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1977-10-26 第82回国会 衆議院 決算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月二十六日(水曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 芳賀  貢君    理事 丹羽 久章君 理事 葉梨 信行君    理事 森下 元晴君 理事 北山 愛郎君    理事 原   茂君 理事 林  孝矩君       津島 雄二君    西田  司君       野田 卯一君    福田  一君       村上  勇君    春田 重昭君       安藤  巖君    工藤  晃君  出席国務大臣         労働大臣    石田 博英君  出席政府委員         大蔵省主計局次         長       禿河 徹映君         労働大臣官房長 石井 甲二君         労働省労政局長 北川 俊夫君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省婦人少年         局長      森山 眞弓君         労働省職業安定         局長      細野  正君         労働省職業安定         局失業対策部長 細見  元君         労働省職業訓練         局長      岩崎 隆造君  委員外出席者         大蔵省主計局司         計課長     石井 直一君         厚生省環境衛生         局指導課長   林   崇君         労働省労働基準         局監督課長   小粥 義朗君         会計検査院事務         総局第三局長  松尾恭一郎君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 委員の異動 十月二十六日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     工藤  晃君 同日  辞任         補欠選任   工藤  晃君     山口 敏夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十年度政府関係機関決算書  昭和五十年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和五十年度国有財産無償貸付状況計算書(  労働省所管)      ————◇—————
  2. 芳賀貢

    芳賀委員長 これより会議を開きます。  昭和五十年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、労働省所管について審査を行います。  まず、労働大臣から概要説明を求めます。石田労働大臣
  3. 石田博英

    石田国務大臣 労働省所管昭和五十年度決算について、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額は、三千六百十八億九千二百九十万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額三千九十八億四千五百二十万円余、前年度繰越額九千百五十万円、予備費使用額五百十九億五千六百十九万円余となっております。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額三千五百八十四億四千十二万円余、翌年度繰越額二千万円、不用額三十四億三千二百七十七万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものについて申し上げますと、雇用保険国庫負担金及び失業対策事業費等であります。  これらの経費は、雇用保険法に基づく求職者給付等に要する費用の一部負担及び緊急失業対策法に基づき実施した失業対策事業に要したもの等でありますが、このうち、失業対策事業の主な実績は、事業主体数六百五十三カ所、事業数二千六百八十四、失業者吸収人員一日平均九万六千人となっております。  なお、不用額の主なものは、職業転換対策事業費等であります。  次に、特別会計決算について申し上げます。  まず、労働保険特別会計について申し上げます。  この会計は、労働保険特別会計法に基づいて昭和四十七年度に設置されたものであり、労災勘定雇用勘定及び徴収勘定に区分されております。  初めに労災勘定について申し上げます。  歳入につきましては、歳入予算額七千七百三億四千五百九十四万円に対しまして、収納済歳入額七千三百五十六億七千八百三十万円余でありまして、差し引き三百四十六億六千七百六十三万円余の減となっております。これは、前年度から受け入れ支払備金の額が予定より少なかったこと等によるものであります。  次に、歳出につきましては、歳出予算現額七千七百十二億四千九百三十二万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額七千七百三億四千五百九十四万円、前年度繰越額九億三百三十八万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額三千七百八十二億三千百六十八万円余、翌年度繰越額八億九千五百五十四万円余、不用額三千九百二十一億二千二百八万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、労働者災害補償保険法に基づく保険給付に必要な経費及び労働者災害補償保険事業業務取り扱いに必要な経費等であります。  この事業実績概要について申し上げます。  保険給付支払件数は四百三十三万一千件余、支払金額は二千八百七十六億三千九百八十七万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、支払備金等に充てるものであります。  次に、雇用勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額九千十億二千六百五十四万円余に対しまして、収納済歳入額八千八百六十一億七千百五十一万円余でありまして、差し引き百四十八億五千五百三万円余の減となっております。これは、徴収勘定からの受け入れ予定より多かったこと等により積立金からの受け入れを必要としなかったため等によるものであります。  次に、歳出につきましては、歳出予算現額九千十二億九千九百六十九万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額九千十億二千六百五十四万円余、前年度繰越額二億七千三百十四万円余であります。このうち、予備費使用額は一千四百八十八億五百七十四万円余で、これは失業給付費等経費であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額八千七百八十九億七千三百十五万円余、翌年度繰越額六千八百十九万円余、不用額二百二十二億五千八百三十四万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、雇用保険法に基づく失業給付に必要な経費及び雇用改善等事業に必要な経費等であります。  この事業実績概要について申し上げます。  失業給付のうち、一般求職者給付及び日雇い労働求職者給付月平均受給者人員は、一般求職者給付八十七万人余、日雇い労働求職者給付十三万九千人余、また、短期雇用特例求職者給付及び就職促進給付受給者数は、短期雇用特例求職者給付十一万二千人余、就職促進給付三万四千人余でありまして、支給金額は、一般求職者給付六千七百二十三億六千百五十六万円余、日雇い労働求職者給付百七十一億七千八百五十二万円余、短期雇用特例求職者給付百四十三億六千百六十七万円余、就職促進給付二十五億七千九百十六万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、予備費等であります。  次に、徴収勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額一兆七百十六億九千四百四十三万円余に対しまして、収納済歳入額一兆一千五百八十七億六千七百三十万円余でありまして、差し引き八百七十億七千二百八十七万円余の増加となっております。これは、賃金の上昇率予定より高かったこと等により、保険料収入予定を上回ったこと等によるものであります。  次に、歳出につきましては、歳出予算現額一兆一千四百四十三億七千七百十九万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額一兆七百十六億九千四百四十三万円余、予算総則の規定による経費増額七百二十六億八千二百七十六万円余であります。  なお、予算総則の規程による経費増額は、保険料収入収納済歳入額歳入予算額を上回ったため、他勘定繰り入れに必要な経費に充てたものであります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額一兆一千四百二十億九千九百三十九万円余、不用額二十二億七千七百八十万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、労災勘定及び雇用勘定への繰り入れに必要な経費であります。  この事業実績概要について申し上げますと、労災保険適用事業場数百五十三万五千余、労災保険適用労働者数二千九百七万五千人余、雇用保険適用事業場数九十六万二千余、一般雇用保険適用労働者数二千三百九万五千人余、日雇い雇用保険適用労働者数十九万四千人余となっております。  なお、不用額の主なものは、保険料返還金及び予備費等であります。  最後に、石炭及び石油対策特別会計のうち、労働省所掌分炭鉱離職者援護対策費及び産炭地域開発雇用対策費歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額百三十億九千二百七十一万円余でありまして、この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額百三十億五千四百九十八万円余、不用額三千七百七十三万円余で決算を結了いたしました。  この事業実績概要について申し上げます。  まず、炭鉱離職者援護事業につきましては、移住資金八亘二十六件、雇用奨励金二千九百十六件でありまして、支給金額は、移住資金四千五百八十四万円余、雇用奨励金六千九百八十九万円余となっております。  次に、炭鉱離職者緊急就労対策事業につきましては、事業主体数四十四カ所、事業数二百七十、就労人員延べ七十七万七千人余となっております。  また、産炭地域開発就労事業につきましては、事業主体数四十六カ所、事業数百六十二、就労人員延べ七十四万人余となっております。  なお、不用額の主なものは、炭鉱離職者援護対策費であります。  以上が労働省所管に属する昭和五十年度一般会計及び特別会計決算概要であります。  なお、昭和五十年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾に存じております。  これらの指摘事項につきましては、鋭意改善に努め、今後このような御指摘を受けることのないよう一層努力をいたしたいと存じます。  以上をもちまして、労働省所管に属する一般会計及び特別会計決算説明を終わります。よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  4. 芳賀貢

  5. 松尾恭一郎

    松尾会計検査院説明員 昭和五十年度労働省決算につきまして検査いたしました結果の概要説明申し上げます。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項二件でございます。  検査報告番号六十二号は、失業給付金等支給が適正でなかったもので、雇用保険事業における失業給付金等受給者が再就職しているのに、引き続き失業給付金のうちの基本手当支給していたなど給付の適正を欠いているというものでございます。  検査報告番号六十三号は、雇用調整給付金支給が適正でなかったもので、雇用保険事業における雇用調整給付金給付に当たり、実質的に休業日に該当しない日を支給対象休業日としていたなど給付の適正を欠いているというものでございます。  以上、簡単でございますが説明を終わります。
  6. 芳賀貢

    芳賀委員長 これにて説明の聴取を終わります。     —————————————
  7. 芳賀貢

    芳賀委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原茂君。
  8. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣が途中で日ソ協会の方へお出かけになるそうです。それはきょうは差し支えないことに決まりまして、協力申し上げます。しかし、だんだん国会軽視といいますか、前からこの委員会の日程はわかっているわけですから、たとえ国際的な行事であろうと、できる限り——努力したんでしょうが、今後は委員会を第一義に考えるというような時間をつくるようにしませんと、こういうことを通じて国会国民からの信頼性がだんだん失われてきますから、お互い代議士として国会審議を第一に考える、他の時間はそれに合わせるということを当然のことのように考える必要があるんじゃないか。老婆心ながら大臣にひとつお願いをしておきます。  きょうは三点お伺いしますが、最初に、クリーニング師とか理容師美容師など、その免許を取得する人の数の増減がはなはだしい。特に理容師に関しては希望する者が急激に少なくなって将来非常な不安もあるというようなことから、これに対してのお考えをお伺いしたいと思うのです。  厚生省からもきょうはおいでになっていただいておりますが、まず、一番減っている理容師、もちろん美容師もそうなんですが、最初養成学校で一年間、夜間は一年四カ月、通信教育は二年勉強するわけです。卒業後にインターンとして店で一年間以上の訓練を受け、そこで初めて国家試験受験資格が与えられることになっております。試験都道府県に任されていますが、学科と実地を受けて、それに合格した者が免許申請をしますと免許証がもらえる、こういうことになっております。  特に急激に減っている理容師の場合ですが、免許件数は、去る四十三年の一万六千四百九十五人をピークにしまして四十七年まで漸減してまいりましたが、四十八年からは急減して、五十一年は三千七百四十七名、いまもどんどん減り続けている。ことしの東京都の受験者数も一ずっと減っています。という状態になっているわけですが、美容師の場合もやはり四十三年の二万九千百八十八名をピークにして、これは漸減でございますが、五十一年は一万三千百二十三名、五十一年から、いまもこの方は少しふえ始めています。大したふえ方じゃありませんが。クリーニング師も四十年、三千九百五十三名をピークにして漸減して、五十一年からはそれでも少しふえて二千百六十一名となっている。理容師の減り方が最もひどいことがちょうだいしたこの一覧表でもわかるのです。  五十一年現在で従業理容師数というのは二十六万一千八百九十名、美容師の方の数、従業員が二十四万六千五十人、クリーニング師が九万八百四十六名、というのが五十一年現在の各理容師美容師クリーニング師の数なんです。  なぜ理容師がひどい減り方をしているのかというその原因はいろいろあると思うのですが、第一には長髪化ホームバーバーの増大など、一種の構造不況でしょう。第二に理容業界不況というものが影響している。第三には、美容院に比べて料金が半分以下、その上に、一人のお客を終わるまで従業員がかかり切りになっている、大変時間の効率が悪い。第四に、しかも客の集中する時間が夕方や休日などに限られてしまって生産性が非常に悪い。こういうことが絡んで商売としての魅力がなくなったから若い人たちに見放されているというのが理容師、男の頭を刈る方の急減している原因だろうと思うのです。  これは床屋さんの将来にかかわる問題でもありますが、国民理容衛生の上からも放置できない問題である。全然これがなくなってしまうような状態が、若者はほとんど目を向けませんから、起きてきていますが、大問題だと思う。  いま申し上げました理由のほかに、若い働き手にとって最も苦痛なのは、これは私の考えですが、健康保険にかかれない、あるいは厚生年金に入れない、雇用保険適用がない、労災保険適用も受けられない、退職金制度はない等々、労基法諸制度適用はもちろんですが、ほかの会社に勤める者と比較しまして将来が非常に不安定であるということが、若い諸君が床屋さんになろうとしない大きな、これは基本的な深刻な問題じゃないか、こういうふうに思うのですが、そういう意味から私どもの党でもいまこれに対して、従業員組織化といわゆる各六法の適用を実施できるように立案中ではありますけれども、国としても、地域別とかあるいは業界組合別とか、何か働きかけを行って抜本的にこの対策を樹立しないといけないと思うのです。それを放置したままで置くというのは、これだけの数の理容師がいるわけですからどうかと思うのです。労働大臣がざっといまお聞きになったような状態ですが、まずこれに対して、何か健康保険あるいは雇用保険なり労災保険なり何なりの適用が受けられるような業界ぐるみ指導をやはり国としてやるべきだというふうに思うのでありますが、この点をまず先にお伺いをしたい。
  9. 石田博英

    石田国務大臣 理容師が非常に減ってきているということは私もよく床屋さんで聞きます。私どもの感じといたしましては、サラリーマンになるよりは、定年制もないわけでありますし、自営業に入りやすい条件もあるわけなんで、どういう原因で減るんだろうかと考えております。私ども所管としておる範囲内では確かに零細企業が多い、雇用人数が少ないところが非常に多いわけでありますから、したがって労災保険雇用保険あるいは中小企業退職金共済制度というようなものへの加入が非常におくれておる。御存じのごとく現在は全部強制適用でありますから、私どもは全力を挙げまして、基準監督署あるいは安定所を通じまして経営規模の小さいところの人々の加入促進に努めておるところでございますが、これからはさらにそういう業界特別目当てにいたしました行政指導というようなものを強化いたしてまいりたいと思っております。多分これは理容師とか美容師とかクリーニング師ということだけでなく、要するに小規模事業所に対するこれら諸制度適用を促進するということを労働行政一つの柱として努力をいたしておるつもりでございます。
  10. 原茂

    ○原(茂)委員 重ねてお伺いしますが、小規模事業所等適用をずっと下へ下げていくということでいま言った諸制度適用ができるようにしたい、前からこういうことを言われているのですが、少ないところはそれが余り進んでいないわけです。ですから、一応いつごろの目標で、そういった床屋さんの一人、二人を使っているところまで適用できるようにできるか。目標というものはやはりなければいけないと思うのですが、それが一つ。  それから、私のお伺いしたのはそうでなくて、地域別でもあるいは業界別でもいいのですが、何とかして業者そのもの指導して、非常に職人というのは流動的に動いていますけれども、その仕事についていることは間違いないわけですから、職場は違っても一つの団体として、従業者そのものは、自分の働く場所は違っても、移動しても、やはりそれを常に通算した期間と考えていく。一つ地域全体、あるいは地域業種別全体が一つ職場であるという考えに立った何か特別な考慮をしないと、この種の業界の救済の方法はないだろうというふうに思うのですが、その点いかがですか。
  11. 石田博英

    石田国務大臣 理容師美容師に限らず、たとえば板前のような人たち移動性が非常に激しい。こういう人たち労働保険適用させるために、機械的に現在の雇用者というものだけを雇用者責任対象とすれば、その流動的性格に合っていかないわけであります。したがって、これを事業組合なり何とかの形でつかまえて、そして労働保険適用が受けられるように、AからBに移ってもその適用がそのまま受けられるような方法を検討させているところでございます。
  12. 原茂

    ○原(茂)委員 ぜひこれは新しく工夫をしなければいけないと思うので、われわれもこの従業員従業者組織化考えていますが、それを待つのでなくて、いまおっしゃったように進んで模索をして、急速にこの種の者が一般労働者と同じ法の適用の受けられるようにということをぜひ考える、これは私からもお願いをしておきたい。  厚生省にお伺いをしますが、現在のままでいきますと、特に理容師の数は激減をしてしまうのですが、これに対しては何か対策をお考えですか。
  13. 林崇

    林説明員 お答え申し上げます。  免許件数で申しますと、先生指摘のとおり、四十三年をピークに減ってきております。しかしながら一方、従事の理容者数で見てみますと、これも先生の御指摘がございましたけれども、大体最近数年間を見てみますと二十六万程度で横ばいというような形でございます。それで、これも先生からいろいろお話がございましたけれども理容所免許者数が非常に少ない、落ち込んでいるという形でございます。この問題につきましては、理容業の特性というものが非常に影響しているという形が考えられるわけでございます。一つ利用者が非常に減ってきているという形がございます。総理府の家計調査で見てみましても、ここ十年間で、昭和四十三年くらいでしたか、一世帯当たり理容にかかる回数は九・八回というデータがございます。それが四十九年におきましては一世帯平均四・八回というような形で、非常にその回数が減ってきているという形がございます。  それから免許をとりまして、最初はいろいろなところに勤めるという形が出てまいるわけでございますが、数年たちますと、サラリーマンでやっているよりも独立していきたいというような形の中から、新しい施設の開業を申請していく、そういう形の中では、やはり慢性的な供給過剰であるという形と言えるかと思います。利用者の数がある程度限定されてきているという形の中で、行く回数が減るという形の中で施設がどんどんふえていきますと、一つ理容所に対する利用者の数というものは相対的に減ってくる、経営が成り立たないから料金を高くする、いろいろ問題がございますけれども、一応そういう形で、一つ問題点としては施設の数が問題になるわけでございますが、現在の段階では利用者の数がだんだん減ってきているというところに問題が一つあろうかと思います。
  14. 原茂

    ○原(茂)委員 おっしゃるとおりなんだけれども利用者の数が減ってきている、施設が減るかというと減っていない。従業者の数、これも横ばい。いまのような急激な減り方をしていくと、現在では利用者が少なくなっていても、そのギャップというものはぐっと開いていくわけですから、やはり労働大臣にも私からお願いしたように、厚生省としてもこの種の問題の抜本的な対策考えておかないと、あと数年たつと、いまの従業者の数というのは老齢化してどんどん減っていくわけですから、横ばいになっていても——この横ばいというのは実はふえたり減ったりではなくて、どんどん年をとって減っていくばかりですから、したがって、新たに補充される者が最近の傾向のような急減している状況を見ると、これはゆゆしい問題が五、六年たつと出てくるというふうに見なければいけませんから、やはり抜本的なものを厚生省としても考えていくように指導してもらわなければいけないだろう、こう思いますが、その点に関してもう一度……。
  15. 林崇

    林説明員 理容業を含めまして環境衛生営業という形は、非常に中小企業雰細企業が多いわけでございます。そういう中で、一方国民生活に非常に密着した営業であるというような形の中から、衛生水準を確保していく、あるいは消費者の保護を図っていくという観点から、経営の安定なり健全化を図っていく必要がある、こういうふうには考えておるわけでございます。厚生省といたしましてもそういうような経営の安定を図る、個々企業の体質の改善を図って、経営近代化なりあるいは合理化、こういうものはさらに一層強力に推進をしていく必要がある、こういうふうには考えておるわけでございます。  そこで、私の方の行政といたしましては、経営相談員を設置いたしまして、個々営業所に対していろいろな相談をする、指導をする、あるいは助言を与えている、こういうような施策一つやってございます。それから、これは今年度からの新しい施策でございますけれども、各都道府県経営相談室というものを設置いたしてございます。ここにおいて、やはり個々営業所からいろいろ税務なり労務なり衛生問題あるいは消費者問題、こういうものについての相談を受けた場合に適切な指導助言を与える、こういうシステムをつくっておるわけでございます。それからもう一つは、経営近代化なりあるいは合理化を推進していくという形の中で、いろいろな融資制度の活用を図っていくということで、私の方の所管に環境衛生金融公庫というのがございます。ここの融資の増額であるとか融資条件の改善、こういうような形も年々努めているところでございます。  それから従業員の福祉対策というものは、非常に零細企業だという形の中で、先生指摘のとおりやはりおくれている面は多少あると思います。そういう中で、従来も経営指導員による指導という一環の中でやってまいったわけでございますけれども、これも、先生のお話の中にございました営業者でつくっております環境衛生同業組合というのがございます。こういうものを通じまして、やはり個々零細企業ですと事務手続というような点から実行の面ではなかなかむずかしいという形もあろうかと思いますので、そういう組合を通じまして、なお社会保険にしても雇用保険につきましても、その普及には今後とも一段と努力をしていきたい、かように考えております。
  16. 原茂

    ○原(茂)委員 それから労災保険について、その中の特に遺族補償年金について大臣にお伺いしますが、現在の物価高あるいは教育費の高騰その他を考えまして一いま遺族一人、二人、三人、四人、五人以上というふうに区別して金額が違っていますね。たとえば遺族一人の場合、給付基礎年額の三五%から四〇%に現在なっている。それをこんなふうに変える時期がもう来ているのじゃないか、実情に合わすために変えていいのじゃないかという感じがするのですが、たとえば、一人を基礎年額の五〇%、二人を五五%、三人を六〇%、四人を六五%、五人以上を七〇%にする。もう引き上げる時期が来ているように思うのですが、この点はいかがでしょう、検討していますかいませんか。ぜひそのくらいの引き上げの検討をする必要がある時期が来たと思いますが、いかがですか。
  17. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 労災保険給付内容の改善につきましては、たび重なる改正によってその内容を充実させてきたつもりでございます。で、私ども、こういった給付改善の検討をいたします場合には、やはりILOの一番新しい条約の基準というものを参考にする、あるいは諸外国の、特に西欧先進国のいろいろな水準を参考にしてやってまいっております。そういったことで、私どもは現段階では諸外国なりILOの水準を上回って遜色ないような形にいたしてまいったつもりでございますが、それでもやはりいろいろ御意見ございましたものですから、一番最近の改正におきましては、特別給付制度という、これは本体的給付ではなくて、福祉事業というような形で積極的にまた二百万円上積みするというようなかっこうで付加給付をやってまいったような状況でございます。  それからまた、これは諸外国の例は全くございませんけれども、残された家族の子供さんたちの進学につきまして、いろいろな就学援助をやっているというようなことで、総合的に見ますと相当前進した内容になっておると私は思いますが、しかし、労災給付につきましては、諸外国の情勢あるいはILOの動き等十分勘案しながら、やはり引き続きこの内容の改善については努力をしていかなければならぬ、こういうふうに思っております。
  18. 原茂

    ○原(茂)委員 おっしゃるとおり、ILOと比較しますと確かにこれは珍しく日本は非常に進んでいます。労働省はよくやったと思うのです。何もILOの諸規定全体がいいわけじゃないのです。たまたまこれは労働省努力で非常に進んでいる。ほかに悪いものもずいぶんあるわけですから、それと比べて少しいいからというので改善の必要がないというのでなくて、私は、もうそろそろ物価あるいは経済その他の動向から見て、いまの程度には引き上げる必要があると思うのですが、同時に、いまのお話にありました特別支給金二百万円、この二百万円もやはりそれなりの定義があるのでしょうけれども、いままでの実施の内容をずっと見ますと、やはり家族数に応じて考えていっていいのじゃないかというふうに思うのですね。たとえば二人になったら二百二十万円にするとか、三人は二百四十万、四人は二百六十万、五人以上おったら三百万というぐらいにもうしても、数はそんなにふえていないわけですから、遺族補償に関する限りはこの程度のことを考えるべきではないかと思うのです。検討はされていないようですが、こういった方向でとにかく実施を考える必要があるとかないとか、両方に対してひとつずばりとお答えだけ聞かせてください。
  19. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 この単価の引き上げ等につきましては、引き続き検討いたしたいと思います。  ただ本体給付の方は、結局残されました遺家族の逸失利益と申しますか、そういったことで家族数にリンクしながらやっていくということになっております。特別給付金の方は、いろいろ性格等もございましょうけれども、慰謝料的な性格その他いろいろ、お見舞い的な性格もありまして、必ずしもそういうふうに家族的に数に応じてやるのがいいのかどうかという問題もございます。御指摘ございますので、十分検討させていただきたいと思います。
  20. 原茂

    ○原(茂)委員 それから今度は、労災保険補償の全般についてちょっと申し上げてみたいのです。  もちろん業務上の事故があった場合に、労災保険というのは本人あるいは家族に給付されるのですが、一定の補償を企業に義務づけてはいますが、各企業はそのほかに独自の上乗せをやっているのですね。実態は、長野県の例で見ますと、大体従業員三十人以上の企業の約半数、三百人以上の企業で八四%、三十人から百人では約四二%が何らかの形で上乗せ制度を実施しているのです。企業独自でやっています。この上乗せをしていない企業では、必要性は確かに認めている、しかし資金難などから当面実施できないとする企業が六〇%あるのですね。それから、企業規模が小さいほどこの考えが強いのですね。うちの企業の実態から見たら資金難でとってもできないという考えが、小さいほど強いですね。全体の数からいって六〇%がこの考えで実施されていない。したがって、こういうことから労働福祉にも企業格差が大きく反映しているのが実態なんです。非常に大きな差があります。本当の中小企業でこんなことはもうとってもできないと言っているところと、千人、二千人以上の規模で上乗せを完全に一〇〇%まで満たすように実施しているところでは、実はえらい格差ができているというのが現状なんです。おたくからも統計をちょうだいしましたが、企業の数からいっても、全国的にいって、この長野県の趨勢というものとはそう大して違わないようです。  六つの補償制度があるわけですが、中でも企業が最も多く上乗せ制度対象としているのは休業補償制度。これはいま最も大事なものなんです。休業補償制度に対して上乗せをやっているのです。五百社を抽出調査しました。回答が三百九十六社ありましたうちの百三十八社で、この休業補償制度に対する上乗せ制度を実施している。  この上乗せの内容を見ますと、法定給付額、休業直前の給与の六〇%ですね、これが規定ですから。その差額を全額補償している企業が百二社ある。百三十八社の中で七四%になります。  しかし、ここでも企業規模の格差が非常に大きく反映していて、三百人以上の企業では三十四社のうち三十一社までが全額補償であるのに対して、三十人以上、百人未満の企業では七十三社のうち全額は四十六社だけなんですね。しかも労働組合のあるのとないのは大分違うのですね。労働組合のあるところほど上乗せがされているという実情にある。組合のない企業の実施率は四一%、これをはるかに上回っているんですが、労働大臣官房統計情報部調べでもこの趨勢は全国的にほぼ同じように私は見たわけでございます。休業、障害、遺族補償、各給付とも、中小企業ほど上乗せ制度がないためいずれの補償制度でも格差がはなはだしくあります。  福祉である以上、格差の是正を国としても考えていいんじゃないか。どうも大きいところへ勤めている者は得したんだ、小さいところにいた者は損をするのはしようがないんだということでほうっておくには、余りにも格差が開き過ぎている。結局、福祉、福祉と言っている現段階で、そういった日の当たらないといいますか、陰に隠れて不平を持ち、しかも非常に不満がありながら働いているような労働者に対して、何とか日の目を見せてやろうということが政治だろうと私は思うのです。しかも中小企業は数が非常に多いんですから、放置するにしては社会問題として余りにも大きい問題だと考えますが、何か対策をお考えになっておられないかどうか、これが一つ。  たとえば、上乗せ制度、補給金制度というんですか、三十人以下、三十人から九十九人、百人から二百九十九人、三百人以上というふうに分けて給付額に差をつけるとか、私は素人でわかりませんが、何かをもう検討すべき段階に来ていると思いますが、ほうっておいてはいけないと思いますが、これはどうなのかが一つと、一体それに対する対策はどんなものがあるか、この二つに分けてお答えいただきたい。
  21. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 福祉対策について企業規模格差があることは私ども十分承知をいたしております。また、その格差はできるだけ縮小されることが望ましい、こういうふうに思っております。特に休業補償につきましては、そういうこともございまして、大体、社会保険のそういった休業補償あるいは休業手当的な性格のものは皆六〇%になっておりますけれども、実態を見ますと大企業では非常に上積みが行われているというようなこともございましたものですから、一番新しい改正で特別支給金という形で二〇%上積みをすることにいたしたのです。これは、まさにそういった格差をできるだけ避けたいということでやったわけでございます。  その後、八〇を超えてどうするかという問題になりますと、なかなか議論の多いところでございまして、私ども現段階では、こういった給付金には、あるいは労災給付金には税がかからない、それから、病気、けがでお休みになっている間は通勤諸雑費が要りませんというような関係もございまして、八〇%を差し上げておればけがされる前の賃金と大体同じようになると思うわけでございます。そうしますと健康で働いている方とのバランスの問題も出てまいりますものですから、大体この辺で適当ではないか。なおまたそれ以上に労使の話し合いでどうこうするという問題につきましては、私どもとしては労使のお話し合いにお任せしたい、こういう考え方を持っておるわけでございます。
  22. 原茂

    ○原(茂)委員 健康で働いている者と給付を受けるようになった者との二〇%の差、ここらがバランス上いいんじゃないか、これはわかります。私も休んでた方がよけいになったんじゃどうかと思う。この気持ちはよくわかる。私の言っているのは、格差があるということですね。片っ方は一〇〇%、片っ方は八〇%だ、その格差を、中小企業にいるから、組合のないような零細な十人、三十人のところに働いているからというんで放置されていいか。これに対しては、やはりこれを考えてやるのが国の政治なんですから、何とかする方法はないだろうかということが私のいま質問している趣旨ですから、どうですか、その点もう一遍、それにしぼって。あってもいいということですか。
  23. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 格差をできるだけ縮小したいということで、一番新しい改正で二〇を積んだわけでございますが、それからどうするかの問題については非常にむずかしい問題があるかと思います。特にまた、こういった格差というものは単なる現象的なものでございませんで、企業の体質、またその改善というような総合的な対策の中からそういったものを縮めていくというふうな基本的な問題もあると思いますので、基本的にはそういった格差を縮めていくという方向については私どもも当然だと思いますので、そういったことも含めまして十分努力をしてまいらなければならぬ、こういうふうに思います。
  24. 原茂

    ○原(茂)委員 次に、課題を少し変えまして、「職業訓練に関する行政監察結果に基づく勧告」がこの間出ました。これを中心にお伺いをしたいと思います。  まず第一に、新規卒業者の採用というのはことしなんかも非常に窮屈になっている。大変な窮屈です。採用はほとんど中止だという企業がどんどんふえているのですが、その実態はどんなものなのかを、これは局長で結構ですから。
  25. 石田博英

    石田国務大臣 私からお答えします。  新規求人の場合は、中学校、高等学校までの新規学卒者というのが私ども所管でございます。それから大学卒業者はそれぞれの大学が就職の責任を持っているわけであります。現在の求人状況で、本年新規求人をしないという企業がかなりあることは私どもも承知いたしております。しかし全体で見ますと、中卒者及び高卒者の場合は、昨年より若干求人件数は減っておりますけれども、ほぼ横ばい、大学の場合もこれは非常にアンバランスがございます。たとえば大企業とかいわゆる上場会社、そういうところへみんな希望いたしますと、これは確かに深刻な就職難であります。いま来年度卒業予定者の中で就職希望者がほぼ二十七万人ぐらいおりますが、上場会社あるいは千人以上、あるいは五百人以上の企業というようなことになりますと、これは六人に一人ぐらいか七人に一人ぐらいになると思うのです。しかしながら、五百人以下のいわゆる中堅企業の求人意欲はかなり旺盛でありまして、したがって規模別の場合でも、総体的に見ますと本年はほぼ見合うのではないかと思っております。ただ中小企業の場合は、いわゆる信用度、将来性というようなものについての求職者側のつかみ方が非常にむずかしいので、私は、先般リクルートセンターで行われました、大学の就職部の責任者それから各企業の人事関係の責任者約五百人ほど集まつだのでありますが、その席上で、大学側において中堅企業以下の企業の信用調査を大学側として私学協会なら私学協会というところでやったらどうかということを提案いたしまして、また先般、一番大きな団体の会長である早稲田大学総長に対しましても同様の申し入れをいたしたわけであります。  もう一つ食い違いが生じておりますのは、サービス部門、セールス部門についての求人倍率は非常に高いのでありますが、しかしながら今度は、学生の方は大部分がいわゆる管理事務部門を希望いたします。ところが管理事務部門というのは、各企業によってまちまちではございますが、平均いたしますと約二五%ぐらいでたくさんなわけであります。そこへ向かって四〇%ぐらいが行くわけでありますから就職難になる。しかしサービス部門、セールス部門になりますとむしろ求人の方がうんと上回る、こういうアンバランスがあるわけでございます。いま御指摘のような数字は上場企業で、中堅企業の求人意欲は意外に旺盛でございます。
  26. 原茂

    ○原(茂)委員 しょせんは生産、景気の回復がありませんと、企業の採用態度は慎重にならざるを得ない。ですが、ここで景気の見通し、生産の回復の見通しはどんなものとお考えになっているのか、さらにいまの雇用、失業情勢というものの今後は現在と比べてどんなふうになるのか、この二つを大臣にお伺いしたい。
  27. 石田博英

    石田国務大臣 これからの景気の見通し、特に私ども所管いたしております雇用問題という観点から考えてみますと、昭和五十二年度予算の前倒し発注の影響が七月から八月にかけてあらわれ始めております。有効求人倍率において、わずかでございますが回復をいたしました。しかも、その回復した分はほとんどが建設業でございます。今度もまた公共事業が中心でございますので、その前倒しの結果、後の方がやせた分を補給するわけでありますから、効果があらわれてくるものと期待をいたしておるわけであります。  ただ、時間的なずれがございます。それは、まずわが国独特の雇用慣行である終身雇用制度、それから企業別組合、こういうものと、さらに私どもがやっております雇用調整給付金等によりまして、かなりの過剰雇用をしておるわけであります。したがって、景気が回復し、仕事が増加いたしましても、それが雇用にまでいく間には、まず自分のところにいる過剰雇用を実働化させた後でありますので、そういうずれがある。それからもう一つは、予算が成立いたしまして公共事業が雇用にまで及ぶのには約二カ月くらい、どうしても時間的なずれがある。私どもから見れば、もっと早くできそうなものだとは思いますけれども、発注までに一カ月、受注してからいろいろな準備をして人を雇うというところまでにまた一カ月、そういうずれがございます。したがって私は、今度の予算が成立いたしましたが、前の五十二年度の前倒しの効果がこれからずっとあらわれてくるのであって、それに今度の補正予算の効果が連動してくれることを考えているわけであります。  それから、中長期的に考えますと、現在いわゆる就業人口というのは、大ざっぱに見て五千五百五十万くらいあるわけであります。そして前期五カ年計画におきましては、五十五年に大体五千四百五十万くらいの雇用を見ているわけです。それに対しまして、労働力人口が五千六百二、三十万というところでなかろうか、こう思うわけであります。ただ、それがどこで伸びていくかといいますと、こういう不況の中にありましても、昭和五十一年度は就業人口が約六十八万人伸びておるわけであります。ところが、ことしは上半期で六十二万人伸びております。上半期で六十二万人伸びているから下半期を合わせると百二十万になる、こういう計算にはまいりませんけれども、そういう状態である。ただ、それが伸びておるのは第三次部門でありまして、製造業ではむしろ減っておるわけであります。これからの雇用吸収力もやはりそういう方向へ向けていくのではないか、こう考えておるわけでございます。
  28. 原茂

    ○原(茂)委員 長期的な不況下にあってますます悪化する雇用情勢に対処するためと称して、九月五日に労働省は臨時雇用対策本部を設置しました。この本部が実施する雇用対策の具体的な施策はどんなことを考えておるのか。
  29. 細野正

    ○細野政府委員 御指摘がございましたように、九月五日に臨時雇用対策本部を設置しました。その第一回の本部の席上におきまして、緊急雇用対策というものを決定いたしました。その緊急雇用対策は、大きく分けますと二つの事項がございまして、一つは失業の予防という問題でございます。  失業の予防につきましては、この十月一日から発足いたしております雇用安定資金の制度を活用しまして、たとえば構造不況業種その他の業種で、設備の削減等に伴いまして人員の削減をしたり、そういった場合に、その産業が、異なる、つまりいま不況に陥っている業種でない業種に転換をする訓練をするのに必要な賃金とか経費を、中小企業の場合でございますとその賃金の三分の二、大企業の場合でございますとその二分の一を雇用保険の方で負担するという制度、あるいは自分の中ではどうしてもやりくりがつかないのでほかの産業に過剰になった人員を移さなければならぬ、その場合にも行くべき先の産業に合った訓練を当該産業において行う、その場合につきましても先ほどと同じような援助をしております。それから、すぐ訓練をしなくてもいいような職種につきましては出向というような形で、最近も新聞等に——他の産業に労働者をとっていただく、こういう制度がございますが、そういう場合につきましても、行った早々にもとと同じ賃金にするのはなかなかむずかしゅうございますから、行った先の賃金はもとと同じ賃金にしておいていただいて、行き先でむずかしい面につきましては、出した方が負担をする、その場合の出した方の負担をした賃金につきましても、先ほど申しましたような三分の二、二分の一という制度で補助をしていく、こういうふうな形で、できるだけ失業者を出さないで自分の産業の中で処理をするか、あるいは他の産業に労働者をとっていただく場合にも、失業という形をとらずに円滑に転換をしていっていただくというふうな制度考えておるわけでございます。  それからもう一つは、最近高年齢者の問題が非常に重要になっておりますので、高年齢者につきましても、雇用率制度というものがございますので、雇用率を軸にして高年齢者にしわ寄せが来ないようにやっていきたいというふうなことを失業予防対策の中心に考えておるわけでございます。  それからもう一つの柱は、不幸にして失業者が出るということも現実の問題としてはなかなか避けがたいわけでございまして、その場合の対策としましては徹底的な求人開拓をやろうということで、先般も全国の安定課長を招集いたしまして、求人をみずからの足で開拓するようにというふうな指示をいたしております。その効果も逐次あらわれてくるのじゃないかと期待をしておるわけでございます。  さらに、失業なさった場合には当然求職期間中の生活の問題がございますので、この点につきましては、雇用保険制度の中に各種の延長制度なり助成制度なりがございますので、そういうものをフル活用してまいりたいというふうなことを考えておるわけでございます。  さらには、失業された方につきましても、他産業に移る場合の転職訓練という問題が非常に重要でございますので、訓練制度につきましても機動的な活用をやってまいりたいと考えております。  そういう労働省内でも各局にまたがるいろいろな問題がございますので、そういう点を総合的、機動的にやっていきたいということで本部を設置した次第でございます。
  30. 原茂

    ○原(茂)委員 ついでに、いまのお話は、いつごろから実施する予定ですか。
  31. 細野正

    ○細野政府委員 すでに実施をいたしておりまして、たとえば先ほど申しました安定資金制度も十月一日から発足をいたしておるような次第でございます。
  32. 原茂

    ○原(茂)委員 いまおっしゃったのは、具体的に実施していけばきっと効果があるかもしれませんが、構造的な不況に陥って事業の転換や縮小を余儀なくされた企業に対して各種の給付金を支給する事業転換等雇用調整事業を十月から同時に発足しましたね。雇用安定事業一つの柱として実施することになったのですが、いわゆる構造不況産業というのは過剰雇用に悩んでいることは間違いないのです。どの産業にどの程度の過剰雇用があるのかつかんでおいでになったら……。それで、どの程度の離転職者の発生が予想をされるか、それに対して数字をつかんだ上でいまおっしゃったような対策が立てられているのかどうか、この二点。
  33. 石田博英

    石田国務大臣 いわゆる構造不況だけを取り上げないで、全体を見ますと、昭和四十九年から五十年の間に鉱工業生産指数は一二%弱落ち込んだわけです。ところがその同じ時期におきまして、雇用関係の指標の落ち込みは約六%であります。したがって、かなりな過剰雇用感というものが漂ったことは間違いないと思いますし、私どもの方のいわゆる雇調金の支給も非常に巨額に上りました、五百五十億円くらいに上ったわけであります。ところが五十一年になりますと、鉱工業生産指数は、わずかではありますが、四十九年を上回ったわけであります。回復したわけです。ところが雇用関係指標というものは依然として落ち続けまして、四十九年と五十一年とを比べますと約八%の落ち込みになるわけです。したがって、五十一年度に産業界全体として、いわゆる製造業全体としての過剰雇用感というものはかなり減少したんではなかろうか、こう思います。  しかし、いわゆる構造不況産業ということになりますと、非常に事情が違ってまいります。われわれは各担当しておる所管省、通産省、運輸省、農林省、そういうところの数字を集めますと同時に、われわれの方でも独自のヒヤリングをやっておるわけであります。構造不況業種と言われるところに現在雇用されている総数は、大ざっぱに申しまして三百五、六十万人ではなかろうかと思います。そのうち中心は繊維でありまして、繊維が製造部門と流通部門を合わせまして二百八十万くらいある。そのうちで流通部門が百十万弱であります。この流通部門の百十万というものは、繊維ばかり扱っているというわけでもないのでありますから、直ちに構造不況とは言えないのではなかろうか、こう思うのであります。今度は逆に、私どもの方で構造不況産業、いわゆる事業転換等給付金の対象事業として五十四業種を指定をいたしまして、これは二百六万人くらいに上っているわけであります。  さてそこで、その中から一体どれくらいの過剰な人員が出るか、それをどういうふうに措置するかということのヒヤリングに対してはほとんど返事を得られないという実情で、これはこれからの労使関係を考えてのことだと思うのです。私どもは、聞いたからといって一々それを言うわけじゃありませんので、協力をしてもらいたいと思いますし、労働組合にも協力を求めておりますけれども、現在のところなかなかつかめない。しかしながら日経連では、非常に大ざっぱでございますが、構造不況産業に雇用されている者を四百万と見て一割が過剰なんだ、こういうことを桜田さんあたりはよく申されるのですが、しかしそういう数字が出る基礎はどこにあるかということになると、いわゆる大ざっぱなつかみでありまして、いまわれわれ非常に苦慮しておるところでございます。したがってこれに対応いたしまする予算措置、つまり雇用安定資金の予算措置もいわゆるつかみで立てるわけでありますが、ただしこれが実際上不足を来たしました場合においては、義務的負担経費でございますので当然予備金支出をもって賄っていけるものでございます。従来も五十年に雇調金が非常にたくさん出ましたときも予算額は百五十億くらいでございましたので予備費で賄った、こういう次第でございます。
  34. 原茂

    ○原(茂)委員 今後の雇用対策の中心というのは、結果的に雇用機会の創出をしなければだめだ。第二次産業、製造業関係の雇用拡大というのは経済の安定成長下ではそれほど期待できない状態にいまのお話でもなっている、数字が示しているわけです。労働省は今後中期あるいは長期的に見て、雇用の増大が期待できる産業分野は一体どこだと見ているのか。ただ第三次だ、サービス部門だというだけじゃなくて、いわゆる期待できる産業分野はどこと一体見ているのか。どの程度の雇用が確保できそうにお思いになるのか。その見通しを、大臣のような説明で結構です。
  35. 石田博英

    石田国務大臣 製造業ではほとんど期待できないだろうと思います。前期カヵ年計画では若干の増加を見込んでおりますけれども。それからまた長期信用銀行等の調査によりますと、現在投資意欲が一番旺盛なのは省エネルギー部門であります。省エネルギー部門に投資が行われても、それが果たして雇用の回復に結びつくかどうかということになりますと疑問でございます。したがって、第三次と申しましても、いわゆる製造業関連の流通その他の部門というよりは、むしろ消費関連、生活関連の第三次部門、そういう部門が伸びていくだろう。そういう部門に前期五カ年計画で期待しております数字は、先ほど申しましたように現在の五千百五十万から五千四百五十万、その差を期待している。それからもう一つ生産年齢人口というものの伸びがだんだん鈍化しております。そういうところに期待するのは余り行政の筋ではございませんけれども、そういう現象もあるわけであります。しかしもっと具体的につかむ必要がございますので、内閣に雇用関係閣僚会議を設けまして、その下に事務担当者を設けて、一体いかなる部門が雇用吸収力があるか、どれくらいか。それから逆の部門、いわゆる構造不況の部門でどれくらい減るか、こういうことの検討をいま進めているところでございます。構造不況とは何ぞやというところから出発していかなければならぬ問題であると思っておりますが、全体としてはそういう考えであります。
  36. 原茂

    ○原(茂)委員 重ねて大臣の御意見を聞きたいのだけれども、いま言ったサービス部門の拡大、これは非常に大事なのですが、その中に社会福祉関連産業の開拓あるいは福祉関係施設の雇用の拡大、こういうことも相当真剣に考えられていいのじゃないかと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  37. 石田博英

    石田国務大臣 私が生活関連と申し上げましたのはそれを指しているつもりでございます。ただ、これはなかなかむずかしい面がございまして、社会福祉関係に確かに人は不足しておる、これは確かです。実は私も二、三の社会福祉事業に関係しておりますけれども、もうはっきりしております。ここにもやはり若い人の志向と社会の要求との間の非常なずれがございます。それからどういう形でそれを吸収するか、つまり公務員の形で吸収したのでは、いわゆるチープガバメントという要請、それから行政改革に対する国民の願望というものとのギャップをどう埋めるかという問題がありますが、私が先ほど生活関連と申しましたのはそういう部門でございます。さらに私ども行政の範囲から申しますと、週休二日制あるいは年次有給休暇というものの完全消化、そういうものを通じまして、そういうこと以外のいわゆるレジャー部門の雇用力というものを伸ばす、あわせて労働者の福祉の増進を図るということを配慮していきたい、こう考えております。
  38. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで年齢別の求人倍率を見ますと四十五歳以上は〇・二倍と非常に悪い。五十五歳以上になりますと〇・〇九倍、再就職の困難な状況にあることはもう深刻な問題でございます。さらに、五十五歳以上の労働人口というものが昭和四十五年の七百五十七万人から昭和五十五年には八百九十一万に増加することが見込まれていると発表なさっておられます。労働力の高齢化というものはどんどん進んでいくわけです。このような雇用情勢の中では、労働者に対する職業訓練、中でも中高年齢者に対する再就職のための職業訓練が特に重要な問題になっていると考えるのですが、先ほどもちょっと局長か何かからお話がございました。これに対しては——特別に重点的な労働省施策の中に取り上げていかなければいけないと思うのですが、これに対してどんなお考えを持っていますか。
  39. 石田博英

    石田国務大臣 具体的にとっております施策につきましては職業訓練局長からお答えをいたしますが、わが国の高齢化社会への進み方ということの速度は異常なものがございまして、アメリカやイギリスが三十年、四十年かかって到達したパーセントに日本は十年間で到達しているわけです。その速度はますます速まりそうであります。私どもは、これに対して定年延長奨励金とか中高年齢者雇用促進給付金とか、いろいろな制度を設けまして中高年齢層の雇用促進を図っておりますが、残念なことには普及度が非常に低いわけでありまして、そういう制度があること自体を知らない経営者が意外に多い、特に中小企業経営者に多い。そういうことを私は発見をいたしましたために、いま急速にその普及をいたさせているところでございます。  それから、職業訓練でございますが、これは実は二十年ほど前に私が最初労働省に参りましたときに、いまの総合職業訓練所というものを全国につくり始めた、そのときからつくり始めたわけであります。これは、急速に進んでくるわが国の産業構造の変化、高度の成長に伴って出てくるいい言葉で言えば近代化、そういう変化に対応するためには、どうしても職業訓練、それから転換が必要だ。したがって、ほぼ同じくらいの割合でいわゆる転職者の訓練というものを考えてつくったわけでありますが、事実は、結果的には若い人だけの訓練に終わってしまって今日まで来たわけであります。今日の実情は中高年齢者の再就職を増進することが一番大きな問題である。それから雇用をする側から申しましても、中高年齢層の増大ということを裏返しにしますと、将来は若年労働力の総体的不足ということになるわけです。したがって、できるだけ早い時期に中高年齢者の人事管理というものの検討あるいはその実行というものをやっておいた方が将来のためになるわけでございますので、そういう意味の行政指導もやっておるわけでございます。  現在の中高年齢者に対する職業訓練の実態につきまして、これから訓練局長に御説明をいたさせます。
  40. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 ただいま大臣から申されましたが、中高年者につきまして、まず中高年者の将来設計ということを考えますと、これは成人訓練、向上訓練なりあるいは能力再開発訓練ということが必要になるわけでありますし、また離転職を余儀なくされる者ないし離転職者に対する訓練といたしまして能力再開発訓練、これも四十五年当時と現在とを比べますと、五年ぐらいの間に私ども、さっきも指摘されましたが、新規学卒者の若年養成訓練から、こういった中高年者を中心とする成人訓練なりあるいは能力再開発訓練に重点を移して特に公共訓練施設におきましては努力をしてまいっております。  ただ、中高年者の訓練につきましてはいろいろと問題がございます。一つは本人の年齢の問題、あるいは住居移転等が比較的むずかしいので、その地域におけるいかなる雇用需要があるか、それに適当な職種の訓練を受けられるかという問題、あるいはまた公共訓練施設そのものが、入校時期を一年一遍とかあるいは二遍ということでは、いつ何どき出てくるかわかりません離転職者に対して即時的に随時訓練をするというようなことに欠けてまいる。それからまた職種につきましては、いまでの公共訓練施設がどちらかというと技能職種を中心にしておりますが、中高年齢者の年齢の点あるいは産業構造の変化に伴う雇用需要が商業サービスあるいは社会福祉関連というようなことに移っている観点からいたしまして、そういった対応をすることを考えなければならない。これも漸次努力はしてまいっておりますが、今後の方向といたしましては、第一には、離転職者がいつでも出てくるのに応じて離転職訓練をいつでもできるように、そのためには職業訓練の技法そのものも、視聴覚教材あるいはモジュール訓練方式と申しますが、そういったことによって、いつでも入校でき、いつでも終了できるというようなことを拡大してまいらなければならぬ。それからまた職業安定機関との連携を密にいたしまして、その地域における雇用需要の具体的な把握、それに対応する訓練をいかにするか、そして再雇用に結びつけるという連係プレイをいたしまして、商業サービスあるいは社会福祉関連というようなものも含めまして訓練科目を多様にしていかなければならぬと思います。公共訓練施設そのものでもそういった努力をしてまいりますが、当面公共訓練施設にそういった訓練科目を設けられないという事情がございます場合には、民間にあります各種の職業訓練に関連する訓練機関に対して委託をするというようなことも考えて機動的に対処をしていかなければならぬというように考えております。  いまの就職に結びつけるという面では、職業安定機関との連携が特に必要になります。たとえば、あらかじめ企業での必要な人を職種を把握いたしまして中高年者にそれを指示すると同時に、雇用予約のような形で訓練を受けながら、すでに就職先が決まっているあるいはまた訓練期間中にでも、その雇用先の需要に応じた訓練のやり方をするというようなことによって対応をしてまいる努力を今後積極的に続けてまいりたいと思います。
  41. 石田博英

    石田国務大臣 中高年を特に対象とした訓練職種がございますので、それについてちょっと追加説明をいたさせます。
  42. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 現在まで実際にそういうものとしてやっております中で成功している事例としては、たとえば造園の関係あるいはビルメンテナンスの関係、そのほか事務関係、表具関係、軽実務、軽印刷というような科目をすでに成功事例として私ども持っておりますが、今後ともに需要に応じた職種の拡大を図ってまいりたいと思っております。
  43. 原茂

    ○原(茂)委員 いまお話を聞いたので、大体行政監察の結果に基づく勧告に沿った主なものの労働省考えはわかりました。ぜひ急速に実施していただきたい。  最後に、事業主の団体などが行う認定職業訓練がありますね、これについても「労働省は産業界における技術の進歩に対応した効果的な職業訓練を行うため、現行の設備基準を再検討し所要の改正を行う必要がある」と勧告していますが、これに対してもやはり予算の措置が必要で、思い切った設備基準等の再検討を行い、予算措置も行わなければいけないと思いますが、この点どうでしょう、最後に大臣から。
  44. 石田博英

    石田国務大臣 おっしゃるとおりであるのですが、非常にむずかしい問題は、現在の職業訓練所の指導員を異動させなければならない問題が出てくるわけですね。現在の指導員を変えなければならない、あるいはもっと高級な指導員を求めなければならない、そういう場合に組合との関係の処理が一番むずかしいので、予算化の方はそれほどむずかしくないのでございますが、それが非常にむずかしい問題になっております。
  45. 芳賀貢

    芳賀委員長 この際、関連質問を許します。丹羽久章君。
  46. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 大臣は大変労働行政に御熱心だと伺っておりますし、日本の国が比較的失業者がないということも行政がうまくいっていることだと思うのです。しかし、私ははだ身につけた感じで申し上げますと、すばらしい大工場ができてくる、そこには昔は何千人、何百人という人が雇用せられて仕事に従事できた、最近は一台の機械で何百人ぶりという作業をするわけです。言いかえれば、最近の言葉でいえばオートメーション的になってきた。そういう機構がだんだんとあらゆるところに取り入れられてくるようになってきた。たとえば建設作業におきましても、スコップを持ったりつるはしを持っていったのがすべて機械化せられて、一人で何千人、何百人ぶりの仕事をしているという現状。学校の門は大きく開けてきた。私は高校を出ました、私は大学を出ました。特に大学では専門的知識が植えつけられている。そしてその専門的知識をさて社会に移して実際に活用してみようと思うと、そういう狭められたものにこれからはますますなっていくのではないかと思うのです。そういうようなことに対する労働省としての今後何年かの対策、きょうの問題でなく今後の対策はどういうふうにお考えになっておるかということを一点聞きたい。  もう一点は、お百姓さんでも、うちじゅうこぞって、もう若い人も年寄りもみんなでやったのです。最近の農業のあり方というのは、請負制度的なものが一部できてきた。そして朝げに星をいただき夕げに霜をといった時代ではなくて、もう私はあなたにお任せしますというと、機械屋さんと農協の一部の人たちが来て、わっと請け負って仕事をしてくれる時代。そういうところから、あの農業に従事するたくさんの人たちが、形を変えてどこかに働かなければならぬという時代がだんだんと訪れてくる。こういうような問題を抱えて、今後何年かの将来に対してどういう御方針を持っていらっしゃるか。それを、時間がないようですからひとつ簡単に聞かせていただけませんか。また折を見てゆっくりお聞きしたい点がありますので。
  47. 石田博英

    石田国務大臣 先ほどもお答えを申し上げたように、製造業で雇用が増大するということは余り期待できない。いまお話しのように、だんだんとオートメーション化して省力化が進んでいくわけですから。それから第一次産業にも無論期待できない。これはむしろ非常に減少していくだろうと思います。そこで第三次に期待せざるを得ないわけでありますが、第一問の場合は、私どもよりはむしろ文部省に考えてもらいたい。専門的技術を身につけるというお言葉でしたが、本当に専門的技術をみんな身につけてくれるならいいのですけれども、表現は悪いかもわからぬけれども、高学歴低学力時代とでも申しましょうか、そういう状態にあって、希望だけは大企業の管理事務部門とくるのですから、これはギャップが出てくるのは当然なので、文部省に考えていただきたいということです。  それから大学の進学率が非常に高い。ドイツなどは同一年齢人口で一七%くらいです。それに対して日本はやがて四〇%になろうとしている。アメリカも、ピークは四六%までいきましたけれども、それがだんだん減って、いま四三%くらいになってきている。ただ、アメリカの場合は、これは進学率であって卒業率ではないのですね。進学してもできの悪い人は卒業させてくれないのですから、ドロップアウトした人の問題が出てくるわけですけれども、日本の場合は必ずといっていいくらい、ところてん式に卒業させるところに問題がやはりあります。私は何度も労働省に参りましたが、この前に来たときかそのもう一つ前だったか忘れましたが、この調子で大学をふやしていくと学歴による失業者が出てくるということを何度も警告したのですが、ふえるばかりで、特に四十五年からお医者さんの学校がやたらにふえて問題になっていることは御承知のとおりでございますので、これは文部省に考えてもらいたい。  それから、第一そろばんが合わなくなってきます。生涯所得は大学卒業生も高等学校卒業生も変わらなくなりました。初任給は、大学卒業生の下の四分の一と高等学校卒業の上の四分の一はほぼ同じであります。そういう点を理解してもらいたいと思います。  そこで、そういう情勢下において雇用問題を考える場合は、やはり新規卒業者自体が社会的な需要というものを自覚して、そしてそれに応ずる気持ちになってもらわなければならぬ。また、実際仕方がないからそうなっていくと思います。たとえばわれわれは、十一月までは大企業の時間でございまして、十二月は中企業、そして三月まで残った人は中小企業にいくということにならざるを得ないと思うのですが、そういう方法で対処していかなければならぬと思います。  それから農作業が楽になり、一部において、特に関西地方において請負化しておるということも承知しております。現在、もうすでにそういう人たちは他産業にみんな向いて、形は農業という形をとっていても実質的には雇用労働者になっておる人が多いわけです。現在すでにその対象の中に入っております。だから、農地を持っておる労働者とそうでない労働者というふうに私どもは区別をつけては考えていないわけでありまして、昔は、農工一体と言いますと農産物に付価価値を加えていくことが農工一体でありましたが、いまは農業におけるそういう労働力をどういうふうに工業に生かすかということが農工一体に変わってきておるわけです。しかし、これも農工だけでは限度がございます。したがって、三次産業部門の雇用吸収力に期待をする、こういう方向でまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  48. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 どうもありがとうございました。  もう一つお尋ねいたしたいと思いますが、いまの傾向で、デスクで仕事をする人、現業員として現場関係で仕事をする人の率はどういうようなパーセントで、どちらがどのように進んでおるかということを統計的に少し聞かしていただけたら参考になると思います。
  49. 石田博英

    石田国務大臣 私どももそれに非常に関心を持ちまして、一体、平均して間接部門、いわゆる管理事務部門というものはどのくらいいるか、平均化しますと約二五%ぐらいであります。それが管理職、いままでは大学を出れば三人に一人ぐらいが管理職になったわけですが、その管理職の数が現在と同じだと仮定いたしますと、後七、八年もたったら十人に一人ぐらいしか管理職になれないということになるわけであります。  なお詳細、私の方で「大学進学を考え直そう」というパンフレットをこしらえておりますので、それについて説明をいたさせます。  それでは、ちょうど時間が参りましたので、お許しをいただきたいと思います。
  50. 細野正

    ○細野政府委員 先ほど大臣からお話がございましたが、四十八年の「雇用管理診断指標」という資料によりますと、企業の中で管理部門と間接従業員、一般にホワイトカラーと言われておるものの割合が二六・六%、残りがいわゆるブルーカラーと言われるような直接従業員というふうな結果が出ております。
  51. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 四十八年はそれでいい。だが、五十年の傾向はどういうふうになっているのですか。どういうような移り変わりの情勢があるか、それを聞きたいのです。なければ後でもらってもいいのです。
  52. 芳賀貢

    芳賀委員長 資料があったら後で配りなさい。
  53. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 それでは、もう一つ簡単に聞きたいと思いますが、実際、失業すると職業安定所の方へ出頭しますということだが、最近と昔とをこう対照してみますと、昔は呼び出しをして、厳重にいろいろなことを聞かれて、そして横着なことはなかなか許されなかった。このごろは、失業しましたという雇い主からの証明をもらってあなたの方へ出すと、ゆっくりと静養ができるという状態なんです。これは言いにくい話だけれども、そこまであなたの方が予算がなくて、人が足らなくて手が回らないかしれないが、もうこのごろは大変楽だという声が上がってきているのですよ。それはどうですか。そういうような指導はしていらっしゃらぬだろうけれども、本当に調査は行き届いておりますか。この点ちょっとお伺いしておきます。
  54. 細野正

    ○細野政府委員 先生からお話ございましたように、求職者数がだんだんふえているわけでございますが、その中で現在やっておりますのは、先ほど御質疑にもございましたけれども、たとえば高年の方とか身体障害者の方とか、あるいは特別の若年の方とかいうことで、特別に職業指導なりあるいは職業相談を綿密にやらなければならない方と、それから、いわばいいところがあったら行きたいというふうな感じで安定所に求人の状況を見に見えるという程度の求職者と、実は二通り大きく分けると出てまいります。そういうものを同じ扱いをしていることに非常に問題があるということから、いま申しました綿密に相談指導をやらなければならない方については、これは安定所の職員が綿密に御相談に応じ、あるいは個々指導をやり、結合を図っていく。それからそうでない方につきましては、むしろ求人を公開いたしまして、安定所のところに掲示板を置きまして、こういう求人がありますからそれで選ばれる方はどうぞ、こういうふうな二つのシステムに大きく言うと切りかえているわけでございます。そういう意味で、前者の方は従来と変わらず、あるいは従来以上一層綿密な指導相談をやっているということでありますが、後者の方につきましては、いわば先生指摘のような、安定所へ行って自分で見て自分で探す、こういうふうなシステムになっているわけでございます。  なお、求職者の方の内容の実態を見ましても、先ほど求職者がふえているということを申し上げましたが、確かに年配の方で生活を双肩に担っておられるという方も、好況のころに比べればかなりその割合が高まり、実数がふえていることも事実でございます。同時に、非常に若い方、女子の方、こういうものがかなりまたふえているというのも実態でございまして、先ほど、何か最近どうも優雅じゃないかというような御批判がございましたけれども、求職者の層の中にもそういう分化が出てまいりまして、そういう点が御指摘を受けたところではないかという感じがしております。
  55. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 関連ですから余り私が時間をいただくわけにはいきませんので、もう一点申し上げておきますが、昔の話を言っては悪いけれども、これは私が前に言ったことがある。運転手がやめていく、そして再就職するときには手当として十万円もらえる。御存じですか。そういうことを片一方で、おまえやめよ、やめて十万円もらえ、そしてまたほかのタクシー会社へ行って働けばいいという、そういう悪い傾向が流れておったから指摘したことがある。この委員会指摘せずして、局長さんにおいでいただいて、こういう事態がありますよ、これはやめなさいと言った。事業者も大変な迷惑をこうむるから、こういうことでそれはやめたのです。いまではそんな十万円というような手当は出さないようになったと思うし、時代がそうであるから当然出すべきでない。そういう一つ一つをかみしめた行政をせないと、デスクプランの上において進めていくということになると、表面はうまくいっているように見えるけれども、実態はそうでない場面がたくさんあるのです。  私は、きょう、思いついて関連性の質問をしたけれども石田労働大臣も十一月改造というのでどうなるかわからぬけれども、また労働大臣を重ねてやっていただくときには、ゆっくり私の知っている範囲のことを皆さん方に訴えながら、皆さん方の御意見を聞いて、新しい一つの道を選んでいただくことも必要であろうと思っているのです。また、悪いところは切って捨てていただかなければならぬ。最近の行政は非常にうまくいっているのですが、うまくいっているということは楽にいただけるということにもなり得る。そういう点、時間があったらまたゆっくり話しますが、ひとつよくお考えになって行政をやっていただきたい。どうぞよろしくお願いします。  委員長、ありがとうございました。
  56. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 委員長、ちょっと関連して。  簡単なんですが、さっき石田さんが述べられた数字の中でちょっと確認したいのですが、日経連の四百万人という数字を述べておられたが、これは構造不況産業の従事者が四百万人という意味ですか。それからその次に、何か一〇%云々とおっしゃいましたが、この一〇%というのは過剰雇用が一〇%ということですか。どういう意味なのですか。
  57. 細野正

    ○細野政府委員 大臣が先ほど申し上げました数字は、日経連の桜田会長がときどき新聞等でおっしゃっている数字でございまして、それで、御指摘のように構造不況業種として十二の業種を挙げておられまして、その十二の業種の従業員の総数が四百万である、そして、そのうちで一割が過剰労働力というふうに考えている、こういうふうなことが新聞紙上に出ておりましたのを、大臣が桜田会長の発言として申し上げたという次第でございます。
  58. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 それからもう一つ不況業種で二百六万人という数字を挙げられましたね。これはどういう数字なのですか。
  59. 細野正

    ○細野政府委員 先ほど大臣、二百六、七十万というふうにおっしゃったわけでございますが、それは、繊維の流通関係部門が百十万ございますので、私どもの十二業種の関連でいきますと三百七、八十万になりますから、そこから百十万ぐらいの流通関係を引くと、二百六十万ぐらいがいわゆる構造不況業種と言われているものの従業員の数ではなかろうか、こういう趣旨で大臣がおっしゃった次第でございます。
  60. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 ちょっとまだ疑問があるのですがね。繊維関係が二百八十万人、そのうちで流通部門が百十万人、こういうことで、それから不況産業全体では三百五十万ないし三百六十万、それでこの百十万人を差し引くのですか。ちょっとはっきりしないのですが、どうなんですか。
  61. 細野正

    ○細野政府委員 先ほど大臣が申し上げました趣旨は、流通部門は繊維専業とは言い切れないので、したがって、流通部門を構造不況業種に入れるのには若干疑問があるという趣旨で、一応その疑問を前提に百十万は差し引いて大臣が数字をおっしゃったのだ、こういうふうに私は理解しております。
  62. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 そうすると、私の言った二百六万というのは二百六十万という意味ですね。
  63. 細野正

    ○細野政府委員 二百六、七十万ということでございます。
  64. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 それからもう一つお聞きしたいのですが、私がここへ入ったときに、就職の希望者の数を二十七万とか言われたのは、それはどういう数字ですか。
  65. 細野正

    ○細野政府委員 来春の大学卒の就職希望者の数を二十七、八万というふうに大臣がお答えになったのだと思います。
  66. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 それからもう一つは、先ほどお話がございました中で、労働省としては就学、進学について何かどんどん進学するなというような意味合いのことを言われたのかどうか知りませんか、労働省考え方と例の市民大学の考え方——これは文部省が提唱している。坂田君なんか熱、心にやっている。市民大学との関係はどう考えていますか。
  67. 細野正

    ○細野政府委員 大臣が先ほど申し上げました趣旨は、結局進学率が高まってまいりますと、先ほど来御論議がございましたように、需要サイドで見た場合に、たとえば大学卒の求職者がふえた場合に、その方々が自分の能力を生かすために必要な職種が受け入れ側に必ずしも備わっていないという事態が広がってまいりますと、受け入れ体制が整っていないという状況になってまいります。そこで、進学率が高まった結果として、大学等の数が少なければ浪人がふえるという問題があります。それから、学力をうんとしぼって落とせば、アメリカで問題になっておりますドロップアウトの人たちが大学も卒業できないということからぐれてくるという問題が出てまいります。それから、全部出すと、先ほど大臣がおっしゃったように、必ずしも大学卒の学力を伴わない大卒の方が出てきて、需要との間で見合わないということで、結局どこかで社会問題が起きるのではなかろうか。こういう観点から、結局最後は、一番の決め手は、現在大学を卒業した人も、賃金にしてもあるいは生涯の所得にしても、かかる経費と入ってくる所得との関係から言えば余り得になりませんよということをよく御理解いただいて、就職する方もそういう情勢だということを理解しながら自分の就職する道を選ぶ。それから進学するときも、将来余り得でないことを御理解の上で進学してこられるならいいのですけれども、そういう意味での進学熱に対してある程度現状を理解していただいて水をかける以外にこの問題を防ぐ手はないのではないかという趣旨で大臣がおっしゃったのではないかというふうに理解しております。
  68. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 何%ぐらいの進学率になるとあなたは見ておられるのですか。私は六〇%ぐらい行くのじゃないかという見通しを持っているのです。日本人のメンタリティーから見て。  それからもう一つは、最近公務員の上級職に行くべき人が中級職にどんどん行っている。これが非常に問題になっている。だから学校は出るけれども必ずしも学校にふさわしいところに行かなければならぬという考え方がなくて、大学は大学として人間の素養としてそれだけ必要なんだ、しかし職業はまた別なんだという大学の教育と職業との分離の問題が市民大学の中に起こってきているのです。この辺のところに対する考え方をちょっと私は聞きたいのです。
  69. 細野正

    ○細野政府委員 確かに野田先生がいまお話しのように、日本の場合には、外国と比べると、おれは大学を出たのだからどうしてもここでなければならぬというふうな思い込み方がわりに少ない面もあるやに私ども見受けられます。たとえば、ヨーロッパなんかの場合でございますと、大学の卒業と社会の身分階層みたいなものが結びついておりまして、そういうものと比べると日本人の場合にはそういう階級概念みたいなものがわりあいに少なくて、したがって、先ほど御議論が出ましたけれども、セールス的な面等にもそう障害なく進んでいる面も確かにあるように見受けられます。そういう意味で、学問はあくまでも個人の素養の問題であり、一方において就職とは必ずしも結びつかなくてもそう問題はないじゃないかという御指摘も、一面そういう現実があるやに私ども見受けられます。  ただし、社会全体の傾向としましては、親も本人も大学へ大学へということの基本は、そういう非常に割り切った、高い理想に基づいて大学へ進んでおられるという面ももちろんでございますけれども、それよりはどっちかというと、そのことによって大企業に行き、あるいは管理職になるという夢をかけておられる面の方が強いのではなかろうか。そのことが将来社会的なテンション等にならぬかという心配の点は依然として残っているのじゃないかと考えておるわけでございます。
  70. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 これは議論になりますから、これ以上はやりません。  ありがとうございました。
  71. 芳賀貢

    芳賀委員長 午後二時再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十六分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  72. 原茂

    ○原(茂)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長が所用のため、委員長の指名により私が委員長の職務を行います。  質疑を続行いたします。北山愛郎君。
  73. 北山愛郎

    ○北山委員 私は、いまの長期の不況といいますか、あるいは低成長時代における雇用対策という問題について、お尋ねをしたいのであります。  この問題については、すでに昨年の六月に第三次の雇用対策基本計画というものが出ておりますが、少し私も読ましていただきましたけれども、雇用という問題についてもっと重点を置いた諸政策を、雇用を中心にして組んでいかなければならぬのじゃないだろうか、このように考えるわけであります。そういう点からすれば、この計画をもう少し前進をさせるということが必要ではないかと思うのですが、その中でまず第一に解雇制限の問題であります。現在では、ある条件のもとで解雇する場合の届け出制というのがございますけれども、単なる届け出では弱いのではないだろうか。若干そこに条件をつけて、許可制というまでいかなくても、もう少し条件をつけてある一定の期間を置くとか、そういうふうな制度化が必要ではないだろうか。あるいはもう一つは、やはり労働者は人間ですから、物じゃないですから、雇うときには雇っておいて、要らなくなったらほいっと放り出すというようなことでは困るので、労働協約とかあるいは就業規則とか、そういう中に事前にそういう場合の協定をやっておくということについてはどうだろうか。この点についてまずお伺をしたいのであります。
  74. 石田博英

    石田国務大臣 いわゆる構造の変化が起こっているときであり、構造に対応していかなければならないときでありますので、いわゆる解雇制限というものを余りきつくやりますと、構造の変化に結局応じ切れないということもあります。しかし、そこに働いている労働者の人たちが、まず第一には働いておる間に次の職を見つけられるような訓練その他の準備をしてやる、失業という状態に入らないで移動するように努めていかなければならぬと思うわけであります。そういう意味で現在予告制度をとっているわけでございますが、予告制度の趣旨は、やはり一つには、次の仕事に移り得る準備期間という意味も含んでおるわけであります。やむを得ず離職した場合におきましても、訓練を実施してもらうと同時に、特定の条件の人に対しましては給付期間の個別延長というふうなことも考えておるわけでございます。  労働協約とか就業規則の中でそういうものを取り入れたらどうか、これはやはり望ましいことだと私どもは思います。ただこれは、やはり労使双方の話し合いによって決めていただきたい、そういうことが望ましいという点については同感でございます。
  75. 北山愛郎

    ○北山委員 実はいろいろむちゃくちゃな例があるわけです。これは組合のない職場なんですけれども、私は岩手県ですが、岩手県のある村に中央から来ました電子工業の、これは下請だろうと思うんです。テープレコーダーの専門メーカー。それが五十七名の従業員なんです。それでもって、突如として全員解雇だということで電話で通告するというような、組合もないものですから、こういうことがあったんじゃないかと思うんですが、こういうむちゃくちゃなやり方もあるわけですが、こういう問題については一体どういう対策がございましょうか。
  76. 細野正

    ○細野政府委員 基準法の問題でございますので、ちょっと所管局長おりませんのでかわって私からお答え申し上げますが、御存じのように基準法によりますと、解雇をいたします場合には三十日前の予告または三十日分の予告手当の支給が条件になっておりますので、そういう意味ではもしいまのような手続をとらずに解雇をいたしましたとすると、それは基準法違反ではないかというふうに考えられます。
  77. 北山愛郎

    ○北山委員 特に今度の国会でも問題になっております特定の産業の不況による解雇というような場合に、やはり特別ないろいろな手当とか給付金、そういうものが出るという特別な条件があるとするならば、解雇の場合においても、実際問題として、いままでおっしゃったような原則じゃなくて、若干ブレーキをかけるというようなことがあってもいいんじゃないかと思うんですが、どうでしょう。単なる一月の予告でやるというんじゃなくて、特別な——いまのような経済状況の中での解雇という場合ですね、離職した者に対する特別な給付なり何なりの措置をするとするならば、またその事業主に対しても一定の制限をするということができるんじゃないでしょうか。
  78. 石田博英

    石田国務大臣 いま局長が申しましたように、お示しの事例はこれは明らかに基準法違反でありますから、基準法違反として雇用主の方には罰金刑が科されるはずであります。  それから予告手当等は、当然支払いの義務が生ずるわけでございますから、どうしてもがんばれば、裁判に訴えればこれは雇用主が負けるに決まっていることだと思います。
  79. 北山愛郎

    ○北山委員 ちょっと問題が後先になったようですが、実はこのような経済の長期の不況というか低い成長のもとにおける国の政策という場合に、たとえば景気対策というものを組みます。今度の補正予算も景気刺激予算だということになっておりますが、ただ景気を刺激してGNPが六・七%になるというだけでは足らないのじゃないだろうか、雇用の問題が先ほど申し上げたように重要であるとするならば、その予算あるいは財政措置その他によって出る雇用に対する効果、雇用効果というものが測定をされてしかるべきものではないだろうか、こういうふうに思うのです。これは予算委員会などでも若干質疑があったようでありますが、今度の補正予算の場合には、労働省としてはどの程度の雇用効果が発生すると検討されておるのか、それを明らかにしていただきたいと思います。
  80. 石田博英

    石田国務大臣 今度の補正予算と同時に金利の引き下げがございます。金利の引き下げは、いわゆる一千万円以上の企業の借入金の現状を基礎といたしますと、約二兆円ぐらいの負担減になるわけですが、一方預金の利子も下がりますから、それを差し引くと一兆二千億ぐらい、それと今度の事業規模で二兆円、これが具体的に何人の、どれくらいの雇用増になるかということは、これは大変むずかしい問題でございまして、私どもの方としてもいろいろ調査もし、試算もしてみますけれども、マクロでそういう数字はなかなかはじき出せない、根拠の余りないものをマクロで言うことはかえって余りいい影響がないのじゃないかと思うのでありますが、一方その雇用者一人当たり平均どのくらいかかるだろうか、賃金及びそれに付随して起こってまいりますいろいろな経費、これは二百七、八十万円というものが見込まれるわけでございます。それから、昭和五十二年度の予算の中の公共事業費の前倒し施行が二カ月ほどたってぼつぼつ雇用の上にもあらわれてまいりました。七月から八月にかけての有効求人倍率が若干回復いたしまして、しかもそれは主として建設業で回復をされているわけであります。したがって、そういう現象が、五十二年度の前倒しの影響が、これから九月、十月と数字になってあらわれてくると思うのでありますが、今度の利子の軽減とそれから補正予算との効果は、やはりそれくらいの時間的な隔たりを持ってあらわれてくるように思います。特に今度は住宅を主にいたしておりますので、住宅は非常に波及効果が大きい仕事でございますから、そういう意味でもかなりの雇用増は期待できるものと思っておる次第であります。
  81. 北山愛郎

    ○北山委員 いずれにしても、私が先ほど申し上げたとおり、雇用というものがやはり中心の目標として非常に重要性を持たなければならぬということになりますと、景気刺激の財政政策をとるにしても、やはり選択というか、どういう事業なりどういう部面で財政、行政措置をとるかということを選択の問題として考えなければならぬじゃないだろうか。たとえば低成長という時代で、もしも労働生産性がどんどん上がっていくということになりますと、雇用の方が伸びないということになります。雇用に重点を置くということになりますと、その辺のことも考えなければならない。そういう点の配慮が必要であり、そこでやはり労働大臣としては、経済政策を決定する場合に、雇用というものを重点にして考える場合には、たとえば減税によるのか公共投資をふやすのか、そこは非常に雇用の立場から言えば違うと思うのですが、それらの関係の配慮は今後これから考えるべきではないかと思うのですけれども大臣はどのようにお考えですか。
  82. 石田博英

    石田国務大臣 いまの諸施策が雇用に及ぼす影響というものを考え、それからその経済の回復ということと雇用と結びつける場合に、一体減税がいいのか公共事業がいいのか、これは非常に議論があるところだと思います。私どもは、とにかく雇用対策として使った金でも、それがやはり子孫のために残るあるいは何かになって社会的な社会資本として残る、こういうような考え方から、公共事業の方が正しい、こういう考えをとっているわけでございます。また、予算の編成その他におきましてもそういう、常に雇用と結びつけて考えてもらわなければならないという立場は今日までも堅持をしてまいりました。特にこの公共事業を施行する場合におきましては、やはり有効求人倍率の悪いところに集中的に重点を置いて配分してもらいたいという要望を閣議でもいたしましたし、また具体的に事務的にも詰めていっているところでございます。
  83. 北山愛郎

    ○北山委員 たとえば二、三日前の報道を見ますと、これは労働省の調査ですが、昨年の労働生産性が一二・四%上がった、ところが常用雇用指数としては上がらないわけですから、どんどん生産性を上げて、雇用にはむしろプラスになってないんじゃないか、失業者がふえてくる、こういうことになるのじゃないか。そういうときの選択ですね。それから、いわゆる残業をやったりしてどんどん生産をふやすというだけでは雇用には響かない、だから残業を規制するような方法考えなければならぬじゃないだろうか。そういう点を、雇用を確保するというようなことを中心にしていまのようなことを今後は少なくとも考慮していかなければならぬだろうし、それから、したがってそういう政策を含んだ予算案を提出するときには、それから出てくる雇用効果というものもやはり測定をして、その説明として、ただ景気が、GNPが上がるとかそういうことじゃなくして、それにまた加えて、雇用の効果はこれだけ出るのだという説明が必要だと思うのですが、五十三年度の予算で労働省としてはそういう試みをしようとする意思を持っておるかどうか、これをお伺いするのです。
  84. 石田博英

    石田国務大臣 確かに労働の生産性が上がっているのに雇用の指標は改善されていないというのは、私どもの役所の調査の結果としても明らかでございます。ただ、これは現在まで全体として非常に過剰な雇用を抱えておって、これはわが国の独得の雇用慣行である終身雇用制、それから私どもの方でやっております雇用調整給付金、そういうようなもので過剰雇用を抱え込んでおった、そこで仕事がふえてきた場合には、まず現在まだ働いていないそういう帰休中の人たち職場に送り込む、それが一巡しないと新規の雇用増というものには結びつかない、こういう事情もあったと思うわけであります。  それから予算を提出する場合、予算を編成する場合に、それがどれだけの雇用吸収効果を生むかというようなことを説明の中に当然加えるべきでないかという御意見でございまして、私もそうは思うのでありますが、それをはじき出す方法というのがなかなかむずかしいのでございまして、そういうことの検討は命じております。また他面、今度の円高による雇用に対する影響というものも目下急いで調査をさしておるところでございます。
  85. 北山愛郎

    ○北山委員 この点は十分考える必要があると思うのですね。公共投資と個人消費、雇用上から見てどちらに重点を置いたらいいのか。通例は個人消費をふやす方が雇用の上においてはプラスになるのではないか、こういうふうに言われておるわけですよ。したがって、そうなれば減税なり賃金を上げるなり、一般の個人消費がふえるような政策に重点を置くということが雇用対策上は正しいと思うのです。なぜならば、公共投資から言えば、景気から見ての波及効果は大きいにしても、その二十数%は用地費に持っていかれる。あるいは企業の利潤に回るとかいうことになりまして、雇用という立場からするならば、その効果というのは、いわゆる景気波及効果とはまた違って別の要素があるのではないかと思うのです。  なお、いま住宅のお話がありましたからちょっとお伺いするのですが、実は最近の新聞を見て非常に疑問に思ったことがあるのですが、民間の融資住宅といいますか、住宅ローンを使うわけですね。ところがある銀行の調査によると、消費者のローン、もちろん住宅だけじゃありませんが、その大部分は住宅だと思うのです。それが実に三十八兆円も残高があるという、これは私思ってもいなかったのですが、こんなにあるのだと、これは大変なことじゃないか。ローンだけどんどんふやせばいいというものじゃなくて、どんどん賃金なりそういうものが上がっていくときにはこれをこなせる。ところが三十八兆円の金利を何年間かに支払うということになると、一年に何兆円もローンの返済にサラリーマンなんかの所得が削られていくわけですから、それだけ消費はマイナスになるので、ローンの住宅をどんどんふやせばいい、そして賃金の方は余り上がらないということになると、そこに矛盾があるのではないでしょうか。その点は労働省は検討されていますか。
  86. 石田博英

    石田国務大臣 雇用に結びつくと申しますよりは、景気回復の即効的効果というのは個人消費の増大の方があると思います。公共事業ですと、どうしても予算成立後それが波及効果を及ぼすところまでいくのには二カ月くらいかかります。減税ですと即効性があるような気がいたしますが、これはやはり一番最初は三次段階に影響するのであって、それが製造業にまで影響してくるのには、在庫の調整、それから先ほど申しました過剰雇用の調整というようなものが必要でありますので、二カ月くらいの時間的なずれがどうしても出ると思うわけであります。個々の事態、あるいは原理的に公共事業を何ぼ出せば何ぼふえるというような過去の事実を追っていったものは出るかとは思いますけれども、そうでないものはなかなか現状においてそういうはかりをつくることが非常にむずかしい段階であります。ただしこれはお話のように調査し研究をすべき大きな課題だと思います。  それからローンの問題でございますが、私もその銀行の調査を見たことがございまして、それだけの数に上っているとすれば、ずいぶん個人の融資住宅というものがふえているんだなと思うと同時に、やはり返済というものが、国においても借金の返済は重大問題でありますが、個人においても大きな問題だと思うわけであります。それの一つのあらわれではないかと思われますのは、最近婦人の非労働力人口が労働力人口化しつつあるわけであります。これは三次部門、特に流通部門等におきましては、いわゆるパートタイマーというものを何段階にも分けて、何時から何時までというふうに分けて募集をする。その働いている人の目的の第一はローンの返済、第二が子供の教育費、第三が自分の欲しいものを買いたいとか、どこかへ行きたいとかいうことになっているようでありまして、ローンの返済というものが各家庭において非常に大きな重みにだんだんなりつつあるのではなかろうか、そういうふうに考えておる次第でございます。私どもの方でも、いわゆる財形政策の中により有利な住宅建設資金等の貸し出しその他の方法を現在でもやっておりますが、拡大しようといまいたしているところでございます。
  87. 北山愛郎

    ○北山委員 いわゆる景気対策上は、ローンでも何でも住宅がふえさえすればいいかもしれませんが、あわせてそういう点も私は考えなければならぬと思う。ただこれは、ある銀行の調査として新聞で見ただけですから、内容をよく調べなければなりませんが、労働省としては、雇用ということがこれだけ重大なことになってきますと、いろいろな角度から考えなければならぬだろう。先ほど申し上げたように、公共投資かあるいは個人消費かという問題もそうですか、産業部門にしても、重化学工業部門あるいは軽工業部門で同じ一兆円生産の場合でも、雇用効果からすればまるで違うわけですから、そういう政府の政策、産業政策を決定するというか、方向を決定する場合に、雇用の立場からするならば、そういう点の政策の方向を決めるために労働省としては努力しなければならぬと思うのです。私は、そういう角度からの雇用政策というものが必要であり、労働省はそういう観点をさらに強化しなければならぬ、こういうふうに思います。そして願わくは五十三年度の予算につきましても、雇用のサイドから見てどうなのかということを、あわせて説明をそのときに出していただければ結構じゃないか、こう思っております。それだけこれからの雇用問題というのは重要だと思います。  そこで、雇用対策基本計画にもございますけれども定年制の問題  中高年齢層の雇用対策が非常に重要だ。その中の一つの問題として定年制の問題がある。六十歳定年の方向に促進をするということになっていますね。そして行政指導でやっておられるようであります。若干奨励金なども出しておられるようですが、実際にやってみた効果はどのような程度の実績を上げているか、これをお伺いしたいのです。
  88. 石田博英

    石田国務大臣 具体的な数字は担当局長からいたさせますが、大ざっぱに申しまして、四十八年時点では大体六〇%以上の企業が五十五歳定年でありまして、現在はそれが四七%くらいに減少いたしました。それから六十歳定年が三〇%弱であったように思うのですが、それが三七%前後に上昇しているわけであります。五十五歳定年というのは、もう今日の時代に合わないことは言うまでもないのでありまして、日本人の平均寿命が四十五歳未満のときにできた制度でありますから、七十三歳になった今日、それが現実に合わないことは言うまでもございません。ただ長い間そういう慣行が続きました結果として、人事管理あるいは賃金原資の分け方の問題、そういうところに問題が出てきているように思います。したがって、これを一遍に改善するというのは、あるいは法的規制でやるというのは無理を生ずるわけであります。したがって、ある一定の年月日をかけて改善を図っていくことが適当だろう、こう考えております。  それから、定年延長の奨励措置については、明年度予算ではかなりの増額を要求いたしております。
  89. 北山愛郎

    ○北山委員 奨励金の実績はどうですか。
  90. 細野正

    ○細野政府委員 先ほど大臣から四十八年というふうに申し上げましたが、これは四十八年度の調査で、実際の調査は四十九年一月でございます。  定年が五十五歳というのがこのときは五二%でありました。その前の調査の四十六年のときに五八%でございました。それから、それが五十一年、不況下ではございますけれども、二年の間に四七・三%まで、約五ポイントほど五十五歳定年が落ちております。したがいまして、この調査始まって以来初めて、従来定年というと五十五歳というふうに言われていましたが、その五十五歳定年というものが過半数を割りまして、いま申しましたように四七%になっております。一方、六十歳定年につきましては、四十六年調査のときは二三%でございましたが、五十一年調査では三六%でございまして、約一三ポイントほどふえております。したがいまして、五十五歳定年が半数を割りますと同時に、私どもが何とか普及させようと思っております六十歳定年が三分の一を上回って現在実施されつつある、こういう状況でございます。
  91. 北山愛郎

    ○北山委員 アメリカでは七十歳定年ということが制度化されたというように聞いておりますが、事実は、実際のところはどういうものでしょう。
  92. 石田博英

    石田国務大臣 下院、上院を通ったということを聞いておりますが、内容についてはまだ詳しく聞いておりません。それが雇用に及ぼす影響というようなことも、まだ詳細には承知しておりませんが、アメリカの場合は、この数年来、労働力の中におけるいわゆる中高年齢層の割合というものがだんだん減ってまいりました。つまり、日本と反対の現象が起こってきているわけであります。青少年労働力の割合の方がだんだんふえてきた、こういう状態にございます。ところが、ヨーロッパではやはり若年層の失業問題が重大になっておりますので、現在の六十五歳定年をむしろ逆に六十二歳なり三歳なりに下げようじゃないか、あるいは六十歳以下に下げようじゃないかというような検討が行われているというふうに承知いたしております。
  93. 北山愛郎

    ○北山委員 日本の場合は、やはり中高年齢層の就職難といいますか、雇用問題が重大になってますから、そういう意味からすれば、私は、従来の行政指導という域を一歩踏み出して、そして制度化してもいいのじゃないか、また制度化すべきではないだろうかというふうに考えるのです。これは別にすべて六十歳にしろとかなんとかというのじゃなくて、六十歳を下回る定年制を決めてはいけないとか、あるいはその前に自発的にやめることは構いませんし、あるいは誘導してやめてもらうということもあるでしょうから、その程度のことは思い切って制度化をやったらどうですか。
  94. 石田博英

    石田国務大臣 北山さんのお考えになっている制度化というものに適合するかどうかは別といたしまして、中高年齢層の雇用率六%という制度はすでに制度化しているわけでございますが、これはいわゆる努力義務でありまして、法的規制を伴っているものではないのであります。これは人事管理の体系を一遍に変えてしまうことになってしまいます。そこで、各企業の対応の仕方は、いずれ六十歳定年ということになるであろう、そういうものに対応するために順次定年を延ばしていっているようなところが多く見られるわけで、一遍に五歳上げるのじゃなくて、二歳上げるとか三歳上げるとかというような段階的な処置をしているように思われます。これは、もう一つはいわゆる賃金原資の分配の問題に入ってまいりますから、労使の間の合意がどうしても必要になるわけであります。この二つの点から見て、一遍に法的規制に入るというのには現状ではまだ無理でなかろうか。やはり順次これをそれぞれの企業独特の立場からの努力によってそちらの方向へ誘導していくという段階に、現在はあるのじゃなかろうか。現にもういろいろな試みが各企業で行われ始めているわけであります。特に将来を考えますと、日本の高齢化社会の実情というのは、アメリカやイギリスが三十年、四十年かかったものを十年間ぐらいの速度で進んでいるわけでありまして、これがこのまま進んでまいりますと、高齢化社会ということは、逆に言えば相対的に若年労働力が不足を来すことでありますので、企業の側でも早くこれに対応する配慮、処置をするべきではなかろうか。現に、いずれは六十歳定年になるだろう、これは法的規制を伴ってくるだろうというような認識は、これは一般的に広まっていると考えております。
  95. 北山愛郎

    ○北山委員 この問題だけではないのですけれども、やはり従来の行政指導というか誘導というか、それでは済まないようないろいろな雇用状態になってくるのじゃないだろうか。たとえば身体障害者の問題にしても、労働省が発表されましたとおり、やはり誘導政策だけでは実際はそのとおりやっていけないというようなこともありますから、実態はそのとおりいかない。ひとつすべてにわたってもっと積極的な姿勢を持っていただきたい、こう思います。  もう一つ地域雇用と申しますか、最近の経済不況の飛ばっちりでございますか、地方に分散をされたいろいろな企業、あるいはそのもともとの既存の事業でもそうでありますけれども、整理、倒産が非常に多いわけなんであります。私どもの県でも、四月から九月までの倒産、閉鎖されたものが三十二件で、五百人余の失業者が出ている。そのうちの百八十人ぐらいしか職安の窓口なりあるいは自力でもってほかへ転職したという者がないので、あとの者が失業しているというようなこと。また、五十一年度、昨年で見ますと、倒産、閉鎖されたものが五十二件、千百四十七人が街頭へほうり出された。その三分の一はいわゆる誘致企業ですね。こういうふうな深刻な事態でございまして、毎日毎日のようにどこかしらが解雇したとか、あるいは倒産したとかという暗いニュースなんです。  そこで、実はその対策ですね。その企業を立て直そうと思ってももうどうにもならぬ状態になっている。しかも中小企業ですから非常に弱いわけです。さりとてやめた人によそで仕事場を探すといっても、いまのような状態で、しかも地方の田舎、農村地帯ではなかなかそういう職場がないわけです。そこで、その対策、後をどうしたらいいかという具体的な問題になってきているわけですよ、その地域の市なら市、県なら県として。そういう際には積極的な対策、どういう対策考えたらいいものか、ひとつ労働省に教えていただきたいような気がするのですよ。大臣ならどうしますか。これは困ると思うのですね。
  96. 石田博英

    石田国務大臣 北山さんのところと私の郷里は全く同じ様子でありまして、そういう問題にしょっちゅうぶつかっていることは御同様でございます。  有効求人倍率から見ましても、非常に地域的にアンバランスな点が見えるわけであります。東京及び関東では比較的求人倍率が高く、東北、北海道あるいは九州、四国というところでは求人倍率が低い。では都会がいいのかと申しますと、神戸市などは有効求人倍率が〇・三六ぐらいで、非常に悪い。そういうばらつきがあるわけでございます。  それから、地方の場合のもう一つの困難性は移動がむずかしいということであります。労働省といたしましては、移動をしやすいようにするために、五十二年度予算で移動用の雇用促進住宅を五千戸、それから補正で一千戸追加いたしておるわけでございますが、若い独身者、あるいは既婚者であってもまだ学齢に達しない子供を抱えているところでは、わりあいに移りやすいのでありますが、そうでない年齢層が高くなればなるほど移動がむずかしいというところに、より以上の困難な問題がございます。したがって、ごく簡単に大都会地や工業地のように職業訓練を受けて移させればいいじゃないかというわけにはいかないことはよくわかっておるわけでありますが、一方、積極的な求人活動を安定所等にいたさせますと、ある程度の求人が出てくるわけであります。目下のところは、その求人の開拓というところに安定所の力の重点を向けさせまして、求人を開拓させている。  もう一方は、これはできれば今月中に調査を完了したいと思っておりますが、各職種ごとの求人倍率を調べますと、職種によって求人倍率が非常に高いものがございます。二とか三という数字が出てまいります。いわゆる技術労働力の不足ということも見られますので、訓練による再就職の道を見出す可能性もかなり残っているわけでございます。  そういうことに努力をいたしていきたいと考えている次第で、ただ、製造業において求人を非常に高く回復することは、今後の経済情勢ではむずかしいのじゃなかろうか、むしろ三次部門の求人開拓あるいは三次部門の需要の開拓を見出す、特に消費関連、生活関連部門の需要を拡大する方向で——労働行政で需要を拡大することはこういうことかというと、結局、年次有給休暇を完全に消化するようにする、あるいは時短、週休二日制を実施するというような奨励措置によりまして効果を上げていきたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  97. 北山愛郎

    ○北山委員 先ほど言ったように、これも実際そういう問題が出ると、都会の市役所だとか県だとかに行きましても、市や県ではどうにもしようがないのですね。一つの問題は、雇用問題について地方自治体が本当に一部の権限というか、一部の責任しかないということなんです。大体において市町村なんかは、失対事業をいまの失対の法律によってある部分をやっている。新しく雇用を拡大したりあれするということは、本来は市町村の仕事ではないのですね。住民のことだから何とか心配したい、しかし何も責任もなければ金もないしというかっこうなんです。その事態に問題があるのではないかと私は思う。  市なり県なりが積極的に何か働く場をつくる。いろいろな企業とか何かに頼んだって、実態は求人倍率がそのように低いのですから、ほんの一部は処理したとしてもできないような事態ですから、企業に来てくれと言ったってなかなか来もしないし、いまという問題のときにやろうとしても手がないということなんです。そうすると、県も市もやってくれない。じゃ、どこへ行ったらいいか。救いようがないということなんです。私は、これは欠陥ではないだろうかと思う。いままではそれで済んだかもしれぬけれども、長期の雇用問題がこのように深刻になった場合においては、むしろ国もそうですけれども、県や市町村も雇用を創出するというか、職場を新しくつくるという積極的な対策が必要でないだろうか。  たとえば昔は事務失対というものがございました。昔の失対事業には、知識階級の失対事業というものがございまして、事務関係の人の職場を別につくって、事務失対ということである部分の人をそういうところに収容した。そういうこともあったわけです。  それから、一定の制度化、県や市町村に雇用を創出する仕事、任務を与えるというか、そういうことで財政的な裏づけもやれば、創意工夫をこらしていろいろな職場をみずからつくる、調査事業をやってもいいし、農業や林業の関係の仕事を始めてもよし、そういうふうに自治体がやれるような手だてをここで考える必要があるのではないだろうか、私はそのように思うのです。  憲法では二十七条で国民は勤労の権利があるわけです。ですから、反面から言うならば、国の方は国民にそれぞれ仕事をできるだけふやしてやるような責任があるわけですから、こういう事態になれば、二十七条を持ち出すまでもなくもっと積極的な雇用対策が必要ではないか、このように考えるのです。  要するに、労働行政は雇用問題に限らず実は労働省直轄なんですよ。そして地方の出先機関、安定所なり監督署なりそういうものでやっているでしょう。ある部分しか県や市町村に仕事を分担させないのです。失対事業のごとき、あるいは職業訓練施設をつくるとかいうものしか与えていない。一般的にその地域の住民の雇用問題について自治体も国と一緒に心配するという制度化が必要ではないだろうか。そういう意味で、雇用対策法なりの根本の制度を変えるというか、そこまで拡張する必要があるのじゃないかと思うのですが、労働大臣はどのようにお考えですか。
  98. 石田博英

    石田国務大臣 自治体の御協力を願わなければ雇用の面におきましては特に効果を上げられない、効果を上げるためには自治体の御協力が必要であることはわれわれも言うまでもないと思っております。現に、各都道府県にはいわゆる地方事務官がおりまして、安定行政と地方自治体の行政とのつながりをできるだけつけておるわけであります。  いまお話しの、特に北山さんとかわれわれのところのような条件の場合に、雇用を創出するという点から、しかもそれがどこへ消えたかわからないのじゃなくて、子孫に役に立つものを残す、そういうような見地から、いま私どもの方と林野庁との間で植林で吸収する方法はないであろうかという検討を進めておるところでございます。  ただ、その下の市町村の段階に入って、自治体で事業をやらせることの適否は、非常に検討を要する問題だろうと思っております。いま私どもも一生懸命頭をしぼって、しぼった結果として植林を考えられないか、特に分収林制度というのがございますので、地方の森林組合その他との連携のもとにこれを進めていけやしないか。これは一つの山なら山をやりますと、大体十年間くらいは、完全通年はむずかしいとしましても、付帯的な仕事がいろいろ続くそうでありまして、目下検討をさせておるところでございます。
  99. 北山愛郎

    ○北山委員 労働省だけの頭で考えるよりは、全国三千の市町村あるいは県それぞれに考えさせた方がいいのです。市長なんか職場についてはいろいろ思いつきがありますよ。たとえばいろいろな廃棄物の処理であるとか、あるいはいまの林業にしても、いま間伐が非常におくれていますから間伐をやらせるような事業をやるとか、いろいろあると思うのです。そういう多彩な事業をひとつ市町村なら市町村、県なら県で頭をひねって考え出してこい、そうしたらばそれについては一つの財政的な裏づけをやってやる、こういうことができないものだろうか。実をいうと、労働行政だけではないのです。中小企業行政もそうなんです。市町村なんかほとんど権限がないのですよ、通産局でもって。あとは団体と末端が行っているのです。末端の自治体は、実際には住民のことだから心配をせざるを得ない。せざるを得ないけれども、金もなければそのような責任というか権限もない。こういうのが私は一つの欠陥だと思うのです。  地方交通なんかもそうですね。バスなんか赤字になっても、本当は運輸省の直轄の仕事です。だから県なんかやってもやらなくてもいいのだ、こういうことだ。実際には住民の足の問題なのですね。ですから、そういう運輸関係、地方交通の問題、中小企業の問題、それから労働の問題です。特に雇用ですね。雇用について何も労働省が持っている権限を委譲しろというのじゃないのです。むしろそれにプラスをしてやらせるようにしたらどうか、こういうことなのですが、ひとつ検討いただけませんか。
  100. 石田博英

    石田国務大臣 それぞれの地域地域に応じたいろいろなアイデアなり御意見なりございましたら、われわれは現行制度の中で運用できるものはできるだけしたい。同じお金を使うにしましても、雇用保険を払うよりはその財源をもって何かまとまって仕事をした方がいいに決まっているわけです。どういうふうな運用ができるか、これは十分検討をいたさせたいと思います。
  101. 北山愛郎

    ○北山委員 実は昨年の冷害の問題について対策をどうするかということで、われわれ考えたわけなのです。というのは、冷害というのは他の風水害などと違いまして、風水害であれば流れた橋であるとか、壊れた堤防とかそれを修理しますから、当然後の事業が起こるのです。いいことじゃないが仕事をせざるを得ない。冷害はあのとおりで、穂が立ったままで実にもならないので、したがって黙っておれば仕事が出ないのです。すると、それだけは農民は所得のマイナスですから、そうなれば、物も買わないし町場の商店も不景気になってくる。地域全体の地盤沈下になるのですね。ですから、何か特に東北、北海道の冷害地帯については積極的な、できるだけ被災者が働けるような仕事、細かい仕事でいいからやるべきだ。そのために自治体のイニシアを十分発揮してもらう。起債の枠をとって、被害の程度に応じて一定の枠を与えて、その中で個々のプランをつくらせる。そして、一々これは認可が必要ですから認可はしますけれども、そうしておいて仕事はどんどんさせるのですよ。後になってその起債の元利償還のときに、国が何割かを見てやる。そういう方法があるのじゃないかということで、実は立法のところまでやったのです。中途でやめましたけれども。私はいまの地方、中央も問わず、この雇用問題あるいは小さな企業はどんどん倒産して失業者が出てくるというこの事態においては、ひとつそのような思い切った政策が必要ではないだろうか。一般会計の予算なしでどんどん事業をやる、景気対策としてもこれほど即効性のあるものはないのです。確かに各省の役人の方、官僚の方々は頭のいい人ばかりがそろっておるから、おれのところのものが名案だ、こう思っておるかもしれませんが、やはり地方団体の知恵と努力というものを生かして、これを引っぱり出していくという政治がいま必要ではないだろうか。特に先ほど申し上げたように、権限があろうがなかろうが、首切られた人は市役所とかそういうところに頼みに行くほかないのですから、世話してあげようと思っても職場もつくれないし、どうにもならない。この対策を、こうやればいいのだという道を与えてやる、ひとつ真剣になって労働省にお考えを願いたいのですが、再度意見を承りたい。
  102. 石田博英

    石田国務大臣 先ほども申し上げましたように、やはり移動させるということはなかなかむずかしい点がありますので、その地方で雇用を増大するのには、その地方にいる人が一番よくわかるわけでありますから、そういうものを雇用の増大のために役立たせる方法というものを検討いたさせたいと思っております。
  103. 北山愛郎

    ○北山委員 いまの問題は、その腹さえ決めればやり方は非常に簡単なんですよ。そして地方自治体を信用することですね。地方自治体に金なんかやったら何するかわからぬ、そんなけちなというか、気持ちではいけないので、やはりどんどん県も市町村も使って働いてもらって、そして雇用問題という重大な問題を解決する腹を決めれば、方法としてはそうむずかしくないのです。起債の財源だって、資金運用部の持っておる国債を若干手放せば五千億かそこらの金は出てくるのですから、予算外にそれだけの仕事がふえるならこれ以上結構なことはないと思う。ひとつ本当に真剣に取り組んでいただきたいと思うのです。  それから、最後に雇用保険なんですけれども、私もよく実態は知らないのですが、いま適用されている雇用労働者というのは二千三百何十万ですね。ところが、いわゆる労働力調査の雇用者と言われる人たちは三千六百万以上はおるでしょう。そうすると、失業保険を適用されてない人が大ざっぱに言って一千万人ぐらいおるということなんです。これは一体どうしたらいいのか。失業保険の適用を受けない、受けられない人たちが相当数おるのですね。これはどのようにしたらいいのか、どのような努力をされているのか、この実態をひとつ聞かしていただきたい。
  104. 石田博英

    石田国務大臣 詳しくは安定局長から答えさせますが、その差は主として小規模事業場であります。その小規模事業場は、事務組合をつくらせましてそれに加入させるように、法律は強制適用になっておりますから、そういう方法でいま努力中でございます。  さらに細かい実態は局長からお答えいたします。
  105. 細野正

    ○細野政府委員 ただいま大臣から御説明がありましたように、事務組合をつくって、その事務組合かそのいろいろな——小規模の場合でございますと、事務的な手続をとるのについていろいろの点が出てまいります。それから、保険適用上の各事業所におきます企業とかそういうものについての明確化というような問題もございます。その辺の指導と、それからその諸手続をやってもらうために事務組合、これを通しまして保険への加入促進を図っているという状況でございます。  なお、実際のその法の面につきましては、その強制適用になっているところにつきまして、たまたまその保険の適用関係が成立しておらなくても、失業者になった場合には、窓口におきましてこれに対しまして失業保険金を遡及して適用しながら支給をする、こういうシステムになっておるわけでございます。
  106. 北山愛郎

    ○北山委員 これでやめますけれども、いまの雇用保険適用を受けている労働者もどんどんふえておったのですが、何か最近になると二千三百何十万と少し停滞しているような感じがするものですから、労働関係だとかあるいは臨時工だとかパートだとか、いろいろ複雑な問題もそこに含んでおると思うのです。いずれにしても、そういう複雑なあるいは変則な労働慣行といいますか労働関係を明快にする意味においても、私はやはり失業保険なら失業保険という制度をずっとすべての労働者に適用し得るような努力が特に必要じゃないか、こう思うので、その点は要望いたしておきます。  以上で私の質問は終わります。
  107. 原茂

    ○原(茂)委員長代理 林孝矩君。
  108. 林孝矩

    ○林(孝)委員 三点お伺いいたしますが、まず最初に婦人の労働条件に関する問題をお伺いしたいと思います。  昭和二十二年の労働基準法の制定以来今日まで、先ほども大臣がお述べになっておった言葉の中に、いわゆる婦人の非就労者が就労者に移りかわりつつある。第三次部門においてのそういう考え方も先ほど述べられておったように、労働条件というものは非常に変わりつつあるということは事実です。その変わりつつある中でも、非常に景気のいいとき悪いとき土雇用問題が起こってくるのはやはり景気の悪いときになるわけですけれども、特に私は今回婦人の労働条件の問題に関してお伺いするのは、労働基準法の六十二条、いわゆる深夜業、この深夜業の制定された当時の社会的背景と現在の社会的背景というものの変遷ということに関係しているわけであります。  まず最初にお伺いいたしますのは、労働基準法研究会というのがあります。その労働基準法研究会において、労働基準法のさまざまな問題点、運用に関する問題点等、法の見直し、研究会の設置、開催とか、そうしたものをやっておられるそうでありますが、この労働基準法研究会の第二小委員会の中で、女子年少者の保護及び不当待遇の問題、労働時間の検討、こうしたことが研究されておるようでありますが、つまびらかにすることができませんので、この機会にどういうテーマでどのような検討が行われ、何を目指しておられるのか、最初にお伺いしたいと思います。
  109. 石田博英

    石田国務大臣 ことしは、いわゆる国際婦人年に引き続きまして婦人問題についての行動計画を立てて実行に移っている段階でございますが、詳細は婦人局長からお答えいたします。
  110. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 労働基準法研究会は、御指摘のように、社会経済の変化に応じて労働基準法の現行の規定が実態にマッチしているかどうかということを研究するために設けられたものでございまして、特にそのために施行の実情と問題点というものを浮き彫りにして、それが現実にいまの規定が動いているかどうかというようなことをやりますために、昭和四十四年九月につくったわけでございます。  お話のように第一、第二、第三という小委員会を設けまして、第一小委員会では、労働協約、就業規則、賃金というような一般的な問題をやってきております。第二小委員会は労働時間、御指摘のように女子年少問題を中心にしてやっております。第三の小委員会は、安全衛生の問題を中心にやってまいりまして、これまでに四十六年−五十年にかけまして、それぞれ各小委員会から報告をいただいておりますが、その中で特に問題が一番緊急でございました安全衛生問題につきましては、その研究報告に基づきまして、基準法の中に安全衛生という章がございましたけれども、これを独立して安全衛生法という法律をつくったようなわけでございまして、そういった研究会の結果を待ちながら、私どもとしては漸次基準法全体を見直していきたい、こういう考えでおります。なお、第二小委員会につきましては、婦人少年局の方で特に御担当でございますので、譲りたいと思います。
  111. 森山眞弓

    ○森山(眞)政府委員 先生指摘のような問題がございまして、いま基準局長からも御説明申し上げましたように、女子の労働時間等につきましては、労働基準法研究会の第二部会において研究をしていただいているところでございます。  この女子の労働時間の問題につきましては、母性の保護あるいは女子の就業分野の拡大あるいは男女の平等の確保というようないろいろな課題を踏まえまして、その観点から種々議論をしていただいているというわけでございますが、現段階ではまだその結論は明らかになっておりません。労働省といたしましては、その検討結果を待ちまして、慎重に対処していきたいと考えているところでございます。
  112. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この労働基準法の六十二条第四項を受けて、昭和二十九年六月十九日に女子年少者労働基準規則というものが定められたわけでありますが、この第六条に「女子の深夜業の範囲」という項目がございまして、「法第六十二条第四項に規定する女子の健康及び福祉に有害でない業務は、左の各号に掲げるものとする。」ということで、五項目掲げられております。一番目に「航空機に乗り組むスチュアーデスの業務」二つ目が「女子を収容する寄宿舎の管理人の業務」三番目に「映画の製作の事業における演技者、スクリプター及び結髪の業務」四番目に「放送法第二条に規定する放送の事業におけるプロジューサー及びアナウンサーの業務」第五に「かに又はいわしの缶詰の事業における第一次加工の業務」、この五つが女子の深夜業の範囲という第六条の規定の中で、健康及び福祉に有害でない業務として深夜の就業というものが認められておるわけであります。この昭和二十九年にこうして決められた女子年少者労働基準規則というもの、これが昭和二十九年で、労働基準法が昭和二十二年ということですね。私たちの感覚から言うと、戦後間もなく制定された法律が、戦後非常に激しい世の中の移り変わりの中で、果たして現在対応するものとして生きているかどうかということなんです。少なくとも、もちろん法律が定められて改正が行われるということもこれは可能でありますし、またそうされなければならないわけですけれども、大事な変えちゃならない部分、これは残すべきだということもそのとおりだと思うんです。  いま私が、女子年少者の労働基準規則というものの中で読み上げた理由は、具体的に申し上げますとこういう問題があるんです。現在深夜に稼働させなければならない業界というのがたくさんあるわけですけれども、たとえば弁当組合というのがあるのです。この弁当組合というのは——弁当というのは昼食べるものだという感覚から最近変わってきまして、朝もう五時、六時に弁当屋さんが店を開いたら、そこにお客さんが待っておるという形のようになってきました。したがって、早朝に間に合わせなければならないということで、この四、五年の間に深夜労働というものが必要になってきたわけですね。その弁当関係、それからサラダ組合、これもやはり同じです。そう菜組合とか、また新聞配達からヤクルトのような、ああいうものの配達、牛乳配達に至るまで深夜の労働というものが現実にあるわけです。その深夜の労働に対して就業している婦人、年齢的に言いますと中高年の人が多いわけでありますけれども、先ほど大臣が答弁されておりましたように、パートでどうしても仕事をしたい、働きたいということで就業しておる。この法律には完全に触れるかもしれませんね、ここに定められた以外の職種ですから。しかし現実は、深夜に実際婦人の人たちが働いて、それが生活の貴重な糧になっておるということは事実なんです。このような状態には、一つの矛盾を私は感ずるわけですけれども、もしこの法律をそのまま強力に推進するということになれば、現在働いているそうした人たちの失業問題というものが新たに生まれる。そして同時に、その企業はやはり深夜の労働能力というものを失って経営が成り立たなくなっていくだろう。東京都でたとえば大田区を例にとりますと、大田区だけで弁当組合に入っている業者は約三十軒、中小零細の業者です。組合に入ってないものを含めると相当の数に上るわけです。そしてその一つの業者に働いている人数は、深夜で三十人中高年の婦人が働いておる。また私たちが新幹線に乗って弁当を買って食べる、その弁当がつくられているところに行っても、やはり中小零細のメーカーと比べると、ある程度経営も安定し、また弁当業界では大手に入ると言われるわけですけれども、そういうところでも形態は同じ形態なんです。朝間に合わせるために深夜の作業が必要となるわけですけれども、これを時間をずらして早くにつくって朝届けるというシステムをとりますと、たとえば東京都の保険衛生の条例に触れるような結果になってくるわけです。バクテリアの一時間の増加率が、結局先につくればつくるほど、実際食べる段階においては制限量を超えてしまうという結果になる。いろいろなそうした矛盾があるわけですね。  そこで私は、この労働基準法の中で基本的に守らなければならないこと、先ほど婦人局長から答弁があった趣旨というものは守っていかなければならない。しかし改正すべきは積極的に改正しなければ、現在、雇用促進という面から考えても、またその婦人たちの心情というもの、家庭の生活の経済的な面というものを考えても、これは余りにも私はゆっくりし過ぎるのではないか。先ほど研究会の内容をお伺いしたわけでありますけれども、研究会が年に何回研究されておるか知りませんけれども、その成果は一体いつあらわれて、それが労働行政に生かされるのはいつごろになるのだろうかということについてもまだ明確にわからない、そういう状態で、私は大臣に、こうした現実の問題に対してどのようなお考えをお持ちになっておるのか、まずお伺いしたいと思うわけです。
  113. 石田博英

    石田国務大臣 基準法ができてから三十年以上たっておるわけです。この当時、戦争が終わってつくられた労働三法を中心とする法体系というものは——わが国の労働行政は戦前においては工場法ぐらいしか保護法がなかったわけであります。そういう情勢の中に生まれた労働三法はそれなりの画期的な意義を持っておると思います。ただ、その後経済の高度成長へ続き、したがって、それに伴っていわゆる産業構造も変化したと思います。それに対応していかなければならぬわけでありますので、そういうことを目指していまの基準法の研究会をつくっているわけです。いっ結論が出るかわからぬというお話でありましたが、先ほど基準局長からお答えいたしましたとおり、その中で非常に顕著であったものは、いわゆる高度成長期に入って新しい化学物質その他を使用するようになった。一面において公害の問題が生ずると同時に、もう一面においては職業病の問題が生じてきたわけで、われわれの方としてはその職業病の問題に対処するために基準法から独立さした労働安全衛生法を制定をしたわけであります。そういう意味での時代への対応の仕方はやっているつもりでございます。  ただいまお話しのように、簡単に言えば、昔ならば婦人という立場から無理であったと思うものが、近年になっていろんな条件の変化に応じて、あるいは認めていいものが出てくることも当然考えられると思います。いまのような具体的な例については私は承知しておりませんので、婦人局長からお答えいたします。
  114. 森山眞弓

    ○森山(眞)政府委員 ただいま先生指摘の弁当屋さんの話でございますが、これは私も一度その業界の方からお話を伺う機会がございまして、そういう実態をある程度承知いたしておるところでございます。しかし、基準法及びその規則についての検討あるいはその改正をいつにするのか、どういうふうにするのかということになりますと、先ほど来申し上げておりますように研究会にお任せいたしておりますもので、私どもといたしましてはいつどういうようにということを申し上げられる段階ではございませんのですが、当然おっしゃるような問題についても含めて検討していただくというつもりでございます。
  115. 林孝矩

    ○林(孝)委員 これは婦人の労働条件の問題でありますので、婦人局の見解をこの際お伺いしておきたいと思います。  私がいま弁当組合であるとかサラダ組合であるとかそう菜組合だとかいろいろな例を挙げ、また現実の問題として先ほど数字的にも、たとえば大田区の例を挙げて話をしたわけでありますけれども一つの区で千名以上の人が深夜の労働ということで、計算の上ではそうなる。東京都二十三区ということを考えれば非常に多くの人たち対象にすることになるわけです。また、全国的に見ればこれまた非常に膨大な人数に上るわけです。地域においても、働けるということで非常に喜ばれている、そういう状態なんです。こういう実態の数というか、コンピューターのキーパンチャー等も含まれるわけですけれども、そうした深夜の実態というものを労働省の中ではどこが掌握されておって、実態はどうなっておるかというような点、またこういう実態に対して、研究会にお任せしているわけでありますけれども、婦人局としてどういう見解、意見というものをお持ちになっておるのか、この際、お伺いしておきたいと思うのです。
  116. 森山眞弓

    ○森山(眞)政府委員 先ほど大臣の答弁の中にも出ておりましたわが国の婦人の地位向上のための「国内行動計画」でございますが、これは二月一日に閣議で了承されたものでございますが、その中の「法制上の婦人の地位の向上」という項目のところに「雇用、職業における男女平等の確保のための婦人労働関係法令、その他広く各種法令上の問題点について検討を行う。」という文句がございます。さらにその後にございます「雇用における条件整備」という項目のところに「現在、婦人に対して行われている法制上の特別措置について、その合理的範囲を検討し、科学的根拠が認められず、男女平等の支障となるようなものの解消を図る。」ということが書いてございます。これとほとんど同じ言葉で労働省の諮問機関でございます婦人少年問題審議会が昨年の秋お出しになりました建議にも同じような趣旨が書いてございまして、特に優先的にこの件については検討を進めるべきであるということを御指摘いただいておるわけでございます。婦人少年局といたしましては、労働基準局と一緒にこの線に沿って今後検討を進めていただき、結論を得るように努力したいと考えております。  現在そういう御婦人方がたくさん就労しておられるという御指摘でございますが、労働基準法の関連につきましては、労働基準局の方の御所管で実態を把握しておられるかと思いますが、私どもの方の考えといたしましては、婦人ができるだけ多くの職場で気持ちよく働くことができるように、そして健康上もまた福祉上も害のない職場に積極的に働くことができるように、一日も早く諸条件を整備していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  117. 林孝矩

    ○林(孝)委員 基準局にお伺いいたしますが、いま婦人局の見解というものを伺ったわけです。健康という問題を考えましても、実際働いておられる方は、自分の一日二十四時間の時間の使い方、何時間睡眠をとって、この時間に食事をつくるとか、もうそうしたスケジュールというものをきちっとやっておられて——そういう人が多いわけですね。体もがっちりとした人も多くて、実際現場を見てみますと、きのうやきょう始まったわけではないんで、もう四、五年の間、長い人ならば七年もそういう仕事に従事しておるとかいう人も多くて、それぞれがその立場で、家族の理解等も含めて、自分のスケジュールの許す範囲で働いておられる、こういうのが私の印象なんです。  それで、基準局として、いま福祉あるいは健康、そうしたものを踏んまえて、女性が喜んで働ける場所、そういうところへ自由に働いていけるような制度といいますか、そういうものの拡充が必要であるという婦人局のお考え方だと私は思うのですが、基準局としてはどのような考え方でこの問題に取り組んでおられるか、お伺いしたいと思います。
  118. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 私どもは労働基準法の施行をやるのが第一目的でございます。またもう一つの面では、立法論という問題があると思いますけれども、まず私ども施行する立場から見ますと、現行法としては夜の十時から翌朝の五時までは深夜業ということで禁止をされているわけでございますから、法律を守る限りにおいてはやはり女性の深夜業は好ましくない、こういう考え方でございます。  立法論といたしましては、先ほど婦人少年局長からお話し申し上げましたように、先ほど先生の御指摘もございましたように、プロデューサーとか一定のそういった知識、技能というものを持っておられる方、あるいは女性しかできないというような、たとえば看護婦さんとかそういうような者については、現行法上も外してあるわけでございます。そういった社会的な要請なり、また女性のそういう母性保護というものもある程度考えなければなりませんが、そういった女性の職業を確保していくというような観点からとの調整をつけながらこの問題は検討をしていかなければならぬ、こういうふうに思います。
  119. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこで、これから検討するということじゃないと思います。すでにいままで検討されてきたわけでありますけれども、具体的にそれでは、たとえば先ほど私が女子年少者労働基準規則の中の項目を五つ挙げましたけれども、その項目、範囲をさらに拡大するというような考え方、提案というものがこれまであったかどうか、その点はいかがでしょうか。
  120. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 女子年少規則の五号までの規定をどうするかという問題は、主管は婦人少年局でございますが、私どもはこの五号以外に女性にふさわしいいろいろな職場があるのではないかという御提案はいろいろ聞いております。  なお、具体的には婦人少年局でより専門的に御研究いただいておる、こういうような現状でございます。
  121. 森山眞弓

    ○森山(眞)政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、婦人の職場、男女平等をより確保するためにいろいろな面から検討されているわけでございますが、その一つ方法として、いま先生指摘のようなやり方も議論の対象にはなっていると考えられます。
  122. 林孝矩

    ○林(孝)委員 大臣にお伺いいたしますが、先ほど私が一つの矛盾として、法律を適用しようとすれば、こういう企業経営不振であるとか、失業者だとかという問題が起こってくるということを申し上げたわけです。いま私が提案しましたように、労働基準法の立法趣旨というものを崩すんではなしに、その範囲内において最大限のそうした現実に働いている人たちが合法的に働けるような環境、また基準法の趣旨を崩さないということは、健康であるとか福祉であるとかいわゆる母性保護、また男女平等であるとかというようなその趣旨は守りながら、そして片一方で現実のこの問題を合法的な意味で解決していける、こういうふうなことをやっていこうとすれば、いわゆる矛盾を解決しようと思えばどうしたらいいかということになると思うのです。  大臣にお伺いしたいのは、いまのこうした現実の問題、先ほどから議論を聞いておられて理解をされたと思うのですけれども、これは現在の日本の経済状態の中では非常に重要な問題となってきておるのでありまして、今日までの研究の状態というものも把握されて、労働省において一つの改正を要するのではないか、私はそのように思うわけでありますが、大臣はどのような考え方をお持ちになったか、お伺いしたいと思います。
  123. 石田博英

    石田国務大臣 経営側にどういう影響を及ぼすかということはちょっと外にいたしまして、六十二条の立法の精神というのは、これは婦人の保護の方にあるわけであります。ところが、これは二律背反で、それを法どおりに執行しますと、婦人の職場を狭めるという結果になる。いまはこの法律が制定されたときとはよほど違っておりまして、たとえば仮眠所をこしらえるとか、あるいはまた通勤に当たってマイクロバスを使うとか、いろいろな他の方法による保護が可能な、また考えられる時代にいまなってきておる、これは確かによくわかるわけであります。したがって、六十二条の精神というものを貫きながら婦人の職場をできるだけ多くする。男女平等の一つの基準は働き場所を多くすることが一つの基準なのでありますから、そういう意味においての検討は必要だと思いますし、そういう意味での検討はいたさせたいと思っております。
  124. 林孝矩

    ○林(孝)委員 ぜひ積極的に検討を進められて、早い機会に成果があらわれるように要望をしたいと思うわけです。その一つの提案として、私は、女子年少者労働基準規則の第六条の五つの項目をさらに拡大するということを提案しておきたいと思います。婦人の労働条件についてはそれで終わります。  次に、通勤災害保険の第三者求償の問題についてお伺いいたします。  最初に、通勤災害の実態が一体どうなっているかということですが、四十八年の労災法改正、いわゆる労災法が適用されて後の件数、死亡事故、被害額などをお伺いしたいと思います。
  125. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 被災者の数でございますけれども昭和四十九年度三万二千八百四十八人、昭和五十年度三万五千八百四十八人、昭和五十一年度が三万八千四百三十四人ということで若干ふえております。それから、そのうち死亡された方が四十九年度で三百九十九人、五十年度で六百五十五人、五十一年度では七百三十一人、これもふえてまいっております。それに対応します保険給付額は、四十九年度が五十八億四千七百万、五十年度が百一億六千五百万、五十一年度が百三十億八千二百万、こういうような状況になっております。
  126. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この通勤災害において第三者行為によるもの、すなわち第三者求償権を発生させたものはどれぐらいありますか。
  127. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 手元に五十年度の第三者行為の求償件数、金額を持ってまいっておりますけれども、通勤災害が千七百二十三件で対応額が五億二千六百万でございます。
  128. 林孝矩

    ○林(孝)委員 第三者求償の実績労働保険特別会計労災勘定の項目で見ますと、徴収実績というのが非常に悪いわけです。四十九年、五十年、五十一年度の歳入予算額と徴収決定済み額がどうなっておるかお答え願いたいと思います。
  129. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 四十九年度につきましては、歳入予算額が百三十九億四千九百八十五万円、これに対しまして徴収決定済み額が三十億九千二百八万円でございます。収納済み額が九億一千六百二十二万円でございます。五十年度につきましては、歳入予算額が百七十二億五千百四十一万円、それに対応する徴収決定済み額が三十八億百八十九万円でございます。収納済み歳入額が十億四千百六十一万円でございます。五十一年度につきましては、歳入予算額が百七十五億一千二十八万円でございます。徴収決定済み額が四十九億三千百八万円でございます。収納済み歳入額が十三億五千三百四十四万円となっております。
  130. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この予算額、徴収決定済み額、収納済み歳入額の食い違い、格差といいますか、これが起こる原因はどういうところにあるのかということと、五十二年度はどのような考え方でおられるか、この二点をお伺いしたいと思います。
  131. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 実は制度を発足いたしまして、まず予算を計上するに当たりまして、労働者の通勤途上災害に関する調査を一応やってみたわけでございます。一体どのくらいあるかということで、三十人以上の事業所を対象にいたしまして調べてみました。私どもといたしましては、当初年間二十七万人ぐらい通勤途上災害があるだろうということで予算を組んだわけでございます。実際は、先ほど御報告申し上げましたように、五十一年度で大体三万八千件、その前は三万四、五千件ということで非常に見込みが違って、結果的には非常に少ない数で結構なことではございますが、私どもといたしましては、予算上そういった調査と実態とが食い違っていたということが一つございます。そこで、私どもといたしましては、五十二年度予算ではできるだけ実態に合わせるように、この歳入予算額を減らして計上したということでございます。
  132. 林孝矩

    ○林(孝)委員 歳入予算額と収納済み歳入額との差が、計算しますと、四十九年度で百三十億三千三百万、五十年度で百六十二億九百万、五十一年度で百六十一億五千六百万、こういう数字に上るわけです。この差というものと、それからもう一つは、予算で歳入をこれだけ組んでいるわけでありますけれども、実際の収入というものから言うと予定減ということになりますね。この予定減というものに対して、労働省ではどのような取り組みをしているのかということをお伺いしておきたいと思います。
  133. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 徴収決定額と収納済み額、またそこに開きがございますことにつきましては、私どももいろいろと分析検討いたしておりますが、第三者行為災害でございますものですから、御本人は御納得できずにどうしてもまた裁判にかけられるということがございまして、民事訴訟を提起されるということになりますと、年度内にその問題が決着いたしませんで、第三者から金を取るということが年度を越えることがございますので、そういったような年度間の食い違い等がございます。そういうようなことで、私どもといたしましては、この間の格差がなくなるように積極的に努力をいたしてまいりたいと思います。  もう一点は、第三者行為災害で私どもが求償いたします場合に、これは法律上当然でございますが、相手が破産をしたり倒産をしたりしている場合がございます。そういうようなこともありまして、実際に差が出てきております。私どもといたしましては、こういった徴収決定額と収納済み額か格差があることは好ましくありませんので、できるだけそういった問題を十分データで分析をして、食い違いがないような予算の組み方をしていかなければならぬ、こう思っております。
  134. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、未済の歳入額がまた非常に多い。これは徴収体制とかいうものにも問題があるのでしょうか。その点はどうでしょう。
  135. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 私ども労災保険の事務体制については最大の努力をして、そういった収納済み額が下回るようなことがないように努力したいと思っておりますが、全面適用いたしまして約百万以上の事業者がどかっと入ってきたようなかっこうがございまして、できるだけそういった債権管理について遺漏がないように督励いたしておりますが、そういう面も一部あるかとも思います。
  136. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いま、徴収体制はどういうふうになっておりますか。
  137. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 私どもの方は、一応労働保険特別会計ということで雇用保険労災保険を一本にいたしまして——実は全面適用になりますと数かそういうふうに百万もふえますものですから、徴収は雇用保険労災保険を一本にしようということで徴収一元化をいたしまして、そして二つの保険料を一本にいたしまして対応しているということで、そういった合理化努力はいたしておるつもりでございます。
  138. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、四十九年、五十年、五十一年度の不納欠損額の数字はどうなっておりますでしょうか。
  139. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 四十九年度が五千七百七十八万円、五十年度が三千八百四十六万円、五十一年度が八千九百六十七万円でございます。
  140. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、この三カ年で約一億八千万円近い数字に上るわけでありますけれども、これは決算の面から言えば国損ということになるわけです。徴収の努力は十分されておると思うわけでありますけれども、この不納欠損への繰り入れについて、私はこの際会計検査院の見解を伺っておきたいと思います。
  141. 松尾恭一郎

    松尾会計検査院説明員 不納欠損が三年間で一億八千万円という多額に上っておることでございますが、これにつきましては好ましい状態ではないということでございます。  私どもといたしましては、支出と同じように歳入面についても検査を厳重にやっているわけでございまして、検査に当たりましては、各労働基準局の実地検査の際に、大きな収納未済額については個々一つ一つ検討いたしまして、その当否を検討しているということでございます。  検討の内容は、収納未済額に対する納入督促が的確に行われているか、その前に徴収決定は正しく行われているか、この点を厳重に調べております。  それから、不納欠損があった場合には、その当否をこれも留意して検査を終わっております。債権の確保は、先生指摘のとおり非常に重要な仕事でございますので、この点については今後とも遺漏のないように検査をいたしたいと考えております。
  142. 林孝矩

    ○林(孝)委員 労働省の見解をお伺いしたいのですが、このような不納欠損額が出ている実態はいま会計検査院から指摘があったとおりでありますが、大臣はそれを受けて今後どのような姿勢で臨まれるかお伺いして、この問題に対しては終わりたいと思います。
  143. 石田博英

    石田国務大臣 雇用保険並びに労災保険の徴収を一元化しろということは、私が前に役所におりましたときに指図をいたしました。そのことによって未納欠損が増大しているとは実は思いませんけれども、先ほど基準局長からお答えいたしましたとおり、とにかく全面適用になって急速にふえてしまった、そういうことが主な原因であろうと思います。できる限り事務組合その他をつくらせまして、そういう零細な企業加入の促進に努力をいたさせたいと思っております。
  144. 林孝矩

    ○林(孝)委員 次に、現在の重大な政治課題の一つであります失業者対策に関係することでありますけれども、雇用の確保という観点からお伺いするわけであります。  特定地域開発就労事業というのがございます。これについて伺いたいと思います。この特開事業はどのような目的で、どのような特徴を持って行われている事業であるか、いわゆる失業対策事業とどう違うのか、その点を最初にお伺いしたいと思います。
  145. 石田博英

    石田国務大臣 失対部長からお答えさせます。
  146. 細見元

    ○細見政府委員 まず、お尋ねのありました一般失業対策事業は、先生御承知のように、緊急失業対策法に基づきまして、昭和四十二年五月から、失業者に就業の機会を与えることを目的にいたしまして、国庫の負担を受けまして都道府県が直営で、現在でもなお全国的に実施いたしている事業でございます。  これに対しまして、特定地域開発就労事業は、昭和四十六年十月から中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法が施行になりましたことに伴いまして、中高年齢失業者の就職が特に困難な特定の地域の開発と、それから中高年齢失業者等に臨時的に就業の機会を提供することを目的といたしまして、予算措置で地方公共団体が国庫の補助を受けて、請負施行の方式によりまして実施いたしております。したがってその施行地域もきわめて限られておりますし、また事業種目といたしましても、比較的経済的効果の高い建設的な事業を中心に選定いたしまして実施しておりまして、一人当たりの事業費単価も一般の失対事業に比べますとほぼ倍以上になっております。  一言訂正させていただきます。一般の失対事業は二十四年から実施いたしております。恐縮でございます。
  147. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この特定地域の指定は、どういう県、いま何カ所になっておるか、それから実施事業主体はどれくらいあるか、事業件数、雇用人員はどうなっているか、その点についてお伺いいたします。これは四十九年度、五十年度、五十一年度にわたってお願いしたいのです。
  148. 細見元

    ○細見政府委員 まず、特定地域の指定につきましては、昭和五十二年度で十二県下六十四の安定所の管内について指定をいたしております。  次に、事業規模につきましては、四十九年度は実施地域は岩手県ほか八県、六十二の事業主体で年間六十二万七千四百四十延べ人日で実施いたしております。次に、五十年度は高知県ほか七県下におきまして五十九の事業主体、七十九万七百四十延べ人日。五十一年度は同じく高知県ほか七県、五十六の事業主体、七十四万五千四百三十延べ人日で実施してまいっております。
  149. 林孝矩

    ○林(孝)委員 四十九年、五十年、五十一年度の特開事業歳出予算額と予算現額はどうなっているか、お伺いいたします。
  150. 細見元

    ○細見政府委員 四十九年度の歳出予算額は三十七億三千四百万円、歳出予算現額は三十一億一千二百六十七万八千円。五十年度の歳出予算額は四十三億九千四百万円、歳出予算現額は三十六億六千百九十六万一千円。五十一年度の歳出予算額は四十九億八千三百万円、歳出予算現額は四十五億四千三十二万七千円となっております。
  151. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、四十九年度において六億二千百万、五十年度において七億三千二百万、五十一年度において四億四千二百万、すなわち四十九年度は一六・六%、五十年も一六・六%、五十一年八・九%、これだけの流用等減額が行われていることになるわけです。この流用はどういうところになされたのか、お伺いしたいと思います。
  152. 細見元

    ○細見政府委員 四十九年度につきましては、失業対策事業紹介対象者に特例措置を講じましたので、失業対策事業費補助金に流用いたしました。それからいま一つは、職業転換対策事業費に流用をいたしております。それから、五十年度につきましては、職業転換対策事業費に流用をいたしております。五十一年度につきましても同じでございます。
  153. 林孝矩

    ○林(孝)委員 四十九年、五十年、五十一年度の不用額はどうなっておりますか。
  154. 細見元

    ○細見政府委員 四十九年度の不用額は八億四千六百四十六万四百十二円、五十年度の不用額は六千五百十二万二千七百六十四円、五十一年度の不用額は七億五千三百八万一千円でございます。
  155. 林孝矩

    ○林(孝)委員 先ほどの流用等減額と不用額を合わせますと、歳出予算額に対して四十九年度が十四億六千七百万、五十年度は七億九千七百万、五十一年度は十一億九千五百万の減となるわけです。これだけの額が予算に組まれておりながら生かされていないということになるわけでありますが、一方毎年の予算は増額されておる。多額の不用額が出たりあるいは減額が行われたりしているわけですけれども、現実問題として事業主体の減少傾向というものも見られるわけですね。この三つを考えてみますと、予算が有効に使われるようにするためにはどうしたらいいかという問題にぶつかるわけです。そのことに関してどのような検討を加え、対策を立てられておるか、伺いたいと思います。
  156. 細見元

    ○細見政府委員 ただいま先生お尋ねのございました問題について縮めて申しますと、当初予算額に比しまして支出済み現額が少なかったのは、特開事業対象となる事業が少なかったことによるということになりますけれども、いま少し詳しく申し上げてみますと、特開事業は、先ほども申し上げましたように、単に特定の地域で中高年齢失業者の就職が特に困難であるというだけで実施するものではございませんで、地理的条件その他から見まして、地域開発の可能性があり、臨時的に失業者の方にこの事業に就労させていただくことによって、近い将来当該地域の開発が進むことによりまして安定した雇用の場が生まれ、それに吸収していただくということが期待される、そういう場合に限って運営してまいっております。したがって、各年度の特開事業の施行地域実施規模は、当該地域におきます中高年齢失業者の就職の状況地域開発の可能性、公共事業の実施状況等によっても変動してまいるものでございます。また事業の性格上からも、雇用・失業情勢の変化等に応じて、たとえば年度途中におきます特定地域指定の追加あるいは事業の追加実施等の要請等にも応じられるように、ある程度弾力性を持たせながらしぼって実施してまいった結果、このような不用額が生じたことになっております。ただ、御承知のように昨今の雇用・失業情勢は大変厳しゅうございますので、私どもとしては、やはりこの程度の余裕を持って現在のところ事業を運営させていただきたいと思っております。
  157. 林孝矩

    ○林(孝)委員 時間が来ましたので、最後に大臣にお伺いして終わりますが、たとえば補助基準の緩和だとか、自治体がこの事業に積極的に取り組めるような行政指導であるとか、いろいろな、ただいま御答弁のあったことも含めて、こうした減額だとか不用額等が次第に増大していくというようなことをなくすために、雇用促進を図るという意味から大臣としての見解をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  158. 石田博英

    石田国務大臣 せっかく予算に計上していながら減額したり不用額になったりするものがある、一口に言えばもったいない話で、したがって、できるだけその目的に沿うような手段を、いま御指摘の手段も含めて研究いたしまして、もったいなくないように運営をしていきたい。現在の雇用・失業状況というのは、そんな余裕を許すものではないと考えております。
  159. 林孝矩

    ○林(孝)委員 終わります。
  160. 原茂

    ○原(茂)委員長代理 安藤巖君。
  161. 安藤巖

    ○安藤委員 私は、労働者の休日の問題ほか一、二点お尋ねしたいと思うのですが、細かいことは大臣にお答えいただかなくてもいいのです。  最初大臣にお答えいただきたいと思いますのは、大臣や私どもにも実は休日というのがあるのですけれども、労働者にも休日というのが当然あるわけです。そして、これは労働基準法上も、一週間に一日もしくは四週間に四日ですか、という規定があります。その労働者の休日というものを大臣はどういうふうに考えておられるか、まず最初にお尋ねしたいと思います。
  162. 石田博英

    石田国務大臣 一つには、個人としての生活を豊かにする時間を与えるということはもちろん基本でございますが、もう一つは、やはり休養ということも休日をとる大きな目的であって、その休養によって次の週の活動を確保するということである、こう考えております。
  163. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、これは大臣でなくてもいいのですが、ちょっと細かい話をお尋ねしますので……。  企業によっては、その休日を労働者に与えるについて、いま大臣がおっしゃったように労働した後の休養というのではなくて、休日労働というのを、最初に休日に休ませるのをウィークデーにまず休ませておいて、そして後から休日に労働をさせるというような制度をとっている企業が相当たくさんあるわけなんです。休日に労働すれば、その後のウィークデーに休むのを代休というわけですね。ところがその代休を先にとって、いわゆる代休の先取りといいますか、そういうことをやっている企業も相当あるというふうに私も聞いているのですが、まずこの代休の先取りという点は、先ほど大臣がおっしゃったような休養という点、それからいろいろそのほかに文化的なことも何かおっしゃったんですが、そういうようなことから考えてこれは奨励すべきことなのか、別に法に触れるというようなことにならないのかどうかという点をお尋ねしたいと思います。
  164. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 ぎりぎり法違反かどうかという議論と、望ましいか望ましくないかという二つがあると思いますけれども、基準法上は週一回休日を与えなければならぬということで決められております。あとは就業規則なり労働協約で、それをできるだけ具体的にするということが望ましいと思います。だけれども、週一回与えておればそれは法違反にはならない。しかし、私どもはできるだけ就業規則その他できちっと特定をするということが望ましい、こういうふうに考えます。
  165. 安藤巖

    ○安藤委員 代休の先取りの問題につきましては、私が思っておりますのは、先ほどの大臣の御答弁にもありましたように、たとえば土曜日に先に代休を労働者にとらせて、そしてそのかわりにその翌日の日曜日に働いてもらう。少し譲歩しましても金曜日に代休をとらせて、あさって働いてもらうからきょう休んでおいてくれよということぐらいまでならまだ理解できるのですけれども、それが一週間あるいは十日以前に代休をとらせておいて、それから一週間もしくは十日あるいはひどいのになると二十日以降に休日労働させるというようなことになってくると、これは妥当か不当かという問題ではなくして、相当法に触れることになるんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  166. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 法律の三十五条の規定の仕方は、第一項目に毎週少なくとも一回の休日を与えなきゃならぬ。第二項目には、四週間を通じて四日以上の休日を与える場合には第一項の原則は適用しないということでございますから、四週を通じまして四日与えておればぎりぎり法違反ではないということでございますが、冒頭に大臣がお話し申し上げましたように、休養をするという第一義的目的もございます。それから、人間のレジャーその他生活を豊かにするという目的もありますから、私どもとしてはそういった休日が特定されることが望ましい、こういうふうに考えます。
  167. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、いまのお答えは、人間らしい生活だとか休養だとかあるいは生活にゆとりを持たせるとかというようなことの趣旨からすれば、休日が特定されておればいいというお答えなんですか。
  168. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 特定されることが望ましいというわけでございます。つまり、恣意的にいつ休日になるかわからぬようなかっこうで休ませるのは、本人自身も準備ができませんわけですから、特定されることが望ましいということでございます。
  169. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、たとえば就業規則なんかで特定されておれば、代休を先取りして、それから後の休日労働が二十日以降になってもそれはもう構わないというお考えなんですか。
  170. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 基準法は刑事罰をもって強制するわけでございますから、その解釈はぎりぎりやはりきちっとしておかなければならぬということで申し上げているわけです。したがって、四週間通じて四日休日与えておれば法違反になりませんけれども、問題はやはり事前に、いつ休日になるかということがあらかじめわかっているような形で休日を与えることが、私どもとしては行政指導として望ましいと思っております。
  171. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、特定されておれば二十日以上たった後の休日労働ということでも、それよりも二十日以前の代休でも、休日としての役割りはちゃんと果たしておるというお考えというふうに伺っていいわけですね。
  172. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 法律解釈として四週間に四日与える、その与え方は法律的にどうといって言っておりません、ぎりぎりの解釈は。だから、ばたばたとまとめて四日続けてやるということも、それは違法ではないかもしれませんけれども、しかしそういうことであれば休日をつくった法律的意味がありませんから、やはり定期的に与えるというふうな形で労務管理をしていただきたい、こう思うわけであります。
  173. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、やはり休日という制度が設けられているという趣旨から、定期的にその休日の意味がちゃんと達せられるような範囲内で与えてほしいということですね。それと、一カ月なら一カ月の間にいつ代休をとって、いつ休日労働をするのかということを、ちゃんと計画的にしておいてほしいということを考えておられるということですね。  それから同じ代休の先取りの問題ですが、先に代休を、月曜日でも火曜日でもいいんですけれどもとっておいて、今度は休日に労働させるというのではなくて、代休の時間返しといいますか、なし崩しに時間外労働をさせて、その代休分を返してもらうというようなやり方をとっているところがあるんです。ですから、時間外労働をすれば時間外手当がつきますね。それを休日労働のかわりだから、本来休日労働すれば割り増し賃金がつくわけですね。だから、もちろん時間外の賃金を払わないという結果になるわけです。  これは住友軽金属の名古屋工場で私が具体的に調査した結果なんですが、そこは一日七時間四十五分の労働日なんです。で、一日代休を先にとらせます。そうすると、七時間四十五分労働者は会社に対して借金をしたことになるわけなんです。それをその後の日に数日間にわたって残業を、一時間なり一時間半なり三〇分なり十五分なりとやらせることによって、そしてその七時間四十五分というのを消化させるというようなやり方をしているのですが、これはどうなりますか。
  174. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 設例が具体的によく私どものみ込めませんけれども、前もって休日を与えているから七時間四十五分分は会社として貸している、だからその分は時間外労働をやらしていい、こういう御了解でございますね。問題はその休日労働——休日を与えているわけですから、三十五条の問題はないわけでございますね。あとはまとめてその七時間四十五分というのを残業の形で積み上げてくると思うわけですけれども、それがうまいぐあいにたとえば四週間の間に七時間四十五分になるのかならないのか。もしそれがならないで翌月に積み越していきました場合には、今度は賃金の問題に絡んでまいりますね。毎月一回賃金を払わなければならぬわけですから、割り増し賃金を不払いするというような問題になってまいりまして、いわゆる休日労働になるかならぬかの問題とあわせて、賃金の不払いになるかならぬかという、つまり割り増し賃金をその当該の月のときに払ったかどうかという問題もありますから、非常に問題のある運用の方法だと私は思います。
  175. 安藤巖

    ○安藤委員 後から私がお尋ねしようと思ったこともちょっとお触れになったんですが、まず代休の時間返しというのは、これはちょっと異常な事態だと思うんですね。だから代休を先にとらせて——結局これは休日をやりくりしたわけですから、労働基準法の三十五条の規定は休日を与えなくちゃいかぬですから、これは逆の場合ですけれども、時間返しをさせるというのは法の趣旨に反するのではないかと思うのですね。だからいまおっしゃったように、それはもう一つ後からおっしゃったようなことをも含めて問題だとおっしゃったわけですが、具体的にいま御心配になったように、七時間四十五分を四週間の間に消化し切れなくて翌月回しになるということで、翌月になってまだ会社に返してない時間分を返させるためにさらに残業させるということまで行われているというのです。それからさらにもっとひどいのは、返せなかった場合はその分だけ賃金カットをするということまでやられているというのです。これはまさに賃金計算の期間内に処理できなくてそういうようなことがやられているというのですが、これはどういうふうにお考えになるのでしょう。
  176. 小粥義朗

    ○小粥説明員 先生指摘の名古屋の事案についてとりあえず取り急ぎ調べたわけでございます。細かい点まではわかりませんけれども、伺ってみますと、休日の振りかえと代休とが両方その会社には制度としてあるようでございまして、振りかえになりますと一たとえば日曜日か原則として休日である。ところが繁忙期にはこれを振りかえることがあるべしということをあらかじめ就業規則等で決めている場合には振りかえができるわけでございます。先ほどの例で申しますと、たとえば火曜日に振りかえるということになりますと、火曜日は休みになるかわりに、その後に来る日曜日は働かなければならない。通常の労働であって、日曜に出勤して労働した分については必ずしも休日労働の割り増し賃金がつかない。ところが代休ということになりますと、火曜日の休みはこれは休みとしてとれるわけでございますが、日曜日に働いた場合は休日労働として二割五分割り増しがつくわけでございます。そうしますと、休日労働そのものは基準法上三六協定等によれば認められているわけでございますから、結果的には先生指摘の代休の先取りというのは休日が一日ふえたかっこうになっておるわけでございます。そうなりますと、時間返しでございますか、七時間四十五分分を各ウイークデーに積み重ねて残業させるというのは、これは時間外労働について適法な手続がとられていれば、それはそれなりで可能ということに法律上はなっているわけです。ですから振りかえと代休の先取りとが扱いとして混乱している向きも会社にはあるようでございますが、その辺ですっきりしない点が出ているのではないかと感じております。
  177. 安藤巖

    ○安藤委員 振りかえと代休のことは私もよくわかりているのですね。労働契約で、たとえば火曜日にあなたは休んでください、そのかわりに日曜日に働いてもらいますよということがあらかじめ決まっておるわけですね。だからこれは休日の振りかえですから別に問題になることはないのです。そういうような混乱があるのかどうか知りませんけれども、会社の方は代休と言って代休の先取りをやらせたことは間違いないのです。就業規則の中にも代休という言葉が出てきておるわけですね。それに従ってやっておるのだということを管理者は言っておるわけです。大企業ですから、混乱を生ずるようなそういう不手際をするような労務担当の人がおるとも思えません。だからその点はそんなことはない。そういう代休の時間返しというようなことが現実にやられておって、翌月回しになるとかあるいは賃金カットをするとか、現実にそういう労働者がいるわけですから、それはきちっと指導監督していただきたいのですね。どうしてそういうことを企業がやるかといいますと、月の初めは仕事がわりと閑散なんです。ところが月の終わりごろになると製品の納期の関係で相当忙しくなってくるということで、その生産の都合によってその月の半ばごろからそういうことをやらかすわけなんです。だから最初に代休をたくさん労働者に与えておいて、忙しくなったら先取りした代休を返せということで休日労働させたりあるいは残業、時間外労働をやらせて返してもらうということを月末に集中的にやらせているということなんです。  たとえばこれは私の持っている資料ですが、これはある人ですが、月の初めの二月四日に代休を先取りして二月十九日に休日出勤させる。三月一日に代休を先取りさせて三月二十六日、だからこれは二十五日間先取り代休と休日労働との間に間があります。(石田国務大臣「その間は休ませないのですか」と呼ぶ)その間は普通の勤務です。(石田国務大臣「普通の休みは休みですか」と呼ぶ)それはそうです。代休の休日出勤がそれだけ後へ延ばされているわけです。それからこれはもう一人の人ですが、二月三日、二月四日、三月一日、四月四日、五月九日と、みんなそれぞれ月の初めに代休を先取りして、この人の場合はまとまって休日労働ではなくして、先ほど申しましたように、残業で返させているのです。その月の間にずっと。だからこれは先ほど大臣が御答弁になった、休日を労働者に与えるという労働基準法の趣旨と根本的に違ってくるのじゃないかと思います。ですからその辺きちっと御指導いただきたいのです。  もう一つ、年次有給休暇との関連でお尋ねしたいのですけれども、これは先ほどの代休の時間返しと逆で、いろいろな手を考えるものですね。数日間にわたって残業を先にやらせておいて、そしてそれが七時間四十五分になったら休ませる。今度は後の代休ですね、こういう方法も行われておるんですね。そしていつ休むかということはまだ決まっていない段階、まだ労働日が続いているわけですね、その段階で、ある日を休みたい、有給休暇をとりたいというので有給休暇の申し出をして休んだところ、後からそれは代休扱いになっていたというので抗議をしたが、有給休暇扱いにしないであくまでも代休扱いにして代休を無理っこやっことらした、こういうことになるわけです。代休をとるのはいいと思うのです。先に時間外をやっているのですから、あるいは休日労働をやっているのですから、代休をとるのはいいですが、いわゆる年休の請求権、年休権の行使、これを妨げるという結果にもなっているわけです。だから、これはまさに労働基準法違反も明確だと思うのですが、その点いかがでしょう。
  178. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 年次有給休暇は請求されたら与えなければなりません。もし繁忙であれば時季変更権というようなことで法律上はできますけれども、問題は、私もそれをよく見ていませんからわかりませんが、代休が三十五条の休日労働違反にならないようにいろいろ考えられて、それを先にとれというふうにおっしゃったのじゃないか、これは想像でございますけれども、そんなことでそうなっていたのじゃないかと思いますが、私どもといたしましては、年休は請求されたら与えなければならぬ、こういうふうに思います。
  179. 安藤巖

    ○安藤委員 ですから、年休権を行使をしたところが、その日は会社は非常に忙しいからほかの日にしてくれと時期を変更するというのではなくて、それを認めて、しかしそれは代休扱いにしたわけです。だから、請求権を行使したのですが、認められなかったということになるわけです。これは年次有給休暇権の行使を妨げたことになりますね。  そしてもう一つは、先ほど言いましたように残業をやっているわけです。残業をやっているから時間外割り増し賃金は払わなくちゃなりませんね。その日に年休権を行使して休んでおれば残業はそのまま残るわけですから、割り増し賃金支払い請求権があります。当然企業は払わなくちゃなりません。ところが代休扱いにするとこれは払わなくてもいいというかっこうになるでしょう。時間外賃金を払わないということまで考えているんですよ。だから、これはまさに賃金不払いということになるのです。割り増し賃金を払わないということを基本的に考えて年休権の行使を妨げた、二つの悪いことを重ねていると思うのですが、これはいかがでしょう。やはり基準法に違反するんじゃないですか。
  180. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 年休権の行使を妨げたということはそのとおりだと思います。あと賃金不払いであるかどうか、そのケースでよく見ませんとちょっと答えが出にくいのではないかと思います。
  181. 安藤巖

    ○安藤委員 これはまず年休権の行使を妨げたという点ではっきりしているのですけれども、時間外労働をして、そのかわりに代休を与える、いわゆる休日労働と代休との関係からすると、時間外労働の割り増し賃金、その分だけ支払えばこれは問題ないわけですね、それを払わなければ問題なんですけれども。当該労働者の場合はそれも払わないというようなことを言われたというのです。こうなるとこれは大問題ですね。だから、これは年次有給休暇の行使を妨げたという点では明らかに労働基準法違反だということははっきりしているわけです。  そのほかの点については至急お調べいただきたい。そしてしかるべく指導お願いしたいというふうにお願いをしておきます。  そこでまとめてお伺いしたいのですけれども、こういう代休の先取りというようなことですね。これはほかの多くの企業でもやられているのではないかと思うのですけれども労働省あるいは基準局の方で、どのくらいの企業でそういうことが行われているのか、把握しておられたらその数字をお知らせいただきたいと思います。
  182. 小粥義朗

    ○小粥説明員 代休の先取りという仕組みは実は初めて伺ったような次第でございます。休日の振りかえはいろいろやっておる企業がございますから、聞いた例もあります。先生お話しのような先取りというものは実は私どもまだ承知していなかったわけでございます。したがって、件数がどの程度というのもつかんでおりません。
  183. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、どうもいわゆる振りかえ休日という制度を悪用してやっているのかもわからぬですけれどもね。たとえば私が持っているのは、有給休暇の届け出をしたところが代休に変えられてしまったという人が職制の人に抗議を申し入れたところ、その職制の人が書いてくれたことなのですが、有給休暇を申請したけれども代休にせざるを得ないから代休の届けをしてくれというようなことまできちっと書いているわけなんです。振りかえ休日だったらこんな問題は起こらぬと思うのですね。もうわかっているのですから、休日が振りかえられるだけなんですから。だから労働省の方が把握しておられるのは、いまの振りかえ休日というのにごまかされているのじゃないかというような気もしますので、もう一度しっかりとお調べをいただきたいというふうに思います。  休日、代休関係については、以上で終わります。  時間がありませんから、ほかの問題に移りたいと思います。  これはストレートに労働基準法の問題ではないのですけれども労働省の方としましても労働者の基本的権利を守るという立場からお考えいただきたいということでお尋ねするわけですけれども、たとえば労働者の出向あるいは配置転換ということに関しまして、企業の方から労働組合に対して事前に協議をするというのがよく労働協約の中にうたわれている例なんですけれども、最近、経済状態の悪化に関連をいたしましていろいろ出向ということが行われているのですが、その出向の問題について労働協約にいま申し上げたようなことがうたわれているのですけれども、労働組合の頭越しにストレートに労働者に経営者の方が出向を勧奨して、強制も入っているのだろうと思うのですけれども、そういう出向をどんどんやっているということで、相当強い不満があるのです。これは労働省の方としては、労働協約があるんだから労働協約を守るように労働組合がしっかりやればいいことであって、労働省としては関与することではないというふうに放置されることなんでしょうか、あるいはそうじゃない、しかるべく経営者の方に、労働協約があるのなら守るように指導されるべきこととお考えになっているのかどうか、お尋ねしたいのです。
  184. 北川俊夫

    ○北川政府委員 労働組合と出向あるいは配転につきましてちゃんとした同意約款あるいは協議約款があるにかかわらず、そういうことの不履行の場合のお話でございますが、もちろん先生おっしゃるように、そういう場合に組合として協約どおり協議ないしは同意の求めを会社に主張するという立場も必要でございますが、そのこと自体がやはり労使間の安定あるいは健全なる労使関係というものを損なう危険もございますので、そういうことで紛糾をするというような事態が明らかな場合には、われわれとしてはやはり経営者に対して、協約に基づいて十分な協議を行うような指導はぜひしたいと思っております。
  185. 安藤巖

    ○安藤委員 そのことと関連いたしまして、出向というのがよく行われているのですが、全く異職種のところへ出向させるというのをたびたび聞くのです。東レ株式会社というのがありますね。これはもと東洋レーヨンと言っていたところでありますが、最近、ペンキの塗装屋さんとかあるいは自動車の修理工場とか、そういうようなところへ東レの合繊関係の仕事に携わっていた人を出向させる。これは全くの異職種出向ですね。それが先ほど申し上げましたようなやり方で行われているわけなんですね。これは異職種の問題にいたしましても、労働協約の関係からすれば、労働者がオーケーと言えばそれはいいんだと言えると思うのですけれども、やはり合理化一つとしてそういうようなことが相当強制にわたって行われているという向きもありますので、いまおっしゃったような御趣旨で、しかるべく指導、御監督をお願いしたいというふうに思います。  それから、これは最後に一点ですか——大臣がどこかにお行きになったですね。先ほどからもほかの委員の方から質問がありましたが、定年制の問題ですけれども定年制の延長の問題につきましては、これは昭和四十八年の労働事務次官の都道府県知事、それから都道府県労働基準局長あての「定年延長の促進について」というのが出されておりますし、昭和五十年にも労働省の職業安定局長から各都道府県知事あての「当面の雇用対策の推進について」というものの中で定年延長の推進ということも要望されておるわけですね。それから御承知のように、昭和五十二年に衆参両院の社会労働委員会で同趣旨の決議もなされているわけなんです。さっさとまず申し上げておくのですが、それからこれも御承知のように、アメリカでは上院、下院もごく最近雇用人員二十人以上の企業適用されることになっておるという定年七十歳法、これも圧倒的多数で可決されているというような状況にあります。だから、そういうことについて労働省としては相当お骨折りをしておられるということはわかるのですけれども、ごく最近、これは十月十四日の朝日新聞で私が知ったんですが、三菱商事、三井物産という大商事会社が、そういう労働省の御努力に反するような定年制というものを考えているという報道があるわけです。これは多くは申し上げませんが、第一次定年制というのを設けるということです。二次、三次というのもあるんでしょうけれども、四十七、八歳から五十歳ぐらいのところでまず第一次定年制というのをしいて、そこで中途退職の道を開こうということを考えておるわけです。ということになりますと、これは一生懸命御努力をされておる、国会でも決議をされておるということに逆行するようなことを大きな商社がやっているということになると思うのですよ。こういうようなことをやっておったんでは、せっかくの御努力も無に帰するんじゃないかというふうに思います。こういうようなことをやられておることについて、これから労働省としてはどういうような行政的な措置をおとりになるおつもりなのか最後にお尋ねして、私の質問を終わります。
  186. 細野正

    ○細野政府委員 ただいま御指摘ございました、いわゆる第一次定年制というふうにおっしゃいましたけれども、私どもも朝日新聞の記事等から推察するぐらいで、まだよく詳しい事情はわかりませんけれども、新聞報道等によりますと、先生いまお話しのように、定年の一定期間前の時期に退職した人に割り増しを支給する、そして企業年金等も支給をする、そして中高年齢者に中途で退職の道を開いていこう、こういうことが一つ考え方でございます。なお、終身雇用制は崩さずに、定年延長も考慮するのだけれども、できるだけ高年齢者の賃金上昇カーブは抑えるというふうなことをねらいとしている、こういうふうに聞いているわけでございます。  なお、私どもが見た範囲では、そういう内容の構想で今後労働組合との話し合いに入るというふうに書かれていたように記憶しておるわけでございます。この考え方自体は、先ほど申しましたけれども、賃金ベースの増加とか人事の停滞を防ぐ、あるいは高年齢者と比較して再就職が比較的容易な段階で第二の人生を考えていただくようにするというふうな趣旨が片一方にあるわけでございます。そういう意味で、その選択自体が強制的ではなくて、本人の自由意思にゆだねられているものであるというふうに私どもはあれを読んだ限りでは考えられるわけでございます。したがって、そういう意味では、一定の年齢に到達した場合に一律に労働者を退職させるというのがいわゆる定年というものの性格でございますけれども、それとは少し違っているのではなかろうか。たまたま第一次定年制というふうなお話でございましたけれども、そういう意味でのいわゆる定年制とは性質が違っているのじゃなかろうか。また、人によりましては、そういうことによって、ほかの職場へ行くことによって能力の有効発揮につながる場合もあるという側面も考えられると思います。したがって、そういう意味でいわゆる定年の延長を私どもが推奨しておりますことともろに抵触するものかどうかという点は、やや疑問があるのではなかろうかな、こういうふうに考えておるわけでございます。  しかしながら同時に、こういう制度をする予定企業でございましても、本来の定年延長については、私どもはさらに延長していただくように指導してまいりたい、こういうふうに考えております。
  187. 安藤巖

    ○安藤委員 終わるつもりだったんですが、もう一言だけ、すみませんが……。  いま最後に、そういうことを考えている企業に対してもさらに定年を延長するようにいろいろ御指導なさるというお言葉でございましたが、その前に、第一次と言っているけれども、これは退職金を増額したりあるいは本人の同意を得たりなんかしていくんだし、それからほかのところへ就職可能という年齢でもあるしということをおっしゃったんですが、たとえばこれは生産性本部がごく最近調査をした結果によると、退職金を増額して退職を勧奨したりあるいは関係会社への出向を求めることについては、四八%の労働者が反対をしており、さらに当該年齢の人たちは五四%の人たちが反対しているという調査が出ているんですよ。本人たちは恐らく同意するだろうからいいじゃないかとか、あるいはこれは第一次と言っているけれども、退職金を増額するからいいんじゃないかとか、そういうようなお考えを持っておられたら、やはり尻抜けにどんどん三井、三菱のようにやられてしまうのじゃないかと思うのです。労働省はこの辺のところで定年制延長というのを打ち出された以上は、もっとしっかりやっていただきたい。いまおっしゃったようなことは相当甘いのじゃないかと思うのです。そういうことを強く要望申し上げまして私の質問を終わります。
  188. 原茂

    ○原(茂)委員長代理 森下元晴君。
  189. 森下元晴

    ○森下委員 関連質問で少し時間をいただきまして、主として大臣に御質問をいたしたいと思います。いま安藤委員定年制の延長の問題で触れました。その件について初めに御質問したいと思います。  いま非常に就職難でございまして、新卒者は毎日会社訪問等で走り回っております。それと定年延長されるということとの関連性、職場が非常に縮まる、そういう新しく就職したい新卒者の者には狭き門がますます狭くなる、その矛盾をどういうふうにして解決していくか、これは簡明にお答えを願いたいと思います。
  190. 石田博英

    石田国務大臣 定年制の延長と新卒雇用と申しますか若年層の雇用問題との関連ですが、現在日本の場合においては、働く部門が違う、したがって中堅以下の若年層の雇用には直接は影響しないと私ども考えております。しかし、それじゃ全く関係しないのか。いまヨーロッパでは若年層の失業問題がきわめて深刻であります。日本と反対の状態になっている原因はいろいろありますが、それは省略いたしますとして、そこで最近六十五歳定年のところは六十二、三歳に下げていこうというような動きが始まっております。これはアメリカが七十歳にしようとするのと反対の動きであります。これが日本と一番違うところは、年功序列型賃金体系じゃないわけで、そうすると、選択をする場合には賃金がほぼ一緒であれば熟練者の方がいいわけであります。日本の場合は年功序列型賃金体系でございますので、定年延長がそのまま昇給につながったりする、そこに賃金原資の分配の問題、増減の問題で問題はあると思います。  それからいま新規学校卒業者の問題でございますが、中学校卒それから高等学校卒は前年に比べてやや減少はしておりますけれども、就職希望者の実数をかなり大きく上回っております。ただ、大学卒業生の場合は大体二十七万人が就職を希望しております。しかしその中で、それでは今度は規模別を除いて求人全体を見ますと、現在では求人の方が多い。ところが上場会社とか千人以上あるいは五百人以上ということになりますと、六人か七人に一人しか就職ができない。それから今度は職種から言いますと、サービスとかセールスの需要は非常に多いのですが、みんな管理事務部門へ行く、そういうところで苦しいのであります。ことしは、総数においては大体バランスがとれると考えております。
  191. 森下元晴

    ○森下委員 次の問題、これは北山委員が質問されましたときに出た問題です。過剰労働力を植林事業に振り向けたらどうか、この問題でちょっと私の意見を申し上げまして、もうお答えは簡潔で結構でございますからお願いしたいと思います。  大体山村は——農村もそうでございますけれども、労働力のいわゆる供給源であったわけです。日本が経済成長したのも、農村とか山村の優秀な労働者が農業、林業から工業の方へ出ていった、これは非常に大きな貢献度があるわけですね。それが残念ながらオイルショック以来、減速経済、低成長の時代になって、総体的には離職者の問題とか失業者の問題、過剰労働を抱えつつある、将来についても前のような高度経済成長を望めないというような、労働行政についてもかなり大きな転換期になっておるというところで、その過剰な優秀な労働者のおさめ場所として、私はもとの農村また山村にそれを求めるべきである。ちょうどダムのような機能をしてきた感じが実はします。その中で、農村は別にいたしまして、山村の仕事は、たばこをつくるとか、多少お米もできますけれども、これは一応生産費所得補償方式で日役賃にして六千円とか七千円確保はされておりますけれども、量的制限がございます。米も余ったものですから生産制限、たばこも反収をできるだけ専売局も減らしつつありますから、これ以上広げるわけにいかない。あと残るのは林業以外にないと思いますね。林業の場合は外材が、しかも製品等の輸入が大量にふえる傾向がございまして、国内林業は沈滞、意欲停滞して、植林する人が非常に減っておりますし、現在の森林開発公団とか林野庁が計算しております林業労務者の平均賃金は四千円前後である。非常に低賃金なのです。大工さんとか左官さんは八千円から一万円、お米づくりは六千円から七千円、たばこづくりでも五千円から六千円、その中で非常に高度な技術的な能力を必要とする、また非常にきつい労働力を必要とする林業労務者にとりましては、まことに低賃金を強いられておる。これは実は現実なんですね。そういうところで、ちょうどこの山林というものは、いわゆる治山治水、それから山村の経済を支えたり、水資源を初め多目的な効用を持っておりますから、一石五鳥くらいのねらいでこの際に大々的な植林事業を始めるべきである。道路とか港湾も結構でございますけれども、こういう地域は山村に比べてもうすでにかなり開発されておりますから、むしろ森林資源を造成できるような日本の気候、風土、地形、これをいかに活用していくか、国破れて山河ありというくらい、山さえりっぱにしておけば水も出てまいるし、またそれから民族発展の活力も生まれてくるということに目をつけていただきまして、ちょうど昭和の初期の不況のときにも、過剰労働力はかなり植林部門に投入されたようにわれわれは聞いております。極言すれば林業なんかは、不景気で優秀な労働力が余ったときに初めて植林が可能なんだ、大体企業林業なんかは成り立たないんだというくらい極言される実は節がございます。林業基本法なんかを見ましても、もうかる林業とかいろいろ言われましたけれども、そういうものがもうかるときは他産業が非常にいいわけですから、それへ全部流れていってしまう。だから非常に不景気なときにこそ山を緑にすべきである。これはやはり国家百年の計として労働問題、資源問題と兼ね合わせてやるべき、これは林野行政とか一農林行政ではございません、労働行政も含めた国家安全保障的な大きな計画だと思うのです。  私、この前四十九年の決算のときに、国土庁にそういう質問を実はいたしました。いまこそ植林大事業に国が取り組むべきであるということですね。簡単に例を挙げてみますと、いま一ヘクタール当たりの植林費、手入れ費、先ほど大臣がおっしゃいましたように、植えつけすれば、十年か十二年くらいまでは手入れ費、つる切り、除伐と、やはり連続してそういうことをしないとりっぱな木材できませんから、継続していわゆる雇用ができる。大体百万円くらいかければ、植えつけして十年から十二年くらいのちゃんと手入れができる金が投入できまずから、一ヘクタール百万円として二十万ヘクタール毎年植林するとして約二千億で上がります。それを五十年間続けても十兆円あったらいいわけです。たった十兆円です。道路計画とか国防計画とか下水道計画は、五年間で五兆とか十兆とか、ときには二十兆。三全総でも、十年間で二百五十兆円投入するんだ、えらい大きなことを書いてございます。そのうちでエネルギー対策だけでも七十兆の巨額を投資しなければいけない。そういう中で、まことに林野行政にしてもお粗末きわまりないような現状なんですね。そういう五十年、まあ五十年すれば大体山は切れますから、それで上がる大体収入は、いまの木材価格に直しても一ヘクタール一千万円ぐらい上がるのです。ということは、五十年後に、りっぱな山をつくって、分収でもいいと思います。約二兆円の収入がございます。これは完全に財投なんですね。決して道路や港湾のように入れっぱなしでございませんから、一年間に二十万ヘクタールを五十年間植え続けても、五十年後から毎年毎年二十万ヘクタールの山から収穫がありまして、いまの価額にして二兆円の金、いわゆる十倍になって返ってくる。国としても、これは非常な経済的な行為にもつながりますし、あと水の問題とか治山治水の問題も同時に解決していく。これは昔の人がちゃんと考えてそういうことをやってきたわけでございまして、別に私がいまさら改めて発明した、発見した問題でございません。そういうことを実は国土庁にこの前申し上げて、何の返答もないわけなんです。  私は、むしろ林野庁や国土庁よりも、いわゆる労働対策ですね、そしてもう少し大きな国の資源政策また国策として植林事業をこの不況下に取り上げるべきである。どう考えても、もう一石五鳥も六鳥もの本当にりっぱな事業でございますし、労働問題も一挙に解決いたします。いまこそ山村からの日本の経済発展のために寄与した優秀な労働力を、ここいらあたりで山村にお返し願って、しかも国費を投入して、少なくとも日役賃が大工さんとか左官さんのように八千円−一万円ぐらい取れるような高賃金にしていただくならば、喜んで山村に帰るわけです。過疎問題も一挙に解決いたしますから。  この点、ひとつ、大臣先ほども植林問題を取り上げたものですから非常にうれしかったわけです。だから次の機会に、国土庁か農林省の決算のときに、労働省のそういう面を研究されておる方——研究されておる方がいなければ大臣の方でそういう方に特に勉強させていただいて、そのときにひとつ来ていただいて、林野庁や国土庁の担当官ととも、に私の質問にひとつお答え願いたいということを実はお願いして、私の質問じゃなしに意見を申し上げたいと思いますので、大臣から最後に御所見をお伺いしたいと思います。
  192. 石田博英

    石田国務大臣 いま森下さんからおっしゃったような理由、さらにつけ加えますと東北、北海道、四国、九州とかは求人倍率が平均より悪いわけです。その悪いところの労働力を吸収する。それからもう一つは、全体としてUターン現象が起こっている、そういう気風も利用する。こういうことを考えて、すでに三カ月くらい前でしたか、林野庁の長官に労働省に来てもらいまして、そして職業安定局長と、私も立ち会って懇談をして、そしていま両者で検討をしてもらっておるところでございます。次の国土庁ないし農林省の決算のときには、私どもの方で検討に当たっておる者を出席いたさせます。
  193. 森下元晴

    ○森下委員 どうもありがとうございました。終わります。
  194. 原茂

    ○原(茂)委員長代理 次回は、来る二十八日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時四十八分散会