○園田清充君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
昭和五十二
年度一般会計予算外二件に対し、
賛成の
討論を行うものであります。
石油
危機以降の
資源有限時代の
到来は、
世界の平均
成長率の約二倍の率で
成長してまいりました
わが国経済の
高度成長の条件を根底から覆し、いまや
わが国の
経済、社会、産業、文化等のあらゆる環境が厳しい転換期に直面をいたしております。その一つのあらわれが今日の長期にわたる
景気不振であり、二百海里
経済水域をめぐる
海洋問題であり、また、国際環境は、これまでの自由貿易を一部では制約するような動きさえ出てまいりました。いまこそわれわれは、この厳しい事態の変化を冷静に見詰め、旧来の発想に基づく政治、政策、制度、機構から脱却して、新しい時代に適応した理念で、勇気を持って政策運営を図らなければなりません。
わが国経済は、先進国の中にあっては順調に立ち直りを見せているものの、
景気回復のテンポは昨
年度以降中だるみを脱し切れず、完全
失業者数は百万人を超え、稼働率も予測を下回り、
倒産件数は
増加し、
消費者物価も
目標値を上回る事態となっております。
今日の
わが国の
課題は、このような石油
危機後遺症として残された問題を速やかに解決して、
経済に活力を与え、
わが国経済を長期安定
成長路線に定着させることが急務であります。
五十二
年度予算は、このような
経済情勢を踏まえ、
わが国経済の
インフレなき発展と
財政の
健全化に対処すべく編成されたもので、以下数点につき、その
賛成の
理由と若干の意見を申し述べたいと存じます。
第一は、現下の最優先政治
課題である
景気の浮揚から安定
成長への着実な誘導と雇用不安の解消を図ろうとしていることであります。
さきに触れましたように、
わが国経済は、昨年夏以降は、
輸出の鈍化、国鉄、電電公社の工事発注の削減、あるいは冷災害などの
影響によりまして、個人消費や民間の
設備投資がふるわず、
景気は中だるみ
状態で推移しております。このため、わが党
政府は、昨年十一月、七項目の応急
景気対策を実施するとともに、本年二月には、
公共事業の拡大を中心とする補正
予算の編成、さらにこの三月には、五十二
年度公共事業の上半期七〇%の契約確保を中心とする
景気対策を
決定しております。このような
景気対策は、今日の緩慢化した
景気にそれなりの効果が期待できるのでありますが、これらはあくまで新
年度予算成立までの補整的な
措置にすぎず、本格的なてこ入れは、本
予算の早期執行以外にはありません。
景気対策は、
財政と金融が両々相まってその効果を発揮するものでありますが、特に、
国民総生産の二割強を占める
財政の
役割りは大きいものがあります。
五十二
年度の一般会計の
予算規模は二十八兆五千百四十三億円で、特に
景気対策の主役となる
公共事業費は、前
年度より二一・四%増の四兆二千八百億円計上されておりますほか、
財政投融資においても、住宅、下水道、道路、鉄道等の建設整備の資金を大幅に伸ばしていることは需要喚起の効果が期待でき、また、
国民生活充実の基盤となる社会資本の整備が図られるものとして評価すべきであります。
この
公共事業重視の
景気回復予算に対し、
減税を優先すべしとする意見がありますが、私は、雇用改善にも役立ち、資材等の需要創出効果が期待できる
公共事業投資の方が、現下の
景気対策として即効性があると思います。
なお、この際、
政府及び金融当局に要望いたしたいのは、今回の
予算の執行で、停滞している
景気の浮揚が期待できると思いますが、効果不十分のときは、新たな有効需要創出のための
財政の補正、公定歩合の引き下げ等の金融
対策を考慮されるとともに、地方自治体に対する補助金交付や地方債の許可等についても、地方自治体の事業促進が図られるよう
措置願いたいと存じます。
第二は、厳しい
財政事情のもとで
税負担の軽減が図られております。
五十二
年度の国債発行額は歳入の三割、八兆四千八百億円、国債の元利払いの国債費は二兆三千四百八十六億円であります。大蔵省の中期
財政試算(ケースB)では、五十五
年度末の国債残高は五十五兆円、国債償還費は四兆七千九百億円の巨額になると報ぜられております。今日の
わが国の対
国民所得租
税負担率は、主要諸外国の三分の二、社会保険負担率は三分の一と、きわめて低く、一方、標準世帯における所帯の課税最低限は
世界で最も高い方であります。
このような
わが国の
財政事情や租
税負担の現況にあっても、わが党は、
物価調整減税は行うべきであるという
世論にこたえて、中小所得者の負担軽減を行うこととし、所得税三千五百億円、住民税八百億円、計四千三百億円の
減税を予定をいたしておりました。この
減税問題をめぐって与野党の話し合いが行われましたが、わが党は
予算の早期成立が
景気浮揚になるという柔軟な
態度を示し、結局、三千億円の戻し税方式の追加
減税が行われることになりました。私は、追加
減税の効果を否定するものではありませんが、その財源
対策が
政府任せに終わり、いまだ
措置が決まっていないことは納得のいかぬところであります。
第三は、社会保障と
国民生活を守る
施策の充実が図られているという点であります。
一般会計における社会保障費は、対前
年度一八%アップの約五兆七千億円が計上され、さらに恩給
関係費を加えますと総額六兆八千五百四十億円となり、
予算規模の実に二四%を占め、
福祉見直しの中で飛躍的に充実されております。
これにより、年老いた方々や恵まれない人々のために、恩給、遺族年金、各種の年金等や
生活保護費を
経済、社会事情の変化に応じて引き上げ、改善されておりますほか、
国民の生命と健康を守るために、特に新
年度は緊急を要する救急医療体制の画期的整備と脳卒中半減計画を推進しようとしており、民生安定と
国民福祉に並み並みならぬ配慮がうかがえます。
与野党の
合意により、追加
減税と関連して、社会保障給付金の改善時期を二カ月繰り上げることになりましたが、野党の提示した当初案には、対象人員の多い恩給、年金の繰り上げ要求はなく、わが党の
主張、主導により、これが日の目を見ることになりましたことを、この際明らかにいたしておきたいと存じます。
最近、改めて
福祉見直しが論議されるようになりました。
福祉の充実は
国民共通の願いであり、その量的拡大に
反対すべき
理由はないのでありますが、従来ややともすると、思いつき、人気取りのため飛びついた傾向なしとしません。国、地方の
財政が苦しくなったから見直すのではなく、
国民のための
福祉はどうあるべきかという観点から、これまでの社会保障
施策における給付、負担、支給条件など、制度的な不合理について見直し、公正な
福祉の充実を図る必要があります。
福祉にとって一番大切なものは、お互いが助け合うという心であると思います。今日、
わが国は、金銭万能、エゴ、無関心、断絶の社会と言われ、
日本人の心、美徳が損なわれております。二十年後には、人口の九割が都市に集中し、五人に一人は老人という壮年社会が
到来すると言われております。これからは、同じ地域に住む者同士がお互いに協力し、いたわりの心で接しないと、幾ら
福祉が進んでも、心の通わぬ空虚なものでは、活力ある
福祉は生まれてまいりません。為政者は、単に行政面におけるサービスだけでなく、地域の
連帯意識、相互扶助の精神にのっとった真の
福祉の姿を真剣に模索すべきときではないかと思います。
第四は、行
財政の
改革に取り組む
総理の
決意がうかがえることであります。
社会、
経済の著しい発展と変化に応じて、行政需要も複雑、多様化し、巨大化してまいりますので、行政
改革は絶えず時代の変遷、
国民の要望に対処して、簡素化、合理化し、
国民負担の軽減を図ることが肝要であります。
新
年度は、一般行政経費を極力節減しておりますほか、
昭和四十三年の佐藤元
総理の一省庁一局削減以来、初めて各省庁の部局及び特殊法人の新設を一切行わないとする英断を、私は高く評価するものでございます。
さらに、
総理はこの姿勢を飛躍させ、この八月をめどに行政の抜本
改革に取り組む旨発表いたしております。
役所にとって最大の関心は、
予算と定員であります。一たんつかんだ仕事を離さないのが役所の常と言われますように、この
改革は、役所はもとより、与野党の
政治家も、また強い抵抗が
予想されますが、行
財政の硬直化による当然増経費は、多様化した
国民の願望にこたえられません。この際、不急不要の定員、機構、補助金、特殊法人の整理統合、合理化には、ひとつ蛮勇をふるってこの難題の
改革に当たっていただきたいと思います。
第五は、
地方財政に対する国の手厚い配慮がなされていることであります。
国と同様に、
地方財政も、
経済の
不況で税収が伸び悩み、地方債への依存が高まるという厳しい
財政事情にあります。すなわち、
地方財政は三年連続二兆円を超える財源
不況を生じております。
五十二
年度の
地方財政対策は、二兆七百億円に上る不足財源を、国、地方が折半して負担することとし、一兆三百五十億円は地方交付税の増額により、残りは建設地方債の増発により
措置することになりました。
地方交付税の増額分の財源は、臨時地方特例交付金九百五十億円と、資金運用部借り入れ九千四百億円と相なっております。この借り入れについては、後
年度、その償還額が多額に上ることを考慮して、四千二百二十五億円は、五十五
年度から八年間に臨時地方特例交付金として交付税特別会計に繰り入れることといたしたほか、交付税率の三・六%に相当する五千百七十五億円は、今
年度の国の負担としております。そのほか、建設地方債についても、
政府資金の引き受け、利子補給等資金
対策を講じて、その円滑な消化と金利負担の軽減が配慮されております。
このような特例
措置は従来例がなく、
景気対策の着実な
回復のため、地域住民の
生活の基盤となる
公共事業の推進及び
社会福祉施策の充実を図ろうとするものでありまして、その実効が期待されます。
なお、地方自治体においては、硬直化した
地方財政の体質改善に配意するとともに、定員管理や給与水準の適正化のため、一段と努力されることを望むものであります。
以上、新
年度予算は、今日の
経済、
財政、社会情勢に適合した
予算であり、その適時適切な執行と、金融政策の弾力的運営を行えば、
景気の浮揚と雇用の安定に資することはもとより、
わが国経済の安定
成長路線への定着と
国民生活の充実は確信できると思います。
討論を終えるに際し、一言申し添えたいと存じます。
国民期待の
予算審議が本院で開始される時期を同じくして、あらかじめ設定されていた
日米首脳会談出席のため、
冒頭の総括
質疑に
総理不在という事態に際会いたしましたことは御承知のとおりであります。流動する国際政局の中で、新たに誕生した
両国首脳が胸襟を開いて懸案事項を解決することは、国家的に意義深いことはもちろんでありますが、同時に、憲法に基づく本院の
予算審議権を確保することも、二院制下の
参議院としての使命であり、責務であります。
野党の各位におかれては、このような複合する難題に理解を示され、異例とも言える、訪米直前、帰国直後の
審議、あるいは不在中の空白を充足するため初の
地方公聴会を開催するという形で御協力をいただきましたほか、
日ソ漁業交渉のため主要閣僚を欠くという事態の中で、
国民の納得のいく
予算審議が何らの波乱もなくスムーズに運営できましたことは、野党の皆さんが公党としての自覚と使命に徹した理解と協力の
態度には、
予算案に対する賛否は別として、高く評価し、敬意を表するものでございます。(
拍手)願わくは、
予算委員会における今回の
協調的な運営が、今後の
予算委員会の運営のよき先例として定着するとともに、本院全体の議会運営のあるべきパターンとして確立されることを期待いたしまして、
予算三案に対する私の
賛成の
討論を終わります。(
拍手)
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