○山崎説明員
アメリカの会計検査院長が六月十五日、米国の上下両院
議長に対して
報告書を提出しておりまして、
日本の防衛の問題に触れておることはただいま御質問があったとおりでございます。
その中で
アメリカの会計検査院は、
日本は、防衛上のかさを米軍に依存することによって防衛支出を最小限度にとどめ、世界第三の経済大国に成長し得たとしまして、
アメリカは
日本との間でより公平な経費分担の
可能性を検討すべきであるというふうなことを総論的に述べております。
さらに、
日本における
アメリカの寄与としまして、現在四万七千人余りの
アメリカ軍人が
日本におるわけでございますが、そのために国防省が直接に支払っている費用は、年間約十億ドル近くなっておるということを言っております。
他方、
日本側の寄与としましては、基地の提供その他のことは別にしまして、経費の面で言いますと、
日本側は米軍に提供した土地借料の支払いを行っておる。その借料は過去三年間に年平均約一億一千二百万ドルであったということを言っております。さらに、基地の整理統合に伴いまして米軍が施設を移転する場合には、その移転される施設の建設費用を
日本側が負担しておる。これも一九七六会計年度中には一億六千三百万ドルの金を出しておるということも言っております。さらに、
日本側は米軍基地の周辺の整備対策費として必要な金を出しておるということも述べておるわけでございます。その点は
日本側の貢献は認めておるわけでございますが、先ほど申し上げました総論的な
立場から
日本にもっと経費の分担を求めるべきだということを言っておるわけでございます。
そして具体的にどういう分担を求めるべきかということについては三つの点に触れておるわけであります。
第一は、相互補完性とでも訳すべき概念でございます。英語ではコンプリメンタリティーと言っておりますが、それで
日本が引き受ける役割りを増大しながら、米国と
日本が相互補完的な軍事的な防衛能力を発展させるようにしたい、こういうわけでございます。
その点につきまして具体的に、たとえば内陸輸送とか、そういった後方支援機能を
日本が提供することもできるのではないかというふうなことに触れております。
それから、作戦協力という面では、対潜作戦あるいは防空作戦あるいは空中早期警戒の機能を
日本に期待するということも述べておるわけでございます。
それから、特に力を入れておりますのは、第二の点でございまして、労務費の分担という問題でございます。現在約二万四千人の
日本人を
日本政府が雇用して米軍に提供しておるわけでございますが、その給与の問題がいまの在日米軍にとって大きな負担になっておるということを詳しく述べております。過去十年以上にわたって年次年々ベースアップが行われて平均一二・四%のベースアップであったが、そこで労務者は半分に減ったにもかかわらず労務費は三倍にもなっておる、こういうことを言っておりまして、いまや米軍が
日本人労務者に払う年間給与総額は約四億ドルにも達しておるということを
指摘しております。そこで、その労務費を削減するために在日米軍としてもいろいろな
努力をしてきておる。たとえば退職年齢を引き下げるとか、週労働時間を少なくするとかいうふうなこともやってきておるが、余り成果は上がっていないということを述べまして、一番手っ取り早い方法は人員削減であって、一九七二年以来人員削減が大幅に行われて、現在は二万四千人程度になっているというわけであります。しかしながら、これ以上の人員削減は困難であるということを述べまして、したがって今後の方向としては、
日本政府がこういう労務費を分担すべきではないかということは示唆しておるわけであります。
それで、そのやり方として二、三、たとえば労務者の退職手当を
日本政府が一部持てないかとか、あるいは間接的な経費を
日本政府が持てないかとかいうふうなことを書いておるわけでございます。
しかし、
結論としては、いずれにしてもそういう方法は、
日本にとって政治的に受け入れられるものでなければならないということは
指摘しておりますし、また、日米両国
政府とも地位
協定について再
交渉することは望んでいないということも
指摘いたしております。
それから、第三の問題として、共同使用という問題に触れておりまして、現在でも多数の防衛施設が、米軍及び自衛隊と
民間会社を含む種々の
日本の団体によって共同使用されているということを述べております。しかし、この共同使用をさらに推し進めていったらどうかということを提案いたしております。ことに、米陸軍はかなりの余裕のある施設を持っておるようだということを言っておりまして、それを共同使用することによって
日本政府の方が費用をより多く分担する
可能性を探求すべきだということを言っております。ただ、この点については、在日米軍は再使用権が確保できるか、また運用上の困難がうまく調整できるかという点を問題にしておるということは
指摘しておるわけでございます。しかし、まだこの問題については、国防省は正式に
日本政府との間で取り上げていないということも書いてございます。
ざっとそういう内容でございます。
この点に関しまして、まず総論的に申し上げられますことは、こういう全般的な防衛費の分担という問題について、
アメリカ政府から
日本政府に対して正式に
申し出があったことはないということでございます。そういう観点からの申し入れはわれわれは受けておりません。
ただ、具体的にこの
報告書が
指摘をしております点、ことに
日本の防衛
努力の点でございますが、この点は、
日本側の自主的な防衛
努力として、対潜能力の向上、防空能力の向上、早期警戒機能の強化というふうな問題については、つとに防衛庁の方でそれを立案され、防衛力整備の大綱という大方針に基づいて現在
実施されつつあることは御承知のとおりでございます。
第二の労務費の問題でございますが、これに関しましては、この
報告の中にもございますように、日米双方とも地位
協定の改定ということは
考えておらないわけでございます。他方、われわれといたしましては、最近の労賃が非常に上がっておるということも事実でございまして、その中で基地
関係労務者の雇用の定定をいかにして達成するかということにいろいろと苦心をいたしておるわけでございます。したがいまして、地位
協定の範囲内においてどれだけのことができ、どういうことができないかということを、いま日米共同で検討しておる
段階でございまして、この秋までには
結論を出すことになっております。
第三の共同使用の問題に関しましては、これは従来からもやってきておるわけでございますが、
日本の自衛隊の必要に応じて米軍の施設を使うということはやっておりますけれども、米軍のために基地を保有するというような
考え方では運用いたしておりませんし、今後もそういう
考え方をとる
考えはございません。