運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1977-02-23 第80回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年二月二十三日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 大村 襄治君 理事 栗原 祐幸君    理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君    理事 細田 吉藏君 理事 安宅 常彦君    理事 楢崎弥之助君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    伊東 正義君       石橋 一弥君    稻葉  修君      稻村佐近四郎君    越智 通雄君       金子 一平君    川崎 秀二君       木野 晴夫君    始関 伊平君       瀬戸山三男君    根本龍太郎君       藤井 勝志君    古井 喜實君       松澤 雄藏君    松野 頼三君       森山 欽司君    阿部 昭吾君       井上 普方君    石野 久男君       上原 康助君    大出  俊君       小林  進君    佐野 憲治君       多賀谷真稔君    藤田 高敏君       武藤 山治君    坂井 弘一君       広沢 直樹君    二見 伸明君       矢野 絢也君    渡部 一郎君       大内 啓伍君    河村  勝君       工藤  晃君    寺前  巖君       正森 成二君    大原 一三君       田川 誠一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 福田  一君         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 渡辺美智雄君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  田中 龍夫君         運 輸 大 臣 田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 長谷川四郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       小川 平二君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      園田  直君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      藤田 正明君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      西村 英一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 三原 朝雄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 田澤 吉郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         防衛庁参事官  水間  明君         防衛庁長官官房         長       亘理  彰君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁経理局長 原   徹君         経済企画庁長官         官房参事官   岡島 和男君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   伊原 義徳君         法務省刑事局長 安原 美穂君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 中島敏次郎君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省銀行局長 後藤 達太君         厚生省年金局長 木暮 保成君         社会保険庁年金         保険部長    大和田 潔君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         水産庁長官   岡安  誠君         通商産業省通商         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省貿易         局長      森山 信吾君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省機械         情報産業局長  熊谷 善二君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       武田  康君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君         運輸省航空局長 高橋 寿夫君         海上保安庁長官 薗村 泰彦君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治省財政局長 首藤  堯君  委員外出席者         衆議院法制局長 大井 民雄君         日本国有鉄道資         材局長     竹田 信人君         日本輸出入銀行         総裁      澄田  智君         参  考  人         (海外経済協力         基金総裁)   大来佐武郎君         参  考  人         (海外経済協力         基金理事)   大島 隆夫君         参  考  人         (新東京国際空         港公団総裁)  大塚  茂君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月二十三日  辞任         補欠選任   笹山茂太郎君     石橋 一弥君   浅井 美幸君     渡部 一郎君   荒木  宏君     工藤  晃君 同日  辞任         補欠選任   石橋 一弥君     笹山茂太郎君   渡部 一郎君     浅井 美幸君   工藤  晃君     正森 成二君     —————————————本日の会議に付した案件  昭和五十二年度一般会計予算  昭和五十二年度特別会計予算  昭和五十二年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度一般会計予算昭和五十二年度特別会計予算及び昭和五十二年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。  理事会協議により、総括質疑保留分について質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。工藤晃君。
  3. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) この前の質問におきまして、私は、ブルネイLNGについて、シェル三菱商事バーミューダコールドガストレーディングというペーパーカンパニーを設けて、そうして価格の操作を行い、三菱などは想像を絶する大きな利益を上げている事実を資料によって示しましたが、それに対しまして田中通産大臣は、「多国籍企業の詳細な分析につきまして、大変に参考になります資料をちょうだいいたしましてありがとうございます。」と言われ、「これらの問題につきましては、産業行政といたしましても今後十分調査をいたしたいと存じます。」と答えられましたが、それは今後通産省ブルネイのこのLNGの問題について、シェル三菱商事に対しても調査を行うものと理解しますが、それでよろしいでしょうか。
  4. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  LNG価格決定の問題でございまするが、これらは売買当事者間の交渉によりまして価格決定されております。  なお、詳細のことにつきましては、担当政府委員からお答えさせていただきたいと存じますが、われわれの方もかかる多国籍企業の問題につきましては、今後ともに十分注視してまいる所存でございます。
  5. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) いまの問題について調査を行うかどうかという点について、それに関係するならば答弁していただきたいのですが、三菱商事シェルに対しての調査を行っているのかどうか、その点であります。
  6. 田中龍夫

    田中国務大臣 特にブルネイ問題等につきましては政府委員からお答えいたさせますが、先般も申し上げましたように、本来、日本に進出しておりまする多国籍企業あるいはまた日本から出ておりまする多国籍企業等の問題につきましては、御案内のとおり、OECD指針もありますれば、さらにまた経団連等民間業界におきまする自粛の規制もございます。さような次第で、今後ともにこれらの問題を注視してまいります。  御指摘ブルネイその他の問題につきましてはエネルギー庁長官からお答えさせていただきます。
  7. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 多国籍企業一般については、別途政府委員からお答えいたすことと思いますが、私からは、せんだって御質問があった後どの程度の調査を実施したかということについて簡単に御報告申し上げたいと思います。  三菱商事担当者を呼びまして事情聴取いたしましたところ、一つは、ブルネイLNG価格は、まずCIF価格決定されるわけでございますが、この決定されましたCIF価格についてはブルネイ政府の承認が必要であるということで、実質的にブルネイ政府意向が強く反映されるということのようでございまして、事実、ブルネイ政府といたしましては、LNG価格ナフサあるいはLPG等競合燃料とカロリーにおいて等価格にするように、非常に強く従来からも要求してきておるわけでございますが、ユーザー側といたしましては、交渉過程におきまして、ナフサあるいはLPG等に比較して、より低い価格価格を設定しているというふうに聞いております。  それから二つ目は、一九七五年の半ばごろからブルネイ政府コールドガストレーディングヘの事業参加ブルネイLNGへの事業参加比率の引き上げについて申し入れをしてきておったようでございます。この点につきましては、昨年末コールドガストレーディング社国籍バーミューダからブルネイに移すということと、コールドガストレーディング社に対するブルネイ政府事業参加を行うということについて、基本的に両者の間で合意ができておるようでございますが、その細部についてはなお交渉中であるというふうに承知いたしております。
  8. 坪川信三

    坪川委員長 この際、政府側に申し上げておきますが、十六名の質疑者がありまして、各党の理解ある理事会協議の結果、お一人が十二、三分、お三人が二十分と十五分と二十五分というような事情でございますので、答弁は簡明率直にお願いいたします。
  9. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 橋本長官はこの前の答弁の中でも、売買契約に当たって、東京ガス東京電力、大阪ガスなどの向こうの契約の相手はコールドガストレーディング、つまりシェルとそれから三菱商事の合弁であって、一義的にはこれと交渉しているのだ、こういうことを答弁されておるわけであります。  それでいまの答弁では、なるほどそのCIF価格ブルネイ政府意向が反映されるということを言われたわけでありますが、それは三菱商事から間接的に聞いて、そういうことであります。しかし問題は、前回の質問で示しましたように、コールドガストレーディングバーミューダに置かれたことによって、そして三菱商事に半期で百億円といったような配当が送られ、そうして計算によると、それだけを計算するだけでも価格の約三〇%を占める。もしバーミューダコールドガストレーディングがその全利益配当に回したのでなければ、それよりもはるかに大きな利益がその中間にあるわけであります。先ほどの、ブルネイ政府コールドガスに対してそれをバーミューダからブルネイに移すという要求があるということは、まさにそのようなメジャー商事などが介在して大きなもうけを上げていることに対する不満のあらわれだと思いますが、それだからこそ、今度の調査で明らかにしなければならないのは、四十七年、四十八年、四十九年、五十年、五十一年にわたって、少なくともこの期間コールドガストレーディング幾らLNGを仕入れ、幾らで売ったか、この資料をぜひ調査して当委員会に提出していただきたい、そのことであります。
  10. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま申し上げましたような形で価格決定がなされるわけでございますが、コールドガストレーディングブルネイLNG社、それからブルネイ政府、この三者の取り分につきましては、われわれとしては、具体的な内容は承知いたしておりません。また、先日も三菱商事を招致いたしまして、価格について公表の話を出しましたところ、やはりブルネイ政府との関係で依然として公表できないという姿勢をとっております。
  11. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) いまの御答弁のように、全体の価格の間の取り分が明らかにできないというところでとどまっているありさまであります。石油価格などについて言えば、私がここで詳しく述べるまでもなく、大体産出国取り分メジャー取り分というのが明らかにされるわけでありますが、このLNGという、これからますますエネルギーの中で重要な地位を占めるものについて、その価格構成が一体どうなっているのか、メジャーや多国籍企業はそこでどう大きな利益を上げているのか、その資料が明らかにできないということでは、これからの日本エネルギー政策はやっていけないということさえ言えると思います。そういうことで、重ねて私はこの問題について、いまの特にコールドガストレーディングについての資料はここでの審議についてもぜひ必要だと思いますので、委員長にお願いしますが、委員会として理事会にお諮りになって、このような調査を行い、そして資料を提出することを要求していただくことをお取り計らいくださいと願うものであります。
  12. 坪川信三

    坪川委員長 政府側とよく協議をいたします。
  13. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) さて、続きまして、多国籍企業の全体の調査をどう行っているかということに対しまして、はっきりしたお答えが得られませんでした。なるほど通産省から外資系企業の動向やわが国企業海外事業活動などの調査が出されておりますが、たとえば後者について言いますと、回答率は五〇%という大変不満足なものであります。しかし、とりわけいま必要とされるのは、こういう調査を実際に、たとえばOECD行動基準の中にあるように、「情報公開」というところには、たとえば「企業構成体間の価格設定に関する方針」、トランスファープライシングなどですね、こういうものを多国籍企業は明らかにしなければいけない。それから「課税」のところでは、企業集団構成員がこういうトランスファープライシングなどの使用は差し控えるべきであるという具体的な基準を示しておりますし、またさらに、国連国籍企業委員会が昨年リマで開かれたものに対しまして「結論と勧告」の中に、特にこれから調査すべき点、それは情報調査センター、IRCに集めるべきものとして十三項目ありますが、そのうち特にトランスファープライシングなどを挙げておりますが、こういう多国籍企業トランスファープライシングなどのビヘービアについての調査を必ず行うかどうか、この点について最後に御質問いたします。
  14. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいまのOECD等によります多国籍企業指針でございますが、この遵守状況並びに国際的な組織の実態の把握のために調査を行うことといたしておりますが、また、この調査の結果に基づきまして、必要に応じまして各企業に対して行動適正化のための指導も行ってまいりたいと存じております。このために、来年度予算案におきましても所要の予算措置を講じたところでございますが、なお、多国籍企業行動適正化につきましては、国連におきましても議論が行われておりまして、わが国といたしましてもこれに積極的に参加をいたしてまいる所存でございます。同時に、ただいまの調査その他につきましても、これをずっとフォローしてまいりたい、かように存じております。
  15. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 終わります。
  16. 坪川信三

    坪川委員長 次に、多賀谷真稔君。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 先般の予算委員会において、私が国民年金加入漏れの問題について質問をいたしましたところが、その後各地から電話があったり手紙がずいぶん参りまして、そうしていろいろ実情を訴えてきたわけであります。それで、私もその詳細をこのいろいろな手紙によって知ることができたわけですが、たとえばかつて特別納付金制度があったけれども、分割納入であって、ある期間一期分だけ実は未納になったために全然資格がない、こういうものも一つ訴えが来たわけです。ですから、各地において十分な調査資料がないわけですが、私がやや調べたところによりますと、たとえば東京の府中市においては、昭和十六年四月二日以前の出生者で、強制加入者で、保険料納付期間が不足し、これは未納のため受給権につながらないものが千百五十九名ある、こういうように報告をしております。この方々は何らかの形で少し納入しているのです。全然納入してないのじゃなくて、役所が発見できるのですから、少し納入している。ですから、全然納入してないのがかなりあるのじゃないか。  そこで、稲城市、やっぱり東京都ですが、これが調べたところによると四百四十五名。昭島で千名ぐらいである。こういうことで、東京都の国民年金部に調べたら二十三区で大体六万ぐらいいまわかっておる、こういうことであります。そういたしますと、全国的にはかなり多いのではないか。これは何らかの形で役所に手続をとろうとしたもの、あるいは若干でも納入して期間がないものでありますから、全然いまだに気がついてない層というのは相当多いのではないか、こういうように判断をされるわけであります。そこで、各地から、昭和二年生まれの主婦ですが、国民年金加入漏れで困っております。ぜひ助けてください、お願いしますなんという手紙が来るわけです。  そこで一体、厚生省としてはこの問題にどう取り組んでいくのか、お答えを願いたいと思います。
  18. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御指摘のように、本当に気の毒な方も私はあろうかと存じます。過去において二回救済措置をとったことがございます。それぞれ二百万を超える救済をしたことがあります。しかし原則論は、この前も申し上げましたように、やっぱり保険料納入している人がばかを見てはいかぬという原則論もありますし、これからも毎月きちんと払うのが保険ですよという原則論もあるわけです。しかし、いま言ったような方も私はあろうかと存じますので、そういうようなものを考慮に入れまして、その両方が両立できるようにしたい、こういうように考えております。
  19. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 両方が両立できるようにしたいというのは、これは具体的にいつぐらいまでにそういう処置をしたい、何らかあなたの方ではっきり期限を切って目標を定めて、いつごろまでにそういう整理をしたい、こういうようにおっしゃっていただかないと漠としてつかみどころがない、かように思いますが……。
  20. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 年金の問題については、一遍全体の問題として考え直そうじゃないか。年金基本構想懇談会もございまして、目下詰めておりますから、それらと一緒に、そう何年も先というのではなくてなるべく早い時期に、そういう構想がまとまったときに合わせてやったらいかがなものであるか。別に何月何日までということは目下のところ考えておりませんが、できるだけ早い時期に、というように思っております。
  21. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 簡単に御答弁をいただいて了承しようと思ったのですが、それでは了承できませんよ。年金制度全体を改正するという問題はきわめて大きな問題。そうでなくて、いま国民年金加入漏れの人をどうするかというんですから、これは簡単に処理ができる。早く処理しておかないと大改正になったときにまた不幸にしてその方が乗り得ないということも起こるのですよ。ですからこの部分は早く処理をする。たとえば、六十歳までしか掛金の納入はできませんが、それを六十五まで期間を延長するとか、あるいは二十五年なくても二十年でも金額は少ないけれども受給をさすとか、何らかの方法が講じられぬはずはないのですよ。あるいは前の特別納付のような制度をつくるとか、あるいは特別納付制度をつくると金のない人は困るとおっしゃるならばまたどういうようにするか。とにかく当面しておかないと、この人は加入がだんだんおくれるのです。加入がおくれればだんだん大きな改正のときに資格を失うのですよ。ですから早急に、少なくとも大改正の前に一年をめどにしてぜひその部分だけの改正を出していただきたい。私はこういうように思うのですが……。
  22. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 前にも納付の特例については、昭和四十五年から四十七年で二百十九万ばかりやったことがあります。それから四十九年から五十年にかけて二百八十二万ばかりやったことがございますから、その年限等もおのずからそう先のことでなくてできるだけ早い時期に、御趣旨に沿ってそういうものは救うように検討してまいりたい、かように思っております。
  23. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次期通常国会までと返事ができませんか。できるでしょう。
  24. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いまの段階で私が次期通常国会という確約はいたしかねますが、できるだけ早い時期に努力をいたします。
  25. 坪川信三

    坪川委員長 次に石野久男君。
  26. 石野久男

    石野委員 私は、エネルギー問題について特に原子力が非常に重要だということで関心を持っておるのです。党は、こういう問題では人類の将来に対しても影響のある放射能障害というものを重大視して政治的に取り組んできました。美浜の問題について私は先般資料要求をしておりましたが、まだ資料は完全にこちらへ来ておりませんので、まず最初に、来てない資料は後引き続いて出してもらいたい、これが一つ。  それから先日、資料の一部としてお手元に——配ってくださいましたか。お手元にお配りしております資料美浜事故に関連して四十八年四月八日の作業日誌です。この作業日誌を見ますと、ちゃんと事故が明記されております。こういう事実がはっきりしているのに、これを政府に対して報告してないということについては、関西電力原子力基本法及び規制法に対する構え、法を守らないというこの態度は許せない。私は、この事実にかんがみて、本委員会関西電力代表者、社長をぜひ証人として喚問してもらいたい、このことをまず最初委員長要求したい。
  27. 坪川信三

    坪川委員長 ただいまの御要求理事会において十分協議したいと思います。
  28. 石野久男

    石野委員 先般の委員会では、この問題については政府統一見解を積み残しのきょうの会議までには私の手元へ出してくるということになっておりましたが、統一見解は先ほど私の手元に参りました。まだ十分見ておりません。政府はどういうふうな統一見解を持っておるか。総理大臣、ひとつ統一見解を明確にしていただきたい。
  29. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいまの原子炉等の報告を行わなかったことにつきましては、規制法の第六十七条及び電気事業法第百六条の報告を怠ったものである、かように考えます。  政府におきましては、本件の重大性にかんがみまして、二月の四日に行いました指示に加えまして次の処置を講じました。  すなわち、事故原因の詳細な究明等が完了するまでの間、美浜発電所第一号炉の運転再開を延期する。  第二は、法律の規定に違反した者であって主任技術者免状の交付を受けている者に対しましては、その免状の返納を命ずる手続をとる。  第三は、原子力発電所の定期検査及び立入検査の充実、強化を図りますとともに、電気事業者に対しまして、今後軽微な故障につきましても報告させるように指導する。  これらの措置によりまして、政府といたしましては原子力発電所の安全の確保にさらに万全を期する所存でございます。
  30. 石野久男

    石野委員 いまの統一見解によると、ただ免状の返納を命ずるというようなことだけで事を済まそうとしておりますが、こういうことでは関西電力に対して、法を守らないということに対する政府の監督業務が十分だとは言えない。これはむしろ、関西電力原子力を扱うだけの資格はないとまで断定されるとわれわれは考える。そういうことについて法律はきちっと決めておるが、通産省はそのことをどういうふうに考えますか。
  31. 田中龍夫

    田中国務大臣 法適用の詳細につきましては、担当エネルギー庁長官から申し上げます。
  32. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 原子炉等規制法によりましては、原子炉の許可の取り消しという規定がございます。それから電気事業法につきましては、事業の取り消しといったような規定もございます。ただ本件につきましては、すでに時効が発生いたしておりまして、ただいま引用いたしました法文は、そういうことによって処罰された場合に援用されることになっております。さようなところから、先ほど大臣が御答弁いたしましたような統一見解によって対処いたしたい。具体的には二月四日に文書をもってすでに保安体制の総点検を指示したところでございますが、さらに、ここで報告義務違反が明瞭になってきたというところから、ただいま先生御指摘の主任技術者に対する問題のほかに、美浜一号につきましても、原因が究明され、かつ、それに対する対策が十分なされるまでの間、運転を延期する、ということで対処いたしたいと思っておるわけです。
  33. 石野久男

    石野委員 法の第二十四条一項三号によるところの許可基準の中に、設置者の技術的能力という問題が規定されておる。いまの事故の事実は、設置者に技術的能力がないと見なければならない。これに該当するのです。だからむしろ、これは許可基準に反するのでから、許可を取り消すべきです。一時、炉の開始延期をするというだけではよくないと思います。これは十分やはり検討すべきだし、統一見解の中にもあるように、三年間の時効を経ておるからということで行政処罰だけでこのことを処理しようとすることは、住民の原子力開発の安全性に対する期待には全く沿わないものになると思う。私は、政府はもう少し検討を密にして、法を守らないということに対する的確なる処断をすべきである、このように考えます。  ことにこの問題は、いまお手元にもありますように、作業日誌にはちゃんと書かれておる。これは関西電力の問題だけじゃなしに、この監督の衝に当たる、定期検査に処したいわゆる監督官が全然この事実を見なかったのかどうかという問題にもかかってきますから、これは監督官庁である通産省の責任も出てくるはずです。通産省は自分の省内におけるこの問題に対する対処をどういうようにしますか。  それと同時に、もう一つは、この事実は法の七十三条による除外規定によって、規制法の実施を電気事業法に任しておるところからきていると思う。定期検査の報告がいわゆる規制法に規定するような報告の内容になっていないところからきていると思う。だから、これはもちろん、法律の七十三条の除外規定というものをもう一遍考え直して、電気事業法というものからもう一遍規制法に戻すべきだ、こういうように私は考える。その問題について政府はどういうふうに考えるか。
  34. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 第一の御質問の技術能力があるかどうかということは、原子炉等規制法関係でございますので、科学技術庁関係政府委員からお答えいたすかと思いますが、ただいま御指摘のいわゆる原子炉等規制法の適用除外として定検がなされておるということにつきましては、私たちの立場といたしましては、一つには、これは二重検査を避けるということと、いま一つは、原子炉を含めまして原子力発電所を構成するすべての電気工作物を一体として検査をするという立場から、電気事業法で定期検査をやっておるということになるわけだと思います。問題はむしろ、われわれといたしましては、その定期検査でも発見し得なかったという点に重点を置きまして、この定期検査を拡充強化していく。たとえば立ち合い項目をふやすとかあるいは立ち合い回数をふやすということも必要かと思います。また、その方向で現在対策の検討を進めておるわけでございます。  それからいま一つは、いずれにいたしましても、事業者の安全に対する認識ということは非常に大切であり、すべての前提に立つものでございますので、従来以上に立入検査を増加させることによって対処いたしたいと思っておるわけでございます。
  35. 石野久男

    石野委員 自治大臣にお尋ねしますが、自治大臣は、美浜原子力発電所とそれから美浜町との間の協定がある、あるいは福井県との協定があります、そういう問題が全然無視されていることに対してどういうふうに対処されるか。  それからまた、環境庁長官は、この時点において環境に及ぼしたところの影響、放射線影響とか、あるいはこういう事実があるにもかかわらず美浜ではあの地帯を海水浴場としてすばらしい所だということで宣伝している。こういう問題についてそのまま放置しておいていいのかどうか。この点は文部省とも関係あるかどうか知りませんが、とにかくこういう問題に対してどういうふうに対処しておるか。  労働省は、この時点において——恐らくこの事故が発見されたときには、いわゆる燃料棒の破損片の回収とかあるいはペレットの回収とか非常に危険な作業が行われたと思います。そういう問題について、労働者の被曝状況がどうであったかということを十分掌握しておるかどうか、こういう問題についてもお聞きしておきたい。  そして最後に、総理に、やはりこういうような問題を含めて、起業者が、設置者が安全性に対して非常に安易な考え方を持ち、安全宣伝だけに終始していることについてどのように対処されるか、このことを聞いておきたい。
  36. 小川平二

    ○小川国務大臣 お答えいたします。  個々の事業の内容に関しましては、それぞれ主管の大臣から御答弁を申し上げるべきだと存じます。
  37. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 お答えいたします。  もし放射能の漏洩があるならば、これは人間の健康にかかわる非常に重要な問題でございますが、直接、放射能は科学技術庁の所管でございます。しかし、そういう事実があるならば、環境庁としても見逃すことのできない事態でございますから、当然環境問題として取り上げますが、その前に科学技術庁からの詳細の報告を得てから判断したいと心得ます。
  38. 石田博英

    ○石田国務大臣 四十八年にさような事故があったことは、後で報告を受けて承知しておりますが、その事故直後の報告はなかったように承知しております。事態を知りましてから直ちに調査をいたしました。労働安全衛生法の規定によりますと、線量が一・五レム以上の場合に報告をしなければならぬというものでありまして、その基準には法的には触れていないと判断をしましたけれども、とにかく隠しているということはよくないことなので、責任者に対して当該基準監督署を通じて厳重に注意をいたしました。
  39. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いずれにいたしましても、本件は重大なエラーでまことに残念であります。こういうことが再び起こらないように、特に起業者に対しまして、人命を尊重するという立場で厳粛に対処するように要請いたします。
  40. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 この間、石野委員の御質問に関連いたしまして、楢崎委員から科学技術庁に対しまして調査要求がございましたが、その調査に関しましてはただいま鋭意続行中でございますから、いましばらく御猶予のほどをお願いいたします。
  41. 石野久男

    石野委員 私はまた後で、質問を残します。
  42. 坪川信三

    坪川委員長 楢崎君の御質疑の問題につきましては、政府の回答があるまで保留いたします。  次に藤田高敏君。
  43. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、政務次官の適格性の問題について答弁を持ち越しておるわけでありますが、これに対する政府答弁を求めたいと思います。
  44. 園田直

    ○園田国務大臣 藤田委員の御指摘に関しまして、速やかに調査をして内々連絡をいたしましたところ、藤田委員調査と私の調査が若干食い違いがございます。その後、改めて調査いたしましたところ、遺憾ながら藤田委員の御調査の方が正確でございました。  次に、この問題は、福田内閣成立直後の政務次官会議で、兼職の問題については厳重申し合わせ並びに注意をいたしております。  その第一は、営利企業については、政務次官は報酬を得ると否とにかかわらず兼職を認めない。なお、この兼職については、報酬がない場合には所管大臣の認可を必要とするということになっておりますけれども、この際、特に厳重に戒めて、各大臣が兼職は許さないということ及び公益法人その他の申し合わせをいたしておったところでありますが、藤田委員から御指摘を受けたわけであります。  この件は、その後調べましたところ、政務次官に就任いたしましたのが昨年の十二月、その前五十一年の十一月に辞任、登記抹消してございます。が、いずれにいたしましても、今後政府職員その他の任命については、御指摘の点を十分留意をして、このような御指摘を受けないように注意をいたします。
  45. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私が質問をした限りにおきましては、いま園田官房長官の答弁によって私は了承したいと思うのです。しかし、答弁の中で一つだけ確認をしておきたいと思うのですが、私の手元政府委員の方から私の質問に対する回答が来ております。それによりますと、「営利企業の兼職については原則として認めない方針だ」、こういうことでありますが、ただいまの長官の御答弁を聞きますと、兼職は許さない、きわめて明確であります。したがって、私は長官のただいまの答弁を全面的にその限りにおいては了承したいと思うのですが、原則というよりもむしろそういうふうに非常に厳しい、兼職を許さないということで今後とも対処していくということかどうか、その点確認をしておきたいと思うのです。
  46. 園田直

    ○園田国務大臣 ただいま御報告申し上げましたとおり、原則として認めないが、大臣はこれの認可願が出てきても許可しない、こういうふうにしておりますが、御指摘のとおり、こういう時節でありますから、特に認めないようにいたしたいと考えております。
  47. 藤田高敏

    藤田(高)委員 今日政治家に求められております一番重要な要素は、私は政治家に対するモラルの問題だと思うのです。そういう観点からも、今後政府の役職につく者についての適格性については、ただいまの答弁にありましたように、きわめて厳格に処置されることを強く要請をいたしておきたいと思います。  さて、私の持ち越しになっておりますいま一つの問題は、領海問題であります。  今回、政府わが国の領海を十二海里にするという方針を決定し、この国会に法案を提出することになっておりますが、その中に、いわゆる世界にも類例を見ない領海の幅を決定する地域があるということがせんだっての私の質問で明確になったわけであります。いわゆる国際海峡にかかわる部分についてのみ三海里にするという、いわば主権を制限するような領海設定をやろうとしておるのはどういうことかということについての答弁が保留されております。これについて答弁を求めたいと思います。
  48. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 領海幅員を十二海里に拡大するに当たりまして、当面の対応策として、いわゆる国際海峡のような水域につきましては当分の間現状のままとする理由について、十四日の当委員会において藤田委員から御質問がありましたが、この問題に関する政府の見解は、藤田委員からの御要求に基づいて取りまとめて提出をした資料のとおりでございます。それを読み上げてみます。   領海幅員を十二海里に拡張するに当たり、国  際航行に使用されるいわゆる国際海峡における  通航制度をどうするかが重要な問題となるが、  この問題については、現在国連海洋法会議にお  いて、一般領海の無害通航制度に比しより自由  な通航制度を認める方向で審議が進められてい  る過程にある。国民生活の安定と繁栄に不可欠  な資源の大部分を海外から輸入し、貿易、海運  に特に大きく依存する海洋国家、先進工業国と  してのわが国独自の立場からしても、こうした  方向に沿ってマラッカ海峡等の国際交通の要衝  たる海峡における商船、大型タンカー等の自由  な通航を確保することが総合的国益の観点から  ぜひとも必要であること、わが国としては、本  問題がこのような方向で国際的に解決されるの  を待つことが望ましいこと等から、当面の対応  策として、いわゆる国際海峡のような水域につ  いては、当分の間、現状を変更しないでおくも  のである。   なお、今般、いわゆる国際海峡にかかわる部  分について暫定的に領海の幅を現状のままとす  ることは、いわゆる国際海峡における通航に何  ら変更を加えるものではないので、わが国の権  限の及ぶ限りにおいて非核三原則を堅持すると  の従来の立場を変更するものではなく、また、  かかる措置をとることは、前記の理由に基づく  ものであり、非核三原則の問題とは関係がな  い。  こういう見解でございますので、御了承をいただきたいと思います。
  49. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この見解は、政府統一見解として確認してよろしいかどうか。
  50. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 そのように御了承いただきたいと思います。
  51. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私の質問に対する明確な答弁に、これはなっておりません。残念ながら、私の質問はいわゆる三海里にしなければいけない積極的な理由、世界で領海の幅を決めるのに、こういう主権の行使が制限される部分をわざわざつくってまで領海幅を決定するというのは世界的にも類例を見ないんだ。そのためには世界に類例を見ない特別な理由なり積極的理由があるはずだ。このことに対して、いまの統一見解では、今日の領海法による無害通航制度の問題については私は答弁があったと思うのです。しかし、いま私が問題を提起しておる点については、特に昨年来の外務委員会における審議の経過から見ましても、この領海幅の決定、いわゆる国際海峡にかかわる部分についての領海幅の決定については二つの重要な条件があるということを政府自身が答弁しておりますね。その一つは自由航行制度の問題であり、いま一つの問題は非核三原則の問題だということを明確に小坂外務大臣が答弁をしておるわけですよ。このむしろ大事な非核三原則の問題にかかわる点が何ら回答されてない。  ですから、私の方からあえてお尋ねしますが、こういう回答になったということは、非核三原則を避けて通るために、非核三原則に政府みずからが風穴をあけるためにこういう統一見解を示したのかどうか。これは私は外務大臣にお尋ねをいたしたいと思うのです。どうでしょうか。
  52. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいま鈴木国務大臣がお述べになりましたこの統一見解のとおりに私どもも考えている次第でございまして、非核三原則はあくまでも守るんだ、そういうことで、わが国の権限の及ぶ限りにおきまして非核三原則を厳粛に守ってまいるというのが政府の政策であるというふうに心得ておる次第でございます。今回のいわゆる国際海峡を三海里のままにしておくということは、これは国連の海洋法会議の結論が出るまでの暫定的な措置として現状どおりにしておくことが一番国策に沿うゆえんではないか、こういうことで、いま読み上げましたような統一見解をとっている次第でございます。
  53. 藤田高敏

    藤田(高)委員 そうすると、十二海里にすれば、非核三原則の問題とこれは競合しますね。両立しないですね。どうですか。
  54. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 領海幅が十二海里になると、国際的にそういうことが認められるということになった場合に、いわゆる国際海峡がどのような通航制度になるかということに従いまして決定されることと思うのでございます。そういうわけで、国連海洋法会議の結論が出ませんと、わが国としての対応の仕方というものは決められないというふうに考えておる次第でございます。
  55. 藤田高敏

    藤田(高)委員 きわめてあいまいです。何回も繰り返しておるように、領海幅を拡大するという場合に、十二海里であれば十二海里を普遍的に全域にわたって適用するというのはこれはもう国際的な常識なんでしょう。ですから、十二海里にするということがあくまでも常識的であり、原則でなければならぬのです。ですから、十二海里になった場合は非核三原則の問題との競合が起こるでしょう、たとえば津軽海峡において。起こらないのですか、起こるのですか。それを言ってください。
  56. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 国連海洋法会議の結論が出ませんと、いまの問題に対する的確なるお答えはできかねる次第だと思います。  そういう次第で、わが国は、御承知のとおり、いわゆる国際海峡の通航問題につきまして、従来から海洋法会議に、一般の十二海里の領海よりもより自由なる通航制度を持つべきであるという主張の方をとってまいった次第でございます。これは、先ほど来統一見解で申し述べましたところがそこに述べてあるわけでございまして、わが国が海洋国家あるいは多くの資源を海外から運ばなければならない、こういうことから来るわが国の方針であったわけでございまして、そういうことから、いわゆる国際海峡に対してどういう通航制度がとられるかということが、これからの非核三原則を考える場合におきましても、その点が問題になることである、こう考えておりまして、それまでは結論は出せないものである。  いずれにいたしましても、わが国の権限の及ぶ範囲におきまして、わが国といたしまして非核三原則を厳守するという政府の政策にはいささかも変わりがないということを申し述べたいと思います。
  57. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は重ねて申し上げておきますが、昨年の十月の二十二日と二十七日の外務委員会における領海問題にかかわる審議の中で、野党議員が、運輸大臣も農林大臣もすでに領海を十二海里にすることについてはその態度が明確になっておるにもかかわらず、外務省だけがいまだにその態度が不明確なのはどういうことなのか、また別の委員から、何が条件で、何が理由でそんなに悩んでいるんですか、こういう質問をしたのに対して、当時の小坂外務大臣は、領海決定に当たっては、「一つは非核三原則の問題であり、一つは海峡の自由通航の問題でございます。」、こう言って、この国際海峡にかかわる部分については、むしろ非核三原則の問題が非常に重要なので実は悩んでいるんだ、もう本当に悩んで悩んでいるんだということをここで答弁しているのですよ。  この問題に対して、その答えが出なければ、回答にならぬじゃないですか。どうですか、担当大臣。外務大臣の答弁なんか聞いているともう……
  58. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 先ほどの御意見の中で、世界に類例がない、こういうことをあえてするのは非核三原則を空洞化する目的に基づくものではないかという御趣旨の御発言がございました。なるほど、今日まで世界各国の領海幅をあるいは広くあるいは狭くとっておるというのはございません。しかし、私どもは、現在このいわゆる国際海峡の通航問題が国連海洋法会議で大きな政治問題になっておる、わが国もまた日本の置かれておる立場から、いわゆる国際海峡は一般の領海よりもより自由な航行制度を確保したい、こういう主張をいたしておる、そういう段階でございますので、国連海洋法会議の結論等を十分見た上でこの問題は処理しなければならない、そういう観点から、当分の間、現状を変更しない、こういう趣旨でございます。
  59. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この限られた時間の中で、この問題の結論を出すことはむずかしいと思いますので、これは私はさらに後日機会があれば継続して質問することにいたします。  ただ、ここで私の考え方を明確にしておきたいと思うのですが、いま国連海洋法会議の中で議論をされておりますのは、今日言われておる国際海峡の無害通航権よりもさらに自由な航行ができる、そういう方向で審議されているやに私は判断をしておるわけでありますが、私はその国連海洋法会議においても、わが国政府の代表が、ただの一度も非核三原則の問題についてわが国の立場を明確に主張したことがないということの報告を聞いておりますことを非常に残念に思っております。  したがって、私は結論的に言えば、国連海洋法会議のこの結論がどのように出ようとも、非核三原則の問題だけはわが国最高の国是として厳守すべきである、このことだけ明確に申し上げて留保しておきたいと思います。  時間がありませんので、この問題に関連をしてお尋ねをいたしておきますが、先般の参議院における国会答弁で、領海が十二海里に拡大をされた場合に、竹島に対していわゆる領海権を十二海里に設定するかどうかという点について、総理は、この法律を適用する、こういう答弁があったと新聞で拝見しておるわけでありますが、そのように理解してよろしいかどうか。
  60. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そのとおり御理解願います。
  61. 藤田高敏

    藤田(高)委員 そういうことであれば、日米安保条約の第五条に、いわゆる「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」と、こう明記されておりますが、この領海を十二海里にするということ、竹島にこの法律を適用するということになれば、日米安保条約の第五条が適用されると考えられますが、適用されますか。
  62. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 竹島の問題につきましては、わが国のほかに韓国とそれから北鮮、それぞれ自国の領有であるということを主張しておりまして、韓国との間には、一般的に紛争は平和的と申しますかお互いの交渉によって解決しよう、解決できない問題につきましては、その処理の方法につきまして文書の交換があるわけでございまして、竹島問題につきましてそのような安全保障上の問題というふうに解するのは適当でない、こう考えておる次第であります。
  63. 藤田高敏

    藤田(高)委員 領海の十二海里を適用するということになれば、いわゆるこれはその地域にはわが国の法律が適用される、法律が適用されるということは行政権がそこに行使される、こういうことでありますから、当然この第五条が適用されるというのはもう当然過ぎるほど当然な解釈じゃないかと思うのですね。総理、どうでしょうか。
  64. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 どうも私、条約の条文のことをよくわかりませんが、私は竹島はわが国の固有の領土であるというたてまえを明確に示したわけです。したがって、領海が拡大されるということになれば、またそのたてまえといたしまして、それは竹島においても拡大される、こういうことになる。  ただ、竹島はいま非常に微妙な環境、立場にありますものですから、それが条約上どういう適用になるか、そういうような点につきましては、条約局長の方からお答えを申し上げます。
  65. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちょっと、重大な問題ですから、簡単に関連をさせていただきます。  一つは、せんだってわが国のマスコミが飛行機で竹島の上空を飛んで、抗議が来ておりますね。それに対してはどういう措置を外務省としてはとられる所存か。  いま一つは、いま総理の言葉でいきますと、竹島は日本の領土であるという認識。そうすると、領海法が出てきたときに、恐らく日本の領土を画定しなければなりません。政令の中に竹島を入れるかどうか、その二点だけ明確にしていただきたい。
  66. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 竹島の上空を飛行した問題につきまして、先方から抗議があったことは事実でありまして、その抗議に対しまして、わが国としては、わが国の領土の上を航空したことであるから当然のことで何ら非難されることはないのだということを、厳重に当方からも申しておる次第で、その経過は政府委員の方から御報告させます。
  67. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 二番目の、領海法が出たときに政令の中に竹島を入れるかどうか。
  68. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 その点も含めまして、政府委員から御答弁させます。
  69. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お答えさせていただきます。  竹島の周りの領海の問題でございますが、先ほど総理大臣からも御答弁がありましたように、わが国が領海を十二海里に拡大するということになれば、竹島はわが国の固有の領土であるというたてまえでございますから、竹島の周辺の領海も十二海里になるというたてまえになるというのがわが国の立場ではございます。  ただ、具体的に竹島の周辺の領海がどこであるということを特定するかどうかということは、何分にもいずれ提案されますところの領海法の立法技術の問題になるのではないか。一々具体的な地域について一つ一つ領海の外縁を書き上げて法律をつくるというようなことになるのかどうなのか、この点は、全部ほかの点も含めまして、ただいま政府全体としてその法律案を検討しておる、こういう段階であるというふうに承知いたしております。
  70. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは異なことを承りましたね。日本の領土を確定するのが、明確にするのは当然であって、技術上の問題とは、これは何ですか。こんなばかな話がありますか。これは了承できませんよ、総理。たてまえのとおりにやるべきじゃありませんか。それを何か、法律の技術でどう変えるのですか。どのようにぼかすのですか。あれはどういうことなんですか。これは了承できませんよ。
  71. 坪川信三

    坪川委員長 法制局長官。
  72. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、ちょっと、これはあなたが出てくる幕じゃないのだよ。主権の問題ですよ、あなた。何しているのですか。
  73. 坪川信三

    坪川委員長 ちょっとお聞きになってください。
  74. 真田秀夫

    ○真田政府委員 立法の技術上の問題ではないのじゃないかというお声がございましたけれども、現在すでに、竹島に関して申しますと、竹島は日本の固有の領土であるとわれわれ確信しております。そして竹島の周囲は、領海はいま現時点においては三海里であると確信しておりまして、それで立法作業が終わりまして国会にいわゆる領海法を、仮称でございますが、出した場合には十二海里になるということであって、現在の三海里が十二海里になるということでございまして、政令でそこを、竹島を入れるとか入れないとかいうようなことを恐らく書くことはないのではないかと私は思います。それは奄美大島が政令で入るとか入らぬとか、そんなことを書くことがないと同じように、竹島も書くようなことにはならないのだろうと思います。まだ立法の作業でございますが。
  75. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうしてそこに奄美が出てくるの、あなた。奄美と竹島と同じなんですか。何、言っているのですか。
  76. 真田秀夫

    ○真田政府委員 日本の固有の領土であるという点では同じでございます。
  77. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちょっと待ちなさいよ。あなた、待ちなさいよ。  領土を確定しなければ領海は画定できないではないか。そうでしょう。領土を確定して初めてその外の領海が画定されるのであって、領土を確定しないでどうして領海の幅が決まりますか。あなたにそんなことを聞いているのではないのですよ。何らかの形で竹島を領海法の場合に確定しますかということを聞いているのですよ。それが、あなたの言うのが法律的な技術なの。そうなの。
  78. 真田秀夫

    ○真田政府委員 お答えをいたしますが、おっしゃいますとおり、領土がまず初めに確定しまして、そしてその周囲の何海里の幅で領海が決まる、これはもうおっしゃるとおりでございます。それで、竹島は日本の固有の領土である。これはわれわれは確定していると確信しているわけでございまして、したがいまして、その幅を法律で書けば自動的にその竹島の周囲の三海里の領海が十二海里に広がる。別に竹島を、政令とおっしゃいましたが……。
  79. 坪川信三

    坪川委員長 簡明に願います。
  80. 真田秀夫

    ○真田政府委員 政令で指定するというような形には恐らくならないのだろうと私は思います。
  81. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたが法律をつくるの。あなたが法律をつくるのですか。あなたがこういう法律ができるであろうなどと言っていいのですか。あなたは一体、何。あなたは一体何なのよ。幾ら領海の問題でも、ああいうやつは了解できませんよ。これは残しておきますよ。
  82. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この領海問題は、いま適切な締めくくりがありましたように、了解ができませんので、後日に適当な時期を見て、また継続して質問したいと思います。
  83. 坪川信三

    坪川委員長 次に、渡部一郎君。
  84. 渡部一郎

    渡部(一)委員 早速お伺いするのでございますが、先ほどの論弁の応酬に関しましてははなはだ遺憾に存じます。竹島の問題につきまして私も続けて御質問した方が御理解が早いと思いますから申し上げますが、安保条約第五条におきましてわが国の明確な施政権のもとにあるところであるかどうかの認識がなければ、この問題につきましてはわが方としては何とも言えないだろうと思います。そこで安保条約第五条をもう一回読んでみますと、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」。したがいまして、「日本国の施政の下にある領域」に竹島をみなすか、みなさぬか。まずその御認識から承りましょうか。
  85. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 竹島につきましては、北方四島もあるいは同様な状態かもしれませんが、わが国といたしましては、わが国の主権を主張いたして  おるわけでございます。しかし、現実に施政のもとにあるかというと、これはまだ未解決の問題として残っておるわけでございますので、ただいま御指摘の条文上「施政の下にある」というのはちょっと言えないのではないかというふうに考えるわけであります。
  86. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまの外務大臣の御答弁は、外務省当局の伝統的御答弁なんです。あれは正解なんです。総理の御答弁が違っていたのか、外務大臣の答弁が違うか、いま修正しなければならない。  総理がこの間、竹島なんかにも十二海里を設定するとおっしゃいました。竹島に十二海里を設定するということは、わが国の施政のもとにあることを当然意図していられるものでありますし、日韓関係を考慮すると、この竹島問題の紛争に関する問題を考慮しますと、わが国は竹島の問題について、施政下にないという立場をとれば、事実が違法であったとしても、継続的にそこを占拠する状況というものが竹島に生ずる。そしてそれは次の外交交渉にとってマイナスの積み重ねということが行われ、これがある一定の国際法上の論拠になり得るという立場から、福田総理は十二海里領海を竹島にも設定すると言われたのかと私は思っているわけであります。総理の言うことをいま私が整理したわけなんです。ところが、向こうの方は伝統的答弁でやっているわけですから、竹島は施政下にないとぽんといま言われたわけであります。  これは総理が謝るか外務大臣が謝るか、どっちか片づけませんと、総理はいまダブルトラッキングで答弁をされているわけであります。政府統一見解を求めます。
  87. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 わが国といたしましては、北方四島あるいは竹島、尖閣列島、これらにつきましては主権を主張しておりますので、この主権を主張するという意味から、総理は当然領海も主張すべきだ、こういうふうなお考えのもとに答弁をされた、こういうふうに考えておるわけで、わが国としてもそういう主張をすることは当然であろう、こう思うわけであります。
  88. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いま答弁のすりかえを行いました。総理の答弁を外務大臣がすりかえてはいけない。領海を主張するというふうに言われた、領海を設定するというふうに総理は言われたんです。だから、この問題については、総理が御自分で決着をつけなければなりません。そんないいかげんな答弁はない。
  89. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、たてまえ論を申し上げたわけです。ところが、竹島は御承知のように非常に微妙な環境のうちにある。北方領土なんかもそうでございますが、そのたてまえの具体的適用、これにつきましては、その環境に応じてその適用が行われなければならぬ、こういうふうに思います。そのことを外務大臣が申し上げているんだ、かように理解いたします。
  90. 渡部一郎

    渡部(一)委員 たてまえなどという俗語を使っておっしゃるんでございますと、総理の本音は何ですかということになりますね、それは。施政というのは、たてまえで施政をするんではない。具体的事項として領海を設定するかどうかが、いま問題になっているわけですね。ですから、たてまえとして十二海里を主張するんだが、本音はとられてもやむを得ないんだ、設定しないんだということになったら、これは設定しないということですね。  だから、たてまえと本音なんという言葉を使ってこの問題を御説明になろうというのは、総理、ひど過ぎます。これは明らかにお二人の間に意見の明快な食い違いがある。伝統的な政策に対する明快な背馳がある。違っております。幾ら後ろで入れ知恵をつけようとしても不可能です、これは。だめ、あなた。  そこで総理、もう一回外務大臣とお打ち合わせになって、ぴしゃっとお答えを出されなければいけません。外務大臣、もう一回総理のところで話し合いをしなければなりません。するのかしないのか。領海をつくるのかつくらないのかから言ってごらんなさい。
  91. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 領海をつくるとかつくらないとかいうようなお話と先ほど法制局長官が答弁された意味と若干関係いたしますが、わが国はいま領海は三海里ということでやっておるわけでありますが、この三海里が十二海里になるというふうな解釈は当然のことと思います。  そこで、竹島におきます領海は、いまわが国といたしましても三海里は当然主張をしておるわけであろうと思いますが、その三海里というのが竹島におきましても当然十二海里になるという意味で、その本体の竹島自身がこの紛争の対象になっておりますので、そういう意味で竹島本体またその領海も含めまして、やはりこれは両国間におきましてまだ紛争の対象であるというふうに御理解をいただきたいのであります。総理の御答弁もそういう趣旨で、十二海里に当然なる、三海里のものが十二海里になるというのがたてまえであるということで申し上げたと思うのであります。
  92. 渡部一郎

    渡部(一)委員 これは、私の持ち時間はきょう決められていて、積み残しの質問のはずなんです。そんな意見を長々聞かされたんじゃ、時間が何十時間あっても不能です。委員長、これはもうしょうがありませんから、これはまた留保をつけさせていただかなきゃ進みませんが、どういたしましょう。
  93. 坪川信三

    坪川委員長 鳩山外務大臣、もう一度御答弁願います。
  94. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 総理の御答弁になりましたとおりで私ども理解をいたしております。
  95. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 渡部さん、これはいまでも竹島の領海はあるんですよ、三海里。それが十二海里になるという、そういうことなんです。それがわが方の主張である、こういうことを言っておるわけです。
  96. 渡部一郎

    渡部(一)委員 わかりました。それが総理のたてまえでしょう。ところが、本体はどうなっているか、本音のところは。竹島のところに太極旗が翻り、コンクリートのハウスができ、向こうの制服軍人と思わしい人がそこに所在し、日本のマスコミの取材に対しても抗議を申し入れてくるという状況ですね。あなたは、そこのところが三海里で竹島が自分の領有だと言うなら、どうしてそれに対する領有権を確保するような明確な措置をおとりにならないのか。つまり、海上保安庁はその領海保全のために何もしていないじゃないか。領海は実質放棄しているじゃないか。実質放棄じゃないか。領海を設定する意味ないじゃないか。だから、三海里について実質放棄している。いま十二海里に広げるというのは、まさにたてまえなんですよ。だから、いま総理はたてまえの主体的適用という言葉で言われた。たてまえ十二海里と言いたいんだ。主体的適用というのは、韓国が何しても目をつぶる、こうやって手で目を押さえている、国会だけ十二海里と言う、韓国の方に向いたら目をつぶる、そういう意味になりますよ、これは。あなた、それは日本国民を欺くのもはなはだしいし、日本の領域に対する明快な主張を何らしない。そして現実の積み重ねを次から次へと放棄していくという意味で、全く意味がないですね。十二海里主張するどころの騒ぎじゃない。三海里の主張すらできない実態論がこの後ろ側についているじゃありませんか。私は、だからそれはもう全然ナンセンスな議論だと思いますね。いかがですか、これは御答弁できないでしょう。  それというのも、総理が竹島の問題について十二海里設定すると、ぱあんとおっしゃったところに、ぎしぎししたところが出てきたわけですね。だから、それを確保されるためにやらなきゃならない仕事があるはずです。また十二海里設定しないと言うなら、設定しないでやるべきいろいろな手続というのがあると思いますね。だから、いままでの政策ときょうのお話とは全然違っておる。総理の御答弁も違っておる。鳩山さんの御答弁に至っては、総理のおっしゃっておることを必死になっていま解説を加えておられるけれども、解説不能ですよ。言えるはずがないですよ、あなたみたいな純真な人が。これは無理だよ。この問題については、私は何と御説明になっても無理だと思いますがね。だから、さっきから議論が空転しておる。
  97. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 渡部さんがおっしゃっておることは、これはいま現にある竹島の三海里で領海ですね、そこに問題がいまある、その御指摘なんです。その三海里というものがそういう問題を抱えながら十二海里になる、こういうことであります。十二海里になる、どうもそこの問題じゃないようなお話でありますが、私は、もういまとにかく設定されておるところの竹島の領海三海里、これがただ単に十二海里になる、こういうことを申し上げておるわけであります。
  98. 坪川信三

    坪川委員長 渡部君に申し上げますが、この問題は大事な問題でもあり、篤と御審議をいたすことも当然でございますので、理事会協議いたしまして、当該委員会においてまた十分御質疑を願いたい、これでひとつ御了承願いたいと思います。
  99. 渡部一郎

    渡部(一)委員 当該委員会というのは外務委員会のことですか。
  100. 坪川信三

    坪川委員長 外務委員会です。
  101. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いや、これは予算委員会で問題になったので、その当該委員会というのはこの予算委員会で……。
  102. 坪川信三

    坪川委員長 それですから、私は理事会において協議の上と、こう言っていたんですから、これでひとつ御了承を願います。
  103. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それで決着のつかない場合は外務委員会でも何でも議論するのは当然のことですが、この予算委員会理事会でこの問題に対する詰めをぜひひとつお願いしたい。こんなばらばら答弁では審議できませんので、ひとつお願いします。
  104. 坪川信三

    坪川委員長 承知しました。
  105. 渡部一郎

    渡部(一)委員 領海十二海里は北方四島についても設定なさるのかどうか、伺いたい。
  106. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 北方四島におきましても、ただいま議論のございました竹島と同じように、まだ領土問題が解決しておらないわけでございます。したがいまして、領土問題が解決してない地域におきます領海というものは、私どもといたしましては、この領海権も当然のことながら主張いたすわけであります。しかし、この領海が、この領土問題を解決するというのは、これは話が実は逆さまなわけでありますので、はやり問題は本体の解決が先であるというふうに思います。したがいまして、領海自体はわが国は従来三海里を主張をいたしておりますから、この主張をいたしておりまするその三海里というものは、いわゆる国際海峡に当たるような地域はこれは別でございます。あの地域につきましては、海峡幅が狭いところもございます。そういうところは除きまして、一般原則に従いまして、わが国も当然のことながら従来の三海里というものを十二海里を主張する、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  107. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、北方四島につきましては、今度の領海に関する法案を出すとされても、北方四島については領海十二海里というのを設定しないという意味でしょうか。鈴木さん、お願いします。
  108. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 ただいませっかく検討中でございますが、私としては、竹島にいたしましてもあるいは北方四島にいたしましても、わが国固有の領土である、こういうすっきりした認識を持っておるわけでございます。したがいまして、領海の幅員を十二海里に拡大をいたします場合には、北方四島につきましても竹島につきましてもこれを設定をする。しかし、領土問題を含めてこれは係争中の問題でございますから、処理さるべきものである、このように考えております。
  109. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そのいまの御答弁は結構なんですが、領海十二海里を設定する、ただし領土係争も解決する、それは政策方向としては結構ですが、じゃ、領土係争が片づかない間は領海十二海里を設定しないのかどうか。
  110. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 先ほど明確に申し上げたと思いますが、設定をする、こういうことでございます。
  111. 渡部一郎

    渡部(一)委員 領海幅十二海里は領土の係争の有無にかかわらず設定する、こういう意味でございますね。ちょっと御答弁を。
  112. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 そのとおりでございます。
  113. 渡部一郎

    渡部(一)委員 これは従来の外務省の御答弁と全然違っておりますから、外務大臣、後で鈴木さんとよくお打ち合わせをなさいますように、これはもうすさまじい方針変更ですから。  第二は、領空の問題です。国際海峡が十二海里の幅になりますと、恐らく領空もそれに伴って広がってくるというのが国際法上の慣例であります。ところが、もし現在海洋法会議で議論されている国際海峡の自由航行が認められるような時代になる、つまり海洋法会議の現在論議されている草案がそのまま設定された段階においては、国際海峡の上空は飛行機の、あるいは外国軍隊の航空機の航行もまた自由になると思われますが、いかがですか。
  114. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 御説のとおりの方向に進んでおるというふうに理解しておりますが、条約局長から補足させていただきます。
  115. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先生御承知のとおり、ただいま海洋法会議で議論をして交渉いたしております交渉の基礎になりますところの単一草案におけるいわゆる国際海峡における航行の制度といたしましては、船舶の航行と上空における航空機の通過ということで審議が行われております。
  116. 渡部一郎

    渡部(一)委員 防衛庁長官に、これは重大な関係がありますから聞いておいていただきますが、そうすると鈴木大臣が先日おっしゃいましたところによれば、津軽海峡、対馬海峡等の四海峡についてこれを国際海峡にする方向で議論が進んでいる旨のお話がありまして、それは私も御質問したわけでありますが、もしそうなりますと、それらの四海峡は、上空は外国軍隊の航空機が自由にフライトすることが可能になるわけであります。そうしますと、防空識別圏がかなり前面に出ていたとしても、あるいは国籍不明機があったとしても、あそこの海峡の上を通るのだといって飛んでくる以上は、防空識別とか航空自衛隊による排除とかあるいは査察とか、あるいは国籍不明機に対するスクランブルとか、実質的な航空自衛隊による領空保全のためのさまざまな措置というものはことごとく意味がなくなると思いますが、どうですか。
  117. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 一般領海の三海里が十二海里になることにつきましては、これはその上空に及ぶということでございますが、いま言われます国際海峡につきましては、国際海峡の制度的なものも明確でございませんし、いま防衛庁として特に御意見を申し上げることは差し控えてまいりたいと考えております。
  118. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それは間違っているんじゃないですか。国際会議が現に行われている真っ最中だからこそ、わが国の意思は明確にするのがあたりまえで、そのわが国の意思を明確にしないで、ルールが決まった後で何もできぬというのだったら話にならぬのではないでしょうか。大臣のいまの御答弁は非常にまずいのではないか。横におられる方が少し大臣にメモでもお渡しして、りっぱな答弁ができるようにしなければいけないですよ。いまみたいな御答弁をさせたらめちゃくちゃじゃないか。
  119. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 先ほど申し上げましたように、第一義的には制度が明確でございません。国際海峡については、防衛庁としていろんな検討はいたしております。いままでの実績等からも検討はいたしておりまするが、いま具体的に防衛庁として見解を述べることは差し控えていきたいと考えておるのでございます。
  120. 渡部一郎

    渡部(一)委員 十二海里問題を設定するときの関係閣僚会議の中で、防衛庁長官はひとりオミットされて、意見を言うチャンスがなかったとぼやいておられた旨、私はうわさとして伺っておるわけでありますが、この無害航行の海上航路が設置されますと、その上の自由な航空路が設定されるとすれば、航空自衛隊のいままでの防衛論議というのはもうナンセンスを通り越すわけですね。たとえば、大隅海峡と津軽海峡のところを、某国の軍事飛行機がこの上をフライトをすることが自由にできるんだとすれば、現在の津軽海峡の上はコースが入り組んでおりますから、三海里の幅の領海があり、そしてその真ん中に通航帯があるとしても、海上船舶としては通航できるけれども、飛行機としては通航不能です。だから、たとえばソビエトの軍事飛行機はこの上を通航していないと言われているところです。ところが、国際海峡なら話は別になってしまう。だから、わが国にとっては国際海峡を四海峡にわたって自由航行帯にするということは、外国の軍事飛行機がわが国の目と鼻の先、わが国の島の間を突き抜けて通れる自由を与えることを意味しておる。そうすれば、海洋法会議における議論にもそのことは当然反映されるはずだし、されるべきだし、そうでなかったら航空自衛隊というものは全然意味がないんだし、意味がないならやめた方がいいんだし、物々しい武装なんか必要ないんだし、戦闘機も要らないんだしということになるじゃありませんか。だから、私はそちらの立場に立って、それでいいのですか、どういう気持ちなんですかとお伺いしておるのです。そういう大事な話をみんな後ろにしまって知らぬ顔をしておられるから、私は聞いているんじゃありませんか。そうしたら、さっきから、そんないまの段階では言わないことにしておりますと、まるで軍人さんのような雰囲気でお答えになる。そうじゃないの、あなたは意見を言う立場なんです。命令を受けたら必ず慎むのではなくて、命令を受ける前によく意見を言わなければいけないところにいまはきておるのです。それで自衛隊を抜きにしてどんどん話がいろいろ進んでいるんですから、日本の中に国際海峡がたくさんできたら困るのは漁民だけではありません、いろいろあるのですという例に、私は一つくぎを刺して申し上げているんじゃありませんか。それでも三原長官はそれでいいとおっしゃるなら、ぼくは別の議論をします。
  121. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 いま、今日までお話のように、津軽海峡については、ああした非常に狭隘なところで、また曲線ラインもありまするし、外国機は上を通過しておりません。それから、宗谷の場合には領海に入ってまいりますればスクランブルを組み、対馬の場合にも同様でございます。  したがいまして、将来国際海峡というようなことになりますれば、その時点において対処してまいる考えでおりまするし、なおまた他の海峡等につきましてもいろいろ御意見は申し上げております。たとえば、先般出ました大隅あたりの地域については非常に狭隘でございまするし、そういう点で申し上げておるわけでございます。具体的には、いまのところあれが国際海峡になったからどうだというようなことは、私から申し上げる立場にはないと思います。御了承願いたいと思います。
  122. 渡部一郎

    渡部(一)委員 申し上げる立場にないといま大臣言われた。ここは国会であり、委員長、立法府であります。立法府の最高権威を持つ国会の、しかも予算委員会において質問されておることに対して、申し上げる立場じゃないと言って答弁を拒絶される以上、私も質問はできない。
  123. 坪川信三

    坪川委員長 伊藤防衛局長。(渡部(一)委員「大臣が言われたのですよ。局長なんかの答弁でごまかされるか」と呼ぶ。)——伊藤防衛局長
  124. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 ただいま大臣から……(渡部(一)委員「あなたなんかに答弁求めていないよ、こっちは。求めていない」と呼ぶ)
  125. 坪川信三

    坪川委員長 発言を続けてください。
  126. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 ただいま大臣から御説明申し上げましたように、現在対馬、それから宗谷等につきましては外国の航空機が飛んでおります。これに対しましてはスクランブルに上がっております。  同様に、対馬海峡が国際海峡になったときにどういう形になるのか、実はまだ私どもははっきり知らないわけでございます。現在、三海里のときには船は通れますけれども、飛行機は技術的に曲がるために通れないというようなことになっておりますが、今度の国際海峡ができましたときにもあるいはそういう形になるのか、あるいは飛行機が通れるようになるのか、そこら辺のところはまだわかっておりませんが、いずれにいたしましても、通れるようになりましてもスクランブルという体制は維持してまいることになろうと思います。
  127. 渡部一郎

    渡部(一)委員 何を言っているのですか。いまの答弁もごまかしですよ、さっきの答弁もごまかしなら。スクランブルをかけるというのは、おまえさんはけしからぬ、不審がある、どこへ行くんだよ、何しているんだよというのがそれがスクランブルでしょうが。完全に通航を認められている、そばまで飛んできているのを、一々行って、おまえ何している、そんなこと質問できるはずがないじゃないですか。だからスクランブルなんてナンセンスになるんだよ。何を言っておるのですか、本当に。そうしておいて、海上警備、航空警備の問題点についてこの委員会答弁できない、私は話す立場にないと。話す立場にないとは何ですか。これは問題じゃないですか。ここでなぜ全部話ができない。わからないから話せないというなら、いまの国連海洋法会議に出ている外務省がそんなことまで向こうに教えないのは問題ですよ。官庁関係の間はめちゃくちゃじゃないですか。ところが、長官は話す立場にないと。立場にないならだれが立場があるのだ。そんな長官はないですよ、そんな責任回避な。口がないのか。
  128. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 いま申し上げておりますように、国際海峡の制度がはっきりしません場合に私から申し上げることはできませんということを申し上げておるわけでございます。制度がはっきりしましてどういうことになるということが決まりますれば、私の方で申し上げることができますけれども、制度的に明確でない場合には、津軽海峡のごときは申し上げることができません、そう申し上げておるわけでございます。
  129. 坪川信三

    坪川委員長 渡部君に申し上げます。  本問題につきましては理事会においてさらに協議を重ねたいと思いますから、御了承願いたいと思います。  渡部君。
  130. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そういう制度がはっきりしないから答弁ができないというのだったら、決まらないことを外国と交渉することは全部できないことになるじゃありませんか。決まらないことを交渉するから外交交渉があるのであり、海洋法会議があるのであり、十二海里問題があり、いろいろあるのじゃありませんか。それについて何にも国会の中には言わない、おれの方は言うことはできないというのだったら、質疑になんかなりやしない。立法審査権に対する最大の侮辱だと私は思う。私はもう、こんなことではこの委員会の成立というのは期せられないと思うのです。  時間がなくなりましたようですから、まことに恐縮ですけれども、委員長、最後に総理にこの問題に対する所見をお伺いしておいて、先ほど委員長がおっしゃいましたように、理事会でお計らいをいただくということでありますが、この点については私は留保さしていただきまして、私の質問とさせていただきます。
  131. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 重要な問題のようでありますから、政府においても検討いたします。
  132. 坪川信三

    坪川委員長 次に、大出俊君。
  133. 大出俊

    ○大出委員 この間ソウルの地下鉄問題の質問をいたしましたが、持ち時間が十分ですから、LNGの問題を省きまして地下鉄問題一本にしぼります。また住友商事の問題も、初めて聞いたから調べるというお話でございましたが、これも後に残します。  そこで経済協力基金に承りたいのですが、ゆうべ御説明に来られた大島理事がお見えでございますから、総裁よりもきのうやりとりをした当の御本人の方がはっきりしますから、大島さんにお答えをいただきます。  二点承りますが、第一点は、ソウルの地下鉄は四十八年五月十三日に韓国調達庁と三菱の間で契約が結ばれました。このときに経済協力基金には車両のわかる専門家は一人もいなかった、ゼロであった、このことをゆうべお認めになりました。車両のわかる専門家が基金にお入りになったのは五十年の九月、しかもそれは一人入ってきた、こういうことでございます。この事実を再確認をいたしたいと存じますので、そうであればそのとおりであるというふうにお答えをいただきます。  二番目、四十八年の決算委員会におけるわが党の松浦君の質問のときに、答弁に詰まった基金の方々が、日本の地下鉄の国内価格と韓国に売りました地下鉄の価格との倍近い開きについて六つの理由を挙げて資料をお出しになりました。これは委員会に出した資料であります。これが正森さんが資料一でこの委員会に紹介をした資料であります。この六つの理由について昨晩お見えになって金額をお挙げになりました。この六つの理由についての金額をもう一遍ここでお述べをいただきたい。  時間がありませんから、その二つだけ簡単にお願いをいたします。
  134. 大島隆夫

    ○大島参考人 お答え申し上げます。  御指摘がございましたように、四十八年の五月の当時わが経済協力基金には技術系統の職員はおりませんでした。その当時の審査といたしましては、外部に委嘱するとか、あるいは技術系統でない職員がいろいろの資料を集めまして、できるだけのことをやっていたというのが実情でございます。  それから第二点、前回の委員会の際に提出いたしました地下鉄建設比較表、こういう表でございますが、これは前回の委員会でもお答えいたしたかと思いますが、二番目、三番目、四番目合わせましてざっと六百万円だということを申し上げました。(大出委員「五百ないし六百と言ったじゃないか」と呼ぶ)前回の委員会では六百万円と申し上げました。それから五番目のメンテナンスの予備費で三百万円ということを申し上げました。それから六番目で、これはややミスリードの申し上げ方をしたかと思います。もしそうであるとすると大変申しわけありませんけれども、輸出に伴う運賃が百五十万円、こういうことでございます。
  135. 大出俊

    ○大出委員 昨晩私に説明をいただきましたのは、二と三と四。新規の地下鉄であるために製品規格の多くを新たに設計、製造しなければならないこと、車体が大きいこと、寒冷地向けの特別の配慮を施したこと、ヒーターなんか熱くなるようにしたというわけですが、この三つで五百万円ないし六百万円、こういうお答えでございました。私これは明確に、きのうやりとりをして記録してあります。あと一は一千万円、つまり交直流両用であるからということで、そのために一千万円よけいかかっている。以下、いまお述べになった予備費、部品等の関係で三百万、運賃、荷役等で百五十万、こういうわけであります。  そこで、私がいま皆さんに差し上げた資料が渡っているはずであります。この大きい方の資料を見ていただきたいのであります。これは国鉄資材局車両課長三浦さんからお出しいただきました資料であります。この一番上の欄であります。五十年度も出していただきましたが、必要がありませんから切りました。  そこで、国鉄の方にこの数字に間違いがないかどうか。転載しただけですから、この点だけ、そのとおりでございますとお答えいただきたいのです。
  136. 竹田信人

    ○竹田説明員 提出いたしました数字のとおりでございます。
  137. 大出俊

    ○大出委員 国鉄公社の方に御確認をいただきました。一番上の資料がそうであります。「昭和四十六〜四十九年度契約の103系、415系の購入平均価格」、こうなっております。  ここで、この基金がお出しになった金額が全くうそっぱちであることを立証いたします。一遍うそを言うと次々うそを言わねばならぬものと見えまして、かくてうそ八百というんでしょうが、まことに困ったことだと思います。  ひとつ確認をしておきたいのは、車両がわかる技術者がゼロである。ゼロでチェックができません。委託といったって、これは基金の責任においてはできません。だから後になって数字合わせをしているというのが今日の姿であります。  まず第一に、一番大きな金額、この間の資料の一であります。交直両用であるからして一千万円一車両について価格が高くなるという説明であります。日本国内でも交直両用電車は購入され、使われております。それが国鉄であります。つまり、直流電車と交直両用の切りかえ装置がついておる電車を比較すれば、幾ら差が出るかということは明確になります。四十六年国鉄が買いました直流電車の方が二千五百二十六万四千円、交直両用の電車の方が二千八百二十九万五千円。この下の二番目の表を見ていただきたいのですが、その差は三百三万一千円であります。つまり交直併用のために高くなった単価は三百三万一千円であります。四十七年、四十八年は国鉄が購入していないことになっています。また事実ないようであります。四十九年度でまた買っております。それが直流電車が三千九百三十七万四千円、交直両用電車が四千六百十万八千円、この差をとりますと、下の欄にございますように六百七十三万四千円という数字になります。だから、上の表だけで言うと、四十七年、四十八年に交直両用電車というのはどうなっておるかというと、直流電車の価格との開きがちょうどこの四十九年の差、四十六年の差の間ということになる。つまり三百万から六百万ばかりの間になる。これだけを見ても一千万という数字は出てこない。  ところで、国鉄に納入をしている車両メーカー、それから電気回り、動力関係をやっているメーカーにそれぞれ当たってみました。日本車輌、川重、東急、日立、近畿などというのが車両の方であります。動力回りの方は日立であるとか東芝であるとか三菱であるとかいうところであります。非公式にいろいろ関係筋を通じて当たりました。計算をしていただきましたが、これは非公式な数字でありますので括弧に入れてあります。下の欄であります。四十七年、四十八年の交直両用の電車をもし国鉄に納めるとすればということで単価が出ております。四十六年の二千八百二十九万五千円に対して、おおむね三千三百九十四万円ぐらいになるであろう、四十八年に納めているとすれば三千五百八十八万六千円ぐらいになるであろう、これを括弧に入れてあります。この推定数字の差をとりますと、直流と交直両用の差は、四十七年で三百六十三万五千円、四十八年度で三百八十四万三千円。前期契約ですから。かくて狂乱物価を経た四十九年になって大変な値上がりをいたしまして、その差が六百七十三万四千円になっている。こういうわけであります。  さて、動力回りその他をやっておるところに聞いてみますと、車体が一〇%幅が広くなる、高さが高くなる、だから重量がふえるという程度で、果たして交直両用という意味で単価が上がるかということを調べてみましたら、動力というのは、モーターというのは決まっている、切りかえに必要なのは整流器が中心である、変圧器はどの電車にもついている、関係ない、こういうわけであります。だから別なものを使っているわけじゃないので、多少車体が大きくなったからといって変わりはないと言う。そういうことになりますというと、一千万という数字は一体どこから出た。きのう大島さんに聞いたら、積算の根拠はないと言う。ともかく一千万だと言う。チェックしていないのだから仕方がない。だとすると、これだけで約六百万近い開きが出る。六百万近い開きが出るとすると、これだけで実は大変な金になってしまいます、百八十六両でございますから。このトランスの、整流器の計算の仕方だけで片や三百万から四百万くらい、片や一千万。六百万の差があると十一億一千六百万円どこかに金が行っちゃったことになる。この金は一体どこに行ったのだということになる。不届き千万であります。ごまかしちゃいけません。  それから、二、三、四という三つで五百万から六百万とゆうべ私に説明されましたが、これもいいかげんな数字でありまして、五百万と六百万の間には百万円違いがある。百万違っただけで一億八千六百万違う。こういうでたらめな話をされても二、三、四一緒だと言う。分けてくれと言ったら、分けられないと言う。寒冷地向けのヒーターがどうとか、車体が大きい、それから新しい規格などがある。分けられないはずはない。こういういいかげんなことで話はできない。  そこで、私の方でメーカーにいろいろ当たってみましたら、二、三、四、これどういうふうに高く計算をしても、この電車価格の一割、約一〇%、それを超えることはもう断じてないという。ヒーターといったって、電熱器の大きなようなものだというわけです。そんなことはない。それから、一〇%高さが高くなった、横幅が一〇%多くなったと言ってみても、そのことは内装その他やっていく上に、組み立てる上に同じ技術である。技術に関係ない。鉄のトン数が多くなったくらいしか単価は上がりゃしない。だからその三つ合わせてみても、どこから計算しても一割を超えない。  そこで私は、二枚目の小さい紙がございますが、東京だけでは困りますから念のために横浜の地下鉄をとってみました。横浜は初めて入れたわけであります。二十一両でありますから、正森さんがお出しになった東京の一番高値、この小さい紙の方の一番上、ソウル地下鉄一両の契約価格が六千三百九十万、部品、運賃等を除いた価格が五千八百七十九万。東京都購入の高値のものが三千七百八十八万。横浜市の地下鉄価格が三千八百七十万。これはちょっと前でありますけれども、東京より高い。高いから下の計算書きの左側に東京の高値、右側に横浜の高値。これを使って計算をいたしまして、ここに書いてあるとおりでありますが、交直両用にしたところの差、四十八年の推定単価、ここにおける交直両用にしてトランスその他をつけた、変圧器は全部車についているのですから、その三百七十八万を入れますと、それにいま言った規格がどうの、大きさがどうの、寒冷地用の暖房がどうのというのを入れて一割以内というのですが、一割見て計算をいたしますと、東京の最高値をとって計算をするとなんと千三百二十九万の差が出てくる。これだけ余っちゃう。横浜の方が高いから横浜を念のために入れて計算をすると、横浜の方でも千二百四十一万円という差が出る。こういうことになると、ここで千二百万違ったら一体幾らになるんだ。二十二億も違いますよ。一体この金はどこに行ったんだ。きのうあれだけ念を押したけれども、大島さんにはこの数字以下の細かい積算の根拠はないと言う。しょせんそういうものはできないと言う。それで済みますか。
  138. 大島隆夫

    ○大島参考人 お答え申し上げます。  まず第一点でございますが、一千万かかるかどうか、こういう問題について申し上げます。  実はこの四十六年度の数字は初めて拝見したわけでございますが、国鉄とソウルとはやはり違う車両でございまして、御指摘のはあくまでも国鉄の車両の価格の話でございます。単純な比較は、これは非常にむずかしいわけでございます。ソウルでは使用電圧といたしましては二万五千ボルト、国鉄が二万ボルトということで、電圧が高くて仕様も異なっておるわけでございます。そこで、ソウルのものを調査いたしましたところが、交直両用にするために必要な変圧器、整流器などの主要な機械だけで一組二千四百五十万いたします。このほかにスイッチ類、電線、電線防護のためのパイプといったような部品あるいは取りつけのための人件費を必要といたします。かようなことを考慮いたしますと、一組が三千万円というふうに考えられます。で、一編成六両にはこれが二組ずつついておりますので、一両の平均では約一千万、かような数字になろうかと思います。
  139. 大出俊

    ○大出委員 だから、私はきのうあなたに積算の根拠を出せと言ったら、ないとゆうべおっしゃって、いまあなたはそういうことをまた——私が恐らくそれを言うだろうと思ってその後相談をしたのでしょうが、ではどういう変圧器をどういうふうに使っているのか。そうして整流器は一体どこのどういうものを使っているのか。積算の根拠を明確に示してくれなければ、どれだけ違うかわかりゃしないじゃないですか。そうでしょう。  時間が終了したということですから後に残しますけれども、ここでもう一つ大きな問題は輸送の運賃。これも調べてみると大変におかしい。私は横浜におりますので、輸送に当たっている人ばかり。港湾関係の業者ばかり。車両を送っておる業者もございます。調べてみましたが、ここにございますけれども、百五十万というのはいかにも高い。つまり一両の釜山までの船賃、こちら側の積み込みの方と向こうの受け取りと違います。こちら側は荷役含みで計算をしておりますけれども、それで大体百二十万欠ける。一両でそうですから、これが、二、三十両ということになるとすると百万。そうすると、そこから先は五十万かかる理由はない。ここらも大変に疑問がある。だからどこから送ったのだ、社名言えと言ったら、あなたの方は知らないと言う。言えないと言う。一々それではこれは議論にならない。したがって、二十数億も違ってしまうというのを放任はできませんから、私はこの問題は後に残さしていただいて、大臣に一つ承っておきますが、積算の根拠も示さずに数字を持ってきて一千万です、その根拠はと言ったらよくわからないのです。しょせんわれわれに細かく積算をする能力がないので、そこから先のところは非常に多岐にわたって私どもには手に負えないというのがゆうべの説明。それでは物事は解決をいたしません。私は、大変に大きな疑問を残したままで次に送ります。委員長、いかがでございますか。
  140. 大島隆夫

    ○大島参考人 昨晩積算の根拠について申し上げましたのは、これは二、三、四につきまして一々内訳について、どれが何百万円というのを言うのは不適当である、こういうことを申し上げたわけでございまして、私の記憶によりますと、その一の中身につきましては御説明申し上げていないつもりでございます。  それから、先ほど内訳の問題があったわけでございますけれども、これは大変にいろいろな要素が絡んでいるわけでございまして、私ども能力のことを申し上げましたのは、原価計算みたいに一つ一つの厚さとか口径とか、こういったようなものを調査してやるわけではないんだ、原価計算とは違うのですと、こういうことを申し上げたつもりでございます。
  141. 大出俊

    ○大出委員 いずれにしてもきわめて不明確。何でその書いたものを出さぬかと言ったら、書いたものをお出しできないと言う。書いたものを出してまたそれをつかれるとひっくり返るから、口頭でお答えになるのでしょうけれども、書いたものを何で持ってこないのだと言ったら、失礼します、口頭でなければというわけです。そういう不明確なことでは話になりません。  そこで、これは運賃にも大きな疑問がありますし、どこでどこからどういうふうに送ったんだと聞いても、言えないというので、それじゃこれはどうしようもない。しかも、当時技術者がいなかったことも明確になったわけでありまして、チェックといったってろくなチェックができていない。後になって問題が起こったから数字合わせをしている。しかも、百万違ったら一億八千六百万違うのですからね。そうでしょう。それを五百万から六百万ぐらいだなんていうことを言われて、そうでござんすかと言って引き下がれやしません。だから、改めてこれは理事会で相談をしていただいて、日韓問題に関する特別委員会でもつくっていただけるのならそこでやりますし、適当な方法をお示しいただきたいと思います。よろしゅうございますか。
  142. 坪川信三

    坪川委員長 政府側に申し上げますが、ただいまのような大出君の申し出もございますので、そうした観点から真摯に協議を続けていただきたいと思います。  われわれの理事会においても、また十分協議もいたしたいと思いますから、御了承願いたいと思います。  次に、正森成二君。
  143. 正森成二

    ○正森委員 ただいま同僚の大出委員から数字を挙げての非常に詳細な質問がございました。  そこで、私は海外経済協力基金側に答弁を願いたいと思いますが、たしか私に対する答弁では余り肯綮に当たった答弁がございませんで、私の記憶に残っておるのでは、営団地下鉄の四十八年七月契約という車両の価格を持ち出されて、それと余り大差がないというような答弁だったと思いますが、そういうことで答弁をなさるおつもりですか。     〔委員長退席、澁谷委員長代理着席〕
  144. 大島隆夫

    ○大島参考人 せんだっての正森委員の御質問におきましては、価格の開きが、大ざっぱに申しまして一千万ないし一千二百万、こういう御指摘がございましたので、これにつきまして申し上げてみたいと思います。  基金におきましても改めてチェックをいたしましたが、ソウルの地下鉄と都営の地下鉄六号線との価格差につきましては、基本的に規格、仕様が大きく異なっております。また輸出の場合には、国内の納入と異なりまして貿易に随伴する経費がかかります。市場環境もまた違うわけでございまして、こういったようなものをただ比較するということは、大変にむずかしいわけでございます。しかし御質問もございますので、中身に立ち至って申しますけれども、ただいまのようなむずかしさがあるのだということを前提にお聞き取りいただきたいと思います。  第一に、まずソウルの地下鉄が新規であり、車体が大きい、それから寒冷地向けに特別の配慮をしたということを申し上げておるわけでございますけれども、これをやや分けて申し上げますと、第一に、新規の設計でございまして、さらには承認図面、取扱説明書などの作成の費用が必要でございます。  それから第二に、国内の発注と違いまして、継続発注ではございませんで、特注品でございます。そのために治具であるとか工具、こういったようなものが違ってまいりまして、また償却につきましても差が生じてまいりますのは当然のことと思います。  それから第三に、新規でございまして、かつ保証期間が二年と長いわけでございます。国内は通常一年と聞いております。したがいまして、入念かつ特別な試験の実施をいたしております。  それから第四に、車体が大型であることでありまして、容積、重量、台車、モーターの性能などに関する材料費、工作費が絡んでまいっております。  それから第五に、寒冷地対策としての三段式の特殊なヒーターあるいはドアの選択開閉装置あるいは断熱器などを必要といたしておりまして、これらの要素を勘案いたしますと、約六百万見当の増加となるかと考えられます。(正森委員「設計や何か全部ひっくるめてですか」と呼ぶ)いままで申し上げました五点を総合いたしましてでございます。  次に、輸出に伴う運賃、荷役費用その他について申し上げたいと思います。  第一に、これは積み出し港までの輸送費などの船積み諸掛かり、いわゆるFOB価格とも申すかと思います。これが第一でございます。  それから第二に、国内取引に比しまして保証期間が長いこと、これは先ほど申し上げましたが、そのためにいわゆるコンティンジェンシー的費用、つまり保証期間中に何か問題がありました場合にこの保証に応ずる、保証の責めに任ずる、このための費用を見込んでおるわけでございます。  それから第三に、輸出保険料、組合賦課金などの費用がございます。  それから第四に、外注品取りまとめに要する手間がメーカーの負担となる。これはいろいろな機器を積み込みます場合に、これを発注者ではなくてメーカーの方で取りまとめる、これに要する費用でございます。  それから第五に、車両の製作期間の物価上昇の問題がございます。これは、正森委員が前回御指摘になりました物価上昇のほかの物価上昇と申しますのは、前回の正森委員の御指摘は、応札時における物価上昇、これをおっしゃっていたと理解いたした次第でございますが、一般に、応札をいたします場合には、そのときの価格状況だけではなくて、それが完成するまでに至る物価の上昇、これを織り込むのは当然のことであると思いますので、その分の差額が出てこようかと思います。  それから第六に、輸出に伴う商社の手数料がございます。  こういったような諸要因によりまして約九百万円の増加となると考えております。  合計いたしますと約千五百万円のコスト増加になるわけでございます。  これは増加要因だけを申したわけでございまして、ほかに減少の要因もあるわけでございます。これは車両の材質であるとかあるいは台車のバネの違いであるとか、こういったようなものがあるわけでございまして、これがざっと四百五十万というふうに考えられます。  以上、検討いたしました結果を総合いたしますと、ソウルの地下鉄の車両は、交直両用にかかるコストの増加、部品費、海上運賃などを除きまして、大体千五十万くらいのコスト増、こういったふうに考えております。  以上、あえて先生の御計算による都営地下鉄との価格差について検討した結果を御説明いたしたわけでございます。くどいようで恐縮でございますが、先ほど申し上げましたように、都営とソウルとでは基本的に規格、仕様が異なっているわけでございまして、加えて新規、継続性がないというような国内取引との違いがあるわけでございまして、これを比較いたすのは非常に困難だということを重ねて申し上げておきたいと思います。
  145. 正森成二

    ○正森委員 いま御説明になりましたのは、私の質問の一あなた方はこの前の答弁では、営団地下鉄が四十八年の七月に契約したものが六千七百万円と称して、それから見れば六千三百九十万円、運賃等を引いて五千八百七十万何がしというのは高くないということを理由にしたのですが、それではその理由というのは取り下げるわけですか。     〔澁谷委員長代理退席、委員長着席〕
  146. 大島隆夫

    ○大島参考人 先生の方からいろいろとその違った要素の御指摘がございますので、そのそれぞれにつきまして答弁申し上げておるわけでございまして、理由の説明は何も一つに限ったわけではございません。都営地下鉄が六千七百万円したということは事実でございますし、そういったことも説明の一つになろうかと思います。  なお申し上げておきますと、そういうことを申しますならば、先般先生が引用なさいました五十年八月の日本から派遣されましたソウル調査団の調査、これの物価指数の上昇分を先生引用なすったわけでございますが、あの調書におきましても、ソウルの地下鉄の費用はあのとき六千万円、こういうことを申しておるわけでございます。で、先ほど申し上げましたように、物価上昇の見方につきましてあのリポートは問題があろうかと思いますので、先ほど申し上げましたような趣旨で物価の上昇率を変更いたしまして換算いたしますと、約六千三百万になるわけでございます。  いろいろと日本の車両との比較がございますけれども、これは先ほどから申し上げますように、条件が基本的に違うわけでございますので、一番適切な御説明といたしましては、そうやってまさにソウル地下鉄そのものを調査いたしました調査団が六千万、物価を修正いたしますとざっと六千三百万、こういったような数字を挙げておりますことを申し上げておきたいと思います。
  147. 正森成二

    ○正森委員 私の質問にはさっぱり答えないで、試験官から問題も出ないのに、自分で試験の予習をしてきたところだけをしゃべっているじゃないですか。そういう問題はあなたが恐らく言うだろうと思って、後で全部私が質問しますから、そうあわてないで、私が聞いた、あなた方が一つの原因としている——いまあなたは都営と言ったけれども、営団でしょうが。営団の地下鉄の六千七百万円というのが四十八年の七月の契約であって、それが一番ソウルの地下鉄に近いというようなことをおっしゃったから、その説明は維持されるのですか。その営団の地下鉄の車両というのは、それじゃ、あなたの言葉をもってすれば、ソウルの地下鉄と比較できるような車なんですかということの説明を求めているのです。まずそこから聞きましょう。それから順番にあなたといろいろ議論しましょう。あなたは私が質問していないことも、今度は前の一足す二は六と違って、いやに積極的に答えるじゃないですか。それだけ積極的に答えるなら、せめて聞いていることだけでもちゃんと答えたらどうです。
  148. 大島隆夫

    ○大島参考人 出過ぎたといたしますと、おわびいたします。  営団地下鉄との比較はそれはそれとして、やはり規格が違いますのでむずかしい点がございます。したがいまして、営団地下鉄と値段がほぼ合っているからそれですべて解決なんだということを申し上げるつもりはございません。ただ、いろいろな値段がありますうちには、営団地下鉄のような値段もあるのだということを申し上げただけでございます。
  149. 正森成二

    ○正森委員 能吏の典型みたいな答えであります。なぜ答えられないか。そのからくりを言いましょうか。六千七百万円と言ったけれども、営団地下鉄で実際に聞いてみたら、六千七百万円じゃないでしょう。私はあのとき値段を知っていたのです。あの営団地下鉄の九十五両は二十両と七十五両に分かれておる。二十両が一番あのソウル地下鉄に近い、四十八年の七月で納期もほぼ合っておった。その価格は六千百九十万なんです。そんなことは調査してみてわかったでしょうが。わかったから、すでにそこで五百万円ごまかしておるということがばれるから、そこでその部分答弁は避けようとしているのです。  もう一つ聞きましょうか。あの営団地下鉄の車の材質は何でしたか。アルミだと言ったでしょうが。そこも調べてないのですか。ソウルの地下鉄はスチールなんです。スチールとアルミではどのぐらい値段が違うか調べてみましたか。また、営団地下鉄では電動車はチョッパー車といって制御装置に半導体を使っているのです。これをやると値段がべらぼうに高くなるのです。一両当たりそれで値段がどれぐらい高くなるか調べましたか。  また、ソウルの地下鉄は前に言ったように、四M二Tで安いT車が二台ついております。ところが、営団地下鉄は四M一Tで安いTは一台しかついていないのです。そういうもろもろの点を総合修正すると一体どれぐらい高くなるか、ここで言うてみなさい。
  150. 大島隆夫

    ○大島参考人 営団地下鉄の値段につきましては、御指摘もありましたのでさらに取り調べましてお答えいたしたいと思いますが、ただ申し上げておりますのは、いろいろと条件の違いがあるということでございます。  それから御指摘になりました日本価格の方が高い要素、これも確かにあるわけでございまして、その点は先ほども言及いたしましたように、千二百万円の御説明をいたします際にマイナス要素として申し上げたとおりでございます。
  151. 正森成二

    ○正森委員 いまお聞きのように、この前とは打って違ってよくしゃべる。しかも、しゃべる内容は、私が質問していることには答えないで、自分があらかじめとらの巻で勉強したことだけは盛んに答える。だが、あなたがこの前の答弁の中で一番有力な根拠と思われるように言った営団地下鉄の六千七百万円というのは、まず価格をごまかしており、比較すべからざるものを比較しておる。私が調べたら、私が挙げたような要素で優に二千万円以上違うのです。そういう点をごまかして、もし私たちが調べてなければそれでこの問題を終わりにするつもりだった。まことにけしからぬ考え方であると言わなければなりません。  そこで、先ほどの東京都の問題についていろいろ理由を挙げましたが、それらの点について言いますと、あなたは、私が言ったのは契約のときの値段であって、そのときには、納入のときまでの値段を考慮しているから高くなるのはあたりまえだというようなことを言いましたが、まさに同じことを私はこの間の質問で言っているじゃありませんか。契約をするときにメーカーは全部、来年になれば春闘でどれくらい賃金が上がるか、また材料がどれぐらい上がるかを考えて、その上で四十八年の五月に計算をするのです。納入が、ソウルの地下鉄が八月十五日開通ならそれまでに納めなければならない。それまでにはどれぐらいもろもろのものが上昇するかによって契約をして、私が主張したのは、そういうものを計算して一たん契約をしたらそれ以後は値段を上げないのだ、そういうやり方が日本では、たとえ国鉄であれ、あるいは東京都の地下鉄であれ、大阪の地下鉄であれ横浜であれ、官公庁は全部そうなっているんだ。だから四十八年の五月現在の価格を考えれば、納入が四十九年であるからもう一年分の価格修正をしなければならないというようなことは、これは業界では通用しないんだということを言ったのです。あなたがいま言っていることも基本的には私と同じことであって、それをいかにもさらに私のこの間の説明が不十分であったかのように印象づけようとしているだけじゃありませんか。基本的にはそうでしょうが。契約したときに、一年後に納入するならそのときの物価上昇も考えて、その契約時の価格によって決まるのですよ。それをさらに変更するなどということは、官公庁では例外の例外としてもほとんど認められていない。こういうことは明らかである。そういうことを考えますと、私はいまあなた方の説明というのは断じて納得することはできない、こう思います。  なお、私は申し上げたいと思います。  運輸省あるいは行政管理庁長官に伺いたいと思いますが、統計法に基づいて統計をおとりになっていると思います。その統計というのは統計法の何条に基づいてどういう権威をもって統計を出しているのですか。鉄道車両についてもそれを出しているはずです。運輸省はわざわざ統計課長を呼んで聞いたでしょう。
  152. 西村英一

    ○西村国務大臣 行政管理庁長官としてどうかと言われましたが、突然のことでございますから、よく調べまして……。
  153. 田村元

    ○田村国務大臣 いま行管庁長官も申しましたように、まことに突然のことでございますので、私にとっていささか青天のへきれきであり、よく調べまして御報告を申し上げます。
  154. 正森成二

    ○正森委員 それでは、私が準備しました資料の一と二を配付してください、両方一遍に。  そこで、時間を節約するために配付しながら申しますが、資料一というのは、私が国鉄に対して先ほど大出議員が提出いたしましたのと同じように、交直流ではどれくらい値段の差があるかという点についての資料であります。念のために昭和四十九年、五十年と両方をとりました。  そこで、それを見ますと、昭和五十年度は一千九十万くらい差がありますが、昭和四十九年度は、先ほど大出議員がお示しのとおりの六百七十万円前後の差であります。また、それから類推いたしますと、昭和四十八年度の価格の差は、大出議員が指摘されましたように、恐らく五百万円を超えることはあるまい、四百万円以下であろうと思われます。私は、この点を明確に指摘したいと思います。しかし、私どもがそう言うと、二万五千ボルトと二万ボルトであるから、変圧をして千五百ボルトに圧を下げて、そしてそれを整流器で変えなければならない、だからいろいろ違うんだということを言うでしょう。そこで、あなた方に対して説明を求めたいと思います。  ここに鉄道車両工業年報というのがあります。これは私が運輸省の関係官に聞きましたところでは、統計法の第二条に「この法律において指定統計とは、政府若しくは地方公共団体が作成する統計又はその他のものに委託して作成する統計で航つて行政管理庁長官が指定し、その旨を公示した統計をいう。」と書いてあります。ですから、行政管理庁長官も関係があるはずであります。そして、運輸省の役人は、まさにこの鉄道車両工業年報に載っておる統計というのは、この統計法に基づく正規の統計であって権威のあるものである、こういうように言っております。この中には、私が見ましたら韓国に輸出した車両の写真まで明確に載っております。これです。これを見ますと、韓国の写真がスチール製であるということが一目瞭然にわかります。  同様に、皆さん方に差し上げました資料をごらんになってください。その資料のうち国鉄の部分を除きます第一を見ていただきますと、製作会社が日立と日本車両、鉄道名は韓国鉄道庁と韓国ソウル特別市、こういうぐあいになっておりまして、その主な仕様が全部書いてあります。——わかりますか。  資料の第二番目を見ていただきますと、これは一九七四年の八月刊に載っているものでありまして、昭和四十八年度の鉄道車両輸出契約実績国別、一番上に韓国百八十六両となっております。まさに韓国へ輸出したということを統計が明らかにしているわけです。  第三番目の紙を見てください。第三番目の紙は、昭和四十八年に、鉄道車両の受注両数及び受注金額が書いてあります。私が囲んだところを見ますと、輸出向けの電車四十八年上期は百五十三両で、四十億三千三百五十万円になっております。  二枚目を見てください。二枚目を見ますと、その輸出に基づく価格が出ております。これは百六十二両で四十四億七千五百三十一万円であります。私は月ごとの生産台数ももっと詳しい資料がありますからそれを確かめてみましたが、この百六十二両、百五十三両の大部分は韓国向けであります。全部ではありませんし、またすべてが入っているわけではありません。したがって、誤差があると思われますが、これを計算機ではじいて計算してみますと、大体二千六百三十六万円から二千七百六十三万円になります。他の国別輸出の微細な誤差があるといたしましても、三千万を大きく超えることがない。運輸省に聞いたら、これはメーカーが商社に対する波止場渡しの価格であろう、こういうように言うております。  そうすると、あなたがいろいろ夢物語みたいな数字を挙げたけれども、権威のある統計法に基づく統計に出ているこの数字との差はどうなるのですか。私はいろいろ価格の構成についても調べてこようと思って調べました。また、それについての論戦をするいろいろな材料を持ってまいりましたが、あなたのいまの大出議員並びに私に対する答弁の態度を見ておると、一々製造メーカーに当たって原価を確かめるのではなしに、価格の増価要因とか減価要因というのをできるだけ数多く並べて、一つ一つのあらがばれないように、込みでどのくらいだということで、すべて韓国向きというのは国内と違うのだということでごまかそうとしておる。  そこで私は、明らかに運輸省が動態統計として行ったこの資料に基づいてあなたに質問をしたいと思う。なぜこんなに値段が違うのです。これは明らかに商社のマージンを加えても、なおかつ大出議員やあるいは私が指摘したような三千万台の値段というのが妥当であって、とてもそんな車両だけで五千八百万円もするような、運賃を込みに入れても六千三百九十万円もするようなそういう価格ではないということを示しているじゃありませんか。どうですか。
  155. 大島隆夫

    ○大島参考人 この統計は初めて拝見いたしますので、にわかにお答えいたしかねます。
  156. 正森成二

    ○正森委員 徒手空拳の委員が調べようと思えば、図書館へ行けばこういうものがちゃんとあるのです。しかもこれだけ国会で疑惑になっているのに、それを当然調べるべき海外経済協力基金が一そして私や大出議員が指摘してからすでに一週間、十日たつ。自分に有利なことは質問されないのにどんどん答える人間が、どうして政府のこういう公の統計を使って調べないのですか。そんな態度で、一体国民に対して責任を負う態度と言えますか。  そこで私は、あなたが答えられることを聞きたいと思う。海外経済協力基金について、まず大蔵省から聞きましょうか。今年度は一体一般会計から幾ら、財投から幾ら、そして貸し付けた金が返ってきたところから幾ら海外経済協力基金に入って、総計予算を幾ら組んでいますか。
  157. 坪川信三

    坪川委員長 政府側、御発言願います。
  158. 宮崎勇

    ○宮崎政府委員 お答えいたします。  海外経済協力基金の投融資の予定額は、五十二年度は、一般案件といたしまして二百億、直借が二千四百十億円、合計二千六百十億円で、そのうち出資が七百六十億、借入金が九百八十億、自己資金が八百七十億でございます。
  159. 正森成二

    ○正森委員 つまり、いまの説明をわかりやすく砕いて言いますと、資金運用部資金の九百八十億円というのは、国民の零細な郵便貯金等が海外経済協力基金に行って、それが海外へ貸し付けられるのです。また一般会計の出資金七百六十億円というのはわれわれの血税を使うのです。また八百七十億円の回収金というのは、一たん貸し付けた金や金利が返ってくる、その金をもう一ぺん貸し付けるわけです。もとを正せば、資金運用部資金とわれわれの税金であります。そういうものが使われているのです。  昭和三十六年から五十年までの間に借款をいろいろ行っておりますが、その借款の認証の額はどのくらいで、実行融資総額はどのくらいで、投融資残高はどのくらいありますか。また、そのうち韓国向けの一般借款の承認額はどのくらいありますか。
  160. 宮崎勇

    ○宮崎政府委員 お答えいたします。  海外経済協力基金が投融資をしております残高を、五十一年十二月三十一日現在でとりますと、一般案件につきましては千四百億円、直借が六千四百四十七億円でございまして、そのうち韓国向けが、一般案件が十六億、直借が千百二十五億、合計千百四十一億でございまして、全体の残高に対する比率は一五・三%になっております。
  161. 正森成二

    ○正森委員 以上お聞きのとおりであります。つまり、数千億円の金がこうして使われ、韓国向けだけでも一千億円をはるかに超えます。そして、私たちが疑問点として指摘したこの統計数字によれば、はるかに大きくて、ピンはね価格は恐らく一両当たり二千万円を超えるでありましょうが、私や大出議員が控え目に控え目に計算をいたしましても一千万円以上、一千二百万、三百万という金が一両ごとにピンはねされている。百八十六両で二十二億円をはるかに超えます。  李在鉉教授はこう言っている。橋本議員などが行っていろいろ聞いたら、このお金は二割から三割がピンはねされて、それが日本の韓国ロビーと朴大統領以下の韓国の政財界に流れて、それが日韓の癒着と腐敗を行っているんだ。金大中氏もそう言っているのです。  どうですか、福田総理。こういうようなずさんなことが行われており、それがわが国の政財界と韓国の政財界との癒着を行っている、こういう疑いが十分にあるときに、いまのような説明で納得することができますか。また、こういう政府の公の統計資料についても何ら答弁ができない。また、私や大出委員質問に対しても、一括していろいろ価格がふえた原因や減った原因ということだけを言って答えられないというようなことでは、私は、この重大な予算審議について、このままよろしゅうございますと言って予算を通すわけにはまいらないと思う次第であります。それは、恐らく同僚議員についても同じであろうと思います。  もう一つ聞いておきますが、海外経済協力基金に……。
  162. 坪川信三

    坪川委員長 正森君に申し上げますが、持ち時間がかなり経過しておりますので、結論をお急ぎ願います。
  163. 正森成二

    ○正森委員 ジャーツというのを知っておりますか。
  164. 大島隆夫

    ○大島参考人 存じております。国鉄と関係の深い、鉄道関係のコンサルタント機関であります。
  165. 正森成二

    ○正森委員 ジャーツというのは、JARTSと書きます。日本で言いますと、社団法人海外鉄道技術協力協会であります。ここが韓国のソウルの地下鉄の設計とかいろいろなことをやっております。私は、そこへ行って確めてまいりました。それを取り寄せますと、韓国の地下鉄の仕様やら構造が一体どんなものであったか、あなたが言うように金がかかったのかどうかということが一目瞭然にわかるはずであります。私は、できれば審議を密にしたいと思って、その提出を求めました。ところが、総理に聞いていただきたい。また、海外経済協力基金の監督官庁の経企庁にも聞いていただきたいが、その契約の第六条第七節で、これはソウル特別市との約束によって秘密を守らなければならないということになっているからお渡しすることができないということになっているのです。全額われわれ国民の血税と零細な預金から出されているその借款である。それに不正がこれだけみんなの間で起こっている、そのもとを調べようと思えば、不正を通すルートになったと思われるソウル特別市との契約の中で、その秘密を守らなければならない、こういうことで全部シャットアウトするようになっているのです。こういうことで一体わが国益を守ることができましょうか。  私は委員長に、時間が参ったという御説明でございましたので、最後に申し上げたいと思います。これでは予算審議を全うすることができません。商社とメーカーとの一つまりメーカーが調べられていないのです。商社とメーカーとの契約を含む一切の契約書、いま申しましたJARTS、海外鉄道技術協力協会の仕様書、この資料の提出を委員会に求めたいと思います。さらに、この借款は三菱商事が幹事団体になっております。また、私がいま提出いたしました資料で明らかなように、日立と日本車輌がまとめ役となってメーカーの代表として名前を出しております。また、海外鉄道技術協力協会が、いま言った重大な設計上の役割りを果たしていることは明らかであります。  そこで、私は、田部文一郎三菱商事社長、吉山博吉日立製作所社長、天野春一日本車輌製造社長、島秀雄社団法人海外鉄道技術協力協会理事長、これを証人として喚問していただいて、まさに、韓国の地下鉄がどういう仕様であり、どういうメーカーとの契約を行い、どういう材料をつくり、交直両用はどういうような仕様であったか、そういうことを確かめてこの疑惑を晴らすのが日本国民の代表である国会の予算委員会の責務であると信じたいと思います。その点について、私はこれらの証人のお取り調べを願いますとともに、いま政府委員みずからこの統計については答えられなかったわけでありますから、私の質問をその部分について留保させていただきたいと思います。
  166. 坪川信三

    坪川委員長 ただいまの正森君の御提言につきましては、私ども理事会といたしましては、承りました観点から協議をいたしたいと思います。  午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十六分休憩      ————◇—————     午後一時三十二分開議
  167. 坪川信三

    坪川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。阿部昭吾君。
  168. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 運輸大臣に最初資料要求いたしたいと思います。  新東京国際空港公団法二十六条によって、「公団は、毎事業年度、事業計画、予算及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、運輸大臣の認可を受けなければならない。」、この二十六条の関係の認可をいたしました資料を御提出をいただきたいのであります。  同じく公団法二十七条の毎事業年度、財産目録、貸借対照表、損益計算書、これを作成し、当該事業年度の終了後三カ月以内に運輸大臣の認可、これもぜひひとつ資料として御提出を願いたい。  それから、航空法の五十五条による工事実施計画の認可申請書及び認可書、これを添付書類を添えてお出しをいただきたいのであります。  これにつきまして、いままでもずいぶんと資料のお願いをしてまいったのでありますが、なかなか提出をされないのであります。この提出をぜひお願いいたしたい。図面等の関係で時間がかかりますならば、申請書と認可書の本体だけ——本体というのはこの程度のものであります。     〔委員長退席、田中(正)委員長代理着席〕 後でごらんをいただきますが、これに関する資料の御提出を願いたいのでありますが、運輸大臣、よろしゅうございますか。
  169. 田村元

    ○田村国務大臣 なるべく早くお出しをいたします。
  170. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 それでは、前回の総括の際にお尋ねをしたのでありますが、航空保安施設の一部でありますILS、この施設を、用地の確保ができなかったためにA滑走路の中に七百五十メーター食い込まして施設をしたわけであります。この施設をいたしました際の認可を、航空法五十五条による認可を取っておらぬじゃないかと言いましたところ、設置基準とすりかえて御答弁が公団当局からあったのであります。この工事が完成いたしましたのは四十七年の二月であります。この認可をいたしましたのは四十七年の七月のころだと思います。間違いございませんでしょうか。
  171. 高橋寿夫

    ○高橋(寿)政府委員 お答えいたします。  工事の実施とただいま御指摘の施行規則によります承認との時間的な関係につきましては、実は工事の完了しました時点について、私今日まだ正確に把握をしておりませんので、ちょっと御答弁しかねます。
  172. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 私はこのことで前回からずいぶんと御質問いたしておるのであります。あなたの方の関係の皆さん、ずいぶん参りました。なかなか明らかにいたさぬのであります。  事実は、あなたの方から参りました資料等を総合してみますると、工事を実際に完了いたしましたのは四十七年の春であります。認可をいたしましたのは、五十一年の十一月二十五日をもって認可をしたということになるのでありますが、これ、間違いありませんか。
  173. 高橋寿夫

    ○高橋(寿)政府委員 認可の時点につきましては御指摘のとおりでございます。ただ、その前に工事を完了した正確な時点をいまつかんでおりませんので、そのことについては保留させていただいたわけでございます。
  174. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 つまり航空法の五十五条によれば、この施設をいたします場合には事前に認可をちゃんと受けなければならぬということになっておるわけであります。したがって、この認可を受けずに工事はどんどんやっておる、これはどう考えましても航空法五十五条に違反するというふうに思うのですが、運輸大臣どうでしょう。
  175. 田村元

    ○田村国務大臣 これは私が感じたところでありますが、形式的にはそれは確かに違反になるかもしれないと思うのです。まあ、後で工事実施計画の変更をしておりますから、その点はそれでいいと思うのですけれども、その過程において、いまから考えればと言いますか、私が考えてみて、やはりそういうことは最初からきちっとしておくべきものだとしみじみ思います。今後そういうことのないように厳しく指導をいたしてまいりたい、このように考えております。
  176. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 すべきものだということであれば法律を守らなければならぬのであります。前回も総理大臣は、国家権力の行いますことは何をやってもいいということにはならない、法律に従ってしっかりしたことをやらなければいかぬ、こう言われておるのであります。したがって、五十五条は、工事をやろうとするときは事前に認可を受けなさい、変更しようという場合もまた同じだ、こういうふうに明瞭に規定しておるのであります。認可は去年の十一月に受けまして、実際の工事そのものは数年前に終わっておるというようなことは、どう考えましても、これは航空法の五十五条を無視した無認可工事をやったことは明らかであります。この事実を運輸大臣は、お認めになりますか。
  177. 田村元

    ○田村国務大臣 いま御指摘のようなことであったと思います。恐らく当時の担当者は、四千メートルを無視されるというか否定されるようなことになりはせぬかというのでいささかのおびえがあったのだろうと思いますが、しかし、法律はきちっと守るべきものであり、そのけじめはっけるべきものだ、このように思っておりますので、私からもおわびを申し上げたいと思います。
  178. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 時間がありませんので、もう一つ。  現在の第一期工事のA滑走路の南西部に、たしか油タンクその他の給油施設がつくられておるわけであります。それからA滑走路の東北部だと思うのでありますが、消防所その他車両の整備のために要する施設等がつくられております。これは新東京国際空港の起業地の外側につくられておるのであります。これも実は公団が行った事業でありますから、当初つくられました工事実施計画から見ますと当然に変更の認可を得てやらなければならない事業であると私は思いますけれども、運輸大臣、いかがでしょう。
  179. 高橋寿夫

    ○高橋(寿)政府委員 お答えいたします。  それは当初から全体の計画の中に、図面の中にも入れまして、そういったものを前提といたしまして実施計画の認可をしているわけでございます。ただ、用地が事業認定を受けた用地ではなくて、前の三里塚御料牧場の残地ということでございました。公団が所有していた用地を使ったわけでございます。
  180. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 私がいまお尋ねをいたしておりますのは、当初あなたの方で立てました事業実施計画では、あの区域内にあれはちゃんとおさまることになっておるのだと思うのであります。それがいろいろな関係で外にはみ出した。はみ出したならば、はみ出しますということで工事実施計画の変更認可を受けなければならぬのではないか。こう言っておるのですが、受けなければならぬことですね。
  181. 高橋寿夫

    ○高橋(寿)政府委員 その点につきましては、いま御指摘の場外にございますのはいわゆる給油のタンクでございますが、給油関係のたとえば地下パイプその他につきましては全部事業認定を受けました土地の中につくっておるわけでありまして、それを支えるための付帯施設ということでタンクをつくるわけでございますので、必ずしも基本的な施設とは考えていない。したがって付随的な施設でございますので、事業計画の中に入ってなかったわけでございます。
  182. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 私は納得いたしませんね。なぜ私がそのことをくどくど申し上げるかといいますと、公団は何と言ってもすかっとしたことをおっしゃらぬのでありますけれども、土地収用法の、空港公団の起業地の設定を誤ったのです。いまのところも全部外枠にあるわけであります。パイプラインの敷設用地も、所有権までは収用する必要はないのです。そこにパイプを敷設するといういわば使用権は収用できるようにしておかなければならなかったのであります。それをやらなかったから暫定措置で鹿島、そのために膨大な地元の要求をのまなければいけない。いままた千葉県のパイプラインで、相当の工事費を突っ込んだにかかわらず、土地収用法の対象にしておきませんでしたからそれができない。この過ちを反省しなければいかぬのです。したがって、いまの場合も、ちゃんと設定されておる土地の中につくられないというならば、当然に事業の変更認可を受けなければならぬところじゃありませんか。そういう三百代言みたいなことを言っておるから、莫大な金を突っ込んで、長い長い年月をかけて、なおかつ物にならぬのですよ。いまの答弁では私は納得いたしません。  それから、法のもとに公正でなければいけない、公平でなければいかぬ。ところが、いま代替地を出しておるということをこの前申し上げました。  そこで、空港公団総裁、岩山地区というのがありますね。あの皆さんを十二戸移転さすために十三町歩ほどの社台牧場、この場所を買いましたね。これは大体十アール当たり一千二百万ぐらいしておると思う。これは現地の皆さんとは等積交換でいきましょう——現地の皆さんは、自分たちは公団に三十町歩ほど土地を提供するのに、十三町歩じゃ足らぬということになって、いまもめておるでしょう。ところが、いま若干の値上がりを計算いたしましても、前回の答弁では十アール当たり二百五十万だ、こう言っております。これに対して、いま一千二百万の代替地を提供しなければならぬのです。千葉県を媒体にしてやりましたと言っておりますけれども、千葉県がまさか空港公団にただで土地は提供しないでしょう。いずれこれは全部空港公団がその用地の金の面でのつじつまはつけなければならぬわけであります。したがって、あなた方は等積交換じゃないとおっしゃっておるのに、現地では等積交換と言うので、あなたの部下は現地へ行って説得をしておるのです。そうすると、土地収用法との関係で、昭和四十四年の段階で価格は凍結をされて、それ以降はある値上がり率を見た分以外は見ちゃいかぬのでしょう。一千二百万の代替地というのは一体どういうことです。岩山地区の皆さん。  それから農林大臣に。これはきょう御答弁は要りませんけれども。印旛沼の干拓をやりました。
  183. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 阿部君に申し上げます。時間が参って、おります。
  184. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 はい、すぐ終わります。  そこで、成田の関係の皆さんをここに代替地提供をやっております。そこでは大いに米をつくりなさい。福島潟は、同じ干拓でありながら米をつくっちゃいかぬと言って、去年あの大騒ぎをいたしました。福島潟と印旛沼干拓はどういう基本的な根拠の違いがあって、片一方は米を大いにつくらす、片一方はつくっちゃいかぬということにしておるのか。これは成田空港の問題と重要な関係があります。改めてひとつ御回答願いたいと思います。
  185. 大塚茂

    ○大塚参考人 代替地の問題でございますが、岩山十二軒とは完全に話がつきました。おっしゃられますように、社台牧場十三ヘクタールを十アール千百万の値段でその代替地用として買収をいたしました。しかし、それとほかの安い土地を抱き合わせて提供する、しかもそれは全部が——提供していただくのは約三十ヘクタールでございますが、私どもから提供するのはそれを若干下回る面積で結構だということで話がついております。
  186. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 時間がありませんからこれで終わりますが、いまの答弁では納得いたしません。インチキな答弁です。改めてまた一般質問か何かの機会に解明したいと思います。
  187. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 次に、井上普方君。
  188. 井上普方

    ○井上(普)委員 住宅金融会社の住宅ローンの金利は銀行の住宅ローン金利よりもはるかに高いのでございます。住宅金融専門会社の方でございますと一一・四、高いのになりますと一一・八八%という金利もあるのでございます。こういうようなことで消費者に対して非常な荷重をかけておると私どもは思われるのであります。したがいまして、銀行自身が住宅金融をやったらいいんであって、こういう金融専門会社をつくるのはどうかと思うのでございますが、この点いかにお考えになっておられるか、お尋ねいたしたいと思います。
  189. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  住宅金融専門会社でございますが、金利が御承知のとおり二十五年もので一一・四といったようなことは、むろん長期金利の中でも決して安い方ではない。さような意味におきまして、これはだんだんと下げていかなければならぬと思いますが、現在のところ、まだこの会社の歴史がそれほど古くなくて、その資金を集めるに当たりまして、各種金融機関から長期の金を調達いたしまして、それを融資しておるというような関係上、目下のところはこれはちょっとやむを得ない点もあろうと思いますけれども、われわれといたしましてはできるだけ安くしていくように、時がたつに従いまして指導してまいりたい、かように考えております。
  190. 井上普方

    ○井上(普)委員 私も先般の質問のときに計算間違いをいたしておりまして、御迷惑をかけましたことをおわび申し上げます。  しかしながら、二十五年もので大体一一・四、これは非常に多いのでございますが、やりますと、元金の三倍払わなければいかぬのですね。一一・八八%というのも実はあるのです。こういうような会社をなぜつくらなければならないかということなんです。会社の内容を見てみますと、資本を出しておるのがほとんど銀行あるいは証券会社であります。なぜつくらなければならないか。しかも銀行ローンの方は、これは年率九%前後であります。片方は一一・四から一一・八八%という高さを示しておる。しかも、ここに住宅金融会社の社長が書いた本がございますけれども、この社長も大蔵省出身の役人ですな。そして、手前勝手なことばかり書いてある。余りにも金利が高いというので解約するときには、手数料を取っておる。あるいはまた保険も、生命保険までかけさせているのですよ。     〔田中(正)委員長代理退席、委員長着席〕  しかも、見てみますというと、この会社が店舗をどれくらい持っておるかといいますと、わずか三つしか全国で店舗を持っていない。全部ほかの金融機関に仕事をさして集中さしておる。従業員百八十数名、店舗数は全国で三カ所ないし四カ所。これじゃ、銀行の完全なる子会社じゃありませんか。子会社であって、それの利益を吸い上げる、これが銀行のいまの姿じゃありませんか。これはやめさせたらどうです、こんな金融会社は。
  191. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  住宅金融専門会社が存在しておるということでございますが、それについてやめさせたらどうか、こういうお話でございますけれども、住宅金融会社にも、ああやって存在しておるということにつきましては一応それなりの意義がある、こういうふうに思うのでございますがね。住宅金融会社は、それを中心としておりまする各金融機関相互間あるいは地域的な資金の繁閑を調節いたしまして、そして住宅金融資金の需要がいま大変多うございますけれども、その資金のパイプを太くしていくということが一方にございます。なお、いま御指摘保険会社だとか農協等の機関投資家の資金にも繁閑があろうと思いますが、そういったようなものを住宅金融投資に動員をするというような役割りも果たしておる。  それから、御承知のとおり、住宅金融専門会社は物的担保主義をとりまして、これは厳しい担保主義をとっております。そこで、そういったような場合に、住宅を建てたいというような人たちが預金取引をしておる銀行がない場合に、こういったような人たちが家を建てたい、そういったようなときに、まあ主としてこれはサラリーマン等が多いと思いますけれども、そういったような人たちの住宅資金需要にともかくお役に立つことができるということでございます。  この住宅金融専門会社が金利が高いということについては、確かに、長期金利のプライムレート九・二%ですが、それよりも高いということは、これはまあとにかく設立後日がなお浅いので、何とかそれを成長させていきたい、かように考えております。
  192. 井上普方

    ○井上(普)委員 どうも私、大蔵大臣の御説明納得できないです。といいますのは、地域的な偏在資金を持ってくるというのでございましたら、各県に都市銀行が全部あるのです。あるいはまた相互銀行、地方銀行があるのです。これらが全部資本参加しておるじゃありませんか。役員に参加しておるじゃありませんか。それらの連中が実際の事務はとっておるのですね。店舗が全国でわずか三つしかないんだから。しかも、その職員は百七十名前後しかないんだから。金融専門会社というのは完全なる銀行の子会社じゃありませんか。  しかも大臣、あなたおっしゃいますけれども、この大蔵省出身の——日本住宅金融会社の社長になっておるのは昔大蔵省におった役人ですね、これがぬけぬけと、住宅金融会社について政府からくちばしを入れていただくのはまことに迷惑至極ということを本に書いてあるのです。あなたは金利を下げるように努力するとおっしゃいましても、向こうはそう言って書いてあるのですよ。こういうのは不必要じゃないかと私は思うのです。  しかも、銀行というのは、土地がもうけそうだというと土地の子会社をつくってみて、そしてともかく土地会社で大もうけする。あの蝶理が倒れたのだって、三井信託銀行が金を貸して土地を買わして、そして、それで金がなくなって蝶理が倒産して社会的な大きな問題になったことも御存じのとおりです。銀行のやり方というのはどうも私は納得できない。  おとといも、私ちょっと銀座を歩いてみますと、一丁目から八丁目までに銀行の支店が幾つあるかというと、十三あるのです。しかも、全部角地にあるのですよ。銀行というのはこういうようにして——大体銀行などというのは質屋から発達したものだから、大体裏通りにあるのが本当だと思うのだけれども、銀座のあの大通りに十三あって、しかも角地は六割まで占めているのです、押さえているのです。そうやって銀行はともかく資本蓄積をやっておるのです。これは見てみたらこの会社も同じなんです。これらについてあなたどうお考えになりますか。これが一つ。  もう一つは、去年、実は私は労働者財産形成制度について、住宅制度についてお尋ねいたしました。大蔵省の一番足元にある専売当局が労働組合との間に契約を結んでいないがために、まだ住宅財形を職員は利用できないという状況があります。これはほかの大臣も、涼しい顔をしていますが、一つ一つ聞いていきましょうか。あなた方らのなににもあるのですよ。国鉄にもある。国鉄も組合と契約してないのですよ。  労働大臣、こういうような制度をせっかくつくっておきながら、しかも使用者側はこれを奨励しなければならないという義務づけすら財形の法律には書いてある。にもかかわらず、これをやっていないのをどうお考えになりますか。この点ひとつ伺いたい。以上。
  193. 石田博英

    ○石田国務大臣 実は白状いたしますが、労働省もまだやっておらぬのでありまして、それで、私はこの制度を三十九年に提唱いたしまして、実施されたのは四十八年であります。共済組合との関係でありますが、速やかにやるように私の方はやっておるわけでございます。しかし、四十八年から開始されたにいたしましては、いま預金残高が約一兆二千億円に達しまして、最近ひどく理解が進んでおるわけであります。  ただ、いま住宅の問題をお取り上げでございますが、別に宣伝するわけではありませんけれども、われわれの方は、大企業で八分、それから中小企業の場合は七分五厘、それから勤労者住宅協会が取り扱う場合は五分五厘という安い金利でやっておるのでありますが、この分譲枠が毎年消化できないのです、残るのです。ことしからは新たに個人に直貸しをする制度、それから使用者を通じてその従業員に直貸しをする制度、そういうような制度も発足させようといたしておるわけでありますが、金利はいま申しましたとおりであります。その予定どおりの枠内の消化がなかなかむずかしいのには、二つばかり理由がありまして、一つは、これを申請したときに事業主の方が、その従業員の預金高の二倍半の融資をする約束をしなければならぬということと、それからもう一つは、その契約をした当該の勤労者がよそへ職を移したりあるいはやめたり、何か途中でやめた場合に、前にとっておりました免税、これは税額で預金額の一割を引くわけですが、それを今度は途中でやめれば事業主が責任をもって集めて返さなければならぬ、こういうことが義務づけられておるのであります。たてまえとしてはもっともだと思いますが、主税当局とこれから打ち合わせをさらに重ねまして、そういう障害点を除去したい、こう考えております。
  194. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  銀行が大変もうけ過ぎるじゃないかという御意見でございますが、とにかく銀行は今日まで、何と申しますか、高度成長の経済に乗って、そして相当その融資の分量がだんだんだんだん増大をしてきたということが一つの大きな原因であると思いますけれども、その銀行がもうけ過ぎておるということにつきまして、私も銀行は非常にもうけ過ぎてはいないということは決して申しません。しかし、適正なる銀行の仕事をやっておって、そうしてそのもうけるということにつきましては、そのもうけるのはけしからぬと言うわけにもまいりません。適正な金融業をやっておるかどうか、それはあこぎなことをやっておるというようなことだと、これは、監督官庁といたしましても、できるだけこれに対しては是正をしていくように指導をしなければならないと思っておりますが、今後ともその点につきましては大いに注目をいたしましてやってまいりたい、かように考えております。
  195. 石田博英

    ○石田国務大臣 ちょっと言葉が足りなかったので……。  いま労働省もやっていないと言った意味は、財形制度はやっておるのであります。財産形成法の貯蓄の方はやっておるのでありますけれども、住宅の方、井上さんが住宅のことをおっしゃるものですから、住宅の方だけはまだやっていないので、これはやらせます。
  196. 井上普方

    ○井上(普)委員 住宅財形について、住宅は国民の間に需要は非常に強いのであります。住宅財形という制度をせっかくつくっておきましても、大蔵省さん、あなたの下、あるいは労働省のあなたの下の労働組合とあなたとの間に契約を結んでない。だから利用できないということをやっている。法律には、しなければならぬ、使用者側は努めなければならぬということを義務づけておるのです。それすらもやっていない。各省の組合とも案外結んでないのですよ。こういうようなことは実際おかしげな話だと思うので、去年指摘をいたしたのでありますが、まだこれが実行できていないというのは、私どもにははなはだ残念であります。この場逃れの答弁だけでは済まぬのですよ、大臣。あなたの下の専売局労働組合と当局とは結んでないのですよ。こういう点をひとつ直していただきたいと思います。  さらにもう一つ申し上げますと、銀行は、インフレのときであろうとデフレのときであろうと、やすりのように両面もうけるのです、国民のふところからこすり上げていくんです。所得番付を見ましても、銀行は全部上位におるじゃありませんか、いつの場合でも。しかも、銀行がこのような子会社をつくって金融専門会社をつくるのは、あなたのおっしゃった理由、住宅金融会社をつくらなければならない理由というのは、これは少なくとも都市銀行については通用しない議論なんです。証券会社であるとかあるいは信託銀行でありましたら、あなたのおっしゃる意味はわかります。都市銀行には通用しない議論、しかも、その都市銀行が四〇%あるいはまた三〇%資本投下をやって子会社をつくっておって、これでもうけて、金利一一・八八%というんですから、元金の三倍近く、金利だけで二倍以上をともかくむしり上げるというんですから、あこぎな商売だと思いませんか。少なくとも都市銀行並みに、この金利を九%前後に引き下げる努力をひとつしていただきたい。この社長によりますと、できませんということを書いてありますけれども、もうそんなこと言うんでありましたら、政策的に介入するのはお断りなんという生意気なこと書いてありますから、この点はもう一つお読みになって、住宅金融会社に対する対策を講じていただきたい、このことを強く要求いたしまして終わります。
  197. 坪川信三

    坪川委員長 次に、上原康助君。
  198. 上原康助

    ○上原委員 せんだって私が指摘をしたことに対して、政府はお調べになって御報告をするということでしたので、その御報告を承りたいと思います。
  199. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 去る二月十六日の上原委員の御質問でございますが、三点あったと思います。  第一点は、昨年の十二月二十一日付のワシントン・ポスト紙の掲載の記事でございますが、この点につきましてアメリカ側に問い合わせましたところ、このワシントン・ポスト紙に記載された記事については、米国政府としては、この記事に言及されているような勧告もしくは検討がなされた事実は承知していないという返答があった次第であります。  残りの二つの点につきましては、事務当局から御説明いたします。
  200. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 残りの二点について在京米大使館を通じましてアメリカ側に照会いたしましたところ、アメリカ側から次のような回答がございました。  一つは、一九七六年版の沖繩にあります米軍の電話帳に記載されているNBCセクションということでございますが、これにつきましては、アメリカの海兵隊の中に、NBC兵器すなわち核、生物、化学兵器による攻撃に効果的に対処するための防護措置を担当し、その教育及び訓練を実施する要員が存在しているが、これらの要員の任務は、核や生物、化学兵器を取り扱うものではない。なお、第三海兵師団内でこういう任務を担当している要員の数は二十二名である、こういう回答がございました。  第三の御照会のありました点でございますが、沖繩にありますキャンプ・ハンセンの中にある建物番号二四八五につきましては、この建物は、武器の取り扱い訓練を実施する施設であって、武器は貯蔵されていない、こういうふうに回答してまいっております。
  201. 上原康助

    ○上原委員 いまお聞きのとおりきわめて不満足な御回答ではありますが、やはり第三海兵師団の中に核、化学、生物兵器を取り扱う担当者がいるということははっきりしたわけですね。  そこで、私が指摘をしたのは一九七六年版の電話ブックに出ているわけです。いまの御回答は七四年というお答えでしたが、その点、もう一度念を押しておきたいと思うのです。
  202. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 私が申し上げましたのは一九七六年版の電話帳でございます。
  203. 上原康助

    ○上原委員 時間がありませんので、これと関連をしてお尋ねをしました、いわゆる建物番号二四八五、これはどういう作業をやっているのか、もう少し明らかにしていただきたいと思います。  同時に、外務大臣がお答えをしました、いわゆる昨年十二月二十一日のワシントン・ポストの記事ですが、確かにまあ米国政府としてはこのことに対しては言及してない、あるいはそういう勧告を受けていないというふうにおっしゃるかもしれませんが、この英文を見てみますと、「ユナイテッドステーツ・ハング・オン・ツー・イッツ・ニュークリア・ベーシス・イン・オキナワ」、いわゆる沖繩にある核基地について固守しなさい、死守しなさいというような表現のことなんですね。きわめて強い調子の勧告をしたいということを言っている。これとの関連において、せんだっても指摘をいたしましたが、私は、韓国からの地上軍の撤退あるいはその他の米軍の撤退とあわせて、沖繩基地なり、あるいは横須賀、岩国を含めて、安保体制下における事前協議の問題とか、あるいはその他の作戦行動展開の問題にいたしましても、実質的に空洞化されてきている、このことを裏づけていると思うのですね。沖繩国会以来このことについてはかなり議論をしてまいりましたが、ようやく公式に核、生物、化学兵器を取り扱う部隊が第三海兵隊に存在をしているということはお認めになった。いわゆるそういう対処措置をやる、防護措置をやるということは、有事の際には核や生物、化学兵器も取り扱うという前提で訓練をするわけでしょう、軍隊は。一体、この関連性については政府はどういう御所見を持っておられるか。どのように対処していかれようとするのか。私は、きわめて納得のいかない御回答でしかない、この点を指摘しつつ、いまの点に対してお答えをいただきたいと思います。
  204. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 沖繩の基地に核兵器は存在しないということは、沖繩返還時の経過、そのときの約束からして、政府としては、明らかに、ないということを信じておる次第でございます。  ただいまのNBCセクションのお話でありますが、アメリカのそこにおる人々は、私の聞いたところでは、これはいろいろ指導的な任務を持った人であって、軍隊というところはしょっちゅう訓練をするところでありますから、そのようなことにつきましてもいろいろな訓練はあろうかと思います。しかし、現実に核があるということは、私どもは全くそのようなことは信じられないことでございます。
  205. 上原康助

    ○上原委員 それは、まあ外務大臣は信じられないにしても、疑惑は深まるばかりなんですね。私は、このことにつきましては、委員長、いまの御回答では納得いきません。  さらに担当者は二名だというようなお答えでしたが、セクションということは、少なくとも班ないしは課、部ですよ。(「二十二名」と呼ぶ者あり)二十二名。これだけの、二十二名の担当者がいるということも初めて明らかになった。これだけおれば明らかに核兵器を貯蔵し得る基地であるということは理解できますか。そういうふうに見ておりますか。
  206. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私ではちょっと判断の能力がございませんので……。
  207. 上原康助

    ○上原委員 これは総理にもぜひ聞いていただきたいのですが、私は、もちろん現在の国際情勢なり戦略体制からして、戦略核については沖繩に貯蔵されていないと思うのです。しかし、戦術核についてはきわめてまだ疑わしい。その証拠に、改めてここでもう一度いろいろなことを指摘いたしますが、核だけでなくして、まだ毒ガスも貯蔵されているんじゃないかという懸念を私たちは持っております。それはなぜかといいますと、依然として弾薬にこういうラベルを使っているということですね。これは漫画が書いてあるのじゃないのですよ。これは一つの明らかにポイズン、核か毒ガスを表示するラベルなんですね。これは海兵隊と陸軍関係で使われております。こういうマークですね。さらに、空軍においてはやはり放射性物質の取り扱い、こういうものが依然として使われているということ。私はこの間も、これまで出そうかと思ったのですが、まだ私の方の調査も幾分追及すべき面がありましたので、この件との関連においてきわめてそういう疑いが強いということ、したがって皆さんが口約束だけで軍事基地というものは律することができないということを私は証明できていると思う。あるいは、こういうラベルが依然として使われているということ、これはもうやはり毒ガスか生物兵器と関係あるものだと私は見ている。  さらにもう一点、明日との関係も出てくるかと思うのですが、これは物的証拠をもう少しこのように挙げたかったのですが、大変厳しいところですので、残念ながらそこまでいきません。しかし、私が弾薬庫番号を明らかにいたしますので、調査してもらいたいのですが、やはり二重金網をされた弾薬倉庫、いわゆる貯蔵庫ですね、それの周囲にヤギが現在放牧されているという事実が明らかになっているのですね。十匹ないし十数匹のヤギが依然として放牧されている。これはやはり生物化学兵器か、きわめて人畜に被害があるか、いろいろな危険性のある物を貯蔵しているからそういうことになっていると思うのです。これもぜひお調べになっていただきたいのですが、弾薬庫番号四〇六一、四〇六二。これはそのほかにもありますが、残念ながら全体は確認できません。きわめて厳重なところであるということ。私が前から指摘しましたように、空軍のいわゆる四〇〇弾薬部隊と背中合わせに、最近できた弾薬倉庫であるかあるいは従前からあったかどうか、その地域にヤギが放牧されているという事実がまた明らかになっている。こういうことが次から次と、沖繩県民だけじゃなくしてわかる。そうしますと、やはり核兵器か生物、化学兵器が貯蔵されているということを疑わざるを得ないじゃありませんか。これに対して調査をして、明確な答弁を求めたい。
  208. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま御指摘の点につきましては、調査して御報告申し上げます。
  209. 上原康助

    ○上原委員 ぜひそうしていただきたいと思います。これだけで納得できません。  私がなぜ核問題なり基地問題を強く言うかといいますと、私は、せんだっても時間があれば、沖繩基地の問題、本土の関東計画を含めて御質問しようと思ったのです。よく口では、沖繩は基地の密度が非常に高いということをおっしゃっておりますが、時間がありませんから、私は、閣僚の皆さんにぜひここでごらんになっていただきたいのですが、返還後——返還された軍事基地というのは、この五カ年間でわずかにこれだけですよ、総理。沖繩の基地の整理、縮小計画を積極的に進めると亡くなられた元総理大臣佐藤さんもおっしゃった。しかし、わずかにこれだけですよ。こういうところで一体地方自治とか振興開発計画ができますか。こういう状態なんです。これは与党の先生方も見てくださいよ。しかも、きょうは時間がありませんから、委員長、あと一言だけ勘弁願いたいですが、日本全体の軍事基地を比較してみた場合に、どうなっていますか。よく数字の上で、沖繩に全体の五三%の基地があるということを言われておりますが、実際に図面に書くとこういう状態なんです。五億二百九万二千平米のうちに沖繩に何と二億六千六百万平米以上ある。全体の五三%。こういう状態で、失業問題はどうなっていますか。振興開発計画、十カ年計画は、総務長官、開発庁長官、本当にいま台なしでしょう。海洋博だって、何ら沖繩の県民生活につながる基盤整備とかあるいは振興開発につながらなかった。挙げて諸悪の根源は軍事基地の存在であるというのは、これが証明をしておるのですよ。ですから、このことについては後ほど議論いたしますが、もう少し基地の問題にしても、核の問題にしても、あるいはきょう指摘をしました問題等については、誠意を持って、政府は日米安保体制下における基地の機能や性格がどう変質しているかということについて十分御検討いただいて、改めて三月に行われる日米交渉、そして在韓米軍の撤退問題との関係においてやるという総理の決意のほどを承っておきたいと思うのです。
  210. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 沖繩の基地が沖繩の発展に大変な支障があるということはよく承知しております。しかし、これはなかなかむずかしいいろいろな問題がありますので、そう簡単にもまいりませんが、鋭意努力いたします。
  211. 坪川信三

    坪川委員長 次に、安宅常彦君。
  212. 安宅常彦

    ○安宅委員 新韓碍子の問題に関して、輸出申請書に承認を与えた書類一式、これを出せ、それから頭金の問題について、日商岩井との貸借関係、輸銀との関係についてその内容、これを公表しろ、こういうことについてできないという話でしたが、その後、統一見解はどうなったか、発表してください。
  213. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたします。  日本輸出入銀行及び海外経済協力基金に提出を求められている資料は、いずれも両機関が融資に関連して知り得た企業の秘密に属するものと考えられるので、提出ができないことでございます。
  214. 安宅常彦

    ○安宅委員 よくまあぬけぬけとそんな統一見解を持ってきたものですね。ちょうどさっきまで——ソウルの地下鉄の価格をわが党の松浦君に別室で見せて、それが問題になって、価格がわかったのでしょう。見せているじゃありませんか。  それからこれは、輸出承認をしたのは通産省でございますけれども、企画庁がその基金の監督をやっているわけですね。だからあなた答えたのでしょうか。それは質問に答えなくてもいい、わかっているから。  それでは、輸銀の総裁来ていますか。輸銀の総裁は、この前私が指摘したような場合における議事録を詳細に見ましたか。予算委員会の荒舩委員長がこう言ったじゃないかという部分
  215. 澄田智

    ○澄田説明員 五十年六月の衆議院予算委員会でございますが、議事録は拝見いたしました。
  216. 安宅常彦

    ○安宅委員 その議事録によれば、ここにある、あるとあなたが言うから、だけれども、私は時間の関係で、後でいい、いま出さぬでもいい、こう言ったら、委員長が後でいいですか安宅君と、こう言って、後でいいですよ——ここは議事録に載っていないようですけれども、とにかく後でいいそうです、後で出しなさいということになっているのですね。そうですね。あなたはなぜ出さなかったのですか。
  217. 澄田智

    ○澄田説明員 あのときにお話のありました前受け金の入金を証明いたします輸出貨物代金前受け証明書の写しでございますが、私はあのときに、「委員長、ここにございます。」ということを申し上げました。これは確かにそういう写しがあるということを申し上げるつもりでそう申したのでございますが、適切な発言ではなかったと思っております。  それから、委員長から出すようにという言葉がございましたが、提出をいたさなかったわけでございますけれども、その理由は、輸出入銀行は金融機関として借入人から書類を出してもらう、これは信頼関係に基づいて審査を行うために出してもらっているものでございますので、これは出すべきでない、外部に出すことを差し控えるべきものであると存じましたので、出さなかったわけでございますが、あの折にすぐそのことを申し上げないで、機を失しました点につきましては、おわびを申し上げる次第でございます。
  218. 安宅常彦

    ○安宅委員 ここにあります、ありますと言ったのが適切でないので、委員長の命令には従わなかったという意味ですね。
  219. 澄田智

    ○澄田説明員 委員長のそのときの御命令に対して、その後これを提出いたさなかったことにつきましては、理由は先ほど申し上げた理由でございますけれども、そのことについてあの席ですぐ提出することができないということを私が申すべきでありましたが、それを申さなかったことにつきましてはおわびを申し上げる次第でございます。
  220. 安宅常彦

    ○安宅委員 委員長、よく聞いてください。ここに書類がありますと何回も手を挙げてやっているのですよね。それは見せないつもりでやったのか、あります、ありますとちらつかせてこうしたのかと私この間言ったでしょう。それを今度は、委員長が正式に、後でいいそうですから後で出しなさい、議事録ではこういう発言になっているのですよ。それに従わないのはあたりまえで、前のあります、ありますというのは正しくなかったなどという答弁では院の権威が損なわれます。こういうばかみたいな態度をとって平然と予算委員会答弁するその感覚が問題。心構えが問題。そして大来さんはすでに見せている。どんどん出しているでしょう。通産大臣、あなたもそうです。さっき共産党の工藤さんの質問に答えて、バーミューダにある海外のペーパーカンパニーですね、ブルネイ政府が不満を表明したので、近くコールドガストレーディングバーミューダからブルネイに移すことになっておりましてと問わず語りにちゃんと発表しているのですよ。こういうこともあんた企業の秘密だと言って出さなかったのです。それから今度は出光石油のことで私がいろいろ質問した際、バーミューダ島にあるアポロインターナショナル、それから富士石油の場合のリソーセス、それからもう一つはグレートヒルという企業について発表できない、発表できない、そういうことは知らないと言っていながら、ついに通産省は私に対して資料を出しているのです。こういうのはすでに慣行として崩れているのであります。非常に官僚的だと思いませんか。  総理、私はきょうこういうものを持ってきました。「海外進出企業総覧」、これは週刊東洋経済が出しているものです。膨大な海外のペーパーカンパニー、全部書いてありますね。その中には、ジャパンラインなんというのは心臓強くて、これはLNG関係しておりますけれども、目的はどういうことが書いてありますかというと、税金免除のためだと書いてあります。堂々と書いていますよ。みんなそうです。アラビア石油にしてもみんなそうです。税金優遇。全部後で調べてください。こういうように自分の方で、企業が発表しているものさえも、官庁としてはわかっておっても発表できません、こういう言い方なんですね。そんなことをやっているから、経済援助というものがどういうことになるかということを国会で論議をすることができない状態にみずからあなた方はしているのですね。けしからぬじゃありませんか。  そんな統一見解は了承することができないです。もう少し考えてみなさいよ。総理、どう思いますか。企業が堂々とみずから発表しているものさえも発表できないとがんばっているのですからね。今度は、富士石油の場合なんか、リソーセス、グレートヒルなんというのはここに書いてないのだ。書いてないのを私に資料を出しているのですよ、そういう企業を持っていることについて。その内容はどうか。リソーセスというのは富士石油のものではなくて、アラビア石油の仕事をしているのです、ですからそういうペーパーカンパニーの役割りはしておりませんはずです、こんなことまで、企業の内容まで通産省は出しているのですよ。よござんすね。そうしておいて企業の秘密でありますから出せません。輸出承認書の中には、ソウルの地下鉄と同じように、全部機械代金明細書が書いてあるのです。それを片一方では見せておいて、片一方では見せない。統一見解だ。それは理屈が成り立つと思いますか。総理、どうですか。
  221. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 政府が会社のことをいろいろ知っている、その知っている中で全部これを政府が触れてはならぬ、こういうことはないと私は思うのです。やはりものによる、ケース・バイ・ケースだと思うのです。企業のこれは本当の機密に関する事項である、知り得ている材料といえども漏らすべからざるものである、こういうことを政府が漏らすことはできないんじゃないか、そういうふうに思います。
  222. 安宅常彦

    ○安宅委員 じゃあ統一見解はおかしいですね。総理がケース・バイ・ケースだと言い、あなたの方は企業の秘密でありますから出せませんと言う。政府統一見解というのは総理は盲判を押したのですか。知らなかったのじゃないですかね。どっちでございます。これは。はっきりしましょうや。だめです、これは。
  223. 倉成正

    ○倉成国務大臣 先ほど統一見解を申し述べましたので、私からお答えしたいと思います。  統一見解として申し上げましたのは、日本輸出入銀行及び海外経済協力基金に提出を求められている資料は、いずれも両機関が融資に関連して知り得た企業の秘密に属するものと考えられるので、提出できない、こういう答えでございます。
  224. 安宅常彦

    ○安宅委員 それでは、私が例示いたしました——何もほかの党のことまで言うことはないですけれども、目の前でせっかく出ましたから、こういうコールドガストレーディングという会社の内容、それから企業が移動する内容、そういうことまで通産大臣はけろっとして言いましたね。それからバーミューダのアポロインターナショナル、リソーセスあるいはグレートヒル、こういうものを言いましたね。それは例示しましたね。ところが、そういうものは出せない、出せない、出せない、企業の秘密だと言ったのを、こちらから例示をされてやむを得ず言った。ただこれだけなんですよね。だから、ケース・バイ・ケースとは何かということを含めて——この特定した輸出の承認書、これは出せないと言う。頭金の問題はあなた方触れてないけれども、それはそれとして、広範なものに広げたいと私は思うのです、ケース・バイ・ケースだとおっしゃるならば。そういう企業の秘密——輸出代金を知りたいから、ちょうどソウルの地下鉄のように何ぼで売ったか知りたいから、だからそれを出せと言っているんでしょう。それをソウルの地下鉄の分は出しておいて、出せない。こんな統一見解はない。理屈に合わない。わかるでしょう。総理、わかりますね。わからないですか。それから、たとえば頭金の問題で言うならば、弁護士法第二十三条の二に基づく報告御依頼の件、弁護士が外為銀行各社あてに照会を出している。そうすると、ちゃんと報告々していますね。こういうものは取り扱っていないとかいるとか、そういうことはやっておって、国会にそういうものを出せないという理屈はない。したがって、先ほどのような統一見解は理屈に合わない。出せないと言いながら、片一方では出しておる。そして澄田さんのように、失礼だけれども、予算委員長の命令に従わないことについて当然だという態度をとる。こんなばかな話はない。したがって、先ほどのような統一見解は認めることができない。  委員長、あなたどういうふうに処理するつもりか。はっきり総理から聞くなり打ち合わせなりしてください。何ぼ言ったって、理屈に合わない統一見解を出しているんだもの、だめじゃないか。
  225. 倉成正

    ○倉成国務大臣 安宅委員が引用なさいました四十八年九月二十日の衆議院決算委員会の件でございますけれども、先般の委員会でもお答えしたわけでございますが、松浦委員要求に基づき委員長から資料提出の指示がありましたけれども、提出はできないということで、提出はいたしておりません。ただ、別室において同議員の求めに応じて契約書の存在を示し、同議員の指摘された点について該当する個所を説明し、確認を受けたというのが事実関係と聞いております。したがって、公表したものではございません。これは異例のことと思っております。
  226. 安宅常彦

    ○安宅委員 そういうばかな答弁をすると、だんだんぼろが出てくるだけよね。そんなら自民党さん得意の巻で、都内某所で安宅常彦にこそっと見せていただけますか。冗談じゃないですよ。どうですか、異例なことで私に見せていただけますか、新韓碍子の機械代金の入っている承認書を。差別じゃないか。おかしいじゃないか。松浦君はいい子だから見せて、安宅というのは暴れ者だから見せないという意味ですか。冗談じゃないよ。理屈に合わないのは政府だよ。冗談じゃないよ、そんなもの。はっきりしてください。統一見解だと思いますか、それ。
  227. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  これはもう全く異例のことで、先例とすべきものではないと心得ております。
  228. 安宅常彦

    ○安宅委員 もうばかみたいな答弁をするね。それは私は納得できませんが、たった一つ最後に、あなたの処置を期待しているのだけれども、それでは澄田輸出入銀行総裁が予算委員長の指示に従わなかったことについて、あなた、経済企画庁長官としてどう思います。国会を軽視をしたことに澄田さんはなりませんか、なるのですか、どっちですか、あなたの見解をお聞きしたい。
  229. 倉成正

    ○倉成国務大臣 私から所見を申すのが適当であるかどうかわかりませんが、これは公務員の守秘義務と国政調査権とのいわば調和、接点の問題でございまして、委員長の御指示というのは、国政調査権の立場からの御発言と思うわけでございます。ですから、これに対して政府側が、公務員の守秘義務をもってこれは出すべきでないと判断した、そういうことではなかろうかと思うわけでありまして、これは一概に軽視したとは考えられません。
  230. 安宅常彦

    ○安宅委員 たとえば、あなたに今度は質問するよ。あなたが荒舩さんと同じ立場でそこに座ったとしますね。澄田さんに、後でいいと言うから後で出しなさいとあなたが命令したのですよ。出さなかったときは、委員長、軽視されたとは思いませんか。予算の委員長であります。どうです。
  231. 坪川信三

    坪川委員長 安宅君に申し上げます。  五十年の六月十日に、本予算委員会において、澄田総裁並びに時の予算委員長である荒舩委員長からの御発言も、速記録を拝見いたしまして十分知悉いたしております。したがいまして、私といたしましては、あなたの御指摘になりました点も理解するにはやぶさかでもございません。そうでございますから、お聞き取り願いたいと思います。この問題に関しましては、与党野党を含めましての理事会で十分さらに協議を続けたいと思いますから、御理解願いたいと思います。
  232. 安宅常彦

    ○安宅委員 念を押しますが、あなたは何でも理事会でございますが、予算委員長としてそういう指示をしたことについて、資料を出しなさいと言ったことについて、出さなかったということは、予算委員長の権威が失墜したことになり、国会が軽視された、本委員会が軽視された、たかがなんて言っては悪いけれども輸銀の総裁あたりに、そういうふうにあなたは思いませんかと聞いているのです。
  233. 坪川信三

    坪川委員長 お答えいたします。  それでございますから、私は理解するにやぶさかではございません。しかし、大事な問題点でもございますので、理事会において協議をしたい、こう思います。  さらにつけ加えますが、私は、責任逃れじゃございませんよ、荒舩委員長が述べられたことにつきまして軽々に私の所信を申し上げるということは差し控えたいと思いますから、御理解願いたいと思います。
  234. 安宅常彦

    ○安宅委員 それでは、予算委員長がかわったら予算委員会の性格が変わるのか。冗談じゃないよ。何を言っているんだ。荒舩さんは知らないけれどもおれだったらそんなことはしないみたいなことを言ったってしようがないよ。そんなばかなことがあるか。納得できない。
  235. 坪川信三

    坪川委員長 お答えいたします。  本問題につきましては、非常に重要な問題でもありますし、さらにわれわれ理事会において十分煮詰めた上において御期待に沿うよう努力することも含めまして、御理解願いたいと思います。
  236. 安宅常彦

    ○安宅委員 さすが強硬な安宅も、楢崎さんの話によりまして、また、あなたが顔色を変えて真摯な目つきになったことを了としまして、あなたの努力を信頼いたします。  それで、ただ理事会を開くでは困る。したがって、両総裁からそのときの事情をすべて調べてやれるような理事会にしてもらわなければならない。これを条件にして、私はあなたの措置について、あなたを信頼しながら質問を終わりたいと思います。
  237. 坪川信三

    坪川委員長 承知いたしました。努力いたします。  次に、楢崎弥之助君。
  238. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ハワイ会談の内容について回答を求めておりましたが、政府側の御回答をお願いします。
  239. 園田直

    ○園田国務大臣 先般の御質疑の際、ハワイ会談について、当時の外務大臣大平正芳氏及び大使の牛場君について照会せよということでございました。  大平正芳氏については、直接私がお会いをして照会をいたしましたところ、ハワイにおいて私が出席した日米会談では、公式にも非公式にも、航空機の機種の問題は議題にも話題にもならなかった、そこでああいう趣旨の答弁委員会でした、こういうことでございますから、御報告をいたします。  牛場君については外務大臣から。
  240. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 牛場元駐米大使につきまして、私自身直接お会いいたしまして状況を聞いたのでございます。その結果、八月三十一日の田中・ニクソン二者会談を含め、牛場大使が出席した田中元総理とニクソン元大統領のハワイにおける会談におきまして、米側より、日本が導入する飛行機はロッキード社のトライスターにしてもらうとありがたいといったような話は一切出なかったということであります。  またさらに、ハワイ滞在中にトライスターという名前、あるいはもちろんロッキード社の名前も聞いたことがないかという問いに対しまして、そのようなことは一切聞いたことがないというのが牛場大使のお答えでありまして、私はそのとおり信じております。
  241. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 検察側の冒頭陳述におきまして、前回私が指摘したとおり、ハワイ会談においてニクソンから頼まれたということを田中被告が若狭氏なりあるいは小佐野氏に言っておるということが、冒陳にそのまま載っているのですね。ところが、田中被告は否定している。牛場氏も否定している。そうすると、そういうことはどうでもいいんだと検察は果たして見過ごしていいのかどうかというのが問題になる。まさに昨日も第二回の公判において、人の言ったこと、すなわち関係人の供述を裏もとらずに冒陳の中で言うということはいかがなものであろうかという反撃が出ておりましたね、裁判官は取り上げませんでしたけれども。検察の態度がそうであれば、そういうことを言うすきを私は与えると思うのですよ。ちょっと無責任ではないかと私は思うのですが、法務大臣どうでしょうか。
  242. 福田一

    福田(一)国務大臣 冒陳においてそういうことが出て、いまお話があったように、何かハワイにおいてそういうようなことがあってこの全日空あるいはその他に対して働きかけた、こういう冒陳があることは私も見ておりますから承知をいたしております。しかし私は、そういうことを言うべき筋ではないと思いますけれども、検察が最も重きを置いておる点は、田中前総理がそのようなことをだれから頼まれたか頼まれないかは別にしても、とにかくそういうことを言って、そうしてトライスターを買うようにという動きをしたというところに重点を置いて取り調べをしておったんだと私は承知をいたしております。しかしこのことは、私、実を言うと余りあなたほど専門家じゃございませんから、もしこのことをはっきりするには刑事局長か何か呼んでおきませんといけませんので、実はきょう呼んでありませんが、私から御答弁できる範囲はこの程度と御承知を願いたい。
  243. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、関係人の供述調書がうそなのか、田中被告がうそを言っているのか、牛場氏がうそを言っているのか、どこかにうそがあるはずですね。そうでしょう。そうじゃありませんか、冒陳にわざわざ検察側が述べておるのですから。では、だれがうそをついておるかについて解明をされますか。
  244. 福田一

    福田(一)国務大臣 これはいま裁判が続行中でございまして、検察と被告との間においてこの事実の立証問題というのが裁判所において行われるのだと思っております。したがって、その段階においてその事実が明らかにされるものである、かように私は信じております。
  245. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、いまの法務大臣の御答弁では、だれかがうそを言っておるのは事実ですから、だれがうそを言っているかも解明される、そのように理解しておってよろしゅうございますね。
  246. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、その両者の意見を聞いて裁判長がどう判断するかという問題だと思っております。
  247. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういうところを解明しないで——これは実は後で申し上げますけれども、非常に重要な部分ですから解明されるでありましょう。  そこで、牛場氏が外務大臣に報告したことの中にはうそがある、私はそういう確証を持っております。牛場氏がうそを言っておるというその有力な確証を私は持っております。  そこで、その問題の四十七年八月三十一日午後一時から田中・ニクソン首脳会談が行われ、牛場氏がそこに出、アメリカ側はキッシンジャー氏が出た、それは何時まで行われましたか。
  248. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 アメリカ局長からお答えさせたいと思います。
  249. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 私が持っております記録によりますれば、八月三十一日の午後一時から午後三時まで行われております。
  250. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはそうでしょう。午後三時から今度は第一回の合同会議が開かれ、そこに牛場氏は出ております。もちろん田中・ニクソン両首脳も出ておる。しかし、一時から三時まできっちり行われたかどうかについて自信がありますか。つまり、そのプライベートミーティングが、第一回合同会議が開かれる直前まで行われたと、いまの報告ではそうですか、もう一度確かめますが、確信がありますか。
  251. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 私が持っております記録によりますれば、午後の一時から午後の三時まで総理・大統領会談が行われまして、その後第一回の合同会談は午後三時五分から四時まで行われております。
  252. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは場所が違うから、同じホテルの中でも部屋が違いますから、それだけ移動しなくてはなりませんからそのくらいのあれはあるかもしれません。これはまたちょっとおいておきます。  それで、私は、やはり牛場氏にうそがある、確かにハワイ会談においてニクソン氏は田中被告にトライスターを頼んだ、こっちの方が事実だと思います。もしトライスターを頼んだとすれば、問題は、トライスターの方はたかだか一機六十億、二十機買っても千二百億、一方の問題のP3Cオライオンの方は一兆円の商売ですよ。しかも日米防衛分担の日本側が受け持つべき対潜作戦の有力な武器になる、兵器になる。トライスターが出てP3Cオライオンが出ないはずはないのです。PXLの問題は、御承知のとおり糸口がつかめずにおる。ハワイ会談の真相を確かめればPXL解明の糸口になる。重要な糸口になります。もともとこういう重要な会談の内容を検察当局が素通りしておることに私は重大な疑問を感ずる。勘ぐれば、いわゆるPXL隠しになっておるのではないか、だからハワイ会談の内容を詰めないのではないか。これは重要な会談ですよ。そこで、検察は、このハワイ会談の内容は公判維持に関係がないからどうしても調べる必要はないと思っておられるか、もう一遍確認をしたいと思います。
  253. 福田一

    福田(一)国務大臣 先ほどのお話はトライスターの問題についてお話があったのでありまして、いまのお話はPXLの問題ということでございます。PXLの問題について検察がどのように見ておったかということは、私はいままだ聞いておりません。したがって、後刻調査をいたした上でお答えをいたしたいと思います。
  254. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 また問題を一つ残されましたが、結構でしょう。  そこで私は、いま国会において解明すべき残された問題がずいぶんあるが、そのうちの大きな柱はPXLの問題、総理もそのとおりだと思われると思います。このPXL解明の糸口になるこのハワイ会談について内容を明らかにするということは国会の重要な任務である。この前確認したとおりであります。  そこで私は牛場氏を証人としてぜひ当委員会に御喚問をいただきたい。つまり、この問題の重要なポイントを握っておる、あの四十七年八月三十一日午後一時から行われたハワイ会談のプライベートミーティングに出ておるのは、当事者をのければ日本人としては牛場氏でありますから、重要なかぎを握っておる。ぜひ証人として喚問されることを要求をいたします。どうでしょうか。
  255. 坪川信三

    坪川委員長 ただいまの御要望の件、再度にわたる御要望でもございますので、理事会においてそれぞれ協議します。
  256. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 法務大臣にお伺いしますが、私が申し上げたとおり、このハワイ会談の内容の重要なポイントを握っているのは牛場さんです。この牛場氏に対して事情聴取を検察の責任においてやらせる気はございませんか。
  257. 福田一

    福田(一)国務大臣 先ほども私が申し上げたように、PXLの問題について検察がどのような考えを持っておるかということは、いま承知をいたしておりません。したがって、それについてお答えすることはできませんが、せっかく御質問があったのでありますから、いますぐ調べてでもお答えをしたいと思います。
  258. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それではいますぐ調べられるそうですから、後ほどその御回答をいただきたい。いずれにいたしましても、どうしても検察当局が事情聴取あるいは強制捜査に入らないとするならば、牛場氏を偽証で告発すれば当然ハワイ会談の内応に触れざるを得ませんね。その点を確かめておきます。
  259. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、この偽証問題を取り扱うということは人権の問題に関係のある非常に重要なことでございますからして、こういう問題を取り扱うときには——私はあなたがそういうことをおやりになってそうして国会においてお決めになることにとやかく言うことはできないと思いますけれども、少なくとも慎重に取り扱っていただきたい。私たち検察はやはり人権を守るという非常に大きな責務があります。また議院も同じだと思うのです。悪いことがあれば、これを正すのは検察としては当然であります。その悪いことというのは、どういう事実があったかということが問題になるのでありまして、単なる想像とかあるいはそういうことが新聞に出たとかということだけでもって検察が動くということになったら、これはなかなか……。
  260. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちょっと待ってください。聞き捨てなりませんよ、いまの言葉は。私は言い伝えとか一いや違いますよ、あなたの言っていることは。
  261. 福田一

    福田(一)国務大臣 いや、ちょっと、あなたそれは後で言いなさいよ。私はいま答弁しておる。私が答弁しておる。——だからあなたがそういうようなことを調べるか調べないかとおっしゃるから、またそういうことをここで偽証というか、証人として呼んでそして告発したらこれを取り調べるかというお話があったから、だからそれはひとつ慎重にやっていただきたいということを私は申し上げた。
  262. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私がいま途中で立ち上がったのは、私はうわさや新聞によって指摘しておるのじゃないですよ。だめですよ、あなた。検察側の冒頭陳述に書いているのは一体だれですか。検察当局が冒陳の中で書いている。訂正してくださいよ。だめですよ、そんなこと言って。私はうわさや新聞でやっていない。冒陳を基礎にしてやっているのです。おたくの関係で書かしているのですから、そんなでたらめ言ってはだめですよ。
  263. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、冒陳で書いているのはトライスターの問題だと了解をしておる。PXLの問題ではないと思っております。
  264. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そんなへ理屈を言ってはいけませんよ。じゃトライスターの問題だったら訂正しますか。トライスターについてハワイ会談でニクソン氏から頼まれたと書いたのは一体だれですか。冗談じゃありませんよ。
  265. 福田一

    福田(一)国務大臣 何度申し上げても繰り返しになるかと思いますけれども、検察として考えておりましたことは、田中前総理がどのような働きかけを全日空その他の関係者にしたかということを言っておるのでありまして、冒陳においても、御案内のように、ハワイ会談においてそういう話をした、それで今度は、その後引き続きこういうような行為をした、こういうようには書いてないのでありまして、ここに稻葉前法務大臣もおられますが、その点は間違いないのです。私は何もあなたに何をしようと思って言っているのではない。
  266. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私もさっき声がやや荒くなりました。それはおわびをいたしますが、この問題を慎重に取り扱うということは当然でありまして、過去一年間予算委員会において慎重にこれを取り扱ってきた。そして国会で取り扱った、その結論については間違いがなかったという確信があります。しかも検察の方は、たとえば大久保氏の逮捕については、国会のあの偽証問題を手段としてと言うと言葉は適切かどうかわかりませんが、国会の審議が重要な踏み石になっている。だから、そういう点については大臣から言われるまでもなく、人権も考えながらわれわれは今日までやってきたし、これからもやります。しかし、この牛場氏の問題については、私は重大な疑惑がありますので、証人として喚問されんことを再度要求して、私の質問を終わります。
  267. 坪川信三

    坪川委員長 次に、小林進君。
  268. 小林進

    ○小林(進)委員 申し上げるまでもないことでございますが、予算委員会における総括質問が済んだ最後の積み残しの質問というのは、大体総括で出ましてまだ未解決の問題をその最後の一日で解決をいたしまして、後に仕事が残らないようにして明日からの一般質問に入ろう、こういうことで、あえてこういう予備日が一日設けられた。どうも先ほどからの質問を聞いておりますと、この積み残しの一日を持った理由が一つもない。理事会に諮ります、また一般質問に譲ります、後日に譲ります、これでは私どもがせっかく設けた積み残し処理の目的がやや逸脱しているのではないかと私は思います。これは委員長においても十分ひとつ御考慮をいただいて、問題は一般や後日に残さないように、この場で処置するように御努力をいただきたいと思うのであります。  そこで私は、私の積み残し質問の前に、委員長やあるいはその他の方々に要求している問題がありますので、まずそれから処理をしていきたいと思います。きょうは処理の日であります。  第一番目には、私はレイナード氏に対する照会をやっていただきたいということをお願いした。きのう参議院等において——米議会の秘密公聴会の議事録をこの委員会に提出を願いたいということとあわせて、レイナード氏は、この種の問題についてはもはや昨年中に日本政府に正式な回答をいたしておりますということも答えておるのであります。その資料をここへ出していただきたいということをお願いしておる。出てまいりません。これはどうも約束が違いますので一そうですか、待ってください、これは外務省に要求するものであった。ちょっと間違えました。これは外務省への要求ですが、ちょっと順序が狂いました。まず委員長に対する要求から申し上げます。  委員長に対しては、私は三つのことをお願いしてあるのです。  第一番目には、若狭全日空会長への質問書をひとつ当委員会委員長の名前において出していただきたい。この国会の予算委員会に二日も出頭せられて、ついに偽証の疑いで告発をせられて、この予算委員会に大変迷惑をかけた。国民にも大変迷惑をかけた。社会を動かした。民間の企業といえども社会的責任があるとすれば、そこにおのずから責任のとり方があるだろう。同じ民間企業でも丸紅と全日空じゃどうも世間を動かしたものの姿勢としては少し差があり過ぎる。これはどういうことなのかということを私は問い合わせていただきたいということを委員長にお願いをいたしました。回答を得ておりません。これが一つであります。  第二番目には、駐米のジャーナリスト、文明子さんを、本人も求められればと言っておられるのでありまするから、この衆議院の予算委員会にお招きをいたしまして、金大中事件等KCIAの活動その他についてひとつ意見を求める、そういう処置をお願いいたしたいということをお願いいたしておりました。これも回答をいただいておりません。  第三番目では、これは昨年——一昨年でありまするか、荒舩委員長のときにいみじくも一つの道を開いていただいた。荒舩委員長は衆議院安全保障問題等調査議員団というものを編成されて、核の問題についてアメリカの国会議員と密度の深い会議を重ねて、非常に成果を上げております。その報告資料もちゃんとここにあります。この前例にならって、今次予算委員会においては一番問題になっておる日韓問題、日韓癒着の問題等調査をするこの委員会調査団というものを編成されて、アメリカの議会人その他アメリカに滞在をいたしておりまする関係の有力な元権力者等とお話をして、予算委員会みずからの責任においてこの問題の真相の追及に当たられたらいかがでございましょう。これに対しては、委員長は、前向きの形で十分ひとつ考慮して理事会に諮りますという御回答がありました。しかし、まだこれも回答をいただいておりません。  まず、以上三つの問題を承って、次の質問に入りたいと思うのでございます。
  269. 坪川信三

    坪川委員長 お答えいたします。  非常に重要な問題点に触れられての御要望を十分承っております。決して故意に放置しておるようなわけでもございません。長年理事会で御協力いただいた小林委員としては、一般、総括質問その他の問題で重要な——これが重要でないというわけではございません。重要な問題を理事会において与野党の合意を得ながらこれに取り組んでまいったわけでございます。したがって、与野党の温かい御理解によって本日総括が終了いたします。おかげであすから一般質問に入るわけで……(「そうはいかぬ」「残した問題がたくさんある」と呼ぶ者あり)残した問題を協議することになっておりますので、私としては決して放置しておりません。片時も忘れてはおりません。したがって、これからの理事会でこの問題を十分協議したい、こう思っておりますので、御理解願いたいと思います。
  270. 小林進

    ○小林(進)委員 いまの御答弁は、私が総括で質問したときに委員長からいただいたお言葉と同じであります。あれは二月の七日、それから補正予算のときと同じでありまして、その御答弁に基づいて総括が終わったこの締めくくりにその結論を承るのがきょうの日だということを私は先ほどから繰り返して申し上げておるのであります。慎重に御審議をいただいて、与野党理事の理解のもとにお話しになったその結論をいまここで承りたい、こう言っておるのでございまするから、ひとつよろしくどうぞ……。
  271. 坪川信三

    坪川委員長 承知いたしました。先ほど申しましたように、非常に重要な問題でもありますので、あの当日受けた問題については片時も忘れずに何とか解決したいという、頭から離れていない重要な問題と思いますので、いよいよ一般質問の段階に入りまして、われわれといたしまして理事会にこれをかげながら協議していくということをお約束申し上げて御理解願いたいと思います。
  272. 小林進

    ○小林(進)委員 私も意地悪く何も委員長に絡んで問題の混乱を起こすのが目的ではないのでありまするけれども、繰り返して私が言いまするように、そういう予算の総括が二週間なり続けられている間に出てきた問題を、そのために毎日お昼には理事会が開かれているのでございましょう。こういう問題を諮るための理事会、そこでちゃんと理事会の結論が出て、総括の締めくくりのときに理事会の結論はこうなりましたと出るのが従来のしきたりでございましょうと私は申し上げているのであります。しかし、残念ながらそのしきたりに基づいていままでの委員長のお話では結論が出ていないようであります。私は一歩委員長のメイ答弁といいましょうか——そのメイは迷うでございますよ、迷いの答弁に一歩譲りまして、それじゃ一般質問が終わりますときまでにこの問題に対する明確な御答弁をいただく、もし一般質問が終わって、それから分科会等に入るときまででもまたいまのような御答弁の場合には、残念ながら私はそこでひとつ寝さしていただいて、次の分科会等の質疑に入ることを私は了承できない、この委員会は残念ながら回答が出るまでストップさしていただく、こういうお約束にいたしまして、そのときまで若干お待ちすることにいたしたいと思います。委員長もひとつそういう御決意で問題の処理に当たっていただきたいと思います。
  273. 坪川信三

    坪川委員長 十分承知しながら御期待に沿いたいと思います。
  274. 小林進

    ○小林(進)委員 恐れ入ります。  それでは次に、積み残しでありまするから私は外務省に。レイナードの問題に対する資料が出ておりません。本人は去年のうちに外務省に正式な資料をやったと言っておるのであります。私はその資料をちょうだいしたいと言っていることが一つ。  それから、きのうも問題になった米議会秘密公聴会の議事録も入手したものをいただきたいと言っておるが、これが来ておりませんのが一つ。  それからいま一つは、昭和四十八年九月の法眼次官とスナイダー国務次官補との会談の記録があるということを私は申し上げているが、これに対して外務省は、そういう記録はないという御答弁。これは私は外務省の方の答弁違いじゃないかと思うが、これはいま一度御調査を願いたい。  第四番目も、同じく四十八年九月二十日、高島当時のアジア局長でしたか条約局長でしたかの部屋にレイナードの訪問を受けた、ここまでは同じであります。けれども、これは儀礼的な訪問であって、金大中事件等に対する話がなかったと言われておる。これもわれわれの入手した情報とは違っております。これはいま一度ひとつ再調査をして、後からあれは間違ったなどという訂正をなさらないようにひとつお願いをいたしたいと思います。  それから五十一年の三月十七日のフレーザー委員会の秘密聴聞会の、これは記録はいただきました。いただきましたが、これはどうも英語そのままです。私がよほど英語の弱いのを御承知の上でこういうのをストレートにお出しになった。これは出されたって私には手も足も出ないのであります。やはり幾分の親切があれば、関係部分くらいはちゃんと日本語に訳して私は手渡しくださるのが常識だと思う。いんぎん無礼であります。あのやろうは英語は知らぬから、努めて分厚い英語の本でも出しておけばこれで物が言えぬだろうという底意地の悪いところが見えております。これはいま一回御考慮をいただきたいと思うのです。  それから第八番目に、私は、金相根という元駐米参事官がFBIにおいて行った日韓癒着の件の資料、これはわれわれの情報では、どうしても外務省には入っておる、入っているが外務省は入っているとおっしゃらない。これも私どもとは違いますので、いま一回ひとつ再調査をしていただきたい。  それから次に、元中央情報部長金炯旭氏のレポート、これは当然外務省はもうサウンドされておると思うのでありますが、その結果を私はお聞かせいただきたいということを申し上げておる。同じく元駐日公使金在権のこれもレポートであります。それから現西イリノイ大学の準教授の李在鉉氏の報告。この三人はみんなもとの韓国の重要な地位にいられた人でありますから、一民間人とか一市井の人などという言葉で表現できるような方ではございません。こういう方々が前歴を明らかにして、わが日本の根幹に関するような重要な発言をしておられるのでありますから、外務省としては当然タッチをされるなりサウンドをされて、そういう回答を得ていられると私は思うのでありますが、その回答をちょうだいいたしたいと言っておる。ないわけはありません。ないとすれば怠慢です。そういう怠慢な外務省は、いてもらっては困る。高給をはんでいて何もやらぬという結論になりますから、さっさとやめてもらわなければならぬと思いますが、そういうことでひとつこれをいただきたい。  以上であります。これは私の資料要求に対して、まだ資料が出ていないのでありますから、これはひとつ強く要望をいたしておきます。  なお、いま一つ資料要求といたしましては、これは警察庁、公安委員長でもよろしゅうございます。金大中事件に関する調査の中間報告をいただきたいということを私はぐどく申し上げました。しかも、どうもこの点については特に念を押して、昭和四十九年のこの予算委員会において前の山本警備局長が言われたときと、三年もたったいま、いまの警備局長がここで答弁せられておることは、答弁の内容がむしろ後退しているのじゃないか。誠心誠意調査をいたします、捜査をいたしております。二十三名の捜査員が努力をしておりますと言うけれども、四十九年のときより一歩も前進をしていない。おかしいじゃないか。そういうことも含めて中間の報告をいただきたいということをくどく申し上げました。まだ報告は出てまいりません。一体私がなめられているのか、この予算委員会がなめられているのか、委員長自供がなめられているのか。私は委員長の顔を見れば実にりっぱだと思うのでありますが、しかしあの荒舩——私は前任者を云々するのじゃありませんけれども、私ども予算委員の諸君がやったときには、前の委員長は非常に精魂を傾けて資料収集のために努力してまいりました。その努力に私どもは一委員として感激をいたしました経験がありますから、あえてその経験を申し上げるのであります。いまの委員長が何も努力されないというのではありませんけれども、ひとつそういう前任者の経験も生かして、こういうことはきちっとそういう報告書をそろえるように御努力いただきたいと思うのであります。いま締めくくりだというのに、私の調査資料がそのとおり出ておりませんから、いまざっと再要求を申し上げているわけであります。
  275. 坪川信三

    坪川委員長 関係大臣におかれましては、いま要望されました資料につき、責任を持ってお出し願いたいと思います。
  276. 小林進

    ○小林(進)委員 それじゃ、委員長の厳重な御要求がありましたから、今度は正しく出てくるということを期待いたしまして、私の積み残しの質問は公営競技に関する問題であります。  ところが、公営競技の問題に関して私がここで質問したことにつきまして、実に方々から意見が出てまいりました。公営競技のギャンブルの中央団体が競技の売上金を何%かの比率に基づいて地方公共団体、社会福祉その他に配賦する。配賦するのはいいが、一番悪いのは、そういう振興会あるいはその他の中央団体が公営の施設を持ってその施設から上がる金を私したり、あるいは競技に使う競艇その他、それを全部独占をいたしまして、そういう競技の材料、競艇等もほかの者には使わせない、そこで独占をした者にしか使わせないということで、またそういう売上金も私しておる。あるいはまたその公営の場所にいる売店あるいは出入りする商人、そういうものも全部独占をいたしまして、そういう売上金も全部個人の所得にしているというような形で、そういうことから上がってくる資産というものは実に重いものがある。はたから見ても実に不愉快千万だ、こういうところまでメスを入れなければ問題の処理にならないけれども、一体監督官庁はこういう問題をどのようにしているのか、こういう多くの投書がございますので、この問題についてひとつ関係官庁の大臣から御答弁いただきたいと思います。  それからいま一つは、私の質問予定の、公営ギャンブルの金は公金ではないか、しかもその金は中央競馬においては大蔵省の財政の中に入っている、地方だって地方財政の中に全部入っている、まさにこれは国の税金の補てんの役割りを演じているのであるから、税金その他を扱うと同じような形で扱うのが本当じゃないか、私はこういう金の扱いについて差別を設けられている理由がどこにあるのかということをお伺いをいたしたい、これが私の今日の質問の趣旨でございます。
  277. 小川平二

    ○小川国務大臣 お答えします。  公営競技は、第一に地方財政に寄与すること、同時に関連産業等の振興、こういう目的を持って地方公共団体が開催いたしておるわけであります。したがいまして、基本的には地方公共団体に帰属すべきものでございます。実際もそのようになっておるわけでございますが、もう一つの関連産業等の振興を図るという目的のために資金を供給するという仕事は、これは地方公共団体がやりますのには必ずしも適しておりません、効率的でございませんから。それぞれの法律で設置されました法人に、法律に基づき政府が監督をいたしまして、この仕事をゆだねておるわけであります。制度自体は、自治省として格別の意見はございません。それが、ただいま御指摘のあったような事実が出てきておるということについては、これはそれぞれの法律の主管官庁から御答弁申し上げることだと思います。
  278. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 中央競馬並びに地方競馬につきましては、競馬法に従いまして農林大臣が監督をし、また監査もいたしております。さらにまた、会計検査院等におきましても検査をいたしておるわけでございまして、小林委員指摘のような事実を私どもはいま承知いたしておりませんが、もしそういう事情がございますれば厳重にこれを監督してまいりたい、こう考えております。
  279. 田村元

    ○田村国務大臣 聞いてみると、十分計画、経理、監督指導しておるというので、不正はあり得ないということでありますが、いま小林さんのお話を承りますと、仮にそういうことがあったら大変なことで、公金というのも、公の監督に服するという意味においては明らかに公金でありますから、もし私するとか不正な問題があれば、これを許すべからざることであります。でありますから、十分調査をして、そういうことは絶対ないと思いますが、万一妙なことでもあれば、私は、小林さん以上に怒るつもりであります。
  280. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  わが方の関係でございますが、競輪の収益につきましては、自転車競技法に基づきまして競輪施行者、自転車競技会及び日本自転車振興会に配分されますが、これらの競輪施行者、自転車競技会及び日本自転車振興会に対しましては、同法に基づきまして、従来から監督指導を行ってまいっております。今後ともに、これらの監督指導につきましては万全を期して行う予定でございます。
  281. 小林進

    ○小林(進)委員 これでもう時間が来ましたから終わりますけれども、ともかくギャンブルの金が、中央競馬だけは国庫納付制度が採用せられている。ちゃんと税金と同じようにきちっと、それは国会の干渉も受けているし、予算の審議も受けているし、また会計検査院の検査も受けている。しかし、それ以外のギャンブルの金が、そういういわゆる中央競馬と同じような扱いを受けない理由は、一体どこにあるのだ。その流れ行く先は、やはり税金と同じように、いわゆる税金を補完し、国の財政や地方の財政を補っている点においては税金と同じ効力を発揮しているじゃないか。なぜこんな差別の扱いをしているのか、これを私は言っているのであります。その理由を聞いているのであります。それが悪いと言うのならば、直ちに改めるとおっしゃるならともかく、私は、この差別を設けられている理由がわからない。これが私の公金論争というのでございまして、この点どうですか、大蔵省。
  282. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  公営競技の売上金が地方自治団体からそれぞれの振興会へ一定の割合でもって交付せられておるという、それが公金か公金でないか、こういう御質問でございます。これは二十九年以来相当の歴史をもってやってきておるわけでございますが、それぞれの振興会というものは、これは……(小林(進)委員「振興会が悪いと言うのじゃない。悪いのもあると言っているのだ」と呼ぶ)法律によって実際監督が徹底的に行われておるかどうか、一応監督を受けて、そしてしかるべきその振興会の関係の事業の振興とかあるいは福祉関係といったようなものへ、公的性格のところへこの金が流れておるということを考えてみますと、一応はこれは公的な資金である。公金か公金でないか、公的な金として使途が公的に使われておるというような意味から申しますと、これは一応公に使われておるんだということが認められますけれども、御指摘のとおり、いろいろなことを私どもも聞かぬじゃございません。そういったようなことから考えてみますと、この金というものについては、歴史はございますけれども、各関係のいろいろなものもございますけれども、今後検討をしていくに値するものであろう、かように考えます。
  283. 小林進

    ○小林(進)委員 それなら、これで終わりましょう。
  284. 坪川信三

    坪川委員長 次に、大内啓伍君。
  285. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、去る二月十八日の当委員会における質問を通じまして、最近のカナダによるウラン供給の停止、あるいはカーター政権による新しく打ち出されるであろう新原子力政策というものが、今後のわが国原子力の平和利用にとって重大な問題をはらんでいることを明らかにいたしました。     〔委員長退席、田中(正)委員長代理着席〕 ただその際、この問題の処理の過程におきまして、十月の二十七、八日、これは昨年でありますが、フォード大統領によるアメリカの新原子力政策が発表される前段階におきまして、当時のアメリカのキッシンジャー国務長官がわが国の外務大臣に対して秘密書簡を出し、そしてこれに対してわが外務当局がどういう反応を示したかということについて、必ずしも詳細が明らかでありませんでした。その後、その後の経過につきまして事務当局から資料をちょうだいいたしましたが、鳩山外務大臣は、十月の十四日に当時の小坂外務大臣からキッシンジャー国務長官にあてて書簡を出した、こう当委員会においても言明されました。外務大臣が言明されたのですから恐らくそうだろうと思うのでございますが、ただ、やはり御留意いただきたいのは、この十月の二十八日にフォード声明が発表されたときの記者会見におきましては、アメリカの国務省当局者は、日本だけが公式の回答を寄せていない、こういうふうに述べたと伝えられまして、これを外電として伝えられた当時の毎日新聞は、日本だけが回答をよこしていないと大きく報道したのでございます。しかし、当時の毎日新聞はこれに対する政府の弁明をも取材いたしました。その際日本政府筋は、いや、そうじゃなくて、十月の七日に在日ERDA、つまりアメリカエネルギー研究開発庁のアタッシェを通じて口頭で米側に回答したんだ、そしてこの回答というのは、科学技術庁長官の命を受けて行ったものであるから、文書ではやっていないけれども口頭でやっているんだ、こういう弁明であったのでございます。したがって当時、外務大臣からそのような返書が出されたということは当時の政府筋からは何ら説明がないままに、そういう政府弁明が載った、こういう状態はまことに遺憾だと思うのです。  そこで、私は、過去の問題についてそう論争しようと思いませんけれども、この外務大臣の返書をアメリカに出すに当たっては、問題の重要性にかんがみまして、当然原子力委員会と相談されたと思いますが、されましたでしょうか。
  286. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 当時の事情をつまびらかにいたしませんので、政府委員から答弁させていただきます。
  287. 大川美雄

    ○大川政府委員 十月十四日の外務大臣のキッシンジャー長官に対する返書は、外務省として発出いたしました。
  288. 大内啓伍

    ○大内委員 私が聞いているのはそうじゃないですよ。原子力委員会に相談したかと聞いているのです。
  289. 大川美雄

    ○大川政府委員 原子力委員会とは特に相談せずに、外務省として発出したものでございます。
  290. 大内啓伍

    ○大内委員 アメリカの新政策の発表というのは、日本原子力平和利用に尽大な被害を与える重要問題なのでございます。そしてこの問題については、当然原子力委員会がタッチし、日本の外務省が少なくともキッシンジャー国務長官に返事を出そうというなら、原子力委員会と当然相談してよかったと思うのです。ですから、原子力委員会の、外務省から出ている前の駐米大使の新開氏も不満を述べております。したがって、こういうようなやり方でこういう重要問題が外交的に処理されるならば、やはり今後重要な問題を残すと思います。反省していただけますか。
  291. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまお述べになりましたこと、私ももう一度確かめてみたいと思います。もしそのようなことがありますとすれば、大変遺憾なことに思いますので、今後十分気をつけたいと思います。
  292. 大内啓伍

    ○大内委員 私どもの調査では、原子力委員会と何ら相談なしに外務省が電報文をもって返事をキッシンジャー国務長官に出しているにすぎないのでございます。こういう状態では日本原子力政策にとって非常に重要な問題だと思って指摘をしたわけなのであります。しかし、私があの段階で論じようといたしましたのは、わが国の安全保障の死活に関する重要問題に対するわが国の対応というものが、いま申し上げたとおり余りにも形式的かつおざなりであって、いまカナダからウラン供給の停止が起こっておりますように、わが国がこれによって窮地に追い込まれるという国益に関する問題なのでございます。  そこで、この問題につきまして、これから三月に行われる日米首脳会談において福田総理はわが国から積極的にこの問題を提起すると言明された。これは大変結構だと思うのでございます。しかし、これはよほど本腰を入れてかかりませんと、アメリカ側から簡単にあしらわれる可能性があると思います。すなわち、この首脳会談に臨むに当たって、福田総理は二つの点について日本としての提案を持つ必要があるように思われます。  その一つは、採算を無視してもプルトニウムを再処理によって抽出しようとする裏には、核兵器をつくる状態を確保しようとする野心があるのではないか、アメリカはそう思っているのでございます。したがいまして、その懸念を一掃するためには、プルトニウムの再処理が将来における経済的なメリットを持ったものである、これを日本としては証明しなければならぬと思うのでございます。第一、アメリカは三段論法でこう言っておりますよ。ここ十年ぐらいはプルトニウム燃料の利用は経済的に引き合わない。つまり、採算を無視してもプルトニウムを抽出しようとする裏には、核兵器をつくろうとする野心があると疑われてもいたし方ない。だから、技術上、経済上の問題がはっきりし、核兵器の非拡散のめどがつくまでは、再処理を積極的に推進するのはやめようじゃないか。これはアメリカなりにも一つの理由があるのでございます。したがって、福田総理が首脳会談に臨まれるに当たりましては、そうしたプルトニウムの再処理というものが日本にとって将来経済的なメリットがこういうふうにありますよということをアメリカ側に納得させなければ、アメリカはおいそれと下がれない、これが一つでございます。     〔田中(正)委員長代理退席、委員長着席〕  もう一つは、米国が一番懸念している、プルトニウムが核兵器づくりに利用されない保障といたしまして、いまもちろん日本は国際的にも厳しい査察を受けておりますが、それだけではプルトニウムの管理はできません。したがいまして、この点について、福田総理としては首脳会談に臨むに当たって、プルトニウムの国際共同管理を提唱する必要があると思われます。つまり、一つは経済的なメリットを日本として立証すること、もう一つはプルトニウムの国際共同管理を提唱すること、この二点において日本が積極的な提唱を持つのであれば、この首脳会談においてある程度日本側の要求も聞いていただけるのではないか。  もとよりこの問題は、西ドイツもあるいはその他の諸国も関連をいたしておりますので、決して日米首脳会談だけで決着がつく問題とは思われませんが、しかし、それにつけましても日本はこういう主張を持つ必要がある、こういうふうに考えますが、これは首脳会談に関する問題でございますので、福田総理からお答えを賜りたいと存じます。
  293. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 第一点につきましては、御説のとおりと思います。  第二点がどういうふうになりますか、これは話の進みぐあい、推移によって出てくる問題か、かように考えます。
  294. 大内啓伍

    ○大内委員 再処理という問題は言うまでもなく日本の核サイクルの目玉でございまして、これについて相当のチェックを受けるようなことがありますと、日本原子力の平和利用政策は破綻していくことは論をまちません。  そこで、通産大臣にお伺いいたしますけれども、これから五十二年から六十五年にかけまして必要再処理量というのは、私どもの把握では総計七千四百トンに達すると考えます。これは政府も出している試算でございます。そして、現在の第一再処理工場でございます東海村、つまり動力炉・核燃料開発事業団におきまして消化し得るものは七千四百トンのうち二千三百トンにしかすぎません。したがって、あと海外、つまり英国やフランスに対して海外で処理を依頼するとしても、これは大体千八百トンぐらい。あと追加必要処理三千三百トンを処理しなければわが国原子力の平和利用の一つの当面の目標は達成できません。これはどういうふうにしてやりますか。
  295. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 私どもの試算といたしましては、一九八五年すなわち昭和六十年を対象として、ただいま次のような数字を持っております。その年には、御承知のとおり原子力発電は四千九百万キロワット、これを対象とした場合に累積四千百トン、これだけの再処理をしなくちゃならない。それに対しまして、いま大内委員指摘のとおり、現在動いております再処理工場では年間二百十トンでございます。したがいまして、とうてい足らないわけであります。また、英仏に対しましては現在千八百トンの累積でありますが、これもやはり契約を終了いたしております。なおかつ七百五十トン足りません。したがいまして、勢い第二再処理工場が必要となり、それでも足りませんから、さらに英仏に対しまして追加再処理をお願いする以外にない、こういうことで現在手当てをいたしております。
  296. 大内啓伍

    ○大内委員 福田総理、いまお聞きのとおり、日本がこれから再処理しなければならない量は相当なものに達します。そして、これをやればやるほどアメリカあるいはカナダの疑惑、懸念というものを深めていく状態にございます。そこで、先ほど福田総理は、第一番目の私の提案については大体賛成をされ、また、国際管理の提唱につきましては、なおこれからの話の推移を見てというお話でございました。しかし、私どもはやはりこの問題を真剣に検討しておりまして、非常に重要な問題であって、ただ日本の立場を説明するだけでは諸外国は納得する状況にございません。したがって、どうかこのプルトニウムの国際管理という問題につきましては、政府におきましても今後真剣に検討されますよう心から要望いたします。よろしくお願いいたします。  以上でございます。
  297. 坪川信三

    坪川委員長 福田一法務大臣。
  298. 福田一

    福田(一)国務大臣 先ほど楢崎委員から、今回の捜査においてなぜハワイ会談の内容について調査をしなかったのかという点と、もう一つは、PXLも一つの大きな疑惑があるのであるが、それについてなぜ捜査をしておらないのか、こういう二つの質問があったやに私、了承いたしておるのであります。そこで、ただいま刑事局長を呼びましたので、刑事局長からその間の事情を説明させたいと思います。
  299. 安原美穂

    ○安原政府委員 ハワイ会談の件を冒陳で検察官が陳述した趣旨は、先回も申し上げましたように、田中元総理の受託収賄につきまして、田中元総理が関係者にどのような働きかけをしたかということが、受託収賄の立証をする過程において必要な事実として立証しなければならないということでごございましたので、したがいまして、立証する検察官の立場としては、田中元総理が関係者に対して、小佐野氏とかあるいは若狭氏に対して、ハワイ会談でハワイへ行った際にニクソン大統領から、日本が購入する民間機はトライスターにしてくれるとありがたいんだがということを言われたよということを伝えたということ、そのことが立証上必要な事柄であるということでございまして、そのような事柄、つまりニクソン氏と田中元総理との間にどのような話し合いが行われたかということ、そのことを立証しようとするものではなくて、そのような話があったよと田中元総理が言われたということ、そのことが立証しようとする事実でございまするから、田中元総理の言われたことの内容が真実であるかどうかということは、犯罪の捜査、立証については直接必要のないことでございます。したがって、法律的に捜査上そのことの真否を確かめる必要はないのでございますということを前回申し上げたわけでございます。  それからもう一つ、PXLの問題につきましては、今日までのところ、PXL、つまりP3Cの導入の問題につきまして、いろいろと社会的には疑惑が投げかけられております事柄でありますとともに、ロッキード社の企業活動としての売り込み工作の中で不正があるかどうかということが検察当局の基本的な関心であったわけでございまするから、PXLの導入の経過につきましても検察当局としては十分の関心を持っておったはずでございまするが、今日までの報告によりますると、PXLの導入に関しては犯罪の容疑は認められないという報告に接しておる次第でございます。
  300. 坪川信三

    坪川委員長 楢崎君。
  301. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは前回お聞きしましたから、それについて私はきょう重ねて、このPXLの問題についてもハワイ会談のプライベートミーティングの中身を明らかにすることによって一つの解明への——国会における解明はもちろんのこと、刑事事件においても大きな突破口になるのではないか、私ども常識的にそう思うわけです。それなのに、これほどまで言ってもどうしても牛場氏からも事情聴取をされないというのはなぜか、私どもはそこに疑問を感じるわけです。ハワイ会談の内容について、刑事事件においても、PXLの問題あるいはトライスターにおいても重要な一つのポイントである。それなのにどうしてもハワイ会談の内容を解明しようとなさらない検察当局に対して、私は疑問を感じておるのです。さらに言えば、何かそこに、日米の両首脳の問題だから国際的にもぐあいが悪いことがあるのではないか、勘ぐれば。われわれにそういう疑惑を与えないようにするためにもハワイ会談の内容を解明する必要がある、と私は先ほど申し上げたわけでありまして、もうこれ以上私は申し上げません。あとは牛場氏を証人として国会の次元において真相を明らかにしてまいりたい、このように思います。
  302. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 別に答弁を求められたわけではございませんが、私自身が牛場元大使にお目にかかりましていろいろ問いただした印象からいたしまして、これは私どもがそういった非常に疑惑があるものを隠しているというようにとられますと非常に心外でありますので、私と牛場氏とは長いつき合いでありますし、牛場氏にいろいろ私が問いただしたことにつきまして、牛場元大使がうそが言えるような方でないというふうに私はいまでも思っておりますし、そういう意味で、いませっかくの仰せでございますけれども、私といたしましては、直接聞きました印象といたしまして、そのような疑点は全く感じなかったということを一言だけ申し述べさせていただきます。
  303. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そう言われるから私申し上げておきますけれども、外務大臣がそういうふうに思われることは、それは外務大臣の立場で勝手でありますけれども、しかし、われわれは重要な疑惑を持っておるのです。これは時間があればいまここでやりとりしてもいいけれども、その証人喚問の問題もございますから、その場で明らかにしたいと思います。ただ、余りそういうことを言われておって、もし事実であったら、これは牛場氏は偽証の問題が出てくるし、あなたもそれを一生懸命やっておったら共犯の問題が出てきますよ。余り言われない方がいいです。以上です。
  304. 坪川信三

    坪川委員長 この際、かねて政府統一見解を求めておりました国会の予算修正権問題について、内閣総理大臣から発言を求められております。福田内閣総理大臣
  305. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 先般の当委員会におきまして、矢野さんから御意見を含めての御質問でありましたが、予算の国会の修正権、これは事は重大でありますので、政府においては慎重に検討いたしました。結論が出ましたので、法制局長官から説明いたさせます。
  306. 真田秀夫

    ○真田政府委員 国会の予算修正についての政府の見解を改めて申し上げます。     国会の予算修正について   国会の予算修正については、それがどの範囲で行いうるかは、内閣の予算提案権と国会の審議権の調整の問題であり、憲法の規定からみて、国会の予算修正は内閣の予算提案権を損わない範囲内において可能と考えられる。 以上でございます。
  307. 坪川信三

    坪川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢野絢也君
  308. 矢野絢也

    矢野委員 いまお示しいただきました政府の国会の予算修正権についての御見解でありますけれども、まず基本的なことから伺いますが、二月八日にお示しになりました政府見解、これとどこがどう違うのかという問題が具体的な課題になってくると思います。読めばわかるというようなものでありますけれども、二月八日の政府見解では、三つの項目から見解が成り立っておりました。きょうお示しの見解は、この二番目の見解、おおむねこの見解をお示しになった。つまり一番目と三番目の見解は本日の見解には記載されておらないわけでありまして、政府の真意と申しますか、この辺のところからお伺いをしたいと思います。
  309. 真田秀夫

    ○真田政府委員 お答えいたします。  ただいまお示しいたしました国会の予算修正についての政府の考え方は、従来から申し上げておりますし、また、去る二月八日の当委員会において申し上げました考え方と基本的には変わっておらないわけでございますが、ここで特に申し上げたいのは、必ずしも歳出予算の項の新設にはとらわれないという姿勢をあらわしておるつもりでございます。
  310. 矢野絢也

    矢野委員 二月八日の政府見解第三番目の項目では、簡単に言えば三つの内容から成り立っておると思うのです。一つは、いわゆる款、項——項の新設の問題につきましては、項が予算の議決科目の単位であり、これによって表現されるものであることを考えると、一般的に言って内閣の予算提案権との関係からむずかしかろうと考える、これが一つです。  二つ目には、また仮に項の新設でなくても、既存の項の内容が全く変わってしまう修正であれば、同様の趣旨から問題がある、これが二番目の問題。  三番目には、個々のケースに即して判断すべき問題だという表現があるわけですね。  きょう、政府見解としてあえてこのくだりについてお触れになっておらないということは、これは従来から政府が述べてこられた見解であったわけですけれども、これをもう撤回された、このように理解してよろしいのか、あるいはまた別のお考えがあるのか、これを総理から伺いたいと思います。
  311. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 本日の見解をもって正式の見解である、こういうふうに御理解願います。
  312. 矢野絢也

    矢野委員 そうしますと、かねてからの歴代内閣が示してこられた統一見解、あるいは本予算委員会でお示しになった政府の見解、具体的には、項の新設、項の付加、こういった問題は政府の予算提案権の侵害になる、損なうものであるという意味の従来のお考えは、いま政府のとるところではない、そういう考え方は持たない、こういうことで理解してよろしゅうございますか。くどいようでございますが、大事な問題でありますので……。
  313. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 それはケース・バイ・ケースで決定すべき問題である、そういう理解であります。
  314. 矢野絢也

    矢野委員 整理して申し上げますと、従来は、項の新設、付加というものはケース・バイケースという概念を超えて、およそこれは予算提出権の侵害になる、だから、もう入り口でシャットアウト、こういう判断であった。しかし、いまの総理のお答えによりますと、必ずしもすべて項の新設、付加というものは認めない、政府の判断としてそれは予算の提出権侵害になるというものではない、つまり侵害にならない項もあれば、侵害になる項もある、こういう御判断でございますか。
  315. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そのとおりの見解でございます。
  316. 矢野絢也

    矢野委員 そうしますと、やはりその侵害になるという項と、侵害にならないと判断できる項というのは一体どういうことなのか。それもケース・バイ・ケースと言われましたのでは、そのときの出たとこ勝負、そのときのお天気次第、気分の問題、極端な言い方をすればこういうことにもなりかねないわけでございまして、ケース・バイ・ケースという言葉は正確にこれを解釈しますと、こういうケースにはこういう対応をするというルールのある言葉なのですよ。ですから、いまおっしゃった政府が予算の編成権を損なうものであると判断する新しい項の問題、そうでないこれは侵害にならないと判断できる項の問題、これがやはり問題になってくる。しかも本日お示しの政府見解の「国会の予算修正は内閣の予算提案権を損わない範囲内において可能と考えられる。」というこの文言の「損わない範囲内」という、これは抽象的な言葉でありますけれども、具体的な中身の問題がいま私がお尋ねしている問題にかかわってくると思うわけです。具体的にお答えを願いたいと思います。
  317. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これはなかなか具体的にお答えはできないのです。つまり、政府の予算提案権を損なわないという修正は、これは国会においてすることができる、こういう見解でありまして、その限界点がどこかということは、これは個個のケースで判断をする、こういう趣旨でございます。
  318. 矢野絢也

    矢野委員 問題点は二つあると思います。一つは、私がいま整理して申し上げたとおり、項の新設、付加についてはすべてだめという判断はとらない、場合によっては新しい項のつけ加えも提案権を侵害するものではない、こういう判断をお示しなさった。これが一つの特徴であろう。これは従来のお考えから見れば前進であると私は評価するにやぶさかではございません。  しかし、もう一つの問題は、やはり依然として国会の修正権に対して限界があるという基本的な態度は貫いていらっしゃるわけなんですね。私たちは、憲法構造から見て、立法府の予算修正権というものは最終かつ完全な権限を持っておるのだという判断に立って議論を進めてまいりました。もちろん、この最終かつ完全と申しましても、修正した結果歳出と歳入が金額が合わないというようなでたらめな修正、あるいはまた、いままでの予算規模を十倍にしなさいというような、常識的に見て納得できないというような修正、つまり客観性のない修正というものは、これは議会の良識の問題としてとるべきではない、そういう意味においては、おのずから良識の問題として、節度の問題として私たちは限界というものを心得なくてはならぬ、こういう判断を持っております。しかし、立法府と行政府の間柄の問題として、政府から立法府の修正権には限界があるんだなどと言われる筋合いは全くない、こういう判断を私たちは持っておるわけなんです。こういう二つの問題があるわけです。  この問題について具体的に伺っていきたいと思うのですが、まず修正権に限界がある、それは政府の予算提出権を損なわない範囲で可能なんだ、その損なわない範囲というものは、一体だれが判断するのでしょうか。総理が判断なさるのですか、それとも国会が判断するのでしょうか。あるいはまた、そういう損なわない範囲について判断をする主体になるものは何かということとあわせて、先ほど伺っておるように、範囲を超えるこの範囲とは一体何だ、この二つをひとつ具体的に聞きたいのです。
  319. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 どうもその限界点を判断する機関というものは私はないと思うのです。これはやはり国会と政府が連帯と協調というか、そういう中において判断をするというほかはないのじゃないか、そういうふうに考えます。
  320. 矢野絢也

    矢野委員 国会と政府が判断するんでしょうか。国会が判断するんじゃないでしょうかね。これは国会のみがその判断をなし得るのではないかと私は思いますけれども、どういう法理論に基づいて政府がその判断ができるという理論をお持ちなんでしょうか。
  321. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 政府に提案権があるわけですから、政府も判断の主体となる、こういう見解でございます。
  322. 矢野絢也

    矢野委員 提案権を持ち出されるとこちらも理屈を言わなければならぬわけでありますけれども、憲法の規定によりますと、第八十三条では「國の財政を處理する権限は、國會の議決に基いて、これを行使しなければならない。」これは御存じのとおりであります。これは財政における国会中心主義の原則というものをきわめて端的に表明しているわけですね。しかもこの規定は、新憲法下の財政会計制度のあり方の基本理念を明らかにした規定である。そして財政に関する憲法の諸規定、この後に八十三条以降ずっとあるわけですけれども、そういう諸規定の中でもすぐれてその根幹をなす規定である、このように私たちは理解をしておるわけです。したがって、いま総理がおっしゃった内閣の予算提出権、これは私、虚心坦懐にこの文面を分析しますと、八十六条では「内閣は、毎會計年度の豫算を作成し、國會に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」という規定でありまして、これは一面では内閣の予算提出権あるいは編成権というものを規定しておると私は解釈できると思います。そのことまで否定しようとは思いません。しかし、あくまでもこの文面の趣旨は、そういう内閣の提出権というよりも、むしろ内閣の国会に対する義務というものを第一義的に明らかにしておる。予算を提出しなくてはならぬ、編成しなくてはならぬ義務という色彩が濃い。しかもこの八十六条というものは、先ほど申し上げた八十三条の財政における国会中心主義という基本的な規定、これに基づいてこの八十六条というものが成り立っておるのであって、八十六条と八十三条が別個に、競合する形で成り立っておるとは私たちは理解しておらないし、またそれが憲法の正しい解釈だろうと思うのですよ。そういう立場からいきますと、そう抽象的な言い方で内閣の予算提出権、これを国会に押しつけるような調子でおっしゃることは誤りではないか。むしろ正しい解釈は、国会に完全かつ最終的な修正権がこれはもう憲法に基づいてあるのだから、その判断に政府は従っていく。もちろんその前提として編成なり提出する権限は政府にある。そして政府としてのみがたい修正、とてもとても賛成しがたい修正というものがもし国会によって行われた場合には、それは内閣が総辞職をなさるか、あるいはまた解散という形で国民の審判をお受けなさるか、こういうことが憲法構造の正しい解釈であると私は思うのですけれども、その辺ひとつ総理、そうあいまいな抽象的な言い方では将来やはり議論を残すことになるかと思いますので、明確に伺っておきたいと思います。
  323. 真田秀夫

    ○真田政府委員 憲法にただいま矢野先生がお示しになった規定があることはもう明瞭でございます。八十三条に「國の財政を處理する權限は、國會の議決に基いて、これを行使しなければならない。」これはいわゆる財政に対する国会のコントロールを書いたものであることは当然でございます。ところが、先ほどもお示しになりましたように、やはり内閣に予算の作成権限がある。それは七十三条でございましたか、それにも書いてございますし、これはやはり議院内閣制のもとにおいては国会で指名を受けた内閣総理大臣が内閣を組織しまして、そこで政策を立てる、その政策は予算という形で示されるわけですから、そういう意味でやはり内閣の、つまり政府の予算作成権、提案権、これはやはり憲法はかなり重視しておると見ていいのだろうと思うのです。もちろん国会はそれを議決するという権限をお持ちですが、先ほど総理からお話にありましたように、この提案権と議決権とを解決する第三者機関というものはないわけなんですね。これは憲法裁判所というものが制度上でもあれば話は別なんですけれども、現在の裁判所は、そういうものは恐らく裁判にはなじまないのだろうと思うのです。ですから、提案権と議決権との調整は、それは両者よく話し合って、そこで調整点を見つけ出して、しかるべき方法で処置していくということを憲法は期待しているのだというふうにわれわれは思うわけでございます。
  324. 矢野絢也

    矢野委員 それは長官、おかしいのでして、あくまでも長官の御答弁は、この修正の範囲について、政府見解によればということになるわけですけれども、この範囲までは政府の予算提出権を損なわない、これは損なうのだ、この判断は政府と国会が話し合って決めるのだということですね。いま問題は、法律論の憲法の解釈の問題として議論が進んでいるわけでして、話し合いが進むということなら裁判なんか要らないわけであって、全部示談で解決するのです。話し合いができないときには、法律論で問題を処理をしている限りはこれは適法なのか違法なのかという問題が出てくるのです。その場合のこれは適法なんだ、これは違法なんだ、前提で考えた場合、話がつかない、それは一体だれが判断するのですかということを私は聞いているのです。話し合いですか、やはり。長官、どうですか、議会が決めるのじゃないですか。
  325. 真田秀夫

    ○真田政府委員 それはやはり国会側と内閣、政府との間の良識のある協調によって決めるということを憲法は期待しておると思います。
  326. 矢野絢也

    矢野委員 国会がそういった問題について最終的な判断を示すということが、憲法の基本的な精神じゃないかと私は思うのですけれども、いかがでございますか、長官。国会の決定あるいは意思以上に、この予算修正の範囲について、あるいはそれが適法であるか違法であるかという判断について、判断する別の機関があるのですか。教えてください。
  327. 真田秀夫

    ○真田政府委員 それは先ほどから繰り返して申しますように、最終的にいかなる修正もできるというようには憲法は読めないというわけでございます。つまり、国会側だけで、お言葉をかりれば、国会の権能として国会のみの判断でいかような修正、つまり提案権を損なうような修正までできるとは憲法は読めないということです。
  328. 矢野絢也

    矢野委員 読めないなんて、まるでちょっと神がかったことを言われても困るのでして、私、ここで時間の制約がありますから、この問題で押し問答しようとは思いませんけれども、やはりいまの議論から総理もお考えいただきたいことは、結局政府の予算提案権を損なわない範囲で国会に修正権があるのだというふうに範囲を設けて、つまり逆に言えば国会の予算修正権に限界を設けるというこの考え方は、いまの法律の神様みたいな長官ですら、きわめてあいまいな、何か断定的なきめつけ調の言い方しかできない。少なくとも常識のある人間が聞いて納得できるお話じゃないわけです。やはり限界はないのだという判断にお立ちになって、その上で、国会の良識あるいは技術的にむちゃな修正はできないんですよという言い方が正しい解釈じゃないかと思うのですけれども、総理、いかがでございましょうか。
  329. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 事は法律論でありますが、法律論とすると、提案権を侵してはならないという限界がある、こういうふうな見解でございます。
  330. 矢野絢也

    矢野委員 だから、そうなると、またもとへ戻るのでして、その限界とは何ですか、あるいはまたその限界を侵したか侵さないかはだれが判断するのですかという問題にまた戻ってくるわけでありまして、私は、そういう判断をするのは最終的には国民だろうと思うのです。そのためにこそ、政府の気に入らないといいますか、政府が賛成できない修正を国会がなした場合には、政府は解散もしくは総辞職という手だてによって対抗していくといいますか、問題を処理していく、そして国民の審判を受ける。もちろんその場合、国会がまさに常識的に見て気違いざたの修正をした場合には、これは当然その過程において議論があるわけでありまして、国会議員は、技術的に考えてもそんなむちゃな修正をするということは考えているわけじゃない。そこはむしろ国会を信用なさるという姿勢が政府のおとりになる方針だろうと思うのです。いたずらに限界限界というようなお立場はとるべきじゃないと思うのですけれども、重ねてもう一度伺いたいと思います。
  331. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 どうもその法律論だけは、これは私は賛成することはできません。政府には提案権がある。この提案権を侵すことは国会としてもなすべからざることである、こういうふうに考えます。
  332. 矢野絢也

    矢野委員 私は提案権まで否定しているわけじゃないのです。提案権があるということは認めた上で、その提案権と国会の修正権のかかわりあいにおいて議論を進めている。それを提案権があるのだ、あるのだと、そう力まなくても、これはわかり切った話なんです。  この問題ばかりでも時間がたちますから、それでは先ほどおっしゃったケース・バイ・ケースという問題にもう一度戻りますけれども、これはたとえば、抽象論、一般論として伺います。社会福祉を社会正義回復という立場からふやさなくちゃならない、しかし、いわゆるいままでの社会福祉の項とは別の項を設けるべきであるという主張、あるいはまた住宅ローンというものについて利子補給をしなくちゃならない、こういう判断を持って、そういうことについて新たに項を設けて予算措置をする、修正をする、たとえて言えばこういうたぐいの修正、これはもうケース・バイ・ケースじゃない、具体的なケースを私は示しておるわけでございまして、あるいはまた会社臨時特別税というものを新たに設けて修正をするというやり方、こういうものについてはイエスの方の項目なんでしょうか、ノーという項目なんでしょうか、一般論としてまず伺っておきたいのです。
  333. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これはケース・バイ・ケースですよ、要するに。これは一兆円の福祉予算を編成すべし、そのための新たなる項を立つべし、こうなるとなかなか問題があるんだろうと思います。しかし、ささいな手直しだというようなことでありますれば、私は提案権を妨げるというような色彩がないのじゃないかと思いまするけれども、事は具体的にこういうふうに予算全体を変えるんだというようなことがないとどうもお答えがむずかしいですな、これは。
  334. 矢野絢也

    矢野委員 前の見解にも載っておりましたけれども、いまの総理の御答弁関係がありますけれども、こういう表現があったんですよ、たしか前の見解では。つまり、項というものは予算の議決科目の単位である、政府の施策がこれによって表現されるものであることを考えると、一般的に言って内閣の予算提案権との関係からむずかしかろうと考える、こういう表現がありました。これは今回なくなったわけでありますけれども、思想としてやっぱりこの思想があるのです、いまの御答弁の中には。つまり、項というものは、政府の施策があらわれておる単位なんだと、簡単に言えば。だからそういうことを考えると、内閣の予算提案権の関係から、項を新設するときはむずかしい、つまり、政府の施策というものを変えること自体が提案権の侵害になるんだという基本的な思想というものが流れておる。いまの総理の御答弁にも、ささやかな修正であればこれはいい方のケースなんだ、基本的に行政府がつくった予算というものには間違いがないんだ、ささやかな、少しばかりの修正なら、これはもうがたがた国会もうるさいことだから少しくらい乗りましょうかというのが本日のこの見解の、言えば魂胆ということですわ、本音が。私は、そういう判断がむしろ立法府の政策判断を拘束しておるやり方になっておるんだ、むしろ立法府の政策判断というものを優先する立場、これが先ほど私がいろいろ引用した憲法の精神でもあり、財政における国会中心主義というものなんだ。ささやかならいいんだけれども、ささやかでないのは承知できない。この見解は非常に重大な見解だと私は思うのですよ。  ここであなたをとっちめても始まらないから具体的に聞きますよ。あなた方がお考えになるささやかでない修正がもし国会で行われた場合は、このときは総理は拒否なさるつもりですか。拒否できるとするならば、それはどういう根拠があるんでしょうか。
  335. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは政治問題として重大な措置をとらなければならぬ、そういうふうに考えます。
  336. 矢野絢也

    矢野委員 ということですから、結局あなたはいまの言葉の上からも、国会における修正権というものは、それはお言葉の上ではケース・バイ・ケースだ、やはり予算の政府の提案権を損なわない範囲だ、限界があるのだと言われながらも、やはり国会においてささやかでないと判断される修正が行われた場合は重大な政治判断、つまり、拒否はできない重大な政治判断というのは恐らく総辞職とか解散ということをやはり意味されておるのだろう。拒否なんかできる論拠が長官ありますか。国会が決めた修正に、こんな修正、気に食わぬから政府は乗れません、こんなことを言える根拠はありますか。これがないとするならば、国会の修正権は最終かつ完全じゃありませんか。
  337. 真田秀夫

    ○真田政府委員 先ほど来申しますように、憲法は明瞭に政府に提案権があると書いてあるわけですね。それから、一方国会は議決権がある、修正権もある、そしてそれは憲法の解釈上、提案権を損なわない限度であろうというふうに、まあ、そこまではおわかりくださったようでございますが、それは第三者機関としての解決、審査機関はないわけですから、双方で協議をして、そうしてお互いの立場を尊重して調整点を見つけ出すということを憲法は期待しているということを言ったわけなんです。だから、憲法はそういうことを期待しているのである、もしその提案権を損なうと思われるようなことをおやりになれば、内閣としては、ただいま総理が仰せられましたように、重大な決意をしなければならぬことになるだろうと……。
  338. 矢野絢也

    矢野委員 この議論は大体幾らやっても、大蔵官僚として人生を送ってこられた総理にこれ以上物わかりのいい回答をしろと言ったって、これは人生観の問題にまでかかってくるだろうと思いますから、この程度にしておきます。  要するに、法律解釈としては、すべて項の新設、付加がだめだというわけではない、ケース・バイ・ケースということでその都度判断をするのだ、そして力点が、きわめて政治的な運用というところに力点を置いていらっしゃる。これはわれわれから言えばきわめてあいまいな、逃げた答弁であるという見方もできますけれども、逆に言えば、いま国会の中で論議されておる現実の問題としての予算修正要求ということについて、法律論では半歩下がった形、しかし現実論では弾力的に運用するということで、やむを得ざる場合には応じなくてはならぬという含みを残されておると私は理解をしたいわけでありますけれども、運用の問題として今国会における予算修正、大いに弾力的にその運用に対処される用意がございますか、総理。
  339. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この問題は、結局、憲法上限界を決める、こういう機関がないのです。結局、国会、政府に対しまして良識を期待しておる、こういうことだろうと思うのです。お互いに良識でいくほかはない、そういうふうに考えます。
  340. 矢野絢也

    矢野委員 良識を期待するなどと言われますと、いかにも良識がないのを出せと言われる、これはきわめて問題の発言だ。きわめて私どもは良識のある国会である、これはもう与党も野党も含めて良識があると言いたいところでありますけれども、それは別といたしまして、いずれにしても国会には良識がある、その前提で私は修正権の範囲というものを議論しているのですよ。それをまた良識を期待するなんて言われたんじゃお話にならないわけであります。  時間が参りましたから、これで終わりたいと思います。  最後に、いずれにしても不満足ではありますが、重ねて見解を示すに至りました。委員長初め理事委員各位に御礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
  341. 坪川信三

    坪川委員長 次に、安宅常彦君。
  342. 安宅常彦

    ○安宅委員 私は別な角度からこの問題について、やはり国会の運営の反省点も含めて論議をしてみたいと思うのです。  この予算審議の場合に、国会法に基づいてできた衆議院法制局というのがあります。この法制局の長を何か日陰にしておくような国会の運営というのは、どだい旧憲法の残滓、名残の運営をしているのではないかということを私は非常に心配しているのであります。  衆議院の法制局長来ておられますか。——よく聞いてもらいたいのです。総理の後ろに座っているのは真田さんですか、あなたは。これは法律的には国会法に基づいて、独立した機関として国会の両院に法制局を置くと明確に法制上書いてあるのですね。本当はあなたは日陰の子なんです。そんなところへ出てくるのはおかしいのです、日陰の子。なぜかと言いますと、これは昭和二十三年ごろですか、いわゆる明治憲法時代にあった内閣法制局というのは廃止になって、連合軍によって解散させられたか廃止させられたか、その辺ですね。そして昭和二十七年に初めて日の目を見たのが内閣法制局長官というものです。しかも、どこを探しても内閣法制局を置くという条文は内閣法には見当たらないのであります。したがって、そのことについてあなたは、そうですと言わざるを得ないと思うのですが、まず、そっちの方から聞きましょう、どうですか。
  343. 真田秀夫

    ○真田政府委員 私の役所のことをおっしゃいましたので……(安宅委員「あるかないかだけで結構です、時間がありませんから」と呼ぶ)内閣法制局が置かれている法律的な根拠を申し上げます。(安宅委員「いや、そういう条文があるかと聞いているのです」と呼ぶ)それは内閣法制局設置法という昭和二十七年の法律二百五十二号に「内閣に内閣法制局を置く。」という条文がございます。
  344. 安宅常彦

    ○安宅委員 それは別として、内閣——いやそうじゃない。あなた笑い事じゃないのです。内閣には官房が置かれる、すべて内閣法というものについてきちっとした法律がある。内閣法の中にあるかと聞いているのです。あるかないか。ないでしょう。時間がないから、あるかないか、それだけでいいのです。
  345. 真田秀夫

    ○真田政府委員 内閣法の十二条に「内閣官房の外、内閣に、別に法律の定めるところにより、必要な機関を置き、内閣の事務を助けしめることができる。」この「別に法律」というのは、先ほど申し上げた内閣法制局設置法に該当するわけでございます。
  346. 安宅常彦

    ○安宅委員 だから私はないと言っているのです。別に法律を設けて、それでその条項に適応させて、そしてなくなっておって、一番最初は法務庁あるいは法務府と言いましたね。そうですね。あなた方は明治憲法の当時は大変大きな権限があって、予算の修正権はないのだといばっておった機構は民主憲法に対しては有害であるというのでなくなって、そして法務省の中に置かれておった。ただ、いまの条文を適用してやはりつくらなければならないという逆コースの中であなたはやっと生まれたのであります。ようござんすか。ところが、これは新しい憲法に基づいて国会法がしかれて、国会法の中で国会には法制局を置くという明文があって、そしてあなたと同じように独立した法制局というものがつくられているのであります。予算の編成や立法やそういうときの事務の手伝いをするという意味にとれる条文しかあなたの所掌はありません。このことは認めますね。
  347. 真田秀夫

    ○真田政府委員 先ほど引用いたしました内閣法制局設置法に、内閣法制局の所掌事務が書いてございまして、その第三条第三号に、「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること。」これが私の仕事の一つでございます。
  348. 安宅常彦

    ○安宅委員 内閣総理大臣、それからそういう各大臣に対して意見を述べるだけなんです。国会に来て意見を述べるなんてどこにも書いてない。いまそれが問題なんです。ところが、そういう役目の人が、さも何か法律の権威者のようにして、国会を三百代言的見解で、そして明治憲法のときのような残りかすをまだ金科玉条として解釈しているというところに問題がある。  衆議院の法制局長答弁を求めます。あなたは、この国会の審議権の中には修正の権利もあるいは議決の権利もすべて審議という中には入っている。修正というのは否決を伴わないときに大体やるものであって、成立させるということでなければ修正というのは出てこないのですよ。そして修正は、お互いの連帯とか何か福田さん言いますけれども、それで議決をするというのが一般の常識ですから、そういうもので言うならば、この辺は修正されても構わないけれども、この辺は修正されては困るとかという内閣の意見とは別に、あなた方は、そういうものは審議権というもの、審議するということ、それから憲法八十三条、すべて予算というものは国会の議決を経てそして施行されるということになっているのですから、その見解を明らかにしていただきたい。それだけでいいです。よけいなことは要らない。そういうものではないですか。
  349. 大井民雄

    ○大井法制局長 衆議院法制局の置かれております立場から申し上げまして、すでに国会で各党の委員の方々から国会の予算修正権に関する見解が公式にお述べになられておられます現段階におきましては、私どもの御意見を申し上げることはいかがなものであろうかと感ずるのでありますが、安宅委員よりたっての御要求でございますので、参考意見として申し上げましょうか。
  350. 安宅常彦

    ○安宅委員 いやいや、ちょっと待ってください、誤解のないように。ちょっとあなた待ってください。私が聞いているのは、その修正権に対する見解を聞いているのではない。こんなことは私ら国会の最高議決機関の一員として見解を持っておりますから、あなたの見解がどうだと聞いているのではない。議決権というものは修正を含むものであろう、修正というものは、何も妨害したり何かするのではなくて、可決するということが前提で、成立させるということが前提で言葉を使うのが修正権ではないか、そういうことを聞いているのであります。それだけしか答える必要はありません。
  351. 大井民雄

    ○大井法制局長 お答えいたします。  国会の審議権と申します中には、最終的に賛否の意思を明らかにすることはもとより、議案に対しまする修正を含むものであることは当然でございます。
  352. 安宅常彦

    ○安宅委員 最高議決機関の国会法に基づく正式な条文によって生まれて、独立した権能を持っておるそういう法制局長がぴしっと言っているのであります。日陰の子の言うのとは違うのでございます。ようございますね。  それで福田総理に、矢野さんの質問に関連するような形でありますが、明治憲法の……(発言する者あり)日陰という言葉がひどいという話でありますが、日陰のようなということにしておきましょう。訂正いたします。日陰の子というのは取り消して訂正いたします。日陰のようなということですよ。  それであなたは、憲法の八十三条に明確に書いてある文章に対して、いまの衆議院の法制局長の見解とあわせて、この部分はだめだとかあの部分はだめだとか言って、自分の見解、個人的なあるいはそのときの内閣の総意というのでしょうか、それによって区別をつけて重大な措置をとらなければならないということを言っておりますが、そうした場合には憲法八十三条というものは承服しがたいということになると思うのですがそのとおりですか。
  353. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は内閣に提案権があると、いうことを強調しているのですよ。提案権を損なうような修正は私どもとしてはこれは賛成はできない、こういうことでございます。
  354. 安宅常彦

    ○安宅委員 それは総理、そういうときは、私らのめないという場合には重大な措置をとる、それは内閣総辞職か解散で対抗するというのが——解散権というのはそのためにあるのでしょう。だから、それは手段であって、それに従うか従わないかということになりますと、八十三条というのは明確に書いてあるでしょう。これには「國の財政を處理する權限は、國會の議決に基いて、これを行使しなければならない。」。提案権というのはずっと前の話、議決というのは最終的な話。いいですか。これに従わないということですから、従いたくないという意思、従わないということではなくて。そのときには重大な措置をとるということはわかる。それは手段である。しかし、国家公務員であるあなたはこの憲法を遵守しなければなりません。したがって、第八十三条を改めて読みますが、「國の財政を處理する權限は、國會の議決に基づいて、これを行使しなければならない。」これに従わないという意味かと聞いているわけであります。
  355. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 それはそのとおりでございます。
  356. 安宅常彦

    ○安宅委員 従うというのですか、そのとおりというのは。従わないというのですか、どっちですか。
  357. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 しかし、他方において政府には提案権があるのだ、こういうことを申し上げておるのです。
  358. 安宅常彦

    ○安宅委員 提案した後のことを言っているのです。提案するまでは、お経を読み、それから国会は審議をする。審議権がある。修正の権限もあるとあなたは言った。議決権はもちろんありますよ。議決に従わないということを言っているのか、従うと言っているのか。物によっては従えないから、そういう場合には解散か総辞職だと言っているのか、どっちか。従わないから解散するのですか。従っても、これは内閣の命脈にかかわることだから解散でもって対抗するという手段をとるのか、その見解をはっきりしてくださいよ。
  359. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 憲法の規定には従います。しかし、その憲法の規定に、政府に提案権を認めておる、これを御理解願いたいということを強調しているわけであります。
  360. 安宅常彦

    ○安宅委員 だからケース・バイ・ケースだとあなたはおっしゃったでしょう。ケース・バイ・ケース。それをはっきりさせるのは、内閣ではなくて、われわれの党の考え——私たちももちろん含めてですが、これは国会にその権能があると考えているのです。国会が決めるほかないのです。最高議決機関が決めるほかないのです。内閣は、その国会の意思を体して行政をつかさどる機関にしかすぎないのではないのですか。それが正しい見解でしょう。憲法というのは、裏には何も書いてないです、日本の憲法には。そういうように読めないとか、そんなことないのです。どうです。
  361. 真田秀夫

    ○真田政府委員 先ほど矢野委員のお尋ねに対しましてお答えしましたように、八十三条は明瞭に「國の財政を處理する權限は、國會の議決に基いて、これを行使しなければならない。」とあります。もちろんこれは大事な規定でありまして、財政に対する国会のコントロールを決めたものでございます。ところが、その憲法自身が別の条文で、政府に予算の提案権があると書いてある。その規定と、それから財政に対する国会のコントロールをあらわしているこの権限、議決権、これとの調整を考えれば、先ほど来申し上げましたように、予算に対する国会の修正権は提案権を損なわない限度であるというふうに思う、こういうことでございます。
  362. 安宅常彦

    ○安宅委員 そんなこと詭弁ですよ。最高議決機関の法制局の長は何と言っているか。審議権の中に修正も全部含まれます、最終的には国会が議決するのです、そういう明瞭な答弁をしているのです。あなたは、最高機関の法制局でもない男がぴょこぴょこ出てきて、そして提案権はある——提案権はこっちだって認めているのですよ。提案権がないなんて一回だって私は言ったことはない。自由にお出しなさい。それを審議する権利、修正する権利、議決する権利を持っているのは、内閣でもどこでもない、国会でしょう。憲法は、どこを裏返し読んだって、それ以上のことは書いていないのではないですか。それだけは認めてくださるでしょうね。どうですか。
  363. 真田秀夫

    ○真田政府委員 私も、衆議院法制局長のおっしゃるように、国会に予算に対する修正権があると思っているのです。修正権がないなんてちっとも言っていないんで、ただ、その修正権を行使できる範囲が提案権を損なわない限度にとどまるという……
  364. 安宅常彦

    ○安宅委員 それは提案権があるから、だから議決権や修正権や審議権の中に介入することができるとあなたはお考えのようですね。総理もそのようですね。したがって、ケース・バイ・ケースで私が決める、矢野さんに重大な——内閣が決める、そういう重大な発言をいたしましたね。(「違う違う」と呼ぶ者あり)そのように言っていますよ。じゃだれが決めるのですか、国会が決めるのですか、どうですか、それは。もう一回言ってください。
  365. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 このことは決める人が憲法にないのです。そこで国会並びに政府が良識のある行動を期待する、これが日本憲法の趣旨である、かように考えております。
  366. 安宅常彦

    ○安宅委員 それはそうじゃありません、決めるのはだれかと言ったらだれもいないなんて。だから私は八十三条を出したのですよ。国会の議決を得なければ行使できないのです。国会で決めるのが憲法でないかと私はさっきから言っているのです。そんなことはあんたが幾らがんばったってだめなの。新しい憲法をつくるときの担当国務大臣であった金森徳次郎氏が昭和二十七年二月四日の場合どういうことを言っているか。貴族院が、提案権があって修正権がないと思っていたけれども、現実に腑抜けておってそれをやっちゃったという事態がある。今度は、国会の方ではそういう修正権がないのに、地方自治体がすでに修正をどんどんやっておったということからして、この憲法ができるときには、増額あるいは減額を含めてすべての権利を持っている、こういうふうに私は解釈しているんだと、担当国務大臣であった金森さんが国会に参考人として出てきて言っていますよ。そういう「修正権はないのだという伝統的の議論を叩き潰した実際の行き道であると思っております。」と「叩き潰した」という表現をとっている。ようございますか。勉強してください。  そしてまた、両院法規委員会は、はっきり国会の決議として、院の中の委員会の決議としてそういう措置をするように言っている。これは楢崎さんがこの間言いましたから私は言いません。  とにかくそういうことは、統一見解はあやふやであって何だかわけがわからない。前の方こそ反動的であれある程度明らかだったですよ。提案権の問題が書いてあり、項の問題が書いてあり、そして最後の三つ目の問題が矢野さんがおっしゃったように書いてある。ここに稻葉さんはきょうはいないようです。私に言われるから逃げていったと思うのですが、それは無限にあるかどうか知らないけれども、おれの見解は、項だとか何だとかあれはどこから出てきたんだあの項は、なんて言っていましたよ。だからあわててあなたの方が抜いたのはわかるけれども、抜いたところが、コウノトリではなくてぬえみたいになっちゃった。そういう見解が統一見解だと言ったら、日本政府がそういうことを今国会で出したということは恥を後世に残すことになる。  幾らやったって水かけ論ですから、私はこの辺で情勢を見ます。楢崎さん来てやってください。後でまた……。
  367. 坪川信三

  368. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 安宅委員質疑に関連をして質問をいたしたいと思います。  いずれにいたしましても、新しく出てまいりましたこの統一見解をどう読み返しましても、結局は、政府の考え方としては、内閣の予算提案権の範囲内で国会は修正することができるという見解ですね。ということは、やはり内閣提案権の方を上位に置いている。これはわれわれの見解としては、前回申し上げたとおり、憲法違反で、絶対に認めることはできない。われわれは事実をもってそれをこれから証明してまいりたいと思うのです。  そこで私が注意をしておきたいのは、もともとかつての明治憲法感覚を一番継承しているのが大蔵省です。お上の意識がある。そしてどうも国の予算というものを自分のふところ金みたいに思っている。そういう傾向がある。こう申し上げては失礼でございますけれども、総理も大蔵省出身でございますから、どうもその感覚があるのではなかろうか。その証拠には、この問題が起こりました直後の記者会見で、記者に対して総理はこういうことをおっしゃっていますよ。十六日の日ですよね、びた一文も出さないということを言ってらっしゃいますね。それからかつての、先日の十九日の公明党の広沢委員質問に対しても、こう答えておられますよね、びた一文も節減する余裕がないということではないがと。びた一文などという言葉というのは、これはやはり総理のさっき言った意識がその辺に出てきて、どうも自分のふところ銭を何かあれするような、左右するような、そういう感覚がこのびた一文という言葉にあらわれていると思うのですよ。それで、わが党は前回われわれの見解を表明しました。それを変える必要はないのでありまして、こういう、きょう出てまいりました統一見解は認めるわけにいきません。  そこでお伺いしますが、もし組み替え動議を出して、それが採決で決まるということになりますと、これは内閣の予算の提案権を損なうことになりますか。
  369. 真田秀夫

    ○真田政府委員 組み替え動議が可決された場合のお話でございますが、これはそれに応ずるか応じないかはまあ政治的判断だろうと思いますけれども、組み替えてまた政府の提案権を行使して新しく出す、あるいは組み替えて出すということになろうかと思います。
  370. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 形式的に言えば、組み替え動議が通るということは予算の否決になりますね。それはそのとおりでしょう。
  371. 真田秀夫

    ○真田政府委員 組み替え動議が可決されて、それに応じて政府が新しいのを出すという場合のことを考えれば、それは否決と実質的には同じようなことになろうかと思います。
  372. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その場合はいわゆる修正ではありませんね。いまお答えのとおり、これは否決になります。  そこで、私はここではっきりしておきたいのですが、これからわれわれの一兆円減税問題の取り扱いにも関係してまいりますから、明確にしておきたいのですが、国会がみずから主導権を持って予算案を修正する場合は、三つあると考えられます。  一つは、国会において修正をするということ。これはしかし、技術的な能力がなかなか国会側にないのですね、スタッフもいないし。補佐機関がこれは不十分です。だから非常にむずかしい。しかし、国会が修正する場合がある。  二番目に、政府がみずからの発議で修正する場合がありましょう。これはここに書いてあるとおりの、与野党の合意というものが底辺にある。この場合にも、国会は政府に対し修正すべき点を明確にする必要があると思います。したがって、その範囲内において、政府は、いわゆるフリーハンドと申しますか、裁量の余地が残される。この場合も国会法第五十九条によって院の承諾が必要でありましょう。しかし、この承諾があった場合に、修正部分は予算の原案の中に組み込まれて一体となって、そしてそれが委員会の議題にまたなるわけであります。この例が、昭和四十七年二月二十六日本会議政府の発議でやられた例の四次防の主要装備の修正の場合、これがこれに該当しますね。  三番目に、いわゆる組み替え動議があります。これはもう先ほどから言われておるとおり、いわゆるこれが成立すれば予算の否決になる。否決を意味する。したがって、政治的にはこれは内閣不信任に値するものである。だから、政府は総辞職をするか解散をしてこれに対応するというのが常道でありましょう。この例は、まさに昭和二十三年二月二十四日、当時の片山内閣に組み替え動議を出して本会議で成立をし、片山内閣はそこで総辞職をした。これが過去の実例でありましょう。この三つの選択をわれわれは実際問題としてしなければならない。  そこで、先日、十九日の日に新自由クラブの田川委員から質問があった際に、こういう質問ですね、与野党間で結論が出たらそれを尊重するかというときに、総理が、もう前半の答弁からだんだん柔軟性が出てきて、一番最後だと思いますが、こういう答弁をなさっています。国家、国民のためにベターであれば、修正案が出るのを待つまでもなく、みずから修正をするという答弁をなさいました。そうすると、実際問題として、政府は、もしこういう条件があれば、というのは、私が申し上げました国会が修正する場合の二ですね、この二を総理としてはお考えになっていらっしゃる、このように思っていいわけですね。
  373. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、いま御審議願っておるこの予算案がこれはベストである、こういう見解でありまして、修正をいま前提とした議論はいたしておりませんが、しかし、理論的に、まあ皆さんからの御提案で、これは国家、国民のためにとるべき案であるという際におきましては、これはそれに応じてみずから進んで修正を行うということにやぶさかでない、こういう私の基本的な姿勢を申し上げておるのです。しかし私は、この御審議を願っておる予算案につきましては、これはベストのものであり、いまこれを修正するというような考え方は毛頭ないということを、ひとつお含みおき願いたいのです。
  374. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、私がいま確かめましたのは、田川委員に対する答弁の中で、さっき申し上げたとおり、国家、国民のためにそういう合意ができるならば、野党から提案されるのを待つまでもなく、政府みずからが修正するとお答えになったのですから、そのことは、私が申し上げました三つのうちの二番目のことを言っていらっしゃるのですねと、こう言っているのです。
  375. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 それはそのとおりでございます。
  376. 安宅常彦

    ○安宅委員 委員長、私は具体的なことを最後に委員長にお願いいたしますが、総理がはっきり答弁していないことをもう一回ただしたいということが一つ。それから私の要請というものを受けてもらいたいということが一つ。これで発言を終わりますから、あとは政府の、総理の答弁だけでいいわけです。  先ほど言ったように、憲法八十三条というもの、これについては、国家公務員として総理は守らなければならないのではないか、守りますと言った。だけれども、国会の議決に基いて重大な、あなたの気に食わない修正が行われたという場合には、服したくないからこそ解散に訴える、こういうことなのであって、服さない意思表示としてやるのか、ただ内閣の命運にかかわるから、服するけれども、服したいけれども——非常におかしいのですよ、これは。そういう手段をとるのか、どっちかということをはっきりしてもらわなければならない。もう一回はっきりしてもらわなければならない。  あと一分しかないのだから、後、続けて言います。  そこで、今度は院の運営についてであります。この「國會運營の理論」という前の事務総長が出した、しかも同僚の知野君が協力して、これは共同の著書だと思って差し支えがないと「まえがき」に書いてある著書であります。「國會連營の理論」、鈴木隆夫さんの著書であります。そして知野君はどうかといったら、ついせんだってまで長い間衆議院の事務総長をやった方であります。こういう連中がはっきり一致していることは、たとえばいま真田さんが言ったような、そういう論法は旧憲法時代の暴理にすぎないというような意味のことを書いてあるのです。間違いだということをるる書いてあります。それは最高議決機関の事務総長であったり、後に事務総長になったりした人の論なのであります。このことは考えておいてもらわなければならない。しかもこの「まえがき」にどういうことを言っているかといいますと、鈴木さんは、「新憲法によって、国会は国権の最高機関となり、国の唯一の立法機関となった。その地位、権限は、往時の内閣」つまり旧憲法時代の内閣「でさえ到底及ぶところではなく、今や、名は国民主権であっても実は国会主権である。それにも拘らず、いまだに国会を内閣の協力機関の如く考え、内閣優位の官尊主義の論議が交わされていることは、驚くと言うよりもむしろ悲しい位である。あまりにも時代の推移に無頓着であり国会に対する知識がなさ過ぎると言わねばならぬ。」こういう気持ちでこの本を書いた。その中には、何にも国会があなたの恣意によって、気分によってあるいは信念によって、これは服したくない、これは服さなければならない、これは服さないなどという選択を内閣に与えてないということが一貫して流れている著書であります。  したがって、私が言うのは、ただいま現実の問題として楢崎君が言うとおりだと思うのです。私はそれを信じたくないけれども、国会で修正する場合にはスタッフも少ないし云々と言われました。悲しい現実ですよ。そうであるならば、いまでも委員部もある、それから法制局もある、調査室もある、たくさんの人を抱えています。そうして衆議院の法制局長は次官と同じ給料をもらっています。つまり、国会議員と同じ給料をもらっています。それにあやかってかどうか知らぬけれども、あなたも同じ八十八万円であります。真田さん、ようございますか。——————————————————————ここは取り消します、取り消しますから。旧憲法時代の解釈をそのまま何とかして延長しようとする意図に基づいて発言をしているのです。ですから、その場合には院の法制局長がおるのでありますから、この地位を明らかにして、国会の運営については衆議院の法制局長という立場、法制局という立場を明確に位置づけて、そうして国会を運営するという習慣を立てられるように、あなたが予算委員長のときから、明確にそれをやってやろうということを、ひとつあなたから明言を賜っておきたい。これが私の、長い間議院運営委員会などでこの問題を徹底的に論議した者としての悲願であります。あなたはどう思いますか。
  377. 坪川信三

    坪川委員長 ただいまの問題につきましては、あなたと私とは議運の委員長あるいは理事というような立場でこの論争をやったことも記憶いたしております。しかし、院の重要な運営に関する問題でもありますので、あなたの貴重な意見を頭に踏まえながら、議運の委員長その他とよく御協議をいたしたいと思います。
  378. 安宅常彦

    ○安宅委員 それは少なくとも予算委員長の見識として、予算委員会の場合のみに限定しても結構ですが、法の解釈その他について、内閣側からばかり発言があって、院の法制局が何ら発言の機会がないという運営はどうも片びっこで仕方がないと思うので、そういう立場の人を、きちっとした地位を、国会運営の場合に、予算委員会の運営の場合に置いてもらいたいという意見であります。提案であります。
  379. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま安宅さんは著書を持ってこられまして紹介されましたが、これは著書にもいろいろあるのです。修正権を認めるという著書もありまするし、また修正権には限界があるという説もありまするし、むしろ限界があるという方が多数じゃありませんでしょうか、私はそう思います。  それから、それにもかかわらず、もし国会におきまして予算の編成権にかかわるような重大な修正をする、それが可決されるというようなことになると、これは内閣としては重大な決意をしなければならぬ、こういうふうに思います。
  380. 坪川信三

    坪川委員長 お答えいたします。  ただいま御提示になりました問題につきましては、非常に重要な問題と私は考えております。したがいまして、いま直ちに個人坪川として、あるいは予算委員長という公式な坪川として直ちにお答えすることは控えたいと思いますから、この点御了承願いたいと思います。
  381. 安宅常彦

    ○安宅委員 それはそれ以上言いません。  それで、最後に申し上げておきます。総理、そうした場合においてさえも、どこで判断するかと言えば、判断する人はいないのですとあなたは言いました。最高の議決機関である国会が判断をするのであるというのが社会党の意見であります。これは明確に申し上げておきます。  以上であります。
  382. 坪川信三

    坪川委員長 河村勝君。
  383. 河村勝

    ○河村委員 先ほどから政府側では、政府の予算提案権ということを非常に強調しておられます。そうして、きょうの見解におきましても、憲法の規定から見て、国会の予算修正は内閣の予算提案権を損なわない範囲内において可能と考える、憲法の規定から見てというふうにおっしゃっておりますが、憲法七十三条は、ただ内閣の職務という項目の中で、いろいろな権限と並んで第五項に「豫算を作成して國會に提出すること。」内閣の職務としてこれが書いてあるだけですね。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕 それにもかかわらず、まるっきり同一性を失わせるような、そういうような修正というならともかく、国会の修正に対してきわめて制限的に、さっき総理は、ささいな手直しならよろしいがというような言葉まで使われておるが、そこまで制限的に考えるという論拠は一体どういうことなんですか。その条項の立法趣旨をどう考えているのですか。
  384. 真田秀夫

    ○真田政府委員 きょうお示ししました見解の中で、憲法の規定から見てという文句が入っておりますが、それは砕いて申しますと、国会に予算についての議決権が与えられている。一方七十三条で政府に提案権が与えられておる。これは職責だとか職務だとかおっしゃいましたけれども、これはまさしく内閣の権限でございまして、それは他の条項などと読み比べていただきますと、これは内閣の権限であることはもう明瞭でございます。
  385. 河村勝

    ○河村委員 内閣の権限であることは全然否定をしていませんが、非常に制限的に解釈をしなければならないという読み方はここからはどこからも出てこない、それはそうですね。提案権があるからまるっきり予算案そのものをぶち壊してしまって、同一性が喪失してしまう、全く新しい提案と同じような予算であるというようなことはできないということまではこれは常識的に理解できるが、非常に制限的に考えるという、そういうものはここからは何も出てこないでしょう。
  386. 真田秀夫

    ○真田政府委員 別に制限的にというふうに見解を示したわけじゃございませんのであって、提案権はあることは御了解いただきましたが、その提案権を損なわない範囲であるということなんで、特に制限的に物事を考えるという根本思想ではございません。
  387. 河村勝

    ○河村委員 じゃ、非常に制限的な解釈はとらないということは確認してよろしいですね。  そこで、法律論で言えば、国会の予算修正権に対する法律の条文での唯一の制限というものは国会法五十七条しかないのですね。国会法五十七条の二では、予算修正動議の発議権、ここで衆議院ならば五十名、参議院ならば二十名以上なければ発議ができないという規定と、それから五十七条の三の予算増額修正と内閣の意見陳述という項、ここで予算総額の増額修正については、「内閣に対して、意見を述べる機会を与えなければならない。」、そうですね。だからこの二つだけが国会の予算修正に対する唯一の制限規定なんだ。それ以外には何もない。修正は一般的に認めて、増額修正についてだけこういう規定がある。それは反対解釈をすれば、国会の修正というのは原則的に自由である、そういうことになりますね。
  388. 真田秀夫

    ○真田政府委員 ただいま御引用になりました国会法五十七条の二、五十七条の三、これは修正をされるについての手続規定であろうと思います。それで、先ほど来ここで問題になっておりますのは、国会がお持ちになっておる予算についての修正権の内容といいますか、幅といいますか、その問題でございますので、少し面が違うことではないかと思います。
  389. 河村勝

    ○河村委員 そういう解釈は成り立たないのであって、ここではわざわざ増額修正するときには「内閣に対して、意見を述べる機会を与えなければならない。」、ここで内閣の提案権というものを尊重して、だから内閣の意見を聞かなければならないというそういう制限をつけているわけだ。だから、単なる手続規定ではありませんよね。これ以外に一切、憲法の七十三条以外には国会の予算修正権を制約する規定はない。そうであれば、当然普通に法律常識で読めば、反対解釈としてそれ以外のときには制約はないと解釈するのは当然でしょう。ここでわざわざ内閣というのが出てきているわけですよ。提案者である内閣の意見を聞かなければ増額修正はできないということがわざわざ出てきているでしょう。だから、当然反対解釈が成り立つと考えるのはあたりまえじゃありませんか。
  390. 真田秀夫

    ○真田政府委員 議論を繰り返すようなかっこうになりますけれども、先ほど来申しておりますように、憲法の解釈としてわれわれは国会の予算についての修正権には提案権を損なわない範囲という限定があるだろう、その範囲内で修正をなさるときの手続をこの国会法が五十七条の二、五十七条の三で定めているというふうに解釈されるわけでございます。
  391. 河村勝

    ○河村委員 何遍言っても同じ返事しかしないでしょうね。  そこで伺いますが、政府の憲法解釈というものはどういう権威を持つものですか。総理大臣、どうお考えです。政府の憲法解釈というのは一体どういうオーソリティーを持つものなんです。
  392. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 憲法の解釈はなかなかむずかしいところがありますが、その中で政府の見解は、これは非常に大きな重みを持つ、こういうふうに考えております。
  393. 河村勝

    ○河村委員 解釈権がないとは言いませんが、これは別段第一次的に法律や予算を執行する立場だから一応法律解釈をしてやらなければ仕事にならないでしょうから、それはそれで構いませんが、しかし、これは決して有権的解釈ではなくて、それで国会を拘束するものではない。そこまではよろしいですね。
  394. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 憲法の解釈はこれをどういうふうにするかということを決める機関がないのです。これは私は日本国憲法はそのつかさ、つかさがこの憲法を良識をもって判断するということを期待している、こういうふうに思います。
  395. 河村勝

    ○河村委員 ないことはないのですね、事後的には。もし国会が予算を修正した、それが憲法に違反であると政府がお考えになれば、それは裁判所に違憲訴訟を起こせばいいわけですね。それで憲法八十一条、憲法に適合するかしないかは最終的には最高裁判所、だから有権的解釈を本当にできるのは最高裁だけであって、そのほかは、解釈権というのもおかしいが、その解釈の有権性については政府も国会も同じだ、そういうことでしょうね。
  396. 真田秀夫

    ○真田政府委員 ただいま憲法第八十一条を御引用になりましたけれども、なるほどそこには最高裁判所は最終的な憲法適否の審査権があると書いてございますけれども、ただいまここで問題になっているような予算に対する国会の修正権の問題、これが訴訟事件として最高裁判所に上がる、上告されるというようなケースはちょっと考えられないのじゃないかと思います。
  397. 河村勝

    ○河村委員 いや、私もそれは認めております。これはそのまま裁判所が自主的に出てきて裁くわけにいくわけがないのですから、すぐには使えません。ただ、私が言いたかったのは、政府政府の解釈が非常に有権的な解釈であるかのごとくおっしゃっておるけれども、実は本当に有権的に解釈できるのは最高裁判所だけであって、政府のは、まあ有力と言ってもよろしいかもしれないが、一つの解釈である、そこまではよろしいのですね。
  398. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そこまではよろしゅうございます。
  399. 河村勝

    ○河村委員 そこで、さっき法制局長官も国会の予算修正権について決して特別に制限的に解釈をしているわけではないというところまで言いましたね。ところがこの前の第一次見解だとずいぶん細かいことを言っておりますね。いかにも制限的に書いてある。そうすると、今回いろいろな雑物を取り除いて非常に抽象的ではあるが簡潔になったということは、そういう制限的なものではなくて憲法の規定そのものから出てくる解釈というものは、国会の修正がまるっきり新しいものを出すようなもの、さっき公明党の矢野さんは予算を十倍にするとか十分の一にするとかという例を引きましたが、とにかく換骨奪胎してしまって、提案した予算とは思われないようなものにしてしまう、そういうものはいけないのだ、政府の提案権に対する侵害というものはそういうものだ、そういうふうに解釈してよろしいのでしょう。
  400. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 予算の根幹を動かすような影響のある修正というものは制限されている、私はこういうふうに思うのです。つまり、憲法は法律案につきましては国会に提案権を認める、しかし予算案につきましては国会には提案権を認めておらないわけです。何だと、こう言いますと、これは予算というのは非常に総合的なものである、そういうことを配慮してのことであろう、こういうふうに思うのです。ですから、その総合的な非常に複雑な予算案、その根幹を揺るがすような修正、これは提案権を政府にのみ専属せしめたという憲法の趣旨と違ってくるのじゃないか、こういう見解です。
  401. 河村勝

    ○河村委員 さっきは、ささいな修正ならよろしいがとおっしゃっていて、今度はまた逆の側からおっしゃる場合には、根幹を揺るがすような修正は侵害になる、そこのところのニュアンスがえらい違うわけですね。ですから、この際、とにかく根幹を揺るがすような修正は困るのだというふうに、素直に理解をしてよろしいですね。
  402. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 結構です。
  403. 河村勝

    ○河村委員 そうなりますと、いよいよこの問題は政治決断になってくるわけです。いまの保革伯仲の国会で、予算が一日も早く成立をしないと日本経済に大きな打撃を与えるという、そういう時期に来ております。そうして総理は、自分のお出しになった予算ですから非常に強い自信を持って、これで日本の物価も景気もすべてうまくいくんだという主張をしておられますが、しかし、それは立場としてはわかりますけれども、一般的な評価として、やはりこれでもまだ景気の見通しというものは決して楽観は許さない。このままでは政府の言っておられる六・七%の実質成長率も怪しいのではないかという不安もあるし、一方で物価の上昇による所得の目減りもあって、同時に、それが影響して個人の消費支出も減っておる。だから、これがやはり個人生活に影響を与えるだけではなくて景気の動向にも影響を与えそうだ、そういう実態があることも事実なんですね。ですから、ここのところは、やはり根幹を揺るがすような予算の修正ではなくても、やる気さえあればわれわれが主張しております減税問題も十分そしゃくの余地はあるというふうに考えるわけで、これは決して予算の根幹を揺るがすようなものになるはずはないのですね。まるまる入れたって全体の二十分の一ですからね。ですから根幹にはかかわらない。  でありますから、この辺でもって総理はやはり弾力的な対応は少なくとも考えている、どっちが修正するというようなことはここでは触れません、とにかくそういう用意はあるんだということぐらいはおっしゃって、ここでもって国民——先ほど国家国民のためによくなることならば自分から進んでもやりたいんだということもおっしゃっておるわけですから、ここでもってひとつ政治的な決意を、ぜひともあなたから伺いたい。
  404. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、いま御審議を願っておる予算案ですね、これがベストである、ぜひこれをこのまま議決願いたい、しかも早く決めてもらいたい、こういうふうにお願いをしておるわけなんです。まあしかし、一般的な議論として、これは国会でございまするからいろいろ御審議がある。その御審議の中からこのように変えることが国家国民のためにいいんだということになれば、それは私は田川さんにも申し上げたのですが、国会の修正を待つというようなことはいたしません。みずから修正をするという態度になりますが、しかし、いまの予算がこれはベストじゃありませんか。いま一兆円減税というようなことが言われておりまするけれども、あれが国家国民ために私はいいという感じはいたしませんが、そのことだけを申し添えておきます。
  405. 河村勝

    ○河村委員 最後の発言が蛇足でして、これがないと非常によい答弁だったのですが、そこのところは、いまの段階では総理としてはそれをつけておかなければ立場上困るというふうに理解をしておきますので、どうかひとつそういう意味で積極的に対応をしていただきたい。要望して質問を終わります。
  406. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 寺前巖君。
  407. 寺前巖

    ○寺前委員 この問題が当委員会で問題になりましてから半月たちました。先ほどから各党の皆さんが御質問になっておりますので、私は端的にもう一度復習のつもりでお聞きしたいと思いますので、ひとつ端的にお答えをいただきたい。  まず第一番目の問題は、前回統一見解なるものをお出しになって、きょう新しい見解なるものをお出しになりました。共通した部分がありますし、全然なくなっている部分がある。そこで私は聞きたいのは、削除された以上は、あの削除文はぐあいが悪いから削除さしてもらいますんやということになるんだろうと思うのです。  端的に聞きましょう。これは三項目、前回出されたものにありましたが、第一項目が全文削除になっている。どこがぐあいが悪い。第二項目では、「増額修正を含めて可能と考えるが」というところが削除になっています。どこが悪いのか。第三項目は全面的な削除になっています。どこが悪いのか。逆に言うたならば、たとえば、第三項目の最初のくだりは、「政府の施策がこれによって表現されるものであることを考えると、一般的に言って、内閣の予算提案権との関係から難しかろうと考える。」項の新設問題です。「難しかろうと考える。」ということが削除になったのだからむずかしくないということになるのか、逆論的に言うたら。あるいは、「仮に、「項」の新設でなくても、既存の「項」の内容が全く変ってしまうような修正であれば、同様の趣旨から問題がある。」と言われている。これは削除されたのだから問題がないということになるのか。  私は、これらを削除された以上は、どこがぐあいが悪いから削除したんだという、ぐあいの悪い点はどこにあるのだということを示されなかったならば、天下に明らかにされた内容だからぐあいが悪い。復習のつもりでもう一度私は削除された以上は削除のどの点が悪いのか、はっきりお示しをいただきたいと思う。
  408. 真田秀夫

    ○真田政府委員 ただいま政府のお示しした二つの見解を逐一比較して御質問になりましたが、結局二月八日の政府見解の第一項は、これは実はきわめて明瞭なことだからわざわざ書くまでもないということで落としたわけでございます。  それから第三項にお触れになりましたが、これは前回は項についてはどうだということが問題になっておりましたので、項について見解を述べたわけでございます。(寺前委員「第三項が全面削除になっているのは」と呼ぶ)それは項についてはどうだという御質問がありましたので、項の扱いを書いたわけでございます。  それで結局、今回は、要するに端的に本問題は提案権と修正権との調整の問題だから、その修正権の範囲は提案権を損なわない限度でありますよということで尽きるということで簡明直截に書いた、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  409. 寺前巖

    ○寺前委員 第三項目でわざわざ項を提起をして、そうして施策の表現されたものであるから、項というのは、これは一般的に言って提案権に抵触するからむずかしかろうと、こういうふうに言われたけれども、むずかしかろうというわけにはいかない。このままでよかったらそのままにしておられたらいいわけでしょう。そうは言い切っては悪いという立場があるから削除されたのじゃないですか。このままですか。このままであったらこのままでいいのですよ。どっちかはっきり言ってもらった方がいい。このままではぐあいが悪いから削除されたんでしょう。そうじゃないのですか。  もう一度聞きますよ。このままではぐあいが悪いから削除されたんでしょう。このままですか、お管守えいただきたい。
  410. 真田秀夫

    ○真田政府委員 繰り返して申しますが、このままではぐあいが悪いから削除したというのではなくて、前回は項の扱いはどうだということが具体的に問題になりましたので、それで項についての政府の見解をここに述べたのであって、これはこのままでぐあいが悪いという感じではありません。むしろ本日の矢野さんにお答えしたときのように、この提案権の範囲を損なわない範囲内においては可能であるのであって、むしろ項にはこだわらないという見解でございます。
  411. 寺前巖

    ○寺前委員 このままではぐあい悪いとは言わない、こだわらないと言うが、これはこだわっているのでしょう。「むずかしかろうと考える。」とこだわったのでしょう。それで片っ方ではこだわらない、これはどういうことなんですか。こだわったものが今度はこだわらぬ。そうすると、これはやっぱりこだわっておったのでぐあい悪いので削除したんだということと解釈してよろしいか。
  412. 真田秀夫

    ○真田政府委員 前回の政府見解の三項につきましても、よくお読みになっていただくとおわかりになると思いますが、一般的に言ってむずかしかろうということであって、項だから、項の新設は全然だめなんだとは実は前回も言っていないのです。(寺前委員「「むずかしかろう」とこだわっている」と呼ぶ)一般的にはむずかしかろう。ですから、項の中にも、一般的にはむずかしかろうが、例外ももちろんあり得るという含みは前回の見解の中にも入っておるわけなんでございます。今回はそれを簡明直截に範囲を書きまして、それの応用問題といいますか、運用としては、項だからおよそいけないというのじゃなくて、項にはこだわらないという含みを持って書いてある、こういうふうに御理解願います。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕
  413. 寺前巖

    ○寺前委員 趣旨としてはこのとおりだけれども、項にはこだわらない。そうしたら、やはり変化があることです、こだわったものをこだわらないと言うのだから。  一般論を言っておっても始まりませんので、これは施策にかかわる問題だから、国会が施策にかかわる問題について審議をし、態度を決めていくという上において重大な問題をこの内容は含んでいると思うので、次に聞きたいのは、総理は、ケース・バイ・ケースだということをおっしゃいました。だから、どういうケースの場合がこれは提案権を侵すことにならないんだという、何か経験の上からも、あるいはいまの上においても見解をお持ちだろうと思うのです。何か何となしにぐあいが悪いでという話じゃなかろうと思うのですが、そのケース・バイ・ケースについてどういうことを考えておられるのか。ケース・バイ・ケースだとおっしゃる以上は、私は、そのケースを具体的にお教えをいただきたいと思うのです。
  414. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私がケース・バイ・ケースと申し上げましたのは、予算の提出、この趣旨を損なうような、先ほどは根幹を揺るがすようなというふうに申し上げましたが、予算というものは非常に総合的なものであります。その総合性を損ない、その根幹を揺るがす、そういうような修正は憲法上禁じられておる、こういうことなんです。  そのいかなる場合が予算の重要な修正というふうになるか、これはそれこそケース・バイ・ケース、ケースを見て総合的に判断をする、こういうことでございます。
  415. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃ私はちょっと具体例を挙げて総理に、これはどういうふうに考えておられるのか、国民の要求との関係で聞いてみたいと思うのです。  先ほどから論議になっている一兆円減税の問題、これは野党の各党の皆さん方から、施策の問題として重要な課題だ、どうしてもそれは解決をしなければならないという強い行動が起こっています。そこでいろいろ論議がありましたが、この間も矢野委員の方から、会社臨時特別税というのをかつて予算に組んだことがある、あの会社臨時特別税というものをこの際に財源として一つは考えてみたらどうだろうかという形でもって提起をして、そうして修正を加えてみたらというつもりでもって問題を提起しておられました。これは根幹を揺さぶる問題だと言って提案権を侵害すると決めつけられるのかどうか。  あるいはまた、私どもの党ではこういうことを考えております。有価証券取引税というのは現行〇・一二%である、これを八倍にして一・〇%にせよと言うことによって税率の引き上げで財源々つくるという一つの課題を考えています。こういうふうにして、修正問題というのは、審議をする以上、責任ある党としては当然財源も含めて検討しながらやらなければならぬことです。そうやって国民のためになるように国家予算を改善をしていきたい、これを審議しようじゃないかということをお互いにやってきていると思う。いま私が提起したような問題は、これは全部項の新設ないしは項の中の大幅な修正部分になる内容になると思うのです。かなりの修正になると思う。これは提案権を侵すことになるのだと言うて居直られるつもりなのかどうか、ちょっとお聞きしたいと思う。
  416. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 予算は総合的なものでありますから、一体総合的にどうするのだという全貌をはっきりお示しを願わなければこれは何とも申し上げられない、こういうことでございます。
  417. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、総合的なんであって、個々の問題について項を云々するというやり方はできないんだという見解として聞いていいわけですね。とすると、項にこだわった前回お出しになった、施策にかかわる問題としての項の新設は問題があるというような、むずかしかろうという提起という問題は、総合の中の提案権ということを云々される以上は相矛盾する話にはならぬでしょうか。私はやはり、税にはいろいろな税があるけれども、税の中の個々の問題について検討してみる必要があるんだという問題を提起したら、そんなものは当然のことながら根幹を揺さぶる全体の問題というふうに言って、そこをなぶってもらったら困る。そういう立て方はできないと思うのですが、もう一度お聞きしたいと思うのです。
  418. 坊秀男

    ○坊国務大臣 ただいまの問題は税に触れておりますので、私からお答えを申します。  予算の中には御承知のとおり歳出と歳入とがございます。その歳出につきましては、これは予算の歳出ということによりましてその予算を含んでおるところの政策というものを実施、実行できるということになっております。ところが、その歳入の面の税でございますが、税というものは予算だけに計上するとかあるいは予算の上だけから削減するとかということをやりましても一その歳入というものは、それぞれの収入の法律に基づいてそこで計上せられておるものが、つまり国の収入の見積もりというものが予算に計上されておる、こういうことでございまして、いまおっしゃられました一兆の減税とかあるいは臨時会社特別税だとか、すべてそういったようなものは税でございますが、その税は、背景にある税というものを法律を確立してかかりませんと、予算だけでもってその税を減らすとかあるいはふやすとかというようなことをやりましても、これは予算の問題にあらずして、法律の問題であり政策の問題である。その法律なり政策なりから生じました結果の税収というものを、予算は、見積り表を予算に計上しておるということでございますので、予算においてその税だけをふやすとか減らすとか、それはやっても効果を生じない、こういうことになろうと思います。
  419. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、あなたの見解では、予算だけでもってここで検討してもらったって、なぶってもらうわけにはいきません。法律が済んでからでないと予算はなぶれませんよという論になりますよね。そうすると、この予算委員会で税を財源として法律にかかわるようなことをなぶってもらったって、ここでそれじゃ修正することは断じてできませんよということになってしまいますな、法律にかかわる問題だということになったら。
  420. 坊秀男

    ○坊国務大臣 もし法律が伴いませんと、税というものは国民に重大なる負担をかけることでございますから、そこで国民に負担をかけるためにはやはり税によりましてこれを決めていきませんと、その結果によって出てくる収入は、もちろんこれは増減ともに予算に計上しなければならない。しかし、私はこれはどっちが先、こっちが先ということよりも、予算に計上されておる税というものは、法律とは不可分一体、裏と表と申しますか、不一不二と申しますか、一にして二、二にして一と申しましょうか、そういう関係にあるものだと思っております。
  421. 寺前巖

    ○寺前委員 そんなことわかり切ったことで、だから予算をつくったら今度はそれに伴うところの法律の裏づけがなければならないという、法律を予算関連法案としてすぐに審議するということでやるのはこれはわかり切った話ですよ。いまの修正権の問題とは別でしょう、そのことは。だから税の修正を、新しい項をつくったりあるいは現在の税について部分的に内容をなぶるということが、項の大きな金額としてもウエートを占めてきた場合に、それが提案権の侵害だということになったら、この国会が予算に対する重要な審査はできぬことになるじゃないかという問題として私は提起しておるのであって、その法案との関連問題というのはわかり切った話ですよ。これは別の話です。ですから、いまは国民の側から言ったら、たとえばいま言ったような一兆円減税の問題もありますし、あるいは産業投資特別会計というのがある。ところが、これに対して国民生活に関係するところの投資にこの会計を変えてしまえという論議も当然起こることだろうし、被爆者援護法として制定せよ、国家賠償としての制度をそこにつくれという形で従来からも問題にしてきている。こういう内容を予算として編成するということがここで論議になる場合に、これは施策の上においては従来と違う大きな施策を含んでいる。大きな施策を含んでいるからといって、たとえばこの前言われた、これが施策にかかわる問題は修正権としては侵害になると言わんばかりの話では、むずかしかろうという話では、一体国民の長年にわたって一番大きく問題にしておったことは、それじゃ予算の上においては反映することができないということになってしまうじゃないか。  だから私は総理に聞きたいと思う。具体的に国民の課題として産業投資の問題とかあるいは被爆者の問題とか、こういう施策にかかわる問題は明らかに項にかかわる問題として出てきているものを、ここで審査をして修正をしてもらっては困るのだとあくまでも言い切られるのかどうか、この点について再度お聞きしたいと思う。
  422. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただ単に項という問題にこだわる考えはありませんけれども、予算の根幹というか、その趣旨を没却するような、そういう修正につきましてはこれは応じかねる、こういうことを申し上げておるわけでございます。いろいろ設例がありましたけれども、予算というものは総合的なものでございまして、総合的な全貌を見なければ何とも意見は申し上げられません。
  423. 寺前巖

    ○寺前委員 施策の問題を具体的に出した場合には、具体的には総合的ということでおっしゃって逃げてしまわれるのだから、個々について説明することはやはりむずかしい。ケース・バイ・ケースとおっしゃったけれども、事実上ケース・バイ・ケースでようお述べにならない、私はそういうふうに理解をせざるを得ないと思う。  そこで、先ほどから論議になった点ですけれども、この憲法の八十三条なり八十六条、ここで、たとえば八十六条には、「内閣は、毎會計年度の豫算を作成し、國會に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」こうなっています。そこで内閣は予算を作成するんだ、国会に出すんだ、こうなっておる。国会に案件としてお出しになった以上は、その審議をするのは国会の側だと思う。この審議にあなたたちは制限があると言われるのか、全面的に出された案件としての予算について自由に御審議くださいとおっしゃるのか、審議の問題についてまずお聞きしたいと思う。
  424. 真田秀夫

    ○真田政府委員 お挙げになりました条文にありますとおり、政府は毎年予算を作成して国会に提出して議決を受けます。議決されるのは国会でございますから、御審議も十分自由になさって結構なんですけれども、一方政府の提案権というものも憲法に書いてあるわけですから、その修正をされるについては提案権を損なわない範囲で許されるのだろう、こういう意味でございます。
  425. 寺前巖

    ○寺前委員 あなた要らぬことをすぐ言うからくだらぬことになるのだ。案件を提起して審議をするのは国会でしょうと言うのです。その国会の審議に制限がありますかと聞いたのだ。ないですね。あったら出てきてください。ないですね。出てきますか。あるのですか制限が、審議に。
  426. 真田秀夫

    ○真田政府委員 審議は十分なさって結構なんですが、審議の結果、審議をするのは議決するための手段として審議なさるのですから、審議は十分お尽くしになって、その結論として議決されるときの修正権の範囲がきょうここで問題になっている案件だろうと思います。
  427. 坪川信三

    坪川委員長 寺前君に申しますが、持ち時間が過ぎましたので、簡潔にお願いします。
  428. 寺前巖

    ○寺前委員 審議は十分やってくれ、議決は制限があるがごときことを言われると、それじゃ国会議員はオブザーバーか。発言だけは自由にやって、制限を受ける、こういうことになるんですか。先例集にこういうのがありますよ。「議案を併合し、又はその内容若しくは題名を変更するのは修正の範囲内とする。」「議案の修正範囲は、広汎であって、字句の修正は勿論、議案を併合し、又はその内容を変更し、拡張し若しくは縮小し又は題名を変更するのはすべてこれを修正と認める。」出された議案に対してどんな字句の修正であっても全面的にできますよというのが先例として、議決としてもちゃんとあるのです。あるいはまた昭和二十三年両院の法規委員会で、「国会は、予算の増減又は予算費目の追加若しくは削減等すべて内閣の提出した予算に関し、最終且つ完全な権限を有する。」と、両院議長あてに勧告をやってきているという歴史もあるのです。国会が、このように内閣が出してきた案件に対して、その審議を自由にし、そして議決は、それは賛成することも反対することも修正することも、これが基本的にあるというのは新しい憲法の特徴であって、この憲法の条文以外に他に何物もないというのがこの新しい憲法を見る立場でなければならないと私は思います。  時間がありませんので、これで終わります。
  429. 坪川信三

    坪川委員長 田川誠一君。
  430. 田川誠一

    ○田川委員 いままでの予算修正の法律論争を聞いておりまして、これは国会の機能の根本に触れる重大問題であると思います。しかし、いまこの時期にこの問題に決着をつけるということは、総理のお考えをお聞きしまして、水かけ論になってなかなか困難だと思います。そこで、いまこれを解決していく道は、予算修正という前提に立って良識ある予算修正の慣行を実際に積み立てていく、これ以外に方法はないのじゃないでしょうか。ですから、私はきょう実は意見だけ申し上げまして質問をするのをやめようと思ったのですけれども、先ほどいろいろな方の意見を聞いておりまして、二、三お聞きしたい点がございます。  その一つは、提案権を損なわない範囲、これが国会と政府との間で折り合いがつかなかった場合、総理は最後の決着をつけるものは何もないとおっしゃいました。しかし、その後で国会が政府の提案権を損なうようなことを決めた場合には、重大な決意をせざるを得ない。その重大な決意というのは、総辞職かあるいは国会の解散かという以外にないと思いますね。総辞職するというのはどういうわけで総辞職するのでしょうか。それから国会を解散するというのはどういうわけで解散をなされるのですか、そのことをお伺いいたしたい。
  431. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私はまだ解散をするんだとかあるいは総辞職をするんだとか言っておりません。重大な決意をするということでございます。
  432. 田川誠一

    ○田川委員 重大な決意というのは、総辞職か解散しかあり得ないのですね。で、いま解散だとか総辞職だとか総理の口から言葉だけでもなかなかおっしゃりにくいと思いますからそれ以上聞きませんが、仮に総辞職をする場合あるいは解散をする場合、総辞職の場合を想定してみますと、やはり立法府に、言葉は適当じゃないけれども、負けたということじゃないでしょうか。つまり、立法府の意見を尊重しなければならぬという判定が出た場合じゃないでしょうか。それから解散をせざるを得ないというのは、政府が国民に信を問うわけですから、国民の意見が判定をするということになるんじゃないかと思うのです。  ですからそういう意味で、国会と政府でその範囲について折り合いがつかなかった場合にはやはり国民が最終的に、つまり国会が最終的に判断をせざるを得ないということになるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
  433. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この憲法問題は、この点につきましてはこれをどういうふうに解釈するかという判定の機関がないのです。私は、日本国憲法は国会に対し、行政府に対し良識というものを求めておる、こういうふうに思うのです。ですから、その良識を越えた度外れな修正というものがよもや国会において提起されるであろうということを予定いたしませんです。
  434. 田川誠一

    ○田川委員 これは水かけ論になってしまいますが、私どもはあくまで国会に権限がある、こういう見方を捨てておりません。  もう一つお伺いをいたしたいのは、予算委員会で五十二年度の予算案にかかわる一兆円減税の論議の中でこういう問題が起こって、そして政府が予算提案権を損なわない範囲ということを非常に固執しておられるわけです。その範囲を政府が判定するということになってしまいますと、先ほど来お話がありましたように、いま政府とわれわれ野党との間で論議されているこの程度の減税の規模や財源論争まで、政府の予算提案権を損なうような全面的修正とみなされる恐れが出てくるのであります。それでは予算委員会における減税の審議なんというのは全く意味がなくなってしまうわけです。ここで幾ら審議をしても意味がないことになるわけです。なぜ政府が、総理がこの範囲というものにこだわっていらっしゃるか。これはどうも最近の与野党接近、特にこの予算委員会が与野党逆転の委員会になった、そういう現状から見て、予算修正について野党が何かむちゃくちゃな修正をやるのじゃないだろうかというような疑心暗鬼が政府の中に、総理の中にあるのではないかという懸念を私は実は抱いておるのですけれども、その点についてはいかがでございましょう。
  435. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そういうことじゃないのです。憲法解釈からいいますと、戦前、項というものが非常に大事な立場にあったわけです。戦後におきましてもそういうような説が多かったわけでございますが、とにかく予算の提案の趣旨を損なわないという範囲におきましては項の問題にはそうこだわりは持たぬ、こういう見解まで申し上げておるわけでありまして、田川さんのおっしゃるのとちょっと逆のような立場にあるわけです。
  436. 田川誠一

    ○田川委員 もちろんそういうような疑心暗鬼を抱いていたのではわれわれも容赦することができません。仮に政府の言うとおりに修正の限定論を認めるにいたしましても、それは単に形式的に修正ができないということであって、この予算委員会で私ども野党が一致して予算案の撤回を求め、編成替えを要求することもできるいまの現状、こういう現状からしますと、政府幾ら修正限定論を盾にとって野党の修正要求を抑えようとしましても、現在の予算委員会の構成からすれば、野党の意向によって全然新たな予算を改めて内閣に編成提出せしめることも不可能ではないということは先ほど来お話がありましたし、私どももそういう事態あり得ると思っているわけです。これについて総理はどのようなお考えでいらっしゃいますか。
  437. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは組み替え動議が成立いたしまして、そしてそれが妥当な組み替えだということでありますれば、政府はその動議を尊重して予算の再提出をするということになりまするし、また、その動議は妥当でないということになれば、その際はその際で重大な処置をとらなければならない、こういうふうに考えます。
  438. 田川誠一

    ○田川委員 余りこれ以上申し上げることを遠慮いたしたいと思いますが、最後に、私たちは、憲法の趣旨から申しましても、国会の予算修正権には限度はない、限定はない、こういうことを前に表明しております。しかし、そうかといって、これについて予算の持つ特別な性格、内閣の予算提案権などの関連におきまして、おのずからなる制約も内在していることをわれわれはわきまえているつもりでございます。  国会の予算修正権に限界があるかないかの法律論をこのままいつまでも続けていくということは、余り現実的ではなくなってきたような感じがいたします。要は、この機会に、国会の審議の機能を含めて、予算審議の新しい慣行をつくるための努力を政府も国会もお互いにやっていくことではないかというのが、実は私どもの主張なんです。これまでの予算編成では、大蔵省の原案づくりから政府案の決定されるまでの間に与党の意向が深く織り込まれてくるために、国会の審議といっても、与党多数のもとでは形だけで終わって、野党の政策が予算案に吸収されない傾向が非常に強かったことはよく知られているところであります。福田内閣になりましてから、予算編成の前に、あるいは予算編成中、あらかじめ与野党首脳会談などを持たれるようになりました。大変結構なことだと思いますが、結果はどうも野党の意向政府が聞こうという姿勢が残念ながら余り示されない、そういう感じがいたします。そういうことで、予算案がそういう状態のままに国会に提出をされているのが現状でございます。つまり、行政府の優位の形で国会の審議が行われている状態でございます。  私は、たびたび申しますように、こうして与野党が伯仲してきたこうした国会では、野党による修正がようやく実現できるような政治情勢が生まれてきたのです。したがって、このような公開の場で公開の論議を通じて必要な政策を実質的に決定していくことが、議会制民主主義を高めていく基礎になるものとわれわれは確信をしているのでございます。立法府に属する私たちも、人気取りのはでな提案とか、あるいは支持団体の圧力によって政策全体の体系や整合性を見失うような無責任な行動を実際はとれなくなったのです。ですから、政府もこれまでやられていたような態度を、修正限定論という形式論に余りとらわれないで、もっと弾力的な態度をもって野党の修正意見をどしどし吸収していくような努力をすべきではないかと思うのですが、いかがでございましょう。
  439. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 法律論、憲法論と実際の国会の運営論、これはおのずからはっきり区別をしなければならぬものであると思うのです。憲法論といたしましては、私は国会の修正、これは田川さんも御理解を持たれておるような御言動でございましたけれども、制限がある、提案権を損なうそういうような修正はできない、こういう考えでございますが、しかし、その憲法論を離れまして、憲法の範囲内であることはもちろんでありますが、そういう中では、協調と連帯、これは国会運営における要諦でなければならぬ、そういうふうに考えております。
  440. 田川誠一

    ○田川委員 予算修正についてできるだけ野党の意見をくみ入れて、これから残る審議期間やっていっていただきたい。総理はここ少し私どもの言っていることをやや理解しているような態度も見られますけれども、最後までこの気持ちを維持していただきたいと要望をします。  そこで、いま野党内でいろいろ話し合いをしております。やがてまとまると思います。与党とも話し合いをする、あるいは政府意向も聞く。しかし、なかなかこれは決着がつくのはむずかしいと思いますけれども、その場合に、これを打開していく道を総理は真剣に考えていかなければならぬと思うのです。とにかく予算を年度内に通さなければならぬ。しかし、政府が自分の出した予算案がこれで満点だと言っていつまでもそれにこだわっていたら、年度内に予算を成立させるということは非常にむずかしくなる。あるいは暫定予算をもっともっと長い期間組まなければならぬような事態だって起こる。ですから、そういうことを考えると、総理は最大の努力をすべきだと思う。そのためには、これはこの間も総理もちょっと言われていたようですけれども、総理が野党の党首と裸になって話し合いをするというようなことをどうしてもやらなければならぬ時期が必ず来ると思う。それをおやりになる御意思がありますか。
  441. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は具体的にどういう行動をとるかということをいまここで申し上げることは差し控えますが、要は、これは協調と連帯だ。かたくなな一本調子でいくわけじゃないのです。ただ、御理解願いたいのは、予算というものは、これは非常に総合的なものでありまして、これは先ほどからいろいろ話が出ている、ちょこっと一カ所手直ししますとそれが全体に波及するという、そういうような性格のもので、なかなか予算の修正というのは、法律案の修正なんかと違いましてかなり慎重な態度をとらなければならぬだろう、こういうふうに思っておるのです。しかし、御意見傾聴いたしました。きょうは憲法論の場でありますので、その具体的な適用の問題につきましてはまた後日見解を述べさせていただきます。
  442. 田川誠一

    ○田川委員 私は憲法論や法律論を申し上げているのじゃないのです。総理の姿勢をただしているのであって、予算編成前に野党の党首とお会いになって、そしてお話し合いをされた。そして現在、これからも政府と野党との間に予算案を通じてのなかなか解決できない道が出てくるわけです。そういう解決ができない問題がデッドロックに乗り上げたときに、総理が本当にこれを打開していくという気持ちがあるかどうか。その一つの方便として再び野党の党首と会うか会わないか。そんなに微妙な問題じゃないと思うのです。その決意を私は伺っているわけです。
  443. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 各党と裸になって話し合いをいたします。
  444. 坪川信三

    坪川委員長 この際申し上げます。  先刻安宅委員が取り消された発言については、委員長において適当に措置いたします。  以上をもちまして、総括質疑は全部終了いたしました。  次回は、明二十四日午前十時より開会し、一般質疑に入ります。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時十分散会