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1977-09-14 第81回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年九月十四日(水曜日)    午前十時九分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         片岡 勝治君     理 事                久次米健太郎君                 粕谷 照美君                 小平 芳平君     委 員                 片山 正英君                 田原 武雄君                 林  寛子君                 藤井 丙午君                 山内 一郎君                 勝又 武一君                 野口 忠夫君                 沓脱タケ子君                 三治 重信君                 円山 雅也君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  石原慎太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        環境庁長官官房        長        金子 太郎君        環境庁企画調整        局長       信澤  清君        環境庁企画調整        局環境保健部長  山本 宜正君        環境庁水質保全        局長       二瓶  博君        厚生省公衆衛生        局難病対策課長  古川 武温君        厚生省環境衛生        局水道環境部長  国川 建二君        厚生省薬務局長  中野 徹雄君        厚生省薬務局企        画課長      新谷 鐵郎君        厚生省薬務局安        全課長      代田久米雄君        水産庁研究開発        部漁場保全課長 伊賀原弥一郎君        通商産業省立地        公害局長     左近友三郎君        資源エネルギー        庁公益事業部技        術課長      中村 守孝君        建設省計画局長  大富  宏君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公害及び環境保全対策樹立に関する調査  (環境アセスメント法制化に関する件)  (スモン問題に関する件)  (赤潮問題等に関する件)  (飛騨高山浄水場汚染問題に関する件)  (複合大気汚染調査に関する件)     —————————————
  2. 片岡勝治

    委員長片岡勝治君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。  公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 野口忠夫

    野口忠夫君 余り時間を持ち合わせておりませんので、二点だけお伺いいたしまして、後日またゆっくり時間をいただきまして、環境行政問題についてお伺いしたいと思っております。  お伺いいたします第一は、環境庁企画調整局長——局長になられたようですが、柳瀬孝吉氏の退職発令をめぐる環境庁人事問題について、新聞等でとかくの報道が提供されているので、その点でお尋ねしたいと思います。  新聞報道によりますと、柳瀬氏は、八月十九日の金曜日の午後次官室に呼ばれ、突然辞表の提出を求められて、勇退勧告を断るわけにもいかずこれを受けて、四日後の八月二十三日にはこの局長人事閣議で了解された。内示から閣議了解までわずか四日間と、全く一方的な唐突な人事であったと指摘しておりますが、長官にお伺いいたしますが、この柳瀬局長退職人事の事実関係経過について、新聞報道のとおりであるのかどうか。その退職を求められるまでの経過についてお伺いしたいと思います。
  4. 金子太郎

    説明員金子太郎君) 内示などの問題は大臣はタッチしておられませんので、私から御答弁申し上げたいと思います。  今回の柳瀬企画調整局長勇退の件でございますが、内示が行われましたのは八月十九日の金曜日でございまして、正式に発令されましたのは八月二十三日でございます。したがいまして四日前でございました。ただ、これが唐突であるとか、期間が短いとかいうような報道がございましたが、今回の人事は、柳瀬局長厚生省御出身であるということとか、あるいは後の人事関係で、厚生省関係から局長さんをお迎えしたというようなことなどがございまして、厚生省人事と合わせて、いわばその一環として行われたものでございます。その厚生省人事は、局長次官クラスのものでございますが、同じ日付の八月二十三日に行われまして、厚生省内示も私どもと全く同じ八月十九日に行われておりますので、私どもは唐突であるとも何とも思っておりません。
  5. 野口忠夫

    野口忠夫君 官庁人事というものは、退職後の世話などありまして、天下り人事などととかくの批判が多くて、一般公務員人事とは異なる経過をたどることは私もわかっております。また、そうした批判を私自身も持っておるものでありますが、それにしても、通例から言えば一週間くらいの余裕をもって、本人の心構えを十分待って発令するという取り扱い通例と言われていると思うんですが、本件の場合は、その日に内示してその日に返事を求められて、そして四日後には閣議了解という、全くこれは異例な取り扱いと言わざるを得ないのじゃないかと思うんです。人事に関しましては、非常にこれは行政全般に与える影響等もあって、とかくのうわさが絶えないことはおわかりのことだと思います。そうした中で、このような一方的な唐突な人事を目の前にいたしましては、この陰には何かあるんじゃないか、そういう疑問を誘うことはこれは当然のことじゃないかと思うんですが、これについてのひとつ見解を承りたい。  また、なぜこういう人事を進めなければならなかったか、その理由を明らかにしてほしいと思います。  以上、二点についてお伺いいたします。
  6. 金子太郎

    説明員金子太郎君) 人事のことでございますから、余りあれこれ申し上げるのは適当でないかと思いますが、御質問の中の、その場で返事を求めたという事実はございません。  それから、四日前が時間が少ない、心の準備、気持ち整理をするのに不十分だという意見新聞などにもあるようでございますが、私どもといたしましては、課長とか課長補佐でやめるような方については、そういう配慮は従来いたしております。しかしながら、局長クラス以上でやめる人のような場合、大変恐縮でございますが、私など長い間に何十人という人のいわゆる肩たたきというようなことをやらざるを得なかったと、いまだにそれを思い出すと断腸の思いでございますが、そういうことをやってきた最高幹部については、常に気持ち整理はできているはずだと、こういう考え方で私ども今日までやってきたわけでございますが、その点についても、その考え方についてなお反省してみる必要があるという御指摘でございましたら、十分考えてみたいと思っております。
  7. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 今回のあの人事は、まあ発令の時期は別にしまして、かなり長期の以前から、いろいろな方々意見をお聞きし、考慮したものでございまして、そのほか、先ほど官房長説明いたしましたが、厚生省との関係もございまして、まあそちらの方から該当の局長の方にどのように伝聞があったかなかったかということは私はつまびらかにいたしませんが、いずれにしましても、役所としましては、いま環境庁が抱えておりますいろいろな問題をこれから先最善方法で解決するために考えて行ったことでございまして、それ以外の他意は全くございません。
  8. 野口忠夫

    野口忠夫君 第一段のお答えでございますがね、そういう局長クラス人事については、心構え等は常にできているものであろうと、そういう意味で私たち考えているというこの言い方が、やっぱり局長といえども国家公務員であるわけでありますから、その職をやめさせるというならば、これはある程度そういうことはあっていいと思いますよ。事いやしくも一生懸命働いて、まじめに勤務してきた者が、その身分を奪われるというこの問題について、局長なるがゆえに、そういう覚悟は常にできているはずだと、こういうことでやっていくということは、まあ明治憲法のもとならいざ知らず、今日の民主的な憲法の中で、人権の問題等考えた場合、当人は覚悟ができているかもしれませんけれども、全体的に与える印象というものは、一方的な上からの押しつけによって自由に首が切れるんだという風潮ですね。ことに人事の問題、国会のこの場などで取り上げることは私も差し控えたいと思うんですけれども新聞にああいうことが出ている以上、やはり事を明らかにして、石原長官の言うような明朗な行政というものをつくり上げていきたいということに協力したいと思っているわけですよ。何となく官庁人事というものが、既往の枠の中で、まあこうすると言えば言うことを聞くべきだというような印象の今日的行政あり方については、私はやっぱり改めなけりゃならぬ問題じゃなかろうか。そうではあっても、四日か五日くらいの間待って、そうして心構えを求めていくという姿勢をやっぱりとるべきではなかろうか。まあ同じ新聞報道ですけれども、同じような年配の方が、今回の柳瀬人事に関しては、三十年来私は勤続してきたけども初めてのケースだと、やはり何かのショックを受けながらいられるような新聞報道があったわけですが、この報道が全くの虚偽の報告をしている報道だと私は感じません。そんなことをつくり上げることがやはりこの人事の中にあることは、慎まなきゃならぬことだと思うんですけれども、ただいまの御答弁で、今後は留意したいというんだが、しかし、私たちとしてはこうだというようなお言葉もありますので、その点についていま一度お伺いしたいと思います。
  9. 金子太郎

    説明員金子太郎君) 私ども局長クラスについては先ほど申し上げたような考えでやってまいりまして、ほかの官庁の例でございますが、二日前ぐらいに内示を受けておやめになったという例も幾つかあるというふうに聞いております。また、新聞が取材された方は、恐らくそういう局長クラスの人ではなくてもう少し下の方だったと思うんですが、そういう方については、二日前とか四日前とかいうようなことの内示で、済まないが君やめてくれというようなことはやっておりませんので、その辺に若干、答える方と取材する方と、今回の特別のケースの場合との混淆があったんではなかろうかというふうに察しておりますが、なおかつ、私どもがこれまでやってまいりました人事やり方についての貴重な御意見でございますので、今後私ども人事をやっていく場合には十分参考にさしていただきたいと思っております。
  10. 野口忠夫

    野口忠夫君 十分ひとつ、人事というような問題が絡んでの行政面における暗い部面、こういうものが国民の理解の中でなるほどなと進められるような、そういう立場での皆さん方の御検討をひとつ十分お願いしたいと思います。  次に申し上げたいことは、柳瀬局長の異例な唐突人事の進められた背景が、またこの人事に非常に疑問を持たせるようになったのではないかということであります。  昭和五十二年度の環境庁環境行政の第一の課題は、環境影響評価制度法制化したい、これはもう五十二年度の当初の所信表明の中で長官が第一の課題として掲げられたことであります。この問題の成否をかけた折衝が行われている最中にこの唐突な人事が行われたということでございます。この法制化担当局長柳瀬氏が中心になって法制化実現のために一生懸命努力してきた、こういうことは衆目の一致するところであろうと思います。そうした姿は、この法制化によって規制の強化がされるのではないかという不安、法制化によって生まれる規制に対する不安というものを隠すことのない産業界経済界皆さん方圧力中心にこの人はなったのではなかろうか、こういうことであります。この背景の中で唐突に行われた人事がそういう疑いを生み出してきたのではないかということです。こうした背景の中での余りにも唐突な人事に、人を動かすということによって、行政の利益というものを自分のものにしようとする、そういう圧力があったのではないかという疑問が生まれてくることも、これも当然ではないかと思われます。新聞報道は、またそのようなことを推測しながら記事にしているようでございます。私は、長官がこの問題でそうした折衝過程にあられたと思いますから、環境庁としては、産業界経済界との何らかの折衝を、この問題をめぐってお持ちになったことがあられたか。また、そうした新聞報道にあるような、環境庁に対するこうした方々の干渉というものがあったかどうか。今回の人事異動をめぐる、新聞報道されているこうした疑念に対して、ひとつ率直にその辺のところをお聞かせ願いたいと思うのです。
  11. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 結論から先に申し上げますと、今回の人事に、財界等外側圧力があったなどということは一切ございません。先生がそのようにお考えかどうか、新聞に一、二そういう記事がございましたが、確かに小説的な発想だと思いますし、また政治の中には小説以上に小説的な事件も起こりますが、この場合は全くそのような事実はございません。私は、かねがね、財界との関係あるいはこの環境問題にかかわる住民との関係は是々非々で進むつもりでおりますが、アセスメント法に関しましては、かねがね申しておりますけれども、これは、これからの日本の、環境行政だけではなしに社会全体の進み方のために不可欠のものだと思っております。そうして、そのアセスメント法の直接の担当者は確かに柳瀬局長でございましたし、柳瀬さんもそれなり努力をされましたが、立法の進め方についていろいろ評価批判もあると思います。いずれにしましても、この環境庁にとっての大眼目でございますアセスメント法を一刻も早く成立させるために、まあ人事の時期でもございますし、最善考えまして、事務次官その他関係者と十分話し合った上での人事でございまして、財界などの圧力があったなどということは一切ございません。環境庁の名誉のために申し上げておきます。
  12. 野口忠夫

    野口忠夫君 これは新聞投書欄——国民の自由な意思を表明する自由な立場での投書があるわけですが、その投書欄に、ごらんになったと思いますが、環境庁局長人事をめぐって、「石原長官に腹が立つ 公害防止のためのアセスメント法案心血を注いできたといわれる環境庁企画調整局長柳瀬氏が突然辞めさせられたことは、全く残念なことだ。とかく産業界寄りとウワサされる石原環境庁長官の本音を見た気がして腹が立つ。今後の公害対策がどうなるか、不安だ。」と、こういう投書が載っているわけです。これは東京都の染色業、染め物をやっている人の投書であるわけです。私は、一たん新聞に出たこの新聞情報等は、このように、今日の行政の問題について、本当に毎日そのことを考えてないような染色業の人までもこの問題に認識を持つような、そういう課題を持っているわけですね。とにかく「石原長官に腹が立つ」というほど怒っていらっしゃるんですから、なかなか主権の立場も高まっているんではなかろうかと、非常に賛意を表したいような感じですけれども、あの小さな記事を見ただけでこれだけのものが出ている。一般的に言いまして、新聞情報の行き過ぎの問題は若干これはあるときがあるかもしれませんが、しかし、そういう情報を提供する者の軽率さといいますか、そのこと自体がどんな国民との間の関係を生むか。今日の政治課題で一番重要なのが政治に信頼を取り戻すということだろうと思います。住民運動が全国的に高まる中で、何か国民の不信の感情がぬぐい去ることができない今日の中で、こうした情報を提供するような軽率さというのは、新聞に書かれたことが悪いなんていうこと以上にやはりとがめられねばならない問題ではなかろうか。特に、一省一局を預かるという責任ある立場にある者が、単に自分たちのやっていることの考えは間違いがないと、いいことなんだという考えだけで、その行政が及ぼしていくであろうところのいたずらな影響ということを考慮することもできないようなことは、これは許されないことではないかと思います。今回の環境庁人事に見る、こんなときにこんな人事が何の障害もなくまかり通る時代ではないはずであろうと思うんです。長官の御見解によりますと、深い意味ではまだまだ未熟な国民意識であるかもしれません。あなたのお話によると、今日の民主主義というものの根底に、自分で解決するという意識ではなしに、他人に責任を転嫁するような、そういう未熟な部面が残されているというようなお話もあったんですが、戦後三十年の日本民主化の中では、これくらいのことは理解する国民にやっぱり成長しているのではないかと私は考えるものであります。戦後三十年の間に、国民の権力の支配に対する警戒心というものは、これは非常な高まりをやっぱり持っているものではなかろうか、こうしたことを考えた中で、私は今回の人事が余りにもその背景、その及ぼす影響等について大きなものがあろうというようなことを考えることを見失っていた、そういう人事行政の、環境庁の反省を深めて、この問題に対する長官見解を、こうした国民との接着点を持つような問題についての見解をひとつお伺いしたいと思うんです。
  13. 金子太郎

    説明員金子太郎君) 長官お答えになります前に、私から先に一、二説明をさせていただきたいと思います。  今回の人事が唐突であるというふうに受け取られた、少なくとも新聞にそのように報道されました背景といたしまして、今回の、七月、八月は各省の定期的な異動の時期でございますが、その各省異動に際しましては、ほかの省庁はいずれも、だれが次官になるだろうとか、何局長はだれになるだろうというような予想記事が出たわけでございます。これは漏れるのか漏らすのかその辺はよく存じませんが、いずれにせよそういう予想記事が出るのは、少なくとも私といたしましてはよくないことだというふうに考えておるものでございます。人事は役人にとって神聖なものであり、興味本位に外から見られるべきものではないと、こういう信念を持っておりまして、そういう考え方に基づいて、次官大臣にも、今回の厚生省人事に合わせる最高人事外部に一切言わないようにお願いしたいと、大臣次官もそのようにしようと、こういうふうに言われましたので、わが庁に関する限りは予想記事が全然出なかったわけであります。したがって、発表をして、受けとめられた方は唐突に感じられたかもしれません。しかしながら、私はそれなりに私のやり方がいいというふうにいまでも考えております。それが第一点であります。  第二点は、唐突な人事をやったから外部から圧力があったんではないか、これは、冷静に考えてみれば、私は新聞報道も論理的ではないというふうに考えます。なぜ唐突な人事外部からの圧力によるものであるか、その結びつきは私は全然ないというふうに考えますが、事実関係としてもないというふうに大臣が言われたとおりでございまして、何とぞその辺の、ほかの省庁といささか違ったような運び方をしたためにこういうような印象を与え、したがって先ほど野口委員の言われたような投書もなされたのではないかというふうに考えております私ども考え方も御理解いただきたいと思います。
  14. 野口忠夫

    野口忠夫君 私は、御質問を申し上げましたのは、あなた方の立場でこれがいいとこう思ってやったことが、新聞報道の云々ではなしに、そういうものを引き出すような状況があったという中で一たん出たものがあるわけだ。それに対して国民は、「石原長官に腹が立つ」というような気持ちで言われているわけでしょう。これはやっぱり、いま御自身のやられた政治的な主張というものを述べられた気持ちはよくわかります。だがそれが正しく受けとめられないような問題が、やっぱりこの時期にこの人事をめぐって起こっていることについて、これは決してよかったとは言えないと私は思うわけであります。  長官にお尋ねいたしますが、長官大分環境行政に本気であられまして、水俣病患者のところにもおいでになられ、そして、その前に立ったときには、とてもいたたまれないような心の痛みを感じたとその心境を吐露しておられます。そして、こういうような悲惨な事実の累積がどうも行政カーテンにさえぎられて、そのうめき声が隠されたところにこの問題の奥底があるのじゃなかろうか。私はこのカーテンを開くことに最善努力を尽くしたいと、こういうことを委員会答弁等でもお話がありました。その国民行政をさえぎるカーテン、ここには常に考えなければならない一つの明るいやっぱりあり方がなければならぬと思うんですが、何となく国民の知らなかったところで人事行政が不明朗に行われたのではないかというような疑惑を与えるようなことをやらない人事をしないと、長官の思っていらっしゃるお気持ちが、国民との間では一つカーテンができてくると、こういうふうに今後のことについて思うわけでありますので、今回のような人事行政が私としては再び行われないようなことを期待したいと思うんですけれども、今後の人事行政についての長官のひとつ所見を承りたいと思うんです。
  15. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 先ほどお引きになりました投書は、あくまで一市民の方でございまして、国民大衆千人千様の意見をそれぞれ持たれると思います。腹がお立ちになったというのは、つまり、その市民の方がアセスメント法そのものに、環境問題に非常に関心をお持ちだったせいだと思いますけれども人事というものは行政一つの要素でございまして、あくまでも行政国民のために結果として実を上げるということのために最善の選択をしなくてはならないと思います。そういう意味では、投書の方が、本当に腹をお立てになるのは、この人事によって最大眼目でございますアセスメント法が非常におくれたということのときには、ひとつ存分にお腹をお立ていただいても結構でございますけれども、どうかひとつこの人事の結果というものを、ある時間を置いて見ていただきたいと思います。  それから、アセスメント法に携わっておりますスタッフ全体のために申し上げますけれども、確かに前局長努力をされましたが、この法律の成案を見るために心血を注いできたのは何も局長だけではございませんで、それを支えるたくさんのスタッフがいろいろな努力をしてまいりました。その努力というものを、できるだけ早く、一番いい結果で実らせるために行いました人事でございまして、それ以外の何物でもございませんし、また私は今後の、環境庁に限らず各省人事もそういう観点で、行政の結果が国民のために最良な結実をもたらすという観点で行われるべきだと思いますし、そういう意味では結果がわかるまでに時間がかかることでございますけれども、ある時点では、非常にそれこそその人事そのものが非情な印象を与えるかもしれませんが、しかし、それはあくまで行政の実を国民の皆様のために上げるという観点にのっとって行われたということをひとつ御理解いただきたいと思います。
  16. 野口忠夫

    野口忠夫君 この問題について最後にお尋ねしたいと思うことを長官が先にお答えになられましたので、長官いま御自身のお気持ちを述べられましたけれども、あの新聞情報から生まれてくるような疑惑の解消、環境庁としての今後の真剣なあり方というものが国民に理解されることは、まさにこの環境アセスメント法案を、これを後退することなくひとつ成案を見ていくと、これが唯一の方法であろうと私も考えます。万が一この法案が、事前折衝過程の中では第三次にまでこれを押し込んできているようでありますけれども、所期の目的を達成されるような意味での前向きのひとつ法案の成立に特段の御協力をお願いすること、それが本当にこの問題を解決する基本の課題であろうと、私もそう思いますので、決意を私よりも先におっしゃいましたが、大変ごりっぱでございますので、ひとつその意味でお進め願いたい。これはもう同感でございますから。  時間がもう全くなくなりまして、あと十分でございますが、第二番目に申し上げたいのは、環境アセスメント法制化についてお伺いしたいと思うわけでありますが、この問題を論議する今日的立場は、環境影響評価制度法制化は、この前の国会の提案は見送りになりましてついに実現を見なかったという段階にあります。議論の余地がその点ではないわけです。長官は、日時を切って、会期内提案をこの国会に約束なさったことは間違いないことだと思います。約束を守ることというのはこれは社会人の第一歩でございます。特に、公の職を奉じ、公の場所での約束は実行をされなければならない、どうでもいいなんということにはならないと思うんですよ。議会制民主主義というのは信義に依存して成り立っているものでありましょう。国会ルールなどはどうにでもなるというような考えで、国会を軽視するようなことは、あえて最高の権威を持ち出さないまでも許すことのできないことではないかと私は感じます。五十二年度環境行政の第一の課題として取り上げた環境アセスメント法制化の形態を、これをどうお考えになられておるか、その見解を承りたいし、また、約束不履行の議会人らしからぬ立場に立たされている長官の率直な心境をひとつお聞きしたいと思います。
  17. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 確かに予算委員会等で、前八十回国会に成立を見たいと、その努力をしますということを申し上げました。環境庁としてはできる限りの努力をいたしました。しかし、先生にも御理解いただきたいのですが、何分いままでの行政原理の中になかった法律でございまして、非常に関係省庁が多うございますし、また、在来の物の考え方、価値観が非常に対立する問題をとらえる法律でございまして、大体この法律の原案と申しましょうか、環境庁の成文を見ましたのが正月に入ってからでございます。これほど大きな重要な法律の成立のための時間としては、一月から六月末ということではいかにも時間が足りなかったという感じがいたしますし、また、その過程関係省庁意見を聞いていく途中に、これは委員会でもいろいろ御説明いたしましたが、思わぬ伏兵があちこちからあらわれてまいりまして、どうもその抵抗が非常に激しくて立ち往生したというのが実情でございます。そういう問題について新スタッフ、新しい人事関係者によって現在関係省庁との話し合いを進めておりまして、あのとき閣議の了解を得ましたように、次の国会で成立を目指して、いまそのための準備を鋭意進めているところでございます。
  18. 野口忠夫

    野口忠夫君 この環境アセスメント法制化の施策を停滞させてその実現を阻んだものは、関係省庁との調整不能が原因であったことは、いままでの衆参両院の審議を通じて明らかになっております。国会会議録にも明らかなとおり、総理を初め歴代の環境庁長官、建設、通産、国土、自治等の各省大臣のこの問題についての答弁は、開発についての事前アセスメントの必要は当然であるし、これの早期実現を望みたいというような答弁ばかりであります。特に、参議院の予算委員会での福田総理大臣答弁は、もっと早く出したかった、鋭意今国会に提出するよう努力したいと言われていたわけであります。まさに法制化課題というものは、この実現は福田内閣の施策としての方向をたどってきたということをこれは物語っているのではないかと思うんです。  また、こうした方向を政治の中に生みつけたものは、当然今日の深刻な公害、環境破壊に対する国民の世論であろうと思うんです。こうした国民の動向、これにこたえる政治の方向、これに支えられて、環境影響評価制度法制化を阻止するというようなそういう力は、その存在はあってはならないし、許されないことだと私は思います。当然その新しい方向づけが求められていく中では、既存のものとの間に調整が図られること、これは当然であろうと私は思います。しかし、そのことによって、こういう大前提での実現を阻むというような結果となることは、本末転倒もはなはだしいことではなかろうか。各省庁間の調整が不能でこの大前提が実現しなかった。あそこで実現していれば、それに対する国民の世論は、非常な期待感をもって行政を見詰めるであろう。環境庁のやりました世論調査でも——アンケート調査をやられたようですけれども、その中ではこの法制化の実現を望まれる声が圧倒的に多かったという事実があるでしょう。それをとにかくやらないでしまったという結果になっているわけですから、どうも各省庁間の行政の調整というようなことによって阻まれてしまったことについて、私としては理解に苦しむものであります。この阻む原因をつくったのは、いままでの審議で明らかになったように、建設省、通産省との間に調整を見ることができなかった。結果的にはこの法制化の、この政治的な国民課題や期待を担う方向性が実現を阻んだ結果を生んだのはここにおける調整の責任になると私は思うのですが、建設省並びに通産省の見解をお聞きしたいと思うのであります。
  19. 大富宏

    説明員(大富宏君) 公害の防止、自然環境の保全のために、公共事業を計画する場合に、立案に際し、あるいは実施に際して、十分事前に環境アセスメントをやらなければならないということにつきましては、建設省といたしましても異論はございません。そのように大臣も国会において答弁いたしたとおりでございます。ただ、何らかの合理的なアセスメント法をつくるという場合には、やはり有効なものでなければなりませんし、また、先生御指摘のように、既存の制度、ことに都市計画法との調整ということが非常に問題でございます。そういうことで、ついに未調整ということで、前国会に法案提出に至らなかったわけでございまして、これにつきましては建設省といたしましても残念に思っております。
  20. 左近友三郎

    説明員左近友三郎君) 通産省といたしましても、環境アセスメントの必要性については十分認識をしております。わが省といたしましても、昭和四十年度以来、産業公害総合事前調査というものを実施しておりまして、大規模工場、事業場が集中して立地しようとしておる地域における公害発生については、未然防止に努めてきたわけでございます。しかしながら、その環境影響評価を法律的に制度化するということにつきましては、われわれの経験からいたしましても、調査方法、予測の方法あるいは評価方法という中にまだ方法が確立していない点もあるわけでございます。ですから、この点についてもう少し固めた上で実施したらどうか、それまではやはり行政運用を通じまして環境影響評価を実施してそれを定着化したらどうだろうかという意見を実は申し上げておったわけでございますが、今後また十分環境庁等とも御協議申し上げて検討してまいりたいというふうに考えております。
  21. 野口忠夫

    野口忠夫君 新しいものを生むために既存のものとの間に個々の調整が行われるという問題は当然であろうと思いますが、その問題点についての議論する時間的余裕はありません。とにかく国会という公の場で約束がされたことが不履行になった。これは私は長官の責任であろうと思うんですよ。そうして、ついにこの法案は未提出となってしまったというこの段階において、そうしたことを議論することは私は不必要だと思うんですよ。問題は、調整がどうであった、こうであったではなくて、約束不履行、法案未提出というこの結果を生んだことに対する反省と自覚が、やっぱりいま一番求められなきゃならぬじゃないかと、こういうふうに私は思うんです。評価という技術的な課題を法によって規制しようとする困難は多分にあると思いますよ。しかし、両省の調整の、いままで明らかになったところを見てまいりますと、どうもこの調整不能の中にひそんでいる、新しいものと既存のものとのがん的症状が、相変わらずこの中に残されているようにきり見えないわけであります。こう申しては何ですが、どうも老舗の大だなの番頭さんが新開店の番頭さんに注文つけているような関係をどうも感じざるを得ない。四十年来の経験があるとか、都市計画事業や電気事業はこれを対象としないでほしいなどという、これが調整の問題でございましょうか。新しい開店の店が存在するかしないかという問題を提起しているんではなかろうかと思うんですよ。そうしたことによって調整不能、約束不履行、法案未提出、どうもそういう関係がこの中にあって、環境庁という庁ができたことがどうもじゃまになったみたいな印象が——印象ですよ、怒らないで聞いてください、私自身印象がそうなんですから。どうもその辺が、ここで考えられなければならない、今日までの約束不履行、国会軽視、この問題に対する建設省と通産省との考えでなければならぬと私は思うんですが、もう時間がなくなってしまいましたので、結果的に言えば、高度経済——これは、こう言ったら怒るかもしれないけれども、怒らないで聞いてください、まあ余りそういうことばかり言っていて憎まれる方ですから。環境庁長官は、今日の公害の、環境破壊の原因は、高度経済成長の一面であると、こう言っているわけです。そうなりますと、今日の公害や環境破壊の、当時の中心的な勢力はだれだったと、これは建設省であり通産省であったんではないですか。だれかが公害をやったと、いま一生懸命そいつに対しては環境の安全を考えていると、建設省、通産省——建設の行政を担当する、産業振興の行政を担当する、この両省が今日の公害、今日の環境破壊の行政的な推進者であったということはこれは明らかであろうと思うんですよ。この反省の上に立って今度の環境庁問題というやつを考えてもらわないと、個別的な、環境庁のいまさらやっている環境保全とか公害防止というのは、これは全く建設行政のための環境でしょう。あるいは産業振興のための環境という考えきり生まれてこないでしょう。建設省は建設を担当しているんです。通産省は産業振興を担当しているわけでありましょう。そういうことでは、環境保全、公害防止というようなものは、全く一方的な上からの、建設と産業振興のための環境保全、公害防止というような形になるわけでしょう。そうしたことに対する不満がいま公害紛争というような住民運動を起こして、あなた方の行政すらも停滞するという今日にあるでしょう。環境庁が今回提案しようとしているアセスメント法というのは、この法案によって、従来のような押しつけ的な行政ではなく、住民との理解と説得の中で、この問題が一つの体系化していく中でむしろ行政は推進するんではなかろうかというような立場をこの環境庁は設置されるとともに持ってきているわけだ。私は今後の環境行政公害行政の中で、これからまた——これ長官に聞くわけでございましたが、時間がないんで聞かぬですが、やる気でしょうね。——まあ首をこうやりましたから、御返事要らない、やる気だろうと、これでやめちまうんじゃなかろうと。今後本当に国民の環境を守り公害を防止していくという立場で、新しいお店であるところの環境庁が持っている課題と責任というものを十分やっぱり理解して、しにせの大番頭さんたちは温かくこれを迎えて、その中で技術の問題があったりあるいは評価の問題や手法の問題があったら、お互いのいままでの経験の中で持ち合わしたものを持ってきて、環境庁を盛り立てるというような方向へこの問題を進めていくことが、法案成立の第一歩の私は仕事でなかろうかと、こういうように思うわけであります。どうぞひとつ——これどうしても聞かなくちゃならないんで、長官どうですか、臨時国会に法案提出しますか。
  22. 信澤清

    説明員信澤清君) 先ほど来大臣が申し上げておりますように、先生お話しのような目的でこの制度の法律化を私どもは従来進めてまいったわけでございます。そういう意味で、五月の末に、さきの通常国会で法案を断念した際にも、今後さらに調整を進めると、そうしてできるだけ早く法案として国会の御審議を煩わすようにいたしたいということを申していたわけでございますが、率直に申しまして、ただいまの段階で、まあいつ臨時国会がございますか私どももつまびらかにいたしませんが、新聞報道等によりますと非常に近い時期のようでございますが、できれば間に合わせるように努力はいたしますが、この臨時国会に間に合うように法案を提出できるかどうかということにつきまして、私ども事務をあずかる立場からは、何ともいまの段階で申し上げられません。ただし、次の通常国会には法案提出の運びに至るように努力をいたしたいと思います。
  23. 野口忠夫

    野口忠夫君 これで終わりますが、ただいまの局長さんの御答弁、まあ時間的にはそうかもしれませんが、何だか福田内閣は内閣改造をやるようなことを言っているわけですね、次の通常国会には。わが愛するべき石原環境庁長官は、その際存在するのかどうかについて、私はいささか疑問を感ずるわけよ。この人にやらせるべきではなかろうかと私は思うんですがね。どうもいまのところ、ちょっと困るがなんというような弱気を言ってないで、これほど国民が期待し、内閣がこれを支持してやってきたものを、単なる各省の調整の不能でだめだったなんという汚名は返上するような元気でひとつ臨時国会に提案されることを私は要望して、私の質問を終わりたいと思うんです。  どうも失礼しました。
  24. 勝又武一

    ○勝又武一君 このところ赤潮の問題や田子の浦のヘドロ、そしてまたスモンの和解等々、新聞をにぎわせた一連の問題があります。この問題について、特に公害と環境保全にかかわって御質問をいたします。  まず第一に、この田子の浦港のヘドロ東京高裁訴訟の問題です。数年前日本じゅう、いや世界じゅうの話題になったほどのこのヘドロの問題が、ほとんど問題になっていないいま、世上から忘れ去られている時期に、新聞のトップ記事を飾ったという意味はどこにあるのか。これは、地方自治法によります住民訴訟で公害問題が争われ、住民側が勝訴したのが初めてだ、ここに私はあると思うんです。そういう意味でこの東京高裁の判決についての御見解を承りたいわけです。
  25. 信澤清

    説明員信澤清君) ただいま先生の御指摘の判決の意義と申しますのは、新聞報道等でも、いま先生お話しのようなことを評価されているわけでございます。ただ、この問題は、高裁の判決が出た段階でございまして、なお県側としてさらに上訴するかどうか、そういうことについての御検討中でもあるというふうに聞いておるわけでございますので、判決内容そのものについて、この時期に私どもが論評いたすことは差し控えさしていただきたいというふうに思います。
  26. 勝又武一

    ○勝又武一君 企業の責任を免れない原因者負担、こういう意味公害防止事業費事業者負担法という法律ができておるというふうに私は理解をしています。その意味からいけば、本件はこの法律制定以前の問題ではありますけれども、いわゆる企業責任、このことについては当然免れないと思いますけれど、これについての見解はいかがですか。
  27. 信澤清

    説明員信澤清君) お話のように、現在は公害防止事業費事業者負担法という法律がございまして、それで負担関係その他明らかになっておるわけでございます。この問題の時点にはこの法律は存在しておりませんでした。しかし、民法の一般原則から申しまして、故意または過失によって他人に損害を与えた場合に、その損害賠償の責めに任ずると、これは当然法律的にそうなっているわけです。今回判決で引いております「共同不法行為」についても、これまた民法の規定があるわけでございます。したがいまして、そういった既存の法体系から言いましても、いま申し上げたような新しい法律あるいは規制その他がございません場合でも、これは当然それなりの責任を負うということは当然のことだというふうに考えております。
  28. 勝又武一

    ○勝又武一君 この事件は、原告が請求をしたのは一千万円。これは、原告が請求した一千万円を支払えという判決ですね。御承知と思いますけれども。もし原告が、静岡県の支出した総額は一億二千万円ですから、この一億二千万円全額を訴訟において請求したとしたら、当然今回の判決も、一千万円ではなくて一億二千万円を支払えという判決に当然なったと考えますが、この点はいかがですか。
  29. 信澤清

    説明員信澤清君) 全額になったかどうかは、これまた私必ずしもおっしゃるとおりになったかどうかは疑問の点もございます。と申しますのは、田子の浦の汚濁の原因が、すべてこの四社の共同責任によるものであるということは、この判決の中では必ずしも言ってないように思うわけでございまして、ともかく汚濁の原因の一つに四社の汚水の排出があるという点を判決はお認めになっているということでございます。したがいまして、県が支出いたしました全額が果たして判決の内容としてなったかどうか、この点については、私ども立場からとかく申すことはできない、そのように考えております。
  30. 勝又武一

    ○勝又武一君 これは論争があるところと思いますが、私は、判決の趣旨からいけば、一千万円を請求したら一千万円払えと、この趣旨からいけば、当然静岡県が支出した一億二千万円をそのまま支払えというようなことになるのはこれは理の当然だと考えます。  そこでお聞きしたいのは、住民訴訟の場合の訴訟費用の負担についてであります。たとえば、いま地方自治体におきまして、県とか市町村において消費者保護条例を制定して、地方自治体が訴訟費用の負担をしている例があります。このような意味からいけば、今回の住民訴訟の場合に住民側が一千万しか請求をしなかった、このところはこういう事情なんです。一億二千万円の全額請求をしたかったけれど、しますと印紙代だけで百二十万円、一億二千万円でかかるわけです。そこで、皆銭のない連中ですから、せいぜい一千万というところで、印紙代十二万円という——非常にみみっちい話とお笑いになるかもしれませんが、がまんをしてやったわけです。ですから、そういう住民訴訟の場合の訴訟費用の負担について考えられているならば、これは当然一億二千万円の訴訟をやっていたはずであります。その意味で、率直に伺いますが、かかる住民訴訟にかかわる訴訟費用について、国の責任において負担をするお考えを持つのは当然だというようにも、地方自治体の側からいって考えますが、いかがですか。
  31. 信澤清

    説明員信澤清君) 先ほどの御質問にも関連して申し上げたいと思いますが、全額四社負担の判決が出たはずであろう、こういうお話でございますが、先生が先ほど来お挙げになっております公害防止事業費事業者負担法におきましても、公共事業費でやりました場合に、これまでの例では事業者の負担は四分の三程度になっているわけでございます。これに公共事業をやることによってまた別の意味の新しい効果があるという場合にはその経費を差し引くと、そういうような措置もとられているわけであります。  なお、また、今回一千万円の訴訟にいたしました経緯等は、いま先生お話のようなことは私も新聞紙上等で拝見をいたしております。そのとおりだと思います。しかし、仮にこの判決が確定いたしました場合は、恐らく県としては、県の財務行為について問題があるということに意味がある判決でございますから、恐らく、判決の一千万はもちろんでございますが、それだけでとどまるかどうか、これはまたこの判決が確定し、県がこの判決に服した場合の取り扱いの問題としていろいろ御議論が出るはずのことだというふうに思うわけでございます。  なお、いまお尋ねの訴訟費用の問題でございますが、お話のように各自治体等でいろいろ訴訟費用についての立てかえ制度とかいうのがあることは私ども存じておりますが、やはりこの問題は、司法についての救助制度等もあるわけでございますので、第一義的にはやはり司法行政の中で解決をしていただくという筋合いのものではないかというふうに考えるわけでございます。
  32. 勝又武一

    ○勝又武一君 この問題は、県と企業が上告するかどうか現在検討中の問題でありますし、時間の関係もありまして、今後の進展状況の中で、また後日見解を承りたいと思います。  次に、スモンの和解にかかわる諸問題についてお伺いをしたいと思います。  スモンの患者数は、全国で現在どの程度の数だというように把握をされておられますか。
  33. 古川武温

    説明員(古川武温君) 昭和四十四年以降、スモン調査研究協議会あるいはスモン調査研究班の調査により、一万一千余りと考えられております。
  34. 勝又武一

    ○勝又武一君 この厚生省調査を四十七年三月末にされたときは九千四百人。このときの調査の仕方は、県の衛生部から各保健所、そして各保健所が医師会、こういう調査方法をとっておられますが、そういう調査以降厚生省として正式におやりになったことございますか。
  35. 古川武温

    説明員(古川武温君) 先生がただいま申されましたのは、患者調査として第一回、第二回及びキノホルム服用調査を指しているものだと思います。それ以降、患者調査は毎年引き続き各県に依頼して行われております。
  36. 勝又武一

    ○勝又武一君 実際の場合の一例を挙げますと、たとえば私の居住します富士市の場合、医師会へ報告をされている数が六人、しかし実際は二十人程度いる、こういう現状が率直に言ってあります。このことから類推しますと、いま一万一千とおっしゃっていらっしゃいますが、世上、二万から三万と言われているスモン患者の実数ですね、この点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  37. 古川武温

    説明員(古川武温君) スモンの調査につきましては、スモンが当時非常に社会的な大きな問題を引き起こしておりますし、また行政府側——衛生部あるいは保健所あるいはまたその調査に伴って医師会等の十分な協力も得ておりますので、相当この調査についての届けは十分行き渡っているものと考えております。
  38. 勝又武一

    ○勝又武一君 そうおっしゃいますけれどね、医師の診断書、これを書いてくれない、うそを書かれた、こういうのが、正直言って私の手元にある調査によりますと、こういう場合のが三〇%あるんですよ。それから投薬証明が取れない。これは、私は、現実の問題として、教員をやっておりましたから、私の教え子あるいは公立学校共済組合の組合員、こういう事実で知っています。こういうのは事実この数の中に入っていないんです。こういう点についてはどういうようにお考えになりますか。
  39. 古川武温

    説明員(古川武温君) この調査については、スモンの現員を調査すると、こういうふうなことで計画されたものでございます。この意味に関しては十分な数が把握され、その結果も報告書にまとめられているところでございます。ただ、ただいま御指摘のように、個々のケースについてその患者が調査の個票の中に、言いかえれば調査対象の中に数えられているかどうかということについては、はっきりとお答えできません。
  40. 勝又武一

    ○勝又武一君 いまの答弁はきわめて不満です。いまの程度のことだから非常にやはり世間的な問題になるというように私はこの点は理解をいたします。しかし、この点については、もうずいぶん古い話ですけれど、四十八年の四月五日参議院の予算委員会第四分科会会議録、この中で当時の大臣答弁が明らかにしておりますね。「やはりそういう実態をつかまえて対策をやるのでなければ意味がありません。したがって、今後とも実態把握については力をいたして、はっきりした数字の上に、はっきりした実態の上に医療を行なっていく、こういうふうに努力いたしたい」、これは当時佐々木さんが、九千二百四十九名という数に対する治療の対象者は三千名しかないという厚生省答弁に対するやりとりの中の大臣答弁です。私は、このことがずっと行われているというようには理解され得ません。これはきわめて不満であります。しかし、時間の関係でこの点は次に進みます。  このスモンの問題は再三もう国会でも議論をされておりますが、特にキノホルムを厚生省が許可をした経過、これらについて少しお伺いをいたしたいわけですが、まずキノホルムが、昭和十年アルゼンチンで神経障害の副作用が発生をし、警告がされた、そしてまた日本にもその文献が入手されていた、こういうように聞いておりますけれど、この点は間違いありませんか。
  41. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) 昭和十年にアルゼンチンでスペイン語で書かれたそのような論文が出て、そしてそれが日本の東北大学の医学部の図書室に来ていたということにつきましては、私ども裁判になりましてから承知をいたしました。それは事実であると存じます。
  42. 勝又武一

    ○勝又武一君 さらにお伺いしますが、昭和十三年ごろ大阪の桃山病院でわけのわからない奇病が発生し、そして犯人がキノホルムではないか、こういうことが言われた事実。十四年、スイス・チバ社での動物実験でネコに異常が発生をした、このとき獣医には警告が出されたけれど、医師には警告がされなかった、こういう経緯。あるいは、昭和十一年の七月三日に劇薬の指定がされましたが、十四年十一月九日にはこの劇薬の指定が解除をされた、こういうことも事実として間違いありませんか。
  43. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) 昭和十一年にキノホルムが劇薬として指定され、十四年に解除されたということにつきましては事実でございます。  その他の点につきましては、御承知のように、これはスモンの裁判で原告側が主張しておられる点でございまして、裁判の結論が出るまでは、国としては、それにつきまして認めるかどうかということにつきましては、答弁を差し控えさしていただきたいと思います。
  44. 勝又武一

    ○勝又武一君 戦後、二十七、八年ごろからキノホルムが大量に使われたという事実、そして当時田辺製薬はエマホルムの販売、これで非常に業績が立ち直った、こういうように聞いておりますが、そのころの状況については間違いありませんか。
  45. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) 昭和三十一年にエマホルムの製造が許可された、田辺に対しまして許可されたということにつきましては承知いたしておりますが、それが田辺の業績にどういう影響があったかということにつきましては、詳細は承知いたしておりません。
  46. 勝又武一

    ○勝又武一君 このスモンの患者の六割が田辺のエマホルムの服用による結果だというように言われておりますが、この点についての見解はいかがですか。
  47. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) 現在、東京地方裁判所以下二十二の裁判所でこの訴訟が起きているわけでございますが、その中で原告が国と会社を訴えておりますその割合でまいりますと、田辺を訴えておる患者さんの数は、田辺だけを訴えております患者さんの数は、全体の患者さんの数が総計三千四百二十八人のうち千二百七十六人でございまして、三七・二%ということになっております。それに対しまして、日本チバガイギーが製造いたしまして武田製薬が販売いたしました、そちらの関係の薬を服用したということで訴えております患者さんの数が千五百二十六人で、全体の四四…五%ということになっております。  なお、そのほかにチバ・武田、田辺の両方の薬を飲んだというような方あるいはその他十数社の中小製薬会社の薬を飲んだというような方がその他の中に含まれておるわけでございます。
  48. 勝又武一

    ○勝又武一君 厚生省がこのキノホルム使用販売の中止を通達で出されたのはいつですか。
  49. 代田久米雄

    説明員代田久米雄君) 昭和四十五年の九月でございます。
  50. 勝又武一

    ○勝又武一君 患者の発生、この点についてお伺いしますが、売薬ではほとんどない、病院で服用した者が九九%、こういうように承っていますが、これも間違いありませんか。
  51. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) 病院で服用した患者の数が圧倒的に多いことは事実でございます。ただ、訴訟をしておられる患者さんの中で、売薬によってなったということを主張しておられる方も若干ございます。
  52. 勝又武一

    ○勝又武一君 そうおっしゃいますけれどね、私の調査ではもうほとんど病院なんです。そうすると、病院だけでしか発生しなかったというのは、大量に病院が使ったのか、つまり大量投与なのか、売薬と種類が違うのか、この点についてはいかがですか。
  53. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) 私ども、薬の種類としては同じだというふうに理解をいたしております。  それで、大量投与が原因であったかどうかということにつきましては、これは御承知のように、外国と日本と比べますと、外国でも全然発生をしていないことはないわけでございますが、日本の場合には圧倒的に高い割合で被害者が出たということにつきまして、その原因をどういうふうに考えるかということにつきましては、まだ最終的な結論が出ていないわけでございます。  で、私ども常識的には同じ薬を飲んで、なぜ日本だけで多発したかということにつきましては、単にキノホルムの原体そのものだけじゃなくって、それにさらに別の事情が加わって日本において多発したものであろうというふうに理解をいたしております。
  54. 勝又武一

    ○勝又武一君 いわゆる製薬会社でつくっている効能書き、これについて、売薬と病院の場合には違っていると思いますが、当然、その場合の病院の効能書きに問題はなかったですか。
  55. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) いわゆる能書というふうに言っておりますのは、薬事法上では添附文書という言葉を使っておるわけでございますが、その添附文書の中に用法、用量、効能、効果を記載することに義務づけられておりまして、その用法、用量並びに効能、効果につきましては、あくまで製造承認したときの範囲内の用法、用量、効能、効果を書くということになっておるわけでございます。
  56. 勝又武一

    ○勝又武一君 これもここで余り論争しても意味がないと思いますが、私の教え子の場合には両眼を失明をしました。高等学校の教員です。両手、両足がしびれて動きません。四十二、三歳で、いま盲学校の高等部へ行き直しておると、高校の教員をやった男が。子供は一人、女の子。こんなことを彼は望んでいたわけではありません。そういう彼の状態なり、外くの公立学校共済組合の組合員であったスモンの患者などの実情からいきますと、病院での大量投与によることは私は間違いないというふうに確信をしています。  そこで、これはこれ以上はまあお聞きするのを時間の関係で省略をしますが、そういう点からいくと、そういうことをいわゆる黙認をしてきた責任というのは、私は国にあるんじゃないかと考えますが、この点はいかがですか。
  57. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) この問題につきましては、確かに前例のない大きな訴訟になっておりますと同時に、御承知のように、東京地裁の裁判長からは昨年の九月に勧告の意思表示がなされ、また、ことしの一月には具体的な和解の勧告案が出されておるわけでございます。で、その勧告の中でも指摘されておりますように、国が製造承認したという、そういう薬につきましてこういう大きな社会的な不幸が起きましたということにつきましては、もちろん薬務行政といたしまして深刻な反省をいたし、また、そういう反省の上に基づきまして、最近では薬務行政の最重点を言うまでもなく安全対策に置くという姿勢で取り組んでおるわけでございます。
  58. 勝又武一

    ○勝又武一君 観点を変えて二、三お聞きします。  スモンの患者が大量に発生をしたのは、四十三年、四十四年、四十五年ごろ、このころに集中していると思いますが、この点は事実と違いますか。
  59. 古川武温

    説明員(古川武温君) 調査によりますと、御指摘のとおりでございます。
  60. 勝又武一

    ○勝又武一君 アメリカでは、昭和二十年、デーヴィッドがアメリカの医学雑誌で連用、乱用を警告していますが、厚生省はこのことを知っていましたか。
  61. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) このデーヴィッド論文は昭和二十年、終戦の年に出たということでございまして、当時としてはもちろん承知をしていなかったようでございます。訴訟の段階で厚生省としては初めて知ったというのが実情でございます。
  62. 勝又武一

    ○勝又武一君 厚生省が知ったのはいつですか。二十年は敗戦の年でわからなかったら、いつ知ったのですか。
  63. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) その歴代の担当者のだれがいつ知ったということにつきましては、非常にわかりにくいわけでございまして、一番確実なことを申し上げれば、訴訟が起きてから承知したというのが確実であろうと思います。
  64. 勝又武一

    ○勝又武一君 昭和三十六年にアメリカの食品局はアメーバ赤痢以外の使用を禁止しているというように私は承知しておりますが、これも訴訟が起きるまで知らなかったんですか。
  65. 代田久米雄

    説明員代田久米雄君) はっきりしたそういう記録が残っておるわけではございませんので、明確な時期をお答えすることはできないと思いますけれども、いずれにしましても、アメリカのいわゆるいろんな印刷物が戦後入ってきておりますので、そういうものを厚生省で保管してありますので、そういうものについてはそういう記録が残っておりますので、そういう時点では承知していたと思います。
  66. 勝又武一

    ○勝又武一君 その二年前、日本で釧路、室蘭に集団発生、つまり三十四年ですね。そして三十九年、埼玉県の戸田市、東京オリンピックの年ですが、集団発生をし、前川教授による研究班、いわゆる前川班。この厚生省の助成金が三十九年度三十万、四十年度三十六万、四十一年度百四十万。そして、四十一年度で打ち切られておりますが、この前川班が解散していなかったらスモンの大量発生は防げたのではないかと、こう言われていますけれど、この点についてはどういう見解をお持ちですか。
  67. 古川武温

    説明員(古川武温君) 前川班は、先生がいまおっしゃったようなことで三年の研究をいたしましたが、原因がわからず解散しております。
  68. 勝又武一

    ○勝又武一君 この助成金を打ち切った理由につきまして、四十四年の衆議院産業公害対策特別委員会において、政府委員の方は、研究班長の前川先生が亡くなられたからと言われています。しかし、ほかの資料をいろいろ勉強してみますと、厚生省の当時の担当官の方が、全国的にスモンの発生が減ったから打ち切ったんだと言っている資料もあります。どちらの理由にしても、当時、この四十一年度で助成金を打ち切り、研究班を解散をした、これは重大な誤りだったというように私は思いますがいかがですか。いまの時点でどう思われますか。
  69. 古川武温

    説明員(古川武温君) 前川班は確かに当時解散しておりますが、国立病院の研究班は存続しております。確かに、さらに大きな規模で研究を続ければ、さらに早く原因が究明されたのではないかといまの時点では考えています。
  70. 勝又武一

    ○勝又武一君 率直な御答弁をお聞きをしましたが、局長もお見えになったようでありますので、いままでのやや細かい質問を変えましてお聞きをしてまいりたいと思います。  エマホルムを厚生省が許可をされたのはいつですか。
  71. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) 先ほど申し上げました昭和三十一年でございます。
  72. 勝又武一

    ○勝又武一君 二十八年ごろと違いますか。
  73. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) エントロ・ヴィオフォルムの輸入を許可いたしましたのが二十八年でございます。
  74. 勝又武一

    ○勝又武一君 当時担当されていたのは製薬課長と聞きますが、そうですか。
  75. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) そうでございます。
  76. 勝又武一

    ○勝又武一君 その課長が、昭和五十年の六月と七月、静岡地方裁判所の法廷で次のように証言をされています。「業者の申請書類に約一時間程度目を通しただけ」だと言っていますが、大体そういう状況であったでしょうか。
  77. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) そういう答弁をされたことは伺っておりますけれども、私ども、そのとおりであったかどうかにつきましては、大分昔のことでございますので、直接は承知をいたしておりません。ただ、このキノホルム関連の一連のいろんな薬の製造承認につきましては、やはり当時といたしましては、何しろかなり古くから外国においてもそれから国内においても非常に安全性が信じられて長い間使われてきた薬であると、そういう前提のもとに審査が行われたということは事実であろうと思います。
  78. 勝又武一

    ○勝又武一君 私は、さっきから細かくアメリカやあちこちのことを言っていましたのは、そういうことをおっしゃると思ったから聞いておいたんです。全然違うと思いますよ。外国では安全だったなんということは一つもないんじゃないですか。  まあそれはそれとして、静岡地方裁判所で当時の課長さんが法廷で証言された、「業者の申請書類に約一時間程度目を通しただけ」だと、こう言ったのに、なぜそうしたかという追及に対して、その課長さんは次のように答えているわけです。「他の新薬の場合の許可も従来からそういう方法であったから」と答えているのでありますが、この点についてはどう思われますか。——局長いかがですか。
  79. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) 現在の……(「局長に言っているんだから局長に答えさせなさいよ。」と呼ぶ者あり)少し現在の製造承認のやり方につきまして御説明さしていただきたいと思います……。
  80. 勝又武一

    ○勝又武一君 いや、現在じゃなくて、その当時ね、「他の新薬の場合の許可も従来からそういう方法であったから」と証言をしているわけですよ。そのことだけを聞いているんです。現在どうしているかということを聞いているわけではありません。
  81. 中野徹雄

    説明員(中野徹雄君) お答え申し上げます。  最初におわびをいたしておきますが、実は私ごく最近薬務局長を命ぜられたばかりでございまして、あるいは細かい点につきまして御答弁いたすのに不正確な点があると申しわけないと思いましたので、ちょっと控えておったわけでございます。  私の承知しております範囲では、昭和四十二年以降新薬の承認許可の手続が非常に厳重になったという歴史的な事実があるように聞いております。で、昭和四十二年以前の新薬の承認あるいはその製造許可につきまして、四十二年以降に比べまして、何と申しますか、反省すべき点が多かったということは、私らとしても承知しておるわけでございますが、現実にその個々の薬品についてどのような審査あるいは許可の経緯であったか、その点は残念ながらつまびらかにはいたしておりません。
  82. 勝又武一

    ○勝又武一君 四十二年以降のことをお聞きしたのではありません。二十八年当時の、この許可をしたときの製薬課長さんの証言の内容を、二十八年当時の厚生省がどうであったかということをお聞きしたのでありますが、お答えがありませんのでこれはまた別途にいたします。  キノホルムの歴史——昭和初期に輸入、十四年国産開始、その他のデータも調べなかった、戦前の劇薬の指定も知らなかった、こういうようにその課長さんはそのときにも答えているのでありますが、そういう状態であったんでしょうか。
  83. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) 先ほどの御質問に戻って恐縮でございますが、当時の新薬の承認がその程度のものであったかどうかということにつきましては、当時の水野課長は一時間ほど見たということを言われたようでございますけれども、私ども役所の組織の常識から考えますと、その下にもちろん大ぜいの専門家がおるわけでございまして、そういう専門家が目を通したものが課長のところに上がるというふうに御理解いただきたいと思います。  それからまた、当時といたしましても、全く新しい成分を含むような医薬品につきましては、やはり審議会に諮って決めておったというふうに私どもは理解いたしております。  なお、昭和十一年に劇薬の指定になったこと等につきまして、まあ水野課長は御存じがなかったというふうにおっしゃった以上はそれは事実であったろうと思います。
  84. 勝又武一

    ○勝又武一君 いろいろ担当の方が調べられたという答弁でありますが、先ほどからお聞きしますと、輸入の際に、外国ではほとんど被害がなかったというお話ですが、たとえばアメリカでは、大正十二年「内科診療の実際」という初版本に、「十日連用したら八日休め」と明記されていると聞きますが、こういうことも知らなかったんでしょうか。
  85. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) 当時その担当者がそういうことを知っておったかどうかということについては、ちょっと私どもお答えいたしかねると思います。
  86. 勝又武一

    ○勝又武一君 幾つかアメリカの例ばかり挙げましたけれど、そういうことをもし知っていて勉強していらっしゃり研究していれば、一時間程度書類を——業者の出したままのですよ、出したままの書類だけで許可をするということは考えられないはずですが、私の常識からいけば。その点はいかがですか。
  87. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) 外国でこのキノホルムについていろいろ着目していた点があるんではないかというような御指摘でございますけれども、先ほどお話ございましたように、もちろん一部に、今日のような、スモンのような副作用ということでございませんですけれども、腸管から吸収されないと思っておられたものが一部吸収されるんじゃないかとか、それから先ほどのアルゼンチンの論文であるとか、そういうものがあったことは事実でございます。しかし、行政としてキノホルムの製造承認なり販売方法に特別に手を打ったというような国はなかったわけでございまして、日本におきます、こういう非常に悲惨な経験をしたその情報が外国にもたらされた以後、外国においてそういう措置がとられておるというふうに私どもは理解をいたしております。
  88. 勝又武一

    ○勝又武一君 少し急ぎますが、厚生省自身が独自の調査あるいは他の研究機関に調査を依頼する、こういうような方法は幾らでも考えられたと思うんです。そういう方法をどうしてとられなかったんでしょうか。
  89. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) 先ほど来申し上げていますように、過去の薬務行政あり方につきまして、行政というものが常に一〇〇%完全なものでないことは明らかでございますので、御指摘のようにいろいろ不十分であった点があることはそのとおりだというふうに思いますけれども、ただ一般論として申し上げますと、一国の薬務行政というものはやはりその国の学問の、医学、薬学の水準以上に出ることは非常に困難でございまして、やはりキノホルムにつきましては日本の医学、薬学の水準における、何と申しますか、平均的な認識のもとに行政が行われてきたというのが実情であろうと存じます。
  90. 勝又武一

    ○勝又武一君 これはもう約十年前ですが、四十三年の五月の七日、参議院の社会労働委員会で、ここに会議録もございますが、当時の園田厚生大臣は次のように言っております。「やはり理論的な上に動物実験、人体実験、臨床実験を経て、万間違いのないという場合にこれははじめて許可すべきものであって、」云々と続くんです。そして、厚生省の責任を痛感しています、と。これはサリドマイド児にかかわる場合のことですが、この厚生大臣が答えている、厚生省の責任を痛感している、と、この四十三年五月七日の方針を踏襲しているならば、ずっと事態は違っていたというようにも思いますが、そういう点についての責任を痛感されていますか。
  91. 中野徹雄

    説明員(中野徹雄君) 先ほども申し上げましたように、昭和四十二年以降新薬の承認、許可についてはきわめて厳重な個々の手続を定めまして、ただいま先生の引用されました園田元大臣の御発言のような取り扱いになっております。で、それはもちろんその四十二年以前の取り扱いに対する反省の上に立つものでございまして、その点の責任の痛感ということは先生のおっしゃるとおりでございます。
  92. 勝又武一

    ○勝又武一君 本年四月二十六日、参議院の社会労働委員会で政府委員の方が次のように答えられております。これも途中を省きますが、「国が医薬品の製造承認に当たりましてきわめてずさんであったがためにそれを見落としてしまったというような場合には、」「民事上の責任ということは問われる可能性はある」と答えていらっしゃいます。そうしますと、この四十三年の園田厚生大臣の、責任を痛感しているという以前、つまり二十八年当時からキノホルムを製造承認をしたその時点等のことを考えますと、この四月二十六日の答弁に私が以上指摘したようなことは該当すると考えますが、いかがですか。
  93. 中野徹雄

    説明員(中野徹雄君) 民事責任云々ということに相なりますと、当然そこに民事責任を負うに足るだけの因果関係及びその予見可能性があって、ありながらといういわば過失問題が絡まってまいります。で、そのような意味におけるいわば不法行為責任が成立するかどうかということは別途の問題といたしまして、われわれといたしましては、行政あり方に対する反省と責任の痛感という意味で先ほどの御答弁をいたしたわけでございます。
  94. 勝又武一

    ○勝又武一君 それでは、行政あり方について二、三お伺いをいたします。  エマホルムを厚生省が許可された、先ほどの二十八年当時の厚生省の製薬課長の方は、——会社の名前を発表する必要はありませんが——現在どういう地位におられますか。
  95. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) ある製薬会社の常務取締役をしておられます。
  96. 勝又武一

    ○勝又武一君 そのある製薬会社、相当大きな某大製薬会社でありますが、常務取締役をされているその方が、厚生省から会社に行かれたときにはどういうポストにつかれましたか。
  97. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) 行かれたときのポストにつきましては、承知いたしておりません。
  98. 勝又武一

    ○勝又武一君 私は、開発部長になられたというように聞いておりますが、知らないと言えばそれ以上追及できませんが、観点を変えまして、製薬会社の開発部長というのはどういうお仕事をされる方ですか。
  99. 代田久米雄

    説明員代田久米雄君) まあ字のとおりでございまして、新しい医薬品の企画開発をする部門だと思います。
  100. 勝又武一

    ○勝又武一君 新しい薬ですから、新薬の担当ですね。そして、厚生省に新薬の許可を求めるという業務を担当するというように考えますが、間違いですか。
  101. 代田久米雄

    説明員代田久米雄君) まあ申請が開発部の担当かどうか知りませんけれども、いろいろ参考の資料をつくるべき立場にあるものかと思います。
  102. 勝又武一

    ○勝又武一君 厚生省課長以上の経験をされた方で、大製薬会社の取締役または重要な部長のポスト等についていらっしゃる方は何人ぐらいいらっしゃいますか。(「数えきれない」と呼ぶ者あり)
  103. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) 数を数えたことはございませんが、相当数おられると思います。
  104. 勝又武一

    ○勝又武一君 相当数あるというお答えですが、人事院の、二十七年から五十一年までの営利企業就職承認事例というのによりますと、わずか二名だけになっています。そこで、よく新聞社の皆さんがおっしゃられる天下り云々という場合には、人事院の承認を必要とする云々というのはこういう非常に少ない数になりますが、私の横でいま星の数ほどという雑音が出るくらい、大製薬会社の取締役あるいは重要なポストについている方が多いということは、厚生省と大製薬会社の癒着ぶりがみごとにあらわれていると考えますが、そういう点での反省はございませんか。
  105. 中野徹雄

    説明員(中野徹雄君) 先生のただいまおっしゃいましたような印象を持たれることもあるいは無理からぬ点があるかとも存じますが、御理解をいただきたい点は、実は最近の行政、たとえば先ほどから申し述べておりますように、非常に厳重な審査手続をとりまして、新薬の承認あるいは許可を行うというためには高度の専門的技術知識を持った方々にいわば役所の機構の中において活動していただかなければならないわけでございます。で、この種の問題、具体的にはこの薬の問題につきましては、当然専門の薬科大学あるいは総合大学の薬学部の御出身の方々にこれらの業務に当たっていただかなければならないということもまた事実でございます。で、実際問題といたしまして、この種のことは、現在の官庁では、たとえば建設土木関係でその種の専門技術、あるいはほかならぬ厚生省におきましても医療関係におきましては医学の専門家ということに相なるわけでございます。で、実際問題といたしまして、現在のような状況におきまして、役所を退職いたしまして再就職の道ということになりますと、やはり薬学系統の専門技術者は、再就職の道を求めるとすれば、その方面以外に実際問題としてはあり得ないわけでございます。で、その点の御理解を賜りたいと存じますと同時に、人事院の関係の手続は適正な手続を経て行われているということを申し添えておきたいと存じます。
  106. 勝又武一

    ○勝又武一君 この点も時間の関係で、最後に、この和解の問題について進行中ですが、お聞きをしたいと思います。  和解案提示についての所見という中で、「キノホルム剤は、」「安易に製造承認が与えられたものであって、」中略「厚生当局の関与の歴史は、」——厚生省ですね、「厚生当局の関与の歴史は、その有効性および安全性の確認につき何らかの措置をとったことの歴史ではなく、かえって何らの措置をもとらなかったことの歴史であるといっても、」決して「過言ではないであろう。」と言っていますが、この点についてどう思われますか。
  107. 中野徹雄

    説明員(中野徹雄君) この可部所見につきましての厚生省の態度は、基本的に、可部所見に述べられておるこの趣旨を踏まえまして、過去の行政の歴史に対して痛切な反省をするという立場でございます。可部所見における個々の具体的な御指摘について、個々に一々どうということについてはいろいろ意見もございますが、全体として可部所見の線に沿った反省を当然社会的に求められるべきもの、こういうふうに考えておるわけでございます。
  108. 勝又武一

    ○勝又武一君 和解案につきましては進行中でありますので、私もその内容云々を言うつもりはありません。ただ、この提示されている所見の全体をまとめた結論がここの部分にあるというように私は判断をいたします。  そこでお聞きをいたしたわけでありますが、もう一つ、国の責任なり企業の責任を、きわめて重大であるだけに、和解の場合の鑑定人の問題ですね、鑑定結果が出次第和解調書、こうなるわけですが、その鑑定人は、被告である厚生省、製薬三社、これが鑑定人を申請すると聞きますが、一般の社会常識からはとんでもないことだというように私は思うのです。AとBがけんかをして、ぶん殴られた方のAに対して、ぶん殴った方のBが鑑定人を申請する、こういうことは私の常識では——私というのは、私と同じ大多数の国民の社会的な常識からは、社会的にも公正と思われるもっと別の方法があるというように考えますが、この点はいかがですか。
  109. 新谷鐵郎

    説明員(新谷鐵郎君) スモン訴訟におきます鑑定の問題につきましては、訴訟上は鑑定の申し出というのは、原告も被告も両方ともできるわけでございまして、東京地裁の場合には原告の方から鑑定の申し出をされまして、それを裁判長が採択いたしまして鑑定が行われておるというのが東京地裁の第一、第二グループについての場合でございます。ただ、地方の裁判の中では、原告の方からは鑑定の申し出をされないというケースがあるわけでございます。で、国といたしましては、この問題を解決するためには、やはり専門家による客観的な鑑定ということだけはどうしても必要であるというふうに考えておりますので、原告の方からそういう鑑定の申し出がされないケースにつきましては、国といたしまして鑑定の申し立てをせざるを得ない。それを採択されるかどうか、それからまた、どういう方を最終的に鑑定人に選ばれるかどうかということにつきましては、あくまでそれぞれの裁判所の御判断ということになっておるわけでございます。
  110. 勝又武一

    ○勝又武一君 時間がありませんから、一つだけ最後に。小さい問題ですが、未提訴者です。私の手元の資料によりますと、地裁に訴訟を起こしている者が五十二年七月現在で三千七百七十八名、こういう資料がございますが、先ほど私言いましたように、厚生省調査では一万一千。社会的に言われている、推定二万から三万と言われているこの場合の未提訴者、これに対しての取り扱いといいましょうか、救済の方法といいますか、こういうことについては、厚生省はどういうようにお考えですか。
  111. 中野徹雄

    説明員(中野徹雄君) 先生御承知のとおりに、現在東京地裁ではいわば和解の手続が進行中でございます。それ以外の裁判所におきましては、現在訴訟そのものが進行中であるという状況でございます。いずれにいたしましても、いわゆる未提訴、訴外の方々取り扱いが、このスモン事件の決着——裁判も含みました決着が、まあいわば峠を越した段階では当然に出てくるというふうに判断をいたしております。したがいまして、それがどのような時期であるかということは、またどのような形で行われるか、訴外者の取り扱いが当然にその土俵に出てくるということは、もうわれわれとしても考えておるところでございますが、それがいついかなる形でということは、現在時点ではまだ申し上げられる時期ではございません。
  112. 勝又武一

    ○勝又武一君 スモンの関係で最後にお聞きをいたします。  私の知っている限りでは、スモン患者の本当の気持ちは金ではありません。本人たちは、金は使えないのであります。もとの姿に戻してくれというのがこのスモン患者の悲痛な叫びであり、訴えだと考えます。この点についてはどうお考えですか。
  113. 中野徹雄

    説明員(中野徹雄君) その点、患者の方々のそのようなお気持ちということは、まことに先生のおっしゃるとおりであろうかと存じます。そのためにもスモンの治療方法の研究開発と、こういうことについては厚生省としても今後鋭意努力をいたさねばならない、かように考えております。
  114. 勝又武一

    ○勝又武一君 今後鋭意努力をするというお答えでありますが、私はそういう言葉だけではなくて、現在の医学水準をもってすれば、両眼の失明、手足のしびれ、リハビリテーション等々、まだまだいま言っているようなお答えではなくて、本当にスモン患者の治療について抜本的な研究体制をぜひつくってもらいたい、このことを強く要望いたします。そうして、このことは、いまの日本の医学水準なり科学的水準を大動員すれば、私は決して不可能ではない。そのことはさっきから私が、二十八年当時から、ずいぶんお聞き苦しいでしょうけれども、厳しく追及をし、指摘をした気持ちはそこにあるわけです。過去を問うのではなくて、むしろこれからの研究体制を本気につくってもらいたいと、こういうように思いますがいかがですか。
  115. 中野徹雄

    説明員(中野徹雄君) 先生の御意見、まことに私としても同感でございます。  なお、申し添えますと、そのような患者の方々の御希望を受けまして、裁判所の仲介のもとにいわゆる恒久的対策というものもこの和解の中の一つの、何と申しますか、事項といたしまして検討が進められるということを申し添えておきたいと思います。
  116. 勝又武一

    ○勝又武一君 スモンに関しましては、非常に質問に対しまして不満足の状況もたくさんありますけれど、幾つかは明らかにしていただきました。きょうは時間の関係もありますのでこれで打ち切りたいと思います。薬事法の改正をしないで行政指導でやってきたというところに大きな問題があると考えます。いま局長からありました患者の抜本的な救済、あるいは薬事行政並びに薬事法の改正、あるいはまた和解問題の進展等に関連をしまして、次回さらにこの問題についてはお聞きをしたいというように考えます。  そこで最後に、瀬戸内海の赤潮の問題について二、三お伺いをいたします。  時間の関係もありまして、特に一昨日衆議院の公害等の特別委員会で相当細かく質疑がされているようにお聞きをいたしております。そこで、特に本日は水産庁の関係者方々にもおいでをいただきまして、申しわけないと思っておりますが、簡潔にお聞きをいたしますので、簡潔にお答えをいただきたいと思います。  まず第一に、衆議院でおやりになっていると思いますが、赤潮の発生の状況とそれによる被害額、簡潔で結構ですからお願いいたします。
  117. 伊賀原弥一郎

    説明員伊賀原弥一郎君) 簡潔に御説明をいたしたいと思います。  今回発生をいたしました赤潮の被害状況でございますが、八月下旬、具体的には二十七日のころだと思いますが、それから九月の上旬にかけまして播磨灘一帯で発生をいたしております。  で、赤潮を構成をいたしました構成子はホルネリアという属でございまして、それによります被害の額でございますが、関係県が香川、徳島、兵庫三県にまたがりまして、養殖ハマチの斃死をいたしました実数が三百三十一万五千尾、被害金額の総額が約三十一億円という状況になっております。
  118. 勝又武一

    ○勝又武一君 四十七年の教訓——大量の被害の発生、そして天災法の適用、こういうことがありましたが、これらの教訓をどのように有効に生かされてきましたか。排水規制はどのように行われてきたでありましょうか、お伺いいたします。
  119. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) 四十七年に大規模赤潮が発生をいたしまして七十一億という被害額を出したわけでございます。このような赤潮の大規模発生というのを契機にいたしまして、一番大きな問題といたしましては、与野党一致の議員立法によりまして、瀬戸内海環境保全臨時措置法、これが四十八年に制定をみたということでございます。で、この法律の中で、瀬戸内海の水質保全の面につきましては、産業系排水に係るCOD二分の一化という規定がございます。この規定に即しましてこれの達成のために努力をしてまいりました。三年後にその目標を達成するようにという規定でもございまして、各県とも協力をしていただきまして、三年たちました昨年の十一月時点においてその目標を達成をしておるというのが、これが一つの大きなことだと思います。  それから、赤潮対策というような面についての具体的な措置でございますが、この赤潮対策につきましては、水産庁が中心となりまして赤潮発生の情報交換の事業なりあるいは予察の事業、それから赤潮の防除、漁業被害対策というようなことについていろんな施策が講ぜられておるわけでございますが、環境庁といたしましても、赤潮発生の予察の開発研究や、こういう面につきまして、四十九年度以来取り組んでまいっております。  それからもう一つは、やはり赤潮が発生をいたします際の要因物質ということで、燐とか窒素とかいうものがあるということが言われておりますし、確かにこれは要因物質の一つであるということは否定できないわけでございます。したがいまして、こういう要因物質であります燐、窒素の収支挙動調査というような一種の現状把握のための基礎調査でございますが、そういうようなことをとり進めてまいってきておるということでございます。
  120. 勝又武一

    ○勝又武一君 今回は、被害額が少ないので天災法の適用はしないというようにお聞きをいたしておりますが、そうですか。
  121. 伊賀原弥一郎

    説明員伊賀原弥一郎君) 御質問ありましたとおり、天災融資法の発動はしないように考えております。
  122. 勝又武一

    ○勝又武一君 そうしますと、当面の具体的な特別措置をどのようにお考えですか。特に、現在緊急な漁民の救済についてはどのようにお考えになっていますか、お聞きをいたします。
  123. 伊賀原弥一郎

    説明員伊賀原弥一郎君) いま融資の関係についてという天災融資法のお話がございましたので、それに関連する面をお話しを申し上げたいと思います。  まず第一に、被害を受けました業者につきましては、当面すぐつなぎ資金等の必要が出てまいりますし、また、その後の救済と申しますよりは、再建等の資金の手当てが必要になってくる、そういう状況でございますけれども、水産庁といたしましては、まず赤潮関係につきましては、養殖関係につきましては漁業災害補償法によります養殖共済という制度がございます。これがございますので、これによります共済金の早期の支払いを、できるだけ早く被害額を確定いたしまして実施したいというぐあいに考えております。また、再建等の資金につきましては、既存の制度資金というのが幾つかございますので、これを積極的に活用することによって対応ができるというぐあいに考えております。  また、養殖業者につきましては、相当の借入金を借りているという実情にございますので、実は、借入金の返済期限の来ている場合にはこの手当てが問題になってくるという情勢もございますので、既存の借入金の償還条件のいわゆる緩和、償還をずらすだとか、それから償還の期限を延長するだとか、そういう問題が出てくるわけでございますが、この辺につきましては実情に応じて措置できるよう、関係の金融機関についてすでに指導をいたしておるところでございます。
  124. 勝又武一

    ○勝又武一君 赤潮の発生の原因はまだ完全に究明されていませんが、一日も早くこの解明を期待をいたします。  新聞等によりますと、この赤潮発生の原因の一つでありますヘドロの処理対策として、いわゆる粘土による方法というのが報道されておりますが、どのようにこの点についてお考えですか。これも時間がありませんので簡潔にお答えをいただきたい。
  125. 伊賀原弥一郎

    説明員伊賀原弥一郎君) 先生おっしゃいましたのは、いわゆる粘土まき事業というような形で通称言っている事業でございますが、これは昨年から事業と言いますか、研究の開発にかかった事業でございます。  理論の面を簡単に申し上げますと、いわゆる細かい粘土粒子につきましては、水中に散布をいたしますと、荷電しておりますので、表面上に有機物を付着をさせる、あるいはカルシウムのイオンとも関係いたしまして付着をさせると、そういう現象がございまして、それで全体的にフロック現象と言いますか、凝集しましてある程度かたまりが大きくなるという現象がございます。そうしまして沈でんをしていくという現象がございますが、これを利用いたしまして、うまくこの作用を水中で大規模に実施をさせる、そのことによりまして、下に落ちました粘土と有機物を含みました一つのかたまりというのがプランクトン、貝類だとかエビ類だとか、そういうものの重要なえさになっていくということがございます。こういうのをうまく全体的にシステムとしてやれるような方法を開発していくという内容でございます。
  126. 勝又武一

    ○勝又武一君 最後に長官にお伺いいたします。  先ほど御答弁がありましたように、議員立法による瀬戸内海環境保全臨時措置法によりまして、有機汚濁を四十七年度の二分の一にするという目標が達成をされたとか、瀬戸の海のCODに関し非常によくなった、こういうことが先般の瀬戸内海の船上会議で報告がされております。そのとおりだと思うんですが、皮肉にもこの船上会議から数日後に今回の赤潮は発生したわけであります。こういう事態を長官としてどのように考えられているのか、あるいは今後どのようにお考えになられるのか、長官としての見解を最後に承りたい。
  127. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) いま局長お答えしましたような幾つかの措置で、臨時措置法ができました時点に比べれば、幾ばく瀬戸内海の水質が改善されたことは確かだと思いますけれども、これによって問題が理想的な解決を見たなどと毛頭思っておりません。たまたまあのとき高松から船上会談を終えて帰ります飛行機の上から、屋島の上を通りましたら、赤潮がすでに見えておりまして、局長とあれを指して話をしながら、どうも非常に危惧を抱いて帰ってきた、その危惧が適中したわけでございますけれども、跡継ぎ法あるいは水質汚濁防止法等に改正を加えまして、総量規制なりあるいは先ほども局長が申しましたが、処理技術というものが一応実用可能な燐などについては積極的な対処をすることで、瀬戸内海に限らず、水質の非常に汚濁しております閉鎖水域あるいはその他の水域に対する処置を講じたいと思っております。
  128. 勝又武一

    ○勝又武一君 時間の関係で終わります。
  129. 小平芳平

    ○小平芳平君 先ほどの環境影響評価制度法制化についてでありますが、いろんな点で詳しく質疑答弁がございましたが、どうもよくわからない点を一、二お聞きしておきたいと思います。  まず、建設省と通産省から先ほどどういう答弁をなさったか、改めて答弁していただきたい。
  130. 左近友三郎

    説明員左近友三郎君) 通産省といたしましては、各種の開発行為が環境に及ぼす影響を事前に十分に調査予測するとともに、これを評価いたしまして、必要な対策を講ずる、いわゆる環境アセスメントにつきましては、その必要性を十分認識しておるつもりでございます。  昭和四十年以来、産業公害総合事前調査というものを実施いたしまして、大規模工場、事業場が集中しようとしております地域における公害発生を未然に防止するということで努力をしてきたわけでもございます。しかしながら、この環境影響評価というものを法律的に制度化するということにつきましては、この調査、予測あるいは評価方法がまだ未確立な分野もございます。したがいまして、どのような技術的な検討をしていくかということについていろいろ環境庁の御意見もお聞きいたしておりましたし、また、われわれの立場といたしましては、そういうこともございますので、当面、行政運用を通じまして環境影響評価を実施して、それが定着するということをまず第一にやっていったらどうかという意見を申し上げておったわけでございます。現在も環境庁と御連絡をとりながら検討を進めていきたいというふうに考えております。
  131. 小平芳平

    ○小平芳平君 通産省が、昭和四十年ころから、そういう事前評価と称して風洞実験その他各地のコンビナート建設のときにやっていたことは、私もよく承知いたしております。しかし、結果は効果がなかったということでしょう。公害は大したことはない、環境汚染は大したことないということで、次々とコンビナートの建設が進められ、結果は、日本列島が公害列島になったと言われるような結果になったということ。したがって、通産省のいままでやってきたことで十分であったと、いまさら環境庁が事前評価制度を持ち出すまでもなく、通産省がやってきたからこれで通産省はやっていけるんだということは、全く通らない論議だと思いませんか。
  132. 左近友三郎

    説明員左近友三郎君) 私の御説明の仕方が足りませんで、あるいは誤解を招いたかもしれませんけれども、私どもは決して通産省がやってきたものが絶対完全であって、それで公害が完全に防止し得たというふうに申し上げたわけではございませんで、通産省もそういう環境影響評価の重要性を考えて、その時点からいろいろ勉強をしてやってまいりましたと、ただし、これがまだまだ十分でないということはわれわれも認めておりますが、その一つに、やはり環境影響調査をし予測をし、それから評価をする基準について、まだ技術的な確立していない点がいろいろあります。したがって、そこをもう少し固めていくというのが必要ではないかということを申し上げておるわけでございまして、決して通産省がやっていることで十分で、それについてそれ以上環境庁がやる必要はないとか、そういうふうなことを申しているわけではございませんで、環境庁中心になっておやりになるについて、そういう点をどのようにやっていくのであろうかということを申し上げておるということでございます。
  133. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、通産省はそれ、どこでどういうふうに決めるのですか、そういう態度は。要するに、評価の技術が確立されてないからそれまでは行政指導でやっていくんだという、そういう方針が変わらない限り、環境庁と事務折衝したところで話し合いがつく可能性は全くないじゃないですか。
  134. 左近友三郎

    説明員左近友三郎君) 評価の予測なり評価の基準につきまして、技術的にはっきりしておるものと、それからなかなか客観的な基準がはっきりしないものというものが分かれるわけでございますが、それぞれについて評価をする場合に、適切に判断をするということが必要でございまして、決して客観的に技術的に決まっておらないものを全然無視するということではございません。ただし、それはそのものとして考えなきゃいけないということでございますので、それを法制化する場合にどのようにしてはっきりさせるのかという点がわれわれの疑問点なのでございます。
  135. 小平芳平

    ○小平芳平君 では、いまの点について環境庁はいかがですか。
  136. 信澤清

    説明員信澤清君) いま立地公害局長からお話しございましたように、環境影響評価をいたします場合に、多分に未確定の分野があるということはこれは否定できない事実である。しかし、すべて確定しなければそういう制度は動かないのかという点になりますと、私どもは通産省とは別の見解を持っているわけでございます。  そこで、いま局長は決してその制度化に反対しているのではないということをおっしゃっておられるわけでございますから、いま私ども考えておりますようなことについて、私どもは私どもなりの経験もございますし、たまたま私どもの局が当面の折衝の窓口になっておりますけれども、この問題は環境庁全体にわたる問題でございます。したがいまして、大気保全局、水質保全局、自然保護局、まあ官房はもちろんでございますが、そういうところの技術関係の諸君を動員いたしまして、そうして通産省の御心配になっている点についてできるだけその御理解を得るような、そういう努力をただいまいたしているわけでございます。
  137. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで見通しはいかがですか。
  138. 信澤清

    説明員信澤清君) いずれにいたしましても、調整中ということでございますので、私としては何とか御理解を得るように努力をしていると、この段階ではこれで御了承いただきたいと思います。
  139. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、建設省はちょっと席を外されておられますが、都市計画法との調整というふうな表現だけをしておられましたが、都市計画法との調整ならこれは十分可能じゃないですか。
  140. 信澤清

    説明員信澤清君) 先ほど、建設省の計画課長がいま先生お話しのようなことを申し上げたように私も記憶いたしております。事実、またそれが問題の一つであったわけでございます。  お話しのように、既存の法律との調整というのは、これはどんな新しい法律をつくる場合にも必要なことでございます。そういう事務のすり合わせをすると、私どもの言葉でそう申しておりますが、それはそれなりにやっていく必要があるわけでございますが、問題は、そういう事務のすり合わせをいたしました結果、都市計画法のようないわゆる総合立法でございますから、総合立法の中に環境庁考えているようなものを全部織り込むと、それで対応したいというのが建設省の御意見だったというふうに、私、当時聞いておるわけでございます。現在もそのようなお考えのようでございます。したがって、そういうふうな同じシステム、法律的なシステムでございますれば、調整の結果、都市計画法の中でやりたいという建設省のお考えもこれは一理あると思います。しかし、半面私どもの法律は、いわば各法律を通ずる通則的な事項を決めると、こういうたてまえのものでもございますから、それに乗っていただくという調整も可能だというふうにも思うわけでございまして、これはある意味では事務的に調整をし、最後別々の法律で、同じ内容ではございますが、それぞれ別の法律で処理するかどうかということは、いわば一つ政治的な決断の問題になろうかというふうに考えております。
  141. 小平芳平

    ○小平芳平君 石原長官、第八十国会に臨むについての所信表明で、先ほど御指摘があったんですが、この環境影響評価制度法制化について第一に掲げておられたわけでありますが、こういうようなことでおくれているという事実ですね、次の国会に臨む場合に、また所信表明をやる場合、また同じことを、第一に環境影響評価制度でありますと言うわけにもなかなかいかない——いくかいかないかわかりませんけれども、どんなふうにお考えですか。
  142. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 事態はますますこういう立法を必要としておりますので、八十国会ではなかなかいろいろ障害がございまして成立を見ませんでしたが、次の通常国会では、だれがその時点で環境庁を主管しておるか知りませんけれども環境庁が抱えておる問題にとっては、やはり一番重要な、最優先順位を持つべき問題と私は心得ます。
  143. 小平芳平

    ○小平芳平君 建設省の方ですね、先ほど評価制度についての御意見を述べられたときに、都市計画法との調整だというふうにおっしゃっていましたが、都市計画法との調整それだけなら十分話し合いがつくんじゃないですかということをお尋ねしたんです。
  144. 大富宏

    説明員(大富宏君) 先ほども答弁いたしましたとおり、環境アセスメントの制度の確立については、建設省もむしろぜひこれは必要な制度だという理解に立っております。ただ、中身につきましては、環境アセスメント法の一番中心になりますところの環境評価の指針を有効なものにされたいということと、既存の制度、特に都市計画法との調整をぜひお願いしたい、この二点が問題であって、調整未了ということに終わったわけでございますが、いま先生御指摘のとおり、私ども建設省といたしましても、この二つの問題については十分環境庁と相談し合えるものだと思っております。
  145. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、国の制度がおくれているところから、地方で大分準備中のところもあるようですが、それらの点についてはどうお考えですか。
  146. 信澤清

    説明員信澤清君) お話しのように、すでに川崎市は条例化をいたしておるわけでございます。その他、条例まで至っておりませんが、たとえば要綱を定めるとか指導指針を定めるというような形で指導されている団体が六団体ございます。さらに検討中の団体がたくさんあることはいま御指摘のとおりでございます。いずれにいたしましても、国の法令と条例との関係につきましては、先生御案内のように、自治法で、法令に違反しない限り条例を定めることができるということになっておるわけでございます。そこで、そういうような準備を進めておられる団体のいろいろな考え方は、それぞれの地方の特殊性がございますから、違っておりますが、一様に申しておりますのは、やはり国の制度を早く決めてほしいと、そしてそれを補完しあるいは地方の特性に応ずるように条例をつくりたいんだと、で、早くやってくれと、こういうことでございますので、そういう問題も含めて、私どもとしては早く制度化の内容というものを明らかにし、条例とのそごを来さぬようにいたしたいと、このように考えております。
  147. 小平芳平

    ○小平芳平君 通産省、それから建設省の方も、いまのこうした地方公共団体からの要請その他の情勢をよくわきまえて推進していただきたいと思います。で、この問題、これで終わります。  次に、私は水道の問題について少し質問したいのですが、環境庁長官に最後にお尋ねするようになりますが、その前といたしまして、岐阜県の高山市で水道を引いた、その水源地に大変な広大な廃鉱があるということ、こういうことでは市民は安心して水道の水を飲めないという反対運動が起きた等々のことは、私が社会労働委員会でも公害対策特別委員会でも何回となく問題提起してまいりました。で、きょうの第一の質問は、ことしの七月十九日に富山大学の斉藤節教授が発表したところの分析結果についてであります。これはきのう各関係省に差し上げてありますからお持ちと思いますが、これで見ますと、一市民の電気温水器の修理のついでのときに、この電気温水器にたまった沈でん物と水をそれぞれ分析をしたということ。その結果は、水道法の基準を大きくオーバーしている、実際電気温水器の中に入っていた水はそういう基準を大きくオーバーしている結果になったということ、これについてどう考えますか。
  148. 国川建二

    説明員(国川建二君) ただいま先生御指摘になりました点につきましては、その市民の方から当然申し出がございまして、直ちに県の方でもう一度再試験を行ったわけでございます。で、その結果を簡単に申し上げますならば、この電気温水器に入る水といいますのは、これは市の上水道の水でございます。温水器を通過して出る水、その両方の水につきまして、通常の使用状態における水質検査を行いました結果は、水道法で定める飲料水の水質基準に合致しているという結果が得られたので、その旨申し出のあった方にも御通知し、また地元でも発表されたわけでございます。  で、最初にお話にございました沈でん物と水という点につきましては、これは当該市民の方が水をとられて大学にお持ちになったデータでございます。したがって、どういう状態のどろと水かということはしっかり確認はできませんけれども、多分どろといいますのは、電気温水器の底にあります排水弁といいますかバルブといいますか、そこをあけましてとった水ではないか——水といいますか、沈でん物まざりの水の分析結果ではないかというように想像いたしておりますが、通常の状態で温水器を通しております水につきましては飲料水の水質基準に合致している、飲料適の水が供給されているというように考えた次第でございます。
  149. 小平芳平

    ○小平芳平君 電気温水器というのは、大きなタンクに水を入れて夜間の電熱を利用してお湯を沸かしておくというわけで、ドラムかん二本分くらいの大きなタンクですから、そこへ常時お湯が入っているわけですが、ところが、県のこの発表によりますと、そういう常時入っていた水を分析したんじゃないわけです。前の日に全部水を抜いてしまって、それで一晩入れておいたものを分析して、さあ何ともないですよと、こう言っているんです。しかし、そんな使い方をしている温水器はないんです。温水器というのは大きなタンクですから、一日で全部使ってしまって、一晩入れておいてまた明くる日全部使ってしまうというような、そんな構造になってないんですよね。そういう点で、県の方はただ安全だと言わんがためにやったみたいにしか思えませんが、どうですか。
  150. 国川建二

    説明員(国川建二君) お答えいたします。  どういう状態で電気温水器が使われているか、あるいは家によっては違うかもわかりませんけれども一、一般的に使われておりますのは、いわゆる水道のパイプと直結した状態になっておると承知しております。したがって、電気温水器という場合、まあいろんな容量、大きさがございますけれども、通常家庭用のものでございましたら、大体三百五、六十リットルから四百五、六十リットルの規模のものだと思いますけれども、そのタンクはいわゆる圧力室になっているわけでございまして、まあたとえて申しますと、その部分だけはパイプが非常に大きくなっているというような状態の構造でございます。したがいまして、温水器に入ります水は当然底を通過して使われますので、一般的な容量は大体一世帯の一日の半分から、まあ一日分はないんじゃないかと思いますけれども、そういう、常にその水は貫流している、底を通過しているという状態で使われている。したがいまして、そのタンクの中に数日あるいは数十日も水が滞留するわけじゃございませんので、まあどういう試験法といいますか、採水のときの詳しいことは私もちょっと承知いたしておりませんけれども、まあ二十四時間滞留するものとしての試験、あるいは半日程度滞留するものとしての試験でほぼ実態をあらわしているんじゃないかというように考えます。
  151. 小平芳平

    ○小平芳平君 電気温水器は、四百リッターくらいの大きな入れ物で、逐次お湯を使う、使うとまた入るようになっている。しかし、底までは抜いているんじゃないわけです、底まで。この底へたまったものが問題だということからこの問題が起きてきたわけです。ですから、ただ底へたまっていくという、要するにこういうように各種分析をするほど沈でん物がたまっていたわけですから、そういうことを無視して、ただこの温水器へ一晩入っていたお湯ですよといって分析しても、それだけで安心だと言えないじゃないかと言っているんです。
  152. 国川建二

    説明員(国川建二君) まあ水道の水、これはもう先生よく御承知のように、いわゆる完全な純粋な水ではございませんので、水質基準値以下の浮遊物と申しますか、若干の物質は含まれているわけでございます。で、通常の状態、つまり通常の水の流れの状態では沈でんしない——その中の物がですね、水中に溶解している物が——状態のものでありましても、相当大きな容量のタンクというものを通過することになりますと、大変恐縮でございますが、大変流速が遅くなる。したがいまして、場合によりましては加温されるという状態もございますので、溶解性の物質、もちろん基準値以下でございますが、そういう物が析出されて、それでそのタンクの中で沈でんという事態が出てくるということは、これはまあ物理的にも避けられない事態かと思います。御承知のように、タンクの底の方にはそういう沈でん物がある程度たまることを予想した構造になっておりまして、そのたまりました物は、年に一回とか二回底のバルブをあけましてそのたまった物は出すような使用方法が、まあ通常販売される場合に指導されているわけでございます。  まあそれはそれといたしまして、そういう状態のタンクの中の水ではございますけれども、そのタンクの使用によりまして新たに汚染と申しますか、というような事態は生じないわけでございますので、そこを通過してくる水が、そこを通過して出てきます水質低下の水そのものが、常時水質基準に合致しているという状態であれば、これは飲料水として差し支えないのではないかというように考えられるわけでございます。そういう意味で、今回もこれを契機にいたしまして、岐阜県におきましては市内で七カ所くらいでございましょうか、場合によりましては沈でん物がとれないようなケースもあったそうでございますが、それはまあ使用状態によって違うと思いますけれども、そういう状態で検査いたしましたわけでございますが、いずれも水につきましては基準に合致していたという結果が得られたというような状況にあると承知しております。
  153. 小平芳平

    ○小平芳平君 確かに水は流れるものですから、きょうはかっていい場合もあれば、あしたはかって悪い場合もあれば、いろいろあるわけです。ただ、この七月十九日の斎藤教授の発表によりますと、銅が八・〇五ppmという、それは多少は天然にあることは十分承知しておりますが、明らかにこうして水質基準をオーバーしているということ、それから鉛が〇・五八ppm、カドミウムが〇・〇二四ppmというふうな状態があったということ、これはひとつ重要な課題なんだというふうに認識をしておいていただきたいわけです。  で、私たちとしましても、ただ一回の検査ではどうかと思いましたので、八月四日に五カ所で採水をして、今度は分析機関を変えて、岡山大学の小林研究室で分析をしてもらったのはお手元にあると思います。大体は確かに基準内に入っておりますが、本町鍛冶橋というところで亜鉛が三・七七ppmというようなものが検出されているということ。   〔委員長退席、理事粕谷照美君着席〕 で、ここは観光地でありますから、山も水も美しいという、こういう看板がありまして、そこで出てくる水がこういうように基準を超している水であったという皮肉な結果が出ているということ。ですから、とにかく廃鉱を一遍ごらんになると、これで安全だと言うことはなかなかむずかしいものだなということを感ずるのは当然なんです。広大な廃鉱ですから。そこから水が噴き出してくる、色のついた水が噴き出してくるわけですから、そういう点、もう少し市民が安心して水が飲めるような方策を考えなくちゃならないじゃないですか。
  154. 国川建二

    説明員(国川建二君) 御指摘のお話、以前にも先生からいろいろお話がございました。高山市の水道事業をどういうぐあいに進めるのか、あるいはその水源選定に当たっての心構えと申しますか、そういうことにつきましても先生から御指摘を以前得たわけでございますが、当該地域の実情から申し上げますと、御承知のように、宮川水系と小八賀川水系しか、この水源として依存すると申しますか、量的に確保できないという問題がございます。そういたしまして、現状では小八賀川水系に依存する水量も大変多いわけでございます。まあ水道事業としての、水質ももちろんでございますけれども水量、両方兼ねた計画を進める、事業を進めるという上に当たりまして、特に私ども注意しておりますのは、水質の管理の問題でございます。したがいまして、かねてから岐阜県を通じまして高山市の水道の水質管理については念には念を入れて行うようにという指導を特別にいたしておりまして、かなり厳格に——かなりと申しますと恐縮でございますが、非常に厳格に定期的な水質検査を行いまして、さらには原水が著しく汚濁された、汚濁といいますか、降雨などで濁度が上がったような場合には取水を控えるというような操作も行っているわけでございます。確かに先生のいまのお話の中で一カ所、本町の部分につきまして亜鉛が非常に多いじゃないかというお話でございます。まあ一回だけの検査ですべてがOKと、あるいは沈でん物の問題はどうかということにつきまして、最終的な、これで終わりということをいたしているわけではございません。とりあえず行いました調査ではこういう状態でございまして、一般的には問題はないんではないかということが言えるかと思いますけれども、残る問題といたしまして、たとえばそういう使用資器材の材質等の点に問題はなかったのかどうか、引き続き私どもも関心を持ちまして、この問題全体について市民の方に不安がないように、あるいは実際問題として心配のないように、必要な指導等を行ってまいりたいというふうに思っております。
  155. 小平芳平

    ○小平芳平君 何の材質ですか。問題がなかったかどうか。材質に何かの問題がなかったかどうか。
  156. 国川建二

    説明員(国川建二君) 本町の件につきまして、これだけが他の地域に比較しまして亜鉛が大変に多いということで、これは先生から伺った資料でございます。したがいまして、そういうところにつきましては再検査するとか、原因を究明する必要があるんではないかというように思う次第でございます。
  157. 小平芳平

    ○小平芳平君 この問題が、電気温水器の沈でん物と水を分析の結果、こういうふうな結果が出たという段階で、温水器そのものに問題があるんじゃないかということを大分言われたわけですが、これについては通産省はどう考えていますか。   〔理事粕谷照美君退席、委員長着席〕
  158. 中村守孝

    説明員(中村守孝君) お答えいたします。  電気温水器につきましては、御案内のように、電気用品取締法で電気用品としての対象になっておりますが、電気用品取締法の対象としております「危険又は障害」というのは主として電気的原因によるものでございます。ただ、実際に電気用品を取り締まっている関係上、ただそれだけでなくてできるだけ多くの障害を防止しようということで、食物、飲料水に接する部分の材質につきましては、電気を通電することによって危険なものが溶出しないようにという基準を設けて、実際に新しい製品が出てまいりましたときには、私どもの方の関係の試験機関で試験をいたしまして検討しておるわけでございますが、本件の温水器につきましては、一般の水道法の適用を受けているいわゆる給水装置の一つでございまして、そちらの方で材質的ないろいろな問題もございます。そういったところに使われているものと格別違ったものを使っているわけでもございませんので、本件について型式承認する段階では、特に材質について問題とはいたしておりません。で、その普及の段階において、昭和四十四年ごろ、この温水器の中でそういうようなことがあかどうかということで試験をした例がございます。これは名古屋市の衛生研究所でしたデータでございまして、八十五度Cの温度に十五時間保ちまして、入り口に入った水とその後出た水との間で差がないのか、そして、出る水の水質がいわゆる水道法に定められました基準に合致しているものかどうかという検査をした段階においては、何ら水質基準に違反するようなことはないというデータも得られておりますし、今回事件が発生いたしましてから厚生省の方でお調べいただいた結果でも、温水器を通過する過程において、出口で、入り口の水よりもさらに濃度が濃縮した形で出るというような結果は得られておりませんので、温水器自身の中でそういうものが発生したというぐあいには私ども考えておりません。ただ、この問題につきましては、まず水道法の問題もございますし、いろいろいま厚生省の方でも御検討のことでもございます。いろいろそういった結果が出てきて、私どもの方の電気用品取締法の方でいろいろ規制を必要とするようなことが出てまいれば、それを受けて規制してまいりたいと思っておりますが、現在のところの状況では、温水器の中で新たなそういう重金属が発生して外側に危険を与えるというぐあいには了解しておりません。
  159. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、県がその後発表しましたところの、沈でん物の中に大量の重金属があったということ、これについては厚生省、どういうふうに報告を受けておりますか。
  160. 国川建二

    説明員(国川建二君) お尋ねの電気温水器の中の沈でん物のものだと思いますが、県の発表にありましたように、全体で七検体、市内の温水器を無差別に抽出して七検体やったわけでございます。その中では、沈でん物だけをとりましてやりますと、場合によりましては亜鉛が二万七〇〇〇ppm、あるいは鉄が四万一〇〇〇ppmというようなものがその沈でん物、沈積物の中にはあったわけでございます。で、大変高い数値のように伺うわけでございますが、先ほども申し上げましたように、そのタンクの中で水が加温されるわけでございます。そういったことから、溶解性のものが溶解されて浮遊状態になりましてタンクの中で沈でんしたものというように考えているわけでございます。
  161. 小平芳平

    ○小平芳平君 最初に私が申し上げたところの富山大学の斉藤先生の分析では、沈でん物でも銅で三四・六とか鉛で二九・〇ppm程度の結果が出ていたわけでありますが、今度は県の方でやったこの分析の結果を見ますと、沈でん物の中で亜鉛が二万七〇〇〇ppm、鉄が四万一〇〇〇ppm。それで、これから製錬してもいいくらいのものが含まれているんですね。そのほか砒素、銅、マンガン、カドミウムというふうな発表がありますが、こういう沈でん物が温水器の中にたまっている。そういう水を飲んでいて安全だと、その水は基準内だからいいんだということで安心できますか、本当に。
  162. 国川建二

    説明員(国川建二君) お答えいたします。  今回、検体といたしまして県が採取したのは七検体でございますが、市内の十一カ所の電気温水器使用世帯を当たりまして、で、その使用状態がそれぞれの家によりましてかなり違うわけでございます。しかし、大体に申しまして、四十六、七年ごろ設置されたものがほとんど大部分でございますが、その使用状況はどうかと申しますと、半分以上の方がその後沈でん物を除くような措置はしておられないというような管理状況であったかと思います。したがいまして、相当年月、まあ四、五年でございましょうか、の間のものが沈積していたということでございます。  で、私ども、電気温水器を利用することの結果、水質に悪影響を及ぼすというようなことがあれば、これはきわめて重要な問題だということに思わざるを得ません。しかしながら、これは今後とも、いままでの調査が不十分だということであれば、さらに引き続きやっていく必要もあろうかと思いますけれども、現在までの判断といたしましては、規格制定時にも、先ほどお話しございましたように、二十四時間八十度ないし八十五度くらいですかに加温した状態の水質で検査するという規格で物を考え、さらには使用状態に置きまして水質自体に影響が出ていないということならば、判断といたしましては、そういう状態の水が得られるということならば差し支えないんではないかというように考えているわけでございます。  で、ただ沈積物につきましては、いろんなケースがあると思いますけれども、長期間放置しておりますと、どうしても相当量沈でん物が出てくるのは避けられないことでございますので、できるだけその管理、まあ使用する方におきまして、年に一回とかあるいは二回程度でいいんではないかと思いますけれども、そういう沈でん物を捨てるという操作を使用者の方にお願いできれば大変結構だと、まあ使用者の方でそういうことを十分御存じなければ、そういったことをひとつ承知の上使用していただくというようなことでよろしいんではないかというように考えております。
  163. 小平芳平

    ○小平芳平君 環境庁でもヘドロが水質にどう影響するかということ、そういう沈でん物と水質との関係は、環境庁ではどういうふうに判断しておられるんですか。
  164. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) ヘドロと水質との関係ということでございますが、現在、たとえば廃棄物処理法等によりまして有害物質の判定基準等を環境庁において決めてございます。その際の考え方といたしましては、これは溶出試験等によりまして判定基準を決めてございます。たとえば、水銀であれば〇・〇〇五ppm以下というようなことで、溶出試験においてこういう判定基準を決めておるわけでございます。といいますのは、一つは、その廃棄物そのものに水銀が相当含有されておる、含有されておるけれどもそれがどのぐらい溶け出すか、この溶け出すということによって環境を汚染することになるわけでございますから、環境をどの程度汚染するか。そのためには水銀であれば〇・〇〇五ppm以下でないといかぬということで、溶出試験をやりまして、それでもって判定基準を決めておるわけでございます。したがいまして、ヘドロそのものには相当ある重金属が含有されておりましても、溶出が余りなければそう環境を汚染しない、こういうことでございます。ですから、重金属の種類によりまして、同じ鉄でも非常に溶解性の高い鉄もございますし、なかなか溶けづらい鉄もあるわけでございます。ですから、含有量試験をやりますと鉄分というのがたくさんあるということがあるわけでございますが、それが非常に溶解性の高いものかそうでないかによって違うわけですから、むしろ溶出するその試験によって基準を決めておる、こういうことでございます。
  165. 小平芳平

    ○小平芳平君 環境庁は、もう公害国会と言われたあの国会の段階で、水についての環境基準はあるけれどもそうしたヘドロその他沈でん物についての基準はないということ。しかしそれは、基準の決めようがないが判断基準とでもいうべきものを検討しますと、こういうふうに言ったのがもう七年くらい前のことですが、それはどうなったんですか。
  166. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) ただいまヘドロと水との関係ということなので、まあ廃棄物処理法によります判定基準の例を引いて申し上げたわけですが、ヘドロそのものについての除去基準といいますものにつきましては、これは中公審にも諮問し、答申をいただきまして、暫定除去基準ということでございますが、一応決めてございます。たとえば、水銀、こういうものにつきましては、一応河川の場合が二五。それから海域の場合はやや、方程式になっておりますので海域ごとに違います。たとえば、今回除去事業に着手しようとしております水俣湾につきましては、二五ppm以上のヘドロはこれは除くべきである、こういうことで、水銀及びPCBにつきましてはこれは有害物質でございますので、暫定除去基準を決めまして、ヘドロの除去対策を進めておると、こういう状況でございます。
  167. 小平芳平

    ○小平芳平君 いやそれで、そういう除去基準を決めているが、こうしたように水道の水の沈でん物がこういうように何万ppmなんというのがあっても、これは差し支えないものかどうか。
  168. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) ですから、先ほどもお答え申し上げましたように、何万ppmあるという場合におきましても、それがどのぐらい溶け出すのかということでございまして、そこの水そのものが水道法によります水質基準というものに合致しておれば問題はないのではないかと。これは先ほど厚生省の部長さんが答弁されたとおりでございます。
  169. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうすると、結論は、何万ppmあろうと、しかも毎日使っている温水器の底にこういう何万ppmというような重金属がたまっているけれども、そのとき調べた水が基準内だから安心して飲めと言う以外にないんですか。
  170. 国川建二

    説明員(国川建二君) 先ほど申し上げましたので十分言葉が足りなかった点があろうかと思うんですが、先ほども説明いたしましたように、今回のケースを契機としまして調べましたのは、十一カ所について調べました。先ほど申し上げましたように、おおむね四十六、七年ごろにつくられたものが大部分でありまして、今日までの間排泥、要するにどろを排除するような操作を行ったかどうかの調査もあわせていたしたわけでございますが、そういうことを年に一、二回やっていますと答えられた方は、十一世帯のうち四世帯でございまして、ほかの世帯は、どうもそういうことも、まあ御存じないといいますか、そのまま使っておられるというような状態もございました。  で、いま先生お話しのことにつきましては、いろいろな詳しいデータその他がございませんので、端的に申しまして何万ppmあってもいいのかというようなお話になったかと思いますけれども、やはり温水器の中には当然沈でん物が出てくるわけでございますから、やはりこれは少なくとも年に一回とかあるいは年に二回とかいうような状況で排泥、沈でん物を排除していただくように使用方法の表示等がしてあるというように聞いております。できるだけそういうものは使用する方にもそういった点を御承知願って頻繁に排除していただくことが大変好ましいと思いますので、そういったことを関係の方にもお願いしたいというように思います。  ただ、結果といたしまして、たまたま今回そうでございますけれども、相当長期間掃除されていないタンクの水でありましても、そこを経過する水そのものについては水質基準に不適合になるような状態ではなかったという事実を申し上げているだけでございますので、今後とも使用上の管理、まあ注意と申しますか、そういったことは御留意いただいた方がよろしいんじゃないかというように考えている次第でございます。
  171. 小平芳平

    ○小平芳平君 どうもそうなると、何か市民が掃除しない方が悪いみたいで、水道には全く問題がない、水源も問題がないみたいな言い方になっておりますけれども、とにかく温水器が大分普及しているんですが、せっせと掃除しなさいと言うだけで、あとは、こんな四万とか二万とかppmというような重金属が温水器にたまっているんだと、しかし飲む水は心配ないぞと言うだけで、どうもそういう行政やり方でいいんでしょうか。環境庁長官、どうですか、溶け出しさえしなきゃいいんだと、環境庁はそういうことだと、さっきから説明しておられますが。
  172. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) 環境庁といたしまして、先ほどからお答え申し上げておりますのは、廃棄物を捨てたりあるいは有害重金属を含んだ、高濃度に含んだヘドロ、こういうものの際に環境を汚染する——一般的にですね、環境を汚染をすることをどう防止していくかということで、先ほど来廃棄物処理法によります判定基準はどうやってやっておるか、あるいはそういうヘドロを除去するための除去基準をどうやって決めているかということを御説明申し上げたわけでございます。  で、問題は、水道法によりまして人間が飲む水、この水につきましては、水道法によりまして水道事業者が水質検査をやらなくてはならぬということになっておりますが、この面はまさに厚生省が所管をいたしておるものでございます。しかも、これはまさに人間が飲む水でございますから、環境汚染という話じゃなくてこの温水器での話でございますので、私が申し上げていますのは、一般の環境を汚染する問題については環境庁として非常にこれは問題でございますので、環境庁の方でヘドロと水の関係でどういうふうにやっているということについて一般的に申し上げたわけでございます。
  173. 小平芳平

    ○小平芳平君 それはよくわかりますが、この沈でん物と水との関係です。それは溶け出さなければいいんだということだけで、しかも水道の関係では、ただ蛇口から出る水が基準内だからそれでいいんだということしか言わないものですから、それでもう少しそうした沈でん物と水との関係を調べるところがないのかということを言っているわけなんです。それは環境の問題と飲む水の問題と二つあります。二つありますが、沈でん物がどんなに高濃度であっても、実際水が基準内だからいいんだというその一点張りでは安心できないじゃないかと。どうですか、水道部長。
  174. 国川建二

    説明員(国川建二君) 一般の廃棄物のようなヘドロというような状態でなくて、水道の中のいわゆる溶解性物質の沈でん濃度が高い場合の水質に与える影響という問題であろうかと思います。もちろんこれは一般的に申し上げまして水質に与える影響、いわゆる溶出度の問題であろうかと思いますが、この点につきましては、まだ化学的にと申しますか、十分わかっていない点がたくさんございます。そういう点におきましては、いわゆる一般的な問題として今後の検討が必要な課題であろうというように思います。  ただ、行政上と申しますか、当面の問題といたしまして、沈でん物が何万ppmもあるという状態での水は飲めるのかという端的な問題提起といたしましては、沈でん物で溶出の問題がどの程度あるか、実際にはほとんど溶出しないんじゃないかというような感じがいたしますけれども、これは確かめていないわけでございますから申し上げられないと思いますけれども、そういう状態での通常の使用状態におきましては、今回相当重金属が多い場合につきましても、水質については温水器の前後で変化がほとんどないという形で、十分に水質基準の許容値以下のレベルで担保されているという状態が確認されたわけでございますので、御心配は要らないという判断を当面いたしているわけです。  先生のおっしゃるようないわゆる沈でん物と水との融出関係の問題、これは今後の課題であろうというように私ども思っております。
  175. 小平芳平

    ○小平芳平君 それじゃ今後の課題として残すとしまして、できるならそういう何万ppm、しかも重金属がたまらないようなそういう設計の方がよろしいと思いますが、どうです。——水源を。
  176. 国川建二

    説明員(国川建二君) 先生いまおっしゃいましたのは、温水器じゃなくて水源の問題に戻ったわけでございます。先ほどもお話し申しましたように、一般的な話で大変恐縮でございますが、水源であります河川、湖沼等一般的に申しまして、雨が降ったり洪水があったりというようなときには、えてして濁度にいたしましても五百度、六百度あるいは千度というような大変濁りました水を、水道の場合原水にせざるを得ないわけでございます。そういった場合でも、必要な凝集沈でんあるいはろ過というような浄水処理過程におきまして、水質基準に十分合致するだけの水質を得るように運転操作いたしているわけでございます。したがいまして、これは高山の問題でございますけれども、私は、似たような問題が他のところにおきましても電気温水器を使用している場合の沈でん物というものはあり得る話だと思うわけでございます。そういった意味では、いわゆる水道の水源はできるだけ上質の水源を選定するということは、これは水道の計画の上から原則でございますし当然でございますけれども、水道の水源といたしまして水質的には不適当であると、水源として使用できない状態にまで汚染されているとかあるいは悪化しているというような水源ではないと、必要な浄水操作を加えれば水道水として利用可能な水源であるというように私どもも判断いたしておるわけでございますが、今後とも水質の管理、特に高山市につきましては十分な上にも念を入れてきちんとした管理を引き続き行っていくように指導してまいりたいと思います。
  177. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 委員長、ちょっと政府委員に資料を配付したいと思います。
  178. 片岡勝治

    委員長片岡勝治君) どうぞ。
  179. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、限られた時間ですので端的にお伺いをしていきたいと思います。  まず、お伺いをいたしたいと思っておりますのは、本年の一月に環境庁保健部がまとめられましたこの「複合大気汚染健康影響調査 調査の概要及び主要調査結果のまとめ」ですか、これが一月に発表されましたが、その後国会内でもしばしば論議を呼んでおりますし、また環境庁も、その後こういった結果に基づいての行政方針が次々ととられているように思うわけでございます。その際に、国会論議等を通じて明らかになっておりますのは、このまとめでは四十九年度を除いて統計上有意の相関が得られなかったということを前提にして、一つは、公害健康被害補償法の対象とはしないというふうなことだとか、あるいは窒素酸化物の環境基準の見直しをことしの三月には諮問を行われたとか、また窒素酸化物の第三次規制が約六カ月もおくれて七月に決められましたけれども、それが当初の方針より緩められるというふうな形で行政が進められてきたのでございます。ところが、一方国民の側から見ますと、公害患者というのはふえる一方でございますし、死亡者もふえておるのでございます。そういう中では、窒素酸化物の規制強化を望む声というのは、国民の中ではいよいよ強まっておるのでございます。こういう中でこの一つのまとめというものが前提になりまして、窒素酸化物の規制の緩和だとか行政の後退、そういうことが起こってくるということになりますと、国民の健康と生活環境を守る上では非常に事は重大でございます。そこで、この点について環境庁見解をきょうはただしたいと思うのでございます。  最初にお聞きをしたいと思うのですけれども環境庁は、岡山県衛生部が行っております「大気汚染健康影響調査」、このデータは御存じになっておられますか。
  180. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) 私どもの方にも報告の写しが参っております。まだ私つぶさに読んでおりませんけれども、文書としてはちょうだいしております。
  181. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 参っておりますけれども、結果はよく見てないということですね。  それじゃ、ちょっとかいつまんで申し上げますが、その内容というのは、このデータというのは、岡山県が環境庁方式によって昭和四十九年度夏及び冬、それから五十年度夏に実施した県下十二地域、四千二百十八名の呼吸器症状有症率調査とこの調査地区を代表すると考えられる大気汚染測定個所のデータとから、各大気汚染物質濃度と呼吸器症状有症率との相関関係を解析したものでありますと、こういうふうに書かれております。解析の結果は、こういうふうに書かれているんですが、幾つかの点に分けて書かれておりますが、その最初の二つを言いますと、一は、「持続性せきとたん訂正有症率と各汚染物質の濃度または量との間には、今回解析したNO2、NOr、SO2及び浮遊粒子状物質のすべてについて順相関が認められた。」それから二は、「なかでもNO2濃度との間には高い相関関係が認められた。」というふうに述べられておるのでございます。で、その「NO2の濃度との間には高い相関関係が認められた。」というところでは、これは詳しく記載をされておりますが、時間の都合がありますから余り詳しく言いませんからよくごらんいただいたらいいと思いますが、「危険率五%ですべて統計学的に有意の相関を示した。」ということが述べられております。  で、その「結論」といたしまして、「疫学的な解析の結果、NO2による大気汚染と呼吸器症状との関係について、統計的に有意な関係が認められた。」ということが第一点です。で、第二点には、「このことは、N02の暴露が呼吸器に悪影響を与えるという多くの実験的研究の成績と符合するものであり、NOxに係る大気汚染を早急に改善すべきであることを示唆するものとして注目する必要があると判断されるので、当面NO2の年平均濃度を〇・〇一八−〇・〇二〇ppm以下に維持するため、諸施策の推進を図る必要があると考えられる。」と、こういうふうに書かれておるのでございます。それは御承知ですか。
  182. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) いま先生のおっしゃる詳細なコメントのところは私まだ拝見しておりません。
  183. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 大変重要な調査なので、地方での調査資料でもこれは当然環境庁としては御検討になる必要があったであろうと思うんですね。きのうやおとといできた資料ではありませんのでね。  で、まあそういうふうに非常にはっきりとNO2と有症率の関係というのが相関関係が認められたと、有意の相関関係が認められたということが明確にされております。  そこで、岡山県の解析結果はこういうふうに明確な結果が出ておる。で、先ほど申し上げた環境庁の「複合大気汚染健康影響調査」の解析ですね。これについては、これは中にも記載をされておりますし、たびたび御答弁になっておられるのを拝見をいたしましても、昭和四十九年を除いて統計学的に有意でなかったというふうにお述べになっておられるようですが、これはそうなんですね。私はちょっと奇異に感じるんですけど。岡山での調査は有意な相関関係が認められ、環境庁調査と解析は大部分有意の相関が認められないというのはちょっとおかしいなと。この対応関係はどういうふうにごらんになっておるかということをちょっと聞きたかったんですけれども、岡山のを見てないと言うから、知らぬと言うからこれはしようがないんですけれども、非常に不思議だと思うんです。私がこれは要約して申し上げましたが、そのとおりなんですがね、記述している岡山県の調査資料と解析の結果というのは。そういうこととあわせて考えますと、環境庁、これの対応関係ですね、環境庁の方の解析は相関関係が大部分認められない、向こうは全部認められたと、これどない思いますか。
  184. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) 専門の先生に事細かい医学的な話をするのはちょっと僣越でございますけれども、御承知のように、呼吸器有症率調査というのは大変技術的なむずかしい点を持っておるわけでございまして、特に私の方で発表いたしました複合大気汚染の調査と申しますのは、報告書をお読みいただけばわかりますように、三十歳以上の女子と六十歳以上の男子というぐあいに限定された集団を特に抽出しているわけでございますけれども、これには一つ理由がございまして、日本の場合、特に男子の場合に喫煙率が大変高いわけでございまして、過去のいろいろな硫黄酸化物の場合のBMRCの調査等を見ましても、男子の喫煙率というのは大体七〇%ぐらいあるわけでございますが、それに対しまして女子の喫煙率は低いというようなことがございますので、女子をねらったというような点がございます。  岡山県の報告書につきまして、実はまだ私つぶさに勉強しておりませんで大変申しわけないのでございますけれども、ちょっと拝見いたしますと、これは男と女と一緒にしている調査であるという点、それに一つの違いがございます。そのほかいろいろ職業的なバックグラウンド——窒素酸化物と申しますのは一般環境大気の中からも呼吸いたしますが、そのほかに職業的な面で、あるいはまたいろいろな面で他の影響からも多量に濃度の高いものを吸うという人もあるわけでございまして、その辺の問題をきちっと仕分けた調査でないとお互いに評価がし得ないという点があるのではないだろうか、こう思うわけでございまして、その点につきましては、ひとつ岡山県の調査と私ども調査との問題点をつぶさに拾ってみたいと思いますが、そういった点、BMRCの調査というのは大変むずかしい調査と言われておりまして、そういう意味ではいろいろな点の問題点を消去しながら結果の解析に当たらなければならない、こんな点があろうかと思います。
  185. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 よく読んでないのに妙なことをおっしゃるんですけれども、若干おっしゃった点はありますがね。しかし、私先ほど要約して申し上げたように、岡山県のデータというのは、「環境庁方式により」と書いてあるんですよ。そう記述していますよ。ですから、これは読んでないのにああだこうだと違いを言うというのはこれはふらちな話ですね。これは後御検討いただきたいと思います。私は、そういうことが一つあるということですね、問題として。  それからもう一つは、環境庁のこの「複合大気汚染健康影響調査」の解析を拝見いたしますと、昭和四十五年から四十九年まで単年度ごとの汚染物質濃度と有症率との相関を分析するという解析方法をとっているんです。私は統計学者でも専門家でもありませんので、統計学的な論争をしようとは思っていないんですが、やり方がそういうやり方をおとりになっておられるんですが、なぜこの場合に、このデータですね、これは六地域の単年度ごとの汚染と有症率の相関をとるということだけを、解析をおとりなさったのか、これちょっと聞きたいんです。
  186. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) 統計的な解析というのも、これまたいろいろとむずかしい点があるわけでございまして、御承知のように、相関関係あるいはいろいろな統計的な手法を見る場合には、その調査にどのくらいの客体を使ったかというようなことから、客体数からある程度制約があろうかと思います。  いま一つは、統計的な解析におきましてもいろいろな手法があるわけでございますが、この複合大気汚染調査におきましては比較的ポピュラーといいますか、カイ自乗テスト並びにTテストというようなものを導入しておりますと同時に、単相関のいわゆる検定というものを主体にしておるわけでございます。まあ重相関というふうなものに対する検討の仕方等々いろいろございますけれども、実はこの五年間の調査の経緯をながめてみますと、必ずしもデータ的に方法論がきちっと一致していない部分が若干あるというようなことの前提を認めつつ、四十五年と四十九年の間の相関を見るというようなこともやっておるわけでございますが、比較的単純な見方といたしましての単年度ごとの単相関というのを主体にしてみるというのが、この解析に当たりましての専門の先生方の御検討の御意見からそういった方法を導入したわけでございます。
  187. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私、統計の専門家ではないのですけれども、せっかく五年間も疫学調査をやって、やっぱり一定の金と膨大な労力を使って出てきたこの調査というのは私は貴重だと思うんですよね。そういう重要な、大事な、貴重な資料をもとにして、やはりいま部長も言われたように、統計学的な解析方法というのはいろいろあると、それをどうして一種類だけ使ったのかなというのが、ちょっと私幾ら素人でも合点がいかぬわけです、実はね。  だから、何でそのことが気になるかというと、環境庁のおとりになったやり方というのは、これは単年度ごとにやっておられるでしょう。そうすると、統計学的に言うたら、これもこの資料を拝見したらよくわかるんだけれども、六地点だから、解析するときに六つの点、あるいは富田林保健所の調査の欠落している部分のときには、わずか五つの客体ですね。五つの標本というようなものが対象になっているわけでしょう。だから、これは相関法を用いるという場合には、これはもう標本数が少ないという場合には本当に意味がなくなるんだというのは大体統計学の常識だとされておるわけですね。で、それをどうしてこんなにわざわざわずかに六点という形のものしか使わないんだろうか。で、今度皆さんの方で調査をされた原データ、この原票をもとにいたしましてどういう解析ができるかということを素人の私が考えても、環境庁がおやりになったような単年度ごとのやり方、あるいは単年度ごとではなくて総合的——一地区ごとに全年度というやり方をするという考え方もできますね。それからもう一つは、経年的な調査というものを生かしていくという立場からいって、これは全地域、全年度を総合的な解析をするという考え方というのはできると思うんですね。そうしますと、環境庁のおとりになったのでは大体標本数が六つないし五つ。で、二番目に言うたやり方をするということになれば、これは五年調査をしているけれども、四十六年度の調査は欠落してますね。ですから四つしかないんですね。四つの対象では、これはもう相関を求めるということは不可能でしょう。だからまずこれは採用するに当たらない。そうすれば全地域、全年度、総合的な解析方法ということが当然とられるべきではないかということで、私の方でそのことをやってみたわけです。これは環境庁がおやりになっておるのかおらないのか知りませんよ。で、やってみた。そうしますと、環境庁がおまとめになった結果と全然違う結果が出てきておる。ですから、全年度、全地域について総合解析をするべきだという結論しか残らないので、それをやってみた。そうしますと、四年間−五年間の調査なんですけれども、四十六年度というのは欠落してますからね。暦年では四年なんですね。それで六地域だから対象は二十四になるわけですけれども、富田林の二つを除いてますから二十二を対象にしているんですよ。それで相関を求めてみたんです。それをお手元へ資料としてお渡ししたのがそれなんですね。  で、そうして相関を求めてみますと、NOxの汚染濃度と呼吸器の有症率とはすべて統計学的に有意の相関を示すということが明らかになった。これはお手元へ渡した資料の初めから三枚目を見てください。第三表というのがございますね。それを見ていただきますと、解析方法はいま申し上げた全年度、全地域総合解析です。このやり方でやりますと、「三十歳以上女子の持続性のせきとたんの有症率」この項をごらんいただきますと、NOでは危険率一%を見て有意なんです。それから同じくNO2、これは危険率五%で有意です。それからNOxでは危険率一%で有意です。で、「六十歳以上男子の持続性のせきとたんの有症率」は、NOでは危険率一%で有意、NO2では危険率五%で有意、それからNOxでは一%の危険率で有意と、こういうことが出てきているわけです。ですから、疫学的な解析の結果というのは、これは非常にはっきりしていると思うんですね、解析の結果。ですから、いま申し上げたとおりなんですね。  もう一つこの総合解析のやり方をやってみましてはっきりしましたのは、いわゆる今度の疫学調査、五年間の六地域の疫学調査の総合解析の結果はっきりしましたのは、NO2の環境基準が〇・〇二ppmということが全くきれいに再確認できるようなのが解析結果として認められるわけです。  ちょっとこれお手元の資料をごらんください。終わりから三枚目です。第三図。これで見てみますと、「NO2汚染濃度と三十歳以上女子の持続性せきとたんの有症率との相関」という三図ですね。この相関図を見ますと、自然有症率三%のところで線を引いて、それの対応する汚染濃度を見てみますと〇・〇二〇七ppm、つまり環境基準〇・〇二ppmとまさにぴったりというかっこうになってきているわけでございます。  で、こういう解析の結果、結論として私はこう思うんですね。この解析の結果の意味することはきわめて重要だと思うんですね。せっかく調査をした資料でどうしてきちんとおやりにならないのかなというふうに思うんです。すなわち窒素酸化物は閉塞性呼吸器疾患の原因物質であることが疫学的にこれはもう明確ですよ。しかも、いま後段で申し上げたようにNO2環境基準が〇・〇二ppmか、またはそれにごく近い数値であるということがこの解析では再確認をされているわけです。しかも、これらの諸結果というのは、従来から明らかにされております動物実験データときわめてよく符合するものになっています。  そこで、私はお聞きをしたいんですけれども、特に長官にお聞きしたいと思うんです。これはいわゆる統計学論議をやろうという気はないんですよ、たまたまこうなったと。そこで、長官にお聞きをしたいのは、きわめて事は重大だと、で、せっかく五年間もしかも六地域でおやりになったデータを使って、たった一つの解析方法だけをやって、そうしてそれの結論に基づいて行政方針が次次と手が打たれた、これは非常に大事なことだ。で、環境庁のこのせっかくの労作の同じデータを使いまして環境庁の解析方法をとると、いわゆる単年度ごと六地域の解析方法ですね。これを用いますと、一部有意で大部分は有意な結果が出なかった、相関が認められなかった。ところが、全地域全年度総合解析の方法をとりますと、先ほど御説明を申し上げたように統計学的に有意な相関というのが全部認められるというふうに、同じデータを使って全く反対の結論が出てくる、これは一体なぜか、それをどう思いますか。——長官じゃなくていいですよ。
  188. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) いまの先生のお尋ねでございますが、実は統計の利用のいたし方といたしまして、数値が出てくる段階のことを非常に大事にしてこの報告書は実は書かれているように私は思うわけであります。と申しますのは、環境汚染の酸化物、硫黄酸化物、浮遊粉じん等のデータにつきましても、五年間のそれぞれの地域に通じまして、必ずしもそのデータのとり方につきましての整合性がきちっと一致していないという点、あるいはまた年度を異にいたした汚染の度合いと有症率の関係との相関というものにつきましても、いろいろな条件、たとえばサンプル数が必ずしも十分でないとか、そういったようなことが検討の段階でいろいろ議論された上で、したがって、この報告書におきましてはいわゆるオーソドックスといいますか、標準的な解析にとどめた発表をしているというように理解しているわけでございます。  この調査につきましての学問的、専門的な見地からのより詳しい解析、こういった評価につきましては、研究班の先生方にも現在お願いしているわけでございまして、まあ出てまいりました数字を単純に二十二のデータを一つに、等質であるというぐあいにして比べるところに若干問題があるんじゃないかというような点が私現在想起されるわけでございますが、先生の御指摘の点等も含めまして、ひとつ専門の先生方にも相談を申し上げて御意見を聞いてみたい、かように思うわけでございます。
  189. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは、もう一遍小委員会の先生方にも相談してとおっしゃっておられるので、学者の方々もその一方法の解析で足れりとお考えになっておられる方はまずなかろうと私は信頼していますよ。だから特に申し上げた。  で、これは統計学論議をする気はないんですけれども、やっぱり何で単年度しかやらなかったのかということはどうしてもひっかかるんですわ。というのは、私、統計学的な専門家ではないけれども、もう統計学の常識だと言われているように、サンプル数が少なければ少ないほど相関係数はいわゆる正に遠ざかると、だからサンプル数が少なければ意味がないんだとさえも言われているんですよね。常識的なんです、これは。だから、私は二十二のサンプルが——私もやりました総合的な、全年度、全地域の総合した二十二サンプルというのが絶対かといったら、それは絶対だとは言えないです。しかし、六サンプルよりも二十二サンプルの方が精度が高いのはもう違いない。そのことだけは断言できる。もし、単年度ごとの相関をどうしても求めたいというんなら、これは調査をやり直す必要がありますよ。少なくとも六地点じゃ無理よ。その辺のことは、私は政治ではなくてむしろ小委員会の学者の先生方、専門家の方方はもう重々御承知のはずだと思います。だから、その点では非常にやっぱり環境庁としては心してもらわなければならない。  なぜこの問題を特に申し上げるかといいますと、一つはその問題が、サンプル数等の関係あるいは解析のやり方が、幾つかの角度から検討されるというやり方というのが十分やられていないという点ではこれは問題だと思うのと、もう一つは、統計学のこれも常識のようですけれども、誤差の問題ということで、専門家によりますと非常にこの点は統計学の適用については留意をする必要があるということが言われている。というのは、統計学の中での誤差の問題は、「あわて者の誤差」というのと「ぼんやり者の誤差」というのがあるんだそうです。「あわて者の誤差」というのは、これはいわゆる有意でない数値が出ているのに有意だとあわてて対処する、取り上げるという誤りであり、誤差である。「ぼんやり者の誤差」というのは、これは有意な相関があるのにこれをぼんやりと見過ごしてしまうという誤りである。こういう二種類の誤差について、これは特に留意する必要があるのだということは、これは統計学上の常識だそうです。特に私は、物を買ったり売ったり、あるいは買い損ねて「ぼんやり者の誤差」を、誤りを犯したというのとはわけが違いまして、事環境庁が主管しておられる。大気汚染のように国民の健康にかかわる重要課題、こういう課題についての統計学の適用で、もしも「ぼんやり者の誤差」、これを犯して見逃すということがあったら、それはもう行政責任としてはまず許されない、そういう重大な問題だと思うんです。ところが、私は非常に心配をしておりますのは、従来国会等の論議の中で長官あるいは大気保全局長あるいは保健部長等のお言葉がいろいろと御答弁の中に出ておりますけれども、この解析のデータを用いて、四十九年度だけは相関するけれども全年度は相関しない、有意な数値が出ないから企業を説得することはむずかしいとか、あるいは窒素酸化物の規制に時間稼ぎができるだとか、あるいは健康被害補償の対象にはしないだとかということが次々発言もされ、行政としても手が打たれている。きわめて重要だと思う。したがって、私は特に問題にしたいと思いますのは、いわゆる統計学の機械的な適用というのは厳に戒めなきゃならない。こういうものを、誤差が——これは私だけの意見じゃないですよ。これは統計学者の、あるいは専門家の検討にたえれものです。だから、そういう専門家から言えばすぐに意見の出てくるような、こういういわば不十分なデータで政治行政の方針というものの指針にするというようなことをしてはならないと思う。  そこで、非常に重要な問題だと思いますので長官に御見解を伺いたいと思いますが、私がいま指摘を申し上げた点、これは統計学の適用について私が申し上げた点では完全に違うんですからね。NO2との関係というのは相関関係で有意な結果が出ているんですからね。ですから再検討が必要ではないかというふうに思いますが、その点について御見解を聞きたい。——長官に聞きたい。
  190. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 私がお答えします前に政府委員から何か答えることがありますそうで、その後お答えさせていただきます。よろしゅうございますか。
  191. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 はい。
  192. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) 先生御指摘のように、確かに統計には「あわて者の誤差」と「ぼんやり者の誤差」というのがある本に書いてあるのを私も読んだ記憶がございます。私ども統計資料を行政に使う上ではいずれも犯してはならない問題点だと思っておりますし、そういう意味では、この調査は、解析に当たりましては、現時点でいわゆる一般的に了解される方法論によって解析されたと、こういうぐあいに私は見ておるわけでございます。  それから、先ほど先生が御指摘ございました、六サンプルの比較より二十二サンプルの比較という方が精度が高いんではないかと。確かに一般論的にはそのとおりでございますが、私ども、この単年度ごとの六サンプルと全体の二十二サンプルとには、必ずしも、いろいろな面で、バック的なデータのとり方に問題点があるということで、こういう検討の結果で解析がされたと、こういうふうに私は思うわけでございます。  以上二点を先につけ加えさしていただきます。
  193. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ちょっと長官待ってください。  いまの御答弁だからちょっと言うておきますけれども、それじゃ単年度ごとの解析だけをやったんじゃなくて、総合解析も環境庁おやりになったんですか。私は非常に善意に考えているんですよ。もしやっていたら、窒素酸化物と呼吸器の有症率と相関関係が明確に出るという方を隠して、あるいは、企業だとか鉄鋼関係あたりから盛んに窒素酸化物の規制を緩めるために環境基準まで変えろといってこの国会でもやられましたわな、何回も。そういうことと符牒を合わすようなかっこうで有意な数値の出ない計算方法をとったんかということになりますよ。その点どっちなんですか。
  194. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) この御指摘の計算につきましては、環境庁でもこの検討の段階でいたしたようでございます。——いたしたようでございますというのは、私実は当時在任しておりませんので若干不確かな答弁で恐縮でございますが、その中で、単年度ごとの大気汚染及び有症率の調査が独立して一致していない以上、この計算というのが科学的ではないと、そういう意味で除外されたと、こういうぐあいに言われておるわけでございます。
  195. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃ、やったんだけれども相関関係のない方をとったと。で、不十分だということになれば、この調査は、こんな統計学的な解析をする目的で、初めから調査目的、調査方法、対象というようなことを決めてないんですよ。その点では、単年度の解析だってこの材料は非常に不十分です。不十分な材料しかないものの中でこの材料をどういうふうに有効に使うかという立場での解析が必要ではないのかと。対処が必要ではないのかと。そこで、少しでも補強のできるやり方ということで総合解析が必要ではないかと。それ以外にないじゃないですか。五点や六点のサンプルで有意な関係があったやなかったや言うて、そんなものどこまで信憑性があるんです。それがしかも行政方針の根拠になっていくんだからたまったものじゃないんですよ。そのことを申し上げている。  そういう点なんで、長官にお聞きをしたいのは、こういう問題を提起しているんですし、学者の中でもそういう点は指摘が出ています。だから、当然私は再検討してしかるべきだと思いますが、長官どうですか。
  196. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) ただいま環境庁が出しております指針の基盤になるデータについて、いままでの解析を含めまして、すべてで事足りているとは私たちも心得ておりません。でございますから、できるだけ新しい知見を求めて、それを徹底的に分析検討をして、それによってより科学性を得るならば、必然的に指針も変わってくる場合があるとも思います。ですから、やはりいま沓脱先生がお出しになりましたこの一つのデータ、別の解析法によりますそのデータ、ただその解析法について環境庁がすでに検討してどういう結論を出したかということはつまびらかにいたしませんが、いずれにしましても、それが新しい視点から行われたデータであるならば、これを徹底的に検討することはやぶさかでございませんし、またそのために時間を少しいただきたいと思います。
  197. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、当然これは十分再検討してしかるべきだというふうに思うんです。  これは私余分なことだから言いたくないと思っているんですけれども、恐らく小委員会の先生方だってもうみんな思っておられるに違いないんです。いろんな角度で検討されているに違いないと思いますよ。私はそういうふうに信頼していますよ。これは科学の端くれをさわっておる者として当然考えるべき常識なんです。  で、もう時間もありませんので最後に。私は、厳に慎まなければならないと思いますのは、統計の機械的な適用による報告を根拠にしましてそれが行政の指針になっていくというふうなことというのは、これはやっぱりよくないと思うんですわ。その点を改めて、たとえば統計学的に適用していく場合でも、すべての角度から十分な検討がなされてその検討にたえ得るような扱い方をしませんと、軽率に統計の機械的な適用というふうなことによって出てきた報告、それが行政の指針になるというようなやり方というのはこれは慎んでもらわなければならぬと、今後ますます重大になってくると思うんです、こういう点で。私は、いま指摘しましたように、少なくとも総合解析によりますと、明確に窒素酸化物と有症率との相関関係というのは認められるので、これは御検討の上で、やっぱり明確な根拠に基づいて行政というのを進めてもらうということにしてもらわなきゃならぬ。私のいまの解析によりますと、これはもう当然いわゆる窒素酸化物と呼吸器疾患有症率との疫学的な相関関係というのは明らかになったんですから、だから窒素酸化物は直ちに公害健康被害補償法の対象物に入れるべきだ、そうして指定地域の拡大も直ちにやるべきだということですよ。  それからもう一つは、時間かせぎなどというようなことを言わぬで、こういうふうに明確な相関関係が出た以上は、財界やあるいは鉄鋼関係あたりからいろいろと圧力があり公然と干渉があっているようですけれども、そういうものは抑えて、明確に国民の健康と生活環境を守るために窒素酸化物の規制を強力に進めるべきだ、許すべきではない、進めるべきだというふうに思うんです。さらに、窒素酸化物の環境基準の見直しについては、先ほども申し上げたように総合解析では実にどんぴしゃりですから、これは見直しを法律に基づいてやっているといってお答えになっておりますが、もう根拠が非常に明確なんで、いまの〇・〇二ppm、これは緩和などということは許されるべきではないというふうに思うんですが、これは、長官、最後にこういう問題提起の上に立って御見解をお伺いしたいと思います。
  198. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) たびたび委員会でもお答えしておりますが、基準値を上下させる、そういう既定の、何と言いましょうか、方針を決めて委員会に諮問をしたり検討願ったりあるいはこちらでデータの分析をしているわけで決してございませんで、まあ科学的というたてまえでございますから、いまのところ、調査の技術そのものも非常に未完備なままにこういう調査をしまして、それをそれなりに分析したわけでございまして、それにのっとっての指針でございますが、なお、すでに行いましたデータそのものの分析の仕方、解析の仕方というものに異論があり、その可能性があるなら、これは当然検討すべきだと思います。  ただ、おっしゃいました複年度の形での解析というものを環境庁がしたのかしなかったのか、その結果どうであったかということは、私は聞いておりませんので、それはすぐに聞き取りまして、していないならそういう形で解析もし直し、その知見をあわせてこれからの指針を決め、規制すべきものは規制する、しなくていいものはしないという形で行っていきたいと思っております。
  199. 片岡勝治

    委員長片岡勝治君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後一時五十二分散会