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1977-11-01 第82回国会 衆議院 決算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月一日(火曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 芳賀  貢君    理事 天野 光晴君 理事 丹羽 久章君    理事 葉梨 信行君 理事 森下 元晴君    理事 北山 愛郎君 理事 原   茂君    理事 林  孝矩君       宇野  亨君    津島 雄二君       西田  司君    野田 卯一君       福田  一君    馬場猪太郎君       春田 重昭君    安藤  巖君       大原 一三君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君  出席政府委員         経済企画政務次         官       森  美秀君         経済企画庁長官         官房長     高橋  元君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁国民         生活局長    井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君         大蔵省主計局次         長       禿河 徹映君         資源エネルギー         庁次長     大永 勇作君  委員外出席者         経済企画庁経済         研究所国民所得         部長      田原 昭四君         大蔵省主計局司         計課長     石井 直一君         中小企業庁長官         官房総務課長  中澤 忠義君         運輸大臣官房海         洋課長     岩田 光正君         会計検査院事務         総局第一局長  前田 泰男君         参  考  人         (国民生活セン         ター理事長)  昌谷  孝君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 委員の異動 十一月一日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     大原 一三君 同日  辞任         補欠選任   大原 一三君     山口 敏夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十年度政府関係機関決算書  昭和五十年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和五十年度国有財産無償貸付状況計算書〔  総理府所管経済企画庁)〕      ————◇—————
  2. 芳賀貢

    芳賀委員長 これより会議を開きます。  昭和五十年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管経済企画庁について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として国民生活センター理事長昌谷孝君の出席を求め、意見聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 芳賀貢

    芳賀委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人からの意見聴取は、委員質疑により行いたいと存じますので、さよう御了承を願います。     —————————————
  4. 芳賀貢

    芳賀委員長 それでは、まず経済企画庁長官から概要説明を求めます。倉成長官
  5. 倉成正

    倉成国務大臣 昭和五十年度における経済企画庁歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  経済企画庁歳出予算現額は、八十二億七千六百七十五万円余でありまして、支出済歳出額は、六十八億三千八十三万円余であります。  この支出済歳出額歳出予算現額に比べますと、十四億四千五百九十一万円余の差額を生じますが、これは不用となった額であります。  歳出予算現額につきましては、当初予算額が百二十一億八百八十三万円余でありましたが、関係各省所管へ移しかえた額二十九億四千九百六十六万円余と予算補正減少額九億八千三百九万円余を差し引き、関係各省所管より移しかえられた額七百四十九万円余と予算補正追加額九千三百十七万円余を加えまして、八十二億七千六百七十五万円余が歳出予算現額となっております。  支出済歳出額の主な内訳は、経済企画庁一般経費六十三億四千二百三十七万円余、経済研究所経費二億九千二百七十三万円余、政策推進調査調整費五千七百八十七万円余、国民生活安定特別対策費一億三千六十万円余等であります。  次に不用額は、十四億四千五百九十一万円余でありまして、その主なものは、国民生活安定特別対策費において、物価対策の効果の浸透等により物価基調としては安定的に推移したことに伴うものであります。  以上、昭和五十年度経済企画庁歳出決算概要を御説明いたしました。何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
  6. 芳賀貢

    芳賀委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。前田会計検査院第一局長
  7. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 昭和五十年度経済企画庁決算を検査いたしました結果、特に違法または不当と認めたものはございません。
  8. 芳賀貢

    芳賀委員長 これにて説明聴取は終わりました。     —————————————
  9. 芳賀貢

    芳賀委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がございますので、順次これを許します。原茂君。
  10. 原茂

    ○原(茂)委員 最初に、最近のスタグフレーション状況について長官のお考えをお聞きしたいと思うのです。  最初スタグフレーションという言葉が出た当時は、これは経済異常現象というように言われていたのですが、最近になりますと、これはすこぶる普通の状態になってきまして、むしろスタグフレーションということが世界的にも先進国すべての通常の状況であるというふうになってしまったわけであります。  そこで、いろいろな原因があるでしょうが、日本におけるスタグフレーション原因をどういうふうにごらんになっているか、まずその原因についてお考えをお聞きしたい。
  11. 倉成正

    倉成国務大臣 いま原先生からお話がございましたように、スタグフレーションという言葉が出てまいりましたのは、恐らく一九七〇年六月、イギリスの保守党が労働党内閣を破って政権が誕生しましたときに、時の蔵相のマクロード氏が言った言葉だと思います。当時のイギリス経済状況をあらわした言葉でございまして、それからだんだんスタグフレーションという言葉が使われるようになりまして、不況のときには景気が停滞し、したがって物価が下がってくるというのが普通の状況であるにかかわらず、不況にかかわらず物価上昇する現象一般的に言っておるようでございます。  そこで、わが国の場合を考えてまいりますと、御案内のとおり、オイルショックのときに昭和四十八年、四十九年と非常に景気の停滞が続いてまいりまして、四十八年にはマイナス成長という状況が出たわけでございます。しかし、物価は異常に、二けた台に上ってくるということでございまして、あの時点での状況はやはりスタグフレーションと申しますか、物価高騰の最大の引き金は石油価格高騰原因であったと思います。同時に、これに合わせて、将来の物不足を見込んだ需要超過現象が非常に強く、景気が停滞しているにかかわらず物価を押し上げたことではなかろうかと思います。  現在の日本状況を、スタグフレーションという言葉の定義でございますが、どういうふうに呼ぶかということでございますけれども、今日まだ景気が十分回復していないにかかわらず、卸売物価は安定しておりますけれども消費者物価がまだ非常に高い水準にあるということでございます。しかし、この点は、消費者物価の方も基調としては落ちついているような感じがいたすわけでございますので、これを一九七〇年代にイギリス大蔵大臣が呼びましたような形のスタグフレーション考えるかどうかということについては、必ずしもそういうものではないのじゃなかろうかと思っておる次第でございます。
  12. 原茂

    ○原(茂)委員 取り上げたら要因は細かくたくさんあると思うのです。  そこで、お伺いしたいのですが、いまの現象すべてがスタグフレーションと言えるかというと、そうでなくて、前から経団連が言っているようなコストインフレというようなものも併存しているといいますか、ある意味ではその面が非常に強く働いているスタグフレーションである。したがって、これに対する対策等も多岐にわたるわけなんですが、コストインフレという状況が、これは御存じのように賃金上昇分を生産調整しないで価格の上に乗っけていくものですが、そういう企業も現存していると思いますが、それが併存しているとお思いになりますか。
  13. 倉成正

    倉成国務大臣 いま先生お話しのように、スタグフレーションの犯人捜しということで現代のインフレをどういう原因によって解明するかということは、学者の中でも必ずしも統一した見解があるわけでございません。したがって、いまお話しコストプッシュインフレーション賃金中心とした企業コスト高インフレ原因ではないかというお説でございますけれども、確かに最近の労働生産性の向上と賃金上昇ということを比較してまいりますと、ある企業においては、お話しのように、生産性が上がらないけれども賃金一般水準にある程度追随していくという形でのコストプッシュが起こっておることは事実でございます。しかし、これを全体としてどう見るかということになるとなかなかむずかしい問題ではなかろうかと思いますが、いずれにしましても、生産性が向上しない状況の中で賃金がその生産性を超えて上がっていくということになれば、これはコストプッシュインフレーションになると考えざるを得ないと思います。
  14. 原茂

    ○原(茂)委員 いずれにしても、このスタグフレーションというものを先進各国ともに放置できないで、これをどう克服するかに懸命に骨を折っていると思うのですが、日本の場合もこれを放置できないわけです。経済企画庁は、その意味ではこれにどう対処してスタグフレーションという状況をなくしていくかということをお考えになっていると思うのですが、賃金上昇中心にしたいろいろな所得拡大を抑える、これが一つ。もう一つは、需要拡大政策的に図っていって何とかして不況という状態から脱却する。この二つのものを組み合わせる、ポリシーミックスと申しますか、こういうことを巧みに操作されてスタグフレーションの克服というものに乗り出していく以外にない。現におやりになっていると思いますが、ほかに何かございますか。いま私の言ったような方向努力をされるという以外にないのかどうか、これを伺いたい。
  15. 倉成正

    倉成国務大臣 お話しのように、日本経済が円滑に安定成長を続けていくためには、その成長率物価生産性等経済諸指標と賃金所得とのバランスということが必要であるということは御指摘のとおりでございます。そのほかに、私ども現在の物価上昇について、基調としては安定しておりますけれども流通機構の問題であるとか低生産性部門の産業が存在しているというような問題がございますので、そういう方面からの物価上昇ということをできるだけ抑えていく、そういう努力もあわせてやっていくべきじゃなかろうかと思います。  なお、不確定でありますけれども日本経済一つ撹乱要素としては、OPEC値上げというのが物価を押し上げる一つの大きな要素になっていくというふうにも考えております。
  16. 原茂

    ○原(茂)委員 先ほどお話のありましたように、イギリスマクロード氏がスタグフレーションなる言葉を言い出したわけでありますが、同時に、労働党政権をとりまして、所得政策需要拡大という二つをうまく組み合わせながら何とかしてこの状態に対処したいと考えてやってみたけれども失敗したということになっていますが、この失敗した原因というのはどんなところにあったとお思いになるのでしょう。これは非常に参考になると思うのですが、どうでしょう。
  17. 倉成正

    倉成国務大臣 私も、イギリス社会契約につきまして、いろいろ書物に書かれているものを読んだりいたしておるわけでございますけれども所得政策といい、社会契約といい、実行していく段階においては非常にむずかしい、ある期間成功しても、それを長期に続けていくことはなかなかむずかしいという感じがするわけでございまして、労使の信頼関係あるいは政府との信頼関係というものが、この社会契約所得政策の成功の基本になると思うわけでございますけれども、これがどうして失敗したかということになりますと、私もいまここで先生にこれをつまびらかにして御報告するだけの材料を持ち合わせておりません。しかし、非常にむずかしい問題であり、どこかの一角が崩れてくると相互信頼関係が失われてなかなかうまくいかないのではないか、そういう感じを持っておるわけでございます。
  18. 原茂

    ○原(茂)委員 労働党失敗原因というのは、いろいろあるでしょうが、端的に言って、当時のイギリス国際収支赤字、それからポンド危機というものがそれに加わって、ついに需要拡大——所得政策の方は失敗じゃなくて、賃金を抑え込むことにあの当時ある程度成功していたと思うのです。これはうまくいったと思う。ところが、需要拡大という点で言うと、いま言った国際収支赤字なりポンド危機というものが重なって、かえって所得政策賃金の抑え込みだけやったおかげで総需要というものをぐっと抑え込んで、冷え込んでしまった、これが当時の政策失敗の非常に大きな原因だったろう、こういうふうに思うのです。そういう意味から言いますと、わが国の場合にもこれは非常に他山の石なので、これからスタグフレーションにどう対処するかという点でこの基本的な一つの例示というものを参考にしなければいけないと思うのですが、わが国は具体的に、やはりイギリスばかりでなくて所得政策、いまは社会契約お話が出ましたが、そのとおりですが、こういうものと需要拡大というものをミックスしていくことをうまくやらないといけないわけですが、現在の日本状態を見ますと、どうもその点に逆行するようなことをいま政府考えているという面がある。かと思うと、スタグフレーションに対処するために物価を抑えるんだというのに絶好機会が訪れたにもかかわらず、これを見逃していることがあるというように私には思えてなりません。  その意味でここでちょっとお伺いしてみたいのは、最近の円高に対して、円高による差益というものはもう相当出ていることは間違いないわけですから、実際的に、物理的に物価引き下げというものも多少ありますが、そうでなくてやはり精神的にも非常に大きな作用をするだろうと思うこの差益国民的なコンセンサスのもとに処分をする、明確にそれが国民納得を得られるというようなことをして、やはりいまの物価を下げるという方向に対する相当大きなチャンスとしてこれをとらえていかなければいけないと思うのですが、現在の政府のやり方、考え方を見ていますと、そういったとらえ方をしていないで、単に、円高による差益が出ている、これを国民にどう還元をするかということだけを考えて、そうして電力料金なら電力料金を当分の間、来年三月以降も値上げをしないように通産省がサゼスチョンを与えた、業界もまたこれにこたえて、そういたしますというようなことだけにとまっている。当時あのことが論議をされ、通産省電力料金値上げはすべてするなと指示した当時の円は二百六十円台、現在はそれがもう二百四十円台にちょこちょこと顔が出てくる。差益はますます大きくなる。あの当時でも電力会社だけで下半期に約七百四十一億、二百六十円台でその程度差益が生ずると言われていた。石油石油の方で、たった四月から九月までで約一千億の差益が生じているというようなことを中心にして、それだけを現象的にとらえて何か国民にどうやってその差益還元するかという問題に終始しているように考えられるのですね。私はもっと大きく、スタグフレーション対策というものの非常に重要な、物価を下げるということに対するインフレ対策としてこれをきちっと整理をし、政府企業責任を持って国民納得のいく、この差益をどう処分するのかということを数字で細かく納得をさせるようなことを通じて、大きな経済施策の一環として、精神的にも現実的にも利用していく大事なチャンスだと思うのですが、この点どうでしょう。いまの政府考え方は、差益還元するのにどうするかだけを考えている。それだけじゃいけないので、スタグフレーション対策一つとしてこういうものを考える必要がある。非常に大きな金額が動きますから、絶好機会だと思うのですが、そういうことに対してはどうお考えになりますか。
  19. 倉成正

    倉成国務大臣 御指摘のように、日本の円が昨年の十二月、ことしの一月が二百九十円台、それから二月、三月が二百八十円台、それから四、五、六というのが二百七十円台ということで、それから七、八、九が二百六十円台、そして十月に入りまして御指摘のように二百五十円台で、最近は二百五十円前後を動いているという状況でございます。したがって、短期間に非常に円高になってまいりましたので、この円高物価安定にいかに活用していくかということは、いまお話しのとおりに、私どももぜひ物価安定のために円高を活用してまいりたいと思っておるわけでございます。  そこで、卸売物価の面から見ますと、これはわが国輸入構造とも関連いたすわけでありますけれども、かなりの部門これは物価安定に寄与していると考えておるわけでございまして、やはり石油価格につきましても、円高が響きまして、石油会社値上げをしようと言っておりましたのも撤回せざるを得ない情勢になってきたということでございますし、また、配合飼料等もこれは九月からトン当たり五千円の引き下げをした、あるいは木材の値下がりもしてきたというような点で、かなり卸売物価の面については寄与しておるわけでございますが、消費財の方につきましては、なかなか私ども考えるようには円高がすぐ響いてこないというところに非常に苦心いたしておるところでございます。一つ消費者物価指数の中に、直接、輸入品品目というのがごくわずかでございますし、また、わが国輸入構造を見ましても、消費材と言われるもので輸入の中に占める比率は約三・八%、そのほかに食料品やその他があるわけでございますけれども、非常に少ないということもございまして、なかなか円高がすぐ消費者物価に響いてこないという点があるわけでございます。  そこで、御指摘のように、個々商品について差益をどう還元するかということだけにとらわれておるんじゃないかというお話でございますけれども、具体的になりますと、どうしても個々商品がどういう差益を生じ、これがどういうふうに物価に響いてくるかということをトレースしないと、なかなか全体だけの議論をしてもいかないものでございますから、先般は三十六品目について調査をいたしまして、ある物は円高がちゃんと響いている、ある物は輸入価格も下がっているにかかわらず、いろいろな事情で必ずしも国内価格は下がっていない、そういうことをありのままひとつ明らかにいたしまして、国民の方々の御批判に供したということでございます。しかし、さらに最近は円高が顕著になってまいりましたので、できることから一つずつ解決していこうということで、たとえば外国製のたばこの値下げであるとかあるいは航空運賃値下げ、これについては国際的な協定がありますから、その承認を得る必要がございますが、いずれにしましても航空運賃値下げする、あるいは厚生省の所管しておる薬価を値下げをするという、いろいろな個々の問題についてやはりきめ細かくやってまいりながら、基本的には先生のおっしゃるように、全体としての物価が安定するように努力をしているというのがいまの政府の姿勢でございます。  ただ、私どもがこういうことをやりながら非常に苦労をいたしますのは、円高があって他の条件が全然変わらないということであれば計算も非常にしやすいし、また対策もやりやすいわけでございますが、円が高くなると今度は逆にドル建て価格が高くなる、すなわち向こうの方が価格を上げてくるという問題もございますし、また、石油価格については、円高について確かに大きな利益を得ますけれども、一方において、OPEC等値上げの問題があるというふうに、円高以外の、価格影響するいろいろな要素がございますので、この要素をどう判断するかということが非常にむずかしいわけでございまして、円高だけを切り離して議論をするということがなかなか困難な状況にあるというところに、どうも政府施策についてすっきりしたものがないじゃないかという御批判をいただくことにもなるんじゃなかろうかと思うわけでございます。いま御提案のことにつきまして、何かいい方法があれば私どももそれを取り上げて実施いたすのにやぶさかではございません。したがいまして、原先生のいろいろ御検討いただいている問題についても御教示いただければ幸いだと思うのでございます。
  20. 原茂

    ○原(茂)委員 いま後でお触れになったように、確かに円高ドル安というものが輸出入相互影響を及ぼしてまいりますから、これ全体が国内に及ぼす影響というものはプラスとマイナスの面があるということはもちろんです。私の第一に主張したいのは、スタグフレーションというものに対する対策一つとしては、こういった機会をとらえて、円高なら円高をとらえて、政府が、あるいは企業責任を持ってこういうことをやるんだ、少しでも物価を下げることに協力をするんだといったことが方程式のようにぴしっとつくられて、定着した形で国民納得が得られる、円安になったらこうだ、円高になったらこうだというようなものが——非常に異常な円高なんですから、この機会に、それをぴしっと一つの図式らしいものをつくるということを考えスタグフレーション対策一つとして位置づけるようなことを、作業は困難であってもやるべきではないかということなんです。  そこでついでにお伺いをしておきますが、今度の差益に対しては、還元という言葉が言われ、国民への還元ということが強く当然のこととして要求もされ、それが論議もされていますが、還元がもし正しいとするならやらなければいけません。何らかの形で異常な差益ですから還元すべきですが、そのかわり、差損が出たときには一体だれがどのように負担をするのかを考えてこれに対する方程式考えておかないと、差益だけ出たからおまえ返せ。前にわずかですが差損が出たことになっていますが、その十一億程度差損であろうとほってあったのですからね。しかし、これはもっともっと大きな差益があったんじゃないか、差損にならないで済んだんじゃないか、企業がうまく損の方を大きく出したから差損が十一億あったことになっているんだという批判もあります。確かにこれは企業ですからそうでしょう。そうでしょうけれども、これからとにかくスミソニアン体制以来フロート制をとっている限り、また円安ということだってなきにしもあらずです。そういうことになれば差損の出ることも考えられる。政府は、企業差益が出たから還元せいというだけの指導をするんじゃなくて、もう一歩進んで、差損の出たときの負担はこういうふうにすべきだというようなことも同時に考えて、これを責任を持って企業にしっかりと明示してやらないと、企業差益だけどんどん吐き出します。差損のときはもう自分で負担だと言われたんじゃたまったものじゃないだろうと思うのです。ですから、差益に関していまのように論議をするなら、差損に関してもやはり政府責任でぴしっとした方程式をつくってやる。その意味ではいまの差益に対してしっかりした指導方針をつくってもらう。ただ、電力会社にしても、来年三月から、まだ値上げもしないで引き続き何とかやれ、やりますといった程度で、出光がとにかくキロどのくらいか値上げしようといったものを発表したけれども、今度は取り消しますといったようなことで過ごしてしまうという従来のやり方は、これからの非常に困難な国際経済の動きの中で対処しようとするのに、日本として非常におくれたやり方だろうと思うのです。ですから企画庁は、困難な作業であることはわかりますが、いまの具体例で言うなら、差益があったときにもその差益がどのくらい出たかを数字で明示する。その差益をどう処分したかをぴしっと細かく数字で、国民納得のいくような図式を示して企業にそれを行わせる。いまのところわかりません、ただ差益が出ていると、大ざっぱにこう出ているだけなんです。差益がどういうふうに処分されているのかが全然国民納得がいっていない。ここに問題があるわけでありますから、実際的にも精神的にも、こういった状態の中でこれほど大きな異常事態の起きた現象に対しては、はっきりとその差益の額は明示する。その差益の処分はこういう処分をいたしますということを数字で明示するような指導を片方でしてやる。そのかわりいま申し上げたように、差損があった場合にそれの負担の仕方についても、困難であっても勇気を持って私は示すべきだと思う。そうしてやれば企業もこれが守れるし、数字的にしっかりと明示してもらえば国民納得がいきますから。そのかわり差益に対しての措置を行ったときに、差損のあったときにはおれたちがこう考えなければいけない、おれたちも、こういう負担があるかないか知りませんが、どういうふうに方程式をつくるか知りませんが、そういうことを同時に国民考えるということで非常に安定した——経済の少しの動きによってただわからないで不安動揺することを防ぐという意味では、精神的に非常に大事だろうと思うのです。現在の差益に関しては、もうとにかく企業としてやるべき業務的な努力、営業努力などを全然しないで、不労所得のように企業が莫大な利益を得ていることは間違いないわけですから、したがって、これに対して原因は何だと言うなら、国力がぐうっと強くなっていったおかげで円が高くなったという利益であってみたりというようなことを考えますと、確かにこれは国益であり、国民の利益であると言っても間違いないのですから、この差益還元するという方法はどんな方法をとってでもやらなければいけない。それに対してははっきりした数字による明示をして国民納得を得る。その裏返しとしては差損に対してはぴしっとした、そのときにはこういう措置をしますということを示してやる。困難でもこれを機会に私はそういった図式をぴしっと政府が出す必要があると思うのですが、どうでしょう。
  21. 倉成正

    倉成国務大臣 すべての商品についていまお話しのようなことをやろうとすることは事実上不可能だと思います。いまお話しの問題は、恐らくたとえば電力料金みたいなものを頭に描いておられるのじゃなかろうかと思いますが、私は基本的には先生お話に賛成でございますけれども、ただ電力料金やガス料金をとりますと、これはやはりある一定の期間安定的に推移するということが望ましい姿ではないかということで、おおむね二年ぐらいを周期に電力あるいはガスという料金の設定をいたしておるわけでございます。したがって、その間に多少の差損が出てもそれはしばらくつないでいく。また同時にある差益が出ましてもその期間は安定的にいくし、また二年なら二年の期間をさらに延ばしていくというのがいまの対応の仕方でございます。したがって、それではどうも国民にとってはどれだけ損したのかどれだけもうかったのかわからないままに、やぶの中で価格が決められていくという御批判でございますので、その点はもう少し私は、電力会社はどのくらいの差益が出てこれをどういうふうに処分していくのかということは明らかにするのが望ましいし、また、そういうふうな指導を政府としてやるべきだと思っておりますが、ただ、期間の途中に電力料金等をいじることがいいのかどうか。そして差損が出たらまた上げていくというような形は、理論としては確かに成り立つわけでございますけれども、それは大変な手間とそして大変な混乱を起こす要素を含んでおりますので、その辺にはなかなか踏み切れないでいるというのが実情でございます。  しかし、原先生がおっしゃられた趣旨のことはまことにそのとおりでございまして、やはり差益が出た場合にこれをどう処分していくのかということを国民に明らかにするということが非常に大事なことであると思うわけでございまして、     〔委員長退席、森下委員長代理着席〕 率直に申しまして私自身、差益が出て電力料金を下げる方法ないだろうかということを実は考えたこともございます。しかしいろいろやってみますと、なかなか実際問題として得るところよりも失うところのものが大きいということで、結局来年の三月以降電力料金を据え置いていくという形の方が結論としては望ましい姿でないかということでございます。しかし、その過程においての議論というか、差益がどのくらい出て、どういうふうにこれを処分しつつあるかというようなことについて、必ずしも明確でないという点はいま御指摘のとおりでございますので、この点については十分部内でも努力をいたしてみたいと思います。
  22. 原茂

    ○原(茂)委員 これは、いまおっしゃったことは政府責任でどうしてもやらなければいけないと思いますね。ただ、来年三月以降も値段を現状維持にしていくんだというだけでは国民納得得られませんから、したがってそのことはそれでいいのです。それでいいから、いまのこの機会差益の数字を明示して、こう処置していくと来年の三月以降も、この程度の幅でもし差損が出始めても現状維持ができますよということを、数字でもって国民納得するようにすることには賛成なんです。結構なんですよ、来年三月以降維持することは。その数字で明示してやりなさい。そのかわりいまの機会に、差損があったときに、たとえばこの程度差損だったら、一例だがこういうような負担割合あるいは負担をしなければいけませんよということを、いまのうちにいわゆる図式を示しておく方が、国民がこういう経済状態の中で不安を感じないで済むというよりは、ある程度自分たちが負担すべき場合はこういうとき、自分たちが得をする場合はこういうときだというようなこともわかる。いまが絶好機会だろうという意味ですから、そのことがスタグフレーション対策の一環にも実はなるわけですから、これはいまおっしゃったように、数字をぴしっと明示するように努力をするというお話ですが、ぜひこれをやっていただいて、そして来年三月以降現状を維持する、数字はこういう根拠で維持できるからやるのですよということを明示する、そのかわりいまのうちに——そのときになってからじゃなくていまのうちに、万が一今後こうなったときはこうだということも、差損が生じたときの方式についても、ある程度方向というものは政府責任を持って示してやるということの方が、国民の側にとってもいいんじゃないか、そういう訓練、教育をやはり何につけてもすべきだろうと思うのですね。  社会保障の問題についてもいろんな論議があります。ただよくしろよくしろと言って、負担の方は考えないような状態だったら、これはやっていけないのは政府失敗から見てもあたりまえです。したがって、こういう機会にこそ私は、益があったら還元するかわりに、その還元の方式は値下げもある、現状維持もあるだろう。現状維持をやろうというのは結構ですからやっていただく。数字はこういう数字が出て、それをもとにこうやってやっていきますよということを長期に発表してもらって結構です。そのかわり、同時に差損があったときの負担はこういうふうになりますよ、一例ですが、この程度のときにはこんなことになるんじゃないかということを一応参考にとにかく明示するというようなことを言って、いまから国民にそういうことを、経済に対処する一人一人の腹構えというものは、なるほどこういう場合にはこう、こういう場合にはこうなるんだという、マイナスとプラスの面における心構えというものを、ゆとりがあると言っちゃおかしいんですが、いまこの円高で幸か不幸か大騒ぎしている最中ですが、長期にわたって、差益に対してはこうだというかわりに、差損に対してはこうだよということを知らせるような、そういう訓練がもう日本もそろそろ行われていいんじゃないか。こんなことは欧米先進国へ行くと、いまさら言わなくたって、みんな腹の中で承知していますよね。それが日本の場合にはほとんど承知されてない、国民が。コンセンサスがないわけです。こういう機会に私はやるべきじゃないかというふうに考えますから、いまおっしゃったように数字を明示する努力はやって、明示して納得をさせるということをまず第一にやり、差損に対しても考えていただくことを、これは私から強く要請しておきます。
  23. 倉成正

    倉成国務大臣 いま私が申し上げましたのは、たとえば電力、あるいは石油にしてもそうでございますが、ことしの上半期についてはもう数字がかなり固まっておるわけですね。これから先ということになると、これは為替相場がどうなるのか、OPEC値上げがどうなるのかという不確定の要素がたくさんあるわけでございます。したがって、一定の前提をつくらない限りにはその計算ができないわけでございまして、そこを余りやっておりますと数字がひとり歩きしていくということでありますので、国民に明らかにするという問題はやはり確定した問題についてどうだ、そしてこういう考え方で将来も行くんだということであってしかるべきじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  24. 原茂

    ○原(茂)委員 それから、こういう状態に対処するもう一つは、需要拡大ということが大事ですね。抑制の問題で、所得政策すなわち社会契約の問題は後で触れますが、まず需要拡大という面で言うと、減税というものはやはり無視できないというように思うんですね。減税に対しては、いま政府の方針というのは非常に冷たいといいますか、いまは減税をとらない。当面する景気対策に対しても公共事業中心でやっていくんだというので、それ一本やりでここ一年間押してきておるわけですね。一兆円減税と言って、われわれも皆さんに一生懸命に働きかけを行う、皆さんも納得して三千億円の所得減税を上乗せをしたという例があります。しかし、あの三千億円の上乗せをしたことで一体総需要にどの程度影響したのか、恐らく微々たるもので計算のしようもないだろうと思う。しかし、何がしか寄与しているだろうと私は思うのですが、これはわかりません。あの方向としては、総需要拡大という点でいくと、国民の購買力、消費拡大という点では、減税というものは、これは過去の例から言うと非常に有効な手段だというふうに思いますから、一兆円減税のときの三千億の所得減税の上乗せなんというものは、これは大したことはないんですが、やはり減税というものも思い切って考えていく必要があると思うのですが、来年度も、また予算編成期になりましたが、減税というものをスタグフレーション対策としてどの程度考えになりますか、全然もう減税というものは考えないのか、思い切った所得減税を考えられますかどうか、基本的な考え方、方針をちょっとお伺いしたい。
  25. 倉成正

    倉成国務大臣 来年度の予算編成方針は、まだ政府の部内でも固まっておりませんので、この段階で申し上げることは適当でないと思います。ただ、基本的な考え方としてお話しの減税の問題でございますけれども、確かに減税が可処分所得を増大させるという意味において、これが消費に好影響を持つことは理論的に明らかなところでございます。ただ御案内のとおり、いまの日本の財政事情、それから社会資本や社会保障をこれから充実していかなければならない場合に、やはり国民にある程度負担をお願いしなければならない。その負担が、所得税の形になるのか間接税の形になるのかということは別といたしまして、とにかく負担増をある程度お願いしなければならないという段階で、大幅な減税ということを実施することが果たしてできるかどうかということは、大変困難な状況ではなかろうかと率直に思っております。  減税はみんな賛成でございますけれども、増税ということになるとこれは大変な抵抗を受けるというのが、私自身が大蔵政務次官といたしまして、実際に酒、たばこ等の値上げの問題で体験をいたしたところでございます。その後も国会にありましていろいろな場面に遭遇しておりまして、増税ということがちょっとした問題でも大変むずかしい問題であるということを考えますと、需要喚起のための減税ということは確かに理論的には考えられましても、現実の問題としては非常にむずかしいのじゃなかろうかということでございます。  それからもう一つ、やはり日本の場合には、御案内のとおり、社会資本が非常におくれておりますから、やはり社会資本の充実を図っていくことに金を使った方がより効率的ではなかろうかという点もございますし、また日本の貯蓄性向、最近の国民の消費態度を見ておりますと、減税をしたからすぐこれが消費に結びつくかというと、むしろ貯蓄の方に行く可能性の方が強いのではなかろうかということも考えられますので、まだ来年度の問題についていろいろ検討したわけではございませんけれども、大幅な減税というような問題がもし考えられるとすれば、これはきわめて困難な問題であるというふうに私は考えております。
  26. 原茂

    ○原(茂)委員 減税は、やはり実質的な需要拡大に対する寄与もありますが、こういう冷えたときには精神的に相当大きな効果があるものなのです。その両者をやはり兼ね合わせて、過去の実例を見ながら、減税というものも、困難があってもやはり考えていく必要があるんじゃないかと、対策一つとしては考えております。これはまあこれからお決めになることですから、私の意見をただ申し上げるにとどめておきます。  そこで、先ほどお話のありました所得政策社会契約の問題ですが、所得政策といわれますと、何らかの形で強制的に所得の抑制を行う、それから、取引も含めて、労使双方の合意によって行っていくのが社会契約というふうに大ざっぱに言えば言えると思うのです。もちろん現在の状態所得政策日本で行うことは非常に困難じゃないかと思いますが、いわゆる強制的な所得政策というものは困難に思いますが、いわゆる双方の合意による、ある意味では政策的な組み合わせを行いながら、取引を含めて社会契約を行っていくという方向所得の抑制をせざるを得ない方向に向かっていくと思うのですが、この点どうでしょう。これからの日本のいわゆる所得を抑えるということも必要なんですから、その抑えるというときの方向としては、所得政策による、あるいは社会契約による、いずれの方向になるとお考えになっていますか。社会契約方向でいくという場合には、日本のいまのいわゆる労使双方の現状から見てそのコンセンサスが得られそうに思いますか。方針としてどうお考えになりますか。
  27. 倉成正

    倉成国務大臣 お話のように、今後日本経済安定成長に移行していくために、先ほども申し上げましたように、成長率あるいは物価生産性、こういう経済諸指標と賃金所得との調整ということが非常に大切なことであることはもう御指摘のとおりでございます。この点については、毎月一回産労懇という会合がございまして、ここに労働大臣と私と労働界の代表あるいは経団連、財界の人たち、三賢人、こういう構成で、これはいわば懇談会、交渉の場ではないいわゆる懇談会でございますけれども、こういう席でも、鉄鋼労連の宮田氏あたりからいろいろなお話がございまして、もう少しいろいろなそういう問題を話し合ったらどうかというような御提案もあったところでございます。ただわが国の場合に、これをイギリスで行ったりあるいは西ドイツで行っているような形の所得政策あるいは社会契約というような形でいけるかどうかという問題については、まだ相当いろいろな問題が残されているのじゃなかろうかと思うわけでございまして、これについては必ずしも労働側について意見の一致を見ておりません。また、政府自体としても、賃金所得物価というのは、本来労使の自主的な決定、市場メカニズムにゆだねるべきであるという基本的な考え方を現在も持っておるわけでございまして、まだ所得政策等の手段でこれらのことを考えるべきだというところまで踏み切っていないわけでございます。しかし、そういうことでありますけれども、労使の間、特に民間の労働組合というのが大変国際的な感覚も豊かになり、またいろいろな点でよきパートナーとして日本経済を支えていこうという自覚を持っておる段階でございますから、これらの方々と十分いろいろな問題について話し合いをいたしていくということは、これからも非常に大事なことであると思っておる次第でございます。
  28. 原茂

    ○原(茂)委員 いまのことに関して少し裏からお伺いするのですが、需要拡大中心にして当然考えることなんですが、不況克服をしなければいけない、同時に、雇用の拡大が強い要請だ。雇用を確保ないしは拡大不況克服と雇用拡大というのは、ある意味では相反するような場合もあるのですが、これはどうしても達成しなければいけないのですが、その方針は今後どんなふうにやっておいでになりますか。不況克服を片方で、同時に雇用拡大をやるのだ、イコール需要拡大につないでゆく、そういうことになるわけですか。この雇用拡大というのは労働界の非常な要請、そうでなくても雇用はどんどん縮小していくわけです。これを現状維持ないしは拡大していこうという方針と不況の克服、これを同時にとにかく困難でもやらない限りは、需要拡大というイコールが出てこない。ということになると、政府としては、この基本的な問題に取り組んで考えて、しかも予算編成なら予算編成もやらなければいけないわけですが、この方針はどうでしょう。この二つ不況の克服と雇用拡大をどんな方針で今後達成しようとなさるか。もう手がない、お手上げでございますとおっしゃるのか、いや、そうでなくて、そのこともこうこうこういう方針で考えているとお考えか、それをひとつ……。
  29. 倉成正

    倉成国務大臣 端的に申しまして、私ども現在の政策の第一の重点は、やはり雇用の安定、これと物価の安定、この二つが最大の課題であると心得ております。したがって、雇用の問題はできるだけ失業者が出ないようにするということをあらゆる工夫をしてやっていくということが一番大事なことではなかろうかと思っております。もちろん不況の克服をするために、構造不況業種がございまして、ある程度の設備の廃棄をしたり、すっきりした形にするためにはここに雇用問題が発生することも事実でございますし、これを避けて通るということになれば、結局いつまでも不健全なものを抱えていくということになるわけでありますから、そういう意味で雇用が悪化するという問題も出てくるわけでございます。したがって、その間非常にむずかしい問題がございますけれども、当面失業者が出ないようにできるだけ企業で抱えてもらいながら、将来の展望を図っていくというために、御案内のとおり十月一日から雇用安定資金制度が発足いたしましたので、これを最大限に活用してまいりまして、雇用調整給付金のみならず、職業訓練であるとか、あるいはその他他の企業に出向した場合にいろいろな手当を考えていくとか、そういう問題も合わせていきたいと思うわけでございます。  それと同時に、やはり私ども中期の展望に立ちますと、安定成長に軟着陸するためには、どうしても構造不況業種について、あるいはいま言われている構造不況業種以外につきましても、もう少しすっきりした形の体質をつくっていくことが非常に大事でございますから、そういうところから新しい部門に労働力が移動していく、これを円滑にやっていかなければならない。したがって、そのためには職業訓練あるいは訓練中の生活の保障という問題が非常に大事な問題になるわけでございますが、私は二つ問題があると思います。  一つは、どういう方面にこれを持っていくかという将来の一つの受けざらの問題が一つあります。それからもう一つは、やはりいままで職業訓練あるいはいろいろやっておりますけれども、現在ある程度の職業訓練とかあるいはそういう施設、機能ということで十分であるかどうかということになりますと、産業の転換を大きくやろうという場合にはこれはもう不十分であると思っております。したがって、やはりそういう問題を少し思い切って体制を整え直す必要があるのじゃなかろうかという感じがいたしておるわけでございます。  したがって、不況の克服——全体として経済がある水準、ある成長を続けていかないと産業の転換ということも簡単にできないわけでございますから、やはりそういうことができる環境づくりをする。いわば六・七%の成長というのは六・七%の数字に意味があるわけではございませんで、やはりある程度の産業の転換をしたり、ある程度のことができるためには、最低この程度の成長がなければ、全部が非常に低い水準でいった場合には何もできない。そういう認識に立って六・七%成長を実現したいと考えているような次第でございます。
  30. 原茂

    ○原(茂)委員 いま離職者対策の話もありましたが、現在鋭意折衝をして、もう少しわれわれの言う条件を取り入れてもらうようなことをやっていますから、最終的にはどうなるかわかりませんが、あれができればできたで一歩進歩です。  これは企画庁としては直接関係ないのでしょうが、いまお話のあるような雇用を中心考えたときの労働力の流動性といいますか、移動がスムーズにいくようなことを基本的に考えてやるときに一番大事なことは、社会福祉関係の諸法規が、その職業によってあるいは勤めている人数によってまちまちであったり適用されなかったりするところに、非常に大きな労働力の移動に対する支障があるのですね。これは労働省を相手にして細かい問題をこの間もやってみたのですが、これは一省の問題じゃない。いま長官のおっしゃったような基本的な考え方一つにこういうものを入れておきませんと、どんな離職者対策をどんなにうまくつくりましても、このことだけではいけませんね。やはり底流となっている非常に大きな矛盾があります。適用されないもの、適用が二つのもの、五つのものというようなものがあります。いろんな条件によってその適用がされないために労働力の移動がわれわれが考えているほどたやすいものじゃないということも、これは大きな意味では政府全体の問題として雇用を考え、離職者対策考えるときの非常に大きな問題だということをどうかひとつ長官も頭に置いて今後十分に配慮をしていただきませんと、これはなかなか一省だけでわれわれが要求したり話し合いをしても全然解決しません。したがって政府全体の問題として大きな意味の雇用対策として十分に勘案していただかないといけないと思うのですが、細かいことを申し上げる必要はないだろうと思うのですが、どうでしょう、そんなことおわかりになりますか。
  31. 倉成正

    倉成国務大臣 私も、制度の細かいことをよく存じませんけれども、いまお話しの、制度が非常にまちまちであるという問題、それから労働力の移動のために住宅の問題というのも大事であるということ、それから特に、地域性が非常にあるものですから、仮に日本国じゅうで職場があるといたしましても、その地域に密着した、たとえば造船であるとかそういうものが簡単にどこにでも就職することはできない、そういう問題意識は十分持っておるつもりでございます。したがって、せっかく政府部内で勉強をいたしてまいりたいと思います。
  32. 原茂

    ○原(茂)委員 それから、先ほどの社会契約の問題ですけれども、北欧なんかではすでに定着しつつあるわけですから、日本は先ほどおっしゃったような事情がいろいろあるのですが、ぜひ政府としても基本的にある程度指導的な立場で研究もし、それからサゼスチョンも行う。勇気を持って対処していかないと、私は御存じの社会党ですから余り突っ込んで物を言えませんが、労働組合団体、いろいろセンターがございますし、立場が違って、何かいいところまでいきそうですかなかなかいかなかったり、全然目もくれなかったりということがあります。しかし私は、国際的な方向として世界の歯車がある程度決めた方向へ回っていると思うのです。こういう点でも、これは政府全体の問題として、単に労働省が労働者を対象に労働組合を相手にというだけに任しておく時代ではもうない。政府全体の問題としても、こういったいまの不況克服、雇用拡大という問題と絡めて、いわゆる所得政策という強制的なものを加味したものはなかなか国際的にも困難ですが、日本の場合特に困難だと思いますから、したがって、社会契約への方式がこれからはだんだん一定の位置を占めていくだろうと私は思うのです。したがって、何も北欧に定着をし、欧米でこれが試みられているからといってそれをまねする必要はないのであって、日本には日本社会契約方式が生まれていいのじゃないかと思うので、これを大所、高所から政府としても十分な検討を加えた上で、雇用を中心考えて、安定したいわゆる諸所得の抑制によるスタグフレーション対策考えていく必要から社会契約というものを考えたら、日本的にはこういうものがいいのじゃないかということは、一省だけに関係する問題じゃない。経済全体の問題としてこの社会契約というものは十分にいまから考えを取り入れて検討をしておく必要があるだろうと思うのです。  ただ要求があった、どこかの労使が契約をした、話し合いによってこういうことができた。ところが労使だけで解決する問題じゃないのですね。いま社会契約というのは、社会保障的なものが、政府の関連するものが加味されていくように必ずなっています。したがって日本の場合も、政府を抜きにして、単に民間の労使間における社会契約を云々するということは、ある意味ではびっこだと思うのですね。やはり政府は非常に大きくかむのですから、社会契約というものを非常に重要な問題として政府自体が相当の検討を大至急にやっておく必要がある。そうして、ある意味ではモデル的なものを例示しながら、諸外国の例も取り入れながら、われわれ国民全体のコンセンサスが得られるようにすべきではないか。単に労働階級のどこかと、単に大資本のどこかというようなことだけで放置しておきながら、片一方は片一方でどんどんやっていきます。そうして、しかも政府には雇用拡大不況克服が要求されております。これはみぞがあいたまま、ギャップがあるままびっこなやり方をしていって問題の解決ができるようななまやさしい時代ではもう全然ない。したがって、雇用問題を考えるときには、どうか二つ目として社会契約という問題も政府全体の問題として十分に考え、とらえていくようにすべきだ、経済政策の一環として考えなければいけない、社会問題の一環としても政府全体の問題として考える必要がある、こう思いますが、どうでしょう。
  33. 倉成正

    倉成国務大臣 高度成長のときには、原先生御承知のとおり分配の問題として、社会的公正という立場から労働の分配率という問題が非常に大きな課題になったわけでございます。安定成長、特に今日の段階で考えてまいりますと、やはり企業自体がまいってしまえば元も子もなくなる。したがって、企業にある程度の元気を出させることが必要ではないか、そういうことが問われておると思うわけであります。先般いろいろ論議を呼びましたけれども、公定歩合の引き下げ等の問題につきましても、すぐ設備投資が起こるとはわれわれこの段階では考えなかったけれども、少なくとも雇用の安定に好影響をもたらす、そういう考え方でいろいろ議論しました末に公定歩合の引き下げというのが行われたという、いきさつがございます。  いま先生お話所得政策あるいは社会契約等の問題につきましては、日本では企画庁が持っております経済審議会の中で、物価所得生産性委員会ということで、隅谷東大教授が主査になられましていろいろ御検討いただいたことがございます。このときの所得政策についての定義は、実質生産量の伸びを上回る名目分配所得の伸びを抑制することを意図して、生産要素の報酬率に直接影響を与える政策、こういう定義をいたしております。そうして、この委員会で昭和四十七年五月に報告書を発表いたしましたけれども、この段階では、日本の現状においては所得政策の発動を促すコストインフレが発生していない上、物価の安定を図るべき本来の政策が十分実施されていないので、所得政策を導入すべきでないと消極的な結論を出したことは御承知のとおりでございます。しかし、いまお話しのようにいろいろな情勢も、特に円が二百五十円を割るという、ある意味において確かに日本経済にとって非常に重要な段階に達してきております。したがって、いまお話しのような点は、私どもとして十分勉強いたしてまいりたいと思います。
  34. 原茂

    ○原(茂)委員 この問題の最後にお伺いしたいのですが、このスタグフレーションという点から言うと、逆の対策マイナスの作用を起こすようないわゆる一般消費税の導入がいま言われている。付加価値税の導入です。これはどうなんですか。どの程度の規模あるいはいつごろからというようなことを、もうお考えになっているのですか。
  35. 倉成正

    倉成国務大臣 これは税制調査会が答申を出したという段階で、そして予算委員会等で総理や大蔵大臣からお答えしたとおりの状況でございまして、これを来年度からどうするというような問題については全然白紙の状態にあるというのがいまの現況でございます。
  36. 原茂

    ○原(茂)委員 これを導入するということに対して経済企画庁長官として現在の日本経済政策上どうお考えですか。
  37. 倉成正

    倉成国務大臣 まだ政府部内でいろいろ議論をしてない段階で、私がここでとかく申しますと、その言葉じりだけがひとり歩きいたしますので、意見を差し控えさせていただきたいと思います。ただ、消費税の問題については、わが国の財政上の立場と、それから私の所管の物価政策という立場から重大な関心を持っておるということだけを申し上げさせていただきたいと思います。
  38. 原茂

    ○原(茂)委員 長官のおっしゃるとおり、確かに言葉じりだけがぐんぐんひとり歩きする恐れがあるでしょうね。そう言われてみるとそのとおりだと思いますから、それ以上あえてお聞きしませんが、こういう問題も、現在のように国債の発行が累積していきます。税収の状況は一体どうか、経済全体の動きから見てどの程度の国債の発行ができるのか考えてくると、何かの形でこれを考えなければいけないことは間違いない。     〔森下委員長代理退席、委員長着席〕 私は賛成をしておるわけじゃないですが、実は付加価値税を考えるか考えないかという問題は、もう四年も前から私も総理に聞いたことがありますし、いろいろ論議をされて古いのですね、この問題は。そのたびに、そんなものは全然考えてない、毛頭頭にない、いまでもとにかく、現在答申を待っていろいろ検討しておる段階なんだ、したがって、政府としては考えていないと言いながら、ぽこんと出るのが、実行されるのがいままでのやり口なんですね。政治の国民からの信頼問題を考えたときに、こういうやり方が——確かに困難でしょう。先にこうこうでございますなんて言ったんじゃ大変だろうと思います。大変だろうと私は思う。いろいろな思惑もあるでしょう。ですが、ある段階へ来たら大胆に、来年度の予算の中に少しも頭を出さないならいいですですよ。出すようなことだったら、これはずばりと国民に早くショックを与えながら、大胆に方針を打ち出すべきだと思うのですね。予算のできる間際まで、全然そんなことを考えていない、いま答申がどうのこうの、これがずっと二、三年後かなと思っているような空気もあれば、人によっては、何回もこらされておるから疑い深くて、ああ言ったってすぐやるぞと思っている人もあるということのないように、こんな大きな問題は、本当に一年以内にやるとか、頭を出すということがあるなら、大胆にPRをしてコンセンサスを得られるように、政府責任を持ってすべきだという習慣がだんだんできてきた方がむしろいいと思うのです。それでこう申し上げておるので、いまおっしゃったとおり、それ以外言えないでしょうから、それ以上私はお伺いしないのですが、デノミなんかもそうですよ。総理にこの間聞くと、何か先にやるぞという印象に受け取る人もあれば、いやまだまだという印象の人もあります。デノミなんかは一年ないし一年半のある意味では予告がありますからいいのですが、いわゆる一般消費税なり付加価値税のごときものは、いきなり実行する、頭を出したときにショックを与えるのじゃなくて、その前に、半年ぐらい前からかくかくの理由から必要だと大胆に、それでいけないならいけないという国民の世論が起きてもいいし、せめて半年ぐらい前には、あの種の大きな問題はぴしっと必要性を説いて納得を得るようにするという習慣が政治として必要だろうと思いますから、いまのお話でそれ以上追及しても何もおっしゃらないと思いますが、ぜひ、半年前ぐらいにはこの種の重大な問題に関してはずばりと勇気を持ってやる、いろいろな弊害があるでしょうがやむを得ない、そういう習慣をつける必要があるのじゃないかなというふうに考えます。  総じてスタグフレーション対策に関しては現在非常に困難な問題ですから、私が四つに分けていろいろ申し上げたような問題も十分に加味しながら、とにかくいつの日か、世界がどうだああだという前に、日本状態というものを正常に返さなければいけないと思います。  最後にお伺いしたいのですが、長官の見込みでは、このスタグフレーションという状況をまた七〇年以前、まだこんな言葉が生まれなかった以前のいわゆる普通の経済状態日本で返せる時期というのはいつごろだとお思いになりますか、見通しはどうですか。
  39. 倉成正

    倉成国務大臣 私ども、前期経済計画で昭和五十五年の姿として消費者物価を六%以下にする、そして昭和五十五年までの実質成長率を六%強という考え方を持っておるわけでございます。したがって、この目標に向かって努力をいたしておる次第でございます。  ただ、御案内のとおり国際情勢が非常に大きく動いておる、特に世界の経済秩序がまだ動揺して確立してないという状況でございますから、海外からの要素という非常に不確定なものがございますので、こういうものに十分注意をしながら、私どもがいま考えている路線を着実に歩んでまいりたいと思っておる次第でございます。
  40. 芳賀貢

    芳賀委員長 原委員に申しますが、先ほど議決いたしました昌谷参考人出席しておりますので、御留意願います。
  41. 原茂

    ○原(茂)委員 それでスタグフレーションの問題は終わりまして、いまお話のありました国民生活センターについてお伺いをいたします。きょうは、このセンター全体の問題について触れるわけじゃないのですが、商品の比較テストの問題を中心にしてお伺いをしたいと思います。  まず、国民生活センター法の第十五条に運営協議会の構成が云々されている。消費者代表が非常に少ないように思えるのです。たしか五名しかいない。この委員の問題を考えましたときに、物価問題特別委員会でも附帯決議等をつけて、十分に消費者の意向が反映するように、こういうことが言われてできたにもかかわらず、どうもあれだけの、二十八名かな、の数のうち五名しか消費者代表がいないということは、数の上から言って何か非常に頼りないのですが、この点はどうなんですか。現在のままで十分なのか、ふやす計画があるのかどうか。
  42. 昌谷孝

    昌谷参考人 運営協議会の委員につきましては、御承知のとおりに、法律で学識経験者それから関係行政機関の職員それから地方公共団体の長というような、三者構成と申しますか、そういう構成が定められております。そういう関係もございまして、現在のところでは、十五名の方々を学識経験者と申しますか一般の方々に充てる。その中で、なるべく消費者問題に御造詣の深い方あるいは消費者運動を現にやっていらっしゃる方々に入っていただく。それからさらに、私どもは全国の問題を取り扱う関係もございますので、なるべく北は北海道から九州といったそういう地域的な御意見の聞けるような構成といったようなことを種々考えまして、ただいまのような構成になっております。したがいまして、純粋に消費者団体あるいは消費者活動といったことでいわゆる消費者団体に属される方々は五名、あるいは日本消費者協会の会長であられます方を入れますれば六名ということに相なりましょうかと思いますが、そういうことであります。  そういうことで一応十分御意見を反映させていけるように考えておりますけれども、しかしなお、今後の充員その他の段階でさらにそういった点を拡充する考え方をとっておりますけれども、そういう組織された方々のほかに、いわば組織に属さない御婦人の方といったような方も御参加をいただくことをやはり必要としますので、それらをいろいろ勘案しながらやってまいりたい、そんなふうに考えております。
  43. 原茂

    ○原(茂)委員 このセンターの運営協議会の委員というのは総枠が決まっているのですか。拡大できるのですか。
  44. 昌谷孝

    昌谷参考人 法律の規定では三十名以内ということに定められております。  現在は、一部の方について御交渉申し上げましたところ、一身上の御都合その他でもってすぐに受け切れないというようなお話もございましたので、一、二保留しております関係で、現状では二十八名ということに相なっております。
  45. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、三十名以内で構成しなければいけないのですから、いまの二十八名のほかにふやすとすれば、あと二名ふやすこと以外はできないのですね。
  46. 昌谷孝

    昌谷参考人 そういうことに相なろうかと思います。  ただ、関係行政機関の職員と申しますのは、数では決まっておりませんけれども、私どもは御承知のとおり大変幅広いお仕事だものでございますから、各省庁、ちょうど消費者行政を担当されておる、あるいはそれに御関係のある各省庁ということになりますと、実はいまは十省庁でございますが、十省庁ではカバーしておりません。しかし、むしろその辺のところに若干問題もあるのでございますけれども、そっちの方との調整をいろいろとりながら、先生指摘のような点も考慮しながら、今後の運営を期してまいりたい、さように思っております。
  47. 原茂

    ○原(茂)委員 これをお伺いした理由は、消費者の最たる団体にやはり労働組合があるわけですから、それを代表する——いろいろな消費者協会、いろいろあります。いろいろありますが、具体的に言うと、労働組合のセンターからもこれらに代表を入れるというようなことを考えるべきだと思うのですが、どうですか。あと二名の余裕があるなら、二つぐらい、いわゆる組合のセンターから入れるということは考えられませんか。必要ないですか。
  48. 昌谷孝

    昌谷参考人 先ほど申しましたように二名の欠員は、おわかりやすいように申し上げますけれども、一名は実は報道関係。さらに具体的に申しますと、NHKに在来とも一名関与していただいておりまして、そのNHKから参加していただいておりました具体的なお方の個人的な御都合と後任の御相談の関係で現在あいておるというような事情でございますので、その方は、私どもとしてはやはりぜひ在来のような方向で御協力を得るための一つの糸口にいたしたいというふうに思っております。  それからもう一名は、関係省庁の職員の在来お願いしておりました方がおかわりになりまして、その関係であいております。そういった事情がございますので、在来の考え方を踏襲して考えてまいりますと、いま申しましたようなことで、余り新味を出すという余地が十分ございませんけれども、しかし長期の問題としては、今後の構成の問題はまたいろいろ考えてまいりたい、さように思います。
  49. 原茂

    ○原(茂)委員 いま考えられないとおっしゃるんだけれども、NHKとそれからあと関係省庁、どこだか知りませんが、それもNHKの方は言えるけれども関係省庁の方は言えないような顔をして言わないから、何か都合があるのだろうから聞きませんけれども、もうここらでセンターも大きな労働組合の代表を入れるということも考えていいのじゃないかと思いますから、早期にそのことが考えられるときには考えるように一つこれ私から要望しておきます。  それから、商品テストを中心にお伺いするのですが、これは消費者の商品選択、それからメーカーの品質向上、こういうものに非常に役立てようというねらいだろうと思うんですね。しかしながら、研修というんですか、こういうテストの設備というものが足らないあるいは十分でないというので、五十二年度から三カ年計画で何かそういうものの建設を進めておいでになるようです。簡単でいいんですが、計画の概要と五十二年から始めた進捗状況を、三年後にどうなるか……。
  50. 昌谷孝

    昌谷参考人 現在私どもの施設、品川にございますが、そこの八階に試験施設を一応整備いたしました。やってまいりまして一番難渋いたしますのは、比較テスト等を本格的にかつ相当の品目数をこなしてまいろうと思いますと、やはり不十分ということがよくわかってまいりました。それから研修の方も研修施設、一応いまの建物の中に持ってはおりますけれども、やはりそこがだんだんやってまいりますうちに手狭になってまいりました。もう一つのことは、いまの場所には宿泊施設を持っておりません。いろいろ研修成果を深めていくために、短期間あるいは期間を限って研修効果を上げてまいりますためにはやはり宿泊施設があった方がいいというようなことがだんだん経験的に明らかになってまいりました。  それらの事情を踏まえまして五十二年度予算の編成に当たりまして、そういった施設を適当な場所に設置いたしたいということで経済企画庁その他関係各省と御相談を申し上げて、御賛同を得ましたので、五十二年度から一応三カ年計画ということで、先生おっしゃるようにそういう商品テストとそれから地方公共団体や消費者団体の方々の研修のための施設を設けようということになっております。私どもとしては、こういう情勢でございますから、品川の現在あります施設からほど遠からぬなるべく便利のいいところで国有地のしかるべきところをごあっせん願いたいということで、関係のそれぞれの向きに現在お願いをしております。  まだそういうことで、本年度予算では土地取得費の一部として約七億円程度を出資金の形でちょうだいをいたしておりますけれども、まだ土地の選定その他が最終的に煮詰まりませんので、その点では現在待機中、年内には何とか煮詰めていただけることを期待しております。大体土地規模にしまして四万四千平米程度のものを予定しております。
  51. 原茂

    ○原(茂)委員 現在比較テストを行う試験室ですか、これに専任の方が七名、非常勤四名、アルバイト二名、現在これでやっておいでになるわけですね。人員はどうなるんですか。現在だって、これで十分じゃないんですから、設備ができて人員の方はこれから十分充足を何人かする予定ですか。現在がこの状態で不満足なのに、人員の配慮がどの程度か知りませんが、それによっては今後とも余り期待できない。特に比較テストなんかはとても研修などの実効は上がらないのじゃないかという感じがするんですが、この点はどうですか。
  52. 昌谷孝

    昌谷参考人 御指摘のとおり、現状でも試験室は手不足で悲鳴を上げております。一生懸命やってくれておりますが、十分ではございません。いわんや新しい施設に移りますということは、比較テストの対象品目も現在よりも数段拡大してまいろうということがそもそもの発端でございますから、いまよりもたくさんの業務をこなしてもらうことが当然の前提になります。御指摘のように、検査要員、試験要員の充実についても不可欠一体のものとして私ども考えております。具体的には、いま申しましたように、土地の取得から始まりまして施設の完了まで三年ということで一応関係各省の御了解を得ておりますけれども、そういうタイムスケジュールでございますので、充員計画等についても、その施設の整備の速度と合わせて関係各省の御理解を得て充実を図ってまいろうということで、現在準備を進めております。
  53. 原茂

    ○原(茂)委員 予算を決めて三カ年計画で設備を行うことにした。そうすると、三年たったときの人員はどうなるのです。これがないわけないですね。それはどうなんですか。
  54. 昌谷孝

    昌谷参考人 もちろん私どもなりにいろいろ幾つかの案を持って人員整備、機構整備の拡充の計画を練っております。私どもだけで、一存でできるものでもございませんので、大方の皆様の御理解を得ながら、その幾つかの案の中で、私どもとしてなるべく仕事のやりいいように、何分の御理解と御援助を関係各省から賜るようにということを現在念願いたしております。
  55. 原茂

    ○原(茂)委員 設備をつくることを決めて、機械設備がこうこうこういう予算で三年たったらできますというのに、人員は、現在の人員よりどういう種類のものをどうふやすかは三年たったそのときにならなければわからないという、企業としたら落第ですよ。人員計画なしに設備が先にぴちっとできるなんという、そんなばかなことはあり得ないのです。せめて機械設備を中心にした人員——需要が多くなってきたときに、それに対して増員をどれぐらいするかは別ですよ。しかし基本的にそれだけの設備をつくっておいて、人員を現在よりどのぐらいふやすかの計画がないというばかなことは——何かの都合で言い渋ったり隠しているのですか。全然ないのですか。ないのに、設備を三カ年計画で拡充することを関係のどこかが認めたんですか。人員は全然計画ないんですか。そういうばかなことがあるんですか、こういうものをやるのに。
  56. 昌谷孝

    昌谷参考人 先ほども申し上げましたように、私どもはもちろん物的施設の整備にあわせて、どういう規模の試験担当の、どういう専門家をどの程度今後補充拡充していく必要があろうかということを内部では十分議論もし、練っております。もちろん唯一絶対ということはございません。いろいろな代替案もあり得るわけでございますので、それらの可能な代替案もあわせ考えながら、幾つかの試案は持っております。ただ、御承知のとおりセンターの業務は政府からいただきます交付金でやる仕事でございまして、自前の財源で自分で自由に予算の切り盛りをするというわけにはまいらない仕組みでございますので、その点、五十三年度予算要求を初年度として、そういったソフト面と申しますか、人員面の整備の問題も、目下来年度予算の御説明とあわせて並行的に進めております。そういうことでございますので、いろいろ途中経過もございましょうと思いますので、私どもが私どもなりに持っておりますものをここで申し上げるのもいかがかということで遠慮いたしております。
  57. 原茂

    ○原(茂)委員 あなた何で隠しているのか知らないけれども、そういうばかな計画はないですよ。政府の交付金が幾らもらえるかわからないことはわかっているんですけれども、これだけの機械設備をやるときには、基本的な設備に付随した人員としてはこれだけふやす、これだけなければ困りますという案がないなんてばかなことはないので、それは内々検討しています。五十三年度の予算のときにこれをだんだんはっきりさせていきます——そんなはかな、設備だけつくっておいて、人員のことを全然考えないなんということは何か言いにくそうで言えないらしいからあえて聞きませんけれども、そんなことを言うと本当にばかに見えますよ。私は、どこか欠けているのではないかと思います。そういうばかな答弁をしますと、欠陥人間だと思いますよ。  それから、このテストの結果を記者発表とか月刊「国民生活」季刊グラフ誌の「あなたのくらし」、こういうものによって公表されるのですね。新聞記事は詳しい場合もあるが、紙面の都合で非常に簡略にする場合もある。したがって、なかなか国民に周知徹底しない。たとえば朝日、毎日、読売について見ますと、三月発表のガスぶろがまの問題なんかも、朝日は一部省略しましたが、毎日には表がなかった。朝日は表を出している。内容が、いろいろな意味でどこかがかたわに省略する。これは紙面の都合でやむを得ないのでしょう。そういうことになったり、六月にトレーニングウエアーのアディダスという銘柄について発表しているのですが、これもよくないなという感じはわかるのですが、じゃどんな銘柄のものがいいのかが載っていないのですね。これはよくないという感じをわれわれに与えるのだが、じゃどんな銘柄がいいのかを、まだほかにあるのにいいものを言わない。何か業界に遠慮するのかどうか知りませんが、これじゃ困るのですね。いま言ったように、編集方針について、これがよくないということを発表したときには、いいものを同時に出してもらいたい。これはできませんか。それから、もっと詳細に発表するようにしてほしい。
  58. 昌谷孝

    昌谷参考人 テスト結果の公表につきましては、私どもはテスト項目ごとにテスト方法とその結果を洗いざらい皆さまに出しております。各日刊紙の方々あるいは報道関係の方々にも、主として家庭欄、文化欄等、それぞれ新聞によって違いますが、そういった御関心の深い方々に特にお集まりを願い、そこで御説明をして、なるべく詳細に報道されるようにということで期待をいたしております。即日載せていただくところもありますし、数日たって紙面のゆとりあるいは記事内容の消化等を図った上で詳細に報道してくださるというような例も過去にあったように思います。  それだけではもちろん十分とは申せませんが、やはり日刊紙が与える影響力というのが一番ありますし、また関心を持っておる方は、日刊紙を見て一部省略されておりますれば、当方に御照会いただいて、当方からまた生の資料を直接お取り寄せになるといった関心の示され方をされる方ももちろんございます。それから、私どもが直接持っておりますメディアといたしましては、先生指摘のように月刊の雑誌とか季刊のグラフ誌にもなるべく詳細に載せるように努力をいたしております。したがいまして、私どものテスト結果については、各銘柄ごとにテスト項目について全部の結果を網羅的に全部出しておりますから、よかった点はよかった、悪かった点は悪かった、少し疑問だという点はこうだといったことを全銘柄について漏れなく出しております。  先生の御指摘の点は、最終的に、じゃ結論としてどれが一番いいのだというお話であろうかと思います。このことは、実は商品の比較テストをやります上で一つの物の考え方として非常に重要な点だと私どもは思っておりますけれども、各消費者が選択をする場合、それぞれの消費者のその品物を買うねらい、使うねらい等々必ずしも一律でございませんので、私どもとしては、テスト項目の一々についての詳細なデータをよくごらんいただいて、自分の好み、自分の使途あるいは自分の判断によって、最終的にどれをとるかということは、むしろ消費者の皆さんに主体的に決めていただくという方法が、消費者啓発を兼ねて考えますれば、よろしかろう。報道関係の皆様の中には、いい悪いを一発で言ってくれないといわば見出しにならないという式の早急な見解をお求めになる方もいらっしゃいますけれども、それはそれぞれ個人個人としての選択の順位は当然持つと思いますけれども、それを出すことが広い意味での、本当の意味の消費者啓発にむしろマイナスになる懸念を私ども考えまして、いわゆる総合評価は差し控えております。
  59. 原茂

    ○原(茂)委員 あなたのところで出している「国民生活」というのは、何か消費者の中でもリーダー層とか行政指導職員が見るとか、専門誌的な感じですね。やはり「あなたのくらし」が一番大衆に接触している。また読みいいしわかりいいですね。これがいま四万部出ていますね。ところが、実際大衆の目につくのはごくわずかなんです。四万部そっくりじゃないのです。幾らになっているのですか。地域の消費生活センター、県立の九十五カ所へ一万九千、それから市町村立六十九カ所へ七千八百、これだけ行っておるわけですよ。四万部だって足りないのに全部行ってない。ですから、部数を思い切ってふやすことができるかどうか。ふやすべきだと思う。これはわれわれが見てもわかりますし、非常にいいと思うし好評のようですね。  それからもう一つは、これが人の目につくようにする。いまの、消費生活センターに置いてありますというのじゃなくて、目につく場所にどんどん出すこと。たとえば地方における大中小のスーパーなんかにきちっと置いてもらう。これは非常に有効だと思うのです。スーパーだけじゃないけれども、たとえばです。もっと部数をふやすことと、それから配付先を研究して拡大する。特にスーパーなんかは入れるべきだと思いますが、そういうことができるかどうかが二つ目です。  それから最後に、これは季刊誌ですが、月刊というのか、毎月出るものじゃないですね。これは秋号だ、夏号だ、春号だじゃなくて、できるなら毎月か隔月くらいには出す。これは予算の問題でしょうけれどもね。そのくらいにして消費生活センターがあるということが国民に寄与するようにしないと、あなた方は運営しています。センターがここにありますと自分じゃマスタベーションで考えているかもしれないけれども国民の側から言うとほとんど目につかないのですよ。実際には国民の役に立っていない。やっていますと言いわけだけだ。そうじゃなくて実際に役に立たなければいけないと思う。役に立てるためには部数を思い切ってふやし配付先を拡大する。もう一つは、これを季刊でなくて月刊ないし隔月刊くらいにすべきだと思うのです。  長官、お聞きになっていて、これは長官が協力してやらなければできませんからね、この三つくらいのことはやれるかどうか最後にお伺いして終わります。
  60. 昌谷孝

    昌谷参考人 センターが皆様に幅広く役立たなければ意味がないという基本的なお話は、私どもも常々肝に銘じて考えております。いろいろ工夫はいたしておりますが、まだ十分でない点、いろいろ反省すべき点は幾多持っておると思いますので、それは今後ともよく考えさせていただきたいと思います。  具体的に四万部では足りないという問題。私どもも全国に手足を持たず、東京だけで組織を持っておりますので、地方の自治体が設置しておられます地方ごとの消費生活センター、最近では百七十近くになっておりますけれども、そういったところを実質的には私ども一つのネットワークの中に組み込んで御協力いただき、そこを通じてさらに一般の方々にいろいろな情報をお流しするという意味で、私どもは直接ももちろんいたしますけれども、そういった全国約百七十の地域消費生活センターのいわば裏方のような役割りを果たすのが私どものあり方の一つの重要なポイントだということを考えまして、直接消費者に接せられる自治体の消費生活センターをむしろなるべく立ててと申しますか、そちらの方を優先的に考え、私どもはそれにいろいろのお役に立つような後ろ盾あるいは裏方をするという方向でなるべく広い範囲の方々にお役に立つのが一つの行き方ではなかろうかというふうに考えておりますけれども、これらについてはなお今後ともいろいろ考えるべき点が多かろうと思います。  雑誌の部数なり、季刊を月刊にする問題でございますけれども、私どもも、テストの結果がだんだん充実してまいればいまのようなことでは物足りないと考えております。先ほど御説明をいたしました商品テスト施設の拡充に合わせまして、テスト結果を皆様に知っていただくための雑誌としてこれはぜひ月刊でつくりたい、それからせめて二十万部ぐらいは発行いたしたい。その施設完成時の私どもの広報手段の目安を現在ではそこに置いて、そのためにはどういう専門家を養成する必要があるか。そういった専門知識の専門家とこういった広報手段の専門家というのはまた別の持ち分がございますので、そういう専門的な技能を持った方というのはそう簡単に得られるものじゃない、そういった点の充員等も、先ほどの試験要員の充員とあわせて考えながら、最終目標はいま申しましたようなことへ持ってまいりたいということで、経済企画庁の方でも御賛同いただけるものと期待をいたしております。
  61. 倉成正

    倉成国務大臣 理事長が申しましたように、センターの方とも十分打ち合わせをして、努力いたしてみたいと思います。これは五十円という定価が後ろの方に小さくついておるわけですが、ほとんど無料で配布をいたしておるようでございますので、配布の方法等もいろいろ工夫をする必要があると思っております。
  62. 芳賀貢

    芳賀委員長 午後一時五十分再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十三分休憩      ————◇—————     午後一時五十五分開議
  63. 芳賀貢

    芳賀委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。北山愛郎君。
  64. 北山愛郎

    ○北山委員 私は、経済企画庁がいろいろ発表しましたりした問題、経済や社会の問題について二、三御質問いたしたいと思うのです。  実は、四月のこの委員会でも五十二年度の民間の設備投資の見通し等についてお尋ねをしたわけです。政府の見通しは甘いのではないか、民間の設備投資が一二・二%になっておるけれども、その達成は、その動きは甘いのではないか、こういうことを質問したのですが、企画庁長官はいろいろな理由を設けて妥当であるというふうに言われたのです。そこで、恐らく訂正せざるを得ない事態が出てくるであろうが、そのときにひとつ長官の言いわけを聞きたい、私はそのように前の委員会で申し上げたはずであります。  その後政府経済見通しも改定され、また民間設備投資につきましても改定されたわけでありますが、この前、四月の委員会で一生懸命になってこうだああだという理由を挙げて、一二・二%民間設備投資が伸びるのだということを強調されたわけですが、今日長官の御所見を承りたい。
  65. 倉成正

    倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  当初の見通しの作成の際には、いま北山委員指摘のように、民間設備投資の見通しを一二・二%といたしておりましたが、今回の改定見通しにおきましては、名目六・〇%といたしました。  この理由につきましては、私どもがこの当初見通しを作成する際には、経済がマクロで見ると少しずつは拡大基調にあるということを前提にいたしまして、民間の設備投資が事実的に回復していくということを期待いたしておったわけでございまして、当時は素材産業の面、特に鉄鋼等は非常に大きく落ち込むけれども、非製造業の部門の電力とか流通あるいは中小企業等は昨年に比較してプラスになるので、総じて申しますと一二・二%程度の成長はできると見込んだわけでございますけれども、その後の状況が、投資マインドがなかなか回復いたしませんで、当初の見通しのようには設備投資が出てこないという状況がはっきりいたしましたので、今回改定いたしたような次第でございます。民間の投資マインドに対する見方が甘かったというのが理由でございます。
  66. 北山愛郎

    ○北山委員 四月の時点において、もう日銀を初め民間の調査機関が、一様に設備投資はほとんど横ばいであるというようなことを、資料を挙げて実態の調査の上に立ってそういうものが出ておるそういうときに、企画庁が当初の目標だからといっていろいろな理屈を立てて強弁をするということは、私は必要がないのじゃないかと思うのです。一応目標はこうであるけれどもいずれ改定せざるを得ないかもしれない、こう率直に言った方がいいと思うのです。  これは民間設備投資だけではございません。この数年来の企画庁の経済白書にしましても、毎年毎年その白書の見通しというか、経済の見方と経済の実態、動向というものが相当に配慮されている。五十年の白書におきましては、「新しい安定軌道をめざして」ということで、五十年の一−三月が景気の底入れであり、インフレが収束すれば自然に安定成長の軌道に乗るんだ、こういう非常に楽観的な見通しでありました。これも外れてしまった。五十一年の白書では、これまた白書の中で五十一年度は本格的景気回復の年になると言い切っておるのですね。いろいろ言っておりますが、新しい発展のための基礎固めの年である、こういう五十一年白書になっておりますが、これまた実態と差がついたわけです。五十二年度の白書にしても同じような傾向で、はっきりしませんが、均衡回復の道であるということで、現実のいまの経済の矛盾を率直にあらわしてないんじゃないか。白書が経済の実態と遊離をしているんじゃないか、こういう印象を私は特に最近受けるわけであります。  また内容的に見ましても、国民から見ればわかりにくい企業の内容であるとかそういうことであって、経済そのものずばり、全体を国民にわかるような形で説明されてない。たとえばことしの白書では雇用、失業の問題なんかもっと深く掘り下げていくべきじゃないだろうか、あるいはエネルギーの問題ですね。そういうことを突っ込んでないですね。重大なエネルギーの問題であり、総理自身がもう資源有限の時代に入ったんだというふうに言われておるわけですから、この間の問題やなんかについても、もう少し経済企画庁が白書の中でもっと突っ込んだ説明が必要なのではないか。また国民からすれば、一体今後の雇用がどうなるのか、低成長下における雇用問題はどのようなものになるのか、またこれに対してどういう政策が必要なのかということを聞きたいと思うのです。そういう点私は非常に不満なんですが、五十年、五十一年、五十二年各白書が若干現実と遊離していやしまいか、私そういう印象を受けているんですが、これに対して長官のお考えを聞きたいのです。
  67. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいまのお話、結果的に見てどうも見通しが甘かったんじゃなかろうかという御指摘でございますけれども、仰せのとおり、結果的に見ますと私どもの見通しが甘かった点はあると思います。ただ、今回の設備投資の見通しにいたしましても、五十一年の七、八月実施の開銀のアンケート調査あるいは長銀のアンケート調査等を参考にしたわけでございますけれども、その後五十二年の二月、五十二年の七、八月の調査で、これらの民間の調査も下方修正をされておるわけでございまして、この設備投資についてわれわれが五十二年の二月の段階で一二・二%と見通したときには、電力中央研究所、これは五十一年十一月段階で一四・五%、日経の研究センターは五十一年十二月段階で一一・四%、また山一証券は五十一年十二月で一一・七%、国民経済研究協会は、これは非常に強気の見通しで五十一年の十二月に一四・六%という見通しをいたしておりまして、私どもだけが非常に強弁というか、意識的に高い見通しをいたしたわけではございません。やはり当時の事情としては十分こういう見通しをするに足る客観的な要素があったと思っておるわけでございます。しかし結果的に見ますと、確かにこの見通しは甘かったということになろうかと思います。  なお、ことしの白書についてもう少し雇用の問題あるいはエネルギーの問題について掘り下げる必要があるんじゃないかという御指摘でございますけれども、仰せのとおり、今日の段階で最大の課題は雇用の問題であり、また中長期的に見ますとエネルギーの問題というのが日本経済を決する大きなファクターでございますので、これらの問題についてはこれからも十分掘り下げて勉強してまいりたいと思うわけでございます。
  68. 北山愛郎

    ○北山委員 しかし、長官はどこまでも弁解なんですね。私がこの前この委員会で議論したのは、ことしの四月時点における状況を聞いているのです。もうその四月時点においては民間の調査機関も変わっているのですよ。去年の十一月と比べるとやはり民間の機関も違っておった。それは言いわけですよ。そうではなくて、そういうふうに現実と遊離したのではまずいでしょう。だからその時点において民間の機関というのはもう見通しを訂正しているわけですね。その時点でどこまでもがんばる必要はないのじゃないかと思う。もう少し、何か突っ込まれるのは困るというのではなくて、困った問題なら困った状態だということを率直に国民に対して政府が実態をはっきりと説明する、わからせる方が、私はいまの政治の態度としてはいいんじゃないか。それをどこまでも自分の方針が間違いない、間違いないと言って、今度は変えるというと、変わった途端にいままでのあれは知らぬ顔しているわけでしょう。そういうやり方じゃなくて、いまはもう日本経済というのはだれが考えたって非常に深刻だと思いますよ。ですからその実態を企画庁としてはむしろ国民に知らせるということですね。責任問題だとかそんなこと余り考えない方がいいですよ。そういう姿勢を私は望んでいる。何か言ったことがその都度すぐ裏切られる。八月になれば景気がよくなるのだと言って、八月になったってだめだ。今度は総合経済対策というものを出したでしょう。今度の補正予算を出した。その時点で長官は、これで五十二年度は必ず六・七%達成できる内容になっている、こんなことは言わない方がいいのですよ、この予算でできるなら。すぐに今度は円高になりますと状況が変わってきて、もっと強力な景気対策不況対策が必要だなんということになってくる。場当たりなんですね。そういう姿勢を私は問うているのであって、企画庁という役所は少なくともそんな硬直した、責任などばかり考えて言質をとられまいというような姿勢であってはならない、こういうことであります。  そこで、せんだって国民生活白書を出したのですが、これが若干問題があると思います。この中に、ざっと見ますと、非常に短期的な問題というかこの数年来の傾向と、わざわざ特に長期の、昭和三十五年から五十年までの長期の状況と動向とを出していますね。昭和三十五年から五十年までの十五年間には、やはり生活が豊かになったというか、そして格差が縮まった。あるいは意識から見ても、九〇%もの人が中流意識を持っている、アンケートをとってみると。そういうふうなことで、長い目で見るとだんだんよくなっている、こういう内容を盛ってある。ところがその冒頭のところを見ると、実際には五十一年の所得を見ると、自由業は四四・四%、個人企業の経営者は三二・二%所得がふえている。その他会社の重役とか無職、いわゆる財産収入なんかのある人は一三・八%、商人、職人は一二・八%。ところが勤労者は実質上はほとんど伸びていない。農民も農家も伸びていない。ですから、これで見ると格差が拡大しているのですね。労働者とか農民と自由業その他のあれとは所得の伸びがまるで違うのです。そういうことを言っておきながら、後の方で、この十五年間の平均を見ると、日本ぐらい平等化している国はないような礼賛をしているのですね。そういうところは私はおかしいんじゃないかと思うのです。この点についてまずお考えを聞きたい。
  69. 倉成正

    倉成国務大臣 生活局長からお答えを申し上げたいと思いますが、先生指摘の五十一年は確かに勤労世帯の収入の伸びが低かったということは言えると思います。しかし、五十二年に入りましてまた一般家庭の収入、支出が減ってきておるという現象がございますので、五十一年だけをとるとあるいは御指摘の点があろうかと思います。細部について、生活局長からお答えいたしたいと思います。
  70. 井川博

    ○井川政府委員 ただいま大臣からお答え申し上げましたとおり、二つの面が生活白書で記載をされているわけでございます。目次にもございますように、去年からことしにかけて一体暮らしがどうなるかという先生のおっしゃいました短期の分析と、それから国民の意識がどうなったか。その裏には長期に見まして十年、十五年間に一体暮らしがどうなったか、そういう分析がございまして、短期の問題としては、先生のおっしゃったとおり、やはりサラリーマンの世帯とそれからそれ以外の自由業等の一般家庭と伸びの違いが出てきたというふうなことを規定しております。しかしながら、長期の目から見ますと所得の差は縮まってきているというふうなことを、ジニ係数等々を使いまして立証した上、国民が全体的に、あなたの現在の暮らし向きはどうですかと聞いたときに、中ですと答える人が非常に多くなった、中流帰属意識の人が多くなったという分析をいたしているわけでございまして、長期と短期はそういう趣旨から分けているわけでございます。
  71. 北山愛郎

    ○北山委員 一番問題は、この七〇年代、今後の動向が十五年間の動向と同じような動向をたどるであろうか、あるいはいままで三十五年当時から十年間くらいはあれだけれども、七〇年になってきたら変わってきたんじゃないか。これからの動向はどうなるかということからすれば、いまのような作業というのはおかしいと思うのですよ。十五年間の傾向でもって今後もその傾向で進むとは言えないんじゃないですか。要するに経済が七〇年代になってことにおかしくなったわけですね。低成長になったわけだ。高度成長が変わってきたわけですよ。そうなったら、いまの社会の状況も、いままで十五年間の平均の動向でいくでしょうか。いかないかもしれない。そこがいまみんなの関心じゃないでしょうか。それをわざわざ、いままでの三十五年以来の傾向を書くというのは、そこに政治的な意図がある。そうじゃないでしょうか。  それからいま一つ、ここで具体的にお尋ねをしますのは、実は企画庁自身が、一九七五年、昭和五十年、作業して、「所得資産分配の実態と問題点」という本を出していますね。それによりますと、最近はキャピタルゲインとか利子配当所得、いわゆる地価の高騰等によってそういう所得がふえて、所得の格差が開いているんだ、こういうことを企画庁自身の昭和五十年に出したいまの研究資料、調査資料というものが発表していますね。要するにいままでと違った状況が七〇年代になって出てきたということなんです。     〔委員長退席、原(茂)委員長代理着席〕 そしてまた、国民生活審議会が、これは一九七四年の社会指標として出しておりますのに、いわゆる所得の上位三万人の平均所得と勤労世帯の平均所得を比べまして、一九六〇年、三十五年は十五・一倍であった。それが一九七〇年には三十七・六倍に広がった。格差がまさにそのように広がったということを国民生活審議会の出しました社会指標に出しているのじゃないでしょうか。  こういうものを見ましても、いままでの企画庁の出している資料、特に最近の労働省なんかが出している統計を見ますというと、この三年ぐらいの間に、業種間の賃金の差であるとかあるいは規模別の差であるとか、そういうものは開いているのですよ。それまではだんだん規模別とかそういう格差が縮まる傾向であったものが、三年前ぐらいから開く傾向にある。この数年間変わってきたということなんですよ。われわれが欲しいのは、今後どうなるかということなんです。それを、わざわざことしの生活白書に——三十五年からの状況、流れが、今後も続くような状況ならばそれでいいでしょうね。変わっているのですよ。変わっていることを企画庁自身のいろいろな資料によって出している。そういうときに、わざわざ何で一体十五年間の傾向を、天下太平みたいなことを、みんな中流階級になって平等化されてというようなことをうたう必要がどこにあるのですか。私はそのことを言っている。  それから、その企画庁の出した資料との関係はどうなのか、説明していただきたい。  それから、もう一つ、中流という言葉ですね。一体、中流ということについて、あなたは中流かどうかということのアンケートをやったのですから、企画庁自身は中流というものをどの程度のものに考えているのか。やはりそれは、少なくとも設問を出す方の側で客観的な基準がなければいかぬじゃないでしょうか。企画庁としては、中流というのはこういうものが中流だと考えている。どういうものが中流だと考えているのです。どの程度のものが中流だと考えて、そしてアンケートを出したのですか。
  72. 井川博

    ○井川政府委員 短期の傾向を見まして、その平準化と逆行するような傾向があるということは事実でございますし、ことしの白書自体におきましても、自由業等の一般家庭とそれから勤労者世帯というふうなものの伸びが違ったということを書きましたけれども、ことしに入ってからは今度は反対にサラリーマン世帯、勤労者世帯の方の伸びが大きくなって、一般世帯の方が小さくなっているということを記述をいたしてございます。それからさらにはジニ係数につきましても、いま、ここ数年、横ばいになっているというふうな表現もいたしておるわけでございます。  それから、さらには、規模別の格差の問題につきましては、見かけは大きい企業と小さい企業と格差が縮まったように見えるけれども、それは新規雇用者の年齢の違いがあるから、それを差し引いて考えると、そう数字ほどは格差が縮まっていないというふうな点も分析をいたしておるわけでございます。  したがって、われわれといたしましては、いままでのような勢いで今後もどんどんということは言っておりません。しかしながら、かといって別にこれが拡大をするというふうなことにもならぬのではないか、そういう前提で分析をいたしておるわけでございます。  それから、先生のいまのお話に、中流とはどういう程度かというお話がございましたけれども、総理府広報室が調査をしております国民生活に関する世論調査におきましては、中流とはこういう程度のことを言うのですよ、おたくはどうですかという問い方をいたしておりませんで、一体世間一般から見ておたくはどの部類に入りますか、こういうふうな質問をして、その結果、上であるとか、中の上中下、下という答えが返ってくる。したがって、あくまで意識の面でございます。  当然白書における分析も、中間層といった、いま問題になっているそういうふうな固定的な層としてとらえるのではなくて、中流帰属意識、そういう意識の人が九割に達している、こういう分析をいたしておるわけでございます。
  73. 北山愛郎

    ○北山委員 最近の動向についても指摘はしているのだというのですが、私が疑問に思うのは、あなたの最後に言った、今後はいまのままでいくとは思えない、やはり長期で見れば平準化するのだというような断定はどこから出てくるのか、私はわからないのです。どうしてそういうことが出てくるのか。  それから、中流のお話ですが、調査対象の人が主観的に考える意識の調査、こういうことで物差しは別にない、こう言うのです。しかし、それならばお伺いしますけれども、たとえばこの調査によりますと、年収が百万未満の人でもその四五・五%は中の上か下だ、こう答えているのですね。百万未満の所得の人が中流と企画庁はお考えでしょうか。あるいはまた、貯金が五十万未満の階層でも七〇%は中流でござい、自分でそういうふうな答えを出していますね。貯金が五十万以下という状態で中流と言えるでしょうか。企画庁はどのようにお考えになっていますか。百万未満の収入があって私は中流だという人もあるかもしれない。しかし企画庁は、自分ではそう思っているだろうけれども、客観的に見ると中流とは言えないのではないかと思っているのかどうか。
  74. 井川博

    ○井川政府委員 いろいろな世帯があるわけでございます。したがいまして、たとえばきわめて若い年代の世帯というふうな場合もありましょうし、それからまた、貯金がなくてもすでに家を持っているとか、あるいはそのほか自分としては別の面で人並みのことをしているというふうなこともあろうかと思います。  したがって、いま先生がおっしゃいましたような一つ一つの点をとりますと、これはどうも中流という意識がおかしいという感じになりますけれども、やはりその人はその人として人並みにそういう生活をしている、こういう意識を持つ根拠があるのだ、そういうふうに考えられるわけでございます。
  75. 北山愛郎

    ○北山委員 そうなると、こういうアンケートをとって、九〇%が中流意識を持ってますぞなんという総括をすることがおかしいのじゃないでしょうか。ちゃんとパーセントを挙げていますよ。百万円未満の所得者でも、これは単身者でも百万円未満というと月に七万ぐらいの賃金でしょうから、そういう人が自分で中流だと言ってもそうはちょっと見られないのじゃないでしょうか、客観的に見れば。そういう人が四五・五%もあるのですよ。それから五十万未満の貯蓄があっても中流だという人が七〇%もある。ただそう思っているのだ、それぞれそう思うでしょうということじゃ、この統計数字にあらわせないのじゃないか、あらわす価値がないのじゃないか、ただ主観的にそう思っているということならば。やはり何かしら中流というものの一つの企画庁なり政府なりのお考えがあって、それでもって調査をやって——それならば多少あれだけれども、自分では所得が少なくても中流だと思っている人があるでしょう。いろいろな都合であるでしょう。それなら、こういうふうに統計数字をやって、しかも結論的に九〇%も中流意識を持っていますよ——要するに世の中には虚偽意識というのがありますからね。現実はどうであっても、こういう一体中流かどうかなんという設問をされますと、私は貧乏ですとかなんとかというふうには書かないですね、もともと意識調査ですから。普通は意識と現実とは離れているものですよ。それもありますから、アンケートをとって、国民のこうした暮らしの変化を背景にして、国民の中流意識は強まっている、九〇%も中流だと思っている、そういうふうなことは統計としてはおかしいのじゃないでしょうか。長官、どうでしょうか。
  76. 倉成正

    倉成国務大臣 いま局長がお答えいたしましたように、このアンケート調査は、いわば主観的な、対象の人たちが実際どう思っているかということを中心に尋ねたものでございますから、いま先生お話のように、ある一定の基準を設けてたとえば百万円以下の所得の者は中流でない、そういうふうに考えるならば必ずしもこの調査は妥当でないということになるわけでございますけれども、これはどこまでが中流であるかということは非常にむずかしい問題でございますので、大きな生活の流れの中で人々がどういう意識を持っているかということを調査した総理府の資料を、この生活白書の中に援用したということでありまして、こういう中流意識を持っている人が相当ふえているけれども、しかし同時に、中流でないという取り残された層も非常に多いので、このことにも十分配慮しなければならない、そういうところにもこの白書の考えの重点があるわけでございまして、決して中流ということがこういうふうに出ているから万事めでたしと考えておるわけではございません。
  77. 北山愛郎

    ○北山委員 しかし今度の生活白書の、先ほど来申し上げたような昭和三十五年以来の十五年間の傾向、いま問題なのは、経済成長がストップしたというか、経済社会の非常に大きな変動なわけですからね、これからどうなるかということがみんなの関心事であるし、どうなるかということをむしろ私どもは企画庁に聞きたいくらいなんです。そういうときに、いままでの調子で今後もいくのだというふうな印象を与えるようなこういう資料をことしの生活白書で出しているということ、そういうこと自体が私はおかしいと言うのです。その点はひとつ考えていただきたい。聞いてみると、それはみんな主観的な意識の調査だからということですが、やはり客観的な通念としての、普通の通念としての、中流であればこの程度の生活だとかなんとかという物差しがあって、それにつれて調査をするなら話はわかりますが、ぶっつけに、ただ、あなた中流ですか、これじゃ価値ある資料にはならない、価値ある情報にはならない、このように私は思います。  そこで、白書では、借金をして住宅を買うとか、要するに先に金を借りて買って後で払うというような傾向と言っているのですが、最近ある資料で私、びっくりしたのです。それは数日前の朝日新聞に載りました朝日生命の調査なんです。  五十一年度末の消費者信用の残高、いわゆる住宅ローンが大部分ですが、それが実に三十四兆円になっておるというのです。昭和四十年には二・二兆円だった、四十五年には七・九兆円になって、四十八年には十八兆円になった、五十一年には三十四兆円、その六割は住宅ローンだ、こういう調査であります。しかも、最近のいわゆる成長率というかローンのふえ方は、毎年三〇%くらいの物すごいスピードでふえているわけです。この点についてのローンの調査ですが、企画庁としてはどういう資料をお持ちか、またこの資料の信憑性といいますか妥当性といいますか、それについての見解を聞きたいのです。
  78. 井川博

    ○井川政府委員 住宅に関しましては、第一章の「安全性と収益性を求める家計資産、借金返済という名の貯蓄」というところで、そこのいわば「借金返済」というのに、住宅ローンが多いんだというふうなことを分析をしておりますのと、それからもう一つは、二章の「質の改善求める住宅需要」というところで分析をいたしております。しかし、ローンが占める比率が大変多くなってきているというふうな点は、総理府統計局の貯蓄動向調査によりまして、全国のそうした世帯の貯蓄、その中で借金返済というふうなものが一体どういうかっこうになっているかというふうなことを分析いたしたわけでございます。
  79. 北山愛郎

    ○北山委員 そういう調査から見て、いま申し上げた朝日生命の数字は妥当かどうかということです。これは大変なことですよ、三年間に十八兆円が三十四兆円にどんどんふえていく、一年に十兆円くらいずつローンがふえるというのは。どういうことになりますか。消費者ローンというのがふえていくということは、経済的に見ても手放しにほっておけないことじゃないかというふうに私は思うのです。この数字が私妥当だと思いますのは、実はその中で住宅ローンの残高が約二十兆円あると言っている。それは住宅金融公庫の年報が出しております。五十年末で民間のローンとそれから国、公庫なんかのローンを合わせますと十七兆七千億になると言っている。一年に五兆円あそこはふえますから、住宅金融公庫の調査によりましても五十一年度の残高だと二十兆円を超えているでしょう。朝日生命はその他のローンもいろいろ調べてはあるようですが、たとえば各会社の社内貸し付けなんか比較的多いです。二割以上ある。あるいは割賦ローン、こういうものが一五%ある。こういうふうにして調べた結果でありますが、この三十四兆円が三〇%のスピードで伸びるということになると、五十二年末なんか四十兆円超しますね。そうしますと、ローンを借りた人は十年なりそういう中で元金と利子を払わなければならないでしょう。元利を払うということになると年間どういうことになりますか。仮に八分として十年間に払うということになると、恐らく七、八兆円のものを払わなければならぬじゃないでしょうかね、ローンの返済に。それは大部分勤労者でしょうからね。所得が七十兆円なりそこらあるとしまして、勤労所得の中から一〇%くらい取られるということですから。ことしは分譲住宅で公庫その他のローンをふやしたでしょう。こんなことを続けていっていいのかどうか。これが将来デフレ効果になるわけですよ。ローンの返済、利子。利子だけでも何兆円も取られます。こういうやり方で、いわゆる景気対策として公庫の貸し付け、そういうものをどんどんふやしていっていいのかどうか。これは国民生活にとって大変なことなんです。企画庁にこういうことを分析してもらいたいのです。生活白書の中で。そんなことないでしょう。民間の調査機関がいろいろやっているこういうことについてどう思いますか。
  80. 井川博

    ○井川政府委員 先生がおっしゃいました数字についていまちょっと検証するデータは持ち合わせておりません。しかしながら、消費者ローンが逐年増大をしていっている。その中で住宅ローンがきわめて大きい比重を占めているということは事実でございます。ただしかし、この白書におきましてもいろいろそうした問題の指摘はしておりまして、一つは、住宅を需要する層がぐっと広がってきた、従来のある程度の相当な所得を持っている層から若い平均的な層にまでずっと広がってきたということを記述した後、問題点の「もう一つは、住宅需要が低所得層や若年層に広がり、しかも住宅ローン依存度が高まったことによる問題である。つまり制度面の改善による住宅ローンの「借り易さ」があったにもかかわらず、所得上昇率が鈍化したため、必ずしも「返し易さ」につながっていないということである。」というふうなことで、やはり借りやすくしていきますと多少無理してでも借りる。今後はその返済のときの重圧というのが来る。このことを考えなくてはいけないということを指摘している次第でございます。
  81. 北山愛郎

    ○北山委員 もう少し数量的に突っ込んでやると、単に住宅ローンを借りる人だけの問題ではなくて、個々の人だけの問題ではなくて、経済的にも問題がある。要するに消費者ローンがふえるということは将来における購買力の先取りですから、今後賃金がいままでのようにどんどん上がらないとするならば、将来のデフレの原因をどんどんつくっていく。しかも一年に十兆円もローンがふえるということになったら大変なことになるじゃないですか。国も国債を発行しているから国民も借金しろというようなことになるかもしれませんけれども、今後の景気がどうなるかということにも関連して考えるのが企画庁じゃないでしょうか。個人が月給が上がらなくなるから返しにくくなったのだということでは済まないのではないでしょうか。長官どうですか。
  82. 倉成正

    倉成国務大臣 いま局長からお話いたしましたけれども、現時点で考えますと、住宅ローンを借りておりますと支出の中で住宅ローンがかなり大きな負担になる。これはかなりの所得の人でも実際そういう感じを持っていることは事実でございます。ただ消費性向から言いますと、御承知のとおりいま五分位の消費性向が比較的低いわけでございます。借入金のある世帯では、消費性向が相対的に低い高所得層、こういうところが比較的住宅ローンを多く借りているという状況になりますので、したがって実質的には貯金率が落ちているという結果になっていると思います。ただおっしゃるように、これがずっと長期的に続いていった場合にその部分が消費の足を引っ張るのじゃないだろうかということになろうかとも思いますけれども、しかし、いま必需的な支出がほとんど充足してまいりまして、選択的な支出が伸びていくという形で、国民の願望としては住宅というものが非常に大きな目標になっておりますから、この部分でこの方向を悪いと一概に断定するわけにはいかないのじゃなかろうかと思っております。  しかし、だんだん住宅ローンのすそ野がずっと広がってまいりまして、所得上昇率が鈍化するということになりますと、やはりローンの支払いが家計に対して非常な圧迫要因になってくる。特に若年層の人たちが住宅ローンを無理して借りているということになりますと、これが家計の支出に非常な圧迫要因になるという事実も私ども承知いたしております。したがって、将来の方向としては、やはり住宅ローンの返済の負担をできるだけ軽減していくというような問題であるとか、あるいは持ち家と借家政策をどう組み合わせていくか、あるいは中古の住宅の融資をもう少し広げてそういう方面の道を開いていくとか、あるいは高層住宅と一戸建ての住宅をどういうふうに選択していくかというような、住宅政策全体を基本的に見直していく、その一環として住宅ローンをどう位置づけていくかということが非常に大事なことではなかろうかと思っております。この点については、白書でも一応、不十分であるかもしれませんけれども、分析をいたしております。  なお、やはり住宅の問題については、政府として統一した見解ではございませんが、私は、いま住宅政策考える場合に、余り短期で物を考えがちである、すぐ五年とか十年程度のオーダーで考えるので、どうも戸数の数字合わせをするというような感じがするわけでございまして、イギリスにしてもドイツにしても、ヨーロッパの諸国の今日の住宅というのは、相当長い年月かかって都市計画と合わさってでき上がった住宅でございますから、これとすぐ比較をするのは非常に無理があるのじゃなかろうか、したがって、日本の住宅政策考える場合には、もう少し長期の都市改造を含めた住宅政策考えるのが適切じゃなかろうかということを、私自身は実は考えておるような次第でございます。
  83. 北山愛郎

    ○北山委員 私は住宅だけのことを言っているんじゃないんです。ですから、私聞かないことまで長官お答えになったわけですが、要するにこのような住宅ローンが大部分なんですが、消費者ローンというもの、消費者信用というものがふくれ上がる、その残高がふえるということは実は景気にとっては赤信号なんですよ。そういう角度から考えていないかということを聞いたんです。だけれども、こういうことについてはお答えがない。ちょうど国債がふえていくと残高がふえていくと同じことですよ。ことに国債とは違って、個人の場合には将来の所得、月給の前取りですからね。来年になればその返還分がマイナスになるでしょう、購買力が。そういう点からも考えて、景気とか経済に対する影響についても、消費者ローンというものが非常にふえてくるということは危険信号だと私は思っているんです。ことに最近どんどん——こんなに数字が大きくない、私自身も七、八兆円ぐらいだと思っていたんです。しかし朝日生命のあれを見まして、三十四兆円もあるというから、びっくりしていろいろ調べてみたら、なるほど住宅金融公庫の年報にも五十年末において住宅ローンが十七兆円以上もあるというから、ああ、なるほど、これは間違いないのだな、こういうことで実はこれは相当な問題だぞ、当然企画庁なんかではこの数字を把握して、そうしてその影響とかそういうものをどのくらい——利子と元本を返さなければならないでしょう。どんどん雪だるまのようにふえていく。どういう影響があるかということは当然考えるべきなんです。そういう角度から聞いているのです。方向が違っているのです。企画庁というのはそういうことをやるべきところじゃないかと思う。  そこで、私は最後に言っておきますけれども、この問題について調査をする気持ちがありますか。いま申し上げたような角度から、こういう民間の数字あるいは住宅金融公庫の数字もある、いろいろ数字、その他の数字も企画庁として調べて、この消費者ローンがこれだけふえたということについての見解、それを調べる気持ちがあるかどうか。  あわせて、時間もないですから申し上げたいのは、日本における金融資産負債というものが異常に大きいですね。GNPの何倍かになっている。これはアメリカも大きいのですが、日本も大きいのです。要するに借金が多いということ、貯金も多いけれども、借金も多いということ。国も借金ですね。会社も借金です。個人もいま言ったように、貯蓄もあるけれども、ある層は、いまの消費者ローンに見られるように、どんどんどんどん借金がふえている、それはやはり金利のつく金ですから。この金融資産負債というものが、金融負債で言いますと、これは七五年の日本銀行の資料ですけれども、足してみますと三百五十八兆円あるのです。これはみんな金利のつく金です。預金にせよ、株にせよ。金利なり配当なり何分かのあれがつく。三百五十八兆円というのは、八分の利子ということになりますと二十八兆円ぐらいの利子を払うということなんです。預金なり何なり、株なりを持っている人が、それだけ働かないでもらうということなんです。生産された価値の中からそれだけもらうというごとなんです。ですから、金融資産負債がふえるということは、それだけ経済の重荷になるのじゃないですか。日本の場合、企業は借金が大部分で、借金経済だから、いわゆる資本構成が低いから、自己資本が少ないから、借金が多いから、企業を圧迫していると言いますが、国全体の経済がそうじゃないですか。  それからもう一つの問題は、土地の値上がりですよ。約二十年の間に三十倍ぐらい上がっておりますね。不動産銀行の調査によりますと、昭和三十年時点における全国の土地の評価は十八兆円だった。それが今日では四百兆円になっているのです。二十年間に三百何十兆という土地の値上がり、それがいま潜在あるいは顕在しているわけですが、これが経済にどのような影響を及ぼしたのか、あるいは及ぼそうとしているのか、私はこういうことについて企画庁が検討されているのかどうか、あるいは研究する——日本における金融資産負債というのは非常に割合が多いということ、それからもう一つは、その一つ原因でもあるでしょうけれども、地価のものすごい値上がりですね。それがいまストックになっているのですから、売れば、価値を生まない土地の譲渡所得が生まれますね、あるいは売らなくても、担保にすれば値上がり分だけはよけい金が借りられる。ですからインフレ原因にもなると私は思っているのです。そういうものを掘り出していただきたい。企画庁というものはそういうことをやるところじゃないでしょうかね。そういうことをやる気がありますか、どうですか。長官、どうですか。
  84. 倉成正

    倉成国務大臣 いま北山委員の仰せの金融資産の負債が非常にふえているという点で、むやみに住宅ローンがふえ、また消費者ローンがふえていく、そうしてまたこれが非常に家計の圧迫になるということになれば、これは問題でございます。したがってこれらの問題については、いろいろもう少し掘り下げて勉強してみたいと思います。  ただ一つ申し上げたいと思いますのは、やはりこれは負債だけではなくして、資産として、住宅の効用のみならず、資産として住宅を持つ、そういう気持ちがやはり住宅を取得する人たちにあることも事実でございますから、この点は、たとえば家に住んで、そうしてその住宅、土地というのは決して減価しない、そういう意識が住宅を住宅ローンで買う人の頭の中にあることも事実でございますから、この点もやはり考えておく必要があるのじゃないかと思います。  なお、土地の問題についても、御指摘のような問題について、いま法人が持っておりますストックの中でやはり土地というものがかなりございますので、これらの問題の分析もさらに深めてまいりたいと思っております。
  85. 北山愛郎

    ○北山委員 それに関連するのですが、今度国民経済計算の方式を変えるということが決定された。要するにGNPのやり方を変えるということなんです。これがことしの秋から新しいSNAに変わるという方針になっているわけですが、それが来年に延びたのですが、それはどういう理由なのか。  それからもう一つ、その概要説明をいただきますと、企業についても、このストックの問題も評価を上げることになっています。当然いま申し上げた全国の土地の評価額、これを上げることになっています。いままでの算定で、企画庁としては全国の土地評価額というのは大体どのくらいの金額になりそうですか。これはやはり個人とか法人とか国とか区別をして、そしてその土地の地価というか、評価をするわけですから、そこに当然何百町歩なら何百町歩というのが出てくるわけです。いままでの作業ではどのくらいになるような模様ですか。
  86. 倉成正

    倉成国務大臣 この移行が延びましたのは、いろいろな準備作業を進めていく間にどうも作業が若干おくれたということでございます。非常に専門的なことになりますので、所得部長が参っておりますのでお答えいたしたいと思います。
  87. 田原昭四

    ○田原説明員 お答えいたします。  現在作業中でございます新しい国民経済計算体系でございますが、当初この秋に大体作業を完了するのではないかと思ったわけでございますが、何しろやってみますと非常に膨大な作業でございまして、現在の国民所得統計に比較いたしますと範囲が非常に広がっております。それから、推計の方法などもかなり変えております関係で、数字が詰まってまいりますとなかなかうまく全体がバランスしないような技術的な問題がいろいろと出てまいりまして、そういう関係で来年に移行を延ばさざるを得なくなった。ただ十二月の上旬くらいには大体の試算結果が発表できるのじゃないか、そういう段取りでございます。ただ内容的には専門的、技術的な面が大変多うございますので、一挙に国として新SNA、新しい国民経済計算に切りかえることはまた問題があるのじゃないか、やはりそういう専門技術的な問題について十分利用者の周知普及を図ることが必要ではないかということで、来年度に正式移行を延ばすことにしておるわけでございます。  それから、第二点の土地の評価の問題でございますが、新SNAでは土地の評価もやることになっておりますが、ただこれは、私どもにとっては初めての推計作業でございまして、基礎資料等々、それから推計技術上の問題がございまして、まだ数字的には十分固まっておりませんので、まだ感じを申し上げる段階ではございませんが、いずれ発表までには十分内容を吟味調整いたしまして、土地の評価額というものもあわせて発表する段取りにしておるわけでございます。
  88. 北山愛郎

    ○北山委員 時間が参りましたから終わりますけれども、私はこの新しい国民経済計算体系、これは経済の実態に従来のものよりは迫っていくという意味で関心を持っているわけです。この前長官に質問通告をしました金融機関の帰属利子の問題にしても今度は訂正されておるようであります。ことに実物資産の残高表、これなんかも非常に参考になる問題だと思うので、できるだけ早く作業を進められるように、また部分的にもその結果がわかりましたら部分的にも発表していくというふうな方針で進めていただきたい、こういうことを要望いたしておきます。この点どうですか。
  89. 倉成正

    倉成国務大臣 いま鋭意経済研究所国民所得部の方でこの作業にかかっておるわけでございまして、御指摘の点、北山委員の年来の主張でありました帰属利子の問題につきましても、新SNAにおいては新しい方式をとることになっておるわけでございまして、その他いろいろな点での改善が行われると思っております。したがって、国民経済を分析する上において非常に大きな前進になると確信をいたしております。したがって、作業の途中においても、またある段階まとまれば御報告を申し上げたいと思っております。
  90. 北山愛郎

    ○北山委員 これで終わりますが、私の言いたいことは、要するに企画庁という役所はもっとかみしもをとって経済の実態に肉迫をしてくれということなんです。そうでないと、せっかくのいろいろな作業がさっぱり役に立たない、こういう気持ちでやっていただくことを要望して、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  91. 原茂

    ○原(茂)委員長代理 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。丹羽久章君。
  92. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 長官にちょっとお尋ねいたしたいと思いますが、こういう席で聞かなくともいいような問題でありますけれども、ちょっとお尋ねいたしておきたいと思います。  実は先ほどから住宅問題が一応論議せられておったようであります。大臣は経済閣僚の一人として、住宅問題、十万戸建設に対して内閣において相当の意欲を示されたことだと思いますが、非常に日本のメリットのある繊維が不況になってきた。総理は景気回復に大変な力を入れていらっしゃいますが、なかなか思うように進んでいません。これは総理の言葉をかりますと、世界は非常に不況である、日本だけじゃない、だからこの不況は直ちにというわけにもいきませんし、私はずいぶん努力をしております。こういつもおっしゃいますが、私も先日各国を回ってまいりましたときに、総理の言われることはよくわかるのです。しかし国民はそうと思っておりません。何か日本だけが不況のような感じで、何とか不況を脱出することはでき得ないだろうか。特に中小企業というのは、厳しいそれに対する批判をしながら、一日も早くオイルショック以来の立ち直りを望んでいるわけです。  そういう面から何とか景気の回復の一つ考えてみると、住宅政策ですね。私は私なりの考え方で、これによって景気が直ちにすばらしい景気になる、十万戸の住宅によって解決できるとは思っておりませんが、長官は、この住宅問題の十万戸促進によって、国内的な景気経済企画的にどのような上昇ムードをたどるかという御見解、お考えがありましたら、ひとつお示しいただきたいと思いますが、どうでしょう。
  93. 倉成正

    倉成国務大臣 住宅建設は非常にすそ野が広い、住宅を建設いたしますと、これによってセメントとか木材とかいろいろなものの需要が出るのみならず、これに関連する什器であるとかいろいろな関連の需要がこれに付随して出てくるということでございまして、景気対策としては、特に住宅が不足というか住宅の質が非常に悪い今日の日本状況におきまして、大きな意味を持っておると思います。十万戸で事業費にいたしますと大体八千七百億程度でございますけれども、間接効果、乗数効果を入れますとこの二倍程度の効果が出てくるというふうに考えておるわけでございます。そのうちの相当部分は五十二年度中に出ますけれども、残りは五十三年度の方にこの効果が出てくるということでないかと思っております。  ただ、今度の十万戸のほかに、民間の住宅建設というのをあわせますと全部で大体百六十万戸前後の住宅建設でございますから、今度十万戸の住宅公庫の枠をつくりますと、民間で建設しようといったものが一部分今度の住宅公庫の枠に食い込んでくるという問題が若干あるかもしれません。したがって、その部分、従来なら民間で建設したであろうものが若干少なくなる、そういうものもあわせていろいろ私ども計算をいたしておるところでございます。  長期計画としては、御案内のとおりわれわれが前期五カ年計画の中で八百六十万戸、実は建設しようという考え方を持っておるわけでございます。しかし、住宅は四十八年で、全国各都道府県をとりましても、もう量では充足してしまったということですから、これからはやはり質の問題ではなかろうかというふうに思います。景気対策には非常に大きな柱になる、そういうふうに思っております。
  94. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 ただいま説明を聞きましてよくわかったということになるわけでありますが、住宅政策の、住宅金融公庫によるいままでの、最近の制度からいきますと、抽せんで当たるということになるわけですね。もう一つは集団的に申し込んでもらうという二つあるわけなんです。国の貸してくれる金というのは、いままでは四百五十万円まででありましたが、今度は改正して五百五十万まで貸そうではないかということが論議せられて、決定せられるのも今度の抽せんからそうなることだろう。抽せん制度が一部なくなって、低所得者に限っては抽せんでなくても与えましょうという新しい方針がまた打ち出されたように聞いております。非常に時を得た考え方だと思っております。  ところで、五百五十万では自分の家を持つという夢もなかなかかなえることはできません。だから、やはり苦労して、たとえ三百万でも二百万でも預金したものをおろさなければならない。あるいは友達、親戚等からも融資を受けて、せめて八百万円なり九百万円の住宅を建てる、こういうことになる。政府の貸し出しの倍近くの金で建てていくわけです。そういう面からいきますと、政府の十万戸に対して五千五百億の金の倍近くあるいはもう少し少なくなるか多くなるかは別として、相当大きな金額が動くということだけは事実なので、そういう面からすそ野が広い、こういうふうにおっしゃいます。私もそう思っておるのです。賛成者の一人ですから。公共事業で高速道路をつくる必要もあるであろうけれども、それは鉄材、生コンクリート、そして労務費というものに終わっていくわけでありますが、住宅一軒一軒は、ガラスの何枚かが、あるいは畳の何枚かが、あるいは細かい話でありますが、水道のじゃ口が売れていくというように、品目から数えていっても七十なり八十のものが寄せ集められて一軒の住宅が建つのですから、すそ野の広いことだけは疑いない事実であります。しかし、いまのみんなが冷え切って、何とかつかもうつかもうとしておる零細中小企業の人々を潤わせるという、そうしたものの回転力というのは一日も早くやってもらうということが必要であろう。時期を逸するようなやり方なら、どんなうまい政策をしていただいても、それがじり貧的にずっと進んでいくというようなことだったら成果が上がらないと思うのですよ。これを経済企画庁長官にお願いしたいと思いますが、一日も早く実行に移せる体制にどう持っていくかということなんです。資格を審査してもらって着工するという段階までいくには、いままでの事例からいきますと、相当の日にちがかかるわけですよ。これが役所仕事であり、役所のあり方だといってもあえて過言でないと思うのです。話ができた、そういうふうに進むのだと言っていましても、実質それが行えるという時点というのは相当日にちがかかってぐる。日にちがかかっていくことによって期待したものが期待でき得ないという形になる恐れがいままでにずいぶんあるのです。住宅金融公庫でお金を貸してもらって建てた住宅というのは、私の調査で記憶するものでありますが、三百万戸近くあるのです。三百万近くの戸数の中で、お金を返さないとかトラブルの起きておるというのはたったの二十戸、三十戸程度で、あとは回収がうまくいっておるし、スムーズに進んでおるのですよ。だから、前に建設大臣にもそういう質問をしたのです。もっと住宅をたくさん建てること、個人の住宅の望みをかなえさせてやるという政策が今日の時代に必要でないかという質問をしたのですけれども、利子補給が大変であるからという答弁に終わったわけですが、政府が踏み切って今度はやってくれることになったので、非常に嬉しいことだと私は思いますが、いま言ったような問題について、経済閣僚の一人として私の言ったことに御賛成していただけるか。そういうような早くやれるような体制を整えていただくことに、今度何か閣僚会議のときにも建設大臣、関係者によく発言していただきたいと思いますが、大臣のお考え方はどうでしょうか。
  95. 倉成正

    倉成国務大臣 まさに丹羽委員からお話しいただいた点がポイントでなかろうかと思うのであります。今回の住宅対策につきましては、御案内のとおり住宅公庫の弾力条項がございまして、これは国会の議決がなくとも枠を広げることができる。それから利子補給が従来あるわけでございますけれども、これも金利の低下によって利子補給の財源は住宅公庫の方にあるということでございまして、これはもう補正予算の成立を待たずして十月にすでに募集を開始しておるわけでございます。したがって、若干は残っておりますけれども、大部分は十月に募集をいたしたわけです。したがって、募集をして一月ぐらいの間を経まして抽せんをする。そしてかかりますから、大体三カ月から四カ月目がピークで着工できるということでございます。したがって、先ほど相当部分が五十二年に効果が出るというふうにお話しをしたのは、そういうことを頭に置いて申し上げた次第でございます。  それから、やはり住宅公庫で借りられる人というのは、土地の手当てが済んでいる人なんですね。ですから、土地が全然ない人がこれから住宅をつくろうということになりますと、住宅公庫で借りて、また自己資金を工夫しましてもなかなかできないということになるものですから、やはり土地の問題というのもあわせて考えていかなければならないというのが今後の課題じゃなかろうかと思っておるわけでございます。丹羽委員の御指摘まことにごもっともでございます。そのとおりに考えております。  なお、今回低所得の方に抽せんを省くという問題がございましたし、また、すぐ効果があり、すぐ仕事ができるということで、賃貸、分譲住宅ということで、業者が土地を持っておりまして、そしてすぐ着工できるという枠もつくったわけでございまして、景気対策に効果が出るような配慮を、建設省と打ち合わせて万全の態勢をとっておるというのが実情でございます。
  96. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 もう少しお尋ねいたしたいと思います。  これも同じような住宅問題で、建設大臣に尋ねるべきであろうと思うが、これは将来の建築、そうしたものに対する経済企画庁としてのお考えの中に取り入れておいていただきたいと思いますが、何々ハウス、何々どうだとかいうたくさんの住宅の、政府の援助を受けておるとは申しませんけれども政府からほとんど指定的な、この業者は非常に優秀だという折り紙つきの業者が相当数あるわけなんですね。この業者が建てた住宅の中に、実は特許的なものでいろいろの機材が使ってあるわけなんです。だから、たとえば、まだそういう事態が起きてきませんけれども、私は愛知県ですが、あの大きな伊勢湾台風のような災害が起きたときには、果たしていま建っているような、あの近代的建物の住宅が持ちこたえ得るかどうかということに私は非常な疑義を持つわけなんです。これは最初に申し上げたように、建設大臣に話すべきかもしれませんが、その住宅が傷ついた、さて今度それを直そうと思うときに、いままでの町大工さん、親戚におる大工さんを連れていっても全然機材が違うから直すことができない、なぶることができないということなんです。そうして、でかしてくれた住宅会社を訪ねていくと、その住宅会社はもうすでにつぶれている、ないという現象に当たる。そういうときどうするのですか。これは日本経済における一つのひずみになると私は思う。ここに住んでいる人たちは何年か後に大変な苦しみをしなければならぬ事態が起きてくると私は思っておるのです。伊勢湾台風のようなああいう被害でなくても、自然的に壊れたものでさえ直すことが困難だ。そしてあちらこちら探し求めてやっと直す人を見つけ機材を見つけてくると、大変な金を取られなければならない、また、その人に出さなければ直らない、こういうことなんですね。  私ごとを申し上げまして非常に恐縮ですけれども、先日テレビの映りが悪くなった。もう四、五年使っておるから悪くなったのは無理ないだろうと思って、買ったテレビ屋さんへ直してくれと言って頼んだ。そうしたらチャンネルを回して、ああだめですよ先生、これは全然だめですよ、新しいのを買ってくださいと言う。直らぬかと言ったら、絶対直りません、これはだめですよ、こう言う、ああそうか、それは困ったな、君のところから買ってまだ四年か五年くらいじゃないか、いい考えはないかと言ったら、専門的に見てもうだめですよ、こう言う。だから、やむを得ぬからそれじゃひとつ買おうかと思ったが、待て待て、まだ新しいし、修理もあれだ、君のところがだめだと言うならこれはどうするのだと言ったら、これはもうくず川へほうり込むのです。ただでは持っていってくれませんから、銭を出してどこかへ捨ててしまうのですよ、こう言う。そんなことまでしてもらわぬでもいい、考えるわと言って帰ってもらって、そしてテレビ病院という、何かテレビ直しますという会社へ電話した。そうすると、来てくれて見てくれて、ちょっと一日貸してくださいと持っていった。そして明くる日持ってきたから、これはもう直らぬと言ってきたのかと思ったら、もうこれでいいですよと言って据えつけてくれた。新品と同じことに映るのですよ。大臣、そういうことまで御研究になったかどうかは知りませんが、国民の生活の上においてそれは大きなひずみがある。もう使いなさい、使いなさい、それは捨てなさい、使い捨てにしなさいという考え方がいまだに消えていないということと、業者自身の考え方に本当に物を大切にしましょうという考え方があるかということなんです。  これは失礼ですけれども、私はいま何事を頼むにも、何事をやるにも、みずから自分に言って、一つ一つが経験だと思って話し合ってみますと、そういう形があらわれてくるのです。これはやはり高所に立って、いろいろの政策を打ち出される前に基本的にはこういうものをお考えになった上に立って物の判断をしながら、政策を進めていただく時代が来たのでないかと思うが、大臣、どうお考えになりますか。
  97. 倉成正

    倉成国務大臣 いまの消費者の態度、それからまたいままでの企業の態度というのは、どうしても高度成長時代の物の考え方がございました。したがって、高度成長の時代にはいわば使い捨て時代ということで、結局もう、少し古くなった、捨ててしまう、そういうことがいまお話しのようなテレビの問題にあるのじゃなかろうかと思います。しかし、すでにもう今日、資源制約時代に入っておりますので、物を大切に使っていく、そして修繕して間に合うものは修繕していく、そういうことがこれからの消費者の態度でもなければならないし、また企業の態度でもなければならないと思うわけでありまして、自動車なんかもモデルチェンジが大分自粛されてきたというのも、やはりその一つのはしりじゃなかろうかと思うわけでございます。  いまお話しの住宅は、恐らくプレハブ住宅が一番典型的なものでないかと思います。非常に見かけはいいのですけれども、ちょっとどこかで雨漏りがしたりいろいろな欠陥が出てくると、これはもうなかなか直すことができないということで、これに対する苦情が非常に多いわけでございます。したがって、この問題については、建設省においても十分指導をするように、それからまた、私の方の国民生活局もそういう意味で苦情を受け付ける窓口になっておりますので、私ども国民生活局あるいは国民生活センターというのもそういうものについて取り組むようにいたしておるわけでございますが、せっかくのお話でございますので、これからも十分そういう問題について業者にも注意を換起し、そして、消費者もまたそういう態度をこれからやってまいりますように啓発をしてまいりたいと思っております。
  98. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 どうもありがとうございました。
  99. 原茂

    ○原(茂)委員長代理 春田重昭君。
  100. 春田重昭

    ○春田委員 最初景気の動向についてお伺いしたいと思いますが、今日の日本経済というものは円高の動きに一喜一憂しているわけでございまして、このことは大臣も先刻御承知のとおりでございます。政府は五十二年度の経済成長の見通しを実質において六・七%、名目で一三・七%ですかに置いておりますけれども、この円高によりましてこの成長率も非常に危ないのではなかろうか、このような声が出ておりますけれども長官はこの円高による経済成長率影響をどのように見ておられるのか、最初に御見解を賜りたいと思います。
  101. 倉成正

    倉成国務大臣 最近円高の傾向が非常に強まってまいりまして、この円高が輸出に影響を及ぼしてくる。特に輸出比率の高い輸出産業、中小企業等に大きな影響を及ぼしてくるということは御指摘のとおりでございます。ただ、これが経済成長にどういう影響を及ぼしてくるかということになりますと、御案内のとおり円高があったからすぐその時点で輸出が減るというものではなくして、やはり相当のタイムラグがある。すでにいま成約をしているものがございます。そういう点もございますし、また同時に、操業度が非常に低い状況でもございますので、やはり円高で多少出血であっても輸出をしなければならない、そういうものもあるものですから、輸出にどういう影響が出てくるかということを判断するのは現在の時点ではなかなかむずかしいのじゃなかろうか。それから輸入がふえてくるということが一般的には言えるわけでありますけれども、それではどのくらい円高によって輸入がふえてくるかということも、いましばらく様子を見ないと数量的に把握することはむずかしいのではなかろうかと思っております。民間の経済機関でいろいろな推測をいたしておることもよく承知をいたしておりますが、政府として責任ある立場でいろいろやるということにつきましては、いろいろな仮定の条件を立てなければならないことでございますから、円高がどういう状況で続いていくのか、そしてどういうふうにこれから経済が動いていくのかということをもう少し見きわめる必要があるのではなかろうかと思っております。
  102. 春田重昭

    ○春田委員 円高もそうでございますけれども日本経済は非常に不景気のどん底にあるわけでございまして、そういう面から言ったならば、昨年が実質経済成長目標は五・七%で、最終的には五・八%で終わったわけでございます。ことしは六・七%を置いているわけでございますけれども、そういういろいろな条件を含めてさらに昨年以上に厳しいのではなかろうかということが出ているわけでございまして、軌道修正を大きくやる必要があるのではなかろうかという声も出ておりますし、業者からもそういう声が出ているわけでございます。そこで、政府は、九月の初旬、二兆円にわたる総合景気対策を立てられたのでございますけれども、その後、この総合景気対策を立てられた以後においても相当な変動が出ておりますので、この時点からまた変わってきたのではなかろうかということも言われております。     〔原(茂)委員長代理退席、委員長着席〕 そういう点で、長官はもう少し推移を見たいということでございますけれども、この時点で、再度聞きますけれども成長率六・七%の見通しというものは確実にいけるかどうか、総合的に判断してどのようにお考えになっておりますか。
  103. 倉成正

    倉成国務大臣 九月三日に私どもが決定いたしました政府の総合経済政策によりますと、五十二年度中に出ます効果が一兆五、六千億、五十三年度の上半期約半年間くらいの間に一兆五千億強の効果が出る、こういう国民経済計算上の計算をいたしておるわけでございます。したがって、これで六・七%の成長を達成するというのが先般の説明でございます。その後、円高が非常に急速に出てきたということで、これがどういう影響を及ぼしてくるかということは、先ほどもお答え申し上げましたように、私どもとしましてもこの影響はかなりいろいろあるのじゃなかろうかと思いますけれども、先ほど申しました時間的なずれであるとか、あるいは円高のこれからの見通しであるとか、いろいろな要素がこれから出てまいりますので、もうしばらくこの様子を見きわめる必要があるのじゃなかろうかと思います。  したがって、私どもがいまやるべき対策二つでございまして、一つは、先ほど丹羽委員からもお話がございましたように、総合経済対策を着実に実行していくということでございまして、五十三年度に半分の効果が出るわけですから、この問題についてももう少し早く効果が出るような方法はないだろうかという工夫も必要でございますし、また同時に、この円高によって直接打撃を受ける産業について十分な配慮をしていく必要がある、そう考えておる次第でございます。
  104. 春田重昭

    ○春田委員 もう少し推移を見たいということでございますけれども、そうしたら、現時点では長官としては六・七%の経済成長はできるという考え方に立っておられてそういう御答弁になっているのか、その点もう一回確認したいと思います。
  105. 倉成正

    倉成国務大臣 大変困難な状態でございますが、六・七%成長が達成できるように政府としては最善の努力を尽くしたいと思っております。
  106. 春田重昭

    ○春田委員 最善の努力を尽くすということでございまして、達成できるという確信は得られなかったわけでございますけれども長官、この二兆円の総合景気対策で何%の経済成長が押し上げられると見てこの景気対策を組まれたのか、その点どうですか。
  107. 倉成正

    倉成国務大臣 私ども、今度の政策をやらない前に大体六%弱、六%をちょっと切るのじゃなかろうかという感じを持っておりまして、今度の政策によりまして六・七%の成長が達成できる、そういうふうに判断をいたしたわけでございます。
  108. 春田重昭

    ○春田委員 となれば、いわゆる総合景気対策を行う前の状態であれば六%弱で、今回〇・七足して最終的に六・七いけるのじゃなかろうかという見通しじゃないかと思うのですね。そこで、先ほど長官からもお話があったように、総合景気対策が九月三日に一応試案を出されて十月初めに閣議決定されたと聞いておりますけれども、このときの対ドルレートはインターバンクで幾らだったのか、御説明願いたいと思います。
  109. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 技術的なことでございますので、私からお答えいたします。  レートにつきましては、現在フロート制でありますので、将来について予測するということが困難でございますし、それからこの種の予測をいたしまして経済の見通しに織り込むというのにはいろいろ問題がございます。したがって、従来もそうでございますが、その見通しを作成いたしました時点における中心レートを採用しております。したがって、今回も九月の二日に対策を打ち出したわけでございますが、その当時の中心レート二百六十六、七円をとっております。
  110. 春田重昭

    ○春田委員 二百六十六円から二百六十七円ということでしょう。今日においては二百五十円ですね。そうしたら十六円ないし十七円の円高になっておるわけでございます。経済の専門家によれば、円がドルに対して一〇%切り上げられた場合においては成長率は大体〇・五%ダウンするのじゃなかろうか、このように言われておるわけです。したがって、九月二日に二百六十六円で決められたのが今日においては二百五十円、この十六円ないし十七円のアップを率にして換算すれば七%になってしまうわけですよ。これを単純計算していったら、いわゆる七%を〇・五に掛けたらいいわけですから、〇・三五ダウンするのではなかろうか。こういう点からいったら、六・七%の経済成長というのは、九月二日時点では確かに二兆円の総合景気対策でそのくらいいくのではなかろうかと見られたけれども、その後、円高によってこのように情勢が変わってきた、こういう点が言えるのではなかろうかと思うのですね。その点からいったら六・七%はきわめてむずかしいのじゃなかろうか。  これは数字の羅列で一応言うわけでありますけれども、確かに長官は、輸出の面においてはそういうタイムラグがあって長期契約なんかやっているとおっしゃいますけれども、それはプラントなんかの場合においては長期契約であろうと思いますが、中小零細企業の方たちの契約というのは短期契約でございまして、もう一月前、二月前の契約だってあるわけですから、相当大きな響きがあるのじゃなかろうかと思うのです。やはり輸出が伸びなければ、当然内需の方においても影響があるわけであって、全体的には円高影響は非常に強いと私は見ているわけでございます。この点、九月二日以降十七円、率にして七%上がっているという点から考えて、経済成長率は非常に厳しいのではないかと私は見ているわけですが、どうですか。
  111. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 お答えいたします。  先ほど長官から御報告申し上げましたように、円高による影響はいろいろな面であらわれることでございます。需要の面で申しますと、直接的には輸出入、間接的には設備投資あるいは在庫投資というような面にあらわれるわけでございます。  ただし、あらわれ方はいずれもタイミングがございまして、円高になればすぐその効果が出てくるわけではございません。特に輸出入につきましては、円高になりました当初は引き続き黒字基調が続くというのが、従来二、三度ありました経験からも言えるわけでございますし、諸外国の場合でもレートが変更になってその効果がすぐにあらわれるということではございません。  したがって、中小企業あたりの成約が現に減っている一足踏みをしていることは事実でございますし、また企業の収益が恐らく円高になったためにかなりドラスティックに変更を受けることはありますが、六・七%の成長の基礎になりました総需要についてそのような効果が果たして年度内にあらわれるかどうかについては、もう少し事態の推移を見なければ何とも申し上げかねるということではないかと思います。
  112. 春田重昭

    ○春田委員 この問題につきましては、経済界からも非常に厳しいのではないか、また自民党の河本政調会長も第一次の総合景気対策円高によって相殺されたのだ、したがって第二の総合景気対策が至当ではないか、このような発言も各所随所にあるわけでございます。  その背景は、経済成長六・七%を達成しなければならないという先進諸国会議で総理が発表したその大義名分で、何としてもやらなければならないという点で一生懸命なさっているわけでございますけれども、現状においてはそのように厳しいのではないか。したがって、そのような河本政調会長の発言があるし、経済界からも非常に不況である、そういう点でさらに第二の総合景気対策が必要でなかろうかということが出ているわけでしょう。その点はどうお考えになりますか。
  113. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 円高影響がどのように経済に出てくるかということについては、先ほど申しましたようにタイムラグがございますので、年度内に限って言えば成長率にはそれほど大きな影響はないとも考えられますが、実態的な面におきまして、ただいま先生が御指摘のように大変厳しいものがあることは十分承知しております。特に円高が最近のように急速にあらわれるという事態は、率直に厳しいものとして受け取らなければいけないということで、中小企業対策あるいはもっと広い円高対策を精力的に取り上げるということでやっているわけでございます。
  114. 春田重昭

    ○春田委員 先ほどの第二の総合景気対策という面でお尋ねいたします。  一昨日の新聞では、第二の総合景気対策政府としては五千億くらいの年末融資を中心とした対策を立てたいということで柱が出ておりますけれども、この辺のところは、やはり円高による相殺をなくして、これによって成長率を上げようという考えがあるのではないかと思いますけれども政府としては第二の総合景気対策をどのようにお考えになっておりますか。
  115. 倉成正

    倉成国務大臣 いまお話しの年末融資でございますけれども、これは例年政府三機関において行うものでございます。したがって、ことしは特に厳しい状況でございますから、そういう意味での配慮を加えた年末融資を行うことは当然のことではなかろうかと思います。  しかし、いまお話しのは、恐らくそういう例年の問題じゃなくて、そのほかに特別な対策をもう一段というお話でございますが、それについてはいまのところ考えていないというのが実情でございます。
  116. 春田重昭

    ○春田委員 さらに、経済企画庁では五十二年度経済見通しを立てられております。十月三日改定見通しが閣議決定されたわけでございますが、これは先ほど言ったように、九月二日のそちらの試案という形で出てきて改定されているわけでございますけれども、その後急速に円高になっておりますので、この改定見通しをさらに改定する必要があるのではなかろうかと私は思っているのですが、その点はどうでしょうか。
  117. 倉成正

    倉成国務大臣 先ほどお話し申し上げましたとおりに、六・七%の成長を達成すべく全力を尽くしているのが現在の状況でございますので、いまのところ改定する考えは持っておりません。
  118. 春田重昭

    ○春田委員 長官としては一応六・七%に向かって全力を挙げて努力する、こういうことでございます。  若干角度を変えますが、マクロ的に六・七%成長を達成したとしても、ミクロ的に見た場合に、全体の成長の中に残された構造不況業種というものがあるわけですね。これは決して忘れてはならない。これはいま国会で相当論議されておるわけでございますので、長官等も御承知のことだと思いますが、昨年の五・七%の経済成長を達成した場合でも相当そういう業種がありまして、毎月毎月千四、五百件倒産している。年間で一万四、五千件が企業倒産したわけでございます。そうした意味からしても、今年度六・七%経済成長は達成するけれども、その陰では相当企業倒産があるのではなかろうか、こういうことがうかがえます。  そういう点で、経済成長が最終的に何%になるかわかりませんけれども、たとえ六・七%を達成したとしても、政府としては六・七%達成しましたよと国内外を問わず全世界に向かって胸を張って公表できるものではないかと思うわけです。そういうふうにミクロ的に、個々的に見ていった場合、かなり厳しい業種があるわけでございますので、マクロ的に見た場合には六・七%で経企庁の試算どおりいったとしても、ミクロ的に言った場合そういう点が見られる。この点、細かい配慮が今後必要ではなかろうか、こういう点を考えますけれども、経企庁としては今後そういう点についてどのようなお考えを持っておられるか、長官の御所見を賜りたいと思います。
  119. 倉成正

    倉成国務大臣 いま御指摘の点はまさにそのとおりでございます。六・七%成長が達成されても、その中身が問題でございまして、これが輸出主導型の成長であったら世界の国々から非常に風当たりが強いということでございます。  それからもう一つは、六・七%成長を私ども目指しておりますのは、雇用を安定し、そしてまたある程度の産業転換等を考えていかなければならないときに、ある程度の成長がなければ非常にむずかしい、そういう問題意識があるわけでございます。したがって、六・七%の成長が達成されましても、構造不況業種、安定成長の後にも問題を抱えている業種、具体的に申しますと繊維産業、途上国の追い上げのもの、あるいは高度成長のとがめとして出てまいっております平電炉産業が典型的なもの、またエネルギー価格高騰によりまして国際競争力が非常に失われつつあるもの、アルミ製錬あるいは石油化学あるいは造船業、精糖業、それぞれ理由は違いますけれども、構造的な不況業種というのは依然として問題を抱えておりますので、六・七%成長の達成が仮にできたといたしましても、来年の三月までの間にこれらの問題がすべて片づくわけではございません。かなり時間をかけて着実に少しずつ改善をしていかなければならないものであろうかと思いますので、そういう部門については大変厳しい状況が残ってくる。しかし、その厳しさを乗り越えていったときに、初めて高度成長ではないけれども落ちついた形の安定成長の姿が出てくる、そういうことを私どもは期待しておるわけでございまして、これからしばらくの間は相当厳しい中を歩んでいかなければならない、特に円高の問題が拍車をかけておりますので、そういう時期に直面している、そういう認識をいたしております。
  120. 春田重昭

    ○春田委員 「昭和五十二年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」というのをことしの二月三日に閣議決定されているわけでございます。これは毎年こういう形で出てくると思うのですが、いま言ったマクロ的な考え方じゃなくして、ミクロ的にも細かい配慮をして、経企庁が各省庁にそういう連絡調整を図るべきである、これを要望して第一段階の質問を終わりたいと思います。  次に、黒字減らし対策でございますけれども政府は財界の方々といろいろお話をなさっているようでございますし、庁内でもいろいろ御検討されていると聞いておりますけれども、黒字減らし対策というのはいかなる内容なのか、具体的にお伺いしたいと思います。
  121. 倉成正

    倉成国務大臣 九月二十日に私どもは対外経済対策というのを発表いたしまして、これは七項目より成っております。  第一は、東京ラウンドへの積極的な取り組みということで、いわゆる関税率の引き下げ、あるいは非関税障壁の軽減等に積極的に取り組んでいくわけでございます。関税引き下げの計画については、明年の一月十五日までに交渉各分野のオファーを提出することになっているわけでありまして、この作業を早く進めていくというのが一つのポイントでございます。  それから第二番目は輸入の促進ということで、原油の貯油量の積み増しの実施ということで、これについては八月末の貯油の水準が原油換算で約六千九十万キロリットルになっておるわけでありますが、ことしの秋までに過去最高の貯油の程度まで積み増すとおよそ三百六十万キロリットル程度になるということでありまして、これが大体三億一千万ドル程度になるというふうに通産省で発表いたしております。  それから、非鉄金属の備蓄の拡充ということで、銅や亜鉛地金の民間資金による備蓄の拡充ということでありまして、これは御承知のように、市中銀行が金属鉱産物の備蓄協会に直接融資を行うことにしておるわけでありまして、約三百億ほど融資をしておりますが、十月中に第一回の融資を行って買い入れを継続していくということで、これが今年度中に約一億ということでございます。  それから、ウラン鉱石の輸入の促進ということで、計画中のウラン鉱石の輸入促進を図るために輸銀の融資を活用するということで、日本原子力発電株式会社とアメリカの鉱山会社の間で三年間分のウラン鉱石の購入契約をする、こういう問題があるわけでございます。  その他、航空機の安定的輸入の確保であるとか、備蓄用の飼料穀物の繰り上げ輸入ということでトウモロコシ、コウリャン等について繰り上げ輸入をする、あるいは飼料用大麦について年度内に三万トン程度繰り上げ輸入するというようなことを考えておるわけでございますが、これらはいずれも金額としてはそれほど大きなものではございません。  六番目には、残存輸入制限品目輸入枠の拡大などについて検討を進めていくということ、七番目には、輸入製品の常設展示事業の充実強化ということで輸入促進ミッション等を派遣して、そして開発途上国、先進国からの輸入製品を常時展示して、こういうものをできるだけ入れていくということ、あるいは日本からこれらの国に対して輸入促進のミッションを派遣するということを考えておりまして、これらの問題を着実に進めていくということであろうかと思います。  このほかに何かいい知恵はないだろうかということでいまいろいろ知恵をしぼっているところでございますけれども、御案内のとおり、日本輸入というのが原燃料を中心とした輸入構造になっておるものですから、消費財が非常に少ないわけなんですね。そこで、急に輸入をふやそうとしてもなかなかいい知恵が具体的にはいま申し上げました以外には見つかりにくいということでございます。しかし、何とかして、いい方法はないだろうかということで鋭意検討をいたしているのが現状であります。
  122. 春田重昭

    ○春田委員 いまの原油と非鉄金属の備蓄につきましては金額の明示があったわけでございますが、ウラン鉱石は予想では大体どれくらいなのか、具体的に……。
  123. 大永勇作

    ○大永政府委員 ウラン鉱石につきましては、現在大体固まりましたものが、日本原子力発電が購入いたします分で一億三千万ドルでございます。そのほか一、二の会社がスポット物につきまして前払い輸入を検討いたしておりますが、さらに、最近新聞紙上にも出ておりますが、備蓄用といたしまして、アメリカのERDAから濃縮ウランを買いつけることにつきまして打診を行っておるわけでございます。天然ウランベースにしまして大体一万トンぐらいということで打診を行っております。金額は、価格によって変わってまいりますが、一応のめどとしてはそれができますれば十億ドル程度までいくのではないかと思います。
  124. 春田重昭

    ○春田委員 そうしたら、当面の黒字減らし対策として、全体の額としてどれくらいの額になるのですか。
  125. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 先ほど大臣から御報告申し上げました十月二十七日現在での進行状況は、通産省の関係が約七億ドル強でございます。それから、農林省の関係が約八百万ドルでございますが、その後いろいろ検討しておりますので具体化がさらに進んでおりますけれども、今日ただいまの時点の数字は十月二十七日段階のものでございます。
  126. 春田重昭

    ○春田委員 ということは七億八百万ドル、こういうことでいいわけですね。
  127. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 先ほど資源エネルギー庁から話がございましたようにスポット物等がございますので、それよりは若干大きくなるということもあり得ます。
  128. 春田重昭

    ○春田委員 現在の外貨準備高というのはどれくらいあるのですか。
  129. 倉成正

    倉成国務大臣 八月末で大体百七十七億六千七百万ドルということですから、百八十億ドル弱だと思います。
  130. 春田重昭

    ○春田委員 円高の直接の原因国際収支の黒字ということで、総理は当初七億ドルの赤字ということで所信表明をおっしゃったのですが、六十五億ドルの黒字になったのだということで、八月末で大体百七十七億ドル、たしか十月ごろには百九十億ぐらいの準備高になっているのではなかろうかという記事をぼくは読んだことがあるのですが、いずれにしても高い準備高になっているわけですね。そこで、こうした緊急当面の黒字減らし対策で十億プラス幾らかのそういう対策が立てられたわけでございますけれども、最終的には大体どれくらいを減らすという、そういう計画というか、見込みというのはお持ちになっているのですか。
  131. 倉成正

    倉成国務大臣 いま外貨準備のお話がございましたけれども、外貨準備は御承知のとおりに、長期資本収支並びに短資の流入という問題がございまして、これで決まるわけでございます。したがって、いま問題にされておるのはそういうことではなくして、むしろ経常収支あるいは貿易収支の問題について議論がされておるところではなかろうかと思います。もちろん識者の中には、そういう経常収支じゃなくて、もっと基礎収支等で議論したらいいのじゃなかろうかという議論もございますし、われわれが前期経済計画で考えておりますのは、基礎収支で均衡するということで、あの計画の中では、御承知のとおり経常収支四十億ドルの黒字で、そして長期資本収支その他移転収支で四十億ドルの赤字、そこで基礎収支でとんとん、こういう考え方をとっておるわけでございます。  したがって、いま幾ら減らすのかというお話でありますけれども、われわれとしては、とにかく現在の円高というのが、日本の経常収支の黒字、あるいはアメリカのそういう貿易収支、経常収支の赤字というのが背景になっておりまして、ことしの一月から九月までの数字で申しますと、アメリカが大体貿易収支で百九十二億九千八百万ドルの赤字でございます。そのうち対日の赤字日本から申しますと貿易の黒字が五十八億ドル強でございます。こういうことが背景に、アメリカだけを関連して申しますとそういうことになっている。そういうことで、いま数字を幾らにしたらということではなくして、私は、むしろ日本輸入という構造から申しまして、そう簡単に輸入がふえるということは非常にむずかしいと思うのでございます。そして前倒しすればまた後でその部分が減ってくるということにもなるわけでございますから、やはりわれわれが一生懸命になってそういう姿勢を示しているということを、アメリカのみならず、世界の国々の人たちに明らかに知ってもらう。そういうことを行動で示すということに意味があるのではなかろうかと思っておるわけでございます。
  132. 春田重昭

    ○春田委員 いま関税の引き下げの問題がございましたけれども、これは東京ラウンドの交渉妥結を待たず、その前に引き下げるといううわさが出ているように聞いているのですけれども、その点はどうなんですか。
  133. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 東京ラウンドの進捗状況、予定は先ほど大臣が御答弁申し上げたとおりでございますが、最近問題になっておりますのは、その東京ラウンドを前倒しにすると申しますか、先取りをするということで黒字減らしの対策の一環にしたらどうかということでございまして、ただいま関係当局を中心に検討を進めております。それは前倒しの実行をいたしまして、それが東京ラウンドにカウントをされるということが前提でございます。もちろん、必要な法改正その他は当然に手続を踏んで行われるという前提でございます。
  134. 春田重昭

    ○春田委員 明快な答えがないわけでございますが、一説によると、五十四年度を待たず特定品目に限り来年度から、五十三年度より引き下げる意思がある、固まった、こういうことも聞かれているわけでございますが、そういう点どうですか。
  135. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 どの品目をどの程度下げるというようなことは決まっておりません。
  136. 春田重昭

    ○春田委員 年度ですよ。そういう細かい問題でなくして、五十三年度に引き下げる意思があるということで……。
  137. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 それは東京ラウンドの計画に従ってやるわけでございますから、当然そういう日程になります。
  138. 春田重昭

    ○春田委員 さらに、この黒字減らし対策の中に、海外での企業誘致という問題がいま非常に熱が上がっているように聞いているのですが、この点はどのように考えておられますか。
  139. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 お答えいたします。  先ほど九月二十日の対外経済対策について御説明申し上げましたが、その四番目の柱の中で「資本取引及び経済協力等」というのがございまして、ここでただいまの海外投資の関連が述べられております。  現在までの実施状況でございますけれども、第一の「円建て外債の発行促進」という項目につきましては、五十二年度の円建て外債の起債量は、九月末現在で私募債も含めてすでに八銘柄、千二百二十億円に達しております。当面、十‐十二月には起債規模がさらに拡大して、現在のところ千九百億円程度の発行が見込まれております。  それから、海外投資の一環といたしまして「経済協力の推進」ということでございますが、政府直接借款の実行の促進、その中では商品援助の部分も含まれているわけでございまして、従来コミットいたしましたものをさらに促進するというようなことでございます。  それから直接の海外投資につきましては、関税面その他におきましてこの促進を図るということで、昨年よりただいまのところかなり海外投資がふえておりますが、この傾向が今後も促進されるということを考えております。
  140. 春田重昭

    ○春田委員 そこで、関連して、通産省の方来ていると思うのですが、昨日の新聞で、イラン政府の要請で石油精製所を海外に立地したいという計画があるように記事が載っているわけでございますが、この話はどの辺まで進んでいるのですか。
  141. 大永勇作

    ○大永政府委員 従来、日本の場合には消費地精製主義ということで、原則的に精製は国内で行うということになっておりますが、ただ、油の確保のために相手方の協力をするという見地から、適当な場合には現地での精製もこれは協力しようという考え方に最近なっておりまして、イランにつきましてもそういうことで現在話が進んでおるわけでございますが、現在のところはまだそのフィージビリティースタディーといいますか、可能性につきまして検討しておるということでございます。一応の規模としては二十五万バレル・パー・デーの規模でございまして、一応の目標としては一九八三年あたりをめどにいたしておりますが、いま申し上げましたように、フィージビリティースタディーをなお両国でやっておる段階である、こういうことでございます。
  142. 春田重昭

    ○春田委員 いずれにいたしましても海外での投資でございます。特に企業誘致の問題につきましてはともかくも、過去においてはいろいろ日本企業の活躍がエコノミックアニマルとして相当ひんしゅくを買っている面もありますので、その辺のところは局長として黒字減らし対策のために積極的に進めるとともに、そういう点を踏まえて十分考えていく必要があるんではなかろうかと一応要望しておきますので、よろしくお願いしたいと思います。  さらに、黒字減らし対策の中には、関税の問題、それから海外からの輸入の問題とあわせて内需の拡大の問題があると思うのです。  そこで、特に石油の備蓄の問題でお尋ねするわけでございますけれども、これは通産省に聞いたらいいと思うのですが、五十年から五十四年の五カ年計画で九十日の備蓄が打ち出されております。このプロジェクトはスケジュールどおりはかどっていっているのかどうか、その点お伺いしたいと思います。
  143. 大永勇作

    ○大永政府委員 いま先生が仰せられましたように五十四年度末、つまり五十五年三月末に九十日備蓄ということで毎年五日ずつふやしております。したがいまして、今年度末は八十日備蓄ということになるわけでございますが、現在の見通しでは今年度につきましては、おおむねといいますか、八十日備蓄は達成し得るものというふうに考えております。
  144. 春田重昭

    ○春田委員 ことしはいいとしても、五十五年の三月までに九十日備蓄はできる見通しはあるのですか。
  145. 大永勇作

    ○大永政府委員 これはタンクの建設というのが大前提になるわけでございます。特に共同備蓄ということで、余りタンクを持たない中堅メーカーが共同してタンクをつくる計画を進めておりますが、幾つかの計画がありますけれども、今後相当立地の促進に努めませんと、また政府としましても積極的な助成をいたしませんと必ずしも楽観を許さない。われわれとしてはできるだけ努力をしてまいりたい、こういうことでございます。
  146. 春田重昭

    ○春田委員 用地の確保で非常に厳しいんではなかろうかと私たちも見ているわけでございますが、今回打ち出されたいわゆる石油の備蓄、黒字減らし対策の中に入っておりますけれども、これは昭和五十五年三月までに九十日分で六千八百万キロリットルですか、これで一応終わり、このような考え方で今回の対策一つの中に入っているのか。さらに九十日以上を備蓄していくんだ、こういうお考えなのか。その点お伺いしたいと思います。
  147. 大永勇作

    ○大永政府委員 五十四年度末に九十日になりますが、実はその後におきましても石油の消費がふえてまいりますので、この九十日分を維持するということが実はなかなか大変でございます。ただ、先生も御承知だと思いますが、ヨーロッパの各国なんかを見ますと、イギリスは北海の油田が出ましたので比較的備蓄日数は多くしないわけですが、そのほかのドイツ、フランスあるいはスイスといったようなところは百日あるいは百二十日以上の備蓄を持っております。アメリカも大体同様でございます。わが国といたしましても、やはり輸入依存度の非常に高い日本としては、九十日備蓄では十分ではないというふうに考えておりますが、先ほど申し上げましたように九十日備蓄を維持することだけでも大変でございますので、九十日を超える分につきましてはやはり国が直接備蓄をするという考え方に立つべきであるというふうに考えておりまして、実は来年度の予算におきまして石油開発公団によります備蓄ということで予算要求をいたしておるような次第でございまして、これには石油公団法の改正等を要しますが、来年度からわれわれとしては公団自身による備蓄ということをぜひ実現したいという考え方でおるわけでございます。おおむねその目標としましては、六十年度までに一千万キロリットルということで、約十日分に該当するわけでございます。
  148. 春田重昭

    ○春田委員 そこで、非常に用地の確保がむずかしいわけでございますけれども、電源立地の場合は交付金というものが各都道府県ないし市町村に出るようになっていますね。ところが、この石油の備蓄の用地確保については交付金が出ないのですよね。この辺の努力というものはされているのですか。見通しはどうなんですか。
  149. 大永勇作

    ○大永政府委員 実は本年度から、先生御承知の工業再配置補助金という中で、タンクの設置をいたしました場合に周辺整備等につきまして補助金が出るということになったわけでございますけれども、ただ、電源立地の場合と異なりまして、この場合には当該市町村には出るわけですが、周辺市町村には出ないわけでございます。それから金額につきましても頭打ちがあるということで、電源立地の場合に比べまして非常に見劣りがするわけでございまして、来年度からは工業再配置の中ではなくて、独立いたしまして電源立地に類似した立地交付金制度を設けたいということで、約百億円弱の予算要求を来年度行っております。
  150. 春田重昭

    ○春田委員 そこで、いわゆる陸地の石油の備蓄が非常に用地難ということが今後も考えられますので、対策として地下に貯蔵するとか海上備蓄、こういう問題を通産省としては検討されているみたいでございますが、地下の備蓄は別問題として、ここで海上の石油の備蓄の問題につきまして、いま長崎県の上五島ですか、あの地において計画が鋭意進められておると聞いておりますけれども、この計画の現状、どの辺まで進んでいっておるのですか。
  151. 大永勇作

    ○大永政府委員 いま先生指摘のように、長崎県南松浦郡上五島町というところで、三菱重工等が中心になりまして、現在、いわゆるタンク貯油方式によります備蓄、規模といたしましては約六百万キロリットルでございますが、これを五十五年三月末完成目標ということで計画をいたしておりまして、現在地元あるいは関係漁協等と話し合いを行っておりますが、まだ話し合いができているわけではございません。しかしながら、この交渉を積極的に進めますために、十月二十七日にこの推進のための会社を設立いたしております。これはいま申し上げました三菱重工のほかに、石油精製会社も入っておるわけでございます。われわれといたしましては、九十日備蓄を達成いたします上でこのプロジェクトは非常に重要な、積極的に推進すべきプロジェクトだというふうに考えておりますので、地元の折衝がうまくまいりましたならば、国といたしましても積極的に助成をして推進をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  152. 春田重昭

    ○春田委員 大体設計して建設して実用化の段階までにどれくらいかかっちゃうのですか。
  153. 大永勇作

    ○大永政府委員 タンクの場合には、着工いたしましてから大体二年間ぐらいであろうと思います。
  154. 春田重昭

    ○春田委員 となれば、五十五年春ということは、来年の春までに地元において話し合い、調整がつかなかったらだめなんですね。安全面とか環境保全ですか、汚染の問題等でずいぶん問題になっておるみたいでございますけれども、来年の春まで、いま鋭意努力なさっていると思いますが、間違いないですか。
  155. 大永勇作

    ○大永政府委員 システムとしまして、このタンク方式によります備蓄につきましては、国におきましても前々から研究をいたしておりまして、防災あるいは公害等の見地からいたしまして問題はないと思いますが、何といたしましても地元にこれを御了解いただくということが必要でございますので、これにつきましては当事者の努力と相まちまして、われわれといたしましても側面的に支援をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  156. 春田重昭

    ○春田委員 これは五十五年から五カ年で一千万の積み増しの計画の中に入っているのですか。
  157. 大永勇作

    ○大永政府委員 この上五島町の海洋備蓄は、先ほどもちょっと申し上げましたが、民間が九十日を達成しますために、いわゆる共同備蓄ということで関係会社が集まりまして備蓄をするという中に入っているわけでございます。公団が、国が直接備蓄をいたしますものにつきましては別途地域を選定する必要がある、こういうことでございます。
  158. 春田重昭

    ○春田委員 さらに運輸省の方にお尋ねしたいのですが、この問題につきましては運輸審議会に諮問なされていますね。この答申はいつごろ出るんですか。
  159. 岩田幸基

    岩田説明員 お答えいたします。  来年の三月を目途に大いに検討していただくようにお願いいたしております。
  160. 春田重昭

    ○春田委員 時間がありませんので、この問題はまた次回にいたします。  次に円高による影響ということで二点につきましてお尋ねします。  最初に構造不況業種、いわゆる輸出関連産業につきましての御質問でございますけれども、いま企画庁では輸出産業者を対象に調査をなさっていると聞いておりますが、これはいつごろまでにそういう回答が出てくるのか、またいままでも調査を何回かおやりになっているようでございますが、輸出関連企業円高による影響というものはどのようになっているのか、簡単で結構でございますから、御見解を賜りたいと思います。
  161. 中澤忠義

    ○中澤説明員 御説明申し上げます。  本年七月から全国の産地の中で二十二産地を選びまして十月までに三回調査をいたしております。その結果は、七月以降の急激な為替変動に伴いまして、特に十月に入りましてからの最近時点の調査によりますと、新規の契約、いわゆる発注が非常に落ちてきておる。円相場の先行き見通しがしっかり立ちませんものでございますから、模様ながめということで発注が落ちまして、手持ちの受注残高が減少しておるというのが調査の特色でございます。また二百五十円台に入っておりますので、為替差損につきまして、輸出関係の中小企業者の受注単価につきまして非常に無理が出てきておるという点が出ております。  また、ただいま先生指摘の、これからの調査につきましては、二十二産地を広げまして七十六産地につきまして、今月の半ばをめどにいたしまして、県と協力しながら現在産地の状況の悉皆調査をしておるという状況でございます。
  162. 春田重昭

    ○春田委員 通産省の方にお尋ねいたしますけれども、輸出関連企業が非常に厳しい中で、その対策として為替変動対策緊急融資制度というものがありますね。これは輸出比率二〇%以上の中小企業者を条件としておるわけでございますけれども、中には、特に繊維業者の中では、滋賀の高島の産地では平均一七%という、そういう業者だってあるわけですよ。したがって、この制度を二〇%以上なかったら利用できないわけでございますが、こうしたボーダーラインぎりぎりの業者に対して、中身をよく検討してもう少し弾力的に利用できるようなお考えはないのかどうか。どうですか。
  163. 中澤忠義

    ○中澤説明員 先生指摘の為替変動に対します緊急融資制度は十月一日から発足したわけでございますが、これは中小三機関につきましての別枠融資を設定したということでございます。したがいまして、中小公庫について申しますと、運転資金について言いますと、六千万円の基本的な枠がございますので、その中の運用としては、輸出比率が必ずしも高くない企業であってかつ円高影響を受けておるというものにつきましては、政府系の機関におきまして弾力的に運用するということはできると思います。またこの別枠制度の中におきましても、平均して二〇%ということではなくて、円高影響を受けます業種を指定いたしまして、その中の企業が二割以上輸出比率を持っているというものはこの別枠制度の対象にもなるわけでございますので、いずれにいたしましても、極力実際の企業がこの融資制度の恩典を受けますように運用してまいりたい、かように思います。
  164. 春田重昭

    ○春田委員 私が平均一七%と言ったのは、滋賀の高島の産地では全体で平均一七%の輸出比率だ、こういうことなんですよ。したがって、恩典が受けられるところもあるし、この制度が利用できないところもあるという意味なんで、かなりボーダーラインに近い線が滋賀のこういう繊維業者の中ではあるのではなかろうか、こういう点で言ったわけですよ。いずれにしろ二〇%以上が条件ということで、それ以下は別枠の対象にならないわけですね。それをもう一回答えてください。
  165. 中澤忠義

    ○中澤説明員 正確に申しますと、円高影響を受けます業種は五十八業種ございますが、この業種を指定いたしまして、その業種の中で輸出比率が二〇%を超えます企業につきまして対象とするというのがこの制度のたてまえになっております。
  166. 春田重昭

    ○春田委員 さらに、これは何回か指摘されていると思いますが、貸し出しの金利が市中金利の七・六%と同じということになっておりますけれども、これは私は納得がいかないわけです。こういう状態で厳しいので、この制度を利用したいという方が多いわけでございまして、政府としては何らか利子補給をする必要があるのではなかろうかと思うのですが、どうですか。
  167. 中澤忠義

    ○中澤説明員 十月一日から発足いたしました別枠融資制度につきましては、御指摘のとおり三公庫といたしまして七・六%の通利で行っております。最近の状況によりまして、先ほどお話し申しましたように、対象を広げまして改めて産地調査を実施しておりますが、その結果も見ましてさらに必要な対策をとるべきかどうか検討してまいりたい、かように思っております。
  168. 春田重昭

    ○春田委員 要するに課長さんでございますので、その辺の答えがきちっと出てこないと思うのですけれども、この金利の問題は相当あちこちから出ているわけでございまして、この制度を業者の方はほとんど知っているけれども、実際三分の一は、知っているが借りないという答えが調査で出ているのです。経済企画庁が前回調査をやった段階でも、この制度は確かに知っております。しかしせっかく借りてもどうせまた返さなければならないし、金利も相当高い、市中金利並みである、したがって借りられない、こういう声が約三分の一あるのです。そういう点で、こういう方々に対しては政府が何らかの金利の負担をして、利子補給をして、そして多くの方が借りられるように、せっかくの別枠でございますから、本当にこういう方たちが借りられるような条件にすべきである、このように私は要望しておきます。  最後に、この円高から得られる為替差益還元の問題でお尋ねするわけでございますけれども、総理もこの前のテレビの主婦との対談の中で、この円高物価安定の強力な武器にするということで国民の皆さん方の前に決意を発表なさっておるわけです。ところが、現実相当円高になっている面にしても、実際の輸入商品というものは安くなっていない、われわれ庶民の手の届く段階においては、商品は下がってないという現象が起こっているわけでございます。しかしながら、輸入物価指数は下がっているわけですよね。本当にそういう点では矛盾しておるわけでございますけれども長官はこの円高による輸入商品につきましての物価への影響というものにつきましては、どのように引き下げの御指導をなさっているのかお尋ねしたいと思うのです。
  169. 倉成正

    倉成国務大臣 御承知のように、卸売物価についてはかなりの影響が出ておるということを私ども数字の上でもつかんでおります。特に石油等については、石油会社値上げをしようと言っておりましても、今度の円高でその値上げを撤回するということも出てまいりましたし、また木材の価格、また午前中にも申し上げましたけれども配合飼料等も九月からトン五千円引き下げる、そういう形での反映は出ておると思うわけでございます。  ただ消費者物価につきましては、その消費者物価指数の中で直接響く輸入品というのがもうほとんどないわけでございますね。そういうことで、どうしても間接的にならざるを得ない。したがって、基本的には卸売物価がだんだん消費者物価に波及をしていく、卸売物価がこれだけ下がっているのだから、消費者物価になおこれが響いていくように最善の努力をしたいというのが基本的な姿勢でございます。  したがって私どもは、いままでやりましたことは、もうすでに御承知のとおり三十六品目について追跡調査をいたしまして、輸入消費財円高によってどういう影響を受けているかということをいろいろ勉強したわけでございますけれども輸入品が下落したものが十五品目ありまして、そのうちで小売価格も下落したものが、腕時計あるいは木材、配合飼料、乗用車、カラーフィルム、書籍、雑誌というものがあるわけですけれども輸入価格が下がりましたけれども小売価格上昇または横ばいというものがございます。この中で代表的なものを挙げますと、たとえばマグロとかプロセスチーズとかいうのがあるわけでございます。これらはそれぞれ、マグロの場合にはやはり国内価格が高いという問題がありますし、プロセスチーズの場合には国内の酪農製品とのミックスという問題で、やはり高くなってくるというようなことがあります。また一面、輸入価格上昇したというのが二十品目ありますが、その中で小売価格が下落または横ばいしたというものが十七品目あるわけです。レモンとかグレープフルーツとかウイスキー、食肉加工品、大型の電気冷蔵庫、万年筆、ライター、ネクタイ、カーペット、浴用石けん、石油製品というようなものもございますので、円高だけがすぐ価格に響くというわけにはいかない。すなわちドル建て価格がどうなるのか、あるいは国内との競争状況がどういうことになっているのか、あるいは流通機構が十分円高が反映できるようになっているのかどうかと、いろいろな品目によって事情が異なりますので、それぞれの事情についてまだ十分とは思いませんけれども、一応われわれが勉強したところを結果として公表したところでございます。  そこで、この状況を踏まえまして、さらに円高が一層強まった十月十四日の物価担当官会議で、六項目の対策を決定いたしました。まず第一は、外国製たばこについての引き下げということで、すでにイギリスの巻きたばこを中心にして引き下げを行うことにいたしました。また輸入牛肉についても、指定輸入牛肉販売店における小売り目安価格引き下げ平均七・四%の浸透を図るために、モニター制度を拡充するというような、あるいは監視を徹底するというようなことをやることにいたしました。第三番目は、国際航空についての運賃を引き下げる。これは御承知のとおり国際的な協定がありますので、ここの承認を得次第引き下げる。また第四番目に、厚生省の所管である薬価についての改正を行う。また、先ほど申しましたいろいろな三十六品目の問題につきましても、なかなか下がらないものについては、通産省その他の省を通じまして、関係の輸入業者その他になお一層円高の反映について努力をするような要請をいたしておるわけでございます。また消費物資の輸入促進を図るために、並行輸入の促進を図る、あるいは残存輸入制限品目輸入の枠の拡大を図る、こういう一連の政策を実は実施いたしました。その後電力につきましては、御承知のように来年の三月以降も現行価格で当分据え置く、そういうことにいたしておるわけでございますが、なおこれらの問題について円高がこれだけ出てきておる現況でありますから、これを国民還元するための努力を一層いたしてまいりたいと思っております。
  170. 春田重昭

    ○春田委員 長官から詳しく説明されましたので、それ以上言う必要はないと思いますが、特に長官もおっしゃった、輸入価格が下落しながら小売価格上昇しているものが七品目ある。マグロとかチーズとかストーブ、レコード、めがねフレーム、釣り具、鉄鋼製品、こういうものにつきましては、さらに目を行き届かして関係省庁に具体的な対策を迫るよう、経企庁から指導していただきたいと思います。  ここで私、石油の問題につきましてお尋ねしてまいりたいと思うんですが、消費者が一番これから関心が深いというか影響があるものに灯油というものがありますし、ガソリンというものがあるわけでございますけれども、この石油業界に対しましてはどのような指導をなさっているのか。かなりの差益が出ていると私たちも聞いているわけでございますけれども、どのような御指導をなさっているのか、お尋ねしたいと思います。
  171. 大永勇作

    ○大永政府委員 石油企業の経理の状況を簡単に申しますと、昨年度五十一年度のこれは精製元売り三十数社の総計でございますが、経常利益が全体で大体二千二百億円ぐらいあったわけでございます。しかし、その前からの繰り越しの赤がございますので、五十一年度末におきますところの繰り越し損益は、外資系はプラスで民族系はマイナスで、全体としては若干マイナスということであったわけでございます。  その後の変化を見てまいりますと、五十一年度におきましては、為替は平均が二百九十二円だったわけですが、五十二年度上期にはこれが二百七十二円になったわけでございます。そこで為替差益が、年間ベースに直しますと五千億円程度の為替差益が出ることになったわけでございますが、一方におきまして先生御承知のように、一月と七月にOPECの引き上げがございました。そのほか関税のアップでございますとか、防災費のアップ等がございまして、上期のバランスというのは、この為替差益とそれからOPEC値上げとを相殺いたしますと、五十一年度に比べますと若干悪くなったという感じであろうかと思います。ただ下期に入りますと、為替がさらに円高になりましたので、若干の利益が出つつあるということは御指摘のとおりであろうかと思います。  それで現在石油製品の市況でございますが、ガソリンあるいは灯油、重油等、おしなべましておおむね横ばい、若干弱含みということであろうかと思います。為替差益が出ているからこの価格引き下げる指導をすべきではないかという意見も、灯油、ナフサ等に関連してございますが、先生御承知のように、一月からのOPEC値上げにつきましてカラカスでOPEC会議が開かれるということになっております。その辺のOPEC値上げあたりがどうなるかということも勘案しながら慎重に検討してまいりたいというのが現在の方針でございます。
  172. 春田重昭

    ○春田委員 民族系と外資系合わせれば、トータルで一応赤字が出ているわけでございますが、外資系は相当もうかっているんですよ。民族系がそういう点で赤字が出ているわけでございますが、この違いというのはどういう理由なんですか。時間ありませんから、簡単に言ってください。
  173. 大永勇作

    ○大永政府委員 ごく簡単に言えば、ガソリンの販売力、石油製品の販売の中に占めるガソリンのウエートでございます。
  174. 春田重昭

    ○春田委員 外資系がガソリンの占めるシェアが多いので黒字が出ているということでございますが、全体的にしたら、企業が三十六社あるわけでしょう。そのうち赤字欠損会社が十六社ということで、二十社はもうかっているわけですよね。したがって、石油円高によって、一円上がることによって大体八十五円の差益が出るということが言われているわけでございまして、五十二年度の上期においても約一千五十億円の黒字が見込まれている。差益があるという形で見られているわけです。全体からいっても五千億円ぐらいの黒字の収支状況になるのではなかろうか。そういう点からいったら、一般の民間からいえば相当もうかっている、取り過ぎているという感じが強いと思うのです。そういう点で主婦連とかいろいろな消費者の方たちの運動が盛んになっているわけでございまして、いわゆるそれだけもうかっていながら還元されないじゃないか、こういう声が非常に上がっているわけですよ。確かに一月と七月に若干原油が上がったんだ、また来年も上がりそうだ、こういうことを踏まえて、いわゆるいまのところは情勢を見ているんだ、こういう言い方でございますけれども、私はやはりこの差益というものは、国民経済の高まりによって、高くなったことによって、円が強くなったことによって出てきたわけでございまして、いわばこれは国民のそういう経済的な高い価値によって出てきたんだから国益である、こういう論もあるわけですよ。そういう点からいったら、やはり国民全体のものである、それは当然還元すべきである、こういう論法だってあるわけですよ。そういう点で、確かに理論的に説明されるのはわかりますけれども、いわゆる実態的に言った場合、私たちのはだ身に感じますのは、かなりもうかっているのに還元されない、この不満は私は消えないと思うのです。一方では、そういう輸出関連業者が相当まいっている。倒産も出ているし、実際自殺した方もあるわけですよ。一方では失業者が非常に困っている。輸入業者はがっぽりもうかっている。こういう点からいって、それがおしなべて値下げもされず、還元もされなかったら、これは不公平と言ってもいいんじゃないかと思うのです。そういう面でやはり通産省が積極的に立って、あるいは時点時点で値下げを断行するか、また現時点では値下げできないけれども、いわゆる電力業界は五十三年度までの現在の料金は据え置きらしいですね。それを五十三年度以降も据え置きます。こういう見解を発表しているわけでしょう。だから、現時点では値下げできないけれども、いわゆる料金はずっと長い期間、長期間据え置きますよ、こういうことを打ち出せば納得すると思うのです。その点が全然ないということで不満が上がっているわけです。こういう点で、現時点で値下げするか、さらに現在は据え置くけれども、将来、現在の価格は維持していくのだ、こういう形の答えが出なかったら、国民の方たちは承知しないと思うのです。消費者の方は承知しないと思うのです。この点どうお考えになりますか。
  175. 大永勇作

    ○大永政府委員 現在、価格通産省の方としては一切指導いたしておりませんが、実際には、最近需要が若干たるんでおるといいますか、緩慢であるということもございまして、価格は先ほど申し上げましたように若干弱含みである。ガソリン等も末端価格は値崩れが出ておるというふうな状況でございますが、これは通産省が指導してそういうことになっておるということではなくて、需給の実勢がそういう方向に動いておる、こういうことでございます。  先生指摘の、今後の価格のあり方について通産省は積極的に指導すべきではないか、あるいは発言すべきじゃないか、確かにそういう意見もあるわけでございますが、ただ今後の為替の動向、それから特に一月以降OPECがどうなるかということにつきましては、全くこれは予測がつかないわけでございまして、その辺をやはり見た上でないとわれわれとしては判断はつきかねるというのが実態でございます。
  176. 春田重昭

    ○春田委員 そういう答弁では困るのです。確かに一月にOPEC会議があって、大体五%から七%ぐらい値上がりするんじゃなかろうかという線が出ておりますけれども、そういう線が出た段階で検討するのじゃなくして、大体そういうふうに予想しながら現在打ち出せるのじゃないかと思うのです。一説によると、来年一月原油が値上がりするから灯油だって上がる、ガソリンだって値上げしなければならないという、値下げどころか値上げのうわさだって出ているわけです。これでは困ると思うのです。西ドイツではマルクが高くなったとき、早速政府の行政指導でいわゆるガソリンが下がって、スタンドにおいては店頭に、いわゆるマルク高によって差益が出てきたからガソリンは下げますという店頭表示もあったという例があるわけです。こういう例もやはり見習って、わが日本の国においてもそういうやはり消費者の立場に立った政策、行政をとるべきであると思うのです。企画庁長官としては、この点、どのようにお考えになっているか、どのように御指導をなさっていくのか、お尋ねしたいと思います。
  177. 倉成正

    倉成国務大臣 石油価格については、いまエネルギー庁の方から申し上げたとおりだと思いますが、やはりいまお話しのように、国民の素朴な気持ち、円がこれだけ高くなったのだからかなりもうかっているところがあるだろう、それはひとつ国民還元すべきだというのは、やはり私は素朴な気持ちだと思います。したがって、価格円高だけで決まるものではございませんから、いろいろむずかしい問題はありますけれども、しかしこういう仕組みになっている、そこで国民の御理解をいただく、そういう努力を私どもとして精いっぱいいたしてみたいと思っております。
  178. 春田重昭

    ○春田委員 それじゃ、外国の例もありますし、わが国でも電力業界においてはそのように長期間据え置きという線も出ているわけですから、石油業界においてもそういう線で、要するに国民納得するような形の公表をすべきである、この点を私は要望いたしまして終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  179. 芳賀貢

    芳賀委員長 安藤巌君。
  180. 安藤巖

    ○安藤委員 私は国民生活センターについてお尋ねしたいと思います。  午前中もちょっと話が出ましたけれども国民生活センターは国民の生活にとって大層大切な仕事をしておられるところです。したがいまして、その人事の問題、それから運営の問題、これは相当大幅に消費者、国民の声が反映できるような仕組み、これが一番望ましいというふうに思うわけです。ですから、その関係についてお尋ねをしたいと思いますが、まず長官にお尋ねしたいのですけれども、センターの役員、会長、理事長、理事、監事というふうにございますけれども、この役員の人事について、監督官庁である経済企画庁長官としては、どの程度関与しておられるのかどうかということを最初にお尋ねしたいと思います。
  181. 倉成正

    倉成国務大臣 役員につきましては、これは御承知のように国民生活センター法という法律に基づきまして、会長が一応決めるようになっておりまして、その際に監督官庁と申しますか、総理大臣の認可を得るように、そういう仕組みになっておるわけでございます。したがって、そういう認可をする際に私ども監督官庁として関与するということになろうかと思います。
  182. 安藤巖

    ○安藤委員 いま長官がおっしゃった中で、会長、理事長は内閣総理大臣の認可ではなくて任命ということになっているわけです。だから、それが少し間違っていると思いますが、そうしますと、そういう法律に従った手続の中で、いろいろ長官としてだれだれが適任であるとかというような御意見を出されるというふうに伺っていいわけですか。
  183. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいまの点、訂正いたしておきます。「会長、理事長及び監事は、内閣総理大臣が任命する。」「理事は、内閣総理大臣の認可を受けて、会長が任命する。」と第九条になっておりますので、後段の点だけを申し上げましたので訂正をいたしたいと思います。御指摘のとおりでございます。
  184. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、この会長、理事長、理事、監事なんですが、私が経済企画庁からいただいた国民生活センター役員管理職一覧というのによりますと、会長さんの大浜英子さんは非常勤。いまお見えになっている昌谷理事長さん、それから五人の理事さん、そして監事さんが二人いるのですが、そのうちのお一人は非常勤、合計七名の方が常勤というふうになっているわけです。ところが、このうち本当に民間から理事としてなっておられるのは大島さんという理事さんお一人、こういうふうになっております。ということになると、これはやはり消費者の声を反映するというような点からいって、相当問題だと思うのです。いわゆる役人の天下り人事、これによって理事のほとんど大半が占められている、こういうような状態になっております。これは、国民生活センターの設立の趣旨からすると、こういうような天下り人事というのはけしからぬことだと思うのです。やめるべきことだと思うのですが、この点について長官の御意見をお伺いしたいと思います。
  185. 倉成正

    倉成国務大臣 国民生活センターの役員は、このセンター設立の目的に照らして適任者を選んでいく。それぞれ会長、監事は総理大臣が任命し、理事は会長が総理大臣の認可を受けて任命するということになっているわけですが、この国民生活の動向を的確に把握する、そして総合的な見地から国民生活に関する情報の提供、苦情処理などの活動を円滑に行っていくためには、やはり広範な見識を有し、しかも同時に関係分野についていろいろな深い学識を持つ者がその運営に当たることが必要だと思うわけでありまして、国民生活センターが広く関係方面から人材を求めるという意味で、それぞれの方が、いま申しましたような目的に照らして適任であると、そう考えて、政府もこれを認可いたしているということでございます。今後ともいずれの分野におきましても適格性ということを考慮しながらやってまいりたいと思うわけでありまして、現在の役員は十分その適格性を持っておると判断をいたしておるわけでございます。
  186. 安藤巖

    ○安藤委員 適格な人が役員になられるということは、一般的に申し上げればまさに長官がいまおっしゃったとおりだと思うのですね。しかしその中身は、先ほど私が申し上げましたように、本当に民間のいわゆる消費者を代表するというような形で理事になっておられる、そのうちの常勤の方はたった一人というような状況では、広く人材を集めるという趣旨には沿わぬのじゃないかというふうに思うのです。  そこで、もう一つ申し上げておきますと、天下り白書というのがあるのです。これは政府関係特殊法人労働組合協議会、いわゆる政労協という労働組合がつくっている本ですが、天下りの占有率、これをずっと調べまして、関係の法人に対しての天下り占有率はどこの省庁が一番多いか。たくさんありますけれども、その占有率だけ申し上げますと、厚生省関係の法人がトップ一〇〇%、外務省が九〇・五%、経済企画庁の場合は八五・七%といって第三位を占めておるわけです。だから、こういうようなことでは国民生活センター設立の趣旨にやはり反する。長官はいま適正な人事だというふうにおっしゃるけれども、これは改めていただきたいというふうに思うのです。やはりセンターの趣旨を生かすには、いままでセンターの仕事を長年やってこられた人を登用する、いわゆる内部登用ですね、あるいは学者、消費者団体、あるいは婦人団体などからもたくさん理事を選んでいただきたいというふうに思うのですが、これからそういうような方向考えていただけるのかどうか、長官にもう一つお答えいただきたいと思います。
  187. 倉成正

    倉成国務大臣 センターができましたのは御承知のとおり昭和四十五年でございます。したがって、内部からいい方が育っていただけば、それがまあ一番いい方法じゃないかと思います。しかし恐らく、現在いろいろ天下りというお話がございますけれども、それぞれの分野で深い経験を持った方がこの理事に就任して一生懸命やっていただくということであれば、あながちこれは天下りとして非難すべきことではないんじゃなかろうかと思います。確かにお話しのように、消費者代表という考え方がございますが、だれが消費者の代表であるかということになると、これは非常にむずかしいものでございまして、それはなかなか、議論としてはよくわかりますけれども、現実の問題としては私は現在の役員が、まあこれ以外には全然ないというようなことは申し上げませんけれども、十分適格性を持って一生懸命やっていただいておると確信をいたしております。
  188. 安藤巖

    ○安藤委員 消費者あるいは婦人団体、それから学者という人たちが理事になっておられないということは、この経済企画庁からいただいた一覧表でもはっきりしているのです。だから、その人たちが適任かどうかということはもちろんあろうかと思いますけれども、やはり消費者の代表という人たちが入ってないということはもうはっきりしておるものですから、その点はお考えいただきたい。この前やはり決算委員会でしたか郵政審議会の問題が出まして、郵便局にお金を預けておられる方は、国民一般たくさんお見えになる、官庁の役人だっておられるのだ、そういう論法でいきますと、国民生活をしているのは全部ですからね、全部代表だみたいなことになってしまいます。だから、そういうような論法ではなくて、本当に消費者運動をしている人とか、学者の人とか、あるいは婦人団体の代表とか、こういう人たちを登用していただくようにお願いしたいと思います。  それからもう一つ、これは昌谷さんがすぐお隣にお見えになるのでおっしゃりにくいと思いますから、御答弁をあえて求めませんけれども、いまの民間からあるいは消費者団体からというようなことからすれば、昌谷さんは来年の十月が任期ですか、だからあえて御答弁を求めませんけれども、そういうように任期が切れて理事さんがおかわりになるというときに、そういう機会をとらえて広く人材を各界から登用するということをお願いしたいということを申し上げておきたいと思います。  それから、いま人事の問題ですけれども、運営の問題についてお尋ねしたいと思うのです。  運営につきましては、運営協議会というのがありまして、その委員がお見えになるわけですね。この委員は、会長さんが任命されて、それで総理大臣の認可を受けるということになっておるわけです。実際問題としては長官なりあるいは理事長さんなりがいろいろな御意見をお述べになると思うのです。午前中、原委員がやはりこの運営協議会の委員の問題を取り上げられました。だから重複は避けますけれども、私が調査したところによりますと、経済企画庁、農林、厚生、行管、文部、自治、建設、運輸、労働、通産と、これだけの各省庁の事務次官だと思うのですが、その人が運営協議会の委員になっておられるわけです。午前中の理事長さんの御答弁によりますと、まだ一名欠けておるのでもう一人一つの省庁から入れることになっておるけれども、いま欠員になっておるというお話でした。そうするとこれは十一名ということになります。現在そのほかに地方自治体から三名、省庁の外郭団体から三名という構成になっておるのです。そして現在二十八名という構成になっております。そうしますと、消費者団体とかあるいは消費者の研究機関あるいは知識人、こういうような人たちのウエートが非常に少なくなってくるわけです。役所関係が全部で十六人、そして午前中おっしゃった一名を加えれば十七人というメンバーになってきます。だからどうしてもこれは中央官庁のウエートが多過ぎるのじゃないかという感じを持たざるを得ないわけですね。昌谷さんも午前中は、各省庁関係の人から何人この運営協議会の委員になってもらうかという人数は定まっておらないというふうにおっしゃったのです。だからこれは昌谷さんにお答えいただきたいと思うのですが、この辺のところ、各省庁の人たちの方をもっと減らして、婦人団体なり協議会なり学者の人なり、こういう広く意見を求めるというふうに人選をされるということはお考えにならないのかどうか、これをお尋ねしたいと思います。
  189. 昌谷孝

    昌谷参考人 午前中にもお答えいたしましたけれども、消費者行政あるいは生活問題ということになりますと、実は関係する省庁、行政機関は大変数が多くなります。設立の経緯等もあったと存じますけれども、当初各省から、ぜひそういう運営協議会委員として当省の職員もというお話はまだ数多くあったやに承っております。その中で、多少生活問題に関連する度合いの濃淡と申しますか、そういうことを申しますとやや主観的判断になって恐縮かもしれませんけれども、おのずから濃淡というようなものもあろうかということで、とりあえず現状のようなことで発足をいたしました。そういう経緯から申しまして、関係行政機関の、これ以下に圧縮と申しますか、関係がない、あるというような議論をこれ以上重ねますことは、実際問題として困難ではなかろうかと私は現状では考えております。しかしなお、先生の御趣旨も私としてもわかりますので、折があればまた関係行政機関の方とも御相談を申し上げて、円満に事が運ぶようであればそういうような方向考えられないことはないと存じております。
  190. 安藤巖

    ○安藤委員 ぜひともそういう御努力をお願いしたいと思うのです。  これはこの前の毎日新聞にも載っておったのですが、国民生活センターの中の労働組合がありますね。この労働組合の執行委員会が責任を持って出したという「国民生活センター業務の見直しに関する報告書」、この中にいまの問題で気になることが載っておるのです。運営協議会の委員はもちろん法律で三十名以内ということになっておりますね。しかしその比率は、役所対消費者団体、学者等が十六対十四、役所の方が十六、それ以外が十四という比率になっておって、その構成について、理事長さんはこの十六対十四の比率は変えられないというふうに発言をしておられるというふうに載っているんですよ。これは本当ですか。
  191. 昌谷孝

    昌谷参考人 お手元でごらんになっておられます資料の経過と申しますか、ちょっと簡単に申し上げておきたいと思います。
  192. 安藤巖

    ○安藤委員 いや、それが本当であるかどうかだけ、違うなら違うでいいんですよ。
  193. 昌谷孝

    昌谷参考人 大体先ほど申し上げましたように、当初三十名のうち、役所、行政機関並びに地方公共団体の長が十四名ということでぎりぎりスタートいたすように努力をいたしました。先ほど申しましたように、なお他にも多くの御不満の官庁も実際問題としてあったのでございますけれども、そこは特別に御了解を得まして、何としても三十名のうち過半がそういう方々では運営がいかがであろうかという趣旨で、私どもがむしろかなり熱心にお願いをして十四名にとどめるというふうなことにいたしたわけでございます。地方公共団体の長と申しますのは、今後自治体が消費者行政を熱心にやっていただかなければなりませんから、やや性格を異にいたしますけれども、しかしいずれにいたしましても、いわゆる学識経験委員の数を十五名を下らない十六名ということで、どうにかこうにか私の考えているところを実現できたと考えております。そういう意味から申しまして、その文書にございます事実は何らかの誤解か間違いだろうと私は思います。
  194. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、この運営協議会というのは年何回ほど開かれておられますかということが一つと、それから協議会の委員になっておられる各省庁の次官の方々は実際に参加しておられるのかどうか、これをお答えいただきたいと思います。
  195. 昌谷孝

    昌谷参考人 センターができましてからことしの十月でまる七年になります。比較的最近、この秋九月に最近の運営協議会を開きました。それが第十七回でございます。そういたしますと、結果的には年に二回半程度の割合で正式の運営協議会を開いておる。大体予算、事業計画決定と決算ができましたときというのを最低限度の必要な開催とし、その中間に必要があれば開いておるというのが実態でございます。なお、正規の運営協議会のほかに、運営協議会委員懇談会というものは随時開催を持っておるというのが実態でございます。  なお、出席委員につきましては、各省の次官を委員にお願いをしてございますけれども、次官が直接御本人で御参加ということは、どうもお役所の方も忙しいようでなかなか十分にまいっておりませんけれども、その際は必ず担当の局長なり何なりが代理で御出席をいただいております。
  196. 安藤巖

    ○安藤委員 代理の話が出ましたが、実際は局長さんなかなか忙しくて出席されなくて、課長さんとか課長補佐の人たちが代理人になって出席しておられるというのが実態じゃないですか。
  197. 昌谷孝

    昌谷参考人 そういう事例もあることはございます。
  198. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、やはりなっておられてもなかなか出席をされないというようなことであれば、それこそいろいろ御了解を取りつけていただいて、もっとしぼって、本当に責任ある立場で運営協議会に参加していただく、出席していただけるような体制をつくっていただきたいと思うのですね。  そこで、ひとつこれは私の提案なんですが、たとえば経済企画庁は大切だと思いますね。それから通産、厚生、それから農林、公正取引委員会、せいぜい省庁関係はこのくらいにしておいて、そして次官にきちっと、あるいは局長さんなら局長さんと人をきちっと決めて、そして委員として出席していただく。残る人たちは消費者団体、学者の人たちあるいは婦人団体あるいは労働組合などからも参加するというような道を開いていただきたいということを強く要望しておきます。これはできないことではないし、運営協議会を本当に実のあるものにしようと思えばそうしていただくのが一番だと思うのです。そういう方向で一遍お考えいただけるかどうか。いますぐというわけではありませんが、御努力いただけるかどうか、その点だけひとつお答えください。
  199. 昌谷孝

    昌谷参考人 発足の経緯が先ほど申しましたようなことで、ずいぶん御無理を願った関係がございます。なお、私ども実際に業務を展開いたしてまいりますと、なかなか関係行政機関の御協力がなければ解決のむずかしい問題が多々ございますので、先生の御指摘の点は私も十分理解はできますけれども、現実問題として御理解を得ることについては相当の困難があるだろうこともまた現状ではやむを得ない現実かと思っております。
  200. 安藤巖

    ○安藤委員 だから、そういう困難を承知の上で、国民生活センターとして趣旨を貫くという意味で御努力いただけるかどうかということをお尋ねしているのです。  もう一つお尋ねしますが、そのときついでにお答えいただければいいのですが、運営協議会の位置づけですね。これがやはり一つ問題になっているのではないかと思うのです。この位置づけをはっきりすれば、いま私が申し上げましたようなことも、理事長さんの方から、困難を承知で、金のわらじを履いてでも、お百度参りをしてでも、とにかく目的を達成するという意気込みになっていただけるのではないかと思うのですけれども、どうもその役割りは、センター法を見ますと、諮問機関としての位置づけのようなところもありますし——会長のあるいは理事長の諮問に答えるというのが十五条の二項、三項にあるわけです。これは単なる諮問機関なのか。そうかと思いますと、先ほどおっしゃったように、もう一つこれも条文にあるのですけれども、基本的な財政問題あるいはどうやって運営していくかという問題もあるのですけれども、まさに生活センターを運営していく一番のもとになっておるところだ、国民の生活と直結する運営をしていくのだというようなかっこうでやっていただくということを再検討していただく段階にもう来ているのではないかというような気がします。  時間がありませんから、まずそのことだけひとつ、さっきのとあわせてお答えください。
  201. 昌谷孝

    昌谷参考人 運営協議会が私どもの業務運営の際の一つの、法律上の言葉はとにかくとして、最高の顧問機関だというふうに考えて、そこの御意見を伺い、そこに御相談をしながら重要事項を決定するのが趣旨であろうと私は思っておりますし、いままでもそういうつもりで運営をしていただいておりますし、今後もそういう運営の仕方を変えていくつもりは毛頭ございません。そういう意味でやはり私どもの運営の指針をいろいろいただく、御指導をいただくということで今後とも運営を続けてまいりたい、さように思います。  なお、先ほど前段で申されました点については、私個人としてはそういった方向努力をいたすことは、いままでにもそういう努力をいたしてまいりましたし、今後とも機会があればそういう機会を逃さずなるべく御理解を得るようにやってまいりたいと思っておりますけれども、それでとどめておきます。
  202. 安藤巖

    ○安藤委員 ちょっと歯切れが悪いですが、これは原委員もお触れになりましたけれども、衆参両院で附帯決議がちゃんとあります。「運営協議会の委員については、消費者の利益を代表する者ができるだけ多く任命されるよう措置すること。」きちっとありますので、何も及び腰ということでなくてやっていただきたいと思うのです。  それからテストの問題ですけれども、これは十月九日の毎日新聞に、生活センターがいろいろ商品のテストをしてそれを発表されるについて、記事に載っておりますのは、先ほどお話しましたセンターの労働組合の執行委員会が責任を持って発表した中にも載っているのですけれども、たとえばAF2、豆腐などの殺菌料ですね。この問題について、これが禁止になる前に、その安全性に対する疑問を指摘した記事がセンターで発行する出版物の原稿にあったのです。これに対して総理府が、政府が許可しているものを非難するのはおかしいとクレームをつけたり、あるいは医薬品の特集記事に対しては、厚生省がこの種の記事を載せるときは事前に知らせるようにという横やりを入れたというのが載っておるのですが、こういうようなことはあったのですか。
  203. 昌谷孝

    昌谷参考人 そこに書いてございますことと似たようなことと申しますか、そういうふうに受けとられたのかなと思われるような事柄は私にも思い当たることがございます。やはり国民生活センターが提供いたします情報というものは、消費者のために役立つもの、ということは、また客観的にも真実を伝え、非常に客観性の高いものというのが国民生活センターのお伝えすべき情報だろうと思っておりますので、そういう意味でそれぞれの専門の官庁なり、専門家がそういった客観性なり真実性について御助言がいろいろあるということは、むしろ私どもとしては歓迎すべき事柄であって、それをそこの記述に書いてございますような趣旨で受けとめるというのはいかがなものであろうかというふうに私は思っております。
  204. 安藤巖

    ○安藤委員 ものには言い方がいろいろあって、御助言という場合も、実際はそういう助言というのもあろうかと思うのですが、一つの独立した特殊法人としてテストされた結果ですから、たとえばこういうふうにそれを発表するならおれのところに事前に言ってこいとか、もともと政府が許可しておったのをあれこれいちゃもんをつけるのはおかしいじゃないかというような言い方、そういうふうに受け取られるような言い方をするということは大間違いだと思いますね。だから、こういう問題はきちっと排除していただく。そういうようなものには、一般の消費者が味方についているわけですから、そういう意味でしっかりがんばっていただきたいというふうに思います。  時間がありませんからもう一つだけお尋ねしたいのですが、商品の比較テストというのをおやりになりますね。そのテストされた結果を発表されるわけですが、新聞記者の人たちに記者会見で発表するというようなこともございますね。それが、きょう午前中にも問題になりましたように、いろいろ新聞記事になるという問題だろうと思うのですけれども、この場合に、午後一時から新聞記者の人たちに発表する、その前、午前中に当該商品を製造している業者の人たちに集まっていただいて、まず業者の人たちに業者説明会というのを先にやる、その後で記者発表する、こういうような順序で現在はやっておられるのでしょうか。それはどういうような意味でそういうことをやっておられるのか。
  205. 昌谷孝

    昌谷参考人 私ども商品の比較テストをやる目的から申しまして、もちろん第一義的には、消費者によい商品の選択のための手引きとしての資料を差し上げるということでございますが、同時に、やはり消費者のためになるよりよい商品が生産され、販売されることを促進するという趣旨も比較テストの目的の中には当然入っております。これは世界各国どこのテスト機関もそういうことを目的として掲げてやっておられるわけでございます。私どももそういう趣旨で、消費者に対する情報の提供の手段として、新聞記者の諸君に集まっていただいて私どものテスト結果をいろいろ御説明をし、それをなるべく広く御伝達願うようにお願いをいたしております。しかし、いま申し上げましたような一方の目的もございますし、また発見されました欠点については一日も早くそれが改善をされ、よりよい商品として生産され販売されることがテストの結果を生かす道であろうと思っております。そういった意味で、つくっておられます方々にもテスト結果については、詳細に試験の方法、それからその方法の結果出たデータをかなり専門的にお教えいたしております。新聞記者諸君にお教えすることも大切ですけれども、そういう意味でつくった方々に反省を促し、あるいは商品改良をやっていただくためのデータとして、かなり専門的に私どもは試験結果の公開をやっております。  誤解のないように申し上げておきますが、事前にはそういう御相談や連絡などは絶対にいたしておりません。私どもの結果ができてからでございます。  午前午後の関係は、まさに時間的にはいま便宜上そういうふうにやっておりますが、私としては別段事前であろうと事後であろうと、午前午後の関係はどうでもいいわけでございますけれども、やはり新聞記者諸君の御都合その他からいって、記者の諸君によくお集まりを願い、ゆっくり話をそしゃくしていただくのには午後の方がいい。新聞記事になってからメーカーの諸君にお伝えするというのでは、何か底意地悪くやみ討ちをしているように思われるのも不本意でございますから、そういう意味で、一層の御協力をそれらの諸君から得るためにも、なるべく同時発表というのがあるいは本当は一番好ましいのかもしれませんけれども、事の便宜上午前と午後に分けておるという程度の他意のないことでございます。
  206. 安藤巖

    ○安藤委員 初めのころは、記者発表が前で業者説明会が後だったというふうに伺っているのです。それがどうしてひっくり返ってしまったのか。そして、業者説明会というのが先にあるということになれば、そんなことはないと思いますけれども一般国民にとってはあるいは消費者にとっては、どうして業者の人に先に説明するのだ、あとで発表するのはどういうわけだ、何かあるんじゃないかというようなことまで思われることにもなりかねないと思うのです。業者に説明されるのはいいと思うのですが、何か業者の人たちに仁義を切ってからそれから記者会見をやらぬとかっこう悪い、そんなふうにも思われてしようがないのですが、これを前のとおりにお戻しになって、記者発表を先にやられるべきではないか、これは実行していただきたいと思うのですね。いかがでしょう。これだけお尋ねして終わります。
  207. 昌谷孝

    昌谷参考人 別段こだわるわけでもございませんけれども、先ほども申しましたように、新聞記者諸君には商品知識もない、いわば素人の諸君に十分にのみ込んでもらってよく書いてもらいたいというのが私どもの願いでございますので、新聞記者諸君の一番取材活動のしやすい時期、場所は、私どもの品川のセンターの試験室がありますから、いろいろサンプルもお見せしなければいけませんから、私どもに来ていただいていろいろ見ていただいたり、写真をとっていただいたりしておるわけでございます。そういう発表効果ということを私どもとして第一義的に考えたい立場でございますので、そういう意味では、いまのことはいろいろやってみた結果、これが一番ぐあいよくいくということで落ちついた経過もございますので、そう簡単に、何となくそんな感じがするという程度のことでは私は変えたくございません。
  208. 安藤巖

    ○安藤委員 終わろうと思ったのですが、もう一言だけ。何となくということは、私があえて何となくとぼかしたのであって、国民に対して不信感を招くことにもなりかねぬということを申し上げておるのですよ。だからそういう意味で、検査商品の比較テストをしたその結果こうですよとまず国民に知らせる、そして業者の人たちに後から説明会をやればいいじゃないか、それが順序ではないかということを申し上げておるのですよ。だから、理事長さんなかなかがんばっておられるので、最後にそのこと一つだけ、監督官庁である長官に一言その辺のところをお尋ねしたいのです。私がいま申しましたように、順序としてはまず国民に知らせるべきだ。それから後に業者に説明会をやっていいんじゃないか。その方が国民に対する信頼感を増すじゃないか、こう思うわけです。そういうふうにお考えにならないのか、そういうふうに措置をされるお考えはないのかどうかお尋ねしたいのです。
  209. 倉成正

    倉成国務大臣 センターの自主性をできるだけ尊重したいと思っております。理事長を信頼し、理事長が判断されるのを支持したいと思います。
  210. 安藤巖

    ○安藤委員 終わります。
  211. 芳賀貢

    芳賀委員長 次回は、明二日水曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十六分散会