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1977-08-24 第81回国会 衆議院 決算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年八月二十四日(水曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 芳賀  貢君    理事 天野 光晴君 理事 丹羽 久章君    理事 葉梨 信行君 理事 森下 元晴君    理事 原   茂君 理事 林  孝矩君       西田  司君    村上  勇君       高田 富之君    土井たか子君       馬場猪太郎君    春田 重昭君       安藤  巖君    伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      園田  直君  委員外出席者         警察庁警備局長 三井  脩君         公安調査庁調査         第二部長    谷  藤助君         外務大臣官房長 松永 信雄君         外務大臣官房領         事移住部長   賀陽 治憲君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省経済協力         局外務参事官  三宅 和助君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         外務省情報文化         局文化事業部外         務参事官    田中 常雄君         大蔵省主計局次         長       禿河 徹映君         大蔵省主計局司         計課長     石井 直一君         水産庁海洋漁業         部長      松浦  昭君         会計検査院事務         総局第一局長  前田 泰男君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 委員の異動 八月二十四日  辞任         補欠選任   高田 富之君     土井たか子君   山口 敏夫君     伊藤 公介君 同日  辞任         補欠選任   土井たか子君     高田 富之君   伊藤 公介君     山口 敏夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十年度政府関係機関決算書  昭和五十年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和五十年度国有財産無償貸付状況計算書  (外務省所管)      ————◇—————
  2. 芳賀貢

    芳賀委員長 これより会議を開きます。  昭和五十年度決算外二件を一括して議題といたします。  外務省所管について審査を行います。  まず、外務大臣から概要説明を求めます。鳩山外務大臣
  3. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 昭和五十年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  歳出予算現額は一千五百七十七億八千八百六十万円余でありまして、支出済歳出額は一千三百五十二億八千三百四十六万円余、翌年度繰越額は百三十三億八千六百二万円余、不用額は九十一億一千九百十一万円余であります。  歳出予算現額の内訳は、歳出予算額一千四百四十六億四千二百五十七万円余、前年度繰越額百十九億七千八百四十九万円余、予備費使用額国際連合緊急軍及び国際連合兵力引離監視軍活動の継続に要した経費)十一億六千七百五十三万円余でありまして、前年度から繰り越したものの内訳は、経済開発等援助費百十四億三千七十四万円余、在外公館施設費五億四千七百七十五万円余であります。  支出済歳出額の主なものは、科学技術振興のため、国際原子力機関に対し同機関の憲章に基づく分担金及び拠出金として七億一千六百十二万円余、並びに国際連合その他各種国際機関に対する分担金等として百二十二億二千九十八万円余。  次に、経済協力の一環としての技術協力実施につきましては、コロンボ計画等に基づく技術研修員二千五百四十五名の受け入れ及び専門家六百六十四名の派遣事業のほか、青年海外協力隊派遣開発調査センター協力医療協力農業協力開発技術協力開発協力専門家養成確保等事業アジア諸国等開発途上国に対する経済開発援助及び国連開発計画等の多数国間経済技術協力のための拠出等に要した経費五百八十五億八千三百九十二万円余。  さらに、移住事業につきましては、中南米等への移住者四百四名を送出及びこれを援護するため等の経費三十九億二千八百十一万円余であります。  次に、翌年度繰越額について申し上げますと、財政法第十四条の三第一項の規定による明許繰越のものは百二十三億六千六百二万円余でありまして、その内訳は、経済開発計画実施設計等委託費二千九百四十万円、経済開発等援助費百二十二億九千万円、在外公館施設費四千六百六十二万円余。  また、財政法第四十二条ただし書の規定による事故繰越のものは十億二千万円でありまして、その内訳は、経済開発等援助費十億二千万円であります。  不用額の主なものは、外務本省の項で退職手当を要することが少なかったこと、経済協力費の項で経済開発等援助費を要することが少なかったこと、移住事業費の項で移住者渡航費交付金を要することが少なかったこと並びに在外公館の項では、職員手当を要することが少なかったこと等のためであります。  以上でございます。
  4. 芳賀貢

    芳賀委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。前田会計検査院第一局長
  5. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 昭和五十年度外務省決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めたものはございません。     —————————————
  6. 芳賀貢

    芳賀委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。丹羽久章君。
  7. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 外務大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、わが国外交姿勢及び在外公館について、これから二、三の質問をいたしたいと思います。  大臣は、就任以来、世界の政治が多元化してまいりましたし、国際関係が非常に複雑になってまいりました中で東奔西走、本当に日々御努力をしていらっしゃることに私どもは最大の敬意を表するわけであります。  ASEANの各国総理が回られ、そして帰っていらっしゃいましたが、歴代の総理が口を開けば、行政改革人員整理等をやらなければならぬというようなことで勧告を受け、それを実行に移しますよと言っていらっしゃいましたが、なかなか実行はでき得なかったことは現実の問題であります。総理は帰っていらっしゃってから直ちに、目玉商品というか、本当に国を思う上においての行政改革をしていかなければならぬということで、各閣僚においでをいただいて、そしてひざを交えて行政改革協力方をお願いせられたようであります。  新聞報道によりますと、外務大臣も、きのうでありましたか、その席に出られたようでありますが、そのときの協力要請に対して、あなたは積極的でなくて、消極的であるという新聞報道がせられております。世界情勢の中で、行政改革に対して賛成ということにはなるかもしれませんが、その行われていく上においては賛成でないようでありますが、どのようなお話をせられたか、差し支えがなかったら、まずその点をお聞かせいただきたいと思っております。  第二の問題は、外務大臣という、世界に伍していく日本のすべてをしていかなければならぬその責任において、大使、公使、領事それぞれが外へ出られるについて、どういう心構えでその責任を果たせという、訓辞というか訓令というか、心構えお話しせられたか、そのような点についても、ひとつあなたの決意をお聞きいたしたいと思いますので、どうぞお話をしていただきたいと思います。
  8. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 第一点のお尋ねでございますが、行政改革が多年主張されながら、なかなか実行できていない、福田内閣はぜひこれを実行する、このような決意福田総理は固められております。閣僚として皆、その行政改革必要性につきましては十分認識をし、また、鋭意努力をしなければならないことは当然のことでございます。  ただ、私のお預かりいたしております外務省あるいは外交能力という点におきましては、一般の官庁とは、いささか違う点があるのではないかと私は常々考えております。それは、終戦後日本外交というものがほとんどなくなってしまった。占領下に長い間ありました間に、外交というものがほとんどなかった。そういったときに、人員等につきましても非常に減らされてきたわけであります。日本が独立を回復いたしましてから、外交が急に拡充を迫られてきたわけでありますが、しかし、毎年毎年必ず行政整理をしなければならない。これは一般の、政府としてそのような必要性があったわけであります。  そのような中に、外務省は一度なくなった外交を立て直しにかかったわけでありますが、今日に至りますまで、いわゆるOECD諸国工業国家と言われている中で、日本は最も乏しい陣容をもって今日外交をいたしておるというのが実情でございます。そういう環境下にありますので、外交能力につきましては、今日なお拡充する必要がある、このように私自身認識をいたしておるところでございます。  そういう意味で、政府全体としては行政改革に強い姿勢で臨むべきであることは私も全く同感でありますし、ぜひとも実行をしなければならないと考えておりますが、外交能力につきましては急速に拡充を図っていただきたいということを私は総理にはお願いを申したわけであります。これは、一般政府の方針としては、いささか逆行するかのごとき印象を与えかねないのでありますけれども、現在のわが国が直面しております国際環境のもとにおきまして、外交能力拡充は、やはりぜひとも実施しなければならない。このような観点で、あるいはそのような空気記者会見等のときにも反映したのかもしれません。しかし、政府として行政改革に臨むことは多年の懸案であるし、国民の強い世論であるという点から、行政改革自身の成功につきましては、私自身としてできる限りの努力をいたしたいと思っております。  また、第二点につきまして、外交に臨む職員心構えという点につきましては、これは個々の大使が発令されます都度でありますが、大使が赴任するに際しまして、個別に大使に対して、日本が今日世界に臨んでおりますこの大変重要な時期であるので、日本国を代表して任地に赴かれる大使につきましては、大使自身率先垂範をして、日本国益確保のために努力をされるよう指導をいたしているところでございます。  なお、また、具体的なお話があれば、お答えを申し上げたいと思います。
  9. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 よくわかりましたから、時間の関係でまた個人的にもお目にかかってお話を聞くことにいたしたいと思いますが、これはわが国国際的立場から考えまして、外交活動拡充と申しますか、大変急務であると思います。  そういう意味から考えまして、少しきめの細かい話になるわけでありますが、アメリカから日本へ来ておる大使館館員の数というものを具体的に申し上げると、私の調べた範囲では二百四十七名、日本からアメリカの方へ行っている日本大使館館員は六十八名です。そういう数字を挙げてまいりますと、すぐ隣の、人口的に言っても日本の半分以下のところの韓国の場合でも、日本へ百五十四人来ているが、日本からは大使館へ三十四人より行っていない。さらに、英国から日本へ来ている人が七十八人で、日本は三十八人より出ていない。  一つ一つを挙げていきますと、現在、三千百三十九人という人が本省大使館をまぜての全員の外務省職員ということになるわけでありますが、五千名に、五十年度を初年度としてぜひ達成していきたいという考えのようでありますが、こういう中で非常に厳しい予算であります。外交役割りというのは大変な役割りであって、先ほどから言っておるように、これは日本国だけで行えるものではなくて、世界国々と手を結びながら、世界国々情報を手に入れながら大きな活動を示していかなければならない。そういう意味から考えましても、五十年度から五千名という計画が立てられたようでありますが、これに対して、いま行政改革の中には人員という問題も起きてくると私は思うわけですね。  外務大臣が、その話に対しては、戦後立ち上がってきた外交を考えてみるときに、とりょうによっては積極でなくて、消極的にとられるかもしれないけれども現実は厳しいのであるから、行政改革のその趣旨賛成できるけれども、それに伴う人員問題等については、もう少し少なくしたらどうだということに対してはなかなか賛成できかねるということは、私どももわかるわけなんです。  五千名の今後の見通しを、どのように進められていくかということを、大臣の御答弁をいただかなくても、それに関係する方から答弁を伺えばいいと思います。
  10. 松永信雄

    松永説明員 いま御指摘がございました、わが国在外公館人員陣容に関しましては、そのときそのときによりまして若干数字が異なってまいりますけれども、御指摘がありましたような状況でございます。  大ざっぱに申し上げますと、外務省定員約三千二百名のうち約半数、二分の一が在外公館勤務いたしております。百五十六公館がございますから、平均十名という規模になるわけでございます。このうち、約一割は外国にありまして研修をいたしております。でございますから、それを引きますと、約九名というのが平均公館規模ということになるわけでございますけれども先ほど指摘がありましたように、アメリカ、ワシントンにおきましては七十名の館員勤務いたしております。そういう大型公館は、ところどころにございますので、非常に小さい規模のところでは四名、五名というような非常に貧相な規模陣容をもって仕事をいたしているわけでございます。  このような状況は、私どもといたしましては何とか改善いたしまして、先ほど先生がおっしゃいました五千名の規模まで持ってまいりたい。五千名に持ってまいりましても、西ドイツの六千二百名、カナダの五千四百名というものには、まだ及ばないわけでございますけれども、その程度まではぜひとも何とか数年ぐらいで持ってまいりたいと思いまして、この近年、数年間非常な努力をいたしてきておるわけでございます。  関係当局の非常な理解と支援も得まして、外務省定員は毎年着実に増員を実現させていただいているわけでございますけれども、いまの人員増強の趨勢をもってしては、なお非常に長期の期間を必要とするだろうと思っております。したがいまして、定員増強につきましては、もう少し違った角度からの検討も必要ではなかろうかと思って、現在鋭意検討しておりますけれども、私どもといたしましては、着実に増員を図り、できるだけ速やかに必要な在外公館規模は確保するようになるべく早く実現いたしたいと思って、鋭意努力しているところでございます。
  11. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 いま、官房長からのお話で、一応その目的達成はぜひ実現いたしていきたいということでありますが、私どもも、日本国の将来の発展を考えていきますと、外務省仕事は非常に責任が重大でありますので、ぜひ人材を求めながら、そうした陣容拡充というよりも陣容内容を整えていただくごとを切にお願いいたしておきたいと思います。  第二の問題についてお尋ねいたしたいと思いますが、在外勤務をしている人と、私どもがたまたま外国へ参りましたときに、私は前はどこどこにおりました、内地でなくて海外ですが、今度こちらへかわりました、もう三年あるいは四年になります、そうですか、大変御苦労さんですね、子供さんなんかあるんですから、その子供さんの教育という問題にも大変でしょうといったような話し合いをしたわけですけれども一遍日本へ帰りたいと思いますが、なかなか大変な金がかかるので、帰ることもできませんしという話を、これはちょっと古いのでありますが、四年半ほど前にそういう話を私は聞いてきたわけであります。あるいは三年前ごろにも聞いたわけであります。  そうした話を聞いてきまして、私は、外務省のどなたか、外務大臣であったか、三年も待たずして、少なくとも二年ぐらいには一遍日本に帰ってきてもらって、日本の国会の空気も吸ってもらったり、あるいは国内事情を、新聞ラジオテレビだけで聞かずして、本当の耳で聞き、本当の目で見て、そうしてまた勤めていただくことが大きな役割りになるし、そうしてそれが仕事の上における大きな活力になるでしょうと、私は帰ってそういう話をしたわけであります。もっともなことだから、予算は乏しいけれども、何とかしてそういう措置を考えてみようと、その当時の大臣がおっしゃったようでありますが、たまたまそれから聞いてみますと、そういう人もあったようであります。まだまだ帰れない人もあるようであります。  そこで外務省の規約を読んでいきますと、第七章の二十三条に「休暇帰国」というのがあります。ここの中に、「三年につき一回、二月以内の期間勤務地と本邦との間を往復するに要する期間を除く。)の休暇のための帰国を許すことができる。」というようなことが書かれておりますが、そういう点について、現在百数十ヵ国の各国に勤めておっていただく人々に対して、どのように処遇をしておられるか。この点、官房長で結構ですが、一応お聞きいたしたいと思います。
  12. 松永信雄

    松永説明員 数年前までは、休暇帰国につきましては、四年に一回というのが外務公務員法によって定められておりましたけれども法律改正をしていただきまして、現在は御指摘のように三年に一回休暇帰国を認めるという制度になっております。なお、不健康地につきましては、一年半ごとに、すなわち二分の一の一年半に一回帰国を認めるということに制度改正をいたしまして、予算範囲内でございますけれども、できるだけ館員日本への帰国を認めるように私どもとしては努力いたしているところでございます。  法律上は三年を超えるごとに、あるいは一年半を超えるごとにということになっておりますけれども実施上は、三年あるいは一年半確実に在勤するという見通しの者につきましては、なるべくそれを少し切り上げまして、早く帰すというように努力いたしているわけでございます。  また、在外から在外へ転勤いたします場合には、これまた予算の許す範囲内でございますけれども、できる限り東京に立ち寄らせる、そうして日本国内情勢その他の勉強にも資してもらうというように努力をいたしております。  御指摘のように、在外に余り長くおりますと、日本内地情勢に疎くなるということがございますので、この休暇帰国制度と申しますのは、本来の休暇のほかに国内事情勉強ということも、その趣旨としてはございますわけで、私どもとしては、この休暇帰国制度を全面的に活用いたしまして、在外公館の必要とします内地国内の知識あるいは本国政府の政策をできる限り十分理解するということに今後とも遺憾のないように期してまいりたいと思っております。
  13. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 官房長にいま一度お尋ねいたしたいと思いますが、このときの休暇帰国旅費は、本人は支給せられるということがわかっておりますが、家族を伴ってくるといったような場合は、どういうふうな処置がとられるでしょうか。
  14. 松永信雄

    松永説明員 休暇帰国を認めます場合は、本人のみならず、随伴しております家族旅費も支給いたしております。
  15. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 いまお話を聞きますと、そういうことをできるだけ実行に移していく、この規定に基づいて、そのような運用をしているとおっしゃいますが、五十一年度の実績では三百九人ほどが帰れるということになるように、私の調査の間違いかもしれませんが、出ておりますが、三百九人の人に本当に一応休暇帰国させる用意があるのか、どうでしょうか。
  16. 松永信雄

    松永説明員 御承知のような状況予算をいただいておるわけでございますけれども実行上も、実態的にはその規模休暇帰国をほぼ認めるようにしたいと思っております。
  17. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 官房長に特にこの問題をお願いしておきたいと思いますが、たまたま向こうでいろいろお話をしておっても、もう三年も四年も帰らないという過去の例からいきますと、発展途上国というのか、そういうようなところに勤めていらっしゃる方は、少し日本空気と違っておって、長くそこにいらっしゃると、私どもとタイミングの合わない点がたくさんあるのですよ。テレビラジオ新聞という報道だけで、それを楽しみにしている。また、来る人の話ぐらいでは実際にわかりませんから、先ほども言うように、本当に目で見て、耳で聞いて、そして日本をいま一度勉強してもらって、また勤めていただくということが必要だということを痛切に私は感じましたから、ぜひ予算の上おいて——特に、外務大臣は、大蔵で育って外務にかわっていらっしゃった外務大臣ですから、予算関係のことは、だれよりも強いと思いますから、この際そうした先鞭をつけておいて、予算をうんともらった方がいいと思いますから、官房長大臣としっかり話し合って実現してもらうようにお願いしたいと思います。  その次に聞きたいと思いますことは、現地相当数補助員を使われますね。これが五十二年度の場合は三千五十九人になっておるわけです。それぞれの国情によって違ってはくるが、補助員給与身分保障基準は、その国によって違っておるけれども、あらましどのような基準で、このような人を使っておるのか。簡単で結構ですが、お聞かせいただきたいと思います。
  18. 松永信雄

    松永説明員 現地補助員待遇改善につきましては、私どもも十分な留意をいたしまして、毎年その待遇改善努力いたしております。このための給与予算も、五十年度には四十二億円ございましたけれども、五十二年度につきましては五十四億円、約十二億円の増を認めていただいております。  現地給与あるいは社会保障につきましては、それぞれの任国、任地におきます事情社会保障その他の制度も異なってまいりますので、一概には決めがたいものがございますけれども在外現地補助員給与規程というものを設けまして、できる限り統一的に、また、本人処遇に遺憾のないように努力をするということを私ども心がけといたして、この問題を処理しているわけでございます。
  19. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 具体的に運転手さんを例に挙げますと、アメリカでは二百八十万円を年間に払っていらっしゃる。そして、東南アジアへ参りますと七十四万二千円です。物価、人件費といったような格差はあろうと思いますが、これは大変な違いだと思うのですよ。そうしたことで納得して働いておってくれるとするならば、とやかく言うことはありませんが、アメリカにしても、東南アジアにしても、現地企業で働いておる人たち給与公館補助員として働く人の給与、この待遇はいささかの不平不満の出ないような方向でやっていらっしゃるか、この点を少しお尋ねいたしたいと思います。
  20. 松永信雄

    松永説明員 先ほど指摘がございました運転手給与予算単価の問題でございますけれども地域別によりまして非常に違うものですから、たとえば北米地域については二百八十万、それが大洋州地域に行きますと約百八十五万というふうに、かなりの格差はあるわけでございます。これは、やはりその土地土地状況によりまして、手当てをしてまいらなければならないという状況がございます。  また、同じ地域にあります日本進出企業その他の雇用します現地補助員と、私ども公館において雇用されます現地補助員給与格差につきましては、私どもできるだけそういう材料も集めまして、公平、不公平がないようには配慮いたしております。ただ、職務の内容が異なる場合もございますし、必ずしも全く同一基準というわけにはまいらないわけでございます。しかし、公館において働く現地補助員が不満不平を持つことのないように、できるだけの配慮をしているつもりでございます。
  21. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 民間企業から大使館員として採用されて勤務しておる人があることは、これはもう現実なんです。私はかつて海外に視察に行きましたときに、大使館の人だと思っていろいろ話を進めてさましたら、どうもピントが合わないので、あなたは大使館の人ではないのかと言ったら、私は大使館に採用されておる民間企業の者ですという話だったのですね。こういうふうに民間企業から採用して大使館仕事をさせる人の身分はどのような身分で、もしも事故が発生をしたとか、いろいろの場合にどのような身分になるでしょうか。こういう点は明らかにしておかないといけないと思いますので、これもひとつお聞かせいただきたい。
  22. 松永信雄

    松永説明員 外務省の職務が非常に複雑多岐になっておるということもございます。また、人材不足を補うということもございまして、この二、三年来、民間企業から外務省職員を中途採用の形で採用いたしまして、それを在外公館に派遣して勤務させている者が相当数あるわけでございます。  これらの職員は、すべてその民間企業を退職いたしまして外務省に採用しておる。私どもは正規の外務省職員として採用し、これを在外公館に派遣しているわけでございまして、これらの者は、すべて正規の外務公務員であり、大使館員でございます。したがって、その地位と申しますのは、私ども外務省本来のと申すのはおかしいのですが、外務省に初めから採用されて勤務しております者と全く同じでございます。
  23. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 官房長、民間企業からそういう人を雇い入れたのではなくて、大使館員と全く同等であるということならば——日本で試験を受けさせて、そして向こうへ連れていって使うのでなくて、現地日本人の民間企業の人を臨時的に大使館員として使っているという例はないとおっしゃるのですか。ありますよ、それは。臨時であるのか何であるのか、いろいろと大使館仕事をやるのですよ。そんな身分も一切、大学を出て非常に厳しい試験の中で通った人と同等の館員であるなんというようなことになれば、私は少しわかりにくくなってくるのですよ。その点はどうですか。
  24. 松永信雄

    松永説明員 在外におきまして、公館によりますけれども、その地にいます日本人と申しますか、民間人を、先ほど御質問がありました、いわゆる現地補助員という形で採用して在外公館で使っているという人たちがあるわけでございます。そういう人たちは、先ほど私が申し上げました日本の民間企業から外務省本省において採用をしまして派遣している者とは違う。ですから、これは現地補助員というカテゴリーのものでございます。
  25. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 それで、その現地補助員というものの資格というのは、外務省規定によると、大使館が適当に使ってきなさいという資格で使っておるのか、何か資格があるのかないのか、それを聞いておるんですよ。  私どもが向こうに行ったときに案内してくれる人のうちに、領事、公使、大使という人が案内してくれる場合と、たまたま日本人で両方言葉を話せる人が案内してくれる場合があるが、そのときに、大使館の人だと思って聞きますと、いやいや私どもは民間企業から採用せられて臨時的に来ておりますよという場合があるんですよ。そういうような人は、どういうような手続により、どういう資格を与えて大使館仕事を手伝わせておるのか。いま日本は別に機密も秘密も何もないのですからいいようなものの、そういう人の資格というものを私は聞いておるんですよ。それを一遍聞かせてください。
  26. 松永信雄

    松永説明員 現地補助員につきましては、これは大使館との雇用契約によって、その人の資格が決まっているわけでございます。それで、たとえばいろいろな庶務関係の事務の補助をするために大使館に雇用するという人たち相当数あるわけでございますから、外務公務員あるいは外務省職員ではないわけでございます。それは契約によりまして、その人たちが雇用されており、したがって、その人たちの身分、社会保障その他につきましては、現地の法令によってカバーされているという場合が多いわけでございます。  秘密保持の点につきましては、公務員法による守秘義務をこういう人たちにそのまま課するというわけにはまいりませんから、守秘義務を非常に必要といたしますような問題の処理には当たらせないというふうに配慮いたしているわけでございます。
  27. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 くどいようですけれども、たくさんの人が、現地企業から使われておるとかどうとかということではなくて、在外で臨時的に補助員的に使われておるわけですが、日本国を傷つけるようなことができてきた場合、あるいは何かの事故が発生した場合、それは大使館で採用した者である、だから外務省としては何らの責任もないということは言えないという立場になってくるだろうと私は思うのですね。そうしたことを、国際慣行上で大使館で雇った者がどういう事故を発生させようとも、それは大使館責任であるということで、日本国外務省責任というようなことを言わないで済んだら結構ですが、その点は明らかにしておいていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
  28. 松永信雄

    松永説明員 大使館で雇用をいたします場合にも、本省の承認は求めてくるわけでございます。私どもの方からこれを許可するわけでございますから、本省責任を持たない、それは全く大使館限りの問題であるというふうには私どもも考えておりません。もし、何か事故その他がございますれば、外務省としても、当然それには本省としても対処すべき責任があると思っております。
  29. 丹羽久章

    丹羽(久)委 員官房長、いまの答弁で大体わかったのですが、そうなれば、いままでは何らの事故もなくて結構でしたが、これからどういう事故が発生しないともわからない。だから、その点について、そうした場合には外務省としての立場をどうとるか、たとえ、どういう身分の人であろうと、雇い入れた以上は、どこでその責任を明らかにするかということを、はっきりしておいていただきたいということをお願いいたしておきます。  それから、これはアメリカの問題でありますが、在米日本大使館調査資料等を相当外注をいたしておるということが書かれております。このようなことは他国でも行われておるのか。相当エキスパートというか、現地で間に合う人を使っておるようでありますので、補助員でこういうような調査資料というものは、まとまりがついていく方法はないのか、こういう点はどうお考えになっておりますか。
  30. 松永信雄

    松永説明員 在外公館におきましてはいろいろな仕事があるわけでございますが、その中に、任国の政治、経済情勢情報収集あるいは分析、あるいはわが国事情の任国への紹介、広報というような仕事があるわけでございます。こういう仕事をいたしますに当たりましては、現地の人の協力を求める方が便宜であるという場合もございますので、そういった仕事を、その任国の人との間で契約を結びまして委嘱をするということがときどきあるわけでございます。  こういう仕事の場合には、いまおっしゃいました現地補助員として雇用をして仕事をさせるという方法もございますけれども、必ずしもフルタイムの常勤でなければならないということも事柄の性質上ない場合がございますので、そういう場合は、一定の仕事を委嘱するという方式によって使っているわけでございます。
  31. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 五十二年の六月四日の毎日新聞は、ワシントン・ポストがこのようなことを書いておるということを報道しております。お読みになっておると思いますが、そこの中で、「米国議会の動向を理解できないので、地元の法律事務所に代金を払って調査をしてもらうというケースを皮肉たっぷりに紹介している。しかし、在米日本大使館は、こうした記事が現れる前から政治・経済情勢調査や広報活動から、大使、公使の米国内での演説、原稿書きまで、大使館員が本来やってもおかしくないはずの仕事を高い代金を払って米国側に「外注」するのが多いことで知られている。」と書いてあり、その次に、「ワシントンの各法律事務所の間では、カネ離れのよいお得意として評判は上々なのだが……。」となっております。こういうようなことが書いてある。  何か皮肉たっぷりですけれども、こういうようなことはどうでしょうか。まあ、金離れがいいということは、世界に向かって悪いことではないと思いますね。やってもらって銭を払わなかったら、そういう方がぐあいが悪いのだから、いいことではあると思うが、どうもこういう書き方をせられるとね。  その次には「外交官の能力」ということが書いてあるのです。これは読まぬ方がいいと思いますから読みませんけれども、こういうことは慣例であったかどうであるか知らぬが、大使館の能力というものは大変な能力を持っていらっしゃると私どもは思うのですよ。それを、めんどうくさいからお願いしようか、金を払えばいいわというようなあり方は、余り国民に知られると適当でないと私は思っておるのです。  この点について、これは官房長でなくて、外務大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  32. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 毎日新聞の記事は私も読みましたが、この問題につきましてはいろいろな側面があると思います。特に、日本外交として一番大事なアメリカ大使館におきまして、各種の情報をとりたいということは、やはり大使館としては一番大事な任務であります。そういった意味で、自分のところの直接の職員を使うのみならず、適当な機関にある程度の謝礼金を払いまして、いろいろな情報の入手を図るということは、これは一つの大事な仕事であろうと思います。  しかし、新聞に書かれましたように、館員がやるべきような仕事まで外注をするというような感触を外部に与えることは余り適当ではなかろうと、私はこのように思いまして、これからの運営につきまして、もう一度検討をいたしたいと思います。
  33. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 大臣新聞をもうすでにお読みになっておるということなら、あえてこれ以上のことをお尋ねしようと思いませんし、これから再検討しますというお話でございますので、こういうような皮肉たっぷりのことを書かれないような姿勢に、ぜひしていただきたいと思っております。  その次にお聞きいたしたいと思いますことは、東南アジア福田総理が訪問せられまして、そこで特に強調せられてきたことは、心と心の触れ合いだということをおっしゃっております。どこの国とも対等でいこうと……。そして、日本経済が相当進出しておることについては各国は大変な関心を寄せておるわけでありますが、そういう意味から、このたび一緒に行かれました大臣は、日本企業が向こうへ進出して、そして働いておる人々というものは、どんな感じで作業に従事しておるか、そういうような点に触れられたか、どうでしょうか、その点をちょっとお聞きいたしたいと思います。
  34. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今般、東南アジア六ヵ国を回って福田総理のお供をしてまいったわけでございますが、現地日本進出企業につきましては、私どもも大変関心を持っておるところでございます。この現地企業のあり方が原因となったと思われますが、前回に田中元総理が回られましたときにデモ等があったということがございますので、その点につきましても関心を持っておったわけでありますが、最近の日本進出企業の態度というものにつきまして相当な改善が図られたのではないかという印象を受けてまいったのでございます。  記者会見等におきまして、ある国では、日本企業現地人に対して大変低賃金であるというようなことを言った場所もありますし、若干の不満が出たところもございますが、しかし、現地の人によく聞いてみますと、給与待遇等の点には最大の関心を持っておるということで、日本企業は決してそのようなことはないというようなことを現地の会社の方は言っておられました。  私ども日本企業一般現地の人の世話をほかの国よりも大変よく考えてくれているというようなことを最近はよく聞いておりますので、いろいろな企業がございますから、中には問題のところもあるかと思いますが、概して言えば、たとえば日本の商社等では相当いい待遇を与えているというふうに聞いております。  ただ、タイにおきまして、麻の関係の会社が倒産しかかって企業者が日本に帰ったというような事件が、ちょうど総理が行かれる前に明らかになったりいたしたことがございましたが、これらにつきましても、現地で早速日本から責任者を呼び戻して、遅配になっておりました給与の支払い等も行わせたというようなこともあります。  しかし、日本企業のあり方につきましては、なお今後とも十分気をつけなければいけませんが、特に、現地採用の職員本当に心の通ったような企業の運営をしてもらいたい。心と心というようなことは、総理各国の指導者間のことだけでは何にもならないので、現地に進出しておられる日本企業の方々が、皆心と心のつき合いを各国においてしていただきたいということを強く感じておるところでございます。
  35. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 大臣、東京銀行とジェトロ等で使っておる現地人との紛争問題、労働紛争があるわけなんです。これはやはり大使館が中に入ってある程度調停をしたり、話し合いをしてあげなければならぬと思いますが、いまのお話しのように、もう一つ、何か向こうで事業をやっておって、日本製麻ですか——これはもちろん外務省だけでなくて、指導するところの通産省にも責任はあると思いますが、いまお話を聞いておると、代表者は逃げてきてしまったのだ、これを現地に帰るようにして、賃金を払うようにという話のようですが、五百人からの人が給与ももらえずして、それで会社を倒産させて逃げてきてしまって、帰る見通しもなければ払う見通しもないというような状態なんですね。  本当に心と心の触れ合いなんと言って、それを大きい看板にして総理が一生懸命におやりになっても、こういう企業が後足で砂をかけるようなかっこうになったら、タイ国の国民感情が果たして許すでしょうか。  特に、東京銀行だとかジェトロとかいうところで使っている人たちとの紛争問題が起きてくる。これは賃金が余りにも安過ぎるとかなんとかという処遇関係でいろいろな問題が起きておると思うのです。  なるほど、総理の行ったときには波静かな体制を整えてきた。田中さんのときとは違った形で受け入れ体制をしたことは事実でありまして、それだけ、いま大臣のおっしゃるように、感情的にもなごやかになり、日本を信頼するようにもなったと思うけれども、一面にはこういうことが実際に行われている。タイ国の新聞にもはっきり出ておるのですから、こういうような点について、向こうで話をせられるときにも、そういうような問題は余り報道するようなことはないし、心配するようなことはないとおっしゃるのか、こういうようなことは通産、外務がお互いにひざを突き合わせて、そうしたことのないように指導的な責任をとることが本当に必要になってきたとお感じになるのか、この点を大臣から御答弁いただきたいと思います。
  36. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この製麻会社の事件は、本当に例外的な事件が突発してしまったというふうに感じております。合弁企業でありますけれども、この企業の運営が円滑を欠いた状態になって、給与の支払いのめどが立たなくなったという点にあったと思います。  この解決といたしましては、現地大使館の方で現地の金融機関によく話して、一応の金繰りを何とかつけて七月分の月給を払い、また、八月分の月給につきましても払うめどがついたというところで私どもは帰ってきたわけでございますが、一つの企業でありますので、企業の業績いかんによりましては、このようなことが起こる場合が今後ともあり得るわけでありますけれども、これがもとになりまして現地の間に日本に対する大変悪い感情が起こってくるということは何とか防ぐように、感情問題に発展しないような対処の仕方をしなければならない、このように考えておるわけでございまして、今後とも十分注意をしてまいりたいと思います。
  37. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 大臣から、いま御答弁を聞きましたので、これ以上申し上げることはありませんが、お互いにみんなでうまくやっていこうと思いましても、一企業の利益のために感情的に悪くなったり、あるいは利益中心主義による低賃金で使おうとしたり、そういうようなことのないように、通産、外務ともお互いに話し合っていただいて、本当の友好関係、心と心の触れ合いをつくっていただくように今後御努力をいただきたいと思っております。  それから、日本の大学などへたくさんの人が留学に来ておりますね。これは大臣は御存じだと思います。特に、東南アジアなどは、近隣国として、また、発展途上国として日本に見習うべきものがあるということで、日本の大学にも相当留学しておりますが、この大学課程を終えましてから帰っていった人の中に、反日というか、何か日本に対して好意的なものを示さない形のリーダーが、調査すると相当数ふえておるんですよ。これはどういうところに原因があるか。これは大学側に聞くべきであるかどうかということは別として、外務省として、入国許可をしていらっしゃって、思想的にもいろいろ調査もあろうと思いますが、表立ってはなかったかもしれぬけれども、田中総理が行かれた当時には、そういう人たちが先頭を切ってやっていたことは事実なんですよ。それに対しての関心を大臣はお持ちになっておったか、全然そういうことは無関心でいらっしゃったのか、どうでしょうか。  私どもは、日本へ来てもらった人たち日本勉強する間、あるいはいろいろの技術を身につける間、どうもそうしたものに十分なものがなかったのでないかと思う。十分という言葉は表現が大き過ぎるかもしれませんが、本当に心温まる思いをもっていろいろと指導する、いろいろの学問を教えるということに、ある程度欠けていたのでないかという感じがしますけれども、それが、やはり、兄貴分である日本は思ったより冷たい、さらに、あの大東亜戦争におけるところの大きな被害を与えながら、いまだ反省している色合いがない、何かといえば、日本は指導国だといったような心構えで、われわれに接しておるというような感情が、四年なり五年なりおるうちに自然に養われてきて、向こうへ帰っていって、見ておれ、おれたちはいつの日にか、という感情的なものになっているんではないかしらんという懸念を持つのですけれども大臣でも官房長でも、どちらでも結構ですけれども、その点についてのお考えはどうでしょうか。
  38. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国東南アジア関係から留学されている方は、現在日本に留学されている方の七割以上になっていると思います。たしか五千六百人くらいが、いま日本に留学しておられるというふうに聞いております。これらの方々が、それぞれ国へ帰られまして、いまでは相当枢要な地位にあられる方も多いと伺っております。  クアラルンプールで、これらの東南アジア各国から日本に過去に留学された方々の集会が開かれまして、私は、たまたま外相会談がありまして出られなかったのでありますけれども、大変盛大な日本留学生のOBの会合が持たれまして、大変よかったと思っておりますが、この会合は、福田総理が大蔵大臣のころ起請して、東南アジアから大体百人の、かつて日本に留学された方を日本に招待するということを始められたわけで、それらの方々が各地で活躍をされておるということでございます。  戦後、特に日本の教育がやや動揺した時期もあったからかもしれませんが、日本でせっかく留学されて、本国へ帰られて反日的な行動をとられるというようなことがよく言われるわけでございます。しかし、何千名という留学生がおられますから、反日的な行動をとられる方も、あるいはその中から出てこられるということは十分あり得ることでありますけれども、そのようなことのないように、外国から日本へ来られた留学生の方々は日本国民全体で大事にしてあげるように、それこそ心と心の通じ合うようなことにして、これらの方々が国へ帰られたときに、日本本当に心の通い合った、日本を真に理解をしてくれる方々になられるように、今後ともいろいろな細かい注意を払っていくべきだろう、このように考えております。
  39. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 時間が来たようでありますので、最後に締めくくり的なことをお願いいたし、また、そのようにひとつ指導していただきたいと思いますが、その前に、これは御答弁をいただかなくてもいいのですが、最近、日本の景気は立ち直る、立ち直ると言っていただいておりますので、もうきょうかあすかといろいろ期待をしておるのが国民全体の希望でありますが、なかなかそうは思うようにまいりません。  そこで、新聞を見ますと、海外に移住する——日本ではもう景気回復もできない、経営も困難だということで、すべてを見捨てたわけではありませんが、一獲千金という夢ではないけれども海外で一旗上げようというまじめな考え方から海外へ移住する方が相当数ふえたということであります。  私は、海外移住の問題について、いまから五年ぐらい前ですか、南米のブラジルを中心にして、あちらこちら回ったわけでありますが、そのときに、海外移住関係の向こうの方で、現地海外移住として来てもらった方々に対しては会っていただかなくても、ここで説明をすれば、もうよろしいですよということでしたが、それではわれわれの使命が達せられないということで、私どもはアマゾン流域を三百マイルくらい上ったことがあるのです。そうして、そこにいる人たちとひざを交えて実は語り合ったのですが、そのおじいさんが話すことには、もう八十歳ぐらいのおじいさんでしたが、私はここへ十五、六のときに船に乗ってやってきたんだ、海外移住を頼って、南米のブラジルはコーヒーの地であって非常にすばらしい、金もうけができるんだということで私はやってきた、そうして車に乗せてもらって、まず最初に、どこへ行くのかわからぬところを、さあっと何人かの人が連れられてきて、途中で、おまえはここでおりろと言う、こんなところでおりてどうするんですかと言ったら、ここは木は幾らもあるから、自分で寝るところだけは考えよ、これがおまえが食べていけるように、また将来やっていけるようにという道具だと言って、ぽっとほかられちゃって、何とも泣くにも泣けない状態でした。  そうして私は、一生懸命仕事をしておるうちに、着るものがだんだん傷んでしまって、ぼろぼろになった、そこでどうしたかというと、肥料を入れて持ってきたその袋の頭の方を切って上からかぶった、その袋は、わりに長いから腰の辺までかぶる、それで袋の両そでを切って手を通した、私が袋をかぶって仕事をしていると、たまたまアメリカ人かだれかが来て、袋をかぶって歩いておるものだから、人間じゃないと思って、向こうがびっくりしましたよ、それほど私どもは難儀をして、この開拓をやってきたんですと涙を流しながら話してくれた。それから私は帰ってきまして、今日はそういう冷たいあり方はないと思うが、どうじゃと言って聞いてみたら、いや、もうここは本当に天国の地です、もう何でもできます。十分です、ということです。  また、私どもが次の現地を視察に行ったら、私どもは、ここにモーターで水を吸い上げられるようにしてもらったら、この広いところに大根もできる、野菜もできる、そしてそれをサンパウロに持っていくならば、私どもの収穫は大変なものなのに、もう何年間か叫び続けてきておっても、それがやってもらえませんという訴えでした。  それから、またもう一遍現地に戻って現地の懇談会をしたときに、何を語ったかというと、そこの私どもは二代目です、あるいは初代目ですという人たちが、一生懸命に働いて与えられた土地の金を全部払って籍を自分の籍にしようとしても、ここの国によって籍が自分の土地としての登記ができません、だから金を借りようと思っても金を借りることができない、土地を担保にしようとしても、金を払ってしまってあるが、自分の名前にならないから担保に入れることができません、だから私どもはこんな苦しい思いをして経営をしておるのですよと言うのです。私は力は足りませんでしたが、わかった、これは外務省関係省にどうやっても話をして、お金を払ってしまえば、あなた方が基本的に自分のものになるように、持って帰れるものではないから、この国と交渉をしてもらいましょう、日本では、韓国の人であろうとアメリカの人であろうと、金を払って所有権がそこに移ったときには完全に登記ができるのだ、この南米、ブラジルだけはそういうことができないはずはないということで約束をして私は帰ってきたのです。  そして、私は議員でありましたので、皆さん方にいろいろと話をしまして、その解決ができて今日は籍が移されるようになったということであり、担保にもその土地が入るようになったということは、一歩前進したことであると、いま私は実は喜んでおるわけでありますが、そういうような現地におけるところの報告を聞いておると、想像でき得ないような事態があることも十分認識していただいて、今後の指導的な役割りについて大臣官房長局長は特に十分に注意していただいて、そしてきめ細かい外交をやっていただきたい。移住者に対しては温かい手で——新聞にも出ておったが、日本人が、うまいことを言って夫婦の大切な金を取り上げられてしまって、そして泣き泣きの姿でこれを取り戻すことができ得ないというような事態が起きておるという今日なんですが、いま一度お考えいただきながら、今後について、ひとつよろしくお願いいたしたいと思っております。  実は、私どもは、委員長を中心にいたしまして、一日から、会計検査が各国どのように行われておるか——共産国にはその必要はありませんから、自由国家群を回って、どういうような決算報告がせられておるか、決算によるところの金の使い道、それに対して各国ともどもどのようにして指摘し、どのような調査方法がとられておるか、そういうことをこれから調査して回って見たいと思っております。一日から二十日間の予定で一生懸命勉強しながら帰ってくるつもりでありますが、外務省におかれましても、今後の日本の行くべき道については、心の触れ合いについては、東南アジアだけでなくて、世界に対して、もうすでに宣言すべきことであろうと私は思っておりますので、大臣、どうかひとつよろしく責任を果たしていただきますことを心から願って、私の質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  40. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま生々しい移住のお話を伺わせていただきまして、ありがとうございました。  特に、ブラジルには大ぜいの移住者が大変長い間苦労を続けられておるわけでありまして、特に来年は七十周年を迎えるのでございますが、なお、このブラジルにおきましても、老齢の方で相当生活に因られている方があるというようなことも伺っておりますので、移住行政のあり方は、移住の数をふやすということではなしに、いま出られておる邦人の方々に、本当に細かい温かい気持ちで、これらの方々の幸せを図るということ、そういう考え方で努力をいたしたいと思います。  なお、遠いところまで、会計監査と申しますか、国費の支出につきまして見ていただきますことは、私どもとしても大変ありがたいことでございます。本当に感謝にたえないところでございますが、よろしくお願い申し上げます。  ありがとうございました。
  41. 芳賀貢

    芳賀委員長 原茂君。
  42. 原茂

    ○原(茂)委員 きょうは主に三点に分けてお伺いします。  いま丹羽委員からも最後に話をしましたように、私ども委員長を中心にして、各国の会計検査なり決算制度というものを一応視察に一日から行こうと思いますが、それに先立って、少し予備知識としてお伺いをしておきたいことがありますが、その一つは、在外公館における毎年度の予算執行状況、その適否の検査は一体だれが行うのか。いま考えたのですが、在外公館における毎年度の予算の執行に対する検査は、だれが行っているのか。参考までに、まずそれを伺いたい。
  43. 松永信雄

    松永説明員 在外公館におきます経理につきましては、四半期ごとにその経理の報告を本省に受けまして、本省において、これを監査いたしております。  また、その結果につきましては、会計検査院の方にも、当然のことでございますけれども報告をし、その審査を受けるということになっております。
  44. 原茂

    ○原(茂)委員 それから、いわゆる機密費的なものは、これは外交に従事するのですから、表だけではなくて、当然検査を受ける経費ではありましても、そういうものはやはりなければ、ちょっと困るのじゃないかと思うのですが、その許容額というものはあるのですか。
  45. 松永信雄

    松永説明員 いまのお話は、現在は機密費というものは制度的にもございませんで、いわゆる報償費というのがあるわけでございます。これは外交活動に必要とされます情報収集その他の工作関係に使う経費でございますけれども、この使用に当たりましても、きわめて厳正に取り扱わなければならないということで、本省においても、また、在外においても、この使用については十分な意を用いまして、それが適正に使用されるように経理を監督いたしております。
  46. 原茂

    ○原(茂)委員 それから、私どもが行こうとするのはカナダ、アメリカ、フランス、イギリス、西独、ついでにチェコ、スイス、デンマークと八ヵ国に参りますが、そういう国々——そればかりじゃありませんが、主要先進国と言われるようた国々の議会制度あるいは会計検査院制度というものに対する調査活動といいますか、資料の収集などは在外公館がやっておりますか。
  47. 松永信雄

    松永説明員 できます範囲においては、私どももいろいろと調査いたしております。
  48. 原茂

    ○原(茂)委員 そういうものを調査したものは、まとまって何かあるわけでしょうか。別にまとめて一つのものにしてはないのですか。
  49. 松永信雄

    松永説明員 全部を総合して取りまとめたものというのは、まだございませんけれども各国別に、いろいろ事情調査しまして判明いたしたものにつきましては、各国別に、それぞれの国の事情調査したものを取りまとめたものはございます。
  50. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで、いま申し上げたように、われわれ視察団として、委員長を含む一行四名が参ります。あらかじめ事務当局に連絡をしてはおきましたが、外務大臣なり官房長から、やはりこのことに関心を持って、出先公館に対して、われわれの調査が十分できるように、効果的に行われるように、ひとつ配慮をぜひお願いしたいと思います。  最初にお伺いした会計検査の問題なんですが、海外公館やあるいは経済協力基金、そういう財務や決算の適否を検査する機会が直接には会計検査院にない。この際、決算委員の立場で、参考的にそのことも事情を聴取することがあり得るというふうにお考えおきをいただきたいと思うのです。公館に参りまして、その場所によりましては、私どもがある程度そういった公館における実情というものを、会計検査的な面からの決算委員としての実情の聴取等も行うことがあり得るということを、ひとつついでに通知おきをいただいて、その場合には差し支えない範囲で、それに応じていただくように、これもお願いをしたいと思うが、大臣、ひとつこれについて……。
  51. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 各国予算決算、会計等の制度調査に行かれますということは、この機会に在外公館におきます経理の実態につきまして見ていただければ、私どもとしても大変幸せだと思いまして、全面的に御協力申し上げます。
  52. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで、きょうの本論に入ります。  この十八日に、福田総理以下外務大臣を含めた一行がASEAN、東南アジア五ヵ国の訪問を終わって帰ってこられまして、一応その訪問は終わった。まあ、いろいろな見方がありまして、ある面では悪い面だけを取り上げて、将来を心配して、成果はほとんどないという評価の仕方もあります。しかしながら、一面では効果があったというある種の評価もしており、いい面があると私も思うのであります。  いずれにしても、このASEAN訪問そのものをいま論じようと思わないのですが、このアジアにおける日本の、せっかくの東南アジアの五ヵ国との交流を深めるための首相を中心とした訪問は終わったわけでありますが、それだけでこれが終わったのでは意味がないと私は思う。やはり、このことを通じて、ソビエトあるいは中国に対するところの今後解決しなければいけない、いろいろな問題への足がかり的な、外交的な成果というものがここにないといけない。  換言しますと、東南アジア、ASEANを訪問したということの、いわゆる日本外交のいま当面するスケジュール的な問題から言うなら、常に中国、ソ連というものを——いま、ソ連における、中国における平和条約の締結の問題があり、あるいはソ連に対する、特に北方領土返還の問題が中心でしょうが、いろいろなソ連との未解決の問題がある。早急に解決しなければいけないこれら中ソの外交問題に関して、今回のASEAN訪問というものは足がかり的に何らかのつながりを持ち、成果をそこに持ち得るような、そういう外交的な配慮というものが払われたろうと思うのですが、今回のASEAN訪問をいま申し上げたソ連、中国との関係において考えますと、今後どういった成果が期待できるのか、今回の訪問を中国なり、ソ連に対する日本の持っている最大の課題解決のために、どのような足がかりにしようとしているのかという関連を最初にお伺いしたいと思う。
  53. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日本外交の課題といたしまして、中国とソ連に対しまするそれぞれの条約問題がございます。これらの問題は、長い間の懸案でございまして、今回のASEANまた東南アジア六ヵ国に対します総理の訪問が終わりました現在の段階として、これからの外交課題として、この大きな課題に取り組まなければならないことは当然でございます。  さればと申しまして、今回の東南アジアの歴訪、またASEANの拡大会議等への総理の御出席が、これら中国あるいはソ連に対する外交との関連におきまして、ある種の目的を持って行われたかと申しますと、私は、決してそうとは考えておりません。とにかく、アジアの一国としての日本責任を果たす上からいきましても、ASEAN各国また東南アジア六ヵ国の、今回歴訪された地域は、日本としては最も関心の深い、また、歴史的にも大変深いつながりを持つ地域でありますので、これら諸国と日本が、本当に心の通い合った関係を打ち立てるということ、それ自体が大変大事なことであろう、また、ひいてこのことが、広い意味でアジアの平和と繁栄に尽くす上で大変大事な第一歩であると思います。  しかし、一番大きなアジアの大国である中国との問題が、アジアの平和の上に最大の問題であることは御指摘のとおりでありますし、また、わが国といたしまして、北方領土を含みますソ連との平和条約を早く締結したい。これもまたアジアの平和また世界の平和のために最大の問題であると思いまして、そういう意味で、それぞれ最大の努力をいたしたいと考えております。
  54. 原茂

    ○原(茂)委員 きょうは、その問題を主体に審議しようと思っていないものですから、余り深入りいたしませんが、一例を申し上げますと、とにかく現在の日本はかつての日本と違って、武力、戦力によって外交における優位あるいは外交的なある種の有利な立場を求めようとすることは不可能になっている。してはいけないことになっていますし、武力、戦力によっては一切そのことを考えない。ASEANに行っても、総理は特にそれを強調したわけですが、では、これにかわるものは一体何か。外交を実際に推し進めていくときに、いま、日本がある意味で歓迎をされ、ある意味では非常に警戒をされるような状態にあるのは、かつて言われた武力、戦力にかわって、いまは経済力が日本に相当程度備わってきた。だから、ASEANとの今度の外交においても、われわれが口を出さなくても、日本と接触するASEANの五ヵ国は、昔の日本帝国主義のイメージを持っておりますから、経済力が武力の変型でもあるような、戦力のかわりでもあるような、何となくそのことに対する警戒心を持っている。  経済力が非常に大きくなった日本というものは、いまASEANからある一面で歓迎をされるが、中国なりソ連の五ヵ国に対する対応の仕方は、おのおの違っておりますから、これは一例を言っているのですが、やはり、そういった面で、日本の経済的な力を背景にしたASEAN諸国への外交の展開をソ連、中国の側から見たときに、同じような警戒心を持たれるという心配がある。そのことがまた、条約を結ぼうとする大きな課題を持った日本の対中、対ソ外交に、ある種の影を与える心配もあるように思う。  そういう配慮からお聞きしたわけですが、そういった点で、今度のASEAN五ヵ国訪問というものに対して配慮をしておやりになったかどうか、そういう配慮なしにおやりになったのか、それをひとつ外相からお聞きしたい。
  55. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日本の国が軍事大国にはならないという点は、これは日本の憲法で決められておるところでありますから、これはもう各国は、不安は何ら持っておらない。御説のとおりでございます。ただ、経済力をもって支配するのではないかというような心配が一部にはある。日本は経済大国になった、経済的に支配をされてはたまらないという感情が、東南アジア各国にあることは事実であろうと思います。そういう点で、経済的な関係というものは、本当に心と心の触れ合いがあって、お互いの本当の相互理解があった上に、対等の立場で経済協力をやっていこうという姿勢を打ち出されたことにつきまして、今回各国の共感を呼んだところであろうと思います。  また、日本が、ASEAN各国というものを、一部でよく言われておりますような反共グループであるというような考え方でとらえるのではなくして、相互の友好関係を深めるという点と、それからベトナムを含めましたインドシナ三国に対しまして、アジア地域の平和と繁栄のために、日本といたしましても、ある程度の協力姿勢をとるべきであるという考え方を打ち出してまいった点につきまして、これも各国から、一つの安心と申しますか、歓迎をされておる点であろうと思います。  ASEAN内部におきましては、ニュアンスの差が若干あろうと思います。国を接しておりますタイとその他の国との若干の感覚的な差はあろうと思いますけれども、タイにいたしましても、ベトナムとの外交関係の樹立に努力をいたしておるところでありまして、そういう意味で、互恵の原則に立ちました共存共栄というものを図ってまいるという姿勢をASEAN各国側が打ち出されたということにつきまして、一部に言われましたような反共グループというようなことにつきまして、その誤解を解いておると思います。そういった意味で、世界各国、体制を異にする国、大国の理解も十分得られるものと私は確心をいたしております。  一部に、たとえばモスコーの一部の新聞紙上で、やや批判的な、日本が経済侵略をするというような指摘があったことは事実でございますが、これらの点につきましては、私どもとして誤解を解く努力をいたしたい、このように考えておるところでございます。
  56. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで、順序不同になりますが、先にお伺いしておきますが、マニラで、まあマニラ宣言ということはないのでしょうが、集約すると、三つにまとまった声明を出して引き揚げてきたわけですね。この旅行の最後。その一つは、平和に徹して軍事大国にはならない。これはおっしゃったとおり。二つは、政治、経済のみならず、社会、文化など広い分野で相互信頼関係を築く。三つは、対等の協力者として、東南アジア諸国連合、ASEANの自主性強化に協力し、インドシナ諸国との相互理解を深めて、東南アジア全域の平和と繁栄の構築に寄与する。と、せんじ詰めると、こういう声明をされたが、そのうちの二つ目の問題に関して、先にちょっとお伺いしたい。  政治、経済のみならず、社会、文化など、広い分野で相互信頼関係を築くとおっしゃった。このことは口で言うのはやすいけれども、なかなかに、いままで実効が上がっていないわけです。いまおっしゃった、精神的な心と心の結び合い等というものを考えたときには、何をおいても社会、文化の交流というものに力点を置かないと、先ほど丹羽委員からも指摘がありました行政改革の問題で、きのう総理から問われたときに、外務大臣は、まあ反対ではないが、逆に中南米局あたりを設けたいというような積極的な押し返した進言をしたようでありますけれども、ああいった態度で最も強く推進する必要があるのは、やはりアジアにおいては、日本は文化面における交流の強化だというふうに考えて、非常にこれは大事だと思うのです。ところが、総理がまた、かつて四十七年ですか、外務大臣のときに発案した日本の、いまあります国際文化交流基金ですか、これも、日本に対して各国からエコノミックアニマルなどと言われることを何とかして避けたいし、事実で示そうというので、当時の福田外務大臣の発案で、いわゆる国際文化交流基金なるものを法律によって定めて、毎年予算をとって今日に至っているわけですね。  今度の場合は、それとは違って、もう一歩進んで、その基金なるものを単なるファンドにするのじゃなくて、これをASEANの事務当局に任す基金として拠出をする。それを大体五十億円ぐらい、まず第一にやりたいという外務省の、総理との打ち合わせの結果だと思いますが、強い意思が表明されたのですが、大蔵省がこれに対して、いまの財政難を理由に難色を示しているということを聞きました。  私は、これはぜひ必要だと思うので、この点は外務省のしり押しをしても、——五十億円は確かに大きな金額ではありますが、日本東南アジアの五ヵ国と個々に文化交流をするという従来のパターンでは決してなくて、このASEANそのものにこれを任せて、ASEAN内部における文化交流に自由に使わせる金というのが五十億というものを考えたことは、金額は、少ないと感じることはありましても、多過ぎるとは思っていないのです。  財政難ではあっても、この点は外務省の言うとおり、ぜひ実現させたいものだと思うのですが、現在どうなっているのですか。大蔵省との折衝の内容見通しをお聞きしたい。
  57. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま御質問の点は、新聞等にも出た経緯がございまして、ASEANの五ヵ国内での文化交流を図られたら、どうかという点でございますが、日本とASEAN各国との文化交流につきましては、現在、先ほどお述べになりました交流基金、ジャパンファンドと言われておりますが、この運用で行うので、この事業も拡大をいたしたいと思います。日本とASEAN各国との相互理解が、まず日本といたしましては大事なことであろうと思っております。  ASEAN内部、各国同士の、やはり同じようなことをなされたらどうか、こういうことを考えておるわけでございますが、これにつきましては、今回総理からクアラルンプールにおきまして御発言がありまして、そのようなことを考えられたらどうであろうか、日本では、このようなことをやっておるということを発言をされまして、ASEAN各国の方から、それは大変ありがたいことだということで、それにつきまして、そのような問題は、やはり文部大臣の所管になるというので、その関係各国で担当の文部大臣が至急に集まって、どういうような構想で仕事を始めるかという点につきまして、これから相談が行われるだろうと思います。そのようなことを言っておられたのでございます。  それを受けまして、日本といたしまして協力の態度を決めるのが話としても順当であろうというので、私どもの方で、大蔵省との折衝は、いまここではっきりした金額を決めて先方に提示するのではなくして、先方からの希望をまず出してもらおう、こういうことになったのでございます。
  58. 原茂

    ○原(茂)委員 どこかで大蔵省と変なところで妥協しなければいけないような遠慮があるんではないかと思うのですが、ASEAN諸国から要求があった金額を、たとえば百億という要求が出て、それが五億しか出さなかったり、あるいは十億だったら、これはまたみみっちくて、日本はあんなに大がかりで総理以下りっぱなことを言って帰ったくせに何だこれはということで、かえって信用を落とすもとになるので、この種のものを相手側はどのくらい欲しいか、どのくらいあったらというような希望も大事ですが、いち早くわが国わが国で、いま言った必要性に応じて——いままでいろいろなものがありますので、その関連等も考えた上で、五十億というなら五十億をすぱっと決めて、そしてまた来年それ以上のものを何か要求があったら、それにこたえるというやり方が外交上も正しいんで、先方が相談をして、大体このくらいは欲しいんだというようなことに対して、このくらいが適当だと思うというようなことをやっているというような態度は、これは大蔵省に気がねしたんじゃないかと思うのですが、どうも少し逆立ちをしているような感じがするんです。  まあ、どっちにしても、いまそういうような事態になっているということだけはわかりましたが、もう少し押して、日本が自主的にある程度の額というものを国内で決めて、それもたまたまわれわれが知った五十億というものは最低限の必要な金額だというふうに私などは考えますし、大いに推進すべきだと思いますから、もう少し本腰を入れて、大蔵省とばしっとやったらどうかと思うのですが、どうですかね。われわれみたいな応援団ではだめですかね。これは大蔵省に余り押されないように、もう少し気がねなしに、この種の問題はやっていいんじゃないかと思いますが、外務大臣、どうですか。もう一度答えてください。
  59. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この文化協力につきまして、日本は大変積極的な姿勢を示したわけでございます。しかし、これはASEANというこの五ヵ国のグループでございますから、五ヵ国のグループといたしまして、この案をつくるという手続がとられることが当然でございます。そのようなことが先方から話が出て、それにこたえるということが、グループがあります以上は、やはり必要であろうというふうに考えたわけでありまして、私ども姿勢を弱めたということでは全くないわけであります。  それから、基金がいいのかどうかという点につきましては、やはり、今後私どもも検討する必要があろうと思っております。と申しますのは、五十億もなかなか一気にはむずかしいというようなことになりますと、たとえば五年間で五十億などという、そういうみみっちいことになりますと、これはとてもかえってぐあいが悪い。発想として、金利を活用するという発想がいいのかどうか。仮に五十億にいたしましても、六分で回して三億ぐらいの金しか使えないわけでありますから、これはどういうやり方がいいのかにつきましては、これから十分私どもとしても検討をする必要があろう、大事なことは、担当の文部大臣クラスが集まりまして、どういう事業をASEANとしてやりたいかという点が一番大事だろう、それを日本が押しつけるというようなことは、やはりいけないのであって、先方からこういう事業がいま一番ASEANとしてやりたいことであるというようなことを、いろいろ御研究いただいた上で対処をしたい、こういう姿勢をとったわけでございます。
  60. 原茂

    ○原(茂)委員 どんな経緯があってそうなったか、そうなって、それがいいと外務大臣がおっしゃるのでしたら、それ以上は何も言えないわけですが、私の見解は先ほど言ったように違います。  いつごろそういった要求といいますか、答えが出てきて、いつごろ——たとえば来年度の予算に、この種のものが計上されるように支度をしますか。それとも、来年度は予算上そんなには急に話はまとまらないとお考えですか。いつごろのめどですか。
  61. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 これはできれば来年からでも発足をさせたい、早ければ早いほどよかろうと思っております。
  62. 原茂

    ○原(茂)委員 幅のある答弁ですから、いつということはわかりませんが、まあ来年からでもやりたいというのですから、熱意を込めて、ぜひ推進してもらいたいと私は思います。  これに関連して、いまあります四十七年から発足した例のジャパン・ファンド、国際交流基金について、いま運用の問題がちょっとありましたが、それにつれてお伺いしたいんですが、出資は現在全部でどのくらいになりましたか。恐らく三百三十五億円ぐらいになっていると思うのですが、金額を、年度別の金額と、それから現在のトータルをちょっと……。
  63. 田中常雄

    ○田中説明員 お答えいたします。  政府よりの国際交流基金に対する出資金の累計総額は、現在三百五十億円でございます。  年度別に申しますと、四十七年度において五十億円増資、四十八年度において百億円増資、四十九年度において百億円増資、五十年度において五十億円増資、五十一年度は増資がございませんで、五十二年度において五十億円増資と、そういう形になっております。
  64. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで、現在の国際交流基金について何も問題がないかと言うと、二、三問題がありました。その問題も、二ヵ国で、日本語教育に対する教師の派遣の問題を中心にしたり、あるいはまた今度は教師自身辞任をする問題が起きたり、いずれも現在では、これは解決済みにはなっていますが、裏を返しますと、やはり日本語の教育というものに対する各国の熱意があらわれて、こういう問題が二ヵ所で起きたんだというふうに解釈していいんだろうと思うのですね。現在解決はしましたが、いまお話のありましたように、三百五十億というものが四十七、四十八、四十九、五十、五十二の各年度の増資によってあるといいましても、結論を申し上げますと、いまのような運用の、すなわち基金制度によるこの種の交流基金の効果の発揮度合いというものを期待したときに、基金制度でやっていいかどうか非常に疑問があるんじゃないかと私は思うのですね。  従来のように基金制度でやって運用していくのには限界がある。人件費だって、どんどんふくれ上がっていきます。そういった事業費等も、事業費は出資でなければいけない、管理費は何で使わなければならないというような決めがあります。ということになると、ふくれ上がっていく人件費などを考えてみても、だんだん金利が国際的に下がっていくような状況になっているということを見ますと、三百五十億という基金に、いまはなっているようですが、なっても、先ほどから申し上げているような文化交流というものを本当にもっと高めていきたいという考えでいくと、事業量の方が多くなって、金の方は全然追いつかない。だから、基金制度に無理がある。したがって、補助金の併用とか何かを考えて、新たな装いで根本的に出直しをしないと、単なる基金制度で、毎年五十億だ何億だというものを足していっただけで、まだ運営していこうというのでは、それこそ、そこでがんじがらめになっていて、やりたいことは何にもできないという状態がもうすでにある。これからはますますそうなってくる。  いま、外相は、ASEANに対しては、どのくらい要るかを文部大臣同士で相談して、それを聞いてからやるのが順序だと言うが、この面にだって、それを当てはめたら、この基金制度そのものはもう誤りだ。現在では運用が不可能になることがわかっている。したがって、従来の基金制度の運用の仕方ではいけないので、新たに根本的に考え直して、出直していかないといけないのじゃないかと思いますが、この点どうですか。  先に交流基金の田中さんの方から、後は大臣からお答えいただきたい。
  65. 田中常雄

    ○田中説明員 お答えいたします。  四十七年度から、いわゆる基金制度ということで発足して、その運用益をもって事業に充てて現在までやってきているわけでございますけれども外務省といたしましても、今後とも出資金の増額ということを図り、その運用益の増額を図ろうというのが考え方でございます。  なお、御指摘がありました、いわゆる管理費関係でございますが、人件費その他については、これは運用益を使用しておりませんで、全然別個に、いわゆる補助金というものを財務当局から支給を受けまして、それによって運営しているのが現状でございます。でありますから、現在のところにおきましては、外務省といたしましては、今後とも出資金の増額ということで努力したいということでございます。
  66. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 国際交流基金を発足させますときの発想は、これは福田総理大臣外務大臣のときの発想でありますけれども、国と民間の寄付、半々でやろうという発想であったのでございます。ところが、民間からの出資金というのが、集めるのになかなか困難を来しておる。しかし、民間からも寄付金が集まって、いろいろな意味事業の協賛をいただいております。ただ、出資金ということになりますと、損金扱いにならないという問題がありまして、民間としては、なかなか出しにくいという問題があります。これにつきましては、私は何らか解決を図りたいと思っておりすす。  当初は五百億、五百億で千億というような構想があったわけでございますが、ほとんど国だけで三百五十億ということになっておるわけでございます。したがいまして、来年度どうするかという点は、私ども、国としてもやはり五百億までは何とかふやしたいと思います。なお、それだけで足りない分、毎年の運営につきましては、補助金も併用してまいりたい、このように考えております。
  67. 原茂

    ○原(茂)委員 現在まで、四十九年度に三十一名、それから五十年度四十六名、五十一年度四十七名、五十二年度は計画で五十名にとどまっているのですよ。それで、現在、いま田中さんがおっしゃったり、大臣がおっしゃるような三百五十億の基金を中心にして、よく見て八%ですよね。いま六%だが、最初は八%ぐらいに計算したに違いない。そして政府が五十億出資して、民間が恐らく六百五十万ぐらいしか最初出していないのでしょう。それで、いまの経済の状態からいったら、いま大臣のおっしゃったとおり、民間側はどんどんしぼまっていって出ないことは決まっている。ということになると、政府だけがどんどん出すと言ったって、五十二年度また五十億でしょう。来年度幾ら出すつもりなんですか。現在のように、いままでとにかく三十一名からよくいって五十名。毎年ですよ。まあ、これは事業の一面ですが、こんな程度のことで事足りるわけはないのです。こんなものは急速にもっとふやさなきゃいけないのですよ。  一千億にしてどのくらいになるかを計算してごらんなさいよ。一千億にしたって、六分で六十億じゃないですか。そのくらいの運用資金がなかったら、交流基金だなんといっていま日本が、大それたというか、当然やらなきゃいけないこの仕事をやろうというのに、まだいままでの枠があって、そしていままでやってきたその枠をふやすので、きゅうきゅうだ。五十億を五十五億にしろなんていう予算を要求するのに、きゅうきゅうとしている。大蔵省がなかなかうんと言わないということで、ついいまのような答弁になっているんじゃないかと私は思うのです。  実際に、この文化交流という仕事を真剣に考えて、冒頭から言っているような気持ちで思い切ってやりたいというなら、これはもう一遍発想の転換をして、基金に加うるに、補助金なり交付金というものを併用して、何か思い切った増額を図る。そして、先ほど、管理費は運用益でやっているんじゃないんだということでしたが、そのとおりです。それはわかっていますが、人件費はその管理費の中に入っていても、この事業費とは別だと言っても、事業費そのものを見たって、事業の主体というもののいままでの数を見ても、なかなか思ったようにはできていないと私は思うのです。  これができたときに、百ヵ所ぐらいから申し込みがあったはずです。ところが、これだけではその申し込みに応じ切れるわけがないのです。したがって、ついしぼまった、わずかな、非常にプアなものになっているということを考えると、先ほどから言っているマニラの声明じゃありませんが、総理が言っているようなことを考えたら、この際、文化交流というものの重点を考えて、必要性を考えたら、これにも手をつけて、思い切って発想の転換を行って、補助金、交付金の併用を行うというくらいのことにしないと、従来と同じ調子で、ただ出資の増額、増資の枠をふやします、増額いたします、毎年五十億だ、五十一億でございます。と、そんなことではいけないのではないか。  いま、マニラまで行って、あるいは東南アジア五ヵ国に行って、総理がああいうふうに言ってきたという、いわゆる精神的な、グローバルな文化交流に対する大転換を日本がやろうとするときに、こんな惨めなものをそのままに置いておいていいのかという点も、もう一遍検討する必要があるだろうと私は思う。  田中さん方は御自分がやっているから、大蔵省の手前余り変なことをどうも言えないという、何か遠慮があるのかもしれませんが、外務大臣総理が今度の機会を通じてああいった思い切った文化交流というものに対する考え方を世界に宣言した以上、口だけじゃなくて実行に移すためには、なおさらまずここら辺から手をつけなきゃいけないんじゃないかと私は思うのですよ。従来と同じような考えでは、こんなことでは何にもできませんよ。  外務大臣、どうですかね。これを思い切ってぐうっと拡大することをもう一度転換して考える必要があると私は思うのですが、どうでしょう。
  68. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 原委員の大変御熱意のある、文化交流を飛躍的に拡大するという点につきましては、私どもも、特に東南アジア各国に対する文化交流並びに先ほどお話のありましたASEAN内部の文化交流と合わせまして——これはASEAN地域だけに限らず、世界各国におきまして大変必要なことだと思います。来年度飛躍的に増大を図ることに努力をいたしたいと思います。  なお、この方式につきまして、基金の増額ということでは事業量の増大がなかなか端的に出ないではないかというお話がございましたが、私どももその御趣旨はまことによくわかるわけでございますが、一方、出資金の方も極力ふやしたいという熱心な要望もございまして、両方ともに努力をいたしたいという心境でおるわけでございます。
  69. 原茂

    ○原(茂)委員 鳩山さんは財務のベテランなんですからね。私の言っているような補助金、交付金の併用ということは、これは一つの案ですが、思い切って何か転換しないといけないんじゃないか。おわかりいただいたと思いますから、期待をしていますから、ひとつやっていただきたい。  それから、項目を変えて、日中問題について少しお伺いをいたします。  来月の二十九日、日中復交の五周年を迎えるわけですね。それで、現在の、ある意味で硬直したといいますか、覇権条項を中心にして、なかなかににっちもさっちもいかなくなっている状態の打開を中心にして、しかも、この間の日韓大陸棚の問題に対する中国のこれに対する意思表示があってみたり、あるいはいままた二百海里の問題が起きたりというようなことで、中国と日本外交というものは非常に焦眉の急に解決を要するものがたくさんありますし、基本的に日本外交の支点あるいは支柱と考えていいほどの日中問題の諸懸案の解決に対して、一つのチャンスとしては、来月の二十九日の、この日中五周年というものを契機にした何かを、やはりお考えになっているんじゃないかと私は思うのですが、たとえば、いきなりこれがあるからといって何かをやろうということは不可能でしょうが、このことで何かの接触を行い、その接触を中心にして日中の間における懸案の解決に対する足がかりを求めるような、ある意味では大胆な、ある意味ではこのときを期して、向こうもこっちもと思うような一つのいいチャンスとして、この九月二十九日を利用してと言ってはおかしいのですが、それを考えて、いまから準備をして何かをすべきだと思うのです。そんな考え、これを中心にして何かを懸案解決のために考えていきたいというようなことを、お考えになっているかどうかをひとつ簡潔にお聞きしたい。  それからまた、時を同じゅうして国連総会があります。国連総会には、もちろん外務大臣は御出席なさると思うのですね。このときに、また外相との接触も行われるだろうし、何も日中国交回復の五周年というばかりではなく、国連総会も同じような時期にある。それも一つの節になる。そういう節を通じて何らかの糸口といいますか、いままでにないような糸口をここで見出していくようにしないと、公然と接触のできる機会というものがまた当分なくなってくる。そうすると、あれを通じ、これを通じて、いろいろとつまらない試行錯誤を重ねるようなことがあります。  もうずいぶん長い間の懸案事項が煮詰まった形で壁に乗り上げているわけですから、いろいろなことは言いませんが、この機会に、国連総会、あるいはそれと同じような時期の日中五周年という機会を期して、相当の決意で、ある種の太い糸口をぴしっとつかんで打開の道を開くということにすべきだ、それが外交の一つのチャンスだと私は思うのですが、これに対して外務大臣のお考えはどうですか。
  70. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 九月の二十九日で五周年になるということは、まさにそのとおりでございます。五周年というのが一つの区切りではないかという点につきましても、私も一つの時期であろうと思いますが、日中関係につきまして、平和友好条約の締結等、なるべく早い機会に、この懸案を解決いたしたいという点につきましては、これは何回も申し上げているところでございまして、いまこの時期をどうするかという点は、まだここで申し上げる段階にないわけでございますが、平和友好条約の点につきましては、いろいろな議論が、もうすでに尽くされておるわけでございます。したがいまして、これにつきましては、これから両国間が本当にこれでよかったというような条件をもってなるべく早い機会に、ということを申し上げておるわけでございます。  その点につきましては、これはアジアの平和と発展のために最大の問題であるという認識のもとに努力をさせていただきたいと思います。
  71. 原茂

    ○原(茂)委員 ここでお伺いしますが、小川前中国大使辞任に当たって記者との懇談をやられましたが、その中で印象的なのは、いろいろなことを論じた末に、中国との平和友好条約というのは近い機会に締結できると確信していると言い切っているのですね。  この小川前大使の、中国との平和友好条約は近い機会に締結できると確信していますということに対して、同感ですか。何か疑義がありますか。外相、やはりそうお思いになりますか。
  72. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 これは二国間の条約の問題でございますから、私が確信を持っておるということを申し上げることが適当かどうか存じませんが、私は、もう近い機会にぜひともこれはなし遂げなければならないことであるというふうに考えております。
  73. 原茂

    ○原(茂)委員 なし遂げなければならないことだと確信をしていると言わんばかりの——むずかしい日本語がややこしくなりますが、とにかく、私はやはり外交にも一つのチャンスというものがあると思いますから、そのチャンスが来月の末に二つあるということをよくお考えの上で……いまおっしゃったように、小川前大使があれだけ苦労して、あそこに長くいて、そしてすっぱりと近く締結できると確信を持っていると同じように、外相もそうしなければいけないという決意を持っているようですから、ぜひひとつこれを早期にやるように、二つのチャンスを絶対にむだにしないというふうな展開をこれから期待をしていきたいと思います。  それから、朝鮮民主主義人民共和国との問題に今度はちょっと触れますが、二百海里の宣言なども行われたりしても、いまだに政府間で正式にはなかなか折衝が持てない。したがって今度は超党派の訪朝団が行く。久野団長以下いろいろ使命を帯びて行くことになるわけですが、政府間交渉らしいものがかつて一度最近行われたことがある。これは国連の海洋法会議のときに接触がちょっと行われている。たしか、それは六日に——現地時間の六日ですから、日本でいつになるか知りませんが、日本の代表としては水産庁の米澤邦男さん、それから外務省からは久米邦貞さん、この二人が北鮮の代表のゴン・ミンジュン氏と六日に接触を行ったのですね。二百海里の問題が当面の一番大きな問題だというので、この二百海里の問題に関しての二、三の質問をぶつけた。  ところが、いや、そういう細かい問題に関しては平壌放送で放送した範囲しかわかりませんと言われた。言われてそのままではいけないので、何とかしてその詳細を知りたいと思うので、操業許可の手続でございますとか、あるいは二百海里の線引きの基線というようなものに対して、すべてそれを知らないことには日本として困るので、ぜひそれを知りたい、こういう意思表示を強くしたら、近く返事をしようという約束だけはしてもらって別れたということになっているのですが、その事実はないとは言わないでしょうが、私の知っている範囲が、内容が違っているのかどうか。違っていたら指摘をしてもらいたいし、簡単に言って、近く返事をするという約束を取りつけたことになっていますが、その約束どおり返事が来ましたかどうか、来そうなんですか。その後そのルートを通じての返事を求めておいでになるのか、三つに分けてお答えいただきたい。
  74. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ニューヨークの海洋法会議の場におきまして、接触をとったことは事実でございます。恐らくいまお話しになりましたことは、そのとおりだとは思いますが、なおアジア局長の方から補足をさしていただきます。
  75. 中江要介

    ○中江説明員 ニューヨークにおける接触の模様は、いま先生がおっしゃいましたような、いきさつであったわけですが、そのときにはっきり、本国政府に照会して御返事いたしますと約束したかという点になりますと、はっきり約束したというふうには、私どもは受けとめるほどの話ではなかったように聞いておるわけで、平壌放送以上のことは知らないというものですから、日本としてはこういう点に関心があるので、ぜひそれは調べてもらいたいということを二度にわたって念を押した、それに対して向こうは、わかりました、照会して御返事しますとまでははっきりした返事ではなくて、わかりましたと言っただけだったようで、そこのところははっきり約束があって、返事がないのは約束違反だと言えるほどのものかというと、その点はちょっと問題だろうと思います。  いずれにいたしましても、北朝鮮の方では日本政府の持っている関心の度合いは理解したというふうに言えると思いますので、それに対して、どういう応答をどのレベルで、あるいはどの機会にこちらに送ってくるかということは、これは向こうの決める問題だろうと思うのですが、現在までのところは、御承知のようにNHKの緒方解説委員長が金日成主席から本件について、ある程度の話を聞いてきたということが公になっております。それ以上のことは残念ながら、いままでない、こういうことでございます。
  76. 原茂

    ○原(茂)委員 海洋法会議でたまたま接触した、初めての政府間といいますかの折衝なんですが、折衝というほどのものではない、確かにはっきりした約束ではない、こうお考えのようですが、それにしても話し合った人に、どうだろう、あの頼んだ件の返事は何とかもらえないものだろうかと言って押して、もう一度聞くことはできないものですか。そのまま何も言ってこないので、まあしょうがないや、とにかくあのとき考えてみると、はっきりと返事をすると約束したんじゃないんだから、こなければこないで、しょうがない、手をこまねいて待っている以外にないのだということになるのですか。もう一度押して何か聞けるものですか、聞けないものですか。外交のことは素人でわからないけれども
  77. 中江要介

    ○中江説明員 ニューヨークで海洋法会議会議が行われておりました期間中には、一度はどうなんだということは催促したことはございました。その後会期が終わりまして、先方の担当官も本国に帰ったようでございますので、あとは押し方は、なかなかむずかしいということでございます。  それから、これはニューヨークで接触したわが方の担当官の印象では、海洋法会議に来ていた代表は、本件についてはっきりした認識も、まだ余りなかったようだし、またそういうことについて、さらに本国政府との意見交換なり、訓令を仰いで何かをするというほどの権限が与えられているかどうかについては多少の疑問がある、こういう感触を述べておりましたので、私どもとしてはニューヨークで一応打診はいたしましたけれども、その結果は北朝鮮側がしかるべしと思うレベルなり、思う機関を通じて、わが方にもたらされることも十分考えられよう、こういうふうに思って、いつ、どこでも、そういう反応があれば受けられるようなつもりではおりますが、現在までそれがない、こういうことでございます。
  78. 原茂

    ○原(茂)委員 結論的に、現在の段階では北朝鮮に対しては今度行く超党派の使節団が唯一の頼りだ、特に二百海里等の問題を含めて唯一の頼りだ、少しウエートは薄いのですが、緒方解説委員のもたらした金日成と会見をした後の情報、これも唯一の参考資料だ、現在、これから北鮮と接触をするという意味では、今度の超党派の使節団が唯一の頼りなんだ、ほかに何もない、こういう状態になっていますか。
  79. 中江要介

    ○中江説明員 そのとおりでございます。
  80. 原茂

    ○原(茂)委員 今度の国連の総会ではどうなります。また接触が行い得る状態、行えることが予想されますか。代表が来ますよね。
  81. 中江要介

    ○中江説明員 御承知のように、北朝鮮はまだ国連の正式メンバーではなくて、韓国と並びましてオブザーバーの地位が認められている。したがってニューヨークには、朝鮮民主主義人民共和国のオブザーバー代表部といいますか、そういう機関はありますけれども、それ以上に、国連総会のときに、さらに北朝鮮からしかるべき人が来るかどうかといいますのは、これは国連総会で朝鮮問題が正式議題として上程されて実質論議が行われるようになりますと、あるいはその可能性があるかもしれないという程度でございまして、オブザーバーの機関では、この間の海洋法会議の経験から見ましても、少しかゆいところに手は届きかねるかなという感じでおります。
  82. 原茂

    ○原(茂)委員 いままでの例からいったって、北朝鮮のオブザーバーが海洋法会議の代表の一人と同じような状態の人が来るなどとは、私には考えられないのですよ。もちろん今度は朝鮮問題は非常に重要な課題にまたなります。したがって、相当国際的な北朝鮮の地位の向上というものに力を入れている金日成主席にしても、この国連総会に派遣するオブザーバーを、そう軽いと言っていいかどうかわかりませんが、物のわからないような人をよこすはずはない。したがって、この機会における接触も、今度の唯一の頼りだという訪朝団の、その後を受けた外務省としては、やはり真剣にその機会を生かし得るなら生かすという中期の構えも、ちゃんととっておきませんと、今度の民間外交によることだけで、大体いまわれわれが、ぜひこの懸案だけは糸口をつけたいと考えているものを全部糸口がつくとは思わない。  逆に言いますと、今度の訪朝団、超党派の使節団が行くときに、外務大臣もいろいろ久野さんあたりと接触をしているようですが、これは当然やるべきで、その団にも、いわゆる懸案の問題の内容によっては、正式に国連総会に派遣されるオブザーバーと言われる人の中に、この問題をとにかく、あそこの場で何とか交渉のできるようにしてもらいたいということも、その交渉の糸口を切らないように、国連総会に出席してくるオブザーバーの中に、懸案事項で、この問題がまだなかなか一朝にして解決できない、あるいは解決しないという場合には、そのところで政府間折衝の肩がわりした、代位した政府間折衝というようなものができるように何とか配慮しろというようなことも、今度の超党派の使節団に依頼をするようなことを、いまから考えていいんじゃないかと思うのですが、この点は外務大臣、いかがですか。そうすべきだと私は思うのですよ。
  83. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 北鮮の二百海里問題と関連しました問題につきまして、今回ピョンヤンに行かれます久野先生を団長とするミッションとの折衝と申しますか、お話し合いに私どもは大変大きな期待をかけております。現状におきまして、本当に先方が何を考えておられるかという点につきまして、私どもは全く材料を持ち合わせてないというのが正直なところでございまして、今回の使節団の御活躍に期待をいたしておるところでございます。その結果を私どもは期待をいたしておるところでございまして、その結果次第によりまして、またその後のことは考えたいと思っております。
  84. 原茂

    ○原(茂)委員 あの訪朝団は二十六日出発なんですよ。まだ日があるわけですよね。ですから、私は、外交というものをそんなに、唯一の頼りにしている訪朝団が行きました、その結果を聞いてから、さあどういう接触をもっていくか、パイプはどれにするかなんということを考えるよりは、使節団がせっかく行くんだから、行くときに使節団にもう一項託して、とにかく正式のものでなくてもいい、政府間折衝に代位する折衝というものが、国連総会にオブザーバーとして出席する人の中に、この二百海里問題中心の、訪朝団がこれから問題を論議をしてきますが、ディスカスをやって、なおかつ残った場合に、あるいはもう一度何か確かめたいという考えが、わが方日本にあった場合には、それがある程度、隠密じゃないんですが、公然とになりますが、しかし正式な政府間というんではなくて、それに代位した形で、民間が行ってよし、あるいは向こうも何らかの政府の高官というんでなくてもいいから、とにかくそこで、もしこの問題の引き続きがあるなら、ペンディングになっている問題があるなら、それを国連総会で、オブザーバーで派遣される中に一人来ていただいて、政府間交渉に代位するようなものとして、引き続きある種の交渉のできるように、ぜひ配慮をしてもらいたいということを、いわゆるいろいろ向こうと折衝しようとしている中に一項目加えてもらうということを、いま外相から正式にこの訪朝団に依頼をすべきだというふうに私は考えるのですが、もう一度答えてください。やるべきだと思いますよ。
  85. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この問題につきまして久野団長におかれましても、いろいろお考えのあることと思っております。したがいまして、今回のピョンヤンにおきます話し合い、これにつきまして私ども何らかの発展があるだろうと期待をいたしておりますので、そのお話を伺った上で、私どもとしては考えたいということを申し上げたのでございまして、したがいまして、いま私ども、どういう場所で、どのようなことをするかということにつきましては、いろいろな手段、方法があると思います。  これらにつきましては、これはむしろ技術的な問題であろうというふうに思いますので、これからのこの問題についての進め方というものが、やはり今回の超党派による使節団によりまして、大きな根本的なルートというものが何らかの進展があるだろうということを期待しておるものでございますので、そのようなことを申し上げたのでございまして、その結果を期待を持ってお待ちしておるというのが本当の率直なところでございます。
  86. 原茂

    ○原(茂)委員 私の言うのは、久野さんが打ち合わせに来るのじゃなくて、外務大臣の方から久野さんに、団の一つの条項に加えて、もしペンディングの問題があり、何か私どもがもう一度疑義をただしたいとか、話し合いをする場としては、近く国連総会があるなら、そこにおける話し合いができるようにという糸口を、この団によってつけてもらうようにということを、これは本当外務大臣が久野団長に頼む。いまそういうことが団の中に入っていないです。話題になっていないですね。  私からは、わが党の団員にそういうことをまたサゼストいたしますが、本来は、やはり外務大臣がそのことを一度団長に対して頼むというようなことが一番いいと思いますし、そうでなくとも日本外交は、いつも後手後手になる。何かの機会があるなら、その機会を、近くこういう機会があるのだから、もしまだまだお互いに、日本の側で質問をしたい、何をしたいというときの接触を、どんな形でもやらしてもらいたいという考え方を先に持っていて、転ばぬ先のつえですから、そのことを団の方は心得て話し合いをするようにすべきだというのが私の考えですが、いま大臣は、どんなことをしても何か成果があると期待をしておるから、いまのところは、そういうことは言えない、言うべきじゃないと思っておるのだという配慮のようですが、私どもの団員に、私は私なりにそういうことを言いますけれども、私はそのことが必要だというふうに、いまの日朝関係のぷつっと切れた状態で、政府間で何も話し合いができたい状態を、しかもこのままで二百海里の問題を、ソ連との問題を考えたって、一遍や二遍訪朝したからといって、なかなかうまくいくものじゃないと私は思うのです。  だから、ソ連との日ソ、ソ日漁業協定が行われても、いまだに、勝手気ままじゃないんでしょうが、拿捕しては四百万円だ、二百万円だと言って、帳面のつけ方が悪い、とじ方が悪いから四百万円よこせ、よこさなければ帰さないと言うから、仕方ない、四百万払うというような問題も、いまになって、これはいけないというので、水産庁が中心で、外務省も一緒になってナホトカで会議を持ったりいろいろして、ようやくに、では今度はこういうところに封印をしてこうします、こうして何とかやるというようなことをいまどんどん、協定ができたって本当に不測の事態が起きて、きのうもここで委員から質問をしても、残念ながら——水産庁の指導のもとに出漁している。そして自分は何も悪いことをしたんじゃない。つけていたものを、帳面をとじたところに封印をしてないというので四百万円、そんなもの、罰金払わなければ帰さないと言うから、罰金払いました。その四百万円に対して政府が何とかしてくれ、水産庁の指導によってやったんだから、間違ったことをしてないんだから。水産庁が初めからソ連との打ち合わせをして、帳面をとじたところに封印をして、封印のところに判こを押すというようなことを指導してくれれば、そのとおりやったものを、全然指導がないから、つまらないそんなことで四百万だ、何百万だという金を取られては釈放されている。その損害に対して、とにかく国で補償してくれないかというようなお話があっても、それはいまのところできませんと水産庁長官は、きのうも答えている。  そういうようなことが、あの困難な協定が結ばれても、なおかつ、その後に、われわれが常識では考えられない問題が起きているというような例をもうすでに、いやというほど見ているということになりますと、日朝間における二百海里の問題が、一回や二回の接触によって何か問題が、大筋が決まったとかわかったとか言ったって、まだまだとういう問題はどうだというものが、うんと細かい折衝を必要とすることは間違いないのです。そのことを配慮して、外交というものはチャンスがあるなら、そのチャンスを生かす。訪朝団が行くなら、問題があったらその問題の、いわゆるもう一度再質問なり何か、細かい点はどうだということを聞く機会というものを、いまは政府間にないのだから、国連総会にオブザーバーで来るなら、そのときにやってもらいたい、そのときに折衝できるようにしてもらいたいということを、いまの訪朝団が発言をし、いわゆる北鮮の了解を得て、北鮮もそうしましょうと言ってくれたら、これは非常に大きな成果なのですから、そのぐらいのことを外交もやはり先を見て配慮する必要があるだろうと思う。  外務大臣は大きな期待を持っているから、その必要はないような装いで、当分団の帰るのを待つという態度ですから、やむを得ませんから、私の方の団員には、その必要性をこれから話しておきます。  それから、次に北方領土の問題についてお伺いします。  北方領土というのは、残された戦後、沖縄が解決をした後まだ戦後が残っているとするなら北方領土だ、こう言われております。残された戦後である北方領土。いまだにこの領土問題に対する目鼻がついていないように、国民の側はいらいらしているわけです。政府は、ただ手をこまねいているわけじゃないはずでありますから、したがって、これに対する何らかの目鼻をつけ、何らかの目標を設定して、いつごろまでには北方領土問題というものを解決したい、するんだという予定があると思うのですが、外務大臣からその予定、北方領土問題解決のスケジュールについてお伺いしたい。
  87. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 戦後最大の懸案事項であります北方領土問題につきまして、政府として、これは一日も早く解決しなければならない、そういう責任を持っているわけでございますが、日ソ間に平和が回復いたしまして二十一年になると思います。これだけの長い期間かかって解決できなかった問題でありますから、それなりに容易でないということは当然であります。  この問題につきまして、どういうスケジュールをもって臨むかという点につきましても、これは問題がソ連という国を相手にする問題でありますから、スケジュールということを申し上げるわけにはいかないわけでありますけれども、私どもといたしては、戦後と申しますか、平和回復後二十一年になるということと、それから、これだけの海洋秩序の大変革のある時代だ、二百海里時代が到来したのだ、こういう観点に立って、この新しい二百海里時代を迎えるに当たって、漁業問題がこれだけ国民の皆様方の大変な心配を呼んだわけであります。  したがいまして、外務省といたしまして、この問題につきまして思いを新たにして取り組むべきである、このように考えて、私自身モスコーに参りたかったのでありますが、今月末は先方の都合がどうしてもつかない、こういうことで先に延びたわけでございます。国連の総会の機会に、何とかグロムイコ外相と最初の会談に入りたいと思っておりますが、精力的に臨むということしか申し上げることができません。
  88. 原茂

    ○原(茂)委員 おっしゃるとおりに、せっかく外相が訪ソしたいと言ったのに、遠回しにソ連から断られたわけですよね。その後、いつという時期を示してこない、したがって、やむなく先ほどから論じられている国連総会の場でグロムイコ外相に会う以外にない、こういうお考えになっているのだと思うのですが、私は、ソ連の場合は別なんですから、正式にせっかく国連総会の場では会えるのだから、この場で、いわゆる漁業暫定交渉後の、ある意味では初の非常に重要な懸案を含めた日ソの政治交渉をしたいということを、前もってソ連の場合は言っていいんじゃないかと思うのですが、そういうことを全然言わずに、ただ当然国連総会の場では会えるのだから、そこで会ったときに、いっちょう話してやろうというふうにこっちが考えただけでいって、ソ連という国柄を考えたときに、まともな話になるか。  いかにグロムイコ外相であっても、私はソ連の場合には思い切って、向こうが遠回しに断ってきたのですから、では一体国際連合の総会のときには、おまえさん来るだろうから、そこでひとつ話し合いをしたい、正式な会談をしたいという申し入れをすべきではないかと思うのですが、この点どうでしょう。してからやるべきだと思うのですが、どうですか。
  89. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 国連総会の場におきまして、その時間を利用しましてのグロムイコ外相との会見は、いま先方の打診中でございます。当方としては希望を申し入れております。
  90. 原茂

    ○原(茂)委員 では、すでに交渉は行っている。そういう会談をしようという打診をしている。それに対してはオーケーと言ってくるのが常識だと思うのですが、いかがですか。オーケーじゃない場合もあり得るのでしょうか。いかがですか、打診をした結果。
  91. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 国連総会中、両方の関係者が滞在期間というのが、ある程度限られておりますし、その間に各国とも、それぞれいろいろな国となるべく多くの方々に会いたいと、それぞれの国は考えますので、時間とかアポイント、スケジュールをとることに若干の日数がかかるということでございまして、何とか実現をいたしたいと思っておるのでございます。
  92. 原茂

    ○原(茂)委員 アポイントメントの問題もあるだろうと思いますが、私は実はこんなことをあえて言うのは、日本の対中、対ソ外交というものを見ていますと、両方ともへっぴり腰で、ソ連に対しては中国との関連をいつも気にする、中国に対してはソ連との関係をいつも気にする、そのためについ及び腰になる、卑屈なと国民が思うほどのへっぴり腰外交になるというふうに国民は思っていると思います。私も一そう思っている。  中国に対してソ連との関係を配慮すること、これも必要だと思います。同時に、ソ連に対して中国の問題を配慮することも必要だと思うのですが、私は両方とも必要である限り両方とも堂々とやる。しょせん、どこの国だってナショナルインタレストといいますか、自国の利益を度外視した外交はない。日本日本の利益というもの、国民の利益を中心にして外交の展開を堂々と行うという態度が、ぴしっと胸を張って出てこないと、どうもわれわれが見ていて、日本外交のいまの弱腰といいますか、特にソ連、中国に対する配慮をし過ぎるような、遠慮をし過ぎるような外交の仕方に対して非常な不満を私は持っている。  特にソ連なんかは傍若無人なことを平気でやるとすら、国民も、私も一部考えています。われわれの常識では考えられないようなことをやっているようにすら思えることを平気でやるというようなことを考えますと、国民的な感情からいっても、私は社会党ですから、ソ連だ、中国だというと、何か言うことに遠慮があってしかるべきように考えられるかもしれませんが、私は日本外交を考えたときには、日本国の利益、日本国民の利益が中心で対中、対ソの外交は展開すべきだという信念を持っております。  まして自民党政府であるいまの政府外交を見たときに、およそ私でさえそう思っているのに、弱腰といいますか、軟弱といいますか、へっぴり腰過ぎるような、ある意味では、よく言えば配慮をし過ぎるような外交の態度に対しては、非常に私は、疑念というよりは不満を持っている。その立場をいま表明しているわけなんでありまして、やはり日本の必要な外交的な事案に対しては、その手続上の問題であれ何であれ、堂々と行う、堂々と主張する。もちろんアメリカに対して、近ごろは言いたいことが大分言えるようになってきたようですが、まだまだアメリカに対しても本当に言うべきことを言ってないように私などには見えます。  しかし、ソ連、中国に対しては、何かもっと弱腰外交をやっているように見えてならない。それは原因は何かというと、ソ連に対しては中国を配慮し、中国に対してはソ連を配慮するというところに、いまの日本外交の大きな穴がある、欠陥があるんだというふうに私思うのです。この点外務大臣どうですか。そんなことはないと言うに決まっていると思いますが、配慮しているという事実は否定できないと思うのです。国民的な感情からいっても、たとえばソ連を考えてみたときに、ソ連に対して、非常に非常識な傲慢な振る舞いがあるというようにすら、細かいことが理解できませんから考えている。ずっと淵源、向こうをさかのぼってみると、北方領土の問題がいまだに未解決だというようなことを考えて、常に国民的ないわゆるソ連に対する正当な理解ができない、あるいはある意味では正当に理解しているから、非常な憤りを感ずるというような感じを持っていることは事実なんです。  日本外交の上で対中、対ソの外交の重要性はわかりますが、この両国との外交を考えるときの、いまの日本外交の立場は、どういうことに配慮をして、一体どういうことを一番中心に注意を払いながら、外交の展開をやっているのかを、そういう意味でひとつお答えをいただきたい。
  93. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日本の置かれている位置がアジアにおきまして中国とソ連と接しておるわけでありまして、お互いに引っ越しをすることのできない関係とよく言われております。したがいまして、日本といたしましては、中国に対しましても平和友好関係を増進する、ソ連に対しましても友好関係を増進しなければならない、こういう立場にあるために、いろいろな憶測を生むというのが現実であろうと思います。しかし、わが国といたしまして、世界平和を維持する上からも、両国ともに友好関係を結んでいかなければならない、こういう関係にあるということだけは事実でありますし、それをお互いに壊したくないという気持ちがあることは事実であります。  ただ、従来から日本外交につきまして議論をするという習慣が少ないわけです。これは、中国側にしましても、あるいはソ連政府にいたしましても、外交関係について相当発言をされる。それに対しまして、日本国民というのは従来そういう論戦といいますものは余りするような経験がない、そういう国民性もあろうかと思うのでありますけれども、私は、今後日本としての外交を進める上でも、日本として言うべきことは的確に主張をするということでなければならない、このように思っておりますし、これから特に二百海里時代に入った日本の国益を守る上からいいましても、言うべきことは的確に言っていくという姿勢がぜひとも必要だ、このように考えて努力をいたす決意でおります。
  94. 原茂

    ○原(茂)委員 私も意を尽くしませんが、私の意とするところは外務大臣もよくおわかりの上で、いまの答弁があったと思います。激励する意味で、ひとつゴーイングマイウエーで堂々と展開してもらいたいと思うのです。  小さい問題に入りますが、北方領土問題で現在問題になっているソ連の主張、日本の主張、これはもうずっと並べ尽くされて、言い尽くされて今日に至っていますから、そのことを全部あげつらおうとは思わないのですが、小さい例示をしたいのです。  たとえば日本の古文書などで、間違いなくこれは択捉、千島を含めて日本の領土だというような古文書がたくさんあるわけです。日本にたくさんあります。そういうようなものは、やがて何かの必要があるというので国として集めているんでしょうか。たとえば北方領土に対して古い地図があるんですね。これは完全に日本の領土だということが、素人が見ると主張できるような昔々の地図、日本の領土としてぴしっと書いて、測量をしてやったものがあるのですね。何かのときにやはり、日本が違った面での主張をするときに、ソ連はソ連の領土だと言って主張をし、日本日本の領土だとして主張をするときに、古い文書、古い地図——文書の中に地図も入りますが、本当にだれが見ても信憑性があると言われるもの、しかも年代の古いものがたくさんあったとしたら、私は国家的にきちっと集めておく必要があるのじゃないかと思うのですが、そういうことをやっているんでしょうか。外務省だけじゃない、どこがやるのか知りませんが、やっているのかやっていないのか。外務大臣きちっと、わからないと思うのですが、どなたかわかりますかね。
  95. 宮澤泰

    ○宮澤説明員 ただいま御指摘のような資料は、北方領土復帰期成同盟というような団体が中心になりまして、どこにどういう資料があるかということを承知しておりまして、ときに開催いたします北方領土展というようなときには、あるいは民間から借りまして、あるいは国会図書館のようなところから借りまして、それを展示して広く国民の啓発に努めておる。こういうことでございますので、ただいままでわかっております貴重な資料等は、北方領土復帰期成同盟その他の団体の方で承知をいたしております。
  96. 原茂

    ○原(茂)委員 その北方領土何とか期成同盟というのは、民間の団体ですか。
  97. 宮澤泰

    ○宮澤説明員 さようでございます。
  98. 原茂

    ○原(茂)委員 それはいつできて、本部はどこにあります。
  99. 宮澤泰

    ○宮澤説明員 発足いたしました年限は、私正確に覚えておりませんが、本部は札幌市でございます。発足後、もう十年近くになっております。
  100. 原茂

    ○原(茂)委員 発足後十年で、それじゃ相当所在を確かめているんだろうと思うのですが、長野県飯田市の伝馬町の産婦人科医をやっている後藤光正という先生が、所蔵している地図の虫干しで、嘉永年間に測量した地図を最近発見したのですが、そんなものがあるかないか。じゃ、そういうものは、発見されたら、直ちに届け出をしてもらった方がいいのですね。参考になるかならないかは別にして、その団体に届けてもらった方がいいのですね。
  101. 宮澤泰

    ○宮澤説明員 ただいま御指摘の地図につきましては、私たしか新聞で読んだように思いますが、団体の方ではそのような報道がございます都度、当然それを問い合わせて、自己の記録には残しておると考えております。
  102. 原茂

    ○原(茂)委員 あなたが見たということも不思議なんだが、七月十四日、先月の十四日に初めて発見されて、小さいと言うと悪いですが、本当に地方のローカル紙で「南信州」という新聞に初めて載ったのです。ですから、きっと地方にいて、ごらんになるような状態で、まだ知ってないと思いますが、そういうことがありますので、団体に注意してもらって、飯田市の伝馬町の後藤光正という人に、ひとつ保管をしておいてくださいというように、きっとするんだろうと思うのですが、そういう手続をさしておいていただきたい。貴重な図面だと私は思います。これやってもらえますか。
  103. 宮澤泰

    ○宮澤説明員 すぐにそのように取り計らいます。
  104. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで、最後にお伺いしたいのだけれども、そういう古文書類が保管されている状態にある、何らかの目的はあると思います。私は、日本の側もソ連に対して、おまえさんも固有の領土だと主張をしたり、いつから何の条約でどうだと、こう言ったりしている、そのある一部は、ずっと前からソ連の領土なんだということを言っている部分もあるんですね、相当あります、あるのですから、それじゃソ連の方も、ちょうど日本が集めているような古文書類、年代に信感性のあるような古文書類を全部集めてください、そしてお互いにそれを交換はできないけれども、見せ合おうじゃないか、民間団体が主催してやっているんだそうですか、私は民間団体がそれを提案してもいいし、ソ連の固有の領土と主張している部分に対して、日本の古文書をソ連にも見せるから、ソ連も自分で日本が主張しているような古文書等を集めて、主張の正しいことを裏づけるように見せてくれというようなことをソ連に提案してもらいたいと思うのです。  そういうことをやるべきだと思うのです。日本にもあるのですから、向こうにも古文書であるはずですよ。いま細かいことを申し上げませんが、たくさんの、千島、樺太、問題になっている四島はもちろんですが、全諸島に対して、ソ連が固有の領土だと言っているところは、どこだかおわかりになっている、われわれも知っている。ある部分の、ここの島は、これはヤルタ協定がどうの、日本のポツダム宣言を受諾したときにどうのということになっているのと、二つ分かれている。  いま条約に関係してのものは、やむを得ないと思うのですが、そうでなくて、ソ連が固有の領土だと主張している島などに対しては、日本と同じように、ひとつ古文書を見せてくれということを、私、堂々とソ連に主張してもらいたいと思う。そうしてお互いにそれを確認し合って、見せ合って、民間団体でもいいから、そのことをやろうじゃないかとソ連に提案してもらうということを、これは外務省としても、その団体を知っているのなら、それをやらしてもいいし、ソ連に対しては、そういう民間団体の意思があるので、ひとつソ連が固有の領土だと主張しているものに対する、ソ連内にある古文書を見せてもらいたいということを、堂々と外務省としてソ連に要求してもらいたいと思う。  外務大臣、どうですか。これが最後の質問。
  105. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 古文書類につきまして、わが国の固有の領土であるということのために有力な証拠となるような物件につきましては、これを有力な根拠として利用をさせていただきたいと思います。  先方との交渉の仕方につきまして、古文書類等につきまして、どのような先方と交渉をするかという点につきましては、これはいまここで、どうしたらいいのか、即刻ちょっと判断つきませんけれども日本として有利な方法があれば、いまお示しのようなことにつきましても検討をさせていただきたいと思います。
  106. 原茂

    ○原(茂)委員 私の言った真意は、おわかりになっているかどうかわかりませんが、日本にも古文書の収集ができているのですから、ソ連が固有の領土だと主張をする部分に関してのソ連国内にある昔からの古文書を集めてください、それを見せてくださいということを正式にソ連に要求をしてもらいたいということを私はお願いしておる。それにずばり答えてください。
  107. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま御説の先方の古文書を当方に示すように要求するという点につきまして、それを含めまして検討させていただきたいと申し上げたのでございます。
  108. 芳賀貢

    芳賀委員長 午後二時再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時二十五分休憩      ————◇—————     午後二時四分開議
  109. 芳賀貢

    芳賀委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。土井たか子君。
  110. 土井たか子

    ○土井委員 去る六月二十二日のアメリカの下院国際関係委員会国際機構小委員会、通称フレーザー委員会における公聴会で公にされました金炯旭氏の証言に対しまして、すでに七月の十三日に外務委員会の席で私は質問させていただいております。  その節、鳩山外務大臣の御答弁の中に、どうも、この金炯旭氏自身の発言の中には伝聞のところが多い、こういうふうな御認識でもって、その中で、金在権氏からいろいろ聞いておる、こういうことが述べられておりますので、この金在権氏について、いろいろ証拠のあるようなことが入手できるのではないか、このように考えて、金在権氏の所在あるいは接触の可否について、アメリカの国務省等に折衝しておるというのが現状だという御答弁でございます。  その後、これに対して、アメリカの国務省に対していろいろ折衝なすったはずでありますけれども、自後の経過の御報告を一向承っておりませんので、まずその点について、金在権氏に対しての折衝が具体的に外務省を通じてどのようになっているかをお尋ねしたいと思います。
  111. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま御質問のございました金在権氏に対します、アメリカ大使館におきます米国政府との折衝でございますが、それに対しまして、今般、アメリカの国務省から、わが方の大使館に通報があったわけでございます。  アメリカ政府といたしましては、金在権氏について日本の捜査当局が接触をする、任意の事情聴取というようなことにつきましては、アメリカ国務省としては、それは異存はないというような態度であったわけでありますが、それにつきましては、本人の同意が必要だというので、アメリカ政府の方で金在権氏本人に接触をした、その結果につきまして通報があったわけであります。  金在権氏本人の申しておりますことは、本人として日本側当局の事情聴取に応ずるべき理由はないと思うけれども、他方、聴取に応ずることに反対でもないということであったのであります。ただし、それにつきまして、現在金在権氏の家族が米国内で新しい生活を設定するように努力しておることでもあるので、マスコミ等の注目を避けるために、米国内での事情聴取には応じたくないということであるという通報があったわけであります。  それに対しまして、わが方といたしましては、金在権氏の意向にかんがみまして、しかし、はっきりしない点がありますので、米国政府当局に対しまして、金在権氏としては近い将来、米国外に出る予定があるのかどうか、及び金在権氏としては、場所の問題を含めて、どのような条件が満たされれば事情聴取に応ずる意向があるのか等につきまして、さらに金在権氏の意向の確認を進めてもらいたいということで、アメリカ政府の方にわが方大使館から申し入れをしておるというのが、いまの現状でございます。わが方といたしましては、早期にこの事情聴取の実現するように努力をしておるというところでございます。
  112. 土井たか子

    ○土井委員 ところで、外務省自身アメリカの国務省に対して、いろいろと御連絡をおとりになっていらっしゃるわけですが、金在権氏の御家族は、いまどこにお住まいかは、いずれといたしまして、金在権氏その人自身は、いまどこにおられるわけでありますか。
  113. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま現在におきまして、どこにおられるかということは、はっきりつかんであるわけではございません。しかし、アメリカ政府が接触をした段階では、アメリカ国内におられたものというふうに私どもは推定をいたしております。しかし、現実にいまどこにおられるかということ、一説にはソウルにおられるのではないかという説もあるわけでありますけれども、私どもはその真偽のほどは確証がないのでございます。
  114. 土井たか子

    ○土井委員 そのアメリカの国務省と金在権氏とのいろいろな連絡は一体いつごろの話でありますか。
  115. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先方から通報がありましたのが、八月の十七日のことでございます。
  116. 土井たか子

    ○土井委員 さて、忙しい中、時間を差し繰って御出席の園田官房長官に、時間の都合がございますから、ここでお尋ねをしたいと思うのですが、金在権氏から政府に対して私信がもたらされたということが新聞紙上報じられております。一体この金在権氏からの私信は、いつ届けられたのでございますか。
  117. 園田直

    ○園田国務大臣 金在権氏からの手紙は政府には届いておりませずに、新聞で、政府高官に届いているという話でございますから、多分私のことだろうと思うわけでありますが、私の手元に手紙が着きましたのは、七月の二日ごろだと思います。二日と十日の間、はっきり覚えておりませんが、その間でございます。
  118. 土井たか子

    ○土井委員 どこから、どういう形で、その私信は届けられたわけでございますか。
  119. 園田直

    ○園田国務大臣 届いた経路は、私信でもありますし、向こうで極秘にしてくれということでございますので、ここで申し上げるわけにはまいりませんけれども、公邸にじかに届いてまいりました。
  120. 土井たか子

    ○土井委員 それは郵便物として届けられたのですか、それとも第三者が使者として届けてきたのでございますか。
  121. 園田直

    ○園田国務大臣 第三者がお届けになりました。
  122. 土井たか子

    ○土井委員 その私信は米国から届けられているのですか、韓国から届けられているのですか、いずれでございますか。
  123. 園田直

    ○園田国務大臣 その手紙の中には、住所は全然書いてなくて、金在権という名前と署名があるだけでございまして、果たして米国から届いたものか、韓国から届いたものか、私にはわかりません。
  124. 土井たか子

    ○土井委員 その届けられた第三者というのの氏名を、もし差し支えなければ、ここで明らかにお示しをいただきたいと思うのですが、どなたですか。
  125. 園田直

    ○園田国務大臣 それは向こうとの約束でございますから、御勘弁を願いたいと思います。
  126. 土井たか子

    ○土井委員 ところが、官房長官は肝心のところになると約束だ約束だと言って、御勘弁をとおっしゃるので、えたいの知れないものになってしまうわけでありますが、大変おかしいことには、新聞紙上でそのよくわからない、あるのかないのかもよくわからない、この私信の内容が明らかにされているわけでございます。その明らかにされているところのさわりの部分について、いま報道によれば、金炯旭元KCIA部長が米議会で行った証言を事実無根であると、真っ向から否定しているというかっこうになっております。そのとおりでございますか。
  127. 園田直

    ○園田国務大臣 これは私信でございまするし、またその内容そのものも当面問題になっておりまする一つの事件に対する黒白性、信憑性等に影響のあるべき筋合いのものでもありませんから、私は公表した覚えはございません。  その内容は、質問される前に申し上げますと、大体あいさつの手紙に少しつけ加えた程度のもので、最初いろいろな事件で御迷惑をかけて相済まぬということ。それから、私——私というのは金在権氏でありますが、私に関する限り前部長の証言は事実無根であります。特に重点を置いてあるのは、日本で自分が在任中に前部長と会ったとか、あるいは一緒に寝ながら話したということは全くございません。この点は米国の委員会でも前部長は、それはそう言った覚えはない、これは通訳の間違いであるということを言われた程度で、そのほかは、ほとんどこの事件に対してこれを判断したり、または事実か事実ではないかという判断をするような程度はございません。したがって、私はこの内容はだれにも公表しないで、ただ総理にはよろしくと書いてありましたから、総理だけにはこの内容趣旨を言った程度でございまして、内容は公表した覚えはございません。  それからまた、その後この手紙が事実かどうか、こういう新聞記者からの御質問もあったわけでありますが、私は金在権氏の筆跡を知りませんから、事実かどうかわかりませんけれども内容からして、さほど重大な手紙ではありませんから、つくり手紙をするほどの内容ではないので多分事実だろう、こう思っているわけであります。
  128. 土井たか子

    ○土井委員 内容からして、さほどのことではないとおっしゃいますけれども、金在権氏が日本に在任中に金炯旭氏と会ったこともなければ、一緒にいろいろと語り合ったということもないという文面だという、その内容についての御説明をただいま承りました。  そういうことからいいますと、現に金炯旭氏証言というものが、非常にいま大きくいろんな点で日韓関係に対して影響を与えている時期でございます。したがいまして、この私信の持つ意味というものは非常に大きいと言わざるを得ません。だからこそ、いまどこから来たか、だれが持ってきたかということに対して御勘弁をと官房長官はおっしゃるんじゃございませんか。  そういうことからいたしますと、これはやはり筆跡の点においても、事実金在権氏自身の自筆であるかどうかというのは非常に大きな問題になってこようと私は思います。官房長官御自身が、金在権氏の筆跡を私自身持っていないとおっしゃいますけれども、金在権氏の筆跡について確かめようとしたら、幾らだって方法はございます。金在権氏がみずからお書きになったという文書は、日本にたくさんあるんじゃないでしょうか。信書を持っていらっしゃる方は、自民党の議員の中にもおありになりますよ。そういうことをまさか御存じない官房長官ではあるまいと私は思うのです。  ただ、この信書に対して——信書と言わないで私信ですね、私信に対して、これはやはりお確かめになる必要があると思うのです。いままでにお確かめになっていらっしゃらないということでございますなら、事実それは信ずるに足る金在権氏その方の私信であるかどうかということを、ひとつお確かめをなさる必要があると思いますが、どうですか。
  129. 園田直

    ○園田国務大臣 うかつでございまして、私は手紙の内容が本事件に影響を与えるほどのものではなくて、あいさつの程度だ、こう思っておりましたので、外務大臣にも外務省にも警察にもこれは見せておりません。ただ、外務大臣には、ちょっとこういう手紙が来たよということを言っただけでありまして、いまおっしゃるとおりでございますれば、その手紙持っておりますから、さらに詳細確かめることは今後いたそうと思います。  しかし、この内容でいまの前部長の米国における証言が事実であるとかないとか、そういうものにいささかの影響も与えない程度の手紙であるという私の判断に変わりはありません。また、その証拠にしたいとも一考えておりません。
  130. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、この金在権氏という方から来たということになっている私信によって、金炯旭氏の証言に対しての信憑性に対して、いささかも影響を官房長自身は受けてはならないというふうにお考えになっていらっしゃるわけでありますか。
  131. 園田直

    ○園田国務大臣 私は、この私信は自分の名前が出て迷惑をかけて申しわけないというところに重点があるのであって、その他のことは立場上言っているだけで、これを振りかざして、前部長の証言はうそだとか、あるいはこれは間違いだとか言うほどのものではない、その判断はいまでも変わりません。
  132. 土井たか子

    ○土井委員 特に官房長官に申し上げたいのは、もうすでに御承知おきいただいているかと存じますが、社会党の派遣で私は先日、八月の七日から訪米いたしました。そして、金炯旭氏自身にも会い、フレーザー委員長にも会い、関係の方々にも会って帰ってきたわけであります。そして、かの地においても、この金在権氏なる方の私信らしきものについて取りざたをされていたことも事実であります。そして、それに対していろいろ問いただしをしてみますと、これはこぞって日本政府とKCIAとの合作による工作なのだというふうに受けとめているのが大ぜいであります。したがって、そういう意味からいいましても、これは単なるあいさつ文だと言って済ますわけにはいかない中身でございますよ。一つは、そういうことを官房長官にはっきり申し上げたいと思います。  それからさらに、官房長官御出席をいただいておりますから、特にこの席でお尋ねをしたいのは、さかのぼりますが、六月二十四日に、金炯旭氏の証言についてフレーザー委員長が、あの証言が事実という前提で、日本の主権に対して韓国は侮辱を与えたという言葉を使ったということは、まことに遺憾である、したがって、フレーザー発言に対して抗議をしたいという意向を公にされております。官房長官は、この公にされた中身に従って、フレーザー委員長に対して抗議をなさいましたか、いかがでございますか。
  133. 園田直

    ○園田国務大臣 新聞記者の方からの当時の質問に対して、この事件が事実であるならばという前提のもとに、取り調べ中にこういうことを言われたことは、まことに遺憾であるということを私は言いました。これに対してフレーザー委員長は、決して日本に対して言ったのではなくて、韓国の問題の取り調べ中言ったことである、そういう趣旨のことを、私に直接ではなくて、フレーザー委員長新聞記者にそういうことを言われたようで、私もフレーザー委員長に抗議は申し入れせずに、新聞記者の方の質問にそう答えただけでございます。
  134. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、直接抗議はなさらなかったというかっこうでありますね。記者会見の席で新聞記者に対して、抗議をしたいという旨を申されたいというふうに理解をしてようございますね。
  135. 園田直

    ○園田国務大臣 新聞記者の方の質問に対しても、抗議するとは言っておりません。前提として言われることは、まことに遺憾である、残念だと言っただけでございます。
  136. 土井たか子

    ○土井委員 官房長官のお答えは、いわく微妙でございます。トカゲのようでありまして、しっぽを切っても切っても出てくるという調子の御答弁なのであります。しかし、先ほどの金在権氏からの私信という問題は、これは大変意味として大きゅうございますから、一体いつごろ、この私信に対して、事実その筆跡をお認めになって、果たしてそのとおり、金在権氏の手紙であると信じてよいかどうかということに対しての確認をされますか。
  137. 園田直

    ○園田国務大臣 私信ではございますが、そう疑われるとあれでございますから、これはわかることでございますから、早速、きょうあすにでも事実かどうか筆跡を確かめてみたいと存じますが、それが金在権氏の手紙である、真実であるということが証拠が出ましてみても、その内容は特別のものじゃありませんから、向こうの許しがなければ公表する所存はございません。
  138. 土井たか子

    ○土井委員 官房長官は、いままで公式の場所以外のところで、実は金在権氏からの私信というものは事実なかったのだというふうな御発言をなすったことはございませんか。
  139. 園田直

    ○園田国務大臣 きょう土井先生から呼ばれましたので、何事かと思いましたが、田さんの週刊誌に書かれた公開質問状を読んだ中に、私がそういうことを言ったということでありますが、なかったということはありません。内容は、これを聞いて、とかく言うべき筋合いは何もない、大したことはありませんよ、こう言ったことはありますが、手紙が来たことはないということはありません。
  140. 土井たか子

    ○土井委員 さて、その手紙の内容について、いま官房長官の方からの御答弁の中で、金在権氏が在官中に、そしてしかも在日中に炯旭氏といろいろと会ったということはないという意味のことが書いてあるというふうにお述べになったことに対して、ここに小林進議員も御出席でありますけれども、私たち社会党の派遣で訪米をして、炯旭氏自身に会った席で、いろいろと金炯旭氏から聞いたことによって、いま申し上げたいと思います。  その中には、金炯旭氏は一九七〇年の一月に、世界旅行に出発をされて、日本で一週間滞在をした後、アメリカ、南アフリカを回って、四月に再び日本のホテルオークラで一ヵ月滞在をして、北海道から四国まで、その間いろいろとあちらこちらを視察されているわけですが、その中で主な視察として、金在権氏の紹介で、自衛隊や日本の兵器工場を視察したということを申し述べられているわけであります。  さらに、七四年以降になりますと、七四年の二月と四月、実はこのこと自身、金大中氏拉致事件に対して、そのことの調査のために金炯旭氏自身が来日をしているわけでありますが、このときには金在権氏の自動車を使用して東京から横浜、神戸そうして四国というふうに調査を進めたという発言であります。さらに七四年の五月、ニュージャージー州の金炯旭氏の家を金在権氏自身が訪れているという事実であるとか、七四年の末に、当時丁一権氏がブラジルからの帰りに一週間ロサンゼルスに寄って、そこで滞在されている間、金在権氏御夫妻と自分の妻子とともども、ここで会っているというふうな発言も得ているわけであります。  それ以外に、金在権氏自身がニューヨークを幾たびか訪れているわけでありますが、そのときは金炯旭氏がホテルをいろいろお世話をして、そのホテルの名前はセンチュラルホテルであったりエクセスハウスであったりなどするということも述べられているわけであります。  そこで、一つどうしても聞きたいのは、この金炯旭氏と金在権氏との出会いといいますか関係といいますか、これにも実は関係のあることでありますが、ひとつ御出席の皆さんの中で、在日韓国人が日本から外国へ出る場合のパスポートは、どのようにしてつくられるか、発給されるかということをお答えくださいませんか。
  141. 中江要介

    ○中江説明員 主管は恐らく出国を管理しております入国管理局であるべきだと思うのですが、来ておりませんので、私の知っております知識によりますれば、御質問の在日韓国人でございますと、韓国人でありますので、韓国の政府から発給される旅券に、しかるべき査証をもらって出国していく、これが通常の手続であろう、こういうふうに思います。
  142. 土井たか子

    ○土井委員 在日韓国人が日本から外国へ出る場合は、わざわざ本国政府に対して発給を申請して、本国政府から出された。パスポートによって初めて外国に出ることができる、こういうことでございますか。
  143. 中江要介

    ○中江説明員 御承知のように、在日韓国人に大きく分けて二種類ありまして、韓国から韓国の旅券をもらって日本に来ている韓国人、これも在日韓国人でございますが、その在日韓国人がアメリカといわず外国に出ますときには、当然韓国政府の旅券で出国する、これは当然のことでございます。  もう一つの種類は、御承知の協定永住権を持っておりますような、戦前から日本におりまして韓国のパスポートをもらう必要がなくて、日本に合法的に滞在している、しかし国籍は戦争が終わりましてから韓国籍となった、こういう人たちは、改めて出ますときには渡航文書が必要でございますので、在日の韓国の在外公館から韓国の旅券をもらって、それによって海外旅行をする、こういうことを申し上げたわけでございます。
  144. 土井たか子

    ○土井委員 いまのいずれの例にも当てはまらないパスポートの発給があったという事実を御存じでございますか。
  145. 中江要介

    ○中江説明員 私がすべての例を知っているわけではございませんけれども、問題の金大中氏自身日本からアメリカに行きますときに、韓国政府からいただいておった旅券の効力が切れていたために、その旅券では渡航ができなくて、国際赤十字委員会の発給いたしますレッセ・パッセによって渡航したというふうに聞いておりますが、そういう例はあろうかと思います。
  146. 土井たか子

    ○土井委員 いま、さらに述べられた例にも当てはまらない例がさらにあるわけです。それが実は金炯旭氏と金在権氏との関係を物語る例として、ひとつ申し上げたいと思います。  実は、私は間違いのないように金炯旭氏自身の発言をテープにとってまいりまして、そのテープを再録したものを、そのまま申し上げましょう、間違いのないように。「ぼくのワイフのパスパートは日本で金在権がつくってくれた。あれをいままで利用した。その保証は長谷川仁がいままで保証してくれた。ワイフも一年前からやめている。日本の居留民団のパスポートをやめている。六ヵ月前に米国でテンポラリーのパスポートを受けているが、まだ一回も使っていない。」こういう表現のところがあるのです。いかがですか。
  147. 中江要介

    ○中江説明員 いま伺いました限りでは、金在権当時の駐日公使が旅券を発給したというふうになっておりますが、これは私どもの常識から見ますと、金在権公使が発給したのは、事実上発給したのでありましょうけれども、発給された旅券は韓国政府の旅券であったのではないか。つまり、個人が旅券を出すということは考えられませんので、またそういうもので出国を認めるということは考えられませんので、これは韓国政府の旅券を発給したもの、これは在外公館員が発給するのは通常でございますので、そのことを言っておられるのではないかと、いま伺った限りでは判断するわけでございます。
  148. 芳賀貢

    芳賀委員長 土井委員に申しますが、この際、園田官房長官が用務のために退席の申し入れがありますので、いいですか。
  149. 土井たか子

    ○土井委員 はい。  それはしかし、そういうかっこうには、これはなっていないのですよ、発言を正確に受けとめれば。第一、この金炯旭氏自身は米国に亡命している人です。韓国の本国政府がよろしい、出しましょうと言ってパスポートを出すはずがない。金炯旭氏自身が「ぼくのワイフのパスポートは日本で金在権がつくってくれた。」ということをわざわざ二度繰り返して言っているのです。そして、それをいままで利用してきた。そして、その保証は、長谷川仁さんと言えば前参議院議員なんですが、その長谷川仁さんが、いままで保証してくれたというふうに言っております。  これは意味として非常に大きいのではないですか。金在権氏と会ったことがないと金在権氏自身が言われるというのは、どうも金炯旭氏自身に会って——いろいろと、金在権氏に会ったのはこうだ、しかも因縁はそう浅くない、具体的には、身の安全についてまでも託する相手であったということも、ここに保証されているのではないですか、意味として。そうなってきますと、いままで金在権氏と会ったことがない、勝手に金在権氏について金炯旭氏は言い続けているのだということは、どうもこれに対しての反論が具体的に説得性を持たない限り、無理なように私は思うのですが、いかがにお考えですか。
  150. 中江要介

    ○中江説明員 金在権元公使と金炯旭氏中央情報部長との間の話があったかなかったかということを、日本政府にあるいは外務省に直接お尋ねになりましても、ちょっといかんともお答えのしようがないという感じがいたします。  それから旅券の発給は、これは韓国政府がどういう人に旅券を出すか出さないかということでありまして、日本政府とは直接関係がなくて、韓国政府がどういう意図で、どういう手続をそのときに適用したかということは、これは私どもの知る由のない問題だ、こういうふうに思います。
  151. 土井たか子

    ○土井委員 このことについては、さらに別の機会に具体的な追及をしようと思います。ただ、韓国政府からじきじきに韓国大使館を通じてパスポートが出されたはずはないというのは、客観情勢を見ても、だれでもわかるところでありまして、現に韓国から亡命していこうという人に対して韓国政府がよろしゅうございますと言ってパスポートを出すはずはないのですから、そういう点からすると、この金在権氏によって、ぼくのワイフのパスポートは日本でつくられたということを言っている意味というものは、ひとつ非常に大きいということを重ねて申し上げたいと思うのです。  さて、金炯旭氏からいろいろ聞かされた中に、一つは、もうすでに外務委員会の席でも二度重ねて、警察の、特に三井警備局長に対して質問を展開をしてまいっております。警察とKCIAとのいわゆる秘密協定と言われる問題であります。今回金綱旭氏に会ってじかに聞いたところ、金炯旭氏は自分が協定書にサインをしたのだから間違いない、自分が当事者である、自分がKCIA部長当時にやったことだ。だから、これは伝聞でも何でもないですよ。相手はだれかというと、相手は、これははっきり名指しで言ったわけであります。高橋警備局長だ。名指しで言ったわけであります。  この問題について三井警備局長にお尋ねしたいと思うのですが、先日外務委員会の席で、私、歴代警備局長の訪韓についての一覧表をいただきました。昭和四十一年ごろから以前は、警備局長は訪韓されていたかいなかったか、その点いかがですか。
  152. 三井脩

    ○三井説明員 訪韓しておりません。高橋局長が初めてでございます。
  153. 土井たか子

    ○土井委員 そこで話が符合するのです。私の手元にいただいた歴代警備局長の訪韓年月日と訪問先というこの一覧表によりますと、いま三井警備局長が御答弁されたとおり、四十一年十月の十日から十月の十五日まで、当時の警備局長、高橋幹夫氏は訪韓をされている。金炯旭氏の発言を申し上げますと、日本の警察とKCIAとの間で協力関係を持つ、そのために協定を結ぶ、これはこういう意味だ。聞いてみると、これは韓国のKCIAと日本の警察との関係から言うと、至極当然あるかもしれないという中身なんです。それは日本の協力を受けないと——北へのスパイは合法的に地下組織をつくって日本から韓国に入ってこないと活動ができない。韓国の大きいスパイというのは、日本を中継にして活動する。強力な組織を持っている。そのために日本の警察に協力を求めなければならない。で、日本の警察に協力を求めた。そこで、高橋警備局長との間で、これに対してお互いが協力をするという協定を取り交わしたんだ、こういうことなんであります。  しかもその次なんですが、これができた後に高橋警備局長を私が韓国に招待して、局長と会って食事をして、チョンガーという芸者ハウスで接待をした。彼は、というのは高橋局長のことなんですが、彼は、飲んだらよく黒田節を歌う、だからぼくははっきり記憶にある、こういうふうな話なんですよ。したがいまして、四十一年以前に警備局長が訪韓されたことがない。まさしく金炯旭氏自身は、局長を招待して、そして食事をして芸者ハウスに招待をしたという、あの招待が最初だというふうに言っているんです。四十一年の十月の十日から十月の十五日まで訪韓されている。これ以前に訪韓されている局長はない。ちょうどこのときですよ、問題の、お互いの間で協力をしようではないかということに対しての協定が取り交わされたというのは。この間の事情に対しては、三井警備局長は全く御存じありませんか。いかがなんですか。
  154. 三井脩

    ○三井説明員 前に報道によりますと、金炯旭氏はそういう協定を結んだのは一九六五年、こう言っておりましたが、いまのお話ですと、一九六六年の話になるわけであります。事実、高橋局長が訪韓をいたしましたのは昭和四十一年であります。訪韓し、招宴を設けられて、その宴会に出席した。その席で協定にサインしたとかというような報道もありますが、いまの土井委員の御質問との関係で考えますと、訪韓したその機会にサインをしたというのか、宴会の席でサインをしたというのか、その辺は必ずしも明らかでありませんけれども報道では宴会の席でサインしたと、こうなっておりました。  宴会の席は、高橋さん初め関係者等、いろいろ私たち調べましたけれども、そういう事実は全くございませんし、また宴会は宴会でありまして、その宴会は、高橋さんも報道等で言っておりますけれども、たまたま訪韓されておった馬場検事総長も同席でありまして、相手方は金炯旭氏以外に内務部長官、法務長官等おられて、仮にそういうことをやるとしても、サインをするにはふさわしくないだろうと常識的にも思われる席でありますし、またそういう席を離れましても、実際に協定を結び、かつ、サインをしたという事実は全くないということでございます。  私たちも、そういうことがあったということを前提とした、その後の動きといいますか、そういう仕事の仕方はやっておりませんので、そういうことは実質的にも形式的にもなかった、こういうふうに理解いたしております。
  155. 土井たか子

    ○土井委員 私は、先ほど来、宴席でとは一言も申し上げておりません。新聞情報によればとも一言も申し上げておりません。金炯旭氏自身の発言からすると、できた後に高橋警備局長を招待したということになっているわけであります。したがって、四十一年十月十日訪韓される前に、すでにお互い同士が協力に対して協定を結ばれているというかっこうでなければ、この金炯旭氏発言というのは生きてこない、こういうことなんですよ。いかがです。
  156. 三井脩

    ○三井説明員 高橋局長訪韓以前にも以後にも、そういう協定はございません。
  157. 土井たか子

    ○土井委員 ございませんと言ってしまえば、それまでの話です。恐らく金炯旭氏も、質問をすれば、三井警備局長はございませんという答えをするであろうという話でありました。しかし、これは当時、KCIA部長当人であった金炯旭氏がみずから言っている事柄でありますから、そういうことはございませんと言って一遍の答弁で済んでしまうというわけにはいきません。当事者は、向こうが名指しで言っているのは高橋警備局長であります。  やがてこの事柄に対しては、当時の高橋警備局長自身に対しての出席を求めるという委員会の持ち方を、社会党として要求していくということに当然なりますけれども、警察当局とされては、やはりこの問題は日本の警察とKCIAとの関係について具体的に指摘をしている金炯旭氏発言でもありますので、ひとつ事実について確かめられる必要が私はあると思う。いままでどおりに、そういう事実はございませんというふうに答弁をしさえすれば、それで済むというふうにお考えになったら、これは私は間違いだと思います。説得性はございません。ひとつ、そういうことについて、しっかりこの事実に対して、もう一度確かめるということ、はっきりしていただきたいと思うのですが、どうです。
  158. 三井脩

    ○三井説明員 先ほども申し上げたつもりでございますけれども、名前が挙げられておる高橋さん自身はもちろんでありますけれども、当時の関係者等につきましても、手を尽くして調査をいたしましたけれども、そういうような協定を結んだという事実はない、こういうことでございます。
  159. 土井たか子

    ○土井委員 協定の事実というものが、はっきり協定書という文書であったかなかったかということを、いまここでお尋ねをしても、水かけ論に恐らくなるだろうと思います。しかしながら、そういう協定書という形式的なものがあるなしにかかわらず、KCIAとの間で協力行動というものをとられた例は、ただの一度もないというふうに言われますか、いかがですか。
  160. 三井脩

    ○三井説明員 この前にも、あるいはお答えしたかとも思うわけでありますけれども、私たち隣国の警察同士でありますので、治安機関として協力すべきものは協力をいたすというのが基本の立場でございます。ところが、現実にわが警察が担当しておる仕事は、韓国の治安機構あるいは組織というものに直しますと、その大部分を韓国の治安本部——昔は内務部治安局、いまは内務部治安本部が担当いたしておるわけでありまして、一部分、特定の法律につきましてはKCIA、中央情報部で担当しておるわけであります。  したがって、私たちの日常的な協力関係というものは、治安本部との協力で進んでおります。したがいまして、韓国に訪問をする場合に、治安本部に訪問をするといますか、行く場合が大部分でございまして、同じ治安機関の一部でありますので、中央情報部にも表敬をする、こういう関係でございまして、訪問するときは、そういうことであります。それから、訪問しない日常的な協力関係というのは、ICPOその他を通じて、いろいろな協力関係はございますが、KCIA、中央情報部の関係について申しますと、ただいま申しましたような表敬的関係ということでございます。
  161. 土井たか子

    ○土井委員 治安局同士ではそういうふうに連携がある、協力方がある、お互いの連絡があるという趣旨の御発言でありますが、そうすると公安調査庁とこのKCIAとの間で、やはりお互いの協力を具体化していくための協定があったということも金炯旭氏は言われるわけでありますが、公安調査庁どうなんですか。
  162. 谷藤助

    ○谷説明員 お答えいたします。  ただいまの御質問ですけれども、当庁とそれからKCIAとの関係で、やはり秘密協定が云々ということが新聞紙上に出ておりますけれども、私の方では、そのような協定というようなことをやった事実はございません。
  163. 土井たか子

    ○土井委員 協定という形式的なものはこちらに置きましょう。いまの三井警備局長の御答弁の中にもありましたとおりで、治安という点からすると、お互いが協力し合うということは当然だというふうな意味の御発言であります。そうすると、公安調査庁とされても、この連絡方がなければ、日本国内における公安調査活動というのは具体的に展開し得ないと私は思うのですが、いかがですか。
  164. 谷藤助

    ○谷説明員 ただいまの御質問でございますけれども、現在当庁が調査対象団体としておりますのは、いわば朝鮮総連といいますか、そして国内の規制に関する調査ということでやっておりますので、特に外国調査機関その他と協力をしなければ、あるいは情報交換をしなければ、役所の任務が達成できないというようなことはございません。
  165. 土井たか子

    ○土井委員 重ねて警察にお尋ねをしたいと思うのですが、金炯旭氏自身は具体的に、かの金大中氏事件についていろいろと知っている証拠がある。具体的に、KCIAによってなされた犯行であるということを裏づけることを、警察としては手に持っているというふうな発言がありまして、そしてこういう話であります。日本の警察は金炯旭氏の証言の後、フレーザー委員長によって公にされた、かの金大中氏拉致事件の犯行者リストの中にある尹振元海兵大佐、これは実行グループの責任者であり、KCIA工作第一団長なわけですが、この尹振元氏の写真がないだけで、ほかの五人の写真は全部それに対して調べ済みであるという発言があるわけであります。この点いかがですか。
  166. 三井脩

    ○三井説明員 私たちは、拉致事件、直接の拉致行為に参加した犯人は、おおむね六人、こういうふうに考えておりまして、そのうちの一人、金東雲は御存じのようにはっきりしておるということでありまして、あとの五人については不明、こういうことでありますので、そういう観点からは、写真云々ということは、そういう問題は出てこたい、こういうことになるわけであります。  ただいま言われた金炯旭氏が挙げておる十一人の犯人リストというものについて、写真がどの程度にあるかということについては、いま直ちにちょっとわかりませんけれども、尹振元大佐というような人は、もともと日本に全くおったことがない人だと私たちは考えますので、この人の写真がないことは明瞭でありますけれども日本におったからといって、常に全部写真が捜査当局にそろっておるかと言われますと、その辺は、いまちょっと定かでないわけでございますけれども、いずれにいたしましても、金炯旭氏のいまの発言の趣旨は、日本の警察は捜査上犯人六人を全部割り出しておるはずである、したがって写真も持っているはずだ、こういう意味でありますれば、はっきり言えるのは金炯旭だけで、あとの五人については、この人が犯人ではなかろうか、こういうような容疑人物も捜査上は浮かんでおらない、こういうことでございまして、いろいろ犯行リストの名前というのは、幾つかそういうものは情報として私たちいろいろな機会にいただいておりますけれども、捜査とそれが結びついて、ただいま挙げた六人の犯人というもののどれかに当たるのではないかというところまで、今日の捜査の段階におきましては至っておらないということでございます。
  167. 土井たか子

    ○土井委員 ちょっと三井局長、注意を申し上げますが……。
  168. 三井脩

    ○三井説明員 犯人は金東雲でございますので、言い間違えました。金東雲が犯人でございますので、どうも……。
  169. 土井たか子

    ○土井委員 ところで、犯人は金東雲でございますのでということを、いま三井局長は金炯旭氏の名前をさらに訂正されたわけでございますが、金東雲氏について、例の政治決着を初めてする一九七三年の十一月二日、韓国側から例の金鍾泌首相が来日されまして、金東雲自身がこの犯行を犯したのかどうかということは、つまびらかではないけれども、しかし金東雲以外に犯行者が五名ある、これを捜して調査をしようということを申し述べられておる事実があるということも、金炯旭氏は言われるわけであります。いま三井局長が六名だと言われる中には、まず一九七三年の十一月二日に、金鍾泌首相が来日された折に出されている以外に、さらに五名あるというその五名と金東雲氏をプラスして六名と言われるわけでございますか。
  170. 三井脩

    ○三井説明員 金鍾泌首相来日時の話というのは、私たちちょっとよくわかりませんけれども、私が申し上げておる六人といいますのは、あの犯行現場で、あのホテルの部屋から出たところを拉致をしエレベーターに乗せ、車に乗せて連れ出した、ここまでの拉致行為、この関係で金東雲を含む六人が犯行に加わった、六人組の犯行、こういうふうに考えておるわけでありまして、この六人組を支援する他の支援組織というのは、このグランドホテルから出るその行為についてあったのかどうか、そこはちょっとわかりかねますけれども、その後船に乗せたり、いろいろありますから、犯人全体の数はもっと多いわけでありますけれども、ただ、いま捜査上はっきり言えるのは、ホテルの部屋から拉致をしホテルを出るまで、その間の捜査上今日まで明らかになった犯行について、これに加担した者が約六人、こういうことでございます。
  171. 土井たか子

    ○土井委員 その約六人については、それぞれ調査なり事情に対してのいろいろな確かめというのは、今日まで継続して行われているわけでありますね。どうなんですか。
  172. 三井脩

    ○三井説明員 六人のうち、一名が明らかになり、他の五人が何者であるかということについては、いろいろな方法で捜査を継続しておるわけでありますが、だれであるというところを申し上げるまでに至っておらないというのが大変残念なわけでございますけれども、ただ御存じのように、拉致に使われた車が、ほぼこれではなかろうかというところは、だんだん固まってきておる。こういう段階であるという意味では、この六人プラスアルファ、そしてまた六人のうちの六マイナス金東雲一の五名の人相その他人物の特定、あるいはもっと詳細に確定していくということについて努力は続けられておるということでございます。
  173. 土井たか子

    ○土井委員 努力は続けておられるということらしいのですが、さてもう先刻、指紋もはっきりと出てまいっております。そして、これが犯人であると警察も明確に指摘をされております金東雲氏は、現在どこにおられるのですか。
  174. 三井脩

    ○三井説明員 わが国から韓国に帰り、その後免職されたということは承知しておりますけれども、うわさとして、どこどこにおるのではないかというような話は伺いますが、捜査の観点から、どこにいるという心証といいますか、確認と申しますか、そういうものは得ておりません。ただ報道によれば、金炯旭氏が金東雲にアメリカ——多分ロサンゼルスであろうが、そこで会ったことがあるというようなことが伝えられておりますけれども、その真偽のほど等については、私たちもまだ確信を持つに至っておらないわけでございます。
  175. 土井たか子

    ○土井委員 それは全部うわさの段階である、これは捜査の対象としては、具体的にそれに対して、どうこう言うことはできないなどということの御答弁でありますが、金炯旭氏自身は、金東雲氏が家族をカナダに送ったということをはっきり言われておるわけであります。そうなりますと、これは一応金東雲氏については警察は明確に犯人だということを割り出していられるわけでありますから、犯人である以上は、金東雲氏については、さらに逮捕していろいろと事情を確かめるという必要がおありになるだろうと私は思う。すでにいまも御答弁のとおりで、もう金東雲氏自身は公務員としての資質を欠いたので免職にしたという韓国側のこの処置であります。外交官でも何でもない。  そうすると、カナダに在住をされているとするならば、その事情を確められて、カナダ政府にその旨を伝達して係官をカナダに派遣して、金東雲氏に対して逮捕することもできるはずだと私は考えるわけですが、このことに対して、どのようにお考えになりますか。
  176. 三井脩

    ○三井説明員 金東雲のその後の所在等について私たちは関心を持っておりますけれども、いまおっしゃるような、的確にどこどこというようなところまで、つかむところに至っておらないのが現状でありますけれども、カナダに家族がおる以上、本人もおるかということになるわけでありますが、家族がおると言われるカナダを手がかりにして本人の所在を追及するという努力は私たちもしたいと思います。  ただ、それではカナダに対して逮捕の要請ができるか、あるいは係官を派遣して逮捕して連れてこられるかということになりますと、これは結論から申しますと、現行法制上困難である、こういうことになるわけであります。これはICPOの関係とか条約の関係とかいろいろございますから、それはできないわけでございますけれども情報収集を依頼する、わかったことを教えてもらいたい、こういうことの依頼は可能でございます。そういう角度からの努力は、今後も続けたいと考えます。
  177. 土井たか子

    ○土井委員 やる気さえあれば、それは逮捕は無理かと思いますが、そう言われる以前に、それなりの努力をやっていただかないと、続行して調査やいろいろな事情に対して聴取を続けておりますということには私はならないと思うのです。少なくとも警察がはっきり割り出している人に対しての対処の仕方というものに対しては、なまぬるい。一体本気でやる気があるのかないのかということに対しても、まことにこれは心もとない話であります。したがいまして、このことに対しては、はっきりやってもらわなければ困ると思います。  それと同時に、もう時間が参りましたから申し上げたいと思いますが、きょうの三井警備局長の御答弁によると、金大中氏拉致事件については明らかに単独犯じゃないんですね。個人の行った犯行じゃないのです。組織的な犯行、集団的犯行ですよ。そしてその組織的犯行の中に、警察が具体的に割り出しておられる金東雲氏について言うならば、金炯旭氏は、金東雲というのは私の信用していた部下だということを言われます。高橋幹夫元警察庁長官は非常に正直な人だ。金東雲氏がKCIAだということを認めておられる、そのとおりだ。私が信用していた部下である、このようにはっきり述べられるわけであります。  そうすると、これは個人的な犯行であるかもしれないとか、KCIAの犯行と断定するわけにはいかないとか、四の五のいろいろと御答弁を続けてこられましたけれども、この一点を見た限りでも、KCIAの組織化された集団での犯行である、このことをはっきり言えるのではないか、このように思います。いかがですか。
  178. 三井脩

    ○三井説明員 ただいま申し上げましたように、端的に言えば拉致行為自身は約六人の犯行、こうなるわけでございます。その後の行動も含めますと、かなり組織だった犯行であるということは、御説のとおりだと私たちは考えます。ただ、だからといって、直ちにそれがKCIAの犯行ということを証拠に基づいて言えるかということについては、なお問題があるというように考えておる次第でございます。
  179. 土井たか子

    ○土井委員 これで質問を終わりますが、最後に外務大臣に、先日、八月十五日に、韓国ではまた政治犯の部分的な釈放がございました。金大中氏、金芝河氏、特に日本においては、日本から拉致された金大中氏の原状回復という問題が、何としても日韓間に対して正常なあり方を、われわれがっくり上げていく決め手になると私たちは考えています。  そういう点からいうと、韓国に対して今後どういう見通しで、今後続々政治犯に対しての釈放というのも、アメリカとのいろいろな話し合いの中で進められていくに違いないわけでありますが、肝心のわが日本外務省としては、どのような対応の仕方をお考えになっていらっしゃるかお伺いをして、私、質問を終わりたいと思います。
  180. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 韓国におきまして最近政治犯の釈放が行われていること、これは好ましい方向であるというふうに考えておりますが、金大中氏につきましては、まだ行われておらないことは御承知のとおりでございます。この釈放に当たりまして、先方ではいろいろなルールをつくってやっておる、そのルールに乗らないからであろと思うわけでありますけれども、私どもといたしまして、金大中氏事件が解決すること、これが日韓間にわだかまっておる問題の解決には何より大事なことであるというふうに認識いたしております。しかし、わが方が韓国政府に対しまして、どのようなアクションをとるかということにつきましては、警察当局の方の捜査の問題と絡めて、わが外交当局として行動しなければならない、このように考えております。そして内政干渉と言われるような点につきましては、細心の注意が要るというふうにも考えているところであります。
  181. 土井たか子

    ○土井委員 これで終わります。ありがとうございました。
  182. 芳賀貢

    芳賀委員長 春田重昭君。
  183. 春田重昭

    ○春田委員 鳩山外相は、今月の初めより福田首相に同行されまして、東南アジア諸国連合、いわゆるASEAN諸国の五ヵ国とビルマの訪問の旅に立たれたわけでございまして、去る十八日帰国されたわけでございますけれども、暑いさなか大変御苦労さまでございました。  そこで、まずお尋ねしたいわけでございますが、今回の訪問の目的と、外相自身がつかまれた感触を簡単で結構でございますから、最初にお伺いしたいと思います。
  184. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今回の福田総理の、クアラルンプールにおきますASEAN五ヵ国の首脳会議、この終了後に招待を受けられまして、ASEANの五ヵ国首脳との会合に出られましたこと、それから、その後の六ヵ国の訪問、これにつきまして、これは福田内閣といたしまして、わが国外交上、東南アジア地域、これが、やはりアジア全体の平和と発展のために、また、ひいて世界平和のためにも大変大事な問題であるという認識のもとに実行されたわけでございまして、外務当局といたしまして、総理大臣みずからが、このような五ヵ国の会合に出席をされますこと自体が、大変歴史的にも画期的なことでありますし、また、わが国外交を推し進める上でも、大変有益なことであるということで、総理の御発意によって行われたわけでございます。  その効果はいかがかという点につきまして、これはいろいろな御批判のあるところもございますけれども、やはり日本が、これから積極的にアジア外交と申しますか、東南アジアを中心とした地域の平和達成のために努力をするという姿勢を打ち出しました点に、やはり最大の意義があるものというふうに考えております。     〔委員長退席、原(茂)委員長代理着席〕  さらに、これからの日本として、このアジア地域に対します外交を、どのようにしてフォローアップと申しますか、これから進展をさせていくか。まず今回の総理の御訪問は、これからの日本外交姿勢を開く第一歩であったというふうに考えておりまして、私ども、また広く東南アジア方面に関係のある者、国民と申しますか、全般の、これからの努力を必要とするものというふうに考えておるところでございます。
  185. 春田重昭

    ○春田委員 今回のASEAN諸国に対する経済協力というものは、随行の政府関係者をして、異例にして最大であると非常に驚かせているわけでございますけれども、今後、政府がとる海外協力の基本的な態度、方向ですか、この辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  186. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今回の経済協力面におきまして日本がとりました態度というものは、これは円借款供与は、従来から各国に行っておりますところを若干、増大したという程度でございますが、やはり特徴的なものは、いわゆるASEANプロジェクトと言われておりますもの、一方国おおむね二億ドルといたしまして十億ドルの事業規模を持つところのASEANプロジェクトというものにつきまして、日本がフィージブルである、実現可能性等の調査を終わりまして、これが実現可能であるものであれば、これにつきまして積極的に支援をするという表明をいたした点にあろうかと思います。  これにつきましては、非常に金額が大きいではないかと言われることもありますが、しかし、いま毎年度の日本経済協力規模というものは、円借款で、ことし約束しましたものが千六百億円であります。また無償援助並びに技術協力、これが二百億円弱でありますから、千七百八十億円くらいの規模になっておるわけであります。これに対しまして日本は、五年以内に政府開発援助の額を倍増しようということをCIECの会議で表明をいたして世界に公約をいたしたわけでございます。そのような日本のこれからの南北問題に対します方針、これに沿って考えました場合に、この程度のことは当然、賄い切れる大きさのものでありますので、この計画につきまして日本政府として積極的な姿勢を打ち出した、こういう次第でございます。
  187. 春田重昭

    ○春田委員 そこでASEANの五ヵ国と、それからビルマに対しまして、具体的に、その金額と内容各国別にお示し願いたいと思います。
  188. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 お答え申し上げます。  マレーシアに対しまして有償資金協力、いわゆる円借款でございますけれども、第四次円借款として二百十億円を供与いたします。まず円借款のみを、ずっと申し上げますと、ビルマに対しまして二百八十五億四千万円、それからインドネシアに対しまして四百九十億円、タイに対しまして二百七十五億円、フィリピンに対しまして二百七十五億円でございます。  このほかに、インドネシアに対しまして食糧借款を六十五億円、供与いたすわけでございます。  無償資金協力は、大変細かくなりますが、全体合計で八十四億八千四百五十万円、それから技術協力が全部で九十九億九千万円というような金額になっております。  もし、さらに詳しい金額でありましたら、政府委員から御説明申し上げさせます。
  189. 春田重昭

    ○春田委員 一般的に新聞報道されております四千億円の経済援助というものは、これを細かく分けた場合、円借款と無償協力と、それから工業プロジェクトに対する援助というもので分けられると思うのですが、その三点に分けた場合、どういう形で金額はあらわせますか。
  190. 三宅和助

    ○三宅説明員 お答えいたします。  四千億円という数字の中には、実は十億ドル分が入って計算されていると思いますが、十億ドル分につきましては、いかなる形態の援助になるかということが、まだフィージビリティ調査その他が確認されておりません。したがいまして十億ドルというのは、今後五年間の投資金融それから延べ払い等も、その中に入った数字でございます。これが、いかなる形態の援助になるかは、フィージビリティが、まだ一ヵ国しかできておりませんし、それも日本によって確認されてない。したがいまして、できましてから、これを確認し、それに対して、いかなる形態の援助がいいかということで決められます。したがいまして、十億ドルはどういう形の援助になるか、いまのところ、わからない。  そうしますと、その十億ドルを引きますと、ただいま大臣が申し上げましたように、有償資金協力が——ビルマの場合は、もうすでに前にやった分でございますが、総理が行ったときの分だけを合計しますと全部で千六百億円でございます。それから無償資金が約九十億円でございます。それから技術協力が約百億円、九十九・九億円ということになります。
  191. 春田重昭

    ○春田委員 まあ大体政府援助は合計千八百億円くらいという形になってまいります。さらに工業化のプロジェクトに対する十億ドルでございますが、これは民間の援助もあると聞いておりますけれども、大まかに民間ベースと政府援助と分けた場合、この十億ドルというのは大体どれくらいの比率になってくるのですか。
  192. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 いわゆるASEANプロジェクトと言われております十億ドル、これはどのような形の経済協力になるかという点も、まだ全く決まっておりません。また先方は、なるべく条件のいいと申しますか、金利といたしましても、なるべく低い金利を希望するのは当然であります。そのような希望が出ておりますけれども、私どもといたしまして、この資金の条件をどうしたらいいかという点につきましては、まだ決めておらないのでございます。  と申しますのは、今度のASEANプロジェクトというものは、一つの近代的な工業設備になるであろうというふうに考えております。工業設備である以上は、やはりこれは今後、国際競争の一つの企業になるわけでありますから、やはりリーズナブルな条件であるべきであるというふうに私どもは考えておりますので、一般には考えられないような大変有利な条件で、した場合には、かえって問題が起きるのではないか。  そういう点で私どもといたしましては従来、経済協力基金が相当な低利の資金を供給しておりますが、私どもは今回のようなプロジェクトでありますと、輸銀のベースの融資というものも相当比率を占めてもいいのではなかろうかというふうに考えているわけであります。しかし、これはまだ先方と話を詰めなければいけませんので、はっきりしたことは、いま申し上げられないのでございます。
  193. 春田重昭

    ○春田委員 民間ベースの場合は非常に金利が高いということを聞いております。したがって、相手国としては政府援助の金利の低い、そういう援助が非常に欲しいということを言っているそうでございます。  いずれにしても、大臣御存じのとおり、政府援助というものはOECDのDAC委員会ですか、あの中でも、参加国十七ヵ国の政府援助のみを考えた場合に、日本の場合は十三番目という、金額の面からすれば非常に低い水準になっているわけですね。そういう点で新聞にも、よく載っておりますけれども、GNPでは世界第二位といいながら、非常にがめつい日本である、そのような印象が強いということで、今後、日本としても、先ほど大臣から御説明があったように、五年間で二倍にしていくという話がありました。そういう点で力を入れていくということを言われております。  いわゆるGNPの一%を先進国が開発途上国に経済援助をしていく、こういうことで目標というものが決められているそうでございますけれども、五十年度には〇・五九%、五十一年度で〇・七二%という数字に上がってきております。したがって、先ほどの一%目標というのは五年目に、それに向かっていく、こういう考え方なのかどうか、この点、明らかにしていただきたいと思うのです。
  194. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 経済援助の場合に、政府開発援助と民間の経済協力とあるわけでございますが、私ども比べるべきものは、やはり政府開発援助であろうと思います。民間の投資を入れました場合には、日本は、かつて非常に海外投資が伸びました時代がございまして、これはオイルショックの直前までは、日本が外貨事情も非常によかったものですから、非常に海外投資が伸びまして、そのときは一%をはるかに上回ったわけで、民間ベースを込めた数字では一・四四%というところまでいったことがあります。その後オイルショックがありまして、急激に民間の投資がダウンをいたしましたので、政府援助の比率が非常に高まりました。  今後日本といたしましては、民間のことは、これは民間の投資意欲にかかわることでありますので、政府開発援助を確実に伸ばしてまいりたい。政府開発援助を五年間に少なくとも倍にはしたい、倍以上にしたい、こういう計画を立てて臨むということを天下に明らかにしておるところでございます。
  195. 春田重昭

    ○春田委員 その五年間で倍ということがGNPの目標一%に値するわけですか。
  196. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 GNPの一%というのは民間も含めたところの目標値でございまして、ODA、政府開発援助といたしましては、いまDACで言われております数字は〇・七というのが目標値でございます。  御承知のように、昨年暦年の実績をとりますと、日本は〇・二というきわめて低い水準であるわけでありまして、これを着実に伸ばしたい。しかし、〇・七というのは、まことに容易ならぬ数字でございまして、日本とかアメリカ——アメリカは、なお日本よりGNPが非常に大きい国であります。したがいまして、私どもは〇・七がいつ達成できるかという点につきましては、ちょっと自信がございません。  率直に申し上げまして、これは不可能に近い、現状では数字ではないかと考えております。いま先進国の平均がおおむね〇・三六というような水準にございます。日本としては、なるべく他の先進国の平均のところまでは何とか、こぎつけたいというのが、当面の目標としているところでございます。
  197. 春田重昭

    ○春田委員 さらに、いま問題になりました五大工業プロジェクトの問題でございますけれども政府も民間も合わせて十億ドルの経済援助をしていくということで報道されているわけでございます。このプロジェクトの問題でございますが、現在いわゆる各国の青写真といいますか、計画といいますか、それは非常にあいまいだと聞いております。インドネシアでは尿素のプラントが、ある程度めどがついて、はっきりしている、こういうことを私たちは聞いておるわけでございますが、他の四ヵ国は非常に不明確であると聞いておるわけでございます。この辺の問題は、大臣、行かれまして、まだ、はっきりしてないということで先ほど答弁がありましたけれども、青写真なり計画なりは明確なものがあるわけですか。
  198. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 このASEANプロジェクトと言われておりますのは、 いわばASEANの、はっきりした仕事という意味で、一つの最初の共同同事業というような感じを持っておるわけでございます。各国一つずつの事業計画しておると…うのが現在のところ出ております。しかし、この各国がいま計画として出しております案が、必ずしも最善であるかどうか、これも検討をしなければならないかもしれないのでございます。また、この事業が出ない場合に、第二次的には七つの事業というような計画も掲げられております。  しかし、どれがいいかということも含めて今後、検討すべきであろう。ただ御指摘のように、インドネシアにおきます尿素肥料計画はインドネシア自身としての一応のフィージビリティースタディーも終わっておるという段階でございまして、この計画は比較的早く進むのではあるまいか。他国の尿素肥料につきましては、またマレーシアも計画をいたしております。そういう総体としてのフィージビリティースタディーが必要になってまいるわけでありまして、今後の検討課題であるということでございます。
  199. 春田重昭

    ○春田委員 外務省から資料として「プロジェクトの概要」というものをいただいておるわけでございますが、これは最終的に、まだ確定はしてないわけですか。
  200. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 まだ最終的な確定とまでは至っておらないと思います。
  201. 春田重昭

    ○春田委員 私たちの聞いている範囲内では、たとえばフィリピンの過燐酸の肥料工場というものが一応、計画では、されておりますけれども、これは十分な調査がされてない。したがって、原料の過燐酸をどこから持ってくるかも、はっきり決まってないというのですね。果たして、そういう点で工場が建つかどうか心配だという点で、そういう計画がたな上げになるかもしれないという問題も出ているわけです。フィリピンとしては、肥料がだめなら他があるさという、そんな調子で、何とか援助さえ引き出せば、それでいいという見方もある、このように聞いております。  また、タイのプロジェクトでは、 ソーダ灰となっておりますけれども、当初においてはシンガポールが決めているディーゼルエンジン工場のプロジェクトの融資を先取りしていこうという考え方もある、このように聞いております。なぜならば、長年希望の石油化学工場の新設をシンガポールと住友化学ですか、これが相提携して契約をした。この腹いせに当初シンガポールで決めたディーゼルエンジンのプロジェクトを先取りして、タイの方でやっていこう、こういう考え方もあると聞いておりますし、この五大工業プロジェクトという問題は先行き非常に不安がある、不安定な要素がある、このように私は思うわけでございます。  新聞紙上では、総理等、非常に華々しく大盤振る舞い的な、そういう援助をなさっておりますけれども、果たして、この工業プロジェクトが物になるかどうか非常に心配な面がある、このように私たちは考えているわけでございます。物と金さえ与えればいいというものではないと思いますし、そういう点は大臣も十分お考えだと思いますけれども、このプロジェクトの個々を探っていった場合、そういう問題があちこち出てきておるということを聞いているわけですね。そういう点で大臣どうですか。この十億ドルの経済援助というものが果たして実を結ぶかどうか、非常に危険じゃないか、こう私は思うわけでございますけれども大臣の感触はどうですか。
  202. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 御指摘のように、このプロジェクトは相当大型のプロジェクトでございます。したがいまして、これは、ただ資金さえ出せばいいという問題ではなくして、その与える経済的な効果、果たして、その企業自身がうまくいくのか、これは下手をすれば、また経済混乱の原因にもなりかねないわけであります。したがいまして、その計画されます企業が、果たしてフィージブルであるかどうか、特にマーケットの問題、需給が果たしてASEAN地域の需要を満たしていけるものであるかどうか、またオーバープロダクションというような問題にならないで済むものかどうか、こういった需要先というような点も十分検討した上で取りかからなければ、協力をしたことが、かえって援助先の国の経済混乱の原因にもなりかねないわけでありますから、そういった点を含めまして、フィージブルであるかどうか、これから十分な検討をした上でということを明白に共同声明に書いてあるわけでございます。
  203. 春田重昭

    ○春田委員 確かに共同声明を読んでみますと、「日本は、ASEAN各国における一つのASEAN産業プロジェクトに対し、各プロジェクトがASEANプロジェクトとして確立され」た後「種々の形での資金援助を行うことに同意した。」こういう形で書いてあります。一応、十億ドルということで経済援助をすることになっておりますけれども、これは大体、条件といいますか、いつごろまでに、はっきりめどを出しましょう、いろいろそういうものがあると思うのです。この文章だけでは抽象的で、わからないわけですけれども、その辺はどういう条件を出されているのですか。
  204. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 このASEANプロジェクトというものは、先ほど申し上げましたように、ASEAN五ヵ国の団結と申しますか、域内で、それぞれの国が、それぞれお互いに競争する面もありますけれども、共同した利益としてプロジェクトをつくろうという点に、この意義があるだろう、そういう観点と申しますか、そういう構想につきまして日本は、これを支援いたしたいという表明をいたした、そこに今回の政府の意図もあるわけでございまして、この事業がうまくいくことが何より大前提でございます。したがいまして、五ヵ国が共同したプロジェクトをつくるという点を、日本は、あくまで支援しよう、こういうことでございます。  新しい、そういった構想につきまして、一国だけではなく、五ヵ国共同して、そういった計画を立てる。したがいまして、いま五ヵ国内で一応の検討された案が出ておるわけでありますけれども、なお問題点が多々あるように私どもも聞いております。したがいまして、ASEAN五ヵ国側においても今後、検討を続けるだろうと思いますし、私どもも、そのフィージビリティーの点につきましては、できる限りの協力をして、いい計画、実現可能なものの計画実施したい、このように考えております。
  205. 春田重昭

    ○春田委員 大臣、そういう抽象的なあれではなくして、大体のめど、時期ですね。これは大臣として大体いつごろだと読んでいるのですか。
  206. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先ほど申し上げましたように、インドネシアの計画は、中でも一番進んでおるようでありまして、このインドネシアに対しましての支出時期は比較的早く来るのではないか。しかし、その他の計画につきましては相当時間がかかるのではないか。全体としまして、やはり総体ができますのには、五年以上の年月がかかるであろうというふうな、これは、それぞれ確かめたわけではございませんけれども、そのような心づもりをしておるのでございます。
  207. 春田重昭

    ○春田委員 国によっては、ずいぶん長い期間かかる場合もあるということで大臣も想定されているみたいでございますけれども、この十億ドルという大枠はASEAN五ヵ国に対しての、いわゆる政府援助である。民間ベースも一緒でございますけれども、経済援助なんですね。そこで各国に、これを均等に割ったら二億ドルずつということで解釈していいのかどうか。さらに貸し付けの条件でございますけれども、どれくらいの金利で貸して、どれくらいの据え置きで、どれくらいの年賦で返還、こういう細かい詰めというものは行われているのですか。
  208. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 その点は、まだ詰まっておらないところでございます。
  209. 春田重昭

    ○春田委員 政府の円借款というものがございますね。金利三%くらいで非常に安い形で貸し出されると聞いておりますけれども、これと大体同等の金利、また貸し付けの年数も政府の円借款でいけば二十五年ないし三十年で返還、こういう形になっていると聞いておりますけれども、大体それと歩調を合わせるような形の貸付条件になるかどうか、その辺はどうですか。
  210. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先方は金利等につきましても、条件をなるべくよくしてもらいたいという希望は言っておるわけでありますが、具体的にどうするというのは、まだ決まっておらないというのが現状でございます。
  211. 春田重昭

    ○春田委員 決まっていないということでございますけれども政府の円借款よりも高くなるかどうかという問題でございますが、その辺はどうですか。
  212. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 まだ全く決まっておらないのでございます。
  213. 春田重昭

    ○春田委員 さらに、民間の援助でございますけれども、これは日本の財界としては、特に東南アジア等においては相当厳しい反発を買っておりますので、果たして、それだけ反発を買って東南アジア、ASEAN諸国に対して金や技術を投げ出すかどうかというので、心配の面もあると思うのですね。こういう点で何か企業等がASEAN諸国に対しては協力いたしましょうという、そういう兆しがあるのか、何か約束がとられたのかどうか、その辺はどうですか。
  214. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 すべて、まだこれからフィージビリティースタディーをやろうというものでございまして、まだ民間のどこの企業に、どういう協力が必要であるかというような点も全く具体化をいたしておりません。
  215. 春田重昭

    ○春田委員 それでは、かつて石油ショックの際、政府が中近東諸国に対して経済援助の約束をされて三木さんや中曾根さん、また小坂さん等が行かれて、いろいろ実績をつくられたと聞いておりますけれども、その実績というものは、どういう形で今日まで、きているか、御説明願いたいと思うのです。
  216. 三宅和助

    ○三宅説明員 お答えいたします。  中近東諸国に対しまして、四十八年から四十九年にかけまして、三木、小坂両特使それから、その後、中曾根通産大臣が回ったわけでございます。その際、八ヵ国に対しまして合計七千百億円、民借、円借両方合わせまして七千百億円、そのうち円借款が二千四百億円に上る借款の供与を約束したわけでございます。エジプトは六百八十億円、シリア、混合借款でございますが二百七十億円、ヨルダン三十億円、アルジェリア百二十億円、モロッコ三十億円、スーダン三十億円、イラン十億ドル、イラク十億ドルというようなことでございます。  それに対しまして、若干のケースにつきましてはプロジェクトの選定その他に、まだ先方政府との間で話がついておりませんので、交換公文の締結には至っておりませんが、現在までに、すでに六ヵ国、エジプト、ヨルダン、アルジェリア、モロッコ、スーダン、イラク、十一件、計千二百九十五億六百万円ができております。これは円借款の交換公文が締結されております。それに加えまして、民間信用といたしまして千九十一億四千万円が、これに伴ってできております。また、両特使がお約束になったイラク及びサウジアラビアとの経済技術協力協定の締結につきましても、これは締結されております。もちろん、まだ相当分が残っております。したがいまして、政府といたしましても、今後とも関係諸国との協議を続けながら約束の実施に鋭意努力してまいりたい、こう考えております。
  217. 春田重昭

    ○春田委員 このように中近東においても、まだ約束されたことが履行されていないところがあるわけでございまして、そういう面では、この五大工業プロジェクトにつきましては、先ほどから何回も言っているように、不安定な要素がたくさんあるわけですね。そういう面で海外援助というものは、一たん約束したものについては必ず実行する、履行する、これが一つの合い言葉らしいのでございますけれども、どうか、そういうことが絶対にないように、このプロジェクトにつきましては十分なる関心を政府側では抱いていただきたい、このように御忠告いたしておきます。  さらに四億ドルに上る輸出所得補償制度という新しい制度やASEAN基金の問題等が総理から出ているみたいでございますけれども、これはどういう形で決着したのか、大臣の方から御説明願いたいと思うのです。
  218. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま御指摘になりました輸出所得補償制度についてでございますが、これはASEAN五ヵ国の輸出所得につきまして、これが一定割合以上に減った場合に、その減った額の一定割合等について何か補償するような、そういった制度をつくってもらいたいという話がございました。これは南北問題の一つの問題として、世界全体の発展途上国から、そういった要求があるわけでございまして、その分との関係がありますので、世界全体として、どういう方向に進むかということも十分見きわめて対処すべきことであろうというふうに考えております。今回、その点につきましては日本としては、これは今後の検討課題にするということでございます。  それから二番目の基金といたしまして、輸出所得補償につきましても、そのための基金というような要求もございました。また文化交流につきましては、先方からの要求というものはなかったわけでございますが、日本といたしまして国際交流基金というものをつくって、日本が諸外国との文化交流をやっておる。ASEAN地域におきましても、その地域内の文化交流として、そのような基金をつくったらどうだろうか、そのために日本としては資金的な協力をしたらどうか、こういう発想があったわけでありますけれども、文化に対します先方の構想というものが、まだ出てきておりませんので、先方として何かいいような案ができれば、それについて日本としては協力を惜しまない、このようなことを総理が発言をされておるというのが事実でございます。
  219. 春田重昭

    ○春田委員 さらに、マニラにおける宣言、声明というものがございますけれども「インドシナ諸国との間には相互理解に基づく関係の醸成をはかり、もって東南アジア全域にわたる平和と繁栄の構築に寄与する。」このようにうたってあるわけでありますけれども、インドシナ三国に対しての経済援助は、どのようにお考えになっておりますか。
  220. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 インドシナ三国のうちでも現在、話を進めておりますのはベトナムだけでございまして、ベトナムとの間には、日本は従来から南北ベトナムに対しまして経済協力を行ってきたところであります。歴史的には、南ベトナムに対しまして経済協力をし、また北ベトナムに対しましては一昨年と昨年、合計しまして百三十五億の無償資金協力を行ったところでございます。  今後の問題につきましては、南ベトナムとの日本が過去に行いました債権債務の関係がございます。これにつきまして、どのような解決を図るかということが、まだ懸案事項になっておりまして、この懸案事項の解決と関連しまして、今後の経済協力の方針を定めたい、こういうことで、まだ具体化はいたしておらないのでございます。
  221. 春田重昭

    ○春田委員 その債権債務の問題でございますけれども、インドシナ三国に対する内戦終結時の政府借款の金額ですね、それと民間投資額はどのくらいあったのか、それがわかれば御説明願いたいと思うのです。
  222. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国の南ベトナムに行いました債権につきまして、元本で申しますと、百五十五億円というのが、政府が行いました借款の元本額でございます。それに金利が加わりまして百六十七億円というのが、いま現在の金額になっております。  民間につきましては政府委員からお答えいたします。
  223. 三宅和助

    ○三宅説明員 民間につきましては正確のところ、わからないのでございますが、約四百万ドルぐらいであると聞いております。すなわち五十一年の三月現在で、直接投資が三百九十万ドル、商業信用につきましては、これは全部回収済みとなっております。したがいまして正確には三千九百万ドル強というぐあいに聞いております。
  224. 春田重昭

    ○春田委員 ラオスとカンボジアはないのですか。
  225. 三宅和助

    ○三宅説明員 お答えいたします。  ラオスにつきましては、政府借款の方がナム・グムの二期工事分の四億三千七百万円、それからカンボジアの政府借款でございますが十二億五千八百万円。それから民間借款につきましては、ラオスは全額回収済みでございます。カンボジアにつきましては、これまた二十三万四千ドルございましたが、これまた全部回収済みでございます。したがいまして民間につきまして、ラオス、カンボジアとも現在のところペンディングなものはございません。
  226. 春田重昭

    ○春田委員 そこで、報道等によりますと、大臣は、未回収の金額は無償援助という名目で棒引きしたい、こういう方針であると聞いておりますけれども、たとえばベトナム政権におきましては、旧政権、かいらい政権に与えられた政府援助であって、いまさら、それを棒引きしたいと言っても通らない、それは新政権に敵対するために使用されたものである、こういう形で向こうのベトナム政府は言っているわけでございますけれども、このことにつきまして大臣はどのようにお考えになっていますか。
  227. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この問題は、いま折衝中でございますので、ここで日本政府としてはこう考えておると、そこまで申し上げるのは適当でないのでございますが、しかし、私ども日本政府が南べトナム政府に対して行いました援助、経済協力でありますが、無償の協力もいたしましたし、有償協力もいたしております。無償協力として大きなものは、あそこに病院を建てたりしておるわけでありますし、その病院は現在でも残っております。また電力関係の設備をプロジェクトとして供与をいたしまして、その設備等も残っております。一部破壊をされたもの等もございます。そういうような状況でありまして、日本は戦争協力という観点から援助をしたわけではない、南ベトナムの住民の福祉の向上に役立つものにつきまして援助をしてきたということ、そういった日本の援助の性格につきまして十分、先方によく説明をして理解を求めておるところでございます。  そのような性格の援助でありますから、国が合併をした場合に、被合併地域の債権債務というものは、当然引き継がれるべきであるというのが私どもの主張であります。  ただ現実問題といたしまして、北ベトナムが統一後の政府として考えましたときに、南の地域の分につきまして、その債務を将来、返済をしていくというのは、現在、経済困難に陥っておりますベトナム政府といたしましては、なかなか、これは重荷になるであろうということもございます。したがいまして、わが方といたしましても、先方ともよく話し合いを詰めまして、そして、わが方の主張、住民の福祉に役立っておるものにつきまして承継を求めるという点を貫きたい、そして、そのために先方が経済困難に陥っておるので、返済可能になるような案にしなければ実現性が少ないだろうという漠然とした考え方を持っておるのであります。  したがいまして、ある程度の無償資金協力ということも必要になるのであろうということを申したことがあります。しかし、これはまだ政府として決まった方針でも何でもございませんで、目下交渉を詰めておる最中であるというふうに御理解を賜りたいのでございます。
  228. 春田重昭

    ○春田委員 それは向こう側と大臣の見解は違うんじゃないですか。政府としては、非常に返還が大変だから無償援助という形でやりましょうということで大臣は発言されたと思いますけれども、向こうとしては全然そういう援助なんかしてもらっていないんだ、それは、いわゆるかいらい政権に対する援助であって、いまの新政権は全然関係ないんだ、こういうとり方なんでしょう。したがって無償援助、そういう実績なんて言ってもらいたくない、これが向こうの考え方じゃないですか。だから、こちらが無償援助でやりましょうと言っても、向こうは、そういうものは全然関係ないんだという形で、とっているんじゃないですか。そういう点で、新聞等では、はっきりと新政権に継承することは認められないという形で報道されておりますけれども、その点どうですか。
  229. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 これは、いま折衝中でございます。わが方には、わが方の主張がありますし、先方には先方の主張があります。しかし、その両者の主張の妥協点というものを、いま見つける最中にあるわけでございますから、それは当初は双方の言い分は相当かけ離れておりましたけれども、目下、両方で成案を見つけるように努力をしておるので、したがいまして、まとまるまでは、ちょっと、どのようなことというふうに確言はいたしかねるわけでございます。しかし私どもといたしまして、こういう問題はやはり、なるべく早く解決をいたしたいという考え方で努力をいたしておるのでございます。
  230. 春田重昭

    ○春田委員 交渉中ということであっては、いたし方ありません。私は、じっと見ていきたいと思うのですけれども、棒引きの問題は、民間のそういう投資につきましても棒引きする、こういう考え方ですか。政府援助のみを棒引きする、民間の場合考えない、どちらですか。
  231. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 政府といたしましては、政府関係の問題の始末をつけなければならないのでございます。民間の場合は民間としての、これはどのような処理になりますか、ものによっては保険の対象になりましたり、いろいろなことがあろうかと思うのでございますけれども政府としては政府の債権債務の整理に当たっておるということでございます。
  232. 春田重昭

    ○春田委員 これらの問題は今後のことにも関連いたしますので、私は大臣に警告をしておきたいと思うのです。  わが党の見解は、ベトナム内戦当時の政府のサイゴン政権への借款、経済援助につきましては、慎重に対処すべきである、このように言ってきたわけでございますけれども政府はこれを入れず、サイゴン政権に賠償を行い、政府、民間の投資を行ってきたのであります。ところが、現実はこのとおり、わが党が非常に危惧したような結果になろうとしているわけでございまして、政府側の考えている棒引き論というのは、政府姿勢というものを国民の血税によって帳消しにしよう、こういう考え方じゃないかと私は思うわけでございます。その姿勢を率直に政府は認めるかどうか。私は、この点の政府の態度を明らかにしていただきたいと思うのです。
  233. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国の過去に行いました援助につきまして、わが国といたしましては、これは戦争遂行のための援助ではなくて、南ベトナムの国民の福祉ということを目的とした援助である、これは私ども、はっきり申し上げたいと思います。その点につきましては、統一後のベトナム政権の理解を得るように私ども努力をしたい。そして、この問題の円満な解決を図りたいという考えでございます。
  234. 春田重昭

    ○春田委員 南ベトナムの福祉の向上ということで政府は援助したと思いますが、結果的には、こういう形になっているわけですね。今日の、そういう一つの紛争の種になっておるわけでございます。それは旧政権の債権債務は新政権に無条件に継承されるという古い国際法論に固執しているのではないかと私は思うのでございます。たとえばロシア革命におけるソビエト政権、また中華人民共和国の旧政権に対する債権債務の継承の先例を慎重に検討すべきではないか。私は、このように提言しておきます。  われわれは、これらの先例を考慮して、政府の無定見なサイゴン政権に対する経済援助に対しては内政不干渉、そして内戦においては中立の立場をとるべきである、このように何回も警告したわけでございまして、将来においても政府は、このような借款、経済援助を行う際には、このことを十分に考慮して、国民の血税を決してむだにしないようにしていただきたい、このことを警告する次第でございます。  いずれにしても、経済協力というものは将来のためにも非常に必要でありましょう。また今後ますます国際間の相互依存関係が深まる中で、自国のみの繁栄や相手国の犠牲の上に立っての発展はあり得ない、このことは私たちもわかるわけでございまして、それだけに節度ある、内容の深い、質の高い海外協力というものが望まれるわけでございます。どうか今後、過去にもありました、そういう汚職や、また一部の特権階級のみの利益につながるようなことのないように海外協力はやっていただきたい、このように願う次第であります。大臣決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  235. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 お言葉を返すようでございますけれども、南ベトナムに対します、わが国の援助のあり方につきましても、政府といたしましても慎重な態度をとってまいったところでございます。したがいまして、この残額、借款額も百五十五億円という、ほかの国の現在額からすれば、大変少ない額になっておるという点も、これは御理解を賜りたいのでございます。  それから経済協力のあり方につきまして、いろいろな事業をやってまいります場合に、いろいろな競争があったり、いろいろなことがありまして、とかくの批判が起こりがちでありますが、その点につきまして今後のあり方として、いやしくも指弾されるようなことがないように厳に戒めてかかるべきであるということを強く考えております。
  236. 春田重昭

    ○春田委員 その問題は、もう時間がありませんので、今後の課題といたします。  あと三点だけお聞かせいただきたいと思いますので、答弁は簡単に要領よく、やっていただきたいと思います。  マニラ声明の中に、心と心の相互信頼関係ということで、非常に格調高い文章が入っておりますけれども、私はこの問題につきまして、まず国内の留学生の問題につきまして相反するのじゃないかという問題で、大臣に質問したいと思いますが、わが国が現在受け入れている留学生というものは、総数にして、どのくらいなのか、人数を御説明願いたいと思います。
  237. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 現在、日本に留学中の外国の学生さんは五千六百名というふうに聞いております。そのうち約千名が、いわゆる国費留学生でありまして、国の財政によりまして留学しておるという人たちであります。そのほかに、要するに自費で留学をされる方、残りの四千六百名というのが自費で来られるわけであります。  これらの方々について、自費ということで来られますので、国として何らの援助をしてないわけでありますが、そのうち二百名ばかりの方につきまして国際学友会がお引き受けをしていたというのが実情でありまして、この国際学友会が過去にいろいろなことがありまして、閉鎖寸前という状況までいきました。これの再建を図りたいということになっておりまして、御心配をかけておるわけでございます。これにつきましては、生まれ変わったような教育施設にしたいというのが私どもの考え方であります。
  238. 春田重昭

    ○春田委員 五千六百名のうち、アジアの諸国から四千三百三十八名、約七六%が日本に留学に来ているわけでありますけれども、このように高い比率をアジア諸国の学生が示しているという点につきまして、大臣はどのように、この現状を御認識されますか。
  239. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 いま日本は教育面におきまして大変な期待を受けております。いま東南アジアの諸国は、アジアの中で日本はあのように発展したではないか、そういったことが可能なんだということが考えられておる、日本に学ぶべきだということが、ほうはいとして起こっておると思うのでございます。そういったことのあらわれとして、日本に私費の留学生が非常に多く来られるということが、いま起こっておると思います。  このほかにも技術的な面の協力、日本がもっと技術指導と申しますか教育と申しますか、そのために協力をしてもらいたいというような声は各国から出ておるところでありまして、これから日本といたしまして、この点につきましては経済的な協力と並んで重点を置いて考えていかなければならない大事な問題であると考えております。
  240. 春田重昭

    ○春田委員 この国際学友会の問題でございますけれども、この経緯は時間がありませんので、ここではお尋ねするわけにはいかないわけでございますけれども日本語学校を建てかえた場合、現在の生徒数と新しい生徒数はどのくらいになるのか。
  241. 田中常雄

    ○田中説明員 お答えいたします。  現在、国際学友会の日本語学校に在学している数は百九十六名でございます。しかし来年以降、新しい日本語学校をつくるときには約二百五十名を想定して現在いろいろ建設のプランをつくっているという段階でございます。
  242. 春田重昭

    ○春田委員 現在の、この留学生の学習期間は一年間だと聞いておるわけでございますが、日本語というのは非常にむずかしいと言われておりますけれども、一年間でマスターするのは期間的に非常に短いのではないか。ある人によれば、少なくとも二年ぐらい必要じゃないかという説もあるわけでございますが、この点どうお考えになっておりますか。
  243. 田中常雄

    ○田中説明員 お答えいたします。  確かに日本語の研修のむずかしさというのは、われわれも非常に認識している点でございます。過去においては、一年間半コースということをやったことがあるのでございますけれども、やはり留学生の方の要望から見ますと、一年ぐらい日本語を勉強して、それから大学へ進学したい、そういうような要望が圧倒的多数だったもので、その後、一年間コースということで、やっている次第でございます。ただ関西国際学友会においては、一年間半コースというのを部分的に実施しているのが現状でございます。
  244. 春田重昭

    ○春田委員 そういう大部分の学生が一年間コースということを望んでいるみたいでございますけれども、一年以上、いわゆる一年半ないし二年も研修したいという学生もおるわけですから、その辺は十分検討をしていただきたい、このように私はお願いするわけでございます。  さらに、日本語学校の新しい建てかえとともに、寮の問題が、この国際学友会の大きな話題になったわけでございまして、問題になったわけでございますけれども、建てかえた場合は何名の定員になるのか。現在、古い建物の場合は何名おったのか、その比較対照をしていただきたいと思います。
  245. 田中常雄

    ○田中説明員 お答えいたします。  現在の再建計画においては、現会計年度において六十室分の寮を建設しようと考えております。それから来会計年度においては、さらに予算を請求いたしまして、四十室分ふやし、そして総計百室分ということを現在、計画しております。  過去にありました学友会の寮は、百五十室分の寮がございました。
  246. 春田重昭

    ○春田委員 一室何名なんですか。
  247. 田中常雄

    ○田中説明員 お答えいたします。一室一名でございます。
  248. 春田重昭

    ○春田委員 新しい方も。
  249. 田中常雄

    ○田中説明員 さようでございます。
  250. 春田重昭

    ○春田委員 ということは、建てかえる前は百五十四名でしょう。建てかえた後は百名ですね。減るわけでしょう。減少するわけですね。あれほど大騒ぎして、一部留学生の中には、後輩のためにも退寮しないということで、ずいぶん、がんばった学生もおるみたいでございます。外務省としては、どうしようもないということで、相手国の領事館に頼んで、その学生を説得して、やっと出した、こういう実情があるらしいわけでございます。後輩のためにということで、先輩たちががんばったわけでございますが、その退寮の際の条件として、新しい寮をつくっていく、必ず条件面としては、古い寮よりも質量ともによくしていく、そういう条件がついていたのじゃないかということを聞いておりますけれども、その条件があるならば、これは減っているわけでしょう。結局逆行するのじゃないですか。その点どうですか。
  251. 田中常雄

    ○田中説明員 お答えいたします。  学友会を再建する場合に、いかなる形で再建するかということにつきましては、学識経験者も入れました八人委員会というものを組織いたしまして、そして、それの答申を待ったわけでございます。その場合に一つの大きな問題になりましたのは、学生の寮というものを、いかなるサイズにするかという問題でございました。そして日本において現在、学生の寮として非常にうまく運営され、しかも、よく舎監によってコントロールされている寮の現状を見ますと、大抵四、五十名のサイズというのが一番の適正規模という形になっております。しかしながら、国際学友会においては、学生側の要望も非常に強いということもありまして、四、五十名ではなくて百室の寮というものをつくったわけでございます。  それで、単に百名の寮をつくるというだけではなく、学友会においては、それに付随するものといたしまして、学生会館というものを設立いたしまして、そして学生がいろいろセミナーを開く、または日本の各界の士と交歓を図ることができるような施設も兼ね備えた、そういうような付随的施設を持ちまして、今度、学生の百名の寮ということに決めたわけであります。
  252. 春田重昭

    ○春田委員 私の考えでは、学生をだまして出したようなものだと思うのですね。要するに、減ったわけでしょう。出すときの条件としては、質量ともに非常によい寮をつくるということが条件だったと聞いているわけでございます。  その論議は、時間がありませんので、また後ほどといたしまして、この国際学友会に対する補助金の問題でございますけれども、五十一年度においては二億五千万の実績があるわけでございます。わずか二億五千万ですよ。今回のASEAN諸国に対しては、プロジェクトも入れて四千億でしょう。そういう比較対照をした場合、非常に微々たる補助金である。こういうことで、この補助金をもっと私はふやすべきである、ふやしたら、ああいう問題も起こらなかったのではなかろうか、このように考えるわけでございますけれども、この点、大臣どう思いますか。
  253. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 国際学友会の問題は、これは大変根の深い問題で、長い間、苦労を重ねてきた結果が、このようになってしまったわけであります。先ほど申し上げましたように、いま四千六百名の私費の留学生がおる、その中で二百名だけが学友会の寮に入っておった、こういう形になっております。そして、この学友会に入りました二百名は、きわめて安い宿泊費で生活ができたわけであります。一度そのような状況になりますと、日本語学校を卒業いたしましても、なかなか出ていかない、そういうことになりまして、この寮というものが非常な恩恵の場所になってしまった。入った者の既得権というようなことにもなってくる。こういうふうになって、しかも食費を上げるといっても、なかなか上げるわけにはいかない、宿泊費も上げられないというようなことが長く続きまして、そして、ついに二億以上でございますか、の赤字で、これはもう行き詰まってしまった、こういうのが実際でございます。  したがって、寮をつくる、寮が減ったではないかという御指摘があったわけでありますけれども、寮の運営というものが、まことにむずかしい、こういったのが過去の経験であります。したがって、教育施設にふさわしい運営がされなければ、かえって学生としての規律のない事態に立ち至る、こういうようなことが現に起こったわけであります。  したがいまして、これから本当に生まれ変わったような、本当に留学生のためになる施設にしたい。これは、予算が幾らでもあれば多いにこしたことはないということでありますけれども、何分、本当にいま寮を提供しているのが、九牛の一毛に当たる二百名分の寮というものが存在をしている、しかも、それに対しては補助金がついているというところに問題のむずかしさがあった。七割以上が東南アジア諸国から見えておりますから、やはり、それでも三千名くらいの私費の留学生がおるということで、この方々について政府として、どのような協力ができるかという点が本当の問題であろう。これらの方々が皆、日本勉強に来てよかったと言われるために、どうしたらいいかというのが、これが留学生問題の一番のむずかしい本体ではあるまいかというように考えております。     〔原(茂)委員長代理退席、委員長着席〕  もとより留学生自体、全体の所管は文部省で所管しておられますので、文部当局とも、よく連絡をとりながら留学生対策に努力をいたしたいと考えております。
  254. 春田重昭

    ○春田委員 ここに新聞があるわけでございますけれども、私費留学生のAさんという方の言葉の中に、後輩から日本に留学したいという問い合わせもあったが、私は日本にだけは来るなと返事を出した、こんな苦しみは私だけでよい、簡単でございますけれども、前から読んだら、ちょっと時間がありませんので、そういう結論になっているわけですね。  そういう点で、本当に留学生の中では日本が一番不人気であるということを聞いておりますし、とりわけ今回のマニラ声明で福田首相が「心と心のふれ合う」ということを非常に格調高い文章でうたっておるわけでございますけれども、実際、外で、どんな華やかな外交をやったとしても、国内の、そういう留学生に対する対策が非常におざなりであるし、非常に低い、こういう問題があっては、外と内の二面を持った、まるでジキルとハイド的なそういう政策じゃなかろうかと私は思うわけでございまして、今後こういう国際学友会の問題では、もう何回も国会でも論議されておるわけでございますけれども、十分にこの問題につきましては配慮していただいて、今後の留学生対策の一環として、本当に留学生が日本に来てよかった、こういう印象を残すような対策を立てていただきたい、このように思うわけでございます。  さらに、中性子爆弾の問題についてお尋ねしたいわけでございますけれども、これは大臣も御存じのとおり、アメリカの上院では一応、通りまして予算がついて、あとはカーター大統領がオーケーするかどうかにかかっているわけでございます。  この中性子爆弾というものは、御存じのとおり、すごい性能を持った近代的な兵器なんですね。そこで、まだカーター大統領が、つくるとは、はっきりは断言しておりませんけれども、もし、これをつくるとなれば、大変な問題になってくるわけです。そこで政府としては、いかなる国を問わず、この中性子爆弾を開発するということにつきましては反対を表明すべきである、このように私は思うわけでございますけれども、その点どうか。これが第一点。  そして、つくった場合、まず、この中性子爆弾が実戦用に使用される段階に達することは、もう将来性を考えても当然であるということで、私は非常に危険な兵器である、このように思っておるわけでございますけれども、これが非核三原則に照らしてみて抵触するので、わが国への持ち込みは断じて拒否すべきである、この点どうか。  さらに、持ち込む場合は事前協議の対象と、当然なると私は思っているわけでございますけれども、これはどうか。  この三点につきまして、大臣の御所見を賜りたいと思います。
  255. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 中性子爆弾につきまして、言われております中性子爆弾というものが、これから開発しようというものでありますから、どのようなものであるか、つまびらかにはいたしておりませんが、しかし核兵器の一種であるというふうに考えられるわけで、私どもといたしまして、わが国が核兵器の廃絶ということを、唯一の被爆国として将来の理想として掲げておるわけでありまして、そういうことから見て、各種の核兵器が開発をされるという点につきまして、私どもといたしまして核軍縮に努力してもらいたい、こういったときに新しいものが開発されるということにつきまして、私ども賛成をするというわけにはいかない、当然これは反対をいたすべきものであろうと考えております。  しかし、まだ内容がどういうものであるか、中性子爆弾につきまして、いまNATO諸国の間でも、いろいろな議論を呼んでおるわけでありまして、まだ実体が把握されてないという点につきまして、先般、福田総理大臣も本会議におきまして、まだ把握してないので、反対は申しておらないわけであります。  それから、非核三原則の観点から言いまして、当然私どもは、この核兵器の持ち込みにつきましては事前協議の対象になる、わが国としては非核三原則は厳守をするという点は当然のことであろう、このように考えております。
  256. 春田重昭

    ○春田委員 大臣は中性子爆弾はどんなものかわからないということは、一応そういうあれであって、もう百も承知の上で御答弁なさっているんじゃないかと思いますけれども、七月の初旬の新聞には、これは東京新聞でございますが、これが中性子爆弾だということで詳しく載っております。また七月十二日は、毎日新聞の社説にも載っております。七月十日には、東京新聞に掲載されております。さらに読売新聞の「インサイド・レポート」にも七月初旬に載っておるわけですね。そういう点で中性子爆弾の脅威性、残虐性というものは、もう新聞を見れば明らかだと思うのです。  そういう点で、まだ開発の段階には至っていないということでございますけれども、すでにアメリカの方ではネバダ州でも七月の当初ですか、実験段階に入っておるということも聞いておるわけです。そういう点で、あと、つくるかどうかということはカーター大統領の胸の中にあるわけですね。そういう点においても私は、こういうことで非常に危険な爆弾である、放射能であるということで、カーター大統領に、やはり事前に念を押していくのも必要じゃないかと思うのですよ、できてしまってから反対だと言っても、どうしようもないわけですから。そういう点で、この中性子爆弾につきましては、外相の勇気ある、そういうアメリカ政府に対しての、ひとつ強烈な反対声明をお願いしたいわけでございます。  最後に、日中平和友好条約の問題でございます。先ほども質問が出ておりましたけれども、来月の二十九日で、日中共同声明が発表されてから満五周年ですね。そういう非常に記念すべきときが来ておりますし、また、さきの中国の第十一回全国大会でも、新しい陣容で中国は出発しようとしているわけですね。そういう点では、私は時期がまさに熟している、このように思うわけでございますけれども、この日中平和友好条約につきましては、国会でも相当論議になっておりまして、総理は、双方の満足いく条件が相整えばサインしてもいい、こういうことでございますけれども、せんだって新しく駐日大使である符浩大使が来まして、いわゆる議長に表敬訪問されたのですが、中国側には何の支障もない、早い方が好ましい、あとは日本側だけですよ、政府側だけの態度待ちですよ、こういう意味にとれる発言をして帰っているわけでしょう。  そういう点で、日中平和友好条約の懸案の問題ですが、交渉の前途につきましては、大臣はどのようにお考えになっておるのか。私はいろいろな面を総合して熟しているんじゃないか、時が来ているんじゃないか、このように思いますけれども大臣の御所見をお願いします。
  257. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先ほども申し述べましたけれども、日中平和友好条約につきまして、これは政府といたしましても、なるべく早い機会に双方の満足すべき条件によりまして締結をいたしたい、福田総理も繰り返し述べられているところでございます。  来月の二十九日というお話がありましたが、時期は、そのように機械的に決められるべきものでございませんので、今後、努力によりまして、これはいつになるか、いま私どもも的確なことは申し上げられないわけでありますけれども、私どもといたしまして極力、努力をいたしてまいる、こういうふうに申し上げたいと思います。
  258. 春田重昭

    ○春田委員 この日中平和友好条約で、最大の問題点というのは覇権条項、こう言っても過言ではないと思いますけれども、かつて元外相であった宮澤外相が四項目の解釈を出して中国側からの批判を受けたわけでございますけれども、鳩山大臣に至っては、覇権条項につきまして、どういう御見解を持っているのか、お聞かせ願えればお願いしたいと思います。
  259. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この覇権条項は種々、議論を呼んだわけでございます。この点につきまして議論をいろいろいたしますと、かえって支障を来すのではないかというような感じがいたしまして、極力この問題には触れないようにしてまいったのでございます。しかし、問題であることは事実でございますし、私ども覇権条項の問題を含めまして、双方が本当に、これでよかったというような条件を見つけ出したい、このように考えておるところでございます。
  260. 春田重昭

    ○春田委員 時間が参りましたので、これで終わりにしたいと思いますが、いずれにしても、九月の中ごろですか、国連総会があると聞いておりますし、外相もそちらの方に出席されると聞いておりますし、当然、中国側の外相だって、また問題によってはソ連側の外相だって、おいでになると思いますし、そういう点でも十分な詰めをして、この日中平和友好条約——私は何回も言いますが、機が熟している、このように思いますので、早急なる政府の統一見解を出して意思を統一して、この締結を促進していただきたい、このことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  261. 芳賀貢

    芳賀委員長 安藤厳君。
  262. 安藤巖

    ○安藤委員 私は、最近の朝鮮民主主義人民共和国の二百海里宣言に関する問題と、それからソ連の二百海里海域内における日本の漁船の操業の問題についてお尋ねしたいと思います。  朝鮮民主主義人民共和国の二百海里宣言の問題につきましては、きのうも農林大臣にお尋ねしたのですけれども、資料になるのは平壌放送以外、知るところがないのだ、あるいは金日成主席とNHKの緒方氏との対談の中で出てきたこと以外には知りようがないのだ、さっぱり情報がないので、現在のところ日朝議員連盟の使節団が行って、そこで出てきたことを材料にして判断する以外にない、こういうような話でございました。そして、きょうも原委員の方から、いろいろお尋ねになったのですけれども、海洋法会議での接触の結果もはかばかしくないというようなことなんですが、これはもう、これまでの日本外交政策が全くアメリカ一辺倒、そして朝鮮民主主義人民共和国を敵視するという政策をとり続けてきた結果、そして外交関係が全くないということから、こういうことになっていると思うのですね。  しかしながら、いろいろ外交ルートを通じて、といいますのは、朝鮮民主主義人民共和国と友好関係にある国は幾つかあるはずでありますから、そういう国を通じてでも、朝鮮民主主義人民共和国の意向がどの辺のところにあるのかということは打診することができたのではないかと思うのですが、その辺については外務省としては何も努力はされなかったのでしょうか。まず、その点についてお伺いしたいのです。
  263. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 努力をいたしましたけれども、ただいまお述べになりましたような状況であるということでございます。
  264. 安藤巖

    ○安藤委員 努力もされたといいますのは、先ほどお話で、海洋法会議で何らかの接触を試みて打診をしようと思ったけれども、思わしい結果は出てこないというお話でしたね。だから、それ以外に、いま私がお尋ねしたような方法で打診をして何らか意図を探ろうということはなさらなかったかどうかということをお尋ねしているのです。
  265. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 それ以外にも、いろいろ試みましたけれども、得られなかったということでございます。
  266. 安藤巖

    ○安藤委員 それ以外といいますと、それはどういうような方法をおとりになったのでしょうか。
  267. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 在外公館等を通じてでございます。
  268. 安藤巖

    ○安藤委員 いま私が一つの例として申し上げましたような朝鮮民主主義人民共和国と友好関係のあるような国を通じて、在外公館を通じておやりになったということも、その中に入るわけでございますか。
  269. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 外交関係のありますところで、その相手国を通じてと申しますよりも、お互いに在外公館がありますので、そのような土地柄においてということでございます。
  270. 安藤巖

    ○安藤委員 朝鮮民主主義人民共和国が二百海里経済水域の宣言をするだろうということは、すでに二百海里経済水域の問題は世界の趨勢になっておりますし、ことしの五月にも、朝鮮民主主義人民共和国の代表団といいますか使節団が日本へ来ております。ですから、そのときにも、そのような示唆をしていったはずなんです。だから、そのころから二百海里経済水域の宣言をするだろう、あるいは、するに違いないということはわかっていたはずですから、これは相当、対応の手おくれになっているというふうに思うわけです。ですから、そういう点では、外務当局は相当、怠慢のそしりを免れないのじゃないかというふうに私は思っております。  ところで、これは、きのうも農林省にお尋ねしたのですけれども、朝鮮民主主義人民共和国の二百海里経済水域内の無害通航権、この無害通航の問題につきましては、たとえば山口県の萩の漁業協同組合とか長崎県の県漁連、そして、これは長崎県ですが、対馬の漁業協同組合の人たちは異口同音に、何とか、この無害通航権をはっきりさせてほしい、とにかく、あそこを迂回してくるだけで十二、三時間のロスを生ずるのだということを、しきりに訴えておられたのです。だから、この無害通航権の問題は国際法上、とにかく、その国に対して害を与えない、あるいは汚染しないというようなことで権利として認められているところだと思うのです。だから、その辺のところについて外交ルートを通じて、きちっと早急に確立していただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  271. 中江要介

    ○中江説明員 いま御指摘の無害通航の点は、私どもの得ております情報でも、はっきりしないのでございます。というのは、ただ一つ、先生も御承知のように十一日に、浜田漁港所属のイカ釣り漁船が、親洋丸という船でございますけれども、これが北朝鮮の経済水域内を航行中に臨検を受け、無害通航は認めない、今後は捕獲すると言われたという連絡が一つ入って、これは一つの情報なんですけれども、これも簡単な無線連絡なものですから、法的根拠その他について、はっきりいたしません。  他方、この二百海里の漁業専管水域にいたしましても、あるいは二百海里の経済水域、いま海洋法会議で議論されております。その経済水域にいたしましても、どちらの水域という立場をとっても国際法上、無害通航を認めなければならないということになっておるわけでございますので、北朝鮮の当局が当該特定の船に対して、どういう理由で臨検して、そういうことを言ったのかという点についても、はっきりしないわけでありまして、おっしゃいますように、国際法上認められていないような権利の行使が、この水域で行われましたならば、これについては過般、松生丸事件のときに行いましたような所要の措置はとらなければならないかと思っておりますが、いまのところは、まだ判断をするに十分な材料なり、先方の制度というものがわかっていない、こういうことでございます。
  272. 安藤巖

    ○安藤委員 ところで水産庁の方は、いま、おっしゃったようなことがあったので、通航するにしても、漁船はそこの中を通航しないようにという指示を与えておられるので、相当大きく迂回しなければならぬというのが実情なんです。だから、何か事件があった場合に、そのときに処理するんだというのでは、事件を起こさなければ処理できないのかということになってまいるわけなんですね。だから、これはできるだけ速やかに何らかの手段を講じて、はっきりとした権利を確立していただきたいと思うのです。だから、この点についての覚悟のほどを一言、話していただきたいのです。
  273. 中江要介

    ○中江説明員 これは、わが国民及びその財産を保護するという立場から、国際法に反するようなことのないように何とか適当な措置をとるべく検討いたします。
  274. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、これも、きのうお尋ねしたのですが、長崎県の若宮丸という船がビルジを流したということで、これはソ連の二百海里海域内での問題ですが、二百万円の罰金を取られているわけですね。この問題については、十六日から十八日までのナホトカでの専門家会議で、日本の方から、若干のビルジを流したぐらいのことで違反になるのかということを質問したところ、モスクワへ帰って検討しますという返事をもらったという御答弁を農林省の方からいただいたのですけれども、この問題につきまして、ナホトカの専門家会議での話の内容の、きのうの農林省の答弁は、ソ連側が言っているのは、ソ連の幹部会令に違反するからだという話だったというのですね。  ところが、若宮丸の船長の聞き取り書きによりますと、これは機関長の説明ですが、ソ連の法律、海上汚染防止法違反である、それで罰金二百万円取るということを向こうは言ったというのです。ですから、幹部会令違反というのと、これは内容が違うんじゃないかというふうに思うわけです。  そしてさらに、これは御承知かと思いますけれども、油による海水汚濁防止条約というのがございますね。これは略称でございますけれども、その第二条の一項の(a)項、これによりますと、この条約が適用を除外されるのは「総トン数百五十トン未満のタンカー及びタンカー以外の総トン数五百トン未満の船舶。」これは、この条約の適用外だというふうに規定されておるわけです。若宮丸は百トン未満の船でございますし、当然この適用外だと思います。  それから、いま申し上げました若宮丸の機関長の言うソ連の法律、海上汚染防止法、これはどういう法律なのか私も実はよくわかりませんけれども外務省の方からいただいた一つの資料があるのですが、ソ連邦及び構成共和国の水基本法という法律がありまして、これによると、その適用水域というのはソ連の「領水(領海)」とあるのです。そうしますと、この若宮丸のおった位置が問題になろうかと思いますけれども、これはこの聞き取り書きによると北緯四十二度四分、東経百三十二度七分ということになっておるようなんですが、この位置が、いわゆるソ連邦の水基本法のソ連の領海に入っておったのかどうかということも問題になるのですけれども、入っていないとすれば、これは全く不法、国際条約にも違反する罰金の取り立て方、規制の仕方だと思うのです。  だから全く違法、かつ、しかも不当だと思うのですが、ナホトカの専門家会議では、少しぐらいのビルジを流したことぐらいで違反になるのかというような言い方を日本の方はしておられるようですが、そんなことどころではなくて、まさに、これは国際条約にも違反した、とんでもないことだと思うのです。だから、そういうような点について、きちっと外交ルートを通じて、やっていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  275. 宮澤泰

    ○宮澤説明員 ただいま、お尋ねの件につきまして、モスクワに外交経路を通じて先方の態度をただすべく、目下手配中でございます。
  276. 安藤巖

    ○安藤委員 それは専門家会議で出た話と余り違わぬように思うのですけれども、私が強調したいのは、少しぐらい流したっていいじゃないかという言い方ではなくて、全然これは向こうのやり方は不法なんだというととを、はっきり言っていただきたいというごとなんです。  だから、この関係では、これは読売新聞の八月二十一日付なんですが、長崎の県漁連は、この若宮丸問題について国に賠償請求をするということまで決めているのです。これは日本政府にソ連の国内法がどうなっているかを問い合わせても、とにかく満足な回答が得られない、そこに非常に強い不満を持ちまして、不法操業について罰金は当然だけれども、不当に払わされた分については、国が補償すべきだということまで決議しているわけです。だから、これは水産庁の方からも来ていただいているのですが、この長崎県漁連の補償請求に対して、どういう対応をされるのか、お伺いしたいと思います。
  277. 松浦昭

    ○松浦説明員 ただいま先生のお尋ねの若宮丸のビルジの問題でございますけれども、まず私どもといたしましては、ナホトカの会議におきましても、イカ汁程度を流したことによりまして、罰金を取られるということは余りにも行き過ぎではないかということで向こう側に話をいたしまして、その結果、向こう側も再調査をしようということを言っておるわけでございますので、あくまでも、その結果を見まして、向こう側の方が当然これは違法な、現在の向こう側の法令にオーバーした措置だったということであれば、これは何も補償の問題になるわけでもございませんし、当然まず、これを問いただすということで対処いたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  278. 安藤巖

    ○安藤委員 向こうの罰金の取り立て方がとにかく不法不当であったということになれば、補償の対象にならないというふうにおっしゃったのですが、罰金は現実に取られてしまっているんですよ。損害をこうむっているのです。だから、不法不当であれば、罰金を返してもらって、それを若宮丸に返す。あるいは不法不当であるということを認めながらも、ソ連の方が罰金を返さない場合は、国の方として当然、補償すべきではないでしょうか。
  279. 松浦昭

    ○松浦説明員 ただいま、お答えを申し上げましたのは、まず向こうが不法あるいは不当な罰金の科し方をしたということを確かめているわけでございまして、その点が仮に向こう側が不法あるいは不当であったということを言ってまいりますならば、当然こちらの方としては、その罰金は適法に向こうが科したものではないという主張をしていく、これが当然であろうというふうに考えております。
  280. 安藤巖

    ○安藤委員 いや、それはいいのですけれども、向こうの出方次第によっては、若宮丸に対して補償するかしないか、どうもはっきりしないんですね。ちゃんと返してもらって、そうして、それを若宮丸に返すのか、罰金を返してくれなくても、不法不当だということを認めれば、若宮丸に補償するのかどうかという問題なんです。
  281. 松浦昭

    ○松浦説明員 ただいま申し上げましたように、私どもといたしましては、向こう側が不法不当であるということを認めさせたいということに、まず重点があるわけでございまして、その結果によりましては、当然、向こうが不法不当であるということを認めましたならば、それは罰金は返してくれということを主張するべきでありまして、私ども国といたしましては、補償の原因はないわけでございますから、補償のことは現在、考えていないわけでございます。まず罰金を返してくれということを、その根拠をただすということが現段階であるというふうに考えておるわけでございます。
  282. 安藤巖

    ○安藤委員 余り、このことをやっておりますと、時間がなくなりますので、はしょりますけれども、罰金を返してもらうように努力をする、もちろん不法不当であるということを認めさせて、そうしてその上で、その罰金を取られた分は若宮丸に返すというために努力をする。しかし、それでも向こうが返してくれないような場合は、努力をするけれども、それは、そのときに考えるということですか。
  283. 松浦昭

    ○松浦説明員 ただいま、お答えを申し上げましたように、とにかく向こう側が不法不当であるということにつきましての認定を向こうがいたすかどうかということに、まず努力をいたしまして、もしも不法不当であるということであれば、罰金を返してもらうということで最大限の努力を払う、そこがまず重点であるというふうに考えておるわけでございます。
  284. 安藤巖

    ○安藤委員 最終的なところが、まだ、はっきりしていないようですけれども、そのために最大の御努力をお願いをいたしまして、ほかのことをお尋ねしたいと思います。  先ほどもお尋ねしたのですが、八月の十六日から十八日までナホトカで専門家会議が行われたということですが、これは、きのう外務省の方からお聞きした範囲では、ソ連側の方から開いてほしいという要請があって開かれた第一回の専門家会議であるということです。そこで、こういう専門家会議を、これから定期的に開くように制度化することはどうかということを農林大臣にお尋ねしましたところ、これはなかなか結構なことで、基本的には、そういうような方向でやっていただければ、それは望ましいことだというような御答弁があったのです。ところが、外務省の加藤参事官が、きのう答弁されたのですが、基本的には水産庁のそういう考え方には賛成であるけれども、定例化する、制度化するというようなことまでは考えていないというお話でした。  そこで、きょうは大臣が出席しておられるのでお尋ねしたいのですけれども、御承知のように八月の下旬から、今度はソ連との間に暫定協定ではなくて、長期協定の交渉が始まる、そして長期協定が結ばれるという段階になろうかと思います。だから、そういうことになってまいりますと、やはり、これは制度化して、定例的に開くということが望ましいのではないかと思うのですが、そういうことについて、そういう方向で努力をするという考えは持っておられるのかどうか、お尋ねしたいのです。
  285. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 専門家同士の綿密な連絡が必要であるということは、御説のとおりと思います。しかし、これをどのようなことにしますか、農林省当局とよく打ち合わせをいたしまして対処をいたしたいと思います。
  286. 安藤巖

    ○安藤委員 それからソ連の監視船の二百海里内における罰金の取り方の問題が、いろいろ、きのうも議論になりまして、漁民の人たちの間では非常に大きな不満が出ているわけです。ところで、中には四百万円の請求をして、いろいろ交渉したら、八十万円にまけてくれたというような話があったり、どうも監視官の恣意的な判断によって適当に罰金を取られているのじゃないかというような不満があるわけです。  私が直接、漁民の人たち、あるいは漁協の役員の人たちと話をして聞いたところによりますと、とにかく協定によりますと、一万ルーブル以下ということで四百万円までは取れる、違反をすれば取られるのだということになっているようですが、許容限度といいますか、余りにも範囲が広過ぎて、これは何らかの基準を知りたい、何らか基準を示してもらえぬだろうか、どういう違反をしたから、おまえは幾らなんだ、こういう違反をしたのだから、これだけなんだというような、何か、そういうものを知らせてほしいのだという希望があるのです。一々細かい段階まで全部明らかにしてくれといっても、むずかしいかもしれませんが、せめて二段階、あるいは三段階ぐらいのところで基準を明らかにしてもらうように交渉をするというようなことは考えておられないのでしょうか。
  287. 松浦昭

    ○松浦説明員 お答えをいたしたいと思います。  確かに、今回のソ連の監視船によりますところの罰金徴収の事件におきましては、最高の四百万円を取られたケースがございます。ただ、この違反の内容なんでございますけれども、やはり私どもの方にも問題のあった漁船はございます。たとえば無許可操業であるとか、あるいは停止命令に違反をしたとか、そういう事犯には、やはり非常に高い金額がかかっているということは事実のようでございます。  ただ、お尋ねのように、ある程度まで向こうと話し合いをいたしましたところが、かなり罰金の金額が低くなったというケースもありまして、これは恐らく、わが方が漁船の方といたしまして、その事犯につきまして、かなり向こう側に詳細説明できたケースであろうというふうに思います。したがいまして、向こうの方は非常に厳重な罰金を科さなければならぬと考えておりましたけれども、こちらの方の陳述によりまして、それを変えたというケースではないかというように考えられます。  私どもといたしましては、今後やはり、ある程度までの基準というものを明白にしてもらいたいというふうに考えておりまして、その意味ではナホトカの会議におきましても、このような基準を明らかにするようにということで、向こう側に強く申し入れをしておる次第でございます。今後とも、なおいろいろなチャンネルを通じまして、これを明らかにしていきたいというふうに考えます。  なお非常に重要なことは、こちらの漁船が向こうの言いなりになってしまってアクトをとられるというケースが多いようでございますので、わが方といたしましては漁船の方にも、向こう側が違反であるということを言ってまいりまして、過重な罰金をかけるということを現場でやってまいりました場合に、漁船の方も十分に、これを陳述するし、それからまた、わが方の言いたいことは、ちゃんと言ってくるということをやるようにという指導をしておきたいというふうに考えております。
  288. 安藤巖

    ○安藤委員 これは水産庁の方にお尋ねしたいのですけれども、いま、そういう努力をされておるということで了解いたしましたけれども、とにかく四百万円までは取られるのだから、お金を持っていけばいいではないかというような指導といいますか、指示といいますか、そういうことを漁船に対して水産庁がやっているというような不満が相当出ているのですけれども、そんなことはないと思いますけれども、ひとつお尋ねをいたします。  それからもう一つは、きのうも、これはお尋ねしたのですが、水産庁の指示どおりに操業日誌もちゃんとやっているのだけれども、それでも向こうの気に入らなくて罰金を取られてしまったという場合は、まさに、これは水産庁の方から、国の方から、補償問題として責任を負うべきではないかということをお尋ねしたのです。  改めて同じような答弁をいただこうと思いませんが、もう一つ、それと関連をして、たとえば操業日誌のとじ方の問題にいたしましても、とじたひもに封印をするというようなことは、いままでは日本の漁船ではやっていなかった。しかし、向こうの方では、そういうような慣習なんだということになりますと、その辺のところまで、きちっとした詰めを——相当、急いでおられたことはわかりますけれども、きちっとした詰めをやらないでおいて、その結果、こういうようなことになって、何ら責任のない漁民の人たちに罰金が科せられるということになっているわけですから、これはまさに政府責任じゃないかというふうに思うのですね。だから、そういう点について補償問題を考えておられないのかどうか、お尋ねしたいのです。
  289. 松浦昭

    ○松浦説明員 お答えをいたします。  まず、水産庁が、あらかじめ、違反がありまして、その場合に罰金を払わなければならないケースが出てくるので、金を所持していけというような指導をいたしたことは一切ございません。そんなことはございません。  それから第二のお尋ねの点でございますが、昨日も長官から申し上げましたように、この日ソの交渉、かなり短期間でまとめたわけでございますけれども、操業日誌の記載の内容につきましても、モスクワでかなり話し合ったわけでございます。これで大丈夫であろうということで指導をいたしておったわけでございますが、何分にも、双方の国の操業日誌の取り扱い方につきまして慣習の差がございまして、その結果、このようなことが起こったというふうに考えられるわけでございます。したがいまして、昨日も長官が答弁いたしましたように、この操業日誌のつけ方、あるいは取り扱い方につきましての解釈の相違といったようなことから出た問題でございますので、私どもといたしましては、直ちに、これが補償につながるというようなことは、問題があるのじゃないかというふうに考えるわけでございます。  なお今後の指導ということが非常に大切でございますので、一昨日、片桐課長が帰ってまいりまして、ソ連側との、かなり細かな了解事項をつくってまいりましたので、昨日、海津漁業部長名をもちまして、各団体、県庁に全部指示をいたしまして、かかることは今後、問題にならないようにいたした次第でございます。
  290. 安藤巖

    ○安藤委員 慣習の違い、その他ということを、いま、おっしゃったのですけれども、やはり、その辺のところまで、きっちり詰めをしなかったのが、一つの原因になっているのじゃないかと私は思います。だから、その点については直ちに補償の問題にはつながらぬと、いまおっしゃったのですけれども、やはり、これは政府がきちっと責任をとるべき問題じゃないかということを強く指摘して、善処を要望しておきます。  そして最後に、これは外務省にお尋ねしたいのですけれども、罰金を取られるときに領収書をくれなかったという問題がありますけれども、決定書というのと領収書というのと一緒に交付するということになっているようですね。協定の中には、決定書というのは、うたわれていないようですけれども、領収書は交付する、その決定書というのは、いわゆる交通違反なんかした場合の略式命令のように、いつ幾日どこで、どういう違反をしたかというようなことが書いてあるわけですね。そしてその中に、不満であれば十日以内ですか、ソ連の裁判所に不服申し立てをすることができる、そうすれば裁判で黒白をきっちりとつけるのだということが書いてあるそうです。  しかし実際問題として、幾ら不服があっても、操業中の船が、その不服を申し立てるために漁港へ帰ってきて正式な手続をとるということは、とうてい考えられない、不可能な問題だと思うのですね。だから、これは空文に等しいと思うのです。ソ連の国内法がどうなっているのか知りませんけれども、実際に役に立たないような十日間以内に云々ということは、本当に黒白をきっちりつけるという点からすれば、もっと余裕を持たせるようにしてもらわなくちゃいかぬと思うのですね。だから、そういう点について、ちゃんと外交交渉を通じて余裕を持たせるように、それが絵にかいたもちでないように努力していただきたいと思うのですが、その点いかがでしょうか。
  291. 松浦昭

    ○松浦説明員 ただいまの控訴の関係でございますけれども、今回のナホトカの会議におきまして、監督官の決定に対しまして、十日以内に人民裁判所に控訴ができるということがわかりましたので、この裁判所の名称、所在地等につきましては、早急に向こう側から連絡をもらうということにいたしまして、通知あり次第、向こう側も連絡をよこすと言っておりますから、直ちに、わが方も、それで漁民を指導しようというふうに考えております。  それからいま一つ、非常に重要なことは、違反の取り調べに当たりまして、いわゆるアクトというものをつくられるわけでございますけれども、そのアクトの中に船長が、わが方は異議があるということを留保しておきませんと、後に控訴ができなくなるということがございますので、問題があれば、それは異議があるということを、ぜひ、はっきり書いてこいという指導をいたしております。  なお、十日間の問題は、私どもの方のあれではございませんので……。
  292. 宮澤泰

    ○宮澤説明員 ただいま御指摘の十日の点につきましては、実情を十分に検討いたしました上で、必要に応じ、ソ連側とさらに交渉をするつもりでおります。
  293. 安藤巖

    ○安藤委員 では、その点について御努力をお願いいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  294. 芳賀貢

    芳賀委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後五時三分散会