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1977-09-14 第81回国会 衆議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年八月三日(水曜日)委員長の指名で、 次のとおり小委員及び小委員長を選任した。   税制及び税の執行に関する小委員       池田 行彦君    大石 千八君       鴨田 宗一君    後藤田正晴君       丹羽 久章君    村上 茂利君       村山 達雄君    保岡 興治君       大島  弘君    川口 大助君       只松 祐治君    貝沼 次郎君       宮地 正介君    高橋 高望君       荒木  宏君    永原  稔君   税制及び税の執行に関する小委員長                 保岡 興治君   金融及び証券に関する小委員       愛知 和男君    大石 千八君       後藤田正晴君    砂田 重民君       丹羽 久章君    野田  毅君       毛利 松平君    山崎武三郎君       佐藤 観樹君    沢田  広君       村山 喜一君    坂口  力君       宮地 正介君    永末 英一君       荒木  宏君    小林 正巳君   金融及び証券に関する小委員長                 野田  毅君   財政制度に関する小委員       愛知 和男君    小泉純一郎君       佐野 嘉吉君    砂田 重民君       林  大幹君    山崎武三郎君       山下 徳夫君    山中 貞則君       伊藤  茂君    池端 清一君       山田 耻目君    坂口  力君       宮地 正介君    永末 英一君       荒木  宏君    永原  稔君   財政制度に関する小委員長  小泉純一郎君   金融機関週休二日制に関する小委員       池田 行彦君    佐野 嘉吉君       林  大幹君    原田  憲君       村上 茂利君    村山 達雄君       山下 元利君    山下 徳夫君       伊藤  茂君    川崎 寛治君       山田 耻目君    貝沼 次郎君       坂口  力君    高橋 高望君       荒木  宏君    小林 正巳君   金融機関週休二日制に関する小委員長                 山下 元利————————————————————— 昭和五十二年九月十四日(水曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 小渕 恵三君    理事 小泉純一郎君 理事 山下 元利君    理事 佐藤 観樹君 理事 山田 耻目君    理事 坂口  力君       愛知 和男君    大石 千八君       鴨田 宗一君    林  大幹君       原田  憲君    毛利 松平君       山中 貞則君    渡部 恒三君       伊藤  茂君    池端 清一君       只松 祐治君    村山 喜一君       貝沼 次郎君    柴田 睦夫君       工藤  晃君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 坊  秀男君  委員外出席者         行政管理庁行政         管理局管理官  佐々木情夫君         大蔵大臣官房調         査企画課長   大竹 宏繁君         大蔵省主計局次         長       松下 康雄君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局次         長       副島 有年君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         大蔵省国際金融         局長      旦  弘昌君         国税庁長官   磯邊 律男君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      森永貞一郎君         参  考  人         (税制調査会会         長)      小倉 武一君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 委員の異動 九月十四日  辞任         補欠選任   山下 徳夫君     渡部 恒三君   荒木  宏君     柴田 睦夫君   永原  稔君     工藤  晃君 同日  辞任         補欠選任   渡部 恒三君     山下 徳夫君   柴田 睦夫君     荒木  宏君   工藤  晃君     永原  稔君     ————————————— 八月三日  一、有価証券取引税法の一部を改正する法律案   (村山喜一君外九名提出衆法第一四号)  二、法人税法の一部を改正する法律案村山喜   一君外九名提出衆法第一五号)  三、所得税法及び有価証券取引税法の一部を改   正する法律案坂口力君外四名提出衆法第   一八号)  四、土地増価税法案村山喜一君外九名提出、   衆法第一七号)  五、法人税法の一部を改正する法律案坂口力   君外四名提出衆法第一九号)  六、銀行法の一部を改正する法律案村山喜一   君外九名提出衆法第四三号)  七、貸金業法案坂口力君外三名提出衆法第   四九号)  八、国の会計に関する件  九、税制に関する件  一〇、関税に関する件  一一、金融に関する件  一二、証券取引に関する件  一三、外国為替に関する件  一四、国有財産に関する件  一五、専売事業に関する件  一六、印刷事業に関する件  一七、造幣事業に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計税制及び金融に関する件      ————◇—————
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  ただいま金融に関する件について、参考人として日本銀行総裁森永貞一郎君が御出席になられております。  森永参考人には御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。  これより質疑を行います。佐藤観樹君。
  3. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 きょうは総裁大変お忙しいところ大蔵委員会のために御出席いただきましてありがとうございます。大変短い時間ですので端的にお伺いしておきます。  一番最初に大変辛らつな質問になるかと思うのですが、今度の公定歩合引き下げが決まったのが九月三日の土曜日の午後五時の日銀政策委員会だ。それの午前中にはきょう決まることはないのだ。公定歩合、円の切り下げ、切り上げの問題はうそをついていいという中身の問題でありますから、その意味で昼にはそういうことはないのだと言われることはそれなりのカムフラージュもあったかもしれません。しかし外から見てみますと、やはり政府総合経済政策に引きずられたという感がしてならぬわけであります。  そこでちょっと抽象的な言葉になるかもしれませんが、果たして日銀中立性というものはいまやどうなったのだろうか。それは総裁総理大臣の任命ということもある。あるいはいまこれだけ経済が複雑化してき、為替にしてもフロート制がとられる、あるいはスタグフレーシヨンの経済情勢となりますと、金融財政一体化ということが政策遂行の上に非常に重要になってくる。ある意味ではそういう面からも考えていかなければならぬと思うのです。片面で四十七年、四十八年のあの過剰流動性を出したときの苦い経験をわれわれは持っているわけです。そういうことから言いますと、前の佐々本日銀総裁のときにあんなに公定歩合を下げなければあるいは準備率をあれだけ下げなければ、あの過剰流動性というのは出てこなかったのではないかということを考えますと、もう一度日銀中立性というものを考え直さなければいかぬのではないか、そういう疑問に非常に駆られるのでございます。と申しますのは、後からお伺いをしますように、今度の公定歩合引き下げによって実体経済の中にどれだけ効果があるのだろうかということと関連をいたしまして非常に疑問に思うわけであります。  日銀中立性というのはこれから財政制度審議会の中でも御討議になると思いますけれども、今度の引き下げあるいは三月、四月の引き下げを見ましても、政府経済政策に同調する、歩調を合わせる。どうもその意味では日銀が引っ張られているのじゃないかというふうに見ざるを得ないわけなんです。その点、日銀中立性ということは総裁の立場でどういうふうに考えていらっしゃるのか、その辺からまずお伺いしておきたいと思うのです。
  4. 森永貞一郎

    森永参考人 大変率直なお尋ねでございますので、私も率直に申し上げます。  事公定歩合に関します限り、私就任後、今回七回目でございますが、政府から公定歩合を下げたらどうかというようなことで私どもの方がそれに従ったということは一度もございません。私の方からこれこれしかじかの理由に基づきこういうふうにしたいと思うがというようなことでイニシアチブをとっておりますのは常に日本銀行申しますか私でございまして、そのことは天下に胸を張って申し上げる次第でございます。今回の場合にそれではいついかなる時期ごろから大蔵省との間に相談を始めてどうこうというようなことが申し上げられればその辺の誤解も恐らくお解けになるのじゃないかと思いますけれども、その辺のところは実は私どもの、あるいは大蔵省というのが驥尾に付するところでございまして、その辺の経過まで一々申し上げるわけにはまいりません。結論としては事公定歩合に関します限りは大蔵省でなくて常に日本銀行の方がイニシアチブをとって事が成就をしておるということだけをはっきりと申し上げておきたいと存じます。
  5. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そのあたりが、今度の例をとってみても、余り時間がありませんからそう細かいことは言いませんが、九月三日の土曜日夕方五時にどうしても決めなければいかぬことだったのかどうなのかということを見ますと、どうもその辺のところが釈然としないということが残るのでありますが、この問題は全体の金融財政政策の中で非常に大きな問題ですので、また改めて日銀中立性という問題についてはお伺いをしていきたいと思うのであります。  さてそこで、日銀独自の判断でいまの経済情勢に対して公定歩合を下げられたということでありますけれども、果たしてこれが効果があるのかどうなのか。いまの景気が悪い不況要因というのは、従来のような循環的な不況ではなくて、日本経済の持っている構造的な不況にかなり原因があると私は思うのです。そういうことから言いまして、いまこれだけ金融が緩和した中で公定歩合引き下げて、なおかつこれから預貯金金利引き下げるということが連動して必ず起こるわけでありますけれども、これだけ国民的な大きな負担を強いてなおかつ公定歩合引き下げをすることによって、果たしていまの日本経済というものが景気が回復していくのだろうかということにつきましては、私たち非常に疑問を持つのです。むしろそれだけあまねく広く国民負担ばかりさせて、まあ計算の方法によっていろいろありますけれども預貯金のうち年間大体一万五千円ぐらいの金利はふっ飛ぶという状況の中で、果たして公定歩合引き下げが必要なのかどうなのかということについては非常に疑問が多いわけであります。けれどもあと預金準備率の問題なりその他もお伺いをしていきます。  まず、現在の不況はやはり構造的な不況である。十三兆ないしは十五兆の需給ギャップがあるという中にあって、しかもこれだけ金融が緩和をしている中で公定歩合引き下げということが果たして経済効果があるかどうか、財界の中でも若干赤字が減る程度かというような声が非常に強いわけです。なおかつそういう中で公定歩合引き下げを決意された御心境というか決定的な政策を選ばれた要因は何か。総裁も、いままで財政主役であって金融は脇役だ、私の出番はないということを再三言ってこられたけれども、ついにここで戦後最低公定歩合になるわけであります。が、総裁をしてそこまで最低公定歩合までもたらしたその直接的な変化申しますか政策決定をさせた要因というのは何でしょうか。
  6. 森永貞一郎

    森永参考人 初めにお話のございました九月三日のことでございますが、これはいろいろなことがございますが、先ほども申し上げましたように考えて申し上げません、ただ一言だけ御了承いただきたいのは、公定歩合引き下げ予告つきでやるべきものではないということだけはひとつ御理解をいただきたい、そのことだけでございます。  次に、公定歩合引き下げる決意をするに至った根拠は何か、並びにその効果いかんというお尋ねでございます。  私もかつてはこの場合公定歩合出番はないということを申し上げておったのでございますが、そのときの心境は三月、四月に公定歩合合わせて一・五%引き下げました。それから政府の方でも上期の公共事業執行率七三%という異例の前倒しを決意されまして、それが実行に移されておる。それはどういう影響を持つであろうか。その辺のところをもう少し慎重に見きわめる必要があるのではないか。もちろんその間金利の方は着々と、金融機関貸出金利約定平均金利の低下を見つつあったわけでございますし、また公共事業の方も直接には建設事業等にいい影響を生じつつあったのでございますが、その辺が果たしてどの程度しみ通るものであろうか、その辺のところをもう少し見きわめなければならぬのではないかと思って、そういう場合の公定歩合についての表現は、やはり公定歩合は下げるつもりはありません、慎重に情勢推移を見きわめなければなりませんというような表現にならざるを得ないのでございます。そういうことで事態推移を見きわめておったのでございますが、それなり効果はございましたものの、企業家景況感そのものにはどうも余り変化がないような感じがいたしまして、もしそういう沈滞した景況感が今後も長く続くということになりますと、そのことがまた実体経済の方に悪影響を及ぼす、いわば悪循環みたいなことにもなりかねないということで、その辺の企業家心理の動きなども冷静に見きわめなければならぬと思っておった次第でございます。  たまたま八月の時点で、私ども毎四半期に実行いたしておりまする主要企業短期経済観測、約五百社でございますかにつきましての個別アンケート調査を年四回いたしておりますが、八月の時点での調査が八月の末ごろに集計がだんだん固まってまいりまして、発表は九月になってからでございますが、大体その内容がわかってまいりました。それによりますと、五月の時点での調査よりもさらに少し企業家心理は悪い方へ動いているような感じがいたしました。業況感あるいは需給感その他にいたしましてもまた少しこの五月ごろより悪くなった感じ、また企業の利益にいたしましても五月の時点で考えておりましたよりもわずかではございますが八月時点ではまたマイナスがふえたというような感じでございます。また設備投資につきましても、五月の時点での情勢よりは八月時点調査の方が実体的にはむしろ悪くなっておるような感じがつかめてまいりました。  たまたま政府の方でもそういう事態推移をよくごらんになっておりまして、やはり財政面からする景気対策を考えなければならぬというふうにお考えになっておられたのでございますが、私どもも、金融の方も、この際、主役財政であるにしてもやはりお手伝いをして、落ち込んでおる景況感を少しでも明るい方に導く方が今後の日本経済安定成長への乗りかえのために必要ではないかという決断をいたした次第でございまして、その結果が九月三日の公定歩合引き下げということに実を結んだ次第でございます。  もちろん、金利は少し下がりましただけで設備投資あるいは民間消費が大いに起こってくるという、そこまでの直接の効果は多くを期待することはいかがかと思いますが、私は少なくとも、それによりまして企業金利負担がかなり緩和され、企業収益にも好ましい影響が出てくる、そのことが企業家心理を少しでも明るくして、それによって、落ち込み一方の景況感の悪化に歯どめをかけることによって安定軌道への成長へ乗り移る、それだけの元気をつけるのにはやはりそれなり効果があると期待しておる次第でございます。もちろん主役財政面からの需要の振興でございますが、それにあわせて金利負担軽減をかなり大幅に図ることによって、この際着実な景気振興を本物にするように、そういうお手伝い金融の面からもした方がいい、そういう結論に達したわけでございまして、そういう意味ではそれなり公定歩合引き下げ効果が今後出てまいるのではないかと期待をいたしておる次第でございます。
  7. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いまの総裁のお言葉を聞いていますと、政策的にというよりも八月の日銀短観——短観短観と言っているのですが、いわゆる景況感というのは、ある意味では、数字に裏づけられたというよりも心理作用というのが非常に大きなウエートを持っていると思うのですね。私も短観は読みました。あそこでも確かに五月よりも八月の方が設備投資意欲もさらに減っているということでありますけれども、私は設備投資についても、これからの日本企業がかつての高度成長期のように設備投資によって——ただし省資源とかあるいは公害の問題とか省エネルギーといった意味での設備投資は若干あるにしても、供給力をふやすという意味での設備投資によって日本経済がもう一回テークオフと申しますか、回復軌道に乗っていくという考え方自体が私は間違いだと思うのです。その意味から言って、いまのように設備投資意欲がないところに公定歩合引き下げをやって果たしてどれだけの効果設備投資に対してあるだろうか、それが非常に疑問を持つ一つであります。  もう一つは、確かに企業財務にとりましては金利負担が多い。これは西ドイツなんかに比べまして日本企業は非常に借入金が多いという面から申しますと、その金利負担を取り除くという意味ではそれなり気持ちが楽になるという程度のことはあるでしょう。しかし、私もいろいろ調べてみたデータがあるのでございますけれども、五十二年の下期に〇・七五%公定歩合を下げたことによって一体どれくらい金利負担が減るだろうかということであります。資本金一千万以上の会社約十七万社をとってみますと、五十二年の下期で軽減額が千七百二十八億円という数字、これは都市銀行がはじいた数字でありますけれども、出ているわけですね。千七百二十八億円という数字自体は若干大きいけれども、これを十七万社で割ってみますと、平均一社あたり百一万円にしかならぬわけです。これも資本金別に見ますれば約十億円以上の会社というのは千七百社程度でございますけれども借入金の約半分以上をこの資本金十億円以上のところが借りているわけでありますから、そういうことから見ますれば、大企業金利負担は軽くなるけれども中小零細企業はむしろずっと少なくなるわけですね。平均してとにかく百一万円にしかならない。これだけ企業に恩典を与えたと申しまか、金利負担軽減を行った片面では、国民の方には、これから審議になります預貯金金利引き下げをやって、一家族大体一万五千円ぐらいの金利の目減りになるのではないかと言われておるわけであります。こういうのと比べてみますと、わずか一社当たり平均して百一万円ばかりの金利負担軽減をやったわりには、国民に対する負担というのはあまねく非常に広く、そして一万五千円程度のことといいながらも、せっかくやった一兆円の減税もふっ飛んでしまうというようなことを考えてみますと、どう見てもこの公定歩合引き下げというのは、日銀総裁としてはとにかく戦後最低金利まで下げたのだということで、やるべきことをやったという気持ちがあられるかもしれませんけれども国民の側にしてみますと——預貯金金利引き下げがついてこなければ別だと思うのですね。いまのシステムでいけば必ずついてくるわけでありますから、これだけ負担をしたわりあいには単に国民の資産が企業に移っただけじゃないか。それで大蔵省は大げさに雇用が確保できるの何のかんのと言いますけれども、たかが一社平均百一万円程度金利負担軽減雇用の確保なんて大げさなことを言わぬ方が私は正しいと思うのであります。どうもこういうことから考えますと、本当にあえて公定歩合引き下げをやらなければいかぬのだったのだろうか。ましてや、循環的な不況じゃなくて構造的な需給ギャップがある日本経済の中で、公定歩合引き下げという経済政策が果たして正しいことだったのだろうかどうかということについては、私は今申し上げた数字からいっても非常に疑問に思うのであります。その辺のところ、もし私の申し上げました数字等が違っていれば何でございます。けれども、ひとつその辺も含めましてもう一度お伺いしておきたいと思います。
  8. 森永貞一郎

    森永参考人 いろいろなお考え方がおありであってしかるべき問題だと思います。佐藤先生の御意見も傾聴いたした次第でございますが、公定歩合引き下げによりまして金利負担が減少し、企業家もそれだけ不況感からの脱却が早まるだろうということを先ほど申し上げたわけでございます。が、具体的に申しますと、やはり金利負担軽減はそれだけあるいは赤字を補てんし、あるいはすでに黒字のものにつきましてはそれだけさらに体質を強化する効果を持つわけでございますし、さらにはまた、いままではとかく雇用調整というようなことで、企業余剰人員を背負い込んでいる、負担もかなりかかっておるわけでございまして、ややもすればそれが首切りになりかねないような企業の例もいろいろとあるわけでございます。が、金利負担軽減によってそういうことにもちょっとブレーキがかかると申しますか、そういう必要をやわらげるという効果も出てくるわけでございまして、公定歩合引き下げそのものは、それなりにいろいろな意味での景気刺激効果を持ち得るはずであると確信いたしておる次第でございます。  具体的に金利がどのぐらい軽減されるか、これはいろいろな計算の仕方があるわけでございます。けれども、私どものところで、資本金一千万円以上の会社につきまして、三月、四月、九月と合わせて三回、二・二五%の公定歩合引き下げをいたしました、それに伴って市中貸出金利はいままでと同じような割合で追随して下がっていく、そういう計算をいたしますと、究極的には企業金利負担は約二兆円程度低くなるわけでございまして、他方、企業が預金しております預貯金金利も下がるわけでございますので、その下がる金額が八千億円ぐらい。そうしますと、ネット一兆二千億円ぐらいは究極においては企業金利負担に寄与し得る、そういう計算になるわけでございます。これはもちろんすぐにそうなるわけではございません。公定歩合に対する、あるいは預貯金引き下げに伴う、コストの低減に伴う貸出金利追随引き下げがその極に達した場合でございまして、これから一年、あるいはもう少しかかるかもしれませんが、そのぐらい後の究極の姿を申し上げておるわけでございますが、その程度効果はあるわけでございまして、国民所得GNP統計等の上でそれがどのくらいの効果になるか、これはまだ私どもいろいろ計算しなければならぬ問題もございましてはっきりつかんでおりませんが、かなりの効果があるのではないかというふうに期待をしておることだけを申し上げておきたいと思います。
  9. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私が挙げた数字は、三月、四月の分はすでにもう追随して軽くなっているという上に立っていますので、もうそれは、要するに企業財務の中に入り込んでしまって済んでしまったものだ。これからの公定歩合引き下げに伴うところの、しかも半期ということで計算をした数字を挙げたわけでありますけれども、その点で若干数字の違いがあろうかと思います。  要するに、いままでの総裁のお話を聞いていますと、従来行っていた公定歩合引き下げというのは、それによって積極的に前向きに設備投資を起こして、そしてもう一度需給のアンバランスというものを取り除いていこうというのが従来の公定歩合引き下げ効果だったわけでありますけれども、それは余り期待しない、強いて言えば、企業家景況感を幾らかでも醸し出そう、あるいは企業財務の関係において幾らかでも手助けになればというぐらいに考えておいた方がまあ正しいというふうに理解せざるを得ないのですが、それでよろしゅうございますか。
  10. 森永貞一郎

    森永参考人 その点につきまして申し上げます。と、日本経済の姿がいままでと少し違ってきているという点は、これはもう本当に率直に認めざるを得ないのじゃないかと思います。  いままでの過去二十年間におけるこの日本経済景気、不景気の波をどう切り抜けてきたか、その辺を振り返ってみますと、一たび金融引き締めの必要が揺るぎまして緩和に転じますと、それは直ちに設備投資の増加を引っ張り出し、さらにはまた輸出増加、個人消費の増加、そしてまた究極的には設備投資の増加というような循環が高まりまして、それでいままでの日本経済の高度成長が築かれたわけでございますが、その点につきましては、先ほど佐藤委員も仰せられましたように、日本経済の置かれておる環境がもういままでと全然違ってきておる。何といっても、その一番大きなものは資源の制約でございましょうか。さらにはまた国内における環境保全、立地問題からくる制約でございましょうか。昔のような高度成長の夢を追うべきでないことは当然なのでございまして、その意味で、いままでの景気回復の過程とは大分違った様相を呈せざるを得ないと思うのでございます。  なお、輸出が非常に起こっておるわけでございますが、輸出が個人消費を呼び設備投資を呼ぶ、そういう意味の循環は、今後は昔ほど期待できないのではないか。これはやはり世界経済の構造が変わった、それにつれて日本経済の構造も変わった、その構造上の問題が非常に大きいのでございまして、仰せられるように、不況業種を一体どうするのかといった構造上の問題もございますし、そういう問題を考えますと、昔のように、一たび景気が回復に向かえばすぐに八%、九%、一〇%というような高度成長の自動的なエスカレーターに乗っかるというようなことは、もう今日はできないわけでございまして、安定成長という言葉で代表せられておりますけれども、その実態はなかなかそんなに簡単で楽なものではないと思います。が、そういう状態に甘んじなければならないのが日本経済の宿命だと思っておる次第でございます。  今度いろいろな景気対策が講ぜられまして、それによりまして、もちろんGNPの上では六・七%の成長は私は可能だと思いますが、仮にそれが可能であるといたしましても、景況感の上では、昔のように非常に景気がよくなったという感じがなかなか起こらないのではないだろうか。そして、それがまた日本経済のいま置かれておる宿命だと思うわけでございまして、それは昔の楽しい夢を知っておるわれわれには非常に苦しいわけでございますけれども、その苦しさを耐え忍んでいって、そして着々と安定成長の軌道に乗り移っていく、それがいまの過程であると思うわけでございまして、その意味で、昔言われておりましたような好景気をいまもう一度謳歌するというようなことはなかなかむずかしいのではないか。その辺のところは国民の皆さんにも、また企業家の皆さんにも十分納得していただいて、その苦しさに耐えながら新しい日本経済の構造をつくり出し、新しい日本経済の世界経済の中での地位を見出し、日本経済を時流の変化に適応させていく、これはなかなかむずかしい問題だと思います。苦痛が伴う問題だと思いますが、ぜひともこれからやっていかなければならない問題ではないかと思っておる次第でございまして、根本的にはそういう問題を考えなければならないと思う次第でございます。  それならばなぜ公定歩合を下げあるいは公共事業費等を追加したのかということになりましょう。しかしそれは先ほど申し上げましたように、いまのような心理状態が存続する限りにおきましては、その移り変わり、新しい体制への順応すらも非常にむずかしくなって、じり貧に陥ってくるのではないか、そのところを心配したわけでございまして、この際企業家心理が余りにも落ち込むことにつきましては、それを刺激しチアアップし、それによってノーマルな景況感の復活を期待することも、またこれは大変大切なことであると考えた次第でございまして、恐らく今度政府の需要追加並びに公定歩合の追加によりまして、その面ではかなりの効果期待できるのではないか、そしてそのことが安定経済への乗りかえ、乗り移りのためにはぜひとも必要なことであるのではないか、さように考えておる次第でございます。
  11. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いまの総裁のお話をお伺いしますと大体わかるのでありますけれども、ただ前半に言われたことと後半に言われたことで、企業家心理をチアアップするというのにしては、片面では国民負担が、預貯金金利引き下げ、さらには目減りということからいくと非常に大き過ぎるというような気がするわけです。その意味政策的に正しかったかどうかということは一つ問題が残ると思うのです。  時間がなくなりましたので最後にもう一つだけお伺いしたいのは、いまプライムレートと預金金利の差が〇・七五とますます広がったわけです。簡単に言えば、銀行から借りて預金をした方がいいというような状況になっているわけですね。それから片面では、背後では財政が拡大をしていく、国際収支は大黒字になっているというような状況は四十七年、四十八年の状況とその面だけ見れば非常に似ているわけです。私たちはその意味過剰流動性の問題を非常に気をつけなければいかぬ。幸いに日銀券の発行、M1、M2を見ましても四十七年、四十八年よりは非常に低い数字になっていますから、その意味ではあの当時とは若干違うとはいうものの、さらにこれに預金準備率引き下げということが言われているわけですね。そうじゃなくても金融が緩和をして借り手が少ないときに、こういう時代といいながら、やはり財務内容のいい企業にある程度銀行が貸し出し競争をするということになってきますと、そこから幾らかそういった資金が漏れていって、株なり債券なりというところにまた走るという可能性が、いまのプライムレートと預貯金金利の逆ざやの拡大あるいは預金準備率引き下げという量の拡大、こういったものからいってまた過剰流動性の再発ということが片面では心配をされる。それなりのチェックがいろいろありますけれども片面では、状況としましては、ひょっと緩むと、額は少ないにしても直ちにそこに走る可能性というのは非常に待っているのではないかという気がするわけでありますけれども、その点についてはいかがお考えでございますか。
  12. 森永貞一郎

    森永参考人 プライムレートと一年もの預貯金の利率の逆転現象は四十六、七年の場合とまさに同じようなことが起こっておるわけでございまして、そのことから四十六、七年におけるがごとき過剰流動性の発生を心配される方も多いことは、それなりに私どもも大いに傾聴いたしております。が、そのときと今日とで事情が非常に違っておりますのは、あのときは企業の資金需要が大変旺盛でございました。なかんずく列島改造というようなブームみたいなものもございまして、ほうっておけば土地その他の投機資金を駆り集めるような風潮が強かったわけでございますが、今日におきましては資金の需要は幸いにしてきわめて落ち着いております。また金融機関側におきましても、あの当時といたしましては貸し出し競争に焦って、逆転の利ざやの損をカバーしようという空気があったわけでございますけれども、今日のところは金融機関の態度はきわめて冷静でございまして、そのような貸し出し競争に走るがごとき空気はございません。また金融機関のポジションもあのころは非常によくなりまして、そのことが貸し出しをしやすくしておったわけでございますけれども、今日は、幸か不幸か、と申しましょうか、国債がたくさん出ておりまして、その方の消化にも資金を割かなければならないわけでございまして資金ポジションはむしろ悪化しておるわけでございまして、それらの点をあわせ考えますと、あのときと同じように企業側、金融機関側両方から過剰流動性の発生を招くというような情勢は目下のところ心配しなくてもいいのではないかと考えております。  ただし、プライムレートと一年もの預貯金との逆転は、そのこと自体決して好ましいことではございませんので、今後もしそのことが理由になりまして貸し出し競争等が起こるようなことになっては困りますので、その辺のところは私ども金融政策の運用上周到な注意を払って臨まなければならない問題であることはおっしゃるとおりだと思います。よく気をつけてまいりたいと思っております。
  13. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 では終わります。
  14. 小渕恵三

  15. 坂口力

    坂口委員 総裁には大変お忙しい中をきょうは御出席いただきましてありがとうございます。  ただいまも議論があったわけでございますが、前回この委員会に副総裁がお見えいただきまして、もう一度公定歩合引き下げがあるのかどうかという議論をさせていただいたわけでございます。そのときには副総裁も、そういう必要性は少なくとも現在の時点では認められない。先ほど総裁がおっしゃいましたように、八月におきます短期経済観測の結果を見てから決定はするけれども、少なくとも現在はそういうところは認められないというお話がございまして、お話を聞いております限りにおきましては、どちらかといいます。と、日銀側としてはその必要性はないという意味合いの強いお言葉であったというふうに承っているわけでございます。  そのことについて、先ほどの佐藤さんと同じような疑問を私も一つ持つものでございますが、あわせてお聞かせをいただきたいのは、これで三回の引き下げがあったわけでございますが、前回二回目が引き下げられましたときに、もう一回必ず引き下げがある、こういううわさと申しますか、こういう心理企業家の中にかなりあったと私ども考えているわけであります。前回の八月にも副総裁にもそのことを申し上げたわけでありますけれども、もう一遍ある、それまで待とう、設備投資をするにいたしましてももう一遍あるからもう一遍待とう、こういう気持ちがかなり働いているのではありませんか、したがって、はっきり公定歩合引き下げ等は予告はできないものだとはおっしゃるけれども、しかしある程度これでおしまいだというような姿勢を示すことが、それならば大事ではありませんか、こういう御質問をしたわけでございますが、それに対する十分なお答えはそのときもございませんでした。したがいまして、先ほどから企業家心理が冷え込んでいる、八月の時点でさらに冷え込んだというふうに感じたということをおっしゃったわけでありますが、そこにはそういういままでの下げ方の問題というのが含まれていはしなかったかということを思うわけでございますが、いかがでございますか。
  16. 森永貞一郎

    森永参考人 最後のところがはっきりいたしませんでしたので、もう一度……。
  17. 坂口力

    坂口委員 最後に申しましたのは、いままで二回の引き下げがあって、それによりまして、もう一回あるのではないかというふうに企業家の皆さん方が思っておみえになる。だから、設備投資をするのをさらに控えて、もう一遍待とうじゃないかというふうにお考えになっている向きはなかったのか。そのことがいわゆる企業家心理を悪化させることに一役を買っていなかったのか、こういうことを申し上げたのであります。
  18. 森永貞一郎

    森永参考人 まだこの上金利が下がるだろうというようなことから、設備投資等についての着工を見合わせるというような感じは、財界の一部にあったかなかったか、その辺、なかなか的確にはつかみにくいところでございますけれども、一部にそういう感じでおられる向きもあったのではないかと私も想像いたします。  その意味では、もうこれ以上恐らく公定歩合を下げる余地がないと存じます。金利もいわゆる底値観が出尽くしたのではないかとも想像されるのでございまして、もう待っていてもこれ以上下がらないということが、反面において必要な設備投資意欲を刺激するようなこともないではないのではないかという感じもいたしますが、これは全くの頭の上での想像でございますので……。
  19. 坂口力

    坂口委員 大変正直にお答えをいただいたわけでございますが、この三回の引き下げを振り返っていただいて、そういうことを踏まえていただくと、下げ方というものに対してもう一考を要したのではないかというような御感想はございませんか。率直な御意見を承りたいと思います。
  20. 森永貞一郎

    森永参考人 私、日本銀行に参りまして、二年半ちょっと超えました。その間、公定歩合引き下げが七回ございまして、その都度、皆様方からはどうもおくれたんじゃないかというおしかりだけ実はいただいておったのでございまして、わずかに一度だけ、この前の四月はよくやったとほめられたのでございますけれども、なかなかほめられるように意外性を発揮してやるということは非常にむずかしいものでございまして、その意味でも、非常に微力を嘆いておる次第でございます。が、私自身といたしましては、それぞれの問題、それぞれの引き下げにつきまして、最もいい時期を選んだのではないかと実は思っております。しかし、皆様方からいろいろな御批判のあることはよく承知いたしておる次第でございまして、御批判には率直に謙虚に耳を傾けておるつもりでございます。
  21. 坂口力

    坂口委員 先ほどもおっしゃいました、企業家心理の中にもいろいろあると思いますが、特に大きい企業中小零細企業等におきましては、またその内容も異なっていると思うわけでございます。これは、その辺の分析も恐らくしていただいているものと思いますけれども、私もそう思うわけでございます。特に中小企業申しますか、小零細企業と言った方があるいはいいかもしれませすが、その辺のところは、先ほどの議論にもございましたが、公定歩合が下がりましても、それほどの恩恵を受けない。一つには、もうすでに借りるだけ借りてしまった。いま借りてしまったこの金利を返していくのにもう青息吐息である。いま下げてもらってもどうにもこうにもならないという実情があるわけでございます。こういうふうな中小企業の現状をどう打開していくかということも、これからの日本経済景気というものをどう持っていくかということに大変大きな影響を与えるものだというふうに思うわけでございます。が、その辺のところについて、日銀として何か打つ手というものをお考えになっているか。あるいは現在固まっていないまでも、これからこういうふうにしていけばその一端でもほぐれるのではないかというようなお考えがございましたら、ひとつこの際お聞かせをいただきたいと思います。
  22. 森永貞一郎

    森永参考人 公定歩合引き下げに伴う市中の貸出金利の低下が大企業だけにとどまる、あるいは大企業に偏するようなことがあっては非常に困るわけでございまして、私ども公定歩合引き下げの際に、金融機関の代表者にも、市中貸出金利の低下につきまして協力を求めておりますが、その場合には、企業の大中小を問わず、全般的に金利水準が下がるようにということを、特に声を大きくしてお願いしておる次第でございますので、銀行、大銀行等におきましても、その点は大企業だけじゃなくて、中小企業にまで金利負担軽減が及んでまいることを切に期待しておる次第でございます。  ただ、問題として指摘されますのは、中小金融機関でございますが、公定歩合を下げますと、短資資金の金利が下がりまして、中小金融機関の運用面での減収が起こる、そのことはやはり中小金融機関貸出金利の低下のブレーキになる心配があるわけでございまして、その意味で私ども、中小金融機関のふところぐあいはいつも注意してながめておる次第でございますが、今回のごとく預貯金、定期も要求払いも同時に下がったわけでございまして、この前と合わせますと、要求払いは一%、定期は一・五%下がったわけでございますので、それなりに資金コストは減少したわけでございますので、中小金融機関における中小企業への貸出金利につきましても、かなり低下を促進できる環境が整ったと思っておる次第でございまして、そういう意味では中小企業への金利引き下げの均てんが確実に起こりますようにということを、今後とも念願し続けて、協力を求めてまいりたいと思っておる次第でございます。
  23. 坂口力

    坂口委員 もう少しその辺のところをお聞きしたいところでございますが、十五分という限られた時間でございますので、お聞きすることができませんが、いまおっしゃいました預貯金金利引き下げの問題がございます。この三回目につきましては、貯金の方はまだ態度が決まっておりませんけれども、どうも引き下げられるという気配でございまして、こういうふうになりますと、いわゆる消費者物価と、それから預貯金金利というものとの乖離がますます大きくなっていくわけでございまして、この点、これは日銀だけに責任のあるわけでは決してございませんけれども、しかし通貨価値の番人としての責任を果たしておみえになる、また中立性を高く掲げて、それを自負しておみえになる日銀として、消費者物価とそれから預金金利の乖離という問題についての責任と申しますか、これをどうお考えになっているかということをお聞きして、終わりたいと思うわけであります。
  24. 森永貞一郎

    森永参考人 預金金利金利体系の非常に重要な部分をなしておるわけでございますので、資金需給の関係から申しまして、預金金利体系にも引き下げ影響が及ばなければならないようなときには、やはり預金金利を下げるという問題が起こってこざるを得ないわけでございます。その場合に、消費者物価の動向との関係が一つの問題になることは、またお説のとおりでございますが、その点につきまして申し上げたいことは、過去に対して消費者物価が何%上がっておるかということよりも、むしろ将来に向かって消費者物価がどういう動向をたどるだろうか、そちらの方がより重要な問題だと思うわけでございます。預金金利引き下げますのは、新たな契約について下がるわけでございまして、既往のものにつきましてはその期間中は及ばないわけでございますので、将来の動向いかんということがより一層大きな問題にならざるを得ないかと思うわけでございまして、その意味では、私どもといたしましては、消費者物価につきまして極力安定を期する責任が非常に大きいのではないか、国としての責任が大きくなってくるのではないかと思っておる次第でございます。  幸いにして卸売物価は年初来ほとんど動いておりません。〇・何%ということでございまして、前年同期比で見ましても〇・八ということでございますが、これは世界のどこに比べましても日本が一番安定しておるわけでございます。消費者物価につきましては、前年度と比べますと、八月の場合は九%を超えるというようなことで必ずしも安定した状態ではございませんが、今後についてそういう状態が起こらないように、できるだけ騰貴率が下がるようにということを念願していかなければならない、そちらの方がより一層大きな問題ではないかと思う次第でございます。政府の消費者物価の見通し七・七%でございますが、私はそれは必ず達成できるのではないか、場合によってはそれよりももう少し低いところにおさめるように努力もしていかなければならぬのではないかと思っておる次第でございます。  目減りに対しての唯一の確かな対策は、やはり物価を上げないということしか実はないわけでございまして、過去に何%上がったからどうこうと言うのは、むしろインフレを是認する立場に立つ議論にしかならないわけでございます。それよりも将来に向かって卸売物価はむろん消費者物価も上がらないように国が全般の責任を負って努力をすることが非常に大切じゃなかろうかと考えておる次第でございます。
  25. 坂口力

    坂口委員 もう少し聞きたいところでございますけれども、時間が過ぎてしまいましたので終わらせていただきます。
  26. 小渕恵三

  27. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今回の公定歩合引き下げでは、先ほど金利軽減効果資本金一千万円以上十七万社について差し引き一兆二千億円、そういう効果という説明があったわけですけれども結局は一千万以上といってもここで利益を受けるものは大企業が圧倒的多数であるということも中身を分析すれば明らかであろうと思うわけです。このような金利負担軽減措置は、いま大企業よりむしろ経営の危機にある中小企業や構造不況業種などに手厚く及ぼさなければならないということも常識になっていると思うのですけれども、そのための措置について総裁は考えていらっしゃるかどうか。そして、これを政府に進言することが必要であろうと思うのですが、その点についてのお考えをお伺いします。
  28. 森永貞一郎

    森永参考人 先ほど統計の便宜上資本金一千万円以上の法人企業についてだけの試算を申し上げたのでございますが、もちろん一千万円以下の言うなれば中小企業あるいは個人企業にも金利負担軽減効果が及ぶわけでございます。ちょっと統計的にその計算がなかなかむずかしいということで一千万円以上のものだけを申し上げたわけでございますが、当然中小企業、個人企業にも金利引き下げ効果は及ぶべきでございます。金融機関に対しましてもその辺の協力を切に求めておることを御了承いただきたいと存じます。  構造不況業種等につきましても金利の問題はあるわけでございますが、これらの業種については単に金利だけでは片づかない大きな問題があることは御承知のとおりでございまして、その辺をどう切り抜けていくか。これはやはり根本は、各企業ないしは各業界の自助努力によって立て直しを図っていくほかないわけでございますが、政府におきましても産業政策の面等から適当なアドバイスをしていただくことがもちろん必要であると思います。  そういうことによりまして、業界の自主的努力あるいは政府の施策が今後いろいろと進んでいくことをひたすら期待しておるわけでございます。が、その間におきまして、民間金融機関といたしましても、民間金融のベースに乗り得るものについては極力協力をし、業界の立ち直りが全うされるようにという面でのお手伝いをしなければならないと思っておりますが、これは具体的にその業界にいろいろと今後対策が立てられることでございましょうし、その上での各金融機関の協力、そういう問題になろうかと思っておる次第でございます。
  29. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 大蔵当局に聞いて、後で総裁の御見解をお伺いするのがいいかと思いますが、ちょっと時間がなくなりましたので私の中小企業対策についての考えを申し上げますと、まず政府系の金融金利引き下げる、そしてこれの既往の金利引き下げも実施すべきであると考えるわけです。また、中小企業政府金融機関についてもこれを行って、既往の金利の全部を一定程度ずつ引き下げることにして、これに対して政府としては利子補給などの手を打つべきではないか、このように考えます。  また、既往の金利引き下げは、四十七年八月まではすべての分について引き下げるのが慣例となっておりましたが、最近では新規貸付分に限定したりあるいは種別を限るというようなことをやって、一般国民には不当な高金利が押しつけられるという状況があらわれていると思うのです。五十二年八月の倒産状況を見てみますと、不況業種だけではなくてすべての業種にわたって倒産があらわれてきておりますし、今回の既往金利引き下げに当たっては、やはり従来と同様にこれを限定しないで一律に引き下げるべきではないか、このように考えているわけです。これらの中小企業の実態を踏まえた場合に、今後の公定歩合政策のあり方において特に中小企業への配慮をする必要がある、このことを強調したいと思うのですが、重なるかもしれませんけれども、この点の御所見をお伺いして終わりたいと思います。
  30. 森永貞一郎

    森永参考人 公定歩合引き下げ、さらにそれに伴う市中金融機関の実際の貸出金利の低下は当然中小企業、個人企業等にも及ぶべきものでございまして、従来といえども、各金融機関にそのように御協力方をお願いをしておる次第でございまして、現実にもそういう方向へ着々と向かいつつあると確信をいたしております。
  31. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて森永参考人に対する質疑は終了いたしました。  森永参考人には御多用中のところ本委員会に御出席いただき、かつ貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。     —————————————
  32. 小渕恵三

    小渕委員長 ただいま税制に関する件について、参考人として税制調査会会長小倉武一君が御出席になられております。  小倉参考人には御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。  質疑を続行いたします。只松祐治君。
  33. 只松祐治

    ○只松委員 どうもたびたび来ていただきまして、それだけにきわめて新税創設をめぐりまして影響、したがって本委員会も重要な段階を迎えておるわけでございます。前回も税調の進捗状況を御説明いただきましたが、大蔵省からいただきました日程によりましても、秒刻みとまでは申しませんが、日刻みでいろいろ御論議になって、その後大分進んでおるようでございます。今朝来の新聞にもいろいろ出ておりますので、ひとつさらに国民の前に明らかにその後の税調の進捗状況をお知らせいただきたい。
  34. 小倉武一

    ○小倉参考人 税調の進捗状況でございますが、かねて御承知のとおり、私どもの現在の税制調査委員の残任期間もうごくわすかで、十月十日まででございます。中期税制のあり方についても昨年来討議しておりますので、何らかの形で今月中にでも政府に御答申申し上げたい、こういう所存でおるわけでございます。最後の詰めと申しますか、御指摘のように時間的にもそうなってまいっておりまして、昨日でございました、それから先週と二回、いわば最後の取りまとめとまでまいりませんが、それを目標とした審議を実はいたしておるわけでございます。まだ全般的な答申の素案と申しますか原案ができて審議しているというわけではございませんが、いわばその部分品に当たるようなところあるいは前段階に当たるようなところをただいま審議しておるというような段階でございます。
  35. 只松祐治

    ○只松委員 この前も所得税、法人税、それから新たにするとするならばということで若干の消費税を中心に御説明をいただきました。けさの各新聞を読みましても、税調でされたのか大蔵当局か主税局がしたのか、大体の骨格というのは各紙に出ておるわけですね。こういうことは全紙に出ておりますから、スクープではないと思うのです。概要を話された。マスコミや何かに概要をお話しになるわけですから、当然に国民の議決機関であるこの国会にはもう少し具体的に話の煮詰まっている方向というものをぼくはしていただきたい。いまの答弁きわめて抽象的でございますので、たとえば所得税はもう少し増徴の必要があろう。あるいは前回は法人税も多少増徴の必要があろう、こういうことでございました。きょうは新聞によりまして、法人税は余りないというのと、いやあるというのとありますし、いろいろ違っておるようでございます。それから新税の方向もこの前より具体的に発表されております。国会においてはもっと具体的にひとつお答えをいただきたいと思います。
  36. 小倉武一

    ○小倉参考人 ただいま申しましたのは大体の段取りみたいなことを申し上げたので、審議の中身はまだ御説明いたし足らなかったのでございます。が、ただいまのところまでの審議の状況からいきますと、大体三つに分かれておりまして、一つは、いま検討しております税制のことにつきまして、その検討に当たっての基本的な考え方というものが一つでございます。もう一つは、先般も御説明申し上げましたように、一部会、二部会と分かれまして、所得課税それから資産課税、消費課税、こういったようなふうに一部会、二部会と分けまして審議したその審議の経過を取りまとめまして、大体どういう問題についてどういう意見があったかというようなことを審議して取りまとめるということにいたしております。その中にいまのお話のように所得税についてどう、あるいは法人税についてどう、あるいは一般的な間接税についてどうというようなことについてのいろいろの審議が行われたわけであります。それでさらにそういうことを踏まえて中期税制のあり方として今後どういう答申といいますか提案をするかということがいわば第三部になるかと思います。  今日までのところは第一部と第二部に重点がございまして、まだ最後の詰めといいますか、これからの提案というところまでの審議にはまだ実は入っておりませんです。おのずから一、二を踏まえて第三が出てくるということでありますから、唐突に第三の提言が出てくるわけではないわけです。  そこで、いまお話しの少し具体的な話になりますけれども、これはこの前お答えしたことをちょっと繰り返しになって恐縮でございますが、大きく分けますと、まず所得税でございますが、これは筋としては、大幅の増税を国民一般にお願いするとすれば、所得税によるのが最もいいんではないか。いわば所得税というのは、釈迦に説法でございますが、税制の中心的な問題、能力に応じて国費を負担するということになっておるものでございますから、筋としては大幅増税というのはやはり所得税によって行わるべきではないか、こういう意見がございます。これは税制調査会での話でございますが、あるわけでございます。ただ、そうは申すものの、所得税について大幅増税が一体受けられるかどうかということになると、これは疑問がつくと、こういうことであります。  それからもう一つは、所得税についてお願いするにしても、一般的な消費税あるいは間接税によって補強をするということがやはり必要ではないかというような意見も、所得税を中心に増税をお願いするという御意見の方もそれを否定なさるわけではないわけでございます。  法人税でございますが、法人税については、これは主として外国との比較でございますが、もっとも外国との比較は非常にむずかしいようでございますけれども、若干の増税の余地はあるのではないかというような認識は大体一致しておるのではないかと思います。しかし、一部に伝えられるごとく大企業に増税をすることによって今日の問題が解決するというような期待はできないということも、大方調査会の内部では一致しておるのではないかと思います。しかし、法人税についての増税ということも考える余地があるし、考えるべきではないか、こういうようなことになっております。  それから、住民税のことは所得税と準じて考えてよろしいと思います。  次に、いろいろの従来の間接税、物品税であるとか自動車関係の税でありますとかというようなものが多数ございまするけれども、これらについて、物品税について一般的な増税をお願いするということはどうも物品税の性格からむずかしいのではないか、今日のように物の状態が非常に変わってくる、いい物が新しくできるとか、昔はよかったものも陳腐化するというような状態のときに、税制上一々それを追っかけていくことは非常にむずかしい、かえって不公平なことになるということで、物品税について増税をお願いするということはどうも無理があるのではないかというのが、これまた大方の意見でございます。  自動車関係の諸税についてはいろいろ御意見がございまして、大体これは九つにもなるそうで、なるそうでと言っては失礼ですけれども、なるんですな、九つに。九つもの税金をああだこうだといっていろいろな側面から税金を納めるような仕組みになっているのはまずまずおかしいのではないか、もっと簡単明瞭に一般の方に自動車なりガソリンを使わしてわかるように仕組んだらいいんじゃないかということが一つあるわけです。  もう一つは、財源が特定されておるというのがやはり困るのではないか。ガソリン関係、広く言えば石油問題、あるいはもっとさらに広く言えばエネルギー問題ということに大変な問題があって、そのやり方によっては大変なお金がかかるにかかわらず、ガソリン税は主として道路であるというような仕組みになっておるのが、これはどうもおかしい。もっとも、これまた道路関係の方から言えばちっともおかしくないという議論が出てくるわけでございまして、むずかしいことでございますが、そういう問題がある。  しかし、この問題について、中期税制についてガソリン税、自動車関係税についてこうあるべきだという結論を出すことはなかなかむずかしいのではないか、まあ時間切れみたいな感じもあるわけでございます。まだ、これは結論を得ておりませんけれども、そういうようなむずかしい問題があるという認識でございます。  それから、漏れておれば失礼でございますが、新税の問題に移りますけれども一つは土地増価税あるいは富裕税というようなこともございます。が、土地増価税というのはどうもむずかしいのではないかというのが、簡単に申しますれば税制調査会のおおよその意見である、結論を得ていませんが、と申してよろしいのではないかと思います。  それから富裕税でございますが、富裕税につきましては、どうも考え方としては了承できる面もあるけれども、徴税上公平に把握できるかどうか、こういう難点がある。しかし、いまここで富裕税を適当でないとかどうかと言うのはまた尚早過ぎるので、その徴税上の問題。要するに外見的にあらわれる財産となかなか外見的に把握しにくい財産と両方ございますので、その辺の税務執行上の公正さを期し得るかどうかというようなことが一つの大きな問題点でございまして、それらについての考慮をした上でないと結論は出しにくい。  もう一つの問題は、間接税を一般的に増税してその負担をお願いするということになれば、これは一般国民大衆が負担するわけですから、特別のお金をお持ちになっている方はそれなりにまた御負担を願うというふうなことがよろしいのではないかという考え方も当然ございますので、そういうことともやはりにらみ合わせて考える必要があるだろう、こういうことでございます。  なお、そのほかに新税としていわゆる広告税あるいはギャンブル税というようなこともございますが、どうもギャンブル税というのは、公式のギャンブルの話ですけれども、公営企業としてやられているギャンブルについての収得金といいますか収益は、それぞれ公益のために使途されておる、場合によっては一般財政の収入の中に組み入れられておるということになっておりますので、それに税金をかけるというようなことは一体どういうことになるのかということについて、ちょっと簡単には理解しにくい点があるということもございまして、これはどちらかと申しますと消極的でございます。  広告税については両論ございます。広告について広告税を課税すべきであるという意見と、どうもそれは、どうしても今日のような自由主義社会での広告というのはそれなりにまた役割りがあるので、それに税金をかけるのは適当でないではないかという御意見と両方ありましで、結論はなかなか得にくい状態でございます。  最後に大きな問題の新税としては、いわゆる一般的な消費税でございますが、この消費税については、すでに昨年の中間報告、中期税制審議の中間報告の中で製造者消費税、EC型の付加価値税、それから大型売上税といいますか大規模売上税と申しますか、それから大規模の取引税、こういう各種の税についての長短を論議いたしまして、それらの審議を行ったわけですが、引き続いて昨今再びこの一般消費税のあり方について討議いたしまして、まだ結論は得ておりませんけれども、どうも一般売上税の方向で考えた方がよろしいのではないか。ただ、これについてもいろいろ問題がございます。問題もございますと言いますか、もっと具体的な内容についてもう少し詰めてみる必要がある。そこで、先ほど申しましたような所得税、大きく言えば所得税、法人税あるいはこの一般消費税、それをどのように組み合わせて中期税制のあり方としての税制を組み立てたらよろしいかというふうなことが、今後のこの審議の主要な課題になろうかと、こういうふうなことでございます。
  37. 只松祐治

    ○只松委員 申し上げるまでもございませんが、税調は学会の論争ではないわけでございまして、それが直接国民税制、税金となってはね返ってくる。そこで中期財政計画、御存じだと思います。けれども、ことしは十九兆余りの税収、あと昭和五十五年度で三十五兆六千億というものを目指しております。そういたしますと、その差は十六・三兆円、これを三カ年に割りますと大体一年、五・四兆円増税をしていかなければならない、こういうことになりますね、平均値にいたしまして。したがって、この目標に達成するためには来年から四、五兆円、将来六兆円、七兆円となるでしょうが上がっていかなければならない、こういうことになりますが、いまのいろいろな御論議というのは、そういうことを踏まえての御論議ですか、ただ抽象的に……。  一問一答を本当はしたいのですが、時間がありませんから、ついでに、パーセンテージはことしは一八・二%になっております。国民所得に対しまして三%ぐらい、やはりこれが六兆前後になってまいります。パーセンテージはどの程度引き上げることを目途として税制を御論議になっているか。そういうことは一切おれらは知らないんだ、方向だけ出して、あとはあなた任せだ、こういうふうなことでございますか、どうですか。
  38. 小倉武一

    ○小倉参考人 これはなかなか微妙と申しますか、むずかしい御質問でございます。と申しますのは、財政収支試算がございますけれども、これは財政計画というような性質のものとは若干違いまして、財政計画として政府がお決めになっておるということであれば、税調は税調で、それはそれで別だ、こういう考え方もあるでしょうけれども、一応それを尊重してやっていくというのは、政府の諮問機関だから、ある程度是認される態度ではないかと思いますが、一つは試算であるということです。  もう一つは、中期と申しますか、昭和五十年代前半期の五カ年計画があるわけでございまして、この計画はまた単なる計画でなくて、閣議決定がなされておるあれですから、これは一つ有力な基準になるだろう。ただ、今日の景況から申しまして、あの五カ年計画どおりいくんだろうかというと、政府の役人でないからいいわけですが、これまたちょっと疑問があるのじゃないかという感じもいたすわけでありまして、あれを金科玉条にしてやっていくというわけにもちょっといかないという点がございます。ただ、あれによりますと、三%ぐらいの税負担の増はどうもやむを得ないのじゃないか、そういうものは一つ考えておかなければ今後の経済計画が成り立たぬ、特に財政計画が成り立たぬのではないかという趣旨はうたわれておりまして、これは税制を考える場合の一つの基準になるだろうというふうに思います。  それから、もとへ戻りまして、この財政収支試算でございますが、あの数字にそのまま縛られることはないにしましても、とにかく日本財政は、先生方の方がよく御承知と思いますけれども、これは容易ならざる状態になっておる。したがいまして、いつまでにどの程度の増税をお願いするか、あるいはどの程度の歳出の節減をするかということが非常に重要な課題になっているということをあれは示しておるというふうに受け取っていいのではないか。五十五年までに特例公債をなくして建設公債だけにするというのがあの収支試算の目標みたいなことになっておりますが、それに必ずしもとらわれなくても、相当の増税をお願いし、相当の財政の支出の合理化、あるいは広く言えば行財政の整備、合理化をする必要があるんだということはあの中から読み取れる。その範囲においては税制調査会としても、およそそういう気分といいますか、そういう感じで仕事を進めておるわけでございます。  そういう前提に立って、しからば中期の期間あるいは五十五年までの期間、五十五年と申しましても、五十三年からですから、ごくわずかな三年の期間になってしまいましたけれども、その間にどれくらいの増税をお願いし、そして、その増税はどういう税でもってお願いするんだというところまでは詰めておりません。また、それはもう少し政府の今後の経済の中期的な見通しなり計画なりというものが立つ段階、同時にまた、年々の税制のあり方を審議する税制調査会の場で行わざるを得ないのではないか、いまから行って悪いというわけではございませんが、今日のような状況ではそこまでは税制調査会としてはできかねる、大体いまのところこういうような見込みでおります。
  39. 只松祐治

    ○只松委員 一方、けさの新聞は、吉瀬次官が、公債は目に見えて引き下げてみせる、また、みせなければならない、こういうことを言っています。当然に、これは税収によっていまの中期財政計画を賄っていかなければ、これは手品をするわけにはまいりませんから、ほかに方法はない。そうすると、いろいろまだ微妙な段階で言葉を避けておられますけれども、帰するところ消費税を大幅に新設しなければならないということはだれが見ても、これは私だけじゃなく、小倉さんに三回来ていただいて御質問しているわけですが、一歩一歩、私の感触としてもその方向へ進んでおる感触を受けておるわけであります。これはあと二週間足らずすると感触じゃなくて結論が出てまいりますから、おのずから明らかになると思います。  そういうことになりますとどの程度消費税が取れるか、私たちは私たちなりに勘定をしますと、大蔵当局も言っているのは、最低で二兆円から多ければ七兆円ぐらい、足して二で割っても、真ん中をとりましても大体四兆円前後というものが、いきなり来年から四兆円前後にするか何年かあけてするか、それを平均値にしたときに四兆円となるかは別にして、とにかく消費税でその前後のものを取らないとこの中期財政計画の三十五兆円の税収には及びもつかない、こういうことになるのは明らかですね。これはどんなことをしても法人税や所得税でそんな大幅な伸びというものはない。したがって、消費税というものは大体そういう、三年平均いたしまして四兆円前後、あなたがおっしゃるように、あれは役人のつくったもので、あれは閣議決定ではあるけれども自分たちとしては疑いの点もあると言えばまた別になりますけれども、しかし、政府の諮問機関でございますから、この閣議決定に基づいた一応のそういう方向で御論議なさっておることもまた事実なんです。したがって、大体そういうふうに四兆円前後という私たちの推測はそう誤りはないと、あなたの方からいまそうだと額は示されなくても、私の推測に誤りはないと、こういうふうにお思いになりますか。
  40. 小倉武一

    ○小倉参考人 消費税の見積もりでございますけれども、これはいろいろ試算をすることがあるいは可能かと思いますけれども、もっともしかし、これは私たちじゃちょっとできにくいわけです。     〔委員長退席、小泉委員長代理着席〕 と申しますのは、消費税としてどういうふうに仕組むかという骨格がまだ決まっておりませんので。ただ、税収入の必要性から何兆円あった方がいいんだろうというふうな漠然たるといいますか、そういう数字はまた人々によってあるいはおはじきできるでございましょうし、あるいは消費税にしましても、こういうふうに仕組んでこの程度というふうなこともできるでしょうけれども、私たちとしてはまだそういう数字を役所の方から聞いたこともございませんし、また、委員会の席上でどなたかの委員がこういうふうにやればこの程度の消費税の収入になるというような御意見も拝聴してございませんので、その辺は全く白紙でございます。
  41. 只松祐治

    ○只松委員 私の言っていることは全く見当外れだと思いますか、まあそういう感触だとこういうふうに……。しかし、少なくとも具体的な税制を論議なさっているわけですから、これは一つ結論というものを出せば大体税の増収は行われるだろうということを前提として御論議なさっておるんで、子供のけんかでもなければ学者の論議でもないわけです。やっぱりこれをやったら幾ら取れるということを前提として論議なさっておるわけですから、ここであなたの方から言いにくいにしても、私がそういうことを言えば、まあ当たらずといえども遠からずとは言わなくても、そう外れてないというぐらいのことはお答えになってもそう国民の前に悪くはないと私は思うのですが、いかがですか。
  42. 小倉武一

    ○小倉参考人 それは、突然の金額でございまして、どうも、どういう消費税の構想を先生がお持ちで、したがってこうだということをお話しいただいても、私にはちょっと、それで四兆円になるかどうかはすぐには見当はつきかねるのでございますが、それはもう四兆円のお話は御意見としてお聞きするほかはないと思います。
  43. 只松祐治

    ○只松委員 そういう全体のマクロの問題がそういうふうに抽象的に逃げられたわけですから、ミクロの個々の課税最低限を幾らにしていくか、あるいはどういう品目に課税していくか、まさか魚や野菜まで課税されるとは思いませんけれども、消費税というものをどういうところに力点を置いていくか、そこまで詰めてないと思いますけれども、私がいつも申しますように、決めてしまって答申をきちんと出すということでなくて、国民にある程度知らせる、あるいは相談をしていくというのは、私は納税の納は納得の納だと言っておりますように、税制の論議のあり方だと思うのです。とするならば、これをやるのは本委員会か大蔵の税小しかないわけです。税調と国民が論議する場合。だから若干なりとも方向を御論議なさっておるか、なさっておらなければ会長として御所見なりそういうものがあるかどうか、あればお聞かせをいただきたいと思います。
  44. 小倉武一

    ○小倉参考人 これは全くごもっとものお話でございまして、突如としてある日具体的な案が出るというようなことで、その間一般の国民の意見が反映しにくいように持っていくことは好ましくないと私も思います。  しかし、今回中期税制のことを考えておる際は、おおよその構想といいますか、考え方にとどまらざるを得ないのではないかという気がしております。と申しますのは、特にこの一般的消費税につきましては、いまお話のようないろんな問題について一般の御意見を反映しなければならぬということもございまするし、したがいまして、仮に中期税制の答申がある程度の骨子をもってなされるといたしまして、その次の段階に今度はそれをどういうふうなかっこうで税制に仕組むかという第二段階が恐らくこれは税制調査会としても必要なのではないかという気がいたします。いわば今回のは中期税制というようなことになっておりますけれど、従前で言えば長期税制のあり方というふうなものがときどき答申になったこともございますが、これなどをざっと見ましても、長期税制のあり方についてそう具体的に書いてあるわけでもございません。それを具体化するには、やはりある程度の具体性を持った内容でお示しして御意見を拝聴するということになりましょうし、さらに政府が今度法案にするという段階があるわけでございます。その際にもまた御意見が拝聴できるし、さらにまた国会にお出しをするというふうなことでございまするので、幾段階かにおいて一般の方々、国民あるいは国会の御審議あるいは御批判を受ける機会があると思いまするので、税調としても突如相当の具体的な内容を持った、先ほどお話のように積算すれば幾らになるというふうなところまでのものをいきなりお出しするということはなかなかできにくいのではないかという気がいたしております。またそうあっては困るのではないかという気もいたします。
  45. 只松祐治

    ○只松委員 まあ新税は必至でございますし、これを適用すると言うか、全国民に及ぶ問題でございますから慎重であらねばならぬと同時に、やはり国民にある程度知らしめて審議を進めていただきたいと私は思うのです。したがって、これで三回お出ましいただいておりますし、私はできればこれが政府に答申される前に、ぴしゃっとしたお答えでなくても一定の方向は国民に知らせてやる、また国会でもう一度ぐらい来ていただいてそこいらを相談しつつ、別にこれを是認するわけじゃありませんが、一応の方向を示しつつ政府に答申をしてもらいたい、私はこういうふうに存じます。きょうは時間がございませんのでそれ以上話し合いできませんけれども、ぜひひとつもう一回ぐらい出てきて、日程によりましても大体月末には固まるようでございますから、できればひとつもう一度お出ましをいただきたい。  最後に、この場合不公正税制ということが問題になります。私も前回、あなたがお帰りになった後にもその具体的な一つのタックスヘーブンという問題を取り上げたわけでございます。これも後の時間に、きょうあなたがお帰りになった後で取り上げますけれども、単に医師の優遇税制とか租税特別措置というような面だけではなくていろいろな問題があります。それから税金の場合は、いわゆる省令なりあるいは政令なり、そういういろいろな関係法令がございます。あるいは調査、徴税、こういうことによって実際上国民にかかってくる場合は、単に一般の法と違いましていろいろな差が出てくるといいますか、開きが出てくるというか、あるいはいろいろな問題が生じてくる。したがってそこで、この場合でも不公正税制ということが打ち出されておりますが、私はこの新税を創設するために羊頭狗肉であってはならない、不公正是正をすると言いながら中身はほとんどタッチしない、あるいは皆さん方としては一応の答申を出されるけれども主税局や政府当局がそれをしない、こういうことであってはならないだろう。何としても私は、こういう大幅な新税を創設しなければならないというときには、まず先に不公正税制に勇断をもって対処すべきだ。したがって不公正税制の中身について、きょうは余り時間ございませんから詳しくはできません、別な機会にまた論議いたしますけれども、その中身について、特にいまちょっと例を挙げましたけれども、国内における中小企業者や日本だけに住んでおる普通の国民は完全な徴税の把握がされる、外国に出資している商社、四千社を超すあるいはタックスヘーブン地域に千から千二百社、きわめてあいまいである、そこにためられたドルというものは皆目わからない、こういうことでは、外国にペーパーカンパニー等をつくるのは大商社以外にはない、幾ら脱税しようといってもそこいらの小さい土建屋やなんかがペーパーカンパニーをタックスヘーブン地域にまでつくるはずはありません、したがって、そういう問題等についても新法律をつくるなりあるいは諸外国と租税条約なり協定をもっと強化するなり、いろいろなことが同時に行われなければならない。そういう点についてお考えを聞かせていただきたいと思います。
  46. 小倉武一

    ○小倉参考人 不公平税制の問題は、これは御指摘のとおり、税制調査会でもほとんどというか全く異論がないところで、是正しなければならぬという意見でございます。ただ、いわゆる不公平税制、こう申しましても、特別措置等ごらんになっておわかりのとおり、少額の預金の助成であるとか、あるいは中小企業であるとかあるいは住宅の問題であるとか、多数いろいろございまして、そういうものが皆不公平税制であるというわけにもまいりません。  それからもう一つ問題は、法人税の仕組みに関連しまして、これが不公平税制と見る見方と、いやそれは違うのだという見方とございますが、どうも税制調査会の大方の意見は、法人税の仕組みに関係をするものについてはこれは別途法人税そのもののあり方として検討すべきであって、不公平税制の問題として処理するのは適当でないというように一応結論としてはもう昨年以来なっておるわけでございます。  それからいまのタックスヘーブンの話は、これは新聞等で私も拝見をしておりまするし、新聞以外にも外国、まあ小さい国ですがそういう国のあることも承知しておりますけれども、それをどういうふうに取り扱うということについてはまだ税制調査会で討議の対象になっておりません。恐らく主税局その他で国際的な租税条約その他の関係等もにらんで、これも不公平税制と名づけるか名づけないかは別にしまして、この税制のあり方について問題点と方向でもある程度おつきになればあるいは調査会でも取り上げることになるかとも思いますけれども、いまのところまだ議題にはなっておりません。
  47. 只松祐治

    ○只松委員 ひとつぜひ議題にして——私の言うように、羊頭狗肉であってはならない、そういうところは新たな不公平税制の大きな問題である、だから議題に取り上げてください。必ずしも大蔵当局から、主税局から——私、この前言ったように、事務局のあり方等から問題になるわけですから、そこまできょう時間がないから私は論議しておらないので、ぜひあなたからも発案してやるのが普通ですから、やってください。こういうことがありますかと聞いておるのです。お願いもしておるのです。
  48. 小倉武一

    ○小倉参考人 そういう御意見十分拝聴しました。
  49. 小泉純一郎

    ○小泉委員長代理 坂口力君。
  50. 坂口力

    坂口委員 税調会長には何度かお越しをいただきましてまことにありがとうございます。  私がお聞きしたいと思っておりました幾つかの議論がすでに出たわけでございますが、いま議論のございました中の一つに一般消費税の問題がございます。この一般消費税のことにつきましては、一般売上方式がいいのではないかというような御意見があります。やはり若干細かく議論が進んでいるなという感じを受けたわけでございます。けれども、このほかに、一般消費税の問題につきましては、所得税との絡みの問題等もあるわけでございまして、この辺のところが、いまどういうところまで議論が進んでいるのか、もう少しお話しをいただけるのではないかというふうに思いますが、ひとつお願いを申し上げます。
  51. 小倉武一

    ○小倉参考人 消費税と所得税との関係でございますけれども、大きく申しますれば、先ほどもちょっと只松委員にお答えしましたように、税収の大きさとしまして所得税にどの程度依存できるのか、それから消費税にどの程度依存できるかという問題が一つございます。もう一つは筋論としまして、所得税に依存して増税をするのが税制上いわば正当な理論であるといいますか、筋の通った理論である、しかし、そうばかりも言っておれない、こういう議論とございます。  それからもう一つは、似たようなことでございますが、所得税であれば当然累進的になる、消費税であればいわゆる逆進的になるおそれがある、こういうことでございます。そこで、余り消費税に重点を置くと逆進性が強くなって困るのではないか、こういう意見がございます。したがいまして、それらをどういうふうにかみ合わせて所得税との関係で消費税を考えるかというのが問題でございます。  そこで、逆進性の問題でございますが、酒とかたばこはなるほど非常に逆進性が強いものでございます。しかし、物品税になると、御承知のとおり物品税というのはどちらかというと従来ぜいたく品的なものにかけておった関係もありまして、これは逆進ではなくてむしろ比例的あるいは多少累進的になっていることがございます。総計してみますと、間接税、物品税と酒税も入れますと、大体比例的になっているのではなかろうかという感じでございます。  そこでもう一つの問題は、結局、税を負担するのは、消費税であろうと所得税であろうと全体としての税でございますから、両方合わせてどうなっているのかを見るのが適当であろうということでございまして、累進的な所得税、多少逆進的な傾向を持つものも含んでいるものと合わせてみて、しかるべき累進性が確保されていればいいのではないかという考え方もあるわけでございまして、仮に一般消費税について相当の負担をお願いするとすれば、その辺を考えて、余り逆進的な作用が及ばないような工夫というものが必要になる、こういうことかと存じておる次第であります。     〔小泉委員長代理退席、山下(元)委員長代理着席〕
  52. 坂口力

    坂口委員 いま御説明いただいたことにもう少しつけ加えさしていただきたいのですが、所得税というものが税の中心であるというのが筋論だというお話があったわけで、これは確かにそうだろうと思うのですが、この所得税というものを中心にしてそしてプラスアルファという形で一般消費税というものをお考えになっているのか、そこから上がってくるいわゆる税額等の額の問題ではなしに、考え方としまして、もう少し大きいウエートを一般消費税というものに置いての議論になっているのかということをもうちょっとお聞きしたいことが一つ。  それからもう一つは、物価上昇の問題で、何か物価上昇には一般消費税はそう影響しないだろうという御結論のように新聞等に報道されているわけでございますが、われわれその辺も心配をする点の一つであるわけでありまして、この辺のところが、どこまで詰めた議論がなされているのかということをもう一つお聞きをしたいわけであります。
  53. 小倉武一

    ○小倉参考人 所得税と消費税とに税源を求める際にどの程度のウエートをかけるのか、所得税についてはもう決まった税率制でございますから、それに多少——多少と言っては失礼ですけれども増減税という問題はあるわけでございますが、それにプラス消費税をする場合の考え方としましては、まだ煮詰まった考え方はしておりません。  しかしいずれにしましても所得税が根幹であり、消費税は何らかの意味においてそれを補完するものであるというような考え方が私はいいのじゃないかと思います。しかしまだ税率をどうする、消費税の範囲をどうするかというようなことにつきましては詳細検討しておりませんのでどうこう言いませんが、外国等の例から見ますと、アメリカは一応別でございますけれども、国税としてみますとアメリカに次いで日本は、法人税を入れまして直接税のウエートが非常に高い。ヨーロッパ諸国と比べてみると間接税のウエートが非常に低い。したがって別に外国にならうということだけが能じゃございませんでしょうけれども、もう少し間接税の負担をお願いしてもいいんじゃないかというようなことも考えられるわけです。フランスなんか徹底しておるというとおかしいです。けれども、所得税が四割ぐらいだったですかのウエートしかない。そういったような状態になるということは、これはとうてい想像ができないわけです。しかしいずれにしても金額からいえば補完的なものであろうというのが、これは私個人的な感じでございますが、そういう感じがいたしております。  もう一つ物価の問題につきましては、これも一般的な消費税ということがあればその負担は消費者に転嫁されるということが予期されるわけでございますので、それだけ上がるということはこれはやむを得ない。ただその際に物価騰勢に拍車をかけるということはないのかどうか、あるいは便乗値上げということがあるのではないかとか、いろんなことがございますが、これはやはり税金だけの問題でなくて、一般の物価政策全体とのにらみ合わせで、悪い波及がないようにするということがぜひ必要かと思います。  それから、消費税でもって増税された分だけは、それは物価が上がるのはやむを得ないけれども、それは単なる物価上昇と違って、それだけ財政収入はふえるのであるから、そこは単なる一般物価の上昇とは若干趣が違うのではないかというようなこともございまして、一遍物価が上がるということはやむを得ないというようなことでございます。
  54. 坂口力

    坂口委員 もう少し聞きたいのですが、ちょっと時間がございませんので、もう一つ別の問題を聞かせていただきたいと思います。  法人税の問題がございますけれども、法人税については一つの限界であるというようなお考えであるやに承るわけでありますが、私どもまだ限界には少し距離があるというような考え方を持っているわけでありまして、その辺のところはそういう結論になっているのですか。
  55. 小倉武一

    ○小倉参考人 別に結論を得ているわけではございません。審議の途中でございますけれども、これはなお若干の増税の余地があるだろう、こういうようなことでございまして、具体的にそれをどうするかということについては、税率をどうするというようなことについては、まだ審議は及んでおりませんが、これで大体精いっぱいで、したがって法人税の増税の余地はございません、そういう結論を得ているわけではございません。
  56. 坂口力

    坂口委員 それからもう一つ増税についてはどういうふうな内容にするかということとあわせて、時期をどうするかという問題があるわけでありまして、その時期は当然のことながらいろいろな前提条件があると思います。たとえば経済成長率でございますとか、物価の上昇率でありますとか、そのほかに幾つかあるかもしれません。そういった時期というものについても議論の対象になっているのですか、どうですか。
  57. 小倉武一

    ○小倉参考人 これはむろん時期についても審議対象——審議対象と言っては語弊がございます。が、審議になっております。ただ、私ども審議していますのは、中期税制ということでございますので、その時期については、やはり一番妥当なときにスタートする。今後三年なり何年かの間の最も適当なときにスタートする。あるいは最も必要なときというのもむろん考えざるを得ませんでしょうが、必要なときだけではなくて、環境条件がこの時期がよろしいというときが見定めがつけば、そういうときが最もよろしいということは抽象的には言えるわけでございます。しかし、何しろこういう財政の状況でございますから、できれば早い時期にやった方がよろしいということは、また一方において言えるかと存じております。
  58. 坂口力

    坂口委員 最後にもう一点だけお聞きをして終わりにしたいと思います。  長く会長をなすって今日までいろいろ議論をしていただいたわけでございますが、この税制調査会のあり方というものについて、いままでの御議論あるいはまたいままでの取り組まれた過程を踏まえて、何かお考えになっていることございましたら、ひとつこの際にお聞かせいただきたいと思います。  いろいろ一般的な議論も出ているところでありますが、現在の状態でいいというふうにお考えになっているのか。あるいはまた現在の規模だとかあるいは内容というものをもう少しこういうふうに変えた方がいいのではないかというふうな、そういったことも含めてこの税制調査会のあり方というものに対するお考えをひとつお聞きしておしまいにしたいと思います。
  59. 小倉武一

    ○小倉参考人 これは私どもいわば使われている方でございまして、税制調査会を設置し委員を任命し運営する、運営の方には一部は議事の段取りの責任がございますから関係がございますが、余り口幅ったいことを申し上げられる地位にはございません。  ただ、一般的感想を申し上げますと、いまそうたくさん審議会に関係しているわけではございませんが、過去から数えてみれば相当の数になるわけでございますが、その中で税制調査会はわりといい方ではないかと実は感じでおるわけでございます。一般には何か知らぬけれども有名無実みたいにごらんになる方もあるわけでございますが、審議会は政府の諮問機関ですから、行政機関と違ってそう独自の役割りを果たすということを考えることの方がちょっと無理でございますので、いろいろなそういう意味での政府の諮問機関の中ではまずまずいい方だろう。上中下に分けるとどうも上の方に属するのじゃないかという気がするわけです。  そうだからと言って、もういまのままで満足すべき状態であるかというと、必ずしもそれはそうではございません。しかし、それは言い方は非常にむずかしいのでございますが、一つはやはりこれはどうしても政党政治との関係があるわけですね。この政党政治との関係というのは、これは何も委員会に限らず行政官庁のあり方だってそうかと思いますが、だからこれは一委員会のあり方云云という問題ではなくなるわけです。もっと自主的に自由に論議できるというふうなことになるには政党政治の関与がどうも強過ぎるのじゃないかという感じがするわけです。ただ、増税の問題になりますと、余り関与がございませんから、それはちょっと話は違うわけですけれども、そんな感じでおります。
  60. 坂口力

    坂口委員 では、終わりにいたします。
  61. 山下元利

    山下(元)委員長代理 柴田睦夫君。
  62. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 会長のお話を聞いております。と、十月十日を期して税調の答申を出される、そうして結局は所得税、法人税、それに間接税においても一定の増税の答申が出るということになるようですが、この税制の改正は国民各層にとって大きな影響と利害を持つわけであります。特に今回の中期税制の改革は国民が大きな関心を持つことであって、どういう改正が答申されても、あるいはその改正されようとするについての何といっても国民的な合意、そうしたものがどうしても必要であるというように考えるわけです。  国民への増税が図られようとして、その中で大きな目玉に付価価値税あるいは一般消費税の導入ということが伝えられておるわけですけれども、これについては、御承知のように総評を初めとする不公平税制をただす会、あるいは全国商工団体連合会、日本消費者団体連合会、こうした多くのところで国民運動としてこうした税制の導入ということに反対がなされているわけです。税制の改正を進めるに当たってこうした人々を含めた国民的合意を得ることが民主主義の世の中において当然のことだと思うのですけれども、現在もその審議の対象とされている内容、これもなかなか明らかにされないというようなことを考えてみます。と、そうした国民的合意を得る方向での努力が足りないのじゃないかというふうに考えるのです。が、会長としてのお考えをまず承ります。
  63. 小倉武一

    ○小倉参考人 国民的合意ということは、最近いろいろな場面で言われまして、確かにそういう必要性があることは私ども十分承知しておるわけでございます。税制問題なんかになりますと、よけいそういう主張というのがあるのかと思います。ただ審議の途中の問題につきましては、途中でいろいろ変更が起こるということがあります。当然これはあり得るわけでございます。ところが一般に報道される場合に、報道されて一般に周知したころには、次のものはそれと違っておったというようなことになりますと、いろいろこれまた要らざる混乱が起こるというようなことがございまして、ある程度まとまったところで報道申し上げて御批判を願うことがよろしいのじゃないかというような心づもりも他方において必要かと思います。  したがいまして、税制調査会は何も万事すっかり決まった答申が出るまで秘密にしておいて、答申ができたらそれを発表するということだけでいいとは必ずしも思っておりませんけれども、段階、段階において、たとえば昨年、いまの中期税制審議の途中、一応の段落として、中間的な審議の状況を資料をまぜて公にしておるということもございまするし、適当な時期には、お話しのとおり、一般にお知らせをして御批判を請うということは必要だと思います。
  64. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 問題になっております付加価値税あるいは消費税の四つの類型、会長が言われましたものの類型、それぞれの具体的な問題についてどれが最も妥当であるかということを出さなければならなくなるかと思うのですけれども、税調としては、それぞれの類型について利点あるいは弱点、こうしたものを併記するようなことになるのか、それとも、このやり方が最も妥当である、そういう方向での答申がなされるのか、そういう見通しについてお伺いします。
  65. 小倉武一

    ○小倉参考人 答申の仕方はいろいろあると思います。ただ結論だけ数行出すような審議会もございますけれども、税調は従来、わりと親切といいますか——皆さん方から見ると余り親切じゃないとおっしゃるかもしれませんけれども、ほかの審議会と比べてわりと親切な答申になっておるのじゃないか。ただいまの御質問のようなところは、審議の多少経過的なことも含めまして、製造者の消費税、付加価値税、大規模売上税あるいは取引税というようなものの長短は、恐らくお示しして発表するというようなことになろうかと思います。
  66. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 いずれにいたしましても、付加価値税や一般消費税は、結果的には最終消費者あるいは中小企業、中小業者、そうしたところに転嫁されるということになるわけですが、このような国民負担をふやす、負担の強化をするというような一般消費税導入の前にやるべきことがあると、われわれいつもそれを主張しているのです。それは言うまでもなく、不公正税制の是正という問題であるわけです。不公正税制を是正するという立場に立って新規の財源を生み出すことが必要であると考えますし、さきに言いました不公平税制をただす会などもその点を強く主張しているわけです。  ですから、やはり税調としても不公正税制についてどういう審議をしたか、どういうことを問題にして議論しているかということがわかるような答申にならなければならないと思うのですけれども、この点についての御見解を伺って終わります。
  67. 小倉武一

    ○小倉参考人 不公平税制の問題についての御質問、これはまことにごもっともでございまして、不公平税制の是正ということは、今回に限りませんけれども、一昨年あたりから非常に強くその点を内外に訴えて、また、具体的な措置も示して答申をいたしておるし、その後も逐次整理をしてきておるというのが実情でございます。今後ともそういう面には努力したいと思いますが、若干つけ加えて、お許しいただけば申し上げたいのです。が、不公平税制の是正は無論必要なことであるし、それをやらなければならぬというふうに思いまするし、税制調査会の中で、だれ一人としてそれには異論はないわけですが、それによって今日の財政問題が片づくという性質のものでないことだけはひとつ御了承願いたい、こう存じます。
  68. 山下元利

    山下(元)委員長代理 これにて小倉参考人に対する質疑は終了いたしました。  小倉参考人には御多用中のところ本委員会に御出席をいただき、かつ、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  午後一時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十五分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  69. 山下元利

    山下(元)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長の指名により暫時私が委員長の職務を行います。  午前に引き続き質疑を続行いたします。佐藤観樹君。
  70. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 大臣、きょうは全国知事会議の中でお忙しいところ御苦労さまでございます。  そう長い時間ではありませんので端的にお伺いをしていきたいのでありますが、九月三日に政府の事業規模二兆円と言われる総合経済政策が発表になったわけでありますけれども、非常に水ぶくれといいますか、羊頭狗肉と申しますか、中身は非常に小さなエビだけれども衣ばかりたくさんつけたてんぷらをわれわれが食べさせられるみたいな感じが非常にするわけであります。それはたとえば住宅の建設にしましても大体中身、ことしは六千億ぐらいしかできないだろう、しかも経済効果から見まして、波及効果は若干あるけれども、本来民間で調達するような金融、それが公庫の金融に移ったというぐらいにしかならぬだろう。そういうようなことを見てみますと、事業規模二兆円と言うけれども、中身については非常に小さなものにしかならないと私たちは見ざるを得ないわけであります。この辺のところを、大臣はせっかくおつくりになったのでありますからこれで十分六・七%の経済成長ができるというふうにごらんになっているんだと思うのでありますけれども、そういった意味で、新聞なんかの論評でも分析をしてみますと、非常に水ぶくれといいますか、二兆円、二兆円というわりには中身がないではないかという評判が非常に多いわけであります。まずその点について大臣はいかがお考えでございますか。
  71. 坊秀男

    ○坊国務大臣 今度の総合対策でございますが、そういったような見方をされる方ももちろんないと私は申しません。そういうような見方をされる方もございます。ございますが、私どもは国費及び財政資金それからいま仰せられた公庫の住宅募集といったようなものを、これは苦しい財政のいまの現況から見まして精いっぱいに出したということでございまして、いまおっしゃられたように、これは水ぶくれというものではないと私は思います。  そういうようなことから、今度の対策が金融関係の効果でございますか、そういったようなものの思い切った措置というものとあわせて相当の効果が私はある。そう申しますことは、今日までやってまいりました最初からのこの前倒しの政策でございますが、これも大分、今日までは余り明るさは見えないじゃないか、こう言っておりましたけれども、四−六等のそういったような経済指数から見まして、相当の目に見えた数字が出てきておるというようなこととあわせて今度の総合対策というものは相当な効果を発生する、私はこういうふうに考えております。六・七のこの目標というものは、これは必ず達成することができるというふうに考えております。
  72. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 政府が初めて、あれは九月の何日だか、私はっきり覚えておらぬのでありますけれども、新聞に全面広告をやったわけです。三千万円ぐらいかけだそうでありますけれども。まあその意味での心理効果というか、PRをかなり考えたことは事実のようであります。しかしあの中で一番われわれが気になるのは、この総合経済対策の中でも、公定歩合引き下げとは書いてないけれども金利水準の低下を図るというふうに書いてあって、そして同日九月三日に公定歩合引き下げが行われたわけですね。  その効果についてはきょう午前中森永総裁とやり合ったわけでありますけれども、そこで問題なのは、やはり総合経済対策の中で公定歩合引き下げが入っている。それは直接的には日銀の問題でありますけれども、入っている。きょうの午前中も議論になったのは、大体これによりまして、〇・七五%下げたことによってこれから郵便貯金の金利引き下げも、審議中でありますけれども恐らく過去の経過からいったら、残念ながら大体いまのシステムからいったらなるだろうと思う。そうなりますと、大体一家族当たり一万五千円ぐらいずつは金利が吹っ飛んでいってしまう。一万五千円といいますと、あのすったもんだしてやっと渋々出した一兆円の減税とほぼ匹敵するわけですね。何やっているかわからぬことになっちゃうわけですね、そういうことをやっていますと。こういう面からいって、あの政府のPRを見ましても、全体経済がよくなるという話は書いてあるけれども、庶民にそういった直接つながった預貯金の目減り、あるいは金利引き下げに伴うところの金利の減少、さらに物価上昇率との関係から言えば目減りがひどくなるわけでありますけれども、そういったことについては一言も触れてないわけですね。やはり庶民は預貯金の目減りというのは端的に一番響いてくるわけなんです。その辺のことについては一体大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃるのですか。
  73. 坊秀男

    ○坊国務大臣 預貯金の目減りでございますが、公定歩合引き下げてまいりまして、昭和五十年からやはり預金に対する配慮というものは絶えず考えておるというようなことで、五十年から五十二年の五月までの公定歩合引き下げというもの、それと預金の利率の引き下げというものはずいぶんこれ配慮いたしまして、公定歩合の場合全部で都合四%下げておるが、預金については二%といったようなことを考えましてやってまいった。そういったようなことから、佐藤さん御承知のとおり、金融機関の貸し出しと預金との利ざやというものはだんだんと小さくなってまいる。そういったような場合に公定歩合引き下げるということは、どうしたって預金の金利を下げてまいりませんことにはなかなか金利引き下げの実効を得られないということから、預金の利子を引き下げるというような態度に出たのでありますが、なおそういうようなことも考慮をされまして、例の特殊の預金者、年金の受給者といったような方々の預金につきましては特別の配慮をするなどということで、いまおっしゃられたように、そういった大衆の預金については非常に過酷じゃないかというようなことに対しましては、私どももでき得る限りの配慮をしてまいった、かように考えておる次第でございます。
  74. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私が問題にしたいのは、確かに福祉預金というのはもう一回復活をさせています。その点については是といたしますけれども、きょうの午前中も論議しましたように、いろいろな計算の仕方があるけれども、五十二年度の後期の、資本金一千万円以上の十七万社の金利負担軽減額が大体千七百億ぐらいだろうと計算されているわけです。半期で。これは十七万社ですから、割ってみれば、金利軽減といっても一社平均百万円程度なんですね。大蔵省に言わせると、これで雇用の確保ができます。企業の経理が若干楽になりますというのは、少しおこがましいんじゃないか。これはまさに羊頭狗肉で、国民を全くごまかすことになるわけです。そして片方ではなけなしの貯金の金利が下がる、目減りはますます。ひどくなるということでは、果たして本当にそういった経済効果というのはあるのだろうかということを私は疑わざるを得ないわけであります。  いま大臣が言われた前半の話は、これはある意味では経済の常識でありますから、そのことは別にそれ以上のことを言いませんけれども、問題は、やはりあれだけのPRを出すならば、目減りをすることについても、せめて物価対策はなお一層やりますというぐらいのことも一つ加えておかないと、PRにはならぬのではないかと私は思うのであります。  それで、先に進めますけれども、さてそこで、事業規模二兆円の総合政策でありますけれども、一体これは財源のことはどういうふうになさるおつもりですか。
  75. 坊秀男

    ○坊国務大臣 財源でございますが、二兆の財源、これは一般公共事業等に約三千億、災害復旧等に約九百億の国費を出します。それから約三千四百億円の財政投融資を見込んでおります。そういうことによりまして、事業費約一兆円を追加いたすわけでございますが、そのほかに地方の単独起債千五百億と、例の公庫の八千七百億、それで二兆二百億というものが出ておるわけであります。
  76. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私がお伺いしたのはそれの財源でございまして、この中で財投で充当できるものはいいといたしましても、あるいはこれはどうするつもりだか知りませんけれども、三〇%の起債のアッパーリミットに残っているのは恐らく千億程度あるでしょう。その他、いつも補正予算でやる諸経費の削減、事務費の削減等で充てていきますけれども、それでも若干足りないところが出てくると私は目分量で見ているわけですが、そのあたりのところの財源はどうするのか。
  77. 松下康雄

    ○松下説明員 今回の対策に伴いまして必要となります国費の額につきましては、ただいま大臣からお答えがございましたけれども、そのほかにも、財政需要全体といたしますれば、たとえば人事院勧告に伴う追加の財政需要、その他がございます。これらのものを総合いたしまして、そしてそれにつきまして必要な財源をどのように充当していくかということを、現在私ども内部的にいろいろ検討しておる最中でございます。現在の予算を見直しまして、このような財政事情でございますから、極力既定経費の節約もいたさなくてはならないと考えておりまするし、またそのほかに、歳入等におきまして、何か知恵を出すことができないかということも検討いたしておるところでございまして、極力国債の追加を抑えながら必要な財政需要は賄ってまいりたいという考えで作業をいたしております。
  78. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 大体あと十日もすれば、言われているところの臨時国会の召集になるわけですね。それで、新聞の報ずるところによりますと、いま次長が言われたのでも恐らく足りないだろうから、そこで、開発銀行なり輸出入銀行なり中小公庫なりの貸倒準備金を取り崩すという話も出ているわけですね。そういったことも考えていらっしゃるのですか。
  79. 松下康雄

    ○松下説明員 私ども、歳入の対策あるいは特別の財源措置につきましては、確信を持ってこれならば大丈夫という考え方を固めるまでにはまだ至っておりません。いろいろな可能性がないかということを広く検討いたしておるところでございます。
  80. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それでは、そのことについても、具体的にはまだ討議が進んでいないというふうに理解しておいてよろしいですね。
  81. 松下康雄

    ○松下説明員 まだ具体的な結論を得るまでには至っておりません。
  82. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それから、これは大臣に聞くのでは話がちょっと細か過ぎるのかもしれませんが、経済企画庁が、あれはいつでしたか、先月だと思いましたけれども、四−六の経済成長が、年率に直すと六・七でしたかな、かなりハイスピードになっているという話が出ていたので、恐らく大臣の先ほどの六・七%達成できるというのは、もし、この追加の事業規模二兆円をやらなければ経済成長は五%程度ではないかと言われていたのが、この追加によって、うまくいけば六・七%の経済成長というふうに恐らく大蔵省も考えていらっしゃるんじゃないかと思うのでありますけれども、ただ、この中には若干トリックがありましてね。  これはGNPのはかり方自体の問題であります。けれども一つは、いまのGNPのはかり方というのは、在庫がふえればふえるほどGNPは高くなるわけですね。ですから、いまのように在庫が非常に問題になっているときに、在庫の積み増しがふえればGNPがふえるということでは経済の実態をはっきり把握できないわけですね。  それからもう一つ、私は寡聞にして最近知ったのですけれども公共事業の契約した額というのはそのまま支払いが行われなくてもその期にGNPの中に入っているのだそうですね。ですから、六月段階で五〇・二%の契約率が行われますと、約五兆円というのが実際に政府支出になってなくても入っている。これは本来おかしいのだと思うのですね。それで、こういうものをもとにして最終六・七%が達成できるという話は、いわゆる企業家景況感とのずれもあるし、実体経済とも非常にずれてくるのだと思うのです。これは京都大学の宮崎義一さんが言っていることでありますから、恐らく後半の政府支出の問題についても私はそのとおりだと思っているのでありますけれども、もしそうでないならば御訂正を願いたいと思いますが、こういうものをもとにして非常に景気が微妙なときに論議をしていたのではまずいのではないかというふうに思うのですね。これは直接大蔵省の問題ではないかもしれませんけれども、やはり財政経済全般を扱う大蔵省としてもこのあたり経済企画庁と話し合われて、このGNPの取り方について少し考え直さないと、どうも論議のベースが合わぬのではないかと考えるものですから、その点についてはいかがお考えでございますか。
  83. 大竹宏繁

    ○大竹説明員 ただいま御指摘がございましたように、GNP統計はいろいろな約束事の上に成り立っておるいわば加工統計でございまして、それを計算するに当たりましては、確かに在庫がふえる、国民総支出がふえるという仕組みになっているわけでございまして、よく言われておりますように、マクロでは伸びておるけれども個別の企業の段階でなかなか景気がよくなったという感じが出てこないという御指摘はしばしばあることでございます。そのような点につきましては、今回の対策におきましても有効需要の追加を財政の方からいたしますとともに、公定歩合引き下げとか、あるいは構造対策、失業対策といったような個別の対策を講ずることによりまして、いわばミクロの段階での景気の回復にも資するという配慮をいたしたところでございます。
  84. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 企業景況感というものとGNPというものはそんなに即ぶつかるものではないし、景況感というものはあくまでもフィーリングですからそれは差し引いて考えてもいいと思うのですけれども、GNPの取り方として、この微妙なときに、四分の一年ずつとるときに五〇%の前倒しをやった、六月末で五〇・二%の契約率にはなったけれども実際の政府支出はまだそこまでいってなくて、契約率が五〇・二%で、実際には金は恐らくその一割か二割ぐらいしか出てないと思うのです。だから、そういうものまで全部計数に入ってしまって、四−六が一・九%だから年率に直すと何%で、このままいけば何だ、どれだけ成長ができるのだというのはまずいのではないか。在庫の問題は、これはかなり基本的な問題ですからあれですけれども政府支出についてはこれを何か考える必要があるのではないか。これは大蔵省だけの問題ではなくて、統計を直すということになりますと過去との関係がいろいろあったり何かいたしますから非常にむずかしい問題があろうかと思いますが、ひとつこれは景気の問題をお互いに同じベースで、しかもなるべく実体経済に合わせて——いまですら実体経済と二カ月ずれて話をしているわけですから、経済企画庁と相談をして実体経済がなるべく早くわかるように、しかも正確にということでひとつもう一度考えてもらいたい、こういうことなんですがね。
  85. 大竹宏繁

    ○大竹説明員 先生のおっしゃいましたもう一つ政府支出のGNPにおける取り扱いでございますけれども、これは契約があったからGNPに計上するということではないというふうに私どもは企画庁から聞いておるわけでございまして、いわば工事が進行するにつれましてGNP統計に需要として出てくるわけでございますので、そのとらえ方といたしましては、政府固定資本形成の場合には支払いという段階でとらえておるというふうに聞いております。
  86. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私も常識的にそう思っていたわけなんですね。ただ、先ほど名前を出したように、宮崎義一さんが「成長率算出のからくり」という題で、頭金が支払われた段階で公共事業費が算入されてしまっているというふうに言われているものですから、そうしますと今度の場合にも前倒し効果というのが数字の上ではからで出てきているわけですね、これではちょっとまずいのじゃないかと思います。私もそれ以上いま自信がありませんので、ひとつお互いに調べ合って、なるべく実体経済に合うようにしてもらいたいと思うのであります。  最後に、大臣にお伺いをしていきたいのでありますけれども、いま日米の経済協議が行われておるわけですね。福田総理が五月にロンドンの先進国首脳会議で七億ドルの経常収支の赤ということを約束してきたわけですね。私はこれが出たときも、従来の貿易収支、経常収支の状況からいって、また日本の貿易構造からいって、経常収支が赤で七億ドルなんということは大変なことで、とてもじゃないけれどもこれは達成できぬ、こういうふうに踏んでおりましたら、案の定六十五億ドルの黒というのが出ているわけですね。これはどう見ても世界に対して赤と黒の幅が逆に十倍違うわけですね。これでは幾ら何でもみっともないし、私は五月の段階でこんなことできるかなということを思っていたのです。  これは一つの新聞の報道でありますからどうだかわからないのでありますけれども、日米の協議の中で、貿易というものはそう簡単に手綱がとれるものではないからなかなかその辺の数字合わせはむずかしいのだというのを通産省か大蔵省かの局長さんが述べたというふうにさる新聞には出ているのです。五月に総理大臣が外国へ行って約束してきたことが、日米の協議の中で局長さんが、とてもそれはむずかしくて実はできませんという話では——これは本当かうそか知りませんよ、新聞の報道でありますけれども、これでは何とも政治姿勢としておかしいし、いま短期的に日本の国際収支は大幅な黒になっておりますけれども、将来的に石油の購入その他を考えていきますと、長期的にはこれからむしろ外貨をどうやって獲得する産業構造にしていかなければならぬのかということを考えていかなければいかぬわけですね、短期的にはいま黒字対策になってきますけれども。そういうようなことを考えてみますと、どうも五月に福田さんが言われた話というのは、口から出任せと言っては何でありますけれども、冒頭私が言ったように、今度の二兆円規模の補正予算案なるものと同じように、どうも羊頭狗肉の感がして、やはり七億ドルの赤なんということは、これはもう本当に、世界に向かって幾ら何でも現状と余りにもかけ離れ過ぎている。その意味で、その場限りのことばかり言っていても日本は世界の信用を失うと私は思うのですね。これは政治責任のかなり大きなものだと思うのでありますけれど−も、大体七億ドルの赤というのを約束をしたことがいいかどうかは別といたしまして、経済企画庁の修正でも六十五億ドルの黒ではないかと言われているときに、五月には七億ドルの赤を約束してきた、これは余りにも行政当局としては無責任だし、総理自身の発言の信用というものを問われる問題ではないかと思うのです。大臣、これは一体どういうふうにお考えになりますか。
  87. 坊秀男

    ○坊国務大臣 福田総理の、ロンドンの首脳者会議におきます六・七の経済成長率ということにつきましては、これはだんだんと公約ということになってきておりますけれども、経常収支の七億ドルの赤ということは約束をしたことではありません。それははっきり申し上げておきます。ただしかし、七億ドルに触れなかったかといえば、それは見込みとしてそういったようなことを考えたのだと思いますけれども、要するに対米輸出の需要というものは堅調でございまして、それともう一つ、一方において日本の国内需要というものがなかなか上がらないというようなことで、そういったようなことが両方作用いたしまして、その七億ドルの赤ということはこれは見込み違いと申しますか、ただそれをうそ八百とか、そういうふうにはお考えいただかないようにひとつ願いたいと思います。
  88. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 六・七の約束をしたかどうかという問題になりますと、これはもう一回私も調べてみますけれども、要するに、世界はとにかく日本は七億ドルの赤だと受け取っているわけですね。これが日本のいまの貿易構造の中でできるかできないかの問題は別とします。さっき言ったように長期的な問題がありますから。そのことは別といたしましても、片方、結果がどうも、経済企画庁の試算では六十五億ドルの黒ではないか。逆に七億ドルぐらいの黒だというなら、まだ赤と黒が少し違った、色が違ったぐらいで済むかもしれないけれども、片や七億ドルの赤というのを話をしながら——いまどうですか、旦局長、大体アメリカだって日本に対してそのつもりでいるのでしょう。そのときに、結果はどうも六十五億ドルの黒だということでは、これはやはり福田首相の耳に数字を入れた事務当局に多分の責任があるだろうし、それをうのみにした福田総理にも責任があると私は思うのです。余りにもこれは数字が違い過ぎる。また私は、果たして背後の日本の貿易構造からいってそういうことができるかどうかということは非常に疑問に思う。その意味では、坊さんは福田派ですからおかばいになる気持ちはわかりますが、正直言って私は、これはやはり政府として大いに反省をしなければいかぬことだと思うのですね。日本国民に対してもうそを言ってはいけませんけれども、世界に対してこれは余りにも違い過ぎると私は思うのです。あえてもう一言お伺いして、私の質問を終わります。
  89. 旦弘昌

    ○旦説明員 ただいま御指摘の点でございますけれども、おっしゃいますように、確かに当初の五十二年度の見通しでは経常収支七億ドルの赤ということで見込んだのでございますけれども、その後の海外需要が非常に強い、それから一方では、国内の需要が当初予想しておりましたほどには上がってこないというような両面の誤差が生じてきたわけでございます。現在の日本の輸出入の貿易規模は、合計をいたしますと大体千四、五百億ドルの規模になっております。したがいまして、その間におきまして一、二%狂いますとこれが数十億ドルになる可能性があるわけでございます。こういう予想が食い違いましたということは、われわれの力の範囲外のいろいろな海外の要因もあるわけでございまして、そういうことで、好ましいことではございませんけれども、現在のような六十五億ドルというような点に修正せざるを得なかった次第でございます。その辺はひとつ御了承いただきたいと思います。  それからなお、先ほど日米準閣僚会議の御言及もございましたけれども、その際におきましても、将来の日本の経常収支の姿としてのいろいろな要望がございました。その話が出ました際にも、われわれといたしましては決して経常収支の黒を積み上げていくのが目標ではない、現実に本年度の三角七億ドルという見込みを立てましたときにも、経常収支の赤を受け入れる用意があるというスタンスをそこで示したわけでございますから、必ず黒字でなければいかぬということではないということを説明した次第でございます。
  90. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 終わります。
  91. 山下元利

    山下(元)委員長代理 只松祐治君。
  92. 只松祐治

    ○只松委員 せっかく大臣がお見えになりましたので、一言聞きたいと思います。  午前中に税調の小倉さんにもお見えいただきましていろいろ御論議いただいたんですが、そのときに、中期財政計画その他を勘案して現在の一八・二%に対して三%ぐらいの税の増収というものが必要ではないか、こういう論議を私はいたしました、そういう感触の話をされたわけですが、大臣もそのようにお思いになりますか。
  93. 坊秀男

    ○坊国務大臣 いまの只松さんの言われたようなことを念頭に置いて税制調査会では審議、検討をしてもらっておる、こういうことでございます。
  94. 只松祐治

    ○只松委員 これはある意味で全く画期的なことでございますので、また別な機会に論議いたしますけれども、ぜひ税調の結論が出る前にも当委員会なり何なり、大蔵当局もこの税制の新設に対しましてはひとつ慎重な御配慮をいただきたいということを御要望申し上げたいと思います。  次に、佐藤君がずっと午前中からこれも論議してきたわけでございますが、そういうことの一つの例といたしまして、たとえば郵貯を見ますと約三十三兆円あると言われております。仮にこれが十万円に対して千二百八十円利子が減った、こういうことにいたしますと、トータルとして四千二百二十四億円減るということになる。これは私たちがいたしました、さきの国会でのいろいろなものを含めまして約三千六百億円の減税というものが、郵便貯金だけの利下げでふっ飛んでしまう、こういうことになる。まして二百兆円に及ぶいろいろな形の預貯金、こういうものを考え合わせますと、これは大変なことになります。本年度内で約一兆円、あるいは平常年度に直すと二兆円からの実質上のいわば損害を国民がこうむる、こういうことも言われておるわけでございます。とするならば、たとえば住宅ローン——あるいは大会社は三年なり五年なり借りておりましても書きかえたり何かいたしまして、額が大きいだけにわりと簡単にこういうものは処理されていきます。中小零細企業あたりが五年なり十年なり十五年なり長期的に借りております。こういうものは、金額も小さいしいろいろめんどうくさい、数も多いということで、どうしても取り残されて古い金利のままに終わっております。こういう郵便貯金一つ数字を申し上げましても、国民には大変な迷惑を及ぼしつつ金利引き下げが行われておるわけですから、当然にその見返りとして中小零細企業への、まず一つは国家関係の金融機関、それから民間の金融機関もぜひそういうふうに指導をしていく。住宅ローンはなかなかむずかしいということでございますけれども、これもぜひひとつもう一骨折って昔にさかのぼった金利引き下げというものに努力してもらいたい。大臣の御所見を承りたいと思います。
  95. 坊秀男

    ○坊国務大臣 住宅ローンの金利につきましては、長期金利の改定が行われれば、その変更について民間金融機関において検討が行われるということになろうと思います。
  96. 只松祐治

    ○只松委員 余りこれが主題ではございませんので、きょうはそのくらいにしておきますが、銀行局長お尋ねします。  私は、前から景気が浮揚しない一つの大きな柱として、土地に莫大な金が投下されておる、これが国政の段階でもほとんど取り上げられておらないわけでございますが、経済界の裏の話といいますか、実際上いろいろな話をいたしますと、いや、おれが幾ら働いても、とにかく銀行に金利を払うために働いているみたいなものだ、何だ、それは、いや一番大きいのは何といったって土地の買い込みだ、こういうことがお互いの話の中では、経済界で出てきておるわけです。この数字を出しなさいとこの前も資料要求を本委員会でも私しておるのですが、今日に至るも、約三カ月くらいたっても出てこない。なかなか大変だろうと思う。たまたま出てきたのは、私のところに来たのは、五十一年度で八兆幾らかだったのですが、これは五十一年度というのは下火になったときですから、四十七、八、九年くらいの一番土地ブームが燃え盛っておったころ、幾ら買い占められたか、幾ら投下されたか、その金利払いが幾らぐらいになっている、これが一つの大きな問題点だと私は思うのです。安宅産業の倒産の一つの原因も一千億に及ぶ土地の買い込みにあったことは申し上げるまでもないことであります。これがはっきり把握されないで、一兆なら小型だ、二兆なら大型だというようなことでわずかな補正予算をいじくってみたところで、私は本格的な景気の浮揚というものはあり得ない、この面だけ見ても、こういうふうに思う。これだけではないですけれども。若干できておるようでございますけれども、私は速やかに全容をつかんでいただきたい、日本経済の再建のために。と同時に、ひとついまおわかりの数字をお示しいただきたいと思います。
  97. 徳田博美

    ○徳田説明員 先生御指摘のとおり、土地関連の融資につきましては、金融上の非常に大きな問題でございます。それで、銀行局としてもその辺の事情をいろいろ探っておりますが、この点につきましては先般、後藤前銀行局長が先生の御検討にたえるようなものができますかどうか、勉強させていただきたい、こう申し上げたわけでございます。  先ほど先生も御指摘のように、土地関係の融資がどれだけ現在あるかということの把握はかなりむずかしいわけでございまして、企業の場合には土地の保有と全体の資金繰りとの関係を必ずしも結びつけて的確に判断することは大変なことでございますし、全体の資金繰りの中に土地関係の融資が沈でんしてしまうというようなこともあるわけでございますので、いま把握はむずかしいわけでございますが、直接のお答えになるかどうかわかりませんけれども、一応現在わかる限りの数字について申し上げたいと思います。  まず、全国銀行の不動産業向け貸し出しでございますが、これは五十二年六月末でございます。と、五兆六千七百八十億円でございます。これが一つの手がかりになるかと思います。それから、これは全く別の角度からでございますが、全国銀行の銀行勘定の中で不動産、財団、船舶抵当貸し付けへのトータルの金額でございますが、これが二十五兆二百九十六億円ございます。これはしかし間接的な数字になるかと思います。  ただいま銀行についてだけ申し上げたおけでございますけれども、相互銀行、信用金庫を含めまして、不動産業向けの貸出残高を見てみますと、四十六年の三月末が二兆七千八百十五億でございまして、これが五十二年三月末には九兆四千四百七十二億になっております。この間の増加額が六兆六千六百五十七億円でございまして、これの相当部分が土地関連の融資というふうに考えてよろしいかと思います。  それからこれまた別の角度でございますが、一部上場の不動産業者の商品用不動産とそれに見合う借入金の増減を見てみたわけでございますが、四十六年度下期と五十一年度下期を対比します。と、商品用不動産は四千八百六億円ふえておりまして、これに対しまして借入金は五千八百九十四億円、このような数字になっております。これは一部の数字でございます。  このような数字とは別に、銀行局が独自にとった数字がございまして、これは実は四十七年、八年の総需要抑制の金融引き締めの際に土地関連の融資についてこれを抑制的に行うよう指導した際にとった資料がございます。これは、四十七年から四十九年の九月までとった数字がございまして、ちょうど先ほど先生御指摘の一番問題の時期でございます。  これはどのような調査をいたしたかと申します。と、五つの業種、不動産、建設、私鉄、百貨店・スーパー、商社、この五業種について調査いたしまして、この五業種に対する銀行の貸し出しを実行した額の中で土地取得金が一億円以上、地方銀行については五千万円以上でございますが、一億円以上あると認められた貸出金を全部報告さしたわけでございます。  これの全額を申し上げますと、四十七年中は一兆九千五百三億円でございます。土地ブームが過熱してまいりました四十八年中は三兆五千五百六十九億円でございます。それから四十九年のこれは一月から九月まででございますが、四千六百八十億円と非常に金額が減ってきております。失礼しました。四十八年の増加額が三兆五千億と申し上げましたが、それは累計でございまして、一兆六千六十六億円でございます。  もう一度申し上げますと、四十七年が一兆九千五百三億円、四十八年が一兆六千六十六億円、四十九年が四千六百八十億円でございまして、合計が四兆二百四十九億円でございます。  これは一−四半期のピークで申しますと、四十七年の十−十二月が三カ月で七千二百八十八億円出て、これがピークでございまして、四十九年の七−九月になりますと千億台に下がってきているわけでございますから、ほぼこの辺でいわば土地ブームのときに取得されたものが、全額に近いものが出ておるのではないか、このように考えられます。  なお、御参考までに申し上げますと、この間におきましてこの五業種に対する貸し出しの増加額の総計が八兆八千七十二億円でございまして、これに対しまして先ほどの土地関連の貸し出し四兆二百四十九億円は大体四六%に当たるわけでございます。したがいまして、この間の五業種に対する貸し出しの四六%が土地の取得に充てられた、このような数字になっております。
  98. 只松祐治

    ○只松委員 いま数字をお述べになりましたけれども、大体いわば内輪といいますか、控え目といいますか、直接に限られたものだとほぼ推定される。しかし、これは氷山の一角とまで申しませんけれども、まだ下に隠れて、設備投資だ、あるいはいろいろな名目で借りておりながら土地を買っておる。しかもこれが多く調整区域なんですね。私はたびたび言いますように埼玉県だけでも浦和市、川口市に匹敵する膨大な調整区域の買い占めが行われておる。これがどうしようもない。もうにっちもさっちも動かない。それでその金利だけ払わなければなりませんから、金利支払いに追われておるというのが、現在の景気が上がってこない一つの大きな要因になっておる。ところが、臭い物にふたかどうか知りませんけれども、恥ずかしいのかどうか知りませんけれども景気対策のときにこの問題はほとんど論じられることがない。政府もまず表に出しては論じない。ところが、末端の市町村や県に行きますと結構これは論じられておるのですね。埼玉でも買い上げてくれないか、それで農地にまた逆転用してくれないか、こういうことで業者が盛んに働きかけてきておるわけでございます。  きょうは時間もありませんが、大臣、ひとつ景気対策にただ単なる——この予算を五千億や一兆円ふやした、減らした、社会党は一兆円だから景気対策は余り熱心でねえ、ぼくたちは二兆だ、二兆五千億言っているからえらい国民のことを考えているんだ。それはまあ言い過ぎとまで申しませんけれども、一方的なことだと思う。だから、もう少し本格的な経済の再建について——ここまで来ているんですから、悪いところは悪いところでどうしようもない。税収率は、三%も急速に増収を図らなければならないというところに来ているんですから、腐ったところやらこういうものは出してしまって、それから経済再建をどうしていくかということを論議した方が私はいいと思うのです。だから私は、いまのは全部でないと思いますので、さらに的確な調査資料の提出をお願いいたしたいと思います。私が言うよりも、政府当局としてもこれを本当につくらなければ経済の立て直しはできないんじゃないですか、大臣。ぜひやってください。要望をいたしておきます。  それから、ついでにお聞きしておきますが、そういう中でことしの上位五十社の利益や何かいろいろなことを見ますと、銀行というのは依然としてもうけているんですね。上位にランクされておる。銀行はもうけているだけに、どんどん銀行店舗数がふえております。これはお互い競争しておりますからそうですが、銀行に行って聞いてみなさい。いや、店舗は確かに多いよ。自分のところは多いとは言わない。人のところなり全体として多い。こういうことはお互いにそこの町の支店に行って聞いてごらんなさい。あそこもここもいっぱいあるじゃないか、いや、多過ぎますよ、君のところやめればいいじゃないか、うちはあれだけれども、ほかのところは多い、こう言います。  だから私は、新しくニュータウンができたりそういうところには必要だと思いますが、それは新規ではなくて、いままで古いところは、小学校や何かでも旧市内は生徒が減ってきています。古いところを減らして、そして、町の真ん中から持っていくのは多少体裁悪いかもしれない。しかし、そういうことをやって、新しく銀行がふえているニュータウンやそういうところに持っていく、こういうふうにすべきで、いたずらに店舗数だけ増大しない方がいいと私は思うのです。別な機会にまた銀行行政全般についても質疑をいたしたいと思っておりますけれども、余り店舗をふやすことは私はしない方がいいんじゃないかというふうに考えますが、大臣、こういうふうにお考えになりますか。
  99. 徳田博美

    ○徳田説明員 金融機関の店舗でございますが、確かに先生のおっしゃるとおり、既存の市街地店舗にはかなり金をかけた店舗も多いわけでございますけれども、最近の店舗行政につきましては、このような市街地の競合するような店舗については、非常に抑制的に行っておりまして、現在ふえている店舗の主体は、先ほど先生も御指摘になりましたような住民の利便ということを中心にしておりまして、団地店舗等がかなり大きな比率を占めております。したがいまして、一店舗当たりの土地、家屋の経費も、従来に比べると非常に低いものになっておるわけでございまして、その点では、かつてのような姿は徐々に変わってくるということを考えております。  それから配置転換でございますが、この点も経済情勢はいろいろ動き変わっておるわけでございますので、従来は配置転換を余り認めてなかったわけでございますが、本年度の店舗の認可に当たりましては、そういう意味経済情勢変化に応じ、住民の利便に即応した形での配置転換についても弾力的に認めることにした次第でございます。
  100. 只松祐治

    ○只松委員 前回のときに私は、不公正税制一つとしてタックスヘーブンの問題を取り上げました。そのときに、参考人に三菱の方もお見えいただいたわけですが、けさ議事録ができてまいりまして、それを読み直してみましても、国税庁と三菱との答えといいますか、大きく食い違っております。ここで、どっちが正しいんだ、こういうことを聞けば、国税庁側からは、いや、おれの方が正しいんだという答弁が返ってくるだろうと思いますが、しかし、少なくとも国民の前で、国会で論議されたことですから、私は改めてお聞きをしたいと思います。特に読売、朝日の二大新聞には、どっちも「東京国税局」という、サブタイトルまでいきませんけれども、見出しで、東京国税局からアングラ放送ですか、あるいは何か知りませんが、とにかくその辺から大体得た確証だというふうな書き出しで、いろいろなことが書いてあります。そういうことも関連いたしまして、ひとつ国税長官のお考えを承りたいと思います。
  101. 磯邊律男

    磯邊説明員 まず最初にお断りさしていただきますけれども、新聞紙上あるいは週刊誌等で、これは国税当局の方からリークしたとか、あるいは新聞の見出しのサブタイトルに「東京国税局」というふうな文字が出ておりますけれども、そういった事実は全くございません。私たち、任意調査いたしましたその内容につきまして、たとえどういった形であろうとも、それを報道陣にリークするというようなことはないわけでありまして、それはあくまでも新聞記者の取材活動によるものだと思っております。その情報のもとがどこであるかということにつきましては、私は確信をもって国税当局から出たものでないということを、ここで断言できると思うのであります。  そういった前提でお答えいたしますけれども、過日の税制及び税の執行に関する小委員会で、只松先生の方から御質問ございました。それに対しまして三菱商事側からも御答弁があったのは、私も拝聴しております。それから同時に私たちの方も、国税当局の考えということで御答弁申し上げたわけでございますが、繰り返して申し上げます。ように、われわれ税務当局が調査いたしますと、結論が出ますまでには国税当局とそれから調査を受ける側の納税者の間にいろいろな事実の認定の問題あるいは解釈の相違等で議論が行われていることは、これは事実でありますけれども、最終的にはそういった議論を積み重ねた上で一つ結論が出るわけでござまして、このたびの三菱商事の問題に際しましても、やはり最終的には結論を得まして、そして三菱商事の方からの修正申告が出されたというふうな形でございます。ですから私たちとしては、税務の課税の処理の内容というものは正しいものであるというふうに確信を持っております。
  102. 只松祐治

    ○只松委員 国税当局はそうだと思うんですね。しかし、片一方も名だたる天下の三菱ですね。その代表された方が国会にお見えになりまして、証人ではございません、参考人でございますけれども、少なくとも国民の前でおっしゃっているわけです。それは国税庁の見解と真っ正面から対立するお答えですね、内容は申しませんけれども。私たちは、日本じゃ官尊民卑と言わかますように、官を尊重したり、あるいは特に大蔵委員会ですから国税庁を信用するにやぶさかではないですけれども、しかし三菱側といえどもああいうことを言っているから、一応私たちも三菱の言い分も考えてみなければならない、こういうことなんです。  三菱の言分を考えていろいろしてみますと、一つのこういう中に重加算税というものを取り出してみます。重加算税を課するということは大体脱税だ、悪質と、こういうふうに見ていいと思うんですね。国税当局は重加算税を課しておるわけですから、ただ単なる修正申告、こういうふうには私は受け取らなくて、やはり相当悪質と見ておる、こういうふうに判断するのが常識的な判断ではないかというふうに思うのですが、そこいらはどうですか。
  103. 磯邊律男

    磯邊説明員 納税者の申告の内容と、それから税務調査によって調査した結果の数字とが食い違う場合があります。食い違います場合には、これを税務当局の方で更正の処分をするか、あるいは納税者の方から税務当局の数字を納得しまして修正申告を出すかという、二つの方法があるわけでございます。  いずれにしましても、更正の処分をしようとあるいは修正申告を出していただこうと、その増差の内容というものが重加算税を課するに足る内容でありますと、これは別途に重加算税の決定をするわけでございます。したがいまして、それは重加算税の決定をするかどうかということは、修正申告をするかあるいは更正を受けるか、それには関係ないことでございます。
  104. 只松祐治

    ○只松委員 内容は守秘義務でなかなかおっしゃらないだろうと思いますし、言いにくいだろうと思いますが、ただ「東京国税局」というようなサブタイトルがつきまして、相当具体的に米国三菱なりあるいはバハマ諸島における向こうのタックスヘーブンのところのバイコール社というような名前まで挙がりまして、相当詳しく述べられ、しかもこれは為替差益金までこういうふうに出てきているというようなことが、少なくとも一つだけなら別として二大紙にほとんど同じような記事が出てきておるということになりますと、これもまた私たちは信用せざるを得ないと思いますね。出どころが東京国税局かどこかは別にいたしまして、この内容がほとんど似通っている。そういうことになりますと、私はただ抽象的に悪質かどうかということをお尋ねしたわけですが、前提として申しましたように、なかなか内容は言えないでしょうが、こういう新聞記事というものは妥当か、どういうお答えになりますか、間違いないかとも言えないし、推側としてでもいいですよ。当たっておるか当たってないか、そこら辺のお答えはどうですか。
  105. 磯邊律男

    磯邊説明員 先ほど申しましたように、その記事の内容は国税当局から出した記事ではございませんけれども、いろいろな新聞、それから週刊誌等を拝見いたしておりますと、さすが大新聞はよく取材するものだと感心しております。
  106. 只松祐治

    ○只松委員 なかなか名答弁だと私は感心をいたしました。  そこで、これが大新聞だけに大したものだということになればおのずからそういうことになると思いますが、そうするとこの課税をされました基準というものは一体どういうところにあるのだろう。と申しますのは、私はこれはタックスヘーブンだけを問題にしましたけれども、たとえば前閣僚等も関係されておりました海運会社、こういうものの問題もいろいろ出てまいります。パナマやリベリア、こういうところに便宜置籍船というような用船なりいろいろそういうことをやりまして収益逃れをやる。当然に税金も日本では捕捉が困難である。こういう問題も出てきておるわけです。したがって単にタックスヘーブンだけではなくて、また貿易の増大だけではなくて、いろいろ国際的なこういう問題が出てまいりまして、国内で税金を払わないで外国へ逃避しようという傾向は一層強まるだろうと私は思うのです。したがってどこでどういうふうにそれを把握するかという問題と、それから何を基準に徴税をしていくか。外国に会社があるから、ペーパーカンパニーがあればこれは課税しないか、あるいは置籍船で、外国に船の籍があるから日本では課税できないか、こういう問題が出てくると思うのですね。この問題は徴税上の国税庁長官とともに、これは徴税技術だけではなかなか容易ではな、今後の立法上の問題もあろうかと私は思いますので、主税局長、あるいは国際的な大きな問題にもなりますので、ひとつ大臣の方からも今後の立法上等の問題についてもお答えを賜りたい、こういうふうに考えます。まず国税庁長官から。
  107. 磯邊律男

    磯邊説明員 御指摘のように最近海外に子会社を設立する本邦法人というのは非常にふえてきておりまして、こういった海外の子会社等を使ういろいろな経理上の諸問題というのが税務上におきましても大きな問題になっていることは御指摘のとおりでございます。  代表的な例といたしましては、ただいま御指摘になりましたようないわゆる海運会社がペーパーカンパニーを海外につくりまして、それによりまして一定の利潤を上げ、また利益を留保しているという形態がございます。そういった形態につきましては、私たち、法人税法の第十一条によりますところのいわゆる実質課税の原則、これによってそういった一定の基準に該当いたします場合には海外の子会社の所得は本邦法人の所得であるというふうにみなしまして、本邦において課税しておるというのが現状であります。代表的な例といたしましては、海運会社が海外に持っていますペーパーカンパニーにおいて運航したりあるいは用船したり、それからまた売船したりした場合の利益というものを本邦法人の所得と認定して課税した例が多いわけであります。しかしこれはあくまでもわれわれの行政上の一つの判断であります。  それから同時に、こういった実質課税の原則というものを適用いたしますためには、ただいまの法人税法第十一条の規定だけでは非常にむずかしい問題がございます。いわんやそういった資本関係というものがほとんどない、あってもごくわずかしか持っていないといったような海外の子会社に対しまして、そこまで本邦法人の所得であるというふうに手を伸ばして課税するかどうかということは実際問題としてむずかしい問題がございますので、極端な例、あるいは明らかな例を除きましては第十一条の規定は適用できますけれども、それ以上の一般的な問題につきましては、やはりこれは立法措置にまつよりほかはないような面が多いことは事実でございます。ただ、私どもといたしましては、であるから漫然と手をこまねいているわけではございませんで、そういった調査官に対する研修はもちろん重視しておりますが、同時に海外の取引等につきましての調査に重点を置く、あるいは海外の子会社等に対しまして調査官を、当該国の主権の行使と矛盾しない範囲内において海外に派遣いたしまして、いろいろ実情を見、同時に調査の便に資しておるというふうなことを繰り返しておるわけでございます。しかしなかなかこれは大きな問題でございまして、今後税務調査上の一つの大きな問題になるということは事実であろうかと思っております。
  108. 大倉眞隆

    ○大倉説明員 何らかの立法が必要ではないかという考え方に立ちまして、先般来部内での検討をいたしておりますし、現実に海外に進出している企業につきまして、実情をいろいろ教えてほしいということで接触を続けております。  問題を幾つかに分けて御説明いたしますと、まずどこの地域に子会社があるときが問題かということが一つ。たとえばアメリカの本土で子会社を持って活動している場合には、当然アメリカで法人税を負担するわけでございまして、アメリカの法人税負担日本とほぼ同じでございますから、こういう地域については租税回避のための子会社設立という角度からとらえる必要はないであろうと思うわけでございます。ヨーロッパ大陸でもほぼ同様の事情にございますので、結局、法人税に相当する税が全くない国とか、あるいはあっても非常に低い国とか、そういうところを個別に国を限定してかかることになるのではないか、一体ある程度低いというのはどの辺を妥当と考えるか、これについて現在外国の税制もにらみながら、現実にどういうところに企業が行ってどういうことをやっておるかということを合わせて、ある時期には何%以下の実効税率の国を対象とするというような基準を打ち出しまして反応を見たいと思っております。  第二の問題は、仮にそういう国が特別措置として一定期間免税するから来てくださいというような問題をどう扱うか。それは免税するから来てくださいということで、それは経済協力でもあり正当な海外投資でもあるという場合には、現実に納めている税金がないとかあるいは非常に免除されているからということだけでこれを租税回避とするのはやはり無理ではないか。その問題をあわせて考えてみる。  もう一つは、前回の小委員会でもお答えいたしたかと思いますけれども、今後長い目で見ました全体のわが国の立場というのはやはり資本輸出国であり、海外投資というものは積極的にやらなければいかぬ、経済協力もやらなければいかぬ、そういう意味での正常な海外投資活動を阻害することになってはいかぬのだ、そこは基本として一つ置かなければならぬであろう。  そうであるといたしますと、特定の国、X国ならX国がタックスヘーブンというようなところに該当するといたしましても、X国に現実にたとえば機械設備を持ち工場を持ち、そこでの原産物を使って物をつくり、それを輸出しておるというふうなのは、租税回避のためにそこにいると考えなくてもいいのじゃないかという問題がなお残されております。つまりX国になぜいるのかというと、それはX国の中の経済活動をやっているのではなくて、もっぱらX国の外回りのことをやっておる。ただ本拠地だけ便宜そこに置いておる。それはなぜそこに置くかといえば、要するに税金がないからで、外で稼いだものをそこへためておけば少なくとも配当するまでは税金を負担しないで済んでしまう、それが問題なのだというふうにいまのところ考え方をだんだんとしぼってまいっておりますが、さてそれを具体的に法律にどう表現するかということは非常にこれまたむずかしゅうございまして、いま申し上げましたような考え方を整理しつつ具体的に案を考えた場合に、現実に海外でいま活動しておられる企業に対してどういう影響が出てくるか。先ほど例示なさいましたような問題はある程度は実質課税原則でも処理できる。ただ、長官が申しましたように、実質課税原則というのはしょせん判断の問題でございます。し、先方が争おうと思えば裁判に持ち込んで争うことが十分できる問題でございますが、やはり非常にティピカルなものは完全に課税できる。それから、正常な海外投資活動というものは外す。その間のグレーゾーンをどうやって法律的にきっちり決めたらいいかということで現在研究を続けているわけでございます。
  109. 坊秀男

    ○坊国務大臣 事実問題としましては、いま長官、それから局長が御答弁申し上げたとおりでございますが、海外に子会社を持つくらいの会社は大企業だ。その大企業が海外へ子会社を持つというケースはいろいろあろうと思います。しかし、そういったケースの中で、何か税負担をあえて軽からしめるために脱税、あるいはそういったような目的のためにつくって、そういうようなことをやるということは許されるべきことではないと私は思います。  すでに一、二の例もあるようでございますし、ことにタックスヘーブンがいろいろ問題にされておる折からでございますから、私はかようなことがないように、絶無を期して税務行政というものを執行していくことが私どもの使命だと思います。が、その行政でなおかつ十分ではないといったような場合には、これは制度上も考えてさようなことのないようにもつていかねばならない、かように考えます。
  110. 只松祐治

    ○只松委員 最後に御要望だけ申し上げます。  さっきちょっと税調会長にお尋ねしたら、大蔵当局から一つも話がないというような話がありました。ぜひひとつ税調の方にも、立法措置その他ということになれば必要と思いますのでお伝えをいただきたい。大臣、国内で汗水流して働いている者は税金を取られて、外国へ逃げていった者は税金を免れる、そういうことが絶対にないように格段の御努力をお願いいたしまして私の質問を終わります。
  111. 山下元利

    山下(元)委員長代理 坂口力君。
  112. 坂口力

    坂口委員 先ほども日米協議会のお話が出ておりましたので、私も一言お聞きしておきたいと思います。  ことしの予算委員会におきましても、経常収支七億ドルの赤字というものが一体こういうふうな状態で推移するのであろうかという議論が出まして、一昨々年、あるいは一昨年の例を見ましても、どうも七億ドルの赤字というような形に終わらないのではないか、この数字はどうもおかしいのではないかという議論が出たわけであります。しかし、それがこの五十二年度も半ばにしまして修正を余儀なくされるに至っているわけであります。きょうの新聞を見ますと、旦国際金融局長はこれは誤差範囲である、こういう見解を表明しておみえになるわけでありまして、バーグステン財務次官補はよくわかった、こうおっしゃったというのが出ておるわけでありますけれども、私はちょっとよくわからないわけで、どうもこの誤差範囲の議論というのはいささか誤差が大き過ぎるのではないか、こう思いますが、いかがでございますか。
  113. 旦弘昌

    ○旦説明員 私が申しましたのは、七億ドルの赤の見通しが六十五億ドルの黒になりそうであるということが誤差範囲であると申したわけではございません。先ほどもちょっと申しましたように、日本の貿易量は年々かなりのスピードでふえておりまして、現在では往復合わせますと年間千五百億ドルの規模に達しております。したがいまして、輸出、輸入の両サイドで仮に一%誤差が生じますればここで十五億ドル変わる。それから二%変わりますれば三十億ドルの誤差が出るということでございまして、その程度であれば統計上の誤差とも言えるのではないかという意見があるということを申したのでございます。したがいまして、ことしの赤の見通しが六十五億ドルの黒ということはいろいろな要素がございますけれども、かなり大きな変更であろうと思っています。その点につきまして、相手方がそれはよくわかったということでございませんで、別の話をしておりますときによくわかったということを何回か聞いております。それがちょっと交錯しているのではないか、かように考えております。
  114. 坂口力

    坂口委員 誤差の話、私もおっしゃる意味は理解できるのですけれども、しかしそういう考え方ならば、逆に容易に現在の黒字というものは赤字の方に持っていけるというふうにもとれるわけであります。これは誤差範囲で生じたことで非常に簡単なことなんだ、ときのはずみでこうなったのだ、こういうことであるのならば、議論はいささか荒っぽくならざるを得ないという気が私はするわけであります。  昨年の経常収支等を見ておりましても、われわれ素人が考えました場合でも、どうもそうはいかぬだろうということを思ったわけで、それが皆さんの方でいやこうなるのだ、こうおっしゃった。それはならぬだろうということは思っていながらそういう数字になすっていた、こうも理解できないことはないわけでありますけれども、このことが国民全体にいろいろの面で不信を買う、そういったことにも私は結びついてもいくであろうと思いますし、これからまた来年度予算に取り組んでもらわなければならぬわけでありますが、来年度の予算に、このいわゆる経常収支の問題をどう反映させるかということは非常に大きな問題だろうと思うのです。特にアメリカを中心といたしまして何とかして日本もこれを赤字にしてほしいという申し出がある。これをどう受け入れるかは別にいたしまして、このことを念頭に置いて来年度予算というものには取り組まなければならないのではないかと思いますが、その辺のところはどういうふうな点を特に考慮に入れて取り組もうとなすっているのかということをきょうはお聞きしたいわけであります。
  115. 旦弘昌

    ○旦説明員 ただいま御指摘のありましたように、過去の実績を見ましても、たとえば四十八年度には当初の政府見通しでは五十億ドルの経常収支の黒と見ておったのでございますけれども、実際には逆に三十九億ドルの赤になりまして、前後八十九億ドルの誤差が出ました。それから四十九年度には当初見通しは五億ドルの赤であると見ておりましたが、これがさらにふえまして二十三億ドルの赤になったという実績がございます。その後の五十年度、五十一年度につきましてはそれぞれ赤の見通しを立てておりましたけれども、五十年度は十七億ドルの赤の見通しが、わずかでございますが一億ドルの黒、それから五十一年度には二十七億ドルの赤と見ておりましたのが、逆に四十七億ドルの黒になったというような傾向でございます。したがいまして、この経済見通しは海外の要因も半分はあるわけでございますので、非常にわれわれの手の及ばない要素がございますので、またその予測をつくりました段階におきます。使用できるいろいろな指数というものがその後急激に変わるということも十分あるわけでございます。先ほどの誤差論ではございませんけれども、国際的に日本の問題を話しますときにも、エコノミストたちでございますので、その辺は十分理解してくれる非常にむずかしい問題でございます。  来年度のお話でございますけれども、もちろん来年度の経済見通しにつきましてはまだ何も決めておりません。しかし、日本の置かれております国際経済的な環境でありますとか、いろいろの海外からの要望もございます。それらを考え合わせまして、日本としてはもちろん経常収支の黒をため込むのが目的ではございませんので、その辺はいろいろな要素を勘案いたしまして来年の経済見通しをつくるべきなのではないか。もちろんこの問題は経済企画庁の問題でございますけれども、私どもといたしましてもそういうような感じを持っておる次第でございます。
  116. 坂口力

    坂口委員 大臣、一言御見解を。
  117. 坊秀男

    ○坊国務大臣 ただいま国際金融局長がお答え申し上げたとおりでございますが、要するに、この国際収支の見通しというのは大変むずかしいものであって、しかし、むずかしいからこういうふうに毎年毎年食い違っておるんだということで甘んずるわけにはいくまい、かように私は考えます。できるだけさようなことのないように十分データをとりまして見通していかなければならないということを、今日こういうことに遭遇いたしましても私は考えます。ただ、福田総理が七億ドルと申しましたことも、この見通しの誤差と申しますか誤りということでございましょうが、これはこれから十分気をつけまして、さようなことのないように持っていきたい、かように考えます。
  118. 坂口力

    坂口委員 景気対策にいたしましても、当初の予定ではこれで十分六・七%の国内景気対策はいけるのだ、かなり強気な発言がことし初めの予算委員会では目立ったわけでございますけれども、なかなかそうはいかないという現実が幾つか出てまいりまして、今回の大型補正予算にも結びついてきているわけであります。昨年、ことしともに輸出中心の動きというものは基調としては変わっていないというふうに思わざるを得ないわけでございますけれども、少なくとも来年度やはり景気というものを安定せしめていくためには、さらにことしの試行錯誤と申しますか、これを踏まえて来年度もこの予算に組み込んでいかなければならないと思うわけでございます。ことしのこの景気対策というものをどう踏まえて、これを来年度に反映させようとなすっているのか、この辺のところもあわせてひとつお聞きをしておきたいと思います。
  119. 坊秀男

    ○坊国務大臣 いよいよ五十三年度の予算の編成期になってまいりましたが、五十三年度の予算は、もちろん五十二年度のいろいろな経済事情というものも踏まえてやっていかなければならない、かように考えております。五十三年度の予算を組んでいくのに何を一番主眼にしていくかということでございますが、今日私の考えております。ことは、過去三年間にわたりまして三割に近い公債依存度を続けてきておる。どうしてもそういったようなことから脱却していくためには特例公債、これを思い切って削減していくということによって来年度の予算の骨格をつくって、健全なる骨格にしていきたい、こういうようなことでございまして、では政策上その予算に何を盛り込んでいくかということにつきましては、今日ただいまのところは、これをやっていこうというようなことにまでまだ至っておりません。現在のところは言うなれば五十三年度の予算のデッサンと申しますか、それを非常にしっかりしたものにしていって、それに対する色づけというものはしっかりしたデッサンの上に色をつけていくということで財政運営の万全を期していきたい、かように考えております。
  120. 坂口力

    坂口委員 デッサンをいま描いていただいておるところで、かいておる最中にはたからやかましく言うのはどうかと思いますが、しかしこのデッサンがときどき狂うものですから議論の対象になるわけであります。このデッサンを描いていただきます中で、いま御指摘になりました健全財政を目指してという心構えをお聞きしたわけでありますけれども、これはまことにごもっともな御意見でありまして、われわれもそう願うわけでありますが、その健全化の中で、なおかつ先ほどからもあります対外的な貿易収支の問題でありますとかあるいはまた国内におきますところの景気の不均衡、回復しておるものもございますし、してないものもある、そういった不均衡、これらの問題、両面内外ともに抱えての予算づくりでありますから、デッサンも非常にむずかしいことはよくわかるわけでございますけれども、むずかしいながら、健全財政を旗印にしながらも、なおかつその中でもう一歩突っ込んで重点をどこに置くのか、デッサンの一番のポイントをどこに置くかというところについてのお考えがあれば、もう少しだけ聞かせていただきたいと思います。
  121. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御案内のとおり、ただいま各省から概算要求が出そろいまして、性質上まだ若干出ないところもありますけれども、そういうものを大蔵当局におきまして慎重に検討いたしておるということと、それから現在の財政金融の事情といったようなものをにらみ合わせまして、いまおっしゃいました政策上どこに中心を置くか、どこに目玉を置くかということにつきましては、今日のところはまだそこまでの段階には至っていないということを申し上げます。
  122. 坂口力

    坂口委員 先ほど、国債依存率というものをどうしても下げて、より健全化の方向へというお話がありましたが、大臣の頭の中に描かれておりますのは、大体どの辺まで下げていきたいと思っておみえになるか。先日どなたかが、はっきりと目に見えた減り方を示したいというような内容のことを言っておみえになりましたが、デッサンも余りもやっとした、何を描いておるかわからぬようなデッサンではぐあいが悪いので、もう少しびしっと決まったデッサンの中で、できているかどうかわかりませんが、その辺のところはどうお考えになっておりますか。
  123. 坊秀男

    ○坊国務大臣 五十二年度は二九・七でございますが、その二九・七をどれだけ切ることができるか、できないかということにつきましては、これはなかなかここで今日申し上げる段階ではないと思うので、御了承願いたいと思います。
  124. 坂口力

    坂口委員 けさも日銀総裁にお越しをいただきまして、公定歩合に絡みます幾つかの質問をさせていただいたわけでございます。これは日銀総裁にも実はお聞きをいたしましたけれども、三回にわたって公定歩合引き下げが行われました。一回、二回が行われましたときに、公定歩合引き下げがもう一遍行われるのではないか、二遍目に行われたときに、またもう一遍はあるのではないか、われわれいろいろ企業家の皆さん方にもお会いいたしましても、こういう企業家心理がかなり働いているということが言葉の端々に感じられたわけでございます。そういったことから、今回三回行われました公定歩合引き下げの経過を振り返ってどうお考えになりますかということをきょう日銀総裁にも私端的にお聞きしたわけでございますけれども、これは大臣としても、現状を踏まえてどのようにお考えになっているかということをもう一遍お聞きしたいと思います。  それから、これは前にもお聞きをいたしまして、何度か同じことをお聞きしてはなはだ恐縮なんですけれども、特に中小企業の場合に、いま公定歩合が下がる、金利が下がる、こういうふうに申しましても、すでに借りられるだけもう借りてしまった、そして借りた分の利子の支払い等にいま追われている状態で、いま金利が下がってもいかんともしがたいという状態が非常に色濃く出ていると私は思うわけであります。このことについて何らかの手を打ってもらいたいというふうに、前に、これは大臣にも私どもお願いをしたわけでありますが、きょう日銀総裁にも私同じことを申し上げたわけでございます。このことについて先日、重要な問題なのでひとつ検討したい、こういう大臣の委員会での御答弁であったと私記憶をしているわけでございますが、このことはやはり真剣にお取り組みをいただきたいと思うわけでございます。住宅ローンは、すでに行われておるものにつきましても、一回、二回とこれで利子が下がっているわけであります。特に商工中金等の政府系の機関の場合にも、何らかのいろいろの条件はつくだろうと思います。無条件というわけにはいきますまいけれども、幾つかの条件をつけながらも、その中でそこに何らかの手を打てないものだろうかと思うわけであります。特に銀行等におきましては好意的に、いままで非常に利子の高かったときに借りておりましたものに対する借りかえと申しますか、新しくまた借りることによって前の一部を返す、そしてまた一部を利用するというような、いわゆる借りかえみたいなことを大目に見てやってくれているところもあるようでありますけれども、商工中金あたりはその点、かっちり線が引かれていると言えば引かれているわけでありますけれども、なかなかその辺はうまいぐあいにはいかない。この辺のところに、すでに貸し出しが終わっている非常に高かった時代の金利を抱えていかんともしがたくなっているところに何か手が打てないか。このことに対して、それ以後何か省内でお話が進んでいることがあれば、この際お聞かせをいただきたいと思うわけであります。
  125. 徳田博美

    ○徳田説明員 お答えいたします。  政府関係の中小金融機関企業貸し出しについての金利引き下げができないかという御質問かと思いますが、御承知のとおり政府関係機関の融資は十五年というような非常に長いもので固定しておりますので、新規の政府関係機関の原資が下がるといたしましても、下がるのは新規のものから下がってまいります。そのような融資構造になっておりますので、既往のものについてこれを一律に下げるということは非常にむずかしい形になっているわけでございます。  それからまた政府関係金融機関の貸し出しの金利申しますのは、いわば借り手にとって国からの債務に当たるわけでございまして、これを引き下げることは、国からの債務を免除することになります。企業の中にはもちろん経営の非常に苦しいものもございましょうし、またしかし他面には黒字の企業もかなりあるわけでございますから、このような黒字の企業に対してまで国の債権の免除を行うことについてはまたいろいろな問題もあろうかと思います。したがいまして、現在原則としては政府関係金融機関の貸し出しにつきましては既往のものは引き下げない、こういうことで運営されているわけでございます。  確かに、現在長期金利を含めまして、過去のピーク時に比べましてかなり大幅な低下になっておりまして、過去の金融引き締めのときに借りた金利に対してかなり大きな格差が出ていることは先生御指摘のとおりでございます。したがいまして、先生も、一律のことは無理だ、いろいろな条件をつけなければならないであろうということをおっしゃいましたけれども、そのようなことを含めまして、これからいろいろ検討をしてまいりたい、このように考えております。
  126. 坂口力

    坂口委員 私も、その金利を取っ払ってしまえ、なしにしてしまえということを言っているわけじゃ決してございませんで、そこに何らかの色をつけることができないだろうかということを申し上げているわけであります。おっしゃるとおり、企業にも黒字のところもあれば赤字のところもあるわけでありますけれども、しかしその黒字幅、赤字幅、これもいろいろございますし、その辺のランクづけもむずかしい問題ではございます。けれども、その辺のところの解決が、各企業に対して次の設備投資なりあるいはまた一歩前進せしめることへの手がかりの一つになることだけは私は疑いのない事実だというふうに思うわけであります。  この前も検討で、きょうも検討ということになるわけでありますけれども、同じ検討でも、この前の検討ときょうの検討とで中身が若干違っておればいいわけであります。同じ言葉の連続ではぐあいが悪いわけで、どうですか、検討の内容もいろいろあろうと思いますが、若干その辺のところの進んだ検討でございますか。
  127. 徳田博美

    ○徳田説明員 検討にもいろいろあるわけでございますけれども、確かに現在は預金金利引き下げも行われましたし、近いうちに長期金利引き下げについてもいろいろ検討が行われているわけでございまして、そのように情勢が変わってまいりましたので、ただいまの先生のお話を十分に承りまして、いろいろ考えてまいりたいと思います。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕
  128. 坂口力

    坂口委員 大臣、これはこの前もお願いをしたことでございますし、こういう議論をいたします。と、今度は逆に金利が上がりましたときには、低いときに借りたやつをまた上げろというような逆の議論も出てくることにもなるわけで、これは両刃の剣になるわけでありますけれども、しかし現在の急場をしのぐためにはそういう何らかの方法を講じるきめの細かさというものがやはり大事ではないかと思いますので、同じような検討いたしますという言葉ではなしに、もうちょっと、一歩前進したお答えをいただければいただいて、次の問題に移りたいと思います。
  129. 坊秀男

    ○坊国務大臣 事務当局からお答え申しましたとおり、これは非常にむずかしい問題で、この点は坂口さんもよく御理解もしていただいておると思いますけれども、できるだけ何とかしてまいりたい、かように考えます。
  130. 坂口力

    坂口委員 それから来年度予算で、これは先ほどから出ておりますとおり、大臣も頭を痛めておみえになると思うわけでありますが、その中で税収見通しについてであります。大蔵省は厳しい見方をされているようでありますが、現在までの状況では、源泉徴収を除いて法人税あるいは酒税などは好調のように伺っております。この自然増収が望めるのか望めないのか、この辺のこともあると思いますが、自然増収がありました場合、それは補正予算と絡んでまいりますが、これは補正予算として中に一考を要する問題として入れられるのかどうかという問題をまず一つお聞きしたいと思います。  それから、時間がありませんので、二、三まとめてお伺いいたしますが、もう一つは、財投資金として郵便貯金等の伸びが鈍化してきております。が、この点について補正予算の財源にどのような影響を及ぼすのかということであります。  もう一つは、資金運用部の手持ち国債を日銀に引き受けてもらうということが報道されておりますけれども財政法上からも問題があるのではないかというふうに思いますが、これに対するお考えはどうか。  この二、三の点につきまして、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  131. 大倉眞隆

    ○大倉説明員 最初に税収について申し上げます。  一番新しい数字は七月末でございますが、前回の小委員会のときお配りいたしましたとおり、七月末の累計では予算額に対しまして二九%でございまして、昨年の同期が二八・九%でございましたから、いわばプラスの貯金というのはほとんどない、〇・一しかないという形でございます。ただし、これは、ことしの特殊事情としましては六月のボーナスにつきましてかなり特別減税が行われたということがあるようでございまして、その点は考えてみなくてはならないかと思いますが、その点を考えましても、全体としまして、いまお手元にお持ちでないかもしれませんが、この表でお読み取りいただけますように、所得税が非常に足取りが重い。したがって、それを法人税なり、おっしゃいました酒税なり、そういうものでどの程度カバーしていけるかというのがことしとしての最大の問題です。法人税は現在までのところ、かなりの貯金が出てきておりますけれども、これから先の見通しは決して明るくないと申し上げざるを得ないかと思います。  それから、現在まである程度進捗率でまずまず前年どおりとなっている一つの要素として、揮発油税が前年比で非常によろしい。ただ、これは、昨年のいまごろはまだ増税前だったわけでありますけれども、したがって昨年対比の伸び率は増税分が入った伸び率になっておりますが、あとしばらくいたしますと、昨年も増税後になりますと揮発油税の伸び率というのは数量の伸びに落ちていくわけでございます。  そういういろいろな要素を考えますと、予算額を達成することができるかどうか。いつか只松委員にお答えいたしましたように、上に出てくるという可能性は全くない。ただ、届かないという場合に、それが処置できないほど大きな誤差にならないように、何とかうまくいってくれないかなと、率直に申し上げてそういう状態でございます。  したがいまして、補正予算に際しましては、まだ決定したわけではございませんけれども、特別減税の三千億円を修正減額する、これは別途財源手当ては当委員会で法案を通していただいたわけでございますので、その財源手当てによる前年度剰余金受け入れを立てまして、見合いに税収の方は所得税を三千億減額するということはお願いするつもりでおりますが、それを三千億減らして、なおかつもう一遍減らすかというほどの確固たるものはございませんで、今回の補正では恐らくその部分だけをお願いするということになるのではないかと考えます。
  132. 副島有年

    ○副島説明員 今回の総合対策に要する財投資金の総額は、先ほど大臣から御説明がありましたように、総額で六千二百億円でございます。  これに対します原資でございますけれども、先生御指摘のように郵便貯金の伸びが、この六、七、八と三カ月間わりあいに低い伸びを示しております。ただ、これは、見方によっては、五月に金利引き下げましたときに非常に大きな、対前年比二百二十数%の伸びをしておりますので、それの反動とも言えるのではないか。したがいまして、本年度の郵便貯金の伸びがどの程度になるかということは、いましばらく様子を見る必要があるのではないかというふうに考えております。  そのほかの財源といたしましては、すでに本年度当初に割り当てを予定しております各財投機関に対して、節約し得る余地がないかどうか、それから政府保証債の発行の余地がないかどうかというような面の検討をいま行っているところでございます。  先生の御指摘の、運用部の手持ち国債を日銀に売るかどうかというお話は、新聞に出ていたわけでございますけれども、私どもとしては、いま申し上げました財源手当てで追加需要が賄えるかどうかということの検討をいまやっているところでございます。
  133. 坂口力

    坂口委員 終わります。
  134. 小渕恵三

  135. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 政府は、この九月二日の閣議了解の行政改革基本方針の中で、社会経済情勢変化に対応した体質改善ということとあわせて、財政支出の合理化、行政経費の軽減、これを改革の目的として挙げているのですが、財源対策という側面から現下の行政改革問題についてお尋ねしたいと思います。  五月十八日の行政改革本部の申し合わせで、当面の改革テーマごとに主な担当省庁を決めているのですが、それによると、大蔵省と行政管理庁は、行政機構、定員管理、審議会、特殊法人、補助金、行政事務の六つのテーマのすべてに関係することになっております。  現在検討中の行政改革で、各テーマごとにどの程度財政支出の合理化を見込んでいるのか、さしあたり昭和五十三年度予算ではどの程度の経費節減を見込んでいるのか、大蔵省にその目標金額を明らかにしてもらいたいと思います。
  136. 松下康雄

    ○松下説明員 行政改革につきましては、御指摘のように、閣議了解によりまして基本の方向をお定めいただきましたので、この方向に基づきまして、関係各省において施策の具体化にただいま鋭意努力をいたしているところでございます。  言うまでもなく、行政改革の目的の中の一つに、将来における経費の増高をできるだけ抑制し、また、むだな経費を省いていくということがあることはもとよりでございますけれども、私どものこの改革案を具体化いたしますときのやり方は、先に何億円の歳出を節減をしようという目的を立てて、これに当てはめまして内容をつくっていくということではございませんで、極力、各省庁手分けをいたしまして、担当の部面での合理化を図ることによりまして、結果的に行政経費が節減になるようにやってまいろうということでございます。来年度予算での目標額というものを持っているわけではございません。
  137. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 行政管理庁に二つ伺っておきます。  一つは、今後の行政改革のスケジュールについて、九月二日の要綱決定が第一ラウンド、第二ラウンドは十月末の改革の具体案決定、第三ラウンドは法律案提出段階、こういう新聞報道があるのですけれども、今後のスケジュールを明らかにすることと、もう一つは、省庁統廃合については、エネルギー省や住宅省などの構想が姿を消して、当面の検討対象は農林水産省だけとなっているようです。これは名称変更と水産庁の部の再編成を行うというだけのことであって、二百海里時代に対応した漁業再建のための改革としてはきわめて不十分であって、財源対策としても余り重要な意味があるとは思われないわけです。このほかに財源対策として省庁の統廃合はどのようなものを検討しているか、この二つについて管理庁に伺います。
  138. 佐々木情夫

    ○佐々木説明員 お答えいたします。  九月二日に行政改革につきましての閣議了解が行われまして、これに基づきまして、目下今後の段取り等も考えつつ検討を続けているところでございますけれども、今後の段取りといたしましては、五十三年度予算編成の中に組み込まれるべき事項とかあるいは五十三年度に法律案提出すべき事項のように、五十三年度の予算編成の過程でそれぞれ煮詰めを行わなければならないような問題があろうかと思いますが、これにつきましては、予算編成の時期にこれと並行いたしまして閣議決定に持ち込みたいというふうに考えておるわけでございます。  また、これに至りません比較的予算との関連が少ないというふうな事項、たとえば許認可の整理だとかあるいは審議会の問題とか、こうしたような問題につきましては、それを待たずして、できるだけ速やかに各省の調整を終えまして閣議決定に持ち込みたいというふうに実は考えておるわけでございます。  それから第二の省庁の統廃合の問題につきましては、新聞紙上種々報道されたところでございますけれども、これはいわば事務的な検討を越える問題でございまして、むしろ政治的、政策的な御判断にゆだねられるべき問題であろうかというふうに考えておりまして、いまの別途の内容の省庁統廃合の検討をいたしておるかということにつきましては、事務的にはその判断を越える問題であるというふうなお答えでやむを得ないかと考えております。
  139. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 定員の管理問題について政府の行政改革要綱は、現行の総定員法と計画的削減との組み合わせを基本とした管理方式を一層推進するということをうたっているわけですが、これが実行されると、現在の定員管理のゆがみが一層拡大する危険があると考えます。  現行の総定員法が施行された前年度、つまり昭和四十二年度と五十二年度の行政機関の予算定員を比べると、この十一年間に全体として一万一千八百三十三名ふえているのですけれども、この間に防衛庁、防衛施設庁、公安調査庁、この三庁だけで一万四千七百九十三名ふえておって、この増員分を除きますと、全体では二千九百六十名減っているわけです。総定員法の枠内だけを見ても、入国管理関係や国税、財務、通関関係、いわば国民生活とは直接関係がない機構、こういうところについては大幅に増員されているのに対して、国民の生活に密着した機構の定員は、たとえば学校や病院、療養所で一定の増員は行われているのですけれども、全体としては大幅に減って、国民に対する行政サービスの低下を来しているわけです。たとえば郵便関係は九千九十三名減、国有林、治水事業関係は合わせて八千九百六十七名減、食糧管理関係は六千九百四十三名減、職業安定、労働保険、労働基準監督関係は合わせて二千十四名城ということになっております。  財源対策、財政支出合理化対策として合理的かつ民主的な定員管理を行うというのであれば、こうした現行の定員管理のひずみにメスを入れて、国民の生活と民主的権利に密着した機構の定員を十分確保しながら、アメリカ従属あるいは国民弾圧あるいは大企業奉仕、そうした機構など、国民にとって不要不急の機構の定員を思い切って整理縮小して、全体としてむだのない効率的なものにすべきであるというように考えるのですが、ここは大蔵大臣の所見をお伺いしたいと思うのです。
  140. 松下康雄

    ○松下説明員 定員管理の基本の方針は、行政管理庁におかれてこれを策定されるわけでございますけれども、年々の予算編成を通じまして、大蔵省におきましても行政管理庁に御協力をしながら各省の定員の適正な配置について努力をしてまいったところでございます。  この結果といたしまして、国家公務員の総定員の全体は、行政事務の増加にもかかわらず、長期にわたって増加を抑制するように努力をいたしてまいったのでありますけれども、その際の考え方は、定員の削減によって行政サービスの低下を来すというようなことがないように、能率の向上でございますとか、あるいは事務の機械化でございますとか、いろいろの対策を講じまして、全体として削減をいたしましたその定員をもちまして、国民生活上特に必要な公務員の増加に充ててまいったわけでございます。したがいまして、たとえば病院あるいは学校等の定員は、この間に相当大幅に増加をいたしておるわけでございます。定員が減少いたしております部門の中では、その部署によりまして業務の内容がだんだんと変わりましたために、自然に人員の減少が可能になったところもございますし、また機械化の導入等の推進によりまして、関係者の努力を得ながら減員を可能にいたしてまいった部門もございます。  いずれにいたしましても、定員の管理につきましては、全体としての行政水準を落とさないで、その時代の要望におこたえをするように努力をしながら、今日まで対処してまいったのでございまして、今後も同じような姿勢で本問題には取り組んでまいりたいと存じております。
  141. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この改革の問題については、たとえば審議会の問題があるわけですけれども、結局、審議会の整理を改革の目玉にすると言い出したら、その行政改革はおしまいだ、こういう意見もあるくらいです。というのは、審議会整理は民主主義的要素をなくしていくということにつながりかねない危険がありますし、経費節減対策ということであるならば、審議会を整理しても経費節減には余りならない。そういうことを言うならば、むしろ大臣初め本省庁の局部長や課長のもとに、数百になるだろうと言われる私的諮問機関などがありますし、こういうものにメスを入れる必要があると考えるわけです。  それから今度の改革で言われております百十二法人、職員数九十四万人に達する政府関係特殊法人の機構とその大企業奉仕の運営全体にメスを入れるという問題があるわけです。  いろいろあるわけですけれども、その中で一つ言いますと、特殊法人の役員の給与、退職金については改定を検討するとしているのですが、総理大臣の俸給月額が百四十五万円に対して日銀政策委員会議長が二百万円、国務大臣が百五万円に対して日銀政策委員は百二十万円、政務次官が七十四万円に対して公社公団総裁は九十四万円、外局の長官が六十二万七千円に対して公社公団理事は六十四万円、こういうように法外に高い給与になっておりますけれども、これは国民負担の点からいって、当然是正すべきであります。また在職一カ月について俸給月額の四五%ないし六五%という退職金もまた法外なものであって、これも是正すべきであると考えます。役員の給与、退職金は少なくとも民間対応の原則で算定される一般職国家公務員の例によることとすべきであるというように私は考えるのですが、この点についての大臣のお考えをお伺いします。
  142. 松下康雄

    ○松下説明員 政府関係の特別の職務の俸給の定め方でございますけれども、一方におきましては一般職あるいは特別職の公務員の俸給の高さとのバランスを考え、また他面におきましては民間の類似の職種の俸給の高さを勘案しながら、相対的に幾つかの格づけで決定をしてまいっているわけでございます。  民間を考慮してと申しますのは、それらのポストの中では、広く人材を官界のみならず民間からも求めたいという趣旨で設けられているポストも多いわけでございまして、この点から民間の給与水準とのバランスを考えることが重要なわけでございます。これらの俸給の水準につきましては、ただいま申し上げましたような考え方で年に一回ずつ見直しを行ってまいってきておるわけでございますけれども、今後におきましてもさらに心いたしまして、毎年の改定、見直しを行ってまいる考えでございます。
  143. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 政府は、財政支出の合理化対策の柱といたしまして補助金の整理ということを挙げておりますが、社会保障と教育、公共事業関係が補助金の大部分を占めている現状のもとでは、国民に対する行政サービスの切り捨てと国民の租税負担の増大ということにならざるを得ないと考えます。教育、社会保障関係の補助金の整理合理化で、さしあたり五十三年度でどの程度の経費節減と受益者負担増を予定しているのか。教育、福祉の低下に直結するような制度改悪は直ちに中止すべきであるというように考えるのですが、この経費の節減ということについては、先ほど何か最初に説明ができないような状況でありましたけれども、この補助金の整理の問題についての社会保障や教育関係、公共事業関係、こうしたものに対する大蔵省考え方を伺って終わりたいと思います。
  144. 松下康雄

    ○松下説明員 補助金の整理につきましては、従来予算編成の都度見直しをいたしまして、時代の推移に伴って効果の薄れたもの、あるいは目的を達成したもの、あるいは内容的に見て問題があるのではないかと思われるもの等を整理いたしまして、それらの財源をもちまして極力新しい時代の要望に応じた補助金をつくってまいるという、スクラップ・アンド・ビルドの考え方で進めてまいってきておるわけでございます。特定の行政水準の切り下げを意図して整理をいたしておるのではないわけでございまして、来年度予算におきましては、さらに一段と厳しい財政状況を反映をいたしまして、補助金の見直しについても厳しい姿勢で臨むべきであると考えておりますけれども、その考え方は、ただいま申し上げましたようにしてまいるつもりでございます。
  145. 小渕恵三

    小渕委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後三時五分散会