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参考人(
中島篤之助君) 中島でございます。
私も三月十一日のこの
委員会の議事録を拝見いたしまして、大変間違った情報に基づいた
お話がされているんではないかと思いました。きょうこういう機会が与えられましたので、二、三申し上げたいと思うのであります。
それで、その前に、いま小巻
委員も言われましたけれ
ども、私の長崎県のむつ
安全性研究委員会への
出席に関します事件につきまして、
宇野長官初め井上
委員長代理があっせんの労をとられたことにつきまして、大変御多忙の中をそういうことをやっていただいたことに対しまして一言お礼は申し上げておきたいと思います。
で、それを受諾いたしますときに、私はただ若干の
意見を井上さんに申し上げたわけでありまして、とにかく問題は、今後こういうことが起こらないことを前提として私は受諾さしていただきたいと、これが第一点でございます。
それから第二点が、この井上
先生から示されました調停案の、一番目は問題がないんですけれ
ども、二番目の項目で、賃金カットされた分についてさかのぼって年次休暇を出せということは、これはある
意味では、長崎県知事がもうすでに一月の二十日に原研当局に対して公文書を出しておられるわけでありまして、これを結果としては無視することになるので、実はわざわざ長崎県に電話をいたしまして知事の御意向を、そういうことになるけれ
どもよろしいかということを一応確認いたしまして、長崎県久保知事といたしましては、とにかく円満解決したいというのが趣旨であるから、そういうことで、私としても不満であるが受諾する
方向で
考えてほしいという御意向がございましたので、それを受諾するということを申し上げておきました。それが第二点でございます。
〔
理事塩出啓典君退席、
理事森下昭司君着席〕
それから第三点は、実は井上
先生の調停案の前文の最後の方に「協議妥結せられたい」という項目がございます。それに従いまして私三十日に原研の人事担当
理事と協議をいたしまして、そのとき私が申したことは、つまり、やはりこういう問題が
——私も原研の一員でありまして、これが
国会等において議論されたり、あるいは新聞等において出たりするということは、少なくとも私にとっても余りありがたくない話でありますし、原研にとっても名誉な話ではないであろうと。今後、やはりこういうことが起こらぬようにするには、実は、私が
原子力研究所の所員であると同時に学術
会議の会員でもあるという身分を持っておる、そのことのために、そのことについてどうも原研当局の理解が足らないようであるからこういう問題について今後話し合いをしたいということを申し入れたんです。で、それはどういうことかと申しますと、実は、私が学術
会議へ行って仕事をしますとき、それは原研では特別休暇という扱いになるんですけれ
ども、御
承知のように、学術
会議というのは学術
会議法という法律によって設立された国の機関でございまして、身分としては特別職の公務員であるということになっております。で、旅費も、すべては支給されませんけれ
ども、大変残念なことに、すべては支給されませんが、総理府から旅費をいただいて
委員会に
出席するわけでありますから、これは原研の規程にいうところの旅費先方負担の出張の扱いにしてもらいたい、そういうことをしておらないで特別休暇ということになっておるものだから、宗像
理事長が全部休んでおるかのごときことを
国会でおっしゃるもとにもなる。これは変えてほしいと。
それからもう一つ、学術
会議の会員であることによって生ずるいろいろな仕事が実際起こります。
〔
理事森下昭司君退席、
委員長着席〕
これは、たとえば今度の長崎県の
研究委員会の場合も、私が学術
会議の原子力問題特別
委員会の幹事をしておるということを、まあ見込まれてと申しますか、そういう立場で委嘱がなされておるのでありますから、そういうようなやはり社会的な仕事というのはどうしても学術
会議の会員であることに応じて出てくる。ですから、こういう問題については、しかしこれは公務の執行とは違いますから、これについては原研の職員であるということのいわゆる職務専念義務との間で、まあケース・バイ・ケースに話し合ってもいいけれ
ども、たとえば年間何日というふうな
協定を結ぶということをすべきであろう、そうして、第一、こういう余り芳しからざることを起こして井上
委員長代理の
——これは個人の御資格だとお伺いしましたけれ
ども、こういう調停を受けるというようなことが今後起きないし、それから、この問題を円満におさめるというためには、実は私の
結論を
——私の申し上げた点を全部聞けというようなことを言ったんではなくて、とにかくきょう初めに協議を始めるということだけは言ってもらいたい、話し合いをするということだけでも言わなければおさまらないのだということを申し上げたんですけれ
ども、大変遺憾なことに、今度のことだけであると、おまえと話をするのは今度のことだけであるというような態度であって、私は大変残念でありましたから、そういうことであったということを井上氏にはお伝えいたしました。で、残念ながら円満解決では
——私の問題については一定の解決はなされたけれ
ども、どうも根本問題については済んでおらないということを申し上げた。
以上が調停に当たりましての経過でございます。
それから次に、小巻
委員から御
質問のございました
理事長の挙げておられる「
専門家」という問題であります。
宗像氏は、
理事長は、私は分析の
専門家であって原子力安全問題の
専門家ではない、こういうふうに簡単に断定をされたわけでありますが、実は、この
専門家というのは何かということをわれわれ科学者の中の言葉で申しますと大変むずかしい問題になってまいります。非常に適切な例ではないかもしれませんけれ
ども、理解を助けるという
意味であえて申さしていただきますと、たとえばノーベル賞をもらわれました湯川秀樹
先生は、これは物理学者であると申し上げてよろしいと思うんです。しかし、この物理学者の中で湯川
先生の御専門は何かという話になりますと、これは実験物理学ではなくて理論物理学である。そのまた理論物理学の中の、しかもそれはたとえば固体物理の分野ではなくて、素粒子論という分野のまたその中のいわゆる最近は場の理論をやっていらっしゃると、こういう話になって、その場の理論の
専門家であるというようなことを言わなきゃならなくなるわけであります。こういうことを言っておりますと、
専門家はだれもいなくなってしまうであろう。この問題が一つございます。そういうことなんだということを御理解いただきたい。
それからもう一つ、原子力安全問題の
専門家というのは一体何であろうか。で、これは実は、この長崎県の
研究委員会の、大変失礼な言い方ですけれ
ども、構成メンバーをとりまして、たとえば長崎大学のある薬学部の
先生も
委員になっておられます。それから私が少なくとも学術
会議の原子力問題特別
委員会の幹事をやっている私が、私は原子力問題の
専門家ではないということは言えません。社会的通念としては、それは言えないのでありまして、一番どうも
関係が深い。しかも、
原子力研究所に創立以来勤務しているということで、私が原子力の安全問題について何にも
意見を持ってないということであれば、これは科学者としては私は失格であろうとむしろ思うんです。それが第二点の、そう簡単な問題ではない。
私が一番残念に思いますのは、こういうことを
理事長という立場で、これは
原子力研究所をそれこそ総理すると言われたんですけれ
ども、大変重要な責任のある立場にある方が一方的にこの人はこういう
専門家だということを決めることが私は科学者として一番抗議しなければならぬことである、そう思います。その点が第一の御
質問に対するお答えであります。
それから、二番目の勤務態様のことですけれ
ども、これは
理事長から昨年は六一%という
お話がございまして、私はびっくりいたしまして、私の所属しております原子炉化学部の事務長に
——これが実は私の出勤管理を厳重にやっておる人でありますけれ
ども、彼に、これは
国会等でこういう問題になっているのであるから、間違いないデータを人事部に行って調べて出してほしいということを申し上げました。それで、早速
報告をもらったんですが、昨年でありますから、つまり
昭和五十一年の一月から十二月までの間の
原子力研究所のいわゆる労働日、出勤しなきゃならない日というのは二百九十六日であります。私が
東海研究所に勤務いたしました日が二百日ありまして、そのほか
原子力研究所の業務に
関係する出張が十七日ございまして、これがいわゆる出勤した日二百十七日ということになります。それから、夏休みを含めまして休暇を十七日とっております。それから、学術
会議に五十九日行っておる。それから、たしか松山の裁判所でありますが、裁判所から
参考人として出頭を命ぜられまして一日行っております。つまり、合計六十日がいわゆる原研外の特別休暇をいただいて、
理事長の表現をかりますと、よその仕事をしたことになります。それで、実はいろんな割り算をやってみたんですけれ
ども、六一というのが出てこないわけであります。実は一番近いのは二百十七を三百六十五で割ると大体六〇に近いパーセントが出てきて、宗像
理事長は普通の日曜日も休日も全部出勤しろということにどうもなるんじゃないだろうか。そうでないとすると、どこかにこれは間違いがあるに相違ないんでありますが、私の計算ではそういうことであります。それからもう一つ、
理事長がそういうことを申し上げたのを
宇野長官がお聞きになりまして大変びっくりされたというのは、これはいま私が申し上げたことに相違ございませんので、これはぜひお改め願いたい。
実はどうしても改めていただかなければなりませんのは、私が行っておりますのは、私が東京へ出かけますのは、つまり学術
会議の仕事でありまして、これは全国の四部、三年ごとに行われます選挙によりまして、一定の資格を持った有権者から選挙によって選ばれて仕事をしなければならないという立場にありますので、そういう状況にあるということであります。で、さらにつけ加えますならば、学術
会議というのは、会員はすべてパートタイムの会員ばかりであって、皆それぞれ別の仕事をお持ちになって、そして学術
会議という大変重要な仕事をしておる方ばかりであります。ですから、学術
会議に
委員会があるから
出席せよという通知が参りましても、これはどうしても忙しければ別にそこへ行かなくても、それは別にだれが怒るというような性格のものではございません。ただ、そういうことをいたしますと、私
どもをせっかく選挙をしてくれた有権者の負託にこたえることができないという道義的な責任が生ずるだけの問題だと言えばそういうことなんですけれ
ども、それは決して
原子力研究所の任務を放棄してそちらに行っているということでは決してないわけであります。その点だけは厳重に、私はむしろ宗像氏が理解がない点については抗議をしなければいかぬと、この
国会の場をかりて、あえてこれは間違っていると申し上げなければならないと思います。
大体これで私の申し上げるのは、とりあえず終わりであります。そうですね、一つ、こういうことを申し上げたいと思います。したがいまして、学術
会議の会員の方々はいま言ったようなことではございますが、たとえば、ある部の会員の方で就任されたときは教授であった、ところが会員になられてしばらくして学長におなりになったということになりますと、これは実際問題として非常に学長の本務の方が忙しくなりまして、それまで大変熱心に学術
会議においでになっていた会員の方がやむを得ず来れなくなるということは、これは間々見受けるわけであります。これはしかしそういうことでありますが、私の場合には実はそういう仕事が余り原研の方ではございません。ですから、私は安んじて学術
会議の仕事ができるという状況にあるということが一つです。
それからもう一つ、先ほど分析の
専門家とか原子力安全の
専門家とか、
専門家というのは大変むずかしいものだということで大体もうおわかりいただいたと思いますが、きょうは
国会の場でございますから一言申し上げさせていただきますと、大変失礼な言いようでありますが、国
会議員の方々はそれぞれがやはり御専門を、これは正確に言えばバックグラウンドをお持ちになって、たとえば法律の専門の方もいらっしゃれば、あるいは教育の方の経歴をお持ちの方もいらっしゃるというようなことでございますが、さりとて国の政治全体についてはやはり私
どもの負託にこたえて国政の
専門家であるということであろうかと思います。それと同じ
意味で原子力安全問題の
専門家というのは私は
考えられるのではないかというふうに思いますので、つけ加えさせていただきます。
以上です。