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桧垣徳太郎君 御
報告を申し上げます。
村田委員長、
小巻理事、青井
委員、
山田委員及び私桧垣の五名は、去る八月三十一日から三日間、昨年の台風第十七号で激甚な
被害を受けました愛媛県、香川県における
災害復旧事業の
実情並びに先般
播磨灘において異常発生いたしました
赤潮被害の
実情を
調査してまいりました。
以下、
調査の
概要を簡潔に御
報告いたします。
まず
災害復旧事業について申し上げます。
台風第十七号による
災害は、
昭和五十一年
災害の大半を占めるものであり、
豪雨の強さと
被災地域の広さにおいて近年まれに見る大
災害でありました。台風
被害の少ない地方と言われていた愛媛県、香川県におきましても、台風第十七号は多くの死者と激甚な
被害をもたらし、一年を経過した今日においてもその傷跡は随所に見受けることができました。激甚
災害の指定が行われて以来、
被災地に対する両県の
災害復旧事業は順調に実施されており、三年以内で完了の方針のもとに、昨年度中に三十数%、本年度末には八〇%、以上の進捗が見込まれております。温暖な地方のため冬期間を通じて事業が進められたことが全国の
進捗率を上回った要因でありますが、最近では台風の常襲的地帯ともなっており、
被災一年後には施設
復旧が概成に達するよう、さらに工期を縮める努力が必要と痛感いたしました。
災害復旧に当たり、再度
災害を防止するための改良
復旧の大幅採用は
被災地の共通した
要望でありました。
災害助成事業、
災害関連事業を通じ、申請件数に対する採択率が高まっていますことは、改良
復旧が一般化の方向にあることを示すものと思われますが、事業費の削減等により
災害費に対する改良費の比率がなお低いことは、今後さらに改善の努力を要する点であります。また、改良
復旧が決まっても、そのための用地買収等に日時を要し事業が滞っている個所もあるとのことで、
防災事業の円滑な実施には事業主体と地元民との一体的な理解と
協力が不可欠と思われました。
災害時に特に施設
被害がない場合でも、
防災機能を高めるために一定期限内に
河川、砂防、治山等の事業を実施しようとする激特緊急事業も随所で継続実施されておりました。
両県の山間部は風化が著しい花崗岩地帯のため、
豪雨時には土砂崩れ、地すべりが頻発しましたが、激特緊急事業も砂防、地すべり事業、治山事業に集中して採択され、本年度末には両県で二百数十個所、四三%の
進捗率と見込まれておりました。しかし、短期間に多額の投資が集中的に実施されるため、
地方公共団体の財政負担は大きな問題であり、加えて採択区間に接続する改修必要個所について、地方単独事業による早期実施が強く待たれておりました。
調査いたしました
災害復旧事業個所は両県合わせて二十地点に達しましたが、その中から土木
災害、
農業災害の代表例について具体的に触れることといたします。
愛媛県では主に東予、中予の山間部に
被災地が集中しており、その要因は林地崩壊と樹園地崩壊による土石流
被害が大半でありました。典型的な天井
河川であります田滝川は丹原町内で床固め工四基、護岸延長二百七十メートルが決壊、さらに橋梁一基が流失するほか、下流右岸堤が六十三メートル破堤する等の
被害を受けたのであります。
復旧計画は砂防
災害関連として二億一千九百万円が採択され、
災害費一億二千六百二十四万円に対し関連費九千二百八十五万円、昨年度においては決壊護岸堤部分を実施し、残事業は本年度中に完了する予定とのことでありました。
玉川町法界寺
地区では樹園地五・七八ヘクタールが崩壊するとともに、下流部の水田三・九五ヘクタールが埋没する
被害が発生、
農業開発施策と
防災との関係が提起されておりました。
復旧計画は四億一千九十二万円が採択され、土砂どめ工十五基、集水暗渠工二千七十一メートル、
道路兼用水路二千三百十八メートルを設置するほか埋没水田の土砂排除を行うもので、基幹施設の
整備を先行したため、樹園地
復旧は本年度より始め五十三年度で完了する予定とのことでありました。
香川県の
被災地は小豆島に集中しておりましたが、四十九年
災害以来多数の死者を伴う連続
災害に見舞われたこの
地域は、もろい花岡岩層からなる急峻な山間地が崩壊し、土石流により集落と田畑が直撃を受けたのであります。
池田町谷尻
地区では集落の中央を土石流が貫通し、流失
家屋十八戸、死者二十四名を出したのを初め、
農地一・〇三ヘクタール、
道路五十メートルが埋没したのであります。
復旧計画は、激特砂防事業として二億二千四百万円が採択され、堤長百二メートル、高さ十八メートルの堰堤が目下建設中で五十三年度完成を目指しておりました。同時に、
河川、
道路の
災害復旧事業も進められており、それらの完成を待って宅地、
農地の換地処分に入るとのことで、関係者の協議が進められておりました。また、
流出土砂の排土場として埋め立てられた区域については、
災害公営住宅の建設、公園、緑地の
整備等の構想が
説明されました。
四十九年
災害で十九名の死者を出した内海町橘
地区は、激特砂防事業、緊急急傾斜地
対策の積み重ねと、
避難訓練の徹底により、五十一年
災害では大禍を免れたのでありますが、それだけに一望コンクリート壁の町と化しておりました。現在は集落の背後地に、激特砂防事業橘川堰堤を三億六千万円の事業費で建設中でありましたが、堰堤に続く橘川流路工の早期
整備についても、地元は大きな関心を示しておりました。
池田町上地
地区は土砂流のため
農地一三・五七ヘクタールと、
道路、水路が流失した
地域であり、事業費二億七千三百万円で五十三年度を目途に
農地復旧が行われておりました。上流からの土砂どめは四カ所の砂防堰堤で防ぐとのことでありますが、地元では五十一年
災害の
経験に照らし
防災ダムを建設し、治水の先行
整備に万全を期してほしいとの強い
要望がありました。
このように、
被災地においては各種
復旧事業が鋭意進められておりましたが、これらを実施する上で共通する問題点としては、次のような点がありました。
第一は、技術職員の不足とその
対策についてであります。
災害時において技術職員は
被災個所
調査等の業務に追われる一方、緊急に
復旧を要する個所の施行に当たらなければならないのが
実情であります。
災害は毎年いずれかの
地域に
被害をもたらしていることでもあり、
災害復旧のための
市町村間、都道府県間の技術職員の相互援助について、国の指導のもとに
協力体制を
確立する必要があると思われました。
第二は、
災害査定設計費に対する国庫補助についてであります。測量、
調査の委託費については、本激
災害の場合に五〇%補助の道が開かれましたことはともかく前進でありますが、
被災地方公共団体にとりましてはいまもなお設計委託費は膨大となり、地方財政に及ぼす影響がきわめて大きいのが
実情であります。
被災地の多くは過疎
地域でもあり、補助対象足切り額の引き下げとともに、高率補助の制度化を図るべきだと痛感いたしました。
第三は、建設業者の工事消化能力の問題であります。中小建設業者に対する受注拡大の行政方針もあって、
災害復旧事業も地元業者
中心に発注されておりましたが、
被災地が特定の
地域に集中したため業者によっては過大な負担となった事例もあり、一部事業の繰り越しを余儀なくされたところもありました。地元業者を
中心に近郊業者の
協力を得て工事受注量の適正化に努めるとともに、施工能力の向上を図るため研修会の開催等適宜な助言、指導を図ることが必要と思われました。
第四は、建設資材確保の問題についてであります。
災害復旧事業の主要資材は積みブロックと生コンクリートでありますが、当該
地域の製造業者に対し生産設備の増設を依頼するとともに、近郊
地域の製造業者の
協力を求めてようやく必要量を確保したとのことであります。特に離島小豆島にあっては資材確保は深刻な問題であり、国の立場からも広域的な需給体制の
確立について検討することが必要と思われました。
第五は、用地確保についてであります。改良
復旧が拡大してくると、新たな事業の用地確保は大きな課題でありました。
被災地においては土地所有の境界確認が困難な
状況にあり、あわせて短期間に用地確保することが要件とされますので、補償対象物権を明確に把握するため、日常における
河川台帳、地籍台帳の
整備が、
災害復旧事業を進める上での根幹であると思われました。
すなわち、
災害復旧に当たっては、改良
復旧事業の大幅拡大を図ること、事業執行のための体制
整備を
確立すること等が緊要であり、これらの着実な積み重ねの中にこそ、
災害後追い行政の非難を排し、
災害予防行政を推進する道があると痛感した次第であります。
次に、
赤潮による漁業
被害の
実情について申し上げます。
去る八月二十七日
播磨灘一帯に異常発生した
赤潮は、二十八日夜半になって香川、徳島両県沖合いに迫り、二十九日未明には沿岸の養殖ハマチが甚大な
被害を受けるに至ったのであります。私たちは急遽
調査日程を変更し、最も深刻な事態に見舞われた香川県引田町の漁業協同組合を訪ね、
被害の概況と対応策を聴取、あわせて
赤潮汚染の
状況を
調査したのであります。
引田町はハマチ養殖の発祥の地でありますが、四十七年にも同様の
被害に襲われており、その痛手からようやく立ち直りの兆が見え初めていたときだけに、養殖業者にとってはまさに沈痛と苦悩の追撃でありました。
香川県水産課がまとめた八月三十一日現在の
被害状況は、東讃
地域六漁協の合計で、ハマチ当年魚百二十万尾五億四千万円、ハマチ二年魚四十七万尾八億八千五百七十八万円、マダイ五千尾千五百万円、総
被害額十四億四千二百万円余に達しており、特に引田町、大内町においてはハマチ養殖が全滅したとのことであります。三日間にわたる死魚の回収を終え、腐敗ハマチを満載した運搬船が太平洋沖に向かった後だけに、漁民は心身ともに疲労こんぱいの様子でありましたが、声をふるわせ海に生きる以外に道はないと語りかけておりました。組合長は、この
地域の養殖業者は借入金で経営している零細漁民であり、九月下旬には大半の手形決算が迫られていると経済的苦境を訴えるとともに、死魚処理費に対する
助成、養殖共済の早期支給、
赤潮対策設備改善資金の
創設等、緊急
措置の実施を強く
要望しておりました。
赤潮は発生以来四日目に至っても依然として
播磨灘に停滞したままであり、潮の
流れのない海域だけに今後も居座るものと予想されておりました。現に引田漁港の沖合い三キロのハマチ養殖場
周辺は、茶褐色と異臭に満ちた汚染海域と化しており、その深さは二十メートルにも及んでいるとのことであります。
赤潮の発生原因は、海水中の窒素、燐の増大がプランクトンの異常繁殖を誘発するためとされており、元凶である窒素、燐の増大は沿岸の工場排水と都市排水によるものと言われているのであります。
四十七年の
赤潮大
被害の後、水質環境基準も制度化されて工場排水に一応
規制の綱がかぶされてきましたが、いまだ汚濁物質の総量
規制がないことは抜け穴と言わざるを得ないのであります。また、都市排水についても資金面、用地面からの下水道
整備の立ちおくれに加え、終末処理の技術水準の問題もあり、これらが生活排水
規制の立ちおくれ要因であることも事実であります。
いずれにせよ、
赤潮被害をなくするためには、海域の徹底浄化以外に道はなく、そのためには時限立法である瀬戸内海環境保全臨時
措置法の継続とともに、環境保全計画の策定とそのもとの恒久諸施策の着実な推進こそ不可欠と考えるのであります。同時に、沿岸二百海里時代を迎えたわが国にとって、養殖漁業はまさに貴重な存在であり、荒れ果てた漁場を再
整備し、漁民に再生産の意欲を与えるために
被害救済
対策には万全を期すことが必要であります。
赤潮の天災論、人災論はさておくとしても、緊急
避難的に
天災融資法を
適用し、低利資金融資の道を開くことが必要と考えます。また、同様の理由により養殖漁業共済金の早期支給
措置を図るべきであります。さらに、
被災漁民の真摯な
要望でありました漁業経営維持安定資金の増額貸し付け、再生産資金制度と
赤潮対策資金制度の新設等についても、前向きの行政姿勢を早急に示す必要があると痛感したのであります。
以上、
報告を終わります。