○対馬孝且君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、議題となりました
日ソ漁業暫定協定について、
総理大臣並びに
関係大臣に対し若干の
質問をいたします。
今回の
日ソ漁業交渉は、九十日にわたる大
交渉であり、日夜御苦労された
鈴木農林大臣の御
努力は多とするものであります。しかしながら、今回の
交渉を通じ
国民が思い知らされたものは、対ソ
外交が後手後手に回り、しかも
内容は後退の一途をたどり、先方の術策に翻弄させられた
日本の
外交力の驚くべき弱さであります。
まず、この
協定の
内容は、
北洋における
漁獲量の大幅削減によって、かつてない多くの漁民に大きな犠牲を強いる先行きの暗いものであります。したがって、この
交渉は決して成功したとは言えないと思うのであります。
政府は、
わが国だけの一方的な解釈による御都合主義的な判断やたてまえ論に終始するのではなく、対ソ
交渉に臨むに当たっての判断の甘さや二百海里
時代への対応の立ちおくれ、
平和条約の
締結の怠慢などを率直に認め、今日の新しい二百海里
時代の中で進むべき道の厳しさを
国民の前に率直に述べる必要があるのではなかろうか。その上に立って、この
協定を正しく結論づけるべきであろうと思うのでありますが、
総理の御
所見をお伺いいたします。
次に、この暫定
協定では、
漁業と
領土の切り離しが完全に貫かれたのか、また、未
解決となっている
北方領土問題について果たして明確な歯どめができたのか、それが
国民の最も懸念をしている点なのであります。
協定の第一条には、当初
日本政府が望まなかった
ソ連邦の最高幹部会令及び
ソ連政府の
決定に従って定められる
海域という文言が入っております。このような条文が挿入されたことによって、
北方四島の
ソ連による領有を
日本は認めたのだと
ソ連側に解釈される懸念は全くないのかどうか、伺いたいのであります。
確かに第八条には、
相互関係の諸問題についていずれの
政府の
立場または
見解を害するものとみなしてはならないとの、意味の不明瞭な条文がありますが、この
規定のみをもって
北方四島に対する
日本の領有権の
主張を貫き通したと言明できるのかどうか、
国民の前に明らかにされたいのであります。
また、そうであったら、何ゆえに北海道の
沿岸漁業者が熱望した四島
周辺の特殊
水域化が実現できなかったのか。本件については、六月四日の
衆議院外務委員会において、わが党の土井氏の
質問に対する
鈴木農林大臣の
答弁は、
ソ連の出方によっては高度の政治判断によって四島
周辺を二百海里法の適用除外
水域にすることがあり得る、というものであるが、これでは相打ちとはならないのではないか。何のために
わが国が二百海里
暫定措置法を制定をしたのか、改めて問い直さなければなりません。この点もあわせて
答弁を願いたいのであります。
次に、
協定第二条は、
ソ連の
漁船による
わが国領海十二海里内の
操業の禁止についても全く触れておりません。のみならず、第二条には、
ソ連漁船のために
日本の
地先沖合いにおける
伝統的操業を継続する
権利を
維持するとの文言さえあります。この
規定は、
ソ連が
わが国の
領海内での
操業の継続を
主張する根拠となるおそれがあると思うが、これに対する御
見解を伺います。
次に、第八条の、この
協定はいかなる
規定も
相互の
関係における諸問題についていずれの
政府の
立場を害するものとみなしてはならない――
政府は、この
規定によって
北方四島に対する
わが国の
立場は何ら害されていないとの言明をしているが、それでは
ソ連が
交渉の過程において「その他の」の四字の削除を執拗に固執した理由がどこにあるのか、疑問を持たざるを得ません。
また、「諸問題」の中に
領土は含まれることを先方は十分に了解をしているのですか。了解しているとすれば、それはいかなる
会議録に残されているか。しかも、六日付の朝日新聞によれば、ブレジネフ
ソ連書記長は
日本の報道
関係者に対し、「未
解決の
領土問題があるとする
主張は、一方的解釈で、不正確である」との
見解を明らかにしたとのことであります。この点に関する疑念を明確に晴らしていただきたい。
さらに、
北方領土に関して
政府部内の不統一の
動きがうかがわれるのです。六月三日の
衆議院、これも
外務委員会において、わが党の土井氏の
質問で、福田内閣の有力閣僚が、
北方四島のうち歯舞、色丹両島は
返還を
要求するが、国後、択捉両島は
日ソ共同の
管理とするとの構想を持って
訪ソするやに聞いているとの発言がありましたが、もしそのとおりであるならば、これはこれからの
外交にとって重大な問題であります。
政府部内の不統一は、
国民を惑わすものであります。
総理の責任あるお答えを願います。
今回何とか
領土問題を絡ませなかったとしましても、私は、これからの長期
協定の
交渉には、
ソ連は
領土問題を絡めて臨んでくると予想しなければならないと信じます。むしろこの際、堂々と受けて立つべきではなかろうかと思いますが、いかがなものでございましょうか。
ソ連との
国交回復二十年を迎えたものの、
漁業もだめ、墓参もだめ、
領土の問題の
解決の糸口すら見出すことができないというありさまでは、これからの
日ソ関係について
国民は強い不安を一層深めるものではないでしょうか。この際、
日ソ友好関係を
維持する上にも、
領土問題の
解決を含む
日ソ平和条約締結を速やかに促進すべきであると存じますが、
総理の御
所見をお伺いをいたします。
次に、今回の暫定
協定実施に伴って、
昭和三十八年以来民間
協定に基づいて行われてきた貝殻島のコンブ漁、また、国後島の西岸三海里までの北海道羅臼漁民の
操業が
日ソ交渉では全く無視され、これら
関係漁民はあすからの生活の場を失ったのであります。
政府はこれらの漁民の生活をどのように
考えているか。私は、
政府交渉の復活を図るとともに、伝統を誇ってきた民間
協定交渉のルールを今後のソ日
交渉の中に取り入れるよう
努力すべきであると
考えるが、
政府はどのように対処されるか、それをお伺いをします。
次に、
漁業補償についてお伺いをします。
今回の
日ソ交渉が難航に難航を重ねながらも
締結にまでこぎつけることができたのは、
北洋漁民の方々が出漁したい気持ちをひたすら抑え、耐え抜いて、国論を割らなかったことが大きく貢献しているのであります。このような姿勢に対して、
国民の間からは同情が寄せられているのであります。しかし、漁民の方々が待ちに待ったあげく得たものは、余りにも厳しい結果でありました。これらの
関係漁船約一千隻も
減船させられたことによる
関係漁民への打撃はきわめて深刻であります。
政府は、
減船及び
休漁に対する補償措置、乗組員、加工業者などの
対策を含めて、その救済について、完全補償をするとともに、かつて炭鉱閉山のあらしが吹きまくったときの炭鉱離職者臨時措置法のように、総合的
対策の確立のための特別立法措置を講ずべきであります。また、二百海里
時代に対応し、海上
監視体制強化のためにどのような諸
対策を
考えられておるか、
関係大臣の御
所見をお伺いをします。
次に、今日の
日ソ交渉により大幅の
減船によって大量の余剰
漁船の利用の問題であります。これらの
漁船を、
水産資源や漁況の調査や研究、
監視船、汚染
漁場の掃海、
漁場の
開発等に
活用すべきだと思うのであります。これによって
漁船員の雇用
対策にもなります。農林
大臣の御
所見をお伺いをします。
次に、魚転がし
対策についてお伺いをします。
漁業問題で苦しんでいるのは漁民だけではありません。
国民の台所もまた最近の著しい魚価の高騰によって脅かされているのであります。すなわち、魚転がし、魚飛ばし、のこぎり商法などのからくりによる価格操作は、卸売市場法違反の疑いを持たれたまま、まかり通っております。これによって大手
水産会社が莫大な
利益を上げていることは、某社の最近の決算が前年の三倍に近い
利益となっていることからも明らかであります。このような
事態に対して、いまこそ買い占め売り惜しみ防止法を発動すべきではありませんか。
鈴木農林大臣の所信をお伺いをいたします。
次に、二百海里
時代の海の囲い込みの突入が既成事実となった今日、一時的興奮に駆られることなく、
わが国の
漁業が新
時代にいかに適応すべきかを早急に
考える必要があります。この
対策を間違えば、
わが国の食糧基幹産業としての
水産業に与える影響はきわめて大であり、このことが
国民生活を圧迫する要因になりかねないと思います。そこで、従来の自民党
政府の大
漁業資本本位、つまり、みずからとらずんば人にとらすなとの乱獲優先の誤った
漁業政策から転換をし、現行の
漁業関係法を総ざらいをして新たに
漁業基本法を制定し、
漁業資本の構造を整理統合して、公社化の方向に進むべきと
考えますが、農林
大臣の御
所見をお伺いをいたします。
最後に、私は
総理大臣に強く要望したい。
過ぐる日、
総理は札幌市の政経パーティーに臨まれましたが、その折に魚市場に五分ほど立ち寄られたのが、たった一つの庶民との接触でありました。
総理は、
領土問題、
漁業交渉の成り行きをかたずをのんで見守っている道民と、なぜひざを交えて語り合おうとはされなかったのか。もちろん私は、この問題について、いたずらに
政府だけを指弾しようとは思いません。わが社会党もこの
国民的
課題についてあらゆる
努力を傾けます。来るべき長期
協定の
交渉に備えて、
総理御自身北海道に来られ、根室納沙布岬に立ち、現地漁民の血の叫びをしっかりとその胸に受けとめた上で、みずから敢然と
訪ソされるべきであります。
総理にその
決意がおありでしょうか。このことを確かめて、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣福田赳夫君
登壇、
拍手〕