○沓脱タケ子君 私、統計の専門家ではないのですけれ
ども、せっかく五年間も疫学
調査をやって、やっぱり一定の金と膨大な労力を使って出てきたこの
調査というのは私は貴重だと思うんですよね。そういう重要な、大事な、貴重な資料をもとにして、やはりいま部長も言われたように、統計学的な解析
方法というのはいろいろあると、それをどうして一種類だけ使ったのかなというのが、ちょっと私幾ら素人でも合点がいかぬわけです、実はね。
だから、何でそのことが気になるかというと、
環境庁のおとりになった
やり方というのは、これは単年度ごとにやっておられるでしょう。そうすると、統計学的に言うたら、これもこの資料を拝見したらよくわかるんだけれ
ども、六地点だから、解析するときに六つの点、あるいは富田林保健所の
調査の欠落している部分のときには、わずか五つの客体ですね。五つの標本というようなものが対象になっているわけでしょう。だから、これは相関法を用いるという場合には、これはもう標本数が少ないという場合には本当に
意味がなくなるんだというのは大体統計学の常識だとされておるわけですね。で、それをどうしてこんなにわざわざわずかに六点という形のものしか使わないんだろうか。で、今度皆さんの方で
調査をされた原データ、この原票をもとにいたしましてどういう解析ができるかということを素人の私が
考えても、
環境庁がおやりになったような単年度ごとの
やり方、あるいは単年度ごとではなくて総合的——一地区ごとに全年度という
やり方をするという
考え方もできますね。それからもう
一つは、経年的な
調査というものを生かしていくという
立場からいって、これは全地域、全年度を総合的な解析をするという
考え方というのはできると思うんですね。そうしますと、
環境庁のおとりになったのでは大体標本数が六つないし五つ。で、二番目に言うた
やり方をするということになれば、これは五年
調査をしているけれ
ども、四十六年度の
調査は欠落してますね。ですから四つしかないんですね。四つの対象では、これはもう相関を求めるということは不可能でしょう。だからまずこれは採用するに当たらない。そうすれば全地域、全年度、総合的な解析
方法ということが当然とられるべきではないかということで、私の方でそのことをやってみたわけです。これは
環境庁がおやりになっておるのかおらないのか知りませんよ。で、やってみた。そうしますと、
環境庁がおまとめになった結果と全然違う結果が出てきておる。ですから、全年度、全地域について総合解析をするべきだという結論しか残らないので、それをやってみた。そうしますと、四年間−五年間の
調査なんですけれ
ども、四十六年度というのは欠落してますからね。暦年では四年なんですね。それで六地域だから対象は二十四になるわけですけれ
ども、富田林の二つを除いてますから二十二を対象にしているんですよ。それで相関を求めてみたんです。それをお手元へ資料としてお渡ししたのがそれなんですね。
で、そうして相関を求めてみますと、NOxの汚染濃度と呼吸器の有症率とはすべて統計学的に有意の相関を示すということが明らかになった。これはお手元へ渡した資料の初めから三枚目を見てください。第三表というのがございますね。それを見ていただきますと、解析
方法はいま申し上げた全年度、全地域総合解析です。この
やり方でやりますと、「三十歳以上女子の持続性のせきとたんの有症率」この項をごらんいただきますと、NOでは危険率一%を見て有意なんです。それから同じくNO2、これは危険率五%で有意です。それからNOxでは危険率一%で有意です。で、「六十歳以上男子の持続性のせきとたんの有症率」は、NOでは危険率一%で有意、NO2では危険率五%で有意、それからNOxでは一%の危険率で有意と、こういうことが出てきているわけです。ですから、疫学的な解析の結果というのは、これは非常にはっきりしていると思うんですね、解析の結果。ですから、いま申し上げたとおりなんですね。
もう
一つこの総合解析の
やり方をやってみましてはっきりしましたのは、いわゆる今度の疫学
調査、五年間の六地域の疫学
調査の総合解析の結果はっきりしましたのは、NO2の環境基準が〇・〇二ppmということが全くきれいに再確認できるようなのが解析結果として認められるわけです。
ちょっとこれお手元の資料をごらんください。終わりから三枚目です。第三図。これで見てみますと、「NO2汚染濃度と三十歳以上女子の持続性せきとたんの有症率との相関」という三図ですね。この相関図を見ますと、自然有症率三%のところで線を引いて、それの対応する汚染濃度を見てみますと〇・〇二〇七ppm、つまり環境基準〇・〇二ppmとまさにぴったりというかっこうになってきているわけでございます。
で、こういう解析の結果、結論として私はこう思うんですね。この解析の結果の
意味することはきわめて重要だと思うんですね。せっかく
調査をした資料でどうしてきちんとおやりにならないのかなというふうに思うんです。すなわち窒素酸化物は閉塞性呼吸器疾患の原因物質であることが疫学的にこれはもう明確ですよ。しかも、いま後段で申し上げたようにNO2環境基準が〇・〇二ppmか、またはそれにごく近い数値であるということがこの解析では再確認をされているわけです。しかも、これらの諸結果というのは、従来から明らかにされております動物実験データときわめてよく符合するものになっています。
そこで、私はお聞きをしたいんですけれ
ども、特に
長官にお聞きしたいと思うんです。これはいわゆる統計学論議をやろうという気はないんですよ、たまたまこうなったと。そこで、
長官にお聞きをしたいのは、きわめて事は重大だと、で、せっかく五年間もしかも六地域でおやりになったデータを使って、たった
一つの解析
方法だけをやって、そうしてそれの結論に基づいて
行政方針が次次と手が打たれた、これは非常に大事なことだ。で、
環境庁のこのせっかくの労作の同じデータを使いまして
環境庁の解析
方法をとると、いわゆる単年度ごと六地域の解析
方法ですね。これを用いますと、一部有意で大部分は有意な結果が出なかった、相関が認められなかった。ところが、全地域全年度総合解析の
方法をとりますと、先ほど御
説明を申し上げたように統計学的に有意な相関というのが全部認められるというふうに、同じデータを使って全く反対の結論が出てくる、これは一体なぜか、それをどう思いますか。——
長官じゃなくていいですよ。