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国務大臣(
鳩山威一郎君) ただいま
議題となりました千九百七十一年七月二十四日にパリで改正された
万国著作権条約及び
関係諸
議定書の
締結について
承認を求めるの件につきまして提案理由を御
説明いたします。
万国著作権条約は、米州
諸国のように著作権を保護する条件として納入、登録等の方式に従うことを要求する国と
わが国や欧州
諸国等のように著作権を無方式で保護する国との間の橋渡しを行うものとして一九五二年に作成されたものでありますが、このパリ改正
条約は、
開発途上国の文化的、社会的及び経済的発展の必要性を考慮して、翻訳権及び複製権に関して
開発途上国のために特別の便宜を図る
措置を講じたものであります。なお、現行
条約に附属している無国籍者等の著作物に対する
条約の適用に関する第一附属
議定書及び国際連合等の
国際機関に対する
条約の適用に関する第二附属
議定書は、そのままの形でこのパリ改正
条約に引き継がれています。
わが国は、一九五六年に
万国著作権条約及び
関係諸
議定書を
締結しており、
わが国がこのパリ改正
条約及び
関係諸
議定書を
締結することは、
開発途上国との
友好関係を促進する見地から、また、著作物の保護のための国際
協力を推進する見地から有益であると考えられます。
よって、ここに、この
条約及び
関係諸
議定書の
締結について御
承認を求める次第であります。
次に、子に対する
扶養義務の
準拠法に関する
条約の
締結について
承認を求めるの件につきまして提案理由を御
説明いたします。
渉外的な私法上の法律
関係につきどの国の法律を適用すべきかを指定する国際私法が国によって異なっておりますため、同種の私法
関係に係る紛争が国によって異なって
処理される等の不合理が生じております。この不合理を除くため、ヘーグ国際私法
会議は、一八九三年以来各種の法律
関係について
条約を採択し、国際私法の漸進的統一作業を続けております。同
会議は、一九五六年十月に開催された第八回
会期において、子に対する
扶養義務の
準拠法に関する
条約を作成しました。この
条約は、一九六二年一月一日に発効しており、その締約国は、一九七七年二月現在、西ドイツ、フランス、イタリア等十二カ国であります。
この
条約は、子に対する私法上の
扶養義務に関し、原則として、子の常居所地の法律を適用することとして、
各国に
共通の国際私法の規則を定めるものであります。子の扶養の問題は、子の常居所地すなわち子が実際に居住する国の生活水準等に密接に関連しておりますことより、この
条約の定める
共通の規則は、子の保護の見地から妥当と認められます。
近時、
わが国と諸外国との間の人的交流が盛んになり、これに伴い、
わが国国民の
関係する渉外的な親子間の扶養の問題が法律上の紛争となる事例が漸増する傾向にあることにかんがみまして、
わが国がこの
条約の締約国となりますことは、子の扶養に関し国際的に
共通な規則を採用するとの見地から適切であるのみならず、国際私法の漸進的統一のための国際
協力を進める上からも、きわめて望ましいことであると考えられます。
よって、ここに、この
条約の
締結について御
承認を求める次第であります。
次に、税関における物品の評価に関する
条約の改正の受諾について
承認を求めるの件につきまして提案理由を御
説明いたします。
税関における物品の評価に関する
条約は、価額を課税標準として関税を課する場合の価額の定義を定めることによって税関における物品の評価方式の統一を図り、もって国際
貿易を容易にし、関税
交渉及び外国
貿易統計の比較を簡易化することを
目的として一九五〇年に作成されたものであり、
わが国は、一九七二年にこれに加入いたしました。
現行
条約は、CIF(運賃・保険料込み価格)評価方式を採用しているため、これと異なる評価方式をとっている豪州、カナダ、
米国等は、
条約に加入することができません。すなわち現行
条約第二条によれば、締約
政府は、
条約の附属書Iの価額の定義を
国内法令に組み入れる義務を負っており、同定義の第一条(2)(b)に従い、輸入物品の販売及び引き渡しに伴うすべての費用を価額に含めて評価を行うこととなっております。しかしながら、この改正により、
条約に新規に加入する国に限り、輸出港から輸入港までの運賃及び保険料を価額から除くとすることが認められることとなります。
わが国がこの改正を受諾することは、豪州等の
条約への加入を促進することにより、税関における物品の評価方式の国際的な統一へ寄与するとともに、国際
貿易の円滑化にも資するものであり、
世界貿易に大きな比重を占める
わが国にとってきわめて望ましいものであると考えられます。
よって、ここに、この改正の受諾について御
承認を求める次第であります。
次に、
がん原性物質及び
がん原性因子による職業性障害の
防止及び管理に関する
条約(第百三十九号)の
締結について
承認を求めるの件につきまして提案理由を御
説明いたします。
この
条約は、一九七四年に国際労働機関の第五十九回総会で採択されたもので、その内容は、職業上労働者がさらされることが禁止され、または許可もしくは管理の対象となる
がん原性物質及び
がん原性因子の決定、
がん原性物質及び
がん原性因子の有害性の一層低いものへの代替、労働者に対する保護
措置及び適当な記録制度の確立、労働者に対する情報の提供、健康診断の
実施等について規定したものであります。
この
条約の規定は、
わが国においては、労働安全衛生法及びこれに基づく政省令並びに法令により充足されているところであります。この
条約を
締結することは、
わが国における労働者の健康を促進する上からも、また労働分野における国際協調を推進する上からも有
意義であると考えられます。
よって、ここに、この
条約の
締結について御
承認を求める次第であります。
次に、
国際農業開発基金を設立する
協定の
締結について
承認を求めるの件につきまして提案理由を御
説明いたします。
一九七四年十一月にローマで開催されました
世界食糧
会議は、
開発途上国における食糧事情がきわめて深刻な状況にあること、及びこれらの国の食糧問題を解決するために緊急かつ共同の
措置が必要であるとの認識に基づきまして、これに対処するための各種構想について討議を行いましたが、その
一つとして
国際農業開発基金を設立することを決議いたしました。本
協定は、この決議に基づき、三回にわたる
関心国
会合での起草作業を経て、一九七六年六月、
国際農業開発基金を設立するための国際連合
会議において採択されたものであります。
本基金は、
開発途上国の農業
開発、特に食糧増産のために
開発途上国に対し、緩和された条件による貸し付けまたは贈与の形式で資金供与を行うことを業務内容としておりますが、本基金の設立によって
開発途上国の基本的課題である農業分野の
開発が促進され、さらには、これらの国の経済的及び社会的発展にもつながることが期待されるものとしてきわめて重要な
意義を有するものと考えられます。
本基金は、その資金として、当初、約十億ドルを予定しており、
先進国及び産油国がおのおの応分の拠出をすることとなっておりますが、
わが国は、国会の
承認を条件に五千五百万ドルを拠出する旨を誓約しております。
わが国は、従来より
開発途上国における農業
開発の重要性を認識し、この分野における
わが国の経験を活用して二国間あるいは多数国間
協力を通じて積極的に貢献してまいりました。したがいまして、
わが国といたしましても、本基金の趣旨に照らし、また、本基金が国連の専門機関の
一つとなることが予定されていることもあり、
開発途上国に対する農業
開発協力の
中心となる本基金に資金的な
協力を行うことは、
開発途上国に対する
経済協力を積極的に推進しようとする
わが国の基本政策に合致するものであり、きわめて有
意義なことであると考えられます。
よって、ここに、この
協定の
締結について御
承認を求める次第であります。
最後に、
国際農業開発基金への加盟に伴う
措置に関する
法律案について提案理由及び内容の概要を御
説明申し上げます。
この
法律案は、ただいま、その
締結につき御
承認をお願いいたしました
国際農業開発基金を設立する
協定に基づきまして、
わが国が
国際農業開発基金に加盟することに伴い必要となる各般の
措置を規定することを
目的とするものであります。
国際農業開発基金は、
開発途上国における農業
開発、なかんずく食糧増産のために、従来の
開発援助資金に加え、新たな資金を利用することができるようにすることを
目的とするものであります。具体的には、
国際農業開発基金の加盟国である
開発途上国またはそのような加盟国が参加している
政府間機関に対し、緩和された条件による貸し付けまたは贈与の形式で資金供与を行うことになっております。
御承知のとおり、
開発途上国における農業
開発の促進は、これら
諸国における経済社会分野における大きな課題となっているばかりでなく、
世界の食糧事情改善のかぎとなっているものであります。
わが国といたしましても、
先進国の一員として、これら
諸国に対し援助を行い、その農業
開発に積極的な
協力を行っていくことが要請されております。
政府といたしましては、
わが国が
国際農業開発基金へ加盟することは、このような
開発途上国からの要請にこたえるものであるとともに、
世界の食糧農業事情の改善に貢献するものであると考えこれに加盟することを決意した次第であります。
以下この
法律案の概要について申し上げます。
まず、
政府は、同基金に対し、予算で定める金額の範囲内において本邦通貨により拠出することができることといたしております。
次に、同基金への拠出については、国債の交付によって行う方法が認められておりますので、この国債の発行権限を
政府に付与するとともに、その発行条件、償還等に関して必要な事項を定めております。
さらに、同基金が保有する本邦通貨その他の資産の寄託所として、
日本銀行を指定できることといたしております。
以上、
国際農業開発基金への加盟に伴う
措置に関する
法律案の提案の理由及びその概要を御
説明いたしました。
以上六件につき、何とぞ御
審議の上、速やかに御
承認、御賛同あらんことを希望いたします。
以上でございます。