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政府委員(宮崎勇君) 今回のロンドンの
会議の
宣言に、一番冒頭のところで
経済政策に関連するところがございまして、
黒字国並びに
赤字国は、それぞれ
責任を持って現在の困難に対処しなければいけないということが述べてございます。
その際に、
黒字国として最も重要なことは、
インフレの再燃を防止しつつ国内の景気の
拡大を図る、それを通じて
各国の
国際収支の不均衡を是正し、かつ、それによって
世界経済の
発展、
回復を促す、
失業の解消を図る、こういうことでございます。
いわゆる成績のいい国と申しますか、現在
世界経済の中で、御承知のように二極化現象が起こっているわけでございまして、
日本、
西ドイツ、
アメリカというような国は、
国際収支の点もそうでありますけれ
ども、国内の成長率あるいは物価の上昇等におきまして、そのほかの
フランス、イタリア、
イギリスといったような国に比べまして、比較的
経済的な業績と申しますか、パフォーマンスがよろしいわけでございます。したがって
日本に対しても、この
会議では、
黒字国としての
責任の景気の
拡大を軌道に乗せるということが要請されたわけであります。
この
宣言の一番最初に書いてありますように、この成績のいい三国が、それぞれ目標として掲げている成長率を達成することを約束した、英語ではコミットでございますが、したということが書いてございまして、その趣旨は、先ほど
外務大臣からも申し上げましたように、これは自動的に強制的に諸
外国からこの六・七%の成長率を達成するということを強制されたというような趣旨ではございませんで、第一義的には
日本経済自体にとって景気の
回復が必要でございまして、現在も
失業が百万人に達する
状況でございますし、雇用の改善がはかばかしくないというような
状況でございますので、景気の
回復それ自体は
日本にとっても必要であるわけですが、同時に、そのことが
日本の
内需の
拡大を通じまして輸入需要を喚起する、その輸入需要の喚起ということが、
国際収支の
赤字に悩んでいる国の
輸出を助けるという形になるわけでございます。
ただ、
日本の
貿易の特殊な構造からまいりまして、必ずしも
日本の景気の
回復は直ちに現在問題になっております、たとえばヨーロッパの国々からの輸入をふやすということには直接必ずしもつながらない面がございますけれ
ども、
日本が景気の
回復によりまして原材料やあるいは
エネルギー源を輸入するわけでございますが、その輸入先の購買力がふえるということが、ヨーロッパのそれらの国に対する
輸出を
増大せしめるという、間接的なルートを通じてそれらの国の均衡
回復に役立つというふうに考えるわけであります。そういう
世界経済の
回復に対して
日本の景気
回復が非常に大きな影響を持っているという点で、
日本としても積極的に六・七%の成長を達成するということをコミットしたわけでございます。
その六・七%の成長を達成するのにつきましては、昨年の半ば以降
日本の
経済が停滞
傾向を続けているわけでございますけれ
ども、そういう事態に対処するために、昨年の十一月の景気対策、七項目から成ります景気対策に続きまして、本年に入りまして補正予算を追加する、あるいは五十二年度予算を早期に成立を図り、そしてその予算におきましては需要
拡大効果の大きい公共投資を
中心にして編成されている、その公共投資につきましても、上半期に七三%集中前倒し的に支出するということによって
経済にはずみをつけるという措置がとられているわけでございます。あわせまして、金融
政策の面におきましては公定歩合を三月、四月それぞれ引き下げたわけでございまして、これによって私
どもは景気が
回復軌道に乗るものと考えているわけでございます。
昨年の七−九月、あるいは十−十二月の実質国民総生産は、対前期にしましてそれぞれ〇・四%、〇・六%の
増加でございますので、大変低い伸びでありますが、一連のとられました措置によりまして、そしてあわせてことしに入りまして
輸出がやや伸び率を
回復しておりますので、そういういわば外生的な需要ではございますけれ
ども、それをきっかけといたしまして、この一−三月にはかなり実質成長率が
回復していると私
どもは考えているわけでございます。国民所得統計がまだ一−三月の分につきましては発表されておりませんで、今月の下旬には出るかと思われますが、かなりの高い実質成長率を実現しているんではないかと思われます。
それから、そういう
状況を受けまして、生産がややこのところ
回復をしておりますが、生産自体の伸び率もそれほど目立った伸びを示しておりませんが、注目されますのは、この月例
報告でも述べておりますように、在庫が七ヵ月ぶりに対前月比でマイナスを示すということで、在庫調整がかなり好調に順調に進展しているというふうに思われるわけです。したがいまして、四−六月におきましても一−三月と同じような
状況で景気が
回復しているというふうに考えられます。そういういわば
政府支出主導型とあわせまして
輸出が高水準であるということによって、今年暦年の上半期の
経済がかなりの勢いで
回復してまいりますと、そのことが下半期におきまして民間の需要、消費、あるいは設備投資を刺激して、だんだん主役が交代しながら景気が
回復し、六・七%の成長を実現するということを期待しているわけでございます。
なお、
政府見通しの五十二年度におきまして、経常収支が御指摘のとおりマイナス七億ドルという見通しになっております。率直に申しまして、五十二年度マイナス七億ドルの経常収支を記録するということまで、現在の
内需の
拡大から輸入の
増加ということを期待してそういう数字になるというのは、大変厳しいという
感じがするわけでございます。この数字は
内需の
拡大によって
国際収支の
赤字、厳密に申しますと
貿易収支の
黒字の縮小、ひいては現在四十億ドルの水準に達しております経常収支の
黒字を縮小し、
赤字になることも辞さないという、そういう
姿勢を示しているわけでございまして、そういう形において国際
協力の実を上げていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。