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1977-02-19 第80回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年二月十九日(土曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 大村 襄治君 理事 栗原 祐幸君    理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君    理事 細田 吉藏君 理事 安宅 常彦君    理事 楢崎弥之助君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    伊東 正義君       稻葉  修君   稻村佐近四郎君       越智 通雄君    奥野 誠亮君       片岡 清一君    金子 一平君       川崎 秀二君    木野 晴夫君       北川 石松君    笹山茂太郎君       始関 伊平君    白浜 仁吉君       瀬戸山三男君    根本龍太郎君       藤井 勝志君    古井 喜實君       松澤 雄藏君    松野 頼三君       阿部 昭吾君    井上 普方君       石野 久男君    上原 康助君       大出  俊君    北山 愛郎君       小林  進君    佐野 憲治君       新盛 辰雄君    多賀谷真稔君       藤田 高敏君    武藤 山治君       村山 喜一君    坂井 弘一君       鈴切 康雄君    広沢 直樹君       二見 伸明君    薮仲 義彦君       大内 啓伍君    河村  勝君       寺前  巖君    三谷 秀治君       大原 一三君    田川 誠一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 福田  一君         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 渡辺美智雄君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  田中 龍夫君         運 輸 大 臣 田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 長谷川四郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       小川 平二君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      園田  直君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      藤田 正明君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      西村 英一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 三原 朝雄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 田澤 吉郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         総理府賞勲局長 川村 皓章君         行政管理庁行政         監理局長    辻  敬一君         防衛庁参事官  平井 啓一君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁装備局長 江口 裕通君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         科学技術庁研究         調整局長    園山 重道君         国土庁土地局長 松本 作衛君         国土庁大都市圏         整備局長    国塚 武平君         国土庁地方振興         局長      土屋 佳照君         法務省民事局長 香川 保一君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 中島敏次郎君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 岩瀬 義郎君         大蔵省銀行局長 後藤 達太君         農林大臣官房長 澤邊  守君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省構造改善         局長      森  整治君         農林省農蚕園芸         局長      掘川 春彦君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         農林省食品流通         局長      杉山 克己君         水産庁長官   岡安  誠君         通商産業大臣官         房長      宮本 四郎君         通商産業省貿易         局長      森山 信吾君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省立地         公害局長    斎藤  顕君         通商産業省機械         情報産業局長  熊谷 善二君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         中小企業庁長官 岸田 文武君         運輸大臣官房長 山上 孝史君         運輸省港湾局長 大久保喜市君         運輸省航空局長 高橋 寿夫君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省河川局長 栂野 康行君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治大臣官房長 近藤 隆之君         自治省行政局長 山本  悟君         自治省財政局長 首藤  堯君  委員外出席者         内閣参事官   角田 達郎君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月十九日  辞任         補欠選任   白浜 仁吉君     片岡 清一君   北川 石松君     森山 欽司君   大出  俊君     村山 喜一君   多賀谷真稔君     北山 愛郎君   武藤 山治君     新盛 辰雄君   浅井 美幸君     薮仲 義彦君   矢野 絢也君     鈴切 康雄君   藤原ひろ子君     三谷 秀治君 同日  辞任         補欠選任   片岡 清一君     白浜 仁吉君   北山 愛郎君     多賀谷真稔君   新盛 辰雄君     武藤 山治君   村山 喜一君     大出  俊君   鈴切 康雄君     矢野 絢也君   薮仲 義彦君     浅井 美幸君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十一年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十一年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和五十一年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ————◇—————
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  昭和五十一年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十一年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十一年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三件を一括して議題とし、質疑を行います。広沢直樹君。
  3. 広沢直樹

    広沢委員 最初に、私は、大変問題になっております在韓米軍削減問題について、総理並びに関係大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。  カーター大統領は、選挙の過程から、在韓米軍撤退あるいは削減を主張されておりました。現在まで米政府の新政策の目標は、統一的には明確にされておりません。  そこで、お伺いいたしますが、この在韓米軍削減問題は、韓国自身はもとより、わが国内においてもあるいは米国内におきましても、反対論があることは御承知のとおりだろうと思います。そのような中で、カーター政権は、どのような理由をもって撤退ないしまた削減を主張しておるのか、また、それによってカーター政権としては何を期待しておるのか、こういう点について総理はどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、まずお伺いしたいと思います。
  4. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 カーター政権考え方は、これはニクソン・ドクトリン、あの考え方の延長線上の考え方ではあるまいか、そういうふうに私は考えるのです。カーター大統領選挙戦のときそのことを言明をしておるわけです。モンデール大統領と会った際にも、まだ考え方の具体的なことは決まっておりません、しかしカーター大統領が国民に公約したことだ、ですからこれはいずれ実行されなければならぬ問題である、こういうふうに言っておりましたが、しかし、その実行につきましても、これはアジアの全局を見て現実的にこれを行うことになるであろう、こういうふうに思う、こういうふうに言っておるわけでありまして、私どもは総合的に観察いたしまして、そういう基本的な考え方は持っておるけれども、具体的にいついかなる段取りにおいてこれを行うかということについては全く白紙の状態である、こういうふうに見ております。
  5. 広沢直樹

    広沢委員 いま総理お答えのように、撤兵ないしは削減は早晩段階的なものとしてあるのではないかということは、私たちも思うわけであります。しかし、日韓議連韓国側李秉禧幹事長共同記者会見で申しておることは、いまのところ撤兵削減もあり得ない、こういうふうに見解として述べております。  そこで、お伺いいたしますけれども日本政府としては、撤退は実現するものと考えておられるのか、それとも選挙公約とはいえ、簡単には実現できるものではない、こういうふうに分析されておられるのか、その点をひとつお伺いいたします。
  6. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、朝鮮半島が平和的に統一される、こういうことが理想的である、恐らくこれはアメリカにおいてもそう考えておると思うのです。そういうことを考えますと、長期的に見ますと、在韓米軍撤退ということになるだろうと思うのですが、これは私は相当時間がかかる、そういうふうに思います。しかし、当面緊急の話として、どうも米軍地上軍韓半島からそう早急に撤退するというような動きになることはないのじゃないか、そんなような感想を持っております。
  7. 広沢直樹

    広沢委員 いま来日しております朴東鎮外相鳩山外相外相会談が持たれておりますけれども、その中で、この地域の力のバランスを急激に崩すことは好ましくないということで意見一致を見た、こういうふうに報道されておるわけであります。会談の結果ですね。その点についてはそのとおりであるかどうか、外相にお伺いいたします。
  8. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいまおっしゃいました、最後の意見一致を見たという点は事実に反するところでございまして、今回来日されました朴外務部長官といろいろ懇談をいたしまして、私も先方の御意見はいろいろ伺ったわけでございます。当方からは、先般モンデール大統領が見えたときのお話をいたしまして、そういったことで、意見一致を見たという表現は適切でないと思う次第でございます。
  9. 広沢直樹

    広沢委員 意見一致を見ていない、ただそのことについて話し合っただけである、こういうことでございますが、そうすると、日本韓国との間で、この撤退問題に関する認識が異なるのかどうか、その点どうでしょうか。
  10. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私の方からは、先方に対して、当方としての意見は申しておりません。先方からいろいろお話を伺ったというのが事実でございまして、認識を異にするということも言えないわけでございまして、お互いお話をし合うということでございまして、私の方は先方のいろいろな事情を伺った、こういうことでございます。
  11. 広沢直樹

    広沢委員 それならば、日本はこの問題に対しては独自の判断をするということでございますか。
  12. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日本といたしましては、先般来福田総理大臣から御答弁申し上げておりますように、朝鮮半島におきます平和あるいは韓国の平和と安全というものが保たれますためには、やはり力の微妙なバランスということとを維持することが大事であるというふうに考えておりまして、別に朴外務部長官との間にそういう点につきまして意見不一致ということはございません。
  13. 広沢直樹

    広沢委員 いまの外相答弁によりますと、力のバランス、これを損なわないということであれば意見不一致はない。朴外相は、急激に力のバランスを崩すことは好ましくないという話があったということと、いまおっしゃっておられる力のバランスを急激に崩すことは好ましくないということでは、いまの答弁では一致しているということではございませんか。
  14. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 朴外務部長官韓国情勢につきましていろいろお話を伺いました。そういう意味で、これからしからばどうするかという点につきましてはお話し合いをしたわけではないのでございます。そういうことでお互い認識を深め合うということが今回の来日の主な目的でございまして、そこで何らかの結論を出すというような、そういった方向での話し合いをしたわけではないのでございます。その点は御了承いただきたいと思います。
  15. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私ども朝鮮半島におけるバランスバランスと言っておりますのは、ひとり軍事ばかりじゃないのです。それは経済上の問題もありましょう、社会上の問題もありましょう。それからさらに、その背後におきましては中国、またソビエトロシアアメリカというような勢力が朝鮮半島には何らかの意味において影響力を持っておる。その総合的な均衡の上に私は朝鮮半島におけるバランスがとれておる、こういうふうに思っておるのです。それを私は微妙なバランスだ、こういうふうに申し上げておるわけであります。ひとり軍事だけの問題ではない、こういうふうに御理解を願います。
  16. 広沢直樹

    広沢委員 鳩山外相にもう一つ聞きますけれども朴外相は、この地域の力のバランスを急激に崩すことは好ましくないという意見は述べておったのでありますか。確認の意味で……。
  17. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 朴外務部長官は、趣旨としてそのような御意見でございました。
  18. 広沢直樹

    広沢委員 そうすると、総理がいまお答えになりましたバランスを損なわない、そういうこととこのことは一致することになるわけでありますが、急激にバランスを崩さないならばという前提条件がある。それは好ましくないんだということであれば、その条件が満たされることになった場合は、いわゆる撤退はやむを得ない、こういう意味理解をされるわけでありますが、そのように外相はとっておられるわけでありますか、いかがですか。
  19. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先般、この正月でございましたか、新聞に出ておりましたが、朴大統領の年頭の話みたいなものがございましたとおり、未来永劫に米軍に依存するというようなことは考えてないというような御意見も承っております。
  20. 広沢直樹

    広沢委員 それでは、総理は二月の十四日当委員会におきまして、バランスを損なわない撤退は容認するかということについて、そのとおりであるとお答えになっていらっしゃいます。このことは、基本的には撤退には反対しない、こういうことでございますか。
  21. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 朝鮮半島の平和を支えておる微妙なバランスが損なわれないという限りにおいては、米軍撤退問題というものもこれは考えられ得る問題である、こういうふうに考えます。
  22. 広沢直樹

    広沢委員 それではお伺いしますが、現在南北関係バランスが保たれていると見ておられるのか、あるいはどうでしょうか。
  23. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まあ大体とにかく平和が実現をされておる、こういう状態であり、平和が実現されておるという前提として、朝鮮半島におけるバランスというものは保たれておるのじゃないか、そういうふうに見ております。
  24. 広沢直樹

    広沢委員 そうすると、いまこの在韓米軍地上軍撤退が仮にある、軍事的な力の関係でいきますと、そこに撤退が行われる、こういうことになれば、バランスがその意味では崩れるということになりますですね。どうでしょうか。
  25. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 一概にそうは言えないと私は思うのです。まあバランスというのは広い意味でございますけれども、ただその軍事面だけを見てみましても、韓国軍自体近代化、そういうものが行われるというようなことがあれば、地上軍撤退がありましてもそれを補う、そういうことにもなりましょうし、また、この米地上軍撤退が行われましても、反面において韓国経済力がそれを補うというような事態もありましょうし、事は総合的な問題だ、こういうふうに思うのです。その一こまとしての軍事問題がある、こういうふうに理解をいたしております。
  26. 広沢直樹

    広沢委員 それでは、その撤退協議が行われようとした場合、当然日本側としては、韓国条項もありますし、独自の判断というものをしなければならぬ。総理は、直接介入はしないけれども意見は述べる。ですからそれは当然だと思うのですね。そういう場合は、いま言うような調子でバランスが崩れるとこういうふうに思われる場合については撤退について反対をなさる。その他の条件で、いま総理お答えになりましたように埋め合わせがついていって総合的なバランスというものが崩れてないという場合は、これはまあ容認はします、こういうことはお答えになっていらっしゃるのですから、その反対に崩れるという場合は、やはりそう日本独自の判断を持った場合はこれは反対します、こういうことですか。
  27. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まあこれは米韓間の問題で、日本国反対する、賛成するという立場じゃないですよ、そもそもが。私ども反対するということを言ってみましても、これは別に効力は両国に対して実質的にはないわけです。ただ、韓国にいたしましてもアメリカにいたしましても、日本立場というものは、これはアジアにおいては非常に重要な立場ですから、その意見参考にするということはあると思うのです。その参考にするための意見、これは申し述べるつもりでございます。その申し述べる要旨は、朝鮮半島におけるこの微妙なバランスが失われないというようなことについては配慮すべきである、こういうことなんでありまして、これはあくまでも参考意見でありまして、介入するとか、それに対して反対する、反対を押し切ってやるというのに対しましてはわが方としてはこういう立場をとる、こういうようなことじゃないのであります。
  28. 広沢直樹

    広沢委員 カーター大統領は、撤退問題については日韓との緊密な協議を段階的に行う、こういう言い方をなさっていらっしゃる。もちろんそれは韓国条項もございますから、ただ米韓の問題だけで取り決められる段階ではない。当然日本にも相談しなければならぬ、協議する、こうおっしゃつていらっしゃる。また、過般モンデール大統領が来られた場合も、その話が出たやに伺っているわけであります。ですから、そのときには、日本側としては独自の判断としてこうだということはやはり言わなければならない。それが総理のおっしゃる意見といいますか、日本側態度というものは明確にしなければならないわけでありますね。したがって、その場合にバランスが崩れるというふうに考えた場合においては、やはり反対なら反対という意見を述べなければならない。いまおっしゃったように、反対してどうこうするというようなことではなくて、態度ははっきりさせなければならないということは当然のことでありますね。その点、いかがですか。
  29. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 介入はいたしませんけれども日本政府見解は明瞭にいたします。
  30. 広沢直樹

    広沢委員 現在、朝鮮半島においては依然緊張状態が続いていると見るべきなのか、それとも緊張緩和状態にある、こういうふうに判断されているのか、いかがでしょう。
  31. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私どもとして余り詳しいこともわかりませんから、緊張が緩和しているのか続いているのかと言われると、正確な答弁をすることはまことにむずかしいのです。しかし、韓国政府緊張が続いておる、こういうふうに言っておるのですが、その韓国政府言い方につきましては、ああそういう状態かなあと、一応こういう理解をすべきである、かように考えております。
  32. 広沢直樹

    広沢委員 韓国言い分を聞き、それからその状況において緊張状態が続いているという御認識答弁があったわけでありますが、そうなりますと、現実の問題としていま在韓米軍がいわゆる撤退する——撤退というか削減するということになった場合に、緊張状態が続いているという見方からすると、これは賛成はできない、反対する、こういうことになりますね。どうでしょう。
  33. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この問題について、わが国当事者じゃないのですよ。ですから、その当事者でない問題に反対するとか賛成するとか、そういうような言い方は、私はいたすべきものじゃないと思うのです。しかし、日本政府としてはこういう考え方を持っておる、これはアメリカ政府においては考慮してもらいたい、こういうことは言えると思うのですが、さあ反対だ、反対を押し切ってやるのにはわが国としてはこういう態度をとるのだ、そういうような言い方はできないと思うのです。
  34. 広沢直樹

    広沢委員 当事国じゃありませんから、反対してどうこうするということはないのかもしれません。やはりそれについては、韓国条項に基づいても、あるいはカーター大統領の在韓米軍削減の方針からしても、当然相談はあると思う。協議する、緊密な協議をやってこれを行う。相当慎重な言い回しをなさっていらっしゃるわけです。ですから、これは当然意見は求められるわけですから、それに対して隣国としての韓国条項に基づいての情勢判断から、これに対してはっきりとした態度を表明しなければなりません。ですから、私は伺っているわけです。  いま総理は、緊張は続いている、こういう認識に立っていらっしゃるわけですね。もちろん、これまでの外交交渉もあるわけでありますし、当然情勢というものはわが国としてもつかんでいらっしゃるはずであります。ところが、四十九年の八月ですか、日本政府見解として、いわゆる北からの脅威、緊張状態が続いているかという質問に対して、それは当事国間の問題だけれども、あるいは韓国の問題ではあるけれども、しかしながら、客観的に見た場合にはその事実はない、緩和状態にあるんだということを当時の木村外相は発言なさっていらっしゃるわけです。いま総理お答えは、緊張状態が続いているという向こう側言い分も引用されて見解を述べていらっしゃるわけでありますが、その点はどうでしょう。これはそのときから情勢が変わってきたという御認識なんですか。
  35. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、最近における南北関係というものはそう基本的に変わっておらぬと思うのです。一張一弛というか、一時は多少緩む、多少は緊張する、こういうような状態じゃないかと、こういうふうに思いますが、しかし、南北対立関係が残念ながら今日なお現存しているというふうに韓国政府はとらえておるわけなんです。そのことは私ども頭に置かなければならぬ問題である、こういうふうに考えております。
  36. 広沢直樹

    広沢委員 私が先ほどお伺いしたのは、向こう言い分は頭に置かなければならぬ、それは無視することはできない、こういういまのお話でありますが、総理は、日米首脳会談、先に開かれますから当然御出席になるでしょう。きのうの質疑の中でも、その中で韓国の問題も触れられるというお話がありました。どうせ向こうからも当然話が出るでしょう。その場合に総理としては、あるいは日本政府としての客観的立場にせよ、やはり状況を掌握して、それに対する意見を述べなければならないと思いますね。そのときに、向こうはそう言っていますよということでこのことが済まされる問題か。いま大体そういう御答弁なんですけれども、そうじゃなくて、結局日本政府、その考え方は統一されて、こういうふうに考えているということをはっきり御答弁いただきたいと思うのです。何か相手はこう言っているんだよというふうに、相手任せの、それこそ客観的な、意見ではなくて、見方を言っているだけでございますから、それではならないと思うのです。  私が聞いているのは、そういうことじゃないのです。日本政府として過去においては、三年前ですか、そういう客観的事実はない、北からの軍事的脅威はない、そういうふうに外相は明確に答弁されている。いま向こうがそう言っているから緊張状態があるのでしょうというようなことでは、これはお答えにならないと思うのですね。
  37. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 緊張緊張というて、いろいろ意味がありますものですから、私は非常に注意深く申し上げているのですが、南北の間に私はいま軍事的な衝突の脅威がある、こういうふうな認識は持っておりません。しかし、さらばといって、この両国の間に握手をしてざっくばらんに話し合うというような状態にもない、そういうような理解でございます。私は、南北朝鮮、これが十分に話し合いをいたしまして、そしてだんだんだんだんと平和統一の方向にいくことを期待しておるのです。そういう状態には今日はない。なおまた、南北の間においていろいろな意見の対立がある状態であるということにつきましては、そのとおりに思います。
  38. 広沢直樹

    広沢委員 ここはやはり最大の問題だと思うのですね。現在、やはり在韓米軍削減ということが現実の問題として取り上げられてきた。その段階においての判断というものは、これは的確になさらなければならぬ。また、当然米韓の問題にせよ、日本とよく協議するというんですから、日本の客観的な情勢判断にせよ、その意見は求められることは事実なんですね。ですから、当然、いま緊張状態が継続をしていないという前の木村外相日本政府としての見解に立っておるとするならば、それはあなたがおっしゃったように、総合的な力のバランスを見た上で、そして撤退は容認できるという形に、前向きに賛成、基本的には賛成という方向にもとれていくわけですが、しかしながら緊張状態が続いている場合はそういうわけにいかない。緩和状態にあると言えば、いま言うような状況で前向きにとれていくと思うのです。ここはやはり問題だと思うんですね。  日本の姿勢というものは、この問題に対してどういう考え方を持っているかということが、やはりこれはアメリカとしては日本協議するというのはそこに意味がある。だけれども、それについては、これはやはりいまのような状況が続いているのか、緊張状態が続いているのか、あるいは緩和状態であるのかということについては、これはやはり決定の重要なポイントになってこようと思うのです。ですから、その判断はいずれなのか。前の木村外相は、緊張緩和状態なんだ、こういうふうに言っている。先ほどあなたのお話では、そうではなくて、向こうもやはり緊張状態が続いている、こう言っているんだから、そういう認識に立っているんだというようなお話であった。その点はひとつ明確にしていただきたい。
  39. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まあ緊張緊張と言うと、何か軍事的意味緊張、こういうことだけに理解されるような傾向がありますものですから、私どもも注意深く申し上げておるのですが、朝鮮半島における平和というものは、私は軍事のバランスだけじゃないと思うのです。南北の社会情勢ということもありましょうし、また朝鮮半島をめぐる米、中、ソ、これらの国々の態度というものもありましょうし、総合的に見てみまして、両国の国内的、国際的、そういう両側面から見て微妙なバランスの上に成り立っておる、こういうふうに考えるのです。そういう微妙なバランス、それが損なわれないというような形におきまして、私は初めてその一環としての軍事問題というものも総合的な立場の中において論ぜられるべき問題である、これが私の基本的な考え方なんです。  どうも奥にはさまったような言葉を申し上げて申しわけないのですが、この撤兵問題というものは、これは朝鮮半島の平和を支えておる微妙なバランス、この中において論ぜられるべき問題であり、その微妙なバランスが失われないようなことを期待する、こういうふうに申し上げておるわけなんです。
  40. 広沢直樹

    広沢委員 総理、またバランス論に返ってきて、余りこの問題ばかりに引っかかっているとあとの問題できませんけれども、いま言う総合的な微妙な関係バランスが保たれているというのであれば、いまここでその一つである在韓米軍削減されるということは、そのバランスを崩す一つの大きな要素にはなるのです。それを何で埋めるかという問題はあるでしょう。それはあるでしょう。しかしながら、これを撤退する段階において、そのバランスが崩れるようであれば容認できない、バランスが崩れないならば容認するということは、逆さまに言えば、崩れたならばこれは容認できませんよ、こういうふうな意見になるわけでありましょう。そうでしょう。このバランス論と、いま緊張問題とは一つじゃないですね。緊張状態が続いているか、あるいは続いていないか、こういう二つの判断に立っていけば、その緊張状態もいろいろな問題がありますよとおっしゃいますけれども、その中の一つの大きな要素が、やはりそういう力の関係また軍事的な関係緊張状態があるかないかというその一つの大きな要素なんです。それは木村外相があのときに、北からの軍事的な脅威というものについては、これは韓国自体が判断することだけれどもわが国として客観的に見た場合はそういう事実はありませんと理解していると、こういうような答弁。ということは、そういう軍事的力による緊張状態は続いておりませんのですと、こういうことなんです。では、その点の緊張緩和状況にあるんだったら、いま当面の問題として起こっている軍事的な力の減という問題に対しましては、それに対しては、緊張状態が続いていないとするならば、やはりこれは前向きで容認できる状況が造成されていると判断できるわけでありますし、そうでないならば、緊張状態が続いているということだったならば、撤退は、軍事的な力の関係バランスは崩せないということになりますから、反対意見を述べざるを得ない。こういうことになるんではないかということで、その状況はどういうふうにいま政府としては判断をされておりますかというふうに伺っているわけなんです。
  41. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 朝鮮半島の平和を支えておる要素はいろいろあると思うのですが、まあとにかく政治的要素もありまするし、国際的要素もありまするし、国際的要素としてはやはり米、中、ソ、この関係南北間のバランスというものを大きく支えておると思うのです。そういう中に、いま変化がすぐ起こるというふうには見られない。それと並行して、南北の軍事体制というものもまた一つのバランスを決める要素としてあるわけでありまするが、この南北の軍事バランスはどういうふうにしていま均衡を保たれておるかというと、米軍の駐留ということも大きな要素になっておるわけです。私は、ですから軍事バランスのことを言っておるわけじゃないのです。米、中、ソの間に南北の平和統一をひとつ実現しようじゃないか、そして、その手順、段取りをこう進めようじゃないかというような話が出てきて、それを現実化するというようなことになれば、軍事バランスの方は、これは非常にウエートが薄くなる、こういうふうに思います。そういうようなことを総合的に考えなければならぬ。軍事バランスの問題は、その総合的の問題の中の一つの要素であると、こういうふうに考えておるわけでありまするから、この在韓米軍撤退問題というものは、そういう他の要素ともひっくるめて、全体の朝鮮半島を支えておるこの緊張状態、これが崩されないようなそういう配慮のもとに、軍事的バランスだけじゃない、他の要素ともひっくるめ合いながら検討さるべき問題である。  私は、朝鮮半島を支えておる微妙なバランスが崩れるような形における米軍撤退というもの、これは問題があるんじゃないか、また逆に朝鮮半島における微妙なバランスが失われないならば米軍撤退もあり得るんじゃないか、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  42. 広沢直樹

    広沢委員 それでは、この在韓米軍削減問題については、時間の関係もありますので一応終わりまして、福田内閣の基本的な政治に取り組む考え方について、一、二前もってお伺いしておきたいと思います。  福田総理は、総理になられてから機会あるごとに協調と連帯、こういうことをおっしゃっておられるわけです。それは言葉の意味はいろいろとりょうがあるでしょうけれども、これは結構なことだと私は思うのですね。しかしながら、協調と連帯ということを総理がおっしゃいますが、歴代、首班がかわりますと、必ず忍耐と寛容とかあるいは決断と実行あるいは対話と協調ですか、そういうふうな一つの姿勢というものが示されるのですね。しかし、具体的にそういうことが行われているか、一こま一こまの中で。よく検討してみると、そうではない。いままでの政治のパターンの中では、やはり自民党の多数というもので問題を処理するという傾向が非常に強かった。ところが、御承知のように、いま総選挙後の状況を見たらわかるように、衆参において保革伯仲になっている。さらに、総選挙の結果というものは、やはり過半数の国民は現在の自民党政権のやってきたことを非常に批判している。結果はちゃんと出ているわけですね。したがいまして、総理の言う協調と連帯ということは、やはりそういうことを背景にして、国民大多数、そしてまた野党の意見を十二分にあらゆる面に生かす、こういう意味にとっていくのが本当の協調と連帯ではないかとわれわれは思うのですが、その点はどうですか。
  43. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私が協調と連帯と申し上げておりますのは、ひとり国会の問題だけを考えておるのじゃないのですよ。今日の社会情勢を見ておりまして、どうも金、金、金、物、物、物だ。そして、それとうらはらをなしてエゴ、自分さえよければという社会風潮がある。これが高じてくるということは、日本社会として非常に危険な道をたどることになる、こういうふうに私は考えておるわけです。やはり人間は助け合いの世の中でなければならぬ、あるいは補い合いの世の中でなければならぬ。そしてお互いに責任を分かち合うというような世の中でなければならぬ。それが、自分さえよければいいんだ、人のことは構わないんだ、他人とともに責任を分かち合うという理念が薄れてきておる。その大勢は何とかして是正しなければならぬな。これが私の政治におけるところの基本姿勢です。細かい政治的な一つ一つの問題のさばきがある、そのさばきの中でこの考え方を何としても打ち出していかなければならぬ、こういうふうに私は考えておるわけなんです。ことに文教政策、いろいろ制度改正の問題、文部大臣がいろいろ苦心しておりますけれども、その苦心、これはしなければなりませんけれども、その根底に、人間のあるべき本性がいまゆがめられておる、いわば動物的な方向をたどっていると言ってもいいのですよ。やはり人間の人間たるゆえんのものは、本当に持って生まれた才能というものを伸ばす、伸ばしたその力をお互いに分かち合う、分かち合ったその中で、また自分が完成されていく。これが国家社会という仕組みになっておるわけでありますが、その国家社会の仕組みを通じて個々の人間の完成をしていくんだ、これこそが本当に社会のあるべき正しい姿でなければならぬということを私は強調しておるのですが、その考え方をあらゆる面において一つ一つ実現していかなければならぬ。  国会においてもまたそうだと私は思うのです。自民党だけが自民党エゴというとろに立ってはいかぬ。野党の方でも野党エゴの立場に立っちゃいかぬ、そうだと私は思うのです。やはりお互いに足らざるところがあるのですから、それを助け合って、政治全体がよくなり、政治全体がよくなるその中において公明党もよくなる、自由民主党もよくなる、こういうふうにしなければならぬ。そこで初めて国会は国民からの信頼を樹立し得るのだ、こういう考え方なんですよ。そのことを御理解願いたいということをもってお答えといたします。
  44. 広沢直樹

    広沢委員 総体的といいますか、一般論的に総理は申されておりますけれども、やはり国会は国民の意見のそれぞれ集約された形で論議される場所でありますから、その中には、それを背景として論議される中の一つ一つを、協調と連帯とおっしゃるならば、やはり取り入れていく、積極的にその問題については取り組んでいく、こういう姿勢があればこそいけるのじゃないか。総体論としては、それはおっしゃるとおりでしょうよ。いまいろいろな社会のひずみの問題を一つ一つ、そうでなければいかぬ、ああでなければいかぬとおっしゃっておりますが、認識は私もそうだろうと思います。別にそれに変わったことはございません。しかし、それは言葉だけではいけないのであって、具体的な問題を実行に移す上においては、やはりたとえば国会の審議の中においてもそれを具体的に意見を十分取り入れていくという形でなければならない、こう思うわけですね。  そこで、総体論の抽象的な話をしておっても始まりませんが、そういうことになってまいりますと、国民の多くは現在の不況が非常に続いてきて大変苦しい状況にある。したがって、何とかその不況を脱却していきたいという強い願望があるわけですね。不況対策一つとってみても、これまでの論議でも明らかになっておりますように、不況対策にはいろいろな手の打ち方があると思うのです。いま政府はいわゆる公共投資一本やりで考えておりますけれども、政府支出を行う上においても、公共投資もあれば減税もあるでしょう。あるいは金融面においては、いわゆる金利を下げるとか、場合によっては上げ下げですね、調節という問題で景気調整をするということもあるでしょう。しかし、現在の立場においては、総理は、現在のこの不況を克服していくのは財政面における公共支出が乗数効果が非常に大きい、ですからそれ一本やりでいけるというふうにおっしゃっていらっしゃる。ところが、国民の多くはやはりそれについては減税を強く迫っているわけですね。それに対して、減税というのは財政的に見れば自殺行為である、いまの状況ではとてもできません、こういう言い方でかたくなにその意見を聞こうとなさらないですね。それはおかしいんじゃありませんか。どういうお考えでしょう。
  45. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいま申し上げました協調と連帯、これは国会の運営の部面においてもやっていかなければならぬ。私はいま初めて協調と連帯を言い出したわけじゃないです。前々から言っているのです。特に今国会は、とにかく私の内閣も一票差の内閣でありまするから、好むと好まざるとにかかわらずそういうことにならざるを得ないわけでございますが、私はそういうつもりでおるのですよ、これは。でありまするから、異例のことでありまするけれども、組閣早々もうあらゆるものに先駆けてと申しますか、野党五党首と会談をする、そしてお話を承りました。  私は、減税論につきましては、政治家として減税というようなものをしてみたいという感じはあるのです。しかし、国家、国民の将来のことを考えると、果たしてこの際減税をするのがいいのか。私は、いま日本が当面している問題は何であるかというと、やはり社会資本を充実することだと思うのです。下水道はもう世界先進諸国の中ではびりっこというような状態だ。住宅もどうだというと整わない、恥かしい状態である。あるいは上水道もいまや二、三年先のことまでが心配されるようなことになっておる。さあエネルギーの問題はどうだ、これも非常に寒心すべき状態にある。治山治水、これも災害のことを考えて早くやらなければならぬ。私は、社会資本の充実ということは今後非常に大事になってくると思うのですすよ。つまり社会資本、これは皆さん、この世の中が社会化されていくということを考えるとそうだろうというふうにうなずけると思うのですが、そういう際に不況対策という問題がある。まあ減税というお話もありますが、これは不況対策から言えば減税よりは公共投資がいいのですから、そうしたい。あり余る財源がありますれば減税もしますよ。そういう状態じゃない。しかし、五党首の会談を考えますと、そうもいかないというので、三千五百億円の減税をして、そうして皆さんに対して協調と連帯の精神を発揮した、こういうふうに理解をいたしております。
  46. 広沢直樹

    広沢委員 三千五百三十億の減税が、協調と連帯のあらわれとしてやりましたと言うんですね。昨年、五十一年度も、財政的な大変な赤字で先行きを大変憂慮されて議論が活発に行われたわけです。その折も、こういう状況の中で減税はできませんということで、ずっとこれまで調整減税というか、減税を行ってきた。あるときには景気対策のための減税をやったことがあるのです。しかしながら、今年度これはできない、こういうことでやらなかったわけですね。今回の場合は、三千五百三十億国税においてやっております。それであるならば、結局その三千五百三十億の減税というのはどういう効果、単なる心理的な効果だけでやったんだ、言われるからやったんだということでございますか。私は、中途半端なやり方でやるのはおかしいと思います。やはり、それだけの効果を期待しないで財政的な手を打っていくのはおかしいと思います。われわれの主張しているのは、その三千五百三十億では十二分なる効果を上げてこないじゃないか、この三千五百三十億のミニ減税というのは一体どういう意味合いを持っているのかという問題を提起しているわけです。  もう一つ。いま財源があればやりたいですよ、こうおっしゃいましたね。わが党の矢野書記長も総括の代表質問で、具体的にその財源はこうすればできる、約九千億、約一兆に上る財源を具体的に示して言っております。それが、連帯と協調というのですか、とにかく話し合いですから、そのことが全部が全部できるかどうかということはやってみなければわかりません。われわれはできると思って手配しているわけでありますから、ちゃんと示してください。それも十分御検討なさっていらっしゃるのでしょうかね。どうなんでしょう。
  47. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 三千五百億円減税は、景気対策を企図した減税ではございません。これは、結果として多少の景気対策への影響もございましょう。しかし、私どもが考えたのは、物価も上がってきておる、それから三年続きの不況である、そういう際に、せめて零細な所得者に対しまして配慮をしなければならぬ、こういう趣旨に基づくものであります。  それから、広沢さんは、財源がないからないからと言うが財源はあるじゃないかと言いますが、どこに一体あるのですか。具体的にいろいろ御指摘願いますれば一々御答弁申し上げまするけれども、恐らく法人税の方をどうだ、こう言うんじゃないかと思いまするけれども、法人税の方を増税すれば、今度は法人の負担はふえるのですよ。それは法人が企図しておったところの設備投資もできなくなるのですよ。あるいはこれだけベースアップしようと思っておった、それを少し削らなければならぬという問題も起きてくるのですよ。あるいは法人はいろいろな意味において社会消費をしております。その消費もかなり、それだけ節減しなければならぬということになるのですよ。それから、いま不況、不況だ、こう言っておるじゃないですか。その不況というのは一体全体何だというと、これは企業の方の不況なんです。その不況状態に対してどういう効果を持つんだろうか。それは一々具体的提案があれば承りますけれども、これは大観いたしまして、法人税から増徴して個人に所得を移すのだ、こういうような考え方は、法人の景気刺激効力はそれだけ減殺されてしまうわけでありまして、差し引き私は、計算はしておりませんけれども、ちゃらちゃらになるのだろう、こういうふうに考えております。
  48. 広沢直樹

    広沢委員 その減税財源の問題については、ここに具体的にこうすればということで持っているのです。これを一つ一つやっていると時間もございませんし、集中審議で税の審議をやるということを決めておられるわけでありますから、その点でまた具体的な問題として取り上げてやっていきたい。  いずれにしましても、総理、先ほど申しました、財源がなるほどあるなということになれば一応それは考えるということですね。もう一遍念を押しておきますよ。あなた先ほどそうおっしゃったのですから。いまもう全然財源がありませんとあなたはおっしゃっているかもしれませんが、われわれも予算審議しているのです。われわれも、いろいろなところで、どういうところにどういう財源が浮いてこないかということは検討しているわけです。  それと、もう一つは、最近の問題でございますが、いろんな絡みは別としまして、自民党の中にも、やはり、現在のこういうミニ減税ではいけない、多少これは考えなきゃいかぬじゃないかという動きが出てきている、こういう情勢ははっきりといま出てきているということが報道されていますね。それは党内のことですから、全くそういうことがないとは言えないと思いますよ。御否定なさるのですか。
  49. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 自民党の中にそういう議論があるということは、自由民主党総裁は承知しておりません。とにかく、政界のみならず、民間においても、いろいろ議論があることは承知しております。そして、私は、そうかたくなな男じゃないのです、これは弾力的な男です。したがって、これは、いろいろの角度から、あらゆる検討をいたしまして、そうしてこれは国家国民のために、しかも現在のみならず将来にわたって国民のためになる、こういうことでありますれば、私は潔くこれは御相談に応じますよ。応じますけれども、いま私どもが出しておるところの提案は、これはよほど真剣に考えたわけであります。ことに減税論のごときは五党首からも話があったわけですから、これに対して十分配慮をいたしまして出た結論でございますが、いま私どもが出しておる提案は、ひとり今日の問題として考えるばかりではなくて、これは二、三年ばかりじゃありません、もっと先までも考えて、これはもう国家国民のために最善の施策である、こういうふうな見解でございます。
  50. 広沢直樹

    広沢委員 財源があればということでございますので、この補正予算の中に私は一、二指摘してみたいと思います。  補正予算につきましても、私どもは、五十一年度の景気の状態から見て、補正予算で減税をすべきであるという要求をいたしました。それは当初から財政的に大変だということでなかなかお聞き届けにならない。そこで、この補正予算を見ましても、やろうと思ったら、私は、財源はひねり出せるのではないかということが感じとれるのです。  というのは、まず、補正予算の中に「既定経費の節減」という項があります。今度、九百六十九億、五十一年度の補正では削減をいたしております。約一千億ですね。これをずっと推移を見ますと、五十年が七百四十一億、四十九年が五百八億、四十八年が四百八十一億というふうに、まだずっとありますけれども、補正のたびごとに既定経費を削減をいたしておる。財政規模が大きくなれば大きくなるだけ、いま申し上げたように、いまは逆に申し上げましたけれども、順次大きくなっていっているわけですね。  ですから、やはりこれは、いまこういうような大変な状況にあるのだ、総理がこうおっしゃるならば、もっとこれは考えていけば出てくるのではないか。恐らくまた五十二年度で補正を組まなければならないという状況が出てきた場合においては、やはり既定経費の削減は一切ありませんということはないでしょう。そこをやはり、当初予算を組むときに、しっかりこれは洗い直して、もうここのぎりぎりまでですよということをはっきりしなければならないはずですね。現実に出てきているのですから。  それから、もう一つ、予備費です。五十一年度予算でも三千億を組んでおりますね。五十二年度の予備費は三千五百億、一応上げております。これも補正において減額修正なさる金額を見てみますと、逆にいきますと、五十一年が、この予算書にも出ておりますが千四百五十億、これを補正に入れておりますね。それから五十年が一千億、四十九年が一千百九十億、あるいは四十八年が一千六百五十億、大体千五百億、まあ大ざっぱに言って一千億以上といいますか、これだけ補正が出ていっている。予備費の性格はわかりますよ。しかしながら、ここの中にも、もっと現実に即して考えていけば、五十一年度の補正だけでも二千億は一応補正を組める財源としてあるということじゃありませんか。当初において考えられるということじゃありませんか。これから推測していきますならば、五十二年度においても、ここで大体二千億程度の金は具体的に出てくるということがはっきり言えるじゃありませんか。いや、それは先行きのことが心配だから予備費の規定に基づいて予備費を組んであるのだから、大まかに組んだときはそういうふうなシステムでやってきましたよ、いままではそれでいいでしょう。しかし、いまのような財源が窮屈だ、三分の一を国債にゆだねなければならないという厳しい状況の中で、旧来と同じ組み方をしているじゃありませんか。こういったところにもう少しメスを入れていくならば、財源は出てこないわけがない、こう思いますが、いかがですか。
  51. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、資源有限時代、エネルギー有限時代、こういう時代で、国民の各界各層がそれに対応する構え、決意をしなければならぬ、そういうふうに考えておるわけでありますが、それにはやはり官庁が率先してしなければならぬ。     〔委員長退席、栗原委員長代理着席〕 そういう趣旨で五十二年度予算につきましては、これは過去においてもいろいろやっておりますが、その上にさらに——新たにじゃありません。その上にさらにかなりの縮減をしているのです。縮減をどの程度にしたかということは、主計局長がその衝に当たっておりますから御説明も申し上げますけれども、とにかく官庁としては思い切った節減をいたしておるわけであります。しかし、それがびた一文も余裕はないかというと、そんなこともあるいはないかもしれませんけれども、言われるような多額なものになるというふうに私は思いませんがね。そういうふうな節約をしておる。  それから予備費にいたしましても、去年、五十一年度は災害のこと、それから景気調整というようなことも考えて千五百億円の積み増しを特にしたのです。しかし、それは今度はいたしませんでしたけれども、公務員の給与の問題もありましょう。あるいは物価の関係なんかを考慮しますと、弱い人、小さい人、困窮している人に対して手当てもしなければなりませんでしょう。あるいはある程度の災害も考慮しなければなりませんでしょう。しかも国会からもずいぶん強い要請がある。総合予算主義をやらなければならぬじゃないか、こういうことも言われておるので、やはりあの程度の予備費というものを存置しなければならぬだろう、こう考えておるわけでありまして、そういうことで、私は多少のことはできないとは断言はいたしませんけれども、言われるような多額の財源をそこから捻出するということは、総合予算主義というたてまえからするとなかなか困難じゃないか。実行上とにかくその上にもさらに節約はいたしますけれども、そう多額の財源をこれに期待するということはなかなかむずかしいのじゃあるまいか。それから同時に、これはそう極端なことは申し上げませんけれども、それだけ予算を削減するといえば、その予算執行に伴うところの需要の減少ということもあるわけですから、減税によるところの需要喚起と比べて、それがどういうふうなプラスマイナスになるかということもまた、まあこれは理屈のことでございまして、これは私はそう強調するつもりはありませんけれども、そういう問題もある。とにかく結論としてそう大きなことを、一兆円減税の有力なる財源となるほどの経費を捻出し得る状態ではないというような感じですがね。
  52. 広沢直樹

    広沢委員 いまのはこの補正予算の中に出てきている問題を一つ、二つ取り上げてみても、現実の問題としてそういうことが可能ではないかということを申し上げたのです。全面的に御否定はなされませんから、そのことも一応認めていらっしゃると思うのです。  そこでもう一つ、先ほど申し上げたことで詰めて申し上げておきたいと思うのは、報道によりましても明らかになっておりますように、自民党の大平幹事長におきましても、一兆円減税問題というのは国民の大きな期待であるということで、そのことについてはいろいろと配慮なさっていらっしゃるやに聞いているわけです。その方法がどうだこうだということはわかりません。ですけれども、それはだれも無視することはできない。  そこで、総理は、独禁法の改正とかいろいろな問題につきましても、党内の意見をよく聞いて、こういうことをおっしゃるのですが、そういう交渉の具体的な問題が党内にあり、あるいは与野党間の折衝の中で生まれてきた場合においては、当然それを聞いて判断したいということは、ほかの面でもおっしゃっていらっしゃるわけだから、御配慮なさいますか。
  53. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 先般いわゆる五党修正案が参議院でつぶれた、こういう経過を考えてみますと、与党の中で反対的な空気があったということが最大の原因であった、こういうふうにとらえておるのです。私としては、独禁法はこの国会でどうしても決着をつけたい、こういうふうに考えておるわけでありますが、それには全政党の協力を得なければならぬ。野党の方の御意見は、私は五党首との会談を通じましてしかと承知しました。ところが与党の方、これは先般の参議院の状況を見ましても、なかなか容易ならざる情勢があるのです。しかし、私は野党の方においてこういう考え方もあるということを踏まえながら、いま与党の中の調整をしておる、こういう段階でございまして、もとより野党の方の御意見も私はすでに承知しておりますけれども、なおよく意見もお伺いする、それと並行いたしまして、与党内の意見も調整をいたしまして、何とか御協力を得まして、この決着を得たい、こういうふうに考えております。
  54. 広沢直樹

    広沢委員 独禁法の問題は、いまの例に出したわけでありまして、それは前からそうおっしゃっていらっしゃいますから、それと同じように、この五党——これに触れたから一言申し上げますけれども、結局自民党も入れて五党修正案で衆議院を通過しているわけですね。ですから、そういう問題について総理としては、いまそれじゃ党内でまた一応考えて、党内の意見を、こういうふうにうまいことを言われるのです。減税についても野党の意見は十分聞きました、それは聞いているでしょう。これは党首からも強く要求したわけでありますし、あるいは政審会長においても、これについては具体的な案を示しているわけでありますから、それだったら与党内でよく相談なさって、与党内が絶対だめだということでないならばお考えになる余地はあるということでございますかと聞いているのですよ。
  55. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 減税問題につきましても、五党会談を通じ、その他のルートを通じて野党の御見解もできる限りよくそしゃくするように努力をいたしております。ただ、この段階におきましては、いろいろ伺いましたけれども国家、国民の将来を考えるときに、どうもまだ私どもは納得ができないのです。いま私どもが御提案をしておるこの提案が最善のものである、こういうふうに考えておるということを申し上げておるわけであります。
  56. 広沢直樹

    広沢委員 どうも微妙な言い回しをなさっておられますが、それは予算をいま出されて審議中に、それを修正するだのどうこうするだのということは直接言いがたい問題があるかもしれません。しかし、協調と連帯ということで今日の政治すべての背景を考えられて、日本丸のかじ取りですか、沈没しないようにやっていこう、こういうことですから、われわれも建設的な意見、——それは責任は重大だと思っておりますよ。言いっ放しでいいとは思っておりませんし、仮に減税問題でも、これは先ほど御懸念なさったいろいろな問題が出てきてはいけないということはいろいろ考慮しながら考えている問題でありますから、いままでのように過去の、何でも自民党が決めてきたと言っているようなそういう段階で物を判断なさると、これは大いなる間違いだと思うのです。ですから、そういうふうに具体的な問題として上がってきたことについては、総理・総裁として十分耳を傾け、そして国会の意思というものを十分に生かしていくという柔軟な態勢、あなたの言葉をかりればいわゆる協調と連帯、こういう実を見せていただくことが私は国民にとって大事なことである、こう思うわけであります。  そこで、時間の関係もありますから少し景気問題に触れてまいりますけれども、駆け足で参ります。  まず五十一年度の景気の動向と対策について、大ざっぱではございますがお伺いしたいのですが、過般来もまた昨日もわが党の委員からお伺いいたしました。端的に申し上げますと、五十一年度は順調な景気の回復をしている、なだらかではある——言い回しはいろいろあると思いますけれども、しかし総理は順調な回復をしている、あるいは経済企画庁長官もそういった意味合いのお答えをなさっていらっしゃるわけであります。しかし、いよいよ最終年度末を迎えようとしているわけですが、目標に掲げた国民総生産は達成できるというふうにお考えかどうか。それならばそれとしてどういうふうな見地からそのことが言えるか。ひとつ明確にしてください。
  57. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  現在、景気がなだらかな回復過程をたどっているという認識を私ども持っておるわけでございます。しかし、まだちょっともう一つはずみをつける必要があるということで、昨年の十一月に七項目を決定し、また今度の国会で補正予算を提出いたしまして、一日も早い成立を期待いたしている次第でございます。  同時に、これらのことをやってまいりますと、各需要項目別にいろいろ詳細に検討いたしてまいりますと、その中で一番大きな個人消費は、全世帯の統計等を見ますと、やはりなだらかでありますけれども回復の過程をたどっているという指標が出ております。設備投資も確かに大変緩慢ではありますけれども、各種のアンケート調査等を見ますとかなり回復の兆しが見られるという状況でございます。それから住宅投資は、御案内のとおりかなり勢いのよい状況でございます。それから在庫投資は、現在非常に在庫の過剰感がございますから、恐らくことしの一−三月ぐらいには在庫調整が行われる。したがって、比較的低い在庫投資になるんじゃないかということで、二兆四千億程度と見ておるわけでございます。それから輸出は、昨年の上半期のような状況にはまいりませんけれども、しかし依然として高水準にあるということでございます。それから政府の支出でございますが、これは、今度の補正予算を成立させていただきましてそして計算をいたしてまいりますと、経常、資本の両方合わせまして大体一一%程度の伸びを示す。そういう各需要項目を積み重ねてまいりますと、前半の伸びが非常に高かったものですから後半からの伸びが鈍化しているということは事実でありますけれども、しかし、鈍化はしておるけれども依然として高い水準でいっておるという事実でございますから、五・七%の成長は十分達成できる、そう考えておる次第でございます。
  58. 広沢直樹

    広沢委員 倉成長官、高い程度の伸びで、成長でいっておりますから、こうおっしゃいますね。私はやはりそこに、統計的に物をしゃべるのと現実は大きく食い違っている問題があると思うのです。いま、なだらかな成長にしても順調に進んでいるとおっしゃいますね。しかし、現実の企業活動にせよ、あるいは生活の上からの感じで、景気がなだらかに回復し始めたというふうに果たして感じているかどうか。この経済指標を見ても非常にばらつきが多いですね。よくなったり悪くなっり、定まってない。新聞なんかにも、よくなったと出ているかと思ったらまた悪くなったと出るように、非常に安定しておりませんね。したがって、そこから物を考えるのではなくて、前月からの伸び、段階的にどうかということを考えていきますと、先ほど申し上げたように一−三月の輸出が非常によかったから、それがうんと高くなってきたから、全体をそこから考えていけばそれは高い伸びでしょうよ。前月からわずか〇・何ぼ伸びたって高くなっているでしょう。それば数字の上で言えばそうなりましょう。しかし現実はそうじゃないのですね。だから五十一年度の経済の伸びの中では、いわゆる一−三月の輸出が非常によかった。それがきのうもお答えがありましたように、年率に直して一三%という高度な伸びをしました。特定の産業においてそれが輸出によってなされたわけでありますが、それから毎月毎月の動きを見た場合に、そんなに順調な段階的な伸びがありましょうか。やはりこの指標に出ておるように上がったり下がったりでしょう。横ばいということじゃありませんか。いやそうじゃありませんよ、首を振っておりますけれども。生産にしても出荷にしても、ここに明確に上がったり下がったりと出ていますよ。それから個人消費の動きにしても、そのままの横ばいじゃありませんか。  そこで、ではもう一つ具体的に聞きますが、五十二年の一月から三月のいわゆる四・四、これはGNPについてどれくらいの伸びになるといま判断をなさっていらっしゃいますか。
  59. 倉成正

    ○倉成国務大臣 その前に、ただいまのお話をちょっと補足いたしておきますと、確かに企業別、業種別、地域別に非常な格差があるということは事実でございます。また雇用の問題についても、低成長下において企業が非常に過剰雇用を抱えておる。したがって、少しぐらい景気がよくなってきましてもそれがなかなか雇用情勢に反映してこない。そういう基本的な問題が一つあるものですから、確かにいま各企業から見ますと景気はなかなか思わしくないという感じを持っておるわけですけれども、これはやはり低成長に伴う構造的な問題をはらんでおるということを御理解いただきたいと思うわけでございます。  それから景気の伸びでございますけれども、確かに八月ごろ稼働率指数がかなり高かったとか、それが少し落ちたというようなものはございます。しかし、全体として線を引いてまいりますと、やはり上昇カーブにあることは間違いないわけでございまして、このカーブを大体なだらかに伸ばしてまいりましても、三月におきましては五・七%の成長を達成できる、そう判断をいたしておるわけでありまして、近く結論が出るわけでございますけれども、われわれの見通しはもうそう狂わない、そう思っている次第でございます。四半期別の見通しというのはいたしておりません。大体QEが七—九まで出ておりまして、それから十—十二がもうしばらくして出ると思いますが、一—三がその後ですから、かなり結果というのはおくれますけれども、四半期別はいたしてない。これは御理解いただきたいと思うのですけれども、冬は雪が非常にたくさん降った、そうすると春物の商品の売れ行きが遅い、そういうことも起こるでしょうし、電源立地で少しおくれたから設備の注文がおくれるということで、設備投資が少し変わってくる。経済は生き物ですから、生きた経済を動かしておるわけですから、余り厳格に四半期がどうだということを推定するのは妥当ではないのじゃないか、そう考えておる次第でございます。
  60. 広沢直樹

    広沢委員 指標としては五十二年の一−三月というのはまだ出ていないとおっしゃるのですが、私が申し上げたのは、一−三月がどれぐらいの伸びになったとした場合において五十一年度のGNPは目標を達成できますか、こういうことなんです。
  61. 倉成正

    ○倉成国務大臣 正確な計算はしておりませんけれども、一%以下の成長でありましても大体——もちろんこれは十—十二月がどうなるかということにもかかわると思いますけれども、一%以下の成長でありましても大体そういう見通しは達成できる、そう思います。
  62. 広沢直樹

    広沢委員 これは、指標が出てきてからまた議論したいと思います。  そこで、先ほど経済企画庁長官が、なだらかであるけれども高い伸びで推移しているとおっしゃいましたね。たとえば生産の場合でも、四十八年が前年同期比でピークになっておりますね、一三・五。この十二月の鉱工業生産指数のところでも一三・八でありますから、こういう関係で見た場合は非常に高くなっているじゃないかということになるかもしれませんが、前月比で見た場合は、十一月が二・五であったのが十二月がゼロに下がっておる、こういう状況なんですね。これは横ばいか、またダウンという段階も出てきているわけですから、そのところがいまの現実の経済の実態なんです。ぐっとそこが上がったから、数字の上で議論をしておればそればよくなったということになるかもしれませんが、現実はそうじゃない。これを指摘しておきたいと思いますよ。  それから、五十二年度の景気の動向、これも時間の関係で駆け足で参りますけれども、まず六・七%、これは総体ですからまずこれから触れなければなりませんが、いわゆる国民総生産がそこまで達成できるかどうかという一つの問題があります。これは、やはりもっと先の見通しですから、五十一年でさえも、まだ指標がないからわからぬということですから、これはできるできぬと結論づけることはむずかしい問題だろうと思いますけれども、私は、非常にむずかしいのじゃないか、政策的な公共投資一本でやっていっていいのだろうかという疑問もそこにあるわけであります。五十一年度の景気政策は、大ざっぱにいきまして前倒しの公共投資に引っ張られて、政府支出に引っ張られていわゆる設備投資、企業投資が盛んになってくるだろう、こういう見方で経済の大枠の運営がなされましたね。いろいろな事情があったにせよ、やはり企業の投資については非常に低迷しているという事情があるわけですね。十二月でがたんとよくなっているのもありますよ、製造業、非製造業とを比べてみますと。全般にならしてみて非常に気迷いがありますね。そういうことになりますと、五十二年度の経済の運営も、見ておりますと同じやり方をやるということになっていますね。そういう見地から、もしも公共投資が——それはいろいろな事情があると思います。地方財政の問題もあるでしょう、あるいは予算の動向の問題もあるでしょう。いろいろな問題を加味して、公共投資でやはり思惑どおり進まなかった場合、地方財政計画が出て、そのとおり地方自治団体の予算が組めるか組めぬかということで、いま地方自治団体で問題になっておるくらいですから、そういうような状況を考えてみますと、一概にそれが言えるかどうかという心配がまずあります。  それから、固めて申し上げますので一遍にお答えいただきたいのですが、もう少し掘り下げていきますと、景気をぐっと持ち上げていくといいますか、リードというわけにはいきませんがぐっと支えていくのは、やはりGNPの半分を占めておる消費支出でございますね。この動きをずっと見ておりましても、去年一年が大体横ばいで参りました。そして百貨店の売り上げ、あるいは日銀券の発行の問題、勤労者の可処分所得の問題、農業所得の問題、農業所得はいろいろ異論もありましょうけれども、こういった一連の個人消費の関連指標を見ましても、十二月までは下がっておるのです。先行きの見通しがまだ非常にはっきりしない。これは大変な問題です。消費支出を持ち上げていくということになれば、いままでのような高度経済成長のパターンで引っ張ったのではなかなかいかないということは、五十一年度の経済の動きであらかた見えております。五十一年は輸出で引っ張られたと思いますがね。そこに、先ほどから申し上げておりますように、減税がいいかどうかということ、公共投資と減税を同じ次元で乗数効果がどうだなんということをやっておるのは、私は意味が違うと思いますよ。そういうことを考えてみますと、両方のいろいろな意味がございますけれども、減税等とほかの刺激をしなければこれは大変な問題じゃないだろうか。それが具体的に堅実な伸びを示すということは論拠はどこにあるのだろうか。  それから住宅の着工統計、いわゆる住宅投資の方を見ましても、現実はこれは予定よりやはり減ってきております。伸び率の問題で話をしておりますと、横ばいじゃないかとか、あるいは五十一年と同じような力じゃないかということになりますが、新設着工の具体的な統計を見ておりますと、十二月もがたんと減っておりますよ。この問題があります。  それから設備投資の問題にいたしましても、経済企画庁が調べた主要企業の動向ですか、これやら、あるいは各民間の経済機関が調べた企業経営者の五十二年度の設備計画、これを見ても具体的に順調に伸びていくという動向にはない。特に電力だとかガスだとか、非製造業の関係では、いまのうちにやっておかなければならないという将来の需要見通しの関係で若干はあるかもしれませんが、それについても非常な疑問があります。  それからあと指標の見方はいろいろあると思いますが、もう一つ国際収支の問題につきましては、これは逆にいいのじゃないかという見通しなんですね。輸出がうんといいのではないか、去年はそうなりました。ことしも、輸出の好調というのはいま続いておりますね。きのうも、円高の問題で、そういうことも配慮して総理からのお答えがあったようでありますが、その言葉に裏づけされるように円高を一応認めていらっしゃるということ、じりじり上がっていくのはいいのじゃないかというような総理のお考えのようですが、そういうことはやはり輸出が予定より好調であるということを前提にしておっしゃっていると思います。しかし、果たしてこれが今年度許されるかどうか。もしもほかの指標が伸びなかった場合、五十一年と同じように、また輸出に助けられて伸びていくのだということは、ことしは非常にむずかしい状況になってくるのじゃないかという問題がありますから、この問題もどうなるかということでございます。  それから通産大臣、通告をしてございませんでしたけれども、この輸出の関係で一言だけ、固めて聞きますのでお答えいただきたいと思うのですが、輸出については打撃は少ない、通産省はこういう見解を示されておることが報道されております。果たしてそうだろうか。マクロ的に言えばそうなるかもしれませんが、具体的にはどういうことになっていくのか、これについての見解を示していただきたい。まず、経済企画庁長官から、大ざっぱに要約してお願いいたします。
  63. 倉成正

    ○倉成国務大臣 非常に広範なお尋ねでございますから、はしょってお答えいたしますので、もし御疑問がございましたら、再度御質問いただきたいと思います。  一つは、いまの景気の状況、回復過程と言うけれどもそうではないじゃないかというお話がございます。     〔栗原委員長代理退席、委員長着席〕 確かに気迷いがある、そしていまの回復過程は十分でない、われわれはそう判断しておるから、補正予算もお願いをし、また五十二年度予算におきまして大変乏しい財政の中から公共事業を中心とするある程度の財政規模の予算を組んだというふうに御理解いただきたいわけでございます。  それから、五十二年度の経済見通しがGNP六・七%は達成可能であるかどうかという問題でありますけれども、五十一年度の五・七%が、御案内のとおり暫定予算であるとかあるいはロッキード事件であるとか、いろいろそういうものが大変経済の足を引っ張ったことは事実でございます。したがいまして、あのとき輸出がなかったら経済は非常に大変なことになったであろう、そういう判断をわれわれいたしておるわけでありまして、ことしはそういうことがないようにしなければならない。しかし、いずれにしましても景気の力が足らないので、ひとつ公共事業をてこにして、そしてこの気迷いを払拭していこうということを考えておるわけでございます。各需要項目別にそれぞれ積み上げてまいりますと、これは六・七%の達成は十分できる。しかし、その際に、五十一年度のような輸出に支えられた六・七%であってはならないということでございまして、五十一年度の一九・一%という輸出の伸びを五十二年度におきましては十二%程度にとどめる、そういう中身になっておることは御承知のとおりでございます。したがいまして、五十二年度の経済見通しの六・七%、これは十分達成できる。  その中で、政府の支出につきましては、特に政府支出の中の公共事業等を中心とする資本支出、これを十八兆二千五百億——国、地方を通じての財政、またその重複計算を差し引いてそして用地費を引いたものでございます。これが一五・九%と五十一年度の九・六%に比較いたしましてかなり大幅に伸びて、そしてこれがてこ入れになり得る。しかし、これも野球でたとえますと、まあ一塁打ぐらいの力でありますから、やはり一塁のベースに進んだときに後の打者に打ってもらわなければなかなか最終的な一点を上げるというわけにはいかない、そう考えておる次第でございます。  それから、お尋ねのGNPの中の個人消費の問題でございます。これは御承知のように、個人消費については非常に誤解がありまして、非常に減っているとかいうお話がございますけれども、個人消費全体として見ますと、なだらかに伸びておるわけでございまして、一般世帯、農家世帯、勤労世帯の一部におきまして若干伸び悩みがあることは事実でございますけれども、しかし全体としては伸びておる。しかし、この伸びを着実にするためにはやはり物価を安定させなければならないいうことでありますから、物価を安定させることに最大の焦点を当てていきたいと私は考えておるわけでございます。  それから、百貨店の問題がございました。最近の百貨店の売れ行きというのは、一つは冬が非常に寒かったということで、春物の売れ行きがおくれているということも一つの理由でございますけれども、同時に物離れ現象というのがいま出ているわけでありまして、そういう物を買うよりもいろいろなサービス、旅行であるとかあるいはよき医療であるとか教育であるとか、そういう現象もあるということで、百貨店の指標がそのまま個人消費の動向を示すものにはならないというふうに考えておるわけでございます。その点も御理解いただきたいと思います。  なお、輸出等の問題についてございましたけれども、これはそれじゃ通産大臣からお答えいただきましょうか。  なお、詳しく説明いたしたいと思いますので、どうぞ御質問いただければ幸いだと思います。
  64. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  御質問の趣旨は、特に輸出動向の見通しの問題でございます。  御指摘のように、円高傾向やECの貿易問題といったようなものがございまして、なかなか厳しい環境にございますが、この影響は、最近の実績から見まして、余り大きくないと考えられます。五十二年度については、関係国との国際協調を進める等の外交措置その他によりまして、大きな影響を受けないように全力を挙げますが、同時にまた、ただいまの輸出の見通しでありますが、五十一年度の六百八十二億ドルに対しまして、五十二年度の見通しが七百六十三億ドルと、一一・九%を見込んでおるような次第でございます。  なお、五十二年度の輸出につきましては、米国等の経済に回復の兆しが見られまするならば、政府の見通しを達成することはほぼできるのではないか、かように考えております。
  65. 広沢直樹

    広沢委員 時間の関係でまた少し急ぎますが、財政の健全化の問題についてどうしても触れておきたいと思います。  まず、大蔵大臣は財政演説でいわゆる財政健全化の問題に触れて、とにかく三〇%を公債収入に頼っているということは諸外国に例を見ない異常な状態である、これには全力を挙げて解決に取り組んでいくということをおっしゃっておりますね。今回は、国債発行高は御承知のように八兆四千八百億。  そこで、具体的に見ますと、数字のやりくりをしているのじゃないかという面が一つありますので指摘しておきたいのは、地方財政にいわゆる四千二百二十五億の返済金なしの融資をあてがっておりますね。これがございますが、これは返済金なしということは、結局、政府が元金も利子も全部保証して払いますということでありますから、これは形はどうあれ、やはり政府が借金したことになるわけです。そうですね。それは言い回しはいろいろあるけれども、結論的には国が払うのですから、地方団体が払うわけじゃありませんから。  そこで、これに関連しますので、自治大臣にも通告してありますからひとつ簡単に御見解を賜りたいと思うのは、自治大臣は就任のとき、それからそれ以外のときもずっと、自治省の考え方としては五十一年あるいは五十年のような一時しのぎではもう地方財政はやっていけない、したがって四十一年以降据え置かれた地方交付税を引き上げる、こういうようなことをおっしゃっておられました。あるいは公庫の問題についても、地方公営公庫についてもこれは改組する、こういう考え方をお示しなさっておられたのですが、一応いま申し上げたようなことで今年はやっておられるわけです。今度政府が決定された地方財政計画を見ましても、五十二年度のみならず五十三年度も大変な財政不足が行われるのではないかという見通しがあります。内容は逐一申し上げている時間がございませんけれども、こういうやり方ではやはり地方交付税法をとらえてもおかしのではないかと私は思うのですね。もしも五十三年度にもこういう状況があったならば、地方交付税を上げるか、はっきりした処断をしなければならないと思いますが、その点、一点だけ見解をお聞かせしてください。
  66. 小川平二

    ○小川国務大臣 お答えいたします。  ただいまの地方財政の状況は、交付税法の六条の三の二項に規定しておりまするそういう事態がまさにあらわれておるものと存じますから、法律の規定に従って交付税率を引き上げるか、あるいは行財政制度の改正を行うべき事態でございます。  そのうち交付税率の問題について御質問があったわけでございますが、交付税率を引き上げるということは、国と地方の長期的な財源配分の問題につながるわけでございます。財源の配分を長期にわたって固定するということになるわけでございます。今日は経済の転換期であり、一つの過渡期でございます。経済の帰趨もなかなか見定めがたい時期でありますので、かような時期にこのような抜本的改正を行うことは適当でないと判断いたしましたので、御高承のように、一兆三百五十億円交付税を増額するということで、当面の事態に対処いたしたわけでございます。
  67. 広沢直樹

    広沢委員 自治大臣、五十三年度に財政不足があったときもこういうことになるのですかと聞いているのです。一言でいいです。
  68. 小川平二

    ○小川国務大臣 ただいまの時点でどのような具体的措置をとるかということはこれは申し上げられない問題でございますが、いずれにいたしましても、地方財政の健全な運営に支障が生じないように、地方財政が圧迫を受けることがないような措置を必ず実行いたしますということをお約束いたします。
  69. 広沢直樹

    広沢委員 これはやはりちょっと問題がございます。問題がございますけれども、もう一つ財政健全化の問題といたしまして、蔵相が赤字国債の問題について大変問題にされておりましたので、これをひとつはっきりさせておきたいと思います。  一応政府の見通しとしては、五十五年までに赤字国債は発行しないで済むのではないかという「財政収支試算」を出しておられますね。これは今回はまだ出てきておりません。私は、予算と一緒に出すべきだと思っておるわけでありますが、これだけ赤字を抱えられた財政の中で、それがどうなるか。いわゆる財政法にない特例を例年のように出していくというやり方、これ自体にも問題があると思いますよ。それを出してくるべきだと思いますが、出してこないのを、いまどうこう言っても始まりませんが、この見通しは変える、そして五十五年度には赤字国債は無理である、そういうお考えなのか。そうではないのか。これは一言でいいですから、簡単にお答えください。
  70. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申し上げます。  財政は大変厳しい状態にあるということは私も痛感いたしております。しかしながら、五十五年度にもう赤字国債は出さないということを、これをどうしてもやっていこうという計画を遂行してまいりたい、かように考えております。
  71. 広沢直樹

    広沢委員 この「試算」の内容一つ一つに指摘したい点はありますけれども、まず五十二年度を見ましたら、財政収支の「公共投資」とかあるいは「振替支出」だとか、こういう内容を見ますと、狂ったのはやはり「税収」なんです。この「試算」そのものにもう初めから実現不可能な無理があるんじゃないか。税収は合いません。高度経済成長のときのような税収の伸びがなければ、それもピークのときのような伸びがなければ伸びないような仕組みで五十五年にゼロになるという——まあ1と2と、五十四年、五十五年というのがありましたけれども、いま五十四年の話をしても不可能でありますから、五十五年にしぼってお話ししますけれども、それは無理があるんじゃないか。ところが、それを中期の財政計画に基づいて試算されておられますから、やむを得ずそういうことになってきたのか。経済の実体から言うと、これは無理であると考えるか、ゼロになることが無理でないと考えるか、簡単にお答えください。
  72. 坊秀男

    ○坊国務大臣 「財政収支試算」は、これは税制の改正の計画だとかあるいは財政の計画だとかといったようなものではなくて、五十五年度における日本の財政の状態というものを試算したものであります。それにマクロにいまから考えまして、何税をどうするとか、あるいはどういう範囲においてこれを決めるとかということでなしに、五十五年度の状況というものへ試算したものでございまして、だから、税制の見積もりが誤ったとか、あるいはそういう性質のものではないということを御理解願いたいと思います。
  73. 広沢直樹

    広沢委員 いや、そうじゃないのですね。これは一応中期の財政計画に基づいてそれから逆算して均等に出してきたから、一々の数字が合ったの合わぬのということを私は言うつもりはないのです。総体的に見て、ほかのたとえば五十二年度での歳入はぴたりと今度の予算と合っているわけです、あるいは「国債費」も合っている、「公共投資」、「振替支出」も大体合っています。大きく狂ったのは「税収」だけなんです。それはなぜ狂ったかというと、これは高度経済成長のときのように租税弾性値が一・七あるいは一・六で伸びるという過程でしか組みようがない試算だったからなんですよ。そうじゃなかったら、これは五十五年までに大増税しなければならないことになってしまいますね。そうじゃないのだったならば、やはり経済計画が変わったらこの見通しを延ばさなければならぬということになりますね。何がどう変わっても五十五年にはゼロにすると、大蔵大臣ははっきりここでお約束できますか。
  74. 坊秀男

    ○坊国務大臣 私はどうしても五十五年度までには健全財政をつくり上げて、特例公債というものの発行はなくしていくことに全力を挙げて努めてまいるということを申し上げます。
  75. 広沢直樹

    広沢委員 そうなりますと、この「試算」に基づいて、経済計画がどうあろうとも五十五年にはゼロにしたい。気持ちはそうです。われわれも財政法にない国債は出すべきじゃないという考え方でありますから、決意のほどはわかりますけれども、事実上無理じゃありませんか。あなたの決意を聞いているんじゃないのですよ。どうやったらゼロになるかという具体案がありますか。それじゃ、示してください。
  76. 坊秀男

    ○坊国務大臣 GNPに対する租税の弾性値というものを考えてみますと、四十年−四十九年度、四十五年度から四十九年度に至る平均の弾性値は一・三、一・四近くございます。(広沢委員「一・三五です」と呼ぶ)いやいや、四十五年から四十九年度は一・三九、それから四十年から四十九年度、これが一・三五でございます。そういうことから推算いたしまして、私はこれが不可能ではない、かように考えております。
  77. 広沢直樹

    広沢委員 それじゃ、私は大ざっぱにですが、大蔵省みたいに機械もなければ何もないですから、いろいろ計算してみましたら、このままでいきますと、現在の五十二年度に税収が合う形でいきますと、弾性値は一・二にしかならない。計算したら、それでぴったり合います、一・二の弾性値で。やってみてください、これは合うのですから。その一・二の弾性値でGNP十二%、そしてあとの指標は大体これに合わせて考えていきましても、国債の依存度は三〇%を五十五年に切れませんよ、その半分が赤字国債ですから。いいですか。それから公債残高は五十二年度末で約三十一兆になりますが、それがずっと伸びていきますと七十兆を超えるのです。それから公債の発行額も五十五年度では十四兆を超える計算になりますよ。赤字国債を大体七兆ぐらい出さなければならなくなってくるじゃありませんか、大ざっぱに計算して。それを、いまの経済、なだらかに行っておりますとか言っておりますが、ぐっと伸びるような弾性値で伸びていくような方法がどこにあるのですか。大増税か、大税制改革をやらなければ、あなた方がおっしゃっておったように、五十一年、租税特別措置を洗い直してみました、財政も洗い直してみました、五十二年もそういう形でやっている。そんな形でどうして財源が出てきますか。延ばすか、五十五年にはゼロには残念ながらいまの見通しでは困難ですと正直に言ったらどうです。それを必ずやるとおっしゃるんだったら、はっきりとどんなやり方でやるからできますということを国民に示してくださいよ。
  78. 坊秀男

    ○坊国務大臣 五十五年度までに、大増税ということはともかくといたしまして、ある程度の増税をこれは予定しなければなるまい。しかしながら、これは大変なことでございまするから、そこで何税をどうするといったようなことは、これは税制調査会においていま検討をしてもらっております。そういうようなことでございまして、決してこれは財政計画、税制計画といったようなものではありません。
  79. 広沢直樹

    広沢委員 一言、いいですか。  仮に、付加価値税は検討しているということを税調でも言っているし、答申にもあります、付加価値税をやるとしたら、もうこれは間に合いませんよ。五十五年にゼロにするためにやるのだったら、ことしぐらいに具体的な案を出さなければ、できるわけがないじゃありませんか。そうでしょう。われわれは反対ですよ。ですから、そういうことを秘密にしないで、財政が本当に困っているのであれば、国民の前に、こういう状況なんだ、こういうことを考えているからこれも具体的に検討してくれ。われわれは具体案、税制改正案を出してあります。富裕税やいろいろなことも出してありますけれども、それはなかなかむずかしい、こういうお話でございますけれども、とにかくいずれにしてもその点、はっきりしてください。付加価値税なんというものは短時日にはできないでしょう。これだけ一言答えていただいて、私の質問は終わりにいたします。
  80. 坊秀男

    ○坊国務大臣 付加価値税につきましては、今日、勉強の種にはしておりますけれども、やるとかやらないとかというようなことは将来の問題でございまして、恐らく間接税と直接税との関係等から考えてみますと、これは重要な問題だと私は思います。しかし、今日、これをやるのだとかあるいはやらないのだとかいうようなことを考えてはおりません。しかし、勉強をせねばならない問題であるということだけは申し上げでおきます。
  81. 坪川信三

    坪川委員長 これにて広沢君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次に、三谷秀治君。
  82. 三谷秀治

    三谷委員 私は、時間が余りありませんから、具体の問題についてだけ二、三点お尋ねしたいと思います。  五十一年度補正予算で見ましても、公社公団に対する財政投融資の追加が行われております。日本住宅公団補給金も組み込まれております。ところが、この種の特殊法人の事業の内容についてずさんさがはなはだしく目につくようになっております。たとえば住宅公団が一万六千戸に余る空き家を抱えておるとか、あるいは千五百ヘクタールに上る遊休地を抱えておるとか、そして膨大な金利負担を家賃に転嫁をするという事態が明白になっております。それから、先日来議論されておりますように、海外経済協力基金などが水増しの評価を行って、今日、問題化しておるわけであります。  こういう特殊法人の不当な事業実態が浮き彫りになっております。しかも、単にこういうふうな事態が明らかになったということだけでなしに、百十三法人の中にはすでに開店休業の状態にある法人も少なくないのであります。こういう事態に対して、国と国民に対して負担と犠牲がもたらされておりますが、この責任について政府はどう対処されようとするのか、これをまずお尋ねしたいと思います。
  83. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 どうも戦後のわが国の行政機構を見ておりますと、政府の方におきましては、総定員法による抑制でありますとか、そういうことでかなり努力もしております。しかし、政府の方における努力もそれだけで十分かというと、さにあらず。あるいはいわゆる佐藤調査会の答申、そういうような問題でまだ積み残しが残っているとか、あるいは累次閣議において決定しておりましたところが、まだ実行に移されないで残っておるとか、いろいろあるのです。私は、そういう政府自体の問題につきましても、総点検といいますか、レビューをいたしまして、これをどういうふうにするかということを、まあことしの夏ごろ前の時点までに考え方を決めたいと思います。  しかし、それと並んで特殊法人、公社公団、そういう問題につきましても、これはひとつ検討をいたしてみたい、こういうふうに考えておるのです。公社公団、特殊法人と申しましても、これは要するに政府の延長ですからね。政府のというか、そういう形のものだけが検討される、また合理化されると言っても、私は、それは十分じゃないと思います。実質におきましては全く政府の延長とも申すべき公社公団、特殊法人、こういう問題につきましても、この際、時勢も変わってきた、それに応じて再検討をすべきである、私はこういうふうに考えておりますが、いままで公社公団、特殊法人の運営についていろいろ批判もありますが、そういうような批判等も踏まえまして再検討をしてみたい、かように考えております。
  84. 三谷秀治

    三谷委員 おっしゃるように、公社公団など特殊法人が非常にふえてまいりましたが、これは高度経済成長政策の過程におきまして、行政事務を政府事業の形態で執行するという形に向かって移行が始まったところに大きな原因があると思っております。ですから、一般会計の事業が公社公団に移される、あるいは公社公庫の事業が公団や事業団に移される、あるいはその他の特殊法人に移管される。こうして一般行政部門から政府事業部門への事業の移管が三十、四十年代におきまして非常に強く行われてまいりました。そうして、政府事業自体も拡大されてまいりましたから、そういう必要性も客観的には生じてきておる。そこで、この事業部門におきましては企業会計基準の導入がなされました。そして、借入金、債券による資金の調達が比較的自由になってまいりました。それから経費の流用範囲が拡大されましたし、予備費の流用、予算繰り越しの自由が許されてまいりました。そうして、予算原則の適用が大幅に緩和されてきております。ですから、公団その他特殊法人となりますと、予算それ自体が国会の審議の対象から除外されてきておるのであります。そこで、特殊法人の事業運営にきわめてずさんな状態が発生してきておる。その例が先ほど申し上げましたような問題になって出てきたわけでありますが、一昨年の十二月の三十一日、五十年でありますが、その閣議了解によりまして整理、合理化を進める十八法人がすでに明らかにされておりますが、これの整理の状況は一体どうなっておりますか。これは整理を必要とする事業はどこにあるのか、お尋ねしたいと思います。
  85. 西村英一

    ○西村国務大臣 五十年の十二月に閣議了解のもとで十八法人の整理合理化に着手するということになっておりまして、そのうちの電力用炭販売株式会社と八郎潟新農村建設事業団の二法人につきましては、これを廃止するために法律をこの国会に提案したいと思っております。その他の特殊法人につきましては、その了解の内容は期限を決めてひとつ整理合理化をやれということで、目下私の方ではそれに取り組んでおる最中でございます。
  86. 三谷秀治

    三谷委員 いまのお答えは質問の半分しかお答えになっておりませんが、昭和三十九年の政府の臨時行政調査会の答申を見ましても、この種の特殊法人というのが、「中央官庁の人事管理の行きづまりを打開するため」の手段としてつくられたものが多いとか、あるいは「政治的圧力の解消策として設立されたもの」が多いとか、こういう指摘が行われておるのであります。そして、「設立当時に期待された機能がほとんど発揮されていないものが少なくない。」、こういう指摘もなされております。三十九年でありますからもうずいぶん以前の話でありますが、その時点におきましてもこういう指摘が行われておるのであります。そしてすでにその時点におきまして「改組再編成すべきものの例示」としまして十八特殊法人が例示されておりますが、これに対してはその後どのような処置をおとりになるのか、どういう検討を加えられましたか、お尋ねしたい。
  87. 西村英一

    ○西村国務大臣 三十九年の九月の臨時行政調査会の改組再編成の問題ですが、そのうちで対象になりましたのは十八でございますが、そのうちの七法人、また対象にならなかった他の二法人、九特殊法人を整理いたしております。  その後今日まで、新しい行政需要がありましても、なかなかこれは厳しく査定をしておりますが、もし新しい行政需要のために必要があった場合でも、政府はやはり一つ廃止してそれにかわるというようなことで厳しくやっておりますから、その後特殊法人の数につきましては横ばいでございます。なお、政府としても、用事のなくなったもの、それは廃止しなくてもあるいは人員の縮小あるいは組織の縮小等を十分やっておる次第でございます。
  88. 三谷秀治

    三谷委員 そこで、たとえば住宅公団ですけれども、この事業目的といいますのは、住宅に困窮する勤労者のために集団住宅、宅地の大規模供給を行う、こうなっているのです。つまり勤労者を対象にする事業を行う、こうなっておりますが、最近の家賃などを見ますと、これはとても勤労者が払えるものじゃありません。十四万六千九百円という平均賃金から見まして、五万四千八百円だとか五万七千六百円だとか、こういう家賃がどうして払えるのか。どうしてこういう払うことのできない家賃の規模のものをおつくりになるのか。こういう疑問が当然国民からは出てくるのであります。私は、この問題につきましては先般来すでに論議されておりますから、これを引き続き追及はしませんけれども、こういう問題が出てくるについては、こういう事業の実態に問題があるだけでなしに、法人の運営や構造に問題がありはしないか。そこから国民との乖離が始まっておるのではないかという判断を持つのでございます。ですから、企業方式の導入と称しまして、役員、管理者の待遇が、これはとてもじゃありませんが国家公務員や地方公務員の待遇では夢にも及ばないそういう待遇がなされております。そこに退職された政府高官が天下りをして特権的な処遇を甘受する、こういう仕組みになっている。地方公務員の人件費について国家公務員と比較して不当であるとして攻撃されます政府が、この特殊法人の役員の異常な処遇に対して何の問題意識もお持ちになっていない。まことに面妖なことなんです。  特殊法人の実態について若干の質問をしたいと思いますが、政府が昨年一月段階で調査されました百十三法人の常勤役員は八百二十五名と言われております。このうち五百四名、率にして六一%が退職された高官で占められております。その中で役員がすべて退職者で構成されておる法人が二十五と発表されております。これは五十年の一月の調査でありますから、五十一年の一月段階でこれがどのように改善されておるのか、変化したか、これをまずお尋ねしたいと思うのです。
  89. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申し上げます。  特殊法人の業務は非常な高い公共性と特殊性を有するために、役員はできるだけそのうちの練達の士を置く必要があります。(発言する者あり)それじゃ私にではなさそうでありますから……。
  90. 三谷秀治

    三谷委員 これはどこで管轄なさっていますか。
  91. 園田直

    ○園田国務大臣 昭和五十年中に国家公務員から特殊法人の常勤役員になった数は、再任、昇任を除いて新たになった者が百五十人中六十七人、四四・七%であります。
  92. 三谷秀治

    三谷委員 それは五十年中ですか。
  93. 園田直

    ○園田国務大臣 はい。
  94. 三谷秀治

    三谷委員 五十年中のはいまトータル全部出したのですよ。それが八百二十五名中五百四名なんです。
  95. 園田直

    ○園田国務大臣 五十年十二月三十一日現在で特殊法人に在職する常勤役員のうち国家公務員であった者は五百四人、常勤役員が八百二十五名でありますから六一・〇九%になります。
  96. 三谷秀治

    三谷委員 それをいま指摘しまして、これは五十年の統計ですから五十一年ではどう変化しましたとこう言ったのです。
  97. 角田達郎

    ○角田説明員 お答えいたします。  五十年の一月一日から一年間に新たに特殊法人に参りました国家公務員の数は、ただいま官房長官御説明のとおり六十七名でございます。それからもう一つのお答えの特殊法人の役員中国家公務員が全部占めている数、これは先ほどのとおり二十五法人でございまして、それがどのように変化したか。それは、ただいまの数字は五十一年一月一日現在の調査でございます。したがいまして、その後の調査はしておりません。百十三法人のうち二十五法人が国家公務員の経歴を有する者で役員のすべてを占めている特殊法人、こういうことでございます。  以上です。
  98. 三谷秀治

    三谷委員 そうしますと、それ以後六十七名がさらに特殊法人に就職されたとしますと、五百四名に加えて六十七名ですから五百七十一名ということになります。八百二十五名中五百七十一名と非常に比率が上がってきておりますが、毎回改善の約束をされておりますのに改善されていない、むしろ改悪されつつあるという事態のようでありますが、これはどのようにお考えでしょうか。  また、もう一つ。この種の法人の人事問題についての基準は四十年五月の閣議了解事項に示されておりますが、この閣議了解事項はどのようなものか、朗読してほしいと思う。
  99. 角田達郎

    ○角田説明員 お答えいたします。  最初の数字の問題でございますが、八百二十五人中五百四名という数字は五十一年一月一日の数字でございまして、先ほどの一年間で六十七名特殊法人に行ったという役員の数、これはこの五百四名の中に入っております。  それから、閣議了解の内容でございますが、いま読み上げます。  昭和四十年五月十四日閣議口頭了解。    公団公庫等役員の選考について   公団公庫等の役員の選考にあたっては、適任者を広く各界有識者から人選することを原則としているが、今後次の事項に特に留意されたい。  一、公務員出身者から選考する場合は関係省庁の職員にとらわれず広く各省庁から適任者を選考すること。  二、公団公庫等相互間のたらい廻し的異動は極力これを避けること。  三、清新な気風を反映させるため常勤のポストについては、高齢者の起用はつとめて避けること。  四、役員の長期留任は特別の事情のない限りこれを避けること。    その在職期間は同一ポストについておおむね八年を限度とすること。なお、役員人事のうち閣議関係のものについては、候補者選考の段階に於て事前に内閣官房長官に連絡されるようにすること。  以上です。
  100. 三谷秀治

    三谷委員 数字の説明をお尋ねした内容に伴って答えてください。  いまおっしゃいました八百二十五名中五百四名というのは、おっしゃいますように五十一年の一月一日なんでしょう。そうすると、五十二年の一月一日があるはずなんでしょう。それがどう変化をしたかというふうに聞いたのに対して、この間に六十七名ふえましたと言うからそういう数字を述べただけだ。だから、質問に適切に答えてください。  それから、いまの閣議了解事項でありますが、これは全く空文化しているんじゃありませんか、総理。高齢者の起用を避けるという決定に対して——そもそも退職者は高齢者なんですよ。高齢者とは一体何歳からと御理解でしょうか。それが長期にポストを占有したり、あるいは渡り鳥ですね、次から次へと移っていかれる。そうして清新な気風を反映させるべきはずであるにもかかわらずこれを妨げてきている。そこで内部職員の登用が抑えられて勤務意欲が阻害される。こういう事態になっております。  これは閣議了解事項に全く反するものでありますが、このような処置がなぜ依然として続いておるのか、ここのところの御説明をいただきたいと思う。
  101. 角田達郎

    ○角田説明員 特殊法人の役員の選考につきましては、先ほどお答えいたしました閣議口頭了解の線に沿いまして、第一次的に所管の省庁で選考をし、それから官房長協議という手順でやっております。  それで、先ほどの高齢者等につきましては、なるべく高齢の者が役員にならないように各省庁を指導しているわけでございますが、それぞれのケースによりましてそのとおりにならぬ場合も出てくるわけでございます。  以上です。
  102. 三谷秀治

    三谷委員 退職者がこれだけの比率で就職されますと、高齢者の比率は高くなってくる、これは当然のことなんです。ですから、退職者比率というものは、高齢者比率というものと同義のものなんですよ。その状態が改善されておりませんから閣議了解事項に反しているのではないか、こう言っているのです。  それから、役員のみでなしに中間管理職への天下りもずいぶん多いのです。これも、たとえば農用地開発公団は九二%、金属鉱業事業団で七六%なんですね。こういう事態がどのように改善されておりますでしょうか、こういうお尋ねをしておるのです。この改善についてはしばしば約束されているわけなんですが、それがどのように実行されておりますか、これをお尋ねしておるわけなんです。
  103. 角田達郎

    ○角田説明員 中間管理職の点につきましては私のところで所管しておりませんので、各省庁それぞれ監督官庁が実情を把握しているものと思います。
  104. 三谷秀治

    三谷委員 総理、この問題については、総合的にこの問題を把握する機関を指定してもらいませんと、各省庁ばらばらになっているのです。そして、各省の指定ポストになっている。後生大事にそれを抱えているのです。退職者をそこに落とすために、そのポストを一生懸命で各省が確保してきている。これが、いまこれほど問題になりながら特殊法人の整理ができない大きな原因になっております。ですから、この問題について整理されようと思いますならば、総合的なこの問題についての検討をし、対策を講ずるそういう機関を指定してもらうなり、あるいはそういう省庁にそういう仕事を特に指定してもらうということが必要だと思いますが、その点について総理の考えをお聞きしたいと思う。
  105. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、ただいまのお話まことにごもっともな御指摘だ、こういうふうに思うのです。どうもこの実態からいうと、公務員の定年が延長されたのだというような形が公社公団の人事において出てきておる、こんな感じもいたすわけであります。閣議了解のその方針はまことに妥当である、こういうふうに思いますので、そのような方向で今後はやってまいりたい、こういうふうに考えております。
  106. 三谷秀治

    三谷委員 そのような方向とおっしゃいますが、いま言ったように各省ばらばらになっていまして、私どもが資料をお願いしましても、まとめてこれを引き受ける窓口がないのですね。だから、全体を見渡しまして総合的な管理体制ができていない。ここに大きな原因がある。
  107. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは、内閣において責任を持ってそのとおりにいたします。
  108. 三谷秀治

    三谷委員 そこで、特殊法人の処遇の問題をさっき申し上げましたが、報酬が非常に高いのですね。これは大蔵大臣、笑い事じゃありません。国民はこれが納得できないのです。特に特権的な退職金制度は、これは国民が全く理解できないものです。特殊法人の総裁といいますと、理事長もそうでありますが、大体月俸が九十四万円ですね。副総裁、副理事長級で七十七万です。理事級で六十四万なのですね。それから、副総裁、副理事長級で言いますと、十二号俸ですから東京大学の学長、京都大学の学長と同額になっているのです。各省の次官より上級になっている。副ですよ、これは。理事が指定職の九号ですから、これは東大、京大を除きました国立大学の学長、国立病院の病院長と同額になっているのです。在職中の俸給はもちろんですが、現在その職にとどまっていらっしゃったとしましてもはるかに法人に行った方の俸給が高いのです。ですから、これは天下りじゃありません、天上がりというのです。その方がはるかに待遇、処遇がいい状態になってきている。これは国家公務員の給与も地方公務員の給与もそうですけれども官民権衡を基礎にして決めているわけでありますから、こういうとんでもないものを出されますと、民間給与水準を無視したものでもあるわけなのです。財政難や財源難を口にされますけれども、政府の事業部門でこういう特権的な利権が温存されておっていいだろうかという疑問をだれしもが持つわけでありますが、これについての所見を承りたいと思うのであります。
  109. 坊秀男

    ○坊国務大臣 これらのポストは非常に大事なポストでございますから、できるだけ有為な人にそのポストについてもらおうということで、給与等につきましてもそこに配意をいたしまして決めたことだと私は思いますけれども、(発言する者あり)そこで人間が地位につきまして、りっぱな人がその地位につきますればどんどん仕事ができるということであろうと思います。そういう意味においてこの給与というものを決めたということでございましょうけれども、いろいろ御批判もあることと思いまして、これはひとつ福田内閣のもとにおきまして真剣になって検討をしてみたい、かように考えております。
  110. 三谷秀治

    三谷委員 大平さんが同じようなことをおっしゃっていたのですよ。処遇をよくしなければ人材が求められないとおっしゃっているのですよ。そうしますと、いまの官僚の皆さん、これは人材ではないとおっしゃるわけですか。それ以上の処遇をしなければ求められないということをおっしゃっているのであります。これはごまかしに過ぎないでしょう。次官より高いのです。(資料を示す)これで見ますと、総裁、理事長というのは大体局長クラス、次官クラスが就任されております。中には地方建設局長クラスの方も総裁、理事長に就任されておるのです。その総裁、理事長といいますのが、大部分が月俸九十四万の口に入っている。これでいきますと、内閣法制局長官、あるいは宮内庁長官が八十八万でありますから、これよりはるかに高位に位置するわけです。副総裁、副理事長で見ましても大部分が七十七万なのですが、これは事務次官が七十一万八千円ですから、これよりはるかに優遇されてきておる。東大と京大の学長は七十四万ですから、これよりも優遇されてきているわけです。理事にしてもそうなのです。理事にしましても、これは指定職の九号俸で、信州大学等、一般の国立大学の学長、これが六十三万七千円でありますから、大体これと匹敵しておる。  こういう状況になっておりますが、これはつまり定年まで勤めまして、いわば第二の人生と俗に言われますけれども、そこに進んでいく過程としましては余りにも処遇が過ぎやしませんか。常識上から見まして納得できるものじゃないじゃないでしょうか。
  111. 坊秀男

    ○坊国務大臣 先ほど申し上げましたのは、一般的に私は、地位は人を得てとうとしということを申し上げたわけです。人を得て、人材を得てということを申し上げたわけでございますけれども、いろいろな点につきましていま御指摘のようなこともございますし、これは一般的の問題ですが、必ずしも高過ぎるとは——さように私は考えますけれども、給与の点につきまして、またその他の点につきまして、これは真剣に検討を加えてまいりたい、かように考えます。
  112. 三谷秀治

    三谷委員 給与の問題も問題ですが、もう一つ重大なのは退職金なんです。これが法外なものです。国家公務員や地方公務員の退職金といいますと、普通勤続一年に対して一カ月というのが基準になっています。ところが、この特殊法人に行きますと基準のとり方が違う。特殊法人の場合は、勤続一カ月に対して報酬月額の〇・四五カ月、こうなっている。一般の場合ですと、一年勤続に対して一カ月分、こうなっているのです。特殊法人に行きますと、一カ月の勤続に対して〇・四五カ月、こうなっているのです。基準のとり方が違ってきている。ですからこれは大変な退職金が出るわけです。  さっき資料を差し上げましたけれども、その二面のところを見てください。いま特殊法人の役職名、そこに二十ほど挙げてありますが、この二十全部羅列するわけにいきませんけれども、これは平均をとって見ますと八年勤続でしょう。そしてそこに平均値が書いてありませんですが、三千五百万程度の退職金になっている。これは一般公務員の場合ですと四百万円程度じゃないですか。ですから、非常な不合理な処遇がなされておることがわかるわけです。  たとえば説明のついでに申し上げておきますけれども、いま水産庁の長官をなさっていた方が農用地開発公団の理事長に就任されておりますが、この方は退職前の給与が三十六万円でした。特殊法人に就職されますときに五十六万になりました。現給が八十一万円なんです。この方は、公務員年金は退職時で百四十七万円でした。年金も下がっていますよ。そして退職金が二十八年間勤務しまして千六百五十二万円だった。これが支給されているわけであります。これが特殊法人に四年間在職しますと、千七百九十五万二千円退職金が支給される。公務員として二十八年勤めて受給しました退職金というものを、特殊法人では四年間勤務すれば同額以上のものが支給される、こういう制度になっているのです。  いま日本道路公団の副総裁に就任されている方で、これは建設省の事務次官でありましたが、この方は四十五年の時点で、退職前に三十八万円でしたが、四十万円で特殊法人に就任されました。現給は七十七万なんです。この方は三十一年間公務員として勤続されまして、退職金が千九百四十三万円でした。道路公団では五年五カ月勤続しますと千九百五十万円になるわけなんです。すでにもう六年以上勤続されましたから、特に公務員の三十年分以上の退職金の受領資格が生じてきているわけなんです。こういう、まさに天と地の違いがここに示されているわけなんです。  運輸省の事務次官から新東京国際空港の副総裁に就任されました方、この方は退職前の給与は四十三万円でしたが、五十九万四千円で東京空港に就任されました。今日七十七万の月俸です。国家公務員としての勤続年数三十年でありましたから、退職金は二千百二十八万円でした。ところが、この法人で五年間勤続しますと、二千万円の退職金が保証されるわけなんです。こういう状態になってきている。なお、現在総裁、理事等のポストにある者の退職金の試算は、そこに差し上げております第二表に出ておるとおりであります。多いのはもう六千五百万円、一億円退職金がすでに実現しそうな状況になってきている。こんなことは皆さん、国家公務員や地方公務員の退職の制度として考えられることでしょうか。こういうものが放任されてきている。これは財源難をおっしゃいますならば、まず隗より始めよと言いますけれども、こういうところから手をつけて国民が納得できる制度にされるのが至当だと思いますけれども、この点はどうお考えでしょうか。
  113. 園田直

    ○園田国務大臣 いまの御意見のようにわれわれも思います。なおひどいのは、国家業務を代行すべき同じ系統の公団、公社等で、退職して退職金もらって次の特殊法人に就職するなどという例もございますので、この待遇問題は、所管大臣に認可を受ける、認可をする際には大蔵大臣に協議することになっております。したがいまして、ただいま総理大臣が言われましたので、各大臣と御相談の上、十分検討して御趣旨が徹底するようにしたいと考えております。
  114. 三谷秀治

    三谷委員 改善をしてもらわぬといけませんです。それは改善されるということをおっしゃっているわけなんでしょうか。総理、どうでしょうか。
  115. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私が、新体制のもとに国、地方公共団体、対処しなければならぬ、こういうふうに申し上げておりますのは、その国というのは公社、公団、また特殊法人もこれを含めてのそういう意味なんですが、そういう問題も含めまして八月中までには結論を得たい、かように考えております。
  116. 三谷秀治

    三谷委員 特殊法人の問題に触れましたついでに、日銀も特殊法人に入っているわけでありますが、日銀はもう一回り処遇がりっぱなわけなんです。たとえばいま申しました退職金など一般法人におきましては一カ月に対して〇・四五でありますが、日銀におきましては一カ月に対して〇・五五になっているわけです。日銀の政策委員などは月俸が百二十万というのですが、議長は二百万と言っておりますね。総理よりはるかに高いわけなんです。日銀というのは特にそういう特殊な何か事情が存在するわけでしょうか。これも国民の素朴な疑問としてお答えをいただきたい。
  117. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 その検討の際におきましては、日銀も含めて検討いたします。
  118. 西村英一

    ○西村国務大臣 日銀は百十三の特殊法人のうちには入っていないのです。特殊法人ではないと私の方は見ておるのです。しかし、総理は、なくても考える、こう言っておるわけでございます。
  119. 三谷秀治

    三谷委員 そこで、臨時行政調査会の答申で出ておりますように、検討するとおっしゃいましたから全体として検討して改善してもらうということを特に希望しておきますが、臨時行政調査会の答申で出ておりますのは、特殊法人をつくる場合には自主性を十分に尊重するということ、それから役員の責任体制を確立するということ、これがうたわれております。それから官庁との人事交流は、つまり天下りは、つくったとき以外は行わない、こういうことも示されております。それから採用試験、これは国家公務員並みに行うのだ。さっき総理がおっしゃいましたように、政府機関の延長として考えていく。そういう観点からしますと、そういう採用試験のやり方をとるべきだ。それから役員につきましては、本省からの直接登用はできるだけ抑える、半数以下にすべきだと言っておりますが、この半数以下が妥当かどうか知りませんが、こういう答申が臨調から出ておるわけなんですが、こういう臨調の答申というのはすでに十三年前の答申でありますけれども、こういう答申などに基づいて検討を加える意味と解していいわけなんでしょうか。
  120. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 特殊法人をつくる趣旨は、政府の機構でやっていきますと余りにもぎこちない、と言うと語弊があるかもしれませんけれども、弾力性がない、こういうことで、ある程度の機動的、弾力的な運営ができるということをねらいといたしまして、政府とは密接な関係はあるけれども、しかし、政府のきちんとしたやり方では動き得ない面もありますので、特殊法人というものをつくっておるわけでございまするから、その特殊法人をつくった趣旨、これも考えなければならない。しかし、これは官庁の業務を引き続いて行うという面も多いわけでございまするから、その辺の両々の調和ある仕組みにしていかなければならない、こういうふうに思います。臨調の答申につきましては、考え方は私はよくわかります。しかし、きちんとそういうふうにいくかどうかということにつきましては、ただいま申し上げました特殊法人と国との調和、これをどうするかという趣旨で、その趣旨は守っていかなければならないと思いますが、きちんとそういうふうにするかどうかということになりますと、多少ゆとりを持たしてもらいたい、かように考えます。
  121. 三谷秀治

    三谷委員 万博協会というのがありますが、これはいまおっしゃいました百十三特殊法人には入っておりませんが、大蔵が監督されております特殊の法人であります。ここで運営が非常にむずかしくなってきております。御承知のように、万博協会といいますのは、万博の利益金百九十二億円ありました、これを預託しまして、その運用益、これで維持管理費を賄ってきております。この百九十二億円のうちの百五十五億円は基金会計として別に分離しております。これはもう御承知のとおり。残っておりますのは、運営のための積立金が二十億円、それから残存施設撤去費、あの太陽の塔、これを撤去してしまう、これが十七億円。この基金事業百五十五億円から利息が十二億円出てきます。それから施設撤去費と運営積立金の運用益が二億四千万円出てくる。この十二億円の基金事業の運用益は、半分はご承知のように国際交流事業に投入しております。あと六億だけ残っている。これと施設の撤去費、運営積立金の運用益二億四千万円、つまり八億四千万円が維持管理費になっております。  ところが、欠損がずっと出まして、四十八年で一億一千万円、四十九年で四億五千万円、五十年で約五億という見込みでありましたが、こういう欠損金が出ましたから、これで運営積立金を取り崩しております。二十億ありましたものがいま七億くらいになってしまった。ですから、運用益が出る元の基金まで食ってしまってきておる。ですから、このままいきますと、五十三年末になりますと、これは全額取り崩しをして、運用益も消滅する、こういう事態になってきた。これをどうするかという問題でありますが、これは大蔵が管理されている問題です。  そこで問題になりますのは、赤字の要因がどこにあるかということなんです。時間がありませんから一遍に言いますけれども、その赤字の要因といいますのは、機構が不合理なんです。人件費が肥大しております。たとえば職員が九十二名おりますが、係長が二十四名、職員四人に対して一人係長がおりますね。課長が十三名おりますから、職員七人に対して一人課長がおります。部長は七人おりますから、職員十三人に対して一人部長がおるわけです。常勤の理事が四名いらっしゃる。ですから役員が非常に多いんです。管理職が非常に多いわけなんですね。  こういうふうにしまして頭でっかちの機構になってきておる。しかも、この問題をなぜ解決できないかといいますと、ここにつまり各省のポストの割拠主義があるわけでしょう。たとえば、この理事、部長のポストで申し上げますと、自治省が三ポストなんです。大蔵が二ポストになっている。通産まで三ポストをとっていらっしゃる。そこに大阪府が二ポスト、大阪市が二ポストになっている。こうして各省の天下りのポストというものを維持するために、頭でっかちの人事体制が改善できない。そのためにみすみす人件費が肥大をしていって、どんどん原資の取り崩しをしておりますのに、対策が立たないという状態なんです。こういう状態に対して大蔵としてはどうされますのか、お尋ねしたいのです。
  122. 坊秀男

    ○坊国務大臣 一応よく調査をさしていただきます。
  123. 三谷秀治

    三谷委員 これはいまごろ調査ということがありますかいな、あんた。こんなものは、この赤字が出だしましたのが、すでに四十八年から出ているわけですから。万博協会をつくりましたのは四十六年でありますが、四十七年だけは何とかいけましたが、その翌年からはずっと赤字が出てきている。それを調査されるのですか。これは赤字の状態を御承知ないのですか。理財局、知っているでしょう。
  124. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 お答えします。  理財局の所管事項でございますが、便宜私、かわりまして御答弁いたしたいと思います。  これにつきましては、当初百九十二億という資金量は、当時の金としては相当大きいと思われたわけでございまして、それに相応ずるような人員構成で出発したわけですが、確かに三谷委員御指摘のとおり、その後異常な物価騰貴、人件費騰貴などございまして、やや管理機構が肥大化しているという事実は私も認めざるを得ないと思います。それと同時に、この運用につきまして、いつも洗い直して新規のものに出していけばいいのですが、この運用が固定的になっているという面もあるかと思います。御指摘のように、すでに基金の取り崩しをもう進め始めている、こういう実態に対しましては、この万博協会そのものの今後の運営をどうするか、それから、いま御指摘の基本量が、その後の物価、賃金の騰貴に比べて相対的に非常に減少している、こういうものをにらみながら解決していく必要があるのじゃないか、こう思っております。
  125. 三谷秀治

    三谷委員 これは一つは各省庁のポストの割拠主義をまず整理してもらう。これはさっきの特殊法人の場合と一緒でありますけれども、ポストを取り合って、こういうふうな状況になっておっても、なお自省のポストをなわ張り意識で放そうとしない、これが一つの原因でありますから、これをやはり改善してもらうということ。  それから総理にお願いしておきたいのですが、この万博公園を維持しますためには、中環状線にモノレールを通してもらわぬといかぬ。これが通りませんと、そこに行く電車がないわけですから、もう自動車に乗っている人しか行かれない状態なんですね。だから、大阪府はいまモノレール構想をもちまして中環状線にモノレールをつけまして客をここに誘導する、こういう考え方を持っておりますが、これについても何分の検討をお願いして、万博公園が維持できるようにひとつ検討願いたいと思っております。  それからもう一つは、こういう公園の管理なんというものは、役人じゃやはりだめですね。特色のある公園をつくるという点が欠けております。もうどの公園も似たり寄ったりで、たとえば花が咲けば吉野山に行ってみようかとか、もみじが満開になれば高尾山に行ってみようかというので集まるわけでありますが、そういう公園に特色を持たせましてもう少し人を集めるようにするということを考えなければ、だんだんと万博の開催時点から時間が経過しますと客が減ってしまうんですね。こういう点につきましても、管理は大蔵ですが、十分な御検討を願って、これはせっかく大阪府にいまできました一つの重大な施設でありますから、これが健全な運営ができるように希望しておきたいと思っております。これについて御所見を承っておきたいと思います。
  126. 坊秀男

    ○坊国務大臣 こういったような施設、これはやはり大事にしていかなければならぬと思いますけれども、目的を達成することのできるようにできるだけの努力をいたしたい、かように考えます。
  127. 三谷秀治

    三谷委員 時間ですから……。
  128. 坪川信三

    坪川委員長 これにて三谷君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分より再開することとし、際、休憩いたします。     午後零時四十七分休憩      ————◇—————     午後一時三十四分開議
  129. 坪川信三

    坪川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田川誠一君。
  130. 田川誠一

    ○田川委員 総理に対して、補正予算、それに関連して五十二年度の予算案に対する基本的な考え方をお伺いいたします。  五十一年度の補正予算は、前の内閣が昨年十一月に出されました不況対策を補強しようとする第二弾だと言われておりますけれども、その内容は、ロッキード事件などの政局の混迷から出おくれた財政需要を修復する程度のものにすぎないんではないかと私どもは見ているわけです。私どもは御承知のように、年度内に一兆円減税を行って、思い切った景気浮揚対策をやるべきであると主張しております。ですから、この補正予算の景気対策に対する効果というものは余り期待しておりませんし、この補正予算の内容にも大変不満であります。しかも、この不十分な補正予算が昨年末に国会提出をされましてから、もうすでに二月中旬を過ぎております。     〔委員長退席、大村委員長代理着席〕 国民の皆さんは、この補正予算が成立して、何とか景気対策、景気がてこ入れされるんではないかと望んでおるようでございますけれども、果たしてそのような効果が期待できるか。ちょっともうタイミングを失いつつあるような感じがしてならないのです。しかし、この冷え切った経済状態をさらにこれ以上悪化させるということも、これも配慮しなければならぬし、また災害復旧や冷害対策も考慮に入れなければなりません。そうした意味で、補正予算案というものを少しでも早く成立をさせていくということを十分考えていかなければならないと私どもは基本的に考えているわけです。  そこで、総理にまずお伺いいたしたいのは、この五十一年度の補正予算案を含めて、経済不況からの脱出に対する処置というものは大変おくれているような感じがいたしますけれども、このおくれた原因が一体どこにあるのか。これは主に国内的な原因があるような気がしてなりません。一体なぜこんなにこの不況対策に対する処置がおくれてきてしまったのか、これをまずお伺いしたいと思います。
  131. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 昨年一年を考えてみると、景気の情勢は、大局的に見ますと、まあまあ順調なんです。これは諸外国でもそう評価しているくらいですが、ただ、問題がありますのは、その好調であるというけれども、これは年度をならしての話なんです。上半期に輸出が急増しました。特に一−三月期のごときは実質で一三%成長、これは高度成長期にも見られないような成長だったわけです。その輸出が世界情勢の変化に伴いまして伸び悩むという状態になりまして、そこで、まあ下半年をとってみますると、いまお話しのように停滞現象、横ばいだ、こういうところまで来ておるわけなんですが、さあ、それに対してどういう国内対策が必要であるか。そういうことを考えますと、これは世界景気がとにかく落ち込んでおるのですから、これをどうすることもできない。しかし、これはすぐ即効的な役割りは出てきませんけれども、やはり世界景気を上昇させるということにつきましてわが国としても努力をしなければならぬ。同時に、わが国自体の問題といたしましても、この状態をほうっておきますと、非常に国民の士気が阻喪する、活力ある社会情勢というものに支障がある。そこで何とか、去年の秋ごろからどうしてもてこ入れを必要とするな、こういう事態に当面したわけなんです。ところが、御承知のような政治情勢でもあります。総選挙が行われる。その直前の状態で臨時国会を召集し、財政措置についての御審議をお願いするというわけにもまいらぬ。まあ総選挙が済むと政権の交代と、こういうような事態に当面するというので、本当は昨年の秋ごろ財政措置を講ずべき立場にあったと思うのです。しかも財政の方はどうかといいますれば、財政特例法の成立がおくれておる。おくれ切っちゃった。その影響もある。それから電電、国鉄公社の値上げ問題が政府提案のようにいかなかった。そういうような影響もある。そこでまあ焦りに焦っておったのであります。それで私どもは、首班指名の国会が開かれまして、首班指名選挙が行われて新内閣が成立することになりましたけれども、あの環境のもとにおいて補正予算を提出をし御審議を願うというわけにもいかぬ、じんぜん今日に至っておるわけでございます。  本当にいま田川さんがおっしゃるように、いまの景気これでいいか、早くてこ入れをしていかなければならぬ、これを放置しておきますと大変なことになるというので、本当に心から焦りに焦りを感じておる次第でございます。
  132. 田川誠一

    ○田川委員 五十分しか時間がありませんから、なるべく簡潔に答弁をしていただきたいと思います。  一刻も早く補正予算を上げてもらわなければもう遅過ぎるというお話ですね。なぜこういう処置がおくれたか。もとをさかのぼっていけば、そもそも当初予算もずいぶんおくれているわけですね。いま総理がおっしゃったように、ロッキードの問題、国内政局の問題でずいぶんおくれたんだというお話ですけれども、私どもはここでもう一度、昨年の通常国会から秋にかけての国内のもろもろ起こった事件というものを反省していかなければならぬ。私は、実はこういうような処置がおくれたたのはやはり自民党にかなり責任もあると思うのです。三木内閣のときに私もこの席で申しましたけれども、やはり自民党の中の内紛がこういうような不況に対する対策をかなりおくらしているのではないか。また一面、それだけじゃないと思います。それだけではなく、私ども国会に籍を置く者にとっても、たとえば、予算委員会がロッキード論議に終始して、そうして経済に対する対策がやや軽視されていたというそういう面も反省しなければならぬと思うのですね。ロッキード事件を究明しなくていいということではなく、ロッキード事件も徹底的に究明しなければならぬけれども、一方、いま日本が置かれているこの経済状態というものを、われわれ国会に籍を置く者がやはり忘れてはならないことではないかと思うのです。私はそういう意味で、政府・与党も反省しなければならぬけれども、私ども自体ももう少し国会審議のあり方というものを考えていかなければならないと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  133. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ロッキード問題、これはわが国の政治の基本に関する問題でありますので、もとより大事でございますが、同時に私は、ことしは経済の年である、こういうふうに申し上げておるわけであります。これは日本の問題でもあるのです。しかし同時に、これは世界の問題でもある。一体世界が混乱したらどうなる。その混乱に対しまして、これをそうさせないための力を持っているのは日、米、独あるいは日、米、欧である。そうすると、その中の一つの極であるところの日本の責任というものも非常に大きいと思うんですね。ことしは経済の年であるという立場、いまそういうお考えを示唆されるようなお話を承りましたが、ぜひともそういうお考えで対処せられたい、お願い申し上げます。
  134. 田川誠一

    ○田川委員 おくれた原因について総理ば余りはっきりおっしゃいませんけれども、私ども先ほど申し上げましたように、政府・与党としても大いに反省をしていただきたい。そして私どもも国会の審議で、たとえば政界汚職の問題、これも重視しなければならぬ半面、経済的な問題というものもできるだけ重視していかなければならぬ。また、いま総理がおっしゃったように、ことしは経済の年である、そしていまこの国会で減税論が論議されておりますけれども経済の年だから経済だけ取り上げてこれに終始していることもちょっと誤りではないか。この国会で私は少し不満とすることがございますけれども、この予算委員会あるいはこれから行われる各委員会の中で、やはりいまいろいろうわさをされている日韓の問題につきましても十分論議をしていかなければならぬ。そういう面で、私は両方相まって国会審議を行っていかなければならない、こういうふうに思っているわけです。  時間がございませんからもう一点お伺いいたしますが、補正予算を、もう遅きに失したけれども、とにかく早く通さなければならぬ。そうして、これ以上冷え切った景気を悪化させることを防いでいかなければならぬ。こういうことと同時に、この五十二年度の予算もできるだけ年度内に決着をつけていかなければならぬと思うんですね。ところが総理は、野党の主張に対して大変かたくなな態度をとっていらっしゃる。私たちは、一兆円減税をどうしても併用していくべきである、こういう主張でございます。これはいままでの論議の中でかなり煮詰まっているような気がいたします。  そこで、やはりこの五十二年度の予算と補正予算と関連があると思うのです。そういうつながりがあると思うのです。補正予算をできるだけ早く決着をつけて成立させると同時に、五十二年度の予算も年度内に通すようなことを考えていかなければならぬ。総理はどうも真剣にそこまで考えていらっしゃるのかどうか。私は、いままでの国会論議を聞いておりまして、一体年度内に五十二年度予算をどうしても成立しなければならぬという本当の熱意があるかどうか、ちょっと疑問に思えてならないのです。暫定予算を組んでいいのですか、お伺いしたい。もう簡単でいいです。
  135. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま経済の年であり、その経済の中で財政の役割りは非常に大きいわけであります。そういうことを考えますと、昭和五十二年度予算はできる限り皆さんの御協力をいただきまして年度内に成立さしていただきたい。ただただ神に祈るような気持ちでおります。
  136. 田川誠一

    ○田川委員 十六日に、何か新聞記者団に、もう年度内の成立はあきらめたようなことをおっしゃっている新聞の記事が出ましたけれども、もう日程から見てとてもむずかしい、そういうことをおっしゃっていますけれども、いかがですか。
  137. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、年度内に成立することを切に希望する、しかしなかなか容易じゃない情勢だ、最善を尽くします、こういうことを申し上げているのです。
  138. 田川誠一

    ○田川委員 あらゆる努力をして年度内に五十二年度予算を成立させなければならぬというかたい気持ちを抱いておりますか。もう一度念を押します。
  139. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 その気持ちにおいてはいささかの変わりもございませんです。
  140. 田川誠一

    ○田川委員 そういたしますと、先ほどちょっと申し上げましたように、減税の問題をめぐって野党と政府の間は硬直状態になっていることはよく総理御存じのとおりです。しかし、私どもはそれほど硬直的な考えを持っておりません。できれば政府と話し、あるいは与党とも話して何とかして年度内に五十二年度予算を上げたいという気持ちは、ほかの野党の方もみんな同じような気持ちでこの国会審議に臨んでいる。  ずいぶん野党の気持ちは変わりましたよ。最近は、私も毎日この予算委員会理事会に出ております。安宅さんなんか声をここで大きく張り上げますけれども、やはり理事会で話を聞きますと、何とかして一刻も早く五十二年度予算を通さなければならぬという気持ちのもとにお互いに与野党が話し合っている。もう一年前の国会の状態といまの状態とは非常に変わっている。野党のこの国会審議に対応する気持ちというものが、総選挙前というか、一年前とばずいぶん変わっている。これは政局のせいもあるでしょう。与野党の勢力が接近したという事情があるでしょうけれども、われわれ野党も責任を感じて国会審議に臨んでいる。ですから、いままでのこの予算の審議におきまして、私どもも社会党その他の野党の皆さん方も、減税論に対してあるいは予算修正に対して、一応の対案的な考え方を述べて主張をしているわけですね。  それに対して、総理のこの減税に対する態度というものは余りにも硬直し過ぎた答弁をされているような気がしてなりません。われわれ野党の方が発想を転換して、できるだけ論議を尽くしつつ五十二年度予算案を上げていきたいという気持ちを非常に強く持っている。しかし、総理は自説を固持してなかなか譲らない。これでは、いま総理がかたい気持ちを言われましたけれども、五十二年度予算を年度内に何とか上げなければならぬという気持ちを披瀝されましたけれども、これではいつまでたってもなかなか野党と政府のこの減税に対する考え方は接近ができないと思う。  そこで、私は総理に、減税に対する総理考え方は一歩も引かないのかどうか。これは、予算を修正するとかしないとか、いまここであなたが予算修正に応ずるなんということは軽々に言える立場でないということはよく承知しておりますけれども、野党のこの主張に対して一体どれだけ耳を傾けていくか、どれだけ真剣に話し合いをしていくかという気持ち、その気持ちをお聞きしたいのです。
  141. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、予算案にいたしましても、あるいはその中で重要な問題である減税の問題につきましても、これは政府が原案を提出する。政府が原案を提出するにつきましては、国政全般を広くながめまして、バランスのとれた形だ、こういうことで提出しておるわけです。しかし、従来間々ありましたように、いやしくも国会に政府がいろいろ調査をして自信を持って提出したのだ、であるがゆえに、メンツとしてこれが修正をいたしません、そういうけちな考え方は私は持っておりません。与野党の間で話をする——私は現に、特に忙しい、短い時間ではありましたけれども、五党首と会談をしている。五党の間でもどういうお考えを持っているであろうかということを特に聞きたい。本当は、時間があればもっと、もっと何回も何回もお聞きしたいところだったのですが、一回にとどめざるを得なかったわけでありますが、私は本当に五党の党首との間で話をする、あるいは党首でなくてもよろしゅうございます。それぞれの担当の人において話をする、そして煮詰めて煮詰めて、これが本当に国家国民のためにいいというようなことの結論が出ますればそのとおりにするということ、これが私は国家国民に対する責任である、こういうふうに考えているのですよ。  ただ、私が現在の段階で皆さんからもいろいろ話を聞いておる、その範囲内におきましては、どうも私ども考え方の方が均衡を得ておる、そういうものではないかということを申し上げておるわけなんでありまして、私どもが間違っておる、そういうようなことがあれば、これは政府は進んでやりますよ。野党から修正案を出す、そのようなことはまず必要がありません。われわれみずからやりますが、しかし、いま私どもがずっと皆さんの御論議もお伺いしておる、この段階においては、私どもの政府提案が国家国民、現在のこと、将来のことを考えて、これが妥当のものである、そういう見解であるということを申し上げておるのです。
  142. 田川誠一

    ○田川委員 言い回しが大変微妙な言い回しでわからない点もございますが、要するに与党と野党と話し合って何らかの結論が出れば、これは尊重しなければならぬというお気持ちですか。
  143. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 国家国民のために考えましてこれがベターであるということになりますれば、私は皆さんから修正案が出るというようなことを待ちません。みずからやりますよ。(田川委員「ちょっとわかりませんが、修正案を何ですか」と呼ぶ)修正案が出るというようなことを待つまでもなく、みずからこれを修正する、こういうことも当然あります。私は、メンツにこだわっているというような考え方はいささかでもありませんから。
  144. 田川誠一

    ○田川委員 私どももメンツにこだわっているわけじゃないし、また、われわれも国家国民のことを考えてこうして審議をしていることをつけ加えておきます。  将来のことですから、こうした話し合いがいっどういう形でまとまるかわかりませんけれども、私どもは、野党の内部でもお互いに党の立場をなるべく引っ込めるような形で実は話し合いを続けているわけです。ですから、これから与党との話し合いも起こってくると思うのですね。ですから、そういうことを考慮して、ひとつこれから総理は十分弾力的な考えでこの予算案について臨んでいただきたいことを要望いたします。よろしゅうございますか。
  145. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 お互いに国家本位で考えましょう。
  146. 田川誠一

    ○田川委員 もう一つ、この中期的な展望、中長期的な展望で総理に一言だけお伺いしたいのは、いまのような縮小均衡に向かった経済状態、これに対応していくには、行政の簡素化もやらなければならぬし、そうしてできるだけ行政効果を上げていくことを考えていかなければならぬと思うのですね。これからは、歳入不足を増税で賄っていこうというようなこそくな手段でいつまで続くかなかなかわからぬと思うのです。そういう意味で総合的な行政を、行政効果を上げていくということを国も地方も考えていかなければならぬ。それには地方団体、都道府県、市町村、地方自治体の協力も求めていかなければならぬと思いますね。それからさらに、もっと地方に自主権を与えて地方自治を確立していくような方向づけをしていかなければならぬと思うのです。  現在の国と地方との関係を見ますと、どうも地方の自主性というものがだんだんだんだん失われていくような気がします。財源の問題にいたしましても、何か中央集権的なそういうような例がどんどんどんどん出てきている。もっとここで発想を変えて、国と地方との関係、特に市町村を基礎的な団体として、そうして国と府県と市町村との仕事の役割りというものをぴちっとして、地方に任せる仕事はどんどん任せていくように、そういう行政運営をしていかなければならぬ。一挙にはできないと思うのです。一挙にはできないと思いますけれども、できるだけそういう方向に、つまり適切な言葉であるかどうかわかりませんけれども、地方に自治権をもっと強く持たせていくような、地方分権的な考えをおろしていかないと、なかなか行政の効率化というものを図っていけないと思うのですね。  そういう意味で、総理に、一言だけでいいのですけれども、地方自治の確立に向かって政府ができるだけ努力していく考えをお持ちかどうかお伺いしたい。
  147. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いまの中央、地方の関係を見ますと、やはり財政というものが非帯に関係してくるわけですね。いま国の予算は二十八兆円ですね。その中で地方へ国から交付税、補助金、こういう形で交付する金が実に十四兆円になるんです。ですから、国が二十八兆円の財源を調達しますけれども、実はその中で国としては通り抜け勘定が十四兆円ある。ですから、地方自治は、二十八兆円の仕事をしておる、相当膨大な仕事をしておるわけですが、しかしそういうバランスの中で国と地方が車の両輪となって地方の行政を執行しておる、こういう形であります。  私は、方向としては補助金というものが減って、交付税というものがふえて、そして地方自治というか、地方の裁量が働くという形、これは長い目で見るとどうしてもそういうふうな形にならざるを得ないし、なるのが当然だ、こういうふうに考えますが、いずれにしても、国と地方とは車の両輪でありますから、その仕事を一緒にやらなければならぬという問題があるわけですね。そうすると、国が交付税という包括的な形で財源を交付する、そういう形は望ましいわけではございまするけれども、それで果たしてうまく車の両輪という一つの地方というものを対象としての仕事が実行できるか。こういう問題もあるので、いま田川さんおっしゃるとおり、急になかなかいきません。しかし、だんだんだんだんとそういう方向を志向すべきものである、こういうふうな見解でございます。
  148. 田川誠一

    ○田川委員 この問題は議論するとまた長くなりますからやめますが、なぜ私がこういうことを申し上げたかと言えば、個々の例でいろいろ中央集権的な例が出てきているわけです。それで申し上げたわけです。総理が、地方自治を確立していこう、こういう方向をお持ちになっているとすれば大変結構だと思いますが、これはひとつ個々の例でいろいろ見ていっていただきたいと思うのです。  そこで、大蔵大臣にひとつ具体的な問題についてお伺いをしたいのですが、御承知のように、最近、米軍の基地が返還をされてきております。米軍基地の集約化に伴っていろいろな基地が返還をされ、その跡地の問題、跡地をどういうふうにして利用するか、こういう問題が出てきているわけです。最近、大蔵省がこの跡地の処理についていわゆる三分割案という基準をつくりました。これは審議会の答申に基づいて大蔵省が基準をつくったわけです。  簡単に申しますと、この基準案、十万平米程度以上の返還基地、返還の跡地については、国が三分の一、地方が三分の一、残りの三分の一は保留地としてとっておく、こういう三分割。そうしてそれをどういうような条件で貸し付けをするか、譲渡をするか。これは公共施設に使われるわけですけれども、その貸し付け、譲渡の条件、これもいままでは無償で貸し付けできるというのを有償方式に変えよう、こういう基準を大蔵省がつくったわけです。こういうような基準をつくったことによって、地方団体側と国との関係がいま非常に悪くなってきておる。そして米軍基地がもうかなり返還された。返還されたけれども、大蔵省と地方団体側との意見が合わない。この基準案をめぐって意見が合わないために話し合いができない。話し合いができないままに数カ月経過しているわけですね。ですから、せっかく返還された基地がほうりっ放しにされている。環境の問題やいろいろな面で大変これは大きな問題なんです。それよりも何よりも、国有財産だからといって、それが米軍から返還されたその跡地を、国が一方的に、いままではそういう三分割するなんという基準がないのに、一遍に基準をつくって、そうしておまえさん方、もうこれでやれよ、こういうことが私は中央集権的だと申し上げているわけです。非常に残念なことです。このために地方団体と国との話し合いが途絶をして、しかも、いまたくさん基地が戻ってきているその跡地がそのままほうり出されている。これは何とかして早く話し合いをして解決していかなければならぬ問題である。     〔大村委員長代理退席、委員長着席〕 と同時に、このように国が一方的に三分割でなければならぬと言うことは、国側から見ても、われわれ国家の問題を担当している者から見ても、国家的な要請があって、この返還された基地を全部国家的なものに使いたいといった場合に、この三分割案でやったら国家的要請のためにその跡地を利用できなくなるじゃないですか。それから、地方が国家的に見ていろいろな都市計画をやる、しかし、そのために地方が計画したとおりに進めていかなければならぬという場合もあり得る。何でもかんでも三分の一は国が使う、あとは自治体が使え、そうして三分の一は保留地にしろ、こういう一律な考え方というものは再検討していかなければならぬと思うのです。  大蔵大臣は就任間もないし、私がこういうことを具体的に聞いてもなかなかすぐ御答弁できないと思いますから、二、三おわかりになれるような点だけ質問をいたしますが、この三分割案という大蔵省事務当局がつくった基準というものを、一体どうやって運営していこうというおつもりですか。
  149. 坊秀男

    ○坊国務大臣 田川さんのおっしゃられました三分割案に対しまして、大蔵省といたしましては、返還財産の有効利用を図るべく、この答申に示された方針をまず踏まえましてその処理の促進に努めておるところでありますが、個々の大口返還財産ごとの具体的な利用計画の策定に当たりましては、地元地方公共団体と十分話し合いを行い、問題の円満な解決を図ってまいる所存でございます。
  150. 田川誠一

    ○田川委員 個々に話を進めていく。この基準を一方的に押しつけていくということじゃないですね。そういうふうに解釈してよろしゅうございますね、大蔵大臣。
  151. 坊秀男

    ○坊国務大臣 とにかく個々の話し合いを重大視してまいる、こういうつもりでございます。
  152. 田川誠一

    ○田川委員 ちょっと質問が前にさかのぼりますけれども、先ほど私が申し上げましたように、地方団体側と大蔵省側との話し合いがもう行き詰まってしまってデッドロックに乗り上がっているわけですね。そうして、せっかく米軍から返還された国有財産というものがそのままになってしまっているのですね。こういう状態を続けていくというのは大変問題だと思うのですね。これについてどうですか。
  153. 坊秀男

    ○坊国務大臣 ただいま申し上げましたとおり、大蔵省としては一方的にこの方式を地方団体に押しつけようというものではございません。
  154. 田川誠一

    ○田川委員 一方的なことで押しつけるということではないというお話を伺いましたが、それでは譲渡したり貸し付けをしている貸し付けの条件ですね、この条件が、いまの法律、国有財産特別措置法、こういう法律から見ますと、法律の範囲内でこの基準をつくっていることには間違いないですけれども、地方公共団体にとっては非常に大きな負担になるのですよ。  総理大臣にもよくお考えをいただきたいのですけれども、たとえば人口急増地帯で小中学校にこの跡地を利用する。法律では、これは無償貸し付けができるということになっている。ところが、今度つくりましたこの大蔵省の処理の基準からいいますと、半分だけは時価で譲渡、半分だけ時価で地方団体が小中学校を建てるのに金を出さなければならぬ、あとの半分だけは無償貸し付け、こういう基準なんですよ。ですから、こういうような基準で実際にやっていきましたら、これは地方団体の負担というのはものすごく多くなる。ものすごく多くなるというよりも、地方団体で小中学校のために有効的に利用できる土地が利用できなくなるというおそれもある。この譲渡条件について、どうですか、大蔵大臣、このとおりに何でもかんでもやっていかなければならぬですか、お伺いしたい。
  155. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お話しのとおり、地方公共団体の中には現在なお三分割方式に対しましていろいろな御意見があることは私も承知しております。国といたしましては、具体的な跡地ごとの利用計画の検討に関しまして、地元地方団体と十分話し合いを行えば、意見の調整が図られ、おのずと円満な解決への道が見出されるのではないか、かように考えております。  なお、この三分割方式は、従来関係各方面からの需要が競合いたしまして収拾のつかなかった大口返還財産の処理について、関係者が相互に譲り合って現実的な解決を図るための基準でございまして、これにより競合した場合の処理促進が期待されておるところでございます。
  156. 田川誠一

    ○田川委員 時間がありませんから、もう一つ大蔵大臣にお願いしたいのは、基地の跡地の問題は、もう一つ旧軍港にかなりあるわけです。佐世保、舞鶴、呉、横須賀、ここも同じような問題がこれからも起きてまいります。この旧軍港の米軍の返還基地の跡地、この処理についてはどうですか。今度つくった大蔵省の三分割の基準が同じように適用されるのですか。
  157. 坊秀男

    ○坊国務大臣 旧軍港市に所在する返還財産については、この方式によって統一的に処理を行うということは考えておりません。従来どおり旧軍港市国有財産処理審議会に諮って、個別に処理を行ってまいるつもりでございます。
  158. 田川誠一

    ○田川委員 旧軍港の国有財産の処理については、旧軍港市転換法というのがあるわけですね。それでこれが適用されて処分をされるわけです。いま、大蔵大臣のお答えをもう一度確認するわけですが、今度の大蔵省が考えているこの基準というものは、旧軍港の返還財産には適用されない、別のものである、こういう考えでよろしゅうございますね。
  159. 坊秀男

    ○坊国務大臣 さようでございます。
  160. 田川誠一

    ○田川委員 非常に明快でございます。  そこで、いま大蔵大臣が、返還された米軍の基地の跡地の問題、この大蔵省がつくった基準案、どういう性質のものであるか、ちょっと復習をして確認をしたいのですが、これはあくまで大蔵省行政当局の事務処理に関する指針である、こういうふうに解釈すべきものだと私は思いますが、いかがですか。もしおわかりにならなければ、ちょっと局長でも。
  161. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 この大口返還処理に関する指針として、国有財産中央審議会における慎重な審議の結果答申されたものでございますので、私どもとしては、これを行政の指針と心得ております。
  162. 田川誠一

    ○田川委員 それからもう一つ、この返還財産の貸付条件、これについては法令上の優遇措置の適用に当たって、原則として有償処分とする、こういう答申が出ておりますが、有償処分としてすべての返還財産を通じて統一を図る必要がある、こういうふうに答申が出ております。大蔵省もそういう基準で臨んでおりますが、こうした考え方を踏まえて、大蔵省としても弾力的な姿勢で地方団体と話し合って、返還基地の処分を促進していきたい、先ほど来大蔵大臣がおっしゃっておることを整理しますと、そういうふうに見られますが、それでよろしゅうございますか。
  163. 坊秀男

    ○坊国務大臣 大蔵省としても、御趣旨に沿って地方公共団体と十分話し合って処理の促進を図ってまいりたいと考えております。
  164. 田川誠一

    ○田川委員 私がこの話を出しましたのは、先ほど申し上げましたように、米軍の返還された財産、国有財産というものは、これは法律から言えば国のものである。だから、国が払い下げるんだから、国が処分するんだから、地方も国の基準どおり言うことを聞け、こういう態度は改めていかなければならぬ。米軍基地に使われた土地あるいは軍用財産、これを歴史的に見ていきますと、戦争中で、国民から取り上げたと同様なことで強制的に買収をして取り上げた土地が大部分なんですね。ですから、国有地だから何でも国の言うとおりに処分しなければならぬという考えでは、それだけでも私はいかぬと思うのですね。しかも、坊さんは大蔵委員を長くおやりになっておられたから御存じだと思いますけれども昭和四十八年六月二十二日に国有財産特別措置法の改正をしたときに、附帯決議でこういうような内容のことが決議されているわけです。   米軍提供財産の返還後の処理については、国  民の福祉に役立つ公用・公共用に優先的にあて  るごとを原則とし、できるだけ住民の意思を反  映させ地域の再開発、住民福祉の向上等に資す  るよう配慮すること。こういう決議がされていますけれども、御承知ですか。まあ、御承知でなくてもいいですけれども、そういう決議がされているわけですね。  ですから、国有財産であっても、米軍の提供財産、返還財産というものは、やはり地域の住民の意向、福祉、そういう地方の立場から地方の再開発を考えて処分をしていくような考え方でやっていかなければならないと思うのです。特に、先ほど来申し上げましたように、地方自治を確立していくという意味からも考えて、今度つくりましたこの米軍跡地の処理の問題についての大蔵省の基準というものは、弾力的にやっていっていただきたい。そうしてとにかく地方と国とがもっと話し合いを積極的にやっていかないと、せっかく返還された跡地というものがとんでもない方向に行ってしまう。のみならず、話し合いが続けられなければ、その土地がいつまでもほうりっ放しにされて、非常にぐあいが悪い状態がこうして続いているわけでございます。  ですから、時間がもう来ましたけれども、どうぞそうしたことを踏まえて、この大蔵省の基準、これを強制的に押しつけるということでなく、あくまで話し合いでやっていこうという態度を貫いていただきたい。これが国と地方との関係を、いま総理がおっしゃったように、車の両輪である、こういうことを実際にやっていける道になるのじゃないかと思うのですが、もう一度大蔵大臣の答弁をいただきたい。
  165. 坊秀男

    ○坊国務大臣 時間がございませんようでございますから、簡単にお答えいたします。  おっしゃることを、この返還地というものの歴史を考えてみましても、いろいろと事情もこれあることは私も承知いたしております。また、この土地は地元の市民の方々に最も有効に使ってもらうということも、これも非常に必要なことであろうと思います。  さような見地から、この大蔵省の考えておりますことにつきましては、最も弾力性のある運用をやってまいりたい、かように考えます。
  166. 田川誠一

    ○田川委員 終わります。
  167. 坪川信三

    坪川委員長 これにて田川君の質疑は終了いたしました。  この際、村山喜一君の昨日の質疑に関し、補足質疑を許します。村山君。
  168. 村山喜一

    村山(喜)委員 昨日の金融の問題につきまして、当委員会で意を尽くせない問題や、あるいは誤解を与えるおそれがある点を明らかにする意味において、簡単に質問を大蔵大臣に申し上げておきたいと思います。  それは五十一年の十二月末の日本銀行の全国銀行主要勘定速報で資金ポジションが悪化をしているのではないかという指摘をいたしましたが、この点については内容を調べてまいりますると、確かに実質預金の伸びが一兆円ほど前年に対比いたしまして減少をしている。これを賄うためには手持ちの有価証券等の売却等によりまして貸し出しを昨年以上に行っているという状態がございますから、そういう資金ポジションが悪化をしていることは事実でございます。ただ、私が次に申し上げました中で、この全国銀行の主要勘定の問題で、五十一年の上期の勘定の損益状況が手元にございますが、これによりますると昨日の後藤銀行局長答弁の中で、いわゆる貸倒引当金に対する償却等については、大蔵省が銀行検査という意味でやかましく措置をするようなことはしていない、こういう状態の報告がございました。そういう中にありまして、経常利益は都市銀行の場合に三期連続して減益であったものが、この上期におきましては二二%の対前期増加率を示しておるという状態が出ているわけでございます。その中で総資金の利ざやは減少しながら、そういう不況の中で依然として今日また銀行の収益が大変な二二%もふえているということを考えてまいりまするならば、明らかに銀行はもうけ過ぎているのではないか、したがって、そのもうけに対応して適当な担税力を持っているのではないかということが指摘をされると思うのでございますが、それに対する御答弁をいただきたいのでございます。  いままで、ほかの委員の方々から貸倒引当金の問題についての指摘がございました。今回の法律の改正によりまして、引当金に対するものは千分の八から千分の五に縮小をするように法律の改正案が出ているわけでございますが、この繰入額に対する五十一年の上期の状況を調べてまいりますると、これは貸し倒れ残高が都市銀行の場合に七千六百二十五億円、その場合に貸出金の償却として処分をいたしたものが損失分が七十八億円ということでございますので、総貸し出しに対するところの比率から見てまいりますると千分の〇・一四という数字に相なります。したがいまして、今度の改正案に見られる千分の五と千分の〇・一四との開きの中には大きな開きがあるわけでございますので、この貸倒引当金をさらに下げるような状態に持ち込むことが、法律の改正をすることが、実情に即するやり方ではないかという指摘が行われておりますので、この点についてはどういうふうにお考えであるかを、二つあわせて御答弁をいただきたいのでございます。
  169. 坊秀男

    ○坊国務大臣 貸倒引当金と銀行課税との問題のようでございますが、事実の認定と申しますか吟味と申しますか、それが非常に重大な問題になっておりますので、現在の銀行の営業状況、実情に即しまして、その事実を詳しく御報告も申し上げたい、御説明も申し上げたいと思いますので、まず政府委員からお答えさせます。
  170. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 私から、銀行の上期の収益等の面について御報告をさせていただきたいと存じます。  先生ただいま御指摘のように、昨年の上期の全国銀行の経常利益が二二%増となっておるというのは仰せのとおりでございます。そこで、どうしてそうなったかということにつきまして私どもの分析を申し上げさせていただきたいと存じますが、一つは外部負債、これは金利の低下がございましたので、外部負債の金利が下がっております。これが収益的にはプラス要因になりましたことでございます。それからもう一つは、特に外為の関係で海外の金利が下がっておるものでございますから、外為関係の収益が上がっておるということでございまして、したがいまして、三期減益が続きました後、またもとへ戻るようなことで増益の姿となったわけでございます。  なお、その結果の利ざやにつきましても、先生御指摘のように都市銀行の場合で〇・三八という戦後最低の利幅になっている、こういう状況でございます。
  171. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 御質問のもう一点でございます貸倒引当金に対する税法上の処理でございますが、ただいまおっしゃいましたとおり、今回の税制改正の一環といたしまして、繰り入れ率を千分の五に引き下げるということにいたしたいと考えております。  なお、時間の関係で、ごく簡単に申し上げますと、従来から全く実績に合わせるべきかどうかという御意見はたびたび出ておりますけれども、やはり実績に合わせるということに余りに固執しますと、結果的に本来切らなくてもいい債権を切ってしまうような逆の結果が起こり得るということもございまして、どの国でも金融機関につきましては概算率で引き当てを認めている例の方が多いように思いますので、千分の五になりました後の段階でさらにどう考えるか、一層実績を見ながら将来の検討問題といたしたいと考えております。
  172. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、千分の五にその充当率を引き下げたものと、現在の実際の貸出金の償却の割合が千分の〇・一四、これは余りにも実情に——その千分の〇・一四まで下げなさいということは言いませんけれども、まあ余裕を見た上でも千分の五というのは高過ぎるのではないか、千分の一あたりにまで下げても千分の〇・一四との開きは相当大きいわけでございますから、この点については、やろうと思えば下げられるという見解を持っておりますので、大蔵大臣にこの点についてはまた大蔵委員会等において十分に論議をいたしたいと思いますから、大臣からもし答弁をいただけるのであればここで御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  173. 坊秀男

    ○坊国務大臣 将来の問題として検討をいたしたいと思います。
  174. 坪川信三

    坪川委員長 次に、北山愛郎君。
  175. 北山愛郎

    北山委員 私は、久しぶりでございますが、社会党を代表して、補正予算案に関連をして、経済、財政の基本的な問題について質問をいたしたいと思います。  総理は施政演説で、いわゆる行動原理を申されまして、資源有限時代であると強調して、もはや高度成長の時代は去ったんだ、今後は協調と連帯の行動原理でいくということを強調されたわけです。これはしかし行動原理ですから、単に精神訓話じゃありませんから、その行動原理でもって五十二年度の予算案なり、あるいは今度の補正予算案なりあるいはまたその他の経済政策にその行動原理を適用し、具体化するという原理だろうと思うのです。どういう点でこれを具体化し、現実化しておるのか、この点をまずもってお伺いしたいのです。
  176. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 連帯と協調と、こういうふうに申し上げましたが、私は非常に幅広い立場で申し上げますと、これは国内でもそうだし国際社会でもそうだ、こういうふうに申し上げておるわけです。特に国内におきましては、これは乏しきを憂えず等しからざるを憂う、こういうような考え方ですね。つまり、それぞれ持っている力、これを国内政治におきまして、その国内政治の仕組みとしての国家、社会、こういう中におきまして相補い合い、相助け合い、そして互いに責任をこの社会に対して持つ、こういう考え方でいくべきかと、こういうことを申し上げておるわけなのでありますが、一挙にそういうことが実現できるわけでもございませんけれども、逐次そういう方向で世の中の形成に努めていきたい、かように考えております。
  177. 北山愛郎

    北山委員 協調と連帯はやはり政策の上でもちろん具体化しなければなりませんが、政治姿勢の上でももちろん重要だと思うのであります。先ほど来質疑がございましたが、まあ総理も巳年生まれだそうですか、私も実は巳年生まれなので、巳年生まれというのはがんこだという定評があるわけで、私も批判を受けているわけです。ひとつがんこにならないように、やはり柔軟な姿勢でいまの政局に当たらなければならない時期だというふうに考えるのであります。ことしはあたかも巳年でございますけれども、大きな変動の時期であり、あるいは転換の時代でありますから、政府あるいは与党が、従来のようなやり方で、おれの案が決まったのだからこれでいくんだ、これはもう最良の案だと言ってがんばるということでなくて、どんどん野党だけでなくて国民の意見でも受け入れていくということでなければいまのこの情勢には対応できないのではないか、こういうふうに思います。  そこで、総理はよく施政方針で、哲学というか、まだ生煮えの哲学みたいなお話をされるのですが、思い出すのは三年前の施政方針の中でも総理は触れておられますけれども、大蔵大臣としての四十九年一月のあの格調の高い演説を思い出すのです。ひょっとしたらこれは大蔵大臣の財政演説ではなくて、総理大臣の演説みたいな調子であったと思いますが、こう言っています。  新しい社会への展望ということで、「物さえあれば、金さえあれば、自分さえよければという物と金とエゴの支配する時代は、過去のものにしなければならないと存じます。」「人間主義にあふれた新しい社会を建設しなければならないと存じます。」というふうに述べまして、言うならば今度のこの行動原理と相一連の見解を述べられました。ただ、その行動においては当時と非常に違っておるのです。大蔵大臣として四十九年度の予算案を出されました。その四十九年度の予算案というのは、御承知のとおり、所得税において一兆四千五百億の大減税をやりました。それから、社会保障費を年金を中心として大幅に増額をして、前年度に比較して三六%も社会保障を上げて、そしてその反面では公共投資を抑制して、伸びをわずかに五%以内に抑えた。ですから、ことしとまるで逆なんですよ。行動原理とか哲学は相通うものがありましても、四十九年度の大蔵大臣としての福田さんの方針と、今日においてはその逆に、減税はなかなかやらない、社会保障も抑えて、そしてもっぱら公共投資、公共事業をふやすというのは、まさに四十九年のあなたの大蔵大臣としての方針とは逆なんです。一体、四十九年と今日とではどのように客観的な情勢が違ってきたのか、どういうわけでそのように政策が変わっているのか、その点をひとつ総理から御説明願いたい。
  178. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 四十九年度という年は、御承知のとおりえらい年なんです。これは世界じゅうの経済がひっくり返るような騒ぎで、わが国では狂乱時代とも言われたわけであります。ですから、何といっても物価を抑えるということが至上命令です。しかもなかなか抑えられない力そこで公共投資は抑える。これはもう思い切って抑えたわけです。しかしそういう中で、この世の恵まれない人、これに対する配慮をしなければならぬというので、ああいう措置をしたわけですが、いまは逆な情勢でございますので、景気の問題だ、こういうので景気対策をとる。しかし社会保障費をそうないがしろにしたわけではないので、かなり重視しておる。こういうふうに御了解願います。
  179. 北山愛郎

    北山委員 もちろん四十九年と今日とは相当違いますけれども、インフレ、物価高にしてもあるいは不況の問題にしても、やはり共通しているものはあると思うのです。総理が言われているいわゆる四十八年の石油ショック後の、そのショックを受けた次の年でございますから、なるほど非常な物価の動乱期にありました。ところが、この動乱期に当たってやはり大幅な減税をする。いまの施政方針で言いますと、資源の有限時代であるから、減税をしたりして消費をふやすことはどうかというふうなことを施政方針で言っておりますね。ですから、そういう点では四十九年でも大した違いはないと思うのですよ。いまだって不況でしょう。四十九年だって実質の成長率で見ればマイナスなんですよ。物価は高かったけれども、まさに不況なんです。そういう中でやはり大衆の生活を考えて、社会保障、年金をふやし、それから労働賃金をふやし、そして一兆四千五百億の大幅な所得税減税を断行した。その福田さんが今日、三年後の今日ですね、その逆のことをやっている。言うことは同じだけれども、行動原理は同じようなことを言っておられるが、やることは違うというのはどうも私は納得がいかないのですよ。もう一遍御説明願いたい。
  180. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 強きをひしぎ、弱きを助ける、連帯と協調という考え方はいささかも変わりはないのです。ただ、あのときはとにかく消費者物価は年間に二六%上がる、卸売物価は三七%上がる、これは国民の困窮ということを考えると減税を考えなければならぬ、こういうことで減税も考える。同時に、物価の抑制をしなければならぬ。その決め手は何といっても財政需要を抑えなければならぬというので、ああいうことをやったのです。今日におきましては事情が一変いたしまして、まあ物価の方はかなり鎮静してきている。それから、当時あの崩壊寸前というような状態でありました国際収支、これも安定基調を取り戻しておる。そういう非常に大きな情勢の変化があるのです。あのとき私は全治三カ年の重傷を負った、こういうふうに思いましたが、あのときは応急処置です。しかし、今日は、とにかく世界でも称賛されるような状態になってきておる。まあ、私はいまの状態はかなりいい方向で動いておると思うのです。そして、これから先々を展望するというと、わが国も明るい展望が持てる、こういうふうに思いますが、今日この時点として考えると、最大の問題は景気のてこ入れである。経済情勢が横ばい状態みたいになってきておって、そこで公共事業費をふやす。しかし、社会保障というか、この世の恵まれない立場の人のことを考えておらないわけではないので、社会保障費はあれほど増額したではありませんか。また、減税は皆さんのおっしゃるような状態にはなっておりませんけれども、中小所得者のことを思いながら三千五百億円という減税をしておるじゃありませんか。協調と連帯というその考え方の基本はいささかも変わりはない、かように御了承願います。
  181. 北山愛郎

    北山委員 私はどうもいまのお話には納得できないのです。むしろ五十年、五十一年と大企業製品は大幅な値上げを認めていく、いわゆる新物価体系ですね。公共料金は値上げをする、そして、労働者と農民の米価、これは安く抑える。そういうことをやってきましたから、その二年間、むしろ四十九年からずっとその三年間ですね、国民の生活というものは、その間も物価は上がったのですから、しかも不況の中で苦しめられておる。ですから、今度こそ本当は減税をするというのが結論でなければならぬ、政策でなければならぬと思うのです。それを、あえて一兆円減税の要求に対して反対しているというか、そういうかたくなな態度をとるということは私は納得がいかないと思うのです。  それからもう一つ、一兆円減税のことで、景気刺激のサイドからだけ見てもらっては困るということです。これは石橋書記長が言ったとおり、単に景気刺激として公共投資と比べるのじゃなくて、いまの税制というのは非常な不公平でありますから、その税の不平等、不公平を改革する一環として一兆円減税を主張しているわけです。また同時に、景気刺激対策としても、どこの部分を暖めるかということで、場所によって違うのです。上の方の大企業の方を暖めても、中小企業だとか一般の国民の方にはさっぱり暖かみは伝わらない。どこを景気刺激の対象にしてどの分野を暖めていくかという、その景気刺激の場所によって、目標、対象によって違うわけですね。そういう意味で、われわれの減税というのは、言うならば大衆の個人消費をふやして、下の方から景気を押し上げていこうということであり、政府の公共投資を主導とするやり方というのは、従来のように上の方の企業の方を暖めて、そして下の方へやろう、こういうことなんで、やり方の性格が違うのですよ。だから、景気刺激の効果いかんという角度だけから判断してもらっては困る、こういうことに考えます。  そういう点を議論するつもりはございませんが、次に、経済の見方として、いまの経済認識について、私は総理見解を異にしているのです。これは総理だけじゃありませんけれども、現在の経済行き詰まりというものの原因を、とかく政府・与党の方々は四十八年の石油ショック以来のこととして、原因をそこから議論していきますね。何かしらアラブの産油国の値上げの結果、その被害を受けたんだと言わんばかりなんですが、御承知のとおりにOPECの値上げ案も、実はその前の長い間のアメリカのドルのたれ流しとドルの減価、いわゆる世界的なインフレーションの被害者であった、それに対抗するために一挙に四倍も石油を上げたのであって、言うならばアラブ産油国は世界インフレーションに対する、ドルの減価に対する防衛策としてやったのであって、それを石油ショックから問題を説くのでは、世界の経済情勢の見方についても誤りがあるのじゃないかと私は思います。  それから同時に、国内においても、石油ショックから始まったものじゃないです。たとえば卸売物価というのは高度成長期においては余り上がらなかったのです。そして、消費者物価が上がった。だから、池田さんなんかは、消費者物価が上がっても卸売物価が上がらないからこれはインフレじゃないんだというようなことを言っていました。ところが、七〇年代になりますと卸売物価が上がる。ことに、田中内閣になって四十七年の七月から卸売物価がどんどん上がって、次の年の石油ショックまでに一五%も卸売物価が上がっているのです。ですから、インフレ、あるいはこれは日本列島改造論によるのですけれども、石油ショックから始まったものじゃないということです。やはり国内の経済政策もまた原因している、こういうふうに見るべきではないでしょうか。こういう点について総理見解を承りたい。
  182. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 確かに私は、あの石油ショックですね、あの当時の混乱状態というのは石油ショックだけの問題じゃない。わが国の卸売物価は、昭和四十年以降、あの高度成長期にはずっと安定しておったのですよ。消費者物価だって安定しておったのです。五%ないし六%の上昇というのですから、まあこれは安定状態と言っていいと思う。その安定が崩れましたのは昭和四十七年、いまお話しのとおりですよ、四十七年の中ごろから卸売物価の上昇が地価高騰を先頭として始まってきた。そして、あなたは一五%と申されましたが、石油ショックの直前までにあの一年間で二〇%上がっているのです。その後また石油ショックでそれが積み重ねになった。こういうのでありますから、私は行き過ぎの高度成長、これが問題の根幹にあるという認識につきましては北山さんと同じような考えを持ちますが、しかし、そんなことをいま議論しておってもそう問題にならないと私は思うのです。問題になるのは、今日この時点のわが国の置かれている国際社会における地位は一体どうなんだ、これから先を考えるとどうなんだというと、今日の世界、今日のわが国の置かれておる経済情勢というものは、これからの世界というものがいままでと違って非常に変貌してきた。これは私はしばしば言っておりますが、資源エネルギーの有限の時代に入ってきた。その中において資源エネルギーで非常に貧しい立場にあるわが日本国、その運営、その歩む道が狭く厳しいことになってきた。そこに私は今日の経済困難の本質があると思う。そういう厳しい中でわが国がいかにしてわが国経済の活力を保ちながら、しかもわが国が世界経済のそういう中で行き詰まりを生じないように持っていくかということに問題があるわけでありまして、その狭い、しかも厳しい道を歩く、そういうことになると、いままでのような高度成長というようなああいう考え方はできない。やっぱり安定した低目の成長政策、その中において安定した社会を実現するというところに苦心もあり、悩みもある、こういうふうに考えております。
  183. 北山愛郎

    北山委員 私は、いまの資源エネルギーの問題、食糧もあると思いますが、そういうふうなネックといいますか大きな障害がこれは長期的にはあると思っています。それは否定しません。しかし、それだけから問題が出ているのじゃなくて、やはり戦後の高度成長から生まれてきたインフレと不況が共存してがっちり同居しているような現在の状態ですね。いわゆるスタグフレーションの状態、これのいわゆる構造的な、いまの資本主義経済につきものの矛盾の累積というものが一つの原因ではないか、このように考えておるわけであります。  それから、その中では特にまたいわゆる寡占、独占の体制が高度成長の中で強化された。ですから、物価についてもそうです。最近では卸売物価の方が先行するでしょう。大企業製品の方が先に値上がりをして、それが消費者物価へやってくるわけですよ。高度成長のときと違ってきているわけですね。これはいわゆる寡占でなければそういうことはできませんよ、物が余っているのですから。商品は過剰であれば安くなるのが、安くならないで、減産をして価格をつり上げるという、そういうことがスタグフレーションの一つの要素なのですね。いわゆる独占、寡占体制が強化されてきて、こういう経済の構造上の問題がそこに一つのネックになっていると思うのです。  それからまた富と所得の格差、不平等が開いている。たとえば同じ一億円でも、金持ちが持っておれば、それは消費しないで銀行かどこかへ預けて利子でもかせごうとするでしょう。一億円を千人の人に十万円ずつ分ければ、それは消費するでしょう。要するに、同じ一億円でもあり場所によって消費がふえたりあるいはふえなかったりするわけです。その金が上の方へ集まって、いわゆる経済の上半身の方に金がだぶついて、そしてそこから血圧が高くなってインフレが起こるし、下半身の方は貧血を起こしてそこからデフレが出てくる、不況が出てくる、こういう組み合わせだと言っていいと思うのであります。いずれにしてもいまの日本経済というものは、その体の中にあらゆる病気をしょってきておる。単に総理が言うように石油が足りないんだ、資源が足りないんだということだけじゃないですよ。そういう構造上の問題をはっきりと正しく認識をしなければ、今後の正しい政策は出てこないのですよ。  たとえばあなたは資源有限時代だ、これからは使い捨ての時代ではないんだ、こう言いますけれども、景気刺激政策をするということはどういうことですか。過剰生産でしょう、需要をつくるということじゃないですか。だから要するに消費をふやすような政策をとらざるを得ないでしょう。資源が有限で足りないなら——足りないんじゃなくて、実際現実には余って困っているんじゃないですか。それに対する対策としての不況対策、景気刺激対策をやっているのでしょう、それが減税であろうがあるいは公共投資であろうが。  ですから、一本調子にただ資源エネルギーが不足だからということだけで、そこに日本経済の行き詰まりがあるんじゃなくて、この体質の中が、肝臓も悪くなったし、心臓も弱った、動脈硬化にもなった、頭の方も少し脳軟化症になっておるというような状態になってきている。その現実を認めた上で対策を考えなければいけない、私はそう思うのです。そういう点で総理見解は違うということをまずはっきり申し上げておきます。  したがって私の方の行動原理は、正義と道理にかなった政治をやるということです。正義と道理にかなった政治というのは、何も国民大衆というのは教育勅語やあるいは道徳を教え込まなくたってちゃんと何が正しいかわかっていますよ。要するに、国民の多数の人がなるほどと納得のできる政治をやるということです。そういう基準で政治をやればいいわけです。国民をだますような政治はいけませんよ。大衆はだまされるのはいやですから。平和を守る政治でなければなりません。それから命を大事にするとか弱い人を助けるとかあるいは正直者がばかをみないとか、それが大衆のモラルというか、大衆の基準なんですから。そういうような政治をやれば大衆はなるほどと思う。そういう政治をやるということであります。  そこで、第一に、これは石橋書記長も強調したように、富と所得の不平等是正というものをやらなければならぬ。これが党の、われわれのいわゆる行動原理から生まてくる第一の原則、柱であります。そのために一兆減税も主張しているわけです。そのために例の土地増価税、ああいうものも、富の再配分といいますか、そういう意味において主張しているわけです。  私はいまのこの世の中の格差、不平等というものの一つの例として、毎年毎年五月一日に大蔵省が発表するあの長者番付、あれを見るとはっきりすると思うのです。大蔵大臣、大蔵省がこれは何で一体五月一日に発表するのか。これはメーデーですよ。労働者に対する挑戦だと思うのですな。去年の五月一日に発表されたものを見ると、最高の人というのは、これは亡くなった人だが三十七億六千万円でしょう。三十七億六千万円というと、おととしですから、おととしの給与所得者の平均の所得というのは百八十二万円ぐらいですから、まさに二千倍ですよ。しかもそれはかせいだ所得じゃありません。土地譲渡所得、土地成金ですね。上から数えて百番までのうちの九十何人はみな土地成金なんです。不労所得なんです。これを麗々しく発表しているわけだ。しかもその人たちに対してはたった二〇%の分離課税しかかけない、こういう恩典を与えているわけです。その人一人だけに十数億円の減税をやっているわけです。これは一体公平と言えるでしょうか。不公平でしょうか。こんなことでいいでしょうか。まじめに働く労働者の賃金の二千倍以上も不労所得者が所得を得ておる。しかもそれに対しては税金を特別に安くしてある。それを麗々しくメーデーに発表する。こういうことはいいでしょうかどうですか。公平ですか。
  184. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 あれは私も前から疑問に思っているのです。あれは所得の額が発表されますが、あの中から七〇%とか八〇%は税で納めちゃうのです。手取りは非常に少なくなっちゃうわけなんで、私は税額を発表するとか、あるいは税を引いた手取りを発表するとか、そうした方がいいと思うのですね。一応一億円の所得がある、こういう人につきましては税額が七割とかなんとかになっちゃうので、本当の実収人は二千万円とか三千万円になっちゃうので、私はそういう方向で皆さんの御理解を得まして、いま法律で決まっておりますものですからそうせざるを得ないのですが、変えたらどうかと思うのです。  それから時期、メーデーでおかしいじゃないかというのですが、これも皆さんの御理解を得られれば変えていきたい、かように考えます。
  185. 北山愛郎

    北山委員 総理がそういうお答えであればぼくは大蔵大臣に聞かなければならぬです。あの三十七億六千万円の人に対する課税額は幾らですか。それは国税は分離課税で二〇%じゃないですか。これは決まっているんだ。それから地方税が六%ですか。普通ならば、三十七億六千万円もあれば六〇%か七〇%ぐらいは取られるのが当然であるのに、それを分離課税で四十五年から五十年まで土地税制の特例をやったでしょう。それの該当者が出ておるわけですよ。だから総理が言っているのは間違っているのですよ。あの人に対する税額は幾らだか言ってください。
  186. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 ただいまの北山委員の御指摘の三十数億というのは、あれは東京都に土地をお売りになった方のだと思いますから、五十年分はまだ分離課税になっておりましたから、所得税でおっしゃるように二割にとどまっております。五十一年からは変わっておりますけれども
  187. 北山愛郎

    北山委員 総理はそのことを知らなかったわけなんです。私は知らなかったというのはおかしいと思うのですよ。なぜならば、あの四十五年から五十年までの土地長期保有者の保有土地のいわゆる定率分離課税の特例というのは、実は福田さんが大蔵大臣のときにお始めになった。私は大蔵委員会でやったのですね。それが五十年までのあれにあらわれているのですよ。だから、上の方の九十何人というのはみんな土地成金なんですよ。そうして五十年ですから二〇%の分離課税しか取ってないのです。これが公平ですか不公平ですか。
  188. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私はそのくらいのことは私が立案者でありましたから知っておりますが、いずれにいたしましても、所得の額を発表するよりは実際の収入額、実際の手取り額、これを発表した方が国民に御理解がいくんじゃないか、こういうことを申し上げておるのです。そういうことにつきまして、その改正につきまして御理解が得られるならばそうしたいものだ、というような気持ちがいたしますということを申し上げているのです。
  189. 北山愛郎

    北山委員 総理の気持ちは何かしらそういう高額所得者の立場に立ってお話しになって、金額がよけいに見えちゃまずいような、そういう考え方のようです。それは問いませんが、とにかくこれは福田さんが大蔵大臣のときに始めたんですよ。そしてその五年間の集計を見てみますと、実に四十五年から五十年までの分離課税の適用を受けた長期譲渡所得金額ですね、これは十八兆六千九百億なんです。それがいま申し上げたように、すべて当初は一〇%ですよ、当初の二年は。次は一五%、最後の二年間は二〇%という定率の分離課税の適用を受けた所得が十八兆円以上なんですね、恩典を受けた。これは、しかし土地の流動化といいますか、土地をどんどん手放させようという趣旨だった。つまり地価が上がるから、地価が上がるのは土地が少ないからだ、だから供給をふやせば地価が下がるだろうということでやったのですが、実は逆だったでしょう。むしろこういうことをやったために、四十四年からの地価というのはすごく上がっている。四十四年が一九・七%、四十五年が一五・七%、四十六年が一三・二%、四十七年が二五・一%、四十八年が二三%。二けたですね。四十九年になって不況になって五%に下がった。このように地価を上げちゃったのですよ。要するに、あの長期保有者の定率分離課税というのは、そのねらいはすっかり失敗に終わって土地成金をたくさんつくり、それに大減税をやり、そうしてしかも地価を暴騰させた。その政策の責任をやはり当時始められた大蔵大臣の福田さんは負うべきではないだろうか。もちろん、その間には田中内閣のいわゆる列島改造論がございます。だから、当時田中総理日本列島改造とこの土地税制が一緒になって地価を暴騰させ、そして土地騰貴、日本国じゅうが土地騰貴のブームになっちゃった。そういうことを刺激した共犯だと私は思うのですが、どうですか。
  190. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 当時の土地分離課税ですね、ねらいは土地所有者に土地を吐き出させる、こういうことにねらいがあったわけですが、吐き出しの効果は私は大変上がったと思います。ただ、その吐き出しの先が、土地を必要とする個人に行ったことも、これは相当あると思います。しかし同時に、大企業にそれが買い取られたということをこの税制が助長したという側面もあったかと思うので、その点が抜かりがあったということについては反省はいたしております。
  191. 北山愛郎

    北山委員 この税制が土地成金を生み、非常にもうけた連中も出ておりますが、しかしその後遺症が御承知のとおりでいまだに大変残っているわけですよ。ですから、大変な政策の失敗だというふうに思います。少なくともこんなことをやったんじゃますます富と所得の不平等というものは拡大するんだ、こういうことだけは認めてもらいたいと思うのです。  それから、いろいろいまの税金には不平等、不公平な点があります。一つお伺いしたいことは、これは武藤委員の質問に対して総理お答えになったことだと思いますが、例の社会党がこの前の国会に提案しました土地増価税法案ですね。要するに、企業や個人の相当たくさん持っている土地を再評価をして、時価に再評価したんじゃ厳しいから六掛けぐらいにして、そしてその差額、再評価益、企業であれば再評価益の準備金なんかに積み立てる。そしてこれに対して一五%の税金をかける。一遍に取ると厳しいからこれを五年間に分割する。そうすると、一年に少なくとも三兆円ぐらいの税収が上がってくる。これが社会党の土地増価税法案なんですが、これに対して総理が答えたのは、地価公示制度がだんだんあれして、各地点の公示価格がはっきりした、そういう段階で考えるんだというお答えだったようですが、私はそれはおかしいと思っているのです。地価公示制度というのは、地価が上がるに従って公示価格が上がるのですから、そういうこととは無関係ですよ。地価公示制度と土地増価税法案みたいな土地の再評価とは無関係だと思うのですが、総理はどのようにお考えですか。
  192. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 地価再評価を実施するといいますと、一つの評価の物差しがなければならぬ。その物差しというのは、いまわが国の法制上考えられることは地価公示制度による地価公示価格である、こういうふうに考えるのですが、それがとにかく大体全国的に行きわたった、そういう時点におきましては、法人につきましては地価の再評価を行うということが望ましい、私はこういうふうに考えておるのです。その再評価の際に再評価税を取るかどうか。これはいずれにしても法人課税でございますから、その法人課税をそのときに実行するのが妥当であるかどうかというような問題もありますが、その際には、これは再評価とはまた切り離した問題です。再評価の形において法人税増税をすることがいいかどうかということについては、これはひとつ考えてみたい、今後の検討課題にしてみたい、こういうことを申し上げておるわけです。
  193. 北山愛郎

    北山委員 数百兆円と言われる土地の含み資産、いわゆる潜在しておるキャピタルゲインですね、まだ実現されていない含み資産でございますけれども、これがいろいろな弊害を与えている。ことに経済の足を引っ張ったりしておる。しかも、不公平、不平等の根源になっております。  山一証券の調査では、五百八十九社の会社の簿価に対する再評価益というのは六十七兆円以上になる。和光証券が調べたところでは、千三百八十二社の調査で八十兆も含み資産がある。膨大な含み資産があるわけですね。そういうものに手をつけざるを得ないんじゃないでしょうか。いまのような借金財政をこのまま来年も再来年も続けていくわけにはいかない。その際にはやはり増税をせざるを得ない。そういうときに私どもは付加価値税のような大衆課税じゃなくて、大衆に転嫁されるんじゃなくて、そのような含み資産を膨大に持っておる、しかもそれは不労所得である、そういうものに手をつけて財産税、そういうものを取る方向に行くべきだというふうに考えています。  それから、不公平なことはたくさんあります。たとえば法人会社の受け取り配当を益金に算入をしない、これなんかおかしいですね。どうですか、大蔵大臣、これをやめる気はありませんか。
  194. 坊秀男

    ○坊国務大臣 いまの土地の課税でございますけれども、含み土地の増加に対してこれを課税するかせぬかということでございますが、この所得というものは、所得がまだ、いまお話ありましたが、未実現の所得なんです。利益なんですね。それに対しまして課税をするということについては、これは相当研究の余地がある。そこで、私どもこれを無視しておるわけでも何でもございません。それにつきましては税制調査会等でもいろいろ議論をしていただきまして、公正なる措置をとってまいりたい、かように考えております。  それからもう一つお話しになりましたのは、受け取り配当でございますが、この受け取り配当というものは、もう北山さん十分御存じだと思いますけれども、法人税とそれから所得税との間の調整の問題がございますね。二重課税の調整の問題がございます。そういったようなものについて、これはそういう規定がございますが、この問題に触れますと、所得税、法人税についての根本の問題を解決をしていかなければならないというようなことに逢着いたしまして、これをどうするかというのは日本の税制に対する一つの大きな問題であろうと私どもも考えておりますけれども、将来いずれにいたしましても税制の基本的な改正というものは、これはやらなければならないというときにひとつ抜本的に検討をしてまいりたい、かように考えております。
  195. 北山愛郎

    北山委員 これは例の法人擬制説からくるだろうと思うのですけれども経済行為とすればむしろ法人の方が自然人よりも実在的なんですよ。個人の方は、それは生活はするけれども経済行為としては、経済主体としてはむしろ企業の方が実在していますよ。だから法人擬制説をいまだに引用してやるということは、どこまでもやはり大法人の立場に立っている。これが持ち株、法人の持ち株というものを、大企業の持ち株というものをふやして、そして個人の持ち株がいま三割ぐらいしかない。会社の株を会社が持っている。七割は持っている。しかも大企業がたくさんの子会社、系列の会社の株をたくさん持っている。七割も持っているのですよ。もう法人擬制説じゃないじゃないですか。法人同士で持ち合いしているのですよ。だから法人擬制説などを引用して、まだこれから検討します、考えますなんと言う時期じゃないですよ。  これに限らず税法すべてそうなんだけれども、租税特別措置にしても、検討する検討すると言って先に延ばしている。そのうちに、いまの財政にしても行き詰まってしまうのですよ、よほど思い切ったことをやらなければ。いわゆる行動原理を発動して断行しなければだめですよ。その一つの例として申し上げましたが、ことに私が指摘しておきたいことは、いまよく法人持ち株が多いので個人持ち株をふやしたいということでいろいろ検討していますが、何年か前ですけれども日本経済新聞に、亡くなった高橋亀吉さん、あの人が書いておる、評論を。法人持ち株がふえるというのは、この法人会社の受け取り配当に課税していないからだ。そうでしょう。株を持っておっても配当に課税されないから、どんどんどんどん大企業が持ってしまうのですね。これをやめるべきだ、そういう意見を高橋亀吉さんが言っておることを私覚えていますが、これはそういう経済的な意味から言っても、検討するというか、検討どころじゃない、断行してもらいたい。  いろいろ税の不公平はございますけれども、とにかく税だけじゃなしに、社会保障の面でも納税をしない人たちに対する年金なりなんなりをふやして、そしていまの富と所得の再分配をする時期だ、このように考えます。そのことがすなわち日本の新しい経済政策の基礎にならなければならぬ。ちょうど終戦のときに農地改革をやり、あるいは労働組合の結成を認め、そして財閥の解体をやった。そしてそのことが、いわゆる経済の民主化というものが戦後の経済発展の推進力となった。やはりそれと同じような条件に立っておるのじゃないでしょうか。三十年たって行き詰まった。もう戦前以上の財閥、大資本が経済をがっちり抑えておる。そして富と所得の格差が、いま例を挙げましたけれども、開いておる。そういうものを思い切って民主化するということ、金の流れを上から下に流してやるということ、そういうような一連の政策、そういう構造政策をやらなければ日本経済の行き詰まりは直せない、こういうのが私どもの考えであります。  それから同時に、次に産業経済の問題でありますが、一方ではいわゆる独占禁止法、独占、強きを抑える、そして弱きを助けるというのが中小企業対策である。その中小企業対策の中でいま具体的に現実に問題になっておるのが中小企業の事業分野確保法なんですね。これなども思い切ってやはり踏み切るべきだと思うのですね、いわゆる業種指定がどうのこうのと言っておりますけれども。中小企業にとりましては本当に生存権の問題なんです。経済が高度成長のときはまだよかった。しかし、こうなってきますと、中小企業の分野にどんどん大資本が侵略してくるのです。侵略されるということは、中小企業がつぶれるということなんですから、生活権、生存権の闘いなんです。ですから、そういう角度から、この分野法については積極的な姿勢でいかなければならない。技術的にはなかなかむずかしいでしょう、業種指定というのは。むずかしいでしょうけれども、いま平穏にというか、しかもお互いに競争し合いながら中小企業の分野でやっている仕事のところに大資本が入っていって何のプラスになるのでしょうか。そのために中小企業はどんどんつぶれていく。弱肉強食がひどくなる。こういうことは結果としては消費者のためにもなりません。そういういまの経済の大きな波乱ですね、しかもちょうど労働者であれば首切りと同じですからね、中小企業にとっては。そういうふうにやはり中小企業の立場に立って真剣に取っ組んでもらいたいと思うのですが、ひとつ事業指定はできない、業種指定はできないのだと言わないで、前向きに検討するという姿勢を取ってもらいたいと思うのですが、通産大臣お答えを願います。
  196. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  北山先生の一連の経済民主化と申しますか、その構造論のお話を承りまして、われわれがただいま考えております中小企業の問題につきましても、われわれは弱者の立場に立っています中小企業をどう日本経済の構造の特色として守っていくか、またそれをどう助けていくかということの上からいろいろと施策をいたしておりますが、お話のように、お答え申し上げるまでもなく北山先生の方がよく御承知のとおり、分野調整の問題につきましての業種指定の問題は、審議会の答申を待ちまして、それによって施策を進めておるような次第でございます。ただし、その審議会の答申は、いまお話が出ましたように、実際の具体的な問題になりますと非常に分野の指定が困難である。それにかわりますいろいろな中小企業対策をすることによりまして、あるいは勧告をし、あるいは調整をするというような努力を重ねてこれを守っていこう。こういうふうな意味合いから分野調整の分につきましては、お話しのように業種指定はやらないという審議会の答申の線に沿って施策をいたしておる次第でございます。
  197. 北山愛郎

    北山委員 審議会は審議会ですが、とにかく技術的にはむずかしいということはよくわかりますよ。だけれども、やはり事前チェックをしなければどうにもならないですよ。大資本が手を出してから後で勧告をするとかそんなことでは、いままでの例でもいろいろ例があるわけですけれども、そうじゃなくて、これはもうわれわれ大企業の手を出す分野ではないのだなというふうにはっきりさせなければならぬ、そういう方法はあると思うのです。ですから私は、初めから審議会が金科玉条というか、審議会の答申をただ守るというんじゃなくて、政府は政府としての、あるいは与党の考えもあるでしょうし、もっと深刻な問題として考えてもらいたいと思うのです。社会党としては、この問題は昭和三十九年来たびたび提案してきた、一貫してきた問題であります。この必要性がいま現実のものとなってきたわけです。ですから、もう少し中小企業の分野を守るということは、いまの経済不況の中でのその状態に立って物を考えてもらいたいので、営業の自由であるとかなんとかということじゃなくて、企業の生存権を守る、弱い者の生存権を守るという立場に立ってひとつ踏み切ってもらいたい、業種指定についてもさらに検討を続けてもらいたい、このように要望いたしておきます。  さらに私は、同じような意味で下請に関するいまの制度も不十分であると考えます。ですから、一般的に親企業と下請の関係というものを民主化するというために下請関係調整法のような制度化が必要だと思うし、また同時に、中小企業の経営を安定する意味において、いわゆる倒産防止法みたいなものも必要だと思います。これは社会党の中でいま検討中でありますけれども、一連のこのような下請関係なりあるいは事業分野を守るなり、あるいはまた例の大規模小売店の問題、いまこのような経済民主化が必要である。一方では大資本の横暴を規制するための独禁法、一方では中小企業を守る経済民主化のための中小企業のいろいろな諸制度、これを思い切って推進する必要があると思います。この点を政府においても前向きにもっと積極的に推進するように要望を申し上げておきます。  時間もだんだん進んでまいりましたから次に移りますが、農業の問題であります。  まず最初に冷害対策。今度の補正予算の中では、農業共済の再保険の繰り入れの追加分が多少盛られました。しかし私は、去年の、五十一年のあの深刻な冷害に対する対策としては全く貧弱である、いろいろ欠陥がある、このように考えるのであります。もちろん、農業共済制度のいろいろな欠陥については五十二年度から若干改善が進められておるようでありますが、幾つかの問題点をひとつお伺いしたいと思うのです。  一つは、予約概算金を返さなければなりませんが、それについて、ことしの五月までですかに返すということになっておりますけれども、去年の七月からですか、概算返戻金に対して八・二%の利子をつけるというのですよね。これはいただけないことじゃないかと思うのです。予約して後、米が出せなかったというのは、何も意識的に悪意を持って出せなかったのではなくて、これは冷害という事情のために出したくても出せないことになったわけなんで、したがって、やむなく概算金を返さなければならぬ、そういう事情なんですね。     〔委員長退席、田中(正)委員長代理着席〕 しかも、冷害の被害を受けている農家です。それに対して概算金の返す金に利子を取るなどということはこれは金貸しか何かのやることであって、少なくともだれよりも農民を愛する福田さんを総理とする福田内閣のやるべきことじゃないじゃないか、この利子分というのは免除すべきじゃないか、私はそのように思いますが、どうですか、農林大臣。
  198. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 冷害あるいは水害等による被害農家が、予約概算払いをいたしましたお金を、その被害のために予定どおりにお米を供出できないというようなことでその返還を求めるということになっておるわけでございますが、この点につきましては、天災融資法であるとか自作農創設維持資金でありますとか、いろいろの融資上の措置もとられておるわけでございまして、そういう救済の措置は措置として講ずる、しかし返していただかなければならないものは返納をしていただく、こういうたてまえで進めておるわけでございます。これも比較的順調に返納措置が講ぜられておおりまして、たとえば岩手県の例をとりますと、百六十億程度の概算払いがなされておるわけでございますけれども、現在一億程度のものがまだ残ってはおります。しかし、これも農協等の代位払い、代位返済等によりまして解消される、こういうことに相なっておるわけでございます。  また、概算払いに対する金利負担の問題は、被害の程度等によりまして減免の措置を講じておりますことは北山さん御承知のとおりでございます。
  199. 北山愛郎

    北山委員 いまのお話で、天災融資法もあるし自創資金もある、あるいは共済の金も相当回っておる、こういうふうなお話であります。ところが御承知のように、五十一年度の産米をつくるまでに、その生産に入り用な資材とかいろいろなものを借金してやっておるわけですよ。ですから、たとえ共済の金がもらえて、あるいは天災融資法の融資を受けるとしましても、恐らくその金は農協なり何なりにやはり返さなければなりませんから、今後の分はないんじゃないかと私は思うのです。ある被害のひどい町へ参りましたときに言っておりましたが、その町で普通にとれて米代金が六億入る予定だ、ところが、その六億のうち五億はもう借金に返さなければならぬのだ、普通の場合いっても一億しか残らないのだと言っていました。ところが、半作とすれば三億しか入らない。ですから、いままでの借金を返すことすらも足りないと言うのですよ。恐らくそういう金にいまお話があったような融資とかそういうものが使われていくということになれば、今後の生活資金なり来年の再生産資金というものが非常に窮屈になる。農民は非常にまじめですからね。あるいはお話しのように返せと言えば返すということでやっておるかもしれませんけれども、そういう点をやはり十分考えてやらなければならぬと思います。それから、天災融資法でも、あれは何条ですか、農業を主な仕事とする農業者、こうなっておりまして、全部の農家には融資の対象にならない。ああいうことも一つじゃまになっているのじゃないかと思うのですが、その辺のこともひとつお考えがあればお答えを願いたい。
  200. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 被害農家に対しましては、先ほど申し上げたような救済融資のほかに、いままで融資をしております制度資金等の償還の延期の措置等を講じておりますことは御承知のところでございます。また、北山さんが御指摘のように、被害農家は本当にお困りになっておるわけでございます。救農土木事業等で毎日の生活の食いつなぎをしておるというような状況もあるわけでございますので、五十二年度産米につきまして、天災融資等の対象になりました被害地区の農家に対しましては、五十二年度の概算払いを例年七月ごろに行っておるところでございますが、できるだけこれを繰り上げて早く概算払いをするようにということを事務当局に指示いたしまして、現在それを促進するようにいま努力をいたしておるところでございまして、ぜひそういうことを実現をいたしたい、このように考えております。  なおもう一つの点は、農業を主たる仕事としておる者に限る、あるいは大部分を農業収入に求めておる農家に限って天災融資等がなされておる、第二種兼業というようなものはのけられておるのではないか、こういう御指摘があったわけでございますけれども、この点につきましては、地方におきましてその実態に即して弾力的と申しますか、実情に即した融資がなされておる、このように私考えておるわけでございます。
  201. 北山愛郎

    北山委員 いまの天災融資法の対象農家の問題は、実は具体的にそういう地区の農家から要望があったので申し上げておるわけです。ですから、むしろやはり農林省としてそういうふうな指導をされるということに承って、地方で適当にやっておるだろうというようなお話でありますけれども、そうじゃなくて、やはり地方でそのような方向で取り扱いをするようにという指導をするというふうにお答えを願いたいのですが、どうです。
  202. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 天災融資法の規定がそういうぐあいになっておりますわけでございますが、私も地方の実情をある程度知らぬわけではございませんけれども、大体その辺は弾力的にうまくやっておるようでございます。しかし、このことは当該農家につきましては非常に大きな生活の問題でございますから、よく調査をいたしまして指導していきたい、こう考えております。
  203. 北山愛郎

    北山委員 冷害対策について一番の問題点は、救農事業が不足だということなんです。これは冷害と他の台風などの災害と非常に違う点がそこなんですね。台風などの被害については、公共施設というものが壊れますし、橋にしてもあるいは堤防にしても、あるいは個人の家でも、流れたままにしておけませんから、当然その被害地に対しては、その後ですぐいろいろな事業が起こるわけです。ところが、冷害というのは、起きないのですよ。あのとおり絵にもならないのですよ、建ったままのあれで。そして所得は絶対的に減る。所得がマイナスになれば、そのマイナスがまた波及するわけです。要するに、町場へ出て物を買わなくなりますから、農家が困るだけでなくて、その農村中心の商工業もまた大きな影響を受ける。いわゆる地域経済全体が地盤沈下するわけなんです。ですから、同じ災害でも、冷害というのはそういう性格のものです。黙っておけばマイナスがマイナスに波及する。いま申し上げたように、いろいろ共済金が出、あるいは融資が出ておりましても、その金はむしろいままでの借金とか返すべき金とかいうものに使われている。それで、これからの米を買ったり何かするためには、やはり地元の仕事が、いわゆる手間賃を取れるような仕事をふやすことが必要なんです。ところが、そういう対策が非常に欠けている。去年の十一月ですか、予備費の中からたった百十億——東北、北海道四千億以上の大被害に対してたった百十億ですから、ちょうどPXL一台分ですね。それしか出さない。それを土台にして、県がこれに倍ぐらいにしていろいろな事業をやっておりますけれども、とてもそれでは及ばない。  それからもう一つは、そういう事業はできるだけ被害農家が働けるような事業ということになりますから、余りまとまった大きな工事ではだめなんです。できるだけ市町村の小規模な、ため池を直すとか、あるいは農道を修理するとか、せきをつくるとか、そういうものをまんべんなくやって、近所の人が働けるようなそういう仕事にしなければならぬ。そういうふうな角度からいきますと、単に百十億予備費から救農事業費として出して、今度の補正予算にもほとんど出ておりませんね。これじゃいけないと思うのです。私どもとしては、ちょうど去年の臨時国会のときに一つの特例法を出して、五十一年の予算がなければ融資でもって地方の市町村単位でもって起債枠を決めて、その枠の中で市町村がいま申し上げたような事業を選択して、そして予算化して仕事をする、もちろん起債は許可制になっていますから許可の手続はとらなければなりませんが、そういうイニシアを市町村に与えて、できるだけ実態に沿うような仕事をたくさんやらせる、そしてその償還について後で償還のときに国がこれを援助する、こういうような方式が機動的であって実態にマッチするということで、そのような法案を実は作成をしておるわけであります。いまからでも遅くないわけですよ。ですから、こういう点をひとつ検討してもらったらどうですか。とにかくことしは御承知の豪雪ですね。去年の冷害に次ぐ豪雪ですよ。巳年の凶作ということを信ずるわけじゃないけれども、恐らくことしの作柄でも非常な心配がある。そういう中で、もっともっと冷害の被害を受けた地域、農村に対して、公共事業というような形でなくて、もっと簡易な形の事業をまんべんなく起こすような処置をとれないものか。こういうことを、われわれも案を持っておりますので、ひとつ農林省、大蔵省も検討していただきたい。自治省も関係ありますけれどもね。
  204. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 救農土木事業のどうあるべきかということにつきましては、北山さんのお考えと同じような考えを私は持っておるわけでありまして、できるだけ労賃比率の大きい圃場整備事業でございますとか、農道でありますとかあるいは林道でありますとか、そういうような地元に労賃として多くお金が落ち、また就労の機会を失っております農民諸君に、被害農家に就労の機会を与えるように、そういう性格の事業を多く興すべきだ、選択すべきだ、そういう方向でやってまいる考えでございます。  なお、補正予算並びに来年度予算の早期成立によりまして公共事業等の促進を図る、こういうことを私ども念願をいたしておるところでございます。  いままでの予算措置を講じました救農土木事業は、一月末で成約ベースで九五%、その他林道でありますとかそういうものは一〇〇%行われておるものもございますが、予算措置を講じました救農土木事業は、仕事がどんどんなされておるという状況にありますこともあわせて御報告を申し上げておきます。
  205. 坊秀男

    ○坊国務大臣 救農土木事業については、その目的が、冷害等により大きな被害を受けた農家に対する新たな就労機会の確保にあるというところから、関係各省とも十分協議の上、その目的に沿った労務比率の高い事業を選定して、これを実施しておるところでございます。したがって、救農土木事業は現行の措置でまずその目的を達成しておると思っておりますが、なお一々の事例につきましては、もし御必要とあれば政府委員からお答えさせます。
  206. 北山愛郎

    北山委員 総理にお尋ねしますが、いま伺っておりましても、従来の枠というか仕事の枠、やり方ですね、パターンを少しも変えようとしないのですね。もう少しどんどん積極的な姿勢が必要じゃないでしょうか。農業政策でも一つの隘路というのは三百種類もあるような補助金行政で、やはり補助金の枠の中で全体の農政が言うならば硬直化しておるわけですよ。私が申し上げた救農事業というのは一つの方式なんです。もっともっと地元にその仕事が密着をして、そして被害農家にためになるようなそういう事業、また農家の救済だけじゃなしに——私、あるところの土地改良区へ行きましたところが、そこで言っておるのです。前にはため池というのはたくさんあったんだ、ところが、多目的ダムの用水を使うということになったために、ため池はつぶされた、しかしダムの水は三度低いんだ、いまさらになって残ったため池の効果というものを見直した、そのため池がまだ六百あるから、その六百のため池を手直しできるような、そういうような予算というか政策を考えてもらいたい、こういうことをその改良区の理事の人が言っておりました。私、そういうことをさせたい。どんどん地域地域に仕事が浸透するように、そういうことを考えられないんですか。いままでのようにちゃんと補助金にして、事業認定をしたりなんか手続をして、決まったところだけしかやれないというようなそういうやり方だけを守っているんじゃ、これは発展がないですよ。
  207. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 私も冷害の地帯を視察をいたしまして、同様の要望、意見というものを聞いておるわけでございます。これはわれわれ農政を預かる者も、あるいは農業団体におります者も、また営農の指導に当たっております者も、農民諸君自体も、今回の冷害の試練というものは大きな反省材料になったと思います。そういう意味で、いままで地元も要望し、また農林省、県等でも灌漑用水その他に力を入れてやってまいったわけでございまして、古くからあります温水ため池等につきまして余り関心が払われていなかった。しかし、こういう冷害に現実にぶつかってみまして、その効用というものを痛切に感じておるわけでありまして、その補修、整備等につきまして今後は農林省としても力を入れてまいる考えでございます。
  208. 北山愛郎

    北山委員 この冷害について申し上げたことは現在の農政全体について言えると思うのです。私はいまの日本の農業というのは、世界的な食糧の大きな不安とかそういう中にあって、しかもことしの容易でない異常気象とかそういういろいろなことを考えましても、またいまの農業の荒廃したあり方ですね、そういうものにひとつ本気になって取り組む必要があるというふうに思います。  この場所で十五年前、ちょうど昭和三十六年、農政国会において農業基本法を論議をした。政府の基本法に対して社会党の基本法を出して、そしてこの場でもって論戦したわけです、当時の池田さんとかあるいは周東さんと。そして十五年たった。ところが、政府の基本法のねらったところはみんな外れて、たとえば他産業との所得の格差をなくすのだなんと言うけれども、あの昭和三十五年当時よりは逆にずっと開いているんですね。それから、耕地は減ってくる、生産は減る、輸入はふえる、自給率は下がる、どこも取り柄がないじゃないですか。そして、農林省予算は毎年毎年金を使っているのですが、その金が一体どういうふうに役に立っているのか、本当に私は疑問でしようがない。十五年間の農業基本法以来の農業に使った予算というのは何ぼになっているか、ひとつ農林大臣からお示しを願いたい。
  209. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 まだ私計算をいたしておりませんから、事務当局から……。
  210. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 お尋ねの、三十六年から五十一年までの農林関係の予算、一般会計合計いたしまして、物価修正せずにそのまま計算をいたしまして十六兆五千八百七十一億。これを最近の物価で修正して合計をいたしますと、二十四兆二千五百六十九億というふうになります。
  211. 北山愛郎

    北山委員 私の言うのは、その金を使ったのが悪いとかなんとかいうんじゃないですよ。相当の金を使っている。まあ五十二年度でも二兆六千四百億ですか、それ以外に地方の県やなんかでも四、五千億の金を追加していますね。それ以外に五千億くらいの財投が出ているわけだ。ですから、相当な金が出ているわけですね。ところが、この十五年間、米はいいが何が悪いとかそういうことならまだわかるのです。米であろうが何であろうがみんなだめじゃないですか。生産は減るし、農家は農業だけで食っていけないし、外国から輸入はふえるし、自給率は下がるし、しかも消費者だって何も安いものを食べているわけじゃないですね。それでどうしてこういうことになったのですかね。私は、やはりいままでの農業のねらいが間違っていたというふうに言わざるを得ないのです。時間がありませんから深くは触れませんけれども、十五年前にこの場で農業基本法の論議をやったときにわれわれが主張したあるいは心配したそういうことが、この十五年の間に基本法農政が完全に崩壊したというか、ある意味からすれば、農業を高度成長の犠牲にするという基本法のねらいが達成されたとも言えるかもしれませんけれども、とにかく大きな農政転換の時期だと思うのですよ。  時間があとありませんので……。少なくとも、二、三の点を申し上げると、ことしの予算で食管繰り入れを減らしましたね。あれは完全な間違いですよ。農業を発展させるためにはやはり価格政策というのは非常に重要なんです。ですから、私からするならば、仮に三兆円の農政費であれば、その半分を価格政策に使いなさい。もちろん生産者価格を上げて赤字を補てんするとかそういうことだけじゃなしに、生産補給金、奨励金として出してもよろしい。ただし、米だけではなしに、麦であろうが大豆であろうが生産をさせるようにバランスをとって出しなさい。三兆円の半分、一兆五千億くらい価格政策に出しなさい、こういうふうに言いたいのです。ところが、逆に価格政策の方は後退して、いろいろな生産政策、農業基盤の投資だとかなんとかやっているでしょう。農業投資だって一年に二兆円以上の投資をやっていますよ。機械だって七千億以上かかっています。土地投資を七千億以上やっていますよ。やればやるほど資本費が高くなって、経営はマイナスになってぐる。それから、労働生産性は上がっても、上がれば上がるほど単位時間が減って労務費の手取り分は減ってくるという矛盾なんです。そして機械代は払わなければならぬ。もう今後そういうような指導をさしてはならない。機械貧乏にさしてはならない。  私は一端を申し上げたのですけれども、いろいろいまの農政をまともから見て、ひとつ抜本的な転換を考える気持ちはありませんかと、総理大臣にお伺いをいたします。
  212. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今日になりますと、資源エネルギー有限とともに、食糧もなかなか容易ならざる状態になってきておる。そういうことを踏まえまして、食糧政策については見直しといいますか、そういう情勢を踏まえての新しい体制を進めたい、かように考えます。
  213. 北山愛郎

    北山委員 資源有限時代と言いますが、石油とかそういう資源だけじゃありませんよ。食糧問題の方がもっと深刻なわけです。終戦のときに、あの昭和二十年一年で石油はたった二十九万トンしか使わなかった。しかし、食うものはやはり食べておったわけですよ。ですから、三度三度の国民の食糧がもしも思うようにならないというような事態が発生したときには、政府の一つや二つはすぐぶっ倒れる。非常な恐慌を来す。それだけに、この食糧の安全保障——石油だけじゃありません、食糧の安全保障に対しては真剣に取り組まなければならぬし、それを推進するために、やはり農民が農業に本当に意欲を持つような政策をとらなければならぬということであります。  次に二、三の問題がございますが、総理は、いわゆる資源有限時代だ、もう高度成長は終わりだ、こんなことを言っていますけれども、実際やっていることは、高度成長の後遺症というか、まだ二日酔いというか、そういうものが地方でどんどん進んでいるのですね、まだくすぶっているというのか。たとえば、むつ小川原の開発ですね。あの大騒ぎをしたむつ小川原の開発、これに対して政府は今度の予算で若干の予算を調査費とかなんとかつけるという話でございますが、一体むつ小川原の開発を政府は責任を持って進めるという気持ちなんですか。これは国土庁長官ですか。
  214. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 お答えいたします。  むつ小川原につきましては、昭和四十七年六月に青森県からむつ小川原開発第一次基本計画が国に提出されまして、同年の九月にこの開発は閣議了解を終えているわけでございます。その後青森県として、用地の買収、あるいは住民対策事業だとか、環境を中心とした調査等を進めてまいりまして、青森県は昭和五十年の十二月にいわゆる第二次計画を策定いたしまして、国に提出いたしているわけでございます。そして国は昭和五十二年の一月にむつ小川原総合開発会議を開きまして、港湾だとかあるいは小川原湖の水資源の開発等の調査を進めるための五項目に対する申し合わせをいたしまして今日に至っているわけでございまして、今年度の予算には、港湾の実施計画調査費として二億五千万円程度、これは予定でございますけれども、それから小川原湖総合開発事業の実施計画調査費として一億円程度を予定しておるというのが現状でございます。今後、青森県がいま実施しております環境アセスメントの作業を促進していただいて、地元の意見をよく聞いて、また関係省庁と協議をいたしまして、計画の総合的な調整を図って、できるだけ早い機会に第二次計画案を閣議了解を進めるように、いまそれを目標にして進めているという現状でございます。
  215. 北山愛郎

    北山委員 一体むつ小川原のような大規模開発というのは、県の仕事なんでしょうか、国の仕事なんでしょうか。一体閣議了解というのはどういうことなんですか。あの計画によりますと、石油精製日産五十万バーレル、石油化学八十万トン、それから火力発電百二十万キロとか、そういうことを一体政府でやるつもりなんですか。やるつもりもまだなくて、ただ予算をずるずるとつけている。そういうことをいままで何年間もやってきて、そして地元の住民はそれに振り回されて、たくさんの土地の買収というか、土地の会社、三井とかそういうものが入っていって、そして土地はもうむちゃくちゃに移動した。しかし、どの企業が来るという保証は何一つない。一体だれがその責任を持つのです。政府が持つのですか。閣議了解というものはそういうことを含めた了解なんですか。閣議了解というのは一体何です。本当にむつ小川原の開発をやるのですか。県に基本計画を出さしておいて、それを閣議の口頭了解をやったなんというのは、そんなことで一体どうなんです。しかも、資源有限時代だと言っているのに、まだ石油精製だとかやれ石油化学だなんてそんなものをどんどんふやす。おかしいじゃないですか。一体総理はどんな考え方をしているんですか。
  216. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 北山さん、資源有限時代と言うけれどもわが国は成長政策を停止するというわけじゃないのです。しばしば申し上げておりまするように六%成長だ。十二年たちますと日本経済のスケールは倍になるわけですから、そのためには、とにかくいろいろ基幹的な産業というものも整備しなければならぬ。それで、いままでと違いまして、その整備の個所でありますとかその整備のテンポとか、それはかなりおくれることになります。しかし、それにしてもある程度の産業基地というものはつくらなければならぬわけでありまして、これをストップするというわけにはいかないのです。そういう見地から苫小牧、むつ小川原という基地がこれから進められていくわけでございますが、そういう点にも御理解を願いまして、この問題の進展をながめていただきたい、かように考えます。
  217. 北山愛郎

    北山委員 もっと責任のある——一体どこでどうするのか、県が責任を持ってそんなものをやるのか、そういう企業が来るのかと言うのですよ。そんなものをつくってみたところで、また、実際に土地を買収したりしてやっていますが、県の公社ですか。何百億も金を借りて土地を買って焦げついているわけだ。そんなことをさせておくが、本当にそんな発電所ができたり石油化学の工場ができたりするという保証はどこにもない。ただ幻想で踊らされている。そして何年も何年もたっている。だから、そういう無責任なことは、むつ小川原だけじゃないのです。全国至るところそうなんです。これは通産省の立地公害局でもって全国の工業団地の調査をやっていますね。この工業団地というのは千二百もある。そして各県に新しいものはほとんど企業が入っておらないのですよ。土地開発公社とかなんとか第三セクターが借金をして、そして整地をして団地をつくるけれども、企業が来ない。われわれ岩手県の中部でもそうですよ。三百ヘクタール以上の工業団地をつくってやってみたところが、水がないときた、最後に。水の調査もやらないで工業団地をつくるのですからね。百億も使っている。おまけに雇用促進事業団の労働者の住宅だけは二むねぽんと建っている。まだどの企業も来ない。そんな団地があちこちあるのですよ。県内でもたくさんありますし、全国的にもたくさんある。その表が通産省の調査の中にあるわけです。  それから、これは通産省にもお伺いしたいのですが、こういう指導をしてどうするのか。しかも、岩手県で言うならば、そのような各地の団地が造成をされておっても企業が来る当てがないのに、地域振興整備公団ですか、それがさらにその隣のあたりに新たに工業団地をつくろうとしている。全くむだなことをやっている。企業が来るか来ないかわからないのにやっている。しかも、こういう経済状況の中ですから、企業が設備投資を新たにやるということは非常に限られていますね。団地だけをどんどんつくっていく。そして困るのは地方自治体ですよ。  それから、自治大臣にお伺いしたいことは、いわゆる土地開発公社が、普通の公共用地だけじゃなしに工業団地とか流通センターとか、そういうために土地を借金して取得している。しかも、その土地開発公社の関係だけでも借金が二兆円以上に及んでいる。その土地が売れない、処分できないわけですよ。そういうものをたくさん地方で抱えているのです。企業だけではないのですよ、土地を抱えているのは。地方財政の大きな潜在したガンだと思うのですが、こういうことを一体自治大臣はどのように指導して解決をするのか、お伺いしたいのです。     〔田中(正)委員長代理退席、委員長着席〕
  218. 小川平二

    ○小川国務大臣 自治省といたしましては、開発公社が土地の取得をいたしまする際に、まずそもそも取得の必要性があるかどうか、これを国、地方公共団体が買い取るという見通しがあるかどうか、工業団地でありますれば売れる見通しがあるのかどうか等を含めまして、地方公共団体と慎重に打ち合わせをすべし、こういうことを通達等をもちまして、繰り返し繰り返し今日まで指導してまいっておるところであります。
  219. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいま未処置の分だけでも七千五百ヘクタールくらいございまして、全国で七万ヘクタールの工場地帯の中におきまして約一割強くらいまだお話のような状態にございます。しかし、これはいまから数年前、高度成長期におきましては、国土計画に従いまして各地に工場分散というような計画もございまして、それで土地造成をいたしましたりなんかした一つの売れ残りでございますが、考えてみますると、児島干拓の地帯につきましても、その他各地にいたしましても、少なくとも、土地造成をいたしまして団地を誘致いたしますには十年から十五年くらいの経過がございます。その間土地を寝かしておくというようなことで、ことにこういうふうな経済の落ち込んでまいっておりまするときには、地方自治体といたしましても、先行投資いたしました金利が相当な負担になっておるような状態でございます。こういう点もあわせて検討しなければならぬ、かように考えております。
  220. 北山愛郎

    北山委員 いまざっとお尋ねしたわけですが、とにかく大変な列島改造の後遺症といいますか、至るところに残っているわけです。企業はたくさん借金をして売れない土地を抱えて困っておるそうですか、地方自治体とかあるいは自治体の関係している第三セクターとか、そういうところで土地を抱え、借金を抱えて、借金だけでも何千億と払っておるわけですね。その土地を一体どうするのか。ですから、私は政府に要望したいことは、単にこれは通産省でやっておる、あるいは自治省でどうだというのじゃなくて、やはり連絡して、この実態をよく調査をして、その土地をどうするかという方針を立ててもらいたいと思うのです。そうして指導してもらいたい。ただ土地を抱えて、それは決算だけは、土地があるものですからそれをあることにして評価してやっていますが、売れない土地なんですよ。民間の企業であればもう倒産ですね。  そこで、私は自治大臣にお伺いするのですが、一体、土地開発公社というのは、仮に民間の企業のように赤字を出して解散をする場合に、その借金とかそういうものは設立した団体、たとえば県なら県、これがしょい込む、こういうことになるのですか。
  221. 小川平二

    ○小川国務大臣 開発公社は地方公共団体の事務の一部を分担させるために設立されました公法人でございます。そこでこの運営の適正を担保いたしまするために、予算、事業計画は団体の長の承認に係らしめておる、あるいは事業報告、決算を議会に報告をするということをやっておるわけで、いわば公共団体の分身でございますから、これが倒産をするというような場合において地方公共団体も責任を免れないものと存じます。実際問題として、債務の保証をいたしておりますから、公共団体が責任を負わなければならないということになろうと存じます。
  222. 北山愛郎

    北山委員 それからもう一つは、いわゆる公有地の取得の促進、推進に関する法律ですね。いまの土地開発公社の法律ですが、その法律の中で、土地開発公社というのは、民間のたとえば工場の敷地であるとかそういうものをつくるというようなことは本来の仕事じゃないですよ。学校とか道路とか、そういう敷地を先行取得する、本来の公共用地を先行取得するなら間違いがないのです。売れるかどうかわからぬものを、来るか来ないかわからぬような企業を当てにして、何百ヘクタールもの工業団地をつくって、そうしてみんなそれをかぶっておる。こういうことは、いまの公有地の取得促進の法律から見ても、これはちょっとうまくないのじゃないですか。どうですか。
  223. 小川平二

    ○小川国務大臣 公社が工業用地、工業団地等を取得して造成することは、格別法律の趣旨そのものに背反することではなかろうと思っております。
  224. 北山愛郎

    北山委員 時間もなくなってまいりましたが、いまの問題について締めくくりに言いたいことは、よく、行財政の改革ということを言いますと、すぐ人件費がどうだとか役所がどうだとか言います。しかしそうではなくて、行政、政治の運用の面で大きなむだをやっている。たとえばむつ小川原もそうだが——むつと名のつくものはどうもまずい。原子力船「むつ」もそうですよ。何百億も金をかけて、その船がどこへ着いたらいいかわからぬという迷子みたいな状態。こんなものをとにかくやった。あるいは成田空港にしても何千億もの投資がいまだに寝ているわけです。いま申し上げたような各地の工業団地とかそういうむだ、しかもその被害を地方自治体が受けている。至るところ洗えばたくさんありますよ。どこにそういうふうな責任があるかわからぬようなことじゃなくて、きちっとしたことをやるべきだ、もっと合理的な物差しで仕事をすべきだ、こういうことを私は主張したいのであります。長い間のでたらめな行政が莫大な金をむだにしている。これを指摘したいのであります。  最後に、時間がありませんので、ひとつ空港の問題についてお尋ねをしたいのです。  去年の十月に第三次空港整備計画ができているのですが、この第三次空整ができましても、現在七十の空港の中で、ジェット機が使える、いわゆるYS11の後続のジェット機が使えるようなそういう空港というのは、五十五年になっても二十九にしかならない。あと四十ぐらい残るのですよ。その四十ぐらい残る空港はみんなやはり二千メートルに広げるのかどうか。そうすると数千億の金がかかります。それをやるために、花巻空港という私の地元の空港もその一つなんですが、それが二千メートルに拡張されるということで、地元の農民、地権者が反対をして、六年越しに抵抗しているわけです。機動隊を入れて工事を強行している。ところが、御承知のように盛岡まで新幹線が昭和五十五年度をめどにして通るということになっている。二時間半で行ったり来たりできるのですよ。そうなれば、何も二百億の金をかけて二千メートルの空港に拡張しなくてもいいのではないか。これが県民の普通の常識的な判断なんだ。それを押し切ってやろうとしている。これも三次空整の一環です。それから、そうしておきながら、今度は山形空港では千五百メートルの滑走路でジェット機のB737、これを運航しているのですね。千五百メートルで済むなら済むというふうにしたらどうですか。そういうことをやっている。  それからまた、科学技術庁の機関である航空技術審議会ではおととしの暮れに建議案を出しています。日本は国土も狭いしいろいろな障害があるから、地方空港についてはできるだけ滑走路を短くするような、それで済むようなジェット機を開発しなさい、いわゆるSTOLを開発しなさい、そうすれば九百メートル以内の滑走路で百五十人乗りぐらいなジェット機が開発できるのだということを航空技術審議会が正式に科学技術庁長官に答申というか建議案を出しているのです。そこで科学技術庁としては航空宇宙技術研究所でその開発の努力をしているわけでしょう。また通産省は通産省でYS11の後がまのジェット機の開発ということで、やれボーイングと話し合ったりいろいろやっている。皆てんでんばらばらなんです。私は、運輸省の航空局の方針とか、あるいは科学技術庁あるいは通産省は、日本の地方空港、これから拡張しなければならぬだろうというような四十の空港について、それを全部二千メートルにするとか、そんな犠牲を払わないで、先ほど申し上げたようなSTOLのような飛行機で済むならそういう飛行機を開発すべきじゃないかと言うのです。そのために多少の国費をかけてもいいんじゃないか。一つの空港だけで、花巻空港だけでも二百億かかるのですからね。そうして二時間半で新幹線が来たときに、その空港を利用するお客さんというのは、よほどの変わり者しかないでしょう。そのことのために県民が税金を負担している。だからみんなが反対しているわけですよ。そういうことをしゃにむに三次空整ということで押し切って、一方では千五百メートルで間に合わせようとしている。ばらばらじゃないですか。こういうことを一本化してもらいたいということです。これは担当の運輸大臣、それから科学技術庁長官、通産大臣にそれぞれ答弁をしていただき、総理から、航空政策というものを、そしてどのような機種を選定すべきかということについて、もう少し一貫した政策、計画をつくるようにひとつ総合性を持たしてもらいたい。ことに、われわれの希望からすれば、だれから見ても理屈に合わない花巻空港みみたいなものを二千メートルに拡張することを強行するというようなことは中止して、再検討してもらいたい、こういうことを最後に要望いたします。
  225. 田村元

    ○田村国務大臣 いま北山さんがおっしゃったことは、地元感情としてはよくわかるような気がいたします。ただ問題は、STOLもいま何種類か開発中と言われておりますが、これが実用に供されるのは昭和六十年以降であろうというような現状でございます。それからまたYS11ももう製作を打ち切っておるというようなことでありまして、目下のところとしては、現有機、現存しておる飛行機を対象にした空港整備をする以外にちょっとしようがないのです。先ほど四十の飛行場のうちというお話がありましたが、まあ三十四の飛行場のうち、現在とりあえず何とかやろうというのは十二でございます。先ほど山形空港の話も出ましたが、私は技術的には全く素人でありますので何とも言えませんけれども、何か調べてみますと、やはり気流とかいろいろな特殊な要件というのがありまして、これが全部の飛行場に普遍的に適用できるということはなかなかむずかしいようです。これはもし必要でございましたら少し詳しく航空局長から御説明をさせますが、いま申し上げたような次第でありますので、とりあえずは現有飛行機を対象とした飛行場整備を進める以外にどうも方法はなさそうだということのようでございます。
  226. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 STOL機に関しまして、大体の見通しを申し上げたいと思います。  仰せのとおり、科学技術庁長官の諮問機関である航空技術審議会から、先生が先ほど御指摘なさいましたような建議を受けております。したがいまして、ただいま航空研究所において鋭意開発中でありまして、本年度初めてその開発に関する予算がつきました。  この見通しを申し上げますと、昭和五十六年度までに試験機、実験機をつくり上げたい。そして、五十七年度から五十九年度までの間に実験飛行をやりたい。そして六十年度を迎えますが、あと三年ばかり整備にかかると思いますから、したがいまして、実現化、実用化は昭和六十三年ごろではなかろうかというのが今日の見通しでございますが、われわれといたしましては、日本の特殊事情を考えまして、鋭意このSTOL機の研究開発に没頭いたしておるところでございます。
  227. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  通産省は、航空機の生産に関する行政を担当いたしております。ただいまのような話に対しまして、関係省庁とも今後なお一層緊密な連絡をとりまして、万遺漏なきを期してまいりたいと思っております。
  228. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいまの北山さんの御提言、一つの御見識だ、かように考えます。実際の適用になりますと、これはケース・バイ・ケースというか、そういう問題になろうと思いますが、御提言の趣旨も踏まえまして鋭意努力をする、かように考えております。
  229. 坪川信三

    坪川委員長 これにて北山君の質疑は終了いたしました。
  230. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は社会党、公明党、民社党、新自由クラブ、いま緊急に問題が起こりましたから、共産党の方がおられませんので、共産党も恐らく賛成だと思いますけれども、そうなると全野党ということになりますが、代表いたしまして、議事進行に関し、この際総理の御見解をただしたい問題があるのであります。  それは、実は過ぐる二月三日の衆議院本会議におけるわが党の成田委員長の質問に対し、さらに昨日の民社党の大内委員の質問に対しましても、さらに重ねて本日公明党の広沢委員の質問に対しましても、総理は朝鮮問題に関連をいたしまして韓半島という言葉を使われておるのであります。これは私は単なる言葉の誤りではない、このように思うわけです。むしろ私は、すぐに総理認識の誤りあるいはわが国の対朝鮮政策の方針の誤りがそこにあらわれておるのではないか、このような疑問を持つわけであります。  なぜそのような疑問を持つかというと、これは単なる問題ではないと私が申し上げますのは、実はこの総理答弁にあらわれた認識は、たとえば一九四八年十二月十二日、第三回の国連総会の決議一九五号、これにおいては大韓民国が、「朝鮮における唯一のこの種の政府であることを宣言し、」、こうなっておる。さらに日韓基本条約第三条においても、「大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。」、さらには、これは大韓民国の憲法でありますが、この第三条に、大韓民国の領土は韓半島及びその付属島嶼とする、この韓国の憲法の中に韓半島という言葉が出てきております。したがって、私は、こういう考え方総理のあの答弁韓半島という言葉は、認識は一つになっておるのではないか。もし、そうであるとするならば、これはわれわれがいま問題にしている日韓癒着を象徴する認識ではなかろうかと私は思うのです。さらに勘ぐれば、そのように言葉としても言ってくれという韓国側からの要請があったのではないかとさえ疑わざるを得ないのであります。  したがって、この際、総理の御認識なり対朝鮮政策に対する方針について、ここで明確にしていただけると思います。
  231. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 きのうでありましたか、私は韓半島という言葉を使ったら、朝鮮半島だという不規則発言がありまして、私は訂正をいたしておりましたが、私は別に韓半島と言ったら深い意味があるわけではないのです。その直前に金鍾泌首相とお目にかかりました際に、韓半島韓半島と言うものですから、つい韓半島、こう申し上げたわけでありまして、自今、私は朝鮮半島と呼びます。
  232. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま、くしくも言われたのですけれども韓国の金鍾泌さんから言われてそういう言葉がつい出た。まさにそこにあらわれておるのですね。ここに本質がある。それで私は、単にこれは訂正の問題じゃないのです、あなた方笑っているけれども認識の問題です。しかも御承知のとおり、たびたび総理答弁の中に言われておるとおり、対朝鮮政策というのは非常にデリケートな問題を含んでおる。朝鮮民主主義人民共和国の方は韓という言葉を認めていない。そういうデリケートな問題ですから、韓半島というのが単に言葉のちょっと言い間違いというようなことでこれは片づけられたら困るのですよ。  それでさらに勘ぐれば、一つのところには朝鮮半島と言い、あるところでは韓半島、こういうふうにおっしゃっているのです。これは使い分けをしておるのではないかという疑いすらあるのですよ、私ども。こういう外交問題に重要な影響を及ぼす、これはこういう認識の問題と私たちは言うのはそこですが、単なる言葉の問題ではない。それでその点は公式に訂正をされるわけですか。
  233. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私が韓半島という言葉を使ったということがありとすれば、それは朝鮮半島と訂正いたします。
  234. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ありとすればというようなあいまいなあれじゃないのです。私は三人のお方の議事録をここへ持ってきているのです。読み上げてもいいです。成田委員長に対しても、ちゃんと韓半島という言葉を使っている。「私ども日本政府といたしましては、この韓半島が」、こんなふうに使ってあります。それから、大内君の質問のときには確かに言い直されました。それは知っております。議事録ありますから。ここでも韓半島という言葉を使ってあるし、きょうの公明党の広沢君の質問に対しても韓半島、これは議事録です。だから、あなたがそうですかとおっしゃるけれども、そんなふうに軽く出てくるところに実は問題がある。問題があるのはそこなんです。しかも、いま金鍾泌氏とおっしゃいましたけれども、わが党の成田委員長の代表質問は二月三日でございまして、会われる前じゃなかったのですか。だから、私は、総理の頭の中にそういうあれがこびりついていると思うのですね、韓半島という言葉が。そこをわれわれは看過し得ない問題があると言っているわけです。しかも、本委員会においてなされた言葉はよろしゅうございましょう、本委員会で訂正をされるなら。本会議の訂正の問題は、これは議運の方にひとつ申し出をしていただきたいと思います。どうですか。
  235. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私が朝鮮半島のことを韓半島と呼んだ言葉は、朝鮮半島とこの席を通じて訂正いたします。
  236. 坪川信三

    坪川委員長 以上をもちまして昭和五十一年度補正予算三件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  237. 坪川信三

    坪川委員長 これより昭和五十一年度補正予算三件を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。大村襄治君。
  238. 大村襄治

    ○大村委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和五十一年度一般会計補正予算外二件に対し、賛成の討論を行います。  現下のわが国の政治、経済情勢は厳しく、政府の取り組むべき課題が山積しております。この難局に当たって、協調と連帯を旨とし、清新かつ実行力のある福田内閣の誕生を見たことはまことに心強く、この際、私ば新内閣が政治の基本を正し、国民生活の安定と経済の安定に向かって力強く邁進されることを強く望むものであります。  現下の経済情勢下においてできるだけ早く景気を回復させる必要があり、このため、速効性のある強力な景気対策の実施が熱望されているのでありまして、個人消費が盛り上がらず、民間需要が停滞している今日においては、特に財政面からの景気てこ入れに対する期待が大きいのであります。  今回の補正予算は、これにこたえるべく、昨年十一月の七項目の景気対策をさらに補強し、五十二年度予算と相まって景気の中だるみからの早期脱出をねらったものであり、財政投融資の追加等を合わせた事業規模の追加は総額約一兆六千億円に上り、その一日も早い成立と執行が各界から強く望まれているのであります。  以下、私は本補正予算の内容に関連して簡単に所見を申し述べ、賛意を表明いたします。  まず第一に、公共事業は有効需要を喚起し、景気の回復を速める強力な手段であります。したがって、今日のように、特に設備投資が停滞し、また需要拡大を海外に多く求め得ないとき、公共事業費を追加して、効率的、重点的な公共投資を行うことは、速効性のある国内需要拡大策として効果的かつ適切な措置であると確信するものであります。この公共事業関係費の追加に伴う地方自治体の裏負担分については、すでに地方債引き受けのため財政投融資の追加を決定して、事業の執行に支障なきよう配慮しております。  なお、国鉄と電電公社について、削減が予定されておりました工事費の一部復活のための予算補正を行っていることは、財政投融資の追加とともに妥当な措置であり、関連業種や特定地域の雇用面に好ましい影響を及ぼすものと思われます。  次に、台風、冷害等の災害対策関係の経費の追加についてであります。  昨年発生した台風十七号等による公共土木施設、農林水産業施設等の被害は八千五百億円程度と例年になく大きく、これらの被害に対し、政府は、早速、公共事業等予備費等をもって措置しておりますが、今回さらに約九百二億円を計上して復旧に万全を期そうとしているのであります。特に、災害の早期復旧を図るため、初年度の復旧進度を三〇%から三五%に高めていることは心強い限りであります。  また、東北、北海道方面等の冷害に対しては、政府は、激甚災害の指定、天災融資法の発動、救農土木事業の実施、農業共済金の早期支払い等の対策を実施してきたところでありますが、今回の補正で、農業共済再保険金の支払い財源の不足を補てんする等のため約五百三十一億円を計上することといたしております。  このほか、人事院勧告の実施に伴う公務員の給与改定費、義務教育費国庫負担金、国民健康保険助成費等義務的経費の精算不足額の補てん、国債整理基金特別会計、国立病院特別会計等への繰り入れなど、いずれも早急に行う必要があり、そのための経費の追加は当然であります。  このような追加経費を賄うため、多額の財源を要するのでありますが、歳出面では、既定経費、予備費等の節減を行い、また歳入面では、当面の経済情勢を反映して税の自然増収を見込むことができませんので、前年度剰余金の受け入れ、公債金の増額を行うなど、政府はその財源捻出に最大の努力をしているのであります。  特に、公債につきましては、いわゆる建設公債二千億円を増発する一方、いわゆる特例公債を一千億円減額し、差し引き公債の増発を一千億円にとどめて、財政の悪化を避けるため最善の努力をしているのであります。  以上、今回の補正予算を見るに、苦しい財政事情のもとではこれが精いっぱいのところであり、すでに本委員会で審議している五十二年度予算とあわせ考えて、当面の経済情勢、国民生活の安定等にこたえたものとして賛意を表するとともに、景気の回復と同時に物価の安定も引き続き重要な課題でありますし、また、金利の引き下げ、雇用の安定、欧米諸国との貿易不均衡問題なども当面の重要な課題でありますので、これらに対する政府の適切な経済、財政運営を期待して、賛成の討論を終わります。(拍手)
  239. 坪川信三

    坪川委員長 次に、藤田高敏君。
  240. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、日本社会党を代表し、ただいま議題となっております昭和五十一年度補正予算三案に対し、反対の討論を行います。  まず反対理由の第一は、この補正予算は昭和五十一年度本予算が持っている欠陥を補正することができていないばかりか、救いがたいその矛盾をますます拡大しているからであります。  また、国民が当面緊急課題として求めているインフレと不況の克服、失業問題の解決、社会的不公平の是正、冷害、災害、雪害などの問題や、地方財政充実への要求に積極的にこたえようとしていないからであります。  政府は、昨年本予算の審議に当たり、この予算は国民生活と経済の安定と国民福祉を充実し、財政の改善合理化を図り、景気を回復さす予算だと強調し、五十一年度は総合予算主義の立場から補正予算は組まないとまで断言してきたのであります。ところが、これらの政治目標がことごとく裏目にあらわれ、国民に大きな失望と政治不信を高めているというのが現実の姿ではないでしょうか。  まず第一に、国民の生活の実態はどうなっているでしょう。政府のインフレと不況によって、勤労国民の実質収入は半年以上も連続で低下し、失業者は百万人を数え、中小企業の倒産は、負債額一千万円以上に限定しても、毎月一千件を超えるというきわめて憂慮すべき状態が慢性化しております。農民は冷害、災害、雪害によって生活基盤が脅かされ、わけても年金生活者や生活保護世帯の生活は惨たんたるものであります。  国民生活がこのような状態にまで追い詰められた原因は何でありましょうか。その主たる要因は、昨年は物価上昇率以下に賃金と生産者米価を抑制し、国鉄運賃、電信電話料金、社会保険料等等の公共料金の引き上げや、電気、ガス料金の大幅引き上げ等により、国民大衆のふところから直接巻き上げた金額は三兆円にも及んだからであります。  この補正予算には、このような国民生活を積極的に改善しようとする意欲はほとんど見受けることができません。したがって、国民生活擁護を最大の政治目的とするわが党としては、この補正予算を支持することができないのはけだし当然であります。  反対する第二の理由は、この補正予算は国家財政の硬直化をますます強めているからであります。国債発行を中心とする借金財政は、いまや国民の目をごまかすことができないところまで立ち至りました。国債発行額は五十一年度末累計額において二十二兆四千億円、そのうち赤字公債額は五兆七千四百億円にも達しようとしているにもかかわらず、今回の補正では一千億円の赤字公債の減額補正を行っていますが、その実態は新たに公債費として二千億を追加しているのであります。  また、今回の歳入財源の中心は、前年度剰余金を充当し、翌々年度まで留保して使用できるこの剰余金二千五百四十二億円を取り崩して使用するなど、財政硬直化への道をますます強める予算措置をとっているのであります。もし、この前年度剰余金を補正財源として操作しなかった場合は、全予算に占める国債発行額は優に三〇%を超えることになるのであります。このことは、政府みずからが策定した五十年代前期財政計画を政府みずから破綻さすことになるのであります。かかる無責任な財政硬直化政策に賛成することは絶対許されません。  反対する第三の理由は、政府が強調するごとく、この補正予算は着実な景気回復の決め手にはならないからであります。すなわち、先日来より昭和五十二年度本予算の本会議や予算委員会におけるわが党議員の質問ですでに明らかなとおり、これだけ景気が沈滞をし、わが国経済に対する国際環境が厳しい中では、政府が主張する性格の公共事業万能主義の景気回復策は、その基本においてその処方せんを間違えていると言わざるを得ないのであります。  いわんや、今回の補正による公共事業費は合わせて二千六百三十八億程度の小規模のものであり、その財源も既定予算中の一般予備費と公共事業予備費の一部を取り崩したものでありまして、純然たる歳出規模の増加ではありません。そればかりか、昨年、国鉄、電電公社の工事費の削減額は六千七百億円にも及びましたが、その後の復活は四千億円程度にすぎず、二千七百億円は五十一年度の枠より減少しているのであります。したがって、先ほど指摘した今回の補正による公共事業費を追加しても、財投計画を含めて考えるとき、事業費の絶対額は減少しているのでありまして、この補正が財源的立場からも景気浮揚予算になると主張するのはごまかしと言われても仕方がありません。要は、五十一年度本予算が望ましい景気浮揚のてことなり得ないで、補正予算を組まなければならなくなったその原因を、いまこそ福田内閣は厳しく反省して出直すべきであります。  高度成長時代の遺物である企業優遇税制を初め、医師優遇税制や利子配当所得の分離課税制度等を存続し、社会的不公正を積極的に是正しないばかりか、所得減税を見送ってきた五十一年度予算が景気浮揚にはいかに無力であったかを政府は率直に反省すべきでありましょう。さればこそ、当面、全野党がこぞって要求している一兆円減税こそが所得の目減り対策として有効であるとともに、最も現実に即したインフレなき景気浮揚策であることを、福田内閣は素直にこれを認めるべきであることを強く主張するものであります。  最後に、この補正予算は、国民が緊急課題として求めている災害、冷害、雪害対策に対してもきわめて冷淡であり、これが地方財政に対する財源措置もこれまたきわめて冷淡そのものであります。特に、東北、北海道地方を襲った冷害対策のごときは、被害総額約四千億と言われるものに対して、今回の補正ではほとんど農業共済再保険の施策に逃げ込んでしまっており、被害農民に対する救農土木事業さえ興し得ない冷酷、非情なものであります。だれよりもだれよりも農民を愛すと言ったのはだれでありましょうか。私はその責任を強く求めるものであります。  さらにこの補正予算は、地方財政に対する裏づけ財源についても、全部の公共事業に対し一千八十億程度の地方債をつけているだけでありまして、全国自治体の借金財政を一層深刻なものにしているのであります。いやしくも国の責任による公共事業の裏づけ財源は、地方自治体の借金として残らない地方交付税等によって国の責任でめんどうを見るべきであります。  以上、指摘してきたように、補正を組まざるを得なくなった政府見通しの誤りを厳しく追及し、後手後手政策を強く批判して、本案に対する私の反対討論を終わります。(拍手)
  241. 坪川信三

    坪川委員長 近江君。
  242. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十一年度補正予算三案に反対の討論を行います。  当面する経済情勢は、景気回復が著しくおくれ、厳しい様相を呈しております。景気回復のおくれは本年度当初から懸念されていたところであり、われわれも早くから、所得税減税を中心とした生活防衛を通じ、国民生活優先の景気対策の実施を要求してきたのであります。ところが、政府・自民党は、ロッキード事件の真相隠しとロッキード事件を契機として起こった政権抗争に明け暮れ、昨年十一月十二日に景気てこ入れ策を決定するまで、景気回復に有効な対策を全く講じなかったのであります。私は、今日の景気回復のおくれはひとえに政府・自民党がもたらした政策不況、政治不況であると断言せざるを得ないのであります。しかも今回、国会へ提出された補正予算案も、とうてい景気の着実な回復を実現するにはほど遠い内容と言わなければなりません。  以下、補正予算案に反対する主な理由を申し上げます。  第一に、補正予算案においては、国民が一致して要求している所得税減税に全く目を向けていないことであります。  本年度は所得税減税が見送られた上に、社会保険料の引き上げ、公共料金を中心とした物価上昇が続いたために、国民生活が極度に圧迫されていることは言うまでもありません。われわれは、苦境に追い込まれている国民生活を守り、景気を着実に回復させ、さらに安定成長時代への移行を可能にするために、かねて、税額控除方式によって、少くとも三千億円の年度内減税を主張し、その財源をも明示してきたのであります。国民の切実な要求に耳を傾けようとしない政府の態度は納得できるものではありません。  第二に、社会保障政策の拡充にも何ら手をつけず、中小企業対策にも配慮を欠いていることであります。  五十一年度においても確かに各種年金の給付額や生活扶助基準は引き上げられました。しかし、老齢福祉年金は、昨年十月から月額千五百円、日額五十円引き上げられたにすぎません。また、中小企業は仕事量が激減し、加えて大企業のしわ寄せをまともに受け、倒産の危機に直面しているのが実情であります。本来であるならば、中小企業分野調整法の制定や下請代金支払遅延等防止法の強化が速やかになされなければならないはずであります。  第三は、地方財政対策が不十分きわまりないことであります。  不況の影響により地方税収が伸び悩み、また地方交付税が減少しているにもかかわらず、地方自治体に対する行政需要は年々高まり、さらに国の公共事業の裏負担の増大によって地方財政はますます窮迫の度を加えております。こうした状況にあるにもかかわらず、今回の補正予算案による公共事業の拡大も、地方団体の裏負担を地方債という借金によって全額措置させようとしているのであります。これでは借金押しつけ政策と言わなければなりません。  第四は、冷害、災害復旧対策も十分とは言えないことであります。  冷害地においては農業収入が減少し、不況のため出かせぎも思うに任せず、そのため農家の経済状態はますます逼迫しております。いまや、救農土木事業の拡充や農業共済制度の改善を含め、一層強力な被災農家の救済は急務であります。災害復旧対策についても同様であります。政府が十分な財政措置を講じていないために、国庫補助対象外の災害復旧事業が相当量に上っており、いたずらに地方財政を圧迫しております。補正予算において国庫事業の対象の拡大、補助率の引き上げ、さらに地方債の起債充当率の拡充は当然であったのであります。  以上をもって、昭和五十一年度補正予算三案に反対する討論を終わります。(拍手)
  243. 坪川信三

    坪川委員長 次に、大内啓伍君。
  244. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、民社党を代表いたしまして、昭和五十一年度一般会計補正予算等三案に対しまして反対の討論を行いたいと存じます。  反対する理由は、次の四点であります。その第一は、今回の補正予算は国民生活の窮迫を防衛するために十分な措置がとられていないことであります。第二は、景気てこ入れに対しまして十分な機能を発揮し得ない予算編成であることであります。第三は、災害対策に対してもきわめて冷淡であるということであります。そして第四は、地方財政に対する配慮が全く欠けているということであります。  以下、具体的にその理由について敷衍して申し上げたいと存じます。  昨日も指摘しましたように、総理大臣は、昨年の通常国会の経済演説におきまして、昭和五十一年度は雇用が好転し、生産活動も適正水準に達し、経済に明るさと安堵感が生まれるであろうことを指摘されたのでございますが、事実はなかなかそうはまいりませんでした。すなわち、景気の中だるみの深刻化が特に夏以降深刻になったことは御存じのとおりであります。輸出の停滞はEC問題を初めといたしまして、下期から急速に悪化をいたしました。また、経済成長率につきましても五・七%という実績は果たすものの、その年度中成長率は、わが党の河村議員から指摘いたしましたように大体二・四%程度という低水準に低迷をいたしました。個人消費につきましても二二%台でございまして、個人消費が上昇するという傾向は見られませんでした。中小企業に至りましては、約一万五千件にも達するという戦後最高の倒産が記録され、一千万円以下の中小企業の倒産は、まさに六万件を超えるのではないかと推定をされております。  またインフレの進行も、確かに物価の上昇は狂乱物価の時代を過ぎたとはいえ、消費者物価におきまして消費者に転嫁された犠牲は私どもの推計で九兆円に達すると考えられます。また、国鉄、電電等の公共料金の値上げによりまして、二兆五千億円に達する犠牲が国民に対してしわ寄せされました。また、失業者の増大、雇用情勢の悪化も御存じのとおりであります。私どもは、そういう形で、まず景気の中だるみの深刻化の中で、国民生活の窮迫に対してこの補正予算が何らの対策も講じられなかった、これが第一の反対理由でございます。  補正予算の任務は、言うまでもなく国民生活を窮地から救い、景気のてこ入れをすることが第一でございましたので、私どもは内需の造出、個人消費の刺激という見地から、昨年末におきまして五千億円の年度内減税を要求するとともに、先ほど来申し上げたような事態が起こることを留意いたしまして、その当初予算におきまして一兆円の減税要求をしたことにつきましても、政府はそれぞれこれを無視したのでございます。  そして、災害復旧事業につきましても、十七号台風、東日本冷害あるいは豪雪被害が続出し、特に北海道、東北、北陸、山陰、二千万人に及ぶ被害が出まして、四十人以上の死亡者も出すという事態が生まれたのでございますが、これに対する救農事業はきわめて不十分でございましたし、またその実施されようとする公共事業も、生活関連公共投資は住宅、下水、保育所、文教施設等々にわたりまして、なお私どもとして納得する状態ではございません。  また、この災害復旧事業は単なる損害救済だけではなくて、地域経済振興策が必要であることは論をまちません。特に、地域的購買力の低下に対する適切な施策が必要でございますが、それらの施策はとられませんでした。そういう意味では、本当の生きた災害対策になっていないという点で、私どもは賛成するわけにはまいりません。  また、地方財政の窮迫につきましては、すでにいろいろ申し上げられたとおりでございますが、特に生活保護、あるいは健康保険、公務員給与等等の問題を通じて、地方自治体の義務的経費が急速にふくらんでいることは御存じのとおりでございますし、私どもは、それは大体一千四百億円程度と見積もったのでございますが、臨時地方特例交付金を私どもが提唱したのに対しまして、これを政府は拒否されました。同時に、財政投融資計画の拡充という点につきましても私どもが要望いたしましたが、あの七項目の景気対策は、景気を立て直すために不十分であったことは事実の示すとおりでございます。中小企業の融資、住宅融資につきましてもそれぞれ配慮がなされておりますが、いずれも不十分でございます。  以上の諸点から、私ども民社党は、昭和五十一年度一般会計予算補正予算案等三案に対しまして、反対をいたします。  以上であります。(拍手)
  245. 坪川信三

    坪川委員長 次に、寺前巖君。
  246. 寺前巖

    ○寺前委員 政府提出の昭和五十一年度補正予算三案に対し、私は、日本共産党・革新共同を代表して、反対の討論を行います。  今日、国民は戦後三十一年の中でも異常な長期不況と深刻なインフレ、物価高のもとで大変な苦しみをなめさせられております。いま政治は国民のために何をなすべきでしょうか。国民のための公共事業による景気回復と所得の引き上げ、一兆円減税の早期実施、福祉の向上、物価の抑制など、国民の生活防衛にこそ力を注ぐべきであります。  わが党の国会議員団は、昨年の十二月十六日、最小限の緊急課題を物価対策、所得税緊急減税など七項目にしぼり、補正予算要求として政府に申し入れました。しかるに、政府提出の本予算案は、国民の営業と生活の実情と要求を無視して、依然として大企業のための施策に予算を振り向け続けております。  私は、国民の切実な要求を踏んまえ、以下、反対の理由を申し述べたいと思います。  その第一の理由は、物価対策をおざなりにし、国民生活を守るための施策をほとんど何ら行っていないということであります。  政府は、五十一年度中の消費者物価上昇率を八・六%に抑えると、このひどい物価上昇にもかかわらず胸を張って唱えておりますが、こんな物価上昇率でいばれたものではありません。政府は国鉄、電報、電話その他の公共料金をみずから次々と引き上げ、大阪ガスなどの値上げを容認し、国民生活の実質切り下げを進めております。まさにこれは国民泣かせそのものであり、物価対策なしと言わざるを得ません。そればかりか、広く国民が求めている年度内三千億円の緊急減税と低所得者への越冬資金支給の要求に背を向け、十六年ぶりという異常な減税見送りで実質増税を押しつけたのであります。そして、本予算案においては、原爆対策費、看護婦養成所運営費補助、気象通報所のための支出などを減額し、現在最も重大な課題となっている中小企業に対する特別の融資枠の設定や中小企業信用保険公庫の信用枠の拡大など、また、失業者に対する就労制限の撤廃や失対事業の拡大、さらに失業給付金の八〇%への引き上げ、北海道、東北の季節労働者に対する失業給付を、従来どおりの九十日分支給ないしはそれに見合った対策などについては何の手当ても行っていないのであります。このようなことでどうして国民のための補正予算と言えるでしょうか。  第二の理由は、景気対策を口実に依然として公共事業を大企業本位で進めていることであります。昨年全国を襲った冷災害や本年の雪害に対しても緊急にさらに大幅の予算を振り向け、復旧と援助を急ぐべきであります。しかし、そのための予算はこれでは十分とは言えないのであります。低家賃の公共住宅、学校、保育所など、国民のための公共事業も積極的に進めなければなりません。ところが、政府は従来どおりの高速道路など産業基盤中心の公共事業、道路政策を踏襲しています。しかも、高速道路などの事業費は、国民生活になくてはならない暮らしの道路、つまり地方道路の四倍近くにも及んでいるのであります。そればかりか、国民のための公共事業を推進する主体である自治体は、独自財源を削ってでも国の補助不足を補っているのであります。たとえば今回若干の追加を見た下水道事業は、公共下水道を施設しても、地方の単独事業の枝管ができ上がらなければ、下水道としては何の用も果たさないのであります。この単独分を進めるためにどれだけ独自財源が費やされ、他の住民の要求が抑えられているかはかり知れないものがあるのであります。財政危機にあえいでいる自治体への強力な援助策を、この際、私は強く要求するものであります。  第三の理由は、大企業本位の税、財政の仕組みをそのままにし、さらに国債の増発を行っていることであります。新日鉄一社だけでも年間二百二十億円にも上る税金をまけてやっていると言われていますが、その大企業本位の税制をできる限り是正することは、税の不公正を正すためにも、新たな国民のための財源を確保するためにも不可欠の課題であります。また、軍事費やYX開発費、石油備蓄の名による共同備蓄会社への出資金など大企業のための補助金、高速自動車道建設費、新植民地主義的海外進出費など、不要不急の経費を早期にできる限り組みかえ、国民のための施策に振り向けるべきであります。  ところが政府は、大企業の高度成長を支えた税の仕組みや財政に全く手をつけないばかりか、新たな財源を国債一千億円の新規発行に求めたのであります。補正後、国債発行額は七兆三千七百五十億円、国債依存率は依然として二九・九%の高きに及んでおります。さらに国債の累積発行残高はついに二十三兆円を超え、その規模は実に、国家予算の一年分にも近づいているのであります。この返済が将来の長きにわたり、国民の肩に重い税となってのしかかることは火を見るよりも明らかであります。昨年二月の中期財政収支試算が一年を経ずして改定を余儀なくされたように、これでは財政の健全化をいよいよ遠ざけるばかりか、破綻への道を突き進めるものであると断ぜざるを得ないものであります。  以上、私は三つの反対理由を述べましたが、改めてここに、国民無視、大企業本位の予算案に強く反対することの意思を表明し、討論を終わりたいと思います。
  247. 坪川信三

    坪川委員長 次に、大原一三君。
  248. 大原一三

    ○大原(一)委員 私は、新自由クラブを代表して、昭和五十一年度補正予算三案に対して賛成の討論を行うものであります。  われわれは、当面する深刻な経済危機の状況に着目しつつ、五十一年度内一兆円減税、公定歩合の引き下げ等、各般の施策を緊急にとるべき必要性を強調してきたところであります。  しかるに、政府においては適切な対応を怠り、その結果、不況は深刻の度合いを深め、失業は年間を通じ百万を下らず、企業の倒産は五十年に引き続き月千件を超え、年末には千五百ないし千六百件という驚異的水準に達し、企業経営の不安感は累増しております。  一方、企業の操業率も八〇%台と、引き続き石油ショック以来の低迷を続け、いわゆる景気中だるみ現象が進行し、産業界のみならず、国民生活もまことに深刻な打撃を受けつつあります。つまり、家計においては、名目所得の上昇にもかかわらず、その実質的消費水準は前年に比べ横ばいないしマイナスに推移しております。  以上のような指標が示す現状は、かつてわれわれの経験しなかった深刻な事態であり、機動的な政府の対応が早急に実施されるよう強く要請されていたところであります。  しかるに、自民党の内紛を契機に、政府側において臨機の適応がなされず、ずるずると今日に至ったことは、政府・与党の重大な責任であると言わなければなりません。  私は、本年も引き続き、政府の楽観的な経済見通しにかかわらず、国際収支の不均衡、国内的には失業と設備過剰という、国内、国外の不均衡を背景に、デフレギャップは国民生活の上に相当にきつくのしかかり、晴れ間のない曇り日が続くものと考えるものであります。  ところで、今回の補正予算は、われわれにとり満足すべきものではございませんが、当面する景気状況の重大性にかんがみ、できるだけ速やかに成立させ、かつ実行に移すことがまず必要であると考えるものであります。  補正の内容は、災害復旧並びに災害関連公共事業、農作物の冷害対策を中心に、例年ならばすでに昨年中に支給されているはずの人事院勧告に伴う給与改善費、国鉄、電電公社の工事費にかかわるもの等であり、いずれも早急な手当てを必要とするものであります。  われわれとしては、政府は、与野党伯仲下の国会状況を踏まえ、今後予算の編成に先立ち、各党の政策に謙虚に耳を傾け、党利党略を捨てて真に国民の立場に立った予算の編成に努むべきであると考えるものであります。その意味で、今後あらゆる予算について、各野党ともっと突っ込んだ予算折衝の仕組みを慣行として確立し、政府も進んでそのテーブルに着くべきことを提唱するものであります。  当面われわれは、経済の緊急事態に対処し、昨年度末に補正予算を審議し、その際、年度内減税を含め、企業並びに国民生活に血の通った政策をとるべきであったと考えるものでありますが、いま年度末ぎりぎりのこの期に及んで、本案に反対して、早急に必要とする予算の執行に渋滞をもたらすことは適切でないという点にもっぱら着目しつつ、本案の早期成立に賛同するものであります。以上。(拍手)
  249. 坪川信三

    坪川委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  250. 坪川信三

    坪川委員長 これより採決に入ります。  昭和五十一年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十一年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十一年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三件を一括して採決いたします。  右三件に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  251. 坪川信三

    坪川委員長 起立多数。よって、昭和五十一年度補正予算三件は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  お諮りいたします。  委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  252. 坪川信三

    坪川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  253. 坪川信三

    坪川委員長 次回は、来る二十一日午前十時より公聴会を開きます。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時十八分散会