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1977-03-14 第80回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月十四日(月曜日)     午前十時三分開議  出席分科員    主査 伊東 正義君       足立 篤郎君    鹿野 道彦君       片岡 清一君    中村  直君       井上 普方君    西宮  弘君       日野 市朗君    馬場猪太郎君       村山 富市君    渡部 行雄君       二見 伸明君    宮井 泰良君    兼務 大坪健一郎君 兼務 玉沢徳一郎君    兼務 安宅 常彦君 兼務 上原 康助君    兼務 川崎 寛治君 兼務 古寺  宏君    兼務 武田 一夫君 兼務 山本悌二郎君    兼務 米沢  隆君 兼務 山原健二郎君    兼務 甘利  正君  出席国務大臣         農 林 大 臣 鈴木 善幸君  出席政府委員         農林大臣官房長 澤邊  守君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省構造改善         局長      森  整治君         農林省農蚕園芸         局長      堀川 春彦君         農林省食品流通         局長      杉山 克巳君         農林水産技術会         議事務局長   下浦 静平君         食糧庁長官  大河原太一郎君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁長官   岡安  誠君         労働大臣官房審         議官      松尾 弘一君  分科員外出席者         環境庁水質保全         局水質規制課長 島田 隆志君         国土庁土地局国         土調査課長   高田 徳博君         大蔵省主計局主         計官      古橋源六郎君         大蔵省理財局国         有財産審査課長 山本 昭市君         厚生省環境衛生         局食品化学課長 宮沢  香君         農林大臣官房審         議官      石田  徳君         資源エネルギー         庁石炭部鉱害課         長       北川 幸昌君         気象庁総務部企         画課長     竹内 清秀君         気象庁予報部長         期予報課長   青田 孝義君         建設省河川局水         政課長     吉沢 奎介君     ————————————— 分科員の異動 三月十四日  辞任         補欠選任   足立 篤郎君     鹿野 道彦君   井上 普方君     岩垂寿喜男君   石野 久男君     馬場猪太郎君   二見 伸明君     長田 武士君 同日  辞任         補欠選任   鹿野 道彦君     中村  直君   岩垂寿喜男君     西宮  弘君   馬場猪太郎君     石野 久男君   長田 武士君     長谷雄幸久君 同日  辞任         補欠選任   中村  直君     足立 篤郎君   西宮  弘君     日野 市朗君   長谷雄幸久君     宮井 泰良君 同日  辞任         補欠選任   日野 市朗君     金子 みつ君   宮井 泰良君     二見 伸明君 同日  辞任         補欠選任   金子 みつ君     渡部 行雄君 同日  辞任         補欠選任   渡部 行雄君     村山 富市君 同日  辞任         補欠選任   村山 富市君     井上 普方君 同日  第一分科員安宅常彦君、上原康助君、第二分科  員古寺宏君、米沢隆君、山原健二郎君、第三分  科員甘利正君、第五分科員大坪健一郎君、玉沢  徳一郎君、山本悌二郎君、第六分科員川崎寛治  君及び武田一夫君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十二年度一般会計予算農林省所管  昭和五十二年度特別会計予算農林省所管      ————◇—————
  2. 伊東正義

    伊東主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  昭和五十二年度一般会計予算及び昭和五十二年度特別会計予算農林省所管について質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安宅常彦君。
  3. 安宅常彦

    安宅分科員 農林大臣せっかくですから、本当は林野庁の職員の処遇改善の問題でやろうかと思ったのですが、三十分じゃとてもなんですから、きょう取り上げたいと思うのは小さいようで非常に大きいことなんですけれども小麦三百万トン、大豆三百万トン、トウモロコシなど八百万トンですか安倍さんが農林大臣のときアメリカに吹っ飛んでいって輸入をお願いをしてきた。それが期限切れになるのでまた行かなければならないということを聞いていますが、それはいつごろ行かれるつもりなんですか
  4. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 カーター政権の方もまだできたばかりでございまして、向こうの新農務長官日程等西欧諸国を訪問するとか、いろいろ予定があるようでございます。私も、小麦大豆その他の主要農産物安定輸入、確保につきまして安倍農林大臣時代に一応の話はついておりますけれども、新しいカーター政権として方針もはっきり聞いておきたいという点もございますけれども、いま申し上げたようなことで日程等まだ決まっておりません。
  5. 安宅常彦

    安宅分科員 私は、この食糧輸入のことについて日本食糧の需給との関係で、政策として非常に重要な問題だと思うのです。これはもう十年も前からおかしくなっているとみんな言っているのですが、そうじゃなくて、ガリオア・エロアからずっとアメリカ食糧かさの中に強引に入れられた仕組みの中で日本農業政策がやられている。したがって、ぐうの音も出ないということ。たとえば、今度また総理がアメリカに行かれるわけですが、新政権がこちらにできますと直ちに参勤交代みたいにして行く。そして何とか会談かんとか会談、双方の首脳会談がその都度行われる。これはロッキード買いを決めろなんて言われて、はいわかりましたと言うのと同じように、ただいま私が述べたような日本主要食糧というものをアメリカから買わざるを得ないようにきちっと首脳会談で縛られておる、こうにらんでおるのです。私はいま資料を集めておるところですから後で徹底的にやるつもりですけれども、そういう重大な駆け引きの中で、サクランボ昭和三十五年以来自由化品目になっているから解禁をしてくれないかなどと言われて、あのとき安倍さんが取引してきたといううわさが国内に充満しておるのです。火のないところに煙は出ないと言われるとおりこれは真実だと私は思っておるのです。このたびサクランボ輸入の問題で防疫関係あたりが必死に抵抗しているようですけれども、抵抗する手段防疫関係しかないのかどうかということですね。これは日本の柑橘類だって何だって、いままでグレープフルーツからミカンから全部やられてきましたから、サクランボでも何でもすべて食糧政策かさに入っているために、日本特産物といいますか、そういう農産物を徹底的に犠牲にした形で、食糧輸入をお願いしに行ったり、首脳会談が開かれたりすることについて私は非常に大きな疑義を持っているのです。だからサクランボの問題で言うならば、事は小さいようですけれども問題の根は非常に深いんだと私は理解しています。ことしは先ほど言ったように防疫関係でコドリンモス、みんなコドリンガと言っていますが、こういうものだけのことでいまのところストップをかけているのか。そのほかに政策として農林省がこれをストップしなければならないことが幾つもあるような気がするのですが、見解をちょっと承りたい。
  6. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 事食糧の問題につきましてはきわめて重大な問題でございまして、私も基本的には安宅先生の御意見と同じでございまして、やはり総合的な食糧自給力を一日も早く高めるように、しかしこれは一朝一夕ではできることではございませんが、それを農政の基本として食糧自給力を高めるところのいろいろの対策を総合的に進めてまいる、そしてその不足の分を安定的な輸入を確保する。農林省の仕事は、生産者である農林漁業者経済の発展、所得の向上、社会的な地位の向上と安定を図ることであり、また消費者である国民の皆さんには、食糧の問題に関してはいささかも不安を与えないようにということを基本的な考えとして進めておるわけでございます。ただ残念ながら、いまのところ先ほど申し上げるような小麦であるとか大豆であるとかその他家畜の飼料、そういうものにつきましては、国土資源関係から当分の間安定的な輸入、供給を図らなければならない、こういうことになるわけでございます。これも一つの国に全面的に依存をし、死命を制せられるというようなことは私は適当でない、このように考えておりますので、そういう方向ですべて対処をしていきたい、こう思っております。  それからサクランボの問題につきましては、すでに輸入化ということが決まっておるわけでございますが、ただ問題は、コドリンガにより国内農産物等にそれが入ってきて伝播するというようなことは非常に重大な問題でございますので、この完全な防除対策というものが講ぜられなければならぬわけでございまして、これは慎重の上にも慎重に対処する必要がある。もっぱら技術的な問題でいろいろデータであるとか資料であるとか、また人を派遣したり、いろいろの角度から慎重な検討は進めておる段階でございまして、この問題は技術的な問題を離れて政治的にどうこうというわけにはいかない、こう基本的に考えております。
  7. 安宅常彦

    安宅分科員 ここ数年間はサクランボ輸入はないというふうに理解してよござんすか
  8. 堀川春彦

    堀川政府委員 加工したものが若干欧州から入っておりますが、生果のものはございません。
  9. 安宅常彦

    安宅分科員 きょうは分科会すから時間がこればかりじゃどうにもならぬので、「ございません」ですが、私言うのは、ことしはもうアメリカはあきらめたというふうに理解していいかということと、防疫関係でしか対抗できないのかという心配が残りますよね。政治的にそれは輸入するということはあり得ない、これは結構です。だけれども防疫関係で、このことだけしか対抗手段はないというふうに農林省は理解したら間違いだ。この点については、私は後でいろいろとあなた方と議論をしなければならないと思っています。ここ数年間はそういうことはあり得ないだろうということでよござんすか。もう一回確認します。
  10. 堀川春彦

    堀川政府委員 いま大臣が申し上げましたのは、これは四十六年ころからの話でございまして、ただ、コドリンガという害虫がおりまして、私ども植物防疫法上これを重要害虫とみなし、禁止をしておるということでございますが、もっぱらこれは植物防疫法上の理由でございまして、わが国は先生も御案内のように国際植物防疫条約加盟をしておりまして、植物検疫上の理由がない場合に輸入禁止措置等はとらないということを約束をした条約加盟をしておるわけでございます。したがいまして、検疫上の問題が片がついた暁においては、検疫上の技術上の理由をもってして輸入をしないということはできない。そういたしますと、今度はもし全く検疫上の問題としての心配がないということになった場合のことは、まだそういう態度を決めておるわけじゃございませんが、別途の観点から、国内サクランボ生産者への影響を配慮したいろいろのことを考えていかなければならなくなるだろう、こういうふうに思っております。
  11. 安宅常彦

    安宅分科員 それから今度は、いろいろ去年からこれは大蔵省が聞かないだろうということで、あなたもひとつ頼みますよと農林省の係の人から頼まれておったこともあるのですが、特定野菜の問題、指定野菜の問題いろいろあったのですが、今度新しく去年法律が改正されて、そして制度が改正されて、六品目ぐらいその安定基金の問題で品目を追加しようという話が出ておったのですが、露地メロンとそれからイチゴとスイカ、これだけは何とか安定基金の中に入れるということについては成功したのはいいと思っております。大変農林省も私はいい制度をつくってもらったと思っておりますが、この制度自体やはりこれは、資本主義の国ですからこれはできないと言えばそれまでの話ですが、どうもまだ一人前のものではないような気がいたします。たとえば八〇%補償するということになっても、よく聞いてみたら、五〇%ぐらいどうだったら、それ以下はそのラインは包装してかちっと出荷したってやらない値段だから、余っちゃって困って、スイカだったら畑の中にぶん投げておくというしかない値段なので、そこまではどうかというふうな話まであなたの方から言われて、なるほどそういう仕組みというもののむずかしさということをつくづく考えたのですが、この制度をもう少し、たとえば基準のとり方、選択の自由を与える、何%までにするかということ、特定野菜安定基金のような方向に持っていくとか、もっと進んだ考え方をやらないと、どうしても生産者はどうにもならない状態に結局はこんな制度をつくっても追い込まれる、私はそう思っているのです。これを救済するいろいろなことについて今後検討するという御意思があるかどうか、これだけちょっと聞いておきます。
  12. 杉山克巳

    杉山政府委員 価格補てんの場合の対象とする最低基準額、これは現在では普通はそれよりは下がらないだろうと思われるような水準を対象として決めております。特定野菜の場合五〇%ということにしておるわけでございますが、先生指摘のように、確かに物によって、時によって下がり方は必ずしも一定しておりません。ほとんどただ同様に下がるというようなこともございます。  どこまで補てんするかということでございますが、これをほとんどただ同然のところまで補てんするというようなことにいたしますというと、これはある意味で生産者掛金負担積立金負担が大きくなるということもございます。そこで、私ども通常の場合は五〇%ということにしておりますが、生産者負担も考え、それからそれ自身の価格の動向も考え、国の指定野菜の場合は実は選択制ということを考えて、五〇%を基準としながらも、物によっては四〇ないし六〇という幅を設けて生産者選択を認めるという制度をとっております。特定野菜はまだ歴史も新しゅうございますし、都道府県基本補助事業として行っているというところもございまして、これから生産者それから都道府県そのほか関係者意見を聞いてまいる必要がありますが、私どもとしては、やはり国の場合と同じようにそういう選択制を採択することにしてはどうかということも検討いたしております。今後各方面の要望を聞きながら善処をしてまいりたいと思っております。
  13. 安宅常彦

    安宅分科員 次に、大臣、私どうしても納得いかないことがあるのです。これはほかの分科会でやろうと思ったのですが、あなたの方も関係があるからここでやります。  いま国土庁国土調査というのをやっているのですね。そしてその国土調査に基づく地籍調査というのをやっているのですね。私は、庶民から見ると、これは国の赤字がいっぱい出たものだから、大蔵省あたりがあわててて、昔の悪代官みたいに、ここはおまえの土地だと思ったが、違うぞ、召し上げろ、こういうふうにやっているとしか思えない。国有林の場合、そういう感情で受け取っているのですよ。それから民有地の場合でも、たとえば構造改善事業なんてきちっとならない時代に、昭和三十一年ごろ農林省指導を受けて、これは県が認可した問題ですが、建設省も必ず行きます。どういうことかと言いますと、河川がありますね、川が流れている。ちょうどそこに自力で堤防を築いて——農林中金あたりから融資は受けましたよ。だけれども堤防を築いて、川があふれないように、こっちへ来ないようにして、圃場整備をちゃんとやったのです。だから、建設省河川局の方から、圃場整備した後十何年もたってから、国有地がここへ入り込んでおったとか、農林省農林省で、そんなことあり得ないのに、国土調査してみたらおまえさんの方の圃場整備になったところに何町歩河川敷があったとか国有地があったとか言って、それで召し上げられてしまう、ばかみたいなことが起きているのです。そういうことは本来はないはずだと私は思うのですが、どういうものですか。あり得べからざることですね。建設省も絡み、農林省も絡み、圃場整備をやった。堤防はこの辺に築けと言われたから、はいと築いた。ところが、圃場整備したところに河川敷があった、しかも、河川敷だったら、石やら砂利やらごじごじゃしているのですが、ちゃんとりっぱな田んぼにしたのを、田んぼ値段払い下げるんだったら払い下げてやるなんて言って、まるで徳川時代の悪代官みたいなことをしているのです。そういうことがたくさんある。  それから、もっと言いますと、圃場整備をしようと思ったら、土地交換分合はおまえさんのうちはできないと土地改良区の親分から言われた。なぜだと言ったら、地籍調査をしてみたら——それは、私ら知らないんだけれども、私のうちのものだと思って、じいさんの時代からずっとつくっているんだ、税金もちゃんと納めている、ところが、その中に国有地がぴょこっと何畝かあった、だから交換分合できないと。そんな、税金を納めているんだから、おかしいじゃないかと言ったら、お上の言うことだからだめだと言うのです。一生懸命探してみて、財務局等へ私も行って調べてみた。財務局を非難するわけじゃないけれども、非常に好意的にやってくれて、それは大正七年にちゃんと内務省から払い下げを受けているという書類が出てきたのです。払い下げ申請書を出しなさいなんで言われておったのを、せっかく出している真っ最中にそれがわかったり、そうかと思いますと、今度は、山形県の舟形で、小関勝利という人ですけれども、この人なんかは、やはり同じにやられて、そういう書類があるはずだから探せと言ったら、ないと言うんですよね。ないことないというので、私の秘書たちが仏様の引き出しから皆ひっかき回してくれたら、明治三十何年に、いまの林野庁ですな、そこから払い下げを受けたという書類がやっと出てきた。それまでは、おまえさんはここの土地を一反歩三十六万円だとかなんだとかといじめ抜かれて、そしておろおろしておったのです。みんなわからないんですね。そういうことが山ほど出てくるのですよね。こういうやり方はもっと慎重にやってもらいたいし、もしそういう書類が見つかってはっきりした、こういう場合には、もとの娘の十八に返せというような表現も、いいか悪いかは別として、一たん払い下げをやりましたということで、判こついたんだけれども、国とは契約を結んだんだけれども書類が出てきたら、もちろんもとに返してくれるでしょうな。金も返してくれるし、当然その人の権利だということを認めてくれるでしょうな。この辺をはっきり答弁していただきたいと思うのですが、どうでしょう。これは国土庁からそういうことを答弁してもらえばいいし、本来、圃場整備か何かやって、建設省農林省もやったのですから、本当はそういうことはあり得べからざることではないかということについては、建設省農林省から答弁してもらいたいね。
  14. 吉沢奎介

    吉沢説明員 いま御指摘のございましたのは小国川に関する件だと思いますが、小国川先生御承知のように山形県知事管理している川でございますが、何分土地の面につきましていろいろ行き届かない点、わからない点があろうかと思いますが、私どもの方も、管理については十分留意いたしまして、適正を期するように指導をしているところでございます。いま先生の御指摘のございましたのは、いわゆる小松開田というところの国有地でございますと、先生もいまおっしゃいましたように大正十一年、と私聞いておりますが、に内務省から大蔵省へ引き継いだ土地であるということで、その時点から河川管理が行われていないというふうに聞いております。
  15. 高田徳博

    高田説明員 地籍調査を行います際、所有者の確認をいたすことにつきましては慎重に実施するようにいたしておるところでございますけれども、たまたま地籍調査を行いましたときにその調査の結果に誤りがありました場合には、市町村長登記所にそれを通知いたしまして、登記簿の訂正をするような手続をとることとしております。
  16. 山本昭市

    山本説明員 地籍調査の結果無番地の土地国有地として登記される場合がございますが、そういった土地につきまして、その土地を占有していた方が証拠をそろえて所有権を主張される場合には、大蔵省といたしましては、その証拠が真正なものでございますれば、その所有権を認めまして登記の修正の所要の手続をいたすこととしております。先ほどの小関勝利氏の場合はまさにそのようなケースでございます。なお、そのような関係にあります、すなわち所有権を主張される方が明確な証拠を提示される場合には、すでに売り払い済みのものといいましても、売買契約を解消いたしまして、売却代金は返還いたすという扱いにいたしております。なお、大蔵省財産がある部分につきまして国土調査をお願いしている事実はございませんで、たまたま国土調査が行われている地域内に脱落地と申される国有地があります場合にただいまのようなお話があったわけでございまして、特に財政上どうこうしているわけではございませんので、よろしく御了承願います。
  17. 安宅常彦

    安宅分科員 大体そういう答弁はいいんです。  まだありますがね。たとえば今度は、新しく国有地を見つけた、しめたと思ってあなたの方では土地登記をするんですよね。そのとき、小関さんの例なんか見ますと、この登記簿を見たら、おもしろいですね、法律用語で調べてみたら、あなたの方からも教えられて調べてみたら、なるほどあるのですが、国有地に今度はきちっと直したというところの登記簿を見たら、なぜそういうふうになったかと「原因」その「日付」と書いてあるのですが、「国土調査による成果」と書いてあるのですね。まるで戦争へ行って戦利品とってきたみたいな話だな、これは。何だこれは一体。これをみたら農家は頭にくるですよね。なるほど国土調査法によるやつは成果と書いてあるんだ、やっぱり。これは言葉がいかぬね。成果とは何だ、なめるな、ということになるですよ。戦利品みたいなんだね、これは。だから庶民感情にがちんとくるわけですよ。こういうことは、お役人さんに特に言っておきますが、ぜひ、そういう逆なでするような言葉は使わないでくださいよね。それはひとつ農林大臣、検討してくださいよ。大蔵大臣もそうだな。これは各省庁協議して考えてもらいたい。成果とは何だ、なめるなということなんです。本当に国を、政府を信頼するなんていうんじゃなくて、対立する言葉ですよ、これは。先ほど小松開田の話が出ましたけれども大正十一年にそういうふうになったなんてあなた答弁していますが、そんなのは、小松という部落はなくなっているんです。川の流れは、徳川時代から明治時代大正時代にかけて、堤防も何もその農家人たちが築いたからこそいまあたりまえにいまのところに流れていますけれども、その人たちがやらなければ、川はあっちへ流れたりこっちへ流れたりしているうちに、小松開田という名前はあるのですが、小松という部落は事実上ないんですよね。大正十一年に、国民の諸権利なんてものはないときに、こうだぞと言って、そして決めただけの話で、その以前の証文や何かは、残っているのがたくさん旧家あたりから出てくるのですが、そういうときにはあなたの答弁では間に合いませんから、そういうことを含めて一体問題はどうなのか。  それから農地法昭和二十二年か二十三年でございましたかにできた。その以前と農地法ができた後の問題というのは、法体系から何からまるっきり違うわけですから、農地解放なされて。なるほど国だって一つの不在地主にすぎない。一体こういう問題をどういうふうにするかという非常に大きな問題と絡むことですから、こういうことが評判になりますと、どんどん、どんどん私のところに頼みます、頼みますというので、一つやると三つ、四つとふえてくるのですよ。おれのもそうだ、おれのもそうだと言って。土地というものは昔から一所懸命といいまして、大変な執着を持っているのが、日本国民、特に農民ですから、このことを無視して法律がこうなっている、政令がこうなっている、通達がこうなっているという、ただそれだけで処理しようということは、とてもできない時代が来るだろうと私は思っていますよ。ただ、泣く子と地頭には勝てないから、土地改革の親分には勝てないから、あるいは小松開田の場合なんかは、財務局と町の農業委員会が必死の折衝をやりまして、そんなに多くないはずだ、この辺までだというふうにして、いろいろ縮めてくれた。国有地がせっかく圃場整備したところにもぐり込んでいるというようなことは、本当はあり得ないことだけれども、町の農業委員会の御苦労を考えるとこれ以上主張できなくなったというので、泣く泣く——大正十一年の話は違うのですよ。昭和三十一年のみずから土地改良をやった、自分たちの力というものに基づいてこの人たちは主張しますから。農業委員会は信頼する、大変御苦労なことをしてくれた、もっと国有地だと言われるのを詰めてくれた、だからこの辺で妥協しよう、これ以上反抗すると、安宅常彦とやっているのはあいつは赤だの青だのと言われるから、仕方がないからこの辺で妥協したということになるだけで、あなた方は権利と思っているかもしれないけれども日本国民が、主権を持っている国民が、その権利というものをいかに主張するかという手段をまだ余り持っていない人々に、証拠書類があるならばとは、そんなことを言ったら証拠書類はない場合があるのです。たとえば小関勝利という人の場合には、財務局が県あたりの書類なんかをひっかき回してくれて、山形県は戦災も受けていなかった、だからこそ、これは財務局を非難する意味ではないと私が言ったのは、あそこの局長が一生懸命になってくれたから、だから見つかったのでございまして、農家の方から証拠書類なんか出るはずはないのですよ。だから、そういう官僚答弁では困るのです、あなた。このことについてただいま答弁なさった、そういうことはおかしいではないか、証拠書類は出てこないと私は言いましたね。このことを含めて、先ほど国土庁から言ったように、あなたの方も努力して、そうして私らも努力して、本当に正当な所有権が何らかの手段でわかった場合には全部戻しますという答弁だったら百点満点ということになるわけでありますが、最終的に農林大臣なりあるいは——農地法関係ありますからね。国有地から何から、林野庁土地を含めて、きょうは大蔵大臣から、国土庁長官あたりからそういう答弁をいただいておくと一番確実なんですけれども、大農林大臣だからあなたひとつ代表して答弁していただけませんか、どうですか
  18. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 農地法制定以前の古い時代のものにつきましては、いろいろむずかしい問題があるということも私聞いております。今後関係各省庁で十分連携を密にいたしまして、いま安宅先生が御指摘になったことのないように最善の努力をすることにいたしたい、こう思います。
  19. 安宅常彦

    安宅分科員 どうもありがとうございました。
  20. 伊東正義

    伊東主査 安宅君の質疑はこれで終了いたしました。  次に、馬場猪太郎君。
  21. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)分科員 総理が有資源時代ということを非常に強調されているわけです。そしてまた石油ショック以来食糧問題もずいぶんと国民の関心の高いところになりました。そういう中で、農林省食糧増産あるいは自給率の向上ということに力を入れていらっしゃると思っておったところが、ことしの予算を見ますと、大体従来とられておった一〇%ラインを割っております。九・三%に低下しております。口では農業振興とか、あるいは食糧の自給率向上とか言われるけれども、実際にはこういう結果があらわれているということは、国民の一人一人としましては農林行政について後退しているんではないかというような印象を持っておりますが、農林大臣のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  22. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 馬場さんも長い間農民運動等をおやりになっておられましてよく御承知のことでございますが、御指摘のように農林予算は全体の総予算の一〇%程度を確保してきた、また私どももぜひこの水準は堅持したい、こういうことで努力をしておるわけでございますが、五十二年度予算の中をごらんいただけばわかるわけでございますけれども、この中に国債費の比重が非常に大きくなってきておるわけでございます。これは過去において、農林省もその一部を農政のために使っておる。過去のこれは遺産でございますけれども、この国債費を除きました農林予算のシェアは、一〇・一%ということになっておりまして、私どもはこれで十分だとは思っておりませんけれども、とにかく総体予算の中で農林予算というものは私はそう軽視されていない、私どもの一〇%堅持という考え方は貫いておる、こういうぐあいに考えておるわけでございます。  それからまた総合食糧の自給率の確保のためのいろいろの施策、たとえば土地改良事業等、農業基盤の整備の問題につきましても、一般公共に比べまして、農林公共の予算は二二・四%程度ということで、一般公共の伸び率よりも伸びておる、私はこのように考えておりますし、その他農地の確保並びに有効利用、高度利用さらに農業の担い手である農林漁業従事者の確保の問題、後継者の育成の問題、そういう問題にも力をいたしておるつもりでございます。
  23. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)分科員 公債費を除いたものは確かに一〇%台を確保しておりますし、そうしてまた予算だけが必ずしも農林行政に対する熱意を占う基準でないこともわかりますが、では具体的に米価の問題にしろ、あるいはまた跡継ぎの養成の問題にしろ、そうしてまた、せっかく開拓した地域で農家が一生懸命米をつくったらもう途中で計画外だからということで青田刈りをやるというようなこともたびたび新聞紙上をにぎわしますし、そしてまた特に大都市周辺の野菜というのはいつも秋から一、二月ごろにかけては物価の高騰に大きな役割りを果たしておる。そういう意味から特に大都市周辺では営農意欲の低下がここ十年来非常に厳しい。そういう中で宅地並み課税が行われてきました。もちろん宅地並み課税は農林大臣の所管ではないことはよく存じておりますけれども、しかし少なくとも農業の振興ということを考えていらっしゃる、特に大都市周辺でもまだまだ自然環境の保全ということも大事だし、そしてまた消費対策というものも大事だということになるならば、現実に各市町村では緑地制度などを設けてほとんどが払い戻しをしておるような現状ですから、この際、本当に農林振興について御熱意を持っていらっしゃるなら、宅地並み課税をやめるような動きを農林大臣から、大蔵省なり自治省なりにそれぞれ交渉していただくおつもりはございませんか。
  24. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、大都市圏における農地の課税の問題につきましては、昭和五十一年に決定をいたしましたあの方針というものが、現在の経済社会の実態からいたしましておおむね妥当なものである、このように考えております。したがいまして、これをこれ以上拡大をして農地課税を広げていくというようなことはやるべきでない、五十一年度決定がおおむね経済社会の状況から見て妥当なものである、こういうぐあいに私は考えております。
  25. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)分科員 さっきも申し上げましたように、この農地課税というものが農民の生産意欲を非常に阻害していることは御承知のとおりだと思います。そういう意味からも、特に農業については非常に熱意を持っておるんだとおっしゃっておるわけですから、そうしていままでと違って、開発優先から環境を守ること中心の世の中に大きく変わったわけですから、やはり農林省自体が宅地並み課税をやめてもらいたいという意思表示をするぐらいにならないと、農林についてはずいぶん振興意欲を持っていると幾ら言われても、農民の皆さんは口と実際とは違うという受け取り方をされると思うのです。ですから、五十一年当時の現状が妥当だと考えるのは、やはり農林大臣の感覚と農民の一人一人の感覚とが十年ぐらいずれているんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  26. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は市街化区域と市街化調整区域をはっきり考えの中で区別をして考えておりまして、市街化区域の中の農地の市街化への転用というようなことが完全に利用し尽くされた後でなければ、市街化区域以外の方にどんどん虫食い的に広がっていくというようなことは厳に抑制をしたい。したがいまして、農地法の適用等につきましても厳正にやっていくべきだ、このように考えておるわけでございます。なお、市街化区域内におきましても先ほどお話がありましたように、緑地制度というようなものを十分活用いたしまして、そして生活環境の保全整備等についても活用される、なお宅地並み課税もそれによって、必要な地域については緑地等に利用されることによって防いでいきたい、こういうことを考えておるわけでございます。
  27. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)分科員 いま言われた調整地域でも実際には、大都市周辺は、不動産会社やあるいは電鉄会社やさらには公社、公団までずいぶんと土地を買い占めて持っておるということで、農業の前途というのは非常に悲観的だと一人一人の農民は全部そう思っておるのです。ですから、せめて農林大臣の姿勢だけでも宅地並み課税を撤廃するのだというぐらいの姿勢を示していただいてこそ、若い人たちも初めて後継者として育つ熱意を持つでしょうし、また近郊農村を育てるために熱意を持ってくると思います。しかし、いまの農林大臣の御見解でいまの内閣の姿勢というものはほぼわかりました。この点は水かけ論になる点も多いと思います。  次に市街地の周辺における農業用水路とか里道とかいった、従来農業生産にずいぶん役立っておったその地域の問題について御質問申し上げたいと思うのです。  御承知のとおり、水問題というのは農業の半分だと言われておりますから、用排水というのは従来非常に力を入れられておりました。しかしここ十数年来、近郊農村というのは宅地化に次ぐ宅地化のために、ほとんどの農業用水路が農業用排水路としての用をなさなくなってきておるということは御承知のとおりなんです。それがそのままにとどまっておる限り、いろいろの問題を引き起こしておるということについて大臣御承知でしょうか。
  28. 伊東正義

    伊東主査 森構造改善局長
  29. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)分科員 まず大臣御承知かどうか。
  30. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 営農上、水の問題が非常に大事であることは私も認識しております。それが都市化の進行に伴いましていろいろのむずかしい問題が出ておる。それは、実情に対応して水の確保ができるようにという面からも、十分配慮しながら対策を講じてまいる、こう考えております。
  31. 森整治

    ○森(整)政府委員 御指摘のように、市街化が高度経済成長の過程で相当急激に進行いたしまして、都市周辺の農業に非常に好ましくない影響をいろいろ与えておるということ、それと同時に、今度都市側から見ましてもいろいろ、上水道の需要あるいは排水がうまくいかない、用水が都市の排水路になってしまう、それから今度逆に農業で水が余っておるのに、もう少し工業用にほしい、そういうことでやはりいろいろオーバーラップした問題が非常に出てまいりまして、それに対しましても、農林省としましてもその合理化対策という事業を若干仕組みまして、この対策は講じておるわけでございますけれども、いろいろ地元負担等の問題が絡みまして、土地改良は申請主義になっておるわけですから、土地改良側で事業を起こすというのはそういういろいろな問題がある。さりとて、今度逆に都市側からいたしますと、またちょっとお荷物みたいな感じもございまして、その間の調整が一般的な話といたしましてはなかなかスムーズに移行しないという問題がございます。ただ、われわれは、そのウエートによりまして、もう都市化した地帯で都市的機能にその用水等あるいは水路等を使うということが適当であるというような場合、特に都市計画法の市街化区域の線引きの際、一応関係各省と協議をいたしまして、一定の方針は出しておることは先生も御承知だと思いますが、そういうことでいろいろ対応しておる。ただ地元の問題としてはなかなか複雑な問題が非常に含まれておるというふうに認識をいたしております。
  32. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)分科員 管理権はいまどういうふうになっておりますか。都市化して実際にはほとんどもう農業用として使われてないような用排水路あるいは里道についての管理権はどういうふうになっておりますか
  33. 森整治

    ○森(整)政府委員 大体県営ということで考えてよろしいと思いますが、当然県営の場合には管理権は県、それから団体営等の場合には土地改良区というのが一応管理をいたすことになっておるわけでございますが、先ほどのような問題から、線引きの際に、都市化に伴いましてもっぱら都市の排水機能を受け持つというような施設につきましては、市町村と土地改良区が協議をいたします。原則として市町村に施設の管理を移管するよう各県を通じまして市町村、土地改良区を指導している次第でございます。
  34. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)分科員 農業用水路といいますと、一般にはせいぜい二メートルとか三メートルという小さいものを考えていらっしゃることが非常に多いと思います。私どもの地域にある古川あたりは、狭いところでも十五、六メートル、広いところは二十メートル、あるいはまた万博会場のすぐそばにあります新安あたりは五十メートルから百メートルくらいの幅を持っておる農業用水路もあります。そして、それが新都市計画法のもとに市街化区域になっているという理由だけで、それから以後いわゆる護岸管理だとか、用水管理というようなものの費用が農林省の予算から入らなくなりました。しかも、宅地化によって負担能力も少なくなってくる、自然に荒廃しておるというのが現状だと思います。昭和四十二年、四十七年、四十九年、三回にわたって大水害を受けました。一万何千世帯というものが水害を受けておる。ところが、食糧不足だ、増産だといったときには、いろいろの規制を設けて予算措置をするのだからということで、管理、監督の面で府県なり自治体なりあるいは水利組合あたりにいろいろの指導、助言をなさった、農林のサイドから見て役に立たなくなったということで、後は全く放置してしまうというような現状がこういう大きな水害を招いておる原因です。水を使う必要がなくなった、農林に関係なくなったからといって、そういう状態で置いておっていいのでしょうか。
  35. 森整治

    ○森(整)政府委員 確かに考え方といたしましては、線引き後、長期にわたる公共投資は行わないという方針を出したわけでございます。ただ、その場合にも、やはり防災、災害復旧等の場合には当然農林省としてもその復旧に助成をするということで処置をいたしております。その他いろいろいま御指摘のような問題がございます点につきましては、私も先生から御指摘がありまして、実は正直に申しますが、その実態をよく聞きましてこれは大変だという感じを持ったわけでございます。ただ、確かにあれだけの相当な水田面積を持っておりまして、それが非常に急激に市街化されてきたというところでなかなか引き継ぎ、バトンタッチがスムーズにいかなかったという点についてはわれわれも大いに反省をしなければならないというふうには考えております。確かにそういう御指摘のような問題が、しばしば水害があったというお話でございますが、この問題は早急に方針どおり解決をしていかなければいけない問題だというふうに認識をいたしております。
  36. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)分科員 実際の川に対する管理権はいまはどういうふうになるのですか。たとえば橋をかけようと思ってもどこかに許可を求めなければならないわけですね。それは府県なのか、市町村なのか、水利組合なのか、最終的には農林省にお伺いを立てなければならぬ。農林省は全然関係ないのですか
  37. 森整治

    ○森(整)政府委員 古川の場合で申しますと県が管理権を持っておって、それを実際には末端の水路については市町村がただいま管理をするということになっておると思いますが、先ほど申しましたように市町村へ移管をするという方針で指導をしております。それが現在幹川については県が管理をし、支川についてはまだ土地改良区が管理をしておるということで、その処理がおくれておるというふうに私どもは判断しております。
  38. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)分科員 市町村あるいは改良区に管理をゆだねている限りは当然予算もついているはずだと思うのですが、どの程度——わずかだったらいいのですが、私どもの周辺で、私どもの選挙区だけで考えてみても約二千の水路があります。大阪府下全部では二万三千から四千ぐらいの水路があるのですね。ですから、この管理権というのは非常な問題だと思うのです。しかもその管理は、ただ単に用水を管理したり護岸を管理するだけの問題なのか、そしてその所有権はどういうふうになるのか、それは農林省関係ありますか、ありませんか。
  39. 森整治

    ○森(整)政府委員 一般に土地改良管理が、農林省プロパーの問題としても、いまおっしゃいましたように非農家が非常にふえてくるとか、そういう問題で管理自身が一般的によく行われておらないということで、とりあえず来年度からは土地改良の施設の管理の適正化事業というのを仕組みまして、国も負担するということで、講みたいに積立金をつくって県も負担する、地元も負担する、国も負担するというやり方で、当面五カ年小さい修理費等を出していこうということで、来年度から予算を計上してお願いをしておるわけでございますけれども、その中で特にただいま先生指摘のような地帯になりますと、土地改良区自身に熱意がなくなってくるというような問題がもっと深刻に出てきているのではなかろうかというふうに思っております。もちろん施設につきましては県営の場合は県、それから団体営の場合は土地改良区、それから敷地そのものにつきましてはもちろん国、こういうことに相なるわけでございますが、実態はそういうことではなかろうかというふうに判断をいたしております。
  40. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)分科員 そうすると、敷地そのものは国ということは、これは大蔵省所管ということになるわけですか
  41. 森整治

    ○森(整)政府委員 大蔵省というよりも、行政財産といたしまして建設省の所管というふうに考えております。その場合の建設省の所管の国有財産の取り扱い規則によりますと、都道府県知事がその部局長として管理をするというふうに考えております。
  42. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)分科員 そうすると、農業用水路の河川敷あるいはその周辺のいわゆる流作といわれるようなところも全部建設省すか建設省だとするならば、建設省に対しても、ある程度維持管理に対する管理権を行使するためのいろいろな予算措置、調査費等々もついているはずなんですが、そういう点ははっきりしていますか
  43. 森整治

    ○森(整)政府委員 いわゆる青線という区域につきましては、建設省の所管ということでわれわれ考えておるわけでございます。
  44. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)分科員 いまそれは建設省だと言われましたが、そうすると大阪の知事、土木部長が直接管理することになる。ところが一切管理をしていないのです。予算もないのです。ですから事実上は野放しになっておるのです。そのために被害を地域住民に与えているだけではなしに、国有地が取りほうだいになっておるということ。私の周辺だけ考えてみても、現に私の住んでいる真裏が完全に民間の住宅会社に切り取りされたり、あるいはまた地域の人たちがだんだんと——いま言っているのは一つの例ですよ、古川というのは一つの例ですから。一万メートルの両側にわたって、それこそ綿密に調査すれば何万坪という土地が自由になっておる。古川沿岸の水害に当たって大阪府の農林部がこれを調査をいたしました。その間に不法占拠だけでも十数件あるということが初めて今度わかったのです。全く無管理状態だということです。もし、水を使う使わない、そういう権利、あるいは護岸工事をした、そういう権利、そういうことに対する農林省は監督義務なりあるいはまた維持の権限をお持ちだということになるならば、もし農業用水が必要でなくなったというのなら当然建設省に対して、あるいはまた大蔵省に対してでもそういう手続をやらなければならないはずではないでしょうか。それを怠っておるためにずいぶんたくさん土地が窃取されておる、民間にどんどん取られておる。ほとんど国有地がなくなりつつある現状なんです。そしてまた正規に手続をして払い下げをしようとしても、古い人たちがおらないためにいわゆる明示がうまくいかないのです。そうすると半年も一年も二年も放置されるというのが現状なんです。ということは、もうただで取りなさいということになっているのです。よ。これは古川だけじゃないのです。大阪府の二万数千の周辺、そしてまた一メートルや二メートルのそういう道路というのは、ほとんど周囲の住民なり建設業者なりに窃取されてしまっておるのが実情だと思うのです。だからせめてこれからでも、建設省なら建設省でよろしい、大蔵省なら大蔵省でよろしい、農林大臣ともっと協議をして公有地の管理を厳密にしてもらわないと、国の貴重な財産がなくなるだけではなしに、地域住民に対しても非常に悪い影響を与えておる。取り得という悪い影響を与えておる。農林大臣、これに対してどういうふうにお考えになりますか
  45. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私も古川等の実態をつぶさにいまお話を伺いまして驚いたわけでございますが、今後大蔵省建設省等とも協議をいたしまして、実態調査の上やはり善処しなければいかぬ、このように考えております。
  46. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)分科員 いまの所有権の問題、管理権の問題、府県の権限の問題、そういった点どうも明らかでないと思うのですよ。それぞれの所管と十分に打ち合わせをして、その責任の所在を明らかにしていただきたいと思うのです。いま農林大臣から言われましたように、建設大臣なら建設大臣でも結構です、そして大蔵大臣でも結構です。所管大臣同士の間で、これは事務レベルではなかなか解決がつかないと思いますので、こういう問題を、国有地の特に農林省関係のある土地についてはひとつ十分に監督をしていただきたいと思います。
  47. 伊東正義

    伊東主査 ちょっと速記をやめてください。     〔速記中止〕
  48. 伊東正義

    伊東主査 速記を始めて。
  49. 井上普方

    井上(普)分科員 それに関連して。この問題につきましては、非常に問題が多いと思うのです。特に管理権につきましては、いまあなたは建設省が持たれておると言いますが、実態はどうもそうじゃない。財産はいかにも行政財産として府県知事が監督するようになっているけれども建設省の所管の国有財産になっていないと思うのです。移管ができていない。そこらあたりをもう少しはっきりして、いまの御答弁だって、建設省に移管しておると思いますなんというような答弁じゃ困る。これはもう一度、この問題は保留にしていただきまして、そして十分農林省としてもお調べ願いたいと思います。委員長のお取り計らいをお願いいたします。
  50. 伊東正義

    伊東主査 それでは、いま馬場君それから井上君から発言がありました件は、よく調査しまして御報告するようにいたします。  これにて馬場君の質疑は終了いたしました。  次に、武田一夫君。
  51. 武田一夫

    武田分科員 私は、冷害の問題につきましてお聞きいたしたいと思います。  御承知のとおり、大臣は岩手県、私は宮城県、隣の県でございますし、冷害で非常に騒いだ大変な地域でございます。そのほか雪もございまして、東北、北海道そしてまた四国などでも最近非常な損害が出ておりまして、これはもうどうしようもないという事実、しかもどうもことしもいろんなお話を総合しますと、異常気象が続いてことしの夏も冷害じゃないかという不安が農家の中には非常に深刻に浸透しているようでございますので、そういう観点から、この問題について農家の方々が万々が一そういう場面にぶつかったとしても、万全の対策をとらなければならない。毎年同じようなことを繰り返しておりますとこれは問題でございますので、ひとつそういう観点から二、三お尋ねしたいと思います。  まず第一点は、私の宮城県の例を申し上げますと、去年の十二月以降今年の一月、二月と、いわゆる農業共済の問題で非常に騒いでおります。すなわち三割足切りの問題、それから損害評価の問題と、非常に不満がある。金が予想外に少ないという不満がたらたらでございまして、あの私たちの仙北平野といいますと穀倉地帯でございます。その農協四団体が、もうこれはどうしようもないということで決起大会なども開いております。さらにまた栗原郡という地方では、これはもう共済を脱退しようじゃないかという不穏な動きもある。石巻の近くの矢本という地方でもそういう話がある。せんだっては岩手県の玉山村に行きましたら、そういう不満がたくさんありました。そこで、私は端的に言って、この三割足切りという問題を、農家の方々が常に要求している一割程度の足切りに持っていく、こういうような体制といいますか、そういうものを検討すべきじゃないか、私はそう思うのですが、大臣にまずこの点について見解を伺いたいと思うのでございます。
  52. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 農業共済保険の足切り制度の問題につきましては、いろいろ検討すべき問題があると思います。ただ、御承知のように昨年この農業共済保険制度は見直しをいたしまして、所要の改正をしたところでございます。一筆単位方式では、御指摘のように三割足切りということになっておりますが、農家単位方式では二割ないし一割という新しい制度の運用も認められるように相なっておるわけでございます。軽微な被害につきましては、農家の営農努力によって自家保険的に考えて善処していただく。モラルリスクという問題もございますわけでございますから、私は足切り制度を全部やめるというわけにはまいらない、このように考えております。いまの新しい制度としての農家単位方式、こういうような制度の運用等によりまして、この制度の運用が被害農家のためになるように適正に運用されていくことを期待をいたしております。しかし、今後この問題につきましては、引き続き農林省としても検討を進める考えでございます。
  53. 武田一夫

    武田分科員 ひとつこの問題は徹底して検討していただきたいと思います。  もう一つ関連ある損害評価の問題をちょっとお伺いしたいと思いますが、この損害評価について非常に差があり過ぎる。すなわち、組合段階での評価と連合会と国の最後の認定との間、そこにどうも不満が非常にあるんではないか、こういうふうに思います。それであちこちいろいろ聞いてみましたが、これは二つの問題点を私見つけたような気がします。一つは、岩手県の例です。大臣関係あるところですので聞いていただきたいのですが、評価の方法とか時間とか、聞きましたらいろいろあるらしくて、そこでいろいろな狂いがあるというのですが、余りにも差がひど過ぎる。たとえば岩手県のある共済組合の例を取り上げますと、連合会の評価高が約九百五十万キロ、ところが農林省の認定が八百四十万と、そこに百十万という差があるわけです。こういう県がほかにも何県かあると聞いております。宮城県などを聞きましたら、これはうまくちょうど同じ数でございましたし、多くはそうだったそうですか、この岩手県など何県かのように、余りにもこういうふうに連合会の評価と農林省の認定された評価が違いますと、金額にしてこれは相当な、約二億四千万くらいの違いが出てくるわけです。こんなに違いがあっていいものかどうか私は疑問を感ずるし、地元の方々もこれに対しては大変なことだということで不満を持っているのですが、この点はどういうふうにしてこういう結果が生じたのか、ひとつお答え願いたいと思うのです。
  54. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 損害評価の違いに二つございまして、一つは、組合の損害評価と連合会の損害評価との違いの問題、それから第二は、連合会が農林省に申請をいたしまして、農林大臣が認定した場合のその違いの問題と二つございます。  第一点の組合と連合会との違いの非常に大きなところは、御存じのとおり、組合等の損害評価につきましては、検見ということで、損害評価員が目で見てどの程度の損害があるかということを行うわけでございます。通常の損害の場合ですと、検見をいたしましてそう大きく違いがない。連合会の損害評価といいますのは、坪刈りをやりまして実測調査をやるわけでございます。通常の被害の場合ですと、その間にそう大きな隔たりはないのでございますが、その損害の調査員がかつて経験したことのないような大きな災害に遭いますと、必ずしもそこのところがうまく突合しないということがございます。  それからもう一つ、連合会と国との間の評価の違いでございますが、これは実はそんなに大きな違いはないのでございまして、今回の災害の場合におきましても、果樹も全部ひっくるめまして、実は連合会の言ってきたそのとおりに認定しなかったのはただの六県でございまして、その差もごくわずかでございます。  そこで私たちとしましては、今度の災害の非常に大きな評価の違いが連合会と組合との間に出てきましたのは、実は年内支払いを実施するということの非常に強い要請がございましたので、組合と連合会の損害評価の時期がある程度ずれたわけでございます。大体十日から十五日のずれができてきた。そのずれの間に、御存じのとおり、終盤になって天候が非常に好転をいたしまして、作況が回復をしたということがございます。これは統計情報部の作況指数の回復状況もごらんいただければわかりますが、そういうふうな期間的なずれによりまして、農家が見たときと連合会が実測したときの違いというものも出ております。そういうようなことが相違の要素であろうと思いますが、今後とも私たちは昨年の経験にかんがみまして、組合段階の損害評価に、目で見たのではなくて簡易な実測を取り入れてはどうだろうか。それから評価時期にずれの生じないように、組合とか連合会あるいは関係機関が緊密に連絡をとりまして、できるだけずれができないようによく指導いたしたいと思います。それから、損害評価に先立ちまして標準田のようなものを選定をいたしまして、損害評価員の評価、見る目を統一するというような評価技術向上を図るような措置もあわせて講じてはどうか。そういう改善を図っていきまして、連合会と組合との評価の適正を期するように十分指導いたしたいと思っております。  なお、国と連合会との間ではそれほどの大きな差がございませんので、大体連合会の適正な評価と国の適正な統計情報部の被害調査とを突き合わせれば、私はそんなに大きな問題は生じないのじゃないかというふうに考えている次第でございます。
  55. 武田一夫

    武田分科員 それではもう一点お聞きいたしますけれども、いわゆる組合等で出している評価員ですね、こういう方々はいまいろいろ改善なさって、これから実測という方向に持っていくとかいろいろありますが、これはぜひやっていただかないと困るわけです。というのは、要するに村の方々あるいは農家の方々の信頼関係という中にひびが入るおそれがある。本人も一生懸命やっているわりあいには報われない。この間会った二、三の方々は、こういう冷害がまた来たらどうするのだ、おれたちが一生懸命やっても結果的には何だ、半分以下じゃないかとか言われて、面と向かって話もできないような立場に置かれる場合もある。こういうことを考えると、もっと科学的なものをわれわれとしても望んでいるのだ、何年もそういうふうな習慣下で来たという行き方はこの辺で改めないと、これから五十六、七年また六十年になるとそういう気温の関係上冷害というもの、異常気象というものが続きそうだというときに、われわれにもこの辺で抜本的な対策を国に明示してもらわなければ、われわれの後の若い連中などは、そういう姿を見たらそういうものを引き受けようとしない。まして報酬だって大してもらっているわけではない。今度四〇%上げるとみえを切っているようだけれども、たった四〇%で幾らになるか計算してみろ、千二百円そこそこじゃないかというような不満がそういう一生懸命やっている方々の中に起こっているという事実、これは何とか改善をして、待遇の面でもその方が権威を持って、信頼を置いてその仕事に当たれるようなものを与えるのが私は国として大事な問題ではないか、こういうふうに考えますが、いかがでしょうか。その点についてお願いします。
  56. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 昨年の冷害等によります水陸稲の被害に対しましては、年内に農業共済金を農家にお支払いするということのために、現場の損害評価員の方々あるいはまた共済組合の職員の方々が非常な献身的な御苦労をなさったわけでございまして、私たちといたしましては深く感謝をいたしておるところでございます。損害評価員は、非常な御苦労をいただいておるわりには手当は少ないじゃないかというお話は、お話しのとおりであろうと私も考えます。ただ従来の考え方からいきますと、自分たちが保険金をもらうのだから、相互共済事業の精神に基づいて農家の中から組合が委嘱して、地元損害評価業務に従事してもらったらいいじゃないかというような相互扶助的な考え方がベースにあったわけでございます。しかしそういうことだけではいけないので、その経費については地元負担の原則ということだけで済まないので、昭和四十九年度から補助の対象といたし、自来、金額の引き上げを図ってまいったわけでございます。五十一年に三〇%、五十二年に四〇%ということで、絶対金額は少ないのでございますが、私たちが努力をしてきておるということはひとつ御了承いただきまして、今後とも損害評価員の御苦労につきましては、その処遇の改善について私たちとしましても一層の努力をいたしてまいる所存でございます。
  57. 武田一夫

    武田分科員 ひとつその努力の実るようにお願い申し上げまして、次に気象庁の方々にお伺いしたいと思います。  いろいろな産業の中でやはり農業ほど気象というものに左右されるものはないということで、気象というのは非常に大事な存在である。日本はその面では世界的にも非常に高い地位にあって、非常に権威のあるものだということは伺っておりますけれども、その気象の問題で、今後いろいろと、今回の異常気象、そういうものに対する教訓があったのではないか、足らない、これから改善しなければならない点もあったのではないかというような点を踏まえて何点かお聞きしますので、お答えいただきたいと思うのでございます。  私は、日本の気象が世界的に非常に高い水準にあるとしても、それは実際の農業の問題における評価ではなくて、学問分野の評価にすぎないのではないか、そういう感じがいたします。それだけに、現実に農業気象という問題にどのように取り組んでいるか、また取り組もうとしているのか、まずその一点お伺いしたいと思うのでございます。
  58. 竹内清秀

    ○竹内説明員 お答え申し上げます。  まず最近の異常気象という言葉でございますけれども、気象庁としましてもこういう異常気象に関しましては、部内的にも委員会をつくりまして非常に取り組みをやっておるわけでございます。  それから、こういうものには気象の観測体制の整備ということが非常に大事でございまして、従来から努力しておりますけれども、最近におきましても、社会的に要望の強い集中豪雨あるいは気温の急変などの異常気象につきましてきめの細かい予報を提供できるように、地域気象観測システムとかレーダーの観測網の整備を進めております。  地域気象観測システムでございますけれども、従来は委託観測を主にしておったわけでございますが、そういう細域の観測を機械による自動観測に置きかえまして、通信線とか電子計算機を利用しまして自動通報とか編集それから配信などの作業を行いまして、日々の予報や注意報、警報を作成し提供しております地方気象台に即時に配信するシステムでございます。これによりまして従来は一日一回程度しか把握できなかったものが毎正時に、必要な場合にはその途中の時刻においても地方気象台で入手できるようになりまして、そういう意味で観測体制が各段と進歩したと思います。  それから、先生のおっしゃる農業との関係でございますけれども、全国及び地方ブロックそれから府県の段階におきましても農業気象協議会というものをつくっておりまして、それを有効に利用して農業関係者に役立つ情報の提供をするということで進んでおります。
  59. 武田一夫

    武田分科員 アメリカなどは、要するに農業気象サービスの専門分野があり、そこで天気予報等が農業の面に非常に生かされているという事実があるわけですが、日本のように零細農家が非常に多いところは、アメリカ以上にそういう体制が完璧化されていく方向が望ましいのではないか、私はそう考えます。  そこで、そういう観点から二つの点についてお伺いしますが、気象と農業の両面に精通した専門家が不足してないか、人間が足りないのではないか。何かいろいろなところを聞きますと、そういう技術的な分野とかいろいろな分野における人員の削減がありそうだ。岩手県に行って調べましたら、これは気象とは関係ありませんので後でまた質問しますが、営農技術の面では年ごとに人間が十人、十五人と減っています。そういうことを考えますと、気象の面においてもそういう手薄なところがあるのじゃないか。機械機械という方向にばかり行って、肝心の人的配置というものが欠けているんじゃないかと思いますが、この点がどうかまず一点です。  それから、年間の長期予報というのは例年、三月に発表される。あと十一月ですか。ところが話を聞きますと、農家の経営計画に役立つためにはもっと早くしてほしいという声が多いわけですが、現在の体制ではこれは不可能なものかどうか。努力次第では今後、一月なり二月なりに長期予報というものができて、それに対応して農家が営農作業ができるという体制ができるものかどうか、そういう問題がまたあるわけです。その点どうか。この二点についてお聞きしたいと思います。
  60. 竹内清秀

    ○竹内説明員 初めの質問でございますけれども、削減という問題と農業気象の問題の関係かと思いますけれども、特別に農業気象の方で削減があるということは気象庁ではございません。  それから長期予報に関しましては、特に最近の異常気象と関連しまして、来年度もたしか人員をお願いしているわけでございます。  それから、あとの問題についてでございますけれども、ちょうど青田長期予報課長が来ておりますので、そちらの方で答えたいと思います。
  61. 青田孝義

    ○青田説明員 気象庁では毎月十日と月末に向こう一カ月間の予報、二十日に翌月から三カ月間の予報、それから毎年、三月十日と十月二十日ごろに、向こう半年間の予報を定期的に発表しております。  外国では、一カ月予報はやっているところはありますけれども、三カ月先以上の予報をやっている国はございません。  先ほど、たとえば暖候期の予報を月か二月ごろに出せないかというようなお話でありますが、春から夏にかけての予報を出すためにはどうしても冬の状態を知らないとなかなかむずかしいということで、現在では秋から冬の状況を確認した上で、つまり冬といいますと二月までの資料を使いまして、そこで三月十日に発表しているということでございます。しかし、北日本の特に冷害対策のためには、何とか早く予報を出さなくちゃいけないということについての認識は十分持っておりますので、現在も期間を早目に出そうということについては、その技術開発に努めております。しかし現在ではまだむずかしいということであります。
  62. 武田一夫

    武田分科員 ひとつ一層の努力をして何とかそういう期待にこたえられるようにお願いしたい、こう思いまして、次に大臣にお伺いいたします。  そういう冷害とか災害が起こりますと、対策本部をつくるのが非常に慎重に過ぎてどうも遅きに失する場合が多い、こういう傾向は否定できません。そういう意味で、ことしもどうも異常気象が続いていますし、夏もこういうふうなおそれがあるという、そういうおそれがあるという観点から、国としましても異常気象対策本部というようなものをつくりましてそういうものに対する特段の配慮をしていくべきじゃないか、私はこう思うのですが、いかがでしょうか。
  63. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 五十一年度のかつて経験したことのないような大きな冷害、水害等を受けまして農産被害も甚大であったわけでございます。このような試練を教訓といたしまして、今後いま御指摘のような総合的な災害対策、これにつきましては機を逸しないように十分措置を講じてまいる考えでございます。
  64. 武田一夫

    武田分科員 青森県は御承知のとおり雪で大変でございましたし、昨年の冷害と関係ありまして、すでに三月一日に県独自として異常気象対策本部をつくりまして、県としては慎重に対処していく、こういうような動きを示しておるわけでございますので、どうか慎重に検討した上での実現をお願いしたいと思います。  最後に、気象と関係ありますが、さらに農作物の技術の問題です。健苗、丈夫な苗をつくるとか地力の問題とかあるいは水管理とか、こういう問題について、昨年の冷害を踏まえた上でのいろいろな反省があったと思いますし、それに対する、こうあらねばならないというようなそういう一つの問題点があったと思いますが、そういう問題を踏まえて、簡単で結構ですが、今後どういう面にどういうふうにしていかなければならないかという、そういう考えと決意というものをひとつお聞きしたい、こう思います。  そしてもう一つ。そういうものが現時点で余り徹底指導というのがなされていなかったというところに被害を大きくした原因があったというふうに私は聞いていますし、この目で、耳で見てまいりました。指導が不徹底です。指導が徹底されているところは冷害の中でも助かっているケースが多いという観点を考えますと、そういうりっぱな指導技術が開発されたとしても、末端までのそういう指導というのが不徹底だということも問題だ。こういう面で、これに対する対策をいかに考えているかをお聞きして私の質問を終わりたいと思います。
  65. 堀川春彦

    堀川政府委員 技術的な問題について私からまずお答えいたしたいと存じます。  昨年の東日本におきます冷害につきまして特徴的なことは、一つは地域差がかなり激しく出たということと、もう一つは個人差がこれもまたかなり激しく出ておるということでございます。そういう差がございますが、まず品種の問題でございますけれども、品種につきましては、これは高冷地、標高の高いところではかなり一様に著しい被害を受けておるわけでございます。ところが中山間地帯におきましてやはり適品種が入っておらないことによって被害が拡大されたと思われるところがかなり見られておるわけでございます。これらにつきましては品種の選択が非常に大事なことでございますので、私どもも特に昨年の冷害を反省をいたしまして、適地に適品種が入るように指導をいたしたい。すでにこのことは昨年の十二月に局長通達をもって指導済みでございますけれども、これによりまして、たとえば、岩手県の今回冷害の被害を受けました地域におきましてはやはりわせ種の耐冷性の強い品種をふやすという動きが現実に出てまいっております。そういった品種の問題が一つございます。  それから、次に水管理の問題でございますが、これは水管理がうまくいかない冷水がかりのところで被害を大きくしたというのが出ておりまして、これにつきましては温水ため池その他施設を改善をいたしましてやるということが必要でございます。それから平たん地におきましても、水管理が適当でなくて——たとえば間断灌漑とか中干しをうまくやるとかいうことで被害を軽減したのが現実にあるわけでございますので、水管理の徹底を図ってまいるということが非常に重要なことだと存じます。  次に施肥の問題でございますが、これにつきましても、良質な堆厩肥を入れておる、あるいは土壌改良資材を入れておるというところで被害が少ない。その他の化学肥料常用区に比べまして現実に被害が少ないという結果が出ております。こういうことも反省をいたしまして、今後施肥のやり方等につきましても、地力を根本的に維持するための堆厩肥の増投等のことを進めるのとあわせまして、指導の強化を図ってまいりたい。  次に病害虫問題でございますが、昨年はいもちが非常に多発をいたしました。特に東北地方、北陸地方で多発をしたわけでございます。これの防除関係でございますが、発生予測に基づきます注意報ないし警報を発しまして、農家に周知徹底を図り、これに対応しました適期防除を図っていくということがきわめて重要でございます。昨年は防除の適期に雨が降って防除ができなかったというようなことが被害を大きくした一つの原因ではございますが、それ以外に、農家によります防除組織が崩れておりまして、そのことが適期防除が実行できないということの大きな原因になったという反省を持っております。これにつきましては、宮城県などは東北各県の中でかなり防除組織づくりに御熱心でございまして、これは四十九年のいもちの大発生の反省から出ているわけでございますが、この防除組織がもし確立しておりませんともっと大きな被害が出たであろうというふうに思われます。こういった防除組織の強化の問題、これも大事な問題でありますので、今後とも強力に指導をしてまいりたいというふうに思っております。  それからもう一つ、東北地方では機械移植が非常に進歩発展をしております。全国では七割ちょっと程度の普及率に対しまして、東北地方では八割を超える普及率ということになっておりますが、その機械移植のやり方の問題につきましては、これはやはり問題があるのではないか。稚苗移植を機械によってやるということが不適当な地帯においてまで稚苗移植を機械でやるということが見られております。この辺は、田植え期の機械移植によります地帯区分をもう一遍見直しをいたしまして、これは各県で指導の方針というものをつくっておるわけでございますから、これを見直しをいたしまして、機械移植の適切な実行、それから機械移植をしますにつきましてもできるだけ健苗を育てまして、健苗による機械移植を進める、あるいは場合によりまして中苗による機械移植に置きかえていくというようなことが、機械移植に関しましては非常に重要なことであろうと思います。  とにかく個人差がかなりあらわれておるということは、これはいろいろ普及組織を活用いたしまして、昨年はかなり普及員の方々にも御苦労をかけまして、場合によったら日曜日や休日を返上いたしまして、かつまた夜間にも普及に出かけていただくというようなことをしていただいたわけですが、この個人差が非常に大きく出たということは、やはり基本的な営農技術を励行するということが昨今やや欠けてきたというふうにも思いますので、この辺を中心にいたしまして普及活動の一層の強化を図ってまいって、再びかようなことのないようにいたしたい。  なお、先ほども申し上げましたように、私どもは昨年の水稲作の大冷害を反省いたしまして、昨年の十二月に通達を発しておりますが、先ほど気象庁からもお話のありました暖候期の予報も出ておりますので、またこれに対応した技術対策を早急につくって指導の徹底に努めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  66. 武田一夫

    武田分科員 どうもありがとうございました。
  67. 伊東正義

    伊東主査 これにて武田君の質疑は終了いたしました。  次に、米沢隆君。
  68. 米沢隆

    米沢分科員 私は農産物価格の問題について若干の質問をさせていただきたいと思います。  御案内のとおり、牛やら豚肉等、来年度、五十二年度の主要農産物政府支持価格を決める畜産振興審議会が本日から開催されて、三月末をめどにこれから激しい攻防戦が繰り広げられることになりますけれども、これら主要農産物政府支持価格の上げ幅いかんというものは、これから先の米、麦など来年度の各農産物価格の先行指標になるという意味で、全国の農民の注目するところでありますし、国民にとっても重大な関心事であります。したがいまして、まず第一に、価格の問題を議論する場合には、その農産物の置かれておる環境等が、左右する大きなポイントになるでありましょうから、昨今の畜産を取り巻く環境というものを安定的に推移するというような言葉で言われておりますが、どういうかっこうで本当に安定なのか、現実の認識と将来の展望について大臣からお聞かせをいただきたいと思います。
  69. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御承知のように、国民食糧の中でもたん白食糧に対する国民的な需要というものが高まってきております。これは国民生活の中での食生活の多様化、高度化というようなことを反映いたしまして、良質のたん白食糧に対する需要も高まっております。しかしながら、一面におきまして、たん白食糧の五一%以上を占めておる魚肉たん白は、二百海里時代を迎えまして非常に厳しい条件下に置かれております。そういうこと等を考えまして今後畜産振興ということに一層力を入れてまいりたい、このように考えておるわけでございます。  その際におきまして、畜産物の価格の問題が重要なウエートを持つことも認識をいたしておるわけでございます。私は、わが国の畜産業を着実に伸ばしてまいりますために、価格の問題あるいは生産対策、構造対策、さらに家畜飼料の安定的供給の問題、そういうような総合的な施策を進めまして畜産振興の実を上げていきたい、こう考えております。  なお、国内の畜産振興を図ってまいりますためには、海外からの輸入によってこれが大きな悪影響を受けるというようなことがあってはいけない、こう考えておるわけでございまして、私はあくまで国内の自給率を高めるということを基本に考えまして、また一方におきまして、何といっても消費者である国民の皆さんにも、この高度化してまいりました食生活に対応して、たん白食糧の安定的な供給ということも大事でございますので、相互勘案しながらわが国の畜産業の健全な発展を図る、そういう方向で進めていきたい、こう考えております。
  70. 米沢隆

    米沢分科員 将来の展望についてお話をいただきましたが、私は、日本の農政というものを考えてみました場合に、何とか食糧確保という政策は前面に出てきますけれども、実際はその食糧確保のために、それを支えている農民や農家の農業の経済というものについて大変おろそかな取り組みしかなされてないのではないかという感想を持つものでございます。数字を挙げたらいろいろ議論がありますし、皆さんの方が専門家ですからきれいに作文はできましょうけれども、実感として、いま畜産農家等に携わっている皆さんの話を聞いて、決して将来に対して明るい希望も持っていないし、何とかもうこれしかできないのだというかっこうでしか農業に取り組んでいない。そういう実情を見たり聞いたりします場合に、食糧確保対策はあっても、農業経済をうまくやろうという、支える農家対策というものは全然なってないという感じがするのでありますが、こういう批判に対してどのようにお答えになるのでしょうか、大臣にお伺いします。
  71. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 高度経済成長のもとにおきまして、他産業との所得の格差ということが生まれてきたことは否めない事実でございます。しかし近年、経済の安定的な発展と、これは海外からの資源あるいはエネルギー等の制約も受けておりまして、今後の経済というのはどうしても安定的な方向に進まざるを得ない。そういうような社会、経済の状況を反映いたしまして、最近、農村経済、農業というものに対する国民の認識も変わってきております。なおまた、政府並びに国会等の農業政策に対する農民対策というようなものも含めまして力を入れておりますのが反映をいたしまして、だんだん他産業との間の格差も、私は徐々ではあるが改善をされつつある、このように考えております。  今後とも、農村と都市におけるところの地域の格差並びに他産業と農林漁業者の所得の格差というものを解消する方向に最善を尽くしてまいりたい。また一面、経済問題だけでなしに、やはり農村の生活環境の整備、こういうことも非常に私は大事な問題だ、こういうぐあいに考えておりますので、総合的な施策を進めてまいる考えでございます。
  72. 米沢隆

    米沢分科員 それでは当面、今度の価格決定作業に当たり農林省としてどのような方針で臨まれるおつもりか、まず所信をお伺いしたいと思います。
  73. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御承知のように、原料乳等につきましての不足払いの制度がございます。また、肉類につきましては安定帯制度をとりまして、そして安定帯価格を支持価格として肉類の再生産を確保する、畜産農家経済の安定を図る、こういう基本の上に立ちまして政策を進めるわけでございますが、この価格の問題につきましては、ただいま審議会に御意見を伺うことにいたしておりまして、その答申を待ちまして私どもも今後の畜産農政が円滑に進むように、また、消費者である国民の皆さんにも納得のいただけるような価格を決めていきたい、このように考えております。
  74. 米沢隆

    米沢分科員 まあその価格については、きょうから始まった審議会で審議をされてその答申を受けるという、そういうのはわかっておりますけれども農林省自体としての意見というものが私はあるはずだ、そう思うのです。主張というものがあるはずだと思うのです。そういう意味で、いまこれらの価格の算定作業に入っていらっしゃると思うのでありますが、例年のおっしゃる需給実勢方式でいきますと、いわゆるいろんな政治的なものは抜きにしましてクールに例年どおり計算をしますと、実際加工原料乳の保証価格とか豚肉、牛肉の安定基準価格は大体どれほどの上げ幅になるのでしょうか。
  75. 石田徳

    ○石田説明員 目下作業中でございまして、細かい資料が全部整っておりませんので、この席で幾らになるということは大変申し上げかねるわけでございますが……(米沢分科員「推定でも結構です」と呼ぶ)また推定も、仮定の数字というのも出しにくいわけでございますが、環境としては昨年に比べまして大変落ちついておるということでございまして、中身を申し上げますと、コストの大きなウエートを占めますえさの価格が大変落ちついておる。ことしになりましても、これから六月まで建て値は据え置きになっておる。最近まれに見る安定を示しております。それから経営を見ましても、規模の拡大等がございまして生産性もかなり向上しておるというようなことはわかっておりますが、具体的の数字は目下作業中でございます。
  76. 米沢隆

    米沢分科員 それなら、前年度の八%台の上昇からかなり下回るというふうに見通しができるということでいいのですか
  77. 石田徳

    ○石田説明員 これは目下作業中でございまして、まだ事務的に何とも申し上げかねるわけでございます。
  78. 米沢隆

    米沢分科員 作業中、作業中と言われるけれども、需給実勢方式でもしやられたとしても、数字なんかみんなそろっているはずですね。ただ数式に当てはめさえすれば出てくる数字でしょう。だから、政治的な背景は別にしましても、クールに計算したときに大体のめどが立っていない限り審議会なんか始まらぬと私は思うのですが、いかがなんでしょうか。
  79. 石田徳

    ○石田説明員 本日総会を開いておりまして、各種価格の算定につきまして総括的な御意見をいただきます。それに基づきましてわれわれのこれから出てまいります数字をはじくわけでございますので、目下のところはまだ最終の結論には達していないわけでございます。
  80. 米沢隆

    米沢分科員 今後の畜産政策の見方いかんによって価格を見る目も全然違ってくると思うのでありますけれども、そういう意味で、私は、農林省がもう本日から始まっておる審議会において意見を持たないとか、大体の推定の数字も持たないなんてうそだと思うのですよ。はっきりしてほしいと思うのです。
  81. 石田徳

    ○石田説明員 実はきょうの審議会で部会にそれぞれ分かれてやるということを決めるわけでございますが、その部会は、食肉につきましては二十八日ごろ、酪農につきましては二十九日ごろに予定をしているわけでございます。ちょっと私出席しておりませんので、そういうように決まったかどうかまだわかりませんが、この辺をめどにわれわれとしては最終の数字を出す運びにいたしております。
  82. 米沢隆

    米沢分科員 皆さんの出される数字というのは、いろんな動きを見て変動するようなものなんですか
  83. 石田徳

    ○石田説明員 方式等は大体昨年のものを踏襲いたします。あとは中にはめ込みます数字が最終的に決まれば出るわけでございます。
  84. 米沢隆

    米沢分科員 最終的に決まらぬでも、ある程度の数字の動きはわかっておるのでしょう。
  85. 石田徳

    ○石田説明員 費目の中の生産費でございますが、統計情報部の方で本年から新しい方式によりまして生産費調査をいたしております。そういう数字がまだ出そろっておりませんので、目下のところ、大変恐縮でございますが、そこまでまだいっていないわけでございます。
  86. 米沢隆

    米沢分科員 その新しい方式はどんなのですか。そんなにめんどうくさいものですか。旧来のものとどう変わるのですか
  87. 石田徳

    ○石田説明員 たとえば労賃は、いままでは雇用労賃をとっていたわけでございますが、これから農村の労賃をとる、そういう方式が変わるのと、従来と同じものでありましても、いまのところ生産費の調査が出ていないわけでございます。
  88. 米沢隆

    米沢分科員 この前、読売だったか記事を見ておりますと、もう試算ができ上がっておるのですね。加工乳が二十五銭、約二・三六%、豚は五円、〇・〇七%、牛は去勢牛、和牛で二十六円、一・八%、新聞社の皆さんでさえこういう計算ができるので、皆さんができないはずはないと思うのですが、大体これくらいなんですか
  89. 石田徳

    ○石田説明員 外部の方は計算されるのにいろいろ前提を置いて計算されておると思います。われわれとしては正確な計算をいたさなければなりませんので、その数字はわれわれとして関係のない数字でございます。
  90. 米沢隆

    米沢分科員 こんな議論で時間を長くとっても申しわけないのでありますけれども、審議会のある関係で言いにくい面がたくさんあるのかもしれませんが、もう少し率直に数字等をお示しいただいて、そしていま畜産政策にどういう対策を持って臨もうとするのか、そのあたりをはっきりするというのが責任を持った行政のあり方だと私は思うのです。  次に、いま議論しましたが、実際同じ畜産農家を見ておきながら、農協さんなんかがやってくる要求価格と例年の政府の決める価格というのは非常に大きな差がある。その差はどこから出てくるのでありましょうか。同じ畜産農家対象になっておるのでありますが……。
  91. 石田徳

    ○石田説明員 これは農業団体側の要求の価格とわれわれの方で決定いたしております価格の決定の方法が違うというところに大きな差が出てくると思います。われわれの計算といたしましては、牛肉につきましては市場の実勢価格もとにして計算いたしておりますが、団体では生産費所得補償方式によって計算をしておる。この点が一番大きな相違ではないかと考えております。
  92. 米沢隆

    米沢分科員 そこで、生産者から政府のいわゆる需給実勢方式ではなくて、生産費所得補償方式をぜひとってほしいという要求が長年なされておると思うのでありますが、政府自身がこの需給実勢方式から生産費所得補償方式に変えられない理由は一体何でございますか
  93. 石田徳

    ○石田説明員 現在われわれは市場価格もとにして計算をいたしておるわけでございますが、現在の価格安定制度は、市場におきます自由な食肉価格の形成を前提にいたして、価格が暴騰暴落、乱高下をいたしますが、それを防ぐということを制度の根幹といたしておりまして、市場で形成されました実勢価格と無関係に生産費所得補償方式によりまして算定をいたしました価格を導入いたしますと、実勢価格と大幅に乖離が生じます。事業団は価格が下がったときには買い入れをしなければいけないわけでございますが、事業団の買い入れが開始されまして、しかも一たん買い入れますとこれは基準価格で買い入れるわけでございますが、採算のとれる大規模経営の供給増というようなこともございまして、買い入れが継続していって反面売り渡しは行われなくなるというようなことにもなりまして、現在法律で決められております制度が崩壊する、こういうおそれがあると考えております。  また、肉牛経営あるいは養豚経営についても経営規模には大きな幅がございます。一般的にはまだ飼養規模の拡大が続いておりますし、それから経営の合理化の余地も多分に残されているわけでございます。ここで生産費所得補償方式を導入いたしました場合には、どの程度の規模の階層を対象にするかというようなことも目下のところ大変見きわめがたい現状にもございます。また、食肉だけをとってみますと、国民生活の中でまだ米ほどの必需品としての地位は高くないわけでございまして、地域により、所得水準により、その消費にはまだ大きな格差もございます。そういう点から、直ちに米と同じような扱いをするということには問題があるのではなかろうかというふうに考えております。  なお、現在の価格算定でございますけれども、これにつきましても、再生産の確保を可能にするという明文もございますので、農家が行います各種畜産物の再生産の確保を可能にするような水準で計算をいたしておるわけでございます。
  94. 米沢隆

    米沢分科員 農家の再生産の確保あるいは畜産経営の安定あるいは自給率を向上させていこうという政府の大きな方針に基づく自給率の向上への努力、そういうものをやっていくためには、どうしても現在の農家の経営を見たときに生産費所得補償方式みたいなものが入ってこないと意欲がわかないと私は思うのです。それゆえにまた生産者の皆さんもそういう方式でぜひ考えてほしいという要求が長年続いておると思うのでありますが、いまのお話によりますと、そういうのにもいろいろ問題があるのでほとんど未来永劫にそんなのをとる可能性はないというそんな感じがしました。そうなりますと、農協の皆さんでも、この要求を始める段階で、生産費所得補償方式でどれくらいになるものだろうかと膨大な作業をされる。余りにも私は気の毒だと思うのですね。もう絶対にそんなことをしないから、そんな作業をやめて別な方向でやってこい、そう言うのが親切じゃありませんか。そういう意味では、需給実勢方式でいって、畜産の安定というのは本当に大丈夫だというふうにお思いなんですか
  95. 石田徳

    ○石田説明員 目下のところ、われわれが計算いたしております上限価格と下限価格でございますが、これは農家の再生産を確保することを旨として定めているわけでございまして、定める際にもそういう考慮をいたしておりますが、さらに、その結果としまして、畜産農家の数がふえているか減っているか、畜産の振興が進んでいるかどうかということもまた検証の材料になると思いますが、目下の制度によります操作によりまして、農家側の意欲はわいてきているというふうにわれわれは考えております。  また、価格だけで農家の意欲を云々するだけでなくて、生産対策その他の諸施策とあわせて農家対策を講じていきたいというふうに考えております。
  96. 米沢隆

    米沢分科員 だから、生産費所得補償方式というものは、いま農林省としては全然考えていないというふうに断言できるということですね。
  97. 石田徳

    ○石田説明員 五十二年度の価格決定に関する限り考えていないわけでございます。
  98. 米沢隆

    米沢分科員 それは後に残しましょう。  さらに、いまそういう価格決定する場合に、問題は、もう皆さんも御案内のとおり、結局輸入量がどうなっていくのかという問題と、もう一つ農家の皆さんを逆なでしておるのは、まあ財界とかあるいは財政筋等からの圧力といいましょうか、相当な価格支持対策で、政府もかなりの負担がある、そういうものを考えていった場合には、何とかして農産物全体の価格制度の見直しをしなければならぬ、そういう記事がいろいろ出ておりまして、そういうものが結果的には農家を不利に追い込むのではないかという、そういうものが農家をいら立たせておる大きな原因になっておると思うのです。  そこで、ぜひここでお聞かせいただきたいことは、たとえば、いまECあたりからも、日本の工業製品等の輸出等に絡みましてトラブルが起こっておりますし、それと反動的に、ECの乳製品等をかなり積極的に輸入を拡大すべきだという、そういう要請が政府の方にも来ておると思うのですね。そういう意味で、たとえばECの乳製品の輸入拡大の要請に対して、いま農林省はどういう感覚でそれを受け取られておるのか。あるいはオーストラリアあたりから、昨年の例にもありましたように、需給調整で輸入する、輸出するというような問題ではなくて、最初から決まっておって、政治的な圧力によって輸入せざるを得ないというのが、残念ながらいまの実態だという気がするのでありますが、政府のいわゆる輸入に対する今後の方針ですね、きちっとした原則論をはっきりしていただきたいと思います。
  99. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは農政に関する基本の問題ですから、私からお話を申し上げたいと思いますが、私は前段でも申し上げましたように、食糧の問題はきわめて重大な問題でございまして、国民の皆さんに、食糧に関する限り、いささかの御負担も与えてはいけない、これが一つの側面でございます。  それからもう一つの問題は、そのためにはやはり総合的な農林水産物資の自給力を高めていく、これが国民生活の最低の安全保障にもつながる問題でございますから、自給力向上、そのためにいろいろな総合的な施策をやってまいる、そして大事なことは、自給力を高めつつ、それを補う意味での輸入、こういうことを私は基本として考えておるわけでございます。したがいまして、秩序のない貿易、集中豪雨のような貿易を一地方にやって、その貿易のアンバランスを第一次産業の農業の方にしわ寄せをされる、そういうことは断じて容認できないことでございます。あくまでそういう基本線は堅持してまいるという考えでございます。  ECの問題が出たわけでございますが、御承知のように、農産物にしても農産加工品にしても、各国別に割当をしておるわけではございません。輸入量というものを総体として国内の生産と見合ってどれだけ輸入をするか、こういうことを考えるわけでございまして、ECが幾ら強い話を持ってまいりましでも、EC自身が品質の面、価格の面あるいは運賃その他の面等で国際競争力がなければ、輸入枠を広げましてもECからは入ってこない、こういうことになるわけでございまして、しかも、その想定される輸入の枠というものもきわめて少ない、こういう状況でございまして、ECとの貿易関係の話し合いでECを特別扱いにするというようなことは考えておりません。  また、肉の話で豪州の問題がございましたが、これは御承知のように、昭和五十年に輸入を再開したわけでございますが、五十年の六月から始まりまして、そうして七万五千トンの肉の輸入をやったわけでございます。それで、彼らの考え方は、六月に輸入を再開して七万五千トンであったのだから、通年ベースにすると十万トンぐらいの輸入量になるのではないか、こういうことを言うわけでございます。私、豪州のシンクレア第一次産業大臣と会ってみまして、その認識の非常な食い違いというものを感じ取ったわけでございます。私は、国内の需給の関係その他を勘案いたしまして、もう一般枠としては最高限度八万トンであるということで、上期四万五千トンにプラスいたしまして二万トンをとりあえず下期に割当をしておりましたから、先般一万五千トンを追加した。これはもう需給関係からいたしましてぎりぎりの線であるということにしたわけでございます。この上下合わせて八万トンという輸入量は、国内の需給関係価格の面等から相対的に判断をいたしまして、妥当な輸入量である、私はこのように信じておるわけでございます。  そのほかに、学校給食、ホテル用という特別枠があるわけでございますが、それに五千トンを追加する、しかし、その五千トンのうちの二千五百トンは五十二年度の先食いである、こういうことで処理をいたしたわけでございまして、私は、今回の措置というものは、いまの国内の状況から見ましてこれは妥当な結論である、このように信じております。  繰り返して申し上げますが、私は、貿易のアンバランスのしりを農産物等で補完をする、補う、カバーする、そういうことは日本の農政の立場からいたしまして絶対に受け入れることはできない、このように考えております。
  100. 米沢隆

    米沢分科員 御答弁が大変親切なので時間がなくなりましたが、最後に、先ほど申しました、いま政府農産物の全体の価格の見直しをされておるという、そういうことになった背景ですね。そしてどういう方向で取り組まれようとするのか、そういうあたりをちょっと教えてほしいと思います。
  101. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御承知のように、総合的な食糧自給力を高めるということを農政の基本に考えておるわけでありますが、どうも現在のところ稲作復帰志向というものがいまだに根強いものがございまして、米の過剰基調というものが続いております。一方におきましては、大豆であるとかあるいは麦類であるとかあるいは飼料作物というものは大部分を輸入せざるを得ない。こういう日本農業の構造の面で、食糧政策の面からいっても大変な不均衡が存在するわけでございます。そういうような観点から、私は水田総合利用というような政策を進めたり、あるいは麦、大豆等の生産奨励をやったり、そのための基盤整備その他の施策をやる、こういうことをやっておるわけでございますが、そういう際におきまして、価格の問題もやはり重要な要素であると考えております。  そこで、農林省の中に農産価格政策の検討委員会というものを設けまして、ただいまバランスのとれた条件整備をしていかなければいけない、転作等を円滑に進める上からいたしましても、価格を含め、あるいは生産の問題、構造の問題、いろいろな問題を総合的に、この転作等がスムーズに行われるような環境条件をつくる必要がある、そういうことに今後力を用いていきたい、こう考えております。
  102. 米沢隆

    米沢分科員 もう時間が来ましたから、これで終わりますが、米をやめろと言っても米にしがみつくのは、やはり米が何と言っても他の農産物に比べて安定しておることだと思いますね。そういう意味では、自給率向上という名目のもとに方針が続けられていくとするならば、他の農産物についても農家の立場から安定した作物である、そういうふうに見られるような価格対策というものをぜひ念頭に置かれてがんばっていただきたいと思います。  終わります。ありがとうございました。
  103. 伊東正義

    伊東主査 これにて米沢君の質疑は終了いたしました。  次に西宮弘君。
  104. 西宮弘

    西宮分科員 大臣にまずお尋ねをいたしますが、新たに学校を卒業した、中学校、高等学校新卒の子供で、しかも農家の子弟で農業に残ったというのが最近は大体一万人程度になってしまったわけですね。去年、おととしなどは一万人を切るというような状況で、辛うじて一万人というのが現状でございます。私は、このことは実に重大問題だというふうに考えるわけです。私の県、宮城県などを例にとりますると、十二万農家と称される中で、その農家の子弟で農業に残った新卒の子供たちは五百人になってしまったわけです。これは昨年の統計で五百人になってしまった。宮城県の場合などは、全国の平均から見るとこれもよほどいい方なんですよ。いい方でその程度だ。こういうことになってしまったので、私はその点が本当に大問題だと考えるわけですけれども農林省の発表した統計を見ましても、さっき申し上げたように大体一万人程度、そしてその中で男の跡継ぎ、それで残った者が六千百人、わずかに六千百人が跡継ぎの男子だ、こういうことなんですね。こういうことで一体将来どうなるのだろうかというごとはまことに憂慮にたえない問題ですが、これが実は昭和四十三年をピークにして、それからがたがたっと急坂を転がるようにして減ってしまってきているわけです。毎年毎年、例外なしに減ってきているわけです。これは全国的に見てもあるいは私の宮城県を見ても同様であります。昭和四十三年をピークにして減ったということに私は非常に重大な問題を感ずるわけです。  と申しますのは、例の西村農林大臣のときに総合農政ということが打ち出されたのが昭和四十三年であります。つまり、総合農政というのは言葉は大変りっぱでありますけれども、これはもう、要するに米は無理してつくってもらわなくても結構だ、これがその内容、実態であることはだれも承知しているとおりであります。私の記憶で間違いがないとすれば、あの年に外貨が二十億ドルに達したというので、これだけの外貨がたまればもう必要な食糧等は十分に外国から買える、したがって無理して国内でつくってもらわなくても結構だ、こういうことで、従来の食糧増産政策を変更する、こういうふうに変わりましたのが、例の西村農林大臣の唱えたところの総合農政でございます。それと全く符節を合わせて、いま申し上げたようにこの年から急激に新卒の学生の就農が減ってきたわけであります。  私は、かつて予算委員会で佐藤総理大臣に、一体日本では農業は必要なんでしょうか、総理大臣はどうお考えでしょうかと言って、お尋ねをしたことがあるのでありますが、今日なお——私は大変皮肉な言い方で恐縮ですが、そういう気持ちをこれは農林大臣に対してお尋ねをするというのは大変皮肉な質問になるわけでありますが、政府の政治全体としては、農業問題なんというのはそれほど大事な問題だというふうには見られておらないのじゃないかという感じがするわけでありますが、一言だけ大臣のお考えを伺いたいと思います。
  105. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 食糧問題は、世界的にも、またわが国にとりましても、非常に重大な問題になってきておると私は認識をいたしております。国際的な食糧事情、これはこの一両年若干好転はしておるようでございますけれども、しかし、在庫はいまだに低位にあるというようなことで、長期的な展望に立ちますれば、世界的な食糧事情というものは予断を許さないものがある、こう考えておりますし、わが国にとりましても、今回の漁業専管水域二百海里というような問題にも直面をいたしておりますし、食糧全体としてなかなか厳しい環境にある、こう思っております。私は、基本的には一億一千万国民食糧の安定的な確保を図るということは、これは何といっても国政の中でも最も重大な問題だ、このように心得ておるわけでございまして、そのためには、国内食糧の自給度を高めるということが大きな政策目標として不変のものでなければならない、こう考えておるわけでございます。  ただ、御指摘になりましたように、高度経済成長の過程で土地の壊廃も相当進みました。また、農村の生産労働力が他産業に過度に流出をしたということも御指摘のとおりでございます。そういうようなことで、日本の農林漁業の体質が脆弱化しておるということでございまして、いま前段で申し上げました食糧問題の重大性ということを考えますと、何としても、日本農業の体質の強化、生産体制の整備、そのための土地改良等基盤の整備の問題、また農林漁業従事者の確保と生活の安定、後継者の育成、こういうことに力を入れなければいけない。結局、農業といってもそれは土地の問題であり人の問題である。こういう面に農林漁業政策の重点を今後置いて、特に御指摘になりましたところの農林漁業者の確保、後継者の育成、確保ということにつきましては、いろいろな総合的な対策を進めていく必要がある、このように考えております。
  106. 西宮弘

    西宮分科員 農林大臣の非常に強い決意を伺って、私もその点はいささか意を強うするわけでありますけれども、ただ、先ほども申し上げたように、残念ながら政治全体の中ではそういう姿勢になっていないのではないかということを私どもは極度に警戒をしておるわけであります。  私は、いままでの国の農政が間違っておったというようなことで、卓をたたいてその非を糾弾するというようなつもりは全くないので、大臣がそういうふうに非常に深刻に考えておられると同じように、私も憂えをともにしてどうしたらいいんだろうということで、全く考えてみると、少し大げさな言い方でありますけれども、寝つかれないというほど、後継者が減ってしまっているという問題に私は深刻に苦悩するわけであります。たとえば、これは「農業と経済」という雑誌に出ておりました本当の農民、愛媛県の永井民枝という人でありますが、この人は、農基法農政は失敗したなどと言われていますが、よく考えてみると、政府のねらいどおり事態の基本は進行して、麦も大豆もつくらなくなった、米も減反した、食糧の海外依存は物のみごとに急増した、その果てに食糧危機を見て騒いでいるだけのことではないでしょうかというようなことで、政府の今日までとってきた政策に非常に不信感を持っている。こういうことだと、さっき申し上げたように、農業に残る者がだんだんなくなってしまうということ、これは大臣のさっきの非常な強い姿勢にもかかわらず、だんだん減ってしまうということはほとんど避け得ないのじゃないかという感じがするわけです。  そこで、さっき高度経済成長に関連して云々という大臣の御答弁がありましたけれども、たとえば小倉武一さん、この人は農業基本法を生み出した生みの親とも言うべき人でありましょうけれども、この人でさえ、農基法は経済の高度成長と国際的な農産物の過剰を前提としていたが、今日では状況が変わり、実情に沿わなくなってきている、こういうふうに言っておるわけであります。私は、こういう点を反省して、そこから再出発をするということが絶対に必要だと思う。ただ、農基法も正しかった、いままでのやり方も正しかった、しかし世界的にいろいろ食糧状況などが変わってきたというような、そういう受けとめ方では、日本の農業は再建できないのではないか、ここまで落ち込んできた日本農業をもう一遍もとに引き直す、立て直すということが不可能なのではないかということを考えますので、大臣からそういう点について、つまり農基法農政なるものを今日どのように評価をしておられるか、一言だけ簡単に伺いたいと思います。
  107. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、農業基本法を、小倉さんがどういうぐあいにそのとき受けとめておられたかわかりませんが、農基法の精神というのは、やはり農林漁業者の生活の安定、農林業の振興を図り、そして一方において国民食糧の確保を図るための農林業の振興を図らなければいけない、これが農基法の基本的な精神だ、こういうことを考えておるわけでありまして、したがって、農林物資等は国際分業で賄えばいいんだ、そういうようなことは農基法の基本精神ではない、私はこのように考えておりますし、最近における世界的な食糧需給の推移等を見てまいりますと、ますますその感を深くするわけでございます。そういう認識で私は農基法の展開を図っていきたい、こう考えます。
  108. 西宮弘

    西宮分科員 大臣がそういう決意で当たられるならばこれ以上議論をいたしませんけれども、農基法制定の当時を考えてみても、いまの食糧の問題等について、たとえば私は日にちまではっきり覚えておりますけれども昭和三十五年十二月九日でしたけれども、農基法制定を前にして全国の農協の関係者が集まって、農協の全国大会が行われました。そしてそこで、今度農基法に盛り込んでもらいたいという要望を幾つか出したのでありますが、最後まで残った問題は、食糧自給度の向上という言葉を農基法の中に入れてくれ、このことを荷見全中会長が代表して要請いたしました。ところが、ついにそれは政府の採用するところにならなかったというようなところにも、実は当時の農基法が、高度経済成長を農業の側から裏づけをして工業を盛んにする、そういう立場で食糧輸入というようなことをむしろ考えておったのではないかというふうに私は考えざるを得ないのでございます。しかし、時間がありませんからそういう議論はいたしませんけれども、こういうふうになってまいりますと、本当に大臣心配されるように食糧が足りなくなってしまう。私は農家の諸君に言うのですけれども、いま農業が軽視されているとあなた方憤慨するかもしらぬけれども、農民がやがて神様扱いされるのだ、そのときが必ず来る、ただしそのときは日本民族が滅びるときだ、極端な言い方だが私はこういうふうに言っております。恐らく日本でもあの終戦直後と同じように農民が神様扱いをされるときがやがて来るだろうと思います。しかしそのときは残念ながら日本民族が滅びるときだというふうに私は考えて、きわめて重大な問題だと考えます。  時間がありませんからこの程度にいたしまして、せっかく大臣もそういう点を非常に強く認識をされて強い姿勢で臨んでおられるようでありますから、政府全体の政策として生かしていただきたいと思います。  二番目は、担当の局長で結構でございますが、食糧の問題、農産物の問題ですね。これは終戦直後は量が問題であった、その次は質の問題に変わった、そこまで来ていると思います。私は実はそれ以上といいますか、それと並行して大事な問題はコストの問題だということは、数年来国会でも主張してきておるのでありますが、どうもその反応がないようなんです。コストを引き下げるということに真剣に取り組まなければならぬ段階だと思うのだが、その問題についてどういうふうに考えておられましょうか。
  109. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 農業生産振興を行います場合にコストの引き下げということは非常に重要であるということで、農業基本法におきましても生産性の向上というものを目標の一つに掲げておったわけでございますが、三十五年から五十年までの推移を見ますと、農業の生産性、これは実質でございますが、この間に年平均七%という伸びを示しております。これは先進西欧諸国と比べましても遜色のない伸びだと思います。そういう意味におきまして、そのときどきに、たとえば数年前のえさの価格が非常に上がったというようなときにはもちろんコストが非常に暴騰いたしておりますけれども、その後鎮静しておりますし、長い傾向的に見ますと、わが国も労働生産性の向上をかなりこの間に果たしてきた、先生のおっしゃる実質的な面でのコストの引き下げ、名目はもちろん上がっておりますけれども、そういう点に寄与してきたと思っております。
  110. 西宮弘

    西宮分科員 いまお答えの労働生産性が上がってきたというのは、たとえば機械化等でかなり省力化されたというようなことで上がってきたに違いないと思うのでありますけれども、農業試験研究機関なども、かつては量の問題、続いて質の問題、これには非常に力を入れてきたんだけれども、もっとコストの問題にいろいろ試験研究を重ねていくということが大事ではないかと思うのです。  私はその一つとして、農業機械の問題を指摘をしたいと思うのです。なぜならば、生産費の中に占める農業機械の割合というのは非常に高くなっているわけです。肥料とか農薬というのはここ二十年くらいの間に大分構成割合が低くなっておりますけれども、逆に農機具だけは非常に高くなってきておる。二十年間で三倍近くに上がっている、こういう現実があるわけであります。そういう点から考えると農業機械に投ずる経費をどうしても減らさなければならぬ。そのためには、問題がたくさんあるのでありますけれども、要するに私が指摘をしたいのは、農林省としてあるいは通産省なども加えた政府として、そういう点についてどういうふうに取り組んでおるかということでございます。私も農林省のいろいろな通達、依命通牒、その他たくさん持っておりますけれども、どうもそういう農機具のいわば抜本的な対策がなされておらない。たとえば各メーカーがつくる製品について、部品は規格を統一するとかあるいはモデルチェンジはむやみにやらないとか、あるいは保証書なんというのもついておるのはごくわずかでありますけれども、乗用型のトラクターぐらいしかついてない、そういうのを徹底するとか——これは通牒には載っていますよ。通牒には載っていますけれども、そういう問題、あるいはもっとさらに徹底して言うならば生産原価を公開させる、公開が困難ならば、何か信頼すべき第三者にチェックさせるというようなことなどが必要ではないかと思うのだけれども、そういう点について思い切った手が打てないでしょうか。
  111. 堀川春彦

    堀川政府委員 農業機械が適正な価格農家の手に渡るという上で先生の御指摘の点大変重要な問題だと存じます。部品供給体制を整備するということも大変重大でありますし、それからモデルチェンジなども行き過ぎたモデルチェンジをやらないということも大変重要なことでございます。私ども、これらの問題につきましては、かねて来、機械メーカー並びにその機械メーカーにつながる販売業者等と種々相談をいたしまして、できるだけ農家の手に安定した価格で農機具が渡るようにというふうに指導をしてまいってきておるところでございます。また部品供給体制の整備の問題等は、今後大いに努力しなければならぬ問題であろうと考えているわけでございます。  なお、生産原価公開の問題につきましては、これは現在農機具が農家に渡る系列として大きく見まして二つの系列がございます。一つは全農を初めといたしまして農協系統を通じて渡る仕組みと、あとは商人系の系統を通じて渡る仕組みと二つございまして、私どもできるだけ価格の安定を図るという趣旨から、全農と農機具メーカーなり販売業者と相談をさせまして、毎年、価格を引き上げる要素が出てまいったようなときに、できるだけ引き上げを避けるという趣旨で、どういう要素について引き上げというような事情が起こるのかということを、全農とメーカーとの間でかなり時間をかけまして検討させました結果をさらに私どもも勉強いたしまして、適当でないと思ったときにはもう少し引き下げができないのかというような指導も加えまして、安定的な価格農家に保証されるというふうにやってきておるわけでございます。これからもそういう方向で努力したいと思っております。
  112. 西宮弘

    西宮分科員 私もその点はよくわかっていますけれども、全農が大メーカーの代表とたしか年に二回、六月、十一月にやるんじゃなかったのですかね、会合してやっておるけれども、私はそんなことではとてもチェックができないと思うのですよ。何か権威ある第三者機関というようなものでもつくって、そういうところでチェックしなければ、いま全農なども売らんかな方式になっているのですから、農民からはそういう点では非常な批判を買っているのですから、だめだと思う。そういう点ではなしにもっと思い切ったチェックをしていく。単なる指導、たとえば農林省がいろいろ通牒を出しておられますけれども、通産省から出ておる五十年十二月三日の通牒なんというのもありますけれども、こんなのは、全く本当につまらないことをただ二項目挙げておりますけれども、こんなことでは全然痛くもかゆくもないのじゃないかと思う。こんなやり方では、私はとうてい農民が期待するような農器具を農民の手に渡すということはできないと思う。これは時間がないからこれ以上申し上げませんけれども大臣もそういう点認識をいただいて、これに思い切った手を加えるということをお願いいたしたいと思います。  三番目に、私は、これも局長で結構でございますが、いまの農振法ができて以来、農振地域であるとか、あるいは農振区域であるとか、あるいはその中に設けられた農用地利用区域であるとか、それが設定されたり、あるいは市街化区域ができたり、そういうものができております。ただ、いまそれを見直しの段階になって、特に国土利用計画法に基づいての問題と関連して見直し作業に入っておる。こういうことで、農家から大分変えてほしい、これは新たに農振地域を拡張する、あるいは農用地利用区域を新たに設定したいというような要求ももちろんありましょうけれども、また反対に、従来の農用地利用区域から解除してほしいというような注文等もあると思うのですが、これが全国的にどのくらいの件数あるいはどのくらいの面積、申請が出されているかということがもしわかったら答えてください。もし資料を手持ちでなかったら、後でも結構です。
  113. 森整治

    ○森(整)政府委員 御承知のように、線引きの見直しをやっております。そこで、地方農政局にただいま協議が来ておりますのが二十二区域にわたっております。うち、これはただいま電話で照会した数字でございますが、本省に提出されてきておりますのが十一区域。その十一のうち、決定を見ましたのが七区域でございます。そこで、簡単に申し上げますと、農地でふえたのがその七地域でございますが、三ヘクタール。プラス・マイナスいたしまして、もちろんふえたのもありますし、減ったのもあります。ということで、農振地域が拡大したところもございますし、減ったところもございますが、減ったところの数字は、全体で二百三十六ヘクタールということに相なっております。
  114. 西宮弘

    西宮分科員 農民の願い、注文は、早くやってほしい、結論を早く出してほしいということなんですけれども、これはここまで出すまでには、それぞれみんな市町村あるいは県、そういう段階を経、さらにまたそれぞれには相当それぞれに設けられたいろいろな審議機関があるわけですね。そういうところでそれぞれ審議を経て送り出してきているわけです。ですから、早く結論を出してほしいということなんですが、大臣に一言だけ伺いますが、なかなか農地を——農地と申しましても、市街地と接触したところでは、いわゆる都市の公害等で、もう農業には不適当になっているというような土地もあるわけです。そしてそういう土地はむしろ売って、しかも近傍の市街地と同じような値段で売って、その金で郡部に新しい農地を取得をする、こういうことで郡部に新しい農業を経営をして、非常に合理的な、また能率の高い経営をしておるというような農家も少なくないわけです。そういうのを見ていると、早く決定してほしいという要求が出ておるんで、だからそういうところはどんどんそういうふうに進行していくし、自分のところはいつまでも抑えられている、こういうことでそういう点での不満が大変ある。あるいはまた同時に、それならばつくった米は全部買ってくれるのか、そういうと、決して米は全量は買わないというのでは、大変に矛盾するのではないか、こういうような不満もあるわけです。  私はこの前、全国の予算要求の運動の農業団体の大会だと思いますが、集まっておるところに行ってみたら、そういう意見がかなり指摘をされておったというのを見てつくづく考えたのですけれども、そう言うならば、容易に改善しないというならば、つくった米は全部買うべきだという主張、あるいはいま申し上げたように同じ地域で隣同士で非常な不合理が、不公正があるというような問題等について不満が高い。こういう点について、大臣、どういうふうにお考えでしょうか。
  115. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いまの農振法を実情に即して弾力的、機動的に、早期に処理ができるようにしてほしい、こういう御要望につきましては、私どももその実態を見た上でできるだけ早期にそれらが処理できるように進めてまいりたい、こう考えております。  なお、そうして広い農地を取得して、そして稲作農業を拡大をしていく、それがまた全量それを買い上げろ、こういう問題につきましては、先ほど申し上げたように米の過剰基調というのを一方に抱えておりますし、一方におきましては麦その他大豆等、飼料作物等をぜひつくってほしい、増産をお願いをしたい、こういう政策もとっておりまして、いまの農地を拡大することは大変結構でございますけれども、それを全部稲作に向けていくということにつきましては、これは日本全体の食糧政策の面から私どもは十分慎重に取り扱っていかなければならない、こう考えております。
  116. 西宮弘

    西宮分科員 ちょっと私の言い方が足りなかったかもしれません。誤解されていますので一言だけ伺います。  私が申し上げたのは、農地を郡部に取得して規模を拡大すると言ったのは、何も米作をやる——おおむね郡部に新たに拡大するというものは水田ではなしに、水田はもう満杯ですから、そうではないところで畜産とか、主として畜産が多いと思うのですが、そういう拡大をしているわけです。だからそれはその農家は大変うらやましいと思っておるわけです。自分の農地をそういうふうに処理されない人はうらやましいというふうに思っているということなんです。  それから生産した物を全部買うのかということを言っているのは、自分の農地を転用したいと思うのだけれども農林省が転用を許可しない、許可しないならば、それではつくったものは全部買うのか、こういう意味です。
  117. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御趣旨がよくわかりました。私どもも規模拡大のためにそういう市街化地域等の高い土地を処分をして、そして農村地帯に広い農地を確保し、農業の拡大を図る、こういうことは大変結構なことでございますから、個々のケースをよく吟味いたしまして御趣旨に沿うようにしてまいりたいと思います。
  118. 伊東正義

    伊東主査 西宮君の質疑はこれで終了いたしました。  次に、日野市朗君。
  119. 日野市朗

    日野分科員 私は、漁業問題、特に沿岸及び近海といわれる、それにさらに浅海も含めて漁業の問題について若干の質問をいたしたいと思います。  過日は大臣にはモスクワまで行かれまして本当に御苦労様でございました。心から御苦労様と申し上げたいと思います。  あのような場に臨まれまして、この二百海里問題を抱えて、二百海里時代に入った厳しさというものは非常によくはだ身で感じておいでになったろうと思います。二百海里問題がこのように出てまいりますと、もう漁業専管水域二百海里というこの問題について、各国の二百海里がどんどん宣言されてくる。そうしますと、実際上日本の遠洋における漁業というものが大きな壁にぶつかってしまったし、これをどんどんいままでのように外国の二百海里水域まで出ていって漁獲を上げてくるのは、もはや不可能になったのではないかというふうに思うわけでございます。それで私は、この日本の近海や沿岸、こういうところの漁場がもう一度見直されなければならないというふうに根本的に考えているわけでございます。日本人が食べる魚類、これは日本の近くからとるというような方向に根本的に考え直していかなければならないのではなかろうかというふうに考えております。これは非常に根本的な問題でございますので、その点についての大臣の考え方を伺っておきたいと思います。
  120. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 日野さんのおっしゃるとおりでございまして、私どもは漁業外交を積極的に展開をいたしまして、今日までの伝統的な漁業実績ということにつきましては、あとう限りこれを確保するという方向で努力をいたしますが、世界の大勢からいたしまして、どうしても海外で減る分については、日本列島周辺の沿岸の漁場を開発整備をし、資源をふやし、あるいは積極的に栽培漁業等を振興していく、これ以外に道はない、また沖合い漁業、あるいは未開発の漁場の開発、それから漁獲が減るわけでございますから、とった魚はできるだけこれを可食部分をふやすように加工、保存、あるいは流用の面、これの合理化、近代化も図っていく、こういうことで対応せざるを得ない、このように考えておりまして、日野さんが御指摘になりました日本漁業のあるべき将来の方向というものはお説のとおりだと私も受けとめております。
  121. 日野市朗

    日野分科員 私は、その関係につきまして若干予算書をいろいろ見てみたのでございますが、いま大臣がおっしゃられましたように、新たな漁場の開発とか、既存の漁場をさらに豊かなものにしていくという努力の方向が予算書の方から見るともう少し熱意が見られてもいいのではなかろうかというような感じがいたしたわけであります。二百海里ということは、既定の問題として問題を抱えられていたわけでありますから、もう少し努力ができなかったのであろうかということを考えております。これは漁礁の設置やら、それから養殖漁場の大規模な整備、開発とか、そういった面の予算が若干これは足りなかったのではなかろうかというふうに思うのでありますが、この点いかがでありましょう。また、来年度からはどのような方向でこの予算の編成に取り組んでいかれるつもりなのか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  122. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 基本的な私の考えを申し述べて、具体的な予算の説明は水産庁長官からいたさせます。  私どもは、二百海里時代の到来ということは、海洋法会議の動向等から十分察知されたところでございまして、したがって昭和五十一年度の予算におきまして、御承知のように沿岸漁場整備開発事業というものを公共事業としてこれを取り上げる。従来は沿岸漁業の構造改善事業という形でやってきたわけでありますが、これを公共事業として行うということにいたしまして、二千億、七カ年計画というものを策定をいたしたわけでございます。五十二年度予算も、その二千億七カ年計画の目標達成に向かって予算の確保を図った、こういうことでございます。  しかし私は、この七カ年計画を達成いたしました後、これは第二次、第三次、第四次、第五次というぐあいに、漁港整備計画と同様にこの政策は今後とも積み上げていかなければならない大きな事業である、このように認識をいたしておるわけでございまして、五十三年度以降の予算におきましてもいま申し上げた方向で最善を尽くしてまいりたい、こう思います。
  123. 岡安誠

    ○岡安政府委員 沿岸漁業の振興につきまして、いま大臣が申し上げたことが基本でございますが、さらに御質問によって増養殖、栽培漁業等につきまして付言いたしますれば、栽培漁業につきまして、従来、国としましては県のセンターを中心にこの振興を図ってまいりましたけれども、国営といたしましては、暖水系の魚を中心に瀬戸内海に栽培センターを設置して運営しておりますけれども、五十二年度からは二カ年計画で、北日本に寒水系の魚を対象とします国営の栽培センターを設置するというようなことも五十二年度に新しく予算を要求いたしておりますし、サケ・マスのふ化放流事業等につきましても、従来より以上に事業の実施を図るということで予算措置をいたしておるわけでございます。
  124. 日野市朗

    日野分科員 私は海岸の育ちな者ですから、非常によく海の移り変わりというようなものを見ているわけであります。私の住んでいる石巻市でございますけれども、あそこは万石浦というところがございます。ここなんか、私は子供のころよく遊びに参りまして、海の中に入りますとよく小さなカレイで足がすべるくらい、小さなカレイがいたという記憶があるわけですね。刺し網なんかにはサヨリがいっぱいに卵を産みつけていたという記憶もあるわけでございます。ところが残念ながら現在は、もうそういうものは全然見られないわけですね。私は万石浦などというのは非常に魚の産卵場、そしてあそこで育つ重要な漁場ではなかったかというふうに思っているわけでありますが、そういうところを現実に目の当たりに見ておりますと、日本における沿岸の浅海漁場というものはこれは衰えているなというふうに感ぜざるを得ないわけであります。  また、これは数日前の新聞なんかにも載っていましたけれども、漁業技術がどんどん発達をいたしまして漁獲がどんどん上がる、そしてそれが乱獲につながって逆に漁業資源を枯渇させていっているというこういう悪循環が非常にあるわけであります。また最近見られるのは、何といっても生活下水といったものが万石浦などにもどんどんと流れ込んでいる。こういう状況を見まして、これでは沿岸の漁場というものはどんどん衰微せざるを得ないのではないか、こういうふうに思うのであります。  それで私、まず第一に、この汚染の問題を取り上げてちょっと伺ってみたいと思います。特に漁民の方々は、合成洗剤というのは資源保護の立場からすれば非常に悪いということは感覚的に考えておられるわけですね。そしてあれを何とかしなければいけないというようなことをよく言われるわけでありますが、合成洗剤による汚染というものについて、現在、どのような検討を進めておられるか、伺いたいと思います。
  125. 島田隆志

    ○島田説明員 先生いま御指摘ございましたように、合成洗剤問題としましては、大きく分けますと三つの問題があろうかと思います。一つは、合成洗剤の中に界面活性剤として使われております直鎖型のアルキルベンゼンスルフォン酸、ラスと言っておりますが、それによる安全性の問題、特に人間に対しての問題だとか、あるいは催奇形性の問題ですとか、あるいは慢性毒性の問題ですとか皮膚障害だとか、そういう安全性の問題、もう一つはあわ立ちの問題があろうかと思います。それからもう一つは、主として家庭用、医療用の粉末洗剤に補助剤として使われております燐酸塩が使われておるわけでございますが、燐によります富栄養化の問題、これが特に水産の問題では大きな問題に今後なろうかと思いますが、大きくその三つの問題があろうかと思います。  安全性につきましては、現在厚生省で研究が進められておりますので、その成果を待ってわれわれはさらにどうするかというようなものは判断したいと思います。  それから、あわの問題につきましては、従来非常に生分解性の悪いABSというものを使っていたわけでございますが、四十六年以降ほとんど、先ほど申しました直鎖型の非常に生分解性のいいものに転換されまして、まだ寒いときだとかあるいは下水の整備されていないところには問題は残ろうかと思いますけれども、そういう方向でございます。  それから、私ら、いま先生指摘ございました、今後環境への影響の問題で非常に問題だと思っておりますのが燐の問題でございます。従来、二十数%ぐらいの無水燐酸で含まれていたわけでございますが、五十年以降、所管でございます通産省とも相談しまして、できるだけ合成洗剤から燐を減らしていくという方向で、五十年の一月から一五%、五十一年から一二%ということで、すでに大部分はそういうふうになっております。中には八%ぐらいまで落ちているものもあるわけでございますが、今後さらにこれを強化していきたい。  それから、合成洗剤だけでございませんので、先ほどございましたような生活排水の中にも非常に燐の問題がございますので、燐の問題をどうするかということで、いま私どもの中公審の中の専門委員会の中で、水産サイドから見た場合どういうことが望ましいか、あるいは水道サイドから見た場合どういうクライテリアがあるかというようなことで、いま勉強を進めさせていただいている段階でございます。
  126. 日野市朗

    日野分科員 こういった合成洗剤を初め生活排水等々による海水の汚れというようなものは、これはやはり赤潮の原因になったり、そういうことで、これは水産資源の維持というようなことから考えますと、非常に問題があると思いますので、これは急いでこういった研究すべき点は研究していただいて、そしてこういうものを漁場に流さないというような方向でひとつ検討を進めていただきたいと思います。  次に、魚礁の投入等によって漁場をいまつくっておられるようでありますけれども、これらはかなり関連性を持たせてやらないと、ただ魚礁を投入すればいいというだけのものではないと思うのです。その地域における漁獲とか魚類資源とか、そういったものとの関連を十分に検討した上でやりませんと、これは効果が非常に薄いものになってしまうのではなかろうかと思います。そういうことの研究体制はどのようになっておりましょうか。
  127. 岡安誠

    ○岡安政府委員 この魚礁設置は、先ほど大臣が申し上げましたとおり、五十一年度から七カ年計画で、沿岸漁場の整備開発事業の一環として魚礁の整備をやっておるわけでございますけれども、おっしゃるとおり、ただ魚礁を設置をするというだけではなくて、まず調査をいたしまして、その周辺海域におきましてどのような魚族が生育に適するか、それにつきましては増養殖の目標をどういうふうにしたらいいか、それから増養殖場をどういうふうに設置するか、それとの関連におきまして、魚礁をどこにどういうぐあいに設置するかという計画を立てまして、その計画に従って事業を実施しているわけでございます。おっしゃるとおり、私どもといたしましては沿岸漁場を最大に有効に利用できるような、そういう方策を樹立して、その一環として魚礁の設置事業を進めてまいりたいと思っております。
  128. 日野市朗

    日野分科員 私なんかも海に行きますとよく見る風景なんですが、漁師の方々はどんどん魚をとってくるわけですね。そうするとカモメなんかがその水揚げがある時間や船をよく知っていて、どんどんそこに集まるのです。何でそこにカモメがいっぱい集まるかといいますと、船着き場なら船苦き場にいっぱい魚は揚がるのですが、本当にその中から漁師が抜き出していく魚というのは幾らもないんですね。あとはタイの小さいやつだとか、本当に小さい、余り人間の食用にはならないようなものがいっぱい残される。そうするとそれをねらってカモメが飛んでいくわけです。  こういうのを見ていますと、このような略奪漁業みたいなことをやっていたのでは、これは漁場がどうなるんかいなという心配を実に私は強く持たざるを得ないのであります。  こういう点について、これはいろいろな規制もやっておられると思うのですが、どのような規制があるか。そうしてそれをどのように強化していって、このような稚魚のようなものまで根こそぎとってしまうものを抑えていくか、これも非常に大事なことだと思います。特に私は底びき、あれにはかなり問題があるように思うのですが、いかがでしょうか。
  129. 岡安誠

    ○岡安政府委員 確かに私ども沿岸漁場を今後大いに整備していくためには、やはり乱獲の防止ということから始まりまして、最大の漁獲量を上げ得るように、漁法等につきましても計画的にやらなければならないというふうに考えております。  一般的な方策といたしましては、やはり魚の産卵場その他を中心にいたしまして、海区等につきましては、休漁区、禁漁区等を設けるとか、また、期間につきまして、一定の期間は漁獲を禁止するとかいうような方法、さらには魚体、特に小さい魚を乱獲することは再生産の障害になるわけでございますので、網目の制限とかいうようなことでもって、先生おっしゃるような乱獲の防止、再生産の維持拡大のために規制を設けているわけでございますが、御指摘の床びきにつきましては、そういう弊害が特に大きいということを私どもも痛感をいたしております。そこで、底びき網漁業につきましては、小型機船底びき、それから沖合いの底びき等、それぞれ別でございますけれども、底びき網漁業の禁止の区域、それから禁止期間、網目の制限等を設けまして、厳重にこの規制を守るように従来からも指導をいたしておるわけでございます。
  130. 日野市朗

    日野分科員 規制をしておられる、それから期間や区域を決めておられるということなんですが、それは私は若干甘いのではないかというふうに考えておるのですが、いかがでしょう。
  131. 岡安誠

    ○岡安政府委員 見方によりましては、現在の水産資源がどういう状況にあるか、それから現在のような漁法等を続けてどうなるかという見方がございます。したがって、さらに強化をしなければならないという考え方もおありかもしれませんけれども、私どもは、やはり基本的にはおっしゃるとおり、今後最大の漁獲量を上げるためにはどういう方法で漁獲を続ければ資源が損耗しないかという観点に立ちましていろいろ規制をやっているわけでございます。もう一つは、ほかの漁業を行なう者との調整の問題もあるわけでございます。  私どもはその二つの観点から、先ほど申し上げました禁止の区域、期間等を設けているわけでございますが、私ども、先ほど申し上げましたように、今後は沿岸に依存するシェアが非常に大きいわけでございますので、さらに漁獲量を上げるためにはどうしたらいいかということにつきましては、御指摘の点につきましてもさらに検討は加えたいというふうに考えております。
  132. 日野市朗

    日野分科員 これは基本的な認識の問題になるのですが、沿岸の漁業資源、これは枯渇しつつあるというふうにはお考えになりませんか。
  133. 岡安誠

    ○岡安政府委員 最近そう言われておりますのは、特にその環境の汚染という面からは、非常に漁場が失われる、それから漁獲量が減るという点は相当見られたわけでございますけれども、この点につきましては、環境の保全という見地から、汚水等を中心とします排水の規制、それから廃棄物等の投入の制限等を主体に規制を強化いたしておりますので、そういう側からの漁場の汚染あるいは資源の枯渇の方は相当ブレーキがかかっておるというふうに思っております。  あとは乱獲という御指摘かと思いますけれども、これらの点につきましてはなかなか一概にはわからない点もございます。たとえばある一定時期にイワシがとれ、それがまた翌年とれなくなる、これは乱獲のせいであるのか、それとも海況等の変化によるのかというような問題もございます。私どもそれらは鋭意研究をいたしておりますけれども、ある一定の時期にたくさんとれた魚が翌年以降とれなくなったというような事例等につきまして、必ずしも乱獲であるという結論は出ておらないようでございます。やはりプランクトンの発生、それの移動等の状況から、漁種が変わるというようなことがあるのではあるまいか。事例から見ましても、サバがとれるときはほかのものがとれなくなり、またサバがとれなくなるとほかのものがとれるようになるという事例が非常に大きいということもございます。もちろん私どもは乱獲につきましては十分注意をしなければならぬと思いますけれど、私どもとしましてはさらに原因は究明してまいりたいというように考えます。
  134. 日野市朗

    日野分科員 私なんか、漁師とつき合いが非常に多いものですから、さっき西宮議員がここで農業後継者の問題について質問をしておられましたが、漁業の後継者の場合はもっと問題は深刻だと思いますね。もう若い人は海にはおりませんね。海にはもう出たがらない。そして、全部おかでの仕事を求める。数日前の朝日新聞でしたか、ちょうど塩釜周辺の漁場の問題について記事が載っておりましたけれども、そこでももはや漁師をやっているのは五十代以上の人なので、あと若い人はもう海に出たがらないというような記事が載っておりました。実際われわれ感覚的に見て、魚族資源というのは非常に枯渇してきてしまっているのではないかというふうに考えているわけなんです。これはもう計数的にはかれるものではなかなかないでしょうけれども、ひとつそこいらの実態というものをもっとシビアな認識をぜひとも持って、近海沿岸の漁場問題に取り組んでいただきたい、このように考えているわけでございます。  じゃ次に、さっき万石浦の話がでましたが、これも漁場の開発整備事業として作澪計画というふうなものが進んでいるわけでございます。今年度の予算案の中にもその予算が計上されているようでございますが、こういうずっと入り組んだ湾とか浦とかいうやつですね、これはかつては豊富な漁場であったものが非常に多いわけでございます。このようなところがまた最近漁場としては非常に疲弊しつつある。こういう点について、特に水産庁の方でこれを見直していこう、これを再開発をして、生き生きとした漁場にしていこうという考えがおありなのかどうか、伺いたいと思います。
  135. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いま万石浦の例が出たわけでございますけれども、確かに万石浦は若干特殊な事例だというふうにも考えております。これは先生十分御承知だと思いますけれども、あれは入り口が非常に狭くて奥行きが長いような、いわば閉鎖性の湾になっておるわけでございます。ここで、陸上からの汚水等の流入が少なかった時代にはある程度の生産量を確保でき得たということが一つと、もう一つは、やはり余り漁場を過密に利用いたしますと生産量が落ちるという点もございます。最近の様子を見ますと、確かにあそこで従来からやっておりましたカキの養殖とかノリの採苗等につきまして、若干その生産量が停滞的になっている。減ったのもありますしふえたのもありますけれども、全体として停滞をしているということは否定ができない。ここの再開発というのは、私ども調査の結果によりますと、やはり海水を入れかわらせるということがあそこの生産力をさらに増大させるゆえんではなかろうかというふうに考えております。  そこで、県におきまして二年間ばかり調査いたしましたけれども、国も五十一年度に調査をいたしまして、五十二年度からはいま御指摘の作澪事業というものを実施をいたしたいと思います。  このように疲弊した漁場の再開発につきましては、先ほど大臣から申し上げました沿岸漁場の整備開発事業の中に漁場保全事業というのがございまして、その事業によりまして御指摘のようなケースにつきましては、私ども積極的に生産力の回復のための事業を実施したいと思っております。
  136. 日野市朗

    日野分科員 これからは本当に二百海里時代で、こういう漁場は最大限度有効に活用していかなければならない、これは異論の余地のないところであろうかと思います。万石浦の場合には非常に特殊だといま水産庁長官はおっしゃいましたけれども、同じようなところは全国的に見ればかなり数多いのではなかろうかと思います。こういういわゆる深い湾、こういうところについては非常に金はかかるだろうと思うのです。たとえば作澪をやるにしても、場合によっては、湾から一部を外洋にさらに出入り口を新たに設置するというような事業なども考えられるわけですが、そういう事業などは今後積極的に取り組んで、どんどん進めていこうというお考えがあるのかどうか伺っておきたいと思います。
  137. 岡安誠

    ○岡安政府委員 万石浦の例は特殊だと申し上げましたが、確かにそれと似たようなケースがないわけではございません。やはり沿岸漁場開発の一環としましては、そのように従来ある程度生産力を上げていたけれども、周囲の環境の変化または生産力が一定の限界に来ているというものがございますので、それらにつきましては相当大規模な事業をも含めまして、生産力の回復さらには増大のための事業は今後ひとつ計画をしてみたいと思います。
  138. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 日野先生が御指摘になっておる問題は非常に重要な問題でございまして、ああいう湾入をしておる地域は稚魚の揺籃の場所でもあるわけでございます。基本的にああいう湾入しておるところで積極的な漁業をやるということは適当でない、むしろ栽培漁業であるとか、あるいは稚魚、稚貝等の育成をするとか、そういうようなことに大きく生かしていく必要がある、こう私は思うわけでございまして、そういう観点でああいう湾入した地域の漁業、これは今後とも必要な施策をやってまいりたい、こう考えております。  それから先ほど来お話があるのですが、この沿岸漁業の開発整備事業の中でつきいそをやるとか投石をやるとか、そういうようなことは、魚のアパートをつくったり海草をたくさんそれに付着させたりするということと、これは稚魚やまた魚がそこに停滞をするということで、いい漁場としての性格を持たせることになりますと同時に、小型の底引き網等の操業ができにくくなる、そういうつきいそをしたり投石したりしたところを網で引けないことになるわけでございますから。そういう過度の漁獲努力によって漁場を荒廃をさせる、そういうことのないような条件整備もやる。一方においては魚もふやす、一方においては過度の乱獲等ができないような状態にする、こういうことにも意味があるわけでございまして、海況その他をよく調査の上でそういう魚の資源をふやす、また、先ほど長官からも言いましたように網目の制限あるいは漁法の制限あるいは禁漁区の設定、そういうようなこともあわせてやらなければ長期的な展望に立つ沿岸漁業の振興はできない、そういうぐあいに考えておりますので、沿岸漁場開発整備事業につきましては、そういう点を十分留意しながらやってまいる、こういう考えでございます。
  139. 日野市朗

    日野分科員 これで質問を終わります。
  140. 伊東正義

    伊東主査 これにて日野君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時二十分休憩      ————◇—————     午後二時一分開議
  141. 片岡清一

    ○片岡主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林省所管について質疑を続行いたします。大坪健一郎君。
  142. 大坪健一郎

    ○大坪分科員 農林関係の一、二の問題について御質問申し上げたいと思います。  最近、国際関係のいろいろな緊迫からも農産物の自給度の向上が盛んに言われておりますし、農業の生産力の拡大でありますとか、農家の生活安定のために農地の総合利用について盛んに言われております。国が積極的にこの農地の総合利用について対策を実施すべきだということは論を待たないところでございますけれども、その最も重要な手段の一つとして基盤整備、特に圃場整備の問題があろうかと存じます。圃場整備の問題では、その規模それから方法あるいは進捗の速度に、現状においてそのままでいいのかどうかという問題点があるんではないか。  そこで大臣にお伺い申し上げたいのですが、圃場整備の一番の目的は、農地の総合利用の可能性をこれによって開放することでございますから、将来の大型機械の導入を十分可能にするように、もう少し大規模の圃場整備事業というものが考えられないのかどうかということが一つ問題点でございます。  それからそのやり方でございますけれども農家経済の現況から見ますると、農民負担が多きに失してはおらないか。また地方財政の現状から見ても、団体営の圃場整備のやり方の補助が必ずしも十分に行き届いているとは思えない。この辺の補助率の再検討というようなことがお考えになれないかどうか。  それから圃場整備の進捗状況でございますが、日本全体ではまだ五割ぐらいだと言われておりますし、東北では若干進捗をいたしておるようでございますが、西南暖地の方では、これは農家の事情もございましょうけれども、まだ四割そこそこというような状態ではないかと言われておるようでございます。西南暖地の場合は、農家経済にとって裏作が非常に重要な意味を持つわけでございます。裏作が農家経済に果たす役割りも三割ないし四割に及んでおるといわれておる昨今でございますれば、なおのことこの圃場整備の実施の速度がいまのままでいいのかどうか。特に沖積層で地盤沈下が起こっておるような、たとえば有明海の北岸の佐賀平野のようなところで、圃場整備は地盤沈下対策のいわば必要な手段になっておるわけでございまするが、そういうところの圃場整備がいまのような進捗状態で十分であるかどうかという点については、もう少しこれが積極的に行われる必要があるのではないか、そうして何かもう少し手厚い考え方で取り扱いができぬものかというふうにわれわれも考えるわけでございますが、この点について農林大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  143. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 大坪さん御指摘のとおり、食糧問題は世界的な視野に立ちましても、またわが国の問題としても非常に重大な問題に相なっておるわけでございます。特に食糧は、国民生活の確保の上からいたしまして最低の安全保障を求めるという観点からも、これは国政の基本として食糧自給力を高めて、食糧問題に関する限りは国民にいささかの不安を与えてはならないというような方向で、長期にわたって取り組んでいくべき政策課題だ、このように私、心得ておるわけでございます。そのためには日本農業の体質の強化を図る、生産体制を整備する、農業の担い手である農林漁業従事者並びに後継者の育成、確保、そういう施策を総合的にやっていかなければならぬわけでありますが、いま特にお取り上げになりましたところの土地改良等農業基盤の整備の問題、これは日本の農業を足腰の強いしっかりした農業に育てていくためにも非常に基本的な問題だ、こう心得ております。  そこで、政府におきましても十カ年という長期計画を立て、その問題に取り組んでおるところでございますが、今日まで、四十八年以来の石油ショック、それに伴う総需要抑制政策というようなこと等もございまして、御指摘がございましたように、その進捗率というものは残念ながら思うように進んでおりません。しかし、十カ年十三兆円という予算額の投資額の面におきましては、私どもはおおむね達成できる、こう考えてはおりますが、工事費がその後高騰いたしております関係等もありまして、事業量の面ではなかなか容易ならぬものがあるということを十分認識をいたしております。この農業基盤整備につきましては、今後とも基本的な問題として最善の努力を傾けていきたい、このように考えておるところでございます。  なお、有明海周辺等の土地改良事業、そういう問題の具体的な問題につきましては、担当局長の方から御説明を申し上げたいと思います。
  144. 森整治

    ○森(整)政府委員 先生いま御指摘の大規模な圃場整備という問題でございますが、いま大臣からお答え申し上げられましたように、農業基盤整備全体の予算が五千三百五十四億円となっております。そのうち圃場整備が一千億ということでございますが、なおその工期が非常におくれておるという事態でございます。  実際の対応といたしまして、大きい規模で事業の採択をいたしましても、やはり工事が進まない。そういう問題について、また地元負担との関係がいろいろむずかしく複雑に相なるということで、御承知のように白石平野でも一期、二期というようなぐあいに分けて工事をしております。そういう事情で、規模が小さくてもそれをいろいろ組み合わせてやっていくということで対応しているのが実情でございます。  西南暖地について圃場整備の事業が進まないということの一つには、やはり先生御承知のように、佐賀の平野の水の問題、水源問題がいままで手がつかなかったわけでございまして、それを解決しませんとやはりなかなか末端の事業も進まないということで、幸いにいたしまして一応水源の見通しを立てまして始めたばかりということでございます。私どもも、もちろん全体の進度がおくれておるという批判をいろいろ受けておりまして、極力工期を短縮していくということで、原則としてはそれを重点に考えてまいりたいと思っておるわけでございます。そういう関係で補助率アップにつきましても大蔵省にはしばしば要求はしておりますものの、どっちを選ぶのだと言われますと、やはり始めました工事を早く仕上げるということに政策の重点を置かざるを得ないという事情もございますので、ひとつその点はわれわれも今後努力はいたしますが、ともかく工期を早く仕上げるということで努力をいたしたいというふうに基本的には考えておる次第でございます。
  145. 大坪健一郎

    ○大坪分科員 ひとつ今後ともその点はよろしくお願いを申し上げたいと思う次第でございます。  いまお話の出ました米どころであります佐賀県の白石平野でございますけれども、水の問題がございまして、御承知のように深井戸が二百本以上掘られております。年間に二千万トン以上の水が揚水されておるというような関係もありまして、沖積層の粘土層が水を取られまして地盤沈下をしておるようでございます。したがってどうしても水の調達を新しいところに求めなければならぬ。水源転換というのがぜひ必要だということでございますので、この水源転換について積極的な国の政策がどうしても要るんではないかという点をひとつお伺いいたしたいと存じます。  それから時間がございませんから質問をあわせて申し上げますけれども、白石平野の場合はそういう地盤沈下のために排水不良が起こっております。梅雨期でありますとか台風の時期には、少しの大雨で平野の中心部が大きな湛水地帯になる。この間の台風十七号の場合も約五千町歩の水田で被害が出てまいりまして、ふだんは反当九俵から十俵取れるところが七俵ないし八俵しか取れないということになりました。五千町歩でございますと大体五十万俵ぐらいとれるところでございますけれども、十万俵ないし二十万俵というものが減収になる、金額にして十億以上の減収になるということで、大きな損失を受けておるわけでございます。この排水の問題は水源転換と相まって、あるいは場合によっては水源転換の政策が遂行されるやや前に積極的に対策を打っていかなければならない。これにはもちろん有明干拓の海岸保全の問題もまた必須の問題でございます。この海岸保全につきましては、大臣の大変な御努力で新年度予算に国営に組み入れていただくことができました点はまことにありがたく、地元でも感謝をいたしておるようでございますけれども、この排水の抜本策として水源転換とともにぜひひとつ農林省で積極的にお考えいただきたい。新しい予算の中にどういう形でこれが組み込まれておるかもひとつ御説明いただきたいと思います。
  146. 森整治

    ○森(整)政府委員 白石平野の地盤沈下の問題、それに伴う用水の手当て、排水問題という御質問でございますが、私ども地盤沈下の最大の地域はまさに白石平野、それと尾張の方にもう一つございますということで頭を悩ませておるわけでございます。幸いにして国営の筑後川下流事業の水利事業ということで事業が始まりました。特に白石平野につきましては、先生御承知の建設省の嘉瀬川のダム、それから六角川の河口ぜき、この二つによりまして、それからあと河川の自流の地表水に水源を転換するということで事業を進めておるわけでございますが、それに合わせまして、県営の地盤沈下対策事業と県営の圃場整備事業をすでに始めておるわけでございます。先生御承知のように、ダムの方はいろいろ反対もございましてなかなか進んでおりません。ただ、河口ぜきの方は非常に事業が進んでおるわけでございます。私ども基本的には水源の手当てができないから事業はやらないということではなしに、逆に河川の自流もございますので、私どもといたしましては河口ぜきと合わせまして、もう一つ、六角川から二カ所揚水のポンプをつくるということと、それから国営で排水路をつくる、その間につきましては県営の地盤沈下対策事業で対応をするということで、すでに事業を始めておるわけであります。あと圃場整備事業が一番進んでおりますが、これも次々と、先ほど申し上げましたようにちょっと小刻みになりますけれども、一期事業、二期事業というようなことでとりあえず通水をよくしていく、圃場整備をしていくということをやってまいりたいということで、全体の進度といいますと始めたばかりでございますから非常におくれておりますけれども、今後そういうことで積極的にこの問題に取り組んでまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  147. 大坪健一郎

    ○大坪分科員 白石平野の水問題の解決に一つの計画がおありのようでございます。これらの計画の進捗状況が、いま局長が言われましたように、国営の筑後川下流農業水利事業でありますとか、地盤沈下対策事業でありますとか、圃場整備事業が行われておるわけでありますけれども、どうも進捗の度合いが遅い。いまのようなテンポでいくと百年かかる、地元ではこう言っております。これではいかに何でも対策という名に値しないのではないかということですので、ぜひひとつ、大臣もおられることでございますから、日本有数の地盤沈下地帯でございますので、対策の手をなお強めていただきたいと考えるわけです。  この六角川は、うねりくねって白石平野の真ん中を走っておる川でございますが、北の方に江北という町がございまして、ここはかつての杵島炭鉱の鉱害を受けた地域になっております。六角川の川添いの南郷とか八町という地域がございますが、ここは地盤沈下がまだきわめてひどいところでございますけれども、この土地は通産省の御所管でございます臨時石炭鉱害復旧法の指定地域にもなっておりませんし、また農林省の地盤沈下対策対象にもなっていないということで、非常に片手落ちのような感じがいたすわけでございます。通産省の方がおいででございましたら、あわせて御返答いただきたいのですが、ここの地域等もやはり非常に地盤沈下の実害を受けておるところでございますが、どのような御対策が今後考えられておるのか。  なお、鉱害復旧につきましても、家屋復旧は非常に進んでおるようでございます。地域で申しますと、福岡県などは大変進んでおるようでございますが、農地の復旧がおくれており、農地の多い佐賀県では相対的に大分おくれをとっておるような感じもいたしておりますけれども、この辺の事情についてもひとつ御説明をいただきたいと思います。
  148. 北川幸昌

    ○北川説明員 御指摘のありました南郷、八町地区の復旧問題につきましてお答えいたしたいと思いますが、この地域は杵島炭鉱等の石炭採掘の影響による鉱害があるということで地元から鉱害認定の申し出が行われているわけでございますけれども、いろいろと複雑な問題がございまして、この因果関係究明のために、私どもの方の制度としてございます鉱害認定科学調査という調査を実施いたしましたところでございます。これは大学の地質学のエキスパートの先生方等、学識経験者のお世話になりまして、因果関係を究明するということで、五十一年五月にその調査結果の報告が出たわけでございます。この報告によりますと杵島炭鉱の採掘による影響も否定できない旨の結論となっておるところでございます。したがって、私どもといたしましては、この結論を受けましてこれに即した復旧方針について現在調整中でございます。この結論を得次第、早急に鉱害認定を行いたいというふうに考えておるところでございます。  それから第二の佐賀県地区の鉱害復旧のおくれの問題でございますが、私どもの鉱害復旧事業は、鉱害復旧長期計画という四十七年度に制定されました十カ年計画に即して行われているわけでございますけれども、ちょうどこの三月になりますと、前半の五カ年が経過いたしまして、折り返し点近いというところでございます。この間、御承知の石油ショック後の狂乱物価の影響等がございまして、四十八年度あるいは四十九年度は予算をかなり伸ばしましたにもかかわらず、実質的には予算の減というような状況になりまして、背に腹はかえられぬ状況になりましたので、民生直結の家屋の復旧を優先するというような運用を行ってまいりましたわけでございます。  こういう事情の中で、農地と家屋の被害物件の比率をとってみますと、相対的に農地の比重が大きい佐賀県は、総体としましてこの影響を受けたということは事実でございます。ところが近年におきまして、農地、家屋間の復旧テンポのアンバランスが円滑な復旧促進の障害となってきておりますので、来たる五十二年度予算では農地復旧予算を重点的に増額いたしましてアンバランスの是正を図ることとしております。この結果、農地の比重の大きい佐賀県もおのずからアンバランス是正の方向で予算の配分が図られることになるものと期待しているところでございます。
  149. 大坪健一郎

    ○大坪分科員 時間がございませんので、最後に御質問申し上げたいと思うのですけれども、ことしに入りまして大変異例の寒波がやってまいりまして、全国的にも農作物の被害が大変多いようでございます。特に柑橘類の被害が大変多い。それから柑橘に類した高地の園芸作物の被害が多いようでございますが、その被害状況がどうなっておるのか、それをまず伺いたいと思います。  それから、全国的な被害でございますから、当然この寒波現象に対して積極的な対策を打っていただかなければならぬと考えるわけでございますけれども、天災融資法にいうところの認定が受けられるのかどうか、その辺の可能性について、ひとつ大臣のお話を伺いたいと思います。
  150. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御指摘のとおり、異常寒波による柑橘類その他の農作物に相当の被害が出ておるようでございます。ただいま地方農政局並びに県等からの報告では、二百数十億を超える被害ではないだろうか、こういうぐあいに言われておるわけでございます。一方、豪雪による農業災害、これも融雪期には相当のものが出てくる、こう予測されるわけでございますが、そこで、一緒にこれらの災害について救済対策をとったらどうかという意見もございますけれども、私は柑橘類等の異常寒波による災害がそれだけ相当広がっておるということの実情からいたしまして、災害農家の救済を急がなければならない、こう考えておりますので、天災融資法その他の所要の救済措置をできるだけ早い機会にやりたい、このように考えております。
  151. 大坪健一郎

    ○大坪分科員 大臣から大変積極的なお話をいただきまして、全国の農家の方々は非常に喜ばれることと存じますが、実は柑橘類と類似したもの——類似というと語弊がございますけれども、産地の高いところにつくっておりますお茶も、やはり非常にひどい冷害を受けております。ここに写真をちょっと持ってまいりましたけれども、本来緑であるべき茶が、このように本当に茶色になっておるわけでございます。この場合も柑橘と同様に、柑橘等に含めていただきまして、天災融資法の対象になり、かつ自作農の維持資金の災害枠の適用もいただければ非常にありがたいと存ずるわけですが、その点についてひとつ御返答いただきたいと思います。
  152. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 先ほど大臣がお答えを申し上げましたように、天災融資法の発動につきましては、私たちとしましては今度の被害の状況等を踏まえまして、前向きに、積極的に取り組んでいく所存でございます。できるだけ早くいたすつもりでございますが、一つの処理としまして、やはりお茶を含め、柑橘を含めるということで全体的にとらえていきたいというふうに考えておりますので、その点につきましては、方針はできるだけ早く決めたいと思いますけれども、実行の段階におきますと、統計情報部の被害がわかりませんと融資額その他が決定できませんので、私たちとしましては、被害の状況をできるだけ早く把握しますと同時に、方針をできるだけ早く明示することによって農家の方々に安心をしていただけるような措置として、今回の災害全体に対応していきたい、かように考えておる次第でございます。
  153. 大坪健一郎

    ○大坪分科員 恐らく、ことしの寒波は非常に特殊なものでございまして、ことしだけのことであろうかとも思いますけれども、一説によりますと、寒冷状態が比較的続くのではないかというような説もあるようでございまして、たとえば本年度、来年度についても同じような事態が起こるということになれば、やはりこの対策については今後とも、農作物が一番打撃を受けるわけでございます。十分ひとつ御配慮の上で、農民が実際に農家経営を維持できなくなるような事態のないように御配慮をいただければ非常に結構なことではないかと存ずるわけでございます。大臣も御出席いただいておりますので、その点を特にお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  154. 片岡清一

    ○片岡主査代理 これにて大坪君の質疑は終了いたしました。  次に、山原健二郎君。
  155. 山原健二郎

    ○山原分科員 最初に、野菜類とそれから台湾産の野菜類の関係につきまして、いま私の県でもいろいろ問題が起こっております。しかもよく調べてみますと、私の方にもわからない点がありますのでお伺いをするわけですが、台湾ショウガの問題です。これは「日本貿易月報」を見ますと急速に輸入がふえてまいっておりまして、たとえば一九七二年の場合に台湾から、生ショウガですが、百四十七トンであったのが、一九七五年には五百六十八トン、そして一九七六年、昨年度に入りますと五千四百四十七トンという、約百倍に達する生ショウガが入ってきておるわけですが、農林省の方ではこの事態をどういうふうにつかんでおられるか、最初に伺いたいのです。
  156. 杉山克巳

    杉山政府委員 御指摘のように、最近外国産の根ショウガの輸入、特に台湾産のものが急激にふえてまいっております。台湾産のものについてはただいま先生申されました数字のとおりでございます。それらを含めまして、総量で見ますと、四十七年六百九十三トン、四十八年九百七十六トンというふうに推移してまいりましたものが、五十一年には六千三十三トン、これは台湾のものを含めましてほかに中国、タイ、インド合計したものでございます。このように大幅にふえてまいっております。なぜふえてまいったかということでございますが、これは国内生産の状況から御説明申し上げる必要があろうかと思います。  四十年代に入りまして根ショウガの生産量、これは年々ふえてまいっております。業務統計上の数字でございますが、四十九年にピークに達しまして八万八千七百トン、約九万トン近い生産になったわけでございます。ところがこの主要生産県は千葉、高知、長崎といった三県。この三県で大体七割を生産するわけでございますが、五十年から五十一年、この二年引き続きまして、五十年は干ばつ、それから五十一年は西日本の水害というようなことで、この三県大きな被害を受けております。その結果生産量が五十年のごときは約四割落ちたというような状況がございまして、いわば供給が不足した。需要に対して国内生産量では間に合わなくなったということから輸入を図った。その場合中国とかタイ、インドのものは入りにくいわけでございますが、台湾のものが一番弾力性があって入りやすいということから、台湾のものにそのふえた大部分が集中した、こういう経過になっております。  これはどういうふうに見るかということでございますが、いま申し上げましたように国内供給が不足をしたときに、その不足した分を補うために入ってきたという需給関係があること。それから国内産は価格はもちろん若干高いわけでございますが、品質的に外国産のものよりすぐれているということで、それが好まれていることでもございますので、今後とも基本的に生産対策等いろいろ措置を講じていく必要があろうかと思っておりますが、特に最近、五十一年の輸入量の増大が基本的な大問題になるというふうには考えておりません。
  157. 山原健二郎

    ○山原分科員 一つは検疫の問題ですけれども、きょう農林省からいただいた検疫の状態ですね、これが、台湾産生ショウガの植物検査数量が五十一年度に四百三十件の五千八百トンとなっていますが、これは先ほど私の申し上げました五千四百四十七トンとどうして違いがあるのでしょうか。
  158. 堀川春彦

    堀川政府委員 この違いは、私どもの方は植物防疫の業務統計でございまして、先ほど食品流通局長の申したのは通関統計であろうと思います。したがいまして、私どもの方で数量をまとめますときに、その辺多少の、数量のカウント違いというようなものがあって、そういう差が出たのではないかというふうに思います。
  159. 山原健二郎

    ○山原分科員 検疫という面では万全の対策がとられているのでしょうか。
  160. 堀川春彦

    堀川政府委員 この生ショウガの問題でございますが、これには、台湾にミカンネモグリセンチュウという有害病害虫がついておるということが、文献調査等で発表されたことがあったものですから、昭和四十年に植物防疫法の規定によりましてこの生ショウガの輸入禁止したわけでございます。その後台湾側では、ミカンネモグリセンチュウは台湾には存在しないという調査を行いまして、その文献等を私どもに送ってきておるわけでございます。なお、四十九年には私どもの方の専門の職員を現地調査を行うため台湾に派遣をいたしまして調査をいたしました。その結果も、存在をしないということが明瞭になりましたために、四十九年の十月に輸入の解禁をしたわけでございます。  ただ、しかし、入れておりますけれども、植物防疫検疫をゆるがせにするわけにはまいりませんので、私どもは法八条に基づく検査を実施し、先ほど先生の御指摘になったような件数検査をやったわけでございます。その結果は、ネモグリセンチュウは発見をされておりません。
  161. 山原健二郎

    ○山原分科員 価格の問題ですが、ずいぶん価格が違いますね。去年で一番高いときに——去年はもっとも台風その他の問題が起こっておりますのであれですが、八月が、これはたとえば高知県産のショウガ、一キロ当たりですか、トン当たりですか、八百八十七円、九月には千三十五円、十月には千百十七円となっています。その場合に台湾産が、大体平均しまして昨年度二百五十四円という金額ですから、ずいぶん差があるのですね。そういう差はお認めになっていますか
  162. 杉山克巳

    杉山政府委員 なまものでございますから、入荷する数量により、それからそのときの市場の需要の状況により価格に変動がございますが、一般的に言って、高知県産のものは内地でも一番上等なもので価格も高うございますが、台湾産のものの倍以上ないし三倍くらいするという状況になっております。
  163. 山原健二郎

    ○山原分科員 そこで、この品質表示の問題ですけれども、これは日本産のものと混入されて出てくるということでいろいろ問題が出たわけですね。というのは、品質が悪くなったということで評判も悪くなってしまいますし、そういう問題が各地で起こりまして、これは台湾産なら台湾産という原産地名を表示すべきではないかという意見が出ているのですが、これはショウガなんかの場合にはどういうふうになっているのですか
  164. 杉山克巳

    杉山政府委員 外国で生産された商品につきまして、その商品が、その原産国で生産されたものであるということが直ちには一般の消費者が判別することが困難であると認められるもの、こういうものにつきましては、消費者保護の観点から、公正取引委員会の所管に属する法律でございますが、不当景品類及び不当表示防止法というものによって規制がされることになっております。ただ先生がいまおっしゃいましたようなショウガについて、不当表示、いわば台湾産のものを内地産のものと偽って出荷するというようなことがありますれば、そういう消費者保護の観点もさることながら、私ども野菜の生産、ショウガの生産も所管いたしております立場からいたしますと、上等な、価格の高い国内生産のものの品位、評価を傷つけるということになりますので、それは生産面からも妥当でないというふうに考えております。先生指摘のような事例は私ども最近耳にしたわけでございますが、それぞれの県にも実情を問い合わせ、県としてしかるべく指導をするようにということで連絡をとっているところでございます。
  165. 山原健二郎

    ○山原分科員 そうしますと、これは景品表示法四条三号に、商品の原産国に関する不当な表示というのが出ておりますが、これの適用になるのでしょうか、加工の場合、生の場合。
  166. 杉山克巳

    杉山政府委員 この法律は直接は公正取引委員会の所管するものでございますが、不当景品類及び不当表示防止法の第四条に「次の各号に掲げる表示をしてはならない。」ということで、その三号に「前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認めて公正取引委員会が指定するもの」として不当な表示の禁止をいたしております。これに該当するかどうかということになりますと、私どもとしては直接この法律を所管しておりませんけれども、生ショウガはそのままでは、台湾産のものであるとか高知県産のものであるとかというふうに判別することは困難であるというふうに考えております。
  167. 山原健二郎

    ○山原分科員 もうちょっとお伺いしますが、では台湾産のものを混入させた場合にはどうなるのでしょうか、生の場合ですね。あるいは表示はどういうふうな形態になるのか、どういうふうに指導をされるのか伺っておきたいのです。
  168. 杉山克巳

    杉山政府委員 一般的に生のものにつきましては、表示は包装あるいは箱にラベルを張るとか、印刷をするという形で行っております。ショウガの場合、現物を見ておりませんが、お話しのような例があるとすれば、国内産のものと台湾産のものを箱に一緒に詰めて、国内産というような表示をしたものであろうかというふうに私は思います。
  169. 山原健二郎

    ○山原分科員 これからはそれに対してはどういう指導をされるわけですか
  170. 杉山克巳

    杉山政府委員 消費者保護の観点からの規制につきましては、これは公正取引委員会とも相談をいたしまして、そのような妥当でないことが行われないように指導をしてもらうというふうに考えております。  私ども直接生産物を所管する立場からは、それ以前に、そもそも優良な国内生産品の品位を傷つけるようなことがあってはならない。特に生産者、出荷団体等の立場でもってそういうことが行われているというような話も耳にするものですから、そういうことを行わないようにということで、県と打ち合わせをして厳重に指導をしてまいりたいと考えております。
  171. 山原健二郎

    ○山原分科員 その指導もとよりでございますが、いままで比較的安易な気持ちといいますか国内産のものが災害を受けまして減ったためについついそういうことが行われたことに対して、皆、実に非常に反省しているわけですね。もう二度とこういうことはやらない、みずから首を絞めることになるんだという反省も業者の皆さんから行われておりまして、これに対して適切な指導が行われれば非常にはっきりしてくると私は思いますので、この指導は適切に行っていただきたいということが一つです。  それからもう一つは、輸入規制の問題でございますけれども、たとえば国内産ショウガに非常に大きな影響を与えるというような場合には、台湾との野菜の関係では輸入規制というのはどういう形で行われるのか伺いたいのです。
  172. 杉山克巳

    杉山政府委員 一般的に野菜につきましては、植物防疫法上の、先ほど農蚕園芸局長から御答弁がありましたようなそういう関係のもの以外は、輸入について特に規制しているということはございません。したがいまして、ショウガの場合、これを直接量的に輸入を規制するということは、これはいままでも貿易自由ということになっておりますので、できがたいわけでございますが、私どもとしましては、やはり国内生産のショウガが価格の安い外国産のものに比べて品質がいいということもありますが、それだけではなしに、できるだけコストダウンが図られるよう、自給の体制がとられるよう、生産対策そのほか全般の奨励策を講じて、これの生産振興を図ってまいりたいというふうに考えております。
  173. 山原健二郎

    ○山原分科員 結局、日本の生産農民の生活を守る、経営を守るという立場が貫かれることが必要だと思うのですね。そういう意味で私はこのショウガの問題を出しましたけれども、そのほかの品目を見ましても、たとえばピーマン、キヌサヤ、ニンニク——ニンニクは中国のようですが、それから最近では台湾からイグサなどまで入ってくるという状態で、しかも向こうは暖かいし、労働賃金が安いというようなことがあります。しかもこちらからむしろ指導に行っておるというような状態もあって、これはよほど気をつけてこの状態を把握していないと、何もかもやられてしまうというような結果が出かねないのではないかという危惧の念が出ているのです。そこまで事態は、もちろん現在の段階では来ていないと思いますが、将来を展望いたしましたときに、ショウガにいたしましても、いま来ておるのはかなり筋ばった、品質のよくないショウガが来ているのだそうです、しかしあそこで本腰にショウガをつくり出したら、良質のショウガが出てくる可能性を持っていまして、そうなってくると、こちらが指導して、また輸入も全く制限なしにやっている間に、いつの間にか日本国内農民が生産するものが暴落をしていく、経営が成り立たないという結果が出てくる可能性を持っておる、こういうわけですね。そういう見通しにつきまして、ちょっと見解を伺っておきたいのです。
  174. 杉山克巳

    杉山政府委員 ショウガは確かに台湾そのほかの地域でもできますが、たび重なる品種改良なり生産者の努力によりまして、現在日本国内産ショウガは品質的に最もすぐれておるということになっております。先生指摘のように、台湾産のものは繊維質が多くて品質的には余り好まれないという状況にございます。将来これが改良される余地がないかといえば、それはあると思います。あると思いますが、日本のような水準に届くのはなかなか至難のことではないか。ただそれを油断してはいけない話でございますので、私先ほど申し上げましたように、外国産の品質がいまよりよほど上等になって安いものが出てくる場合でも対抗できるように、国内産の品質をますます向上させる、同時にコストをできるだけ引き下げるように、政府としても種々奨励策をとりながらその生産振興を図ってまいるという考えでおります。
  175. 山原健二郎

    ○山原分科員 台湾との関係につきましてはわからないところもありましたのでお聞きしたわけですが、もう一回、その表示のことで伺いますけれども、たとえばお茶の場合でございますと、台湾茶配合などという表示がなされていますが、お茶とショウガの場合は、大分違う性格を持ったものですか
  176. 杉山克巳

    杉山政府委員 性格としては同じものでございます。ただ、もともとお茶につきましてはそういうふうにブレンドをするということが一つの商品慣行といいますか、流通上実態として存在するということから、ショウガの場合のように表示自体を特に問題にするというようなことは、これは私の想像でございますが、ないのではないかと思います。
  177. 山原健二郎

    ○山原分科員 次に、先ほども質問がありましてダブるわけでございますが、今回の寒波、干ばつによりまして相当被害が出ているわけであります。私も災害委員の一人として豪雪地帯の調査に参りまして、豪雪地帯における天災融資法とかあるいは激甚指定の問題など、この間も質問をしたわけですが、豪雪地帯でなくて、先ほども佐賀のお話が出ましたけれども、たとえば高知県なんかでもずいぶん被害が出ておりまして、いままでにない経験をいたしておるところでございます。たとえば三月四日の県の統計調査によりますと、ミカンで七億五千万、それからハッサク、ブンタン四億六千万、ユズ一億二千万等、こういうふうに、合計しまして柑橘で十六億五千三百万。野菜でございますと、ニラとかナス、キュウリ、トマト、こういう野菜の被害が五億六千五百万というふうに出ておるわけです。それからさらに、茶、シイタケあるいは林産物の被害、総計二十五億九千七百万という数字が出ております。これはこういう寒波、干ばつによる被害としては、ほとんど初めて経験するような被害でございまして、しかも、たとえばこの被害地というのが、昨年の十七号台風、一昨年の五号、六号台風というふうに毎年被害を受けている被害地なんですね。そういう中から何とかこれに対する救済措置を講じてもらいたいという声が出てくるのは当然でございます。  その中で、幾つか出ているのですが、これは先ほど大臣からも御答弁のありましたように、天災融資法の早期発動の問題が出ております。改めてこの問題、こういう要求に対してもう一度御答弁をいただきたいと思います。二つ目といたしまして、自作農維持資金の確保と、重複被害者に対する制度資金の償還延期の問題が出ております。さらに三番目としまして、無加温から加温園芸施設への切りかえに対する金融措置の問題。さらに、果樹共済再保険金の概算払いの問題。そして五番目に、樹勢の早期回復用肥料、農薬の購入などに対する助成の問題、こういう問題がこの寒波、干ばつの問題から出ているわけでございますが、農林省として、これらの被害に対してどういう救済措置をお考えになっておるか、伺いたいのです。
  178. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 異常寒波による農作物の被害は、いままでの報告によりましても、相当広い地域にわたって被害も甚大であるように聞き及んでおります。したがいまして、できるだけ早いうちに、早期に被害の調査をいたしまして、その被害金額等を十分把握をいたしまして、天災融資法を初め、自作農維持資金の枠の拡大の問題、そういう一連の救済措置を講じてまいりたい。  なお、お話がありました、二度三度と水害あるいはその他の災害を受けております農家に対しましては、いままで借り入れております制度資金の償還の延伸の措置その他、総合的な救済対策を講じてまいる考えでございます。
  179. 山原健二郎

    ○山原分科員 大臣の積極的なお考えをお聞きしまして、これらの全国における今度の大変な寒波、豪雪等の中でそういうお考えになっておると思いますが、ぜひ早く調査をされまして、適切な救済が講ぜられるような配慮を御要請申し上げたいと思います。  最後に、ちょっと四分程度残っておりますので、これはお尋ねするつもりではなくて、農林省の方へもその質問のことは言わなかったのですが、私は鈴木農林大臣にお会いしたらぜひお聞きしたいことがあるのです。それは二百海里問題と日本の沿岸漁業の問題についてでございますけれども、この二百海里時代を迎え、しかも厳しい状態の中でソ連にも行かれて、ずいぶん御苦労なさったわけでございますが、その点御苦労でございました。  ところで、たとえば高知県の場合、いま遠洋漁業としては、室戸を中心にしましてカナダ沖、しかも東海岸その他に出漁しております。そういう実態を聞き、また関係者にしばしば会ってきたわけですが、その中で問題になりますのは、一つは、二百海里の線が敷かれた場合の入漁料等に対する国の補助というのを考えていただく必要があるのではないかというのが一つです。  それからもう一つ、非常に意外に強いのが、やはり日本の水産行政全体についてもう少し重視をしてもらいたいという声が非常にあります。そして、それが集約されたものとして、たとえば政府に水産省を設けてもらいたいという声がずいぶんたくさん出てまいりました。私の党としても、この水産省の問題については政策の中で今回打ち出したわけですが、当然四方を海に囲まれた、まさに海に囲まれた日本として、しかもこのような新しい時代を迎えて、沿岸漁業の発展また遠洋漁業の深刻な事態というものを考えましたときに、これからの水産日本の発展のために、当然、この水産省という昇格の問題を考えていいのではないか、また、それは漁業者の切なる期待でもあるのではないかというふうに考えているわけでございますが、最後に、つけ足しのような質問になってまことに恐縮でございますけれども、新しい時代でありますので、この考え方についての農林大臣の御見解を伺いたいのです。
  180. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 二百海里時代を迎えまして、わが国の漁業をめぐる環境はきわめて厳しいものがあるわけでございます。特に石油ショック以来、漁業用燃油を初め、漁業用資材等値上がりをしておりまして、漁業経営もなかなか困難な状況にございます。それが、いま二百海里の時代を迎えて、入漁料等を相当取られるということになりますれば、漁業経済はますます苦しくなってくるわけでございます。それが直ちに魚価に反映をして、国民生活にも影響をもたらすということはできるだけ避けなければならないというような考え方から、入漁料等に対しましては、政府におきまして利子補給等をいたしまして、中期資金等の融資をして、そのショックを緩和する措置を講じてまいりたい、このように考えております。  なお、こういう新しい海洋秩序の再構築をする時代で、その対応はなかなか迅速かつ的確にやらなければいかぬ、そのためには漁業省とか水産省とか、そういう専門の行政機構をつくって体制を強化したらどうか、こういう御意見のあることも承知をいたしております。しかし、一面食糧問題は総合的な観点からこの対策を講ずる必要があるわけでございます。たん白食料の五一%以上を魚で賄っておるという状況でございますが、たん白食料にいたしましても、畜産振興、そういうことも総合的に考えなければならぬわけでございます。私は、いまの農林省ではありますけれども、こういう厳しい国際漁業情勢に対応することにつきましては、全力を挙げてこれに対処していきたい、こう考えております。  漁業省、水産省を設置するかどうかの問題は、もっと大局的、総合的な立場に立って判断をしなければならない問題であろうかと考えております。
  181. 山原健二郎

    ○山原分科員 時間が参りましたので、これで終わります。
  182. 片岡清一

    ○片岡主査代理 これにて山原君の質疑は終了いたしました。  次に、甘利正君。
  183. 甘利正

    甘利分科員 私は、食糧の供給と国内自給について、数点について御質問をいたします。  歴代内閣は、次のように食糧供給の方針を示したのでございます。石黒農商務大臣当時、農民は国民の母である、農地は国民の父である、母なる農民は父なる農地と国民を養わなければならない。まことに単純な理論であり、農民は多くの使命感と、そして生産意欲に満ち満ちたわけでございます。したがって、空襲下におきましても農業生産は続行されたのでございます。何代か飛びまして、佐藤内閣当時——間違いは御指摘ください、発展途上国から一次産品を輸入することは、経済大国日本の国際社会における義務である、このような仰せでございました。次に田中内閣、政府は、国民の必要とする食糧農家の方に生産をしていただきます。このように申したわけでございます。次に三木内閣、明確に簡単な表現はございませんでしたけれども国内の安定した自給力向上について、歯切れは悪かったけれども、るる述べられたわけでございます。所信のほどにつきましては、私、大臣からしばしば伺いましたので、この点についての御答弁は求めないものでございますが、後日、方針を示す簡単な言葉を、御用意をなされましたらばいただきたいと考えておるので、この点は要望いたしまして、質問を進めます。  第二点は、いまアメリカにおきまして、休耕地の統制が解除されたと聞きます。したがって、食糧については、需給関係にやや緩和が見られるように相なったということでございます。しかしながら、一方長期展望に立ちましての指摘といたしましては、食糧の長期安定供給は国の安全保障の問題であるという御指摘、さらに、三十八年後に世界の人口が二倍になったときには、その時点において、食生活の向上から三倍の食糧が必要であるというような点、地球の北半球に寒冷化が進んだ場合に、食糧パニックが起こるであろう、食糧パニックが起こった場合、食糧の最大輸入国である日本に及ぼす影響は、重油パニックのような状態になるのではなかろうかという御指摘等もあるわけでございます。私は、これらの指摘等を考えまして、将来、長期展望に立ちましては、自給第一主義をとるべきであると思うわけでありますが、この点につきましては、御所見もしくは感想で結構でございますからお述べ願いたいわけでございます。
  184. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 甘利さん御指摘のように、世界的に見ましても食糧需給の問題はきわめて重大性を帯びてきておると思います。この一両年幾らか好転はいたしておりますけれども、国際的な農産物の在庫はまだ低位にございますし、先ほど来お話がありますような北半球の異常寒波の問題であるとか、また、人口の増大というような問題、いろいろの観点からいたしまして、食糧問題は予断を許さない、このように私も厳しく受けとめておるわけでございます。また一方、わが国といたしましては、やはり国民生活を安定し、確保するという面からいたしまして、食糧の問題に関しましてはいささかの不安も国民に与えないようにしなければならない。そのためには国内自給力をできるだけ高めていく必要がある。米だけは、農民諸君の非常な長年にわたる御努力の結果過剰基調になっておりまして、二百六十万トンも在庫があるわけでございますけれども、その他の麦でありますとか大豆でありますとか飼料作物等々におきましては、大部分を海外から輸入をしておる、こういう状況にございます。そこで、どうしても稲作偏重、こういう傾向をできるだけ麦であるとか大豆であるとか、そういう必要な主要作物にスムーズに転換できるような環境、条件を整備する、そういう政策を整えて食糧全体としての総合自給力を高める、こういう政策を今後とも国政の基本として進めてまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  185. 甘利正

    甘利分科員 一かどのごりっぱな見識でございますが、私の考え方について申し上げますので、御意見を賜りたいと思います。  食糧の自給体制の確立が現在叫ばれておりますときに、米もミカンもなるべく国民の皆さんに食べてもらうように、政府は食生活の指導に乗り出されたらどうでしょうかということでございます。それは、米作の転換が意外に困難であるということについては大臣御承知のとおりでございます。そこで、逆説になるわけでございますが申し上げるわけでございます。  稲作の作付制限が農民の生産意欲を低下させてしまって、そして使命感をなくしてしまっている。農民に戸惑いを生ぜしめ、使命感をなくした、そして農地を荒廃させた最大の原因がこの米の作付制限ではなかろうかと私は思うわけでございます。したがって、行政が国民の嗜好、食生活に介入して、米の消費、ミカン等の消費の拡大を図るということを考えるべきではなかろうかと私は思いますが、これは感想で結構でございます。御感想を承りたい。
  186. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 甘利先生指摘のとおりでございまして、農林省といたしましても、米の需要の拡大、これに力をいたしておるところでございまして、全国の農業団体におきましても米の消費拡大運動というものを展開をいたしております。また、五十二年度の予算編成に当たりましても、学校給食、これが、長年にわたる学校給食でパン食の方向に若い世代の人たちが向いておる、こういうこと等の反省も含めまして、学校給食にもっともっと米飯を導入をする、そのためにいろいろな助成政策等も五十二年度で講ずることにいたしたわけでございます。現在、学校給食のためには政府の売り渡し価格も三十数%値引きをいたしますと同時に、その量も現在では二万二千トン余に及んできております。今後文部省とも十分連携をとりながら、学校給食に米飯の普及を図るように今後とも努力をしてまいりたい。また、それを通じまして一般家庭にも米の消費の拡大を促進するように力をいたしてまいりたいと考えております。
  187. 甘利正

    甘利分科員 御見解につきましては、よく理解をいたしました。質問を進めます。  次に、農業用地域の問題でございますが、現在、国土利用計画の全国利用計画に基づきまして、県計画が策定されるということでございます。この県計画に基づきまして、県の土地利用基本計画が見直されるということでございまするが、農林省とされまして、暫定計画でありまする土地利用基本計画の農業地域の総面積と、計画が確定されたときの面積と比較をされて、たとえば三大都市圏等におきましては、なかなか農業用地域の把握が、暫定計画だけ把握するということは困難かもしれませんが、その他の地域等において十分把握して、国民食糧を支える農業用地域というものをそこに策定することができるのでしょうかということについてお尋ねしたいわけでございます。要するに、大丈夫ですかということをお尋ねするわけでございます。  さらにその結果といたしまして、農振法の地域、調整区域——調整区域はかなり問題であると思うわけでございますが、この二つの地域のほとんど大部分が農業地域であるという結果が出るでしょうかどうでしょうか、こういうことでございますが、担当が国土庁でございましたら、私、建設の方でございますから、そちらで質問をいたします。そっちでしょうか。
  188. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 御指摘のように、国土利用計画の全国計画はすでに策定されておりまして、これは農業関係におきましては、農産物の需要と生産の長期見通し、五十年の五月に閣議決定したものでございますが、それに即しまして、五百八十五万ヘクタールの農地を確保するということで策定をされておるわけで、現在御指摘のように、都道府県都道府県の計画を策定中でございます。これは、国土庁指導によりまして五十一年度中に全部策定するということになっておりましたけれども、実行はややおくれておりまして、私どもの聞いておりますところでは約二十県ぐらいが、二十府県だったと思いますが、二十県ぐらいが本年度内に策定をされるという見込みになっております。全国計画を基本といたしまして都道府県計画を定めることになっておりますので、都道府県の計画ができました場合、それを全国集計した場合、全国計画に整合するように、私どもの方といたしましては都道府県の農業担当部局を内面的にも指導をしてまいっておるわけでございますが、現在のところまだ途中でございますので、どのような形になっておるか、断定的に申し上げる段階ではございませんけれども、進行状況を中間的に聞いておるところでは、大体全国計画に即したような、そう大きな食い違いのないような都道府県計画ができるのではないかというように見ております。今後の推移をよく見たいと思います。  ただ、土地利用基本計画につきましては、これは本来国土利用計画に基づきましてつくるものでございまして、土地利用図をつくりまして、農業地域なりあるいは森林地域なり都市地域というように五地域に区分するということでございますが、これも御指摘がございましたように、法ができました際、本来ならば国土利用計画ができてから、あるいは全国計画並びに都道府県計画ができてから行う性質のものでございますけれども、とりあえず暫定的な措置といたしまして、土地利用基本計画が都道府県によって策定をされておるわけでございますので、国土利用計画の都道府県計画が全部策定されますれば、それに基づきましてもう一回見直しをするということになっておるわけでございます。現在国土庁を中心に、確かに五十年度からその見直しの準備には着手されておりますけれども、具体的にどのような見直しを行うかということにつきましては、まだ国土庁の方から各省に協議が参っておりませんので、今後の問題といたしまして、都道府県計画の推捗状況と合わせまして、協議がありますれば、農業振興地域なり森林地域の農林関係の確保につきましては十分念頭に置きまして、見直し作業に協力をしていくということにしたいと思います。
  189. 甘利正

    甘利分科員 その点よくわかりました。  それで、農振法の地域、都市計画法による市街化調整区域等で、本来農地でありながら耕作放棄されておる土地が、税を逃れるための仮登記もありますが、農地なるがゆえに本登記ができなくて仮登記等がなされておる農地がかなりたくさんあるわけでございますが、これらの地域が全国的にどのくらいあるであろうかという点については把握しておられるでしょうかどうでしょうかということでございますけれども、この点はいかがでございましょうか。
  190. 森整治

    ○森(整)政府委員 私ども調査よりも国土庁調査をいたしたのがございますが、これは五十年の八月から十二月の時点におきまして、その利用程度が周辺の利用と比べて著しく劣っているという観点から調査をいたしたものでございますが、全体で約三十万ヘクタールということに相なっております。それで、その中で農地がどのくらいあるかということは、ちょっと正確にはつかんでおりません。別途農業会議所で調査したものですとか、公式でない調査というのはあることはあるわけでございますが、いずれにいたしましても、企業が先行取得して仮登記をしたとか、あるいは耕作を放棄されて遊休地になっておるという農地が相当あるというふうにはわれわれも考えておるわけでございます。
  191. 甘利正

    甘利分科員 昔は大地主がたくさん持っていて、持っていない人に貸していたわけですね。いまは、農地でございますと、少し持っている人がたくさん持っている人に貸す、こういう現象になっておりますし、農地法その他いろいろむずかしい法律がございますので、これを農林省に向かって一気に解決しなさいなどと私とうてい申し上げるものではございませんけれども、これらの耕作を放棄された、本来農地であるべきものが農民がこよなく愛さなくなってしまったということで放棄されているという状態が、生産を阻害しておるし、あらゆる公害を出しておるし、そしてまた国民食糧を支えるということに対してマイナス要因であるということは、私どももよく理解するものでございます。  そこで、これらの所有関係者にいろいろと聞いてみると、手がないからやらないんだ、合わないからやらないんだ——手がないからやらないんだというのが非常に多いようでございますが、いませっかく農林省の農蚕園芸局ですか、奨励されております農業の機械化、これはかなり機械化が大型化しておりますから、これらの圃場にこの機械を入れるというと、耕作放棄地から生産圃場に変えるということはそうむずかしい話ではないわけでございます。そして、これらの圃場に何をつくるかということについては、大変むずかしい話ではございまするけれども、畜産に対する飼料、養蚕の桑畑等にこれを変えていくということになれば、経営はそうむずかしくはなかろう。そして畜産の体質を改善していかなければならぬということになりますと、農林省御承知のように、自給飼料がその主役を果たすようになる。そして、昔の畜産農業のように、厩肥がその生産の最たるものになるという、理想までは行かなくても、この形の一部でも具現しなければならぬのではなかろうかと思うわけでございますし、私の見解、農林省の見解も同じと思いますが、自給飼料による畜産、自給飼料で牛、豚等飼うということは、食糧パニックが来たときに完璧な食糧の貯備になるわけでございます。こういう点等を考えたときに、これらの圃場に機械化に取り組む。多少の気象のむずかしい枠を越えてその荒畑を美田に変えていく、生産に力をいたさしめる、そして畜産を安定して、日本の自給飼料による畜産が食糧の貯備としての役割りを果たす、こういうようなことに対して、大変な御努力、これは私がお願いしたいと考えておるわけでございます。  さらにまた、私の方からお願いしなければなりませんことでございますが、私の考え方でございますが、地域農業の振興ということについて配慮されておるようでございまするが、日本農家集落、生産集落が一体幾つあるのか。その生産集団が十分の使命感のもとに、生産意欲のもとに活動するという、地域農政の確立というものがさらに一層なされていかないのではお話にならぬのではないか。古い言葉ではありますけれども、使命感、これはどうしても今日の世の中に、ことに農業生産については必要であると私は断ずるわけでございますが、ひとつこの点について御意見を承りたいと思うわけでございます。
  192. 森整治

    ○森(整)政府委員 前段の御指摘については、私どももそのとおりだと思っております。ただ問題は、権利関係とまたそれを利用する関係、そこがなかなか組み合わないというところに非常に悩みを持っておるわけでございます。端的に申して、一番問題は価格問題。たとえば私ども、合理化法人でそういう土地を買って、有効に使うということを促進をするということでやっておるわけでございますが、なかなかその辺の折り合いがつかないというようなこともございます。それからもう一つ、端的に申し上げまして、耕作放棄をされている土地が、いろいろ機械でまとめてやるという場合に、出してもいいという土地が、今度受ける方から見ると、なかなかかみ合わないというようなことがございます。それはそれといたしまして、私どもいま御指摘のございましたような仮登記されているような未利用地につきましても調査をいたし、それを何とか利用していくということを県の農業会議等に協力を求めて、そういう事業を組んでおります。  それから農用地の利用増進事業、先生御承知と思いますが、それをさらに進めまして、地域農政の特別対策事業ということで、集落を中心にして話し合いでいろいろ土地の利用の合理化、促進を図ってまいるということを来年度予算に計上しているわけでございます。そこのところの現実の細かい問題から解きほぐしていくということが重要なんではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  193. 堀川春彦

    堀川政府委員 農業の生産組織がどのくらいあるかというお尋ねでございますが、農林省は、四年置きに農業生産組織調査というのをやっております。それの一番新しい数字といたしまして、五十一年七月現在の数字がございますが、それによりますと、農業生産組織数としては、三万八千百五十という数字が報告されております。
  194. 甘利正

    甘利分科員 きめ細かな点に至るまで御努力をいただいておるわけでございますが、たまたま農業会議という言葉が出たわけでございますが、私、長年神奈川県の農業会議の会長をいたしておりまして、そういう御指摘の点については私もよくわかるわけでございますが、農政と申しますよりもむしろその地域の農業、それを農政的に振興させるという一つの大きな指導の渦の中に巻き込んで、これらの耕作放棄地を美田に変えていくということ、これをひとつ御努力をお願いをいたしまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  195. 片岡清一

    ○片岡主査代理 これにて甘利君の質疑は終了いたしました。  次に、川崎寛治君。     〔片岡主査代理退席、主査着席〕
  196. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 私は、農業機械や農薬等によります農業労働の災害補償の問題にしぼってお尋ねをいたしたい、こういうふうに思います。  まず、農林省にお尋ねしたいと思いますが、この農業機械や農薬等によります事故の実態というものをどう把握しておられるか。後ほど鹿児島の方の実態を私の方から報告したいと思いますが、伺いたいと思います。
  197. 堀川春彦

    堀川政府委員 農作業中の事故につきましては、従来から事故事例として把握してまいったところでございますが、四十九年度から農機具を主体といたしまして都道府県に助成をいたしまして、全国を対象にいたしました事故調査を実施しております。この事故調査は、悉皆調査と標本集落調査と二種類ございますが、悉皆調査は、これは厚生省の方の人口動態調査死亡個票から、県に助成いたしまして悉皆的に調査したものであります。また標本調査は、四十九年度、五十年度実施しておりますが、それぞれ前三カ年を対象にいたしまして、全国の集落の中から農業集落を二百五十分の一という抽出率で抽出して調査をしております。これらの調査結果から、いろいろ事故の態様、農機具については把握しておるわけでございます。  それから農薬につきましては、県から報告をとりまして、その発生の態様を把握をしておるわけでございます。そこで事故の内容でございますが、農作業の事故調査中死亡事故の発生件数につきましては、四十九年におきまして、農業機械施設によるものが五八%という数字が、厚生省の統計を分析した結果出ております。機械施設によるものとそうでないものとございまして、そのうち機械施設によるものを分離して調べたわけでございます。実数にいたしますと二百五十八人、全体の五八%に当たる方が農業機械施設によって死亡をしておるということでございます。  それから農薬の関係では、大部分が中毒の関係でございまして、死亡事故は非常に少なくなっておるわけでございます。
  198. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 鹿児島の方でも農業会議の調査によりますと、鹿児島はわりに経営規模が小さいものですから少なくなっておる面もあると思いますが、四十八年で死亡事故が八、四十九年で五名、そして五十年が一名、こういうふうになっておりますが、いずれにしましても機械による死亡事故というのがありますし、全国的に見ればふえていく傾向にあるだろう、こう思います。  農業の構造が変わりますにつれて、つまり農外所得に期待が多くなればなるほど、そしてまた老齢化なり婦女子化ということになりますと、農業機械による死亡事故というのは今後もいまのままでは減らない、こういうふうに思います。  そこで、第四十八国会、昭和四十年に労働者災害補償保険法を改正をして、特別加入制度というのを新しくつくったわけでありますけれども、これは農業の事業主並びに特定農作業従事者、こういうことで非常に資格が限定をされております。そのために、両方合わせて依然として五万そこそこではないかと思うのでありますが、なぜこんなに死亡事故が一方でふえながら、必要性が痛感をされながらこの特別加入制度というのが伸びないのか、加入者が伸びないのか、この点について農林省としてはどうお考えですか
  199. 堀川春彦

    堀川政府委員 これは一概に断ずることは非常にむずかしゅうございますが、一つには、十分制度についての周知徹底が必ずしも行き渡っておりませんで、農家の方に認識が薄いということもあろうかと思うわけです。  そのほか、農業の機械の関係でございますと、農協が農機具による事故につきましていわゆる共済制度というのを実施しておるわけでございます。これはいわば一種の農協組織による保険事業のようなものでございますが、これがかなり普及をしておるという面がございまして、そういった問題とか、あるいはそれ以外にもいろいろと手続その他の点でめんどうだとか、いろいろそういうことはあろうかと思うわけでございますが、以上のようなことが原因ではなかろうかというふうに思っておるわけであります。
  200. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 この第四十八国会におきます論議というものを振り返ってみますと、農民全体をカバーする制度にしてほしいんだ、こういう要望が当時農業団体等からは強かったわけです。しかし、結局これは法案の改正過程の論議の中では、労働省の政府委員は、農業団体や農林省と十分打ち合わせはしたい、こう言いながらも、法案自体の改正過程の中では決まらずに、政令にゆだねられて、結局はいまのような形での特定のものにしぼられたことになっておる、こういうふうに思います。  そこで、農林省としては、そういう、いま局長自身がお認めになったような制度の問題について、全体をカバーできるものにしようという気持ちがあるのかどうか、そして労働省とそれらの点についてはこれまでどういう論議を進めてこられたかを伺いたいと思います。
  201. 堀川春彦

    堀川政府委員 労災の特別加入の問題でございますが、対象とする範囲についてのお尋ねも含んでいるかと存じます。  御案内のように、特別加入できる農業者として、農業事業主等というのがございます。これは家族従事者もはいれるわけでございまして、そういう意味で、農業従事者をかなり取り込むという思想がそこで出ておりますし、それから、指定農業機械作業従事者という種類がございます。これは、指定した農業機械を使用して作業に従事する者ということになっておりまして、これは制度発足当初におきましては、動力耕運機、農用トラクター等特定の機械でございました。その後、そういうことでは全体をカバーするという観点から足りないのではないかということから、いろいろ論議がございまして、私どもも労働省にもお願いをいたしまして、四十九年四月から適用対象として自走式の田植機あるいは動力脱穀機、動力カッター、動力草刈機、動力摘採機、動力揚水機というようなことで追加がございまして、私ども、当初から指定をされております機種とこの追加になりました機種で、大体そのカバーの範囲としては妥当に近いところへきておるんじゃないか。ただ、いろいろと新たな機械等も出てまいるということもございますので、私どもは常に需要のあり方等を考えまして、労働省と協議をして、必要なものはこの範囲に加えていくというふうに努力をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  202. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 四十年の法改正のときにも議論になったような、農民全体をカバーするものにしようという意思は、農林省にはいまの御答弁からしますとないというふうに私は伺えたわけであります。
  203. 堀川春彦

    堀川政府委員 いまの加入資格者の範囲とそれから加入資格者にかかわります指定機械の関係でございますけれども、この両方を考えてみますと、大体いい線へ来ているのではないか、こう思うわけでございます。できるだけ多くの方が法制上入り得るような、つまり法制上の障害がそこにあるということであっては困りますので、それは排除をするように今後も努力をしていきたいというふうに思うわけでございます。  要は、そういう法制上は入り得ることになっているが、なかなか加入の実績が上がらないということをおっしゃっておられるかと思いますので、私どもその点につきましては、単に法制の仕組みの話だけでなしに、運用の話やその他PRの話やいろいろございますので、そういう面で努力をしてまいりたいと思っております。
  204. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そうすると、法制上でいくと、いまの制度で大体全国的にはどれくらいの農民が加入できることになりますか。最大限の可能性というものをどう見ますか
  205. 堀川春彦

    堀川政府委員 私どもの方でそういう統計を実ははじいておりません、あるいは推算も持っておりませんので定かには言いにくいわけでございますが、入り得る者としては非常に多くのものをカバーしているのではないかというふうに思っております。
  206. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 しかし、十数年たちながら依然として五万そこそこということについては、農林省は農業機械の方は一生懸命機械化促進とこう言ってやられておるけれども、それの主体であるべき人間の方は余り、農林省全体の中にそういう農民というものを扱うセクションがないわけですし、そういう災害の問題等を考えてみましても、農業機械の付随物として認識されておる、こういうふうに私はこの機構上は考えられるわけです。だから十数年の間に、法制上は可能なんだ、相当なものだ、こう言われながら、実際にこの程度にとまっているとしたら、それは農協に問題があるのか、つまり全国的な農協組織ですね、あるいは農林省自体の宣伝——宣伝というかそういうものを進めていくのに不足があるのか、あるいはこの制度上組合をつくらなければなりませんけれども、そういう組合のつくり方というものに対しての指導が足りないのか、その辺どうお考えになりますか
  207. 堀川春彦

    堀川政府委員 先生のいろいろ御指摘になりました問題の中で、最後の、この制度を利用して入るときに一定の団体組織で事務処理をするということがございますので、その辺が一つの、何と申しますか、私は必要な制度だとは思いますけれども、ややめんどうくさいとかまとまりが悪いとかいうようなこともございますかと思います。  しかし、いずれにしても、私ども考えてみまして、この制度の活用状況が非常に低位にあるということはどうも解せない点がございます。見直しをいたしまして、できるだけ御活用いただくように進めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  208. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 労働省の方は、つまり工場労働者あるいは一般労働者というものを主体にした労災補償保険制度ですね、それに農民を加えたといういまの制度上の問題ですね。そうしますと、昨年の暮れ、当時の藤縄労働基準局長日本農業新聞のインタビューに対しまして、相当いろいろと突っ込んだことを思い切って答弁もしておるわけですけれども、そういうものを見ますと——いま解せないとこう言われた。農林省の方はふえないのは解せないのだ、こう言う。制度はいいのだけれども、どうもこの理解が悪いし、入ってこぬというのは解せないのだ、こういうふうに言われた。労働省側から見て、なぜこれは、つまり農民の死亡事故とかあるいはけがとか、そういうものに対してカバーをしていく制度として要望が強いにもかかわらず、これが伸びない。やはりどこかに欠陥があるんですね。だからその点について労働省としてどうお考えになるかというのが一つと、それから全農民というものを対象にしたものにするためには、ではどうしたらいいのか、労働省側からの御回答を伺いたいと思います。
  209. 松尾弘一

    ○松尾政府委員 いま二つの点の御質問がございましたが、第一の点は、先生もいま御指摘ありましたように雇用労働者を相手にしている保険制度である、そういう中で、表現はよくありませんけれども、事務的な能力の限度において周辺労働者を特別加入制度で救済していくという中で、農業の特定機械を使用する災害に着目して四十年来制度を起こしているというのが現状でございます。したがいまして、おのずからそこには限度がありまして十分にいかないという点でございまして、この間農業新聞のインタビューで私ども局長が答えましたのも、その点は十分ではないじゃないかという御指摘に対しまして、私ども制度自体がそういうことに重点があるために、余力をもって周辺労働者を救済する限りにおいて限界がある、こういうような意味で答弁をいたしたと思います。  さて、では全農民に対してどうするのだという問題は、私から申し上げるのは筋合いではないのじゃないか、全体農民としてどう救済するか、たとえば労災補償的なものをどうするかという問題は大きな問題でございますので、私の方から特段の御意見を申し上げるのは差し控えたいと思います。
  210. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そこで、これは農林省側にお尋ねしたいのですが、四十九年に農業機械促進ということで農業機械銀行をおつくりになりましたね。そしてパイロット事業を全国数十カ所でやられたわけでありますが、このときに、農林省は農業機械を促進すると同時に農作業の受委託をあっせんをしたわけです。そうしますと、農作業の受委託をあっせんをしたというそのことから、相当これは進んだと思います。四十九年という、高度成長のピークから移る時期ではありますけれども、農村構造は相当変わっておるわけですね。そこで、受委託をあっせんをした。ところがその受委託の他人の圃場で事故に遭ったときには、その事故は補償の対象にならないというのが今日の事態であります。これらの問題については昭和五十一年の三月二日、農林水産委員会で社会党の柴田君が安倍農林大臣等に質問をいたしておりますが、その中で澤邊政府委員が回答しておるわけでありますが、いまお答えになった範囲の回答なんです。そうしますと、こういう農作業の受委託をあっせんをされた、機械化を促進された、しかし事故が起きてきている、それは他人の圃場であって今日の制度ではカバーできない、そういう問題について農林省として、なぜこれをカバーできるように、つまり自分の方が主体的に機械化を促進したわけですから、そのことを進められないのか、そのことについては労働省と検討しておるのかどうか。どうも農林省の方には主体的な姿勢が大変欠けておるというふうに私はいろいろなものを検討してみますと感じられますので、伺いたいと思います。
  211. 松尾弘一

    ○松尾政府委員 ただいまの受委託の問題でございますが、従来の考えでいきますとこれは当然入らなかったわけでございますけれども、この四月一日に、委託の関係の共同作業でない委託の場合、個人の場合でも適用を広げていこうという話し合いを農林省ともいたしまして、目下検討いたしておるような状況でございます。
  212. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そうすると、それは当然省令、政令の改正ですね。
  213. 松尾弘一

    ○松尾政府委員 通達になると思います。
  214. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そうしますと、それは通達でふやせるわけですね。それならばふやして、受委託を集団だけでなくて個人の場合の受委託も含める、こういうことになってきますと、私どもは大変大きな前進だ、こう思います。  それならば、なお、ことしの二月、全国の農協の青年部が大会で、ハウス病なり農薬なりもぜひ入れてほしいのだ——これは農林大臣もハウスの中に入られたことがあると思うのですけれども、あの中で作業しておりますと大変なことですよ。ですから、ハウス病なり農薬なりもこの際ぜひひとつそういう通達で改正をしますときに追加すべきだと思うのです。その点農林省、どうですか、労働省と話し合っていますか
  215. 堀川春彦

    堀川政府委員 農業機械の関係は相談をしておるわけでございます。ハウスの関係と農薬の関係は大分態様が違いますので、ハウスの方は明確に私どもまだ把握しておりませんが、農薬の関係は御案内のように事故が起こりますのがほとんど中毒という形で起きてまいりますが、その事故原因を私どもも追跡をし調べておるわけでございますが、八割以上のものが不注意から来るということに私どもの分析結果が出ておりまして、そういうことでございますと、むしろこれは労災補償あるいはそれに準ずるような制度化ということよりも、むしろ農薬の使用についての安全使用を徹底するという方向でいくのがまず第一ではないかというふうに考えておるわけでございますが、新たな制度の問題については、問題御提起ございましたので、われわれとしても今後検討をしてまいりたいと思っております。
  216. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 昨年来農協中央会あるいは全国の各県の農協団体においても、相当この問題については、特別加入制度というものを当面は加入促進をして、そしてこの中でカバーをしていきたいという希望を持ち、運動を進めているように見受けられますね。そこで、そうしますとこのことについて農林省としても特別加入制度を充実させていくということについて、いまのハウス病なり農薬なりという問題等も含め、制度の検討をすると同時に現行の中で加入の促進をしていく、推進をしていく、これは労働省の保険財政の方からすれば余りありがたくないということにあるいはなるかもわからぬですけれども、しかし国民の大事な食糧を確保する経済安全保障、そういう食糧安全保障という観点に立てば、これは鉄砲や大砲や飛行機にお金を使うよりも、今日の食糧安全保障などという考え方の上からいけばより進めなければいけない、私はこう思います。そのことについて特段の促進を農林省としてお考えになっているかどうか伺いたいと思います。
  217. 堀川春彦

    堀川政府委員 新たな制度の問題につきましては、これはいろいろとむずかしい問題がございますので、私どもも真剣に内部でも検討を進めてまいりたいと思っておりますが、さしあたりの措置として、農業機械による事故に対します対策としての労災保険の特別加入制については大いに熱意を持って推進を図りたいと思っているわけでございます。
  218. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 当時の藤繩労働基準局長の農業新聞への回答の中では、農民全体をカバーする特別の独立の制度というものに対する要望が農民側は強いと思うのです。だから、いまある制度としての特別加入制度というのと、それから国の新しい制度というものの要求とがあるわけですが、その国の新しい制度を検討していくということについては、いまたとえば広島県やあるいは福井県においても、どうも現行制度では不十分だ、こういうことで町自体がそういう制度をやっておるところもありますね。農林省はこれは御存じですか
  219. 堀川春彦

    堀川政府委員 いま御指摘の具体的な事例について私ただいま承知をしておりませんが、後刻調べてみたい、かように存じております。
  220. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 担当官は知らないのですか
  221. 堀川春彦

    堀川政府委員 担当の課長に聞いたわけでございますが、承知をしておらないようでございます。
  222. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 広島県の吉舎町、それから福井県の上中町、これはどういう制度でやっているか、農林省としてもひとつ御検討を願いたいと思うのです。大変財政上ということが農林省としては先に頭に立っていると思うのですね。しかし、これはぜひひとつ検討を願いたいと思います。農林大臣、いかがですか
  223. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 現在のところ、農業団体等とも連携をとっておるわけでございますが、特別加入制度をできるだけ広げていこう、全農民に趣旨を徹底をして加入の促進を図っていこう、こういう方向で努力をいたしておるわけでございますが、いまのような事例もあるわけでございますから、独自の補償制度につきましても、農業団体等の意見を十分聴取をし、またこれが独自の保険制度として農民の負担が増高しないかどうか、そういう保険制度としての問題もあるわけでございますから、総合的に検討を進めてまいりたい、こう考えております。
  224. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 農業団体と十分に話し合って、現行の制度、それから新しい制度、そういうものも含めて、命が大事なんですから、ひとつぜひ検討し、促進をしていただきますことをお願いしたいと思います。  最後に、農業機械が非常に普及してまいりますと——先ほど農薬については、使用上の不注意だ、こういうお話がございました。農業機械もやはりそういう問題が多いかと思います。そこで、農業機械自体の安全チェックというものについては法律で義務づけるべきではないか。民間企業が売らんかなでどんどんやっていくだけではいけないと私は思います。現実に何百人かずつ毎年死んでいるのですから。ですから、それは使用上の不注意という問題もあろうかと思いますが、農業機械自体の安全チェックということを法律自体で義務づける。聞くところによると、この国会に出そうという計画もあったようですが、なぜドロップしたのか、あるいは今後どうしようとしておられるのかを伺いたいと思います。
  225. 堀川春彦

    堀川政府委員 農業機械の安全検査を強制的と申しますか、国の手で相当広範囲に強制的に行わせるというようなシステムをとるべきではないかという問題点の指摘に対しまして、農林省も検討をしてまいったわけでございますが、農業機械というのは、通常の工場などに装置されている機械と違いまして、使用の環境も違う。自営業者である農家が使うことが多い。それから道路走行中の問題もあれば圃場へ入ってからの問題もある。それから安全性を確保するためにやはり使用者側の知識、技能の向上という問題も非常に大きなウエートを持った問題でもあります。それと離れまして農機具自体に求めらるべき安全性と、それから効率といいますか農作業にうまく使えるかどうか、あるいはコストの問題、そういったことがそれぞれ相関をしてまいりますので、私どもその辺を詰めてからでないとやはり法制度として定立するのはなかなか無理があるというふうに考えまして、法制化の検討を続けてきたことは事実でございますが、今国会に提案するというところまで詰め切らなかったというのが実情でございます。
  226. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 終わります。
  227. 伊東正義

    伊東主査 これにて川崎寛治君の質疑は終了いたしました。  次に、古寺宏君。
  228. 古寺宏

    古寺分科員 厚生省おいでになっておりますか——OPP、これは柑橘類に使用するカビの防止剤でございますが、伺いますところによりますと食品衛生調査会に明日諮問するということになっておりますが、これは事実でございますか
  229. 宮沢香

    ○宮沢説明員 そのとおりでございます。
  230. 古寺宏

    古寺分科員 このOPPにつきましてはアメリカ等においては農薬の取り扱いを受けておりますが、こういういわゆる毒性のあるものを食品添加物として認めるということは非常に問題があると思うわけです。特に農業団体等におきましてはこのOPPの食品添加物としての許可については非常に反対が強いわけでございますが、農林大臣はこのOPPの問題についてどのように考えておられるか、まず承りたいと思います。
  231. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 防ばい剤としてのOPPの食品衛生上の観点からの問題でございます。この問題につきましては厚生省の所管になっておるわけでございますが、厚生省においても従来からいろんな資料、データ等を取り寄せ、それを基礎に検討を長期にわたって進めてきておる、こういうことも伺っておるわけでございます。厚生省が今回食品衛生調査会に諮問をされる。その結果を私どもは注視いたしておるところでございますが、いやしくも人体に影響があるというような事態でありますれば、これはわれわれとしては慎重の上にも慎重に扱うべきものだ、このように受けとめております。
  232. 古寺宏

    古寺分科員 OPPというのは非常に毒性が強いと言う専門の学者もおられます。いま日米首脳会談を前にして、アメリカの要請と青果物の輸入業者の要請によって食品衛生調査会に対する食品添加物としての諮問が行われるというお話もございます。こういうように日米首脳会談を前にしてなぜ急がなければならないのか、その辺について非常に疑問を持つ方がいるわけでございますが、閣僚の一員として農林大臣政府としての態度をひとつもう一遍明らかにしていただきたいと思います。
  233. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 こういう問題は政治的にどうこう扱うという性質のものではない、あくまでこれは食品衛生上の観点から安全性が確認されるものでなければならない、このように受けとめておるわけでございまして、恐らく厚生省においてもこの取り扱いについては十分慎重な取り扱いを今日までしてきたものと考えておりますし、調査会におきましても各界の専門家によってこの安全性の確認、確保ということにつきましては、十分な検討がなされるもの、このように考えております。
  234. 古寺宏

    古寺分科員 まだまだ非常に今回出されているデータ等につきましては不十分な問題が多々あると聞き及んでおりますので、どうか日本の食品行政の上からも、あるいは日本の農業を守るという立場からも、こういう問題については農林大臣に、そういう政治的な圧力によって人命を尊重しないような、そういう行政のないように特に総理にも申し上げていただきたいということをまず冒頭にお願いしたいと思います。  次に御質問申し上げたいのは酪農の問題でございますが、最近は非常にわが国の酪農も順調な伸びを示しておりますが、加工原料乳が非常に大幅にダブついておりまして、このために限度数量の百三十八万トンを少なくとも十五万トン以上はオーバーするだろう。そういうことで、すでにもう青森県初めいわゆる不足払い制度がございますが、こういう補償金をもらえないというような事実があらわれているわけでございます。現在すでに畜産振興審議会が開かれているわけでございますが、まず今年度のいわゆるオーバーした分についてはどのように農林省として処理をされるのか、酪農民は非常にいま不安を持っているわけでございますので、そのいわゆる限度枠を超えた十五万トンについてはどういうふうに対処なさるお考えか、まず承りたいと思います。
  235. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 昭和五十一年度は気象が非常に寒冷であったというような事情その他で、飲料乳の消費の伸びが停滞をしたわけでございます。一〇一%程度というようなことでは、若干は伸びておりますけれども、当初予想しておりましたよりも消費は停滞気味であった。ところが一方におきまして生乳の生産は相当伸びてきております。その結果、限度数量を十五万トン前後超える、こういう事態に相なったわけでございます。私どもは、できるだけ飲料乳として国民の皆さんに飲んでいただくという消費の拡大について意を用いておるところでございますが、五十一年度はそういうような事情であった。そこで私もこの事態を何とかしてあげなければならないということで、ただいま大蔵省、事業団等々とも協議を続けておりまして、できるだけ前向きにこれを処理するようにしてまいりたい、こう考えております。
  236. 古寺宏

    古寺分科員 前向きというのは出てみなければわからないわけでございますが、そこで、現在畜産振興審議会に大臣の方から、来年度の新しい限度枠の数量とかあるいは乳価等については諮問をしていらっしゃるのじゃないかと思いますが、大体どのくらいでございましょうか。
  237. 石田徳

    ○石田説明員 本日審議会の総会を開きまして、明年度の価格等を決める際に留意すべき事項ということでお伺いしておるところでございます。具体的な数字はそれぞれの部会に提出いたしまして御審議をいただくということでございますが、ただいまお話に出ております限度数量の問題は酪農部会が取り扱う予定でございまして、本日酪農部会は二十九日に開くということに決めておりますので、まだ明年度の限度数量を幾らにするかということは数字が出ていないわけでございます。
  238. 古寺宏

    古寺分科員 いま大臣からもお話がございましたが、この大きな加工乳のダブつきの原因は、乳製品の輸入が非常に最近増大しております。五十一年を見ましても、生乳に換算いたしますと、乳製品の輸入量が史上最高の二百五・八万トン、こういうふうになっているわけでございまして、わが国の自給率が大幅に後退をしているわけでございます。これからのわが国の酪農にとっては、やはり自給率を高める、酪農民を守る、そういうためには、無秩序な乳製品の輸入の防止というものを図らなければならないというふうに考えるわけでございますが、先日新聞等を見ておりますと、最近は特にECの貿易不均衡是正のために、乳製品の輸入拡大、あるいは関税率の引き下げ等が要求されている、こういうふうに承っているわけでございますけれども、このいわゆる日本の酪農を圧迫している輸入問題について、今後これを規制していくお考えがないかどうか、大臣から承りたいと思います。
  239. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は酪農関係だけでなしに、畜産を含め、またその他の農産物を含めまして、内外の食糧事情の将来を展望いたしました場合に、どうしても食糧全体の自給率を高めていかなければならない、端的に申し上げますと、自給率の向上に支障を来すようなことであってはいけない。しかしながら、一面において、国民に対しての食糧の安定的な供給ということも農林省の大きな使命として担わされておる問題でございますから、私は国内の自給を基本として、それを補う限度において輸入というものは慎重に取り扱っていくべきものだ、そういう方針をとっていきたい。特に御指摘のありましたEC等からの、向こうから言うと輸入圧力になるわけでありますけれども、この問題は、御承知のように農産物あるいは農産加工品の輸入は、各国別割り当てになっておるのではございません。全体として輸入量をどう設定するか、こういう問題になってまいりますから、要はその品質なり価格なり、あるいは輸送費その他の条件、そういうようなことによって、どの国が多く割り当ての中でシェアを持つかということが決まってくるわけでございまして、私はECだけを特別な扱いにする、そういうような考えは持っておりません。
  240. 古寺宏

    古寺分科員 昭和五十一年度の畜産振興事業団の放出による差益、これは円高によるものと思いますが、九十二億六千八百四十二万円、こういうふうに発表されておりますけれども、この一部を加工原料乳の限度枠オーバー分に振り向ける、生産者補給交付金に振り向ける、そういうふうにしたらどうかというふうに考えているわけでございます。  それからもう一つは、原料乳のダブつきを解消する間、事業団の放出を一時中止して調整を図らなければならないのじゃないか、このように考えるわけでございますが、ことしの百三十八万トンを十五万トンもオーバーしているわけでございますので、来年度は相当大幅な増枠を見なければならないのはもちろんでございますが、これとあわせまして、この事業団の差益の問題と、それから事業団の放出の問題、三点あわせてお答え願いたいと思います。
  241. 石田徳

    ○石田説明員 乳製品を輸入いたしまして放出した場合の差益が出ておることは確かでございます。その差益は事業団のルールによりまして積み立てをする等いたさなければならないわけでございますが、そのルールによりまして助成勘定あるいは交付金勘定に振り込むことができるわけでございますので、従来もこの差益金を追加払い等に使った事実もございますが、それは当然できるようになっております。  それから、乳製品に関する輸入でございますが、年度当初、上期におきましては、乳製品等の価格はかなり高騰いたしておりましたので、バター、粉乳などを輸入いたしたわけでございますが、その後、下期に至りまして加工品の在庫もふえてまいりましたので、目下のところは輸入をとめております。これは、割り当て制ではございませんので、事業団の一元輸入でございますから、先ほど大臣が申されましたように需給という点を第一に考えまして、需要との差についてはこれを輸入する。しかし、国内産だけで賄い切れる場合には輸入はとめるということになっておりますので、目下のところは差し控えております。
  242. 古寺宏

    古寺分科員 乳製品にも擬装乳製品というのがありまして、生乳に換算しますと相当な量になって入ってきているわけですね。やはりそういうものを整理しませんとこういうダブつきは解消しないと思うのです。ですから、やはり酪農民を守り、先ほど大臣がおっしゃった自給率を高めるという立場からも、もう少しこの限度枠を実態に即した大幅な枠に改定するということはぜひやっていただきたいと思います。時間がございませんので次に移りますが、いよいよ明日から日ソ漁業交渉がモスクワと東京で同時に開かれるわけでございます。これは二百海里時代のわが国にとってはまさに正念場とも言うべき大事な漁業交渉でございます。  そこで、農林大臣に私は次の点についてまずお尋ねしたいと思います。  まず第一点は、いわゆるいままでの実績の漁獲量、これを確保できる確信がおありになるかどうか。  第二点としては、当然予想される入漁料の問題がございますが、この入漁料について国が国庫負担をしてあげる、そういう考えをお持ちになっておられるかどうか。  第三点といたしましては、当然、この二百海里の線引きに伴いまして、領土問題がこの交渉の中に必ず私は出てくるというふうに考えます。その場合に、大臣はどのような姿勢でこの領土問題に臨まれるか。  また、第四番目は、これと並行して、わが国の領海十二海里、専管二百海里をいつごろまでに実施をするお考えになっておられるか。  以上四点についてまず承りたいと思います。
  243. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 実績の確保につきましては、私どもは官民を挙げて強力な漁業外交を現在展開をいたしておりまして、特に二国間交渉におきましては、わが国もたん白食糧の五一%以上を魚に依存しておるということ、それから中小零細漁船がその中核として操業しておるということ、またその背後には多数の零細な加工業者もこれに関連企業として存在をするということ、国民経済上に及ぼす影響も甚大であるということ、そういう点をるる相手国に説明をし、理解と説得に努めておるところでございます。その結果、御承知のように、日米交渉におきましては実績の八九%を確保することができたわけでございます。  問題は、明日から行われるモスクワ並びに東京における交渉、これが北洋漁業の中でも大きな比重を占めており、その結果いかんというのはわが国の漁業にも食糧問題にも大きな影響を持つ、こういうことでございますので、全力を尽くしてまいる考えでございます。  ただ、古寺さんも御承知のように、ソ連も日本と同じように遠洋漁業国でございます。約一千万トン近い漁獲を上げておる水産国でございます。そしてアメリカ、カナダ、EC、ノルウェーとの二百海里交渉でも、ソ連も大変過去の実績の削減等の苦しい立場に追い込まれておる。その失った分の漁獲量というものを自分の庭先の北西太平洋で相当カバーをしたい、こういう気持ちのありますことも、私、イシコフさんとの交渉の段階におきましてよくくみ取れてまいったところでございます。そういうようなことで、日ソ交渉というものは日米交渉とはまた違った意味合いでなかなか厳しいものがある、こういうぐあいに私は受けとめておるわけでございます。  しかし、北洋におけるわが国の実績というものは戦前から、戦後におきましても三十年の伝統的な実績を持っておるわけでございますから、前段で申し上げたようなわが国の事情もございますから、私もイシコフさんにその事情を十分訴えて理解と協力を求める。と同時に、わが国も近く二百海里漁業専管水域を設定をする考えである。お互いに二大遠洋漁業国として、実績はできるだけこれを尊重し合うということが、第三国に対してもその実績国としての主張を強めるゆえんではないか、相互の間で実績を大幅に削減しておいて、そして第三国に向かって実績尊重を訴えてもそれは通らない議論になるわけであるから、これはひとつお互いに考えようではないかということも私よく訴えておるわけでございます。いまそういう観点で今後の交渉を粘り強くやってまいる考えでございます。  それから入漁料の問題、これはアメリカとの間には入漁料を納めることになりました。ソ連がどう出てまいりますか。私とイシコフさんとの先般の会談では、入漁料の話は一切出ておりません。これはどうもその辺が十分真意を捕捉することに私迷っておるわけでございますけれども、あの先般の会談では一切入漁料の問題は出なかった、こういうことも申し上げておくわけでございます。  いずれにしても、石油ショックによりまして燃油も上がり、漁業用資材も上がって、わが国の漁業企業の経営というものは、中小漁船を含めて非常に苦しくなっております。その上に入漁料を納めるということになりますと、経営の面でも大変な問題であり、これが魚価にはね返ってくるということになると、これは消費者にも大きな影響を及ぼすわけでございます。そういうような家計に及ぼす影響並びに漁業経営の安定というものを確保するためには、どうしても入漁料につきましては、中期低利の資金を融資をいたしまして、そのショックをできるだけ緩和するような措置を講じてまいりたい、このように考えております。  それから、領海幅員を十二海里にする問題につきましては、いま関係各省庁と協議を進めておりまして、月末ごろには国会に提案をし、国会の御審議と御承認を煩わしたい、お願いしたい、こう考えております。  二百海里の漁業専管水域の問題につきましては、五月の国連海洋法会議の動向、これは単一草案に基づいて今度詰めた議論がなされる、こういうぐあいに見ておりますので、その動向を見るわけでございますけれども、もしもことしの海洋法会議で結論が出ないということになりますと、日本の置かれております環境からいたしまして、いつまでも国連海洋法会議の結論待ちというわけにはまいらない。適当な時期には決断せざるを得ない、こういうぐあいに私は判断をいたしておるわけでございます。  それから領土問題につきましても、これはイシコフさんと私の会談の間には公式にも非公式にも一切出ておりません。これは御承知のように、一九七三年にモスクワにおきまして、田中首相とブレジネフ書記長との間で、戦後未解決の問題を解決して、日ソ平和条約の締結について今後も交渉を継続するという最高首脳間の合意がなされております。その戦後未解決の問題というのには北方の四島も含まれておるということも、その後における日ソの外相会議で確認をされておることでございます。でありますから、この領土問題というのは、両国の首脳初め高度の問題であって、息の長い交渉でその結論を見出すべきものだという認識を私は持っておりますし、イシコフさんも領土問題などを持ち出したら、もうその瞬間に漁業問題は暗礁に乗り上げてどうにもならぬ、これは恐らく認識をされておることだと思います。なおまた、この日ソ漁業関係というのは、日ソ友好の象徴でもあり、かけ橋である、こういうことも私は十分認識をされてのことだと思います。一切領土問題は出ておりません。また、私は暫定取り決めの段階におきましては、北海道に接続する水域等におきましては、一千数百隻の中小漁船が出たり入ったりする特殊な海域でございます。こういうものにつきましては、特別な、ほかの海域とは違った取り扱いがなされるべきものであり、そうすべきものだ、こういうぐあいに考えております。
  244. 古寺宏

    古寺分科員 非常にこの問題は重大でございますので、後手後手に回るようなことのないように、やはり強力な漁業交渉というものが必要でございますから、どうかひとつ日本の将来のために誤らないように、今回成果が上がるようにひとつお願いをしたいと思うわけでございます。  時間が来まして残念でございますが、これと同時に、新漁場の開発あるいは沿岸漁業の振興を図っていかなければならないわけでございますが、御承知のように、青森県の陸奥湾では、この二年間大量のホタテガイが斃死をいたしております。先日もイワシの大群が陸奥湾に参りましたが、何の関係かわかりませんが、やはり大量斃死をいたしております。こういうふうに、自分の庭先の海が公害やいろいろな関係で活用できない、開発できないということは、非常に残念なことでございまして、水産庁長官は特に公害のベテランでございますが、陸奥湾のホタテガイの大量斃死問題について、その原因の究明にひとつ全力を挙げて取り組んでいただきたいと思うわけでございますが、その点をお伺いして終わりたいと思います。
  245. 岡安誠

    ○岡安政府委員 御指摘のとおり、陸奥湾のホタテにつきましては、五十年と五十一年にも斃死が出て、相当の損害が起きております。  国といたしましては、五十年の斃死事故が起きたということにかんがみまして、東海大学の山本教授を団長とします調査団を現地に派遣いたしまして、種々調査研究をいたしたわけでございます。私どもといたしましては、五十年、五十一年のホタテガイの斃死につきましては、密殖とか、それから養殖の管理が必ずしも適当でなかったということを主因といたすと思っておりますが、さらに加えまして、夏場に二十三度を超えるような相当高水温になったということが合わさって五十年の斃死事故が起き、五十一年度は、そういうようなことによって相当弱っていたホタテガイが五十一年度に斃死として結果したというようなぐあいに一応考えております。  ただ、私どもといたしましては、今後ともあの漁場をさらに適正に利用していくということが必要でございますので、青森県が中心になりまして、漁場の適正利用、技術開発研究というものを行うことに対しまして助成を考えておりまして、あそこのホタテガイ養殖を中心といたします漁業の振興につきましては意を払ってまいりたい、かように考えております。
  246. 伊東正義

    伊東主査 これにて古寺宏君の質疑は終了いたしました。  次に、山本悌二郎君。     〔主査退席、片岡主査代理着席〕
  247. 山本悌二郎

    山本(悌)分科員 いまほど古寺さんからも質問がありましたので、できるだけ重複を避けまして大臣にお伺いをしたい、こう思います。  ということは、私も出身地が佐渡島でございますから、周りが海でありまして、大臣も水産関係にはかなり造詣の深い方でありますけれども、そういう意味で、いま話題になっておる二百海里あるいは十二海里、こういう問題は多くの方が質問され、また多くの国民が非常に注目をしておるところでありますし、また私どももこの漁場を持つ地域から出ている関係で、非常に関心を深めておるわけです。外務委員会や、あるいは農水のその方のベテランの場所でと違いまして、きょうは局部的にいろいろお伺いしてみたいと思うのです。  そこで、まず、先ほどからいろいろ話がありますように、日本人の副食の主なるものが魚だ、基幹たん白源だ、その魚がいま話がありましたようなことで、非常に制限をされていく。大臣からも答弁がありましたように、何とか確保していかなければいかぬということだと思うのです。私どももこれは将来に向かって非常に大切なことだと思うのでありますが、その意味で、まず十二海里設定の現在における状態を今後どういうふうに進めていくのか、いわゆる日本側のわれわれ側の腹づもりというようなところをお聞かせ願いたいと思うのです。
  248. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 領海の幅員を三海里から十二海里に広げる、この問題はもう御承知のように、世界の五十数カ国も十二海里というものを設定しておりますし、もういまや世界的な一つの定説になっておるというぐあいに考えております。また近年日本の沿岸水域におきまして、外国船の無秩序な操業によりまして沿岸漁民が相当被害をこうむっている、漁業の操業も制約を受けておる、こういう状況でございます。そしてもう二百海里時代が現実の問題として到来をしておる、こういう諸般の状況から、私は就任以来、一日も早くこの領海十二海里を設定をすべきものだということを閣内でも主張いたしまして、幸いにして関係閣僚の間でも意見が一致をいたしまして、そして閣議の了解事項にも相なりまして、ただいま関係省庁との間でその法制化につきまして作業を進めております。総理がアメリカから帰ってこられた直後におきまして、私は閣議決定をし、国会に提案をして御審議をお願いをする、こういうことになると考えております。  それから二百海里の問題につきましては、日本としては遠洋漁業国家でもあり、できるだけ資源の保存と有効利用という観点からいたしまして、日本としては国連海洋法会議の動きというものを注視をして、みずからこれを単独でやるというようなことは控えていった方がよろしい、こういう考え方で政府もずっと来たと思うのでありますが、しかし最近、米ソを初めカナダ、EC等々も海洋法会議の決定を待たないでもう二百海里に踏み切っておる、こういう状況でもあり、私は日本もこの際国益を守る観点からもいたしまして、五月の海洋法会議の推移を見た上でできるだけ早く日本としての方針を決定すべき段階に来ておる、こういうぐあいに判断をいたしておるところでございます。
  249. 山本悌二郎

    山本(悌)分科員 それで沿岸漁業の振興策というようなものは、具体的には大臣、何かお考えですか
  250. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 二百海里時代になりまして、日本の伝統的な海外の漁場における実績はできるだけ確保するという努力はしておるわけでありますが、いずれにしても漁獲量はある程度の削減は避けて通れない。そういたしますと、これを補完いたしますためにも、日本列島周辺の沿岸の漁場の開発、整備、資源をふやしさらに積極的な栽培漁業等の振興を図って漁獲を高めていく、こういう施策をする必要がある。またあわせて、とった魚はできるだけ高度に利用して、できるだけ多くの部分を国民食糧に回すような加工、保蔵、流通等の問題を改善をしなければならない、このように考えておるわけでございます。したがいまして、漁港の整備でありますとか沿岸漁業開発整備事業、これを五十一年度から二千億、七カ年計画で、御承知のように公共事業として実施をする、こういう事業を第一次、第二次、第三次、第五次というぐあいに積み重ねてまいりまして、日本列島周辺の漁場の開発と沿岸、沖合漁業の振興を期していきたい、こう考えております。
  251. 山本悌二郎

    山本(悌)分科員 大分先の方まで御答弁いただいてしまったのですが、いま大臣から話がありましたように、沿岸漁業、まあ遠洋漁業も同じでありますが、やはり漁港というものが非常に大切になってまいっておりますし、私どものところもかなり遠洋にも出ておりますし、また沿岸は御存じのとおりであります。イカ場がありますし、エビがありますし、いろんな漁場があるのであります。そしてまた新潟港にはかなりの大型の船も入ってまいりますが、そういう意味で漁港の整備ということについて、いまちらっと大臣からお触れになりましたけれども、二十七年第一次漁港に指定されまして、私の方ではちょうど私の出身地でありますが、佐和田町の沢根という漁港があるのですが、第一次漁港に指定されてその後ずっとやっておるのですが、なかなか漁港としていい漁港にならないのです。真野湾というわりあいと浅海でうまくない地域であるせいもあるのですが、この整備についてはどんなふうにお考えでしょうか。長官、御存じでございましょうか。
  252. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いま御指摘の佐渡の沢根漁港でございますけれども、これは第五次の整備計画において計画されておりまして、あそこは非常に波浪が高いということもでざいまして、小型漁船等の係留が非常にむずかしいという問題がございますので、防波堤を二百メートルくらい整備をするということで、四十八年から事業に着手いたしておるわけでございます。五十一年度末見込みでございますけれども、まだ完成はいたしておりません。大体百十メートルぐらいができ上がっているという状況でございます。  六次の問題は五十二年度から始めたいと思っておりますけれども、地元とも相談いたしまして、この防波堤をもう少し延長したり、別のところの防波堤もさらに考えるというような御意向もあるようでございますので、そういうようにさらに防波堤の整備強化というようなことを中心といたしまして、六次計画に着手いたしたい、かように考えております。
  253. 山本悌二郎

    山本(悌)分科員 佐渡の場合は、この沢根漁港ばかりではないので、漁港がわりあいといっぱいあるのです。両津もありますし小木もありますし赤泊もありますし、そういうことを含めてひとつ御検討願って、いま言う第六次漁港整備計画の中でできるだけひとつ——島国というのはそれが生命なんです。佐渡はお米の高でも、かなり島民が食べても余るほどあります。魚も十分あります。しかし最近は沿岸漁業がだんだんだめになってまいりまして、どうしても漁港の整備をしてやりませんとできません。  もう一つは、沿岸もだんだんすたれてまいっておる関係がありまして、養殖へ養殖へと切りかえつつあるのも、私は一つの行き方だと思っております。いまお話がありましたこの沢根の漁港の沖にカキの養殖をやらせておりますけれども、これもかなりの成果を少しずつ上げてきておるのですが、そういうことでぜひひとつこのところは目をかけてやっていただきたい、こう思っております。  それから農業基盤整備に関する問題でお尋ねを申し上げますけれども、何といっても農業問題の中で、ことしもお米の問題がこれからいろいろ話題になってくると思います。その中で特に基盤整備というのは重要な役割りを果たしてくることと私は思っておりますが、いまお話し申し上げました島国という特殊なところで、私の出身地でありますけれども、水には恵まれないのであります。ですから水力発電ができないというのはこれが一つの大きな原因で、おわかりのとおりでして、干ばつになりますと一番困るのです。そのために新穂村にあります大野ダムとか、今度佐和田町につくろうという石田川の上流ダムというようなものが一つの基準になっておりますけれども、この辺についていろいろ御配慮いただいておると思うのですが、その計画あるいは内容を、おわかりでございましたら聞かせていただきたいと思うのです。その前に、いわゆる基盤整備の振興ということについてまずお伺いします。
  254. 森整治

    ○森(整)政府委員 先生指摘のように農業基盤整備の進捗度といいますか、工期と申しますか、それが大変おくれておりましていろいろ御迷惑をかけておるわけでございますが、基本的には土地改良長期計画が始まりましてすぐに総需要抑制政策というのにぶつかりまして、四十九年、五十年と公共事業が抑えられ、それから逆に石油ショックの物価高というので、今度は工事費が上がるということで、出だしから非常にいろいろ問題があったわけでございますが、五十一年、五十二年というふうに見てまいりますと、最近は非常に予算額もういてまいりまして、一応十年計画のうちで五十二年を入れますと、前期五カ年ということになりますが、進捗率は三三・五%ということに相なっておるわけでございます。これは計画よりは若干低いものではございますけれども、後の伸びは平均一五・四%の伸びが必要だということになりますが、過去五カ年をならしますと一五・三%ということでございますので、五十二年段階での予算規模としてはまずまずのところへきたというふうに考えております。ちなみに工期で申しますと、二年から三年、一年というのもございますが、この一、二年でございますけれども残事業の工期が短縮されつつある、そういうことで今後とも全力を挙げてこの事業の進度を上げてまいりたいというふうに基本的には考えております。  それから先生指摘の佐渡の問題でございますが、一般的には離島というものにつきましては、内地、北海道、離島、沖繩、こういうふうに分かれておりまして、分けて扱っております。そこで、確かに御指摘のような非常に困難な地域でございますので、農業基盤整備の推進に当たりましては、内地に比べますと補助率を五%ないし一〇%高くしておることが一つでございます。それから団体営のクラスの事業につきましては採択基準を約半分、たとえば灌排にいたしましても圃場整備にいたしましても、内地では二十ヘクタール以上ないと採択しないということになっておりますが、それを十ヘクタールまで下げて取り扱いをするというようなことを図っておるわけでございます。  それで五十二年度予算では大体離島につきましては全体で約九十一億ということに相なっておりますけれども、特殊な地帯がございますからそれを除きますと、前年比一二二・五%ということで、特に県営の灌排事業につきましては全体で三億八千二百万円、佐渡のダムの経費もここに入っておりますが、三億八千二百万円というのは前年に比べますと一五五・九%ですが、そういう予算を計上しておるわけでございます。  先生指摘のように離島というのは確かにいろいろ地域的に考えていかなければならない問題でございますので、われわれも実情に即しましてなるだけその予算額は確保してまいるということで今後努めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  255. 山本悌二郎

    山本(悌)分科員 離島の問題の中で、先ほども私申し上げましたように、水資源というのが一番困るところなんですね。この対策というのは、いまのダムの問題が一つあるのですが、ほかに何か考えておられますか。いま私が申し上げたところのダムは、ことし恐らく調査費がつくかつかないかという段階だろうと思うのです。ぜひつけていただきたいのですが、いま言う三億八千二百万の中に入っておるかと思いますけれどもね。離島における水資源問題をぜひひとつ聞かせていただきたい、こう思っております。
  256. 森整治

    ○森(整)政府委員 地形にもよりますけれども、私どもいまのところ、特に佐渡、こう言われますと、恐らくダムしかないのではないだろうかというふうに思います。ほかの地域ではいろいろなことも考えておるわけでございますけれども、結局ダムに頼るということしかないんじゃなかろうか、いま専門家もここにおりますけれども、相談いたしましたが、どうもそれしかないんじゃなかろうかというふうに考えております。
  257. 山本悌二郎

    山本(悌)分科員 それではなおさらのことでございますから、もう一度お願いをいたしておきますけれども、いわゆる離島の不利、特にいま言う水資源の中では非常に悩んでおるところで、干ばつになるとどうにもなりません。河川が小さいために非常に困っておるのですね。これは佐渡に限らず、離島というのはもうそういう宿命を持っておるわけですから、ぜひひとつ目をかけてやっていただきたいし、離島の島民のために——佐渡というのは米も非常においしいし、田畑もよろしいところなんですよ。そういう意味では枯らしてしまうと全くだめになってしまいますので、ぜひひとつ御協力を願いたい、こう思います。  最後に、先ほども少し御答弁がありましたけれども、農業基盤の整備事業の実施面から見まして、補助率ですね、離島もそうですけれども、それも含めましての地域における補助率を上げていくというか、そういう面についてはどんなふうなお考えを持っているか伺いたい。
  258. 森整治

    ○森(整)政府委員 確かにその問題につきましては、事業によりますけれども大蔵省にも実は五十二年度予算についても要求したものもございます。しかし結局全体の公共の枠の中で補助率を上げるか、先ほど一番最初に先生指摘の問題、工期を継続事業に金をつけて短縮するか、どちらか選べ、こう私ども言われますと、やはりこの際はおくれている進度を取り戻すのが先決だろうというふうに判断をいたさざるを得ないわけでございますが、ともかくそれはそれとして、やはり補助率を高くしないと困るという問題もいろいろあるわけでございます。今後の努力の課題としたいというふうに考えております。
  259. 山本悌二郎

    山本(悌)分科員 私は非常に簡単で端的な質問だけをして終わらせていただきますけれども農林大臣、最後にもう一度お願いをいたしておきます。  日本を取り巻くいまの情勢というのは、大変厳しい情勢がたくさんあるわけです。ソ連においでになってイシコフさんと交渉された経緯もそのとおりですし、またアメリカとの間の問題もそうです。漁業を含めまた農業問題を含めて、これから食糧ということに対して大変大きな目を向けていかなくてはならない時代が来ておると思います。これは一佐渡島とか新潟とかなんというようなそんな小さな問題ではない。日本人一億一千万の生命にかかわる問題でございますので、どうかひとつ十分配慮をしていただいて、そうして二百海里問題、十二海里問題、それから私が先ほど御質問いたしました日本の周りにある小さな島々の離島の苦しみというものも十分配慮をしていただきまして、政治の中にこれを取り入れていっていただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  260. 片岡清一

    ○片岡主査代理 これにて山本君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  261. 上原康助

    上原分科員 最近、農業問題はわが国全体として非常に最重要視されてきている状況だと思います。特に、国内で生産できる農産物についてはできるだけ国内自給率を向上せしめるということ、従来のような農業の国際分業論ということに対してもいろいろと手直しをしていかなければいけないのじゃないのか、石油ショック以来食糧問題の見直しということで、高度経済成長下において衰退をしてきた農業というものを、もう一度国民的立場で考え直して、農業再建というものをやらなければいけないという認識がようやく出てきているのじゃないかという感じがいたします。最近の二百海里問題を含めて、国民食糧に対してのあるいはたん白資源に対しての不安というものも非常に拡大をされてきているわけですが、私は、そういう国民的な重要課題であるということを踏まえつつ、特に復帰後の沖繩の農業問題ということについて、わずかな時間ですからしぼってお尋ねをさせていただきたいと思うのです。  といいますのは、私も分科会なり、あるいは時折農水また沖特などでもお尋ねをしてきた経緯もあるわけですが、私たちは、当初から、沖繩の経済振興開発というものあるいは復帰後の海洋博プロジェクトとかそういう中で、もっと第一次産業というものを大事にしていかなければいけないということを非常に強調をしてきたわけですが、残念ながら復帰当初の政府政策なりあるいは進めてこられた施策においては、必ずしも農業や第一次産業を大事にするという方向じゃなかったような気がいたします。しかし、先ほど申し上げましたように、高成長から、どうしてもそういう路線ではいけない、やはり農業を見直していかなければいけないという国際的あるいは国内的な環境によって、ようやく農業問題に対しても予算措置を含めて、てこ入れをしようというある程度の転換がなされてきていると思うのです。  そこで、ちょうど復帰五年という節目にもなっておりますので、一体政府として進めてこられたこれまでのいろいろなたとえばサトウキビ、パイナップルの基幹作物を保護育成をしていくということ、あるいは基盤整備、土地改良、そのほか農業技術向上等々いろいろ力を入れてきておられるわけですが、この五カ年振り返ってみて、どういう面が前進といいますかよく推進をされ、沖繩農業を再建をしていく、あるいはもっと生産性を言われているように高めていくという場合には、どういうことを今後なしていかなければいけないか、どのように実態を把握しておられるのか、そういう点から政府のお考えなり今後の御方針をお聞かせをいただきたいと思います。
  262. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 沖繩県が復帰をされて満五年、六年を迎えようとしておるわけでございますが、沖繩県は離島もたくさんございます。それから海洋性亜熱帯の気候であるという特殊な事情もございます。私どもはこの沖繩県の気候、風土に合った農業の振興というものを特に考える必要があるということで、適地適産と申しますか、そういうものの生産の増強また農業体質の強化を図るように努力をしてきたわけでございます。幸いにして近年、沖繩の基幹作目でありますところのサトウキビでありますとか、あるいは肉用牛の畜産の関係でございますとか、あるいは冬、秋等の野菜の栽培の問題でありますとか、あるいはパイナップル等の問題でありますとか、ようやく軌道に乗ってまいりまして、生産意欲も非常に高まってきておる、私はこういうぐあいに考えております。したがいまして、今後沖繩のこういう基幹作目に重点を置きまして、そしてその振興のために必要な土地改良事業あるいはそれに対する生産構造改善等の助成政策、そういうようなものを総合的にひとつ対策を講じまして、今後とも沖繩の農業の発展、振興を図るように農林省としても最善を尽くしてまいりたい、このように考えております。
  263. 上原康助

    上原分科員 大臣の意欲と誠意はわからぬわけでもございませんが、歴代の農林大臣も大体そういうお気持ちなり方針というものをその都度明らかにしてこられたわけです。しかし、基幹作目にしましても、あるいは生産基盤の整備の面、経営の近代化、いわゆる農業構造改善等、さらにいま一つは、何といったって離島であるということと流通機構の整備ということも非常に不可欠の問題なんですね。もちろんこれらの基本施策を進めていくということは、ただ単に政府なり国の方だけに期待をするというわけにもまいらぬし、県なりあるいは関係団体、農民自体の努力というものも必要であるということを前提にして私は申し上げるわけですが、一つの基本的な認識として、これまでも毎年十月ないし十一月ごろになりますと、サトウキビの生産者価格をめぐっていろいろな議論を繰り返してまいりました。農民団体の要求に対しては、よくて大体五割ないし六割程度の価格にしか決定されてきていない。価格のことを言うと、いや生産性をもっと高めなさい。反収を上げないとだめなんだ、価格だけ上げたっていまのキビ作農家の問題は解決できないんだという、鶏が先か卵が先かというような議論になりかねない面もあったわけですね。しかし強調しておきたいことは、なぜこういう状態に追い込まれたかというその原因、遠因、背景というものをよくとらまえて施策を立てなければいかぬということですね。要するに、キビにしましてもパインにしましても、確かに沖繩の気候とか気象条件に合う、あるいはまたそういう作目しか生産できないという局地的な面もあるわけですが、ならして言えば、生産性が上がらないということは、農業基盤整備なり技術改革、試験場の問題を含めて、二十七年にわたって米軍の軍事支配下において、ほとんどなされなかったということが今日の格差を生んでいるわけですね。これを根本的に直していくということ、土台づくりはやはり国の大半の責任においてやっていただかなければいかない問題があると思うのです。  そこで、いまそういう方向に着々と進みつつあるということですが、一つ具体的な例を挙げてみまして、農業基盤整備ということを特に四十九年、五十年にかけて非常に力を入れてきているわけですが、現在基盤整備を要する耕地といいますか、地域に対して、一体どのくらいの達成率になっているのか、また基盤整備を必要とするものを、ほぼ本土水準といいますか、あるいは一定のところまで持っていくにはあとどのくらいかかって、どのくらいの予算が必要とお考えなのか、そういう点なども明らかにしていただきたいと思うのです。
  264. 森整治

    ○森(整)政府委員 全体の見通しとしまして、先生御承知のように土地改良長期計画で正式にはという問題がございますが、一応沖繩分といたしまして千七百億円ということに相なっております。そういうことで、達成率ということになりますと、沖繩分全体といたしまして五十二年の予算、これは相当伸ばしておりますが、それを含めますと二三・五%ということに相なっておるわけでございます。
  265. 上原康助

    上原分科員 五十二年の予算分を入れてそれを達成していくと二三・五%になるわけでしょう。そうすると、その達成する年度といいますか、時期はいつまでを見通しておられるのか。たしか五十年度では進捗率はまだ一六%弱ですよ。そうじゃないですか
  266. 森整治

    ○森(整)政府委員 ちょっと手元に資料がございませんが、土地改良長期計画は四十八年から五十七年までの十カ年間ということになっております。五十二年がちょうど五年目に当たるわけでございまして、その五十二年を含めますと二三・五。ちなみに逆に申しますと、その千七百億の計画を達成するには、今後二〇・二%毎年伸ばしていかなければならない、こういうことに相なるわけで、内地よりは確かにおくれておるということは認めざるを得ません。
  267. 上原康助

    上原分科員 十年計画で大体千七百億円を投じてやる、そして一定水準にまで持っていくには二〇・二%程度の達成率、かなり高いテンポといいますか、相当テンポを上げないとできないわけですね。基盤整備の問題にしましても、もちろんこれはそうブルドーザーで敷きならしてやれるような環境、状況でもないですから、いろいろ手順があってなかなかむずかしいという面もありますが、少なくともこの十年計画で立てられているものについては、単にそういう計画にはめ込むのでなくして、できる面からどんどん拡大をしていくという臨機応変の基盤整備の方向というものもやっていただきたいということ、それが必要だと思うのですね。基盤整備は相当拡大をされている。構想はできたけれども、しかし実際問題としてはまだ二〇%以下の達成率でしかない。これを全体的に達成するにしても、恐らく六割程度しか達成できないでしょう。その面で大変おくれをとっているということと、もう一つは、これとの関連において、特に沖繩農業のことを、キビだけでは、単作方式ではいけないとか、よくいろいろ酷評なさる方もおるのですが、私は、知恵とそれだけの政策を取り入れることによってかなりの面まで改善していくことができると思うのです。  いま一つ非常におくれていると思われるのは、土壌改善だと思うのです。もちろん基盤整備と不離一体の形でなされるでしょうが、土質改良、そういうことに対してはどういう御計画を持っておられるかということ。  いま一つ、私たちが一番感ずることは、ようやく最近、いま指摘をした問題等については、県も、あるいは関係者も、それだけ力を入れていく傾向が出てきましたが、もう一つ大事なことは、サトウキビにいたしましても、NCO三一〇号というのは長い年月たっているわけですね。パインにしましても、品種改良というものが全然なされていない。そういうことなどに対する技術改良、いわゆる試験場の設置の問題等は非常なおくれをとっているんですよ。こういうことについてやらない限り、私は本当の農業の発展というもの、振興というものにはつながらないと思うのですね。特にサトウキビの原原種改良問題なども、五十二年度予算でも実現を見なかったはずなんです。こういう最も基礎的な問題などがなぜおくれをとるのかということ、これについてはどういうお考えを持っておられるのか、今後の見通しなど含めて明らかにしていただきたいと思います。
  268. 堀川春彦

    堀川政府委員 まず、私から、先生指摘のうちの土壌改良問題につきましてお答えを申し上げます。  沖繩の土壌は、酸性土壌あるいは重粘土壌というような性質の悪い不良土壌が広く分布しておることで知られておるわけでございます。その上、本土に比しまして高温多雨でございますので、有機物が分解して流出し出す、それから土壌養分も流出がはなはだしいというような、土壌条件が悪いということが言えるわけでございます。  このため農林省におきましては、従来から、これら不良土壌に対します土壌改良対策の方法を明らかにすることが必要であるということで、試験研究も推進してきておるわけでございますが、特にその実行面におきまして、土壌調査専任の国庫補助職員を農業試験場に三人配置をいたしております。  それから、土地の性状についての調査をする必要がございますので、これにつきましても、内地ではかねて古くからやっておるわけでございますが、沖繩は五十年度から三カ年計画で地力の基本的な調査を実施いたしまして、その結果を取りまとめて、どういう対策を講ずるか、基本的な方向づけをしたいというふうに考えておりますほか、改良普及組織に地力の診断施設を設けて、そして簡易な地力診断の器材等をもちまして地力診断をして、どういう作物をどのようにつくったらよろしいかというようなことの普及に努めておるわけでございます。  それからまた、これはハードウェアの方になるわけでございますが、沖繩の主要作物でございますサトウキビにつきまして、土壌改良機械の導入事業を四十七年度から進めてきておるわけでございます。深耕用の機械、トラクター、プラウ、ハローというようなものを導入をしてきておるわけでございます。また、パイナップルにつきましても、特産果樹生産出荷合理化対策事業というようなことで、機械導入を図ってきておるわけでございますが、特に五十二年度におきましては、これらの対策のうち、土壌改良の関係を拡充強化する方向で考えておりまして、たとえばサンゴ礁排除用の機械を新たに助成対象として加えるというようなことを考えて、実行してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  269. 上原康助

    上原分科員 五十三年度までに調査結果をまとめて、もっと積極的にやるということのようですが、これは構造改善の一環としてこの問題なども積極的にやらないと、やはり基礎的な問題が全然なされていないところに、生産向上というものがなかなか上がらないというハンディがあるわけですから、これも積極的に進めていただきたいと思うのです。  それと、時間の関係もありますので、いま一つ試験場設置の問題、技術改良、技術といいますか、技能の向上ですね、農業技術向上、これなども私は前々からもっと力を入れるべきだということを指摘をしてまいりましたが、現実問題としてなかなか進んでいない。国の熱帯農業センターが一カ所と、県の農業試験場が一つ、それから家畜試験場というふうに、一応あるにはありますが、やはり沖繩農業をどう位置づけるかという問題とも関連いたしますが、亜熱帯地域ということをもっと有効に生かすとするならば、もう少し技術改良、技術者の養成等を含めて、あるいは品種改良問題等を含めて、こういった試験場の問題とか技術者の養成ということに対しては積極的な施策ということがない限り、一定のところまでは土地改良なり、そういう面で進歩するかもしれませんが、やはりまた停滞がくると思うのですね。これについてどういうお考えなのかお聞かせをいただきたいと思うのです。
  270. 下浦静平

    ○下浦政府委員 試験研究につきましてお答え申し上げます。  沖繩における試験研究でございますけれども、これはただいま先生からお話もございましたような各種試験場、研究所、さらに国の機関といたしましては九州農業試験場その他の専門場所というものがそれぞれタイアップをいたしまして研究を進めてまいっておるところでございます。  これまでにおきましても、先ほどもサトウキビにつきましての御指摘がございましたけれども、二十八年に導入されました現品種と申しますか、のほかに、サトウキビにつきましてNi1、L60−14等の新品種が育成をされておりますし、さらに、本年じゅうには新しい品種が登録をされるということになろうかと存じております。これはまだいろいろと、サトウキビの機械化の問題でございますとか、その他の残された問題等でございますけれども、今後ともこの試験研究の推進につきましては十分努力をしてまいりたいと考えております。  それから、これも御指摘がございましたが、県の方にはただいま三つの——二つでございますか、指定試験をお願いしております。これは十分の十の国の負担、こういうことになっておりますが、来年度におきましてはミバエの関係で指定試験をさらにお願いする、これに伴いまして、従来からも国から四名の研究員が沖繩の方に人事といたしまして派遣をされておるというようなこともございますし、さらに県の段階の試験場の整備でございますけれども、これにつきましては四十七年度から始めておりまして、五十六年度までに整備を終わるという計画で、来年度予算におきましても二億八千万余を予定いたしておるということでございますので、これらを総合いたしまして、今後とも十分研究対策の整備、それから研究の推進ということには努力をいたしてまいりたいと考えております。
  271. 上原康助

    上原分科員 どうも三十分という時間はすぐたっちゃって……。  この点はもっといろいろ問題提起したいのですが、時間がありませんのでいずれかの機会に譲りますが、ぜひもっと積極的に進めていただきたいと思うのです。  それで、いま一つ、復帰特別措置法の延長問題との関連において、消費者米価と麦の売り渡し価格のいわゆる食管制度の特別措置の件なのですが、これは多くを申し上げるまでもなく、沖繩復帰に当たっての県民生活との関係では、この特別措置は最も大きな柱となっておったわけですね。まだ結論を出していないようですが、どういう御検討をしておられるのか。県からは、徐々に段階的に価格を本土並みに上げていくということをある程度考慮しつつ、向こう五カ年ないし八年の延長を要請されていると思うのですね。これについて、よもや一挙に本土並みということじゃないと思うのですが、県民、県からの要望を入れて改定する方向で結論をお出しになることになると思うのですが、御見解を賜っておきたいと思うのです。
  272. 大河原太一郎

    ○大河原政府委員 諸前提は先生御案内のことでございますので省略させていただきまして、復帰時から五年、これは本土とアップ率を同じにしてまいったわけでございますが、その後三年間で同水準に近づけるということに相なっております。これが取り扱いをいかがするかという問題だと思いますが、これにつきましては、最近の価格関係を見ますと、やはりアップ率が同率でございましたので、本土との価格関係の開差が復帰時よりもさらに大きくなっておる。たしか六万七千円ぐらいの開差が十二万四千円ぐらいになっておる。これを一挙に同水準へ近づくというためには、大幅な引き上げを要するという問題がございますので、取り扱いはきわめて慎重でなければならないという点で、沖繩県当局その他からただいま意見を十分聴取いたしまして、関係方面と協議いたしまして、よろしく結論を得たいということで進めておるわけでございます。
  273. 上原康助

    上原分科員 いつごろまで結論は出ますか
  274. 大河原太一郎

    ○大河原政府委員 お答え申し上げます。  御案内のとおり、五年間の期間が五月たしか十四日でございますか、私どもといたしましては五月十五日以降三年間の調整期間に入る。この三年間をもっと延ばすかという問題でございますので、私どもとしては四月中には結論を得たいというように考えております。
  275. 上原康助

    上原分科員 最後に、大臣に要望をして、できればお答えもいただきたいのですが、私はもっと夢のある話も沖繩に必要だと思うのですよね。たとえば亜熱帯地域という面での亜熱帯の国立の植物園をつくる。沖繩に行けば、学術研究を含めて観光との関連においても、どういう亜熱帯植物でも、子供さんでも高校生でも中学生でも大学生でも見られるというような、もっとそういう本当の沖繩の特性を生かしたような農業のあり方、あるいは沖繩の産業の開発、一次産業との関連において、そういう構想も農林省として進めて、もっと希望の持てる発想というもの、構想というものを打ち出していただきたい、そういうこともひとつ御検討いただきたいと思いますが、いまさっきのこととの関連を含めて、大臣の改めての見解を賜って、質問を終えたいと思います。
  276. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 冒頭に申し上げましたように、沖繩の海洋性、亜熱帯性の気候、風土、これは特殊な環境下に置かれておるわけでありまして、それに即応した農業の振興、その一環としてのいまの御提案があったわけでございますが、これらの問題は、総理府の沖繩の開発計画等ともよくにらみ合わせまして、今後検討の課題として進めていきたい、こう思っております。
  277. 上原康助

    上原分科員 どうもありがとうございました。
  278. 片岡清一

    ○片岡主査代理 これにて上原君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部行雄君。
  279. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 それでは、現在国が農業後継者育成のためにいろいろな施策を行っておりますが、その施策の主なもの、そしてそれに対する基本的な考え方、また現在の農村の置かれておる実態に対する認識等をお聞かせ願いたいと思います。
  280. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、日本農業を振興してまいりますためには、一つには農用地の確保、土地の問題がございます。もう一つは、やはり農業従事者並びに優秀な後継者の養成、確保、この二つがやはり基本である、このように考えておるわけでございまして、この御指摘の農業従事者の確保の問題と後継者の育成の問題につきましては、農業政策の今後の大きな柱として力を入れてまいりたいと、こう思うわけでございます。  それにはまず農民の方々に明日の日本の農業に対して明るい展望を与えること、魅力を持ってもらうということ、そういうことが必要だと、こう考えておりますし、また地域の状況にマッチしたところの農業の振興ということが大事だ、このように考えるわけでありまして、農村の地域の方々の創意とくふう、またいろいろのその地元の将来の農業のあり方等に対して意欲を持っていただけるような、そういう盛り上がるような意欲と振興計画というものをみずからつくっていただくというようなことも私は非常に大事だ、このように考えておるわけであります。  昭和五十二年度の予算におきましても、そういう観点から、地域農政特別対策事業というものを新たに興すようにしたわけでございます。また、農業者の技術研修あるいは研究等のために、各県にありますところの農村青年の技術研修等の機会をふやしていく、またそういう体制の整備を図る、あるいは農業者大学の問題に力を入れる、そういうような総合的な施策を図ってまいりたい、このように考えております。
  281. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 その農村の実態に対する認識という点ではお答えがありませんでした。いまなぜこんなに後継者の問題が重要な政治問題になってきているか、それには私は日本農業のあり方という基本問題に触れるし、また、今日まで政府がやってきた農政の欠陥がいまようやく現実になってきたと言わざるを得ないと思うのです。現実に私が約五百戸の山村を調べましたところ、その中でいま結婚適齢期で結婚のできない青年たちが八十三名おった。こういう現実は、一体こういう枝葉末節の対策だけで処理できるのかどうか、この点についてお伺いします。
  282. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 確かに御指摘のように、経済成長の過程で他産業と農業との間の所得の格差も相当開いておった時代がございます。そして他産業へ若い生産労働力、若い諸君が相当多く流出をしたという事情もございます。そういうような状況下におきまして、いま御指摘になったような深刻な問題が農村に生起してきておるわけでございますが、最近、経済社会情勢も変わってまいりまして、高度経済成長から安定の方向に向かってきておる。農業復帰の傾向も出てきております。また、農業に対する施策も総合的に進め、また、生活環境の整備、都市と農村、山村との間の生活環境等の立ちおくれ、こういう問題につきましても、近年努力をするようにいたしておりますので、そういうような総合的な対策を進めることによって、私は、農村、山村の今後の安定と振興を期してまいる考えでございます。
  283. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 時間がありませんので、ここでは特に後継者育成の問題にしぼって御質問いたします。  今度政府の出された後継者育成の対策は、いろいろと細かにありますけれども、大まかに言って、大体後継者育成の教育に重点が置かれているように思われます。  そこで私がお尋ねしたいのは、いま、教育で後継者の育成、後継者が農業にとどまるということが果たして可能だろうか、そういうことを考えるわけです。たとえば農林高校を卒業した者が、それではどれだけ農業に就業しておるのか、これらについての具体的な数字がもしありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  284. 堀川春彦

    堀川政府委員 新規学卒の中で高卒で就業をしておりますのは、五十一年三月の数字で八千人でございます。
  285. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 それは何%ですか、農業高校は。
  286. 堀川春彦

    堀川政府委員 総体が一万人でございますかち、高卒の八千人は約八割ということになるわけでございます。
  287. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 これはどういう統計がそういうことをしたのかわかりませんが、私の方の農業高校は、卒業者の八割が他産業に就職するなりあるいは進学するなりしておるわけです。私は、こんなでたらめな数字は、いままでどんな統計書を見ても、聞いたこともないし見たこともありません。
  288. 堀川春彦

    堀川政府委員 ただいま申し上げましたのは、新規学卒の中での、中卒もございますので、の比率を申したわけでございます。
  289. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 農業高校ですよ。
  290. 堀川春彦

    堀川政府委員 農業高校という形での統計はいま手元にございません。そこで、新規学卒全体に対しましては、就農者が一万人でございまして、全体に対する比率から見ますと三・六%、したがいまして、そのうちの八割が高卒でございますから、高卒に限って言えば二・数%ということに相なる、三%前後の数字になるわけでございます。
  291. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 この数字は後から私も十分検討をして……。ここで数字の争いをする時間もございません。  問題は、そのように専門の農業高校を出てさえ他産業に多く流出してしまうという現実なんです。これを本当に農業につかせていくためには、私は、教育だけでそういうものの成果をおさめられるとはとうてい考えられない。もちろん教育が重要でないとは申しません。しかし、一方において、本当に農業をすることによって将来に夢と希望が確信できる、利益が保証される、そういうものが与えられてこそ教育の面も生きてくるし、そして後継者の育成というものが万全を期されると私は思いますが、その点はいかがでしょうか。
  292. 堀川春彦

    堀川政府委員 その点は、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、総合的な施策を推進することによって後継者確保を図るとおっしゃられましたのと全く同じに私考えております。研修教育は大変重要でございますが、それだけで後継者が確保できるというふうに思っておるわけではございません。
  293. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そこで、研修教育のほかに農業後継者対策の育成資金の貸し付けということをやっておるようですが、私は、この貸付制度を見ますと、全く仏つくって魂入れずという感がしてならないわけです。というのは、大体今度据え置き期間を一年にしましたが、限度額はいままで二百万円のを三百万円にしたわけです。しかし、実際に後継者が計画的に農業をやっていこうとした場合、たとえば果樹栽培をしようとした場合に、一体リンゴやブドウは何年でなって、そうしてそれが経済ベースに乗っていくには何年かかるのか、このくらいのことは当然考えられなければならないと思うのです。これは果樹全体に、大まかに言えば大体三年でなり始める。これはもちろん売るわけにはまいらぬです。そうして、何とか経済ベースに乗せるまでには七、八年かかる。だとすれば、その七、八年の据え置き期間というものを考慮しないでその翌年から返済させていく、そういうことになっていったのでは、後継者はますます借金を背負ってしまって、とてもじゃないがそういう計画ができなくなる。そうなると必然これは別な方に使わざるを得ない、こういうことになって、実際の後継者育成になっていない、こういうふうに思いますが、その点はいかがでしょうか。
  294. 堀川春彦

    堀川政府委員 先生の仰せられましたのは、後継者育成資金のうち部門経営開始資金のことについての御指摘と思うわけでございますが、これにつきましては、貸し付けの限度額は最高で二百万円、償還期間は五年以内、据え置きは一年と現行でも認めておりますが、それのうち償還期間の点につきまして問題を御指摘されたと思うわけでございます。(渡部(行)分科員「据え置き期間です」と呼ぶ)私どもといたしましては、この改良資金の部門経営開始資金は、これは独立した経営者としての自己回転をするための貸し付けだというふうには考えておりませんで、特殊な部門をお父様のやっていらっしゃる経営とあわせまして息子さんが開発をしたいというときの、呼び水としての助けというふうに考えておりますので、金融的な厳密な考え方で据え置き期間の設定なり償還期間を設定しておるわけではございません。しかしながら、現行制度におきまして資金需要はますます高まってまいりますので、先生御承知のとおり、五十二年度からはこの部門経営開始資金の貸付限度の最高を二百万円から三百万円に、それから、複合部門をやる場合には特認といたしまして四百万円に上げたい。さようなことになってまいりますと当然のことながら償還の問題も出てまいりますから、現在法律で五年以内と最高を切っておりますものを、七年以内まで延長をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。この場合、据え置きにつきましては一年認めておりますのをそのまま据え置きというふうに考えておるわけでございます。いずれにいたしましても、改良資金の貸し付けは純然たる金融ベースでの考慮ということとちょっと外れる面がございますので、さように扱っており、また今後扱ってまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  295. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 それではこのお金というものは、私が後継者であるという趣旨のことを書けば、事業計画なりそういうものは一切必要としないわけですね。
  296. 堀川春彦

    堀川政府委員 これは事業計画を出していただきまして、特に指導金融でございますから、無利子の貸し付けでもございますし、改良普及所が積極的に参加いたしまして、内容を適正なものにして、それに基づいて貸し付けるということにしております。
  297. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 だから、話がちぐはぐになっておると思うのですよ。最初はただお父さんと一緒に農業をやれば、そういう趣旨で貸し付けるのだ、決してこれは新しい事業をもくろんで貸し付けるのではないのだ、こういう答弁であったら、今度は事業計画を基礎にして判断するんだと言う。その事業計画というものは、やはりみんな新しい事業というものを取り入れながら現実にはやっておるわけですよ。だから、その事業の達成というものに対する判断がなされないでただ貸し付けたって、それは何にもならぬじゃないか。むしろ、かえって後継者を苦しめる結果になりはしないかということなんです。
  298. 堀川春彦

    堀川政府委員 先ほども申し上げましたように、この資金の貸し付けは、経営の学習資金を貸し付けるという性格を基本的に——新経営を学習するための、しかし、実地にやってみるわけでございますから、その資金を貸し付けるという性格を持っておるわけでございまして、それだけで完結しまして、たとえば酪農経営でございますとか、その他の経営が一人立ちできるという形のものではございません。したがいまして、おのずからその貸し付けをいたしますに当たりまして、その学習の内容も一定の規模の制約があるわけでございます。本格的に一つの新たな部門で経営を拡大していくということになりますと、これは別途、農林漁業金融公庫資金に総合資金というような制度がございまして、もちろん学習をこういう改良資金でやったりして、自信をつけた上でそういうものに進むわけでございます。そういった資金の貸し付けが行われます場合には、貸付限度もずっと高うございますし、償還期間もずっと長い、こういうことになるわけでございます。
  299. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 それは後継者育成とは違うでしょう。農林金融の総合的なものは私だって知っていますよ。そうではなくて、いましぼっておる後継者育成という名のもとに貸し付けるのに、しかも、それが事業計画を出させておいて貸しつけるには、その貸し付けた金がどのように有効に作用し、そして、そこから後継者たちが利益を得ているか、このことを考えないで、ただ学習のために三百万円も貸し付けて、それでは、本を買ったって本だけ積んでおいたらそれでいいわけですか。そういうものじゃないと思うのです。いずれにせよ、後継者がどういうふうに農村に落ちつくかということは、先ほど言ったように、まさにその一つの制度資金を通して、なるほどおれはこういうふうな農業者になりたい、そのためにはこういう事業をやってみたい、そういう意欲を燃やしてこれに取り組むわけですよ。それに対する本当の温情があるならば、やはり据え置き期間は最低五年以上、そうして償還年限は十五年とか二十年に延ばして、本当にみんなが喜んでやれる、そしてその効果があらわれる、そういうものとしてこの制度資金を考えるべきではないかと思うのです。
  300. 堀川春彦

    堀川政府委員 学習というのが、ちょっと私の言い方が悪かったのかもしれません。実地に新しい経営をやってみるという意味での学習というつもりで申し上げたわけでございます。  ただ、先生のおっしゃるように、非常に貸付金も多額にしまして、償還期間もその作目の経営の回転に合うようなものにするということであれば、これは通常一般の金融の考え方に立つわけでございまして、そういうことでございますと、やはり公庫資金とかそういった形の貸し付けということになるのだろうというふうに思うわけでございます。ただ、改良資金の貸し付けにいたしましても、私ども、先ほど申しましたように、貸付期間等の償還条件ができるだけ農家の要望の実態に沿ったものになるようには、今後とも改善を検討してまいりたいと思っております。
  301. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 公庫資金というものの利用は、これは農民の基本的なものとして利用されていることは承知しております。そうでなくて、後継者ということで特別にしぼってこういうものがあるならば、それをもう少し後継者の本当の生の声にこたえるように善処する考えはないかどうか、これをお聞きします。時間がありませんから簡単に言ってください。
  302. 堀川春彦

    堀川政府委員 今回も五十二年度予算で改善を図っておるところでございまして、今後もそういう方向で努力をしたいという気持ちは持っております。
  303. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 次に、繭の問題についてお伺いいたしますが、繭と生糸の基準価格は、どんな方法で決められておりますか
  304. 堀川春彦

    堀川政府委員 繭糸価格安定制度における基準糸価の決定は、繭糸価格安定法に規定があるわけでございまして、生糸の生産条件及び需給事情その他の経済事情から見て適正な水準に決定するということになっておるわけでございます。この糸価は現在自由な価格形成の中で行われておるわけでございまして、したがいまして、そういう趣旨から、基準糸価をどう設定していくかということは、各種の要因を総合勘案して決めるという仕組みになっております。  それから、この基準糸価と連結いたします繭価でございますが、この繭価も、実際には繭生産者と製糸業者との間の繭価協定で決まるわけでございますけれども基準糸価と関係のございます基準繭価というものをにらんで、協定が生産者と需要者の間に行われまして決められる、かようになっておるわけでございます。
  305. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 この繭と生糸の価格の決め方は、私は非常に無原則なやり方ではないかと思うのです。この中で、農業者のいわゆる必要な諸経費の補償、それから農業労働に対する補償という考え方が全然ないわけで、したがって、そのときの繭の変動によっては非常に農業者が困ってしまって、莫大な借金を背負わされる、こういう結果が現実に出ておるわけでございます。  そこで、五十二年の繭の生産費をその団体が計算しましたのを見ますと、繭の場合一キロ当たり二千四百二十五円、生糸の場合は、これも同じ五十二年ですが、キロ当たり一万六千四百六十一円、こういうふうになっておるのです。しかも、この内容を見てみますと、労働賃金のとり方が非常に安いわけです。それは米価のときのような賃金のとり方でなくて、八業者ぐらいに分けて、それらの平均賃金をとって、非常に安い。しかも五十一年の適用の家族労働費を見た場合、これは一日換算で米と比べると、米の方が六千八百五十七円、これに対して繭の方は三千百七十円、こういうふうに安いわけです。ですから、こういう同じ農業に働く農民の労働の価値というものがこんなに格差をつけられては、どうにもならないのじゃないか。この辺に対する価格の考え方をお聞かせ願いたいと思います。  そうして、五十二年適用の繭の基準価格、いわゆる繭価ですね、それから基準糸価、これはいまどのように考えておられるか、御質問いたします。
  306. 堀川春彦

    堀川政府委員 先ほども答弁しましたように、生糸という商品は統制をしておるわけではございませんで、一定の価格安定帯の中でその値段が動く、生糸の値段の動きによってまた繭価も影響を受ける、かような仕掛けになっておりますので、たとえば米との対比で先生指摘になったわけでございますが、米のように食管が直接統制をやりまして、これを農家から買い入れ、管理し、そして消費者のところまで責任を持って届ける、こういう仕組みの買い入れ価格等の問題とは非常に違いますので、その点やはり安定帯の価格の幅の中で適切な動きをするようにということが趣旨で価格が決められるわけでございますから、したがいまして、需給実勢というものを無視して価格を決めることは不可能であるというふうに思っておるわけでございます。さような基本的な制度仕組みになっておりますから、私どもも養蚕農家の所得につきましては、先ほど先生指摘のように、米の時間当たり家族労働報酬とたとえば繭の時間当たり家族労働報酬との間に現実に差があるということ、それはそのように思っておりますが、しかしこの辺は米という商品と、それから繭という商品との違いもございます。経営における地位、その他の点も違います。いろいろそういう事情もございますので、できるだけ糸価、繭価がいまの価格安定制度もとにおいて適正に決められることが必要だ、こういう考え方で決めてまいりたいと考えております。
  307. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 それでは自由経済の成り行きに任せるという考え方に受け取らざるを得ないのですが、しかし、本当に国内で需要と供給のバランスの中から出てくる価格ならば、私はそれでわかります。しかし、いま通産省が行っておる輸入の面を見ますと、生糸は五十一年四月から十二月までに四万八千三百六十俵買っているのですね。それが今度、五十二年二月告示ですか、これによると六万四千七百四十俵、これだけ生糸を買っているわけです。そうして、繭撚糸においてはこれまた非常に大きく伸びて、かつての約四万俵から今度は五万三千俵、そうしてそのほか絹織物、これも莫大に伸びてきておる。しかも中国と日本は二国間協定を正しく守っておりますからこの問題には大して問題はありませんが、特にひどいのは韓国からの輸入をうんとふやしておる。そうしてまた第三国と申しますかその他でアメリカ、香港、こういうところからも輸入をどんどんふやして日本の繭生産者を圧迫しておる、こういうふうになると、私は農林省政策というものは日本の農業を守るためにあるべきだと思っておったところが、そうではなしに、逆に日本農業の中で日本農民をどうしぼり取るか、こういうふうな立場で農業政策というものが考えられているのではなかろうか、こういうふうに考えざるを得ないわけですが、この点が第一点。  そうして、時間が来ましたから最後に大臣にお伺いしますが、昨年の米価を決める際には大臣は六十キロ当たり一万六千三百八十一円の諮問案としてこれを出されて、そして閣議決定が、政府決定が六十キロ当たり一万六千五百七十二円、この決定の経過の中で私は不思議に思うのは、農林大臣が本当に日本農民の父親のような立場で農政を考えているとするならば、まず農林大臣から出される諮問案というものは相当高い値段で出されなければならないのではなかろうか。それが閣議で他の大臣からもっと上げなさいというようなことで上げられるということは、逆に農林大臣は農民を抑えるための大臣ではなかろうか、こういうふうにこの経過から考えざるを得ないわけです。これから六月、七月にまた生産者米価闘争が始まりますが、そういう際に自民党の働きかけによって米が上がったんだ、こういうサル芝居はもうやめて、そうして本当におれは農民のためにやってやる、そういう姿勢を出し、高い諮問案が出て、それが審議会である程度抑えられる、そうしてさらにそれが閣議で抑えられてくるならば、農林大臣はなるほど農民のためにやっておる、こういうふうに考えられるわけですが、その辺に対する所信のほどをあわせてお聞かせ願いたいと思います。
  308. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 昨年の米価の決定に至る経過につきましては私もつまびらかにいたしておりませんが、いま渡部さんがおっしゃったように、私は生産農民の諸君の立場に立ちまして最善を尽くすつもりでございます。
  309. 堀川春彦

    堀川政府委員 先生から輸入の問題に触れられたわけですが、私も全く輸入まで含めてフリーマーケットになっておるというつもりで申し上げたわけではございません。輸入につきましては秩序ある輸入を図ることが大事だという観点から、特に大口の輸出国でございます中国と韓国に対しましては昨年春協定を結びまして、目下その協定を実行中でございます。そういうことで秩序ある輸入を図り、今後もそれを続けていきたいというふうに思っております。ただ、これらの国とその他から入りますものの総体を合わせますと、これは五十歴年では、織物も含みまして換算しての数値でございますが、十五万五千俵ぐらい程度ありましたものが、五十一年は十五万俵程度に落ちたわけでございますが、それにしても国内の総需要の三分の一程度を輸入が占めておるということは大変なことでございまして、私どもも生糸の一元輸入の当分の間の実施ということで生糸をコントロールするほか、織物、撚糸につきましては通産所管物資でありますが、通産省ともよく相談をいたしまして、この二国間協定等でできるだけ適正な必要量が入ってくるというふうに努めるようにする所存でございます。
  310. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 以上で質問を終わります。どうもありがとうございました。
  311. 片岡清一

    ○片岡主査代理 これにて渡部君の質疑は終了いたしました。  次に、宮井泰良君。
  312. 宮井泰良

    宮井分科員 私はきょうは特に二百海里漁業専管水域設定に伴いまして、その影響によるスケトウダラの高騰、そしてそれが中小かまぼこ業者に影響を与える、ひいては消費者に影響を与える、主にこういった観点で質問を行いたいと思います。  その前に一問だけ松くい虫の対策につきましてお聞きしたいと思います。  御承知のとおり、松くい虫の被害は全土にわたっておるわけでございますが、山口県の東部におきましても非常に猛威をふるっておるわけでございます。特に柳井市を中心にいたしまして、平生、田布施周辺八町の被害は県下全体の半分を占めております。  そこでお尋ねしたいことは、一つ目に防除対策、それから二番目には、枯れ木の早急処置、これは特に地元では強い要望がございます。もうどうしようもないということになっておりまして、私どももよく大島郡というような島を車で走るときがありますが、枯れ木が道路に落ちてきまして交通事故にもなりかねません。また三つ目には、被害林跡の植林対策、それから四つ目には、被害林の所有者への助成補助、五つ目には二次公害、これはいわゆる地盤沈下、風水害等の被害ですね、地崩れ、こういったものが二次公害として災害として影響が起きてくるわけでございますが、この五つの点につきまして積極的な取り組みを望むものでございますが、御見解をお伺いいたします。
  313. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 松くい虫の被害につきましては、ただいま先生おっしゃいましたように、全国で面積にいたしまして約四十五万ヘクタール、材積で百万立方に及ぶものがただいま被害に遭っておりまして、私どもといたしましても、早急にこの激甚的な被害をおさめるために、ただいま国会に特別措置法を提案いたしまして御審議をお願いしておるわけでございまして、できるだけ早く松くい虫がただいまのような激甚な被害から平常的な形になるように努力してまいりたいというふうに考えております。  そこで防除対策でございますけれども、従来から松くい虫の防除につきましては、ただいまございます森林病害虫等防除法という法律によりまして、主として立木駆除あるいは焼き払い等、さらには一部薬の散布という形でやってまいりましたけれども、きわめて激甚な被害に対応するための処置としては非常に問題がある。そしてなかなか蔓延がおさまらないということで、いろいろ林業試験場を中心に研究いたしました結果、どうしてこれだけ松くい虫がばっこするかということにつきましての科学的なメカニズムが解明できましたので、その対応に一番よろしい、そしてきわめて安全性も高いということで、ただいま御審議願っております特別措置法は、薬剤の空中散布を中心とする予防という形で松くい虫の蔓延を防ごうという対応を考えております。  したがいまして、今後はこの法律が成立した暁には、私どもといたしましては空中散布を中心にいたしまして徹底的な予防をすると同時に、現行法によりまして行い得ます立木の伐倒あるいは焼却等を積極的に進めてまいりたいというふうに考えております。  それから枯損木の処置でございますが、これもいま申し上げましたように当然枯れてしまった木は除去する方が得でございますし、早急にこれが除去できますように現行法によります枯損木の伐倒を推進すると同時に、全面的に造林等で復旧する場合には、ただいま一般の造林におきましてもこういう被害木の枯損木の伐倒ということにつきましては補助を出すことにいたしておりますし、さらに特殊林地改良事業というのがございます。これにつきましては、その採択条件の緩和等を考えまして、松くい虫跡地の造林を積極的に進めてまいりたいというふうに考えております。  そういう観点から、先生指摘の助成の問題でございますけれども、一般の造林よりはこういう松くい虫によりまして被害を受けたところについては特別な助成を考えて、的確な復旧造林ができますような努力を私どもといたしましても対応しておる次第でございます。  それから二次公害の問題がございましたけれども、松くい虫によって直接被害を受けました林地があったために災害が出た、あるいは沈盤沈下が出たという事例はなかなかきわめがたい問題でございまして、当然そこに集中豪雨的な豪雨がございまして災害が出たという例もございます。この辺につきましては、私どもといたしましては、治山事業を積極的にそういう地域においては進めまして、予防治山あるいは復旧治山等で国土保全に十分対応すると同時に、また保安林の改良事業で対応できますところにつきましては保安林改良事業等で対応し、国土の保全等につきましては十分配慮してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  314. 宮井泰良

    宮井分科員 地方自治体でも努力をしておるわけですが、何分予算という関係で非常にむずかしい点もございますので、国の方で積極的な援助をお願いいたしまして、次の問題に移ります。  二百海里の問題についてお尋ねしますが、関連いたしまして、本年三月一日から米ソ両国が二百海里漁業専管水域を設定した、このことによりましてわが国の漁業はきわめて厳しい環境下に置かれておるわけでございます。大臣も御苦労されましていろいろと努力なさったわけでございますが、その後、大変厳しい情勢も出ておる。代表団も出発いたしたようでございますが、今後漁獲量の減少入漁料の支払いによりまして魚価の高騰等、国民生活に大きな影響があらわれてくることが予想されます。そこで、今後どのような影響が出ると思われるか、またさらにその時期はいつごろからと考えておられるか、またこれらに対しましてどのような対策を講じていかれるお考えか、大臣の御所見をお伺いいたします。
  315. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 厳しい二百海里漁業専管水域の時代が現実に到来をいたしました。まず私どもは対米交渉に全力を挙げたわけでございますが、これは今後の第二、第三の国との交渉におきましてよき先例をぜひつくりたい、こういう観点で、時間をかけて粘り強い努力をいたしたわけでございます。幸いにして、日米の伝統的な友好関係の基礎の上に立ちまして、実績の八九%、百十九万一千トン程度の実績を確保することができたわけでございます。  ただ一方、ソ連との交渉、これは私もイシコフ大臣と二十八日から四日間にわたりましてひざを突き合わして折衝をいたしたわけでございますが、ソ連も御承知のように、対アメリカ、カナダ、EC、ノルウェーその他との交渉におきまして厳しい、苦しい立場に立っておるようでございます。したがいまして、ソ連としてもこれらの海域で削減されます漁獲量を北大西洋のソ連設定の二百海里の中でできるだけそれを補うようにしたいという方針であるように私、受けとめておるわけでございますが、したがいまして日本も、このソ連が設定いたしました海域には三十年間の長い大きな実績を持っておるわけでございますけれども、ソ連もそういう環境にあるというようなことで、今後の対ソ交渉というものはきわめて厳しいものがある、このように受けとめておるわけでございます。私は、イシコフ大臣に申し上げたわけでございますが、日本も遠洋漁業国であるが、ソ連もまた遠洋漁業国である。この二大水産国が、今後他の国々に対して漁業の実績を要求していきます場合に、日ソ両国の間で漁獲量の大幅な削減等をやるということは、今後の対外交渉を不利にするのではないか。お互いに世界の二大水産国として大局に立って、また日ソの伝統的な漁業の関係に基づいて、この際お互いにひとつ相互の利益になるようにしようではないかということをるる強調をしておるわけでございます。しかし、前段に申し上げたように、なかなか日ソ交渉というものは予断を許さない厳しいものがあると私は受けとめておるところでございます。
  316. 宮井泰良

    宮井分科員 日ソ交渉のそういう厳しい状態はお話でわかったわけでございますが、具体的にどういう影響が国内にあらわれ、そしてそれがいつごろになってくるのか、あるいはまた、それらに対する対策はどうなるか、この点を再度お伺いいたします。
  317. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は今後の日ソ交渉におきましても、どうも漁獲量の削減、これは厳しいものがあると思っておりますが、そうなってまいりますと今後魚価に影響をもたらすであろうことは予見できるところでございます。対米交渉の場合も含めまして、この漁獲量の削減というものが直ちに魚価にはね返り、そして国民の家計に直ちに重圧になってくるということは、何としてもこれは最小限度に食いとめるようにしなければならない。また、石油ショック以来石油の値上がり、漁具の高騰、そういうようなことで漁業経営も苦しくなっておるわけであります。その上に入漁料等も取られるということになりますといろいろの問題が起こります。  そこで、私としては入漁料等に対しましてはできるだけ政府において利子補給等をいたしまして、そして負担を軽減をし、その影響を最小限度に食いとめる、そのショックをできるだけ緩和するような措置を講じてまいりたい、このように考えております。いつ時点で魚価その他にどれだけの影響があるかということは今後の日ソ交渉の結果を見なければ即断をいたすことができない状況にあるわけでございます。
  318. 宮井泰良

    宮井分科員 それでは具体的にお伺いしますが、スケトウダラの漁獲と価格についてでございます。  釧路や主要漁港ですか、昨年十月ごろからことしにかけまして、スケトウダラの水揚げ量が増加しておる、こういう実態でございますが、それにもかかわらずかなり値上がりを示しておる。入荷量が増加してきますと、市場の論理からいきましても当然価格は下がるはずであります。しかしこのような漁獲量が増加しておるにもかかわらず値上がりしておるという、このような値動きに対する水産当局の見解をお伺いいたします。
  319. 岡安誠

    ○岡安政府委員 御指摘のとおり昨年の十月以降最近までのスケトウダラの水揚げ量並びに価格の推移を見ますと、水揚げ量は前年対比大体三割ぐらいふえているようでございます。しかしながら価格の方は七割ぐらい上がっているというのが実情でございます。その原因を私ども考えたわけでございますけれども価格上昇になる原因もございます。私ども考えられますのは、まず昨年に比べまして魚体が大型化しているということで、これはやはり価格上昇の原因であろうというふうにまず考えております。それ以外の原因で考えられますことは、昨年の末からたらこの需給が相当逼迫をいたしまして値段が上がっておりまして、それに引っ張られているということがまたもう一つございます。それ以外の原因といたしまして、魚粉、魚かす等のミールが、昨年来の海外におきます大豆かす等の値上がりに引っ張られまして相当値上がりいたしておりますので、そういうこともスケトウダラ自体の価格上昇に影響があったのではあるまいか。それからスケトウダラからすり身にいたしますけれども、すり身の価格自体も昨年から上がっております。そういうような諸般の価格上昇要因に引っ張られて、水揚げ量が多いにもかかわらず値段が上がっておるのではないかというふうに私どもは考えております。
  320. 宮井泰良

    宮井分科員 たらことかミールとかいろんな原因、それも確かにあるかもわかりませんが、もっとほかに原因があるんじゃないか、こう私は見ておるわけです。この魚価の値上がりというのは、二百海里時代に入りまして漁獲量の減少が起きる。そうしますと品不足が予測される。それを見越して思惑買いが行われているのではないかということでございます。新聞紙上でも「大手が恩惑買い」「スケトウ暴騰」「入札はほとんど一番札」「石油に味をしめまた甘い汁」というような見出しで釧路の実態を新聞では報道いたしております。こういう思惑買いの実態を水産庁は掌握されているかどうか。また思惑買いによる魚価の値上がりに対しまして、大臣は何らかの対策を講ずる考えはないか、その点をお伺いいたします。
  321. 岡安誠

    ○岡安政府委員 最近新聞紙上では、御指摘のように一部のところで昨年対比二倍ぐらいの価格を示すというようなことも私ども承知いたしております。どうも先ほど申し上げましたように若干の値上がりというものはある程度予想できるわけでございますけれども、二倍とか二倍を超えるような値というようなものは非常に不思議に思われる点もございます。若干思惑その他が働いているのではないかというふうに考えますけれども、ただ私ども将来のことを、少し先行きを見ますと、練り製品の需要、それから練り製品の価格の見通し等を考えますと、そのような高い価格でもってスケトウ原魚を買いつけたのでは、これは恐らくは採算が合わないのではないかというふうに考えられるわけです。ですからこれはそんなに長続きするような値段ではあるまいというふうに思っておりますけれども、もし思惑等が働いて異常な騰貴が続くということであるならば、私どもは業者等につきまして厳重な指導等をいたさなければならないというふうに考えております。
  322. 宮井泰良

    宮井分科員 その点がどうもはっきりしませんので、ひとつしっかり掌握をしてしかるべき処置をとってもらいたい、こういうふうに考えます。まあ聞くところによりますと、大手水産会社とか一部の商社などは、もう三年前から手を打っていたというふうな——その内容は私はつぶさに調査をいたしておりませんけれども、もう三年前ごろから今日を予想していろいろな手を打っていたというようなことも聞いておりますので、実態をなお調査してしかるべき対策を講じていただきたいと要望いたします。  またこのスケトウダラの高騰ということは当然すり身価格にはね返ってくると思われます。現在すり身の在庫は前年より増加しており、年内は確保されておる、このように言われておるわけですが、すり身の在庫はどの程度になっておるか。またこのスケトウダラの値上がりによりまして、そしてすり身価格にこれがはね返り、高騰してまいりますと、加工業者への影響というものはいつごろから出てくると思われるか。私が山口県防府市の中小かまぼこ加工業者の方に会いましていろいろ話を聞いてみますと、もうすでにそういった影響が出てきておる、高く買えばどんどん持ってきてくれる、しかし、もともとの料金で要求するといま在庫がないというようなことで分けてもらえない、こういうようなことも実態として私は調査したわけでございますが、その点について今後どう対処されるかお伺いします。
  323. 岡安誠

    ○岡安政府委員 最近のすり身価格の推移を見ますと、先ほど、スケトウは昨年の十月ぐらいから最近まで大体七割の価格上昇と申し上げましたけれども、すり身価格は最近前年対比大体二割から三割ぐらいの間の上昇にとまっているようでございます。  それから在庫の状況も、全般的には昨年よりもよけい在庫がございます。地域によって多少差がございますけれども、北海道では昨年の倍以上の在庫というようなところもございます。したがって需給は明らかに緩んでいるというふうに思います。また需要の方を見ましても、最近は御承知のとおりかまぼこ類等の需要の最盛期ではございません。むしろ不需要期というふうに言った方がいいのではないかと思っております。したがって、かまぼこ生産業者の方ではそんなにあわてて高いすり身を手当てをする必要のない時期でございます。にもかかわらずこのように値段が上がるということは、先ほど申し上げましたように若干私ども腑に落ちない点がございますので、そう長続きするものでもあるまいということは考えております。しかし、もしこれがかまぼこ業者等の需要期になりましても流通が円滑にいかないということがあってはならないわけでございますので、私ども指摘のような事実はまずないと思いますけれども、さらに調査をいたしまして今後の流通が円滑にいくように十分指導いたしたいと考えております。
  324. 宮井泰良

    宮井分科員 長続きしないというような見通しのようでございますけれども、異常なパニックというような状態にもなっているのではないか、こういうことも言われておりますので、その辺は慎重に手を打っていただきたいと思います。  そこで、このすり身価格の点について先ほども申しましたが、売り惜しみをしているのではないかということも予想されます。また、現地の加工業者の方も不審を抱いております。買い占め、売り惜しみをしているのではないか。私が調査しました加工業者のすり身買い入れ価格の一例を申しますと、特Aという二十キログラム入りでございますが、特Aで五十一年四月には五千八百円、大体五十一年は平均して毎月五千八百円程度であった。五十二年一月になりまして五千九百円になった。そしてさらに二月には六千二百円、三月には六千四百円と、このように上がってきておる。またC級品では、五十一年四月には二千八百円、六月が二千九百五十円、七月は三千五十円、十月が三千二百円、十一月も三千二百円、五十二年一月には三千六百円、二月は三千七百円、こういうぐあいに毎月のように値上がりをしておるわけですね。零細な加工業者としましては、値上がりしても買い入れなければ製品をつくることができませんし、高くても買わざるを得ない。しかし製品に安易に価格を転嫁するわけにはいかない。これは販売の不振にもつながる。  そういうようなことからしますと、どうも便乗値上げの疑いがあるわけですが、このような不当な値上げが行われないように、すり身の流通について追跡調査等により実態を掌握して、加工業者を不当に圧迫しないよう指導を行うべきであるというふうに考えるわけですが、どういった対策を講じられるかお伺いいたします。
  325. 岡安誠

    ○岡安政府委員 先ほど申し上げましたとおり、私ども若干異常な価格が出ているということは承知いたしておりますが、長続きするものとは思っておりません。しかし、やはり今後の思惑等もありまして、不当な価格のつり上げ、また不当な売り惜しみ等があってはならないと思っておりますので、私ども今後の荷動き、また値段の動向等につきましては慎重に見守りながら、異常があれば直ちに関係業界につきまして注意をするなど、指導の万全は期したいと思っております。
  326. 宮井泰良

    宮井分科員 次に、このすり身価格の値上がりによりまして、中小の加工業者の経営に影響があらわれてくるということはいま申しましたが、この結果、かまぼこ製品の出荷価格の値上げ、さらに小売価格の値上げとなってくることは時間の問題であると思います。そうなりますと、この異常なスケトウダラの値上がりは消費者にまで及んでくる。新聞の報道でも「二百カイリの余波ひたひた かまぼこ値上げ機運」メーカーは原料が高いからということで、そういうふうな報道がなされておりますが、今後の見通しと消費者対策、また伝えられるところによりますと、一部かまぼこのメーカーから値上げ要請が出ている、このように新聞報道などにもあるのですが、このようなことについてお答えをお願いします。
  327. 岡安誠

    ○岡安政府委員 練り製品の価格の推移並びに見通しでございますけれども、私ども見ているところによりますと、昨年末までに練り製品のうち、さつま揚げとか竹輪等のようにわりあい大衆的な値段の安いものにつきましては、これは原材料の値上げ等も絡みまして若干値上がりを見ております。それはやはりそれだけの消費があった、またあり得るということではなかろうかと思いますけれども、一方、多少価格の高いかまぼこ類につきましてはなかなか値段が上がらない、上がったら消費が減るというような状況で推移をしているわけでございます。したがって、原料高になれば普通消費者価格は上がるというのが経済の原則かもしれませんけれども、一方これは代替品があるわけでございますので、そう値段が上がって消費を持続させるわけにはいかないということを加工業者も考えているようでございます。そこで、一般的に通例の幅での値上げは若干あるにいたしましても、いま御指摘のような異常な原料高による価格をそのまま消費者に転嫁することはむしろ加工業者は好まないし、そのようなことにはなり得ないのではないかと私どもは見ております。しかしながら、そういうような価格の動きにつきましては、私どもさらに慎重に見守りたいとは思っております。
  328. 宮井泰良

    宮井分科員 それじゃ時間が参っておるのですが、最後にもう一点だけお聞きして終わります。  現地の、これも私が聞いた生の声ですが、支払いの面にあらわれてきておりまして、加工業者が中間業者にすり身の価格の支払いを、従来は二カ月サイクルの支払いでよかったのですが、現在は一カ月ごとに支払い請求されておる。そのために運転資金に困っておりまして、今後倒産等の心配も出ておる。これらの実態をつかんで、原料の確保、融資等の措置を考えるべきであると思うのです。また零細な加工業者を保護育成するために、加工業振興法といったものを制定する考えはないか、この点と、最後に、大手水産会社がこのすり身というものを大量に買いつけまして、そして大手企業が自分でこの安い価格のすり身でかまぼこやちくわを製造しまして、そしてスーパーやそういったところで売りに出す、こういうふうなことで中小の加工業者は太刀打ちできない、こういう実態があります。細かい数字についてはもう時間がございませんので申し上げませんが、いわゆる事業分野調整をより一層進めて、また分野調整法制定に努力していくべきであると思いますが、この二点について簡単にお答えをお願いします。
  329. 岡安誠

    ○岡安政府委員 まず金融のお話でございますけれども、私ども一般的には先ほど申し上げましたような実情なので、かまぼこ製造業者が非常に金融が逼迫して支払いに困っているという話は聞いておりませんが、特定なケースとしてはあり得るかもしれません。それらにつきましては事情によりまして必要な金融のあっせんをいたしたいというふうに思っております。  それから加工業について特別の立法措置が必要ではないかというお話でございますけれども、確かに水産加工業は一般に零細でもございますし、今後原料での安定確保ということも問題でございます。また一方、公害規制等につきましての対応も必要でございますので、いろいろな問題を抱えているということを私ども考えております。そこで、五十二年度から水産加工業の今後のあり方と対策ということにつきまして学識経験者に集まっていただきましていろいろ検討いたしたいというふうに思っておりまして、この結論を待って、必要があれば御指摘のようなことも検討いたしたいと思っております。  最後に、大手水産会社と中小のかまぼこ業者の分野調整のお話でございますけれども、かつて両者の間において紛争がございました。私ども間に立ちましていろいろ相談をいたしました結果、現在生産等につきましては協定が成立いたしております。たとえば、大手筋では包装かまぼこと生ちくわしかつくらないとか、それから大手は年間におきましては大体二万四千トン以上は生産をしないというような協定が両者の間でできまして、現在それが守られております。現在は両者から問題が余り起きてないというふうに考えております。将来問題があれば当然私ども間に立ちまして調整をいたしたいと思っております。
  330. 片岡清一

    ○片岡主査代理 これにて宮井君の質疑は終了いたしました。  次に、鹿野道彦君。     〔片岡主査代理退席、主査着席〕
  331. 鹿野道彦

    鹿野分科員 サクランボの問題につきまして質問をさせていただきたいと思います。  まず、二月十七日の日経に六月下旬にも輸入解禁」こういうふうなことで「近く公聴会を開いて正式に決定、三月二十一、二十二日の日米首脳会談でこの方針を伝える。」こういうような報道がされたわけです。サクランボの生産農家の方々は、余りにも突然の報道であったために非常にショッキングな記事として受けとめておるわけでございますが、この新聞報道につきまして政府としての考え方というふうなものをお聞かせ願いたいと思います。
  332. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私も実はああいう記事を見まして大変驚いておるのでございます。私はどこでそういうようなことが進んでおるかということさえも把握できない状況でございまして、生産地の諸君から二、三度にわたりまして御陳情も受けておるのですが、その都度、さようなことはないということをはっきり申し上げておるところでございます。
  333. 鹿野道彦

    鹿野分科員 このサクランボ輸入の問題はことしの問題ではなしに、もうすでに数年前からの問題としていろいろあちこちでうわさされておるわけでありますが、毎年毎年生産農家の方々が非常に不安な気持ちで、果たして来年どうなるのだろうか、再来年どうなるのだろうかというような状態であります。  そこで、これは結局は植物防疫上の問題が残されておる、こういうふうなことでありますが、実際のところ、問題になっておりますところのコドリンガというものが果たしてどうなのか。これは世界じゅう至るところに生息しておる害虫でありまして、ただ単にサクランボということだけではなしに、リンゴとかあるいは桃とか、そういうふうなものに対しても被害を与える恐しい害虫だ、こういうふうなことでありますが、その点につきまして農林省としましてもいろいろと調査団を派遣したり、あるいはまた回答に対していろいろな数年間の一つの流れがあると思うわけでございますが、その点につきまして詳しくお聞かせ願いたいと思います。
  334. 堀川春彦

    堀川政府委員 経過について申し上げますと、先生御承知のとおり、米国からサクランボを生の形で日本に輸出したいという話があったのが四十六年ころでございます。ところが、米国にはコドリンガという有害虫が分布しておりまして、これがサクランボに付着をするという事実もわかったわけでございます。先生指摘のように、これはどちらかというとサクランボにはつきにくい方でございますが、他の果実につくという問題もありまして、単にサクランボそれ自身だけの問題でなしに、他の農産物に対する波及の問題がございますから、私どもとしましては、そういう有害虫サクランボに付着させて入れるというような心配がある以上は、これをその心配のないようにしなければいかぬということから、植物防疫法上は輸入禁止の措置をとっておるわけでございます。ところが、米国の方ではこれにつきまして、コドリンガというガを、サクランボについている場合に完全に殺虫するという技術を確立をしたいということで何回も試験をやりました。米国側としましては四十九年に行った試験と五十一年に行った試験が主要なものでございますが、そういう試験結果をデータとともに私どもに送付をしてきておるわけでございます。私ども農林省といたしましては、その試験結果、試験成績を専門家の手にゆだねまして、目下慎重に検討中という段階でございます。
  335. 鹿野道彦

    鹿野分科員 このコドリンガというのは文献にもサクランボにもつくだろう、こういうふうなことであります。また、そのコドリンガ以上に大きな被害をサクランボに与えるだろう、このように言われておりますチェリーフルーツフライというふうな害虫につきましてはどういうふうな見解を持っておられるわけでございますか
  336. 堀川春彦

    堀川政府委員 米国の北西部のサクランボがつくられておるような地帯に、いまおっしゃいましたオウトウミバエの一種でございますセイブオウトウミバエというのが分布しておるということがわかっております。これがそのサクランボにくっついて入ってくるということになりますと、これはやはり検疫上重大問題になるわけで、植物防疫の立場から大変な問題になります。そこで、法的な扱いは、コドリンガとオウトウミバエ、いま申し上げましたセイブオウトウミバエとは扱いを異にはしておりますが、やはりコドリンガの殺虫試験を行って、それが、コドリンガが完全に死ぬということがわかっただけではぐあいが悪いので、やはりオウトウミバエの殺虫につきましても全然心配がないという状態にならないと、植物防疫法上完全な措置とは言えないというふうに思うわけでございます。その点につきましても農林省としては重大な関心を払っておりまして、米国としてはそのことを承知しており、このオウトウミバエを殺す方法についてもあわせて私どもに試験結果を送ってきておるという状況でございます。
  337. 鹿野道彦

    鹿野分科員 アメリカシロヒトリとか、そういう過去におきますところの重要な問題もあるわけでございますので、ひとつこの点は十二分に御検討していただきたいと思います。  それから、わが国で使用禁止になっておりますパラチオン剤が使われておる、こういうふうに言われておるわけですけれども、そういうふうな防腐剤等が使われておるものに対して、わが国としてはどういうふうな見解を持っておられるかどうか。
  338. 堀川春彦

    堀川政府委員 先生の御指摘になりましたパラチオン剤は、生育の過程におきまして農薬としてかけているというお話じゃないかと思うわけでございますが、そういう角度で私どもも、わが国内ではパラチオン剤を農薬として使用することは、これは使用者の中毒の問題等が出ますので禁止をいたしておりますが、米国では防除使用書等の中にそれが記載されておりますので、農薬として病害虫防除のために使われておるのじゃないかというふうに思われます。これは全く仮定の話でありますが、そういうパラチオン剤を使ったサクランボが仮に日本国内に入ってくるというようなことになりますと、そのパラチオン剤の残留が問題になるわけでございます。食品に許容される限度まであるのかないのか、許容限度を超えてあるのかというようなことが問題になります。これは食品衛生法上の措置といたしまして、許容限度を超えておるということになりますと、食品として流通するわけにはまいらぬということになる性格の話だと思います。
  339. 鹿野道彦

    鹿野分科員 聞くところによりますと、向こうのサクランボは非常に長もちする、二十日から二十五日くらい長もちする、こういうふうに言われておりまして、これは日本では使用禁止になっているいろいろな防腐剤が相当使われておるのではないか、こういうふうなことであります。そこで、考え方としましては国内の果物も外国の果物も、そういうふうなものに関しては平等の扱いをしなければならないのではないか、こういうふうに私は考えるわけでございますが、その点につきましてもひとつ政府の御見解を聞かしていただきたいと思います。
  340. 堀川春彦

    堀川政府委員 これはカビの生えるのを防ぐ防ばい剤のお話だと思うわけでございますが、これにつきましては、私ども、どこに出荷されるものか存じませんが、アメリカ国内の産地におきまして防ばい剤が使われておるのじゃないかと思われる事実を聞いておるわけでございます。ただ、どこへそれが仕向けられておるのかということは定かにはわかりませんが、仮にそういった問題が今回の、これも仮定の話でございますが、輸入問題に関係いたしまして、コドリンガの問題が解決をしたとしても、そういう問題が仮にあるとすれば、これもやはり食品衛生法上の問題として厚生省所管でございますが、片がつくということになりませんと輸入は認められないということになろうかと思います。
  341. 鹿野道彦

    鹿野分科員 このサクランボの問題は、昭和四十五、六年にも稲作転換というようなことで相当の農家の方がサクランボに転作をしておるわけです。ちょうどそれがいま実りの時期に来ておる、こういうふうなことで、もしもアメリカから入ってくるということになってきますと、生産農家に対する被害、打撃というふうなものが致命傷になるのではないか、こういうふうな考え方でおるわけであります。山形は主産地でありますが、そのほかにも北海道、青森、福島、山梨、長野というようなところでもとれておるわけでありまして、この方々の一つの不安を取り除くには、その辺のいろいろな問題をはっきり解明をしていただき、そして農家の方々にも納得がいくような形をとっていただきたい、このように要望する次第であります。
  342. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この問題は生産農民の立場を十分私、心配いたしておるわけでございます。ただ問題は、すでに自由化品目になっておるということでございますが、コドリンガの問題にしても、あるいはパラチオン等の有害農薬の問題にいたしましても、植物防疫上あるいは食品衛生上、その安全性が十分確認をされない以上は入れるわけにはまいりません。したがいまして、影響も大きいわけでございますから、慎重の上にも慎重な態度をとりましてこの問題には対処していきたい、こう考えております。
  343. 鹿野道彦

    鹿野分科員 このサクランボは、日本のものに比べて向こうの方が甘い、粒が大きい、長もちする、こういうふうなことで非常に心配をしておるわけでありますが、わが国で生産されておりますサクランボにつきましても、いかにしたら糖度を増すことができるかというような品種改良的なことなり、あるいは非常に雨の多い時節なものですから、テント補助などでそういうふうな実割りを防ぐというようなことに対しましても今後積極的に取り組んでいただきたい、このように考えるわけであります。  そこで、次に総合的なことにつきまして御質問させていただきます。  世界における非常に厳しい食糧事情の中で、わが国もこれから農産物の自給率をどうしても高めていかなければならない、こういうことになるわけです。それにはやはり農家の方々が意欲のわくような農業政策をやっていかなければならない。意欲がわくということは結局所得が上がる、こういうふうなことになるわけですけれども、現在のような状態では国際相場と比較しましても農産物はすべて高い、こういうふうな状態であります。そこで、終局的にはそういうような外国のものに比べても大丈夫だというようなことに持っていかなければならない。それには一町歩や二町歩程度に機械化を進めていくとか、あるいはまた一時しのぎの価格に対する保証、負担というふうなものはもはや限界に来ている、私はこのように考えるわけです。そうすると、結局生産性の向上を図るには、日本の国土というものを最大限に生かしていこう、こういうような基本姿勢で今後やっていかなければならないのではないかと思うわけです。  そこで、昭和四十四年の調査によりますと、わが国の農地の開発可能面積が百五十万ヘクタールと見込まれておる、こういうふうな結果が出ておるわけです。そこで、その後の開発状態はどのように進んでおるかということをお聞きしたいと思います。
  344. 森整治

    ○森(整)政府委員 土地改良長期計画というのがございまして、四十八年から五十七年までの十年間でございますが、農地造成が三十万、草地造成が四十万、計七十万ヘクタールということで計画が立てられておりますが、その実績といたしましては、農地造成が五万五千、草地造成が八万四千、これは五十二年の予算を使ってという前提でございます。要するに、五年間を見るということで見ますと、その程度の進捗率になっておるわけでございます。
  345. 鹿野道彦

    鹿野分科員 いまの説明をお聞きしますと、私は、非常におくれておるんじゃないか、こういうふうに考えるわけです。特に、自給率を高めていくには、やはり基本的には、先ほど申し上げましたとおりに、農業の後継者というふうなものをどうして育てていくかというふうなことも非常に関連してくる問題であり、重要な問題であります。統計的に見ましても、二ヘクタール以上の農家の方々は、農業というものに、おれもおやじの跡を継いでやろう、こういうふうな意欲がわくという結果が出ておるわけです。  私はやはり土地だと思うのです。ですから、こういう開発可能というふうなところに対しましては、今後積極的にそういうものを利用していくというふうな姿勢が一番の基本じゃないか、私はこのように考えるわけですけれども政府の見解をお聞きしたいと思います。
  346. 森整治

    ○森(整)政府委員 先生指摘のとおりだと思います。ただ、それについてのいろいろな条件、問題がございます。それは、先ほど先生指摘の四十四年の調査で百五十万ヘクタールということになっておりますけれども、これは土地の傾斜度なり温度というような自然条件、もちろん社会的な条件も踏まえての開発可能地、こういうことになっておりますけれども、さらに、私どもといたしましては、やはりそこの中の土地権利関係先生指摘のような担い手の問題、それから、主産地の形成といいましても、それだけの詰めた条件、たとえて言いますと、すでに農用区域なり農振地域なり、そういう地域区分が行われております。それから、森林としていろいろ今後利用していくであろうというようなものもあると思います。ですから、森林か、現況どういうふうに原野になっているかとか、そういういろいろの組み合わせ、それから、先ほど言いましたように、傾斜度、そこの土地までに至るまでの距離がどのくらいあるかということをきめ細かく五十年度に再調査をいたしております。その結果に基づいて、さらに詰めた開発可能地を明らかにするような調査を行っているわけでございます。確かに、くどいようでございますけれども、われわれとしてはそういう開発を大いにやりたい、しかしいろいろ問題がある。それをもう少し細かく究明をいたしまして、そのためのいろいろな手法を編み出していかなければいけないということだと思います。  とりあえずは、たとえば合理化法人を使いまして先行取得させるということ、あるいは今度は農業だけでなしに林業もあわせて生かしながら開発していくとか、そういうことで農林地一体開発というような調査費を来年度計上しているとか、そういうようなやり方で具体的に解決をしていくことが必要だというふうに考えておるわけでございます。
  347. 鹿野道彦

    鹿野分科員 五十年にも再調査をした、こういうふうなことでありますが、里山、そういうふうなところなんかは少々いじって開発すればすぐ農地に使える可能性があるのじゃないか、こういうふうに考えるわけです。ですから、そういうふうな点も含めた調査の結果を私は期待したいわけであります。  次に、最近耕地の利用度が非常に低下しておる、こういうふうに言われておるわけです。限られたわが日本の国土でございますので、現在の土地というふうなものをいかに利用していくか、これが非常に大切なことだと私は思います。  そこで、高度経済成長というふうなものも終わり、安定成長の時期にも入ってきた中におきまして、こういうふうな耕地の利用度が低下しておるというものをこのまま放置しておくわけにいかない。そこで、水田の裏作可能面積が関東以西で約百五万ヘクタールある。しかし、冬季の利用面積がそのうちの約二十四万ヘクタールにすぎない、こういうふうな結果が出ておるわけですけれども、利用できるならばやはりそういうところを積極的に今後生かしていく、そういう利用度が低下しているものを少しでも防ぐというふうなことが非常に大切なことだ、このように考えるわけですけれども、その点の御見解をお聞きしたいと思います。
  348. 堀川春彦

    堀川政府委員 先生指摘のとおり、水田の冬季土地利用率は非常に低うございまして、都府県の数字でございますが、現在八・七%というような状況でございます。そこで、先生もおっしゃいましたように、最新の農林省の農地現況調べによりますと、関東以西で、つまり水田の裏作可能地域という意味でございますが、そういうところで地下水位が七十センチ以下、つまり地下水位が低いから、したがいまして裏作が可能であろう、こういう条件を入れましてどのくらいの水田があるかというような推計をいたしますと、百十二万ヘクタール程度あるということがわかっております。五十年四月現在でございますが、このうち水田裏作物が栽培されておる面積が二十四万ヘクタールございますので、差し引き約八十八万ヘクタールは何らかの裏作をやることが、そういった条件からして可能ではあるまいかと思われる数字でございますので、これだけ膨大な水田が裏作利用なしに放置をされておるということは、土地利用の面から見て大変適切でございませんので、私どもは、麦であれその他の作物であれ、できるだけ水田裏作を進めるという政策をとって、いろいろの予算措置をとりながら進めておるところでございます。
  349. 鹿野道彦

    鹿野分科員 ぜひそういうような方針で今後やっていただきたいと思います。  次に、わが国の自給率の問題なんでございますが、非常に下がってきておる。農業生産は二%近い伸びを示しながらも、総合自給率が下がってきておるというふうなことは、これは畜産関係の需要の増大から来る飼料穀物の輸入増大が原因しておる、こういうふうに言われておるわけです。これは日本の食生活が非常に変わってきておる、こういうふうなことであると思います。これからは、自給率を高めていくというふうなことを基本に考えた場合に、今後どのような食生活になっていくのかということも大まかに把握しながら、それに合わせてやっていかなければならないのじゃないか、こういうふうに考えるわけです。そして、その作物のウエートをどこに置くかというふうなところもはっきりと示しながら、今後そういう自給率の増大に向かって進んでいかなければならないのじゃないかと思うわけでございますが、その点の御見解をお聞きしたいと思います。
  350. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 現在、主食用に供されております穀物の自給率、これは七四%程度になっております。で、米が二百六十万トンも余剰があるわけでございますが、そういう余剰米を差し引きますと七二%程度の自給率、それにいま鹿野さんが御指摘になったように家畜の飼料作物あるいは大豆とか麦とかいうようなものを入れますと、自給率はぐんと四〇%台に下がってくる、こういう状況に相なっております。そこで、自給率を総体的に高めていくための総合的な諸施策を進めていかなければならないわけでございますが、一方におきまして、日本人は昔からお米を主たる主食としてやってきたわけでございますから、米の消費拡大というものにも力を入れていかなければならない。農業団体等も米の消費拡大運動を展開しておりますし、五十二年度予算編成に当たりましても、学校給食の面でもひとつ長期にわたって米食を普及をするという観点からもいろいろな施策を講じておるところでございます。しかし、どういたしましてもやはり食生活が高度化し多様化してきておるのも事実でございます。たん白食糧、脂肪、そういう摂取量もふえてきておるわけでございますから、私どもは今後漁業、畜産、そういう面にさらに力を入れて、国民食糧の需要にこたえるような観点に立って総合的な自給力を高める施策を進めていきたいと考えております。
  351. 鹿野道彦

    鹿野分科員 当然米は中心であります。ただ米以外のものにつきましても、いま私のところにおきましても生産農家の方々は非常に不安な気持ち、迷いがあるような気がするわけです。そこで、今後の長期的な展望に基づいて、食生活がどのようになっていくかということもひっくるめて、やはり地域別に一つの生産指標というものをある程度設定しながら今後やっていかなければならないんじゃないかと考えるわけです。ひとつそういう方向づけでぜひやっていただきたいと思います。  それでは最後に、時間でございますので、ことしは非常な大雪でございました。雪が解けてみないとその被害状況もわかりませんが、果樹関係あるいはいろいろな農作物に対しての被害が見込まれると思います。ひとつ政府といたしましても、そういう問題につきまして十二分に御理解していただきまして取っ組んでいっていただきたい、このように要望いたします。
  352. 伊東正義

    伊東主査 これにて鹿野君の質疑は終了いたしました。  次に、村山富市君。
  353. 村山富市

    村山(富)分科員 大分時間も経過しておりますので、できるだけ切り詰めてやりたいと思うのですが、特に私が御質問申し上げたいと思いますのは、山村地域における特用林産物の振興対策についてであります。  振り返ってみますと、急速に成長した日本の高度経済成長時代には、やはり労働力が必要ですから山村やら農村からずっと都市に吸収された。いまのように成長がストップして低成長の時代になりますとまた帰ってくる、こういう傾向が若干見られますね。しかし、帰ってみても山村地域では生活ができない、仕事ができない、こういう状況で、いつの場合にも山村地域というのは荒廃をするばかりです。極端な例を申し上げますと、二、三軒家があったけれども、とうとうそれもいなくなって部落はだれもいない、こういう地域さえ出てくるような傾向にあるわけです。私は、最近の林業労働者の傾向なんか見ていますと、大分老齢化して若い者がいなくなる、こういう傾向にあるのじゃないかと思うのです。したがって、山村地域の開発の中に占める特用林産物のウエートというものはもっと高めていっていいのではないかと思うのです。ですから、一年間のトータルを見ますと、たとえば山林労働者として山に季節的に働きに行く、シイタケをつくるとか牛を飼うとかそういう仕事を兼ね合わして一年間のトータルをした場合に、大体年間の生活が保障される、こういう条件ができていかない限りは、山村地域を守っていくことは無理なのじゃないか。そういうことから考えますと、いま申しました特用林産物の振興というものはきわめて重要な要素になる、こういうふうに思いますから、この特用林産物の振興対策について一体どういう手だてを講じておるのか、どういう考えでおるのか、その点をまず承りたいと思います。
  354. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 山村の振興には、まずわれわれといたしましては林業を振興させなければいけないということで、従来から基盤整備でございます林道網の整備あるいは造林の推進等々図ってまいりましたが、さらにそのためには、林業の担い手でございます労働力の確保、これも十分今後対応していかなければいけないというような問題がございます。したがいまして、いま申し上げましたような林道、造林以外に林業構造改善事業というものを、第一次はすでに終わりまして、もう第二次にかかり、積極的に推進し、その中で農山村の基盤整備並びにいろいろな機械整備、施設整備等を図りながら山村の振興を図っていこうということで従前からも対応してまいっております。いま先生のお話のございました特用林産物の問題につきましても、林業構造改善の中の施設事業の中にメニューとして入れておりまして、積極的にシイタケを中心にいたします特用林産物を推進して林業の振興を図る、そして担い手を確保するという考え方で対応してきておりますし、今後とも山村の振興を図るためには、林業ばかりではなく、現金収入の対象となりますシイタケを初めとする各種のキノコ類あるいはそのほかの特用林産物の振興につきましては積極的に対応していき、山村の振興を図るべきであるというふうにわれわれも考えております。
  355. 村山富市

    村山(富)分科員 特用林産物だってシイタケとかナメコとかいろいろあると思うのですね。竹もありましょう。そういうものをトータルして大体四十九年、五十年、五十一年というふうに年次別に分けたときに、生産額はどういうふうに推移していますか
  356. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 シイタケの生産額を申し上げますと、たとえば昭和四十年には五千三百七十一トンでございますけれども、四十五年には七千九百九十七トン、それから五十年には一万一千三百五十六トン、これは干シイタケでございます。こういうふうな生産量になっておりますし、生シイタケにつきましては、四十年に二万七百六十一トン、それから四十五年には三万八千六十五トン、五十年には五万八千五百六十トンというふうに生産量が伸びております。
  357. 村山富市

    村山(富)分科員 個々のものを聞いていますと時間がございませんから、大体傾向としてそういう特用林産物のトータルした場合にどういう推移になっておるかということを聞いているわけです。
  358. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 個々の問題につきましては確かにいろいろございますけれども、総体では、年々金額は増加いたしております。そして、五十年では、大体合計で千八百億円に達するという数字が出ております。
  359. 村山富市

    村山(富)分科員 いずれにしましても、私はトータルとしては余り大きな前進はないんじゃないかと思うのですよ。それはいろいろむずかしい要因もありますからそう簡単にはいかぬと思うのですけれども、ただここで特にいまお話のございましたシイタケの問題についてお尋ねをしたいと思うのですが、このシイタケに最近、特に南九州一帯、大分県、宮崎県、熊本県等で、ほだ木の害菌が発生して、相当の被害が出ていますね。四十九年が一番多かったと思うのですけれども、この被害の実態というものはどういうふうに把握されているか。四十九年、五十年、五十一年というふうに分けて御報告願いたいと思います。
  360. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 四十九年の被害が二十億七千六百万、五十年が六億九千万というふうに把握いたしておりまして、五十一年につきましては、まだはっきりしたデータが出ておりません。
  361. 村山富市

    村山(富)分科員 これは主として害菌による被害ですね。これは、ずっと以前からあったんじゃないかと思うのですね。それが、突然四十九年に大量に発生した。そして、五十年には、いまお話のありましたように、被害額は若干違いますけれども、幾らか下がっている、こういう傾向にあるのですけれども、この被害というのは、たとえばどういう原因で四十九年にこんなに多く発生したのか、一体何が原因なのかという実態がなかなかつかまれておらぬと思うのですけれども、それはどうですか
  362. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま先生お話しございましたヒポクレア菌という菌は、高温多湿のところに発生するということで、四十九年に非常に出ましたのは、そういう異常気象がございましたために非常に発生したということ。それから、異常気象と同時に、ほだ木の手入れその他にも伏せ込み場所というような問題の関連等もあると思いますけれども、それに異常気象が加わりまして、四十九年のような被害が出たというふうに調査結果では言われております。
  363. 村山富市

    村山(富)分科員 もっと細かく聞きますと、たとえばシイタケ菌の中に寄生する菌でしょう、ヒポクレアというのは。一体いま生産者が一番困っているのは、こういう被害が生まれてくるのは、栽培技術上に問題があるのか。たとえば、菌そのものの扱い方、あるいは打ち込みをするとき、あるいは伏せ木をするとき、どういう過程の中でこの菌が活躍をしてこういう被害が生まれてくるのかということが一つと、それから管理の仕方に問題があるのかということ。それから、そうではなくて、菌そのものの持つ特性に問題があるのか。三つの分類した場合にどうなんですか
  364. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 この菌は、さっきもちょっと申し上げましたけれども、たとえばシイタケの場合ですと、二十二度から二十五度くらいが適温と言われておりますけれども、この菌につきましては、さらに三十度以上の高温の場合に出てくる。それから、湿度につきましても、九〇%以上の多湿になりますと、この菌が出てくる。逆にシイタケはこういう多湿は好まないということでございまして、主として高温多湿のところにこの菌が発生する。そうしてその対応の仕方といたしましては、シイタケそのものも菌でございますから、薬その他で対応することは非常にむずかしい。そういう観点からやはり生態的な防除、こういう形で対応していくのが一応妥当であろうということで、現時点ではそういうかっこうで対応いたしております。
  365. 村山富市

    村山(富)分科員 これはさっきも申しましたように、四十九年に大変大きな被害が出まして、そうして各県でも、特に九州の場合には宮崎と大分と熊本と三県で対策委員会をこしらえて、そうして各県にあります林業試験場、それから生産者等が一緒になって原因究明に当たっているわけでしょう。ところが、いまお話がありましたように、もうはっきりどこに原因があるのだということがわかっておれば、対策の立てようがあるわけですよ。たとえば栽培技術上の問題があるのならば、どこを改造すればいい、あるいは管理に問題があるならば、もっと通風をよくするとか、もっといい条件のところにつくるとか、こういう方法が講じられるでしょう。しかし、それでもなおかつ解決しておらぬということで、大変困っているわけでしょう。現に、これは大分県の場合ですが、ことしに入りまして研究会というものを開いています。その研究会を開いた中で生産農民がいろいろ疑問を出していますけれども、たとえばあるところでは「一日も早く防除ができるよう解決の方法を講じて欲しい。」「栽培管理面では慣行法以外に方法はないと思う。罹災自体は運、不運によるところが大きい。害菌発生の要因は空気伝染だと考える。」こういうふうな経験から発表しているものもある。ところが「害菌は栽培方法によって発生するのではなくて、その過程によって発生するものと考える。」こういう意見もあるらしい。ですから、集まった生産者意見を聞いてみますと、全くまちまちなんですよ。まちまちであるということは、まだ実態が本当に把握されておらない。実態が把握されていなければ、それに対する対策のしようもないわけですからね。そこらの現状把握というのは一体どうなっているのですか
  366. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 先ほど申し上げましたように、被害を起こす菌といいますか、原因はヒポクレア菌であるということはわかったわけでありますけれども、この菌というのはわが国では四十種類以上ございます。さらにこのたび九州の原木から見つけられたものにつきましても三種類の菌が最も多く検出されております。そういう関係で、この菌によります菌害で被害を受けたものをどうやって再現させまして実証試験をしていくか、その辺を現在実施しておるところでございまして、さればといって、この菌によりまして被害を受けたものをどうやって対応するかという最終的な対応の仕方、これが詰まるまでの処置として手をこまねいておるわけにもまいりませんので、一応生態的な防除という形で防除をやらしておりまして、ただいま、さらに詰める段階で林業試験場あるいは県の試験場で、いま申し上げましたようなものを中心にいたしましてもろもろの試験をするという考え方で試験を続行いたしております。さらには国立試験場に五十二年度からキノコ研究室もつくりたいということで対応し、早急にその原因解明、さらに恒久的な予防対策が確立できるような対応をしてまいりたいというふうに考えております。
  367. 村山富市

    村山(富)分科員 いま出ている意見を全部まとめたところでこういうふうに言われているわけですよ。「ただ今この害菌に対して、まちまちの意見が出ているが、これといった決め手がない。どのようにしたらいいのか、暗中模索するだけでなくて、何か解決策はないものか。」ですから、四十九年、五十年、五十一年と、こう経過してまいりまして、五十二年のこの段階でもまだこういう状況である。そこで一番考えられることは、高温多湿とかいろいろな気象条件もあるのだと思いますけれども、これは、シイタケ菌に寄生をして、そしてシイタケ菌の方が弱いものですからやられる、飛躍して言いますとね。こういうことになるわけでしょう。そうしますと、気象条件というのは毎年毎年違ってくるかもわかりませんから、またいつ起こるかもしれない。これだけのことから考えてみましても、シイタケはいずれ全滅するのではないか、こういう不安さえ持っていますよね。そういうものに対して、この四十九年、五十年、五十一年と恐らくいろいろな調査研究をされたと思うのですけれども、いま言いましたように、生産農民はまだ全く暗中模索の状態である。これは一体どういうふうに理解したらいいのですか
  368. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 先生おっしゃいましたように、恒久的な、決定的な原因なり予防対策の究明はまだできておりませんけれども、当然私どもとすれば試験研究機関を動員いたしましてその解明に努力をしなければいけないというふうに考えております。単に菌の問題だけではなくて、逆にまたその菌に強い種菌の方、シイタケの菌の方でございますけれども、そちらの方の研究にも手をつけております。そういう関係で、両面からこれを早急に研究いたしまして、この対応を図っていく必要がまずあるであろう。それから、先ほど申し上げましたように、温度、湿度に非常に関係がございますから、その関係についてのいわゆる管理の面で十分対応していくことによりまして、当面は十分対応していけるのではないかというふうに考えております。
  369. 村山富市

    村山(富)分科員 そうしますと、先ほど言いましたように、生産農民は大変不安に思っている、現にまだ暗中模索だ、こういう状況にあるわけですから、たとえば種菌に対してはどういう改善をしたりどういう指導をしておるのか、あるいは温度や湿度や通風の問題とか乾燥の度合いとか、そういう栽培技術上の問題あるいは管理の問題に対してはどういう指導をしておるのか、それはどうなんですか
  370. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 たとえば種菌の問題につきましても、害菌の発生原因あるいはシイタケの発生率の減少、こういう問題がございますので、そういうものが減少しないような種菌としてはどういうものがあるのであろう、どういうふうな方途を考えたらいいか、どういうような種菌を考えたらいいか、そういう調査、研究、追跡というものをやっております。それから、菌そのものにつきましては、ほだ場の温度等の害菌発生環境条件をどうやって解決していったらいいだろうか。あるいは、これは非常にむずかしい問題でございますけれども、薬剤による防除効果はないだろうかというようなこと。さらには害菌に対する抵抗性品種の開発はないだろうか、いま申し上げたようなことでございますが、こういうものを含めまして、県の試験場、国の試験場合体で対応しておるわけでございますが、さしずめの管理方法としては、きわめて一般的な話ではございますけれども、風通しのいいところにまず対応しろ、あるいは直射日光が当たらないようにしろ、あるいはじめじめしないところにほだ木を管理しなさい、さらにはほだ木の下に非常に草が生えますから、そういうものを処理しなさい、いわゆる下刈りでございますけれども、そういうことをやりなさいというような形で、管理条件を非常によくするということにいまの段階ではまず精力を注いで対応しておるわけでございます。
  371. 村山富市

    村山(富)分科員 どういうところに問題があるのか、その問題点の研究をするのに、たとえば種菌であるシイタケ菌自体に問題があるのか、あるいはいろいろな技術の過程の中で、栽培の過程の中で問題があるのか、あるいはほだ木自体に問題があるのか、原木自体に問題があるのか、それからいま言いましたように管理上にいろいろ問題があるのか、そういう問題点は素人が考えたってわかりますよ。問題は、そういう問題点の中のどこかに主たる原因があるのか、どうすればいいのかということがわからなければこれは解決にならぬわけでしょう。そういうところに生産農民は一番苦悩しているわけですからね。ですからこれは、ことし起こったんだがどうなんだ、こういう質問ならこんなことは私も言いたくありませんけれども、もう四十九年から起こってきているわけですから、やっぱり何らかの対応策が考えられていかないと、さっき言いましたように大変不安に思っていますよ、全く暗中模索ですから。いろいろ下刈りをやってみたりする者もあるのですよ。やっているのですよ。やっているけれども、やはり同じだった、こういう結果になっていますから、もう少し林野庁は、素人が言うような返事でなくて、本当に三年間も調査研究してきたのなら、その調査研究の結果こういう点はまだ解決しておらぬけれども、こういうところに主たる問題があるそうだから、こういうふうに改善をしていけば幾らかよくなっていくのではなかろうかというぐらいの指導があってもいいのではないかと思うのですが、どうなんですか、その点は。
  372. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 先生の御指摘は試験研究のテンポなり能力なりの問題かと思いますけれども、そういう点で、先ほど申し上げましたように、国立試験場なり公立の試験場で五十年、五十一年、五十二年と三カ年連続で各種の試験をやっております。われわれといたしましても早期に試験研究で成果を出して、それが本当にいいものであるならば結構でございますけれども、やはりやる以上は徹底して究明しなければいけない。そういう意味でただいま試験場その他で精力を挙げて研究している次第でございますし、さらに、先ほど申し上げましたように、シイタケ研究室を五十二年にはつくって、なお充実さしてやっていきたいと考えておる次第でございまして、その辺の試験研究については、できるだけ早く解決の方途が見出せるように私どもとしても指導してまいりたいと考えております。
  373. 村山富市

    村山(富)分科員 この種の研究というのは、人体と違ってまだそれほど開発されておらない部分がたくさんあると思いますから、大変無理な問題もあると思います。思いますけれども、しかし、実際にこれだけの被害が出て、いま申しましたように、生産農民というのは暗中模索で途方に暮れている、こういう状況の中ですから、精力的に研究を進めて、そして安心してシイタケがつくれるような指導対策が講じられるというふうにしてもらいたいと思うのです。時間がないから、余り言うと終わってしまいますからね。  そこで、先ほど申しましたように、実際に被害の出ている被害額についてはまだいろいろ違いがありますよ。それは、たとえば森林組合に出すとかあるいはシイタケ組合に出すというだけの量でなくて、庭先で売るものもあるでしょうし、そういう意味からしますと全体の把握というのは非常に困難だと思いますけれども、私に言わせれば、実際のところはもっと被害は大きいのですよ。そこで、個々の農家を当たってみますと、仮に一人の人は二〇%の被害があったというのもあるでしょう、ところが一人の人は全滅だったというものもあるわけですよ。これは大変資金力の弱い農民がやっているわけですから、したがってこの被害に対する何らかの対策を講じる必要があるのではないか。そこで、とりあえず一番問題になりますのは原木の購入とかいろいろな融資対策が問題になると思うのですけれども、そういう融資に関するこれらの被害対策について何か特別の対策を講じていますか
  374. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 いま先生おっしゃいましたように、確かに被害の度合いが、シイタケの生産農家の方々が均等に被害がいっているわけではございませんで、その辺は非常に区々に分かれているだろうと思います。この被害を受けた生産者に対します原木の購入の資金等につきましては、ただいまのところ農林漁業金融公庫の資金あるいは農業近代化資金の長期低利の資金、こういうものの融資が円滑に行われるように関係方面、府県を通じまして指導しておる次第でございます。
  375. 村山富市

    村山(富)分科員 これは単にいまある制度金融をそのまま活用してもらうというだけでなくて、たとえば利子補給を考えるとかなんとかいうような手当てを講じてやらないと、これは実際のところやはり自転車操業ですからね。ですから一遍被害をぽっと受けますと、もう立ち上がりできぬ、こういう状態の小さな農家がたくさんあるわけですから、したがって、そういうものに対してはやはり利子補給も十分考えてやるとかなんとかいう手当てを講じる必要があると思うのですが、そういう点について検討する気持ちはないですか
  376. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 被害を受けた方々につきましては、いま申し上げましたような制度金融等を通じまして融資枠を拡大しながら融資制度に乗れるような指導をいたしておりますと同時に、また被害の度合いによりましては、償還期間の延長というような形で対応するという姿勢をとっておりまして、積極的にそういうものは指導してまいりたいというふうに思っております。
  377. 村山富市

    村山(富)分科員 そこでまた次を聞きますが、この特用林産物なんかについては共済制度というのは全然ないわけです。これからやはりこれだけ環境が破壊されて、予期しない被害がいろいろな要因から生まれてくる可能性がある。そこで、これから本当に特用林産物を奨励していこう、育成していこうというのなら、こういう共済制度も考えていく必要があるのではないか、どのような事態になろうとも安心してやれるといったような条件をやはり整備する必要があるのではないかというふうに思うのですが、そういう点についてはどうですか
  378. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 シイタケの栽培問題に関します被害がいまいろいろ出ておりますけれども、これを共済制度に乗せるということになりますと、料率の問題だとか、あるいはその被害の認定の問題、非常にむずかしい問題がいろいろございます。現在林野庁でもそういうものを検討いたしておりますけれども、非常にむずかしい問題が多々ございますし、また非常に地域的な問題もございます。なかなか全国的に出る問題でもないというような形、いろいろございまして、先ほど申し上げましたように同じ県でも全般に広がる問題でもない、いろいろな問題がございます。したがいまして、研究する課題も非常に多うございまして、非常にむずかしい問題とは思いますけれども、慎重にわれわれとしても検討はしてまいりたいと思っております。
  379. 村山富市

    村山(富)分科員 こういう問題をずっと考えてみますと、私は冒頭に申し上げましたように、本当に山村地域を開発して守っていこうとすれば、やはり年間をトータルして生活ができるといったようなものをつくっていかないと、山林労働者の定着もできないと思うのですよ。そういう意味からしますと、この特用林産物というのは将来はきわめて重要なウエートを占めていく。そういうことを考えた場合に、林業構造改善事業の中でも取り上げてやっているとかいろいろお話がありましたけれども、しかし、この特用林産物なんかを奨励する林野庁の対応する行政の姿勢というものは、私はまだまだ弱いんじゃないかと思うのですよ。  話を聞いてみますと、林産課の中に特用林産班というのがあって、わずか五名ぐらいの程度の職員がやっているわけでしょう。それは林業試験場もあるでしょうし、いろいろありましょうけれども、いままで申し上げておりますように、三カ年間かかってまだ生産農民は暗中模索の状態にある。こういう実態というのは私はやはりおかしいんじゃないかと思うのですよ、むずかしさもあると思いますが。  そこで、やはり本当の意味で山林地域の開発をやろう、特用林産物を奨励していこうというのなら、それに対応する行政の姿勢というものをもっと強化して積極的な姿勢をとるといいんじゃないかというように思いますが、この点はどうですか
  380. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 行政の姿勢の強さ弱さがその所属する人の人数で決まるかどうかは別問題といたしまして、私どもといたしましてもできるだけ積極的に、林産物とあわせまして特産物の振興については今後とも力を入れてまいりたいという姿勢でおりますが、先ほど申し上げましたように、その一環といたしまして、ことしはまず林業試験場の中にシイタケ研究室をつくるという姿勢をとっておりますし、今後とも山村の振興のために特産物の振興については十分意を払ってまいりたいというふうに考えております。
  381. 村山富市

    村山(富)分科員 人が多いだけが能じゃないと私も思いますよ。だけれども、全国これだけのものがあるのに、わずか五名で課の中に班があって、その班だけで対応している。こういう状況では、口で何ぼ特用林産物を奨励しますとか育成しますと言ったって、それはお話にならぬとぼくは思うのです。ですから、シイタケの問題で聞きましたけれども、やっぱり同じような状況にあるこういう問題が起こってもなかなか解明されぬということにもなると思います。したがって、私は、もう少しそれに対応する姿勢というものを強化していかなければ、本当に林野庁が本気になって山村地域の開発をやるとか、あるいは林業労働者を守っていくとかというようなことにならぬのじゃないかと思うのです。  そこで、最後に大臣にお尋ねしたいと思うのですが、いままでずっと一連聞いてまいりましたが、たとえば利子補給の問題、金融援助の問題、あるいは共済制度の問題、あるいはまた最後に申し上げましたが、もっと取り組む行政の姿勢というものを強化していけば、農民も希望を持って勇気もわいてくるし、それがまた大変大きな力になっていくと思うのです。そういう点を考えた場合に、私はもっと考えてもらう必要があるのじゃないかと思いますから、最後に大臣にその見解を聞いて終わりたいと思います。
  382. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 山村の振興を図る上から林産特産品の振興を図る、これは山村経済の上からも非常に大きなウエートを持っておる、こう私は考えます。したがいまして、今後農林省におきましても、この林産特産物の振興政策につきましては力を入れてまいるように私も特に指導してまいりたい、こう考えております。
  383. 伊東正義

    伊東主査 これにて村山君の質疑は終了いたしました。  次に、中村直君。
  384. 中村直

    中村(直)分科員 私は、大変広範な分野を担当しておられます鈴木農林大臣並びに林野庁長官に対しまして、きょうは問題をしぼりまして、林業に関する問題につきましていささか御質問を申し上げたいと思います。  ただ、その前に、いま漁業専管水域の問題とか、あるいは食糧の自給度を高める問題とか、あるいは農畜産物の適正価格を設定する問題、あるいは冷害対策の恒久対策を確立する問題等々、数限りない重要課題に取り組まれまして奮闘されております農林大臣に対しまして、敬意を表しながら、御質問を申し上げたいと存じます。  まず、林業に関する諸問題の中の第一点といたしまして、林道網の整備の促進についての基本的な考え方を承りたいと存じます。  昭和四十八年二月十六日の閣議決定によりまして、森林資源に関する基本計画が定められておると承知しておるわけでございます。この中におきまして、林道は林業経営あるいは森林管理等にとりまして基本的な施設である、そしてまた、林産物の搬出のみならず、森林の有するところの多面的な機能を発揮させるための森林施業を実行するためにもきわめて重要なものであるというふうに位置づけられております。またさらには、農山村の地域社会の振興を期する上におきましてもきわめて重要な意義があると位置づけられておると承知するのでありますが、そのわりにはその後の林道の開設実績が必ずしも所定の成果を上げておらないのではないかというふうに見受けられる節があるわけでございます。この四十八年二月十六日の閣議決定の基本計画というものは現在も生きておって、それが施策の一つの指針になっておるものであるかどうか、その点をまずもってお承りいたしたいと思います。
  385. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま先生指摘になりました、昭和四十八年に閣議決定がありました森林資源に関する基本計画、これは現在もまだその方針に基づいて林業政策は推進いたしております。
  386. 中村直

    中村(直)分科員 この計画によりますと、林道の開設目標は、総延長を二十六万七千キロメートルと定めておるようであります。つまり、昭和四十六年を起点といたしまして、今後の開設を必要とする延長を十九万七千キロメートルと見込んでおるのがこの計画のようでございますが、その実績を見ますと、四十六年度の、これは自動車道なわけでございますが、自動車道の開設延長は四千八百八十キロメートルでありまして、その後四十八年におきましては、これに対して七七・八%に当たる三千八百三キロの開設、そして四十九年には同じく五七・三%に当たる二千八百三キロメートルの開設、そしてまた五十年になりますと、さらにこの率は下がりまして、五六・九%の二千七百八十三キロメートルの開設実績になっておるようであります。これを私の出身県であります岩手県の場合に例をとってみましても、その傾向は全く同様、あるいはそれよりもやや低い状況であります。つまり、民有の林道の開設実績は、四十六年を一〇〇といたしました場合、岩手県におきましては、四十八年で八三・七であり、四十九年が六四・七であります。五十年が四一・六というふうな数字になっておりまして、これでは、山村住民の大きな期待にどうも沿うていないのではないか、かように見受けられるわけでございますが、格別の御事情があったのか、その辺のことを承りたいと思います。
  387. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 先生指摘のように、近年林道の着工延長と申しますか、総延長は年々減ってきております。その原因といたしましては、石油ショック等によりまして、建設資材の高騰あるいは労賃の値上がりというものがございました。それから、景気抑制に対する公共事業の抑制という問題がございました。さらには、自然環境保全という観点から、十分これらを配慮した工法をとるという形で、林道の設計、計画、施工というものに、従来に見られないきめの細かさを加えたという点で、実行単価の値上がりという問題がございます。  そういうようないろいろな因子がございまして、たとえば公共事業の補助林道につきましても、予算は横ばい、あるいは最近伸びておりますけれども、いま申し上げましたような因子で延長の方は伸び悩んだということでございます。
  388. 中村直

    中村(直)分科員 一応理解ができるわけでございますが、反面におきまして、わが国の林道をめぐる情勢、あるいは木材需要の減退、あるいはこれに関連しますところの木材価格の低迷、あるいは関連産業の深刻な不況というような状況から考えまして、むしろ林道の開設を促進して地域の振興を図る必要性というものはかえって高まっておるというふうに考えることも可能であり、またそれが実態ではないかというふうに私は見受けておるわけでございます。したがいまして、それらの諸種の困難な情勢を乗り越えまして、何としても地域住民の期待に沿い、地域振興の原動力になるところの林道の開設を計画以上に進めるような熱意をもって当たってもらいたいのでございますが、まず、年次計画があられるのかどうか。最終目標年度は、国有林道におきましては昭和九十年ですか、それから民有林道におきましては昭和六十年というふうに設定しておられるやに見受けられるのでありますけれども、中間における年次計画あるいは年度目標というものが林野庁内部にはおありで事業を推進しておられるのかどうか、その点を承りたいと思います。
  389. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 先ほど先生指摘になりましたように、森林資源に関する基本計画では、二十六万七千キロを九十六年までにつくるということになっております。それに対しまして、その場合のヘクタール当たりの林道密度を見ますと、一応ヘクタール当たり十・七メートルの林道密度にしようではないかという計画になっておりまして、現在ではこの密度は三・三メートルという形で、この計画に対しまして約三割程度の状況でございます。  私どもといたしましても、先ほどもちょっとお話しいたしましたけれども、林業生産の基盤でございます林道の拡充ということには積極的に対応しておるところでございますし、今後ともまたその姿勢でやってまいりたいというふうに考えておりますが、いま先生指摘になりました年次計画があるかということでございますが、これに対します細かい年次計画というものはつくっておりません。しかしながら、一応全国森林計画というものがございまして、その全国森林計画の中で対応しながら考えていこうということにいたしておる次第でございます。
  390. 中村直

    中村(直)分科員 この問題につきましては、今後に向かいまして熱意あるお取り組みを御要望申し上げたいと思います。  一応了承いたしまして、次に、大規模林業圏の開発事業につきましてお尋ねをいたしたいと思います。  この大規模林業圏は、岩手県にも指定地域がございますが、その大規模林業圏開発事業のねらいとするところは、まず第一には、この地域はきわめて低位利用の広葉樹林地帯であるというふうなことでございまして、しかも農林業を除いては他に見るべき産業もない典型的な過疎地帯であるということがこの地域の一つの特性ではないか。第二には、地域に賦存するところの森林資源の高度利用を通じまして、林業を中心とする地域開発を促進し、そして地域経済の振興と住民福祉の向上を図ることが必要であり、またそれ以外に適切な地域振興の方策が見出しにくいという地域ではないだろうか。第三には、山村地域の振興は国土の均衡のある発展を図るというふうな大きな目的から申しましてもきわめて重要な課題であり、高く評価されるべきものではないか。第四には、大規模林業圏の開発事業を効果的に推進するための手段といたしまして、しかも指導的な役割りを担わせる意味をもって、大規模林道というものをここに開設すべく着手されておるわけでございますが、それを高く評価すべきだと思います。そして第五には、この大規模林道というものは、林業的な利用だけではなくて、地域開発の上におきましても、山村地域の生活道的な役割りも大きく担っておるというふうなことにもかんがみまして、特別な財政措置というものを講じて、その建設を進行させなければならないのではないか。こういうふうな特殊な地域性があり、また事業のねらいがあるというふうに理解されるわけでありますが、それにつきまして、具体的な開発構想といたしましては、現在のところ、大規模計画造林の推進によるところの地域森林の整備、そして第二には、木材の大量安定供給を可能にするような流通機構の整備とか、あるいはこれに対する木材関連工業の整備、あるいはシイタケなどの特殊林産物の生産施設、販売組織の整備など、この地帯の森林の関連産業を整備すること、第三には、森林の公益的な機能を整備してまいること、そしてまた第四には、広域林道網を整備する。これは大規模林道に接続するところの縦横のそれぞれの規格の林道網を形成すること、そしてまた最後に開発組織を整備すること、これらが仕事のねらいになっておると理解されるわけでありますが、残念ながら、この地域はきわめて財政力に乏しい地域でございます。それで、関係町村の財政力指数を見ますると、他の全国町村の平均などに比べまして三分の一以下というきわめて弱い財政力地帯でございます。そういう意味におきまして、この重要な大規模林道の建設を促進するためには、現在の制度に基づく国庫補助率あるいは県負担、そしてまた受益者賦課金というものを見直しまして、地域の特性あるいは事業の特殊性に適応したところの適正な負担区分というものをここに定めてもらわなければ事業の進行はむしろおぼつかないのではないか、かように考えるのでございますが、そういうお考えがおありでありますかどうか、承りたいと思います。
  391. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいまやっております大規模林道事業でございますが、これはただいま先生お話ございましたように、大規模林業圏開発という形で過去において薪炭林、まき、炭等に主として使われた森林が現在各地でまだ大量に残っておる、そういう地域がやはり一番財政的にも、そして産業振興の面からもおくれておるという形で、そういう地域を中心に今後いい山づくりをしながら山村振興を図ろうというのがねらいでございまして、そういうねらいのもと昭和四十八年からまずさしずめ林道に着手をしたわけでございます。その後私どもといたしましてもこの仕事には特に力を入れまして、予算の面でも他のものに比較いたしましてきわめて高い伸び率の予算で仕事を実行いたしておりますが、いま先生指摘のように、この林道が通ります受益地域でございます地域は財政的にもきわめて厳しい、財政力指数等も低い市町村が多いわけでございまして、いろいろな問題が従来から出ておりますけれども、現時点では国が大体三分の二、六六%でございます。それから、県が二三・三%、それから受益者が一〇%という形でこの林道の経費負担をしておるわけでございまして、私どもといたしましても、いま先生が御指摘のように過疎地帯の経済的に非常に基盤の脆弱なところでございますし、受益者賦課金の軽減という問題については従前からも検討は進めておりますけれども、なかなかむずかしい問題もございまして、さらに私どもいろいろと検討を進めまして実現に対して努力はしてまいりたいというふうに考えております。
  392. 中村直

    中村(直)分科員 私、大蔵省筋に当たってこの問題の意見交換をしている限りにおきましては、三分の二を四分の三に引き上げるということは事業が大きいだけに膨大な国費の負担にはね返るというふうな主として財政的見地に立って難色を示しておる向きもあるようでございます。しかし、事業の性格あるいは地域の特性に応じたところの負担区分というものはおのずから定まるべきものであって、それだけに担税力あるいは財政力の乏しい地域に対して国の負担が軽ければいいということだけで問題が今後も引き続き推進されるということであっては適当ではないのではないか。しかし、事の重要性にかんがみまして、私はここでは農林大臣の大きな政治力をひとつ御発揮いただきたいのでございますが、大臣の御所見を承りたいと思います。
  393. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この大規模林道の受益者の賦課金の軽減の問題、これは五十二年度予算編成に当たりましても関係地域の方々から強く要望のあった点でございまして、農林省としても大蔵当局に対して鋭意これが実現のために努力を傾けたところでございます。しかし、ことしは非常な財政困難の中で予算の編成ということになりました。また、農林省としてはほかにも国庫負担率のアップの問題等もございまして、ついに五十二年度でこれを実現することができなかったわけでございますが、五十三年度予算編成等におきましては地元の強い要請も踏まえまして最善を尽くして実現を期したい、こう考えております。
  394. 中村直

    中村(直)分科員 大臣の力強い御答弁を賜りましたが、関係地域住民あるいは関係者の団体が大きな期待とともに、また協力を惜しまない決意でおることを申し添えまして、次の問題に移らせていただきます。  次に、私は森林の国営保険及び全森連が行っておりますところの森林災害共済等の制度の改善、また国の助成等の問題につきまして御所見を承りたいと思います。  近年、森林の広域的な機能に対する国民的な要請はますます高まっておることは申し上げるまでもございません。ところが、他面におきまして林野火災及びいろいろな災害がきわめて大規模に、また件数も増大の傾向をたどっておりますことはまことに憂慮にたえない次第でございます。私ども岩手県の林野地帯におきましてもしばしばこうした大火に見舞われておる経験を持っておりますだけに、私はこの問題をきわめて深刻に考えておるわけでございます。現在、これらの災害に対しまして損害てん補の手段といたしましては森林の国営の保険制度及び全森連が行っておりますところの森林災害共済制度というものがあるのみでございまするが、これは現在の世相あるいは経済情勢のもとにおきましては何かしら適合しない面がある、かように考えまして、私はこの制度を通覧いたしまして抜本的に検討をし直すべき問題点を持っておるのではないかというふうな感じがいたすわけでございますが、まず大局的にそういうふうなお考え、あるいはこれをさらに現在の情勢に適合するように内容を整備充実するというお考えが林野御当局におありかどうか、それをまずもって承りたいと思います。
  395. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま先生お話しございましたように、現在森林の災害に対する損失補てんの制度につきましては、国がやっております森林国営保険あるいは全国の森林組合連合会が行っております森林災害共済事業、また民営の保険も一部ございます。こういうふうに保険の制度がございますけれども、それはそれぞれの特徴を持ちながら相補いあって現在までやってきたわけでございます。しかしながら、最近非常に災害も多い、いろいろな点もございますし、さらにはただいま森林組合の制度の検討会をやっておりまして、森林組合制度検討会の中でこの森林組合が行っております共済事業についてどうあるべきかということを検討していただいております。したがいまして、私どもといたしましてはいま申し上げましたような問題につきまして、この森林組合の共済事業のあり方の中の一環として今後検討を進めまして適正な対応をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  396. 中村直

    中村(直)分科員 現在、造林は制度資金を活用いたしまして造林されるという例がきわめて多くなっておりますことは好ましいことでございます。しかしながら、そういう場合におきましてこの国営保険に加入する実態を見ますと、掛金が高い関係もありますが、きわめて短期の契約をいたしましてその後の更新がほとんど行われていないという例が多々あるわけでございます。そういたしますと、むしろ三年、四年経過した、あるいはその後の造林地に災害があった場合には、まさに保険は一文もかかっておらないが、借金だけが残るというふうな現状を呈しておることは、まことに残念なことでございます。しかし、これも掛金が非常に高くつくということにマイナス要素がございますし、また全森連の災害共済の方におきましては、さらに基盤が弱いと思いますので、いろいろコストの面におきましても、なかなか保険掛金を切り下げるというふうなことは、自主的な努力によってはもう限界があるのではないか、かように考えます。さような点からいたしまして、私は他の制度、たとえば農業共済あるいは漁業共済等におきましては、掛金に対する国あるいは都道府県の助成の例もございますので、この森林の火災に対する保険制度につきましても、何らかそういう道が開かれるべきではないか。そしてまた、事務的経費あるいは事務執行のための人件費等につきましても、むしろ事の性質上国庫負担で行ってもいいのではないか、そういうふうな前向きの意味を含めての御検討があられるかどうか、承りたいと思います。
  397. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま、私ども先ほど申し上げましたような中で、この制度についての検討を進めておるわけでございますが、まず何よりも先には、いま申し上げました補助に関する制度につきまして、どういうふうに国全体あるいは森林組合でやっておりますものとを調整しながらやっていくべきであるか、またどういうものが一番森林所有者にとってよりよい制度であるのか、その辺を中心に検討いたしておりまして、いま先生が御指摘のようなその制度の内容そのものについては、まだ必ずしも十分詰めてはおりませんけれども、やはりわれわれといたしましては、最近非常に豪雪地帯に折損木その他の被害もふえております。また、逆に森林所有者がこの保険制度に加入する度合いは必ずしも高くございません。したがいましてそういう問題にどう対応していくか、現在私どもとしても検討を進めておりますけれども、いま直ちにどういう方向、どういう対応がベターであるかという方向は出ておりませんし、今後われわれといたしましてもいろいろな事態を十分研究、検討しながら、将来に向かって検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  398. 中村直

    中村(直)分科員 最後に一言御要望を申し上げまして、私の質問を終わります。  つまり、私、過去におきまして、農業共済あるいは漁業共済等に対しまして、国の制度に対応いたしまして、都道府県の財政当局といたしまして財政措置をした経験を持っておりますが、林業に関しましてもそういう意味を積極的に含ませました今後の制度の見直しを、ぜひ力強く、しかも短期に結論が出られますように、強く御要望を申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  399. 伊東正義

    伊東主査 これにて中村直君の質疑は終了いたしました。  次に、玉沢徳一郎君。
  400. 玉沢徳一郎

    玉沢分科員 私は、わが国における食糧自給率を高める、こういう福田内閣の姿勢に対しまして、それを中心といたしまして御質問をさせていただきたいと存じます。  まず私は、年々食糧自給率が低下しておる、こういうことが世論、マスコミ等におきまして言われておるのでありますが、しかし実際にその数字を追ってまいりますと、必ずしも批判のとおりではない。農林省当局の御努力によりまして非常にわが国における生産力が高まっておる。このことに対しましては心から敬意を表する次第でございます。たとえばわが国における肉類の生産でございますが、昭和三十五年の国内の消費量を見ますと、四十六万トン、生産量が四十二万トンで、自給率九一%、こういうことに相なっております。ところが、昭和四十七年におきましては消費量が二百十四万トン、そして生産量が百七十三万トン。それで消費量も生産量も高まっておりますが、その消費量につまりわが国の生産力が追いつかないがために自給率は八一%に落ちておる。昭和五十年度におきましては消費量が二百五十九万トン、生産量が百九十八万トン、そして自給率は七六%に落ちておるわけであります。したがいまして、自給率、こういう点から申し上げますと、わが国は確かに自給率は低下いたしておりますが、ただし、消費量に見合った生産力が足りないというだけでありまして、この間におきましてはわが国の生産農家農林省の皆さんの御努力によりまして生産力そのもの、自給力が上がっておる、こういうことに対しましては心から敬意を表してまいりたいと考えるわけでございます。ただ、しかしながら、今日までの経過におきましては幾多の問題を抱えておるわけでございます。こうした点を一つ一つ是正をしていくことが前進的な農政というものを確立する最大のものである、こういうふうに考えるわけでございます。  そこで質問を申し上げますが、まず第一点といたしまして、昭和四十八年の十月、御承知のとおりに大変な石油ショックが起きたわけでございます。そこで各経済界におきましても、また農業、畜産業界におきましても、それによって大きなショックを受けたわけでございますが、まだその立ち直りが畜産業界においても十分でない、こういうふうに聞いておるわけであります。多大の借金を抱えた大規模の畜産農家政府の貸付資金に対する借金を返済する場合に、自分の先祖伝来の財産をなげうってそれを売り払いまして借金の返済に使用する。そうした場合に、今日までの十分な努力にもかかわらず自分の財産を売り払って借金を支払う場合には、それ相当のつまり税金が課せられる。こうした問題に関しましては、やはり畜産農家食糧の自給を達成するという立場から、純粋に自分の借金を返済する、こういう場合におきましては、大蔵当局におきましても税金の軽減その他特別の処置を講ずる必要があるのではないか。この点を御質問を申し上げたいと存じます。
  401. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 担当局長が来ておりませんので、私から御質問に対して不十分かもしれませんが、お答えいたしたいと思います。  畜産経営におきましては、他の農業経営と違いまして、特に長期の資本投下を要するということのために相当な債務を持っておることは事実でございます。ただ、現在の債務がすべて不良債務といいますか、返済困難なものであるというものばかりではなくて、通常えさだとかいったような運転資金につきましては、生産物を販売するまで農協等から借り入れをするというのが実態でございますので、その辺はよく実態を見きわめて、どの程度が本当に返済困難な債務であるのかということを見定める必要があろうかと存じます。  畜産経営は、オイルショック以来、あの前後からえさの高騰ということで非常に経営が圧迫を受けたわけでございますが、その後先生御承知のように飼料価格が非常に安定をしてまいっております。特に昨年以降最近まで非常に安定をしておりますので、オイルショック後のえさの価格の高騰その他の事情によりまして大きな打撃を受けました肉牛経営あるいは酪農経営あるいは養豚経営等におきましても、かなり立ち直ってまいってきておると思います。したがいまして、それらの債務の状況につきましては現在通産局で種々調査をしておりますので、それの実態を明らかにした上で必要な措置は講じたいということで、検討しておるところでございます。
  402. 玉沢徳一郎

    玉沢分科員 今後とも十二分の畜産農家に対する御配慮を賜りたいと存ずる次第でございます。  なお、自給力という点を見てまいりますと、肉類と同じような係数をもって上昇してまいりましたものに鶏卵あるいは牛乳、乳製品等々がございます。ところが問題は、今後小麦とか大豆、こうした生産量が落ちておるわけでございます。これらは大量に、しかも安価に外国から安定供給をする、こういう方針で私も大筋はよろしいかと思うのでありますが、ただ、国際情勢の変化によりまして、一切外国からそうした大量の安定した供給が日本に入ってこない、こういう事態も考えまして、必要最小限度の自給力、こうしたものは確保していかなければならぬのじゃないか。今後昭和六十年度までの間におきまして、どういうような施策を講じられようとしておられるのか、その点について御質問させていただきます。
  403. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 玉沢さんの御質問は、食糧等の自給率を高めるように農業の諸施策を強力に展開すべきではないか、こういう御趣旨の御質問でございます。この食糧問題は、世界的に見ましてもまた国内的に見ましても、非常に重大な時期に当面をしておる、こう思うわけでございます。一両年好転はしておりますけれども、長期的な展望に立ちますと、世界的な食糧の需給は予断を許さない、こういう状況にあると思います。わが国におきましても、稲作の復帰志向というものが強うございまして、米の需給関係は依然として過剰基調を続けてはおりますけれども、その他の小麦あるいは大豆、飼料作物、そういうようなものは大部分を海外から輸入に仰いでおる、こういう状況にございます。  自給率の問題でございますが、食糧用の穀類の自給率は、大体七四%程度ということに相なっております。しかし、これを飼料作物等の大幅な輸入依存というようなこと等からいたしまして、総体的な自給力というものは四〇%程度、こういう状況にあるわけでございます。しかし、食糧の確保、特に国民に対していささかの食糧の不安を与えてはならないというのが政府の最大の責任であるわけでございますから、私どもは、今後とも国内食糧の総合的な自給力を高めるように努力をいたしますと同時に、足らない分につきましては、外国から安定的な輸入を図りまして、そして国民食糧の安定供給を期していきたい。私は、農政の基本としてはあくまで食糧に関する限りは、やはり国内の自給ということを大きな目標にして、そして足らないものを補完的に海外から安定的に輸入をする、こういうことを政策基本として今後の農政を進めてまいりたい、このように考えております。
  404. 玉沢徳一郎

    玉沢分科員 わが国の自給率を高めまして、なおかつ国民に安定した供給をやる、大臣の御説明十分納得するわけでございますが、続きまして、わが国がつまり安定した食糧生産をなすという場合におきましては、何と申しましても未開発の地域を開発する、これが重要な観点をなしてくると思うわけでございます。  そこで、従来から広域農業開発選抜地区事業という問題、私の岩手県におきましては北上山系開発ということで、県民、国民の大変な期待を担っておるわけでございますが、ただし国庫からの相当の御援助をいただきましても、地元負担金がやはり相当の高率になっておる。たとえば、基盤整備につきましては地元負担が七・五%、利用施設等におきましては地元が二七・五%、こういうことに相なっておるわけでございますが、これをできるだけ地元の負担を軽減をいたしまして、そうして地元農民ができるだけ参加できるように、たとえば市町村とか農協が経営の主体になっておるわけでありますが、農協と申しましても農民がこの主体をなしておる。農民は、いまいろいろな借金で非常に悩んでおるわけでございますから、できるだけその負担を軽減をいたしまして、国の全面的な負担でもって生産意欲をかき立てていくという処置も必要ではないか、このように考えるわけでございます。この点につきまして、関係当局の御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  405. 森整治

    ○森(整)政府委員 ただいま御指摘の広域農業開発につきましての国庫補助率は、農用地造成の場合は御指摘のように七五%ということに相なっております。これは国営でありましても公団営でありましても、扱いは同じでございます。私ども、この程度のもので、国営にいたしましても公団営にいたしましても——公団営は畜産の施設等もやるわけでございますが、一応財投資金を入れまして、それで県にも負担をしていただくということで、県がかさ上げをこれにいたしまして、現実には農用地開発につきましては、基盤につきましては七・五%というのが地元負担ということに相なっておるのが、北上、北岩手地域につきましては実態でございます。  これをほかの地区で比べてみますと、岩手県はまあまあここより高い地元負担を持っておるというところもございまして、横並びで見ますと相当県のかさ上げといいますか、そういう措置がごく最近決まったやに聞いておりますが、いずれにいたしましてもこの程度のものを将来にわたって事業を先に仕上げて、それから負担をしていっていただくということでございますから、現状の制度では一応一番恵まれた制度ではなかろうかというふうに実は考えておるわけでございます。  ことに公団営は、ほかの——まあ、ほかのものが怒られるかもしれませんけれども、計画どおりにともかく仕上げるということで私ども相当重点的に予算の配分をいたしておるわけでございまして、早く仕上がるという効果も入れますと、一応私どもとしては一番高く評価していただきたいという事業の一つと考えておる次第でございます。
  406. 玉沢徳一郎

    玉沢分科員 ぜひひとつ山村開発、こういう観点から御努力をお願い申し上げたいと存ずる次第でございます。  さらにまたもう一つの観点から御質問申し上げます。  現在、山村地域におきましては過疎状態が進行中である。出かせぎ等が行われておる。なぜ過疎及び出かせぎが行われるかと申しますと、そうした山村と言われる地域におきましては所得の向上が図られない、この点が重大な問題であると思うわけでございます。そこで、そのためには何を手っ取り早くやっていくかと申しますと、山村は字で読むとおり木がたくさんある。どうしても林業開発というものを強力に推進をしていかなければならないと思うわけであります。  そこで林野庁にお伺いを申し上げます。たとえば林業を専一にして生活をしていく場合に、林業は植えましてからそれが製品として価格がつけられるまでに六十年かかる。ところが、確かに数は少ないのでありますけれども、林業をなりわいにいたしまして生活をしておる方々が相当あられるわけであります。ところがこういう方々が、たとえば財産を相続する場合におきまして、つまり財産として持っておる山林地主、こういう方々と同じように所得税を非常に高く取られておるわけであります。そうしますと、林業というものに生きがいを感じ、それを推進しようと思っておりましても、六十年の間に三代も代が続きますと、遺産相続その他相当取られるわけですね。したがいまして、もう六十年たって、いざ木を売ろうという時点におきましては、林業をなりわいとする方は一人もおらなくなる、こういう事態がいま進行中ではないかと思うわけでございます。こうした点におきまして、林野庁がもっと大蔵省に、つまり租税措置の十分な対策を少し政策として打ち出したらいかがか、このように質問いたす次第でございます。お答えをお願いします。
  407. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 山林の相続税の問題につきましては、いま先生が御指摘のような問題があるのかと思いますけれども、一応昭和五十年度に、税制の改正によりまして相続税につきまして大幅な課税最低限の引き上げが行われております。先生御存じのように、日本の森林所有者の九〇%が大体五ヘクタール以下の所有者でございます。したがいまして、私どもといたしましては、一部の大森林所有者は別でございますけれども、一般的にはこの課税最低限の引き上げということで、いま申し上げましたようないろいろな問題も大体この範囲内におさまっているのではないかというふうに考えております。
  408. 玉沢徳一郎

    玉沢分科員 続きまして、林業に関連をいたしまして大規模林道事業がございますが、大規模林道事業の事業量が全国規模で二十三・五キロメートルでございます。各市町村、全国山村地区と言われるのは四百数十町村あると思うのでありますが、これらの市町村が非常に熱望しておるにもかかわらず、二十三・五キロというのはきわめて少ない量じゃないか。それから大規模林道事業の国庫補助率がきわめて少ない。これを少なくとも四分の三ぐらいに実現をするという努力を前向きにして山村開発のためにやる意思はないかどうか。この点をお答えください。
  409. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 大規模林道の事業量の問題でございますが、これは先生も御存じのように、四十八年度から発足した事業でございまして、予算といたしましては、例年他の予算に見ないほどの伸び率で一応予算をつけまして実行いたしております。ちなみに申し上げますと、五十一年度でも一四〇%の伸びになっておりますし、ただいま御審議願っております五十二年度の予算につきましても一四七%の伸びという形で、私どもといたしましても、始まったばかりでございますので、事業量の絶対量は小そうございますけれども、積極的にこの事業を伸ばしていこうという姿勢で対応いたしております。  それから、これに対します負担の問題でございますけれども、これにつきましては先ほど大臣から中村先生の御質問にお答えになったとおりでございまして、私ども大臣の意を体して対応してまいりたいと考えております。
  410. 玉沢徳一郎

    玉沢分科員 それから、先ほどちょっと一つ質問し忘れておったのでありますが、先ほど相当大きな山林を持っておる人は全国で非常に少ない、こういうことをお話し申し上げたわけであります。ただ、林業の特殊法人というようなものも、やはり林業をなりわいとする方々に対しましては考えて、これを実施するというぐらいの姿勢が必要なんじゃないかと思うのであります。いま林業の特殊法人についていろいろ検討中であるのか、こういうことに関しましてひとつ林野庁のお考えをお伺いをいたしたいと思います。
  411. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 いま先生の御指摘になりましたのは、林業の特殊法人ではなくて、森林所有者は大体個人経営が多いけれども法人化を進めたらどうかという御質問ではなかろうかと思います。(玉沢分科員「そのとおりです」と呼ぶ)これにつきましては、四十九年度の税制改正のときに、森林計画制度対象となっている山林を現物出資して法人化した場合の制度を設けまして法人化を進めるという方向で対応いたしております。
  412. 玉沢徳一郎

    玉沢分科員 続きまして、本年は冬相当寒かったわけでありますが、去年も相当寒かったわけでございます。ことしも冷害が来るのじゃないか、こういうことでございまして、農民はことしの天候の推移に非常に危惧の念を持っておるわけであります。  私のところにある町から陳情が参ったわけでありますが、せっかく農業共済、こういうものがあっても農林省の評価が非常に低いのじゃないか——ちょっとこれは長くなりますけれども申し上げますと、冷害への救済処置で農業水稲共済金は、当町、これは二戸郡安代町というところでありますが、作付面積四百六十ヘクタール、被害率七二%、共済金申請額は二億四百六十二万円で、十アール当たり四万四千四百八十三円であり、農家は期待していたのでありますが、評価員の評価した内容にほど遠い一億一千八百五十万円、十アール当たり二万五千七百六十一円の決定で、四割以上の減額という結果であります。  またもう一つ、これは久慈市というところから来ておるのでありますが、農業災害補償制度、こうしたものも農作物共済損害評価及び評価高決定方法を改善されたい、農作物共済の単位当たり共済金額を引き上げられたい、こういう陳情の声がしきりに高いわけでございます。そうした意味におきまして、この点を改善する意思がないかどうか。これは一年ぐらいならいいのでありますが、二年も三年も共済が続くというのが東北地方の冷害の歴史であります。七年を周期としてやられるのじゃないか、こういうこともありますので、これの改善をひとつやっていただきたい。
  413. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 担当部長がおりませんので、かわりましてお答えをしたいと思います。  五十一年産の水稲につきまして、共済組合におきます評価額と連合会の評価、それから最終的に農林省で作表いたしました損害額との間にかなりずれがあるということで地域的に問題のかかっておる例が出ておるわけでございますが、組合の損害評価は検見の方法によってやっております。これは通常の場合は、連合会が行います坪刈り損害額との評価の差は余り出ていないのが通例でございますけれども、昨年のように近年まれな冷害というような事態でございましたために、検見による評価と連合会が行いました坪刈りによる評価とかなりの差が出てきたということが一つと、もう一つは、組合と連合会、それから国が査定いたします段階での時期のずれがございます。これは、御承知のように昨年は秋になりましてから天候がやや回復いたしまして、遅くなればなるほど当初の損害よりは作柄が回復いたしまして、損害額がやや軽減をしたという経過があったわけでございますが、それが、先ほど申しました組合と連合会と国の場合の実施の時期が十日ないし十五日ずれたということのために、組合で評価をいたしましたのと最終的な数字との食い違いが出たというような特殊の例が出たわけでございます。  農林省といたしましては、そのようなずれが出るということは好ましいことではございませんので、組合段階の損害評価につきまして、単位実測を行うような方法を導入するように指導をする、あるいは評価時期にずれを生じないように三者の間で緊密な連絡をとって指導する、あるいは損害評価に先立って、標準田を選定いたしまして損害評価員の評価の目を統一するというような改善を行うことによりまして、今後評価の適正を図っていきたいというように考えております。
  414. 玉沢徳一郎

    玉沢分科員 時間が残り少なくなってまいりましたので、沿岸の問題についてやります。  最近、二百海里の問題等で、養殖または沿岸の漁業の重要性が指摘されておるわけでありますが、最近、韓国のワカメの輸入量が増大をいたしまして、沿岸の養殖ワカメ漁家に対する圧迫に相なっておるわけでございます。したがいまして、昨年は大体八万トン韓国から輸入されたと言われておるわけでありますが、どうしてもこの点を解決をいたしませんと、昨年の場合は生ワカメ十キロ千二百円、本年は六百円、こういうように値段が低下いたしておるわけであります。したがいまして、韓国のワカメの輸入に対する規制、あるいはまたそれに対応する処置等につきまして、ひとつ農林大臣の御見解を賜りたいと思います。
  415. 岡安誠

    ○岡安政府委員 御指摘のとおり、昨年、生産者の手取りという意味におきますワカメの価格が非常によかったわけでございますけれども、そういうようなことを反映したからか、韓国から塩蔵ワカメの輸入が急増いたすということがありまして、その在庫が加工業者の段階に相当積み上がるということもありまして、今年産のワカメに対して非常に悪影響があるということが心配されていたのでございます。そこで、昨年末、水産庁それから韓国の水産庁、それぞれ実務者が集まりまして会談をいたしまして、五十二年につきましては韓国の対日輸出量は五十一年の実績を上回らないというような話し合いをいたしまして合意に達したほか、ことしの二月、たまたま韓国の水産庁長が日本にお見えになりましたので私もお会いいたしまして、この合意の確認をするということも行ったわけでございます。また一方、日韓双方の民間レベルにおきましても、昨年三回にわたりまして折衝を行いまして、韓国の対日ワカメ輸出につきましての自粛措置等につきまして了解がついているというところでございます。  そこで、私どもといたしましては、こういうような合意のもとにおきまして、日本側も輸入体制の秩序化を図るということから、ワカメの輸入協議会を開催をいたしまして、これは零細な業者が非常にたくさんございますけれども輸入業者が適正な輸入を行うように指導をいたしますと同時に、近く輸出入取引法に基づきまして輸入組合をつくるというような方向で現在指導を行っているわけでございます。  さらに、ワカメの輸入動向を事前に的確に把握するという目的のもとにおきまして、輸入貿易管理令に基づきます事前確認制を三月の十日からすでに行っているわけでございます。  また一方、ワカメの国内の調整保管につきましても、すでに全漁連が産地におきまして調整保管態勢に入ったということもありまして、御指摘のとおり最近まで若干価格が悪く、キログラム当たり六十円前後といいますか、割るような状態でございましたけれども、最近はようやく七十円という声も聞けるようになっております。  私どもは、今後さらに国内におきますワカメの需給状況につきましては、まず生産者が共販体制を確立をして市場に対応する能力を確立するということと同時に、加工業者に対しましても、最折の需給事情をよく把握いたしまして、積極的にワカメの養殖に参加するように指導いたしたいというふうに考えております。  在庫もおかげで昨年の末に比べまして大体半減をいたしておりますので、大体私どもの予期するような方向に今後進んでいくのではなかろうかというふうに思っております。
  416. 玉沢徳一郎

    玉沢分科員 もう一つ、JAS規格を設定するということを聞いておりますのですが、これの見通し、時期等につきまして御質問させていただきます。
  417. 岡安誠

    ○岡安政府委員 ちょっとお答えが落ちまして申しわけございませんでしたけれども、JAS規格につきましては、特に韓国産のワカメと国内産のワカメとがブレンドをされるというようなこともありまして、やはりわが国産のものはわが国産のように、韓国産のものは韓国産のように、品質等につきまして、消費者の理解を得て今後消費が伸びるようにという意味合いから、私どもも近くJAS規格の設定をいたしたいということから、二月から関係者の参集を得まして現在検討を進めております。したがって、私どもといたしましては、色沢とか水分とか塩分、形態等の規格、それから製造者、製造年月日、さらには原産地の表示をどうするかということも含めまして、近くJAS規格の設定に向かって努力をいたしたいというふうに思っております。
  418. 玉沢徳一郎

    玉沢分科員 大変ありがとうございました。  なお、本年度から農林省におきましては、地域農政特別対策事業、こういうことで非常に積極的な予算と姿勢で取り組んで、きめの細かい農政をやられるということに対しまして、非常に私ども期待をいたしておるわけでございます。どうかこれを農民の皆さんの納得のいくような形で推進をしていただきますことを要請を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  419. 伊東正義

    伊東主査 これにて玉沢徳一郎君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和五十二年度一般会計予算及び昭和五十二年度特別会計予算農林省所管についての質疑は終了いたしました。  次回は、明十五日午前十時より開会し、通商産業省所管について質疑を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時三十八分散会