○森下
委員 次の問題、これは北山
委員が質問されましたときに出た問題です。過剰労働力を植林
事業に振り向けたらどうか、この問題でちょっと私の意見を申し上げまして、もうお答えは簡潔で結構でございますから
お願いしたいと思います。
大体山村は——農村もそうでございますけれ
ども、労働力のいわゆる供給源であったわけです。日本が経済成長したのも、農村とか山村の優秀な労働者が農業、林業から工業の方へ出ていった、これは非常に大きな貢献度があるわけですね。それが残念ながらオイルショック以来、減速経済、低成長の時代になって、総体的には離職者の問題とか
失業者の問題、過剰労働を抱えつつある、将来についても前のような高度経済成長を望めないというような、
労働行政についてもかなり大きな転換期になっておるというところで、その過剰な優秀な労働者のおさめ場所として、私はもとの農村また山村にそれを求めるべきである。ちょうどダムのような機能をしてきた感じが実はします。その中で、農村は別にいたしまして、山村の仕事は、たばこをつくるとか、多少お米もできますけれ
ども、これは一応生産費所得補償方式で日役賃にして六千円とか七千円確保はされておりますけれ
ども、量的制限がございます。米も余ったものですから生産制限、たばこも反収をできるだけ専売局も減らしつつありますから、これ以上広げるわけにいかない。あと残るのは林業以外にないと思いますね。林業の場合は外材が、しかも製品等の輸入が大量にふえる傾向がございまして、国内林業は沈滞、意欲停滞して、植林する人が非常に減っておりますし、現在の森林開発公団とか林野庁が計算しております林業労務者の
平均賃金は四千円前後である。非常に低賃金なのです。大工さんとか左官さんは八千円から一万円、お米づくりは六千円から七千円、たばこづくりでも五千円から六千円、その中で非常に高度な技術的な能力を必要とする、また非常にきつい労働力を必要とする林業労務者にとりましては、まことに低賃金を強いられておる。これは実は現実なんですね。そういうところで、ちょうどこの山林というものは、いわゆる治山治水、それから山村の経済を支えたり、水資源を初め多目的な効用を持っておりますから、一石五鳥くらいのねらいでこの際に大々的な植林
事業を始めるべきである。道路とか港湾も結構でございますけれ
ども、こういう
地域は山村に比べてもうすでにかなり開発されておりますから、むしろ森林資源を造成できるような日本の気候、風土、地形、これをいかに活用していくか、国破れて山河ありというくらい、山さえりっぱにしておけば水も出てまいるし、またそれから民族発展の活力も生まれてくるということに目をつけていただきまして、ちょうど
昭和の初期の
不況のときにも、過剰労働力はかなり植林部門に投入されたようにわれわれは聞いております。極言すれば林業なんかは、不景気で優秀な労働力が余ったときに初めて植林が可能なんだ、大体
企業林業なんかは成り立たないんだというくらい極言される実は節がございます。林業基本法なんかを見ましても、もうかる林業とかいろいろ言われましたけれ
ども、そういうものがもうかるときは他産業が非常にいいわけですから、それへ全部流れていってしまう。だから非常に不景気なときにこそ山を緑にすべきである。これはやはり国家百年の計として労働問題、資源問題と兼ね合わせてやるべき、これは林野
行政とか一農林
行政ではございません、
労働行政も含めた国家安全保障的な大きな計画だと思うのです。
私、この前四十九年の
決算のときに、国土庁にそういう質問を実はいたしました。いまこそ植林大
事業に国が取り組むべきであるということですね。簡単に例を挙げてみますと、いま一ヘクタール当たりの植林費、手入れ費、先ほど
大臣がおっしゃいましたように、植えつけすれば、十年か十二年くらいまでは手入れ費、つる切り、除伐と、やはり連続してそういうことをしないとりっぱな木材できませんから、継続していわゆる雇用ができる。大体百万円くらいかければ、植えつけして十年から十二年くらいのちゃんと手入れができる金が投入できまずから、一ヘクタール百万円として二十万ヘクタール毎年植林するとして約二千億で上がります。それを五十年間続けても十兆円あったらいいわけです。たった十兆円です。道路計画とか国防計画とか下水道計画は、五年間で五兆とか十兆とか、ときには二十兆。三全総でも、十年間で二百五十兆円投入するんだ、えらい大きなことを書いてございます。そのうちでエネルギー
対策だけでも七十兆の巨額を投資しなければいけない。そういう中で、まことに林野
行政にしてもお粗末きわまりないような現状なんですね。そういう五十年、まあ五十年すれば大体山は切れますから、それで上がる大体収入は、いまの木材価格に直しても一ヘクタール一千万円ぐらい上がるのです。ということは、五十年後に、りっぱな山をつくって、分収でもいいと思います。約二兆円の収入がございます。これは完全に財投なんですね。決して道路や港湾のように入れっぱなしでございませんから、一年間に二十万ヘクタールを五十年間植え続けても、五十年後から毎年毎年二十万ヘクタールの山から収穫がありまして、いまの価額にして二兆円の金、いわゆる十倍になって返ってくる。国としても、これは非常な経済的な行為にもつながりますし、あと水の問題とか治山治水の問題も同時に解決していく。これは昔の人がちゃんと
考えてそういうことをやってきたわけでございまして、別に私がいまさら改めて発明した、発見した問題でございません。そういうことを実は国土庁にこの前申し上げて、何の返答もないわけなんです。
私は、むしろ林野庁や国土庁よりも、いわゆる労働
対策ですね、そしてもう少し大きな国の資源政策また国策として植林
事業をこの
不況下に取り上げるべきである。どう
考えても、もう一石五鳥も六鳥もの本当にりっぱな
事業でございますし、労働問題も一挙に解決いたします。いまこそ山村からの日本の経済発展のために寄与した優秀な労働力を、ここいらあたりで山村にお返し願って、しかも国費を投入して、少なくとも日役賃が大工さんとか左官さんのように八千円−一万円ぐらい取れるような高賃金にしていただくならば、喜んで山村に帰るわけです。過疎問題も一挙に解決いたしますから。
この点、ひとつ、
大臣先ほ
ども植林問題を取り上げたものですから非常にうれしかったわけです。だから次の機会に、国土庁か農林省の
決算のときに、
労働省のそういう面を研究されておる方——研究されておる方がいなければ
大臣の方でそういう方に特に勉強させていただいて、そのときにひとつ来ていただいて、林野庁や国土庁の担当官ととも、に私の質問にひとつお答え願いたいということを実は
お願いして、私の質問じゃなしに意見を申し上げたいと思いますので、
大臣から最後に御所見をお
伺いしたいと思います。