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1977-08-01 第81回国会 衆議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年八月一日(月曜日)     —————————————  議事日程 第三号   昭和五十二年八月一日     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ————————————— ○本日の会議に付した案件  国務大臣演説に対する質疑     午後一時四分開議
  2. 保利茂

    議長保利茂君) これより会議を開きます。      ————◇—————  国務大臣演説に対する質疑
  3. 保利茂

    議長保利茂君) これより国務大臣演説に対する質疑に入ります。安井吉典君。     〔安井吉典登壇
  4. 安井吉典

    安井吉典君 私は、日本社会党を代表し、福田総理所信表明に対し、当面の緊急な課題について、もっぱら総理に質問いたしたいと思います。  今度の参議院議員通常選挙において、わが党は、残念ながら保革逆転政治目標を達成することはできませんでしたが、政治変革を願う国民期待や多くの批判を冷厳に受けとめ、新しい前進を期しているところであります。  さて、一昨日の総理所信表明は、国民に何を訴え、国民要求にどうこたえるか、熱意も意欲もない通り一遍のあいさつにすぎず、国民に信を問うて闘われた参院選直後の国会演説とも思えない空虚なものであったことを、私はきわめて遺憾に思います。(拍手)  まず、選挙結果の認識についてでありますが、与党自民党も決して勝利とは言えず、当選した無所属議員を抱き込み、会派名まで、自由民主党自由国民会議と長い名前に改め、辛うじて過半数の議席を確保したにすぎず、与野党伯仲は、この選挙により一層その度合いを強め、逆転委員会も、衆議院七、参議院九とふえました。すなわち、自民党の長年にわたる政権独占に対し、逆転には至らなかったものの、政治革新についての国民期待は、一段と強まったものだと言わなければなりません。(拍手福田総理は、この参院選に示された厳正な国民審判をどう認識し、これを今後の政治にどう生かしていこうとされるのか、率直にお述べいただきたいと思います。(拍手)次に、日本経済について、総理はこれまで、公共事業の上期大幅集中契約により、景気回復は順調で心配はないと、再三再四公言されました。  ところが、現実総理の言明とはうらはらに、中小企業は、昨年の記録的な倒産に続き、本年に入っても大型倒産が相次ぎ、件数でも負債額でも史上最高を記録し、完全失業者は百万人の台を超え続けているのであります。しかも、関連倒産とか、ドル建て繊維食品加工等円高倒産までが続出し、鉱工業生産と出荷は落ち込み、在庫は増大するという傾向が続いています。事態はきわめて深刻であります。  企業投資意欲の大きな後退も各種調査で明らかであり、来春大学卒業者の新採用ゼロは、全上場企業千七百八社の二一%以上と伝えられ、加えて労働者実質賃金、ひいて大衆消費需要は低下の一方であります。  倉成経企庁長官は、六月二十日の日本記者クラブの講演で、現在の景気動向について、政府の判断が甘かった、景気自律的拡大段階に達していないと、はっきり政府失敗を認めています。長官総理よりも正直ですから、本音を吐いたのではないかと思うのであります。  ひとり輸出だけは伸び続け、貿易黒字は増大し、これは福田総理のロンドン七カ国首脳会議における約束違反であり、そのため国際的不信が高まり、まさに内憂外患経済情勢であります。  財界でも、「経済福田」の実態認識の不足にいら立ちを隠さず、自民党内でも不況対策の手ぬるさに批判が出ていると聞くのでありますが、利は、福田総理は、この際、いままでの経済政策失敗をはっきりと認められ、今後、国民に対する景気回復約束を果たすためにどうするか、そのことを明示すべきだと思うのでありますが、お考えを伺いたいと思います。(拍手)  そして、景気回復の機動的な政策運営として、補正予算を組むおつもりなのか、組むとすれば、その規模はどれくらいか、赤字国債の増発による大型公共事業費中心なのか、また、余剰設備を抱えている現状で効果があるとも思えない財界要求投資減税を行うつもりなのか、あわせてこの際伺いたいと思います。  政府は、本年度当初予算公共事業費を重点的に盛り込み、かつ、早期発注を実施しつつあるというのに、景気浮揚効果が余り上がっていないということは、政府公共投資のあり方に再検討が必要だということではないでしょうか。  わが党は、一貫して減税福祉充実等による個人消費需要拡大生活関連公共投資の拡充を主張してまいりましたが、公共投資は、特定地域大型プロジェクトへ集中的につぎ込むよりも、住宅、下水道、学校、保育所土地改良事業等自治体中心に実施することが効果的ではないか。また、土地問題に特別な対策を講じつつ、住宅建設に思い切った投資を行うことも一案ではないでしょうか。  景気産業問格差企業間格差拡大が大きな問題であり、これらの構造的な問題を、国民生活の安定、不公正是正基本に改革していかなくてはなりません。とりわけ繊維紙パルプ非鉄金属、平電炉など構造的不況産業には業種ごとのきめ細かな対策が必要だと思います。  わが党は、生活経済立て直しのための中期経済政策を発表いたしましたが、いま国民が望んでいるのは、中期的な経済の目安と当面の不況対策の二つを提示することであり、内需の刺激と物価関係、エネルギー問題をも含め、早期に次の臨時国会を開き、これを文字どおり不況対策国会として論議を進めることを私は提唱いたしたいが、総理のお考えを伺いたいのであります。(拍手)  総理が二十一世紀を望むのも結構ですが、多くの国民は今日の景気物価はどうなるかということを総理にしっかりやってもらいたいと考えているのではないでしょうか。(拍手)  消費者物価は、消費者米価の値上げが誘い水となり、新しい上昇機運で、総理の七%台抑制は果たして可能なのか、円高輸入価格が下がり多額の為替差益が生じているのに、なぜ石油製品を初め輸入品の値段が下がらないのか、政府の指導は手ぬるいのではないか。また、いずれもわが党提案中小企業倒産防止基金制度実現不況長期化に伴い雇用保険失業給付拡大と出かせぎ季節労働者一時金を九十日まで延長する特別措置雇用保障法実現、私はこれらをこの際政府に強く要請するものであります。  さて、先般の政府昭和五十二年度米価決定は、生産農民及び消費者のそれぞれが政治不信を強烈につのらせたということであります。  生産者米価は、物価賃金上昇に遠く及ばぬ二・五%引き上げの米価審議会諮問農民は憤激し、米審は無答申、そこで例のごとく二・一%の政治加算という政府与党サル芝居で決められたわけであります。生産費所得補償といいながら、その算定基準はその場その場でネコの目のように変わり、貿易優先の小麦の輸入増加でつくられた米過剰の責任を低米価という形で農民に押しつけられたのでは、怒るのも当然であります。しかも、その政治加算をそのまま消費者にかぶせ、食管法の精神を無視した逆ざや解消で、消費者米価を九・八%引き上げ、米の消費拡大してください、しかし米価は上げます、これでは消費者が不満を表明するのも当然だと思うのであります。(拍手)  思うに、農業高度成長経済犠牲産業として縮小され、食糧自給率の向上と農業後継者確保は今日の中心的政治課題であります。したがって、農業見直しをかけ声だけではなく、食糧自給とそして備蓄、これについて国の責任を明確にし、基盤整備飼料自給等に集中的に財政投資を行い、食管制度の堅持で生産者消費者を同時に守り、価格決定は米だけではなく主要な農畜産物はすべて同じように他産業労働者並み所得補償する安定した基準によるならば、生産は米だけに偏らず、総合自給率七四%、カロリー換算四〇%の現在から大きく引き上げられるし、農民生活は守られるはずであります。  わが党は、そのための関連法案準備を進めておりますが、福田総理がいまなお、「たれよりも農民を愛す」と言われるのなら、虚心にわが党の提案に耳を傾け、協力していただきたいと思うが、いかがでしょうか。(拍手)  水産については、さきの日ソ漁業交渉の難航と漁獲割り当て量の減少により、減船あるいは休漁のため損害を受けた船主、船員、水産加工業などの関連業者従業員に対する政府補償措置はいまどうなっているか。単なる救済ではなく、政府責任により生じた損害に対する補償というのがたてまえで、また、共補償ではなく完全補償とすべきであり、そのため石炭や繊維並み特別立法が必要であると思うがどうか。  また、いわゆる二百海里時代を迎え、遠洋漁業については割り当て資源の公正な配分のため、母船式はやめ基地独航船方式とし、国内二百海里水域は世界でもソ連に次ぐ七番目の広さとなるわけですから、ここでの漁場の開発造成、新しい漁業秩序の確立についての総合的なプランを政府は速やかに提示すべきではないか、ぜひお答えを願いたいと思います。  自民党政府福祉元年と唱えたのは高度成長期昭和四十八年のこと、ところが低成長期に入ると一転して福祉見直しと逆行し始めたのであります。  去る六月十四日夜、横浜市港北区のある貸し衣装店の四畳半の居間で、脳性小児麻痺で寝たきりの四十一歳の長女が、ビニール袋をかぶせられ、殺害されていました。書き置きにより、そのとき以来行方不明となった七十一歳の父親の犯行とわかりました。二十年以上も寝たきりの娘の看護をし続けてきたその父は、心臓を病み、数日前病院で動脈硬化で危ないからすぐ入院しなさいと言われ、娘がいる、入院するわけにはいかないと取り乱し、思い余ったものと思われるのであります。銀行からおろした預金二十万円のうち、五万円を合掌させた娘の手に握らせ、四万円を仏壇に、一万円を長女回復を祈り続けた郷里の群馬県の神社に、とありました。長女の死因は窒息死、安らかな死に顔であったといいます。  このことを報じた毎日新聞は、同じ紙面に、障害児を抱える十人の親たちにアンケートを試みていますが、「殺すのは納得できない、ほかに方法はなかったか」「自分も何回か自殺を考えたことがある」「同じ立場だったら私も……と自信がない」などと答えが返っているのであります。  総理心身障害者収容施設は近年増加しつつあるがまだまだ間に合わず、ことに十八歳以上と乳幼児を対象とした施設は全く足りません。家庭の事情もあろうが、娘と父の二人のとうとい生命を同時に失わせたことについて、私は一人の政治家として心が痛みます。老人は総理と同郷だから言うわけではありませんが、高度経済成長にうつつを抜かし、福祉は後回しにしてきたこれまでの政治こそが、何よりも身障者たちの満身の怒りを込めた抗議を受けなければならないと思うのであります。(拍手)  福祉は国の責任であり、恩恵ではありません。私は、福祉優先主張するわが党の立場から、心身障害者施設を初め各種社会福祉施設を手近に利用できるまで思い切った増設、施設の安定した運営保障、そして、厚生省は超過負担の本場ですから、超過負担を一切生じない配慮にも立ったこれらの整備年次計画の樹立と実施、そしてまた、さらに数多くの福祉要求政府は真剣に応じ、福祉見直しをもう一度見直せということ、私はこのことについて総理の確約を要求するものであります。(拍手)  さて、福田内閣外交国内政治以上に不安定で、激動する世界情勢の中で、「日本丸」の福田船長は羅針盤を故障させ、方向性を失っているのではないかと心配させられるのであります。  福田総理は、深刻な経済問題や国会審議要求を逃れ、来る六日からASEAN諸国等の訪問に出発しますが、ASEANベトナム戦争中に反共国家連合として生まれたものであり、アムネスティー・インターナショナルの指摘するように、政治犯に対する深刻な人権問題も抱えております。日本に対し援助の期待警戒の二面の心を持っていると思います。  みやげは十億ドルの借款だというが、その内容はいかなるものでしょうか。経済協力札束外交やエコノミックアニマルの資源収奪につながるものでは困るので、開発途上国に対する経済協力基本姿勢をまず明確にしておいていただきたいと思います。  また、インドシナ三国は日本ASEAN接近警戒心を持っているはずですから、したがって、中国をも含めたアジア外交全体に対する基本的態度を明らかにしておかなくてはなりません。  これらが福田総理出発前になさるべき最も重要な旅行準備であると私は思うのであります。  最近中国から帰ったわが党国会議員訪中団によれば、福田総理が忙しくて日中平和条約のことを考える暇がないと漏らしたという報道で、中国要人は、福田首相は本気で日中関係を推進する気があるのかどうかと、非常な不信感を持っていたということであります。  先日、総理は、自民党長老会議において、日中平和友好条約締結について手順があると述べておられますが、この段階に至っていかなる手順が残っているのでしょうか、どのような手順を経れば締結に至るのか、その手順の中には総理自身訪中も含まれるのか、手順日程内容を具体的にこの際示していただきたいのであります。  所信表明において「双方にとって満足のいくような形で、」と言われておりますが、これはいかなる意味なのか。私は、日中共同声明というのは、田中内閣時代両国が満足してサインしたものだと思うし、したがって、覇権主義反対の条項を含む共同声明に基づく条約締結は、すでに問題がなく、いまや総理の決断を強く求めるのみであります。(拍手)  日ソ漁業暫定協定は、野党協力を得て曲がりなりにも締結されましたが、ソ日漁業協定の見通しはどうなっていますか。漁業問題も常に領土、領海の問題が壁になっております。  かつて鳩山一郎首相河野一郎氏らとともにモスクワで日ソ共同宣言に調印したのは昭和三十一年のこと、いまはその鳩山氏、河野氏のジュニアが外務大臣や一党の代表になっているというのに、この二十余年間、歴代自民党政権は、領土問題や平和条約交渉前進について、何一つ有効な手段を講じたことがなかったのであります。(拍手)  春の日ソ漁業交渉は百日交渉と言われたが、日本側交渉エネルギーの九九%は領土問題に費やされ、これでは漁獲量交渉失敗するのも当然であります。ソ連が、北方領土解決済みとか、一部の主張にすぎないというようなのは論外であり、また、平和条約の前に善隣友好条約を出してくるのは、領土たな上げのおそれがあるので応ずるわけにはいきません。わが党の領土問題の主張は周知のとおりでありますが、当面、日ソ間の経済問題の話し合いを積極的に進める必要があります。あらゆる面で両国間の改善を進めつつ、領土問題の解決平和条約締結に向かうべきであります。  鳩山外相の訪ソはいつごろで、いかなる任務をもって行われますか、この際伺っておきたいと思います。  朝鮮民主主義人民共和国の二百海里宣言は、西日本漁民にとって重大問題であり、これに対し政府は全く打つ手がなく、右往左往していることはまことに遺憾であります。わが党が従来から指摘したとおり、韓国一辺倒で、朝鮮民主主義人民共和国とは国交を持たないゆがんだ外交政策の結果にほかならないと思うのであります。(拍手)  私は、政府が直ちに朝鮮民主主義人民共和国日朝漁業協定締結すべきである、政府間で協定ができなければ、少なくも政府保証つき民間協定でもよいと思います。日本漁民生活権擁護安全操業確保に努力すべきであり、そして、このことをして両国国交正常化に踏み切るこよなき機会とすべきだと私は思うのであります。  在韓米地上軍撤退について、政府米側にいかなる了解を与えたのでありましょうか。  訪韓後、日本にも立ち寄って帰った米ハビブ国防次官ブラウン統合参謀本部議長は、米下院で、在韓米地上軍撤退後の北に対する抑止力に、沖縄駐留海兵一個師団と空軍が含まれる旨の証言をしており、両氏はまた、朝鮮半島に緊急事態発生の場合、米軍日本基地戦闘行動で使用することで日本政府の暗黙の了解を得ていることを示唆したと報ぜられております。日本基地からの米軍の発進が、日本防衛韓国防衛と区別なく行われることで、安保条約事前協議は歯どめにならなくなるではないか。  また、在日米軍駐留費のうち、労務費日本が分担する問題につき、政府米側交渉に入っていると言われているが、これは地位協定第二十四条違反ではないか。日本が経費を分担した米軍韓国防衛に出かけるという構図を考えれば、日本韓国防衛費の一部を負担することになり、国民感情からも許されるものではないと思うのであります。  以上の外交問題に関する私の見解や疑問に対し、総理の明解な答弁を求めます。  最後に、私は、福田総理政治姿勢を二点についてただしたいと思います。  第一は、政治の浄化についてであります。  福田内閣のルーツと言えば、ロッキード事件追及の際、自民党の中にできた挙党協という三木おろし集団の中から生まれたものであり、福田内閣ロッキード事件徹底解明に不熱心なのはそのゆえだと言われます。  同時に、日韓癒着事件についても、総理はもともと岸派中心人物であったということから、これまた消極的な対応しか望めないとも見られております。事実、選挙中も、日韓腐敗と言うが、においもしないなど、非常識な発言に終始してきました。この疑惑をいまこそ総理は晴らすべきときに来たと思うのであります。  しかし、米議会金炯旭KCIA部長が、金大中誘拐事件韓国政府機関KCIAがやったことで、これに日本の警察も関与していると、ショッキングな証言を行い、また、米国防総省公式文書にも同様な記載があるが、これが事実とすればきわめて重大であります。政府は事実を否定しておりますが、こうなったのも、今日まで政府金大中氏の事件をうやむやにし、あいまいな外交決着をつけてきたからにほかならないと思うのであります。(拍手)  国会ではロッキード特別委員会等調査を始めますが、アメリカ下院との資料交換金炯旭氏らの来日証言あるいは訪米証言米議会証言のための在日韓国人渡米容認等日米両国議会国政調査権の行使につき政府は全面的に協力すべきだと思うが、その用意はあるか、はっきり態度をお示し願いたいと思います。(拍手)  第二は、伯仲国会運営についてであります。  政府は、これから補正予算、続いて明年度予算編成作業を本格化していくわけでありますが、スタグフレーションが深刻化しているこのような経済情勢のときこそ、予算国民意見要求を十分に反映しなければならないと思います。  第八十回通常国会では、伯仲国会のあかしとして、かつてない予算修正が行われましたけれども、これからは、予算編成段階から野党意見を取り入れるべきであり、予算官僚主導型から国民本位に変えていかなければならないと思うのであります。(拍手)たとえば閉会中でも予算委員会を開き、各党が予算要求資料を提示し、各界各層参考人意見を聞き、予算編成についての論議を深め、議会政治の権威を高めて、国民の負託にこたえるべきであると思うが、総理の御見解をぜひ伺いたいと思います。(拍手)  戦後三十年にして初めて衆参両院とも与野党ほとんど差のない国会状況となりました。私は、これは真の議会制民主主義を発展させ、定着させていく好機であると思うのであります。  したがって、福田総理は、権謀術数をもっての党利党略的議会運営ではなく、誠意を尽くし、国民の納得のいく話し合いを通し政治全般に対処してほしいと思うのであります。この基本をあなたが貫かれるならば、自民党単独最後内閣と言われる福田内閣も有終の美を飾り、福田総理自身の晩節を全うし得るものだと思うのであります。  わが党は、また、流した汗が報われる政治を目指しつつ、民主政治の発展に力を尽くすことを重ねて明らかにし、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣福田赳夫登壇
  5. 福田赳夫

    内閣総理大臣福田赳夫君) 各般の問題につきまして、お答え申し上げます。  まず、安井さんは、今度の参議院議員選挙の結果をどうとらえておるかと、こういう私の認識についてお尋ねでございます。  安井さんのお気に召すようなお答えをすることはできませんが、今度の参議院選挙国民審判、これはやはり私は、自由民主党中心とする政局の安定を国民期待した、かように考えておるのであります。(拍手)  私は、選挙中も精力的に全国を駆けめぐった、そして、全国国民がどういうことを考えているかということをこのはだに感じてきたわけでございますが、やはり国民は、いわゆる保革逆転だとか連合政権論争だとか、いろいろある、そういうことについて非常な不安を感じたのじゃないかと思うのです。さあ、連合政権になったらどうなるのだろう、あるいは保革逆転したら一体この日本政治日本社会はどうなるのだろう、非常に深刻な不安を抱いてこの選挙に臨んだのではあるまいか。しかし、その結果があのような投票の実績となってあらわれてきた、私はかように考えておるのであります。(拍手)  さて、そういう政局安定という上に立って、政策的に一体国民は何を期待したか、こういうことになりますと、私は、やはり暮らし、また仕事、つまり経済を早く安定してもらいたい、これが国民の声であった、願いであった、願望であった、かように考えておるのであります。  私は、そういう認識に立ちまして、この選挙の結果を踏まえ、熱心に国民願望にこたえていく、これが私の責任であり、使命であると、かように考えております。(拍手)  それにいたしましても、保革伯仲であるということは、これはもう現実であります。伯仲下国会にどういうふうに対処するかというお話でございますが、私は、もう伯仲であろうがなかろうが前から言っているのです、「協調連帯」でこの国会運営されなければならない、そういうふうなことでございます。しかし、国民自由民主党政府期待するところは非常に大きい。「協調連帯」——なるべく皆さんのお話は承ってまいります。できるものはどんどんと取り入れてまいります。しかし、責任政府自由民主党がこれを持つ、しっかり承る、さように考えておるので、その点はひとつ篤と御理解のほどをお願い申し上げます。  安井さんは、私が国民願望経済の問題にある、こういうふうにとらえたと同じようにおとらえになったのであろうと、こういうふうに思うのですが、経済の諸問題につきましていろいろお話がいまありました。  確かに、いま世界は非常に経済的な混乱時代でありまして、この経済運営はなかなかむずかしい問題であります。しかし、三年半前にあの石油ショックが起きた。あの石油ショックによる打撃というものは、石油に依存すること最も大きいわが日本への打撃世界の中で一番大きかったのです。申すまでもございませんけれども、物価狂乱状態になる、国際収支は一年間で百三十億ドルの大赤字を露呈する、また、経済成長は戦後初めてマイナス成長というようになる。大変なことだ。しかし、三年たちまして昭和五十一年度になりますとどうであったかといいますれば、あの狂乱というような物価状態はもう本当に鎮静してきております。また、国際収支は、世界各国から黒字日本責任ということを問われるような状態まで来ておるわけであります。経済成長はどうかというと、先進諸国の中で最も高い五・六%の成長をなし遂げるというところまで来ておるわけであります。  そういう状態でありまするけれども、何せあの石油ショック打撃というものは非常に深刻であります。その後遺症というものがまだ残っておる。その後遺症の最大の問題がこの今日の不況であり、また物価水準の高さである、このように私は受けとめておるのであります。また、国民も、この問題につきまして政府が確固たる対策をとることを期待しておる、私はその期待にこたえなければならぬというふうに考えておりまして、とにかく着実に必要なその手その手を打ってきておるわけでありまして、昭和五十二年度予算におきまして公共事業費を大幅に盛り込んだ、しかも、これが早期発注に努力をした、これもそのためであります。また、公定歩合を西独と並んで世界最低の水準まで引き下げた、企業への金利負担の軽減を図ろうとしている、それもそのためでございます。  私は、そういういろいろな手を打っておる、その結果が八月ごろには顕著に出てくるのではあるまいかという展望を持っておるのであります。つまり、公共事業は六月までにはその半額を投入いたしたわけでございます。契約を了したわけであります。しかし、これは契約をしたからといって、すぐ効果が出てくるわけじゃありませんよ。まあ、二、三カ月のずれがある。私は、八月ごろにはこの公共投資の影響というものが出てくる。そこで、この八月の経済の動きをじっとよくにらんでみたいと思うのです。そして、今日の日本経済というものがどういう段階にあるか、また、その結果どういう手段を必要とするかというようなことを検討いたしまして、国会に御審議をお願いしなければならぬ問題がありますれば、早期国会をお開き願って、御審議を賜るというようにいたしたい。しかし、それまでといえども、政府ができることは幾らでもあるのです。その必要な手は着実にこれを打ち続けるという考えでございます。  そういう中で、安井さんは、いま補正予算をどうする、提出するか、その規模をどうするかというようなお話でございまするけれども、補正予算の提出が必要であるかどうか、さらに財政、金融措置はどういう形のものが必要であるか、それらの点全体を八月末の時点において判断をいたしてみたい、かように考えておる次第でございます。  投資減税についての御意見もありましたけれども、投資減税というのは、景気刺激には若干影響はあると思うのです。しかし、金がかかります。その同じ金を使うならば、他に景気対策として有効な手段がないかということになりますと、その辺若干の問題があろうかと思うのでありまして、私はなお慎重に検討してみたい、かように考えております。  また、景気対策のために生活関連中心公共事業を推進せよ、国民消費需要を拡大せよというお話でございますが、考え方としては私は全然同じでございます。いろいろ工夫をしてみたい、かように考えております。  また、構造不況対策、産業間の格差是正、こういうようなことを考えてみろというお話でございますが、これは言われるまでもない、国会に御審議をお願いしないでもできることが多いんです。個々の構造不況、そういう問題につきましては、いま鋭意その対策を進めておるというふうに御理解を願います。  さらに、消費者物価につきまして、本年度中七%の目標を達成できるかというお話でございまするけれども、私はこれはもう相当自信を持って申し上げることができると思うのです。これは実現をいたしたいし、また実現をできる、このように考えておる次第でございます。  消費者物価と関連をいたしまして、為替差益消費者に還元せよというお話でございますが、これはもうすでに、西ドイツと並びましてわが国の卸売物価はいまや本当に世界最低の水準の上昇率となっておるのであります。また、端的に申し上げますと、ほとんど横ばいというくらいな状態まで来ておるわけでありまして、これは石油を初め、為替差益、この関係から大きく影響されておる、こういうふうに見ておるのでありますが、その卸売物価の安定が消費者物価へまた、半年、そういう間を置いてはね返ってくる、消費者物価にも非常に為替差益円高の問題はいい影響を持ってくるであろう、こういうふうに考えておりまするし、さらに個々の輸入物資につきまして、消費者価格の動向がどうなっておるか、これをよく調査をいたしまして、できるものがありましたならばその価格の調整をいたしたい、かように考えておる次第でございます。  また、中小企業、これはいま今日、とにかく三年半続きの不況でございます。でありまするから、大企業といえどもいま大変疲労しておる状態だろうというふうに見ております。そういう中で特に中小企業、力の弱い、立場の弱い中小企業状態というものは、これはもう本当に私は困窮をきわめておるものが多いだろう、こういうふうに思うのでありまして、政府は、政府系三機関、これを動員いたしまして中小企業の援護体制をとる、また、市中の金融機関に対しましても中小企業に対する配慮を厚くしなければならぬというような要請をする、さようにきめ細かな配慮をいたしておるのでありますが、なお一層この点につきましては心してまいりたいと、こういうふうに考えます。  雇用保障法を制定せよというお話がありまするけれども、不当解雇につきましては、労働基準法などで規制がある、そういうことから考えまして、新しい措置は必要はないんじゃないか、そのように考えております。ただ、雇用安定資金制度の活用等をいたしまして、なるべく失業者が出ないように、出た場合におけるところの対策、これは心し、またこれを強化してまいりたいと、かように考えております。  また、失業手当給付を増額せよ、またその期間を延長せよ、季節労務者への一時金を九十日程度に延長せよというようなお話でございまするけれども、雇用保険法で失業補償機能は非常に強化されておるわけなんです。給付日数、給付率ともに私はいまの制度で妥当なところじゃないか、そのような感じがいたしますので、これは改正をするようには考えておりません。  また、特例一時金につきましても、これはずいぶん皆さんとも御論議の末、五十日というふうに決めたのでありまして、これをいま変えるというのはいかがであろうか、かように考えます。  さらに、生産者米価消費者米価、この両米価決定の過程、これが不明朗ではないかというようなお話でございまするけれども、これは両米価とも米価審議会に意見を求めた次第でございます。その意見を踏まえまして、最終的には政府責任を持って決定をするということにいたしたのでありまして、まあ大方この程度の結果で、生産者消費者も御満足がいっておるのじゃあるまいかと、かように考えております。  また、社会党からは、食糧自給及び備蓄の特別措置法の御提案があるようでありますけれども、食糧自給力を向上する、これは非常に私どもは大事なことである、そういうように考えておるのであります。また、適度の備蓄、これも必要であろう、こういうふうに考えておりますが、これは新しい立法を必要といたしません。これは政府の行政措置で十分にやろうとすればできる、さように考えております。  さらに、食管制度を堅持するとともに、他の農作物にも所得補償の制度を拡充せよというようなお話でございますが、食管制度を変えるなんというような、そんな考え方は私ども持っておりませんです。これは食糧行政の基幹となるべきものであるというふうに考えまして、この制度の根幹はこれを堅持してまいりたい、かように考えておりまするし、また、重要な食糧その他農作物につきましては、価格安定の施策が十分整っておるのです。しかし、足らないところがあればまた御指摘等踏んまえまして対処してまいりたいというふうに考えております。  さらに、北洋漁業の損害に対してどういうふうに対処するか、共補償をやめて特別立法で十分な補償を行え、こういうお話でございますが、日ソ漁業交渉の結果に伴うところの北洋漁業につきましては、すでにその対策基本方針を六月に決めておるわけであります。その実施といたしまして、七月の二十七日には特に緊急を要する減船漁業者に対する救済金額等を決定をいたしておるわけでありまして、この決定は、政府交付金と共補償のために必要なる融資から成っておるわけでありますけれども、共補償をやめてしまえというのもまたいかがであろうと思うのです。私どもは、共補償を強く大幅に、というふうには考えておりません。妥当に現実的にこれを執行するというふうに考えておりまするけれども、やはり廃業する企業、また残存する企業、その間にはやはり利害の調整というような問題があるわけでありまするから、常識的程度の共補償はやむを得ないのじゃあるまいか、私はさように考えておりまして、特別立法による必要はないのじゃないか、このように考えております。  また、母船式遠洋漁業をやめて二百海里内の新漁業秩序を確立せよというお話でございますが、いま直ちにこの母船式の漁業をやめるということになりますと、ここで働いておるたくさんの従業員の方々の問題もあります。さようなことを考えてみますと、直ちにこれをやめるというわけにはいくまいと思います。しかし、考え方、これから先の大きな流れ、そういうことから見ますと、やはりわが国の二百海里水域というものは世界でも有数の広い海域になるわけであります。この海域をフルに活用いたしまして、そして新しい漁業秩序をつくっていくという考え自身は大事なことでありますので、その方向で諸対策を慎重に検討してまいりたい、かように考えております。  さらに、福祉問題につきましてのお話でございます。  福祉見直し論というのがあるが、これは後退じゃあるまいかというようなお話でございますが、私は福祉問題、これは制度面をさらに充実するという必要のあることを認めております。しかし、同時に、この福祉というものは、ただ単に制度だ、金だ、これだけじゃいかぬ。やはり国民全体が福祉の心といいますか、そういう気持ちになって、世の弱い人、小さい人に対応してくれるというような気持ち、その上に立っての制度の充実でなければならぬだろう、かように考えておるのであります。  これから日本社会というものを考えますと、本格的な老齢化社会になっていくわけであります。福祉社会といいましても金がずいぶんかかる。反面におきまして、経済は低成長だ、財源問題が非常に窮屈な状態になります。その間においていかに効率的な福祉対策を進めていくか、充実していくかということは非常に重大な問題になってくるであろう、こういうふうに考えておる次第でございますが、さような考え方のもとに国の社会をどういうふうに持っていくか、総合的な見地に立ちまして福祉問題に対処してまいりたい、かように考えております。  特に、心身障害者施設等の増設と運営の新しい計画を充実せよというお話でございましたけれども、わが国の心身障害者に対する施設は、私はかなり進んでおると思うのです。しかし、とにかく心身障害者の人たちに対しましては、お話のようにきめの細かい配慮をしなければならぬ、かように考えますので、鋭意きめの細かい、行き届いた施策と評価されるように努力をいたしてまいりたい、かように考える次第でございます。  次に、外交問題についてであります。  ASEANに対する十億ドル借款についてのお尋ねでございまするけれども、私は、ASEAN諸国の代表の方から、この借款については概要を承っております。しかし、私は、今度のASEAN訪問は、いろいろの人から、みやげは何を持っていくのですかというようなことを聞かれますけれども、みやげをぶら下げていって、そうして、歓心を買う、そういう態度は私はとりません。これはやっぱり私は、アジアの国々——わが国が世界の中の日本という立場で立ち臨む、そういう際に、足元といいますか、われわれの近い関係にあるアジアの国々との善隣友好、本当によき友人としてのイコールパートナーシップに立ってのつき合いという形をとっていかなければならないだろう、こういうふうに思うのであります。(拍手)私は、この十億ドル借款につきましても、そういう立場に立ちまして、よく先方の意見を聞いてみる、そうして、私がこれは協力すべきだというように考えますならば、積極的な姿勢をもって協力してまいりたい、こういうふうに考えておるのであります。  なお、これに関連いたしまして、経済援助についての基本的な考え方を示せ、こうおっしゃいますが、この基本的な考え方を示すとずいぶん時間がかかりますので、要約をして申し上げますれば、これは私は、わが国は戦前と違いまして、戦後、新しい国の姿勢を打ち出しておる、こういうふうに認識をいたしておるわけであります。つまり、戦前は、今日の二十数分の一の経済力を持ちまして世界の三大海軍国の一つである。また、ソビエト・ロシアに備えて、あれだけの強大な陸軍兵力を持つというような状態であったわけであります。  戦後、新しい憲法ができる、また、国内にも平和国家というコンセンサスができた、そういうようなことで、みずからの安全を守るという以上の軍備はしないことを決意しておるわけであります。そういうことになりますれば、今日、戦前の二十数倍の経済力を持っておる。そこに余裕が出てくる。軍備を持たないために、わが国は世界の平和に対して、ただ乗り論なんというようなことを言われまするけれども、私は、このよって生ずるところの余力をもって、やはり世界のおくれた国々の民生の改善あるいは新しい建国、そういうものに協力をいたしていくべきである、こういうふうに考えておるのであります。  ただ、ずっと今日まで戦後それだけの実績を上げておらぬ、それは国内の建設に忙しかったからであります。しかし、わが国の今日の経済力、そういうことをよく考えてみまするときに、対外経済協力、これは強力に進めていかなければならぬ、こういうふうに考えておるのであります。しかしながら、これは先ほども申し上げましたけれども、ただ単に物で援助する、金で協力をするというような、そういう形であってはならぬと思うのです。やはり世界を支えるところのたくさんな国々、これが「連帯協調」です、お互いに助け合わなければならぬ、そういう立場で初めて世界は平和であり、繁栄していくのだ、そういう基本的な立場において物と金というようなものが協力されていくということでなければ、間違ったことになっていくのじゃあるまいか、さように考えておるのであります。  日中平和友好条約締結手順日程はどうかというようなお話でございまするけれども、私は、先日、所信表明演説でも申し上げたのです。これは日中双方にとって満足されるような形でなるべく速やかにこれが締結を図りたい、こういうことでございます。  私は、日中関係というものは、とにかく五年前にあの共同声明ができたんですから、あの共同声明を忠実に実行するということに尽きるのじゃないか、そういうふうに思うのです。あの共同声明にも、平和友好条約締結するということがお互いに了解されておるわけですから、そういう認識に立ちまして、いまこの問題をどういうふうに取り進めていくかということは真剣に考えておる次第でございます。  日ソ平和条約につきましてのお話でございますけれども、私は日ソ両国、これはやはり隣り合わせておる、友邦関係になければならぬ、こういうふうに考えておるのです。この関係も、これは例の北方領土の問題を解決する、そしてその上に立って平和条約締結をするということで最後の締めくくりができるんだ、こういうふうに考える。私は、しかしそれと並行いたしまして、両国間には貿易の問題もあります、あるいは、産業開発の問題もある、あるいは漁業大国として利害の共通しておる漁業の問題もある、また、文化、人物の交流というような問題がある。それらの問題は相並行して進めていくべきだ、こういうふうに考えておるのですが、終局的にはただいま申し上げましたような決着に持っていきたい、かように考える。  なお、鳩山外務大臣につきまして、いつ訪ソになるのかというお話でございまするけれども、なるべく早い時期に訪ソという……(「まだそんなことを言っておる」と呼ぶ者あり)これは先方もあることですから、こっちだけで決めるわけにはまいりません。目的は、これは定期協議を昨年モスコーでやるという話であったのですが、それができなかった。そういうようなことから、定期協議という目的も兼ね、かたがた平和条約の推進ということもいたしてみたい、かように考えておるのであります。  ソ日漁業協定の見通しはどうかというお話でございますが、御承知のとおり、これは六月三十日に東京で開催されまして、そして交渉がずっと続いておりましたが、七月二十八日に至りましてイシコフ漁業相が来日いたしたのであります。まだ詰まらぬ点が若干ありまするけれども、この両三日中におさまりがつくのではあるまいか、さように考えておる次第でございます。  また、朝鮮民主主義人民共和国の二百海里宣言、これに関連をいたしまして、旧朝漁業協定締結し、国交正常化の契機としたらどうだろうというお話でございますが、日本、北鮮間の国交正常化、これはまだそこまで条件が整っておりません。貿易や人物、文化の交流ということを逐次積み上げていきたい、かように考えておる次第でございます。そういう際でございますので、漁業問題につきましては民間で何らかの取り決めができないものか、こういうことを期待をいたしておる次第でございます。  また、在韓米軍撤退について、政府はいかなる了解をアメリカに対して与えたかというお話でありますが、基本的には在韓米地上軍撤退問題は、これは米韓間の問題でありまして、わが国が了解するとかしないとかという性格のものじゃございません。しかし、わが国といたしましては、朝鮮半島で平和が維持される、南北の均衡が失われてあそこで平和に支障が出てくるというようなことにならないような方向で米韓間で十分話し合ってもらいたいという意向表明をいたしておる次第でございます。  さらに、朝鮮半島の防衛につきまして、日本基地とすることにつき日本米側に暗黙の了解を与えた旨の米統合参謀本部議長発言について、総理はどう思うかというお話でございますが、このような暗黙の了解を与えた事実はございませんから、その辺は篤と御理解のほどお願い申し上げます。  また、在日米軍駐留費の事務費分担につきまして、日米間協議中との報道が事実かというようなお話でございまするけれども、昨年の春以来、日米間で駐留軍の労務費の給与に関する諸問題について検討中、話し合い中でございます。しかし、いずれにいたしましても、日米双方とも地位協定を遵守しなければならない、地位協定の枠内においての話し合いであるということを御理解おき願いたいのであります。  最後になりましたが、安井さんから私が政界の浄化の問題で余り熱心じゃないじゃないかというような御批判でございますが、私は、政界浄化刷新ということは、これはもう非常に熱心です。これはもう私が政界に入るときからそういうことを言っておるわけなんです。今日もその姿勢につきましてはいささかの変わるところもございません。  日韓癒着という御指摘でございますけれども、この日韓問題につきましてはいろいろな情報がある。金炯旭元情報部長の話なんというのはいろいろあるようでございまするけれども、金炯旭さんという人は、八年前にもう韓国の情報部長をやめている人なんです。それが金大中事件の話をした、そこに何の証拠性というものがありますか。そういうようなことから考えまして、私どもは金炯旭さんがああ言った、こう言った、一々それで騒ぎ回るというようなことはいたしません。  しかし、金炯旭氏が言ったことについて、これはもっともだ、何かいろいろ示唆を与えられることがあるのです。そういう点につきましては、私どもこれを追及のよすがとする、こういうようなことでございまして、たとえば金炯旭氏が金在権氏との会談をしたというような話をしておりますけれども、そういうことであれば、金在権氏と接触をとるということも、これはすべきことじゃないか、そういうふうに考えますけれども、金炯旭さんが、八年前にやめたあの人がああ言った、こう言ったということを一々とらえて大騒ぎをするというのも、いかがでありましょうか、かように考えておるのであります。  それから、日韓間の問題の基本は、これは金大中事件がああいうあいまいな解決になったことに原因があるというふうにおっしゃるのでありますけれども、これは当時、もう政治的な決着がついたということにつきましては、御承知のとおりであります。(発言する者あり)しかしながら、この問題は一つの刑事事件としてまだ捜査中でございます。捜査の結果、これはあの政治決着が悪かったのだというようなことでありますれば、そのとき、また改めて考え直す、こういう種類のことではあるまいか、さように考えております。  予算編成、そういうことにつきまして御所見が述べられました。また、伯仲国会国会運営ということにつきましても、御所見が述べられたわけでございますが、さきに申し上げましたように、伯仲でなくても、私は、国会運営というものは、政府自由民主党としては他の政党に対して低姿勢でなければならぬ、そういうふうに考えておるのであります。そこで、私は、重要な施策につきましては、政府決定する前にできるだけ皆さんの御意見もお聞きしたい、こういうふうにいま考えておりますので、どうかひとつ、よろしく御協力のほどをお願い申し上げます。  また、予算委員会を開催すべしというお話でございますが、この問題につきましては、これは篤と国会において御協議のほど、お願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  6. 保利茂

    議長保利茂君) 藤井勝志君。     〔藤井勝志君登壇
  7. 藤井勝志

    ○藤井勝志君 私は、自由民主党を代表して、福田内閣当面の施政に関し、若干の質問をいたさんとするものであります。  まず、お尋ねいたしたいことは、福田総理は、今後どのような政治姿勢で国政の運営に当たられるかということであります。  今回の参議院選挙で示された国民審判は、大多数の国民が、何よりもまず政局の安定により、難局の乗り切りを求めておると信ずるものであります。  いま、わが国にとって最も緊急を要する課題は、一日も早く景気を正常な回復軌道に乗せ、雇用不安の解消と物価の安定を達成し、国民生活を充実させることであります。この国民課題によくこたえることが、福田内閣のみならず、与野党を通じて国民期待に沿う道であると確信するものであります。  福田内閣は、この政治の原点に立って国政の運営に当たるべきであり、そのためには、総理も日ごろから強調されておるように、従来にも増して「連帯協調」の政治姿勢を必要とするのであります。  この政治運営基本方針に関し、総理の御所信のほど、念のためにお伺いいたしたいのであります。  私の具体的な質問の第一は、当面の優先課題である景気回復についてであります。  最近のわが国経済情勢について、政府は、緩やかながらも回復基調にあり、実質経済成長率六・七%の見通しは実現できるとの見解を持たれておるようでございますが、私は、この点について残念ながら率直に疑問を提起せざるを得ないのであります。  たとえば、最近の鉱工業生産は一進一退を続け、製品在庫はむしろ増加する傾向を見せており、特に今回の景気回復過程にあって、業種間の大きなばらつきが見られ、いわゆる構造不況業種が景気全体の足を引っ張っておるといった状況も見逃すことができません。さらに、個人消費も民間設備投資も、ほとんど増加する気配を見せておりません。  私は、いまにして適切な手を打たなければ、政府与党が内外に公約しております実質経済成長率六・七%の達成が困難になることを深く憂うるものであります。  当面の景気浮揚に最も効果のあります施策は、政府及び地方公共団体の責任で実行できる公共事業等を拡充し、促進することであります。わが党も、さきの参議院選挙に当たり、公共事業等を上半期に集中発注させることを公約し、現在、政府も七三%の契約を上半期で成立させる方針にて事業を促進しておりますが、それが必ずしも予期したような景気浮揚効果を上げておりません。  私は、こうしたときにこそ、社会資本の立ちおくれを取り戻し、生活基盤、産業基盤を整備するとともに、景気早期回復を図ることが政治のとるべき急務であると信ずるのであります。そのためには、効果的な公共事業等を中心として、大型補正予算の編成を急ぐべきだと思うのであります。  その財源措置としては建設公債等の増発が必要でありますが、現在のように景気早期回復が至上課題であるときには、公債依存度三割以下などの制約にかたくなにとらわれる必要はないと思います。現在のように市中に十分な消化能力がある場合、その限度内において建設公債や政府保証債を増発しても、決してインフレの誘発を恐れるべきではないと存ずるのであります。いわんや、国際収支は大幅黒字であり、設備の稼働率にも十分余裕を持ち、また、人手も余っておるわが国経済においてをやであります。  そもそも財政は、単年度においてとらえて健全、不健全を判断すべきものではなく、中期、長期の展望に立って運営すべきものと思います。本年度、仮に公債依存度が三割を超しても、これによって景気がよくなり、社会経済の基盤が強固になれば、将来、税収も大幅に伸びることになって、健全財政への復帰を早めるものと思うのであります。  特に、住宅建設は、景気浮揚の即効性と波及効果から見て、また都市における重大な社会問題である住宅難の解消のためにも、宅地対策とあわせて優先的に配慮する必要があると思います。  以上、財政面からの景気対策として、大型補正予算の編成並びに財源としての公債増発の可否について、福田総理の御見解を承りたいのでございます。  景気対策の第二の柱は、金融政策であります。  日銀は、本年に入り公定歩合を五%に引き下げましたが、それでも西ドイツの三・五%、わが国四十七年の四・二五%よりも高いのであります。現在のように企業意欲が冷え切っておるときこそ、思い切った公定歩合の引き下げが必要であり、それに連動して、政府系金融機関並びに民間、市中貸出金利の引き下げを誘導すべきであります。このような金融政策についての総理の御見解を承りたいのであります。  質問の第三は、貿易収支の大幅黒字と円高傾向についてであります。  昨年来のわが国の輸出貿易の好調は、国際経済に種々の問題を引き起こし、欧米先進国はもとより、貿易相手国の不満と抵抗を強めております。本年春の日米首脳会談やロンドンにおける先進国首脳会議においても、福田総理は、集中豪雨のような輸出を抑制し、国内需要の増進による輸入の増大等を約束されたのであります。しかし、最近のわが国貿易の実績を見ましても、本年度の貿易収支の黒字は、政府の予想を大幅に上回るものと推定されるのであります。  この貿易収支の大幅黒字基調を是正する有効な応急対策といたしまして、私は、この際、エネルギー源、非鉄金属等の重要輸入資源の備蓄を思い切って増強することを提唱いたしたいのであります。(拍手)また、プラント輸出、商品援助、経済協力等を積極的に推進しなければなりません。  私がこの際特に言及いたしたいことは、一衣帯水の近きにある中国との貿易拡大であります。  中国から原油及び石炭を長期的に安定輸入し、その見返りとしてわが国のプラント等を輸出する長期貿易取り決めを実現することは、日中両国間貿易の拡大均衡と友好促進という基本的国策に沿うものと確信するのでありますが、総理の御所見を承りたいのであります。  以上、貿易の諸問題につき、具体的にはいかなる対策を進められんとしておられますか、総理の御答弁をお願いいたしたいのであります。  これに関連してなおお伺いしたいことは、最近の円高傾向による輸出中小企業の深刻な打撃に対しての救済対策であります。  一ドル二百六十数円という最近の円為替レートは、わが国の輸出を困難にし、特に輸出中小企業の受ける打撃は甚大であります。かつて、ドルショックによる輸出の停滞のときも、これら中小企業が真っ先に打撃を受け、政府も特別の救済措置を講じましたが、今回も政府は速やかに適切な対策を講じなければならないと思います。  また、わが国経済活動の圧倒的部分を占めている中小企業が、三年続きの深刻な不況に苦しんでおりますが、これに対し特に連鎖倒産防止対策などが急務ではないでございましょうか。総理の御所見はいかがでありますか、お伺いいたします。  質問の第四は、エネルギー政策であります。  総理が言われたとおり、わが国にとっては、有限の資源を効率的に活用しつつ、国民生活の維持向上を図っていくことがぜひとも必要なことは申し上げるまでもございません。  今後なおエネルギーの大半を石油に依存せざるを得ないわが国の現状にかんがみ、一昨年石油備蓄法が制定され、昭和五十四年度末を目標として九十日備蓄の計画が策定をされておりますが、これに対し政府は、さらに必要に応じこれが援助を強化するとともに、アメリカ、西ドイツの例にならい、石油備蓄はナショナルセキュリティーの観点から国家備蓄として再検討の必要があると考えますが、総理の御見解はいかがでございましょうか、御答弁をお願いをいたします。(拍手)  次は、原子力エネルギーについてであります。  原子力は、まさに資源有限時代を克服する決め手であると言われております。原子力発電については、その安全性の確保に万全を期し、国民的コンセンサスの上にこれが積極的推進を図るとともに、使用済み核燃料再処理施設、高速増殖炉の建設による核燃料サイクルの樹立はきわめて重要な課題と思います。  カーター大統領の新原子力政策は、核兵器の不拡散という崇高な理想から発していると聞いておりますが、わが国も平和憲法を有し、非核三原則を国是としております。わが国の基本立場は、まさに原子力の平和利用の推進と核拡散の防止を両立させることにあると思います。  本件につきましては、去る三月の日米首脳会談及び五月のロンドン七カ国首脳会議の場において、福田総理大臣からカーター大統領に対し、このわが国の立場を明快にしてかつ率直に申し入れられたと承っております。一億国民は、挙げてこの交渉の成り行きを見守っており、これが円満かつ速やかに妥結することを切望いたしておるものであります。  原子力政策と本件交渉基本的姿勢に関し、改めて総理の所見を伺いたいのであります。  エネルギー対策は、このような供給面の対策とともに、産業、生活面での省エネルギー化が必要なことは申し上げるまでもありません。あの石油ショックの直後には省エネルギーの必要性が国民のすみずみまで浸透いたしましたが、のど元過ぐれば熱さを忘れるのたとえのごとく、わが国ほどエネルギー消費についてむとんちゃくな国はないと思われます。  エネルギー対策は、省エネルギー面においても強力にしてかつ実効ある対策を早急に確立することが絶対必要であると信じますが、これが対策についてもあわせて総理の御見解を伺いたいのであります。  総理は、先日の所信表明演説で、総合的食糧自給力の向上のため、生産基盤の整備、需要に即応した農業生産拡大等、わが国農業の体質改善に努め、米の需給均衡化の施策の強化を約束されたのであります。私は、ぜひこれが具体化について、強力な施策の展開を求めてやみません。  特に、過剰な米の作付転換と、その大半を輸入に依存する麦、大豆、飼料等の飛躍的増産は、万難を排して実現せなければなりません。また、遅延しておる土地改良事業等の促進等についても、特段の措置をすべきだと思いますが、総理のいま一度の御所信を伺いたいのであります。  最後に伺いたいことは、行政改革についてであります。  行政改革ほど、歴代のどの内閣でも取り上げられ、しかも、これほど成果の上がらなかった政治課題はありません。  福田総理は、強い意欲を持って、各省庁の統合整理を含め、中央、地方を通じ、抜本的行政機構の簡素合理化を決意されておるように伺いますが、わが党も、これに全面的に協力しなければならぬことは言うまでもありません。しかし、行政改革は、事務的積み上げで結論が得られる問題ではなく、要は、政治の決断と実行であります。(拍手総理は、どのようにこれを進められるか、御所信のほどを承りたいのであります。  以上、私は、景気対策中心に質問をいたしましたが、景気対策は、そのタイミングと施策の内容を誤らないことであります。常に先手を打ち、後手に回らず、小出しをせず、大胆に実行することであると思うのであります。(拍手)  総理の明快な御答弁をお願いいたしまして、私の代表質問といたします。(拍手)     〔内閣総理大臣福田赳夫登壇
  8. 福田赳夫

    内閣総理大臣福田赳夫君) お答えいたします。  まず、今度の選挙の結果を踏まえて、大胆に政務に取り組め、こういう御激励でございますが、先ほども申し上げましたように、私は、今度の選挙は、国民自由民主党中心といたした政局の安定を期待し、そういうような結果があらわれたんだというふうにとらえておると同時に、政策面では、やはり景気をひとつよくしてくれ、また同時にインフレ、これに対しましても気を遣ってほしい、そういう判断が示されたんじゃあるまいか、さようにとらえておるのであります。  そういう立場に立ちまして、私は、五十二年という年はこれは経済の年だというふうにも申し上げておるわけでございまするけれども、新しい参議院選挙後という事態を踏まえまして、経済問題の処理に全力投球をいたしてまいりたい、かように考えております。  景気対策につきまして、大型補正の準備を急げ、また、その場合には公債依存度三割にとらわれるな、また、金融政策も並行して推し進めよ、また、景気対策はタイミングが大事だ、これを誤らないようにすべきである、かようないろいろ御提言でございますが、私は、昭和五十二年度予算、これは御承知のとおり、公共事業費を相当組み込んでおるのです。その契約がとにかく六月末までに約半分終わっておるわけであります。しかし、よく調べてみますると、その影響が出てくるのは二、三カ月ずれると、こう言う。そこで、八月といいますか、八月を中心といたしましてかなり景気の動きに変化が出てくるのではあるまいか、そのように見ておるのであります。  そういうような状態、しかし、八月になりまして、統計上の数字なんかはこれはまだ六月だというような時点のものしか出てまいりません。出てまいりませんけれども、私どもいろいろな指標等を抜き取り的に調査をいたし、また経済の動きというものをはだに感じておりまして、そして八月の経済の動きというものを判断し、その上に立ちまして財政、金融、この両面の施策をどうするか、そのようなことを判断をしてみたい、かように考えておるのでありまして、精いっぱいの努力をいたしますので、非常に大事な問題でございますので、特に藤井さんの御協力を賜りたい、お願いを申し上げます。  なお、景気対策と関連をいたしまして、対中国貿易拡大のために、原油、石炭の安定輸入、また、これに見合ったプラントの輸出を内容とする長期貿易取り決めの話があるが、これをどういうふうに考えるかというお話でございまするが、その話は経団連からよく聞いております。目下、民間でその内容について検討が行われておりますが、具体化には幾つかの解決すべき問題もあるわけでございます。  政府といたしましては、重要な隣国である中国との貿易の拡大、しかもエネルギー源の多様化、さような立場から見て、この構想の実現ということは好ましいことである、かように考えておりまして、この実現のために政府のなし得ることがありますれば、積極的にこれを行い、協力してまいりたい、かように考えております。  それから、貿易収支の不均衡是正の早期解決のためにとるべき具体策いかん、こういうお話でございます。  この問題は、私は、議論の余地はない、これはもう景気拡大、内需拡大である、こういうふうに思うのであります。やはり日本経済の活況、その中で輸入が促進される、輸出が伸び悩むというような状態が出てきて初めて黒字問題は解決される、こういうふうに考えますので、先ほど申し上げましたように、何とかしてわが国の経済社会を活発化させる、そうしてその上に立って貿易収支の改善を図ってまいりたい、かように考えておるのであります。  また、円高問題、これに触れられまして、輸出関連の中小企業の救済対策はどうかというお話でございますが、私は特にこの問題につきましては意を用いておるのであります。  中小企業は、全体として非常に苦しい立場にある。その中で円高によりまして中小の輸出業者が非常に苦しい立場に立たれる、これはダブルパンチのようなかっこうになりますので、通産省に対しましてその対策に遺憾なきをもう前々から注意し、指導をいたしておるわけでありまして、ただいまのところといたしますと、政府系金融機関、これを活用する、また特に中小企業倒産対策緊急融資、これを推進する、また、私は特に日本銀行に依頼いたしまして、この関係で非常に窮屈な状態が出てくるというようなものがありましたならば、時を移さず対処してもらいたいということを求めておる次第でございます。まあしかし、この中小企業問題は、これは非常にむずかしい問題でありますので、私どもは、今後とも鋭意この対策を強化してまいりたい、かように考えております。  また、石油備蓄のために抜本的な対策をとれというお話でありますが、石油の備蓄は八十日分の備蓄を今年度において実現するということを考えておるわけでございますが、また来年度におきましては、さらにそれを増強しなければならない、そして五十四年度末には九十日分の備蓄を保有をいたしたい、そういうふうに考えておる次第でございます。これを進めるための新しい方式につきましては、十分検討いたしてまいりたい、かように考えております。  次に、原子力政策の基本的姿勢についての所信を求めるというお話でございますが、わが国は、もう申し上げるまでもございませんけれども、いまエネルギー源を主として石油に依存しておるのでありますが、この体制は、これはもうどうしても改善をしなければならない、かように考えておるのであります。この石油依存体制からの脱却、そういうことを考えますと、まあいろいろのことが考えられるのでありまするけれども、特にこれはもう原子力エネルギーへの転換を強力に進めるというほかはないのじゃないか、さように考えておるのであります。これは安全の問題とか、あるいは地域社会との調整の問題とか、いろいろ問題がありまするけれども、これは強力に推し進めてまいりたい、かように考えております。  また、これに関連いたしまして、日米原子力交渉、これに対する基本的な姿勢はどうか、こういうお話でございまするけれども、わが国は、これは申し上げるまでもありませんけれども、非核三原則、これをもう堅持いたしておる国でございます。わが国が原子力の平和利用をするということになりましても、これが兵器化するというような心配を、どこの国の方におかれましてもされる必要はない、かように考えておるわけであります。しかし、アメリカ側は核の不拡散ということを非常に神経質に考えておる。そのアメリカの核不拡散についての配慮とわが国のそのような姿勢との間に私は調整は必ずできる、かように考えておるのでありまして、使用済み核燃料の再処理につきましては、その基本的な姿勢をアメリカに対しまして強力に進めてまいりたい、かように考えておるのであります。私は、そういう方向でこの問題は処理される、かように見通しておるわけであります。  省エネルギーに関する強力かつ実効ある対策が必要であると思うがどうか、こういうお話でございますが、これはもう御説のとおりでございます。ただ少し——私はこの問題、大いに宣伝でありますとか、省エネルギー施策の必要性についてのPRには努めております。おりまするけれども、いま景気政策が非常に重要な問題になっておる。そういう景気政策との調整ということも頭のすみっこでは私は考えておるのでありまして、景気が軌道に乗るということになりますれば、省エネルギー政策、これは強力に打ち出していかなければならぬ問題である、かように思うのであります。  また、過剰米の作付転換、そういうことにつきましての御提言でございますが、米の過剰状況があるのに対しまして、反面におきましては、麦、大豆、飼料などの生産の停滞という問題があるわけであります。総合的な食糧自給力の向上のため、米から他の作物への転換が重要課題になってきておる、かように考えておるのでありまして、そういう見地に立ちまして、転作奨励措置の強化、また畑作を重点とする土地基盤の整備、また国内生産の不足する農作物の技術、経営の改善、米と他の農作物との相対価格関係の是正、食管制度運営の改善等々の施策を強力に進めてまいりたい、かように考えております。  行政改革を本当に進める決意があるのかというような御所見でございますが、いま政府部内におきまして、行政機構の問題、それから定員の問題、特殊法人の問題、審議会の問題、補助金の問題、行政事務の問題、この六つの分野に分けまして検討をいたしておるのです。定員の問題、審議会、補助金、行政事務、これは事務的な積み上げでかなりの原案ができるわけでございます。けれども、行政機構は中央、地方にわたるわけでございますが、これをどういうふうに処置するかということは、事務的な検討の中から出てまいりません。私は、これは政治的な判断を下さなければならぬ問題である、こういうふうに考えます。そういう判断を下す前に、私は、この問題につきましては各党各派の御意見も篤と承ってみたい、かように考えるのであります。慎重に、しかしながら、これは確固たる決意をもってこの問題には取り組む、かようなことを最後お答え申し上げまして、終わりといたします。(拍手)     —————————————
  9. 保利茂

    議長保利茂君) 正木良明君。     〔正木良明君登壇
  10. 正木良明

    ○正木良明君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、今日、きわめて憂慮すべき事態にあるわが国の経済運営に対する福田内閣の姿勢について、包括的に言及し、その後に、具体的課題について私どもの提案を交えて質問をいたすものであります。(拍手)  総理、あなたは参議院選挙戦を通じて、五十二年度の実質経済成長率を六・七%にするのは内外への公約であり、それが実現できない心配が出てきたら必要な手を打つ、と国民に公約してこられました。が、しかし、現在すでに本年度後半の日本経済総理の言う心配が出てきていることは、経済専門家の共通した予測であります。  総理、あなたが躍起となっておられる景気浮揚への施策に対して、その効果が遅々としてあらわれてこない原因は一体何でありましょうか。  それは、本来経済財政運営の発想を根本的に転換しなければならなかったにもかかわらず、従来のまま、しかも単年度限りの場当たり的不況対策に終始してきたのが第一であります。  その第二は、ことしよりも来年、来年よりも再来年の景気、それが一体どうなるのか、こういう国民生活企業の経営にとって一番関心事である先行きの見通し、すなわち、日本経済の新しい展望が全く示されないでいるところに、福田内閣基本的な誤りがあることを私はまず指摘したいのであります。(拍手)  経済学は一面心理学と言われるように、経済動向は国民企業の心理的動向によって大きく左右されるものであります。すなわち、政治が、とりわけ政府がいま直ちに果たさねばならない責任は、日本経済の確かな展望を示し、国民の暮らしに対する不安と企業経営の不安を、希望へと変える手だての第一歩を直ちに踏み出すことにあるからにほかなりません。  しかし、総理、あなたの所信表明は、時間にしてわずか九分、しかもその中身たるや、現下のわが国が抱える問題解決の方途を示すには、大変失礼ながら、余りにもお粗末であったと言わざるを得ません。  内需拡大策としての公共事業のいわゆる前倒しも、本年度工事契約の成約率五二%と報告されておりますが、一向に建設資材の在庫調整が進んでいないのはなぜか。公共事業による景気刺激についてどのような見通しに立っているのか承りたいのであります。したがって、このような先行きの見通しの困難から民間設備投資の誘発にはつながっておりません。  現下の不況を打開する確かな道は、日本が新しい経済の路線を進むこと以外にありません。その新しい経済路線は、高度成長、輸出至上路線の反省の上に日本自体の中で景気回復する内需主導型の手だてを探ることであります。そして、生産生活の両面から国民に希望と自信を持たすべく、少なくとも向こう三年間の経済計画並びに財政計画と責任ある経済展望をまずはっきりと示すことであります。  総理、私どもはこの立場から次のことを提案申し上げたい。  私は、当面の不況打開から日本経済を安定にと導く政策の中軸を生活関連社会資本充実に置き、生活関連社会資本整備中期計画と中期予算計画を組み、実行に移すことであります。  現在、わが国の社会資本を欧米先進諸国の水準に到達させるためには、およそ数百兆円の事業が必要でありましょう。その実行は、中期展望に立つ不況打開のための内需主導型経済への転換となり得るとともに、国民福祉充実と経済成長を一体化した新しい発想であることから、国際社会からの日本経済に対する厳しい要請にもこたえ得る唯一の道であると私は確信を持って福田内閣に申し上げたいのであります。(拍手)また、これは中小企業部門の官公需を増大することにもなります。  そして、同時に必要なことは、強力な地価安定対策とともに、現在、公共投資経済効果を著しく削減している用地費に対しては、一定要件を定め、原則として十年程度の分割償還とする交付公債をもってそれに充てるなど、日本経済の転換のために、国民に深刻な理解と協力を求め、大胆にこれを実行すべきであると私どもは考えるものであります。  この計画の大綱については、去る七月六日に公明党の政策として発表しておりますので、省略させていただきますが、この一連の提案について、総理の御所見を承りたいのであります。  なお、近々に公定歩合の引き下げを考えているのか。その際の預貯金利子の引き下げを連動させるのか。私は、庶民大衆の生活自衛的預貯金金利の引き下げという犠牲の上での貸出金利引き下げには反対であります。  新しい経済体制を築く上で、国民生活に安心と活力を与えることは不可欠の要素であります。  不況の深刻化とともに、社会的不公正の是正、また産業・企業間、官民間の格差に対する国民の不満は、生活実感を通じて充満いたしております。いまこそ私は、「乏しきを憂えず等しからざるを憂う」という政治の原点に立ち返るべきであると考えるものであります。  したがって、為政者が国民の不安と不満の根底にあるものをくみ上げ、それと取り組む真摯な姿勢を示すならば、国民の不安と不満は、必ずや安心と信頼に変わり、共通の自覚に立つ協力と活力を生み出すものであると確信するものであります。  その意味から私は、提案を含めて総理の所信をお伺いしたい。  その一つは、税制改革と行政改革の問題であります。この両者は、戦後、わが国の再建から今日まで三分の一世紀の間に積み上げられてきたものであり、とりわけ高度成長期の十年間に積み上げられた体制は、国の内外を通じた歴史的変革の潮流の中で、総体的に改革を迫られている問題であります。  その基本は、税制における所得再配分機能を高めることであり、同時に、高度成長期の豊かな税収の中で、世界にその類例を見ないほど乱発された租税特別措置をここで総整理し、減速経済時代にふさわしい体制を整えることであります。  そのため、当面改革すべき課題は、個人所得税の低所得者層を中心とした課税最低限の大幅引き上げと、高額所得者、とりわけ資産所得者の課税負担をふやし、所得再配分の機能を整備すること、あわせて、高度成長のために法人留保を豊富にしてきた現行法人関係税制の総洗い直しを徹底して行うことであります。  これは、本年の一兆円減税問題をめぐる政府自民党野党交渉の結果、その実行を約束されたものであり、私は、総理にこの問題に対する決意を確認しておきたいのであります。  さて、現在、財界では、設備投資推進のため、投資減税創設の要望が高まっております。これは明らかに法人税の減税であり、新しい租税特別措置の創設であります。しかし、すでにエネルギー、耐久消費財、流通などの部門では、五十一年度において二十二兆円、国民生産の一五%を占める、世界的に見てきわめて高い水準の設備投資が行われてまいりました。反面、素材部門である重化学工業分野においては、過剰設備を抱え、新たに投資する可能性は、投資コストと収益の関係から見ても、そのめどさえ立たないのが実態であります。したがって、私は、投資減税景気対策として設備投資の促進に必ずしも結びつかないと考えるものであります。  新しい租税特別措置は、先ほど申し上げた税制改革、さらに省エネルギー対策、構造不況産業対策を含めた産業構造の転換という大きな課題と取り組んだ上で、しかも、国民経済的に見てよほど重要性を持たない限り創設すべきでないと私は申し上げたいが、総理の御所見を承りたいと思います。(拍手)  総理不況打開と減速時代の中で、民間企業はあらゆるむだを省き、経営効率化の努力をいたしております。これに対し、行政の側では、巨額の国債発行による赤字財政の中で、歳出の整理削減を何一つ実行していない。減速時代の今日、多くの国民は、官民格差を解消し、社会的公正確保に何ら動こうとしない怠慢きわまる政府の姿勢に不満をつのらせております。(拍手)  時代の変化によって、不要不急部門の廃止と新しい行政需要部門への人員の有効な配置を基本とし、ロッキード疑獄を生むもとにさえなってきた国の許認可事業の整理、公社、公団等の特殊法人の整理や中央省庁の行政運営体系の整備、合理化に基づく統廃合、さらに各種審議会の整備、また、中央集権的な行財政の地方分権型への移行等を計画的に明示することが要求されております。  総理、行政改革は、不況打開とともに、福田内閣の二大公約でありますが、何を改革の基本とし、いかなる効果をねらい、どう改革なさろうとするのか、その構想を率直にお開かせを願いたいのであります。(拍手)  さらに、国の内外市場の発展的変遷の中で、繊維などの構造不況業種の発生は、歴史的に見ても免れないと解するものでありますが、高度成長から減速低成長へと急転する中で、これからの業種の苦境たるや、深刻そのものであります。その対策についての基本方針を明示していただきたい。  同時に、増大の一途を示す中小企業倒産は、その企業とともに、わが国労働人口の七八%を占め、しかも、未組織労働者である従業員生活を深刻な不安に陥れているのであります。この現状に対処するため、中小企業倒産関連防止保険の創設、下請代金支払い遅延防止法の改正とその運用強化は急務であります。  さらに、構造不況業種、産業構造転換の過程で、失業者の増大が予測されておりますが、失業対策並びに労働時間の先進工業国水準への移行による雇用体制整備について、この際、総理は所信を明らかにすべきであると思いますが、いかがでありますか。  次に、国民生活の不安を解消する観点から、消費者物価高騰を主導している公共料金について、生活必需サービス最低保障、受益者負担、所得応能負担の三原則のもとに、国民の家計から見た公共料金の総合的見直しをし、国民福祉料金体系をつくる必要があると考えます。  最近の消費者米価の九・八%の値上げは消費者物価へのはね返り〇・三%程度と説明されております。しかし、ある新聞が、「この言い方は、雪山の上から石を投げて、なだれを起こしておいて、おれの投げたのは石っころだけだとうそぶくのに似ている」と言いましたが、まさにそのとおりであります。(拍手)公共料金の値上げが他の物価値上げを誘い出す効果が大きいことから、まさに慎重に対処すべきであります。  さらに、円高時代に入り、その為替差益消費者への還元をどのように具体的に行おうとしているのか、見解を承りたいのであります。  また、年金制度について、すべての国民の老後の生活保障確保する基本年金制度を、年金税の創設を裏づけとして創設し、現行年金制度と組み合わせたいわゆる二階建て年金制度をつくるべきであります。  さらに、医療保険負担と給付格差を是正し、国民が等しく医療保障を受けられるために、とりあえず被用者保険と地域保険の二系列に統合することを具体的に行うべきことを提案するものであります。  これら三つの提案について、総理の御所見を承りたい。(拍手)  さて、エネルギー問題の重要性は、石油なしには一日とて暮らせない国民生活日本経済の上に、重大な問題を提起いたしております。しかしながら、国民一般の感覚としては、一九八〇年代危機説も遠い未来の問題としか映らないのが実感であろうと思います。  しかし、石油に代替するエネルギーの開発と節約型の産業構造への転換、あわせて節約型生活様式の確立は急務であります。  しかも、そのいずれもが国民協力なしには実現は不可能でありましょう。なかんずく、原子力発電は、核燃料の再利用問題を含め、その安全性について国民の不安感は見過ごすわけにはまいりません。したがって、原子力発電に対する政府の取り組みはきわめて重要であり、その基本は、国民の現在と未来に不安を与えないことであります。  総理政府はあくまでも原子力基本法の自主・民主・公開の原則に立って、その安全性の確認に全力を注がねばなりません。その立場から、私どもは、行政権限と充実した審議機能を持つ規制委員会の設置と、その機能を国民の側から利用し、国民の納得のもとに原子力発電とその境域の安全性を確保すべきであると提案するものであります。  この体制の確立とエネルギー節約に対する国民協力こそきわめて重要であると考えますが、これに対する総理の所見を具体的に述べていただきたいのであります。  以上、私は、当面する内政問題を重点的かつ国民立場から質問いたしましたが、政府が予定しておられる九月の臨時国会における昭和五十二年度補正予算案、並びに現在各省庁で準備しつつある五十三年度予算案に対する福田内閣の施政の中に質問に対する真の答えがあり、あすのわが国の方向を決するものとして国民は注目をいたしております。  したがって、総理、あなたは予算案の編成権を持つ内閣責任者として、この際、補正予算基本的方針を明らかにされたい。  あわせて、本年の重要問題であった日ソ漁業交渉の被害処理としてきわめて緊急性のある減船補償等に関する特別措置、この法制化、及び漁業離職者等救済のための臨時措置の法制化を強く要求し、その用意がおありかどうか承りたいと思います。  昭和五十三年度予算案編成については、編成権を持つ内閣はもとより、全政党が国民期待を担い、全力を込めてその期待にこたえなければなりません。そのために、私は、さきに申し上げた生活関連中期予算を組み入れることを要求するとともに、政府が次の臨時国会で、予算編成方針を事前に国会審議の中心に置くべきことを提案するものであります。(拍手)  これらの提案について、総理の御答弁を願うものであります。  最後に、日本外交が当面している二、三の問題について、福田内閣の所信をただしたいと思います。  総理、まず、日中間の最大の懸案である平和友好条約問題であります。  日中復交満五年を迎えようとしている現在、条約締結の見通しは総理所信表明でもあいまいであります。私どもは、福田内閣発足以来の総理の日中問題に対する見解の変転にはいささか理解に苦しむものであります。特に、参議院選直前の、「日中に取り組む暇がない」との発言は、言語道断であります。中国ソ連の対立を相互に牽制する道具立てとして利用すべきでない、これは私が総理に明確に申し上げておきたいのであります。  総理、あなたは日本外交責任者として、あくまでも自立的外交方針を堅持すべきであります。日中平和友好条約は、一九七二年の日中共同声明を忠実に履行する立場において、反覇権条項の本文明記を含め、早期締結を行うべきであると考えるが、その決意がおありになるかどうか、もしありとするならば、具体的なスケジュールについてお示しをいただきたいのであります。  次に、金炯旭KCIA部長のアメリカ議会における金大中事件に関する証言は、韓国当局による主権侵害の疑いを裏づける重大なもので、証言の信憑性に疑問があるとして片づけられる性質のものではありません。政府は、真相究明に取り組むつもりはあるのかどうか。  あわせて、金炯旭氏が述べている韓国からの政治献金問題、ソウル地下鉄建設にかかわる疑惑に対しても究明を行い、日韓癒着の不明朗な疑惑を一掃すべきだと思うのでありますが、総理見解を示していただきたい。(拍手)  さらに、他のアジア諸国との関係もわが国外交にとってきわめて重要であることは、改めて申し上げるまでもありません。総理ASEAN諸国訪問は結構なことでありますが、その前提となるこれら諸国との関係を今後どのように位置づけ、進めようとされるのか、私は、その基本姿勢総理に伺いたい。  基本姿勢も明確でない経済援助政策、海外日本企業のあり方など、これまでの方法には根本的な再検討が余儀なくされております。特に、場当たり的な外交ではなく、アジアの平和と安定に対する長期的な展望と、わが国の果たすべき役割りを明確にしたアジア平和外交政策の確立こそ急務であると思うのでありますが、この点に対する総理見解を承りたい。  以上、私は、わが国が当面している諸問題の中から、幾つかの重点にしぼって福田総理に質問をいたしましたが、総理責任ある誠実な答弁を要求いたしまして、代表質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣福田赳夫登壇
  11. 福田赳夫

    内閣総理大臣福田赳夫君) まず、経済問題についてのお尋ねでございます。また、御意見を交えてのお尋ねでございますが、特に、今後の長期にわたっての経済展望を示せ、こういうお話であり、また、経済運営のかなめは、これは内需の拡大ではないか、そこに置くべきである、国民生活、そういうことに立脚して内需を大福に拡大すべし、これを中心としての経済運営をやっていけ、また、貸し出しの金利引き下げ、これを行うのかどうか、これからさらに検討するのかどうかというようなお尋ね、また、投資減税についての見解、また、五十二年度補正の美本的な考え方、さような各般の角度からの経済問題についてのお尋ねでございます。  私は、お話のとおり、この長期展望を国民が持つということは非常に大事だと思うのです。そういう立場から、政府におきましては、中期経済計画、これを国民にお示しをいたしておる、こういうわけでありまして、今後、私は、もう資源・エネルギー有限のこの時代において、国民が高度成長時代のことを考えまして、夢よもう一度というような考え方になったとすれば、それはできないことである、こう申し上げざるを得ないのであります。  しかし、資源・エネルギー有限時代でありますから、これは資源・エネルギーについて慎重な配慮をしなければならぬ時代になってきておる。そういうことになりますると、成長の高さ、これはなるべく低い方がいいんです、実際は。しかし、日本社会の活力ということを考えますると、そう低いところに置くわけにはいかない。その低い成長であるべしという要請、高い成長であるべきという要請、その接点をどこに求めるかということが問題でございまするが、私は、今後しばらくの問は大体六%成長、その辺を目途として経済運営をしていかなければならぬ、そういう角度から国民に対しまして、しばしばこれからの展望ということにつきましては申し上げておるのです。また、それは詳細な資料といたしまして、五十年代前期五カ年計画においても示しておるとおりでございます。もちろん、そのときどきの国際情勢等によりまして紆余曲折はありまするけれども、基本的には、あの前期五カ年計画の線で日本社会運営しなければならないものである、かように私は考えております。  また、内需拡大経済運営中心とすべし、また、それは国民生活ということに立脚しての内需拡大でなければならぬというようなお話でございまするが、私はそう思います。思いまするけれども、それだけでいくわけにいかない。同時に、これは国際収支のことを考えなければならぬ。また、インフレを起こすというようなことがあってはならぬ、これも考えなければならぬ。インフレを起こさないで、そして国際収支においても壁に突き当たらないで、そしてわが国の社会が安定的に運営される、内需拡大という問題がその間におきまして非常に大事な位置を占めるであろうということにつきましては、正木さんと私は考えを同じゅういたします。  また、貸出金利引き下げを今後も行うのか、こういうお話でございますが、貸出金利は、公定歩合の引き下げに伴って、いまどんどん引き下げられつつあるわけでありまして、この傾向は今後ともさらに推し進めてまいりたい、かように考えます。  またさらに、公定歩合そのものを下げるかどうかということになりますると、これは日本銀行の問題でありますので、ここで私が意見を申し述べることは差し控えさせていただきます。  預貯金金利の連動につきましては、公定歩合の引き下げ、これは日本銀行がどうするかという問題にかかわるわけでありまするから、この段階お答えいたすこと、これまた差し控えさしていただきたいのであります。  また、生活関連の社会資本を充実する、そういう際におきまして、用地購入には交付公債を使ったらどうか、こういうような御提言でございまするけれども、交付公債といえどもこれは公債なんです。これは公債全体として、経済秩序に悪い影響があるかどうかというような観点の中で処理されなければならぬ問題であり、交付公債だから公債の枠外だというふうには考えられませんと同時に、交付公債だからといって、さあこれを受け取ってくださいといった場合のその受け取り側の感触、それなんかを考えまするときに、そう簡単に結論を出すことは私はできないであろう、こういうふうに思います。  さらに、投資減税につきましての見解を示せというお話でございますが、先ほどもどなたかにお答えをしたのです。投資減税というのは、これは財源がそれだけ要る。それだけの財源を使って、さあ景気対策だという際に、効率的な使い方であるかどうかということも考えなきゃならぬ。  また同時に、私は、投資減税景気対策上、力がない、全然ないとは、こうは申し上げませんけれども、しかし、いまの問題は設備過剰なんです。設備過剰なものだから投資意欲というものが起こってこない。そういう状態において減税をするというようなことにして、果たして設備投資意欲を刺激することになるのかならないのかというような問題もあろうかと思うのです。  この問題につきましては、特別措置整理というような段階の今日といたしまして、私は、これは慎重に考えなければならぬ問題である、かように考えておるのであります。  それから、五十二年度の補正につきましての基本的な考え方を示せ、こういうお話でございまするが、これは先ほどるる申し上げたとおりであります。八月の動きを見て、そしてわが国が内外の情勢に対処するためにどういう経済運営をしなければならぬか、そういう立場から、補正が必要であるかどうか、補正が必要であればどういう内容のものにすべきかということを八月末の時点において構想してみたい、かように考えておる次第でございます。  五十三年度予算において、税制の不公正是正、租税特別措置の全面的見直しを行え、こういう御所見を交えての御質問でございますが、税のこの種の問題は、五十二年度予算御審議の過程におきまして与野党間でいろいろ御論議のあったところであります。あの御論議を踏まえまして、私はこの問題に対処してまいりたい、かように申し上げます。  さらに、行政改革についての見解を示せというお話でございます。先ほども申し上げましたが、この行政改革に関する基本的な考え方は、どうも私、正木さんと同じようでございます。時代が非常に変わってきた、同時に、低成長時代が迫ろうとしておる、そういう際に、やはり国民もあるいは企業も、また政府、地方公共団体もみんな姿勢を変えなければならぬ、新しい時代に取り組むべき新しい姿勢が打ち出されなければならぬ、こういうふうに考えるわけでございます。そういう中におきまして、政府は率先して姿勢の転換を行う、また低成長時代に対しましてなるべく財政負担を重からしめないという配慮をする、私は政府の大きなこれは責任問題である、かように考えておるのであります。  いま、政府部内で行政機構の問題、定員管理の問題、特殊法人の問題、審議会の問題、補助金の問題、行政事務の問題等を検討いたしております。結論を出す前に各党各派の御意見も篤と承ってみたい、かように考えるのでございまするけれども、そういう趣旨でこの行政改革は行いますので、ぜひ各党各派におきましても御協力賜らんことをお願い申し上げる次第でございます。  次に、構造不況対策につきまして御所見を交えてのお話でございまするけれども、この構造不況問題、これがいま不況感というものを非常にあおっておるというふうに私は見ておるのであります。なるほど経済全体としては上昇、いわゆるGNPベースですね、成長の問題として経済をとらえるときには、これは上昇過程にあるのです。しかしながら、個別の企業をとってみますると、なかなか好況感というものが出てこない。特に不況業種というものがある。これは御指摘のような構造不況業種でございますが、この不況業種に対しましては、これは全体的な景気上昇政策をとる、それと同時に、並行して不況業種対策をとらなければならぬ、こういうふうに考えております。  不況業種対策といたしましては、どうしても大体が設備過剰なんです。その過剰設備をどうするかという問題があります。しかし、同時に緊急対策がある。いま構造対策をとるその過程におきまして息を引き取るというような企業も出てきかねないような状態でございます。そういう緊急の事態に対しましてどういうふうに対処するかという問題があるのであります。やはりこれは価格カルテル、いま不況業種で出しておるものがありますけれども、とにかくカルテルの問題が一つあるのです。それから同時に、これは緊急対策としての政府金融、これについての問題があるわけでありまして、それらの緊急、恒久二つの面をにらみながら構造不況業種に対する施策を進めておる最中でございます。  また、その際起きるところの失業対策につきましては、これも十分配慮しておるわけでございまするけれども、すでに御承知のように、平電炉あるいは繊維などの不況業種につきましては、雇用調整給付金制度の対象業種として指定をいたしておるわけでありまして、これら業種からの離職者に対しましては、必要に応じまして雇用保険の給付日数を延長する、そういうこともできるわけでありますし、また、十月一日から新しく発足いたしまする雇用安定資金制度、これによりまして事前の対策、これに遺憾なきを期してまいりたい、かように考えておる次第でございます。  それから、関連倒産の問題につきましては、これは先ほど申し上げました景気全体をよくする、こういう問題がありまするけれども、同時に、その間におきまして政府中小企業金融の積極的な活用、また連鎖倒産を防止するための対策、そういうものに特段の配慮をするとともに、特に下請代金の支払い遅延、そういう問題につき幸して政府として目を光らさなければならぬじゃないか、さように考えておるのでございます。  下請代金支払遅延等防止法を改正せよというようなお話でありまするけれども、当面現行法の厳正な運用で対処し得る、かように考えております。  公共料金につきまして、公明党から前々から生活必需サービス最低保障、受益者負担、所得応能負担ということを言われておるわけでありまするけれども、私は前々から、これも繰り返して申し上げておるのですが、公共料金は受益者負担を中心として考えなければならない、かように考えるのでありまして、この考え方を変える考えはいたしておりません。  所得の階層なんかに応じまして公共料金が一々違うというようなこと、これは私は、とても実際問題としてもできませんし、国民の受ける感触といたしましてもいかがであろうか、こういうふうに思うわけでありまして、そういう角度の問題は、これは社会保障政策の範疇の問題として処理すべき問題である、かように考えておるのであります。  それから、年金制度につきまして、これを統合して、二階建て年金制度を創設せよ、あるいは医療保険制度につきまして、これも二系列に統合せよ、こういう御所見が述べられましたが、この年金制度につきましても、あるいは医療保険制度につきましても、これをどういうふうに合理化するかということにつきましては、いま検討中でございます。この水準自体はかなり日本は高い水準に来ておる、そういうふうな認識でございまするが、制度としてこれを合理化、近代化するためにはどうするかということの検討をいたしてみたいと考えておる次第でございます。  次に、エネルギー問題についてのお尋ねでございます。これにつきましては先ほどもるる申し上げたところでございまするけれども、わが国は何といっても資源・エネルギーに乏しい国なんです。そういう立場を踏まえますると、このエネルギー問題というのは格段の重みを持ってくるわけでございます。いまエネルギー源というものの大部分を石油に依存しておる、この状況から何とか早く脱却しなければならぬ、かように考えておりまして、今後原子力の発電につきまして特に重点を置いた施策を進めたい。  原子力発電と言いますると、これはもう何といっても安全の問題が前提の問題になりまするけれども、この安全の問題につきましては特に配慮しなければならぬ一ただいま国会にも安全委員会の設置についてお願いしておりまするが、速やかに御審議のほどをお願いしたいと、かように感ずる次第でございます。  さらに、五十三年度予算の編成方針を、まあ九月、十月ごろ召集されると言われておるところの臨時国会においてこれを審議せよ、こういう御所見でございますが、私は、五十三年度予算の編成に当たりましては、前広に各党各派の御意見を承りたいと、かように考えております。御協力のほどをお願い申し上げたいのでございまするけれども、九月、十月ごろの段階で来年度の予算の編成の方針なんというのは一とてもまだ出てきません。五十三年度は、もう申し上げるまでもありませんけれども、五十三年の四月から始まるわけなんです。それに最も近い時点において、内外の動き等をよく見なければならぬという必要もありますので、ことしの九月、十月の段階で五十三年度の予算をどうするかということは、ごく大局的な見方の御論議としては理解はできまするけれども、いわゆる予算編成方針をどうするんだというようながっちりした構えの問題としては、妥当ではないんじゃないかというような感じがいたしておるのであります。  北洋漁業の減船補償対策、離職者対策を示せというお話でございますが、これも先ほど申し上げたとおりでございまして、緊急を要するところの減船漁業者に対する救済金額は、去る七月の二十七日にもう決定をいたしております。内容は、政府交付金と農林公庫からの共補償融資でありますけれども、そのほかにも不要漁船の処分に伴う助成措置なんかも加えております。  離職者対策といたしましては、まだこれは、六月の基本方針閣議決定、この具体化ができておりませんけれども、ただいま離職者等に対する対策につきましてきめ細かに検討中でございます。  次に、日中平和友好条約についてのお尋ねでございまするけれども、私は先ほども明確に申し上げたんです。日中平和友好条約、これは双方とも満足し得る状態においてなるべく早く締結したいということで目下鋭意努力中である、かように申し上げましたが、私は、日中関係というものは、日中共同声明、あれをお互いに忠実に遵守するということでいいんじゃないかと思うのです。その共同声明に書いてあるのです、平和友好条約締結すると。私は、この問題の処理はさような姿勢をもって臨んでいきたい、かように考えておるところでございますが、その日程、わが方の条約案の内容等につきましては、まだここで申し上げる段階に至っておりません。  金大中事件についての政府の方針いかんというお話でございますが、これもしばしば申し上げているとおりでありまして、金大中事件はすでに外交的に決着を見ておるが、わが国捜査当局は引き続いて捜査を進めておるというところでございます。  最近の米国議会での本事件に関する金炯旭韓国中央情報部長の証言が関心を呼んでおりまするが、政府といたしましては、同証言のもととなっておる金在権氏に対しまして、直接、任意の事情聴取を行うべく、現在米国政府とその可能性について話し合いをしておるのであります。  先ほども申し上げましたが、金炯旭氏という人は八年前にもう部長職をやめておるんですよ。その人の言動で一々対処するというわけにはまいりません。  それから、ASEAN訪問についてのお話でございまするけれども、私は、先ほども申し上げましたが、もう、みやげをぶら下げていってそれをばらまいて帰るというような、そういう姿勢はとりません。私は、アジア諸国の首脳、これとお目にかかりまするけれども、本当によき隣人といいますか、よき友人として、ひとつアジアをともどもに繁栄させ、また平和でやっていくようにしようじゃないかと、本当に心と心が触れ合うようなつき合いのできる国柄というものをこれらの国々との間に建設していきたい、かように考えておるのでありまして、そのような考え方、これをぜひ私はスタートさせてみたい、かように考えておる次第でございます。もちろん、この物の面の話し合いがないというわけじゃございませんけれども、この物の面の話はこれは心と心との触れ合いのその中で消化されるべき問題である、かように考えておるのであります。  以上、お答えを申し上げた次第でございます。(拍手)     —————————————
  12. 保利茂

    議長保利茂君) 塚本三郎君。     〔議長退席、副議長着席〕     〔塚本三郎君登壇
  13. 塚本三郎

    ○塚本三郎君 私は、民社党を代表して、当面する重要な問題、すなわち、行政機構の改革、エネルギー問題、そして第三には景気回復の三点について質問いたします。  その第一は、行政機構の改革であります。  政治の要諦は、貧しきを嘆かず、等しからざるを嘆くと言われております。すなわち、国民不況中小企業の破産、倒産が相次ぎ、ほとんどの企業赤字で体質が衰弱しているとき、お役人様だけが国民の税金の上に安住している姿は余りにも不似合いであります。民間企業がいかにしてぜい肉をとり、身を軽くしてこの不況を切り抜けるかに腐心している今日、国民の納める税金の上にどっかとあぐらをかく官僚群の姿は、そのまま政治不信の象徴になりましょう。親方日の丸の行政機構に安住し、戦時中にもまさる多額の赤字国債を発行しながら、ただ現状に甘んじております。  福田総理、一体国家とは何でありましょうか。政府とは、役所とは、公共企業とは何でありましょうか。それは自民党の下部機構でもなければ、官僚それ自体のものでも決してないと信じます。  この際、政府は、民間企業と同じように苦労を分かち合う立場に立ち、ぜひとも行政機構の改革を断行すべしと要求いたします。(拍手)  政府はこれまで、各種調査会、審議会等による改革案を提示してまいりましたが、結局、官僚主導の保守政権のもとで全く実行されないまま今日に至ったのであります。いまこそ政治の力で世論の期待にこたえるべき実行のときと信じ、次のごとき具体的提言を行い、総理の決意と実行を求めます。  その第一は、中央官庁の廃止統合であります。すなわち、国土庁、北海道開発庁、沖繩開発庁等の省庁の廃止統合を行うことであります。  その第二は、中央官庁の地方ブロック出先機関は現業庁を除いて廃止することを原則にせよと主張いたします。  たとえば、通産省の出先たる通産局、農林省の出先たる農政局、大蔵省の出先たる財務局、建設省の出先たる建設局等々、ほとんどの各省が有する出先は、国税、郵政、営林、海上保安等の現業部門を除いては思い切って廃止したらいかがでありましよう。  思えば、いまから四十二年前、すなわち昭和十年に存在した地方出先機関は現業庁のみでありました。それが昭和十二年以降、戦時行政の必要上各省すべて出先機関を設け、戦争終了後も廃止せず、地方自治体が独立したのにかかわらずその所管事務は減っておりません。これら地方ブロックの出先機関は、その事務がほとんど中央並びに地方自治体に移管が可能なものであります。  特に最近では、主要府県庁の部長人事が、その自治体から離れて中央官庁の人事に主導権が移されている部門が目立ち、それでなお、地方通産局や農政局や医務局や建設局等を大々的に設置することの意義はどこにあるのでございましょうか。むしろそのことによって、地方自治体の自主性を害すること及び事務の重複のマイナスさえ来していると言いたいのであります。  改革の第三点は、地方公務員についてであります。  教育、警察、消防等の職員を除く府県、市町村の一般職員の数は、昭和三十五年に比べ、約百十万と二倍に膨張しております。職員の人件費は自治体財政に重圧となり、事業費より事務費で予算の大部分を使い果たす自治体も少なくないのであります。したがいまして、これが抜本的改革の必要を提言いたします。  各自治体は、口で主権在民を叫びながら、その内実は官尊民卑の古い因襲を悪用しており、自称革新自治体にしてなおその弊を脱しておりません。  改革の第四は、公団、事業団を含め、特殊法人の廃止統合によって、思い切って整理を断行することであります。  宅地開発公団、鉄道建設公団等は特にその対象とすべきでありましょう。また、行政管理庁が約束をしてまいった特殊法人の整理についても、その方針を貫いていただきたい。  その際、特に天下り官僚の高給と退職金の二重、三重取りは何としてでも廃止して、庶民感情、社会通念に合致した方策をとっていただかなければなりません。(拍手)  改革の第五は、国の補助金の整理についてであります。  補助金は、年率二〇%の増加率で伸びてまいりました。そして、四年間で二倍になり、その金額は十兆円に近く、国家予算のうち、一般会計の三分の一を占めるに至っています。日本の行政がひもつき行政と言われ、地方自治体は三分の一自治と自嘲的に叫ばれております。これは、国にとっても、地方自治体にとってもマイナスであります。しかも、予算編成期には、民族大移動と言われるごとく陳情団が上京してこられる姿は、日本政治特有の悪弊と化しております。(拍手)  この際、全面的にこの補助金の見直しを行い、その基礎となっている法律を改廃して、まず昭和五十三年度には一〇%の減額を目標に作業を行うべきであると提言いたします。  以上五項目を実施することは、政府、行政機関の当然の責任であり、福田総理の決意と誠意ある御答弁を求めます。  次は、エネルギー問題について御質問いたします。  遠い先の話でありながら今日ただいま着手しておかなければ間に合わないのがエネルギー問題であります。  日本のエネルギー事情は、申し上げるまでもなく海外依存度が一〇〇%に近い石油によって全体の七三%の供給を受けております。しかも、石油は十年後には供給不安が決定的と言われております。石油依存型の消費構造を改めようともせず、さればといって、代替エネルギーの開発もその緒についておりません。すでに電力会社は、石油供給が続いたとしても、発電施設の行き詰まりから五、六年先には停電もやむなしと警告を発しております。しかも、それは石油が今日のごとく十分に供給されたとしての話であります。だが、油の問題を中心にしてエネルギー問題の第一のピークは、八〇年代後半、すなわち、これから八年先には確実にやってくると言われております。だが、それにかわる原子力発電は着手して完成までに八年かかり、地熱利用は六年を要し、太陽熱また、各家庭に実用化されるまでには数年を要すると専門家は叫んでおります。さすれば、エネルギー問題は、決して遠い将来の問題ではなく、本日ただいま着手しておかなければなりません。エネルギー問題が目下の政治課題であり、また経済の安全保障という見地から、直ちに対策を樹立しなければなりません。  米国は、石油ショック以前から一バレル五ドルの高い自国の油を使い、西ドイツ及びイギリスが、発電のために高い自国の石炭を使って、これが資源の保護に少なからぬ代償を払ってきたことを注目すべきであります。スエズ動乱というエネルギー供給の断絶の苦い経験を得た結果、払うべき代償の必要を彼ら国民自身が自覚をしているからではないでしょうか。  わが国も、いまこそエネルギー確保と代替エネルギー開発のためには、ある程度の代償を負担し、五年先、十年先も大丈夫だと胸を張って答えられる施策を政府が打ち出していただくことが必要であります。  わが党は、次のごとき具体策をこの見地に立って提言いたします。  その第一は、まずエネルギーを節約する方途についてであります。  重化学工業中心の多消費型産業は、エネルギー供給不安及び公害問題の両面から、根本的に転換を余儀なくされております。また、生活面でも大量消費が使い捨ての風潮をつくり、消費率増が年一二%を超えていることは、欧米の年率四、五%に比べ、三倍にもなっております。産業転換を積極的に指導し、国民にも節約方を徹底することが第一の課題であります。  第二は、代替エネルギーの開発であります。  原子力開発利用、LNGの大量安定供給、水力資源の再開発、石炭の積極的活用等がそれであります。  特にこの際、核エネルギー及び新エネルギーについてお尋ねいたします。  核エネルギーについては、今日対米交渉が暗礁に乗り上げ、つまり東海村再処理工場の運転について、具体的にどのような方式で臨まんとされるのか。恐らく八月中旬にはアメリカから提案されると予想されるウラン、プルトニウムの混合方式について、これを政府は拒否するのか容認するのか、この場で明らかにされたいのであります。(拍手)  また、新エネルギーの開発について強調しなければなりません。すなわち、地球上に無限に存在する太陽熱、地熱など、自然エネルギーを最大限に活用する技術開発及び普及体制の整備促進をすべきであります。  その第三は、備蓄体制の強化であります。  石油備蓄の必要性は、四十八年のオイルショックに見られるごとく、世界各国政治問題となっております。とりわけわが国は、この備蓄が経済の安全保障となるだけではなく、ドルの支払いがメジャーである米英に渡り、貿易不均衡の是正に役立ち、また一面、造船不況日本産業への景気回復に与える効果も忘れてはなりません。現在の備蓄量七十五日を九十日から百二十日に高めるよう施策を講ずべきゆえんであります。  第四は、エネルギー安定供給のための国際協調の推進であります。  当面最も必要なことは、資源国との友好であります。政府は、今日まで場当たり的対応によって、相手国との摩擦や誤解を生じてまいりました。このような現状を打開し、資源国を含む関係諸国との友好と信頼の増進は、エネルギー危機に対処する政府のなさねばならぬ要件であります。  かくして、町のおすし屋さんでさえ、氷を置かせないで、全部冷凍フリーザーになっております。停電が四時間続けば、お魚は全部腐ってしまいます。国民生活は、もはやそんなふうにエネルギーの中に組み込まれてしまっております。  しかるに、五年後には停電もやむなしと言われながら、政府に何ら具体策が打たれていない事態考えるとき、エネルギー問題は焦眉の急と自覚して、それが打開のために政府、否、全政治家責任考えて取り組むことを提言し、総理の所信をただしたいのであります。(拍手)  質問の第三は、景気回復であります。  不況の風はすでに四年目に入り、企業体質の衰えは、もはや耐えがたいところまで来ております。産業人は全くやる気をなくして先の見通しが立たず、出口を見つけ出せずにおります。  政府景気回復は、ツーレート、ツースモールと言われております。すなわち、余りにもテンポが遅過ぎる、そして余りにも小出しにすぎません。したがって、今度こそ本気で景気回復に乗り出していただきたい。国民がはっきり認識できるほどの施策を示していただかなければなりません。  私は、そのような立場に立って、いま直ちに必要な具体策についてお尋ねいたします。  その第一は、まず大型の補正予算を組み、公共事業をさらにせき立てることであります。  恐らく補正予算案は九月後半にならねばできぬようでありますが、ならば、その規模と時日を明示することによって国民に心理的効果を与えるためにも、本日この場で具体的中身を明示していただき、準備をしていただくことが大切であります。  景気対策の第二は、大幅な住宅建設であります。  日本国民は、戦後三十年の今日、およそ生活に必要なものはそれなりに満たされつつありますが、なお住宅だけは諸外国に比べ、最も貧弱であります。幸い、国民住宅金融公庫融資の希望が予定の二倍に達していることを考えるとき、大胆にその予算をふやし、国民期待にこたえることは景気回復の最短距離だと信じます。政府は、本年度二十四万戸のうち七万戸の残り部分を直ちに貸し付けるとともに、希望にこたえるため、追加融資を拡大して、建設戸数をふやすべきであります。  また、住宅建設で問題なのは、公益施設を開発当事者に負担せしめ、最終的には購買者をして過重な負担を強いていることであります。公益施設は、国や地方自治体が税金でこれを設置すべきものであります。国は地方自治体に対して、法律にはない法外な要求を厳に禁止せしめていただきたい。  景気回復の第三は、住宅環境の開発整備であります。  国民の大半が海岸に密集して、住居に最も適していると思われる日本列島の中央部は、全く過疎のままの状態に置かれております。かつて、田中前総理は、日本列島改造を提唱して、狂乱物価を招き、一億国民をして総不動産屋たらしめたことを思い起こさずにはおられません。  私どもの見解を申し上げるならば、日本列島改造そのものが悪いのではなく、その時期と順序を間違えられたことが問題でありましょう。幸いいまは、不動産売買に対しては厳格な土地規制と税法が適用されて、当時とは様相が一変し、かつ、景気が冷え過ぎている現状からして、いまこそ新たなる日本列島の改造に政府が着手すべきときだと思います。  景気回復の第四は、備蓄制度の充実と拡大であります。  特に石油備蓄の問題は、エネルギー対策として提言いたしてまいりましたが、建設資材たる鉄鋼及び合板についても大幅に取り入れるべきでありましよう。  特に鉄鋼については、その原料のすべてを他国に依存しております。一定の量を平均して購入し、生産してこそ企業として成り立つところでありますが、販売が思うに任せず、その半分を輸出に依存し、その結果、米国、ECより激しい非難を受けております。さりとて、稼働率をこれ以上下げれば、コストが高くなるだけではなく、それ以上に日本に送り出している資源国の経済に致命的影響を与えつつあります。したがって、半製品、すなわちビレットやインゴットの備蓄制度を確立することによって、産業に欠くことのできない鉄鋼が、日本経済のみならず、世界経済の安定供給国としての地位を確保することができ、これはひとり日本経済景気回復の問題にとどまらず、国際的に重要な課題であるからであります。  今日の経済下では、高炉メーカーを除く鉄鋼、繊維、木材合板、合成化学等、一軒として採算に合うメーカーはないというべき状態にあります。それはもはや企業努力の限界をはるかに超えておるのであります。国際競争力に十分耐え得る力を有しながら軒並み倒産赤字企業であるということは、まさに政治不況と言わなければなりません。(拍手)  過日、USスチールの会長は、日本企業がダンピングによって米国市場を強奪し、その結果、米国鉄鋼業界の利益は五分の一に切り下げられたと、怒りの発表をしております。さりとて、その分だけ日本企業がもうけたのではありません。日本企業もまた損をしております。  かくして、日本経済は欧米では国際的孤児になる心配すらあります。それもこれも国内需要だけでは成り立っていかぬという長期不況現実があるからであります。  きのう、私のところに来られた設計屋さんの言葉ですが、すなわち、伊勢神宮の貴賓室造営の一番札が十五億円で大手会社が落としました。神宮当局の予算は何とその倍以上の三十四億円でありました。驚いたことに、二番札も十六億円でありました。いずれも予算の半額以下であります。それでも建設会社は仕事を欲しがっております。結局、その損は全部下請、孫請に押しつけ、一軒として採算の合う企業はなくされております。もちろん、設計会社そのものも、もはや最初の見積もりの半分で落札されたのでは、資材計算そのものまで信用をなくしておりますと自嘲しておりました。  総理、これが日本企業の実態だとお気づきになりませんか。景気回復がいかに重要な政治課題になっているかを深刻に受けとめていただきたい。  最後に、小棒業界から価格カルテルの申請が公取に出されております。  四十九年には一トン当たり十万円を超えていた品物が、今日、資材、人件費が五〇%以上の値上がりを来していて、なお市場価格は半分の五万円を低迷しております。業界は五万二千円の価格カルテルを認めてほしいと叫んでおります。ちなみに国際価格は七万円前後であります。採算を度外視し、倒産を免れるための資金繰りのためにこんなありさまになっておるのであります。通産省が躍起になっても、需要の側に立つ建設省はきわめて冷ややかにこれをながめておるではありませんか。  これら中小企業にあっては、構造改善、不況カルテル、そして最後には価格カルテルも緊急避難として認めることもやむを得ないと早く断を下していただく必要があり、それが政治でありましょう。生産業界が死んで、工場がとまり、品薄になって、やがて市況を回復させるのは決して政治ではないと申し上げて、私の質問を終わらさしていただきます。(拍手)     〔内閣総理大臣福田赳夫登壇
  14. 福田赳夫

    内閣総理大臣福田赳夫君) まず、行政機構の改革の問題についてのお尋ねでございますが、私は、いま塚本さんからお話がありましたように、この問題はもう時世が大変変わってきた、そういう際におきまして、政府が取り組まなければならない責任問題である、かように考えておるのであります。  ただいま中央機構、地方機構をどういうふうにするか、また特殊法人についてどういう改革をするか、定員の管理、審議会、補助金、行政事務、そういうような各般の面にわたりまして検討をいたしております。  しかし、中央の機構、地方の機構、これをどういうふうにするか、こういうことになりますると、これは政治的な大きな決断を要する問題でございます。その決断をしなければならない、かように考えておりますが、その決断をするに先立ちまして、各党各派の御意見を篤と承りたい、かように考えておる次第でございます。  なお、塚本さんにおかれましては、地方公務員につきましても言及をされておる一わけであります。御指摘のような問題もありますので、これは自治大臣を通じまして、地方の自治団体に対しましても中央の動きに準じた措置をしていただきたい、かように考えておる次第でございます。  また、公団、事業団等のいわゆる特殊法人、これにつきましては、いま御指摘がありましたが、理事職なんかにある人が転々と移りかわる、そういう際における処遇をどう改革するのかというようなことまで含めまして考えてみたい、かように考えておる次第でございます。  それから、補助金の整理、これも言うべくしてなかなかむずかしい問題でありまするけれども、今日わが国の財政が非常な窮迫した状態になってきておる、しかも世の中がずいぶん移り変わりつつあるのであります。そういう際に補助金を全面的に見直すということも、これももう絶対に必要である、かように考えるのでありまして、いま御提言がありましたけれども、気持ちといたしましては、そのくらいの気持ちをもちましてこの問題の処理に当たりたい、かように考える次第でございます。  次に、エネルギーの問題につきましていろいろ御提言があったわけでございまするが、お話しのように、このエネルギー問題というものは、今後わが国が取り組むべき最大の問題になってきておる、そういう認識でございます。  そういう中で、電源開発、これなんかも、いま個別の電源につきまして、問題点を個別に詰めまして、積極的に処理を急いでおる次第でございまするが、経済運営景気対策という面から見ましても、この問題はこの際早急に進めなければならない、かように考えておる次第でございます。  このエネルギー問題につきまして、塚本さんから幾つかの御提案があるわけでございますが、一つは省エネルギーを推進せよ、これは先ほども申し上げましたが、そのとおりに考えております。  また、代替エネルギーの開発につきましては、特に原子力エネルギー、これを重視しなければなりませんけれども、その他におきましても、LNGでありますとか、あるいは石炭でありますとか、エネルギー源の多様化ということもまた同時に考えなければならない問題である、かように考えております。  備蓄については、御所見のとおり考えておるのでありまして、一層努力いたしたい、かように考えております。  なお、資源外交、これも御指摘のとおり非常に重要な問題でございます。消費国と資源保有国との関係、これはもうどうしても、世界全体としてのスケールにおきましてもそうでありまするけれども、その中でまた、わが国と資源保有国との関係の理解ある協調関係、これにつきましては特段の配慮をしていきたい、かように考えております。  また、核燃料再処理問題につきまして、いわゆる混合方式を受け入れるのか受け入れないのか、また、日米交渉が何か壁に突き当たっておるというようなお話でございます。ございまするが、日米交渉は壁に突き当たった、暗礁に乗り上げたという状態ではございません。私はアメリカの立場、これは理解できます。また、カーター大統領もわが日本国の立場をよく理解をいたしております。そういう関係から見まして、八月中旬以降のタイミングで両国の閣僚の会談、これが持たれることになっておりまするけれども、これは私は日米間で妥結ができる、こういうふうに考えております。  混合方式を採用するかどうか、こういう問題は、わが国自体が前から持っておる方式、これが望ましいわけではございまするけれども、いろんな提案がアメリカ側からも行われておるという状態でありますので、一概にこれが否定されなければならぬ、こういうふうには考えておらないのです。日米間でよく話し合って、双方の主張が相立つという形におけるところの決着を図りたい、かように考えておる次第でございます。  次に、景気対策の問題でございまするが、第一に、思い切って補正予算を早く出世、また、国会の審議に時間がかかるんなら、それを配慮して政府考え方をあらかじめ明らかにせい、こういうお話でございまするけれども、そのための準備をいたしておるわけでございます。八月中の経済の実態的な動きが一体どうなるか、これをよく見まして、どういう対策が必要であるか、そういう考え方が決まりましたならば、前広に国民にこれを披露する、こういうことにいたしたいと考えております。  住宅問題の重要性を非常に強調されましたが、私も、住宅というものは景気波及効果というものが非常に広い、そういう面で、景気対策としてはこれは重視すべきものであるということを常々考えておる次第でございます。そういう考え方のもとに公庫住宅、これの繰り上げ実施、これなんかを強力に進めておる次第でございまするが、もし追加的にこの景象対策を必要とする、財政的にそれが必要であるという際には、これは住宅並びに住宅環境の整備、そういうことを重視しなければならぬことは当然だ、かように考えておる次第でございます。  また、これに関連いたしまして塚本さんが、住宅環境整備の際、地方自治体の負担、これについて問題を提起されておりますが、これは住宅の団地をつくる企業がある。その企業が、いま大方、原則としてその環境といいますか、道路だとか下水だとかそういうものまでも受け持つような仕組みになっておりまするけれども、そのためにまた、つくった住宅が非常に高い家賃になるとか、あるいは高い価格になるとか、そういうようなことが指摘されておるわけでございます。そういうことにつきましては、それは全然業者が負担しないというわけにもまいりませんけれども、しかしながら、これが常識的妥当な範囲を超えた業者負担というようなことになって、国民に高い住宅を売りさばかなければならぬというようなことになりますことにつきましては、これは検討してみたい、かように考えておる次第でございます。  それから備蓄制度、石油の備蓄をこの際拡大する、石油ばかりでなくて鉄鋼、合板、いろいろ個別にこれを考えたらどうかというようなお話でございまするが、これはいわゆる景気対策というような見地からも、石油の備蓄を強力に進めるということも大事なことである、こういうふうに考えております。そういう方針でございます。  また、平電炉対策として、鉄鋼半製品の備蓄というようなお話でございますが、これはなお合板等の備蓄の問題とともに検討をさせていただきたい、かように考えます。  なお、最後になりますが、小棒のカルテルの取り扱いをどうするのか、事態は緊急である、早く結論を出せ、こういうお話でございますが、カルテルの問題は、これは政府の問題じゃないのです。これは公正取引委員会の問題なんです。私はこれに介入することは避けますけれども、私の希望といたしましては、非常に深刻な平電炉業界の実情から見まして、事業経営の容易でないものが続出しておるわけであります。そういう状態を踏まえまして、公正取引委員会が早急に結論を前向きの姿勢で出してくれることを期待いたしたい、かように考えます。(拍手)     —————————————
  15. 三宅正一

    ○副議長(三宅正一君) 工藤晃君。     〔工藤晃君登壇
  16. 工藤晃

    ○工藤晃君(共) 私は、日本共産党・革新共同を代表し、総理見解をただすものであります。  第一は、当面の経済政策についてであります。  最近の経済状況は、あらゆる点から見て、日本経済が深刻な構造的危機に陥っていることを示しております。したがって、この構造的危機を打開する政策をとるかどうか、ここに国民生活を守る上での根本問題があります。そして、補正予算のあり方にしろ、来年度予算のあり方にしろ、それらを定める際の前提もまた、この根本問題にはっきり答えることにあるのであります。  日本共産党は、この見地から「日本経済への提言」を発表し、この構造的危機を打開する経済再建五カ年計画の実行を提唱したわけであります。  第一、物価安定と結びつけて——ここは大変肝心なところであります。実質賃金上昇社会保障拡充により大衆の消費力、購買力を高めること、及び勤労者の住宅、下水道、学校など生活密着型公共投資優先投資の流れを変えること、これらを統一的に推し進めることによって、不況とインフレの同時解決を達成していく。  第二、農業、漁業の再建、自主的、総合的エネルギー政策の確立など、長期的対応としての構造政策も推し進めるなど、数字的試算の裏づけも丹念に行い、詳細で総合的な再建政策を示したのであります。(拍手)  総理、革新の側からこのような具体的な意義ある計画が提案されたのであります。政府は、いつまでも場当たり的なことを続けるのでなく、従来型経済政策を見直し、特に中期的、長期的展望を持って、国民本位経済再建政策を掘り下げて検討し、定めるべきではないでしょうか。見解を伺うものであります。(拍手)  ところで、財界は、参院選挙後、一大キャンペーンを繰り広げて、大企業本位の新たな景気刺激政策を政府要求しており、そこでは、赤字国債の増額を前提とした大型補正や大型プロジェクト中心公共投資の追加などが強く押し出されております。補正予算や来年度予算がこのような財界ペースの方向に流されることは、絶対にあってはなりません。(拍手)これからの予算の編成は、まず編成過程そのものを民主的に改めるべきであり、こうした民主化はまた、ロッキード疑獄や日韓腐敗事件の再発防止のために、絶対に必要なことであります。  政府は、来年度予算案の基本点に関する予算編成方針を早急に国会に報告し、国会で審議できるようにすると同時に、予算国民の声を広く反映できるよう、事前の公聴会を直ちに開くべきだと思いますが、総理見解を伺うものであります。(拍手)  総理は、所信表明演説で、「物価の安定は、国民生活安定の基礎である」と述べられたものの、物価を安定させるための具体的な計画も方策も何一つ示しておりません。かえって、政府は、消費者米価の九・八%引き上げを決め、また、国鉄運賃の法定制の事実上の廃止を企てるなど、無謀にも公共料金大幅引き上げ政策を推し進めているのであります。  わが党の「日本経済への提言」は、大型公共料金の暫時凍結、大企業の独占価格に対してカルテル価格の引き下げ命令などを含む独禁法の再改正、国会に強力な権限を持つ独占・多国籍企業委員会を設けること、通貨の総量規制などの新政策の実施を通じまして、五カ年計画で消費者物価上昇を二ないし三%まで下げるという具体的な物価安定計画を示したのであります。政府昭和五十年代前期経済計画で示した、最終年度六%以下といった目標設定は、この数字自体高過ぎる上に、達成する政策手段も示しておりません。物価安定の目標と政策手段とをあわせて明確にした物価安定計画を、これからの経済計画の一つの柱とすべきでありますが、所信をただすものであります。  物価安定のために、いま問題となっている円高傾向に対して適切な措置が求められております。すなわち、一方では、不況の深刻化を防ぐために、経済運営に自主性を打ち立て、この異常な円高傾向への歯どめを行うことが必要であります。もう一方では、物価安定のため、大企業に対して為替差益の吐き出しを徹底して、円高利益の国民への還元を行わせるべきであります。(拍手)たとえば、電力九社について、いまの一ドル二百六十五円が十二月まで続いたとしますと、年間差益は九百億円に達すると見られます。この莫大な差益は、家庭用電力料金の値下げや農事用電力料金のすべての農業用への適用など、国民に還元させるべきだと考えますが、総理、答弁を求めるものであります。(拍手)  第二は、二百海里及び千島問題であります。  二百海里時代の影響が日本の漁業の全分野に及びつつあるいま、政府は、従来の場当たり的な消極外交を改めることが強く求められております。総理、資源の共同調査や増殖などの共同管理方式の採用も積極的に提案し、水産省も設置して積極的な漁業外交を確立すべきではありませんか。また、漁業関係者には共補償ではなく万全の補償措置をとらなければなりませんが、所信をただすものであります。(拍手)  また、ソ日漁業協定交渉において千島問題がどう扱われているか、詳しい報告を求めるものであります。  全千島返還は当然でありますが、北海道の一部である歯舞、色丹については速やかな返還を実現すべきであります。総理、そのために、返還後これら二島には非軍事的措置を保障することをこの場で表明する考えはありませんか。  また、全千島返還のために、南千島は千島にあらずといった虚構はもう捨てて、千島を放棄したサンフランシスコ条約第二条の該当項目を廃棄し、返還交渉の国際法上の根拠を確立すべきでありますが、総理の所見を伺うものであります。(拍手)  その第三は、金大中事件についてであります。  総理は、去る二月二十二日、参院予算委員会でわが党の上田議員の質問に、捜査の成り行き次第では政治的決着をつけ直さなければならぬと答えられました。金炯旭証言によってKCIAの計画的犯行であることがここまで明白となったいま、金大中事件を徹底して究明せよということは国民全体の世論となっていますが、総理に一体その意思があるのかどうか、答弁を求めるものであります。(拍手)  さらに、金大中氏の原状回復日本政府責任であります。金大中夫人は、昨年七月九日、当時の三木首相あて手紙で、「こうした日本の無責任さによって、金大中は獄中で生命の危機にさらされているといっても過言ではありません」、このように述べられているではありませんか。  福田内閣にいま問われていることは、日本の主権と自由と人権を大事にするのかどうか、金大中氏を葬り去ろうとする朴政権のファッショ的犯行への事実上の加担を続けるのかどうか、この問題なのであります。(拍手)かつて、西ドイツ政府が、KCIAによる十七名の留学生拉致事件に対し、全員の原状回復を行わせたように、対韓援助即時中止など断固とした措置もとり、金大中氏の原状回復を直ちに行わせるべきであります。(拍手国民金大中氏の前に、総理の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)  第四は、安保条約、核兵器禁止についてであります。  安保条約発効後二十五年の今日、安保条約を廃棄し、非同盟中立の大道をとることがまさに現実的な選択となっていることが、今日いよいよ明らかであります。安保なくしてベトナム侵略戦争なしと言えるほど、日本は深くこの戦争に巻き込まれましたし、加害者の役割りも果たしました。そして、いま、日米韓軍事一体化のもと、導火線は朝鮮と結ばれて、絶対に繰り返してはならないことを繰り返す危険が続いているのであります。  また、いま大きな危機となったエネルギー問題も、輸入原油のほとんどは発展途上国産出のものであり、アメリカとの軍事同盟、大国同盟の力をかりて発展途上国に力をかけつつエネルギー資源を確保しようとする道は、もはや通用しないのであります。(拍手)非同盟中立の立場に立ち、公平、平等の新しい国際経済秩序確立のため積極的に振る舞う大道を選ぶことこそ、長期的展望を持ったエネルギー問題の解決をもたらす道なのであります。(拍手)  総理、眼を開いて世界を見るならば、非同盟中立こそ世界の大勢であります。非同盟諸国会議の参加国は国連加盟国の約六割、八十六カ国に及びます。巨大な工業生産力を持つ日本が非同盟中立の道をとるならば、世界の平和と進歩を築くすばらしい転換の大きな力として貢献し得ることは確実なのであります。(拍手ASEAN諸国を訪問しようとする総理は、非同盟中立のこの流れをどのように認識されているのか、所見をただすものであります。  いまアメリカのカーター政権は、韓国からの米地上軍撤退に伴い、日本責任分担の強化を求め、沖繩基地を初めとする在日米軍基地強化のアメリカの戦略と結びつけて、米軍、自衛隊の共同作戦体制を強化することや、米軍駐留費の日本負担分をふやすことなど、露骨に求めております。総理、この要請を受け入れるつもりなのかどうか、明確な答弁を求めるものであります。(拍手)  来年は、非同盟中立諸国の要請が実を結び、国連軍縮特別総会が開かれます。この特別総会に向かって、総理は、地上から核兵器をなくすため、核兵器全面禁止国際協定実現のため努力する決意を表明されるかどうか。  また、アメリカのカーター政権が残虐兵器の開発をエスカレートして中性子爆弾の開発に着手したことに対して、強く抗議し、その中止を要求すべきでありますが、総理の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)  最後に、選挙制度についてであります。  七月二十日付読売新聞は、自民党選挙制度調査会の正副会長会議が、参院全国区の改革とともに、衆院の小選挙区制導入とも本格的に取り組む方針を決めたことを伝えております。四割の得票で七割も八割も議席を占められるという小選挙区制の導入は、まさに議会制民主主義の破壊であり、ファシズムへの接近にほかなりません。  私は、最後総理に、総裁としてこのような小選挙区制導入は行わないということをはっきり表明することを求めて、質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣福田赳夫登壇
  17. 福田赳夫

    内閣総理大臣福田赳夫君) 共産党の「日本経済への提言」に掲げる物価安定計画を実行する意思はないか、このようなお話でございますが、これは私どもは自由経済体制の中で経済の安定を求めておる、こういうわけでありまして、共産党のような考え方、それをとっていくという考え方は持っておりません。  ただ、結果におきまして、たとえば重要な物価につきましては最初の二年間は五ないし六%、五年後には二ないし三%に下げるというようなことをおっしゃりますが、それはそんなことができればいいなとは思いまするけれども、なかなかさようなわけにはいかないだろう、私はかように考えるのであります。賃金もかなりこれからも上がるでしょうし、また海外の資源、それの価格がどうなるかというようなことを考えますと、まあ二、三%の消費者物価安定、こういうことはなかなかむずかしいのではないか、私はそのように考えます。  また、五十三年度予算編成方針を早く明らかにしたらどうだ、そして、それを国会で審議せよというお話でございまするけれども、私は、各党各派の五十三年度予算に対する御意見、これは篤と拝承いたしたい、かように考えております。しかし、最後に決めるのは政府自由民主党でございます。この編成の責任政府は十分尽くさなければならぬ立場にある、かように考えておる次第でございます。  また、石油など輸入物資につきまして為替差益消費者に還元せよというお話でございまするけれども、この問題は私も考え方としては異存はございません。現に卸売物価はもうほとんど横ばいのような状態に動いてきておる、それも円高、これについてその影響がかなり出てきておる、こういうふうに見るのであります。  なお、消費者物価につきましても、卸売物価がそういうような動きになりますれば、自然、月日はかかりまするけれども、消費者価格にも影響をしてくる。特に、主要な消費財につきましては、その影響がどういうふうにあらわれておるかということをよく調査し、そして、その円高の影響がこれに反映するように努めてまいりたい、かように考えております。  サンフランシスコ平和条約の千局列島放棄条項を廃棄せよ、これは共産党の前々からの御意見でございまするけれども、わが国はサンフランシスコ平和条約によりまして、得撫以北の千島列島に対する権利、権原を放棄しておるわけなのであります。この平和条約を改定するということは、これはまたなかなか容易なことじゃない、言うべくして望み得べきことでもないわけでございます。私どもは、平和条約の条章に従いまして千島列島問題は処理すべきである、かように考えております。  また、ソ日漁業交渉の進捗状況いかん、領土問題の取り扱いいかん、こういうお話でございますが、先ほどこの交渉の状況につきましては申し上げたとおりでございます。  また、この領土との関連の問題につきましては、これはわが国の領土についての主張、これを傷つけることなく決定しなければならぬ、さような方向でただいま交渉が進められております。  金大中事件、これを改めて考え直せというような御主張でございますが、これは政治的にもう決着のついた問題でございます。ただ、この問題が刑事事件としてどういうことになるかということにつきましては、これはただいま捜査当局が捜査中であります。もし、この捜査当局の捜査の結果、わが国の主権が侵害されておるというような事実が明確になるという際におきましては、この決着された金大中事件、これを考え直さなければならないというふうに考えておる次第でございます。  さらに、安保条約二十五年に当たり、非同盟中立の体制に移り変わるべきじゃないか、したがって、安保条約はこれを廃棄すべきじゃないかというようなお話でございますけれども、私どもは安保廃棄論はとりません。世界じゅうの国が本当に聖人君子、釈迦やキリストというような世の中になりますれば、これは一つのお考えであろうと思いまするけれども、そうでもない、今日の現実世界情勢の中で、安全保障について十分の配慮を尽くしておらぬという体制は、国民に対する責任を果たすゆえんではない、かように私は考えます。  また、在韓米地上軍撤退とあわせ、日本責任分担を重くする米政府要請に対する政府態度いかん、このようなお話でございますが、在韓米地上軍撤退との関連で米国政府からわが国の防衛責任分担を求められた事実は全然ありませんから、そのように御理解を願います。  また、わが国は、来年国際連合の特別総会が開かれる、そして、軍縮が論ぜられる、そういう際に、核兵器の一挙全面禁止協定締結するように主張すべきではないかというお話でございまするが、私は、平和国家、非核国家たるわが国とすると、終局的にはそこを目指していくべきものである、こういうふうに思うのです。カーター大統領との会談でも、私は明確にそのことを申し上げておるのです。しかし、具体的に現実の国際政治の問題とすると、一挙にそこまでいくというわけにはとてもいきません。そういう抽象的なことを申し上げるという立場をとることは妥当じゃないのです。現実的な問題とすると、全面的核実験の停止である、禁止である、こういうふうに思いますので、この方向につきましては、強力にこれを国際社会で進めてまいりたい、このように考えておるわけであります。  それからアメリカの中性子爆弾問題に関連してのお尋ねでございますけれども、事実関係が非常に不明確な点が多いわけであります。この問題だけを切り離して論ずることは適当ではないと考えますので、直ちに抗議する考え方はとりません。  また、最後に、自民党内で小選挙区制を進める動きがあるが、私の考え方はどうだ、こういうようなお話でありますけれども、そういう動きはございませんです。それは、私は、今度の参議院選挙の結果を顧みてみましても、選挙制度はどうしても改革を要すると思うのです。とにかく全国区の選挙制度なんかはどうしても改革しなければならぬ、こういうふうに思います。思いまするけれども、この選挙制度というものは、各党各派の利害に非常に関係する問題であります。したがいまして、多数党がこれを構想をいたしまして、そうしてこれを押しつける、こういう行き方は妥当ではない、やはり各党各派よく相談をいたしまして、そうして共同の土俵づくりであるという意識を持って決めていくことが妥当である、かように考えておるのであります。小選挙区制を掲げてこれをごり押しするというふうには考えておりません。(拍手)     —————————————
  18. 三宅正一

    ○副議長(三宅正一君) 田川誠一君。     〔田川誠一君登壇
  19. 田川誠一

    ○田川誠一君 私は、新自由クラブを代表して、総理所信表明に対して質問をいたします。  すでに指摘をされましたように、今度の所信表明は、当面解決を迫られている行政改革、エネルギー、教育など重要な課題について、何ら具体的な政策が示されておりません。一国の総理大臣の国政に臨む所信とは余りにもほど遠いものであったことを、はなはだ残念に思っております。  さて、福田さんは所信表明の中で、「今回の参議院選挙で示された国民期待願望を正しく、謙虚に受けとめる」と述べています。しかし、福田総理参議院選挙の際行った数々の発言の中には、所信表明で述べたとはまるで反対の聞き捨てできない内容が含まれておりますので、まずその真意をお伺いしたい。  福田さんは選挙中、「最近政治をおもちゃ遊びのように考える風潮になり、雨後のタケノコのように政党ができた」とか、「ワラは千本束ねても柱にならない」とか「いたけだかになっておられました。さらに福田さんは、「ロッキード総選挙与野党伯仲時代に入ったのは異例のことである、いまのような事態は放置できないので、適当な時期に解散し、与党の圧倒的体制を築きたい」とも発言しております。これは明らかに福田総理の真意は自民党の多数支配、一党支配こそ政局の安定をもたらすものであって、与野党伯仲のいまのような状況は政局の不安定の根源であるという本音を露呈したものであります。福田流の政局安定を実現させるためには衆議院の解散権までもてあそぼうとするものとも言えましょう。  こうした一連の発言は、総理が就任以来強調してきた「連帯協調」という言葉とはまことに矛盾したものであり、その裏に一党独裁を夢見る自民党の本音が隠されているとしか思えません。(拍手)「連帯協調」はいわばやむを得ない仮面にすぎないと思われます。  昨年暮れの衆議院総選挙の結果、与野党の議席数が接近しました。今度の参議院選挙でも、この伯仲度は一層強まりました。しかし、さきの通常国会では従来繰り返されてきた与野党対決の国会審議のパターンに少なからざる変化が見られてきたことは、福田さん、あなたもお気づきでございましょう。野党側もいたずらに反対のための反対をするようなことが次第に影をひそめてきましたし、政府与党野党側の意見に耳を傾けざるを得ないような傾向が出てきました。つまり、国会は各党が議論を出し合った後、何らかの合意点を探し出すという、憲政本来の姿に近づこうとする新しい芽が生まれてきたものと私たちは見ております。(拍手)これでも福田さんは政局不安定と言うのでありましょうか。  与党が絶対過半数を占めることが政局安定だと言っても、その内部から相次ぐ腐敗が噴き出たり、多数をかさに着た一党独裁的な思い上がりの姿勢が改められない限り、政局安定を期し得ないということは、過去の経験から見まして明らかではありませんか。(拍手)  最近の多党化は民意の反映であります。政党の数や与野党の比率だけで論ずるものではなく、国会話し合いの場であり、妥協の場であるという精神に徹することこそ真の政局安定につながると思いますが、いかがでございましょう。  次に、福田総理は、経済の問題について、「最大の課題経済運営である」と言っております。しかし、そこで言われているのは、これまでやってきた施策の羅列であって、結論的に言えば、政府のやってきた施策の効果を待ちたいと言っているにすぎません。一体、そんなことでいいのでしょうか。  私たちがいま非常に強い疑問を感じますのは、福田さんの経済に対する現状認識であります。  福田さんは、「景気は緩やかな回復基調にある」と言っています。確かにGNPで見る限り、その指標は少なくとも下がってはいないようです。しかし、求人倍率は〇・五三というように、三十年代以来見られなかった低い水準に落ち込んでいます。ある調査機関の調べによりますと、全上場会社の二一%の企業では、来春大学卒業者の採用を全くしないという結果が出ておりまして、若い人たちに大きな不安感を与えております。また、毎月の企業倒産は千五百件を超えています。そして、企業収益は、ことしの九月期の中間決算での減益が避けられないで、在庫調整はおくれ、六月の在庫率は昨年一月の水準まで逆戻りしており、企業の先行き見通しは冷え込んでおります。  このような事態が「回復基調」と言えるのでしょうか。それともそれは本心でなく、心ならずもそう言わざるを得ないということでしょうか。このままほうっておいたならば、中小企業、構造不況業種を中心企業整理は強行され、中高年齢層の雇用問題が重大な局面を迎えることは避けられなくなります。  日経連の桜田武会長は、「このままでは永久不況になる」と言っていましたが、この言葉は、経済界の前途に対する不安の念を端的に示すものと言っていいでしょう。特に構造不況産業だけでなく、勤労者はもちろん、北洋漁場から締め出される漁民を初め、これから予想される朝鮮半島や中国周辺海域を漁場とする水産業者は、ことし、来年は一体どうなるのか、前途に深刻な不安を抱いております。  このような時期にこそ、総理は、様子を見るといった官僚的な発想を捨てて、率直にできることとできないことをこの国会で明らかにすべきであります。  長期にわたる不況が高じてくれば、深刻な社会不安につながります。いまこれに歯どめをかける道は、財政の均衡にだけ目を奪われることなく、まさに緊急避難的な施策を実行に移すことがいま直ちに必要であると私たちは信じています。  私たちは、この際、思い切って相当規模の大型補正予算を編成すべきであると提案します。同時に、企業及び家計の金利負担を軽減し、設備や住宅投資への意欲を高めるための公定歩合の再々引き下げを実施する必要があります。また、中小企業の苦しい経営を改善するために、政府系金融機関の金利引き下げも必要です。不況に低迷する業種について、一体わが国の今後の産業構造をいかにすべきであるか、そのあるべき姿について明確にすべきであります。  そのような見通しに立って、きめ細かい構造改善のための施策、政府関係金融機関からの特別な金融面での手当て、不況カルテルの弾力的運営といった施策を早急に講ずるべきであると思われますが、これに対する総理の具体的なお答えを求めます。  総理は、近く東南アジア諸国連合歴訪の旅に出発されますが、酷暑の折、大変御苦労に存じます。一路平安を祈りますとともに、その成果を期待しております。  ここで一言、政府外交姿勢について反省を求め、お尋ねしたいことがあります。  わが国の外交には主体性がなく、国際問題に対処する対応力が非常に欠けていることは内外でも定評があります。このことが一部の国々の間に、日本は一体何を考えているのかわからないという不信感を持たせるようになっています。  日中平和友好条約の問題にしても、福田総理は、積極姿勢を示したかと思うと、次には急に慎重な姿勢に戻り、先ほども指摘がありましたように、はなはだしきは、「他の問題で、日中条約考える暇がない」と不謹慎なことをおっしゃるなど、行きつ戻りつの態度が相手国の感情を逆なでしているのではないでしょうか。福田さんは今度の演説の中でも、「日中関係は順調な発展を見せている」と言われましたが、日中正常化の直後に国会条約早期締結の決議が全会一致でなされました。また、前の内閣からどの総理も、日中共同声明を忠実に履行をすると何度も言明しているのに、すでに五年を経過してもいまだに平和友好条約が結ばれていない現状を見ますと、決して順調とは言えません。  総理は、日韓大陸棚条約の承認が国会で自然成立した後、「今度は日中の番だ」と言われました。そして「条約締結の環境づくりができた」とも言われました。日中関係に限らず、国と国との真の友好というものは、ただ安易なムードだけで実を結ぶものではありません。特にわが国と中国や朝鮮半島の民族との関係のように、過去数十年間不幸な関係にあった国々との友好発展というものは心と心の結びつき、つまり信頼関係を打ち立てていくことが大事な要素であります。  日中正常化以来、日中友好とか善隣友好とかいった言葉がしきりに飛び出してきますけれども、日本中国に対して、長年の間、物心両面からあれだけの被害を与えながら、賠償も払わず、反日デモにも遭わずに済んだという深刻な意味をずっしりと感じた人が一体どれだけいるでしょうか。世界の大勢が、中国を承認するとか、米中正常化という具体的な現象で騒ぎが起こると、敏感には反応しますけれども、静かな底流の中から教訓を読み取るということに欠けているような感じがしてなりません。(拍手)  こうした過去の歴史と教訓を胸に秘めてさえいれば、いま日中間に横たわる懸案の問題などは、一瞬のうちに解決できるであろうということを、福田さんは十分銘記すべきであります。(拍手)  条約締結のおくれの多くの原因は、相手国との問題よりも、福田さんの率いる与党自由民主党の合意が得られないところにあると私は見ているのです。(拍手)極言すれば、条約の成否は、福田総裁が日中のあるべき姿を真に理解し、ごく一部の無理解な人々を説得するなど、決断と強い指導力を発揮できるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。(拍手)これに対する総理の決意を伺っておきたいのであります。  もう一つは、在韓米地上軍撤退についての対応策を早急に樹立していくべきであります。福田さんは、この問題を「アメリカと韓国の問題である」と先ほども言っておりましたが、そんな人ごとのような言い方は無責任だと思います。アメリカの議会の議論を見ましても、アメリカは早晩わが国に対して軍事力の強化とか基地の自由使用などを迫ってくることが予想されます。国民政府から聞きたいのは、こうしたときに日本が一体どう対処していくのか、その確固とした方針を求めているのです。それを言わずに、人ごとのように片づける総理の言葉の裏には、こうした情勢を口実に、実はただ単に日本の軍事力強化をもくろむという腹が隠されているのではないか、そういう不安を招いてまいります。  ここで、総理自身のこの問題に対するお考えを明快にしていただきたい。  在韓米軍撤退の問題にわが国が対応するには、南北朝鮮の対話を促進するための環境づくりにわが国こそもっと積極的に協力することにあります。(拍手)このためには朝鮮民主主義人民共和国との交流を深めていくことであります。また、対中、対ソとの友好関係を維持することはもちろん、アジアの緊張緩和を促進するためにわが国が主導的役割りを果たしていくことをいまこそ考えていくべき時期であると思いますが、これに対する総理大臣の考えをお聞きしたい。(拍手)  私たちは、日ソ漁業交渉のときに見られましたように、筋道さえ立てば党派を超えて積極的に政府協力してまいります。わが国の国益と総合的な安全を守っていくには、お互いが小異を捨てて共同歩調をとっていくことにやぶさかでないことをここに申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣福田赳夫登壇
  20. 福田赳夫

    内閣総理大臣福田赳夫君) まず、私が政局の安定についてどういう考えを持っているのだ、こういうお尋ねでございますが、私は、田川さんが御指摘になっておるように、自由民主党による一党独裁という、そんな大それた考え方をしておるわけじゃないのです。私はかねて申し上げておるのでありますが、政界における心構えは「協調連帯」だ、こういうことでございますが、しかし、最後にこの日本国について責任をとる勢力は、私は過半数の体制を持っておることが望ましい、かように考えているのです。これが一番望ましい形である。私は、国民も、今度の参議院選挙で示されたあの結果を見まして、そう考えているのではないか、自由民主党中心とするところの政局の安定ということが国民の心にあったのじゃないか、さように受け取っておるわけであります。  それはいずれにいたしましても、とにかく私は、政局の安定につきましては、安定のもとにおきまして「協調連帯」、そういう姿勢だけはとり続けていきたい、かように考えておるのであります。  景気問題につきまして、思い切った補正予算を組めというようなお話、また金利の大幅な引き下げを実行せよというような御提言、いろいろありましたけれども、これらにつきましては、先ほど皆さんに申し上げたとおりの考え方でございます。  特に田川さんは、不況対策として構造不況、この問題をどう考えるかというようなお話でございます。これは先ほど申し上げましたが、当面の問題とその構造自体に対する問題と分けて考える必要がある。分けてと言いまするけれども、これはばらばらに行うのではありません。並行して行う必要があるわけであります。この構造問題につきましては、やはり各業種に共通しておる点は設備過剰問題であります。この問題にどういうふうに対処するか。それから当面の問題として共通しておるのは、やはりカルテルの弾力的運営、これも考えなければならぬ問題であるというふうに思いますが、同時に、これは政府関係の金融機関の働き、これに期待するところが非常に多いのであります。  とにかく、私は、いま田川さんが、現状認識について何か間違っているのだというような御指摘でありましたが、私はずっとこの日本経済を最も正確につかんでおる一人である、こういうふうに考えておるのであります。(拍手)とにかく三年半も続いた低成長の中でありまするから、大企業も相当くたびれてきた。特に力の弱い、小さい中小企業、零細企業、これの困窮というのは大変なものだ、こういうふうに考えておるのであります。  そういう中で一体何をするんだ、こういうと、大きく言いますると、国全体の経済上昇計画を立てなければならぬ。そればかりじゃないのです。同時に個別のいわゆる不況業種に対する対策、これを進めなければならぬ、こういうふうに考えておるのでありまして、十分正しい認識の上にこの経済運営に当たっておるというふうに御理解を願いたいのであります。  なおまた、外交につきまして、わが国の外交に主体性がないというようなお話でございますが、わが国は最も主体性を持った外交を進めておる、このように私は考えておるのであります。とにかく古今東西の歴史をひもときましても、経済力がある国は、どうしたって軍事大国になっていくのです。その道を選ばない、これは最もわが国として特色のある行き方である。私は、世界の国の新しいあり方、それをわが日本がとにかく実験過程に入っておると言っても支障がないくらいな行き方じゃないか。私は、外交姿勢に主体性がない、こういうような言動は全くいわれのないところである、かように考えるのであります。(拍手)  日中問題処理に対する私の考え方、これにつきましては先ほど来るる申し上げておるとおりでありまして、日中共同声明を忠実に実行する、お互いにそれを実行することが日中関係を円滑に処理する基本的な考え方でなければならぬ、こういうふうに申し上げたところでございまするけれども、この考え方のもとに、両国が満足し得るような状態でなるべく速やかに条約締結されるように一層の努力を払ってまいりたい、かように考えております。  また、在韓米地上軍撤退問題に対しまして、私が人ごとのように考えておるというふうなお話でございますが、そういうわけでもないのです。これは、基本的には、この問題は米韓間の問題であるから、ああすべきだ、こうすべきだというふうなかかわりはとりがたい問題であるけれども、しかし、朝鮮半島の平和ということはわが国の平和に非常に大きな関係がありますので、米地上軍の撤退がこの朝鮮半島の平和に影響をするようなことにつきましては、これを厳に慎んでもらいたい、こういう希望を米韓当局に申し上げておるわけでありまして、決して無関心でおるわけではございません。  また、最後に田川さんから、外交問題に限らず、いろいろ超党派で協議すべきことがあるじゃないかというお話ですが、そのお話は傾聴いたしました。私は、あくまでも「協調連帯」の精神をもって各党と対処してまいりたい、かように考えます。(拍手
  21. 三宅正一

    ○副議長(三宅正一君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  22. 三宅正一

    ○副議長(三宅正一君) 本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十九分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 福田  一君         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 渡辺美智雄君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  田中 龍夫君         運 輸 大 臣 田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 長谷川四郎君         自 治 大 臣 小川 平二君         国 務 大 臣 石原慎太郎君         国 務 大 臣 宇野 宗佑君         国 務 大 臣 倉成  正君         国 務 大 臣 園田  直君         国 務 大 臣 田澤 吉郎君         国 務 大 臣 西村 英一君         国 務 大 臣 藤田 正明君         国 務 大 臣 三原 朝雄君  出席政府委員         内閣官房副長官 塩川正十郎君         内閣法制局長官 真田 秀夫君      ————◇—————