、それに産業界からもいろいろな意見があるわけでございます。  そこで、いまの徳永さんの御発言が、委員会をつくって何か新しく事を始めたという意味でございますれば、それは明らかに間違いだというふうに申し上げていいかと思います。ただ、こういう事実はございます。いわゆる中公審でございますが、中公審の中に環境保健部会というのがございます。その部会で本年の六月ごろ、たしか三回ほどだったと思いますが、従来いろいろ言われております問題点について自由にディスカッションをしたということがあったように承知をいたしております。それを指しますとするならば、新しい委員会をつくったのではなくて、本来そういう問題を審議すべき部会の場で審議をしているということにとどまっているわけでございます。
  272. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、中公審の中でそういう討議をしているということに財界が非常な期待を寄せておることになると思うのですが、この中公審の中で、ことしの五月ですか、地域指定についての排除要件等の審議を実質的に始めたというようなことが報道もされておるわけでありますけれども、そういうことになっておるのですか。
  273. 信澤清

    信澤政府委員 一部の報道にそういう記事がありましたことは、私も存じておりますが、先ほども申し上げましたように、この制度につきましては、被害を受けられた方、地方公共団体、さらには負担をされる方、それぞれ意見があるわけでございますから、そういうものについていわば全面的に、といいますと語弊がございますが、出てきた問題一つ一つについて検討をしまうということで、先ほどの懇談会があったわけでございます。
  274. 東中光雄

    ○東中委員 その懇談会というのは、いつ、どういうように開かれて、どうなっておるのか、ちょっと経過を明らかにしていただきたい。
  275. 信澤清

    信澤政府委員 先ほど申し上げたように、六月にはいわゆる懇談会という形式でおやりになっておったわけで、通常の部会を開催してやるという形ではなかったわけでございます。しかし、三回やった結果、いまはほぼ問題点の所在というものが明らかになったということでございますので、部会として正式に審議を始めたい、こういう御意向がございましたので、九月の末でございますが、部会を正式に開きまして、そして問題別に小委員会をつくるということで、一つは賦課徴収小委員会一つは給付小委員会、二つの小委員会に分けまして、そしてそこで細かい議論をし、その議論を部会でさらに検討するという形で処理をするということをお決めになりました。私どもはその中でとりわけ急いでおりますのは、自動車にかかわる賦課金をどう徴収するか、これは先生御承知のように従来自動車重量税からもらっているわけでございますが、この期限が五十二年度で切れるわけでございますので、まず賦課徴収の方の自動車関係の問題を急いでいただきたいということでお願いをいたしておるわけでございます。
  276. 東中光雄

    ○東中委員 いま懇談会三回と言われたのですが、それはいつといつで、どういう問題について——そのときの問題と言われましたか、項目別にたとえば解除の要件とか患者認定に絡む暴露要件とかそういうような、何か私たちはわかりませんけれども、どういうことについての懇談をやられたのか、お伺いしたいと思います。
  277. 信澤清

    信澤政府委員 日にちは六月二日、十五日、十八日ということでございますが、先ほども申し上げておりますようにいろいろな御意見があるわけでございますので、私どもが事務としてお手伝いをするということではなくて、先ほど申し上げたように自由にディスカッションしていただく、こういうことにいたしました。したがって問題はいろいろ出たわけでございますが、正式の部会として御審議を始めるということになりますれば、必ず議題の整理をし、かつ優先順位をつけてまいるわけでございますが、その段階にまで至っていないということでございます。
  278. 東中光雄

    ○東中委員 いま言われたのは全部ことしのことですね。そうお伺いしたのですが、経団連の月報に出ておるのは去年の六月の月報なんですね。そのことも私は言うてこの間質問したのですけれども、答えがなかった。ちょっと誤解があったのかもしれませんけれども。いずれにしましてもことしの六月に三回懇談会を持たれた。そこで窒素酸化物を地域指定要件にするという問題は、これは答申のときから見直しをすべきであるということが中公審としては決まっておるわけですね。「今後とも窒素酸化物及び浮遊粒子状物質と呼吸器症状有症率の関係を量的に検討した研究に関する資料等を集めて地域指定要件等の見直しを行う必要があることを付言する。」これは中公審としての正式の答申で書いてあるわけでありますから、これをこそやられなきゃいかぬと思うのですけれども、その方は進んでおるのかおらないのか、その点はどうなんでしょう。
  279. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 この制度ができました当初にいわゆる大気汚染の物質といたしまして硫黄酸化物、窒素酸化物、浮遊粒子状物質その他幾つかの物質がこれに関与しておる、これにつきまして現在地域指定の要件にいたしましても、また現在のところ硫黄酸化物を一つの指標といたしまして地域指定の要件としておるわけでございますけれども、窒素酸化物につきましては先生御承知のように、複合大気汚染影響調査あるいは先般発表いたしました自動車沿道調査というようなものの中で、窒素酸化物による健康影響というもののはっきりした答えを期待してといいますか、はっきりした答えが出ましたならば、それを取り上げてまいりたい、こういう姿勢であったわけでございますけれども、私ども、現在までのところそういった答えが出ておりませんので、こういった調査に関する手法等も開発いたしながらひとつそういった要件を、窒素酸化物を取り上げるということについての問題を鋭意検討してまいりたい、かように考えているところでございます。
  280. 東中光雄

    ○東中委員 この複合大気汚染健康影響調査のまとめが発表されたとき、ことしの一月でありますか、三月段階で、三月十一日の予算分科会でありますが、わが党の松本議員が質問をしまして、このときに政府側は「この調査結果につきまして、現在専門の学者におきまして研究班を設置いたしていただきまして、学問的あるいは専門的な見地からさらに詳しく解析、評価をお願いしているというふうな段階でございます。」政府委員答弁です。それから長官の答弁としては「なお先般のあの資料を統計の専門家にさらにより科学的に分析する依頼をしておりますし、そこで得られました報告を基調にこれからの問題を考えていくつもりでございます。」という答弁をされているわけですね。これが出されて、これについては専門的に現に研究班をつくってやっているんだ、それが結果が出ればということになっておったわけですが、それからすでにこれが出てから八カ月になるわけですね。これはどのように進んでおりますか。
  281. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 先生指摘のようにこの二月に公表されました複合大気汚染健康影響調査の解析、評価につきましては、複合大気汚染健康影響調査総合解析企画評価小委員会、大変長い名前でございますが、ここにお願いいたしまして、いわゆる学問的、専門的な解析を実はお願いしているところでございますが、現在までのところ、まだその答えをちょうだいいたしておりません。しきりに督促をいたしているところでございます。近く出していただけるように先般も督促したところでございまして、そういった段階でございます。
  282. 東中光雄

    ○東中委員 この問題については、このむずかしい名前の委員会ですね、複合大気汚染健康影響調査総合解析企画評価小委員会、この長い小委員会ですが、これは解散したんだとか、もうやっていないんだとか、報告は出さぬことになったんだとかいうふうなことが、これは風聞で、公式に聞いているわけじゃありませんけれども、そういうことが言われている。いま督促をしているということでありますけれども、この影響調査、これは窒素酸化物については答申の立場から言えば早急にやって、そして指定要件の見直しをやらなければいかぬ。これさえやらぬといって、これがさっぱり進まなくてそして今度は解除要件が検討されるというふうなことが、要するに財界側の、あるいは経団連なんかからの要求があるからといってそういうふうな動きになってくると、これは本当に公害の、環境保全の優先という立場か、あるいはいわゆる調整原理かということに、結局問題がそこへいくと思うのです。私は、やると言い、すでにやられておったことがさっぱり進まないという状態で今度は解除の方が進められてくるというふうなことではまことに環境行政が後退しているということになると思うのですが、長官、その点について、三月段階での御答弁もこれあり、その後さっぱり進んでいないということについて積極的な措置をとられることを私は要求したいのでありますが、いかがですか。
  283. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 私はその専門小委員会がすでに解散したとも聞いておりませんし、そこで出された答申が公表されないなどということもゆめ聞いておりません。それは当然発表されるべきだと思いますし、これだけ話題の対象になっておりますNOXの問題でございますから、いま部長からもお答えしましたように結論を早くといいましょうか、その答申を早く出していただくよう督促しているようでございますけれども、もうすでに数カ月を過ぎまして、私自身も、一体どういうことになっているか、非常に関心がございますので、できるだけ早く何らかの答申が得られますように私の方からも改めて督促いたします。この問題をどこぞの言いなりになって後退させようとか消去してしまおうとかいうことはゆめ考えておりません。
  284. 東中光雄

    ○東中委員 質問を終わりますが、要するに一応のまとめというのをぱっと出されて、結論が出ておるかのような、出ていないかのような状態で、要件が決まっていないのに今度は解除の条件が問題になってくるという姿勢は大変な問題だと考えますので、あえてその点についての積極的な姿勢を強く要求いたしまして、質問を終わります。
  285. 島本虎三

    島本委員長 東中光雄君の質問は終わりました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時一分散会