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1977-04-27 第80回国会 参議院 農林水産委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月二十七日(水曜日)    午後一時四十三分開会     —————————————    委員異動  四月二十七日     辞任         補欠選任      岩上 妙子君     小林 国司君      佐多 宗二君     佐藤 信二君      坂元 親男君     亀井 久興君      福井  勇君     梶木 又三君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         橘  直治君     理 事                 青井 政美君                 鈴木 省吾君                 粕谷 照美君                 鶴園 哲夫君     委 員                 亀井 久興君                 小林 国司君                 佐藤 信二君                 菅野 儀作君                 初村滝一郎君                 福井  勇君                 川村 清一君                 対馬 孝且君                 相沢 武彦君                 小笠原貞子君                 塚田 大願君                 和田 春生君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        農 林 大 臣  鈴木 善幸君    政府委員        防衛庁長官官房        防衛審議官    渡邊 伊助君        水産庁長官    岡安  誠君    事務局側        常任委員会専門        員        竹中  譲君    説明員        外務大臣官房外        務参事官     井口 武夫君        外務省経済局外        務参事官     溝口 道郎君        海上保安庁総務        部長       鈴木  登君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○領海法案内閣送付予備審査) ○漁業水域に関する暫定措置法案内閣送付、予  備審査)     —————————————
  2. 橘直治

    委員長橘直治君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  領海法案及び漁業水域に関する暫定措置法案、以上両案を一括して議題といたします。  両案の趣旨説明はすでに先般聴取いたしておりますので、直ちに質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 川村清一

    川村清一君 冒頭、鈴木農林大臣日ソ漁業交渉をまとめるために大変御苦労されておりますことにつきまして、心から敬意を表するものでございます。  私も、過般、超党派の訪ソ漁業交渉国会議員団の一人として訪ソいたしまして、向こうの要路の方、イシコフ漁業大臣シチコフ連邦議会議長、あるいはポドゴルヌイ最高会議幹部会議長等にお会いいたしまして、率直に日本人の声を、また私北海道選出でございますから、道民の切実な声を忌憚なく訴えてきたわけでございますが、実感としては非常に厳しいものがあることを受けとめてまいりました。したがいまして、鈴木農林大臣が今後第三次の交渉に行かれるわけでございますが、どうかひとつ十分御健闘されますよう、ぜひ国民や皆さん方の要望が通る形の中において漁業交渉がまとまることを心から願ってやまない次第でございます。  さて、質問の第一陣として、領海法漁業水域に関する暫定措置法案につきまして一括して御質問いたしますが、まず北海道の問題を中心としてお聞きしますが、第一番目に、この二百海里というものが決まった場合において、沿岸漁業協同組合が管理しております共同漁業権漁業とはどういうような関係になるか、これをまずお尋ねいたします。
  4. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 二百海里法、漁業水域法制定公布になりました場合には、外国人につきましては農林大臣許可がなければ二百海里内に入漁いたしまして操業ができないということになるわけでございます。その場合には、当然量の制限のほかに、操業につきましては秩序ある操業をさせなければならないというふうに考えておりまして、いま御指摘共同漁業権等につきましては、漁業権者漁業支障のあるような形では絶対に操業はさせないつもりでございます。いわば、そういうような条件をつけまして許可証を発給をするということになろうかと思っております。
  5. 川村清一

    川村清一君 この問題につきまして重ねて長官にお尋ねしますが、これは漁業協同組合によって違いますが、また地域的にも違うと思うんでありますが、北海道におきましては共同漁業権沖出しが二万五千メーターから三万メーターぐらいあるところがあるわけでございます。領海十二海里をはるかに超した共同漁業権が設定されておるわけでありますが、これとの関係はどういうふうなことになりましょうか。
  6. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) いま漁業水域との関係を申し上げたわけでございますけれども、まず十二海里になりました領海内では、これは絶対に外国人漁業規制に関する法律によりまして、これは外国人操業を認めないわけでございます。十二海里以遠二百海里までの百八十八海里につきましては、先ほど申し上げましたように外国人操業を絶対認めないというわけにはまいりません。これはやはりわが国当該相手国沿岸操業しているかどうかの状態のほかに、わが国資源状態等勘案をいたしまして、秩序ある形でもって入漁を認めるつもりでございますけれども、これは農林大臣許可によって入漁を認めるわけでございますので、許可条件におきまして、先ほど申し上げましたように、共同漁業権等があるような場所につきましては、これは漁業権者漁業支障があるような形では操業を認めるつもりはございませんので、そういうようなことは制限を付した形での許可を与えるということになろうかと思っております。
  7. 川村清一

    川村清一君 重ねてお尋ねしますが、農林大臣が決めておる、御承知のように沖合い底びき漁船操業禁止区域がございますね。あるいはオッタートロール操業禁止ラインがございますね。これと、いわゆる領海外の百八十八海里の外国船との操業はどういう関係になりますか。
  8. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 長官からも御答弁を申し上げましたように、十二海里の外でありましても、わが国資源保護上、また操業秩序を確保する、そういう意味合いでオッタートロールあるいは沖合い底びき網漁業等禁止区域というものを設定しておりますから、この禁止区域では外国漁船は絶対に操業させない、こういう方針でございます。
  9. 川村清一

    川村清一君 いま大臣がおっしゃったように、この沖合い底びき禁止区域という問題も、オッタートロール禁止区域を決めておるという問題も、要すれば資源維持のためにやっておる、国内法によってそれを規定して資源維持のために努力しておるわけでございますね。そこへ外国漁船が入ってきて、日本漁船操業できないところに外国漁船が来て操業するなんということは絶対認められないという大臣の御答弁、これをお聞きしたくって私は質問したのですが、確認してよろしゅうございますね。
  10. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) そういう方針を堅持してまいります。
  11. 川村清一

    川村清一君 どうも法律を読みますというと、政令にゆだねられた点がずいぶんあるので、そこでいろいろ疑問がわいてくるわけでありますが、いま日ソ漁業交渉が非常に今日的な状態になっておりますので大急ぎでこれをやっておるんでございますが、その外国漁船というものの中にはソ連だけでなく韓国漁船も入っているのか、入っていないのか、これを明らかにしていただきたい。
  12. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 一般的には、ソ連人操業のみならず韓国人その他の外国人操業がこの「外国人」という規定に当てはまるわけでございますが、これは私ども、この法律の運用といいますか、政令によりまして、十四条の規定がございますけれども、御指摘がございましたので申し上げるわけでございますけれども日韓関係には現在日韓漁業条約というのがありまして円滑に操業が行われておりますし、また韓国は現在二百海里の漁業専管水域、これを設定いたしておらないわけでございます。そこで、そういうような状態にある韓国に対しましては、私どもといたしましては水域、海域の点におきましても二百海里の漁業水域除外をするということも考えておりますし、また韓国人に対します本条適用につきましては、本条ごとに吟味はいたしますけれども韓国人に対しましてこの漁業水域法規制規定排除をするということを十四条に基づきます政令規定をいたしておる、かように考えております。
  13. 川村清一

    川村清一君 長官の御答弁一般論としていろいろおっしゃっておりますが、私の聞いていることは端的にお尋ねしているので、いろいろ説明なさらなくてもよろしいのでございまして、私も素人ではないんですから大体わかっているのですが、聞きたいのは、その外国人漁船というのはソ連漁船だけでなくて韓国漁船も入っておるのか、入っておらないのか。外国漁船に対する措置についてはただいま大臣がはっきり申されて確認されたのですから、その外国漁船の中に韓国が、入っているのか、入っていないのかということを聞いている。
  14. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 端的に申し上げますと、この法律に基づく政令によりまして、韓国人漁船につきましては適用除外をするということを考えているわけでございます。
  15. 川村清一

    川村清一君 それでは韓国につきましては、この法律の、政令によって適用除外するということは、韓国漁船は先ほど大臣のおっしゃったその原則の中には入らないということでございますね。
  16. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) そのとおりでございます。
  17. 川村清一

    川村清一君 現に韓国漁船北海道沿岸周辺に参りまして操業をやりまして、ソ連と同じように大きな被害沿岸漁民に与えておりますが、そういうものはやはりこの法律から適用除外いたしまして、現状のままそれは認めるということでございますね。
  18. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 外国人漁船と御質問の底びき網の禁止ラインオッタートロール禁止ライン等に対します、私どもが絶対入れないという方針とは、これは大臣が申し上げたとおりでございます。ただ、漁業水域に関する法律適用につきましては先ほどのようなことになりますので、韓国人漁船につきましては私どもは先ほど大臣の申し上げましたような方針を、別途これは韓国日本政府間の協定を結びまして、絶対にわが国漁業秩序を乱さないような操業を維持してもらうような、そういう措置は別途とる、そういう考えでおります。     —————————————
  19. 橘直治

    委員長橘直治君) この際、委員異動について御報告いたします。  ただいま岩上妙子君、佐多宗二君及び坂元親男君が委員を辞任され、その補欠として小林国司君、佐藤信二君及び亀井久興君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  20. 川村清一

    川村清一君 こういうことですか、それで初め私がお尋ねしたことは、日本の国の資源を維持し守るために、やっぱり規定によって沖合い底びきの禁止ラインあるいはオッタートロール操業禁止ラインというものが規定されておるわけです、御承知のように。そこへ外国漁船は入るのか入らないのかということを聞きましたら、入らないとこう言う。それじゃその外国漁船というものはソ連漁船だけでなく韓国漁船も含まれるのかと、こういう質問です。そうすると、外国漁船であるけれども韓国はいわゆる政令によって適用除外をする、こういう御答弁なんです。そうすると、外国漁船の中にはいわゆる適用外ですから、ここの第五条で言う「外国人」と、それからずっと後にきての十四条、この十四条はこれは韓国を含んでおる。第五条の方はこれはソ連漁船の方を対象にしておると、こういうふうに理解されるわけでありますが、その辺はどういうことになっていますか。あなたの御答弁によればどうもはっきりしない。韓国漁船については、大臣のさっき確認されたこととはいささか違ってくる。わが国規制しておる——自国のですよ、日本の国の漁船操業規制しておるそのラインの中に韓国の船は入ってきて操業することもあると、こういうふうにも理解されるんですが、そういうことなんですか。
  21. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) もう一回簡単に要約して申し上げますと、先ほど大臣からお答えを申し上げましたとおり、日本漁船資源保護のためまたは漁業調整のためにみずからを制約をいたしまして、沖合い底びきを禁止をしたり、オッタートロール禁止をしているところがございますが、そういうところには外国人漁船操業は認めないという方針でございます。  で、それにつきまして、まずソ連船につきましては、この二百海里法が公布施行になりますれば、この二百海里法によりましてそういう排除措置といいますか、そういうところで操業しないような措置をとります。ただ韓国人漁船につきましては、先ほど申し上げましたように、十四条の規定によりまして韓国人につきましては先ほど申しました理由でこの二百海里法、漁業水域法適用除外をする考えでございますので、ストレートにはこの二百海里法の適用によってそういう禁止ライン操業排除することはできないわけでございます。そこで、先ほど申し上げました外国人一般についてそういう場所での操業排除するために、韓国人につきましてはわが国韓国政府との間で別途政府間協定を結びまして、韓国人操業につきましては、そういう禁止ラインでは操業をしないように確保をいたしたいということを申し上げているわけであります。
  22. 川村清一

    川村清一君 そうしますと、第十四条は私が言ったとおりですが、韓国漁船を指しているということが明らかになりました。そこで、十四条によって韓国漁船はこの法律適用外になるわけであるけれども、しかし政府間協定を結んでソ連漁船と同じように、いわゆるわが国規定しておるその沖合い底びき禁止ラインであるとか、あるいはオッタートロール禁止ラインの中に入ってくることは絶対認めないようにすると、こういうことでございますか。
  23. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) そのとおりでございます。
  24. 川村清一

    川村清一君 それでははっきりこれは確認しておきます。  そこで、鈴木農林大臣水産専門家でございますので十分御承知でございますが、これはわが北海道の一部ですが、日本海に面した地域でございますが、こういうふうに漁業が込み入っているわけですね。要するに、この十二海里の線を引きましても、十二海里の外にこれは御案内のように共同漁業権というのがずっと沖に出ていますから、共同漁業権行使につきましては、それぞれ漁業協同組合共同漁業権行使規程というものを設けて、そうしてやっているんです。これはカニの漁場であるとか、これはエビの漁場であるとか、あるいはこれはカレイの刺し網であるとか、ここはタコのなわであるとかといったように、こういうようなことが結局領海十二海里をやり、そして領海の外に共同漁業権がずっとまだ出ておるわけでありますから、これは御承知願えると思うんです。そこで十二海里の外二百海里を決めた、もちろん領海十二海里に外国船が入ってくるなんということになれば、こんなことはもう非常識であって認められるわけもないんですね。しかし、百八十八海里については一応これは認めることもある、それはソ連との話し合いというようなこと、しかしながら認めても、先ほどから私が何回も言っているように、資源維持のために日本漁船でさえ操業できない区域があるわけですから、こういうところに外国が入ってこないと、それでこの法律ソ連ははっきり決まる、しかし、韓国は十四条によってこの法律からは適用除外されておる、だから韓国がどんどん入ってきてもいいということになったらこれは困るから、そこで韓国日本との政府間協定をきちっと結んで、そして韓国も絶対ここへ入ってこないような処置をとる、これが大臣のいまのお答えですが、そう確認してよろしゅうございますか。
  25. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) そのとおりでございます。
  26. 川村清一

    川村清一君 ぜひ韓国話し合いを進めまして、政府間協定を結んで、いま確認をされたとおりの線を実現していただきたい、こう思います。  次にお尋ねすることは、これは将来の問題ですが、現在の問題として韓国漁船が、いま北海道太平洋岸からは離れた模様でございますが、最近は日本海の方にあらわれまして天売や焼尻の漁場であるとか、あるいはオホーツク海の方において相当操業をやりまして、日本漁船との間にトラブルを起こし大変な被害を与えている模様でありますが、これに対してどういうような処置を現在水産庁としてとられておられますか。
  27. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) お話のとおり、どうも三月一日にソ連の二百海里法の施行以来、ソ連沿岸操業いたしておりました韓国漁船相当部分北海道周辺、まず太平洋岸、最近は日本海岸にもあらわれまして、大型船による操業を行って相当わが国漁船漁具その他の被害を与えているようでございます。私どもも在日の大使館を通じましてしばしば警告を与えたのでございますけれども、それ以外に先生御承知のとおり、現在韓国日本との間におきましては、民間によります損害発生防止のための協議会並び損害が起こった場合にどう処理するかということの検討をする協議会を設けておりまして、昨年大体基本的な事項につきまして合意を得たのでございまして、その細目につきましてさらに詰めるべく、ことしの二月韓国へ参りまして相談をいたしました。残念ながら細目につきましては、まだ完全な合意に至っておりません。そこで、私どもといたしましては、水産庁職員並びに外務省職員をさらに韓国に派遣をいたしまして、韓国船による無秩序操業を防止すると同時に、わが国漁船に対する被害漁業に対する被害最小限度に防止するような申し入れをいたしております。で、なるべく早く先ほど申し上げましたように、現在からでも直ちに日韓間におきまして政府の援助によりまして、または政府間によりまして操業ルールが確立をされるように現在も努力しているわけでございますが、この法律の成立の暁には直ちにまた再び韓国職員を派遣いたしまして、政府間でしっかりした約束ができるように努力をいたしたいというふうに考えております。
  28. 川村清一

    川村清一君 長官お話はわかるんですが、現実問題とすればそうならないわけなんですね。いま民間協定でというふうなお話もございまして、沿岸漁民の代表が韓国へ参りまして、韓国の方の日本近海へ来て操業しておるそういう漁業者の団体の責任者といろいろ話し合っていることも承知しておるわけであります。そうしてその結果もよう聞いているわけでありますが、もはや民間での話し合い民間協定は不可能である、できないとはっきり言っているんですよ。そうして現にもうこういう私が質問しているきょうこの時間にも、韓国漁船が先ほど言ったように北海道近海を荒らしているんではないかと思いますが、そう長官のような悠長なことを言っておったってどうにもならないわけでございまして、これは早急にやめてもらわなければならないのですが、民間協定に任せるとか、あるいは今後政府間で話し合ってそうしてそういうふうな方向に進みたいといったようなその考えをお聞きするわけじゃないんですが、しかし、いまもう現に行われているわけですから、これを即刻やめてもらわなければならない、これはどういう手を打たれますか。
  29. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この問題は、御指摘のように日韓の間の民間取り決め、これが誠実に履行されていないということを私は非常に残念に思っておるわけでございます。したがいまして、この漁業水域法、これが成立いたしますればできるだけ早く政令も決定をいたしまして、直ちに韓国側と今度は政府間の協定締結をいたしまして、現在のような無秩序な、履行されないようなことでなしに、この水域法趣旨、目的が確実に実行されるように政府間協定によってそのことを確実にしたい、こう考えております。
  30. 川村清一

    川村清一君 早急にぜひやっていただいて、確実にその問題を解決してもらいたいと思うわけでございます。しかし、これもなかなか大臣のおっしゃるようなことにはならないのが遺憾のきわみなんですが、例をとれば日本ソ連との間にも日ソ漁業操業協定締結されたのは一昨年の秋ですね。しかし、その協定によって一体ソ連漁船の横暴なる操業がやまったかというと、全然やまらないでずうっと続いてきたわけでございます、御承知のように。それで付属書なんかには事細かく書いてあるわけでありまして、これを日本側の方は厳重に守っているわけです。ソ連側の方は一向に守らぬということで、もう三千トン、四千トンの底びきがやってきて、トロールがやってきて底をかき回して引くもんですから、これは漁具、漁網、こういったものの損害というよりも、資源がなくなってしまう。そして危なくてしょうがないから、日本漁船操業ができない。休漁しておる。この損害というものは莫大なもんなんですね。そういう協定ができてもやっているわけですから、そしてその協定締結のときに、いわゆるいままで受けた、また今後損害ができた場合においては賠償請求処理委員会というようなものが協定に基づいて設置されておる。数百件の問題が出て、数億円の損害が出ておる。その処理ができない。私は、ことしの二月五日の参議院の本会議でこの点にも触れて質問したわけでありますが、福田総理大臣の御答弁は、まあそういう委員会発足当時であったからなかなか事務処理にもおくれたと。今度はいよいよ軌道に乗ったから、そういう問題も早く進められて処理ができるといったような御答弁をなされておりました。しかし、どうなんですか。まあ東京の委員会を終えて、モスクワに送られたものが二件である。二件につきましては、いまだにそれが損害賠償が実現しなかった。それで私どもが今度参りまして、イシコフ漁業大臣にこの問題も団の中の方が話されました。そしたら、翌日聞いたことでございますが、イシコフがその漁業省の役人に、早急にこれを処理せよという命令を出されたということで、この問題は近いうちに処理がされるといったようなことを聞きましたが、何百件の中からたった二件だけがモスクワに上げられたんですね。これが、協定があり、そして協定の中で賠償請求処理委員会というものができた結果においてなおこういうような状態なんですから、今度は韓国との間にどうなるのか。協定を結んでも守られるのかどうか。そして今日までもうすでに相当な件数、金額というものが、韓国漁船の無謀な操業において出ておるわけでありますが、この損害に対処してどうなされるのですか、水産庁としては。
  31. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 確かに御指摘のとおり、日ソ漁業操業協定が一昨年の十月にできまして、損害賠償請求処理委員会が昨年の三月に発足いたしたのでございますが、それ以来七百件余りの審査請求があり、そのうち三十六、七件が審査をされまして、現在は三件モスクワへ行っているようで、最近一件行きましたので三件モスクワに送られておりますが、御指摘のとおり、まだ現実に損害賠償が行われるというふうにはなっておりません。私どもこれは非常に促進しなければならないというふうに考えております。発足当初でもあり、急に過去二カ年間にわたりまして損害請求を認めたものでございますので、一挙にたくさん書類が上がりまして、ふなれでございまして処理が滞ったということも事実でございますが、今後はひとつ馬力を上げまして、早急に処理できるようにいたしたいと思っております。  韓国漁船によります損害も確かに最近ウナギ登りに上がっておりまして、金額も相当な金額に上がっております。私どもは、先ほど申し上げましたように、すでに韓国漁船による損害につきましては、これを損害賠償をするということ、これはもう基本的に話し合いがついているわけでございまして、どういうルールでこれをするかという点だけが決まっていないわけでございますので、民間にばかり任せないで、政府間におきましてこの処理につきまして相談をいたしまして、早急にこれが処理のされるように措置はいたしたいというふうに思っております。
  32. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 先ほど私が、民間協定では今後不十分であるので、この海洋二法案が成立をし、政令でその施行をやると、こうなった場合には早急に政府間協定締結をする方針であると、こういうことを申し上げました。これに対して、現在でも守られないのだから、政府間協定をした場合にも守られるのであるかどうかという何か疑問を投げかけておられるようなことでございますが、今度はこの法案には管轄権並びに裁判権その他規定をいたしておるわけでございます。したがいまして、協定いたしましたところの海域、操業条件等々に違反をしたと、政府間協定に違反をした場合におきましては、この漁業水域法に基づくところの管轄権が及ぶと、こういうことでございますから、今後のことにつきましては政府間協定を結ぶことによって十分海の秩序が確保できると、このように考えております。
  33. 川村清一

    川村清一君 それで明確にわかりました。そういうことでひとつ厳重にやってもらいたい。  あわせてお尋ねしますが、鈴木農林大臣が今度訪ソされまして第三次の会談をイシコフ大臣とやりまして、日ソ漁業暫定協定ができた場合において、いまのお話と同じようにソ連船もわが二百海里水域内において操業する場合においてはその協定に基づいてなされるわけでありますから、したがいましてその管轄権なり裁判権というものはわが主権が持つわけでございますから、ソ連に対してもいま申されましたように、韓国漁船と同様の処置がなされるものと判断いたしますが、それに間違いございませんか。
  34. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) そのとおりでございます。
  35. 川村清一

    川村清一君 これで私の聞きたいと思っておったことは明快にされましたので、了解いたします。  そこで、今度国内の問題で一つ心配なものですからお聞きしますが、実は私、参議院に出る前に北海道議会の議員を十年やっておりまして、十年間一貫して水産委員会におったわけであります。それで大臣御案内のように、何といいましてもわが北海道漁業というものは日本水産の中での王国でございまして、全漁獲高の四分の一ぐらいは北海道が生産しておるわけでございます。沿岸漁業からいっても日本一でございますが、この沿岸漁民沖合い底びきですね、これの紛争をなくするために、この沖合い底びきの禁止ラインを拡大するために、まあ十年間苦労し、沖合い底びきの人たちと戦ってきたと言ってもこれは過言でないのでございますが、そういうような経過の中から、当時三百隻あった底びきの数をどんどんどんどん減らしていったり、そしてまたこれは北転船として北洋に転換を図ったりして、そして現在の北海道沿岸漁業秩序というものをつくったわけでございますが、この北洋から今度締め出された底びき船、特に沖合い底びきでございますが、百二十四トン型はこれはオッタートロールという方向に行きましたが、九十六トン型の船は北洋からUターンしてきて北海道沿岸に来るんではないかということを、きわめて憂慮しておるものなんです。   〔委員長退席、理事鈴木省吾君着席〕  もし、沿岸にやってまいりまして、そうしてこれらが沿岸の沖合いでもって操業するということになりますれば、これは沿岸漁民にとっては大変なことでございまして、いままではソ連船だ、あるいは韓国船だということで、腹が立って腹に据えかねてもう怒りに燃えているわけでありますが、何せ相手は外国船でありますし、余りに大き過ぎてとても太刀打ちもできないものだからまあ泣き寝入りをしてまいりましたが、今度は日本沖合い底びきが沿岸に来て同じようなことをやりますれば、沿岸とその沖合い底びきとのトラブルというものは、これは日本人同士のけんかになるわけでありますから、下手すると流血の惨事も起きるんではないかということを私は本気になって心配しているんですが、こういうようなことについて一体大臣水産庁長官はどのように受けとめられているか。もしそういう心配があるとするならばどういう措置をなされようとしているのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  36. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 四月一日以降、日ソ協定が中断いたしました関係もありまして、北洋海域で操業しております北転船並びに沖底びき網漁船が全部母港に帰港いたしておるわけでございます。その沖底びき網漁船の中には、日本近海操業できる許可を持っているものもございます。それに対しまして、いま川村先生御指摘のように、沿岸漁業者とトラブルを起こしてはいけない、こういうことで直ちに水産庁から係官を派遣をいたしまして、稚内を初め各地の沖底びき網漁業者に対して、さようなことがあってはいけないという強い行政指導をいたしております。そういうことで、沿岸漁業者との摩擦、トラブルを未然に防止するような措置をとっておるわけでございます。  今後におきましても、北洋のクォータ等が決まりまして減船等の余儀なきに至った場合におきましては、私はクォータに見合った減船もやむを得ない、新しい体制で沿岸漁業との摩擦を回避しながら操業が確保できるような、そういう体制をつくっていきたい。沿岸漁業にしわ寄せをするというようなことは、絶対に避けるようにしてまいる方針でございます。
  37. 川村清一

    川村清一君 本当に日本人同士が血で血を洗うような、そういうことがもう起きかねないような事態になるんでないかということを本当に私ども心配しておりますから、そういうことにならないようにしっかりやっていただきたいと思うんです。  もう一点、これに関連してお尋ねしておきたいのは、日ソ漁業協定締結されまして、それによっていままでの既得権が全部認められるならばこれはもう何をかいわんやでありますが、しかし、そういうことにはなかなかならない厳しいものがあると思うんです。結局、締め出されてくるものがありますから、まあ減船もこれはやむを得ないでしょう。船は減船、それによって船主とかそういう者は、これはまた後で質問いたしますが、政府措置によって減船が可能であると思いますが、その船に乗っておる今度は乗組員でございますね、漁師でございますが、これは全部北海道沿岸から出ているか、あるいは大臣のいらっしゃる岩手県とか三陸のああいう浜にいらっしゃる人がたくさんいるわけでございますが、船からおりたわけでありますから、もともと漁師ですから、ほかの職業にもなかなかつけないとすれば浜に戻ってくる。船のUターンでなくて、今度は漁業労働者のUターンもこれは出てくる可能性は大いにあるわけでございますね。  それから漁業協同組合、組合員の脱退、加入というのはこれは自由でございますから、その地元の漁業協同組合に加入して組合員になった場合において、先ほど冒頭申し上げました共同漁業権行使の権利があるわけですね。そうすると、小さな船を持って沿岸漁業をやったり、特に私心配しておるのは、北海道周辺沿岸は非常に海草に依存している、コンブだとかあるいはワカメだとか。岩手県あたりも同じだと思うのですが、ワカメなんかね。そうすると、その組合の管理しておる共同漁業権というものは限定されておりますから、そこにある資源というものは、現在の組合員でこれを分け合ってそうして生活しているわけです。決まった資源、ここに、これをとる権利を持った漁民の数がずうんとふえてまいりますと、いわゆる一人一人の分け前というものが非常に少なくなってくるわけですね。その結果、沿岸漁民は全部共倒れになってしまう、こういう状態が出てくることが予想をされるわけでございますが、こうなったらこれはまた大変なことであって、沿岸漁業はつぶれてしまいますし、沿岸の漁家はもう生活もできないと、こういうようなことになるわけでございますが、こういう予想をされる問題についてどのように把握され、またこういうことができないようにどう対処、処置をなされようとしておるか、お考えをお聞きしておきたい。
  38. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) その問題は非常に大事な問題でございます。減船等のやむなき事態になりました場合におきまして、多数の乗組員の諸君、漁民諸君が北洋における操業の場を失うということになるわけでありますが、この救済対策ということが私一番頭の痛い問題であるわけでございます。これに対しましては、海からおかへ転職をいたします場合には雇用対策法によって措置してまいる、また、海から海へ転換をする、そういう場合におきましては漁業再建整備法の適用、活用によって対処をしてまいると、そういうことをやってまいりたいと考えておるわけでございますが、川村先生専門家でいらっしゃるので、それにしても漁師はおかへ上がったんではカッパのおか上がりになると、こういうことで、やはり海で何か生活の場を与える必要があるのではないか。その場合に、漁業組合に加入しなければ組合の持っております共同漁業権の中での仕事ができない、これはもうそのとおりであるわけでございます。私は、組合によりましては、共同漁業権の中でまだ余裕があるという組合もあろうかと思います。そういうところにおきましては、漁業協同組合の諸君にいたしましても、同じ漁師仲間であるわけでございますから、温かく迎えてやっていただきたいと、これもそういうように考えております。  また、その余裕がないというようなところもあるわけでございますが、できるだけそういう諸君につきましては、栽培漁業、養殖漁業等につきまして、これもとかく漁業権であるとか、いろんな漁業権が付与されなければならないわけでございますけれども、そういう点につきましても漁業権の新しい付与をすると。これは海区漁業調整委員会等によく御検討を願わにゃいかぬ問題でございますが、あらゆる問題が出てくるわけでございますが、そういう問題を十分検討いたしまして、これらの漁民諸君がどうしても海でしか生活ができないという場合におきましては、それを適当な職場が与えられるようにあらゆる角度からひとつ行政指導もやって対処していきたい、このように考えております。
  39. 川村清一

    川村清一君 炭鉱が閉山いたしまして炭鉱離職者がたくさん出ます。やはり長年炭鉱で働いた人は、別な職場へ行ってもなかなか仕事になじめない。これと同じように、いま大臣もおっしゃったように、かっぱが陸に上がってしまったらなかなかその陸の仕事にはなじまないわけであります。どうしてもまた海に戻って沿岸で少なくなっても漁業をやって食べていきたい、これはひとしくそういう思いを持つと思うのであります。さあ浜へ帰ってきたら、今度は漁業協同組合は、おまえは入れない、組合員にしない。しないというばかな話があるか、水協法によって加入、脱退は自由だ、入れないとは何事かというようなことで、浜でまたその漁業者同士、日本人同士がトラブルを起こすというようなことができたらば困ると思って、私は非常に憂慮してこういうお尋ねをしているわけでありますが、それに対しましてはぜひ万全の措置をとってもらいたい。漁業再建整備法に基づいてなんということをおっしゃいましたが、そんなのは個人個人の漁船の乗組員には別段大した関係もないことで、それでもって処理をしようとしたって、首をかしげていらっしゃいますから、大臣、その漁業再建整備法によって、法律で船からおりたそういう漁師の方にどういうような処置をなされることができますか、ちょっとお尋ねいたします。
  40. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) いまの沿岸漁業共同漁業権の中でやるという問題につきましては、漁業再建整備法がそのまま適用ということではございません。私は、共同漁業権の中にも余裕のあるような漁業組合については、温かく迎え入れてほしいということを申し上げておるわけであります。そのほかに、政府としても新漁場の開発、そういう問題につきましては一層今後力を入れてまいる考えでございます。そういうことをいたしまして、海から海への転換、こういうこともやってまいりたいという意味で申し上げておるわけでございます。  なお、御承知のように、現在日本列島周辺には三千万ヘクタールの大陸だなのような二百メートルよりも浅い部分があるわけでございますが、そのうち増養殖等に利用されております海域ばわずかに百五万ないし十万ヘクタールしか利用されていない。私は、これをもっともっとやはり増養殖等ができるように沿岸漁場の開発整備を進めていきたい。専門家の検討によりますと、せめて一千万ヘクタールを利用するようになれば、その海域で現状よりもなお一千万トンの漁獲が可能であると、こういう提言もなされておるわけでございまして、そこまで一挙にまいりませんが、今後は沿岸漁場の開発と整備を積極的に進めまして資源をふやす、また増養殖等の栽培漁業等も盛んにする、そういう基本的な方向でやってまいりたいということを申し上げておるわけでございます。
  41. 川村清一

    川村清一君 大臣がいまおっしゃった基本的な問題につきましては、またこの後に少し時間をとって議論をしたいと思いますが、大体いままでの御答弁でわかったわけであります。  そこで、今度二百海里の線引きの問題でちょっとお聞きしますが、一番問題になり、そして大臣交渉を中断されたのも、暫定協定の一条、二条の問題であるというふうに理解しておりますが、この線引きがなかなか強硬である。大体日ソ漁業条約というものはまだ存在していると、私はこう理解しておるのですが、これはどうなんだということが一点。  それから日ソ漁業条約におきましては、北西太平洋上のいわゆるサケ・マス、ニシン——もとはここにカニも入っておったのですが、こういう資源の維持のための条約ということで、そこで資源維持のために両国が努力していくということでこの条約ができて、今日まで二十年これでやってきたわけでありますね。それで対象は、最初のころは、たしか北緯四十五度以北であったわけでございますね。以北が対象の水域であったはずでありますが、これがいつの間にかだんだん南になりまして、今度は太平洋小型から日本海マスまでこれの適用を受けるような、こういう状態になってきておる。これは条約の趣旨と全然変わってきたわけでありますが、それにしても条約そのものは生きておる。二百海里に関係なく、二百海里の外でいわゆることしのサケ・マス漁業——それで、これは中部千島の四十八度以南のサケ・マス流し網漁業、太平洋の小型漁業、それから日本海のサケ・マス漁業、これが大臣がお帰りになるまではなかなか向こうが強硬で、五万七千トンの線を崩さなかった。ところが、われわれが行ってイシコフと猛烈にやり合ったところが、翌日がらりと変わってそれに五千トン上積みされまして六万二千トンに、五千トンふえて六万二千トンになったわけでございますね。  で、荒勝代表は、これは早急に調印をして二十八日には東京で正式調印をして、四月三十日からこれは出漁できるというようなことをおっしゃっておったのですが、こっちへ帰ってきて、二、三日前かの新聞見たら、俄然そこにまた二百海里の問題といいますか、線引きの問題、いわゆる閣僚会議の決定を入れるとか入れないとかいったような問題で、もう調印間際まで行ってから話し合いがつかないで、四月三十日出漁、これはもうとても不可能といったような状態で、これは大変なことですね。大変な事態になってきておるわけでありますが、一体これはどういうことなんですか。どうも私にはわからないのですが、大臣の御見解をひとつお聞きしておきたいと思います。
  42. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 川村先生いまお話しになりましたような経過でございまして、荒勝代表からの、ほとんど九九%ニコノロフ首席代表との間で話がついて二十五日には調印をいたしましょう、二十八日には東京でシャルクを再開をしてそこで正式な調印をいたしましょう、こういうことでニコノロフ代表以下の諸君も訪日のビザも申請をしておると、そういう状況であったわけでございます。ところが、その議事録に署名しようとする段階におきまして、突如、いま川村先生御指摘のように、一九七七年の二月二十四日付閣僚会議の決定の線、その問題を持ち出してきたわけでございます。これは全くア連政府の態度の急変と申しますか、豹変と申しますか、約束をたがえた行為であるわけでございます。これに対して強く抗議的な立場に立って再交渉も荒勝代表にお願いをしたわけでございますが、ニコノロフ代表はこれは至上命令であると。その至上命令というのが一体どの辺からおりてきたのか、とにかく漁業省だけでは処理できない。イシコフさんは五万七千トンに五千トンを上積みをして早くこの問題だけは処理しようと、こういうことでイシコフ漁業相の裁断によってそこまでいったやつが、至上命令という形でもう漁業省の諸君だけではどうにもならぬというような事態に追い込まれておる、これが現時点における状況でございます。私は荒勝代表にもさらに折衝をお願いをいたしておるわけでございますが、ちょうど暫定協定第一条の問題と同じ問題でございますので、私も六日ころの訪ソを予定をいたしておりましたけれども、これを繰り上げまして二日ないし三日には出発をして、そしてイシコフ大臣と私自身が折衝に当たりたい。この問題を早く処理をいたしたい、このように考えておる次第でございます。
  43. 川村清一

    川村清一君 四月三十日から操業をするサケ・マス漁業というのは、三月一日から出漁することになっておりました日本海の北緯五十二度以南のニシン漁業と同じで、これは母船式サケ・マス漁業とは違いまして、全く沿岸の中小零細な漁業でございますから、特に私は北海道太平洋岸、日高の沿岸に住む者といたしまして、この辺は太平洋の小型サケ・マス漁業、約千二、三百隻がいるはずでございますから、それから日本海のマス漁業、これも本当の沿岸の零細漁業者でございますから、これはもう四月三十日から操業できないということになれば大変なことです。大臣御案内のように、マスもやっぱり魚道がございまして、これは秋のサケとは違いまして、これはずっと太平洋を回って北海道の方はこの西の方、胆振の方からだんだん回って日高の方から襟裳岬を回って、そして釧路の方へ行くというマスの一つの魚道があるわけでありまして、サケの方はそれと反対でございますが、したがって漁期というものがあって四月三十日、五月なんかに入ってしまいますれば、もう胆振から日高沿岸の小型の漁船は行ったってもう魚がいないわけですから、大変な損害を受けることになるわけであります。そこで、これは早急に決めてもらわなければどうにもならぬと思いますので、強く私は要請しておきたいと思うわけであります。  それからもう一点でございますが、いよいよ今度北方領土でこの法律ができれば二百海里日本も線を引くわけですから、向こうも二百海里の線を引くと、いままでは向こうだけがあってこっちはなかったんですから、共通の土俵がなかったわけですから、今度この法律ができますと共通の土俵ができるわけですから、この共通の土俵の上で鈴木農林大臣イシコフ漁業大臣が相撲をとるという、こういうことになるわけでございますから、どうかその相撲に負けないようにがんばってもらいたいわけでありますが、そこで、この二百海里がこういうふうに重なった場合において、これはどういうことなんですか、常識で言うと真ん中の線ということになるわけですがね。それから向こうの最高会議幹部会議議長は、四百海里あったら二百海里ずつとったらいいじゃないか、それから二百海里ずつ重なったら等分したらいいじゃないかというようなことをわれわれに言っておりましたが、こちら側の見解はどういうことになりますか、その場合。
  44. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) その最高会議幹部会議長の御見解は、これは一般論としてお話しになっておることだと私は受けとめておるわけでございます。たとえば沿海州と北海道との間でお互いに二百海里線引きがなされる。その場合にオーバーラップしたところは、これは海洋法会議の統一草案にもありますように、その中間線をもってそれぞれの管轄する水域を決める、こういうことに相なっておるわけでございます。しかし、北方四島絡みのこの水域は、これを中間線というわけにまいりません。日本の方としてはやはり、わが国固有の領土の沖合い二百海里はわが国漁業水域適用海域である、こういう立場をとるわけでございますから、中間線理論というのはこの海域には適用されない、私はそういう見解をとっておるわけでございます。そういう立場の上に立って、むずかしい問題ではありますけれどもこれに対処していきたい、こう思っております。
  45. 川村清一

    川村清一君 そこまでは話がわかりましたが、今度はその次の具体的な問題ですが、向こうは二百海里とこうやる。こちらの方も二百海里。それは決して半分に分けたりなんかするのではない。こちらの方の主張としては、あくまでも北方領土はわが固有の領土であるという見解で線を引く。向こうの方は向こうの方で、もうこれは処理済みであるといったようなことで線を引く。で、線は重なるわけでございますが、決してそれを等分するなんということはするのではないんだと。こういうことは、具体的に言えば、事実問題とすれば、向こうは向こうでその線の中で操業するし、こっちの方もこっちの決めた線の中で操業するし、そうすると実際問題として、そこの海域というものは両国が共同で使うというような海域になるんですか。どういうことなんですか、そこは。
  46. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) これはソ側もこの北方四島は戦後未解決の問題である、今後両政府間で平和条約締結交渉の問題として引き続き協議を続けていくのだと、こういうことを前提にいたしまして、そしていま言ったようなぐあいに両方がそのことを認めて、オーバーラップした海域が設定をされた。これは大人の話し合いでございます。私はそのこともこいねがっておるわけでございます。そういうことが合意の上になされれば、いろいろやり方は、双方の立場を損なわないように私はできる、このように考えておるところでございます。たとえば日本漁船については日本の監視船等が取り締まりをする。旗国主義でございます。向こうの船については向こうがやる。裁判管轄権についてもそういうことでやる。これは本当に腹を割って、心からそういうことで話し合いがついた場合におきましては、いろいろのそれに即したところの操業体制や操業秩序というものが私は出てくると思うわけでございます。これも考えておかなければならない有力な案の一つであろう、こう考えておりますが、向こうがこう出てきた場合はこっちとしてはこうせざるを得ないとか、いろいろの問題がございますが、これからの交渉ごとでございますので、その具体的な対処方針というものにつきましてはこの際御遠慮をさせていただきたいと存じます。
  47. 川村清一

    川村清一君 その次に、これも私代表質問のときにちょっと質問いたしまして、福田総理の御答弁を願ったんですが、もう翌日すぐ韓国の方から大きな反響が出てまいりましたが、この法律ができますというと、日本の二百海里というものの線引きは、やはり竹島であるとかあるいは尖閣列島とか、そういったような固有の領土等から二百海里のコンパスを延ばすことになるのか。その辺は、どういうお考えを持っていらっしゃるのか。
  48. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この点は私明確に申し上げておるところでございまして、この漁業水域法では政令でもってどういう情勢に対しましても対応できるように、こういうぐあいにお願いを申し上げておるわけでございます。私は、日韓の間には日韓漁業協定があり、日中の間には日中漁業協定があり、これによって西日本わが国漁業はきわめて安定的にいま操業秩序が確保されておる、このことを大事にしていきたい、こう考えております。したがいまして、わが方から先にこの二百海里の水域を指定をするということは、私避けていきたい。しかし、韓国側が、あるいは中国側が二百海里を先んじて設定をいたしますれば、間髪を入れず政令によりましてわが方も二百海里を設定をする、相互主義で対処していきたい、このように考えておるところでございます。
  49. 川村清一

    川村清一君 そういうようなお考えだから、この法律そのものがすべて政令にゆだねるというようなかっこうで、さっぱりつかみどころのない法律になっているというふうに理解するわけですが、それはそれとして、それらに関係したことにつきましてはまたわが同僚議員の方から質問がなされると思いますから私は避けますが、たとえば領海十二海里にいたしましても、いわゆる国際海峡と言われる特定海域を三海里に凍結したり、どうもみずからの手で自国の主権を放棄するような、こういう処置なんというものは世界各国に例のないものではないかと私は理解しておりますが、こういう問題につきましては、あとでまた同僚議員から詳しく御質疑があるものと思いまして、私はあえて避けます。  最後に私が大臣の御見解を承りたいのは、もう今日のこういう事態をつくった原因は、日本とかあるいはソ連とかこういう漁業先進国が、資金と技術に物を言わせて、領海外は全部公海である、公海上の資源はどこの国がとっても構わないんだ。そうして生産第一主義というようなことで、しかも日本政府は今日まで高度経済成長のそういう経済政策の中で沿岸はどんどん埋め立ててしまって、そして工場をつくって、そして廃水をたれ流して、もう沿岸でとれた魚を食べられないような状態にまでしてしまって、そうして今度は外延的に遠洋へ、遠洋へと政府も大いに奨励いたしまして、そういう漁業者に対しましては漁船建造の資金はどんどん貸してやる、それから着業資金も貸してやるということで、もうアフリカから、南米から、ニュージーランド、オーストラリア、ソ連、アメリカはもちろんのこと、どんどんどんどん発展していった。それがいわゆる後進国といいますか、開発途上国といいますか、こういう方々の反感を買って、いわゆる資源ナショナリズム、こういったものの形が一九七三年の第三次の国連海洋法会議の第一会期、ここでこの問題が提起されてずっと今日まで来ておるわけであります。  こういうような中から、アメリカが二百海里を法律をつくってことしの三月一日から実施した。それから、ソ連もアメリカの方から締め出された。そして、ECあるいはノルウェーの方からも締め出された。ソ連も有数の、遠洋漁業にかけては日本以上でありますから、そしてまたソ連も動物性たん白食料としては水産物、魚に頼っているのが日本同様でございます。こういう中で、ソ連ソ連の海域の資源をやはり守るという、こういう態度はこれは私はわかるんですよ。日本もそういう立場になれば確かにそうなると思うんです。しかしながら、この北洋漁業というものは、わが先輩が全く血と汗を流して命がけで開拓した漁業であり、いわばわが日本の権益でありますから、そこで百七十万トンはとれなくてもそれに近いものをぜひとらしてくれという要求は、これは当然だと思うのであります。  しかしながら、二百海里というものはもう世界のこれは大勢であって、歯車はそっちの方に回っているのですから、これを逆に回すことはもう不可能だと思うのです。ですから、私どもは、むしろ早く海洋法会議で決まって、世界の合意のもとにわが国も実施し、世界じゅうの国がこれを実施いたしまして、そうして本当に秩序ある海洋の利用を図るべきであるということを主張してきて、そうして早くまとまるように努力せいということをわれわれは主張してまいりました。それからアメリカがこういう動きがありましてから、アメリカがやればソ連も必ず報復主義としてやることば先が見えているのですから、アメリカをやらせないように、とにかくわが遠洋漁業の権益を守るために強力な漁業外交を進めるべきだということを主張してまいりましたけれども大臣悪いですが、自民党政府漁業外交というものはもうなきに等しかったと言っても過言ではないのであります。昨年一年間日米外交をどうやったのか、日ソ外交をどうやったのか、この漁業については何にも外交がなかったと思うのです。さあアメリカがやった、ソ連も今度は報復手段として最高会議幹部会令におきまして三月一日から二百海里を宣言するということを決定いたしまして、その結果この事態が招来されたわけでありまして、そういう政府の外交的な失態によって、日本の漁民また関連産業に働く人々全部が大変な打撃を受けております。そして、日本人全体の休漁問題という点からもきわめて憂慮すべき事態が出てきたのでありますが、そこでまず政府はこういうような経過の中で一体どう責任を感じていられるのか、まずそれを承りだい。政府の確かこれは責任であります。これは何と言ったってやってこなかったのですから、これが第一点です。  その次には、もうわれわれはこういう時代になりますれば、いま今日は鈴木農林大臣の努力によって暫定協定が結ばれたといたしましても、これは年々歳々その漁獲量というものは削減されていくことは明らかであります。これは先が見えている、だんだんだんだん減っていくわけであります。こういう時代になりますれば、先ほど農林大臣がおっしゃったように、日本列島の回りに大きなわが二百海里の漁業専管水域ができるわけでありますから、三千万ヘクタールですか、それに匹敵するようなそういう海があるわけですから、この日本列島の回りの海によって、もうこれに頼らぬ、もう遠洋漁業なんていうものは将来第二次的なものであって、とにかくこの二百海里の中の漁業を振興いたしましてその中で日本民族は生きていくのだと、こういう立場に立って、そうして沿岸漁業と沖合い漁業の振興のために全力を傾注してやるべきではないか。他の政策に優先してもこれを図るべきではないか。そのためにはわれわれずいぶん強く言っているのですよ。前の安倍農林大臣のときにもずいぶん言っているのですが、いまのような水産庁の予算で何ができるか。一遍にこれは三倍ぐらいに上げなさい。そうして増養殖の沿岸漁業振興のための施策を強硬に推進していくべきではないかということを進言しておりますが、どうも政府の予算の編成は前年度の何%アップといったようなことが基本になっておって、もう優先的な政策というものはないのであって、前年度何ぼだからその何%上げるのは何ぼだ。ほかの省庁と同じような予算をつけておるから、いつまでたったって、先ほどああいう大変りっぱなことを大臣はおっしゃいましたが、一体そんなことできるんですか、どうですか。私はぜひそれをやってもらわなければ大変なことになる。  わが民族はこの日本列島の二百海里の中で漁業をやっていくんだと、これで生きていくんだという考え方を基本的に持つべきだと思いますが、これに対する御見解をお伺いしたいと思います。
  50. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 前段の御意見は、この二百海里時代に対する対応がおくれたのではないかと、こういう御指摘でございます。この点につきましては、率直に私ども対応がおくれたということを残念に思っておるところでございます。しかし、川村さんも御承知のように、わが国はこういう海によって国を立てておる国であるということで、海洋を先んじて分割をし、そしてこれを管理し支配をするというようなことは日本が先んじてやるべきことではないと、このように考えて海洋法会議の動向等を見ておったというようなところに、結果的に立ちおくれというようなことになったことを私ども非常に遺憾に思っております。しかし、私は福田内閣に入閣をし、農林漁業行政を担当いたしまして以来、即刻この問題には取り組んでまいったわけでございまして、閣内のいろんな議論もございましたけれども領海十二海里法をとにかく率先してこれをやるという方針を決め、また二百海里法につきましても国会の御協力をお願いを申し上げておると、こういうことでございまして、私は私なりに全力投球をやっておるということにつきましては御理解を賜りたいと、こう思うわけでございます。  なお、今後の沿岸漁業の振興、沿岸、沖合い漁業の振興につきましてはお説のとおりでございまして、先ほども私基本的な考え方を申し述べたとおりでございます。今後二千億、七カ年計画というものを、年次を繰り上げても沿岸漁場整備のための予算を大幅に獲得をして、こういう厳しい漁業情勢に対応していくような施策を強力に推進してまいりたいと、このように考えておるところでございます。
  51. 川村清一

    川村清一君 私は野党でございますが、鈴木農林大臣の姿勢、それから努力に対しましてはこれを評価して敬意を表しておるわけでございまして、大臣を決して責めているわけじゃございませんから、冒頭申し上げましたように、敬意を表しながらひとつ今後の御健闘を期待しておるわけでございますから、そういうふうにしてお聞き取り願いたいと思います。  いまのおっしゃったことをもっと詰めて申し上げますが、大臣承知のように、戦前一つの漁業法があって、この漁業法に基づいていろいろなあるいは共同漁業権であるとか、専用漁業権であるとか、いろんな漁業権を免許をやる、あるいは許可をしておった。ところが、戦後農業における農地改革と同じように、漁村の民主化を図るという立場から、戦前において与えておったそういう漁業権を全部政府が買い上げて補償して、そして新しい漁業法をこれは昭和二十四年ですかつくりまして、それでこの新しい漁業法に基づいていろいろなまた共同漁業権、専用漁業権、許可漁業等をいたしまして、そして現在の漁業構造というものをつくったと、それがいまの形の漁業になっておるわけですね。  そこで、私はいま考えておることは、また大臣に率直に申し上げたいことは、これをいますぐやれと言ってもこれはできっこもないことでありますが、しかし、いまのこの段階における日本漁業というものは大きな転換期であって、もうある意味においては維新ではないかと、いわゆる戦後のあの時代に匹敵する時代ではないかというふうに私は把握しています。そこで、現行の漁業法あるいは水協法、こういったものを全部見直しをする、そしてひとつこれからの二百海里時代に対応するところの新しい日本漁業構造というものをつくらなければならないのではないか。そのためには、ひとつ政府は勇断を持ってあの昭和二十四年当時のように、いままでのいろんな漁業権を一回全部これを買い上げて、そうして全く新しい漁業法を制定して、この漁業法に基づくところの新しい日本漁業の仕組みというものをつくるべきではないか、こう考えます。これを御提案申し上げます。そのためには、ぜひひとつ漁業制度基本問題調査会というようなものをつくられて、そうして十分時間をかけて、新しい時代に対応するところの日本漁業構造をつくるためのいろいろの御検討をこの調査会でやってもらいたいということが一点。  それから、アメリカなんかでも漁民の代表を入れてのいろいろ規制——この二百海里の中で外国漁船操業規制するいろいろな調査会というようなものがつくられておりますが、漁民代表を入れて日本でこういうものをつくられていくことがいいのではないかと思うんですが、そういうような一体御用意があるかどうか、いま私提案した問題につきまして、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  52. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は、現在の漁業法に基づいて沿岸のこの共同漁業権初め漁業権制度というものが確立をし、その上に立って一定の安定的な秩序が確保されておる、沿岸の漁民諸君はこれが漁業協同組合に与えられることによって漁業組合のもとにその漁場の活用等もなされておる、こういうことでございまして、いま直ちに漁業法並びに漁業権制度を根本からやり直すというようなことは考えておりません。ただ、遠洋漁業等新しい情勢に対応したところの許可制度というようなもの等につきましては、新しい情勢に対応するようにこれを見直していくと、再検討を加えるということは考えなければならない問題だ、このように思っております。  それからなお、この二百海里漁業水域時代、専管水域時代になりまして、アメリカ等におきましては各州にそれぞれ地区漁業委員会のようなものができております。このことも私どもいろいろ研究をいたしておるわけでございますが、わが国の二百海里水域法の運用等に当たってそれをどういうぐあいにするかと。現在、御承知のように、中央には中央漁業調整委員会というのがございます。それから各道府県には、それぞれの漁業調整委員会というものがございます。さらに、数府県にまたがって連合漁業調整委員会というものも設けられるように法制的にはできておるわけでございます。これらは、いずれも漁民の選挙によって調整委員が選ばれておるというようなことで、きわめて民主的な組織でやっておるわけでございます。私どもはそういうものの活用等も含めましてこれからどうしたらいいかということを十分検討もし、具体化していきたい、このように思っておるところでございます。
  53. 川村清一

    川村清一君 最後の質問でございますが、漁業調整委員会が設置されておることは十分承知しております。しかし、漁業調整委員会のやっぱり守備範囲があるわけでございまして、私の申し上げますのは、この二百海里以内において外国漁船がいろいろ操業する、それを規制するためにはもっと漁民の代表を入れて、そしてそれを調査するあれをつくったらどうかということが一つです。  それから、大臣は消極的でございますが、私が言っている真意をのみ込んでいらっしゃるかどうかわかりませんが、とにかく漁業の全く維新時代を迎えたと言っても過言ではないと、漁業構造を根本的に変えなければならない時代に来ているのではないかという判断のもとに、漁業法あるいは水協法、こういったようなものをもう一回洗い直し、見直しする必要があるのではないかどうかということを、そのためにやっぱり漁業制度基本問題調査会のようなものを設置されて、それで各界のそういう有識の方を集められて、それで今後の日本漁業のあり方というものを十分ひとつ考えてみたらどうか、検討されたらどうかということを提案しておるのですが、私もこれがすぐ来年、再来年できるなんというようなことは思っているのではなくて、昭和二十四年の漁業法の改正のような大きな問題でございますから、そう簡単にはできないことも十分承知して申し上げているのですが、もっと大臣も積極的に御検討いただきたいと思うのですが、これに対する御答弁と、最後に、ひとつ訪ソされましたら、冒頭申し上げましたように、ぜひ日本の権益を守るために、そして漁民や関連産業に働いておる方々の生活を守るために存分の御健闘をされてまいりますことを強く要請申し上げて、私の質問は終わりたいと思います。
  54. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 川村先生の言っておられるところは、十分私理解をいたしております。今後十分に検討してまいりたいと考えております。  なお、三たび訪ソするわけでございますが、私、しばしば申し上げておりますように、わが国固有の領土であるこの北方四島、この問題は戦後未解決の問題になっておるわけでございます。この問題を抱えた日ソ平和条約交渉、これにいささかの影響を与えてはならない、日本の立場を損ねてはいけない、これを一つの大きな柱にいたしておりますし、先ほど来お話がございますように、一世紀以上にわたってわが国の漁民が営々として開拓し築き上げてきた北洋の漁業権益、これはどうしても守っていかなければならない、この二つの命題、これを達成するために微力でありますけれども全力を挙げて努力をすることを、ここにお誓い申しておきたいと思います。
  55. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 どうも鈴木農林大臣、大変御苦労さまでございます。十八日の日に党首会談が行われまして、御案内のような形で、法案はまだ両法案ともきょう衆議院の委員会が採決になるかどうかはっきりしないわけでありますけれども、私どもとしましては全く異例な形で現地調査をやったり、あるいは参考人に来てもらって意見を聞いたりいたしました。きょうまたこういう形で審議をし、あすはまた三つの委員会と合同審査をやるというような形で努力をいたしておるところです。  そこで、農林大臣のソビエトに行かれますのは三日というふうにはっきり決まったんでございますか。それと、七日間か十日間か、そういうものがはっきり決まったのか、どうですか。
  56. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 今回の日ソ交渉に当たりまして超党派の御支援をいただいておりまして、この点厚く御礼を申し上げます。また、参議院の農林水産委員会におかれましては異例の審議をやっていただいておると、このことにつきましても厚く感謝を申し上げるところでございます。  私は、先ほど来申し上げますように、漁期の迫っておるサケ・マスの問題もございます。そういうようなことで、当初六日ころ訪ソする予定でございましたけれども、これを繰り上げまして、二日、遅くとも三日には東京を出発をして訪ソをしたいと、いま国会の方にも政府の方から正式に二日訪ソということで手続を御承認をお願い申し上げておる、こういうことでございます。  なお、一応日程は十日間の日程ということにいたしておりますが、情勢次第で、これはあくまで今度は三度目の訪ソでございますので、多数の漁民諸君もああして船をつないで出漁を待っておるわけでございますので、十日が二週間になりましても何とかこれをまとめてくるように努力をいたしたい、こう考えております。
  57. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そういたしますと、農林大臣の訪ソは二日、遅くとも三日という考え方で進めておられると、決定をしているわけではない、そして日程としては十日間、こういうようなことなんですね。
  58. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) それは、私の会談の相手であるイシコフさんの御都合等もいま伺っておるところでございまして、二日ないし三日にはぜひ出発をしてそして交渉に直ちに入りたい、こういう考えでございます。
  59. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それでは次にお尋ねをいたしたいのは、四月十四日に打ち切って総引き揚げという形になったわけですが、大臣が行かれまして妥結までは帰らぬというようなことで行かれたわけですけれども、これはしかし新聞等の情報によりますというと、なかなか向こう側の姿勢が強い。さらにまた、イシコフさんの方がECとの漁業交渉の問題も始まるというところから、四月の十四日に打ち切ってお帰りになった、こういうことなんでありますが、私はなぜ、どういう理屈で打ち切られたのかということを聞きたいわけなんです。新聞等の伝えるところによりますというと、領土と魚を分けてやる、この考え方で行かれたんだけれども、しかしあの段階で考えますと、そのことがいまになってみると甘かったというような感じも私は持っておるわけですけれども大臣はどういうふうに考えていらっしゃるかお尋ねをしたいと思います。
  60. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は、二月の二十八日から三月の四日までイシコフ漁業大臣と会談をして、そして御承知のように合意文書の書簡の交換をいたしたわけでございます。これを受けまして三月十五日から、わが方の代表とソ側の代表の間で暫定措置につきまして協議に入ったわけでございます。こういう段階におきましては、イシコフ漁業大臣と私との間ではこれは漁業の問題として話し合いをし、新しい北西太平洋の漁業秩序をひとつ確立をしようと、こういう基本的な考え方でずっとやってきたわけでございます。しかるに、その後協定文、案文の第一条にきわめて象徴的に出てまいりましたのが、一九七七年の二月二十四日の閣僚会議の決定の海域というぐあいに、線引きを内包するところの案が出てきたわけでございます。イシコフさんと私とは、そういう新しい情勢の中でいろいろ交渉も重ねたわけでございますけれども、ついに平行線であり妥結に至らない、こういうことでございまして、私ももう一遍帰国をいたしまして、そうして政府首脳にも経過を報告をし、また全く対立状態になっております状況に対して冷却期間を置いて互いにひとつ考え直してみようではないかと、こういうこともイシコフさんとも話し合いをいたしまして、一時的に中断をして帰国をした、こういうことでございます。  そこで私は、その間にわが国の国論もかつてないほど固まっております。また、超党派の御支援もちょうだいをしておる。国会の決議もここで御鞭撻をいただいておる、また超党派の議員団の訪ソもあって大局的な立場で日ソ友好を訴えられたと、こういうようなことで、条件は私の交渉中とは大分変わってきておるわけでございます。私はこういう情勢を踏まえまして、三度目の訪ソで何とかこの打開策を見出したいという考えでございます。
  61. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、幹部会令の線引きのあいまいな形で仮に決まったとしましても、二百海里というものを設定をするということになれば、当然ソビエトの側としましてはこれは北方領土を線引きするわけでありますから、当然出てくる。そういう意味合いから言いますれば、私はイシコフさんとの間でお進めになっておった領土と魚とを別にしていくというやり方では甘かったのではないか、あるいはもっと言うなら、少し根拠が薄かったというような感じがしてしょうがないわけであります。そこで、まずその点をお尋ねをしたわけですけれども農林大臣が向こうに行っていらっしゃる間に二百海里の線引きについて妥協をするとか、あるいは領土問題についてはどうだこうだというようなことが外務省筋という言葉で流布されましたり、あるいは政府筋という形でそういった問題が流されたりしたわけでありますけれども、私はどうもそこら辺がしっくり納得できないわけなんですけれども、ですから、やはりそこをあいまいな形で表現をするというようなことで領土問題というのが抜けられるというふうな考え方では処理できなかったのではないかと、こういうふうに思っておるわけなんですけれども、いかがでしょうか。
  62. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は、領土問題に直接触れた話し合いをすることにつきまして、この点はいろいろのことを実は考えておったわけでございます。領土問題に触れますと、領土問題が白黒がはっきり決着がつきませんとこの漁業協定が結べないと、こういうことに相なる危険も多分にあると。私は常に頭にありましたのは、北方四島は残念ながら戦後未解決の問題、この問題は田中・ブレジネフ会談、一九七三年のあの会談で合意され、共同声明が出ておりますように、戦後未解決の問題、それにふさわしい漁業協定、具体的には適用海域もしたい、こういう考え方を常に頭に置いてやっておるわけでございます。領土問題こそイシコフさんも私も一言も触れてはおりませんけれども、何とかそういう立場で漁業問題として処理をしたいという考えであったわけでございます。したがいまして、あの三月三日の合意文書には、第一項としてソ連沿岸に接続する北西太平洋の海域でかつ幹部会令の適用を受ける海域と、こう表現をいたしておるわけでございます。  ソ連邦の沿岸に接続する北西太平洋の海域、これはあるいはソ連側は北方四島は自分のものだと、こう考えておるかもしれませんが、わが方は断じてさようには考えておりません。ソ連邦の沿岸に接続する、この点が一つあるわけでございます。第二は、幹部会令の適用を受ける海域、とうございますが、そこに幹部会令を事務当局お持ちになっておると思うのでございますが、幹部会令の中で適用海域をうたっておるのは、まあ日本的な読み方によりますと、第一条がその指定海域を述べておる。その第一条を受けまして、第二条以下も第一条で定められた海域と、こういうぐあいに表現をいたしておるわけでございます。幹部会令の第一条というものは、いま申し上げたような北西太平洋のソ連沿岸に接続する二百海里の海域、こう書いてあるわけでございます。そういうようなことで三月三日の鈴木イシコフ合意文書、これは私は決してわが方の立場を損ねるものではない、こういまでも信じておるところでございます。  しかし、いま鶴園先生が御指摘になったように、そういう玉虫色といいますか、同床異夢といいますか、そういう形では片づかないのではないか、こういう御指摘、それがまさにソ側の協定条文案として第一条でははっきり一九七七年二月二十四日閣僚会議の決定の海域と、こういうぐあいに出てまいったわけでございます。それではこれはとうていわが方としては受諾できない。これは今後の日ソ平和条約の交渉にも非常な影響を与える、こういうことでついに一条問題で合意ができなかったと、こういうことでございます。第二条の問題につきましては、これはイシコフ漁業大臣と私との間におきましては基本的に話がついております。いま実務家にそれを下げまして、修文化を進めておるという段階で中断になったと。しかし、第三条以下につきましては全部合意をいたしまして、修文化も全部完了しております。また、その細目を定めた付属書、この方も全部修文化も進んでおる。問題は、第一条の問題でございます。領土がらみの問題である、こういう状況にあるということを御報告申し上げておく次第でございます。
  63. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 鈴木農林大臣が二回訪ソされまして、さらに政府の特使ということで総理の親書を持って官房長官も訪ソされる、こういう中で中断をしなきゃならぬ、大変私は異常な事態だと思うわけであります。さらにまた続きまして、先ほど川村さんの方からもお話がありましたですけれども、荒勝代表と本当に仮調印の寸前にこれがまた領土問題と絡んで延期されるという事態になったわけです。私は、鈴木農林大臣大臣になられましてから、本当に二回にわたる訪ソ、さらに今回三度目の訪ソになるわけでありますが、そうしてこの漁業交渉の文字どおり先頭に立って活動をしていらっしゃるわけです。そこで、今度三回目の訪ソに当たって、これを二日あるいは三日というふうに早められたのは、荒勝代表のところで仮調印しようとしておったものを暫定協定とともに解決せざるを得ないというふうに判断なさったのが一つだろうと思うのです。  そこで私は伺いたいんですけれども、第三次の訪ソに当たって鈴木農林大臣はどういう新しい立場で行かれるのか、それをお尋ねしたいわけです。
  64. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 今回、超党派の御理解、御支援によりまして、領海法並びに二百海里漁業水域法、これが国会の御決定をいただくと、こうなりますれば、私は交渉に当たって共通の土俵で交渉ができるという新しい立場、条件を付与さしていただいたと、このように認めております。  私は、もとよりイシコフさんと第一回の会談で、わが国も近く二百海里漁業専管水域をやる方針であるということは申し上げてあります。ソ連側もこれは予告として受けとめておったと思いますけれども、その法律が現実に国会の御承認を得たと、実施されるんだということと、これからやるのだと、国会で果たして御承認が得られるだろうかどうかということでは、交渉の足場というものが全然違ってまいります。また、国民世論、国会の超党派の御支援、そういうようなわが国の体制もはっきり固まってまいっております。私は、前二回の交渉よりも今回はしっかりしたわが方の立場に立って、共通の土俵で交渉が行われるということを大変心強く思っておりますし、それを背景といたしまして、私も最善を尽くしたい、こう思っております。
  65. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 荒勝代表が仮調印の寸前に延期せざるを得なかったということについて、一体どういうふうにお考えなのか。新聞等の報道によりますというと、二百海里法案にしても領海法にしても、衆議院を通り、そして参議院も通るという見通しの上に立って、この領土問題はあくまでもソビエト側としては、ということで先制攻撃をかけたのではないかと、こういう見方が有力だというふうに報道されておりますですね。私は確かにそういう点もあるのではないかというふうに思いますけれども大臣はどのようにお考えでしょうか。
  66. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は先ほどもちょっと触れましたように、イシコフさんとの第一回の会談で、わが方も近くやりますよということをはっきり申し上げて、これは交換書簡の中で明記しておるわけでございます。したがいまして、ソ側としてもそのことは織り込み済みの問題である。私は何にも言わぬでおって、今度帰ってきて国会にお願いをして急にやったということであれば、これはどうも信義に反するとかあるいは抜き打ち的にやったとか、こういう批判もソ側から出てくるかもしれません。これは前もってはっきり、わが方も二百海里漁業専管水域を近く設定をする方針であるということも明確に私申し上げておいたところでございます。  それに関連いたしまして、この条文にもございますが、この漁業水域法は本邦沿岸沖合い二百海里に全部しくわけでございます。しかし、相互主義で相手国が二百海里をやらないところはこれを消去法といいますか、ネガティブな形でこれは相互主義で海域の指定から削除をすると、適用しないと、こういう仕組みになっております。そういうことを余り神経質に考えて、中国との間にはしないのではないかとか、韓国との間にはしないのではないか、ソ連だけを相手にしているのではないか、対象にしているのではないか、こういうようなことは、これは私は大変そういう解釈はわが方の基本的な考え方を理解していない言い分である、わが方はあくまで相互主義でこれはやっていくと、できるだけこの二百海里というようなこの海域を分割支配をする、排他的なことをやるということは日本としてはこれは好まざるところでございまして、できるだけこれは避けたい。よその国がやる場合は、これはそれに対応する国益上の措置をとらざるを得ない、こういう立場でございまして、韓国も中国も現時点におきましては二百海里をとっていないわけでございますから、わが方もこれを適用から除外をするという政策をとるということは私はこれは当然のことだと、こう考えております。その点についてあるいは思い過ごしといいますか、わが方に対する誤解等がありとすれば、これは私、イシコフさんに会った際において十分説明をしたいと、こう思っております。
  67. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そうしますと、いま鈴木農林大臣お話を承っておりまして、第三回の訪ソに当たっての政府考え方というのは新しい立場をとったというふうに考えられるわけですが、それはいまおっしゃいますように二百海里、領海法、特に二百海里、これを踏まえましてわが方も二百海里の線引きをやる、ソビエトの方も二百海里の線引きをやるという同じ土俵の上に立ってという立場にお立ちになって、いままで漁業交渉で、争点になっているのは領土問題だということがわかっていながら、実際はそれを避けて通ろう、できるだけ避けて通ろうという形になっておったのを、そうではなくて、今度はいま言ったような形に出てきたと、お行きになるということは、新しい立場に立ってお行きになるというふうに考えるわけですけれども、いかがでございますか。
  68. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 今度は条件、土俵を同じようにつくっていただいたわけでございます。でありますから、ソ連の二百海里の海域にわが方の漁船が伝統的な実績に基づいて入漁をする。同時に今度は、ソ連漁船もわが方の二百海里水域に入ってくるわけでございます。したがいまして、この協定の全条文にわたりまして、それぞれ、今度はソ連にこっちが入っていくだけのことでなしに、日本側に入ってくることも考えながら、この案文の話し合い交渉というものが持たれるというようなことでも大分違います。私は、そういうことで、今後の交渉というものは相互の立場が非常にわかりやすくなる。いままで日本だけのことを考えておったかもしれませんが、今度は日本の海域に自分の方も入ってくることも考えながらやらなければいけない、こういうことになるわけでございますから、そういうことが非常に条件整備ができたと、こういうことを申し上げておくわけでございます。これは一般的な考えとして申し上げるわけでございますが、すべての条文は、ソ連漁業海域に日本が入る協定日本漁業海域に向こうが入ってくる協定、これはいずれもパラレルに物事を考えなければならないと、こういうことが一般的にこれは常識として言われる問題ではないだろうかと、このように考えております。   〔理事鈴木省吾君退席、委員長着席〕  それからもう一つ具体的に申し上げるわけでございますが、第二条についてのイシコフさんと私との話し合いは完全に意見が一致いたしておりますが、これが成文化に当たりまして向こうとこっちの法制上の仕組み、たてまえが違うのでございます。向こうは、ソ連沿岸沖合い二百海里、これに全部漁業専管水域としての幹部会令が適用されておるのでございます。その中にソ連領海というものが存在をする。ところがわが方のたてまえは、本邦沿岸沖合いに十二海里の領海がある。その十二海里の外側に百八十八海里の漁業水域が設定をされる、こういうことで大分法制的なたてまえが違うわけでございます。向こうは根っこから二百海里が幹部会令の適用を受ける漁業専管水域である、こういうことでございますから、協定によっては十二海里の中にも入れてもいいと、入り得るというこれは根拠になるわけでございますが、わが方ははっきり、国会の御決定というものは十二海里までは領海であり、領海ば領土の延長として外国船は一切入れない。その外、百八十八海里がいわゆる漁業水域であって、これは実績等に基づいて一定の条件のもとに入漁を認めると、こういうことで、きわめてはっきりしてまいりましたから、二条問題の成文化につきましても、こんがらかっておった問題もここに明快にこれが処理できる、こういうことも言えると思うわけでございます。
  69. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 どうも私は、先ほども申しましたように、この二百海里法案が通るという、あるいは領海法が通るという、確実視されたという段階で、荒勝代表の仮調印の寸前に、大臣のお言葉ですと、九九%固まっておったものを、領海を絡めましてこれを延期さしたという問題は、これはやはり私は重要視しなければならない出方ではないかと。したがって、状況はなかなか厳しいものがある、こういう感じがやはりするわけであります。  もう一つ、イシコフさんが四月の十九日からECとの間の漁業交渉をやられたわけですが、一ラウンド、二ラウンド、三ラウンドと、結局、実績主義は通らない形でこれまたそのままの形になっておりますですね。このECとソビエトとの間の漁業交渉の問題というのは、これは端的に日本漁業交渉に非常に大きな影響を及ぼすのではないかというふうに考えておりますけれども、そのECとソビエト側との交渉の問題について、政府としましてはどのような検討なり研究を行っていらっしゃるのか、そこらあたりを簡単でよろしゅうございますからお伺いいたしたいと思います。
  70. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は、ソ連とECとの漁業交渉の成り行きにも重大な関心を持っておるわけでございます。と同時に、ノルウェー、デンマークあるいはアイスランド等との漁業交渉にも至大の関心を寄せております。そういうものが、結局わが国との交渉にも微妙に影響してくるであろうということを憂慮するからでございます。しかし私は、イシコフさんに申し上げておるのでありますが、ソ連も遠洋漁業国家であり、わが国も遠洋漁業国家である。この二大遠洋漁業国家がお互いにその漁獲量を大幅に削減し合うというようなことはこれは賢明なことではない。第三国に対してそれぞれ実績の尊重を訴え、できるだけその実績の多くを要請をしていく立場にある両国が、みずからはこの漁獲量の削減をし合うというようなことでは私は主張が弱くなるのではないかと。これはやはり両国は、大所高所に立って、相互の利益になるようにひとつやっていこうではないかということを、私はイシコフさんにも申し上げておるわけでございます。しかし、そうは申しましても、ECその他の国々で失ったところのソ連の漁獲量の穴埋めを、自分の庭先の北西太平洋でできるだけこれをカバーしようというような方針で臨んでくることも、これは十分わかるわけでございます。  そういうようなことから、仮に協定ができ上がりましても、実績の問題になりましても、これもまたいろいろ粘り強い交渉が必要である。何といってもここで申し上げる必要もないほどでして、北海道の漁民諸君を初め日本の漁民が一世紀以上にわたって営々として開拓してきたこの北洋の漁場、これはソ連の漁民が開拓した漁場ではないのです。日本の漁民が開拓をした漁場でございます。そういうようなことで、多数の中小漁業者がこれによって生活をしておるし、また関連の産業もそれによって成り立っておると、こういうような事情もございますので、この実情というものを踏まえまして、私はソ連側の理解も十分得るように話し合いをしておるわけでございまして、今後も努力をいたしたいと思っております。
  71. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 ECの二百海里水域の中でソビエトの漁獲高というのが六十万トンだと、それでEC諸国がソビエトの二百海里の中での実績というのは六万トンだと、これは大変差があるわけなんですが、ですからソビエトとしましてはやはり実績ということを言うのだろうと思うんですけれども、余りにもかけ離れておりますからその折り合いがつかなかったということだろうと思うんです。でありますから、そのことが、ECの二百海里水域からソビエトがこの実績を守り切れないということになりますれば、どうしてもその分を、日本を二百海里の中から悪い言葉で言えば追い出すというような形になってくるだろうと、なってくるというふうに見なければならぬだろうと。事実、きのうの新聞でありますけれども、総評と同盟と中立労連と新産別が、この労働四団体が四月の二十六日にソ連の大使館に行きまして、ソ連の大使に対してコスイギン首相あての申し入れ書を手渡していますね。その際の大使の発言というのが、やはりソ連はECなど二百海里の設定の動きで約六〇%漁獲高を失うんだと、そういう情勢も理解してほしいと、こういうことを言っていますですがね。  ですから、私は、やはりいま大きな問題になっておりますECとそれからソビエトとの漁業交渉、しかも、この漁業交渉は、五月末まではソビエトとしては協定があってできるというんですけれども、したがって五月末までは恐らく妥結に至らぬだろうと、ECとソビエトとの間の妥結には至らぬだろうと、こういう言い方をしておるわけですね。そういうふうに見ていいと思うんですよ。そうしますと、私は先ほど申し上げました、何か今度三回目の訪ソを農林大臣がやられるに当たって、新しい立場に立ち新しい方針に立っていらっしゃいますけれども、しかしそれは私はどうもそう簡単なものではない、むしろ非常にむずかしい問題だと、そこへもってきてECの問題というのがもう一つ大きく覆いかぶさっている、それも五月の末ごろまでに解決すればソビエトとしてはいいわけでありますから、そうしますと今度の訪ソというのはなかなか容易なことではないと、これは大変むずかしい交渉になるのではないかというふうに思えてしょうがないわけでありますけれども大臣はどういうふうに考えていらっしゃるのか。
  72. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 鶴園先生がおっしゃられるように、情勢はなかなか厳しいということも私十分承知をいたしております。しかし、イシコフさんと私との間の数次の会談を通じていろいろ受けとめておる点は、この日ソ漁業関係というのは日ソ友好のかけ橋であると、これが変にこじれてくると日ソ関係全般に大きな影響を持つものであるということ。それからこういう問題はなるたけ早く解決をしないと、日ソ国交全般にも悪い影響をもたらすであろう、こういう認識、これは一致しておるところでございます。私はそこで申し上げておるのでございますが、ソ連の最高指導部が一体日本との友好関係をどのように位置づけ、どのように評価をしておるのか。日ソ関係というものをやはり大事にし、これが両国の将来の友好と発展、繁栄のために大事に考えておるのか。こういうソ側の国際政治に対する戦略の中における日本の位置づけというものをどう考えておるのか、私はこのことが非常に大事な問題だと、ただに漁業の問題だけではないと、こういう認識を持っておるのでありまして、そういう意味合いで、私は超党派の訪ソ議員団の方々が三役の一人である最高会議の議長にもお会いになってこの点を強く訴えられた、こういうようなことは私は非常によかったと、このように喜んでおるところでございます。
  73. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私もいま農林大臣のおっしゃるように、漁業問題というのが日ソのかけ橋だと、日本とソビエトとの友好ということをどう位置づけているかということによって、これは左右されてくる問題だと思います。ただ私の心配いたしますのは、それではそういう日ソの友好を深めていこうというような積極的な着実な努力が行われてきたのかということになりますと、これは私はそういうふうに受け取れないわけであります。いろいろ申し上げてもよろしゅうございますけれども、これは結局向こうは恐らくこれはやはりかけ橋と思うし、こっちもかけ橋と思っているし、また両方の友好のためにいろいろ位置づけをしておると思うんです。しかしこちらの側の外交態勢、政府の姿勢というものが、そういうものを深めるための努力を着実に積み上げてきたとはこれは言えないと私は思うんです。  そういう中で、鈴木農林大臣が三回目の訪ソをやられるわけなものですから、私は大変に御苦労だというふうに思うわけですけれども、やはり国論が統一しておるということも必要であるし、超党派的な議員団が行っていろいろやってきたということ、あるいは農林大臣が三回も行かれて努力をされるということ、あるいは親書を持って官房長官が行かれるということ、しかし何といいましても、やはり日ソ関係というものを友好な関係に持っていく外交姿勢といいますか、それが着実に行われてきていなかったというところへ、特に私はこの一、二年の間そうでなかったと思いますね。それがやはり大きな問題になっているというところから行かれるわけですから——しかしこの問題が解決するということになりますれば、これはまたひとつ前進が図られてくるとも思うんですけれども、そういう点が私はなはだ残念だと思っておりますですけれどもね。  にかかわらず、大変な重荷をしょって一回、二回、そして三回というふうに行かれるわけで、大変御苦労だと、大変御苦労さまでございますと、こう申し上げたいわけであります。だからなかなか大変だなという感じですね。まあ、ミグ25の問題を取り上げてもそうですからね。とにかく福田内閣が成立しまして、三木さんが出てそれから以降の問題見ましても、どうもそんなふうに言えないですもんね。アメリカとの関係についてはそれはね。ですが、ソビエトとの関係についてはどうもやはり政府の外交姿勢として、私は着実に積極的にそういう努力を行われたなんというふうには考えられない。むしろ逆だというような感じすらする。そういう中で大変だろうと思うんでありますけれども、しかし、これは何せいま当面している最大の問題になっているわけでございまして、大変御苦労さまでございますけれども、ひとつ御苦労をお願いしたいというふうに要望する次第であります。  もう一つは、先ほど川村さんも触れましたですけれども、二百海里という問題は、すでに七四年の六月、日本がああいうような形で二百二十五カ国が賛成をして、ただ一カ国日本だけが反対をしたという、ああいう惨めな外交失敗。だから、もうすでにあのときから、二百海里の問題については日本は積極的に考えなければならなかった。ところが依然として、七六年になって初めて政府としては条件つきで二百海里というものを認めるということになった。それでも二百海里の問題というのは、具体的になっていなかったわけですね。そして、今度のソビエトとの漁業交渉によってまさに突如として浮かび上がってきまして、二百海里だという話なんですね。それも、初めは参議院選挙が終わってからの臨時国会という話だったのですが、これを突如として四月までの間とかいうような、まさに驚くべき怠慢というのでしょうかね、これ。外務省というのは、私はこういうような経済外交になれていないように思いますですね。きょう外務省の参事官お見えになっておりますが、私は、いつも外務省というのはどうもこういう問題になれていない。農林省も、どうもこの二百海里問題については大変に甘い。何とかなるだろうというような調子のことでこられたのじゃないだろうかと思う。そんなものは、私はどうも大変理解に苦しむわけですけれども、こういう事態になって、突如としてまさに息せき切っておるのですよ、これ。えらい話ですね、これ。われわれもそのために大変苦労しなければならぬわけで、しかもこう急にやらなければならぬわけで大変なんですが、こういう外交のあり方というのは一体どういうことなんでしょうかね。参事官ちょっとあなたの見解でもいいから聞かしてもらいたい。余りにもこれはひど過ぎるよ。
  74. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) どうも私から余り申し上げるのも確かに自己弁解的になるかもしれませんし、なかなかこういう問題についていろいろな側面がございますけれども、これは、わが国自身は遠洋漁業国の面が非常にあるわけでございますから、海洋法会議では遠洋漁業の実績確保ということが実は最重点でまいったわけでございまして、したがって、三年ぐらい前から二百海里が確かに非常に圧倒的に有力になってきた段階でも、なかなか二百海里の排他的な漁業専管水域そのものをそのまま認めるということは、日本の立場としてはとりにくかったわけでございますし、ちょうどカラカスで二百海里の経済水域というのが、日本とEC諸国を除いて米ソも原則的にこれに同意するという方向にまいりましたときにも、国際司法裁判所では、当時イギリスとアイスランドの漁業紛争の実は判決がございまして、そのときも国際司法裁判所は、当時はまだ国際法上は、十二海里以遠では優先的な権利の主張ができるという形の実は判決だったわけでございます。  ただ、さらにその翌年から交渉が進展して、急速に二百海里ということが国際的に受容されるという状況になりましたので、昨年三月、ニューヨーク春会期——第四会期でございますけれども、これが開かれますときに、農林省とよく御相談して、やはりこれは大勢であるから日本としてはその中で条件闘争をして、内容的に合理的で日本の遠洋漁業ができるだけ守られるような形であれば受け入れるということで、むしろ昨年三月には閣議で経済水域二百海里、特に漁業に関しまして遠洋漁業の実績確保を最重点にしながら受け入れざるを得ないということで踏み切りまして、昨年二会期にわたって交渉したわけでありまして、やはり大勢というものに即応しながらいろいろ条件闘争しなければならないという非常につらい立場に立ってやってきたわけでございまして、この点についてはいろいろ日本の既得権とか、やはり従来の国際法の枠の中で非常に国民全体の努力で発展した海洋国家でありますから、それがやはりまた新しい世界の秩序の中で適応し直さなければならないという状況でありまして、過去の立場というものを簡単に変えるわけにはいきませんけれども、やはり新しい状況に即応しなければならない。そういう二つの目的があって、やはりそこは日本のつらい立場でありまして、外交の観点からも私どももいろいろ悩みがあったわけでございます。
  75. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 とにかく私は、やっぱり七四年の段階で、あるいは七六年の春の段階ではっきりすべきだったと思うんですけれども、それがこういう状態になりまして、まさに急遽ですよ、全く変身、変身ですわ。まず息せき切っちゃって、通せ通せでしょう。全く場当たり的と言うのか何と言うのか、たまったものじゃないという感じが私はしてしようがないですね。こういう外交をやっておられたんでは、どうにもならぬという感じがしてしようがないわけですね。ですが、苦悩のほどば十分推察できますので、さっきまた川村さんからもそういうお話がありましたので、これはこれで終わりたいと思います。  そこで、この二百海里の問題につきまして、先ほど川村さんの方からもいろいろ質疑がありましたですが、韓国と中国を除外をして線を引くんですか。西日本日本海の方は除外をした線を引くわけですか。何か線を引いたものがあるんですか、われわれの手元には来てないんだけれども、線は引いてあるわけですか。
  76. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) これは、法律の第三条の三項で漁業水域の定義がございますけれども、定義のところで領海とそれから政令で定める海域を除くということになっているわけでございます。したがって、政令でこの海域を定めれば漁業水域から除かれるということになりまして、私どもお手元に配付してあると思いますけれども、「政令規定見込事項」という中でお示ししておりますのは、日本海の西部それから東海、黄海、それから東海に接続する太平洋南西部の一部ということで、東海と南西諸島を境にいたしまして、接続いたしております太平洋の一部につきましてこれを除外をいたしたいというふうに考えております。これはまだこういうことを考えておるということでございまして、具体的にどういう部分といいますか、線引きをするかにつきましては、なお検討いたしまして政令で具体的にあらわしたい、かように考えているわけでございます。
  77. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 衆議院の農林水産委員会だったと思いますが、鈴木農林大臣が、西日本の線引きをしてないところにソビエトの漁船団が大挙して入ってくるということになった場合は、直ちに線を引くんだというお話だったですね。その場合に、韓国と中国はやはり除外されるわけですか、線の中でも除外されるわけですか。
  78. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 先ほども答弁を申し上げたところでございますが、日韓漁業協定、日中漁業協定によりまして西日本海域の漁業秩序は安定的に維持されておる、このことは私は大事にしていきたい、そういう前提の上に立ちまして、韓国なり中国が先んじて二百海里をした場合におきましては相互主義で直ちにわが方も二百海里を設定をする、両国がしないのにこちらから先にやるということは避けてまいりたい、このように考えておるわけでございます。  なおまた、いま衆議院の私の答弁に関連しての御発言がございましたが、そういう際におきましては、これは西日本の海域にも二百海里の水域の設定を政令に基づいて直ちにやることに考えております。ただ、この法案をよく御検討いただいておると思うのでありますが、水域適用とまたその適用から除外される漁船漁業者というものもこれもできるようになっております。海域で除外することもございますし、海域を設定してもその海域の中で適用を受けないという漁船もある、そういう国籍の漁業者もある、できる、こういうきわめて弾力的に対処できるようにいたしておるところでございます。
  79. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 もう少しそれじゃ具体的に伺いたいんですけれども、アメリカ側の方は、日本列島の周辺の十八国際海峡ということを主張しておられるのですが、日本は五海峡というふうになさったわけですね。その点の関係についてちょっとお尋ねをしたい。  それからもう一つは、五海峡の中のこの間現地調査で参議院の方は大隅海峡の現地調査をやったわけですね。あの海峡は、十二海里をとりますと海峡ぽっかり入っちゃうわけです。若干ちょっぴり点みたいのが残りますが、ぽっかり入るわけです。あそこは三海里で凍結した形になる、それ以外は公海という形になる。そこに外国漁船が入ってきた場合、操業した場合、心配もしているわけですね。あそこはアジ、サバ等の大変いい漁場です。水揚げ高も鹿児島の水揚げの三割近くを占めているわけですが、そこでそれについてはこの二百海里法によりまして外国漁船禁止をするというお話でございますね。その禁止については非常に細かく規定せざるを得ないだろうと思うんですけれども、ただ禁止をするのか、漁業そのものをそこで禁止区域とされるのか、あるいは細かく規定をして魚類なり漁法なり漁船の種類なりそういうものを細かく規定をして禁止をされるのか、そこら辺のことをお尋ねしたい。いまのところそう実績はないわけですけれども、やはり韓国それから台湾等のことを心配しているわけですね。その辺についてどういうふうな措置をされるのか、お伺いしたいんです。
  80. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) 前半の御質問の五海峡の問題についてまずお答えさせていただきます。  十八ということを先生言われましたけれども、確かに日本は島が多いために、公海と公海をつなぐ水路という意味では相当の数のいわゆる通称の海峡といいますか、そういう水路はあると思いますが、そして二十四海里前後ということで十二海里の領海という場合には領海ですっぽり包まれるというそういう水道が、おっしゃるとおり数としてはかなりあるのではないかと思います。ただ、海洋法会議の実は国際海峡の方はこれはまだ定義が最終的に固まっておりませんで、それに基づく国際海峡というような観点から選んだわけではございませんで、これはいままでの政府答弁からもおわかりいただいていると思いますけれども、あくまでもわが国の総合的な国益の立場から、国際的にこの資源有国あるいは遠洋漁業国として海洋の自由というのを確保する上から、わが国として五海峡の領海幅員は現状維持という立場をとったわけでございまして、その場合に五つの海峡というものの選定をいたしました基準といたしましては、これは公海と公海をつなぐというだけではなくて、やはり大きな海といいますか、大洋を結ぶものであって、そして国際航行に使用されている重要な海峡ということで、やはり外国船が通る頻度とか、そういうものを考えて選んだわけでございまして、その結果、この五つがやはり現状凍結をする海峡として必要であるというふうに考えたわけでございます。
  81. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) いまお話の特定海域のうち、特に大隅海峡ですか、これについての外国人漁業規制をどうするかというお尋ねでございますが、これは漁業水域に関する法律の第五条にございますとおり、特定海域である海域につきましては、外国人漁業はこれはすべて漁法のいかんにかかわらず「漁業又は水産動植物の採捕を行ってはならない。」、こうなりますので、これで禁止されるわけでございます。なお、正確に申し上げますと、この五条の括弧にございますとおり、特定海域のうち、沿岸から三海里から十二海里の間のところ、この海域に属する部分というものが禁止になるわけでございまして、仮にいま本来十二海里以遠のものにつきましては、これは今回の特例の対象にはならないわけでございますので、これは従来どおり漁業は継続をされるということになります。
  82. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そうしますと、いま文字どおり禁止、間違いない。法律はそうなっているけれども禁止する、一切認めない、こういうことですか。
  83. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 五条の規定によりまして、外国人漁業禁止をされるということになっておるわけでございます。
  84. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それで済めば結構な話で、ぜひそういうふうにしてもらいたいと思いますね。しかし、これは問題が起きるんじゃないかなという気がしてしようがないけれどもね。しかしいずれにいたしましても、この二百海里法案というのは突如としてまさに出てきたわけでありますから、このことによって、これはまさに日本漁業政策というものも大変な大きな影響を受けるわけだと思うんですね。しかし、そういった問題について、詳細な検討は恐らくなさらないでこの法案を出さざるを得なかったのだろうというふうに思うわけです。  そこで、中身についてもう少し伺いたいのですが、いま二百海里の問題をこういうふうに設定することによって、日本の一体遠洋漁業というのはどういう大きな影響を受けるのかという点については、いまソビエトとアメリカとの関係で問題になっているわけですけれども、南半球の問題についてはどういうような交渉を持っておられるのか。恐らくことし五月から開かれますところの海洋法会議の結論がどうなろうと、恐らく南半球の日本漁業と最も関係の深い、日本の遠洋漁業に非常に関係の深い、これはニュージーランドから豪州から、フィリピンから、インドネシアから、あるいはミクロネシア、パプア・ニューギニア、ミクロネシアばまだアメリカの統治下にありますが、パプア・ニューギニアから、これは一斉になだれを打って二百海里論を出してくると思いますですね。そういうものに対処して政府としてはどのような交渉を進められるのか、折衝をやっておられるのか、お伺いしたいわけです。
  85. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 中南米あるいは大洋州関係、あるいは東南アジアの国々、いずれも日本の遠洋漁業にとりましてはきわめて関係の深い地域でございます。したがいまして、今回のわが方の二百海里設定につきましても、豪州政府とも外交チャンネルを通じまして、その内容を説明をし理解を求めておるところでございますが、これらのいま申し上げました中南米、南半球関係の諸国に対しましては、いま積極的に漁業技術協力等を進めております。きょうもアルゼンチンの計画大臣がお見えになりまして、漁業の技術協力等についての要請がございました。豪州に対しましても、積極的にそういう面の協力関係を進めております。その他の国々からもいろいろの希望もあり、またわが方からも専門家の派遣をやって技術指導をやる。また、向こうの技術者を受け入れて養殖その他の技術の指導研修もやっておる、こういうことでございまして、そういう友好協力関係の上に立ってその国の漁業の開発振興に寄与し、またその国の消費を賄ってなお余剰が出るというようなもので、わが国の関心を持つところの魚種につきましては、これをわが国の市場に受け入れをすると、こういうような相互の利益になる形で協力関係を進めております。  こういうことが、今後のそれらの国が二百海里等の実施をいたしました場合に、あるいは合弁の事業をやるとか経済協力をやるとか、あるいは日本漁船のある一定数をその漁場で実績に基づいて操業さしてもらうとか、そういうことがそこから出てくると思うのでありまして、私はただ実績があるからといって、その実績だけを主張しておっては今後の二百海里時代に対応できないと、そういう広い視野に立って今後の漁業外交を展開をしていくと、そういうことで取り組んでおるところでございます。
  86. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 二百海里問題について、私は政府の経済外交あるいは漁業外交というものが後手後手に回っておるという点は痛切に感じておるわけですが、ソビエトの問題にいたしましてもアメリカの問題にいたしましても、通知を受けてから腰を上げるというやり方で、とても腰が重い。いま一番やっぱり不満がありますのは、そういうアメリカが通知をした、ソビエトが通知をした、そこから腰を上げて、さて交渉が始まるというんじゃどうにもならない。もうわかっておるんだから、もう二百海里時代に突入してしまっておるんだから、だから積極的にやはり漁業交渉というものをやっていかなきゃならないのじゃないか。私もいろいろやっていらっしゃることは承知しております。しかし、一般のこれは特に南半球についての不満は、これは後手後手、後手後手だけれども、その後手もいいところだ、通知してから腰を上げると、農林省というのは、政府というやつは。そういう感じですね。ですから、私は通知してからどうだということじゃなくて、もう怒濤のようにせきを切ったようにこれは二百海里になる、もう二百海里ということの前提に立って、いろいろひとつ漁業交渉をやって安全操業、そうしてそういう実績を確保していくような努力をしてもらいたいと思いますですね。  アメリカとかソビエトと違いまして、発展途上国でありますから非常にやりいい点もありますし、相互互恵の立場からこの問題について積極的にひとつ努力を願いたいと思いますですね。この四月の二十三日、ニュージーランドの副首相が国会内で記者会見をやって言っておりますですね。八月以降に宣言すると、ニュージーランドが。こういうわけですね。そしてその中に、宣言に当たっては伝統的な操業国である日本と協議をしたい、こう言っておるわけですね。そしてニュージーランドの牛乳、バター、酪農製品、こういったものとひとつ、というような話をしておりますね。早いです、これ。ですから、私はこの間も農林大臣に南半球の問題について要請をしたわけですけれども、ぜひ通知があってから腰を上げるというんじゃなくて、積極的にひとつやっていただきたいと。まあ水産庁の手が足りませんわな。見とったって手が足りぬから、去年のいまごろ私は水産庁の人間を少しふやしたらどうだという話もしたんですよ。外務省外務省でだらしがないですからね。だらしがないと言うとかっこう悪いですが、やっぱり漁業専門家がいなけりゃいかぬから、そういう大使館にもそれぞれ駐在さしたらどうだというような話もしたわけですが、いずれにいたしましても、この問題については速やかにひとつお取り計らいを、積極的な交渉や折衝をしていただくように、基本的な考え方は農林大臣お話でよくわかりましたので、ひとつぜひ進めていただきたい。  それから先ほど私は歴史的な段階に入ったと、もうすでに入っちまっているということでありますから、いろんな面で漁業政策の転換を図らなきゃならないという時代に来ている、そのときに来ていると。去年は水産庁が法案を続々と出しまして、五つぐらい出しましたですかね、去年の通常国会には。農林省の中でも、水産庁は五年分の仕事をしたというふうに言っている人もおりましたですけれども、余りこれは二百海里を問題にしたやつではなかったというふうに私は思っておりますが、そこで昨年の国会で、五十一年の通常国会で成立をいたしました漁業再建整備特別措置法、この問題もこれはもう根本的に考え直さなきゃならない。いまのような自主減船という形ではどうにもならない。速やかにこれは改正する必要がある。いまのような自主減船で、そして残ったものが融資を受けてやるというような措置ではどうにもならぬのじゃないかというふうに思いますし、先ほど大臣が、沿岸漁場の開発や整備についても大いにやるというお話でありました。私は、ちょうど去年のいまごろ、水産庁が大変な法案を五つも出しましたから、その際に伺ったんですが、五十一年度から七カ年計画で沿岸漁場の開発整備を行うことになっていますですね。七年計画で二千億円なんですね。そのとき私は、国土庁が発表したところの資料によるというと、いまから五年で、経済的に技術的に開発できる沿岸漁場というものが千二百万ヘクタールぐらいあるという具体的な数字を出しておるわけなんですよ。千二百万ヘクタールあると、五年間でいまから経済的に技術的に。ところが、農林省が昨年を初年度とする七年計画で二千億円の事業費でやられる面積はその一%なんですよ。十二万ヘクタールなんです。そんなことで、二百海里をそこの目の前に控えてどうするんだという話を大分しつこく私やったんですよ。ところが、わが政府は二百海里を認めていないと、二百海里を前提にして物を言うわけにいかないというような話をされるわけですね。そんなことじゃないじゃないかという話をしたんですけれども、どうなんですかね、これ。大臣も大いにやりたいとおっしゃるんですけれども、数字は出ているわけですよね、国土庁が発表しているわけですから。千二百万ヘクタールある中で一%ぐらいを七年計画でやるというような話ではとても私はできないと、こういう問題も抜本的にこれはやる必要があるというふうに思いますですね。まあそういったことや、どれやこれや、私は水産政策というものをこれはあらゆる面から見直さなきゃならないという段階に来たというように思っておりますですね。  なお、日本列島を中心といたしますこの二百海里、大変な水域を抱え込む。その中における魚族の研究調査というのはほとんど行われていないと言っても過言じゃないと思います。今度初めてじゃないでしょうか、三億幾らの金をつぎ込んで調査をやろうというのですね。そういうことで、私は二百海里に対応する対策というのは、ほとんどできていないというふうに言い切りたいわけなんですけれども、新しく水産庁長官になられた岡安さんに伺いたいと思いますですね、この間なったばっかりだから。
  87. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 確かに私ども、こういうような時代が来るとは思っておりましたけれども、このようなテンポで二百海里の時代というものが到来するというふうには確かに考えておりませんでした。したがって、いろいろ準備は進めておりましたけれども、その準備が完成するテンポと現状とが必ずしも合っていない点は認めざるを得ないわけでございます。したがいまして、私ども現在ある制度、法制等はフルに活用いたしまして現状に対処するつもりでございますけれども、なおかつそれで不備な点がございますれば、やはり早急に体制を整えてやらざるを得ないというふうに思っております。  いま御指摘わが国二百海里内の水産資源等の問題につきましても、かねてから調査はいたしておりますけれども、それでは、じゃ完全な現在の資源状態の把握をするようなデータがあるかと申し上げれば、データの整理等につきましてもまだ十分でもございませんし、また調査そのものにつきましても必ずしも満足するような状態に至っていないと。そこで、五十二年度の予算におきまして、全国を七つの海区に分けまして標本船を置いて調査をするということもやっておりますし、既存のデータを電子計算機にかけて整理をするということもお願いをいたして成立いたしております。若干おくればせの点はございますが、新しい事態に対応してできるだけのことはすると、またそれはある程度はできるのではないかというふうに思っております。
  88. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は去年のいまごろも盛んに主張したのは、国土庁が発表している数字というのはこれは水産庁がお出しになった数字に違いない、国土庁自体が持っているわけじゃないんだから。その中で国土庁が言っているのは、千二百万ヘクタールというものがあると、その中の百万ヘクタールというのがいま使われていると。が、なお千二百万ヘクタールというのがいまから五年間で技術的に経済的に可能なんだということを言っておるにかかわらず、水産庁が初めて七年計画で行うものが、その中の一%ですよ。一割じゃない、一%をやりましょうと。これはまあ、二百海里の時代ではなかったと言えばなかったと言ってもいいですよ。しかし、私はもう去年から二百海里時代に入っていると思っているから、盛んに主張したわけです。ですから、そういう問題を根本的に取り上げていくには、やはり特別措置をしないと私はどうにもならぬだろうというふうに思いますですね。そういう体制をとって、そしてこの二百海里後の日本列島周辺の二百海里というものを、大臣のおっしゃるように積極的にやはり開発しなきゃいけないというふうに思いますけれども大臣のひとつ考え方を伺いたいと思います。
  89. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 御指摘のとおり、二百海里時代という厳しい現実が、われわれ漁業関係を担当しております水産庁だけじゃなしに、政府全体としても、また全国民的な立場で、今回はだでもってしっかりと受けとめたわけでございます。私は、食糧政策という観点からも、これは今後一層力を入れていかなければならないと。大蔵省その他財政当局、政府全体としても、この厳しい現実を踏まえて、今後の二百海里時代に対応するところの日本列島周辺沿岸漁場の整備等につきましては最善を尽くすと、こういう方向で私も努力をしてまいる所存でございます。
  90. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 最後に。私も大臣のおっしゃいますように、食糧政策として漁業を、水産業を位置づけて積極的に開発をしていくという点については大いに賛成でありますし、また期待が持てるというふうに思っておりますが、ただ、きのうも参考人から、根室の市長がおっしゃっておられたんですけれども、輸入をしようという勢いが大変強いという話がありまして、私も、これはやはり何らかの対策をとらないというと、全く無秩序な形で殺到してくるというふうに思いますですね。それで、出ましたのはこれはこういうことでありまして、どうせ大変日本は二百海里の問題で漁獲制限される、今後数年間にわたって相当な大きな打撃を受けてくるであろう、したがってわが社に輸入さしてくれということで、モスクワには四十八社が行っているというんですね。大変モスクワはにぎやかだというわけです。こんなものは、これは漁業外交の足を引っ張るのもいいところですね。このことは、根室の市長がそういうふうにおっしゃっただけではなくて、それはまあそういうふうに聞いたというお話でありましたが、私は本で見ました。この四月に出ました本で、座談会の記事の中で、水産業界の代表の方が、四十八社がモスクワに行ってモスクワは大変にぎやかだという話を聞いたわけですが、また新聞等報道によりますと、各国の大使館の水産担当の人が、とにかく日本の輸入商社に対して大変な売り込みをやっているという話ですね。これは全く、一体日本水産政策というのはいまここでどういう状態になるんだろうかという危機すら感じますですがね。これはしかし政府としてどうというわけにいかないんでしょうけれども、これは私は大変な事態になってくるおそれを感じますですね。それこそ怒濤のようにまたこれは水産物が入ってくるという可能性を恐れなけりゃならぬのじゃないかというふうに思っておりますけれども大臣のお考えを聞きたいと思います。
  91. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私も新聞や週刊誌にそういうことが載っておるということも聞き及んでおります。しかし、私もモスクワで半月ぐらい前後行っておるわけでございますけれども、大手漁業会社とか、あるいは商社とか、そういうものに一度もお目にかかったことがございません。私は、日本の大使館の方にもそういう情報がないようでございまして、果たして四十何社が行っておるというようなことが事実であるかどうかということを疑問に実は思っておるところでございます。しかし、それはそれといたしましても、私はこういう厳しい日ソ漁業交渉をやっているさなかで、多数の沿岸漁業者を初め漁船が係船をして苦悩を続けておると、こういう段階におきまして、もしそういう不心得な者がありますれば、これは断じて許されない、まさに反国民的な行動であるとさえ私は言わざるを得ないと、こう思うわけでございます。なお、魚種によりましては、スケトウタラのごときは、これはIQ品でございますから、政府としてはそういうものは絶対に輸入を認めると、割り当てを認めるということはいたしません。この点は、はっきり申し上げておく次第でございます。  ただ、全体としてこういう二百海里時代になってくる、わが国は開発途上国に対して技術協力、経済協力等をやって、その国の沿岸漁業の振興に協力していくと、私はそうして漁業開発によって得られた漁類資源というものは、第一義的にその国の消費に充てる、福祉に寄与するというのがこれが本来の姿であると、このように考えております。なお、その間におきまして余剰が出る、そしてわが国にとりまして必要なもの、関心のあるものにつきましては、これは二百海里時代でお魚が少なくどうしてもなるわけでございます。消費者のこともございますから、これはそういう開発途上国等において増産がなされ、余剰部分でわが国の国民生活に必要なものは、これは入れてあげるというような政策はとってまいりたいと考えております。  ただ、その際に、沿岸漁業によるところの漁獲物でございますから、わが国沿岸漁業者のとるところの魚種と競合するものが私はたくさん出てくるのではないかということでございます。したがいまして、今後いま私の構想の中にありますけれども、それをどういう形で受け入れをするかと、この問題が非常に大事だと思っております。もう商社に任してばらばらにそれが入ってくるというようなことでは、これは結果的にわが国沿岸漁業者を圧迫することになる、こういうことでございますので、全漁連その他の沿岸漁業団体等を中心とした何かの受け入れ機関というものをつくって秩序ある輸入をやっていくと、または開発途上国のわが方の協力によって漁業を盛んにした、ところがそれを売るところがないというようなこともあり得るわけでございますから、そういう点を実効あらしめるために、わが方でも必要なものは受け入れる。秩序ある輸入、その受け入れ体制をどうするか。これは今後重大な課題として私は早急に確立をしたい、こう考えております。
  92. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 きょうのところは、これで終わります。
  93. 青井政美

    ○青井政美君 私も、自由民主党の立場から、現在御提案の領海法案及び漁業水域に関する暫定措置法案の問題につきまして、与党の立場から大臣並びに岡安長官にお尋ねをいたしたいと思うのでございます。  御承知のように、海洋秩序をめぐるもろもろの問題点は、国連の海洋法会議以来御承知のように南北の問題だとか、あるいは先進国と後進国との問題であるとか、いろいろ合議がなされぬうちに諸外国においてのやはり権益確保の見地から逐次進めてまいったわけでございまして、水産日本という立場で考えてみますときには、やはり世界の海でとっておったという日本漁業という立場からは非常に大きい問題点があり、今後の日本漁業をどのような状況に進めていくかという問題が、端的に申し上げますならば、二百海里時代というものにつきましては非常に大きな御苦労を願うと同時に、問題をより積極的に進めなければならないのじゃないかというふうに思うのでございまして、特に今後の日本漁業の展望について、大臣並びに長官の所見を伺いたいのでございます。
  94. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 厳しい二百海里時代が現実のものとして到来をいたしまして、わが国漁業に与える影響はきわめて甚大なものがあり、かつ深刻なものがあるわけでございます。こういう二百海里時代に対応いたしますために先ほど来申し上げますように、技術協力、経済協力、いろいろな総合的なこれに対するところの漁業外交を展開をして、できるだけ沿岸国との理解と協力のもとにわが国漁業実績をできるだけこれを確保するということが第一点でございます。  第二点は、それにしてもやはりわが国の遠洋漁船操業の場というものが狭くなってくるわけでございますから、新漁場の開発、未利用資源の有効利用、そういう面にこれまた力を入れていかなければならない。  第三点は、結局、日本列島周辺沿岸、沖合い漁業、これを的確な資源調査の把握の上に立ちまして沿岸漁業の積極的な振興、これを図ることが必要である。  第四点には、わが国沿岸でとれるイワシ、サバ等のような多獲性の魚族、栄養価も高い、こういうものがミールになったり、肥料になったり、あるいは魚の養殖のえさになったりというようなことは、資源的に見ましても非常にこれはむだになると申しますか、もったいないことでございますから、そういうものの有効利用、できるだけこれを国民の食ぜんに上せるようにいたしたい。そのために保蔵、加工、流通の根本的な改善策を講ずる必要がある。このように私は考えていく必要があるわけでございまして、そういう意味で総合的なわが国漁業政策というものを、この厳しい二百海里時代を踏まえて再検討し洗い直して、新しい体制を確立をして対応する必要がある、このように心得ております。
  95. 青井政美

    ○青井政美君 先ほど来、川村委員鶴園委員からもお話がございましたように、近年、わが国沿岸ソ連等の大型漁船というものの本格的な操業が始まってまいりまして、わが国沿岸漁業は、漁船やあるいは漁具に非常に大きな被害を受けておるというのが実態だと思うのでございまして、このような影響をこうむっておる沿岸漁業者の心境なり対策なりというものが非常に大きな課題だと思うのでございまして、この考え方の中には、やはり領海十二海里の設定を過去においても切実に要求をしておった漁民の考え方というものが、日本政府としてはやはり領海法の設定がおくれたのではないか、立案が少しおくれたのではないかというふうなことを批判せられる者がたくさんおるのでございますが、現在までおくれてまいったという状況についての見解を伺いたいのでございます。
  96. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 特にわが国沿岸外国船による漁業被害が大きくなりましたのは、昭和四十九年がピークでございます。それ以前にも非常な損害を受けておりましたけれども、四十九年を境といたしまして非常な被害を受けましたので、沿岸漁民からは、この損害を防止するために一日も早く領海の幅を三海里から十二海里にしてほしいというような要望が出てきたわけでございます。政府といたしましても検討をいたしました結果、やはり領海は十二海里に拡張すべきであるというような方針を昨年の一月には決定をいたしたわけでございますが、その実施態様等につきましては、御承知のとおりまだ国連海洋法会議におきまして、これが多数国間の合意によりまして決着がつく見通しが非常にあったのでございまして、その様子を見まして実施の時期を決めるという態度であったのでございますが、残念ながら海洋法会議の会期を重ねましてもなかなかそれが実現をすると言いますか、最終的に多数国間の合意が成立をするという見通しが立たないものでございますので、その間様子を見たという点において実施はおくれましたけれども、ことしに至りまして、漁民の方々の御要望にこたえて、わが国として実施に踏み切ったというような次第でございます。
  97. 青井政美

    ○青井政美君 今回の日ソ漁業交渉におきまして、ソ連わが国の三海里の外、いわゆる十二海里の領海の中で入漁の要求をしてきたというふうに聞いておるわけでございまして、またわが方の領海の十二海里の設定がおくれたからそのようなことを言っておるのかどうか。先般、日ソ漁業の超党派の議員団として出てまいりましたときにも、イシコフ漁業相が、相互主義をとれば現状の時点においてはそのようなことを言っていることも有効ではないかというような意味の発言があったのでございますが、この問題に対しまする見解を伺いたいと思うのでございます。
  98. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この問題につきましては、イシコフ漁業大臣と私の間では完全に意見の一致を見ておるわけでございます。わが国領海の幅員を十二海里にした場合においては、この領海の中では一切外国船操業させない。その際に、いままで三海里領海時代に、三海里と十二海里の中でソ連が上げておった実績というものは、今後十二海里の外の百八十八海里の漁業水域の中における漁業実績にこれを加算をしてクォータを決定する、それを基礎にしてクォータを算定をする、こういうことを申し上げて、なおまた、そのためにイワシ等が十二海里の外では十分とれないというようなことがあった場合には、ソ側にこれを輸出してもよろしい。また、外貨事情その他の関係で、わが方の関心を持っておるスケトウダラその他の魚種と一定の適正な価格で評価をした上で物々交換をしてもよろしい、こういうことも申し上げて、十分理解がいっておるところでございます。つまり、十二海里の中ではソ連漁船操業は一切認めない、こういうことにいたしております。  ただ、青井先生もよく御存じのところでございますが、ソ連の法体系は、ソ連沿岸沖合い基線から二百海里の間全部に幹部会令が適用をされる。言葉をかえますと、ソ連の主権的権利が行使される、こういうことになっております専管水域でございます。その中に十二海里の領海が存在をすると、こういうことでございますから、ソ連の法体系としては、沿岸から二百海里の間には、他国との協定によって操業も認められるという法体系になっておる。ところがわが方におきましては、基線から十二海里までがこれが領海であって、これは外国漁船は一切操業はできない。その十二海里の外百八十八海里がいわゆる漁業専管水域である。こういうことで、この百八十八海里の中には、過去における伝統的な実績、また一定の条件、漁法等によってこの操業を認める、こういう仕組みになっておるわけでございます。法体系がソ側と日本側が違うということで、イシコフさんが、そのことば非常によくわかる、しかし、お互いに別個の協定によって領海の中でも操業を認め合うという方法もあるのではないかと、こういうことを言うわけでありますが、それは、ソ連の法体系ではそういう道が開かれておるけれども、わが方では認めるわけにはいかない、こういう根本的な違いがあるわけでございます。あくまでこれは両国の合意が成立をした場合に協定ができるということであって、わが方は絶対にそういう協定を結ぶ意思もないわけでございますから、この問題はきわめて明確になっておるということを申し上げておくわけであります。
  99. 青井政美

    ○青井政美君 若干の予定がございますので、相沢先生にこれから引き続きお願いして、残りの時間は先生が済んだ後でやらしていただくと、こういうことにいたしたいと思います。よろしくお願いします。
  100. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 鈴木農林大臣、大変どうも御苦労さまでございます。連休中には三たび日ソ漁業交渉のために訪ソされるようでございまして、いまや日本国民はその成り行きを見守っておるわけでございますので、しっかり取り組んでいただきたいと思います。  さて、水産王国としてその名をほしいままにしてきた日本が、諸外国の二百海里経済水域あるいは漁業水域設置へ踏み切っていくという、こういう世界の趨勢の中で、わが国にとっては日本漁業史における歴史的な転換を迫られている、またいわば漁業維新を迎えている、こういう状態になっていると思うんです。すでに外国漁船による日本沿岸における漁業被害というものは近年増大しておりまして、いわゆる沿岸漁民からのやかましく領海を十二海里に広げるべきだ、こういう声が高まって、ここ最近農林省は、政府部内においては十二海里へいち早く踏み切らねばならない、こういう意思を決定してこられたわけなんですが、早晩二百海里時代を迎えるそのためのいわゆる対応ですね、準備というものを速やかに進めなければならない、こういう点は非常にやはり甘い見通しで来たんではないか、このように思われます。  日ソ漁業交渉を行うに当たって、ソ連の方から二百海里を先に宣言されて先制パンチを食らい、また線引きの問題で交渉が難航し、結局同じ共通の土俵で話し合わねばならないということで、今回領海法そして漁業水域に関する暫定措置法を急遽提案された。ところが、この二百海里時代という新しい漁業時貸対応するための広範な具体的な準備というものが立ちおくれたために、今回提案されたこの両案を見ても、条文はきわめて簡素きわまりなく、ほとんど政令にゆだねられているという現状でして、きょうこの本院の委員会での審議に先立って、先ほど両法案に対する「政令規定見込事項」というものが私たちに渡されました。まあ非常に、こういう重大な法案の審議に当たってまことに遺憾なことだと思うわけです。鈴木農林大臣は、大臣就任以来大変な難問と終始御熱心に取り組んでおられまして、その点は大変評価をし、また期待も申し上げるんですが、鈴木農林大臣自身はかねがね与党の中にあっても水産行政については非常に明るい立場にいらっしゃいますし、そういったことで、世界の趨勢がこういう急テンポで二百海里時代を迎えるんだと、それにいち早くわが国としては対応しなきゃならない、こういう予測に立って水産庁等に警告し、またそういう準備に対する側面からの応援をされてきたのかどうか、それとも、大臣に就任されて直接担当されて、これは大変なことになったと、こういうことでいまあわてられているのか。これまでの認識の甘さ、対応の遅さを痛感をされているのか、その辺のところをまずお伺いしたい。
  101. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) いろいろの経過がございます。また紆余曲折もあったわけでございますが、結果的に二百海里時代に対応がおくれたということは私も率直にこれを認め、遺憾に存じておるところでございます。  私は、就任前から長年与党の水産議員連盟の会長をずっとやっておりまして、政府与党の水産政策につきましては常に関心を寄せ、また鞭撻もしてまいったところでございますが、なかなか野にあって自分の思うように全部いくというわけにはまいりませんで、そういうこともございまして、私の意に沿わなかった、反したところもございます。こういう点を、自分の力の足らないところを申しわけなく考えておるところでございます。  ただ、ソ連に先んじてわが方から二百海里をやった方がよかったのか、またソ連に続いてわが方が二百海里体制に入った方がよかったのか、この点はなかなか微妙なところだと思います。北洋の漁場わが国漁船が多数入っております。ソ連側が北西太平洋で二百海里をしない前に日本がやると、そしてわが国の二百海里の中でソ連に対していろいろの管轄権を行使するというようなことが果たしてよかったかどうかということは、この点は非常に微妙な点であると、こう思っておりますが、とにかくそれはそれといたしまして、二百海里時代に対する対応が結果的におくれましたことを、大変私遺憾に存じておるところでございます。
  102. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 まあ二百海里時代を迎えることは、もうこれは世界の趨勢になってきていることはもう大分前からわかっているわけですが、そうなりますと、ソ連もこれまで遠洋でとってきた地域から、よその国から締め出されると、そのはねっ返りがわが国にも来るであろうということは、当然これは予測されることであります。今回の場合は余りにも厳しいソ連側の態度ということで、やむなく急遽こちら側としても二百海里を設定しなけりゃならぬと、こういうことになったわけです。じゃその設定した後にくるいろんなこの対応策については、もう少しやはり水産庁としては事前準備というものがなされていなくてはならなかったんではないかというふうに思います。また、当委員会でも私どもの党の先輩委員が、早晩世界は二百海里時代を迎えて日本も対応せざるを得なくなるということは、かねてからこの委員会質疑を通して政府に対しても警告を発していたところでありまして、そういう面では、やはり政府とししても相当の反省をなされなきゃならないんじゃないかと思うんです。きょうは一時間の質疑予定時間でもございますので、三つの問題についてお尋ねをしていきたいと思います。  一つは、日ソ漁業操業協定との問題であります。それから二つは、特定海域の外国漁船にかかわる問題、それから二百海里設定に伴う中国、韓国除外のことにつきまして、対ソ交渉を今後どうするのか、以上の観点からお伺いしていきたいと思います。  日ソ漁業操業協定がさきの七十六国会で承認されて、一昨年の十月二十三日に発効したわけでございますが、その発効後もわが国沿岸漁民の受ける被害というのは増加をしているわけでして、それによっての十分な補償は全く現時点では行われていない、こういう状況です。そこで、日ソ漁業操業協定がその第一条で、わが国の地先沖合いの公海水域適用することとなっておりますけれどもわが国の二百海里漁業水域が発効されると、二百海里の漁業水域漁業に関する限り公海とはみなされなくて、当然この協定適用されなくなるんではないか。わが国国内法によって規律されてくることになると思うんですけれども、この日ソ漁業操業協定と二百海里漁業水域との適用関係、これは今後どのようになっていくのか、水産庁長官ですか、御説明いただきたいと思います。
  103. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 御指摘のとおり、現在ございます日ソ漁業操業協定第一条にその適用範囲がございまして「公海水域」とありますが、公海は領海以外の部分ということを指しております。また、今回御審議を願っております漁業水域に関する法律で設定されます漁業水域でございますが、この漁業水域におきまして、わが国水産資源の保存及び管理につきまして一定の管轄権を持つわけでございますけれども、やはりこの漁業水域は公海であるというような考え方に立っておりますので、この漁業水域に関する法律が制定施行になりましても、この日ソ漁業操業協定は、十二海里の領海以外の公海におきましては有効にこれが働くというふうに考えております。
  104. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 外務省は、この点はどういうようなことを準備されておりますか。
  105. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) お答え申し上げます。  ただいま岡安水産庁長官の言われたとおりでございまして、この日ソ漁業操業協定の一条で公海水域適用があるということはいま先生が指摘したとおりでございまして、日本が今度いたします漁業水域もこれは公海に漁業水域適用するということでございますから、この点は従来どおり日ソ漁業操業協定適用というのはあるということでございますが、ただ御存じのとおり、領海十二海里に拡張されますから、従来は三海里だったのが十二海里になるという意味では、日ソ漁業操業協定適用水域である公海部分がそれだけ狭くなるということはございますけれども、二百海里の漁業水域法律によってその点適用がなくなる、日ソ漁業操業協定適用がなくなるということは全くないわけでございます。ただ、日ソ漁業操業協定は、これは日ソの双方の漁船が混在する水域において、事故防止とかそういう観点からの取り決めでございまして、漁業水域の方は逆に入漁外国に認めない水域で、入る場合には許可を要するということでございますから、これはそれぞれの目的が違うということでございます。
  106. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 それでは、二百海里法案の第四条によりますと、「外国人漁業水域において行う漁業及び水産動植物の採捕に関しては、政令で定めるところにより、我が国の法令を適用する。」こうあるんですが、実際、この二百海里法には各所に先ほど言ったように政令委任規定があって、政令適用除外を設けることによってはザル法になってしまうおそれがあるわけなので、この第四条の政令の中身について農林省としてまずどのように考えているのか、この際、詳しくお聞かせいただきたい。  その後、外務省として、農林省との間の協議事項においていまだまだ問題点として残っているところがあるのかどうか、御答弁をそれぞれいただきたいと思います。
  107. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) これにつきましては、お手元に「政令規定見込事項」というのをお配りいたしておりますが、そこにございますとおり、この四条の政令におきましては、海上保安庁法、刑法、それから刑事訴訟法などのわが国の法令をこの漁業水域適用するように定めたいというふうに考えております。
  108. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) 農林省との協議に関しましては、これは現在いろいろ打ち合わせ中でございますが、全くその点についての意見の何と言うか、食い違いというようなものはございません。
  109. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 この第四条によりますと、わが国漁業水域内での外国人操業については国内法令によって規律され、そしていま「規定見込」によりますと海上保安庁法、刑法、刑事訴訟法等が適用される見込みであるということですね。そこで漁民が被害を受けた場合に対する補償はかなりの程度実効が伴う、こう期待されるわけですけれども、この二百海里以内の裁判権並びに漁民の被害を受けた場合の補償については本当に安心していいんでしょうね。この辺、どうも関係者から不安がられていると思います。さらに、被害が発生してからの対処はそれはしておかなきゃならないのですけれども、できれば被害が発生しない方がいいのですから、その予防対策としてやはり万全をあらかじめ期していただきたい。この予防対策の具体的な措置としては、何かお考えになっているのかどうか。
  110. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 一般的に、漁業水域内におきます外国人漁船操業につきましては、資源状態との見合いにおきまして、乱獲の防止のほかに秩序ある操業をしてもらわなきゃならぬということになるわけでございます。したがって、私ども漁業水域内におきまして外国人操業を認める場合におきましては、農林大臣許可を受けさして操業を認めるわけでございますが、許可に当たりましては、先ほども御説明いたしましたとおり、わが国漁業等と競合等をしないように、またわが国漁業者資源保護のためまた漁業調整のためにみずから休漁、禁漁をしているような場所においては、やはり外国人漁業者に操業を認めないというような制約を付すつもりでございますので、一般的には大幅にトラブルの発生等は防止できるものというふうに考えております。  ただ、万一違反をした場合には、当然これはこの法律によりまして処罰その他が行われるわけでございますが、ただ損害賠償その他の話になりますと、これは先ほど申し上げましたように、漁業水域は公海としての扱いを受けるものでございますので、損害賠償請求に係る裁判管轄ということになりますと、これは加害者の属する国の裁判所がこれを行うということにならざるを得ないわけでございます。したがって、私ども規制を厳にし、また取り締まりを励行することによりまして、トラブルまたは損害が起こらないように、損害発生の防止のために万全を期すというように考えております。
  111. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) 外国に対しても、この漁業水域二百海里というものの設定に関しましては、外交ルートを通じましてその法律及び政令を周知徹底させるということで準備しております。それからこの通報を行う場合に、外国漁船漁業水域内で違法に操業した場合には、まさに漁業水域法それから適用される先ほどの刑法、刑事訴訟法等に従って措置をとるということも明らかにするわけでございまして、この点、海上保安庁等とも密接に協力してまいるわけでございます。
  112. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 そこで農林大臣に今度お尋ねをしたいんですけれども、これまで北海道、東北における過去の被害、それから今後もあるいは処理し得ない被害は起こり得るだろうと思うのですけれども、そのために関係者の中からは外国漁船被害救済制度を政府の責任でこの機会に発足させてほしい、させるべきだ、こういう強い要望があるんですが、これについていかがお考えですか。これまで損害補償に十分力を果たせなかった政府としては、この際やはりそれぐらいの努力はしていただきたい、すべきであると思いますが、いかがですか。
  113. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) これは政府委員の方から御答弁がなされたと思いますが、基本的には民事の問題でございまして、加害者が賠償責任を負うと、こういうことになります。これが早く処理されるようにソ側に対しても、あるいは韓国側に対してもその促進を図っておるところでございます。ただ、それが延び延びになっておる、また漁業経営上非常な影響をこうむっておるというものに対しましては、これは損害賠償をかわってやるということではございませんが、漁業経営安定資金というようなものを、別途の考慮の上に融資の措置を講ずる等の対策は講じてまいる考えでございます。
  114. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 これまで協定はできてはいるんだけれども、実際に現場ではそれが処理されないという点に不満があるわけですね。ですから、これまでずいぶん被害を受けてきた、さらに今回この二法案が成立したとしてもやはり被害は同じように続く、問題処理は解決されない、しかもいろんな点で経営が圧迫されてくると、こうなりますと踏んだりけったりということになりますので、もし直接政府が補償ということができないというならば、いまおっしゃったような経営安定資金の面で十分それを補えるように対処していただきたいし、その紛争が起きないような予防の対策というものについてはまた別途考えて対応していただきたいと思うんです。  次に、特定海域の外国漁船の問題でさらにお尋ねしておきますが、五つの特定海域における漁業の問題ですけれども、昨年暮れから今年の二月ごろまで津軽海峡でソ連のトロール船が操業して、地元の漁民はソ連船の乱獲で魚道が破壊されたこともあって根づけ魚さえもいなくなってしまったと嘆いていますし、また対馬海峡の方では韓国漁船があらわれてきていると、こういう状態で、ここで確認の意味でお尋ねをしておきたいのですけれども領海を三海里に凍結する五つの特別海域において外国漁船操業にどう対処するのか、この点について明確にひとつ。
  115. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) これは御審議をいただいております漁業水域法第五条で、外国漁船操業はこれを禁止する方針でございます。
  116. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 これが現場でいまの明言どおりに実施をされるように、水産庁としても取り組みをしっかりお願いしたいと思いますが、漁業水域暫定法の第十四条の適用除外規定ですけれども、これには五条から十一条までの規定について政令で定めるようになっていますね。この政令の中身が問題でして、この「見込事項」というのはほぼこれで必ず実施をするという確信のもとにわれわれにお配りになったのだと思うので、単なる見込み、これからの成り行きでもってこれが変更するということはまずないだろうと、こう思うんですけれども、それでもこの後漁業禁止適用除外がふえて漁業者が迷惑を受けるということになっては困るわけで、大臣としても将来ともこの政令はあくまで漁業者考える立場で定めたものであり、またさらに今後も補足をして漁業者を守る立場に立っての細かいそういう政令は今後どんどん発令をすると、こういうことをここで明言していただきたい。
  117. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この政令の見込み、適用の見込みというものは、関係各省庁と十分協議をしその結果決めたものでございまして、その方針政令をつくっていくと、実施していくと、こういう考えでございます。なお、実施の上でいろいろまた新しい予想できない事態が発生した場合に、政令でもってそれを新たに補完をするということは十分考えてまいりたいと存じます。
  118. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 次に、第五条の「漁業等の禁止」について伺いたいんですけれども、第五条第二号に規定されている海域とは、当然漁業法に基づく許可、告示、制限条件等、国内規制に基づく水域がすべて含まれているのかどうか、また試験操業による北海道海域のオッタートロール禁止ライン水域もこの中に入るのかどうか。
  119. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) いま御質問漁業法によります制限規制、またオッタートロール禁止ライン等の扱いにつきましては、私どもはむしろ五条の二号ではなくて、十条で、許可の場合には制限または条件を付することができるということがございます。ですから、外国人操業許可する場合、厳重な条件を付しましてそれでやりたいというふうに考えているわけでございまして、五条の二号の方は、いわば零細なわが国沿岸の小型漁船が多数操業しているような海域等は、外国の大型漁船操業によりまして資源保護とか漁業秩序の維持の点で非常に問題があるわけでございますので、そういうところをともかく外国人漁業者は操業してはならないというふうに禁止海域にしたいというふうに考えているわけでございます。
  120. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 今後再開される日ソ暫定協定交渉によって、日ソ相互主義の立場からこの第二号についてソ連漁船適用除外になるのかどうか、この点お伺いいたします。
  121. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 現在、韓国並びに中国の近隣の諸国、この国々はまだ二百海里漁業専管水域を設定をいたしておりません。しかし、ソ連は三月一日からこれを実施いたしておるわけでございます。私はそういう意味で、またソ連漁船わが国沿岸沖合いにおいて操業しておる実績もございます。そういうようなことで、相互的にわが国ソ連の二百海里水域の中で実績に基づいて操業を認めてもらう、そのための協定も結ぶ、またわが方の漁業水域百八十八海里、この中でソ連操業実績に基づいて一定の条件のもとに一定のクォータの中で操業するということは、これは認めてまいる考えでございます。したがいまして、この漁業水域法というものはソ側には適用される。また、韓国並びに中国に対しましては相互主義で、向こうがおやりにならなければこちらから先んじてやるという考えはいまのところ持っておりません。
  122. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 「必要な海域」を今後幾つ、どのような基準で定めるのか、その辺はまだ明らかになっていませんか。
  123. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) いまの御質問はどの条文のどの海域……。
  124. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 五条の二。
  125. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) この第五条の二号は、先ほど申し上げましたように、わが国の零細沿岸漁民操業を保護する、また資源上からも保護するというような立場から農林大臣が定めるつもりでございますけれども、まだ具体的にここというふうに決めているわけではございません。これはやはり、外国漁船操業状況等を見まして、随時的確に農林大臣がばっと指定をする、そうなりますれば、そこにおいては外国人漁船操業ができなくなるということで、外国人漁船操業状況等を見ながら、ひとつ敏速に的確に運用するということを実は考えておるわけでございまして、何カ所、どこというようなところまでまだ現在考えておるわけではございません。
  126. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 先日の衆議院の農水委員会において、中国、韓国においては二百海里法から全面適用除外が行われることが示されましたけれども、ただいまも御答弁あったのですけれども、この中国、韓国について適用除外した理由を、この際確認の意味でもう一回伺っておきたい。
  127. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は、日韓の間には日韓漁業協定がある、日中の間には日中漁業協定がございまして、この漁業協定によって西日本わが国漁業者は安定的に何らのトラブルなしに操業が行われておるわけでございます。この関係は、私はこれを大事にしていきたいという基本的な考えを持っております。したがいまして、わが方から先んじてその海域に向かって二百海里の漁業水域を設定をする、こういうことはいたさない考えでございまして、しかし、相手国が二百海里をやってまいるにおきましては、この法律の定めるところによりまして、政令によって直ちにわが方も二百海里を設定をする、こういう相互主義で臨んでいきたいという考えでございます。
  128. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 外務省にちょっとお尋ねしておきますけれども、伝えられるところでは、韓国は七・月末までには領海十二海里、漁業専管水域二百海里を設定する意向だと、こう聞き伝えておりますけれども、そうなればわが国韓国に対しても二百海里法を適用せざるを得なくなると思うのですが、その結果、日韓漁業協定は事実上破棄されたことになって、日韓間の新しい操業秩序について話し合いに当然入らなければならないと思うのですが、この韓国の情勢と外交ルートの話し合いの準備、こういうものは現時点で用意できているのかどうか、あれば具体的にこの際明らかにしてください。
  129. 溝口道郎

    説明員(溝口道郎君) 韓国につきましては、すでに農林省あるいは外務省から御答弁いたしておりまするように、三月下旬からソウルあるいは東京でたびたび今度の日本の法案について事前に説明をいたしておるわけであります。いまのところは先方は特に反応は示しておりませんけれども、異論は唱えていないという状況でございます。確かに先生の御指摘のように、新聞などでは韓国の方でも二百海里を検討しているという情報もございますし、また外務省が確認いたしましたところでも、国務総理を長として、閣僚レベルの検討委員会が設けられたという情報もございます。しかし、外交ルートでいままで話し合ったところでは韓国日本に対してそういうことを公式に言ってきたことはいまのところございません。仮に将来そういうことが万一ございますれば、たびたび農林大臣が御答弁されておりますように、これは現在の日韓間の秩序が根本的に変わることになりますので、当然わが方の対応も変わってくる。現在、日韓協定は一応一年間の予告をもって廃棄するということになっておりますけれども、もちろんこれとは別に両方の間で根本的な漁業秩序が変わりました場合には、両国の間で日韓協定を今後どうするかということが外交ルートを通じて話し合いが行われることは当然のことだと思います。
  130. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 もしそういう話し合いが来るとすれば、かなりの余裕を持って連絡があると思うのですけれども、その余裕はどれぐらいに見ていらっしゃるのですか、もしあるとすれば。——そういう取り決めはないのですか。
  131. 溝口道郎

    説明員(溝口道郎君) ただいま申し上げましたとおり、日韓協定は片っ方が廃棄をしたいというときは一年間の予告を決めておりますけれども、これはその両国が合意の上でこれをたとえば新しい協定に置きかえるとか、あるいはこの協定をなくすとかいうことを妨げるものではございませんので、この場合はどれくらい時間がかかるかというのは申し上げられませんけれども、両方の話し合い合意ができたときに新しい秩序に置きかえられる、かように考えております。
  132. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 韓国の問題だけでなくて、やがては中国との間にもこういう事態がないとは限らないわけで、そうなりますと、対ソ関係を初めとしてわが国周辺の国際漁業秩序というものは根本的につくりかえられることになるわけですけれども政府は今回の対ソ交渉がいわゆる後手後手に回った苦い体験を生かして、わが国周辺の国際漁業に関して二百海里時代に対応し得る基本的な腹構えというものを持つべきじゃないかと思うのですが、この点は農林大臣いかがですか。
  133. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この点に関しましてはしばしば申し上げておりますように、韓国政府とも、また中国政府とも、また豪州政府とも、わが方の二百海里漁業水域設定につきましては十分説明もし、理解も求めておるところでございます。したがいまして、今後は双方の十分な意思疎通のもとに話し合いによって新しい事態に対応していくと、こういう考えでございます。
  134. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 二百海里法の適用除外について、中国についてはいまのところ特に問題はないようでありますけれども韓国船については以前から紛争が絶えなかったわけで、念押しのために質問したいと思うのですが、昨年の六月に日韓漁業問題で話し合いがついてからの韓国船による漁業被害、その実態はどうなっているのでしょうか。
  135. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 昨年六月に日韓民間ベースでもって、今後よく相談をしてトラブルが起きないように、また起きた場合にはその損害賠償処理についてはルールをつくってやろうという話し合い合意を見たわけでございまして、その直後は確かに非常に被害が減りまして、七月四件、それから八、九、十と全然トラブルがなくて、十一月一件というような状態で推移いたしたわけでございますが、十二月からふえてまいりまして、十二月五十八件、一月八十四件、二月百二十三件、三月から四月にかけて二百六十六件というふうに、合計五百三十六件、約一億五千万円というような被害が起きております。これは非常に残念に思っておりますが、最近とみにトラブルが多くなっておるというふうに考えております。
  136. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 そういうわけで、一時被害が少なかったものが急激にウナギ登りの被害状況ということで非常に残念なことなんですが、しかも、その操業方法というのはトロール漁船による根こそぎ操業といいますか、沿岸漁民は悲鳴を上げているわけでありまして、領海十二海里法案が提案されたそもそもの動機がソ連トロール船による被害であったことを考えますと、今後もこういったことが起こらなければいいけれども、起こり得ると考えますと、やはりここで対策は必要じゃないか。日本沿岸の場合は漁業者同士の長年にわたる話し合い、こういうことでトロール漁というのは禁止区域をつくってやっている。ところが、外国漁船が今後も相変わらずそのように根こそぎ操業をやっていきますと、いわゆる日本沿岸における漁業について秩序が混乱してくるんじゃないか、こういう懸念もあります。その点については、政府はどのようなお考えでいらっしゃいますか。
  137. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 特に韓国漁船による北海道周辺沿岸漁民被害につきまして、私ども被害防止のために努力をしているわけでございますが、先般、民間の方々並びに政府職員が行きましてこの問題を話し合ったわけでございます。大体十二海里内外におきます沖合い、底びき網の禁止ライン等につきましては、今回わが国が十二海里まで領海を拡張するということもあるかもしれませんが、韓国船もそこまでは近寄らないということに同意を見たわけでございますが、さらに沖合いの、十二海里以遠のオッタートロール禁止ライン等につきまして、わが国から強力に韓国漁船操業の自粛方を要望したのに対しまして必ずしもいい返事が得られていない、いわば合意に達していないわけでございます。そこで、鋭意私どもといたしましては、今後さらに政府が中心となりまして政府交渉を強力に進めまして、このようなオッタートロール禁止ラインその他、わが国漁船が、資源保護のため、または漁業調整のためにみずから操業の休止または禁止に服している海域につきましては、外国漁船、特に韓国漁船操業も遠慮をしてもらうという約束を成立させたいというふうに思っているわけでございます。
  138. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 いまお話しのように、今後政府間レベルでの韓国との解決策の折衝というものをしっかりしてもらわなきゃならないわけですけれども、その窓口は外務省じゃなくて農林省の方が、被害漁民救済に対しては農林省が窓口になるんですか。
  139. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) これはまあ共同だと思いますけれども、やはり私ども漁民に最も近い官庁でございますので、私どもが主になりましてやってまいりたいということでございます。
  140. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 それは事件が起きて被害がわかってから係官を派遣するんですか、それとも通常の連絡ルートによってやるんですか。
  141. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 先ほど申し上げましたように、すでにいろいろ被害が起こっているわけでございます。先般申し入れたわけでございますけれども、これが不調に終わっているのでございますので、近くさらに政府職員を派遣をいたしまして交渉を強力に進めたいというふうに思っているわけでございます。事故の発生等には関係なく、予防のための措置を早急に講じたいということでございます。
  142. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 この中国、韓国適用除外は、新聞報道にも出ていましたけれどもソ連を刺激しているような面があるんですが、ソ連は当初日本の二百海里については、やむを得ないことであり制定されたらよく話し合おうと、こういう態度をとっていたようなんですが、この中国、韓国除外ソ連漁業相と次官が、日本は中国、韓国、台湾を二百海里の対象から除外するという態度をとっているのにソ連には何ら特権を与えようとしない。そういう態度は相互利益の原則に反するし、交渉を困難にする新しい事態だと、こういうふうに語っていたというんですけれども大臣は近日中に出発される、そういうわけで、今後の交渉についてこの点は困難な一つの障害になると思われる点もありますけれども、それについてどのような姿勢と態度で交渉に当たられるのか。
  143. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は、相沢先生も御承知のように、三月の鈴木イシコフ合意書簡、これにも見られますように、すでにわが方も二百海里をやるのだ、二百海里漁業水域を設定する方針であるということを明確に申し上げて、それを交換書簡の中にも明示しておるわけでございます。したがいまして、ソ連側としても日本が近く二百海里水域を設定するであろうということはこれは織り込み済みのことであると、こう信じております。決して抜き打ち的にこれをやったものでもないということで、この点は私は信頼を裏切るものではないということを確信をいたしております。  それから、この二百海里の問題につきましては、やはり相互主義でございまして、韓国並びに中国等が二百海里を先方からやってこないという場合には、わが方としては先んじてやるという考えは持っておりません。しかし、ソ連は三月一日からもうすでにおやりになっておるわけでございますから、わが方として相互の立場からいたしまして、わが国沿岸沖合いにおける漁業水域、ここで同様のやはり協定を結んで、そしてソ連漁船操業を一定の条件のもとに受け入れていくと、こういうことでございますから、相互の立場を害するものではない。ソ連の方も中国や韓国やその他の国と同じように二百海里専管水域をおやめになるということであれば、わが方もそれは適用から除外をするということには変わりはございません。あくまで相互主義でやってまいるという方針でございます。
  144. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 それでは、これで終わります。
  145. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 まず最初に、サケ・マス交渉の仮調印が延期された問題についてお伺いしたいと思います。  日ソ漁業委員会モスクワソ連二百海里以外のサケ・マス漁について二十五日の仮調印ということを私たち帰るときも伺ってきて、まあまずまずよかったなと思っていたんですけれども、二百海里水域の表現をめぐって領土問題がまたここではっきり出てきたと、で延期されるというような事態になってまいりました。四月から出漁ということで期待していた人たちが、非常に絶望的な状態だと問題になっております。こういう事態になりまして、大臣としてはこれについてどのような対策、方針を持っていらっしゃるか、それの問題でお伺いしたいと思います。
  146. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 超党派議員団のお骨折り等もございまして、この公海上におけるサケ・マスの漁獲量というものも六万二千トンに決まったと、そうして漁業相の間におきましては、もうこれで話し合いはついたということで、二十五日には議事録に署名をする、二十八日には東京でシャルクを再開をして調印をする、こういうことになっておったわけでございます。荒勝代表の報告によりますと、もう九九%までそれに間違いがないというふうな観測が来ておったわけでございます。それが一転いたしましてああいう事態になったと。つまり、日ソの暫定漁業協定第一条の適用海域の問題がまたここに登場してきたということで、小笠原先生もびっくりされたと思うんでありますが、私もびっくり実はしたわけでございます。その点は、どうもいままでの交渉をやってきたわが方の代表団としては、それは約束違いではないかと、どうしてそういうことになったのだということを相当抗議的な意味も含めましてそれを撤回をし合意の線によって取り決めをするようにということを再三申し入れをしておるわけでありますが、しかるところ、これは至上命令であると、こういうことで、どうも漁業相を越えたところでそういう方針が打ち出されたのではないかということで、私もこれを深刻に受けとめておるわけでございます。  したがいまして、私も当初、イシコフさんとの交渉再開のために五月の六日前後訪ソの予定をいたしておりましたが、こういう事態にもなりましたので、五月の二日、遅くとも三日には羽田を出発をいたしましてできるだけ早く両国の責任者間でこれが打開を図りたい、このように考えております。
  147. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いまおっしゃったように、この問題というのは暫定交渉が中断される事態と同じような問題になってきたわけですね。向こうで私も行って感じたことは、非常に厳しいということです。こっちで領土問題を絡めないでというふうに言っても、向こうはもうはっきり領土問題から線引きというものを出してきているわけですから、そっとしておいて何とか表現上で領有権の主権放棄にならないようにとずいぶん御苦労なすっていらっしゃるんだけれども、こういうやり方で解決できるというふうにお見通しになっていらっしゃるか。まあ、いま一生懸命になさろうという御努力のほどは買うんですけれども、その一致点を、いままでとまた同じようなことで蒸し返してやらなければならないと。一致点をどういうふうにお求めになるのか、それについてのお見通しはどういうふうに持っていらっしゃるのか。
  148. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) これは基本的には私は、北方四島の問題につきまして一九七三年の田中・ブレジネフ会談の合意——戦後未解決の問題である一これを前提にして相互の立場を損なわないようにやるということが何といってもこれは基本だと、こう思います。それをそうでないんだと、領土問題は解決済みであると、したがって北方四島はソ側の領土であると、こういう前提に立ちますとこれはわが方としても絶対に譲れない、こういうことになるわけでございます。私は両国の最高首脳が合意された線、戦後未解決の問題、こういうこの実態に即したところの問題を、両方が大人になって日ソ友好ということを大事に考えて、そういう前提に立って漁業問題、特に第一条の問題を話し合えば打開の道は出てくると、このように考えております。
  149. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 確かにわが方としては決してソビエトの領土だと認めているわけではないから、やっぱりこれは懸案事項として留保しなければならないという線で、きちっとそこのところは物を言って奮闘していただきたいと思う。そしてまた、この二百海里外のサケ・マスというのは日ソ漁業条約で既存のものとして現実に生きているわけですからね、日ソ漁業条約というものが。だから、この辺のところでまたこれも抑えて、しっかり御奮闘をいただきたいと、切にお願いをしたいと思うわけです。  それで次に、それじゃニシンの資源調査の問題なんですけれども日ソ交渉が難航したあおりで北海道内の各地の水産試験場を初め各試験研究機関の海洋資源の調査が現在ストップ状態に陥っていると。特に全面禁漁のニシン調査というものはほとんど手につかない状態だと。で、こういうことでは来年からの日ソ漁業交渉では、日本側の資料と調査というものがまとまりがつかなくなってくるというふうに考えると、交渉の際にソ連側資料の一方的なもので押されてしまうと、日本側の主張に大きな影響が当然出てくるだろうというふうに心配するわけです。その上、明治時代から続けられている貴重な調査資料に空白がここで生じるということもこれは大変なことだと。学術的にも欠かせない貴重な調査なだけに、調査船だけでも一日も早く出動させてほしいというような訴えが出てきているわけなんです。私も当然な要求だし、資源ということを大事にするという立場からは、やはりこれも一つの問題として考えていただきたいと思うんですけれども、いかがでございますか。
  150. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) これはニシンに限ったことではございませんが、私はソ連の二百海里の漁業水域につきましても、またわが方の漁業水域につきましても、相互にやはり資源の評価なり情報の交換なりというものはこれはやっていくべきものだと、資源の保存と有効利用ということを根本的にやはり踏まえまして、そうあるべきだと、このように考えております。ただ、従来のような調査船の形で、ある意味の商業的な形態で資源調査ということで対応できるか、あるいは政府の調査船等による資源調査という形になりますか、恐らく後者であろうと思うのでありますけれども、今後やはり両国はこの北太平洋の漁業資源というものを大事にし、保存をし、有効利用していくという基本の上に立って、そういう調査であるとか資源の評価であるとか、情報の交換というのはやっていくべきだと、このように考えておりますし、これはイシコフさんとの間でも今後私はよく話し合いをしていきたい、こう考えております。
  151. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それで、まあこれは時期がございますから、おくれてしまったら何にも役に立たないわけなんで、いままでおっしゃったように、商業的に調査船という名前でがっぽりとってくるなんというやり方ではなくて、本当の意味での資源を守るという、調査するというような問題は、やっぱりこれは緊急に解決して出ていかなければ、来年、いま言いましたように、交渉のときの日本側の資料というものがもう手がないわけですからね。で、そういう意味で、いままでは全然この問題についてはお話しにならなかったんですか。今度行ったら話すると、そして解決してすぐに本当の意味の調査船を出すというふうに解釈していいんですか。
  152. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) これは日米の漁業交渉漁業協定の場合におきましても、全体がまとまりましてから、その時点で資源の評価なり情報というものを今後続けようではないか、こういうことで合意をしておるわけでございます。私は何にせよ、何千隻という漁船がもう出港、操業を急いでおるという時期でございますから、まずこの問題を解決をしなければならない。したがいまして、調査の問題でありますとかなんとかはそういう問題が片づいた上でやりたいということでございますので、その点は御了解を賜りたいと思います。
  153. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 やっぱりあれかこれかじゃなくて、確かにいま現実には大きな問題として重々私も行ってわかりますよ。北海道の漁民の立場がわかるんですけれども、長期的な展望に立ってみれば、やっぱりここで調査が中断されてしまうと、来年度また交渉のときには全くこっち側の調査というものがないということは非常にまたもうひいては大きく漁民に影響するわけでございますから、もう本当に頭いっぱいで、いまの漁民のことであろうと思いますけれども、その漁民のためにも本当の意味の調査船というのだけでも早く出そうじゃないかというように御尽力いただきたい、再度御要請申し上げます。いかがでございますか。
  154. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) そのとおり私も考えております。
  155. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 帰ってきて、時間がなくて言えなかったなんということがないように、何とかその辺のところ具体的に調査の方もきちんとお願いしたいと思います。  それでは、漁業水域法の問題に直接関連してお伺いするわけですけれども外国人漁業等の禁止について先ほどもちょっと長官お答えになりましたけれども農林大臣が定める海域について漁業法に基づく許可、告示、制限条件等、国内規制に基づく水域すべて含まれるのかどうか、その点いかがでございますか。
  156. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) いまの御質問は、この漁業水域法の五条の二号についての御質問だと思いますけれども、この五条の二号につきましては、先ほどもお答えしたと思いますけれども、これは当面、わが国の零細な沿岸小型漁船が多数操業いたしている海域でございまして、そういうところに外国漁船の大型な高能率の漁船操業を行うことになりますと、資源の保護の点からも、それから漁業秩序の維持の点からも非常に問題がございますので、そういうところはこの五条の二号の海域として指定いたしまして、外国人漁船漁業禁止をいたしたいというふうに考えておるわけでございまして、具体的な現在漁業法等でやっております漁法、漁期その他の制限等につきましては、これは外国人漁船許可を与える場合に制限条件というような形で処理したいというふうに、現在は考えているわけでございます。
  157. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 沿岸の零細が入ってくるところというようなことで、禁止する海域というのは非常に限られた狭いところというふうに理解していいわけでございますね。  そうしますと、この海域についてもこの法第十四条の適用除外規定に加えられているということになってくるわけですね。そうすると、日本漁民も禁漁すると、適用除外以外の外国船について禁漁するというふうになっているのに、適用除外された韓国船には操業許可するというふうになるわけ。いまおっしゃったように、非常に沿岸で零細なところにまで韓国船は入ってこれるというようなことにも結局なってしまうわけです。そういうことになると、非常に心配されるのは、水産資源の保護という本法の趣旨から考えて、これは反するものではないかというふうに思うんですけれども、その点はいかがでございますか。
  158. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) この十四条の外国人に対します適用除外規定でございますけれども、五条から十一条までの規定についても個々に検討をいたしまして、どの外国人についてどの海域について適用除外をするかということを検討をいたしてから定めたいというふうに考えております。お説のように、五条というのはなかなか重要な禁止規定でございますので、韓国漁船等につきましては、この五条によって韓国人漁船操業禁止するという方向で私どもは現在対処いたしたいというふうに、いま現在考えておるわけでございます。
  159. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この点はきわめて大事な問題でございますから、私の方針を明確に申し上げておきます。  このいわゆる国際海峡、それにつながるところの特殊海域、その外の公海部分、こういう部分につきましては、第五条によりまして、外国漁船はいかなる国の漁船といえども操業は絶対に認めない、こういう方針でございます。
  160. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 確かにこの五条というのは大事なんですね。ここのところはいかなる外国漁船操業させないという、ここはどうしてもきちっと押さえておかなければならないのに、後にいって十四条で適用除外というのが出てくるわけですね。十四条で、五条から適用除外ということになりますと、筋から言っても禁止海域を適用除外とするというのはおかしいんですね。この十四条で五条も含めてあるから、結局ここも適用除外韓国船と中国船、政令のここにあるように韓国船と中国船というのは適用除外ということになるわけでしょう。そうすると、せっかくここできちっと五条で押さえたのだから大丈夫だとおっしゃって、これはもう正しいと思うんだけれども、十四条で適用除外されてしまうと、これは何のことはない、ざる法になっちゃって入れるということになるんじゃないですか。
  161. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 日韓の間におきましても、たとえ韓国が二百海里をやらなくとも、私は漁業水域法あるいは領海法、この趣旨、目的を貫くために日韓間では民間協定でなしに政府間の協定締結をする、そういう方針で進んでまいります。そういうことを前提としまして、この五条によりましてその海域の外国船操業は絶対にこれを認めないという方針で対処いたします。
  162. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それじゃ、その問題後で政府間協定でそういうことはさせないというふうにおっしゃったのは後またお伺いしたいと思いますけれども、それじゃ韓国と中国は漁業水域全域についての適用除外にするということですね。それはどういう理由か、もう一度はっきりおっしゃってください。なぜ適用除外するか。
  163. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) これはしばしば明らかにいたしておりますように、現在、日韓の間には日韓漁業協定がある、日中の間には日中漁業協定が存在をいたしておりまして、この協定によって、西日本わが国漁業はきわめて安定的に何らのトラブルなしに行われておる。私は西日本の漁民諸君の立場を考えましてこの関係を大切にしていきたい、こういう考えを持っております。そこで、中国、韓国が先んじて二百海里を設定しない場合におきましては、わが方はこれを適用除外にしていこう。向こうがおやりになる場合には相互主義でこちらも政令によりまして直ちに適用していく、こういう考えでございまして、あくまで相互主義の上に立っておるということを御理解願いたいと存じます。
  164. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 先ほどからそういう御意見で私も伺っていたんですけれども、確かに西日本に関してはお互いにトラブルはない、安定的な関係にあるというふうに言えると思うんですけれども、それじゃ北海道韓国漁船による被害、先ほど長官の御報告でも急激にふえているわけですね。そうすると、日韓間の安定的な関係、トラブルがないという場合に、北海道における韓国漁船による被害、このトラブルを大臣としてはどういうふうにごらんになっていらっしゃいますか。
  165. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 現時点におきましては、御承知のように領海は三海里である、三海里の外には底刺し網等の漁業日本沿岸漁業者によって行われておる、それに対する被害が頻発をしておる、また沿岸漁業者操業も制約を受けておる、こういうことでございます。しかし、今度はこれを十二海里にするわけでございます。そういたしますと、いままでのトラブルなり被害というものは大部分十二海里の中で起こっておる。外でも起こっておりますが、大部分は十二海里の中で起こっておる。でありますから、今後は領海の中には一歩も外国漁船操業は認めないわけでございます。それから十二海里をはみ出して資源保護上の観点から底びき網等の禁漁区域が設定をされておる、こういうこともあるわけでございます。その場合は、そのままにしたのではやっぱり被害等が起こるのではないかという御心配が当然あるわけでありますが、こういう禁漁区、資源の保存、そういうような観点でわが国政府がとっておること、そしてまたわが国の漁民すらもそこでは操業してないということでございますから、この百八十八海里の漁業水域におきましては、ソ連に対しましても、韓国に対しましても、その水域はこれは資源保存上の措置といたしまして条件として農林大臣はその海域では操業することをこれを禁止すると、こういう措置を講ずる考えでございます。
  166. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 確かにこっちからトラブルしかける必要はないし、しかけろと私言っているわけじゃないんですけれども、現実に発生している。北海道に行ったら、いまソビエト漁船も大変だけれども、とにかく韓国漁船の問題というのでもう頭いっぱいになっているわけですね。それで、漁獲高だとか何だとか見ても、五十年で大体いま出されているわけですけれども、五十年以降というのがもう非常に被害が大きくなっているわけで、私どもちょっといろいろ資料見ても、五十年二月から五十二年三月までで八百三十三件、約二億四千万円の漁具被害まで発生しているというように非常に大きな問題になっていると。また、水産資源の保護という点から考えても、日本の漁民は百二十四トン以上の底びき禁止区域とか、またそれぞれに期間を決めて襟裳の西と東、底びき全面禁止等の規制措置を実施していると。しかし、そこに韓国船は入ってこられると。北海道沖合い底びき漁船は現在どれくらいかといって調べると百九十八隻、総トン数二万三千百五十トンと。韓国漁船は四千トンクラスの大型が入ってきますから、大型漁船初め総トン数で言ったら道の総トン数を上回るものになっていると。だから、それが来ますと、北海道近海に一挙に沖合い底びき船の倍増になってしまうというような状態になってくるわけですね。これを、政府間協定を結んで同様に規制をするというふうにおっしゃるわけですか。
  167. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) そのとおりでございまして、私どもは現在の韓国船操業をそのままに放置いたしますれば、やはり被害がなかなか減らないということを考えておりますので、先ほど申し上げましたとおり、私ども日本漁民が守っているような操業規制はぜひ外国船、特に韓国船にも設けてもらうというために、私どもは早急に二国間、韓国との間でもって政府間協定を結びまして、秩序ある操業の確保を図りたいというふうに思っておる次第でございます。
  168. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 じゃ角度を変えて伺いますけれどもソ連漁船については漁業規制について許可を出す場合に、日本漁業者規制と同様の規制を行うということになるんですか。それから、漁業水域法案の何条でソ連船の場合には規定されるんですか。
  169. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) ソ連船漁業水域内の入漁につきましては、第六条によりまして、農林大臣許可を受けなければ操業を行ってはならないというふうになっているわけでございまして、それが第十条に、六条一項の許可につきましては「制限又は条件を付し、及びこれを変更することができる。」という規定がございます。この許可に対する条件を付すると。その条件の内容が、いまお話しのように、わが国漁船に課していると同じような制限を課したいというふうに思っているわけでございます。
  170. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いま御説明ありましたように、ソ連船に対して規制するという規定については、いまおっしゃったように、六条ですか。
  171. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 十条です。
  172. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 十条ですね。十条で規制するというふうになっているわけですけれども韓国船については、わざわざ政令適用除外と別に同趣旨規制政府交渉で行うということになるわけですけれども、こっちの方の中ではソビエトにはきちっと規制しておいて、韓国だけはこれではやりませんよ、適用除外ですよというと、一歩こっちは大きく譲っているということになってくるんじゃないですか。
  173. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 日韓の間では、長官から申し上げたように、日韓漁業協定を取り結ぶ考えでございます、政府間の協定を取り結ぶと。そうして、その法律ソ連漁船に対すると同様のことをやってまいるということでございますから、その法律趣旨、目的というものは十分確保されるようにすると、こういう考えでございます。その辺は、西日本漁業者もとにかく何とか安定的な漁業をさしたい、北海道の漁民にも形は変わっても同様の措置をやりたい、こういうことでございますので、ひとつその点は御理解を賜りたいと思います。
  174. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 両方立てるというところで、なかなか御苦労なところよくわかるんですけれども、その御苦労を本当に実のあるものにするために私たちも一生懸命考えたんですけれども、問題の一つは、いまも何度も政府間協定ということを考え禁止すると言われたわけですけれども政府間協定というのは相手があることですよね。こっちでやるんだと言ったって、韓国がいやだと言えばそれっきりなわけでしょう。そうすると、いままででも北海道の漁民は、本当に俗な言葉で言えば頭にきていると言うのですけれども、二国間協定韓国規制韓国話し合いをずいぶんやっているんだけれども、いままで守られたことがないという実績ですね。これで政府としては韓国政府がこういう規制に乗ってくると思っていらっしゃるのかどうか。ちょっと見通しが甘いんじゃないか。こっち側は政府間協定でやりますと言えば、ああそうですかで済むわけだけれども、相手のあることでしょう。それに向こうは乗ってきて大丈夫だというふうに見通されているんですか。
  175. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 日ソ間におきましてもそういう操業条件規制の方法とか、そういうことは合意されております。ただ一点、漁業協定第一条の問題と、これは領土絡みの問題でございますのでそれが残されておると、こういうことでございます。日韓の間には、もっと日韓関係というのはあらゆる分野において緊密な結びつきがあるわけでございまして、私は韓国がこの日本秩序ある操業という提案に対して拒否的な態度をとるというようなことは毛頭考えておりません。
  176. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 毛頭考えていないというのはわかるんですけれども、その辺が主観的に毛頭考えないと言ったって相手のあることだから、だからそれを私は伺っているわけなんですよ。北海道の漁民が特に言っていましたけれども、二国間協定韓国規制するなら、漁業水域水域法施行と同時期にしてほしいと。つまり水域法では三カ月以内ということになりますね。特に二国間協定話し合いをしていますと、なかなか問題は早く進みませんということになるわけでしょう。そうすると、何としても協定を結ぶとするならば、三カ月以内にこの法と一緒に規制できるんだということが言い切れるかどうか。三カ月以内のこの法のあれと同じ時期にやれるというふうに、願望ではなくて客観的に見てはっきりそう確信を持っておっしゃれますかどうか。
  177. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) すでに韓国に対しましては、外務省並びに水産庁から人を派して、今回成立をするであろう領海法並びに漁業水域法、この趣旨、目的等につきまして十分説明もし、理解を求めておるところでございます。急にこれが成立してからやるというのじゃなしに、もういまからずっとやっておるわけでございます。したがいまして、この二つの海洋関係の法案が実施に移される、そして日ソの間にも協定が結ばれて実施されるという段階までに、日韓の間の協定もぜひ成立をさせるように最善の努力を払うつもりでございます。
  178. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 御決意と御努力のほどは大いに期待するところなんですけれども韓国漁業者の意向としては、四月四日の日・韓民間漁業協議会においても、先ほどもちょっとお触れになったと思いますけれども操業海域については両国の主張が大きく相違したと共同議事録に明記されております。私も北海道機船漁業協同組合連合会から、韓国漁船団の本道前浜海域操業阻止に関する陳情書という中で伺ったり、またその議事録を伺わせていただいて、これはもう全然いまのところ、いまの大臣の話だと、もうずっと話をしているというふうにおっしゃっているけれども、これは全然一致点を見出せないで平行のままで、議事録も併記をして出されるというふうな結果に終わっているわけですね。そうじゃないですか。
  179. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 全然平行線ということじゃございませんで、いま合意に到達したところは、十二海里以内には入らない、まだわが国領海は三海里でございますので、十二海里以内には入らない、それから沖合い底びき網漁業禁止ラインは尊重するというところまで来ておりますが、さらに沖合いの方のオッタートロール禁止ラインにつきまして、私どもはそれは少し遠慮をしてもらいたい、操業をやめてもらいたいということを申し入れておりますが、それらの点についてなお合意に達していないということなので、今後さらにそれらの線について詰めたいということでございます。
  180. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 この第二回日・韓民間漁業協議会共同議事録という中を見ましてね、ここに「操業海域について両国の主張が大きく相違し、最終的には両国の主張を併記せざるを得ない結果となった。」と。だから決して大臣の、話をしてあるから、だからわかってもらえるんだというような甘いものではないと私ば思うわけですよ。そのことはもう漁民自身が知っています。いままで韓国民間協定を結んだ、そして政府へもいろいろ被害の問題を陳情したら、ちゃんとそれは韓国にも申し入れて、行政指導するようにというふうに話ししたと言われても、後を断たないで被害が起きてきたわけですからね。やっぱりそういう見方というのは、非常に私は甘いんではないかというふうに考えざるを得ないわけですよ。で、韓国政府はどう言っているかといういろいろ新聞を見ますと、韓国政府は大陸だな条約が未批准の場合、現在の日韓漁業協定を破棄して二百海里を実施するという意向を、ソウルの有力朝刊紙の韓国日報が一面トップで韓国政府消息筋の言明として報道しておりますし、日本の二百海里規制が及べば韓国も二百海里を実施するというように、盛んに向こうも、決して理解したなんというようなものじゃなくて、攻勢的な立場に立っている。  こういうふうな状態から見て、私は再度お伺いするんですけれども、いままでの実績から、そしていまのまだ合意がいってないという点から、そして盛んにいま言ったように、政府筋というものが日韓大陸だな未批准の場合はというようなところと絡めてきている中で、それでもかつまた十四条からの適用除外しても、韓国船については規制できるんだというふうに確信を持って一これは後で問題になりますからね、その辺のところを確信を持ってなおおっしゃるのかどうか、その辺のところをお伺いしたいと思います。
  181. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) いま韓国の有力紙がそういう報道をしておる、こういうことは私も耳にしておるわけでございますけれども外務省からの私ども伺っておりますところでは、政府から公式にそういう方針であるとか、近くこうやるとか、そういうことは全然正規の外交関係においては意思表示がなされていないということでございます。  それから民間協定民間交渉でまとまらないから政府間の協定交渉でもなかなかそううまくいかぬのじゃないかというのが小笠原先生のお話のようでございますが、しかし、今度はこういう事態になってまいりまして、民間交渉にゆだねるわけにいかない、政府の責任でこれをやらざるを得ないということでございますから、政府交渉に御信頼を賜りまして御協力をいただきたいと思います。
  182. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 御信頼申し上げたいのはやまやまで、もう胸いっぱいそういう気持ちを持っておりますんですけれども、また、外務省筋の情報ということをおっしゃいましたけれども、今度ソビエトへ行きましても、やっぱり外務省筋の情報のキャッチというのは非常におくれていますね。やっぱりそういう外務省からの正式の報告というものを待って打たれるから、いまの日ソ漁業交渉も明らかに後手後手に回っているんですよ。だから、ここで大臣とかけしたって始まらないからかけはしませんけれども大臣は大丈夫だとおっしゃる、だけれども、私はこれは空手形に終わる、こういうふうに見ているわけですよ。だから、もしも空手形に終わったとき、大臣の責任において迷惑はかけません、後始末やりますというところまでおっしゃっていただきたい、もしそうおっしゃるんだったら。
  183. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 当然政府の責任で交渉するわけでございますから、政府としてはその措置につきましては十分誠意ある措置を講じてまいる所存でございます。
  184. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 私は、地元のいろいろな新聞を読んだりまた情報を聞いたりしていますけれども、この点が一番空手形に終わってしまうということが不安な問題になっているわけなんです。釧路の漁民は四月七日、海を返せと韓国船に海上デモまで行っているわけです。この海域は日本漁船もトロールが禁止されていると、日本語と朝鮮語で呼びかけてサイレン鳴らして退去を迫っているというような、そういう一生懸命にやっているわけです。適用除外から韓国を外すことが、西日本の漁民に与える影響が大きくて困難だというふうに大臣は御心配になってのことだと思いますけれども、それならば、せめて漁業水域二百海里の管轄権の行使の一つとして、農林大臣の責任で日本漁業者漁業規制等を守らせるような規定を、許可適用除外した外国人にも及ぶものとしてこの漁業水域法案に明記するということが必要なのではないかというふうに考えるわけなんですけれども、その辺どうでしょうか。
  185. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) その点は、先ほど来御説明申し上げておりますように対処する方針でございまして、日韓漁業協定の第四条第一項に「漁業に関する水域の外側における取締り(停船及び臨検を含む。)及び裁判管轄権は、漁船の属する締約国のみが行ない、及び行使する。」と、こう日韓漁業協定第四条第一項にあるわけでございます。これは、この日韓漁業協定で定められた水域の外側における公海上の取り締まりあるいは裁判管轄権は、漁船の属する締約国のみが行い得ると、こういう日韓漁業協定があるわけでございます。この協定は両国を縛っておるわけでございまして、わが国もこの協定は誠意をもって守っていかなければならない、こういう立場に置かれております。私どもはこれを踏まえまして、そこでこの水域法等が成立をいたしました場合におきましては、別途日韓の間で漁業協定を取り結んで、そしてこの水域法趣旨、目的というものを達成をしていくと、こういう立場をとらざるを得ないし、とってまいる考えでございます。
  186. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 私たちもいろいろ考えまして、西にも東にも日本全部によくするのはどういうふうにしたらいいかと、大変むずかしい問題でした。それも考えましたし、それからまた、この水域法というのが、いま当面ソビエトばかりに目が向いて、そして大きな抜け穴として適用除外ということで韓国なんかにこのままやられたら大変なことになるというような点から考えまして、やっぱりこの水域法の中で、いま大臣がおっしゃったような問題がきちっと整備される必要があるのではないか。政府間協定でやりますということではなくて、やはりこの水域法の中にそれが生かされるようなことの整備がされなければならないんじゃないかと、そういうようなわけで私たち考えて修正を考えたんですけれども、この十四条の中で五条から十一条までとなっているのを、五条の禁止海域というのはこれはどうしても外してもらっては困ると、だから、この五条まで含めて適用除外というのではなくて、これを七条から十二条までにすべきではないかということですね、一つの点は。  それからもう一つは、ここに新たに、いま大臣がおっしゃった御趣旨をこの法の中にも生かすと、そして、政府間協定を行われるためにもこの法律が大きな後ろ盾となるというようなためにも、新しく新設をして第六条というのを入れて、「漁法等の制限」ということを入れたいと思うんです。これは、「外国人は、漁業水域のうち水産資源の保護及び我が国における漁業規制等の実情を考慮して漁法又は漁業期間を制限する海域として農林大臣が定める海域においては、農林大臣が定める漁法により、又は農林大臣が定める操業期間内は、漁業又は水産動植物の採捕を行ってはならない。ただし、その水産動植物の採捕が前条第一項ただし書の農林省令で定める軽易なものであるときは、この限りでない。」というふうな文章にして、修正をいま衆議院の方で出したいというふうに考えているわけですけれども、やっぱりもう本当にくどいようですけれども政府間協定を結ばれる場合にも、交渉なさる場合にも、これできちっとこういうふうになっているんですよという後ろ盾がなければ、相手のある政府交渉でしょう、幾らこっちが誠実にやってもらえると思うなんて言っても、きちっとした法的な根拠がなければ私はやっぱりやりにくいんじゃないかと思うんですよね。そういう意味で、十四条の五条から十一条までのところを七条からというふうにいま申し上げましたように修正すれば、そうすると、もうあっちもこっちも立つし、心配もないし一番いいんだと思うんですけれども、いかがでございますか。
  187. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) いま先生の五条及び六条についての修正の御意見を伺ったわけでございますけれども、私ども、先ほど大臣から申し上げましたように、非常に国際関係というのは複雑であると同時に、非常に流動的であるわけでございます。現在の日韓漁業協定の条文がこうなっているということは大臣から申し上げたわけでございますけれども、私どもが今後直ちにまた交渉しようとする日韓間の協定内容によりましては、この条文の適用等について、どうしたら一番合うかということはきわめて流動的である。私ども、この十四条で五条から十一条までと書いてございますのは、実質的な制約規定をすべて挙げてあるということで、それをどれをどうするかということは、それぞれ本条規定について、どこの国の人にどこの海域をということをそれぞれ吟味をして適用をいたすつもりでございます。で、前々から大臣からも御説明申し上げましたとおり、五条につきましては、私ども適用除外する方針ではないということを申し上げたわけでございますので、これを適用する方向で私ども日韓その他と協定を結び、運用をいたしたいというわけです。で、協定等の内容いかんによりましては、むしろ五条を形式的に外しておいた方が、新しい協定の方で受けられるという場合もあるかもしれない、私どもはひとつこの法律の運用につきましては、流動的な国際情勢、流動的な国際の関係等を意識いたしまして、適切に運用さしていただきたいというふうに思っているわけでございます。  六条の制限につきましても、おっしゃるとおり、外国人すべてにつきまして、一律に制限その他を付するということを六条でお書きになりたいというような御意見でございますけれども、これはやはりむしろ許可条件といたしまして、その都度その都度条件を付加したり減らしたりということの方が実情に合った運用ができるというふうにも考えるわけでございまして、制限等につきましては、相互主義という問題もございます。しかし、絶対に許してはならない点につきましては、これは共通的に条件を付すということも可能であるわけでございますので、私どもといたしましては、やはり漁業関係はきわめて流動的であるということ、きわめてその流動的な上に立って適切な相互主義という考え方も入れまして運用いたしたいということ等を考えまして、このような条項でひとつ運用さしていただきたいというふうに思っておるわけでございます。
  188. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 この問題ばかりやっていると時間がなくなっちゃいますので、どっちが効果的であったかというのは、後の結果を見て、またそのときに一つの問題としてお伺いもしたいと思います。  次に、補償関係の問題なんですけれども、底びき網漁業者なんかは正しい解決をするためには国内体制づくりも重要だと、だからつらいけれども政府の休漁要請を了承しようということで、了承していまやっているわけなんですけれども、この了承するという中でやっぱり一つ大きな問題なのは、補償問題なんですね。で、行っていろいろ聞いてみると、水産庁は四月初めに各地に係官を派遣されたと、そして国の都合で休漁というような事態になっているんだから金を惜しむものではないと、一般融資などにこだわらないで政治的にも政策的にも問題を解決しようとしていると、なかなかいい姿勢なんですよね。そういうふうにみんな漁民の方にお話をされていると、つまり補償に結びついて大丈夫なんだと、協力してくれたからというふうにおっしゃっているんだけれども、二十六日、緊急融資を決定されていらっしゃるわけだけれども、これは融資だけで決着つくもんではないと、補償という問題とからめて、つなぎ融資だけというんじゃなくて、補償というものとの絡みでどうなっているんだということがいま問題になっているわけなんで、その辺についての漁民の心配に対してどうお答えになるか、伺わせていただきたいと思います。
  189. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 関係漁民に大変な不安と困窮を与えておるということに対して、私ども大変申しわけがないことだと考えております。  そこで、この救済措置につきましては、私としては最善の措置を講じてまいりたい、このように考えておりますが、当面四月中の休漁に伴うところの措置といたしまして、百五十億、金利三%というものをつなぎ融資として出すことにいたしまして、これを今月中に末端に全部届くようにいま急いでやっておるところでございます。その際におきまして、船主だけでなしに、乗組員の諸君、そういう方々にも固定給なり、あるいはその他の歩合等もございましょう。そういうことに見合って、船主だけのそれが支払い、その他に充てられるのじゃなしに、一番大事な乗組員の方々等の生活を守るためにも、十分それが行き渡るようにという指示をいたしまして、いまやっておるところでございます。  なお、関連企業の関係がございます。この点につきましては、財政当局とも話し合いがつきまして、水産加工業者に対する緊急融資、これを融資の枠を三十億、そしてこれも追っかけて、できるだけ早く措置してまいるという考えでございます。その他の関連企業等につきましては、まだその影響の度合い等の把握に努めておりますので、これらにつきましても措置をしてまいる考えでございます。  これはあくまで四月中の休漁に伴う損害と申しますか、措置でございまして、今後日ソ漁業協定が結論が出て、そしてクォータ等も決まってきて減船等の余儀なきに至った場合、そういう最終的な決着がついた時点で本格的な救済措置を講ずる考えでございます。したがって、この融資は、その救済措置を講じます場合にこれがその中へ吸収をされて、本格的な救済措置の中で取り上げていくと、こういう方針でございます。
  190. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 直接漁業者でなくて関連加工——関連というのが非常に多いんですね。私もこの間訪ソして、ほんとにもう発言しながら頭に浮かんだのは、加工業者というのが非常に困っているということなんですね。特に加工業者の前処理なんかというのは、ほとんどがお母さんたちですよ。その人たちが、だからこの日ソ交渉の結果、漁業者だけではなくて、とにかく主婦、そしてその不安を持っている中で、子供がもういま深刻になっているという点を私はソビエトも考えてほしいということを発言したわけなんですけれども大臣も重女御承知だと思いますけれども、やっぱり北海道で、また言いますけれども企業数で千九百でしょう、従業員数で加工業は四万超えているわけですね。道庁で四月十七日現在調べてきたんですけれども、八百三十四工場が操業中止あるいは操短に追い込まれて、解雇、離職者は三千百人、自宅待機は一万数千人というのが道庁の調べでも出ているわけなんです。さらに漁網とか運送、製かん、塗料、燃料というような関係業者というのの影響は非常に大きくなって、四、五月の二カ月だけでその損失は五百億を超えるものと試算されているわけですね。そうしますと、いま直接の加工業者、前処理とか冷凍とか、そういうものはもちろん対象になると、しかし、そのほかのいま言ったような製かんとか運搬とかそういういわゆる関連業者というものも対象にして、そして調査なすった結果で、これも対象にしていろいろな融資だとか損害補償だとかというのを考えていらっしゃるか、考えていただけるのかどうかという非常に具体的な問題ですけれども、そういう関連業者に対して考えていらっしゃるかどうか。  それから、加工業でも損害が五〇%とかなんとかいろいろ規制がありますね、そういうようなものは具体的にどういうふうに考えていま調査されているのかということです。  もう時間がないので続けてお伺いいたしますけれども水産加工業などでは雇用調整給付金制度の対象業種に何とかしてほしいというのが具体的に要請として出ているわけなんですけれども、これについてどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。それから、さしあたって、働いている人たちに対して給与相当分の補償というものを何とか措置していただきたいというふうにお伺いするわけですけれども、その点について具体的にお考えを伺いたいと思います。
  191. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 加工業者だけじゃなしに、関連産業関係につきましてもその休漁等に伴う影響の度合い、そういうものを十分調査、把握をいたしまして、これも対処してまいる考えでございます。  なお、加工業者の従業員等に対する問題も適用されるように措置していく方針でございます。
  192. 和田春生

    ○和田春生君 近く農林大臣また日ソ漁業交渉のために向こうに渡られるわけで、その前にこういうふうに遅くまでの審議に御努力いただいてまことに御苦労さんであります。  実は、この領海十二海里並びに漁業水域二百海里ということについて私たちは基本的に賛成の立場に立っているわけですけれども、法案を検討してまいりますと、かなり重要な問題点が含まれているように思います。とりわけ領海法にそういう問題が絡んでいるわけでございますが、先ほど来の同僚委員の御質問とかかわりのある問題で、領海法漁業水域法に両方にまたがっている二、三の問題についてお伺いしたいと思います。  これは、まず最初に外務省の方にお伺いをしたいと思うんですが、領海法の附則の第二項で、宗谷、津軽、対馬海峡の東、同じく西、大隅、この五海峡を特定海域としております。この線引きをやりますが、この特定海域として政令で線引きをされた海域内の領海三海里部分を除く部分は、海面はこれは公海である、こういう考え方で外国にも臨む、そういうことでございますか。
  193. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) お答え申し上げます。  和田先生の言われるとおり公海でございます。
  194. 和田春生

    ○和田春生君 そういたしますと、今度は漁業水域法の方に戻るわけでございますが、漁業水域法によりまして外国人操業禁止する、この問題について非常に議論をされていることは、農林大臣初め水産庁の皆さんも御承知のとおり、国際海峡として——一応国際海峡という言葉は使っておりませんが、特定海域として公海部分として残されたところに外国漁船操業に入ってくるという形になると非常に困るんだと、こういうことが言われております。特に南の方に行くと、北から締め出された漁船が対馬海峡の東水道、西水道あるいは大隅海峡の近辺にやってまいりますと、この辺はイワシであるとかアジであるとかサバの好漁場であると、非常にトラブルが起こって困るんではないかと、こういう意見があるわけなんです。これに対して現地における事情聴取においての政府側の説明また本日の本院のこの委員会におきます農林大臣の御答弁におきましても、それは漁業水域法の五条によって排除するから心配は要らないんだと、こういうふうにおっしゃっているわけですけれども、そういうふうに確認してよろしゅうございますか。
  195. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) そのとおりでございます。
  196. 和田春生

    ○和田春生君 そうすると、この五条を読みますと、こういうふうに法律はなっているわけです。「外国人は、漁業水域のうち次に掲げる海域においては、」こういうふうに明記をされて、その五条の前文を受けて第一号で「領海法附則第二項に規定する特定海域である海域」と、こういうふうに決められているわけですね。そして本日配付されました「漁業水域に関する暫定措置法案政令規定見込事項」というのによりますと、「第三条第三項の政令で定める海域」というのは、その前に戻りまして第三条第三項では漁業水域の定義があって、その中に「領海及び政令で定める海域を除く。」と、こうなっている。その漁業水域から政令で定める海域を除くわけですから、漁業水域から除く政令で定める海域というものは「日本海西部、東海、黄海及び東海に隣接する太平洋南西部の一部の海域とする見込み。」と、こうなっている。これは見込みでございますが、もしこれが閣議で決定をされて政令という形になります。そういたしますと、対馬海峡の周辺、大隅海峡、この付近は漁業水域から除外されることになりますね、間違いございませんか。これは政府委員で結構でございます。
  197. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 御質問に直にお答えをすればそのとおりでございますが、さらに先にお答えした方がいいと思いますけれども、そうなりますと、先ほどお答えいたしましたように、五条の漁業水域適用にならないわけでございます。  そこで、私どもこの五条によりまして、いま御質問の対馬海峡の東水道、西水道並びに大隅海峡につきまして、五条の規定によりまして外国人操業排除するためには、対馬海峡の東水道、西水道、それから大隅海峡にかかる特定海域については適用除外の海域からまた外すと、逆に適用すると、その部分は。そうすることによりまして第五条の運用ができるということも考えておるわけでございまして、その辺は私ども実態によって運用をいたしたいというふうに申し上げました。また、海域等につきましては、その「見込事項」では大ざっぱに書いてございますけれども、必要に応じて漁業水域部分を残しまして、その漁業水域につきましては五条によって外国人漁業禁止をするということも考えられるわけでございます。
  198. 和田春生

    ○和田春生君 これは法律政令の運用に対して、そんなに恣意的なことが許されていいんでしょうか。結局法律では、いま私が指摘いたしましたように、漁業水域というのを第三条第三項で決めているわけです。これはずっと線引きを決めているわけです。そしてその中で、しかし政令で定める海域を除くんだという、その「政令で定める海域」という中に、いま先ほど申し上げましたように、日本海の西部や、黄海、東海、これは除くわけだ。これは漁業水域じゃないんです。それでさっき外務省にぼくは確認したわけだ。特定海域というのは何だと言ったら公海だと、間違いはないと答弁している。公海なんですよ。それは日本の主権が及ばない範囲として特定海域は残してあるということになっているわけだ。そして漁業水域適用してない。適用してなければ、それは明らかに公海部分であって、法的にも実際的にも日本の主権の及ぶ範囲ではないですね。そこで、今度は外国人漁業をその適用をまた外すと。一体、それに対して相手が従わないというときに、従わなければならぬという法的根拠はどこにあるんですか。これは責任持って答えてもらいたいと思いますよ。
  199. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) いま公海ということを外務省からお答えいただきましたけれども、確かに公海でございます。津軽海峡をお考えいただけばいいと思うんでございますけれども、津軽海峡はまず適用除外する海域には入っておりませんから漁業水域になるわけでございます。で、領海法の上では津軽海峡に関する特定海域は公海部分として残る、しかしその公海部分は漁業水域としての制約が課されまして、第五条によりましてその特定海域のうち三海里を超え十二海里までのところにつきましては、五条一号によりまして外国人漁業禁止がなされるということになるわけでございます。そこで対馬海峡の東、西、大隅海峡につきましても公海部分には違いございませんけれども漁業水域といたしまして五条を働かせる余地は十分あり得るというわけでございます。
  200. 和田春生

    ○和田春生君 それはおかしいですよ。津軽海峡はその三条の三項によって漁業水域に指定するわけだから、当然津軽海峡については五条による「漁業水域のうち次に掲げる」という形で特定海域というものは外国人操業禁止するという対象になる。しかし、予定されているこの「政令規定見込事項」によれば、ともかく日本海の西半分からずっと南の方はこれから外しちゃうというんだから、漁業水域を決めないわけでしょう。これはもう農林大臣にも篤と聞いておいていただきたいんですけれども、決めないわけでしょう。漁業水域を決めなければ、特定海域として領海の範囲から外したら公海部分じゃありませんか、それは。その公海部分に、外国人は出ていけということを日本政府がどうして決めつけることができるんですか。外国人はそれに従わなければならぬという義務はどこにあるんですか。日本法律に基づいて漁業水域として指定してあるから、その漁業水域と指定してある中でほかのところは魚をとってもいいけれども特定海域はだめですよと、じゃその日本漁業水域法を尊重する限りそうなる。ところが、漁業水域の指定から海域を外しちゃっているのだから、これは完全にいかなる留保条件もない公海として領海法によっては残るわけでしょう。締め出せるわけがないじゃないですか。言うことを聞かぬと言ってきたら、何を根拠にしてそれに対抗できるんですか。
  201. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) ちょっと少し整理して申し上げますけれども、まず公海であるか公海でないかということは直接関係ないことというふうにお考えいただいて、と申しますのは、私ども考え、これは外務省も一緒でございますけれども漁業水域というものはそういう意味では公海である、漁業水域の設定されました海域もこれは公海であるというふうに私ども考えているわけです。そういう意味合いで、特定海域の領海以外の部分につきましてこれは公海部分が残るという意味の公海であることには間違いないわけでございます。したがって、公海であるかないかということは一応おきまして、問題は、私どももう一回いきますけれども日本国の沿岸周辺につきましては二百海里の漁業水域を引くと、これはもう第三条に書いてあるわけです。そのうち特定の海域につきましてはこれを除外をするというふうに書いてあるわけですね。その特定をする海域につきましてどこからどこまでと、こういうふうに書き得るわけでございますね、まず。それは漁業水域ではなくなる。したがって、漁業水域でなくなるという点につきましては、五条が働かないのは当然のことでございます。その場合に、全部対馬に関する特定海域部分も大隅海峡に関する特定海域部分もすべて漁業水域から外してしまえば、おっしゃるとおりこれは第五条の適用対象になりませんから、われわれの法律を及ぼすわけにまいりませんけれども除外する場合に、この部分は除外をしないということで漁業水域を残せば、五条の適用があるということを申し上げておるわけです。
  202. 和田春生

    ○和田春生君 公海であることはわかっているですよ。公海のところに漁業水域がかぶるから、津軽海峡の場合の特定海域については外国人操業禁止するということが効いてくるわけでしょう。ところが、政令漁業水域から外しちゃうんでしょう、全部。外しちまって特定水域については漁業水域が効くなんということは、牽強付会もはなはだしいです。それはもう法律をねじ曲げてまことに恣意的にそれは適用するということになるんですよ。もし水産庁の説明がそのとおりであるとするなら、この法律は書き直さにゃいかぬ。どういうふうに書き直したらいいかと言えば、第三条の第三項のところの、この法案でいけば三ページの初めだけれども、「中間線(我が国と外国との間で合意した中間線に代わる線があるときは、その線)とする。)までの海域」、——これは農林大臣よく聞いておいていただきたいと思うんですが、括弧内の「(領海及び政令で定める海域を除く。)」となっているのを、「及び政令で定める海域」は削除せにゃいかぬ。この括弧で「(領海を除く。)」と、こうしておかにゃいかぬ、第三条の三項で。そうして、第十四条において、ここのところに、「第五条から第十一条まで」と、こうなっているけれども、「第五条(第一号を除く)から第十一条までの規定については、政令で、当該規定ごとに外国人及び海域を指定して適用しないこととする」と。  つまり、この原案であれば二段落ちになっている。海域をそっくり外しておいて、そしてさらにまた海域と外国人となっている。これは全く法律の立法措置としてもおかしいんです、これは。だから、海域は除かないんだと、全部一応二百海里の中に入るんだと、しかしそれはいま申し上げましたこの十四条の規定によって外国人に対して適用すると、こういうものについて海域を指定して適用しないことにするから、たとえばそれが韓国、中国に対して適用しないことにするのがいいか悪いかについてはいろいろ議論があるようですよ。仮に、それをやろうと、相互主義でいこうと、韓国も二百海里やっておりません。中国も二百海里やっておりません。で、漁業条約がある、漁業協定がある。したがって、これは除こうと思えば十四条によって、それは韓国人あるいは中国人を外すか、あるいはその海域を指定して、この部分については一応二百海里なんだけれども、こちらに対しては適用しないというふうに十四条で外せるわけです。そして、国際海峡というふうに恐らく政府考えたんだろうけれども、この特定海域については外国人は全部ぴしっと締め出せるわけですから、議論の余地がない。これは公海部分として残っているんだけれども領海十二海里に準じまして漁業については外国人操業は対馬海峡の東においても西においても、大隅海峡においても認めないのですと、したがって、沿岸漁民の皆さん御心配は要りませんという政府の説明は筋が通る。ところが、これは二段落ちだよ。全部海域を一遍外しておくと、その西側について、そう言っているんですよ、これはね。外すと書いてあるのです、これはちゃんと。この政令でいけば外れちゃうんです、完全に。外しといて、そうして特定水域はこれは漁業水域じゃなくなるんだ、大隅海峡にしても。そして外国人を締め出すために、外したところからまた抜き出してきてこれは漁業水域でございますよという、特に対外関係のトラブルの起こる問題についてそんなにわかりの悪い、あなた方の牽強付会の、だんごをぶっつけるような法律なんというものは国際紛争の原因になる。ソ連がねじ込んできて、何が悪いんだと言ってきたときにさあ大変ということになるわけです。ですから、これは私たちは二百海里に賛成なんだけれども、これは政府の方でお直しなさいよ。そうすれば非常にわかりがよくなる。
  203. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) まあ私法律家でございませんが、素人なりに事務当局からこの法案の説明、検討いたしました際に素人なりに理解をしておるわけでございますが、それを申し上げます。  「政令規定見込事項」というのをお渡してあるんですが、これは実は大ざっぱ過ぎておるんです。大ざっぱ過ぎておる。そこから誤解が出てきておるんでありまして、とにかく日本列島、日本沿岸沖合いには全部この二百海里の漁業水域が設定をされる、これがまず大前提でございます。そこから政令によってこう外していくわけでございます。適用除外にしていく。その適用除外をする場合に、その「見込」では一遍全部大ざっぱに言って西日本の海域を外すように書いておりますからそういう誤解が出てくるわけでございますけれども漁業水域から除く海域は、「日本海西部(対馬の周辺を除く。)、東海(大隅海峡を除く。)」、これが「政令見込」なんです。それが「見込」が大ざっぱに書いているもんですから、いま和田さんがおっしゃったようになる解釈をされる。そういうことでございません。外す場合には、ちゃんとその辺は外さぬようになっておるということを御理解を賜りたいと、こう思うんです。   〔委員長退席、理事鈴木省吾君着席〕
  204. 和田春生

    ○和田春生君 これは対外関係ですから、外務大臣もそこに一緒におっていただいてお伺いしたいと思うんですけれどもね。しかし、この「見込事項」についてプリントをもらった、いままで説明を聞いたと。そんな説明は全然ありません。新聞にだってこのとおり発表されておりますよ。そうすると、法律と重ね合わして領海法といけば、先ほどから何度も言いました、くどいことは申し上げませんが、西の方は外しちゃうわけですからそこには漁業水域はない、政令で外せば。ないということにしておいて、その外す中からさらにまた対馬と大隅は除くんだと。何でそんなしちめんどうくさいことをしなくちゃいかぬのですか。めんどうくさいことをする必要はないわけでしょう。それは十四条があるわけですから、ダブりますから三条の三項では「領海を除く。」という形にしておいて、一応二百海里であるぞよと、しかしその中からたとえば特定海域を除く黄海方面については、韓国あるいは中国に対しては東海については適用除外して操業を認めてもよろしいということによって初めて相互主義になるわけでありまして、これはそういうめんどうなことを決めて、いかににわか仕立てとは言え、恐らく法律をつくってから気がついたもんだから、これはいかぬというので外すことにしたけれども、外したらそこに入ってくる、さてどうしようか、外国人操業禁止できない。それじゃ外すところからまた外すことにして、外したやつをもう一遍持ってきて引っかけようというようなことに私はなったんだと思うんですね。  ですから、こういう特に漁業水域なんというのは対外的に関係のある法律なんです。国内のひとりよがりじゃいかぬわけです。そうなれば、もっときちんとわかりやすいことにする。それがやはり対外交渉でも対抗していくという意味においてきちんとしているわけでありますから、ソ連からもそうすれば変な因縁をつけられぬで済むわけですよ。韓国や中国を適用除外にしてソ連だけを目標にするのはこれはもうソ連敵視政策だとかなんとか言っておるようですがね、それはこちらから言えば、よけいなお世話で、おまえの方が先にけんか売ってきたんじゃないか、こういうふうに言いたいぐらいのもんですけれども、そうじゃなくて、線引きは全部に一応やっておくんだということをきちんとしておけば、そういうことを言わせる余地がないわけです。その線引きの中で、相互主義だから、中国に対してはこう、韓国に対してはこう、北朝鮮にはこうといけばいいわけです。そうすれば第三条の三項で「政令で定める海域を除く。」なんということはやめて、「領海を除く。」だけにしておくべきなんですよ。一段落ちでいいんです。いまの水産庁長官の御説明や農林大臣の話を聞けば、二段落ちにする必要はないんです。十四条の一段落ちで十分これは運用できるわけなんです。それをなぜこの二段落ちにしたのかぼくはわからない、この立法のやり方が。まるっきりめんどうなことをやっているんです。   〔理事鈴木省吾君退席、委員長着席〕
  205. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) これは大変手落ちでございまして恐縮をいたしておるのでありますが、先ほど申し上げましたように、本邦の沿岸沖合いの二百海里全部この漁業水域法というのは適用になっておるわけでございます。それから今度は、西日本の海域を適用除外にしていくという場合に、国際海峡のいま御指摘いただいているような部分をちゃんと除くようにしてそうしてその他の海域を適用除外にする、こういうことであって、いまの「政令見込」が大ざっぱに書いてございますので大変御審議に御迷惑をかけたと、こういうことでございます。もう一遍申し上げますと、「漁業水域から除く海域は日本海西部(対馬の周辺を除く。)、東海(大隅海峡を除く。)」、こういうぐあいに政令の見込みはきちっと書いておかなければならないやつが、大ざっぱな表現で大変御審議に御迷惑をかけたと、こういうことを私からおわびを申し上げておきます。
  206. 和田春生

    ○和田春生君 農林大臣、大変これをきちょうめんにお話しになっているわけでありますから、そういう措置を責めようとは思わないんです。しかし、そういうお考えがあるなら、この立法は私はやはりおかしいし禍根を残すものなんだと。結局。言ってしまえば、全部線引きにすれば竹島の領有権とか尖閣列島の領有権とか、あるいは日韓、日中の漁業条約とか、そういうもので相手国を刺激したくないと、こういう配慮から出たというふうにわれわれは聞いているわけです。説明を、そのとおりかどうか知りませんよ、聞いているわけです。しかし、そうでなければこういうことにはなってくるはずがないと思うんです。しかし、国際情勢の動きを見ておれば、韓国も北朝鮮の絡みで二百海里宣言ないしは二百海里漁業専管水域法、場合によれば経済水域、これは大陸だなの問題が絡んでまいりますから、恐らく私は日韓大陸だな協定というものが日本の国会で今度も承認をされぬという形になりますと、韓国の場合には二百海里の漁業専管水域ではなくて経済水域、さらに大陸だなの問題まで一挙に持ち出してくるという可能性は十分にあると思いますね。そうなると、日本側も追い込まれる一方である。そうなってから今度あわてて、いや日本海のうちにも黄海、東海にも二百海里の線を引くんだと、そして対等な形に持っていって交渉するんだといえば、また後手後手で追い込まれてしまうわけでありますから、やはり二百海里は一応全部二百海里ということにしておいて、そしてそういう領有権にあるところについて問題を残すならば、北方領土についても現状凍結ということをおっしゃっているわけですから、問題のあるところには現状凍結であると、あるいは韓国や中国についてはこれは適用除外をするんだと、相互主義でいこうじゃないかという話をするということが日本政府としてのきちんとした態度であるんではないかと。これを直したって何の差し支えもないわけで、十四条がある限り、これが外国人だけなら別ですけれども、「当該規定ごとに外国人及び海域を指定して適用しないこととすることができる。」と書いてあるわけでありますから、この運用で非常にいいわけですが、それを三条の三項が入ってきたために、外しておいてまた呼び戻すというようなめんどうなことをする。  私は、これは非常に立法のやり方としてはまずい立法である。特に対外関係においては、はなはだどろなわ式でぐあいが悪いと思うわけですよ。これは所管大臣農林大臣いらっしゃるわけですから、外務省政府委員答弁はしにくいと思うけれども、大変まずいことではなかったか。こんなことにするぐらいなら、むしろ対外関係を見れば私は領海は三海里にしておいて、日本の十二海里については排他的漁業専管水域とすべきであったと思う、こういうめんどうなことをするぐらいなら。魚だけが対象ならそれでいいわけなんです。排他的漁業専管水域にしてしまって、日本の十二海里は全部やる。そのほかに二百海里の漁業水域があっていいわけですから、十二海里については排他的な漁業専管水域外国人操業は一切認めません、二百海里の水域を求めて運用をしていく領海は三海里のままと、国際会議の決定を待つということにした方がもっとわかりがいいし、日本の態度も私はすっきりしたのではないかと、そういうところに私は非常に問題があると思うんです。  きょうは質疑で時間も限定されておりますから問題を提起をいたしておきまして、私はこの問題については与党の側にも十分御相談いただいて、政府としてむずかしければ、場合によれば国会におきまして与野党一致で修正をするのが妥当であると、この考え方だけを申し上げておきたいと思う。農林大臣の御説明はそれなりとして私はわかっているわけでございますが、そのとおりならば変えなさいと、こういう意見が残るわけでありますから、これは留保しておきたいと思います。  さて、これで領海の方に質問を移したいと思うわけでございますが、領海で一番大きな問題になるのは、やはり国際海峡だと。国際海峡の関連があるものですから、五つの特定海域を定めたというのは、恐らく一これは恐らくではなくて、提案趣旨の説明理由の中にも書いてありますように、国際海峡というものをにらんで五つの特定海域を設定したということは間違いがない、これは政府からの説明の中に印刷物の中に入っているわけですね。  そこで、これはまず最初に外務省の方にお伺いをしたいと思うわけであります。国連の海洋法会議においてまだ結論が出ておりませんけれども、私ども承知している範囲では、領海に関しましてはほぼ合意ができ上がっている。ただ、国際海峡の通過通航の方法についてなお議論の余地は残されておりますが、非公式の単一交渉草案改訂版におきましても、領海並びに国際海峡ということについては、通過通航の方法についての議論は若干残っているけれども、ほぼ全体的な合意はできている、あるいはできつつあると、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  207. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) ただいまの御指摘の問題に関しましては、領海の十二海里及びその中における無害通航というものに関しましては、確かに新しい条約でもほとんど確定しておりますけれども、海峡につきましては、実は国際海峡の定義そのものもまだ最終的には固まっていない面がございます。それから、通過通航制度に関しましては、これは一般領海の無害航行よりも自由であるという形で、いわば領海の無害航行と、それから従来の公海の自由航行の間の中間的な形のレジームができ上がる形成過程にありますけれども、その限りでは無害航行より自由な通過通航を確立するということで収歛しつつありますが、ただ、沿岸国の実は権利に関しまして、特に汚染防止との関係におきましてまだ最終的な意見の調整が出てない点がございまして、やはり大型タンカーの問題なんかとの関連におきまして、沿岸国が一般的な形でより規制権を強化したいという点がございまして、さらにこの国際航行のための航路帯の設定に関する国際機関の権限という点でも最終的な詰めが残されているというのが現状でございます。
  208. 和田春生

    ○和田春生君 で、そういうこともあってであろうと思いますが、領海法案政府から提出された説明理由によると、こういう特定海域を五つ設定をした。「これは、国際航行に使用されるいわゆる「国際海峡」の通航制度につきまして、国連海洋法会議において、一般の領海に比し、より自由な通航を認める方向で審議が進められており、」、その後が大事なんですが、「我が国としては、総合的国益からみて、この問題がこのような方向で国際的に解決されるのを待つことが望ましいこと等にかんがみ、当分の間、いわゆる国際海峡のような水域につきましては、領海の範囲を現状どおりとすることにしたものであります。」と、こういうふうに書いてありますが、特定海域をいわば国際海峡のような水域と国際海峡の通航制度ということの関連においてこういうふうにしたと、それが政府の意図であるということは、そういうふうに確認してよろしゅうございますね。これは大臣
  209. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) そのとおりでございます。
  210. 和田春生

    ○和田春生君 そういたしますと、この資料にも出ておりますが、私ども承知している範囲内では大体六十九、資料からではこの国際海峡に該当するであろうと思われる水域が出ておりますが、この場合、国連の海洋法会議において言われている国際海峡というものについては、公海と公海、または公海と経済水域の一部、あるいは経済水域の一部と他の部分と、そういうものを結ぶ海峡で国際的な通航の用に供されるということでは、大体ほぼ固まっているというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  211. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) お答え申し上げます。  国際海峡の定義に関しましては、原則としては公海と公海を結ぶ水路、そして国際航行に使用される海峡ということで、原則はそういうことになっておりまして、したがって、公海と第三国の領海を結ぶ海峡というような形ではないわけであります。しかしながら、まだ若干この定義についても議論が残っておりまして、国際海峡の定義そのものが最終的にまだ確立したというわけではございませんで、今回の五海峡、いわゆる国際海峡と指定した場合の基準といたしましては、これは公海と公海をつなぐのみならず、重要な国際交通上の地位にあって、地理的にもそういう国際交通を制約するようなルートであるということでありまして、たとえば日本海と東海を結ぶとか、太平洋と日本海を結ぶとか、そういう大きな海洋をつなぐようなルートということと、やはり外国船舶の通航が多くて第三国ルートという観点から重要であるということを考慮したわけでございまして、海洋法会議の定義ではそういう形の詳細な規定ではないわけでございます。
  212. 和田春生

    ○和田春生君 われわれも実はそういうふうに理解しておりますから、その点は政府側も私どもの理解と一致しておるわけですから、その一致した上に立って御質問したいと思うんですが、なお議論は若干残っているとは言え、国際海峡というものの輪郭はほぼわかっているわけでありますが、その中で五つだけを選んだわけですね、日本政府は。  さて、そうなりますと、まだ国連の海洋法会議で最終結論は出ていないが国際海峡についてはそういうような方向で話が進んでいるという中で、わが国が積極的なイニシアチブはとらない方がいい、そしてその結論を待とうということなんですね。ところが、この五つを選んだためにそれ以外のところについては全部現行の領海条約が適用されることになってしまうわけですね。それはそういうふうに確認してよろしゅうございますね。
  213. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) そのとおりでございます。
  214. 和田春生

    ○和田春生君 そうですね。そうしますと、日本も加入をして現在効力を持っている領海条約によれば、領海の幅は規定しておりませんけれども領海については無害通航なんです。先ほど言ったようなより自由な妨げられざる通過通航、つまりトランシット・パッセージ、 これがウイ・シャル・ノット・ビー・インピーデッドと書いてありますけれども、それよりももっと非常に厳しい無害通航という形で現行の領海条約はでき上がっているわけです。五つを除く他の部分については、それがもろにかぶってくるわけです。そうすると、領海の上には領空というものがあるわけです。そして中国の沿岸から太平洋に抜けるというところには、御承知のとおりトカラ列島あるいは奄美群島、沖繩群島というふうにずっと東海と太平洋を遮断する形で日本の島がそこにいっているわけであります。さて、そういうところで見ていきますと、これはしょっちゅう通っていないかもしらぬけれども太平洋岸から中国の沿岸に入っていく、あるいは中国の沿岸ないしは東海、黄海から太平洋側に出ていく船舶並びに航空機、こういうものを考えた場合に、たとえば沖繩本島と与論島の間で、与論島と沖永良部島の間、沖永良部と徳之島の間、徳之島と大島の間、こういうものがありますし、トカラ列島に行けば、南から言ってくれば諏訪瀬水道、中之島水進、あるいは口之島水道、トカラ海峡、こういうものについては幅員も十海里以上、場合によれば二十海里以上あるわけですから、これはその上空を航空機が飛んでも従来の領海三海里であれば日本の領空侵犯にならなかった。ところが、今後はそっちから出る分については、もうこの図面で見ればわかりますが、大隅海峡を日本が特定海域としてあけたとおりの海峡で、あるいは津軽海峡でもこういうふうに非常に複雑な妙ちきりんな線引きをしておりますが、これはいま言いますまい。まことに芋虫がはったような妙なかっこうになっておるんですけれども、ここのところを通る以外にはだめだということになる、領空侵犯ということになりますね。それを確認しておきたいと思います。
  215. 鈴木登

    説明員鈴木登君) お答え申し上げます。  実は先生もすでに御存じのとおりに、民間航空につきましては航空協定等によってお互いに承認をし合っておりますので、その点につきましてはほとんど問題がないと思います。  それから軍用機につきましては、これは防衛庁の方が御出席ですので、防衛庁の方から……。
  216. 和田春生

    ○和田春生君 後から聞きます、それは。  もちろん、民間航空機については、お互いに協定すればそれぞれの領海の上は飛べるわけで、そうでなければ成り立たぬわけですね。しかし、軍用機かあるいは国籍不明機か、わけのわからぬものが飛んで行けば、これはもう領空侵犯という形になるわけで、領海の上には領空というのが必ずくっついているわけでr。ですから、通過通航というのは艦船だけじゃなくて、航空機並びに艦船なんです、これは。それはもう自明の理なんですから。  そこで私が問題にしているのは、事実上南はもう大隅海峡までという形で五つに限定したということによって、いまもうトカラあるいは奄美、沖繩では、沖繩群島と先島群島との間はあいているものの、事実上太平洋と東海の間に通せん坊、つまり日本領海、領土というものがそこにがんばったというかっこうになるわけです。そこにおいては、現行領海条約があるわけですから、その国際海峡に対して、その通過通航で無害通航よりもより自由な通航制度を主張しているという日本の基本方針と背馳する態度をとったことになる、この部分については。無害通航になる。領海条約が生きている。そして特定海域を残さなかった、ふたしちゃった。だから、より自由な通航を念願をしているからあけたと言いながら、そういう重要なところについてそれと全く背馳をする。むしろ非常に国際的に見れば厳しい、国連海洋法会議の中でいけば領海については全部無害通航でなければいかぬという最も強硬な主張に、日本の領土の大きな部分においてそれは日本は同調したという形になりますね。これは一体どうですか。井口さん、国連海洋法会議にあなたずいぶん取り組んでこられたわけですけれども、問題になりませんか。
  217. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) これはあるいは大臣のお答えになる重要な問題かもしれませんが、御指名があったので申し上げれば、これらの五海峡を特定した理由に関しましては、国際交通上重要なルートという観点から五つにしぼったということでございまして、海洋法会議で最終的にでき上がる国際海峡というものがどういう形にでき上がるか、それによってまた改めて海峡の問題というのはそこで見直されるわけでありまして、この五海峡以外に今後国際海峡でどういうものが出てくる・かというようなことは現在の段階で確定的なことは申し上げられないわけでありますが、六十九というふうにおっしゃいましたけれども、これは単に公海と公海をつなぐ水路というもので、十二海里の領海で覆われるということでありまして、恐らく外国の船舶等が全く通ってないものもありますし、ほとんど通ってないようなことでありましょうし、総合的な判断としてはこの五つを現状凍結ということで決定したわけでございます。
  218. 和田春生

    ○和田春生君 私の質問に対する答えになっていないわけですけれども、それではちょっと論点を変えてお伺いしたいと思うんですが、国連の海洋法会議、これは大臣に特に後でまとめてお答え願いたいと思うんですけれども、海洋法会議の結論が出ていない。その場合に、国際海峡なるものに対応するわが国の選択としては、幾つかの政策的な選択の方法というものがあると思うんですね。  その一つは、全部一律十二海里にして現行領海条約第三章の無害通航を適用する、これは最も強硬な措置日本が先頭に立ってとるということであります。これは、あることがあるというだけで、一応外しましょう。  第二番目は、一律十二海里にしておいて国際海峡、この規定は公海と公海を結ぶ、あるいは公海と経済水域を結ぶ、経済水域の一部と他を結ぶというふうに海洋法のいま草案の文句を使っていいと思うんですが、それに相当するもの、六十九と言いましたけれども、はっきり言いましてこれは本土と島の間に水路があるが、その島の外側に同様に便利な通路がある場合にはこれは適用しなくてもいいということになっていますから、これ六十九全部というようなことは言いません。しかし、そういうようなところについては、すべて外国の航空機、艦船が通る可能性があるというところについては自由通航、あるいは当分の間従来どおりの通航を認めると、国際的合意ができるまでは従来どおりの通航を認めていく、つまり新たに領海広がった部分については、そういう方法だってあるわけですね、これは。五つに特定せずに、全部それに該当するところについては領海だけれども通過通航、つまりただ通り過ぎるというだけについては、国際的合意ができるまで従来どおりの通航を認めるという選択がある。  それからもう一つは、国際海峡に該当すると思われるものについては全部特定海域に指定するという選択の方法がある。五つじゃなくて、いま私の指摘したような領空侵犯とか無害通航ということを避けるためには、そういう方法があるんですね。大体、私が海の関係の知識で拾ってみますと、多少議論があるけれども、あと二十四、五拾えば大体その問題がなくなるんです。つまり東海、黄海と太平洋とを行ったり来たりするとかいうようなところを、しかも、幅も大体十海里程度、三海里、三海里、領海との間に三海里ぐらいは残るというところを拾っていきますと、それは大体三十ぐらい指定すればどこからも文句は言われないし、トラブルを起こさないということもできるわけです。それを全部特定海域にひとつ指定するという行き方もある。それはそんなに困難なやり方ではない。  そして、最後に出てくるものが、政府案のように、日本が恣意的に日本としての独自の判断で五つだけを国際海峡に相当するものとして領海三海里で凍結をしておいて、自余の分については全部十二海里でふたをしてしまって無害通航を全部適用するという選択の方法がある。こういう幾つかの政策的な決め方があるにもかかわらず、きわめて恣意的に、日本日本の判断で五つだけに限定をして、そして自余の分については十二海里一律、しかもそれは現行領海条約との関連において無害通航をそこには強制的に適用するという立法措置をとった、その積極的理由は何か。そのメリットは何なのか。それによってどういうデメリットが出ると考えたのか。その点をお伺いしたい。
  219. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) いま先生は非常に整理をされまして、いろいろな方法があり得るのではないかということを申し上げられたので、政府案のメリット、デメリットを申し上げることも一つの方法でございますが、先生お挙げになりました方法についての問題点を申し上げるということでもお答えになるかと思いますけれども、先生がまず最初にお捨てになりましたすべての日本沿岸は、すべて領海は十二海里である、一切特例を設けないで無害通航ということ、これはやはりいろいろ問題がある、これはやはり私どももとり得ない点であります。  それから逆に、説明の順序からいって逆に申し上げますと、三番目に先生が挙げられました、政府案よりもより数多くの海峡について特定海域として指定したらどうかという御提案がございました。これは、いわば限界の話でございまして、政府案の考え方のもとに立って五がいいのか、十がいいのか、二十がいいのかという話になるわけでございます。私どもも、この特定海域を指定する場合には、海上保安庁にお願いをいたしまして、現状の外国船の航行の頻度等を調査をお願いをいたしまして、その結果によりまして非常に頻度の多いところ、これを閉じれば——閉じると言いますか、無害通航にすれば問題がある、やはり従来どおり三海里にする必要のあるところ、ほかを特定海域に指定しなくても、いわば領海として無害通航のままにしておいても問題がないところという選択をいたしまして、大体私どもといたしましては、五つの海峡について特定海域を設定をすれば問題はないと。先ほど航空機のお話ございましたけれども、航空機につきましても、軍用機は一応別にいたしましても、民間航空機の場合にはこの五つの海峡について特定海域を設ければ現状としてはほとんど変化がなく問題がないというふうに考え、いわば現状から考えまして、問題のないところを現状のとおり三海里にとめ置くといういわばわが国の選択でございますので、なるべくそういう異例の選択は、必要は満たし、最小限度にとどめるという考え方にいたしたわけでございます。  最後にといいますか、先生二番目に御提案になりました、国際海峡についてはすべて従来どおり自由航行を認めるという御提案でございます。問題は、国際海峡という定義が先ほど外務省の御説明にございましたとおり、何が国際海峡であるかということは必ずしも明確ではない。したがって、どの海峡について従来どおり自由航行を認めるかということにつきましては、やはり選択がなければならないという点は同じでございますが、二番目に従来どおり自由航行については非常に問題がある、というのは表現といたしまして。私どもの特定海域という考え方も、必要な海域につきましては領海を三海里にとどめまして、残りは公海部分として残し、したがって公海部分ですから、従来どおりの航行が認められるということにいたしておるわけでございます。違いは、従来どおりの考え方でもって自由通航という新しい概念を導入するという点が政府案として違う。この辺はやはりいろいろ御論議ございましたけれども、新しい自由航行という概念をこの際設定することについては、いろいろ問題があるのではなかろうかというふうに私ども考えておるところでございます。
  220. 和田春生

    ○和田春生君 肝心なところにお答えになっておらぬのですが、それの積極的な理由は一体何なのか、五つに非常に恣意的に選んだのは。あなたはいまそれは、いままでの現状において海上保安庁等の話を聞けばそこさえそういうふうにしてのけておけば問題がないだろうと判断したというのは、日本の判断ですね。しかも、それは日本の恣意的な選択なんです。しかし、それに外国が必ずしも従わなくてはならぬということはないわけですね。日本法律で決めたら従わざるを得ないわけです。しかしですよ、これ考えてみて大体中国の沿岸から太平洋に行くという場合に、北米に行く場合、中米に行く場合に、あるいは南方の方に行くという場合に、おおむね汕頭からずっと上海から旅大地区へかけてのあの辺の中から、あるいは韓国から、北朝鮮から行くという場合ですね、それは北米に行くときに大隅海峡を政府が指定したように抜ければいいでしょう。しかしそうでない場合に、こういうふうにおりてきて、こう行ってこう行くというのは常識じゃないんですよ。ぼくら船乗りでそういう通り方をしていない。たとえば先ほど言ったような沖繩の本島と与論島の間あるいは沖永良部の島をすうっと突っ切ったって構わないわけです。航空機だって、いままでは公海部分だったから監視してなかっただけのことなんで、そこを通っていないとは限らない。軍用機が通るかもわからない。中国本土から飛び立った軍用機が太平洋に行くというときに、ちゃんとこうよけて通ってその大隅海峡のところを通るか、あるいは沖繩の南の方との先島群島との間に二手に分かれて通るということだけではないわけでしょう。見てなかっただけだ、統計に出てないだけなんだ。通っていることはぼくらよく知っているわけです。アメリカの航空機にしたって、あるいはソ連の艦隊が来たときに飛ぶにしたって、中国にしたってあるわけです。日本の統計にかかっていないというだけです。しかし、今度こういうふうにして全部十二海里で無害通航という形でやれば、そうはいかぬのです。日本の領土で領海になるわけです。無害通航の条約を適用するわけです。  そこで今度は、この議論はまた後でやりますけれども、自衛隊の方にお伺いしたい。そうすると、これについてやはり国籍不明なんかの飛行機が飛べばスクランブルをかけなくちゃいかぬということになると思う。どういう体制をとっておられますか。
  221. 渡邊伊助

    政府委員(渡邊伊助君) 先生すでによく御承知のとおり、全国二十八カ所にレーダーサイトを設けて見て監視をいたしておるわけでございます。スクランブル体制はADIZという防空識別圏がございまして、防空識別圏を通過する際に、航空機を識別して領空侵犯のおそれのある航空機についてのみスクランブルをかけるという形にしております。先生ただいま御議論になりましたこの南西諸島の方面につきましても、航空自衛隊のレーダーサイトのレーダーカバレージは、すべてこの辺を全部カバーしております。したがいまして、私ども見ております。そこで、新たに領空になったところ、侵犯をされた航空機についてのみスクランブルをかけるわけではなくて、かなり遠方のところから見て、そのおそれのあるものについてだけスクランブルをかけるということになっておりますので、今回領海が三海里から十二海里に広がった程度の距離では、たとえば現在のジェット機の速度等から考えまして、スクランブルの体制にほとんど影響はないというふうに私ども考えております。
  222. 和田春生

    ○和田春生君 それは防空識別圏があることは知っていますよ。領海侵犯のおそれがある、領空侵犯のおそれがある場合にスクランブルをかけるということになりますね。そうすると、たとえばいままででいけば、徳之島と沖永良部の間は十八海里の幅があるわけです。両方から三海里でも真ん中に十二海里残っているわけですね。それをすうっと突っ切っていくという場合には、領空侵犯にならぬわけでしょう。だから、それは防空識別にかかっておったっていいわけだ、そちらの方に進路が向いておれば。今度はそれは領空侵犯ですからね、おまえ帰れといってやらないかんですな。それはやるんですね。
  223. 渡邊伊助

    政府委員(渡邊伊助君) ただいま御指摘になりました海峡の上空を、方向、速度等を変化せずに進行してきたという場合には、スクランブルをかけます。
  224. 和田春生

    ○和田春生君 そういたしますと、これは日本の統計にはちゃんと上がっていないし、そこまでは調べていないと思いますけれども、少なくとも西側に東海あり黄海あり太平洋あり、そこにこの図をごらんになってもわかりますように、日本の領空侵犯をせずに通り抜けようとすれば、大隅海峡の特定海域を行くか、あるいはトカラ列島と奄美群島との間はこういうふうに重なっていますから、それを一たん南に下がってきて、北にこういうふうにジグザグで抜けるか、あるいは沖繩の南を迂回するかしない限り、全部領空侵犯になっちゃう。だから民間航空機で、その協定をしているものが、はっきり識別できるものがやればいいけれども、国籍不明だとか、そこでソ連艦隊みんな南へ来ていますわね、やっている。アメリカが来る、中国がやる、演習をやる、これも全部やっぱりやらなければいかぬことになりますわな、無害通航なんですから。それをやっぱりやるという決意で閣内でも意思統一をして、航空自衛隊、防衛庁としてはそういうお答えをしているわけですね。断固として領空侵犯としてそういうものを追っ払うのですな。
  225. 渡邊伊助

    政府委員(渡邊伊助君) いま私はっきりした数値を記憶しておりませんけれども、確かにトカラ海峡ですか、ここは通過をしたという実績はございます。ただ非常に多くは沖繩本島と下地島ですか、南方の方でございます。非常に広くあいているところでございます。ここを非常に多く通っております。そこで、たとえばソ通ならソ連の航空機が日本海から太平洋に出るという場合には、対馬海峡を通りまして、ただいま申しました沖繩本島の南の方を迂回して通るということになろうかと思います。現在のそういう体制が非常に多うございますし、それからいわば現在の航空機の速度等からいたしまして、この程度の迂回では大した支障はないというふうに考えております。ただ先生おっしゃいましたように、新たに領空になるようなところをもし通ろうという姿勢が見えれば、私どもはスクランブルをかけるということになろうかと思います。
  226. 和田春生

    ○和田春生君 いままでは余り問題がなかったから、そういう形で多くはそこを通っているということなんです。ほかは絶対に通っていないという保証はないわけです。通っている例もあるのです。艦船の場合もあるのですね、実際。それがきちんとそこに全部監視網を置いてどこの何が幾ら通ったということは統計として上がってないというだけでしょう。大隅海峡のときでも、現地視察に行って海上保安庁に聞いたところによれば、レーダーで識別するという場合に、それは国籍まで識別できませんから、相当の外国船が通っているであろうというだけであって、どこの国籍のどういう船が何隻通ったという統計は海上保安庁でさえとってないわけです、大隅海峡についてさえですね。ましてほかについては、それがないわけです。そこの部分が全部いまこの図で見たように領海になるわけですよ。領海の上は領空がそのまま乗っかるわけですから、そうすると、それはいままでとはやっぱり航空自衛隊としても体制というものは変わってこぬと筋が通らぬという問題があるわけですね。それを聞いているわけですから、それはもう一機や二機ぐらいお目こぼしでいいわというんじゃ、これは国土防衛の責任は果たせないですよ。自衛隊があるのがいいか悪いかどうかという議論はあるけれども、いま税金使って存在しているわけだから、守るためにあるわけですから、一つか二つぐらいお目こぼしでそれはよかろうなんということではこれは通らないわけです。びしんとやらにゃいかぬわけだ。従来とはそれは違うのですよ。従来は三海里だったわけです。ずっと通れるところが幾つもあったわけだ。そいつは進路、方向変えなけりゃ領空侵犯にならないと、よろしいで済んだわけだ。これからそうはいかないという問題が、しかもこれは非常に戦略的に要衝の列島に起きてくる。それでいいのかと聞いている。いいと言うのなら、そういう言質とっておきたいと思いますからね。
  227. 渡邊伊助

    政府委員(渡邊伊助君) 先ほど、先生統計がないというふうにおっしゃいましたが、その意味はよくわかりませんが、航空自衛隊がスクランブルをかける場合に、領空を通過する航空機全部にかけているわけじゃございません。私ども航空自衛隊のレーダーサイトに運輸省の航空局、あるいは航空管制本部の方からフライトプランが全部入ってまいります。それでインプットされておりますので、瞬間的に照合できるわけでございます。そういうフライトプランのインプットされていないものについて、いわば私どもアンノーンと称しておりますけれども、アンノーンの航空機についてのみスクランブルをかけるという体制をとっておりますので、それほどはなはだしい状態の変化というものはないのではないかというふうに考えております。
  228. 橘直治

    委員長橘直治君) 時間が参りましたから、和田さん、もう一問でお願いします。
  229. 和田春生

    ○和田春生君 時間が来ましたので、きょうの質問はこれで終わりますけれども、ないだろうというだけのことなんで、そういうところは絶対に通らない、日本がこういうふうに決めさえすれば間違いなく指定水域を通るんだということは、こっちがそう思っているというだけであって、相手が思っているかどうかわからない。現に日ソ漁業条約でも鈴木農林大臣が大変苦汁をなめられているというのは、こう思っているだろうといったらまるきり違った手に出てくるわけですから、やっぱりそういうことを予想に入れてやるというのが国際的な対策だと思うんです。その点を質問しているわけですけれども、きょうのところは私の割り当ての時間も来ましたし、お疲れのようでございますから、あとは次回にひとつお伺いをしたいと、こう思います。
  230. 青井政美

    ○青井政美君 大変時間も経過いたしまして、関係の方々もお疲れだと思いますので、私も簡単にはしょってお尋ねをいたしたいと思うのでございます。  御承知のように、韓国や中国等は二百海里というものの漁業水域を設定をいたしておりません。また、わが国との関係においては漁業協定が結ばれて、安定した漁業関係が維持されておるのでございまして、これらに対しましては、今後この法案が通ったときに特別な措置をせられる用意があるのかどうか、お伺いいたします。
  231. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 現在中国、韓国との間におきましては、日中漁業協定と、それから日韓漁業協定がございまして、両国間の漁業関係は非常に円滑にいっているわけでございます。また両国とも、現在において二百海里漁業専管水域というものを設定しておらないという状態でございますので、私どもといたしましては、この法律施行のときには第三条の第三項によりまして、「政令で定める海域」ということによりまして、日本海の西部、先ほどちょっと申し上げましたけれども、対馬の周辺を除くと、それから東海、黄海、太平洋の南西部、そのうち大隅海峡等を除くというような措置によりまして漁業水域から外していくということ、それから十四条によりまして、個々の条文に当たりまして、韓国人、中国人の漁船につきましては、それぞれの本条によりまして必要に応じて適用除外をいたしたいというふうに思っております。
  232. 青井政美

    ○青井政美君 日ソ間の損害賠償請求処理委員会の現状の活動を説明いただきたい。
  233. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 日ソ損害賠償請求処理委員会、これは一昨年の十月に日ソ漁業操業協定が発効しまして昨年の三月に発足いたしたわけでございます。その発足以前といいますか、協定発効以前二カ年間に起こりましたいろいろなトラブルを一括して請求の対象にいたしておりますので、七百件を超える請求が出まして、そのうち三十七件現在審査中であり、それからそのうち三件がモスクワに行って処理をされておると。非常に審議がおくれているわけでございますけれども、今後はさらにこれを促進をいたしまして、申請されている案件をなるべく早く処理をいたしたい、かように考えております。
  234. 青井政美

    ○青井政美君 わが国周辺の海峡の中から、特に特定海域として五つの海峡を選定をしました根拠の説明をいただきたい。
  235. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) いわゆる国際海峡というものにつきましては、国際的にもまだはっきり確定された定義がないわけでございますが、私ども領海法案におきまして考えておりますのは、まず現在の領海三海里の状態でもって公海部分が残っている、それが十二海里になった場合にはほとんどこれが閉ざされるか、または航行に不適の程度ぐらいしか残らないというような海峡であるということ、公海と公海とをつないでいる海峡であることと、最後には、現に外国船舶が相当な頻度において第三国間の航行をいたしておるというふうなところから、五つの海峡を選んだわけでございます。
  236. 青井政美

    ○青井政美君 沿岸漁業保護という観点から見ますときには、五つの海峡の現状凍結の部分には非常によい好漁場があるのではないか。政府はこの部分における外国漁船操業の防止及びわが国漁業者損害をこうむった場合における救済措置考えておるのかどうか。
  237. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) いま御指摘の特定海域の中等におきましては、御指摘のとおり、優良漁場もございます。それらに対しまして従来どおりの領海にとどめるということによる外国漁船操業による被害等につきましては、漁業水域に関する法律の第五条一号によりまして、外国人漁船につきましては、特定海域につき距岸三海里から十二海里までの間につきましては、外国人漁船操業禁止をするということにいたしたいと思っているわけでございます。
  238. 青井政美

    ○青井政美君 法案の第二条第一項の、「湾口若しくは湾内又は河口に」引かれんとする線はどのような線を考えておるのか。
  239. 鈴木登

    説明員鈴木登君) 領海の線の引き方につきましては、実は現在領海条約という条約で引き方が決まっておりまして、低潮線から引くようにというふうになっております。低潮線につきましては、現在の大きな縮尺の海図にすでにもう記入されてございます。したがいまして、そこから十二海里を引くということに相なります。それから湾口閉鎖線またあるいはいま先生御指摘の河口につきましても、それぞれ、湾口につきましては湾口の幅が二十四海里以内のものにつきましてそのそれぞれ一番突端部の低潮線から低潮線へ引く、河口につきましても河口の低潮線から低潮線へ引く、それを基線にいたしまして、その基線から十二海里に領海線を引くことに相なります。
  240. 青井政美

    ○青井政美君 法案の付則第二項の「当分の間」とはいつまでを考えておるのですか。
  241. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 特定海域を設けるという制度は、やはり現在海洋法会議が継続中でございまして、国際海峡等の取り扱いにつきまして国際間の合意が成立しておらないということに着目いたしまして、こういう特定の例外措置を設けるわけでございますので、私どもといたしましては、国連海洋法会議におきまして合意が成立し、それが国際法として有効に働くまでの間ということを考えております。
  242. 青井政美

    ○青井政美君 施行期日につきまして公布後三月以内としておるわけでございますが、二百海里法案とともにもっと早く施行すべきじゃないかと思うのですが、その見解を伺いたい。
  243. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) これは三月といたしておりますのは、この法律施行の準備、いわば政令、省令の制定その他の準備のほかに、諸外国に対します趣旨の徹底のために要する期間というのを考慮いたしまして三月以内というふうに書いてあるわけでございますが、御指摘のとおり、私どもできるだけ早くこれは施行いたしたいというふうに考えております。
  244. 青井政美

    ○青井政美君 領海を三海里から十二海里に拡張することによりまして、わが国領海の面積はどのぐらいふえるのですか。
  245. 鈴木登

    説明員鈴木登君) お答えいたします。  三海里の場合は概略申し述べまして七万五千平方キロメートルの、現在三海里の場合ですが、七万五千平方キロメートルの領海の面積に相なりますが、それを十二海里にいたしますと約三十一万平方キロになりまして、二十三万五千平方キロが増加するということになります。
  246. 青井政美

    ○青井政美君 領海が拡張せられますと、やはり今後警備の問題が非常に大きく問題になるのじゃないかというふうに思いますと、警備体制という問題の万全を期すためには、保安庁あるいは自衛隊というふうな分担関係はできておるのかどうか、伺いたいわけです。
  247. 鈴木登

    説明員鈴木登君) 御指摘の点につきましては、実は現在海上保安庁の方で三百十隻の巡視船、それから三十四機の航空機を所持しております。それを当分の間、それを有効的に重点海域に張りつけまして、これはまあ水産庁あるいは外務省の方とも御相談しながら重点海域に張りつけまして万全の措置をとりたいと思っております。  なお、先生御指摘の海上保安庁と自衛隊の関係につきましては、第一義的にはこの領海警備というのは海上保安庁の職務となっておりまして、ただ、非常に大規模な騒乱が起こったような場合、これは自衛隊法八十二条に基づきまして、総理大臣の承認を得て自衛隊が出動するということになっております。ふだんは、自衛隊法の百一条によりまして、自衛隊と海上保安庁の間で十分の連絡、すなわち、たとえば情報の御提供をいただくとか、あるいは海難救助のときにお手伝いをいただくとか、そういうふうなことをやっておりますので、そういう関係は今後とも十分充実してまいりたいというふうに考えております。
  248. 青井政美

    ○青井政美君 漁業水域を設定した場合、ソ連漁船が全部締め出されるのかどうか。また、韓国や中国が二百海里の漁業水域を設定した場合には、今後どのように対応せられるのか。さらに、現段階で二百海里法案を早く設定をせにやならないという意義について伺いたいと思います。
  249. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) わが方が国会の御承認を得まして二百海里の漁業水域を設定をいたしました際、ソ連との間にはいままで伝統的な漁業実績というものをソ連漁船が持っておるわけでございますので、一定の条件、一定の規制のもとに、また総合的に判断をして、言いますところのクォータに基づいてソ連漁船わが国漁業水域に対する操業を認めてまいりたいと、このように考えております。  それから、韓国並びに中国等が二百海里を設定をするという事態になりますれば、わが方も相互主義の立場から直ちに政令に基づきまして二百海里を設定をすると、こういう方針でございます。
  250. 青井政美

    ○青井政美君 これは最後の質問でございます。  この法案も各野党の皆さん方の御協力を得て速やかに、早く法案を成立いたしたいと私自身も念願をする者でございます。また、先ほどのモスコーへ訪問いたしましたいろいろな感触を考えてみますときにも、やはり対等の土俵の中で相撲をとらなけりゃならないという感触の中からも、やはりこの問題は国策の中でも最大の大きな課題であり、また北洋漁業を守るという日本産業全体の中でも非常に大きなウエートを持つことだと思うのでございまして、先ほど来、大臣は第三次の訪ソをせられるということを伺っておるわけでございますが、一億の国民が全部大臣の御努力を期待いたしておるわけでございまして、答弁は要りませんが、よろしくお願いを申し上げまして私は質問を終わりたいと思います。
  251. 橘直治

    委員長橘直治君) 両案に対する質疑は本日はこの程度といたし、本日はこれにて散会いたします。    午後八時二分散会