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1977-10-27 第82回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月二十七日(木曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 島本 虎三君    理事 染谷  誠君 理事 登坂重次郎君    理事 林  義郎君 理事 向山 一人君    理事 土井たか子君 理事 水田  稔君    理事 古寺  宏君       相沢 英之君    池田 行彦君       永田 亮一君    福島 譲二君       馬場猪太郎君    細谷 治嘉君       山本 政弘君    坂口  力君       竹内 勝彦君    東中 光雄君       山原健二郎君    加地  和君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁企画調整         局長      信澤  清君         環境庁企画調整         局環境保健部長 山本 宜正君         環境庁自然保護         局長      出原 孝夫君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         環境庁水質保全         局長      二瓶  博君  委員外出席者         国土庁長官官房         審議官     宇都宮綱之君         農林省構造改善         局農政部農政課         長       田中 宏尚君         農林省構造改善         局建設部長   岡部 三郎君         農林省農蚕園芸         局畑作振興課長 伊藤 律男君         水産庁研究開発        部漁場保全課長 伊賀原弥一郎君         運輸省海運局総         務課長     山下 文利君         運輸省港湾局計         画課長     小池  力君         海上保安庁警備         救難監     山本 了三君         建設省計画局参         事官      関口  洋君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 十月二十七日  辞任         補欠選任   上田 卓三君     馬場猪太郎君   細谷 治嘉君     阿部未喜男君   東中 光雄君     山原健二郎君   刀祢館正也君     加地  和君 同日  辞任         補欠選任   馬場猪太郎君     上田 卓三君   山原健二郎君     東中 光雄君   加地  和君     刀祢館正也君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害対策並びに環境保全に関する件      ————◇—————
  2. 島本虎三

    島本委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。永田亮一君。
  3. 永田亮一

    永田委員 私は、赤潮の問題について、主として水産庁にお尋ねしたいと思います。  この間、十月十九日、二十日、わが公害対策委員会委員長を団長としてずっと瀬戸内海環境保全視察に参ったわけでありますが、そのときいろいろな問題がございましたけれども、きょうは赤潮だけにしぼって、主として水産庁見解を伺いたいと思うわけであります。  私は、郷里が淡路島でありますので、瀬戸内海はもうしょっちゅうにらみながら育ったわけでありますが、瀬戸内海は戦前から戦後しばらくは非常にきれいでありました。水もきれいだし海水浴をしてもまことに快適であるし、淡路島には通うチドリもやってきたわけでありますが、最近はもう全然そういうことはなくなってしまって、特に戦後、経済が成長するに従ってだんだん汚れてきました。高度成長になって一段と瀬戸内海汚濁が激しくなってきた。私は素人でありますが、外から上から瀬戸内海汚濁を見ておると、四十七年か四十八年ごろが一番汚れておった。汚れたピークじゃないかと思うのであります。  それから見たところはだんだんきれいになってきましたが、四十八年の十一月に瀬戸内海環境保全臨時措置法、これは与党も野党もがまんならぬということで、こういう法律ができたわけでありますが、この法律によって相当厳しく規制が行われた。それで産業排水CODが、発表を見てみますといまは四十七年当時の半分になったということであります。また、透明度相当上昇した、見たところは大分きれいになったわけであります。  この八月の末でありましたか、環境庁長官それから各関係知事さん、市長さん、皆、こはく丸という船で瀬戸内海をごらんになって、そのときは大分きれいになっておったということで、この前の公害対策委員会のとき環境庁長官に、あのときみんな楽観ムードであったじゃないかと言って話したら、長官が、いや、そんなことはない、心配していたんだというお話でありました。楽観でも悲観でもいいのでありますが、現実にはあの洋上会談があった一週間ほど後に赤潮大発生したわけであります。あの洋上会談が一週間おくれておったら長官も大あわてで、知事さんもみんなあわてられて効果満点だったと思うのでありますが、一週間早かったからそういう楽観ムードで済んでしまったのは残念に思います。  しかし、ここで水産庁にお尋ねをしたいのですけれども産業排水CODが半分にもなるし、透明度も上昇した、それなのに赤潮発生件数というものが毎年ふえてきておる。発表を見ますと、四十七年の赤潮発生件数が百六十四件である。ところが去年の発生件数が三百二十六件だ見たところきれいになってきておるのに、どういうわけで赤潮発生件数だけがどんどんふえる一方なのか、このことについて水産庁はどういう見解を持っておられるか、赤潮がどうして起きるのか、CODが減ってもなぜ赤潮件数がふえるのか、こういうことについて水産庁研究をされた成果、あるいは赤潮原因というものについて、御説明をいただきたいと思います。
  4. 伊賀原弥一郎

    伊賀説明員 御説明を申し上げます。  先生の御質問によりますと、全体的には大分きれいになっているように外見上見られるけれども、依然として赤潮がふえている、そういう原因はどこにあるのか、その内容についての話をしろというお話でございますので、十分ではございませんが大体の考え方を申し上げて見たいと思います。  一つは、基本的な赤潮発生機構の問題でございますけれども、現在までにわかっておりますところは、一般的に燐とか窒素というような基礎的な栄養物質が十分あるということを前提にいたしまして、赤潮プランクトン増殖促進作用をする幾つかの物質、そういうものが存在しているということを置きまして、その上に好適な気象だとか海象だとか、そういう条件がそろったときに大発生をするというぐあいに一般的に言われております。  瀬戸内海全体の情勢といたしましては、いろいろなプランクトンごと実験の結果によりますと、赤潮発生させるに足るだけの燐だとか窒素等基礎栄養分というのは大分きれいになっておりますけれども、現在でも十分にあるという状態だといわれております。したがいまして、燐とか窒素等条件につきましては、いつでも大きな赤潮発生できるような状態にあるというぐあいに言われているわけでございます。しかしながら、それだけの燐とか窒素とかが十分ございましても赤潮発生しない場合もございますし、小さな赤潮が頻発するということでとまる場合もございます。こうした、後の刺激物質存在の問題と増殖促進物質存在の問題と、それから好適な条件の問題がいつどのような形でそろっていくかという点がまだわかってきてないというぐあいに言えるのじゃないかと思います。  次に、きれいになっているにかかわらず赤潮件数がふえてきているというのはどういうところに原因があるかというお話でございますが、一つは、私どもといたしましては、四十六、七年ごろから赤潮に関する観測等がふえてまいりまして、特に四十八年以降につきましては、水産庁補助という形で各県が赤潮予察だとか情報交換事業を開始してまいりましたので、従来より、より詳しく赤潮観測ができるようになってきたということで、発見される件数がふえてきたという点も一部あるのではないかと思います。  しかしながら、そういう考え方一つあるわけでございますけれども赤潮発生機構の中で、瀬戸内海の底にたまっておりますヘドロというのが相当大きな役割りを占めているということが言われております。そのヘドロ等につきましては相当長期間、徐々に蓄積をしているという実態がございますので、水面と申しますか、水質の方が直ちによくなっても、それが直接的に赤潮発生件数が減っていくというところまでは至ってないのじゃないか、ヘドロの問題が相当重要な比重を占めているというぐあいに私ども考えているわけでございます。
  5. 永田亮一

    永田委員 いまのお話ですと、燐とか窒素なんかが減っておらないというのも一つ原因であるということでありますが、産業排水の方は大分抑えられておるようで、この間、回って歩いても、産業排水についての苦情は余りなかったように思うのでありますが、結局、窒素とか燐とかいうものは生活排水原因なのであるか、あるいは化学肥料だとか合成洗剤とか屎尿とか、そういうものの処理が欧米なんかに比べてまだおくれているためなのか、そうすると、これは対策にも関係してくるわけでありますが、下水処理場なんかの施設がおくれておるということが一つ原因とお考えになりますかどうか。
  6. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 お答え申し上げます。  産業排水の方よりも生活排水についてどうというお話でございますが、一つはここで申し上げておきたいと思いますことは、CODにつきましては、これは環境基準もございますし、排水基準もございまして、それでこのCODというもののカットを進めておる。先ほど先生がおっしゃいましたように、瀬戸内海については産業系排水に係る二分の一カットという措置をやったわけでございます。その面については確かに先生おっしゃいますように、そういう産業排水の方は大分やっておる、しかし、生活系排水の方は手おくれではないかという話があろうかと思います。それはそのとおりだろうと思います。問題は、今度燐と窒素の話になりますと、これは環境基準もございません。排水基準もございません。規制措置というものを現段階においては特にやってない。なぜやってないか。なかなかその辺の具体的な削減技術等も十分でないという問題もございまして、まだやっておらないわけでございますが、ただこれにつきましては、ただいま先生からお話がございましたように、CODよりもむしろこちらの方は汚濁源が非常に多うございます。まさに産業排水なり肥料工業なりあるしは屎尿なりございますし 燐につきましては合成洗剤も確かにございます。そういうことでございますので、今後、富栄養化対策ということで燐とか窒素とかこういうものにどう取り組んでいくかというのが大きな課題であろうかと思います。  さしあたりは、燐の方につきまして、明年度から環境ガイドラインなりあるいは排水処理技術ガイドライン、こういうものの設定のための調査に取り組んでいこうということで、予算も要求をいたしておるわけでございます。また、下水道の方もまだそういう基準がございませんので、下水道の方も、特にその燐なり窒素なりを落とすための三次処理というようなものも一応実験は多少はやっておりますが、まだ実用化しておらぬ、こういう状況でございます。
  7. 永田亮一

    永田委員 この間行ったときに、南西海水産研究所村上博士広島湾のことで、広島湾のNとP、窒素と燐ですが、これが六割カットされたら——六割カットということは現実には四割ですな、いまの四割になったら広島湾はきれいになるというお話でありました。そういう目標でひとつ大いに推進をしてもらいたいと思うのです。  それから大気汚染というものは赤潮関係があるとお考えですか、どうですか。そういう研究はされておられませんか。
  8. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 大気汚染赤潮が直接に関係があるとは私ども考えておりません。大気汚染の、硝酸塩が出てまいりまして、その硝酸塩窒素成分に対して一部の負荷にはなるということでございますが、大気汚染そのもの赤潮発生に対して非常に大きな役割りを持つというぐあいには私ども考えておりません。
  9. 永田亮一

    永田委員 さっき水産庁の方からヘドロ役割りも大きいというお話がございました。ヘドロ回収試験が行われておると聞いているのですが、私の方の淡路島の由良というところで、一番初め一九七三年、四十八年だったと思いますが、ヘドロしゅんせつする実験をやられたと思います。その後兵庫県では、姫路の揖保川の河口でヘドロを吸い上げる実験をやったということを聞いているのですが、その後この実験は継続してやっておられるのか。それで吸い上げたヘドロ処理船に送って、凝固剤か何かをまぜて沈でん凝固させてしまう、そして固型化したものを捨ててしまうということを聞いているのですが、このヘドロ赤潮発生の大きな役割りを果たしておるということになると、このヘドロしゅんせつするいままでのやり方、しゅんせつ船というようなものは特別にあるのかどうか、このヘドロの吸い上げの状況について、ちょっと御説明をいただきたいと思います。
  10. 伊賀原弥一郎

    伊賀説明員 御説明申し上げます。  先生からお話がありましたように、ヘドロを一応吸い上げをいたしまして、凝固剤を入れまして沈でんをさせ、それを固型化いたしまして陸上埋め立て地に使うという方式の実験を五十二年、ことしまで約三年ほど実施しております。その主眼といたしました点は、ヘドロというのはきわめて水分の多い、いわゆるしゅんせつ等をやりましても外へはばけてしまうと申しますか、そういう性質のものでございますので、しゅんせつをやることによりまして周りに新たな被害を起こすという危険がございます。こういう危険のない状態しゅんせつをいたしましていわゆる処理をするという目的のためにやりました試験でございまして、一応装置といたしましては、沈でんをさせる槽を持つ第一船と、それから出ます水をもう一度処理をいたしまして懸濁物のきわめて少ない状態にいたしまして外へ放出するための船と、合わせて二隻の船でワンセットになった実験をやっております。ことしで一応その試験を完了し、現在その試験結果の取りまとめをやっている段階でございます。
  11. 永田亮一

    永田委員 赤潮がちょびちょびはずいぶん起きているのですが、四十七年度とこの間の八月でしたか、二回大発生をやったのですが、徳島大学金野教授ですか、この方の書いておられるのをちょっと読んでみますと、大量の高濃度富栄養海水というものが海面に急に浮上する、そして日光と酸素及び適当な温度を得たときに赤潮大発生するのだというふうに書いてあります。ふだんはこういう高濃度富栄養海水は、ヘドロの上、酸欠海底にある。どうして浮上するのかということでありますが、四十七年の大発生それからこの間の八月の大きな赤潮被害、四十七年のときは集中豪雨で、どしゃ降りがあって、陸上の土砂の水が海底に流れ込んで、それがヘドロをかきまぜて上へ浮上させたのじゃないかということを書いてある。この間の八月の赤潮大発生のときは、台風の七号が起こした異常潮流によると思われるというふうに書いてあるのですが、水産庁なんかはこの二回の赤潮大発生原因というものについてどういう見解を持っておられますか。
  12. 伊賀原弥一郎

    伊賀説明員 御説明申し上げます。  四十七年に起こりました赤潮につきましては、先生いまお話しになりました内容のとおりだというぐあいに考えているわけでございます。つい最近起こりました今年度の赤潮につきましては、前回とは大分様相が違っておるということは事実でございますけれども、現在その原因につきましては調査班をつくりまして検討している最中でございます。  それで、その検討の中で、前回赤潮及び今年度につきましてはほかの地方でも赤潮が起きておりますので、それらの様相との相互の比較をして検討しているという段階でございます。
  13. 永田亮一

    永田委員 そうすると、そういう原因を早く究明していただいて——ども望んでおるのは、赤潮予知ができないかということなんです。赤潮警報といいますか、天気予報なんかで風雨波浪注意報なんというのをよくやってくれますが、赤潮注意報とか赤潮警報というのをやってもらえると、ハマチ養殖なんかしている者はハマチを避難させたり、被害を未然に防げるわけです。ですから、たとえば集中豪雨があってどうも赤潮大発生しそうだ、あるいは台風があったというような後で赤潮警報というものを考えてくれませんか。
  14. 伊賀原弥一郎

    伊賀説明員 御説明を申し上げます。  赤潮予知につきましては、現在、水産庁補助事業等をもちまして赤潮情報交換事業という事業、これは漁業協同組合に、それぞれ実際に漁業に出ております漁船に依頼いたしまして、赤潮発生した場合の情報を集めるという事業でございます。そのほか予察事業といたしまして、水産試験場がみずから船を出しまして、採水等をしてプランクトン性質等を調べるという事業がございますが、こういう事業をもちまして一応赤潮のある程度までの予知ができるという段階にきているわけでございます。  と申しますのは、被害を大きく起こします赤潮につきましては、幾つかのプランクトン種類がいまのところ限定されております。しかも大きな赤潮発生します前には水中にある程度の数が存在しているという点からいたしまして、ある程度のプランクトンの数が存在いたします場合には赤潮発生する可能性があるという意味で予知はできるということを申し上げたわけでございます。そういう事実を踏まえまして、相当危険度が高いという場合には警報というのは出せるのではないかというぐあいに考えております。  しかしながら、若干困りました点といたしましては、警報を出しました場合に、今度警報を解除するというのがきわめてむずかしい点でございます。ちょっと余談になりましたけれども赤潮発生する可能性はあると申しましても、いつ、きわめて短時間の間に発生する可能性があるのか、あるいは相当長期の後に発生する可能性があるのか、あるいは場合によっては発生しないのかという点になりますと、そこら辺を相当の確率をもって言えるまでには至っておりません。したがいまして、危険がある場合に予報警報を出すというのは比較的簡単でございますけれども、それによって漁業者の方が実際に起こらない場合に一応退避をいたしましたり取り上げをいたしますと大変な損害になってしまうという点がございますので、技術陣といたしましては相当慎重な態度をとっているということでございます。  したがいまして、幾つか出した例はございます。ございますが、どうも結論的なところから申し上げますと、今回の大きな赤潮のように、これは危険があるな、こういうことがわかり始めましてから二日くらいの間に大部分の魚が死んでしまったというような、急速に大発生するような場合には、なかなかその予知を出すのに困難性があるということが言えるのではないかと思います。
  15. 永田亮一

    永田委員 天気予報だって当たったり当たらなかったりするのだから、台風があったりして非常に危ないときは、注意報くらいを出していただきたいと思うのです。  それから、同じ徳島大学金野先生ですか、これが四国を横断するトンネルを掘って、太平洋の黒潮を土佐湾から瀬戸内海中央部へ流し込んで瀬戸内海富栄養海水を外海へ押し流してしまえという御発想があるようですが、この四国横断トンネルについて、水曜庁はどういうお考えですか。
  16. 伊賀原弥一郎

    伊賀説明員 まことに工学的な内容でございまして、非常に大きな事業費のかかる問題でございますし、他に影響もある問題でございますので、まだその点につきまして突っ込んだ検討をいたしてないというのが正直なところでございます。
  17. 永田亮一

    永田委員 それはまあそうだろう。  この間われわれが公害視察に行ったときに、さっき申しました南西海水産研究所へ行きまして村上彰男博士お話を伺いました。これはわれわれみんな、非常に興味深く拝聴し、また時間が短くて残念だ、もっといろいろ伺いたいと思ったのであります。  時間がなかったので、ゆっくり御研究成果をお聞きするひまがなかったのですが、そのとき、本をちょうだいしました。「赤潮富栄養化」という本であります。これを帰ってきてずっと読んでみました。しかし、これは学術的なことなどが主に書いてあって、結局、赤潮をやっつけるのにどうしたらいいという決め手はどこを見ても書いてないのであります。  この村上博士が書いておられる赤潮対策というのは、予防措置治療措置予防措置というのは赤潮発生原因を究明して、赤潮発生しないように予防するわけであります。それと、赤潮発生したときにどう対処するか、治療措置という言葉を書いてありますが、この二つに分けてこの本には書いてございます。  それで治療措置の方なんですが、われわれが研究所へ行ってお伺いしたときにも言っておられたのですが、発生した赤潮をみんな吸い上げてしまう。三井海洋開発とかいうところの船か何かで発生した赤潮を全部吸い上げてしまう。水は海へ流して、赤潮だけを船の上へみんなとりこにしてしまうということのようであります。  私もあの研究所顕微鏡で見せていただきました。赤潮のもとはこれだということで、ホルネリアマリーナとかいうのを百倍くらいの顕微鏡で見たら、小さいのがうじょうじょと動いておりましたが、聞いてみると赤潮はそれだけではなくて、三十種類くらいあるということで、それの複合もある。しかしこの間、八月に発生した大赤潮のもとは、このホルネリアマリーナというものだという御説明を伺ったのであります。こういうホルネリアみたいなのをみんな吸い上げてしまって、発生しておるやつを個々に撃破するという方法があるということを伺ったのでありますが、現在、この発生した赤潮を吸い上げて、片っ端からこうやっつけるという実験か、あるいは現実にやっておられるのか、そういう現段階でどの程度やっておられるか、わかっておったら伺いたいと思います。
  18. 伊賀原弥一郎

    伊賀説明員 御説明申し上げます。  水産庁といたしましては、発生いたしました赤潮回収することはできないかということを考えまして、実は四十八年から三カ年で赤潮回収技術事業化試験というのをやってまいりました。その原理は、赤潮の非常に濃密な海域からポンプで水を吸い上げまして、そしてタンクの中で凝集剤を加えまして、そしていわゆる加圧水を注入をいたしまして浮上させる。凝集現象を起こしましたものをいわゆるかき取りをいたしまして、そして濃縮をするという形の赤潮回収実験を実はやったわけでございます。一応原理的には成功いたしまして、ある程度の濃度以上のものについては十分そういうことができるという実験結果が出たわけでございますが、実験をやりました装置自体が比較的小さな装置でございまして、これを現実に現地に適用いたしますためには、幾つか問題が残っております。特に、経済的な問題等につきましては相当大きな問題でございますし、そういう点もございまして、これをいまのところ直接大きな規模にいたしまして、現実に使用するというのはなかなかむずかしいのではないかという考え方に立っているわけでございます。
  19. 永田亮一

    永田委員 この村上先生治療措置の中で、もう一つこういうお話があったのです。超音波を当てると赤潮生物が破壊されて死んでしまうということがわかった、それで超音波を当てる時間は二分間ぐらいが最も効果的であるというお話でありましたが、この超音波赤潮に当てるという実験は、この南西海水産研究所でやっているんですか。そのことを御存じですか。
  20. 伊賀原弥一郎

    伊賀説明員 日本水産資源保護協会に委託をいたしました、先ほど申し上げました赤潮回収技術試験の中で、超音波処理による赤潮プランクトンの破壊と凝集の試験というのをやっております。これは薬品を用いないでプランクトンの凝集ができないかということを検討する目的でやってきたものでございますが、一応十九キロヘルツだとか千六百とか幾つかの波長の超音波実験いたしました結果、やはり九〇%ぐらいの細胞が破壊されて、少量でございますがそういう処理ができるということだけはわかっております。ただ、その後の実用的な問題もございますので、それ以上の詳しい実験というのはいまの段階ではやっておらない状況でございます。
  21. 永田亮一

    永田委員 赤潮を退治するのは、いま言った根本的に赤潮発生原因を究明しなければならぬのですが、それはなかなか大変で急にはいかないと思うので、少なくともいま村上博士が言われておるような、発生した赤潮を吸収してしまう、あるいは超音波を当てて殺す、そういうことがいまのお話ですと効果があるということであれば、それをまずどんどんやってもらいたいわけです。しかし、赤潮を吸い上げるといっても、瀬戸内海は広うござんすから、一隻や二隻の船では、あっちこっち全部赤潮発生ということになると、方々に吸い上げる装置を備えつけておかなければならぬということになるのじゃないかと思うのです。それから、超音波赤潮を破壊して殺してしまうということが効果があるとしても、いまお話があったように経費の問題で、その超音波装置瀬戸内海のあっちにもこっちにも幾つもたくさん備えつけるということは大変な金がかかると思うのです。  この問視察をした帰りに、皆さんでバスの中でいろいろ意見を交換したのですが、そのとき与野党ともに一致した意見は、こういう赤潮対策なんかはどうせ金が大変かかるのだ、だから野党も与党も一緒になって来年度の予算の獲得にわれわれ公害対策委員はバックアップしようということを話をして、みんな賛成をされました。さしあたってヘドロを吸い上げる予算とか、あるいは赤潮を吸い上げる船の予算とか、あるいは超音波でやっつけるその機械の予算とか、そういうものを来年度の予算で——これは水産庁だけじゃないと思います。科学技術庁とかあるいは各大学の研究所とか、各県の水産課あたりでも皆やっておられると思うのですが、そういうものに対する補助とか、赤潮をやっつけるための予算の項目というようなものを、わかっておったらちょっと発表していただきたいと思います。
  22. 伊賀原弥一郎

    伊賀説明員 赤潮関係水産庁が五十三年度予算で現在要求いたしております総額は、約三億八千八百万でございます。五十二年度が三億三千四百万でございますので、約五千万強増加要求をしているという実情でございます。  内容といたしましては、簡単に申し上げますと、先ほど御説明申し上げました赤潮情報交換事業あるいは赤潮予察事業、そうしたものを片一方で要求いたしておりますし、それから先生から先ほどお話がございました治療対策の中の一つでございますけれども赤潮発生いたしましたときに生けすの中にそのまま置いておきますと魚が死んでしまいますから、船の中の生けすだとか陸上の生けすに移すために、そういう施設の補助をするというような事業赤潮被害防止施設でございますが、こういう施設の補助を要求いたしております。そのほか、一応赤潮の防除技術ということでございますけれども、そういう技術の一環といたしまして一昨年までは赤潮回収だとかヘドロ回収だとかそういう実験をやってきたわけでございますけれども、そのほかに来年から、粘土を薄く海中にまきまして攪拌をしてプランクトンを凝集沈降させると同時に、海底の方に細かく存在しておりますヘドロを巻き込みまして、それを魚の飼料になるような形に底質の改善をしていくという、種類の新しい技術開発の試験考えております。これが約二億くらいの形でやっていこう。これ以外に、従来からありました海底の攪拌だとか酸素の供給だとか、それから逆に、これは内水面の湖沼の関係でございますけれども、植物性のプランクトンを多く食べます魚等を使いまして水域をされいにするというような種類試験も加えまして、約二億の金額で大きくやっていこうというような考え方を持っております。  そのほか、他省庁の関係でございますけれども赤潮予察技術で、リモートセンシング等の技術を他省庁のおかげをもちましてやっていこうというぐあいのことも考えているわけでございます。
  23. 永田亮一

    永田委員 予算も伺いましたが、赤潮大発生して損害賠償、この前、四十七年の裁判でも何十億という損害賠償を訴えられておるわけですから、そういうことから比べると、二億とか三億とか、けちなことを言わないで、損害賠償がそれだけ後でごたごた時間と手間とかけてやらなければならぬということになるとすれば、事前にもっと思い切った予算要求をしてもらいたいわけです。われわれは、野党も与党も一緒になってバックアップしますから、遠慮しないでひとつやってください。  質疑時間終了しましたと言ってきましたが、もう二、三分いいですか。——赤潮の問題もいろいろ聞きたいのですが、時間が来ましたので、一つだけ別の問題でちょっと環境庁長官に御意見を承りたいと思うのです。  それは、この間、視察に行ったときも、広島の海田湾の埋め立てのことで県庁で促進の陳情を受けたのです。これは知事も非常に熱心でありました。市とか企業が熱心であるというのはわかるのですが、漁業組合長もまことに熱弁をふるって、埋め立てをやって下水処理場をつくってほしいということを言われました。下水処理場ができないと海が汚れてしまって、結局魚がとれなくなるから、大きな見地から——普通の場合、漁業組合なんというのは埋め立て反対に回るのが普通だと思うのですが、非常な熱意で、早く埋め立てを許可してもらって下水処理場をつくってくれという御要望がございました。  ところがその後、われわれ一行がバスで現地へ行ったのです。現地へ行ったところが、百人ぐらいでしたか、その地方の人がみんな旗立てて、埋め立て反対とえらい勢いで集まっておられたのでびっくりして、私、これはバスジャックやられるんじゃないかと思ったぐらいですが、行ってみたら非常におとなしくて、埋め立てをされてはわれわれの環境が破壊されるから困る、そういう御陳情でございました。  これと似たようなことが私の方の西宮の甲子園の浜の埋め立てでもあるわけです。県とか、市とか、市会とか、漁業組合とかがみんな早く埋め立てをして終末処理場をやってくれという御要望でありますが、地元の地区の住民の方が反対して、いま何か訴訟をされておるようであります。  こういうことは、環境庁長官としては、環境保全の最高の責任者であられるので、全体の環境保全ということと、それからその地域の人たちの環境保全ということが衝突をする、これは全国あちこちにあると思うのですが、こういう場合に長官はどういう態度をおとりになられるか、ちょっと伺いたいと思います。
  24. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 これは非常にむずかしい問題でして、環境庁もいつも板ばさみになって苦悩いたしますのですが、先ほど付言なさいました船上会談でも、大阪の黒田知事が、瀬戸内海水質というものをもっと良化させるために企業にこれ以上負担をかけることは、もう非常にむずかしいかろう、ということは、大阪そのものの財政にも響いてくるし、生活排水というものの負荷量が非常に多いと思うので、下水というものに国がもっともっと補助率を上げるなど、とにかく重点政策をとってほしいということを強く要望されました。  そういう意味で、瀬戸内海全体から見れば下水道の普及と終末処理ということは非常に大事なことだと思いますが、海田湾のように、いままでそこでカキを養殖し、魚もとれていた、つまり、海そのものの経済性が失われる、しかも、そこでそのヘドロを埋め立てに使うことで海も浄化され、海の経済性も復活するという要求があれば、片方には、とにかく工事する間、振動とか騒音とかいろいろ問題が起こるだろうし、もうおれたちはとにかく何もいじらぬでいてほしいんだ、これまた心情的にわかるわけでございますが、その二律背反で非常に苦労しているわけでございます。そしてまた、いまおっしゃいました西宮周辺の問題にしましても、とにかく埋め立てによりまして終末処理場を造成するようなときには、あらかじめ環境保全上の効果も含めて十分に調査をしてくれということで、こちらから県に数項目の質問をいたしまして、乙の間、大まかな回答がございましたが、それではまだ不十分なので、改めてこちらからもっと詳細にという要求をしておりますが、いずれにしましても、計画の実施、特に土地利用の具体化に当たっては、何といっても環境保全ということを重視して事を進めるように、そしてまた関係住民の理解を得るようにという指導をしているわけですが、住民も、その直接の周辺にいらっしゃる方々と、そこに汚水処理場をつくることによって大きな意味での環境的な利益を受ける方々と、つまりどちらを立てるかということは非常にむずかしい問題でございまして、ここで一律に申すことができませんが、とにかくその直接の地域の方々、同時にそれによってさらにその周辺の地域の方々が同じような利益を受けるような理解と解決策というものを見出すべく、地方公共団体等を指導していくつもりでございます。  ですから、どうもはっきりした答えになりませんけれども、この二律背反にいつも悩んでいるのが現状であるということをひとつ御理解いただきたいと思います。
  25. 永田亮一

    永田委員 時間が参りましたから終わります。
  26. 島本虎三

    島本委員長 なお、この際、環境庁長官に一言委員長として申し上げます。  先般、十月十九日、二十日、二日間の瀬戸内海視察におきまして、参加された全員が、赤潮対策のための研究費を含む対策予算に対しては、これは党派を超えて努力を惜しまない、このような申し合わせをいたしました。やはり二百海里時代に対処するたん白資源のためにも、ぜひともこの問題は長官を通じて内閣に反映してもらいたいことを要望いたしたいと思います。  以上で永田君の質問は終わりました。  次に、土井たか子君。
  27. 土井たか子

    ○土井委員 一昨日の当公害対策並びに環境保全特別委員会で、私、質問の入り口程度のことを始めまして、次回に続行というかっこうで前回は終えたわけですから、きょうは前回、一昨日に引き続いて質問をさせていただきたいと思うのです。  一昨日の委員会で、私は、公害対策基本法の昭和四十二年につくられたあの一条二項にあった経済との調和条項が昭和四十五年の改正時点で外されたということに対して、環境庁長官はこの経済との調和条項が外されたために誤解が生じたように思われるというふうに言われた事柄を取り上げて、ここに御出席の信澤局長並びに橋本局長に御質問を始めたわけであります。  そこで、まず私は、もう一度確認の意味でお尋ねをしたいと思うのですが、経済との調和条項が削られたことでどういう誤解が生じたというふうに環境庁長官としてはお考えになっていらっしゃるのか、その誤解が生じたとおっしゃる内容について御説明をいただきたいと思います。
  28. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 たとえば産業界の一部には、あの調和条項が取られたために健康被害補償というものの実態が今日のようになったという不満がございます。これは実は論外、筋違いでございまして、公害の健康項目というものに関してはもともとその調和というものは入っておりませんので、全く論外の、要するに誤解でございますけれども、しかし、そういう声が確かにあることはあります。また一方、生活環境というものの中で健康そのものに致命的に響いてこないような種類の問題でも、とにかく開発は一切いやだ、とにかくやるべきでない、開発をすることは間違いだという論もあることは事実でございます。そういう意味で私は申したわけです。
  29. 土井たか子

    ○土井委員 いまのような内容で、誤解があれを削除されたためにわざわざ生じてきたとおっしゃるのなら、これはあらゆる法律の条文について言いますと、ときに拡大解釈をされたり、ときに曲解をされたりするようなことは多々ございまして、別にこの公害対策基本法の一条二項の中にかつてございました経済との調和条項が削られたから新たにそういう誤解というものをわざわざそのために引き起こされたというふうに私自身は思われないわけであります。  ところで、ひとつ環境庁自身が一体その問題に対してどのように考えてこられたかということを私はあらましこの「公害関係法令・解説集」に当たってみました。これは、環境庁長官と同じような理解でいままで環境行政が進められてきたのかどうかという点が一つは確かめてみたかったからです。  まず申し上げるのは「公害関係法令・解説集」の昭和四十八年版なのですが、この解説に当たられているのは環境庁の担当官の方であります。この文章の中には、解説の四ページのところでありますが、公害対策基本法に対して「目的」と書いてある場所であります。「公害国会においては、この目的について」、この「目的」というのは公害対策基本法の目的について「全面的な改正が行なわれたが、その内容は次の点である。第一は、「経済の健全な発展との調和」条項が削除されたことである。改正前は、その第二項において「前項に規定する生活環境の保全については、経済の健全な発展との調和が図られるようにするものとする。」と規定され、国民の健康の保護に関してはこれを絶対的なものとして取り扱う一方、生活環境の保全については、経済の健全な発展との調和が図られるようにすることとしていた。」それからです。「しかしながら、この規定は、ともすれば経済優先と誤解されがちであつた。」こう書いてあるのです。むしろ四十五年段階で改正をされる以前の方が誤解をされるということからこの条文は削除されたといういきさつが実はあるのです。このことを環境庁自身もこれは解説集によって確かめておられるわけですが、信澤局長、これはそのとおりですか。
  30. 信澤清

    信澤政府委員 私はその解説書のことをしかとは記憶いたしておりません。しかし、四十五年の公害国会で、衆議院の本会議で趣旨説明がございました際、この問題に触れた御質問に対して、佐藤総理から明確に、そういう誤解を避けるための改正であるという御答弁をされております。この点ははっきりしておる事実でございます。
  31. 土井たか子

    ○土井委員 この解説集というのは、これは実は環境庁からいただいております。  それで、さらにもう一度その四十五年、改正された時点に近づけまして、四十六年七月三十日に出版された「続公害関係法令・解説集」というのがあるのですが、これはサブタイトルがございまして、「公害国会成立法律の政省令特集」というサブタイトルがついています。これもやはり解説の部分は環境庁の担当官の方が責任を持ってお書きになっているのですが、これを読んでまいりますと、この公害対策基本法について、「法律内容(一)「目的の改正」」というところ、間違いのないように、その部分だけをとにかく引用することをやめて、前後左右が大事であろうと思いますから、これをずっと全部読んでみます。こういうふうに書いてあるのです。「公害対策基本法第一条においては、その第一項において「この法律は、……もつて国民の健康を保護するとともに、生活環境を保全することを目的とする。」と規定するとともに、第二項において「前項に規定する生活環境の保全については、経済の健全な発展との調和が図られるようにするものとする。」と規定し、〃国民の健康の保護〃に関しては絶対的なものとして取扱う一方、〃生活環境の保全については、〃経済の健全な発展との調和〃が図られるようにすることとしていた。しかしながら、その後、この規定がともすれば経済優先と誤解されがちであることにかんがみ、目的規定について全面的な検討を行ない、第二項の〃経済の健全な発展との調和〃規定の削除問題を含め、政府の公害対策に取り組む積極的姿勢を示すため、目的の全体を改めたものである。すなわち、公害対策基本法の改正においては、「福祉なくして成長なし」の理念を明らかにするため、従来ともすれば誤解されがちであつた経済との調和規定を削除するとともに、「国民が健康で文化的な生活を確保するうえにおいて公害の防止がきわめて重要である」旨を目的の中で明確にし、公害対策については、単なる「公害のあと追い」にとどまることなく、積極的に国民の健康を保護し、生活環境を保全する観点から、前向きの姿勢でこの問題に取り組み、「真に人間らしい生活」の確保——すなわち「健康で文化的な生活」を確保するため、公害の防止に全力をあげるべき旨を明確にしたものである。」こう書いてあるのです。これはまた信澤局長によって、どういうふうにお考えかをひとつお聞かせいただくとともに、確認したいと思うのですが、この文中に言う「「健康で文化的な生活」を確保するため」という内容は、申すまでもなく憲法二十五条に言うところを具現するための施策を環境庁としては講じなければならないという責務がある旨を明確にした内容であると私自身は理解をいたしておりますが、その点もあわせて、御意見をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  32. 信澤清

    信澤政府委員 四十五年の基本法の法律改正、これは政府提案でいたしました。したがって、先ほど申し上げました衆議院の本会議、これは四十五年の十二月三日でございますが、その際、山中国務大臣が趣旨説明をいたしております。その冒頭の部分は、いろいろ過去の経緯を書いてきているわけでございますが、若干省略いたしまして、関連部分を読み上げますと、「このような状況にかんがみ、政府の公害に取り組む姿勢を明確にするため、公害対策基本法の目的を全面的に改正するとともに」云々、そして法律案の概要について、「第一に、憲法にいう国民の健康で文化的な生活を確保する上において公害の防止がきわめて重要であることを目的の中で明確にするとともに、経済の健全な発展との調和規定を削除したことであります。」こう申されたわけでございます。したがって、その解説書の中に書かれておりますことは、この提案の趣旨と認識を異にするものではないというふうに考えます。  同時に、お尋ねの第二点の「健康で文化的な生活」というのは、この趣旨説明の中で山中国務大臣が申されているように、「憲法にいう」ということをはっきり申しているわけでございますから、先生のおっしゃるとおりでございます。
  33. 土井たか子

    ○土井委員 ということなんですね。つまりあの四十五年は政府提案で公害対策基本法の一条二項の削除ということを含めての大改正がなされたわけで、その内容から言うと、公害行政についての目的を明確化したというふうに環境庁の方から提案をされる——後に環境庁というものがつくられる以前のこの四十五年の政府提案という中身では、はっきりただいまの環境庁に対して、環境行政に対しての目的を明確化しているということに私はなると思うのです。そうすると、これは長官おかしいじゃありませんか。四十五年以前は、この一条二項について経済との調和というふうな問題が実は誤解を生ぜしめた、したがってこの誤解というものを生ぜしめないためにも、さらにもう一つ積極的に環境行政というものはこうなければならないという目的を明示するためにも、この一条二項の経済との調和という問題を削ったというところに意味がある、こう環境庁自身がおっしゃっているわけであります。長官いかがでございますか。
  34. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 それは当時としてはそのとおりだったかもしれません。しかし、誤解はあくまでも誤解でございまして、私は、あの調和の条項の入った文章を、たびたび申しておりますけれども、理性的に冷静に読めば、私は、目的というものをあれを削ることでより明確化するという作業をしなくてもわかったと思うのです。私は、調和という言葉の中にどう読んでも経済を優先するというニュアンスは含まれているとは思いません。そういう意味で、私はそれを、経済を優先するのではないんだという基本法の大原則というものを調和条項を入れたまま趣旨徹底していくためにすべきことはむしろ政府の姿勢であり、行政の姿勢だと思うわけです。そして実際に、たびたび申しておりますように、それを取ったために先ほど申しましたような新しい誤解が現在あるということは、私は否めないと思います。
  35. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、環境庁の方も責任を持って監修もされ、そして解説に筆をとっておられるこの公害対策基本法について、かつて「経済の健全な発展との調和」という条項があったことを削除したのは、この規定がともすれば経済優先と誤解されがちだったから削除したのである、さらに環境行政の目的を明確化せんがためにはひとつこの条文に対してはっきりその点をしようではないかということで、この部分が削除されたのであるということに対しては、そこまでやる必要なかった、要らないことを当時は法の改正としてやったというふうに長官自身は御認識なんですか。
  36. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 そう申しているわけではございませんが、それをつまり削除したことで新しい誤解を生んだ、しかもその文章はどう読んでも、つまり経済の優先というものを意味してはいない。でありますから、今日のように環境問題における経済的な側面というものをいろいろ重視して取捨選択といいましょうか、物事を勘案しなくちゃいけない社会的な状況ができているときに、振り返ってみればむしろそのときに条項を削るということよりも、そのときから四十二年に公害基本法をつくりながらそれでもなお公害が非常にばっこした、そして公害国会と言われる国会が開かれた、その中ですべきことは、政府がそういう現象というものをとらえ、時代の流れをとらえて行政、政府の姿勢の中で積極的な指導をしていく、経済のいたずらな優先というものを抑えていくということによって、私は公害基本法の精神というのは徹底されたと思っておるわけでございます。
  37. 土井たか子

    ○土井委員 政府が、とおっしゃいますが、問題は公害対策基本法というのは環境庁によって行われる法律なんですよ。環境庁の環境行政というものはいかにあるべきかということに対して基本的な問題を述べている法律なんですよ。こういうことをやっていかなければならないよということを述べている法律であり、具体的に環境基準の設定などについて、また、特定公害というのはこういうものだということの明示の規定も置きながら、環境行政に対して問題にしているこれは内容なんです。政府とおっしゃいますが、そこのところははっきり環境庁に対してこれは明示されている法律であるということはやっぱりお考えいただかないと私は困ると思うのですね、政府の中でもわけても。いまの経済の発展との調和ということも、経済の優先というものを許さないという方向でやるというのはこれは別の問題であります。たとえば通産省が通産行政を行うときに、やはり人権であるとか、何より大事な人の生命とか健康というものを無視してどしどし企業誘致を進めたり、先ほど来問題になっていた埋め立ての問題に対して賛意を表したりするようなことは、通産、建設、運輸行政の上では許されないというのはこれは鉄則でしょう。これは、いま大臣がお答えになった、そういう方向でやるべき行政の一側面だと思います。けれども環境行政というのはそんなことじゃないと私は思うのですね。環境行政というのはあくまで経済優先というふうなものを抑えるんじゃなくて、むしろ人の健康をどこまでも考え続ける、環境保全というものをどこまでも考え続ける、これがやっぱり環境行政の本旨でなければならない。このことをやはり明確にするために四十五年のあの公害国会の中で公害対策基本法の一条二項にあった経済との調和条項というのは削られたという大変大きな意味があったのではないでしょうか。  こういうことを申し上げて、ひとつそれじゃ長官にこれに対しての御感想をお聞かせいただきたいんですが、これは日弁連ですね、日本弁護士連合会が「公害と人権」という一冊にまとめたものを出されておりますけれども、この中で「公害基本法について」ということが述べられている部分があります。これについては、この全部が全部また読むわけにはまいりませんけれども、ひとつその部分で問題になる点を、そこだけをはしょって言うんじゃなくてその前後も少し加味しながら少し読んでみようと思います。  「公害基本法の目的は、国民の健康の維持とこれに必要な生活環境の保全という、極めて基本的な、人権擁護の立場から出発しなければならない。今日までの各種の公害対策が、その実効を挙げえなかった根本的理由は、産業経済の保護という美名に眩惑せられて、その本来の目的を忘れたことに存する。しかるに政府原案はその基本法の目的について、」——というのは、これは出されたのが公害国会直後であります。つまり四十六年の十月に発行されているわけです。「「国民の健康を公害から保護するとともに、経済の健全な発展との調和を図りつつ、生活環境を保全し、公共の福祉の確保に資することを目的とする」と規定し、厚生省原案が、「国民の健康、生活環境及び財産を公害から保護し、公共の福祉に資すること」を目的と規定していたのに比し、人権擁護の立場から著しい後退を示し、ふたたび従来の公害対策の根本的誤りを犯そうとしている。われわれが、国民の健康の保持と生活環境の保全を重視するのは、憲法二五条第一項が「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障したことに、その根拠を置くものであり、公害対策につき国がその責任を持つべき理由は、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」旨規定する憲法二五条第二項に存する。かかる憲法上の保障は、人の生存権に関する問題として、無条件に守らるべき命題であり、他の如何なる理由も、これを否定するものとはなりえない。いかに必要な生産といえども国民の健康を侵害して許さるべきでないことは理の当然である。今日われわれが直面している公害問題は、まさにこの基本的人権に関する問題である。国民の生存のために必要とされる最低限度の生活環境は、その目的に従って、純粋に科学的、医学的見地からのみ考察さるべきであって、経済の発展その他の如何なる問題も考慮さるべきではない。而してかかる立場を貫くことは、決して産業の発展を阻害するものとはならないと、われわれは確信する。その理由は、大気汚染、水汚濁、騒音、地盤沈下等の公害の深刻化が、企業の直面する技術革新の重大な障害となり、企業自身の財産を侵害するばかりでなく、そこに働く労働者にとって、深刻な労働条件の悪化となって作用することを考えれば、容易に理解しうるであろう。冒頭にのべた如く、いまや公害は住民そのものに対する侵害であるばかりでなく、産業自らをも侵害するものであることを強く銘記すべきである。われわれは以上の立場から、公害対策の目的の中から、「経済の健全な発展との調和を図りつつ」の条項を削除すべきであると考える。」こう述べられているわけであります。  このことに対して長官としてはどういう感想をお持ちになるか、ひとつお聞かせくださいませんか。
  38. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 それは全くそのとおりだと思います。しかし、憲法二十五条に言われております健康で文化的な最低限度の生活というものの中にはいろいろな要件がございまして、たとえば現在の日本の下水道の普及率というものは、きのう総理もテレビで言っておられましたけれども、これはまさに途上国並みで、最低限に近いものである。私はやはりそういうものを完備することもまた、つまり二十五条で言っております最低限の健康で文化的な生活というものの維持のために絶対に必要な要件ではないかと思うのです。  ところが、先ほど永田先生が例にも引かれましたけれども、そういうための施設をつくり、かつ海を復活させ、そこに失われた経済性を復活させようとすると、つまり一部の方々がとにかく何もするな、開発はすべて困るんだということで反対をされる、ここら辺にいろいろなジレンマがあるということで、私、先ほどお伺いしておりましたけれども、目的明示とおっしゃいましたけれども、もとよりいろいろな目的がございますが、環境行政の中で基本的な欠かすことのできない目的というものは人間の健康、生命というものの保全です。しかし、そのためにさらに幾つか出てくる末端の具体的な問題になってきますと、これはやはりいま申しましたように、ある開発なりある環境というものをとにかく手を加えて変えるということでなければ到達できないような問題が出ているわけで、つまりそれについての物の考え方の中にいろいろ混乱があり、摩擦があるということを申してきているわけでございます。
  39. 土井たか子

    ○土井委員 るる長官としては説明をそれなりにされるわけでありますが、それならば実際問題として、この経済との調和条項というものが外されたためにまことに環境行政の上でやりづらいことになってしまったというふうな実感を、この前もお尋ねをいたしましたけれども、きょうはもう一つ明確にお答えを、両局長にまたお願いをしたいと思うのです。  その経済との調和条項というものを外されたために、昭和四十五年以降この条項をめぐって新たな誤解が生じて、そのために、そのためにですよ、環境行政がまことにやりにくくなったとお考えであるかどうか。そして、事実もしそういう調和条項が外されたために誤解が生じたということに当てはまるような事例がありとするならば、それを具体的にひとつお示しいただきたいと思うのです。
  40. 信澤清

    信澤政府委員 先生のお尋ねの御趣旨は、先ほど大臣が答弁しました削除したことが新しい誤解を生んでいる、これに関連してのお尋ねだと思います。  それが誤解を生んだかどうかということは一つの印象なり認識の問題でございますから、私、さようなことについて余り明確には申し上げられませんが、一つ言えますことは、先ほど大臣が例にもお挙げになりましたように、一部において、たとえば公害健康被害補償制度のあり方等について、本来旧法、改正前の四十二年当時の法律においても予定をしておらなかった健康にかかわる問題についても、あたかも当時、経済との調和というものがあったかのごとく言われている事実は、これはございます。これはもう全く誤解でございます。改正に伴う誤解かどうかわかりませんが、ともかく誤解であることは間違いないと思います。  それから、後段にお挙げになりました、開発なんて一切要らぬという議論は、これは現在でもございまするし、恐らく当時もあったと思います。まあ、議論としてはあり得ることでございますので、それによって迷惑をこうむったかどうかということについては、私も大変短い経験でございますから、私自身の経験の範囲内ではそういう感じでいまの問題を受けとめておるわけでございます。
  41. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 前回御答弁申し上げるときに少し舌足らずの面がありました点をまず補正しておきます。  誤解を生じたからすべてやりにくくなったというような意味ではございません。非常に環境行政が進歩してちゃんとしてきた面がきわめて大きいということは間違いないですが、実感として、これは余りの議論ではないかというのが中にはあるということを申し上げたわけであります。そういう意味にまず解していただきたいと思います。  実例を挙げよという御意見でございますが、これは率直に申し上げますと、私は伊達火力のときの議論をずっと横で聞いておりまして、やはりあそこまでの議論に入ってくると、そのためによくなった面もあるけれども、経済の健全な発展との調和が落ちたということの問題であそこまで議論をしてあそこまで火力がおくれるというのは、これは少し片一方の誤解ということに私ははまる場合があるのではないかというようなことを感じました。おしかりを受けるかもしれませんが、率直に申し上げます。
  42. 土井たか子

    ○土井委員 産業界とか経済界とか企業者側からすると、この条項が落ちたことによってまことにやりずらくなるという事実はあります。したがって、そのためにやりづらくなったことに対して、時にあの条項が落ちたために何でもかんでも私たちの活動はいけないのだと言わぬばかりの行動があるので思わしくないという声を出されることはあります。これはそういうことを覚悟の上でやったんじゃないですか、環境行政としては。それは出てくるのは必至ですよ。企業が利益追求の場であり、経済活動というのが利潤を追求せずして経済が成り立たないといういま体制なんですから。その中でこの問題を問題とするということになってまいりますと、それはいま両局長からお伺いした限りでの問題については当然起こってくる問題なんです。しかしここで忘れてならないのは、この条文を見ていった場合に、生活環境を悪化する経済活動というのはどういう場合にも否定されるというのが鉄則でしょう。これが従来は、生活環境を悪化しようが、御承知のとおりに出しっぱなし、たれ流しですわ。死ぬ方まで出たって企業責任をあえて省みない企業があったから、公害列島日本という悪名を全世界に売ったという現象をもたらしたんじゃないですか。そういう点からすれば、企業はやはり企業活動を続ける限り、それなりに社会的責任というものがあるわけですね。社会的責任というものをどういう意味で感じていただくかといったら、それは通産行政では通産行政における企業の社会的責任がございます。農林省においては農林省での企業責任がそれなりにあるでしょう。運輸省においてしかり、建設省においてしかり、各省庁においては、それぞれ取り扱う部門において、企業活動に対してこうあれかしという問題の取り上げ方を具体的にしているわけですよ。環境庁においてはどうなんですか。そこのところが問題じゃありませんか。そこのところを考えますと、二者択一で、ときには経済活動に対しては、ここまで認めてはいけない、これはここまで認めてもいい、この論点を、企業者側の意見というものを重視しながら考えられるきらいがないとは言えない。これがあってはいけないということを明確にきっぱりと明示しているのが、公害対策基本法の一条二項から経済との調和というあの条項が削り取られた一つの大きな眼目じゃないかと私は思っているのです。どうでしょう。
  43. 信澤清

    信澤政府委員 これは四十二年の基本法制定時に返る話になるかと思いますが、先ほども日弁連の「公害と人権」という先生のお読み上げになりました中にございましたように、一番最初、厚生省が公害対策基本法(仮称)試案要綱というものを確か四十一年の暮れごろ出したわけでございます。その後、各省連絡会議をやりまして、その中では、先ほどお読み上げになったような目的になっておったわけでございます。その後、各省の公害対策連絡会議というものをしばしば開きまして、そして政府案として、先ほど来御議論になっているような問題が出てきたわけでございますが、当時、たとえばばい煙規制法、こういう法律にもほぼこれに等しい規定がございました。それはたしか産業の発展との調和と書いておったと思うのですね。ここで、基本法のとき、これは当然のことだ、つまり公害対策を進めていく以上、いろいろな経済的側面を考えなければならぬことは当然のことなので、ただし、その場合に「産業」ということじゃなくて「経済」と言い直しておりますのは、このことは逆に誤解を生んだかもしれませんが、たとえば先ほど永田先生の御質問にございましたような、そういった公共事業、こういうようなものも含む意味で「産業」で切っておきますとその点が非常にあいまいになる、そこであえて「経済」という言葉を使ったという経緯があるやに伺っております。しかし、当時経済成長を云々されておりましたから、かえってそのことが非常に誤解を生んだ。その結果、四十五年あのような改正をいたした、こういうふうにつながっていくのではないかというふうに法律問題としては考えておるわけでございます。
  44. 土井たか子

    ○土井委員 局長、そういうことをおっしゃいますと、四十二年に公害対策基本法が政府提案でつくられるまでのいきさつの上では疑問視される点が出てまいりますよ。というのは、当初の厚生省案にはなかったものが何で入ってきたか。いまおっしゃった公害対策推進連絡会議においてつくられた試案要綱がだんだん企業者側のいろいろな圧力に押されまして、そして自民党筋を通じて連絡会議要綱案から政府原案に至る過程でこの条文が入ったといういきさつがあるのです。だからそういうことから言えば、住民の声で入ったのじゃない、企業者側からの切なる要望を受けてこの条文がつくられたといういきさつを言わざるを得ませんよ。だからその辺はおっしゃらない方がいい。その辺をおっしゃれば、ならばこの公害対策基本法というのは一体だれのためにつくられた基本法かということをあなた、明確にしてしまうことになりはしませんか。それ自身が問題だったから削られた。基本的には、公害対策基本法というのは企業者のためにつくる法律じゃないのですよ。問題はそこでしょう。だからそこを問題にしてむしろ削られたという経緯があるわけだから、あなた、いまの御答弁からするとそれはどうも思わしくない御答弁になりますよ。
  45. 信澤清

    信澤政府委員 私、先生に論争を仕掛けるつもりはございません。事実関係を申し上げたわけで、おっしゃるような公害対策連絡会議の過程におきまして各方面からいろいろな意見が出ておりましたこと、これはそれなりに私も承知をいたしておるつもりでございます。問題は、四十二年に出ました際の政府の原案は、事の経緯はともあれ、ただいま問題になっております個所につきましては、「公害対策の総合的推進を図り、もつて国民の健康を保護するとともに、経済の健全な発展との調和を図りつつ、生活環境を保全することを目的とする。」こういうことで書いておったわけでございますね。これに対して国会で、政府案が一部方面に健康の保護についても経済の発展との調和を図るものであるかのごとき誤解を与えている。それから「目的とする。」という「目的」の記述の中にこの種の事柄が入ってくることは目的の純粋性を損なうではないかとか、あるいは経済の健全な発展との調和は目的達成の過程での考慮すべき一要件にすぎないのだから、その趣旨を法文上明確にする必要がある、そこで四党共同提案で四十五年の改正前の基本法のように改められたわけでございまして、その際には「もつて国民の健康を保護するとともに、生活環境を保全することを目的とする。」、そして二項で、「前項に規定する生活環境の保全については、経済の健全な発展との調和が図られるようにするものとする。」、これが四野共同修正で入ったと私ども伺っております。
  46. 土井たか子

    ○土井委員 四党の共同修正で入ったにしろ、これはそのとき賛成だ反対だという論議をやればそのこと自身がまた新たな論議を呼びます。ですから、それはいずれかの機会にまた時を改めていたしましょう。  いまここで問題になっているのは、先ほど長官が言われたように、四十五年段階で果たして産業界あるいは企業者側あるいは経済界自身が、そういう経済活動というものがこのことによって大変阻害されるという意味での誤解というものを当初から抱くことになるから反対だと言われたかどうかというのは、私は大変問題だと思います。四十五年にこの改正のための審議をやっている間には、私もあの公害国会の席にはおりましたけれども、そういう状況はいささかも聞こえてまいりませんでした。それはよく知りませんでした。新聞紙上にもそういう記事は載りませんでした。ただ、しかし、こういう向きはあります。企業者側が最後までもし渋った点があるとするならば、それはこの公害対策基本法の主務官庁が厚生省であるということではなかろうか、厚生省は環境衛生面を重視し、その観点から企業への規制を強行するかもしれないと思えたからである、企業者側は、主務官庁は総理府または経済企画庁が当たるべきだと考えていたようである、こういう点はあるのですよ。こうなると、この公害対策基本法の条文の内容はもちろん一番大事な問題ではありますけれども、本当のところ、これを取り扱う官庁というものが一体どういう官庁であるかということが大変大事なポイントになってくるのです。だから私が先ほどから通産省や建設省や運輸省と環境庁は違うでしょうということを、あたりまえのことなんだけれども、ことさら力説して問題にしているのです。  そこで、そのことを前置きにしながら、私は、長官にもう一たびはっきり確かめておかなければならないなと思っております問題は、ことしの三月十七日に、長官も覚えていらっしゃるかと思いますけれども、予算委員会で私質問を申し上げました。その節、長官に御質問申し上げた中身について、もう一つはっきりした御答弁になっていないのではないかと私は思いますから、これをもう一度この意味を込めて、先ほどから申し上げております意味を込めて御質問するわけですが、ことしの一月二十五日に公害対策全国連絡会議の陳情を大臣自身がお受けになったわけです。その陳情に対しまして大臣自身は、私自身の考えがある、開発計画の持つメリット、デメリットの両面を評価したい、そのようにおっしゃっているわけなんですね。そうして、アセスメント法というのは早急につくる必要があるけれども、しかし、すべての開発にブレーキをかけるような目標でつくることは疑問だ、通産、建設などの扱う問題も含めて多角的に計量評価できるようなものをつくりたい、こういうふうにおっしゃっているので、私は、どうもこれ自身がアセスメント法の内容に触れている部分でありますけれども、通産や建設などが本来その省で扱うべき問題も全部引き込んで環境庁がこれを環境庁の仕事としてやるということは間違いではございませんかという意味を込めた質問をやっているのですが、このことについて大臣自身はどうお考えになっていらっしゃいますか。
  47. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 先ほどされました御質問にやや答えが足りませんでしたので、それを加えてお答えいたします。  公害基本法というのは、これに立脚する主務官庁というのは当然環境庁です。しかし、通産の仕事にしろ運輸にしろ建設にしろ、この時代に、つまり公害基本法というものをそんたくしないで事業をすることというのは基本的に歴史的に間違いだと私は思います。そういう意味ですから、私は環境問題とは限りませんが、社会的な問題の中に当然環境の問題がございますし、問題によっては建設なり通産なりいわゆる経済的な側面、社会的な側面というものが出てくるわけでございまして、それを一つのプロジェクトとして云々するときに、要するに私たちは何といっても環境というものを主眼にして物を申しますけれども、しかし、他の関係省庁というものの主張もより耳をかし、そこである合意を得なければとにかく一つ事業というものは前へ進まないわけです。そしてまた、一つの開発にしろ何にしろ、社会的に利益の還元を図らない、国民大衆に利益の還元を図らないで行われる計画というものはないと私は思うのです。御存じかもしれませんけれども、昨年のOECDの環境問題に関する日本における会議のレビューの中でこういうことがございます。私は、四十二年、四十五年のいきさつというものは、特に四十二年のころは国会におりませんからそれはつまびらかにいたしませんが、現在の時点で環境行政を担当してみますと、四十五年からわずか六、七年しかたたないいま、いろいろな問題、新しい傾向が出てきている。そういうものも含めてOECDがこういうことを言っております。「今や日本の政策はより広い基礎にたって進展されることが期待される。つまり、より広範に、汚染防止のみでなく、全般的な福祉の推進、よりすぐれた土地利用、又、貴重な自然や文化遺産の保存にも取り組むべきである。」途中ちょっと省略しますけれども、「将来は、」「基準が増々厳しくなり、かつ、それを達成するための費用が上昇するに従って、産業界は基準を受け入れるのにより躊躇するであろうからである。そしてまた将来においてはさらに広範なアプローチが望まれるのである。」  この「広範なアプローチ」というものを多角的に関係省庁と話し合いをして、環境問題に含まれておる社会面な側面、経済的な側面というものを十分しんしゃくしながら、しかし、その中で、私たち環境庁の主張の眼目というものは生活環境の保全でございます。しかし、一つ事業の中で、問題の中で、関係する省庁の言い分に一切耳をかさないというわけにはいかないと思います。たとえば先ほどの埋め立ての問題にすべて反対だと言われている方々の姿勢の中には、やはり広範囲なアプローチという姿勢がない。それは何によってもたらされるかというと、いろいろ理由があるかもしれませんけれども、その一因に、だってとにかく四十五年に調和条項を取ったじゃないかという論がともするとよく聞かれます。そういう意味で新しい誤解が生まれたということを申してきているわけでございます。
  48. 土井たか子

    ○土井委員 先ほど来私が申し上げているように、産業界が産業活動を続けるのについては、それなりの企業責任というものがあるわけですね。ですから、私自身は何も経済活動を全面的に否定してかかる立場でもなければ、経済活動というのは全部悪であるとも思っておりません。健全な経済活動が必要だ、そう思っています。だから、そういう立場から、いまお答えになった環境庁長官のお答えに即してひとつお尋ねを進めたいと思うのです。  昨日、健康被害補償法の問題で参考人の方々においでをいただいて、私たちは御意見を拝聴いたしました。その中で、経団連の環境安全委員会を代表して御意見を述べられた参考人から、私どもは資料をいただいたわけですが、その資料の中に、いろいろと述べられている後に要望事項がございます。この要望事項の一番末尾に、「最後に、NOxを新たに賦課対象物質に追加しようという動きがあるやに聞くが、NOx環境基準等をめぐって重大な疑問が提起されている現在、厳にこれを避けるべきである。」こう書いてあるのです。つまり、NOx環境基準等をめぐって疑問視されているから、これを新たな賦課対象物質に加えることは厳にこれを避けるべきである、これは要望なんですよ。もし経済との調和条項というものがあの四十二年当時のままにおかれていたら、この点はどうなるか。これは、いわゆる環境基準の点について申し上げますと、まさにこの点ずばり、かつて、九条二項では「経済の健全な発展との調和を図るように考慮」しながら環境基準というものは定められなければならないことになっておりました。したがいまして、こういう点からすると、こういうふうな要望に従って対応の仕方というものが環境庁としては違うのじゃないかと私は思うのです。  そういう意味から一つお尋ねしたいのは、同じ参考人から、NOxの問題にしても大気汚染の問題にしても、固定発生源よりも移動発生源にその原因があるということに留意してほしいという御意見がきのうあったのです。移動発生源という乙とになってまいりますと自動車ですね。この車について排ガス規制環境庁で問題にされる節にどういう対応の仕方をされたか。これは、当時ごうごうたる国民からの非難が環境庁に向けられたことを長官自身もよく御存じだったであろうと思います。これはどういうぐあいに問題にされたか。長官、まずこの点についてどうお考えになりますか。  五十一年規制について、NO2が当初原案では〇・二五グラムだったのが緩和をされまして、小型車は〇・六グラム、大中型車は〇・八五グラムと決定をされて告示をされたのです。このときには環境庁はどういう立場に立ってお考えになったのか。恐らく、環境保全とか健康被害の問題以前に自動車産業界、自動車工業会というものの立場を非常に考慮されたのではないか、こういう非難があったのですが、この点どうお考えになりますか。
  49. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いまの先生のような御意見、あるいはそのような受け取り方をする方がおられることも、これは否定できません。また、そういう自由もあると思います。ただ、五十一年規制が決定をした時点で、その期限内に完成するという技術がまだでき上がっておらなかったということは、私は間違いのない客観的な事実だと思います。
  50. 信澤清

    信澤政府委員 先生の言葉のしりをとらえて申し上げるわけではございませんが、先ほどおっしゃった、四十五年の改正前の九条で環境基準に関する規定がございますが、この二項でも「前項の基準のうち、生活環境に係る基準を定めるにあたつては、」云々ということでございますので、国民の健康の保護に関する部分については、経済との調和というのは従来から全然変わっていない、こういうことでございます。
  51. 土井たか子

    ○土井委員 信澤局長の御答弁ね、いまのはまるで私が聞いてないことを御答弁になっているわけであって、環境基準等々を定めるに当たって、自動車の排ガス規制というのはこういうことでなければ環境基準というものを十分に達成するという環境をつくることにならないという側面を持ってあの排ガス規制は対処なさったんじゃないですか。だから、そういうことから言うと、この問題というのは大きい意味を当時持っていたと私は思うのです。  そこで、いま橋本局長から、一体いつそのことが実施できるかという時期が不明だったからこうなったという御答弁でありますが、それならば、さらに今度は石原長官にお答えをいただきましょう。  この規制値に対して、大丈夫クリアできるということを業界が言いましてから、五十年値については五十年四月一日施行で、それ以後どの車種についてもそういうことをメーカー側に義務づけるということが、事実上乗用車についてはできたはずなんです。ところが、この辺をずいぶん先に延ばしまして、在来車については十一月三十日までどうぞ生産してくださいということを環境庁自身が告示としてお出しになったのですよ。十二月一日から初めて五十年規制値の車が売り出されなければならなくなった。だから、そういう点からすると、駆け込み生産というものが大変問題になるんじゃないかということを当時私は問題にいたしました。五十年にしてしかりですが、五十一年値についても、五十一年四月一日になるわけじゃなくて、何と五十二年三月以降というかっこうになったわけです。したがいまして、ずいぶん先に延ばして、そこから先で結構だ、それまではどうぞ在来車を思う存分生産してくださいという告示をお出しになったのですが、これは大変問題が大きいと私は思います。  こういうことについては長官、どうお考えになりますか。本当に経済との調和条項というものが削られてから後出た問題だから、経済との調和条項というものがいまだに亡霊のように足を生やして歩いているという非難が出たのですよ。いかがでございますか。
  52. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 事実関係について政府委員から答弁しました後、私の所感を述べさせていただきます。
  53. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いつまでにそれの実行の期限を置くかという点につきましては、確かにいろいろな議論があることだと思います。しかし、これは生産ラインを変えるというような問題を伴いまして、どうしてもここまでにやらせるということを完全に担保しなければいけないということもあり、いまのような期限の設定が置かれるということは規制基準設定の場合には当然起こり得ることであるということでございます。これはおのおのやるべきだというような議論、やりたいという議論も決して私は否定をいたしません。ただ、そこには状況判断についての事実情報をお互いにどれだけ握っているかという問題、あるいはおのおの価値体系がどれぐらい違うかというような問題、そういう問題がいろいろ絡んでなってまいりますので、先ほどからの御質問にも関連いたしますが、規制法の基準等を決定するのは環境庁長官がやるわけでございます。そういうことで、そのときにおきましてはやはり検査体制がきっちりできるか、生産ラインがきっちりいくかということの問題についての判断が中に入って環境庁長官として最後に判断をするところがございますので、環境庁としてはいま申し上げたような判断になっているというぐあいに御理解をお願いいたしたいと思います。
  54. 土井たか子

    ○土井委員 国道四十三号線の視察などをされるときに、長官は常に発生対策というのが大事だということをおっしゃり、車の台数の制限なんというのをやはり考えなければならないということをおっしゃったことを私は明確に覚えております。そうしますと、車の排ガス規制というのは、いまの局長の御答弁のとおりで、どういうふうな規制値を設けるかという問題とは別に、台数制限というものも考えていく必要がやはり生産時点であるわけですね。だから、そういうこともあわせて考えてみますと、このように生産時点というものをずっとおくらせて、それまではどうぞ在来車をどしどしつくりなさい——事実上これは大変な駆け込み生産があったわけですけれども、そういう状況環境庁としてお許しになったというのは、やはりあえて批判を受けなければならない側面ではなかったかと私思いますが、いかがですか。そのときにやはり経済との調和条項というものが足を生やして歩いていると言われたのですよ。
  55. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 いま局長からお答えいたしましたが、いわゆるリードタイムについていろいろな要因が絡み合っているので環境庁としてはそういう判断を下したのだと思います。  それから、先ほど信澤局長が申しましたが、すでに十分御了解のことと思いますけれども、この問題はいわゆる私の発言が問題になりました調和条項とは違うカテゴリーの、そういうものを一切法律の案文としては含んでいない範疇の問題でございますので、これは念のために申しておきます。  ですから、一層国民の健康というものを優先的に考えるべき問題だと思いますけれども、しかし、私、詳しい事実関係をつまびらかにいたしませんけれども、そのリードタイムというものの分析の結果、先走りして短くしてしまってもどうにもならないし、その企業が果たしてそれでこたえられるのかこたえられないのか、そこら辺の判断がありましてそういう結果になったのだと私は思います。
  56. 土井たか子

    ○土井委員 いま企業の立場をおっしゃいましたね、企業にそういう判断があったと思いますと。問題はそれじゃないのですよ。企業の立場は立場としてそういうことがあるに違いない。それに対してチェックするのが環境庁じゃないかという乙とを私は初めから言っているのですよ。はしなくもいまの長官の御答弁で長官の姿勢とか長官の認識というのがわかる気が私いたします。そういうことじゃないでしょうか。
  57. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 その問題は余り詳しく知りませんのでちょっと失言いたしましたが、これは主に運輸省で検査体制の問題にも非常に大きな要件があったようでございます。
  58. 土井たか子

    ○土井委員 それでは運輸省の方に責任転嫁をなさるような物の言い方でありますけれども、要はしかしそういうことではなくて、あるいは環境行政の上で問題はこの点は産業優先という姿勢をまだまだとられているのではないかという意味での大変な批判があったということを重ねて申し上げます。  したがいまして、範疇が違うとおっしゃいますけれども、それは確かに自動車工業会の問題を私言っているのではないとおっしゃる意味においては違うでしょう。でも、企業者側があるいは経済界がこの条文が削除されたことのためにいろいろ経済活動というのがやりにくいというふうな意味で誤解を生ずるということをおっしゃるこの範疇とは同次のことを私は申し上げております。これは頭のよい長官ですからその点はお考えになればよくおわかりになると思うわけであります。つまり、企業者側が企業活動をやるのについてそれぞれ一定の限界があるわけです。環境庁としては経済の発展との調和というものを削除したことによって、企業者側に対してはそういうことを考えないで、企業の発展とか企業の経営状況とか景気が悪いとかいいとか、そういうことを考えないで、環境保全、生活保全というふうなものを全面的に全力投球で考えるということが義務づけられている結果になったわけですよ。だから、そういうことから言いますと、いま考えるべきでない要素を考えていろいろとこの排ガス規制のときには基準値を設定され、また先にリードタイムというふうな内容で引き延ばしをされたということ自身に対して、やってはならぬことを環境庁はやられた。その内容はかつて削りとられたはずの経済の優先ということを誤解として受けてきたあの調和条項というものが、またぞろここで環境庁の姿勢として見られるではないかという意味で私はいろいろ批判があったということを申し上げているわけです。だから、決して範疇は別のことを私は言っているわけじゃない。特に、あの経済との調和条項ということを問題にしてまいりました節問題になるのは、やはり後の環境基準ということを考える場合に、一体「経済の健全な発展との調和」というものが削られたためにこれからどうなるかという側面が私は非常に大事なポイントだと思っておるのです。これはそのように考えてよろしゅうございますね。橋本局長、いかがですか。
  59. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生のおっしゃいましたように、「経済の健全な発展との調和」という条項が削られたために、環境基準の設定ということにつきましては非常に深い関心と厳しい目でこれは見られているということは事実でございますし、環境庁としても非常に重大な責任を持ってこれは決断をしなければならない、こういうことであります。
  60. 土井たか子

    ○土井委員 そういう節、やはり環境基準の設定ということに当たってはいろんな問題があるわけですけれども、従来この調和条項があったがためにできなかったことに一つは歩を進めて、環境行政の理念と申しますか、それを一つは具体的に生かすのがこのかつてあった九条二項のいわゆる経済との調和条項との削除という意味で出てきたと思うのです。これは順を追って、本会議があるようでありますから、本会議後私はさらに歩を進めたいと思いますが、この本会議までの間にひとつ関連質問で、馬場猪太郎議員がここに来られておりますので、まず馬場議員の方からの関連質問を先にお願いしたいと思います。
  61. 島本虎三

    島本委員長 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。馬場猪太郎君。
  62. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 お許しを得まして、関連質問をさせていただきたいと思います。と申しますのは、せんだっての十月十四日に私、環境庁長官に、はからずも重要な環境行政をあずかる長官が大臣なんてつまらないというような発言をなさったということが雑誌や新聞で問題になりまして、その真意をただしました。そこで、ある程度の真意をお聞きして、その上で——ということは、環境行政の政治姿勢というのは非常に重要な問題であるために当初ただしました。そして、御答弁をいただいて、本当に二言、三言のやりとりでその点は終わったと思うのです。ところが、御答弁をいただいてからいろいろただしてみますと、長官の弁明いただいた内容と少し違うような問題もあると思いましたので、重ねてただしたいと思って関連質問をお願いしたわけです。  その前に、いまたまたま経済との調和条項が出ておりますし、これもやはり環境庁の政治姿勢の問題として重要な問題だと思いますが、当時、私どもも地方議会の中で条例制定のときに、この経済との調和条項、産業との調和条項をずっとやっておりました。そのときの時代背景を抜きにしてこれは考えられないと思うのです。先ほど途中で参りましたので、ひょっとして間違っておったらお許しいただきたいと思いますが、調和条項の文字の中にはそういう産業優先的な、経済優先的なそういったものは全然ないのだ、こういうふうな御答弁をなさったと思うのです。これはしかし時代背景を抜きにしては考えられないと思うのです。当時は大体硫黄酸化物を中心とした大気汚染が中心の公害対策だったと思います。そして、その当時のたれ流しあるいは汚しっ放しの大気汚染に対して、健康優先というのは、公害は本来ゼロから出発すべきだ、あるべきじゃないのだ、がしかし、現在の日本の産業状態から見て直ちにこれをとめるわけにいかないから、やむを得ずたとえば〇・〇五までいいのか、〇・〇四でいいのか〇・〇三でいいのかということでの議論があったわけです。ところが、現状を出発点とする産業界の考え方というのは、その当時は恐らく〇・〇七五くらいの非常に厳しい排気物を出しておったと思いますが、そこからの出発点。両極端からの出発点なんです。だからこそゼロから出発するということになれば厳しい状態になるだろうし、現状から出発するということになれば産業界としては、当時は硫黄酸化物をなくするための技術もないし、そしてまたそれを開発するめどもついておりません、その技術開発をやるためには莫大な投資をやる必要がある、そういうことになれば経済界は麻痺してしまうのだという考え方、そこに経済を優先して考えるか、健康を優先して考えるかという、どこで線を引くかという論争があったのが当時の時代背景です。だから、言葉として調和条項の中には経済の優先も何もありませんけれども、産業界の主張していらっしゃる、経済界の主張していらっしゃるそういう発想でいくならば、その調和条項、「調和」という文字が、現在の産業状態との調和という意味でこれはまずいということで調和条項が廃止された経過があるわけです。そういうこと、あるいは当時の事情はお知りじゃないかもわかりませんけれども、新聞紙上にもそういうことは一々やりとりがあったということは御承知のとおりだと思います。そういう中でそういう経過を知っておる者から見れば、先ほど常識的な意味での調和というように長官言われたと思うのですが、幾ら常識的な意味で言われたとしても、法律解釈、法律上の文字の解釈という意味でないとしても、現在、環境庁の長官である現職の長官である方の発言としては非常に影響が大きい、そういう意味で調和条項がいま土井委員からも厳しく真意をただされたわけです。そういう時代背景というものを十分御承知の上で発言なさったわけじゃないわけですか。
  63. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 公害基本法はこれは特別臨時措置法ではないわけでございます。ですからこれは恒久法でございまして、やはりあの時代には時代の背景がございましたが、わずか六、七年たたないうちに経済状況も変わり、社会状況も変わり、いろいろな新しい要因というのが出てきておるわけです。ですから私は、いろいろ議論の末決めた言葉、しかもその言葉自身に時代の背景によっていろいろ拡大解釈されたりいろいろな解釈をされる可能性があるにしても、「調和」という言葉は私は調和でしかないと思いますし、その中に込められている幾つかの要素の中に優先というような要因というのは私はないと思うわけでございます。おいでになる前に、そして一体どういうケースがいま出てきておるかということについては埋め立ての問題等々るる申しましたけれども、やはり環境問題に込められました社会的経済的側面というものをあのときよりもいましんしゃくして考えないと解決しない問題が非常にふえてきているということで、現在の時点から考えれば、あれは臨時措置法なら別でございますけれども一つの恒久法でございまして、「調和」という非常に大きな概念を持った、しかし幾ら大きな概念でもその中に決して経済を優先するというニュアンスはみじんもない言葉というものについて削除がなされたということについての私の印象を述べたわけでございます。
  64. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 十分ぐらいしかないそうですから、その問題はおきますけれども、少なくとも誤解を与えるような発言であったということは、長官も十分お知りおきいただきたいと思いますし、そして常識的な意味とまた違うわけですから、その点十分心得ていただきたいと思いますが、私が食い違いがあると申しましたのは、長官は「これも実は前後の文脈が無視されて、そこのところだけ報道されまして、こちらも非常に迷惑をしております」というふうな御答弁だったわけです。  それで「現代」九月号をコピーいたしましたものを読み上げますから。ひょっとして私だけの思い過ごしであれば、いま長官の前後を抜いて一部だけということになるかもわかりませんが、私はそういうふうな印象を受けませんでした。その部分を読み上げてみます。「大臣なんてこれは下らない仕事だね。男のやる仕事じゃないね。あとは総理だけだっていうけど、まあ総理もねえ……政治家なんて下らないですよ。ボクは海洋開発公団なんてものができたら総裁になりたいな、都知事ねえ……これもニヤニヤして女々しくないと票がとれないし。だいたいいまの世の中、ボクみたいに言いたいことハッキリいう人間はうまくいかないね。」  この前後に何か文章があるかどうか聞いてみたのですが、現代の方でも別に文章は全然ありませんと言いますし、これに発表されたままでいくならば特別に抜き書きしたわけでもありません。そして長官が十四日に御答弁いただいた内容もうかがい知ることができません。御答弁いただいたのは「盲判を黙って押すのが名大臣であるということをよく覚えておけという忠告もいただきました、あるいはまた他省との絡み合いは全く無視して、とにかくある種のジャーナリズムに拍手喝采されるようなことを、いわば大臣など一過性であるから、やればよろしいという忠告もありましたが、私は、やはり環境庁長官といえども国務大臣でございますので、その他省庁との兼ね合いということの中で、国益を考えて言うべきことはやはり言うべきではないかということで、もしそれらの方々が言うようなものが一つの理想的な大臣像であり、安定した成果を得る大臣であるならば、私はまさしくそういう閣僚はくだらない存在でしかないという意味で申しただけでございます。」こういうふうな注釈がついているのですが、原文の中には、弁明をいただいた、御答弁いただいたようなことは、どう解釈しても出てこないんじゃないでしょうか。ただ、長官自身の気持ちの中には、あるいはそういうお気持ちはあったかもわかりません。しかし、原文からはそういう御答弁の内容を引き出せないとするならば、言葉が足りませんでしたと一言言っていただくといいわけですが、これは捏造したものだ、前後のつながりなしに、これはむしろ私も迷惑しているんだという御答弁なんですが、この点いかがでしょう。
  65. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 その問題について馬場委員から「現代」の方にお問い合わせがあったという記事が新聞に一つ出ておりました。それでその編集の幹部の方に後で聞きましたら、何か来客中で、その来客も実は私の偶然知っている人でしたのですけれども、電話があって立っていって数分で戻ってこられたそうですか、そのときに、何かその前にもう一つその方がメモをされていた言葉があって、それは十年政治の世界にいると何か全部わかっちゃったという言葉がその直前にあるということでございましたが、これは実は、編集長とあの文章を書かれた小池さんという方と、それからお問い合わせになった編集部の幹部の方と私と四人で、一時間半でしたか二時間でしたか、かなり長いインタビューを受けまして、速記者をつけずにときどきメモをとられながら、後はテープを聞かれてあの記事を書かれた。小池という方の名前で書かれた文章ですが、私の言葉が引用されたり、私の知人の言葉が引用されたりしておりまして、その知人も、実は自分の本意が伝わっていないという釈明と言いましょうか、それを私に電話してまいりましたが、私自身、その一時間半か二時間何を話をしたか、数カ月前のことですから詳しく覚えておりません、言い逃れではなしに。それからテープもずいぶん前のものでございまして、編集長に聞きましても、ほかのものに使って、ない。しかし、私は、その会談の中で、その直前の会話の中でなしに、前後左右いろいろな話をしましたが、あるいはテープを消した後かもしれませんけれども、要するに会談が始まってから終わるまでずっとかけておりましたから、テープの中に入っているのではないかと思いますが、とにかく詳細な記憶はございませんけれども、いろいろな話をした中で、そういう話をしたと思います。  それから、その機会だけじゃなしに、いろいろなインタビューにも応じまして、大臣どうですかとか仲間に聞かれたりジャーナリストに聞かれたりして、いろいろな問題がありまして、特に、この問題が起こる前にもいろいろ記者クラブとの間に不本意な出来事もあったりしまして、そういうことで、もうちょっとうまくやれないのか云々という話の中に、盲判という言葉がぐあいが悪いのならば、とにかく内容を見ずにポンと判こをその場で押して、うるさいちっちゃなことを注文せずにお役人に任せ切る——私は私で環境問題に興味がございますから、これは何かということを、スタッフにとっては迷惑かもしれませんけれども聞くこともございますし、それからまた、今度の調和条項の問題も含めまして、考え方の違いというものがいろいろ環境問題で際立って立ってまいりました。私は私の所信がございますので、それは私の信念、責任で述べていくつもりでございますけれども、それをある種の風潮に迎合しろと言われれば、これは不本意で、そういうものが名大臣とされて、波風立たずに無事に大臣を終わって結構だったということを言われるなら、ということをあちこちでもたびたび言っておりましたし、私も詳細に覚えておりませんけれども、その会話の中で言ったと思いました。確かにあったそうでございます。それは、何かお聞き合わせになった編集の幹部の方のメモの中にあった。要するに「すべてわかっちゃった」という言葉の中には、何がわかったかということで、そういうことを私は申したと思っております。
  66. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 ただ抜き書きされたんだ、真ん中だけを取られたんだ、前後の文派の関係なしに、というふうに言われておりますけれども、そうじゃないのじゃないですか。あれはそのまま、ありのまま出ているのじゃないですか。そうすると長官、この間、弁明された内容というのは、あくまで長官がひとり主観的に考えていらっしゃることであって、対外的には、あの発言は「現代」九月号が間違っているのだということになりますよ。主観的に長官がどう考えられようと、それは構いません。しかし、あの文章だけで、抜き書きじゃなしに、あのとおりで前後もなかったとしたら、長官が言葉が足りなかったと言われない限り、これは「現代」の方が間違いだということなんです。そうでいいのですか。
  67. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 「現代」が間違いだということで私は言っているのではございませんで、実際メモに残っておりますように、その直前の言葉も数行ですか、とにかく出ておりませんし、ほかにどういうようなメモがとられておるかわかりませんけれども、しかし趣旨として、私はその長い対談の中で言ったと思います。  それで、紙数の都合もございましょうけれども、また時間の都合もございまして、本来なら私は、そういう校正を自分で見せていただいて、再校まで見届けるようにしておりますけれども、時間が足りずにそれができなかったという不幸な行き違いがございまして、確かにああいう形であの言葉が出ればいろいろな誤解を与えたでしょうし、もし私に校正の機会があったら、ほかの部分を削ってでも足したと思います。そういう意味で、いろいろ物理的な条件もございまして非常に誤解を招きやすい形の文章になったという意味で申したわけでございます。
  68. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 作家としての石原慎太郎さんでいろいろ言われたならかまいません。しかし、現職の環境庁長官として、大臣はつまらない、くだらないと言われたら、その文字どおりにとれば、これはもう環境庁長官としてつまらないのにどうしてやっていらっしゃるのだろう、これは当然じゃないですか。そんなにつまらないものをどうしておやめにならないのだろうかと、だれもが思うのが当然じゃないですか。十四日の答弁で私は聞きましたけれども、だれもほかの人は聞いていないわけですよ。全部そう思っていますよ。誤解を与えるような発言であることには間違いないと思いますが、その点について何らかの反省はお持ちでしょうか。
  69. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 でございますから、その一時間半なり二時間の対談の中で、話題があちこち移ったりいたしましたけれども、私はそういうことを申したつもりでございます。それで、結果としてメモに残っているものもある形で消去されてそういう形だけ出ましたことは、私も大変遺憾ですし、私、本来ならどんなに時間が切迫しても校正を見せていただくよう要求すべきでしたけれども、こちらも仕事が忙しくて任せたということには、私の責任はあると思います。その点は反省いたします。
  70. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いまのは校正を見なかった責任を言われるのですが、出てしまった以上は、見なかったことを恥じたところで、どうにもならないのじゃないんですか。現在まだ、環境庁長官という地位に対して不信感を与えっぱなしなんですよ。その点について反省はなすっていないのですか。全く反省の場所が違いますよ。校正をしなかったことを反省しているのですか。おかしいじゃないですか。
  71. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 ですから私は、その一時間半なり二時間のインタビューの中で、私の趣旨は申し上げたと思うのです。それで、そのすべてわかってしまったということの中にもそういうことを込めて申したつもりでございますけれども、私が自分で書いたものならそういう表現をいたしませんし、もっとわかりやすく、くだらないという言葉を使っても誤解を招かないような形で表現いたしますけれども、いろいろな要件が絡まりましてこういうことになりまして、これは質問いただいて議事録にも残り、しかし、国民の方々がすべて議事録を読まれるわけではございませんので、御指摘のとおり何らかの機会に、誤解のないように私自身の言葉で、これは読者の方々にも正当な御理解をいただくように努力いたします。そういう手続を必ずとります。
  72. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 時間がございませんし、これ以上申し上げませんけれども長官、意図はどうあろうと、出た結果は出た結果ですから、率直に過ちは過ちだとお認めいただいた方がいいんじゃないかと思います。  一応これで終わりたいと思います。ありがとうございました。
  73. 島本虎三

    島本委員長 この際、午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時四十八分休憩      ————◇—————     午後一時三十八分開議
  74. 島本虎三

    島本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。土井たか子君。
  75. 土井たか子

    ○土井委員 休憩前に引き続きまして質問を続行いたします。  休憩前に長官からの御答弁で、あの四十五年に公害対策基本法の一条二項にあった経済の発展との調和条項というものが削除されたために誤解が生じたと言われる内容が、質問すればするほど、環境庁が従来四十五年当時なぜ削除されたかということに対する認識を持ってこられたその内容と、長官のこの問題に対する認識が違っているということがわかるわけでありますが、しかし長官は、私は私の認識がある、認識の相違だと恐らく言われると思うし、先ほど休憩前に御答弁の中に出てまいりました、ある種の風潮に迎合するということは私としてはできないというふうにおっしゃるだろうと思うのです。それは、私は、作家石原慎太郎氏という立場だったら結構だと思うのですが、ただいまは環境庁長官石原慎太郎氏であります。したがいまして、私は、環境庁長官としての石原長官に対して、いまさらに質問を申し上げたいと思うのです。  当然のことながら、環境庁長官でございますから、憲法九十九条によって憲法の尊重、擁護義務がございます。その憲法の中には、内閣に対して七十三条で法律を誠実に執行するという義務がございます。法律は国会で制定した、ただいま問題になっている公害対策基本法でございます。しかもこの公害対策基本法に対しては、従来から、環境庁としてはこの一条二項が削除されて以来どういう基本姿勢で臨むべきかということに対してのこの法律に対する一定の認識がございます。しかも、私が長官に対して申し上げたいのは、四十五年にあのいわゆる経済条項というものが削除されてから、環境庁という新たな庁がそのために設置されたのです。そうして環境庁が発足した。環境庁設置法の内容を見てまいりますと、その第三条に、午前中私がるる質問をいたしましたことにも関係しますけれども、「環境庁は、公害の防止、自然環境の保護及び整備その他環境の保全を図り、国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するため、環境の保全に関する行政を総合的に推進することをその主たる任務とする。」とございまして、企業の立場とか企業の利益とか、さらに企業との調和とか経済との調和とか、そういうことを配慮することは何らここでは問題になってないのです。  こういう立場からすると、私は環境庁長官である石原長官にお尋ねいたしますが、一連のあの経済の発展との調和という条項を削ったためにただいま新たな誤解が生じていると言われる、それ自身が新たに誤解を生んだ発言に対して不適当な発言だというふうにお考えになっていらっしゃいませんか。
  76. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 もう一回言っていただけませんか、最後のところ……。
  77. 土井たか子

    ○土井委員 最後のところというと、どの部分からが最後になるのか私よくわかりませんけれども、結局、かつてあったいわゆる経済との調和条項が公害対策基本法から削除されたことによって新たな誤解を生ずることになったと言われる環境庁長官発言が、いままさに世間に新たな誤解を生んでいるわけであります。それで、私は、作家である石原長官に言っているわけじゃなくて、環境庁長官である石原長官に言っているわけでありますから、その辺ははっきりけじめを持ってお答えいただきたいと思うのですが、この経済との調和条項に対してとられた発言なり、またその後にとられてきた一連の答弁なりについては、これは不適当な発言であったというふうにお考えになっているかどうかという点を私はお尋ねしているのです。
  78. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 私、別に不適当とは思っておりません。確かに設置法の中に挙げられている項目の中には経済との調和というものが入っておりませんにしても、環境行政というものに不可欠の、つまり経済的側面、社会的側面というものがあるわけでございますから、これに対するしんしゃくなしに関連省庁との間に環境問題の解決はないわけです。ですから、私は、それを冷静にしんしゃく、そんたくして、一番納得のいく形で解決をする。しかも、環境庁の立場としては、あくまでも環境の保全ということを眼目に掲げながら、折衝する中では、私たちは他省庁の言う言い分なりに最初から全く耳を傾けないというわけにはいかないと思います。そういう意味で、要するに、社会的側面、経済的側面を全く考える必要はないんだというような、つまり論の出てきやすいそういう誤解を生んだということを私は申したわけでございます。
  79. 土井たか子

    ○土井委員 それはちょっと論のすりかえじゃないでしょうか。これは書いてあると書いてないとにかかわらず、政治を動かしていこうとすると経済問題というのはどうしても好むと好まざるとにかかわらず考えなければなりません。環境行政の上で、一条二項にあった経済との調和条項がわざわざ削除されたことに対して、環境庁はそれなりの意味をいままで認めてこられておるわけです。これによって新たな誤解が生じたとは考えておられないわけです。われわれがこの法律を制定するときには、過去にあったこの条項を削除しなければならないということで全会一致でこの改正を成立させたわけです。この改正を成立させた由来について言うならば、このことによって新たな誤解が生じたと言われている石原長官の認識とはまるでわれわれは違うわけでありまして、これは単に認識の相違で済まされる問題ではないと私は思うのです。やはり公害行政の基本にかかわる問題でありますから。しかも、ある種の風潮に迎合するようなことは私は断じてしたくないとおっしゃるけれども、それは個人的信条としてはそうであるかもしれない。しかし、個人的信条とは別に、環境庁長官としての職務規定というものがあるわけですよ、憲法にも、それから法律にも。これに従って環境行政はやっていただかないと困るのです。この環境行政の中身をいま私は問題にしているのであって、すりかえをしないようにお願いいたします。
  80. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 ですから、私は決してすりかえをしているわけじゃございません。  それから、閣僚として公害基本法を基本的に守っていくということにいささかの変わりもございません。ただ、公害基本法にのっとって、しかも、その公害基本法が立脚しております憲法の二十五条、とにかく最低限の文化的、健康的生活というものの要件の中に、私たちが抱えている環境問題の中で、経済的側面、社会的側面というものに対する勘案なしには解決のできない問題がたくさんあるわけです。ですから、私はそのことを申しているわけなんです。それはいままでのプロセスで削除についてどういうふうな環境庁の見解があったかは、私はつまびらかにいたしませんけれども、現在の時点で、社会が変わり、流動し、問題の性格が変わってきて、先ほど私も申しましたし局長も答弁いたしましたが、いろいろな誤解があるわけです。それが障害になっている問題があるわけです。ですから、私はそのことに付言したわけでありまして、私がそう申したことが公害基本法の一番基本的な理念、一番基本的な目的というものを逸脱をするものではございませんし、私は、そういう他の省庁絡みの環境問題の中であくまでも環境の保全というものを第一義に話をしてまいりますけれども、しかしやはり、こういう問題の中に経済的、社会的側面があるということを認めないでかかるような、つまり物の考え方には私は賛同できないということを繰り返し申しておるわけでございます。
  81. 土井たか子

    ○土井委員 それは経済的な側面があるということを認めてかからないような意見というものは認めるわけにいかないとおっしゃる。しかし、これは経済との調和条項があるなしの問題じゃないと思うのですよ。どういう場合においても経済的側面というものは不可欠の要件です。だからこそ、この条項を削ったという意味があるんじゃないでしょうか、逆に言えば。  それではあえてお伺いしますけれども長官は、経済の発展との調和条項と言われる条項があったときに、産業優先であり経済優先ということでこれが人権無視につながるとか、したがって、公害対策というものがそのためにないがしろにされてきたという意味で、いわゆる経済の発展との調和条項というものを誤解してきたという向きがあることについては理解されますか、そういうことはなかったとお考えになっていますか。
  82. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 確かに、四十二年以来その条項が隠れみのに使われたということはあると思います。しかし、それを是正するということは、行政の姿勢、措置ということで十分それをコントロールすべきですし、できると思います。問題は、行政の結果できてくる所産でありまして、私はその方が大事だと思うのです。そういう意味では、おっしゃるように、調和条項というものを悪用されたという例は確かにございました。私はそれを認めることにやぶさかではございません。
  83. 土井たか子

    ○土井委員 問題は、企業者側がそれを悪用するとか住民がそれを誤解するとかいうふうな問題ではないので、行政官庁がその条文に対して誤解をしているかしていないかということが実は問題になってくるのですね。だから、それ以上の条文についても、間々、行政官庁のやっていることとは別に、行政官庁があたかも産業優先で、経済本位で、このことに対策をいろいろ講じ、そして行政を行使しているように思われがちであったというところが問題なんじゃないですか。だから、それからすれば行政姿勢、いわゆる環境行政の理念というふうな問題について考えるならば、こういうふうな誤解をを生ずるような向きがある条文は間違っておるということでそれが削除されたところが、実は私は肝心かなめのポイントではなかったかと思うのですよ。だから私は、企業者側にどういう認識があるとか住民側にどういう認識があるとかというふうな問題とは別に、肝心かなめは行政官庁である、ここでは、具体的に言うと、環境庁がそれをどういうふうに受けとめているかということが私は問題だと思うのです。だから環境庁自身が、その条文があった当時は産業優先の誤解が間々あったことにかんがみ、この条項を削除するということになったという由来をちゃんとみずからおっしゃっているわけでありますから、このことに対しては確認をされていいと私は思うわけであります。したがいまして、これが削除された後どうですかとお伺いすると、この後にはさほど支障はない。このことに対して誤解が生じているということを強く認識はされていないようでありますから、これは環境庁長官のこの条文に対する御認識なり事の経緯なりあるいは実情に対しての御認識なり、いろいろ個人的御見解はおありになるようでございますけれども環境庁長官としてのお立場からすれば、いままさに環境行政の基本問題が、私はこの意味において問いただされているのではないか。だから環境庁長官の姿勢に、世間から見ると相も変わらず企業優先の姿勢がある、企業者側の立場に立って環境行政を行っていらっしゃるというふうな認識というものは後を絶ってないし、以前に比べるとこれは一層今回の御発言で強くなっていると私は思うのですよ。だからそういうことからしても、本当にいまの公害対策基本法の趣旨に従って環境行政を行うということであるならば、ひとつやはり経済との調和条項というものを削ったことで誤解が新たに生じたと言われたその表現に対して、いま世間一般が、そうなれば四十二年当時のあの状況を恐らくはよしとして環境庁長官としておっしゃっているに違いないというこの誤解が必ずまた生じてこようと私は思いますからね、そういう意味からすれば。だから、そうではないのならないという趣旨を少し説明しておいていただかなければならないと私は思います。
  84. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 でございますから、それにお答えするには、私、再三申してきましたように、公害基本法を遵守、尊重、そんたくして環境行政を行ってまいったつもりでございますし、これからも行ってまいります。
  85. 土井たか子

    ○土井委員 というのは、なぜ私はこういうことをあえて環境庁長官に対して、いろいろとその御発言の内容に対して新たな誤解が本当に生じますよということを申し上げているかというと、いままで公害対策基本法の趣旨に従っていろいろと公害行政に対してそれを行ってきたというふうな御発言をいまなさいました。しかしながら、いままであの経済条項が削除されて以後問題になったのは、先ほどの環境基準などを初めどして、いわゆる条例の取り扱いというのがそれ以前に比べると違ってきた側面があると思います。つまり、地方自治体で、条例によっていろんな環境庁が定めるところの基準値に上乗せをするということが認められる。それからさらに法律と条例との関係から言うと、法律を超えるような条例をつくることができないという、過去に大変問題になった例がございます。それは言うまでもなく、東京の条例とそれから当時の厚生省の側から立つ法律との関係でございましたけれども、それについても、条例の効力について、調和条項を前提とする限りでは、国の定める基準というのは、生活環境の保全に関する場合には生活環境の保全と産業の発展との調和点として決められるから、これを超えてはならないという論法が通用していたわけですが、今回、経済との調和条項というのが除かれることになって、今度は条例で上乗せするという、いわば出発点といいますか根拠といいますか、それが具体的に示されることになったということも私は言えると思うわけですね。そういう点から言うと、あくまでこの問題というのはそれぞれの地方自治体、さらに地方自治体の実情に即応していろいろ基準値というものを条例で問題にしていけるという側面がどこで出てきたかというと、やはり事は発生対策であり、いろんな問題に対して汚染をされているその地域で被害が起こった場合には、被害地の被害者の方々が具体的実情を一番よく御存じだという側面というのがここではっきり認識をされなければならないと思うわけであります。  従来、たくさんの方々がもう環境庁に具体的な事例を持って、あちらからこちらから東京にわざわざ来られるという例が相次いでいるわけでありますけれども、私はある週刊誌を読んでおりまして、長官がこういう認識を持って接しておられるのかということに改めて注目せざるを得ない一場面がございました。  それは、ことしの四月十日号のサンデー毎日の中に掲載をされている「冷静な環境行政を 私もいいたい」という署名入りの文章でございますから、御自身がお書きになっただろうと私たちは思って中身を読んでいるわけでありますが、その中に「先般いささか過剰に世間を騒がした私の新左翼系グループへの面会忌避とテニス事件も、どうもそうした民主主義の本質に関る認識のギャップに依ったといえそうだ。」こう書いてあります。まさに私は、民主主義について長官といろいろ議論をすれば、恐らく違いが出てくるだろうと思うのですが、ここにおっしゃっている新左翼系グループというのはどういうグループでございますか。
  86. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 私は、これはあくまでも伝聞でございますけれども環境庁にあのときやってこられました水俣の患者さんたちを支持していらっしゃるグループというふうに聞いておりました。
  87. 土井たか子

    ○土井委員 そういたしますと、水俣の患者さんを支持なすっているグループは新左翼系グループと、こういうふうに環境庁長官としては認識を持っていらっしゃるわけですね。
  88. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 いえ、御存じのように、水俣の患者さんにも非常にたくさんのグループがおられます。そして、はっきりと特殊の政党がこれを支持していらっしゃるグループもおありのようですし、幾つかのグループがあるようでございますけれども、あのとき私が面会の問題で、まあ社会的に通用するルールを守ってくださいということで面会を忌避して問題を起こしたそのグループに付き添っていらっしゃる方々は、そういう政治的な立場にいらっしゃるグループだと聞いておる次第です。
  89. 土井たか子

    ○土井委員 そういう政治的立場に立っていらっしゃるグループだというのはどこからお聞きになったのですか。聞いておりますといまおっしゃいましたが、どこからお聞きになったのですか。
  90. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 ジャーナリストの方々からも聞きましたし、環境庁の中でもそういう認識をしているようでございます。
  91. 土井たか子

    ○土井委員 そういう新左翼系グループだったら、この面会を拒否なさるというわけでありますか。
  92. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 とんでもないことでございまして、これは予算委員会でお話ししたじゃないですか。私は、要するにどんな方々、どんな住民運動の方々にも耳を傾けて、その方々の御意見を聞いていきたい、しかし、役所での陳情、面会ということには、要するに私は私のスケジュールもございますから、東京へ出てきたからいるなら会えというわけにはこれはいきません、ですから、あらかじめ通告をし合って、時間の折り合ったときに、折り合った時間の中で、あらかじめ打ち合わせていた話題について話をしましょう、しかも、余りだくさんの方々では不規則な発言があり、名前を聞いてもわからないような、名乗れないような人、そういう方々じゃなしに、名刺を一々印刷したものを出してくれと言ったわけじゃございませんけれども、名前をはっきり名乗り合って話をしましょう、そういうルールのもとにならいつでもお会いしますということを言ったわけで、何のグループだから会わないなんて、私はそんなこと一度も申したことはございません。
  93. 土井たか子

    ○土井委員 ただここの文面では、書いてあるのをどう読みましても、私はそういうふうにしか読めないのじゃないかと思って実は注目したのです。「先般いささか過剰に世間を騒がした私の新左翼系グループへの面会忌避とテニス事件も、」と、こう書いてあるわけなので、だから、私はちょっとそれは、やはり文章をその辺読んでみますと、これは新左翼系グループであるがために忌避をなすったのかというふうな読みもこれはできるわけであります。ですから、そういうふうな認識でもって面会をされなかったのかなという、この文章に対する私なりの理解であります。
  94. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 それは読み間違いと申しましょうか、私の文意が足りなかったかもしれませんが、とにかく、私がこの前後にお目にかかったたくさんのグループの方々、いろいろな陳情の方々の中で、先ほど申しましたようにごく世間一般で通用するルールをお守りいただけなかったのはこの方々だったので、私はこの方々にはこの時点で面会を忌避いたしました。しかし、それ以後非常に理解をしていただきまして、ちゃんと世間に通用する形で連絡し合い、きちっとした形で、いままで以上に整然と実のある話をしております。
  95. 土井たか子

    ○土井委員 しかし、そういう御認識でいろいろな方にできる限り対応しようというお考えをそもそもお持ちであるならば、ここに「新左翼系グループへの面会忌避」と「新左翼系グループ」なんという表現をわざわざお書きになるという必要はさらさらなかったのじゃないかと私は思うのですよ。まるで新左翼系グループというのはとんでもない連中なんだ、私としては会いたくない連中なんだ、そして時間についても打ち合わせもせずに飛び込んでくる、そして名前も名のらない、先ほどおっしゃったような、会うための常識として当然持っておかなければならない世間一般の常識をも持ち合わせていないような連中であるかのごとき認識をお持ちになっているようにすら私は思えてならないのですよ。だから、ここにわざわざこういう表現で「新左翼系グループ」とお書きになったことに対して、いまおっしゃったようなお気持ちならば多分に誤解が生ずるのではないか、私はそういう気がしてなりません。  と同時にもう一つ、これこそ私ははっきりさせなければならないと思ったのは、一昨日の上田卓三議員からの御質問の中で出てきた問題であります。私自身は、これを承っておりまして、これは長官御自身が個人としてお持ちになるいろいろな思想であるとか信条であるとか、こういうものは個人として当然にあるわけでありますし、それから、自由民主党の議員としてどういう政治信条でいまの政治に携わっていらっしゃるかというのも、おのずと客観的にそれは考えてみることができます。けれども、どういう質問に対してどういう答弁がなされたかというのをあらましここで申し上げてからこの問題を質問したいと思いますが、十月四日の記者会見で石原長官が、ある新聞記者が自分の社に使われなかった記事について、それを赤旗に売ったということを取り上げて問題にされているあの問題に対する具体的根拠というものをお挙げにならない、で、それは何月何日の記事でどういう事例ですかということをお挙げくださいと言っても、それは他のいろいろな事柄や事実をもって確認できるというふうに言われているその他の事柄、事実とは具体的に何を指しているかというふうな上田議員の質問にお答えになって長官がおっしゃっている中身はこういうことなんです。「たとえばある人の個人歴、まあ政治的なものを含めまして、それに対する共産党側の印象と申しましょうか、評価と申しましょうか、あるいはその方の赤旗に非常にかかわり深い中枢におられる方との関係であるとか、あるいはその関係からさらに派生している他の人間関係であるとか、そういうことでございます。」私は承っておりましておやっと思ったものですから、議事録を確かめました。そうしたらこういう表現なんです。私はこれを承っておりまして——一議員としておっしゃるのとは別ですよ。環境庁長官としての御答弁なんです。どういう人とも接しようと先ほどおっしゃいました。いろいろな人とも会わなければならないという御心情であろうと思いますが、事いまの御答弁からいたしますと、これは共産党側の印象からして評価をされている人、それから赤旗に非常にかかわり深い中枢におられる方との関係がある人、またその関係からさらに派生して他の人間関係をつくっている人、そういう人というものを事柄、事実から具体的に指示できる、こういうふうにおっしゃっているわけですね。私は、これはもうまさに長官とされては、憲法尊重擁護の義務があるというのは先ほど申しました九十九条ですが、思想信条の自由というものを尊重するとか言論の自由を尊重するとかいうふうなことに対してどうお考えになっているのかということをまずお伺いしてみたいと思います。
  96. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 お答えします前に、私、お断りしておきますけれども、私は赤旗に自分の原稿を売ったという形で申しておりません。  私は憲法を遵守いたしますし、そこにうたわれております言論、思想の自由というものを十分尊重するつもりでございます。また私は、その一連の発言の中で、記者の中の方々が、ある人たちがそういう政治的なスタンスを持つということを別に非難しているわけではないのです。ただ私は、要するにそういう政治スタンスとおのずから立場を変えるということで、考え方も違う、環境行政に対する物の考え方も違うであろうということを言っているわけです。
  97. 土井たか子

    ○土井委員 立場は違ってもそれはお認めになるんでしょう、相手の立場を。そうすると、どうして今回のような問題になった御発言が出てきたのか、その辺が矛盾しておりますよ。いかがですか。
  98. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 一向に矛盾しておりません。私は環境行政に対していろんな考え方があると思います。しかし、私は私の所信を貫くつもりでございますし、それに対する批判もございましょう。ですから、環境庁のクラブのある人あるいはある場合にはその過半、とにかく一つの問題をとらえて議論の応酬もありますし、意見の対立もありますし、考え方の対立もございます。そういう意味で私は、私と考え方を異にする人たちを決して否定しようというのではありませんけれども、それはそれで対立であり、壮絶な闘いというのはいささか不穏なので取り消しましたけれども、とにかくそういう状況があるという意味で申したわけで、私に異論を持たれる方々を私は一切認めないとか、それをけしからぬとか言っているわけではございません。ただ、申しますれば、何といいましょうか、とにかく企業がすべて悪であるといったような物の考え方、社会工学的に自由経済社会というものを認めない、自由経済社会というものを構築している企業というものを、それは企業にもいろいろ性格があると思いますけれども、企業であるがゆえにすべて悪であるという物の考え方、そういうものには私は絶対に迎合するわけにいきませんし、それを是認するわけにはいかないということでございます。
  99. 土井たか子

    ○土井委員 企業が悪であるのないのなんということをいま一言も私は申し上げていないわけであります。ただいま私が問題にしているのは、環境庁長官からすれば、やはり特定の相入れない立場の人たちに対して環境庁長官はとかく寛大ではないということを私は申し上げているのですよ。排除の姿勢というのが非常に強い。やはり自分としてはこういう考え方を持っているということを自己主張なさるという向きが非常に強いということがありますから、片やこういうことになるのかと思いますけれども、しかし、問題は、もはや個人の嗜好の問題ではございません。やはり環境庁長官環境行政の長でございますから、そういう点から言うとこの及ぼす影響は絶大だと私は言わざるを得ないと思うわけであります。環境庁長官に会いに来る住民の方々に対する取り扱いだとか、いろんな環境行政の内容に対してそれを報道する立場にある新聞記者の方々に対する取り扱いであるとか、そういう問題を考えてまいりますと、どうもやはり一定の線を引いて取捨選択をなさるという向きがあるのではないか。その線というのは、やはり自分では、私は私の主張がある、おっしゃるとおりです。長官の主張というのは非常に鮮明ですよ。そしてよく物にも書いていらっしゃるし、事あるたびごとによくお話しになる。しかし、言いたいことを言うといって、それはどんどんおっしゃるのも結構でありますけれども、おのずとそこには環境庁長官としての職務があることをひとつお忘れにならないでいただきたいと私は思うわけであります。特に私は、今回の記者クラブとのいろんな問題についても、やはり記者の方々の立場というのは、それなりにそれぞれの思想信条というのはございましょう。しかしながら新聞に記事にされるときには、新聞記事にする報道に対して厳正中立であるための努力というものは、それぞれそれなりに払っておられるということは言うまでもない話であります。したがいまして、これは厳正中立の立場からすれば、いろいろその記事に対してたとえば自由民主党の自由新報が買いに来る、社会党の社会新報がその記事を欲しいと言う、同様に赤旗がその記事を欲しいと言う。それぞれの政党の機関紙というものが自由にそれぞれの記事に対して取捨選択をして、これを取り上げても取り上げなくても自由な話でありまして、そのこと一つ取り上げてその記者クラブの中にはということを根拠として色づけされること自身が、日ごろの環境庁長官がお思いになっている合理主義からすると、まことに非合理主義ではないか、私はこのように思うわけであります。このことに対していかがですか。
  100. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 別に私、非合理と思いません。
  101. 土井たか子

    ○土井委員 それでは憲法から言うところの思想信条の自由というものを、そのことによって本当に尊重されているとは言いがたいという側面に対しては、どのように思っていらっしゃいますか。
  102. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 ですから、新聞記者、要するに本来中立であるべき商業新聞の記者が、しかし個人として特定の政党を支持されるという政治的なスタンスを持つことは、私は一向に自由だと思うのです。それにのっとって過去にも、本来機密にされるべき内容のものが某政党の機関紙に載ったり、あるいは西山事件のような事件もございました。世間はやはり新聞記者といえどもそういう政治的なスタンスを持つ人がいるんだな、そういう認識は私は幾つかのケースで持っていると思います。私は、世間は決してそれをとがめてはいないと思います。
  103. 土井たか子

    ○土井委員 しかし、この問題になりました長官の「現代」九月号の御発言の中では、「ここの記者クラブの記者とのたたかいは壮絶なものですよ。自分とこの新聞で没になった原稿が、共産党の赤旗にのる記者なんかが何人かいる。」という、つまり赤旗という共産党の機関紙に記事が載る記者がいるという、この記者クラブに対して自分は戦いをしているんだというふうな趣旨の中身でありまして、それはやはり先ほどおっしゃったことから考えていくと、特定の思想信条を持っている人たちに対してそれを認めるわけにはいかないという基本姿勢がなければ、こういうことにはならないと私は思うわけでありますが、いかがですか。
  104. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 私は、いずれの方がいずれのような思想を持たれようとそれは結構でございますけれども、しかし、行政の上でそれを取り入れるというつもりはございませんし、またその論調にのっとって環境行政をするというつもりはございません。それはそれなりの私の自由だと思います。また、そういう所信を持つことは、私の権利でもあると思います。
  105. 土井たか子

    ○土井委員 これはいま大変な御発言をなさっていますよ、長官長官というのは公の場所なんです。一個人の私的場所じゃない。私はある企業、会社の社長がそういうことをおっしゃるのだったら、そうですかと言いますよ。でも環境庁長官という場所は公の場所でしょう。  そうしてしかもここでこの「民主主義の本質に関る認識のギャップに依ったといえそうだ。」というふうな、この「私もいいたい」「冷静な環境行政を」のあの一文の中で書いていらっしゃる部分にも触れるわけでありますけれども、やはり環境庁長官とされてはどんなに小さな声に対してもこれを無視しない——ある一つ考え方があったら必ず反対の意見があります。両者に対してこれを聞くという態度を常に持っていただかないと困るのです。そういうことから言うと、いま特定の政党に属する、あるいは特定の政党を支持する、特定の政党に類似した信条を持っている、そのことのためにこういう行動をとったりこういう言辞を弄する人たちとは私はやっていけないという意思表示をなさるということは、まさに民主主義に対しての挑戦じゃないですか。私はそういうことを言いたいと思いますが、いかがですか。
  106. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 私はどなたの意見も無視しません。私と百八十度違う意見でも聞きますが、しかしそれは、聞くということとそれにのっとって行政をするということはおのずと違います。私は、自由民主党という社会党とも共産党とも違うイデオロギーを持った政党に属する、自由民主党の政府の閣僚でございまして、私は、自由民主党の他の同僚議員と強いアイデンティティーを持っておりますけれども、しかし、共産党の物の考え方とは恐らく百八十度に近い相違を持つと思うのです。ですから私はその意見は確かに聞き取りますけれども、しかし私は、それにのっとった行政をするつもりはございません。
  107. 土井たか子

    ○土井委員 それに従って行政をやりなさいと私はいきさかも言っていないのです。行政決定に至る過程の中で、そういう立場というのを無視するようなことをやってはいけないということを私は言っているわけですよ。いままさに長官の今回問題になった中身というのは、その存在自身を敵視し、そういう行為自身を敵視しているがゆえに、この記者クラブとの確執というのが大変壮絶なものだというふうな意味合いの表現になるのではないですか。行政決定の問題を私は言っているのではないですよ。もちろん決定に当たってはそういう意見というものをしんしゃくされなければ民主主義とは言えません。しかしながら、どういう決定を下すかということは、これは環境庁長官の職務であります。しかし、その職務を遂行するに当たって必要な必須要件というのがある。そこを私はいま問題にしているのですよ。
  108. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 ですから、私は無視せずに十分聞き取っております。ですから、私、そういうことを余り言わない方がいいかもしれませんけれども、水俣の患者さんたちの中にも幾つかのグループがあって、要するにこれは通念になっているから、そう呼んでも差し支えないのかもしれませんけれども、共産党系のグループの方々、社会党系のグループの方々、また多少オーバーラップしているようですけれども新左翼系と呼ばれている方々、しかしその意見は全部聞きまして、私はある解決の場合にはすべての方々に満足いっていただけるような措置をしたと思いますし、またこれからもしようと思います。しかしケースによっては、私はイデオロギーを異にする方々の意見は十分聞きますけれども、しかし私はそれを受け入れて行政をできない。これはその方々にしてみれば、言うだけは言って聞くだけは聞いてもらったけれども、結局実現されないのは無視されたということになるかもしれませんが、しかし私は、十分そんたくし聞き取り、私なりの判断をして行政をしていくつもりでございます。
  109. 土井たか子

    ○土井委員 決定というのは、やはりどこに出してもこういう決定の仕方をやったということが明々白々説明できるようなものでないと困るわけであります。これは言うまでもない話ですけれども。そういうことから言えば、いろいろな意見を聞いたけれども、この意見に対してはどういうわけで取り入れなかったというふうな説明が、それぞれのいろいろな意見を展開する人たちに対して環境庁長官からできるような決定でなければならないと思うのです。  いま、記者クラブを相手にしていろいろとおっしゃった事柄あるいは記事の内容というのが大変問題になりました。これ自身は環境庁長官が、まさに言論の自由という問題のあり方あるいは人間の思想信条の自由という問題に対してのあり方、これを作家石原慎太郎氏なら別ですよ、だけれども環境庁長官としてどういうお取り扱いをなさっておるかということに対して、憲法から考えたらおかしいことをやっていらっしゃるじゃありませんか、憲法から考えたら認めることができないような中身ですよという意味で、私は大変問題になると思うのですよ。そういうことを含めまして、今回のこのおっしゃった発言の内容に対して、やはり内容が不適切であったということを環境庁長官自身お考えになりませんか。
  110. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 私と百八十度違う思想を持たれた方々に対する私のいままで申し上げました基本的な姿勢は、決して憲法違反でないと思います。それから、この問題の私の発言、いま何とおっしゃいましたか、不適当——私は別に不適当と思いません。何回も申してきたことですけれども、私はこれによってだれを特定し、だれを中傷したとも思いませんし、また記者クラブ全体を中傷したとも思いません。
  111. 土井たか子

    ○土井委員 さらに私はこの問題を次回に続行いたします。後の時間があるようですから……。
  112. 島本虎三

    島本委員長 議論が大分すれ違いがあったようですが、この際、これだけはきちっとしておきたい問題があります。  それは、公害対策基本法が改正され目的が明確化し、そして環境庁がつくられて、その設置法第三条に任務がはっきりしておるのです。そして、それによって公害行政は経済との調和を考えていかなければならないものだと考えるかどうか、これが焦点なんでありますが、さっぱりその点は触れられないのであります。ここだけはきちっとさせておいた方がいいと思います。御答弁を求めます。(発言する者あり)ここがはっきりしないからだめなんです。長官に御答弁を求めます。(発言する者あり)  ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  113. 島本虎三

    島本委員長 速記を起こしてください。  いま委員長が申しましたのは、すれ違いの点があって、こういうような議論を重ねていたらやはり真意を得ないではないか、したがってここを整理しようとしての発言です。  この問題は、答弁がないようでありますが、いずれ土井委員から次の機会に明確にさせてもらいたいと思います。  次に、細谷君。
  114. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、四十九年の九月一日から施行されました公害健康被害補償法について幾つかの問題点を質問したいと思うのでありますが、具体的な質問に入る前に、長官の基本的なこの法律に対する認識といいますか——たとえばこの補償法というのが、いま補償されておる被害者から見ても不十分なものである、あるいは地域の指定がいろいろ問題点がある、あるいはPPP原則に基づいて企業が負担しておりますけれども、その負担にもいろいろな問題点がある、こういうふうに、この法律について、現状は、施行して四年間になりますけれども、幾多の問題をはらんでおるわけであります。そこで長官にお尋ねしたい点は、こういう問題点をはらんでおるが、この補償体系というものをPPP原則にのっとって今後科学的にしていく、あるいは合理的にしていく、あるいは強化していく、こういう決意があるのかどうか、お考えがあるのかどうか、まずお尋ねしておきたいと思います。
  115. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 この法律は何分、事態に非常に追われた形でつくられまして、私は、決して十全なもの、完備したものとは思っておりません。でございますから、いま先生御指摘のようないろいろな点について、問題があるところは、これから鋭意改正し、強化し、国民の皆さんに満足、評価願えるようなものにしていく所存でございます。
  116. 細谷治嘉

    細谷委員 強化して国民の満足のいくようにしたい、こういう御答弁ですが、その場合に貫くべき原則というのはPPP原則であると受け取ってよろしいですか。
  117. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 それは民事責任におきまして私はPPPの原則と心得ております。
  118. 細谷治嘉

    細谷委員 そこで、具体的に順次お尋ねしたいのでありますけれども、第一に地域の指定の問題でございます。  四十九年九月一日に施行された際には、第一種の地域が十二地域、第二種の地域が五つの地域。その後、四十九年十一月三十日、五十年十二月十九日、五十二年一月十三日と地域が新しく加えられまして、現在三十九地域。その地域に住んでおる住民はおおよそ千三百万人と言われておるわけでございます。  こういうふうに施行以来三回にわたって現状に至ったわけでありますが、この追加をした理由は、あるいは原因といいますか、根拠といいますか、そういうものはどういう点にあったか、お尋ねしておきたいと思います。
  119. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 お答えいたします。  昭和四十九年のときは、新法に移りましたので、その時点で十五地域ございましたが、先生御承知のように、旧法の時代からいたしますと、昭和四十四年の十二月に川崎市等の指定をいたしました以降、現在まで三十九地域になっておるわけでございますが、新法制定以降の地域指定につきましては、個々の地域におきます過去の汚染あるいはせき、たん等の有症率を疫学的に調査すること等のデータによりまして、地域を逐次指定してまいったり、または地域によりましては拡大してまいったわけでございます。
  120. 細谷治嘉

    細谷委員 私の質問に答えていただかなければいかぬですよ。いまの経過は私が質問の前に言ったでしょう。そういうふうに地域を追加していった理由、根拠、これはどこにあったのか、これにお答えいただけばいいのですよ。私の質問する内容を繰り返してもらっては貴重な時間のむだですから、正確にお答えいただきたい。
  121. 信澤清

    信澤政府委員 これは先生御案内のように、一定の地域を指定いたしまして、そしてその地域内に住む方々について患者としての認定をする、こういうたてまえで運用してまいっているものでございます。  そこで、私どもといたしましてはそういう要件に該当するであろうという地区につきまして、第一次的には県の調査、それから国の調査、こういう調査をいたしまして、これまた先生御承知のように、地域指定の要件を決めておりますので、その要件に合致する場合に地域を政令で指定する、こういう手続を経て、いま先生お話しのような地区の指定が行われてきた、こういうことでございます。
  122. 細谷治嘉

    細谷委員 そういう経過を経て、不十分なお答えですけれども、地区の指定をやってきた。現在の三十九地域の線引き、こういうものが妥当だといまでも思っておるのか。あるいは、もっと実際に近いものにこれからずっとアプローチする、理想的なものにアプローチしていくという長官の基本的態度があったわけです。現状はどう理解しているのか、この地域がいいと思っているのかどうか、お答えいただきたい。
  123. 信澤清

    信澤政府委員 あるいは先生のおっしゃることと違った受け取り方をして失礼かもしれませんが、現在、地域指定に当たりましては、行政区画を単位にして指定をいたしております。このことにつきまして、もっときめ細かくやるべきだという御意見がございますことは、十分承知をいたしております。ただ、制度発足の際、先ほど大臣が申し上げましたように、民事責任による損害を補てんするという制度でございましたので、いわば一つの行政的な割り切り方として、現在のような地域指定をいたしておりますが、問題のあることについては十分認識しておりますし、またその是正をどうするかということにつきましては、私どもは私どもなりに研究をいたしているということでございます。
  124. 細谷治嘉

    細谷委員 少し言葉が怪しいのだけれども、現状の指定地域について問題がある、こういうふうには認めますね。
  125. 信澤清

    信澤政府委員 地域の指定の仕方に問題があるわけでございますから、結果として、いまお話しのように、現在指定されている地域についても、新しい指定の方法等を考えますれば、当然是正しなければならない、こういうことでございます。
  126. 細谷治嘉

    細谷委員 これは古い基準あるいは新しい基準、それと有症率との関係、こういう問題がございまして、こういう問題についても論議してみたいのでありますけれども、もっとわかりやすい問題として、あなたはさっき行政区画、行政区域、こういうものを一つの指標にしておる、こういうお言葉がございましたね。いま富士市とか東京都とかいろいろなところで、やっぱり区の境界というようなことでいろいろ問題があるようでありますけれども、一番わかりやすいこと、私の一番よく知っている福岡県の例をちょっととってみたいと思うのですけれども、わかりやすく私は地図を持ってきたのです。ちょっと見てください。その地図の下の方というか、南の方に三池港というのがございます。その三池港の周辺というのは、この市の中においても、昔からやはりいまで言う公害、大気の汚染があったところです。現実に指定された地域内においては、現在、公害病患者が相当多発しているわけです。いま指定されているその南の方には、工場というのは何があるかといいますと、電力会社だけなんですよ。その電力会社は、同じ行政区域であるにかかわらず、除かれておるでしょう。それ以外には大気を汚染する原因はないのですよ。北の方、上の方は、工場群があるわけですから、これはもちろん汚染するわけですよ。南の方はどなたが考えても大気汚染原因であろうという電力会社、いま新しく四十六年か七年にアルミニウム工場ができましたから、それは大気汚染関係があるでしょうけれども、そこのところは入っていないのですよ。これはどういうわけですか。
  127. 信澤清

    信澤政府委員 先ほど実は答弁を間違えましたので訂正させていただきたいと思いますが、すべて行政区画で割り切っておらず、自然的条件によって、たとえば道路で区切るというようなことをいたしておる場合があるわけでございます。その結果、いまお話しのようなことが出てきたわけでございまして、そういう点から申しますると、すぐ近くにお話しのような発電所がある。それが汚染の主たる原因であると思われるような場合が、これはいまお挙げになりました大牟田以外にもあるわけでございます。  そこで、当初、地域につきまして、いわば現在は指定地域とその他と二つに分けてしまっておるわけでございますが、周辺地域ともいうべき三段階ぐらいの地域区分をしたらどうか、こういう御意見も実は審議会で御議論された過程においては起きたわけでございます。ただ、先ほど申しましたように、いわば一つの行政的な割り切り方として現在のようなことをとっておる、こういうことでございます。
  128. 細谷治嘉

    細谷委員 行政的な、何かいま二段階しかないわけですね。指定地域とその他しかないわけですよ。いま新しく周辺地域なんという言葉が出てきたんだけれども、初めて聞いた言葉です。  この問題をちょっとおいて、もう一つ、これはいま長官ごらんになったように点線で、これは福岡県と熊本県の境です。境でありますけれども、この区域は大気汚染がされておるということは、昔からもう市民どなたも知っているわけです。現に、後で申し上げますけれども、指定されておる区域外の市の部分にも、こういうふうに、赤丸のように公害病の被害者と認定される、これは素人じゃないんですよ、岡山大学の医学部の調査で認定される人が赤丸の方にこういうようにおるわけですよ。この点線の下の方も、これは密集地帯、行ってみると、四、五メーターの川が県の境ですよ。四、五メーター先の方は熊本県になりますから、これは行政区域は変わってまいります。その行政区域が変わったところは指定地域でありませんから、これはもう全く対象にもならぬ。そして、こういうふうな多発地帯でありますと、指定地域外についても企業の協力を得て市の方でまあ何らかの救済といいますか、そういう措置をしておりますが、こちらの方は県が指定の関係ないわけですから、全然救われない。たった川五メーター、そうして何かわかりませんけれども、行政区域という明治以来の境界で、行政の大きなギャップが人の健康の問題に生まれてきておるわけですよ。こういう指定地域のあり方は、私はこれはもう納得できない。何としても合理的な形で是正していただかなければならぬ、こう思います。こういう点について、ひとつ長官のお考えをお聞きしたい。
  129. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 その種の御苦情は、たとえば委員会でありますとか、陳情の折とか、非常に数多く聞かされます。それで、やはり私がお聞きしましても、苦情を述べられる方と同じような不合理性というようなものを感じることが多々ございます。そういう問題について、できるだけ早く合理的な解決をするように、これからも鋭意検討し、督励するつもりでございます。
  130. 細谷治嘉

    細谷委員 恐らく、長官なり、調整局長の手元あるいは補償部長等には、こういう現実の不合理を是正してもらいたいという陳情なり要請なりが多々来ていると思うのですけれども、なかなか改まりません。長官は、やると言ったんですが、どのくらいのめどでおやりになるのか。これはもう住民が心配している問題ですから、ここでひとつ長官の、いつの日かではどうにもならぬわけですから、ひとつ明確な御答弁をいただきたいと思う。
  131. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 具体的なことにつきましては、政府委員から答弁さしていただきまして、その後で所見を述べさしていただきます。
  132. 信澤清

    信澤政府委員 先生御指摘のような問題については、いま大臣が答弁いたしましたように、やはり合理化すべき問題点だと思います。早急に私ども結論を出したいと考え、審議会の御意見もいろいろ聞いておりますが、重要な項目の一つとしてお聞きをいたしておるわけでございます。  現在でもやろうと思えばできるという問題もあるわけでございますが、やはり何と申しまするか、私どもだけの判断ですべて物事が決まるわけでございませんで、第一義的には、この公害行政につきましては、特に四十五年の一連の関係法律の改正以来、地方公共団体の御意見というのを強く私ども見ておるわけでございますから、さような意味で地方公共団体と御相談をしながら過去やってきた経緯がございます。先生この点、よく御存じだと思いますが、いま御指摘の問題につきまして地元の地方公共団体にいろいろな御意見があるということは、これまた御承知のはずだと思いますが、そういう問題を考えながら私どもとしては今後処理をしていきたい、こういうふうに思うわけでございます。
  133. 細谷治嘉

    細谷委員 いろいろな御意見があるということでごまかしては困るわけです。地域指定の現状の不合理というのについては、どなたもいろいろな意見はないわけですよ。現に地元の市においてもあるいは福岡県においても、ほとんどこれは満場一致で決まっているわけですよ、議会においても。そうして現に、私の承知しているこの春の議会で満場一致決めた福岡県議会の議決というものが環境庁にもたらされておるはずですよ。ところが、今日何らの音さたもない、動いていない。そこで、私は不信感を述べるわけでありませんけれども、不合理は認めます。やれますと言うけれども、住民にとっては命のかかっておる問題、そうして、地方自治体はたまらないわけですよ。説明できないわけですから、私が指摘したような不合理な問題は。これはやはり、完全に合理的な境界を決めるということはできないにしても、現実環境というものがあって、その環境から被害者というのができてきているわけでありますから、環境に対応して行政区域なり、あるいは私が申し上げた——これは大阪の例でも申し上げますが、ずばり申し上げますと、有力な企業のところが区域から外れている例が多いのですよ。まあ言ってみると、日本の政治を動かすだろうと言われておる企業の電力会社等は、発電所なんというのは大気汚染をかなりしているけれども、発電所というものは除かれている例が多いのです。いま私が指摘したのもそう。大阪あたりはそのとおりですよ。  こういうことではどうにもならぬわけでありますから、私はあえてひとつ早急に、少なくとも五十三年の四月一日くらいからは実現できるだけのことをやっていただかぬと、地方公共団体の意見がどうのこうの、この点について問題がないわけですから。問題のある点は後で申し上げます。早急にやってもらわなければ、この補償法の権威というものがいよいよ失墜すると私は思うのですよ。長官の方針にも沿わないと思うのですよ。長官いかがですか。
  134. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 おっしゃるとおり、環境庁のレベルまで上がってきておる問題で不合理なそういう地域指定の問題がございますならば、これはできるだけ早急に判断を下すように指導いたします。  それからまた、政治的な波及力のある企業が政治的にそこから除かれているということはあり得ないと思いますけれども、そういうことがあるならば、これは許しがたいことであると私は思います。
  135. 細谷治嘉

    細谷委員 私も長官と同じように企業が強い、弱いということで政治の判断がゆがめられるということは、これはもってのほか、あり得ないことでありますから。しかし、客観的に住民の目から見ますと、どうもそうとしかとれないような事実が指定の線引きをめぐって存在しているということは、私も否定できないと思いますから、長官、そういう方針で、ひとつかちんと、どなたも納得するように、この線引きの問題については対応していただきたい、こう私は思います。  その次にお尋ねいたしたい点は、この地域が指定をされましたけれども公害の患者が認定を受けていく場合に、申請をした数とそれから認容される数との間に、ブロックによって地域によって大きな格差があるわけですよ。環境庁の資料でも明確でありますけれども、たとえば、この三十六の地域のうち、五十年の場合を見ますと、きのうのこの委員会の参考人も指摘をしておりましたけれども、大阪は申請した人は一〇〇%公害患者として認められておるわけです。ところが、四日市は申請した人の七五%ですよ、二五%は落とされておるわけです。そこの川崎市は九六%です。大牟田市は八二%ですよ。あるところでは一〇〇%、四日前では七五%、大牟田の八二%というのは、これはもうきのうの参考人も言っておりましたけれども、その地元におる人は、主治医あるいはかかりつけの医者そうして保健所、こういうもので精査して申請をしてくるわけですよ。ところが、あるところでは一〇〇%、あるところでは八二%、あるところでは七五%、これは一体どこに原因があるのでしょうか、お聞きしますと、中央の方では書類審査だけでやっていく、こういうことのようであります。でありますから、医学的に一〇〇%が正しいのだ、この地区は七五%が正しいのだという裏づけがあるなら別ですよ。書類審査だけで、それがない。そうしてこういうような認容率の格差が起こるというのは一体どういうことですか。どういうふうに御理解になっているのか、まず局長なり部長からお答えいただきたい。
  136. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 先生御指摘のように、地域によりまして認定率に差があるわけでございますけれども、この認定の手続は、患者さんの申請に当たりまして主治医の診断書をつけまして地域ごとの認定審査会におきまして審査をして認定をするわけでございますが、その審査の過程におきましては、場合によりましてはその判断のために主治医の先生等の御意見を十分聞くような措置を講じておるようなわけでございますが、やはり診断書を書かれる先生方と、認定審査会の先生方の方はより専門的な知識が高いという点における差が出るのではないだろうか、こういうぐあいに見ておるわけでございまして、私ども、各地域の認定審査会の先生方の折々の集まりをいたしまして、そういったような格差のないようなことにつきましての指導をさせていただいているところでございます。
  137. 細谷治嘉

    細谷委員 これはまた重大な発言だね。中央の調停委員である委員の人はレベルが高い、田舎に行けばいくほど——大阪が一〇〇%だから一番高いんだ、川崎は九六%だからその次だ、四日市は七五%だから、四日市の医者は七五%だけしかないということですか、書類審査だけで。それが科学的ですか。
  138. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 認定審査は中央の委員会でするのではございませんで、それぞれの指定地域の知事あるいは市長が任命するところの、四日市なら四日市、名古屋市なら名古屋市の認定審査会で判断をするわけでございまして、その地域におきます専門の先生方がしておる。中央ですべてを一括して審査をしておるわけではございません。
  139. 細谷治嘉

    細谷委員 そして、そういう審査に不満がありますと、当然異議申請をしておりますが、異議の申し立てというのはしてもほとんどむだ、これはあなたの方の資料からも明らかであります。異議申請をして生き返るというのは百人のうち一人もおらぬというのがおたくの方の資料を見てもはっきりしているのです。こういうような審査のあり方では問題がある。昨日も、かかりつけの医者、主治医の意見が尊重されるような、こういう意見が保障されるような体制をぜひつくってもらいたいというのが参考人の切なる声でありました。実態はそうです。長官、この点どうなさるおつもりですか。
  140. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 私はきのうの参考人の御意見をつまびらかにしておりませんので、私の前にちょっと局長から御答弁させていただきます。
  141. 信澤清

    信澤政府委員 ただいま先生お話しの問題は幾つかの段階がございます。御承知だと思いますが、まず、先ほどもお話しのように、県知事の認定を申請するわけでございますが、その場合に却下される場合がございます。却下につきましては、これは不服の申し立てができるわけでございますが、これにつきましても再度却下される例が多い。このことをいま先生仰せになったと思います。その場合の救済措置といたしましては、これは環境庁にあるわけでございますが、公害健康被害補償不服審査会というのがございます。この審査会にさらに審査の請求をできるようにしているわけでございまして、ここに参りますれば、当初の知事の認定の処置がどうであったか、あるいは再度不服申し立てをされた場合の審査の状況がどうであったか等々調べまして、そして最終的に判断をする、こういう仕組みで運営しているわけでございます。
  142. 細谷治嘉

    細谷委員 この認定のあり方も余りにもブロックによって——プロセスはいろいろあります。しかし、参考人も言っておりますよ。これはお医者さんが言っているのですから。あるところでは一〇〇%、あるところでは八二%、あるところでは七五%というのもおかしいのだ、これはもうかかりつけの医者、主治医としてはがまんならぬ、こういう言葉を言っておりました。現実はこのとおりでありますから、いまの局長の答弁ぐらいでは、プロセスを教えて説明したぐらいではどうにもなりませんが、この問題もこれはやはりこの法律についての信頼感の大きなよりどころになりますから、長官のお考えをひとつ明確に示していただきたい。
  143. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 申請者がすべて一〇〇%認定をされるということは、つまり事の性格から言って、私、それが果たして理想的と申しましょうか、数値の上でどう判断していいかよくわかりませんけれども、いずれにしてもその認定される方々が納得のいく手だてでそのイエスなりノーなり決められるということは必要だと私は思います。そういう意味で欠けているところがございましたら、それを補うように努力するつもりでございます。
  144. 細谷治嘉

    細谷委員 私も、それぞれ段階のある医師が私心を忘れてというか、医学的なものでやれば、それはそんなに大きな差があるとは思いません。百上がってきたらある場合に一〇〇%、これはおかしいかもしれません。九九ぐらいが妥当かもしれません。私が特に問題にしているのは、地域によって余りにも大きな差があるというところが問題じゃないか、この法律施行の信頼にかかわってくるのではないかということを指摘しているわけですよ。申請してきた者は何でもかんでものんでしまえということじゃありませんで、問題は、余りにも大きな乖離、格差がある、これはやはり科学的合理性ということからいって割り切れないものがあるのではないかということを言っているわけです。いかがですか、もう一度……。
  145. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 確かに数値の差が余りにもあり過ぎるような気がいたします。ですから、地域によってそういう認定患者のパーセンテージの数値がどうして食い違ってくるのか、その原因をやはりできるだけ早く究明いたしまして、適切な処置をとりたいと思います。
  146. 細谷治嘉

    細谷委員 次に、この法律を実施するに当たって、私が環境庁の資料あるいは白書の中から拾った数字をちょっと申し上げます。  認定された被害者の数は、五十年三月を一〇〇といたしますと、五十二年三月は二七六、二・七六倍と患者の数はふえていっております。  これに対しまして、PPP原則にのっとっている原資というものは、発足時の四十九年を一〇〇といたしますと——もっとも四十九年は半ばからやられたのですが、五十一年度が一三二五という指数になります。言ってみますと、十三・三倍に賦課の料率は上がっていっております。五十二年度はどうかといいますと、四月一日からA、B、C、Dの四段階に分かれました。この突っ込み平均を指数で見ますと、二四二〇となるわけです。このA、B、C、Dの一番下の段階のDランクを見てみましても、一九三六となるわけです。  言ってみますと、四年間に認定被害者は二・七六倍、賦課料率は低い方で十九・四倍、平均いたしますと五十二年度は二十四・二倍となっておるわけです。  一方、この賦課金をかける物差しであります亜硫酸ガスの排出量を見てみますと、四十八年と五十年を比べますと、四十八年を一〇〇とすると大体六五・三という指数です。亜硫酸ガスはやや下降ぎみである。これが賦課料の物差しになるわけです。  ところが、認定患者は二・七倍であるが賦課料率の単価は二十四倍にも上がっておる。これはもちろん患者がふえる、それから物価の上昇等によって補償も上がってくるわけで、その相乗積でくるわけですから、これは患者の数よりも上がってくることはあたりまえでありますけれども、言ってみますとこれは青天井です。実施後四年間のうちに青天井になっておりますよ。こういうことでこの法律を今後とも充実強化することが現実の問題として可能かどうか、お答えいただきたい。     〔委員長退席、水田委員長代理着席〕
  147. 信澤清

    信澤政府委員 いま先生がお挙げになりました指数は、先生御自身もおっしゃいましたように、四十九年を基点といたされますといろいろ問題があるわけでございますが、つまり年度の途中から始めておりますので。したがって数字そのものは間違えて申すことを言うわけではございませんが、お話の要点は、患者数がわずか三倍近くしかふえていないのに負荷量賦課金の総額の方はそれを上回る伸びを示しているではないか、こういう点に一つの問題があるように伺いました。  それはいま先生がおっしゃいましたように、年々医療費も上がってくるわけでございまして、その中には、いわゆる医療の高度化ということで医療費そのものが毎年ふえてまいっていることは、健康保険その他にもそういう例があるわけでございます。そのほかに医療費そのものの単価を改定するということも毎年やっております。したがって、そういう意味で医療費がふえてきておる。同時に、補償給付関係の経費はそれぞれ労働省の統計等を使いながら数値を決めてまいっておりますので、お話のように賃金の上昇等に応じて金額がふえてきておる。こういういわば条件の違いがあるわけで、そういう年々歳々の条件の違いに応じて金額がふえてくる、こういうことでございます。
  148. 細谷治嘉

    細谷委員 長官、とにかく患者のふえ方よりも物すごい幾何級数的な速度で賦課料率が上がっていっております。  そういう賦課料率について、それでは地域的にどうなっておるかということをちょっとつかんでみますと、環境庁が五十二年三月にまとめました資料で申し上げますと、岡山ブロックは、その岡山ブロックにおる患者について補償をしておる額に対して、三・二四倍の金を出しておる。福岡ブロック、これは北九州と大牟田でありますけれども、自分のところの費用を一といたしますと、納めている金は三・五三倍。それから東京都は、支出している金に対して地元の企業が負担しているのは五三・六多だから半分ちょっとぐらいです。四日市は、地元の納めている金は支出しているものの八六・七%、大阪はどうかといいますと、地元に補償金として配られておる金に対して地元の負担しているのはわずかに一四・八%で、一五%程度しか地元は納めていない。  こういう点からいきますと、PPPの原則、ポリューター・ペイズ・プリンシプルというのですから原因者負担、汚染者負担ということでありますけれども、このように自分の負担すべきものの三倍も納めなければならぬ、それから自分の負担しなければならないものの一五%しか納めておらぬということになりますと、もはやPPPの原則は成立しておらないのではないか、こう申し上げる以外にないと思うのです。いかがでしょうか。
  149. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 御指摘のとおりでございまして、そういう矛盾をこちらも痛感いたしましたので、ことし幾分その数値の修正をいたした次第でございますが、やはりまだまだその矛盾は残っていると思います。これは一遍に変えてしまうこと自身にも非常に問題がありますので、ことしはある幅を置きまして数値の修正をいたしましたけれども、やはり御指摘の矛盾というものはもう少し積極的に解消しませんと、都市によって非常に不本意さというものはぬぐい切れないということは否めないと思います。
  150. 細谷治嘉

    細谷委員 これは大臣も認めたように、汚染者負担の原則というのは著しく外れちゃっておるのですよ。それは私は、日本全体としてこの法律を守っていくということは必要だろうと思う。けれども、自分のところの汚染者負担というのを一〇〇でいいものを三五〇も六〇も、三倍も四倍も納めるということになりますと、これは私はもはやPPP原則から大きく乖離して、その原則が守られておらないと言う以外にありません。おっしゃるように五十二年四月、ことし、いままで一本でありましたのがA、B、C、Dと四ランクになりました。多少は調整をされましたけれども、これでは私はまだPPP原則にのっとっておらないと言う以外にないと思う。これを是正するということでありますが、五十二年度、是正しました。五十三年度も是正されるのかどうか。伺いますと、環境庁の最初の案というのは五十二年度の四月に実施した案よりももっと一歩進んだ案であったと仄聞しております。ところがどこかの強いところで消されてこういう案になったということをお聞きするのであります。しかし激変は避けなければならぬわけでありますから、五十三年度どうするのか、具体的には結論が出てないでしょうけれども、大臣、五十三年度もやられるかどうか、明確にお答えいただきたい。
  151. 信澤清

    信澤政府委員 細谷先生は御承知の上でおっしゃっているわけでございますから、いささかあれでございますが、一つ法律のたてまえの原則はPPPでございます。同時に、先ほども冒頭、大臣が申し上げましたように、いわば共同責任、こういうたてまえもとっているわけで、その兼ね合いの上にこの制度をいかにPPPに近い形で運営していくかというところに問題があると思います。  さような点で、本年の三月に審議会で御審議いただいた結論は、少なくとも指定地域については二分の一を調整するということでございますが、いまお話しございましたような急激な摩擦現象を避けるという意味で四分の一にした経緯がございます。したがいまして、ただいまのところまだ結論を得ておりませんが、少なくとも二分の一調整の方に向かって事柄の処理を進めるべきものだ、こういうふうに考えております。
  152. 細谷治嘉

    細谷委員 調整局長は経過説明しただけですが、大臣、どうですか。
  153. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 五十三年度に実現すべきその方向でいま折衝進行中でございます。
  154. 細谷治嘉

    細谷委員 これはやはり私も全国的な共同ということを全部否定し去っておるものではありません、この法律を守らなければいかぬわけですから。けれども、これは余りにもPPPの原則から外れておりますから、五十三年度もひとつぜひ手直しをしていただきたい。  と申しますのは、大臣、こういうことだものですから。たとえば私の住んでおる市では、五十二年度には十億近い。しかも、そのほかに地域外に患者がおりますから、それを救済しております。それも企業に持たしておりますから、五十二年度には十億を超す負担をして、そうして法に基づくものあるいは単独のものというものをやっておるわけです。しかし、実際は十億負担するけれども、地元で補償として給付されるものは大体四億ぐらいです。これが実態です。そういうことからどういう現象が起こっているかといいますと、これは四日市でも起こったわけですけれども、もう法律のお世話にならぬ方がいいぞ、四日市は四日市の独自でやれば、十億円余分に出しておるのを、困っておる人をやった方がいいじゃないか、市の条例でやろうや、指定を外してもらおう、こういう決意、運動が起こっております。私のところの市でも、いま地元の新聞に毎日のように書かれている問題は、もう補償法という法律の枠内でやらぬで独自でやろうじゃないか、そして線引きされた地域以外に二百人ぐらい救済してやらなければいかぬ被害者がおるから、そういうものを一緒に救おうじゃないか、こういう動きが出まして、この暮れの十二月の市議会にその条例を提案するという具体的な動きにまで来ているのですよ。  こうなってまいりますと、大臣が冒頭言ったように、この法律を充実強化する方向ではなくて、これは大変な事態になると私は思うのです。こういう事態でございますから、決意をもってこの問題をPPP原則にのっとって是正するように切に要請をしておきたいと思います。  そこで、時間もありませんから、結論的なことになるわけでありますけれども、こういう問題から、大臣も恐らくごらんになったと思うのですよ、岡山県知事を先頭といたしまして、こういうふうに賦課方式を改めてもらいたい、こういう陳情書が出ております。恐らく環境庁もごらんになっていると思います。それはどういうことかと言いますと、この賦課については、指定地域の人口密度を賦課の物差しの一つに入れてもらいたい、こういう問題が出ております。これは一つの方向だと私は思います。けれども、現在の問題と亜硫酸ガスの量と人口密度とをどう組み合わせていくかということについてはなかなか技術的にはむずかしい問題があろうかと思うのですけれども、岡山の知事等が出しているのはやはり一つの案だろうと思う、方向だと思う。  もう一つの方向は、やはりすそ切り。指定地域が五千ノルマル立米・パー・アワー、それから指定地域外では一万ということでありますけれども、たとえば東京都の例をとりますと、工場がたくさんございますけれども、硫黄酸化物で大気汚染防止法に関係ある工場で賦課をされているのは五三%しかないわけですね。四七%というのは賦課をされていないのですよ。だとするならば、やはり共同責任というのを担う以上は、この五千と一万という問題、それから五千と一万をなぜ差をつけなければならぬのか。差がついた上に、賦課金については一対九、九分の一という問題があるわけですね。  こういう問題があるわけですから、地域外であれば九分の一しか納めなくていい。地域に指定されたら九億円を納めなければいかぬけれども、地域外なら一億円でいいわけですから、企業は競って、一杯飲ませてでも——大変失礼しますけれども——指定地域外に行きたがりますよ。そうでしょう。これは人情の常。そういうことから言いまして、これは九対一というのも問題があります。いろいろな根拠があるのですけれども、これは問題があります。  それからすそ切りという、五千と一万というのも問題があるので、たとえば岡山の方では、東京都は半分しか賦課をされていないということならば、これをやはり是正して、三千ぐらいまで落としたらどうかという具体的な提案まで起こっております。この辺についてやりませんと、金は青天井のように要るけれども、賦課の方のもとがなくなってしまう、こういう現況でありますから、私は、この補償はPPPの原則でやるとすれば、その辺も考えなければならぬのではないか、こう思います。こういう点について大臣どうお考えですか。
  155. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 まことに一々ごもっともな指摘で、御指摘の点について、やはりこの法制度というものを保つためにも、早急に考慮し、改正すべきものはしていきたいと思います。先ほど御指摘のように、地方公共団体が自分たちの条例でやるなどという乙とになりますと、これは燎原の火のごとく広がってしまって、実質的にこの制度というものは解体するおそれもございますので、そういうことのないように、ここら辺でひとつ鋭意検討、改正をしたいと思います。
  156. 細谷治嘉

    細谷委員 もう一つの点は、きのうも参考人の方々から強く指摘された点でありますけれども、やはり亜硫酸ガスはだんだん減っていく、いまほとんど変わっていないのはNOxだ、こういうものを対象にすべきだという議論がありました。しかし、NOxを対象にするには、それだけの科学的根拠はまだ整っていないで、いま検討中である、こういうのが現状ではないかと思うのであります。ところが、現実には、自動車重量税から十のうち二割分を持ってきて、八割は亜硫酸ガスで、二割はNOxで、移動発生源から現実にやっているわけですね。しかし私は、自動車重量税の成立の経緯からいって、そういう原資をそこに求めたのだろうと思う。それから賦課のしようがなかなか複雑だということで、イージーな行き方をしたのではないかと思うのです。しかし、八対二で、百三十億円ばかり自動車重量税から五十二年度に入るわけですけれども、五十二年度で切れるわけですよ。五十三年度以降どうするのか。この八対二というものもやはり問題があるわけですから、その辺を含めて検討をしなければならぬのではないかと思いますが、いかがですか。
  157. 信澤清

    信澤政府委員 実は冒頭に申し上げればよかったのでございますが、先ほど来先生から御指摘をいただいております事項、それぞれごもっともな御意見でございますので、実は私の方の中公審の部会で、すでに議論をしていただいております。いろいろな項目について議論していただいておりますが、先ほどお挙げになりました岡山県知事からの要望書、その他患者の方々あるいは地方公共団体、そういう方面からいろいろな意見がございますので、そういうものをもとにしまして、ことしの六月ごろ三回ぐらい懇談会をやっていただきまして、現在その懇談会で懇談したものを整理しながら、二つの小委員会をつくって研究を進めていただいております。急ぐものは急いでやるということになるわけでございますが、その急ぐべきものの一つが、まさにいま先生御指摘の、自動車重量税から自動車にかかる分をもらっているという問題を今後どうするかということでございます。この点は、窒素酸化物をどうのこうのという以前の問題でもあるわけでございまして、いろいろな、イージーであるというおしかりはあったかもしれませんが、やはり一つ一つの自動車に対して料金をかけるという取り方は、徴収経費、事務費がかかって仕方がないわけでございますから、さような意味で、重量税の趣旨等から見て、あの財源の一部を繰り入れることは必ずしも不適当な措置ではないと考えて今日までやってきたわけでございます。しかし、早急に検討を迫られている問題でございますので、現在、精力的にこの問題を特に中心に、審議会で御審議をいただいておるわけでございます。まだ結論をいただいておりません。
  158. 細谷治嘉

    細谷委員 大体八対二で、自動車重量税から二割をもらうなどということは、発足のときの四十九年、これは割り切ってやったのですから、そのときはいいですよ。そのときはイージーと申しません。四十九年、五十年と二年続けたわけですよ。それでも成案を得ないで、五十一年、五十二年と続いて、来年度は切れようとしているわけですよ。今日まで四年実績を重ねてきて、いま研究しています研究していますと言っていますけれども、そういう問題について何らかの方向が五十三年度も出ないということになりますと、あなたの方の研究というのは、こういうところの答弁の言い逃れにすぎぬ、こういうことになりますよ。大臣いかがですか。そうならないようにやっていただきたいと思います。
  159. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 ちょっとその経過について私つまびらかにいたしませんが、いま環境庁側の具体案、試案というものはすでに出しておるようでございます。それについての検討がいま続行中と聞いております。
  160. 細谷治嘉

    細谷委員 もう時間がありませんから終わりますが、言い足りない点もありますけれども幾つかの点を私は指摘したわけですが、冒頭申し上げたように、この補償法はやはり法律として充実強化していかなければならない。そのためには、やはり柱としてはPPPの原則を踏まえて、それにのっとってやっていかなければならぬ。ところが、そうは申しましても、支出の方はふえていく。ところが、収入の方は、いまのままでありますと先細りです。先細りを防ぐために幾何級数的に賦課を増額していかなければならぬ、こういうことになっていきますと、その賦課の仕方についてもPPPの原則で、地域格差がめちゃくちゃに起こらないように是正していかなければならぬと同時に、対象を広げていくということも考えなければならぬだろう。  同時に、きのうもありましたけれども、この事務を実施するために、かなりの事務費というのが県や市町村という地方自治体にかかってきております。こういう事務費についても、これはPPP原則で企業が負担すべきだという議論がありますけれども、これはさっき共同責任というような言葉がありましたように、国においても地方自治体においても、住民の福祉を守っていくということについて、事務の費用は、これは重要な事務として公費負担というのはやむを得ないと思うのですけれども、そういう公費負担についても特に国において格段の努力をしなければ、言葉では充実強化と言っても、これは破壊の方向をたどる以外にないと私は思っております。具体的に、イデオロギーの問題ではない、数字の問題として私はそう思っているわけですから、最後に大臣、私の言ったことについて同感かどうか、そういう考えであるなら、冒頭言ったような姿勢でひとつ積極的に取り組んでいただきたい、これをお願いしたいと思います。
  161. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 るる御指摘の点は、私たちもすでに十分感じているところもたくさんございます。何と申しましても、この法律を堅持、強化していく姿勢で今後臨むつもりでございます。
  162. 水田稔

    ○水田委員長代理 次に、古寺宏君。
  163. 古寺宏

    ○古寺委員 私は、むつ小川原開発について、八月三十日に閣議口頭了解された事項につきまして、きょうは確認の意味でいろいろ御質問申し上げたいと思います。  まず最初に、このむつ小川原開発に当たっては、現在すでに五千ヘクタールの土地が大体確保されているわけでございますが、この土地問題について、むつ小川原総合開発会議の資料の中には、住民対策として載っていないわけでございますが、この点について、むつ小川原総合開発会議においてはどういうような取り扱いをすることになったのか、まず承りたいと思います。
  164. 宇都宮綱之

    ○宇都宮説明員 お答えいたします。  去る八月三十日の閣議了解におきまして、それに先立ちまして各省の申し合わせ事項ができたわけでございますが、関係各省庁の申し合わせに基づきまして、その中で「住民対策等に十分配慮しつつ、地域住民の理解と協力のもとに、事業の推進を図るものとし、このため必要な施策等について適切な措置を講ずる」というように述べられております。
  165. 古寺宏

    ○古寺委員 それでは、私は一つずつお尋ねしますが、この五千ヘクタールの中で農地は大体どのくらいございますか。
  166. 田中宏尚

    ○田中説明員 お答えいたします。  五千ヘクタールの中に現況農地であるものは約千七百ヘクタールあるわけでございます。
  167. 古寺宏

    ○古寺委員 その千七百ヘクタールの農地転用はいつ行われますか。
  168. 田中宏尚

    ○田中説明員 農地転用の際には、先生御承知のとおり事前審査というのを一つ行っているわけでございますが、この事前審査につきましては、昭和四十七年十月にむつ小川原開発株式会社から、この約五千ヘクタール全体の地域につきましてそこで立地させたいという事前審査の申し出がございまして、同じ四十七年の十二月十四日日に東北農政局長から事前審査のオーケーを出しております。したがいまして、まだ本審査の段階になっておりませんので、転用手続等に関しましては今後の問題になろうかと思っております。
  169. 古寺宏

    ○古寺委員 それではいつごろ農地転用が行われるという見通しでございますか。
  170. 田中宏尚

    ○田中説明員 全体のスケジュールがどの程度進むかということにも関連いたしますが、先ほど国土庁の方からお話がありました、去る八月のむつ小川原総合開発会議におきましても、この地域につきましては都市計画法に基づく必要な都市計画を早急に進めるということで、地域全体の立地等につきまして都市計画ベースでその物事を検討するという点も一つございますので、先生御承知のとおり、都市計画が定められまして市街化区域内ということになりますと転用手続というよりは届け出ということで済むことに相なるわけでございます。
  171. 古寺宏

    ○古寺委員 六カ所村は、村でございますので、都市計画法で網をかぶせるにはいろいろ問題があると思うのですが、どういうような都市計画をお考えでございますか。
  172. 関口洋

    ○関口説明員 御承知かと思いますが、ただいま農林省の方からもお話がございましたように、都市計画の場合には俗に言う線引きというものも行わなければなりません。そういう意味で現在主として都市局の方で担当しておりますが、青森県と協議中ということでございます。
  173. 古寺宏

    ○古寺委員 この千七百ヘクタールの農地につきましては八割しか代金が支払われていないわけでございまして、残りの二割につきましては閣議了解を得て、その後、農地転用が許可になったら支払いをする、こういうことになっておりまして、現地の住民は、この閣議了解後に残金についての支払いがなされるもの、このように期待しておったわけでございますが、それが、いまの御答弁にもありましたように、非常に長引いております。この点について国土庁はどういうふうに考えているわけでございますか。
  174. 宇都宮綱之

    ○宇都宮説明員 先ほど申しましたように、閣議口頭了解ができましたので、できるだけ速やかに農地転用の手続を進め、その後あとの二割を支払うという手順になっております。できるだけ速やかに行いたいと考えております。
  175. 古寺宏

    ○古寺委員 できるだけ速やかにというのは、スケジュールから言って、大体どのくらいの期間を要するわけですか。
  176. 宇都宮綱之

    ○宇都宮説明員 まだはっきりしたスケジュールを申し上げることはできませんけれども、先ほど申しましたように、都市計画の都市計画区域の指定並びに線引きが行われるということとにらみ合わせまして、それを運んでいきたいと考えております。
  177. 古寺宏

    ○古寺委員 その都市計画の指定と線引きをするのにはどういう手続と期間が要るわけでございますか。
  178. 関口洋

    ○関口説明員 具体的な問題についてのお尋ねでございますが、先ほど申しましたように、私、実際の青森県との協議の段階がどこまで煮詰まっておるのか詳細に存じておりませんので、法を適用する場合にどういうスケジュールで行われるかということを主としてお答えさせていただきたいと思います。  都市計画につきましては、まず都市計画の適用区域を指定するという行為が一つ要ります。それから、その都市計画の区域を指定して、その次におきますのが、先ほど申しましたような都市計画法第七条の規定によります市街化区域及び市街化調整区域の定めという手順に相なってまいるわけでございます。それらのいわば都市計画を定める基礎が固まった後におきまして所要の都市計画施設、道路とかあるいは公園とか上下水道、こういうような個々の施設を計画決定いたしまして、それを逐次事業実施に移していく、先生御案内だと思いますが、大体そういう流れで処理されてまいるわけでございます。それらの問題が完了するめどがいつかという点につきましては、早急に都市局と打ち合わせをしまして、後日、スケジュールその他について御説明させていただきたいと思いますが、きょうのところちょっと準備しておりませんので、保留をさせていただきたいと思います。
  179. 古寺宏

    ○古寺委員 実際に現地のいわゆる都市計画の見通しを打診した上でこういうような結論に至っているわけでございますか。
  180. 関口洋

    ○関口説明員 こういう結論というのは恐らく各省の申し合わせ事項を指しておられると思いますが、私ども建設省といたしまして、国土庁が中心になられました、俗に言う十三省庁会議でいろいろ御相談をさせていただきましたポイントは、いわば都市計画を定める基礎的な諸条件がはっきりしておりませんと、具体的にたとえばいろいろな施設計画を定めるとか、あるいはその施設計画の基礎になります線引きをするとかいう場合に、たとえば工業の配置でございますとかあるいは人口問題、こういうものがはっきりしておりませんと非常に困るものでございますから、むしろそういう点の合意という点について非常に関心を持って見守っておったというのが実情でございます。
  181. 古寺宏

    ○古寺委員 どうも回りくどい聞き方で申しわけないのですが、六ケ所村は人口も少ないし、都市計画法の網をかぶせるには条件が整っていないわけでございますね。したがいまして、都市計画法の網をかぶせるためにはどういう方法でやるかということについていろいろと協議があったと思うのですが、そういうことについて具体的にひとつお話をしていただきたいのです。
  182. 関口洋

    ○関口説明員 どうも手間取りまして申しわけございませんでした。  先生御案内のとおりに、八戸が新産業都市に指定されまして、そこは都市計画が定められております。それで、私どもといたしましては、そういう八戸の都市計画との関連というようなことで検討を進めておるというのが実情でございます。
  183. 古寺宏

    ○古寺委員 その新産都市の一環として都市計画の地域に指定するためには、どういう手続が必要でございますか。
  184. 関口洋

    ○関口説明員 どうもそこまで突き詰めた議論がどうなっておるのか私も十分承知いたしておりませんが、およそ一般的に考えられます類型として御説明をさせていただきたいのでございますが、八戸につきましては都市計画区域が定められておるわけでございますが、その都市計画区域の変更というようなことでも処理できるのではなかろうかというようなことが、一般的にはまず私どもの頭に浮かぶところでございます。  先生が先ほど来御質問をなさっておられます背景は、私なりに理解いたしますと、およそ都市計画を適用する場合に、六ケ所村を独立さしていろいろ都市計画の区域決定なりそういうものを検討しておるのか、あるいはほかの方法で検討しておるのか、その方向を示せということだろうと思いますが、恐らく先ほど申しましたように八戸の都市計画区域とのかかわり合いで問題を検討しておるというのが実情であろう、こういうふうに考えております。
  185. 古寺宏

    ○古寺委員 では、いまそれは具体的にどの程度まで進んでおりますか。
  186. 関口洋

    ○関口説明員 都市計画の問題は都市計画を決める主体、これは都道府県知事でございます。ただ、知事さんといたしましても、これも通例のやり万でございますが、御自分の判断だけで決めるということではなしに、該当の市町村と十分協議した上で案を作成していくというのが通例でございます。本件の場合も県と六ケ所村、あるいは関係の公共団体と県が精力的に協議を進めておるというふうに聞いております。     〔水田委員長代理退席、委員長着席〕
  187. 古寺宏

    ○古寺委員 この千七百ヘクタールの農地の未払いのいわゆる二〇%の代金、これはどのくらいになっておりますか。
  188. 宇都宮綱之

    ○宇都宮説明員 約三十億円近い金額と聞いております。
  189. 古寺宏

    ○古寺委員 その代金が支払われないために非常に迷惑をしているわけです。もうすでに土地を手放してから約五年を経過している方々もいらっしゃるわけです。今の建設省の御答弁にもありましたように、これから都市計画法の網をかぶせるにしましても相当の期間を要する、あるいはまた農地転用を正規の手続をして代金をお支払いするのにも相当の期間が要るわけです。そうしますと、この開発に協力をしてくださった、土地を手放したいわゆる住民の方はいつも苦しんでいなければならない。それなのに、このいわゆるむつ小川原総合開発会議の住民対策ではその点については一言も触れていないというのは、どういうわけでございますか。
  190. 宇都宮綱之

    ○宇都宮説明員 最近まで政府の方針が確定いたしませんでしたが、去る八月三十日の閣議了承によりまして方針が確定いたしましたので、その後できるだけ速やかにということで、現在、手続を進めておるわけでございます。
  191. 古寺宏

    ○古寺委員 それでは、生活に困っている方々がいらっしゃるわけですね、三十億近い未払いがあるわけですから。もう利息を入れますと相当の金額になると思います。そういう方々に対してはどういう対策をお考えですか。
  192. 宇都宮綱之

    ○宇都宮説明員 現在のところ特別の対策考えておりませんけれども、すでに八割はお払いしてあるということと、あとはできるだけ手続を促進するということで処置してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  193. 古寺宏

    ○古寺委員 そういう農用地を手放した方は、新しい土地を求めるとかあるいは転職をするとか、いろんなことを考えなければならないわけですが、そういう点に対する住民対策については、ここにもある程度のことは書かれておりますが、具体的にはどういうことを現在進めておられますか。
  194. 宇都宮綱之

    ○宇都宮説明員 開発に伴いまして移転を余儀なくされます住民につきましては新しい市街地、いわゆる永住区と申しておりますけれども、そこの建設をすでに完了いたしまして、一部住民の移転も始まっております。それから、農家につきまして、引き続き農業を行いたいという方々につきましては代替農用地のあっせんをいたしております。  それからあと、転業を余儀なくされる方々につきましては職業訓練あるいは就職のあっせんという生活再建対策も実施しておるという状況でございまして、住民対策に万遺漏のないように努めておる次第でございます。
  195. 古寺宏

    ○古寺委員 いま土地を手放した方々の問題について、簡単ですがいろいろ質疑を行ったわけですが、こういう問題について大臣は、閣議口頭了解でございますので、閣議には出席していらっしゃったと思うのですが、こういう点については閣議では了解したのでしょうか。
  196. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 閣議了解は口頭でございましたので、細部については聞いておりません。
  197. 古寺宏

    ○古寺委員 この「むつ小川原開発について」というむつ小川原総合開発会議の資料には恐らく環境庁も当然参画をしておられたと思います。特に環境アセスメントの問題もありましたので、この内容については当然、大臣もある程度は御存じのはずでございますし、さらにこの資料に基づいて閣議の口頭了解というものがなされているわけでございます。私はこういうことは申し上げたくないのですが、大臣は、盲判云々とか私は男らしい男の道としての大臣の道を選ぶとか、大層ごりっぱなことをいままで御答弁になっておられますが、こういう重要な問題についてなぜ大臣はもっと真剣に取り組まなかったのか、御答弁をお願いします。
  198. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 そのいきさつにつきましては担当の局長から御説明させていただきます。
  199. 信澤清

    信澤政府委員 大変私どもの補佐が悪いために、細部まで御報告しておりませんでしたので先ほどのような大臣の御発言になりました。  私どもの関心事は、いまの農地転用の問題その他いろいろあることは、十三省庁の連絡会議でいろいろお話を伺っておりますので存じております。しかし、いま先生おっしゃいましたように、何といいましても私どもは、あの地域開発が環境に及ぼす影響について、あの計画自身が一体成り立つかどうかというところに重大関心があるわけでございます。さような点につきましては、細部にわたって大臣に御報告しているつもりでございます。
  200. 古寺宏

    ○古寺委員 それは局長の御答弁としてはよろしいかと思いますが、私は石原長官の、大臣として閣議に参画をしたお一人としての御答弁をお伺いしているわけでございます。
  201. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 この問題は、直接環境庁の所管の事柄ではございません。そういう意味でも私、閣議に出ます前に報告を聞いておりませんでしたし、閣議でもこの問題が話題に上りませんでしたので、そのまま済ましたわけでございます。
  202. 古寺宏

    ○古寺委員 それは大臣としてはそういうふうにお考えかもわかりませんが、この「むつ小川原開発について」は十三省庁でこの問題を煮詰めて、閣議で了解になっているわけでございますので、当然関係のある大臣としては、この内容について具体的に掌握をし理解して了解をしていかなければならない問題ではないかと私は思います。  したがいまして、いま申し上げてまいりましたように、この開発に伴う農用地を手放した方々が二〇%の未払い代金のために非常に困っておられるわけです。そういう問題については、やはりただ単に了解しただけではなしに、きちんとした対策を立てていただかなければ、私は政府の責任は果たされないと思う。したがって今後、この農用地を手放して現在未払いになっている方々に対して、政府として、いままで非常に長い間御心配をおかけしたわけでございますので、十分な措置をとっていただきたいと思うのですが、大臣から御答弁をお願いします。
  203. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 そのように関係の大臣に私の方から必ずお伝えいたします。
  204. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、やはりこの中にございます農林省の上北馬鈴薯原原種農場の移転の問題でございますが、この点については、農林省は了解をしたわけでございますか。
  205. 伊藤律男

    ○伊藤説明員 お答えを申し上げます。  先般先生からの御質問もございましたように、農林省の上北馬鈴薯原原種農場につきましては第二次基本計画の中に入っておりまして、これにつきましては、私どもといたしましては、先般先生にも申し上げたかもしれませんが、この移転につきまして県から本年の一月に農林大臣あてに要請がございました。候補地につきましては、青森県の天間林村柳平地区が推薦されております。
  206. 古寺宏

    ○古寺委員 私がお尋ねしているのは、県の方からはそういうような要請があったと思いますが、農林省としてそこへ移転するなら移転するというようにはっきり決まったのかどうかということをお聞きしているのです。
  207. 伊藤律男

    ○伊藤説明員 私どもといたしましては、県からの推薦がございましたので、これにつきまして十分な調査をしなければならないと考えております。  まず、県からこの地区についての現況そのほか、バレイショの原原種農場を移転いたしますに当たって適地であるかどうかということの資料の提出を求めたわけでございます。  それから、資料の提出が大体行われまして、私どもといたしましては補足的な問題もあるかもしれませんし、また農林省といたしまして、この候補地につきまして調査をする必要がございますので、ただいま調査を実施中でございます。その上で決定をいたしたいと思っております。
  208. 古寺宏

    ○古寺委員 これは、もう相当以前からこういうお話があって、もうすでに調査も終わっていると思うのですが、何か非常に歯切れの悪いお話でございます。この移転先の天間林村の場合には、現在地から見て用地が約半分近い小さな土地であるということも承っておりますし、そういう点についてはもうすでに農林省で検討済みでこの資料の上に載っけたんだ、こういうふうに私は考えたのでございますが、そういう点については了解した上でここへ書いているのではないのですか。
  209. 伊藤律男

    ○伊藤説明員 私どもも県とはいろいろ話し合いをいたしておりますけれども、最終的に了解をした上でこの地区を載せたということではございません。候補地として載せたということでございます。
  210. 古寺宏

    ○古寺委員 ここを読みますと、「土地利用の具体化に伴い移転の措置が必要となる国有施設等については、以下のとおり進めるものとする。」と、こういうように書かれてありますよ。これは進めることになっていますよ。
  211. 伊藤律男

    ○伊藤説明員 これにつきましては、いま先生のおっしゃる、以下のように進めるものというのは、地元と協議をいたしまして進めていくという意味でございまして、先ほど申し上げたように、そこに決めたということではございません。
  212. 古寺宏

    ○古寺委員 しかし、ほぼ決まっているわけでございましょう。
  213. 伊藤律男

    ○伊藤説明員 現在のところ、県から出てまいってきております候補地といたしましてはこの地区だけでございます。私どもといたしましては、そのほかにもないのかということで県には再三申し上げたわけでございますが、六ケ所村につきましてはこれだけの面積がない。私どもといたしましては、少なくともいま全体の面積としては四百ヘクタール近い原原種農場でございますので、最低は百ヘクタールを超す面積がございませんと、ほかの農場でもそうでございますが、バレイショの原原種の生産に支障を来すわけでございますので、そういうことでこのところだけがいま候補に挙がっているというようなことではないかと思っております。
  214. 古寺宏

    ○古寺委員 どうもはっきりしないのですが、ひとつ申し上げておきたいのは、原原種農場が青森県にあっても付近の町村に十分に原原種というのですか、種イモが行き渡らない。それをおたくの方にお尋ねいたしますと、原原種農場の次に原種農場があって、原種農場が悪いんだ、こういうようなお話をなさいますが、今後、この開発のためにいろいろ犠牲になると言うとこれは語弊があるかもわかりませんが、そういう農家に対しては十分に要望しているだけの種イモが行き渡るような、そういう機能を果たせるような原原種農場を考えていただきたいと思うのです。  それとあわせまして、資料の中にございます農業の振興対策でございますが、これについて農林省は具体的にどういう対策考えているか。現在進行中のものもあわせてお答えを願いたいと思います。
  215. 島本虎三

    島本委員長 古寺委員に申しますが、どちらが答弁していいかまだ決まらぬようですが、どちらに答弁を求めますか。
  216. 古寺宏

    ○古寺委員 農林省がいないのですか。
  217. 島本虎三

    島本委員長 農林省は四人来ております。
  218. 古寺宏

    ○古寺委員 代表の方にお願いします。
  219. 島本虎三

    島本委員長 代表はそれぞれ決まっておらないようです。——では、岡部建設部長。
  220. 岡部三郎

    ○岡部説明員 私どもの方でいま計画いたしておりますのは、小川原湖から取水をいたしまして、相坂川という川がございますが、この左岸に国営事業を実施すべく、現在、全体計画を実施中でございます。
  221. 古寺宏

    ○古寺委員 相坂川左岸の開発計画というのは、これはいままでいた農家の方々の問題でありまして、私がお尋ねしているのは、六ケ所村の土地を手放した方々、あるいはまだそこへ残ってこれからも農業に従事しようとする方、そういう方の対策をお尋ねしているわけです。
  222. 岡部三郎

    ○岡部説明員 私ども構造改善局の所管しております基盤整備事業としては、現在、考えてございません。
  223. 古寺宏

    ○古寺委員 担当の方がいないのでお答えできないのだと思いますが、この次にまた農林省にお尋ねをすることにします。  次は、この資料の中にありますところの港湾の問題についてお尋ねをしたいと思います。  むつ小川原港が重要港湾に指定をされまして、地方港湾審議会の議を経てこれから計画が進められていくわけでございますが、このむつ小川原港の建設に当たって、環境アセスメントの方はどういうふうになっているか、これは環境庁からまずお聞きしたいと思います。
  224. 信澤清

    信澤政府委員 むつ小川原関係の開発につきましては、先般来いろいろ申し上げておりますように、昨年、環境影響評価の指針を県にお示ししまして、それで実施をしていただいたわけでございます。したがって、その中には当然、港湾計画にかかわる部分があるわけでございますが、いずれにいたしましても、先般も申し上げたと思いますが、なお追跡調査をし、さらに関係住民の意向を反映するというようなことも残されておりますので、港湾審議会の御審議は別といたしまして、県が港湾計画を作成する場合には、私どもが従来お示ししたような事項について十分配慮してほしいということを指導してまいるつもりでございます。
  225. 古寺宏

    ○古寺委員 それじゃ運輸省の方にお聞きしますが、中央港湾審議会に諮問するのはいつごろになりますか。
  226. 小池力

    ○小池説明員 お答えいたします。  むつ小川原港の港湾計画でございますが、先生御指摘ございましたとおり、今月十八日に青森県が主になっておりますむつ小川原港は地方港湾審議会の議を経てございまして、十月十九日に港湾計画が運輸大臣に提出されております。現在、運輸省において審議中でございまして、十一月の下旬には港湾審議会に諮問するという予定に考えております。
  227. 古寺宏

    ○古寺委員 予算にはこの実施計画の調査費が載っておりますが、どういうような調査をこれからお考えになっているのか、また調査を始めるに当たって現地の漁民に対する対策としてはどういうことをお考えになっているか、承りたいと思います。
  228. 小池力

    ○小池説明員 まず、本年度の調査でございますが、五十二年のむつ小川原港の港湾整備といたしまして二億五千万の実施設計調査費を予定してございます。この内容といたしましては、気象海象の調査、地形測量、深浅測量、土質調査等を直轄事業としてやることを予定してございます。  なお、第二点のお尋ねで、これからの調査に関する漁業者との対応はどうかというお尋ねでございますが、この調査に関連いたします漁協は、三漁協、約千五百名の対象者の方の漁協がございます。県並びに国の方で、九月下旬から十月の上旬にかけまして調査内容説明し、関係者とお打ち合わせをしている状況でございます。
  229. 古寺宏

    ○古寺委員 この海象調査は、どのくらいの期間を考えておられますか。
  230. 小池力

    ○小池説明員 海象調査、特に波の継続観測等ございまして、これにつきましては、ずっと今後ともども継続することになりますが、本年度の調査といたしましては、年度末までやることを考えております。
  231. 古寺宏

    ○古寺委員 それは、いままでもずっとおやりになったわけでございますが、大体どのぐらいの期間を見て調査を完了する予定でございますか。
  232. 小池力

    ○小池説明員 潮流関係等の調査につきましては、調査の具体的なタイミングに合わせまして実施をいたしますが、波浪の観測につきましては、むつ小川原よりももう少し南になりますけれども、そこの波浪の調査は、今後も継続観測をやっていくつもりでございます。
  233. 古寺宏

    ○古寺委員 現在お隣の東通村では、東北電力、東京電力の原発の建設のために、いろいろ海象調査が行われております。沖合い約一キロメートルぐらいですかのところに鉄塔を立てまして、水温とか塩分とか波高とか、いろいろなものを現在測定をしていくようでございますが、そういうような海象調査というのは、運輸省ではおやりにならないのですか。
  234. 小池力

    ○小池説明員 海象調査の直轄事業で実施いたします事業内容、実は詳しく存じておりませんので、申しわけございませんが、ただ鉄塔を立ててやるなんというようなやり方じゃなく、波浪観測につきましては、すでに沖合いに波高計を設置してございます。それから、毎日の波浪の情報を取るということでございます。それから潮流の調査等につきましては、調査を実施いたします期間、まだ具体的にいつからいつまでという、本当の調査の実施の期間は決めてございませんけれども、その時期に、潮流計を入れまして潮流を測定するというようなやり方でございまして、海象全般につきましては、先ほど申しましたように年度末まで実施するわけでございますけれども、実際に器具を設置してやります期間は、その中でまた調査のタイミングに合わせて実施するというようなやり方でございます。
  235. 古寺宏

    ○古寺委員 環境庁は、こういう大規模な港湾の建設に当たっての環境のアセスメントと関連があるのですが、海象調査はどのぐらいの期間をかけて、どういう調査方法によって行えばよいというふうにお考えでしょうか。
  236. 信澤清

    信澤政府委員 計画の段階と実施の段階とを二つに分けて考える必要があると思いますが、私ども現在、中央の港湾審議会にかかる案件につきましては、私どもの事務次官が委員であるというようなことから、委員としての立場からいろいろ計画段階で申し上げているわけでございます。同時にまた、それが具体化されます。たとえば埋め立て等の問題が起こりました場合には、公有水面埋立法によります別途協議をいただく、こういう形で従来やってまいっておるわけでございます。したがいまして、規模なりあるいは計画期間なりに応じて、おのずから環境影響評価のために要する時間というものも変わってくるわけでございますので、一概にどうこう申すわけにはまいりませんが、必要な項目等につきましては、従来から運輸省港湾局と御相談しながら整備をし、必要欠くべからざるものについては、それぞれ必要な段階に応じて環境影響評価をやっていただくということで処理してまいっているのが現状でございます。
  237. 古寺宏

    ○古寺委員 むつ小川原港のような場合には、大体何年ぐらいが至当とお考えでございましょうか。
  238. 信澤清

    信澤政府委員 先ほど申し上げましたように、この港湾計画を含めて全体的な地域開発につきまして、かかる環境影響評価を青森県が実施をいたしたわけでございます。恐らくこれは港湾管理者は青森県だと思いますので、従来の私どもの指針に基づく環境影響評価の結果をかなり使って処理ができるのではないか、少なくとも計画段階では処理ができるのではないか、こういうふうに考えております。
  239. 古寺宏

    ○古寺委員 いま東通村の東京電力、東北電力の場合は、迷惑料というものを七千八百万円支払いまして、そして五年間海象調査を行うことになっております。そういうようなある一定の期間を設けてきちんとした海象調査をやったのでなければ、私は完全な環境アセスメントというものはできないと思うのです。そういう点から考えて、青森県が行った環境アセスメントについては、これは環境庁が指導をし、きちっと点検もしたわけでございましょう。その場合にこういうことはなかったわけですね。これから調査に入るので、運輸省としては漁民との折衝をしなければならない、こういうことになっているのですが、そうしますと、いままでの港湾に関するアセスメントというのは作文でございますか。
  240. 信澤清

    信澤政府委員 さような意味で申したわけでございませんで、あの段階でやりました調査の中でも、今度の港湾計画の立案、決定に当たって参考とすべき点が多いということを申したわけでございます。通常、港湾計画の場合につきましては、各般の資料は少なくとも一年間、年間を通じてのものは最小限度必要だ、これはもう当然のことでございますが、いまお話にございましたように、たとえば外洋についての波浪の問題ということになりますれば、それはまたそれなりの時間がかかるということになろうかと思います。
  241. 古寺宏

    ○古寺委員 その点はきょうは時間がありませんので、次回にまた今度は細かくお聞きします。  次に、小川原湖の総合開発計画の中の小川原湖の水の問題でございますが、農業用水としては毎秒六トン、それから都市用水としては毎秒七トン、これを計画しているようでございまして、先ほど農林省からお話がございました相坂川左岸の農業水利事業ですかが始まるわけでございますが、この点について農林省は心配がないというふうに判断をしているのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  242. 岡部三郎

    ○岡部説明員 先ほど失礼をいたしましたが、小川原湖から毎秒六トンの水を取水いたしまして、相坂川左岸の農業水利事業の全体実施設計を現在いたしておるわけでございます。ことしで全体実施設計が二年目になりますので、来年五十三年度はぜひ着工いたしたいということで、現在、概算要求をいたしております。
  243. 古寺宏

    ○古寺委員 農林省、この毎秒六トンの用水を必要とする時期は大体いつごろでありますか。
  244. 岡部三郎

    ○岡部説明員 この計画には畑地灌漑と水田の補水と両方含まれておりますが、六トンと申し上げますのは水田の灌漑期間の総取水量を灌漑期間で割ったものでございまして、これは計画基準年における流量でございます。
  245. 古寺宏

    ○古寺委員 どうもはっきりしないところもあるのですが、環境庁にお尋ねしますが、この小川原湖は淡水化を始めるわけですね。そうした場合にいろいろな農業用水、生活用水が入ってまいりまして汚濁がどんどん進んでいくと思うのです。瀬戸内海、いろいろなところを見ましても、下水道の整備の立ちおくれ等からああいう大きな海でさえ汚濁をしているわけでございますが、この小川原湖の汚濁の点についてどういうような環境アセスメントを行ったのか、今後心配がないのかどうか承りたいと思います。
  246. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 小川原湖につきましては、淡水化いたしまして、その後農業用なり都市用水等に利水をするという計画があるわけでございますが、その際にこの淡水化等いたした後の水質がどうなるかという点のお尋ねかと思います。  青森県の方から環境影響評価書を提出されましてこれを審査いたしました際に、ただいまの点につきまして非常に重要なことでもございますので、この面について特に重点的に審査をいたしたわけでございます。その際には、青森県の方におきましては四十八年の調査データをベースにいたしまして水質の現状の把握、それから将来の、ただいま申しました淡水化が行われた場合の水質の見通しということを行っておるわけでございます。その際に、この小川原湖が大体目標の水質というものを一応考えておるわけですが、具体的にはCOD三PPmというのを目標水質にいたしておるわけですが、これが達成できますと、こういう姿の報告書になっておったわけでございます。この点につきましては十分われわれといたしましてもヒヤリングもし審査もいたしたわけでございますが、一つはどうも水質の現況の把握、この面につきまして調査のデータに若干不十分な点がある、それから将来の予測でございますけれども、このための入力条件、いろいろな条件を設定してはじくわけでございますが、この辺の条件設定のやり方あるいは見積方法、との面についてもなお検討すべき点がある。それから将来の汚濁負荷量、これにつきましては削減の計画を県の方でも考えておるわけでございますけれども、これが余り具体的になっておらぬ、そういう点をさらに詰める必要があるというようなことで、さらに検討の補完を必要とする部分がありますので、本格的な河口ぜきの建設工事、これが始まります前に所要の検討を行ってほしいということで、これは環境庁の方でいろいろ注文した中の一こまといたしまして、一項目としてこれも県に注文をいたしております。県の方としては、当然、この本格的な建設工事着手前までには必ずそういう点は十分検討をいたしますということでございますので、今後ともこの面につきましては環境庁としてさらに指導をしてまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  247. 古寺宏

    ○古寺委員 この閣議口頭了解の中にも、住民の生活再建措置など住民対策についても配慮しつつ、適切な措置を講ずるものとする、こういうふうにございますが、住民の問題については、長官からひとつよく連絡をとって遺漏のないようにやっていただきたいと思います。  きょうは時間がありませんので最後にお聞きしたいのは、いろいろ長官の発言問題等が毎回この委員会で取り上げられておりまして、一番大事な環境アセスメント法がどうなるのか、あるいはこういうようなナショナルプロジェクトと言われるような開発について実際に問題点がないのかというようなことについては、やはりこれは重要な問題だと思います。したがいまして石原長官が、これは私はよくわかりませんが、十一月、何か改造があるというようなお話もございますけれども、現在の長官の真意としてこの環境アセスメント法を次期の国会には提案できるような態勢に現在なっているのかどうか、また、それを実現しようと現在思っていらっしゃるのか、その点について承って終わりたいと思います。
  248. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 先般の通常国会で時間切れになりましてやむなく提出を断念いたしました際にも、閣議の了解事項として、各省庁協力をしていただきまして、次期の国会に必ず提出できるように努力をするということを官房長官の談話でも発表した次第でございまして、現在、環境庁の中でも関係省庁と、大きな障害になっております問題について、事務レベルでできるだけ速やかに解決し、なおそれで残るものは閣僚間での協議として受け継いで、次の通常国会に何としてでも提出するつもりで努力をしております。
  249. 島本虎三

    島本委員長 古寺宏君の質問は終わりました。  次に、山原健二郎君。
  250. 山原健二郎

    ○山原委員 海洋汚染問題につきまして質問をいたします。  去る十月二十日、高知県室戸岬沖に発生をいたしましたクウェート国籍のタンカー、アル・サビア号、三万五千七百五十二トンの重油漏れの問題にしぼりまして質問をいたします。  これは状況を簡単に説明しますと、この船の船底の亀裂によりましてC重油が土佐沖を帯状に漂流して、現在、北上中であります。土佐湾中西部に広がり、二十六日の夕方には高知港沖合い二十四キロまで近づき、土佐清水市など四市町十四漁業協同組合漁業被害がすでに出始めております。現在の調査では、約六百キロリットル、ドラムかんにいたしまして三千本分の流出と見られております。  県水産課の発言によりますと、沿岸漁協を総動員して定置漁大敷き網を初め、養殖場への油の流入を防いでいるが、足摺岬から高知沖にかけて百数十キロに及ぶ油の帯は手がつけられず、沿岸漁船約五百隻が操業をストップするなどいたしておるようです。  高知海上保安部は、同日午後三時土佐湾浮流油対策本部を設置し、二十七日、第五管区本部などからトロール式集油ネット二基を取り寄せ回収に当たる。またこの船の代理店も、松山市日本マリンの油回収船「第二清海」をチャーターして出している。県水産課の推定では、すでに被害額は三億円を超えるものと見られ、漁民の間には損害賠償要求の動きが出ている。足摺岬一帯では、流れた重油がボール状の油塊になって漂い、沖合い約三キロにある四つの定置網やいそに付着をし、被害が出ている。同岬沖は、ソウダカツオ、サバの一本釣り漁場であるわけですが、例年二百隻ないし三百隻が出漁する主な漁場でありますけれども、この漁場の同岬南約六十キロメートル前後で油が帯状に流れており、漁はできず漁船は休漁している、こういう状態でございます。  現在、私の調査では、刻々と変わっておりますけれども、すでにこの油は、土佐湾全域に広がりつつあります。現在、足摺岬から高知市付近まで達しておりますから、現状は土佐湾の約半分が油によって包囲されておるという、こういう状態が生まれておるわけですね。大変重大な問題で、このクウェート船は、クウェートを出発しまして、行く先は瀬戸内海の、神戸を経由しまして、そして水島に入るという計画航路であります。この土佐沖で起こっている事故でありますけれども、もしこれが神戸あるいは水島沖でこのような事故が発生したとすれば、これは恐らくもう大騒ぎになると思うのですけれども、まあこういう状態にあるわけですね。このことについてはもうすでに海上保安庁その他も御承知だと思いますが、以上、簡単に状況説明して、以下、質問をいたします。  まず第一番に、海上保安庁につきましてお尋ねをいたしますが、このクウェート船はどういう性格の船であるかという問題であります。お調べになっておるかもしれませんが、あるいは便宜置籍船ではないかという意見も出ておりますが、この点について最初に伺っておきます。
  251. 山本了三

    山本説明員 お答えいたします。  この船の船舶所有者はクウェート・オイル・タンカー、ロンドン在住の株式会社でございます。運航者は泉和海運、こういうことになっております。
  252. 山原健二郎

    ○山原委員 クウェート・オイル・タンカー・カンパニーですが、これはクウェート国籍でありますが、いまのお話ではイギリスの会社に所属しておるということですか。
  253. 山本了三

    山本説明員 クウェートだと私ども考えております。会社の所在地はロンドンというふうに承知いたしております。
  254. 山原健二郎

    ○山原委員 運輸省の方、どういうふうに把握しておられますか。
  255. 山下文利

    ○山下説明員 国籍及び船主につきましては、ただいま御答弁させていただいたとおりでございます。  ただ、便宜置籍船かどうかにつきましては、若干私どもの方では検討する余地があろうと思います。と申しますのは、OECDの前身でございますOEECというところで便宜置籍船の定義を決めたものが、大体現在踏襲されておるものでございます。その定義に従いまして現在便宜置籍船に該当する国は、リベリア、パナマ、ホンジュラス、レバノン、キプロス、ソマリア及びシンガポール、この国を対象といたしておりまして、ロイド統計その他につきましても、ほぼ便宜置籍国というものはこういうものに制限してございますので、便宜置籍国の定義によって若干考え方変わろうかと思いますが、現時点の統計上は便宜置籍国とは私どもは理解してございません。
  256. 山原健二郎

    ○山原委員 このクウェート・オイル・タンカー・カンパニー、これは私のいままでの調査ではクウェート国営の企業であるという把握をしたのです。これはいまおっしゃいました日本総代理店のシー・エフ・シャープ商会に照会をいたしましたところ、またPI保険の日本総代理店のドッドウエル社に照会しましたところ、これは国営の企業であると申しておりますが、この点はいかがですか。
  257. 山下文利

    ○山下説明員 大変申しわけございませんが、現在の時点では調査してございませんので、ちょっと御答弁いたしかねるのでございます。
  258. 山原健二郎

    ○山原委員 こういう事故が起こった場合に、当然どこかと交渉しあるいは折衝するということが起こると思いますが、現在、運輸省あるいは海上保安庁におきましては、どこと折衝しているのですか、どのような接触をしておるのですか、簡単にお答え願いたい。
  259. 山本了三

    山本説明員 油の防除活動並びに流出油の局限と申しますか、流出の局限と申しますか、こういった作業につきましては、代理店であります泉和海運と連携をとりながら実施いたしております。
  260. 山下文利

    ○山下説明員 事故対策あるいは事故の状況につきましては、海上保安庁の方で窓口として処理していただいてございますので、私の方は二次的な検討をさせていただきたいと思っております。
  261. 山原健二郎

    ○山原委員 油に関する海洋汚染の条約もあり、クウェートもこれに入っておりますので、そういう意味で、クウェート国籍であるならば、当然クウェート政府と折衝を保つこともできると思うのです。  その意味で次の質問に入りますが、この油漏れにつきまして、実は十月の二十日の午後一時にこの油漏れがわかっているのです。そして、これが海上保安庁の第五管区海上保安部に通報されたのが、それから実に九時間から十時間たって通報されておりまして、二十日の午後二十三時、午後十一時ですね、そういう状態です。この九時間の間、百数十キロにわたって油を流しながらこの船は航行しておるという事実があるわけですが、これは把握しておられますか。
  262. 山本了三

    山本説明員 事故が発生いたしました時点につきましては定かではございませんけれども、この事故を起こしましたタンカーから海上保安庁への事故発生の通報は、二十日の二十時五十二分、電話通報をもちまして神戸の海上保安部に通報が行われております。海上保安庁といたしましては、その後、翌朝といいますか、明るくなりまして飛行機を飛ばして、現場の浮流油の状況調査をいたしたわけでございますけれども相当広範囲に浮流しておるということを確認いたしております。
  263. 山原健二郎

    ○山原委員 いつ発生したかわからないが、二十三時、午後十一時近くに報告があったということでございますが、これはどういう報告でしたか。少量の油が漏れておるという報告があったのではないですか。
  264. 山本了三

    山本説明員 代理店の泉和海運から神戸海上保安部に入りました電話通報の内容は、このタンカー、アル・サビアですか、これは九月下旬ペルシャ湾からC重油五万キロリットルを積載、神戸に向けて航行中、発生の日時、場所については不明であるが、船体の損傷によってタンクの一部から積み荷の油が流出している、こういう連絡であります。
  265. 山原健二郎

    ○山原委員 その通報を受けただけで、調査をしておるのですか。
  266. 山本了三

    山本説明員 海上保安庁は、この通報を受けまして、直ちに巡視船を現場に急派いたしております。その後、翌朝明るくなって飛行機を飛ばして現場の調査を行った、そういうことであります。
  267. 山原健二郎

    ○山原委員 時間がないので簡明に聞いているわけですが、その通報があって、九時間も前から油を流して航行しているということを私は言っているわけですね。そういうことを調査されておるかということですよ。単に泉和海運の通報だけで海上保安庁というのは動いておるのですか。これだけの油で汚染されておるときに、泉和海運は代理店の下請でしょう、その下請の通報だけを聞いて、それを信頼して、しかも出動したのは翌日じゃないですか。そういう手ぬるい動き方をしておるのかどうか、その事実関係調査されておるかどうか、もう一回伺っておきます。
  268. 山本了三

    山本説明員 先ほども申し上げましたけれども、この事故通報がございまして、なるべく速やかにということですが、二十一日の〇三〇〇巡視船が高知を出発いたしております。現場に到着したのは六時であります。〇六〇〇、さらに、早朝航空機を飛ばして油の浮流状態調査する、そういうことをいたしたわけでございますけれども、海上保安庁といたしましては、現に油がどれだけ流れておるかという実態を把握するということがまず先決であります。したがいまして、航空機で上空から、どれだけの幅にどれだけの広がりをもって浮流油が流出しているかということを調査いたしたわけであります。
  269. 山原健二郎

    ○山原委員 停船を命じたのは何時ですか。
  270. 山本了三

    山本説明員 代理店からの情報は二十時五十二分と申し上げましたけれども、この情報を受けました第五管区海上保安本部は、この情報に対する返答といたしまして、現在の位置にとどまって巡視船の確認を受けよ、現状のままでは領海内に進入することはできないということを即座に連絡をいたしております。
  271. 山原健二郎

    ○山原委員 海上保安庁の仕事は、どれほどの油が流出しておるかを調べるのが任務だと言いましたが、油はどれほど流出しているのですか。
  272. 山本了三

    山本説明員 ただいま手元に資料がございません。しかし、航空機で調査いたしました結果につきましては実は電報が入っておるわけでございますけれども、私の記憶で申し上げるとあるいは数字が間違っておるかもしれませんけれども、船尾から長さにして三、四十海里ぐらいの長さであるというふうに報告があったと記憶いたしております。
  273. 山原健二郎

    ○山原委員 油がどれほど流れたかもわからないでしょう。確かに飛行機を飛ばしたり調査をされたりしているわけですが、どれだけの油が流れて、それに対してどういう手を打つかということが、これは海上保安庁の仕事か運輸省の仕事か、どっちか知りませんけれども、その油がどれだけ流れているかということを把握しなければ手の打ちようもないわけですね。  それからもう一つは、この油漏れの原因は何かということを調査なさっていますか。
  274. 山本了三

    山本説明員 先刻御報告いたしましたけれども、巡視船が、この情報を受けて直ちに現場に向かっております。翌朝現場へ着きまして、そこで事故の状況といいますか、どこからどういう油が流れているか、こういったことについての調査を実施いたしております。
  275. 山原健二郎

    ○山原委員 だれに聞くのですか、そのときは。
  276. 山本了三

    山本説明員 それは船の乗組員に聞きます。
  277. 山原健二郎

    ○山原委員 じゃ、船に乗ったわけですか。
  278. 山本了三

    山本説明員 ただいま本件につきましても細かい資料は手持ちがございませんけれども調査するわけでございますから、私の推定では乗ったであろうと考えております。
  279. 山原健二郎

    ○山原委員 こういう事件、初めてではないわけですね。しかも、外国国籍の場合ですから困難なことはわかりますけれども、しかし余りにも調査とか、あるいは船長に対して、船に乗り込んで専門官を入れて調査——一週間たっていますよ、いま。二十日からきょう二十七日ですからね。一週間たった間に油がどれだけ漏れたのかもあるいは原因はどこにあるのかも調査していないようなことで、どうして外国と被害問題等についての折衝ができるかという問題があるのですね。したがって、私は、そのことを厳密にやっていただきたい、こう思います。だから、油がどこから漏れておるか。私の聞いたところでは、船首のこの船の使用する油が漏れ始めたのだ、こう言っているわけですけれども、しかしそれだってだれも確認もしていないわけですね。だから、どうすればここのそれを修繕をして油漏れを——いまだに油が漏れているのですよ。どうしてこれに適切な溶接をして油をとめるかというような対策も出てこないじゃないですか。だれが政府では責任を持つのですか、こういう問題は。海上保安庁じゃないでしょうか。
  280. 山本了三

    山本説明員 このタンカーの損傷状況でございますが、タンカーの前部にフォアピークタンクというのがございます。これはいかりがおさまっておる、そのちょっと後部にありますけれども、ここと、それからその後部にディープタンクという燃料を搭載いたすタンクがあります。この亀裂はこのディープタンクの右舷、喫水下三メートル、これに亀裂が生じております。この亀裂の大きさは、縦に四メートル、横に三・五メートルということであります。ここへ積載いたしておりました燃料油は千二百トンであります。その千二百トンが右舷と左舷に分かれて搭載されていたというふうに聞いております。事故が発生いたしましたときには船長はその残油といいますか、そこに入っておる油をなるべくほかのあいたタンクの方へ移送するというような作業をいたします。そういったいろいろないわゆる流出を防除するための、最小限に食いとめるための作業をやるわけでございますので、どれだけそっちの方へ行き、どれだけ油が流れ、どれだけいま現在残っておるかというのが非常にその推定がむずかしいというのが現状であります。したがいまして、六百何十トン流れたと申しますのは、多分右舷側のディープタンクはみんな流れてしまったであろうと推定をして、六百トンとか言っているわけでございまして、これを計測するといいますか、そのタンクを計測したらいいだろうということですけれども、それもC重油でございますので固まっておる。なかなかその計測は正確なところはできないというような状況で、流出量について非常に歯切れの悪いといいますか、云々するということになっておるわけでございます。海上保安庁といたしましては、こういった船体の損傷の状況あるいは流出油の概算といいますか、こういったものはなるべく早急に把握をいたして、それから防除の有効な活動に移るということでございまして、その辺の調査は十分にいたしておると考えております。
  281. 山原健二郎

    ○山原委員 きのう私は海上保安庁まで行って、この問題についてきょうは質問を申し上げることも言ったわけです。一週間たっているのですよ。あなたの御答弁を聞いておりましたらもういらいらしますね。もっと的確な、しかも漁民が被害を受けているじゃないですか。それに対してどうするのだということが出ないで、何となくくつの下から足をかくようなことでは、これは問題の解決にはもちろんなりませんから、直ちに的確な資料を、船に乗り込んで、そして専門官を入れて調べる。これは当然のことです。また、石原長官に最後に伺いたいのですけれども、当然クウェート政府に対しても、これはもう国籍だけでなくてこの船がクウェートの国有の企業であるということがはっきりすれば、クウェート政府に対して乗り込んでやる、また船長に対してやるというような手は幾らでもあるわけですよ。そういうことを当然やるべきだと思うのです。  それからもう一つは、この船はまさに老朽船。だから三万数千トンという大きな船でございますけれども、大体きょう私は日本タンカー協会に聞きましたが、いまおっしゃったような船首の方の壁に三・五メートル、四・五メートルなんというL字型の亀裂が出るなんということは、常識的に考えて判断をしますと、よほど鉄板が薄くなっているものであろう、あるいは腐蝕しているのだろう。そして船首に力がすごくかかった場合、大きな台風などのときにスピードを落とさずにピストン運転を続けていく場合にはそういうこともあり得るけれども、この場合は台風も何もあったわけではありません。そういうことから考えますと、およそこんなことは考えられないことだ。まさに定期検査で精密な検査を行ったならば、鉄板に穴をあけて調べて、そしてその鉄板を張りかえる。これがあたりまえのやり方であって、日本では考えられない事故だ、こういうふうに言っているわけですね。こういう老朽船、しかもこれは御承知のように日本でつくられた船ですでに十二年間経過しておりますが、日本タンカー協会によりますと、耐用年数は十数年あるのだけれども、実際にタンカーとして十年以上使うようなことはしていません。こういういわばぼろ船、スクラップ船が油を積んで瀬戸内海や東京湾へ出入りしておるのが実態なんです。これに対して何らのチェックもしてないという。こんなことでこういう事故が再発をしないという保証もないわけですね。だからこの問題は、私は、非常に大きな教訓として受けとめて徹底的な調査をしていただきたいと思うのですが、簡単に答えてください。やりますか。
  282. 山本了三

    山本説明員 海上保安庁は先ほど申し上げましたとおり、巡視船を派遣し、防除活動につきましては、船主と申しますか代理店を督励いたしまして流出油の防除活動をやっております。流出油の局限につきましては、サルベージを直ちに手配して現場におもむかせて、この亀裂の閉鎖作業を現在督励中であります。油の防除、それからら流出油の局限、こういった作業は可及的速やかといいますか、できるだけ速いペースで現在進められております。ただ、一たん流出いたしました流出油、C重油は粘度が高くなってスラッジ状になっておりますので、この防除活動が非常に困難をきわめておるというのが現状でありますが、なお関係者を督励して被害を他に与えないよう最大限の努力をいたす、そのようなつもりでおります。
  283. 山原健二郎

    ○山原委員 この通報を受けましたときに的確な措置がとられまして、そしてあのときにオイルフェンスが千五百メートルぐらいしかないんで、しかも油は二千メートル、三千メートル広がっているのだから、早くということを要請しておりますけれども、オイルフェンスは間に合わない。その間に油はずっと広がっていま三方面にわたって動いておるという状態なんですね。いまやもう手がつけられないのですよ。これからこの油の除去に対してどうするかという問題ですね。これはどこが責任を持っておやりになるのか伺っておきたいのですが、保安庁ですか、環境庁ですか、あるいは運輸省ですか、どうでしょう。
  284. 山本了三

    山本説明員 浮流油の現状を申し上げますと、高知から室戸岬にかけまして距岸大体十海里から二十海里ぐらいのところに点々と、私どもの報告では約五カ所、大きなところがあるわけですけれども、五カ所点在して残っておるというのが現状であります。この点在しておる中の最も大きなものには第二清海丸が行って盛んに油の回収作業をやっておりますけれども、その他につきましてはさしあたり沿岸に漂着するかしないか、その辺のところはまだわからない。防除活動を現に行う必要があるのか、ないのかということも監視してみなければわからない、そういった実情であります。しかし、海上保安庁並びに船主の手配船、これは漁船も含めてそうでございますけれども、こういったのがそれらの流出油に対して防除活動を実施しておるというのが現状であります。もちろん流出油の防除の指導、これは海上保安庁の責務であります。
  285. 山原健二郎

    ○山原委員 漁民の方では、もうすでに油は下へ沈み始めて、これが沈んでしまえば半永久的な汚染を受けるだろう、ハマチにいたしましても、二百万尾ぐらいが損害を受けるであろうというようなことがもう刻々と入っているわけです。海上保安庁第五管区だけに任さないで、乗り込んでそして調査をする、全面的な排除活動を展開するということを私は最後にお聞きしたいのです。乗り込んでいいんですよ。代理店を使ったり、第五管区じゃなくて、これだけの大きな事故が発生した以上は、本当に問題解決のために調査もし、そして油の排除についても全力を注ぐということにしていただきたいと思いますが、その決意は後で伺いたいと思います。  運輸省の方に伺いますが、現在起こりつつある漁業の損害問題、あるいは漁網がもうやられている。油を取るのはモジャコの採取の網で取っていますが、油がつくものですから捨てざるを得ないとかあるいは船にも油がたまってくるとかいうようなことで、しかも五百隻に余る船が出漁できないという状態、こういう状態が起こっているわけですが、このような事故の場合に、これらに対する補償の問題はどういうふうに解決をされるおつもりでございますか。聞くところによりますと、条約上の面から考えましても、限度額として十三億八千万程度のものは保険の関係で出るだろうと言われていますが、その余の損害補償に対しては、こういう場合にはどうするおつもりか、伺っておきたいのです。
  286. 山下文利

    ○山下説明員 お答えいたします。  タンカーの事故によって損害が発生したことに対処いたすために国際条約もございまして、先生御指摘のように国内法でも油濁損害賠償補償法というのがございます。この油濁損害賠償補償法では、これを担保する意味で、一定以上のタンカーについては、保険を掛けなければ日本国内に入れないようなたてまえになってございます。したがって、日本の国内に入るタンカーについてはすべて保険に入っておるわけでございまして、その保険の額は一トン当たり四万六千円でございますので、仮に三万トンタンカーでございましたら、約十四億程度かと思います。ただ、それを超す被害が生じた場合には、世界的に石油会社が集まりましてCRISTALという組織をつくってございます。そのCRISTALがそれを超える分については補償するたてまえになっておりまして、そのリミットは三千万ドルでございますので、仮に一ドル二百五十円と計算いたしましても、七十五億までの補償は可能だろうと思います。ただ、具体的な中身につきましては、補償額の範囲とか金額、そういう問題について詰めた上で、その財源でもって処置することは可能かと、このように存じております。
  287. 島本虎三

    島本委員長 もう時間が迫っております。
  288. 山原健二郎

    ○山原委員 申しわけありませんが、石原長官に最後に伺いたいのですが、事態としては、いま私が申し上げたような状態ですね。それで一つは、ここは御承知のように二百海里漁業専管区域の中にわが国の経済水域にも入っておるところでございますし、またここは国立公園でもあるわけです。もう足摺宇和国立公園ですね。一昨々年ですか、国立公園に昇格したばかりの、風光明媚、しかも魚の宝庫とも言われておるところでございます。こういう状態で、しかもいま言いましたように、老朽船が大変危険な形で日本に出入りをするというような問題、また外国との関係もあります。そういう点で、本当に外交ルートを通じましても、また場合によっては乗り込み調査をするとかして的確な原因を把握して除去する、そしてまた、いろいろな損害については完全な補償をしていくという態度をとる必要があると思うのです。そういう意味で、石原長官の総合的な立場、こういう問題、非常に質問しにくいのは、運輸省であり、海上保安庁であり、環境庁でありというようなことで、総合的にこれに対応する体制というものがないものですから、非常に質問がやりにくいわけですが、こういう問題を考えましたときに、総合いたしまして長官、どういうふうに解決をしていくか、考え方を伺っておきたいのであります。
  289. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 先ほど御質問の中にありましたこのタンカー事故による油の流出に起因する汚染の対策、その損害の賠償等々につきましては、これは賠償責任当事者がはっきりしましたならば、環境庁から運輸省に申し込みをいたしまして、相手側に積極的に交渉するように要請をするつもりでございます。  タンカー事故によります油の流出は、もう海上の環境を非常に損なうこと明白でございまして、これは日本に限らずアメリカなどでもこういう問題に非常に配慮が行われて、ことしの三月にカーター大統領が、アメリカにやってくるタンカーに対しては構造上に非常に強い規制を加えるという提案をいたしました。それを受けて、実は今月の二十二日まで十二日間ロンドンでIMCOの会議が行われましたが、いままでは環境庁それに参加することはできませんでしたけれども、この問題にやはり環境庁としても非常に強い関心を持っておりますので、ミッションの中に環境庁からも専門家を加えて派遣した次第でございます。  事故と申しましても、今回のように船が老朽して亀裂を生じたりする場合と、座礁とそれから衝突という幾つかのケースがございますが、カーター提案の中にも——特にこの間、瀬戸内海の後継法の問題の中で船上会議をしましたときに、瀬戸内海におけるタンカーの衝突防止のために何らかの措置をしてくれという要請がありました。私は、衝突を避けるようにやはり船自身にたとえばカーター提案の中にございます衡突予防の舵輪装置であるとかレーダーであるとかあるいは事故を軽減するためのイナートガスシステムであるとかそういったものを積極的に取りつけていくべきだと思いますし、また今回のこの老朽性によります亀裂等の事故は、七四年に出されました、日本も調印はしたとたしか覚えておりますけれども、いまだに批准しておりませんが、七四年の人命安全条約等も早急に批准して、できるだけ多くの国がこれに参加するように呼びかけ、日本の近海だけではなしに、世界全体の海がこういった事故で汚染されないように、日本も世界で最も大きな油の輸入国の一つとしまして主唱していくべきだと心得ております。
  290. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に保安庁。
  291. 山本了三

    山本説明員 先ほどから御答弁申し上げましたとおり、流出油の沿岸への被害の防止に関しましては、今後とも最大限の注意とそれから努力を払って遂行してまいりたいと、そのように考えております。
  292. 山原健二郎

    ○山原委員 調査官を派遣しますか。
  293. 山本了三

    山本説明員 この船の亀裂の修理でございますけれども、これは現在、室戸岬の南東約八十海里のところで、この船は漂泊というか漂流いたしております。そこへ船を置いてある。新しいたとえば不幸な事態で事故が起きても、海岸への流出油の影響がないようにという配慮をいたして、現在、その地点に置いてあるわけでございますけれども、その地点が非常にしけておりまして、そこではなかなか修理ができないというようなこともございますけれども、早急にこういった船体の安全関係の検査官等を現地に行ってもらいまして、この状況の検査を行って、この船をどこまで——要するにそのクラックを修理することができる地点、これをどこまで静かなところに持ってこれるか、そういった調査をこれから行いたい、なるべく早くそのクラックを修理して、流出油のこれからの再発を防止いたしたい、そのように考えておるところであります。
  294. 島本虎三

    島本委員長 次回は、来る十一月一日火曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十一分散会