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1977-03-28 第80回国会 参議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月二十八日(月曜日)    午前十時五分開会     ―――――――――――――    委員の異動  三月二十六日     辞任         補欠選任      片山 甚市君     工藤 良平君      安武 洋子君     上田耕一郎君  三月二十八日     辞任         補欠選任      堀内 俊夫君     岡田  広君     目黒今朝次郎君     戸田 菊雄君      前川  旦君     大塚  喬君      藤田  進君     安永 英雄君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         小川 半次君     理 事                 坂野 重信君                 園田 清充君                 中山 太郎君                 吉田  実君                 小柳  勇君                 竹田 四郎君                 桑名 義治君                 内藤  功君     委 員                 安孫子藤吉君                 石破 二朗君                 糸山英太郎君                 岡田  広君                 長田 裕二君                 亀井 久興君                 源田  実君                 後藤 正夫君                 佐藤 信二君                 玉置 和郎君                 戸塚 進也君                 中村 太郎君                 夏目 忠雄君                 秦野  章君                 林田悠紀夫君                 宮田  輝君                 最上  進君                 青木 薪次君                 大塚  喬君                 粕谷 照美君                 工藤 良平君                 対馬 孝且君                 田  英夫君                 戸田 菊雄君                 野田  哲君                 藤田  進君                 前川  旦君                 安永 英雄君                 太田 淳夫君                 藤原 房雄君                 岩間 正男君                 上田耕一郎君                 渡辺  武君                 三治 重信君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   福田 赳夫君        法 務 大 臣  福田  一君        外 務 大 臣  鳩山威一郎君        大 蔵 大 臣  坊  秀男君        文 部 大 臣  海部 俊樹君        厚 生 大 臣  渡辺美智雄君        農 林 大 臣  鈴木 善幸君        通商産業大臣   田中 龍夫君        運 輸 大 臣  田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君        労 働 大 臣  石田 博英君        建 設 大 臣  長谷川四郎君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      小川 平二君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       園田  直君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       藤田 正明君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       西村 英一君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  三原 朝雄君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       倉成  正君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       宇野 宗佑君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  石原慎太郎君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  田澤 吉郎君    政府委員        内閣法制局長官  真田 秀夫君        内閣法制局第一        部長       茂串  俊君        青少年対策本部        次長       望月哲太郎君        公正取引委員会        委員長      澤田  悌君        警察庁刑事局長  鈴木 貞敏君        警察庁刑事局保        安部長      吉田 六郎君        警察庁警備局長  三井  脩君        行政管理庁行政        管理局長     辻  敬一君        行政管理庁行政        監察局長     川島 鉄男君        防衛庁参事官   番匠 敦彦君        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        防衛庁人事教育        局長       竹岡 勝美君        防衛庁装備局長  江口 裕通君        防衛施設庁施設        部長       高島 正一君        経済企画庁調整        局長       宮崎  勇君        経済企画庁国民        生活局長     井川  博君        経済企画庁物価        局長       藤井 直樹君        経済企画庁総合        計画局長     喜多村治雄君        経済企画庁調査        局長       岩田 幸基君        科学技術庁計画        局長       大澤 弘之君        科学技術庁研究        調整局長     園山 重道君        科学技術庁原子        力局長      山野 正登君        科学技術庁原子        力安全局長    伊原 義徳君        環境庁企画調整        局長       柳瀬 孝吉君        法務省刑事局長  伊藤 榮樹君        法務省人権擁護        局長       村岡 二郎君        法務省入国管理        局長       吉田 長雄君        外務大臣官房長  松永 信雄君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省欧亜局長  宮澤  泰君        外務省経済局長  本野 盛幸君        外務省経済協力        局長       菊地 清明君        外務省条約局長  中島敏次郎君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        大蔵大臣官房長  長岡  實君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        道正 信彦君        大蔵大臣官房審        議官       佐上 武弘君        大蔵省主計局長  吉瀬 維哉君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  岩瀬 義郎君        大蔵省証券局長  安井  誠君        大蔵省銀行局長  後藤 達太君        国税庁調査査察        部長       系  光家君        文部省初等中等        教育局長     諸沢 正道君        文部省大学局長  佐野文一郎君        文部省学術国際        局長       今村 武俊君        文部省社会教育        局長       吉里 邦夫君        文部省管理局長  犬丸  直君        文化庁次長    柳川 覺治君        厚生大臣官房会        計課長      持永 和見君        厚生省医務局長  石丸 隆治君        厚生省社会局長  曾根田郁夫君        厚生省児童家庭        局長       石野 清治君        厚生省年金局長  木暮 保成君        厚生省援護局長  出原 孝夫君        農林大臣官房長  澤邊  守君        農林省農林経済        局長       今村 宣夫君        食糧庁長官   大河原太一郎君        水産庁次長    佐々木輝夫君        通商産業省通商        政策局長     矢野俊比古君        通商産業省貿易        局長       森山 信吾君        通商産業省産業        政策局長     濃野  滋君        通商産業省基礎        産業局長     天谷 直弘君        通商産業省機械        情報産業局長   熊谷 善二君        資源エネルギー        庁長官      橋本 利一君        資源エネルギー        庁長官官房審議        官        武田  康君        中小企業庁長官  岸田 文武君        運輸省船舶局長  謝敷 宗登君        運輸省自動車局        長        中村 四郎君        運輸省航空局長  高橋 寿夫君        海上保安庁次長  間   孝君        郵政省電波監理        局長       石川 晃夫君        郵政省人事局長  浅尾  宏君        労働省労政局長  青木勇之助君        労働省労働基準        局長       桑原 敬一君        建設省住宅局長  山岡 一男君        自治省行政局長  山本  悟君        自治省財政局長  首藤  堯君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        郵政省貯金局次        長        小山 森也君        日本専売公社臨        時制度問題対策        本部長      後藤  正君        人口問題研究所        所長       篠崎 信男君    参考人        日本輸出入銀行        総裁       澄田  智君        中小企業退職金        共済事業団理事        長        渡辺 健二君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十二年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十二年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十二年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 小川半次

    委員長小川半次君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  総予算案審査のため、本日、日本輸出入銀行総裁澄田智君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小川半次

    委員長小川半次君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  4. 小川半次

    委員長小川半次君) 次に、昭和五十二年度一般会計予算  昭和五十二年度特別会計予算  昭和五十二年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  それでは、これより質疑に入ります。玉置和郎君。
  5. 玉置和郎

    玉置和郎君 総括質疑に立たしていただきまして、本当にありがとうございます。お礼を申し上げます。  そこで総理ギリシャ、これは私は、ギリシャという国はソクラテスとかプラトンとか出た大変りっぱな国でありましたが、ギリシャがやがて滅んでいくときに、どうもやっぱり現在の日本に似たようなところがありますが、現在の日本の状況を踏まえて、ギリシャとのこの関連、あるいはまた、ローマもまたやがて滅んでいきますが、どうもやっぱり最近の日本と似ております。そのギリシャ崩壊ローマ崩壊、その背景がこの日本とよく似ている点、どういうふうに御理解をされておりますか、お聞きしたいと思います。
  6. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国におきまして、おごる平家は久しからずと、こういうことが広く言われておりますが、私はギリシャの場合にはそういう状態であったと、こういうふうに思うんです。ギリシャ自体が決して弱体化いたしましてスパルタとの戦争に負けたと、スパルタギリシャを滅ぼしたということでなくて、もうギリシャ自体に、あの強大な勢力を誇ったその国民の中におごりがあった。また政権の中に濁りが出てきておる。もう自殺的な傾向をたどっておったと思うのです。そのとどめを刺したのがあのスパルタである。そんなような感じがしてならないのです。まあ歴史家も大方そういう見方をしておるんじゃないか。私はローマ興亡を考えてみましても同様なことがあると思いますが、しかし、ローマのば合におきましては、パンとサーカス、コロシアムということが言われるわけであります。これがローマ滅亡の象徴的な原因であるというふうに言われておりますが、まあ通じまして、私はこの物質社会が非常に繁栄をする、そういう中でこの心に、国民の間に乱れが出てきておる、その象徴的なものはエゴだと。社会連帯というか、人々が助け合い、補い合い、責任の分かち合いと、そういうような精神の薄れ、その辺にあの強大なギリシャ帝国ローマ帝国の滅亡というものが出てきたんじゃないか。そういうことを考えながら私は協調連帯ということを申しておるんです。人間は一人で生きるわけにいかないじゃないか。相寄り相助けて、自分をみがきながら、そのみがいた長所を他人に分け与える、その他人の蓄積を自分で受けとめる、そうして相補い合って、かたい団結をもって、そうして社会をりっぱにする。そのりっぱにした社会の中でまた自分が成長する基盤ができるんだ。一言で言いますと、エゴへの挑戦ということを私は主張しておりますが、まさに私はギリシャローマ興亡史をひもときまして、日本にも気をつけないとそういう傾向が出てきておるということを憂えております。
  7. 玉置和郎

    玉置和郎君 総理、いまお話しのとおりでありますが、私の見解を少し述べますと、そのギリシャの末期でアテネとスパルタ争いが起こりますね。そうして三十年間紛争が続くわけです。それはちょうど日本労働と資本に分かれて二つ国民がそこにでき上がっておる。ツーネーションズができ上がっておる。そしてその争いの中に、ギリシャの方はどうなっていくかといいますと、その争いに飽き飽きした市民層が、極端な個人主義に走る者と、極端な世界市民主義に走る者とが出てくるわけですね。ここにも二つ国民ができる。そうして政治家はどうかというと、とにかく選挙に勝たなきゃいかぬからといって、大衆に迎合し迎合し迎合し、さらに迎合していく。その政治家の中に、また当選せんならぬために扇動政治家というのが出てくる、デマゴーグをまき散らかす、そうして大衆に迎合する。結局、民主政治衆愚政治に成り下がってしまって、そうしてギリシャが滅んでいくのです。ローマはどうかといったら、このローマはけんらん豪華な文明を築きながら、人間の本能である欲情に負けてしまって、裸体文明をつくるんです。そうしておふろの、あの浴場文明をつくるんです。そうして滅んでいくんです。いまの日本のポルノのはしりです。フリーセックスのはしりです。こういうことを考えると、余りにも最近の日本に似ておる。その辺の理解はどうですか。
  8. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私もギリシャローマ興亡史をひもといてみるときには、これは日本の世相というものは心配せずにはおられないんです。やっぱり私は日本のこの物質文明というものが、もう急速に思いがけないというような形でやってきた。そういう中で、物、物、物というか、金、金、金というか、そういうことが、これが人生だというような感じになってきておる。この心の荒廃、そういうものが高度成長の中に、その裏側に出てきておる。それが第一あたりまえだというような風潮になってきておる、そこに私は非常に大きな問題があると思うんです。私はもう政治家責任は非常に大きいと思うんです。本当に国家国民のために考えまして、それじゃならぬということ、これを言うことは私は勇気があることだと思うんですよ。みんなそれは自由放任というか、自分勝手の行動というものをやりたがっておると思うんです。しかし、それじゃ世の中は成り立たないし、世の中は続かないんだということを言うことは、これは私は勇気のあることであると思うんです。あるいは私は、世の中というものはこれからだんだんだんだん厳しい世の中になっていく、そういうようなことを率直に言う、これも私は勇気のあることだと思います。しかし、それを言ってのけるということ、これは私は国家国民のために本当に忠実なゆえんである、そういうふうに考えておる次第でございまして、玉置さんのおっしゃることと、私は全くその点におきましては同感でございます。
  9. 玉置和郎

    玉置和郎君 総理、このギリシャにしてもローマにしても、建国当時は大変な理想を持っておった。そして一つの理念を持っておった。精神的原型を持っておった。それが崩れていくんです。そこで、私はこの日本民族という、理念精神的原型、それはやっぱり建国精神の中にあると思うんです。二月十一日が建国記念日になってもう久しい。にもかかわらず、なかなか公式行事がやれない。この建国記念の、建国精神というものについて担当大臣藤田さんにお聞きしますが、どういうふうに理解しますか。
  10. 藤田正明

    国務大臣藤田正明君) 建国精神ということにつきましては、これはいろんな解釈があろうかと思います。  まず第一に、国なり民族なりというものが興り、そうしてまたそれが滅びていくというのは、世界人類史世界歴史の中にあるこれはもう厳然たる事実であります。しかし、興るときにはそういうふうな興るべき必要なものがこれはあった。それがために国は興ってき、民族は勃興してきた、時代の要請がそこにあった、こういうことでございます。私はこの建国精神ということが、現在の日本のいろいろな諸制度、物の考え方民族の中にいろいろな形で存在し、また統一をされていないところに不幸があるというふうに思っております。一口に言って建国精神は何だと聞かれますと、答え方はいろいろあるわけでございますが、しかし現在の民族の希求するところの、世界が平和であり、そうしてまた、ともに友好に世界じゅうがやっていかなければならぬ、これはもう新憲法下にうたわれている第九条の冒頭の精神と一緒だというふうに考えております。
  11. 玉置和郎

    玉置和郎君 総理、二月十一日に建国記念日を決めたというのは、これは政府審議会で決めたわけです、日にちを。それはなぜかといったら、この建国精神というのは大和の精神、いわゆる八紘為宇です。これについて、エール大学のパール・S・ピースという博士が、その著書の、日本古典精神というのを書いていますが、その中で、日本民族が二千年も前にすでに国連憲章にうたわれている共存共栄精神をうたい上げていることに驚嘆をしておるのです。そうしてまた、われわれの先輩でありました故清瀬一郎先生が、戦犯のあの裁判の中で、八紘為宇について聞かれたときに、八紘為宇というのはユニバーサル・ブラザーフッドだと、世界人類すべてこれ兄弟なんだと、だから世界平和の実現を目指したものであるという説明をしておるのです。これは国連憲章に全くぴたっとしておるのですよ。ただ、戦前のものは何でもかんでも悪い、戦争につながったんだと、そうしてこれを葬り去ったいろいろな戦後のにせ学者たちのしわざに対して、私ははなはだしい怒りを持っておる。そのことを建国記念日賛成討論に立ったときに言いました。いまこれを振り返ってみて、私は建国精神というのは間違っていない、国連憲章そのものだと、しかも二千年以上前にこれを日本民族はうたい上げたということに誇りを感じなければいかぬ。それなのに、なぜこれを記念行事をやらないのですか。もっと政府が腰を入れて世界に向かってやるべきじゃないですか。そして平和国家のこの理想をわれわれの先祖が持っておったんだということを、公式行事政府はなぜやらぬですか、その点を聞きたいです。
  12. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、建国精神、これば日本民族はまあ元来狩猟民族であり、あるいは農耕民族であり、つまり一人で生活をするという体系が歴史以前においては相当続いたと思うのですよ。それじゃ能率は上がらない。これは集落をつくり、あるいは社会をつくり、そういう中で相共同し、相助け合い、そういう仕組みでもっと能率のいい生活ができるんじゃないか。つまり、それこそ共同、協調連帯というか、そういう考え方、その仕組みとしての日本国というものが考えられた、そういうふうな理解を持つわけであります。したがって、その考え方、今日のようにこれはもう科学技術が発展して、ワシントンまで十三時間で行けるというようなことになれば、これはまあ当時の環境から考えられた小さな日本社会というものは、これは押し広げて、もう宇宙全体に通じてしかるべきものである。そういう認識を持っておる次第でございます。  その建国の日をわが国民として記念し、相祝い合うということは、これは私ばもうわれわれ自然の国民感情であってしかるべきである、こういうふうに考える次第でございます。そういう日を持つということ、それは国ができたといういきさつを考えるいいよすがでもあり、また同時に、私は非常に貴重なのは、それから日本の国がずっと今日までたどってきたいきさつというものを回顧するというよすがとしてきわめて意義の深いものである、こういうふうに思うわけであります。建国記念日、これが制定されたということを私は喜んでおるわけでございますが、これをいかに行事として行うかということにつきましては、私はもう本当は、一番私が好ましいと思うのは、津々浦々国民がこぞって盛り上がる、そういう形でこれをことほぐという形、そういう形になることが非常に私はいいんじゃないか、こういうふうにも思いますし、また国家としてこの儀典を、儀式を行うかどうか、この問題はまた玉置さんなんかとも十分相談してみたい、かように考えます。
  13. 玉置和郎

    玉置和郎君 私はいささか失望ですよ。総理ね、現在国民の間に、ことしの二月十一日には、全国神社が八万あるんです。八万のうち約六割、五万近い神社が実は氏子を集めて建国記念日を奉祝したんです。だから、去年と比べて大体倍以上の者が集まっておるんです。三百万以上参加したでしょう。全国津々浦々ですよ。それなのになぜ政府が――政府というのは国民政府ですよ、あなたの政府国民政府ですよ。しかも政府が提案をして国会で決めたものを、なぜ政府公式行事をやらぬですか、どうですか。
  14. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は別に否定しているわけじゃないんですよ。しかし、私が非常に好ましい姿だと思いますのは、そういうきわめて意義深い日でありますので、その日を回顧し、またそれからずっと二千有余年続いてきたわが国の歴史を振り返ってみる、こういう日とするということはきわめて有意義である、こういうふうに考えるわけです。その考え方国民全体に浸透して、国民全体が、さあみんな旗を立てて、そしてその日、しようじゃないかと言って盛り上がるような形になること、これが私はもう理想的じゃないか、こういうふうに思うんです。それと相並んで、国家国家としての行事を行うかどうかということにつきましては、なお玉置さんなんかは非常にそういう問題の権威者でございますから、ひとつその方法について、また考え方について相談をしてみたい、こういうふうに申し上げておるんです。相並行してやるかどうかということ、しかし一番基本なことは、もう一人一人、一家一家が旗を掲げ、お赤飯を炊いて、そしてきょうは建国の日だ、ここまで日本の国は続いてきた、その歴史はどうだったか、そういうことを考えてみる、そういう雰囲気なしに国だけがやったんじゃ、これは私はその意義は非常に薄くなると思うんです。まず私は、国民的な盛り上がり、それと並行して国としての儀典を行うかどうか、この儀典を行うかどうかという点につきましてはまた御相談をいたしたい、こういうことを申し上げておるんです。
  15. 玉置和郎

    玉置和郎君 総理、政治というのはやっぱり指導性がなけりゃいけません。国民が盛り上がるのを待ってと。一億一千万人の国民が皆賛成なんということは、これはあり得ないです。これは全体主義、権力主義国家ならまあそういうこともあるでしょう。しかし、この民主政治の中にはどんないいことでも反対者があるということですよ。そのために民主政治の鉄則というのは少数意見の尊重なんですよ。それで寛容の自由主義の精神なんです。しかもこれだけ国会で決まって、そうして二月十一日と決めたことを国民一人一人が旗立てて赤飯炊いて祝うまで待っておったら一体どうなるんですか。少なくとも、公式行事というのだったら私は一歩譲ります。少なくとも、橿原神宮で建国記念の日をやるときに総理の名代でも派遣をして、そうして建国記念日をことほぐというその姿勢を見せるべきだと思うのですが、どうですか。
  16. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 儀典の形につきましてはいろいろあると思います。いま玉置さんが具体的におっしゃいましたが、そのような行き方というものは、これは私はそうむずかしい問題じゃないと思いますが、あるいはもっと有効な手段があるかもしらぬ。私も就任早々でそこまで考えておりませんけれども、何かひとつ考えてみたい、相談してみたい、かように考えます。
  17. 玉置和郎

    玉置和郎君 確認いたしますが、総理のもとで、恐らく藤田さんが担当することになると思いますが、そういう検討委員会というか、そういうものをやっぱりつくられるという御意向だと承っていいですね。
  18. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ委員会をつくるがいいか、とにかく有識者の御意見等は承った上、その有識者の中で権威ある玉置さんの御意見は特に承ることにいたします。
  19. 玉置和郎

    玉置和郎君 次に外交。  参議院から出た初めての外務大臣なんで、あなたとあわ飛ばしてやり合う気はありません。そこでまずお聞きしますが、人権外交の本質というものです。わが国にはわが国の人権外交の本質があると、こう思うのです。私は総理、他国のことまで人権で云々するのは間違っておるという考え方なんです。カーターさんのやり方も、あれ間違っています。それは結構ですよ、アメリカはアメリカでやるんですから。それだけに、私の人権外交の日本の本質というものは、少なくともわが日本人が、同胞が海外において、そうして人権が抑圧されておると見たときに、政府が主導権を発揮してその人権抑圧のその責め苦から解放してあげるというのが人権外交のわが国の本質だと思うのですが、どうですか。
  20. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) カーター大統領が、人権は尊重されなけりゃならぬ、地球のすみずみまでそうなければならぬと、こう言っておることにつきましては、私も全くこれは同感なんです。しかし各国とも、これは社会状態、政治状態、もう本当に千差万別という状態でありまするから、同じようなわけには私はいかぬと思うのです。ですから、その国々が置かれておるその環境に応じて物差しを当ててみなければならない、こういうふうに思いますが、要は、私はこれは人類の願いとして、地球のすみずみまで本当に個人の人格というものが尊重されるということは望ましいと思います。しかし、これをさあ地球上に全部実現、直ちにできるかというと、そういうわけにはなかなか、これは国々の事情も違いまするし、いけないことで、まずそういう問題について考える立場にあるのはその国自体だろうと、こういうふうに思うのです。他国が言われるから、言われる前に自分の国でそれは考えなければならぬ問題だ、こいうふうに思います。アメリカとしては、恐らくそういうようなことはよく承知しておると思いますが、相手の国、その置かれておる状況に応じて、そういう人権、自由が尊重されるという状態ができるような協力をしてやりましょう、そういう趣旨だろうと、こういうふうに思うわけでございますが、要はそういう人格の尊厳、自由というものが守られるという状態が、これは実現されるというところにまあ問題があるわけでありまして、その目標というか、もう富士の頂といいますか、そこへ到達する、その道は、あるいはてくてく歩いてずいぶん時間のかかるという、そういう国もありましょう。あるいはヘリコプターで行っちゃう、そういうようなもう近い時間で実現されるというような国もありましょう。まあいろいろ手段、それからまあプロセス、それから時間のかかり方、これはずいぶん違うと思いまするけれども、問題はそういう頂に到着できるということがこの目標であって、私はそれに到達する道筋等につきましては、これはまあいろいろの形があってしかるべきであるという見解でございます。
  21. 玉置和郎

    玉置和郎君 外務省にお聞きしますが、現在中国大陸でとらわれておる日本人、その状況についてお聞きします。
  22. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) お答え申し上げます。  現在、中国には四名の日本人がとらわれておられまして、そのうち二名の方はいま拘禁中でございます。二名の方は刑期を終了しておられると、こう聞いております。
  23. 玉置和郎

    玉置和郎君 現在上海に入っている――刑務所に入っている中島正義さん、深谷義治さん、この方は上海の刑務所に入っていますね。その方と、その日本における家族との接触はどうですか。
  24. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) いま拘禁中の中島さん及び深谷さんの二名につきましては、わが方の上海の総領事館員を、年に二度ばかり上海監獄に派遣をいたしまして、両人を見舞っておりますが、その都度両人の状況を在日の留守家族に伝えておるところでございます。在日留守家族の状況につきまして、陳情等で外務省に来訪される親族の方を通じまして、十分状況は承っておるところでございます。
  25. 玉置和郎

    玉置和郎君 石原長官、きょうあなたに質問予定はないんですが、あなたは中島さんの家族の模様を一番知っているはずです。私たちは石原君を中心にして毎年三十万円ぐらいずつ家族に届けておるんですよ。その状況を一回話してください。八百長じゃないんだから心配しなさんな。
  26. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 非常に困窮されておられます。何と申しましょうか、どこへすがっていいかわからず、本当に孤立した形で、本当に、お宅にも伺いましたけれども、お話を聞いて涙を禁じ得ない感じがいたしました。
  27. 玉置和郎

    玉置和郎君 これは総理、石原君の提唱なんですよ。ぼくらに二万円ずつ出せと言って、毎年やっているんです。いいことやっておるんですよ、彼は。りっぱな大臣です。  そこで、二人の刑期満了の日本人がいまだに行方がわからないというのは外務大臣、どういうことなんですか。
  28. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 四名のうち刑期の終了いたした方が、三木さんという方と立花さんという方がおられるわけでございます。この両氏につきまして、現在消息が本当にはっきりとはっかめにおらないのでございますが、中国側の連絡によりますと、三木さんは黒竜江省に、また立花氏は広東省に居住しておるということでございまして、政府といたしまして中国側に対しまして、これら両人の状況につきまして、今後とも随時照会を行うつもりでございますが、留守家族等の希望に沿いまして、早期帰国が実現されるよう努力をいたしたいと考えておるところでございます。中国側の出国許可がおりますように期待をいたしておるところでございます。まだ実現をいたしておらないのが実情でございます。
  29. 玉置和郎

    玉置和郎君 日本人がビザを持っていって向こうへ渡ってつかまって、刑期が満了したらなぜ帰さぬのですか。なぜ日本はしっかり交渉しないんですか。どこに人権外交があるんですか。もう刑期が十分満了したんですよ。家族が本当に泣きながら待っておるのになぜ帰さぬですか、これ。どうですか。
  30. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 当方といたしまして鋭意努力をしているところでございます。まだ実現しておりませんのはまことに遺憾、残念に思う次第でございます。
  31. 玉置和郎

    玉置和郎君 ソ連にいまつかまっておるのは何人ですか。
  32. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 十三名と聞いております。
  33. 玉置和郎

    玉置和郎君 このソ連の交渉も非常に手ぬるい。もうこれ以上言いませんけれどもね、鳩山さん。これはだめですよ、あんな交渉じゃ。  それから次に、北朝鮮におるところの日本人妻、これに対してどうですか。
  34. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 北朝鮮におります日本国籍を持ちました、いわゆる日本人妻の里帰りの問題につきまして申し上げますと、外務省といたしましては、家族等から消息の調査依頼がございますと、日本赤十字社を通じまして北朝鮮にその意向を取り次いでおります。現在まで十回、百八十五名について安否を照会をしておるのでございます。里帰り問題につきましては、まず本人が里帰りを希望していることが前提となるわけでございますけれども、国内居住家族からの要望もありまして、政府としても本人や家族の希望が一日も早く実現されるよう望んでおるところでございます。したがって、今後の安否調査の成否を見つつ、日本赤十字社を通じまして北朝鮮側にその意向を取り次ぐ予定にしておるところでございます。
  35. 玉置和郎

    玉置和郎君 国務大臣の皆さんね、北朝鮮におって、そして現在日本国籍を持っておる女性がやっぱりたくさんおるんですよ。二千人くらいおるんですよ。それが羽があったら鳥になって飛んで帰りたいという切々たる手紙をよこしている。それなのに一人も帰れない。そして公式な接触は、もちろん国交がありませんからできませんが、赤十字社で幾ら調べても北鮮の日本人の妻の状況はわからないというこの現状、一体どのように認識されておるのか、閣議の中でも一回御相談をいただきたい。お願いしておきます。  それから、中国大陸の問題でもう一つですが、この日本が戦いに負けたとき、大陸で、日本人の孤児が当時のお金で五百円、一人。男は五百円、女は八百円、そしてひどいのになったらジャガイモ一俵と交換をされておる。その孤児がもうすでに三十歳になったり、あるいはまた三十五、六歳になっておる。そして自分日本人であるというはつきりした自覚ができておって、また証明もできておる。にもかかわらず、田川誠一さんに言わしたら、中国大陸の社会情勢、政治情勢の複雑さから言葉にも出せないで悩んでおるということを田川誠一さんが言った。これに対して、総理、あなたと同じ名前の福田実さんという方が非常に熱心にやっておられる。私財をなげうってやっておられる。りっぱな日本人がおりますよ。それなのに、政府は一体何をやっておるのですか、お聞きしたい。
  36. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいまの中国におきます日本人の孤児の問題でございますが、約二千五百名くらいあられるんじゃないかと想定をされております。これらにつきましては、わが方の在外公館におきまして、これらの方の肉親との連絡をとること。肉親を捜さなければなりません。これらにつきまして全力を挙げて応対をしておるところでございまして、その状況は、あるいは新聞等にも報道されましたけれども、一生懸命何とか肉親との連絡をとれるように努力をしておるところでございます。
  37. 玉置和郎

    玉置和郎君 厚生大臣、この問題、あなたのところ、どう。
  38. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) お答えをいたします。  中国孤児の問題は非常に大きな社会的な問題でございます。人道上の問題でもあります。しかし、これは厚生省だけの問題でなくて、国全体としていろいろな関係もございますので、人道上の問題からこれらに真っ正面から取り組んで、それらの人を助けていくという方向で最善の努力をしなければならないと、さように思っております。
  39. 玉置和郎

    玉置和郎君 人権問題で最後に聞きますが、現在サハリンに、かつて日本人であった朝鮮人が戦争中に強制連行されて、そうしてほとんど炭鉱ですが、炭鉱労務者として従事してきている。一九四六年に米ソ協定で日本人の引き揚げがやられた、そのときにもこの朝鮮人は問題にならなかった。五二年のサンフランシスコ条約、これまではこの朝鮮人の人たちは日本人だった。しかし、日本人は帰れたが、日本政府の意向で連れていかれた四万三千人のこの朝鮮人の人たちは、これはいまどうなっておるのですか。
  40. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) いまおっしゃいましたように、サハリンには現在四万人余の朝鮮人がおられると聞いております。そのうちで、五五%の方がソ連の国籍になっておられないということでありまして、無国籍の者が一0%というような状態であると聞いておるわけでございます。これらの方々のうちには、帰還を希望する方があるということをかねがね承っておりますが、サハリン在住の朝鮮人の人数、国籍、帰還希望者等の人数、国籍等の実態をまだ正確に把握し得るに至っておらないのが実情でございます。一昨年の秋ごろから、サハリンの帰還希望者が、現地の当局から、日本国政府の入国の許可さえあればソ連側としては出国を許可するという説明を受けているということが伝えられておるのでございます。よって、政府としましては、積極的にこれらの帰還希望者の入国審査を行ってまいりました結果、現在のところ三百三十七名に対しまして入国を許可し、四十七名について目下入国審査を行っている実情でございます。なお、現在までに、このうち三家族三名の帰還が実現しているという状況でございます。
  41. 玉置和郎

    玉置和郎君 これは各閣僚皆承知しておいてほしいのは、人権外交と言ったらこういうことなんです。金大中さんは、これはよその人なんです。その金大中さん、野党の人がわんわんわんわん言っておるけどね、これはもう間違っておるんであって――これは野党に向かって言うんじゃないんで、大臣にやっぱりよく聞かしておかなきゃいかぬ。それは、こういう日本人をまず救って後に話をすべきなんで、日本人の問題をちっともやらないで、金大中がどうしだこうしたとか言う。それはやっぱりおかしなことなんです。それは私に言わしたら選挙用なんだ。もっとやっぱりわが同胞の人権を救っていくという、その基本が政府にあったときにこういう問題はおのずから解決できる。それだけに、一連のいまのこうした日本人の人権が海外で抑圧されている問題で、外務大臣が中心として答弁がありましたが、総理、最後に、どう思いますか。
  42. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 政府といたしましては、これらの、海外におきまして、あるいは海外の法を犯して拘禁された者あるいはその他出国できないというような方々につきましては、極力今後努力をいたしまして、わが日本人の人権の保護.につきまして全力を尽くしたいと思います。
  43. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ごもっともなお話でございますので、全力を尽くしてそのようにいたしたいと存じます。
  44. 玉置和郎

    玉置和郎君 ベトナム、ラオス、カンボジア、これがいま社会主義国家になっていっていますが、この三国に対する民間投資と政府の援助、この総額、ちょっと聞かしてください。
  45. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 政府委員から答弁させます。
  46. 菊地清明

    政府委員菊地清明君) お答えいたします。  政府関係の援助と、それから民間投資、それから延べ払い等ございますけれども、主としてASEANの五カ国に限りまして申し上げますと、(「ベトナム」と呼ぶ者あり)ベトナムに関して申し上げますと、ベトナムに関しましては一九六0年から七五年の間に一億五千九百万ドル、それからラオスに関しましては五千四百万ドル、カンボジアに関しましては四千六百万ドル、これは政府の援助、それから民間の投資含めてでございます。
  47. 玉置和郎

    玉置和郎君 このあなたのところからもらった資料ね、これによりますと、南ベトナム、ラオス、カンボジア、これで相当な額が投資をされております。なぜこういうことを聞くのかと言いますと、この自由主義の体制にあった国が、ある日突然と言うよりも、社会主義体制の国に入ったら、世界歴史が教えておるのは、いままでの債務は全部継承しないということなんです。継承国家論をとらない。ごれはソ連もそうだったし北京の方もそうです。そうすると、この日本が投資をしたところはみんなそれがパアです。この事実は外務大臣認めますか。
  48. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいまおっしゃいましたように、社会主義国になったときに債権債務の引き継ぎが行われるかどうかという点につきましては、あるいはそのような場合もあったかと思います。しかし今回の場合にりきましては、ベトナム、ラオス、カンボジアにつきまして、この債権債務の処理につきましてはまだ結末が出ておりません。わが国といたしましては、当然引き継ぐべきものであるということを前提といたしまして、この債権債務の処理に当たりたいということで目下折衝中でございますので、この結果は、まだいまここで申し上げる段階ではないのでございます。
  49. 玉置和郎

    玉置和郎君 ぼくは、鳩山さん、あなたと議論するつもりはないけれども、ベトナムだってラオスだってカンボジアだって、いま政権をとっておる連中は世界に向かって宣言しておるじゃないですか、報道されておるじゃないですか、現実に。そういう債務は継承しないと、そういう以前のものは継承しないと。だから、これは日本がいかに努力しようとも、世界歴史の中で、ベトナムだけが、ラオスだけが、カンボジアだけがという、そういうわけにいかぬです。恐らく私は、継承国家論をとらないと。現在の中国も一緒ですよ。もう一回聞きます。
  50. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ベトナムとは国交を持っておるわけでございまして、したがいまして、私どもまだそのように完全に承継が行われないということを確定的に考える必要はないと思いますし、また、国際機関からの借り入れ等もあります。これはこれからの継続的な借り入れという問題も起こってまいりますので、現在におきまして確定的に承継は行われないというふうに断定はできないと思います。
  51. 玉置和郎

    玉置和郎君 現在のベトナム政府との間で、これからの日本との交渉の中でそれは引き継いでほしいという日本の願望、それは日本が伝えております。それで向こうも、それはこれからの話し合いの中に明記してもいいというふうな表現がありますが、実態はもう皆接収されておるんです。実体はないんです。その点をぼくは言っておるんですよ。  そこで総理、こういうことなんです、このASEAN五カ国に対して、この外務省からもらった資料によりますと、インドネシアに民間と政府の方で合わして一兆二千億、それからタイは五千六百七十億、シンガポールが千四十億、マレーシア千五百億、フィリピン三千四百億、ASEAN五カ国で二兆三千億ですよ。これがもし社会主義国家になった場合に、日本皆パアです。大変なことですよ。そこへ持ってきて、これはだれに聞いたらいいのかわかりませんが、通産大臣かもわかりませんが、社会主義国家になった途端に日本の貿易額ががた落ちするんです。それの一番端的な例は中国です。八億の人民がおる。あれだけの広大な面積だ。日中国交が正常化したら大変に日本は経済が潤うという認識だった。ところがやってみた。現在どうですか。現在千六百万の人口しかない中華民国と比べたら、中華民国の方が三十五億を上回っておる、三十五億ドル、米ドルで。中国は三十億ドル。そして北朝鮮と韓国はどうですか。韓国は四十七億ドルを上回っておる。北朝鮮は、最近は日本が売ったものもよう払わない。そして一件について三千万円までという取引の制限をいまつけられておる。これはあたりまえのこうです。払わないものに対してもっと私はつけたらいいと思う。一件一千万円ぐらいにすればいい。そして、このキャッシュ・オン・デリバリーですよ。信用なんてありゃせぬのだ。これが社会主義国家の実情なんです。だから日本の国是は、周辺国家社会主義国家になったら困るということなんです。この点はどうですか、総理
  52. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国は強大な工業力を持つようになってきた。持たんとすれば強大な軍事力まで持ち得る立場でございますが、その強大な軍事力は持たない。よって生ずるところの余力、これを世界のおくれた国々、そういう国々の自立に対しまして協力をするという立場をとっていくことをいま国是といたしておるわけなんですが、まあ協力と言いましても、おっしゃるように無償で協力する場合もありまするが、それよりも大きいのは有償で低利長期の融資をするというようなケースが多いわけなんです。そういう際には、やっぱり相手国の国情、果たして融資した国民の金を返してもらえるのかもらえないのか、そういうような相手国の国情ということをよほどこれは慎重に考えて、その上で決断をしなけりゃならぬ、こういうふうにいま考えておるわけであります。幸いに、いま御指摘のASEANの諸国、これは自立の精神に燃えておるわけであります。そしてその精神の上に立って、そして具体的な計画ができて、そして日本に協力を求めるというようなことがありますれば、もとよりその一つ一つの計画をよく調べてみなけりゃならぬし、また国国によって国情も違いまするから、その国情というものも調べてみなけりゃなりませんけれども、私はそういう性向を持った国々に対しましてはこれは極力援助をしなけりゃならぬ、援助をすることがわが国の責任である、そういうふうな見解でございます。
  53. 玉置和郎

    玉置和郎君 外務大臣にお聞きしますけれども、これはきのうの新聞ですか、「中ソ友好条約は事実上廃止」という書き出しで、北京二十六日共同、廖承志氏が言明とこれは書いてある。その中で「中ソ友好同盟条約は既に事実上廃止されており、立ち消えになっている状態だ。フルシチョフ体制になった二十年前からそうである。」というようなことを言っていますね。私はおかしいと思うんですよ。中華人民共和国も主権国家ならばソ連も主権国家ですよ。その主権国家同士が一九五〇年に中ソ同盟条約を結んだ、三十年間有効だと。一年前に一方的に通告しなかった場合には五年間さらに継続されていくと、ずっと永久に。その主権国家同士が結んだこの条約が、一方で空洞化したとか、事実上廃止したとか言うそういう国と何であわてて日本が日ソ友好条約を結ばなければいかぬのですかね。私はどうも解せない、あなた方の答弁を聞いておって。どうですか。
  54. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 日ソですか。
  55. 玉置和郎

    玉置和郎君 いや、そうじゃない、日中だ。
  56. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ソ連との間にはそのような同盟条約の関係があるわけで、この条約の有効期限はまだ二年間あるわけでございます。その点につきましては、中国側も従来から、これは名目だけ残っておるけれども実体は実はないんだというような表現を前から言われておるところでございます。  また、この中国と日本との平和友好条約の締結問題につきましては、すでに四年半前に路線が引かれておるというふうに私どもは認識をいたしておりまして、その日本と中国との共同声明によります所定の約束に従いまして、私どもは機が熟せば、また日本と中国がお互いに満足し得る条件が整えば条約は締結すべきであるというふうに考えておるわけでございます。
  57. 玉置和郎

    玉置和郎君 鳩山さん、私はこういうことを中国が平気で言う限りは、条件が整っていないと見るべきです。そうでしょう。中ソの間に同盟条約を結んでおって、まだ有効期限がある間に、一方的に事実上はもう廃止したも同然だとか、空洞化したとかいうふうな国と何で日本は条約を結ばなければならぬのか。また向こうの都合が悪くなったら、あんなものは知ったことじゃないと、あんなものは事実上廃止したんだと言われたらどうなるんですか。どうですか。
  58. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 世界の動きというものは非常に変化をしてまいるものでございますし、また中ソの同盟条約というものは大変昔のものでございますので、そのものがすべての変化を妨げるということも非常にそれもまた余りにも時代の変化というものに応じ得ないのではなかろうかというふうに考えるわけでございまして、二年間待てばこの条約関係もなくなるかどうかという問題もありますけれども、しかし、もう余りにも古い条約につきましては、そのような情勢の変化というものを考えてもよろしいのではないかというふうに考えます。
  59. 玉置和郎

    玉置和郎君 それはね、鳩山さん大変なことですよ、あなたそんなことを言ったら。そんなことを言ったら、日本と条約を結ぶ諸外国は日本を信用しなくなりますよ。条約というのはそんなものでないです、約束というものは。そうしたら、中国がそういうふうに思うんなら、ソ連に対して意思表示をすべきです、これは。かつて大平さんがやったじゃないですか。日華平和条約はこれは機能を停止したと言ったじゃないですか。中国は当然それをやるべきですよ。そういうものをやってから初めて日本は考えていくべきなんです。それが順序じゃないですか。理屈はそうじゃないですか、どうですか。
  60. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいま御指摘の点は、これは大変大きな問題であるということは十分認識をいたしております。で、その問題につきましては、やはり日本としてもはっきりした考え方を持って臨むべきであるということにつきましては、御趣旨のとおりでございます。
  61. 玉置和郎

    玉置和郎君 総理、なぜこういうことを言うかといったら、これは現在の日ソ間のいろんな問題の間にこれがあるんです。あの条約の中に、双方合意の上にということが二回うたわれているんです、中ソ双方合意の上に――日本に対するということなんです。いまの日中平和友好条約とかそういうものは、中ソの間の合意の上でないんです。これは中ソのバランスを壊すというソ連の考え方が――わしらもソ連が好きじゃないですよ、ソ連もう大きらい、この国は。大きらいだけれども、それがあるということを前提にして、そうしてソ連というものは日中平和友好条約というものを斜めに見ながら、いろんないたずらをしておるというこの認識に立たないと、この日ソの問題は解決をしないということですよ。  そこでお聞きしますが、現在の日ソ漁業交渉、これは農林大臣来たかな――それなら来てからに質問しましょう。  それで、そうしたら、尖閣列島の帰属をはっきりさせないで、外務大臣、これやっておるから北方領土の交渉はストップなんですよ。交渉なんというのは、北方領土の帰属をはっきりしない、中国は北方領土はわがものだと言っている、日本はこっちのものだと言っている、ちょうど北方領土と一緒ですよ、尖閣列島は。それだけに、この尖閣列島の帰属をはっきりしないで北方領土の交渉はあり得ないですよ。これが一つ。  それからもう一つは、ソ連海軍が、日中平和友好条約を言い出してから、日本の列島の周辺でいろんなことをやっている、それについて防衛庁は確かに知っておるはずです、お答えをいただきたい。
  62. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 先生も御承知のように、極東ソ連海軍というのは、過去十年間を見まして非常にトン数がふえております。もちろん隻数もふえているわけですが、このソ連海軍の動向として私どもがとらえておりますのは、まず極東におきまして非常にトン数がふえたということ、これはソ連の海軍が外洋艦隊に変質しているということだろうと思います。同時にまた隻数は、この十年間を見ますと、六百二十隻から七百五十五隻、トン数の増に比べて隻数の増は幾らか少ないわけでございますが、これはいままで沿岸監視用の艦艇が大型の艦艇に変わっているという傾向だろうと思います。したがいまして、御承知のように七五年のオケアン演習、これは約五十隻の艦艇が参加いたしまして日本の太平洋岸で演習を実施いたしましたが、これが一つの外洋における作戦を実施できるような態勢に入ったということだろうと思います。同時にまた監視体制というものも強化されておりまして、従来から太平洋あるいは日本海におきます海洋調査というのは非常に力を入れておったところでございますが、最近、昨年あたりの動向を見ますと、あの対馬には常時年間を通じまして二百日以上、情報船のようなものを定着さしておりますし、そのほかに日本の周辺に近接してまいりまして、海上自衛隊の演習の状況を観察したり、あるいはまた海上自衛隊の基地周辺等に近接してまいりましていろいろな状況を調査しているというような傾向がうかがわれておる次第でございます。
  63. 玉置和郎

    玉置和郎君 局長、はっきりもう一つ言うなら、ミッドウェーの北、直径五百四十キロのところにあれ撃ち込んだでしょう、ミサイル、八基ね、MIRVにしたら六十四発かな、あの状況と、それからこのピケット艦的な、どのぐらいのなにが日本を取り巻いておるか、それを皆に教えてあげてください。これ、野党にもよく教えてあげてください。
  64. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) ソ連が実施いたしておりますMIRV化されました長距離ミサイルの実験というものは、ソ連の大陸からミッドウェー付近でございますか、その辺に対しまして撃ち込んでおります。つい最近も数隻のいわゆる調査船を配しまして、そこに数発のミサイルを撃ち込んでおります。で、これはことし初めての状況ではございませんで、ここ数年聞そういう状況は続いております。  それから、監視でございますが、昨年の一つ、二つ申し上げますと、情報収集船が房総沖に昨年の五月に出てまいっております。それから若狭沖あたりにも近接してまいってきております。そのほか六月から八月ごろにかけまして五、六隻の船が日本の周辺に来ておるわけでございますが、そのほかに太平洋におきまして常時監視あるいは情報収集、海洋調査、そういう船が数隻、年間を通じて調査に当たっている状況でございます。
  65. 玉置和郎

    玉置和郎君 局長もう一つ、あなた、沖繩の沖の去年の七月六日のソ連の重巡洋艦の演習の状態、これを話して、よく皆聞いてもらいなさい。
  66. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 昨年七月上旬から中旬にかけましてソ連の駆逐艦三隻、それから補給艦等で沖繩の南東海域で洋上訓練を行っております。それから、その途中におきまして七月の十日から十一日にかけまして九州の北西沿岸の海面で演習をいたしております。また、七月十五日には九州南方の屋久島付近海面でわが国に接近してまいりまして訓練をしているというようなことがございました。それが昨年の演習でございます。
  67. 玉置和郎

    玉置和郎君 私は、国会というものは単に政府に対して質問するというような、そんなばかなことやったらいかぬと思うんです。国会議員というのは国権の最高意思を決定するところのメンバーですから、政府をして蒙を開くというのが、これは当然なんだ。それと同時に、国民に対して真実を知らせるという私は大変な義務を持っていると思うんです。だから国会においてこういうことを国民に知らしていく一番いい場所だと、しかも権威のある場所だと、こう思うんでいま言っておるんです。それだけにこの日ソの交渉はこういうことが背景になっておるということがわかってくるわけですね。  そこで、その上に立って漁業問題があるんです。漁業問題だけが特別にあるわけじゃない。中国問題を横にらみにしながら最近特に動いておるこのソ連の動向、これをやつ。ばりしっかり政治家が判断をして交渉に当たらなければならぬというのが私の主張なんです。いま事務官僚が交渉しておりますが、事務官僚で歯の立つようなものじゃない。大変広い範囲から、高い次元からこの漁業交渉に当たらなければならないという。  そこで、私はこの漁業交渉で一番うってつけなのはやっぱり農林大臣だと思うんですよ。日中の正常化のときにあなたは総務会長で私にずいぶんやられた。だから日本にはそういう意向を持っておる政治家がたくさんおるということ、しかも野党の中には少なくても与党はもう大半そうですよ。それだけにそういうことを踏んまえて、現在政権を取っておる与党の議員の中にはたくさんそういうことがある。一たびソ連が無謀なことをやるなら私たちはすぐソ連の攻撃に入る。いまのソ連のやり方はいけない、けしからぬですよ、これは。それだけに当時の日中正常化の党のかなめであったあなたがこの漁業交渉に当たって率先出ていって、そうして高い次元からお話しになるということ、しかも、中国を斜めに見ながらお話しになるということ、非常に私は有益だと思うんで、あなたが出かける意思があるのかないのか、この点お聞きをしたい。
  68. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 玉置先生おっしゃるとおり、日ソ漁業交渉の単なる漁業の狭い範囲だけで、私は日ソ交渉がわが方の要求のとおりうまくいくものではない、やはり総合的な外交の視野、また日ソの経済協力その他を含めて漁業交渉に臨まなければならないと、こういう御意見は全くそのとおりでございます。  私も先般イシコフ漁業大臣と交渉いたしました際におきましても、そういう腹構えで漁業交渉の枠組みを話し合い、新しい二百海里時代の日ソ漁業の将来につきまして話し合いをいたしたわけでございます。いま日ソ交渉は東京とモスクワで行われておりますが、いまだソ連は原則にこだわっております。しかし、私は日ソ友好のかけ橋とも言うべき日ソ漁業のあり方というものは、将来の日ソ友好関係の上にも大きな影響を持つものであると、漁業国であり、かったん白食糧の過半を漁業に依存しておるわが国、また、北海道その他の経済の上から、中小零細漁民がこれに依存しておるということ、これが日ソの友好の将来にも大きな影響を持つ国民的な最大の関心事である、そういう高い立場に立ちましてイシコフ大臣とは話し合いを進めてきたところでございます。また、交渉の現段階におきましても代表のほかに水産庁長官も派遣をし、また重光大使等の御協力を得まして鋭意その打開に努力をしておりますし、外務省並びに農林省からも絶えず代表団と連携を密にとりながらこの打開に努力をしておると、こういう段階でございます。したがいまして、いまの時点で私は再訪ソということを考えておりませんが、イシコフ大臣と私との間で取り交わされたところのあの書簡の趣旨を踏まえて交渉が進められることを強く念願をし、その書簡の精神でやってまいりますれば私は打開できるものだと、このように考えておるところであります。
  69. 玉置和郎

    玉置和郎君 農林大臣としていまの段階では行かれないというのであったら、私は現在のこの官僚機構の者だけに任しておったら問題は解決しませんよ。最近の外務省を見ておりますと、鳩山さんにはなはだ申しわけないですが、一年や二年でぐるぐる交代する大使だとか、それで一年や二年でぐるぐる交代する水産庁の長官に任して何が解決しますか。向こうは十年も十二年も十五年もやっておる。それだけに総理、この際ソ連にはソ連の非常に人的な交流の厚い議員がおりますよ。野党の中にもおります。それから野党の諸君も、まあ与党の中では山田君が一番いいでしょう、山田久就が。あれを団長にして社会党にも御協力を願って、公明さんにも御協力を願って、民社さんにも御協力願って、共産党はソ連とは最近いいのか悪いのかわからぬが、とにかく超党派のそういう応援団というか、出すべきですよ。出すべきです。そして議員外交というものをもっと展開すべきですよ。  たとえば、私があなたの親書を持っていったけれども、親書なんか持っていかなくても私スハルトにいつでも会えるんだ。しかし、たまたま持っていかにゃいかぬというので持っていっただけのことです。だから議員というのはスハルトさんが大統領になる前から私たちは友人なんです。そういうのがたくさんおるはずですよ。社会党にもずいぶんおるはずですよ。だからそういうのを起用して、そして日本国挙げての議員外交、外務省はそのサル回しになればいいんですよ。議員をサルに使えばいい。(「サルとはひどい」と呼ぶ者あり)いやいや、それはサルだって何だっていいじゃないか、お互いに。日本の国のためだったらサルだってネコだっていいじゃないか。(「発言取り消しだ」と呼ぶ者あり)いや、そんなこと取り消さぬでいい、何も。私はそれでいいと思う、私の見解だから。(「いいこと言ってもらうよ」と呼ぶ者あり)いや、そんなことない。それはサルでも犬でもネコでも何でもいい。桃太郎を見てみなさい。サル、犬、キジを連れていった。(笑声)これは物語です、物語。それだけに私は外務省、政府というのはちゃんと本部になって、議員の有効適切に行く人を使ってやっていく、そのためには予算化するという、そして議員を使うということ、それについてどうですか。
  70. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まことに貴重な御意見でございます。私は最近のこの外交の動きを見ておりまして、やっぱり議員間の接触、いわゆる議員外交ですね、これは非常に大事だと思うんですよ。ぜひさようにいたしたいと思いますので、御協力のほどをこちらからもお願い申し上げます。
  71. 玉置和郎

    玉置和郎君 はい。ぜひやっていただきたいと思います。  そこで総理、外交はこれで終わりますけれども、いま話に出ましたスハルト大統領さんのところに行ったときに、ASEANの問題をいろいろ彼は彼なりに総理に伝えてくれと話していました。アジアの心を知る総理ができたんで非常にうれしいということで、何とかお祝いをしたいが何をしたらいいだろうかと、私は友人として相談を受けたときに、極楽鳥をどうだろうと言ったら、彼は極楽鳥、鳥ですよ。そうしたら、極楽鳥はそれは結構ですと、上げますと、しかし、その極楽鳥というのは飼い方がむずかしいんで、日本へ持っていったら二日目ぐらいに死ぬだろうと、極楽鳥を持っていって極楽鳥が二日目に死んだら参議院選挙はどうなるんだろうということで大笑いになって、そこで何がいいんだろうと言ったら、世界の各国から非常に望まれておる珍獣がおると言うんですね。それはコモド島というところにあって、そのコモド島と周辺の二つの島しかない。コモドドラゴンというんです。ドラゴンですから竜ですよ。怪獣ばやりです、いま日本の子供は。そのコモドドラゴンというのは三メートルから三メーター五十ぐらいある、五億年前から生きとるというんです。それを、福田さんなら差し上げていいと言うんです。そのとき大笑いになったのは、かって田中内閣のときにパンダをもらってきた、あれは間違っていますよと、こう言っておった。パンダはおとなしい顔しておるが、あれ人にかみついて人を殺すんだと、それを間違ってもらってきて、そんなことやるから選挙負けるんだ。コモドドラゴンというこの珍獣は大トカゲですよ、それは別名はモニターというんです。非常に警戒心が強い。そしてワニが襲ってきたときに、そのコモドドラゴンを飼っておりますとすぐに騒ぐんですね。そして人に危険を教えるんです。それから大蛇が来たときに、まずそれをかむんです。そういう非常に大事だと。しかも、コモドドラゴンはトカゲですから余りスタイルはよくないですけど、しかし人には非常になつく、えさをくれる人の後には必ずついてくる。人に抱かれてもかみつかない。ちょうど福田総理とよく似ておるんじゃないか、(笑声)と言って大笑いになりまして、そうして、差し上げたいがどうするかということになりました。私はこの際、いろいろ上野動物園に聞きましても、皆欲しがっています。だからコモドドラゴンを総理がおもらいになって、そして民間の受け入れ実行委員会でもつくってそこに差し上げて、そしてまあ幼稚園の子供だとか、皆さんを喜ばしてあげて、それで最後には上野動物園に置いて国民全部に見てもらうという、これどうですか、おもらいになりますか。
  72. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) スハルト大統領のそういう御好意ですね、ぜひこれをお受けいたしたいと、かように考えております。よろしくお取りなしのほどをお願いいたします。
  73. 玉置和郎

    玉置和郎君 文部大臣、幼稚園の公立と私立の違い、これちょっと答えてください。
  74. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) お答えいたします。  幼稚園ば、御承知のように、学校教育法に定める学校でありますが、公の性質を持つものであって、この学校が設置できる者は「国、地方公共団体及び私立学校法第三条に規定する学校法人」に限られるとなっておりまして、私が前半に申し上げましたものが公立の幼稚園でございます。なお、私立の幼稚園につきましては、幼稚園が戦前以来、盲聾養護学校とともに、宗教団体や個人によって設立されていた経緯。それからまた、幼稚園教育に、私立の中の個人立が果たしてきた役割りも非常に高かったということで、学校教育法制定の際、例外的措置をいたしまして、学校法人以外の者も当分の間設置することができると、こうされておりまして、この例外措置が今日まで認められておるわけでございます。したがいまして、国公立と私立の差はそういうところにまず基礎がございます。
  75. 玉置和郎

    玉置和郎君 大田、公立幼稚園と私立幼稚園の設置基準、それから教育の指導要領ですか、いわゆる教育内容。これは皆一緒だと聞いておりますが、どうですか。
  76. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 指導要領とか設置基準というものは、幼児教育をいかにするかという目的のもとに定められておるわけでございまして、同一のものでございます。
  77. 玉置和郎

    玉置和郎君 父母負担の公立幼稚園との差はどんなものですか。
  78. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 父母負担の差を文部省が把握しております数で申し上げますと、公立は五十一年度入園料が四百二十一円、保育料が一万九千六百四十三円、合計しますと二万六十四円ということになります。私立幼稚園の方は入園料が二万七千三百六十四円、保育料が九万六千八百二十四円、その他雑費が加わりますので、合計しますと十三万六千四百二十七円という比率になる、このように受けとめております。
  79. 玉置和郎

    玉置和郎君 公立と私立の差額。
  80. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 差額は約十万円になります。
  81. 玉置和郎

    玉置和郎君 これは総理、幼稚園の園児というのは、これは高校だとか大学生と違って自分の選択の自由がないのです。通園範囲は限られる。それなのに、公立に通う園児と私立に通う園児の父母負担の格差が十万円もあるという、このことについてどう思いますか。
  82. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 最近、幼稚園教育が非常に盛んになってきておる。そういうことを考えますときに、私立大学と国公立大学の間の格差問題ですね、それと同じような角度の問題が生まれつつある、こんな感じがするんです。私は前から、あなたからこの問題についての具体的対策の提起、これを伺っておるわけです。何とかこの問題を工夫してみようというふうに考えまして、ことしのというか、五十二年度予算におきましてもその芽は出したつもりでございますが、なおいろいろ検討いたしまして、そういう方向の施策を逐次進めべきかと、かように考えております。
  83. 玉置和郎

    玉置和郎君 主計局長、あなたに聞きますが、保育所の総予算。乳児と保育所の総予算を総務会で聞いたのは、それは保育所関係の予算が総額で二千四百十億。幼稚園は、この資料を取りましたら、公立私立含めて、いわゆる自治省の一般交付税の中の四百十七億を含めて、総額で五百八十一億しかない、これ事実ですか。
  84. 吉瀬維哉

    政府委員(吉瀬維哉君) 交付税関係を足しますとそういう額になると思いますが、なお交付税を除いて、幼稚園関係、公私立合わせまして五十二年度におきまして措置しましたのは百四十八億でございまして、前年度に対しまして一八・二%の増額です。
  85. 玉置和郎

    玉置和郎君 で、保育所は。
  86. 吉瀬維哉

    政府委員(吉瀬維哉君) 保育所はいますぐ調べてみます。
  87. 玉置和郎

    玉置和郎君 総理、いまお聞きになったとおりですよ。保育所に入っている子供より、幼稚園の園児の方が公立私立では圧倒的に多いのですよ。多いのに保育所関係は二千四百十億です。いま一般交付税のやつを抜いたら百四十八億ですよ。どういうことですか、これ。
  88. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いままで私は幼稚園教育、これがわりあいに軽く見られてきておるのではないかと思うのです。先ほど申し上げましたように、これが普及化してきておる。まあ、これを初等義務教育まで包摂するようにしようじゃないかという議論さえ一部に起きておるようなそういう重要な問題になってきておるわけであります。しかし、せっかく問題の提起がありましたので、五十二年度予算でもその芽を出したわけでございますが、これを厚みを一体どういうふうにしていくか、これはまだ五十三年度予算の編成の際に篤と検討してみたい、かように考えます。
  89. 玉置和郎

    玉置和郎君 私は、戦後三十年の総理の中で、幼稚園問題で一番熱心なのはあなただと思います。敬意を表します。私なんかも幼稚園問題はわからなかったですよ。これ二年半、初めて、皆にせっつかれてやってみて、何と大事なことを忘れておったな。これ社会党の諸君だって、忘れておるんです。(「忘れてない」「冗談じゃない」と呼ぶ者あり)いやいや、そう大したことないんだよ。その証拠に言います。あなた方そんなに言うんだったら、私立幼稚園のお母さん方の、この前宮崎でやった集まりに行って――二千人びっしり集まって、そのときに知事も市長も上條君も来ておった。私は皆に、お母さん方に聞いた。与野党の国会議員、直接のこの姿を、直接の声を聞いた人、手を挙げてくれと言ったら、二千人の中で六人ですよ。仙台へ行って、三千人から集まった。そのときにぼくは話しした。皆さんの中で、国会議員、与野党を通じて聞いた人、手を挙げてくれと言ったら、十六人ですよ、十六人。そして、日教組はどっちかというと、公立にばかり力を入れておるんだ、また学法に力を入れておるんだ。宗法、個人はほったらかしですよ。そこにやっぱり問題があり過ぎるのですよ。それはなぜかといったら、公立はすぐに組合をつくるのですよ。そして、私教連というのをつくって組合に入れ込むのです。学法の場合は理事五人で選挙して、三人理事がとったら、これはすぐに職員が組合に入っていくんですよ。だから、やっぱり私立幼稚園の園児の百七十万人の中に何と百万人を超す宗法、個人立の園児がおるんですよ。それがいつもあっちへやられておる。そして、いま粕谷先生――粕谷先生なかなかりっぱな先生で、私もいつも尊敬しておるのですが、(笑声)いや、心から思っておるよ。この人りっぱですけど、とにかくやっぱり私教連という総評の一つの組織は、宗法、個人は手が入らないのです、これは。  それはなぜかといったら、設置者それから園長のこれは人格、個人的な意見というものが圧倒的に出ていくんです。教育の根本というのは、これはエデュケートするということです。引き出すということです、これは。それだけに幼児期において個性を引き出すという、この手づくりの教育というものが非常に大事なんです。公立に入ったら、小学校でも中学校でも見てみなさい。平均教育ですよ。もっと言葉汚く言えば、みそくそ一緒の教育ですよ、これ。この平均教育がいいのか悪いのかという議論は別にして、人間の人格が決まるという三歳からこの幼児期において、やっぱり手づくりの教育という、この宗法、個人という幼稚園を大事にしないで、それだけがいつも幼稚園教育の圏外に置かれておるという、こういうことはよくない。  私はここで言っておきますけど、何でお母さん方が、お父さん方が公立にやりたいかというと、十万円違うから、そうなるのですよ。幼稚園に通わしているお父さんの所得というのは大体十三万円前後です。二人通わしてみなさい。授業料一万円で二人通わして、そして何か必要経費を入れると三万円近いもの取られるのですよ。こういう者に対して本当に減税したくたって、減税の対象にならないのですよ、これは。こういう人たちの中には、二百一万の所得に入らない人もおるんです。就園奨励費というのでやっていますけど、やっぱり私は、この際にこの公私立間の格差是正を思い切ってやる、そうして教育の機会均等というこの精神、憲法に保障された平等性というもの、これをしっかりやらないと、連帯協調社会はできませんよ。不公正がそこに厳然として存在している間はできない。総理はこの前私に対して、三万円直接助成やろうじゃないかと言った。で、私は文部大臣のところへ行った。坊大蔵大臣のところへ行った。どっちもとんちんかんちんでちっともかみ合わない。本当なんです、これは。事実の話です。そうしたら総理が怒って、なぜやらぬかと言って私が怒られた。その総理の気持ちを、私は幼稚園の苦労してきた人たちに痛いほどわかっていただきたいと思う。だから五十三年は、大蔵大臣、はっきり言っておきますけれども、私立幼稚園の直接助成三万円は必ずやりなさい。  それから自治大臣、いまの公立幼稚園の財政負担が大変なもんです、これは。公立でいわゆる自治体の費用で園舎を建てる、そして経常費は二万円から二万五千円一人当たりかかっておるんですよ、わかりますか、一園児についてですよ。そんなばかなことがありますかいな。そして、その上に千五百円なり千八百円なりの授業料を取っておるんですよ。公立になったら国も地方自治体も財政がうんと悪くなっていく。しかし、なぜ公立をつくるかと言ったら格差があるから、そこの市長が、議員が選挙に当選せにゃならぬために、そのお父さん、お母さん方に迎合するから公立ができてきているんですよ。(「それは言い過ぎだよ。」と呼ぶ者あり)言い過ぎじゃない、私の調査で、あなたは後で言ったらいいよ、そんなもの。それはそのとおりだ。だから、公立のみがいいんじゃない、やっぱり私立幼稚園に対して格差是正をするということ。だから、公立幼稚園の授業料を倍に上げなさい。倍に上げて、そうすると、大体年間に四万円ぐらいになります、父母の負担が。それで、この私立幼稚園の直接助成を三万円ということになると。そうしてまた、市の方がその授業料を倍に上げる。さらに私立幼稚園に対して、その上げた分のこの二万円を私立幼稚園に回すということ、そうすると、大体格差が埋まってくるんです。これが政治です。どうですか。
  90. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 御趣旨はよく承りましたので、実態を研究いたしまして検討いたしてみます。
  91. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) お答え申します。  玉置さん先ほどから非常に強く主張されていらっしゃる幼稚園教育ということは、私もこれは人生の一番大事な教育、その期間が、それは玉置さんや私の先輩である岡潔博士が、幼稚園適齢期が子供を教育するのに一番大事な時期であるということをはっきりと言われておりますが、さような意味におきまして、私は幼稚園教育というものについては、先ほど総理もおっしゃいましたけれども、これは重大視していかなければならぬものだと思います。しかし、いま私に対しまして三万円の助成をやれと、こういうお話でございますが、これは承知いたしましたということをここで申し上げるという――熱心にこれは検討をいたしてまいりたいと、かように考えております。
  92. 玉置和郎

    玉置和郎君 大蔵大臣、あなたと議論はしませんけれども、簡単にできるんです。現在の経常費とそれから国庫補助を入れますと、大蔵省の財布から自治省に渡しておるのが四百十七億あるんですよ。それと就園奨励費を入れただけで――就園奨励費が五十五億ですから、これが大体四百七十億ぐらいになりますね。あと七、八十億も積めば、三万円十分これは出せるのです。大した命じゃない、これは。それで、現在国が出しておる経常費、これが七十七億。自治大臣、あなたに言っておきますけれどもね、一般交付税の中に幼稚園の経常費補助を入れたら、知事はどうするかと言ったら、皆つまみ食いするんですよ。今度つまみ食いした知事の名前、この次の予算委員会で全部挙げてやろうか、ここで。しかも、自民党系に多いですよ。畑和なんかりっぱですよ、あれ。畑和なんかちゃんと、私が二回陳情に行って、幼児教育のためにやってくれるんならおまえさん今度わしが自民党が反対しても推薦してやると言った。これが玉置和郎なんだ。幼児教育のために一生懸命やるんなら党派を超えてやる、私は。それはあたりまえのことなんだ。そして、自民党の知事が半分以上つまみ食いしておる。私は、愛媛の知事の白眉君えらいと思いますよ。私が行ったら、一番最初頭を下げて、先生済みませんと、実は愛媛県知事はつまみ食いしておりましたと、こう言って、勘弁してくれ、二月の補正で必ずそういう弱い人のためには、愛媛県知事白眉はしっかりやるからと言って、ちゃんと補正を組んで渡しましたよ。これは自治大臣、あなた指導足りませんぞ。どうですか、経常費補助についての知事の態度。
  93. 小川平二

    国務大臣小川平二君) お言葉にありますつまみ食いというような事実がございますると、これはまことに好ましからざることでございますから、十分調査をいたしまして、玉置先生からもお教えをいただいて善処してまいりたいと思います。
  94. 玉置和郎

    玉置和郎君 自治省の政府委員だれか来ておるか。自治省政府委員、来てないのか。文部省、文部大臣、つまみ食いの実態、あなた教えてあげなさい、ここで。私は、率直に認めたらこんなこと言いませんよ。自治大臣がいまのような答弁で率直に認めない限り、私はとことんまで食い下がるよ。
  95. 犬丸直

    政府委員(犬丸直君) 玉置先生のおっしゃいますつまみ食いということの意味は、こういうことであろうかと思います。実は幼稚園につきましては、国庫補助と交付税の措置で、両方で五十一年度三百三十九億の措置をいたしております。しかるに、都道府県におきまして実際に行った幼稚園に対する補助、この実績が百八十二億ということで下回っております。まあそのことを、先生のお言葉によれば、本来そちらに回すべきもの、幼稚園に回すべきものをほかのところに回したと、そういう御趣旨であろうかと思います。
  96. 玉置和郎

    玉置和郎君 これ、やっぱりつまみ食いなんですよ。そうでしょう。これはもう県別に言いません。しかし私は、残念ながら自民党系の知事に多いということは事実です。だから、ここでやっぱり自民党の知事がしっかりしないと、いまは総理、こういうことなんです。選挙の実態を、あなた方、大臣皆覚えてください。権力志向型の選挙はだめです。そうして、若いお母さん方の協力を得なきゃいけない選挙――全員参加の哲学を持っておるんですよ。選挙はおれたちのものだ、私たちのものだ、全員参加の政治だと、こう思っておるんですよ。そういうときに、自分たちの所得の中から二割も三割も幼稚園に、私立に通わせるために負担をせなけりゃならぬ。それが政治がちっともめんどうを見てくれないということになったら、どっちへ行くかといったら新自由クラブへ行くんですよ。社会党には行けない。それで共産党はまして行けない。そういうところがどこへ行くかというと、新自由クラブへ行くんですよ。政党離れですよ。ぼくはそれを言っておるんですよ。間違ったらいけませんよ、皆さん。総理、どう思いますか。
  97. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この幼稚園問題というのは、本当にこれは入試問題と同じような社会的重要性を持ってきておる問題だというふうにとらえておりますので、五十三年度予算のときいろいろ工夫をしてみたいと、さように考えております。
  98. 玉置和郎

    玉置和郎君 次に、経済と減税と物価の問題、それから景気浮揚の問題、これをやろうと思いましたけれども、時間が十五分しかないのでこれはやめますが、この大体の考え方だけ私言っておきます。  私はね、総理日本の国は決して経済大国でないという持論なんです、昔からですよ。そして日本の経済というのは水ぶくれ経済だと思っておるんです。企業を見ましたら、上場会社を見ましたら、ほとんど紛飾に近いようなことをやっておる。紛飾に近いような、紛飾とは言いません。大変なことです、これは。そうして連結決算がこの四月から行われる。そういうことになっていくと、みんな何とかして黒字を出さにゃいかぬ、帳簿上黒字を出さにゃいかぬというので、そのしわ寄せを弱い中小企業、損失をそこへ押しつけていく。決して実態経済はよくないです。  それからもう一つは偏向経済です。好、不況の企業が余りにも差があり過ぎるということです。そうして日本の産業の基盤は何と言ったって製造企業でしょう。それを流通に乗せる流通企業でしょう。これが日本の産業の基盤ですよ、製造企業、流通企業が。銀行、証券、損保、生保というのはこれはサービス企業ですよ。製造企業が青息吐息、流通企業が青息吐息のときに、サービス部門が好、不況にかかわらずいつもぬくぬくとしておるということは、これは偏向経済の何物でもないと、こう考えるのですが、どうですか。
  99. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず第一に経済大国論、経済小国論ですが、確かに私はこれからの世界環境、こういうことを考えてみますと、日本は、これは私は常に言っているのですが、資源小国だと。そういうことを考えますときに、私どもの立場というのはそう強い立場ではない、こういうふうに思います。ただしかし、これだけの狭い国土、それからこれだけの一億一千万人の人口、しかも国土の上には資源が非常に少い。そういう中ではずいぶん私は国民は努力してきて、とにかく工業力においては世界第二であるというところまで持ってきたなと、よくやったものだなと、こういう感じは持っておるのですが、基本的にわが国の経済体制が経済大国である、そう言うて胸を張れるようなそういう状態ではない。国際環境のこれからを考えてもそうだし、またその中における一つ一つの企業、こういうものの内容を検討してみても、多分に水ぶくれ的な要素はある。この水ぶくれのその水を吐き出して、そうして体質を強化しなければならぬ、そういう時期に来ておると、こういう認識でございます。  それから製造業、それから流通業、この問題はこれは相携えて、何といいますか、車の両輪のような関係にありますから、政策としてどっちをより重視しなければならぬ、どっちを抑制するというか、抑えなければならぬと言うべきものではない。基本的には私は車の両輪的立場で対処しなければならぬ、こういうふうに考えております。
  100. 玉置和郎

    玉置和郎君 総理、偏向経済の実態の一つだけ触れておきます。  それは昭和四十九年の資本金十億円以上の会社、これが千八百ほどありますが、申告所得が五兆七千三百九十三億です。そうして銀行、保険業をやっておるものの十億円以上の会社一兆三千三百十四億・申告所得です。そうして五十年になりましたら、十億円以上の資本金を持っておる千八百九十三社の申告所得が四兆三千二百三十一億、その中で金融、保険業は一兆六千三百八十五億の申告所得をしておるのです。驚くことに、この五兆七千三百九十三億の申告所得をしておるときに一兆三千三百十四億で、五十年の四兆三千二百三十一億と、一兆四千億も落ち込んだときに、金融、保険業の方が一兆六千三百八十五億にふえておるというこの事実、しかも五十年の一兆六千三百八十五億の金融、保険業の所得は、十億円以上の資本金を持った会社の所得の約三八%、四0%近い所得を上げておるということをお認めになった場合に、日本の経済は偏向経済と私は言わざるを得ない。どうですか。
  101. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私はさっき製造業と流通産業との間の問題かと思ったら、金融業の問題でありましたので改めてお答え申し上げますが、金融業というのは好況、不況の影響をそう受けない。好況でありましてもそうめちゃくちゃに利益がふえるという産業じゃございませんと同時に、不況でありましてもそういう不況の影響を他の産業のような状態には受けない、そういう性格のものでありますが、しかし、私はこう思うんです。不況のときには産業は非常に苦しい立場にある、金融業はそれに協力をすべき立場にあると、こういうふうに思うんです。利益を減らしても、そのためには金利を安くいたしましても、これは産業の方に奉仕すべきものであると、こういうふうに考えますので、いま数字を挙げてのお話でありましたが、よくそれらの点も精査しまして、考え方としてはそういう方向で行政指導に当たっていきたい、かように考えます。
  102. 玉置和郎

    玉置和郎君 実は減税と物価の問題で例を引きながらお話を申し上げたいと思いますが、年収三百万円の標準世帯、その税額ば八万四百円、これは間違いないね。そうして、政府の改正案で六万六千円になるから、その一万四千四百円がこれは助かるということになるのかな、そうだね。それから追加減税三千億で一万五千円、合計二万九千四百円が今度は減税になったということになる。そうした場合に一カ月二千四百五十円です。そうすると二千四百五十円というと、ハイライト二個吸ったら二百四十円、何とこれは十日でパアです。私は、これまた減税の恩典というものはどこにいくかというと、ほとんど延滞しておるローンの支払い。私はずっと聞いて回ったですよ。そうすると、まず住宅ローン。ボーナスのときに、住宅ローンでどうもやっぱり滞っておる、また金利が重いからというのでこれに払おうという。それから電気器具、自動車、もうすでに経済的に十分効果の出ておったその後始末のものに使われる傾向が多い。だから、経済的に浮揚していくという、景気刺激の面は私は非常に薄いと思う。その点どうですか。
  103. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、金があり余ると、それくらい財政は豊かであると、こういう状態でありますれば、これはいろんな景気対策もとれるし、その中に減税というようなことも考えられるが、しかし、いまの国の財政から言いますればそんな豊かな状態じゃございません。どころじゃないです。この状態をほうっておきますると、大変な社会的混乱のもとになりそうな状態なんです。ですから、財源は限られている、そういう前提をとりまするときに景気政策とすれば何だというと、住宅だとか下水道だとか道路でありますとか、そういう公共事業、これが圧倒的な重みを持っておる対策であると、こういうふうに考えて、野党の皆さんから言われた一兆円減税という議論に抵抗をしてきたわけですが、しかし、与野党の間で合意ができまして、私ば合意ができたということはこれは大変高く評価しておるわけです。ですから、今度合意の結果出てきた減税の積み重ねがどういう効果を持つであろうかというようなことにつきましてはもう言わぬがいいじゃないか、そういうふうに考えております。
  104. 玉置和郎

    玉置和郎君 それは総理、私は国会議員の一人として言わなきゃいかぬ。こんなばかげた、これはこんなもので景気刺激なんかできませんよ。景気浮揚できなかったらだれが責任をとるんですか。野党が責任をとってくれますか。とってくれませんよ、これ。結局政府・自民党が責任をとらされるのですよ。それはそうですよ。だからこれは試算でいきますと、京都大学の計量モデルの試算でいきますと、一兆円公共投資で初年度がGNPを二・二兆円増加できると、こうある。そうして一兆円の個人減税ではGNPを一兆二千億増加できると、こうなっておるわけですね。  そこで、ぼくはいまこれをかわりに六千五百三十一億円で試算をしてみたら、これは初年度GNPを大体一兆四千三百六十億円増加ができるということになっている。そうして個人減税の場合に七千八百三十六億円増加ができるということになっている。だから、有効需要創出効果ではこれは六千五百二十四億の差が出てくるんです。だから、こんなばらつき減税で、人気取り減税でやっておったんじゃ景気刺激が成らぬということなんですよ、私が言うのは。――それはあなたたちの見解の相違だ、私の見解を言っているときだから。だから、こういう選挙目当てのこんなことやったらギリシャと同じようになるということを言っておるんです。迎合し迎合し、その迎合し迎合しいって衆愚政治になり下がる前兆ですよ。こんなときに思い切ってやっぱり減税はしない、重点執行してこの予算を使うという、これがステーツマンのやり方なんです。福田赳夫ともあろう者がそういうことに議論をしないというようになったら、これはもう天下はしまいですよ。それだったら、玉置和郎総理大臣にならなければいかぬということになる。(笑声)そうですよ。物事は笑い事じゃない。政治というのはそこまで腹を据えてやらなければだめなの。私は今度の国会運営の、選挙に負けたおかげでこういう迎合をせにゃいかぬのですよ。だから選挙には勝たなければいかぬですよ、参議院選挙は。どうですか。
  105. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まことに貴重な御意見として十分拝聴いたしました。
  106. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 政治全般につきましては、総理大臣が中心になってその責任をおとりになる。今度の問題につきましては、これは大蔵大臣の私も大変な免れざる責任を痛感いたしております。  ただ、申し上げますことは、初めから私も玉置さんのおっしゃっるような全く同意見でございましたけれども、しかしながら、政治の現実におきましては、これは一応の合意ができたものでございまするから、この合意を尊重いたしまして、そうしてこれをやってまいりたい、かように考えておりますが、それならこれが全然景気刺激に役に立たないということでもないということを考えております。
  107. 玉置和郎

    玉置和郎君 それは大蔵大臣、そんなことはようわかっています。それはボデーブローに似たようなもんだよね。間接需要なんですよ、これは。だから、ボデーブローでやがて効いてくるということ、これはようわかっていますよ。しかし、これだけ落ち込んだときには私の言ったような方向でやらないとだめなんです。  そこで、私は総理、総務会でも言いましたが、この減税よりも物価の安定に力を入れるべきなんですよ。経済企画庁長官が物価は八%台になりまするというふうな、まあ何と情けない。これは何としても物価を政府の目標の七・七から以下に抑えるということでなければだめなんです。物価が七・七上がって、三百万円の世帯だったらどうなるんですか。二十三万円減ですよ。だから、ここで物価を仮に一%抑えたら、三百万円の所得のある人は三万円減税と相当するんですよ。しかも減税よりも物価の安定の方がこれは国民生活の安定につながる、それから社会的不公平の是正になる。インフレヘの圧力となりかねないこの減税よりもずっとましです。だから、物価の安定にあんなちょろいことを言わぬで、福田内閣は総力を挙げて物価安定の、七・七以下に切り下げるというこの努力をするかしないか、約束してほしい。
  108. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 物価の安定につきましては、私は日本じゅうでだれよりも熱心である、そういうふうに自負しております。まあ物価というか、インフレ、これは社会混乱のもとです。もう弱きをひしぎ、強きを助ける、こういうような結果になるんで、社会的不公正のもと、その最大なるものである、こういうふうに認識し、物価の安定に努力しておるんです。ところが、わが国におきましてはそう早く定期預金金利以下の物価水準というものが実現できない。海外からの輸入資源に依存するという体質のわが国の経済でしょう。その海外の物価が上がるという事情もある。それからさらに公共料金問題をほうっておくわけにいかぬという問題もあるんですよ。それからさらに賃金。物価が上がるからやっぱり賃金問題、これも連動して上がってくるというそういう問題もある。ですから物価問題は私熱心でありまするけれども、そう簡単に片づくとは思っておらないんです。五十一年度をとってみますと八%台とこう言っておったんです。結局これは八・八、九%ぐらいなところで、やっと九%切るというところにならざるを得ないんですが、これとても基調は私が考えているとおり来ていると私は思うんです、安定の基調に。ただ異常寒波、あれで生鮮食料品の値上がりになっちゃった。非常に残念です。しかしそれだけに、いま玉置さんが御指摘になった五十二年度の七・七%、ことしの三月から高くなっちゃったんですから。それに比べますると、来年の七・七%の実現というものはそれだけ楽になった、こういうふうに思いますが、もう万難、何というか全力を尽くしまして、この七・七%という物価目標、これは五十二年度において実現をするという決意でございます。
  109. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 先ほど玉置委員が、企画庁長官が五十二年度の物価目標について何かあやふやなことという御発言でございますが、これは間違いでございます。五十二年度の年度中上昇率は七・七%に不退転の決意をもって邁進するつもりでございますので、誤解のないようにお願いをいたしたいと思います。
  110. 玉置和郎

    玉置和郎君 そこで総理、景気浮揚のために私が提案しておきますが、投資税額の控除という、投資税額、民間投資を。それから公害除去投資の税額控除。それからもう一つは中小企業の倒産がこれはもう三月末から四月にかけて出てきますが、倒産防止法。これはイタリアがいまやっていますね。それから景気安定基金の創設。それにもう一つは予算の編成の問題ですが、単年度財政の見直し。時間がありませんから私この内容は言いませんが、この四つをひとつ是非検討してください。お願いしておきます。
  111. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 御指摘の四つの問題、なかなかむずかしい問題もあるんです、その中には。ありますが、ここで一番むずかしいのは単年度主義をやめる、こういうことでございますが、これはしかし気持ちはよくわかりまするし、そういう気持ちでやれば、単年度主義でありましょうが、まあ長年度主義でやろうが、これはもう同じですから、気持ちはよくわかります。  それから税制の方はこれはよく検討します。  それから景気安定基金、これは私は是非これを設けたいと思っておるんです。しかし、いま積み立てる余裕のある状況じゃありませんものですから、いまの問題としては適用いたしがたいんですが、経済が安定するというそういう時期をとらえましてその方向の施策は考えてみたい、かように考えております。
  112. 小川半次

    委員長小川半次君) 午後一時まで休憩いたします。    午後零時四分休憩      ―――――・―――――    午後一時四分開会
  113. 小川半次

    委員長小川半次君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  総予算案審査のため、本日、中小企業退職金共済事業団理事長渡邊健二君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  114. 小川半次

    委員長小川半次君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  115. 小川半次

    委員長小川半次君) 午前に引き続き、昭和五十二年度総予算三案を一括して議題とし、玉置和郎君の質疑を続行いたします。玉置和郎君。
  116. 玉置和郎

    玉置和郎君 都市銀行の預金総額と行員一人当たりの預金獲得の金額、これの平均、それから郵便貯金が三十兆となっていますが、局員一人当たりの預金獲得の金額、これをちょっと出してください。
  117. 後藤達太

    政府委員後藤達太君) 昨年の九月末の数字でございますが、都市銀行の預貯金残高が五十八兆でございます。それから職員数が十九万六百八十人、一人当たり預貯金額が約三億円でございます。
  118. 小山森也

    説明員(小山森也君) お答えいたします。  三月二十五日現在の残高は三十兆一千六百億円になっております。職員が約六万名でございます。ちょっと一人当たりの計算が出ておりません。
  119. 玉置和郎

    玉置和郎君 一人当たり五億円だよ、あんた。そんな計算ができないでは困るじゃないの。  そこで、都銀と郵便貯金の資金コストの比較、これを聞きたいんで、支払い利子と経費率、これを出してください。
  120. 後藤達太

    政府委員後藤達太君) 都市銀行につきましてお答えを申し上げますが、昨年度の上、下で、支払い利子率が、上が五・八八、下が五・六六でございます。それから経費率の方が、上期が二・一四、下期が二・0七でございまして、コストの合計が、上期が八・0二、下期が七・七三となっております。
  121. 小山森也

    説明員(小山森也君) 昭和五十年度の計算でございますが、支払い利子率が五・九七%、経費率が一・四五%、合わせまして七・四二%になっております。
  122. 玉置和郎

    玉置和郎君 総理ね、なぜこういうことを聞くのかと言いましたら、都市銀行は郵便貯金に比べて資金コストが非常に高いということなんです。これは社会党の全逓の皆さん方は非常にお喜びになると思いますが、とにかくそんなことはどうでもいいですが、一人で五億円集めておるんですよ。都市銀行は一人で三億切れる、そういうこと.なんです。  そこで、次にお聞きしますが、日銀の各銀行別貸出額は。
  123. 後藤達太

    政府委員後藤達太君) 日本銀行の業態別貸出額は、これは昨年の三月末の数字で申し上げますが、都市銀行が一兆三千四百二十二億、地方銀行が九百三億、長期信用銀行が五百四十九億、信託銀行が六百六十九億、相互銀行が百七十一億、信用金庫が十一億となっております。
  124. 玉置和郎

    玉置和郎君 都市銀行がこの日銀の貸出額の中で非常に優遇されておる。  そこで、私は提案をしますが、郵便貯金のこの中から、信用金庫、信用組合、これに預託するつもりはないのか、お聞きします。
  125. 小宮山重四郎

    国務大臣小宮山重四郎君) 現在、郵便貯金は、地方特定郵便局等の払い戻し資金を、郵便局にとめ置くよりも、銀行に預金していく。これはその日の払いが相当多くございますのでこのようにしているのでございます。しかし、信用組合にはそのようなことはやっておりませんけれども、預託をすることは資金運用部資金の運用でできないと思っております。
  126. 玉置和郎

    玉置和郎君 しかし、それは現在の法律ではできないかもわからぬが、ここで意見述べておったら長くなるからもうやめますが、やっぱり、こういう信用金庫だとか信用組合だとか庶民金融を扱うところへそういう郵便貯金の金を預託してやる、それはやっぱり必要ですよ。もう一回聞きます。どうですか、政治家としての見解を聞きたい。
  127. 小宮山重四郎

    国務大臣小宮山重四郎君) しかし、信用組合、信用金庫に預託できるといたしても、それは非常に資金コストが高くなる。私は、そういう意味では、資金運用部資金の法律があるないを別といたしまして、それならば、たとえば災害に地方自治体に直接お貸しができて、資金運用部資金の金利と同じように七・五ぐらいで貸していただける。あるいは、私学医科大学にいま二千億ぐらいの借り入れがございますから、そういうものに対してかえて貸してやるような方法の方がもっと効果的である。ただ、先ほど申しましたように、信用金庫、信用組合ではちょっとコスト高になるのではないかと思っております。できたとしてもコスト高になるということであります。
  128. 玉置和郎

    玉置和郎君 ぼくはあなたのところの事務当局から聞いたのを資料を持っておるが、七・五ぐらいの範囲だったらこれはいいんじゃないかという見解を聞いておるが、どうですか、それは。――遠慮することないよ。私のところへ来たのとここの答弁と違うなんてとんでもないことだよ。
  129. 小山森也

    説明員(小山森也君) 先生のおっしゃいます七・五%でございますと、いまのは郵便貯金の預託の最高利子が七・五%でございます。平均預託利回りが六・九八%でございますが、これはいろいろ預託の時期によりまして上下があるわけでございますが、いまは七・五%でございます。七・五%でございますと、いわゆる資金としては、いまの一年の定期預金が六・七五%でございますので、私どもの方からその預金の七・五%の利子で信用組合の方に回しますと、これはむしろ預金利子よりも高くなってしまうという現象が出ようかと思います。
  130. 玉置和郎

    玉置和郎君 中期国債の割合でどう。
  131. 小山森也

    説明員(小山森也君) 中期国債が八%少々上回っておると思いますが、この中期国債の利回りよりかは資金としては安い資金になろうかと思います。
  132. 玉置和郎

    玉置和郎君 ここで都市銀行の行員預金金利とそれから住宅資金の預金と郵便局員との比較をしたいと思いますので、都市銀行のこういう問題についてどうなっておるか、お聞きしたい。
  133. 後藤達太

    政府委員後藤達太君) いま先生の御指摘は、都市銀行の行員につきましての社内預金についての御指摘だと存じますが、その社内預金の金利は、普通の一般の預金、これは住宅の目的でないものでございます、これが七・五%以下、それから住宅預金が八・三%となっております。
  134. 玉置和郎

    玉置和郎君 貸出限度は。
  135. 後藤達太

    政府委員後藤達太君) それから住宅に関する行員向けの貸し出しでございますが、これはそれぞれ組合からいたしておるのでございますけれども、これは各銀行によりまして融資の限度等々いろいろございますが、しかし大体一定限度までが四%、それからさらに各銀行が福利厚生費等で補給をいたしまして、行員の実際の負担が二%程度、全体としては、少しばらつきはございますが、大体その程度に相なっております。
  136. 玉置和郎

    玉置和郎君 郵便局、郵政。
  137. 小山森也

    説明員(小山森也君) 質問の御趣旨をちょっと取り違えておりましてまことに申しわけございません。
  138. 玉置和郎

    玉置和郎君 いや、そうじゃないんだよ。おまえさんのところ、共済から借りたって五百万までだよ。それで六%なんだよ。そうだろう。
  139. 浅尾宏

    政府委員(浅尾宏君) お答えいたします。  郵政省の職員に対します住宅貸し付けでございますが、貸し付けの限度額が五百万円でございます。それから貸付利子は年六%ということに相なっております。
  140. 玉置和郎

    玉置和郎君 大蔵大臣、お聞きのとおり。都市銀行の場合は、ローンを借りるとき、これは四%なんです。これも私が前にやかましく言って四%にした。それで四%になっておると思ったら、実質は、一・八のところば福利厚生費でもって銀行のもうけの中から二・二%補給しておるんです。それで二%のところは二%補給しておる。これはどういうことですか。
  141. 後藤達太

    政府委員後藤達太君) 私ども理解しておりますところでは、これは行員の福利厚生ということでやっておるところでございまして、他の企業等でもまあ三%とかその程度のことはあるように聞いております。したがいまして、その福利厚生面の充実ということでいまのようなことを貸し出し面でやっておると、こういうふうに理解しております。
  142. 玉置和郎

    玉置和郎君 とにかく、銀行の行員なら、普通預金は預けたら途端に七・五%の金利をつける。われわれ普通預金を預けにいったら、二・二五ですよ、いま。そうだな、普通預金はまだ二・五か。
  143. 後藤達太

    政府委員後藤達太君) 普通預金はただいままだ二・五でございます。四月から二・0になるわけでございます。
  144. 玉置和郎

    玉置和郎君 お聞きのとおりですよ。銀行の行員ならこれだけ優遇されるんですよ。それで一生懸命に働いて運用部資金をつくっている郵便局の局員は、政党支持はどっちであれ、とにかくよくかせいでいますよ。そして、貸出限度額が五百万、金利は六%取られる。どういうことですか、これは。おかしいと思わぬですか。政治家の判断を聞いておるんだよ。
  145. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) お答え申します。  そういったことにつきましては、労働省の、何と申しますか、基準と申しますか、そういったようなものに従いましてやっておることでありまして、厚生福利のとき、その目的をもってやる場合にも、何もその労働省の決めた基準を超過するということはやっていないと思います。
  146. 玉置和郎

    玉置和郎君 そうしたら、次に聞きますよ。それは、大臣、局長の言うことを聞いてから答弁するんじゃなくて、政治家の判断として言わなきゃだめだ。  そこで、都銀の福利施設、建物、土地、総額どれだけ。
  147. 後藤達太

    政府委員後藤達太君) 都市銀行の福利厚生施設でございますが、昨年の九月末の数字で申し上げます。ちょっと恐縮ですがトータルを出しておりませんのでございますが、一番大きなところで、土地、建物合わせまして二百二、三十億、それから小さなところで四、五十億でございます。ただ、これは宿舎等全部入った数字でございます。(玉置和郎君「あなた間違ってる。一番大きなところ、三和銀行……」と述ぶ)
  148. 小川半次

    委員長小川半次君) 玉置和郎君、私語でやりとりしないように。委員長の許可を受けてから発言してください。
  149. 玉置和郎

    玉置和郎君 二百六十二億七千万円じゃないか、三和銀行。
  150. 後藤達太

    政府委員後藤達太君) 失礼いたしました。ちょっとほかのところを見ておりました。先生のおっしゃるとおりでございます。二百六十億でございます。
  151. 玉置和郎

    玉置和郎君 二百六十二億七千万だ。
  152. 後藤達太

    政府委員後藤達太君) 二百六十二億七千三百万円。
  153. 玉置和郎

    玉置和郎君 そうそう、それでいいんだ。  総理ね、都市銀行十三行だけで、この有価証券報告書の中にある厚生施設ですよ、福利厚生施設がトータルで二千五十七億九千四百万円。  郵便局はどれだけ。
  154. 浅尾宏

    政府委員(浅尾宏君) お答えいたします。  国が、国がといいますか、省が直営しております厚生施設はございませんが、郵政省の共済組合が運営しております厚生施設といたしまして、逓信保養所が四十三カ所、それから学生寮が二カ所ございまして、これらの帳簿価格を合計いたしますと三十六億でございます。
  155. 玉置和郎

    玉置和郎君 これだけ違うのです。どういうことですか、総理、考えてみてください。
  156. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私も初めて伺う数字でありますので、なお考えてみます。
  157. 玉置和郎

    玉置和郎君 これが、総理、大蔵大臣、都市銀行十三行だけですよ。それでこれだけ違うのですよ。しかも、片一方は五億円集めるのです。そのほかに地方銀行、いろいろな銀行がある。証券、損保、生保がある。これの福利厚生施設で一兆円を超すのですよ。どういうことですか。大臣、どう思いますか、政治家として。政治家の判断です、これは。
  158. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 私も初めて聞く数字でございますので、慎重に検討をしなければならないと、かように考えます。
  159. 玉置和郎

    玉置和郎君 実質の貸し倒れ金のパーセンテージはどれだけになるか。
  160. 後藤達太

    政府委員後藤達太君) 昨年五十年度の下期で申し上げますと、都市銀行につきまして〇・〇〇三%でございます。
  161. 玉置和郎

    玉置和郎君 後藤さん、あんたに資料をもらったが、間違っておるよ。あんたの資料で計策したら一・一でないか。貸し倒れ引当金の一・一じゃないか。
  162. 後藤達太

    政府委員後藤達太君) ただいまの資料で五十年度の貸し倒れ金のパーセントを申し上げますと、五十年度の実質貸し倒れ金の貸し倒れ引当金に対する割合でございますが、一・一強でございます。
  163. 玉置和郎

    玉置和郎君 総理、こういうことですよ。貸し倒れ引当金が七千五百九十億あって、実質貸し倒れに引き当てたのは八十七億なんですよ、一・一。あとは皆社内留保でもうけになる。本当は利益にならなければいかぬのだ。どうですか。ここから税金を取れば、減税分なんかいとも簡単だ。
  164. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 貸し倒れ引当金の率は、これは私が大蔵大臣をやっておったころはたしか千分の十五ぐらいだったのですけれども、だんだん下げてきて実勢に合わせようと、こういうことを考えておるのでございますが、なお現実との乖離は御指摘のとおりでありまして、いかなる比率にするのが妥当であるか、なお五十三年度の税制の問題としてよく検討いたします。
  165. 玉置和郎

    玉置和郎君 公取委員長、長いことお待たせして済みませんが、銀行の独禁法八条違反、十九条違反、ことに私のところの手元にある幸福相互銀行の拘束預金、十九条違反、これはあるはずですが、知っていますか。
  166. 澤田悌

    政府委員(澤田悌君) 具体的事実は存じておりません。(「わからないならわからないで、はっきり言えよ、」と呼ぶ者あり)
  167. 小川半次

    委員長小川半次君) 澤田君、もう少し高声で。委員に徹底していないそうです、声が小さくて。
  168. 澤田悌

    政府委員(澤田悌君) ただいま幸福相互銀行という御指摘でございましたが、具体的事実は存じておりません。
  169. 玉置和郎

    玉置和郎君 銀行の独禁法八条違反と十九条違反について、あなたのところが調査をする考えがあるかどうか。
  170. 澤田悌

    政府委員(澤田悌君) 具体的に違反の端緒がございますれば、厳正に調査いたします。
  171. 玉置和郎

    玉置和郎君 そうすると、国会を通さなくても、私たちがあなたに対してこういう疑いがあると思うがどうかと言ったとき、あなたは調査しますね。
  172. 澤田悌

    政府委員(澤田悌君) 調査いたします。
  173. 玉置和郎

    玉置和郎君 これを最後に結びとしますが、総理、あと支店の問題を言いたかったのですよ。支店設置はめちゃくちゃです。支店設置は、いま国民のニードなんてちっともないですよ、支店なんというのは。これ以上ふやしてほしいのは何店もない、一店もない。それなのに、ことしだけで四十三またふやす。そして、支店が一つ設置されたら、大体五年間で投資総額がペイできるようになっているのです。これは、銀行局の報告もそうだし、私の計算でもそうです。それだけにこの辺で、銀行、証券、損保、生保という、先ほど言うた偏向経済の中の王者、偏向経済を占めておるこういう金融資本に対して、自由民主党というわれわれが漸次改革の手を入れていくということでなければだめ。  そこで、結論を申し上げますが、これは日銀法の改正をまずやらなければいけない。銀行法の改正をやらなければいけない。臨時金利調整法という甘えた法律も改正せなければならぬ。預金保険法の見直しもしなければいかぬ。証券、損保、生保に関する法律、これも抜本的見直しをせなければいかぬ。私はこう考えております。それなくては自由民主党というものはこれから生きていけない。本当にこの金融資本に対して果敢にチャレンジをするという、こういう自由民主党であってほしい。お金がお金を生んで、お金によってすべてが支配される社会は不幸である。  だから、最後にもう一つ提案しておきますが、銀行は日曜祭日だって金利がっくのですよ。企業は、日曜祭日、いま週休二日制のところもあるから、大変な休みが多い。せめて日曜ぐらいは金利なしにしたらどうか。五十二日間ですよ。そうしたら一・四三ぐらいの金利の軽減になる、いいですよ、これは。どうですか。
  174. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 金利に週休二日制とかそういうものはなかなかむずかしい問題でございますが、こういう不況時におきましては、金融機関というものは、やはり産業界に協力する姿勢をとらなきゃならぬと思います。そういう構えで、銀行行政、またその他の金融行政を指導したいと、かように考えます。
  175. 玉置和郎

    玉置和郎君 終わります。(拍手)
  176. 小川半次

    委員長小川半次君) 以上をもちまして、玉置和郎君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  177. 小川半次

    委員長小川半次君) 田英夫君。
  178. 田英夫

    ○田英夫君 先日もわが党の前川委員から質問をいたしましたが、総理大臣のアメリカ訪問による福田・カーター会談の問題は、まだまだわれわれにとって伺わなければならない点がたくさんあると思います。  そこで、きょうはまずその問題から御質問をいたしますが、私も実は二月にワシントンに行ってきましたから、カーター新政権の考え方というものはある程度理解をしているつもりでありますが、今回の福田・カーター会談の中で共同声明にも人権問題ということが全然取り上げられていない。これは福田さんとの話し合いの中ではどういうふうに向こうが表現したのか、取り上げられているのかいないのか、そのことから伺いたいと思います。
  179. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、出発の前にどなたかから御質問がありまして、人権問題は一体どうするんだと言うから、私の方からこの問題は持ち出しませんと、こういうふうに申し上げたわけでございます。先方からもそういう話は全然なかったんです。そこで、共同声明にも何も書いてないと、これが実情でございます。
  180. 田英夫

    ○田英夫君 アメリカのクリスチャン・サイエンス・モニターという新聞が、福田・カーター会談について論評をしておりますけれども、その中に、日米関係がこれほど緊密かつ友好的な時代はなかったと福田さんは言っておられるけれども、同時に、日米両首脳の間にこれほど大きな食い違いがあった会談は前例がないというふうに言っているわけでありますが、私も全くそのとおりだと思うのです。この点ば容認なさいますか。
  181. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのクリスチャン・サイエンス・モニターの記事というのは、大変私の認識と違うと思います。私は、日米会談は、意見の違う点はありますよ、ありますが、共通の認識というところが非常に多かったと、こういうふうに理解しております。
  182. 田英夫

    ○田英夫君 そこが認識の大きな違いだろうと思います。佐藤・ニクソン、田中・ニクソン、三木・フォード、こういう一連の会談を通じて、従来少なくとも自民党政府とアメリカ政権との間には一つの共通のレールを走るというムードがありましたけれども、今回はそうではない。その原因は一体何かということをこれからひとつ解明をしてみたいと思うのです。非常に重要なことだと思います。  そこで、まず朝鮮の問題です。非常に多くの点で食い違っている。カーター大統領の言っている人権批判からの朴政権に対する強い批判の態度というものば御存ずだと思いますが、このことを福田総理はどういうふうにお考えになりますか。
  183. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 人権問題は全然話に出ないんです。私は、アメリカの国会の中にそういう議論があることは承知しておりますが、カーター大統領がその問題に何ら触れるところがなかった。大統領がどういうふうな考え方を持っておるか、これは知るよしもない、かように御了承願います。
  184. 田英夫

    ○田英夫君 そういう状態で会われたというその事前のところの外務省を中心とした下話、そこでこの問題が抑えられてしまったということなんですね。国務省に人権問題の特別のセクションが置かれていて、パトリシア・デリアンという女性がそのチーフになっておりますが、私もその人に会ってきました。こればカーター大統領直接に指示をしてこういうセクションを置いているんですね。外務大臣、御存じですか。
  185. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) お名前は伺っております。
  186. 田英夫

    ○田英夫君 どういう仕事をするところだか、外務省はつかんでおられますか。
  187. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) カーター大統領が人権問題について考えておられる重要性にかんがみて、世界各国における人権問題の取り扱いぶりについていろいろ調べておるようでございます。
  188. 田英夫

    ○田英夫君 この席でその女史が責任者が私に述べたことを紹介する時間がありませんけれども、カーター大統領じきじきの命令で人権外交の進め方について研究をすると、そして私のような日本の野党の議員に対して意見を聞かしてくれというところまで言うくらい、きわめて真剣であります。福田さんが人権問題についての話が出なかったということは、向こうがもうあきれて出さなかったんだというふうに私は理解せざるを得ないのですね。  そこで、次の問題ですが、在韓米軍の撤退の問題について、政府は削減という言葉を使うようにという要求をされたそうでありますが、これは事実でしょうか。
  189. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 在韓米軍につきましては、撤退という言葉が使われておりますけれども、私どもとしては削減という表現の方がより穏やかであろうという意見を申し述べたわけでございます。それに対しまして、先方といたしましては、これは究極的には陸上軍を撤退をする。その点につきましては、これはいつの時期になるかわかりませんけれども、韓国側といたしましても、いつまでも米地上軍についてもらうということは思っていないと、こういうことでありまして、したがいまして、撤退と申しましても、計画的に、しかも朝鮮半島の平和を害しないというようなやり方で行われると、このようなことでありますので、これは表現の問題であるからということで、削減ということでなしに撤退という表現を使うこととしたわけでございます。
  190. 田英夫

    ○田英夫君 具体的に何年でどういう方向で地上軍を撤退するのか、その地上軍はどこへ持っていくのか、そういう話をされたでしょうか。
  191. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 具体的なやり方につきましては、韓国と協議をして、また日本の意見も聞いた上でやるということでございまして、具体的な話し合いはなかったわけでございます。
  192. 田英夫

    ○田英夫君 モンデール副大統領が来日されたとき以来、福田さんは、従来からの自民党政府の撤退反対という態度を翻して、米韓間の問題であるからわが方は介入しないというふうに態度を変更されたのであります。福田さん自身は変更されたと思わないかもしらぬけれども、三木内閣以来の自民党政府という通した目で見れば、これは明らかに変更であります。その理由を伺いたいのです。
  193. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 別に変えたわけでもないのですが、この撤退問題は、これはもとより韓国の問題、それに韓国が自主的に決める問題です。ですから、それに日本が介入する、そういうようなことは基本的には韓国も余り快しとしないだろう、そういう認識を持ったわけであります。
  194. 田英夫

    ○田英夫君 それは違うのじゃないですか。韓国の問題じゃなくてアメリカの問題ですよ、アメリカ軍が引き揚げるかどうかという問題ですから。いかがですか。
  195. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) アメリカはどう思うかわかりませんけれども、韓国はなかなか自主的な態度をとっています。その韓国が日本にとやかく言われる筋はない、こういうことを言い出すかもしらぬということを考えながらそういうことを言ったと、こういうふうに御理解願います。
  196. 田英夫

    ○田英夫君 もう少しはっきりさせましょう。  それは、あそこで突然自民党政府の態度が変わったことは事実なんですよ。日本国民はみんなそこを非常に不思議に思っている。モンデールさんから一つの意思表示があったからそう変わったのか、いまおっしゃったことからすると、韓国の朴大統領からよけいなことを言うなと、こういうことがあったのか。よけいなことがあるわけはないんですね、朴大統領と従来の自民党政府の主張とは同じなんですから。それをなぜ変わったのか。
  197. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それは私の判断で私がそういう表現を使った、こういうことであります。
  198. 田英夫

    ○田英夫君 それはいずれ詳しく解明をいたします。これはモンデール副大統領が福田総理に対して言ったんだということをアメリカ側は私に伝えております。この辺はひとついずれ明快にいたします。  御出発前に、私は、関連質問で、総理は朝鮮は  一つなのか二つなのかということを伺いました。これに対して、統一を目指したいという意味の、つまり一つを目指すべきだと思うという意味のことを言われた。しかし、共同声明の中には統一という問題は一言も入っていないんです。これはなせでしょうか。
  199. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それはもう当然のことである、こういうふうに理解したからであります。
  200. 田英夫

    ○田英夫君 共同声明は、「朝鮮半島における平和と安定の維持が引き続き重要」だ。この安定という意味はどういうふうに解釈をしたらいいんでしょうか。
  201. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 朝鮮半島におきます平和と安定という言葉でございますけれども、私どもはそこにいろんな動乱が起こらないこと、そういうことをその二つの言葉に表現をさしておる、そういうつもりでございます。
  202. 田英夫

    ○田英夫君 私ども日本人の通常使う常識で言えば、それならば.平和でいいんですね。どうして安定と。現在南北に分かれている残念な形の中で安定ということは、その南北に分かれたままの形が安定しているというふうに考えるのが常識じゃないでしょうか。これは考え過ぎですか。
  203. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 御質問の平和と安定の問題でございますけれども、御承知のように、朝鮮半島は休戦ラインによっていまのところは辛うじて紛争が激化しない形が国際連合の努力によって維持されているということでございまして、本当の平和に至る前に、いまある姿といいますのは、休戦ラインによる南北間の一種の均衡といいますか、緊張の激化を防ぐという状態で、これは平和の問題に至ります一歩手前の安定の問題が実はいまの日本にとってのより大きな関心事である、こういう観点でございますので、究極的には、先ほど総理もお答えになりましたように、一九七二年の南北共同声明でも統一を前提としての南北対話ということが始まったわけでございまして、それに至る道のりにおいてやはりこの地域の安定というものが大事である、こういう認識でございます。
  204. 田英夫

    ○田英夫君 もうそういう表面のきれいな話はお互いにやめた方がいいと思います。私も素人じゃありませんから、アメリカの大統領以下が何を考えているかということを知りたいから、わざわざアメリカへ出かけていったんですよ。その結果は、カーター大統領と福田総理大臣との間に非常に意見が違うとさつき申し上げた。たとえば、米軍撤退ということについて、あるいは朴政権の人権抑圧批判という点について、明らかにお二人は違うんですよ。しかし、一致している基本的な点、がある。それは何かと言えば、二つの朝鮮ということの考え方ですよ。この私の意見にどういう御感想をお持ちですか。
  205. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 田さんが行っていろいろ話をしてきたというんですが、その話も聞いてみました。が、これは基本的に私とカーター大統領との間に見解の相違はないと、これは私はもう非常に確度の高い自信を持って申し上げることができる、かように存じます。
  206. 田英夫

    ○田英夫君 これは、表面の飾りごとでは済まないことなんですよ。非常に重要なことなんです。朝鮮民族は南北ともにこの点を注目しているわけです。表面できれいなことをおっしゃって、ああそうかと思うようなもうなまやさしい状態ではないわけです。あの人たちのいま置かれている状態、特に韓国の抑圧をされて弾圧をされている連中の気持ちは非常に重要ですよ。  そこで、ナショナルプレスクラブの総理大臣の記者会見の中で、日本は経済大国だ、しかし軍事大国は目指さない、これはもう世界で全く例のないことであるという意味のことで、わが国は違うんだと。日米安保というもので、その上に立ってわれわれは軍事大国にはならないというこのおっしゃり方は、朝鮮の人たちはどういうふうに受け取りますか。これは、アメリカの国民も、日本はつまり安保ただ乗り論だ。そして、朝鮮の人たちは、要するにわれわれは日本の経済大国の一つの前線として、あるいは軍事的にアメリカと日本の前線として立たされているじゃないかということを韓国の人たちは感じるわけですよ。総理大臣の気持ちはともかくとして、あのプレスクラブの表現は、朝鮮の人たちには、韓国の人を含めてですよ、非常に評判が悪い。どういうふうにお考えですか。
  207. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあいろいろの感想を持つ人があると思いますが、私は、福田が言うことはこれは高く評価すべきだなあという人が多いと、これはアメリカでも多いし韓国でも多いと、かように考えております。
  208. 田英夫

    ○田英夫君 ここのところが、こういう予算委員会のすべての大臣がそろっておられるところでないと、基本的な姿勢の問題というのはなかなか議論できないんですね。外務委員会なら、外務大臣だけで、政府全体の――もちろん政府を代表しておられるけれども、そういう議論ができないので、本当はうんとやりたいのですが、問題がたぐさんあり過ぎます。  先へ進みますが、この前も問題になりました共同声明の中の「西太平洋において、」というところの次に、「西太平洋において、均衡がとれ、かつ、柔軟な軍事的存在を」と、こういうふうにアメリカの大統領が言ったということになっている。この「柔軟な軍事的存在」というのは一体どういうことを意味するんですか。
  209. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 共同声明の文言の問題でございますので、私から御説明させていただきます。  この意味に関しましては、従来の米側の用例等から推測いたしますに、米国が西太平洋地域において、そのときどきの状況の変化に応じて機敏かつ効果的に対処し得る軍事的な能力を維持するということを意味すると思われます。
  210. 田英夫

    ○田英夫君 これも通常われわれが使う日本語でいえば、「柔軟な軍事的存在」というのは日本人にはちょっとわからないですよ。これは外務省の翻訳された方はおわかりになっているんでしょうか。要するに、「柔軟な軍事的存在」というのは、軍事的な存在というのは柔軟であるわけはないでしょう。軍事力ですよ。いまの御説明じゃわからないですね。
  211. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) お答え申し上げます。  実は、アメリカは、最近、そういう柔軟といいますか、英語で言いますとフレキシブルという言葉は、いろんな意味でいろんな場合に使っておるわけでございます。たとえばわれわれの調べたところによりますと、アメリカの軍の用語辞典の中でフレキシブルレスポンス、柔軟反応というふうな表現がございまして、これに対しては、状況に即し、かつ適合した行動をもって、どのような敵の脅威あるいは攻撃に対しても効果的な反応をする軍隊の能力というふうな定義を下しておるわけでございまして、これはまあ米軍としては慣用的な表現になっておる次第でございます。
  212. 田英夫

    ○田英夫君 フレキシブルというのと柔軟というのは、ちょっとやっぱり、まあ英語の達人が翻訳したんでしょうが、日本語の感覚は、柔軟というのは違いますよ。それはまた外務委員会でやりましよう。  もう一つ、総理大臣が大変力を入れておられた核燃料の問題、これは基本的な姿勢として私は非常に問題があると思いますよ。つまり、福田さんがどうしてあれをあんなにがんばるのか、その理由を聞かしてほしいんです。カーター大統領の主張に対して、今度は一番戦意を燃やしてと言っては悪いけれども、大変がんばられましたね、ということになっている。これはなぜですか。
  213. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、カーター大統領の考え方の基本については一00%賛成なんです。しかし、わが国の立場を考えますと、これはどうしても代替エネルギーとして核利用を考えなきゃいかぬ。それが阻害されておるんです。阻害されるにしてもそれが不平等な形で阻害されるということになったら、これはまあ大変なことになります。そこで、私は、一体ドイツはどうするんだ、イギリスはどうするんだ、さらにソビエトのことはどうなんだということも聞いたわけでありますが、大統領は、それらの国々に対しましても同様の呼びかけをすると、こういうふうなことを申しておる。とにかく政府間で話し合いましょうということになった次第でございます。
  214. 田英夫

    ○田英夫君 むしろカーター大統領が言っている結論については私ども賛成なんです。プルトニウムを厳重に管理するという問題、この方向については全く賛成なんですが、そういうことを発想した大もとについては、私は、非常におかしいというか、アメリカに対して批判があります。つまり、アメリカがソ連とともに圧倒的な核を持っているという、この核独占体制を維持したいという、部分核停条約、核拡散防止条約、その一連の延長線上にある考え方じゃないですか。これはアメリカの独善ですよ。だから、総理大臣が基本的な姿勢について賛成だと言われたのは、そのどっちの意味なのか、結論を支持しておられるのか、発想の方まで含めて支持しておられるのか、そこをまず伺いたい。
  215. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、核の兵器化をこの地球から廃絶しようというアメリカの考え方、これに賛成していると、こういうことを申し上げております。私はその点におきましてはカーター大統領よりむしろ進んだ立場で熱心です。もう核なんというのを再びわが国がその被害を受けるなんというようなことがあっては相ならぬ。非核三原則というものも堅持しておる。そういう立場で、私は、核を廃絶しようという大統領の意図、これには全面的に賛成であったと、こういうことであります。
  216. 田英夫

    ○田英夫君 つまり、私の言った前段の部分について、私どもと同じように賛成なんだと、カーター支持なんだと、同感なんだと言われる。それだったら、その先の結論が違ってくるはずですよ。非核三原則を重視する、日本は唯一の被爆国である、プルトニウムから絶対に原爆などをつくるというようなことをしないと、こういう態度の延長線上には、当然、経済的には原子力発電としてプルトニウムから増殖炉をつくりたいけれども、それもやめようじゃないかという結論になるはずじゃありませんか。そこはどうして、それがそこから先がぐっと曲がっちゃうんですか。経済優先になっちゃうんですか。
  217. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日本が不平等な待遇を受ける形でそういうことになるとこれじゃ困ると。核の平和的利用、これが許されるというならばこれはもうそこに差別があってはならぬ、こういうことなんです。わが国はわが国として平等な形でその体制の中に、仕組みの中に入らなきゃならぬと、こういうことであります。
  218. 田英夫

    ○田英夫君 不平等はあってはならぬという、大変国民の皆さんには訴えやすいそういう美名に隠れて、実はプルトニウムから原爆をつくる余地を残すようなことになってはならぬという、そのことの方がはるかに大切じゃないか。自民党の一部に、公然と日本は将来核保有をすべきだという意見を言われた方がある。その方が大臣になっていたりするというところに国民はみんな非常な疑惑を持っているわけですよ。そういうときに、カーター大統領がせっかくそこまで言ってきたんなら、わかったと、日本は絶対にプルトニウムから原爆をつくらないのだということをひとつ態度で示そうじゃないか、こういう発想になるべきじゃないですか。これは一部の報道でも伝えられているけれども、アメリカは大体四月末には具体案を出すそうでありますけれども、プルトニウムの国際管理とかいろんな考え方が当然あるのじゃないでしょうか。これは科学技術庁長官に伺いたいのですが、日本のその方向というのは一体どういう考え方をとっておられますか。
  219. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) ただいまの問題、二つの点から考えていただきたいと存じます。  一つは、わが国は御承知のとおり資源小国で、そうして石油に関してはほとんど九九・七%輸入という、言うならば海外依存型でございます。これで将来を迎えるわけにはまいりませんから、原子力は言うならば準国産のエネルギーである、こういう立場で臨みたいのでございます。ところが、その準国産のエネルギしである原子力の肝心かなめの資源、これはウランでありますが、このウランすら、現在、いまのままの軽水炉で推移すれば、恐らく二十年が限界ではないか、こういうふうにいわれております。もう二十一世紀を迎えずして二十世紀の問題であると、こういうふうにいわれております。それに対しまして、プルトニウムを燃料とするところの高速増殖炉ならば資源的にはその六十倍の価値ありと、こういうふうにいわれております。現在日本にはウラン鉱は御承知のとおり一万トンしかございません。そうして、私たちは、昭和六十二、三年度までのウランといたしまして、今日十四万トンばかり持っておりますが、これを高速増殖炉という方式によって発電をするのならば百年分ぐらいの資源になるであろう、こういうことでありますから、いまからその開発を急がなくてはならないというのが日本の立場でございます。このことは、すでに国会も批准いたしまして日本が参加をいたしましたかの核拡散防止条約、NPTでございますが、この四条におきましても、この参加国は平和利用はもうこれが基本的な権利である。だから、この条約のいかなる条項も基本的権利を侵害するような、影響を与えるような解釈をしてはいかぬ、こういうふうにもう書いてあるわけでありまして、このNPTの発想者がアメリカ、あるいはまたイギリス、ソビエトであったという立場から言うのならば、われわれが喜んで参加したこの平和的な目的を持ったNPTの四条においても、日本はここが将来においては死活問題であるにもかかわらず、核を持つている国と持たない日本、これとを差別するのでございますが、これが今日の日米折衝の一番ポイントになるのではないか。したがいまして、いま申し上げましたような観点から言いますのならば、田委員が御指摘なさいましたようなあえて経済的な見地から申し上げておるのではない。世界の資源的な見地からも申し上げ、また資源小国の日本人の将来の死活問題として申し上げ、さらにアメリカの言うならば平和目的に私たちは沿っておるわけでありますから、もうはつきり申し上げれば、米ソがもっと核の兵器の禁止すらも申し合わせた上でわれわれの平和利用に関しても容喙なさるのならばいざ知らず、まず平和の面からだけの利用にすら水をさすという態度はいかがなものであろうかというのが今後の外交の一番中心課題になるのではないかと存じております。
  220. 田英夫

    ○田英夫君 大変りっぱなんですよ、そこまではね。それは、われわれが、核拡散防止条約に党内で大変な議論があった。もう何十回となく議論を積み重ねた上で賛成をいたしました。それは何かと言えば、結局、米ソの核独占ということから発想をした条約だということは百も承知で、そこに非常に問題がある。いま宇野さんが言われたとおりなんです。にもかかわらず、われわれが賛成したのは、自民党政府の皆さんとは若干違うのであって、そこはわれわれは唯一の被爆国だと、非核三原則があるんだと、ユーラトム並みに査察を受けようなんということじゃなくて、もっと積極的に世界で最も厳しい査察を受けても結構だという態度を持ちながらあれに同意をしたわけですよ。だから、今回の問題も、いまお答えになりませんでしたけれども、国際機構をつくるというようなことをむしろ日本から積極的に提案をしたらどうですか。そして、プルトニウムを厳重に管理する。絶対にこれ以上核が拡散しないということに、それほどいまおっしゃったように、総理大臣も科学技術庁長官もおっしゃったほど日本政府も御賛成ならば、日本からむしろそのことを提案したらどうですか。アメリカの提案を待つまでもないじゃないですか。その点はいかがなんですか。
  221. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 御承知のとおり、現在わが国も多少のプルトニウムを持っておりますが、これは国際機関であるところのIAEAが監査をいたしております。なおかつ、この国会に入れましたところの協定、これが批准を終わりますと、わが国はIAEAにかわりまして自主的監査、言うならばユーラトム並みの監査をするわけでございます。したがいまして、すでに多数国条約においてそういうことは決められておるわけであります。それ以上のものを望むとするならば、これは恐らく多数国間におきましていろいろと今後議論されることでございましょうが、いまのアメリカといたしましては、いずれに対しましてもまずとにかくグローバルな見地で臨みたいということでありまして、わが国が今日再処理能力を十二分に持っておる。しかしながら、残念にしてウラン鉱とあるいは再処理、現在といたしましては濃縮技術も持っていない。こういう立場から考えますと、世界のフランスだとか英国だとか、あるいはまた再処理をしたいという国々だとかとは、また恐らく見地の違うところに日本は立たされております。したがいまして、何としてもいま申されました国際的な規制等々は将来われわれといたしましても非常に重要視しなければならない問題でございましょうが、今日の問題といたしましては、たとえグローバルな問題であっても、やはり日本はNPT参加国として、一員としての立場をまず相手に知らしめることが必要である。したがいまして、そういう中においてはいろんな問題が出てこようと思いますが、ただいまといたしましては、日本に対する認識がいささか相手さんも薄いのじゃないかと思われる面がたくさんございます。したがいまして、まずそういう面からわれわれの国情を十二分に相手に知っていただいて、その後ドイツもそういう考えだ、あるいはフランスも英国もそういう考えだということになれば、もちろん日本は、今日まで非核三原則を初めあらゆる面で平和利用を第一義となしておりますから、言うべきでございましょうが、ただいま二国間における重大な外交の前提として、今日ただいまここで公の場でそうした方向に向かうということの是非に関しましては、やはりこれは国益にも重大な影響があろうかと存じますので、田委員の御意見は御意見として十分私は耳を傾ける所存でございます。
  222. 田英夫

    ○田英夫君 きょうの報道でも、西ドイツで原子力発電所に反対をする一万人のデモがあったということもあります。この原子力発電という問題は、まだ完全に一般の皆さんに安全性の点で理解されているとは言えない。そういう中で、一方でもう一つ、インドがやったようにプルトニウムから原爆ができるということ、これまた皆さんの頭の中に焼きついているわけですよ。そういうときに唯一の被爆国である日本のとる態度というのは、繰り返して申し上げますが、世界の先頭に立つべきだし、現に外務大臣が記者会見で、アメリカから帰られたすぐのときか記憶にありませんが、この問題について、アメリカ側の考えがあるようだけれども、各地に管理機構をつくるというようなそういう考えもアメリカから漏れてきているわけです。この点は、アメリカでそういう構想をお聞きになってきているでしょうか。
  223. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 現在、アメリカの国会には、プルトニウムの管理あるいは再処理の管理につきまして、いろんな法案が議員の提案として出ておりまして、その中の一つにそのようなことがあるということでございまして、これがアメリカ政府の意見であるとかなんとかいうことでは全くないのでございます。そういう意味で、それ以上の深い意味のない発言であるとおとりいただきたいと思います。
  224. 田英夫

    ○田英夫君 いや、実は私は鳩山外務大臣の記者会見をこれは大変いいことを言っておられるという意味で読みましたので、それがいままた打ち消されるようなことになりますと、大変残念なんですね。むしろああいう考え方、アメリカの議会はまさに議員立法でどんどんいい考え方が出てきます。残念ながら日本の習慣とちょっと違うようです。日本の場合は、たとえば私がいま発言したこと自体が一つのアメリカで言えば議員立法のようなものだと思っていただきたいのです。ですから、そのアメリカの提案を受け入れるというよりも、むしろ日本の方からそういう考え方を率先して出すべきじゃないか、こういうことなんですが、総理大臣、いかがですか。
  225. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この問題が軌道に乗りますると、いろいろな考え方が出てくると思うのです。田さんのおっしゃることも私は一つの有力なる考え方として討議される、こういうふうに思いますが、それよりも先に、私は、日本の国が不平等な立場に立つと、こういうことであっては断じて相ならぬと思うのです。いま多く行われておる議論は、核再処理の施設を持っている国はそのままにしておくのだ、これから始める国、それは停止を要請されるのだ、そういう動きなんです。これは大変なことだ。そこで、私は、カーター大統領に対して、そういう場合にはわが国は不平等な立場になる、しかもわが国は大変な期待をこの核エネルギー寄せているのだ、一体イギリスの国の施設はどうするんです、フランスのものはどうするんです、ドイツはどうするんです、こういうことで、詰め寄ったわけでもありませんけれども、まあ問いただしたわけです。そうしたら、それらの国々に対しましては話をいたしますと、そして既設のものについてもこれを運行を停止するというように努力します、こういうことです。そこで、私は、それはわかったと、それじゃソビエトロシアはどうするんですと、こういうことを話した。そうすると、ソビエトロシアについても同様な話をいたしますと、こういうことを言うわけでございますが、私はそういう話がもう本当に実りあるものになってくれればこれは世界のために非常にいいことであり、わが国も同調できる立場に立つわけでございまするけれども、さあその交渉がどういうふうになっているか、私もちょっと先先を読むことができないようなむずかしい問題のような感じがするわけであります。とにかく、私の基本的な構えば、わが国がこの問題おいて他国と差別を受けるような状態であっては断じて相ならぬと、こういうことでございます。
  226. 田英夫

    ○田英夫君 不平等ということをしきりに言われるのですけれども、核の問題は初めからもう大変な不平等じゃないですか。アメリカは二万個の核兵器を持っているのですよ。これは兵器ですけれども、まあわれわれがいま考えているのは平和利用の問題ですけれども、核の問題というのはこれはもううらはらみたいなものです。これはもう不平等のことを言えば米ソが核兵器を全部なくすということに到達しなければ完全な解決はできないわけでありまして、そこで、少なくともということが、部分核停条約や核拡散防止条約やそういう条約の中で、自民党もむしろ率先して、政府もお認めになり、われわれもあえてそういう不平等を知りながら賛成してきたじゃないですか。ですから、少なくともその考え方からすれば、七月から運転されると言われている東海村の再処理工場というものは、運転を始めないという態度を御決定になるべきだと思いますが、この点はいかがですか。
  227. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 高速増殖炉に関しましては、先ほどその定義を私が申し述べたとおりでございまして、その燃料が再処理工場で産出されるところのプルトニウムでございます。わが国の高速増殖炉は、御承知のとおり一九九0年代から実用化しようと思っております。ところが、原子炉というものは一回で実用化できませんので、最初には実験炉、続いて原型炉、続いて実証炉、それが終わってから商業炉、いわゆる実用炉、こういうふうに転化するわけでございまして、やはり一九九0年とは言い条、その間に相当な年月を必要とするわけでございます。したがいまして、さような観点から立ちましても、一九九0年にはどうしても高速増殖炉によってりっぱにウランの効率を図りたいと思うからには、今日ただいまからその準備をしなくてはなりません。カーター大統領が総理大臣にお渡しになられましたフォード財団が編さんするところの「原子力の問題点とその選択」という中におきましても、やはり、二十一人の執筆者は、いずれも高速増殖炉、これは必要なんだということを言っておられるわけでございます。ただ、そこに、われわれといたしましては、すでにその再処理の技術を持つに至った日本あるいはドイツ、それらが大きく国際間において隔たりを受けながらストップ食らうというようなことは果たしてどうであるか。そういうふうに考えますと、何としてもやはり準国産であるところのエネルギーというものをわれわれは原子力に求めたい、そういう気持ちでございますので、この七月からホットランに入るところの再処理工場をストップしてはどうかという御意見に対しましては、われわれはいささか反論せざるを得ないわけでございます。もちろん、わが国の原子力行政は、先ほど申されましたとおり、開発だけではございません。その裏をなすものが安全であるということを十二分に承知しながら、安全を期せんがためには、やはり相当な歳月をかけまして実験炉から実証炉、そしてやがては実用炉、そういうふうな段階を踏みたい。これでございますので、残念でございまするけれども、いまの御意見に私たちはくみすることができません。
  228. 田英夫

    ○田英夫君 私が言っているのは、世界に向かって日本が絶対に核武装しないんだということをどうやって示そうかという、そういう大きな点に立っての問題なんです。ですから、七月が来年の七月になっても、一九九0年という先の時点を目指してのことであれば、この一年というものの中でもし国際的に大きな話し合いがついていく、その先頭に日本が立ち得るというような状況になるならば、その一年の延期というものは決して将来に向かってマイナスではない、こういう考え方なんです。この問題はここで一応やめておきますけれども。  総理大臣ね、福田・カーター会談というもの全体を通じまして私が意見を言わしていただければ、これは世界の動きに対する御両人の考え方の違いというものが出たというふうに思います。そこは私は大変残念だと思うのです。カーター大統領は、朝鮮民主主義人民共和国いわゆる北朝鮮の渡航制限を緩和するというような形の中で、社会主義諸国との関係というものも、一方で人権問題で非難もしておりますけれども、一つの風通しをよくしようという考え方がある。世界の第三世界が大きく発言力を持ってきたこの状況の中で新しい対処をしようとしている。その意欲が至るところに見えるわけです。しかし、福田さんの頭の中は、依然として東西対立、冷戦構造という、資本主義か社会主義かという頭しかない。自民党は確かに資本主義の政党かもしれませんけれども、そういう頭ではいま世界に向かって対処できなくなっているという、この違いがはっきり出たと思います。ここのところを御感想を伺いたいと思います。
  229. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) どうも、田さんのお話を聞いておって、偏見を持って私の動きを見ておるなあと、何かもうめがねをかけつ放しで私の動きを見ておるのだなというような感じがしてなりません。私もばかに何というかタカ派みたいなことを言いますが、私も柔軟な姿勢をとっておるわけですよ。世界はもう本当に体制を超えて平和でなけりゃならぬ、こういうふうに考えているわけで、そういう点でカーター大統領との間に何か行き違いがあるというようなお話でありますが、私は、世界に向かっての立場におきましては、日米間でほとんどその考え方の違いがないということが今度の会談の大変な実りであった、こういうふうに考えております。
  230. 田英夫

    ○田英夫君 残念ながら、基本的な考え方で違うようでありますが、次に移ります。  いまモスクワで行われ、一方東京でも行われている日ソ漁業交渉の問題でありますけれども、ソ連が大変な提案をしてきております。これはもう世界の常識から全く外れた提案だと思いますが、まず農林大臣の御意見を伺いたいと思います。
  231. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいま日ソ間の漁業交渉、一方は東京で御承知のように日ソ漁業協定に基づくシャルクの会議が持たれております。モスクワにおきましては、ソ連の設定いたしました二百海里海域におけるわが国の操業の確保、伝統的漁業実績の確保ということの交渉が行われておるわけでございますが、ソ連は私とイシコフ大臣との間の取り決めの線を超えましていろいろの問題を提起をいたしております。  一つには、わが国が国会の御承認を得て設定しようとしておりますところの領海十二海里、この中におきまして現在の三海里から十二海里の間の漁業実績を尊重することが相互主義であると、操業を認めろと、こういうようなことを言っておるわけでございますが、これは田さんも御指摘になりましたように、世界の常識を超えた無法な申し出でございまして、これは絶対に容認することができない。領海は領土と同じことでございますので、このことはわれわれとしては絶対に容認できないということを強く反論をいたしておるところでございます。その他、私とイシコフ大臣の間には、いろいろ日ソの置かれておる立場から柔軟にこの問題を漁業問題として処理しようということに対しまして、いろいろの原則的なことを強く押し出してきておるわけでありまして、そういう点がいま交渉が難航しておるというのが現状でございます。
  232. 田英夫

    ○田英夫君 一部の報道によりますと、こうしたソ連の提案に対して、政府は、裁判管轄権とか入漁料とか許可証とか、こういうものを暫定取り決めに入れろという要求に対して一部譲歩をするのじゃないかと。領海の問題はもちろんいま大臣も言われたとおり、これはもう容認でき得ない問題でありますが、一部技術的なことで譲歩するのじゃないかという情報がありますが、これはいかがですか。
  233. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) これはアメリカとの間の場合におきまして、基本協定が発効いたします間、暫定取り決め、行政取り決めをいたしたわけでございますが、これは行政取り決めとして政府としてなし得ることとなし得ないことがございます。政府としてなし得ないことにつきましては、民間団体、大日本水産会等を通じましてこの問題は処理されておるところでございます。私どもは、この日米暫定取り決めというようなものを下敷きとして、日本として、日本政府としてなし得る範囲のことをやりたい、まあこういうことを言っておるわけでございます。これが、いまお話がありましたように、裁判管轄権等の問題になりますれば、どうしてもこれは国会の御承認を得て、国民の権利義務にかかわることでございますから、どうしても国会の御承認を得、正式の協定として批准をしなければこれに応ずることができない、こういう立場を堅持いたしておるところでございます。
  234. 田英夫

    ○田英夫君 もう少し技術的な点をはっきりしておきたいと思いますが、裁判管轄権は、これはもう当然いまおっしゃったとおりですけれども、その他、民間、大日本水産会というような形で、アメリカの場合と同じように、ある部分を認めるかもしれないというふうに受け取れるのですが、アメリカとの関係を例にとって、どういうものならばそういう民間の話し合いに移せるのか。そこのところは、ソ連の提案の中ですね、それはどういうことですか。
  235. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) アメリカとの間の暫定取り決め、これが限界だと思っております。その他、ソ連の申し出に対してどう対応するかは、ただいま交渉中でございますので、御了承を賜りたいと思います。
  236. 田英夫

    ○田英夫君 これは、基本的に衆参両院でも決議をしているとおり、私どもも日本の漁民の皆さんの生活を守るという基本的な態度に立って日本国民の権利を守るということですから、政府はぜひ最後までがんばっていただきたいということを改めて申し上げたいと思います。  きょうの報道されたようなソ連の態度というのは、先ほどのアメリカの核の問題についての独善性と同じように、まさに大国主義です。覇権主義と言われても仕方がない。こういうことはまことに残念だと思いますが、日本政府はその点は毅然としていただきたいということを重ねて申し上げますが、もう一つ、ソ連が二百海里を宣言したことに伴って、先日も総理大臣に申し入れをいたしましたが、韓国の漁船がソ連二百海里から追われて日本の領海近辺に出没をしてかなり大きな被害が出ているということで、政府社会党として善処を要望してありますが、これについての対処を御報告いただきたいと思います。
  237. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) いま田さんから御指摘になりましたような事態が発生をいたしましたので、早速韓国政府に厳重な申し入れをし、その善処方を求めました結果、わが国の十二海里の中、特に北海道等におきまして資源保護の観点で禁漁区等を設定しております海域には韓国の漁船は入れないと、こういうことをはっきり韓国政府も確認をいたしまして、そのような行政指導をやっておる段階でございます。  また、一方におきまして、いままでの被害、これも御指摘のように相当の額に及んでおるわけでございます。日韓の間には、日韓の漁業のトラブルを排除し、もし不幸にして被害等が発生いたしました場合におきましては賠償その他の処理をするという民間の合意がなされておりまして、これにも韓国側は応ずるということに相なりまして、今月末に日本の民間団体の方からその申し入れをし、近く日韓の間でこの損害に対する補償問題についても合議をすると、こういうことに相なっております。  なお、国内的な措置といたしましては、海上保安庁とも連絡を密にいたしまして、相当の巡視船その他を他の管区からも増強いたしまして、水産庁の監視船等と相まちまして、韓国漁船の操業の規制措置を講じておるところでございます。
  238. 小川半次

    委員長小川半次君) 関連質問を許します。対馬孝且君
  239. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 いま、北海道の、特にソ連、韓国のトロール船による漁業の被害が漁民の最大の課題になっております、いま大臣もお答えになりましたが。そこで、実際にいま北海道の漁民というのは、大臣も御承知のように、二百海里で漁船は追い出されて、一方ではトロール船による被害が続出をしておる、全く往復びんたを張られているというのが今日の漁民の実態です。もう怒り心頭に発しているというのが北海道の漁民の本当の生の声であります。それで、この間も公聴会がございまして訴えられていましたが、四十九年の一月以来、大臣ね、今日まで、この被害件数が二千四百九十六件にわたっているんですよ。その総被害額が十億八千六百万円を超えている。こういうことがはっきり漁民の実態から訴えられているわけです。そこで、この結果につきましては、やっぱり政府は領海に対応する政策が後手を踏んでおった、つまり、なまぬるかったと、これが漁民の声ですよ。つまり、領海十二海里が先手を打っておったらこういう被害にはならなかったのだ、こういうことと、一方ではやはり日ソ交渉に対する政府の非常な弱腰という不満が残っております。それで、私は、いまお答えを願いましたが、率直に言って、すでに三月に入ってから日高沖に再び韓国船が来ているんですよ。これだって件数から言えば三百八十件挙がっている。その被害が一億だと、こう伝えられております。こういう問題について韓国との話し合いをしたと、こういういま経過がございました。それなりにわかりますがね。一つは、本当に被害補償の対策について具体的にどういう補償が出されるのか。これは漁民の訴えはただの一件もこの二年間何一つ解決されたことはない。まさに政治不在だという怒りの声であります。そういう点について私はもっと具体的にこの被害対策についてのお答えを願いたいと思います。
  240. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 日ソ関係、あるいは日韓関係、この漁業に対する政府の対応がおくれたのではないかと、こういう御指摘でございますが、私も、福田内閣成立以来就任をいたしましてから全力を挙げて日ソ問題に取り組んでおり、また、日韓のいまのような状況に対応する措置を講じておるわけでございまして、私も漁業者の諸君の今日置かれておる窮状ということはもう本当に身にしみて感じておるところでございまして、全力を挙げてこの問題の処理に努力を傾けておりますことを御了承賜りたいと思うわけでございます。  なお、ソ連並びに韓国漁船による被害の状況につきましては政府委員から説明をいたさせますが、この問題はやはり民事訴訟的な性格のものでございまして、関係機関を督励してこの処理を急がしておるという段階でございます。
  241. 佐々木輝夫

    政府委員佐々木輝夫君) 近年におきますソ連船及び韓国船における被害の概況について御報告を申し上げます。  ソ連船によります被害は、四十九年度には一番ピークでございまして、千四十二件、三億四千万円の被害がございましたが、その後協定を結びましていろいろ向こう側も注意して操業をいたしました結果、若干被害は低下いたしました。しかし、五十一年度二月末までに依然として三百七十三件、一億百六十万円という被害がソ連船によっても出ております。  それから韓国漁船によりましては、五十年度に二百七十件、八千六百六十五万円の被害が報告されておりますけれども、五十一年度当初は若干低下したのでございますが、三月に入りましてかなり韓国漁船による被害が激増いたしまして、三月十五日までに三百八十一件、一億九百万円の被害の報告が道庁から参っております。
  242. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 いま、大臣から、韓国との間にこの被害を補償する折衝をすることの段階まで取りつけをしている、これは了としますよ、私は。ただ、問題はこれだけでは解決していないということですよ。二つのことを私は率直に、簡潔に申し上げますが、一つは、韓国側がどうしても応じない、あるいはソ連はいろいろなことが関係があると思いますけれども、これは同様でありますが、最悪の場合は日本としてはこの被害補償に応じなければ経済援助は打ち切ると、このぐらいのやっぱり強硬な政府側の態度があっていいのじゃないかという、これは私が言っているのじゃない、漁民の素朴な声ですよ。これが一つ。それからこれは恐らく解決がそうは言っても長引くだろう。その間、漁民がそれじゃ野たれ死にするのか、こういう問題がございますので、外国の漁船被害に対する救済制度を国として考えてもらいたい。この二つについて検討していただきたいと、こう思いますが、いかがでしょうか。
  243. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 対外の漁業交渉については、単なる漁業の枠だけでなしに、経済協力その他総合的な外交の見地に立ってこれらの問題を処理すべきだという御意見。さらに、先ほど田さんからお話がありましたように、国民的な世論というものを背景にしなければ私は外交の本当の成果は期し得ないと、このように考えております。その点につきましては全く同感でございます。  なお、韓国漁船等に対する被害の救済措置、この問題につきましては、日韓の間の損害賠償の交渉を急がせますと同時に、その被害によって経営が困窮をいたしておりますものにつきましては、漁業経営安定資金等の融資によって救済措置を講じてまいる考えでございます。
  244. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいまの問題につきましては、外務省といたしましても、外交ルートも通じ、また定期協議の際等を通じまして、厳重に申し出をしたいと思います。
  245. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 どうもありがとうございました。
  246. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、領海十二海里と二百海里の経済水域という問題がこの日ソ交渉の経緯から見ても非常に重要な意味をさらに持ってきたと思いますが、二百海里の問題は近く政府は韓国、中国に対しては外交ルートを通じて説明をしながら宣言を実施するということでありますが、これはいつごろになりますか。
  247. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいま韓国並びに中国にわが方の考え方を示しまして、理解を求めるようにいま努力をいたしておるところでございまして、できるだけ早い機会にその措置をとりたいと、このように考えております。  なお、十二海里の問題につきましては、大体関係各省庁との間の話し合いもまとまりましたので、明日の閣議にでも閣議決定をいたし、今月中に国会に御提案をし、御審議をお願い申し上げたい、このように考えております。
  248. 田英夫

    ○田英夫君 二百海里の問題は現在のモスクワ交渉に対して一つの力になるというふうにも考えられるので、その点いま明快な御答弁はありませんでしたが、今週中にもというような時点なのか、あるいはもっと先になるのか、その辺はいかがですか。
  249. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 韓国並びに中国との接触をいま外交ルートを通じてお願いを申し上げておりますので、できれば明日にでもという気持ちで取り組んでおるところでございます。
  250. 小川半次

    委員長小川半次君) 関連質問を許します。工藤良平君。
  251. 工藤良平

    工藤良平君 ただいまの十二海里の宣言の問題と二百海里の漁業専管水域の問題について私ちょっとお聞きをしたいと思うのですが、昨年の十月農林水産委員会で私どもこの問題を取り上げました。それというのも、先ほどお話がありましたように、ソビエト漁船が日本の近海に参りましてかなりの漁業被害が出ている、こういう実態から論議が進んだのでありますけれども、そのときに、十二海里の専管水域を日本が宣言をするということは、日米それから日ソ漁業交渉にプラスになるかマイナスになるかという議論をずいぶん詰めまして、その過程でやはり十二海里宣言をやることがこれからの漁業交渉に有利になると判断をするというような御回答もありまして、それを直ちに検討を進めるということになっていたのでありますけれども、今日までそれが進まなかった。その背景には、米ソ二国間の漁業協定の段階で、かなり日本としてはまだ二国間協定で若干時間がかせげるというような印象を私どもは非常に強く受けたわけです。そのときに、しかし、それは国際的にそういう大勢に来ているから、そうではなくて、むしろ積極的に日本が対策を打つべきだということを私どもは主張したのですが、その点において若干の食い違いがあった。それが、さっき御指摘がありましたように、日本政府としての手の打ちどころが結局積極性に欠けたという面で大きな問題を残しているのではないかということが一点であります。  それからもう一つは、今回のこの日ソ漁業交渉の段階でなぜソビエトがこれだけ強力に日本の十二海里の中までも押し込んでこようとしているのかということについてであります。これはどのような政治的な意図があるのか私は存じませんけれども、しかし、ここ数年間続いてまいりましたソビエトを中心にしたいわゆる北半球における冷害、干害等における食糧危機というものから、ソビエト圏内におきましてはかなり肉類に対する欠乏という問題が大きな政治的な問題になってきているということを私どもは実は聞いているわけでありまして、そういうことから食糧危機を迎えたソビエトのやはり二百海里問題に対する異常な熱意といいますか、いわゆる国民的な、向こう側の国民的な立場に立つならば、そういうことが端的に出ているのではないか。そうすると、日本の場合は一体それじゃそういう食糧危機的な問題は考えられないのか。今回の日米漁業交渉におきましても、あるいは今回行われている日ソとの関係におきましても、日本こそより積極的にそのような問題を国際的に大きくアピールしていく時代にいち早くきていたのではないか。そういう点について、日本は、外国に対して、食糧を輸入しているというようなことから積極性を欠いた面があるのではないかというように実は思っているわけで、むしろ私どもはこの交渉の……
  252. 小川半次

    委員長小川半次君) 工藤君、関連質問は三分間ですから。
  253. 工藤良平

    工藤良平君 わかりました。
  254. 小川半次

    委員長小川半次君) 関連質問の場合は、問うことだけにして、余りそう自分の意見を長々述べないようにしてください。
  255. 工藤良平

    工藤良平君 ですから、そういう意味で、日本の沿岸漁業に対する対策、あるいは国内における食糧対策というものを十分に施した上において国際的に私どもが乗り出すということがなければ、向こう側は依然として強硬に押してこざるを得ないだろう。そういう私は二つの問題が背景にあるような気がしますから、この点について明確に御答弁をいただきたいと思います。
  256. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) わが国は世界有数の遠洋漁業国でございますから、海洋の分割支配ということには基本的に反対でございます。少なくとも海の資源、水産資源というものは人類全体のためにその保存措置が講ぜられ、また有効利用が講ぜられるべきである、こういう立場に立ってきたわけでございますが、残念ながらアメリカあるいはカナダ、ソ連等が現実にああいう措置をとってまいったわけでございます。そういうようなことから、私は、就任以来、総理の御指導を得ながら、いま申し上げたような十二海里、二百海里の問題につきましても急速にこれに対応するという措置をとっておるということを御理解を賜りたいと思うわけでございます。  それから国際的な食糧事情また国内の自給力等から考えて、日本が食糧問題についてはもっと積極的な立場をとって国際関係でも働きかけをすべきではないか、こういう御意見でございますが、私も同様に考えておるわけでございまして、わが国の沿岸漁業の振興あるいは畜産の振興等によりましてたん白食糧の確保につきましては今後最善を尽くしてまいる考えでございますし、食糧問題につきましては今後FAOの場におきましてもいろんな場におきまして世界的な食糧問題の解決のために最善を尽くしてまいりたいと、このように考えております。
  257. 工藤良平

    工藤良平君 あとは私の時間のときにやります。
  258. 田英夫

    ○田英夫君 いま、農林大臣から、あしたの閣議で十二海里法案を決定するというお話がありました。この問題も非常に重要でありますけれども、ただこれは当然当該委員会の審議の過程でいろいろ問題を出されるわけですが、いま伺っておきた  いのは、聞くところによるとこの法案は二カ条から成っているというような非常に簡単なもののようでありますけれども、それは事実でしょうか。
  259. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この法案の内容は、現在の領海三海里から十二海里に拡大をするということが第一点でございます。  第二点は、いわゆる国際海峡という部分につきましては、わが国も海洋国として通商航海上、一般の領海の通航、無害航行よりももっと自由な航行が確保できるようにということを海洋法会議等でも主張いたしておるところでございますので、いわゆる国際海峡については現状のままとする、変更しない。  こういう二つの柱からできておるわけでござい  まして、それについての基線の引き方等きわめて簡明な法案になるわけでございます。
  260. 田英夫

    ○田英夫君 条文しては、基線の引き方の方が第二条になるのだと聞いておりますが、それはそれとして、全体十二海里にする、海峡部分だけ附則で五つの海峡を挙げてこれは三海里のままにすると、こういうお考えだというふうに聞いておりますが、そうすると、十二海里を引いてきて、境界の部分だけ三海里にする、その接点は一体どういう引き方をするのか、政令にゆだねられるようでありますけれども、政令でこれは非常に重大な影響が出てくるわけですから、そのお考え方を聞かしておいていただきたいと思います。
  261. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) いわゆる国際海峡をどこどこにするかということは、これは法律に明記をいたすことにいたしております。  なお、いわゆる国際海峡についての基線の引き方、これは特定の海域といたしまして十分法制的にも練り上げまして納得のいくようなものにすることにいたしておりますが、この点につきまして  は、追って法案提出の際に慎重に御審議を賜りた  いと思うわけでございます。
  262. 田英夫

    ○田英夫君 これはいまから非常に心配なのは、  いま申し上げたように、十二海里をやっていって、五つの海峡のところだけは三海里にするわけですね。これは実際は海上保安庁が担当されるのだと思いますが、いままで三海里と言いながら、実はこれは法律ではありませんでしたから、そういう細かな東経何度、北緯何度というようなところの線はなかったわけですよ。今度は、それがさらに複雑に、十二海里から来て、たとえば津軽海峡のところで言えば、どの地点から突然それが三海里に狭まるのかという、そういう線の引き方というのは具体的に可能なんですかね。これが非常に問題になるわけですよ。領海ですから、そこにソ連の船が入ってきてはならないという問題につながるわけですから、その引き方はどういうことになるんでしょうか。
  263. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この問題はきわめ具体的な事項でございますから、事務当局から御説明させます。
  264. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) お答え申し上げます。  実は、私、直接の主管官庁ではございませんで、いま内閣の方でこの法案を準備いたしておりますが、私どもも職掌上そのお仕事の相談にあずかっております。そこで、私どもの理解している限りを申し上げますと、詳細につきましては、いま農林大臣のお話しのとおり、法案の提出を待って詳細な御説明があるものと思いますし、御審議があるものと存じます.が、一応の考え方といたしましては、特定の海峡を法律に明記して、そして、その海峡と、その海峡の属する海域と、それに隣接しておってかつ船舶が通常航行する経路から見てこれらの海域とそれぞれ一体をなすというふうに認められる海峡を包括的にとって、そして、その海域について領海は十二海里にするという規定を適用しないという考え方で法案はすでに作成されておると、こういうふうに理解いたしております。
  265. 田英夫

    ○田英夫君 いや、私の聞いているのは、これは漁民の皆さんの生活にまともに関係をするので、法案審議に先立ってきょう明らかにしていただきたいのです。というのは、非常に重要な部分が政令にゆだねられますから、法案を審議していても、そこは政令ですと、こう言われてしまうと、最後まで漁民の皆さんを中心とした国民の大切な権利が失われますので、外国の船が入ってこれない領海を指定するわけですから、それは北緯何度何分、東経何度何分というところからずっと線を・あらわしてこうやるのか、そういう方法を聞いておきたいわけですよ。
  266. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) いま条約局長から御説明申し上げたような内容のものでございますが、これは海図の面でも明確に記載をいたしまして関係国にも周知徹底をさせると、こういうことにいたしております。  なお、他の部分は十二海里である、そのいわゆる国際海峡並びにそれに接続する特定海域、これが三海里、現状は変更しない、そういうことになった場合には、そこに風穴があく、そこに第三国の漁船が殺到してきて漁業をするのではないか、漁民の保護ができるかどうか、こういうことを御心配だと思うのでありますが、この点につきましては、いま申し上げたように、二百海里漁業専管水域の設定もできるだけ早い機会にやります。また、その他外国漁船規制法の法律もございます。いろんな観点からこの海域についての外国漁船の操業を禁止するという措置をやりまして、いささ.かの不安もないようにいたしたいと、そういう考えでございます。
  267. 田英夫

    ○田英夫君 そのいささかもというところが安心できないと思いますよ。技術的にそういうことが、私も若干海上保安庁のような仕事はかつて軍隊ですが経験をいたしましたから、水路部というものの仕事の内容を知っておりますけれども、これは大変なことですよ、この範囲をぴしっと規定をして周知徹底するということは。しかも、外国  の船が入ってこないようにする以上は、ソ連、韓国の漁船にまで周知徹底しなければいかぬ。こういうことが果たして短時間の間に日本の政令というようなもので決めておいて可能だろうかということを非常に危惧をしているわけです。ですから、ここでとやかく言っても仕方がありませんから、角度を変えて御質問しますが、なぜ政令でお決めになることになさったのか、法案の中にきちんとお入れになることをしなかったのか、このことをまず伺います。
  268. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 各海峡によりまして具体的な処理という問題がございますので政令に譲ることにいたしましたけれども、しかし、その政令並びに各海峡についての御説明は、国会の審議におきまして十二分に御審議を煩わすように、御説明ができるように、法案の審議の際にやるつもりでございます。
  269. 田英夫

    ○田英夫君 そうしますと、今度は指定された五つの海峡、三海里ということになりますその海峡は、一体無害航行なのか自由航行なのか、そういう点は従来のとおりというふうにおっしゃいますが、明快に法律の上では表現がないように思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
  270. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 御質問の意味を必ずしも的確につかんでいないかもしれませんが、私の理解いたします限りは、いま農林大臣から御説明がありましたように、特定の海域につきましては、領海の幅を基本的に現状のとおりとするということでございますから、現状のとおりとされた限りにおいて現在の公海部分がそのまま残るということでございます。公海における航行は全く自由という状態がそのまま継続するということでございます。
  271. 田英夫

    ○田英夫君 つまり、原子力潜水艦も津軽海峡など現在通航しているわけですから、これはそのまま黙認をするということになって、ただし、領海ではないから持ち込まずというその点に触れてこないという知恵だと思います。  そこで、伺いますが、津軽海峡を一つ例にとつて運輸省からお答えをいただきたいのですが、現在、たとえば三月上旬だけでもいいです、上期だけでもいいですが、津軽海峡を通航した船舶の数量というようなものはつかんでおられるかどうか伺います。
  272. 間孝

    政府委員(間孝君) 海上保安庁におきましては、最近、六海里から二十四海里の間の幅を持ちます海峡につきまして通航の実態調査を行いました。その結果を申し上げますと、ただいま御質問のございました津軽海峡につきましては、一日平均十五隻の外国船が通航いたしております。
  273. 田英夫

    ○田英夫君 その中に原子力潜水艦というものが入っているかいないか、把握をしておられるでしょうか。
  274. 間孝

    政府委員(間孝君) 原子力潜水艦につきましては、実態の把握はきわめて困難でございますが、私どもが調べましたこの十・五隻の中には入っておりません。
  275. 田英夫

    ○田英夫君 原子力潜水艦が、たとえ狭い津軽海峡といえども、海底をもぐって通航している場.合、通常はつかめない。しかし、防衛庁の方がおいでになると思いますが、当然海上自衛隊ではこれを把握しておられるに違いないと思いますが、お答えになれるならひとつお答えになっていただきたいと思います。
  276. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 津軽海峡、対馬海峡につきましては、私ども水中固定機器を持っておりますが、津軽海峡につきましては、潜水艦がもぐって通ったというのは把握いたしておりません。そしてまた、原子力潜水艦があそこを通ったということも把握いたしており.ません。
  277. 田英夫

    ○田英夫君 要するに、原子力潜水艦がもぐって通った場合、実際把握していても言えないのだろうと思います。  そこで、こういう御質問を次にしてみたいのですが、なぜ政府はこれは鈴木農林大臣の御発案だそうでありますが、十二海里法案という形でお決めになろうとしているのか。つまり、十二海里宣言ということでおやりにならずに、十二海里法案、法律という形をおとりになったのか。従来、領海は法律で決めていなかったわけですから、あえてそれを破ってまで宣言をおとりにならなかった理由を伺いたいと思います。
  278. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) お答えを申し上げます。  現在、国内法といたしまして日本の領海の幅を決めている法令はございません。これはないといいますのは、従来、各国の領海は沿岸国の距岸、基線から三海里であるという国際法が確立しておって、これは二海里でもなければ四海里でもない、三海里であるという国際法が確立しておって、したがって、わざわざ国内法で三海里であるよということを書く必要がないということでいままでは国内法がなかったわけでございますが、だんだんと国際法が変わってまいりまして、現在では十二海里までならば沿岸国が領海の幅を決めてもよろしいと、ほかの国はそれに対して異議は述べないというような内容の国際法に変わってきておるという理解のもとに今度作業をやったわけでございますが、先生いまおっしゃいました、宣言でもいいじゃないかと、どうして法律をつくるのかという御質問に対しましては、これはとにかく国内法の適用範囲が広がるわけですから、これは何といってもやはり法律事項であろうというふうにわれわれは考えます。  それからもう一つは、従来のように二海里でもなければ四海里でもない、三海里であるという確立した国際法というのではなしに、十二海里までならば沿岸国で領海を設定してもいいだろという内容でございまして、これは十海里でもいいし九海里でもいいし、六海里でもいいわけなんで、そういう選択があるわけなんで、そういう選択がある以上、現在の日本の法体系のもとにおいては、法制のもとにおいては、これはやはり国会の御審議を経て立法の形でやるべきであるという考え方が基礎にあるわけでございます。
  279. 田英夫

    ○田英夫君 これは、いまのお答えは法律の専門家としてはちょっと私は了解に苦しむんですね。三海里ということはもういにしえのお話であって、国際海洋法会議でもミスター三海里と日本のことをみんなが言うくらい日本だけが三海里、三海里と固執をしておったので、いまや世界の常識は十二海里なんですね。それを決めるのにどうして法律の必要があったのか。国民の了解を取りつけるという意味の国会審議を経るということは大変結構です。しかし、実質的にいままで法律で決めていなかった領海を、なぜ今度は法律でやるのかということについてのお答えにはなっていないと思うのですね。宣言をすれば、自動的に、宣言の中に特別断らない限り、津軽海峡を含む例の五つの海峡は全部と言っていいくらいふさがります。特に津軽海峡は完全にふさがりますね、領海の中に入りますから。その方がよかったのじゃないですか。
  280. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 国際法の問題になりますので、私から一言御説明させていただきます。  先生のおっしゃられますその十二海里の領海法案の国際法上の評価の問題でございます。御承知のように、十二海里の領海幅を採用いたしております国はいまや世界の中で六十カ国近くになるということで、もちろん現在のわが国と同じように三海里の領海を採用しておる国もまだ多々あるわけでございまして、ことにアメリカとかイギリスとかいうようなわりあいに海運国、先進国を含んだ二、三十カ国がまだあるわけでございます。  そういう状況から判断いたしまして、他方、現在やっておりますところの国連の海洋法会議では、領海は十二海里までとするということで論議が進められおりまして、海洋法会議で審議しておりますところの非公式単一草案も、先生よく御存じのとおり、十二海里までの領海幅を認めるというラインで審議が行われておるわけでございます。そういう実態から考えまして、領海十二海里というのが現在の国際法、実定国際法の問題として確立された規則であるということとまで言うのにはまだ至っていないだろうと。ただ、そういう規則として確立しつつある状況にあると。そういう意味で、わが国が領海を十二海里まで拡張しても他国から異議が出るというような状態ではないであろうと。逆に申しますれば、領海が十二海里で国際法上固まってしまったということではない。もしそういうことであるとすれば、先生の御論議のような、その国際法をそのまま国内法に持ってくるという考え方も成り立ち得る余地がないではないかと思いますが、現在の状況ではまだそこまでは至っておらないというのが私どもの考え方でございます。
  281. 田英夫

    ○田英夫君 この問題は、いずれ十二海里法案が出ましたときにさらに論議をすることにいたします。  次に、韓国との関係でありますけれども、金大中さんに対する判決が先日二十二日に行われたことは御存じのとおりであります。懲役五年、資格停止五年、今後十年間、彼は政治活動ができなくなりました。先日、その判決の直後に金大中夫人に電話をいたしましたときに、いろいろ言われた中で、非常に体が弱っていると、この問題が一つあります。そして、そのお話の中で、あのときに日本政府が適切な対処をしていてくださったならば、今回の主人のこういう事態はなかったでしょうと、日本政府責任は重大だと思いますということをはっきり言っておられる。そして、私がアメリカのカーター大統領を初めアメリカでも朴政権のこのやり方に対して強い非難の声が起こっているということを言いました途端に電話が切れました。すぐまたつながしましたら、夫人は、やはり重要な話になりますと切りますねと、こういうことまではっきり言っておられます。言葉一つによっては逮捕されるという危険を冒してそういうことを言われたわけでありますけれども、そこで、金大中事件というものをもう一回私はこの際に振り返ってみる必要があると思います。自民党政府は二段階にあたってこの事件をうやむやにされたわけですけれども。  そこで、先日、福田総理大臣は、藤田委員の質問に対して、この金大中事件の犯人ばKCIAではないかという質問に対して、捜査当局に聞いているけれども確認できていないというお答えがありました。その点をもう一回確認しておきたいと思います。
  282. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのとおりでございます。あの問題は、政治問題としては一応決着はついたと、こういうことになっておるわけでありますが、刑事事件、としてはまだ捜査中なんです。捜査班というものはまだ警視庁に依然として残っておりまして捜査活動をしておる。ただし、まだKCIAがその事件の犯人であったという確証は挙がっておらぬ、こういう段階になっております。
  283. 田英夫

    ○田英夫君 金東雲という男が、日本の警察の大変な御努力によって、犯人であると、こういうことで発表されましたのが一九七三年の九月だったと思います。事件後一カ月余りの時点で指紋が出てきた。この指紋はどういう確度のものか、警察からお答えいただきたいと思います。
  284. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 金東雲一等書記官をこの事件の重要容疑者と認定するにつきましては、各種の捜査の結果得た資料によって判断したわけでございまして、そのたくさんある資料の中の一つとして指紋がある、こういうことでございます。わかりやすく言えば、指紋があれば犯人に間違いないと単純に申しますけれども、捜査的に申しますと、その指紋がいろいろの状況の中においてあるというときに、捜査上これは犯人の決め手として意味を持ってくる、こういう関係でございます。
  285. 田英夫

    ○田英夫君 指紋、これが一つですね。あと金東雲を容疑者と裏づける材料はほかにありますか。
  286. 三井脩

    政府委員(三井脩君) なお捜査中の事件でございますので、差しさわりのある詳細の点については差し控えさしていただきたいと思いますけれども、たとえば金大中氏をホテルからエレベーターに乗せて連れ出し、地下から車に乗せた。そのときにエレベーターの中にたまたま乗り合わした目撃者がおりました。また、事件の準備としてあのホテルの近所で犯行現場に遺留されたリュックサック、ロープその他を購入したわけでございますけれども、その購入した人物が彼に酷似しておるといったようなものが主なところでございます。
  287. 田英夫

    ○田英夫君 もう一つありますね。七三年九月二十六日明らかになったことですが、「サトウ」と名のって事件の直前に金東雲が元自衛隊二佐であった坪山という人物がやっているミリオン資料サービスというところ、調査機関ですが、そこへあらわれて現職の二等陸曹であった江村菊男という男に金大中氏の張り込みを依頼したという事実がありまして、この「サトウ」が金東雲だと言われたわけですが、この点の捜査はどうなっておりますか。
  288. 三井脩

    政府委員(三井脩君) いまお挙げになりました私立探偵社の職員二人がおるわけでございますが、この人につきましては、本件事件発生後われわれの方に申し出がありまして、こういうことがありますということでありましたので、それではということでいろいろ捜査に御協力をいただいたわけでございます。その結果、「サトウ」という名前でこの人たちに依頼をした人物は金東雲であろうというようにわれわれは考えておるわけでございます。  したがいまして、その後の捜査を続けておりますが、これについて必要ある場合にこのお二人の方に協力をいただくということはございますけれども、その後の捜査という意味がこの二人について捜査しておるかと、こういう御趣旨でありましたら、この二人は捜査対象ではなくて、捜査に対する協力者である、協力の立場にある人、また、いざというときには証人になるような人たちである、こういうことでございます。
  289. 田英夫

    ○田英夫君 世間の常識で言えば、金大中氏の動静を張り込んで、そして金東雲以下が拉致をすることのもとをつくった人ですから、これは共犯じゃないんですか。
  290. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 私立探偵社でございますので、いろいろなことを依頼されて実行するそうでありますけれども、本件の場合に、いわゆる拉致をするために協力をしたといいますか、依頼を受けたというようなことは本人たちは全く知らなかったという状況が本人たちの供述その他で明らかになっておりますし、また、本件の場合には、その依頼に基づいて探してみたけれども発見に至らなかった、金大中氏を発見できなかった、こういう結果にもなっておりまして、途中でそんなに頼りないのではもう約束の期限までに結果が出ないのでは依頼を打ち切るということで打ち切られてもおる、こういうような状況でございまして、共犯的な立場の人たちではないというように私たちは考えておるわけでございます。
  291. 田英夫

    ○田英夫君 国家公安委員長に伺いたいのですが、御就任になりましてから、この金大中事件についての捜査状況の報告をお受けになったことがあるでしょうか。
  292. 小川平二

    国務大臣小川平二君) あらましの状況の報告を受けております。
  293. 田英夫

    ○田英夫君 そのあらましをここでお答えいただけませんか。
  294. 小川平二

    国務大臣小川平二君) これは現に行っております捜査に支障を来さない範囲で今日まで警察の当局が国会に御報告を申し上げております。警察の当局が参っておりますから、警察当局から改めてお耳に入れます。
  295. 三井脩

    政府委員(三井脩君) いままで国会においてしばしば御質問をいただき、お答えしておるところでございますが、大筋において申しますと、あのホテルにおきまして金大中氏が二人の韓国の方と話が終わりましてホテルの部屋を出たところで、六人の人物に襲われてエレベーターで地下におろされ、車によって拉致された。その後、船等を用いて韓国の自宅付近で解放されたと、こういうのが大筋でございます。  われわれの捜査におきましては、ただいまお話のありました捜査の結果、六人のうち一人は金東雲書記官であるという容疑をわれわれとしては確認をいたしておるわけでありまして、その他につきましては、金大中氏を拉致する場合に使いました車両が、四けただけが記録されておりました車庫の記録から、捜査の結果、横浜における韓国の総領事館副領事の所有にかかる車両である疑いがきわめて濃いというところまで捜査は進展したわけでありますけれども、金東雲書記官を除く他の五名が何びとであるかという点についてはいまだに明確になっておらないということでございます。
  296. 田英夫

    ○田英夫君 いろいろな事件で複数の犯人がいる場合に、その全部がわからなければ一人も逮捕しないということですか、わかっている一人も逮捕しないということですか。
  297. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 犯人の一人として先ほどの一等書記官をわれわれとしては捜査上有力容疑者としてその出頭を求めたわけでございます。この出頭につきまして拒否されるという結果に至ったことは御存じのとおりでございますけれども、なぜ逮捕しなかったかという点につきましては、彼が当時現職の大使館員であるということでありますので逮捕するわけにいかないということでありまして、もし大使館員としての外交特権を持っておらない人物でありましたら、当然逮捕状の発付を求めて、それの執行として逮捕してもしかるべき事件であると、そこまで容疑が固まっておると、こういうことでございます。
  298. 田英夫

    ○田英夫君 福田総理、三井さんは、以前は公安部長ですか、この事件をまさに担当された方ですよ。ずっとこの問題をフォローしておられる。その警察の責任者が、普通の場合なら逮捕状を請求して逮捕している男だと、こう言っている金東雲です。それを一九七五年七月二十二日、これは三木内閣のときです、口上書を交わして、これが犯人ではないということで問題が解決したということに自民党政府がなさったんですよ。これをどういうふうにお考えになりますか。――総理です、総理
  299. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 一応事実を御説明さしていただきますと、昭和五十年の七月二十二日の口上書の前に、田委員も御承知のように、四十九年の八月十四日に韓国側から第一次の通報があったわけでございます。それは一九七四年の八月十四日に、捜査の結果、金東雲その他五名の嫌疑を立証する証拠が発見されなかったので捜査を中止すると、こう言ってまいりました。そのときに、日本の捜査当局の立場は、先ほど三井局長説明しておりましたような立場でありましたので、そういうことでは納得はできないと、日本としてはそういう一片の返事では納得はできないので、なおよく調べてもらいたいということで、これを突き返した経緯が一度ございまして、その後、ただいま御指摘の昭和五十年七月二十二日の口上書が参りまして、その中で、金東雲については事件後とりあえずその職を解いたと、これは金大中氏事件が起きましたときに先方がとった措置でございましたが、職を解いて捜査を行ったけれども、思わしい結果が得られず、昨年――昨年といいますのは四十九年でございますが、八月十四日に捜査を一時中断したと。しかし、日本側もそういうふうな先ほど申し上げました経緯で押し返したこともありますので、その後もひそかに捜査を続行したけれども、嫌疑事実を立証するに足る確証を見い出し得ずに不起訴処分になったと。しかしながら、本件捜査の結果判明した本人の東京における言動は、日本の警察当局の嫌疑を受けるなど、国家公務員としての資質を欠き、品位にもとるものと認めて、公務員としての地位を喪失させたという最終的な説明の口上書が参りまして、当時、政府といたしましては、国交のあります国の正式の外交チャンネルを通じて、一度押し返した問題をさらに半年以上ひそかに捜査した結果としていま言ったようなことを言ってきました以上は、これは他方また行政処分としての最終的な措置をとったということでありましたので、当時の政府としては、これを一つのけじめとみなしましてそれなりに評価したと、これが一昨年の七月二十二日の経緯でございます。
  300. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま政府委員から説明したとおりでありまして、やむを得ざる措置であったと、かように思います。
  301. 田英夫

    ○田英夫君 私はもうしばしばこの問題を取り上げておりますが、いまのやむを得ざるということを日本国民の皆さんが納得しますか。(「納得する」と呼ぶ者あり)納得するのは、まあ一部韓国の人と関係のあるような人たちだけなんじゃないですか。福田さんがだからこれを納得するとお思いになるなら、これは大変疑わしいと言われても仕方がないのじゃないんですか。一部には、この問題を解決するためにお金が動いたという情報、うわさもあるんです。私はそういうことをいまこの席で言おうとは思わない。しかし、そういうこ-とを言われても仕方がないですよ。
  302. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま政府委員から説明したいきさつ国民が聞いたら、恐らく、残念だがやむを得なかったことだろうと、こういうふうに思うと思います。
  303. 田英夫

    ○田英夫君 警察を預かっておられる国家公安委員長、歴代の方が何人かここへおられるわけですけれども、現職の小川さんに伺いますけれども、そういうことで警察を責任を持って指揮していけるでしょうか。
  304. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 警察本来の目的、という点から考えましてまことに残念なことだと存じますが、いま外務省から説明を申し上げましたような経過をたどって外交的に決着がつきました以上、こればやむを得ざることだと思っております。
  305. 田英夫

    ○田英夫君 きょうの朝の新聞に出ておりました、金大中氏を運んだのは龍金号という船だという、この問題についての警察の捜査の状況を伺います。
  306. 三井脩

    政府委員(三井脩君) けさの毎日新聞の記事だと思いますが、あれにつきましては、ある船の船長が、その船はもと龍金号という船であって、現在は名前が変わっておると。龍金号は金大中氏を拉致する場合に乗せて韓国へ運んだ船であると、こういう趣旨のことが情報としてあると、それを警察が最近入手したのだと、こういう記事であったと思いますが、当時この人につきましてはすでにもう前に捜査いたしました。この船長さんというのは、龍金号に乗っておった人ではないと。龍金号が名前を変えたものと言われておる唯星号――ユイセイゴウと読むのだと思いますけれども、それの船長さんでありまして、だれかから聞かれたのだと思いますが、御本人がもうずっと前に日本に入港してきたときにわが捜査員が当たって聞きました。本人はそういうことについては一切否定をしております。同時に、聞いたのは、そういうきょうの新聞に載っておるような情報があったからきいたわけでありまして、今回初めてそういう情報を入手したというわけではありませんで、捜査継続の中でいままでの古い情報や資料も十分に再検討しておるという中の一こまとしての警察活動がああいう形になったのであろうというように理解しております。
  307. 田英夫

    ○田英夫君 私どももこの船の情報はすでに二年前から得ているところでありまして、警察がお調べになるのは当然だと思いますが、要するに、福田総理、この問題については、警察は非常によく情報をつかみ、捜査をやっているんですよ。たくさんのことを持っているんです。にもかかわらず、自民党政府と、あえて自民党の一部の人と私は申し上げたいが、朴政権との黒い癒着の中でこの問題がうやむやに葬むられたと国民の多くの人は考えていることは疑いもない事実であります。これを晴らす責任があると思う。  そこで、この席で正式に要求をいたしますが、先ほど小川国家公安委員長が言われたことですけれども、それをもっと詳しく現在の警察の現在に至るまでの捜査の中間報告を当委員会に提出していただくように正式に要求いたします。
  308. 三井脩

    政府委員(三井脩君) ただいまの点でございますが、現に捜査を継続しておるということでございまして……
  309. 田英夫

    ○田英夫君 衆議院では認めているじゃないですか。
  310. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 私たちといたしましては、ぜひともこの事件について捜査を推進いたしたいという立場でございますので、報告の点は差し控えさしていただきたいと思いますが、質問に応じて現実の捜査に特に支障のない範囲でお答えをさしていただくということで、ぜひとも御了解いただきたいと思います。
  311. 小柳勇

    ○小柳勇君 議事進行について。  いまの問題は、衆議院の予算委員会では、わが党の小林議員の要求に対して出すという答弁があったようでありまして、衆議院では出すと言い、参議院では出さないということは承知できないです。委員長、私はそのいきさつを聞きます。
  312. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 委員長……
  313. 小川半次

    委員長小川半次君) ちょっと待ってください。  衆議院の予算委員会で出すということを確約した以上は、参議院の予算委員会にも資料を出していただきたいと思います。
  314. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 衆議院でもそういうような御要求がございましたので、ただいまお答え申し上げたと同じように、差し控えさしていただきたい旨申し上げたわけでございます。
  315. 田英夫

    ○田英夫君 それでは、この問題は理事会で処理していただきますので、次の問題に移りますが、先ほど金大中夫人が日本政府責任を追及される発言をしたということを申し上げましたが、西ドイツの例がありまして、この場合は西ドイツ政府が毅然たる態度をとって国の主権を守ったという例がありますけれども、そのときに西ドイツから強制的に拉致された尹伊桑という音楽家がおりますけれども、この人が最近、わが党の野田委員、ここにおられる野田さんと会談をした際に、はっきりと、まず自分はハンブルグ空溶から日航機に乗せられてKCIAに運ばれたということを言っておる。そして、羽田空港に到着をしたときに何の入管手続もなしに羽田で一泊をさせられたと、こういうことをはっきり言っているわけであります。必要ならばこの人を参考人として呼ぶことも不可能ではないと思いますけれども、この点について一つ申し上げておきたいのですけれども、金炯旭という、これはKCIAの元の部長ですよ、この人が書いた本がある。これは朝鮮語の本ですけれども、その中に当時の経過を詳しく書いています、KCIAの責任者ですから。東京を経てソウルに送ること、アラスカではアメリカの関係機関の保護を受け、日本では捜査要員への協力を得ることと、こうはつきりKCIAの人は書いているんですよ。そういう形の中で本人の供述も一致をいたします。  この点について、まず運輸省にこれは要求をしておきますが、きょうすぐに出していただくことは不可能でしょうが、この委員会に当日のフライトの、JALの四三二便、これは一九六七年六月十九日ハンブルグを出て二十日に羽田に着いております、このフライトの記録を出していただきたい。  もう一つ、法務省に要求をいたしますが、この尹伊桑という人物が一九六七年六月二十日羽田に着いておりますが、そのときの入管記録をここに資料として提出をしていただきたい。  この二つを要求いたしますが、関係大臣からお答えをいただきたい。
  316. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいまの御要望でございますが、記録にはないようでございます。いま政府委員から聞きました。
  317. 田英夫

    ○田英夫君 運輸省は、局長さん、どなたかわかりませんか。運輸省にいま突然申し上げたので無理かと思いますが、御参考に申し上げておきますが、このときに、ハンブルグで、日航の支店長、現在は羽田の管理部長をやっております定保さんという人が直接案内をしたということを本人は言っております。こういう中でそのフライトの記録、何時何分どこを経由してどういうふうに入ってきて羽田へ来たかという記録をここに提出していただきたいということですが、いかがですか。
  318. 小川半次

    委員長小川半次君) 運輸省の政府委員、来ていますか。
  319. 田英夫

    ○田英夫君 委員長、いいです、後でお答えいただけばいいです。この問題は、後で提出をしていただければ結構です。
  320. 小川半次

    委員長小川半次君) 田君、いまの問題は、理事会において相談することにいたします。続行してください。
  321. 田英夫

    ○田英夫君 もう一つ、いま法務大臣からこの記録はないというお答えでしたけれども、本人のがなくとも、この四三二便で入国をした乗客の一切の入管記録というものはあるはずであります。本人はトランジットでおりておりますからないのかもしれませんが、ないということ自体が実は問題なのでありますから、ほかの乗客の分はあるはずでありますから、これを出していただきたい。
  322. 吉田長雄

    政府委員吉田長雄君) 先日新聞で報道されましたので入管としては記録を調べてみたわけでございますが、その中にはお尋ねの人物の入国記録はございませんでした。(「いや、全部出せと言うんだ。四三二便の入国を全部出せと」と呼ぶ者あり)名簿を記録から出しまして提出いたします。
  323. 田英夫

    ○田英夫君 この問題はこの程度にして、次に移ります。  衆議院の予算委員会でも問題になりました韓国のいわゆる不実企業の一つと言われている新韓碍子の問題でありますけれども、輸銀の総裁おいでになっていると思います。長い間お待たせして申しわけありませんでしたが、そのときに社会党の方から安宅委員が御質問をしているわけでありますけれども、この新韓碍子に対して日商岩井から輸銀からの融資をするように取り次いでおりますけれども、日商岩井から通産省そして輸銀へ出されました融資の請求の文書、ここにありますけれども、その中には、実はこの新韓碍子の社長であった宋氏への謝礼金が含まれていたということが事実として暴露をされているわけですが、この点は明らかに法に違反をいたしますけれども、その点についての輸銀の調査の結果をお答えいただきたいと思います。
  324. 澄田智

    参考人澄田智君) お答えを申し上げます。  本件は、昭和四十五年三月に輸銀は本件についての融資の承諾をいたしたわけでございますが、その承諾に際しましては、借入人すなわち日商岩井から輸出申請書の内容及び輸出契約書その他の必要と認められる書類等を提出を求めまして、金融機関としての審査を行った次第でございます。輸銀の融資は契約金額全部を貸すわけではないわけでありまして、頭金はもちろんでございますが、その他必要な控除を行って融資をしたわけでございますが、今回ただいま御指摘のようなことが報ぜられておりますし、また、御質問もあったわけでございますので、この点につきましてなお当時にさかのぼりまして現在調査をいたしている次第でございます。
  325. 田英夫

    ○田英夫君 まだ調査の結果は出ていないということですか。もう大分たちますよ。
  326. 澄田智

    参考人澄田智君) 輸銀の融資は、先ほど申しましたように全額について融資をしているわけではございませんし、その申請ないし契約の内容等に照らしましてなお調査をいたす必要がございまして、現在その段階でございます。
  327. 田英夫

    ○田英夫君 これはもう私のような素人が見ても明快にわかることじゃないですか。機械代金の中に、通産省の分と、それから問題になって裁判所に提出された分と明らかに数字が違う、これは明快じゃないですか。
  328. 澄田智

    参考人澄田智君) 契約の内容につきましては、当時の申請に際した内容と、それからただいま御指摘のように、その後裁判上提出されたものとの間の関係等がございますが、輸銀融資につきましては、先ほども申し上げておりますように、決して契約全額の融資をするわけではございせん。したがいまして、必要な金額について融資をする、そういうたてまえでございますので、なお当時の記録等について十分調査をする必要があるわけでございます。
  329. 田英夫

    ○田英夫君 謝礼金六十七万ドルというものが機械代金の中に化けて入っていったということ、これだけのことなんですよ。ごく簡単なことじゃないですか。そんなにもう二週間もたつのにわからないことですか。
  330. 澄田智

    参考人澄田智君) いまお示しになりました金額の中にはいろいろな項目が挙がっていると思います。それはやはりその契約内容に照らして見なければならないわけでございまして、決して直ちにそれが融資をすべからざる金額である、こういうふうなものになるかどうか、その点は調査を要する次第でございます。
  331. 田英夫

    ○田英夫君 宋社長はその謝礼金をもらおうと思っているのにもらえないから裁判まで起こしているわけですよ。通産大臣、いかがですか。通産君の方もこればお調べになっているはずなんです。
  332. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) お答えいたします。  衆議院においてもたびたびお答え申し上げたように、通産省におきまする輸出承認の問題は、本件のごときものは代金回収の可否というものだけが承認の要件でございまして、その見通しさえあれば自動的に承認されるものでございます。
  333. 田英夫

    ○田英夫君 そういうお答えの中にあらわれておるようなことの中で実は日韓の黒い癒着というものが起こっていることは、これはもうそういうお答えからますます疑いが深まるんですね。新韓碍子というのはそう大きなケースではありません。その消えてしまったお金というもの、ソウルの地下鉄の問題も一つの例です。これは私ども三年前から聞いています。まだまだ、そういうことが、黒い疑わしいという程度のものはたくさんありますよ。これを順次皆さんの前にお出しせざるを得なくなってくる、こうなってくると。これは改めて私は衆参両院に韓国問題特別委員会でも置いていただいて徹底的に調査をしなければならないと思っています。  最後に、もう一つ防衛庁長官に伺いますが、現在アメリカからステッドマン空軍大佐という人以下十一人の、これはF15-FXの問題についての調査団が来ているようでありますが、これはブリーフィングチームといわれておりますけれども、何の目的で日本に来ているんでしょうか。きのう来たはずです。
  334. 三原朝雄

    国務大臣(三原朝雄君) お答えをいたします。  確かに、米空軍省より、ステッドマン大佐ほか十名のチームが、二十八日から、予定といたしましては来月の二日まで来日をいたしておるのでございます。その参りました用件は、御承知のようにFXで最初に入れます二機は政府間契約になるものでございますから、今後の見積もり作業と必要なそうした事務的な折衝に参っておるわけでございます。  これ自体は、私の方からぜひそういうことをやらなければならぬという要請をいたしておったところでございますが、そういう点で、こちらから行くようになるか向こうから参るようになるかということで待っておったのでございますが、向こうからやってきたという事態でございます。
  335. 田英夫

    ○田英夫君 それはF15の導入を前提にしたものでしょうか。
  336. 三原朝雄

    国務大臣(三原朝雄君) 必ずしもF15というものに限ったものでございませんけれども、大体私の方で昨年の十二月末におきまして防衛庁といたしましてはF15ということを内定いたしましたので、やはりFX全体ではございまするけれども、F15を中心にしてやってまいったと思うのでございます。
  337. 田英夫

    ○田英夫君 そこが大変問題だと思うのです。これはアビエーション・ウィークというアメリカの航空雑誌なんですけれども、そのちょうど裏ページのところに、これはマグダネル・ダグラスの広告ですよ、飛行機会社の広告、それに日本の自衛隊がF15を採用することになったと、その長所ばこうこうこういうことだからだと、こういう広告が出ている一わけです。これは御存じでしょうか。
  338. 江口裕通

    政府委員(江口裕通君) いまお示しいただきましたアビエーション・ウイーク自体は、私、実はまだよく見ておらないわけでございますけれども、米議会筋等におきまして、日本及びその他の若干の一部の国でございますが、そういうものが購入の考え方を持っておると、そういうものを選定する考え方を持っておるということは国会議事一録等においても一部報道されておるわけでございます。
  339. 田英夫

    ○田英夫君 私が聞いているのは、ここにジャパン・ディフェンス・エージェンシと書いてある。いま内定とおっしゃいましたね。内定ですよ。防衛庁ではこういう広告出してもいいと認めているんですか。これはもう日本は決定したと、こういう態度ですよ。
  340. 江口裕通

    政府委員(江口裕通君) 具体的にアビエーション・ウイークの方から私どもの方にそういう了解を求めるというような事実はいまのところ全くございません。それからわれわれの方からもそういうことをあえて先方に伝える、そういう雑誌等に掲載するというような気持ちはいまのところ全然ございません。
  341. 田英夫

    ○田英夫君 実際には出ているんですね、こういうものが。それからビジネス・ウイークというアメリカでは非常にポピュラーな雑誌の三月二十八日号の中に、F15はすでに日本の自衛隊への導入が決定しているほど優秀なものであるという、これは評論員の記事が出ている。これは御存じでしょうか。
  342. 江口裕通

    政府委員(江口裕通君) 先ほど申し上げましたように、いわゆる公式記録という点につきましてはわれわれも十分意を払って見ておりまして、先ほどの国会議事録等においてはそういうもののあることは十分承知しております。ただ、いまのビジネスウイークにつきましてはまだ私はちょっと見ておりません。
  343. 田英夫

    ○田英夫君 着々としてF15をもう決定するんだというムードがその辺でつくられているように思うのです。  そこで、三月二十二日に、東京のアメリカ大使館の中にある日米相互防衛援助事務所というところにブラウン国防長官から文書が来ているということで、これは記者クラブに防衛庁がお配りになって、こういうものが来て、いろいろミサイルなどに問題があると言われたけれども、F15は大丈夫だという意味の文書をお配りになっている。これは認めますね。
  344. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) ブラウン証言がありましてからいろいろなことが言われておりました。それで、私どもも実際にその情報を入手したいと思って努力をいたしておりました。その一つとして、MDAO在日事務所を通じましてこういうブラウン証言に対するいろいろなことにつきましての説明が参りましたので、その事実をクラブに説明したわけでございます。
  345. 田英夫

    ○田英夫君 その文書にはブラウン長官の署名がありますか。
  346. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) ブラウン長官の署名はございません。
  347. 田英夫

    ○田英夫君 なぜそれじゃブラウン長官のものだということがわかるのですか。
  348. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) ブラウン長官の見解と私ば申し上げたわけではございません。ブラウン長官の証言がありまして、その後いろいろ問題になりましたので、いま外務省を通じましてブラウン長官の公式議事録というものを求めております。これがまだ着いておりません。そしてまた、その証言自体につきましては、当時その席におりました、いわゆる正式のものではございませんが、速記録というものが手に入りました。その内容につきまして、米側に、国防省に対しまして、説明といいますか、その内容についての所見を求めておったわけでございます。それが最初は電話で参ったりなんかしておりましたけれども、とりあえずのものとしてMDAOからそういう連絡がございましたので、ブラウン長官がそう言われたということではなく、いままで私どもが入手いたしております情報としてクラブに説明したものでございます。
  349. 田英夫

    ○田英夫君 ブラウン長官の方は山崎という人、福田総理と同行した山崎という人にそれを渡したということなんですが、恐らくアメリカ局長じゃないかと思うのですが、いかがですか。
  350. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 本件に関しましては、防衛庁から公信をもって外務省に資料の入手方の依頼がありまして、私が総理に同行いたしましてワシントンに参っておりますときに公電で参りました。そこで、私は、その以前にも防衛局長から口頭をもって依頼を受けておりましたので、たまたま大統領の晩さん会の席上、私はブラウン長官にお会いいたしました。その席上で、公電でそういうことが来ております、そこで資料の入手についてよろしく御協力願いたいということを口頭で申しました。その点をブラウン長官が早速下僚に指示されたものと思います。それに基づいてそういう資料が送られてきておるわけでございます。
  351. 田英夫

    ○田英夫君 この問題も、ロッキード事件がありました後だけに、大変私どもも関心を持っております。この点についてもさらに調査を進めたいと思いますが、きょうは時間がなくなりました。  福田総理、きょうは、私は、日米会談、そして特に金大中事件を中心とする韓国問題、さらに日韓の黒い疑わしい問題そしていま防衛問題という、いろいろな点について問題提起をするというつもりで御質問をしたんですが、これからこの国会を通じましてさらにこうした問題について非常にますますいろいろなことを御質問しなければならならないという気持ちに駆られています。その点をひとつ国民の皆さんがそういう気持ちになっているというふうに受け取っていただきたい。そのことを申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
  352. 小川半次

    委員長小川半次君) 以上をもちまして田英夫君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  353. 小川半次

    委員長小川半次君) 中山太郎君。
  354. 中山太郎

    ○中山太郎君 私は、自由民主党を代表して、政府にお尋ねをいたしたい。  まず、お尋ねをいたす前に、私は、いまの日本の経済の状態、これは政府の方々もよく御存じだと思いますけれども、景気が非常に悪いということは、これは現実の否定しがたい事実だろうと思います。特に、鉄鋼、繊維、合成樹脂、紙、こういうものの在庫が急増しておる。民間企業の方は縮小均衡に入って、経営というものを非常に合理化しているために大幅な設備投資もやらない、さらに景気がそれを受けて沈滞をしていくという一つの循環サイクルをとっているのじゃないか。金融面から見ると、そういうふうなものを受けて、けさの日経にも出ていますけれども、銀行に対する民間の設備投資の融資の要求が去年と比べると非常に落ちている。企業は過去の蓄積を食いながら経営をやっている。こういうことで、まあ景気のいいというのは、自動車工業、あるいは今回の日米会談でも問題になったテレビの輸出等の特殊な業界に限っています。先般、日本銀行の公定歩合の引き下げが〇・五%おくれましたが、福田総理も国会で御答弁なさったように、あの〇・五%の公定歩合の引き下げは少し時期が遅かったということを政府を代表してお述べになった。こういうことで、景気の問題が非常におもしろくないという現実の姿。  さらに、外交的には、これはもう野党、与党ということなく、漁業の沿岸二百海里宣言をめぐって、北方の日本の漁民たちというものは、これからの生活というものは一体どうなのかという不安を非常に深くしている。きょうもそれについて野党の方からも厳しい政府への要望が行われている。また、この国会で農林大臣に面会を求めてソ連の代表者が国会までやってきている。   一方、われわれが最も友好親善を努めているアメリカが、核燃料の再生処理をめぐって、日本がいよいよ待望の核再生処理の工場が完成するという前に、昨年の核拡散防止条約の批准、これはもう六、七年の歳月が署名後かかった。その当時の三木総理は、どんなことがあってもこれだけは自分の内閣の手でこの国会で承認をしてもらいたい。そのときの政府側のわれわれ国会議員に対する説明では、これを批准しても日本は平和利用には全然影響がないんだと、こういう説明が十分なされておりましたし、科学技術庁の職員もそういうふうな説明をしておりました。しかし、一年たった今日、全然様子が変わってくる。大統領がかわり、アメリカ政府がかわると、新しい政府考え方というものが極度に変わってくる。これが今日の日米間の大きな課題でありましょう。これについてカーター大統領と福田総理がとにかく突っ込んだ話し合いをされる。ここで二年間凍結をするというようなお話がございました。  一方、OPECは、昨年末に一バーレル当たりの単価を引き上げてくる。  考えてみると、今日ほど日本を取り巻く状態というものが最近悪いときはないのじゃなかろうか。内一憂外患こもごも至るという言葉がございますけれども、日本国民というものは、新聞、テレビ、いろんなものを通じて、日本というものがこれから先一体どうなるんだと、こういう大きな不安。経営者は設備投資をやらない。また、最近、環境庁が環境アセスメント法というものを出して、非常に厳しい公害規制に関する新しい法を立法化しようとしている。それじゃもうなかなか民間設備投資ということは先行きを考えるとしにくいなあという気持ちが私は今日の日本の現実の気持ちだろうと思うのです。  また、教育の面を見ても、先般阪神地区の公聴会で公述になった大阪衛星都市の市長会の会長の木崎公述人の公述によると、地方都市では財政逼迫、さらに老人がふえて、いわゆる養老のための経費が莫大に増大してくる。あるいは、保育所一校下当たり一保育所をつくる。そこに子供を預けに来る最近の傾向では、夫婦二人の共かせぎの夫婦が所得を計算してみると五十万円ある。その五十万の所得を月収有する夫婦が、自分の子供を保育所に預けに来るんだ。  この新しい日本社会情勢というものを踏まえて、一体日本はどうなるんだという観点に立って、昨年末に登場した福田内閣は、協調連帯精神でひとつやっていこうとということを内閣が発足当時に国民に向かって宣言をされた。そういう宣言の中で、私はあえて言うならば、いまの日本は苦悩している、悩んでいる。繊維産業にしても、合繊にしても、造船下請、いろんな企業にしても、過去の高度成長期にあった日本の輸出にパンチ力の強い企業というものは、いまもうかってのイギリスのランカシャーの紡績のように落ちぶれていこうとしている。そこへ働いている労働者、下請の従業員、もう切れる者はみんな切ったと、残っているのは優秀な技術者だけだというのが、その地方公聴会での現場の意見でありました。  こういう点を踏まえていまイギリスと日本を比べてみると、イギリスはとにかく日本から融資を受けるような、まあ労働政府の政策の失敗でしょう、そういうふうな姿になっておりますけれども、日本とイギリスの苦悩を比べてみて私は一つ違うところがあると思います。それは何か。それはやはり北海油田という一つのイギリス国民にとっては夢がある。これが一九八0年代には完成すると、イギリスはかつて輸入に仰いでおった油を全部自国の石油によって賄うことができる。そこで、イギリスは再び経済勢力を挽回する可能性があるだろうと思いますけれども、そういう点について、いまここで福田内閣は国民に向かって自分たちが主張している安定経済成長政策というもの、つまり、年率経済の成長率が実質六%、消費者物価の値上がりを五十年代の後半五%と抑えていって、国民がそれに協力をしてくれたら、一体これから先の国民生活はどうなるかということが具体的にまだ示されていないと思うのであります。経営者もその企業に働く勤労者もこれがわからない。きょうは、こういう一つの前提に立って私ば質問をさしていただきたい。  まず、私は、可変的な要素と不変的な要素というものが政策を立てる上にあると思います。まず、不変的な要素からひとつ確認をしてみたい。厚生省の人口問題研究所の所長お越しですか。――前へ出てください。厚生省の人口問題研究所の所長にお尋ねしますけれども、政府のデータの中で、絶対に狂わないとは言いませんけれども、ほとんど誤差のない確実な予測データというものは、私は人口に関する数値だろうと思います。それで、ひとっこれから昭和六十年、つまりあと八年後の日本の人口構成、それからその中では就学児童数もあれば、生産人口数もあるし、老人の人口数もある。それをひとつお答え願いたいこと。それから世帯構成員数はいまたしか三・八人ぐらいですけれども、それが一体一世帯どれぐらいになるのか。まず、そこまでをひとつお答えを願いたいと思います。
  355. 篠崎信男

    説明員(篠崎信男君) 人口問題研究所の篠崎でございます。  ただいまのお尋ねにつきまして、昨年十一月にわれわれ研究所が鋭意将来推計人口を推定いたしました。これは、御承知のとおりいろいろな要素から成り立っておりまするが、今回はコーホート-別にやりまして、かなり厳密に将来予測ができたと考えております。それによりますると、昭和六十年のわが国の人口はまことに覚えやすい人口でございまして、一二二三三三――一が一つに、二が二つ、三が三つで、一億二千二百三十三万三千と、かように覚えていただくと非常によろしかろうと存じます。  それから問題はその内容でございまして、ゼロ歳から十四歳の年少人口は二千八百万と踏んでおります。これは、昭和五十年よりもやや少しふえぎみでございます。それから生産年齢人口と申しまするのは十五歳から六十四歳をとっておりまするが、これはさっきの二千八百万を裏返しまして、八千二百万と、こういうふうにお考え願えると非常によろしかろうと思います。それから問題は六十五歳以上の老年人口でございまして、これはふえる一方でございまするが、昭和六十年は一千百九十万になるということでございます。これは総人口の割合にいたしますると九・七%でございまして、まだ一0%にならない。昭和の六十二年に一割になりまするが、これは一九七一年、七三年のイタリア、アメリカに匹敵しますのでやや時間的に間がある。特に老年人口につきましては、将来増加の一途をたどりまするので、これが現在のイギリスあるいはオランダ、デンマーク、スウェーデン、そういった一三%台になりまするのは昭和の七十一年でございまするので二十年の間がある。この間、いろいろと施策を施さなければならないというのが一つ説明でございます。  それから先ほどお尋ねになりました世帯構成でございまするが、昭和六十年は大体普通の世帯が三千八百万世帯になろうと思います。その中で五十万世帯は準世帯でございまするけれども、大体世帯構成員三・一人になろうかと存じます。だんだん縮小いたす方向でございます。そういった点が将来の人口展望で言えまして、日本が将来安定いたしますラインは昭和百年かと存じます。そのとき一億三千九百万ラインに達しまして、その後は出たり入ったりいたしまして、大体一億四千万ラインで安定するのではなかろうかと、こういう予測をいたしております。ただし、問題は、そのときには非常に老年人口が増加いたすということでございます。  いまこのお答えでよろしゅうございましょうか。もう一つ……
  356. 中山太郎

    ○中山太郎君 一次産業、二次産業のやつを言ってください。
  357. 篠崎信男

    説明員(篠崎信男君) 一次産業、二次産業は、大体一次産業は、昭和五十年のセンサスでは十三・九%、これが四十五年では一九・四%ございましたので、これは減少いたしました。それが一体どこへ行ったかと申しますると、以前は第二次、第三次産業へと流れたのでございまするが、四十五年と五十年を比べますると、第二次産業は三四%でほとんど増減ございません。したがいまして、五十年はこの第一次産業人口はもっぱら第三次産業へ流れ込んだ。したがって、第三次産業の人口は五一・七%と過半数に達します。将来第一次産業はもう少し減るのではなかろうかとも存じております。
  358. 中山太郎

    ○中山太郎君 それじゃ、第一次産業が激減していって、将来は第三次産業がさらに増大してくる、こういうふうな一つの固定的な数値というものが昭和六十年では予測ができる。  それじゃ、日本の場合はそうですけれども、アジアの人口増加の予測というのは一体どうなりますか。
  359. 篠崎信男

    説明員(篠崎信男君) アジアは大変増加の一途をたどりまして、特にアジアと申しましても広うございまして、東アジア、南アジア、中央アジア、西アジアとたくさんございます。その中で一番問題になりますのが、やはり中央アジアのインド、あるいはパキスタン、その他の国でございまして、わが日本が属しております東アジアは、これは日本あるいは中国もかなり努力いたしておりまするが、何せ大型人口がございまするので、昭和六十年にはかなりの増加でございます。しかしながら、それ以後は逐次自然増加を〇・一%ずつ下げてまいりまして、増加率は減ってまいります。しかしながら、中央アジアはなかなか減りませんで、一九八五年以後は逆転いたしまして、東アジアが十二億になるのに、中央アジアは逆に十三億というような非常に大きな数に上る可能性がございます。それから、増加率といたしましては、西アジアでございまして、これはアフガニスタンとかトルコとか、そういう地方でございまするが、絶対人口は少のうございまするけれども、非常に増加率が高い。これが四億以上になろうかと思います。したがって、将来は、開発途上国の三十五億の中でこのアジア地区は二十八億になる。五七%近くは世界人口の比率を占めるのではなかろうかと存じております。したがって、これについては非常に努力いたしておりまするけれども、わが日本のように、かなりスムーズにはまいらないだろうという予測もしております。したがって、アジアの人口に対しまする考え方は、これからもっときめの細かい対策が必要かとも存じております。
  360. 中山太郎

    ○中山太郎君 いま人口の増加の予測をアジアについて聞いたのですが、問題はアジアの人口増加率と食糧増加率の推移がどうなるか、過去のデータに基づいてひとつ人口問題の専門家としてお答えを願いたい。
  361. 篠崎信男

    説明員(篠崎信男君) もちろん人口と食糧の問題はきわめて重大でございますが、わが日本については若干の資料がございまするけれども、アジアにつきましては確たる資料がございません。ただし、数年前でございましたか、私が、ただ食糧があるということと、食糧になるということとは別に考えておりまして、そのときに世界のできるだけの統計を集めまして自給自足の栄養率というものを計算いたしますると、アジアはほとんどの国が栄養自給できません。それから日本もビタミンのAとかDとかそういうのは不足でございまするが、この食糧問題につきましては、むしろ農林省の方々の方が御専門かと存じますので、その方の数字の方が確かかと存じます。
  362. 中山太郎

    ○中山太郎君 農林省、ひとつ。
  363. 今村宣夫

    政府委員今村宣夫君) 食糧の自給の見通しでございますが、これはいろいろの数字があって必ずしも十年先ということを見通しますと確たる数字はないのでございますが、FAOが昭和四十九年に見通しましたのは、開発途上国で需要が九億二千九百万トン、生産が八億五千三百万トンで、七千六百万トンの不足をするという見通しでございます。一方、OECDの五十一年の見通しによりますれば、需要が八億九千八百万トン、生産が八億六千五百万トン、不足が三千三百万トンということに相なっております。
  364. 中山太郎

    ○中山太郎君 いま専門的な方からのお話ですが、結局これから六十年にかけてアジアの人口増加率と食糧自給率というものはアンバランスが起こってくる。この前提に立って日本のアジア政策というものの進め方というものの基本路線というものを考えておかなければならないと、私はまずそのようなことを確認をいたしたいと思います。  わが日本の国内の問題について人口問題研究所の所長にもう一つお尋ねをしたいのですが、日本はかつて資源は幾らでもある、金さえあれば幾らでも買える、これを高度成長下でどんどん増産して外国へ輸出する。そのために、いわゆるブルーカラーが少なくなる。そこで、婦人をパートで労働市場へ引っ張り出してきた。そのときに、子供のふえるのが負担になってはいけないということで第三子手当というものが法律でできた。これは労働力を確保するためということだったと私は突っ込んで申してみたいと思うのですが、これから先も第三子手当というものを出すことが人口政策上正しいのか正しくないのか、それを専門家としてひとつここで御答弁いただきたい。
  365. 篠崎信男

    説明員(篠崎信男君) 私が第三子に出すということの耳に入りましたのは非常に前でございまするけれども、特にこの問題につきましては人口を直接の要因として考えてはいないということをお聞きしました。特に国内のこういう第三子児童手当の問題につきましてのアンバランスとか、あるいは先進諸国が二十六カ国実施しているという社会保障の一環としてこれは打ち出されたと。と申しましても、いま申しましたように、第三子からで、第一子、二子はやらぬとは何事かという御懸念がございまするけれども、人口動態の示す限りにおきましては、昭和の四十五年以来、余り大して第三子以上を持つ子供の数はふえておりません。同じでございます。特に第三子は十三%台で昭和四十九年まで来ておりまして、昭和五十年はこれが一一・八%とかなり下がりましたので、こういう意味から申しますると、まあこれが果たして人口にどう影響を与えるかということについては、そう強力なインフルエンスにはなっていないのじゃなかろうか。こういう意味で、むしろ私はこれは違った社会保障の一環としての問題ではなかろうかという気がいたしますし、また、この問題につきましては、むしろ担当者の方の専門の方からお聞きになった方がよろしかろうかと存じますので、この辺で第三子の問題はおいておきます。
  366. 中山太郎

    ○中山太郎君 まあ人口の専門家としてはその点は触れたくないというお考えのようです。  それじゃ、人口の予測値というものがはっきりとここで確認がされた。その不動不変的な要素の上に立って可変的な政治の問題をこれからひとつお尋ねをしてみたいと思うのです。  まず、経済企画庁長官にお尋ねをしたいのですが、福田内閣の標榜している成長率、実質成長六%、消費者物価の上昇率を五%に抑えた場合の昭和六十年における日本の経済指標というものは一体どうなるのか、それをひとつ。まずGNP及び国民生活の内容。昭和五十年でしたか、月別の収入がいま平均して二十一万円ですね、それが一体どうなるのか。その中でのストックはどうなるのか。そういうふうな一つの予測値が経済企画庁の審議会で検討されてすでに公表されていますが、それについて国民にわかりやすく、安定経済成長の中で協調連帯精神でやっていったらわれわれの生活はどうなるか、それを具体的にひとつお示しをいただきたいと思います。
  367. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) お答えいたしたいと思います。  まず、昭和六十年のGNPでありますが、これは昨年五月私どもが発表いたしました五十年代の前期経済計画は五十五年までの予測をいたしております。このときに昭和六十年の日本経済の姿を大まかに描き出しておるわけでございますけれども、昭和五十年代の実質成長を六%前後と、五・八%の場合と六・二%の場合と二つのケースを分けまして推定をいたします。そういたしますと、昭和六十年におきまして五十年価格で二百六十兆ないし二百七十兆のGNPになると、こういう計算でございます。  それから昭和六十年における具体的な日本経済の姿というのは、実は計画の中では考えておりませんけれども、国民生活の長期的展望と課題ということで国民生活審議会の調査部会の中間取りまとめの形でこの計画に参考に資するように試算をしたものがございます。これについて申し上げますと、昭和六十年における家計の実収入というのを時価で申し上げますと、五十二万九千円が家計の実収入でございます。家計の可処分所得が四十五万五千円、家計の消費支出が三十六万七千円ということになっておる次第でございます。
  368. 中山太郎

    ○中山太郎君 その中で、平均の世帯で、そういうふうな経済政策が成長していくと、どれくらいのいわゆる動産、不動産、そういうもののストックができてくるか、その点をお答え願いたい。
  369. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) お答えいたしたいと思い.ます。  昭和六十年におけるストックでございますが、貯蓄残高で申しますと九百二十万と、こういうことになろうかと思います。そして、これが可処分所得に対してどの程度の比率を示しておるかということになりますと、一・七倍ということでございます。したがいまして、昭和四十八年が一・一倍でございますが、昭和六十年が可処分所得に対して一・七倍になると。すなわち、可処分所得に対して貯蓄残高がかなりふえると、こういうふうに推計をしておるわけでございます。
  370. 中山太郎

    ○中山太郎君 家計の実収入が五十二万円で、家計可処分所得が四十五万五千円という推計で数値が出ておるわけですが、そうすると、いわゆる租税と社会保険料というものは、そのとき平均の世帯構成数が三二人で幾らの負担になるのでしょうか。
  371. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) もう一回……。
  372. 中山太郎

    ○中山太郎君 つまり、家計実収入が五十二万九千円、それから可処分の所得が四十五万五千円ですから、差が七万円あるわけですね。その七万円というのは、社会保険料とかいろんなものが入っていると思うのです、租税とか。それはパーセンテージはどうなりますか。
  373. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) いまのところ六十年におけるこのパーセンテージは計算しておりませんけれども、いま御指摘のように、この差額は税及び税外負担を示しておるものでございます。これはちょっと計算さしてみたいと思います。
  374. 中山太郎

    ○中山太郎君 それでは、数値は七万円の差ということでありますね。七万円の税及び税外負担をそのとき国民の一世帯当たりの負担となって国に支払わなければならない、こういうことだと思うのですね。こういうことから考えていきますけれども、これの数値が予測されていく中で、これが達成できる絶対条件というか、必要条件というものがあると思うのです、政治の上で。その必要条件というのは一体どんなものか。私は私なりに考えてみると、エネルギーが十分確保される、つまり昭和六十年のエネルギーの使用量、あるいはまた政治情勢の安定、それからアジアの平和か戦争かという問題、国際的な戦争が起こっているかどうか。私は、やはりエネルギーが予測どおり確保されて、そして現在の自由経済体制と市場経済制度というものが現在どおり保持される。さらに、国内政治が安定をする。またアジアは平和であると、こういうふうな必要条件というものがあるだろうと思う。それがなければこの数値は大幅に変わってくる。どうですか、その点。   〔委員長退席、理事園田清充君着席〕
  375. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) お答えいたしたいと思います。  まさに一番大事な問題は平和であるということでありまして、もし仮に戦争というようなことになればすべての計画が狂うということは、御指摘のとおりでございます。  それから、やはりこれらの目標が達成されるために一番重要なことは、安定的な成長が維持されるということであります。六%台と申しましても、かなり高い成長でありまして、この成長を確保するためには、やはりいまお話しのようにエネルギーの確保ということは非常に重要な要件の一つであると考えております。
  376. 中山太郎

    ○中山太郎君 資源エネルギー庁長官にお尋ねをいたしたいのですが、昭和六十年の計画がすでに発表されています。それについてエネルギーに関する予測数値を出していただきたい。予測というか、必要数値を出していただきたいと思います。
  377. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 一昨年の八月に、総合エネルーギー調査会から、昭和六十年の需給バランス表が答申されております。これの骨子は、昭和五十年から六十年にかけまして年率六・六%の成長を可能にすると同時に、石油の依存度を低減するためにはいかなるエネルギーの需給バランスであるべきか、こういった内容のものでございます。  この中で特にポイントになっておりますのは、計画の策定当時七五%まで石油依存度にございました日本の一次エネルギー供給構造につきまして、昭和六十年におきましては六三%までいわゆる輸入石油に対する依存度を低減したいということが一つの柱でございまして、それを実現いた一まずために、石油の代替エネルギーとしての原子力、あるいはLNG、その他国産のエネルギーの活用といったようなことをうたっておるわけでございます。  具体的にその進捗状況でございますが、代替エネルギーとして考えられております原子力発電につきましては、昭和六十年におきまして四千九百万キロワットの開発目標が設定されておりますが、現在の段階におきまして稼働中のものが約七百四十万、その他建設中のものを含めましてかれこれ二千二百万キロワットでございます。努力目標を達成するためには、ここ二、三年の間に少なくとも二千数百万キロワットのものを電調審で決定しなければならない、かような状況にございまして、そういった意味合いから原子力開発目標の達成というのはなかなか容易でない段階にございます。それからLNGにつきましては四千二百万トンを想定いたしておりますが、現在の段階で、アラスカ、ブルネイ、あるいは近く入ってまいりますアブダビ、あるいはインドネシアのLNG、合計いたしまして約千六百万トン程度でございます。そのほかにサラワク、イラン、あるいはヤクート等におきましていろいろと開発を検討いたしておりますが、まだ実際段階に至っておらない。その他のたとえば水力につきましての四千二百万キロワットの開発、あるいは石炭の二千万トンの維持といったようなものは、大体努力目標値の方向に即して進捗いたしております。  結論的には、原子力とLNG、いわゆる石油の代替エネルギーをどのようにこの目標に向かって促進していくかということがポイントになろうかと思います。
  378. 中山太郎

    ○中山太郎君 これからエネルギーを確保する中で一番大きな問題は、やはり重油、原子力発電の問題が一番大きな問題になってくる。原子力発電の数値が一体予想どおりできるのかどうか。大体予想値というのはどれだけになっていますか。
  379. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 昭和六十年時点におきましては四千九百万キロワットというのが努力目標値でございます。
  380. 中山太郎

    ○中山太郎君 四千九百万キロワットの原子力の発電は事実上できないのじゃないですか。大体、当初の予定が六千万キロワット。それがきょうの答弁では四千九百万キロワット。しかし、現在の住民の公害問題、いろんな問題をこう配慮して、一体どの程度までこれがダウンするか、資源エネルギー庁の責任者としてひとつはっきりお答えを願いたい。
  381. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 現在稼働中のものと建設中あるいは計画中のものを含めまして、約二千二百万キロワットという段階までは申し上げられるわけでございますが、今後二、三年の間にどの程度まで電調審で決定を見るかというのが問題になってくるわけでございますが、率直に申し上げまして六十年度までに四千九百万キロワットの目標達成はきわめて困難な状態にあると申し上げられるかと思います。   〔理事園田清充君退席、委員長着席〕
  382. 中山太郎

    ○中山太郎君 四千九百万キロワットまでは困難であると。しかし、電力関係の専門家の試算ではある程度もう具体的数字が出ているのじゃないですか。いまのままでいけば一体どの程度しか発電できないか。その点、具体的に、あなたのところの管轄でなくても、電力を供給する責任を持っている組織のデータをひとつここでお話しいただいたらどうですか。
  383. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) エネルギーの研究機関等で発表いたしておりますのは、大体三千万キロワットという数字が出ております。私たちといたしましてはすでに作業に入っておるわけでございますが、総合エネルギー調査会におきまして整合性と実効性のあるエネルギーバランスということの検討に入っておるわけでございますが、原子力につきましてもその作業、検討の一環として今後詰めてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  384. 中山太郎

    ○中山太郎君 三千万キロワットということがはっきり専門の組織の数字として出てきたと。そうすると、あなたの先ほど答弁された数字とはもうすでに千九百万キロワット差があるわけです。それができない場合の代替エネルギーの必要量というのは石油に換算してどれだけになるわけですか。
  385. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) そのまま直ちに石油に代替するというふうには考えておりません。御承知のように、石油依存度を低減していくということは、わが国のみならず、先進工業国全体の努力目標でもございますので、代替エネルギーの開発が順調に進まないからといって、直ちにそれを石油に依存する、あるいは石油依存度を高めていくということは、現実の問題としても、あるいは国際的な問題といたしましても、そういう期待を寄せること自体は問題があろうかと思います。
  386. 中山太郎

    ○中山太郎君 それじゃ、代替エネルギーにそれを転換することができない、問題があるということになれば、それとの経済の計画との数値の誤差というものは一体どういうふうに処理されるのでしょうね。お答えをいただきたいと思います。
  387. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) ただいま御指摘のような点も含めまして総合エネルギー調査会で検討に入っておるわけでございます。その場合、マクロ的あるいはミクロ的に検討いたしますと同時に、代替エネルギーがどこまで開発できるか、あるいは石油に対してどこまで輸入可能性があるかといったような問題も含めまして検討いたすことになると思いますが、この問題は国民経済の成長に非常に関連のある問題でもございますので、あらゆる角度から慎重に検討いたしたいと思います。その場合、もう一つ考えておくべきことは、積極的にエネルギーを確保するということと、そのエネルギーの使用を効率化していく、あるいは省エネルギー型の産業構造に持っていくといったような努力も兼ね合わせまして、経済成長を支えるに足るような方向で実現可能性のある見直しをやる必要があろうかと思っております。
  388. 中山太郎

    ○中山太郎君 あなたのところでは省エネルギーということを言っておられるわけです。しかし、実際国民はあの石油パニックの当時と今日と石油に対しての意識はどのように変わっていると思われますか、ちょっとお答えを願いたい。
  389. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 現実の時点におきましては、エネルギーの供給サイドでは、将来の十年後、二十年後の先を見ていろいろとその選択に入っているわけでございますが、ただ、消費者のサイドから見ますと、必要な時点におきまして必要な量のエネルギーが供給されるということからいたしまして、必ずしもエネルギーの置かれておるわが国エネルギーの実態というものに対する認識は十分でないものがあろうかと思います。
  390. 中山太郎

    ○中山太郎君 その点に関して運輸省にお尋ねをしたい。きょうは大臣がお体が悪いようですから、政府委員からで結構です。  石油ショックの起こったときと今日最も近いときのいわゆる自動車保有登録台数、これの数字を明らかにしていただきたい。
  391. 中村四郎

    政府委員中村四郎君) オイルショック前後の三年間の保有台数の増加状況を見ますと、統計上年度でとっておりますが、四十七年度におきましては約二百五十万台、四十八年度約二百万台、四十九年度におきましても同様の約二百万台、それぞれ年間で増加いたしております。そういう状況に相なっています。
  392. 中山太郎

    ○中山太郎君 これはおたくで調べてもらった資料ですが、五十一年十二月は自動車保有台数は日本全体で三千万台です。いいですか。四十八年は二千六百万台。つまり、石油ショックの前よりも四百万台車がふえているわけですよ。そうでしょう。四百万台ふえているわけだ。いいですか、どうです。
  393. 中村四郎

    政府委員中村四郎君) 四十八年三月におきまして二千三百万台、四十九年三月二千五百万台、五十一年三月末におきまして二千八百四十万台という数字になっております。
  394. 中山太郎

    ○中山太郎君 増加している数字を確認されたわけですね。一方、資源エネルギー庁の方は、省エネルギーというものを昭和六十年に九%見ているわけです。いまの消費の動向というものと、少なくても自動車に関しては省エネルギーはこのままカーブを見ると、上昇曲線をたどっていますよ。ここらにいわゆるエネルギーに対する国民の意識、そういうものが全然ない。また、政府もそれに対して積極的に指導していない。あるいは何かの措置をとらない。そういうことは全然なされていないのじゃないですか。どうですか、自動車に関して。
  395. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 省エネルギー対策はまあいろいろと実施いたしておるわけでございますが、自動車に限って申し上げますと、一つには祝祭日にはガソリンスタンドは休業するようにということをオイルショック以来指導いたしておるわけでございます。それから、低燃費車の改造、自動車燃料の効率を高めるような方向で指導いたしておるわけでございます。  ただいま直接的には自動車についてさようなことをやっておるということでございますが、省エネルギーにつきましては、ただいま御指摘のように、昭和六十年において九・四%、石油換算にいたしまして八千万キロリッターの節約効果を期待いたしておるわけでございまして、大きくわけましてこれは三つの部門から省エネルギー政策を推進いたしておるわけでございまして、一つはエネルギーの効率的な使用を図るということでございます。これは熱管理法に基づきましてエネルギー原単位の改善を図るとか、あるいは開発銀行の融資をもちまして省エネルギー設備の導入を促進する、かような方向で実施いたしておるわけでございます。  それからエネルギーの節約につきましては、四十九年の八月に内閣に資源とエネルギーを大切にする本部が設置されまして、この本部を中心にいたしまして、産業部門、輸送部門、あるいは家庭部門における省エネルギーの指導をいたしておるわけでございます。  三つ目には、技術面からの省エネルギー対策でございまして、国といたしましても、たとえば、MHD発電だとか、廃熱利用システムの開発といったようなことを心がけておりますし、民間における省エネルギー関係の技術開発につきましては、補助金を交付することによって奨励いたしておると、かようなことでございます。  今後とも省エネルギー政策を推進するために、近く総合エネルギー調査会の中に省エネルギー部会を設まして、より実効性の高い省エネルギー、必要とあれば立法措置も検討すべきではなかろうか、かような方向で省エネルギー政策を推進していきたいと考えておるわけでございます。
  396. 中山太郎

    ○中山太郎君 日曜日にガソリンスタンドを休業さしているとおっしゃいますけれども、自動車に乗る人は土曜日にみんな買っているんですよ。それが役所と民間の意識の違いなんです。そこらも踏まえてひとつこれから具体的に省エネルギー政策ができるかどうかということをもっとはっきりやはり政府としては考えるべきです。  これに関連して、政府が一体どれぐらい自動車がさらにふえるか予測している六十年の数値を私の方で調べた。一回紹介してみましょう。新全総は昭和六十年約三千五百万台と、こう言っているんです。運輸省運輸政策審議会は四千二百二十五万台、建設省は四千五百万台、第五次道路五カ年計画の資料では三千五百万台、第七次では四千二百五十万台、建設省道路局では三千九百万台、通産省産業構造審議会では三千七百四十万台、西村肇東大助教授は四千万台と踏んでいるわけです。資源エネルギー庁長官、どうですか、ちょっとそれに関してあなたの御感想を述べてください。
  397. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) ただいまいろいろ御指摘になりました数字につきましてもわれわれも承知いたしておるわけでございますが、ただ、自動車の保有台数がふえること自体が省エネルギー的でないと言い切れない面もあろうかと思います。そのケースによりましての問題であろうと思うわけでございますが、先ほど申し上げましたように、外国でも実施しておりますように、低燃費車を開発してそれを普及していくといったようなことによりましてエネルギー消費の効率化を図っていくというのがわれわれの立場における省エネルギー対策ではなかろうかと思うわけでございます。
  398. 中山太郎

    ○中山太郎君 しかし、世界の石油取引の見通しがありますね、おたくでも調べておられる。その中でOPECが一体何を考えているのか。昭和六十年の世界の石油生産量はOPEC関係では二十八億キロリッターでしょう。日本の使用予測が四億八千五百万キロリットルでしょう。約七分の一ですか、六・五ぐらいですね。そういうことから見ていくと、果たしてアメリカは石油輸入量をどんどんふやしている。こういうことを見て原子力発電の発電量は予測値どおりいかない。昭和六十年度六千万キロワットの当初の予定が、三千万キロワット、二分の一になるわけです。そういう中で具体的なエネルギー政策というものをいまから確立しなければ、もう日本昭和六十年の経済発展というものはなかなかそう簡単にいかない。倉成経済企画庁長官が数値を示されましたけれども、こういう問題がどうしてもう少し具体的に検討されないのか、その点についてひとつ責任のあるお答えを願いたい。
  399. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) ただいま自動車の問題と関連いたしましてエネルギーの節約のお話が出ました。総合交通担当として私が担当大臣でございますが、石油ショック前において総合交通体系についてのいろいろな報告をしたり取りまとめたものはございますが、石油ショック後における総合交通体系としての意見を取りまとめたものがまだございません。したがいまして、自動車の燃料の効率化というような問題だけではなくして、総合交通の中で自動車をどう位置づけるかというような問題もこれから真剣に取り組んでいかなければならない問題であろうと思います。なお、公害等でいろいろ自動車について公害の装置をつけるということになると、逆にエネルギーを多消費するという面もございます。そういう問題も含めて、輸送ということがエネルギー消費の中でかなり大きなウェートを占めておりますから、これをどういう形で省エネルギーの形に持っていくかということを、真剣にこれから関係各省と相談をしながら意見を取りまとめてまいりたいと思っております。  なお、先ほど家計ベースの六十年における税及び保険の負担率を計算いたしておりませんでしたが、昭和四十八年において九%、六十年において一四%でございます。しかし、これは御案内のとおり直接税を中心としたものが家計に出てまいりますから、このほかに間接税その他のものがございますので、国民所得における税負担、保険料の負担率とは違う。家計ベースにおいては一四%の税及び保険料の負担率が昭和六十年において起こると、こういうことでございます。
  400. 中山太郎

    ○中山太郎君 私は経済企画庁長官と運輸省の方にお願いをしておきたいのですが、問題は、いまどんどん各県でローカル空港をつくっている。しかも、ジェット化のために政府からの助成を求める。ところが、近県の場合に、新幹線構想というのがございますね。新幹線がっくと、近いところでは飛行機に乗らない、再び新幹線に戻ってくる、こういう現象が必ず起こってくるわけです。現にあの東北新幹線ができるということになると、もう仙台-東京間が一時間。そうすると、もう飛行機で行くよりも新幹線に乗った方が便利だと、こういう意識で新幹線に乗客が流れを変える。こういうことで、こういうふうないわゆる全国新幹線化とローカルジェット化、これの兼ね合いというものは政府において調整をしておかないと、むだな投資がこの低成長時代に起こってくる。この点について、倉成長官、ひとつお考えを述べていただきたい。
  401. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) ただいまのお話は、幹線と航空だけの問題ではございません。離島の空路が発達いたしますと、離島の空路と航路との関係をどう調整するかというような問題もございますし、すべての面において総合的な交通体系のビジョンを描くことが一日も早く必要なことであると考えておりますので、勉強してまいりたいと思います。
  402. 中山太郎

    ○中山太郎君 今日まで、航空会社の路線というものは、空中を飛ぶことだけで、権利として、あるいは逆な言葉で言えば利権として存在をしていたと思います。しかし、新しい交通体系を整備する上で、どんどんと思い切ってもう利権的観念を捨てて政府としては思い切った処置をやって国家国民のために新しい姿勢を示すべきだと、私はそういうふうに実は考えております。  こういうふうな条件を進めていく中で、私はやはり欠くことのできないものが一つある。それは外交と安全保障ということを抜きでこれだけの経済計画とかあるいは資源エネルギーの利用というものはできない。そういう点を踏まえてこれから少し質疑をさしていただきたいと思いますが、私は、これからの政治の基本というものは、やつぱり資源外交、経済外交と言った方が聞こえがいいでしょう。あるいは安全保障という防衛の問題、食糧自給率の上昇の問題、それから科学技術の振興、これは輸出産業が大幅に変わってくるために、知的産業を育成して新しい知的輸出をやらなければ国の外貨獲得はできなくなる。  こういうふうなことが基盤にあって、このことに国民に合意を取りつける、そしてやはり国民を指導するのが私は政治だと思っているんです。いままでのように国民に迎合する政治の時代は終わつたんじゃなかろうか。政治家がばかにされるのは指導力を失っているからばかにされるんであって、言いにくいことをどんどん思い切って言う政治が福田内閣の基本の姿勢だと、私は実は思っているわけです。こういうことを恐れずに、ひとつどんどん政府責任を持って国家百年のために言うべきだと思うんですけれども、現在のいわゆる国民を見ておると、国民は愚にして賢と言いますけれども、愚にしておるのは政治の責任じゃないか、私はそのように思っています。いまの政治を見ておると、ごね得の行政が、政治が行われておる。各省は縦割りでばらばら、調整機能はなし、こういうことで私はこの難局を乗り切れない、そういうことから考えると、私はきょう新聞で見ましたけれども、科学技術とごね得とが一緒になって存在をしているんじゃないか。  私は科学技術庁長官にお尋ねをしたいですが、原子力船が、むつを母港にしたときに、いわゆる母港にするためにどれだけのほかの補助が要求されたか、地元に対して。あるいはまた、きょうは長崎新幹線の話が出ておる。この点についてひとつ見解を承りたい。
  403. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 原子力船「むつ」、この母港のために、たしか放射線漏れのあった後の話だろうと思いますが、いわゆる四者協定が結ばれましたときには約十三億というふうな国費がいろんな形で出されております。これは御指摘のとおり、まあ事情もあったでございましょう。しかしながら、純粋科学の面から見れば、やはり原子力船の必要性は、もう今日ただいま将来にわたりまして必要ですから、この点はまず安全を国民によく理解してもらって、将来の原子力船が国民生活上もうどうしても必要だというふうな理解を仰ぐ努力を、政府は今後強くしていかなければならないと任じます。  今日ようやく、長崎そして青森の両県の間におきまして、長崎の方は、知事と先週お目にかかりましたが、大体、知事の諮問機関の研究委員会というのがございますが、これがある条件をつけて、それならば入港してもらってもいいんじゃないかというふうなことになってきたという研究委員会の話を知事が持ってまいりました。そのときに一部新聞等にも載りましたとおり新幹線の問題が出たわけでありますが、知事といたしましては、あくまでも原子力船「むつ」に絡んで申し上げておるのではないということをはっきり申しておりますし、また私自身といたしましても、科学行政推進の上におきまして、そうしたことと何かこう一線を画しておかないということはきわめて不条理な話であると、こういうふうに私も知事に申し上げました。ただ、知事といたしましては、せっかくこうやって科学技術庁長官ともいろいろお話をする機会を得たので、どうか同じ閣内ですから、従来からこの問題は長崎の大きな関心であるからひとつお力添えを賜りたいと、そういうような話がございましたが、私といたしましては、今回さような意味で、行政とそして対応策というもの、これまたある面においては必要でございましょうけれども、やはりきちっとした一線を画す必要がございますので、原子力船「むつ」に関しましては、本年度は自由民主党に特別委員会をつくっていただきましたから、その自由民主党の特別委員会が、それぞれ青森あるいはまた長崎の地元の意見を吸収する、そういうふうな順序にいたしておりますから、われわれといたしましては、いま御指摘のとおり、きちっとしてその間のけずめだけはっけて今後も科学技術政策を推進したいと、かように存じております。
  404. 中山太郎

    ○中山太郎君 私は、この科学技術と地元の補助という問題が、政府にしっかりしたものがない限り原子力発電の建設もなかなか予定どおりいかないと思うんです。現実にそうなっているわけですから。あの「むつ」の問題のときにも、私ども医学を学んだ者から見れば、年に一度レントゲン検査を受けた者が受ける被曝量ぐらいなものであれだけの、十何億か、いま科学技術庁長官が発言されたけれども、金が出ていく。これは国民の税金なんですから。今度いわゆる原子力船の問題についてひとつ、私は前にも部会で申し上げたけれども、科学技術庁長官が原子力船の原子炉の横へ座り込んででも、やっぱり体を張って国民を説得するというぐらいの勇気がなければ、これだけの問題はできませんよ。  かつてアメリカに日本がなぜ敗れたか。それは日本の鎖国主義、科学技術否定主義、私はそこのやっぱり姿が今日なおあらわれているんじゃないか。原爆によって負けたらそれだけのことをはっきり国民が認識して、安全なものはどんどん使わなければしょうがないじゃないかというふうな姿勢を政府はとらなければ、いつまでもちょんまげ日本だと、私はそのように実は考えているわけです。どうですか、科学技術庁長官。
  405. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 「むつ」に関しましては、私もいま、同様の考え方を持っております。したがいまして、科学技術庁長官としては、現在の「むつ」はもう絶対安全であると、だから放射線漏れその他の御心配ばないようにということをはっきり地元に申し上げておるわけでございます。しかし、地元を預かっておられる知事さんからするのならば、やはりまだ核アレルギーというものが完全に払拭されておらないと。また、特に長崎はわが国における被爆県である。そうした意味合いの社会的な問題も抱えておられるということを考えますと、私はまた知事等の御判断に耳を傾けなければならない面もあるわけであります。しかし、いやしくも安全であるというからには、過般も衆議院あるいは衆参両議院の特別委員会においても申し上げてまいりましたが、現在の核燃料体は非常に冷たく冷え切っておるんだから、それに対して安全性を疑う向きがあるのならば私みずから手を添えてみせましょうと、ここまで私は申し上げておるわけでありまするから、原子力船「むつ」に乗りまして、そうして回航するということは一つの私の務めではないかと、深く考えております。
  406. 中山太郎

    ○中山太郎君 なかなか私は科学技術庁長官として勇気のある発言だと思うんです。やっぱり命がけでやるんだと、新しい時代に入るのは。それぐらいの姿勢がなければ福田内閣の科学技術庁長官としてはこれはどうもぐあいが悪い。ひとつ大いにがんばってもらいたい。  これを一つお願いをしておきたいことと、私はひとつ総理、外務大臣を含めて科学技術庁長官にも提言がしたい。もう何か放射能というと全部悪いように思うと。しかし胃がんの検査にしたって、今日あなた、もうみんないわゆる被曝しているわけです、レントゲンで。放射能の利用の仕方によっては幾らでもこれがわれわれ国民のためにプラスになるという現実をよく考えて、原子力船というものは、将来日本のいわゆる海運技術の上でこれは避けて通れない問題だということになれば、やはりメリットをどうするのか。  私はまずここで運輸省にお尋ねしたいんですが、世界的に見て、原子力船の入港を拒否している港と国名を挙げてもらいたい。
  407. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) お答え申し上げます。  現在世界で原子力商船と言われておりますのは、アメリカの一隻とドイツの一隻、それからソ連の三隻でございます。で、ソ連は自国内を主に砕氷船として航行しておりますので、ほかの二隻の例について申し上げますと、現在までの実例では、建造国とそれから入港国との間で二国間の話し合いをいたしましてそれで入るというのが通例でございます。で、アメリカの原子力船の場合は、三十七年に完成しておりますが、それ以来二十四カ国、四十六港、主としてヨーロッパの諸国でございます。それから、西ドイツの原子力船「オット・ハーン」は、四十三年に完成しておりますが、十七カ国、二十九港、主として南アメリカとアフリカを中心にして入っております。これらの場合は、現在のところは、すべて二国間の協定もしくは外交文書等によりまして寄港が認められ、入っているというのが実情でございます。
  408. 中山太郎

    ○中山太郎君 私は、「むつ」は核燃料を抜かないと日本の港に入れないというなら、思い切って国際的に入港を認めている国家に母港を依頼したらどうか。ただし、その際には私は、災害国際救助船という形で、それに医療物資あるいは食糧とかいろんなものを積んで、たとえばこの間のルーマニアですか、地震が起こると、トルコに地震が起こると、これはもうすぐ飛んでいくと、これは燃料の補給が要らないわけですから。これがやはり一つの国際協力のあらわれではないか。  私は、さらにもう一つお尋ねしたいことは、運輸省かな、科学技術庁でもいいですが、沖繩のいわゆるアメリカの米軍基地の発電、送電ですね、あるいはかってニューヨークの停電のときのいわゆる米海軍による発電、送電。そういうケースについてちょっとここで説明してもらいたい。
  409. 小川半次

    委員長小川半次君) 答弁どなたですか。
  410. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 御指摘の緊急な場合におきます発電を船で行うというケースにつきましては、琉球電力公社におきまして、過去米軍の船舶を用いまして行った例がございます。発電機容量にいたしまして二万キロワットないし三万キロワット程度のものをやった実例がございます。将来、原子力船「むつ」をいかように活用するかという問題でございますが、私どもはただいまのところ、遮蔽改修並びに総点検をいたしまして所期の開発目標を達成するというのをもちろん第一義に考えておるわけでございますが、その後におきますこの船の活用につきましては、せっかく原子炉も搭載しておることでもございますし、また貨物用の船倉もあることでございますので、御指摘のような緊急発電用船といったふうな可能性も含めてその時点で検討してまいりたいというふうに考えております。
  411. 中山太郎

    ○中山太郎君 科学技術庁長官どうぞ。
  412. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) いま中山委員の御発言の中に、母港がもし決まらないんだったら外国にやつちゃえというようなお話がありましたが、これはもうとてもとても私は考えておらないところでございまして、やはり「むつ」を無事佐世保に入港さして、修理、修繕をいたしまして、三年間の間に国内における母港は複数で決めていきたいと思いますし、また、原子力船は六十日以前に入港届けを出すおきてになっておりますから、日本津々浦々六十日以前に入港届けが出れば、どこの港にも入るというふうなことをこの原子力船「むつ」の十年の間にやっていきたいと、これを私は思っておりますので、どういたしましても将来の日本のために原子力船は必要でございます。特に海運国でございまして、いまも油を運ぶのに精いっぱいでありますが、油を運ぶのに現在で大体十六ノット、二十万トンのタンカーで四%の油を食っておるわけであります。しかし、将来はコンテナ船なんかを開発いたしますと、恐らく倍のスピードアップをしないことには間に合わないという時代が来るわけですが、スピードを倍にいたしますと燃料は三乗になる。三乗はつまり八倍だということになりますと、もうたちまち油を運ぶのに油を三割も四割も食わなくちゃならぬ。こんな不合理なことはありません。このことはよく国民の方々に十二分に認識していただいて、今後いかに原子力船が必要であるか、そのためにもう「オット・ハーン」も就航しておるわけであり、アメリカも開発をし、さらに英国におきましては、アメリカに対しまして最近大型タンカーを仮発注するというところまできておるわけでございますので、決して外国に母港を求めるんじゃなくして、やはりこの国内においてりっぱに母港を求めるべく政府といたしましても最善の努力をいたしたい、かように考えております。
  413. 中山太郎

    ○中山太郎君 私が申し上げておるのは、この原子力船入港一つを見て、これだけ国がいわゆる賛成派と反対派、政府国民の間で相反する運動が起こる、それに便乗して反政府運動が起こってくる。こういうばかげたことを私は日本から早く消してやりたい。そのためには外国で原子力船を国際救助船に仕立てておいて、地震が起こればすぐやってきてどんどん電気をその町へ送ってやるというぐらいの国際協力をしてみせれば、世界じゅうから感謝される。その姿を見て、反対しておる人たちが、自分たちは愚かであったということに気づくだろうと思う。それぐらいのやっぱり思い切った発想の転換をやって、これだけの反対運動をする人たちに理解を求めることが私は必要だと思う。無用な国民の感情の対立をさせるべきではない。数字は科学の言葉だという有名な言葉がありますが、それをやっぱり国際的に認識してもらう、こういうことをひとつ特に申し上げておきたいと思う。  そこで、これからの問題はやっぱりこの物価の問題に関連して、いまの経済成長率から見ると実に二百八十兆円ですか、GNPが昭和六十年。これは大蔵大臣にこれから一つちょっとお尋ねをいたしたい。どうですか大蔵大臣、いまの経済企画庁長官の見通し、これはどうですか、達成できますか。
  414. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 六十年度を目標とした国民生活指標というものは、これは国民生活が非常に大事なものであるということにかんがみまして、国民生活審議会が、これから打ち続いていく安定成長の経済のもとにおいて国民生活がどうなっていくかということを、これは一応試算したものと思いますが、まだ正式に決定をしたものではありませんけれども、これからの生活の姿を、これを示唆するものだと私は考えております。
  415. 中山太郎

    ○中山太郎君 二百八十兆のGNPだということであると相当大きないわゆるスケールですね。これでいまのいわゆる銀行券の流通の中身というのは、いわゆる紙幣別に分けてどうなっていますか、ちょっとそれをお答え願いたいと思います。
  416. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) お答えいたします。  流通高で申し上げますと、一万円券が全体の構成比で申し上げますと二三・六%、五千円券が二・五%、千円券が三四・三%、五百円券が八・三%、あと百円が一〇・二%でございます。枚数の構成比でございます。
  417. 中山太郎

    ○中山太郎君 大蔵大臣ね、いま百九十兆ぐらいですかね、それでこれだけの紙幣の流通量が出ているわけです。これはあれですか、二百九十兆ですかになってくると大変なことになりますね。昭和六十年、あと八年間ですね。そうなると、これはどうですか、デノミをする必要があるんじゃないですか。
  418. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 二十八兆でもちょっと気の遠くなるような数字で、それに二百八十兆ということになりますと、ますますこれはもうそのスケールを察しかねるというぐらいなものだと私は思いますが、しかし、そのデノミをやるかやらぬかということは、通貨の発行数量でもってこれは決定的に判断をするというものでは私はなかろうと思うんです。しかし、日本の通貨のドル換算レートが三けたであるというようなのは、これは世界でちょっと珍しいようなことで、これば決して芳しいことではないと私は思っておりますけれども、デノミを断行するためにはやはり物価が落ちついて、そうして経済が安定するということが何よりも私は大事な条件だと思っておりますので、今日ただいまデノミを断行すると、そうおっしゃっておるのではないと思いますけれども、そういうふうに考えております。
  419. 中山太郎

    ○中山太郎君 私のお尋ねしているのは、いま直ちにデノミをやるということじゃないんです。これで福田政策というものが軌道に乗っていく、国民の協力によって。そして安定成長して、それでいったら二百八十兆になるわけですから、そういう経過をたどった上で、さらに、いわゆる国の経済が繁栄していけば、このままの姿ではいかないというふうにはお考えになるんでしょうね。どうですか。
  420. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) かかる状態にありますから、そこで、しかるべきときにこれはやることが本当だと思いますけれども、ただ、通貨量だけでもってやれないということは先ほど申し上げたとおりです。
  421. 中山太郎

    ○中山太郎君 それじゃ、大蔵大臣として、通貨量だけでなしにどういう因子がそろえばやれるとお思いですか。
  422. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 先ほど申し上げましたとおり――あなたもおっしゃられたですが、経済が安定し、物価が落ちつくということ、これが大事なことでございましょう。
  423. 中山太郎

    ○中山太郎君 続いて大蔵大臣にお尋ねしますが、これは、この間地方公聴会でも公述人から言われたことですが、国債の問題です。十年物――長期のものは買い入れたときが九十八円七十五銭だと、市場価格は九十六円八十五銭。つまり日銀から割りつけられて、買ったときにすでに損金が、幾ら出るんですか――円九十銭出るわけですね。それを買えば直ちに決算までに損金勘定に入れにゃいかぬと。これが五年物はよく売れていますけれど長期物が売れてない、不評判の大きな原因です。この点について、大蔵大臣としてどうお考えですか。
  424. 安井誠

    政府委員(安井誠君) 先生ただいま御指摘の、国債を発行直後に売りますと非常に価格が下がるというお話でございましたが、ここ一月、二月、三月の状況を見ておりますと、この発行の利回りが八・二二七%でございますが、最近その流通利回りも八・五ぐらいに返ってきておりまして、徐徐に、何と申しますか、国債の発行利回りと流通利回りとの差が少し縮小しつつあるということでございます。ただ、十年間持っていただくために発行している債券でございますから、明くる日売りましたときにそのままの価格ではないということは言えるだろうと思いますけれども、極力近づいた形での発行利回りを考えていくべきことだと考えております。
  425. 中山太郎

    ○中山太郎君 国債の流通について、総理はいつもこうおっしゃっていますね。国民になじむ国債を発行したいと、国民にみんな国債を持たしたい。つまり国の経済に対する信頼ですね。ところが現在では証券会社が中心で、一般にはどうしたら買えるかわからない。また、どうしたら売れるかわからない。だから大衆の手に入らない。いろんな意見から、株式市場と別に国債、公社債の独立した流通市場をつくらなければ、私は国債というものは大衆の、国民の手に入っていかない。この点についてどうお考えですか。
  426. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) ただいまのところはどうにか順調に消化をしておるということでございますけれども、これから多量の国債を発行していくということに相なりますから、これは何とかいたしまして国債や国債市場、公債市場の整理と、それから管理といったようなことについて、これは相当検討してまいらなければならないと、かように考えます。
  427. 中山太郎

    ○中山太郎君 いま金融機関にどんどんはめ込んでいますね。はめ込んでいますけれども、いまは民間の設備投資意欲が低いために、萎縮しておるから、いわゆる資金需要がないわけですよ。資金需要がないから銀行の金でそれを持っているわけですね。ところが、これがいわゆる減税もやった、あるいは四月以降、上半期に思い切った公共事業の投資をやると、そういうことになって経済が復活してどんどん伸びてくると資金需要が起こってくる。そのときにショートするんですね。ショートする、これは間違いないんですよ。政府が景気を刺激すれば、政府が発行した国債を抱いている金融機関は売らざるを得ないわけです、十年物でも。この矛盾をどう解決したらいいでしょうかね。
  428. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 確かにそこに矛盾があると思います。景気を刺激して、資金需要というものが、これが非常に活発になってくると、片っ方におきましては国債の発行をどんどんやっていかにやならぬということになりますと、この市場というものがだんだんとこれ苦しく、切迫してくるということはおっしゃるとおりでございます。で、そういうようなことに対処いたしまして、この国債の発行と消化ということにつきましては、今後あらゆる方法をとっていかなければならない。日銀オペレーションとかなんとかといろいろありますけれども、これは相当な一まあそうなってこなきやまた日本の経済が、景気が浮揚するということにならない。そういうようなことを考えますと、われわれも鋭意いろんな方策を考えていかなければならぬと、かように考えております。
  429. 中山太郎

    ○中山太郎君 これは非常に大きな問題ですね。福田内閣の経済政策の中で、国民に国債を持たしたいという内閣、政府の希望、現実の矛盾、その解決をどうするか。これはもう挙げて大蔵大臣の大きな責任だと思います。それで、どうしたら国債が国民の手に入っていくだろうか。流通経路ですね。そこらからこれからしっかりとやっていただかないと間に合いませんよ、公共投資の発注が始まったら。また歩積み両建てなんということが起こってくるんじゃないですか。  そこで、時間がだんだんたってきましたが、日銀は一体信用金庫、信用組合に国債を買わしていますか。相互銀行どうですか。それちょっとお尋ねします。
  430. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 数量はわずかでございますけれども、信用金庫も信用組合も国債を買っております。
  431. 中山太郎

    ○中山太郎君 政府が発行した国債というのは一番信用のある債券ですね。そうでなければならない。それを買わせた。その信用組合、信用金庫が資金が不足してくるという場合に、日本銀行へ国債を持っていって――相互銀行でも。これを担保に日銀から金を貸してくれと言ったときに日本銀行ば貸すんですか。
  432. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 信用金庫、信用組合の持っております国債を市中で売ることは可能でございますので、たとえば機関投資家、保険だとか信託だとか、そういう機関投資家もそれを証券会社を通じて買っております。したがいまして、ある意味におきますところの売買市場というものが存在しておりますので、その辺は、その信用金庫が持っております信用金庫側のそろばんでもって、その資金をどこに運用するかという点を考慮した上で、買うものは買っておるということでございます。先生の御指摘の、何かすぐこうキャピタルロスが出て大変迷惑なことだけを、国債の引き受けが行われておると、こういうふうにお感じでございますけれども、それは必ずしもそういうことではございません。ただ、私ども時間的に見ますと、もっと市場を広めるために、国債を魅力あるものにすれば市場がもっと広がってくるわけでございますから、少し時間をかけて国債のいわゆる流通市場というものをつくっていきたい。そのために国債の条件をやっぱり魅力あるものにしなきゃいかぬ。五十年の十一月に、金融の金利引き下げのときに、国債の流通や発行条件をかなり魅力的なものに直してまいりましたので、これでいま市場においてはかなり売買が行われておるわけでございます。したがいまして、いまの段階におきましては、信用金庫、信用組合の――まあ先ほど先生の御指摘がございましたように、資金の需要がございませんから、したがって国債を持っておる方が有利だということで持っておる信用金庫もございますが、資金運用のために売ろうと思えばそういう形で売っておるわけでございます。直接日本銀行が信用金庫から国債を買うという場合は現金のところございません。
  433. 中山太郎

    ○中山太郎君 日銀は相互銀行、信用金庫に融資しませんね。どうですか。
  434. 後藤達太

    政府委員後藤達太君) 日本銀行の取引は主として都市銀行でございますけれども、相互銀行につきましては、これは昨年の三月末の数字でございますが、貸出額が百七十一億。信用金庫につきましては十一億実績がございます。
  435. 中山太郎

    ○中山太郎君 そこで、いわゆる相互銀行、信用金庫に持たした国債を担保に日銀に金を貸してくれといってもそれは貸すんですか、どうですか。そこをちょっと確かめたい。というのは、いわゆる信用金庫、信用組合というのは都市銀行に取引のできない零細中小企業者の集中している金融機関なんですね。で、日銀がその国債をはめ込む、金はなかなか出さない。実際中小企業政策というのは政府がやっておるけれども、仏つくって魂入らずじゃないかと、その点を私はお尋ねをしたいわけです。
  436. 後藤達太

    政府委員後藤達太君) 日銀の信用供与の形は都市銀行の場合と相互銀行、信用金庫の場合と若干違っておりまして、いま先生御指摘のように、都市銀行に対しましては与信をいろんな形でやっておりますが、相互銀行、信用金庫につきましては主として手形割引の枠を与える、こういう形でやっておりまして、最近御指摘のように、公共部門に対する信用供与の形がふえておりますので、ごく最近でございますが、手形の割引枠を拡大している、つまり資金的にはそういうルートで資金を供給する、こういうことになっております。なお、相互銀行につきましては国債を担保で日銀貸し出しも行うと、こういうことを始めることに日銀の方でお決めになったと聞いております。
  437. 中山太郎

    ○中山太郎君 それなら大分進歩してきたわけですが、まあ続いて私は金利の問題について、この間大阪の地方公聴会でのいろんな意見から、ここで論議をしてみたいと思うんです。この金利は、郵便貯金の金利、都市銀行、信用金庫全部金利が違う。で、郵政審議会にも諮問をする意思はないということを郵政大臣はこの間言明されましたが、金利の整合性を含めて金利の自由化ということについて大蔵大臣どうお考えですか。
  438. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 金利の自由化ということについては強い要請の御意見のあることも私は承知いたしております。ただしかし、ここで急に金利の自由化と、こういうことをやりますと金融機関の間で非常な競争が生、してくる、強い競争が生じてくるということもこれはもう免れない。そうなってきますと大口の預金が、これが小口の預金よりも手数は少ないですね。その方へお金が回っちゃっておりますね。それで大口の預金がどんどんふえてくる、小口の預金が比較的ふえないというようなことになりますと、これはしたがって大企業の方へたくさん回る可能性、流れていく可能性がある。それで中小企業の方へはこれちょっと流れていかないというようなことも考えられるんじゃないかということもこれありまして、それはもうそのときの経済の情勢等、まことにデリケートなものがあるということも考えられまして、急にこれをやろうというようなことについては相当、おまえティミッドじゃないかと言われるかもしれませんけれども、慎重な考慮を要するというふうに考えます。
  439. 中山太郎

    ○中山太郎君 金利の自由化についてはいろいろアレンジメントしてからやらなければならない。いまいわゆる銀行が取りつけになった場合の支払い保証保険の金額は幾らですか。
  440. 後藤達太

    政府委員後藤達太君) 保険事故に当たりますものは一人当たり三百万円であります。
  441. 中山太郎

    ○中山太郎君 これは金利の自由化をやるということになれば、前提として金融機関のいわゆる再編成、再統合、方々で金融機関の問題がいま起こっていますね。その場合に、預金者保護の立場で政府は銀行に対して、あなたが預けている金の中でもしも取りつけが起こったら三百万円までは支払いしますよということを知っている国民は果たしているでしょうかね。どうですか。
  442. 後藤達太

    政府委員後藤達太君) 預金保険法ができまして数年たっておるのでございますけれども、いままで適用例はございませんので、私どもいろんな機会にそのあることは申し上げてきておりますけれども、相当多くの方が御存じかどうか、ちょっとどのぐらい承知しておられるか掌握いたしておりません。
  443. 中山太郎

    ○中山太郎君 これははっきり申し上げておきたいと思うんですが、いま預金者の中で、銀行に取りつけが起こって、自分が一千万預けていると幾ら返してくれるかなんて知っている預金者というのは――九八%ぐらい知らないんじゃないですか、三百万しか返してくれないということ。だから金利の整合性、自由化とか、いろんな問題を含めて金融機関には再保険には三百万円保証されているということぐらい一札ぴしっと掲げておくことは、これ預金者保護の原則に合うんじゃないですか。どうですか。
  444. 後藤達太

    政府委員後藤達太君) アメリカの場合は、その預金保険機構に入っておりますものと入っておらないものとがございまして、入っておりますものは窓口にその表示をする。こういうことになっておりいすが、日本の場合には一般金融機関全部預金保険に加入をいたしております。したがいまして、そういう表示方法を具体的には指示をいたしておりませんが、いま御指摘のような点につきましてはなお勉強さしていただきたいと思います。
  445. 中山太郎

    ○中山太郎君 これは勉強するどころの騒ぎじゃないです。銀行の支店長でも知らないのがわんさといるんですよ。私聞いてみたら聞いた人みんな知らなかった。そういうことはもっと銀行局は徹底させなきゃだめですよ。私は、これだけ国民のストックがふえてきたら金利の自由化も含めて新しい金融体制の時代に入ってくる。そういうものについてはしっかりした腹決めてやりなさい。銀行がいやがるのはわかっているんですよ。それをやらせるのが政府なんです。そこをしっかりとやってもらいたいということを要望しておきます。  もう一つ、大蔵大臣に塩の問題をちょっとお尋ねしたい。塩をいつまでも専売にする必要ないんじゃないですか。どうですか。これはぼくが記録を調べてみると、日露戦争のときの臨時軍事費を調達するために塩を政府は専売したんだな。独占禁止法違反、独占しているわけです。これしかし、この塩業審議会の答申を見ても書いてありますね。合理化がされれば塩ば自由化されるべきだ、民営に移管するべきだということを書いてある。どうですか。
  446. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 塩でございますが、あの石油ンョック以来、その燃料――塩には燃料が要りますな。それ以来塩の製造コストというものは上がりまして、そして相当なこれ困っておるわけでございます、塩製造にコストが上がったために。それで、それとこれとは別といたしまして、塩は何とかしなければ全くしおうがないということに、(笑声)そういう意見も非常に強い。そういったようなことを受けとめまして、公共企業体等基本問題会議、そこでいま鋭意検討してもらっておるところでございますが、そういったようなこともこれを見きわめまして、そして態度を決したいと、かように考えておりますが、いずれにいたしましても中山さんいま御指摘のとおり日露戦争の、それは私は知りませんけれども、その財源かどうかは。それは私は知りませんけれども、長い歴史を持っておるものでございまして、その歴史ということもやっぱり、長いもの必ずしもいいものじゃないと、それは思いますけれども、そこらのところもよく勘案いたしましてこれを決めてまいりたいと、かように考えております。
  447. 中山太郎

    ○中山太郎君 これは専売公社は来てますか、塩関係。輸入塩について一回説明してください。
  448. 後藤正夫

    説明員後藤正君) お答えさせていただきます。  現在、塩は私ども大体国内の家庭用塩は現在七社で約百二十万トンをつくっております。(「理事だな」と呼ぶ者あり)対策本部長で、まだ理事ではございません。それから、あと塩を約七百万トンほど、これはソーダ工業塩と、まあこれはいろんな食品加工等で輸入をいたしております。で、ソーダ工業塩は現在公社が一手輸入でございますが、ワンタッチ方式でございまして、ほとんどソーダ工業の関係業者が相手の国と話し合いまして、公社としてはトン当たり三十円の検査手数料をいただいてワンタッチで引き渡しておる。あとの四十万トンぐらいは、これは公社が輸入をいたしまして粉砕塩にするなり、あるいは再製加工するなりして、元売り等を通じて消費者にお渡しをしております。以上でございます。
  449. 中山太郎

    ○中山太郎君 ちょっと食塩のトン当たりの値段は幾らですか。
  450. 後藤正夫

    説明員後藤正君) 食塩は、これは現在輸入塩は大体トン当たり単価のぶれというような形で大分値段は違ってまいりますけれども、現在五千円から六千円でございます。
  451. 中山太郎

    ○中山太郎君 家庭用食卓塩はトン当たり幾らですか。
  452. 後藤正夫

    説明員後藤正君) いまの食塩は、大体国内塩は一万五千五百円でございます、トン当たりでございます。これは結局国内塩を中心にいたしておりますが、先ほどちょっと大臣がお答えなさいましたが、実は四十六年に私ども先生方のお許しを得まして塩業整備についての特別交付金を予算でいただきました。で、長いこと伝統を持っておりました国内製塩の塩田製塩というものを全部これを整理いたしました。当時約千七百の関係業者、それから二千二百ヘクタールの塩田で塩をつくっていたわけです、約六十七万トンぐらい。これを整理させていただきまして、四十七年からはいまのイオン交換膜製法による七社の製塩に切りかえました。現在は四十七年、四十八年という二カ年間は、当時の四十六年の国内塩の収納価格一万二千五百円でございましたが、千百円ずつ二カ年間に下げまして、五カ年間目標で当時国際的に恐らく認められるであろうといった七千円という再製加工塩を目標に、生産者等に合理化をお願いしたわけでございます。ところが四十八年、先生先ほどエネルギー問題で大変貴重な御質疑、御意見いただかしていただいたわけでございますが、四十八年のオイルショックで全く様相が変わりまして、何と言っても塩は海水をイオン交換膜で自家発電をして濃縮をいたします。それをさらに真空蒸留かんで結晶にさしていくものですから、大変そのエネルギーの、燃料費が高くなってきたこと、それから公害関係、海水汚染、いろいろ問題ございまして、重油の質のいいもの、あるいはさらに灯油に変えていく、いろんなことがございまして、現在私どもが計算をいたしますと、当時国際的には七千円と言われたものが、いま輸入塩を再製いたしますと、どうしてもやはり一万四千幾らばかかるというようなのが、いま私どもの計算で出てまいっております。そういうようなのが価格面の国際、国内的な状況でございます。
  453. 中山太郎

    ○中山太郎君 輸入塩はほとんどなんですね、ソーダ業界に行ってるわけだ。
  454. 後藤正夫

    説明員後藤正君) さようでございます。
  455. 中山太郎

    ○中山太郎君 もうほとんど国内の食料塩は少ないわけだ。ほとんどないわけですね。
  456. 後藤正夫

    説明員後藤正君) ばい。
  457. 中山太郎

    ○中山太郎君 そこで私は、そんなことを公社がする必要ないんじゃないかと。それどうですか。
  458. 後藤正夫

    説明員後藤正君) 先ほど先生が明治の三十八年という御指摘ございました。確かに当初日露戦争等踏まえました、いわば財政需要それから国内塩の需給の安定というような形で塩の専売制は始まったわけでございます。始まりましたわけでございますけれども、大正八年に財政専売から公益専売に専売の目的を変えております。それで先ほど申し上げました何回かの整備を経ながら今日に至っておりますが、何と言いましても、現在、塩は国民の基礎物資、産業の基礎物資でございます。需給の安定というのが一番基本でございます。それと塩の価格は、現在全国どこに回りましても、塩の価格は末端価格同じでございます。そういうようなことでございまして、現在、私どもはやはり需給の安、定と、それと安定的な価格で消費者の末端までお届けするということを、いま私どもの任務にいたしております。
  459. 中山太郎

    ○中山太郎君 これは大蔵大臣にも総理大臣にもよく申し上げておきたいと思うんですが、塩業審議会の答申によると、生産性が上がった場合には民間へ切りかえるべきだという答申が出ておるわけですよ、昭和四十七、八年に出ておるわけだ。私、生産性を調べてみると、明治三十八年入り浜式では七人で年間百二十トンなんですね。それが昭和二十七年流下式になると七人で二千五百トンとれるようになっておる。昭和四十五年イオン交換膜によると七人で七万トンとれるんですよ。これだけ化学技術の発展によって生産性が向上しているわけです。それを明治三十八年の日露戦争を盾にとって、いまごろまでこんなものを、塩業の審議会の答申を無視して専売公社が相変わらず塩をやっていくということ自身が審議会の答申無視じゃないですか。こういうところから行政機構の改革ということを思い切ってやらなきゃだめなんだ。どうですか大蔵大臣。
  460. 道正信彦

    政府委員(道正信彦君) 現在専売公社が行っております塩の専売制度、これを廃止したらどうかということでございますけれども、七十年来塩の専売をやっておると。七十年間におきまして当初は三万軒もありました塩の産業が、現在は七社というふうに合理化されております。  それから不幸にしてオイルショックというような石油急騰に際しまして、自立化という目標は大きな障害をいまこうむっておるというようなことがございます。ただ、その技術の発展によりまして、どういうことになるかということもございますし、また塩の需給あるいは塩の価格の安定という問題は、米と並びましてきわめて国民生活にも重大な影響があるというようなことからいきましても、もうしばらく情勢の推移をながめながら検討していきたいというふうに考えておる次第であります。
  461. 中山太郎

    ○中山太郎君 推移を見るのは役所のこれはくせなんですね。私どもはやっぱり行政改革を八月までやるという福田内閣の大きな基本方針の中で、明治三十八年につくられた目的が達したものは民営にするべきである、社会主義の国家じゃないんですからね。そういうことをひとつはっきりこの機会に自民党を代表して申し上げておきたいと思う。  もう一つ、今度はこういう問題含めて、これから産業構造の改善ということが起こってまいります。通産大臣にお尋ねしたいんですが、産業構造を改善する。造船にしたって繊維にしたって合繊にしたって、もうむちゃくちゃですね。こういう中で産業構造を改善していくのにどういう業種が政府としてはいち早くやらなければならないかということについてお考えを伺いたい。
  462. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) お示しのように、数年前までの高度成長時代の産業構造というものと、低成長に入りました今日の時点におきまして、構造の問題がすでに巷間厳しく論じられておる状態でございます。ことにその中におきましても、中小企業方面におきましては、繊維を初めとしまして、この構造改善に対しまする審議会があり、同時にまたその答申もございまして、われわれといたしましても、特に不況対策等々の中小企業対策の中で、これらの転業その他の問題やら、あるいは根本的な再編成の合理化の問題等、真剣にただいま検討を続けておる次第でございます。
  463. 中山太郎

    ○中山太郎君 労働大臣にちょっとお尋ねをしたいんですが、問題は、中小零細企業、特に下請の企業でやはり失業が起こってくる。そういう問題の中で、やっぱり私は現実に大阪あたりでやって経験してみたんですが、小さい零細企業ほど退職金制度がないわけです。これは退職金制度をつくるというのは非常にむずかしい。私も実際自分の関係している会社で国分でつくってみた、むずかしい。そこで中小企業退職金事業団へ行けば簡単じや.ないか、こういうことになるわけです。ところが行ってみると、一年間掛けて労働者がやめた場合には、それはもう掛け捨てになるんですね。それから三年以内にやめた者は掛けた金よりももらう金の方が少なくなるわけです。しかも、そこでかわって次の職場を探していくと、零細ですね、どうせ。そこへ行ったときに、その中小企業退職金事業団に加盟していない零細業者ならば、それはもうまるっきり労働者というものは浮かばれない。この問題が、私は今日の大都市の零細業に働く人たちの大きな悩みだと、この問題はやはり政府がもう少し本腰入れて、この本当の零細ですね、五人とか十人働いている町工場の働く人たち、それからおやじさんの考え方、それを政府に頼ろうとすると、政府は全部そこで切っていっておるわけですよ、いま。この問題をどういうふうにこれから対処されますか。この産業構造の転換に基づいて、大会社は大きな労働組合がある、しかし、その下請の連中のこの人たちをどうして救ってやるかということは、自由民主党政府にとっては見逃しのできない労働政策の一つになるだろう。どうでしょう、労働大臣。
  464. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 中小企業退職金共済事業団、これはいま中山委員御指摘のような趣旨でこしらえたものであります。逐次加入者がふえてきておりまして、かなり普及はしていると思うんです。しかし、まだまだ十分ではございませんので、毎年十月にこれを普及せしめる月間といたしまして、各種の宣伝その他をやっております。  そこで、いま問題の一年間未満でやめた場合の掛け捨ての問題、三年未満の場合の減額の問題でありますが、この保険制度というのは、本来長く続けて勤めた人に手厚い待遇をするということを目標としたものでありますので、どうしても短期の人の場合はやはり給付その他についてある程度の差をつけざるを得ない。そのかわり、その分だけ長く勤めた人に対して手厚くなっているわけであります。  それから、これを法制化して強制力を持たせるべきだという議論もございます。ただ、この退職金という制度は、日本の労使関係に特筆的にある存在なんですね。欧米ではこういう制度ないんです。年金で補っているわけなんです。で、そういう性質のものである上に、これは付加的な給与でありますから、労使の間で話し合って決められるべきものであり、そして決められた、労使の間で事業団へ参加するということを決めて、しかしそれでも単独ではそういう退職金を支払えない、保障できないというもののために、手助けをするために国費の援助も加えてつくった制度であります。そういう性格から言って、これは法制化よりは、やはり普及宣伝に力を入れるという方が適当だろうと思って、現在のような方針をとっておりますが、いまお話しのように、規模の大きさによって退職金制度のある度合いというものは、だんだん規模が小さくなるほど退職金制度が存在しない率が多くなる、これはそのとおりでありますので、さらに一層普及に努力をいたしたいと思っております。
  465. 中山太郎

    ○中山太郎君 まあ、これは大都会の零細業者の本当の声だと思うんです。それで、この問題、たとえばお互い議員やっとって登録された秘書は社会保険もつけば退職金もつきます。しかし登録されない事務所の事務員というのは、優秀なのがなぜ来ないかと言えば、やっぱり社会保険と退職金制度がないからなんですね。みんなそこへ行っているわけです。そこへ行けない連中が落ちこぼれて零細へ行くわけです。零細へ行けばそういうことになると、つまり大きな一つの穴があいておると、労働政策の中に。労働政策のベテランの労働大臣、やっぱり現実に自分がやってみて、そこで入ってみて、行ったところがだめでしたと言われた人間がこれ言っているわけですからね、国民の声を代表して。一つその点もよく実態を調査していただいて、これを早急に改正していただきたい。私はそれを希望しておきます。
  466. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) いま御指摘のように、そういう例がかなりあることは私も承知しております。したがって、この普及徹底には非常に努力をしておるつもりなんでありますが、そしてまた効果も上がりてきているつもりですけれども、先ほどのほかの場合の議論と同じように、こういう制度のあること自体知らない業者が多いわけなんで、どうしても広く知らせることが大切。それからもう少し軽便に利用できるようにすることが大切と、こう思っております。
  467. 中山太郎

    ○中山太郎君 労働大臣、企業のいろんな都合でこういう産業の変換期のときに、次、行こうと、おまえ行ってくれと言えば、これは経営者は金うんと出さにゃいかぬわけです。おれの方から愛想尽かしてよそへ行くと、いい職場あったから。行ったところにそれが入ってなければ、いままでの分が全部パアになる、通算できないわけですから。そこに大きなネックが存在しておるということをひとつ特に御理解をいただきたい。こういうふうな、いわゆる産業構造の転換とか、経済の計画の実現のためにいろんな政策がやられます。その裏に必要なものはやっぱり日本の防衛です。安全保障と。その点について防衛庁長官二つの点についてお尋ねをしたい。  われわれは専守防衛でやついますけれども、この防衛をやるために、やはりこの世界の各国、特に周辺国は一体何を考えているかというと、それは夜間の昼間化だと思うんです、戦略的には。夜、昼のように戦えることに科学技術の粋を尽くしているわけですね。それについて日本の自衛隊の所有している夜間戦闘用の赤外線の望遠鏡と、この隣国の所有しているものとの比較、どうですか。
  468. 三原朝雄

    国務大臣(三原朝雄君) お答えいたします。  現在、自衛隊において夜間赤外線あたりを、暗視装置を装備いたしておりますのは、小銃、それから戦車、それから監視用の暗視装置を持っておりまするけれども、きわめて装備的には微々たるものでございます。なお、航空機関係では偵察機が赤外線カメラを装備いたしておるのでございます。そこで、米ソを初めといたしまして、諸外国におきましてもそうしたものを装備をする方向にあるわけでございまして、中でも米国のごときは対潜哨戒機でございまするとか、対潜機でございまするとか、あるいは攻撃用のヘリコプターあたりにも赤外線装置をいたしておるわけでございます。全般的に諸外国はそうした方向に流れておるわけでございまして、自衛隊におきましても、まだそういう点におきましては装備の端緒についたという程度でございまするが、将来に向かって諸外国の状態等を勘案をいたしまして、これが開発、研究あるいは装備の充実につきましても考えてまいりたいということで備えておるわけでございます。
  469. 中山太郎

    ○中山太郎君 これは長官おっしゃいませんでしたけれども、日本の自衛隊の持っている陸上部隊のいわゆる暗視装置というのは約六十丁しかないわけですね。陸上十八万、実質十五万八千人ぐらいおるでしょう。その中で六十丁ということは、これはなかなか――夜周辺国からの侵略があった場合に全く自衛官はもう本当にフクロウとスズメのような形でやられるんじゃないか。そういうことについて、もう少し自衛官の方が命がけでやっぱりこの国土を守る勇気を持ってもらわなければ国は守れぬわけですから、彼らが安心してやっぱり戦える兵器というものを防衛庁長官としては予算のときにどんどんひとつ請求してやってもらいたい。私は昨年自衛隊の基地を歩いてみてつくづくそういう声を耳にしたものですから、特にこの点を強調しておきたい。戦車部隊にしてもそうであります。放射器を持ったのが一両、それがやられたらもうあとはほかのやつ全部やられる、こういうことでありますから、侵略を防ぐためにこれはぜひひとつやってもらいたい。これが一点。  もう一点は、軍事偵察衛星と言うとまたいろいろやかましく物議を醸すので、偵察衛星を自衛隊が上げる計画はないのかあるのか、どうですか。
  470. 三原朝雄

    国務大臣(三原朝雄君) 現在のところ、自衛隊におきましては偵察衛星を上げる考えはございません。
  471. 中山太郎

    ○中山太郎君 防衛庁の方に、装備局長でもいいですが、世界でいわゆる偵察衛星が上がっているのはどれぐらいの数が上がっていますか。
  472. 江口裕通

    政府委員(江口裕通君) これは、アメリカの場合とソ連の場合と上げ方がいろいろ違っておるようでございます。ソ連の場合は、非常に短期間の間に衛星を打ち上げておりまして、それはすぐ強ちるということでございます。それからアメリカの場合は、ソ連に比べまして比較的長期であるということが言われております。数から申しますと、数百個のオーダーのものが従来打ち上げられておるわけでございますが、現在活動しておりすすのは、常時活動しております偵察衛星数は、大体一ないし三個という程度にわれわれとしては了知しております。
  473. 中山太郎

    ○中山太郎君 これは地上のいわゆる状況、どの程度に判別できるのですか。
  474. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 偵察衛星につきましては、最近非常に進歩してまいりまして、衛星が撮りました写真、それを現像して送るというようなことも可能になっております。それで、百五十キロの高度で撮りましたものが、地上数フィートの物まで判別できるというような情報を得ております。
  475. 中山太郎

    ○中山太郎君 これば昨年でしたか、ミグ25が低空で日本へ入ってきた。大問題を起こしたわけですが、やはり早期警戒機とかいろいろな問題がその後出た。早期警戒機一機当たり幾らかかりますか。
  476. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) ただいま早期警戒機としてございますのは、グラマンのE2Cというのがございますが、私どもがいままで検討している段階におきまして、仮にこの飛行機をいま輸入するといたしますと、八十億から九十億ぐらいの一機の値段になろうかと推定いたしております。
  477. 中山太郎

    ○中山太郎君 続いて質問しますが、日本のいわゆるわれわれ国民が安全に生活するために、早期警戒機を整備しようと思えば何機必要ですか。
  478. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 早期警戒機につきましては、四次防のとき以来検討いたしております。で、私どもが一応日本の周辺にこの早期警戒機を常時飛ばせるためには、六つのポイントが必要であろうかというふうに判断をいたしました。六つのポイントで常時飛ばせるといたしますと、必要な場合に二十四時間飛ばせますと、一つのポイントにつきまして五ないし六機という数が一応出てまいりました。しかしながら、四次防の段階におきましては、なかなか六ポイント全部をカバーするのもむずかしいであろう。したがって、日本海側三ポイントあるいは二ポイント程度を維持するためには、十数機の飛行機を持っておれば、とりあえず低空で侵入してくるものについてカバーできるのではないかというふうな計算をしたことがございます。
  479. 中山太郎

    ○中山太郎君 いまお話を聞いて簡単に暗算すると、やっぱり一千億の国民の税金が早期警戒機を整備して国民の安全を守るためには必要だというマクロができますね。  そこで、科学技術庁にお尋ねしたいのですが、日本の衛星がもう上がり出している。この衛星ですね、防衛用偵察衛星をもし日本で上げるとしたら、どれぐらいのコストがかかりますか。
  480. 園山重道

    政府委員(園山重道君) 御説明いたします。  偵察衛星につきましてどのぐらいかかるかということにつきましては、私ども資料を持っておりません。ただ、最近の計画といたしまして、この七月に気象衛星――静止衛星の気象衛星でございますが、これを打ち上げる計画がございます。これはアメリカに打ち上げを依頼いたしますけれども、これの衛星の開発費は、打ち上げ費を含めまして約百六十七億という数字を持っております。なお、これは地上施設は含んでおりません。
  481. 中山太郎

    ○中山太郎君 総理、国の防衛の最高責任者として、早期警戒機をもし整備して国民生活と安全を守ろうとすれば約一千億、いま話をお聞きのとおり防衛専用の偵察衛星を上げれば百七十億、これを考えると防衛費の面から見ても非常にコストダウンできるわけですね。こういうことについて防衛の最高指導者としていかがでしょうかね。
  482. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私、その問題はまだ考えたことはないんですが、貴重な御意見でありまするので検討することにいたします。
  483. 中山太郎

    ○中山太郎君 総理から今後検討するということですから、これは非常に日本科学技術の水準がもうここまで来たんですから、自主開発できるか、あるいはアメリカに委託して偵察衛星を上げる、それによって一億一千万国民の防衛に充てるということにひとつ努力をしてもらいたい。  もう時間が大分終わってきた。あと一、二点お尋ねして私は質疑の時間を終了したいと思いますが、私は内閣法制局長官にお尋ねしたいのは、閣議決定の持つ意義というのをひとつ聞かしてもらいたい。
  484. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 御質問の趣旨が必ずしも明らかじゃないんですけれども、閣議決定と申しますのは、結局、内閣総理大臣及びその他の国務大臣でもって組織される合議体である内閣が、その内閣の機関意思を決定する方式でございまして、どういう場合に閣議決定をやるかといいますと、これはいろいろ憲法なり法律で内閣の権限とされている、たとえば政令を制定するとか、最高裁判所の裁判官を任命するとか、天皇に対する助言と承認をするとか、そういう個別的な職権の行使を行う場合には、これはもちろん閣議決定を必要とするわけでございますが、しかし内閣が意思を決定する方式としての閣議決定は、そういう場合に実は限られているわけではございませんで、広く行政一般について内閣がいろいろな方策をたてる、たとえば行政改革をやろうというような方針を決めるという場合にも閣議決定で行われることがございます。
  485. 中山太郎

    ○中山太郎君 官房長官にお尋ねしたいんですが、閣議決定をやって、それがいわゆる実行されていないケースというのはやっぱりあるんでしょうか。
  486. 園田直

    国務大臣園田直君) 閣議決定をして実行できない分はございます。第一は、閣議決定したが法案が通過しないで廃案になったもの。あるいは第二番目は、その後意思変更したもの。そうじやなくて実行されてないものは行政改革に関する面が多うございます。私の直接関係する面から言うと、各省または内閣が持っておる審議委員、その委員の任命、それから公社、公団及び政府関係の各団体の人事等がなかなか守られておらぬばかりでなくて、惰性に流れて逆行する気配もございます。本内閣できて以来、総理の指揮によって厳正にこれを矯正しつつございます。
  487. 中山太郎

    ○中山太郎君 官房長官は党におられたときに、行財政改革委員会の委員長を務められて、日本の行政改革についての私は最近の一番の権威者だと、こう思っておるわけです。ただ、ここでひとつ問題にしたいことは、地方事務官の問題がわが党からやかましく話が出ている。これが、いわゆる地方事務官制度ができて三十年たちます。そして臨時行政調査会が昭和三十九年答申を出し、行政監理委員会が昭和四十一年、昭和四十三年十月閣議決定、それから関係閣僚の覚書を交換されたのが昭和四十三年十月。四十九年五月、衆参地方行政委員会で全会一致で附帯決議がついている。昭和五十年六月、参議院地方行政委員会で特別決議が行われているわけです。全国で二万三千人の地方事務官、この問題、これができないですね。政府が決定する、国会両院が超党派で満場一致可決した決議の問題が、これが実行できない。これはやっぱり各省のなわ張りの問題じゃないですか。どうですか。
  488. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) なわ張りの問題じゃないかと申しまするが、実は問題それ自身が大変むずかしいのでございます。したがいまして、いままであなたがいまおっしゃいましたように大変国会でも議論になり、また政府でもいままでずいぶん取り組んできておるようでございますが、結果的にはやはりいい結果を見ていないんでございます。しかし、非常にだれが考えても不都合な、ちょっと納得できないような制度でございますので、今後とも行管庁の私としては、やはり担当各大臣と折衝を続けましてひとつ努力したい、できるものからやってみたいと、こういうようにも考えておるわけでございまして、ひとつ御協力を賜りたいと思っております。
  489. 中山太郎

    ○中山太郎君 いま長官から御協力ということですが、国会は満場一致で協力をいたしております。ただ、できないのは労働組合の人々の問題、それから国家公務員になるのか地方公務員になるのか、その問題、これ二つあるわけですけれども、問題は、私は地方事務官自体の人たちにこのごろ悩みが出てきた。それは、公募されると、募集するときに、地方事務官と地方公務員になった場合に、片一方は副知事までいけるわけです。片一方は課長どまりです。同じ人生、同じ役所で机を並べて働いておったのが、片一方は副知事までいける、片一方は課長でとまる。この人たちの悩みを実際考えて、国家公務員にしてやるならしてやる、地方公務員にするならするというふうな措置をある程度、国会の満場一致の議決もあることですから、この点はひとつ労働組合の人たちともよく話し合っていただいて、早急に解決をしてや  ってもらいたい、これをひとつ最後に要望して、最終の質問に入らしていただきたいと思います。  いろいろお尋ねしたい点がたくさんありましたが、問題は経済政策の見通し、エネルギーの問題、あるいはまたいろいろと産業構造の改善の問題がありますけれども、防衛の問題は申し上げましたが、これらのことの一番基本にあるものは何だろうかというと、私はこれは総理がいつも言っておられる、われわれの民族の心が一体どうなるのかということじゃないかと私は思うんです。その点についてひとつ総理、お考えを述べていただきたいと思うんです。
  490. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、先ほどからお話を伺っておりまして、内外にわたる諸問題、きわめて重要な幾つかの点の御指摘があったと思いますが、民族の心と、こういうことが最後のお話です。これは私はかねがね言っているんです。また先ほど、玉置議員からギリシャが、あるいはローマが滅びた過程は一体どうだと、こういうふうにお話がありましたが、私はやっぱりこの歴史興亡というものを見ておりまして、心の荒廃、ここが問題になってきておるんだろうと、こういうふうに思うわけであります。今日、私はわが国のこの世情、風潮というものを考えるとき、どうも一人一人の人間がこのエゴというか、自分だけのことしか考えないというような風潮になってきておる。これは個人個人ばかりじゃないんですよ。ましてや地域エゴもある、集団エゴもある。全体のことを考えない。全体がしっかりしていなければ一人一人の人間もしっかりしない、こういうとらえ方が非常に希薄になってきておる。その辺を私は本当に心配しておるわけです。そういうようなことをとらえて、物で栄えて心で滅びる日本人なんて言われるんだろうと、こういうふうに思うんですが、私はそういう認識に立ちまして、エゴ、これへの挑戦、これはもう非常に私どもの政治の大きな柱である、こういうような認識で対処してまいりたい、かように考えております。
  491. 中山太郎

    ○中山太郎君 これは日本の心の中には、民族の長い伝統の家族制度というものがあったんですが、昨今福祉という問題がやかましく出て、公的福祉の面が出てきてからは、家族の相互扶助から公的扶助へ精神的に移動が起こっている。福祉の心、これは結構だと思うんです、福祉国家ですから。しかし家族制度の否定、親子の断絶、核家族。もう地方都市へ行くと、この間も公述人が言いましたが、老人の問題が一番問題だと。ここでひとつ厚生大臣、福祉の心というのは一体どんなものか、あなたの考えていることをひとつおっしゃってください。
  492. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 結論的に申し上げますと、いま中山先生が言ったようなことを内容にする心が福祉の心なんです。御承知のとおり福祉という言葉を考えてみればわかることであって、福祉というのは示すへんに一書いて口書いて田でしょう。示すというのはこれは天の恵みですから啓示、天の恵み。一、口、田というのはこれは福田の田だけれども、肥沃ですよ、肥沃は満つるですよ。恵みが満つるということはこれは幸せですよ。祉というのも示すへんにとまるでしょう。天の恵みがこうばらばらっと降ってきてとまるのはどこか、地球にとまる。したがってこれも幸なんですよ。ですから、幸の心というものがなくて、相手を幸福にしようというものがなければ、それは福祉じゃないんですよ、もともと。私はともかく年金とかあるいは老人福祉の問題等いろいろございます。福祉社会とか言いますが、物と金だけで福祉社会は絶対にできない。物だけでなくて、それには心というお互いの連帯の心、助け合いの心、いたわり合いの心、そういうものが一緒にならなければ、親子の断絶もできるし、医療無料化になったら医者が来なくなるし、そういうようなものをなくしようということで、福祉の心というものを福田内閣では取り上げた、こういうように御理解をいただきたいと存じます。
  493. 中山太郎

    ○中山太郎君 厚生大臣、福祉の心に関連して、私は三千万以上の労働者がいるわけです、勤労者。この人たちがやっぱり日曜日に休むと、一番困っているのは子供たちを病院へ連れていくことなんですよ、特に団地。この開業医は土曜日から休んで日曜日も休むわけです。病院も日曜日休むのですね。役所もこのごろ何か週休二日制なんていうことを言い出したがために、土、日休まれたらどうなるのですか。働く人たちがちょっと子供を連れて医者へ行こう。そこで休日診療所が出てくる。これまた金かけるわけです。予算はまたふくらまないかぬ。それじゃごきげんとりになる、それはこきげん――必要性から出ているわけです。こういうことで、私は国公立の病院は日曜日はオープンする。百貨店方式で月曜日は休むのだ。開業医は日曜日休んで月曜日から働く。時差出勤があるんですからね。日差で、公務員というのは公に奉仕するんですから、日曜日は病院で働くんだと、月曜日はそのかわり日曜日になると。こういう考え方でやれば投資は少なくなる、医者の数も要らないじゃありませんか。こういうふうな発想の転換というものは、やっぱりあなたが厚生大臣の時代ぐらいに打ち出さないと出す人ないな。どうですか。これが福祉の心じゃないですか。
  494. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それは非常に大切な考え方と存じます。ところが現実問題とすると、民間の病院の方は日曜日やってもらえるが、国立病院はなかなか組合がむずかしいということ、現実の姿があるんです、現実の姿が。したがって、われわれとしてば一遍にそこまではいかないけれども、やはり国立の病院も率先をして病院の輪番制等には加盟をしてもらう。救急医療については優先的に引き受けてもらうということで指導していくつもりであります。
  495. 中山太郎

    ○中山太郎君 文化庁長官おられますか、文化庁の人。ちょっとこっちへ出てきて。  いま福祉の心というのが出てきて、そして総理には日本の心ということをお尋ねしたんだが、日本のしっけとかいろんな家族制度とか伝統がありますね、民族の。そういうのはどう思っているんです。宗教を扱っているあなたのところでは一体どうなっていますか、宗教活動。
  496. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) 宗教の問題を含めまして広く文化行政につきましては、わが国の由緒ある伝統の上に立って、また世界に通ずる新しき文化を創造していくという立場の行政でございます。宗教につきまして特に法律上の定義はございませんが、宗教上の教義をとうとび、また信者に対する教化育成を図る、あるいはそのための儀式行事等を行うということの、信教の自由に立ちました国民の宗教的情操の高揚ということは大切にしていきたいというように考えておる次第でございます。
  497. 中山太郎

    ○中山太郎君 法務省は来ていますね。前に出て来てください。  最近、最高裁判所で尊属殺人の判決が出ているわけです。それで、これがいままでは「自己又ハ配偶者ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役」、または「四年以上ノ懲役二処ス」と書いてありますね。これには執行猶予つかないわけだ。与れでいまこの法務省――おたくと最高裁判所の判例との間にそごが起こっておる、これについてどうお考えですか、最高裁判所の判決。
  498. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) ただいま御指摘のように、昭和四十八年に最高裁判所で刑法二百条尊属殺人罪の規定は憲法違反だという判決がございました。その事態にかんがみましていろいろな状況を考え合わせまして、法務省当局としては尊属殺人罪の規定、あるいはこれに関連いたします尊属傷害致死等の罪につきまして特別規定を廃止する  一応の案をつくっております。しかしながら、問題は非常に複雑微妙な問題がございまして、日本の人々の道徳観というものがそれで満足されるかどうかという一つの観点がございます。一般の殺人と、それからいわゆる親殺しというようなものを同じ刑罰法規で処断をするということが、一体日本人の道徳観にマッチするかどうかという観点からいたします若干の御批判がございます。私どもといたしましては、それらの御批判も十分踏んまえまして、それでは一体どういう代案があり得るかということもよく考えまして、なお関係各方面とよく詰めまして最終的な結論を出したいと、かように考えておる次第でございます。
  499. 中山太郎

    ○中山太郎君 それは非常に総理、大事な問題です。日本の長い一つの民族考え方、教え、これをいまここで最高裁判所は違憲判決を下してきたわけです。法務省の人はああいう意見を出す。これは思想の転換ですね。日本はやっぱり孔子、孟子の教えをわれわれは受けてきた。親を大切に、師の影三尺下がって踏まず、この思想でわれわれ教育されてきた者と、今日のこの判断、日本の国の考え方民族考え方というものが一体どうなるのかと。それがあなたの言われる日本の心を取り戻すというのとどうなのか。あなた参議院の本会議でこうおっしゃいましたね。いまでも教育勅語の内容というのはちっともおかしくないというお話を本会議でされた。あの中には兄弟相和しです。親を大切にするというのが思想である。ところが日本でその思想に基づいて教育されたその中に、褒章制度といって、孝子節婦を表彰する制度総理府にあるわけです。賞勲局にも紅綬褒章、緑綬褒章あります。どうですか、総務長官。あなたからひとつその褒章が、私はたしか二十八年から一切発行されてないと、渡されてないと思いますが、どうですか。植木総務長官のときに私はお尋ねしたことがある。一回、それを聞きたい。
  500. 藤田正明

    国務大臣藤田正明君) おっしゃるとおり、ありません。
  501. 中山太郎

    ○中山太郎君 政府が藍綬褒章、紺綬褒章、黄綬褒章、紫綬褒章、あと緑綬と紅綬があるわけです。これが日本民族の心を表彰する規定なんですね。それが昭和二十八年から出ていない。いま、ここに最高裁判所は尊属殺しに対して違憲判決を下している。法務省は考え方が違う。総理は本会議場において国民に向かって、教育勅語の親を大切にする、兄弟仲よくする、こういう気持ちを忘れてはならないと、こう言っている。どうです、文部大臣。この点について、文部大臣として、教育の場を預かっておられるあなたはどうお考えですか。
  502. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 御指摘のように、学校教育の場においては、知育、体育、徳育、調和のとれた心身ともに健全な国民の育成をしなければならない、そういう見地に立ちまして、知育偏重に過ぎるのではないか、徳育を忘れておるのではないか、こういう角度からの御指摘もありまして、現在、昭和三十三年に学校教育法の施行規則が変わりまして以来、小学校、中学校の段階で、やっぱり社会的にはあるべき社会規範をきちんと守る、家庭人としてはおっしゃるように親を大切.にする、夫婦は仲よくする、子供はかわいがる、兄弟は仲よくするというようなこと、また個人としては物、物、金、金とよく言われますが、そういった欲望を抑える理性というものを高めて、一人の人間として完成されていく、そういったことを目標にやっておるわけでありまして、現在取り組んでおります学習指導要領の改定作業の中においても、この道徳の教育の精神、方向づけというものはきちんとして、学校のあらゆる機関を通じてこの人間の徳育を達成させていくために教育は重点を置いていかなければならない、こういう方針で取り組んでおります。
  503. 中山太郎

    ○中山太郎君 あなたは国の教育の最高責任者としてそういうお考えで教育行政を進めていかれる。現場のいわゆる先生方の労働組合と言われる日教組はどう考えていますか。文部大臣としてお答えいただきたい。
  504. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) これは学校教育法の施行規則に基づいて学習指導要領をつくり、そして教育課程編成の段階に教科とともに道徳、特別活動と三つで教育課程を編成するようにお願いをしておるわけでありまして、私はそれは現場においても守られておると、こう考えております。
  505. 中山太郎

    ○中山太郎君 守っている先生が全部であれば私は結構だと思います。しかし、中には親がおまえたちを勝手に生んだんだ、おまえたちは親に責任がないということを言っている先生も現実にいるという話です。国だって、国旗だってどうでもいいじゃないか、君が代だってどうでもいいじゃないかという学生が、答辞で九州で言っているわけですからね。こういうふうな教育の中での徳育面の乱れ、こういう問題が、総理の、いや総理もそうですが、内閣全体が掲げている日本の心を取り戻そうと、これからの苦難の時代に向かってみんながひとつもう一回見直そうじゃないかというその思想と、この最高裁の判決、法務省の意見、学校教育の現場の姿あるいはまた――これはちょっと一回、時間が二分ありますから警察庁、ちょっと出てください。どうですか、ポルノ雑誌の自動販売機の状況、どうですか。ちょっと一回御説明してください。
  506. 吉田六郎

    政府委員吉田六郎君) 都道府県におけるポルノ雑誌の販売規制は、青少年保護育成条例によって行われております。この条例は警察が所管しておるものではございませんけれども、現在三十六の都道府県で制定されておりまして、販売規制は、青少年に対して性的感情を著しく刺激する、そして、その福祉を阻害するおそれのあるものを有害図書として指定しているわけでございまして、その指定がなされたものは販売してはならない。昨年中この指定件数は九千四百四十七件となっております。  また最近、自動販売機によるポルノ雑誌の販売を規制しようとする動きが見られまして、本年に入って四県が規制したほか、その他の府県においても現在検討しておるところが相当あるように聞いております。  なお、一件検挙いたしますと、販売されているその部数でございますが、一件にっき二万部以上というような状況でございます。
  507. 中山太郎

    ○中山太郎君 内閣法制局長官にお尋ねします。  このポルノ雑誌の表現の自由、憲法に言われるこれと、出版との解釈ですね。これを規制した場合に、これは憲法違反になるのかどうか。専門家としてお考えどうですか。
  508. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) いわゆるポルノ雑誌というものを私自身としては見たことございませんのでよくはっきりわからないんですが、結局あれなんでしょうね。わいせつ物、つまり刑法百七十五条のわいせつ物には当たらないが、それに近いような内容のものというものだろうと思うんですが、それを自動販売機で販売することを規制するということになると、まあ憲法上関係する条文としては二十一条の表現の自由、あるいは二十二条の営業の自由の侵害になるかならぬかということだろうと思うんですが、しかし、表現の自由といい、あるいは営業の自由といい、これはもう最高裁判所の判例が常に言っているごとく、絶対無制限なものじゃなくて、公共の福祉のためにはある程度の制限はあっても構わないんだと、こう言っているわけなんです。  それで、いまお聞きしまして、これ、憲法上問題がないかという御質問に対しましてのお答えとしては、まずポルノ雑誌というものの定義がわからないんですね。一体だれがどういう内容のものをもってポルノの範疇に入れるか、また、そのポルノ雑誌だと決めつける、だれがどういう手続でやるかというような、そういう手続面もよく考えないと軽々には言えないと思うんですが、ただ規制することそれ自身が、それによって得られる公共の福祉、つまり青少年が非行に走る、非行化することを防ぐというような面は確かにあるんだろうと思うんです。ですから、そういう面も考えまして、合理的な範囲で説明できるというようなことであれば、必ずしも憲法違反ではないというふうに思います。
  509. 中山太郎

    ○中山太郎君 時間がありませんから終わりますが、文部大臣、道徳と法律はどちらが先行すべきだとお考えですか。あなた個人の立場で、道徳と法律。
  510. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 申し上げるまでもなく一国の社会秩序を形成し維持するものは法律であり、これは罰則を伴う強制力を持った最低限度の基準でありますけれども、道徳は、やっぱり罰則とかそういったものは伴いませんし、強制力もありませんけど、人間として法律以前に守らなければならない一つの規範であって、道徳的責任と申しますか、やはり道徳の方が先行するのではなかろうかと、私はこう考えます。
  511. 中山太郎

    ○中山太郎君 まことに結構な答弁だと思います。いま学校で徳育ができない。そのカバーしているものは一体何か。それは、若人が一番集まっているのはどこでしょう。生長の家の集会、実践倫理の朝起き会、あるいはモラロジーの集会、あるいはPL教団の集合、いろんな信仰団体、宗教団体。(「霊友会」と呼ぶ者あり)霊友会。若手がもう実に驚くほど、若い人たちが不思議にここに集まってきているのは、心の豊かさを求めて集まってきている。社会党の大会もたくさん集まるでしょう。公明党も集まるし、共産党も集まるでしょうけれども、あれだけの人たちが何の命令もされずに集まってくるという。何が欠けているのか、何がそこに行けば満足をするのか、若人が。私はここに日本の心の欠けているものがあると思うんです。  総理、最後に、ひとつ国の指導者として、やはり共産党の人も、社会党の人も、われわれも、やはり年をとっていく、子供に大切にされたい、こういうふうな考え方というものがうまくいけば、みんながやはり老後も幸せになれる。やっぱり西欧化され過ぎているんじゃないか。やはりわれわれは、日本の長い伝統の心というものを、いいところをやはりこれからの政治の上でひとつ国の指導者として生かしていただきたい。これについて御意見を承って私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  512. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 中山委員の最後の点は、私は全面的に賛成であります。まあ何とかして日本人らしい日本人をつくり上げていかなけりゃならぬ、日本人の古来持っておる心を取り戻す、そしてよりよいものにしていく。それからまた、多数の人間の間では、人間人間との間、これは人間らしい接触にしなけりゃならぬ、それを心がけてまいりたいと、そのように考えます。
  513. 中山太郎

    ○中山太郎君 どうもありがとうございました。これで質問を終わります。(拍手)
  514. 小川半次

    委員長小川半次君) 以上をもちまして中山太郎君の質疑は終わりました。  明日は午前十時から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十六分散会